古き神々と封印の子供と (春好 優)
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プロローグ

友達と考えた設定で頑張って書いていきます。よろしくです


夜の暗い闇が広がる中、男が一人走っていた。男の表情には緊迫と恐怖の表情が見て取れる。おそらく何かから逃げているのだろう。

男が走っている場所は街であるが人の気配もなく、昔の街というわけでなくしっかりと電気も流れている。それなのに何処にも人も動物も気配も、声すらもしない。そんな中で走る男は不自然に見えるのは必然だった。しかしそう思うものすらも居ない。

男は不規則に道を進んでいた。止まって考える暇もないのか分かれ道があっても少し迷いながらも直ぐに行く道を決めて進んだ。

道を進んでいると男はふと足を止めた。

慣れていない道を確認せずに進んだためか行き止まりに来てしまった。男は急いで振り返りすぐに戻ろうとしたが彼の足がその1歩を踏み込むことは無かった。何故なら振り向いた先には…

 

「博士あの子供は何処だ?大人しく話した方が身のためだぞ?」

 

「誰が教えるものか!貴様ら教団は世界を滅ぼす気か!」

 

振り向いた先には居たのは黒い服を着た男達だった。その中の一人と博士は話し始めた。しかし博士は何か焦ってもいる様子だった。

 

「ふふ、何を焦っておられるのですか?もしかして既にあなたの中にも我らが神のお使いが居られるのですか?」

 

「うるさいうるさい!黙れえぇー!」

 

博士は気が触れているのか目も焦点が合わずにただ叫んでいた。普通の人が見たならそれは変人がいると思うだろう。しかし博士が元々おかしいのではない。彼は既に精神が侵されているのだ。

 

「どうですか?自身が次第におかしくなっていく気分は、あなたはもう時期我々の同士となるでしょう」

 

「ぐっ、ハァ、ハァ、きさ、まらの、仲間に、なるぐら、いなら、死んだ方が、マシだ!あの子の、いばしょ、は誰にも、教える、きは、ない」

 

何かと戦うように苦しむ博士は自身の顔をつかみ息を切らしながら否定の意志を彼らに見せた。何故に彼は自身の苦しみに耐えるのだろうか。それは彼自身にしか今は分からないことだろう。

教団と呼ばれた者は博士の言葉を無視して手を伸ばし始めた。

 

「貴方の意志など関係ない。教える気が無いならもう1人のあなたに聞くだけですよ」

 

「それは、どう、かな?私の、体は。わたし、のものだ。既に、私は、やく、め、をおえ、た。なら、あとはじょう、ほう、を、けすだけ、だ!」

 

博士は震える手を懐に入れた。そして博士が懐から手を出した時手には拳銃が握られていた。

 

「何を!あなたには既にそこまでする精神力は無いはずだ!」

 

先程まで余裕ぶっていた男は博士のやろうとすることを理解するとすぐに慌て始めた。それはこの者の油断であり傲慢が読んだこと、既に目的を得る機会は失われようとしている。

博士はその様子に満足したのか自殺しようとしているにも関わらず笑顔を向けていた。そして彼は笑いながら口を開いた。

 

「はは、きさま、らの、おもいど、おりに、は、させな、い!」

 

男達は走った。しかし余りにも彼の動きを抑えるためには距離があり、時間が無さすぎた。

博士の指が引き金を引いた。その時、月が照らす夜の街に赤い血が飛び散った。

 

 

 

光は闇に飲まれいつしか暗黒の時代が来るだろう。我々は忘れていたのだ。いや我らは自ら記憶を手放したのだ。支配されていた時代を。我らの歴史の裏に隠れし真実は既に失われている。いつしか報いがやってくる。この星の命が封印し追放した彼らが戻って来る時には既に終わりを迎えた後になるだろう。

アーノルド・ハーヴェン博士の手記より

 

 

 

 

 

 

 

 

21年後とある某所

日が昇り始め世界の半分が明るくなる中で1人の男が目覚めた。普通なら心地よい気分かもしくは、目覚めが悪いと感じるだろう。しかし男が感じるのは恐怖だった。それは子供がお化けと言う存在を恐れるようにだ。

男はハッと目覚め勢いよく飛び起きる。肌は青白く息も切れている。それを見れば男の感じた恐怖がどこまでのものだったかわかるだろう。

この男の名はリオン・S・アルバートと言う。彼は幼少の頃から時折悪夢にうなされていた。起きたあとの気分は最悪で今にも死にそうな様子は家族に会えば死人が目の前に現れたような慌てようをしていた。しかし時とは人を慣れさせるもので、最初のうちは何回も慌てていた家族はいつの間にかリオンがその様な表情をしていても心配はすれど慌てることはなくなった。また彼のその様子の理由が悪夢にあったために体に害は無いと思うようになったことも理由だろう。けれども精神的には来るのではと思うのだが彼の強靭な精神力のせいかすぐに良くなってしまう。

彼はその悪夢を何回と見ているのに対して内容が思い出せないという。人は夢を覚えている時と覚えていない時があるが何回も同じ夢を見ていたら内容が自然と頭に残るようなものであるが彼は記憶が無いという。そして内容もまた同じだそうだ。

そのようなことがありながらも日常になった悪夢から今日も目覚めた彼はいつも通り呼吸を整えてベッドから立ち上がった。

 

「あれ?ここは…」

 

リオンは立ち上がると同時に目に入った光景に呆けてしまった。何故ならそこは彼が毎朝起きる見慣れた自分の部屋ではなかったからだ。誰だって知らないとこに居たら困惑するだろう。だからこそリオンは疑問を口にしてしまった。

