異世界。魔王。討伐。 (カロライナ)
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第1説ー茫然。酒場。無人。

「・・・・・・。」

 

ポツンと見知らぬ城下町に放り出されて、早5分経過。

何をすればいいのか、自分の身に何が起こったのか分からず

ただただ、城下町と城を繋ぐ石橋の上で立ちすくんでいた。

 

「え・・・。アレ? え?」

 

ようやく思考がはっきりしてきたころ、自分の身に何が起こったのか

僕はこれまでの記憶を辿ることにした。

 

「えっと・・・」

 

確か、戦友たちと共に怪物たちから逃れるためにショッピングモールで立て籠もりを

行っていて 突然、外が騒がしくなったと思って窓に近づいたら大きな爆発音とまばゆい光

と共に体が吹き飛ばされたんだったな。うん

で、そこから意識がなくなって・・・気が付いたら見知らぬ場内に居て、中世の王様っぽい衣服を着た偉そうなジジイの前で立っていたんだよな。あぁ。まったく意味が分からん。

 

「・・・・・・・・・。」

 

何度、思い返してみても大きな爆音とまばゆい光の後、体が吹き飛ばされたところまでは

なんとか思い出せるのだがその後がどうしても思い出せない・・・。

途方に暮れていたとき、王っぽいジジイが発していた言葉を思い出した。

『酒場で仲間を見つけるがよい』

 

「・・・・・・はぁ。行ってみるかぁ・・・。」

 

もしかすると、あの場にいた仲間のうち誰かが一緒にこの世界に飛ばされているかもしれない。そんな淡い期待が頭をよぎった。今日はもう何処かの宿屋か何かで休みたい気分であったが 少しの希望を胸に俺は重い足を引きずりながら、酒場がありそうな城下町の方へ歩いて行った。

 

 

 

完全に城下町に入って暫らく看板を見続けながら、歩いていると酒場のような

一軒家が目の前に飛び込んできた。看板的におそらくここが、あのジジイの言っていた

酒場なのだろう。もし間違っているなら、颯爽に立ち去ればいいし俺はダメ元で入ってみることにした。道端で買い物を楽しんでいる人たちに、『酒場はここであってますか?』と尋ねてみるのもありだと感じていたが、引っ込み思案な性格の為、声をかけることはできなかった。

中へ入ると軽いアルコールのような匂いが漂っており、それなりに人々で賑わっていた

しかしその賑わっている人々は、どう見ても戦いに熟知したような人物は一人も見当たらなかった。恐らくここに居る人たちは、この城下町に住んでいる人々なんだろう

俺はとりあえず奥にあるカウンターへと移動した

 

「いらっしゃい。何か用かしら? お嬢ちゃん。」

「・・・・・・・・・。」

 

奥のカウンターに辿り着くと、カウンターで退屈そうに頬杖をついていた

女性がこちらに声をかけてきた。年齢は、まだ20代後半ぐらいだろうか? すらっとした

スレンダーな体系に両耳に大き目なイヤリングを付け赤いドレスを着ている髪は黒色で

前髪によって右目は片方隠れていた。

 

「あの、王っぽい人から、ここに来るように言われて・・・。」

「仲間を見つけろって?」

「は、はい。」

 

少しどもりがちな話し方になってしまうが、相手の女性はそんなことはあんまり気にしたような様子は見せなかった。しかし、僕が質問に対して肯定的な返事を返すと突然笑顔だった顔が曇り、残念そうな顔つきに変わった。

 

「な、なにか問題でも・・・ありましたか?」

 

すかさず、顔を残念そうに雲めた理由を聞く 少し嫌な予感がする

 

「残念な話だけど・・・今、一緒に魔王退治が出来るような仲間は全員、別の勇者たちと

 旅に出てしまっていて居ないの・・・。ごめんなさいね。」

 

彼女は申し訳なさそうな顔でこちらを見てくる。

ウソでしょ・・・一人もいないって・・・

 

「あの、だ、誰か居ませんか? 誰でもいいので・・・。」

「本当に全員出払っちゃっていて居ないのよ・・・本当にごめんなさい。」

 

そういうと、今度は彼女は深々と俺に頭を下げてきた。

別に彼女が悪い訳ではないと言うのに・・・

 

「・・・・・・。そうですか・・・わざわざ教えてくださって ありがとうございます。」

「えぇ・・・。」

 

僕も軽く彼女にお辞儀をする。

取りあえず、今 僕がすべきことは同じように異世界入りした仲間を

町を回って探してみることにした・・・。居る確率なんてほぼ0%だけど。

 

 

 






初めての小説編


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第2説-絶望。戦友。勝機。

 

「・・・・・・。」

 

結果は、最悪だ。結局、異世界入りすることが出来た戦友は居ないみたい。

夜になってしまった。各家々から漏れ出す部屋の明かりだけが暗闇の道を照らしだしている。どこか休めるところを探し出して見つけなければ、明日に支障が出てしまう。

僕は宿屋のある方に足を向けた。・・・・・・あれ? 待てよ・・・ここは円の通貨で通るのかな?

異世界入りしてから、ココの世界の通貨を持っていな――

 

「おい!!」

 

半ば宿屋にも止まれないという絶望感に片足を浸かり始めたとき、突然背後から

誰かに声をかけられる。中世的、時代的に察するにこんな時間に声をかけてくる奴なんて

あらくれものか、暴漢ぐらいしかいないだろう。しかし正直この疲れた体で逃げ切ることなど可能だ。僕はその声の主の方に仕方なく振り返った。

 

「・・・・・・何か、用ですか?」

 

相手は暗がりにおり、顔までは見えない。

しかし体つきや服装から少しだけの希望が見え始めた。

 

「お前・・・・・・」

 

ゆっくりと奴は接近し、明るい光に当てられ顔も見えてくる。

嬉しい事が起こった。僕に声をかけた主は“奴は僕を知っていて、僕も奴の事を知っている人間”と言う同じ異世界人だと言うことだ。

そしてついに奴の顔が完全に見えるようになる。

 

「雪か?」

「・・・・・・雅。」

 

ただの昔の知り合いに会えることが出来ただけだと言うのに、膝が地面に着き涙がボロボロと零れ落ちてくる。戦友でもあり友人の一人・・・雅《ミヤビ》。彼とは、同じショッピングモールで立て籠もった時に最初に話した友人で、その後も深く長く付き合っている友人でもある。

 

「なんだよぉ~。出会った瞬間泣いてんじゃねぇよ~。」

 

雅はゲラゲラと笑いながら、僕に近寄ると背中をバシバシ叩いてきた。

相変わらずの剛腕で軽く背中がヒリヒリと痛み出す。

 

「いや、この世界に飛ばされたのが僕だけかと思って・・・」

 

鼻を愚図りながら、雅の方へと顔を向ける。その顔は満面の笑みで輝いているように見えた。

 

「俺も最初はそう思ったんだけどよーいや、本当に知り合いがいてよかった! よかった!!」

 

そういうと雅は僕の両手を掴み、上に引き立ち上がらせてくれた。さらに地面について軽く砂が着いたズボンを振り払うように落としてくれた。ほんとに男らしい奴だ。

 

「そういえば、雪。お前こんなところで何してんの?」

「酒場で仲間を見つけることが出来なくて、宿屋に向かおうとしたところ、この世界の

 お金を持ってない事に気が付いて途方に暮れてたところ・・・。」

「はははっ! そうかそうか!! なら一緒について来いよ。宿屋に泊ろうぜ。」

「え、でも・・・僕、お金持ってないし・・・」

「俺が払ってやるから、だいじょーぶ!」

 

