ハンター×刀語 (日 健太)
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相席×理由×試験開始

「向こうの建物だな」

 

ナビゲーターの指差す方向に他と比べ、ひときわ大きな建物があった。

 

「あれが会場か」

「うわー」

 

ゴン、クラピカ、レオリオの三人はナビゲーターに案内され、ハンター試験会場の前に来ていた。

 

「ここに世界各地から」

「ハンター志望の猛者が集まるわけだな」

(親父もこんな気持ちだったのかな・・・)

 

三人が建物を前に思い思いのことを考えていると、

 

「おい、そっちじゃないよ。こっちだよ。」

 

ナビゲーターが斜め向かいの建物を指差す。

 

「「・・・・・・」」

「・・・どう見てもただの定食屋だぜ」

 

レオリオの言う通りのそこには普通の定食屋があった。

 

「冗談きついぜ、案内者さんよ。まさかこの中に、全国から無数のハンター志望者が集まってるなんて言うんじゃねーだろ」

「そのまさかさ。ここなら誰も応募者が数百万人とも言われてる、ハンター試験の会場だとは思わないだろ?」

 

ナビゲーターはそう言って、定食屋へと入ってしまい、ゴン達もそのあとに続く。

 

「いらっしぇーい!!」

「・・・・・・」

 

中に入ってみても、亭主が料理を作り、他の客達が食事をしていて、普通の定食屋にしか思えなかった。

 

「御注文は?」

「ステーキ定食」

ピク「焼き方は?」

「弱火でじっくり」

「あいよー」

 

ゴン達に何も聞かず、ナビゲーターが勝手に注文を言う、しかも焼き方まで。

 

「お客さん、奥の部屋どうぞ」

 

(今のが試験者だと知らせる合言葉か)

 

クラピカはナビケーターを亭主のやり取りを見てそう推測する。

 

(一般人がたまたま同じ注文をしたらどうするんだ?)

 

短い合言葉に対してそんなことを考えていると。

 

ガラガラッ

 

店の入口が開き、一人の小柄な女性が入ってきた。

 

「いらっしぇーい!!」

 

女性は美しい容姿をしていたが、見るからにひ弱そうで、まるで病人ように血色のよくない顔をしていた。

 

(例えば、こんな女性が間違ってハンター試験に紛れてしまったら、確実に死んでしまうぞ)

 

「御注文は?」

「・・・ステーキ定食をお願いします。」

ピク「焼き方は?」

「えーっと・・・弱火でじっくり」

 

「「「え!?」」」

 

ナビゲーターと全く同じ注文に、ゴン達は驚いて女性を見る。

 

「・・・なんでしょう?」

 

女性はそれに対して、不思議そうに首を傾げる。

再度見ても、女性はハンター試験を受けるような猛者には見えない。

 

「あいよー」

 

だが、そんなことは気にせず亭主は注文を受ける。

 

(だから、言わんことではない。合言葉はもっと複雑にするべきだ)

 

「お客様、相席よろしいでしょうか?」

 

 

 

「鑢 七実と申します。あ、こちらの言い方では、ナナミ=ヤスリ という事になりますね」

「オレ、ゴン。よろしく」

「オレはレオリオだ」

「私はクラピカ」

 

ゴン達は案内された奥の部屋、(エレベーターになっていて下に降りている)で、

ステーキ定食を食べながら自己紹介をしていた。

ちなみに、上の定食屋のメニュー表にはステーキ定食は無く、その為合言葉を間違えて言う客はいないらしい。

 

「しっかしあんた、どう見てもハンター試験を受けるような人には見えねーな」

「そうですか?」

「失礼ながら、私もそう思った」(しかしここまで来れたということは、只者ではないということだろう)

「ゴン君のような少年が受けているのですから、それほど不思議でもないと思いますが」

「まぁ、こいつは普通のガキじゃねーからな」

「では、私も普通の女ではない、ということでいいのではないでしょうか」

(普通より弱そうだから言ってんだけどな)

「ナナミはどうして、ハンターなりたいの」

 

他の二人と違い、ゴンはナナミのハンター志望の理由に興味があった。

弱くても、ハンターになりたいと思う人はたくさんいるだろう、でもその理由はそれぞれだ。

 

「・・・実は特にハンターになりたいということではないのですよ」

「えっ!、そうなの」

「ええ、こう見えて私、生まれながら病弱でして」

((見たまんまだけどな))

「そのため普通の職につくのが難しく」

((普通の職が無理ならハンターはもっと無理だろ))

「ハンターなれば何もしなくても、定期的にお金がもらえると聞いて」

((それは間違ってないが))

「それで、なろうかな。と」

((かなって!?))

「ああ~、なるほど」

「(納得するとこじゃね~!!)」

 

思わずツッコミをいれてしまうレオリオ。

声にこそだしていないがクラピカ同様である。

 

「わかってんのか!、ハンター試験は困難かつ危険で、毎年死亡者が出るって話だ」

「・・・ハンター志望者が、死亡者ですか。ふふ、面白いですね」

「なんも面白くね~!!」

「毎年試験は変わるそうですし、ひょっとしたら今年は危険の少ない試験かもしれませんよ。料理とか」

「んなわけねーだろ!」

「・・・・・・まぁー、なんとかなりますよ」

 

レオリオの忠告もナナミには、どこ吹く風だった。

 

「はぁ~、もういい。とにかく無理だけはしないようにな」

「ふふ、お優しいのですね」

「けっ、そんなんじゃねぇよ」

 

 

 

チンッ

 

「・・・着いたらしいな」

 

エレベーターが目的の階に着いたらしく、扉が開く。

 

「「「!!」」」

 

会場には既に多くの受験者達が集まっており、これまでとはあきらかに雰囲気が違っていた。

 

(全員が何らかの達人に違いない!!)

 

「それにしても薄暗い所だな」

「コホッ、地下道みたいですし、人が多いせいが空気も澱んでますね」

「一体何人くらいいるんだろうね」

 

「君達で406人目だよ」

 

誰にともなく言った、ゴンの質問に答えたのは潰れた鼻のおっさんだった。

 

「オレはトンパ。よろしく」

 

 

 

そのあとすぐゴン達は番号札を渡された。

 

403番、レオリオ

404番、クラピカ

405番、ゴン

406番、ナナミ

 

トンパというおっさんは、ハンター試験を35回も受けれるベテランらしく、

他の実力のある受験者のことなどを教えてくれ、

またその途中、他の受験者同士の揉め事があり、その受験者、44番ヒソカは特に要注意人物で、

近づかない方がいいとアドバイスもしてくれる親切なおっさんだった。

 

「おっとそうだ」

 

そう言ってトンパはジュースを取り出し、4人に渡す。

 

「お近づきのしるしだ、飲みなよ。お互いの健闘を祈ってカンパイだ」

「ありがとう!!」

 

それをなんの疑いも無く、口にするゴン

 

(くくく、そのジュースは超強力な下剤入り!! 一口飲めば三日はウンコが土石流みたくとまらねェ!! 

お前らもうパンツをはいてテストを受けることすらできないぜ!! 

しかも綺麗な嬢ちゃんまでいるじゃねーか、美少女のお漏らし・・・ゲヘヘ、携帯で撮影しとくか。

どうせあんな弱そうな嬢ちゃんは試験受けても死ぬだけだ、

早々にリタイヤする理由を作ってやるんだ、むしろ感謝してほしいくらいだぜ)

 

実はトンパは親切なおっさんではなく、常連から新人潰しを呼ばれてる性悪のおっさんだった。

 

しかし、トンパがそんなゲスなことを考えていると、

 

「れろ」

ダーーーー

「!!」

 

いきないりゴンがジュースを吐き出した。

 

「トンパさん、このジュース古くなってるよ!!