思考力を取り戻したリオンは自身がいる部屋の中を見渡した。

そこは決して自身の部屋では無かったが確かに私物が置かれていた。

 

(僕の私物がある。旅行に行く予定は無かった筈だからここには仕事で来たのか?悪夢のせいで記憶があやふやだ)

 

リオンは自身が知らない場所へ来ていないことに安堵しながら自身の記憶を思い出そうとしていた。すると少しずつ記憶が蘇ってきた。

 

(確か1ヶ月前に潜水艇へ派遣するって会社から言われたんだっけ?唐突で断ろうとしたけど拒否権がないって言われて…)

 

リオンの記憶に思い当たるのはそれぐらいだ。つまり今いる所は船の中ということになる。

そこまで思い出すと後はすぐにリオンの記憶は蘇った。

 

「ハァ〜そう言えば昨日大型潜水艇に乗った気がするな」

 

会社の命令で仕方なく来たが本当の所はきたくないと思っていた。何故か昔から海に対する恐怖というものがあり浅瀬とかならまだしも足のつかないようなとこまでは行ったことがなかった。

だから本当は断りたかったが仕事に私情はなかなかはさめない。だから今船のところに居るのだ。

 

「考えてもあれだな。とりあえず記憶が合ってるか確認しようか」

 

リオンは足を進め部屋の入口まで向かう。部屋の中は狭いので本の数歩で扉の前まで来れた。

リオンは扉を開けて外に出た。すると横から声をかけられた。

 

「あれ?奇遇だなお前も息抜きか?」

 

声をかけられた方を見るとそこにはリオンと同じぐらいの歳の男がいた。茶髪に綺麗な青い瞳のイケメンの男だ。

彼はリオンの会社の同僚で今回の派遣に一緒に行くことになっていた。名をレオン・ブラウンと言う。

 

「あぁ、ちょっと気分が悪くてね」

 

「おいおい大丈夫かよ。てかお前顔色大丈夫か?例の悪夢でも見たのか?」

 

彼は一応幼馴染と言うやつでリオンとは長い付き合いだった。そのため幼少期に悩みを相談したりして悪夢のことも知っていた。そのため初めて見る人よりかは落ち着いているが心配そうにリオンを見つめていた。

 

「そうだね。久しぶりに見ちゃったよ。おかげで記憶があやふやだったから」

 

「そうか。じゃあ仕事のこととかは思い出したか?」

 

「うん。一応、けど他の予定とかは分からないんだ」

 

「そうか。あんまり無理すんなよ!予定なら後で教えてやるよ。とりあえずまだ時間はあるから甲板に出て息抜きでもしようや」

 

「あれ?まだ潜水はしてないの?」

 

「おう、まだ潜水はしてないぜ」

 

どうやら潜水自体はまだしていないようだ。

リオンを心配してかレオンは手を引っ張りながら甲板まで連れて行かれた。一応言うとこの潜水艇はしっかりとした甲板が出来ており外に出ることも可能になっていた。道中には船員と思われる人が居たが特に気にとめてはいなかった。

甲板に着くと世界はほんのりと明るくなっておりまだ夜が開けたばかりだと教えてくれる。太陽もまだ背が低いところにあり、美しい景色が見れた。

 

「早起きは三文の徳って言う日本のことわざがあるが本当だな。こんな景色見られるなんて凄くいい経験だよ」

 

全くその通りだと思う。リオンですらその景色に見とれていたのだから。その後数分ほどリオン達は景色を楽しみ息抜きをした。

 

「さてと息抜きも出来たところで予定の確認をするか」

 

「助かるよ。なかなか思い出せなかったから」

 

「気にするな。困ったらお互い様だろ?」

 

リオンはその言葉にこくりとうなづいた。その後レオンはしっかりとこの後の予定や他のことも教えてくれた。

まず潜水は今日始める予定でPM9時に集合。その後ある程度の計画の確認をして潜水を開始する。

また潜水艦に新しく乗るのはリオンとレオンそして海洋学者を含む3にんだそうだ。

ざっくり纏めるとこうなる。他にもリオンに対する心配などもあったが大丈夫だと言いくるめた。

 

「じゃあ9時までに朝食とか済まして準備したら良いんだね?」

 

「そうだ。ハァ、早く終わらして帰りたいな。会社の命令とは言えこんなことさせられるとは何考えてんだか…」

 

「仕方ないよ。これが終わったら給料upするらしいし頑張ろう!」

 

「おっ?やっと調子がでてきたなか?それでこそリオンだ。それじゃ俺は部屋に戻るけどお前はどうする?」

 

「もう少しここにいるよ」

 

リオンの返事を聞いてレオンは自身の部屋に戻って行った。その間にもリオンは潮風に当たりながらこれからの事を考えていた。昔から海は苦手だった。関わりたくもない。それでもリオンは仕事と割り切ってここまで来たのだから頑張ろうと思った。

不安を抱えるリオンに太陽の光は優しく包んでくれているようだった。

 



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第1話

リアムと別れてからリオンは宝石のような光景を眺めており、段々と高くなる太陽をずっと見続けていた。何故かその光景がスっとリオン自身の心を落ち着かせてくれてるような感覚があったからだ。

 

「そろそろ戻って準備しないとな」

 

リオンが腕時計を見ると時刻は7時になっておりそろそろ朝食の時間である。自身がする準備は少ないが早めにやることをやって置く方がいいだろうと思っている。

リオンは方向転換をして船の中へはいるための扉へ向かおうとした。すると振り返った時にリオンの目には甲板にいる人影が一瞬だけ視界に入った見えた。

 

(あれ?今人が…)

 

人影が気になったリオンは自身の視線を横へと向かした。するとそこには海風に黄金の髪をなびかせながら太陽の方を見る美しい女性がいた。

この船にいるからには20歳を超えていると思われるが歳は16歳ほどに見えるほど若い。

リオンはその光景に目が奪われると同時にある疑問が頭の中に浮かんだ。

 

(僕は集中しているとはいえ人が来ていたことに気づかなかったのか?)