親指を空にぐっと突き出すと雅は、僕の手を引っ張り宿屋のある道へと歩き始めていった。

 

 

 

 

 

「おじさーん。一人追加ねー。」

 

宿屋に着くと、雅は懐から小さな小袋を取り出しカウンターの向こう側に居る

おじさんにお金を支払った。

 

「おや、おかえり。追加と言うと・・・ひ、ふ、み、よ・・・ふむ。確かに。」

「部屋は一つあれば十分だからー。」

「わかったよ。」

 

手をヒラヒラとそのおじさんに後ろ向きの状態で振ると、僕の手を引きながら

宿屋の2階へと上がる。いくら引っ張られているとはいえ、階段で大転倒をしないために

ソソクサと階段を上った。

部屋に入ると綺麗な白いシーツに白い布団が掛けられたベッドが2つ目の前に飛び込んできた。

雅の奴は部屋に入ると僕の手を放し、扉より離れた位置にあるベッドに腰を掛けた。

 

「何突っ立ってんだよ。ほら雪、座れよ。」

「あ、うん。」

 

雅に呼ばれ、雅の向かい側にあるベッドの上に腰を掛けた。

 

「で、これからどうするつもりなんだ? 雪はさ。」

「どうもするも何も・・・元の世界に帰りたいけど、帰り方が分からないから途方に

 暮れている状態。」

「つまり、最終目標は分かっているが、何をして良いのか分からない状態か。」

「うん・・・。」

 

そう、最終的な目標は元の世界帰る事。だけど、その帰り方が全く分からないのが

今の状況だ。王っぽいジジイは魔王を倒してこいとか言っていたが、酒場を寄った限り

もう魔王討伐隊は何組も出ているようだし、なにも他の世界から来た僕達が討伐をしなくともその先発隊が討伐をするはずだ。僕達の出る幕はない。

 

「じゃあ・・・よ。」

「ん?」

 

雅が急に俯き、重々しい雰囲気を醸し出しながら口を開き始めた。

ニコニコしていた先ほどとは明らかに違う真剣な顔で、俯くのを辞め今度は僕の目を

じっと見つめ合うような形で僕の事を見つめた。

 

「俺達で、魔王討伐をしないか・・・?」

「?!」

 

あまりの雅の発言に驚き思わずベッドから立ち上がってしまう。

雅にも魔王討伐の命が来ていたのか。よくよく考えれば最初に分かることだが

今頃になって、はっと気づいた。

 

「どうせすることもないんだ。何もしないよりは、何か行動した方が良いだろう?」

 

雅は相変わらず、僕の目を見据えたまま話を続ける。

 

「それはっ・・・でも・・・・・・。」

「・・・俺は魔王討伐の旅に出かけることにした。元の世界に帰ることもできない今

 俺が出来る事と言ったら、それしかないからな。・・・できれば雪にも魔王討伐を

 手伝ってもらいたい。」

 

僕は・・・僕は、迷った。

雅と共にどこにいるか分からない魔王を倒すか。このまま何もせずにここに留まるか。

正直、僕の方針としては魔王討伐などせず、このまま、この場所で元の世界に帰る方法を

探りたい。だが、雅は僕が断ったとしても、その魔王討伐に行くつもりだ。魔王討伐へ行きたくない自分と友人を一人で魔王討伐に向かわせる気かと怒鳴り散らす自分とで葛藤が起こる。

僕は・・・ボクは・・・・・・

 

「・・・すまない。やっぱり、俺一人で行くよ。」

「えっ。」

「これは、俺が一人で決めた事だ。雪を巻き込むのは・・・友人として間違ってるよな。」

 

真剣な表情から一転、はにかんだ顔に雅の顔は戻る

不味い。このままでは雅、一人で魔王討伐に向かわせることになってしまう。

あの過酷な環境内で出来た唯一の友人が、一人で死地へ向かってしまう・・・。

そう思った瞬間、僕の口はもう既に動いていた。

 

「ボクも、行くよ・・・雅・・・・・・」

「・・・・・・本当か? 雪? 無理はしなくても良いんだぞ?」

「いや、一緒に魔王討伐に参加する。それに雅となら上手く行きそうだし・・・」

「・・・・・・。」

 

驚いたと言ったように雅の目が丸く見開かれる。

まるで信じられないと言ったような顔だ。

しかし、その顔もすぐに崩れ最初はくすくすと、最高の方には宿屋全体に響くような大きな笑い声に変化し、雅は自分の膝をバシバシと叩き始めた。

 

「な、なに。なんか、変な事でも言ったかな?」

「いやーお前からそんな言葉が聞けるとは思わなくてな!! 意外過ぎて笑いが止まらねぇンだ!!

 アッハッハッハッハッハッハ!!」

「まったく、失礼な奴だな。」

「ふっふっふっ・・・悪い、悪い。でも、俺も雪と一緒なら上手く行く気がするぞ。」

 

ボフッと自分のベッドに倒れこみながら雅は、まだ笑いながら言う。

 

「それ、どういう意味。」

「雪ぃ。自分の道具袋は?」

「え、道具袋?」

 

雅に示唆され、ふと気づく。そういえば、確か城内から出る時に衛兵から

軽い道具袋が渡されたことに。さらにその中身を確認していなかったことに。

 

「これ?」

「そう、それ。もう開けたか?」

「・・・まだだけど・・・。」

「そいつはいけねェよ 雪、早速その袋を開けてみな。」

「うん・・・。」

 

雅に進められるまま、僕はおもむろに道具袋を開ける。

中には様々な道具が入っているのが見える。

 

「雪、ほら・・・ここに、その荷物の中のもの・・・出してみな。っと」

 

雅が角に置かれていた机を持ち出し、引きずりながらベッドとベッドの間まで運んできた。

言われた通り、その机の上に袋に入っているものを順番に取り出した。

中には、よくドラクエ系で使われる薬草が数個と羽ペンのようなもの・・・そして・・・・・・。

 

「ほほぉ~。雪はハンドガンかぁ・・・。」

 

鉄で出来たOB色のハンドガンがゴトリと机に置く。えっとこのハンドガンの

名前は何と言ったかな? 確かコルトガバメントのフォーリッジウォーリアだったような

そんな気がする。というよりも、元の世界では改造モデルガンだったのに何故実銃になっているのだろう? 普通の日常だったらモデルガンの変貌に驚いているのだろうが、今は不思議と驚かない。

むしろ勝機と興奮に満ち溢れている。まだ、銃火器が入っているようだ。これは・・・

 

「89式5.56mm小銃だな。これは、お前の所持品じゃないだろ? ラッキーだな。」

 

多分、この銃器は同じショッピングモールに立てこもっていた自衛隊員の本物の小銃だろう。きっとあの爆風で吹き飛ばされた瞬間に一緒に異世界入りしたと考えるのが妥当かな。

しかし、だと考えても89式5.56mm小銃の弾倉が6つも入っているはおかしいが・・・。

そんな事よりもフォーリッジの弾倉の量がおかしい。いや、一般的に見たら別の意味で

おかしいと思うだろうが、僕がこの世界に入る前は42本所持していた筈なのに

道具袋の中に入っていたのは29本。約4分の1もなくなっていた。まぁ、多すぎても重すぎで

持ち運べないのだからむしろ良かったのかもしれないが・・・。

 

「やっぱり、雪も持っていたか。」

「やっぱりって・・・雅も?」

「あぁ。今、見せる。」

 