「え!? あれ?おかしいな~?」

 

(下剤は無味無臭のはずなのに、このガキどんな味覚してやがるんだ)

 

ゴンの言葉を聞いて、他の三人もジュースを捨てた。

 

 

 

トンパからジュースの謝罪を受けたあと、しばらくすると

 

ジリリリリリリリリリリリー

 

と大音量のベル音が場内に響いた。

その音源は、太いパイプの上に乗った、スーツ姿の男の手に持っていた。

男は音を止めると

 

「ただ今を持って、受付の時間を終了いたします」

 

そしてパイプからおり、こう言った。

 

「では、これよりハンター試験を開始いたします」

 

 



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一次試験×忍法×合格

前を行くスーツの男から、試験中ケガをしたり、死んだりする可能性があるとの忠告を受けるが、それ聞いて、試験を辞退する者は一人もいなかった。

 

「承知しました。第一次試験、405名全員参加ですね」

 

それを歩きながら確認した男は、足を早めていった。

 

「申し遅れましたが、私一次試験担当官のサトツと申します。これより皆様を二次試験会場へ案内いたします」

「二次・・・?ってことは一次は?」

 

294番のハゲ頭がサトツの言葉に当然の質問をする。

 

「もう始まっているのでございます。二次試験会場まで、私についてくること。それが一次試験でございます」

 

サトツの言葉に皆が驚く。

 

「場所や到着時刻はお答えできません、ただ私について来ていただきます」

 

 

「変なテストだね」

 

試験官の言葉を聞いてゴンが、率直な感想を言う。

 

「さしずめ持久力試験ってとこか。望むところだぜ。どこまででも、ついて行ってやる」

「なるほどな・・・」(どこまで走ればいいのかわからない心理的負荷で、精神力も同時に試されてるわけだな)

 

レオリオもクラピカも多少変と思いつつも、常識の範囲だと考え、むしろ試される方向性がわかったぶん、表情は明るい。

 

「・・・持久力ですか」

 

だが、三人と違ってナナミは不安な顔しており、元々あまりよくない顔色がさらに悪くなってる。

 

「どうしたの?ナナミ」

「実は私・・・・・・体力がなくて、長く走るのとか苦手なんです」

((だろうな!))

 

クラピカとレオリオが心の中でツッこむ。

 

「あ~、あまり無理はするな」

「そうだぞ、試験は今年だけじゃねぇしな」

 

試験が始まって、まだ数分だというのに暗にリタイアを勧める二人。

 

スーー

 

その時、4人の間を銀髪の少年がスケボーに乗って通り過ぎた。

レオリオが、持久力のテストだから反則だと言うが、それ聞いたゴンが

 

「違うよ、試験官はついて来いって言っただけだもんね」

 

と言い、クラピカも肯定する。

 

「なるほど!、確かに試験官は持久力テストとは言ってませんでしたね」

 

何か思いついたのか、ナナミはそう言ってキョロキョロと周りを見渡す。

 

「あの人が良さそうですね」

「ん、何か言ったか、ナナミ」

 

レオリオの言葉には答えず、ナナミは トンッ と斜め前方に飛び上がった。

 

「えっ!」

「なっ!」

「ナナミっ!」

 

周りにいた試験者達を軽々と飛び越えるほどの跳躍を見せたナナミに驚く三人。

そしてナナミは一人の男の肩に着地した。

 

「あれは!?、さっきトンパが一番危険だと言っていた」

 

44番のヒソカであった。

 

 

 

「すみません。肩に乗せてもらっても宜しいでしょうか?」

「っ!・・・・・・いいよ♠」

 

ヒソカはいきなり肩に降り立ったナナミに多少驚くも、すぐに笑顔になり肩を乗ること了承した。

 

「一次試験退屈そうだからね、話相手が出来てうれしいよ◆」

「ふふ、私はナナミと申します」

「僕はヒソカ♥」

 

片方が肩に乗っているという異様な状況でもごく普通に自己紹介をする二人。

 

「それにしてもすごいね、確かに肩に乗ってるのに全然重さを感じない♠」

「これは忍法足軽と言いまして、自分や自分が持った物の重量を消す技なのです」

「忍法?ということはナナミは忍者なのかい?」

「いえ、この忍法は忍者と戦った時に覚えたもので、私自身は忍者ではなく剣士です」

「・・・剣士という割に、剣の類は持ってないようだけど◆」

 

隠して、ナイフなどを持っている可能性もあるが、だったらそもそも剣士だなど言わないだろうと、ヒソカは考えた。

 

「はい、無手の剣術ですから」

「無手の剣術・・・面白そうだね♥」

 

無手の剣術、その矛盾した言葉に笑みが濃くするヒソカ。

 

「試験が進めば見せる機会もあるかもしれませんね」

「それは楽しみだ、ちなみに僕は奇術師だよ♠」

「奇術師・・・手品とかをする人ですか」

「僕の手品は、普通のとはワケが違うよ。試験が進めば見せる機会もあるかもね◆」

「それは楽しみですね。ふふふ」

「ハハハ♥」

 

 

 

「何か楽しそうに話してるね」

「そうだな」

 

ナナミの突然の行動に驚いたが、特に問題なさそうで、安心半分呆れ半分のゴン達。

 

「あのねーちゃん何者なんだ」

 

銀髪の少年、キルアがナナミを見ながらゴンに聞く。

 

「さぁ」

「知り合いじゃねーの」

「上の定食屋で合ったばっかしだよ」

「ふうん、・・・めっちゃ弱そうに見えるけど、只者じゃなさそうだな」

 

確かに、先ほどの跳躍といい、走ってるヒソカの肩に乗ってもブレない体幹といい、並の者では出来ない芸当だ。

 

(やはり、見た目通りの病弱な女性ではなさそうだな)

 

クラピカは再度、ナナミの認識を改める。

 

 

 

それからしばらく走り続け、階段を登り、受験生一行は外へと出た。

試験官のサトツが、ヌメーレ湿原 通称”詐欺師の塒”の説明の最中、

猿が受験生を騙して連れさろうとするハプニングがあったが、ヒソカが猿と試験官に攻撃するという見分け方であっさり看破。

 

受験生312名がヌメーレ湿原へ突入する。

 

 

 

「トランプを投げなくても、ヒソカさんは本物がどちらか見抜いていたのでは」

 

湿原でもナナミはヒソカに肩に乗せてもらっていた。

 

「まぁね、でもあの方が楽しいでしょ♠」

「確かにトランプで攻撃というのは、奇術師っぽいですね」

「あの程度、手品の内にも入らないけどね・・・・・・それにしても」

「退屈ですか?」

「わかる?」

「はい、殺気が漏れてますから」

「君と話すのは楽しいけど、さすがに長々走るだけってのはね~・・・試験官ごっこでもしようかな◆」

 

ヒソカは先程まで見せていた、楽しそうな笑みではなく、邪悪な笑みを浮かべる。

 

「試験官ごっこ・・・ですか」

「ナナミはどうする?待っててくれるなら、その後二次会場まで送るけど?」

 

ヒソカに聞かれ、少し考えるそぶりをする。

 

「いえ、私は先に行かせていただきます」

「そ、じゃあまた二次試験で♥」

「はい、・・・ところで」

「ん?・・・」

「ヒソカさん的審査では、私の合否は?」

「・・・もちろん合格さ♠」

「ふふ、ありがとうございます」

 

ナナミはそう言って前方へと飛んでいった。

 

 

 

 

「えっ!ナナミ!」

 

ゴンは肩に違和感を感じたと思って見てみたら、自分の肩にナナミが乗っていた。

 

「すみません、ゴン君、肩を貸していただけますか?」

「いいけど・・・すごいね全然重さを感じない、どうなってるの」

 

ゴンのヒソカと同じような質問に同じような説明をするナナミ。

 

「だから、ヒソカもずっと乗せてたんだ」

「でも、ヒソカの肩に乗るのをやめたのは、やっぱり殺されそうになったからか」

 

ゴンの隣を走っていたキルアが、先ほどから感じていたヒソカの殺気からそう推測し聞いた。

 

「・・・君は?」

「こっちはキルア、オレと同じ年で仲良くなったんだ」

 

ナナミがまだキルアの事を知らないのを思い出し、説明するゴン。

 

