両親ヴィランだけどお向かいさんが女神なのでそれでいい。 (下僕)
しおりを挟む
両親ヴィランだけどお向かいさんが女神なのでそれでいい。
俺の名前は
大きな獅子と書くこの名前、一見かっこよく感じるが俺の容姿を見るとあら不思議ガリガリくんの方がお似合いですよって感じのひょろがりだ。かかしもお似合いかもしれない。
そんなことより今日はいい天気だ。雲一つない青空に、満開の桜たち。
中学校入学式に相応しい日と言えるだろう。
「あいつの親、
結論から言えばそう、入学早々クラス、いや学校で孤立した。幸い教師はちゃんと相手してくれたのでよかった、先生にプロポーズしようか迷った。
両親が
地元ではそりゃもう名を轟かせた有名人、小学校での陰湿ないじめを耐えぬき、これで俺も楽しい学校生活!ハッピースクールライフ!と淡い希望を抱いていたが1日もたたないうちに打ち砕かれた。
ところでテレビで見たってなんだよと。調べると俺の親は全国で名の知れた有名人だったようだ。地元(日本)だったってことだ。
今頃クラス全員と友達になって即遊びに行く予定だったが現実はそううまくいかないらしい。
「ちょ、ヴィランく〜ん。これやっといて」
中学校に入学し、俺は三年生になった。
最初の方は話しかけても無視、ましてや話しかけられることもなかった。だが今はどうだ? こんな俺に頼み事をしてくれているじゃないか。
「おー、任せろ!」
と、とびきりの笑顔で返すと女子軍は何か言いながらそそくさと帰っていった。
「マジでなんなのあいつ…」
よく聞こえなかったがおそらくありがとうと言ったのだろう。照れ屋さんなんだから!!!!!
頼まれたのは大量のプリントとノートの運搬。これは骨が折れますなあ。
「ねえあんた」
突然声がしてビクッと肩を震わせるとケラケラと笑い声がした。
「初対面で失礼では…?」
「あはは、ごめんごめん。それを言ったらさっきの女子たちの方が失礼だと思うけど」
「…なんで?」
そう返すと、は?とでも言いたげな顔をしてそれからはぁと息を吐いた。おい初対面でこんな失礼なこと連発されたの初めて…ではなかったわ。
「あのね、さっきの奴らはあんたに嫌がらせしてんの。わかる?」
「えっ、……え?」
「普通考えたらわかるでしょ、とりあえず手伝うから半分かして」
言われるがまま半分渡すと教室を出て廊下をスタスタと歩いていく。突然のことに頭が追いつかないが一旦考えるのをやめて残りを持って後ろを歩く。
「…あ、私は耳郎響香。あんたの名前は知ってる」
「あ、はい」
うんもう有名人だしね、色んな意味で。
それとあの女子ども嫌がらせだったのか許せん。もう来世まで呪う、末代まで呪うのは子供達が可哀想なのでやめる。
「ありがとうございます?」
「…なんで疑問形なの? あと敬語じゃなくていいし」
なっ、なんだろうかこの…圧倒的ヒロイン感…、いや優しすぎん? 女神? 女神なのか? いや今までの女子がクソだったのか? うん?
