西住家のOUTSIDER〜〜愛を知らない少年の物語 (ボノぼん)
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序〜悪魔の誕生〜
地獄


どうもボノぼんです。
この作品は不定期で投稿するつもりなのでどうぞよろしくお願いします!
それでは3,2,1どうぞ。


辛い・・・・・・苦しい・・・どうして・・・どうして俺だけなの・・・?

 

アイツらとは何が違うの?

 

ねぇ教えてよ・・・

 

神様・・・!

 

 

 

 

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地獄。それは仏教における世界観の一つであり、十界の最下層に位置する場所であり、

そこでは罪を犯した悪霊が罰せられる場所でもある。しかし地獄は死後の世界にある世界。

俺にとっては生き地獄という場所が存在する。それは自分の家だ。はっきり言えば

生まれてきてからの場所が地獄だった。

 

毎日必ず一回は自分の祖父達に暴力を浴びせられる。腹を蹴られ、杖で顔を殴られるのが日常。

酷かった時は一日中殴られ、目蓋が腫れたり体中が痣だらけになるまで殴られ続けた。

 

でも何故か俺にしか暴力を浴びせられなかった。

 

妹二人には何もせずただ猫撫で声を出し頭を撫でていた。この時点で何かがおかしかった。

何でアイツらには何もしなくて俺には拳や蹴りが飛んでくるのか全く意味が分からなかった。

 

でもおかしかったのは、祖父達以外にもいた。父親と母親だ。

妹二人は、父親にとても好かれていてよくハグしてもらっていたり頭を撫でられていた。

俺にはそんなことしてくれた事もないのに・・・。

一方母親は、戦車道などの妹二人に教えていて妹二人がよく出来たら笑顔で褒めていた。

俺にはあんな笑顔見せてもくれないのに・・・。

 

俺が父親と母親からよくされた事は説教や小言ばかりだった。テストの点数が悪いだけで

その日は、夜遅くまで説教。たまに眠たくて欠伸をしてしまった時は、

 

「ちゃんと聞いてるの!」

 

風船が割れた乾いた音が俺の耳に響いた。気がついたら左頬が真紅の様に赤くなっている。

余りにも酷く痛いので父親の方に顔を向けた。しかし・・・父親が俺に向けた目はとても

冷たくて冷たくてたまらなかった。そう余所見するとまた母親から怒鳴り声が耳に響き渡った。

そして、襖の隙間から妹二人がクスクスと俺を嘲笑っていた。本当にあの時を思い出すと

赤黒い感情が出る。

 

でもそんな俺でも黙っていることは無かった。俺が廊下の掃除をさせられていた時に後ろから

尻を蹴られた事がある。振り返ると二人がニヤつきながら俺を見ていた。俺はやり返そうと

拳を振ろうとしたら、妹の一人が大きな声で泣き始めた。すると何があったのかと思ったのか

上役や親族が妹二人を囲い、どうしたの?と優しい声を掛けて慰めていた。そしてもう一人の妹が

目に涙を溜めながら俺を指差し、

 

「彰が私達に雑巾のバケツの水をかけようとしてきた!!」

 

すると上役と親族の目が俺に向けて来た。皆無言で俺を睨みつけていた。何もしてないと

言いかけようとしたその時に鋭い拳が頬に当たった。そして続け様に別の奴から腹を踏まれ、

羽交い締めにされた。それからは別の奴からの拳、別の奴からの蹴りなどが俺の体中に

当たり続けた。女中達は、妹二人の顔を着物で隠し、何処かへと連れて行き始めた。そして

虐待と言う暴行は、約二十分も続き最後にはバケツの水をかけられた。髪や服が

ずぶ濡れになった俺に祖父は、頭を踏みつけこうぶつけた。

 

「女に手を上げるとは何ともまあ屑の事をしたな彰!!」

 

「ち、違うよ。何もして『言い訳をするなこの外道めが!』」

 

そう言うと俺の発言を遮るように足を上げて頭を踏んだ。バキッと鈍い音が俺の頭に響く。

すると突いていた杖を振り上げて、

 

「死ね!この厄介者!」

 

そう言い始めた瞬間何度も何度も俺の顔に杖を振り上げた。そして二、三発目の時杖は、

俺の右目をめり込む様に当たった。その瞬間ビリッと電流が流れた様な痛みが右目に走った。

 

「ぎゃああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

 

右目を必死に両手で押さえ絶叫する自分。いつも暴力とは違いこんな痛みは今まで味わったことも無かった。俺は必死に祖父に助けを求め祖父の足を掴んだ。が、祖父はそんな自分を見ては

ため息をつき、

 

「はぁ・・・・・・お前はどこまで大袈裟な奴じゃ。おい!行くぞ!」

 

そう言い他の大人達を連れて広間に向かって行った。

そして何処かへ行く際右目を必死に押さえている自分に、

 

「芝居が済んだら自分で汚した廊下を掃除しておけもし出来ていなかったら今日の宴会は

 お前だけ抜きだ。まあ元々お前なんかに食わせる物なんてないがなぁハッハハハ!!」

 

心配の声を一つもかけず大きな笑い声を出しながら祖父は広間に向かって行った。

もう一度一人になった俺は左目の痛みが治らず痛くて涙が止まらなかった。

 

苦しい・・・・・・痛い・・・誰か助けて。

 

そう心の中で思いつつも誰も気づかず広間からは楽しい宴会の声が聞こえていた。そして

誰にも気に掛けられず俺は右目を押さえたままゆっくりと意識を失った。

 

 




一応この作品は、月刊で投稿しようと頑張って投稿します。
次回も楽しみに待っていてください。

じゃ!さいならー!!

        
               !!See you!!


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修羅

どうもボノぼんです!お気に入りが二桁でびっくりしました!


「はっ!はぁはぁ」

 

次の瞬間目を覚ました時は薄暗い部屋の中だった。確か自分は右目を杖で抉られて

意識を失ったはず・・・。そう思いながら体を起こして、障子を動かした。廊下に出ると無音が

自分の耳に響いていた。

 

「痛っ!・・・・・・」

 

突如右目がジンジンした。慌てて右目を抑える。が、何にも効果が無い。そんなことをしていると誰かがやって来た。

 

「あ!起きたんですね坊ちゃん!」

「き、菊代さん・・・・・・」 

 

菊代さんが・・・菊代さんが来てくれた。菊代さんはこの家の女中のリーダー的存在で

とても優しい人。もちろん妹達の世話もしているけどどちらかと言うと俺の世話をしてくれる

俺にとって母親の様な人だ。右目を抑えてこちらを見る自分を菊代さんは白い手で

俺の頬を触ってきた。

 

「やっぱり目の腫れは酷いですね・・・眼帯しておきましょうか」

 

そう言うと救急箱を持ってきて俺に眼帯をしてくれた。そんな小さな事に俺は涙を流した。

嬉しかった。俺にそんな優しい表情をしてくれるのは菊代さんだけだった。

他の女中は皆冷たい目で俺を見つめてくる。

だからそんなことをしてくれる菊代さんに対して嬉しかった。

そんな泣いている俺を見ている菊代さんは微笑んで何も言わずに俺の頭を撫でてくれた。

それがとても自分の心の中に灯してくれる唯一の光だった。

その後何も食べずにぐっすりと眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺には家以外にも地獄が存在する。そこは学校だ。でもどちらかと言えば修羅だろう。

 

修羅。インドの鬼神阿修羅の略名だが醜い争いや果てしない闘いという意味でもある。

 

今日はそんな場所にランドセルを背負って向かって行く。正直行きたくない。何故なら、

 

「おい!彰!おっはよーさん!!」バンッ

 

「今日もちゃんとやれよっな!!」バンッ

 

「ハハハハハ面白ぇ!」バンッ

 

いつもこの3人“石田”、“太田”、“江藤”に虐められる。でもこの3人だけではない。

 

「ねぇ西住ー消しゴム取ってくんなーい?」

 

「え!?あ、うん」

 

「もー早く取りなさいよー!」

 

「ごめん。これ・・・」

 

「何これ!!汚ったなーあんた不潔?」

 

「違うよさっき取った時に『ねぇねぇ皆聞いて!西住が私の消しゴムに埃付けてきたんだけど」

 

「えー!マジー西住キッモ」

 

「だからさーちょっとこいつも汚くしてくんない?」

 

「オッケー。おい彰!女子の消しゴムに埃付けるとかお前マジ糞だよな」

 

「そんな奴にはお仕置きでーす」

 

「おーいゴミ箱持ってこい!」

 

「違うって!ねぇ皆話を聞いてくれ『うるせえんだよこの糞野郎が!』」バキッ

 

「痛っ」

 

石田から右のストレートが頬に入った。突然起きたことなので分からなかった。

すると今度は太田が、

 

「制裁キック!」バキッ

 

「ぐはぁっ!!」

 

腹に飛び蹴りが入ってメリメリと音を立てた。そして最後に江藤がゴミ箱を持ってきて、

 

「ゴミになーーれ!!!!」

 

ゴミ箱に入っているゴミを全部俺にぶつけてきた。おかげで体中埃を被った。

 

「キャハハハハ!!最高!あんたって本当にゴミが似合うわ!ハハハハハ!!」

 

「いいよー男子。もっとやっちゃえやっちゃえ」

 

「へーい!彰!学校に来たってお前の“居場所“なんかねーんだよ。ハハハハハ!!」

 

「「「「「ハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!」」」」」

 

これがもう一つの地獄。俺は虐められている。コイツらに・・・このクラスに。正直本当は

殴り返したい。でもそんな勇気が無い。俺は一生虐められ続けて生きていくのだろう。

本当に苦しくて、今でも首を吊りたい。そんな事をされている際他の奴らは見て見ぬ振りをする。こんな屑になりたくなかった。どんなに虐められても・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何とか学校と言う修羅の時間が終わり服は汚れ、鼻にティッシュを詰め、顔を赤く腫れさせながら俺は家に着いた。家に帰るも誰からもおかえりと言う言葉も無い。ふと母親と目が合ってもすぐ

目線を変えて何処かへ行った。父親の顔を見ようと格納庫に行こうとしたが父親はいなかった。

所詮俺に興味などないのだろう。そう勝手に決めつけて自室に向かった。

 

俺の部屋は妹達と違って大きな部屋ではない。畳6畳の茶室の様な部屋だ。もちろん布団を敷くととても狭くなる。本棚などは壁掛けで、 机は折り畳み。俺にはそんなに金を安安と使いたくないのだろう。だから俺が欲しいと言った物は全部却下された。妹達が欲しい物があると言えば

理由を聞いてから買う癖に・・・俺には理由すら耳を傾けてくれない。

 

だから俺は両親のことが余り好きじゃない。だって俺のおねだりや願いも叶えてくれないから。

そう頭の中で考え本棚から飛行機の図鑑とノートを取り出した。俺は飛行機という物が大好きだ。果てしない空を勇ましく飛び続ける飛行機という物に俺は心を奪われた。

いつか・・・パイロットになりたい。

 

そんな夢を心の片隅に置いていた俺はほんの少しずつ飛行機を知ろうと飛行機を描き続けていた。絵心は自分的にはあるとは思っているので図鑑をペラペラと音を出しながら今日は何を描こうかと捲っていると突如図鑑が俺の視界から消えた。慌てて上を見上げるとそこには図鑑を持って俺を

見下ろしている父親がいた。父親は俺が何をしようと理解したのか俺を見つめてため息を溢す。

 

「こんなことをする暇があるなら自分の部屋の掃除をして置きなさい」

 

父親はそう言うと父さんは戦車の整備をするからして置くんだぞっと言い残してドスッドスッと

音を立てながら格納庫へと向かって行った。確かに俺の部屋の掃除は女中の人達がやってくれて

いるが俺の部屋だからなのか埃がやや溜まっていたので今日か明日かやろうと考えていた。

でも父親がやれと言われたら断ることは出来ない。もし断ったりしたら母親を呼んで

また説教を始めるだろう。仕方なく俺はノートをしまい掃除に取り掛かった。

 

 

 

まずは本棚と机の掃除からだ。机はよく消しゴムのカスや鉛筆の黒い痕が付いていたので

そこを雑巾で必死に磨いた。本棚は本を取り出してから棚を磨き埃などはホコリ取りで取った。

 

畳はホウキを使って掃除し、後から雑巾で綺麗に拭いていった。そして最後に部屋の前の廊下を

お寺の和尚の様に拭きながら走ったり戻ったりを繰り返した。そして廊下も綺麗に拭き終えると

辺りはもうすっかり夕暮れになっていた。初秋の風が体中に響き渡る。

 

「さて雑巾とバケツの後片付けをするか・・・」

 

雑巾をバケツに入れてシンクに流しに行こうと廊下を歩いた。

 

シンクにバケツの水を全部流し込み、中の水がすっかり空になったことを確認するとバケツを片付けようと玄関へ向かう。玄関にあったバケツを戻している最中誰かが俺の肩を叩いた。

一体誰だと思い、後ろを振り返ると、

 

パァァン!!!!!!!!!!!!

 

「っ!!!!」

 

突如耳の鼓膜にビリッと電気の様なものが流れた。慌てて耳を塞ぐ。

鼓膜にはキーーンと何かしら不協和音が流れている。

一体誰がやったんだ・・・。そう思って顔を上げると、そこには、

 

「ハハハハッ!!お兄ちゃんびっくりし過ぎだよ!!」

「ハハハハハッ!!!!そんなに驚かなくていいだろう・・・・・・何て大袈裟な奴なんだ・・・」

 

妹達がゲラゲラ笑いながら俺を見ていた。よく見ると左手にクラッカーを持っている。

そう思うと体中が急に熱くなってきた。

 

「どうお兄ちゃん!すっごくびっくりした?」

「私が考えたんだ。どうだ?お前みたいな奴でも面白くなるだろう!」

 

「それを使って俺の耳に向かって打ったのか・・・」

 

「そうだよ!それがどうかした?」

「ふざけるのも大概にしろよ!!」ダッ

「!?」

 

俺は何も考えずに妹に突進しようとした。が、

 

ビリッ

 

「痛っ!・・・」

「普段何にも出来ない役立たずがいい気になるな」

「お姉ちゃん凄い!どうやったの!?」

「何・・・ちょっと膝蹴りをしただけさ。ふん弱いくせにいきり立ちやがって」

「ゴホッゴホッ」

「おい雑魚彰。お前みたいな奴はずっと下を向いてればいいんだ。

 一生私達の遊び相手になっていたらいいんだ。分かったな」バキッ

 

頭を踏まれながら俺は侮蔑された。悔しかった。でも俺は弱かった。そんな力なんて無かった。

多分この時からだろう。この妹2人の人生をめちゃくちゃにしてやろうと思ったのは・・・。

そんな侮蔑行為をされている時菊代さんが大きな声で夕飯の支度が出来たと教えに来た。

 

「いけない。菊代さんだ!」

「早く早くお姉ちゃん菊代さんにバレる前にご飯食べに行こうよ」

「あ!待ってくれみほ!」

 

妹2人は夕飯を食べるために大広間に向かって走って行った。俺も行こうと立ち上がった。

すると菊代さんが運良くやって来た。

 

「あ!坊ちゃんここにいたんですね!さあ早く。夕飯の支度が出来ていますよ」

「ありがとう・・・・・・菊代さん・・・・・・」

 

俺はそう言いながら大広間に向かって歩いって行った。

あれ何か右耳から何か出ているような・・・まあ気のせいか。

 

「あれ?おかしいな・・・坊ちゃんの右耳から“血”が流れていたような・・・・・・」

 

そう気づいていなかった俺は。右耳からポツポツと血が流れていたことに・・・。

そして・・・・・・これから右耳の聴覚がおかしくなっていくことを・・・・・・。

 

 

 

 




如何でしたか?下旬に投稿すると言っていましたが期末テストがあることを忘れていたので
急いで書き上げました。次回は3月です。それではお楽しみに。 

                  !!See you!!


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絶望

どうもボノぼんです!おかげ様でもう少しでお気に入りが30になります。


妹達の嫌がらせから一週間が過ぎた時俺の体に異変が起きた。普段聴こえる物が

聴こえなくなった。嫌、聴こえるのは聴こえるが、左耳の方だけだった。右耳の方は少しも、

嫌ほとんど聴こえないと言っていいだろう。でも俺はその事を話すことが出来なかった。

 

だって信じてくれないのだから。一度母親に話しかけられた時に右耳から話しかけられたので、

ほとんど無視の状態で歩いていた時に肩を掴まれながら言ったが、

まるっきり相手にしてくれなかった。何度も何度も繰り返して言うのに、

言い訳をするなと言われる日々だった。

 

後右目の事だがまだ眼帯を外す事はしなかった。外そうとすると、何故か痛みが走るからだ。

当分は外すことは出来ないと思う。そんなことを考えながら今日も学校へ行く。

今日もいじめられるのだろう。何をやられるのだろう。馬乗りで殴られるのか。

それともバケツの水をかけられるのか。そう考えるだけで虚しい気持ちになる。

元々虚しいが。そう思いながら教室のドアを開けた。

 

ドアを開けると、皆一斉に見るもすぐさま視線を元に戻した。よく見ると今日は石田が

いなかった。太田と江藤しかいない。2人は俺を見るとニヤっとしながら俺の方へやって来た。

一体なんだろう。

 

「おい彰ー!何だよその眼帯」

「東京喰種の金木研か?」

「・・・・・・・・・」

「おい聞いてんのかよ!」

「無視すんじゃねぇよ!!」

「・・・・・・・・・」

 

俺は無視を続けた。コイツらは石田がいなければ暴力など振るう度胸も無いと知っていたからだ。

そうコイツらは石田がいる時しか暴力を振るわなかった。

太田と江藤を無視して机に荷物を置こうとした瞬間、

 

バキッ

 

「!?」

「彰・・・俺ら2人を無視するお前が悪いんだからな」ブルブル

「そうだ!テ、テメェが悪いんだからな・・・」ブルブル

 

2人は体を震わせながら俺を見つめていた。よく見ると手には特殊警棒を持っている。

その瞬間俺の頭からすーっと血が流れていた。そしてゆっくりと意識を失った。

意識が無くなる前に2人の顔を見ると2人は顔を青ざめながら俺を見て笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間俺が目を覚ました場所は保健室だった。

よく見るとベッドで寝かされていたのか体が横になっていた。

俺は保健室の先生を探そうと起き上がった瞬間突如頭に電気が流れた様な痛みが走った。

慌てて頭を触ると包帯が巻かれていた。そんなことをしていると、

起きたのねっと先生がやって来てくれた。俺は先生に何があったのかと聞くと

先生は優しく頬を緩ませながら落ち着いた声で伝えてくれた。

 

俺がここに運ばんで来たのは太田と江藤だったらしい。俺はそれを聞いて耳を疑った。

だって俺を殴った奴らだったからだ。しかし、先生が言うにはこうだった。

 

「西住君が机の角に頭をぶつけったって太田君と江藤君が言っていたわ」

「!!?」

 

そう聞いた瞬間俺はベッドのシーツを思い切り掴んだ。奴らがどこまでも糞だったというのも

よく分かった。自分がやったことを違うことに塗り替えるような奴らに俺は感情を出した。

そして決意した。アイツらを“殺す”ことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい彰!!俺達をこんなとこに呼び出すとはいい度胸してんな」

「いい度胸してんのはお前らだろ・・・」

「あ!何だ!小さ過ぎて聞こえねぇーぞ」

「お前らだろって言ってんだよ・・・」

 

俺は保健室で安静しておけと言われたがこっそりと抜け太田と江藤2人を昼休み中体育館裏に

2人は最初何を言ってんだっと言わんばかりの顔をしていたがすぐさまあの憎い顔をしてついて

来た。俺はここに来る前にポケットにハサミを入れた。コイツらの顔に傷をつけてやろうと

思って。

 

「お前ら・・・保健室の先生に嘘ついただろ?」

「あー!当たり前だろ。わざわざ自首する奴がどこにいる」

「保健室に連れて行ってあげたぐらい感謝しろよ!」

「感謝しろだと・・・!」

 

やっぱり許せない。コイツらには謝罪という言葉すらない。もういい。コイツらを殺してやる。

そう思っていた瞬間俺は2人に突っ込んでいてポケットからハサミを出していた。

2人は俺がハサミを出した瞬間あの憎い顔が一気に青ざめた。俺はまず太田に標的に捉えた。

そして太田を殺した後に江藤をやろうと考えた。

 

「死ね!!!!」

 

顔が青ざめている太田の懐に入りハサミをグッと握って刺そうとした。

この距離なら必ず腹に刺さる。やった!殺せる。そう頭の中で思って力を入れた瞬間、

 

「おい!!何やってる西住!!」

「え!?」

「先生!!」

 

何と目を向けた先には先生達がやってきたのだ。何でだ。姿は目眩ませてはずなのに。

それなのに先生達は太田と江藤の身を確保した後突如俺の頬に1発拳を入った。

 

「ガハァァ!!」ドサッ

 

まともに入った後よろめいてしまい、尻餅をついてしまった。

その隙を逃さず先生は俺を拘束した。

 

「このバカ野郎が!!殺す気か!?」

「くっ!!」

「先生怖かったよ!!」

「本当に殺されると思ったよ!」

「そうかい。もう安心していいからね」

「「はいっ!!」」

 

何がはいっだよ!俺のこと警棒で殴ったくせに何でアイツらのこと守ってんだよ!