「そうですか、私はナナミと申します」

「ああ」

「さっきの質問ですが、ヒソカさんは他の受験者を殺すつもりのようでしたが、私の事は殺そうとは思って無かったみたいですよ。合格と言っていましたし」

「「合格?」」

「はい、試験官ごっこをするそうです」

 

ナナミがそう言った時、後ろから

 

「ぎゃっ」

「ぐっ」

「ってえー」

 

次々と悲鳴か聞こえた、

そのうちの一つはレオリオの声に似ており、

 

「レオリオ!!」

「おっと」

「待て、ゴン!!」

 

それを聞いてゴンはキルアの制止も聞かず後ろへと走っていく。

 

「行ってしまいましたね」

「ああ、・・・てか何俺の肩に乗ってんだよ」

 

ゴンが後ろに走っていった為、キルアへと乗り換えたナナミ。

 

「すみません。二次試験会場まで乗せてもらえませんか」

「オレはタクシーじゃねぇぞ・・・・・・まぁ軽いからいいけどよ。・・・あんたは心配じゃねぇのか」

「いえ、全然」

 

そう言ったナナミの顔は、言葉通り微塵もゴン達を心配していないようだった。

それは信頼しているなどのという意味ではなく、生きようが死のうが興味ないといったそんな冷たい目だった。

 

「あんた何者なんだ」

「ナナミ=ヤスリ。ハンター志望者です」



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二次試験×料理×虚刀流

「みなさんお疲れ様です。無事、湿原を抜けました。ここビスカ森林公園が二次試験会場となります」

 

ゴンと別れたナナミとキルアは、問題無く二次試験会場へと到着していた。

 

『本日 正午 二次試験スタート』

 

ガオオオオォォォォ ゴルルルルルルル

 

「二次試験は正午からですか」

「何だ、このうなり声」

 

変なうなり声が聞こえるものの、建物に正午スタートと書かれている以上、待つしかないようだった。

 

 

 

「やぁ、さっきぶりだねナナミ♠」

 

しばらくするとヒソカが笑顔でやってきた。

 

「ヒソカさん、あの霧でちゃんと着けたんですね」

「・・・・・・」

 

ナナミも笑顔で迎えるが、キルアは険しい顔で少し距離をとる。

 

「奇術師に不可能はないんだよ◆」

「ふふふ・・・試験官ごっこはどうでしたか?」

「なかなか楽しめたよ♥」

「全員殺したのか?」

 

キルアはヒソカを警戒しつつも、遠まわしにゴンの安否を聞く。

 

「ううん、ナナミと一緒だった三人は生きてるよ♠」

「では、あの三人も合格だったんですね」

「そ、特に405番は、熟れるのがとてが楽しみだ◆」

「・・・確かに素質はありますね。けど」

「けど?」

「優しすぎます、熟れる前に死にますよ」

「・・・ボクはそれを補って余りある素質を感じたけどね♥」

 

 

 

その後、ヒソカからレオリオを運んできたことを聞き、すぐにゴン達も現れた。

 

「香水のニオイをたどったー!?Σ(゚д゚lll)」

 

キルアがゴンの異常な嗅覚に驚く。

 

「うん(・・)」

「お前・・・やっぱ相当変わってるな(-.-)」

「そうかな―(´・ω・`)」

 

 

「あら、レオリオさん、ずいぶん男前になられましたね(^^)」

 

ヒソカにやられたのだろう、レオリオの右頬はひどく腫れていた。

 

「うっせーよ! ぉーイテッ(>。≪)」

「レオリオの顔なんて素からこんなものだ( ̄◇ ̄)」

「んだと、ヽ(`Д´)ノ」

 

 

 

しばらくして、二次試験開始間近となり、受験生たちの緊張が高まる。

 

「もうすぐだね」

「うん」

「何が起こるかわからない、警戒しておくべきだろう」

「一体このうなり声はなんなんだ、猛獣でもいんのか」

 

ただ、そんな中、

 

「お腹が空いてる音ではないでしょうか?あ、次はきっと料理試験ですね」

(((そんなわけねーだろ!)))

 

いつもどおりのナナミにツッこむレオリオ、クラピカ、キルアの三人。

 

しかし

 

カチッ ピ―――ン ギギィー

 

正午になって扉が開き、中にいたのは、

奇抜な髪型の女と、お腹からうなり声を出す大男だった。

 

「二次試験は料理よ!!」

 

「「「マジで!!!」」」

「あらあら、冗談だったのですが当たりですか。ふふふ」

 

 

 

建物の中にいた、二人の試験官のうち、大男が指定した料理は、

 

「豚の丸焼き!!オレの大好物」

 

ど~~~ん

 

「森林公園に生息する豚なら種類が自由。それじゃ 二次試験スタート!!」

 

受験生達が一斉に森の中へ、豚狩りに走り出す。

 

 

 

大男、試験官ブハラは豚の種類は自由と言っていたが、ビスカ森林公園に生息する豚は、世界で最も狂暴な豚グレイトスタンプだけ。

仕留めるには、額を正確に攻撃する度胸と判断力、身のこなしが要求される。

しかし、ゴン達三人にはそう難しい課題では無かった。

 

ドォーン

 

易々豚を仕留める三人。

 

「よっしゃ!あとは焼くだけだな」

「急がないとな。あの体格とはいえ食べる量には限界がある」

「・・・ナナミ大丈夫かな」

 

ゴンはそう言って、少し離れた所にいるナナミの方を見る。

 

「「・・・・・・」」

 

一次試験でナナミは予想外な動きを見せたが、それは小柄な体格通りの身軽な動きではある。

その為、三人は非力そうなナナミに強大な豚を仕留める力はないのではないかと思った。

 

ブヒィーーー!!

 

その時、群れの中でも一際大きいグレイトスタンプがナナミへと向かっていった。

ナナミに慌てた様子は無く、突っ込んでくる豚の正面に自然体で立っていた。

そして、接触しそうな寸前、横へ移動し、すれ違う際、豚の額に拳を当てる。

 

ドゴーーン!!

 

軽く当てただけのように見えたナナミの拳は、勢いも相まって豚を大転倒させた。

 

「さて、調理を始めましょうか。肉は七花も好きでしたね、これほどの大物なら大喜びしたでしょうに、ここに居ないのが残念です」

 

故郷にいる弟の事を思うナナミ。

 

「ナナミー!」

「ゴン君・・・豚はもう捕まえたのですか?」

「あ、うん、それは大丈夫だけど」

「さっきのは何をしたんだ」

「さっき?」

「軽く叩いただけで、でけぇー豚を倒してただろ」

 

ゴン達三人からすれば、ナナミの細腕で巨大なグレイトスタンプを軽々倒したのは、異様な光景に映った。

 

「あぁ、あれは虚刀流四の奥義 柳緑花紅と言いまして、・・・・・・鎧通しという言いかたの方が一般的ですかね」

「鎧通しだと!?」

「知ってるのクラピカ」

「・・・文献で読んだだけだが、打撃の衝撃を好きな位置だけに伝えることができる技。鎧を着た相手でも、中の人間にだけのダメージを与えれるから鎧通し」

「へー」

「すげーな」

 

クラピカの説明に、単純に関心するゴンとレオリオ、だが説明したとうのクラピカは軽く戦慄していた。

本当に好きなところに衝撃を伝える事が出来るのだとしたら、ナナミの攻撃はガード不可、どんな屈強な者であっても、頭部を軽く叩くだけで絶命させることが出来るということだ。

 

「虚刀流ってのは何だ?」

「虚刀流というのは、鑢家に代々受け継がれている剣術です。まぁ受け継いだ七代目当主は弟ですが」

「・・・・・・剣術って、もろ素手じゃねーか」

「そのへんのツッこみは、初代に言ってください」

 

刀を扱う才能に全く恵まれず、手刀や足刀を多用しているとはいえ、虚刀流を見た者は十中八九レオリオと同じ事を思うだろう。

 

「そんなことより、早くしないと試験官さんが満腹になってしまいますよ」

「「「はっ!」」」

 

ナナミの言葉を聞き、ゴン達は慌てて、豚の調理へと取り掛かった。

 

 

 

結果から言うと、慌てる必要は無かった。

 

「やっぱりハンターってすごい人達ばかりなんだね」

「ああはなりたくないけどな」

 

クラピカはまたも戦慄していた。

 

(おかしい・・・!! 妙だぞ!?明らかに奴の体積より食べた量の方が多い!!)