そういうと雅は、自分の道具袋を開きゴソゴソと中身を弄り始める。

僕は雅が出しやすいように一旦、道具袋の中に入っていたものを自分のベッドの上に置いた。

銃の他にも、僕が異世界入りする前に所持していた道具が入っており、今後役に立ちそうなものがそれなりにあった。

 

「俺は、コレだ!」

 

雅が置いたのはコルト M4A1カービンと弾倉16本と所持弾倉分の予備弾薬。

これも元の世界では改造モデルガンだったもの。今は実銃に変貌しているが・・・。

それにしても弾薬が多すぎる気がする。一見持てないような量の弾薬の数だが、

雅が普通に道具袋を背負っているところを見ると一応は持ち運べるような重さにはなっている

らしい。今更だが、もしも順調に魔王まで事が進めたら魔王討伐も夢ではない装備だ。

 

「行ける・・・。」

「行けるぞ・・・。」

 

お互いに顔を見合わせる。フラグだがあえて言わせてほしい。

もう何も怖くない。

 

 

 




これからの投稿は、2~3週間をペースに話を書いていこうと考えています。


登場物の中にDQお馴染、4異次元道具袋がありますが、この袋。とある秘密がありまして
その名の通り道具を×99個まで押し込むことができます。しかも、1つの道具につき×99個まで。
勿論、武器防具もどんなものでも道具袋の中に×99個まで入れられます。
さらに重量の問題に関してですが、重すぎて持てないと言ったことはなく、袋が持ちやすいように
重量を変動してくれるという優れもののようです。だから、他の冒険者や2人はどんなに重いものを入れても普通に行動ができるようです。
お値段は無料。ただ、この道具袋を手に入れるには勇者になるしか入手方法はありません。



挿絵で、ミヤビとユキのイメージ画像をRPGツクールVX Aceのキャラクター作成で作ったのですが
RPGツクールの利用規約を見てアボーン。使うことは禁止されているようです。
少し改良をすれば、使用ができるようなのですが、生憎私はそんな技術は持っていないので作れません。たとえ作ることができても、ペイントで弄る事しかできないので雑コラのような画像になってしまう・・・そんな気がします。

そうだ。現在、トレーシングペーパーを使って絵を映して色鉛筆で塗るのが楽しみなんですが、
もしも写すことが出来たら、写メでとって挿絵として上げますね。


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第3説‐出発。友作。帰宿。

 

 

次の日、朝起きると雅がもう隣で起き出発の支度を始めていた。

しょぼしょぼと霞む目を擦りながらベッドから降り、僕も身支度を整えに入った。

10分後身支度は整え終わり、その5分後には宿屋を出て それぞれ武器、防具、道具屋で買い物を済ませた。雅が銅の剣。僕が防具屋の廃材から自作した木の盾を装備し、町の出入り口で集合した。

 

 

「雪、お前武器は?」

「雅こそ盾はどうしたの?」

「俺は、この銅の剣だけで切り抜ける。当たらなければどうと言うことは無い。」

「僕だって、この木の盾だけで切り抜けるつもりだよ。盾の突進を舐めないでね。」

 

 

お互いに顔を見合わせ 軽く笑うと正面を向き直る。

 

 

「雅、心得分かってるよね。」

「あぁ、雪こそ理解してるのか?」

「もちろん。念のため復唱しておく?」

「そうしよう。初めの町を出る前の記念だ。」

 

 

二人で息を整え準備に入る。

息が整った瞬間、互いに魔王討伐までの心得を口にだした。

 

 

1.敵に出会ったら無駄な殺生は控える。

2.銃器の使用は特(別な)事(例)を除いて使用禁止。

3.薬草など原理のわからない道具は“基本”使わない。

4.やむ負えない戦闘では敵の攻撃は全て避ける。

5.絶対に死なない。

 

 

再び顔を見合わせる。雅も決心がついたようだ。

僕達はそれぞれの武器を片手に城下町から、外へ出た。

城下町を出ると、まず目の前に林が広がっておりその奥には高山が見える。

まずはこのまま正面:南側に向かい進んでみることにした。南、南東、東、北東は

高山がありそこを越えることは不可能に思えたためだ。

南に向かう途中、目の前に見えていた林と衝突してしまったが中には入らずそのまま

西へと向かうことにした。しかし、その先に待ち受けていたのは新たな道ではなく

ただの行き止まりと、初めてとなる魔物との遭遇だった。

 

 

「お、おい・・・このチャーミングな魔物は・・・・・・。」

「あぁ・・・。これがスライムだとすれば、この世界はDQの世界・・・!」

「ピギー! ピギーー!!」

 

 

途端に互いの目が光る。幸い、スライムは一匹。心得1の事など忘れ

僕達は途端にある行動に移っていた。

 

 

「こんにちは、スライム君。俺の名は雅よろしくな。」

「同じく、雪。よろしくスライム君。」

「ピギピギー!!」

 

 

そう。その行動とは、魔物と仲良くなってみようとする そのまんまの行動だ。

まずは雅が、スライムと友情の証として握手を試みる。

冷静になって考えてみれば、握手などをする手など無いと言うのにも関わらず・・・

 

 

「ガブッ」

 

[雅に1のダメージ!!]

 

「」

「み、雅ーーーーーーー!!」

 

 

その握手をするはずだった右手はスライムによって噛まれた。

 

 

「イタタタタタタタタタタタタタタ・・・」

「よ、よくも雅を・・・!」

「ピギー! ピギー!」

「いや待て、雪。俺の友人のなり方が悪かったんだ! スライム君を責めないであげてくれ!!」

「みやび・・・。」

「ピギーーー!!」

 

 

今度は握手をするのではなく、笑顔でそのスライムに話しかけ始めた。

 

 

「俺の名前は、雅!! 君の名前はなんていうンだ?」

「ピギー! ピギー!」

「そうか、そうか。ピギーと言うのか。ピギー君、友達にならないか?」

「ピギー! ピギー!」

「ガブッ」

 

[雅に1のダメ-ジ!!]

 

「」

「み、みやびぃーーーーーーー!!」

 

 

笑顔で話しかけて仲良くなろうと言う作戦は、失敗に終わった。

 

 

「おのれ・・・今度こそ、今度こそは・・・雅の仇・・・・・・」プルプルプル

「ピギー! ピギー!」

「ま、待つんだ・・・雪・・・・・・こ、今回も俺が悪かった・・・まだやり方が悪かったんだ・・・」

 

 

プルプルと震えながら痛む右手を抑えつつ雅が立ち上がる。

 

 

「みやび・・・・・。」

「ピギー! ピギー!」

「まぁ、見ててくれ・・・・・・。」

 

 

そして、3回目の魔物と友達になろう大作戦が血行された。

 

 

「ピギー! ピギー!」

「ピギー! ピギー!」

「ピギー! ピギー!」

「ピギー! ピギー!」

「ドムッ」

 

[雅に2のダメージ!!]