 

目に入るまで全く気づかないのはおかしいと思うだろう。足音なり扉が開くなりで気づくはずだ。それにリオン自身人の気配には敏感な方だ。先程の悪夢を見た後なら気づかないかもしれないが。もしくは先に来ていたという可能性があるがあの様な美しい女性をリオンもレオンも気づかないはずがないのだ。海は穏やかで何も波の音が大きかったということすらないのだ。それなのに気づかないのはおかしい。

それから数分だけ考えたリオンは決断を出す。

 

(まぁ悪夢見たあとだし疲れが取れてなかったのかな?)

 

そういう結論である。

結論を出したリオンはその場に留まる理由もなく船の食堂へ向かった。

 

(…そういえば食堂は何処だっけ?)

 

リオンは自身の船に関する記憶がないことを船の中へ戻って数分して思い出していた。

 

 

 

 

 

 

「やっと食堂に着いた…」

 

あれから30分程船を彷徨った後に彼は船員を見つけやっと食堂の前に来ることが出来た。

リオンは目の前にある食堂の扉を開けた。扉を開けた先にはいい匂いが広がっておりお腹が早く食べろと急かしてくる。

食堂の中には数人が居るくらいだが厨房は少し忙しそうにしていることから先程までは忙しかったのだろう。

リオンはとりあせずお腹を満たすために厨房の方へ向かう。

 

「すいません」

 

「はーい。どうしました?」

 

「朝食を取りたいんですが」

 

「分かりました。メニューはどうします?」

 

「軽いものでおまかせするよ」

 

朝から重いものなんて食えないし特に食べたいと思うものもない。

 

「分かりました」

 

料理人の人かな?は厨房に戻って行った。リオンはその間取り敢えず適当な椅子に座り待つことにする。

待つ間ポケットに入っているスマホを取り出しネットを開く。適当なサイトに入って情報を得る。そんなふうに時間を潰していると先程の人が料理をリオンの前に持ってきてくれた。

 

「ありがとうございます」

 

すかざずリオンはお礼を言った。そしたら彼は笑顔を向けてどういたしましてと言って戻って行った。

 

「ン〜いい匂いだ」

 

食パンにスクランブルエッグ、ベーコンとスープ。シンプルだが軽い食としてはいいものであると言える。

 

「ねぇあんた見かけない顔だね。ちょっといいかい?」

 

リオンがフォークに手をかけてベーコンに手をかけようとした時後ろから呼びかけられた。声は女性のものである。

後ろからの気配には気づいていたので驚くことも無く後ろを向いた。

 

「なんで・す・……か?!」

 

リオンは後ろを向いた時に要件を聞こうと声を出したが目の前の光景に思考を停止しかけた。何故ならリオンの目に写った女性は服を1枚だけ来ている。それだけなら驚かないが彼女はボタンを外しており直にブラジャーか水着か分からないが見えていた。それが妙に色っぽくて見ているこっちが恥ずかしくなる。

 

「あれ?気づかれないように近づいてきたんだけどね。あんたもしかして元軍人か何かかい?」

 

幸い彼女にはリオンの精神状態は気づかれておらず全く違うことを話してきた。しかしリオンはそれに答えることが出来なかった。

 

「あれ?聞こえてるよな?」

 

「おいソフィアそこら辺にしてやれ。相手が困ってるぞ」

 

ソフィアと呼ばれたリオンの目の前にいる女性に後ろから注意をしながら黒い肌の男が姿を現した。

 

「なんだよルーカス。私はただこいつに話しかけただけじゃないか」

 

ソフィアと呼ばれた女性は不服そうに男に言う。黒い肌の男はルーカスはまさに今のリオンには救いの神となっていた。

 

「それ以前の問題だ。お前のその露出した格好は初対面の相手にはキツイだろ。すまないなうちの仲間が迷惑をかけた」

 

そう言ってルーカスはソフィアを押しのけてリオンの前に立って頭を下げた。それはまるでこれ以上見せないと言っているみたいに。

 

「なんだよぉ。それは私が邪魔だって言いたいのかい?」

 

「そういう訳では無いから少し落ち着け。俺たちは彼に自己紹介もしていないんだ」

 

ルーカスはソフィアにそういうとリオンのに向かった。

 

「俺の名前はルーカス、ルーカス・ロドリゲスだ。それでこっちが」

 

「ソフィア・マイヤーズだよ。よろしくね」

 

「あ、はい。こちらこそ先程は少し戸惑ってしまってすいません。僕の名前はリオンです。リオン・アルバートです」

 

ルーカスのおかげでで冷静さを取り戻せたリオンはルーカスとソフィアに頭を下げて自己紹介をした。

 

「そうか君が臨時で来てくれた人か」

 

「だから見たこと無かったんだね。てっきり視察のやつかと思ってたよ。なら後で一緒に潜る仲間だ、よろしくね」

 

「臨時だとしても仲間になることに違いはないな。これからよろしく頼むよ」

 

ルーカスとソフィアはそう言ってリオンに手を出してきた。握手を求められてるのかな?