「あーその、両親
「うん、それで今まであんたに興味なかったんだけどそんな理由で会ったこともない相手を勝手に決めつけるのってロックじゃないなって思って」
ロック…? ロックとはなんぞや。そんな顔をしていると今のは気にしないでと言われたのでものすごく気にしておくことにする。
そうこうしているうちに職員室につき、教師に渡す最中ものすごい顔をしていたのを俺は忘れない。あと帰り際によかったなって肩ポンってされた、やめてそんなんこっちが悲しくなってくるんだけど。
その後会話のないまま流れで二人で校門前まで歩いてきてしまった。
じゃあ俺はこっちなのでと行こうとしたら方向一緒だったワロタ。
「今日はありがとう、耳郎さん。往復しないで済んだ」
「別に、あんなの一人でやる方が頭おかしい」
「えまって、今までの俺の頑張りが頭おかしいってことか…?」
そう一人でショックを受けているとまた耳郎さんが笑った。かわいい。これが女子か…、今まで見てきた女子はただの空気だったんだ。
「あとその耳郎さん呼び気持ち悪いからやめて、呼び捨てでいい」
「あ、はい…」
あれ、これどこまで道一緒なのかな。もうすぐ俺の家着いちゃうんだけど。
「あ、じゃあ俺の家ここだから。えと、また明日?」
また明日なんてあるワケねぇだろ!!! と自分に対して思いながら手を振る。
「ははっ、うちの家ここだから!」
そう言って俺の家のお向かいさんの家を指して笑っていた。
うっそだろ。
本当に言ってるのかそれ。
ははーんさてはこれは夢だな。
こんな都合のいいことあるワケが
「おはよ」
翌朝、玄関を出た先の向かいの家の前にいたのは我が女神、耳郎響香様だった。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
雄英受けることになったけど楽しそうだしそれでいい。
「やあやあ響香くん、勉強は進んだかな?」
誰から見てもうざい顔で生涯で唯一できた友達に声をかけると、あからさまに嫌な顔をされた。
「って言うのはマイケルジョーダンで、はいこれ、耳郎が俺に泣きついて頼んできた単元をまとめたノート」
「ありがと、でもやっぱりあんたが頭いいの腑に落ちないわ」
俺の超絶、全世界爆笑間違いなしのマイケルジョーダンをひらりと交わして突然バカにされた。許せん。
「今まで友達と遊ぶことが少なかったから勉強しかやることなかったんだよ言わせんな」
「うんそれはごめん」
耳郎と出会って早いもので八ヶ月、出会ったのが五月だったので今はあけおめパーティnightくらいの感じだ。
「で、あんたは高校どこいくか決めたの」
「んー、特に決めてない。耳郎は雄英のヒーロー科だったっけ」
そ、と素っ気ない顔で言うが雄英ーー正式名称『国立雄英高等学校』
そのヒーロー科といえば偏差値79、入試倍率300倍と言われる桁外れの難関。ヒーローになるための一番登竜門といってもいいだろう。それを耳郎は目指している。レベルが違う。
「…と言うかまだ決めてないのヤバいからね」
「ごもっともです」
進路の紙を取り出してにらめっこしていると頭を叩かれる。なかなかいい音だった、やるじゃないか。
そしておもむろに紙を奪うとさささっとペンで何かを書き、バッと眼前に見せつけてきた。
第一志望、第二志望、第三志望、三つに分けられていた全てを無視してどでかく雄英高校と書かれていた。それもペン。
「おいなにしてんだ」
紙を奪い返そうと手を伸ばすが耳郎はそれをさらりと避けて走っていく。それを追って走り出す。
「バカめ!! 俺の方が足は速いんだよ!!!」
と言って肩を掴んだ。そして耳郎がこっちを向いてべー、と舌を出して見せた。かわいい。ってそんなこと思ってる場合じゃなくてお前まさか…
グサッ
予想は的中、耳郎のイヤホンジャックが突き刺さってきて爆音が俺の中に響き渡った。
「マジでお前許さん、来世まで呪う」
「末代まで祟るとかじゃないんだ」
耳郎は俺の進路希望の紙を無事教師に渡し、俺は全然無事ではないが雄英を目指すことになった。
金銭面での問題が発生するんじゃと教師に言われたがうちには謎に金支給してくれる叔父がいるので大丈夫ですと伝えた。謎の叔父さん心強い。愛してる。別に深い意味はなく。
一度だけ顔を合わせた程度で、なぜこんなことをしてくれるのかと電話で聞いたらうちのバカがしたことで子供の未来がうんたらかんたら言ってた。とりあえず優しい。あんまりあちらからのアクションがないのは多分申し訳ないんだろう多分。お向かいさんは女神で叔父さんは男神、なんてこった人生勝ち組では?