 

「」

「み、みやびぃぃぃぃいいぃぃいいい!!」

 

 

この作戦では、スライム語で語りかけてみたようだが結果はご覧の有様。

手痛い体当たりを雅は喰らっていた。

その後スライムは逃走、6番目の心得として魔物と仲良くなるための行為は2度までにする。

と言うのが追加された・・・。

南西は行き止まりと言うことが分かったので、ここから一度 僕達は北上し城下町に戻ることにした。途中、先ほどと同じようにスライムやおおガラスなどの魔物が襲いかかってきたが、雅が初期に喰らった合計4ダメージを除いて全て回避。受け流すことに成功した。

また、心得1にもあるように無駄な殺生は避け なるべく驚かせて逃がすように

戦闘を回避していった。

 

 

「ッテェ・・・。あのスライムに噛まれて体当たりされた部分がまだ痛いぜ・・・。」

「大丈夫?」

「あぁ。大丈夫だ。」

 

 

城下町が目前まで見えたころだろうか、雅が最初の魔物スライムと出会ったときに

追った傷を 水しぶきを飛ばすように手を振り冷やしていた。

本人は、大丈夫と言っているが手に着いた歯型の跡が痛々しかった。

 

 

「きっと、道具袋の中に入っているやくそうを使えばこんな傷一発で完治するんだろうが・・・」

「使いたくは無いね・・・。」

 

 

道具袋の中に入っている薬草を取り出し眺める。

葉っぱの上に様々な細かい種が乗っているだけの粗末な品だ。到底、コレを飲み込むだけ、すりつぶして傷口に塗るだけで、即時体力回復、傷が癒える気がしない。むしろ痛み増加

副作用の効果、傷口悪化の見込みならありそうだ。

 

 

「しょうがねェ・・・最初の城下町まで我慢すっか・・・・・・。」

「宿屋に泊れたら、包帯巻いてあげるからね。」

「ん。すまねぇな。」

 

 

それから、数度の魔物との戦闘を終え何とかミヤビと共に最初の城下町に到着。

城下町に入るときに気づいたんだけど、城から西の方角に塔があるのを発見。

塔の裏側はどうなっているのかは分からないが、見たところこちら側からあの塔を

上り見ることは無理なようだ。向こう側に橋が架かっているのか・・・それとも、何処か洞窟や地下道とつながっていて中に入れるのか。どちらにしろ、僕達は上るつもりはない

無駄な殺生や戦闘回数が増えてこちらが疲労するだけだからだ。とりあえず、まずは

ミヤビの怪我の手当をしなければ。未知の土地で細菌が体内に入り込むのは、よくない事だから。

 

 

「おっと、雪。見てみろよ。」

 

 

急にミヤビが立ち止まり、怪我をしてない方の手でとある看板に指を指す。

 

 

「アリアハン・・・。」

「最後まで読め? アリアハンへようこそ。だってさ。」

「・・・・・・?」

 

 

はははははっ! と雅は爽快に笑いながら言った。不思議な顔しながら雅の方をまじまじと見つめていると雅はその笑った理由を教えてくれた。

 

 

「俺等ここに来るのは2回目だろ? その場合はおかえりなさいの方が正しいなってよ。」

 

 

納得した。そう言うことだったのか。

僕達は互いに納得の意をうなずきで返答し合うと昨日、泊まった宿屋に向かい今夜は

そこで休むことになった。早速、僕は雅の怪我をした手に消毒液を振りかけ包帯とガーゼ

を取り出し、雅の手当に移る。治療は5分前後で終わり、その日は今度こそ、魔物からの

攻撃をまともに受けないと言う心得をまとめてから眠りについた。

 

 

次の日、朝起きると雅は隣のベッドで眠ってはおらず 荷物は置いたままで何処かに出かけているようだった。武器が持っていかず、そのまま無造作に立てかけられていることから

恐らく城下町の中で散歩でもしているのだろう。もう一度布団に寝転がると、木製で出来た天井を見て時間を潰し待ってみた。

 

 

「ふぃ~。ただいま~~。いやぁ、ジジイから地図の食料奪って来た~。」

 

 

僕が起きてから25~30分ぐらいだろうか、雅が遠征するための食料3日分と世界地図を4枚貰って帰ってきた。その食料と地図はどうしたのかと聞くと、何でもあの王っぽいジジイが本来勇者たちに渡すべきものだったらしい。すぐに渡さなかったことも含めて地図を沢山頂いて来たようなのだった。

 

 

「でよ。本来は、10分ぐらいで終わるはずだったんだがジジイがさ、

 冒険の書を書けって五月蠅くてよ。逃げるのに20分ぐらい費やしちまった。」

 

 

冒険の書? ああ。あのジジイがなんか最初の時にそんなことも言っていた気がする。

 

 

「とりあえず、ユキ。朝食でも食べようか。

 このまま、城下町を出ても魔物から逃げ切れる気がしねェ。」

「そうだね。食べようか。」

「そんじゃ、朝食はココの宿屋が出してくれるらしいから早速降りて食べに行こうぜ♪」

 

 

部屋を出て1階に降りる。するとそこには既に2人分の朝食がテーブルの上に置かれて

いつでも食べられる状態となっていた。

 

 

「ヒャッホー♪ 目玉焼きにパンかぁ。」

「異世界初めての料理だね。」

「だな。それじゃ・・・」

『いただきます。』

 

 

両手を合わせて挨拶を行ってから、僕達は出された食事に手を出す。

美味い、美味い。と言いながら食べていたせいか時折、配給のおばちゃんがやってきて

パンのお代わりを沢山くれた。

 

 

 



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第4説‐盗鍵。魔心。山岳。

お腹がいっぱいになった頃、出発するにも丁度いい時間にもなったので地図で次の行先を確認し、チェックアウトを行うと宿屋を出た。

 

 

「次向かうべき場所はレーベの村だな。」

「そうなるね。距離的にもここが良いんじゃないかな?」

「よし。次はレーベの村だ!!」

 

 

そうと決まれば、事は早い。地図を見ながらレーベの村を目指し現地に直行。

途中途中、大ガラスやスライム等の魔物に出会うが、驚かしと逃亡で何とか戦闘を回避し

道中を進んだ。

 

 

「ほぉ・・・ココがレーベかぁ・・・・・・。」

「なんか、田舎町って感じだね。」

「村なんだから、当たり前じゃね?」

「それもそうだね。」

 

 

アリアハンと比べると実に田舎の雰囲気が漂うレーベの村に辿り着くと、まず初めに

したことは情報収集だった。僕達が出発したこの土地は地図を見たところ島国なようで、

他の場所へと移動するには船を使って移動をするか、旅人の扉と呼ばれる魔方陣で行くしかないようである。

情報収集の結果レーベの村には船は置いていないそうで、レーベから南東にある湖付近の旅人の扉から他の大陸に向かうしかないとのコトらしい。さらに残念なことにその旅人の扉に入るには“盗賊の鍵”と呼ばれる特殊な鍵が必要なようで、少し前にはレーベでも売っていたらしいのだが、村人が村内での不法侵入事件、強盗事件が多発したため今はもう売っていないそうである。ただ、他にも入手できる経路はあり、昨日アリアハンに戻るとき見かけた塔・・・ナジミの塔と言うらしい そこの頂上にある老人が住んでおりそこで“盗賊の鍵”を売っていると言う話を聞いた。1本200Gと中々値が張るが、今後の旅にかかわってくる重要な道具の一つだと言うことで結局買いに行くこととなった。

 

 

「どっちのルートから、行く? 雪。」

「うーん・・・やっぱり、レーベから近い方の洞窟かなぁ・・・」

「そっちの方が、やはり安定か・・・。」

 

 