 

「はい!短い間ですがよろしくお願いします!」

 

リオンは差し出された手をそれぞれ握って握手をした。

その後彼らはリオンと少し話をした後食堂を後にした。どうやらルーカスは潜航長でソフィアは副潜航長だそうだ。

 

「あっ後1時間もない…急いで食べないと」

 

リオンは先程の話しをしている間に冷めた食事を急いで食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは着くのギリギリかな」

 

食事を食べ終わったあとリオンは急いで着替えを済まして作戦室に向かっていた。

光が届かない船内は少し薄暗くて不安なもなるが大丈夫だと自分に言い聞かせる。悪夢のせいで少しだけ暗闇が恐ろしく感じてしまう。本当に面倒だよ。

 

「あら、貴方も遅刻したの?」

 

体がビクッと反応した。突然後ろから気配も一切なく話しかけられてリオンは驚いていた。おそらくリオン自身の顔も驚いた表情をしているだろう。

声のした方を振り向くと見覚えのある金髪と顔がありその青い瞳と目が合った。

 

「驚いちゃった?ごめんね」

 

イタズラが成功したかのように笑いながら笑う彼女は魅力的でリオンはしばし見惚れてしまった。

 

「……コホン、驚いてはいないかな。まぁ遅刻しかけてるのは確かだけど」

 

停止した思考が再稼働したリオンは彼女の問に答えた。すると彼女は嬉しそうに笑顔を見せた。正直リオンは少し意地を張っていた。

 

「そっか、じゃあ一緒に行きましょう?私の名前はエマ。よろしくね」

 

「うん、僕の名前はリオン。こちらこそよろしくね」

 

2人はお互いに笑い合いながら集合地へと急いで行った。

 

 

 

 

 

 

「やっと来たな。ギリギリだったぜ」

 

集合地へと着いたリオンに話しかけたのは彼の親友で同僚でもあるレオンだった。彼は呆れたような表情をしてリオンを見ていた。

 

「アハハ、ちょっと色々あってね」

 

苦笑いをしながら親友にそう返した。リアムはそんなリオンにやれやれといった感じで額に手を当てていた。

リアムは額から手を話してこちらを見るとすぐに近寄ってきて首に手を回された。

 

「それよりそっちのお嬢さんは誰だよ」

 

小声でリオンに質問をしてきた。リアムは先程とは打って変わってニヤニヤとした顔をリオンに近づけてきた。

 

「さっき会って一緒にきただけだよ」

 

「本当かぁ?」

 

本当のことを言っているのだがリアムはそれを疑っており、追撃をしてきた。そんなレオンにしかめっ面をうかべる。するとリアムは急に真面目な顔をした。

 

「お前あの子のことちょっと気になってるだろ?」

 

その言葉にリオンはドキッと心の中で音がした。何故だろうか。リアムのその言葉にリオンは何故か言い返せなかった。

 

「ちょっと私は無視ですか?」

 

「あぁ悪いね」

 

そこにいるのに無視をされてずっとそこにいたエマは怒った顔をして頬が膨れていた。

 

「まぁいいわ。それよりもう説明が始まりそうだし並びましょ?」

 

エマがそう言って見ている先には既に人が並んでいた。そこには先程会ったソフィアとルーカスもいる。あと一人眼帯をつけた男もいる。少し怖い。

エマの言葉に同意して俺たちはすぐに並びに行った。時刻は9時前で本当にギリギリだった。

俺たちが着くと全員が揃ったことを確認されて前に40代後半の男性が前に出てきた。おそらく今回の雇い主だろう。

 

「諸君集まってもらってくれたことに礼を言おうか。さてあまり長い話にはならないように気をつけるとしよう。ではまず今回潜水する場所に向かってもらうのはマリアナ海溝だ。今回は臨時で本部から派遣されて来たリオン・アルバート君とリアム・ブラウン君最後に海洋学者であるエマ・フランク君、そして今回から復帰してもらうジェイコブ・アンダーソンを今回のチームに迎えることとする。何か質問があるものはいるか?」

 

どうやら眼帯をかけた男はジェイコブと言うようだ。エマは海洋学者か、海が好きなのだろうか。

 

「ひとつよろしいでしょうか?」

 

誰も質問が無い中でルーカスが手を挙げて前に出た。

 

「なんだね」

 

「今回の目的を教えていただきたい」

 

「…そうだね、君たちも気になるか。先日別のチームがマリアナ海溝で発見したものがあるのだよ。それはどうやら地上で作られた建物の1部であったらしい。今回我々が求めているのはその建物が示すある可能性だよ」

 

「可能性ですか?」

 

「そうだ。その可能性とはマリアナ海溝のどこかに海底遺跡がある可能性だよ。今回の目的は海底探査及び海底遺跡の捜索だ。他に質問はあるかね?」

 

「いえ、以上です」

 

「そうか。ではすぐにでも潜水をする準備を始めてくれ」

 

何も聞いてなかったがそういうことか。おそらく他の会社にも知られているから早くに調査を行いたいと言ったところだろう。しかしまさがそのような夢物語があるとは知らなかった。

リオン達はすぐに持ち場へと案内された。持ち場と言ってもほぼ待機室のような場所だった。

 

「少し緊張する」

 

「ああ、確かにな俺達はほとんど初めて出しな」

 