そして入試当日、俺は寝坊した。
何を言っているか割らないと思うが俺も何を言っているのかわからない。起きていい朝だと紅茶をクイッとしたところで時計を見て俺は泣いた。携帯を見たら耳郎からの鬼電と先行くというメールが来ていた。俺を待つと言う自殺行為をしなかったことに拍手しながら俺は着替えて本当にするとは思わなかったが寝坊することを予知して昨晩準備した荷物を抱えて外に出る。
腕時計を確認して「おっとこれはアメリカの時間⭐︎」と言って同じ時計を見直してそんなことないわとキレた。時計は正常だった。
ここから雄英までかかる時間と入試開始時間を擦り合わせて間に合わないことに気づいて泣いた。だがここで諦めないのがこの俺。
これバレて怒られたら本当にガチガチに怒られる案件なんだけど個性を使う。
俺の個性は《鷲》、なんか鷲になったりできる。便利だなあ。
誰もいない場所で鷲に変身して荷物を足に引っ掛けて大きく飛び上がる。鷲の速さ舐めんなって感じだ。
後日、普段あまり見られない鷲が足に誰かのバッグを引っ掛けて飛んでいたことが少し話題になった。その後、耳郎には睨みつけられた、すません。
そんなこんなで会場もとい雄英高校に着き、時間に余裕があったので耳郎と合流できた。引っ叩かれた、オカンやめて。
クソでかい会場に入って席につくとしらばらくして問題が配られ始めた。横にいるオカン耳郎にウインクを送っておいた。イヤホンジャックで小突かれて声出た。みんなこっち見た。やめてみないで恥ずかしいでしょ/////ってならねぇよこっち見ないで。
まあ、筆記試験は満点は行かずとも悪い結果にはならない。逆になったら俺の今までのボッチで勉強に励んだ時間を返してほしい。そんなことを考えながら問題を解いていき、全科目が終わった。
「どうだった?」
「まあまあ」
「満点ね了解」
適当な解釈をされているがまあそれに近いだろうし放っておく。それじゃないとプライドが消えて無くなる。
今は筆記試験が終わり昼食の時間中だ、午後には実技試験がある。
耳郎によるとロボットぶっ倒してポイント稼ぐらしい。何その楽しいゲーム形式、雄英好きになっちゃう。
「耳郎は個性でガンガン潰せそうだよね」
「まあ近づければイチコロだと思う、そういうあんたの個性もなかなかだと思うけど」
「鷲になるだけやしなぁ…」
と爺さん口調で言うとアホかと叩かれた。アホになったらどうするんだと言おうかと思ったけどもう筆記試験終わってるのでスルー。
「策はあるんでしょ」
「策は別にないけど鷲は強いからね、儂もだけど」
ギロっと睨まれたので食べ終わった弁当を片付けて会場に向かって走って逃げた。
会場に着くとそろそろ実技試験の説明が始まるようで静まりかえっていた。いやでもさっき昼休憩で一旦抜ける時もこんな感じだったわ。みんなの視線を一身に浴び、俺は堂々と席に座る。その後からちっちゃくなった耳郎が座った。ちょっとおもろい。
プレゼントマイク先生が実技試験の説明をしてくれてなんかその間に、明らかクソ真面目ですって感じのメガネくんが質問してたり注意してたりしてて面白かった。メガネくん受かりそう。
後ちなみにぼーっとしてて何にも話聞いてなかった。飯の後は眠たくなる、これは人間の真理だから仕方ない。まあ多分ロボット倒していくだけだから無問題。これでロボットを救出せよ!とかだったら俺を倒してくれ。その時は俺がヴィランだ。
と言うことで耳郎とは会場が違うので別れて、指定された所に向かうが雄英デカすぎ。東京よりデカい可能性ない? ごめんそれはないか。
周りを見るとみんなジャージやらなんやらに着替えている。そんな中俺は制服だった。そう、制服だったのだ。大事なことだから二回言っておく。
そう、忘れた。忘れました。いやまあ別にいいんだ。でも明らかに浮いてる。それはもうふわふわ浮いてる。
仕方ない仕方ないと一人で頷いて、スタートの合図を待った。
「……………………はいスタート」
割と待ったわ。
さあいくわよあんたたち!! 着いてきなさい!