ナジミの塔の侵入経路は全部で2つあるらしい。アリアハンから真西にある洞窟から入る

方法か、レーベの村の森の中の南部にある草原から入るか。ココは魔物との遭遇を避けるため草原の方から侵入することとなった。アリアハン真西にある洞窟から入れば、アイテムや経験値が稼げてLvが上がるためおトクだと村の人が言っていたが・・・正直、Lvとか異世界人の僕達からとってしてみれば、全く関係ないものだ。年を取ればLv.1上がる、それが僕達の世界の原理。鍛え方によって、そのパラメーターは上下に日々変動するものであり常に固定と言うわけではない。それにアイテム回収をしたところで、僕達には使えない道具が殆どなのだろう。そんなものを集めたところで何の役にも立たないだろうし、重量が嵩み、むしろ命を削る危険性があるため行くのは

危険すぎる。

レーベの村を出発。まだ、太陽が昇ってから数時間しか経ってないようで、太陽の位置はまだそれなりに高い位置にあった。出来れば入りたくない森の中に入り、草原を探し出す。なんとか魔物にも会わずに草原内にある地下水道のような洞窟を発見。侵入後探索を始めた 途中大アリクイやフロッガーと出会ったが、驚かしと逃亡の連続でノーダメージのままナジミの塔内部に侵入することが出来た。

 

 

「4F立てかぁ・・・。」

「なんか、低いな。」

 

 

一旦、ナジミの塔内部から出て塔の全貌を確認する。ざっと15mだろうか。

元の塔にしては雅の言う通り低い気がしてきた。

 

 

「それじゃ、今回もさっさと上って鍵を購入後。脱兎のごとく逃げ回りますか。」

 

 

雅の作戦にうなずき、靴ひもを結びなおす。再度、ナジミの塔に侵入した後踏破するまでの時間はそう長くは掛からなかった。色々と魔物が出現して居たような気がするが、どんな魔物が道を塞いでいたのかよく思い出せない。大体、雅の雄叫びと僕の盾アタックで蹴散らしてしまったためだ。途中G《ゴールド》を拾う。それで盗賊の鍵を2本買うと今度は疾風の如くナジミの塔を“駆け下りた”最近の勇者は、塔から飛び降りてショートカットをするそうだが、僕達はそれをしない。12mの高さから下にクッションもないのに飛び降りるなんて自殺行為にも等しいからだ。 現にナジミの塔の外に出たとき草むらや茂みに人骨が転がっているのを僕は見逃さなかった。どの人骨も魔物に襲われた形跡が残っており死に方は様々だったようだが、共通してあった損傷は両膝部の複雑骨折だった。冷静に考えれば分かることだ。ただの人間が、12mもの高さから飛び降りればどうなるのかなど。次に気が付いた時は、盗賊の鍵を片手にレーベの村に到着している時だった。

 

 

「・・・・・・案外。大したコトなかったな。」

「・・・全力で駆け抜けて帰ってきたからね。」

 

 

ドサッと雅が地面に座り込む。

 

 

「雪ぃ・・・あの時は止めてくれて・・・ありがとな。」

「・・・あの時って?」

「ほら、俺等が盗賊の鍵を買って老人に進められて俺が塔から飛び降りようとした時だよ。」

「ん・・・ああ。なるほど。」

「雪はどうか知らんけど・・・あそこの老人も相当な“魔物”だったぜ?」

 

 

息絶え絶えになりつつもおどけた表情で雅が不思議な事を言い出した。

あの老人が魔物? 雅はいったい何を言っているのだろう?

 

 

「どう言うこと?」

「・・・どうやら、聞こえたのは俺だけだったようだな・・・あの老人、俺が飛び降りようと

 して雪が止めて・・・二人でまた階段を駆け下りようって事になって・・・俺等が降りる瞬間

 に舌打ちをしたんだよ・・・。それによ・・・。何か、あの部屋煌びやかじゃなかったか・・・?」

 

 

確かに・・・塔住みなのに小部屋が、金銀財宝 煌びやかだったような・・・。

 

 

「・・・・・・・・・!!」

「どうやら、分かったって顔だな・・・。多分、ありゃ落下死した来訪人の身ぐるみを剥ぎ

 取ったんだろうなぁ・・・じゃなきゃ、塔での生活で部屋の煌びやかさは説明出来ねェ。」

 

 

雅の発言にゾッとする。僕はあの草むらや茂みにあった人骨は魔物がそこまで運んで、

その場所で殺して食べたのだと、ずっとレーベ帰ってくるまではそう考えていた。

そうじゃなかった。魔物が殺し、それを老人が後始末をしていたのだ。それならば

あの妙に巧妙に隠された人骨たちの説明がしっくりくる。それにあそこの魔物たちは、

決して知能が高い方ではなかった。何処へ行っても人間と言うものは恐ろしいと言うことに

気づかされる。

 

 

「んで、この後はどうするよ? 昼飯を食って、そのまま旅の扉まで直行するか?」

「いや、今回はどんなトコロか偵察だけしてレーベで一泊後、挑もう。ね?」

「わかった。」

 

 

息を整え、村で昼食を取り再びレーベの町から出る。

地図を確認すると、ココから南東に旅人の扉はあるそうだが・・・

 

 

「なるほど。旅人の扉に向かうには最初の難関、山岳を越えなきゃならねェってか。」

「どのルートを通っても、山岳地帯は通らなきゃならないみたい。」

 

 

目の前に見える山々。足場も悪く、進むのには困難が待ち受けているような気がする

それに平地より魔物の出現率が増える。そんな気もするような・・・。

 

 

 



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第5説‐瀕死。水母。死毒。

「どうする? 雪。進むか、今日はレーベでもう休むか。」

「僕は行けるかな。雅しだい。」

「よし、なら行こうぜ。俺も行ける。」

「うん。」

 

 

想像通り、足場が悪く中々思うように平地の様に動き回ることが出来ない。

さらに魔物の強襲が絶えず、なんとか中間地点まで来ることは出来たのだが・・・

 

 

「なんだ?! あの蜂は!! まわり込んでくるわ、増援を呼ぶわ!」

「蜂が主に厄介だね!」

 

 

 

ブゥゥゥウゥン

 

 

 

『キター!!』

 

 

回避する暇もなく逃げ回っている状態に陥っていた。

途中にある森で一休みをするが、気の休まらない状況は変わらず。

時間と共に少しずつ疲労していく感覚が僕達の中にあった。

 

 

「な、なんとか、森に入ったが・・・・・あと、旅人の扉までどのくらいだ?」

「半分越えて・・・あと半分。」

「まだ、半分かよぉ・・・。」

 

 

まだ半分、と言う言葉に軽く嫌気が指してくる。

だが、もうここまで来たならば引き下がる訳にもいかない。

行けるところまで行くしかない。

そんな時、背後の林からガサササと何かが出てくるような音が聞こえた。

思わずその場から飛び上がり自作の木の盾を構える。

雅も剣を抜いたようだ。

 

 

フラフラフラ・・・ポテッ

 

 

林から出てきたのは、弱りに弱ったホイミスライム一匹だけだった。

 

 

「・・・・・・。」スッ

「ゆ、雪! 他の魔物が潜んでるかもしれねェ! 近寄るときは慎重にな!!」

「・・・・・・。」コクン

 

 

ホイミスライムの状況を確認するために、盾を片手に恐る恐る近づいてみる。

ホイミスライムは基本浮遊しているのだが、浮遊していないところを見るとよっぽど

疲れて飛ぶ力がないのか、死んでいるのかの2択しかない。

そこらに落ちている棒を拾いホイミスライムをつついてみる。

ピクリとも動かない。

襲いかかられでもしたら、自殺行為になるが今度は素手でつついてみることにした。

 

 

プニプニ・・・

 

 