「私も初めてだけどワクワクが止まらないわ」

 

リオンとリアムは緊張しながら表情がかなくなっているのに対してエマは嬉しそうに笑顔を浮かべていた。

持ち場はどうやらエマと一緒のようで外の様子が分かるモニターがありエマはそれを見て外の様子を観察するようだ。リオン達は元々援助をしている所への視察の意味もあったがそれよりも急病で来られなくなった人員の代わりに派遣されてたまに点検をすれば良いのだそうだ。だからほとんど待機室のような場所に置かれている。

そんな訳でリオン達は適当な椅子にすわった。

リオンの後ろにいた2人も乗り込み全員が配置に着いた。とは行ってもリオン達は何かあった時のためのエンジニアなのだからやることは少ない。

 

「では潜水を開始する」

 

「「了解」」

 

スピーカーから聞こえて来るルーカスの言葉に続いて返事が聞こえてきた。

外を見るためのモニターは水の中を示しており少しずつ光が薄れていく。その時一瞬背筋がゾワッとしたことをリオンは生涯忘れることは無いだろう。

リオンはこの時海底探査が始まったことを深く感じていた。

 



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第2話

あれから数時間たった。潜水艇も相当な深さまで来ており探査を既に始めていた。段々と暗くなる中で多くの魚を見ることが出来た。外の世界は暗く潜水艇の前に差すライトの光だけがこの暗い世界を照らしていた。

時々リュウグウノツカイなどの深海魚が通り旅にエマはスケッチしてリオン達に説明をしてくれていた。エマは本当に説明している時は楽しそうで彼女がその仕事を好きでやっているのがわかる。

 

「うわぁー!こんなにいいものが見られるなんて嬉しすぎるわ!」

 

「エマさんは本当に海のことが好きなんだな」

 

「えぇ昔から海に関することに興味があってこの間この計画の話が来た時はすぐに志願したわ」

 

「俺らは仕事で無理やりだったからそんな楽しくしてるの見ると羨ましいよ」

 

リオン達2人は何故か会社から無理矢理の派遣だったためにここへ来るのは少しの不満があった。

 

「あら残念…なら私が海の良さを教えてあげるわ!」

 

俺らの答えに残念そうにするエマはすぐに気持ちを入れ替えたのか笑顔を浮かべてリオン達へ彼女自身の持つ知識を存分に教えてくれた。リオンは率直に感心しながら聞いていたもののレオンは少し眠そうに聞いていた。

 

「だから海って言う未知の世界は美しくて探究心が擽られるの」

 

「なるほどね。僕も少し興味が湧いちゃったかな」

 

「えへへ、分からないことがあったら私が教えてあげるから任してね」

 

そう言う彼女の見せる笑顔は本当に美しく見惚れてしまっていた。りおん自身適当に答えたのではなくエマの話に興味が湧いたのは本当の話だ。エマもそれをわかってくれているのだと思う。

 

「アハハ、お二人さん仲がいいのはよろしいんだけど俺の事忘れてない?」

 

「あっ」

 

「あっとはなんだ!本気で忘れてたのかよ!」

 

リオンとエマが話している間完全に空気だったリアムは自身が忘れられていたことに怒って頬がピクピクと動いていた。引き攣るとも言うな。

 

「ごめんねレオンさん」

 

「うっ。はぁ、大丈夫ですよエマさんだけが悪いんじゃないんだから」

 

エマが上目遣いで謝るとリアムは何故か黙ってしまった。

彼の顔は何か気恥しそうに顔を真っ赤にしていた。見るからにエマの美しさに見惚れていたんだと思う。

 

「そ、そろそろ俺らも仕事をするか」

 

「わかりやすい話題変換だ」

 

「うるさい」

 

べしっと頭に空手チョップを食らったリオンは理不尽だと思った。しかしその感情に気づいたのか自業自得だと何も言っていないにもかかわらず彼はリオンに向かってそう言った。

 

「はぁ、めんどくさいけど俺らには俺らのやることがあることには変わりない一応点検はしてあるだろうが一応定期的に見ておかないとな」

 

「そうだね」

 

リオン達の仕事は何か事故が怒った時にする修理や定期的に点検を行い未然に故障を防ぐことにある。だからリオン達はエンジンルームに行こううとしている。リアムは先に向かっているので急がないといけない。

 

「じゃあエマさんごゆっくり」

 

「ちょっと待って!」

 

リオンは立ち上がり仕事へと行こうとしていたがエマがすかさずそれを止める。リオン自身いきなりのことで困惑しており頭に?が現れていたぐらいだ。

 

「私にさん付けはいらないから呼び捨てで読んでくれないかな?」

 

「えっ?そんなことでいいの?」

 

「うん。私には重要な事だよ」

 

「分かったよ。エマ、これでいいかな?」

 

「うん。ありがとう!」

 

その笑顔にリオンはまたも見惚れてしまった。正直拍子抜けであった話だがその笑顔を見れただけで役得と思えてしまう。リオンはおそらく今赤面をしているだろう。恥ずかしいのでリオンはすぐに顔を背けた。

 

「じゃあ僕はもう行くから」

 

リオンはそこにいると何故か恥ずかしくなってしまいここにそれ以上居るのが耐えられなくなりすぐに先に行った。

 

(なんだろう。僕が彼女に抱くこの感情はこれは人に思う感情なのだろうか多分僕は彼女のことを…)

 

リオンは考えるのをやめてそのまま親友の元へと向かって行った。

 

 

 

 

「おい、なんか遅かったが何してたんだよ?」

 

リアムはニヤニヤしながら聞いてきた。なんか既視感がある気がする。

 

「レオンはそうゆうの好きだよな。さっきも僕に毎回僕に何かありそうものならニヤニヤしてまるで不審者だよ」

 

考えてみてくれにやにやしながら近づいて腕を首にかけてくる男を不審者と言わずして何と言えばいいのだろうか?

