ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝 (ひいちゃ)
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Act.01『シャングリラの少女』

さぁ、いよいよはじまりますよ!


【求む】怖そうな兄ちゃんにガンダム強奪を持ち掛けられてるんだけど、どうしたらいい?

 

1:名無しのオールドタイプ

あ、書けた書けた。宇宙世紀に転生したガンオタが書き込める相談所掲示板ってここでよろし?

 

2:名無しのオールドタイプ

あってるやで。

 

3:名無しのオールドタイプ

なんやなんや?

 

4:名無しのオールドタイプ

良かった。ちょっと助けてほしいことがあるねん。

怖そうなおっちゃんに、『一緒にZガンダム奪わんか?』と誘われて、それに仲間のみんなが乗り気になってるんやけど、どうしたらいい?

 

5:名無しのオールドタイプ

ファ!?

 

6:名無しのオールドタイプ

ZZの第2話が始まってて草……って、もうU.C.0088だもんな。始まっててもおかしくないな。

 

7:名無しのオールドタイプ

何はともあれ、コテハンつけれ、そして自分についての概要話してくれ。全てはそれからや。

 

8:ジャンク屋ネキ

そういえばそやな。これでええか? まずオレのことから話すわ。名前は勘弁してや。

・女、13才

・住んでるところ、サイド1のシャングリラ

・ご近所さんのジュドー、ビーチャ、エル、モンド、イーノと一緒にジャンク屋やってる

 

9:名無しのオールドタイプ

女の子なのか……。自意識は男なん?

 

10:ジャンク屋ネキ

そうやで。ついこの前、初めて生理きてしまってビビッたわ。生理ってああいうものなんやな……。

 

11:名無しのオールドタイプ

女の子なのか……かわいいかブスなのか気になるが……

 

12:名無しのオールドタイプ

写真見せられる?

 

13:ジャンク屋ネキ

あぁ、ほれ。

 

【写真画像】

 

【挿絵表示】

 

 

14:名無しのオールドタイプ

ファ!?

 

15:名無しのオールドタイプ

ファ!?

 

16:名無しのオールドタイプ

プル!?

 

17:名無しのオールドタイプ

嘘だろ!? なんでプルがもうジュドー達のところにいるんだよ!?

 

18:名無しのオールドタイプ

お前ら落ち着け。イッチの年齢見てみろ、13才だぞ。ということは、プル本人ではないということだ。ついでにプルツーでもない。

 

19:名無しのオールドタイプ

あぁ、そういえばそうか……。顔立ちも、プルを成長させたみたいな感じだしな。しかし、どういうわけなんや?

 

20:ジャンク屋ネキ

俺にもわからん……。何しろオレ、三年前から前の記憶がないねん。気が付いたら親父と暮らしててな。それからも何かに追われるかのようにあちこちのコロニーを転々としてた。あ、前世の記憶はあるで。前世では大学生やった。

 

21:名無しのオールドタイプ

その親は?

 

22:ジャンク屋ネキ

今月になって、出稼ぎとやらに行った。とっても優しくて良い父親だったんだけどなぁ……。

 

23:名無しのオールドタイプ

まぁ、こんなにかわいいプル似の娘だもんなぁ。そりゃあ優しくするわな。

 

24:名無しのオールドタイプ

でも、それでも娘を置いて出稼ぎに行かなきゃならないとは、やはりシャングリラやな……。

 

25:ジャンク屋ネキ

まぁ、仕送りがあるから、なんとかなってるけどな。ギリギリやけど。

それで本題だけど、どうしたらいいと思う?

 

26:名無しのオールドタイプ

まぁ、流れからすると、ノるしかないんだよなぁ……。そうしないと、ZZが始まらんし、そうなるとジュドーがZZに乗らなくなる→第一次ネオ・ジオン抗争が詰む可能性が高い

 

27:名無しのオールドタイプ

それと、そのおっかない兄ちゃん、ヤザンというんやけどな。そいつが流れで盗みに行くところの兄ちゃんに暴力ふるって大けが負わせやがるから気を付けてや。

 

28:ジャンク屋ネキ

わかったわ。あ、今ジュドーたちに呼ばれたんで行ってくる。

 

29:名無しのオールドタイプ

いてら。

 

30:名無しのオールドタイプ

それにしても、プル似で、しかも過去の記憶がないって、一体どういうわけや……?

 

31:名無しのオールドタイプ

しかも、何かに追われてるみたいだしな。

なんかとても重大な設定が潜んでる気がするやで。

 

32:名無しのオールドタイプ

あと、プル似ってことが気にかかるな……。プルとかプルツーみたいに、強化人間ゆえの悲劇で死んだりしなければいいんやけど。

 

33:名無しのオールドタイプ

まぁ、そこは俺らがなんとかフォローして、悲劇にならないように導いてやろ。

 

34:名無しのオールドタイプ

そやな。

 

* * * * *

 

「おう、遅いぞ、マリハ!」

 

 家を出たオレ……マリハ・クトゥルに声をかけるのはジュドー・アーシタ。家がお隣さんで、彼の妹のリィナ共々仲良くしてもらってる友人の一人だ。

 その彼に、片手をあげて挨拶する。

 

「おはよ、ジュドー。色々準備してたんでな。というか、本当にするのか? Zガンダム盗み」

 

 やらないと物語が始まらないし、この後の戦いが詰むと掲示板のみんなが言ってるからとはいえ、やはり盗みに入るのは抵抗があるんだが……。

 だけどジュドーは、迷いが一切ないような表情でサムズアップした。

 

「おうよ! リィナの授業料稼いでやらないとな! ほら、乗った乗った!」

「へいへい……」

 

 ジュドーは結構いい奴なんだけど、妹のリィナのことになると目の色が変わる、というか……。

 まぁ、仕方ないか。

 オレは、ジュドーに気づかれないようにため息をついて、彼のバイクの後ろに乗る。

 

 そこへ頭上の窓から顔を出す姿が。

 

「お兄ちゃん! 父さんの服なんてどうする気なの!?」

 

 かわいい声。ジュドーの妹、リィナだ。本当に生真面目で兄想いの、ジュドーなんかにはもったいない娘さんだ。オレの妹にきてほしかったぜ……。

 

 だけど、リィナの質問を受け流して、バイクは走り出した。そしてジュドーが一言。

 

「大儲けしたら、お前も山の手の学校へ行かしてやるから!」

「誰がそんなこと頼んだの!?」

 

 そのリィナの抗議を背に、バイクは宇宙港へ走っていくのだった。

 

* * * * *

 

49:ジャンク屋ネキ

お待たせ。ヤザンさんとやらとの合流場所についたぞ。

 

50:名無しのオールドタイプ

お疲れ。そういや、確かこの掲示板には、書き込みしてる奴が見てる風景とかを動画で載せられる機能があったはずだけど、できるか?

 

51:ジャンク屋ネキ

うーん、やってみる。どうや?

 

52:名無しのオールドタイプ

おー、ヤザンさんだヤザンさんだ。生のヤザンさん、いいなぁ。

 

53:名無しのオールドタイプ

やっぱりヤザンさん、ガタイがいいなぁ。ビキビキやで。

 

54:名無しのオールドタイプ

ヤザン、ジュドーの渡した服を不服そうに着てるの、なんかかわいくて草

 

55:名無しのオールドタイプ

でも割と似合ってるな。

 

56:名無しのオールドタイプ

ヤザンさんやからな。(意味不明)

 

57:名無しのオールドタイプ

でもこの掲示板、こんなこともできるし、脳内で内容考えただけで書き込み出来るなんて、どんな仕組みなんや?

 

58:名無しのオールドタイプ

おっとそれ以上いけない。あ、宇宙港から車出てきたな。

 

59:名無しのオールドタイプ

ファさんや! 生ファさんや!

 

60:ジャンク屋ネキ

本当にこんな犯罪まがいのことしたくないんだけどなぁ……仕方ない。えいっ。

 

61:名無しのオールドタイプ

いや、バリバリの犯罪行為だから。

 

62:名無しのオールドタイプ

おー、ファさんの車の前に、ジャンクばらまいたのか。やるなぁ。

あ、ファさんが車を降りたところに後ろからヤザンさんが……。

 

63:名無しのオールドタイプ

ヤザンさん、ファさんを縛ったりするあたり、慣れてるなぁ。さすが元軍人。

 

64:ジャンク屋ネキ

『あなたたち、学校へも行かずに、いつもこんなしてるの?

 親を泣かせることばかりしてて、何が楽しいの?』

「別に楽しくてやってるわけじゃないよ。できればオレたちだってこんなことしたくないし」

『学校なんて一体何を教えてくれるのさ』

『そんな暇あったら稼がなきゃならないのさ。戦争のおかげで、親は二人とも出稼ぎなんだぜ?』

『お母さんも?』

『他のコロニーに出稼ぎさ。仕送りしてくれるけど、空気や電気の料金は、税金以上に取り立てられるからな』

「オレのところは、ジュドー達に比べれば少しはましだけど、それでもギリギリだからな」

 

65:名無しのオールドタイプ

時勢を感じさせる話だねぇ……。

 

66:ジャンク屋ネキ

『おい、マリハ。後ろの荷台確認するから手伝ってくれよ』

「あ、わかった、ジュドー」

 

67:名無しのオールドタイプ

あっ、その中は……。

 

68:名無しのオールドタイプ

君のような勘の鋭い子供は嫌いだよ。

 

69:ジャンク屋ネキ

え、なんや? この中に何かとんでもないものがあるん?

 

70:名無しのオールドタイプ

とんでもないものというか、人というか……。

 

71:名無しのオールドタイプ

まぁ、開けるなら、覚悟しておくことやで。

 

72:名無しのオールドタイプ

でもこれで、ジャンク屋ネキがNTかOTかわかるな(笑

 

73:ジャンク屋ネキ

ちょっと怖いな……がちゃっと。

うわ、なんだこれ!? 中にいた兄ちゃんと目があったと思ったら、ほんの一瞬、宇宙の中にいる幻が見えたやで!

 

74:名無しのオールドタイプ

ジャンク屋ネキ、まさかのNTの素質持ち(笑

 

75:ジャンク屋ネキ

『なんだったんだ、今のは……? もしかして、マリハも見えたのか?』

「う、うん……。オレは、ほんの一瞬だったけど……」

『そうなのか……。俺は数秒だったけど……』

 

76:名無しのオールドタイプ

やっぱり、ジュドー君に比べると、NTの素質は低いみたいやね。

 

77:名無しのオールドタイプ

そりゃあ、ジュドーは主役だからな。それを超えてたらとんでもねぇわ。

 

78:ジャンク屋ネキ

でも、あれ一体なんだったんや……? 誰かあの兄ちゃんのこと知ってる人おるか?

 

79:名無しのオールドタイプ

知ってるで。

 

80:名無しのオールドタイプ

わいもや。

 

81:名無しのオールドタイプ

わ芋や。

 

82:名無しのオールドタイプ

漢字変換ミスってて草

 

83:名無しのオールドタイプ

まぁ、真面目な話するとね。その兄ちゃんはカミーユという、前作の主人公や。前までやってた戦争のラスボスを倒した英雄やで。

 

84:ジャンク屋ネキ

はえー、そうなんや。それがどうして寝たきりになってるんや?

 

85:名無しのオールドタイプ

戦争の悲惨さって奴やな。戦争の中の色々なことに心をすり減らされて、それでラスボスに精神にとどめを刺されたんや。

 

86:名無しのオールドタイプ

あの話はとてもショックだったけど、今こうしてリアルで、カミーユが廃人になってるのを見てると、つらいもんがあるなぁ……。諸行無常だ。

 

87:ジャンク屋ネキ

そうなんや……かわいそうやな。

「なぁ、ジュドー」

『ん、なんだ?』

「彼のことだけど、ヤザンさんや他のみんなには言わないほうがいいんじゃない? 病人を巻き込みたくないしさ」

『そうだな、実は俺もそう思ってた』

 

88:名無しのオールドタイプ

原作ではジュドーが自ら決断するんだけど、こっちではネキが知らせないことを進言するのか。

 

89:名無しのオールドタイプ

ジャンク屋ネキ、とても良識あってすこやで。

 

90:ジャンク屋ネキ

今はこんなだけど、転生前は普通の一般市民やってたからな。良識あって当たり前やろ。

 

91:名無しのオールドタイプ

まぁ確かにそうだな。

 

92:名無しのオールドタイプ

現代世界で良識なかったらやばいからな。

 

* * * * *

 

 スレ民のみんなとそんな会話をかわしながら、オレは仲間と、宇宙港までやってきた。

 見下ろすと、そこにはボロボロの戦艦が。あれがアーガマみたい。

 

 スレ民のみんなは、『やっぱりボロボロやな』『よくシャングリラまで来れたもんだ』とか言っている。オレもそう思う。

 

 と、そこでファさんがオレとジュドーに声をかけてきた。

 

「ねぇ、どうしてカミーユのことを黙っていたの?」

 

 我が親友さん、振り返っていわく。

 

「病人を人質にするなんて、卑怯者のすることだろ」

「女の子はいいの?」

 

 ファさんにそう詰め寄られて、ジュドーは言葉に詰まった。彼がこんなことになるのも珍しい。

 

「うっ……あんたは軍人だろ。それに元気そうだし」

 

 そのジュドーの様子に、オレは悪戯心がわいてきたので口をはさんでみた。

 

「というか、卑怯者も何も、ガンダム盗もうなんて犯罪だし」

「うっ……マリハ、お前、どっちの味方なんだよ」

「ほら、彼女もそう言ってるじゃない。というか、あなたも、どうして彼らに加担してるの?」

「まぁ、彼らとは長い付き合いだしね。誘われたら断り切れなくて」

 

 と、そんな会話をしている間に、ビーチャの脅迫が始まった。

 

* * * * *

 

103:名無しのオールドタイプ

やっぱり、へたっぴな脅迫だな。

 

104:名無しのオールドタイプ

ジュドーが『選挙じゃないんだぞ!』っていうのもわかる気がするわ。

 

105:名無しのオールドタイプ

これでよく、ネェル・アーガマの艦長代理になれたもんだ……。

 

106:名無しのオールドタイプ

まぁ、艦長は弁舌だけでなれるわけじゃないしね。

 

107:名無しのオールドタイプ

お、ヤザンさんご登場か。

 

108:名無しのオールドタイプ

そして上空からは野菜の援護射撃と。

 

109:名無しのオールドタイプ

まぁ、銃で撃ったら死人でるからね、仕方ないね。

 

110:名無しのオールドタイプ

おぉ、ジュドー、Zガンダムにナイスインしたな。

 

111:名無しのオールドタイプ

目的を最優先で押さえるのは、戦術の基本だからな。

 

112:名無しのオールドタイプ

あ……後ろから。

 

113:名無しのオールドタイプ

あーあ、後ろから銃突きつけられて、ビーチャたち降伏。ゲームオーバーやね。

 

114:名無しのオールドタイプ

あっ、ちょっと待て。ヤザンのプチモビ、サエグサさんを殴ろうとしてるで!

 

115:ジャンク屋ネキ

それやったらあかん!!

 

116:名無しのオールドタイプ

ネキ!? どうする気や!

 

117:名無しのオールドタイプ

まさか、ヤザンを止める気か!? 無謀やで! とまれー!!

 

* * * * *

 

 オレたちがアーガマのクルーらしき人たちに銃を突きつけられて降伏してる時、ちょうど下を見ていたオレは見た。

 ヤザンさんのプチモビが、まだ抵抗する気満々なのを。

 

 やばい、あの男の人を殴る気か!? あんなので殴ったら、マジで死にかねんぞ!!

 

「それやったらあかん!!」

 

 オレは銃を突きつけられているのにも関わらず、思わず下に飛び込んでいった。

 

 スレ民のみんなは『とまれ!』とか『死んじゃうぞ!』とか言ってるけど、そんなことは言ってられない! 目の前で人が死ぬところはマジで見たくないんだ。

 

 クルーの一人が撃った弾が足をかすめたけど、そんなことを気にしている余裕はない。

 オレは、殴られようとしている人の前に割り込み、彼をかばい、押し倒すようにした。

 

 背中に衝撃と激痛が走る。マジで死ぬかと思うほどだ。

 無重力のおかげで身体が流され、衝撃が減ったのが幸いだったかもしれない。そうでなければオレは即死していただろう。

 

「あ、あんた……」

 

 オレに声をかける男の人に、オレは痛みに耐えながら、弱々しく笑みを浮かべて言った。

 

「だ、大丈夫でしたか……?」

「あ、あぁ。というよりそれよりお前のほうが……!」

「よ、よかった……」

 

 でも、そこまでだった。

 痛みのために急激に意識が薄れていく。

 

 耳に届いたジュドーの

 

「あいつ……人を殺したんじゃないのか? それにマリハまで……! 本当に大人って……見境も何もないんだから!!」

 

 という声を聴きながら、オレは意識を失った……。

 

* * * * *

 

180:名無しのオールドタイプ

おーい!

 

181:名無しのオールドタイプ

生きてるか、返事してくれ、ジャンク屋ネキ!

 

182:名無しのオールドタイプ

ネキー!!

 

183:ジャンク屋ネキ

う、うぅん……。うるさいなぁ、今起きたわ……。

 

184:名無しのオールドタイプ

ジャンク屋ネキ!

 

185:名無しのオールドタイプ

ネキ!!

 

186:名無しのオールドタイプ

生きてた……よかった……よかった……。

 

187:ジャンク屋ネキ

まぁ、正直、今回は死んだかもって思ったわ……慣れないことはするもんじゃないな……って、え!?

 

188:名無しのオールドタイプ

???

 

189:名無しのオールドタイプ

どうしたネキ?

 

190:ジャンク屋ネキ

なんでオレ……船の医務室らしいところのベッドに寝かされてるん?

 




* 次回予告 *

アーガマがシャングリラに逃げ込んできた事情? そんなことは知りません……とは言えないんだよなぁ。オレ、アーガマにスカウトされちゃったんだから。
ジュドーは引き続き、『Zをもらえればいいの!』と張り切ってるみたいだけど。
え、なんだって? ネオ・ジオンのマシュマー・セロだって?
冗談じゃないよ。アーガマはオレの新しい職場なんだぜ? 出て行ってもらいましょ!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第2話『騎士降臨』

ニュータイプの修羅場が見れる……のか?

※次の更新は、2/4 12:00の予定です。

※この作品のサブタイトルには、あちこちのガンダムシリーズのサブタイトルから、元ネタを拾っています。わかるかな?と言ってみる(笑


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Act.02『騎士降臨』

さて、今回のタイトルは、何という作品の、第何話のなんというタイトルが元ネタでしょう?

正解した人には……


作者からの祝福と、優越感をプレゼントしますww


190:ジャンク屋ネキ

なんでオレ……船の医務室らしいところのベッドに寝かされてるん?

 

191:名無しのオールドタイプ

そんなこと言われてもな……。どんな部屋かライブ映像で出すことできるか?

 

192:ジャンク屋ネキ

うん、やってみる。うりゃ。

 

【LIVE動画】

 

193:名無しのオールドタイプ

……うん。

 

194:名無しのオールドタイプ

めっちゃ見覚えあるな。

 

195:名無しのオールドタイプ

ここ、もしかしなくても、アーガマの医務室じゃないか?

 

196:ジャンク屋ネキ

ふぁ!? 嘘やろ!? なんでアーガマの医務室に収容されてるねん!?

 

197:名無しのオールドタイプ

まぁ……見当はつくな。

 

198:名無しのオールドタイプ

サエグサさんをかばって負傷したネキをそのままにしておけずに、収容して治療した、というところじゃね?

 

199:ジャンク屋ネキ

まじか……。

 

200:名無しのオールドタイプ

よかったやないか。ファさんの看病受けられるで。

 

201:名無しのオールドタイプ

完治した後、独房入りかもしれんがな。

 

202:ジャンク屋ネキ

勘弁してクレメンス……

 

203:ジャンク屋ネキ

(´;ω;`)

 

204:名無しのオールドタイプ

そんな顔文字で訴えられてもな。

 

205:名無しのオールドタイプ

おや、誰か来たみたいじゃね?

 

206:名無しのオールドタイプ

あ、あれは……ハサン先生と……。

 

207:ジャンク屋ネキ

ブライト艦長!?

 

 

 

……すっかり老けられて。

 

208:名無しのオールドタイプ

ブライトさんを見ての第一声がそれかい。

 

209:名無しのオールドタイプ

一年戦争から8年も経ってるからね。でもまだ二十代半ばのはずやで。

 

* * * * *

 

 オレ……マリハ・クトゥルがベッドの中で混乱していると、足音と誰かがやってくる気配がした。

 スレ民のみんなが言う通り、ここがアーガマの中だとすると、アーガマクルーの誰かだろうが……。実はオレ、ガンダムは1stとアナザーガンダムしか見たことないから、ブライトさん以外のクルー知らないんだよな。

 

 一体誰が来たのか、入口を注視して見ていると……。

 

「おぉ、意識を取り戻したか、よかったよかった」

 

 と言いながら入ってくる白衣を着た男性……スレ民のみんなが言うには彼がハサン先生だそうだ。

 あとそれと……。

 

 え、ぶ、ブライト艦長!? オレが知っている彼よりは少し老けているように見えるが、確かにブライト艦長だ。

 

 ついスレに、『すっかり老けられて』と書いたら、みんなに『第一声がそれかい』と突っ込まれた。そんなこと言われてもなぁ……。

 

「君が、サエグサをかばってくれた少女だな。ありがとう。私はこのアーガマの艦長ブライト・ノアだ。君は?」

「は、はい、あの……マリハ・クトゥルと言います」

 

 目の前に、少し老けてるとはいえあのブライト艦長が生でいらっしゃるとは……。もう、ど緊張である。

 夢じゃないよな? スレ民のみんなからも、「生ブライトさんだ!」とか、「ネキうらやましすぎる!」といった書き込みが連続で。

 

「君の処遇だが、本当であればZガンダムを盗もうとした罪で、独房入りの後、裁判にかけるところなのだが……」

「え?」

 

 もしかしてオレの人生、ここでENDですか? 思わず、背筋を汗が伝う。

 

「と言いたいところなのだが、エゥーゴはあくまで非公式組織だし、君にはサエグサを守ってくれた恩がある。今回は不問にしようと思う」

「よ、よかったぁ……」

 

 本当に良かった……。オレが身体を張ってあの乗組員……サエグサさんというらしい……をかばったことが、こんな形で巡ってくるとは。悪いことはしてはいけないし、良いことはするべきだな。……あんな命がけのことはごめんだが。

 あと、『うらやましすぎる、そのまま独房に入れ』と書き込んだ奴は、後で〆ようと思う。

 

「まぁそれはそれとして……」

「え?」

 

 その後、ブライト艦長はとんでもないことを言った。

 

「君さえよければ、アーガマで働く気はないか?」

「ふぇ!?」

 

* * * * *

 

232:ジャンク屋ネキ

な、なんか突然、『アーガマで働かないか?』って聞かれたんだけど、これってもしかしてスカウトってこと?

 

233:名無しのオールドタイプ

もしかしなくても、スカウトと思うで。

 

234:名無しのオールドタイプ

ええやないか。きっとジャンク屋やってるよりは暮らしが楽になると思うぞ。

 

235:ジャンク屋ネキ

それはそうだろうけど、なんでオレのようなガキに……。

 

236:名無しのオールドタイプ

自分で『ガキ』と言ってて草

 

237:ジャンク屋ネキ

だってオレなんか、少しプチモビの操縦と自炊ができるくらいで、他にとりえないんやで? なのになんで……

とりあえず聞いてみるわ。

 

238:名無しのオールドタイプ

いてら。

 

239:名無しのオールドタイプ

果たして、なんて答えが返ってくるか?

 

240:名無しのオールドタイプ

まさか、ジュドーより先に、ジャンク屋ネキをスカウトするとはなぁ……。

 

241:名無しのオールドタイプ

でも、なんでスカウトしたのか、わかる気がするな。

 

242:名無しのオールドタイプ

どういうことや?

 

243:名無しのオールドタイプ

まぁ、それはネキが戻ってきたらわかるやろ。

 

244:ジャンク屋ネキ

聞いてきたわ。それと、『自分はプチモビの操縦と自炊ぐらいしかできない』ことも伝えたで。

 

245:名無しのオールドタイプ

それで答えは?

 

246:ジャンク屋ネキ

「君には、あのZを奪おうとした少年と似たようなものをかすかに感じたから」やって。

 

247:名無しのオールドタイプ

やっぱりなぁ……思った通りやった。

 

248:ジャンク屋ネキ

どういうことや?

 

249:名無しのオールドタイプ

つまりやな、ブライトさんはネキに、カミーユと同じNTの才能のカケラみたいなものを感じてたんや。ネキがサエグサさんをかばった行動に、何か感じるものがあったんじゃないか?

 

250:ジャンク屋ネキ

オレは自分では、そんな大した奴じゃないと思ってるんだけどなぁ……。ブライトさん、買いかぶりすぎとちゃうか?

 

251:名無しのオールドタイプ

これまで、アムロ、カミーユと二人のニュータイプと出会ってきたブライトさんやからな。買いかぶりやないと思うで。

 

252:名無しのオールドタイプ

それにネキも、カミーユと目があったら、宇宙を見たんやろ? なら間違いないと思うで。

 

253:ジャンク屋ネキ

マジか……。

 

254:名無しのオールドタイプ

それで話を戻すけど、どうするんや?

 

255:名無しのオールドタイプ

多分、ジャンク屋やっているより、暮らしは楽になるだろうから、受けない手はないと思うけどな。

 

256:名無しのオールドタイプ

(収入が増えるとは言ってない)

 

257:ジャンク屋ネキ

うーん……。

 

258:名無しのオールドタイプ

ええやないか。ZZのレギュラー、または準主役になれるやで。

 

259:ジャンク屋ネキ

いや、そんなのオレ求めてないし。

 

260:名無しのオールドタイプ

なにぃ! なんて罰当たりな!

 

261:ジャンク屋ネキ

そんなこと言われても。

と言っても、ブライトさんが直々にスカウトしてきたんやし、引き受けないと失礼かなぁ……。

うん、引き受けることに決めたやで。

 

* * * * *

 

 一方、そのころ……。

 アーガマが入港しているコロニー、シャングリラに近づく船があった。

 アクシズの巡洋艦、エンドラである。

 

 グリプス戦役でティターンズが壊滅し、残ったエゥーゴも壊滅寸前に陥ったのを機に、アクシズは各コロニーに巡洋艦1隻からなる制圧部隊を派遣。

 エンドラと、その指揮官であるマシュマー・セロもそのために派遣されてきたのである。

 

 その彼に、副官のゴットン・ゴーが報告をする。

 

「マシュマー様、シャングリラの政庁は、我々の入港を受け入れる、とのことです」

「そうか。さすがはシャングリラ、楽園の名を冠するコロニーの人々だ。ちゃんとこちらの厚意に対して礼を欠かさぬ。素晴らしい者たちではないか」

 

 そう言って、マシュマーは制服の胸に飾られた薔薇を触れる。

 

「見てください、ハマーン様。私は必ず、この素晴らしい人たちを我らアクシズに従わせてみせましょう」

 

* * * * *

 

 一方、こちらはアーガマです。

 シャングリラの港湾担当の係員さん、チマッターさんがとんでもないことを知らせてきました。

 

「なんですって!? アクシズの巡洋艦がこのコロニーに!?」

「はい。上の方々は、その巡洋艦からの金塊に買収されてしまったようで……。なんでも、『敵味方とはいえ、戦艦がコロニー内で戦うはずがない』と……」

 

 驚くブライトさんに、チマッターさんがそう説明した。

 それを聞き、ブライトさんは憤懣と焦りがミックスした表情を浮かべて言い放った。

 

「なんてことだ……。シャングリラという名前が聞いてあきれる! しかしどうする? こちらのMSはZガンダムとメタスだけ。しかも、パイロットは……」

 

 そう言ってブライトさんはこちらのほうを向くが、オレは首をふるふるふると横に振った。オレは一応プチモビの操縦はできるが、それでも少し、程度しかできない。軍用MSの操縦は無理。正規の軍人とでは話にならない。

 

* * * * *

 

275:ジャンク屋ネキ

というわけなんやけど、どうしよ?

 

276:名無しのオールドタイプ

まぁ、ネキもMS操縦できるとはいえ、なぁ……。

 

277:名無しのオールドタイプ

プチモビの操縦を少しできる、ぐらいって言ってたっけ。それならマシュマーさんとやったって勝てるわけないな。

 

278:名無しのオールドタイプ

確か、原作ではジュドーがまたZに乗り込んで、成り行きでマシュマーさんと戦ってくれるんよね。それに期待したいところだけど……。

 

279:ジャンク屋ネキ

乗り込んでくれればいいけど……あ、チマッターさんがとりあえず案を出してくれたで。『コロニー内に逃げ込んだらどうだ』だって」

 

280:名無しのオールドタイプ

原作通りやな。

 

281:名無しのオールドタイプ

まぁ、このままやと見つかってしまうし、妥当なところだな。

 

282:名無しのオールドタイプ

とすると、後はジュドーがアーガマに密航して、Zに乗ってくれることを祈るだけやな。

 

283:ジャンク屋ネキ

……

 

284:名無しのオールドタイプ

なんで黙るんや、ジャンク屋ネキ?

 

285:ジャンク屋ネキ

おまいら……リィナのこと忘れてない? 彼女が、密航&Zガンダム盗難なんて犯罪を許すと思うか?

 

286:名無しのオールドタイプ

あ……。

 

287:名無しのオールドタイプ

だ、大丈夫や! ジュドーならリィナを振り切って密航してくるはず! 原作でもそうだったし!

 

288:名無しのオールドタイプ

不安だったら、こっちからMSに乗って、ジュドーを迎えに来たらどうや?

『操縦は』できるんだろ?

 

* * * * *

 

 間一髪でエンドラと入れ違いでコロニー内に逃げ込んだアーガマ。

 だが、それでもエンドラのクルーの一部は、『何かの船が』コロニー内に入るのを目撃していたのだった!

 

「奥に入っていくの、軍艦に見えませんでしたか?」

 

 ガザD部隊の隊長、パンパ・リダの問いかけに、マシュマーの副官、ゴットンがうなずく。

 

「まさか、エゥーゴってことはないだろうな?」

 

 そしてそれを聞き逃さず、さらにその言葉に使命感を燃やす男が一人。彼らの上官、エンドラ艦長のマシュマー・セロである。

 

「臆するな! 私はこのコロニー、シャングリラの人民をハマーン様に従う様にする為に遣わされた者だ。エゥーゴが潜んでいようがいまいが、断固戦って見せるわ!」

 

 そして彼はブリッジを出て、MS格納庫に向かっていった。

 

* * * * *

 

290:名無しのオールドタイプ

おー、ジャンク屋ネキ、メタスの操縦もまぁまぁできるやん。

 

291:ジャンク屋ネキ

やればできるもんだな。オレも驚いたわ。でも戦闘は無理だからな?

 

292:名無しのオールドタイプ

そこまでは期待していないから安心しろ。

 

293:ジャンク屋ネキ

そうはっきり言われると、なんか複雑だな……。

さーて、ジュドー御一行様はどこかな、と。

 

294:名無しのオールドタイプ

あ。あそこにいるのがそうじゃね?

 

295:名無しのオールドタイプ

それっぽいな。あーあ、やっぱり原作通り、リィナにつかまって説教されてるな。

 

296:名無しのオールドタイプ

ご愁傷様や。まぁ、Zを売ってお金にしようとしてるから自業自得やけどな。

 

297:ジャンク屋ネキ

さて、それじゃ着陸するとしますか。うまくできるかな……。

 

* * * * *

 

「……怒るよリィナ。これは俺達の仕事なんだぞ」

 

 必死に言いつくろうとするジュドーだが、それで引き下がったり、言い負かされたりするリィナではなかった。

 

「人の物盗むのが仕事なの!?」

「違うって、アーガマのモビルスーツなら、力仕事が出来るから、それを借りてもうけ仕事をやるの!」

「イーノには聞いてないでしょ!?」

 

 イーノからの説得も全然効果なしだった。

 

「リィナ、元手が要らずに出来る仕事って言えば、屑鉄拾いしか無いだろう?」

「皿洗いでもベビーシッターでも、仕事は幾らでもあるわ! 私も働けば……」

「お前は学校に行って勉強するだけで良いんだ、お前まで“俺達みたい”になる事は無い!」

「じゃーお兄ちゃん、自分のやってる事は“子供として良くない”って、解ってんじゃない」

「だはっ……」

 

 妹に、逆に言い負かされそうになっている大ピンチのジュドー。そこに。

 

「はいはーい。ジュドー君の大ピンチのところごめんよー」

 

 上空から降りてくるメタスにびっくりするジュドーたち。

 

「な、なんだぁ!?」

「軍用のMS?」

 

 ビーチャとモンドがそう声を上げる中、メタスから出てきたのは……彼らの友人、マリハ・クトゥルだった。

 

* * * * *

 

308:名無しのオールドタイプ

おーおー、みんなびっくりしとるわ。

 

309:名無しのオールドタイプ

ビーチャとモンドなんか、腰抜けかかっとるで。

 

310:名無しのオールドタイプ

でも、うまく着陸できてよかったな。ジュドーたちを下敷きにしてたら取り返しがつかなかったで。

 

311:ジャンク屋ネキ

そうやな。あらかじめ、MSでの着陸について教えてもらってよかったわ。さて……と。

「久しぶりだな、みんなー!」

『マリハ!? お前、どうして軍用MSに乗ってるんだよ!?』

「まぁ、色々あってね。それはそうと、Zガンダムで屑鉄拾いをしたいというえらいジュドー君をアーガマ密航ツアーにご招待しようと思うんだけど、どうだ?」

『ほんとか!? ありがてぇ、恩に着るぜ!』

 

312:名無しのオールドタイプ

……うん、嘘は言ってないな。

 

313:名無しのオールドタイプ

いや、ちょっと待て。『密航』ってところが嘘やん。アーガマに行くのは本当だけど。

 

314:名無しのオールドタイプ

ものは言いようやな。あと、嘘も方便とも言うで。

 

315:名無しのオールドタイプ

あーあ、リィナ、「マリハだけはまともだと思ってたのに! あなたまでお兄ちゃんを悪の道に引っ張り込まないで!」と怒ってらっしゃるぞ。

 

316:名無しのオールドタイプ

ネキ、大丈夫? めっちゃリィナのヘイト買ってるみたいだけど。

 

317:ジャンク屋ネキ

正直、やばいかも、って思ってる。これ以上ヘイト買わないうちにアーガマに帰るとするわ。

 

* * * * *

 

 一方、宇宙港に停泊しているアクシズの巡洋艦、エンドラから一機のMSが発進していた。

 アクシズの試作型MS、ガルスJである。

 

 そのコクピットに座るマシュマーは、満足そうな、いやむしろ陶酔した表情を浮かべながら独り言をつぶやいた。

 

「力強さの中にも、優美さと気品を失わない……良いモビルスーツだ」

 

 そしてまた、胸の薔薇に手を這わせる。

 

「まるでこの薔薇のようだ」

 

 そういうマシュマーの脳裏には、シャングリラへの出発前、指導者のハマーン・カーンから任務を命じられた時のことが、(美化されて)浮かんでいた。

 

(お前こそ、真の騎士だ。励んで欲しい、私の為に)

 

 そう言って、ハマーンはマシュマーに、一本の薔薇を与えたのだ。その薔薇は、いまこうして、彼の胸を飾っている。

 

「アーガマを無傷で手に入れ、ハマーン様に献上すれば……ハマーン様はこのマシュマーに微笑みを与えて下さるだろう……うおっ!?」

 

 回想しすぎて、あわやハッチにぶつかりそうになったマシュマーであった……。

 

* * * * *

 

 えー、一方そのころ、こちらはコロニー内を航行中のアーガマに帰還中のメタスであります。なお、アーガマの現在位置は、特殊な電波で知らせてくれるから問題なし。

 

 そんな中、コクピットに同乗している、親友のジュドー君いわく。

 

「それにしてもお前、このMSどうしたんだ? まさかアーガマから盗んできたのか?」

「え、知らなかった? 今オレ、アーガマにスカウトされてさ。そこで働いてるんだよね」

「え」

 

 衝撃の発言を聞いたジュドーがまるでおびえたかのように、全天球モニターの壁に張り付く。

 

「ま、まさかお前、親友の俺をエゥーゴに売るつもりじゃないだろうな!?」

「オレがそんな薄情な奴に見えるか?」

「いや、見えない……ような見えるような」

 

 失礼な。オレはスレ民のみんなからも、「ネキは仲間を売るような良識のない奴ではない」と評価されてるんだぞ。

 そんな会話を交わしてるうちに、アーガマに到着し、オレたちがMSデッキに降りたところで……。

 

「アーガマの諸君! 私はアクシズのマシュマー・セロである! 私は諸君に無条件降伏を勧める! 素直に従えば、全クルーの命は保障するぞ!?」

 

 なんてナイスタイミング。マシュマーとやら、まさかオレたちのメタスを追いかけてきたわけじゃないよな?

 

「さぁ、ジュドー君、出番だよ」

「え、ま、まさか俺をここに連れてきたのって……」

「うん。アクシズからこのアーガマを守る用心棒になってほしくてさ」

「そ、そんなこと言われても……」

「なら、このまま放っておく? そんなことになったら、Zもアクシズに差し押さえられて、手が届かなくなっちゃうぜ?」

「……」

 

 沈黙しているジュドー。ここは後一押しかな。

 

「ジュドーが出ないとなれば、オレがメタスに乗ってやらないといけないんだよなー。戦えるかなー。やられるかもなー」

「あー、もうわかったよ! やればいいんだろ、やれば!」

 

 そう言って、ジュドーはZガンダムに向かっていった。

 アーガマのために戦いたくはないが、親友を危険に巻き込みたくはない。

 

* * * * *

 

 一方、アーガマのブリッジ。

 メタスを勝手に出撃させたマリハがジュドーを連れてきて、そのジュドーがZガンダムに乗り込む様子は、ブリッジのモニターにも映っていた。

 

 それを見たトーレスが、「あいつ!」と立ち上がろうとする。

 

「待て!」

「え?」

 

 トーレスを制止したブライトは、モニターを見たまま言う。

 

「気になる。あの少年……」

 

 ブライトの視線はZに乗り込もうとしているジュドーに注がれていた。マリハが突然メタスに乗って出て行ったのにはびっくりしたし、後で独房送りにしてやろうと思ったりもしたが、それはこのためだったらしい。

 

 そして。

 

「無傷で艦を乗っ取ろうなんて、ずうずうしいんだよ!」

 

* * * * *

 

 そして、戦いは終わった。

 

「ジュドー、よくやってくれた」

 

 オレの横のブライトさんが、そう、今回のヒーローであるジュドーに声をかけた。

 

「ただのまぐれだよ」

 

 そう言うと、ジュドーはオレのほうをにらみつけた。

 

「な、なんだ?」

「マリハ、もう今度はあんな手にはのらないからな」

「はいはい。でも、またホイホイ引き受けてくれるんだろ?」

「う、うるさいな!」

 

 オレが茶化すと、ジュドーは顔を赤くしてそう反論してきた。

 そこに、トーレスさんが聞いてきた。

 

「何でそのままZガンダムを盗まなかったんだ?」

「今回は、マリハのお願いもあったし、あの新型をやっつけるつもりで乗ったんだ。次はこうはいかないよ?」

「まだ盗むつもりなのか?」

「さてね」

「そうは言っても、いざという時には見捨てられずに助けてくれるんだよ。なー?」

「う、うるさいな。……マリハ、アーガマでもしっかりやれよ」

「あぁ、ジュドーも元気でな」

「おう」

 

 そう言って去っていくジュドーたち。オレたちはそれを見送るとアーガマに入船し、そしてアーガマはジャンクの山に埋もれていくのだった……。

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

オレやジュドーたちの家の近くにある病院で、オレとファさんは、マシュマーさんと色々あっちまった!
さらに、リィナはジュドーのことで何か悩みがあるらしくて。
二人の気持ちもわかるもんだから困っちまう。

そんなとき、ファさんの流した涙が、オレの道を決めたんだ。

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第3話『ファの涙』

なんでオレ!?

※次の更新は、2/7 12:00の予定です。


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Act.03『ファの涙』

はい。前回のタイトルの元ネタは、ガンダム00二期の第一話、『天使再臨』からでした。正解した人はいたでしょうか?
今回のタイトルの元ネタ探しにも挑戦してみてくれると嬉しいです。

あと、次回はいよいよネキの初MS戦が見られるかもしれませんw


「アーガマは?」

 

 シャングリラの市街地を走る電気自動車(エレカ)の中で、マシュマーは自身の副官であるゴットンにそう聞いていた。

 ゴットンはマシュマーのほうを向いて答える。

 

「はい。昨夜から……」

「こ、こら、ちゃんと前を向いて運転しろ!」

「え、う、うわっ!」

 

 あわや赤信号の交差点に突っ込むところだった二人であった。

 

「す、すみません。それで、昨夜から、ジャンクの山をうろうろしているようです」

「そうか」

 

 ゴットンからの報告に、マシュマーは関心がなさそうに、そっけなく答えた。

 彼とて、アーガマの動向を気にしていないわけではない。だが、アーガマがしばらく隠れるつもりというのであれば、急いで叩きに行く必要はないだろう、と考えていたのである。

 

「ところでゴットン」

「なんです?」

「私はコロニーを視察しなければならん。ついていくのであれば、その服を着替えろ」

「え、なぜ?」

「そんな服装で、コロニーの視察ができるか! 私の任務の妨げになるだろうが!」

 

 そう、ゴットンはこの期に及んでも、アクシズの軍服を着ていた。そんな服装では、住民を警戒させるだけである。

 

 着替えるべく、近くのパーキングエリアに車を走らせるゴットンの脇で、マシュマーは思いを巡らせていた。

 

(血を見ずにアーガマを手に入れられればベターだ。その上でコロニーの様々なものを見ておけば、ハマーン様が地球圏の政治を執る時のお手伝いが出来る)

 

* * * * *

 

 一方そのころ、スラム街のジュドーの家。そこに、一人の少女がやってくる。

 ジャンク屋仲間の一人、エル・ビアンノである。彼女はジュドーの部屋の窓までくると、そのガラスをたたいてジュドーに呼び掛けた。

 

「ジュドー起きて! アーガマの居場所が分かったんだよ!」

「えっ、何だって!?」

 

 トランクス一枚の姿で窓を開けるジュドー。さすがにこれにはエルも赤面した。

 

「止めなさいよ!!」

「おー、照れてやんの!」

 

 そう言ってエルをからかうジュドー。そこに。

 

「お兄ちゃん!」

「げっ、リィナ!」

「何よ、げって! またZを盗みに行く気でしょ!」

「り、リィナには関係ないだろ!」

 

 そう言うジュドーだが、リィナも止まらない。止まる気もないが。

 

「そんな犯罪するよりパイロット候補生になれば、収入もあるだろうし、生活も規則良くなるだろうし、そっちのほうが……」

「嫌だよ俺、パイロット候補生なんて。そんなことするよりは、ジャンク屋や、Z盗むほうがましさ!」

 

 そう言ってジュドーは窓から飛び出し、エルとともに走っていった。

 それを見送ってリィナはぷんぷんと怒りが収まらない様子。

 

「もう! どうにかしなきゃ! マリハやファさんだったら、相談にのってくれるかな……?」

 

* * * * *

 

3:名無しのオールドタイプ

なんだかんだ言ってる間に、このスレも2スレ目突入かー。感慨深いなぁ。

 

4:名無しのオールドタイプ

いや、めでたい!

 

5:名無しのオールドタイプ

ここ数日、アクシズの攻撃もないし、いい話や。

 

6:ジャンク屋ネキ

すまんな、みんな。今日はあまり話せなくて。

 

7:名無しのオールドタイプ

いいっていいって、仕方ない。

 

8:名無しのオールドタイプ

確か病院で、ファの手伝いやっけ?

 

9:ジャンク屋ネキ

あぁ。ファさんが病院でカミーユの看病するっていうからな。

オレも、アーガマの仕事が非番だし、手伝わせてほしいってお願いしたんや。

 

10:名無しのオールドタイプ

殊勝なこっちゃな。

 

11:ジャンク屋ネキ

まぁ、転生前からボランティアには興味があったからな。

授業やら講義やらで忙しくて出来なかったけど。

 

12:名無しのオールドタイプ

それなら、ボランティアの学部に行けばよかったものを。

 

13:ジャンク屋ネキ

その当時、やりたいことがボランティアとは方向が違ってたんや。

現世でボランティアのようなことができてよかったやで。

 

14:名無しのオールドタイプ

エエハナシダナー(´;ω;`)

 

15:ジャンク屋ネキ

おっと、ファさんに頼まれたから席外すわ。

皆、適当にだべっててや。

 

16:名無しのオールドタイプ

おう

 

17:名無しのオールドタイプ

いてら。

 

* * * * *

 

「よいしょっと……ファさん、これでいいですか?」

 

 オレはカミーユを車椅子に乗せて、ファさんに声をかけた。

 

「えぇ。ごめんね。色々手伝わせて」

「いいんですよ。オレから言い出したことですから」

 

 何しろ、ファさんはカミーユがこんなことになってしまって辛いだろうに、それでもそれを我慢して、彼のために色々世話をしているのだ。オレの手伝いなんてそれに比べれば大したことではないし、手伝わなければバチが当たるだろう。

 

「それでファさん。カミーユさんの具合は、発症当時からするとどうなんですか?」

「うん……。ハサン先生が言うことには、当時に比べれば少しよくなってるけど、それでもまだだって……」

「そうですか……。ファさんは、カミーユさんの幼馴染なんですよね?」

 

 オレがそう聞くと、ファさんはどこか懐かしいような、悲しいような表情を浮かべた。

 

「えぇ。私がお世話を焼くと反発したりね、後、カミーユって名前で呼ばないでって何度も言われたわ。女の子っぽい名前だからって」

「あぁ……」

 

 そういえばカミーユって名前は、男でも女でも使える名前だって、何かで聞いたことがある。日本でいう「カオル」とか「ヒロミ」とかそういった名前のようなものなんだとか。

 それは確かに呼ばれたくない気がしなくはない。

 

 と、ファさんの目から涙が一筋……。

 

「ファさん……?」

「ご、ごめんね。昔のことを思い出して懐かしくなっちゃった。本当に私たち、遠いところまで来ちゃったみたい……」

 

 そう言って、ファさんは車椅子のカミーユに視線を向けた。

 

「修理が完了したらアーガマはこのコロニーを出ていく。そうなったらカミーユとは……」

「あ……」

 

 オレはふと声をあげた。アーガマが修理を終えてシャングリラを出ていくことになれば、アーガマのクルーであるファさんは、この病院に入院しているカミーユと離れ離れになってしまう。それはとてもつらいだろう。ファさんにとっても、カミーユにとっても。

 

 話を聞いていたオレに一つの考えが浮かんだ。オレがファさんにしてあげられること。

 

 と、その時だ。

 

(危ない!)

 

「え?」

 

 後ろを振り向くと、一台のエレカがこっちに突っ込んでくるところじゃないか!

 

「きゃあ!」

「ファさん!」

 

 オレはカミーユごと、ファさんを押し倒すようにして、車をかわした。

 車椅子がエレカと激突してスクラップになる。

 

「ファさん、大丈夫ですか? カミーユさんは?」

「えぇ、私は大丈夫。カミーユも、下が芝生だったからけがはないみたい。一応、先生に診てもらったほうがいいと思うけど……。助けてくれてありがとう……」

 

 そこに。

 

「三人とも、大丈夫ですか? あわや事故に巻き込むことになって申し訳な……い……?」

 

* * * * *

 

59:ジャンク屋ネキ

なぁ。なんか目の前に、白いタキシードを着た、キザそうな兄ちゃんがやってきて、オレに言い寄ってきたんだけど、誰だこいつ?

 

【LIVE配信】

 

60:名無しのオールドタイプ

誰だこれ……って、マシュマーさんじゃねぇか!

 

61:ジャンク屋ネキ

マシュマーさんって、この前ジュドーが戦っていたアクシズの士官さんか?

 

62:名無しのオールドタイプ

そうや。

 

63:名無しのオールドタイプ

確か原作ではファに一目ぼれするんだけど、まさかジャンク屋ネキに一目ぼれするとは、驚いたわ……。

 

64:ジャンク屋ネキ

されてるオレにとっては、他人事ではないんだけど……。

なんか、オレのことを「なんという優しさ」とか「白衣の天使そのもの」とかべた褒めしてるんだが……。

 

65:名無しのオールドタイプ

まぁ、ネキがいいことしたのは確かなんだから、ありがたくもらっとき。

 

66:ジャンク屋ネキ

ふぅ……「何か私にできることは?」というから、「できればこの病院にご寄付を」「それとあまりこの病院の近くでは戦闘沙汰は起こさないで」とお願いして、三人で逃げてきたやで。

 

67:名無しのオールドタイプ

お疲れ。

 

68:名無しのオールドタイプ

カミーユはどうしたんや?

 

69:ジャンク屋ネキ

あぁ。車椅子がスクラップになったからな。オレがおんぶして連れてきた。これでも、普通の13才よりは力あるからな。そんなに大変じゃなかったやで。なんで力あるかわからんけど。

 

70:名無しのオールドタイプ

お疲れ。でも振られたマシュマーさんが哀れなり。

 

71:名無しのオールドタイプ

お近づきになってやればよかったのに。

 

72:ジャンク屋ネキ

勘弁や。オレ、身体は女やけど、心は男子大学生のままやで。

 

73:名無しのオールドタイプ

そうやった!

 

* * * * *

 

 マシュマー・セロは、二人の少女と一人の少年が駆けて行った病院のほうを見つめ続けていた。

 彼の心には、年端のいかない身ながら、エレカから二人をかばった少女の姿が焼き付いていた。どこかで見た気がするが、どこでだろうか?

 でもそれより、今の彼は少女の優しさと、彼女たち三人の境遇に思いを致し、心を痛めていたのだ。

 そしてつぶやく。

 

(ふむ、下町に咲く一輪の華か……そしてあの二人……乱れた社会が、二人を悲劇へと追い込んだのだ……黒髪の彼女には、暗い未来しか見えていない……)

 

 それは、少女がかばった二人……カミーユとファには当てはまっただろうが、そのかばった少女、マリハが聞いたら噴飯ものだろう。

 ゴットンがやれやれといった表情を浮かべているのがその証拠である。

 

* * * * *

 

 オレたちが新しい車椅子にカミーユを座らせたところで、誰かがやってきた。

 おや……あれは……リィナじゃないか?

 

「どうしたん、リィナ? ここにやってくるとは珍しいな」

「はい。あ、ファさんもいたんですね。よかった、二人に相談したいことがあって」

「いいわよ、そこのベンチでお話しましょう」

 

 そして中庭のベンチまでやってきたところで、リィナの話を聞く。

 なんでも、ジュドーはまだZガンダムを奪うのをあきらめていないらしい。リィナは、そんなジュドーに、それよりはとアーガマのMSパイロット候補生になるよう説得したが、聞き入れてもらえなかった、という。

 

「そうなの……」

「はい……。私、パイロット候補生になれば、お兄ちゃんも真っ当になってくれると思って……」

 

 まぁ、リィナの気持ちもわかる。でもなぁ……。

 

「でも、ジュドーの気持ちもわかる気がするな」

「え?」

 

 オレは聞き返したリィナのほうを向いて話しはじめた。

 

「パイロット候補生になるってことは、MSに乗って戦うことになるんだぜ? そうなれば敵を殺すこともあるかもしれない。ジュドーはそれが嫌じゃないのかな?」

「あ……」

「リィナはさ、ジュドーがMSに乗って戦い、人を殺すことをどう思う?」

「それは……あまり良い気がしないです……」

「リィナが嫌な気がするんだから、当の本人であるジュドーはなおさらじゃないかな? 戦う理由が見出せたなら話は変わってくるかもしれないけどさ」

 

 スレでは、「ネキがまともなことを言ってるぞ!」とか「どうしたジャンク屋ネキ! 悪いものでも食べたのか!?」とかそんな書き込みがあふれてるが気にしないでおく。

 

「それじゃ、マリハはどうなの? アーガマで働くことにしたけど、戦うこともあるのよ?」

「そりゃあ、オレだって人を殺すのは嫌だし、怖いよ。まだ13なんだから当然だろ? でも、シャングリラのみんなやアーガマのみんなを守るためだったら、戦う覚悟は持てると思う。それに……」

「それに?」

 

 ファさんの問いかけに、俺は空を仰いで言った。

 

「オレ、ブライトさんが許せばだけど、パイロット候補生になろうと思ってる。オレがパイロットになって、ファさんの代わりに戦えるようになれば、ファさんはこのままカミーユのそばにいられるからな」

「あなた……そんな理由で……!」

「それだけじゃないぜ?」

 

 そして身体を戻して、今度はファさんのほうを向いて続ける。

 

「カミーユさんを見て思ったんだ。何かで聞いたんだけど、カミーユさんは戦争のせいでああなっちゃったんだろ? また戦争が起これば、カミーユさんのような犠牲者や、ファさんのように悲しむ人が出てくるかもしれない。だから、オレが戦うことで戦争が終わるのが早まれば、その分、そんな人が減るんじゃないかって」

 

 またスレに、「ネキがまともなことを!?」とか「ネキに一体何が!?」って書き込みがあふれてるけど、引き続きスルー。

 

「だけど、これはオレだけの考えだ。ジュドーに押し付けるのはダメだと思う。ちゃんと彼が戦う理由を見出して、納得したうえで戦わなきゃダメだと思うんだ。そうだろ? ファさん」

 

 オレがそう聞くと、ファさんはかすかに微笑んで。

 

「そうね」

 

 とうなずいた。

 




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* 次回予告 *

ゲモンは、ジュドー達はもちろん、他のジャンク屋からの評判も悪いんだ。もちろんオレも好きじゃない。
でも、そんな彼がマシュマーさんと手を組んだから、さぁ大変!

オレははじめてZガンダムに乗ってバトルすることになるし。
あ、ちょっとジュドー、そんなところにいたら危ないって!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第4話『倒せ! ゲテモノMSゲゼ!!』

ゲゼを倒すのが先か、オレがおせんべいになるのが先か?

※次回は、2/10 12:00の予定です。お楽しみに!


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Act.04『倒せ! ゲテモノMSゲゼ!!』

前回のサブタイの元ネタは、ガンダムビルドダイバーズ11話『アヤメの涙』でした! 当たった人いるかな?
さて、今回のサブタイトルの元ネタはなんでしょう? 考えてみてね。

あと、今作にも、マリハの専用MSが登場しますが、登場は後半に入ってからになります。気長に待っていてくださいね。(それまでは色々なMSに乗って戦うことになります)

さてさて、今回はいよいよ、ネキの初陣ですぞ!


 一方そのころ、エンドラには来客があった。けったいなMSを引き連れてきた、醜く粗暴そうな男である。

 

 その彼に、マシュマーが問うた。

 

「お前か? このうっとうしいMSを持ち込んだのは?」

「おうよ。俺はゲモン、ジャンク屋さ。アクシズをゼダンの門にぶつけたって話を聞いてから、アンタ達のファンになっちまってね! デカイ事をやるのが、俺は好きでねぇ」

 

 そう言うゲモンの顔に不快さを感じたマシュマーはしかめ面を浮かべ、傍らのゴットンに説明を促す。

 

「マシュマー様が、『病人を人質にとる作戦はダメだ』とおっしゃったので、次善の策として、コロニーの中で我々に協力してくれる者を募り、その手を借りようと思いまして」

「……」

 

 ゴットンの説明に、とりあえずは納得しながらも、受け入れがたく感じたマシュマーは、また無意識のうちに胸の薔薇に触れた。そこで浮かぶ、ハマーンの言葉。

 

(……そうだ、ハマーン様はおっしゃった。『我々はコロニーの住民と友達になる必要がある』と。その『友達』の力を借りて戦うことができるのなら、それは素晴らしいことではないか)

 

「よし、わかった。ゲモン殿。貴官の助力をありがたく思う。我々も貴官の働きに、できるだけの支援をしよう」

「おう、さすがは大将! 話がわかるね! それじゃ念のために、アクシズのMSをつけてほしい!」

「え」

 

* * * * *

 

 こちらはシャングリラの病院。

 あの後、リィナは「もう少し考えてみます」と言って、病院を去って行った。ジュドーもリィナも、俺の言葉でよい方向に向いてくれたらいいんだけど。

 

 それを見送ったオレに、ファさんが言った。

 

「マリハ、本当にいいの? 今ならパイロット候補生をやめることもできるのよ?」

「いいんですよ。オレが自分で考えて、決めたことですから。後悔することもあるかもしれませんが、やらずに後悔するよりはマシです」

 

 そう答えたオレの目に、学校に向かっていくけったいなMSと、二機のアクシズのものと思われるMSが映った。

 

「あれは……アクシズのMS!?」

「学校に向かうなんて、何をするつもりなの!?」

 

 そう驚愕するオレたちに、アーガマからの通信が届いた。

 

* * * * *

 

 マリハとファがゲモンのMS『ゲゼ』と『ガザC』を目撃した少し前。

 

 マシュマー・セロは、エンドラ内の私室で悩んでいた。それは、ゲモンの要請に従い、二機のガザCを僚機としてつけて『しまった』こと。

 

(護衛と言ってもガザCを2機も出せば、シャングリラの住民は何と思うだろう? アクシズの印象が悪くなるのでは無かろうか……それではハマーン様のお名前に傷がつく)

 

 そして、自室に飾っているハマーンの肖像画にひざまづき、手を組んで祈りをささげる。

 

「あぁ、ハマーン様。私はあなたの前では迷う哀れな子羊です。どうか子羊に、知恵と勇気をお与えください……。あぁ、ハマーン様、ハマーン様……」

 

 そこでドアが開き、ドアの向こうのゴットンが姿を現す。

 

「ゴットン、入ります!」

「き、き、貴様……!」

 

 立ち上がったマシュマーは、すかさずゴットンに詰め寄り、襟首を締め上げた。その顔は真っ赤である。

 

「何も見てないな!?」

「見てません、聞いてません。子羊のことなど何も知りません!」

「何!?」

「何も言っておりません。マシュマー様の空耳です……!」

 

 この後ゴットンは、一週間の有給休暇と、上司の鉄拳をいただいたのであった。

 

* * * * *

 

 ファさんと別れてアーガマに戻ってきたオレは、Zガンダムのコクピットの中にいた。

 前にメタスに乗ったことはあるけど、Zに乗るのはこれが初めてだ。何しろ、スレ民のみんなの話では、前作の主人公機。それに乗るとなると、すごい緊張する。

 

 そこに、通信ウィンドウが開き、ブライトさんの姿が映し出された。

 

『マリハ、できればジュドーと合流して、彼にZガンダムを使わせろ!』

「はい。オレではさすがにまっとうに戦うのは無理ですからね」

『そうだな……だが本当にいいのか? ファは……』

「ファさんはカミーユさんの看病がありますから……大丈夫、なんとかやってみます」

『そうか……くれぐれも気をつけろよ』

「はい。Z、行きます!」

 

 そしてオレの乗ったZは……アーガマの甲板から飛び降り、学校へ向けて走っていったのだった。

 

* * * * *

 

 一方、そのころ。こちらもゲゼとガザCが学校に向かっているのを見たジュドーたちは、予定を変更してその学校のほうに向かった。

 すると、そこではゲゼに乗っているゲモンが、スピーカーで挑発を行っているところだった。

 

「俺はジャンク屋のゲモン・バジャック様だ! Zはこのゲモン様と勝負しろ!! 出てこないとこの学校をぶち壊すぞ!」

 

 それを見ているジュドーたち。エルがジュドーに声をかける。

 

「ジュドー!」

「どうするんだ、逃げるのか?」

 

 そう聞いてくるビーチャにジュドーが言い返す。

 

「そんなわけに行かないだろ! えーい……!」

 

 そこにZガンダムがやってきた。だべだべと走って。

 

「Zガンダムだって!? 誰が乗ってるんだよ!?」

 

* * * * *

 

「アーガマを襲うのが作戦じゃ無かったのか!?」

 

 学校の上空を飛ぶガザCに乗るゴットンは頭を抱えていた。彼が言っていた通り、本当はアーガマを襲いに行く作戦のはずだ。ところが、無軌道なゲモンは、進撃途中で見つけた、校庭に書かれたZGの文字を挑戦状と解釈。ここでZガンダムと対決すると言い出したのである。

 

「ゴットン様、どうなさいます?」

 

 そう聞いてくる僚機のガザCのパイロットに、ゴットンは努めて冷静に答えたのだった。

 

「此処は奴に任せろ、ガザCで戦って見せるのは、住民に良くない」

 

 その彼の耳に、

 

「Zガンダム、もったいぶりやがって!」

 

というゲモンの叫びが届いた。

 

* * * * *

 

106:名無しのオールドタイプ

おー、いよいよジャンク屋ネキの初陣やな!

 

107:名無しのオールドタイプ

しかし、相手がゲモンとは、なんとも冴えない……。

 

108:名無しのオールドタイプ

まぁ、ともかく、ネキの初陣とはめでたい!

 

109:名無しのオールドタイプ

祭りや祭りや!

 

110:ジャンク屋ネキ

お前ら……他人事だと思って。

 

111:名無しのオールドタイプ

そんなことないで。頑張ってや、ジャンク屋ネキ。ワイは応援しとるで。

 

112:名無しのオールドタイプ

くれぐれも気を付けるんやで。あんな見てくれだけど、ムーバブルフレームを使った第二世代並みのブツやからな。

 

113:名無しのオールドタイプ

確か、ゲモンがこいつ組むために使ったパーツの中に、フレームがあったんやっけか。

 

114:名無しのオールドタイプ

そうそう。

 

115:名無しのオールドタイプ

わかってやるやろな、ネキ。ここで戦うのは危険や。牽制しながら、なんとか安全なところまで引っ張っていくんやで!

 

116:ジャンク屋ネキ

おう、やってみるわ。まずは牽制、牽制……えい!

 

117:名無しのオールドタイプ

え。

 

118:名無しのオールドタイプ

え。

 

119:名無しのオールドタイプ

コロニー内でグレネード撃つ奴があるかーい!

 

120:ジャンク屋ネキ

『お前! こんな場所でランチャーを使ったら、迷惑どころじゃないぞ!』

「ご、ごめんなさい。間違えただけなんですっ……」

 

 なんでオレが謝らなきゃならんのや?

 

121:名無しのオールドタイプ

コロニー内でグレネード撃つ奴が悪いと思うで。

 

122:ジャンク屋ネキ

本気で撃とうと思ったわけやない。牽制しようと思って、スイッチを間違っただけや。

本当に、ZガンダムのFCSはわかりにくい……。

 

123:名無しのオールドタイプ

まぁ、最新鋭機やしね。

 

124:名無しのオールドタイプ

このすぐあとに、さらにその最新鋭機のダブルゼータがくるけどな。

 

125:名無しのオールドタイプ

それ以上はいけない。

 

126:ジャンク屋ネキ

今度こそ、今度こそ……それっ。

 

127:名無しのオールドタイプ

おぉ、今度はトリモチランチャーか。うまくいってよかったな。

 

128:名無しのオールドタイプ

おぉ、ゲモンさん、頭にきたみたいだな。逃げていくZを猛追しとるで。

 

129:名無しのオールドタイプ

でも、ネキのZも、ジュドーが乗った時ほどじゃないけど、いい動きしてるよな。

 

130:名無しのオールドタイプ

少なくとも、ファが乗ってる時よりは。

 

131:名無しのオールドタイプ

Zにはバイオセンサーがついてるからな。それがネキのNT能力と連動してるんだろう。

 

132:名無しのオールドタイプ

おぉ、なんとか街はずれまで誘導できたな。

 

133:名無しのオールドタイプ

できたけど……。

 

134:名無しのオールドタイプ

あーあ、ゲゼにぼこぼこにやられてるやんけ。

 

135:名無しのオールドタイプ

ジュドーと交代するまで、Z壊すんじゃないで。ジャンク屋ネキ!

 

136:ジャンク屋ネキ

仕方ないだろ! こっちは軍用MSの戦闘操縦なんてやったことないんだから!

 

137:名無しのオールドタイプ

パイロット候補生が何言っとるねん。

 

138:名無しのオールドタイプ

おっ、後ろからガスタンクが。ジュドーたちやな。

 

139:名無しのオールドタイプ

おー、ゲゼ、直撃喰らってよろけとるで。

 

140:名無しのオールドタイプ

ジュドーもやってきたな。ジャンク屋ネキ、くれぐれもジュドーを踏んだりしないように気を付けるやぞ!

 

141:ジャンク屋ネキ

そ、そんなこと言われてもな……。いてっ、やりやがったなー!!

 

142:名無しのオールドタイプ

うわ、子供同士の喧嘩みたいにポカポカの殴り合いに移行した……。

 

143:名無しのオールドタイプ

踏みつぶされそうになりながら、二機の足の間を逃げ回るジュドーが哀れなり。

 

144:名無しのオールドタイプ

お、でもなんとかZに取り付けたみたいだな。

 

145:ジャンク屋ネキ

うわ、こ、こいつ!

『Z、俺がいるんだよぉ! しっかりしてよ!』

 

146:名無しのオールドタイプ

今度は取っ組み合いしてる中で振り落とされそうになって……今日はジュドーにとって災難の日だな。

 

147:名無しのオールドタイプ

でも、なんとか組合ったまま膠着状態になったな。ネキ、そのままその状態を維持するんやで!

 

148:ジャンク屋ネキ

や、やってみる。でも、あまり期待するなよ……!

 

* * * * *

 

 そしてなんとか押し切られないようにZを踏ん張らせていると、コクピットの前までたどり着いたジュドーがハッチを叩いてきた。

 

『Zのパイロットさん、ハッチ開けてよ! 代わるからさ!』

 

 ふぅ、やっと交代か。これでオレも、肩の荷が下りそうだ。

 ハッチを開けると、コクピットの中のオレを見たジュドーはびっくりしていた。

 

「ま、マリハ!? お前がZを操縦してたのかよ!?」

「あぁ、正直、かなり大変だったけどな」

 

 と、そこで。

 

『その生意気なチビ諸共ぶち壊してやるぅ!!』

「うわっ!」

「きゃっ!」

 

 ゲゼがパワーを出して、Zを押しだした。その衝撃で、ジュドーはコクピットの中に転がり込み、オレに覆いかぶさる形でシートの中にダイブした。あ、キスなんてことにはなってないから安心するように。

 

「やってくれちゃって!」

「うぐぐ……」

 

 ジュドーはオレの上に収まる形でシートに座り、反撃を開始した。

 しかし……苦しい。何しろ、スレ民のみんなの話では彼の体重は56kgあるそうで。その体重がすべてオレの身体にかかっていることになる。早くZから降ろしてもらわなければ、窒息するかおせんべいになってしまう。

 

 そうしているうちに、ジュドーはZでゲゼを蹴り飛ばした。その衝撃で、ゲゼはあおむけに倒れこむ。

 

「ジュドー、タップタップ……。このままじゃオレ、ぺしゃんこになっちまうよ……」

 

 スレ民のみんなは「ひ弱なやっちゃな」とか「もう少し我慢しろ」とか「主人公と密着している幸せな状況なのに罰当たりな奴め」とかいろいろ言っているが、冗談じゃない。男に密着して何が嬉しいものか。

 

「あ、わ、悪い。降りるか?」

「あぁ、そうしてもらえると嬉しい」

 

 そしてオレは、ゲゼが起き上がる隙に、Zガンダムから降ろしてもらうことができた。ふぅ、助かった……。

 

 その後、さすがジュドーに交代したおかげもあり、Zガンダムは苦戦しながらも、なんとかゲゼを無力化したのであった。

 

* * * * *

 

152:ジャンク屋ネキ

ふぅ、大変な目にあったやで。

 

153:名無しのオールドタイプ

お疲れ様やで。

 

154:名無しのオールドタイプ

初陣だけど、あそこまでやれたなら上出来だと思うぞ。よくやった。

 

155:ジャンク屋ネキ

そ、そうか?

 

156:名無しのオールドタイプ

しかし、ゲモンのあの態度といったら……。

 

157:ジャンク屋ネキ

ゲモン、『マシュマーに頼まれて』とか『彼に脅かされて嫌々……』とか言ってるけど、本当か?

 

158:名無しのオールドタイプ

そんなわけないやろ。

 

159:名無しのオールドタイプ

原作では、自分から日の出の勢いのアクシズに自分を売り込みに行ってたからな。今回もその線やろ。

 

160:名無しのオールドタイプ

とはいえ、マシュマーも彼に協力してたからな。彼が共犯ではないというわけでもないが。

 

161:ジャンク屋ネキ

はーん、なるほどね。

 

* * * * *

 

 一方、エンドラ。今回の作戦が失敗に終わったと聞いたマシュマーは艦長席から立ちあがって言い放った。

 

「矢張りあんなジャンク屋に任せていたのが間違いだったな……こうなったら直接エンドラで、アーガマを叩く!」

「しかしそれでは住民が怯えます。私が今回の戦闘に参加しなかった意味が失われます」

 

ゴットンにそう諫められて、再び艦長席に座りなおし、そしてため息をついた。

 

「そうだったな。そんな大切な事も忘れるとは……私は、疲れているのだ」

 

 そして胸の薔薇に触れる。また彼の耳に届く、敬愛するハマーンの声。

 

(そうだ、疲れは判断を間違わせる。急ぐと敵にしなくてもいい人民まで敵に回す。くれぐれも気をつけよ、マシュマー)

 

「試作モビルスーツの組み立てまでお待ちになったら、いかがでしょう? 我が艦にはまだ幾つか、テストしなければならないモビルスーツがあります」

「そうか。“ハンマ・ハンマ”もあったな、うむ……嗚呼、ハマーン様、私にお力を」

 

 その言葉に、ゴットンは『またか』といった表情を浮かべた。見慣れた光景ではあるが。

 

* * * * *

 

「何時アクシズが来るか解らないし、俺がZガンダムを預っとくよ!」

 

 戦いが終わった帰り道、Zガンダムに乗ったジュドーがそう言ってきた。

 まぁ、確かにその通りだ。これからもアクシズが攻めてくるんだったら、いちいちアーガマにとりにくるより、手元に置いておいたほうが効率的だ。スレ民のみんなからも「確かにその通り」とか「ジュドー、一応考えてるんだな」とかそんな書き込みが寄せられてる。中には、「Zがほしいからそんなこと言ってるんじゃ?」というのもあったが。

 

 とはいえ、他のメンバーたちは難色を示しているようで……。

 

「だったら皆でアーガマに来れば良いのに」

 

 イーノがそうジュドーに言う。オレとしては、本人が渋っているのに無理強いするのはどうかと思うんだが。

 

「その話だったら断っただろ?」

「でもジュドー。Zガンダムどこに置くのさ」

 

 エルの言葉に、ビーチャとモンドも便乗する。

 

「こんな大きければ、隠すなんて無理だしね」

「整備する時のクレーンって、レンタル料すっげえ高いんだぜ?」

「そりゃそーだ、アーガマならタダで借りられるぜ?」

 

 というか二人とも、アーガマに就職して良い目を見たいって雰囲気がありありなんだが。

 軍隊ってそんな楽なもんじゃないと思うんだけどな。前世で見た自衛隊の体験入隊の番組なんか見てるとよくわかる。

 

「なぁ、マリハ。お前もジュドーに何か言ってくれよ」

 

 と、横からビーチャがそんなことを言ってきた。まぁ、このさいだから言っておいてやるか。

 

「あのな……誘うのはいいけど、本人が嫌がってるのに無理強いするのはどうかと思うぞ?」

「え?」

「軍隊に入れば人生ラッキーなんて思ってるかもしれないけど、そんなのは夢物語だからな?」

 

 オレもアーガマに入隊してかなり経っているが、仕事はかなりハードなんだ。今でさえ、雑用から炊事洗濯、MSの整備まで。ファさんも手伝ってくれるとはいえ、かなりきつい。この後はおそらくMSの操縦訓練まで待ってる。もう、戦う理由がなければ、オレだってこんなことはしたくないってぐらいだ。

 

 それを考えてかすかにため息をつくオレに、モンドがかみついてくる。

 

「ならお前は、どうしてアーガマに入ってるんだよ。リィナに聞いたぜ? パイロット候補生にも志願したって」

「あぁ。オレなりに考えて選んだ道だからな。それで納得してるから後悔もないし、耐えられるさ。それもなしに入ったって、三日坊主になるだけだぜ」

「……」

 

 沈黙するモンド。するとそこでジュドーが口を開いた。

 

「本当なのか? お前、なんでパイロット候補生に……」

「大したことじゃないよ。次に戦争が起こった時、オレが戦うことでその戦争が早く終わり、その分カミーユさんやファさんのような犠牲者が少なくなってくれたらいいな、ってただそれだけさ」

「マリハ……」

 

 そうつぶやくジュドーに振り向いて微笑んだ。

 彼が自分なりの戦いの理由を見つけてくれることを祈って。

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

マシュマーさんが新たに乗ってきたMS、ズサは新型。だから強い。
オレはジュドーやファさんの代わりに、またZに乗って戦うけど、身体が不調なんだから、大苦戦。
おいビーチャ、ダマールさんちが迷惑受けていい気味なんて言ってる場合じゃないぞ!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第5話『その名はズサ』

この声があるから、オレはまだやれる!