息はあるようだが、動かない。そして柔らかい。

僕は雅に『警戒しなくても、大丈夫。攻撃してこない。』のサインを出す。

雅はそれに対して道具袋をゴソゴソといじり始めた。そして取り出したのは薬草数個。

薬草をすりつぶしたものを現在《いま》は袋に入れている。

使い道はなさそうだと放置しっぱなしだったが、今回ついに役に立つ時が来たようだ。

僕は、そのすりつぶした薬草を紙に乗せ、片手でホイミスライムを抱きかかえるようにし、

もう片手でそのすりつぶした薬草を口の中に流し入れた。

うっすらとホイミスライムの目が開く。

意識が戻ったのを確認し、ホイミスライムを優しく地面の上に置いた。

目だけは相変わらずこちらを追い続けている。

その近くに薬草を置き、僕達は立ち去ることにした。

このまま完全回復をさせた瞬間襲いかかられたら、たまったモノじゃないと判断したがための

行動だった。なんで、回復したかと言われると難しいところだが、木の棒で突いたお詫びかな。

 

 

「雪、旅人の扉の近くに祠の宿屋があるらしい。今日は、そこに泊まろう。」

「そうだね。この時間帯じゃレーベにはもう戻れなさそうだし・・・」

 

 

相変わらず、ホイミスライムはこちらを虚ろな表情で見続けている。

僕はそんなホイミスライムに対し、『さようなら』の意味を込めて軽く手を振ると

再び山の中へ入って行った・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最悪だ。どうすればいい。

このまま、無茶して歩いて魔物と遭遇なんかしようものなら確実に全滅。

そうでなくともどちらか片方が死んでしまう。僕達は今、そんな危機的状況に面していた。

コトの始まりは旅人の扉の下見が終わり、祠の宿屋で一泊しようと

再び山岳地帯に入った時だった。

気が緩んでいたせいか、バブルスライムの集団に背後からの奇襲を喰らってしまったのだ。

思わず反射的に初めて魔物を皆殺しにしてしまったが、その先頭の最中2人がほぼ同時にバブルスライムの猛毒を浴びてしまった・・・いや、正確には体内に取り込んでしまったの方が正しいか。

僕は、バブルスライムの体液を目から。

雅は僕が敵の体当たりの反動で倒れたときに呼びかけをして口から体液が。

1歩歩くごとに目がくらみ、視界が歪む。雅も同じ状況のようだ。

今は、お互いに肩を貸しあって立っている状況だが、いつ倒れてもおかしくないほどに

足がふらついている。

 

 

「雪・・・頑張れ・・・・・。あともう少しだ。頑張れ・・・」

「雅も・・・頑張れ・・・。頑張って・・・」

 

 

 

ブゥゥゥウウゥン

 

 

 

ああ・・・。最悪な羽音が聞こえてきた。また、あの蠍蜂野郎だ・・・。

本当についてない・・・。こんな事なら、レーベで今日は休むんだった。

初めから銃火器を使えばよかった。と色々と後悔の念が心の奥底から湧き出てくる。

そして、あのフロッガーと蠍蜂に完全に囲まれたとき

僕と雅の意識は共にブラックアウトした・・・。

 

 

 

 

 

 




【ユキとミヤビに送りたい言葉。】
・後悔先に立たず。


最近、悩んでいます。現在の更新スピードで続けるべきか
それとも2週間ごとの更新にするか・・・。はたまた、4週間ごとの更新にしようかと。
変更する理由として『3週間だと書いて投稿する分には丁度いいが、1ヵ月に投稿できる話数に
バラつきが出て色々と面倒である』からですね。
まだ変更する目処は立っていませんが、あまりにも面倒と感じた場合は変更させてもらいます。


また5話目となりますが、お気に入り登録者をしてくださる方が増えたと感じたので
短編サラマンダー同様、記載させて頂こうと思います。

デューク様、クトゥルフ様、た利刃様、白狼2様、S aya様、
お気に入り登録ありがとうございます!!



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第6説-生存。仲間。助平。

 

次に目が覚めたときは、あの世でもない、現実でもない。石作りの薄暗い部屋の中だった。

辺りを見回すと僕のほかにミヤビが横たわって寝ていた。だるくて重い体を半分引きずりながら

ミヤビの元に向かう。脈、心拍数、呼吸は正常に動いている。よかった。どうやら、死んではいないようだ。本当に良かった。ミヤビが生きていたと言う安堵の為かそのまま地面に腰を

ストンと落としてしまう。その時、光が差し込み扉が開き誰かが入ってきた。

 

 

「無理しない方がええ。バブルスライムの毒と敵の集中砲火を喰らったんだ。

 もう少し、そこのベッドで休んでいなさい。」

 

 

顔は見えないが、声で分かる。ある程度、歳の行った年寄りのようだ。

しかも、それなりに力持ちな男性。彼は僕を持ち上げると再びベッドに戻してくれた。

 

 

「えっと・・・。」

 

 

彼に聞きたいことが沢山あるはずだった。しかし、その聞きたいことが多くあり過ぎて

どの内容から聞いて行けば良いのか分からない状況だった。

 

 

「質問は後だ。少女よ。今はゆっくりと、体を休めなさい・・・ラリホー」

 

 

男性がそう呟いた瞬間、再び瞼が重くなり再び僕は深い眠りに落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また目が覚めたときも、最初に見たあの時の部屋の中だった。

今度は頭の中がスッキリと晴れ、

一度起きた時よりも体が動きやすくなっているのが分かった。

 

 

「よぉ。ユキ、気分はどうだ?」

「あ、ミヤビ・・・。もう大丈夫みたい。」

 

 

一度起きたときに年寄りが入ってきた扉の近くで、腕組み足組をして壁に寄り掛かって

こちらの様子をうかがっているミヤビが居た。

どうやら、ミヤビもあの昏睡に近い状態から復帰した様だった。

 

 

「それにしてもユキ。人助け、いや魔物助けはしておくもんだなぁ・・・。」

「・・・? 魔物助け?」

 

 

ミヤビは何のことを言っているのか、僕には分からなかった。

まだ頭の中で記憶の整理がついていないんだと思う。

 

 

「お前の助けたホイミスライム。どうやら、あいつが魔物を追っ払って、俺達をここに

 運び、解毒もしてくれた張本人なんだと。ここの宿屋の爺さんから聞いた。

 ま、何かの冗談だろうけど。」

 

 

軽く鼻で笑いながらミヤビはそういった。

そうだ・・・。そんなこともあったような・・・

 

 

「お前も・・・」

 

 

ミヤビが何かを言いかけた時、急にミヤビの隣の扉が開き その言葉はかき消された。

僕たちが目を丸くしてその扉の先を見てみると、そこには一匹のホイミスライムが

浮遊してこちらをデフォルト笑みかもしれないが、ニコニコとみていた。

 

 

「・・・えっと・・・」

 

 

僕が言葉を最後まで発するよりも先にホイミスライムの方が僕に向かって突進をしてきた。

 

 

「っ! ユキっ!!」

 

 

ミヤビが状況を素早く察知してホイミスライムの事と引き留めようと手を伸ばすが届かず

その手は空を切る。その突進の衝撃に備えて力を籠め、目をつむった。

だが、そのホイミスライムが僕にぶつかった瞬間は、力強い体当たりなどではなく

ポヨンと言う柔らかい感覚と、反射的に顔を庇った腕に懐いたように足(触手?)を絡ませて

遊ぶホイミスライムの姿が目の中に飛び込んできた。

 

 

「え? は?」

 

 

これには、ミヤビも驚いたようで何が目前で起こったのか分からないと言う顔をしている。

 

 