おかしいじゃないか!

 

「離せよ!俺はアイツらに警棒で殴られたんだよ!!」

「貴様せっかく保健室に連れて行ってくれた太田と江藤に何を訳の分からんことを言うんだ!!」

「ぐっ!!」

 

先生はそう言うと更に拘束を強めた。すると、段々意識が霞んでいった。

嗚呼、この世は不安定だ。何で皆俺だけにこんな事をするんのだろう。

嗚呼、憎い。何もかもが。そう思って太田と江藤の顔を見ていた。

その時俺は絶対忘れなかった。2人の顔に僅かに俺に対しての笑顔を見せたことを・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰ると日が落ちるまで自分の左耳には怒声と罵声しか響かなかった。

 

「彰!やっていいことと駄目なことぐらい分からないの!?」

「違うよ!・・・その前にアイツらが俺を警棒で・・・」

「彰!嘘をついたって助かると思うなよ!!」パチン

「痛っ!!」

 

父親から平手打ちをされた。それに続くばかりに母親からの平手打ち。何で・・・おかしいよ!

自分の息子の言う事が信じられないの!信じてよ!

 

「もういいわ。あなたにはもう言っても無駄の様ね。今日の夕飯は食べなくていいわ」

「え!?」

「え!?じゃないだろう!!」バキッ

「グハァッッ!!」ドサッ

 

父親が俺に対してフックを入れた瞬間説教は終わった。おかげで今日の夕飯無しになった。

殴られた場所を両手で抑えながら廊下を歩いていると、

 

「相変わらず痛がるのは上手だな」ドゴッ

「痛っ!!」

 

突如誰かが後ろから蹴りを入れて来た。振り返ると俺の右耳を潰した妹がいた。

あからさまに俺を軽蔑している。

 

「お兄ちゃんボコみたいだよ!」

「・・・うるせぇよ」

 

その後ろにはもう1人立っていた。俺がボコだと・・・。コイツふざけてやがる。

そう思っていると後ろから、

 

「おい。私の妹に向かってなんていう口の聞き方をしているんだ。このおじろくが!!」バキッ

「ッ・・・」ドサッ

 

思い切り腕を振られたパンチが鼻に入った。鼻から鼻血が出ている。

そして続け様に馬乗りで数発殴られた。殴り終えるとまるでお決まりの様に俺の頭を踏みつけた。

 

「お前みたいなおじろくの分際は、“生きる価値”もないんだ。

 お前は一生私とみほのおじろくとして生きていろ」

 

そう言うと俺の腹を蹴った後妹を連れて夕飯を食べにいった。

たまに聞こえてくる嬉しそうな声を聞いていると思わず目から涙が溢れていた。

分からない。何度も拭っても溢れる。

 

「坊ちゃん・・・」

 

菊代さんは遠い所から俺を見ていた。多分どう声をかければいいか分からなかったのだろう。

顔を引きずっていたから。

 

もう寝るまで何もすることが無かった俺は風呂に入り、上がった後自分の部屋に障子を開けた。

 

布団を敷いた後俺は意識が無くなったように倒れ、死んだ様に眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眠っている間俺は恐ろしい夢を見ていた。

 

「消えろ」

「ゴミ」

「厄介者」

 

俺は両手で耳を塞ぎながら座っていた。そして俺を囲んでいるかの様に家族を始め、

学校の先生や石田達が俺に向かって口々に暴言を吐いていた。

 

「何でこれが出来ないんだ!!このゴミめが!!」

 

やめて。

 

「あなたの様な最後まで嘘をつき続ける子など私は知らないわ」

 

やめて。やめて。

 

「お前には戦車の整備の仕方を口が酸っぱくなるまで言ってやった。

 それなのに分からないなんて・・・お前は病気か?」

 

何で俺だけ・・・。

 

「雑魚彰は一生私たちの飼い犬だ」

「お兄ちゃんってホント迷惑しかかけないんだね」

 

うるさい・・・黙れ。

 

「先生はお前みたいな屑なんかと一緒に授業なんてしたくないんだ!少しは石田君を見習え!!」

 

何でそんなこと言うの・・・。

 

「やーい!お前は底辺。俺は頂点だ!」

「彰!!テメェは一生俺らの子分だ」

「しっかりとよく命令を聞いていろよ」

 

嫌だ。子分なんかじゃない。俺は・・・。

 

「彰」

 

やめて。

 

「彰」

 

やめて。

 

「彰」

 

やめて。

 

「雑魚彰」

「お兄ちゃん」

 

やめろ。

 

「西住!」

 

やめてくれ。

 

「おい子分!」

「子分!」

「返事しろよ!」

 

やめて・・・。

 

 

「「「「「「「「「彰」」」」」」」」」

 

 

やめてくれ!!!!!!

 

 

「う・・・うわぁあああああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

突如俺じゃない男のうめき声と悲鳴が俺の口から出た。あり得ないぐらい大きな声を出しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!!はぁはぁはぁはぁはぁ」

 

次の瞬間俺が目を覚ました場所は真っ黒な部屋ではなく太陽の光によって照らされた

自分の部屋だった。

 

「くっ!!!」

 

今日は土曜日だ。ゆっくり起き上がって絵を描こうと思い起き上がっただけなのに

体中に電気が走った様に痛みが響く。が、すぐに何事もなかったかの様に痛みが無くなった。

障子を開け、廊下に出て俺は洗面所に向かっていった。でもこの時違和感に気づいた。

 

「あれ?右目が見えない」

 

前まではまだ眼帯を外してもぼんやりとしか見えなかった右目がまるで絵の具の黒色で

塗りつぶされたかの様に全く見えないのだ。どう言う事だと思い少し早歩きに動く。

早歩きの間俺は幾度も家の女中とすれ違った。女中は俺を見ると、皆驚いて顔をして俺に

バレないようすぐさま表情を変える。一体何が起きてるんだ・・・。

そう思っていると前から菊代さんがやってきた。

 

「おはよう御座います。坊ちゃん」

 

菊代さんはいつも通りに挨拶をしてくれる。じゃあ何で皆驚いていたんだろう。

 

「朝食の用意が出来ていますが、どうなさいます・・・・・・・・・え?」

 

突如菊代さん顔が優しい微笑みから驚きの顔に変わった。

 

「ど、どうしたの?」

「え・・・坊ちゃん・・髪が・・・・・・髪の毛が・・・」

 

髪の毛?髪の毛がどうかしたのかなぁ。

 

「髪の毛が・・・・・・いつもの黒色と違って“真っ白”に・・・」

「え!?」

 

髪の毛が・・・真っ白?ねぇふざけてるんでしょ・・・。でも菊代さんの顔からは驚きが隠せていない。

その直後もう1人女中がやって来た。菊代さんはもう1人の女中がやって来るのを見ると

急に走りながら女中の肩を持って、

 

「ねぇ!鏡を持ってきて頂戴!!坊ちゃんの!彰坊ちゃんの髪が!!」

「え・・・あ、はい!」

 

女中は菊代さんの言う通りにして鏡を取って来てくれた。数分経つと先ほどの女中が鏡を

持ってきて、やって来た。女中から鏡をもらった菊代さんは恐る恐る俺を鏡に写した。

俺も一体何が起きてるのか全く分からないのでゆっくりと目を開けた。すると、

 

「え・・・・・・」

 

何とそこには昨日まで黒かった俺の髪が雪の様に白い白髪になっていた。しかし俺は髪だけに

驚いていなかった。右目の網膜が赤くなっていてまるで化け物の目の様になっていた。

俺は鏡に映る自分を受け入れることが出来なかった。そしてゆっくりと息をしていたのが

段々と早くなり過呼吸へと変わっていった。過呼吸になった俺は目を真っ白にして意識が飛んだ。

 

「坊ちゃん!!」

 

菊代さんは俺の肩を何度も叩くも俺の意識が戻らない。

 

「ちょっと!!救急車を呼んで頂戴!急いで!!早く!」

 

菊代さんの焦りに皆驚いたのかすぐさま行動に動いた。

 

「坊ちゃん!しっかりして下さい!!今救急車を呼んだので」

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

 

菊代さんの声を遮る様に俺は過呼吸を荒くしていた。俺は心の中でしきりに呟いていた。

 

《絶望》

 

絶望。それは、希望を失うこと。全く何かに期待出来なくなることだと略されるが、

今の俺にふさわしい言葉だった。

 

だって・・・戻ると信じていた左目があんなグロテスクの目になっていたのだから

俺にとって絶望の淵だった。

 

 

 

その後救急隊が大急ぎで駆けつけて俺を運び病院へと運び込んだ。




如何でしたか?今回は、まず最初の伏線を回収しました。
次の朝に髪が真っ白になるなんて私なんか幽体離脱してしまいますよ・・・。
次回は4月に投稿予定です。もしかしたら遅れるかもしれません。
ではその時までお楽しみに。。 

                  !!See you!!


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誕生

どうもボノぼんです。長い間休んでいて申し訳ございません。
それでは3,2,1 どうぞ。


「はっ!くぅ・・・・・・」

 

次の瞬間、俺が目覚めた場所は家ではなく病院のベッドの上だった。

 

「き・・・菊代さんは・・・?」

 

確か菊代さんも一緒にいたはず・・・。一体何処へ行ったんだろう。

そう思ってベッドから降りようとした時だった。

 

「あ!!目覚めたね!?」

 

振り返ると、そこには聴診器を首から掛けていた1人の医者が立っていた。

医者は、俺にゆっくりと近づいてくる。

 

「・・・・・・!」

 

医者が近づいてきた瞬間、何故か体が急に身構えてしまった。しかし、医者は、

 

「よしよし・・・・・・よく寝ていたね。それにしても、髪の毛は・・・」

 

頭を撫でながら俺を見て微笑んでくれた。何か菊代さんみたいだな。

 

「先生ちょっと・・・!」

 

扉の所に看護師がぽつんと1人立っていた。

 

「はいはい今行きますよ。じゃあね患者さん」

 

そう言うと、医者は看護師と一緒に何処かへ行ってしまった。

再び1人になった俺は何もする事もなく、

 

「寝るか・・・・・・」

 

再び寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方こちらは診察室。私は彰坊ちゃんの容体を聞こうと病院に行った。先日坊ちゃんが過呼吸を

起こして白目をむいていたのでどうしても気になったからだ。そう思っていた時、

電話が少しブルブルと震えた。急いで駆け寄り受話器を取った。

 

「もしもし・・・」

『あ!西住彰くんのお家ですか?』

「え・・・?」

『あ!!すみません・・・こちらは九州総合病院の者で・・・』

「あぁ九州総合病院の・・・」

 

電話先の相手は、坊ちゃんが搬送された九州最大規模の九州総合病院の医師。

声からして若い医師のようだ。

 

『すいませんね・・・今から少し病院お越しいただきませんでしょうか?』

「今からですか・・・・・・?」

『えぇ。今すぐにですねー』

「そうですか・・・では今から参ります」

『そうですか!ありがとうございます!!では!」

「あ・・・あの・・・・・・!」

 

ガチャン!!

 

「切れちゃった・・・・・・」

 

なんとも強引な電話に少しびっくりするも、坊ちゃんの容体が聴けるのならと思い

私は下駄を履いて病院に向かうことにした・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーー着いた・・・・・・」

 

タクシーを使ってなんとか病院前に着く事が出来た私は、すぐに病院の中へと入った。

 

病院の中に入ると、沢山の患者がロビーにいた。相変わらずここは患者の数が多い。

その為混雑するのでどうも道が塞がってしまう。そう困っていた時だった。

 

「あ!もしかして彰くんのお家の方ですか?」

「え?」

 

後ろを振り返るとそこには少し癖毛気味で白衣を着ていた1人の若い医師が立っていた。

 

「あ・・・あの貴方は・・・?」

「あぁすいませんね!さっき電話をした者なんですが・・・・・・」

「あ!あの時の・・・!」

「理解してくれましたか!さあこっちへ」

 

そう言うと私の前を歩いて先導して行く。それについて行く私。そして、そのまま進んで行くと、そこは診察室ではなく資料などがまとめて入れられていた小さな部屋だった。

 

「あのここは?」

「気にしないでください。ここは院長室なんですが、今日は大事な話があると

 伝えたので特別に許可を得たんです」

「す、すみません!!ただの話だけでここまで気を遣ってくれまして

 『いえただの話ではありません・・・』」

「え・・・・・・??」

 

顔を上げると、さっきまでのほんわかした顔ではなくキリッとした目つきで至って

真剣な表情をしていた。

 

「あの・・・ただの話では無いとは一体・・・・・・私は坊ちゃんの容体を・・・」

「ですから今から容体のことを全て話すので、落ち着いて聞いてください・・・」

 

医師は、曖昧な表情を浮かべる私に対して、次の瞬間最悪なことを伝え始めた。

 

「まず彰くんの髪の事なんですが・・・もう・・・・・・一生黒い髪(・・・)が生えるのはまずありません・・・」

「え!?」

「白髪になった理由なんですが・・・・・・実は膨大なストレスから出来る“自律神経失調症”

 だったんです・・・彰くんは・・・・・・」

「嘘・・・嘘・・・・・・」

「すみませんもっと早く気づいていれば・・・・・・本当に申し訳ございません・・・」

 

現実を受け入れられない私に向かって医師は頭を下げていた。その時私はどう対応したらいいのか分からなかった。しかし、最悪はそれだけじゃ無かった。

 

「後・・・お母さんにもう一つ程お聞きしておきたいことがあるのですが?」

「はい・・・・・・何ですか?」

「彰くんの“右目”と“右耳”はいつから悪くなったか知りませんか?」

「は・・・・・・・・・???」

 

一瞬何を言っているのか分からなかった。目と耳が悪い。何を言ってるんだ。

目は分かるが、耳が悪いとはどういうことだ。

 

「彰くんが病院に運ばれて来際に診察したのですが・・・・・・右目の視力はほとんどなくて、

 右耳の聴力は多分一生元に戻らないです・・・・・・」

「でもその二つにはある不可解な点があるんです」

「不可解な点?」

「はい。“右目”と“右耳”どちらも強い“衝撃”や“暴力”が無ければならないんです。

 ですから何か知っていればここで全て教えて欲しいのですが『・・・・・・ざけるな』」

「え?」

「・・・ふざけるな・・・・・・ふざけるな!!」

 

ガシッ

 

「ちょ、ちょっとお母さん落ち着いて!!」

「そんなの嘘よ!!坊ちゃんの・・・彰坊ちゃんの右目が失明だなんて!!

 彰坊ちゃんの右耳が失聴だなんて嘘よ!!」

 

気がつくと、私は医師の胸ぐらを掴んでいた。そんなのは嘘だと思いたかった。

罪も無い子供に体の大事な部分を片方ずつ奪うのだなんて!

 

「落ち着いて下さい!!!!」

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

ようやく取り払われると私の両腕を看護師達が離さんとばかりに握っていた。

医師は尻餅を突いていたが、直ぐ起き上がり私の方に近づいてゆっくりと優しい声で

伝えてくれた。

 

「お母さん急にそんな事を言われたら誰だってそう言ってしまうんです・・・・・・」

「ハァハァハァ」

「でもこの件については彰くんには一切喋らないので安心して下さい!」

「・・・・・・はい」

「後、右耳はもう治ることはまず無理ですが・・・目の方は後からレーザー手術で治せますので」

「・・・・・・・・・・・・」

「今日はここまでしてお開きという事でもう彰くんの顔だけを見てまたお越し頂き下さい」

「今日は本当にありがとうございました」

 

そう言うと、医師はきれいに頭を下ろした。後からも看護師などがありがとうございましたと

頭を下げてくれた。私は、医師の言う通りに坊ちゃんの顔だけを見て帰ることにした・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「坊ちゃん・・・・・・」

 

院長室を抜けた後、私はすぐに坊ちゃんが入院している部屋にやって来た。いつもなら私の顔を

見ると、ほんの少しだけ頬を緩ませてくれるが今はぐっすりと眠っていた。

 

「坊ちゃんごめんなさい・・・・・・坊ちゃんごめんなさい・・・!」

 

坊ちゃんの手を握り私はただ謝ることしか出来なかった。坊ちゃんはいつも家元夫婦や

上役の人達に虐待に近い暴力を浴びて、奥様達からは厳しく躾られお嬢様2人には毎日嫌がらせをされていた。その光景をいつも見ていた私達家政婦は、引いているのもいればやられて当然だと

思う者達ばかりいた。そのせいで坊ちゃんは誰にも助けてもらえなかった。

 

でも、私だけは坊ちゃんの居場所になろうと頑張った。ボロボロになっている坊ちゃんの近くに寄って手当てしてあげたり、叱られている坊ちゃんを守ったり出来る限りのことをした。すると、前と変わらず皆には煙たがられていたが私といる時はそんなことは無くなり、

逆に笑顔を見せてくれた。

 

その笑顔を見た時私は、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

 

しかし、今はその笑顔は無く今まで以上に苦しんでいる姿が映った。

もうこれ以上やられると坊ちゃんはもう完璧に壊れてしまう。

 

まずは何とか奥様と旦那様を説得しなくては。そして、後から家元夫婦と上役達に。

 

もう坊ちゃんを傷つけさせない。坊ちゃんは必ずこの私が守る。心の底で私は神に誓った。

でも・・・

 

 

 

 

 

後にこの思いが簡単に崩れるのをこの時私は知らなかった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入院してから2週間が過ぎようやく俺は退院することが出来た。

でも、医者からは髪の事や目の事は何も話されないままだった。

 

どうして教えてくれないだろうと思い、つい菊代さんに聞くも、聞いていないと優しく微笑み

ながら教えてくれた。そう車で病院を出て数十分経つと大きな門が見えた。そう家だ。

 

家に帰るのは本当久しぶりで、少し緊張した。でも菊代さんが手を掴んでくれると、

緊張が無くなった。門をくぐって数分経つと目の前に大きい屋敷が見えた。菊代さんが先に

入って、戸を開けてくれた。俺はまず靴を脱いで、すぐに両親の所に向かうことにした。両親が

いる部屋までに行く間の渡り道を通っていると、向こうから誰かがぽつんと腕を組んで

柱にもたれながら俺を見ていた。

 

「何だ。もう少し病院にいると思ったらもう帰って来たのか」

 

俺を見ていたのは俺と1つ違う妹のまほだった。

 

「・・・・・・何だよ。ジロジロ見やがって」

「フッ・・・髪が白くなったって女中の人達が言っていたから本当かなぁと思っていたら

 本当だったからつい可笑しくて可笑しくて」ニヤッ

 

ニヤニヤしながら俺を軽蔑するまほ。そんなまほを俺は少しギロっと睨みつけた。すると、

 

バキッ!!