※次の更新は、2/13 12:00の予定です。お楽しみに!


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Act.05『その名はズサ』

はい。前回のタイトルの元ネタは、Gガンダムの第3話『倒せ! 魔神ドラゴンガンダム』からでした。正解者はいましたでしょうか?

今回のサブタイトルの元ネタも考えてみてくれると嬉しいです。


1:ジャンク屋ネキ

ふぅ……これで今日の訓練はおしまいか。少しは上達したかな?

 

2:名無しのオールドタイプ

おう、お疲れやで。

 

3:名無しのオールドタイプ

かなりうまくなったとちゃうか? ジュドーとかカミーユとかレベルではないけど、アクシズのモブ兵くらいまではいってるんじゃない?

 

4:ジャンク屋ネキ

うまいのかそうではないのかわからない表現で草

 

5:名無しのオールドタイプ

前のゲゼ戦の時に比べればかなりうまくなったと思うぞ。

ただ、ちょっとオーバーワークすぎない?

 

6:名無しのオールドタイプ

それは俺も思った。普通の訓練の二倍ぐらいの訓練量があったような気がする。

 

7:名無しのオールドタイプ

しかも、それに通常業務もあるんだもんな。ブラック企業の一歩手前ぐらいの職場環境のような気がするで。

 

8:ジャンク屋ネキ

まぁ、通常業務は別にしても、訓練の増量はオレから申し出たことだからな。

 

9:名無しのオールドタイプ

はえ? なんでまた?

 

10:名無しのオールドタイプ

ジャンク屋ネキってまさか……社畜?

 

11:名無しのオールドタイプ

M?

 

12:ジャンク屋ネキ

お前ら……。社畜でもないしMでもないで。ちょっと思うところがあるだけや。

 

13:名無しのオールドタイプ

そうか……でも、過労で倒れないように気を付けるんやで。

 

14:ジャンク屋ネキ

おう。それじゃ、ちょっとブライトさんのところに訓練終了の報告に行ってくるで。

 

15:名無しのオールドタイプ

いてら。

 

16:名無しのオールドタイプ

くれぐれも無理するなやで。

 

17:ジャンク屋ネキ

おう。じゃ、またあとでな。

 

18:名無しのオールドタイプ

それにしても、思うところがあるって、ネキに一体何があったんやろな。

 

19:名無しのオールドタイプ

多分、ジュドーがパイロット候補生になりたがらないのが関係する気がするけど……。

 

20:名無しのオールドタイプ

でも本当に大したものやで。シャングリラの環境下で幼い身一つで頑張ってきたからかもしれないけど、みんな、『知人が恋人と一緒にいられるように代わりに戦う』だの『犠牲を減らすために戦争に参加する』なんて言えるか? ワイには無理や。

 

21:名無しのオールドタイプ

だよな、ここにいる民のほとんどは、俺も含めて、シャングリラよりはまともなコロニーで、そこそこの暮らし……それこそ現実世界の一般家庭のような暮らししてる人たちばかりだもん。俺たちにはかなりの勇気が必要だと思うぜ。

 

22:名無しのオールドタイプ

でもこのままだと、プルやプルツーのような悲劇になる前に、過労死するという悲劇に終わってしまいそうな気がして、マジで心配や。

 

23:名無しのオールドタイプ

嫌だぞ、そんな散り方は。いや、ネキに散ってほしくはないけど。

 

24:名無しのオールドタイプ

まぁ、そこは俺たちが気を付けてやるべきだろうな。

 

25:名無しのオールドタイプ

そうやな。

 

26:名無しのオールドタイプ

うーん、ジュドーがパイロット候補生になりたがらない、か……。

 

27:名無しのオールドタイプ

どうしたんや? 何か心当たりがあるんか?

 

28:名無しのオールドタイプ

あぁ、心当たりというか、ある仮説が思い浮かんでな。まぁ、外野である俺たちではどうしようもないことだけど……。

 

* * * * *

 

 少しふらつく身体をなんとかもたせながらブリッジのドアの前まで行くと、ドアの向こう……ブリッジのほうから騒ぎ声が聞こえてきた。主にジュドーやビーチャたちの声。何か言い争っているみたいだ。何事だ?

 そう思いながら、ブリッジに入る。

 

「俺は、ヤダね」

「何でよジュドー、一番宇宙(そら)に出たがってたのは、アンタじゃない?」

 

 渋っているジュドーを、エルが説得しているようだ。

 それでも、ジュドーは首を縦に振らない。

 

「此処に居るって事は、アンタ達の下でこき使われるって事だろ?」

「それなりの報酬は払う」

「給料取りなんて真っ平だね! 俺は、働いた分だけ金を貰う暮らしの方が、好きなんだよ!」

 

 ブライトさんも説得するが、ジュドーはやはり反発するばかり。まぁ、スカウトしたいというブライトさんの気持ちも、人殺しなんてしたくないジュドーの気持ちも、どちらもわかるのだが……。

 

「訓練終了の報告に来たんですが……どうしたんですか?」

「あっ、マリハ。お前からも言ってやってくれよ。『アーガマのクルーになってくれ』って!」

 

 モンドがオレにそう頼んでくる。……金のにおいがするぞ。きっとブライトさんから懐柔されたんだろう。

 トーレスさんからも言ってくる。

 

「なんとか説得してくれよ。お弁当まで出して説得してるんだけどさ……」

 

 そんな勧誘じゃダメだっていうのに……オレはため息をついて、ブライトさんのほうを向いた。

 

「なぁ……ブライトさん。そんな勧誘のやり方はやめてよ。そんな無理やり説得したり、恩で縛るようなことをしてスカウトしても、きっとジュドーは本気になって助けてくれないと思うし、彼のためにならないと思うよ」

「マリハ……だが……」

「なんなら、オレがジュドーの分も戦うからさ。だから、彼の気持ちが変わるまで、彼をそっとしてやってくれないか?」

 

 そう、逆にブライトさんを説得するオレの後ろから、ジュドーが「まさかお前、そのためにあんなに訓練を……」という声が聞こえる。ああ、ハードワークしてるのはそれもある。それを恩に着せるつもりはないけどな。これはオレが自分で考えたことだから。それにオレにはアーガマやシャングリラのみんなはもちろん、スレ民のみんなもついていてくれている。彼らがいてくれれば、オレはいくらでも頑張れる。どんな苦境にあっても折れないでいられる。そう思う。

 

 と、そこで。

 

「あ、あれ……?」

 

 突然、視界がかすんできたと思った次の瞬間、オレは意識を失った。

 

* * * * *

 

 一方こちらは、アクシズの巡洋艦、エンドラ。

 

 その格納庫にたたずむ、完成したばかりのMS、ズサを目の前にマシュマー・セロは悩んでいた。

 

(Zは倒さねばならん。だが家一つ壊さずに戦う自信は無い……)

 

 マシュマーが悩むのも無理はない。アーガマ討伐が難航している影響で、市民の動揺はかなり高まってきており、それはシャングリラのお偉いさん方に金を積んでも抑えきれなくなってきているのだ。

 そんなところで、過剰火力のズサを使えばどうなるか……。

 

 迷うマシュマーは、またしても無意識に胸の薔薇に手を触れた。すると、脳裏に敬愛するハマーン・カーンの姿が浮かんだ。そのハマーンはこうマシュマーに告げる。

 

(マシュマー、型どおりに運ばぬ事も時としてある。綺麗事だけでは済まないと言う事も、心に留めておくのだぞ)

 

 その啓示を受け、マシュマーは覚悟を決めた。

 

* * * * *

 

INFO:ID:Sd5qD4xr(※マリハのIDである)が再ログインしました

 

75:名無しのオールドタイプ

あ、ネキが目を覚ましたやで!

 

76:名無しのオールドタイプ

大丈夫かジャンク屋ネキ!

 

77:名無しのオールドタイプ

心配したで、ジャンク屋ネキ!

 

78:ジャンク屋ネキ

うぅん……。気を失ってたみたいや。心配かけてすまんな。

 

79:名無しのオールドタイプ

何はともあれ、無事でよかったやで。

 

80:名無しのオールドタイプ

お医者さんは何と言っておられる? まぁ、大方見当はつくが。

 

81:ジャンク屋ネキ

あぁ、今ハサン先生が教えてくれたわ。やっぱり過労だって。

 

82:名無しのオールドタイプ

だろうなぁ……。あれだけハードワークしてたら、そりゃあ過労で倒れるってもんよ。

 

83:名無しのオールドタイプ

ジャンク屋ネキが仲間思いなのはいいことだが、自分を犠牲にしがちなところは直さなあかんよ。

 

84:ジャンク屋ネキ

そんなこと言われてもなぁ……。ジュドーには十分に納得したうえでZにのってほしいんや。無理やりとか恩に着せられて、ではなくてな。

 

85:名無しのオールドタイプ

ネキがジュドーのためにハードワークしてる時点で、彼に恩を着せている点について

 

86:ジャンク屋ネキ

うぐ……。あ、医務室にビーチャたちが入ってきたから、少しこちら黙るやで。

 

87:名無しのオールドタイプ

おう。

 

88:名無しのオールドタイプ

お大事にな。

 

* * * * *

 

「やっほー。具合はどう? マリハ」

「おう、なんとか少し元気になってきたみたいだ。……あれ、ジュドーは?」

 

 見ると、入ってきた中にジュドーはいなかった。

 オレがそう聞くと、ビーチャは肩をすくめて答えてくれた。

 

「お前がぶっ倒れたから、いたたまれなくなったみたいでさ。アーガマを出て行ったぜ」

「そうか……」

 

 まぁ、オレの戦う理由の一端が自分のためだったなんて聞かされ、さらにそのオレが倒れたとあれば、そんな気持ちになるのも仕方ないことだろう。

 

「しかし、まさかお前があんなことを考えて戦っていたなんてな……」

 

 と、これはモンド。

 

「いいところあるじゃねぇか。それに引き換え、ジュドーときたら……」

 

 ビーチャがそう言う。そんな彼に、オレは苦笑して言ってやった。

 

「そう言ってやるなよ。オレたちはアーガマに出会ってなければ、戦いなんて知らずに平和に暮らしていたんだぜ? それがこんなことに巻き込まれちまって。あいつのように迷うのが普通だよ。オレみたいに、戦う理由を見出して、戦いに身を置けるのが特別……いや例外なんだ」

「マリハ……」

 

 本当に自分ながらそう思う。何しろ、オレは前世では戦いの「タ」の字も、戦争の「セ」の字も知らない、ただの大学生だったんだ。それがこの宇宙世紀に転生したら、紆余曲折の末にアーガマのパイロット候補生になる道を選んでいたんだから。

 スレのみんなからも、「それについては異論の余地はない」とか「よくわかってるじゃねーか」という意見が出ているということは、やはりそうなのだろう。やはり宇宙世紀に転生して、それに適応した影響なのだろうか?

 

 と、そこで。かすかに爆破音が響いた。

 

* * * * *

 

「お許し下さいハマーン様! 悪に徹し切れないこのマシュマーを……!」

 

 そう心の中のハマーンに謝罪しながら、マシュマーは新型MS、ズサを駆っていた。

 最初は、ガザC隊を含めての総攻撃を考えていた彼だったが、悩んだ末、自分のズサ単体でアーガマを攻撃する作戦に変更したのだ。

 

「手段は選ばなくとも、被害は最小にしたい。と言う事は、『密集していない山肌』にするか……」

 

 そう考えた彼は、住宅地の少ないコロニーの一角に向かった。

 だが彼は知らない。そこは『山の手』と言われる、金持ちや上流階級たちが住まうエリアであることを。

 

 そして、そこに居を構える一人であるダマールが、ズサの襲撃による影響で、秘蔵品のワインがおしゃかになり、家を失うことになることに、マシュマーが気づくよしもなかった。

 

* * * * *

 

 山の手がズサに(結果的に)荒らされていくのを、アーガマで作業中のビーチャたちは窓から見ていた。

 

「山の手なんて、やられちゃえば良いのさ!」

 

 のんきにそう言うビーチャに対して、エルとモンドはいくらか現実的であった。

 

「……でも下町まで来ちゃうわよ。病院や学校なんて傍じゃない?」

「俺ん家大丈夫かなー……」

 

 一方そのころ、アーガマに戻ってきていたファは、アストナージが止めるのも聞かず、メタスに乗り込んでいた。

 

「カミーユを守らなくちゃ……!」

 

 そして発進していく。その様子は、ブリッジのブライトも見ていた。

 そして、トーレスに指示する。

 

「ビーチャたちに言って、ジュドーを……」

『待ってください!』

「!?」

 

 スクリーンに映っているMSデッキには、起動して歩き出すZの姿が映し出されていた。

 

* * * * *

 

 オレはくらくらする頭と、ふらふらする身体を鞭打って、Zガンダムに乗り込んでいた。

 MSデッキに来ていたエルとモンドが呼びかける。

 

『マリハ!』

『大丈夫なのかよ!?』

「あぁ。過労は少し取れた! 本調子じゃないけど、ジュドーを戦わせないためには、オレが頑張らにゃ……!」

 

 そしてZを発進させる。ウェイブライダーに変形させ、山の手のほうへ。

 

「た、大変!」

「早くジュドーを呼びにいかないと、マリハがやられちまう!」

 

 二人は、大急ぎでMSデッキを出て行った。

 

* * * * *

 

 オレが駆け付けると、そこではファさんのメタスが、アクシズのMSに腕を引きちぎられてるところだった。オレはバルカンを放ってファさんを援護した。

 

『Z!』

「ファさん、大丈夫かい!?」

『マリハ! あなたこそ、大丈夫なの!?』

『本調子ではないけどさ。でも、ファさんとカミーユさんを見捨てるわけにはいかないよ!』

 

 そう言って、敵のMSに向きなおる。

 

『来たな、待っていたぞ。Zガンダム! 今こそ雌雄をつけてくれる!』

 

 そう言うと、マシュマーさんの乗ったMS……スレ民のみんなの話では『ズサ』というらしい……は、ビームサーベルを抜いて突撃してきた。

 さすがマシュマーさん。少ないとはいえ住宅のある山の手でミサイルはまずいと思ったのか、まずは接近戦を挑んできた。こちらも、ビームサーベルを抜いて、応戦する。

 

 ビームサーベルとビームサーベルがぶつかりあう。……まず……また視界が……!

 

 スレには『がんばれネキ!』『無茶するな!』という励ましやアドバイスの書き込みが流れている。感謝だぜ。それがあるからオレはまだ戦える!

 

 オレはZを後ろにジャンプさせると、頭部バルカンを発射した。ズサはそれを後退させてかわすと、肩のミサイルランチャーを発射してきた。上空にならミサイルを撃っても大丈夫と考えたのだろう。

 オレはそのうちの二発をなんとかギリギリでかわしたが……。

 

「しまっ……!」

 

 過労で具合が悪いうえに、Zを急回避させたものだから、一瞬、視界が真っ白になってしまう!

 そこに。

 

:気をつけろネキ! 直撃コースで来てるで! シールドで防御や!

 

「え?」

 

 視界が元に戻ると、スレ民の一人が書き込みした通り、こっちにまっすぐに向かってくるミサイルが! やばい、この距離じゃ回避も間に合わねぇ!

 

 オレはとっさにZガンダムのシールドを構えてミサイルをガードした。しかし、大ダメージこそ避けられたものの、その衝撃で吹きとばされ、近くにある小屋に墜落してしまう。

 その墜落の衝撃でハッチが開いてしまう。

 

 だが、もしスレ民が警告してくれなければ、オレはあのミサイルに撃墜されていただろう。

 

 腰のバランサーがエラーを起こしたみたいで、なかなか立ち上がることができない。やばい!

 だがなぜか、ズサはそこに追い打ちをかけることをしなかった。

 

* * * * *

 

 一方、そのころ。

 ジュドーは山の手のはずれで、そのZガンダムとズサの戦いを見ていた。

 

 そこに、モンドとエルが駆け付けてくる。

 

「どうしたんだよ、二人とも?」

「どうしたのじゃないよ、ジュドー!」

「あのZに、マリハが乗ってるんだよ! まだ具合がよくなってないのにさ!」

「なんだって!?」

 

 目を見開いて驚くジュドーの脳裏に、親友(マリハ)が言った言葉がフラッシュバックする。

 

(大したことじゃないよ。次に戦争が起こった時、オレが戦うことでその戦争が早く終わり、その分カミーユさんやファさんのような犠牲者が少なくなってくれたらいいな、ってただそれだけさ)

 

(なんなら、オレがジュドーの分も戦うからさ。だから、彼の気持ちが変わるまで、彼をそっとしてやってくれないか?)

 

 そう、彼女は次に起こるだろう戦争の犠牲者を減らすため、そして戦いに迷いを抱いている親友のため、その分まで戦おうと、身体の不調を抱えてまで、こうしてZガンダムを駆っているのだ。

 なのにこのままでいいのか……?

 

 しかし、ジュドーはまだ決断ができずにいた。

 今ならまだ引き返せる。ジャンク屋としてのいつもの生活に戻ることができる。だが、Zに乗れば、アーガマのパイロット候補生になってしまえば、もう引き返すことはできない。そこに待つのは、血と悲鳴にあふれた修羅の道だ。

 

 引き返すべきか、踏み出すべきか、ジュドーは迷っていた。だがそれが普通であろう。戦いを目の前にして、迷いを抱くのが普通の人なのだ。それを責めるのは酷だろう。

 

 そうしてるうちに、ズサは後退をかけた。

 

「あいつ、まさか!」

「友軍と合流して一気に決戦するつもりか!?」

 

 そして二人とも、ジュドーに顔を向ける。

 

「どうするのよ、ジュドー! 今度あいつが仲間とともに来たら、マリハもファさんも死んじゃうよ!」

「そうだよ、お前はそれでいいのかよ!」

 

 仲間の命の危機。それがジュドーに決断を促した。

 

「あー、もう、わかったよ! 言っとくが、アーガマのためにやるんじゃないんだからな! あくまで、マリハとファさんを見捨てたくないからだからな!」

 

 そしてZに向けて走り出した。

 

* * * * *

 

 一方、後退してガザC隊と合流したマシュマーは悩みのうちにあった。それはZガンダムの開いたコクピットから、そのパイロットの姿を見たからだ。それは。

 

(まさか、今戦っていたZガンダムのパイロットが、あの白衣の少女だったとは……。しかも彼女は、後ろの小屋を巻き込まないように盾になっていた。あの娘も、私と同じ、騎士道精神を身に着けていたのか……)

 

 一部勘違いを交えながらも悩むマシュマーだが、少ししてその悩みを振り捨てる。

 

(何を悩んでいるのだ、マシュマー・セロ。ハマーン様も仰っていたではないか。『綺麗事だけでは済まない』と。そうだ、あの娘ごとZガンダムを討ち果たすのは、この身に与えられた試練なのだ)

 

* * * * *

 

 オレは必死に、Zのバランサーのリカバーに努めた。ぼーとする頭をなんとかふり絞り、バランサーは回復。立ち上がることができるまでに至った。そこに。

 

「おい、マリハ、無事か!?」

「ジュドー! お前、戦っていいのかよ!?」

 

 だがジュドーはかすかに迷った後、かすかに微笑んでいった。

 

「あぁ! 軍とか組織のために戦うのは御免だけど、お前たちを見捨てて死なせるのはもっと御免だからな!」

 

 そのジュドーの顔には、迷いはほんのカケラほどしか見当たらなかった。どうやら大丈夫そうだな。

 

「そうか……じゃあ任せた!」

「あいよ!」

 

 そしてハイタッチして、オレはZを降りる。そして、ファさんのメタスへと駆け寄っていく。

 

「ファさん、ファさんのメタスに乗せてくれ!」

 

* * * * *

 

101:名無しのオールドタイプ

おぉ、さすがジュドーやな。

 

102:名無しのオールドタイプ

上空から襲い掛かってきたガザCをビームサーベルで一突き。見事に無力化に成功したな。

 

103:名無しのオールドタイプ

さすが、半病人のネキとは違うな!

 

104:ジャンク屋ネキ

悪かったな、半病人で。

 

105:名無しのオールドタイプ

でも、身体が絶不調なのに、あそこまで頑張れたんだからえらいわ。俺はそこは評価するで。

 

106:ジャンク屋ネキ

おう、サンガツ。

 

107:名無しのオールドタイプ

おぉ、もう一機のガザCも、けり入れて吹き飛ばしたな。これで残るは、マシュマーのズサだけか。

 

108:名無しのオールドタイプ

一体どこからくる……? 原作では、Zの頭上からだったが……。

 

109:ジャンク屋ネキ

あ、本当に上から……!

「ジュドー、気をつけろ! 上からくるぞ!」

『え?』

『墜ちろぉ!!』

 

110:名無しのオールドタイプ

ネキ、ナイスアシストやな。ジュドー、ギリギリでかわして、バルカンとビームサーベルで中破させたやで。

 

111:ジャンク屋ネキ

『マリハ、しっかりつかまってて!』

「これで!?」

『それくらいはできるわ!』

鉄骨つかんで突撃するなんて、ファさんもめちゃくちゃやな!

 

112:名無しのオールドタイプ

でも、効果はあったみたいやで。まだ戦うつもりだったマシュマー、今ので頭が冷えたか、撤退していったわ。

 

113:ジャンク屋ネキ

やれやれ、なんとか終わったか……はふぅ……。

 

114:名無しのオールドタイプ

ジャンク屋ネキ!?

 

115:名無しのオールドタイプ

どうした!? しっかりしろ!

 

116:ジャンク屋ネキ

大丈夫……今までの疲れやら何かやらが一気に押し寄せてきて、力が抜けただけや……。

 

117:名無しのオールドタイプ

本当に無茶しすぎやで……。

 

118:名無しのオールドタイプ

13才の女の子なのに、パイロットに志願、親友のために普通の倍の練習してんだもんなぁ……。本当に自分を大切にしないとダメやで。

 

119:ジャンク屋ネキ

お前ら……。

 

120:名無しのオールドタイプ

これからは、ジュドーや他のチルドレンも一緒に頑張ってくれるんや。大変さは彼らと一緒に分かち合っていけばええんやで。

 

121:ジャンク屋ネキ

そうか……そうだよな、ありがとな、みんな。

 

122:名無しのオールドタイプ

どういたしましてや。お大事にしたってや。

 

* * * * *

 

 そしてアーガマに帰還後。

 

「ジュドー、それじゃアーガマに入って、パイロット候補生になってくれるんだな?」

「あぁ。でも勘違いしてもらっては困るぜ。マリハだけを戦わせるわけにはいかないからだからな」

 

 ブライトさんの質問に、そう答えるジュドー。

 ちなみにオレは、疲労困憊でへとへとなので、そのジュドーに肩を貸してもらっている。

 

「それに、マリハの後ろを守る奴も必要だろうしな。本当に危なっかしい奴だから」

「危なっかしいのはジュドーのほうじゃないの?」

「な、なにを言ってるんだ。俺はだな……」

 

 そのオレとジュドーのやりとりに、アーガマのブリッジには笑いが沸き起こった。

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

しょうがない人っているもんだよな。
いよいよアーガマがシャングリラを出ていくって時になって、前にオレたちが助けたヤザンさんが、ゲモンと結託して、ハッチの前に陣取ったうえに、ジュドーを捕らえちゃった。
そんな時に、また新たな敵が! えー、あれまで出てくるの?

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第6話『シャングリラ脱出作戦』

誰? このお姉さん。

※次回は、2/16 12:00の予定です。お楽しみに!


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Act.06『シャングリラ脱出作戦』

はい、皆さんの想像の通りです。
前回のサブタイトルの元ネタは、ガンダムSEED第2話、『その名はガンダム』からでした。皆さんは正解でしたか?

さて今回のタイトルは? 『脱出作戦』と名のつくサブタイトルはあまりないから、わかりやすいかもしれませんね。

あと、どうして掲示板ものでは、関西弁になっちゃうんでしょうね?(爆


「よいしょよいしょ……っと。マリハ、これはここに置いとくぜ」

「あぁ、ありがとな」

 

 倉庫の片隅に荷物を置いてくれたビーチャに、そう礼を言う。

 アーガマの出発準備が始まった。俺たちはそれに伴う物資の搬入やら整理をすることになったのだが、意外なことに、ビーチャもモンドも、文句の一言も言わず真面目に作業してくれている。

 

 これにはスレ民のみんなも驚いたようで、『あの二人がまじめに仕事してるだと!?』『原作では結構ぶーたれていたのに!?』『何か悪いものでも食べたのか!?』と、二人からすれば失礼な書き込みが多発していた。

 

 実は俺も、少しびっくりしていたりする。

 

「悪いな、手伝ってもらって」

「いいっていいって。女の子のお前に負担ばかりかけるわけにはいかないからな」

「またこの前みたいに倒れられたら困るからな。これぐらいのことで、お前の大変さが減るならお安いもんだぜ」

「お前たち……ありがとう」

 

 いかんいかん、思わず目からお湯が流れそうになった。

 スレ民からも、「あの二人、気持ちを入れ替えたんやな」とか「ネキが二人を改心させた……スレ民冥利に尽きるわ」とか、そんな評価する声が流れてきている。

 

 あら、目からお湯がこぼれた……。

 

「なんだー? 感動して泣いちゃってるのか?」

「いつもは男っぽいのに、かわいいところあるじゃねーか」

「う、うるさいなっ」

 

 と、そこでオレは一つ、気になっていたことがあった。

 

「そういえばジュドー、ハッチの偵察に行ったきり帰ってこないな」

「そういえばそうだな。もう出発してから1時間も経ってるのにな」

「あそこ開かないとシャングリラから出れないんだよな。本当にどうしたんだろ?」

 

 そうなのだ。

 アーガマの修理が終わり、いよいよシャングリラから出港することになった。その後は、エゥーゴの超大型ドック艦……スレ民が言うことには、ブライト艦長激ラブなエマリーさんという人が艦長代理をしている……ラビアンローズと合流する予定だという。

 

 だが、それには大きな問題がある。宇宙港にアクシズのエンドラが停泊していることだ。今のエゥーゴの戦力では、これを突破するのは困難だし、コロニーにも被害が出る。

 そこで、工業用の搬入口から脱出することにしたのだが、それにも問題が。搬入口は、あのゲモンがまとめているジャンク屋組合の一派が押さえているのだ。

 

 そこでジュドーがその偵察に行ったのだが……。それにしても遅いな。もしかして、ゲモンにつかまったか……?

 ブライトさんに言って、様子を見に行くか……。

 

* * * * *

 

7:名無しのオールドタイプ

あーあ、思った通り……というか、原作通りやな。ジュドー、ゲモンたちにつかまっとるわ。

 

8:名無しのオールドタイプ

いや、棒に縛り付けられているあたり、原作以上にやばいんでない?

 

9:名無しのオールドタイプ

ゲモンの隣にはヤザンもいるし、その後ろにはゲゼが二機もいるぞ。まさか、もう『鎮魂の鐘は二度鳴る』の話が来るとはなぁ。『ガザの嵐』はスキップか。

 

10:ジャンク屋ネキ

問題なのは、これがアニメではなく、現実ってことなんだが……。

シンタとクムも捕まってるしなぁ……。どうしたらいいと思う?

 

11:名無しのオールドタイプ

原作とは違って、ゲモンの取り巻きたちもいるからなぁ……。

後ろからこそこそ近づいてボカッてわけにはいかないよなぁ。

 

12:名無しのオールドタイプ

いかんやろ。ネキも捕まっておしまいや。

 

13:名無しのオールドタイプ

BAD END

 

14:名無しのオールドタイプ

次回作にご期待ください

 

15:ジャンク屋ネキ

終わらすなや!!

 

16:名無しのオールドタイプ

悪い悪い。冗談や。

 

17:ジャンク屋ネキ

まったくもう……。

『ねぇ、君、アーガマの人?』

え?

 

18:名無しのオールドタイプ

聞いた覚えのある声だな?

 

19:名無しのオールドタイプ

ありまくるな。中の人で言えば松井菜○子の声。

 

20:名無しのオールドタイプ

え?

 

21:ジャンク屋ネキ

「はい、そうですけど、あなたは……?」

え、誰や? この美人そうなお姉さん……。

 

22:名無しのオールドタイプ

ルーさん!

 

23:名無しのオールドタイプ

ルーや! 生ルー・ルカや!

こうして生で見れるなんて、感激や……。

 

24:名無しのオールドタイプ

そうか、そういえばもう彼女が登場する話なんだもんな。原作では。

 

25:ジャンク屋ネキ

え、このお姉さんのこと知ってるんか?

 

26:名無しのオールドタイプ

ジュドーの未来の嫁さん

 

27:名無しのオールドタイプ

なお、破局した未来線もある模様

 

28:名無しのオールドタイプ

エゥーゴの志願兵のお姉さんや。あのZガンダムどころかZZガンダムをも乗りこなせる凄腕の持ち主やで。

ネキより3才年上……16で少尉だというんだから、そのすごさがわかるやろ?

 

29:ジャンク屋ネキ

はえー……そんなすごい人なんか。尊敬してまうな。

「は、はい。アーガマの雑用兼パイロット候補生のマリハ・クトゥルといいまふっ」

あ、噛んでもた……。

 

30:名無しのオールドタイプ

パッとしない自己紹介になったな。まぁ、有名人と会ったんだから仕方ないが。

 

31:名無しのオールドタイプ

そういえば、後ろにあるのはコア・ファイターなんだが、どうやってここに入ってきたんだ?

 

32:名無しのオールドタイプ

きっと、ゲモンたちが閉める前に潜入してきたんじゃない?

 

* * * * *

 

 というわけで、この背の高く美人なお姉さんは、エゥーゴの志願兵のルー・ルカさんというらしい。

 ……すごすぎる。何がって女子力が。自分でも女子力皆無と自覚しているオレどころか、あのエルより女子力があるように感じる。女子力で輝いてるようにすら見えるぞ。(語彙力)

 

「それで君、パイロット候補生の君が、ここでどうしたのかな?」

「はい。実は……」

 

 この経緯をかくかくしかじか、っと。

 

「なるほどね。そしたらまず、あのジュドー君を助けなきゃね。うーん……あ、君、コア・ファイターの操縦はできる?」

「え? えーと、メタスのMA形態だったらある程度は……あとは、Zのウェイブライダーも少しだったら……」

「そうか。それなら大丈夫だね。えぇと……」

 

 そして、救出作戦開始。

 

 オレは今、ルーさんが持ってきたコア・ファイターのコクピットにいる。戦闘機とは言うが、操縦系はMSのものとほぼ同じなので、操縦するのにさほど問題はなかった。さて、と……。

 

* * * * *

 

 突然、上空から襲ってきた戦闘機を見て、ゲモンとヤザン、そしてその取り巻きたちが騒ぎ出す。

 

「あれはなんだ!?」

 

 と叫ぶ取り巻きの一人。

 

「鳥だ!」

 

 と別の取り巻きが指さす。

 

「木星クジラだ!」

 

 とヤザン。すいません、それ別の作品です。

 

「いや、戦闘機だ!」

 

 とゲモンが叫ぶ。

 

 その騒ぎをよそに、コア・ファイターが何かを発射。周囲は白い煙に包まれた。

 

* * * * *

 

40:名無しのオールドタイプ

おー、うまくいったやな。

 

41:名無しのオールドタイプ

ゲモンや取り巻き、煙でパニックに陥ってるで。

 

42:名無しのオールドタイプ

志村、後ろ後ろ!

 

43:名無しのオールドタイプ

ゲモン、ルーのフルパワーで殴られて哀れなり

 

44:名無しのオールドタイプ

さすがルーさん。軍人だけあって、ナイフの使い方も手馴れてるな。あっさりとジュドーの拘束、排除したで。

 

45:名無しのオールドタイプ

お、おい、あれ見れ?

 

46:名無しのオールドタイプ

ほへ?

 

47:名無しのオールドタイプ

ゲゼが二台とも動き出したで!

 

* * * * *

 

「もう頭にきたぞ! アーガマを潰して、あのガキどもにギャフンと言わせてやる! 行くぞヤザン!」

「おうよ!!」

 

 いつの間にかゲゼに乗り込んでいたゲモンとヤザンは、それを起動させ、アーガマのほうへと進軍を開始した。

 

 オレは、それを見送るジュドーの下にコア・ファイターを着陸させる。

 

「マリハ! お前が助けに来てくれたのか!」

「あぁ。あまりに帰ってくるのが遅かったからな」

「あんたも助けてくれて、ありがとう。えぇと……」

 

 名前を聞いたジュドーに、ルーさんが得意そうに胸を張って言う。

 

「ルーよ。ラビアンローズのルー・ルカ」

「エゥーゴの凄腕パイロットなんだって」

「へぇ」

「あら? そこまで話してないのに、そういうことまで知ってるんだ?」

「え」

 

 ルーさんに意地悪な目でそんなことを言われて、思わず焦ってしまう。

 あれ、これって、めちゃくちゃ怪しまれてる!?

 

「マリハは普通の女の子だよ。ずっと俺たちと一緒にいたんだから間違いないって!」

「そうそう! ルーさんのことは、ミリタリー雑誌で読んだんだよ!」

「ふぅん……まぁいいけど」

 

 と、とりあえずルーさんは納得してくれたようだ。

 勘弁してくれよ……。オレはプルと似てるとはいえ、普通のジャンク屋の女の子なんだからさ。

 

 ……ところで、プルって誰?

 

 何はともあれ、コア・ファイターをルーさんに返し、オレはジュドーと、ここに来るのに乗ったメタスと同乗し、アーガマに引き返すのだった。

 

* * * * *

 

55:名無しのオールドタイプ

おー、なんとか追いついたやな。

 

56:名無しのオールドタイプ

アーガマがゲゼにぼこぼこに殴られてて草。

 

57:ジャンク屋ネキ

ここから反撃やな! ジュドーを降ろしてから、オレも迎撃に参加するわ。

 

58:名無しのオールドタイプ

おぉ、頑張るんやで。

 

59:名無しのオールドタイプ

お、Zガンダムinジュドーの登場やな。

 

60:名無しのオールドタイプ

これで勝つる!

 

61:名無しのオールドタイプ

あー、やっぱりZとゲゼとではくらべものにならんな。ゲモンのゲゼ、あっという間にスクラップにされたやん。

 

62:名無しのオールドタイプ

それでも生きてるあたりが、さすがゲモンやな。

 

63:ジャンク屋ネキ

さすが、ジュドー。なかなかやるな! オレも負けてられへんで!

 

64:名無しのオールドタイプ

頑張れや、ジャンク屋ネキ!

 

65:名無しのオールドタイプ

しかしさすが、腐ってもヤザンだな。あんなゲテモノMSで、ネキのメタスと対等にやりあってるで。

 

66:名無しのオールドタイプ

まぁ、ヤザンだしね。でも、ジュドーが加勢すれば……。って、あれはなんや?

 

67:名無しのオールドタイプ

え、まさか、こんな時にくるのかよ?

 

68:名無しのオールドタイプ

ガザの嵐隊だとぉぉぉぉぉ!?

 

69:名無しのオールドタイプ

『ガザの嵐』がスキップしたのかと思ったら、実は『ガザの嵐』と『鎮魂の鐘は二度鳴る』の悪魔合体ってオチかよ!?

 

* * * * *

 

「いいか、ビアン、ワイム! ハマーン様の名誉を汚すような、卑怯な戦い方はするな!」

「はっ!」

「了解です!」

「よし、行くぞ! 我らガザの嵐隊の力、エゥーゴの奴らに見せつけてやるのだ!」

 

 そして三機のガザD隊……ガザの嵐は、メタスに加勢しようとしていたZガンダムに襲い掛かった!

 

『くそ、新手かよ! 悪い、マリハ。ゲゼは任せた!』

『あぁ! なんとか持ちこたえるよ!』

 

 そしてZガンダムはガザの嵐隊に向かっていく。

 一方、そうなるとおさまりがつかなくなるのはヤザンのほうである。

 

『Zめ、逃がすか! ティターンズの俺が惨めな生活をしなきゃならなかったのも、ジャンク屋如きに身分を隠してヘーコラしなきゃならなかったのも、どれもこれも、皆お前のせいだ! この恨みを晴らさなきゃおさまらん!』

『あんたの相手はオレだっての!』

『邪魔するな! 大体こんなコロニーに来なきゃならなかったのも! 前の戦いであいつにやられたせいじゃないか!!』

『その時Zに乗っていたのは、ジュドーじゃないでしょー!?』

『えーい、邪魔するなら、お前から先に倒してやる!』

 

* * * * *

 

『よし、やるぞ! ガザ・フォーメーション!!』

 

 三機のガザDは、Zの頭上を飛び回り煙幕を展開する。

 

「うわ、なんだ!? 全然奴らが見えないじゃないか!」

 

 煙幕で敵を見失い、うろたえるZガンダム。だが、敵を見失ったのはジュドーだけではなかった。

 

『どういうことだ!? 計算では、煙は我々の機体だけを隠す筈だぞ!?』

 

 そう、煙の流れが早く、ガザの嵐隊だけではなく、Zガンダムの姿まで隠していたのだ!

 

『思ったより煙の拡散が速い様です……』

『条件が同じなら、数の分だけこっちが有利だ!! 見当つけてやれ!』

 

 三機のガザDはあてずっぽうでビームを発射する。

 そのビームをかわしながら、ジュドーが言う。

 

「めちゃくちゃじゃないか。このままじゃシャングリラが壊れちゃうぞ!」

 

* * * * *

 

76:名無しのオールドタイプ

そしてこちらは、ヤザン対ネキですが……。

 

77:名無しのオールドタイプ

なんでヤザンのほうが先に来とるねんww

 

78:名無しのオールドタイプ

さすがヤザン。ネキのメタス相手に有利に戦ってるやん。メタス、左腕壊されてるし。

 

79:名無しのオールドタイプ

パイロットの腕もあるし、ゲゼとメタスとではパワーが違うからなぁ。

 

80:名無しのオールドタイプ

ネキ、取っ組み合いや殴り合いでは不利や! なんとか距離を取って戦うんやで!

 

81:ジャンク屋ネキ

そ、そんなことは言ってもな。こっちにはビームガンとビームサーベルしか武器がないんやぞ!

 

82:名無しのオールドタイプ

そういえばそうだった!

 

83:名無しのオールドタイプ

だけど、取っ組み合いとかでは不利だしなぁ……。

 

84:ジャンク屋ネキ

うーん、どうすれば……そうや!

 

85:名無しのオールドタイプ

お、けり入れてから、うまくアーガマの前面におびき寄せたな。

 

86:名無しのオールドタイプ

おー、おー、ヤザンのゲゼ、副砲のつるべ撃ち喰らって腕もぎとられたやん。

 

87:名無しのオールドタイプ

ムーバブルフレーム使っているとはいえ、装甲は鉄板同然やからなぁ。一部にガンダリウムを使ってるそうだけど。

 

88:名無しのオールドタイプ

やりあうなら、ガンダニュウム合金を使うべきだったな。

 

89:名無しのオールドタイプ

でもさすがヤザンだけあって、結構かわしとるやん。あ、でもまた腕吹き飛ばされた。

 

90:ジャンク屋ネキ

これでとどめや!

 

* * * * *

 

「これでとどめだ!」

 

 オレはビームサーベルを抜き、そしてヤザンに飛び掛かった。そのボディにビームサーベルを突き刺す!

 そこの装甲は厚くなかったようで、ビームの刃はすんなりとそのボディに突き刺さる。

 

 そしてオレがゲゼから離れ、ヤザンからコクピットから飛び降りた直後、ゲゼは機能停止した。やれやれ、どうにかなったか……。

 

 ヤザンは

 

「俺があんな小娘にやられるだと……? ちきしょう!」

 

 と捨て台詞を吐いて逃げていった。悪かったな、小娘で。

 

 さて、ジュドーのほうはどうかな?

 

* * * * *

 

「くそっ、こいつら……!」

 

 三機のガザDに苦戦するジュドーに、通信が届く。

 

『ジュドー、聞こえる? 一機は私とマリハちゃんがやる。後の二機は任せるわ!』

「大丈夫なのか?」

 

 聞き返すジュドーに、ルーが笑顔で答える。

 

『大丈夫。任せなさい!』

『その代わり、もう二機はちゃんとやってくれよ!』

『わかった、それじゃ任せる!』

 

* * * * *

 

97:ジャンク屋ネキ

『それじゃ行くわよ、マリハちゃん!』

「OK!」

 

98:名無しのオールドタイプ

おー、さすがルーさんやな。コアファイターで、ガザDを逆に翻弄してるで。

 

99:名無しのオールドタイプ

そしてガザDが誘導されているところでは……。

 

100:ジャンク屋ネキ

オレが待ってるってわけだ!

「喰らえ!」

 

101:名無しのオールドタイプ

おー、隠れていたメタスのビームガンが見事命中したな!

 

102:名無しのオールドタイプ

パイロットは脱出したみたいだけど、まずは一機やな!

 

* * * * *

 

「マシュマー様、ガザの嵐隊の反応、消えました。ガザD全機、撃墜された模様です」

 

 エンドラのブリッジオペレーターの報告を聞いたマシュマーは、怒りに燃える表情を浮かべた。

 

「おのれ、ガザの嵐隊まで破るとは……! よし、ただちに出港するぞ! コロニーの外で、アーガマを待ち構える!」

「でもマシュマー様、アーガマがどちらから出るのか、わかっておられるので?」

 

 そう聞いてくるゴットンに、マシュマーはこっくりとうなずくと答えた。

 

「こことは反対側、工業搬出口のハッチからだ! アーガマは我々がこの港にいるのを知っている。今の戦力で我々のほうを突破するのは無謀と考えるだろう。となれば、それとは違う出口から出ると考えて間違いはない」

 

 そのマシュマーの読みに、ゴットンは感心した。

 マシュマーは騎士道精神とハマーンへの妄信という問題はあるものの、エンドラの指揮官に据えられるだけあって、それなりの戦略的才能はあるのだ。

 

「なるほど。それでマシュマー様、出港の手続きは?」

「いらん! 待ち構えるほうが先決だ!」

「はぁ……」

 

 そう受け答えながらも、裏で手続きはやっておこうと考えるゴットンであった。

 

* * * * *

 

105:ジャンク屋ネキ

ふぅ、ただいまやで。

 

106:名無しのオールドタイプ

お疲れ様やネキ。

 

107:名無しのオールドタイプ

疲れてないか? 過労死しないように気を付けるんやで。

 

108:名無しのオールドタイプ

俺たちは、ネキが過労死するなんてBAD ENDはごめんやからな。

ちゃんと休息とるんやで。

 

109:ジャンク屋ネキ

おう、ありがとな。大丈夫や。

あれから、ちゃんと休息はとるようにしてるし、ジュドーも入ってくれたからな。

訓練も通常の量に抑えてるで。

 

110:名無しのオールドタイプ

それはよかった。

 

111:ジャンク屋ネキ

おぉ、いよいよ宇宙やな。

 

112:名無しのオールドタイプ

ネキ、宇宙ははじめてではないんやっけ?

 

113:ジャンク屋ネキ

あぁ。親父と流れてる途中に出たことはあるからな。

でも不思議やな。あのころとはまた違った感じというか、そういうのがある気がするわ。

 

114:名無しのオールドタイプ

まぁ、今回は逃亡とかそういうのではなく、旅立ちって感じだからなぁ……。

わかる気がするわ。

 

115:名無しのオールドタイプ

よっしゃ、ネキの旅立ちに乾杯や!

 

116:名無しのオールドタイプ

めでたい! 祭りや祭りや!

 

117:ジャンク屋ネキ

……それって、お礼を言うべきなのか違うのかどうなんや?

 

118:名無しのオールドタイプ

細かいことはなしや!……ひっく。

 

119:ジャンク屋ネキ

しかももう酔ってるし。

 

120:名無しのオールドタイプ

まぁ、これからも俺たちがサポートしたり支えたりするから、無理せず頑張るんやで。

 

121:ジャンク屋ネキ

おう、ありがとな。

ファさんはシャングリラに残ったけど、カミーユさんと幸せになれたらいいな。

 

122:名無しのオールドタイプ

きっと大丈夫やと思うで、あの二人なら。

 

123:名無しのオールドタイプ

原作では、この戦いの後に無事にカミーユが回復したしな。

 

124:ジャンク屋ネキ

そうか……。

「さよならな、ファさん……」

 

* * * * *

 

 そのころ、アーガマが出て行った搬入口のハッチを病院から見つめる、カミーユとファの姿がそこにあった……。

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

仕事だからとはいえ、ゴットンが頑張ってコアファイターを盗み出した。問題は、それにオレとシンタとクムが乗せられてるってことなんだ。

やばい状況だったけど、でもそのおかげで、オレはエマリーさんって人から、新型のパーツである戦闘機を託してもらうことができた。

そしてついに、あのMSが登場するんだって!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第7話『それはダブルゼータと呼ばれる』

ついにあれが登場!……って、もったいぶってるのにサブタイトルで言われてるし!

※次回は、2/19 12:00の予定です。お楽しみに!


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Act.07『それはダブルゼータと呼ばれる』

前回の元ネタは、1stガンダム第4話『ルナツー脱出作戦』でした!
正解した人はいるかな?
さて、今回の元ネタはなんでしょう? これもすぐにわかりそうですが……

さて、今回はいよいよZZ初登場ですよ!
それとこの話では、少し原作と設定を変更しています。グレミーの身分とか。
(生)暖かく了承してくれると嬉しいです。

あと、ZZですが、さすがにあの狭いコクピットに四人も乗れるのはおかしいのと、あのコクピットでは全天周モニターは無理だろってことで、コアトップ側にMS用のコクピットがあり、合体後はそちらにシートが移動するって設定にしています(バルキリー方式


 シャングリラの外の宙域。そこに停泊しているエンドラのブリッジで、マシュマー・セロは雪辱に燃えていた。

 

「アーガマめ、見ていろ。今度こそお前たちの最期だ!」

 

 と、そこに。

 

「マシュマー様、エンドラ級が一隻、接近してきます」

「何? どこの所属かわかるか?」

 

 いぶかし気に聞くマシュマーに、報告したオペレーターが艦籍照会を行う。結果はすぐに出た。

 

「出ました。サイド2・7バンチに派遣されていたミンドラです」

「ほう……。トト家の御曹司が指揮するという……」

「あ、ミンドラから通信です」

「わかった、つなげ」

「はい」

 

 そしてスクリーンに現れたのは、マシュマーより年下そうな少年と、30代の男性の姿だった。

 少年は敬礼すると、口を開く。

 

「ミンドラ艦長、グレミー・トト少佐であります。セロ家のマシュマー様とこうしてまみえることができて光栄です」

「ミンドラ副長のオウギュスト・ギダン大尉であります」

「エンドラ艦長のマシュマー・セロ少佐である。トト家の御曹司が指揮しているとは聞いたが、こんな若いとは意外であった。それだけの才能に感嘆するぞ」

「トト家の七光りというだけです。そんなお褒めいただけるほどではありません」

 

 とはいえ、その表情はどこか嬉しそうだった。だがすぐに真顔に戻る。

 

「わがミンドラは、サイド2・7バンチの制圧の任務を完了後、ハマーン様よりエンドラの支援を命じられて派遣されてまいりました。これから、そちらの指揮下に入ります」

「そうか。グレミー殿の助力があれば、アーガマ討伐も不可能でないだろう。グレミー殿とミンドラの力、当てにさせていただく」

「了解しました。微力ではありますが、アーガマ追討に全力を尽くしましょう。あとそれと、エンドラに派遣する人員がおります」

「人員?」

「はい。監査役の……」

 

 グレミーがそう言おうとしたところに、横から割り込んできたのは……。

 

「私だよ! あんたがエンドラのマシュマー・セロだね。少しの間だけどよろしく頼むよー!」

 

 ケバケバした、昔流行ったパンクロックのような女性だった。

 

「な、なんだ、このケバケバした女は!?」

「私はキャラ・スーン。グレミーが言ったように、あんたの監査をして、ハマーン様にお伝えする役さ」

「な、なんだと!? それは困る」

「今の言葉、もう一度」

「えーい、今のはなしだ! アーガマごとき、我がエンドラと、グレミー殿のミンドラの力があれば敵ではない! そう、ハマーン様にお伝えしていただこう!」

「あ、レコーダーのスイッチ切れてた」

「嫌な女だな、お前は……!」

 

 そのマシュマーのやりとりを聞いて、苦笑を浮かべているグレミーとオーギュスト。一方、エンドラのクルーは、ゴットン含め爆笑していたのであったが。

 

 そこでキャラはこほんと咳払いをして真顔になった。

 

「それでマシュマー君。真面目な話をすると、現状はどうなんだい?」

「あぁ、それは……かくかくしかじか」

「なるほど、というと現状の査定は……」

 

 と、タブレットにマシュマーから聞いた内容を入力していくキャラ。

 

 カチャ、カチャ、カチャ、チーン!という音が聞こえたのは気のせいだろうか。

 

「うーん、めっちゃやばいねー。あんた、左遷寸前だよ」

「な、なんだと!?」

「何しろ、コロニー内でやらかして、住民の反感をかいまくってるのが響いてる。具体的に言うと、今回含めて後二回の作戦で成果をあげないと、左遷決定だ」

「がーん!!」

 

 一瞬、マシュマーの腰が砕けそうになるが、彼はなんとか騎士の誇りでそれを持ち直した。

 

「ならば、若干騎士の道から外れる手ではあるが、あの作戦をやるしかあるまい! ハマーン様も仰っておられた。『綺麗事だけでは済まないこともある』と!」

 

 ハマーンの名を聞いて、グレミーの表情が少し険しくなったが、それは脳内のハマーンに陶酔しているマシュマーの目に入らなかった。

 

「というわけだ、頼むぞ、ゴットン!」

「は?」

 

* * * * *

 

1:ジャンク屋ネキ

なぁ、みんな。なんでオレはこんなことになっているんだ?(死んだ魚の目)

 

2:名無しのオールドタイプ

いや、経緯も現状もわからない俺らに聞かれても。

 

3:名無しのオールドタイプ

まずはわかっていることを話せ。全てはそれからだ。

 

4:ジャンク屋ネキ

確かにそうだよな……。全ては、ゴットンとかいうネオ・ジオンの士官がアーガマに投降してきたことから始まったんだよ。

 

5:名無しのオールドタイプ

ふんふん。

 

6:名無しのオールドタイプ

ふん?

 

7:ジャンク屋ネキ

とりあえず、怪しいので独房に入れておいたんだが、そいつが言葉巧みにシンタとクムを口説きやがって。

 

8:名無しのオールドタイプ

どこかで聞いたような話だなぁ……。

 

9:名無しのオールドタイプ

ちなみに、何と言って口説いたんだ?

 

10:ジャンク屋ネキ

あぁ。ファさんがシャングリラに残ったのが寂しいらしくてな。『シャングリラまで戻って、ファを連れ戻そう』とか言ってたのをゴットンが聞きつけて、『なら俺が運転手をやってやるよ』と言って、独房を開けさせたんや。

 

11:名無しのオールドタイプ

ますます、どこかで聞いたような話だ……。

 

12:ジャンク屋ネキ

それで二人と、たまたまゴットンに食事を届けに来ていたオレを人質にして、コアファイターで逃走。←今ここ

 

13:名無しのオールドタイプ

なるほどな。だいたいわかったわ、このあとどうなるかの予想もな。

 

14:名無しのオールドタイプ

ちなみに今回、ビーチャとモンドは裏切ってないわけだが、ハッチはどうやって開けたん?

 

15:ジャンク屋ネキ

ん? 普通やで。ゴットンが『二人の命が惜しくばハッチを開けろ!』で。その時にブリッジでひと悶着あったらしいけどな。

 

16:名無しのオールドタイプ

なるほどな。わかったわ。普通の言葉の意味は置いとくとして。

 

17:名無しのオールドタイプ

これはどう考えても、あの話だよなぁ……。

 

18:名無しのオールドタイプ

あの話だな。

 

19:ジャンク屋ネキ

何の話だよ? もったいぶらずに教えてクレメンス。

 

20:名無しのオールドタイプ

一つだけ言えることは……ネキ、しっかりシンタとクムを抱きしめてるんやで。離れ離れになって宇宙の漂流者にならんようにな。

 

21:ジャンク屋ネキ

え……? うわぁ!

 

* * * * *

 

 えーと、ここまでに起こった出来事を説明します。

 

 ゴットンが無理やりオレとシンタとクムにノーマルスーツを着せやがりました。

 

 その時のよそ見が原因で、コアファイターが小惑星に接触しました。

 

 オレとシンタとクムは宇宙に放り出されました。ゴットンも放り出されたようですが、ガザCに救出されていきました。

 

 あ、シンタとクムはちゃんと両手で抱きかかえているから大丈夫。本当に『しっかり二人を抱きしめているように』と忠告してくれたスレ民に感謝だ。

 

 でも、このままでは三人ともに宇宙の漂流者になりかねない。ノーマルスーツの空気だって無限じゃないし。

 

 本当にどうしよう……?

 

 あれ、あそこからくるランチはなんだ?

 

* * * * *

 

「ゴットンの情報通りだとすれば、敵はZと戦闘機の2機だけだ!」

 

 新型MS、ハンマ・ハンマに乗ったマシュマーは、エンドラに帰還したゴットンの情報を思い返し、勝利を確信した笑みを浮かべた。

 

 敵は二機。しかもMSはZガンダムのみである。対してこちらは、マシュマーのハンマ・ハンマ、グレミーのバウ。そして……。

 

「それにしてもあの女、戦いを見届けると言ったくせに何をしてるんだ?」

 

 ハンマ・ハンマが振り向くと、そこには赤いMS……キャラ・スーンのRジャジャが落ち着きのない仕事をしていた。

 

「あー、熱い。私はMSに乗ると興奮しちゃうんだよ~!!」

「だったら、出てこなけりゃよかっただろうが!」

「でも、マシュマー君の働きぶりをチェックしておかなきゃいけないし、MSには乗りたいんだよ。あ~、どうすりゃいいのさ~!!」

「知らん! くれぐれもこちらの邪魔はするんじゃないぞ!」

 

 その三機に向かって、Zガンダムと、ルーがアーガマに持ってきていたもう一機の戦闘機、コア・ベースが向かってくる。

 

「マリハと、シンタとクムの仇だ、覚悟しろ!!」

 

 そう言って攻撃をかけるが、マリハをやられた(と思い込んでる)怒りで、平静をかいていて、動きも攻撃も大振りであった。

 

「Zガンダムは私がやる。グレミー殿は、戦闘機をやってくれ」

「了解しました。マシュマー様、ご武運を」

 

 通信を終えると、マシュマーは左手のシールドを構え、向かってくるZガンダムにロックオンした。

 

「いける……いけるぞ、このハンマ・ハンマなら!」

 

* * * * *

 

 一方、グレミーのバウと、ルーのコアベースの戦い。

 

 バウはビームライフルを連射するが、さすが正規のパイロットというべきか。ルーはそれを巧みにかわしていく。

 

「これでは、らちがあかない……! それなら!」

 

 バウはビームライフルをしまうと、ビームサーベルを構え、コアベースに向かっていく。

 そして、コアベースに追いつき、ビームサーベルを振り下ろそうとしたその時!

 

 グレミーは見てしまった。

 

 コアベースのコクピットに座り、こちらに驚きのような怯えのような表情を浮かべている、自分と同い年ぐらいの少女の姿を。

 

 その姿に、グレミーの胸はときめき、頬が染まり、思考が一瞬フリーズした。

 

 正直に言おう。

 

 これは初恋である。一目ぼれである。

 

 グレミーはいい家系の御曹司であるがウブである。

 巡洋艦の艦長を勤めるほどの男だがウブである。

 

 グレミーに色恋のことはわからぬ。

 

 ただ、女性は大切にしなければならぬという教えと、心の中に湧き上がる未知の感情には人一倍敏感であった。

 

 な、なにを言ってるかわからないが(ry

 

 だが、その初恋、ひとめぼれが結局、ルーの命を救った。かわいいことは得である。

 グレミーが我に返った時には、ルーのコアベースはもう、バウの目の前を通り過ぎていた。

 

 そして反転して、バウが振り向く前にビームを発射!

 バウは右腕を破壊された。

 

* * * * *

 

「命があるってすばらしい……助けてくれてありがとうございます」

「いいのよ。こちらも助けられてよかったわ。本当に宇宙で見つけてもらえるなんて、大した運ね?」

「ははは……オレもそう思います」

 

 オレとオレたちを助けてくれた女性の軍人さん……スレ民のみんなの話によると、この艦の艦長代理、エマリー・オンスさんというらしい……と、ドック艦、ラビアンローズの廊下を歩いていた。

 

 ちなみにシンタとクムは、別室で預かってもらっている。この後、臨時便でシャングリラに返す予定だとか。

 

「あの……エマリーさん。お話はいいんですが、襲われてるアーガマが気になるので、そろそろ戻りたいんですが……」

「わかってるわよ。あなたには、これをアーガマにデリバリーしてもらおうと思って……」

「これは……」

 

 そこにあったのは、一機の大型戦闘機。機首の二連ビーム砲が特徴の大型機だった。

 ちなみにこれが何か、オレはラビアンローズに到着した時、スレ民のみんなから教えてもらっている。

 

 なので思わず、「これは……コア・トップ!?」と言いそうになるのをなんとかこらえた。ルーさんだけでなく、エマリーさんにまで怪しまれたら、命がいくらあっても足りない気がする。

 

 だから。

 

「これは……ルーさんが持ってきてくれたコア・ベースですか?」

「ううん。これは、このラビアンローズで開発された新型MSの最後のパーツ、『コア・トップ』よ」

 

「新型MS?」

「そう。ルー・ルカから聞いていないの? ZZガンダムのこと」

「ZZガンダム……」

 

* * * * *

 

 一方。

 

「このぉ!!」

 

 ジュドーのZガンダムがハンマ・ハンマに切りかかるが、ハンマ・ハンマはそれを軽々とかわす。

 

『ジュドー! あなたまで死ぬ事無いでしょ!?』

「誰が死ぬって言いました!?」

 

 とはいえ、仲間であるマリハの死(実際は生きているが)に血が上ってしまってるジュドーは、いつもの戦い方はどこへやら、ただ我武者羅に暴れまわるだけであった。

 

 そこまで頭に血が上ってるジュドーだからこそ、後ろから新手が来ていることに気づけなかったのだ。

 

 突然何者かが、Zガンダムの後ろから組み付いた。

 

「うわ、な、なんだ!?」

『お前なんか居るから、モビルスーツなんかあるから……嫌いだあぁ!!』

 

 それは、興奮しまくっているキャラのRジャジャであった。

 がっつりと組み付き、離れそうにない。いや、それどころかまるで関節技のように各部をしめつけ、Zガンダムは各部からスパークが発し始めている。

 

『良いぞキャラそのまま押さえていろ! Z、今楽にしてやる!!』

 

 そこに、マシュマーのハンマ・ハンマがシールドのビーム砲を発射! 組み付かれたZはかわすこともできず、頭部を吹き飛ばされた!!

 

「うわああああ!!」

 

 さらにそのダメージで、機体の各部が激しいスパークを発し、Zは動けなくなった。

 さらにRジャジャがZを蹴り飛ばし、Zはどこかの方向へと流れていった……。

 

「やった……やったぞ、Zガンダムを倒した! ハマーン様、マシュマーはついにやりました!」

 

* * * * *

 

31:ジャンク屋ネキ

アーガマは大丈夫かなぁ……。

 

32:名無しのオールドタイプ

って、ちょっと待て。あれ見てみてや!

 

33:名無しのオールドタイプ

頭が吹き飛んでるけど……Zやないか!?

 

34:ジャンク屋ネキ

そんな……ジュドー……!

 

35:名無しのオールドタイプ

ま、まだあきらめるは早いで、ネキ!

本人は脱出してるか、気絶しただけかもしれん!

 

36:名無しのオールドタイプ

ハッチは開いてるな……ということは脱出したんか?

 

37:ジャンク屋ネキ

ジュドー……どこや、どこなんや……?

 

38:名無しのオールドタイプ

あ、あそこ見てや! ネキが放り出されたコアファイターのところ!

 

39:名無しのオールドタイプ

無事やったんやな! よかった!

 

40:ジャンク屋ネキ

うん……本当によかったで……

こ、これは違うで! 仲間が無事だったことのうれし涙やで!

 

41:名無しのオールドタイプ

誰も何も言ってませんが。

 

42:名無しのオールドタイプ

それはともかく、ZZに合体して逆襲やで!

 

43:名無しのオールドタイプ

ZZの初お披露目や!

 

44:名無しのオールドタイプ

ネキの怒り、一杯たたきつけるんやで!!

 

45:ジャンク屋ネキ

おう!……って、ZZを操縦するのはジュドーなんやから、オレの怒りうんぬんは関係ないんじゃ……?

 

* * * * *

 

 コアファイターが小惑星帯から飛び出したところで、マシュマーのハンマ・ハンマが襲ってきた!

 

「ふふふ、あんな玩具で逃げるのか?」

 

 シールドのビーム砲を放つものの、コアファイターはそれをぎりぎり回避し、逃げ回る。

 

「あれを倒せば、後はアーガマのみ! 一気に行くぞ! ……なに!?」

 

 別の方向から接近してくる二機の戦闘機。いわずもがな、ルーのコア・ベースと、マリハのコア・トップである。

 それに、もちろんジュドーも気が付いていた。

 

「ええい、あっちからも敵か? いや……コア・ベースと新型だ!!」

 

 二機は、ビーム砲でハンマ・ハンマをけん制すると、まるでコアファイターを守るかのように宇宙を舞う。そう、それはまるで某勇○王のジェ○シック・マシンが、ジェネシック・ガ○ガーの周囲を飛び回るかのように。

 

『ジュドー、無事か!?』

「マリハ、マリハなのか!?」

『あぁ。ちゃんと足はついてるぜ! ラビアンローズの人に助けてもらったんだ!』

「そうか、よかった……! ルー、早くコアベースに乗せてくれ!」

 

 だが、ルーからの返事は意外なものだった。

 

『ううん。ジュドー、よく聞いて。そのコアファイター、それが新型のコアパーツなの!』

「これが!?」

『話はあと。ついてきて!』

「わ、わかった!」

『行くわよ、マリハ! ちゃんとエマリーさんから合体については聞いているわよね!?』

『あぁ、もちろんさ!』

『行くわよ、フォーメーション!』

 

 そして三機は編隊を組んで急上昇していった。

 

* * * * *

 

52:名無しのオールドタイプ

おぉ、いよいよZZへの初合体か!

 

53:名無しのオールドタイプ

ワイの頭には今、『始動、ダブルゼータ』が流れとるで!

 

54:名無しのオールドタイプ

わいもや。

ネキ、しっかりやるんやで!

 

55:ジャンク屋ネキ

わ、わかってるわい! 今まで鍛えてきたジャンク屋根性、見せたるで!!

 

56:名無しのオールドタイプ

おぉ、コアファイターが変形を開始したな!

 

57:名無しのオールドタイプ

コア・ベースからもコアファイターが分離したな。さぁ、ネキもやで!

 

58:ジャンク屋ネキ

やってやるで! Eと書かれたレバーを……うおっ!!

 

59:名無しのオールドタイプ

おぉ、無事にネキも分離成功やな。よかったよかった。

 

60:名無しのオールドタイプ

まずは、コアブロックとコア・ベースが合体して……

 

61:名無しのオールドタイプ

さらにコア・トップが上に合体……。

 

62:名無しのオールドタイプ

あ、ハンマ・ハンマが襲い掛かってきたで!

 

63:名無しのオールドタイプ

さすがはルーさん。うまくけん制してフォローしたな。

 

64:名無しのオールドタイプ

そして変形して……。

 

65:名無しのオールドタイプ

よっしゃー! ZZガンダムの完成やー!!

 

66:ジャンク屋ネキ

これが……ZZガンダム……。

 

* * * * *

 

「これが、ZZガンダム……敵は!?」

『ふふふふ……変形だ、ドッキングだと一気にやろうが、そんなもので私が、たじろぐと思うのかぁ!!』

 

 ZZガンダムを完成させたジュドーに、マシュマーのハンマ・ハンマが襲い掛かる!

 ハンマ・ハンマはビームサーベルで切りかかるが―――!

 

「こ、これがZZの機動性……! これなら!」

『は、速い!?』

 

 その斬撃を、ZZはたやすくかわす。その機動性は、マシュマーが驚くほどのものであった。

 かわしたZZは肩からロング・ビームサーベルを抜き……。

 

「斬るぞぉ、マシュマーさんっ!!」

『う、うおぉ!?』

 

 ロング・ビームサーベルから長大な、剣というより野太刀のような光の刃が発生する。そして振り下ろす!!

 

 マシュマーはなんとかハンマ・ハンマを回避することができたが、二機の間に流れてきていた小惑星があっという間に真っ二つになった。

 

『な、なんというパワーだ!?』

 

 そう言って、ハンマ・ハンマはシールドのビームを発射するが、それはあっさりと弾かれてしまう。ZZの装甲に施されているビームコーティングが、生半可なビームをはじいているのだ。

 

 そして、腕のダブルビームライフルを構える!

 

「こ、こいつはすごいエネルギーだ……! いっけええええええ!!」

 

 そして発射!! 後世のビームマグナムかとも思えるビームが放たれた! ハンマ・ハンマは盾を構えて、ビームを防ごうとする。

 

『このハンマ・ハンマの盾に防げないものは……何ぃぃぃ!?』

 

 ダブルビームライフルのビームは、シールドをも破壊したのである。ハンマ・ハンマはシールドを捨てて回避しようとしたものの、かわしきれず、シールドを持っていた右腕ごと吹き飛ばされてしまう。

 

『なんというパワーだ! おのれ、あと一歩というところで……!』

 

 ハンマ・ハンマを中破させられてしまったマシュマーは、くやしさを表情に浮かべながら、撤退していった。

 それを見送るジュドーは、ZZのパワーにご機嫌な様子だ。

 

「ひゃー凄い……感動の嵐!ZZってなんてパワーなんでしょ!」

 

* * * * *

 

73:名無しのオールドタイプ

なんとか終わったやな。

 

74:名無しのオールドタイプ

一時はどうなるかと思ったがな。

 

75:ジャンク屋ネキ

本当にな……。なんとかなってよかったで……。

 

76:名無しのオールドタイプ

お疲れ様や、ジャンク屋ネキ。

 

77:名無しのオールドタイプ

でも、ZZも登場したし、この先は明るいな!

 

78:名無しのオールドタイプ

だといいけどな……。

 

79:ジャンク屋ネキ

どうしたんや?

 

80:名無しのオールドタイプ

ZZが登場したんだろ? ならその次は……。

 

* * * * *

 

 オレのコアファイターの上空で雄々しい姿を見せているZZガンダム。

 その姿は力強く、希望を感じるはずなのだが、なぜだろうか?

 オレはスレ民の一人がこぼした言葉に、漠然とした不安を感じたのだった……。

 




ただいま、ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

もうすぐラビアン・ローズと合流できるところまで来ても、エンドラのマシュマーさんは楽をさせてくれない。
自分の進退を賭け、ミンドラと一緒に、アーガマを挟み撃ちだ。
ジュドーは赤いMSに組みつかれて、変な感覚に囚われて一時フリーズするし、オレとリィナは……あーれーヘールプ!!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第8話『オレたちの行方』

ここから一時オリジナル展開に行くそうですよ?

※次の更新は、2/22 12:00の予定です!


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Act.08『オレたちの行方』

はい。前回のサブタイの元ネタは、ガンダムUC RE:0096の第3話『それはガンダムと呼ばれた』からでした!
当たった人はいますでしょうか? さて今回の元ネタは何か?

さて、次回から話が原作とはちと変わってきますよ!


「もう少しでラビアンローズという時に……トーレス、状況は変わらないか?」

「はい。周囲に展開している敵の二隻とも、隙あらば仕掛けようという構えです」

「二隻相手に、こちらの戦力がZZ1機のみというのはな……。せめて、Zが動けば……」

 

 アーガマのブリッジで、ブライトさんが頭を悩ませている。

 その理由は、今のアーガマの戦力状況である。

 

 Zガンダムは、頭部を破壊されて当分は出撃できない。残ったメタスは、ここまで酷使したのが響いてガタがきはじめている。実質、戦えるのはジュドーのZZガンダムしかないのだ。

 アーガマの前方に展開しているアクシズの巡洋艦は、まだ戦う意思を失ってはいないようで、もう一戦しなければ、ラビアンローズにはたどり着けそうになさそう。

 とはいえ、二隻のMS隊相手にZZ1機では、例えジュドーとZZの組み合わせではきついと言わざるを得ない。

 

 うーん……。Zが動けば……応急処置ができれば……ん?