リアムは不審者と言われたことにショックを受けているようで口を開いてこちらを見ていた。しかしリアムはガーンとわざとらしく反応していることからた。

 

「おいおい、そりゃないぜ。不審者は勘弁してくれ」

 

「笑いながら言っても説得力ないよ」

 

その時リオン達はお互いを同時に見て止まった。それが数秒経つと2人とも笑っていた。

 

「あはははは、ふぅ笑った。そろそろ真剣にやるか」

 

「そうだね。仕事はしっかりやるべきだ」

 

リオン達はそういうと真剣な表情になり目的地の扉を開けた。扉の先には数人の男がおりそのうちの1人がリオン達に気づき近づいてきた。

 

「おっ?お前さんらが新しく来た奴らか」

 

「はい、本部から派遣されてきましたリオン・アルバートと言います!」

 

「同じくリアム・ブラウンです!」

 

「元気でよろしい!俺はジョン・ハドソンだ。では早速だが簡単に仕事を教えるから今日はそれを出来たらあとは休んでも大丈夫だ」

 

「いいんですか?」

 

「おうよ、臨時とは言っても数週間もするんだ。それに本当の仕事は陸に戻ってからだからしっかりと覚えてくれたらいいよ。それにお前たちは今日が初めて出しな終わったらゆっくり見学でもして来な!」

 

ジョンはそう言った後に直ぐに仕事を教えてくれた。仕事自体は簡単なもので直ぐに覚える事も出来た。ある程度の確認が終わるとジョンはリオン達だけでするように言ってきた。

教わった仕事がだいたい片付いてきた頃。

 

「こっちは大丈夫そうだよ」

 

「こっちも何も無さそうだ。しっかしお前もよく来たよな。昔のお前なら絶対に拒否してただろうに」

 

「まぁね」

 

リオンは昔から悪夢のせいで暗闇などが嫌いだった。最近ではマシになって苦手程度に済むようになっているが幼少期いじめっ子に暗い倉庫に閉じ込められたりして大泣きしたり錯乱状態になるほどだった。

 

「大体の仕事は終わったね」

 

「おう、じゃあジョンさんの所へ報告に行くか」

 

報告に行った後、ジョンさんは今日のと

リオン達は報告が終わったから部屋に戻ろうとしたその時だった。

ゾクッ!

リオンの背筋が凍り嫌な予感を感じた。

 

(なんだ?今何か恐ろしいものに睨まれたような感じは…)

 

次の瞬間大きな揺れを潜水艇が襲った。その衝撃により2人は転倒して転ける。

 

「な、何が起こったんだ!」

 

「分からないよ。でも一旦部屋へ戻ろう!あそこなら遠い操縦室にも連絡が取れるはずだ!」

 

狼狽えるリアムにリオンはすかさず指示を出した。リオンの落ち着いた姿を見て落ち着いたのかレオンは一呼吸すって深呼吸するとこちらを見て頷いた。

 

「すまない、取り乱した」

 

それを聞き終えるとリオンはすぐにエマのいる部屋へと向かった。

先程のエマがいる部屋へハシゴを登って着くとまたもや!大きな揺れが船を襲う。今度は倒れなかったがこれは自分達に不安を抱かせるには十分だった。1回だけなら何かにぶつかったと思えるがさすがに数回は襲・わ・れ・て・い・る・と理解するには十分だ。何かは分からないが。

エマのいる部屋のドアを開けるとそこには倒れているエマがいた。

 

「エマ!大丈夫なのか?目を開けてくれ!」

 

リオンはすぐに駆け寄りエマを心配して呼び掛けた。しかし彼女が何かを話すことは無い。何処にも外傷はないからおそらく気絶したんだと思われる。

リオンは大丈夫とわかると彼女をゆっくりと優しく横にした。とりあえずは大丈夫のようなのでリオンは操縦室に連絡を取ろうとした。

リアムも後ろで心配しており、救急バックを持ってきてくれたようである。

 

「エマさん大丈夫か?」

 

「うん。気絶してるだけみたいだよ」

 

そこでふとリオンは外を見るためのモニターに目を向けて絶句した。なぜならそこには骨を剥き出しにしたような顔を持つ巨大な魚が目の前に居たからだ。それは本当に恐ろしくサメなんて目じゃないぐらいだ。

どうやら船を襲っている怪物はあいつのようであの怪物は船に体当たりをしてきてその度に強い衝撃がリオン達を襲った。

 

「危ない!」

 

リオンの耳にリアムの声が強く響いて届いた。リオンは一瞬呆けてしまった。その一瞬が命取りになったのか分からなかったがリオンの頭は強い衝撃に見舞われた。

頭を強打したためか少しずつ意識が薄れ始めた。最後にリオンの耳にはなにかの爆発音が聞こえていた。



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沈没と脱出

暗い暗い世界でリオンは歩いていた。何も無くただ嫌な感覚を与えてくるそこは現実ではないと思わせてくる。しかし何故か感覚が現実と同じで夢とも言いがたかった。夢と現実では感覚が違う。なのにそこの境界線が無いのは何故なのだろうか。分からぬままにリオンは無意味に進んで行った。