 

「グハァッッ!!!!」

「何だその顔は。何かイラつくな・・・」

 

どうやら俺に睨みつけられたのが気に入りなかったのか膝蹴りをかましてきた。

 

「雑魚彰・・・・・・お前の様なおじろくの分際で、私を睨みつけるなっ!!!」ドゴッ!!

「ブフッ!!」

 

そして、続け様に大きく構えてからのストレートを打ってきた。鼻から鼻血が出ている。

 

「フッ・・・おい雑魚彰。よく聞け。再来週は、お祖父様達の家で新年会をするらしい・・・

 私達も晴れ着に着替えるがお前だけは晴れ着が着れないらしい・・・・・・何故だか分かるか?

 お前が“厄介者”だからだ。ハッハッハ」

 

ドス黒く染まった笑みは正しく悪魔の面だった。そんなまほの顔を見て、俺は少し恐怖を覚えた。

 

「まぁそう言うことだ・・・お前はじっと大人しく下を向いていればいいんだよ」

 

そう言うと、自分の部屋へと向かっていた。俺はゆっくりと立ち上がって、

再度両親の所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでさ病院の時って凄く暇だったんだ!」

「・・・・・・そう・・・」

「それがどうした」

 

両親がいる部屋に着いた俺はどうしても無性に構って欲しくて、両親と少しでも構って欲しくて、俺はいつもと違って明るく振る舞ってみた。でも、両親はいつもと態度が変わらない・・・。

 

「ねぇねぇ!!それで病院ではね!たくさんの『さっきからごちゃごちゃうるせぇな!!!!』」

 

パンッ!!

 

「っ!!」

「父さんは今仕事しているんだ。邪魔をするならどっか行け!!」

「・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」

「ったく・・・お前のせいで、もし仕事が遅れたらどう責任を取るんだよ・・・」

「ごめんなさい・・・・・・」

「もういい謝らなくて・・・・・・聞いているだけ腹が立つからな。

 ほら!!分かったらとっととどっか行け!」

 

父親はいつもより機嫌が悪くて、さらに機嫌を悪くさせてしまった様だ。

仕方ない。次は母親の所へ・・・。

 

「母さん!!あのね僕『彰。母さんは今忙しいの。再来週のお正月までに

 仕事を済ませないといけないから後にして頂戴』」

「・・・・・・ごめんなさい」

 

結局久しぶりに両親と話をしようと思ったけれど、何にも出来なかった。

後ろからはクスクスと俺にバレない様に(まほとみほ)が俺を見て笑っていた。

 

 

嗚呼神様教えて下さい。何故俺だけがいつもこんな風に冷徹な態度を受けるのですか。

何故ですか。教えて下さい。

 

神様・・・・・・!!

 

 

そう心の中で呟きながら早いこと2週間が過ぎ、お正月の日がやってきた。

そして、この日が俺の人生の分岐点ということを俺はまだ知らなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

退院してから2週間が過ぎて、年が変わった。この年から俺は、小学5年生と進級する。

でも、あまり学校に行きたくない。だって虐められるからだ。特に石田と太田と江藤の3人に・・・。

 

そんなことはさておき今は祖父母の家に来ている。そう新年会だ。はっきり言って行きたく

なかった。また暴力を振るわれるからだ。家族や上役の人達は皆晴れ着を着ているのに、俺だけは黒いセーターとズボンだった。晴れ着は?と俺が聞くと、両親や女中は何も聞かれていないかの

様に無視された。所詮俺などに金をたくさん使いたくないのだろう。それにしては、妹2人には

かなり高級な晴れ着を着せているのに。そう暇で仕方なく俯いていると、周りからは口々と何か

呟いていた。

 

「ねぇ見て。しほさんとこの息子さん・・・髪が真っ白よ」

「本当だな。全く・・・あの年で髪を染めるだなんて何という教育をさせているんだ」

「だから私は言ったんだ。あの子なんかを・・・『ちょっと!それ以上は禁句よ』」

 

周りから聞こえる自分の批判。何も知らないのに、髪のことに愚痴をいう上役の人達を見て俺は、少し怒りを覚えた。でも、勇気が無かった。あんな愚痴に言い返す勇気が無かった。

 

「坊ちゃん・・・」

 

その時、顔を上げるとそこには菊代さんが正座で俺を見つめていた。

 

「坊ちゃん・・・明けましておめでとう御座います。今年も何卒よろしくお願いします」

「あ!よ、よろしくお願いします!!」

 

頭を下げる菊代さんに遅れて、自分も深々と頭を下げる。そんな俺を見て、菊代さんはクスッと笑っている。クスッと笑った後菊代さんは俺にある小さな封筒を差し出した。

 

「坊ちゃんお年玉です。どうぞ」

「あ、ありがとう・・・」

 

お年玉なんてほとんど貰ったことが無かったから、少し焦ってしまった。

後から恐る恐る封筒を除くと一万円札が入っていた。

 

ワイワイ賑わっていたこの部屋も、祖父母達が来ると急に静まり返った。

まず、祖母が軽く挨拶をするとシャンパンを片手に持って、

 

「それでは皆、昨年はお疲れ様でした。挨拶はここまでにして楽しい新年会にしましょう。

 それじゃあ···」

 

「「乾杯!!!!」」

 

祖母の合図と共にグラス同士がぶつかり合う音が響いた。それと同時に始まった宴。

皆楽しそうに食べ始めるが俺だけは、

 

「・・・・・・・・・」

 

この新年会に楽しさを感じることが出来なかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤー去年は色々ありましたが、何とかなりましたよ」

「本当本当色々なことがあったけど、この飯を食べると全部忘れてしまうよ」

 

無事新年会は始まったものの俺は相変わらずぽつんと静かに食べていた。

周りの皆は隣同士で喋っているのにも関わらず。

 

 

そう静かに食べていると祖母がスッと立ち上がり、2つ隣の妹達に何かをあげていた。

何だろうと思い、目を向けると、

 

「はーい!!まほちゃん〜みほちゃん〜おばあちゃんからお年玉だよ〜!」

「ありがとうございます。お祖母様」

「ありがとうおばあちゃん!!」

「・・・・・・・・・」

 

お年玉を貰ってニコニコしている2人の妹を見て俺は少しばかり羨ましいと感じだ。 祖母からは一度も貰ったことが無いから今年こそはと思ったが結局貰えなかった。そう2人が貰っている所を遠くで見ていると祖母がこっちが見ているのに気づいた。すると、いつもの様に目を鋭くさせ、

 

「何だいその面は。余りジロジロ見ないで欲しいんだがね」

 

少し怒気がこもった言葉をぶつけられた。

 

「・・・・・・・・・」

 

相変わらず俺はいつもの様に無表情の顔をしていた。そして、その顔が気に入らなかったのか

近づいて来て、更に睨みつけられた。

 

「ったく・・・・・・相変わらずその面は気に入らないわ」

 

そう言うと、チッと舌打ちをして俺から離れていった。しばらくすると近くにいた周りの皆が

俺をゴミを見るかの様な目で見ていた。

 

「本当に鬱陶しい子供(ガキ)だ。家元に怒られる子供なんてアイツだけだ」

「後継者のまほちゃんには“雑魚彰”って呼ばられているらしいよ」

「本当非の打ち所がありすぎる困った厄介者だな」

 

わざと俺に聞こえやすい様に耳元近くで話す上役達。それを聞いていた俺はあの時の悪夢を

思い出して、額から冷や汗をかいていた。何とか落ち着こうと、水が入ったコップを

持とうとした瞬間悲劇が起きた。

 

ガシャン!!

 

「!!」

「「!!」」

「「「「「!!」」」」」

 

コップを持とうとした右手が汗でツルッと滑ってしまい水を溢してしまった。

それに加えてコップ自体も割れてしまった。

 

「あああああ・・・・・・」

 

その瞬間、俺は体中からとても冷たいモノを感じた。その冷たいモノとは、

 

「・・・・・・ああああーーー!!!!やってくれたな彰君よー!!!!」

「!!」

 

そう祖父のことである。

 

「本当に・・・・・・この厄介者が!!!!!」ブンッ!!

「くっ!!」

 

杖を振り上げた瞬間、俺はあの時のことを思い出し、体を丸めて痛みに耐えようとした。

しかし、一向に痛みは来ない。どうしたのかと思い目を開けるとそこには、

 

「坊ちゃんを・・・もう傷付けないで下さい・・・・・・」ツー

「え・・・・・・?」

「な!!菊代!!何故お前が!!!」

 

何と菊代さんが、俺と祖父の間に入って庇ってくれたのだ。

菊代さんは頭から血を流しながら俺を守ってくれていた。

 

「お願いします御父様!!もう彰坊ちゃんに暴力を振るわないで下さい!お願いします!!」

 

そう言うと、頭を畳に擦り付けた。そう謝罪の最上級・・・土下座だ。土下座をした菊代さんを

見た俺はこれが本当に俺が知っている菊代さんかと思った。

 

(菊代さん・・・もう良いよ。俺は自分でもう諦めてるんだから・・・・・・)

 

菊代さんに顔を上げてもらおうと何かしようとした瞬間、

 

「ハッハッハハッハッハ!!!!」

「!!!!?」

 

突如祖父が大きな声で笑いに笑っていた。一体何がそんなにおかしいんだ。

 

「ハッハッハ・・・そうか菊代。そんなに彰を助けたいんだな」

「・・・・・・・・・はい」

「じゃあ1つ聞こうか。菊代。お前は彰に“右目”と“右耳”が使いもんに

 ならんとはちゃんと言ってるのか?」

「え・・・・・・」

「は・・・・・・・・・」

 

一瞬祖父が発言した言葉に耳を疑った。右目と右耳が使いものにならない・・・・・・

そんなの嘘だよね。菊代さん。

 

「ハッハッハハッハッハどうした菊代。言ってるのか言ってないのかと聞いてるんだが

 何だその顔はハッハッハ」

「嘘・・・・・・何で知っているのですか?」

「何・・・お前と彰が行ったあの病院の院長は、わしの知り合いだからな」

「そんな・・・・・・」

「哀れだな菊代。彰には隠そうとしたのにすぐに喋れるなんてな」

「菊代さん・・・・・・・・・」

 

俯いている菊代さんを見て俺はようやく理解した。この話は本当だと言うことを。

そう感じると俺の心はもう・・・限界だった。

 

「さてもう分かっただろう。分かったらとっととそこを退け」

「・・・・・・・・・」

「聞いてるのか?退けと言ってるんだ!!この『ふざけるな!!』」

 

バギッ

 

「ブフッ!!」

「ふざけるな!!元はと言えばアンタが坊ちゃんの目を潰したんだろうが!!」

「ちょ菊代。落ち着け!!」

「うるさい!!」

 

怒りが完璧に出た菊代さんは、祖父の胸ぐらを掴んで祖父に喰れてやろうと殴ろうとした。

それをただ茫然と見ている他の皆。妹達は見たことない菊代さんの姿を見てびっくりした。

そう周りがびっくりしている中俺は・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

右目と右耳のことでもう抜け殻状態になっていた。

それを見ていた2人の上役は黒い笑みを浮かべ俺に近づいて来た。

 

「よー厄介者。まださっきの事引っ張ってるのか」

「そんなの仕方ないだろう・・・お前が日頃ずっと家元達の癪に触る様なことを

 ずっとしていたからそうなったんだからよ」

「・・・・・・・・・」

「おい。何シカトしてんだよ!!」ドカッ

「グハァッッ!!」

「ムカつくんだよ!!その面がよ!!」バギッ

「グハァッッ!!」

 

2人から平手打ちと蹴りを貰った。本当なら痛いのにもう痛みも感じていなかった。

 

もうどうでもいい。何もかもどうでもいい。そう思っていた時、

 

「きゃあああ!!!!」

「わしがずっとやられて黙っていると思っているのか?」

「菊代。お前も彰と同じ痛みを知れ!!」

「やめて!!」

 

バギッ!!!!

 

「グハァッッ!!」

 

俺が叫んだ瞬間、菊代さんに杖が振り下ろされた。

菊代さんは頭から血が出てピクリとも動いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、俺の中で何かがプツンと音を立てて切れ、体中に赤黒いモノが纏わりついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい何動いてるんだよ!この厄介『死ね』」

「え?」

 

バギッ!!!!

 

「カハァッッ!!!!」ドサッ

「え!!?」

「次はお前」

「ちょ、何するん・・・・・・くっ!離・・・・・・せ・・・よ・・・・・・ブフッ」ドサッ

 

思い切り首を握ると、上役は痙攣して気を失っていた。

 

「おい!!どうしたお前ら!!」

 

祖父は一体何が起こったか、理解できていない様だ。俺はゆっくりと幽鬼の様に祖父に

近づいていく。祖父は俺を見て怯えている。父親も母親も妹達も俺の姿を見て体を震わせていた。

 

「き、気持ち悪いんだよ!!!!」ブンッ

 

ビビりながら俺に杖を振り上げてきた。俺は逃げること無くわざと杖にぶつかった。

 

「・・・・・・・・・」ツー

「ハァハァハァハァ」

「それだけ?」

「!!うおおおー!!」

 

バギッ!!

 

「くっ!!」ドサッ

 

バギッ!!

 

「くっ!!ちょ、落ち着け・・・」

 

バギッ!!

 

「ブフッ!!」

「死ね!!」

 

バギッ!!

 

「死ね!!死ね!!」

 

バギッ!!

 

「死ね死ね死ね!!」

 

バギッ!!

 

「死ね!!死ね!!死ね!!」

 

死ねと叫びながら俺は祖父を力強く馬乗りで殴り続けた。

もしここで止めたら駄目だと自分に言い聞かせて殴り続ける。

 

やっと復讐が出来る。やっとコイツを殺せる。そう思うと更に力が入った。

 

「彰やめろ!!」ガシッ

「やめるんだ!!」

 

突如父親と親族が止めに入ってきた。しかし、今の俺にそんなのは通用しなかった。

 

「触んなよ!!!」バギッ!!

「くっ!!」

 

腕を掴まれた為、エルボーを顔に当てた。父親は俺を後ろから抱いて引きずり下ろそうとするも、

 

「な、なんて力だ。こんなの子供の力じゃない・・・!!」

 

今の俺にはいつもの力は出ない様だ。

 

「死ね!!!!」

 

バギッ!!!!

 

「ブフッ!!」

 

バギッ!!

 

「うおおおーーー!!!!!!」

 

バギッ!!×10

 

叫び声を上げながら俺はラッシュで顔を殴った。

そして、これでトドメだと今までの中で1番強く殴りつけた。

 

 

グシャッ!!

 

「「!!!!?」」

「ハァハァハァ・・・・・・ヘヘッヘヘッ」

 

物凄い鈍い音が出た瞬間祖父は一瞬ピクっと動いたと同時に動かなくなった。

その姿を見て俺の中の赤黒い感情が芽生えた。

 

「嘘でしょ・・・・・・ねぇ貴方。貴方!!」

 

祖母は祖父の肩を揺らすも全く返事しなかった。

それを見た俺は祖母を払い退け胸ぐらを掴んでこう呟いた。

 

「殺してやる・・・・・・テメェが生きてる限りテメェの女!!テメェの家族!!テメェの友人!!

 関わる人間全員再起不能にしてやる!!!!」

「テメェも!!お前も!!お前らも!!!!全員再起不能にしてやる!!」

「皆全員再起不能にしてやる!!!!!!!」

 

そう周りに叫んだ後、首を少し傾けながら俺は新年会に来ていた全員の顔を見た。

皆俺を見て怯えに怯えていた。特に妹達は体を抱き合いながらビビってやがる。

でも、アイツらはまだだ。まずやるのは、この糞ジジイと上役の犬2人からだ。

 

『僕らは卵から生まれた少年と言う名の鳥なんだよ。卵は世界だ、生まれようと

 欲するものは一つの世界を破壊しなければならない』

 

俺の頭にはヘルマン・ヘッセの名言が流れていた。

 

一つの世界・・・・・・そうこの家の糞みたいな連中達から受けた屈辱の世界だ。

俺はその世界を今日破壊した。そして、新しい世界が今日から始まる。

 

コイツらにはたっぷりと・・・・・・やり返してやる。

 

誕生。それは物事や状態が新しく出来ることを言う。

そうこの日が俺の人生の分岐点であり、俺の中にある赤黒い感情が誕生したのである。

 

 

 

 




菊代を傷つけられたことで、彰が遂に暴走。そして、破壊。
やっと投稿者が考えていた山場を一つクリア出来ました。 
次回から彰の態度が変わるので、そこにも目を向けて見て下さい。
次回は5月でご会いしましょう。


            !!See you!!


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復讐(クラス)

どうもボノぼんです。
お陰様でお気に入り50を突破しました。
そして、私がライバルとして見ている平四郎さん作
『ガールズ&パンツァーウォーズ』のお気に入り数を超えました。
正直めちゃくちゃ嬉しいです!でも油断は禁物なので今まで以上に頑張ります!
それでは3,2,1どうぞ。


 

ふと顔を上げると、美しい花が咲いた桜の木にホトトギスが止まっていた。

少し経つとホーホケキョと大きく鳴いた。もう一度鳴くと何処かへと飛んで行った。

春だなぁーと思っていると誰かがゆっくりとドアを開けた。

 

「彰様・・・・・・そろそろ学校の用意を・・・・・・」

 

体をブルブルと震わせながら女中が1人入って来た。

 

「分かってるよ。今から行くから退いて」

 

ランドセルを持って俺は学校への支度をし始めた。嫌もうとっくに出来ていたのだが。

 

「あの・・・彰様『気安く呼ぶんじゃねぇよ。後口臭ぇんだよ』」

「・・・・・・・・・・・・」

 

ガンを飛ばしながら言うと女中はし、失礼しました!っと言いながら何処かへと行ってしまった。いい気味だ。

 

「さてそろそろ行くか」

 

ランドセルを背負い帽子を被り戸をガラガラと鳴らしながら俺は学校へ向かった。

途中何度も色んな人とすれ違ったが皆俺の顔を見るとすぐに道を譲る。

 

あの日からもう3ヶ月経ったが俺は何にも被害を受けなかった。

受けたと言っても長い間隔離されていただけだ。隔離されている間

ふと女中の話を盗み聞きしていた時俺はある事を知った。

 

あの糞ジジイと上役達が生きている。

 

それを知った瞬間、俺の中の“赤黒いモノ”が少し溢れ始めた。

だってまたやれるからだ。アイツらを・・・ボコボコにできるのが。

そう思うと無意識に笑みを浮かべる。その笑みは周りからすれば恐ろしい笑みだと思うが。

 

そんな事を考えながら歩いていたらもう校門前に着いていた。

去年の11月から全く通わなかった学校。送られてきたプリントを見ると

どうやらあの石田、太田、江藤も同じみたいだ。

それを知った瞬間、何故か笑みが溢れる。分からない。

校門を越えてからゆっくりと靴を脱いで上靴を履く。そして、

階段をトントンと音を立てながら上がっていく。やがて教室がある階に着くと

そこからはほんの少し歩くとようやく教室に着いた。

教室の中には独特の椅子と机がぶつかる音やガヤガヤと賑わう声が聞こえる。

でも、そんなのお構いなしにガラガラと音を立てながらドアを開けた。

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・!!」」」」」

 

ドアを開けた瞬間、皆が俺の方へ顔を向けた。殆どの奴らは俺を見てとてもびっくりしていた。

でも、他の奴らは一瞬びっくりしていたが段々と気持ち悪い顔になっていく。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そんな奴らを無視しながら自分の席の場所へ向かう俺。

その際色んな話し声がわざと聞こえる様に聞こえて来る。

 

「おい西住だぞ・・・!」

「何で急に来たんだ・・・病院に行たんじゃねぇの?」

「そんなことよりさぁあの髪見てよ。真っ白だよ」

「本当だ・・・でも片目もなんかおかしいぞ」

 

殆どが髪の事や・・・右目の事について喋っている。正直反吐が出る。

今まで俺はこんな奴らにもビビっていた事に・・・

糞みたいな会話を聞きながら自分の席だと思う所に着くとそこには、

 