 

「あの……ブライトさん?」

「なんだ、マリハ?」

「Zを動かせるようにするだけだったら、オレたちジャンク屋ならではの方法でなんとかなるかもしれません」

「ほんとか!?」

 

* * * * *

 

 一方、エンドラとミンドラの連合艦隊。

 

「マシュマー様。本当に出撃されるのですか? ハンマ・ハンマは中破しているのですが」

「無論だ。グレミー殿も、損傷したバウの代わりに、ガザDで出撃するのだろう? 何より、この一戦は、私の進退がかかっている戦い。その私が出撃せずになんとする」

 

 エンドラの格納庫では、ミンドラから送られてきた部品を使って、マシュマーのハンマ・ハンマの修理が行われていた。

 その作業を指揮してる技師長に聞く。

 

「どうだ?」

「右腕のスペアはありますが、接続部分がいかれてて、直すにはかなり時間がかかりますね。他のMSの腕でしたらなんとかなりますが……」

「仕方あるまい。時間はかけられん。右腕は他のMSのものを使って、ハンマ・ハンマの右腕は肩か脇腹にでも取り付けてくれればいい。有線クローアームが使えれば十分だ」

「はぁ……」

 

* * * * *

 

7:ジャンク屋ネキ

うーん、このGMヘッド……ダメだ、カメラが潰されてるわ。

 

8:名無しのオールドタイプ

考えたな、ネキ。宇宙に漂ってる残骸から使えそうなジャンク品見つけ出して、Zを修理しようとは。

 

9:名無しのオールドタイプ

確か原作では、金稼ぎのためだけにやってたんだもんな。

 

10:ジャンク屋ネキ

まぁ、不格好でも動けばそれでいいし、金稼ぎのためだけでなく、アーガマのためにもなればそれが一番じゃん?

 

11:名無しのオールドタイプ

そうだよな。情けは人のためならずや。

 

12:ジャンク屋ネキ

しかし……本当か? 次の戦いで、リィナがアクシズに連れ去られるって。

 

13:名無しのオールドタイプ

あぁ、原作では間違いない。まぁ、この世界がすでに原作とは違うものになってるかもしれんがな。

 

14:名無しのオールドタイプ

ネキがいる時点で、既に原作とは違っている点。

 

15:名無しのオールドタイプ

まぁ、気を付けるに越したことはないやろ。

 

16:ジャンク屋ネキ

そうやな……。

 

17:名無しのオールドタイプ

それにしても……ええんか? ジャンクあさりのアシ代わりにコア・ベースを使って。

 

18:名無しのオールドタイプ

しかも、座席の後ろに、当のリィナが乗ってるしな。

 

19:ジャンク屋ネキ

リィナが、『お兄ちゃんたちの見張りをしなきゃ』と言い張って、仕方なく連れてきてるんや。あ、一応ブライトさんから許可はもらってるで。彼女も、飛ばす程度ならコア・ファイターの操縦できるしな。ちなみにオレが教えた。

 

20:名無しのオールドタイプ

そうなんや……。でも、くれぐれも気を付けるんやで。

 

21:ジャンク屋ネキ

あぁ。はぐれないように、アーガマに着くまで傍にいるわ。

ん? 敵襲の報告?

 

* * * * *

 

 アーガマに向かう、グレミーのガザDをはじめとしたミンドラのMS隊。

 今頃、アーガマをはさんで反対側にいるエンドラからも、マシュマー率いるエンドラ隊も出撃しているはずだ。

 

 さて、そのガザDのグレミーの胸は、ミンドラの艦長でいる彼らしく高鳴っていた。

 

(なんだろう……。またあの女の子に会える予感がする。それを思うと、胸が高鳴って、顔が熱くなって……あぁ、母上様。これが恋というものなのですか?)

 

 野心を胸に秘め、艦長を勤めるのほどの才覚を持つグレミーではあるが、そんな彼もやはり年頃の少年なのである。恋心を抑えることはできなかった。

 

 だがグレミーは、その想いを振り切るように首を振る。

 

(いかんいかん。目の前に戦いが控えているのだ。今はそれに集中しなければ。あの女の子のことはその次だ)

 

* * * * *

 

 一方、アーガマ。

 

「こんなときに……。イーノ、使えそうな部品は手に入ったのか?」

『は、はい……。問題はありますが、なんとか……』

「そうか。それではそれを使ってさっそく応急処置を始めろ。Zの応急処置が終わるまで、コア・トップとコア・ベースで持ちこたえるんだ!」

 

 そして、こちらはそのうちのコア・ベースであります。

 そのコクピットのオレに、ジュドーからの通信が入る。

 

『コア・トップとコア・ベースで持ちこたえろなんて、無茶言ってくれちゃって!』

「まぁ、二方向から攻めてきてるんだし、仕方ないよ。Zの応急処置が済んだら、ZZに合体して逆襲といこうぜ!」

『ほいきた!』

 

 そして二手に分かれて戦闘開始……なのだが、その戦闘はいつもと何か違っていた。

 6時方向からやってきた、ガザDとガザCからなるMS部隊なんだが……そのうちのガザDが、なんかしつこくこちらを追ってくるのだ。

 

 そいつから逃げながら、ビーム砲やミサイルランチャーでガザCを迎撃するのは本当に苦労する。

 

「なんだよこいつは!? オレたちに何か恨みでもあるのか!?」

(あの戦闘機に乗っているのは、もしかしたらあの女の子かもしれない……お許しください母上様。グレミーは、恋心を無視することができないようです)

 

 そしてガザDは、一気にこちらの前方へと躍り出た! 捕まえようとするガザDを、なんとか急旋回して回避する。

 

「本当にしつこい奴だな……大丈夫か、リィナ?」

「う、うん、なんとか……気にしないで」

 

 そう強がるリィナだが、その顔色はあまりよくない。はっきり言って、車酔いしかかっている顔だ。

 コア・ベースから降ろすべきかと思ったが、こんなところに降ろしたら危険だし、リィナがアクシズに連れ去られる可能性を考えるとそれはなしだろう。

 早くZの応急処置が終わることを祈るしかない。Zが出られるようになって、ZZに合体すれば、アーガマに帰還することもできる。

 

* * * * *

 

 そして舞台は再びアーガマに戻る。

 ブリッジに、MSデッキのアストナージからの報告が入る。

 

『ブライト艦長! Zの応急処置が終わりました!』

「よし、よくやった! ルー、出られるか?」

『モチのロンです! さっそく出ます!』

 

 そして出撃するものの、その姿は……。

 頭がザクのZガンダムであった。

 

 出撃したZを見たブライトが思わず噴き出したのは言うまでもない。

 

「何でそれがZなんだ!? ルー、間違って味方に撃たれるのがオチだぞ!?」

『敵艦のMSの中にザクはいません。ジュドーたちに、私が『Zザク』で出撃したと伝えてください!』

 

 そして戦闘に向かっていくルーのZガンダム……もといZザク。

 ブライトとトーレスが、声をそろえて

 

『ジュドー!! ザクの顔のZが出た!! 人相で敵だと思うな!!』

 

 と叫んだのは言うまでもない。

 

* * * * *

 

「うわ、何、このフレーム!? 全天周ってわけにはいかないの? これじゃ、フレーム外から敵が来たら見えないじゃない……」

『敵か!?』

「きゃっ!!」

 

 案の定、ジュドーのコア・トップのビーム砲で撃たれるルーのZザク。なんとかかわすことはできたが。

 

「私よ、ジュドー!」

『ルー!? よりによってなんて頭つけて』

「じゃあ、来ないほうがよかったっての!?」

『そんなことは言ってないだろ!』

 

 軽く口喧嘩を始めるジュドーとルー。そこに。

 

『良く見ればいい加減なモビルスーツ! 一挙に潰す!!』

 

 Zザクのいい加減ぶりに激昂したマシュマーのハンマ・ハンマが襲い掛かってきた!

 

『うおわっ!』

「ジュドー、アクシズのMSは私が押さえるから、早くZZに合体して!」

『わ、わかった! マリハ、いけるな!?』

「お、おう!」

 

* * * * *

 

32:ジャンク屋ネキ

「もう少しだからな、リィナ。もう少し、辛抱してくれよ……!」

 

33:名無しのオールドタイプ

リィナ、もう答える余裕ないみたいやな……。

 

34:名無しのオールドタイプ

そりゃ、あれだけ戦闘機動していればなぁ……。

 

35:名無しのオールドタイプ

原作でダブル・ビームライフルのコクピットに座って振り回されたビーチャとエルのコンビよりはマシとはいえなぁ……。

 

36:ジャンク屋ネキ

合体したら、コア・ファイターは一時どこかに避難したほうがいいかもしれんな……。

このままアーガマに戻ろうとしても、リィナがもたんかもしれん。

 

37:名無しのオールドタイプ

それがいいかもしれんな。

 

38:名無しのオールドタイプ

お、コア・トップから合体開始のコールが出とるで。

 

39:ジャンク屋ネキ

よし、いくで!

 

* * * * *

 

 そしてコア・ベースから分離したオレのコア・ファイターは、リィナを休ませるため、近くの小惑星帯に紛れ込んでいた。

 これでリィナを少し休ませて、落ち着いてからアーガマに帰還しようと思う。

 

 合体に成功したZZは、まさにそれまでのうっ憤を晴らすかのように暴れまわっている。

 

 ガザCの一機を、ハイパー・ビームサーベルで一刀両断!

 もう一機は、ダブル・ビームライフルで撃沈。

 

 とはいえ、マシュマーのハンマ・ハンマには少し苦戦しているようだ。

 ハンマ・ハンマは左腕と、右肩に外付けされた腕から有線クロー・アームを分離して、いわゆるオールレンジ攻撃を仕掛けてきている。多方向からの攻撃には、さすがのジュドーも苦戦気味。

 

 お、そこでルーのZザクが援護射撃してくれた。それで流れがジュドーたちのほうに。

 分離した左腕のワイヤーをハイパー・ビームサーベルで切断されたハンマ・ハンマは、残った右腕のクローアームで引き続きオールレンジ攻撃を仕掛けるものの、ジュドーの勢いは止まらない。

 右腕もビームサーベルで破壊され、たまらずハンマ・ハンマは撤退を開始した。

 

 ふぅ、やっと終わったみたいだな……。

 

 と、そこで。

 

「うぅん……」

「あ、リィナ、大丈夫か?」

「うん……。だいぶよくなったわ……」

「そうか。戦いも終わったみたいだし、これからアーガマに帰るから、少し我慢してくれよ」

「うん……」

 

 そう言って、コアファイターを発進されたオレだが、驚くべき事態に遭遇することになる!

 小惑星帯を出ると、すぐ上にガザDが迫ってきていたのだ!

 

「「!!」」

 

『逃がさないぞ、コアファイター!!』

 

* * * * *

 

 コアファイターにガザDが迫る様子は、ジュドーもとらえていた。

 

「マリハ! リィナ! くそう、連れていかせるか!!」

 

 ジュドーはZZで追いかけようとするものの……。

 

『宇宙が飛んで来る! トリップは楽しいよ!!』

「え……うわぁ!!」

 

 突然、キャラのRジャジャが突っ込んできて、組み付いてきた!

 

「こ、この、離せって……! え……?」

 

 その次の瞬間、ジュドーは硬直した。突然、彼の脳裏に宇宙に浮かんでいるイメージが浮かんだのだ。

 それがキャラとのニュータイプ同士の共鳴だということを、今の彼が知る由もない。

 

 イメージに動揺してフリーズしたままのジュドー。しかし、視界の片隅に、コアファイターから飛び出したマリハとリィナの二人がガザDに捕らえられるのを目にして、彼は正気に戻った。

 

「っ! マリハ! リィナ!!」

『うわぁ!!』

 

 ZZはフルパワーを出して、Rジャジャを振りほどいた。そして。

 

「これで最後だ……。動いてくれええぇぇぇ!!」

 

 ZZガンダムの頭部の砲口にエネルギーが集中する。そして。

 

「ハイメガ……キャノオオオオォォォンンッッ!!」

 

 ZZガンダム最大の武器、ハイメガキャノンが発射された!

 サイコガンダムのIフィールドバリアをも貫通するほどと言われるその高出力ビームは、射線上のデブリを破壊を通り越して消滅させ……。

 

『うわあぁ!!』

 

 回避したはずのRジャジャの下半身を融解させて大破させた。

 

* * * * *

 

42:ジャンク屋ネキ

くっ、なんだよこいつは!? とんでもなくしつこいな!

 

43:名無しのオールドタイプ

このしつこさ……もしかしてグレミーじゃね?

 

44:名無しのオールドタイプ

もしかしなくてもグレミーだな、たぶん。きっと、ネキをルーさんと勘違いしてるんじゃね?

 

45:ジャンク屋ネキ

冗談じゃないって。オレはあんな美人なお姉さんじゃないんやで!

 

46:名無しのオールドタイプ

そんなこと言われてもな。通信も相手には通じないし、色恋にのぼせてるグレミーには通じないと思われ。

 

47:名無しのオールドタイプ

まぁ、原作通りなら捕まっても命をとられることはないだろうが……。

 

48:名無しのオールドタイプ

まぁ、原作通りでなくても戦時条約とかがあるから、待遇については問題ないだろうな。

 

49:名無しのオールドタイプ

とはいえ、アクシズにつかまるのは避けたいところだよな。

 

50:ジャンク屋ネキ

もちろんだよ! なんで、敵であるアクシズに捕まって、その船とか拠点で暮らさなあかんねん!

 

51:名無しのオールドタイプ

ジュドーもなんとかRジャジャを振り切って、追いかけようとしてるな。

ネキ、もう少し粘るんやで!

 

52:ジャンク屋ネキ

わかってるわい! うわっと……もう頭来たで!

バルカンくらいやがれ!!

 

53:名無しのオールドタイプ

おぉ、見事ガザの顔面に直撃! 腕で防御されたみたいだけど。

 

54:名無しのオールドタイプ

あっ、いかん、ジャンク屋ネキよけろ!

 

55:ジャンク屋ネキ

え? うわっ!?

 

INFO:ID:Sd5qD4xr(※マリハのID)がログアウトしました

 

55:名無しのオールドタイプ

ネキーーーーーー!!

 

* * * * *

 

「やっとやっつけたか……。待ってろよ、マリハ、リィナ! 今俺が……!」

 

 キャラのRジャジャを撃退したジュドーが、そう言ってZZで追いかけようとするが、そこで……。

 

「あれ、アッと言う間にパワーダウン……おぉいZZ、どうしたのー!?」

 

 そう、ハイメガキャノンを撃った影響で、ZZのジェネレーターがパワーダウンを起こしてしまったのだ。

 ジュドーは、パワーダウンで機能停止したZZのコクピットから、マリハとリィナを捕獲したガザDが、ミンドラに帰還していくのを見送ることしかできなかった。

 

「そんな……マリハ……リィナアアアァァァ!!」

 

* * * * *

 

 一方のグレミー・トトは困惑と落胆の中にいた。

 

 ガザDに反撃のバルカンを撃ってきたときには、頭に血が上って、ガザDの腕でコアファイターを振り払ってしまい、「しまった」と思ったが、それでも無事だった二人の少女を回収できた。あの女の子、念願のあの子を捕まえることができたのだ、と。

 

 だが、二人をコクピットに回収したグレミーを待っていたのは、衝撃と困惑であった。

 

 あの女の子だと思ったのに、あのコアファイターに乗っていたのは、それぞれ13才ぐらいと11才ぐらいの少女で、彼女ではなかった。しかも、13才の少女は、彼がよく知っており、彼が少なからず関わっていた娘に酷似していたのだ。

 

 それにグレミーは途方に暮れた。思い切って二人を宇宙に放逐してしまおうかと思ったが、さすがにそれは良心の呵責を感じる。グレミーには、二人をミンドラに連れて行くしか選択肢がなかったのである。

 

「困ったな、こんな小さい子……。それに年上のほう……まさか、そんな……」

 

 二人はグレミーの傍らで、彼の苦悩も知らず気を失ったままでいる。

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

ミンドラの捕虜となって意気消沈していたオレだったが、スレ民たちの励ましでなんとか立ち直って一息……とはいかなかった。マシュマーさんは自決未遂しちゃうし、船はアクシズに到着しちゃうしで、もう大変。
そんな中、オレとリィナはこともあろうに、敵のボスであるハマーンに面会することになっちまった!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第9話『ミンドラの再会』

えぇ、オレがもう一人!?

※次の更新は、2/25 12:00の予定です!


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Act.09『ミンドラの再会』

はい。前回、Act.08の元ネタは、ガンダムW第11話『幸福の行方』でした!
正解した人は何人いるでしょうか?
果たして今回は?

それと、ナンバリングの表記を、テテテの #〇〇ではなく、Act.〇〇に変更させていただきました。どうぞよろしくです。


 アクシズに向かっているミンドラ。

 アクシズ上層部が地球侵攻作戦を始めるにあたり、アーガマ追討の任をキャラが新艦長になったエンドラに引き継ぎ、左遷されることになったマシュマーと、先の戦いで保護した捕虜の少女二人を回収し、先遣艦隊の指揮を執るべく、その準備としてアクシズに帰還していたのである。

 

 そのミンドラのブリッジで、副官のオウギュスト・ギダンが上司たるグレミーに苦言を呈した。

 

「グレミー様、なぜあの捕虜の二人にある程度とはいえ行動の自由を与えたのです? それに、あのような教育を施すなど……。それは、年上のほうは『あの娘』に似ているからグレミー様が気にかけているのはわかりますが……」

 

 オウギュストも、『あの娘』には会ったことがある。それゆえに、彼女に最初に会った時は大層驚いた。そんな彼女だからこそ、グレミーが気に掛けるのは気持ち的には納得できる。しかし、年下のほうはそうではない。

 

「ちゃんと考えてのことだ。オウギュスト・ギダン。おそらく我が艦はこれから地球侵攻艦隊の先駆けとして地球に降りることになる。そうなれば、地方の名士や連邦の役人たちと色々と接触しなければならぬこともあろう。パーティとか晩餐会とかな」

「その時に備えて、と?」

 

 オウギュストの言葉に、グレミーはうなずいた。

 

「そうだ。彼女の力を借りて、交渉を有利に進めることができれば、私のアクシズでの立場も盤石となる。それにだ。救助したとはいえ、アーガマにいる仲間または家族と引き離してしまったのだ。それぐらいの償いはするべきではないか?」

「確かに……その償いが、年下のほうにレディーとしての教育、年上のほうにメイド教育というのはどうかとは思いますが」

「私とて完璧ではない。趣味に若干の偏りがあるのは大目に見てもらいたいな。脱出したり、変なことはされないように監視はつけているからそこは安心しろ」

「はっ……」

 

 オウギュストがとりあえず納得したような様子なのを見て、グレミーは一息つき、逆に問いかける。

 

「そういえば、左遷のためにアクシズに連れ帰ることになったマシュマー様の様子はどうか?」

「やはり意気消沈しているようですな。これまでの失態に続いての左遷。無理もないかと」

「マシュマー様は、ハマーン様に心酔しているようだからな。あのお方の役に立てないとなればそうもなるか……。少しでも立ち直ってもらいたいが……」

 

 グレミーの言葉は本音であった。

 グレミーは、アクシズ軍に入った時からマシュマーを尊敬していた。

 人材不足を補うための窮余の策……一般兵や下士官の中から特に才能がありそうなものを、一気に士官に昇格させ、特別教育と訓練を施したうえで艦長とし、各コロニーに派遣して実戦経験を積ませる『特別人材確保プラン』……によってとはいえ、18才という若年でエンドラの艦長に就任したマシュマーは、グレミーにとっては本当に憧れだった。セロ家はトト家に比べて家格は落ちる、つまりマシュマーはほとんど自分の才覚で艦長の座を勝ち取った。それも、憧れの理由の一つだった。

 トト家を盛り立て、あわよくば自分の野望を果たすためにプランに応募し、こうしてミンドラ艦長になったとはいえ、もし昇格試験に落ちていたら、マシュマーの下で働こうと思っていたほどである。

 それゆえに、今のマシュマーの姿は、グレミーをしてその胸が痛むほどだったのである。

 

* * * * *

 

1:ジャンク屋ネキ

ふぅ……今、今日のメイド教育終わったやで……。

 

2:名無しのオールドタイプ

お帰り、ネキ。

 

3:名無しのオールドタイプ

突然ログアウトした時にはどうしたかと思ったが、無事でよかったやで。

 

4:ジャンク屋ネキ

うん……サンガツ。

 

5:名無しのオールドタイプ

ネキの精神状態が無事でなさそうなんですが……。

 

6:名無しのオールドタイプ

俺もそこは本当に心配なんや……大丈夫か?

 

7:ジャンク屋ネキ

大丈夫じゃないかもしれん……。オレ、戦いを早く終わらせて、その犠牲者を減らしたいと思って戦いに身を投じたんやで?それがこうして捕虜になってしもうて、その敵の艦で過ごすことになって、どうしたらええんや……。

 

8:名無しのオールドタイプ

あ……。

 

9:ジャンク屋ネキ

それに、リィナも巻き添えにしてしまって……。ジュドーにどう顔向けしたらええんや……OTL。

 

10:名無しのオールドタイプ

その気持ちはわかるけどな……。まずは生命があっただけマシとおもわにゃ……。

 

11:ジャンク屋ネキ

……。

 

12:名無しのオールドタイプ

なぁ……厳しいこと言ってもいいか?

 

13:ジャンク屋ネキ

なんや?

 

14:12

ネキには俺らという支えがまだあるけど、今、リィナの支えになれるのはネキしかおらんのやで?

 

15:ジャンク屋ネキ

……!

 

16:12

リィナはこれから大変なことに巻き込まれるかもしれん。

なのに、そんな彼女を支えなきゃならんネキがつぶれてどうするんや?

 

17:ジャンク屋ネキ

12……。

 

18:12

捕まったってええやないか。ネキはまだ生きているやないか。その理想の道が一時中断したと思えばええんや。いつかアーガマに戻った時に、再びその道を再開すればいい。

今は、リィナを、ジュドーと再会するときまで支えてやるのがネキの使命やと俺は思うで。

 

19:ジャンク屋ネキ

そうか……そうだよな。それがオレのするべきことだよな。

サンガツ、12。お前のおかげで少しは気合が入ったで。

 

20:12

どういたしましてや。くれぐれもつぶれないようにな。

これからも俺たちが、お前をなるべく支えてやるからな。無理せずしっかりするんやで。

 

* * * * *

 

 オレがそう、スレ民のみんなと会話をしているところに、今日のレディー教育を終えたリィナが戻ってきた。

 

「お疲れ様、リィナ」

「うん。マリハもお疲れ様。メイド教育、メイドのしぐさがだいぶ板についてきたみたいね」

 

 そう言うリィナに、オレはちょっとふざけながら、覚えたてのカーテシー(だったか?)をしながら言う。

 

「恐縮でございます、お嬢様♪」

「ふふ、いつものマリハとは別人みたい」

「ははは、少しはメイドらしくなってきたかな? 今、お茶入れるな」

「うん」

 

 そしてオレは、さっそく教えてもらったことを思い返しながら、リィナとオレの分の紅茶を入れる。

 

「でも、本当によかった」

「え?」

「この艦に拾われたばかりのマリハ、何かとても沈んでたから」

「リィナ……」

 

 オレが打ちひしがれていたことに気づいていたのか。

 そんなオレに、リィナはかすかに微笑んで言った。

 

「マリハ、私のことなら心配しないで。マリハがいるから平気だよ。それに、必ずお兄ちゃんと再会できると信じてるから」

「そうか……はは、リィナに心配してもらうなんて、なんかリィナの支え失格だな」

「え?」

「いや、なんでもないよ。さぁ、紅茶を飲もうぜ」

「うんっ」

 

 本当に、リィナの支え役としては失格だな。オレのほうが年上なんだからしっかりしないと。

 

:本当にな。無理はよくないけど、もっとしっかりするんやで、ネキ。

 

 そんな書き込みが流れてきたのを、オレは心の中に刻み込みながら紅茶をすすった。

 

* * * * *

 

 そしてもう一日か二日でアクシズに到着する、という頃。

 その日のメイド講習を終えたオレは、艦内をぶらぶら散歩していた。周囲に監視の目を感じるが、まぁ、オレは捕虜だからな。仕方ない。

 

 そんなわけで歩いていると、通路脇にあるベンチに誰かが座り込んでいるのを見た。

 あれは……シャングリラの病院で見たことがあるぞ。マシュマーさんじゃないか? 何か、かなり憔悴しているようだ。

 

 そんな彼は、懐から何かを取り出した。あれは……銃!? まさかあれで自殺するつもりか!?

 

「マシュマーさん! それやめてやばいやばいやばいそれはやばい!!」

「ええい離せ! これ以上生き恥をさらすわけにはいかんのだ!」

「だから待ってって! 人生50年もあるというのに今死んだらもったいないよ!」

「ええい、死なせろ、死なせてくれえー!」

「わー! 誰かマシュマーさんを止めるの手伝ってー!!」

 

 もみくちゃになるオレとマシュマーさん。そこに、オレを監視していた人たちも加わって、なんとか彼の手から銃を奪うことができた。

 

「もう……なんで自殺するなんて……」

「自殺ではない! 自決だ!」

「同じようなものじゃん……」

 

 ドタバタ劇で疲れ果て、オレはそうため息をつきながら言う。

 すると、マシュマーさんはオレを見て、何かに気が付いたようだ。

 

「そういえばお前は……シャングリラで出会った、白衣の天使ではないか。ふ……お前とこんなところで会うとは、なんという因果な……」

「本当にな」

「ふ……笑うがいい、娘。功を成すことができず、剣と戦う場を奪われ、ハマーン様に尽くすことさえできなくなったこの身を……」

「笑いなんかしないよ。敵だったオレが言うのもなんだけど、マシュマーさんはあんなに頑張ったじゃん」

「娘……」

 

 なんと声をあげて元気づけてあげればいいだろうか。

 オレは頭の中で言いたいことを組み立てながら、口を開いた。

 

 ……できの悪い兄を持った妹の気持ちってこんな感じなのかな。

 

「なぁ……マシュマーさんのハマーンへの忠誠心ってそんなものなのか?」

「な、なんだと!?」

「こんなこと言うのはなんだけど、一回左遷したぐらいで、ハマーンに尽くすのを諦めるぐらい脆いものなのか? マシュマーさんの忠誠心って」

「そんなことはない! 私のハマーン様への忠誠心はだれにも負けんと自負している!」

 

 そう立ち上がって言うマシュマーさんからはわずかに覇気が蘇っているように感じる。そのことに少し安心しつつ続ける。

 

「ならまたやり直せばいいじゃん。左遷したからって、ハマーンのために戦う道が断たれたわけじゃないだろ? 今までの失敗を糧にして、また立ち上がればいいんだよ。そんな騎士もかっこいいと思うぜ?」

 

 スレには、『ああああ……敵に塩どころか油注ぐような真似して』とか、『あえて言わせてもらうが余計なことを!』とかそんな悲鳴のような書き込みがたくさん寄せられているが仕方ない。だって、あんな憔悴しきって自殺しようとしている人を見過ごせるわけないじゃんか。ジュドーたちには後で謝るから勘弁してくれ。

 

 オレの言葉を聞いたマシュマーは軽く苦笑を浮かべて言った。

 

「ふ……君のような幼い娘に諭されるとは、私もまだまだだな。だが、ありがとう天使よ。君のおかげで、私はまた立ち上がれそうだ」

「そうか……よかったよ」

「やはり君は、白衣の天使なのだな。今回のことでよくわかったよ」

「やめてくれよ。オレはそんな大した奴じゃないって」

 

* * * * *

 

 そして、オレとマシュマーさんを乗せたミンドラはアクシズに到着した。

 

 降りてみると……はえー……。

 

 市街地に出たオレとリィナはそろって目を見張っていた。

 そこには、シャングリラのものとは大違いな、きれいで賑やかな街があった。空が岩石になっているが、そんなのは気にならないほどだ。

 

 そのまま、オレが周辺をキョロキョロしていると……。

 

「マリハ、早く来い。アクシズでのお前たちの住居に案内しなくてはならん」

「あ、あぁ、ごめんよ」

 

 そしてオレは、自分を呼ぶグレミーの下に駆けていった。

 

* * * * *

 

32:ジャンク屋ネキ

はえー……。オレたちのアクシズでの住処に来たけど、これすごいやん。

この宮殿の一室がオレたちが過ごす部屋ってマジか?

 

33:名無しのオールドタイプ

本当にすごいよな。確か、ハマーン様も住んでる宮殿なんだっけ?

 

34:名無しのオールドタイプ

そうそう。確か、ジュドーが潜入してた時には、バルコニーで日光浴していたはず。

 

35:名無しのオールドタイプ

ジュドーが落ちてきた時には、なぜかスーツに着替えていたけどな。

 

36:名無しのオールドタイプ

そういえば、プルもここで住んでるんだよな。ニュータイプ娘とはいえ、待遇良すぎじゃね?

 

37:ジャンク屋ネキ

オレと顔が似てるって娘か……。

 

38:名無しのオールドタイプ

多分、遭遇したらドギモを抜かれることになると思うから覚悟するんやで。

 

39:ジャンク屋ネキ

そ、そんなにか……。

 

40:名無しのオールドタイプ

確かにドギモを抜かれるな。ある意味で。

 

41:名無しのオールドタイプ

まぁ、噛みつかれることはないから安心すれ。

 

42:ジャンク屋ネキ

お、おう。

 

43:ジャンク屋ネキ

なんや? なんか館に入ったら、「ぷるぷるぷるー」とかって声が聞こえるで?

 

44:名無しのオールドタイプ

確かに聞こえるな。今回は本〇陽子さんではなく、本多知〇子さんの声なのか。

 

45:名無しのオールドタイプ

本〇知恵子さん……(;_;

 

46:名無しのオールドタイプ

確かに惜しい人をなくしたよな……(しんみり

 

47:ジャンク屋ネキ

な、なんや!? 突然オレめがけて、下着姿の半裸ロリ娘が突撃してきたで!?

 

48:名無しのオールドタイプ

彼女がプル、エルピー・プルや。落ち着け。

 

49:名無しのオールドタイプ

生プル!!

 

* * * * *

 

「プルプルプルー!!」

 

 そう言って、オレとリィナ、グレミーのほうに突撃してくる半裸の女の子……年頃はリィナと同じぐらいか。スレ民の話では、彼女がどうやらエルピー・プルらしい。

 なるほど、確かによく見ると、オレと顔立ちが似ている気がするな。リィナもびっくりして、オレとプルを見比べている。

 

「ねぇねぇ、グレミー? 彼女が新しくここに入ってきた人?」

「あぁ。この後、お前と一緒にミンドラに乗る予定だ。それはいいとして、下着姿で館の中を走り回るんじゃない!」

「えー、いいじゃん。グレミーのケチ! ねぇ、お姉ちゃん、名前は?」

 

 そう無邪気な笑顔で聞いてくるプルに、オレとリィナはそろって自己紹介。

 

「あぁ、オレはマリハ・クトゥルだ」

「私はリィナ・アーシタ。よろしくね」

「へぇ~、マリハ、女の子なのに『オレ』なんておかしいね!」

 

 そう無邪気に言ってのける彼女に、オレは苦笑してしまう。そして、カーテシー(だったっけ?)をしてお返しする。

 

「私はこういうこともできるんですよ、プルお嬢様?」

「へぇ~、すごいすごーい! でも、マリハ、本当に私そっくり。本当にお姉ちゃんみたい」

 

 なんか、オレになつきそうな勢いのプルに、グレミーが焦れたのか、咳払いをして言ってきた。

 

「プル、もういいだろう。早く部屋に戻って着替えてきなさい」

「わかったよ! いーだ! グレミーの馬鹿! マリハ、また遊ぼうね!」

 

 そう言ってパタパタとプルは走り去っていった。それを見て、グレミーはため息一つ。

 

「まったく……」

「アクシズの人って、元気がいいんだね」

「とんでもない!! あれは例外! 悪いお手本だっ! 見なかった事にして欲しい!」

「そんなこと言われてもな……でも……」

 

 あることに気が付いてふとつぶやいたオレに、リィナが聞き返す。

 

「どうしたの、マリハ?」

「ううん、なんでもないよ」

 

 オレは慌ててそう返す。

 でも、なんだったんだろう……。プルが来た時に感じた不思議なビジョンは……。

 

「さて。リィナ、マリハも部屋に着いたら礼服に着替えてくれ。ハマーン様との謁見にのぞむから」

 

 はい!?

 

* * * * *

 

 そしてオレは、リィナ、グレミーと一緒にハマーンとの謁見室にいた。ちなみにリィナはきれいなパーティドレス、オレは言わずもがなメイド服である。

 

 それにしても……さすがアクシズの最高権力者との謁見の部屋であるとはいえ、とても豪華だ。宮殿内でのオレたちの部屋とはくらべものにならない。

 

「ほう……その二人が、お前が戦いの中で見つけてきた者たちか」

「はっ、その通りです。ハマーン様」

「そうか……二人とも名は?」

 

 ハマーンの質問に、まずリィナが鮮やかなカーテシーをして答える。

 

「リィナ・アーシタと申します、ハマーン様」

 

 そしてオレの番。すごく緊張しながら、カーテシーをして答える。

 

「リィナ嬢の侍女を勤めます、マリハ・クトゥルと申します。ハマーン様」

 

 無事にあいさつをできたことにほっとしたのか、グレミーが安堵したような表情を浮かべる。

 

「そうか。私がミネバ様に代わり、このアクシズの全権を取り仕切るハマーン・カーンである」

 

 すごい、このカリスマ性というか存在感というか、それがもうすさまじすぎて、圧倒されそうである。もし、この存在感が物理的な力を持っていたら、オレはこの宮殿からはじき出され、一気に地球に叩き落されていただろう。

 

 さて、そんな圧倒されているオレたちを一瞥し、ハマーンはグレミーに視線を戻した。

 

「しかし、このような年端の少女たちを囲うとは、特殊な趣味を持っているようだな、グレミー?」

「とんでもございません。彼女たちはただ、宇宙を漂流していたのを救助しただけでございます」

 

65:名無しのオールドタイプ

ものはいいようやな。

 

66:名無しのオールドタイプ

自分が拳を振り下ろしてコアファイターから弾き飛ばしたのを隠してるで。

 

 そんな突っ込みの書き込みに気づくよしもなく、ハマーンはふふと笑って話題を変えてきた。

 

「まぁよい。それより、面白いものを手に入れた。持っていくがいい」

「なんでしょう?」

「サイコガンダムだよ。正確にはその改良型だな」

 

70:ジャンク屋ネキ

なぁ、サイコガンダムってなんや?

 

71:名無しのオールドタイプ

なんや、ネキ知らないのか?

 

72:ジャンク屋ネキ

あぁ。ガンダムシリーズは、1stとアナザーガンダムしか見たことないねん。

 

73:名無しのオールドタイプ

それじゃ、知らないのも仕方ないか。元はティターンズが開発した強化人間専用可変MAやで。

 

74:名無しのオールドタイプ

高層ビルに匹敵するほどの巨体で、MSに変形する機能もついとる、とんでもない奴や。

 

75:名無しのオールドタイプ

確か、Mk2は、カミーユに撃墜されて大破状態で放棄されていたのを、アクシズが回収して修復したんだよな。

 

76:ジャンク屋ネキ

はえー……そうなんか。

 

 オレがスレで会話している間にも、グレミーとハマーンの会話……なぜかオレにはそれが、狸と狐の腹の探り合いに見えた……は続いていた。

 

「あぁ……。しかし、使いこなせる者がおりますか?」

「お前が組織しつつある、ニュータイプ部隊はどうだ?」

「……それは口さがない者たちの噂です、ハマーン様」

 

 すごい。なぜだか知らないが、ハマーンとグレミーとの間に火花が散っているのが見えるぞ。

 そして。

 

「まぁいい。サイコガンダムは預ける。お前には地球侵攻作戦の先遣隊として、地球に降りてもらうぞ」

「わかりました。このグレミー、ハマーン様のためなら」

 

 そうグレミーが言ったところで、ハマーンは立ち上がって、そしてオレたちの脇を通りすぎながら言った。

 

「……世辞はいい」

 

 そして、ハマーンがオレの横を通り過ぎた時。

 

「!?」

 

 プルと会った時に感じたあの感じ。宇宙の中にオレが漂っているようなイメージと感覚。しかし、今回はそれがダンチだった。あまりにスケールが大きすぎるというか。

 

 オレが我に返ったとき、そこにもうハマーンはいなかった。

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

ハマーンのアクシズということを知らないジュドーと、なんとモンドまでアクシズに潜り込んできた。それがドタバタのはじまり。
プルはジュドーになつくし、リィナとモンドは謎の追っ手からの逃避行するし、ジュドーとハマーンはばったり会っちゃうし。
とどめにオレは、ハマーンから軟禁処分を受けることに、とほほ。

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第10話『俺とプルとハマーンと』

ダメな兄とダメな妹の両方を持った子の気分はどんなの?

※次の更新は、2/28 12:00の予定です!


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Act.10『俺とプルとハマーンと』

前回のタイトルの元ネタは、ガンダムAGE第11話より『ミンスリーの再会』でした。
果たして今回の元ネタはなんでしょうか?

今回は思わぬ展開が!?


 マリハたちがハマーンと謁見してから数日後。アクシズの周囲の小惑星帯に、コアファイターと二人の少年の姿があった。

 

「へへ、何て間が良いんでしょ。なまじダミー隕石をばら撒き過ぎてるから、1つや2つ紛れ込んでもばれないのさ! ……でも、モンドまでついてこなくてもよかったのに」

 

 少年の一人、ジュドーが、傍らの少年、モンドに言う。それに対してモンド曰く。

 

「お、俺だって、マリハ……とリィナを助けたいんだ。それに一人より二人のほうがいいだろ?」

「まぁ、確かにな。それじゃ行くとしようぜ。……待ってろよ、マリハ、リィナ……」

 

 そして二人はアクシズに潜入していく。

 こうして二人が楽に潜入できたのも、先の戦いで多くのベテランが失われ、新兵ばかりとなり警戒が緩んでいたからである。ジュドーはアクシズの人材不足に感謝したほうがいい。

 

 だが、その潜入者を感知した者が二人いた。

 

「この感覚! ZZ(ダブルゼータ)のパイロットが来たんだ! 間違いない!」

 

 エルピー・プルである。プルは、ミンドラが入港したしばらく後、アクシズ攻略に向かっていたアーガマ隊の前に立ちはだかって、そのさいにジュドーのZZと戦っていたのだ。

 

 そしてもう一人は……

 

* * * * *

 

83:ジャンク屋ネキ

……? なんや?

 

84:名無しのオールドタイプ

なんや? どうしたんだネキ?

 

85:ジャンク屋ネキ

なんだろう……? 何か、知っている人が近くに来たような感覚がする。

 

86:名無しのオールドタイプ

知っている人……? あ。

 

87:名無しのオールドタイプ

もしかしてあれやないか?

 

88:名無しのオールドタイプ

俺も同じこと考えてた。それだな。

 

89:ジャンク屋ネキ

なんや? 教えてくれよ。

 

90:名無しのオールドタイプ

もしかして、ジュドーがアクシズに潜入してるんやないか? 原作にもそんなシーンあったしな。

 

91:ジャンク屋ネキ

マジか?

 

92:名無しのオールドタイプ

マジマジ。プルを見かけたら聞いてみるがよろし。原作通りなら、プルもジュドーの接近を感知しているはず。

 

93:ジャンク屋ネキ

そうなのか? ……あ、外から騒がしい足音が聞こえてきたので聞いてみるで。

 

「どうしたんだ、プル?」

『あっ、マリハ! あのね、彼が来たの! ZZのパイロットが!』

マジか……。

 

94:名無しのオールドタイプ

どうやら当たりみたいやな。

 

95:ジャンク屋ネキ

でも、マジかよ……。なんでリィナが外出している時に……。

『あれ? マリハ、誰と会話してるの? 掲示板?』

!?

 

96:名無しのオールドタイプ

!?

 

97:名無しのオールドタイプ

!?

 

98:名無しのオールドタイプ

転生者しかアクセスできないこの掲示板を閲覧できている!?

 

99:名無しのオールドタイプ

マジかよ……。さすがアクシズ生まれのニュータイプ……伊達じゃない……。

 

100:ジャンク屋ネキ

『へへーん、プルは特別だもん! みんなよろしくねー』

 

101:名無しのオールドタイプ

お、おう……。

 

102:名無しのオールドタイプ

プルが俺らみたいにならんことを天に祈っておこう……。

 

103:ジャンク屋ネキ

『あ、それでね。これからZZのパイロットに会いに行くところなの!』

「そ、そうか……って! プル、また下着姿じゃん! ダメダメ、先に服を着なきゃ! ほら、部屋に入る!」

『やーん!!』

 

104:名無しのオールドタイプ

大変やな……ネキ……。

 

105:ジャンク屋ネキ

できの悪い兄を持った次に、問題児の妹を持った気分やで……。

『ぶー、プルは問題児じゃないもん!』

「はいはい。わかったから、早くこのスポーツブラをつけて」

 

106:名無しのオールドタイプ

ということは、ショーツ一枚で走り回っていたのか、このロリ娘……。

 

107:名無しのオールドタイプ

配信越しに見てる俺らも赤面ものやけど、衛兵の連中も大変だろうな……。

 

108:ジャンク屋ネキ

はじめて会った時は、ちゃんとブラつけてたけどな……。

「はい、できた。それじゃ、一緒に行くか。途中でリィナを拾わないとな」

『うん、いこいこー』

 

* * * * *

 

 そしてオレは、プルの案内で、アクシズ市街を歩き回っていた。

 

「なぁ、本当にこっちで間違いないのか?」

「うん、間違いないよ! 私のニュータイプの勘、信じてないのー?」

 

 いや、オレは元は現実世界の人間だし……。

 

113:名無しのオールドタイプ

本当にプルのおもり、大変だな、ネキ……。

 

114:ジャンク屋ネキ

あぁ。本当に手のかかる、パワフルな妹やで……。

『ぶーっ、プルは手のかかる子じゃないもん!』

はいはい……。

『うー、みんなもそう思うでしょ!?』

 

115:名無しのオールドタイプ

いや、俺らに言われても……。

 

116:名無しのオールドタイプ

いや、ワイはプルの味方やで! な、お前らもそうだろ!?

 

117:名無しのオールドタイプ

俺はリィナ派や、すまんな。

 

118:116

なにぃ!? ちょっと表出ろ!

 

119:ジャンク屋ネキ

『あわわわ、けんかはダメだよー、ガンダムファイトでないと!』

いや、それは別ゲームだし……。というか誰のせいだと……。

 

 と、そこに。

 

「マリハ? お前、マリハか?」

 

 後ろから聞きなれた少年の声が、それに振り向くと。

 

「わーい、ZZのパイロット! やっと会えた!」

「うわ、な、なんだお前は?」

 

 オレが口を開く前に、プルがジュドーに抱き着いていた。それでもジュドーはやがて立ち直り……。

 

「マリハ、お前も無事だったのか。よかった……」

「ジュドー……すまん!!」

 

 そしてオレはジュドーに全力土下座した。

 

「お、おい、なんでいきなり土下座するんだよ?」

「いや、オレが至らなかったばかりに、オレ共々リィナがアクシズに捕まることになっちまって……本当にどう顔向けすればいいか……」

 

 ぺこぺこと土下座連打です、はい。

 さすがに何度も土下座したのに、ジュドーはうろたえて。

 

「い、いや、そんなに謝らなくていいって。リィナは無事だったんだろ? ならそれでいいって」

「ジュドー……お前は本当にいいやつだな……」

「お、大げさだって。それでリィナは?」

「あぁ。今はこのアクシズの宮殿でお嬢様修行やってるよ」

「そうなのか……でも本当に無事でよかった……」

 

 そう言って、涙ぐむジュドー。そこに。

 

「ぶーぶー。二人とも、感動の再会をするのはいいけど、プルのこと忘れてない~?」

「ほらほら、わかったから、そんなに膨れない」

「本当にお前、子供の扱いうまくなったな……って、え!?」

 

 と、そこでやっとジュドーも、プルについてのあることについて気が付いたようだ。というか遅すぎだろ。

 

「彼女、マリハにそっくりじゃねーか!? どうなってるんだ!? マリハ、お前生き別れの妹とかがいたのか?」

「そんなわけないだろ。多分他人の空似だよ」

「でも私も、びっくりしちゃった。本当にそっくりなんだもん。あ、そういえばお兄ちゃん、名前は?」

「あぁ、俺はジュドー・アーシタ。よろしく」

「そうなんだ。私は……」

 

 そこにオレが。

 

「エルピー・プルだろ? さっき何度も自分のことプルと言ってたじゃねーか」

「ぶーっ、マリハの意地悪!」

「はいはい。それで、これからどうする? オレたちの宮殿で、リィナが戻ってくるまで待ってるか?」

「そうだな……。入れ違いになったら大変だし」

「はーい、いこいこーっ」

 

 そしてオレたちは、宮殿に向かっていった。

 

* * * * *

 

 一方そのころ、ジュドーと別れて別行動でマリハとリィナ……正確にはマリハを探していたモンドは、市街地をきょろきょろしながら歩いていた。そこに。

 

「あっ、り、リィナ!」

「モンド!」

 

 彼の下に、ドレス姿のリィナが駆けてきたのだ。

 

「ど、どうしたんだよ、リィナ?」

「わ、私、追われてて……」

 

 と、そこに。

 

「いたぞ、あそこだ!」

 

 黒服の男たちがやってきた。モンドはリィナの手を握る。

 

「に、逃げるぞ、リィナ!」

「う、うん!」

 

* * * * *

 

 一方、アクシズの軍部の一室で、エンツォ・ベルニーニは、黒服の一人から報告を受けていた。

 

「何、取り逃がしただと!? 馬鹿者、それで許されると思うか! いいか。必ずあの娘を捕まえろ! なんなら、殺してもかまわん!」

 

 そして通信を乱暴に切る。

 

「グレミーが連れてきたリィナとかいう娘。あの娘を手に入れることができれば、グレミーを我が派閥につなげることができる。もし死なせたとしても、それも色々と利用することができるはずだ。グレミーやハマーンに気づかれる前にやらなくては……」

 

* * * * *

 

 一方、こちらは宮殿に戻ってきたオレとプルとジュドーです。なんとか守衛の目を盗んだので、ジュドーも入ったことは気づかれていません、たぶん。

 

 そして今、プルはお風呂中。オレとジュドーは紅茶を飲んでいる。

 

「へぇ、けっこうおいしいじゃないか」

「まぁ、メイド教育でさんざん教えられたからな」

「そうなのか。……しかし、リィナたち遅いな……」

 

 確かに遅いな……。一体、どうしたんだ? 大変なことに巻き込まれてなければいいが……。

 と、その時。

 

「!? なんだ、この感覚は……? ごめん、マリハ。ちょっと出かけてくる」

「おい、ちょっと!?」

 

 そういうと、ジュドーは突然部屋を飛び出していった。

 なんだったんだ? そういえば、この宮殿にはハマーンがいるだけあって、彼女のプレッシャーがびんびん感じられるんだよな。オレはもう慣れたけど、もしかしてジュドーもそれを感じたのか?

 

* * * * *

 

 一方、逃走中のモンドとリィナ。

 逃げてきたのは、路地の先の袋小路。行き止まりである。

 

「し、しまった……!」

「ど、どうしよう……?」

 

 だがそこで、モンドは気が付いた。

 

「もしかしてこれ……壁じゃなくて、MSの運送用トレーラーじゃないか?」

「え?」

 

 そうこうしてる間にも、足音が近づいていく。

 それで、モンドは決意を固めた。

 

「よし、リィナ、来い!」

「う、うん!」

 

 そして二人は、道の先に止まっていたMSトレーラーによじ登り、積まれていたMS……バウに乗り込んだ。

 そして飛び立つ!

 

 それを茫然と見送る黒服たちの後ろに、彼らを尾行していた男……オウギュスト・ギダンがやってきて言った。

 

「エンツォ大佐の配下たちだな? うちの客人に危害を加えようとはいい度胸だ。詳しい話を聞かせてもらえるとありがたいな?」

 

* * * * *

 

 一方、ジュドーはプルの部屋を出て、プレッシャーの源を探して宮殿の中をうろついていた。

 

「この感じ……もしかしたら、リィナかもしれない……」

 

 また、ハマーンも自分に近づいてくるプレッシャーを感じていた。

 

「この感じ……なんだ……? シャア……? いや、カミーユ・ビダンか……?」

 

 そして、それまで着ていた水着から、なぜかスーツに着替えた。

 

* * * * *

 

 そのころ、オウギュストからの報告を聞いたグレミーは、エンツォの下を訪れ、彼に銃を突き付けていた。

 

「私の姫に好き勝手したようですな、エンツォ大佐。あなたが、ハマーン様に叛旗を翻そうとしていたという証拠もそろっています。大人しく、当局へ出頭することをお勧めしますよ」

「くっ、貴様のような若造に私の野望を覆されようとは……! おのれ!!」

 

 エンツォはもはやここまでと銃を抜いて反撃しようとするが、それより先に、無表情のグレミーの銃が彼の眉間を撃ち抜いていた。

 

「私の秘められた野望はまだ途中なのでね。あなたに色々暴れられると厄介なのですよ」

 

* * * * *

 

 一方、こちらは、突然部屋を出たジュドーを追って、プルを部屋に置いて彼の後を追っているマリハですこんにちは。

 

 ハマーンの自室の扉が開いていたのを目撃したオレは、恐れ多いと思いつつ、部屋の中に入っていった。

 

 そこで待っていたのは……。

 

 ハマーンが我が幼馴染様、ジュドーに銃を突き付けている、という修羅場(?)だった。

 

「ジュドー!!」

「この少年のことを知っているのか? ということは、この少年はエゥーゴの!! なんということだ、エゥーゴに潜入されるとは!」

 

 と、そこでなんというナイスタイミングか。ちょうど宮殿の庭に、MSバウが落ちてきたのだ!

 あたりを振動が襲い、ハマーンは体勢を崩した。その隙をついて、ジュドーが出口に向かって駆け出す。

 ハマーンはその後を追おうとするのを、オレは組み付いて阻止しようとした。

 

「ええい、放せ、娘!」

「ごめんなさい後で謝りますから、今回は見逃してあげてください!」

 

 そして、ジュドーの足音がしなくなったところで、ハマーンが落ち着いたようだ。

 

「もういい。離せ……」

「ごめんなさい……」

「まったくとんでもない捕虜だ……。グレミーが来るまで自由にしてていいが、その後彼に言って軟禁させるがいいな?」

「その程度で済ませてもらって感謝です……」

 

 なお、その後、落ちてきたバウを見に行ったところ、コクピットにモンドとリィナがいたのにはびっくりした。

 オレは人目がないのを確認すると、リィナを抱き上げて、こっそりと自室に移動させたのは言うまでもない。モンドの奴はタフでしたたかだからな。オレの助けがなくても、ちゃんと逃げて、ジュドーと合流してくれるだろう。

 

* * * * *

 

 そしてアクシズを脱出したジュドーと、それを追いかけてきたプルが色々あって、そのプルが、オレがアクシズにいる間中軟禁されている自室に駆け込んできた。

 

「うわぁん、マリハ~!!」

「ど、どうしたんだよ、プル?」

「ジュドーが、ジュドーがひどいの~!!」

 

131:名無しのオールドタイプ

軟禁処分喰らったばかりなのに、さらに災難で災難やなネキ。

 

132:名無しのオールドタイプ

災難がゲシュタルト崩壊な予感がするのですがそれは。

 

133:名無しのオールドタイプ

それはともかく、何があったのかわかった気がするで。

 

134:ジャンク屋ネキ

どういうことや? 133。

 

135:133

(1) プルがジュドーを追いかけました

(2) (宇宙服を着ていない)ジュドーに「出ておいでよ!」と言いました。

(3) ジュドー、当然拒否。

(4) そこに、コア・ベースとコア・トップがやってきました。

(5) プル、彼らを邪魔ものだとやっつけようとしました

(6) ジュドー、彼らの助けでZZに合体して、プルのキュベレイに逆襲しました

(7) 「なんで遊んでくれないの!?」と言ったら、ジュドーに「そんなモビルスーツに乗ってるから遊ばないの!」と叱られました

(8) プル、「ジュドーの馬鹿、嫌いだ!」と半泣きで帰っていきました←今ここ

 

136:ジャンク屋ネキ

そうなのか?

『ぐす……すん……その通りなの……なんでわかったの……?』

 

137:133

いや、別世界(原作)のあんたがやらかしたことですから……。

 

138:ジャンク屋ネキ

なんというか……このロリ娘に一般常識を教え込むべきだろうか、悩むんだがオレは……。

『ぶー! マリハまで意地悪して! 私、世間知らずじゃないもん!』

 

 まぁ、そんなやりとりをした数日後、オレとリィナを乗せたミンドラは、もう二隻の船とともにアクシズを出港し、地球へと向かったのであった……。

 




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* 次回予告 *

 オレたちを乗せて出発したミンドラ艦隊。なんかオレたちは地球でネオ・ジオンの交渉に色々使われるみたいだけど仕方ない。
 そうこうしているところに、ティターンズの残党軍がやってきて、プルが出撃していったけど……えーい、助けにいかなくちゃ!

次回『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』

第11話『マリハ、出撃!』

ごめん、オウギュストさん!

※次の更新は、3/3 12:00の予定です。お楽しみに!


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Act.11『マリハ、発進!』

前回の元ネタは、Gのレコンギスタ第8話『父と母とマスクと』からでした!
当たっていましたか?


 アクシズでの騒動の数日後、オレとリィナとプルを乗せたミンドラをはじめとした、三隻からなる小艦隊は地球圏へ向けて出発した。

 聞くところによると、この艦隊は、ネオ・ジオンと改名したアクシズの地球侵攻作戦の先鋒として、本隊の出撃に先駆けて地球に降下し、ジオンの残党と交渉したりしながら、地球連邦の首都、ダカールに向かう、とのこと。

 ちなみに出発の頃には軟禁処分は解け、またある程度自由に歩き回れるようになった。

 

 あと、本隊は一か月後に出発するとのことだ。

 

 さて、そんな中ではあるが、オレ(とリィナ)はといえば……。

 

「はい、今日もいい感じですよ、マリハさん」

「はい、先生、ありがとうございます」

 

 今日も今日とて、メイド講習である。(リィナはレディー教育)

 

 ほぼ毎日メイド講習を受けていただけあって、メイドとしての技能もだいぶ上がってきたように思う。いっそこのまま、戦うメイドを目指すか?

 

2:名無しのオールドタイプ

そんなこと言ってると、招くからやめとけ。

 

 いや、本気で戦うメイドもいいと思ってるんだけどなぁ。ナイフを両手に持って大立ち回りを演じるメイドってかっこよくね?

 

* * * * *

 

 そのころ、ミンドラのブリッジにて。

 

「オウギュスト・ギダン。エンツォ大佐の件ではよくやってくれた」

「いえ、グレミー様の部下として当然のことです。それに、年端もいかぬ少女を誘拐または殺害しようとする者を放っておくわけにもいきますまい。アクシズの名誉に関わりますからな」

 

 オウギュストの言葉に、グレミーは苦笑した。『年端もいかぬ少女』を、アクシズの戦略や自分の野望のために使おうとしている自身への皮肉のように感じられたからだ。

 

「その通りだな。せめて子供は大切にしなければならん。だがこれで、ハマーン様の信任も厚くなっただろう。少しは私の歩む道も明るくなってきたかな」

「そうかもしれませんが、そう思いながら歩く足元に、思わぬ小石が置いてあるもの。お気をつけください」

「確かにな」

「ましてや、我々が進む航路の途中には、ティターンズの残党たちが伏せているとの情報もあります。そのような小石に足元をすくわれては、せっかく築き上げてきたものや、生命そのものが台無しになろうというものです」

「うむ」

 

* * * * *

 

8:ジャンク屋ネキ

なるほどな。向こうの政治家たちとの晩餐会やらパーティに参加することになる、と。

 

9:名無しのオールドタイプ

あぁ。それで、リィナにレディー教育をさせたってことやな。ここで連邦の政治家たちに良い感情を持たせとけば、その後の交渉もうまくいくだろうからな。

 

10:名無しのオールドタイプ

まぁ、パーティとかで色々予備交渉のカケラみたいなのをするのは、現実世界でもあったことだからな。

 

11:名無しのオールドタイプ

問題はそれに参加する政治家たちが腐敗しまくってることなんだがな。リィナ曰く、「皆嘘をついてる。心から笑っている人なんて、此処には誰も居ない」っていうぐらいだから。

 

12:名無しのオールドタイプ

まぁ、そんな奴らだからこそ、ネオ・ジオンとの交渉に応じて、サイド3を明け渡したんだが。

 

13:名無しのオールドタイプ

現実日本の政治家よりよほど腐ってるからな。それにリィナがショックを受けないかが心配なんだが……というかネキも大丈夫か?

 

14:ジャンク屋ネキ

まぁ、前世で政治家たちの色々は見てきたからな。ある程度耐性はついてる……と思いたい。心の中につばを入れるツボでも用意しとくわ。

 

15:名無しのオールドタイプ

そんな連邦の腐敗政治家たちにショックを受けるであろうリィナを支えるのもネキの役目やからな。しっかり自分を持つんやで。いざとなれば俺たちが支えてやるから。

 

16:ジャンク屋ネキ

おう、ありがとな。

……ん、の爆発音? 敵襲か?

 

* * * * *

 

アクシズの先遣艦隊に対して向かっていく謎のMS部隊。

そのうちの一つ、バーザムに乗った隊長格の男が言う。

 

「ついに相まみえたか。今日ほど射手座に生まれたことをありがたく思ったことはない! 行くぞ、ジャミトフ閣下を暗殺したネオ・ジオンを一隻、一機、一人たりとも生かして返すな!」

 

 そして、敵襲の警報が鳴り響くミンドラのブリッジ。そこでグレミーがオペレーターに問いただす。

 

「敵は?」

「はい。ハイザックやマラサイ、バーザムなどティターンズのMS(モビルスーツ)が主な模様!」

 

 うなずくグレミーに、オウギュストが言う。

 

「どうやら、ティターンズの残党のようですな」

「言えば招くとはいうが、本当に招いてしまうとはな。アリアス隊に迎撃するよう命じろ」

「はっ」

 

 そして、ミンドラはじめ各艦からも、ガザCやガザDから構成されるMS隊が発進していく。

 しかし、やはり練度の低さから、先遣艦隊側は数で劣るはずの残党に苦戦し、戦線は拮抗していた。

 

 だが、その中でも、艦隊のMS隊隊長、アリアス・モマの活躍は目を見張るものがあった。愛機である、バウの量産型を駆り、ビームライフルでハイザックを撃ち抜き、またある時はマラサイにビームサーベルを振り、腕を斬り落とすなど、目をみはる奮闘を見せる。

 彼の活躍もあり、先遣艦隊のMS隊は、残党軍に対し、苦戦しながらも互角に立ち回っていた。

 

* * * * *

 

21:ジャンク屋ネキ

アクシズのMSパイロットたちも、なかなかやるもんやな。

 

22:名無しのオールドタイプ

金ぴか大尉のメガバズーカランチャーで、他の雑魚もろともベテランも吹き飛ばされたとはいえ、ベテランが全員吹き飛ばされたわけじゃないしな。

 

23:名無しのオールドタイプ

実際、マシュマーも結構強いしな。性格があれだったから、原作でもこちらでも、ジュドーたちにボコられてたけど。

 

24:ジャンク屋ネキ

マシュマーさんかぁ……。どうなったのかな。自ら強化に志願したと聞いたけど……。

 

25:名無しのオールドタイプ

おや、そうなんか。確か原作では自ら志願したか半ば無理やりされたのか判然としなかったが。

 

26:ジャンク屋ネキ

うん。グレミーの言うところでは、「甘さを消し去るために自ら強化に名乗り出た」って話だった。

 

27:名無しのオールドタイプ

あの兄ちゃんも、ネキとの会話で思うところあったんかなぁ。

 

28:名無しのオールドタイプ

話を戻すけど、あのバウもなかなかやるよな。確か、アリアス・モマの機体だったな。

 

29:名無しのオールドタイプ

だよな?

 

30:ジャンク屋ネキ

あぁ、確かそのはずや。

 

31:名無しのオールドタイプ

本当に鮮やかな戦いぶりやな。

 

32:名無しのオールドタイプ

そういや思い出す、彼がプルをボコボコにして重傷を負わしたのを。

 

33:ジャンク屋ネキ

マジか?

 

34:名無しのオールドタイプ

あぁ。攻めてきたのはプルのほうからだったけどな。(その時、プルはエゥーゴにいた)

 

35:32

でも重傷を負わしたことは許せん。あれがなければプルは、プルは……。

 

36:ジャンク屋ネキ

だ、大丈夫か? 安心してくれや。オレがそんなことにならへんように気を付けるからな。

 

37:32

うぅ、頼むでネキ。ワイの前世での無念を晴らしてクレメンス……

 

38:名無しのオールドタイプ

なんだ、この変にしんみりした雰囲気は。

 

39:ジャンク屋ネキ

まったくや……ん?

 

40:名無しのオールドタイプ

ん、どうしたネキ?

 

* * * * *

 

「これは……!」

「どうした?」

 

 何かに気づいたブリッジオペレーターに、オウギュストが問いただす。そのオペレーターは、勢いよく振り返って答えた。

 

「反対方向からもMSです!」

「こちらは囮だったか。どうしますか、グレミー様?」

「うむ……プルは出られるか?」

 

 するとすぐさま、通信スクリーンに、パイロットスーツに着替えたプルの姿が映し出された。

 

「いつでも出られるよ! あいつらをやっつければいいんでしょ?」

「あぁ、頼めるか?」

「了解、了解!」

 

 そして通信が切れるとともに、キュベレイが発進していく爆音が聞こえた。

 それを見送ったグレミーがちょっと渋い顔をする。

 

「あの返事……またマリハに何かを吹き込まれたのか。あまりプルを染めるのはやめてもらいたいのだが」

 

* * * * *

 

46:名無しのオールドタイプ

おー、いよいよプルの出陣かー。

 

47:名無しのオールドタイプ

頑張れよプルー!

 

48:ジャンク屋ネキ

大丈夫かなぁ……。

 

49:名無しのオールドタイプ

まぁ、あの程度の敵、プル一人でおつりがくるやろ。

 

50:名無しのオールドタイプ

お、さっそくファンネルを展開したな。

 

51:名無しのオールドタイプ

お、さっそく一機撃墜か。やはりオールレンジは強いな。

 

52:名無しのオールドタイプ

あれ? でも、ちょっとファンネルの動きが鈍くね?

 

53:名無しのオールドタイプ

ほんとだ。サイコミュが不調なんかな? あれじゃ、ベテランやエースはとらえられんぞ。

 

54:ジャンク屋ネキ

……悪い! ちょっと席外すな!

 

55:名無しのオールドタイプ

おい、どこ行くんやネキ!

 

56:名無しのオールドタイプ

ネキって意外と、シスコンだったりするのか……?

 

* * * * *

 

「ふ、副長! 副長のドライセンが起動しています!」

「なんだと!? ドライセンに通信をつなげ!」

 

 動揺するオウギュストが通信士に命じると、すぐにスクリーンに、メイド服姿でコクピットに座るマリハの姿が映し出された。

 

「マリハ嬢! 何をするつもりだ!?」

『プルが苦戦するみたいなんです! ちょっと助けに行ってきます!』

「待て! やられるのがオチだぞ!」

『大丈夫です! プルが撃ち漏らして接近してきたやつを倒すだけですから!』

「しかし……! グレミー様……」

 

 オウギュストが『止めてほしい』という願いを込めて、グレミーを一瞥すると、グレミーはかすかに笑みを浮かべて言った。

 

「よい、行かせてやれ」

「しかし……」

「私も、彼女を戦わせたくはないのが本音だが、手が足りないからな。今は彼女の手も借りたい」

「了解しました……」

 

 そしてハッチが開いて、マリハの乗ったドライセンが出撃していった。

 

* * * * *

 

 そして宇宙に出ていくと、やはりプルは苦戦中であった。近づかせまいと、必死にファンネルで牽制したり、ビームガンを撃ったりしてるけど、やはり手練れが相手だときついみたい。

 

『う~、サイコミュの調子が悪いのかなぁ……。わーん、こっち来ないでー!』

 

 そしてついに、ハイザックの一機がキュベレイの目前まで迫ってきた。やばい!

 

 ドカッ!!

 

 オレはバーニアをふかして突撃し、そのハイザックに、ドライセンの喧嘩キックを喰らわせてやった。

 なぜだろう、オレの脳裏に、苦虫をかみつぶしたような、あるいは呆然としたような、オウギュスト副長の顔が浮かんだ気がした。

 

「プル、大丈夫か!?」

『マリハ!』

「無理はダメだぞ。接近してくる奴は、オレが応戦するから、ファンネルで遠くの敵を撃ち落とすことに集中して!」

『う、うん!』

 

 それで潮目が少し変わったようだ。プルはファンネルを飛ばして、まだ遠くにいる敵を迎撃していき、それをかいくぐって接近してきたやつは……。

 

「プルには指一本触れさせないよ!!」

 

 接近してくるマラサイに、両腕のマシンキャノンを浴びせて撃墜する。さらにハイザックが接近。そいつには、ビームトマホークを脳天にぶち込む。

 そうやって奮戦していくうちに、こちら側の敵MSはどんどん数を減らしていった。

 

 しかし!

 

『おのれ、我がティターンズの理想、お前たちに潰させるわけにはいかん!!』

 

 隊長機……いや、敵の隊長は反対側で戦ってるから、多分副隊長機かエース機か?……のマラサイが、こっちに向かってきた!

 

「弾圧者の手先が何を偉そうに!」

 

 そう言って応戦するものの、さすがは手練れ。付け焼刃のオレとはかなり違う。あっという間に、オレは防戦一方になった。

 そこに。

 

『マリハはやらせないよ!!』

 

 プルのキュベレイがファンネルで援護をして、そのマラサイの右腕を吹き飛ばしてくれた。

 

『小娘ごときがあああああ!!』

 

 小娘で悪かったな。オレはタイミングを計って……。

 

 ドカッ!!

 

 ビームサーベルで切りかかってきたマラサイに、またキックを炸裂! こっちはジュドーたちと過ごしてきた中で、喧嘩には慣れてる!

 そのキックの衝撃で、マラサイは大きく吹き飛ばされた。もっともこちらも、その衝撃で、脚の関節部に少しガタがきたっぽいけど。

 

「今だ、プル!」

『うん!』

 

 吹き飛ばされたマラサイに、プルがファンネルを浴びせて撃墜することができた。

 ふぅ、なんとかなったな……。

 

「大丈夫だったか、プル?」

『うん……ありがとう、マリハ。おかげで助かっちゃった!』

 

 そしてエースor副隊長が倒されたことで、ティターンズの残党は不利を悟ったのか撤退していったのだった……。

 

* * * * *

 

「よくやってくれた、マリハ。色々言いたいことはあるが、おかげでたすかった」

 

 ミンドラに帰還したオレは、さっそくグレミーにそう声をかけられた。一方のオウギュスト副長は、自分のドライセンの脚部にガタがきたことに涙目になっていたが。

 

「ネオ・ジオンのためにやったわけじゃないぜ。プルを助けなきゃと思っただけさ」

「そうか。できればこのままMS隊に入って戦ってほしいところだが……」

 

 そう誘ってくるが、オレとしてはそれは遠慮させてもらいたい。

 

「いや、それは勘弁してくれよ。プルやリィナを守るために戦うならまだしも、ジュドーたちエゥーゴと戦いたくはないんだ」

「そうか……」

「まぁ、ティターンズや海賊相手だったら、気持ち次第だけど出てもいいけど。嫌なら独房に入れてくれてもいいよ」

 

 身勝手な言い分だけど、本当にかつて仲間で親友だった人たちと戦いたくはないというのは間違いないオレの本音。オレとリィナは正規の隊員ではなく、客分みたいなものだから、それぐらいは大目に見てほしい。

 

「わかった。仕方ないが」

「よろしいのですか、グレミー様?」

「あぁ。彼女たちは、兵士として迎え入れたわけではないからな。戦いを強制するわけにはいかないだろう。むしろ、条件つきとはいえ、場合によっては戦ってくれるのをありがたく思うべきだ」

「はっ……」

 

 グレミーが話のわかる相手でよかったよ。できればこれからも仲良くやっていきたいところだが……そうはいかないだろうな。スレ民の話では、彼はこの後、ハマーンに牙をむき、エゥーゴとも戦うことになるという話だから。

 それでも、袂を分かつその時までは、仲良くしていたいものだ。

 

 そう思うオレを乗せたミンドラ艦隊は、ゆっくりと地球圏へと向かっていった。

 




ファンアート募集中であり升!

* 次回予告 *

相変わらず、ティターンズの残党さんはしつっこい。
今度は、大気圏突入寸前のところを襲撃ときた!

ミンドラのMS隊の皆さんも頑張ってるけど、そんな中アリアスさんが……。
えーい、敵だけど仕方ない!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』

第12話『大気圏突入』

オレも、情がうつっちまったのかなぁ?

※次の更新は、3/6の予定です。


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Act.12『大気圏突入』

前回のサブタイトルの元ネタは、ガンダムZZ第22話『ジュドー、出撃!』からでした。なぜ出撃ではなく発進になっているかという、ナレーションしておられるジュドー役の矢尾さんが、『出撃』を『発進』と読み違えてしまったことになぞらえてのことです。

さて、プルとはここから一時お別れ。彼女はこの後、原作通り、刷り込まれてアーガマを攻撃するものの、今回はオウギュストの誤射で大気圏突入してしまい、そこをジュドーに助けられて、アーガマの居候になるルートになります。


1:ジャンク屋ネキ

おー。地球が見えてきたなぁ。でも、前世で見たのに比べると、ちょっと色が暗く見えるな。

 

2:名無しのオールドタイプ

まぁ、宇宙世紀は、前世よりも環境破壊が進んでるみたいやからな。アフリカなんか、もうほとんど砂漠になってるで。

 

3:ジャンク屋ネキ

はえー……そうなんか。このまま進んだら、地球に人類が住めなくなるんじゃないのか?

 

4:名無しのオールドタイプ

ところが、少なくとも223年までは、人類はかろうじて住めているんだよなぁ

 

5:名無しのオールドタイプ

その後に、恐怖の共食いの時代が来るけどな。

 

6:ジャンク屋ネキ

そうなんか……。さすが地球やな。

 

7:名無しのオールドタイプ

とはいえ、そんな地球に甘えているわけにはいかないけどな。

 

8:名無しのオールドタイプ

さて、いよいよ大気圏突入となるが……。

 

9:ジャンク屋ネキ

何か問題が?