ある程度歩いた時リオンの耳には不意に何か聞き覚えのある声が耳に流れて来た。それは大きくしかし朧気に聞こえてきた。

声は聞き覚えのある声だった。大切な人のような気がする。

リオンは振り向いた。何か希望を抱いてここから抜け出すために。振り向いた先には小さな光があった。それにリオンは無意識ながらに近づいて行った。

リオンが目の前まで近づくとそこにあった光はいきなり闇に飲み込まれた。突然の出来事で何もすることは出来ず、ただ呆然としていた。

喪失感と絶望感が襲う中でまた違う声が聞こて来た。その声にまたリオンは振り向くとそこには先程とは違う中心に闇を抱える光があった。リオンはその姿に動こうとした足を止めてしまった。光は暖かく優しいかった。けれどその中に抱える闇は虚無感と恐怖感を同時に与えてくる。

どうすれば良いか分からなかった。進むべきか振り返って足を早めるべきなのか。分からない。けれどここからは逃げたかった。どうすれば良いか分からずにオドオドとしているとまた先程の声が聞こえてきた。今度の声は強くハッキリ自分の耳には確かに自分の名前を呼ぶ声を聞いた。それに伴い光は大きくなり闇を抱えた光を包み込んだ。それを見たリオンに迷いは無くなり真っ直ぐと光へと進んで行った。

 

 

 

 

「…オン、…ン…」

 

声が聞こえる。うっすらと聞こえるそれはしかし強かった。しかしぼんやりとしたリオンの頭には何も理解することが出来なかった。

 

「リオ…リオン!」

 

次第に覚醒していく頭には自分の名を呼ばれていることと声の主が誰なのかを直ぐに理解することが出来た。

 

「…おはようかな?リアムにエマ」

 

「馬鹿野郎!何呑気にそんなこと言ってやがる!どれだけ心配したと思ってんだよ!」

 

「本当にそうだよ!」

 

強く怒りのこもる言葉だった。しかし同時に優しさを感じることが出来た。

リアムとエマは瞳に涙を浮かべながらリオンを抱きしめた。抱きしめられたリオンは混乱していてゆっくりと辺りを見渡した。リオンが居るのは先程の待機部屋のようでリオンと彼を抱きしめるリアムとエマしかいなかった。リオンの周りは最初よりも散らかっていると言うか荒れ果てていた。物は散乱し壁には亀裂が入っている。また警報音と赤いランプが点滅していた。

先程と変わっている光景の部屋を見ていると少しずつ自分たちの置かれた状況を理解し始めた。

 

「……あっ!リアム、僕が気絶してからどれだけだったの?」

 

「お前が気絶して30分だ。本当ならお前を担いで避難するつもりなんだがドアが開かなくてな」

 

そう言ってリアムの目線は扉の方を向いた。リオンもそれにつられて扉に目を向けた。ドア自体には何も変哲の無く被害が無さそうなドアだった。

 

「どうやらドアの外に配管が倒れていてドアを塞いでるのよ」

 

「…なるほど。やばいね」

 

エマの説明に苦笑いしか出せないリオンは状況の深刻さを理解した。

 

「しかも浸水が起きてるらしくて脱出ポッドで急いで避難しろって警告が流れてたのが20分前。しかも何処かで爆発が起きたみたいだ」

 

「めっちゃやばいじゃん!」

 

苦笑いなんて出してる暇じゃなかった。急いで避難しないと海の藻屑の仲間入りだ。こんな歳でそんな運命を辿りたくない。しかし絶望しかない状況でどうすればいいのだろうか。それ自体が分からない状況自体が最悪なのだ。

 

「てかなんでリアム達は落ち着いてるんだよ?」

 

「あ〜一通り頑張ったから諦めた」

 

「右に同じくかな?」

 

「いやいやそんなあっさり諦めるな!そして何故疑問形だぁー!」

 

リアムとエマの軽くあっさりした言い方に思わずリオンは声を荒らげてしまった。何故ここまでも落ち着いているのだろうか。別に慌ててろなどとリオンは言いたい訳では無い。ただこの状況で落ち着いていられる2人に驚いてしまっているのだ。

 

「まぁまぁ落ち着いて、ね?」

 

「……あー!分かったよもう」

 

誰のせいだ!と言いたかったがここで言えば相手の思う壷だと誰も何か企んでいる訳でも無いはずなのにそんなことを思ってしまっていた。それだけリオンはこの状況に焦っていた。

 

「とりあえずドアを見てみるよ」

 

「おう!まぁどうにも出来ないと思うぞ」

 

「見るだけだよ」

 

その一言を流しながらリオンは扉に近づいた。扉は普通のドアでドアノブを回すと直ぐに開けることが出来る。だからリオンは手をドアノブにかけた。ドアノブは簡単に周りリオンはするりとドアを押した。最初は問題なくドアを押せたものの直ぐに何かに引っかかり開けることは出来なかった。この船のドアは大体が自動スライド式なのだが船員室などは何故か開き戸なのだ。

ドアの間からは配管が倒れているのが見えた。先程のエマの話を聞いていたし驚きは無かった。

リオンは後ろを振り向きリアムの顔を見た。

 

「ねぇレオン」

 

「なんだ?」

 

「この船何回の攻撃を受けたの?」

 

「…少なくとも10回以上だ。何回も大きな揺れがあったしな」

 

「それがどうかしたの?」

 

エマが分からないと顔で訴えてきた。

 

「…いやなんでもない…よ……」

 