「いや、そんなにマジで悩まれても・・・」

 

試験官ブハラは、受験生が用意した71体の巨大豚の丸焼きをすべて完食した。

 

「豚の丸焼き料理審査!! 71名が通過!!」

 

ナナミもまた違う意味で驚いていた。

 

「・・・私にも見修(みと)れないものがあるのですね。まぁ見修(みと)りたいとも思いませんが」

 



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スシ×美味しい×1名

「二次試験後半、あたしのメニューは、スシよ!!」

 

二次試験もう一人の試験官、メンチは課題の料理を発表した。

 

((((((((((((((( スシ・・・!? スシとは・・・・・・!? )))))))))))))))

 

受験者のほとんどが、スシという料理がどんなものなのかわからなかった。

 

「ふふん、だいぶ困ってるわね。ま、知らないのもムリないわ。小さな島国の民族料理だからね」

 

メンチは受験者に建物の中を見せ説明する。

最低限必要な道具と材料はそろえてあり、スシに不可欠なゴハンも用意してあった。

 

「最大のヒント!! スシはスシでもニギリズシしか認めないわよ!!」

 

ヒントは以上のようで、

 

「それじゃスタートよ!! あたしが満腹になった時点で試験は終了!!その間に何個作ってきてもいいわよ!!」

 

メンチは試験を開始させた。

 

 

 

ニギリズシと聞いて、握って作る物だということは解るものの、用意された食材がライスだけでは、それ以上どうすれはいいのかわからない受験者達。

 

「ライスだけでつくるのかな」

「道具とか見ると他にも何か使いそうだぜ」

「カタチは大体想像ついてきたが、肝心な食材が全くわからねー」

 

それはゴン、レオリオ、キルアの三人も同様だった。

 

(スシ・・・昔文献で)

 

クラピカだけは、文献で読んで知識だけはあった。

しかし、クラピカ以上の知識を、いや、実際に食したことのある人間が近くにいた。

 

「ニギリズシはマイナーな料理だったのですね」

「「「「え!?」」」」

 

そんなナナミの言葉に、4人の目が集中する。

 

「ナナミ知ってるの?」

「ええ、試験官が言っていた島国は私の故郷のことでしょうから」

「作り方教えてもらってもいい?」

 

こういう時、駆け引きなしに聞けるゴンは他の三人にとってありがたい存在であった。

問題はナナミは了承するかだが、

 

「ええ、いいですよ」

 

問題が無いようだった。

 

「まず、ニギリズシでは主に魚を使いますので、捕りに」

「魚ァ!? ナナミここは森ん中だぜ!?」

 

スパコーン

 

レオリオに杓文字投げつける、クラピカとキルア。

 

「「声がでかい!!」」

 

               魚!!!

ε=┌(`◇´)┘ε=┌(`◇´)┘ε=┌(`◇´)┘ε=┌(`◇´)┘ε=┌(`◇´)┘ε=┌(`◇´)┘

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他の受験者達は一斉に魚を捕りに走り出した。

 

「ちィっ 盗み聴きとは汚ねー奴らだぜ!!」

「・・・あれは盗み聴きと言うのでしょうか?」

「「「言わない」」」

 

ゴン達も魚を捕りに向かった。

 

 

 

魚を獲ってきたナナミは、

 

「さてと、まず私が作りますので見ていてください。口で説明するより早いでしょう」

 

そう言って、さっそくスシの調理に取り掛かった。

 

獲ってきた魚を薄く切り身にし、片手でゴハンを一口サイズの楕円の玉を作り、その上に少量のワサビと魚の切り身をのせて軽く握ると、皿に載せた。

 

「完成です」

「え!それだけ?」

「なんだ簡単じゃねーか」

 

思ってたより簡単な手順に、少し拍子抜けな4人。

 

「そうだな・・・あまり複雑な料理では試験にならないから、おそらく試験官の言動をヒントにこの形を推測する事が、この試験の本題だったのだろう」

「俺達はナナミがいて、ラッキーだったな」

「じゃ、さっさと俺らも作ろうぜ」

「教えてくれてありがとうね、ナナミ」

 

ゴンに続いてレオリオ達もナナミにお礼を言い、調理に取り掛かる。

 

「では、私はこれを試験官に持って行きますね」

「頑張ってね」

「はい、・・・といっても後は持って行くだけですが」

 

 

 

「お、来たわね。あなたはすぐに来ると思っていたわ。服装からして、ジャポンの出身でしょ?」

 

メンチは試験が始まる時から、着物をきこなしているナナミに目をつけていた。

 

「ええ、お察しの通りです」

「ジャポン出身なら、スシを知らないわけないわよね。でも、自分がラッキーだったなんて思うのはあまいわよ。答えを知っていたらな、味の審査は厳しくいくわ」

「ふふふ、お手柔らかにお願いしますね」

 

ナナミは料理をテーブルに置き、クロシュを取った。

メンチはその皿に載ったスシを見て、

 

 !っ

 

動きが止まる。

 

「・・・あなた、このスシどこで習ったの?」

「習ったと言いますか、私が食べた寿司の中で一番美味しかったものを真似ただけですが」

 

ナナミは率直に言ったのだが、

 

「・・・・・・そうね、確かに技術は、習うものでは無く、盗むものだものね」

 

メンチは職人的な解釈をしたようだった。

そして、メンチはスシを手に取り、口へ運ぶ。

だが、食べるまでもなく見た瞬間わかっていた、この寿司は、

 

「美味しい」

 

食べてほとんど反射的に、メンチはそう口にしていた。

 

「ふふ、では合格ということですね」

「え、ええ、そうね、合格よ。・・・あなたを落としたら、誰も受からないわ」

 

私を含めたとしても。

メンチは心の中でだけそう付け加えた。

 

「ありがとうございます」

 

ナナミはお礼を言って、ゴン達のところへ戻ろうとしたが、それはメンチに止められる。

 

「あなたは戻らないで他の受験者から離れた場所にいて、他にスシの作り方を教えられたら、試験にならないからね」

「・・・もう他の人に教えてしまったのですが」

「それは見てたから知ってるわ。あの時点では、あなたのスシが正しいかどうかは、決まっていなかったのだからいいのよ」

「なるほど、わかりました。・・・ところで」

「何?」

「私もお茶、もらっていいいですか?」

 

 

 

ズズズッ

 

ナナミはメンチから言われた通り、受験者から離れた場所でお茶を啜る。

 

「あの娘、何者なのかしら」

「まさかメンチが心から美味しいと思えるスシを、受験者が握れるなんて」

 

様子を見ていたブハラも驚いていた。

メンチを満足させられる料理人なんて世界に数えるほどしかいないのに、それを適当に獲ってきた魚でやってしまったのだ。

 

「スシ屋の娘、とかかな」

「それにしては、料理人の雰囲気はしないけど・・・」

 

 

 

「あ、ナナミ合格したみたいだよ」

 

戻らずお茶を啜っているナナミを見て、ゴンは嬉しそうに言った。

 

「てこたぁ、ナナミに教えてもらったスシは正解だってことだな」

 

レオリオも疑っていたわけでは無いが、これで100%正解なのがわかった。

 

「つまり、ナナミが作った通りにすれば、俺らも合格出来る」

「ああ」

 

4人はこれで自分たちも合格出来ると疑わなかった。

 

 

 

しかし

 

「ダメね」

 

メンチはレオリオのスシを食べもせず、そう言った。

 

「なんでだ。合格したナナミと同じ物を作ったんだぞ」

「同じ? これとあの娘が握ったスシが、同じだと言いたいの?」

 