 

10:名無しのオールドタイプ

ガンダムで大気圏突入といえば、敵襲というのがお決まりだからなぁ……。

 

11:ジャンク屋ネキ

あぁ、そういえばそうか……。

 

12:名無しのオールドタイプ

まぁ、毎回毎回起こるわけじゃ……。

 

13:名無しのオールドタイプ

1st『大気圏突入』

Z(ゼータ)『大気圏突入』『キリマンジャロの嵐』

ZZ(ダブルゼータ)『燃える地球』

起こってるぞ。

 

14:名無しのオールドタイプ

あ。

 

* * * * *

 

「プルを衛星軌道上に残していけ、と?」

 

 ミンドラのブリッジで、副長のオウギュストが艦長であるグレミーにそう確認していた。

 

「そうだ。本隊の降下時に、エゥーゴが邪魔をしに来る可能性がある。その際の迎撃に力を借りたい、とのことだ」

「なんと……」

「まぁ、建前だろうな。本音は、私からプルを引き離したいか、それともプルのNT(ニュータイプ)能力を見極めたいか……」

 

 思わぬ横やりに、グレミーに苦渋の表情を浮かべた。

 

(ハマーンめ、私が裏でやっていたことに感づきはじめたか。だが、まぁいい。『アレ』も密かに連れてきている。いざとなれば『アレ』に任せる手もある)

 

「それで、どうなされるのです?」

「ハマーン様からの要請となれば、無視するわけにもいかないだろう。副長はガンドラに残って、プルの監視と、迎撃の指揮を頼む。もしもの時には、プルにアレを施すことも許可する」

「了解いたしました」

 

* * * * *

 

 そして。俺がブリッジに行くと、グレミーがプルと何かもめていた。

 

「どうしたんだ、グレミーさん?」

「あぁ、マリハか。事情があって、プルを軌道上に残すことになったのだが、彼女がな……」

「だってだってだってー。マリハと別れるなんて嫌なんだもん! どうしてもというんだったら、キュベレイで大気圏突入してやるー!」

「そんなことできるわけないだろう。いい加減聞き分けなさい」

「やだやだやだー!」

 

 そこで俺はため息をついた。本当にプルのわがままは度が過ぎるんじゃないかと毎回思わざるを得ない。教育係誰だよ……あ、グレミーか。

 

 やれやれ、仕方ない。

 

「グレミーさん、ここは俺に任せてくれないか?」

「あ、あぁ」

 

 そして俺は、グレミーの許可を得ると、プルに近づいて何事かを耳打ちした。

 するとプルはにこっと笑って……。

 

「うん、わかった! プル、ここに残る!」

「え?」

「は?」

 

 とたんに軌道上に残るのを了解したプル。それに、グレミーもオウギュスト副長も目を丸くしている。

 

「マリハ、いったい何を言ったんだ?」

「大したこと言ってないよ。この後、アーガマが、本隊の大気圏突入を阻止しに来るよ、と言っただけ」

「なるほどな」

「??」

 

 俺の説明を聞いて、グレミーは納得したが、オウギュスト副長はまだわかっていないようだ。

 つまりだ。アーガマがやってくる、ということはジュドーもやってくる、ということ。そうなれば、プルはまたジュドーと会えるというわけだ。

 

「決まりだな。それでは副長、プルとともに、ガンドラに移乗し、本隊が来るまで待機していてくれ。その後は、本隊とともに降下するように。ダカールで会おう」

「了解であります」

 

 そして、オウギュスト副長とプルは、ブリッジを去っていった。

 

* * * * *

 

 そして、二人がミンドラと共に航行していた艦の一隻、ガンドラに移乗し、それと別れて大気圏突入の準備をしていたころ。

 またもやティターンズの残党の襲撃があった。

 

 本当にしつこい奴らだな。それに、数も前から減っていないように見えるし、どこからあんなにMS(モビルスーツ)がわいてくるんだ?

 

 そんなことを思っている俺をよそに、ミンドラともう一隻からMS隊が出撃していった。

 

* * * * *

 

「またもや、奴らの襲撃か。しかし、あの戦力の回復力はどこからくるのか……。ふむ、オウギュストに、あのティターンズ残党の裏を探るように伝えてくれ」

「了解しました」

 

 オペレーターに指示すると、グレミーは再び前を向いた。

 大気圏突入前というきわどい戦いの前に、アクシズのMS隊はやはり苦戦を強いられていた。しかも、残党軍は、理想のためには死んでも悔いなしと言わんばかりに、残り時間など関係なく戦いを挑んでくるのだ。

 

 だが、そんな中でも、隊長のアリアスが駆るバウの奮闘で、残党軍はどんどん数を減らしていく。

 しかしその間も、ミンドラとバウの高度はどんどん下がっていき……ついに限界高度を超えてしまった!

 

 敵の隊長機は、これで厄介なアリアスを始末できると判断したのか、憎らしいことに降下中のHLVに乗り込み、そのまま降下してしまった。

 

 アクシズ軍のMS隊は、それぞれ母艦に戻ることができたが、アリアスのバウはミンドラから離れすぎたこともあり、帰還するのはかないそうにない。このまま燃え尽きるしかないかに見えた。

 

 アリアスは覚悟を決めた。

 

* * * * *

 

20:ジャンク屋ネキ

なんてこった……!

 

21:名無しのオールドタイプ

でも、あれはどうしようもないな。かわいそうだが……。

 

22:名無しのオールドタイプ

諦めるしかないんじゃね? アクシズの有能な士官が失われるのは、エゥーゴとしては儲けものと割り切るしかないと思うで。

 

23:ジャンク屋ネキ

冗談じゃないで! 目の前に死のうとしてる奴がいるのに、そんなに割り切っていられるかよ!

 

24:23

す、すまん。

 

25:名無しのオールドタイプ

だけど、そんなこと言われてもな……。

 

26:ジャンク屋ネキ

なんとか、彼を助けだす方法は……。何か……!

 

27:名無しのオールドタイプ

ん、そうやネキ! あれや! 1stの大気圏突入や!

 

28:ジャンク屋ネキ

1stの……そうか!!

「グレミーさん! あのバウと通信をつないでくれ!!」

 

* * * * *

 

 落下していくバウの中で、アリアス・モマは最期の瞬間を待ち続けていた。

 

「死にゆくことは怖くはないが……これ以上、ネオ・ジオンのために戦えないのが心残りか……無念だ……」

 

 だがそこに。

 

『諦めるのはまだ早いよ、バウのパイロットさん!!』

「!?」

 

 通信スクリーンに、メイド服を着た少女の姿が映し出された。

 

「お前は……リィナ嬢の……しかし、もう助かるすべなど……」

『やってみなきゃわからないだろ! いいから、動力炉を止めて、融合炉の冷却材を放射して!』

「冷却材を?」

『あぁ! そしたらシールドを構えて、冷却材が対流するようにするんだ! そうすれば、無事に大気圏突入できるかもしれない! やらないよりはマシだろ! 隊長なんだから、やってみせなよ!』

 

 そう立て続けに叫ぶ少女に、アリアスは苦笑を浮かべた。そして。

 

「口が減らない娘だ。いいだろう、やってみるか。グレミー様配下にアリアスありということを知らしめてみせよう」

 

 そしてコンソールを叩き、動力炉を止めると同時に、胸部ダクトから冷却材を放出する。止める前に、シールドをマウントした左腕は、前方に構えるようにロックしている。

 

 そして……ついに、アリアスのバウは大気圏突入することに成功した。

 

 彼は一息つくと、冷却材の残量を確認したうえで、動力炉を再稼働させる。そして一言。

 

「一時はどうなるかと思ったが、命を拾うことができて幸いだった。あの娘には感謝しなくてはな」

 

 そう言うと、彼は下半身であるバウ・ナッターを切り離して放棄し、上半身をバウ・アタッカーに変形させてミンドラに帰還した。

 

* * * * *

 

 大気圏に突入した後、件のアリアス隊長が俺の部屋にやってきた。

 

「ありがとう。君のおかげで助かった。礼を言わせてもらう」

 

 隊長さんにそんなことを言われたら、とてもこそばゆいな。

 

「ど、どうも……」

「君には多大な恩をもらった。私にできることがあれば言ってくれ。可能なことならなんでもしよう」

「べ、別にお礼なんていいって。ただ、あんたたちが命を大事にしてくれたらそれでいいよ」

「わかった。その言葉、胸を刻ませてもらうとしよう」

 

 なんか俺、ネオ・ジオンの人たちに、すごい感謝されたりしているんだが、いいんだろうか。俺はエゥーゴの者なんだが。

 

 そんなことを言ってる俺の目に、アフリカ大陸の砂漠が映ってきた。

 




ただいま、ファンアートを募集してます!

* 次回予告 *

地球に降下したオレは、すごい人に会った。地球に残って、連邦軍相手に、骨董品レベルのMSで抵抗活動だって。
そんな人に、エゥーゴのオレが手を貸していいのか迷うけど、袖すりあうも何かの縁! 心の中でジュドーに詫びつつがんばるぞ!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』

第13話『熱砂のロンメル』

目をかけられちゃったけど、いいのかなぁ?



※次の更新は、3/9 12:00の予定です!


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Act.13『熱砂のロンメル』

前回の元ネタは……はい、説明するまでもないですね。
1st及び、Zの『大気圏突入』からです。そのままww


1:ジャンク屋ネキ

なんか先に、ロンメルとかいう人の部隊に接触しに行くらしい。

 

2:名無しのオールドタイプ

ドメル?

 

3:名無しのオールドタイプ

2、それは違う作品や。

 

4:名無しのオールドタイプ

キミタチテロント、ワガガミラスニ、エイコウトシュクフクアレ!!

 

5:名無しのオールドタイプ

そういえばどちらも、勇戦の末主人公たちの前に散っていったのは共通してるな……。

 

6:ジャンク屋ネキ

それで、ロンメルってどんな人なんだ?

 

7:名無しのオールドタイプ

一年戦争から今まで、ずっと砂漠で闘い続けてきた闘将や。

 

8:名無しのオールドタイプ

一年戦争が終わってからも、砂漠に潜伏して、再起を図っていたんやで。

 

9:名無しのオールドタイプ

最期は、ジュドーたちと戦って敗れたんだけどな。

 

10:ジャンク屋ネキ

そうなんや……。

 

11:名無しのオールドタイプ

まぁ、無理もないわな。改修を繰り返してきたとはいえ、一年戦争当時の機体と、最新型の機体ではな……。

 

12:名無しのオールドタイプ

それでも、ジュドーたちとなんとか渡り合ったんだから、さすがとは思うが。

 

* * * * *

 

 砂漠にある小さなの町の片隅。

 

「ロンメル中佐! 北から戦艦が接近してきます!」

 

 兵士の一人が、テントに駆け込むなり、そう報告してきた。

 ロンメルと言われた男性は、その報告を聞き、思わず立ち上がった。その額に汗がにじむ。

 

「なんだと!? もしや、連邦軍か!?」

 

 地球連邦軍が本格的に自分たちの掃討に乗り出したのか。

 緊張がロンメルの体を走るが、部下からの報告は彼の予想を裏切るものだった。

 

「いえ、その戦艦からはジオンの周波数で通信が送られてきています。こちらとの交渉を求めているとのことです」

「ジオンの周波数で……? もしかして、数カ月前に地球圏に戻ってきた、アクシズか?」

 

 ロンメルの質問に、部下はうなずいて答えた。

 

「はい。向こうは、アクシズ……今はネオ・ジオンと改名したそうですが……の巡洋艦ミンドラと名乗っています」

「そうか……もしかすると、いよいよ我らの出番が来たのかもしれんな」

 

 ロンメルはそう、感慨深げにつぶやいた。

 ここまで雌伏してきたのが報われる時が来たのだ。

 

* * * * *

 

「ネオ・ジオンの、地球侵攻作戦先遣艦隊司令官、グレミー・トト中佐であります。アフリカ方面軍・ロンメル師団のデザート・ロンメル中佐で間違いないでありますか?」

「その通りだ。こうして、宇宙からのジオンと合流することができて、これほどうれしいものはない。それはそうと、階級は同じだから、敬語は使わなくてもいいのだぞ」

「いえ、ロンメル中佐は聞くところによると、ジオンが地上から撤退した後も、抵抗活動を続けてきた方、私ごとき若輩がため口で話すことはできません」

 

 砂漠にある小さな町の片隅にある小規模のキャンプにて、オレたちは、スレ民のみんなが言っていたロンメルさんと、その一団と対面していた。それにしても暑い……。この暑さは、現実世界の温暖化以上じゃないのか?

 

 オレが砂漠の暑さに辟易していると、ロンメルさんがオレのほうに視線を向けた。やはり、軍人の中に女の子が二人というのは目立つのか、それとも珍しいのだろうか?

 

「グレミー中佐、この少女たちは?」

「あぁ……。エゥーゴとの戦いで捕虜にした……」

「リィナ・アーシタと申します」

「リィナ嬢の侍女を勤めます、マリハ・クトゥルと申します」

 

 リィナともども、かなり板についてきたカーテシーをもって一礼する。

 他のロンメル隊からは「ほぉ……」と声があがるが、ロンメルさんは厳しい目をしてオレを見ている。そりゃ、敵の捕虜で、しかも女の子が司令官であるグレミーと一緒にいるのだ。警戒して当然だろう。

 オレはそんなものだと割り切ってるが、リィナも気丈に、ロンメルさんの視線に耐えている。芯がしっかりしてるのは、シャングリラのころから知っているが、ここまでとは。

 

「グレミー中佐、いくら娘といえども、捕虜をこのように自由にさせておくのは……」

「いやいや、そうはおっしゃいますが、リィナ嬢はとても賢明で、一人前のレディーとして恥ずかしくない少女です。そして、このマリハは……」

 

 え、何を言う気だグレミー。あまりオレの株を上げすぎないようにしてほしいんだけど。

 

「それなりのMSの操縦技術と、いざという時の機転には目を見張るものがあります。彼女に助けられたこともありました。そうだな、アリアス大尉?」

「はい。大気圏突入の時、マリハ嬢のアドバイスがなければ、私は大気圏の塵となっておりました」

「ほぉ……」

 

 ロンメルさんの表情が変わったような。感心してるような、

 

「もし彼女がエゥーゴの捕虜でなければ、私の幕僚に加えたいほどです」

 

 そこまで!?

 

* * * * *

 

15:ジャンク屋ネキ

なんかオレの株がどんどん上がっていくような気がするんだが……どうしよう。

そもそも、アリアスを助けた時のアイデアは、スレのみんなからのものだし……。

 

16:名無しのオールドタイプ

でも、そこから具体的な救出方法をひらめいたのはネキだからな。幕僚は褒めすぎとしても、グレミーの評価は、それほど的外れではないと思うで。

 

17:名無しのオールドタイプ

シャングリラにいた時にも、Zやメタスを駆って、色々奮闘してたしな。

 

18:ジャンク屋ネキ

マジか……。

 

19:名無しのオールドタイプ

マジマジ。

 

20:ジャンク屋ネキ

でも、余り持ち上げられても困るんだよなぁ……。オレが彼らのために助言したら、その分強くなって、ジュドーたちが苦労するし……。

 

21:名無しのオールドタイプ

そんなこと言っても、彼らが困ったり、窮地に陥ったら、助けたりするんやろ?

 

22:ジャンク屋ネキ

まぁ……うん。

 

23:名無しのオールドタイプ

そんなお人よしなところ、とてもすこやで。

 

24:ジャンク屋ネキ

そんなこと当たり前やろ? 敵勢力とはいえ、こうして一緒の船にいる人たちを見捨てることなんてできへんで。

 

25:名無しのオールドタイプ

まぁな。でも、この戦争下でそんなことができるのが、やはりネキの特別なところだと思うぞ。

 

26:名無しのオールドタイプ

普通の兵士なんか、そんなこと思ったりしないもんな。

 

27:ジャンク屋ネキ

そういうものなんかな……。自分ではそんな特別な奴ではないと思ってるんだが……。

 

28:名無しのオールドタイプ

そう思ってるのは、ネキだけやと思うで。

 

* * * * *

 

 会談が終わった後、オレはロンメル師団のキャンプをうろついていた。MSの簡易整備所を見ていたら、そこは一年戦争時代のものと思われるMSの博覧会みたいなものだった。

 ザク……スレ民によれば、MSVに出てくる砂漠用のデザート・ザクというそうだ……や、ドム……正確には砂漠用のドワッジというらしい……といった、昔のMSがたくさん並んでいた。

 1stとアナザー限定ではあるがガンダムに慣れ親しんだ自分としては、まさに眼福といった感じだ。

 

 とはいえ……原作では、彼らはこんな骨とう品寸前のMSでガンダムチームに挑んで散っていった(スレ民談)わけで……。

 性能差と時代の流れの前にあえなく散っていった彼らは、どんな想いを抱いていたんだろうと、想いを馳せずにはいられない。できれば、この世界では、散るのは避けられないとしても、満足して散っていってほしいと願わずにはいられないのだが……。

 

 と、そこに。

 

「娘。そんなにここのMSが気になるか? グレミー中佐殿の秘蔵っ子殿はメカニックにも興味があるのかな?」

「ロンメル中佐」

 

 ロンメルさんがオレの後ろに立っていた。だが、グレミーからの紹介でオレのことを認めてくれたのか、警戒する様子はまったくない。でも、ベテランならではの隙の無さが隠しようもないほど、その身体から感じられる。もし暗殺しようとしたら逆に返り討ちにあってしまうのが目に見えるかのようだ。

 

「ジャンク屋をしていた身の上から、MSを見るのが好きなのです。それはそうと、私はそんな『秘蔵っ子』言われるような人ではありませんよ」

「そう謙遜することもあるまい。グレミー中佐は、相手の力量を見誤る人ではあるまい。その彼が言うのなら、君は彼の言う通りの娘だということだ」

「はぁ……」

「あとそれと、無理してそんなに堅苦しく振舞わなくてもいいのだぞ。ここはそんな形式ばったところではないのだからな」

「!?」

 

 オレの素を見抜かれてる!?

 

「気づいていたんですか、私……オレの素が違うってことを」

「もちろんだ。これでも、この砂漠で八年も部下を束ねて潜伏してきたのだからな。人を見る目はあるほうだと思っている」

 

 さすが歴戦の勇士ということか。

 

「いずれエゥーゴに戻るか……。できれば君とは戦いたくないものだな」

「そこまでわかるんですか?」

「人生経験というやつだよ」

「そうですか……。エゥーゴというより、エゥーゴにいる仲間たちの下に戻りたいんですけどね」

 

 オレが内心では、リィナ共々エゥーゴに戻ることを諦めていないというところまで見抜いてるとは……本当にさすがだ。

 そうだ。聞いてみたいことがあった。

 

「一つ聞いていいですか?」

「何かね?」

「どうして今まで、八年間も砂漠に潜伏してこられたんですか? 何か信じるものがあってのことですか?」

 

 オレの質問に、ロンメルさんは目を閉じて話し始めた。

 

「そうだな……。ギレン閣下の理想を信じてのことだ。いつか、彼の理想が実現することを信じて、その時のために牙を磨いてきた」

「……」

 

 その理想は間違っているのでは……と言おうとして、それを飲み込んだ。怒られると思ったからではない。彼にとって、ギレン・ザビの理想は自らの力と命を賭け、預けるに足る大切な存在だというのが、彼の様子や、彼らがここまで潜伏して戦ってきたその事実から感じ取られたから。

 例え、その理想が間違っていたとしても、それを信じて戦ってきた彼らの想いは偽りではない真実。そこに「正しい」も「間違い」もない。

 

 だから、オレはその代わりに、この質問を口にしていた。

 

「例え、その戦いの果てに、理想の実現を見ることなく、散ることになったとしても……?」

「あぁ、そうだ。自分の結末がどうなるかではない。その理想のために、どれだけ力を尽くせたか。それが重要なのだ」

 

 そう語るロンメルさんの姿を、オレはとても偉大に感じた。オレたちエゥーゴの敵なのだが、本当に英雄というのにふさわしかった。

 そして改めて思う。できれば彼には死んでほしくない。もし散る運命にあったとしても、彼が後悔するような戦いはしてほしくない、と。

 

 そこに爆音と、敵襲の報告が聞こえた。

 

* * * * *

 

 オレと一緒にテントに駆け込んだロンメルさんは、入るなり部下に問いただした。

 

「敵の規模、そして何者かはわかるか!?」

「敵は新型らしいですが、詳しくはわかりません。ザクのような機体が大半を占めていますが……」

 

 緊迫感に包まれるテント内。

 その中、オレは聞いてみることにした。

 

「敵の機体の映像を見せてもらえますか?」

「はい」

 

 そして見せてもらうと、それは、スレ民のみんな曰く、『ハイザック』と『マラサイ』とのことだ。いずれもグリプス戦役初期のティターンズ製MSとのこと。

 しかし、初期のものとはいえ、それでも一年戦争から七年後ぐらいの機体。ここに並んでいるものとは性能差は大きく違うだろう。

 

「ティターンズのMS、ハイザックとマラサイみたいですね。つい一年前に出てきた機体なので、性能を侮ることはできないと思います」

「ほう……? さすがグレミー中佐の秘蔵っ子、マリハ嬢。MSにも詳しいみたいだな」

「MS雑誌で見ただけですよ」

 

 と、そこでグレミーが。

 

「あのバーザムがいないってことは、衛星軌道上でやりあった残党とはまた別口のようだな。ジオンの残党を略奪ついでに狩る正規兵崩れの強盗団ってところか?」

「どうやらそうみたいです。通信を傍受したのですが、この町に『我々はティターンズの後継者である』『ジオンを討伐するから金品をよこせ』と要求しているようです。『拒むなら住民もろともせん滅する』とも」

 

 通信員の報告を聞き、オレは不快さに顔をしかめる。やってることは、ヤクザの総会屋と変わらないじゃないか。それでティターンズの後継者とは笑わせるなって感じだ。ティターンズって一応はちゃんとした軍事組織のはずだろ?

 そしてその想いは、ロンメルさんも同じだったようだ。立ち上がって口を開いた。

 

「そんな醜い心根で我らを討伐するとはなめられたものだ。あのハイエナどもに、真のジオンの兵の力を見せてやろう。出撃だ!」

 

 そしてテントを出ようとするロンメルに、グレミーが声をかけた。

 

「我々も出撃しますか?」

「いや。貴官らには、ダカールを抑えるという大任があろう。ここは我らで十分。貴官らは戦力を温存されよ」

 

 そう言って、ロンメルはテントを出ていった。

 

* * * * *

 

 そして出撃したロンメルさんの隊は、ロンメルさんのドワッジ改を先頭に、略奪者相手に奮戦した。

 デザート・ザクのマシンガンがハイザックをハチの巣にし、ドワッジ改がビームバズーカで別のハイザックの胴体に穴を開け、また接近してきたハイザックに対し、ヒートサーベルで一刀両断する。

 

 やはり、練度というものもあるだろうが、それ以上に信念に生きる者の強さというものを感じた。堅い信念を持つ者が、ヤクザまがいの奴らに負けるわけがないのだ。

 

 しかしそれも、ドダイに乗ったマラサイがやってくるまでだった。

 上空からの援護射撃に、ロンメルさんたちはピンチに陥った。地上のMSも反撃に転じ、そうしているうちに、一機のデザートザクが上から撃ち抜かれて破壊された。

 

 まずい、このままではロンメルさんたちがやられる!

 

 オレは思わず、グレミーに言っていた。

 

「グレミー、バウを使わせてくれ! ロンメルさんを助けに行ってくる!」

 

* * * * *

 

42:名無しのオールドタイプ

グレミーが、バウを使うのを了承してくれてよかったな。

 

43:名無しのオールドタイプ

しかも、グレミー専用の試作機やもんな。うかつにナッターアタックなんかしたらダメやでネキ。

 

44:ジャンク屋ネキ

わかってるわい! よかった、間に合った! ロンメルさんをやらせはしないぞ!!

 

45:名無しのオールドタイプ

おぉ、燃えてるなネキ!

 

46:名無しのオールドタイプ

でも本当にナイスタイミングだったわ。ロンメル隊、大破こそしていないものの、かなりやられてるみたいだもんな。

 

47:ジャンク屋ネキ

くらえや!!

 

48:名無しのオールドタイプ

おぉ、かわされたけど、向こうのマラサイ、かなりうろたえてるみたいやな。

 

49:名無しのオールドタイプ

向こうも経験あるだろうけど、ネキの攻撃がかなり殺気だってるからな。それに気圧されてるように見えるで。

やっぱり山賊まがいのことやってるから、根性が据わってないんやろう。これなら、ネキでも勝てるんやないか?

 

50:ジャンク屋ネキ

ヤクザに負けてたまるかよ!!

 

* * * * *

 

 空中からの攻撃の前に、一度は危機に陥ったロンメルの隊だったが、マリハがバウで駆けつけたのを機に、再び流れが変わった。

 マラサイは、マリハの猛攻撃にうろたえ、やがて応戦すらできずに撃墜されてしまった。

 それを見て、ロンメルはつぶやく。

 

「あのような年端もない娘に助けられるとは……それに飛行形態に変形できるMSも……。やはり、時代は変わったのかもしれんな……」

 

 そして苦笑を浮かべると部隊に号令をかける。

 

「よし、マリハ嬢の奮闘を無駄にするな! 我がロンメル師団の力を、山賊どもに見せつけてやるのだ!!」

 

* * * * *

 

 かくして、一度は不利になったが、ロンメルさんの隊はなんとか町を守り通すことができた。

 

 それから交渉も無事終わり、いよいよ出発の時となる。

 その場でロンメルさんは言った。

 

「マリハ嬢、君のおかげで助かった。部隊全員を代表して、礼を言わせてもらう」

「い、いや、オレはただ、ロンメルさんたちを助けたいと思っただけだから、そんな礼を言われるほどのことはしてないよ……」

「いや、君の奮闘がなければ、我々は負けないにせよ、大きな損害を被るところだった。エゥーゴにも君のような少女がいたとはな」

「そ、そんな大げさだって。オレよりジュドーたちのほうが……あ」

 

 またスレ民から「余計なことを!」と言われそうだけど、あれを言っておいたほうがいいだろうか。

 

「エゥーゴの一員であるオレが言うのもなんだけど、ガンダムチームには気を付けなよ。オレと年頃は同じだけど、オレ以上に練度は高いし、さっきオレが乗ったバウみたいに、飛行形態に変形できるMSもいるから、甘くみてるとやばいかもよ」

「ありがとう、マリハ嬢。君の意見、参考にさせてもらう」

「それと……グレミー」

「何か?」

 

 このお願いは聞いてくれるかな。同じジオンの部隊のためだし、聞いてくれるといいんだけど。

 

「バウ……とまではいかないけれど、予備の部品があったら、ロンメルさんたちにいくらか譲ってあげてくれないか? そうすれば、ロンメルさんたちも、今までより良い戦いができるかもしれないし」

「まだ部品には余裕があるから構わないが……いいのか? ガンダムチームを苦戦させることになるだろう?」

 

 まぁ、ジュドーたちには申し訳ないけどな。でもいいんだ。オレは複雑な笑顔を浮かべて答えた。

 

「あぁ。ロンメルさんたちには、少しでも悔いのない戦いをしてほしいからさ」

「わかった。それではさっそく手配しよう」

 

 そしてロンメルさんの隊に、ネオ・ジオン製のパーツを譲ったミンドラの艦隊は、再びダカールへ向けて出発した。

 ロンメルさんたちの感謝の声を背にしながら。

 

* * * * *

 

 後日談だが。

 ダカールに到着して数日経った頃、ミンドラにロンメルさんの隊の一員だったニキさんが訪れた。

 

 そして彼によって、ロンメルさんたちが、ジュドーたちガンダムチームに挑み、善戦の末壊滅したこと。

 妻子を持ち、若い者を死なすことを良しとせずに、ロンメルさんが彼に戦いの場から離脱するよう促したこと。

 そして……ロンメルさんが、その戦いに満足して散っていったことを知らされた……。

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

砂漠はまだまだ続くよ!
その道中でオレたちは、ひっそりと暮らすジオンの残党たちに出会った。
その中の一人、連邦軍に両親を殺された少女。オレは彼女の心を開きたくて頑張るんだけど、思ったよりその氷は厚くて……でも!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』

第14話『願い、娘よ』

忘れてたけど、彼女って、将来のあの人だったんだなぁ……



※次の更新は、3/12 12:00の予定です


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Act.14『願い、娘よ』

前回のサブタイの元ネタは、ガンダム0083の第4話、『熱砂の攻防戦』からでしたー!
当たった方はいるでしょうか?

さて、今回出てくるこの二人は、0088年当時は、このアフリカに潜伏していた、という設定にしています。
その後、オーストラリアのほうに逃れてきた、ということで。



 ミンドラは再び、ダカールに向けて砂漠を進んでいる。

 そんな中、ブリッジクルーへの弁当を持ってブリッジにやってきたオレは、そこにあるものを見た。

 

「あれは……?」

「村? おかしいな。確か地図では、あそこに町や村はないはずだったな、アリアス?」

 

 そう、砂漠に小さな村があったのだ。と言っても、バラックやテントが乱雑に集まっているだけの簡素なものだが。

 グレミーに聞かれて、オウギュストに代わってグレミーの副官となっているアリアスが答えた。その彼も首をかしげている。

 

「はい。確かそのはずですが……」

 

 と、そこに、通信オペレーターが報告を入れてきた。

 

「グレミー様、その村から通信です」

「なんと言ってきた?」

「『こちら、元ジオン軍アフリカ方面軍カークス中隊。現地にて潜伏するも、水、物資の残量少なし。物資救援求む』です」

「ほう……。ここにも、ジオンの志を抱いて潜む古強者がいたとはな」

 

 感慨深げに言うグレミーに対し、アリアスが答える。

 

「連邦はアフリカ大陸をあまり重視してはいませんでしたからな。残党狩りもそれほど厳しくはなかったそうです。だから、潜伏してる部隊も多いと思われます」

「なるほどな。よし、さっそくその村に向かうとしよう。同志に物資を援助しなくてはな」

「了解しました」

 

* * * * *

 

 その村に到着して物資を降ろしていると、作業を見ているグレミーとオレたちの下に、二人の人物がやってきた。

 30代ぐらいの、ジオン軍服を着た男と、リィナと同い年ぐらいの褐色の肌をした女の子だ。

 

「物資の援助、ありがとうございます。カークス中隊長、ヨンム・カークス中佐であります」

「ネオ・ジオン、地球侵攻作戦先鋒艦隊司令官、グレミー・トト中佐であります。こちらは、我が艦隊で保護している、リィナ・アーシタ嬢と、その侍女のマリハ・クトゥル嬢です」

「リィナ・アーシタでございます」

「マリハ・クトゥルでございます」

 

 オレたちがそう挨拶すると、カークスさんの後ろの女の子は、何か人見知りしたように彼の後ろに隠れた。その表情は、人見知りというより、オレたちに嫌悪感を持ってるという感じだ。

 

「申し訳ない。彼女……ロニ・ガーベイは、連邦軍の残党狩りで両親を失いまして……」

「そうですか……」

 

 カークスさんの話を聞き、オレはそうつぶやいた。

 おそらくそれで、連邦に対して、良い感情を持っていないんだろう。心を閉ざしてるように見えるのも、両親を失ったのが影響しているのかもしれない。

 オレたちに良い感情を持っていないのも、もしかしたらオレたちがエゥーゴの者だということに気づいたのかもしれない。

 

* * * * *

 

1:ジャンク屋ネキ

というわけで、ロニに嫌われてるっぽいオレ、涙目。

 

2:名無しのオールドタイプ

まぁ仕方ない。連邦軍に両親を奪われてるんじゃなぁ……。

 

3:名無しのオールドタイプ

エゥーゴも、連邦軍の一部みたいなものだしな。まぁ、あきらめるしかないで。

 

4:ジャンク屋ネキ

そうかぁ……。

 

5:名無しのオールドタイプ

ネキもしかして、ロニの心を溶かしてあげようとか考えてない?

 

6:ジャンク屋ネキ

!? なんでわかったんや!?

 

7:名無しのオールドタイプ

まぁ、ネキの性格を知っていればなぁ……。

 

8:名無しのオールドタイプ

でも、気持ちはわかるけど、無理はいけないと思うで?

 

9:名無しのオールドタイプ

戦火で両親を奪われた心の傷は、生半可なことでは消せないからなぁ。

 

10:名無しのオールドタイプ

ネキは親父を殺されたことないから、殺された子の気持ちわからんやろ?

 

11:ジャンク屋ネキ

そりゃわからんけどな。でもわからないなりにわかりたいと思うし、癒したいなら癒したいと思うんや。それっていけないことだと思うか?

 

12:名無しのオールドタイプ

ネキ……。

 

13:ジャンク屋ネキ

『わからないからって、感じる心を止めてしまってはダメなんだ。人の悲しさを感じる心があるってことを忘れたくない。それを受け止められる人間になりたい』。オレが前世で見たアニメで好きだった言葉や。

 

14:名無しのオールドタイプ

ネキ……。

 

15:ジャンク屋ネキ

な、なんだ、爆音!? ちょっと席外すやで。

 

16:名無しのオールドタイプ

おう、いてら。

 

17:ジャンク屋ネキ

あぁ、またな。

 

18:名無しのオールドタイプ

なぁ、お前ら。今のネキの言葉……。

 

19:名無しのオールドタイプ

あぁ。ガンダムUCだよな。

 

20:名無しのオールドタイプ

ネキ、見ていたアニメがガンダムだと知らなかったか、UCはアナザーだと思っていたかのどちらか説

 

* * * * *

 

 ミンドラの近くに戻ると、そこではミンドラのMS隊が出撃準備にかかっていた。

 オレは出撃準備の指揮をしていたグレミーに聞いてみた。

 

「どうしたんですか!?」

「衛星軌道上で襲ってきた奴らだ。おそらく、カークス中佐たちを狩りに来たのだろう」

「なんてことを……」

 

 オレは、あのティターンズ残党たちに対して、怒りを抑えきれなかった。

 いくらジオン残党とはいえ、こうして砂漠で細々として暮らしてる彼らを、点数稼ぎとばかりに狩るなんて。

 

 と、そこに。カークス中佐が慌ててやってきた。

 

「大変だ! ロニを、ロニを止めてくれ!」

「どうしたんです!?」

「ティターンズのMSが接近したのを見たとたんに、保管してあったザクⅠに乗って出ていったんだ!」

「なんだって!?」

 

 まさか、父と母の仇を討ちに行ったのか!?

 だけど、曲りなりにも1年前の新しいMSを相手に、旧ザクで挑むなんて無茶だ!!

 

「グレミー、何かオレに乗れるMSはないのか!? すぐに乗り込んで止めてくる!」

「予備のドライセンがある。それを使ってくれていい」

「頼む、マリハ嬢。ロニを助けてくれ!」

「わかった!」

 

 そしてオレはノーマルスーツを着ずに、ドライセンに乗り込みエンジンに火を入れた。

 

 だがその時、オレの脳裏にある疑問が浮かんだ。

 なぜロニがMSの操縦ができるか、と……。

 

* * * * *

 

 マリハの出撃を見送るグレミー。その彼にある通信が届く。

 

「オウギュスト副長か? なるほど……奴らの裏にはそういうことがあったのか。

 わかった、それでは至急、それ関連のデータをこちらに送ってくれ」

 

* * * * *

 

 さすがドライセンである。出撃して、そう時間も経たないうちに、ロニが乗った旧ザクが見えてきた。

 その時だ。オレの脳裏に、ロニの声が聞こえてきた。

 

(ティターンズ……連邦……許さない……許さない……!)

 

 これは……ロニの心の声……?

 そしてオレは察した。ロニがなぜMSを操縦できるのかを。

 

 だが今はそれより、ロニを助けるのが先だ。

 

 ところが、オレが追い付くより先に、やってきた残党軍のバーザムやハイザックが攻撃を仕掛けてきた!

 ロニの旧ザクは、それを必死にかわしながら応戦するが、やはり性能差がありすぎる。ロニがそれをかわすのがギリギリなのに対し、向こうは余裕でそれをかわし、反撃を返してくる。

 そうしているうちに、とうとうかわしきれなくなり、旧ザクの左腕が破壊された!

 

 そして、マラサイの一機が、ビームサーベルを片手に旧ザクに突撃してきた! そしてそれを突き立てようとする!

 

「マリハキーック!!」

 

 オレはドライセンのバーニアをフルパワーにし、一気に距離をつめ、そのマラサイを蹴り飛ばしてやった!

 しかし安心するのはまだ早い。横に回り込んだハイザックがビームライフルを構えた!

 

「くっ……!」

 

 オレのドライセンはロニをかばい、右腕を吹き飛ばされる! しかしまだだ! ロニをやらせはしない!

 オレは左腕にビームライフルを持ち直し、防戦を続ける。

 

 そのオレのドライセンに通信が入る。

 

『どうして……?』

「連邦でもエゥーゴでも、誰かを助けたいと思うのは当たり前のことだろ!?」

 

 そしてそのまま戦闘を続行。しかし、さすがに一対複数。しかもロニの旧ザクをかばいながらではかなりきつい。

 もう限界かと思ったその時。

 

 接近してきたマラサイが破壊された。村のほうからはミンドラのMS隊が。やっと味方が駆け付けてきてくれたのだ。

 

* * * * *

 

「な、なんだ……!?」

 

 ティターンズ残党軍のMSにあるデータが一斉に送信された。それを見た残党軍のパイロットたちは、皆、衝撃に表情を変えた。

 

 それは、彼らの組織への資金の流れを示すデータだった。

 

 そして、グレミー・トトの声が通信に乗って届く。

 

「ティターンズ残党の諸君。ご覧の通りだ。君たちの組織へは、アクシズの過激派、エンツォ・ベルリーニから資金が提供されている。全ては、私を追い落とし、ハマーン様の体制を揺るがすためである! そして、君たちのリーダー、サトウ大尉は、エンツォの手下であることが明らかとなった。そう、彼にティターンズとやらの理想など存在しない! 君たちは、エンツォと、君たちのリーダーの欲望の道具として使われていたにすぎないのだ! 君たちがこれを知り、どう考え、どう行動するかは、君たちに任せよう」

 

 その通信が終わるとともに、残党軍は戦闘をやめた。そして、一斉に、サトウの乗るバーザムに銃口を向ける。

 

「あ、あいつの言うことはでたらめだ! それに例えそうだとしても、ネオ・ジオンを討てるなら本望だろうが!」

 

 だが、彼の弁明は聞き入れられなかった。部下のMSから一斉に銃弾が放たれ、彼の乗るバーザムは穴だらけになった。サトウは苦悶の声も、憎悪の声もあげる暇すら与えられず絶命したのである。そしてバーザムは爆散した。

 

 ミンドラに対して通信が届く。

 

「我々はネオ・ジオンに降伏する。そして、ジャミトフ閣下の理想を裏切っていたことを、あの男の死をもってお詫びしたい」

 

* * * * *

 

 かくしてリーダーが自業自得の死を迎えて戦いは終わった。やれやれ、これで終わった……。

 と思うのはまだ早かった!

 

 ロニの旧ザクの右腕がぴくりと動き出したのだ! まさか、降伏したティターンズの奴らを撃つ気か!?

 オレは、ドライセンの左腕で、彼女の旧ザクの右肩をつかんで止めようとした。

 

『なぜ止めるの……!? パパとママの仇が……!』

「それ以上はやめな。それ以上踏み込んだらもう後には戻れないよ。あんたは、復讐の連鎖に巻き込まれてしまう」

『でも、それでも……!』

「いいかげんにしろ! あんたのパパやママはあんたにそんなことを望んでいるとでも思うのか!? 娘の幸せを望むのが、本当の両親じゃないのかい!? 憎しみが生み出した偽の両親に惑わされるんじゃない! 生きていたころ、両親があんたに何を言っていたのか思い出すんだ!」

『あ……』

 

 そして思い出してくれたようだ。ロニの旧ザクの右腕が再び降りて、その手からザクマシンガンが落ちた。

 

「ロニ……」

『連邦やティターンズを許したわけじゃない……誤解しないで』

 

* * * * *

 

 その次の日、オレは、カークスさん、ロニと、ロニの両親の墓前を訪れた。

 と言っても、木の板を墓標代わりに立てた質素すぎるものだが。

 

「カークスさん、ロニがMSを操縦できるのは……」

「あぁ。俺が教えたからだ……」

「ロニを自分たちの戦力とするために……」

「……」

 

 やはり……。果たしてそれが、ジオン再興のためなのか、それとも連邦への復讐のためなのかはわからないが……。

 だが、言わなければならないことがある。

 

「これ以上は何も聞きません。でも、一つだけ言わせてください」

「なんだ……?」

「オレには三年前から前の記憶がないんです。ですから一年戦争や残党狩りで家族を失ったあなた方の気持ちを本当にわかることはできません。ただ、とても悲しかったことだろうことはわかります」

「……」

「でも、だからといって、復讐と称して、関係ない人達を巻き込むのは間違っていると思います。そのことにロニを利用することも」

「……」

「『地獄を見たからって、他人にそれを押し付けていいってことはない』……オレが昔見たアニメビデオにあった、感銘を受けた言葉の一つです」

「マリハ嬢……」

「何を思って、何のために戦うかはわかりません。ですが、もう一度考えてみてください。何のために戦うのか。それが、あなたとロニの幸せにつながるのか、を」

「わかった。その言葉、しっかりと受け止めよう」

 

* * * * *

 

28:ジャンク屋ネキ

そういえば、カークスさんやロニって、ガンダムUCに出てきたあの二人だったんだな。

今になって思い出した。

 

29:名無しのオールドタイプ

そうやで。というか、今まで気づかなかったんかい。

 

30:ジャンク屋ネキ

あぁ。色々あって気づかなかったわ。

でも、カークスさんもロニも、考え直して、幸せになってくれるだろうか……。

 

31:名無しのオールドタイプ

きっと大丈夫や。ネキがあんなに必死になって動いて、そしてあれだけ説得したんやからな。

 

32:名無しのオールドタイプ

うん。きっと、原作とは未来が変わるはずや。

 

33:ジャンク屋ネキ

そうだな……うん、きっとそうだよな。

 

34:名無しのオールドタイプ

そうや。ところでネキ、さっき言ってた、『感じる心を止めてしまっては~』とか『地獄を見たからって~』って言葉、どこで知ったん?

 

35:ジャンク屋ネキ

あぁ。前世で借りた、ガンダムUCのビデオで知ったんや。

 

36:名無しのオールドタイプ

あぁ、やっぱり……。

 

37:ジャンク屋ネキ

嘘は言ってないで? あれ、アナザーガンダムやろ?

 

38:名無しのオールドタイプ

いや、それがな、ネキ。

 

39:ジャンク屋ネキ

???

 

40:名無しのオールドタイプ

ガンダムUCは1stのかなり未来の話なんや。だからあれはアナザーには入らないはずや。多分。

 

41:ジャンク屋ネキ

なんやて!? ガンダムUCはアナザーガンダムではないのか!?

……OTL

 

42:名無しのオールドタイプ

そうや。って、そんなに落ち込まんでも。

 

* * * * *

 

 と、スレ民とそんな会話をかわしながら、オレたちはダカールへの旅路を再開したのだった……。

 




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* 次回予告 *

到着したオレとリィナがダカールで見たのは、陳腐な話だけど、大人たちの堕落と腐敗だった。
オレは前世で色々見てきたからまだマシだけど、リィナはちょっと堪えてるみたい。
そんなリィナを気遣いながら、オレはアーガマがやってくるのを待っていたわけなんだが……。
ジュドーとリィナが再会したのもつかの間。ええ~!!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』

第15話『マリハの血』

いてぇ!! ってそんなものじゃないよこれ!?

※次の更新は、3/15 12:00の予定です


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Act.15『マリハの血』

前回の元ネタは、1stの13話、『再会、母よ……』からでした。当たった人はいるでしょうか?

当たった方には、作者からの祝福をプレゼントw

さて、今回、ある人物の設定を原作から大きく変えています。
これも、ネキが転生したことによる、改変の影響ということでw



 そして、オレたちを乗せたミンドラを旗艦とした地球侵攻艦隊の先遣艦隊は、ついにダカールに到達した。

 目的地が地球連邦の首都だけあって激戦になると思ったが、意外とそんなことはなかった。よほど弱体化していたのか、ダカールを守っていた連邦軍は、あっさりと先遣艦隊の奇襲を許し、これまたあっさりと撃破され、連邦首都は拍子抜けなほどあっけなく、ネオ・ジオンに制圧された。

 

* * * * *

 

1:ジャンク屋ネキ

というわけで、本当に楽勝だったなぁ……。鎧袖一触って感じだったわ。

 

2:名無しのオールドタイプ

まぁ、グリプス戦役のせいで、連邦軍も色々あったからな。

 

3:名無しのオールドタイプ

まぁ、連邦が腑抜けてたというのもあるかもね。

 

4:ジャンク屋ネキ

オレの前世での母国も、平和ボケが進んでいたら、こんな風になるのかなぁ……(遠い目

 

5:名無しのオールドタイプ

まぁ、あちらの国にはアメ〇カさんもいるからね。それはそうと、今はこっちよ。

 

6:ジャンク屋ネキ

そうやな……。みんなの話だと、アーガマとガンダムチームもこっちに来てるっていうし、無事にみんなと合流できるといいんだけど……。

 

7:名無しのオールドタイプ

それももちろんだけど、リィナをちゃんと支えてやらなあかんでネキ。

 

8:ジャンク屋ネキ

うん、わかってる。

 

9:名無しのオールドタイプ

あぁ、忙しかった……。

 

10:名無しのオールドタイプ

お疲れや。9、何の仕事してるん?

 

11:9

まぁ、ちょっとな。ある場所の警備を担当しとるねん。それと雑用な。

この後もまた、別のところの作業しに行くから、その時はまた席外すわ、すまんな。

 

12:ジャンク屋ネキ

おう。お前さんも大変やな。無理すんなよ。

 

13:9

おう、サンガツ。ネキもがんばれよ。無理しないようにな。

 

* * * * *

 

 というわけで、グレミーによって一流のレディーに仕上げられたリィナと、その侍女であるオレは、あちらの晩餐会、こちらのパーティと、ネオ・ジオンの鎮撫やイメージ戦略に走り回ることになった。

 

 まず最初は、地球連邦の大臣の一人が主催する小さな晩餐会からである。

 のだが……。

 

「……!」

 

 やはりというべきか、リィナは晩餐会に出席してる政治家とか財界人とかを見て愕然としていた。

 

「どうした、リィナ?」

「あの人たち、一体なんなの……? よくわからないけど……信じられない……」

 

 リィナが愕然としているのも無理はない。オレも、リィナと同じ感想だったから。

彼らの表情や言動からは、連邦という国や市民のことを考えるという気持ちがほとんど考えられず、ただ自分たちの身の安全や身分の保証、自分たちの利権など、自分たちのことしか考えていないように見受けられるのだ。自分たちのために、喜んで敵に媚びを売る輩がそこらにいた。

 

 そりゃあ、交渉には腹芸が必要だとか言われてるけど、これはそれの範疇を超えてるぞ。

 

 こんな奴らに比べたら、ジャミトフとか、ハマーンなどの他の敵勢力の政治家のほうが立派に見えるのは気のせいだろうか。正直、オレの前世での母国の政治家でも、ここまでではなかったんじゃないか?

 

 真に腐敗した政治家とはこんなものなのかと、唾棄を通り越して遠い目をしてしまうオレであった。

 

 ……いかんいかん。遠い目をしている場合ではない。リィナのフォローをしてやらなくては。

 

「気持ちはわかるけど、たいていの政治家ってあんなもんさ。気にしたほうが負けだ。あちらが心のこもってない笑顔でくるなら、こちらもそれでお返しすればいいんだよ」

「う、うん……」

 

 そして適当に受け答えをしたり、料理を楽しんだりした。

 それでも、やはりリィナには負担だったらしく……。

 

「すみません。少し中座させていただきます。マリハ、ついてきてもらえる?」

「もちろんです、リィナお嬢様」

 

 そしてオレは、リィナとともに会場を離れた。

 

「大丈夫か、リィナ? かなり消耗しているように見えるぜ」

「うん……。彼らがあまりに醜すぎて、気分が……。マリハは大丈夫なの?」

「まぁ、オレもいくらか堪えたけどな。オレは別のところで、あいつらほどではないけど、似たようなものは結構見てきたからな。慣れてきちゃったよ」

「そう……マリハは強いんだね」

「そんなことないさ。ただ鈍いだけだよ」

 

 と、そこに、いいところのボンボンらしい若者がやってきた。

 

「これはリィナ嬢。夜涼みですかな? そのようなみずぼらしい者ではなく、私と……」

「い、いやっ!」

 

 無理に引っ張っていこうとするボンボン。さすがにこれは見過ごすわけにはいかないな。リィナの侍女……いや、友人としては。

 

「やめてやれよ。嫌がってるだろ?」

「何? 下賤の者は黙っていろ」

 

 そう言われて、さすがにカチンときた。

 

「下賤で結構。薄汚れた狸よりはマシだね」

「貴様!」

 

 そう叫び、ボンボンは殴りかかってくるが、残念だが喧嘩事ならオレのほうが上だ。腰の入っていないボンボンの喧嘩なんかこわくもない。軽くいなし、キックをぶちかましてやる。

 

「お、おのれ……!」

 

 ボンボンはよほど怒ったのか、銃を抜いた。そこに。

 その手を抑える者があった。

 

「レムター殿、会場で銃を抜くのは禁止だと、父上に言われていませんでしたかな?」

「な、なにを……!」

「私はマシュマー様より、ここの警備と、もめごとの防止を命じられております。もしあえて銃を使われるのなら、私の職権に応じて、ネオ・ジオンの誇りのために処罰させていただきますが」

「ちっ! 覚えていろ、このことは父上に報告するからな! お前らもネオ・ジオンも後悔させてやる!」

 

 それにオレは、あざ笑って言ってやった。

 

「やれるものならやってみな。こんなことは言いたくないが、ネオ・ジオンに反抗できると思うならね。そんな力があったら、ダカールがネオ・ジオンに制圧されることもなかったろうな」

「……ちっ!」

 

 そしてボンボンは、憤懣やるかたないといった様子で、その場を後にした。

 

「ふぅー、言ってやった言ってやった。胸がいくらかすっきりしたぜ。あぁ、兵士さん、ありがとうな。助け船を入れてくれて」

「いえ、とんでもありません。マリハ嬢には、別のところでお世話になっておりますから」

「??」

「それでは失礼します。また何かありましたら、お申しつけください」

「あぁ、ありがとう」

 

 そしてその兵士は、会場のほうに戻っていった。

 再び沈黙。そしてリィナが再び口を開いた。

 

「ねぇ、マリハ。私やっぱり、この会場の人たちのような大人にはなりたくない」

「それでいいんだよ。リィナまであんなふうになることはない。あいつらを反面教師にすればいいんだ」

「うん……」

 

* * * * *

 

20:ジャンク屋ネキ

とうとうこの日が来たな……。このパーティの日に、ジュドーたちが攻めてくるんだったか?

 

21:名無しのオールドタイプ

あぁ。確かそのはずやで。

 

22:名無しのオールドタイプ

メガライダーからの砲撃が狼煙やで。それを合図に、ジュドーが潜入してくるはずや。

しっかり気張るんやで。ネキ!

 

23:ジャンク屋ネキ

おうよ!

 

24:名無しのオールドタイプ

それにしても、数日前から9、掲示板に姿を見せなくなったな。

 

25:名無しのオールドタイプ

そういやそうやな。よほど仕事が忙しいのかな?

 

26:ジャンク屋ネキ

一体、何の仕事してるんやろな……? おっと、パーティが始まったな。

 

* * * * *

 

 そしてオレたちも参加するパーティが始まった。ハマーンが乾杯の音頭を取り、それに壇の下の高官たちも応じる。

 その様子に、やはり不快感を隠しきれないリィナに、グレミーが言う。

 

「リィナ、良く見ておけ。此処に居るのは地球連邦の大人達だ、彼らはああして強い者に身を寄せるしか、生きる術を持たない連中だ。お前もそう思うだろう、マリハ?」

「まぁ、負けた国のお偉いさんっていうのはこんなもんだからね。歴史の中ではいくらでも見られた景色だと思うよ」

「ほう……? なかなか興味深いことを言うな」

「負けても気概を失わない連中は、こんなところにいないで、ゲリラやっているだろうからね。ただ、グレミーもハマーンも、この人たちの姿を目に焼き付けといたほうがいいぜ? こいつらみたいにならないためにも」

「ふ……痛いところを突くな」

 

 そう苦笑するグレミー。彼もハマーンもわかっているのだ。自分たちの勢力は、圧倒的というほどではない。連邦軍が態勢を立て直し、本腰になれば簡単に潰せるものだということを。下手を打てば、自分たちが、今見下ろしている者たちと同じになり果てるかもしれない、ということを。

 それがわかっている分だけ、グレミーもハマーンも、連邦の高官よりはマシなのかもしれない。

 

「心配するな。私も……そしておそらくハマーン様も、負けた時の身の処し方は心得ているつもりだ」

「ならばよし」

「ふ……これではどちらが上官かわからないな」

 

 そしてオレたちはハマーンやグレミーと別れ、会場の片隅でドリンクを飲んだり、食事を食べたりした。

 その途中、リィナに話しかける。

 

「大丈夫か、リィナ?」

「うん……、大丈夫。マリハがついていてくれるからかな? まだ少し辛いけど……」

「なぁに、それももう少しの我慢だ。情報ソースは不明だけどな。もう少ししたらエゥーゴがここに攻撃をかけてくるそうだからな」

「エゥーゴが? それじゃ……アーガマも?」

「あぁ。そうなれば、きっとジュドーとも会えるさ。それまでの我慢だ」

 

 オレがそう言うとともに、近くに爆音が響いて、会場の電気が消えた。それによって生じた混乱に乗じて、オレとリィナは会場を出た。

 

* * * * *

 

 オレとリィナが会場である迎賓館をさまよっていると、かすかに声が聞こえてきた。ハマーンと……そしてジュドーの声だ。ハマーンの声には、何か怒りのようなものが感じられる。

 

「ニュータイプなんて知らないね、俺はリィナを助けるだけだ!」

「この期に及んで私の感情で動くとは……初めは私に期待を抱かせて、最後の最後に私を裏切る……ジュドー・アーシタ、“お前も”だっ!!」

 

 そして銃声。

 いやな予感がして、オレたちは足を速める。

 

 そして曲がり角を曲がったオレたちが見たのは、ジュドーと、銃を持ったハマーンが対峙している場面だった。

 

「お兄ちゃん!」

「リィナ!」

「ふ、そういう事か……甘いな、グレミー・トトはジュドー・アーシタの切り札を持って居ながら、使い切れずに居たか」

 

 そして改めて、ハマーンは、ジュドーをかばうように立ちはだかったリィナ、そしてジュドーの二人に銃を向けた。

 やばい!

 

「二人そろって地獄へ行くんだな!」

 

 ハマーンが引き金を引き絞る!

 そこからは、もう無我夢中だった。

 

 オレは二人に飛び掛かり、押し倒すように倒れこむ。

 ハマーンの銃が火を噴く。

 

 そして脇腹に激痛。

 

「がぁ……!!」

 

* * * * *

 

35:ジャンク屋ネキ

ああああああっっ……がっ……!!

 

36:名無しのオールドタイプ

ネキ!?

 

37:名無しのオールドタイプ

大丈夫か、ネキ!? 二人をかばって銃弾を受けるなんて、無茶なことを!!

 

38:名無しのオールドタイプ

おい……。血に染まっていく部分を見るに、かなりやばいんじゃないか!?

 

39:名無しのオールドタイプ

あぁ。脇腹に直撃喰らっとるで……! このままじゃ、失血死しかねん……!

 

40:名無しのオールドタイプ

メイド服の脇腹がべっとり血に染まってるやんか……!

 

41:ジャンク屋ネキ

ううっ……ぐっ……! はぁ……はぁ……。

 

42:名無しのオールドタイプ

ハマーンは、ジュドーの怒りオーラを見て逃げ出したが、今はそれどころじゃないな……。

 

43:9

会場にトラブルが起こったんで手が開いたわ……って、ネキが負傷!?

 

44:名無しのオールドタイプ

あぁ。ハマーンの銃弾を脇腹に喰らって、やばい状況や……!

 

45:名無しのオールドタイプ

原作でのリィナよりひどい状態やで……!

 

INFO:ID:Sd5qD4xr(※マリハのIDである)がログアウトしました

INFO:ID:Sd5qD4xrが再ログインしました

 

INFO:ID:Sd5qD4xrがログアウトしました

INFO:ID:Sd5qD4xrが再ログインしました

 

46:名無しのオールドタイプ

ログアウトとログインが連続しとる……!

ネキの意識が、失血と痛みで、途絶えかけてるんや……。

 

47:名無しのオールドタイプ

早くどうにかしなきゃ、マジで死んでしまうで……!

 

48:9

くっ……! こうなったら、警備とか仕事がとか言ってる場合じゃねー!

俺がなんとかしてみる。ネキ、もう少し耐えてくれや!

 

49:名無しのオールドタイプ

おい、9、何する気や!?

 

* * * * *

 

「おい! (俺的に)緊急事態だ! 二人ほどついてこい! それと衛生兵も一緒に来てくれ! それと、病院に連絡も頼む!」

「わ、わかりました!」

「了解しました!」

 

 そして俺は、部下二人、そして衛生兵と共に、彼女のいる場所へと走って向かった。

 マリハ嬢は……いや、ネキはこの身に賭けても死なさない!!

 

* * * * *

 

 一方オレ……マリハは、なんとか意識を取り戻していた。とはいえ、激痛は続いてるし、出血は止まらない。

 この場には、逃げ出そうとした高官たちもいたが、彼らはリィナが説得して引き返させた。

 

 あ、やば……また意識が途切れそうだ……。視界がぼやけて……。というか、冥土への門が近づいている感じがする……。

 まぁ、リィナが無事だっただけでもよしとすべきか……な……。

 

「マリハ、しっかりして……!」

「ありがとよ……リィナ……お前、本当に凛々しくなったな……」

「グレミーの教育がよかったのよ、きっと。それより、もうしゃべらないで……助からなくなるわ……」

 

 と、そこにネオ・ジオン兵が四人駆け付けてきた。タンカをもって。

 

* * * * *

 

50:名無しのオールドタイプ

えええええ!? お前、ネオ・ジオン兵だったのかよ!?

 

51:名無しのオールドタイプ

しかもまさかの、ラド・カディハ!!

 

52:名無しのオールドタイプ

原作でリィナを助けたネオ・ジオンの徴用兵!!

 

53:9改めラド・カディハ

あぁ。今まで黙っていてすまんな。気が付いてたらラドに転生していたんや。

しかも、現地徴用兵ではなく、マシュマー様のサンドラに所属する小隊長というボーナスつきでな。

それで、ネキが最初に訪れていた晩餐会の会場や、ここの警備をやっていたんや。

 

INFO:ID:Sd5qD4xrがログアウトしました

 

54:名無しのオールドタイプ

ああっ、ネキが! とうとう本格的に意識が途切れた!

 

55:ラド・カディハ

だべってる余裕はなさそうやな。俺はこのままネキに応急処置を施して、病院に連れて行く。

みんな、ネキが助かるのを祈っていてくれや。もちろん、俺としてもネキを助けるために全力は尽くすで。

 

56:名無しのオールドタイプ

任せたで!

 

57:名無しのオールドタイプ

頼むで! なんとしても、ネキを助けてくれ!

 

58:ラド・カディハ

おう!

 

* * * * *

 

「それではリィナ様。小官はこのまま、マリハ嬢を病院に搬送いたします。後はお任せください」

 

 そう言って一礼するラドに、リィナは立ち上がり、毅然とした、でもどこかすがるような表情をしてこたえた。

 

「えぇ、お願いします。ネオ・ジオンの名誉にかけて、彼女を助けてあげてください」

「はい。ネオ・ジオンと、私の名誉にかけて」

 

 そしてラドは、マリハを乗せた担架を、ちょうどやってきた救急車に乗せて迎賓館を後にした。

 

「マリハ……大丈夫だよね、お兄ちゃん……?」

「あぁ。あいつはそんなに簡単に死ぬタマじゃないさ。さぁ、俺たちも早く脱出しようぜ」

「うん……」

 

 そしてリィナはジュドーとともにZZ(ダブルゼータ)ガンダムに乗り込み、迎賓館から脱出した。

 

 ダカール奪還のために進軍してきた、カラバのGMⅢ部隊と入れ違うように……。

 




ファンアート募集中です。

* 次回予告 *

なんとか一命をとりとめたオレは、別なネオ・ジオンの艦の中で目が覚めた。オレを助けてくれたのは、意外なあの人だったんだ。

その一方、アーガマでは大変なことが起こってた。
ビーチャの所業に腹を立てたルーが、アーガマを家出ならぬ艦出しちゃったんだって。
それで、グレミーに出会って拾われて、どうなっちゃうの!?

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』

第16話『ルーの脱走』

ビーチャ、自業自得……。

※次の更新は、3/18 12:00の予定です!


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Act.16『ルーの脱走』

前回の元ネタは……あえて答えを言わなくてもいいですよねpart2でしたね。はい。『リィナの血』からでした。

さて、今回はなんでしょう? ヒントはZガンダムですw


 気が付くと、オレはミンドラの医務室みたいなところにいた。でも、どこか微妙に違う。別のエンドラ級なんだろうか?

 だけど、医務室で目覚めたのはこれで二度目だな。

 

 そこでふと思い出した。ここまでに起きたことを。

 

 あぁ……リィナをかばって重傷を負った後、治療を受けてこの船に引き取られたのか……。またしばらくネオ・ジオンから離れられなさそうだが、まぁ、リィナとジュドーが再会できてアーガマに戻れたみたいだし、それでよしとするか。

 

 そう思っていると、医務室の扉が開いて、誰かが入ってきた。それは……。

 

「目が覚めたか、マリハ・クトゥル。助けることができて何よりだ」

「まさか、あんたに助けられるとはな、マシュマーさん。礼を言わせてもらうよ」

 

 そう。軍服が袖がない若干ワイルドなものになっているが、薔薇の騎士ことマシュマー・セロだった。よく見ると、目つきもちょっと鋭くなっている。

 

「当然のことをしたまでだ。君には立ち直るきっかけを与えてもらった借りがあるしな。それに、私が助けたわけではない。礼を言うなら、部下のラド・カディハに言うのだな。彼が処罰されるのを恐れず、部下を率いて君を助けてくれたのだ」

「そうだったのか……。マシュマーさん、彼を処罰するわけないよな?」

「むろんだ。傷ついた者を助ける騎士道にのっとった行い、罰するわけにはいくまい」

 

 よかった。その雰囲気や顔つきから、かなり厳しさが感じられたが、根は騎士道を奉ずる、あのマシュマーさんのままのようだ。

 

「既に、アーガマには捕虜返還交渉を打診してある。もうすぐアーガマに帰れることになるだろう。それまでゆっくり身体を休めているといい」

「あぁ、ありがとう。そうさせてもらうよ」

 

 オレがそういうと、マシュマーさんはかすかに微笑んで、医務室を出ていった。

 でも本当によかった。強化されたと聞いたから、どんな風になったのかと思ったが、根は前のままのようだ。

 

* * * * *

 

1:ジャンク屋ネキ

というわけで、なんか助かったジャンク屋ネキです。久しぶり。

 

2:名無しのオールドタイプ

ジャンク屋ネキ!

 

3:名無しのオールドタイプ

ネキ! 心配したで!

 

4:名無しのオールドタイプ

本当に助かってよかったで……!(涙 ラドニキ、本当にお手柄やで!

 

5:ラド

本当に間に合ってよかったで……。処分を覚悟して助けたかいがあったってもんや……。

 

6:ジャンク屋ネキ

まさか、スレ民に助けられたとは。真実はなんとやらだな。

それで、この船にいる経緯なんだけど、どうなったん?

 

7:ラド

あぁ。まずは病院にて本格的な治療をしたんだけどな。治療が終わったところで、エゥーゴ&カラバの攻勢が激しくなってきて、ネオ・ジオン軍がダカールから撤退することになったんや。それで、ネキを病院に残しておくわけにはいかない、ということで、マシュマー様の船、サンドラに収容することにしたってことやで。

 

8:ジャンク屋ネキ

そうだったのか……。色々と手間をかけてしまってすまんな。

 

9:ラド

謝らなくてもいいで。病人をそのままにしておくわけにはいかんかったし、療養するなら、ちゃんと清潔なところのほうがええやろ。それに、収容することを決めたのは、マシュマー様だったしな。

 

10:ジャンク屋ネキ

そうか……。

 

11:ラド

でも本当に危なかったで……。お医者様の話では、もう数十分病院に来るのが遅ければ助からないって言われてたからな。

 

12:名無しのオールドタイプ

うわぁ……。

 

13:ラド

でも不思議なこと言ってたな。ネキの身体、いくらか遺伝子レベルで強化されてるみたいって言ってたわ。それのおかげで助かったって。

 

14:ジャンク屋ネキ

マ?

 

15:ラド

あぁ。もし普通の人の身体だったら、絶対間に合わないところだった、って言ってたわ。

 

16:ジャンク屋ネキ

マジか……。

 

17:名無しのオールドタイプ

またネキに対する謎が増えてきたなぁ……。

 

18:名無しのオールドタイプ

ジャンク屋ネキ、強化人間疑惑か……。でも、精神は全然安定してるし、普通の人にしか見えないもんな。

 

19:ジャンク屋ネキ

あぁ。ただ、普通の人とは違うのは、ちょっと思い当たりあるねん。ラニの一件で、彼女の心の声が聞こえたり、ハマーンやプルと接触した時に、何かビジョンが見えたりとかな。

 

20:名無しのオールドタイプ

そうか……。そういえば、カミーユと初めて会った時にも、ビジョンが見えたとか言ってたな。

 

21:ジャンク屋ネキ

まぁ、強化人間だろうがニュータイプだろうがネクスタントだろうが、オレがオレである限り、気にせんけどな。出自について悩むだけ損やろ。

 

22:名無しのオールドタイプ

ポジティブやな、ネキ。それとネクスタントは作品が違うで。

 

* * * * *

 

 一方、こちらはアーガマ。捕虜交換の申し出は、既にこちらにも届いていた。

 

「やっと、マリハが帰ってくるのか。本当によかったぜ……」

 

 と安心したように言ってるのは、涙ぐんでるモンドだ。彼は、マリハが重傷を負ってネオ・ジオンに引き取られたと聞いた時から、彼女のことをとても心配していたのだ。毎日、ジュドーにマリハについての続報がないか聞いてくるぐらいに。

 

「あぁ。こんなにうれしいことはないぜ。本当によかった」

 

 ビーチャもそう言うが、それに対してジュドーが苦言を言う。

 

「ビーチャ、お前なぁ……。確かにマリハが帰ってくることは嬉しいけど、ルーのことはいいのかよ」

「あんなアーガマを置いていくような女のことなんか知るかよ」

「もう。誰のせいで、ルーがアーガマを出ていったと思ってるの?」

 

 ルーのことをつまらなさそうに吐き捨てるビーチャに、リィナがそう怒る。

 

「俺のしたことなんか大したことないだろ? なのに怒って出ていっちまいやがってよ」

「今、自分がどこにいるのか、もう一度自覚して考えてみたら?」

「うぐ……」

 

 エルの言葉に、ビーチャはぐうの音も出ないほどに言葉に詰まる。

 そう、ビーチャは今、アーガマの独房の中にいるのだ。彼がしでかしたことによって。

 

 そこで、大気圏突入での戦いで助けられ、居候としてアーガマに居ついていたエルピー・プルがぽつりつぶやいた。

 

「ルー、大丈夫かな……? 戻ってきてくれるといいけど……」

 

 そのプルに、ジュドーが意地悪そうに返した。

 

「大丈夫だよ、プル。帰ってこなかったら、ビーチャをルーの分まで、1日24時間働かせればいいんだから」

「なんでだよ!?」

 

 そう、ビーチャ以外のみんなから心配されるルーがどこにいるかというと……。

 

* * * * *

 

「まったくあいつら……もうこれ以上付き合いきれないわ!」

 

 ルーはそうぷんぷん怒りながら、ウェイブライダーを飛ばしていた。

 

 事の始まりは、ダカールを出発してすぐの戦闘。

 そこでビーチャは、なんとルーの(ゼータ)ガンダムを盾にして、グレミーを撃退したのだ。マシュマーが知ったら、「騎士道にあるまじき行い、許せん!」と激昂するところだろう。

 何はともあれ、そんなことをされたら、ルーならずとも怒るのは当然のこと。かくしてルーは、仲間を人質や盾にするような奴らと一緒にいるのは御免と、堪忍袋の緒を切ってしまい、家出ならぬ艦出を敢行した、という次第である。

 

 とはいえ、戦いが終わってすぐに飛び出したので、食料とか水とかの準備ができているわけではない。艦出を決行してしばらくすると困ることになった。もう、「無人島に家出」のエピソードの〇び太の心境である。いや、ルーはドラ〇もんについて知らないのだが。

 

「うーん、困ったなぁ……。どこかで補給しないと……。いっそ、ネオ・ジオンに寝返っちゃうとか?」

 

 そんな不穏なことを言いながらウェイブライダーを飛ばしていると、あるものを見つけたようだ。

 

「あんなところに町が? ラッキー! 神様が、かわいそうな私に助けをくれたのね!」

 

 さっそく見つけた町……ガルターヤの近くにウェイブライダーを着陸させ、適当にカモフラージュさせると、ルーはるんるん気分で街へ向かっていった。

 

* * * * *

 

 一方、こちらはグレミー。原作では撃墜されて、流れ流れて死にかけながらガルダーヤにたどり着いた彼だったが、こちらではちゃんとミンドラに乗ってやってきていた。

 とはいっても、この町から離れたオアシスにミンドラを着陸させた後、砂漠用のジープに乗ってやってきたのだが。さらに言うと、ガルダーヤは諸事情で検問が厳しいので、偽名と変装と賄賂を使って潜入に成功している。

 

 そこまでして、グレミーがここに潜入した理由。それは……。

 

「それでは、ディドー殿、よろしく頼みます」

「こちらこそ。町解放のため、ネオ・ジオンの支援を受けられることに感謝する」

 

 町にある酒場の一角にある小部屋で、グレミーが握手した男は、ディドー。民兵組織『青の部隊』のリーダーである。

 今回、グレミーは、ミンドラ隊と『青の部隊』との提携交渉のために、ここに訪れていたのである。

 

 さて、交渉を成立させたグレミーが、ディドーの後に続いて小部屋を出ると……。

 

(あ、あれは……!)

 

 グレミーはある人物を見つけてしまった。そのことに、再び彼の胸はときめいてしまう。今まで休眠状態だった彼の恋心に、再び火がついたのだ。

 彼はさりげなく、ルーの隣に座ると、マスターに言った。

 

「マスター、隣のお嬢さんに、何かソフトドリンクを」

「あいよ」

「ありがとう……って、え!?」

 

 ルーは隣を見て、驚き、次の瞬間には顔をしかめた。何しろ隣にネオ・ジオンの士官が座っていたのだ。しかも、なぜだろう。何か苦手な感じがする。

 だが、そのルーの表情は、彼女に会い、一瞬にして脳内がピンクに染まったグレミーには見えなかったようだ。

 

「久しぶりですね、ルーさん。こんなところで再会できるとは」

「そ、そうね、おほほほほ……。というか、私はあなたに会ったことはないし、あなたのことを何も知らないんですけど?」

「そういえばそうでしたね。あなたにこうして会えたうれしさから、つい間違ってしまったようです」

「そう。でも言っておくけど、私から情報を抜こうとしても無駄よ。今の私は、ただの脱走兵なんだから」

「そうなのですか? あれだけの実力を持ち、美しいあなたがアーガマを脱走するなんて、何があったのです?」

 

 そのグレミーの言葉に、ルーは彼に半眼を向けた。

 

「あなた、この前の戦いのことを忘れたの? 私に会えたうれしさとやらでボケちゃった? 私を盾にするあいつらに嫌気がさして逃げ出してきたのよ。あなたこそ、どうしてここに?」

「あなたに言っても大丈夫かどうか迷いますが……」

 

 そう考え込むグレミーだったが、やはりルーを前にすると甘くなってしまうようだ。

 結局、機密よりルーへの愛が勝り、口を開いてしまう。

 

「いいでしょう。今のあなたは脱走兵なんだから。実は、このガルダーヤを我が軍の拠点にするために攻略作戦を進行中でして。その一環として、ガルダーヤの白人からの解放を目的とする『青の部隊』との交渉に来ていたのです。利害は一致していますからね」

 

 ネオ・ジオンの作戦の情報の一環を聞き、ルーは席を立とうとしたが思い直した。自分は今はアーガマの脱走兵。彼らとは関係ないのだから。

 

「それはそうとルーさん。泊る所がなくてお困りでしょう? ミンドラを近くに停泊させているので、そこに泊まりませんか?」

「いいの? というか、いかがわしいことをしようとしたら、けり倒すわよ」

「しませんよ! これでも、女性には優しくしなさいと教育は受けています」

「ならお世話になろうかしら。ただ、気が変わったら、こっそりミンドラを出ていくかもしれないわよ?」

「かまいませんよ。あくまで客人としてお迎えするだけで、捕虜扱いというわけではありません」

「それならお言葉に甘えるとしましょうか」

 

 そしてルーは、グレミーとともにミンドラに向かっていった。

 その後、グレミーが副官代理のアリアスに苦言とお小言をもらったことは言うまでもない。

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

いよいよガルダーヤの町で俺を引き渡すことになった。
でもとんでもないことに、そこにグレミーと青の部隊が、街を手に入れようと攻めてきたんだ!