「ん?何これ?」

 

机にカッターで大きく死ねっと彫られていて周りにはマジックで、

“死んでくれてありがとう”や“二度と人間に生まれ変わるな”など

かなり酷いことを書いていた。そして、机の上には花が添えられていた花瓶があった。

机に書かれていたのをジーッと見ていると誰かが急に肩に手を置いた。

 

「ヨー彰ー久しぶりだなぁ」

 

石田だ。

 

「お前最近まで病院に居たらしいじゃねぇか」

「もしかして首吊ったの?」

「バーカ。それだったらとっくに死んでるじゃねぇか」

「そうだな!」

「「ハッハハハハハハ!!!」」

 

後ろからゲラゲラと笑っている奴らがいた。そう太田と江藤だ。

他にも以前同じクラスだった奴らもそれに便乗してゲラゲラと笑っている。

 

「おいおいやめろよ。せっかく久しぶりに来た奴にそれが言うことかよ!」

「「え!?」」

「「「・・・・・・・・・!?」」」

 

突如石田が皆を宥めた。太田と江藤がびっくりしている。

そして、他の奴らも・・・。皆がびっくりしている中俺だけは何か勘づいていた。

 

「ったく本当糞な奴らだぜ・・・なぁ彰!!」

「・・・・・・・・・・・・」

 

肩を叩かれながら見てくる石田の顔は何か企んでいる様な顔だった。対する俺は、無表情だった。

 

「まっ!そう言う事だから皆も彰には仲良くしてやってくれよ!だけどその前に・・・」

 

ポケットから何かを取り出している石田。一体何だろうと思いジーッと見ていると、

 

「じゃーーん!!」

 

取り出したのはスマホだった。

 

「まず彰君が皆と仲良くなれる様にパンツ一丁で逆立ちしてワンワンと言ってもらいま〜す♪」

「おお〜〜!!!!」

 

石田がヤバい事を言っているのにも関わらずクラスの奴らはニコニコしながら喜んでいた。

 

「何だよーさっき変なこと言うからびっくりしたじゃねぇか」

「本当性格悪りぃな石田」

「フッ久しぶり来た子分にもなれない奴に俺が優しく接すると思ったか?」

「まぁ・・・まずねぇな」

「だろう!」

 

太田、江藤と話していた石田は、やっと本性を現した。一方の俺は 

クラスのワイワイムードとは対照に無表情で石田達を見ていた。

 

「もう自分の状況がよくわかっただろう。早くパンツ一丁になれよ奴隷」

 

顔を近づけながら嘲笑いながら言う石田。まぁそう来ると予想していた

俺は机に置かれた花瓶を指差しながら呟いた。

 

「なぁ・・・お前か?・・・・・・俺の机に花瓶置いたの?」

「あぁそうだよ。感謝しろよ。結構高かったからよ」

「へぇ・・・・・・」

 

そう言うと俺は、花瓶を手に持って石田の机に花瓶を置いた。

 

「オイオイ彰!!なんのマネだコラ!」

「病院に入院し過ぎて頭おかしくなったんじゃねぇの?」

「場所が違うから置いただけなんだけど文句ある?」

「何だとテメェ!!」

 

俺にからかわれるのが気に食わなかったのか胸ぐらを掴む太田。

 

「おい彰!!お前調子乗りすぎじゃねぇのか!?」

「調子なんか乗ってねぇよ。ただ・・・」

「ただ何だ!」

「今からテメェが“死ぬんだからよ”」

「「「「!!」」」」

 

俺がそう呟いた瞬間、周りの空気が少しビクッとなった。

 

「何だとテメ『死ね』」

「え!?」

 

バギッ!

 

「ぎぁっ!!!」ガシャン

「!?」

「おい!嘘だろ!」

 

何だ。あの糞ジジイと違って軽く殴っただけなのにあんなに痛そうにするだなんて・・・。

コイツは面白い。周りは違った展開少しざわつき始めた。

石田も太田も俺の豹変に少し驚いていた。

 

「おい起きろよ。外道」

 

グシャッ!

 

「ブフッ!!」

 

とりあえず少しイラついたから顔面を強く踏んでやった。

すると、よろめきながら縋る様に俺のズボンを掴んでガンを飛ばしてきた。

 

「テメェ・・・・・・調子乗りすぎじゃねぇのか?」

「そうだ!いくら何でもやり過ぎだ!」

 

江藤も便乗してきた。コイツら・・・石田が言っていたこと聞いてなかったのかよ。

 

「お前ら聞いてなかったのか?俺はただ一発芸(・・・)をしただけだぜ。一発芸を・・・な?石田」

「・・・・・・・・・ああ」

 

石田に目線を見せると、いつも俺を馬鹿にしている表情ではなく

何かに怯えている様な表情をしていた。フッいい気味だ。

 

「・・・・・・っ!!」

「・・・・・・・・・!!」

 

太田と江藤は石田が言ったことを思い出したのか、

歯軋りをしながら悔しそうな顔をしていた。

3人が俺にやられているのを見ていたクラスの連中はじっと俺を見つめていた。

それに応えようと教壇に向かって歩き、やがて教壇に到着するとこう言葉をぶつけた。

 

「テメェら俺を・・・この俺を虐めて楽しい学校生活を送ったみてーだな」

「でもそれも今日でおしまい。これからは俺がこのクラスを・・・虐めてやる!!

 

そう呟いた瞬間、連中共は固唾を飲んだ。石田も、太田も、江藤も皆ビビってやがる・・・。

でも、口だけじゃダメだ。まずは、あの3人を・・・死ぬまで追い詰めてやらないと・・・。

俺は伝えた後、あの傷だらけの机に荷物を置いて、椅子に座った。

周りの奴らも焦りながら座っていく。

 

俺は座っている時ずっと復讐の案を練っていた。

 

(さぁてどう虐めてやろっかな・・・!)

 

周りは見えていないが、赤黒いモノが俺の回りに漂い始めた。

 




はい!後味悪いですが、今回はこの辺で終わらして頂きます。
次回の更新について話す前に皆さんお詫び申し上げます。
本当なら5月までに更新するはずだった今回の話を
遅れてしまって申し訳ございませんでした。
次回は必ず絶対に遅れないよう気をつけます。
まぁ言い訳なんですが、兄弟によく貸してしまったので
執筆が出来ない日が続いたりや受験勉強などで全くやれなかったことがまあ原因です。
でも悪いことは悪いので絶対に気をつけます!
次回の更新は6月中旬か下旬です。
ではその時までお楽しみに。 

                  !!See you!!


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破滅

どうもボノぼんです。
遂にお気に入り数が70を突破致しました。
超嬉しくてたまりません!!これからもよろしくお願いします。


 

「糞っ!!糞っ!!」

「おい落ち着けよ“(まさる)”・・・」

「落ち着けられるかよっ!!!」

 

ギリッ!!

 

箸を乱暴に持ちながら、ギリギリと音を立てて噛む太田。鼻には絆創膏がばつ印に貼られていた。

太田がこれほどまでに機嫌が悪いのにも理由があった。それは、

 

「彰のヤロ〜〜〜!!!!!!俺をコケにしやがって!!!」

 

そう退院した俺に顔を踏まれたからだ。

 

「あの糞ガキぜってぇ許さねぇぞ!!」

「しかしよ彰の奴なんか雰囲気変わったよな・・・」

「ああ・・・!!でも、なんかムカつくぜ。弱ぇークセにイキリやがって!!」

「どうすんだよ勝!このまま放っておくのか?」

「馬鹿か!?するわけねーだろ!!」

「今日中にあの馬鹿シメてやるからよお前も手ぇ貸せ!“裕二(ゆうじ)”」

「ヘヘッ・・・いいぜっ!ぶっ殺してやろうぜー!!」

「そうと決まれば給食食った後、昼休みあるからそん時に呼び出すか!」

「了解ー」

「ちょっと待て・・・」

「え?」

「何だよ“小次郎(こじろう)”!!俺達止めようって言うのか?」

 

太田と江藤の間で盛り上がっていた時に石田だけは静かだった。

理由は何故かは分からないが、ただ静かだった。

石田は2人を止めると、ポケットからあるものを取り出した。

 

「お、おいそれって・・・!」

「フフッ・・・これさえあればアイツを殺せるだろ?」

「そ、それだけはやめとこうぜ!?こんなの使ったら本当に死ぬって!!なぁまさ『いいね』」

「!?」

「小次郎・・・お前って野郎は本当に捻くれてるな・・・正しい意味でも、違って意味でもよ」

「ハハハハハッ!!そうか!?まぁ父さんが市議会議員だからこんなの買えたんだけどな」

「そうだったな。よしよし・・・これで彰が遂に・・・・・・

 彰、飼い主に逆らったら“飼い犬”がどんな目にあうかたっぷりと思い知らせてやるぜ」

 

そう言うと、太田をはじめ、江藤、石田はドス黒い笑みを天井に見せつけていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スゥー・・・・・・・ハァー・・・・・・」

 

一方、俺は給食を早く食べた後普段は使ってはいけない屋上に入って黄昏ていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

黄昏れていた時俺は朝の感触が頭から離れなかった。

初めてイジメられた奴から殴った感触。そして、顔を踏みつけた感触。

この2つは、俺にとってとても気持ち良かった。

今までやり返すということをしなかった俺が、初めてやり返したからだ。でも、

 

「まだだ・・・・・・・・・まだ足りない・・・!!!」

 

今までやられたのを100とすれば、さっきのは0.1程度だ。

俺が目指すのは100。100返せば、次は1000、10000と増やしていく。

そして、ある程度まで達成すれば俺の復讐は成立する。

これは、あの糞家族と同じやり方だ。しかし、まずはアイツら3人だ。

そんなことを考えていると、1つの飛行機を見つけた。

 

「あれは・・・・・・スカイマークのボーイング737-800」

 

ボーイング737-800。737-400の後継でエアバスA320と競合していて、

NGシリーズ中最も多く生産されているモデルであり、737-400よりも胴体が長く、

最大座席数はボーイング727-200と同じ189席だったはず・・・。

一応右目と右耳が見えなくなる前までは飛行機の本を

毎日読んでいたから大体の知識は分かっている。

まぁ、今はもう消えてしまった夢だけど。でも、

やっぱり頭の中では飛行機の事しか浮かび上がらない。

何とかそれを忘れようと忘れようとしているが、無理だ。

どうすれば忘れられるのか?そう思っていた時だった。

 

 

バンッ!!!

 

「!?」

 

突如屋上のドアが乱暴に開けられた。一体何が起こったのか分からず、

戸惑っているとそこに誰かが現れた。誰だろうと思い、ジッと見るとそこには、

 

「よう・・・彰」

 

額から血管を見せて、血が上っている太田が立っていた。

 

「彰・・・テメェまぐれで勝ったからって調子乗るんじゃねぇぞ・・・!」

「戯言言う暇あるなら早く来いよ“負け犬”」

「っ!!!!!」

 

負け犬という言葉が気に入らなかったのか、一直線に走ってきた。

 

「死ねっ!!!」

 

大きく飛び跳ね、右腕を思いっきり振り下ろしてきた。

何だいつも通りに大振りパンチだ。普通にガードしてパンチが来るのを待っていた。

そして、たちまちパンチが来た。でも、こっちはガードしている。大丈夫だ。

 

 

バギッ!!

 

「くっ!!?」

「ハハッ!!!いつもみたいに大振りパンチが来ると思っていたか!?」

 

突如両腕にとてつもなく激しい痛みが流れた。

何だ。何が起こったんた?

何も分からぬまま、うめき声を上げていると、

 

バギッ!!

 

「グハッ!!!」

 

脇腹に硬いモノが当たった感触を感じた。

何を使っているのか思い、太田を見ると右手に特殊警棒を握っていた。

こいつ・・・拳だと俺に負けると思ったのか武器で勝負するだなんてどんだけヘタレなんだ。

 

「フフフフッ・・・・・・ハハハハッ」

「何がおかしい・・・!?」

「だってよ・・・今までイジメていた奴に負けたからそんなの使ってるんだろ?

 本当お前って“負け犬”だなって思ってさ!」

「ハハハハハハッ!!!!」

 

俺は腹が千切れるかと思うぐらい笑っていた。

だって、こんなにおかしいこと体験したこと無かったからだ。

太田は、俺に馬鹿にされたのが気に入らなかったのか、

ますます機嫌が悪くなった。

 

「う、うるせぇんだよっ!!!!」

 

ブンッ!!

 

「2度も喰らうかよっ!!!」

 

バギッ!!

 

「ギャァッッ!!!」

 

とりあえず警棒が振られたと同時に右ストレートをカウンター気味に入れた。

まともに喰らった太田は、鼻血こそは出ていないが悶絶していた。

悶絶している太田に向かって俺は、もう1発喰らわせようとした。

 

「ま、待てよ!!?もうやめよう!?やめよ!!?な!!!?」

「お前・・・俺が止めてくれって言っても笑いながら蹴ってたよな?」

「そ、それは・・・・・・」

「今さら懺悔しても無駄って言ってんだよ!!」

 

ブンッ!!

 

戸惑ってる太田をお構い無しにもう1度拳を振り上げた。

そして、太田の顔に完璧に入る筈だった・・・。

 

「おいおい太田に集中し過ぎじゃねぇの?」

「な!!」

 

バチバチッ!!!!

 

「うわあああぁぁ!!!!!!」

「す、凄ぇ・・・」

「ハハッ!!どうだ太田?これが“スタンガン”の威力だ!!」

「あ・・・ああ・・・・・・」

 

なんて奴らだ・・・後ろから攻撃してくるなんて・・・。しかも、スタンガンで・・・。

体が痺れて動くことが出来ない俺に更に攻撃が加えられた。

 

「おい・・・」

「?」

「おらよっ!!」

 

バギッ!!!

 

「カハッッ!!!?」

「勝・・・・・・これでいいんだろ?」

「ナイスッ裕二・・・!お前にメリケンサックは鬼に金棒だぜ!」

「う・・・・・・」

「おい彰!!お前がどうしようが俺らには勝てねぇんだよ!ハハハハハハッ!!!!」

「・・・・・・・・・・・・」

 

もう駄目だ・・・。コイツらは、本当にクズでしか無い。それに、男でもない。

こんな奴らにやられていると、自分がダサくて仕方ない・・・。

もういい・・・・・・コイツらは生かしておこうと思ったけど、自分の“アレ”が拒否している。

 

ズズズズズズ・・・・・・

 

殺る。殺ってやる。コイツら全員2度こんな真似出来ない様に殺してやる!!

俺の頭の中がこのクズ3人を“あの感情”で殺れと命令している。

 

「おい彰!!もう降参か?今なら土下座すれば許してやるよ〜!!」

「・・・・・・殺す」

「え?何だって?」

「殺す」

「は?」

 

バギッ!!!!

 

「ブフッ!!」

「な!?」

「嘘だろ・・・」

 

何だコイツら。これでも大分あの糞ジジイと比べれば優しくしているのに、

こんなにびっくりしていやがる。コイツら、馬鹿だ。

 

「ゲホッ!ゲホッ!」

「起きろよ。負け犬ちゃんっ!!!」

 

ドガッ!!!!

 

「オエッ!!!!」

 

先程喰らったフックで、四つん這いになっていた太田に俺は脳天目掛けて踵落としをした。

すると、胃の中にあったモノが全部俺の上履きにかかった。

 

「何汚いモノをかけてんだよっ!!!!」

 

バギッ!!!!!

 

「ガフッ!!!!」

 

馬乗りになって太田の顔面目掛けて拳を振り下ろした。

何度も、何度も、何度も!!コイツの命が消えるまで!!

俺が太田に集中攻撃している間石田が俺の背後にゆっくりと回っていた。

もう1度俺にスタンガンを喰らわす気だろう。そう思って俺は後ろを警戒した。すると、

 

「死ね!!彰!!!」

 

俺目掛けて勢いよく走って来た。スタンガンを両手に持っている。

普通の奴ならびっくりして何も出来ないだろう。でも、

 

「遅せぇよ。カス」

「え!?」

 

ドガッ!!!!

 

「ギャッッッ!!!!」

 

今の俺は、後ろから攻撃されても無駄なんだよ。

後ろから攻めてくる石田に向かって、強烈なエルボーを喰らわせてやった。

鼻に綺麗に入った為か、やや痙攣している。

無様にやられている太田と石田を見ていた江藤は体を震わせていた。

 

「バ、バケモノ・・・・・・バケモノだ・・・!!」

「残りはお前だけだな。江藤」

「彰!!頼む!!!本当に悪かった!!!!!

 もう2度とお前をイジメないから!!頼む本当に!!!!」

 

必死に懇願して、俺に許しを乞う江藤。しかし、俺の答えは決まっている。

 

「江藤・・・・・・言った筈だぜ。これからは俺がお前らをイジメる番(・・・・・・・・・)だってよ」

「ひっ!!」

「だからお前も」

「待っ、待ってく『死ねよ』」

「!!!!」

 

ウワアアアアアアアーーーーーー!!!!!!!!!

 

 

 

江藤は力尽くで叫んだ。しかし、この叫び声の後、

痛々しい姿で倒れているのを先生達に見つけられた。

石田も、太田も。先生達は、この騒動を誰がやったのか懸命に探した。

しかし、結局は分からないままこの騒動は幕を閉じた。

何で分からないかって?皆誰も俺がやったとは言っていないし、思っていても言えないからだ。

 

「ヘヘッ・・・・・・ヘヘッ・・・ヘヘッ」

 

3人をボコボコにした後俺は笑っていた。止めようと思っても止まらなかった。

多分今までの思いが今日全部弾けたからだ。嗚呼、面白かった。

明日も、たくさんあのクズ3人をボコボコにしてやろう。

その日の俺は、それだけしか考えていなかった。

だから・・・・・・・・・

まさか1日の出来事であんな事になるとは思っていなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは翌日の夕方の事だった。

その日の俺の1日は、教室入った瞬間、

どうしようと考えていたらクズ共は休んでいた。

何でだろうと思い、隣の席の奴に聞いてみると、どうやら体調不良らしい。

俺は顔にこそは出なかったが、少しびっくりした。

あのクズ共はなんだかんだ体も強かったから、風邪を引いたなんて聞いた事も無かった。

でも、明日こそは来るだろうと思い、その日は前と同じ大人しく過ごしていた。

 

 

学校帰ると、真っ先に自分の部屋へと向かった。

途中女中の人達と出会った。女中の人達は、俺の姿を見るとすぐに道を譲ってくれる。

やっぱりあの日の出来事で俺の見方が大分変わったのだろう。

今まで俺の部屋の掃除は手を抜いていたが、ここんとことても綺麗に掃除してくれている。

やっぱり人の機嫌を損ねさせない所は上手だ。

自分の部屋に着き、障子を開けた。

ランドセルを下ろした後、俺は畳に寝転んだ。 

理由は分からない。ただ寝転んでみたかった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・スゥー」

 

鼻から息をすると同時に感じる畳独特の匂い。

あの時の様な酷い血の匂いもしない。そう思うと、何故か心が安心した。

そして、目を瞑ると段々と身体に力が抜けていって夢の世界へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

「様っ!!」

「うん?」

「彰様っ!!!」

「わぁっ!!!!」

 

突如肩を揺らされ、何が起きたのか全く分からなかった。

何だろうと思って、目を開けるとそこには1人の女中が慌てた様子で俺を見ていた。

 

「何?俺が気持ち良く寝てたのに・・・」

「じ、実は・・・・・・」

 

女中は、一瞬口籠ったが直ぐにこう呟いた。

 

「実は・・・“警察”の人が来ているんです・・・警察の人から彰様を呼んでいただきたいと」

「警察?」

「はい。そうです」

 

警察が俺に何の用があるんだ?よく分からないが、一応行こうと体を起こした。

 

「で、警察はどこに?」

「玄関にいらっしゃいます」

「そう・・・・・・ありがとう」

 

女中に警察がいる場所を聞いた後、ペタッペタッと足音を立てて玄関に向かう。

自分の部屋から玄関は近いので、1分も経たない内に玄関に到着した。

すると、女中が言った通り警察が2人立っていた。

警察は、俺の顔を見ると、隣同士顔を見合わせて、首を頷いた。

何を頷いているんだ?まあいいや。

 

「あの・・・・・・俺が西住彰ですけど・・・なんか用ですか?」

 

頭を掻きながら、警察に何の用かと聞いてみた。すると、

 

「君が西住彰くんか・・・彰くん。君に率直に言うよ。

 今朝君の学校で同学年の子が3人死亡した」

「は?」

「死因はナイフによる大量出血で、捜査したところ集団自殺だと分かった。

 死亡した児童の名前は、石田小次郎太田勝、そして江藤裕二だね」

「え!!???」

 

何を言っているんだ?死んだ?石田と太田と江藤の3人が?