メンチの顔に明らかな怒りの色浮かぶ。

 

「うっ」

 

気圧され、後ずさるレオリオ。

レオリオはナナミのスシと同じ物を作ったつもりでいた。

 

「あなた、あの娘のスシを見てどう思った?」

「え? あ~、うまそうだなって」

「そうね、それで正しいわ・・・で、これを見ても同じように思うの」

 

レオリオの作ったスシは、魚の切り方が雑で、ゴハンも形が悪くすこし崩れていた。

料理に慣れてなく、その上急いで作ったレオリオのそれは、ナナミのと比べるまでもなく、

 

「美味しくなさそう」

「そうよ。私に美味しいと言わせたいなら、せめて自分で美味しいと思える物を持ってきなさい」

 

同じ理由で、ゴン、キルアも食べずに返された。

比較的丁寧に作っていたクラピカのスシは、食べてもらえたが、

 

「美味しくないわ。握りが強すぎて硬い」

「しかし、この試験は」

「細かい味を審査するものではない・・・かしら?」

 

クラピカが言おうとした事を、先に言ってしまうメンチ。

 

「確かにそのつもりだったのだけど、あなた達はあの娘からスシの作り方を教えてもらった。だったら味での審査が厳しくなっても仕方ないでしょ」

「くっ」

「残念だったわね。あの娘のスシを試食してもっと詳しく教えてもらっていれば、及第点のスシぐらいは作れたでしょうに」

 

合格してしまったナナミに聞くことはもう出来ない。

 

「一見簡単そうだから自分達にも作れる、そう思ってたんでしょうけど、お生憎様」

 

メンチはふんぞり返って4人を見る。

 

「料理は単純な物でも奥が深い。まぁ料理に限ったことではないけどね」

 

 

 

「くそっ 楽勝で合格だと思ったのによ」

「作り方を教えてもらったせいで、より難しい試験になってしまうとは」

「でも、ひどいよな。人に聞いたらダメだなんて言ってなかったのによ」

 

不満顔で文句を垂れるキルア。

 

「ダメとは今も言ってないよ、厳しくなっただけで」

「でもよー」

「スシを作れたらではなく、美味しいと言ったら合格、というルールである以上、いくら文句を言ったところで覆らないだろう」

 

思うところはあるが、クラピカはきりかえることにした。

 

「幸い時間はまだある」

 

作り方を教えてもらったゴン達とは違い、他の受験者達の作った物はスシとはかけ離れている。

正解にたどり着くにはまだ時間が掛かるだろう。

 

「今のうちに何個も練習で作って試食し、美味しいスシを作れるようになるしかないだろう」

 

 

クラピカの案は間違っていない、時間をかければ、いつかは合格出来るスシが作れたかもしれない。

 

「メシを一口サイズの長方形に握って、その上にワサビと魚の切り身をのせるだけのお手軽料理だろーが!! こんなもん誰が作ったって味に大差ねーべ!?」

 

         なるほど、そういう料理か!!

(゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;;

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(゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;; (゚o゚;;

 

「はっ しまったー!!」

 

馬鹿なハゲがいなければ、だが。

 

 

 

その後、受験者達がこぞって、メンチにスシを持って行き、クラピカ達が美味しいスシを作れるようになる前に、

 

「悪い!! お腹いっぱいになっちった」

 

終~~~~了ォ~~~~!!

 

第二次試験 後半メンチの料理 合格者1名!!

 

ズズズッ

「おや、合格はわたしだけですか」



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お礼×ゲーム×三次試験開始

 

メンチは電話でハンター協会会長の秘書に試験の結果を報告していた。

 

「とにかく、あたしの結論は変わらないわ!」

 

メンチが電話と受験者にたいして言い放つ。

 

「二次試験後半の料理審査、合格者は1名!!よ」

 

メンチの試験で合格出来たのはナナミだけだった。

 

ズズズッ

「受験者が私一人だけになりますが、あとの試験はどうなるのですか?」

 

お茶を飲みながらナナミがメンチに聞く。

 

「・・・うーん、多分次で最終試験になるんじゃないかしら、予定していた三次以降の試験は一人では無理でしょうし。ひょっとしたらこのまま合格ってこともあるかもね」

 

ズズズッ

「それだと楽でいいですが」

 

 

 

 

ナナミ的には残念なことに試験は終わりにはならなかった。

 

あの後、255番のレスラーが暴れて、ブハラぶっ飛ばされたり、飛行船からハンター協会の会長が飛び降りて来たりと、色々あった結果、二次試験は再試験となった。

再試験の内容は谷の間にあるクモワシの卵を獲ってくるというものだった。

 

 

グツグツ

 

スシは作れなかったゴン達もこの試験は楽勝だったようで、獲ってきた卵を大釜で茹でていた。

ちなみにナナミはスシの試験で合格していたので、卵獲りを免除されていた。

 

「う・・・うまいっっ!!」

「濃厚でいて舌の上でとろける様な深い味は、市販の卵とははるかに段違いだ!!」

 

クモワシの卵を食べた試験者は皆その味を絶賛していた。

 

「ナナミー、はいこれクモワシの卵、あげるよ」

「ゴン君、・・・私の事は気にしなくてもいいのですよ。せっかく獲ってきたのですから自分で食べてください」

「オレはさっき食べたんだ、これはスシの作り方を教えてくれたお礼、結局最後までナナミみたいにうまく出来なかったけどね」

「・・・・・・そうですか。それではありがたく頂きます。ありがとうゴン君」

 

ナナミはお礼を言って卵を受け取る。

 

「何だ、ゴンもナナミに卵獲ってきたのか」

「考えることは皆同じだな」

「別に俺は借りがあるのが嫌なだけだけどな」

 

レオリオ、クラピカ、キルアもスシのお礼に卵を獲ってきていた。

 

「あらあら、皆さんまで、ありがとうございます・・・・・・そういえば私、殿方から何か物をもらうのは、これが初めてです」(^^)

「へー、ちょっと意外だな」( °o°)

「そうだね、ナナミ美人なのに」(⌒_⌒)

「・・・ゴン、よく恥ずかしげもなくそんなこと言えるな」* ̄д ̄*

「否定はしないがな」( ̄  ̄)

「ずっと島暮しでしたからね・・・・・・あ、これがゾクに言う逆ハーレムですか?」(^^?)

「「「ちげーよ」」」( ̄□ ̄)

 

 

第二次試験 後半メンチの料理合格者 42名

 

 

 

 

キルアはイラついていた。

三次試験会場へ飛行船での移動の最中、会長の提案でボール取りゲームをすることとなった。

会長が只者ではないことは一目見てわかっていたが、右手、左足使わない状態でゴンと二人がかりでも取れないとなるとムカツきもする。

ゴンはまだ続けているが、キルアはボールを取るのを諦めてゲームを降りた。

 

「くそー、スッキリしないなー」

 

ドン

 

そんな状態で廊下を歩いていたため、気配に気づかず曲がり角で人ぶつかってしまう。

 

キルアはイラつきのままに殺ってしまおうと手を動かすが、

 

パシっ

 

「なっ!?」

 

攻撃はあっさり止められ、反撃の手刀がキルアの首に添えられる。

 

「あら?、キルア君」

「な、ナナミ!?」

 

キルアがぶつかった相手はナナミだった。

 

「危ないですよ、ちゃんと前を見てないと」

 

ただぶつかったことを注意ているような言葉だが、今もキルアの首にはナナミの手が添えられている。

 

「もう少しで首を刎ねてしまうところでした」

「わ、わりぃ、ちょっとゲームに負けてイライラしてて」

「フフっ、お子様ですね。まだ試験はあるのですから、早く寝たほうがいいですよ」

 

ナナミは手を離し、「おやすみなさい」といって廊下を歩いて行った。

 

「・・・・・・ふぅ」

 