オレたちは頑張って町を守ろうとするけど、やっぱりルーさんがいないと大変。ルー、カムバーック!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』

第17話『ルー・リターン』

えぇ、貴方たち本気なんですか!?

※次回の更新は、3/21 12:00の予定です!


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Act.17『ルー・リターン』

はい、前回のサブタイトルの元ネタは、Z第4話『エマの脱走』からでした。
さて今回は?

なお、部下たちは別に、マシュマーに洗脳されているわけではありません。みんな、マシュマーに染められただけの大馬鹿野郎ってだけですw



38:ジャンク屋ネキ

捕虜交換についての詳細が決まったみたいやで。

 

39:名無しのオールドタイプ

おー、よかったなネキ!

 

40:名無しのオールドタイプ

やっと、シャングリラの面々と再会できるのか。ここまで長かったなぁ。

 

41:ジャンク屋ネキ

本当や。シャングリラでみんなと、マシュマーさん相手に騒いでいたころが遠い昔に思えるわ……。

 

42:名無しのオールドタイプ

まったくやな……。ネキがここにはじめて書き込みしたのも、遠い昔になりよったなぁ……。

 

43:名無しのオールドタイプ

それでどういうことに決まったん?

 

44:ラド

マシュマー様の話では、数日後、近くにあるガルダーヤって町の近くで引き渡すらしいで。ちなみに無条件や。

 

45:名無しのオールドタイプ

うひゃー、さすがマシュマーさん。無条件で引き渡すとは、太っ腹やな。

 

46:名無しのオールドタイプ

マシュマーさん、なんだかんだ言って、根はいい奴だもんな。根はいいまま、甘さが消えたというか。

 

47:ジャンク屋ネキ

あぁ、それはオレも思った。根は良いままだけど、甘さがなくなって厳しくなった、というか。でもかすかに優しさが残っているんだよな。

 

48:名無しのオールドタイプ

おや、もしかしてネキ、惚れたか?

 

49:ジャンク屋ネキ

なんでやねん! オレは元男やぞ! ……いててて。

 

50:ラド

ネキは手術したばかりなんだから、あまりからかわないであげてや。それで傷口が開いたらしゃれにならん。

 

51:名無しのオールドタイプ

そういえばそうやったな。気を付けるわ。

 

* * * * *

 

 そしてその数日後、捕虜交換の日がやってきた。

 ガルダーヤの町の外に、アーガマとサンドラが並び、二隻の船の間にそれぞれのクルーが並んでいる。

 そして、マシュマーさんの手で、オレがアーガマ側に引き渡され……。

 

 どかーん!!

 

 そこで爆音が響いた。

 

「な、なんだ!?」

 

* * * * *

 

 ガルダーヤ解放作戦を開始したミンドラのほうでも、街の外にアーガマが停泊していることは見えていた。

 そのことに、グレミーの副官代理、アリアスが驚愕する。

 

「な、なぜこの町にアーガマが!? グレミー様、まさかあの少女が……」

 

 だが、その懸念にグレミーは首を振った。

 

「いや。あの時、ルー・ルカはただの脱走兵と言っていたが、声色からその言葉に嘘偽りはないと判断した。それに、この艦から怪しい電波の発信は感知されなかったし、そもそもこの作戦のことを知っていたなら、既に何らかの対策はとっているはずだろう」

「な、なるほど……」

「だがこれは好機。ガルダーヤは青の部隊に任せて、我が部隊にはアーガマを狙えと伝えろ」

「アーガマと並んで停泊しているサンドラはどうなさいますか?」

 

 それに対し、グレミーは厳しい表情を浮かべて答えた。

 

「アーガマと一緒にいて何もないということは、敵に内通していた可能性が高い。遠慮は無用だ。一応、積極的に狙うな、とは伝えておけ」

「はっ」

 

* * * * *

 

 さて、こちらはアーガマです。

 ミンドラがこちらに攻めてきて、アーガマとサンドラ、両艦のクルーの間で緊張が高まっております。

 

 さっそく、モンドが言う。

 

「な、なんでネオ・ジオンがここにやってくるんだよ。まさかお前たち、マリハを餌に……!」

「そんなわけはないだろう! 私は騎士道精神に反することをやる男ではない!」

 

 そう言うマシュマーさんだが、そこにビーチャもかみつく。

 

「ネオ・ジオンの奴の言うことなんか信用できるかよ!」

 

 ルーを盾にした奴が言うことか?

 

 それにしても、まさかこれが原因で交渉決裂か? オレはまた、サンドラにUターンか?

 オレがそう思って、遠い目でいたところで。マシュマーさんは明後日の方向に暴走を始めたっぽかった。

 

「よかろう! お前たちがそういうのなら、我々の行動そのもので、潔白の証をたててやろうではないか!」

「は?」

 

 突然のマシュマーさんの宣言に、ブライトさんがあっけにとられた。

 アーガマクルーたちがあっけにとられたのに構わず、マシュマーさんは部下たちに指令を飛ばした。明後日の方向の指示を。

 

「わがサンドラのクルーたちよ! 攻めてきているネオ・ジオン隊を迎撃せよ! 我らの手でアーガマを守り、我らの身の潔白を、我らの騎士の心に偽りがないことを知らしめるのだ!」

 

 はい!? 何言ってるんですかこの人!? 味方であるネオ・ジオンと戦うって本気ですか!?

 だがそう思ってあっけにとられているオレとアーガマクルーたちをしりめに、サンドラのクルーたちは少しの戸惑いの後……。

 

『おーーーー!! 騎士の誇りのために! マシュマー様、万歳!! ハマーン様、万歳!!』

 

 そう叫び声をあげると、サンドラのパイロットたちは、そろってガ・ゾウムやガルスJなどのMS(モビルスーツ)に乗り込んでいく。マシュマーさんも、カスタマイズされて前の機体より姿が変わっているっぽいガルスJ……聞いた話では、サイコミュも搭載されているらしい……に乗り込んでいく。

 え、マジで? マジで友軍と戦うんですか? みんなマシュマーさんに洗脳されてるんですか? それとも、皆さん全員大馬鹿野郎なんですか?

 

 そして出撃していくサンドラのMS隊。ブライトさんはそれを呆然と見送っていたが、やがて我に返って曰く。

 

「何をしているみんな! みんなも直ちに迎撃態勢をとれ! マリハ、お前はまだ病み上がりだ。アーガマ内に退避していてくれ!」

「お、おう!」

 

 そしてジュドーはZZ(ダブルゼータ)、エルはガンダムMK-Ⅱ(マークツー)、ビーチャが百式に乗り、そしてモンドと、プルがメガライダーに乗り出撃していく。

 

* * * * *

 

55:ジャンク屋ネキ

というわけで、アーガマとサンドラの連合軍と、グレミーのミンドラ隊との戦いが始まったわけだけど……。

 

56:名無しのオールドタイプ

街も守りつつ、アーガマとサンドラも守らなゃいけないから大変だのう。

 

57:名無しのオールドタイプ

ZZ、百式、そしてサンドラ隊(主力)がミンドラ隊と、そして、MK-Ⅱ&メガライダーとサンドラ隊(一部)が街を守って旧型のMS部隊と戦うという構図になってるね。

 

58:名無しのオールドタイプ

ZZチームはなんとか互角に渡り合ってるけど、Mk-Ⅱとメガライダーがかなり苦戦しているなぁ。

 

59:名無しのオールドタイプ

数の差もあることながら、旧型のMSというが、結構動きとか良すぎるんじゃね?

 

60:名無しのオールドタイプ

パクった連邦軍のパーツを使って近代化改修してるんかなぁ。少なくとも、グリプス戦役初期のMS並みの動きしとるで。それで、数が多いとなればなぁ。

 

61:ラド

正直、こっちのほうも少しきついで。突破されないように踏ん張るのが精いっぱいや。

 

62:ジャンク屋ネキ

頑張ってや、ラドニキ。オレは応援しとるで。

 

63:名無しのオールドタイプ

色々な要因あるけど、ちょっとアーガマ側のチームワークが乱れてるのもあるんでない?

 

64:名無しのオールドタイプ

やっぱり、ルーが抜けているのが大きいんかなぁ。

 

* * * * *

 

「もう、あいつら、めっちゃ苦戦してるじゃない! 見てられないわね!」

 

 ルーは、ミンドラの窓から、アーガマ&サンドラとミンドラ&青の部隊の戦いを見て、そう文句を言っていた。

 ミンドラ連合軍のほうが数がやや多いとはいえ、彼らの戦い方は、いつもの戦い方とはくらべものにならないくらい精彩に欠けていた。

 なんとかやられないように踏ん張っているが、本来ならばあれだけの敵に苦戦するわけないのだが……。

 もう敵に主導権を取られて振り回されてるという感じだ。

 

「もう仕方ないわね。やっぱりあいつら、私がいないとダメね!」

 

 そう言うとルーは、自分にあてがわれたミンドラの個室を飛び出した。

 

 そしてミンドラのブリッジ。

 

「ぐ、グレミー様、MS格納庫のハッチが開いています!」

「そうか……」

 

 アリアスの報告に、グレミーは少し落胆しながらつぶやいた。すぐにMS格納庫の中のZガンダムから通信が入る。

 

「ごめんねグレミー。やっぱりあいつら、放っておけないから帰るから!」

 

 そう言うと、爆音が響き、(ゼータ)ガンダムが飛び立っていった。帰りの駄賃に格納庫を潰さなかったのか、せめてもの礼か。

 

「グレミー様、(ゼータ)に追撃をしてもかまいませんな?」

「あぁ、仕方あるまい、やってくれ」

「了解! 前からあの娘には信用ならなかったのだ!」

「……」

 

 そしてZガンダムは、ミンドラからの対空砲火を必死によけながら、戦場へと向かっていった。

 

* * * * *

 

 一方そのころ、ガルダーヤの町の前では、サンドラのMS隊とともに、Mk-Ⅱとメガライダーが必死に、青の部隊のMSと戦っていた。

 

「わーん、こんなに一杯、対処しきれないよ~!!」

 

 思わず泣きごとを発するプルに、Mk-Ⅱのエルが言い返した。

 

「弱音吐いてると、ジュドーに怒られちゃうよ! もっとキリキリ戦う!」

「わーん、怒られるのやだー!!」

 

 半泣きになりながらも、必死にメガライダーを駆るプル。エルも、接近してくるMSに、ビームライフルを撃ったり、ビームサーベルで切りかかったりするが、やはり数の差はいかんともしがたい。

 

 と、そこに!

 

 接近してきたザクⅡの一機が、背後からビームを撃ち抜かれて爆散した!

 

* * * * *

 

70:名無しのオールドタイプ

おー、やっとルーさんが帰ってきてくれたな!

 

71:名無しのオールドタイプ

やっぱり空中からの攻撃は強いな。次々と、青の部隊のMS撃ち抜いていってるで。

 

72:名無しのオールドタイプ

青の部隊も、空にマシンガン撃ったりしてるが、なかなか当たらないな。

 

73:名無しのオールドタイプ

おぉ、これで勢いがついたのか、ジュドーたちも持ち直してきたな。

 

74:名無しのオールドタイプ

チームワークもよくなってきたんとちゃうか?

 

75:名無しのオールドタイプ

なんか、サンドラ隊との連携もうまくなってきたような気がするな。あれ、ところでネキは?

 

76:ジャンク屋ネキ

あぁ、ごめんごめん。出撃の準備してた。

 

77:名無しのオールドタイプ

いや、もうこれはネキの出番なさそうやで。

 

78:名無しのオールドタイプ

青の部隊はほぼ壊滅状態、ミンドラ隊も撤退しそうな雰囲気だからな。

 

79:ジャンク屋ネキ

な、なんやて!?

 

80:名無しのオールドタイプ

そもそも、ネキはまだ病み上がりなんだから、出撃なんかしたらダメだろ。

 

81:名無しのオールドタイプ

大人しく病室で休んどき。

 

82:ジャンク屋ネキ

なんてこった……。(´・ω・`)

 

83:名無しのオールドタイプ

そんな顔してもダメや。

 

* * * * *

 

「グレミー様、青の部隊はほぼ壊滅状態です。ここは撤退を進言いたしますが」

「そうだな……。さすがルーさんの力、あそこから一気に巻き返すとは……」

「あの……感心している場合ではないと思いますが」

「わ、わかっている」

 

 と、そこに青の部隊のディドーから通信が入る。

 

「グレミー殿、もうそちらでもご存じとは思いますが……」

「えぇ。残念ながら、今回はこちらの負けのようですね」

「はい。これから部隊の皆を撤退させます。回収をお願いします」

「了解しました。ディドー殿も、こちらへ撤退してください」

 

 しかし、ディドーはそこで首を振った。

 

「いえ、リーダーたる私がここで逃げては、散っていった者たちに申し訳がありません。私はここで突撃し、仲間たちの脱出を支援します」

「そんな……! ディドー殿、早まってはいけません!」

「私も戦士。散り際はわきまえています。グレミー殿、ここまでの支援、ありがとうございます。青の部隊の仲間たちをよろしくお願いします!」

 

 そうして通信は切れた。

 

* * * * *

 

 アーガマの自室で、窓から戦いを見ているマリハですこんにちは。

 

 これで戦いは終わったかな……と思ったが、それはまだ早かったようだ。

 ほとんどの敵は撤退していったのだが、そのうちの一機、隊長機らしいゲルググが、アーガマに向けて突進してきた。

 最後に死に花を咲かせようというのか、それとも、味方が撤退する時間を稼ごうというのか。

 

 ジュドーたちが迎え撃とうとするものの、そこでマシュマーさんのガルスJが彼らを制した。

 

* * * * *

 

 ガルスJ改のマシュマーは、ジュドーたちガンダムチームを下がらせると、ビームサーベルを騎士のようにかざした。

 そして敵のゲルググに通信を入れる。

 

「私は、サンドラ艦長、マシュマー・セロである。味方のために自分の身を投げ出すその精神、天晴なり。せめてもの手向けに、この私が相手になろう。かかってまいられよ」

 

 そしてビームサーベルを構える。一方のゲルググからも通信が入る。

 

「私は青の部隊隊長のリーダー、ディドーであります。薔薇の騎士と名高い貴官に最期の相手となっていただけるとは光栄であります。いざ!」

 

 かくして一騎打ちが始まる。サイコミュを搭載しているガルスJ改は、マシュマーの操縦に見事に追従し、鮮やかな動きでゲルググを圧倒する。

 そして、戦いの果て、ついにガルスJ改のビームサーベルが、ディドーのゲルググのコクピットを貫いた! 中のディドーはおそらく、瞬時に消滅したであろう。だがそれでも、彼には無念はあれど後悔はなかったに違いない。

 

 その残骸を見ながら、マシュマーはつぶやいた。

 

「敵ながらその散りざま、天晴なり。戦士とはかくありたいものだ」

 

* * * * *

 

 そのディドーの散りざまは、ミンドラからも見えていた。

 沈黙したままのグレミーに、アリアスが報告をする。

 

「グレミー様、青の部隊の残存兵力、収容を完了しました」

「……よし、ただちに撤退する。見事な最期でした、ディドー殿。必ず、あなたの無念を晴らしてみせます……!」

 

 そして撤退していくミンドラ艦隊。彼らに回収された青の部隊の残存部隊はその後、正式にミンドラ艦隊に配備され、彼の牙となって戦うことになるが、今はまだ、そのことをジュドー達は知る由もない。

 

* * * * *

 

 さて、そんなわけで戦いは終わったが、また新たな問題が立ち上がった。

 

「これで我らは正式に反逆者か……。これから身の処し方をどうするべきか……」

 

 と、マシュマーさんがつぶやく。そう、オレたちを助けるためにミンドラ隊と戦ったことで、マシュマーさんたちサンドラは、正式にネオ・ジオンの裏切者となってしまったのだ。

 

 とりあえず、オレはマシュマーさんに話しかける。

 

「すまないな、マシュマーさん。後でビーチャとモンドには土下座させておくから」

「なんでだよ!?」

 

 速攻で抗議するビーチャ。

 

「そんな!?」

 

 モンドも、泣きそうな顔で抗議する。

 

 まぁ、モンドはともかく、ビーチャは明らかに戦犯だよなぁ。

 しかし、マシュマーさんは首を振った。

 

「いや、経緯はどうあれ、ミンドラと戦う決断をしたのはこの私だ。その責任から逃れるつもりはない」

 

 さすがマシュマーさんだなぁ。強化されたことで、自分に対する甘さもなくなり、ちゃんと覚悟を固めている。ビーチャに爪の垢を飲ませてやりたいくらいだ。

 

「ただ、これからどう身を処したらいいか迷っているだけだ」

「うーん……。なぁ、ブライトさん。しばしの間、彼らをアーガマと行動を共にさせたらだめかな?」

『!?』

 

 オレの提案に、ブライトさんとマシュマーさんが驚いた表情を浮かべた。まぁ、気持ちはわかる。

 

「それは、サンドラは投降してきた扱いにすれば問題はないだろうが……」

「だが……いいのか? 敵である我々を……」

 

 そのマシュマーさんの問いにオレはうなずく。だって。

 

「だって、こんなことになってしまったのは、うちのバカーチャがマシュマーさんにあんなことを言ったせいだからさ。そのままにしたら申し訳ないし」

「おい、なんだよバカーチャって!?」

「自分の胸に聞いてみたら? マシュマーが味方と戦ったのは、誰がかみついたせい?」

「うぐ……」

 

 エルに突っ込まれて閉口するバカーチャことビーチャ。彼の株がどんどん下がっている気がするが仕方ない。彼の自業自得だからな。

 

「単独で行動するにしたって、物資とかの補給がないと大変だろ? エゥーゴとしても友軍候補が増えるのはいいことだと思うし、どうかな?」

「確かにな……。ブライト殿さえよければ、ぜひお願いしたい」

「……了解した。投降者扱いとなるが、それでもよければ」

「あぁ、こちらこそ頼む。礼を言うぞ、マリハ・クトゥル。やはり君は、白衣の天使だ」

「よしてくれよ。オレはただの女の子さ」

 

 かくして、マシュマーさんとゆかいな仲間たちを、同行者に加え、アーガマは再び航海を再開したのだった。

 




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* 次回予告 *

塩の湖でひと時の休息……とはいかないんだよな。ちょうどそこに、オウギュストさんが部隊を引き連れてやってきたんだ。
こっちは、ビーチャはジュドーに対抗意識満々で勝手にZZに乗って出撃しちゃうし、マシュマーさんにあらぬ疑いをかけちゃうしで散々。

かくして、ジュドーとしては百式に乗って出るしかないけど、どうなるのか?

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』

第18話『燃える塩湖』

湖は甘いかしょっぱいかって? そんなの決まってるじゃん。

※次の更新は、3/24 12:00の予定です。お楽しみに!


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Act.18『燃える塩湖』

前回のタイトルの元ネタは、ガンダム00、2期の第20話『アニュー・リターン』からでした。当たった人はいましたでしょうか?

今回、色々と設定を追加した部分があります。
グレミーがNT部隊を持つことができた理由とか、なぜハマーンとやりあえるだけの勢力を作ることができたかについて、自分なりに補完したつもりなのですが、気に入ってくだされば幸いでございます(平伏

あとそれと、ちょっと解説。『プル似』では、プルクローンはその名前の通り、プルの細胞から作られたクローンということになってます。なので、プルツーが一番目のカプセルに入っている、というように、名前のナンバーとカプセルの番号がずれている、というわけです。


 ミンドラ艦隊に、輸送艦を同行させてガンドラが合流した。

 ガンドラの艦長は、グレミーの副官であるオウギュスト・ギダンである。

 

「グレミー様、ガンドラ、ただいま艦隊に復帰いたしました」

「そうか。例のブツはちゃんと運んできたか?」

「はい。ですが、ブツは運んできたのですが、パイロットが……」

 

 グレミーも、その報告は既に受け取っている。

 報告によれば、ブツのパイロットの予定だったプルは、地球降下時の戦いで事故に遭い、MIAになってしまったという。

 

「そうか。だが案ずるな。ちゃんとこの時のための手は用意してある。気持ち的にもできればこの手は使いたくなかったのだがな」

「はぁ……。その手とは一体?」

「そうだな……のその前に。聞いておこう。オウギュスト・ギダン。貴官はもしもの時、私とハマーン、どちらにつく?」

「!!」

 

 オウギュストの身体を衝撃が貫いた。まさかグレミーは……?

 

「早まるな。もしも、の話だ。だが、いざという時に私の味方になってくれない者に、これ以上見せるわけにも教えるわけにもいかない」

「……」

 

 そのグレミーの言い分に、オウギュストは納得した。確かに奥の手を裏切るかもしれない者に明かすわけにはいかない。相手がハマーンに切り札のことを報告するかもしれないのだ。

 

「私は、グレミー様がこの艦の艦長になってからずっと、あなたのお側におりました。そしてそれはこれからも変わりません。あなたをひとかどの将になるよう導いていくのが、私の生きがいでありました」

 

 それはオウギュストの本心であった。今までずっとグレミーと歩んできた彼は、グレミーを誰よりも近くで見ていた。そして彼は、上司を忠誠を尽くし、盛り立てていく相手にふさわしいと判断していたのだ。

 

「そうか。ならいいだろう。ついてくるがいい」

 

 そしてグレミーは、オウギュストを伴い、ブリッジを出た。艦内を歩いて二人がやってきたのは、厳重にロックがかけられた一室である。

 

「ここは……? 確かグレミー様が、何者も入ってはいけないと厳命されていた……」

「そうだ……。改めて聞くぞ。本当に構わぬのだな? この先に入り、中のものを見てしまえば最後、もうお前は後戻りはできない。生殺与奪を私に握られ、死ぬまで忠誠を私に尽くしてもらうことになる」

「かまいませぬ。私が忠誠を尽くすに足る者は、ハマーン様ではなくグレミー様です」

「よかろう」

 

 うなずくと、グレミーはカードキーをパネルにかざし、扉を開ける。中に入った二人が見たものは……。

 

「これは……コールドスリープのカプセル!?」

 

 そう、部屋に並ぶ12個のカプセルだった。そしてその中には、彼らが知るある少女にうり二つの少女たちが眠っていた。否。入っているのは11個だけで、No.12と刻印されたカプセルには何も入っていなかった。

 

「これはもしや……クローン!?」

「そうだ。エルピー・プルの細胞から生み出されたクローン……ニュータイプ戦士たちだ」

 

 驚愕に目を見開くオウギュストに、グレミーは思い出話をするかのように話し始めた。

 

「0084年、あのエンツォによって、プルの遺伝子を使って人工ニュータイプを生み出す計画が、ハマーン様には秘して始められ、研究所が作られた。ハマーン様にはニュータイプの研究のための施設と報告していたがな」

「……」

「だが、シャア・アズナブルの手によって、エンツォが一時失脚し、研究所は後ろ盾を失い、計画はとん挫するはずだった」

「もしかして、そこをグレミー様が……?」

 

 オウギュストの問いかけに、グレミーはうなずき、そして続ける。

 

「そうだ。父のコネと、決して多くはない遺産を使い、研究所と研究をこの手に収めたのだ。私の未来のためにな。もっとも、そのおかげで私は、シャアの離脱後に復権したエンツォから恨みを買うことになったが」

 

 その恨みが、アクシズでリィナを誘拐、殺害して、グレミーを追い落とす試みにつながり、そして、あのサトウとやらが率いたティターンズの残党の襲撃につながったのだろう、ともグレミーは続けた。

 

「そしてついに彼女たちを使うべき時が来た。本当なら私とて、彼女たちを使いたくはない。年端もない少女たちを戦士として送り出したくはな。だが、今こそ、この切り札の一つを切るべき時なのだ。切らなければ、私は望みをかなえられず、後悔することになろう」

 

 そして二人は、再び、カプセルの中の少女を見つめ続けていた。

 

* * * * *

 

1:ジャンク屋ネキ

なんか、ダブリンに行くことになったやで。連邦軍高官に呼びつけられたとかなんとか。

 

2:名無しのオールドタイプ

ダブリンか……。

 

3:名無しのオールドタイプ

連邦軍高官に呼びつけられた、か……。

 

4:ジャンク屋ネキ

なんやみんな。ことの顛末知ってるんか?

 

5:名無しのオールドタイプ

あぁ。原作でのことだけどな。でもたぶん、こちらでも間違いないやろ。

 

6:名無しのオールドタイプ

連邦軍は裏でネオ・ジオンと交渉を持っててな。その和平に邪魔なアーガマを武装解除させようという意図やで。

 

7:ジャンク屋ネキ

うわぁ……。真っ黒な話やな。

 

8:名無しのオールドタイプ

まぁ、宋の岳飛の例もあるし、和平の邪魔になる者が排除されるのは珍しいことではないとはいえなぁ。

 

9:ラド

徹底抗戦を叫んで処刑された中国・宋の軍人やな。<岳飛

 

10:名無しのオールドタイプ

まぁ、今まで地球のために戦ってきたブライトさんや、ジュドーたちにとってはたまったものではないやな。

 

11:ジャンク屋ネキ

確かにな。オレだって面白くない、というか。

 

12:名無しのオールドタイプ

まぁ、それで抗議しに行ったブライトさんとジュドーが捕まって色々災難に遭うんだが……。まぁ、それはまだ語る必要はないか。

 

* * * * *

 

 そんな話をスレ民と交わしてるうちに、ルーと合流したアーガマとサンドラは、大きな湖にやってきた。砂漠の端にあるこの湖はメルリル湖という塩湖、つまり塩分が濃い湖だという。

 

 それを聞いて、シャングリラ・チルドレンたちは大騒ぎだ。特にプルは大はしゃぎである。

 

「うわー、湖だって! 久しぶりに水浴びしたーい!」

「あぁ。たまにはそこで骨休みってのもいいんじゃないかな? どうかな、ブライトさん?」

 

 ジュドーに尋ねられ、ブライトさんはまんざらでもなさそうな顔をしてうなずいた。

 

「そうだな。ここで補給物資を受け取ることにするか。補給が済むまでの間は、羽を伸ばしていていいぞ。たまには休息も必要だからな」

「よっしゃー! さすがブライトさん!」

「話がわかる!」

 

 許可をくれたブライトさんに、大喜びのビーチャとモンド。

 エルも、何かわくわくしているようだ。

 

「よーし、一杯泳いじゃおうー! 塩湖だから、溺れる心配もないしね!」

「でも、塩湖だったら、ちゃんと洗っておかないと、塩でべたべたするんじゃないかなぁ……?」

 

 そう首をかしげるオレのつぶやきは、ジュドーたちの耳には聞こえていないようだった。

 

* * * * *

 

18:名無しのオールドタイプ

おー、眼福、眼福。

 

19:名無しのオールドタイプ

ルーさんの水着も、エルの水着もいいよなぁ。

 

20:名無しのオールドタイプ

サンドラの女子クルーの水着もまばゆいで! スタイルが抜群なだけにな!

 

21:ジャンク屋ネキ

確かに、みんなまばゆいよなぁ……。

『ぶーっ! プルは!? プルだってまばゆいでしょ!?』

 

22:名無しのオールドタイプ

いや、プルはなぁ……。

 

23:ラド

お子様だしなぁ……。

 

24:名無しのオールドタイプ

そうやな。ルーさんぐらいの年齢になってから、もう一度言おうか?

 

25:ジャンク屋ネキ

『ぶー、もういいもん! そのうち、いっぱい成長して、スレ民のみんなをギャフンと言わせてやるんだから!』

ふくれるなふくれるな……。というか、スレ民なんて言葉、いつ覚えたんだよ……。ほら、ジュドーが呼んでるぜ?

『あ、わーい、ジュドー!』

 

26:名無しのオールドタイプ

本当にお子様やな、プル。

 

27:ジャンク屋ネキ

それはいいんやが、ここの影響で、プルがオレらみたいになってきてるのが心配や……。

嫌だぞ、すっかりスレに染まり、スレ民になってしまったプルなんて。

 

28:名無しのオールドタイプ

まぁ、そうなったらその時はその時や。

 

29:名無しのオールドタイプ

もしもの時は、ジュドーに謝っておいてくれや。

 

30:ジャンク屋ネキ

他人事と思って……。

 

31:名無しのオールドタイプ

それにしてもジュドー、エルともはしゃいで両手に花だな。

 

32:名無しのオールドタイプ

その反面、エルを誘うも拒否られて、寂しくモンドと遊ぶビーチャが哀れなり。

 

33:名無しのオールドタイプ

ルーにやった仕打ちが仕打ちやからなぁ……。

 

34:名無しのオールドタイプ

あ、と思ったらモンドがネキのほうに行ったな。

 

35:ジャンク屋ネキ

あぁ、来たな。というか顔を少し赤くしてどうしたんだ、風邪か?

 

36:名無しのオールドタイプ

いや、絶対違うと思うで。

 

* * * * *

 

 一方、アーガマに向かっているMS(モビルスーツ)の一隊があった。

 オウギュスト・ギダン率いる、ガンドラのドライセン隊である。

 

 そのうちの一機、メンテナンスが完了した自分のドライセンのコクピットで、オウギュストはスティックを強く握ってつぶやいた。

 

「クローンとはいえ、子供に戦わせるなど……。ここは我々大人が奮起して、グレミー様に、『我々がいれば十分』ということをお見せしなければ……!」

 

* * * * *

 

 当然、オウギュスト隊の接近は、アーガマにも発見され、ただちに敵襲の警報が鳴る。

 

「ちっ、せっかくのバカンスだってのによ!」

 

 とぼやきながら走り出すモンド。

 

「うわ~ん、べたべただよ~!」

 

 プルはそう言って、アーガマに走っていく。

 

 そして、ジュドーもZZ(ダブルゼータ)に走っていくが、その彼を、なんとビーチャが突き飛ばした! そして彼はなんと、そのままZZに乗り込もうとしたではないか!

 

「何をするんだ、ビーチャ!」

「何がジュドー、ジュドーだ! 俺だってZZに乗ればなぁ……!」

「だめだ、ビーチャ、お前じゃZZは無理だ!」

「無理じゃねぇ! 俺だってZZに乗ればヒーローになれる!」

 

 そしてそのまま発進していく。

 

「まったく、ビーチャの奴……! 仕方ない、俺は百式で出る! プル、ドダイの操縦を頼む!」

「うん!」

 

 そしてジュドーは百式に、そしてプルは百式が乗っているドダイに乗り込んで出撃していった。

 

* * * * *

 

38:名無しのオールドタイプ

ネキは今回はMk-Ⅱ(マークツー)が乗ってるドダイでの出撃か。残念やのう。

 

39:ジャンク屋ネキ

まぁ、オレの機体がないからな。仕方ない。

あ、ビーチャのZZが見えてきたな。

 

40:名無しのオールドタイプ

あらら……。まともに戦えてないであいつ。

 

41:名無しのオールドタイプ

ZZのパワーに振り回されちゃってるやん……。

早く助けてやらないとやばいで。

 

42:名無しのオールドタイプ

あと、ZZにはバイオセンサーもあるからなぁ。

あれが使えなければこうなるわな。

 

43:名無しのオールドタイプ

ジュドーにライバル意識燃やすのはいいがなぁ……。

空回りしまくってるぞ。

 

44:名無しのオールドタイプ

だけど、サンドラのMS隊は出なくてええんか?

 

45:ラド

あぁ。ブライト艦長が、『あなた方をネオ・ジオンと戦わせるのは心苦しい。ここは自分たちだけで十分です』と言ってくれてな。

 

46:名無しのオールドタイプ

まぁ、一応投降扱いとはいっても、まだエゥーゴに正式参加してるわけじゃなく、所属はまだネオ・ジオンだもんな。

 

47:名無しのオールドタイプ

おぉ、さすがジュドーやな。ドライセンを殴り飛ばしたで。

 

48:名無しのオールドタイプ

ここから逆転といきたいな。ネキ、エルのサポート、しっかりやるんやで。

 

49:ジャンク屋ネキ

おうよ。それじゃ、戦闘に集中するから、こちらは少し黙るで。

 

* * * * *

 

『あぁ、もう! 見てられないわね! 世話がかかるったら!』

 

 Mk-Ⅱのエルがぼやくのも無理はない。ビーチャのZZは、まともに戦うこともできずに、ドライセン部隊に圧倒されてばかりなのだ。やはり、高性能すぎるZZは、ビーチャの手には余るMSということだろう。

 

『ビーチャの援護に行くわ! マリハ、サポート頼むわね!』

「ほいきた!」

 

 ドダイのアフターバーナーを全開して、ZZのほうへ向かう。

 エルのMk-Ⅱは、ZZガンダムに斬りかかろうとしたドライセンにビームライフルを撃ち、これを撃ち抜いた。

 

『まったく、何やってんのさビーチャ!』

『う、うるせーな!』

「いい格好を見せようとして張り切りすぎなんだよ、ビーチャ。男が女服着てもかっこよくないだろ? それと同じさ。ちゃんと自分に見合った服を着ないと、痛すぎるだけだぜ」

『ふ、ふん!』

 

 そこに、別のドライセンが腕のマシンキャノンを撃ちながら接近してきた。

 

* * * * *

 

「そんなガンダムが出てきたって!」

 

 ドライセンに乗るオウギュストは、Mk-Ⅱに対して、マシンキャノンを撃った。だが、それは事前に感知したマリハによってかわされている。

 そしてドダイとMk-Ⅱは、オウギュストのドダイに対して互角に渡り合っていた。SFS(サブフライトシステム)に乗っての空中戦は、機動や回避をドダイに頼っている関係上、MSの機動性よりも、SFSの性能と、SFSのパイロットの腕が重視される。なので、自動操縦でドダイを飛ばしているオウギュスト機に対しても、対等に戦えるのである。

 

 ともあれ、ドダイのマリハは、ドダイをそれなりに巧みに操り、オウギュストの攻撃を回避し続ける。そうしながらも、Mk-Ⅱはオウギュストや、他のドライセンにビームライフルを撃ち続ける。そうしていくうちに、また一機、ドライセンが撃墜された。

 

 そこに。

 

「お待たせ!」

「ジュドー!」

 

 ジュドーの百式が応援に駆け付けた。そのまま、オウギュスト機へと向かっていく。

 

「今度は金色か! そんなのが出てきたところで!」

 

 オウギュストのドライセンも、ビームトマホークを構えて迎え撃つ。

 ドライセンが、ビームトマホークを横一文字に凪ぐ。だが、百式はそれをジャンプしてかわす。そしてそのまま、ドダイに着陸。そのタイミングはさすがジュドーとプルである。

 

「なんと!? だが私とて、ミンドラのオウギュスト・ギダンだ!」

 

 後ろに回られたオウギュストはそう叫び、ドダイを回頭させるが、それより早くジュドーの百式が接近し、ビームサーベルを振るう! その一閃でドライセンの右腕が斬り落とされた!

 

「落ちろ!」

「くっ!」

 

 とどめを刺そうとするジュドー。しかし。

 

「!!」

 

 突如後ろから殺気を感じ、とどめを刺すのを中止し、回避する。もちろん、オウギュストもその場を離脱した。その直後、彼らのいた空間を、ビームが通り過ぎた。

 

 後ろから、アリアス・モマ中尉率いるバウ隊が駆け付けてきたのだ。アリアス機の後ろに続くバウはみな、青く塗られている。

 

「おぉ、アリアス中尉。なぜここに……」

「グレミー様が、大尉を失うわけにはいかない、ということで助けに来たのです。オウギュスト隊だけでは、ガンダムチームには勝てないだろう、と」

「そうか……」

「我々が援護します。今はここから撤退しましょう」

「そうだな……残念だ」

 

 そして、オウギュストを始めとしたドライセン隊の残存部隊は、バウ隊とともにミンドラに帰還していくのだった。

 

* * * * *

 

 そしてオレたちは、アーガマに帰還していった。

 ZZから降りたビーチャが、ジュドーのところまで歩いていく。もしかして文句を言うのかな?と思ったが……。

 

「ジュドー、やっぱりZZはお前じゃないとダメだな」

「たはは……そう言われると照れるぜ」

 

 しかし、そこで。

 

「お前の癖がついてて、動かしにくいったらなかったぜ」

「もう、勝手に使っておいてそんな言い方はないだろう!?」

 

 ジュドーはそうかみつくが、オレにはそれが、ビーチャの照れ隠しの軽口だとすぐにわかった。

 そしてルーも、それには気が付いたらしい。

 

「ビーチャも照れてるんだよ。本当はジュドーの実力認めたんでしょ。かわいいところあるじゃない」

 

 エルも同じくうんうんとうなずいている。さすが女心。というところだろうか。オレも一応は女だからな。ビーチャはそれに対してそっぽを向いたが、その頬が少し赤くなっているのを誰も見逃さなかった。

 

 そこにプルが

 

「みんなー、シャワー浴びようよ! ブライト艦長がシャワー浴びていいって!」

 

 と声をかけた。

 

* * * * *

 

 一方、ミンドラに帰還したオウギュストは、ブリッジにてグレミーに報告していた。

 

「グレミー様、申し訳ありません。偉そうなことを言っておきながら、戦力を失ってしまい……」

「良い。相手はガンダムチームだ。勝てないのも無理はない」

「はぁ……」

 

 そこでグレミーはオウギュストに向きなおった。

 

「それでオウギュスト。貴様にはやってもらいたいことがある」

「はっ、なんなりと」

「宇宙へ上がってほしい。そして、後々のために足場固めをしておいてほしいのだ」

「私が、でありますか?」

 

 オウギュストの問いに、グレミーはうなずいた。

 

「そうだ。お前には戦いよりも、そのような裏側のほうが向いているような気がするのだ」

「……」

「お前は不服だろうが、戦いは正面で戦うよりも、裏側の地盤固めが大事なものだ。お前ならそれができるはずだ。頼めるか?」

「グレミー様がそうおっしゃるのでしたら、私に拒否する理由はありません。喜んで引き受けさせていただきます。グレミー様が宇宙に戻るころには、ネオ・ジオンの中に十分な勢力を築き上げておきましょう」

「うむ」

 

 そしてオウギュストは、ハマーンや他のネオ・ジオン軍司令官たちとともにシャトルで宇宙に帰還していった。

 グレミーの密命を受け、ネオ・ジオン内での足場固めを行うために。

 

 グレミーの手によるこの戦いの新たな展開は、ここからはじまったのである。

 

 だがそれがどのような結果を導くか、この時点でそれを知る者はまだいない。

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

ダブリンにやってきたアーガマは、上から武装解除を要求されることになった。
そんな時、カミーユがいなくなったって、ファさんが助けを求めてきたんだ! 見捨てるわけにはいかないよな。
みんなで探してる時に、さらにミンドラが攻めてきた!

プルが出撃していったけど、薄着だしマシンが合わないし、サイコマシーンにとらわれかかるしで、大ピンチ!

オレに動かせるのか……これ? えーい、迷ってる暇はない。一か八かだ!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』

第19話『助けは一刻を争う!』

行け、一郎、次郎、三郎!!

※次の更新は、3/27 12:00の予定です!


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Act.19『助けは一刻を争う!』

前回のタイトルの元ネタは、ZZの第23話『燃える地球』からでした。
当たってる人はいましたか?
正解者には、作者からの祝福をプレゼント!

今回は、ビーチャが艦長代理になる伏線として、彼が指揮官として才能の片りんのカケラがあるのを示すシーンも入れてみました。


1:ジャンク屋ネキ

というわけで、ダブリンにやってきたわけだけど……。

 

2:名無しのオールドタイプ

ネキ、誰に言ってるんや?

 

3:名無しのオールドタイプ

ブライトさん、連邦の高官のところに行ったんだっけ?

 

4:ジャンク屋ネキ

うん。それと、ジュドーも、どこからか武装解除の話を聞いて、飛び出していったわ。

 

5:名無しのオールドタイプ

あー。今頃、二人は、『アナハイムとエゥーゴが戦争で利益を得ようとしてる』と言われて怒って、それで監禁されてるんやろなぁ。

 

6:名無しのオールドタイプ

まぁ、確かにアナハイムとエゥーゴ『上層部』はその通りだとはいえなぁ。

 

7:ジャンク屋ネキ

でもオレたちは、平和を取り戻すために戦ってきたんやで? そこにそんなこと言われたら、確かに切れるわ。

 

8:名無しのオールドタイプ

まぁ、お偉いさんはどうせ、下っ端の気持ちはわからないってことだ。

 

9:名無しのオールドタイプ

そういえば、サンドラはダブリンには入っていないんだったか?

 

10:ラド

あぁ。さすがにネオ・ジオンの艦を連邦の町に入れるわけにはいかんだろ。グラスゴーの郊外で待機しとるで。

 

11:名無しのオールドタイプ

確かにそうだよなぁ。でもマシュマーも、エゥーゴ入りは抵抗あるんだろうか。

 

12:名無しのオールドタイプ

そりゃあね。マシュマーも、ハマーンに対して忠誠心篤いし。

 

13:名無しのオールドタイプ

強化人間になったことだし、マシュマーがエゥーゴに入ればかなり力になってくれると思うんだがなぁ。

 

14:名無しのオールドタイプ

まぁ、それはあちらの気持ちの問題だからな。それにしても、ブライト艦長もジュドーも遅いな。やっぱり監禁されてるんだろうか。

 

* * * * *

 

 スレ民とだべってたり、ビーチャと色々話し合ったり、プルにかまったりして数時間経ったころ、ネオ・ジオンのMS(モビルスーツ)隊がダブリンに攻めてきた。

 和平交渉の相手を攻撃していいのかよ、という気が強烈にするが、ネオ・ジオンは構わないとばかりに、ダブリンを攻撃し、炎に包んでいく。

 

 さすがにこうしてはいられないと、ビーチャ、ルーは百式、(ゼータ)で出撃。機体のないオレとエル(Mk-Ⅱ(マークツー)は整備中だった)、プルはアーガマでお留守番となった。

 

* * * * *

 

 そしてビーチャは、ルーと共に多数のMS相手に奮闘をしていた。連邦軍やカラバのGM(スリー)も出ているが、やはり不利は否めない。

 

「あー、次から次へと! これじゃきりがないわ!」

「愚痴を言ってる場合じゃないだろ! もっと頑張りなさいって!」

「わかってるわよ!」

 

 と、励ましあってるのか、喧嘩しているのかわからない会話を重ねながら戦っていく。

 その時、ビーチャの目に映る、建物にハイパー・ナックルバスターの狙いを定める一機のガ・ゾウム。それを見て、ビーチャの頭に何かが浮かぶ。

 

「ルー、二人であのガ・ゾウムを叩くぞ!」

「え?」

「細かい話はあとだ! フルパワーで他の敵機を突っ切って、一気にあいつに接近して落とすんだよ!」

「わ、わかった! というか、指図しないんでほしいんですけど!」

 

 かくして、ビーチャの百式を載せたドダイと、ルーのZはそのガ・ゾウムに向けて突進していった。

 ガ・ゾウムは住民が怯えるのを見て楽しんでいて、構えたままハイパー・ナックルバスターを撃とうとしなかった。だが、それにも飽きたのか、改めてハイパー・ナックルバスターを構えたその時!

 

「させるかよ!」

 

 ビーチャが、建物に突っ込んでしまわない角度で、乗っていたドダイをガ・ゾウムにぶつけ、態勢を崩した! そこにルーのZガンダムが斬りかかり、その右腕を切断! さらにその上に百式がのしかかるように上から激突!

 そしてガ・ゾウムが地面に叩きつけられたところで、メインカメラをビームライフルで撃ち抜いた。

 

 そのガ・ゾウムを無力化した後、百式は飛び上がり、接近してきたウェイブライダーに飛び乗った。

 

「よし、このままいくぞ! 百式とZの火力とスピードをフルに活かして、やばそうな奴らを各個撃破、一撃離脱するんだ!」

「了解!(へぇ、ビーチャ、なかなか戦略眼あるじゃない。ブライト艦長に報告しておこうかしら)」

「ん? ルー、何か言ったか?」

「なんでもなーい」

 

 それからも、ビーチャとルーは機体の性能と巧みなコンビネーションで、ネオ・ジオンのMSを翻弄、撃破していった。

 

* * * * *

 

 そしてビーチャたちがネオ・ジオン軍と戦っていくらかの時間が経った頃……。

 

 ブライトさんたちが帰ってきた。

 

「ブライトさん、大丈夫かよ? 結構ボロボロだぜ?」

「……煙に巻かれて、涙を流してきたんだよ」

「まったく、ひどい目にあったぜ、色々と」

 

 二人の惨状と、ジュドーの口ぶりからかなりひどい目にあってきたのがうかがわれる。

 そして、アーガマに戻ってきたのは二人だけではなかった。

 

「久しぶりね、みんな」

「ファさん!?」

 

 そう、シャングリラで別れた、元アーガマクルーのファ・ユイリィさんだった。

 彼女とこんなところで再会するとは。

 

「そしたら、ファさんがブライトさんたちを助けてくれたのかい?」

「えぇ。燃える屋敷から二人の叫ぶ声が聞こえて、それで……」

「そうなのか……。そういえばカミーユさんは?」

 

 ファさんがここにいるということは、きっとカミーユもここの病院に入院してるってことなんだろうけど……。

 すると、ファさんは突然土下座をした!

 

「お願いです、カミーユを探してください!」

「探してください、って……」

「突然、病院から抜け出して行方不明になったんです……!」

「なんだと……!?」

 

 それに驚愕するブライトさん。確かにそれは大変だ。

 

「わかった、こちらのほうでも探してみる。ファのほうでも探してみてくれ」

「はい! お願いします!」

 

 そしてファさんは帰っていった。

 

「トーレス。戦いのほうはどうだ?」

「どうにか落ち着いたみたいです。敵、撤退していきます」

「よし、ビーチャたちに事情を説明して、カミーユを捜索するよう伝えてくれ。ジュドー、エルも捜索に協力してくれ」

「了解」

「わかったよ」

「あの、オレとプルは?」

 

 オレがそう聞くと、ブライトさんはこちらを向いて言った。

 

「二人はアーガマでお留守番していてくれ。留守中にまた敵が出てくるかもしれないからな」

「そっか、わかったよ」

「ぶーっ。でも、マリハと一緒だからいいよ」

 

 プル、なんとも嬉しいこと言ってくれるな。本当に妹を持つというのは、こんな気分なのかな。

 

 そして、ジュドー、エルはブリッジを出て行った。

 

* * * * *

 

17:名無しのオールドタイプ

そして、プルはネキと二人きりだけど、本当にええんか?

 

18:ジャンク屋ネキ

まぁ、ブライトさんの言うことも当然だしな。

『うん! それに、マリハやスレ民のみんなと一緒だから寂しくないよ!』

 

19:名無しのオールドタイプ

嬉しいこと言う娘じゃのう。

 

20:名無しのオールドタイプ

ほっぺをぷにぷにできないのが無念じゃ。

 

21:名無しのオールドタイプ

たかいたかーいできないのが残念だ。

 

22:ジャンク屋ネキ

いや、プルはもう11だし、高い高いするのも大変じゃないか?

 

23:名無しのオールドタイプ

それじゃ仕方ないから、俺らの代わりに、プルのほっぺぷにぷにしてくれやネキ。

 

24:ジャンク屋ネキ

おう。ほれほれ、嬉しいこと言ってくれる奴じゃのう。ぷにぷに。

『あははは、くすぐったいよー』

それにしても、カミーユさん、心配だなぁ。どこに行ったんだろう?

 

25:名無しのオールドタイプ

それが、原作でもどうして抜け出したかが明記されてないんだよなぁ。

 

26:名無しのオールドタイプ

一説では、この後ダブリンに起こることについて感知したって言われてるけど……。

 

27:ジャンク屋ネキ

この後起こること……?

『……!』

おい、プルどこに行くんだよ!?

 

28:名無しのオールドタイプ

どうしたんや?

 

29:ジャンク屋ネキ

わからん……。なんか突然、『グレミーが来る。私にはわかるんだ!』とか言って……。

 

30:名無しのオールドタイプ

ダブリン……プル……あ。

 

31:名無しのオールドタイプ

あ、それがあったか! あかん。ネキ、急いでプルを追いかけるんや!

 

32:ジャンク屋ネキ

え?

 

33:名無しのオールドタイプ

詳しい話はあとや。急いで!

 

34:ジャンク屋ネキ

お、おう!

 

* * * * *

 

 そしてオレは突然飛び出していったプルを追いかけたが、一足遅かった。

 プルは整備中のMk-Ⅱに乗って、出撃していったのだ。

 

 追いかけなくちゃいけないけど、オレが乗るものは……あ。

 

 オレの目に留まったのは、両肩のバインダーが失われたプルのキュベレイだった。

 スレ民からは『それ、乗れるんか!?』とかって言われてるけど、オレは強化人間かもしれないと言われてた。ならば大丈夫なはず。それに、もしサイコミュが使えなくても、両腕にビームガンがあるし、それがあればどうにかなる。

 

 オレは覚悟を決めて、キュベレイに飛び乗ると、同じくドダイに乗って出撃していった。

 

* * * * *

 

37:名無しのオールドタイプ

やっと追いついたな。

 

38:名無しのオールドタイプ

すっごい奮戦してるな。やっぱりカミーユがアシストしてるのかな?

 

39:ジャンク屋ネキ

さすが前作主人公、なんでもありやな……。

 

40:名無しのオールドタイプ

とはいえ、ちょっとやばいかもな。ビームライフル撃ちつくしたみたいだし……。

 

41:名無しのオールドタイプ

ちょっと待って、あれ見てや!

 

42:名無しのオールドタイプ

サイコMk-Ⅱが動き出した!? プルに反応してるのか!?

 

43:名無しのオールドタイプ

なんとか離脱して、影響から逃れたのはいいが、またアリアスのバウに攻撃くらってるで!

 

44:名無しのオールドタイプ

堕ちるーーーー!!

 

45:ジャンク屋ネキ

間に合え!!

 

46:名無しのオールドタイプ

おお、なんとかMk-Ⅱを拾うことに成功したな。

 

47:名無しのオールドタイプ

よくやったやで、ネキ。プル、無事か!?

 

48:ジャンク屋ネキ

『うん……なんとか……って、マリハがキュベレイに乗ってるの?』

あぁ。他に乗るMSがなかったからな。まったく、無茶しちゃって……!

 

49:名無しのオールドタイプ

ネキもな。サイコミュマシーンに乗るなんて無茶しやがって……。

 

50:名無しのオールドタイプ

お話ししてる最中済まないけど、また敵が来とるで!

 

51:ジャンク屋ネキ

うーん……感覚的にだけど、ファンネル使えそうな気がするな。

『ほんと……!?』

あぁ、さすがに三機以上は無理そうだけど。まぁ、無理しないでやってみるか。

行け、一郎、次郎、三郎!!

 

52:名無しのオールドタイプ

なんてネーミングセンスやねん。

 

53:名無しのオールドタイプ

別作品だけど、シモン、ヨハネ、ペテロと名付けてたルカさんに謝れ。

 

* * * * *

 

 オレが乗るキュベレイから発進した三機のファンネル。オレ命名、一郎、次郎、三郎はオレの意思を受けて飛び出していく。

 さすがに、三機をそれぞれ別々の相手に向けさせるのは難しそうなので、接近してる一機に集中して攻撃させる。多方向から攻撃はかわすのが難しいのか、そのドライセンが直撃を受けて爆散する。

 また突っ込んでくる別のドライセンにも、ファンネルたちを向かわせる。うっ、今度は一郎が撃墜された。なかなかやるな。

 

「それなら、次出ろ! 新一郎!」

 

 スレ民から「四郎じゃないのかよ」とか、「他の名前はないのかよ」とかブーイングが出たけど気にしない。というか、気にする余裕がない。

 色々動かし方を工夫してそのドライセンをなんとか撃破。

 

 しかし、そろそろ限界みたいだ。ファンネルを使ってくるうちに、なんか精神的に疲れてきたのだ。かといって、プルに操作してもらうわけにもいかんしな……。

 仕方ないので、新一郎だけ操作することにして、彼に援護してもらいながら、本体のビームガンで戦うことにする。

 

 どこかで聞いたような声のアドバイスのおかげもあり、なんとか戦うことができていた。

 それでもさすがに無理があるのか、やがて。どんどん押されていく。やべ、そろそろきついかな……。

 

 そこに。

 

『貴様らぁ!!』

 

 ジュドーの乗るZZ(ダブルゼータ)ガンダムが駆け付けてきてくれた。その後ろに、百式とZも続いている。

 やれやれ、なんとか助かったな……。

 

 そして、ZZガンダムはハイメガキャノンを発射し、それでダメージを受けたミンドラ艦隊は撤退していった。

 

* * * * *

 

55:ジャンク屋ネキ

ふぅ……。一時はどうなるかと思ったけど、持ちこたえられてよかった……。

 

56:名無しのオールドタイプ

お疲れ様や、ネキ。ファンネルのネーミングには言いたいことはあるけど、よくやったな。

 

57:名無しのオールドタイプ

まさか、ネキがファンネル使えるとは驚いたで。

 

58:ジャンク屋ネキ

でも、慣れてないからか、かなり疲れたで……。眠くて仕方ない……。

あ、そうだ、プルは!? プルは大丈夫か?

『う、うん……。身体があちこちすごく痛いけど……』

 

59:名無しのオールドタイプ

そりゃ、薄着でMSに乗ったうえで、あれだけボコボコにやられてればなぁ……。

ネキが駆け付けるのが遅かったら、原作みたいにやばかったところやで。

 

60:名無しのオールドタイプ

本当に無茶する娘や……。帰ったら、ジュドーに叱られたうえでゆっくり休んどき。

 

* * * * *

 

「さて、後はカミーユ探しだけども……」

 

 オレがそうつぶやくと、プルは驚くべきことを言った。

 

「私、わかるよ……。カミーユがいるところ……」

 

 これにはびっくりだ。スレ民のみんなは、「原作でもそんなこと言ってたな」と言ってたが……。

 だけど、全身打撲しているプルをさらに連れまわしていいものか……。

 オレがそう迷っていると……。

 

「カミーユって人、優しいね……。だって戦ってる中、ずっと声をかけてくれたんだもの……」

 

 そうだったのか。そういえばスレ民もそんなことを言ってたな。

 そういえばオレも戦いのとき、声を聴いたような……。あの声のおかげでなんとか持ちこたえることができた。カミーユに感謝だな。

 

 そう思いながらオレは、キュベレイとMk-Ⅱを乗せたドダイを着陸させて、キュベレイを降りる。そしてMk-Ⅱに乗り込み、プルをおんぶして機体を降りる。ちょうどそこでジュドーたちもやってきた。

 

「マリハがプルを守ってくれたのか。サンキューな。プル、大丈夫か?」

「うん……なんとか生きてるよ……」

「攻撃受けて、全身打撲になっちゃってるみたいだ。それほどひどくはないみたいだけど。帰ったら手当してもらって、休ませないと」

 

 そう言いながら、プルの道案内に従って歩いていく。

 そしてたどり着いたそこには、彼女の言う通り、岩場に座り込んでいるカミーユの姿があった……。

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

コロニーが落ちてくるのがわかんなかったのは、地球連邦のお偉いさんが隠してたからなんだって。

こちらは、敵の襲撃がないとはいえ、プルは大けがしちゃうし、住民の避難誘導もしなけりゃいけないしでてんやわんや。

そしたらコロニーが落ちてきて……うわーーーーーーー!!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』

第20話『空が落ちる日』

こいつはヘビーすぎるよ……。

※次の更新は、3/30 12:00の予定です。お楽しみに!



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Act.20『空が落ちる日』

今回、コロニー落としの背景について考察されてますが、この考察は、今回のロシアのウクライナ侵攻には全く関係ありません。
これが最初に書かれたのは、ウクライナ侵攻の前なので。
というわけで、ご了承くださいませ。

さて、前回のサブタイの元ネタは、ガンダムX第4話『作戦は一刻を争う!』からでした。
当たった方はいますでしょうか?

あと、某所で『あの場でコロニー落としを邪魔するメリットは何もない』というツッコミがありましたので、それを反映して、ネオ・ジオンの妨害はカット。というわけで戦闘もありません。ごめんなさい;

でも次回は、ちゃんとバトルがありますのでそれまでお待ちを。


 衛星軌道上。そこに浮かぶエンドラ級グワンドラ。

 その艦が見守る中、コロニーが少しずつ進んでいく。目的地は……地球。

 

 そのグワンドラのブリッジで、ラカン・ダカランが満足そうな笑みを浮かべていた。

 その彼に副官が報告する。

 

「ラカン大佐、コロニーは無事にダブリンへの落着コースにのりました。このコースを維持すれば、間違いなくダブリンに落着します」

「そうか」

「しかし大佐、本当にダブリンに攻撃部隊を降ろさなくてもよいのでありますか?」

 

 その問いに、ラカンは邪悪な笑みを浮かべた。

 

「良い。生き残りがいれば、このコロニー落としを許した連邦政府への反感を生み、反連邦分子を生むことにもつながる。それにだ。凄惨さを演出するには、被害を受けた生き残りもいたほうがいいとは思わんか?」

 

 その笑みを見て、その答えを聞いた副官は醜悪さを感じたが、それは表情にほんの僅か出すにとどめた。

 

* * * * *

 

1:ジャンク屋ネキ

マジか!? マジでネオ・ジオンがダブリンにコロニー落としを!?

 

2:名無しのオールドタイプ

あぁ、原作ではそのはずやで。もうすぐ、奴らはコロニーを落とす。

 

3:ジャンク屋ネキ

マジかよ……。なんだってそんなことを。だって、エゥーゴやカラバはまだしも、連邦政府はネオ・ジオンに屈服したんやろ? そんな反感を育てる作戦を行う必要がどこにあるんだ?

 

4:名無しのオールドタイプ

それについて、俺がちょっと考えてることがあるんだが、いいか?

 

5:ジャンク屋ネキ

ん、なんや?

 

6:4改め考察ニキ

確かに、本来ならこの作戦はする必要がないものだった。

だが、カラバの奮闘と、ダカールを奪回したことで状況が変わってしまったんや。

 

7:名無しのオールドタイプ

というと?

 

8:考察ニキ

カラバの抵抗で、ネオ・ジオンは地上侵攻を遅滞させられてしまってる。そのことは、各地の連邦軍に抵抗する希望をいくらか与えてしまったかもしれん。

そこに、ダカール解放や。それでハマーンは、その件が連邦政府に抵抗する気力を与えてしまったかも、と考えたんやな、きっと。

 

9:名無しのオールドタイプ

ちょうどルウム戦役でヘロヘロにされ、本来の南極条約を受け入れようとしていた連邦が、レビル将軍の演説で、戦う気力を取り戻したように、か?

 

10:考察ニキ

そういうことや。ハマーンは、それを恐れてる。何しろ、ネオ・ジオンの所帯は小さい。ジオンよりもずっとな。地球連邦軍がネオ・ジオンを叩き潰す気になって、力を回復させ、動き出せば、自分たちはハエを指でつぶすように簡単に叩き潰されてしまう。それがわからないハマーンではないやろ。

 

11:ジャンク屋ネキ

それでか……。

 

12:考察ニキ

あぁ。それを回避するためには、連邦とエゥーゴとカラバを恫喝し、戦う気をへし折るしかない。そのためのコロニー落としや。そして脅しでもある。「これ以上抵抗するなら、今度はダカールに落とすぞ」と。

 

13:ジャンク屋ネキ

ということは、オレたちの奮闘が原因ってことか……?OTL

『マリハ、大丈夫? 顔、真っ青だよ?』

 

14:考察ニキ

まぁ、悪い言い方をすればそうなる。だが、これは仕方のないことや。『犠牲を覚悟したうえで、ネオ・ジオンと戦い続けて倒す』か『犠牲を避けるためにネオ・ジオンに屈服したままでいる』かの選択やからな。

 

15:名無しのオールドタイプ

まぁ、どちらが正しいか、なんて今はわからないけどな。

 

16:ラド

とはいえ、それに巻き込まれる連邦市民にとってはたまったものではないが。

前世の世界だったらまだしも、今世では連邦のお偉いさんがアレだしな。

というか、プルがそこにいるってことは、ネキ、病室おるんか?

 

17:ジャンク屋ネキ

あぁ。プルの看病のためにな。ジュドーも一緒におるで。

看病しながら掲示板に書き込みしてるから、ジュドーに『何してるんだ?』と変に思われてるが。

 

18:名無しのオールドタイプ

そうか。まぁ、ここは割り切るしかないと思うで。ネキたちがすることは、犠牲を少なくし、そして生じた犠牲を無駄にしないためにも、ネオ・ジオンを倒し、この戦争を早く終わらすことやと思うぞ。

 

19:ジャンク屋ネキ

あぁ、そうだよな……。ありがとう。おかげで、少しは元気が出たで。

『うー、プル、難しくてよくわかんないー』

 

20:名無しのオールドタイプ

まぁ、プルはまだお子様だからな。

 

21:ジャンク屋ネキ

『ぶーっ、子供だからと馬鹿にしてー!』

怒るなよ……。ジュドーが見てるぞ?

 

22:名無しのオールドタイプ

そうそう、ネキ。プルも。コロニー落としのことはブライトさんたちには言わないほうがいいぞ。『どうしてそのことを知ってる?』と変な疑惑持たれるからな。

 

23:考察ニキ

原作通りなら、どうせハヤトさんが情報持ってくるだろうからな。

 

24:ジャンク屋ネキ

うん、わかったやで。

 

25:名無しのオールドタイプ

あとそれと、その時には覚悟しとくんやで。脳内に阿鼻叫喚がダイレクトに届いて大変みたいだから。

原作でもプルはそれで錯乱しかかってたし。

 

26:ジャンク屋ネキ

そ、そんなにか……。わかったわ……。

『う、うん。私も覚悟しておく……』

 

* * * * *

 

 ブリッジに行くと、そこでは小太りの、声がガイ兄ちゃんな男性が、ブライトさんと話していた。どうやら彼がハヤトさんみたいだな。

 

「二人をグラスゴーに降ろしてやって下さい! このままコロニーに落ちる様な場所に行ったら、カミーユは……!」

 

 ハヤトさんはブライトさんにそう訴えていた。どうやら、コロニー落としの情報は、既に伝わってるみたいだ。

 スレ民の話では、ハヤトさんはグリプス戦役で、カミーユを行動を共にしていた他、息子のカツをその戦いで失ったらしい。それはカミーユのことを心配するのも無理はないだろう。もしかしたら、カミーユのことを、もう一人の息子と思っているのかもしれない。

 

 そこでオレは助け船を出すことにした。

 

「なぁ、ブライトさん。だったら、連絡艇に乗せて出してやるとともに、グラスゴーからマシュマーさんのサンドラを迎えに出してもらうのはどうかな? マシュマーさんだったら、それぐらいのことはやってくれるだろうし、あの人の性格からして、カミーユさんに害を加えることはないと思うんだけど」

「マリハ……」

「息子が死ぬのは本当に辛いことだと、オレも思うぜ。ハヤトさん」

 

 ハヤトさんはそのオレを見て、何か驚いた顔になった。何かついてるのかな?

 

 そして、その提案が届き、カミーユさんとファさんは、ファさんが操縦する連絡艇でダブリンから避難することになった。そしてその途中でサンドラに回収してもらい、グラスゴーに送り届けられる予定だ。

 

 そしてカミーユさんとファさん、そしてハヤトさんがアーガマを出る時間になった。乗ってきた連絡艇に乗ろうとしたとき、ハヤトさんはブライトさんのほうを向き、こんなことを言った。

 

「私には、カミーユの瞳の奥にあるものが何か、訴えているものが何かわかりませんでした。ですが……彼女、いえ、彼女たちにはわかるのかもしれません。うらやましい話です」

 

 そしてハヤトさんはアーガマを出て行った。

 

* * * * *

 

29:ジャンク屋ネキ

かくして、市民を避難させることになったんだけど、なかなか進まないなぁ。

 

30:名無しのオールドタイプ

まぁ仕方ないわ。コロニーが落ちてくると聞かされれば混乱も生じるだろうし。

 

31:名無しのオールドタイプ

ネオ・ジオンが邪魔しに来ないだけ、まだましとおもわにゃな。

 

32:ジャンク屋ネキ

でもどうして奴ら、邪魔しに来ないんや?

 

33:名無しのオールドタイプ

実際、こんなに混乱で避難が進んでないからな。あえて邪魔する必要もないんやろ。

 

34:考察ニキ

それに、生き残りが出れば、そいつらがコロニー落としを防げなかった連邦に不満を持ち、不穏分子となる可能性もあるからな。

 

35:名無しのオールドタイプ

それにしても、アウドムラにも避難民を収容してるけど、やはり避難は進まないな……。

 

36:名無しのオールドタイプ

この調子だと、半分どころか、3割も救えるかどうか……。

 

37:考察ニキ

おい、空見ろ空!

 

38:名無しのオールドタイプ

つ、ついにきよったか……。

 

39:名無しのオールドタイプ

コロニー!!

 

40:ジャンク屋ネキ

これが……コロニー落とし……!!

 

* * * * *

 

 雲を裂くようにコロニーが姿を現した。その圧倒する迫力。言葉では言い表せないほどだ。

 そしてコロニーはゆっくりと落下し、そして地上に激突!!

 

 車が、人が、その衝撃で吹き飛ばされる。いや、それだけじゃない。建物も、まるで積み木崩しのように破壊され、吹き飛ばされている。

 犠牲となった人々は、ある人は建物に叩きつけられ、またある人はガラスの破片に切り刻まれ、またある人は空に巻き上げられたところで地表に叩きつけられた。

 

 それはまさに阿鼻叫喚。

 

 そして―――!!

 

 コワイヨー

 イタイヨー

 マダシニタクナイ!!

 タスケテ!!

 イキタイ、マダイキタイヨ!!

 ダレダコンナコトヲシタノハ!!

 ニクイニクイニクイ……!!

 

 ……!!

 

* * * * *

 

43:ジャンク屋ネキ

……!!

 

44:名無しのオールドタイプ

おい、大丈夫か、ネキ!?

 

45:名無しのオールドタイプ

しっかりしろ!

 

46:ジャンク屋ネキ

はぁ……はぁ……。な、なんとか大丈夫や……。

こりゃきつすぎるで……。この前、ダカールで負傷した時とはくらべものにならん……。

はっ、プル!?

『ああああああ!!』

プル、しっかりしろ!

 

47:名無しのオールドタイプ

やはりプルもか……。プルは、ネキよりニュータイプ能力高いからな……。感受性もネキとはダンチのはずや……。

 

48:名無しのオールドタイプ

しかも、まだ11の子供だからな……。残酷すぎるで……。

 

49:ジャンク屋ネキ

『なんか、恐ろしいような、暗いものが頭に飛び込んできて……怖い……怖いよ……』

大丈夫だ、プル。オレも、ジュドーも一緒にいるからな? よしよし……。

 

* * * * *

 

 一方そのころ、コロニーが落ちる様子は、サンドラのマシュマーも目撃していた。

 

「ハマーン様、なぜこのようなことを……。私がハマーン様を信じていたのは何だったのだ……」

「マシュマー様……」

 

 戦死した弟のゴットンに代わり、新しく副官になったボットン・ゴーが声をかける中、マシュマーはただ悩み続けていた。

 

「私がハマーン様に仕えていたのは、ハマーン様にこのような虐殺をさせるためではなかったはずだ……」

「……」

 

 ブリッジクルーはただ沈黙する。やがて、マシュマーは決然な表情をして振り返る。

 

「決めた。私はこれからハマーン様と決別し、エゥーゴと合流する!!」

「な、なんですと!?」

 

 ボットンが驚愕に眼を見開き、クルーたちが絶句する中、マシュマーは話を続けた。

 

「騎士道とは、ただ主に尽くすのみに非ず! 主が道を間違えた時には、それを正すのも騎士たる者の務めだ。例え、そのために主と敵対することになろうとも!」

「……」

「例えハマーン様であろうとも、コロニー落としなどという非道を働くことは許されない! 私はハマーン様と対決し、あのお方を倒し、そのお考えを、行いを正さなくてはならない!」

「……」

「ただ、この考えを諸君らに強制するつもりはない。私についていくことができず、ネオ・ジオンに戻りたい者がいるなら、このサンドラを退艦していってもかまわない。そうなっても、私は恨みはしない」

 

 その返事はすぐに来た。最初にボットンが口を開く。

 

「何を仰います、マシュマー様! 私もマシュマー様に付き合います!」

 

 それに続いて、ラド・カディハも口を開いた。

 

「それでこそマシュマー様です! 私もマシュマー様に従います!」

 

 それからも退艦を希望する者は誰もいなかった。それを見て、マシュマーは感極まったような表情でうなずいた。

 

「よし、これから我々もダブリンに急行する! アーガマに通信をつなげ!!」

 




ファンアート募集中!

* 次回予告 *

コロニー落としの衝撃で頭がごっちゃになったけど、それで混乱してる暇はなかった。名誉挽回のために、グレミーがプルツーを出してきたからだ。

プル似でありながらオレにはわからなかったけど、プルにはわかってたみたい。
大きさに仰天してピンチなジュドーを助けるために出撃したプルに、オレも同行したけど、相手は思ったより強大で……。

その時、ジュドーの叫びが響いた。

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』

第21話『曇った空、散りゆく命』

不穏なサブタイトル……!

※次の更新は、4/2 12:00の予定です!


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Act.21『曇った空、散りゆく命』

前回のタイトルの元ネタは、Zガンダム第25話『コロニーが落ちる日』からでした。皆さんいかがでしたか?

さぁ、いよいよ前半の山場、サイコMk-Ⅱ戦ですぞ!