俺は、何を言っているのか全く分からなかった。しかし、警察は続けて言った。

 

「ここまでだと僕には全く関係のない話だと思うよね?

 でも、ここからの話をよく聞いて欲しい」

「彰くん。君は前日、この3人と喧嘩したよね?」

「!!!!」

「第1発見者の保護者方々は、3人を見つけた際顔がボロボロだったらしい・・・

 我々警察は、誰によってこんな事になったのか捜査した。

 すると、判定から君の指紋と一致したんだよ」

「よって、西住彰くん。君は自殺幇助罪として逮捕することとなった」

「・・・何だと・・・!!」

「今は心が追いついていないと思うから、

 これはお父さんとお母さんで話し合おうね?」

「・・・・・・!!」

「ね?彰くん。分かってi『ふざけんな!!』」

「え?」

 

ドガッ!!

 

「グハァッッ!!!!」

「なっ!!!」

「俺が何で殴ったか知らねぇ癖に何で俺が捕まるんだよ!!!」

 

バギッ!!!

 

「くっ!!!」

 

 

俺は分からなかった。何で、何で俺が逮捕されなきゃいけない!?

今まで俺を苦しめて来たアイツらにやり返しただけで

何で逮捕されなきゃいけないんだ!!

逮捕されるのは絶対アイツらの方だ。俺じゃない。

警察も、アイツらの方についたのか!?そうだったら絶対に許せない。

 

「うおおおおおーーーーー!!!!!!!」

「糞っ!!暴れるならこれを付けやがれっ!!!」

 

そう言うと、警察は、俺の手首に何か付けさせた。

何を付けたのかと思い、見ると銀色に光り輝いている物がついていた。

そう、手錠だ。

 

「ハァハァハァハァ」

「やっと落ち着いたか?おい!今すぐ車用意してこい!!

 今から署まで送り届けてやる!コイツは、警官に暴力を振るったからな!!

 公務執行妨害だ!!ほら!!着いてこい!!!」

 

警察は、俺の手を引っ張りながら俺を車に乗せようとした。

一方の俺は、手錠を見た瞬間、恐怖心を覚えてあの時に戻ってしまった。

後ろのドアを開け、俺を押し込む様に入れた後、

車のエンジンをかけて署に向かって飛ばしていった。

女中は、何とか止めようとしたが、結局何にも出来ず立ち尽くししていた。

後から妹2人も出て来たが、その時にはもう車は無かった。

 

「ハハハハハハ・・・・・・ハハハハハハ」

 

俺は車の中で、掠れる様な声で笑っていた。もちろん警察にバレない様に。

 

「先輩どうしますか?彼」

「フフッ何・・・ちょっと“鑑別所”で長く入ってもらうだけだよ」

「え?鑑別所に入れるんですか!?」

「そうとも・・・だって奴は、君に暴力を振るっただろう?」

「し、しかし・・・・・・」

「ごちゃごちゃ言うな!!奴に聞こえるだろう」

 

 

俺はこの時、自分の人生の大きな分岐点を辿るとはこの時知らなかった。

 

 

 

 

 




はい!今回はここで終わります!!
彰は復讐を成し遂げた瞬間、何と捕まってしまうとは・・・。
でも、人生は悪いことだらけじゃない。次の場所には、
君の事を理解してくれる人間と初めて会えるから・・・!



次回は、8月です。
前よりも、暴力シーン増えるので、どうぞ夜露死苦!!
 

                  !!See you!!


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因縁

どうもボノぼんです。
遂にタイ10がUA7500を突破致しました。
ですが、今思ったら今作も7500突破していました。
(とてもびっくりした!!)

今回は暴力シーン多いので、どうぞ夜露死苦!

それでは3,2,1どうぞ。


 

 

 

バギッ!!

 

「グハァッッ!!!!」

「立てコラッ!!!」

 

ドガッ!!

 

「ウッ!!!」

「どいつも、こいつも!!何で俺のことそんな風に見てくんだよ!!!」

 

ピーーッ!!ピーーッ!

 

「やめろ505番!!」

「これで何度目だと思ってるんだ!!?」

「うっせえよ!!!」

 

あぁ、ムカつく!!誰かをボコボコにしてもこの気持ちは消えない。

何でだろう?分からない。ただ喧嘩を売られたから買って、

ボコボコにしてもこの気持ちはおさまらない。

そう思っていると、また刑務官の奴らに身を拘束された。

 

今俺がいる場所は、熊本第一鑑別所。俺みたいな一線を越えてしまった

奴らを保護する場所だ。っと言っても、ここは審判が決まるまでいる場所。

殆どの奴らが少年院に行くらしいが、俺はどうなるのだろうか。

 

たかが警官を殴っただけで少年院に行くとなると本当に警察の器は小さい。

まぁ少年院に行っても別にどうでもいい。

 

刑務官に拘束された俺はまた反省室に入れられた。

 

「ったく・・・・・・これで今週で5回目だぞ!!

 一体いつになったらやめるんだ!!!」

「うっせぇよ。まず、あの野郎が俺に喧嘩売ってきたんだよ」

「だとしてもやり過ぎだろ!見てみろ!!鼻が曲がってるじゃないか!!」

「うっうっ・・・・・・・・・」

「知るかよ・・・・・・おいお前。今度俺に喧嘩売ってみろ。

 次は、二度と笑えない様にしてやる・・・!!」

「ひっ・・・・・・!!!」

「505番!!!」

「すみませーーん」

「もういい。お前はもう反省室に入れても無駄だ。

 そのかわりもう揉め事を起こすな。分かったな?」

「はーい」

「分かったらとっとと自分の部屋に戻れ」

 

そう言われると、俺は自分の部屋へと歩いていった。

 

「ふー本当疲れますなー505番には」

「本当だ。しかし・・・・・・なんてガキだ」

「はい・・・・・・だって自分より、4歳上の奴をボコボコにするんですからな(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

「あぁ。でも・・・・・・505番がどんなにおっかなくても、429番には勝てないな・・・!!」

「そうですね。429番も結構おっかないですからね」

「確か505番と429番は同い年じゃなかったか?」

「はい。そうです」

「フフフフフッ・・・・・・こんなこと言っちゃならんが少し楽しみだよ」

「何がですか?」

「505番と429番が対決してくれんかと思うとね・・・!!!」

 

刑務官はニタニタと笑いながら言うと、また自分の仕事に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ・・・・・・・・・!」

 

一方、自分の部屋へと戻っていた俺はまだ怒りが収まらなかった。

 

「何で・・・何で俺だけなんだよ・・・・・・!!」

 

正直今からでも刑務官に飛び向かってボコボコにしてやりたかった。

でもそんなことすると、ここにいるのが更に長くなる。

だから、あの時は抑えていた。

 

「・・・・・・・・・全部アイツらのせいだ・・・」

 

そうだ。よく考えれば皆あの“家”の奴らのせいだ。

俺がこんなに苦しまなきゃいけないのもアイツらのせいだ。

そう思ってくると、また“アレ”が出始めた。

 

「おいドチビ!!出てきやがれ!!!」

 

その時だった。誰かが乱暴に俺の部屋の鉄格子を蹴って叫んだ。

何事かと思い、近づくとそこには体のデカい奴が立っていた。

 

「おい!お前か!!俺の者を袋叩きにしたのは!?」

 

そして、後ろに4人いてそこにはさっき俺がボコボコにした奴が俯いて立っていた。

あれ?なんか顔の傷酷くなってやがる・・・。

 

「おい無視してんじゃねぇぞコラ!!!」

 

目の前の木偶の棒がうるさい。コイツ、大声出せばビビると思ってんのかな?

 

「いちいちうるせぇんだよ・・・何か用?」

 

頭を掻きながらそう言うと、木偶の棒の顔が赤くなった。

 

「だから、お前がコイツを袋叩きにしたのかって聞いてんだよ!!!!」

 

そう言うと、木偶の棒は俺がボコボコにした奴を蹴って渡してきた。

 

「う・・・助けて・・・・・・ください・・・」

 

奴は、涙を流しながら俺に命乞いをしてきた。なんて無様だ。

本当に喧嘩売ってきた奴だと思えない。そう思うと、体が震えてしまった。

 

「何だお前!ビビってんのかよ!?」

 

木偶の棒はゲラゲラ笑いながら、俺のことを馬鹿にしてきた。

ったく・・・うっせぇんだよ。泣きながら俺に抱きついている奴を

一旦離れさせ俺は、ゆっくりと木偶の棒に近づいた。

 

「何だお前?俺と闘ろうってのか?」

 

ニヤニヤしながら俺を見つめる木偶の棒。

フフッ、俺を舐めてくれてる。ラッキーだ。

俺がじっと見ていると、木偶の棒はひそひそと後ろの3人と話していた。

話が終わると、もう1回俺の方へ向き顔をちかづけながらこう言った。

 

「ここで闘るのは流石にマズイだろ・・・・・・だから運動場で闘り合おうぜ!」

 

そう言うと、ついて来いと言い、後ろを向いて歩いた。

俺も続いて歩き始めた。

 

「お、おい・・・本当に喧嘩する気か?」

 

奴は俺を止めようとしていた。しかし、俺の答えは決まっている。

 

「あぁ。どっかの“威勢だけが良い野郎”と違うからな」

「!!」

「そんなことより早く自分の部屋に戻れよ。またボコされてぇの?」

「は、はい!!!」

 

少しガンを飛ばすと奴はビクッとして回れ右して走っていった。

フフッいい気味だ。奴がちゃんと走っていったのを見ると、

俺はもう一度足を動かした。

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・やっぱり・・・心配だ」

「ちょっと観てから部屋に戻ろっと」

 

 

奴が心配して戻って来ているのを知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいコラ・・・・・・舐めてんのか?」

「すんませーん。遅れましたー」

 

運動場に着くと、眉間に血管を出していた木偶の棒が椅子に座っていた。

ってか何処からそんなもん持ってきたんだよ?

 

「ドチビ。今日がお前のイキることが出来る最後の日だと思え」

「え?何何・・・アンタが今日イキることが出来るのが最後だって?」

 

耳をわざと出して、間違ったことを言ってやった。

すると、感情に任せてくるのかと思ったら、

 

「ハッハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」

 

何と笑っていた。コイツ・・・何がそんなにおかしいんだ?

 

「ハッハハハハハ!!!お前も寺島とおんなじこと言ってやがるwwwww」

「寺島?」

「そうだ。さっきまでお前に泣きついていた野郎だ!

 アイツもここに来た時は俺に舐めた口聞いてたんだよ!!」

「でもよ、蓋を開ければただの雑魚に過ぎなかったww」

「・・・・・・だからどうなんだよ?」

「お前も寺島と一緒に下向いとけやーー!!!」

 

そう言うと、奴は勢いよく走ってきた。

 

(来る!!)

 

俺は、パンチに備えて両腕でクロスガードした。

 

ボガッ!!

 

「くっ!!」

「そんな細い腕じゃ俺のパンチを受け止められねぇぞー!!」

「チッ!」

 

予想以上に凄いパンチだ。腕の骨に軋んだ。ちょっと不味い。

そんなこと考えている内に脇腹に蹴りが入った。

 

「かっ!??」

「ノロイなぁー!そんなんじゃいつまで経っても無駄だ!!」

「くっ!!」

 

蹴りに続いてワンツーをもらってしまった。この木偶の棒・・・地味に強い・・・。

 

「ま、不味い・・・・・・もう始まってやがる・・・!」

 

俺と木偶の棒が勝負している最中寺島は肩で息をしながら観戦していた。

 

「どうしよう・・・今のままだったら絶対アイツ負けちゃう・・・・・・どうすれば・・・」

 

どうやら俺を助けようとしているらしい。いちいちお節介な奴だ。だけどよーー

 

 

「うおおおーーー!!!!死ねぇーー!!!」

「ヤバいッ!!!!」

 

バギッ!

 

パシッ!!

 

「え?」

「何!?」

 

そんなに俺のこと舐めてもらっちゃ困るんだよねー・・・!!

 

「嘘だろ・・・・・・止めやがった!」

 

何だコイツ?そんなにパンチを受け止めたのがびっくりしたのか?

 

「ほら、お返し・・・っ!!!」

 

バギッ!!!

 

「ガバァッッッ!!!!?」

 

ひとまず俺をのそうとしたから鳩尾に入れてやったら口から唾液が沢山出てきた。

 

「ゴホッゴホッ!!?なんて威力だ・・・!!」

「おい」

 

バギッ!!!

 

「ガバァッッッッ!!!!!!!!!」

 

咳き込んでいる木偶の棒に更にもう一度鳩尾に入れてやった。

すると白目を剥き、仰向けに倒れ込んだ。

 

(よし・・・・・・チャンスだ!)

 

俺はそのまま馬乗りで木偶の棒の顔に拳をぶつけた。

 

バギッ!!!

 

「ブフッ!!!」

 

バギッ!!!

 

「ブフッ!!!!」

 

バギッ!!!

 

「ブフッ!!!!!」

 

段々と変わっていく木偶の棒の顔を見ると何故か笑ってしまう。

木偶の棒の後ろについていた3人はまさかこんな事になるとは

思っていなかったのか、顔面蒼白していた。

 

「嘘・・・・・・このままだとアイツ死んじゃう。どうしようどうしよう!!!」

 

一方寺島はこのままだと俺が木偶の棒を殺してしまうと

いち早く理解したのか、とにかく焦り焦っていた。

 

「糞ッ!!こうなったら俺が止めに行くしか『何やってんの?』」

「え?」

「だから、何やってるって聞いてんだよ」

 

後ろを振り返るとそこには、

 

「げ!?お、お前は!!?」

 

寺島が何か言おうとした次の瞬間、

 

ドガッ!!!!

 

「ガハァッッ!!!!?」

 

突如俺の顔に素早い何かが当たった。そして、鼻から血が出始めた。

何が起こったのか理解出来ず目を開けるとそこには、

 

「お前か?この1週間で5回も反省室に入れられている505番って野郎は?」

 

髪が金髪で片耳に「暴」ともう片耳に「愛」と書かれた太極図の耳飾りを付けていた奴がいた。

そして、胸元には番号が貼られていて、429と記されていた。

 

「429番?」

「やっぱり!!お前があの429番なんだな!!!?」

 

寺島はコイツの事を知っているのか?まあそんな事どうでもいい。

 

「テメェ・・・何で邪魔した?」

「邪魔?もし俺が止めてなかったらコイツ死んでたぜ?

 そんな事もいちいち言わなきゃいけねぇかよ。お前馬鹿?」

「何だと・・・!!」

「あれー聞こえなかったか?だったらもう一度言ってやるよ。お前は馬鹿か?」

 

耳を傾けながら煽ってくる429番。その瞬間、俺の中で“アレ”が完全に芽生えた。

殺したい・・・壊したいと思った時に出るこの感情。段々と体中に纏わり付き始めていった・・・。

 

(うん!?なんか気迫が変わってきたぞ・・・!)

 

これには429番も気づいたようだ。

完璧に纏わった所で俺は429番に向かって飛び向かった。

 

「うおおおーーーー!!!!!!!」

 

バギッ!!!

 

「うっ!?」

 

外されることも理解しながら放った最初の拳は見事に429番の顔面に入った。

429番がよろめいている隙にもう1発入れようと更に近づいた。

 

「終わりだーーーー!!!!!!!」

 

拳をあの糞ジジイにトドメを喰らわせた時と同じぐらい握りしめた。

俺の邪魔をする奴は誰だろうと関係ない。例えソイツがどのくらい強がろうが!!

 

「死ね!!!!!!!!」

 

間合いに入った途端俺は素早く429番の鳩尾に入れた。そう、入れたつもりだった。

 

「さっきからうるせぇんだよ・・・!!!」

「!?」

 

パシッ!!!

 

「なっ!!?」

 

なんとアイツは寸前に止めやがった!俺の本気のパンチを!

驚きを隠せない俺に対して、429番は笑っていた。そして、

 

「ほら!さっき喰らった奴のお返しだ!!!」

 

右足を大きく上げながら腰をきかせ、俺の顳顬にゆっくりと爪先をぶつけた。

 

 

バンッ!!!!!!!

 

 

突如運動場全体に途轍もなく鈍い音が響き渡った。

寺島はびっくりして目を閉じていたが、

たちまち音が聞こえなくなると目をゆっくりと開けた。すると、

 

「え!!!!?」

 

寺島は大きく口を開けながら絶句していた。なぜならそこには、

 

「あ・・・・・・あ・・・あ」

「ヘヘッ・・・・・・決まったぜ笑」

 

口から泡を出しながら気絶している俺とフゥーっと息をしながら、

倒れている俺を見下ろしている429番がニコッと笑っていたからだ。

 

「す、凄ぇ・・・!噂には聞いてはいたが、ここまで強ぇだなんて・・・!!!」

「フゥーー・・・やっと勝ったぜ。なんか久しぶりに疲れたわ」

 

大きく背伸びしながら帰ろうとしていた。しかし、

 

「待て・・・・・・よ・・・」

 

ガシッ!

 

「は!?お前・・・まだ意識があったのかよ!?」

 

帰ろうとしていた所を俺が寸前の所で奴の足首を掴んだ。

俺はそのまま奴の足首を掴みながら立ち上がった。

 

(マジか・・・・・・!!俺の本気の上段蹴り喰らったにも関わらずまだ立ってくるなんて!!!)

 

この時429番は感じた。俺の中にあるモノが想像以上だということを。

じっと見つめている429番に向かって1発入れてやろうと構えた瞬間、

 

 

ピーーッ!!ピーーッ!!

 

「「「!!?」」」

 

突如俺達に向かってけたたましい笛の音が聞こえた。

 

「不味い!!刑務官だー!!!」

 

寺島の叫び声を最初に後から色んな叫び声が聞こえた。

しかし、俺と429番にはそんなことなど関係なかった。

 

「おい・・・・・・早く続きをおっぱじめようや・・・!」

「・・・・・・もうよそうぜ。お前との勝負はさっき着いた筈だぜ」

「うるせぇ!!まだ決まってねぇんだよ!!!」

「!!」

 

いちいちイラつかせることを言ってくる429番に俺は再度“アレ”が纏わりついた。

 

「コラ!!貴様ら!!!もう喧嘩は終いだ!」

 

そんな時に刑務官達が俺達の所へやって来た。

糞ッ!!なんでコイツらはいつもこういう時に!!

 

「邪魔すんじゃねぇよ!!ポリ公が!!」

「うるさい!!!お前らみたいな馬鹿を取り締まるのが俺達の仕事なんだよ!」

 

そう言うと、1人の刑務官が俺の後頭部を力一杯殴った。

 

「くっ!!」

 

強く殴られたせいか俺は段々と視界が遠ざかっていった。

 

「おいお前もか!!429番!!」

「すいません刑務官(オヤジさん)!ちょっと揉めちゃって・・・ハハッ」

「ハハッじゃねぇんだよ馬鹿野郎!!お前も一緒だ!」

「へーい」

 

ヘラヘラしている429番を見て俺は怒りを覚えた。

こんな奴なんかに一時気を失っていたのだと・・・!!

 

 

 

 

 

そして、この時俺は決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対ここを出たら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ先にやるのは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コイツだと!!!