ナナミが見えなくなったところで、キルアは緊張を解いた。

体から先ほどまでとは違う嫌な汗が出る。

伝説と言われるゾルディック家の暗殺者として育てられたキルアは、相手の実力を見抜くのも一流だ。

自分より強い実力者だったら、普通ぶつかった瞬間にわかるし、攻撃などしない。

でも普段のナナミからは、全く実力を測れない。

 

「ほんとに、何者なんだ」

 

そうつぶやきつつ、ほとんど無意識にキルアはナナミとは戦わないことを決めた。

 

 

 

 

「ここが三時試験のスタート地点になります」

 

飛行船で案内されたのはトリックタワーと呼ばれる塔のてっぺんだった。

 

「さて試験内容ですが、試験官の伝言です」

 

豆のような顔を会長の秘書が試験内容の説明をする。

 

「生きて下まで降りてくること、制限時間は72時間」

 

第三次試験参加人数42名

 

「それではスタート!! 頑張ってくださいね」

 

試験開始。

 

 

 



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多数決×試合×反則

 

トリックタワーの側面は窓もないただの壁。

ロッククライマーの男が壁伝いに降りようとしたが、不気味な鳥に襲われ外から降りるのは不可能だということがわかった。

一見何もないように見えた塔のてっぺんには床に隠し扉が設置されていた。

ナナミも含めた、ゴン達5人も5つの隠し扉を見つけていた。

 

「決まったな」

 

ジャンケンで決めた扉の前に皆が立つ。

 

「1.2の3で全員行こうぜ」

「ここでいったんお別れだ」

「皆さん頑張ってくださいね」

「地上でまたあおうぜ」

「ああ」

「1」

「2の」

「3!!」

 

 

!?

 

 

( ̄  ̄)( ̄  ̄)( ̄  ̄)( ̄  ̄)(^^)

 

「短い別れだったな」

 

 

 

 

ナナミ達が入った部屋には『多数決の道』と書かれており、○と×のボタンのあるタイマーが五つ置いてあった。

 

「このタイマーをつけろということでしょうか」

 

『その通り このタワーには幾通りものルート用意されており、

それぞれクリア条件がことなるのだ。

そこは多数決の道、たった一人のわがままは決して通らない! 

互の協力が絶対必要条件となる難コースである。

それでは諸君らの健闘をいのる!!』

 

スピーカーから試験官らしき者の説明がはいる。

 

「多数決の道か」

「協力が必要なら、この5人で入ってよかったね」

「まぁ、全然知らない奴とよりはな」

「ふふ、よろしくお願いしますね」

「こちらこそ」

 

 

5人がタイマーをつけるとドアが現れ、そこにこのドアを開ける開けないの選択肢が書かれていた。

 

「もうここから多数決か、こんなもん答えは決まってんのにな」

 

当然のように5人は○を選んだ。

 

 

 

 

選択肢を答えつつ、しばらく進むと床のない大きな部屋に出た。

そして向かい側の通路から、手錠をつけフードを被った5人が現れる。

その中の一人、顔に傷のあるスキンヘッドの男がフードを取って説明をはじめる。

 

要訳すると現れた5人は試練官で互いに一人づつ選出し、勝負方法を決めて1対1で試合を行い、三勝すれば先へ進める、三敗すれば失格ということだった。

 

「こちらの一番手はオレだ!! さぁそちらも選ばれよ!!」

 

試練官の一人目はスキンヘッドのベンドット。

 

「俺がいくよ」

 

そう言ったのはキルア。

 

「あいつが相手なら勝負方法も大体想像つくしな」

 

ベンドットはかなりガタイがいい、勝負方法がまず間違いなく格闘戦の類だろう。

キルアを緊張した様子もなく、かけられた橋を渡って行く。

 

「結構強そうだが大丈夫か」

「心配ないと思うよ」

「あの程度の相手ならキルア君の敵ではありませんよ・・・・・・格闘戦ならですが」

 

部屋の中央にあるリングでキルアが男と対峙する。

 

「お前が相手か、俺は子供といえど容しゃ・・・・・・・・・!?」

 

ベンドットがキルアを見て目を見開く。

 

「なんだよ」

「い、いや、なんでもない。勝負の方法を決めようか、おれは・・・暗算対決を提案する!!」

「ああ、いいぜ、さっさと・・・・・・え!?」

「よし、承諾したな。すぐに始めるぞ」

「お、おい、ちょっと待」

「スタートだ!!」

 

 

 

 

暗算対決の結果をスピーカーから発表される。

 

『試練官ベンドット 45点 受験者99番 35点 試練官側の勝利』

 

「よっしゃ~!!」

 

大人気なくガッツポーズを獲るべンドット

 

「くそっ」

 

悔しがるキルア。

 

「50点満点だったのでしょうか?」

「問題数からしてそれはないと思うが」

 

『全20問の1つ5点で100満点だ』

 

「僅差じゃねぇか」

 

 

 

 

「何やってんだよ」

 

他の試練官から責めらてるベンドット。

 

「デスマッチで痛めつけるんじゃなかったのかよ」

「子供相手に、見てるこっちが恥ずかしくなるわ」

 

しかしベンドットの顔にあるのは生きて戻れたことへの安堵感である。

 

「あれは普通のガキじゃない、・・・ゾルディックだ」

「ゾルディックって、あの暗殺者の・・・本当なの?」

「ああ、・・・噂でしか知らないが、幾つもの死線を通ってきたオレのカンが本物だと言っている」

 

傷だらけの顔なので、真実味があるが、

 

「・・・・・45点でカッコつけてもきまらねぇな」

「うるさい」

 

 

 

 

「何やってんだよ」

 

試合を終えて戻った時にかけられた言葉はキルアも同じモノだった。

 

「自信満々で出て行っといてよ」

「仕方ねぇだろ、まさか暗算対決とか」

「あんな簡単な問題、満点とれて当たり前だろ」

「苦手なんだよ、暗算は」

「それでもなー」

「まぁまぁ、レオリオ」

 

普段生意気なキルアをここぞとばかりに責めようとするレオリオをゴンが止める。

 

「負けてしまったものは仕方ありません、制限時間もあるのですから早く次の試合へ」

「ナナミの言う通りだな、時間の無駄はよせ」

 

ナナミとクラピカにも言われてレオリオもキルアを責めるのをやめる。

 

「よし、次は俺がいくぜ」

「頼むぞレオリオ」

「任しとけ」

 

 

 

対する試練官側から出てきたのは長髪の華奢な男だった。

 

「ぼくの提案する勝負方法はこれ」

 

そういって試練官のセドカンはローソクを二本取り出す。

 

「同時にローソクに火をともし、先に火が消えた方の負け、どう?」

「わかりやすいが、時間かかりそうだな」

 

当然ローソクが消えきるには相当の時間がかかるだろう。

 

「残念だけど、ぼくはこの方法でしか試合を受けないよ」

「なんだそりゃ、卑怯だぞ」

「ごねるのは自由だけど、時間がないのは君だよ」

 

互で勝負方法を決めると言ってもほとんど試練官側にあるといっても過言ではない。

 

「ちっ、わかったよ、その勝負でいいぜ」

「OK、それじゃ」

「!?」

「どっちのローソクがいいか決めてくれ。長いローソクなら○を、短い方なら×を押すこと。多数決で決めてもらおう」

 

セドカンが持っていたローソクは長さが違っており、不自由な2択をしいてきた。

 

「ここでは相談も自由だ、ゆっくり決めてもらっていいよ」

 

そういってセドカンはその場に座る。

 

「・・・・・・くそ・・・どっちにする」

 

レオリオが皆に相談する。

 

「レオリオが決めればいいんじゃねーの」

 

さっき責められて拗ねてるキルア。

 

「オレは長いほうがいいと思うけど、レオリオに任せるよ」

 

特に罠とか考えないゴン。

 

「長いほうに罠がある可能性はあるし、短いほうにないとは言えない、レオリオが決めるといい」

 

迷わすことだけ言って他人に任せるクラピカ。

 

「相談してる意味あんまりねぇじゃねぇか、ナナミはどっちだと思う」

「・・・・・・その前に一ついいですか?」

 