 一方、ダブリン郊外のミンドラ。そのコールドスリープ室のグレミーは無念そうに表情を歪ませていた。だがそれは、マシュマーのように良心の痛みからではない。

 

「コロニー落としを成功させた今、ラカン・ダカランはさぞ鼻が高いだろうな。それに比べれば私は……だが、このチャンスにアーガマを沈めることができれば、名誉挽回はなる」

 

 そして、冷凍睡眠カプセルのボタンを押す。ゆっくりと開いていくカプセルのケース。

 

「目覚めよ、プルツー。目覚めるのだ!」

 

 その言葉にプルツーと呼ばれた少女の目が開く。プルツーはそのまま、鋭い目を主へと向けた。

 

「重力を感じる。ここは宇宙ではないな?」

「そうだ、ここは地球だ」

「どのくらい眠っていた? その間に物事が整理されたとは思えないが」

 

 そのプルツーの軽口に、グレミーは苦笑しつつ答えた。

 

「三年ほどだ。そして、お前の言う通り、整理されてはいない。お前の力が必要となるほどにな」

「……そうか。それと」

「なんだ?」

「人の裸をじろじろ見るな。お前は幼女の裸を愛でる趣味でもあるのか?」

 

 プルツーの苦情を聞き、グレミーは自分の不明を恥じて頬を染めた。

 そして、プルツーにそこで待っているように言うと、外に出て、部下に下着とノーマルスーツを持ってこさせると、それを受け取り戻ってきた。

 

 グレミーからそれらを受け取るとプルツーはそれを着込みながら言った。

 

「お前はもう少しデリカシーを身に着けたほうがいいぞ。兵士には女性もいるのだからな」

 

 なぜ自分はまだ11の幼女に説教を受けているのだろうか? あとで刷り込みを担当した技官に苦情を言うべきかもしれない。

 そんな理不尽さを感じながら、グレミーはうなずいて口を開いた。

 

「わかった、気を付けよう。それでプルツー、さっそくだが……」

「わかっている。アーガマを沈めろというのだろう? 身体慣らしにはちょうどいい」

 

* * * * *

 

 愛機としてあてがわれたサイコガンダムMk-Ⅱ(マークツー)に乗り込んだプルツーは、面白くなさそうに鼻を鳴らした。

 

「ふん、ちょっと重いな……。前に乗っていた奴の癖が残っている。この機体、新造したものではないな?」

『そうだ。アクシズの付近に漂っていたものを回収して改修したと、ハマーン様が仰っていた。そこまでわかるのか?』

回収(かいしゅう)して改修(かいしゅう)……ふふ。いやなんでもない。あぁ、さすがにな」

『どうだ、いけそうか?』

「私を誰だと思っている? あの研究所で生み出されたのが伊達ではないと証明してきてやろう」

 

 そしてプルツーは、サイコMk-Ⅱを発進させた。

 

* * * * *

 

52:名無しのオールドタイプ

そういえばプルなんだが、容体自体はどうなんだ?

 

53:ジャンク屋ネキ

あぁ。先生の話では、全身打撲がそれほどひどくなかったのと、ずっと安静にしていたこともあって、だいぶよくなったよ。あの元気が半分ぐらい戻ってきたぐらいにはな。まぁ、まだ戦闘は無理みたいだが。

 

54:名無しのオールドタイプ

良かったで。やっぱり、ネキが駆け付けるのが早かったのがよかったんやな。本当にお手柄やで。

 

55:ジャンク屋ネキ

あぁ、本当にな。

……? どうした、プル?

『何か、敵がこっちに向かってくるの……。お願い、マリハ。ブリッジにつないで……』

あ、あぁ。

 

56:名無しのオールドタイプ

いったい何が……あ。

 

57:考察ニキ

そうか、まだ彼女がいたな……。

 

58:ジャンク屋ネキ

おい、なんだお前ら、わかるのか?

 

59:名無しのオールドタイプ

あぁ。プルの最大の死亡フラグや。

 

60:考察ニキ

プルツー……プルの妹やで。

 

61:ジャンク屋ネキ

プルの……

『妹……?』

 

* * * * *

 

「こっちに向かってくる敵……それがアーガマを沈めようとしているというのか?」

『うん……私にはわかるの……』

 

 アーガマのブリッジで、ブライトは病室からプルの通信を受けていた。

 彼女の指示に従って、ハイメガ粒子砲の照準を設定していく。

 

 トーレスが報告をしてくる。

 

「目標、見えません!」

「かまわん、照準固定!」

 

* * * * *

 

「!!」

 

 ダブリンに突き刺さったコロニーの裏側に潜んでいたプルツーは、突然、何かを感じて機体を急速に回避した。

 その次の瞬間、コロニーを突き破りメガ粒子ビームが飛んできた。かわすことはできたが、右側のウィングの一部を吹き飛ばされた。

 

「アーガマめ、なかなかやるな!」

 

* * * * *

 

 コロニーに向かって飛んでいくZZ(ダブルゼータ)ガンダム。ビーチャの百式とルーの(ゼータ)ガンダムは、避難民を収容したアウドムラの護衛や、生き残りの避難誘導などを行っている。

 そのジュドーのZZガンダムに通信が入る。

 

『コロニーの風穴から敵機を確認できた。あれはサイコガンダムMk2だ、強化人間用の機体だ。気をつけろ!』

「わかってるって!」

 

 コロニーの残骸の近くにまでやってきたZZに、上から何かが襲い掛かった! いきなり、拡散メガ粒子砲の洗礼だ。

 

「!!」

 

 ジュドーはZZガンダムのバーニアをフルパワーにして、それをなんとか回避した。

 

『よくかわしたな。直撃させられたと思ったのだが』

「!?」

 

 聞き覚えがある声。

 その声とともに、先ほどの拡散メガ粒子砲の主、巨大なMA(モビルアーマー)が上空から急接近してきた。そのMAは変形を開始する。

 体育すわりのように折りたたまれていた脚部が伸張する。両腕が伸びる。尾翼のような長い三角形のパーツが後方に折れ、頭部が姿を現す。

 

 可変MA・サイコガンダムMk-ⅡはMS(モビルスーツ)形態に変形した。

 

「こ、こいつがサイコガンダム……!」

『ふふふ、驚いたか? ZZ』

「こなくそぉ!!」

 

 ZZはダブルビームライフルを撃つが……。

 

 サイコガンダムMk-Ⅱはその背部から羽の付いたビット……リフレクタービットを射出する。

 それは、プルツーの意思を受けて、サイコの前面に展開し、ダブルビームライフルのビームを、そのままZZへと跳ね返した!

 

「うわぁ!!」

 

* * * * *

 

64:ジャンク屋ネキ

『!!』

ぷ、プル。起き上がってどうしたんだ!?

『行かなきゃ……。ジュドーが危ないの!』

 

65:名無しのオールドタイプ

確かに、プルツー&サイコMk-Ⅱ相手じゃ、ジュドーでもきついかもしれんけど、だからって無茶や!

 

66:考察ニキ

プルだってけが人なんやで!?

 

67:ジャンク屋ネキ

『だけど、このままじゃジュドーが……』

……仕方ない。それじゃ、オレも一緒についていくのじゃダメか?

 

68:名無しのオールドタイプ

ネキ……。

 

69:ジャンク屋ネキ

プルはどうしても行くつもりだしな。

例え、プルツーと戦うのが、プルの死亡フラグだとしても、オレが一緒にいれば、死亡条件が変わるかもしれないだろ?

 

70:名無しのオールドタイプ

なんかゲームのような理論だが……ありかもしれん。だがいいのか?

相手かなり強いし、危険やぞ? 下手したら、ネキも一緒にお陀仏になりかねんのやで?

 

71:ジャンク屋ネキ

そうならんように気を付けるわ。

あと、参考に、プルが原作でどのように散っていったか聞かせてくれるか?

知っていれば、何か対策がとれるかもしれん。

 

* * * * *

 

「ブライト艦長、ジュドーを助けに出ます!」

『マリハ! 大丈夫なのか、そんな中破しているキュベレイで……』

 

 オレはキュベレイのコクピットからブリッジに通信を入れた。

 ちなみにオレもプルも念のためにノーマルスーツを着ている。……さすがに弱っていて腰砕けになりかけのプルに着せるのは大変だった……さらに、脱出のことも考えてパラシュートも持ってきているという万全な対策だ。これも、スレ民のみんなが原作でのこの戦いについて教えてくれたおかげである。

 

「はい。なんとかやられないように、ジュドーの援護をするように立ちまわります」

『そうか……無茶はするなよ』

「はい、行きます!」

 

 そして通信を切る。

 

「それじゃ行くぞ、プル。本当にいいんだな?」

「うん。妹の悪さは、ちゃんとお姉ちゃんが止めないとね……」

「よし、操縦はオレがやる。プルはファンネルの制御を頼むぜ」

「了解、了解……」

 

 そして、オレとプルを乗せたキュベレイは、ドダイにのって出撃していった。

 

* * * * *

 

 そのころ、ZZのジュドーはピンチに陥っていた。

 激戦の末、ついにサイコガンダムMk-Ⅱにつかまってしまったのだ。

 

「ふふふ、これで終わりだな、ZZ!」

「くそぉ、放せ、放せったら!!」

 

 そこに。

 

「!!」

 

 ビームが放たれた。プルツーはZZガンダムを手放して、それを回避した。

 向こうからやってきたのは、ドダイにキュベレイである。

 

「キュベレイ!? プル、なんで出てきたの!?」

「ジュドーがやられるの、黙ってみていられないもん……」

「だとさ。後でお前に大人しく叱られるって。プルが」

『ホームドラマをやっている場合か!!』

 

 三人の会話に割り込むようにサイコMk-Ⅱが拡散メガ粒子砲を発射。ジュドーのZZと、マリハとプルのキュベレイがあわててそれを回避する。

 キュベレイがファンネルを展開して攻撃するも、サイコMk-Ⅱは、その動きが読めているかのようにやすやすとその攻撃を回避した。

 

* * * * *

 

74:ジャンク屋ネキ

ファンネル攻撃も簡単にかわすとは……。

『何で私のする事が解るの!?』

 

75:名無しのオールドタイプ

あぁ、そうか。プルツーはプルのクローンだからな。いわば姉妹のようなものだから、動きを読むのも簡単なんだろう。

 

76:ジャンク屋ネキ

くっ、それならオレのならどうだ! 行け、一郎、次郎、三郎!!

 

77:名無しのオールドタイプ

だからそのネーミングセンスを直せと……え?

 

78:ジャンク屋ネキ

……通じたんだが。

 

79:考察ニキ

そうか。例えネキがプルクローンだったとしても、一つだけ大きな違いがある。それは、ネキが現実世界から転生したこと。だから、その本質みたいなものが二人とは根本から変わっているんだ。

 

80:名無しのオールドタイプ

つまり、プルツーとはつながりのない別人のようなものになったから読まれなくなった、ってことか。

これならいけるかもしれんで、ネキ。

 

81:ジャンク屋ネキ

あぁ。やってみるで!

 

* * * * *

 

 そしてオレは、一郎、次郎、三郎の三機のファンネルを操って、サイコガンダムMk-Ⅱへの攻撃に参加した。プルが操っている分のファンネルと組み合わせて、攻撃を仕掛ける。ZZもダブルビームライフルで応戦し、オレたちはプルツー相手に互角に立ち回っていた。

 

 しかし、行動不能に追い込むまでには至らない。何しろ、ファンネルのビーム程度では、サイコMk-Ⅱの装甲の前にはたいしたダメージを与えることができないのだ。ZZのダブルビームライフルならいけるが、そちらはリフレクタービットで対処される。

 

 そして戦いが長引けば、当然こちらは消耗してくるわけで……。

 

『しまった、パワーダウン……!?』

 

 こちらもそろそろ限界が近いが、その前にZZがパワーダウンしてしまった! しりもちをつくように擱座してしまったZZガンダムに、ゆっくりとサイコが迫る。やばい!

 

 と、突然キュベレイがドダイを飛び出していった。なんだ!?

 

 もしかして……と横を見ると、プルが真剣な目をしていた。

 そうか。キュベレイはサイコミュによる操縦もできると聞いた。プルがサイコミュを使ってキュベレイを操縦しているのだ。

 そんなプルは、オレのほうを見て、悲しそうな笑顔を見せた。

 

「ごめんね、マリハ。マリハも巻き込んじゃって……」

 

 その言葉と表情から、オレはプルの考えがわかってしまった。

 スレ民から聞いた原作での最期と同じように、サイコの拡散メガ粒子砲をキュベレイで受け止め、そして奴と一緒に自爆して果てようとしているのだ。

 ここで散るのは無念だが、オレにはそれを怒る気にはなれなかった。だって……。

 

「いいさ。オレがプルの立場だったら、そうしただろうからな」

『プル、マリハ、ダメだ!!』

 

 ジュドーの制止する声。しかし、それを意に介せず、キュベレイはZZの前に立ちはだかった。

 その時。

 

* * * * *

 

90:名無しのオールドタイプ

待て! 早まるな!

 

91:ジャンク屋ネキ

みんな……でも……。

 

92:名無しのオールドタイプ

お前たちが死ねば、ジュドーたちに心の傷を残すことになるんだぞ! それでもいいのか!?

 

93:名無しのオールドタイプ

そうや、何か他の方法があるはずや!

 

94:ジャンク屋ネキ

でも、オレたちにはほかの方法は……

 

95:名無しのオールドタイプ

それでもあきらめるには早い!

俺たちが考え付くまで、それまでは早まるな!

 

96:名無しのオールドタイプ

ああ……拡散メガ粒子砲が発射態勢に……! 早く、早く……!

 

97:考察ニキ

サイコミュ……リフビット……そうか! 手はあるぞ!

 

98:名無しのオールドタイプ

な、なんか思いついたのか、考察ニキ!

 

99:考察ニキ

あぁ。ネキ、プル! リフビットのジャックだ!

 

100:ジャンク屋ネキ

ジャック? ……あ。

 

101:名無しのオールドタイプ

そうか、ガンダムUCのシャンブロ戦か!

 

102:考察ニキ

そうだ。あの時、バナージのユニコーンは、サイコフレームで、敵のリフレクタービットをジャックしたんだ。キュベレイにもサイコミュがあるから、同じことができるはずだ!

 

103:ジャンク屋ネキ

できるのか……? オレたちで。

 

104:考察ニキ

あぁ。確かにプルツーは強大だが、ネキとプルが力を合わせればサイコパワーは二人分、プルツーを上回るはず。可能性はあるぞ!

サイコミュがオーバーロードしちまう可能性もあるが、特攻するよりは生き残れる目はあるだろ!?

 

* * * * *

 

「だそうだ。やってみようぜ、プル。考察ニキの言う通り、ただ特攻して死ぬよりはマシだろ?」

「う、うん、やってみるよ……」

 

 そしてオレとプルは、サイコガンダムMk-Ⅱのリフレクタービットに意識を集中した。

 キュベレイからオーラが立ち上る。

 

 サイコガンダムMk-Ⅱから拡散メガ粒子砲が発射される。

 

 リフレクタービットが少し動き出した。

 

 そして。

 

 リフレクタービットがビームを反射したその瞬間、リフレクタービットが方向を転換した。ビームを、発射したサイコMk-Ⅱへと跳ね返す方向に。

 

『な、なんだ!?』

 

 そして、反射されたビームは、そのままサイコガンダムMk-Ⅱの砲口に集中! 大爆発を起こした。

 

 しかし、その代償は大きかった。やはりキュベレイのサイコミュがオーバーロードして爆発を起こしたのだ。このキュベレイはもうダメだ。脱出しなくては。

 オレはパラシュートを背負うとプルを抱きかかえ、ハッチを開いた。

 

「いくぞ。しっかり捕まってろよ?」

「うん……」

 

 そして。

 

「ジュドー、受け止めてくれよ!!」

 

 そして空中に飛び出す。オレたちの身体は、風に巻き上げられて大きく飛び上がった。そしてパラシュートを開く。

 プルを抱きかかえたままゆっくりと舞い降りるオレたちは、無事、なんとか再起動したZZの手に受け止められた。そして、胸元の非常用ハッチからコクピットに迎え入れられる。

 

「まったく……二人とも無茶しすぎだ!」

「はは……ごめんよ」

「でもこれで……え……」

 

 絶句したプルのつぶやきに、正面を見ると、そこにはサイコガンダムMk-Ⅱが。

 ビーム砲の直撃を受けて中破したといえ、悠然とこちらに歩いてくる。なんて奴だ……あれでもびくともしないとは。プルツーもサイコフィールドを展開してダメージを減らしたのだろうか。

 

『ふふふ……よくもやってくれたな。だがこれで終わりだ!』

「そうはさせるか!!」

 

 プルツーにそう言い放ったジュドーの身体からオーラが立ち上り、ZZの各機能が再起動し始める。ジェネレーターの出力も急上昇している。ジュドーのサイコパワーの影響だろうか。

 

「妹たちをやらせはしない!!」

『な、なんだこのパワーは!?』

 

 そのサイコパワーを感じ取ったのか、プルツーのサイコガンダムMk-Ⅱは少したじろいだ。オレたちを守ろうとするジュドーのサイコパワーが、プルツーをもたじろがせるレベルまで上昇しているのか。

 

「うおおおおお!!」

 

 ZZがハイパービームサーベルを抜く。そのビームの刃は、ジュドーのサイコパワーを受け、強力で長大なものになっていた。

 そのビームの刃でサイコMk-Ⅱを一刀両断! そのボディは爆散したが、プルツーは頭部を切り離したことで脱出したようだ。

 

「逃がすかああああ!!」

『くっ!!』

 

 撤退していくサイコ頭部を追撃していくZZ。そしてビームサーベルを振るう!

 そしてビームの切っ先が頭部をかすめたその時。

 

 オレたちは見た。

 

 プルと似た顔立ちの少女の姿を。あれが、プルのクローン、プルの妹、プルツー……?

 

 衝撃を受けたのは、ジュドーも同じだったようだ。

 

「あれは……プル……? どうして……?」

 

 それで闘志が切れたのか、ZZは再びパワーダウンを起こして、落下していった。

 オレたちを発見し、回収しようとサンドラがやってきたのは、ちょうどその時だった……。

 




ファンアート募集中です!

さてさて、次回、いよいよネキの新しい愛機が出てきます。
その名も、バギ・メタス! メタス改をさらに改造して作られた、NT専用メタスです。サイコミュ技術がどこから来たのかは不明ですが、まぁ、マシュマーさんのガルスJ改のサイコミュを解析した結果と、バイオセンサーの技術とをニコイチした、ということで。
ちなみに、次々回あたりに改名される予定w

* 次回予告 *

ハマーンは宇宙に帰った。
オレたちも北の国のカラバの基地から宇宙に出た
ハマーンのいるサイド3に潜入する新しい戦艦と合流するためだ。

そこではコロニーを落としたあの男が待ち構えていたんだ。

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第22話『出撃、ネェル・アーガマ』

マシュマーさん、大活躍!

※次の更新は、4/5 12:00の予定です!


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Act.22『出撃、ネェル・アーガマ』

はい、まずは前回の答え合わせです。
元ネタは、ガンダムAGEの第47話『青い空、散りゆく命』からでした!
皆さんはどうでしたか?

さて、ここから舞台は宇宙にうつります。もちろん、プルも一緒に!



「プルの妹?」

 

 宇宙へ向かうシャトルの中で、オレはジュドーからそう聞かれていた。

 

 アーガマは一度降りたら、もう宇宙へは戻れない。そこで、シャトルで宇宙に出てラビアンローズに合流し、そこで建造されている新型艦に乗ることになった次第だ。

 またラビアンローズには、グリプス戦役末期から建造中であったアイリッシュ級の新造艦も合流しているとのことで、そちらはマシュマーさんたちサンドラクルーに提供される、とのこと。

 

 さて、ジュドーの問いかけにオレは答える。

 

「あぁ、そんな感じだ。な、プル?」

「うん。感覚的にわかったの。プルツーは、私の激しいところを持った娘だって。私の分身のような人、妹みたいなものだって」

「そうか……」

 

 事前に、プルツーがプルのクローンだということは黙っていようと、プルとは相談しておいたが、そう語る彼女の口調には確信めいたものがあった。おそらく、スレ民から聞いた説明とは関係なく、プルツーが自分の分身だと感覚的にわかっているんだろう。

 それを聞いたジュドーは目を閉じてつぶやいた。

 

「そうか……。もし、できれば彼女も戦いから解放してやりたいな。プルの妹だもの……」

 

 そしてオレたちを乗せたシャトルは宇宙へと打ち上げられていった。

 

* * * * *

 

1:ジャンク屋ネキ

ラビアンローズが見えてきたな。あ、二隻並んでるな。

『あの手前の艦、アーガマそっくり!』

 

2:考察ニキ

あれがネェル・アーガマ。史実では、その八年後にも近代化改修されて使われた名艦やで。

 

3:ジャンク屋ネキ

ネェル・アーガマ……。

 

4:名無しのオールドタイプ

ネェルとは『近い』という意味だそうやで。ハイメガ粒子砲を装備した、いわばアーガマを強くしたような艦や。

 

5:名無しのオールドタイプ

もう一隻はアイリッシュ級だけど、緑色に塗られとるな。あれがサンドラクルー用かな?

 

6:ラド

エンドラの色にそっくりに塗られとるな。それを見てマシュマー様が感動してるわ。

今から、『あの艦を新たなエンドラ、ネオ・エンドラと命名する!』と言ってらっしゃるで。

 

7:考察ニキ

さすが、強化されていてもマシュマーさんはぶれないな。

 

* * * * *

 

 さて、ラビアンローズに到着したオレたちだが、ネェル・アーガマのブリッジに行くと、(ジュドーたちにとっては)驚くべき人がオレたちを待っていた。

 エゥーゴのお偉いさん、メッチャー・ムチャさんだ。オレは初対面だが。

 

 そしてさらに驚くべきことに、メッチャーさんはオレたちに腰を曲げて謝罪したのだ。

 

「シャングリラの諸君、我々のふがいなさから、これまで戦いを強要し、辛い思いをさせてきて済まなかった。今だ我が軍の戦力再建は途上だが、ここからは我々がこのネェル・アーガマで戦いを引き継ごう。君たちは望むならこの艦を降りて、シャングリラで元の生活に戻って構わない。いや、戻ってほしい」

 

「君たちにこれ以上の苦難を押し付けるのは申し訳ない」とも。これには、スレ民もびっくりである。スレ民の話では、原作では彼らはジュドーたちを邪魔もの扱いして、ネェル・アーガマから外そうとしていたそうだから。

 

 もっとも、ジュドーたちは降りる気はなさそうである。オレもその一人だが。

 

「謝るならもっと早く謝って、そして動いてほしかったぜ。でも、俺たちは降りるつもりはないよ。乗ってしまった船だからな」

「だが……」

「オレたちは、無理やり戦わされてきたわけじゃないよ。そりゃ、最初のうちは成り行き任せだったけどさ。でも今は違う。これ以上の犠牲は出したくないと思って、自ら戦ってきてるんだ。降りろと言われても降りないぜ」

 

 そこに、モンドが横から口を出す。

 

「そうそう。それに、エゥーゴの正規軍の人たちより、俺たちのほうが長く戦ってきたからな。それなりに強い自信はあるよ」

「……」

 

 ジュドーたちの真摯な言葉に打たれ、メッチャーさんは黙り込んだ。それを見て、ブライトさんが口をはさんだ。

 

「負けてますな。どうでしょう、ここは彼らのビビッドなセンスを信じて、ネェル・アーガマを任せてみては? こちらは急いで正規兵たちの練度を上げて、それから援軍に送り出せばいいでしょう」

「ビビットなセンス……。君がウォン氏に言っていたことか。そうだな。君の言うことがベストなのだろう。わかった、そうしよう」

 

 と、そこに。

 

「敵艦隊接近!」

 

* * * * *

 

 ラビアンローズに接近してきたのは、グワンドラをはじめとした、ネオ・ジオン艦隊であった。

 グワンドラのMS(モビルスーツ)デッキ、格納されているMSの1機、ドーベンウルフのコクピットにいるラカン・ダカランは不敵に笑って言った。

 

「ハマーンにしろ、グレミーにしろ、味方にしてもらうには、それだけの功績をあげてみせねばならんからな。エゥーゴの新型艦なら、十分な手土産になる。ドーベンウルフ、出るぞ!!」

 

 そして、ラカンのドーベンウルフを筆頭に、他の艦からもドライセンが発進していく。

 

 敵の接近をとらえたエゥーゴ側からもMSが発進していた。

 ラビアンローズからはGMⅢ隊。

 アイリッシュ級ネオ・エンドラ(マシュマー命名)からは、マシュマーのガルスJ改、ボットンのガ・ゾウム、ラドのズサ、他一般兵のガザD。

 そしてネェルアーガマからは、ジュドーのZZ(ダブルゼータ)ガンダム、ルーの(ゼータ)ガンダム、エルのガンダムMk-Ⅱ(マークツー)。(百式は整備中だった)

 

 そして……。

 

* * * * *

 

11:名無しのオールドタイプ

これがネキの新しい愛機かー。

 

12:考察ニキ

見た感じ、メタス改をベースにしているように見えるな。

ファさんのメタスを回収して改装したのかな?

 

13:名無しのオールドタイプ

ん? 背中と両足についてるのはなんや?

 

14:ジャンク屋ネキ

あぁ。これは、サイコミュとコンピュータ制御で動く、モビルビットというビットの一種らしいで。通常はサイコミュで制御するけど、オレが疲れたらコンピュータ制御に切り替わるらしい。

ちなみに、こいつらにも一郎、次郎、三郎と名前をつけた。あと、オレのリクエストで犬っぽい動作をするプログラムも入れてもらった。

 

15:名無しのオールドタイプ

だから、そのネーミングセンスをなんとかしろと……。

 

16:名無しのオールドタイプ

まぁ、いつものことだから……。

 

17:考察ニキ

もう、モビルビットまでできてるんか……。まぁ、モビルビット搭載のバギ・ドーガが登場するダブルフェイクは二年後だから、出てきてもおかしくはないか。

 

18:ジャンク屋ネキ

あぁ。こいつの名前も『バギ・メタス』というらしい。もっとかっこいい名前がいいんだけどな。

 

19:名無しのオールドタイプ

モビルビットに一郎、次郎、三郎と名前つけてる奴が何言ってるねん。

 

20:ジャンク屋ネキ

そやけど、オレにも美意識というものがあるんや。おまいら、この戦闘が終わるまでに、新しい名前を考えてくれると嬉しい。

 

21:名無しのオールドタイプ

ほいほい。あまり期待するなや。

 

22:ジャンク屋ネキ

それじゃいくで!

『マリハ、頑張ってー!』

おう、バギ・メタス(仮)出る!

 

* * * * *

 

 そしてオレたちは、ネオ・ジオンのMS隊と接敵した!

 

 さすが経験を積んできただけあり、オレたちは見事な連携で敵と渡り合っていた。

 ジュドーのZZがダブルビームライフルを撃ちながら、接近してきたバウにハイパービームサーベルで切りかかる。

 ルーのZとエルのMk-Ⅱは背中を向けあって、なかなか見事なコンビネーションで、敵と戦っている。

 

 もちろんオレも。

 

「行け、一郎、次郎、三郎!」

 

 三機のモビルビットたちとともに、敵をほんろうしながら攻撃していく。

 モビルビットたちが多方向から攻撃して、敵をけん制しているところに、ビームサーベルで切りかかった。

 

 マシュマーさんたちのほうも、さすが手練れというべきか。互角どころか、むしろ敵を押していた。

 

 だが、ラビアンローズから発進してきたGMⅢのほうは……。

 

「あーあ、なんだありゃ。見てられないなぁ」

 

 まだまだ練度が足りないのか、ネオ・ジオンのMS隊に押されていた。

 そうしているうち、敵の流れ弾が、ラビアンローズの一角に直撃した!!

 

* * * * *

 

 ネェル・アーガマのブリッジに、衛生兵のアンナからの通信が入る。

 

『大変です! ラビアンローズの居住区の一部に被弾して、シンタとクムが外に!』

「なんだと!? どうしてシンタとクムがラビアンローズにいるんだ!?」

『みんなが帰ってくるというので、お出迎えしたいとのことで……』

「だからと言って、戦場に来るなど……。いや、そんな話をしている場合ではないな。わかった、すぐに行く!」

『お願いします!』

 

 指揮をとっていたブライトは、艦長席から立ちあがり、横に立っていたビーチャに声をかける。

 

「ビーチャ、この後の指揮は任せた! やる気があるなら、少しは慣れておけ!」

「は、はいぃ!」

 

 そしてブライトはそのままブリッジの外へ出て行った。

 呆然としているビーチャに、トーレスが声をかける。

 

「指示を頼むぞ、艦長代理!」

「お、おう!」

 

 トーレスに促され、ビーチャは戦況スクリーンを見つめる。そして映し出されてる戦況を見ながら、作戦を組み立てる。

 

「おいおい、GMⅢ隊何やってるの!? 結構押されてるじゃねーか! ガンダムチーム! なるべく早くカタつけてGMⅢ隊の援護に向かってくれ! ネオ・エンドラ隊も、余裕がある機は、GMⅢ隊への援護を頼む!」

 

* * * * *

 

 ガルスJ改のマシュマーは、目の前のドライセンの斬撃をかわし、逆に斬り捨てながらつぶやいた。

 

「ほう……。さすがネェル・アーガマの艦長代理。面白い指揮をする。MS隊! ここは私と、後二機ほどいれば十分だ! 残る機体は、GMⅢ隊の援護に回れ!」

 

 そしてマシュマーは、その言葉を有言実行するかのように、複数の敵機を相手に、有利に立ち回って見せたのだった。

 

 一方のネェル・アーガマ隊も。

 

「ビーチャの奴、簡単に言ってくれちゃって! よし、こいつらを早くカタ付けて、援護に向かうぞ!」

「OK!」

「わかった!」

 

 そして、見事なコンビネーションで、ネオ・ジオンを圧倒する。その攻撃で、彼らと戦っている5機のドライセンのうち1機が撃破される。

 

 しかしそこに。

 

「MSを黙らせられなくとも、母艦を潰せばなぁ!!」

 

 ラカン・ダカランのドーベンウルフが、ガンダムチームの脇をすり抜けて突破しようとしていた。

 

* * * * *

 

29:名無しのオールドタイプ

あれは……ドーベンウルフ。ラカンが来たなぁ。

 

30:ジャンク屋ネキ

なんや、強敵なんか?

 

31:考察ニキ

あぁ。そして最低な奴や。原作では、ダブリンへのコロニー落としのさい、喜々として病院船を沈めた外道やで。

 

32:ジャンク屋ネキ

うわぁ……最低やな。

 

33:名無しのオールドタイプ

あぁ、最低な外道や。でも腕は確かだし、あのドーベンウルフはインコムというオールレンジ攻撃兵器があるから注意するんやで。

 

34:ジャンク屋ネキ

おう。あんな奴に負けるかよ! あ。

 

35:名無しのオールドタイプ

あー、さっそくルーのZがインコム喰らっとるな。幸いながらに、とっさにシールドで防いだが。

 

36:ジャンク屋ネキ

くそ、それなら! 行け、一郎、次郎、三郎!

 

37:名無しのオールドタイプ

おー、すごいすごい。インコムとモビルビットとで激しい空中戦やっとるな。

 

38:考察ニキ

頑張るもんやな、ネキ。

 

39:ジャンク屋ネキ

あぁ……だけどさすがにそろそろ限界やわ。コンピュータ制御だと多分勝てないと思うし、一度機体に戻す。

 

40:名無しのオールドタイプ

あっ、ラカンの奴、今の隙に突破していった!

 

41:考察ニキ

おい、その近くに……!

 

* * * * *

 

 ついに、ラカンのドーベンウルフはガンダムチームを突破し、ネェル・アーガマの至近まで到達した! だがその前で作業しているランチが。なんとか、シンタとクムを救出した、ブライトのランチである。

 

 それが癇に障ったのか、ラカンはドーベンウルフの左腕を振り上げた!

 

「こんなところでひょっこりと出てくるから!!」

「!!」

 

 その時!

 

「やらせん!」

 

 マシュマーのガルスJ改が、ドーベンウルフを殴り飛ばした!

 

「騎士道に反した行い、このマシュマー・セロが許さん!」

「ふん、騎士道にのっとった戦いをしていて、いくさに勝てるか!!」

 

 そう言いながら、ドーベンウルフは背部のインコムを射出し、ガルスJ改にオールレンジ攻撃を仕掛ける!

 だが、さすが強化人間というべきか。ガルスJ改はその攻撃を回避した。お返しにと、その指のフィンガーミサイルを発射!

 

 ドーベンウルフはその攻撃を余裕でかわす。

 

「なかなかやるな。なら、これはどうだ!」

 

 続いてラカンは、その左腕を射出! 飛ばされた左腕は、ガルスJ改の左腕をつかんで、敵機の動きを止めた。

 

「むっ……!」

「これで終わりだな」

 

 そして、動きを封じたガルスJ改に、メガランチャーの照準を定める。万事休す!

 しかし、これで終わったと思うのは早かった!

 

「まだまだぁ!!」

 

 マシュマーはそう叫ぶと、右腕にビームサーベルを構え、なんとつかまれた左腕を斬り落とした!

 

「なんと!?」

 

 左腕を切り離して自由になったガルスJ改はメガランチャーのメガビームをなんとか回避! 再びビームガンを握ると反撃した!

 その攻撃で、ドーベンウルフは右足を破壊されてしまう。

 

「ちっ、なかなかやるな!」

 

 そしてそこに、ZZも駆け付けてきた!

 

「無抵抗の人をやるなんて、いい大人のやることかよっ!」

「戦争で命を奪う相手に抵抗も無抵抗もない! この俺がダブリンにコロニーを落としたようにな!」

「お前がコロニーを!! このぉ!!」

 

 ZZはビームサーベルを振るうが、ラカンをそれを苦も無くかわす。

 しかし戦いはここまでのようである。手の空いたガンダムチームやGM3隊などが戻ってきたのだ。

 

「くっ、戦いはここまでのようだな。引き上げるぞ!」

 

 ラカンのドーベンウルフはさらに斬りかかってきたZZを蹴り飛ばすと、そのまま撤退していくのだった。

 

* * * * *

 

 そして戦いが終わった後、ネェル・アーガマは出航していった。

 それを見ていたメッチャーが、傍らのブライトに対して言う。

 

「やはり、君の判断が正しいようだな」

「は?」

「きっと彼らなら、この戦いを終わらせてくれる、そんな気がする」

 

 そんな会話を交わす二人が見つめる中、ネェル・アーガマの姿は少しずつ小さくなっていった。

 




ファンアートが来ました! 感謝です!
これからもファンアート募集中!

* 次回予告 *

オレ達、サイド3に接近するはずが、民間の貨物船を助け、ムーンムーンの人が乗った船も助けてしまった。
問題は、モンドが何故か心揺らしてたせいで、貨物船が隠してたMSをスルーしちゃったことなんだよな。
でもさすがモンド。ただでは終わらない!
気になる娘がそばにいると、男の子は頑張るもんだからな。オレも元は男だったからわかる!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第23話『聖者との再会』

ほんと、あの人、聖者だよなぁ。

※次の更新は、4/8 12:00の予定です。


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Act.23『聖者との再会』

前回の答え:0083第3話『出撃アルビオン』

今回はシンプルに答え合わせしてみましたww
皆さん、あっていましたか?
正解した方には……

景品:作者からの祝福(拍手つき)と優越感


「よくここまで根を張ってくれたオウギュスト、感謝するぞ」

 

 新しい母艦、グワンバンに移ったグレミーは、目の前のオウギュストにそう感謝を述べた。

 他方のオウギュストは、申し訳なさそうな顔をして答える。

 

「いえ。グレミー様から大任を命じられておきながら、こちらの陣営に引き込めたのは4割ほど。この体たらく、お詫びいたします」

 

 そう頭を下げて謝罪するオウギュストに、グレミーは苦笑してとりなした。

 

「いや、そう詫びることはない。その戦力差を埋めるのも指揮官たる私の仕事だ。それに、お前が用意してくれた『これ』があれば、その差を埋め、逆転することも不可能ではなかろう。これこそ、お前の一番の功績だと思うが」

「は……」

 

 そう言うグレミーたちがいる部屋。その窓の外には、巨大のコロニーの外壁が映されていた……。

 

* * * * *

 

「敵はサイド3で迎え撃つ態勢を整えてるってことか」

 

 ネェル・アーガマのブリッジで、ビーチャはトーレスにそう聞いていた。

 トーレス、うなずいて曰く。

 

「あぁ。戦力を小出しにして失うよりも、本拠地の近くで万全の態勢で整えたほうが、戦いは楽になるからな」

 

 連邦政府とネオ・ジオンとの間で交渉が成立した結果、サイド3はネオ・ジオンの手に渡り、ハマーンは早速アクシズをサイド3に移動させ、サイド3のコロニー群をたちまち制圧。

 その中のコロニー、ジオン発祥の地と言われるコア3を拠点とするべく動き出していた。

 

「何時でも片づけられるってか? 馬鹿にしやがって」

 

 面白くなさそうに吐き捨てるビーチャ。だが、そこでトーレスが気になる発言をした。

 

「だが、それだけでもなさそうなんだ。サイド3のネオ・ジオン軍の中に、怪しい動きがある」

「というと?」

 

 トーレスにジュドーが聞き返す。

 

「ネオ・ジオン軍の中に、微妙な緊張関係があるんだ。まるでお互いに監視というか、牽制しあってる、というか」

「内部分裂の前兆ってこと?」

 

 エルも気になる様子で聞いてきた。もし内部分裂があれば、それは付け入る隙になりうるからだ。

 

「そこまではわからないな。だが、可能性はなくはないと思う」

「でも、もし内部分裂となればこちらとしては大いに助かるよな。互いに潰しあってるところを攻撃してもいいし、片方と手を組んでもいいし。トーレス、そこらへんの情報収集をよろしく頼む」

「了解」

 

* * * * *

 

1:名無しのオールドタイプ

おー、これがマシュマーさんの新しいガルスJか。だいぶ変わったなぁ。

 

2:ジャンク屋ネキ

マシュマーさんの話では、これまでマシュマーさんが乗ってきたMSからパーツを移植したいいとこどりのMS(モビルスーツ)だそうだよ。

 

3:考察ニキ

確かに。右腕はドライセンだけど、左腕はハンマ・ハンマ、そして肩にはズサのミサイルポッドか……。

 

4:名無しのオールドタイプ

左腕には、ハンマ・ハンマのメガ粒子砲つきのシールドもついてるな。そういえば名前はあるんか? こいつ。

 

5:ラド

あぁ。『モナーク・ガルス』だ。

 

6:名無しのオールドタイプ

モナーク……君主か。大層な名前をつけたなぁ。

 

7:ラド

いや。騎士よりさらに上位の騎士、という意味合いやで。

 

8:名無しのオールドタイプ

君主は君主でもロードか! ウィ〇ードリィかよ!

 

9:名無しのオールドタイプ

マシュマーさん、実は転生者でウィ〇フリークだった疑惑……?

 

10:ラド

いや、俺がモナークって名前を提案した。

 

11:考察ニキ

お前かい。

 

12:ジャンク屋ネキ

そういや、名前で思い出したけど、オレの愛機、名前考えてくれたか?

 

13:名無しのオールドタイプ

あぁ、一応はな。昨夜、ネキが寝ている間にみんなでわいわい話し合って、『リャナンシィ』って名前はどうかって結論になった。

 

14:ジャンク屋ネキ

リャナンシィ……。

 

15:考察ニキ

アイルランドに伝わる若く美しい姿をした女の妖精やな。

 

16:ジャンク屋ネキ

へぇ、なんか素敵やな。オレなんかがそんな名前をもらっていいのか、という気がするが。

 

17:名無しのオールドタイプ

ちなみに、リャナンシーの恋人になった人は吟遊詩人としての才能をもらう代わりに精気を吸われて早死にするがな。

 

18:ジャンク屋ネキ

おい。

 

19:名無しのオールドタイプ

それだけやないで。リャナンシーの気に入った男性以外には、その姿は見えない、というのもあるしな。

 

20:ジャンク屋ネキ

なるほどな。まぁいいや。なんか語感が気に入ったから、それにするで。

ん、なんだ、警報?

 

* * * * *

 

 ブリッジに行くと、ちょうど救難要請を受信しているところだった。

 

「船が襲われてるって?」

「あぁ。ネオ・ジオンに襲われているらしい」

「それじゃ、早く助けに行かないと!」

 

 と、ルーが言うものの、ビーチャは渋い顔だ。

 

「だけどな。こんなところで余計な戦いをして消耗したら、何にもならんだろ?」

 

 まぁ、確かにそうだが……ビーチャもたまには指揮官みたいな考え方するのね。

 

「だけど、襲われてて助けを求めてるんだよ! 助けないでどうするの!?」

「そうだよ! 困ってる人は助けなきゃ!」

 

 そうリィナとプルが異論を言うと、ジュドーも口を開いた。やはり、妹たちに助力せざるを得ないらしい。

 

「それに、情報収集とかの必要もあるしな。ビーチャの意見もわかるが……」

 

 そしてとどめにエルが……。

 

「これだけ助けに行こうって言ってるのに行かないの? もう、冷たいビーチャなんて嫌い!」

 

 さすがにそれにはビーチャが慌てた。ははーん、そういうことね(笑

 

「わかったよ。助ければいいんだろ、助ければ! ただちに発進準備にかかってくれ! ただし、あまり消耗するんじゃないぞ! あとそれとモンド、ラビアンローズに補給要請を送ってくれ!」

「OK!」

「ほいほい!」

 

 そして、ネェル・アーガマからオレ含むガンダムチームが発進していった。一応、別動隊の可能性もあるので、マシュマーさんのネオ・エンドラには周囲の警戒をお願いしてある。さすがビーチャだ。

 

 なお、プルは基本的にネェル・アーガマで留守番。これは、もうプルをあまり戦わせたくない、というジュドーの意向だ。

 

 だが、出撃してその民間船に接近すると、襲っていたけったいなMA(モビルアーマー)(スレ民の話では『ジャムル・フィン』というらしい)は、まるで蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 

「ありゃ? 逃げていった。なんか拍子抜けだなぁ」

 

 オレがそう言うと、ビーチャから通信が入った。

 

『無駄な弾やエネルギーを使わずに済んだなら、それに越したことはないだろ! いいから船を護衛しながらこっちに戻ってきてくれ』

「了解、了解」

 

 と、そこに(ゼータ)ガンダムのルーが何かに気づいた。

 

『ちょっと待って。もう一隻、こちらに助けを求めてるよ! こちらはかなりやばいみたい!』

「なんてこった! なんか今回は忙しいな!」

 

 そう言いながら、もう一隻のほうに急行する。

 船が見えてきた。あれは……ずいぶん古い型の船だなぁ。

 

『あれ? あれはムーン・ムーンの船じゃないか?』

「ムーン・ムーンってあれか? オレが捕まったあとに、アーガマが立ち寄ったという」

『えぇ、そうよ。ムーン・ムーンで見たことあるわ』

 

 そんなムーン・ムーンの船を襲っているのは、先ほどとは違い、ハイザックとかマラサイなどのティターンズのMSがメインのようだ。どうやらティターンズくずれの海賊らしい。

 

『手向かい出来ない者を甚振るなんて、卑怯だぞ!!』

 

 はい。義憤に燃えるジュドーの手により、いたぶるように船を襲っていた海賊たちは、あっさり蹴散らされました。オレたちの出る幕、全然なし。

 

* * * * *

 

26:ジャンク屋ネキ

あの人が、ムーン・ムーンの人々の長、サラサさんかぁ。オレたちより同じ年ごろなのにすごいなぁ……。

 

27:名無しのオールドタイプ

そりゃ、傀儡とはいえ、かなりカリスマあるからね。見ろ、光って見えるぞ。

 

28:名無しのオールドタイプ

本当にな。あのカリスマは、マリアさんとタメはれるわ。

 

29:考察ニキ

それで、サラサさんはなんて?

 

30:ジャンク屋ネキ

うん。『見分を広めるために旧式船で宇宙に出たけど、動力部が壊れて漂流していた』んだって。

 

31:名無しのオールドタイプ

旧式の船で宇宙に、しかも戦闘が行われている宙域に来るなんて無謀やなぁ……。

 

32:考察ニキ

まったくやな。

 

33:ジャンク屋ネキ

ん? なぁ、サラサさんってもしかしてニュータイプだったりするんか?

 

34:名無しのオールドタイプ

そんなことはないはずや。ただ、不思議な感知力はあるみたいだけどな。どうしたん?

 

35:ジャンク屋ネキ

いや、今、サラサさんが気になることを言ったんや。

『この艦に、邪悪な気が紛れ込んでる』って。

 

36:名無しのオールドタイプ

邪悪な気? なんのことやろ?

 

37:ジャンク屋ネキ

オレにもさっぱりやねん。敵のスパイでも紛れ込んでるのか……?

『うーん。だけど、プルも感じるの。黒くて、でも知ってるような気がする気配がこの艦の中にあるの……』

 

38:考察ニキ

邪悪な気……ムーン・ムーンの船……もう一隻の船……ん?

 

* * * * *

 

 一方そのころ。モンドは民間船の貨物チェックをしていた。

 が、その様子はどこか心ここにあらず、といった感じだった。

 

 それはサラサの妹、ラサラとの再会による。

 モンドはジャンク屋になってから、マリハと交流していく中で、彼女にほのかな片思いを寄せるようになっていた。まだ告白するには至ってないものの、その想いは、彼女がネオ・ジオンに捕虜になったことで、さらに強くなった。だがその一方で彼は、ムーン・ムーンにて、ラサラと交流し、彼女にも惹かれていたのだ。

 とはいえ、再びアーガマがムーン・ムーンを出たことで、その気持ちも薄れていき、またマリハへの想いが強くなっていったのだが。なお、再びマリハがアーガマに戻ってきた今でも、彼女には告白できていない。彼もシャイな男の子なのだ。

 

 だが今、かつて惹かれていたラサラと再会した。そのことで、彼の心は、マリハとラサラとの間で揺れていたのだ。

 

 しかし、そのことが、ある見逃しを招き、ネェル・アーガマに危機を呼ぶことになったのだ!

 

* * * * *

 

39:ジャンク屋ネキ

うーん。この部屋にもいない……。ということは、ネェル・アーガマにはいないみたいだなぁ。

ネオ・ジオンの奴ら……。

 

40:名無しのオールドタイプ

ということは、まだあの船の中にいるってことなのかなぁ。

 

41:ジャンク屋ネキ

にしても、ハマーン。ジュドー欲しさにネェル・アーガマに潜入して抑えようとするなんて、ずいぶん大胆じゃない? ネオ・ジオンのトップなんよね?

 

42:考察ニキ

あぁ。それだけジュドーに執着してるってことやね。

 

43:ジャンク屋ネキ

まさかすれ違った女性が実はハマーンで、『馬鹿者、それがハマーンだ! 追えー!』ってことには……ならんよなぁ。

 

44:名無しのオールドタイプ

なんでル〇ンやねん。

 

45:ジャンク屋ネキ

そしたら後は、連中が持ち込んでるガ・ゾウムか……。荷物のチェックはモンドがしてくれてるから見つけてくれてると思うけど……な、なんだ!?

 

* * * * *

 

 突然、民間船の後方に曳航されていた貨物船のコンテナが開き、中から二機のMS、ガ・ゾウムが飛び出してきた!

 それに、ネェル・アーガマに緊張が走る!

 

「コンテナの中から現れただと!?」

「モンドの奴、何やってんの!?」

 

 動揺するトーレスやビーチャなどブリッジクルーを後目に、ガ・ゾウムの一機はそのナックル・バスターをブリッジに向ける。

 

「ただちに降伏しろ、さもなくばブリッジを吹き飛ばすぞ!」

 

 まさにネェル・アーガマの危機! だがそこに。

 

「俺のせいでこーなったんだったら!!」

 

 モンドが百式で飛び出してきた!

 

* * * * *

 

 ネェル・アーガマの一角。そこで、既に潜入していたハマーンと侍女が身を潜めていた。

 そんな中、侍女が動揺するのをハマーンがなだめていた。

 

「は、ハマーン様……!」

「声が高い。生きていれば、チャンスはいくらでも作れる」

 

* * * * *

 

47:ジャンク屋ネキ

大ピンチかと思ったけど、意外と事態が硬直してるな。

 

48:名無しのオールドタイプ

何しろ、こちらには既にハマーン様が潜り込んでるからね。沈めるわけにいかんやろ。

 

49:考察ニキ

それに、ハマーン様としては、ネェル・アーガマを無傷でほしがってるからね。

攻撃するにできないジレンマ。

 

50:名無しのオールドタイプ

モンドのやけっぱちが功を奏した感じだね。彼が出なければ、降伏するしかなかったろうからな。

 

51:名無しのオールドタイプ

対するガ・ゾウムのパイロットのほうは、ネェル・アーガマを制圧しなくちゃならんけど、攻撃するわけにはいかんと、八方ふさがりでお気の毒や。

 

52:ジャンク屋ネキ

とはいえ、こちらも膠着状態で困ったもんやな。誰か割り込んでくれるとありがたいんだが……爆音?

 

* * * * *

 

「こ、このガキがぁ!!」

 

 しびれをきらしたガ・ゾウムのパイロットがついに、改めてナックル・バスターを構えて撃とうとした! だがその時!

 

「やらせるか!!」

 

 ジュドーのZZ(ダブルゼータ)が飛び出してきて、ダブルビームライフルでナックルバスターを持っている右腕ごと吹き飛ばした!

 もう一機のガ・ゾウムがZZにナックル・バスターを構えるも、そちらは……。

 

「これでやったことのけじめをつけるっ!!」

 

 モンドの百式が、不意を突いて敵の胸元にビーム・サーベルを突き刺し、さらに蹴り飛ばして爆散させた。

 

 

* * * * *

 

 戦いが終わり、ブリッジに戻ってくると、ラサラさんとトーレスが、モンドを褒めたたえていた。

 

「立派でしたよ、モンドさん」

「ふ、不始末をしでかしたんだから当然ですよ」

「いや、見直したよ」

 

 そう褒めたたえられているモンドは、ちょっと頬が赤くなってるらしかった。一方のビーチャは、失敗をやらかしたモンドが褒めそやされているのが気にくわない様子。まぁ、気持ちはわかる。

 

 でも、本当にモンドはよくやったよな。というわけで。

 

「本当、よくやったよ、モンド。ラサラさんじゃないけど立派だったぜ。かっこよかったよ」

「あ、そ、その、あ、ありがとよ」

 

 オレがモンドを褒めてやると、彼の顔はさらに赤くなった。どうしたんだ、風邪か?

 スレ民に「鈍感……」とか「絶対に違うぞ」とか言われたんだけど、何のことだ?

 

「ねー、ねー、プルはー? プルだって、マリハと一緒に探すの手伝ったり、難民の人たちにお弁当配ったりしたんだよー?」

「あぁ、プルもよく頑張ったぞ、よしよし」

「えへへ……」

 

 陰で頑張ってくれたプルも、ジュドーに頭をなでられて悦に浸るのだった。

 

* * * * *

 

 一方そのころ、侍女を空き部屋に残して居住区を偵察する、変装したハマーンの元に、サラサがやってきた。

 

「なんですか?」

「私には、全ての悪しきものの根源を、貴女の身体から感じます……」

「悪しきもの、ですか?」

 

 聞き返してきたハマーンに、サラサはうなずいて続けた。

 目に深い憂いと、相手の未来を慮る心を秘めて。

 

「はい。ですがそれは、ただねじれただけのもののようです。ジュドーの想いと、本質的には変わるものではありません」

「……」

「願わくば、あなたがそれに気づき、ねじれを元に戻し、より良き未来に進みますように……」

 

 そして立ち去るサラサ。その彼女に、ハマーンは内心で毒づいた。

 

(戯言を! 私はここにいるというのに、ジュドーめ……!)

 




ファンアート募集中!

* 次回予告 *

オレたちは、助けた民間人を降ろすため、タイガーバウムという変なコロニーに立ち寄った。
そしたらあれよこれよという間に、オレを除く女性陣がコロニーのお偉いさんの元に連れ去られちゃった!
さっそく救出しようと潜入するんだけど、今度はそこにハマーンもやってきて、てんやわんやに!
とにかく、逃げろや逃げろ……って、えー!?

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第24話『敵地、タイガーバウム』

旧式だって時には役に立つ!

※次の更新は、4/11 12:00の予定です。お楽しみに!


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Act.24『敵地、タイガーバウム』

はい。前回の元ネタは、ガンダムW第30話の『リリーナとの再会』からでした。
いかがでしたか?

さて、今回はネタ回として一部で評判かもしれないタイガーバウムの話ですww

注意!
ボットンさんについて、ゴットンの誤りではないかと誤字報告してくる人がいますが、これは誤字ではありません。
ボットンさんは新キャラで、原作通りに戦死したゴットンの代わりに、マシュマーさんの副官になった、ゴットンの兄です。
詳しくはAct.20をチェック!
ということで、よろしくお願いいたします。




「これがタイガーバウム……」

「派手なコロニーだねー」

 

 そうつぶやくイーノに、率直に感想を述べるプル。

 確かにプルの言う通り、オレたちの目の前には、外壁を金の竜で飾った密閉型のコロニーが浮かんでいた。このコロニーはタイガーバウム、サイド3に所属するコロニーである。

 オレたちは、ムーン・ムーンの人たちや、民間船に乗った人々を降ろさせてもらうため、ここにやってきたのだ。

 

「旧世紀の香港とか、京都をモデルにしたコロニーだって話だぜ」

「いや、香港はともかく、京都はちょっとどころじゃなく違うだろ」

 

 モンドの話に、オレはそう突っ込んだ。本当に、京都の人達に謝れ、という感じだ。

 というかモンド、なんでそんなにオレに接近している。

 

 さて、そんな派手なコロニーであるものの、このタイガーバウムは、総監のスタンパという男の手腕により、戦いとは長らく無縁な状態が続いていたという。あのグリプス戦役にも巻き込まれなかったのだから大したものだ。

 よく見ると、確かにコロニーの周囲には、機雷が敷設されており、さらにネェル・アーガマの入港時にも武装にしっかりと封印を施すなどしっかりしている。これぐらいなら、無事に人々を降ろしてもらえる……か?

 

「平和のための必要経費だ! この少女たちはスタンパ様のためにいただいていく!」

 

 コロニーに入ると、ネェル・アーガマにやってきた係員がそう言い放った。

 へ?

 

「あーれー! たーすけてー!」

「ルーさん、実は結構楽しんでない?」

「助けてジュドー!」

「なんで俺じゃないんだよ!」

 

 ルーさんとエル、そしてムーン・ムーンの船や民間船に乗っていた女性たちが、引っ立てられていった。

 

 なんなの、これ? あれか? 帯を引っ張って、『あーれー!』とか言わされる奴なのか?

 

* * * * *

 

1:ジャンク屋ネキ

というか、ルーさんを始めとした女性陣が引き立てられていったんだが。

 

2:考察ニキ

いやまぁ、知ってた。

 

3:名無しのオールドタイプ

スタンパが実はとんでもない女好きってこと、先に教えておけばよかったな。

 

4:ジャンク屋ネキ

いや、それはいいんだが、お子様なプルはともかく、なぜオレが引き立てられなかったのか解せぬ。

『ぶー! お子様で悪かったね!』

だから怒るなって。ほら、ジュドーが怪訝そうな顔してるぞ。

 

5:名無しのオールドタイプ

まぁ、ネキは確かに外見はかわいい女の子なんだが、内面がなぁ……。

 

6:ジャンク屋ネキ

そんなこと言ったって仕方ないだろ。オレ、転生前は男だったんだから。

 

7:名無しのオールドタイプ

まぁ、それも運命と諦めれ。スタンパにつかまらなかっただけでもよしと思わにゃ。

 

8:ジャンク屋ネキ

複雑や……というか、ルーさんやエルが抜けたら、オレたち戦力がガタ落ちするんだが。それに、女の子の端くれとして、仲間の女の子たちがあんなことやこんなことをされるのは阻止したいし。

……ん、なんや?

 

* * * * *

 

 MS(モビルスーツ)デッキに出てみると、数人の少年たちが金属の棒を持って、整備員たちを威嚇していた。

 数人ほど、武器が金属の棒ごときでは整備員たちに勝つことはできないだろうが、その整備員たちも、脅されて大人しくしているというよりは、どうしたらいいかと戸惑い、硬直している模様。

 

「今からお前たちを人質にとるんだよ、さっさと外へ出ろ!」

「黙ってガンダム寄越せ!」

 

 なんかどこかで聞いたようなセリフのような声がするぞ。

 オレは心の中で、ジュドーに半眼を向けた。

 

 いやいや、それより今はこの状況をどうにかしなくてはなるまい。

 オレは拳銃を構えながら聞いてみた。

 

「お前たち、スタンパの手下か!?」

 

 すると、少年たちは、表情を厳しくして、顔をふりふりしながら言った。

 どうやら、彼と一緒にしてほしくないらしい。

 

「俺たちは、ただMSが欲しかっただけだ! 奴なんかの手下じゃない!」

 

 そこにジュドーが言った。

 

「MS手に入れてどうするつもりなの!」

「売って金にするんだよ!」

「そうでもしなけりゃ、税金払えないだろ!」

 

 おやー、またどこかで聞いたような動機が出てきたぞー?

 まぁ、税金を払うためというまっとうな動機の分だけ、ジュドーよりはマシだが。

 

 だがこれは、何か事情があるみたいだし、もしかしたら説得の余地があるかもしれない。

 

 そこで、打ち合わせのためにネェル・アーガマを訪れていたマシュマーさんが、一歩踏み出して説得した。

 

「少年たち、税金のためというのはわかるが、そのような手を短絡的に選んで、君たちの心は痛まないのかな? 例えその手でその場をしのぐことはできても、何かが痛むのなら、その手段は誤っているということだ。その場しのぎではなく、もっと別な手段を選ぶべきだろう。なんなら私たちも相談にのるぞ」

「うっ……」

 

 その説得を受けて、少年たちが言葉に詰まった。さすがマシュマーさんだ。これまでの経緯からか、説得力がある。

 オレたちも引き続いて説得してみることにした。

 

「なぁ、事情を説明してくれよ。MSを売ることはできないけど、もしかしたら助けになるかもしれないぞ」

「そうそう。困ったことがあったら、この魔法少女プルプルが助けになるかもよー」

 

 プルと一緒にそう説得する。

 というか誰だよ、プルに魔法少女ものを教えた奴は。

 

「本当か? 本当に助けになってくれるのか?」

「あぁ。必ずとは言えないけど、できることなら助けになるぜ。俺たちも元はと言えばお前たちと似たようなものだったからな」

 

 ジュドーからもそう説得すると、彼らは武器を降ろして事情を説明してくれた。

 

* * * * *

 

11:ジャンク屋ネキ

重税を課して、払えない者は、男だったら鉱山送り、女だったらスタンパのハーレム送りか……。なんか、テンプレの独裁者みたいな話だなぁ。

 

12:名無しのオールドタイプ

だな。俺も見て、中南米によくいそうな独裁者かよと思ったな。

 

13:名無しのオールドタイプ

奇遇やな。ワイはヒトラーかと思った。

 

14:12

ちょっと待て。ヒトラーは禁欲的で、ハーレムなんかは作ってなかったはずだぞ。今の発言取り消せ。

 

15:ジャンク屋ネキ

『あわわ、みんな、喧嘩はダメだよ~。プルプルステッキでおしおきしちゃうぞ☆』

だから、誰だよ。プルに魔法少女ものを教え込んだのは……。

 

16:考察ニキ

すまん、俺だ。

 

17:名無しのオールドタイプ

お前さんかい。

 

18:ジャンク屋ネキ

頼むから、プ〇キュアは教えないでくれよ。プルがあれにまで染まったら洒落にならん……。

それはそうと、これ、利害は一致してるんじゃね? オレたちはルーさんたち女性陣を取り返したい。子供たち(リーダーはルナンというらしい)は重税から解放されて、親たちを助けたい。

 

19:名無しのオールドタイプ

そうだな。そしてとどのつまりは、独裁者のスタンパを倒せば全て解決。アラブの春の後みたいになったら? 知ら菅。

 

20:ジャンク屋ネキ

『ねぇ、マリハ。知ら菅ってなに?』

プルは知らなくていいんだよ……。

『ぶー、いいもん。ジュドーに聞くから!』

お、おい、それはやめれって!

 

21:考察ニキ

まぁ、そうとなればやることはただ一つ。

 

22:名無しのオールドタイプ

レッツ革命!やな。

 

23:名無しのオールドタイプ

とはいうけど、どうするんや? 大人の男たちはみんな、鉱山に連れていかれて、子供たちにしかおらへんのやで。

 

24:名無しのオールドタイプ

子供たちだけで革命起こしても、すぐ潰されるだろうしな。……あれ、ネキは?

 

25:ジャンク屋ネキ

ただいま。ジュドーに『プルに余計なことを教え込まないでくれ』と怒られてた。

オレが教えたわけじゃないのに、理不尽だ……。恨むで、19。

 

26:19

悪い悪い。それで、革命を起こそうかって話になったんだが、どうする?

 

27:ラド

ネオ・エンドラからMS隊を出すわけにもいかないよな。被害が大変なことになりかねん。

 

28:名無しのオールドタイプ

まぁ、そりゃな。

 

29:ラド

マシュマー様だったら喜んで出しそうではあるけどな。というか出しそうな雰囲気だ。

ボットンさんが必死に抑えているが。

 

30:名無しのオールドタイプ

ということは、中に潜入してどたばたするしかないな。

 

31:考察ニキ

ということはあれか?

 

32:19

あれだな。

 

33:ジャンク屋ネキ

あれ?

 

* * * * *

 

「えー……この娘とこの娘は残せ。このひどいのはつまみ出せ」

「は、はい……」

「ありがとうございます」

「そ、そんなー」

「その声も嫌いじゃー!!」

 

 哀れにもジュドーは退場。

 

 というわけで、女装して潜入しようとしたオレたちだが、メイドをしていた経験をフル活用したオレと、素がよさそうなイーノはOKな一方で、やはり無理があったジュドーは、スタンパの部屋で叩きだされたのだった。

 ジュドーは泣き真似をしていたが、まさか本当に悔しかったのか……? 本当に泣き真似がリアルなんだが。

 

 まぁ、それは置いといて。

 

 部屋では、サラサさんがスタンパに説法をしているところだった。ラサラさんやルーさん、エル、他の女性陣も変なことをされた形跡はないようだ。

 なんだ、そんなに心配することなかったんじゃないか。

 

 と。

 

「そこの娘! 紅茶を入れてきてくれ!」

「あ、はい、ただいま」

 

 スタンパに優雅なカーテシーで答えると、キッチンへ行き、ティーセットをもって戻ってくる。

 そして、ミンドラで習った技を活かして、スタンパのティーカップに紅茶をいれると、ルーさんのそばに座る。

 

(マリハ、メイド姿、とても様になってるじゃない)

(へへ、捕まっていたころに、色々教わってね。それはそうと、ジュドーも潜入してるから、もう少し我慢しててくれよな)

(OK)

 

 そして、好色なスタンパをいなしながら、彼や兵士たちにメイドの技を活かしておもてなしをしていると……。

 

 ズズーン!!

 

 突然すごい揺れが館を襲った!

 

「な、なんじゃ!?」

 

 スタンパは突然の異変に大いに慌てている。窓の外を見ると、そこではジュドーが乗ってるらしいズゴックが、他のMS相手に戦っている。

 

「よしみんな、逃げよう!」

「OK!」

 

 その混乱に乗じて逃げ出す。その途中、戦闘が起こっているほうを見ると、ジュドーはなかなか奮戦しているようだ。だが、途中、アッガイが参戦してきて逆転。アッガイの巧みな動きの前に、ジュドーは大苦戦である。

 

 どうにかしないと……。あ、ふと見ると、そこにはジュアッグが。これは使えるかも。

 

 そして乗り込む。すると、通信機から聞き覚えのある二人の声が聞こえてきた。

 

『ふふふ、また会えたな、ジュドー』

『ハマーン!? なんでこんなところに!』

『もう一度話がしたくてね。会いに来たのだよ……私に従え、そうすればニュータイプとしての力を認め、犬死をさせずに済む』

『犬死なんか、するつもりは無い!』

『わかってないようだな?』

『わかってるさ! あんたたち大人の戦争は、みんなを巻き込んでいくってことぐらい!』

 

 そしてジュドーは奮闘するが、やはりハマーン相手では、少し分が悪いようだ。

 だが今、ハマーンはオレに気づいていないようだ。それなら……。

 

 しとめるのは少し忍びないので、脚を狙う。そして、指のロケットランチャーを発射!

 

『なに!?』

 

 さすがに不意打ちはハマーンにもどうにもならなかったのか、直撃を脚部に受け、アッガイは崩れ落ちる。

 脱出したハマーンをジュドーのズゴックは追い詰め、クローを振るうが……!

 

『はぁ……はぁ……あんたって、あんたって!!』

『そうだよ。お前が生身の人を殺せない、かわいい坊やだってわかっているのさ』

『俺だって……俺だってーーー!!』

 

 あらら、こりゃダメだ……。

 

 ズゴックのクローは数ミリどころか、数十センチ単位でハマーンに届いてないのだ。まぁ、そりゃそうだ。MSに乗ってる奴を倒すならまだしも、生身の人を殺せるほど、オレたちは人間ができていない。

 

 仕方なく、オレはジュドーのズゴックのところまで走っていく。そして、その手で肩をぽんならぬどんっと。

 

「はいはい。ジュドーの負け。かわいい坊やでなくても、生身の人をMSで殺すなんてなかなかできないんだから』

『マリハ!? 止めないでくれよ!』

『ふふふ、マリハ・クトゥル、お前はわかっているようだな。なんならお前もジュドーと共に私の元に来てもかまわぬのだぞ』

「いや、それはやめておきます。まったく……ハマーン、あなたには負けましたよ」

 

 と、そこに、センサーに反応。ザクⅠをはじめとしたスタンパの手下たちのMSが接近しているのだ。そしてそれは、ハマーンも気づいたらしい。

 ズゴックの周辺に爆発が起こる。

 

『もう少しの所を……スタンパの愚か者共が!』

「ジュドー、ルーさんたちも無事に屋敷から脱出したようだし、オレたちも撤退しよう。ハマーンとは、後でちゃんとした形で決着をつければいいだろ」

『あ、あぁ……』

 

 そしてオレたちは、MSで撤退を開始。適当なところで乗り捨てると、ネェル・アーガマに走っていった。

 

 だがオレはこの時、気づいていなかったんだ。サラサさんとラサラさん、そしてモンドが、再びネェル・アーガマを抜け出していったことを。

 

* * * * *

 

「なに、ハマーン様がアクシズを出たと?」

 

 グワンバンのブリッジで、グレミーがオウギュストにそう確認していた。

 

「はい。ハマーン様の元に派遣している工作員からの報告です。避難民を乗せた民間船に潜入してアクシズを出た、とのことです」

「そうか……。何を考えているのか……だがこれは好機だ。この機会に、一気にアクシズを抑えるぞ」

「ではいよいよ……」

 

 そしてグレミーはうなずき、目を閉じて続ける。

 

「ここで内乱を起こせば、戦力をただ消耗し、連邦軍に勝つことすらできなくなるかもしれん。だが、ハマーン様……いや、ハマーンを倒す好機は今しかない。ハマーンがいない隙に押しに押しまくり、差を広げて、損耗を抑える。これに賭けるしか手はあるまい」

「は……」

「だが、向こうに感づかれるのはよくない。あくまでアクシズの制圧は秘密裏に進めろ。あとそれと、お前が用意してくれた『アレ』の用意もしておけ。その威力をもって脅せば、被害を出さずに終わらせられるかもしれん」

『了解しました』

 

 そして立ち去っていくオウギュストに背を向けたまま、グレミーは自分に言い聞かせるように独白する。

 

「果たして、私の野望が、この身に相応か否か。いよいよそれが試されるか……」

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

スタンパさんのコロニーから出ようとしてるけど、出られない。
モンドとサラサさんラサラさんが行方不明になったんだ。
おまけにハマーンもジュドーを待ち受けてるし……。

そんな中、悲しみを胸に秘め、モンドの百式がタイガーバウムを駆ける。

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第24話『ラサラ』

えぇ、オレでいいの!?

※次の更新は、4/14 12:00の予定です。


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Act.25『ラサラ』

はい。前回の元ネタは、ビルドダイバーズ第5話『聖地・ペリシア』からでした! 当たった人には、筆者からの祝福をプレゼント!


「誠に持ってハマーン様、知らぬ事とは言えご無礼の数々……平に御容赦の程をお願い申します……」

 

 やっと持つことのできたジュドーとの逢瀬を、無粋なスタンパに邪魔されたハマーンは、その彼の館にて、彼の土下座をしての謝罪を受けていた。

 

「構わぬスタンパ・ハロイ。下々のやる事を、面白く見せて貰った。だが、わかっておろうな? あのようなことをしたからには、それなりの責任はとってもらう」

「ははっ、このコロニーは私の庭も同然です。私自らの手で、ネェル・アーガマの連中を捕らえて御覧に入れます!」

 

 スタンパの謝罪を寛大に許すハマーンだったが、その目は、肉屋の店先の肉になることが確定した豚を見下ろすかのように冷酷であった。そのまなざしに、スタンパが肝を冷やしたことは言うまでもない。

 とはいえ、そのスタンパの大言壮語に、ハマーンはいくらか興味を持ったようだ。

 

「お前はMS(モビルスーツ)に乗れるのか?」

「はい。私は一代でこの地位にまで上り詰めました。そのくらいは」

「面白いな。よし、やってみせてもらおう」

 

* * * * *

 

 一方、タイガーバウムの市街地の裏路地に、周囲を気にしながら歩く四人の姿があった。

 モンド、サラサ、ラサラ、そしてタイガーバウムのあの子供たちのリーダー、ルナンである。

 

 市街地を、スタンパの屋敷に向けて歩いていく中、ルナンが突然、右腕を押さえてうずくまった。

 

「いたっ!!」

「どうしたのですか?」

 

 うずくまったルナンに、サラサとラサラの二人がしゃがみこんで、心配そうに声をかける。

 

「さっきのMS戦で身体をぶつけちゃって……。腕の骨が折れちゃったのかな……。今までは逃げるのに精いっぱいで痛みなんか感じなかったんだけど……」

「それはいけません……。ちょっといいですか?」

「え?」

 

 ラサラがそのルナンの右腕に手を当てて、何かを念じる。すると、ルナンの腕の痛みはたちまち消えていったる

 

「す、すげぇ……。お姉さん、超能力者なのか?」

「えぇ、そのようなものです……」

 

 そう言うラサラだが、何か疲れているようだ。さすがにモンドがそれに気づき、心配そうに聞く。

 

「ラサラさん、大丈夫か? とても疲れているように見えるけど……」

「えぇ。これは体力をかなり消耗するものなんです……。でも大丈夫です。大したことはありません。いきましょう……」

 

 そしてまた歩き出す四人。

 その途中、サラサが妹に顔を寄せて話しかける。

 

(ラサラ、あまりその力は使わないようになさい。宇宙船の中でも、重病の人たちにも使っていたでしょう? あなたのその力は……)

(はい……わかっています……)

 

「でも、ハマーンのまた会いに行くって本気かよ?」

 

 その二人の会話の内容を知る由もなく、モンドがサラサに問いかける。

 サラサはしっかりとした決意を秘めてうなずいた。

 

「はい。ハマーン・カーン、彼女の深い悪意は、やがて私たちの手には負えなくなり、ジュドーさんたちに大きな害をもたらすでしょう。ですからそうなる前に彼女に会い、その悪意を正しい意志へと変えなければなりません。モンドさん、ラサラ、無理についてこなくてもいいのですよ?」

「いえ……ご一緒させてください」

「俺も、ラサラさんが行くというのに、黙ってみるわけにはいかないよ!」

「そうですか……」

 

 ラサラとモンドの言葉に、サラサはそう言って目を伏せた。彼女には、ラサラを待つ運命が見えていたのだ。このまま、ラサラが自分と共に行けば、必ずその運命はラサラに訪れる。だが、ラサラの堅い意志を感じたサラサは、それを拒絶することはできなかった。

 

* * * * *

 

37:ジャンク屋ネキ

というわけで、サラサさんとラサラさんとモンドがいない件について。

もう、ジュドーたちも大騒ぎになってるわ。

 

38:名無しのオールドタイプ

そういうネキもやろ?