 

 

 

そう思うと、“アレ”がぐつぐつと煮え始めた・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(505番か・・・・・・。また会ったらもう一度()りてぇな・・・!)

 




はい!今回はここで終わります!!

イヤー今回は暴力シーンが多くてですね度々イヤになりかけましたよ。
私は後1週間後に2学期が始まるのに何をしているのかと思います。

今回彰が闘った429番君は今後も大事なので覚えていてください。
後、サブキャラの寺島くんも覚えててね!

次回の投稿は9月です。
出来れば早くだけど難しかな?まぁ頑張ります。

じゃあ次回も夜露死苦!!
 

                  !!See you!!


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燃える復讐心

どうもボノぼんです。
お気に入り数85突破。
UA9000を突破し、遂に自身初の10000に王手がかかりました。
「タイムリープしたら10年前の世界だった件」と同様に
ますます執筆を頑張りますのでよろしくお願いします。



それでは3,2,1,どうぞ。


 

 

太陽がギラギラと光り、それを鼓舞するかの様に鳴く蝉の集団。

様々な場所に向かっている通行人の額には汗が流れている。

そんな人達を俺は車の窓越しで覗いていた。

何故車に乗っているかというとあの3ヶ月間いた鑑別所を今日出所することになったからだ。

正直2度とあんな所には戻りたくない。

理由は色々あるけど、1番の理由は429番に敗北を喫したことだ。

 

アイツに負けた瞬間、俺の“何か”がぐつぐつと煮え始めた。

そして、家族に復讐を実行する前にアイツを潰すという課題も立った。

 

そんなことも少し考えていると、やっと家に着いた。

元々鑑別所は熊本の端にあるからか、家に着くまでに1時間以上かかった。

その為、腰が酷く痛い。やや猫背になりながら俺は玄関を越えた。

 

 

玄関を越え、中に入ると1人の女中が掃除をしていた。

それを見ていた俺はニヤッと笑い、

目の前にいた女中に向かって蹴りを喰らわせた。

 

「キャァァッッッ!!!?」

 

蹴られた女中は意外にも吹っ飛んだ。

女中は俺を見ると、ブルブル体を震わせながら何か言ってきた。

 

「ど、どうして・・・・・・何もしてないのに・・・」

 

は?何を言っているんだコイツは?

分からないのかよ?邪魔だから蹴っただけに決まってるじゃないか。

 

「は?何言ってんの?邪魔だから蹴っただけだけど文句あるの?」

「イ、イヤ・・・別に何もありません・・・」    

「だったら、黙って掃除しとけよ。カスが」

「は、はい・・・・・・」

 

そう言うと、女中はもう一度掃除を始め出した。

さっきの行動もそうだが、俺はあの日以来「女」という生き物が大嫌いになった。

理由は簡単だ。この家は女が男より上だからだ。

 

だから、偉そうにしている奴らを見ると、とても胸糞悪い。

特にあの妹共は。まぁいつか酷い目に合わせてやろうと思っている。

そう頭の中で考えていながら靴を脱ぎ、自室に向かおうとした時だった。

 

「・・・・・・殺し・・・」

「うん?」

 

後ろから、小さな声が聞こえた。誰だろうと思い、

後ろを見るとそこには柱に顔を隠しながら俺を睨み付けていたまほがいた。

まほは、俺を見ると小さな声でこんな事を言っていた。

 

「この・・・人殺し・・・・・・」

「あ?」

「人殺しが・・・・・・帰ってくるな・・・!!」

 

歯を噛み締めながら俺のことを人殺しと言うまほ。

どういうことだ。俺は誰も殺していないはず。

 

「おい。何で俺が人殺しなんだよ?」

「そうか・・・お前は何も知らずにあそこにいたんだからな・・・!!!」

「教えてやる・・・・・・雑魚彰!!お前がいない間お祖父様と叔父様2人が自殺した!!」

「っ!!どういうことだ?」

 

俺は一瞬耳を疑った。あの糞ジジイと上役の犬2人が自殺しただと!?

何を言ってるんだコイツは?

 

「どういうことだよ?自殺したってのはよ?」

「・・・・・・私も最近聞いたから分からないが、

 お祖父様はつい1ヶ月前に退院したと聞いた」

「それで?」

「お祖父様が退院したのは本当に嬉しかった・・・。

 でも・・・・・・お祖父様は正月に見たお祖父様じゃなかった」

「体は痩せ細って、髪も抜けててご飯もろくに食べていなかった・・・

 そして、いつも眠っている時いつもこの言葉を口にしていた・・・

 

彰・・・彰もうやめてくれ!!許してくれーー!!!

 

 っとな」

 

そう言うと、まほは俺を今まで以上に睨みつけた。

 

「雑魚彰!!皆お前のせいだ!!!お前があの時何もしていなかったら 

 今頃お祖父様も、叔父様も、皆死なずに済んだんだ!!」

「お前なんか・・・・・・死んでしまえ!!

 

そう言い終えると、荒く息をしながら俺を睨み付けた。

そんなまほを見つめていた俺は、笑いながら近寄った。

 

「ハハハハハハ・・・・・・」

「何がおかしい・・・・・・!!?」

「ハハハハハハ・・・お前こそ何勘違いしてんだ・・・?」

「え?」

 

ガシッ!!

 

「くっ!!!?」

 

次の瞬間、俺はまほの頬を思い切り掴んでやった。

すると、あの綺麗な顔立ちが醜くくなっている。いい気味だ。

 

「は、はにゃせっ!!(離せ!!)」

「ハハッ!何だよその言葉」

 

頬を掴んでいる成果まほはハッキリと喋れていなかった。

そんなまほを俺は鼻で笑った。

そして、俺はまほと目と鼻の先まで顔を近づけこう呟いた。

 

「おい。まほ・・・・・・お前はあの糞ジジイ達が死んだら

 次はどうなるか分かってねぇみたいだな・・・」

「え?・・・どういうこと・・・・・・???」

「ハハッ・・・勉強出来る癖に頭は回んねぇんだな。

 良いか。これから言うことはみほにも伝えとけ」

「糞ジジイ達が死んだから、次の復讐のターゲットはお前らだ!」

「!!」

「言っとくがお前らってのはお前とみほだけじゃねぇ・・・

 あのババァと糞親父も入ってるからなー・・・・・・分かったか?」

「・・・・・・・・・・・・」

「おい。答えろよ。答えねぇと痛い思いにさせてやろうか?・・・な!!!?」

「は、はいっ・・・・・・!!!!」

 

まほが返事したのを聞くと、バッと手を離してやった。

解放されたと同時にまほは俺から逃げる様に何処かへと走り去った。

途中何回も転けた為、それが面白くて堪らなかった。 

まほが完全に居なくなったことを確認すると、また足を動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お・・・お兄ちゃん・・・・・・」

「あ?」

 

しばらく歩き、やっと自分の部屋に着いた時また誰かの声がした。

振り返るとそこには両手を後ろに組んでブルブルと震えて奴がいた。

そう、もう1人の妹みほだ。

 

「何だよ?」

 

俺はみほにガンを飛ばしながら言葉を口にした。

すると、オドオドしながらこんなことを言ってきた。

 

「お兄ちゃん・・・・・・その・・・誕生日だったよね」

「あ?」

「お兄ちゃん忘れたの?・・・・・・お兄ちゃん5月5日だったよね?誕生日」

「ああ。そうだったな・・・・・・で、それが何だ?」

 

俺がそう言った瞬間、後ろで組んでいた両手を前に出した。

何やら黒くて細長い箱を持っている。

 

「何これ?」

「実は・・・お姉ちゃんと一緒に買ったの・・・お兄ちゃんのプレゼント・・・・・・」

「プレゼント?」

「うん・・・・・・お姉ちゃんは反対してたんだけど、頑張って説得したんだ・・・」

 

顔を下に向けながら伝えるみほ。プレゼントか・・・・・・。

菊代さん以外から貰ったのは初めてだ。特にこの妹達から貰ったなんてもっての外。

まぁせっかくなので貰うことにしてやるか。コイツらを見る目は変わらないけどな。

 

「・・・・・・分かった。それは受け取ってやる・・・

 でも、俺はテメェらの顔見てるとイラつくんだよ。とっとと自分の部屋に帰れ」

「本当!?あ・・・ごめん急に大きな声出して・・・・・・」

 

一瞬大きな声を出したが、また細い声に戻ったみほはそのまま自分の部屋に帰って行った。

みほが居なくなったことを確認すると俺は、久しぶりに部屋の障子を開けた。

 

「え・・・・・・?」

 

次の瞬間、俺は目を見開いた。何故かというと、

 

「・・・・・・綺麗だ・・・」

 

今まで手を抜いて掃除されていた自室が埃1つも無く、綺麗に掃除されていた。

そして、いつも敷かれたままだった布団も部屋の隅に綺麗に畳まれていた。

至る所が綺麗であり思わず声を漏らしてしまった俺だが机の上に目を向けると、

一瞬止まってしまった。何やら1つの封筒が置かれていた。

 

「誰からだ?」

 

俺は封筒を拾い上げ、中身を取り出した。すると中からはこんなものが入っていた。

 

 

 『坊ちゃんへ。

 

  坊ちゃんお久しぶりでございます。

 

  私は今病院でリハビリを続けています』

  

 『どうやら私は正月の一件で上手く体を動かすことが出来なくなりました。

 

  ですから坊ちゃんとは多分5年近くは会えないと思います』

 

 『ですが、後悔は1つもありません。なぜなら、

 

  坊ちゃんが怪我を1つも負わなかったからです』

 

 『ですから坊ちゃん。あの一件のせいで自分を責めないで下さい。

 

  先日仲の良い女中から話を聞きましたが、鑑別所に行かれたのですね。

 

  それを聞いた時、私はびっくりしました。

 

  あんなに大人しかった坊ちゃんが鑑別所に行かれたのだなんて驚きが隠せませんでした』

 

 『坊ちゃん。出来れば願いたいのですが、

 

  師範代含み、旦那様、まほお嬢様、みほお嬢様に対して、復讐はおやめください』

 

 『確かに坊ちゃんは今まで酷い扱いを受けられていましたが、

 

  実は理由があるんです。その理由を聞かれるまではどうか復讐は考えて下さい』

 

 『これで最後になりますが、坊ちゃん。どうかお元気でお過ごしください』

 

 『それでは此処らで失礼します』

 

 『井手上菊代より』

 

 

手紙を読んだ後俺の顔は、とても複雑な表情だった。

計画していた復讐を止めろと言われたこともそうだが、

何故今になってこんな手紙を寄越したのかもあって、よく理解出来なかった。

しかし、菊代さんに言われてもこの復讐だけは譲れないと段々感じ始めた。

 

(菊代さん・・・・・・)

 

俺は手紙を折り畳みと、入っていた封筒に戻して本棚に保存した。

さて、そろそろ今日決めていたことをしようと思っていた時、ふと何か感じた。

 

「あ・・・・・・プレゼント・・・」

 

そうだ。プレゼントだ。妹共からもらった・・・何が入っているのだろう。

少し思いながら、包紙を破いて箱の蓋を開けた。すると、そこには・・・

 

 

「え?ピアス・・・?」

 

細長い長方形で、赤い十字架に斜め十字が入っており、

それらの周りを黒色で統一されたピアスだった。

何でこんなものを・・・?俺はアイツらが何を思って買ったのか理解出来なかった。

まぁピアスには鑑別所に入る前に興味を持っていたから別に良かった。

しかし、普通ピアスというものは大抵は2つで1組なのだが、俺の場合1つで1組だった。

高くて1つしか買えなかったのか?まぁ別にいいか。

俺は手にしているピアスを左耳に入れようとした。しかし、入れる瞬間に手が止まった。

 

「待てよ。どうせなら・・・・・・右耳に付けてやるか・・・」

 

どうせなら右耳に・・・。

俺はアイツらがやったことをわざと思い出させようと思ったのか、右耳にピアスを入れた。

 

「っ!!」

 

入れると同時に右耳にチクッと痛みが走った。まぁ初めてだから仕方ない。

俺は鏡を持って映し出された自分を見た。

 

「これが・・・ピアスか・・・」

 

右耳に入れられたばつ印が入った十字架のピアス。

何故か知らないが、世界観が変わった様な気がする。

 

「ハハハハハハ・・・・・・」

 

映し出された自分を見て俺は笑った。とても笑っていた。

 

この時、俺はまだ知らなかった。

 

今日入れたピアスが、死ぬまで右耳に付けていることを。

 

 

この後、俺は飯を食べた後ぐっすりと夜まで眠ってしまった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!・・・・・・ハッ!!・・・ハッ!!!」

 

出所してから2ヶ月が過ぎ、ようやく元の生活にも馴染んできた。

今俺は10キロの鉄アレイを両手に持って鍛えている。

それが終わったら、腹筋を100回してそれが終わったら走り込みをする・・・。

 

何故そんな事をしているのかって?忘れたのか?

俺は鑑別所の時にあの429番に負けたからだ。

だから、今度はアイツを必ず殺す為に鍛えている。

 

今考えたら俺は全く筋肉なんか無かった。

ヒョロヒョロしていて見るからにも弱かった。

でも、あの赤黒い感情があったからまだ詰んでいなかっただけだった。

だから、今こうして体を鍛えている。アイツを完璧に勝つ為に。

 

筋トレが終わると、俺は必ずやっていることがある。それは、

 

「うおおおーーーー!!!!!」

 

バギッ!!!

 

「くっ!!!!!」

 

毎日100回以上大木を殴ったり、蹴ったりすることだ。

一見バカバカしいと思われがちだったが、意外にもキツイ。

実際初日は両拳の皮が剥がれた。骨が見えるぐらいまで。

しかし、今となると皮が剥がれる事も無くなった。

それに以前よりも拳の皮が分厚くなっている気がする・・・。

 

まぁ最近イキがっていたチンピラ3人と喧嘩した際、

1発でのしたからやはりパンチが強くなっている。

あの時の感触はたまらなかった。たったの1発で人間の顔がグチャグチャになるのだから。

 

2学期まで後、1週間。久しぶりに学校へ通う。

あのクズ共もいないから、のびのびと復讐の計画を進める事が出来る。

今の俺ならあの429番も、妹共も殺れるかもしれない・・・。

そう思っていると、不気味にも俺は微笑んでいた。

 

 

でも、この時俺は知らなかった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またもや俺の人生の分岐点が・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迫っていることを・・・・・・。

 

 

 

 




はい!今回の話はここで終わらせていただきます!!
読者の皆さん本当にすみません!
作者も受験シーズンなので、投稿がとても遅くなってしまいました!
多分今度から受験合格するまでは投稿が不定期になるかもしれません。
そこら辺の所はどうか許してください!!

次回は多分年末か、頑張れば11月後半に投稿したいと思います!!
それではここらで終わらせて貰います!

じゃあ次回も夜露死苦!!
 

                  !!See you!!


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再闘(リベンジ)

どうもボノぼんです!
今回でこの作品が大きく動きます。
彰を変える男が現れる・・・。

それでは3,2,1どうぞ。


明日から2学期が始まる前日、俺は特訓をしていた。

 

 

「ふっ・・・!はぁっ・・・!ふっ・・・!」

 

流石に腕立て100回を休まずにするのはとても苦しい。それも拳立てとなると更にだ。

これが終わると次は腹筋100回、ランニング30分、そして、打ち込みだ。

 

俺は、鑑別所を出所した日と比べてかなり筋肉がついた。

以前は棒切れの様な腕が今は塊を付けているのかと思うぐらいの筋肉がついた腕になった。

それは腹筋も変わらない。でも、腕と腹筋よりもよく変わったのが、拳だ。

 

どう変わったかというとまずとても分厚くなった。

そして、以前よりも強くて破壊力があるパンチが打てる様になった。

一応ランニング中にわざとぶつかって悶着が起きた時も

たった1発顔に拳をぶつけただけで相手は鼻血を出していた。

 

殴るたびに・・・血が・・・疼いてたまらない・・・!!

 

そんな心を持った俺だが、明日からいよいよ学校へ復帰となる。

 

もう誰も俺の邪魔をする奴はいない・・・。思う存分にイジメてやる。

そうと思いつつ拳立てを終えた後、腹筋に移った俺だった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んんっ!・・・ごくんっ!・・・あむっ!!」

 

今日全ての特訓を終えた俺は用意された夕飯を食べていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

両親に凝視されている事に気づかずに俺は箸を止めなかった。

もちろん妹共も俺の食い意地に気が引いている事も気づかずに。

 

「ふー・・・・・・」

 

そして、おかわり3回した後俺は手を合わせて自分の部屋へと向かった。

母親じゃない。作ってくれた家政婦の人達に。

あんな奴らでも作ってくれた事には感謝している。上辺だけだが。

 

自分の部屋に着いた俺は、小さく息をしてゆっくりとうつ伏せに倒れた。

最初はうつ伏せだったが、途中から仰向けになり、天井を見上げた。

 

(明日から学校か・・・)

 

本当何ヶ月ぶりだろう。最後に行った日は4月だったはず。だとしたら、5ヶ月ぶりだ。

 

(フフッ・・・どうイジメてやろうかなぁ・・・・・・!)

 

まぁそんなことはどうでも良い。明日、クラスの奴らをどうイジメてやるか楽しみだ。

不敵に笑いながら俺は、待ち遠しい気持ちを持ちながら目をゆっくり閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふはぁ〜〜!あぁ眠てぇ」

 

翌朝、俺は珍しく朝1番に身支度をして妹共より先に家を出た。

理由は分からない。もしかしたら早く学校に行きたかったのかもしれない。

 

まあ、そんなことどうでもいいか。しばらく歩くと見覚えのある建物が見えて来た。

俺はその建物の入り口をくぐりゆっくりと中へ入っていた。

 

コッコッコっと音を鳴らしながら階段を登っていく。

途中何人かの教師達とすれ違う度に2度見された。

そして、目的の階に着くとそこからは教室に向かって歩いた。

とは言っても目の前なんだが。

 

教室に着いた俺は目の前の戸をガラガラと音を立てながらゆっくりと開けた。

 

戸を開けた瞬間、賑やかだったクラスが一瞬にして静かになった。

以前は騒ついていた癖に今度は黙り込みやかったか。情けないカス共だ。

俺は自分の席へと進んで行く。生憎俺の席は変わっていなかった。

ランドセルを下ろして、椅子に座った俺はランドセルから

教科書などを取り出して中に入れ始めた。

 

「ねぇ・・・何で西住が学校に来てるのよ・・・!」

「知らない知らない!意味分かんないわよ・・・!!」

 

途中、2人の女が俺に向かって何かボソボソと呟いていた。

ギロッと睨むと奴らは面白くヒッ!っと声を上げやがった。面白い。

 

教科書をしまい終えたと同時にガラガラと誰かが戸を開けた。

先生だ。先生は、チラッと皆の顔を見た時に偶然と俺と目が合ったのか、一瞬びっくりしていた。

 

しかし、すぐさま顔色を変えて教壇の前に立った。

 

「えー・・・皆おはよう!!今日から2学期が始まりまるね。

 夏休みも直ぐに終わっちゃったな!先生は、

 夏はバテてかき氷100杯食べちゃってお腹壊しちゃったよ笑」

「「・・・・・・・・・」」

 

多分、皆笑っている場面だったかもしれない。

でも、誰1人とも笑った奴はいなかった。俺というモノが教室にいるからだろう。

 

(早く終われよ・・・)

 

俺は椅子を傾けながら、そう思っていた。

 

「さて、挨拶はここらにして今日は重大な発表があるんだ」

「何と、今日からこのクラスに転校生がやってくることになった」

「!?」

 

何、転校生?何処から来た奴なんだ。急な発表に俺はびっくりした。

もちろん周りの奴らも騒ついていた。

 

「じゃあ、今から転校生から挨拶をしてもらおうか!どうぞ入って来て」

 

先生は戸に目を向けた喋った。皆も戸に一点張りなった。

俺も少しは気になる為、ジッと見つめていた。

 

「失礼しまーす!!」

 

すると、大きな声が響いた。そして、ガラガラと音を立てながらゆっくりとその姿を現した。

 

(どんな奴だ・・・)

 

俺をジッと今から入ってくる転校生を見つめていた。

しかし、次の瞬間俺は衝撃的な事を知った。

 

何と目の前にいたのは、

 

「シシッ・・・学校なんて何ヶ月ぶりかな笑」

 

髪は金髪で、片耳に「暴」ともう片耳に「愛」と描かれた太極図の耳飾り・・・。

俺はそれだけで直ぐに分かった。

 

(429番・・・・・・!!!)