「随分、懐かれたようだの。少女よ。」

 

 

今度は派手に開かれた扉から、最初に起きたときに出会った年寄りが入ってきた

顔が向いている方向からして僕に対して話しかけているようなのだが・・・ボクは・・・。

 

 

「あのぅ・・・」

「言わなくとも分かる。魔物は基本人間には懐かない。それがどうして懐いているのかと

 私に聞きたいのだろう?」

 

 

全然分かっていないよ。この年寄り・・・

しかしここで否定すると、話の進み具合が悪くなってしまうようなそんな気がしたので

否定はせずに 一呼吸を置いて短く『はい』とだけ答えた。

ホイミスライムは相変わらず細い触手をクネらせ体を弄りながらじゃれてくる。

一線を越えたら薄い本が一冊できそうなそんな・・・触手プレイだ。

 

 

「そうだろう。そうだろう! そして、何故少女に懐いたのかと言うと・・・」

「はい。」

「儂にも分からん。」

 

 

ガタン!! と言った大きな音と共に扉の近くで、スカした顔をしつつ話の内容に耳を傾けて

こちらの会話の内容を聞いていたミヤビがよくある漫画のずっこけの様に転んでいた。

 

 

「わ、分からねェのかよ・・・爺さんよ。」

「うむ。何せ、今まで人間に魔物が懐くなんてことは無かったのだからな。

 ・・・・・・・・・いや、もしかして少女よ。おぬし、魔物なのか?」

「えっ・・・」

 

 

年寄りの発言によってホイミスライム以外の空気が一斉に凍りつく。

そして次に口を開いたのはミヤビだった。

 

 

「おい! ジジイ!! 誰が魔物だって!!? 俺の友人に随分と言ったモノの良いようじゃねェか!!」

「い、いや・・・別にそう言った事では・・・・・・」

「なら、どう言った意味だ! ゴルァ!!」

 

 

ミヤビは早歩きで年寄りに近づくと、年寄りの胸倉を掴みあげて前後に揺さぶりつつ

互いの鼻頭をぶつけんとするような距離で怒鳴り散らし胸倉だけで相手を持ち上げた。

 

 

「ミ、ミヤビ・・・やめなよ・・・!」

「ユキ! こいつはなァ! お前の事を魔物だと疑ったんだぞ?! 悔しくないのか!!」

 

 

止めに入ると鬼のような形相で今度はこちらを見つめる。

流石にじゃれていたホイミスライムもミヤビの形相に恐れを為したのか

触手プレイを止め僕の後ろに素早い動きで後ろに隠れた。

 

 

「確かに悔しいけど・・・その人、一応助けてくれた人なんだからあまり暴力は・・・。」

「・・・チッ・・・・・・分かったよ。ジジイ、ユキに感謝するんだな。」

 

 

なんとかミヤビをなだめることに成功したようだ。

ミヤビは年寄りから手を放し再び扉付近の壁に寄り掛かった。

 

 

「・・・ゲホッゲホッ・・・・・・す、すまなかった少女よ。」

「良いんです。気にしていないので・・・。」

 

 

急にミヤビから胸倉を放された年寄りは、尻餅をついた後 僕に謝罪をしてきた。

それに対し別に気にしてない事を伝えベッド上から降りるとミヤビの元に行き、

少し今後について話会おうとした。一方年寄りはと言うと、用事を思い出したと言い残し

この部屋の扉から急ぎ足で退出をした。

 

 

「ミヤビ・・・。」

「ケッ」

「この子なんだけどさ。」

「え? あ。そっちか。どうした?」

 

 

どうやらミヤビは年寄りの件で何かを言われると身構えていたようだが、

聞かれた内容は他の話題で拍子抜けしたような顔をしていた。

 

 

「悪さもしないようなら、魔王退治に連れて行っても良いかな?」

「・・・・・・別に良いんじゃないか? 一般の魔物が魔王を討伐するなんて聞いた事ないし

 討伐したら、それもそれで面白そうだし。ただ同行するかどうかはホイミスライムに

 聞いてからだな。」

「うん、そうだね。

 ホイミスライム・・・これから、僕達は魔王討伐に向かうんだけど一緒に来る?」

「・・・・・・♪」

 

 

ホイミスライムが浮いている方に振り返り魔王討伐同行について聞いてみると

答えはすぐに返ってきた。肯定のようだ。

ホイミスライムはクルクルと回り再びじゃれてついてきた。

 

 

「答えはYesみたいだな・・・。」

「えっと、じゃあよろしくね。ホイミン。」

「・・・・・・♪」

「え?・・・ホイミン?」

「ホイミスライムじゃ呼びにくいから、ホイミン良いでしょ?」

「・・・・・・♪」

「ほら良いって。」

 

 

ホイミンは楽しそうにクルクルクルと回って、今度は触手で

胸部と突起部をフニフニと巻き付き触り始めてきた。

 

「・・・ミヤビ?」

「・・・なんだ。」

「ホイミン、すっごい上手いんだけど。」

「R-18タグが付くぞ。」

「そうだねっ・・・♥♥んっ・・・♥」

「はぁ・・・。」

 

 

 

 

 

 



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第7説‐竜巻。ロマリア。視線。

 

祠の宿屋で一泊し、日が昇る頃、僕達は旅の扉前に来ていた。

一昔前はここも今のようには綺麗に舗装されておらず、魔物が飛び出してくるような

危険な道のりだったらしいのだが、今では一変魔物は出ない床に穴は開いていない、

案内板まで設置されていると言う随分 人間に配慮されている旅の扉に繋がる洞窟と

なったらしい。因みに魔物が出ないと言うのは1階、地下1階だけの話でその下の階に

行けば昔洞窟に住んでいたと言われる魔物たちと出会い戦うことが可能のようだが、だが

僕達にその魔物と戦っても利点はホイミンのLevel上げ程度の利点しかないのでスルーを

決め込むことにした。道中、ホイミンが触手プレイの強要をしてきたがスケベェって呼ぶ

と軽く脅しをかけると“洞窟内では”セクハラに近い触手プレイを一切行わなくなった。

 

 

「これが旅の扉かぁ・・・。」

 

 

目の前に青く竜巻状のくぼみが見える。

看板にはこの中に飛び込むように入ればいいと書いてあるが・・・

 

 

「飛び込む気には・・・なれねぇなぁ・・・。」

「飛び込んだ途端に体が細切れになって、血しぶきだけが飛び散りそうだよね・・・。」

「分かる・・・。」

「しょうがねぇ、俺が先に飛び込んで安全確認してしきてやるよ」

「いや、ミヤビ。僕が行くよ。」

「いや。俺が」

「僕が」

「俺が」

「・・・・・・。」オロオロ

 

 

“俺が”の復唱にホイミンがオロオロし始める。ホイミンはオロオロするばかりで

触手を上げて自分が行こうとはしないようだ。

 

 

「ダメだなぁ・・・ホイミンは。」

「・・・?!」

 

 

僕の言葉にホイミンが驚き、硬直する。

 

 

「ホイミンいいか? こういう“俺が”コールが連続して続いたら自分も手を上げないと。」

「・・・・・・!?!?」

 

 

さらにミヤビにもタタミをかけられて再び硬直する。

 

 

「それで上げたら、僕達が“どうぞ、どうぞ”ってするから“なんでやねんっ”と

 ゲッツ☆のポーズを取りながらツッコミを入れないと。」

「まぁ、ホイミンはこっちのネタは知らないからな。ゆっくり覚えていけばいいさ。」

「・・・・・・。」

「さて・・・本気で、どうしよう・・・飛び込むか。レーベまで戻るのか。」

 