 

39:ジャンク屋ネキ

そりゃそうや。オレはサラサさんたちとはさっきが初対面だったけど、やっぱりジュドーたちと関わりのある人たちだし、二人とも良い人だもんな。そんな人が何かに巻き込まれるのはいやや。

 

40:名無しのオールドタイプ

多分、原作通りだと、サラサさんたちはハマーンを説得しにスタンパの屋敷に行ったんだろうが……。

 

41:考察ニキ

どのルートを通っていったかがわからないからなぁ……。

 

42:ジャンク屋ネキ

そしたら、スタンパの屋敷に先回りしたほうがいいのか……。

あ、ジュドーが三人を探しにブリッジを飛び出したから、オレも彼と一緒に行くわ!

何かあったらよろしく頼むで!

 

43:名無しのオールドタイプ

おう、気を付けてや! 多分スタンパはズゴックに乗って出撃していたはずやで。

 

44:名無しのオールドタイプ

って、聞こえたかなぁ……。

 

45:考察ニキ

あの様子から見ると、聞こえてないっぽいなぁ……。

 

* * * * *

 

 一方、そのモンドたちはピンチに陥ってきた。スレ民の言う通り、ズゴックで出撃してきたスタンパに見つかってしまったのである。ルナンとはいつの間にかはぐれてしまっていた。

 

「煎餅にしてやるから逃げるな!」

 

 スタンパのズゴックに崩された建物が降り注ぐ中、逃げ惑うモンドたち。そして彼らは港湾エリアに追い込まれてしまった!

 

「!!」

「これで終わりだぁ!!」

 

 スタンパのズゴックが、モンドたちのそのクローを振りかざした!

 それはとっさのことだった。

 

「危ない!!」

「!!」

 

 モンドがラサラとサラサを突き飛ばした直後、ズゴックのクローがモンドの近くの地面に突き刺さり、その衝撃で彼は吹き飛ばされて、そして地面に強く叩きつけられてしまった。

 

「モンドさん!」

「……」

 

 モンドに駆け寄る二人を意に介することなく、スタンパのズゴックはゆっくりと三人に歩いていく。

 そこに。

 

「頭と体力を使えば勝てる! シャングリラではそうやって生きてきたんだ!!」

「なに? うおっ!!」

 

 駆け付けたジュドーが乗り込んだクレーンハンマーが不意打ちでハンマーをズゴックに食らわせたのだ。

 その一撃を受けたズゴックは態勢を崩し、そのまま水中に落ちてしまった。

 

 その一方で……。

 

「モンドさんの身体から生命力が……このままでは……」

「お姉さま……ごめんなさい……」

「……! いけません、ラサラ!」

 

 姉が止めるのも聞かず、ラサラは今にも命尽きようとしているモンドの手を強く握り、そして念じる。

 

(どうか、私の命に代えても、モンドさんを……!!)

 

 そして、ラサラの身体は光に包まれた。

 

* * * * *

 

 間に合わなかった……のか……。

 駆け付けてきたオレが見たのは、力尽きたかのように倒れ伏してるラサラさんと、その身体を抱きかかえているモンドと、そして二人を見守っているサラサさんの姿だった。

 そこに、ジュドーも駆け付けてくる。

 

「サラサさん、ラサラさんは……?」

「……」

 

 サラサさんが悲痛な面持ちで話してくれたことによると、ラサラは生命力を削って、他人の傷や病を治す力があるという。そしてラサラさんは、重傷を負ったモンドを救うために、自分の命をいとわず、その力を全力で発動させたという。

 しかし、先ほどの放した通り、その力は生命力を消耗する。結果、モンドは助かったが、その代償にラサラさんは生命力を全て使い切ってしまった、という……。なんてことだ……。

 

「お姉さま……」

「ラサラ……」

 

 ラサラさんはサラサさんに弱々しい笑みを見せた。そして口を開く。残り少ない命の火を削りながら。

 

「ムーン・ムーンの民たちをお願いします……。そして、モンドさん……」

「……」

「あなたのその気持ちに目を向けてください……。あなたの心の中の人に心を告げずに終わることの……ない……よう……」

 

 そしてラサラさんを目を閉じ、二度と開くことはなかった。

 

「ラサラさん……目を開けてくれよ……! お別れなんてしないでくれよ……!」

 

 重々しい空気をあたりを包む。そして。

 

「許さない……俺は絶対に許さない……許さないぞ……!!」

 

 ジュドーが突然立ち上がり、走り出した。おそらくはハマーンの待つ、スタンパの屋敷のほうに。

 

「おい、待てよ、ジュドー!」

 

 それを追ってオレも走り出す。

 

* * * * *

 

 スタンパの屋敷の門の前では、やはりハマーンが待っていた。その胸倉をジュドーがつかみ上げる。

 

「お前のせいで……お前のせいでみんな!!」

「ははは……私がなぜこんなところで、お前を待っていたかわからぬか」

「わかるかよ! わかればラサラさんは戻ってくるというのか!」

 

 胸倉をつかみあげられ、ジュドーの怒りをぶつけられながらも、ハマーンはその態度を崩さなかった。

 

「ふふふ、だからお前は飛べないのだ。それでは魂を重力に引かれた人々と、何も変わらん……私に失望させるな。そんな感情など捨てろ、そして私とニュータイプの世づくりをしようではないか」

 

 それがハマーンの信条であり、偽らざる本心なのだろう。だがオレにはそれが正しいとはどうしても思えなかった。

 

「やめろよ、ジュドー。激情のままやりあって何になるよ。ハマーン、すまないけど、オレにはあなたの言うことは、どうしても正しいとは思えないよ」

「なに?」

「一言でいうなら、あんたのいうところの『そんな感情』を捨ててまで空を飛びたくないんだ」

「マリハ……」

 

 ジュドーも、ハマーンから手を放して、オレに目を向けている。

 

「人の心を軽視した世界を作って何になるんだよ。人の心を、感情を軽視して作られた世界が正しいものになるとは、オレには思えない。人の心、感情を大事にしてこそ、世界は清らかに、美しくなるんだ」

「ふん、馬鹿な事を。それが世界を滅びに導くとわからぬのか?」

「そうなったら、それがオレたちの限界だったってことさ。少なくとも、心や感情を軽視した冷たい世界が続くよりはずっとましだと思うぜ。それに、あんただって見たんだろ? カミーユの心や感情がシロッコを倒したのを。覚えてるだろ? ダカールで、ジュドーの発した激情に、あんたが恐怖に襲われたことを」

 

 まぁ、カミーユがシロッコを倒した顛末は、スレ民から聞かされたんだけどな。

 

「……!」

「それらを体験したあんたが、人の心や感情を軽視することが正しいかどうか、わからないはずはないと思うけどな」

「黙れ、戯言を!」

 

 そしてハマーンが銃を抜いた直後!

 

 周囲に爆発が巻き起こる!

 

「ジュドー! マリハ!」

 

 見ると、ルーとエルが、ロケット砲を積んだジープに乗って駆け付けてきてくれた!

 オレたちはそれに飛び乗ると、その場を脱出していくのだった。

 

 ネオ・ジオンのMSが、ハマーンを迎えに駆け付けてくるのは、その直後だった。

 

* * * * *

 

 その一方、港のほうでは、ズゴックが水中から抜け出してきた!

 

「よくもやってくれたな! 今度こそお前たちの最期だ!!」

 

 そしてズゴックは、再びモンドたちに襲い掛かろうとして……。

 

「うわっばー!?」

 

 その頭上を通り過ぎた何かの勢いによる衝撃波に煽られ、再び水中に没した。

 

『イーノに艦長を任せてきたぜ!』

「ビーチャ!」

 

 駆け付けてきたのは、百式に乗ったビーチャだった。

 それに駆け寄って、モンドが怒りと決意に満ちた顔で言う。それはまさに、いわゆる漢の顔だった。

 

「ビーチャ、百式の操縦を代わってくれ!」

 

 そして降りてきたビーチャと入れ替わって、百式のコクピットに乗り込む。

 そのモンドに、サラサとビーチャが声をかける。

 

「どうか御無事で。ラサラも、見ているでしょうから」

「無茶すんなよモンド! ラサラさんが悲しむぞ!」

「ありがとう、サラサさん、ビーチャ。モンド・アガケ、行きます!」

 

 そして、再び浮上してきたズゴックに飛び掛かっていく。

 

 そして、ズゴックがクローを構えるより先に、ビームサーベルでその右腕を斬り落とす!

 

「お前がラサラさんを!!」

「おおお、卑怯者! こっちには片腕がないんだぞ!」

「今更何を言う!」

 

 そして左腕をも斬り落とす! その衝撃で、ズゴックは再び倒れこんだ。

 そしてとどめにビームサーベルを突き刺そうとしたところで……。

 

(モンドさん……)

 

 脳裏に浮かぶラサラの声。その声に、モンドはビームサーベルを収めた。まるで彼の命を奪うまでもない、というかのように。

 しかし!

 

「馬鹿が! ……!!」

 

 起き上がったズゴックが襲い掛かろうとした! がその直後、百式のビームサーベルが、そのコクピットを貫いていた。ビームサーベルに逆手に持ち替えた百式が、相手が襲い掛かろうとしたその瞬間、ビームサーベルを再び発振し、ズゴックに突き立てたのだ。

 モンドは彼を完全に許したわけじゃない。チャンスを与えただけだったのだ。

 それに気づかなかったスタンパはおそらく、ビームで焼かれ、塵も残らなかっただろう。

 

 主を失ったズゴックはそのまま水中に転落していった。

 

(ふぅ……やったよ……。ラサラさん……俺、やったよ……)

 

* * * * *

 

52:ジャンク屋ネキ

なぁ、オレ、どうしたらいいと思う?

 

53:名無しのオールドタイプ

なんだ、どうしたいきなり?

 

54:名無しのオールドタイプ

まずは経緯を話せ。全てはそこからだ。

 

55:ジャンク屋ネキ

あ、あぁ。いよいよタイガーバウムを出ていくことになって、サラサさんやムーン・ムーンの人たち、タイガーバウムに残ることになったあの民間船の人たち、そしてタイガーバウムの人とお別れを言ってたんだけどさ。

 

56:考察ニキ

ふんふん。

 

57:ジャンク屋ネキ

そしたら突然、モンドから「前から好きだった、付き合ってくれ」と言われたんだよ!!

なぁ、これってもしかして……告白ってやつか?

 

58:名無しのオールドタイプ

もしかしなくても告白だと思うで。

 

59:名無しのオールドタイプ

やっぱりなと思ったんだよ。ネェル・アーガマの出航の時、ネキに褒められたモンドが、頬を染めて照れてたところからさ。

 

60:ラド

甘いな。俺なんか、ガルターヤでの捕虜交換の時、モンドが嬉しそうな顔をしてた時から気づいてたで。

 

61:ジャンク屋ネキ

まさかオレに惚れるなんて……。モンドが言うには、「ラサラさんから、自分の気持ちに素直になって打ち明けてください、と遺言されたのがきっかけ」とのことなんだが……。

 

62:名無しのオールドタイプ

それで、ネキはモンドのこと、どう思ってるんや?

 

63:ジャンク屋ネキ

嫌いではないで? これまでずっと一緒にいたからな。

でも、オレは元男だし、付き合うとなると……。

 

64:考察ニキ

『元男』というところを抜いたら?

 

65:ジャンク屋ネキ

まぁ、モンドは支えたくなる男の子みたいな感じだし、付き合うのもまんざらではない……かも。

お、オレは何を言ってるんだっ。

 

66:ラド

まぁまぁ。そしたらそれが、どう応えるべきかの答えになるんとちゃう?

 

67:ジャンク屋ネキ

うーん……。

 

* * * * *

 

 スレ民と会話した直後、オレは改めてモンドに聞いてみることにした。

 

「なぁ、本当にオレでいいのか? 後悔しないか?」

 

 だがモンドは、心を揺るがすことなくこくりとうなずいた。

 

「あぁ、後悔なんかするもんかよ。それにこんなこと、冗談じゃ言えないだろ? だから、マリハも本音で答えてほしい。どんな答えでも、俺は受け入れるよ」

「~~~っ」

 

 そう言われて、オレは顔が赤くなってしまう。こんなこと、今まで一度もなかったぞ。告白されたことも、されて顔を赤くしたことも。

 

 あぁ……もう。

 

「お、オレもお前のこと憎からず思ってたよ。でも、正式に付き合うのはまだ腰が引けるから、恋人未満からということだったら……いいぞ」

 

 ジュドーたちがにやにやしながらこちらを見ている。多分、オレの顔は真っ赤になっちまってる。それこそゆでだこのように。ああ……ちくせう。

 

「あぁ、今はそれでいいよ。よろしく頼むぜ」

 

 そしてモンドは手を差し出してきた。オレもそれをおずおずと握り返す。すると、周囲から拍手が上がった。

 

「マリハ、らぶらぶだね~」と茶化してきたプルには、後でおしおきをしようと思う。一週間お風呂抜きとかがいいだろうか?

 

「あとそれと、オレはいやらしいことは嫌いだから。えっちとかキスとか、そういうのは抜きだからな?」

「お、おう」

 

 そんなオレたちを乗せ、ネェル・アーガマはタイガーバウムを後にしたのだった。

 




ファンアート募集中~

* 次回予告 *

コア3とかいうコロニーに潜入した。うまくいったよ。
でも問題はその後。ジュドーたちと顔見知りというキャラさんが現れるし、それが元で反ネオ・ジオンの人たちに、ネオ・ジオンの手先と間違えられて捕まってしまった。もうスレ内は大草原状態。

そこで思わぬ人と再会したと思ったらまた捕まるし、しかもそこにプルツーまでやってきた!

どうなっちゃうの!?

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第26話『親父が作ったレジスタンス』

ついにオレの謎が明らかに!?

※次の更新は、4/17 12:00の予定です。お楽しみに!


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Act.26『親父が作ったレジスタンス』

はい。前回の元ネタは、ガンダム00の第25話『刹那』からでした。

さぁ、今回はいよいよ、ネキの秘密が明らかになるかも!?


「あれがコア3か……」

 

 目の前に浮かぶひときわ大きなコロニーを見て、ビーチャがそうつぶやく。

 それを受けて、通信スクリーンのマシュマーさんがうなずいた。

 

『そうだ。我々の間では、ジオン発祥の地と言われている。ハマーン様は、サイド3を手に入れた暁には、あそこをネオ・ジオンの拠点にするとおっしゃっていた』

 

 そのマシュマーの言う通り、ネオ・ジオンはあのコロニー、コア3を拠点化する作業を本格化させているようだ。大きな小惑星をコロニーに接続する作業を行っている。

 

「あの小惑星に潜入すれば、そこからコア3に潜入することができるか……?」

 

 オレがそうつぶやくと、ジュドーもうなずいて答えた。

 

「あぁ、きっとな。それに、拠点というからにはハマーンもいるはずだ。彼女に肉薄するにはまたとなる機会だと思うぜ」

 

 それを聞いて、すぐに反応したのはマシュマーさんだ。やはり、ハマーンというワードに弱いらしい。

 

『よし、それでは私も行こう! この手でハマーン様と相対し、問いただし、その行いを正さなくてはならない!』

 

 しかし。

 

『いえ、マシュマー様。マシュマー様はネオ・ジオンでも顔を知られすぎています。あなたが行かれては、潜入の意味をなさないでしょう。ここは大人しくしていてください』

 

 掲示板の常連の一人、ラド・カディハに説得されてしょぼんとするのだった。こういうところは相変わらずみたいだな。

 

* * * * *

 

1:ジャンク屋ネキ

というわけで、コア3に潜入することになったんだが。

 

2:名無しのオールドタイプ

ついにここまで来たか。この後は、いよいよ最終決戦が待ってると思うから、気張るんやで。

 

3:名無しのオールドタイプ

とはいえ、ここでうまくいけば、最終決戦をショートカットできるかもしれんな。

 

4:考察ニキ

プルツーも潜入してくるはずだからな。うまくいけばもしかしていけるかもしれんで。

 

5:ジャンク屋ネキ

『プルツーも!?』

もしかしてうまくいけば、プルツーを説得することもできるか……?

 

6:名無しのオールドタイプ

うまくいけば、な。

 

7:ラド

あとそれと、途中でけばけばしい姉ちゃんを見かけたら、ジュドー引っ張って全力で逃げるんやで。

 

8:ジャンク屋ネキ

どういうことや?

 

9:名無しのオールドタイプ

その姉ちゃん……キャラ・スーンというんだけど。彼女はジュドーたちとは顔見知りでな。洗脳が解けかかった彼女はジュドーとの再会を喜び合い、それを見て誤解した反ネオ・ジオン派につかまってしまう、という一幕があったんや。原作でな。

 

10:考察ニキ

そうそう。ネオ・ジオンとの交渉カードになる、という理由でな。くれぐれも気を付けるんやで。

 

11:ジャンク屋ネキ

わかった、気を付けるよ。プルもよろしく頼むぜ。

『うーん、それも面白そうだけど……わかったよ』

……あれから、誰も変なこと吹き込んでないよな?

 

* * * * *

 

 というわけで、さっそくコア3に潜入したんだが……。

 

「ん? お前は……ジュドーじゃないかぁ! あは、ジュドー!! 久しぶりだねぇ! 元気かぁい!?」

 

 パンク・ロックみたいな髪のけばけばしい女性……彼女がキャラ・スーンらしい……に抱きしめられるジュドーを見て、オレとプル、エル、ルー、モンドは遠い目をしていた。あぁ、空が青いなぁ。

 ちなみにスレ内は大草原状態。

 いや、だって仕方ないだろ。潜入してすぐ、民間人に当たり散らしている彼女を見つけたジュドーが、オレが止める間もなく、キャラを止めに行って、こうなってしまったんだ。オレは悪くない。不可抗力だ。

 

「まずい」

「若い男を見て、『元に戻った』のか!?」

 

 よく似た顔だちのイケメンたち……キャラの付き人かな?がそんなことを言いあっている。ごめんなさい。若い男だからじゃないんです。ジュドーたちと旧知の仲だからなんです。

 

 まぁ、そんなことがあり、キャラはその二人に引っ張られていって、そして……。

 

「やっぱりあの時、全力で止めに行っとけばよかったぜ……」

「だから悪かったって。というか、街の人が困ってるのに助けないわけにはいかないだろ?」

 

 縛られたまま、そんな会話を交わすオレとジュドー。その横でぶつぶつ言ってる女性組とモンド。はい。案の定、反ネオ・ジオン派の人たちにつかまってしまいました。

 やっぱり、スレ内は草原状態です。

 

 そこに。

 

「君たちが、猫目のキャラと仲良しだった者たちか?」

 

 鉱山小惑星キケロの坑道にある、反ネオ・ジオン派のアジト。その奥から聞き覚えのある声がした。……え?

 そしてそこから現れたのは……。

 

「え、お、親父!?」

「マリハ……マリハか!?」

 

 なんてこった。こんなところで、親父との再会を果たすとは。

 その再会の横で、ジュドーは目を丸くしていますが。

 

 そう、現れたのは、オレの義父、ロイ・クトゥル(なお、クトゥルは偽名で、本当はレビンというらしい)だった。もうびっくりだよ娘さんは。

 

「まさか、親父がここのリーダーやってたなんて、驚いたところの話じゃないよ……」

「済まなかった。少し前にここに出稼ぎにきたんだがな。少し前にネオ・ジオンがここを制圧して、それからこうしてレジスタンスを組織して、抵抗活動するようになったんだ」

 

 なんとも、バイタリティあふれる親父だ。

 

「そういうお前こそ、どうしてここに?」

「シャングリラで色々あってさ。それでエゥーゴに所属することになったんだよ」

「そうなのか……もしかしたらこれも運命なのかもしれんな……」

 

 運命? なんのことだろう。

 

 だが、さらに驚くのはそこからだった。

 入口のほうから足音が聞こえたのだ。

 そして現れたのは、オレより少し年下ぐらいの少女。彼女に対し、反ネオ・ジオンの人たちが銃を向けるが、親父がそれを手で制する。

 

「撃つな! ルチーナ!?」

「父さん!?」

 

* * * * *

 

 え、父さん? 親父、いつの間に子供作ってたの!? というか、彼女が親父の娘ってことは、オレの妹に当たるのか?

 ……プルよりはマシな妹であってほしい。そうであってくれ。

 

「ふん、マリハのぱかー! ジュドーにかまってもらうからいいもん!」

「そ、そんなにくっつくなって……」

 

 やべ。口に出てたか。

 

「ルチーナ、どうしてこんな所に!?」

「アンタの代わりに徴用されたんだよ! 子供を親戚に預けて、どこかにとんずらしてたからさ!」

 

 娘がこんなところで徴用されていると聞いて、親父は愕然としている様子だ。いや、もう一人の娘がエゥーゴのパイロット候補生やってることはいいのか親父よ。

 

「ネオ・ジオンが、子供まで徴用に取るなんて……お父さんは色々あって、それでネオ・ジオンに追われていたんだ。家に帰れば、お前まで巻き込むので、隠れるしか無かった……」

「でも私、一人だったんだよ!」

「あのー、修羅場のところすみませんが、お二人はどのような関係で?」

 

 そこまで話が進んだところで、オレがそう口をはさむと、二人ともそろってこちらを向いてきた。いや、ルチーナのほうはすぐに親父のほうに顔を向けたが。

 

「父さん、この子は誰? 父さんの隠し子? お母さんを裏切ってたの?」

「そ、そんなんじゃないって。今説明するから……」

 

 そして話してくれたことによると、今から12年前の宇宙世紀0076年にルチーナが生まれたらしい。それから、8年後の0084年に、親父は突然、ネオ・ジオンの工作員に脅されてアクシズに連れてこられ、プルクローンの研究をやらされていたらしい。そして……。

 

「あれ? だけど親父、3年前にはオレと一緒に逃避行中だったよな? 研究所はどうしたんだ?」

「あぁ。研究所から脱走してきたんだよ。お前を連れてな」

「は?」

 

 そこからの話は、ちょっと衝撃的なことだった。それは。

 

「オレが、プルクローンの一人?」

「あぁ、そうだ。プルトゥエルブの下、プルサーティーン。お前はそれになるはずだったんだ」

 

 プルトゥエルブといえば、ガンダムUCに出てきたマリーダさんのことだよな。ということは、オレはマリーダさんの妹ってことなのか? というか、プルがオレの姉?

 スレ民から可能性を示唆されて、オレ自身そうかもと思ってはいたが、こうして改めて聞かされると、やはり衝撃を受けずにはいられない。

 

「だが、0085年の冷凍睡眠カプセルから出しての検査の結果、お前のニュータイプ能力はほとんど確認されてなかった。それで上層部は、お前を失敗作とみなして、放逐するか、冷凍睡眠したまま封印するかの処分をすることにした。だが」

「親父は、それに異を唱えて、オレを連れ出して逃亡したってことか」

「あぁ。あまりにお前がかわいそうでな」

 

 あとは、オレが覚えている通り。ネオ・ジオンから逃れて逃走しまくり、やがてシャングリラにたどり着いてそこで暮らすことになる。そして今年(0088年)になって、コア3に出稼ぎに戻るも、そこで色々あって、反ネオ・ジオン勢力を作ることになった、と。うん、事情はわかった。

 

「マリハ、大丈夫? 顔色あまりよくないよ? (小声で)スレ民のみんなも心配してる」

「はは……大丈夫。そうではないかなーと予測はしてたしな……あ、あれ?」

 

 と、突然力が抜けて、しゃがみこんでしまった。あれ、おかしいな……ははは……。

 

「お、おい。本当に大丈夫かよ?」

「ははは……大丈夫と思ってたけど、内心結構ショックだったかな……。すまん、モンド。ちょっと胸貸してくれるか?」

「お、おう」

「~~~っ」

 

 そしてオレはモンドの胸に顔をうずめ、少しの間嗚咽した。

 

* * * * *

 

214:ジャンク屋ネキ

というわけで、どうにかショックから立ち直って来ました。

 

215:名無しのオールドタイプ

おう、お帰り。

 

216:名無しのオールドタイプ

モンドの胸は暖かったか?

 

217:ジャンク屋ネキ

あぁ。とっても安心できたで。あの暖かさは、親父より……って何を言わせるねん(赤面

 

218:ラド

しかし、本当にネキがプルクローンだったとはなぁ。

 

219:名無しのオールドタイプ

プルのクローン、プルの妹だったとはなぁ。

 

220:考察ニキ

良かったなプル、妹が増えたで!

 

221:ジャンク屋ネキ

『うん! ほら、マリハ。私をお姉ちゃんと呼んで!』

呼ばん、絶対呼ばんわ!

『えーーー』

 

222:名無しのオールドタイプ

それで、反ネオ・ジオン派と連携が成立したんだっけ?

 

223:ジャンク屋ネキ

あぁ。やっぱり、オレがリーダーの娘だというのが大きかったみたいや。あと、ルチーナが説得してくれたこともあってな。ただ、完全には信用してもらえなくて、エルとルーを保証人としてアジトに残しておくのが条件だけど。

 

224:名無しのオールドタイプ

まぁ、妥当なところやな。

 

225:ラド

まずは、キャラさんを説得するんだっけ?

 

226:名無しのオールドタイプ

原作通りとはいえ、いきなりハードル高いミッションだなぁ。

 

227:ジャンク屋ネキ

まぁ、オレはキャラさんとは会ったことはないから、ここはジュドーたち頼みだけどな。うまくいけばいいけど……。

 

* * * * *

 

「もう一度聞くよ。レジスタンスのアジト、その秘密の入り口はどこだい?」

「知らないよ。それより、元に戻ってくれキャラ!」

 

 はい、ダメでした。コア3のネオ・ジオン基地に潜入しようとしたオレたちだけど、あっさり見つかり、こうして尋問にかけられているのでした。ジュドーが必死に元に戻るように呼び掛けてるけど、よほど洗脳が強化されてるのか効果がない模様。

 

「仕方ないですな、キャラ様。それならもう一人の、そう、娘のほうに聞いてみてはどうでしょう? ちょっと強引に」

「私はできればそんなことはしたくないんだけどね。でも、どうしてもというなら無理はしないさ。でも、嫌なのは変わらないから、別の部屋に行ってるからね」

 

 イケメンの片方がオレのほうを見て、そう言ってきた。その表情や口調から、ちょっとどころではないのは明らか。

 そしてキャラは心底嫌そうな顔をして部屋を出て行った。

 

 そしてそのイケメンがオレのほうに一歩踏み出してきた。思わず冷や汗が伝う。

 

「や、やめろぉ!」

 

 モンドがそう悲鳴をあげる。それに対し、イケメンがまじめな顔でモンドに向きなおった。

 

「それなら、入口の場所を教えてもらおうか。こちらとしても、教えてもらえさえすれば、手荒なことはしない」

「わかったよ……」

 

 そしてモンドは、とうとうアジトの入口の場所を教えてしまった。

 それを聞いたイケメンは、二人とも部屋を出て行ったが、オレはもちろん、ジュドーも沈痛な表情を浮かべはしても、彼を責めることはなかった。多分、オレもジュドーも、大切な人が傷つけられるとわかれば、同じことをしただろうから。

 

「ご、ごめんよ、二人とも……」

「あの場合は仕方ないさ。それより、今はここを脱出する方法を考えようぜ。キャラたちを追わなきゃ」

「あぁ、そうだな」

 

* * * * *

 

 一方そのころ、そのアジト、その秘密の入り口には先客があった。

 ジュドーたちが潜入したと聞き、彼を倒すためにキュベレイでやってきたプルツーである。

 

 内部に入ろうとする彼女だが、その前にルチーナが立ちはだかっている。

 

「どかないと、あんたも撃っちゃうからね!」

「あなたにそんなことはできない! あなたも悪い人じゃないもん!」

 

 その言葉に、プルツーは困惑を隠せない。

 でも、彼女をどかして内部に潜入し、ジュドーを倒さなくてはならない。

 プルツーはファンネルを射出し、周囲を展開する。

 

「私はジュドーに仕返ししなきゃならないの! どいてよ! さもないと!」

 

 そこに。

 

「あれはキュベレイ!? プルツーもここを狙っていたってのかい?」

「それにしては、少し様子がおかしいですな」

 

 キャラの新型MS(モビルスーツ)・ゲーマルクと、双子の片割れ、ニーのガズエルが飛来してきた!

 

「ちぃ!」

 

 それを確認すると、タイムオーバーを悟ったのか、プルツーはキュベレイでルチーナと、後ろにかばっていたエルとルーをつかむと、その場を離脱していった。

 

* * * * *

 

232:ジャンク屋ネキ

ちょっとまいったな……。色々ありながらも脱出して戻ってきたと思ったら、今度は妹……ルチーナと、エルとルーさんが捕まるとは。

 

233:ラド

犯人のあてはついとるんか?

 

234:ジャンク屋ネキ

あぁ。目撃者の証言でわかったMSの特徴からするとキュベレイらしい。

『プルツー……まさか、誘拐までしちゃうなんて……。こんなこと、許しちゃいけないよね!』

 

235:名無しのオールドタイプ

エルやルーはもちろん、ルチーナも助けてあげたいところやな。

 

236:ジャンク屋ネキ

そうやな。義理とはいえ、オレの妹だしな。

ん、なんや、爆音?

 

* * * * *

 

「た、大変だ! 接続が完了してしまった! ネオ・ジオンの奴らが突入してくる!」

 




再び、XINNさんからファンアートをもらいました。大感謝です!

【挿絵表示】

そして、引き続きファンアート募集中です!

* 次回予告 *

オレたちはハマーンの新しいコロニーに再び潜入し、さらにプルツーもジュドーを追ってやってきた。
それにハマーンの反応が遅れたのは、彼女曰く「ジュドーがバリアーになったから」というけど、どう見ても、ジュドーのことが気にかかっていたからだよなぁ。
でもそれはともかく、今はみんなを助け出さなくちゃ! プルツー、素直になれって!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第27話『脱走者たちの船出』

オレだって頑張ってる!

※次の更新は、4/20 12:00の予定です。


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Act.27『脱走者たちの船出』

前回のタイトルの元ネタは、Vガンダム第41話『父が作った戦場』からでした!
いかがでしたか?

さて、今回はコア3編の後編です!


 アクシズの付近に待機しているグワンバン。そのブリッジに立つグレミーに、副官のオウギュスト・ギダンが報告をもたらす。

 

「グレミー様、アクシズ及びその周辺宙域の制圧、完了しました」

「そうか。ご苦労だった」

「はっ。ですが……」

「なんだ?」

 

 グレミーがオウギュストに顔を向けて続きを促すと、オウギュストは済まなそうな顔をして続けた。

 

「残念ながら、アクシズ制圧のことは、ハマーンの工作員に突き止められた模様です。こちらで処理はしましたが、おそらくは、ハマーンに伝わるのは避けられないかと。それと、アレのことも……」

「それは痛いな……。だが、知られてしまったことは仕方あるまい。ハマーンにこのことが伝わる前に動くよう、スケジュールを前倒ししなければならぬ。『アレ』の発射準備と演説の準備、そして攻撃の準備を急がせよ。アレの発射と同時に演説を行い、本格的な交戦を開始する」

「はっ、了解しました」

 

* * * * *

 

 親父たちのレジスタンスが作った、鉱山小惑星キケロとコア3とをつなぐ秘密の通路。

 それとは別に、キケロとコア3の接続が完了し、宇宙港を通して行き来ができるようになってしまった!

 

 そして今、ネオ・ジオンの陸戦部隊が、その広い通路を通ってキケロ内になだれ込んできたのだ!

 

「反乱分子とガンダムチームは、このキケロに隠れている! 一人残らず引き摺り出せ!!」

 

 ネオ・ジオンの陸戦部隊は、反ネオ・ジオン派のレジスタンスたちを倒しながら、親父たちレジスタンスの首脳や、オレたちガンダムチームを捕らえるために進軍してくる。

 

「ガンマグループ、全滅の模様! デルタグループと連絡が取れません!」

 

 報告を聞いて、親父……ロイ・クトゥルが渋すぎる顔をする。

 

「そうか……。秘密通路のことが知られた以上、そこも抑えられてると考えたほうがいいかもしれないな。第四サブエアロックは?」

「あそこは大丈夫です」

「よし……そこから、ランチを使って脱出しよう。マリハ、護衛を頼めるか? ランチに乗って、お前たちの艦に避難することにしよう」

「おう! 確か第四サブエアロックだったら、そこにオレたちのMS(モビルスーツ)も置いてあるから大丈夫だと思う」

 

 そう言いながら、通路を走っていく。すると、途中でまた、ネオ・ジオン兵と鉢合わせ! 奴らの銃撃で、またオレたちと同行していたレジスタンスたちが射殺された。

 

「こなくそ!」

 

 オレたちも、負けじと応戦する。ジュドーもモンドも、そしてプルも、拳銃で反撃する。

 その銃撃戦の後、なんとか敵を倒すことに成功した。

 

「……っ」

 

 だが、戦いが終わってみると、親父が腕を抑えてうずくまっていた。腕から血が流れてくる。今の銃撃戦で負傷したんだろうか?

 

「だ、大丈夫か、親父? ちょっと待ってくれよ」

 

 そう言ってオレは、服の袖を破り、それを包帯代わりに応急処置を施す。パイロット訓練生の訓練の中でやってた応急処置の修練、まじめに受けといてよかった。

 

「あぁ、ありがとうマリハ。娘に手当してもらえるなんて、父親冥利につきるな」

「何言ってるんだよ、親父」

 

 よし、応急処置完了っと。

 

「しかしマリハ……お前は俺のことを恨みに思っていないのか? 軍に強制されてとはいえ、強化人間としての運命を背負わせてしまった俺に……」

「そんなこと思うわけないじゃんか。確かに、オレがプルクローンと知らされた時にはすごいショックだったけどさ。でも、その分親父には三年間、いっぱいお世話になったんだぜ。例え恨みがあったとしても、その恩の分でチャラになってるよ」

「マリハ……」

「それに、オレを生み出してくれたおかげで、オレにはジュドーたちといった、大切な仲間たちができたんだぜ。むしろオレのほうが感謝したいくらいさ」

 

 そう答えたオレに、ジュドーが横から茶々を入れながらこづいてくる。

 

「このこのー、嬉しいこと言ってくれちゃって」

「はは……良い仲間ができてよかったな、マリハ」

「あぁ」

 

* * * * *

 

251:ジャンク屋ネキ

というわけで、どうにかネェル・アーガマまで戻ってこれたやで。

 

252:名無しのオールドタイプ

おう、お帰り。災難やったな。

 

253:名無しのオールドタイプ

それで、被害はどうだったんだ?

 

254:ジャンク屋ネキ

もう散々だわ……。結局、エアロックまでたどり着けたのは親父含め4人ぐらい。後はたぶん、キケロの中で抵抗してるか、隠れてるか、捕まった、それか殺されたかやろな……と親父が言ってるわ。

 

255:ラド

それくらいしか残ってないんだったら、もう彼らだけではキケロの奪還は無理やろうなぁ。

 

256:ジャンク屋ネキ

そうだろうなぁ……。ルチーナはもちろん、エルやルーさんも助けだしたいところなんだが……。

 

257:名無しのオールドタイプ

まぁ、手はあるんだけどな。それをビーチャたちが考え付いてくれるといいんだが……。

 

258:考察ニキ

まぁ、いざとなれば、ネキから提案してもらえばいいんじゃない?

 

* * * * *

 

 しかし、オレが提案するまでもなかった。

 ネェル・アーガマに戻ると、マシュマーさんがしたり顔で提案してきたのだ。

 

「心配ない。要は、ネオ・ジオンからの干渉がなくなればいいのだろう? ならば、キケロとコア3との接続を物理的に断ち切ればいい。ネェル・アーガマにはそのための装備があるだろう?」

「接続を物理的に断ち切るための装備?」

 

 オレはそれが何か、とんと思いつかなかった。だが、さすがはビーチャ。ここまで艦長代理をしていることはあり、すぐに思い当たったようだ。

 

「そうか、ネェル・アーガマのハイメガ粒子砲か!」

「その通りだ。さすがにネェル・アーガマの艦長代理。よく気が付く」

「マシュマー様がそのような作戦を思いつくとは! これも弟ゴットンの教育のたまもの……いてっ」

 

 感極まったようにそう言うボットンさんの脳天に、マシュマーさんのげんこつが炸裂した。そこでマシュマーさんはこほんと咳払いをして続ける。

 

「それをもって接続部を撃ち抜いて破壊すればいい。そうすれば、キケロに残ったネオ・ジオン兵などどうにでもできる」

 

 マシュマーさんの提案した作戦に、親父もうなずく。

 

「なるほど、奴らの数が多すぎるなら、作業員たちを扇動して叛乱を起こさせ、奴らを制圧するのもいいかもな」

「そういうことだ」

 

 そこでビーチャが手を打ち合わせて言った。

 

「よし、それじゃその手でいこうぜ! 俺たちはネェル・アーガマでハイメガ粒子砲の発射準備を進める。マリハのおやじさんは、再びキケロに戻って扇動をお願いするよ。ジュドーとマリハとプルは、もう一度コア3に潜入して、エルとルー、ルチーナを救出してくれ。頼んだぜ!」

「わかった」

「おう!」

 

 そして作戦開始。オレとジュドー、プルの三人は、キケロに潜入する親父たちと別れて、MSでコア3へと向かっていくのだった。

 

* * * * *

 

 一方そのころ。

 

(すごいプレッシャーだ……ここではできない……!)

 

 ハマーンが執務する館の敷地に潜入したプルツーだが、屋敷の中に満ちているプレッシャーを前に、手を出すことができずにいた。

 

(となれば、キュベレイで襲うしかないか……)

 

 そう判断して、敷地から脱出する。そこにはルチーナが待っていた。

 プルツーは、ハマーンの館への潜入工作に際し、ルチーナも連れだしてきていた。

 

 戻ってきたプルツーに、ルチーナが駆けよる。

 

「こんなところで何を……?」

「どうでもいい。ここにいると死ぬ。だから逃げろ」

 

 そう言い放つプルツーの元に、キュベレイが下りてきた。

 

「どうして、私だけ……?」

「なぜだろうな……。ただの気まぐれだ。いいから行け。巻き添えを受けて死んでも知らんぞ」

 

 そしてプルツーは、キュベレイに乗り込み、再び館のほうへと向かっていった。

 

* * * * *

 

 オレとジュドー、プルが再びコア3に潜入していると、向こうのほうから誰が走ってきた。おや、あれは……?

 

「あれ、もしかしてルチーナじゃない? 私の妹の」

「いや、オレの義妹であって、プルのじゃないだろ。でも本当にルチーナだな」

「プルツーの元から逃げてきたのか?」

 

 そしてオレたちは無事にルチーナを保護することができた。後は、エルとルーだが……。

 

「ルチーナ、どうして?」

「あ、お義姉ちゃん。え、プルツー!? って、あ、プル」

 

 ルチーナは、やっぱりプルを見て、プルツーと間違えそうになって混乱してる。まぁ、プルとプルツー、オレはよく似てるからなぁ。そうなるのも無理はないよな。

 

「うん、プルだよー。それで、ルチーナ、どうしてここにいるの?」

 

 プルがそう聞いて、ルチーナはやっと、自分が何を話すべきかと再び思い出したようだ。

 

「プルツーが私だけを連れ出して、解放してくれたんです」

「プルツーが? なぜ?」

「わかりません……。でも、私だけ助かるのは嫌だから、こうして戻ってきたんです」

「私『だけ』ってことは、エルとルーさんはまだ、プルツーの隠れ家とかに?」

「はい。私、案内します!」

 

 そしてルチーナはエルとルーさんがいるであろう場所に向けて駆けて行った。もちろん、オレたちもあとに続く。

 

 ところが、そこではキャラさんのゲーマルクがエルとルーさんを回収して離脱しようというところだった。

 

「ちょっと、放しなさいよ、爆乳お姉さん!」

「助けてジュドー!」

「キャラ!」

『ふふん、二人を返してほしければ、とっとと私たちに降伏しな。行くよ、二ー、ランス!』

『『ははっ!』』

 

 そして飛び去って行った。く、せっかく救出できると思ったのに、なんてことだ……。

 そこでジュドーが。

 

「仕方ない。急いでキャラたちを追わなくちゃ! マリハ、お前とプルはルチーナを連れて、ネェル・アーガマに戻ってくれ。それから駆けつけてきてくれ!」

「わ、わかった! 気をつけろよ!」

 

 そしてオレはジュドーと別れ、ルチーナを連れて、MSが隠してあるコロニーの片隅の森に向けて走り出した。

 

* * * * *

 

 一方、ハマーンの館。その周辺では、警備を担当している、ハマーンの親衛隊のガザDと、プルツーのキュベレイが戦闘を繰り広げていた。

 さすがに親衛隊といえども、相手がプルツーでは荷が重いと言わざるを得ない。キュベレイのパワーと、ファンネルによる攻撃の前に、親衛隊は苦戦していた。

 

 その様子はさすがにハマーンにもわかってくる。さらに、その執務室に部下が駆け付けて報告してくる。

 

「ハマーン様、大変です! アクシズより連絡があり、グレミー・トトと、彼に同調する一部の隊が蜂起、アクシズを制圧したそうです!」

「なに? ふふふ、グレミーめ。私がアクシズを離れた今しか勝ち目がないとついに動いたか。もう少し、不穏分子をあぶりだすために泳がせておきたかったのだがな。それにしても、奴がこうして動くだけの力を手に入れるとは、報告があった例の財団のバックアップによるものか……」

 

 一方、敷地の中では、エルとルーを兵士に引き渡したキャラが、再び出撃しようとしていた。

 

「このゲーマルクの一斉砲火なら、キュベレイだろうがなんだろうがいちころだぁ!!」

 

 当然そんなことをしたら大変である。ここはコロニーの中なのだ。ニーとランスがあわててそれを押しとどめる。

 

「キャラ様、おやめください! コア3が壊れます!」

「ハマーン様やミネバ様はまだ屋敷の中です!」

「出撃するなら、せめてRジャジャで!」

「なに!? えーい、わかった。早く準備を済ませろ!」

 

* * * * *

 

「それにしても、どうしてこうもプルツーとやらの襲撃に感づくことができなかったのか……? む?」

 

 ハマーンがそう疑問を口にしながら、脱出しようとしたその時。

 

「ハマーン!」

 

 ドアを開けて、ジュドーと、彼に救出されたエルとルーが入ってきた。

 それを見て、ハマーンは得心がいった。

 

「ふふふ、お前か。わかったよ、お前がこの屋敷にバリアーを張っていたのか。そうでなくば、私がキュベレイに対応するのが遅れるはずがない」

「ジュドーの気配にぼーっとしていただけの話でしょ?」

 

 ルーがそう軽口を叩くが、ハマーンは涼しい顔である。

 

「小娘は黙っていてもらおうか。さて、脱出しなくてはならんのでな。そこを退いてもらおうか」

 

 と、その時。突然天井が崩れだした! 戦闘の被害が、館にも及んだのだ。

 

「だめだ!!」

 

 とっさにジュドーは、ハマーンとエル、ルーを押し倒すようにして、その場から離れた。その直後、彼らがいたところにがれきが降り注ぐ。

 押し倒されたままのハマーンが言う。

 

「なぜ、私を助けた? なんのつもりだ?」

「つ、つもりはなかった! こうなっちまっただけだ!」

「ふふふ……かわいい奴め。教えてやろうか? お前と私は同類だ。呼び合っているのさ」

「か、勝手なことを言うな!」

「そうよ、そうよ!」

「子供は黙っていてもらおうか!」

「子供ですって! 私はもう16よ! 小娘なら横のエルのほうでしょ!」

「なんですってー!」

「あぁ、もう! こんなところで口喧嘩している場合かよ!」

 

 そこに、ランスが駆け付けてくる。

 

「ハマーン様、ご無事でしたか! ……エゥーゴ!」

 

 ジュドー達を見つけたランスは銃を向けようとするが、ハマーンはそれを制した。

 

「よい。彼らには命を助けてもらった借りがある。今回は逃がしてやれ。ジュドー・アーシタ。期待しているぞ。お前が私の元にはせ参じる時を」

「か、勝手なことを!」

 

 そのジュドーの文句を聞き流し、ハマーンはランスと執務室を去っていった。

 

* * * * *

 

264:ジャンク屋ネキ

あーあー、派手にやってるなぁ。これじゃ迷うことはないな。プル、ZZ(ダブルゼータ)の操縦は大丈夫か?

『うん、任せて!』

 

265:名無しのオールドタイプ

そういや、キケロとネェル・アーガマのほうも作戦は順調なんだっけか?

 

266:ジャンク屋ネキ

あぁ。扇動はうまくいったらしい。今、ネオ・ジオンの奴らと絶賛戦闘中だそうだ。それで、戦況が傾いてきた頃合いを見てハイメガ砲を発射するって言ってたな。

『あ、あそこにいるのジュドーとルーとエルじゃない?』

 

267:名無しのオールドタイプ

あ、ほんとだ。みんな煤で薄汚れちまってるが。

 

268:ラド

おまけに、Rジャジャとガズアルとキュベレイの戦闘に巻き込まれて右往左往してるしなぁ。どこかで見たようなシーンだ。

 

269:名無しのオールドタイプ

ん? ネキに通信入ってるんとちゃうか?

 

270:ジャンク屋ネキ

あ、ほんとだ。

……ふんふん、ZZを代わってくれってさ。よし、プル、あそこに着陸するぞ。

『了解!』

 

* * * * *

 

「熱い、身体が熱いんだよー!」

 

 そう言いながらも、キャラはRジャジャのビームサーベルでファンネルを切り払っていく。

 一方のプルツーは、長丁場の中ファンネルを使っていて、かなり疲弊していた。

 そこに。

 

「キャラ!」

 

 ZZが突っ込んできて、Rジャジャの左腕をハイパー・ビームサーベルで切断した。その攻撃で、キャラはうろたえる。

 

「だ、ZZ!?」

「キャラ、思い出せ、俺のことを。アーガマでの生活のことを!」

 

 そう呼び掛けるジュドー。すると、ついに声が届いたのか、キャラが取り乱し始めた。

 

「やめろやめろー! 頭がごちゃごちゃするー!!」

 

 ぶんぶんとビームライフルを持った右腕を振り回すキャラのRジャジャ。その尋常じゃない様子に、ニーのガズエルがあわて止めに入る。

 

「およしください、キャラ様。冷静に! 今、ランスから連絡が入りました。ハマーン様がサダラーンに戻られたそうです。ゲーマルクもサダラーンへの搬送が完了したそうです。我々も引き上げましょう!」

 

 それを聞き、キャラはなんとか冷静さを取り戻した。

 

「そ、そうだな。どうかしていた……私は、どうしてしまったのだ……。ZZ、今度会った時こそ、お前を倒してやる!」

 

 そうしてキャラのRジャジャは、ガズエルと撤退していった。

 

「キャラの説得は無理みたいだ。すっかり変わっちまった……」

「洗脳された今の状態で、和解する道を探すしかないかもな」

 

 そう言葉を交わす、ZZのジュドーと、リャナンシィのマリハ。そこに。

 

「助けてくれたことには礼を言うよ。でもそれとこれとは別だ! ダブリンでの借りを返させてもらう!」

 

 キュベレイが後ろからビームを撃ってきた。それを二機は慌てて交わす。

 

* * * * *

 

 キュベレイはなんとか操作できる二機のファンネルとともにこちらを攻撃してくる。オレたちはそれをなんとかかわしながら、プルツーの説得を続けた。

 

『やめるんだ、プルツー! 君はこんなことをしていい子じゃない!』

『何をたわごとを!』

 

 そのプルツーに、オレのリャナンシィに同乗しているプルが訴えかける。

 

『戯言じゃないよ! ならなんで、ルチーナを助けたの!?』

『ただの気まぐれだ! それ以上の理由などない! 何なのだお前は!? なぜ私と同じ気配を持っている!? 不愉快な奴だ!』

 

 そのプルツーの言葉に、オレは後ろからのファンネルの攻撃をかわしながら言う。

 

「不愉快なのは当たり前さ。オレもプルも、お前と似たもの同志だからな!」

『なんだと!?』

『私はエルピー・プル。あなたの姉みたいなもの。そして彼女はマリハ。あなたと同じ子、私の分身なんだよ!』

『……!』

「お前はプルの激しい部分を受け継いだ子なのは確かだ。だけどそれだけでなく、彼女の優しい心も受け継いでいる。だから、ルチーナを助けたんだよ!」

『そ、そんなこと……! 違う、私はプルツー! グレミーの忠実な戦士だ!』

 

 そう言いながらも、プルツーのキュベレイの動きには、ダブリンで見たようなあの精彩はなかった。それこそが、彼女が動揺している証、そして、オレたちの言っていることが図星だという証だ。

 

 ジュドーが、そのプルツーの隙をついて、ZZがキュベレイを抑え込んだ。

 

『もっと素直になるんだ、プルツー! 自分の心を見つめれば苦しまずに……』

『苦しくなんかあるもんかぁ!!』

 

 キュベレイは全力をもって、最後の力を振り絞るかのように、ZZガンダムを振りほどいた。

 そしてそのままコロニーの外へ飛び去って行く。

 

『プルツー……』

 

 彼女の名を呼ぶジュドーの声が、通信機から聞こえてくる。

 ハイメガ砲発射準備完了の通信が入ったのは、その直後だった。

 

* * * * *

 

 そして。

 

「幸い、このキケロには、まだ生活できるだけの空気も水も食料もある。この小惑星で、どこか別のコロニーに移住するよ」

「そうか……。親父、くれぐれも気を付けてな。妹と仲良くやってくれよ」

 

 そして。ネェル・アーガマのハイメガ砲で、キケロとコア3は再び分断され、キケロの中にいたネオ・ジオン兵たちは、人数が少なくなったこともあり、みんな降伏した。

 今回の事件と同調して、グレミーが反乱を起こしたらしく、ハマーンもそちらへの対応を迫られ、キケロにかまっていられなくなった。かくして、キケロはとりあえずはネオ・ジオンから脱することができたのだった。

 

「お義姉ちゃん。いつかまた会いに来てね!」

「あぁ、ルチーナもそれまで元気でな。親父と仲良くな。とっても良い、オレにとっても自慢の親父だからな」

「うん。それからジュドー……」

「ん?」

 

 そこで、ルチーナがジュドーとプルのほうに向いた。

 

「プルツーって悪い子じゃないよ」

「あぁ、わかってる。プルの妹だもんな。悪い子のはずがないさ。連れ戻すことができたら、一緒に会いに行くよ」

 

 そしてオレたちは、親父やルチーナと別れ、再びネェル・アーガマで出発した。

 

 だが、そのオレたちに、ある凶報がもたらされる。

 ハマーンが、再び、今度はダカールにコロニーを落とそうとしていたのだ!

 

 オレたちはサイド3への進撃を一時中断して、奴らがコロニー落としの準備をしている、その宙域へと向かった。

 




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* 次回予告 *

ハマーンが、今度はダカールにコロニーを落とそうとしてる。ダブリンでの惨劇を知ってるオレたちは、それをさせるわけにはいかないと、ただちにそれを阻止しに向かった。
結果、それを阻止できたのはよかったんだけど、大変なのはそれからだったんだ!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第28話『コロニーを撃つ巨光(オーロラ)

あれは……憎しみの光?

※次の更新は、4/23の予定です。


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Act.28『コロニーを撃つ巨光(オーロラ)

ビーチャ「なぁモンド。前回のサブタイの元ネタってなんなんだ?」
モンド「うん、作者の話では、ガンダムAGEの第12話『反逆者たちの船出』だそうだよ」
ビーチャ「へぇ。さて、いよいよ最終盤だ。頑張っていこうぜ! ……浮気者の声を払拭できるようにな!」
モンド「おう! ……え?(汗」

ということで、今回からはキャラの会話形式で答え合わせをしていこうと思いますw

さぁ、ここから一部オリジナル展開に入りますぞ!

なお、今回と次回(29話)は特別に、二日連続しての公開とさせていただきます。お楽しみに!


 ハマーンは、グレミーとの対決に備える一方で、ダカールへのコロニー落としを画策していた。

 

 これも、連邦軍とエゥーゴがまだ戦力の立て直しの途中であり、いまだに宇宙がネオ・ジオン優勢であるがゆえだ。

 

 地球連邦軍とエゥーゴの艦隊が戦力を再編し、サイド3に攻め込む準備を進めている中、それに対する脅しと同時に、双方の戦意を完全に折るためだ。

 この脅しに連邦とエゥーゴが屈して矛を収めればよし、そうでなくとも心が折られれば、ハマーンはグレミーに全力を集中できる。折ることができなくても、ダカールにコロニーを落とせば、連邦とエゥーゴはそれによる混乱の立て直しを余儀なくされ、ネオ・ジオンの内戦に介入できなくなる、という考えだろう、と我が艦長代理のビーチャは推測した。これにはマシュマーさんも同意し、さらにエゥーゴの参謀本部も同じ考えだとの知らせが、ブライトさんからあった。

 

 オレたちネェル・アーガマ艦隊はそれを阻止するために、至急その準備が行われている宙域へと向かっていた。

 ハマーンたちの戦略がどうであろうと、ダブリンへのコロニー落としで、その惨劇を目の当たりにしてきたオレたちとしては、それを許すわけには絶対にいかない。

 エゥーゴの本隊が来るまでのサイド3への攻略作戦は、オレたちに一任されているので、サイド3での進撃を中断して、宙域に向かっている、という次第だ。

 

* * * * *

 

「グレミー様。発射用意は完了しました。しかし、目標は本当にそれでよろしいのですか? それよりはハマーンの本隊に発射したほうが……」

 

 グワンバンのブリッジ。そこでオウギュストが、グレミーにそう質問していた。

 グレミーが指示した作戦は、彼から見れば、とても甘いものだったのだ。ハマーンの本隊に発射するか、あるいはコア3に放てば、現在の作戦より、自軍の被害をさらに少なくし、完勝できる可能性が高いものを……。

 

 だが、グレミーは首を振った。

 

「いや、これでよい。確かに貴様の言う通り、本隊なりコア3なりに撃てば、決着は簡単につくことだろう。だが、私はそのために、自ら進んで大量虐殺者になることはできぬ。大量虐殺者にどれだけの大義があるというのだ?

 それしか勝つ手がないとすれば使うことに躊躇はしないが、それはあくまで最後の手段だ」

「……」

「それに、アレを撃つことは、外交的なリスクが生じる。アレのような大量破壊兵器、しかも、一年戦争の負の遺産を持ち、使う相手を警戒しないわけがないからな。ならば、犠牲を少なくするように使えば、そのリスクはいくらか少なくなろう」

「……」

「他の理由もある。ただでさえ、ネオ・ジオンの戦力を二分して対峙しているのだ。ハマーン派を消し飛ばしてしまえば、その後の連邦軍との戦いは絶望的なものとなるだろう。それよりは、この一撃でハマーンを降伏させ、ハマーン派の戦力を糾合させれば、連邦軍への対処も楽になる、というものだ」

「なるほど、そこまでお考えでしたか……。わかりました、どこまでもお供します、グレミー様」

 

 感嘆の表情を浮かべながらオウギュストが言う。甘さを感じなくもないが、辛さを甘受するような主君でいてほしくない、と思うのも確かであった。

 

* * * * *

 

1:ジャンク屋ネキ

見えてきたな。あれが奴らが落とそうとしているコロニーか。

 

2:名無しのオールドタイプ

しかし、まさかこんな展開になるとはなぁ……。

 

3:考察ニキ

あぁ。すっかり、原作とは違う展開になってしまったわ。俺もこの先どうなるか読めんわ、すまんな。

 

4:ジャンク屋ネキ

謝ることはないで。お前らがいるだけでオレの支えになってくれてるからな。

 

5:名無しのオールドタイプ

嬉しいこと言ってくれるで……。

 

6:ジャンク屋ネキ

目の前、宙域の端にエンドラ級が二隻と、MS(モビルスーツ)が20機ほど展開してるなぁ。

コロニーの近くにも、エンドラ級二隻とMS18機いるっぽいわ。

 

7:名無しのオールドタイプ

この二隻をどうにかしないとコロニーにたどり着けないってことやね。

気張ってや、ネキ。

 

8:ジャンク屋ネキ

おうよ!

 

* * * * *

 

 そしてさっそく出撃準備。オレはもちろん、リャナンシィに。

 ジュドーとプルもZZ(ダブルゼータ)ガンダムに流れていく。(今回はいよいよ正念場ということで、プルが自ら、あえて連れて行ってほしいとジュドーに懇願したのだ)そしてZZに到着したジュドーたちに、アストナージさんが声をかける。

 

「ほれ、ジュドーの言った通り、ZZを複座機にしておいたぞ」

「ありがと! さすがアストナージさんだね!」

「ははは、おだてたってなにも出ないぞ。ほら、乗った乗った」

「あいよ!」

「うん!」

 

 そして、ジュドーとプルはZZに乗り込んでいった。ちなみに後で聞いた話によると、ジュドーが座るメインパイロットシートが後部座席、プルが乗るコパイロットシートが前部座席になっているらしい。

 

 さて、エルとルーさんも、それぞれガンダムMk-Ⅱ(マークツー)(ゼータ)ガンダムに乗り込んでいく。ビーチャは艦長代理の仕事があるから出撃はなし。(出撃できなくて文句言ってたけど、トーレスさんになだめられていた)

 

 そしてオレたちはネェル・アーガマから出撃していった。

 ネオ・エンドラからもモナーク・ガルスをはじめとしたMS隊が出撃していく。

 

* * * * *

 

 そしてオレたちは、コロニーを守るネオ・ジオンのMS隊と戦闘になった。

 

「それ行け! 一郎、次郎、三郎!」

 

 リャナンシィから一郎、次郎、三郎を切り離し、それでドライセンを翻弄しながら、その隙をついて攻撃を仕掛ける。

 

『いい加減、通してちょうだいよ!』

 

 ジュドーのZZはダブルビームライフルを撃つ。一機は回避したが、その背後にいたもう一機がビームの余波で中破した。

 

『私の操縦センスの華麗さを証明してみせねばな』

 

 マシュマーさんのモナーク・ガルスも、肩のミサイルポッドや、左腕の有線クロー・アームを駆使して、複数の敵を相手に有利に立ち回っていく。

 

 ZとMk-Ⅱも、互いにフォローしあいながら、うまいコンビネーションで戦っている。

 

 しかしさすがに敵も手練れで、なかなか突破できそうにない。

 一刻も早く、コロニーにたどり着き、投下を阻止しなければならないのだが……。

 

 そう焦っているうちに、別のドライセンが横から襲ってきた!

 

「!!」

 

 オレはとっさに、次郎をそのドライセンにぶつけて態勢を崩した。

 そこにビームライフルを発射して仕留めた。

 

 またもう一方では、ZZに背後から襲い掛かってきたドライセンを、マシュマーさんがモナーク・ガルスのメガ粒子砲で倒してくれていた。

 

 そうしていくうちに、少しずつ敵は数を減らしていき、ついに敵を全滅させることができた。

 

『ふぅ、てこずったな』

「あぁ。エネルギーも弾も結構使っちまった」

 

 と、ジュドーと言葉を交わす。そこにネェル・アーガマのビーチャから通信が入る。

 

『まだコロニーの至近には敵がいる。ここはいったん補給に戻って来いよ。ネェル・アーガマで補給しつつ突撃し、それから発進して挑むとしようぜ』

『あぁ、そうだな。それじゃみんな、一度艦に戻ると――』

『みんな、待って! あれ見て!』

「え?」

 

 プルがそう言った瞬間。

 サイド3の方向から一条の光が飛んできて、コロニーと、おそらくその付近に展開していたネオ・ジオンの部隊を飲み込んだ。

 

 その衝撃的な光景に、オレはもちろん、その場のみんなはただ凍り付いていた。

 

 そして光が消えていく。そこには、コロニーはもちろん、何も残っていなかった。

 

 これはもしかして……ソーラ・レイ!?

 

* * * * *

 

17:名無しのオールドタイプ

まさかここで……ソーラ・レイだとおおおおお!?

 

18:名無しのオールドタイプ

まさかここで、マハルのソーラ・レイが出てくるとは……。

あの、すいません。グリプス2のコロニー・レーザーじゃないんですか?

 

19:ラド

いや、明らかにサイド3の方向から飛んできたから、明らかにグリプス2じゃないと思う……。

 

20:考察ニキ

俺もこれにはたまげたわ……。完全に原作のストーリーから逸脱しとるやんけ……。

 

21:名無しのオールドタイプ

というか、ネキとプル、大丈夫か? 死に際の思念とか。

 

22:ジャンク屋ネキ

あぁ。かなり距離が離れていたからか、全然感じることはなかったわ。プルは大丈夫?

『う、うん……。少し飛び込んできちゃったけど、平気……』

 

23:考察ニキ

それにしても、コロニー落としを結果的に阻止できたのはいいけど、今度はソーラ・レイか……。

これは一筋縄ではいかんで……。グレミーの奴、とんでもない隠し玉を用意しやがったな……。

 

24:ジャンク屋ネキ

そうだな……。これは作戦考えなきゃならんかもや……。

 

* * * * *

 

「グレミー様、初弾発射完了。目標の消滅を確認しました」

 

 オペレーターからの通信を聞き、グレミーはうなずくと次の指示を与えた。

 

「よし。第二射、発射準備。目標はコア3に合わせろ。だがあくまで撃つのは最後の手段だ」

「はっ」

「それとオウギュスト、ただちに演説の準備をしろ。これから我が『新生ネオ・ジオン軍』の将兵たちへの演説と、ハマーンへの最後通牒を行う」

「了解いたしました」

 

 そう野心と大義を胸に秘め、指示を飛ばすグレミーを、プルツーはその表情に動揺を浮かべながら見つめていた……。

 




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* 次回予告 *

グレミーがソーラ・レイを発射して、事実上の最終決戦になった。
プルツーはグレミーにつき、それにラカンとキャラさん、アリアスさんが絡む。
ハマーンを止めようと逸るマシュマーさんは暴走気味なところに、そのラカンに付け込まれた。
頼むから不幸は起らないで……!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第29話『ソーラ・レイ始動! 出撃ガンダムチーム!!』

マシュマーさん、死なないでくれよ!

※次の更新は、4/24 12:00の予定です。


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Act.29『ソーラ・レイ始動! 出撃ガンダムチーム!!』

マリハ「前回の元ネタは、ガンダムWの第43話『地上を撃つ巨光(オーロラ)なんだってさ」
マシュマー「ふむ、やはりそうか。それにしても、かの作品に出てくるトレーズという者、ぜひ一度決闘をしてみたいものだ」
マリハ「マシュマーさん……エレガントって言葉知ってる?」
マシュマー「し、知っているに決まっているだろう!」
マリハ「はぁ。当たった人には、作者が祝福をプレゼントするってさ」

さぁ、いよいよアクシズ決戦、開始ですぞ!


 ソーラ・レイ発射後、グレミーは司令部をアクシズに移した。

 

 司令部の安全や指揮の利便性などから、戦艦であるグワンバンより、要塞であるアクシズから指揮をとったほうが良いというオウギュスト・ギダンの進言を取り入れたからだ。

 

 そして今、グレミーはアクシズの市街地スペースに作られた演説台に立っていた。

 

「やはり演説というのは慣れないものだな」

「何をおっしゃるのです、グレミー様。一軍の大将たるもの、それぐらいの道化は演じなければならないものです」

「わかっている」

 

 オウギュストにそう言うと、グレミーは覚悟を決めて壇上に上がった。

 

「聞け、私の元に集った兵士たちよ! 先ほど我らが放った正義の光が、再びコロニー落としを成そうとした女狐の尖兵を消し飛ばした。これは我々の決起を祝福し、忍従の終わりを告げる光である!」

 

 前に並ぶ将兵たちから歓声が上がる。

 

「もはや、我らが脾肉を嘆く時は終わりを告げた。諸悪の根源は、ミネバ様をいただき、欺瞞あふれるネオ・ジオンを作ったハマーン・カーンにある! 真なるネオ・ジオンを築き上げるのは、ハマーンの軍を打倒し、彼女を降伏に導くそなたたちである! さすれば、この地球圏の英雄として、末代まで称えられよう!」

「おおおおおお!!」

 

(青二才にしては、美味い事を言う)

 

 歓声をあげる将兵たちの中のラカン・ダカランがそう独り言ちる。

 

「もう一度言う。ハマーンの軍を打倒し、彼女の作った欺瞞あふれるネオ・ジオンを討ち倒すのだ! その戦いの中で功績を立てた者には、それに応じた褒賞を与えよう!」

 

 再び歓声が上がる。

 

「そしてハマーン・カーンに告ぐ。私は無益な殺し合いは望まない。真にネオ・ジオンのことを思うなら降伏せよ。そうすれば、残った将兵の安全と身分は保証し、貴様にとっても悪いようにはしないと約束しよう」

 

 そして歓声の中、グレミーは壇上から降りて行った。

 

 その中、グレミー派の兵士たちはひそひそと話し合っていた。

 

「ハマーンの軍と戦って勝てってことか?」

「コロニーの一つ、くれるってことか?」

「地球の大陸の一つぐらい、くれるっていうぜ?」

 

 その声が聞こえる中、グレミーはオウギュストとプルツーの元に戻っていった。

 

「気に入ったよグレミー。そういうのは好きだ」

 

 そう評するプルツーに、グレミーは苦笑を浮かべて言う。

 

「お前に喜んでもらいたくてやったわけではない。それまではハマーンの下で戦っていた者たちだ。彼らをやる気にさせるには、このぐらいのことはしないとな」

「お見事でございました、グレミー様」

「うむ。さて、これでハマーンがどうでるか……」

 

* * * * *

 

「欺瞞あふれるネオ・ジオンを作った諸悪の根源、か。ふふ、グレミーめ。言いたい放題に言う」

 

 旗艦・サダラーンのブリッジで、ハマーンはそう言って嘲笑を浮かべた。

 そこに、副官が話しかけてきた。

 

「それでハマーン様、降伏勧告への返事はいかがなさいましょうか?」

「降伏を拒否する、以外の選択肢があると思うか?」

「は……ですが、ソーラ・レイはその照準をコア3に定めているとの情報も……」

 

 その副官の報告にも、ハマーンは態度を崩さなかった。

 

「心配には及ばぬ。奴が本気で勝ちにくるなら、一射目でコア3ごと私を仕留めるべきだった。それができぬ甘い奴など、私に勝つことはできぬよ。それにソーラ・レイとて連射できるわけではあるまい? 二射目を撃つ前に、ソーラ・レイを潰すか、グレミーを討ち取るかすれば問題ない」

「確かに……ですが、先ほどのソーラ・レイの一撃と、グレミーめの演説で、アクシズの宙域に展開しているこちらの先鋒部隊は浮足立っております。そちらはどうにかしなくては」

「わかっている。サダラーンを前線に急行させろ。御旗である私が到着すれば、軍の士気も上がろう」

「了解しました」

 

 艦長がサダラーン発進を指示する中、ハマーンは傍らのキャラ・スーンに声をかけた。

 

「キャラ・スーン、コア3でグレミーの人形を仕留めることができなかった失点、ここで取り返してもらうぞ」

「はっ、お任せくださいハマーン様。必ず、汚名を挽回してみせます!」

 

 正しくは汚名返上なのだがな、とはハマーンは思ったが、口にはしなかった。

 

* * * * *

 

 一方、アクシズにて。

 

「グレミー様、ハマーンより返事が届きました」

「なんと言ってきた?」

 

 そう聞き返したグレミーに、オウギュストは少し顔を曇らせて答えた。

 

「ミネバ様に刃を向ける逆賊に下げる頭など持ち合わせていない、とのことです」

「やはりそう来たか……。だが、まだ敵の前衛は浮足立って、十分な迎撃態勢がとれていない。ここで押せば、二射目発射までの時間は稼げるはずだ。後はソーラ・レイで脅すか撃つかすれば決着がつく。全軍戦闘配備。ハマーンが戻ってくるまでに決着をつけるぞ」

「ははっ」

 

 そこでグレミーは、プルツー、ラカン、アリアスに顔を向けた。

 

「三人とも、私についてきてくれて礼を言う。この先の戦いは貴様たちの活躍に全てがかかっている。その武名に劣らぬ戦いを期待している」

「わかっている……」

 

 答えるプルツーはどこか複雑な表情を浮かべていた。

 

「任せてもらおう。だが、地球の支配権をくれてやるという約束、お忘れなきよう」

「わかっている」

 

 邪悪な笑みを浮かべたラカンに、グレミーはそう答えた。

 最後に、アリアスがきりっとした表情で言う。

 

「お任せください。必ずグレミー様に、勝利をもたらすと約束しましょう」

「うむ」

 

* * * * *

 

1:名無しのオールドタイプ

いよいよ始まったな、グレミーとハマーンの戦い。

 

2:名無しのオールドタイプ

見る限り、グレミー軍のほうが押している感じだな。

やっぱり、ソーラ・レイと演説の効果かな。

 

3:考察ニキ

それもあるし、向こうにはラカン、プルツー、アリアスと三枚看板のエースがいるからな。キャラしかエースがいないハマーンにとってはつらいやろ。ハマーン自ら出陣するわけにはいかないだろうしな。

 

4:ジャンク屋ネキ

プルツー……。

『やっぱり、グレミーに従って、戦いに身を置いているんだね……』

 

5:名無しのオールドタイプ

プルツーはまだ、グレミーに依存している状態だからな。

プルはあの大気圏突入のショックで、依存から脱することができたけど。

 

6:ジャンク屋ネキ

『うん……。でも、やっぱりプルツーには戦いから脱してほしい……』

そうだよな。オレも本当にそう思うよ。

 

7:ラド

気持ちはわかるけど、今はこの戦いを切り抜けることだけを考えたほうがいいで。

その前に命を落としたら、助けるも何もないからな。

 

8:ジャンク屋ネキ

あぁ、わかってるで。

……あ、作戦会議するみたいだから行ってくる。

 

9:考察ニキ

おう、がんばってや。

 

* * * * *

 

 コロニー落下阻止を終えたオレたちは、急ぎサイド3の空域に引き返し、その外縁にて、先に到着していたラビアン・ローズからの補給を受けていた。幸いにも、ハマーン派もグレミー派も、互いへの対処でいっぱいのため、ラビアン・ローズが襲われることはなかったという。よかった。

 なお、ラビアン・ローズはこのまま、サイド3の外縁で待機するという。

 

 そして、作戦会議がはじまったのだが、まずあがったのが、連邦とエゥーゴの動向。

 

「連邦とエゥーゴの連合艦隊も、サイド3の境界付近から動かないな」

 

 そう不満そうに言うビーチャに、イーノが言う。

 

「仕方ないよ。向こうにはソーラ・レイがあるんだし、いくらなんでも『撃たれる前に突っ込んで来い』なんて言えないでしょ」

 

 オレもそれにうなずくと口を開く。

 

「あぁ。それに、あちらからしたら、ハマーンとグレミーが潰しあって消耗したところを叩くのが、エゥーゴとしては犠牲が少なくて済むからね」

 

 その意見に異論を唱えるのはジュドーだ。その表情には決意と、少しの怒りが浮かんでいた。

 

「だけど同士討ちを狙っていてはダメだ。双方ともに討ち果たさないと。戦いが終わって奴らがまた一つに戻ったらまた元通りじゃないか」

 

 そこに、ネェル・アーガマを訪れていたマシュマーさんが、別の議題を振ってきた。

 

「だが、問題はどちらを先に叩くかだ。ハマーン様とグレミーをどちらも同時に相手にしては、数に劣る我らはあっという間に負けてしまうだろう。ここは、先にどちらかを集中して叩き、その後でもう片方と決着をつける、というやり方がいいと思う。私は、先にハマーン様のほうに向かいたいのだが……」

 

 先にハマーンを叩きたいと言うマシュマーさんに、ビーチャが異論を唱える。

 

「いや、ここはソーラ・レイを擁するグレミーのほうじゃないか? いつまたあれが撃たれるかわからないんだぞ」

「そうだよ。脅威になってるのは、あのソーラ・レイのほうだと思うぜ」

 

 モンドも、ビーチャの意見に賛成のようだ。

 それを聞き、マシュマーさんもうなずく。

 

「そうだな。確かにソーラ・レイをそのままにしておくわけにはいかん。私も、ハマーン様のことは横に置いておくことにしよう」

 

 それで結論が出たらしかった。

 

「よーし、それじゃ俺たちはこのままグレミー軍を叩きにいく、ということでいいな」

『異議なし!』

「よし、ネェル・アーガマ、前進だ!」

 

* * * * *

 

 そしてMS(モビルスーツ)の発進準備にかかる。

 エルは、愛機であるガンダムMk-Ⅱ(マークツー)のコクピットに入ると、すぐに発進準備を始めた。そこに、ブリッジから通信が入る。

 

「ビーチャ? どうしたのさ?」

「いや、出撃の時なんか表情曇らせてたからさ。どうしたのかなと思ってさ」

「なんでもないよ……」

 

 ビーチャの言葉に、そう否定するエルだが。

 

「嘘だな」

「なんでわかるのよ?」

「俺はアーガマに乗ってから今まで、お前をずっと見ていたんだぜ? それぐらいわかるっつーの」

「な、何を言ってるのよ、もう!」

 

 そういうエルの頬は少し赤く染まっていた。

 

「本当になんでもないよ……。厳しい戦いが待ってるってのに、気休めの言葉一つもかけれない自分に自己嫌悪してるだけ。ビーチャはそうして声をかけてくるってのに……」

「俺はいつもこうしてたつもりさ。誰かさんの気分が、よそに行ってたから気づかなかっただけだ」

「え、どういうこと!?」

「こんな恥ずかしいこと、二度も言えるかよ」

 

 そうして通信は切れた。

 

「ビーチャったら……でも、ありがと」

 

 一方、ZZ(ダブルゼータ)ガンダムに乗り込もうとしてるジュドーとプルに、リィナがドリンクを差し出してきた。

 

「はい、二人とも、ドリンクよ」

「あぁ、ありがとう、リィナ」

「ありがとー!」

 

 そして二人とも、そのドリンクを受け取り口をつける。プルはとてもおいしかったのか、とても幸せそうな表情を浮かべていた。

 

「うん、おいしいー!」

「二人とも、気を付けてね。そして、必ずみんなでシャングリラに帰ろうね!」

「あぁ、もちろんさ。リィナも祈っててくれよな」

「うん!」

「プルもお祈りする! そして頑張るよ!」

 

* * * * *

 

 と、そんな様子を、オレはリャナンシィに乗り込みながら言ってた。

 

「いや、いいね。若いってのは」

 

 いや、オレも転生前は大学生だったし、今は13だし若いのだが。

 でも、本当に微笑ましく思うと同時に、うらやましいと思ってしまう。

 

 と、そこに。

 

「マリハ!」

 

 モンドがこっちにやってきた。

 

「あぁ、モンド、どうしたんだ?」

「いや、お前にドリンクを届けようと思ってさ」

「そうか、ありがとうよ」

 

 そしてドリンクを受け取り、口をつける。うん、とってもおいしい。

 

「おいしいな、これ」

「もちろんさ。俺が作ったものだからな!」

「マジで!?」

 

 モンドにこんな才能があったとはびっくりである。

 

「あの、無事に帰ってきてくれよな。パインサラダ作って待ってるから」

 

 あの、すまないが、そんな死亡フラグてんこもりなメニューは嫌なのですが。

 

「あ、あぁ、ありがたいけど、できればチキンサラダのほうがいいな」

「わかった、用意しておくよ。頑張ってくれよな!」

「おう!」

 

 そして気が付くとオレの発進の番になっていた。よし、行くか。

 

「マリハ・クトゥル、リャナンシィ、行きます!」

 

* * * * *

 

 アクシズの新生ネオ・ジオン軍司令部。

 そのオペレーターが驚いて、グレミーに報告した。

 

「宙域の6時方向より、ネェル・アーガマの艦隊が接近! このアクシズに向かっています!」

 

 その報告にグレミーは、わずかに表情を曇らせて答えた。

 

「やはり来たか……。ソーラ・レイを擁するこちらを脅威と考えるのは当然だから来ると思っていたが。やむを得ん。よし、ラカンのスペースウルフ隊と、アリアス隊を向かわせろ。正面の戦力が薄くなるが仕方ない。並みの戦力ではガンダムチームを止めることはできん。正面は、プルツーとニュータイプ部隊に持ちこたえさせろ」

「了解!」

 

* * * * *

 

14:名無しのオールドタイプ

おぉ、さっそく迎撃部隊が出てきたか。ラカンとスペースウルフ隊のドーベン・ウルフと青いバウの部隊と……。

 

15:考察ニキ

ちょっと待て。向かってくるそのバウ隊の隊長機らしき奴、ギラ・ドーガじゃねーか?