 

そう、俺が鑑別所に居た時に唯一負けた相手だった。

奴の姿を見た途端俺の中の赤黒いモノがぐつぐつと煮え始めた。

 

「えー今日からうちのクラスに転校して来た黒田明宏君だ」

「チワッス!!今日から転校して来ました黒田明宏って言います!

 好きなスポーツは野球です!よろしくお願いします!!」

 

そう言うと、429番は頭を90度に下げた。

皆少し騒ついている。まぁ、無理もない。

金髪で耳飾り付けた奴が転校して来たんだからな。

 

「じゃあ黒田君、君は・・・あそこの席に座って」

「はい!!」

「!!」

 

先生は429番に座る場所を指差した。何と、俺の右斜め前の席。

俺は、こちらに向かってくる429番をジッと見つめていた。

すると、奴も誰かに見られているのに気づいたのかこっちと目が合った。

 

「うん?」

(気づきやがった・・・)

「何だよ・・・・・・ってもしかしてお前・・・」

「よう、久しぶりだな」

 

その瞬間、俺は椅子から立ち上がって奴に近づいた。

無論、奴も近づいて来た。来るなら来い。今の俺はあの時とは違う。あの時とは・・・

 

「やっぱり!!お前あん時喧嘩した奴じゃんか!!!」

 

ガシッ!

 

「!!」

「お前ここの学校の野郎だったのかよ!?それだったら最初から言えよー!!」

(は・・・・・・・・・??)

 

何と奴は俺の肩を掴んできた。それは攻撃ではなく普通に親しみを込めての・・・。

俺は429番が何をしているのか全く分からなかった。

 

「おい!何してる西住!!席につかないか!!!」

 

それを見ていた先生は何故か俺だけに叱責して来た。

 

「大ー丈夫ですよ先生!俺こういうの慣れてるんで!」

「イヤ、しかし・・・」

「大丈夫って言ったら大丈夫っすよ!!」

 

しかし、429番が先生を宥めた。コイツ・・・いちいち鼻に付く野郎だ。

俺は429番が先生に何か言ってる時そっと奴の耳にこう呟いた。

 

「今日の放課後・・・俺とついて来い」

 

そう呟いた後俺は奴の腕を肩から引き剥がし、自分の椅子に座った。

 

(今に見てろ・・・・・・・・・必ずぶっ殺してやる・・・)

 

そう心の中で呟いた後、体中が赤黒いモノに包まれていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

その日の放課後、俺はじっと校門の前で429番を待っていた。

今日は新学期初日ということもあってか、午前中で授業は終了した。

他の奴らは早く帰りたいのか焦って帰っていた奴らや

ガヤガヤと大勢になって帰って行った奴らもいた。

 

しかし、俺は違う。なぜなら、

 

「ん?」

「悪りぃー・・・・・・小便かましてたわーー笑笑」

 

コイツとケリを着けなければいけないからだ。

 

「お前・・・ちゃんと聞いていたんだな」

「当たり前じゃん。で、何か用?」

「ここじゃ場が悪い。ついて来い」

 

そう言うと、俺は歩き始めた。429番も俺の後を追って歩き始めた。

 

 

しばらく歩きようやく目的地に到着した。

 

「おい・・・ここって・・・」

「工場だ。もう何十年も前に潰れたけどな」

 

そう言い、俺は工場の中へと入って行った。

中は殆ど何も無く広々とした空間だけが取り残されていた。

俺は、そこにランドセルを下ろして429番の方へと体からを向けた。

向こうもランドセルを下ろして俺の方を向いていた。

 

「あのさ、今からここで何すんの?俺早く帰りてぇんだけど」

「今からテメェを殺すんだよ。429番・・・・・・」

「殺す?俺をか?笑わせんなって・・・それに・・・」

「何だよ?」

「もうとっくの前に勝負は決まっただろう?」

 

欠伸をしながら429番は俺を見つめてそう言った。

その時、得体を知れない何かが俺の頭の中に入って来た。

そして、次の瞬間、

 

「それに俺は、お前と仲良」

 

バギッ!!

 

「グハァッッ!!?」

 

ドサッ

 

俺は目にも止まらぬ踏み込みで429番の顔面に拳をぶつけていた。

 

「諄いんだよ・・・さっきからよ・・・・・・」

 

俺は拳の骨を鳴らしながら、429番に詰め寄った。

すると、向こうもようやく理解したのか反動をきかせて立ち上がった。

 

「・・・・・・分かったよ。この喧嘩買ってやるよ・・・行くぜっ!!!」

 

そう言うと、429番は俺よりも更に速い踏み込みを見せた。

 

「来いっ!!!!」

 

俺は奴の攻撃に備えてクロスガードした。

 

「うおおりゃーーーー!!!!」

 

ドガッ!!!

 

「くっ!!」

「全力で行くぜ!」

 

バギッ!!!

 

「カハァッッ!!!??」

「もう一丁!!」

 

バギッ!!!

 

「カハァッッ!!!!!」

 

くっ、やっぱりコイツ強い。最初の飛び蹴りは耐えれたが、

後からのボディ2発は交わしきれなかった。

 

でも、このまま殴られてままじゃ前と変わらない。

 

「これでも喰らえっ!!!」

 

バギッ!!!!

 

「くっ!!!」

「くたばるにはまだ速ぇーよっ!!!」

 

ドガッ!!!

 

「ブフッッ!!!」

 

俺は、奴の顔面目掛けて膝蹴りを喰らわせた。途端に奴の鼻から血が垂れてきた。

それを見た俺は黒い笑みを浮かべたが、突如腹に激痛が走った。

 

「うっ!!!!?」

「ヘヘッお前に膝蹴り貰った時にボディに1発入れてやったぜ」

「ちっ!!糞っ・・・・・・」

 

腹を押さえながら、俺は429番を睨みつけた。

 

「・・・・・・・・・まさか鼻血が出るとは・・・お前少しはあん時と違うじゃないか?笑」

「うるせぇ・・・知った様な口使うんじゃねぇよ。俺はテメェには負けない」

「そっか・・・・・・まぁさっきの1発を凄かったよ。でも、それもいつまで続けられるかな!!」

 

突如、アイツが今まで以上の踏み込みを見せた。

 

「俺は負けない・・・・・・負けたらダメだ・・・・・・・・・絶対・・・負けるかよ!!!!」

 

俺も負けじと奴と変わらない速さで踏み込みを見せた。

 

「うおおおおおーーーーー!!!!!!!」

「うおおおおりゃーーーー!!!!!!」

 

互いに叫びながら、俺達はぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから何十分殴り蹴り続けたか。

俺達互いに殴っては倒れてを繰り返し、殴られては反撃と延々と続いた。

 

そして、

 

「ハァハァハァ・・・・・・お前まだ立つのかよ・・・・・・ハァハァ」

「そっちこそ・・・早くくたばれよ・・・・・・ゲホッゲホッ!!」

 

お互い顔が腫れあがり、血まみれになった姿で立っていた。

さっきまでペラペラと喋っり合っていたのにも関わらず、今は2人共無言で見つめ合っていた。

 

(もう後がない・・・・・・こうなったら1発アレに賭けてみるか・・・)

 

はっきり言ってもう殴る力も無い・・・。それはアイツも同じだろう。

そう考えた俺はゆっくりと深呼吸し始めた。少しでも楽になるために。

一方429番は俯きながら、深呼吸をしていた。

 

(スーーッ・・・ハァーーッ・・・ハハッまさかこの俺がここまで

 追い詰められちゃうなんて・・・・・・アイツマジでスゲェや・・・!!)

(でも、こっちだって負ける訳にはいかない・・・・・・こうなったらアレに賭けてやるぞ・・・)

 

そう心の中で呟くと、奴は顔を上げて俺の方へ向き直した。

俺も深呼吸を終えて奴と向き直した。

そして、数分の沈黙の間俺達は睨み合った。

 

(負ける訳にはいかない・・・絶対負ける訳には・・・)

(果たして上手くいくかな?・・・・・・)

 

お互い何かを考えた後・・・一呼吸入れた直後だった。

 

「行くぞーーーー!!!!!!!!」

「うおおおおーーーーー!!!!!!」

 

俺達はほぼ同時に踏み込みを見せた。

しかし、そんなこと関係ない。

 

「うおおおーーー!!!!!!!」

「これでも喰らえーーーー!!!!!!!」

 

俺は右拳を構え始めた。それと同時に429番からの右フックが来た。

 

(よし!!今だ!!!!)

 

しかし、俺はそれを待っていた。近づいてくる右フックを紙一重に避ける。

 

「何!!!!????」

 

これには奴も驚きを隠しきれなかった。

俺は右フックを避けた後素早く奴の懐に入り、

 

「死ねっーーーーー!!!!!!」

 

バギッ!!!!!!!

 

全体重を乗せた右拳を思い切り429番の顔面にぶつけた。

 

「グハァッッッ!!!!!!!!!!」

 

俺の渾身の右拳を喰らった429番は、面白く吹っ飛んでいきくたばった。

それと同時に俺も両膝を下ろした。

 

「き、決まった・・・・・・俺のジョルトカウンターが・・・・・・」

 

雑誌で読んで知ったカウンターがまさか成功するとは思ってもいなかった。

それぐらい俺は追い詰められた。

 

「くっ!!!・・・・・・・・・」

 

何とか立ち上がれたもののやはりダメージが酷い。

 

(早く帰ってシャワーでも浴びて寝よう・・・・・・)

 

そう考えていた俺は、ランドセルを下ろした場所に戻ろうとしていた。

 

そう、正にその時だった。

 

 

 

ダッダッダッ!!!!!

 

「?」

 

突如誰かが走っている足音が聞こえた。まさかとは思い後ろを振り返ると、

 

「オイオイ・・・・・・まだ勝負は決まってねぇよ!!!」

「!!!????」

 

何とあの429番だった。何でだ。さっきくたばった奴が何で___

 

「うおりゃーーー!!!!!!!」

 

俺がぼーっとしている間に奴はジャンプして両足を突き出し、

 

「喰らえーーー!!!!!ドロップキックじゃ!!!!!!!」

 

ドガッ!!!!!!!!

 

「ブフッッッ!!!!!!?????」

 

429番のドロップキックをまともに顔面で受け取ってしまった。

全体重が乗っているのか、顔面が深く沈んでいく。

 

「ガハァッッ!!!!!!!」

 

ドロップキックを喰らった俺は激しく吹っ飛び、奴から数m離れた所に転がり込んだ。

 

 

 

 

 

 

そこで、俺の意識はシャットダウンした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい!今回はここで終わります!!
再会と同時にリベンジに臨んだ彰。

しかし、結局は油断していた所を狙われてしまいました。
次回はその後の話から始めたいと思います。

黒田明宏・・・一体彼は何者なんでしょうね笑笑。
どうして彰に興味を持ったのか、それは後々わかるので楽しみにして下さい。

それではここらで終わらせて貰います!

じゃあ次回も夜露死苦!!
 

                  !!See you!!


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相棒

どうもボノぼんです!

遂に前回のノロノロ連載ではなく、通常運転で再開します!
しかし、私が通う学校は工業系なので資格取得など、大切な時は
ノロノロ運転になると思うんで、それは許してください笑

それでは3,2,1・・・どうぞ。


 

「喰らえーーー!!!!!ドロップキックじゃ!!!!!!!」

 

ドガッ!!!!!!!!

 

「ブフッッッ!!!!!!?????」

 

429番のドロップキックを顔面で受け取ってしまった。

全体重を乗せているのか、顔面に深く足が沈んでいく。

 

「ガバァッッッッ!!!!」

 

ドロップキックを喰らった俺は、激しく吹き飛び、奴から数m離れた所まで転がった。

何とか立ち上がろうとするも、全く力が入らなかった。

 

(くっ・・・・・・糞っ・・・!!)

 

そして、どうすることも出来ないまま俺は意識を失った。

 

「ふーーっ・・・・・・何とか成功した・・・」

 

429番は、立ち上がりながら、俺の方を見つめていた。

 

「しかし・・・何て野郎だ。俺に負けてからたった2ヶ月半で

 俺をダウン寸前にまで追い込むなんて・・・・・・マジで何者なんだよ・・・」

 

まさか俺がここまで変貌したのに対して、429番はとても驚いた。

しばらく立ったまま俺を見ていた奴は、俺に近づき始めた。

 

「まぁ、何はともあれ俺が勝ったんだし喧嘩の後片付けはしておかないとな」

 

そう言うと、意識が無い俺を担ぎながら廃工場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う・・・・・・・・・」

 

次の瞬間、俺が目を覚ました場所は廃工場ではなく河川敷だった。

 

(確か・・・・・・俺は・・・・・・・・・)

 

本当なら、廃工場で意識が戻っていた筈なのに・・・誰がこんなことを・・・。

何が何だか理解出来ずに辺りを見渡しているとある事に気が付いた。

 

「うん?・・・・・・この上着って・・・・・・」

 

自分の胸に黒い上着がかけられていた。

その上着には見覚えがあった。

確か・・・・・・429番の上着だった筈だ。

 

「何で、アイツの上着が・・・・・・」

 

何故、俺の胸にかけられているか分からず、疑問に思っていると、

 

「あ!!目ぇ覚めたんだな!」

 

後ろから、男らしい声が聞こえた。

後ろを振り返ると、そこには、

 

「結構気失ってたから、心配したけど、安心したわ」

 

さっきまで闘っていた429番が立っていた。

どうやらコイツが俺をここまで運んで来たようだ。

俺がジッと奴の顔を見ていると、奴はポケットから何か取り出した。

 

「ほら、喉渇いてただろ?これ飲めよ」

 

それは、自販機で売っていたコンポタージュだった。

しかし、何でこんなのを買って来たんだ。

こっちは、口の中切りまくっているのに。

 

「普通買うなら水だろ?何でこんな熱いもん買ってくるの?」

「あ!!本当だな!!!悪りぃ笑笑

 いつもみたいにこれ買っちまったわ笑笑」

「買っちまったって・・・・・・お前・・・」

 

何なんだコイツは?

頼んでも無いのに、こんなむさ苦しくしてくるんだ。

更に黒田のむさ苦しいさは止まらず、俺の隣に座って来た。

そして、ポケットからタバコを取り出して火をつけ始めた。

 

「お前・・・・・・何してんの?」

「スゥーー・・・・・・ハァ〜〜何って

 タバコ吸ってるに決まってんだろ。お前も吸う?」

「イヤ、良い・・・・・・・・・」

 

何やら途轍もなく気まずい空気になって来た。

 

「そんなことよりさ、お前この短期間何してたの?」

「え?」

「この短期間でそのパンチ力をどうやって

 鍛えたんだよって聞いてんだよ」

「あぁ、それは・・・・・・」

 

突然意表を突いた質問されて、たじろいでしまった。

少し間を開け、再び会話を始めた。

 

「大木を殴ってた・・・」

「え!?大木!?」

「あぁ。それをずっと続けてたら、凄く拳固くなった」

「固くなったって・・・・・・その時、拳壊れなかったのか?」

「壊れた。その時は、ローキックをした」

「で、拳が戻ったら、また殴るのを再開するってことか?」

「あぁ」

「お、おい!一回殴ってみろ!?俺の掌目掛けて!」

「は?」

 

突然俺の目の前に立ち、両手を広げながらそう言う429番。

一瞬戸惑ったが、そこまで言うならと思い、右拳を固く握った。

 

「行くぞ・・・・・・」

「あぁ!来い!!」

うおおおお〜〜〜!!!!

 

ドガッ!!!

 

俺は固く握った右拳を思い切り奴の両手にぶつけた。

 

「くっ!!!」

 

近距離で俺のパンチを喰らった429番は、

ガードしていたのにも関わらず数m飛ばされた。

 

「ス、スゲェ!!お前本当にスゲェよ!!!」

 

そして、吹き飛ばされたにも関わらず笑顔だった。

それからもう2,3発パンチを打つと、俺の隣にまた座って来た。

 

「く〜〜痛ってぇ〜!

 こんなに良いパンチ受けたの兄貴以来だぜ」

「兄貴?」

「そう!俺よりも6個上の人なんだけどさ、

 お前みたいにスゲェ人なんだよ!!」

 

鼻を擦りながら、嬉しそうに話す429番。

何で俺の事を褒めてくれるんだ。何で俺なんかを・・・。

 

「別に俺は・・・・・・凄くなんか・・・ねぇよ」

「え?」

「どうせ皆・・・俺のことなんて、凄いと思ってねぇよ・・・・・・」

 

俯きながら、俺は喋った。

何でこんなことを喋っているのかも分からなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そんな俺を見ていた429番は、一呼吸入れると俺の肩を抱いた。

 

「な、何すんだよ!?」

 

突然の出来事に俺は何も出来なかった。

肩を抱いた後、429番はキリッとした目つきでこう言った。

 

「お前・・・やっぱ理由(ワケ)があんだろ?

 鑑別所から思ってたんだけどよ・・なんかあるんだろ?」

「え・・・・・・」

 

さっきまでのヘラヘラした顔ではなく、真面目な顔だった。

 

「別に・・・お前は関係ないだろ・・・ほっといてくれよ」

「今日喧嘩に勝ったのは俺だろ。いいから教えろって」

「全然理由なってねぇよ・・・」

 

意味の分からない理由を言う429番に理解が追いつかない。

しかし、このままずっと断れば肩から手を離してくれない筈・・・

そう思った俺は、一呼吸入れ、429番と目を合わせて、

 

「・・・・・・あれは、俺が5歳の時だった・・・」

 

理由を話し始めた。

 

 

 

今までずっと祖父達から暴力を浴びていた事。

父母両方に冷たい態度を取られ続けていた事。

妹2人に度を越えたからかいを受けていた事。

学校で、全員にいじめられていた事。

そして、それに耐えきれず、正月の集まりの日に

祖父を含め3人の大人を病院送りにした事。

学校で、自分をいじめていた主犯格の3人を自殺までに追い込んだ事。

事情聴取されそうになった時、警察を殴り、それが原因で鑑別所に入った事。

 

以下の全ての事を429番に俺は話した。

途中話すのをやめようと思ったが、口が勝手に動いた。

何で動くのかも分からなかった。

全て話し終えた後、俺は横目で429番を見た。

 

(話すだけ無駄だったな・・・・・・)

 

ハッキリ言って、関係ない事をただ1人で話している様な感じだ。

何も伝わってないだろうと思っていた。

しかし次の瞬間、俺の予想を遥かに上回る出来事が起きていた。

 

「・・・・・・っ、・・・・・・ぅ・・・っ・・・・・・」

「!!??」

 

な、泣いてるのか・・・?

俺の話を聞いて泣いているのか?

何でどうして・・・・・・?