そう思いながら後ろをチラッと見るが誰も動いてない。
いやスタートって言われたら走るでしょ学校でそう習った、もはや洗脳教育並だと思う。
まあつまりスタートは好調という訳だ。今一人で走ってる。楽し、あっ動き出した。集合体恐怖症だったら今ので泣いてる。
「いくぞー」
そう自分に呼びかけて全身にくっと力を入れる。完全に鷲にはならない、半魚人くらいの気持ちで形態を変化させる。全部変えたら後々服が面倒になる。服ごと変化する訳じゃないので服がその場に残ってしまう、そうパンツまで。今朝はバッグにぶち込んですんだので良かったが、この場所じゃ広いしどこか路地におこうにも他の奴らの個性でボコボコにつぶれて服がおじゃんになって全裸で帰宅とか嫌だからね。
目撃! 全裸で帰宅する受験生!! とかで新聞に載りたくない。載るわけないけど。
あれ? でも一部だけ変化したら服とか破けーーーーーーーーー
ビリビリッと予想通りの音がした。
「わああああ!!!!!!!」
やけくそで叫びながら向かってきたロボット2体を翼になった腕で叩き飛ばして潰した。もうやってられねぇ俺は今日から鷲になる。
両翼をいっぱいに動かして上空に舞い上がり市街地を俯瞰する。やっぱりデカい。東京デズニーシーもびっくりだよこんなの、行ったことないけど。
ロボットを捕捉して、ほぼ垂直に等しい角度からロボットをくちばしで突く。速度も相まっていいダメージ、一撃ノックアウト。あと鉤爪をぶっ刺しながら市街地を飛んで回る。
ある程度ロボットを潰した所である可能性に気づく、もしかして救助とかしたらポイントつくのではってちょっと待って。
————この完全に鷲になった形態、ただの野生のやつだと勘違いされるのでは!!? いやでもロボット潰して回る鷲なんてどこにもいねぇかガハハ、ここにいるけど。
閑話休題。個性書いたやつ提出してるしそれくらいわかるやろ、ともかく救助的なことをしたらポイントくれるんではないか説が浮上している。でもこの鷲だと首根っこ掴んで助けてあげると言う荒技しかできないので諦める。これでもヒーロー志望です。仕方ないよね。
とまあそんなことを言いながら助けれちゃうのは俺なんだよねって。意図的にではなくなんか倒してたら助けた感じになってたのは内緒だ。俺が鷲だからからめちゃくちゃ微妙な表情をされていました。すみませんねこんな鳥で。
へこへこしていたらドゴォンともう世界終わったか? くらいの音がして振り返ってみると倒していたそこらのロボに比べ何十倍もデカいロボがビルを壊しながらゆっくりと歩を進めていた。
そして俺はそいつを見て思った。
あんなん倒したら絶対ポイント天国なるやん、と。みんななぜか逃げているがそれなら好都合だ俺だけがあのデカブツのポイント独占できるんだから。
ビルの屋上から飛び立ち、スピードをぐんぐん上げて上げて上げまくって、スピードが最速に達したところで真正面からあのクソデカロボットに突っ込む。
普通の鷲なら衝突したら死ぬ、だが俺の個性はそんな弱いものじゃない。人間の状態での頑丈さや筋肉量などすべて鷲の形態に引き継がれるのだ。それに気づいた時はもう楽しくて楽しくて筋トレはいいぞおじさんになってた。耳郎にキモいと言われ即やめたが。
ズガァン
ロボットの頭をぶち抜いた。
景色が広がった時の快感といえば凄かった。何かとアトラクションだったのかもしれない。
後処理はしなきゃなと思い、落ちていく瓦礫やらを翼で打って人のいない所に落としていたらブザーがなった。
………服どうしよ。
東京デズニーシー行ったことない。
誤字脱字の報告助かっていますありがとうございます。
目次 感想へのリンク しおりを挟む