ナナミのその言葉はセドカンの方に向けられていた。

 

「なんだい」

「火がついてる時、ローソクはきちんと相手に見えるように持つ、というルールを追加してもらえますか」

「・・・もちろん構わないよ。まぁ言われるまでもなく、ボクは見えるように持つつもりだったけどね」

 

ナナミの提案に余裕の笑みで答えるセドカン。

皆もイカサマをされない為にも、当然のことだと考える。

 

「でしたら構いません。私もレオリオさんに任せます」

「ナナミもそれかよ」

「・・・しいて言えば短い方をオススメします」

 

任せる2、どちらかといえば長い方1、短い方1、なので結局レオリオが決めなくてはいけなくなる。

 

「・・・・・・・・・・・・長い方に仕掛けがあるに違いねぇ!! 短いローソクにするぜ」

 

皆が×のボタンを押す

 

「OK 君が短い方で僕が長い方」

 

レオリオに短いローソクが渡され、二人同時に火をつける。

 

「あのローソク普通ならどれくえらいで燃えつきるんだろうな」

「5、6時間ってとこじゃないか」

「そんなにかかりませんよ」

「「え!?」」

「ねぇ、あれ見て!!」

 

ナナミの言葉に疑問を感じたクラピカとキルアだが、ゴンの声でローソクに視線を戻す。

 

「うぉっ」

 

ボオオォ

 

「レオリオの炎の勢いがでかくなった!」

「おそらく軸の中に火薬か何か混ぜて、火力を増大させロウの消耗を早めているのだろう」

「短い方に罠が仕掛けてあったってことか」

 

自分のローソクだけ火の勢いがましている為そう思うレオリオ。

 

「くくく」

 

ちがうね!!、とセドカンは心の中で答える。

 

(用意していたローソクは4本!! 不自由な2択はあくまで実際の罠を隠すためのカムフラージュ、君達は勝手に「どちらかが罠」だと思い込んだ、あまりにも不公平な選択を前にして両方とも罠だとは考えなかった。実際は長短どちらを選ぼうが俺がお前に渡すのは油のたっぷり染み込んだローソクの方だったのさ)

 

ポトッ

 

「!?」

 

セドカンが心の中で説明をしていると、足もとに何かが落ちた。

 

「えっ!!?」

 

足もとにあったのは、火が消えたローソクだった。

 

「どうして?」

 

セドカンの手には確かにローソクが握られている、だがそのローソクは途中刃物で切ったかのように切断面になっており、その先は足元に転がっているローソクで間違いなかった。

 

「馬鹿な!?」

 

レオリオ達もセドカンのローソクが消えていることに気がつく。

 

「え!?・・・ひょっとしてオレが勝ったのか?」

 

間もなくしてレオリオのローソクも消える。

 

「ふふ・・・先に火が消えた方が負けなのですから、レオリオさんの勝ちでしょう」

 

いつも以上に笑みのナナミ、しかし

 

『今の試合、受験者側の反則により、試練官側の勝利』

 

「「「「え!?」」」」

 

スピーカーの声にナナミ以外の皆が声を上げてる。

 

「ちょっと待て、反則ってなんだ」

 

当然レオリオは反則をしていない、反則をしたのは、

 

『それは、406番に聞くといい」

 

「ナナミに?」

 

皆の視線がナナミに集まる。

 

「ローソクを切ってはいけないというルールは無かったはずですが?」

 

『確かに、403番がセドカンのローソクを切ったのなら何も問題ない。しかし前提で1対1というルールはあっただろう、他の者が手を出せば反則だ』

 

「ローソクに仕掛けがしてあったのですからおあいこだと思いますが?」

 

『仕掛けをしてあるローソクを渡してはいけないというルールは無かった』

 

ごねたところで試験官は譲る気がないようで諦めるしかなかった。

 

「・・・・・・そうですね・・・・・・すみませんレオリオさん」

 

ナナミが申し訳なさそうにお辞儀をする。

 

「私のせいで反則負けのようです」

 

 

 



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順番×賭け×杞憂

 

ナナミは戻ってきたレオリオに説明をする。

 

「あれは斬撃を飛ばしたんです」

 

そう言ってナナミは右手を前に出し、その手がブレる。

 

ズザンッ

 

リングの方で斬撃音がし、落ちてたロウソクが浮き上がる。

そして次はナナミの両手がブレる。

 

「ロウソクが十字に!!」

 

四つに切り分かれるロウソクを見て皆が納得する。

 

「それで試練官のロウソクを切り落としたわけか」

「はい、・・・バレないように上手くやったつもりだったのですが、・・・すみません」

「あ、いや、・・・まぁ、ナナミは勝つためにやってくれたことだしな、気にすんな」

「ですが・・・」

「ナナミが手を出さなくでもレオリオが負けてたって」

「・・・否定はしねーが、オメーが言うな!」

 

キルアの言葉につこっむレオリオ

 

「終わったことはしかたない、時間制限があるんだ、次へ行こう」

「もう負けられないね」

 

ゴン達が早くも2敗、残り3戦を全勝しなければならない。

 

「次は私が行こう」

「クラピカさんがいきますか・・・汚名返上のために私がいこうかと思ったのですが」

「この場合最後の方が汚名返上になるんじゃね」

「・・・・・・それもそうですね、では私は最後にします。もしお二人のどちらかが負けたとしてのも私に文句はありません」

「そんなに気にすることないのに」

「ならば、次は私、4戦目はゴン、5戦目がナナミの順番で行くか。ゴンもそれでいいな」

「うん」

 

残りの勝負の順番が決まり、クラピカが橋を渡る。

 

三戦目の試練官はマジタニ。

マジタニはデスマッチを提案し、不気味な顔と屈強に見える体、さらに仕掛けをした右手で床を砕いたり、

背中の蜘蛛の刺青(偽)を見せることで相手を戦意の喪失を狙うが、蜘蛛の刺青にブチ切れたクラピカにあっさりK.Oされる。

 

戻ってきたクラピカは幻影旅団の恨みから、普通の蜘蛛を見ただけ逆上して性格が変わる事を説明する。

「クラピカには蜘蛛は見せないようにしようね」

「うむ!」

 

 

「よし!次は俺だね、相手は誰?」

 

気合をいれてリングに進もうとするゴン、だが試練官の一人レルートがそれを止める。

 

「残念だけど今の勝負、まだ決着がついてないわ」

「?・・・どういうこと!?」

 

そのレルートは橋を渡り、横たわるマジタニに近づき、

 

「・・・・・・気絶しているだけ」

 

生きていることを確認して言った。

 

「勝負はデスマッチ!! 一方が負けを宣言するか、死ぬかするまで戦うと決めたはず。彼はまだ生きているし、負けも宣言していない」

 

このレルートの屁理屈を聞いて、レオリオがクラピカに止めを刺す様に言うがそれをクラピカは断る。

クラピカとレオリオが口論になり、キルアも混ざるが結局マジタニが起きるのを待つこととなった。

 

そのまましばらく待つが起きる気配を見せないマジタニにキルアが

 

「あのさ、もしかしてあいつ・・・死んでるんじゃないの?」

「死んでる?」

 

それ聞いてレオリオはマジタニを見るが、よく見えない為、確認を要求する。

 

「さっきも言ったでしょ。彼は気絶しているだけよ」

「あれから何時間たってると思ってるんだよ。とてもお前の言葉だけじゃ信用できねーな」

「それじゃ賭けましょうか? 彼が「生きている」か「死んでる」かで」

「賭け!?一体何を賭けるってんだ?」

「時間よ」

 

レルートが時間をチップに賭け勝負を提案する。

 

「でも勝負するのはあなたではなく、残りの二人のうちのどちらかだけどね」

「賭けとかやったことあるか、ゴン」

「島の漁師さんがやってるのを見てたことはあるけど、ミトさんがダメっていうからやったことない」

 

ゴンに賭け勝負とかミスマッチだと考える他の四人。

 