 

「・・・・・・ぐすっ、お前・・・ずっと、耐えて、たんだな・・・・・・っ」

「あ・・・・・・あぁ・・・」

「普通なら・・・もう、とっくに・・・・・・っ、自殺してるぞ・・・・・・ぅ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

雨の様に涙を溢し、啜り泣く429番を見ても尚俺は分からなかった。

 

何で、他人なのに・・・こんなに感情を注いでくれるなんて・・・。

 

「何で・・・・・・泣いてるんだよ・・・・・・」

「え?」

「他人なのに・・・ずっと一緒に生きてる訳でも無いのに、

 それに・・・今日喧嘩に負けた奴の話聞いて、何で泣くんだよ!」

 

叫ぶ様につい言ってしまった。

すると、奴は涙を拭いて俺の肩を掴んでこう言った。

 

「こんなに辛い話聞いて、誰が泣かねぇんだよ!!」

「え?」

「他人も糞も関係ねぇよ!!こんな辛い話を聞いて、

 ゲラゲラ笑う野郎なんざ、この世には居ねぇよ!!!」

「それに・・・・・・お前辛かったんだろ?」

「!!」

「そうだろ?打ち明けられる奴も居ないし、誰も助けてくれないし、

 何より居場所が無かったんだろ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

何で、何で分かるんだ。

たったの2回しか会っていないのに、

どうしてそこまで俺の事が分かるんだ・・・。

全然分からない・・・・・・。

 

「お前、友達居ないんだろ?」

「え?あ・・・・・・うん」

「だったら、俺がお前のダチ・・・イヤ、相棒になってやるよ!」

「えぇ!?」

「お前の痛みや悲しみを俺も一緒に受けてやる。

 お前見てるとほっとけねぇんだよ」

「で、でも・・・」

「でもじゃない!ほら、拳出せ」

 

429番の言われるままに右拳を出された。

429番も自分の左拳を出して、そっと俺の右拳とくっつけた。

 

「今思ったんだけどさ、俺らまだ名前名乗って無かったな。

 俺の名前は、黒田明宏。お前は?」

「に・・・・・・西住、彰・・・・・・・・・」

「そっか、彰って言うんだな・・・よろしくな!!彰!!!」

 

満面の笑みでそう伝える429番。 

 

「あぁ・・・・・・よろしく、黒田・・・・・・」

 

一方の俺は、まだ他人行儀の喋り方になってしまった。

 

「もう、他人行儀だなぁ〜明宏で良いって、明宏で!」

「わかった。よろしく、明、宏・・・」

「おう!よろしくな!!!」

 

そう言うと、俺達は拳を元に戻した。

429番は、置いていた上着を着ると一息ついて俺の方を向いた。

 

「じゃ、俺もう帰るから気をつけて帰れよ!」

「あ、うん・・・」

「じゃあな!彰!!明日からよろしくな!」

 

そう言い終えると、

429番は額に指をピッとするポーズをして走って行った。

 

1人残された俺は、右拳をジッと見つめていた。

 

(相棒・・・・・・か・・・)

 

とても、複雑な気持ちだった。

何故、ここまでしてくれるのかと思うと尚更思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが俺と42・・・イヤ、黒田明宏との出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この黒田明宏との出会いが俺の人生を大きく変わる きっかけ(・・・)になることを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時の俺はまだ知らなかった・・・・・・。




はい!今回はここで終了です!!

これでまず、序の1つ目の山場は終了しました。
まだ山場はあるので、楽しみにしていてください。

それではここらで終わらせて貰います!

じゃあ次回も夜露死苦!!
 

                  !!See you!!


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遭遇(前編)

どうもボノぼんです。
前回の投稿から、約4ヶ月ぶりに投稿しました。
もっと、早くに投稿したかったのですが、
新生活が予想以上に忙しく、かなり遅れてしまいました。
誠に申し訳ございません。
今回は、彰が明宏の家に遊びに行く途中に、ある少女と出会う話です。

それでは3,2,1どうぞ。


 

明宏と相棒という関係になってから、1ヶ月の時が経った。

最初は、本当に信じていいのかどうか疑問に思ったが、

今はとても心の何処かが埋まった様な感じがする。

 

何でだろう?アイツと会うまでは、ずっと1人で良かったと思っていたのに。

本当、明宏は一体何者なんだろう?

 

そんな事を考えていると、後ろから誰かが勢いよく俺の肩に手を置いて来た。

 

「おはよう!彰!!」 

 

明宏だ。

 

「おはよう・・・明宏」

 

朝から元気に挨拶する明宏と対照に若干暗目に挨拶した俺。

まだ人と接するのが苦手だ。

 

「フハァ〜〜・・・何で朝ってこんな眠たいんだろうな」

「何でだろうな・・・・・・」

「本当、欠伸し過ぎて顎が外れちまうよ」

「どれだけ欠伸してるんだよ・・・」

 

こんな間抜けな会話をしていると、

突如明宏が、俺の右耳を掴んで来た。

 

「前から思ってたんだけどさーお前の耳飾りってなんか独特だな」

「そうか?」

「だって・・・十字架にばつ印付いた耳飾り付けた奴なんていないぞ」

 

俺の返答がおかしかったのか、明宏は半笑いで俺を見つめた。

 

「まぁ、この耳飾り・・・アイツらがくれたからな・・・・・・」

「アイツら?」

「妹がくれたんだ」

「あ、そうなのか・・・・・・」

 

妹と聞いた途端、何か察したのか明宏の顔色が変わった。

まぁ、コイツは俺の裏事情を知っているから

聞いてはいけない事を聞いてしまったと思ったのだろう。

 

「良いよ。何も思ってねぇから・・・」

「そっか。悪い・・・・・・」

 

一応声をかけたが、少し気まずい空気になってしまった。

少し間が空くと、今度は明宏が声をかけてきた。

 

「なぁ、彰」

「何だ?」

「今日さ、暇?」

「暇だけど・・・」

 

そう言うと、明宏は一呼吸入れてこう言った。

 

「あのさ!今日俺ん家に遊びに来ねぇ?」

「え?」

「俺ん家に・・・遊びに来ないか?今日親居ないから」

 

顔を赤らめながら、明宏はそう言った。

 

「え・・・まぁ、良いけど」

「ホントか!?じゃあさ今日の放課後、家にランドセル置いたら学校に集合な!!」

「ちょ、おい!」

 

素早く決めてしまった明宏を止めようとしたものの、

明宏は嬉しさの余り教室に走って行ってしまった。

 

「ハァー・・・・・・まぁ、別にどうでもいいか。

 アイツに決めてもらった方がかえって良かったし」

 

友達と遊んだ事のない俺にとっては、勝手に集合時間も場所も決めてくれる奴が良いと思った。

実際、顔には出していないがとても楽しみにしている。

 

「早く、遊びたいな・・・・・・」

 

そう思いながら、俺は教室へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーっ・・・やっと着いた」

 

放課後、俺は朝明宏と約束した通りすぐに家に帰ると、ランドセルを部屋に置いた後

もう一度、学校に向かった。学校に着くと、まだそこには明宏はいなかった。

しばらくの間ボーッと立っていると、

 

ブォン!!ブォン!!

 

遠くから、けたたましいバイクのコールが聞こえてきた。

何だと思い、見つめるとそこにいたのは、

 

「お〜〜い!お待た〜〜!!」

 

スクーターに乗りながら、手を振っている明宏だった。

 

「お前・・・何してんの?」

「ヘヘッ!家からスクーター持って来たぞ」

(コイツ、馬鹿だ・・・)

 

ヘラヘラ笑う明宏を見て俺は呆れてしまった。

でも、それと同時になんだか面白かった。

 

「ま、そんな事良いから早く乗った乗った!」

 

座席のシートをバシバシ叩きながら言う明宏の言う通りに

俺はスクーターに跨った。俺が乗った事を確認すると、

明宏はエンジンをもう一度かけた。

 

ブォン!!ブォン!!

 

「よっしゃ〜ぶっ飛ばすぞ!!」

「分かったから、早く動かせ」

「ちぇっ!相変わらず、無愛想だなー」

 

そう言うと、明宏はアクセルスロットルをクルッと捻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校を出発して、丸20分近く経ったか。

今、俺達は辺り一面田んぼの道を進んでいる。

この道をまっすぐ進んで行けば、明宏の家が見えるらしい。

しかし、一体いつになったら着くのだろう。

まだ、何も見えはしないではないか。

 

「なぁ、いつになったらお前の家が見えるんだよ?」

「そうだなぁ・・・後、10分くらいかな?」

「後10分もこんな道通らないといけないのかよ」

「文句言うなよ。俺だって引っ越したばっかなんだから、

 ここ以外の道とか分からないんだよ」

 

明宏と若干言い合いになっていると、突如スクーターのスピードが急激に遅くなり始めた。

 

「あれ?なんかスクーターのスピード落ちてないか?」

「嘘っ!?あれ!!アクセル入れても全然動かん!?」

 

そして、数m進んだ後スクーターは田んぼの真ん中で止まってしまった。

 

「おい!止まったぞ!!?」

「ヤベェ〜まさかガソリン切れかな?彰!一回降りてくれ」

 

明宏にそう言われ、俺はスクーターから降りた。

明宏は、すぐさまスクーターの異常を調べた。

すると、原因が分かった。

 

「悪りぃ・・・・・・やっぱガソリン切れだったみたい」

 

明宏は、頬を掻きながら俺にそう言った。

 

「はぁ!?」

 

その言葉に対して、俺はあんぐりしてしまった。

何もない田んぼのど真ん中で俺達は、何も見えない道をただ歩くしか方法が無くなった。

 

 

それから数分後、俺達はあれこれ言いながらもまず明宏の家に着いてから考えようと

明宏の家まで、ただひたすら歩く事にした。今の季節が秋で助かったが、

夏なら2人ともぶっ倒れていたに違いない。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、本当ッ田んぼしか無いな笑」

「だろ。ハァ、何でこの道に、線路とか作らない訳?」

 

しばらくの間、どうでもいい話を続けていると突如明宏が足を止めた。

 

「おい、彰・・・」

「何だ?」

「あれ見ろよ?」

 

明宏が指を指す方へ顔を向けると、5.6人ぐらいの奴らが1人の少女を問い詰めていた。

よく見ると、少女は白いシャツでオーバオールを履いており、麦わら帽子を被っている。

 

「どうする?」

 

明宏がこっちを見て聞いて来た。その顔は、何故か少し笑っていた。

 

「そんなの決まってるだろ・・・殺るんだよ・・・」

「だよな。そう言うと思ったわ」

 

でも、そんな明宏とは対照に俺はジッと奴らを見ていた。

 

それと同時に、赤黒いモノが俺の体全体に纏わりつき始める。

 

(こ、この感じ・・・まさかあの時の!?)

 

明宏は俺の異変にすぐさま気がついた。

コイツは俺と鑑別所で勝負した時に感じたからな。

 

俺は目を閉じて、スゥーと息を吸う。

 

そして、目を開く。

 

 

すると、奴らの内の1人が少女の髪の毛を掴んだ。

 

(今だ!!)

 

それと同時に俺は、素早くステップして奴らの方へと走り出した。

 

「ちょ、おい!?」

 

突然の行動か、明宏はびっくりしている。

しかし、そんな事など知らんと、俺は走るのをやめない。

 

「チッ!本当ッ何考えてんだか!!」

 

明宏も俺と変わらないステップで、走り出した。

 

(もうすぐだ・・・!)

 

奴らとの距離も少しずつ近くなっている。

それと同時に俺は顔を歪ませる様に笑う。

 

(さぁーて、どれくらいの強さかな?) 

 

前までの自分なら、黙って見て見ぬふりをしていただろう。

 

でも、今の俺は違う。

 

手に入れたんだ・・・暴力という最高の感情(Tunteet)を!!

 

そう思って来ると、更にゾクゾクして来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、私はただ外に出て行っただけだった。

 

だって、家にいても誰からにも構われず、いてもまた姉の自慢話を聞かされるだけだから。

 

私の名前は逸見エリカ。小学3年生だ。

 

今私は、お気に入りのウサギのぬいぐるみを持って、

田んぼのど真ん中の道をただふらついている。

 

(秋なのに暑い・・・喉乾いた)

 

何もない道をただふらついていたせいか、喉はカラカラだ。

そう思えば、家に帰ってから一口も飲んでいない。

 

(やっぱり・・・家に帰ろっかな?・・・)

 

このままだと、脱水症状で倒れるかもしれない。

家に帰って、ゆっくりお茶が飲みたい・・・。

 

でも、家には帰りたくない。

 

『出来損ない』

 

『どうしてもあなたは、その程度なの!?』

 

『あなたは、ずっと私の為に汚れ続けていてね』

 

家にいる人間は、誰も私を必要としてくれていないから・・・。

姉は優秀で、私は平凡。姉が出来ることが私には出来ない。

 

そう、私は何も出来ないただの平凡な人間なんだ。

 

平凡な人間・・・平凡な・・・

 

「おい」

 

その時、後ろから誰かに声をかけられた。

振り返ると、そこにはクラスメイトの男4人と年上と思われる人が1人いた。

 

「おい。お前がクラスで有名なぶりっ子ちゃんか?

 昨日弟が世話になったらしいんだけどよ」

 

男は、私にニヤニヤしながら問いかけて来た。

後ろには、私を見てヘラヘラと笑っているクラスメイトがいた。

 

そうか、そういうことか。

 

昨日、私の事を揶揄って来た奴は私に無視され続けていた事に腹を立てて腕を掴んで来た。

その行動に私は、つい奴の頬をビンタした。

多分、その事について奴の兄は問いかけているのだろう。

 

「えぇそうよ。昨日私の腕を掴まれたから、軽くビンタしただけよ」

 

私は、奴の兄にハッキリとそう伝えた。

何はともあれ先に手を出したのは奴の方だ。

私は悪くない。私はただ自分を守っただけだ。

 

「へぇ〜そうなのか〜」

 

私の言葉を聞いた奴の兄は、ニヤニヤしながら私の方へ近づいて来た。

 

「な、何よ?」

「弟の言う通り、生意気だな〜」

 

そう言うと、突然私が持っていたウサギのぬいぐるみを取り捨てた。

 

「きゃあ!?」

「生意気なぶりっ子ちゃんには、きっちりと教育してやるっか!!」

 

私が突然の出来事でパニックになっている隙に男は髪の毛を掴んで来た。

 

「痛い痛い!!離しなさいよ!!!」

「黙れ。年下の癖に偉そうに喋りやがって」

 

何とか離そうとするも、力は断然にあっちの方が上。

どうすることもできないまま、私はただ・・・泣き出した。

 

「おいおい、どうしたさっきまでの威勢は!もう降参かよ笑」

「頑張れよぶりっ子!泣いたって誰も助けに来ねぇよ!!」

 

私が泣き出したのを見て、クラスメイト達はヘラヘラと笑いながら、

抵抗できない私に好き勝手な言葉を叫びまくる。

それを聞くと、さっき頭の中で思っていた事を思い出し、

更に涙が出て来た。

 

「う・・・うぅ・・・っ!!」

「フッ・・・おいぶりっ子ちゃん。もうやめてほしかったら、

 弟に土下座して謝れ。そしたら、許してやる」

「っ・・・!!そんなの・・・絶対嫌っ!!」

 

嫌!こんな奴の弟に土下座するなんて!!

死んだ方がマシだ!!

 

「あ、そう。じゃあもっと教育してやるよ」

 

そう言うと、男は私の胸に手を近づけ始めた。

 

「い、嫌っ!!やめてーー!!!!!!!」

「ヘッ、だから叫んだって誰も来やしねぇよー」

 

嫌、嫌!誰か、助けて・・・お願い・・・

 

(お願い・・・助けて・・・)

 

か細い声で私は心の中で泣きながらそう叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダッダッダッダッダッダッ!!!!!!!  

 

 

 

  

 

 

 

 

「うん?何かこっちに向かって来るぞ?」

「何だ?なんか変な奴が走って来るぞ?」

 

その時田んぼの道から、1人の少年がこっち向かって走って来た。

 

「ハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

少年は笑いながらクラスメイトに近づくと、大きくジャンプした。

 

バンッ!!

 

「え?」

「うおおおおーー!!!!」

 

そして、大きく宙を舞いながら握り拳を作ると1人のクラスメイトの顔面に素早く振り下ろした。

 

バギッ!!!

 

「ブハァッッ!!!?」

「え?え!?え!!?」

 

パンチをダイレクトに喰らったクラスメイトは倒れ、

唖然としているもう1人のクラスメイトに狙いを定め、

 

「うおおおおおーーー!!!!」

「ちょっ!?待っ_ 」

 

ドガッ!!!

 

「ガアアアアアアッー!!」

 

鳩尾に鋭い蹴りを入れた。

突如起きた出来事に、私は理解が追いつかなかった。

それと同時に先程まで楽勝ムードだった奴等も焦り始めた。

 

「何だアイツ!?」

「何で俺達を攻撃するんだ!?」

 

「ハハハハハハ・・・後3人」

 

混乱している2人を見つめながら、少年は薄ら笑いを浮かべた。

 

「く、来るぞ!?お前らちゃんと足止めしろよ!?な!」

 

男は叫びながら2人に命令する。

 

「そ、そう言われても・・・」

「何だ・・・この・・・悍ましいオーラは!!」

 

しかし、2人は完璧に少年のオーラに怯えていた。

 

「うおおおおおおーーー!!!!!!!」

「ひっ!!」

 

少年は声を上げながら、1人のクラスメイトに素早いステップを見せた。

少年のオーラに完璧に身動きが出来ないクラスメイトはどうすることもできず、

 

バギッ!!!

 

顔面にパンチを喰らった。

 

「ブフッ!!!!」

「くっ、無理だ。踏み込みが早くて対応出来ない!」

 

パンチを喰らわした後、隣にいたクラスメイトにさっきよりも早い踏み込みを見せた。

余りにも一瞬の行動に対応が追いつかず、

 

ドガッ!!!

 

顔面に膝蹴りを喰らった。

 

「グハァッッ!!!!」

「これで・・・後は、お前だけだな」

「くっ・・・嘘だろ・・・」

 

突如、現れた謎の少年に男は戦意を半分失っていた。

少年のオーラは、更に凄くなっている。

 

(一体・・・この人は・・・!?)

 

2人とは少し離れて見ていた私は、少年の凄さに驚きが止まらなかった。

 

よく見ると、髪は白髪でヒョロっとしているが、何処からか分からないオーラを放っている。

そして右耳には、細長い長方形で十字架にばつ印?の様な耳飾りをはめている。

 

少年は、男を見るとゆっくりと歩み始めた。

 

「ハハハハハハ・・・」

「な・・・何なんだよお前・・・」

「ハハハハハハ・・・」

 

首を傾けながら笑い、男と距離を短くしていく。

やがて、男と目と鼻の先ぐらいになると、足を止めた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

男の顔をジッと見つめながら、少年は軽く握り拳を作っていた。

それに気づいた男は、そっと右手をポケットに入れ何かを持った。

 

(何が起きるの?今から?)

 

2人を見た私は、この場の空気感に緊張しているのか、一粒の汗を溢した。

 

その時だった。

 

「うおおおおーー!!!!死にやがれ!!!!」

 

男が右拳を少年に振りかざした。よく見ると、右拳にはメリケンサックがはめられていた。

 

(危ない!!)

 

私は少年を助けようと走った。あんなもので顔面を殴られたら、大変な事になる。

 

しかし次の瞬間、私は目を疑う様な光景を目にした。

 

 

「遅ぇよ」

「何!?」

 

何と、男の振りかざした右拳を綺麗に交わしたのだ。 

そして、それで終わりでは無かった。

 

「死ね」

 

バギッ!!!!!

 

交わしたと同時に作っていた握り拳を男の右拳の上に乗せる様にカウンターを入れたのだ。

 

「ブ・・・・・・ブフッッ!!!!」

 

まともにカウンターを喰らった男は、立っていたが鼻と口から血が噴き出るとゆっくりと倒れた。

 

「あ、ああ・・・・・・」

 

男も倒し、血が付いた拳をピッピッっと叩いていた少年は私の方へと目を向けた。

私はドキッとし、息を呑んだ。ゆっくりと歩み寄る少年に僅かながらの恐怖を感じるも、

勇気を出して耐えた。

 

私の目の前に立つと、少年はそっと声をかけて来た。

 

「大丈夫か?・・・」

 

私は恐る恐る少年の顔に目を向けるとそこには、

 

さっきとは真逆で、静かな少年が私の目の前に立っていた。

 




はい!今回はここで終了です。
最後の所は、半分うたた寝で執筆した為ぐちゃぐちゃだと思います。すみません。

次回も、投稿が遅れるかもしれないので、不定期だと思います。
1年越しとかにならないので、それは安心して下さい。

それではここらで終わらせて貰います!

じゃあ次回も夜露死苦!!
 

                  !!See you!!


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