 

16:名無しのオールドタイプ

ほんとだ。あれはギラ・ドーガだ。細かいことは違うっぽいが。プロトタイプかな?

 

17:ジャンク屋ネキ

強いのか?

 

18:名無しのオールドタイプ

何しろ、量産型は5年後の機体だからな。強いぞ。

 

19:名無しのオールドタイプ

なんとことだアナハイム、許さねぇ!!

 

20:考察ニキ

アナハイムのバックにいる某財団がグレミーに手を貸していたという説を何かで見たことがあるけど、その片鱗を見ることになるとは……。

 

21:名無しのオールドタイプ

もうここまで来たら、クシャトリアが出ても驚かんわ。

何はともあれ、ギラ・ドーガはそこそこ強いから気を付けるんやで。

 

22:ジャンク屋ネキ

おう、サンガツ。

 

* * * * *

 

『プルツーはいないのか……』

「多分、ハマーン軍のほうにいるんだろうな。でもそれより今は……」

 

 ジュドーのつぶやきにオレはそう答えた。それと同時に、敵部隊からビームが発射される。オレたちは急いでそれを回避した。マシュマーさんから通信が入る。

 

『ドーベン・ウルフどもは我々が相手する。お前たちはザクもどきが率いている部隊を頼む』

『了解した。マシュマーさん、気を付けてくれよ!』

『承知した!』

 

 マシュマーさんと、ガンダムチームのリーダーであるジュドーと短い会話で意思疎通を行い、オレたちは戦闘に突入した。

 ZZのダブルビームライフルがドライセンを撃ち抜き、エルのMk2がガ・ゾウムを牽制しつつ翻弄し、その隙に。

 

『いただきね!』

 

 ビームライフルで背後からそのガ・ゾウムを撃ちぬく。見事なコンビネーションだ。

 

 そしてオレの元には、スレ民が言っていたギラ・ドーガとやらが向かってきた。

 

『あの動き……マリハ嬢か。大気圏突入のさい、命を助けてもらった恩はあるが、敵として立ちはだかるなら容赦はせん!』

「アリアスさんか!」

 

 アリアスさんのギラ・ドーガが右手のビームマシンガンからビームを連射する。オレはそれを回避しながら、リャナンシィの両足と背中から一郎、次郎、三郎を切り離した。

 

 次郎、三郎にはAI制御で、部下たちの青バウの相手をさせ、オレ自身は、一郎とともにアリアスさんに立ち向かう。

 

* * * * *

 

「いいか。ラカン・ダカランとその手下は、普通の者たちがかなう相手ではない。奴らの相手は私がする。ネオ・エンドラ隊各機は私のバックアップに専念せよ!」

『イエス・マイ・ロード!』

 

 マシュマーのモナーク・ガルスをはじめとしたネオ・エンドラのMS隊も、ラカン率いるスペース・ウルフ隊との戦いのときを迎えていた。

 

「それそれ!」

 

ラドのズサがミサイルを乱射して、敵に牽制をかけ。

 

「くそう、宮仕えは大変だ。でも頑張らないと!」

 

 ボットンのガ・ゾウムがハイパーナックルバスターとビームサーベルで奮闘する。

 

 一方のマシュマーも奮闘している。

 モナーク・ガルスはまず、その肩のミサイルポッドからミサイルを乱射した。この先制攻撃に、一機のドーベンウルフが直撃し、爆散する。残りはそれを回避したに成功できた……が。

 

「逃がすと思ったか!」

 

 モナーク・ガルスは右腕にマウントしたシールドからビーム砲を発射! また一機のドーベン・ウルフを撃墜した!

 

「やるな! だが、これはどうだ!」

 

 ラカンのドーベン・ウルフは左腕を射出! モナーク・ガルスの右足をつかみ、動きを封じた。さらに、残り三機も腕を射出し、両腕と左足を拘束する。

 

「む……!」

「ひと思いに楽にしてやる!」

「なめるなぁー!!」

 

 そう叫ぶと、マシュマーは、左腕の有線ビーム砲を射出! 左腕を拘束していたドーベン・ウルフの頭部を逆につかみ、そのまま零距離でビーム砲を発射! これを撃破する。

 さらに、フルパワーで拘束された右腕を曲げ、シールドをドーベン・ウルフに向けてメガ粒子砲を発射。これも撃破する。そして、ビームサーベルで左足をつかんでいた有線アームをつないでいるワイヤーを切断。それに動揺したドーベン・ウルフは、ラドのズサがミサイルを撃ち込んで撃破された。

 

「私は、ハマーン様を正すまで、やられるわけにはいかないのだ!」

「うわぁー!!」

 

 もう一機の一般兵用ドーベン・ウルフのボディに有線クローアームを射出して貫き、これも撃破した。 

 

「お、おのれ、なんて奴だ!!」

 

 残り一機となったラカンは、たまらずその場から離脱していくのだった。

 

* * * * *

 

 一方こちらはガンダムチームです。

 

 さすがアリアスさんはベテランだけあって、リャナンシィと一郎の攻撃を次々と交わして、反撃を返してくる。ミンドラ時代、MS隊長をしていただけのことはあるな。

 オレと一郎だけではきついが、ZZはもちろん、ルーさんの(ゼータ)と、エルのMk-Ⅱも、他のMSとの戦いでこちらを援護する余裕はなさそう。ここはオレだけでどうにかするしかなさそうだ。

 

 サイコミュを通して周辺の様子を確認すると、次郎と三郎が戦っているあたりの敵はほとんど片付いたようだ。よしそれなら、彼らにもアリアスさんへの攻撃に参加してもらおう。

 スイッチを操作し、次郎と三郎の制御をサイコミュ制御に設定する。

 

「よし、戻ってこい。次郎、三郎!」

 

 オレの意思を受け、次郎と三郎もアリアスさんのギラ・ドーガに向かっていく。あらゆる方向からビームを浴びせるオレとモビルビットたち。それをも交わし続けるアリアスさんはさすがだが。

 

「!!」

 

 ついに、次郎の一撃がギラ・ドーガの足に命中! その脚部を粉砕する。その攻撃に態勢が崩れる。この機を逃さずオレはリャナンシィをハイメガキャノン発射モードに変形させる。頭部が胴体に収納され、背中にマウントされたハイメガキャノンが倒れこみ、発射態勢をとる。

 

「いけーーーー!!」

 

 そしてハイメガキャノンからビームが発射! ギラ・ドーガはなんとかそれをかわそうとするが、態勢を崩していた影響でかわしきることができず、その機体の右半分をハイメガビームに飲み込まれることになった。

 ハイメガビームを喰らって機体の半分を破壊されたギラ・ドーガは、やがて爆散して果てた。脱出ポッドは射出されなかったので、おそらくアリアスさんもろとも……。

 

「……」

 

 少しの間感傷に浸っていたが、ミサイルの飛来に気が付き、我に返ってそれを回避する。どうやら、この戦いは、感傷に浸る暇すら与えてくれないらしい。

 

 一郎、次郎、三郎をAI制御で放ち、接近してきた敵を迎撃される。

 モビルビットたちとジュドーたちの奮闘のおかげもあり、新たな敵はあっけなく蹴散らされた。

 

「なんとかひと段落したな……」

『うむ。艦に戻り、補給しながらさらに前進するとしよう』

『了解だ、マシュマーさん』

 

 そしてオレたちはネェル・アーガマ艦隊に引き返していった。

 おそらく、次がいよいよ正念場だろう。

 

* * * * *

 

 一方そのころ、キャラはゲーマルクを使い、その火力をもって、接近してくるグレミー軍のMSをかたっぱしから撃破していった。

 

「このぉ、邪魔するんじゃないよ! とっとと道を開けろぉ!!」

『き、キャラ様、あれを!』

「なんだい?」

 

 敵を薙ぎ払いながら進むキャラのゲーマルクの前に立ちはだかったもの。

 それは、大型のMS、そしてそれを取り巻くキュベレイによく似た機体の群れであった。

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

有利になったと思われたグレミーだが、ハマーンが戻ってきてまた互角に戻った。
そこでグレミーは、モウサをコア3にぶつけようとしてきたんだ。
オレたちは、グレミーを止めるため、再び出撃するけど、やっぱりプルツーの新型のパワーは強大で……。

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
第30話『さよならプルツー』

グレミー……潔い。

※次の更新は、4/27 12:00の予定です!


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Act.30『さよならプルツー』

ボットン「今度は俺たちの番か~。なぁ、ラド、これも宮仕えなのか? 宮仕えの範疇なのか?」
ラド「そうですよ(本当は違うけど)。だから、頑張ってやってください。さて、前回のタイトルの元ネタはなんでしたっけ?」
ボットン「なんか聞き逃せないことを聞いた気がしたけど……まぁ、いいや。前回の元ネタはGガンダムの48話『地球SOS!出撃ガンダム連合!!』だそうだ。俺はガンダムWの『出撃Gチーム』からだと思ったんだけどなぁ」

さて、いよいよ最終話前! 今回の次回予告では、気になる発表もありますよ!


 グレミー軍のMS(モビルスーツ)を撃破しながら進むキャラのゲーマルクと、ニーのガズエル、ランスのガズアルの三機。

 

 その前に現れたのは、通常のMSより一回り以上大きい機体と、それをとりまく、キュベレイらしきMSの群れだった。その数10機。

 

 大型の機体、クィン・マンサに乗るプルツーは、周囲のキュベレイ……量産型キュベレイのパイロットたちに言い放つ。

 

「来たぞ、用意はいいな?」

 

 プルツーの言葉に、彼女と同じ姿、同じ声の少女たちが応える。

 

「はい」

「グレミー様のために」

「この命に代えても」

「ハマーンの艦隊を叩いてみせます!」

「よし、行くぞ!」

 

 そして、クィン・マンサと量産型キュベレイたちは、一斉にキャラたちに襲い掛かっていった。

 

「な、なんだいあいつらは!?」

「グレミーのニュータイプ部隊だと思われます!」

「笑わせるんじゃないよ! 甘いんだよそういうの!」

 

 そう叫ぶと、キャラはゲーマルクの背中から二基の大きなファンネルを射出。さらにそこから通常サイズのファンネルが射出される。

 

 かくして、キャラとプルツー率いるニュータイプ部隊とのファンネル戦がはじまった。それと同時に、キャラも全身のビーム砲で応戦する。

 

 しかし、やはり多勢に無勢。戦況はキャラ達に不利であった。しかも、キャラと同行しているニーとランスは、ニュータイプではないのだ。

 

 かくして。

 

「うわぁー!!」

 

 ランスのガズアルが、背後からのファンネルに対応できずに撃墜される。

 

「おい、ランス! おのれ!」

 

 だが、ランスの撃墜に気を取られたその一瞬が致命的な隙となった。

 その隙に、一機の量産型キュベレイが、ゲーマルクに襲い掛かった!

 

 そこに、一条のビームが放たれ、その量産型キュベレイの下半身を吹き飛ばした。中のプルクローンが脱出したと同時に、そのキュベレイは爆散する。

 そのプルクローンが、後にマリーダ・クルスと呼ばれることになるのは後のことになる。

 

「な、なんだい?」

「あれは……ZZ(ダブルゼータ)です!」

 

 そう、ジュドーのZZガンダムと、マリハのリャナンシィが援軍に駆け付けたのだ。その後ろには、ルーの(ゼータ)ガンダムと、エルのガンダムMk-Ⅱ(マークツー)も続いている。

 

 リャナンシィから三機のモビルビットが分離され、ニーのガズエルに襲い掛かろうとしていた量産型キュベレイの両腕を撃ち抜いた。

 

 だが、ネェル・アーガマの援軍がやってきても、プルツーの不敵な表情は変わらなかった。

 

「それだけの数で、私たちに勝てると思っているのかい?」

 

 しかし。

 

「待ってください、プルツー様、あれを!」

「なに?」

 

 プルツーが見ると、ハマーン軍艦隊に、ハマーンの座乗艦・サダラーンが合流してくるのが見えた。そのサダラーンからキュベレイが発進する。

 

「よくぞここまで耐え抜いた、我がネオ・ジオンの精鋭たちよ。今こそ反撃の時だ! ミネバ様のために、裏切者グレミーの軍を叩け!」

 

 サダラーンの合流と、ハマーンの参戦により、ハマーン軍の士気は上がった。

 ハマーン軍のMSたちは猛攻撃を仕掛け、グレミー軍のMSは少しずつ後退していく。

 

「くっ、もう少しというところで……! 我々も後退する!」

 

 そして、プルツーのクィン・マンサと、プルクローンたちの量産型キュベレイも後退を開始する。

 キャラのゲーマルクはそれを追撃しようとするが……。

 

「……!!」

 

 量産型キュベレイのファンネルによる足止めをくらい、止まらざるを得なくなった。

 それでもキャラは食い下がろうとするが……。

 

「キャラ、先走るな! 状況を考えろ! ニュータイプ部隊は強敵だ。今のまま突っ込んでもやられるだけだぞ!」

「くっ……わかったよ、戻ればいいんだろ!」

 

 そしてキャラとジュドーたちも態勢を立て直すために後退を開始した。

 

* * * * *

 

「ハマーンが前線に出てきたか、さすがだな。彼女の登場で、ハマーン軍の士気は高まり、こちらの部隊を押し返してきている」

 

 グレミーが感嘆と苦々しさをミックスさせた表情でつぶやくと、傍らのオウギュストもうなずき、それに同意した。

 

「一流の将とはあのような者をいうのでしょうな。彼女の到着により、戦線は膠着しつつあります。いえ、むしろ押されているかと」

「そうだな。だがここで負けてやるわけにはいかない。やりたくはないが仕方ない。作戦を第二段階に移行する。……モウサを切り離せ! ハマーンの艦隊のど真ん中に進路を設定せよ!」

 

 グレミーの指示の元、モウサのエンジンが火を噴き、少しずつ前進を開始した。

 

* * * * *

 

 その様子は、サダラーンにも見えていた。オペレーターが驚愕と恐怖に顔を硬直させて報告する。

 

「ハマーン様! モウサが移動を開始しました! この進路だと、我が艦隊の中央を突破し、背後のコア3に直撃します!」

「グレミーめ……。グリプス戦役での最後の戦いでも落とすことのなかったモウサをぶつけてくるとは……許せん! 全艦、モウサに砲火を集中! 進路をそらすのだ。モウサをコア3に直撃させるな!」

 

 ハマーンの指揮の元、ハマーン軍の各艦はモウサに対して砲撃を開始した。

 

 だが、モウサが接近するというこの事態に、ハマーン軍の将兵は再び動揺し、グレミー軍の逆襲を許してしまう。それで再び戦線は膠着状態に戻る。

 

 しかし、グレミー軍にはまだ、ニュータイプ部隊という切り札があるのだ。

 

* * * * *

 

30:名無しのオールドタイプ

しかし、グレミーもやるものだな。

 

31:ジャンク屋ネキ

どういうことや?

『どういうこと?』

 

32:考察ニキ

グレミーの狙いは、ハマーンをモウサでつぶしたり、コア3を破壊することじゃないってことや。

 

33:ジャンク屋ネキ

それでハマーン軍の人たちを動揺させて、その間に叩くってことか? 今まさにそうなってるけど。

 

34:名無しのオールドタイプ

それもあるが、それだけじゃないで。モウサが突っ込んでくれば、ハマーン軍はそれをよけるために、陣形を崩してしまうやろ? そこに、ニュータイプ部隊による攻撃をかければ……。

 

35:ジャンク屋ネキ

ハマーン軍は

『一たまりもないってこと!?』

 

36:ラド

そういうことや。ハマーンのことだから、もしかしたら持ちこたえるかもしれんが、少なくとも、ソーラ・レイの二射目を撃つまでの十分な時間稼ぎにはなるわな。

 

37:ジャンク屋ネキ

それは大変じゃないか!

 

* * * * *

 

「モウサでハマーンの艦隊を分断させて、ニュータイプ部隊で各個撃破する……か」

「あぁ、それで多少の戦力差は逆転できるし、その分グレミー軍は戦力を温存できるってわけだな」

 

 驚くべきことに、スレ民の人たちが教えてくれたグレミーの作戦は、ビーチャもすでに読んでいた。ビーチャがこれほど指揮官としての才能を開花させたとは驚きだ。ここまでの戦いが彼を成長させ、確変させたんだろうか。

 とはいえ、驚いてばかりもいられない。

 

「でもそしたらどうにかしないと。ソーラ・レイを撃たれたらおしまいだぜ!」

 

 オレがそういうと、ビーチャは右の拳を左手に叩きつけていった。

 

「わかってる! モンド、各機の補給のほうはどうだ?」

「あぁ。既に終わってるってさ。真っ先にマリハのリャナンシィに補給しといたからな。あと、ネオ・エンドラのほうも終わったそうだよ」

 

 ……オレの機体に真っ先に補給した、の部分を強調してるような気がするのは気のせいか?

 

「よし、それじゃ出撃準備! 今度こそ、グレミーを叩いて、ソーラ・レイを止めるぞ!」

『おう!!』

 

* * * * *

 

40:ジャンク屋ネキ

なんか、ジュドーがZZにゴテゴテしたものをつけられて文句を言ってるんだけど、なんだあれ?

 

41:名無しのオールドタイプ

あぁ。あれは、ZZガンダム用に作られたフルアーマー用の増加装甲やな。

ジュドーは重くなるとか言ってるけど、ミサイルポッドがついてたり、腹部装甲にもハイメガ砲がついていたり、ビームコーティングされていたりと、なかなかの逸品やで。

 

42:名無しのオールドタイプ

本来は、ハイパーメガカノンもオプションとしてつけられるはずなんだけどな。さすがに今回は用意できなかったか。

 

43:ジャンク屋ネキ

はえー、そうなんか。

 

44:名無しのオールドタイプ

なお、あのフルアーマーのために、FAZZという試作機が何機か作られた模様。そいつらは、フルアーマーZZとしては今一つやったけど、遠距離支援機としてはかなり活躍したほうやで。

 

45:ジャンク屋ネキ

そんな色々手間がかかった、すごいユニットなら、ジュドーも文句言わなくてもいいのになぁ。

 

46:考察ニキ

まぁ、機動力が落ちるのは間違いないからね。

っと、ネキの発進の番がきたな。頑張ってや。

 

47:ジャンク屋ネキ

おうよ!

 

* * * * *

 

 そして、ネェル・アーガマからオレを含むガンダムチーム、ネオ・エンドラからマシュマーさんのモナーク・ガルスが発進、前線に向けて突撃していった。

 

 ラドニキたちネオ・エンドラのMS隊は同伴していない。ラカンはもちろん、プルツーたちNT部隊の相手は、彼らにはきつすぎるからな。MS隊の皆さんには、ネェル・アーガマとネオ・エンドラの防空をしてもらっている。

 

 周囲の敵を撃破しながら進んでいくと、前線の戦場が見えてきた。既にハマーン軍の艦艇が何隻か沈んでるようだ。これは急いだほうがよさそうだ。

 と。

 

『プルツー……? ジュドー、ごめん。プルツーのところへ向かって?』

『プル……? わかった』

「オレも行くよ。オレもプルクローンで、プルツーと無縁なわけじゃないからな。エル、ルーさん、マシュマーさんは先に行ってくれ。マシュマーさん。二人のこと、頼んだぜ」

『わかったわ!』

『ジュドーも気を付けてね!』

『任せてもらおう』

 

 そしてオレとジュドーは、ルーさんたちと別れて、ハマーンの艦隊を攻撃していると思われるプルツーの元へと向かった。一方のルーさんたちは、そのままアクシズへ。

 

* * * * *

 

「やめろぉ!」

「ん、奴か!?」

 

 ジュドーは、プルツーのクィン・マンサと共にハマーン艦隊を攻撃しているラカンのドーベン・ウルフにミサイルを発射する。しかし、さすがというべきか。彼はそれを簡単にかわす。

 

「あれは、ZZと変形する奴!」

 

 こちらに応戦しようとするプルツーに、プルとマリハが説得を試みる。

 

「もうよせ、プルツー! オレたちは敵じゃないよ!」

「そうだよ! ジュドーたちと一緒にいると幸せな気持ちになるって、どうしてわからないの!?」

「やめろぉ! 私を混乱させるな!!」

 

 プルツーの混乱が反映されたかのように、クィン・マンサが周囲に拡散メガ粒子砲を乱射する。その攻撃で、グレミー軍のMSも、何機か巻き添えにされて撃墜される。

 

 一方、ラカンはビームランチャーを撃つが、それはZZに着弾する前に弾かれてしまった。

 

「何、効かんぞ。バリアーがあるのか!? プルツー、援護しろ!」

 

 しかし、動揺するラカンの言葉もむなしく、プルツーはただ混乱し、暴れまくるだけである。

 そこにマリハのリャナンシィが突貫する。

 

「ダブリンの人たちの仇を討たせてもらうよ!」

 

 背中と両足のモビルビットたちを分離。サイコミュ制御でドーベン・ウルフに襲い掛からせる。

 ダブリンの市民たちの仇に燃えるマリハの闘志が反映されたかのように、モビルビットたちは巧みに激しく動き回りながら、ラカンをけん制し、翻弄する。

 

 そして。

 

「落ちろよぉぉぉぉぉ!!」

「なぜだ、あれには小娘が乗っているんだぞ!?」

 

 リャナンシィは懐に飛び込み、ビームサーベルでドーベン・ウルフの胴体を薙ぎ払った! 一刀両断!

 ラカンは最期の言葉を残すこともできずに、ビーム・サーベルのビームで消滅した。

 

 そしてリャナンシィが離れた直後、ドーベン・ウルフは爆散した。

 

「私は、私はぁ!! グレミー!!」

「待て、プルツー、戻ってこい!」

 

 そしてジュドーの制止もむなしく、プルツーのクィン・マンサはアクシズへと引き換えしていった。

 ジュドーのZZと、マリハのリャナンシィもそれを追う。

 

* * * * *

 

52:名無しのオールドタイプ

やっとアクシズまでたどり着いたな。おや、あれは……。

 

53:考察ニキ

マシュマーさんのモナーク・ガルスじゃないか?

 

54:ジャンク屋ネキ

ほんとや。かなりの奮戦ぶりやな。周囲のグレミー軍MSの残骸の数が半端やないで……。

……。

うん。『ルー・ルカとエルはこの中に入った。お前たちも後を追うがいい。例え己の肉が骨からそぎ取れようと、グレミー軍の奴らはここから先には通さん』だって。

 

55:名無しのオールドタイプ

マシュマーさん、それ原作での最期の台詞……。

 

56:ラド

お願いですから、死亡フラグ立てないでください、マシュマー様……。

 

57:ジャンク屋ネキ

一応、「無理しすぎないでくれよ」と声かけておいたわ。それじゃ内部突入するで。

 

* * * * *

 

 それより少し前。アクシズの、新生ネオ・ジオン軍の司令部前に、プルツーのクィン・マンサが戻ってきた。

 それを見て、グレミーが驚く。

 

「どうしたのだ、サイコミュの調整がうまくいっていないのか?」

 

 そして、司令部を出ると、クィン・マンサに飛び乗ってハッチを開いた。中のプルツーはひどく取り乱している。

 

「どうしたんだ、プルツー?」

「私が……もう一人の私が、私の邪魔をするんだ……うぅ……! もう一人の私が、プルにほだされて……」

 

(あぁ……)

 

 そう言われて、グレミーは理解した。

 プルにほだされた『もう一人の私』は別の存在ではない。それはプルからクローニングされたさいに、彼女から受け継がれた優しい心だ。今までは精神操作で抑え込まれていたそれが、プルたちの説得で目を覚まし、この戦いの中で悲鳴を上げ続けていたのだ。

 

 だが、このまま彼女を解放するわけにもいかない。彼には司令官として、プルツーを戦力として活用する使命があるのだ。彼は心の中でプルツーに謝ると、ともにコクピットに乗り込んだ。

 

「私がともに戦ってやる、プルツー。そうすれば、もう一人のお前も、ガンダムチームも恐れるに足らん」

 

 すると、プルツーも少し落ち着いたようだ。それを確認すると、グレミーは司令部に通信を入れた。

 

「もうすぐここでも戦いが始まる。貴様たち司令部要員はグワンバンへ退避しろ」

 

 そして、膝の上に座る少女とともに侵入してくるであろう敵を待ち受ける。やがて、司令部の要員が退避した後、市街ブロックにガンダムMk-Ⅱが現れた。

 

「このクィン・マンサの力を思い知らせてくれる!」

 

 胸部の拡散メガ粒子砲を発射。エルのガンダムMk-Ⅱはそれをバーニア全開で回避しようとするも、回避しきれず、右腕と両足を破壊されて擱座してしまう。

 

「きゃああ!!」

「私とプルツーの力で、ガンダムなど暗黒の底に落としてくれる!」

 

 続いて、ルーのZがやってくるも……。

 

「ルー・ルカ、こうなった以上、貴方に抱いた情ごと葬らせてもらう! 落ちろ!!」

 

 クィン・マンサは拡散メガ粒子砲を発射した。ルーのZはそれをなんとかかわすも、今度はファンネルが彼女を襲う! その攻撃まではかわしきれず、頭部と左腕を破壊されて、これまた擱座してしまった。

 

「どうだ、プルツー。お前と私が組めば、もう怖いものはない」

「あぁ……そうだね……」

 

 そしてついに本命、ZZガンダムとリャナンシィがやってきた。

 

* * * * *

 

 駆け付けたオレたちを待っていたのは、魔王のように悠然とたたずむクィン・マンサと、それにやられたらしきガンダムMk-ⅡとZガンダムの二機が擱座しているところだった。

 

『グレミーの奴、まだプルツーを……!』

『グレミー……!』

「とにかく、今はクィン・マンサを止めなきゃ!」

『おう! 行くぞマリハ!!』

 

 そして、左右に分かれて戦闘を開始する。オレは一郎、次郎、三郎のモビルビットを展開して挑むも……。

 

「くっ……!」

 

 さすがに激戦で疲労してきたのか、モビルビットの動きが鈍く、単調になってしまい、三機ともファンネルに撃墜されてしまった。

 そこに、拡散メガ粒子砲の射撃。なんとか直撃は避けられたが、それでも頭部と右腕を破壊されてしまう。

 

「すまん、ジュドー、後は頼んだ!」

 

 そして力及ばず、擱座してしまう。後は、ZZに任せるしかない……。

 

 そのZZのジュドーは、クィン・マンサの攻撃を回避しながらも、プルツーに呼び掛ける。

 

「プルツー、グレミーはお前を道具にしているんだぞ!」

「私にはそこまでしてまでも戦わなければならん大義がある! お前こそ、正義など見えていないのになぜ戦う!」

「!!」

 

 グレミーが攻撃しながら、さらに言い放つ。

 

「私は自らこの道を選んだ。そのことに後悔はしていない。だが、状況で戦ってきたお前に、そのようなものはあるまい。そのような者は、私の前から去れ!」

 

 と、そこでZZはクィン・マンサの前に着陸した。そして、ジュドーは口を開いた。

 

「違うよ。俺は、身勝手な奴らの独善に対して、多くの人の意思を背負って戦ってる!」

「多くの人の意思だと?」

「あんたはザビ家の血のことを言ってるんだろうけど、その血はどこからきた? 地球だろ。青く美しい地球が俺たちの故郷だ。ザビ家の血なんて、その中の何億分の一だろ! そんなもののために戦うなら、アクシズの中だけでやってくれ!」

 

 次の瞬間、オレの周囲を宇宙のイメージが取り巻いた。これは、カミーユの時と同じ、いやそれ以上だ。彼の地球を想う熱い思いが映し出しているのか。

 

「今はね。人類全体がやり直さなくちゃならないんだ。あんたみたいに小さなことに拘ることや、血に縛られてることは、それには邪魔なんだよ! 人間の可能性を、ちっぽけな自己満足で潰されてたまるか!」

 

 そしてイメージの向こう、グレミーとともにシートに座るプルツーにも、プルの言葉が届く。

 

「プルツー。ジュドーは優しい事を言ってるんだよ、ほら、おいでよ。私たちのところに!」

 

* * * * *

 

 グレミーにも、ジュドーが見せる宇宙のイメージが届いていた。

 それを見て、彼は驚愕していた。ジュドーがこれほど大きく深く、地球のことを案じていたのか。状況の中、兵士として戦っていたと思っていた彼が、実はそうではなかったのだ。

 

 ふと、自分の前のプルツーを見る。その表情はつきものが消えたかのようであった。いや、むしろ、ジュドーたちに居場所を求め、そこに帰りたがっているかのようであった。

 

 それを見て、彼は悟った。

 

(あぁ……そうか……)

 

 彼は悟った。自分の野望の敗北、終焉を。それはただの力だけではない。人の可能性、人類の未来という大きなものを、ひたむきな心で見据え、切り開こうとする若き心に、彼の野望、理想は敗れたのだ。だが不思議と、そのことに後悔はない。

 

 そしてこれから先のことに、プルツーをつき合わせるわけにはいかない、と。

 

 そして彼は、プルツーに言った。

 

「行くがいい、プルツー。お前が行くべきところへ」

「グレミー……?」

「私の戦いはもう終わったようだ。これからは、お前の真なる心に従え」

 

 それを聞き、プルツーは自らを縛っていた鎖が砕けたのを感じた。本人にもなぜかはわからないが。

 

「マリハ・クトゥル。プルツーを解放する。受け取るがいい」

「あ、あぁ、わかった」

「グレミー……!」

 

 通信機から聞こえる、感極まったかのようなジュドーの声。

 

 そして、マリハがリャナンシィをなんとか再起動させ、こっちに接近してくる。そしてリャナンシィは外に出たプルツーを左手に乗せると、そのままコクピットへ招き入れた。

 

 その様を穏やかな瞳で見つめるグレミーに、グワンバンから通信が入った。

 

『グレミー様。ハマーン軍の猛攻が始まりました。ハマーン自らが参戦していることもあり、MSも戦艦もほとんどやられ、戦力はこのグワンバンと小数のMSしか残っておりません。残念ですが……』

「負け……か」

『は……無念ですが……』

「いや、これでいいのだ」

『グレミー様?』

 

 プルツーを引き取ったリャナンシィが下がっていくのを見ながら、グレミーは清々しい気持ちでつづけた。

 

「これで私が消え、ハマーンが敗れれば、それでミネバ様を除いて、ザビ家につながる悪しき全ては、深淵の闇に消え去ることになる」

 

 通信機の向こうで、オウギュストが息をのむ音が聞こえる。

 

『まさか、グレミー様はそのために……!?』

「勘違いするな、オウギュスト。私が、大志に燃え、野心を抱いて立ったのは確かだ」

『……』

「だが、負けるからには意義がほしいではないか? この我々の決起、そして敗北が、後の地球圏の明るい未来につながったとなれば、我々の敗北やこれまでの犠牲、そして私の死にも意味があるというものだ」

『グレミー様……。私はあなたのようなお方にお仕えできて、幸せでありました』

「ありがとう……。最後の命令を伝える。新生ネオ・ジオン軍は私の戦死後、ただちに全ての戦闘行為を中断し、ネェル・アーガマに降伏せよ。これ以上の犠牲は無用だ」

『は……』

「後のことは、お前が我が軍の将兵にとって、少しでもプラスになるようにせよ。全てお前に任せる。私は、ハマーンがこっちに来た時に、どんな言葉を投げつけてやるべきか考えるのに忙しいのでな」

『了解いたしました……』

 

 そして通信は切れた。

 

「さて……それでは行くか。このグレミー・トト、最後の大舞台へ」

 

* * * * *

 

 プルツーがこちらに来て、それで万事解決かと思ったが、そうはならなかった。

 クィン・マンサが少しずつ、鈍い動きながらもこちらに向かって歩いてくるのだ。グレミーが、手動操縦で動かしているのだろう。だがなぜ……?

 

『グレミー……!』

『どうして……?』

 

 ジュドーもプルも信じられないものを見ているかのように絶句する。

 全周波で、ここにいる全ての者に、グレミーからの通信が届く。

 

『確かに、戦いは我々の負けに終わった。だが私には、大義と野望に燃え、この内乱を起こした責任がある。お前たちに愚かだと非難されようが、私は自らのしたことに対してのケジメをつけなければならない。それが大人というものだ』

 

 そう言いながらも、クィン・マンサはゆっくりとこちらに迫ってくる。本来ならサイコミュ制御で動くクィン・マンサは、プルツーなしの状態では動くのがやっとで、戦闘などままならないはず。それでもクィン・マンサはこちらに向かって歩いてくる。

 勝ち負けなど関係なく、ただオレたちに討たれるために向かってきていることは、オレたちにも感じ取れた。

 

 そこに。

 

『ジュドー……最後の介錯は私にやらせて』

『ルー?』

『グレミーに好かれ、一度でも触れ合った私が、彼を討たなければならない。そんな気がするの』

『わ、わかった』

 

 そして擱座したルーさんのZガンダムはビームライフルを構え、クィン・マンサに狙いをつけた。

 それに気が付いたクィン・マンサは一度止まり、Zに向きなおった。

 

 そしてしばしの間、互いを見つめあうかのように動きを止める。

 その様子を見て、オレにはグレミーの声が聞こえた気がした。

 

『ルー・ルカ、君に討たれるならば本望だ。この戦いに関わり、内乱を起こした罪人の終わりにはもったいないほどの、幸せな終わりだ』

 

 と。

 それは、あまりに哀しい幸せだと思った。

 

 そして、クィン・マンサは再び、Zに向けて歩き出した。

 

『グレミー……。私のことを好きだと言ってくれたの、忘れないよ……ごめん……』

 

 そのルーの声とともに、ビームライフルが発射された。それは狙いあやまたず、クィン・マンサの頭部、コクピットを貫いた。

 そしてクィン・マンサは、主のグレミー共々、爆散して果てたのだ。

 

* * * * *

 

 そしてプルツーを救ったオレたちは、アクシズを出た。しかしそこでは衝撃がオレたちを待っていた!

 

「マシュマーさん……!」

 

 そう、ハッチの前では、マシュマーさんのモナーク・ガルスが、大破というのも生ぬるい状態で立ち往生していたのだ。

 周囲にはグレミー軍のものと思われるMSの残骸が、先ほどよりも多く漂っている。

 おそらくは、オレたちが出てくるまで、このハッチを守り切って果てたのだろう。

 

「マシュマーさん、ありがとう……。あんたは本当に素晴らしい騎士だったよ……」

 

 だがそこに。

 

『勝手に殺さないでもらおうか!』

 

 マシュマーさんの声。えぇっ!?

 

「生きてたのか、マシュマーさん!?」

『当たり前だ。言ったはずだ。このマシュマー・セロ、ハマーン様を正すまで倒れるわけにはいかんとな』

 

 いや、知らんがな。少なくともオレは今まで聞いたことがない。

 

『だがこのモナーク・ガルスではこれ以上戦うことはできそうにない。無念で不本意だが、ハマーン様を正す役は、ジュドー・アーシタ。お前に任せた。必ずハマーン様を止めてきてもらおう!』

『わ、わかった……』

『よし。それでは少し待て。備え付けのノーマルスーツに着替えてから、この機体を脱出する』

 

 だがそこで。

 

『ごめん、マシュマーさん。プルが一緒に乗るの嫌だって言ってるんだけど……』

『な、なにぃ!? それでは、マリハ・クトゥルのMSに……』

 

 うーん、すまないんだけど……。

 

「ごめん。オレのほうも、エルとルーとプルツーの三人を同乗させてて満員なんだよ」

『えぇい、『済まないなのび太、この車は三人乗りなんだ』とでも言うつもりか! なんとかしろ!』

 

 そんなこと言われても。というか、なんでドラ〇もんのことを知ってるんだよ。

 

 そんなオレたちのもとに、ラドのズサがやってきて、マシュマーさんを回収していったのだった。

 

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

グレミーが倒れ、いよいよ残るはハマーンのみとなった。
彼女との決着をつけるため、ジュドーは出撃していったけど、今度はそのジュドーたちに脅威が!
それを助けるためにオレたちは出撃していったんだけど、さらに原作通りだと、え~!!
ジュドー、プル、死ぬな! 生きて帰ってこーい!!

次回、『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』
最終話『ウォーリアーズ・アゲン』。

いよいよラスト、ニュータイプの修羅場が見られるか?

※次の更新は、4/30 12:00の予定です。お楽しみに!



そして、ここから新しい発表です!

皆さんお待ちかねぇ!
いよいよ5月から、TS転生ガンダムファイターの熱きバトルが始まります!
彼女の進む道はいかに!?

新連載『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』
にReady Go!!


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Act.31『ウォリアーズ・アゲン』

マリハ「前回のタイトルの元ネタは、Zガンダム42話『さよならロザミィ』からだってさ」
プル「へー、そうなんだ。でも、いよいよ最終回だね。私、原作では中盤で死ぬ予定だったけど、無事に生き残れてよかったよ!」
マリハ「そうだな。できれば、プルツーや他のプルシリーズたちとも、ハッピーエンドで終わりたいところだけどな。さて、いよいよ最終回だぜ!」


 ネェル・アーガマの医務室。

 そこで、船医のハサン先生(一時はシャングリラで降りていたのだが、ラビアンローズでまた乗艦してくれたのだ)が、ベッドに横になっているプルツーを診察してくれている。

 元気そうではあったが、やはりサイコミュ搭載MS(モビルスーツ)に乗っていたし、少し心配なので診てもらうことにしたのだ。

 

 さて、モニターを見つめていた先生はうなずいて、こちらに向きなおった。

 

「うん。若干の精神的消耗は見られるようだが、他はいたって正常だ」

「よかったぁ……」

 

 答えを聞き、プルが安堵したようにつぶやく。

 

「精神的消耗にしても、サイコミュを使ったことによる疲労によるものだし、特に問題はないだろう」

「だから言ったじゃない。私は大丈夫だって」

 

 プルツーはそういうものの。

 

「いや、それでも心配なものは心配なんだよ。これまでずっと戦いに身を置いてきたんだからさ」

「そうだぞ、プルツー。みんなお前のことが心配なんだから、黙って診てもらってろって」

「……それはわかってるけど」

 

 オレとジュドーの説教に、照れ隠しなのか、面白くなさそうな顔をして言うプルツー。そんなところもかわいい。

 そんな彼女を見て、スレ民のみんなは何か感極まっているようだ。彼らによれば、プルツーはアクシズの戦闘で重傷を負い、その後ジュドーを助けるために力を使い果たして死ぬという哀しい最期を迎えたという話だから、そんな彼女が無事生き残ったことに万感の思いなのだろう。

 

「さて、ブリッジに行くか」

「待って、私も一緒に行くよ」

「大丈夫? プルツー。もう少し休んでたほうがよくない?」

 

 お姉さんぶって、そう心配して言うプルに、プルツーは平然として答える。

 

「心配ない。先生も言ってただろう? 精神的消耗がある以外は正常だと。それに、ベッドの中にいると退屈で仕方ないから」

 

 そう平然と言うプルツーに、ジュドーが心配そうに言う。

 

「そうか、でもあまり無理するなよ、プルツー。無茶もダメだからな」

「気を付けるよ。本当に心配性なんだね」

 

* * * * *

 

 オレたちがブリッジに戻ると、ビーチャがプルツーを見て苦手そうな顔をした。まぁ、ネオ・ジオンの兵士だったし、強化人間だし、彼女にエルがやられかけたんだから、気持ちはわかる。

 

「ただいま、ビーチャ。ハマーンの動きはどうだ?」

 

 ジュドーがそう尋ねると、ビーチャは気を取り直して教えてくれた。

 

「あぁ。モウサの向こうにいたまま動かないままだ」

 

 レーダーモニターには、モウサをはさんでコア3側にいるサダラーンと、あと二隻のエンドラ級を表すCGが映し出されている。

 モンドがビーチャの話の後を続ける。

 

「位置的に、モウサが盾になってくれて助かってるが、向こうもモウサに隠れてる形になってるからな」

「なんで攻撃してこないの?」

「こちらの動きを見てるのかな……」

 

 ビーチャがエルにそう返したその時……。

 

「……っ」

 

 ジュドーが顔をしかめ、真剣な表情を浮かべた。何かの声を聴いたのだろうか。

 

「どうしたの、ジュドー?」

 

 プルツーがそう聞くと、ジュドーは振り向かずに、前を見据えたまま言った。

 

「聞こえた。ハマーンが呼んでる……」

「ハマーンが?」

 

 オレが聞くと、ジュドーはそのままうなずいた。

 

「あぁ。ハマーンは動かず、ずっと俺が動くのを待ってくれているんだ」

「ジュドーとの決着をつけるために?」

「あぁ。これ以上の犠牲は出したくない。決着は俺とハマーンでつける。向こうもそのつもりさ!」

 

 そしてブリッジを出て行った。その後に、プル、そしてエル、ビーチャも出ていく。

 モンドも行こうとするが、それはルーさんが押しとどめた。

 

 三人が出ていくのを見ながら、プルツーはつぶやいた。

 

「大丈夫かな……?」

「え?」

「何か知らないが、胸騒ぎがするの。それに、グレミーの降伏命令に従わないグレミー軍もいるし、ほかのプルクローンたちも……」

「そうか……。だけど、出られるのはビーチャの百式しかないし、それはアーガマの直掩に残しておかなくちゃいけない。どうしようも……」

 

 そういうものの、オレもやはりプルツーの指摘に不安を隠しきれなかった。

 

* * * * *

 

 サダラーンのMSデッキ、そこでハマーンはノーマル・スーツを身にまとい、愛機のキュベレイに向かって歩いていた。

 グレミーの新生ネオ・ジオン軍に勝ったとはいえ、元々戦力を二分して戦っていたうえに、自分の手元の戦力もかなり消耗してしまった。

 ソーラ・レイを使えないかと思ったが、その制御システムは既にグレミー軍に破壊されていた。おそらくは、グレミーの内意を受けたオウギュストによるものであろう。

 

 今の状態では、これから来るであろう連邦軍とエゥーゴの連合艦隊に勝つことは不可能である。だが、そんな絶望的な状態であろうとも、ハマーンから闘志は消えていなかった。

 

(グレミーは満足して散っていったか……。私はどのような結末を求めているのだろうな。奴のように、世界の未来の礎となることに満足して散っていくのか、それとも……)

 

 だがそこで、ハマーンは表情を引き締めた。

 

(否! 私は美しくても結末など望まない。例えあがくことになろうとも、どこまでも生き抜き、戦い抜いてみせる!)

 

 そう決意を固めるハマーンに、キャラとニーが追いかけてくる。

 

「ハマーン様! おひとりで行かれるなど無茶です! せめて我々だけでもお供に!」

「案ずるな。敵は一人だ」

「敵は強力であります!」

 

 そう言い募るキャラ・スーンに、ハマーンは不敵な笑みを浮かべて返した。

 

「心配はいらん。ジュドーは既に私の意思の元にある」

 

 ある意味ではそれは真実である。ジュドーは自分の意図の通り、一人で出撃してきたのだから。だがそれは同時に、無意識に放ったハマーンなりの強がりでもあった。ハマーンはそれに気づいているのか否なのか。

 

 そしてハマーンは飛び上がり、キュベレイのコクピットに飛び込んだ。

 ヘルメットをかぶり、そこでまた顔をしかめる。

 

(私にノーマルスーツを着る気にさせたジュドー・アーシタ……子供の癖して!)

 

 目をかけていたとはいえ、子供のジュドーを相手に、自分はノーマルスーツを着て戦うことを覚悟させられている。そのことにハマーンは不愉快だった。

 その不愉快さを振り払うかのように、ハマーンは言い放つ。

 

「キュベレイ、出るぞ!!」

 

 そしてキュベレイは、漆黒の闇の中へと飛び出していった。

 

* * * * *

 

 漆黒の宇宙を舞いながら、キュベレイは飛んでいく。その中で、ハマーンは自分が解放されるのを感じていた。

 宇宙の片隅の小惑星で生きてきた彼女にとって、宇宙は彼女の魂の故郷であり、彼女を彼女らしくさせてくれる居場所でもあった。

 

 その中を飛ぶハマーンは、ふと、シャア・アズナブルのことを思い返す。

 

(シャア、お前は連れ出した本物のミネバと、まだこの地球圏に雌伏し、さまよっているのか?)

 

 当然、それにこたえる者はしない。

 

(戻ってくればいいものを……。なぜ遠回りばかりをする……)

 

 そう思いを巡らしていたところに警報が鳴る。我に返った彼女が前を見据えると、ビームサーベルを構えたZZ(ダブルゼータ)ガンダムが接近するのが見えた。

 

「よく来たな、ジュドー!」

 

 笑みを浮かべてそう通信を入れると、ハマーンはキュベレイをZZに突進させていった。

 そこに―――。

 

* * * * *

 

1:ジャンク屋ネキ

!? プルツー……どうしたんだ?

 

2:名無しのオールドタイプ

どうしたんだ、ネキ?

 

3:ジャンク屋ネキ

あぁ、プルツーの言うことには、『複数の、私によく似た悪意がジュドーたちが戦っているほうに接近している』というんだ。

プルツーは助けに行きたがってるようだが……。

 

4:名無しのオールドタイプ

あぁ、そういや、他のプルクローンたちがまだ残ってたな……。

一人は先の戦いで脱出したっぽいが。

 

5:考察ニキ

まぁ、原作では、彼女たちはキャラさんが全滅させてくれたけど、こちらではどうなるかわからんからな……。

 

6:名無しのオールドタイプ

とはいえ、今出られるのは百式しかないんやろ? そしたらどうしようもないんでないか?

 

7:ジャンク屋ネキ

それはわかるんだけどな……。

プルツーは、『ジュドーとプルたちを助けるのはもちろん、妹たちも戦いから解放してやりたい』と思っているらしくてな……。

 

8:ラド

うーん、そう言われてもなぁ……。

 

9:ジャンク屋ネキ

ん? 何か、アストナージさんから、『グワンバンからの届け物が来たから来てくれ』と言われたからMSデッキに行ってくるわ。

 

10:名無しのオールドタイプ

おう、行ってら。

 

* * * * *

 

 そして、MSデッキに行ったオレたちは、驚くべきものを見た。

 それは、プルツーが乗っていた赤いキュベレイと、肩にビーム砲を装備したグレーのキュベレイ(スレ民の話では、量産型のキュベレイだそうだ)だった。

 これがグワンバンからの届け物? なんでこんなものが?

 

「なぁ、アストナージさん、どうしたんだ、これ?」

「あぁ。向こうの偉い人の話では、あちらの大将に何かあった時には、これをプルツーとマリハの元に届けてやってくれ、と遺言があったんだってさ」

「オウギュストさんが……」

 

 そうつぶやき、オレはプルツーと、二体のキュベレイを見上げる。

 

「整備はばっちりされてるみたいだ。後、チェックしたが爆弾とかシステムトラップとかはなかったよ」

「そうか……。グレミー、やっぱりオレとプルツーのことを気にかけてくれてたんだな……」

「うん。それにこれで、駆け付けることができる」

「大丈夫なのか?」

 

 オレがそう聞くと、プルツーは決意の顔でうなずいた。

 

「うん、無理はなるべくしないように気を付ける。行こう、ジュドーとプルを助けて……妹たちを戦いから解放してあげないと」

 

* * * * *

 

 そしてオレたちが、ジュドーたちが戦っているであろうほうに向かっている(オレが量産型、プルツーが赤キュベレイに乗ってる)と、向こうのほうに戦いの光が見えた。

 もう始まっているのか!?

 

 さらに接近していると、キャラさんのゲーマルクが、数機の量産型キュベレイ相手に、奮戦しているようだ。サイコフィールドで、相手のビームをはじきながら、ファンネルで、量産型を次々と落としていく。

 その傍らには爆散した別のMSの残骸があった。おそらくはキャラさんの取り巻きの片方のものだろう。南無南無……。

 

 そして、後ろから量産型がゲーマルクに飛び掛かっていった。色々とやばい!

 

「ダメだああぁぁぁ!! 行け、ファンネル!!」

 

 オレはファンネルを展開させ、そのキュベレイに向かわせた。ファンネルで不意打ちを喰らわせ、その両腕両足を撃ち抜いて沈黙させる。

 それに、キャラさんも気が付き、こちらに向きなおった。

 

『あぁ、助けてもらってすまないね。……って、グレミーの人形!』

 

 と思ったら、プルツーのキュベレイを確認して、装備させているビーム砲を全て展開させた。

 あわわわ、やばいやばい! 敵だと誤解されているみたいだ。

 

「ままま待って! オレたちは味方だよ! プルツーも、グレミーから解放されたんだ!」

 

 そう必死になって説得する。ここで敵に間違われてやられるなんてバッドエンドなんか冗談じゃない。

 なお、その間も、プルクローンたちの量産型キュベレイは攻撃を仕掛けてきて、オレたちと交戦しています。

 

 そうしているうちに、やっとキャラさんもわかってくれたようだ。

 

『なるほどね。あんたには、ジュドーと一緒に、私を助けてくれた恩があるからね。信じるよ』

『ありがとう……それで、ジュドーたちは?』

『あぁ。ここを私に任せて先に行ったよ』

「そうか……。ここでやられなくてよかった」

 

 そう言っている間も、量産型キュベレイはこっちに襲い掛かってくる。

 長話している場合ではなさそうだ。

 

『っと、だべっている暇はなさそうだね。すまないけど、こいつらをやっつけるのに力を貸しておくれ!』

「わかった! けど、できるだけ殺さない方法で頼むよ!」

『難しいことを言ってくれるね!』

『でもお願いしたい……彼女たちも、私と同じ。グレミーに縛られて、戦わされていただけなんだ』

『そうかい……わかったよ。でも、あまり期待はしないでおくれよ!』

 

 そしてオレたちは本格的な交戦に入った。

 オレとプルツーは、敵のファンネルをかわし、逆にファンネルで攻撃しながら、必死に妹たち(オレにとっては姉だが)を説得した。

 

「もうよせ! グレミーはもういないんだ! お前たちが戦う必要はもうないんだよ!」

『何を言う! グレミー様が戦死されたのなら、その敵の首を彼に捧げるのが、私たちの使命!』

『馬鹿なことを言わないで……! あのグレミーがそんなことをあなたたちに願うと思ってるの……!?』

 

 しかし、オレたちの説得には耳も貸さず、プルクローンたちは攻撃を仕掛けてくる。オレたちはそんな彼女たちに、あきらめずに説得を試みながら戦いを続けた。

 

 そして数十分。このあたりの量産型キュベレイはほとんど全滅したようだ。できるよう殺さないように奮闘したが、それでも数機の量産型が宇宙の藻屑と化した。(当然中のプルクローンは散っただろう)

 

「結局、説得することはできなかったな……」

『刷り込みが強力だったから……。でも数人でも、助けられてよかった……』

「そうだな。さぁ、生き残りを回収することにしようぜ」

 

 そうして、オレが動き始めた直後。

 

『危ない!』

「え?」

 

 次の瞬間、どこからか飛んできたファンネルで、オレの量産型キュベレイの両腕両足が撃ち抜かれた!

 

「うわぁ!」

『マリハ! きゃっ……!』

 

 続いて、プルツーにもファンネルの洗礼が降り注いだ。さすがプルツーというべきか、直撃を避けることはできたものの、それでも右腕と左足、それに尻のファンネルコンテナが破壊された。

 

 そして、小惑星の陰から、一気の量産型キュベレイが現れた。闇討ちを行うような卑怯な奴も、プルクローンの中にいたのか!

 

『ふふふ、これで終わりだな。お前たちを仕留めたあと、悠々とハマーン様とジュドー・アーシタを討ちに行くとしよう』

「くっ……!」

『そうはいかのなんとかだぁー!!』

 

* * * * *

 

14:名無しのオールドタイプ

キャラの姐さん、まさか特攻を!? やめてー!!

 

15:ラド

すごい奮戦ぶりや……。ファンネルで、キュベレイのファンネルを排除しながら突進しとる……。

 

16:名無しのオールドタイプ

キュベレイからの攻撃もサイコ・フィールドで無効化しとる……。でも……。

 

17:考察ニキ

あれだけのサイコパワーを発動させてたら、サイコミュが……。

 

18:ジャンク屋ネキ

あぁ……。やはりサイコミュがオーバーロードで停止したのか、直撃もらうようになっとる……。右腕と両足が……!

 

19:名無しのオールドタイプ

頭部も撃ち抜かれた……!

 

20:名無しのオールドタイプ

なんとか逃げるキュベレイに追いついた……! もうそこまででいいって、やめてー!

 

21:ラド

残った左腕でキュベレイをはがいじめに……! まさか……!

 

22:ジャンク屋ネキ

キャラさん……ダメだぁーーーー!!

 

23:???

『よーく見ておけ! これがキャラ様の散りざまだぁーーーーー!!』

 

24:ラド

な、なんだ!?

 

25:名無しのオールドタイプ

まさか……。キャラ様の最後の魂の叫び……!?

 

26:考察ニキ

あぁ……零距離メガ粒子砲で、キュベレイごと……。

 

27:ジャンク屋ネキ

キャラさん……。

 

28:名無しのオールドタイプ

かわいそうな人だったな……。

 

29:考察ニキ

あぁ。だけど、暴走しているのに気づかず、その果てに自爆した原作とは違って、ネキたちを守るため、身をなげうち、自覚して自爆した分、こちらの世界のキャラは、その分マシだったかもな……。慰めにもならんけど……。

 

30:ジャンク屋ネキ

……。

 

* * * * *

 

 ゲーマルクと量産型キュベレイの残骸が漂う中、オレの量産型キュベレイと、プルツーのキュベレイはその中を漂っていた。

 やがて、赤いキュベレイが再起動し、動き出した。

 

『マリハ……生き残りの妹たちを回収して、ネェル・アーガマに戻ろう……。キャラは、命を賭して、私たちを守ってくれた。それを無駄にしちゃいけないと思う……』

「プルツー……そうだな……。ありがとう、キャラさん。あんたに会ってから短い間だったけど、あんたのこと、そしてあんたのしてくれたこと、ずっと忘れないよ……」

『私も忘れないよ……。マリハ、そのキュベレイはもう動かないでしょ? 私のキュベレイはまだ動くから、こちらに乗って』

「わかった。それから、ネェル・アーガマに姉たちを救助するように要請しておこう……」

 

 そしてオレは、プルツーのキュベレイに乗り込み、ネェル・アーガマからのランチが来るのを待ち続けた。

 

* * * * *

 

 

 オレたちがなんとかネェル・アーガマに戻ってくると(プルクローンたちは、ラビアンローズの医務室に預けている)、不思議と張りつめた気配が消えていくのが感じられた。

 

 それは、ビーチャたちも感じ取ったらしい。

 

「不思議ね……。張りつめていた空気が消えていく……」

「終わったな……ジュドーとハマーンの戦い……」

 

 ほっとした表情を浮かべるビーチャとイーノ。 だけど、エルはまだ、不安そうな表情を浮かべている。

 

「じゃあ、どうしてジュドーは戻ってこないの?」

「まさか、アクシズの中で何かあったんじゃ……?」

 

 そうモンドがつぶやいた。というか、どうしてわざわざオレの隣にやってくる? あぁ、オレの恋人未満だからか。

 いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

 

 と、そこで。

 

「……!?」

「……っ」

 

 ほぼ同時に顔をしかめるオレとプルツー。

 

 頭の中に、ジュドーとプルの悲鳴のようなものが聞こえてきた……気がした。

 モンドの言う通り、アクシズの中で何かあったのかもしれない。

 

* * * * *

 

32:ジャンク屋ネキ

なぁ、というわけなんだが、ジュドーたち、無事に戻ってくるんだよな?

 

33:考察ニキ

それがな……ネキ。

 

34:ラド

ZZが大破したうえに、アクシズの中で迷子になっている可能性が高いんや。原作通りだったらな。

 

35:ジャンク屋ネキ

なんやて……!?

 

36:名無しのオールドタイプ

掲示板にプルの書き込みがないことからすると、マジでそれどころじゃない可能性が高いな……。

 

37:名無しのオールドタイプ

まぁ、ネェル・アーガマとモウサとでは、距離がありすぎて、掲示板にアクセスできない可能性が高いが……。プル、ネキを介して書き込みしてたみたいだしな。

 

38:ジャンク屋ネキ

そんな……! なんとかならんのか?

 

39:ラド

原作では、プルツーがNT能力でジュドーたちの位置を見つけ出して、そこにハイメガ砲で穴を開けて脱出を手助けしたんだが……。

 

40:名無しのオールドタイプ

でも、ネキたちにできるのか……? そんなこと。生命の心配とかはないのか?

 

41:考察ニキ

こればかりはわからん。原作では、プルツーが最後の力を振り縛って、やっと見つけ出したぐらいだからな。

 

42:ジャンク屋ネキ

……いいや、やってみる。プルツーと力を合わせればなんとかなるかもしれんし、助けられるなら是が非でも助けたいからな。

 

43:名無しのオールドタイプ

そうか。でも無理するんやないで。プルツー共々力尽きて……って結末は、まっぴらごめんだからな。

 

44:ジャンク屋ネキ

おう。

 

* * * * *

 

 そしてオレがプルツーのほうを向くと、彼女もうなずいてきた。どうやら、オレと同じことを考えていたらしい。

 

「できそうか? プルツー?」

「うん……。私だって、ジュドーとプルを助けたい。やってみる……」

 

 オレはプルツーを抱きかかえて副艦長席に座り、彼女の手を握る。プルツーもその手を握り返してくれた。そして、目を閉じて、モウサに意識を集中させる。

 

 ここでもない……そこでもない……ジュドー……プル……どこなんだ……?

 

 目を閉じていても、モウサのあちこちが爆発するのがわかる。プルツーの精神がNT能力の発動で消耗してきてるのが感じられる。その様子に、オレの中に焦りが生じる……。

 

 早く……早くしないと……。

 

 そこに。

 

『このままじゃ、ZZもろとも蒸し焼きになっちまう!』

『というか、ここはどこ~? このまま死ぬなんてやだよー!』

 

 ジュドー達の声が聞こえた。その聞こえてきたほうに意識を集中させると……いた!

 オレは目を開いて、ビーチャたちに言った。

 

「よっしゃ、ジュドー達を見つけたぜ!」

「ほんとか!?」

 

 とビーチャが聞いてくる。オレはうなずいて続ける。

 

「あぁ! オレが指示するポイントに、ハイメガ砲を発射してくれ! それで穴をあけて、二人を脱出させるんだ!」

「よっしゃ!」

 

 そしてオレが言ったポイントに照準を固定、発射準備を進める。

 そして。

 

「照準固定完了、エネルギーチャージ完了! 艦長代理!」

「よし、ハイメガ粒子砲、発射だ!」

 

 ビーチャの号令一下、ネェル・アーガマのハイメガ粒子砲が火を噴いた!

 ビームが、モウサに飛んでいき、突き刺さり、岩盤を貫き、吹き飛ばした。

 

『……』

 

 固唾をのんで見守るオレたち。やがて……。

 

 モウサから飛び出す光の点が現れる。それはどんどん大きくなっていき……。

 

「ジュドー……やった……!」

 

 それは、ジュドー達を乗せた、ZZの上半身だった。

 

「あぁ……ジュドー……」

 

 そのプルツーのつぶやきにオレが視線を降ろすと、彼女はオレの膝の上で、安らかな表情で目を閉じ、ぐったりしていた。

 まさか……!?

 

「お、おい、プルツー!? 嘘だろ!? エル、ハサン先生を呼んできてくれ!」

「わ、わかったわ!」

 

* * * * *

 

 そしてハサン先生がブリッジにやってきた。そしてプルツーを診察して一言。

 

「ふぅ、心配しすぎだ。精神を消耗しすぎて、気を失っただけだ」

「そ、そうなのか。よかったぁ……」

「まぁ、かなり消耗しているようだが、2、3日ぐっすり眠れば、きっと元に戻るだろう」

 

 その先生の話に、クルー一同安堵のため息を浮かべる。そして。

 

「やったー!」

 

 ビーチャが歓声を上げる。

 

「よかった! ジュドーもプルも助かったし、プルツーも無事だし、本当によかったよ!」

 

 モンドがオレに飛びついて抱きしめてきた。恥ずかしいが、気持ちはわからなくもないから、そのままにさせておく。だけど、キスはダメだからな?

 

 ルーさんもエルも、イーノもみんな喜びを爆発させていた。

 

 そこで、トーレスさんが報告してきた。

 

「後方から艦隊が接近してくるぞ。どうやら、連邦軍とエゥーゴの連合艦隊のようだな」

「今になって、全てが終わってようやくのご到着かよ」

 

 トーレスからの報告に、ビーチャが憮然として言った。それにはオレも同感だ。

 

「まったくだよな。彼らがちゃんとすることをしてくれれば、オレたちがこんなつらい思いをしなくて済んだんだ」

 

 そしてオレたちは、ジュドーたちが助かった歓喜と、連邦軍やエゥーゴへの怒りが入り混じった複雑な表情で、接近してくる連邦とエゥーゴの連合艦隊を見つめ続けていた。

 

* * * * *

 

56:名無しのオールドタイプ

ジュドーは、やっぱり木星船団に行くんやな。

 

57:ジャンク屋ネキ

あぁ。地球圏の外から、改めて地球を見つめて考えたいと言ってな。

 

58:名無しのオールドタイプ

ルーも一緒に行くというし、二人で喧嘩しながらも仲良くやってくれればいいけどな。

 

59:ラド

でもいいのか? ネキ。ネキもついていかなくて。

 

60:ジャンク屋ネキ

あぁ。ルーさんはしっかりしてるから、ジュドーを支えてくれるやろ。それに二人の邪魔をする気はないで。馬に蹴り飛ばされるのは避けたい。それに、プルとプルツーの面倒も見なくてはいけないしな。

『お世話になりまーす』

 

61:名無しのオールドタイプ

一気に妹が二人増えた感じだな。そういえば、他のプルクローンたちも、ネキの親父さんが面倒見てくれるんだっけ?

 

62:ジャンク屋ネキ

あぁ。ネオ・ジオンが倒れて、レジスタンスする必要もないし、出稼ぎも終わったので、シャングリラに戻ってくるそうや。それで、オレたちと一緒に暮らすついでに、彼女たちの面倒も見てくれることになってな。あぁ、あくまで引き取り先が見つかるまでの里親ということで、引き取り先が見つかり次第、その家庭に引き取られることになるそうだけどな。

 

63:考察ニキ

原作では、マリーダさん以外のプルクローンたちが戦死したけど、今回は何人かだけでも助けられてよかったよな。彼女たちの幸せを祈らずにはいられんわ。

 

64:名無しのオールドタイプ

あと、まさか、ネキがモンドと同居することになるとはなぁ……大丈夫か?

 

65:ジャンク屋ネキ

あぁ。親父もいるしな。めったなことにはならんやろ。もし迫ってきたら、キックでもいれたるわ。

 

66:ラド

やっぱり、ネキはネキやのう。

 

67:名無しのオールドタイプ

あ、いよいよ出発の時間みたいだな。

 

68:名無しのオールドタイプ

おー、おー、エルとルーが火花散らしてて微笑ましいわ。

 

69:考察ニキ

そして、プルがジュドーに甘えてるのもほっこりするわ。

 

70:ジャンク屋ネキ

『だって、木星に行っちゃったら、4~5年は会えないんだもん。今のうちに甘えとかなきゃ!』

本当にすごい甘えっぷりだよなぁ。

 

71:名無しのオールドタイプ

うんうん。いっぱい甘えておくといいで。

 

72:名無しのオールドタイプ

その横で、プルツーがクールに見守ってるのがいじらしいなぁ。

 

73:ラド

ジュドーがプルツーの頭をなでて、それでプルツーが目を細めているのも、なんかいいな。

 

74:ジャンク屋ネキ

そういえばラドニキ、これからどうするんや?

 

75:ラド

あぁ。仕えるべき主を失ったとかで、マシュマー様が新しい主を探しに旅に出る、とのことでな。俺とボットンさんも彼についていくことになったわ。他のクルーたちはそのまま連邦軍に入るらしい。

 

76:名無しのオールドタイプ

マシュマーさんが生き残ったのは嬉しいところやな。彼が素晴らしい主を見つけられることを祈らずにはいられんわ。

 

77:考察ニキ

それと、再就職するんだったら、シャアのネオ・ジオンはやめとけ。

 

78:ラド

あぁ、もちろんや。その時には全力で止めるわ。

 

79:ジャンク屋ネキ

あぁ……ジュドーたち、木星に飛び立っていったなぁ。

 

80:考察ニキ

そしてネキたちも、これから新しい一歩を歩みだしていくんだなぁ……感無量や。

 

81:名無しのオールドタイプ

これで全て終わったし、このスレもこれで終わりか?

 

82:ジャンク屋ネキ

何言ってるねん。オレはまだまだみんなと仲良くしたいし、何かあったら相談にのってもらうこともあるだろうからな。これからもよろしく頼むぜ。

 

83:考察ニキ

嬉しいこと言ってくれるのう。

 

84:ラド

ネキたちと一緒に、こうして俺たちも新しい一歩を踏み出していくんやなぁ……。

 

85:名無しのオールドタイプ

俺たちの未来が、光あふれるものになったらいいよな。

 

86:ジャンク屋ネキ

きっとなるわ。オレたちの未来も、地球圏の未来もな。何しろ、プルやプルツー、シャングリラのみんなにスレ民のみんながいるんやからな。きっと、素晴らしい未来にできるはずや……。

 

 

『ガンダムZZって作品の世界に転生してきたプル似のTS転生者だけど、ヤザンとかいう人にゼータ強奪を持ちかけられてます~ガンダムZZ別伝』FIN




ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
今回も、前回と並ぶほどのUAや感想いただき、とても嬉しかったです!
次回作も、それぐらい応援してくださると嬉しいです!

ではその次回作の予告、どうぞ!


皆さんお待ちかねぇ!
いよいよ5/5 12:00から、TS転生者ガンダムファイターの熱きファイトが始まります!
第13回ガンダムファイト大会が展開されているこの地球で、彼女はどのような出会いをし、どのようなファイトをして、そして何を目指してどのような結末を見るのでしょうか?

それではみなさん!
『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』
に、Ready Go!!

※初回更新は特別に、プロローグと1話の、同時二話更新です。お楽しみに!


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