そう言いながらリオンはまたドアの隙間に顔をやった。目線がドアの隙間に合わさった時目の前に髭を生やした男の顔がそこには会った。

 

「………」

 

「………」

 

「うわぁぁぁ!」

 

一瞬放心した後にリオンは大声をあげて驚いた後ろに驚いた時の猫のように飛び退いた。

 

「おっと、おいおいどうしたんだ?」

 

「ねぇ扉の隙間に男の人がいるんだけど」

 

リアムがリオンの体をクッションの代わりに受け止めると心配するように聞いてきた。それと同時にエマはすぐさまドアの隙間へと確認をしに行った。怖がらずにあそこへ行くとはエマ恐るべし。

 

「本当か!」

 

エマのの話を聞いたリアムは直ぐにリオンを置いてドアに向かった。リオンはその後に直ぐさに立ち上がり恐る恐るエマ達がいるドアへと向かっていった。

少し遅れてリオンがドアの前に来るとリアムは既にドアを覗き込んでいた。リオンが横から様子を伺うとレオンは驚いた表情をドアの先へと向けていた。

 

「ガーハッハッハ!まさかあんなに驚くとは思わんかったぞ!」

 

ドアの先から豪快なしかし親しみのある男の低い声が聞こえてきた。その声は凄く聞き覚えのあるもので声を聞いた瞬間にすぐ様に主の姿を頭に浮かべることが出来た。

 

「ジョンさん!なんで貴方がここにいるんですか?」

 

少しポカーンと目をぱちくりさせていたリアムは復活すると質問を投げかけた。当然だ普通なら避難してるはずなのにわざわざ遠回りになるこの場所に居ること自体がおかしい事だった。なにかあったにしても他の人達が居ないこと自体その可能性を消すことにもなっていた。

 

「…なぁーに避難してる時に突然お前さんらのことを思い出してな、心配で見に来たんだよ。そしたら部屋から話し声が聞こえてな、覗き込んだらたまたまリオンと目があってな、まさかあんなに驚かれるとは思わんかったぞ」

 

「…すみません」

 

何事も無かったように話すジョンさんの話を聞きながらリオンは顔を見て驚いたことに申し訳なく感じて謝った。しかしジョンさんは気にするなの一言で許した。というかジョンさん自身リオンのことを一切怒って居ないようだった。

 

「なになに?3人は知り合いなの?」

 

3人で話しているおりにエマが話しかけてきた。おそらく1人だけ仲間外れになっているのを不満に思ってのことだと思われる。

 

「仕事先の上司みたいなものだよ」

 

「初めての俺らに優しくしてくれた寛大な人だな」

 

「優しい人だね」

 

「あーお前さんら話してるとこ悪いがそろそろ出ないと死ぬぞ?」

 

少し恥ずかしそうに言うジョンさんはそっぽを向きながら話題を急に変えてきた。頬を書きながら赤に顔を染めてもいた。

しかし最もな話でこのまま無駄に時間を潰していたら死んでしまうだろう。今は直ぐに逃げ出さないといけない。それが第1の目標だから。

 

「すいません。えーとそこに倒れている配管はどかせますか?」

 

「大丈夫だ、こう見えて俺は俺は怪力だからな!」

 

ジョンさんはそう言って腕を曲げながら力こぶを作って見せた。それを見て少しの安心感を得られた。

ジョンさんは直ぐにドアから離れた。見えない位置にジョンさんが行くと直ぐに踏ん張る様な声と共に何かが擦れる音が聞こえた。

 

「今のうちに早く出ろ!」

 

声が聞こえると直ぐにリオン達はドアを開けた。リオンがドアノブを回し押すと先程と違い、軽く簡単に開けることが出来た。そこで誰が先かと問題になると思うがリオンは迷わずににリアムの方を向いた。リアムもちょうどこちらを向いたようでお互いに目があった。何も言うことなくリオン達は頷くと直ぐにエマの方を向いた。2人とも考えることは同じということだ。

 

「エマ、君が先に出るんだ」

 

「えっ?なんで?」

 

「レディーファーストってやつだ」

 

「で、でもぉ」

 

「良いから早く出てくれ。言い合ってる時間は無いんだ」

 

反論しようとしたエマに何も言わせないと言うような威圧感をだして彼女の言葉を遮った。そのかいもあってかエマは渋々としかし直ぐにドアから先に入って言った。だがそこにあったある光景にリオン達は顔を背けた。…理由は名誉のために言わないが。

まずこういう時は意見が合わない時があるだから先にエマを先に生かすことにした。

 

「通ったよ!早く2人も出てきて!」

 

顔を背けていたリオン達にエマは直ぐに知らせた。

 

「じゃあさっさと出るか、なぁリオン?」

 

「ああ、生きてここから出てやるさ」

 

2人はリアム次にリオンという順番で外に出た。

全員が出るのを確認したジョンさんは持ち上げていた配管を下ろした。その際にドカンと大きな音がなりそれがどれだけ重たかったかを教えてくれた。

 

「ジョンさんありがとうございましす!おかけで命が助かりました!」

 

「本当にそうだな」

 

「命の恩人です!」

 

「感謝は生きてここから出てからにしな。道は俺が知ってるから着いてこい!何があってもお前らは俺が送ってやるからな!」

 

ジョンさんは直ぐに後ろを振り向くと進み出した。その力強い背中をリオン達は見ながらついて行く。その背中に父、もしくは恩師のような感じを覚えながら脱出ポッドを目指してリオン達は進み始めた。



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