 

真剣な眼差しでミヤビを見る。ミヤビも真剣な眼差しで口を開き言った。

 

 

「飛び込む。ただし、3人同時でな。」

「・・・・・・!」

「ホイミン、嫌だったら自分の住処に帰っても良いんだぜ?」

 

 

ミヤビの言葉に対してホイミンは、僕の身体にキツク触手を巻き付け

否定的な反応を見せつけ始めた。ちょっと締め付けが気持ちいいのが悔しい。

 

 

「ユキ。」

「それじゃ、せーのっ!! で飛び込む・・・良いかな?」

「あいよ。」

「・・・・・・。」

 

 

息を整え、互いの身体を密着させていつでも飛び込むことが出来るような準備を

整える。そして飛び込む位置を再度確認しアイコンタクトを取って準備完了の知らせを

教え合う。

 

 

『・・・せーのっ!!』

 

 

青い竜巻状に飛び込むと、目の前の視界が都市伝説に出てくるようなクネクネの如く

左右に歪み 先ほどまで見えていた場所から別の場所が目先に映り出してきた。

完全に視界が安定して見えるようになった頃、ミヤビがまず最初に

新たなる新天地の地面を踏みしめ周囲の安全を確認する。

 

 

「うわぁぉ・・・これが・・・・・・ワープ。周囲に敵なし。」

「・・・ミヤビ・・・気分、だいじょうぶ?」

「大丈夫~♪ だいじょぶ~♪×2」

「・・・・・・♪ ・・・・・・♪」

 

 

ノリノリなテンションを見ると其れなりにミヤビとホイミン“は”大丈夫なようだ。

僕は出来れば二度と乗りたくない。別の場所へ移る瞬間、ジェットコースターに乗って

下り坂の時に時折感じる浮遊感が全身で感じ取った。なんというか・・・気分が悪い。

 

 

「さてと、案内板を見ると・・・今はここだな。」

「・・・・・・。」

 

 

ミヤビとホイミンが地図を確認して、それぞれの地図に一つずつ丁寧にボールペンで

書き込みを行っていく。僕はと言うと・・・気分が悪くて壁に寄り掛かって酔いが覚めるのを

ただひたすらに待っていた。

 

 

「ユキ。大丈夫か?」

「・・・・・・ちょっと、不味いかも・・・。」

「近くに城があるらしいから、そこまで頑張ろう・・・な?」

「うん・・・。」

 

 

手を差し伸べられ、それに捕まって立ち上がりそのまま肩に寄り掛かった。

ホイミンが何やら恨めしそうな目でミヤビの顔を見ていたが、

ミヤビはそれを気にした様子もなく僕を引き上げる体を密着させ

体に寄りかからせるような形で、もたれ掛けさせてくれ正面の出口から出た。

祠を出るとすぐ目の前に城と城下町が建っており、僕達の後ろ側には海が広がっていた。

 

 

「探索したいが・・・ユキがこんなだし・・・一旦正面の城に向かうかぁ・・・」

「ミヤビ・・・ごめん。」

「・・・・・・・・・。」ナデナデ

「ありがと・・・ホイミン。大丈夫・・・。」

「・・・・・・♪」

 

 

一旦立ち止まり、少し下の方にズレた僕の事を引き上げなおすと城の方へ歩み始めた。

辛そうな僕の事を心配してか、ホイミンがフニフニと触手で背中や腹部を優しい力

加減で摩ってきた。感謝の気持ちを伝えると今度は顔に触手を巻き付け始める

ひっぺり剥がす頃には、僕たちは城の目の前まで来ていた。

道中、特に魔物とも出会う事もなく何事もなかったかのように城下町にすんなりと

入ることが出来た。ふと入口の傍らに目をやると看板が立っておりアリアハンと

同じように“ようこそ、ロマリア”へと書かれており、アリアハンと少し違う点と言えば

城下町の入り口に衛兵が2人立って居ることぐらいか。

 

 

「・・・・・・・・・?」

「・・・・・・・・・。」

 

 

なにやら、衛兵2人はコソコソとこちらを見ながら何か内緒話を行っている。アリアハンから

勇者についての伝達が来ており、その勇者と似てつかない身形をしていることに驚いているのだろうか? とにかくチラチラと時折こちらに視線を向けながら何かを話している。

半分引きずられるような恰好のまま町の中を彷徨い、大勢の民衆から興味と怯えたような目で見られつつも何とか宿屋までたどり着くことができた。

 

 

「すまねぇ! 至急、3人泊まれる部屋はあるか?!」

「は、はひぃ」

 

 

ミヤビが手で扉を開けずに思いっきり足で蹴り開ける。

ミヤビの大きな声と扉が急に開く音に驚いたのか、

カウンターの奥から宿屋の主人とみられる小太りの中年男性が現れた。

 

 

「え、えぇと・・・3名様です・・・ひぃっ!」

 

 

うすべ笑い作りつつも客対応を行う宿屋の主人。

だが、部屋の確認が終わりこちらを見るために顔を上げた瞬間情けない声を上げ、その場に尻餅をついた。不思議な顔をしてミヤビの方を確認してみると、鬼のような顔をして

その宿屋の主人を睨みつけていた。

 

 

「あ゙ぁん? テメェ、お客様に向かって何が『ひぃっ』だ!! それで、泊まれるのか?!

 泊まれねぇのか?!」

 

 

ミヤビがカウンターから身を乗り出して宿屋の主人に対して怒鳴り散らす。

まぁ、気持ちは分からなくないけどさ・・・ちょっと、怖いです。

 

 

「泊まれます! 泊まれます!! だ、だから、殺さないでください!!」

「流石に、そこまではしねぇよ。ほら、宿泊代。」

 

 

袋の中から硬貨を取り出すと、その硬貨をカウンターに置き部屋に向かって行った。

部屋に向かう途中、僅かなアンモニア臭がしたのでふとカウンターの奥へ目をやると

尻餅をついたまま、情けなく尿を漏らしつつ後さずりをしながら奥へ消えていく宿屋の

主人が居た。

部屋に入るとまず、僕をベッドに座れるように誘導行動を行ってくれた。

フカフカとまでは行かなくとも柔らかいベッドの上に腰が少し沈みこんだ。

 

 

「気分はどうだ? ユキ。」

「あ・・・うん。さっきよりも良いかな。」

「そいつは良かった。」

「・・・・・・♪」

「さてと・・・俺は少し情報収集と必要物品をそろえてくるから雪とホイミンはここで

 待っていてくれ。」

「・・・・・・。」

「分かった。」

 

 

ミヤビは自分の道具袋を背負いなおすと、背中姿で片手を振りながら部屋から出て行った。

 

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 

 

ホイミンと二人っきりになり、お互いに顔を見つめ合う。

 

 

「えっと・・・ホイミン。」

「・・・・・・?」

「自己紹介したっけ。僕の名前はユキだよ。よろしくね。」

「・・・・・・♪」

 

 

ここでホイミン恒例のセクハラボディタッチ。不思議と嫌な感覚はしない。

 

 

「ははは・・・本当にホイミンはボディタッチが好きだね・・・。」

「・・・・・・♪」

 

 

ここで、肯定の舞。沢山ある触手を器用に使い人の各部位を撫でまわしていく。

一歩踏み間違えたらR-18禁タグが付きそうだが、その時はその時だ。上手くカット等を

使って切り抜ければ・・・

 

 

 

 

 

 

 



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