「ナナミは?」

「私も賭け事はやったことありません、交代してもいいですが・・・」

「オレやるよ」

「・・・そうだな、イカサマには気をつけろよ」

「うん、わかった」

 

素直な返事をして前に出るゴン、その素直さがこの場合不安な4人。

 

「よーし、勝負を受けるよ」

「オーケー」

 

レルートはどちらに何時間賭けるかを解いてきた。

 

「う~ん・・・生きてる方に10時間かな。死んでてはずれたとしても、クラピカの勝利が確定するしね」

 

言ってることはそのとおりだが、賭け勝負で思ってることを口していることにさらに不安になる他の4人。

 

「それじゃ確認してもらいましょう」

 

橋が掛かり、ゴンがマジタニの脈を確認する。

 

「生きてるよ~!」

 

ゴンがみんなに向けて言う。

 

「ね、気絶しているだけでしょ?」

 

これでさきほどの賭けはゴンの勝ちとなり、掲示板にチップ替わりの時間の数字が40:60と表示される。

 

ゴンがリードしたことで喜ぶとこだが、マジタニがそのまま起きずに残り時間が過ぎるほうがマズイことに気づく。

 

「さぁ 次はアンタの番よ。賭けの内容を決めてちょうだい」

「う~ん・・・じゃコインの裏表を当てるのは?」

 

ゴンは単純な賭けを提案する。

 

「もちろんいいわよ」

「じゃあ、決まりだね! キルア俺のカバン取って」

「でも投げる前にコインの確認をさせてもらうわよ」

「うん!」

 

キルアから渡されカバンからコインを取り出し、ゴンはレルートに渡す。

 

「エラく単純な勝負を提案したな。何か考えでもあるのかゴンは?」

「ゴンに限ってそれは無いだろ」

「ねーだろうな」

「ありませんね」

 

信頼の厚いゴンであった。

 

「問題はないわね。でも念のためコインは手で受けるのではなく、床に落とすようにしてくれるかしら」

「わかった、裏表どっちにする?」

「裏で10時間賭けるわ」

「よし、じゃあ投げるよ」

 

そしてゴンがコインを上に跳ばし、

 

チャリーン

 

落ちたコインは、

 

「やったー!表だ」

「ふふ、やるわね」

 

素直に喜ぶゴンとハズレたのに余裕のレルート

時間の数字が30:70と表示される。

 

「一応優勢だな」

「今のは本当に唯の運だが、次あたりなにか仕掛けてくるかもな」

 

賭け勝負を言い出してきたからには、運勝負などしないだろうと考えるクラピカ。

 

「次の賭けに行きましょうか」

「どんな賭けをするの?」

「そうね、それじゃ」

 

レルートはフードをとる

 

「あたしが男が女か賭けてもらうわ」

「男か女かを賭ける?」

 

レルートの見た目があきらかに女性、それをなぜ賭けにするのかわからず首を傾げるゴン。

 

「ちょっとまて、それゴンがハズレた場合、どうやって確かめる気だ?」

 

賭けの内容を聞いて質問したのはレオリオだ。

 

「気が済むまで調べればいいわよ。あたしの体をね」

「・・・おいゴン、男に賭けろ。調べるのは俺がやってやる」

「え?なんで」

「そりゃ~おめぇ~、ぐっへっへ」

 

ガスッ

 

「ぐはぁっ!!?」

 

レオリオの頭にクラピカの武器がめり込む。

 

「レオリオの言うことはほっとけ、ゴンが決めろ」

「え~と、うん、わかった」

 

そしてゴンはレルートを観察するように見て、

 

「女の人に10時間」

「・・・本当にそれでいいの?」

「うん」

「本当の本当にそれでいいのね?」

「うん」

「本当の本当の本当に・・・」

「女の人でいいよ」

「・・・・・・・・・チッ、正解よ」(さすがに子供過ぎたか)

「やったー!!」

 

これで20:80、次はゴンが賭けの内容を決める番となる

 

「次は何にしようかな」

 

ウーンと唸りながらなかなか良い案が浮かばないゴン。

 

「では、こちらはクラピカさんが男か女かを賭けてはどうでしょう?」(^^)

「ちょっ!?、ナナミ!!?」Σ(゚□゚(

「それだ!!」(ノ゚ο゚)ノ

「ゴン、何を言っt」∑( ̄ロ ̄(

「女に10時間よ!!」(/ ̄^ ̄)/

「だから、待てと言っt」ι(`ロ´)ノ

「本当にそれでいい?」(^-^ )

「ええ!」( ̄^ ̄)

「正解は~、・・・・・・クラピカどっち?」(・・?)

「男に決まっているだろ!!」(`Д´)

「本当なの?、確認させてもらうわ」( ̄ロ ̄)

「どうぞどうぞ」LL(゚^゚ )LL(゚^゚ )LL(゚^゚ )

「やっ、ちょっ、やめろ」(゚A゚;)

「じっとしてなさいよ!!」(`Д´)

「いや~!!」(/ω\*)

 

そんなわけで掲示板の数字が10:90となる。

 

「・・・なんで私がこんな目に」

「予想外にゴン君が圧倒してますね」

「ああ、さっきのは相手の自滅だけどな」

 

いじけているクラピカをよそに、始めは不安だった賭け勝負はゴンの連勝でリーチとなっていた。

 

「おい!もう後がないぞ」

「大丈夫よ」

 

ベンドットの言葉にこの状況でも余裕を崩さないレルート。

 

「次は何で勝負する?」

「カードゲームで勝負しましょう」

「うん」

「では試験官、トランプを用意してくれるかしら」

 

少し待ってトランプが用意される。

 

『そのトランプに仕掛けはない、試験官として保証しよう』

「ゴン、それでも相手の手の動きに注意しておけよ」

「うん、わかった」

「心配しなくてもイカサマなんてする気はないけどね」

「賭けるのは10時間で」

 

試験管が言う以上カードに仕掛けがないのだろう、そしてゴンが注意していればそう簡単にはイカサマはできないはず、しかし。

 

「これは・・・マズイですね」

「「「ああ、マズイな」」」

 

 

 

皆の予感通り

 

「はい、これで私の勝ち」

「うぅ・・・」

 

他の四人の想像通り、ゴンの負け。

真っ直ぐで単純なゴンは思っていることが顔に出やすく、カードゲームには不向きだった。

 

「後の勝負、同じような顔に出やすい勝負方法でくるだろうな」

「まずいだろ!!どうすんだよ!?」

「手出しできねぇんだから、ゴンに任せるしかないだろ」

「そうですね。ゴンくんに任せましょう」

 

次はゴンがゲームの内容を決めるターン、ゴンはしばらく考えてから。

 

「ジャンケンでもいいかな?」 

「いいわよ。私は自分が勝つ方に残りの20時間をかけるわ!!」

 

自分のターンでほぼ確実に勝てるのに、ジャンケンに残りのチップを全部賭けるレルート。

それも相手の動揺を誘うため、これまで子供相手だから、嘗めていたが、本気でやれば勝てるとレルートは思っている。

ジャンケンも最初のコイン同様、特に考えもなく思いついた分かりやすり勝負を提案しただけだと。

しかし、ゴンにとってジャンケンだけは違った。

 

「「最初はぐー!ジャンケン、ポン!!」」

 

ゴンはチョキ、レルートはパー。

 

「っ!?・・・」

「やった~、勝ったよ!!」

 

両手を挙げてみんなに報告するゴン。

 

「よっしゃ~!ヒヤヒヤしたぜまったく」

「結果だけ見れば圧勝と言える」

「運が良かっただけだけどな」

「ふふっ・・・運も実力のうちですよ」

 

レルートは呆然と自分の出したパーを見ていた。

 

「何全部掛けて、あっさりと負けてんだよ!?」

 

ベンドットの怒りは当然であるが、心理戦の要素もあるジャンケンでならレルートは十分な勝率があると見込んでの賭けだったのだ、しかし先ほどのカードゲームと違い、ゴンは自信に満ちた顔をしていた。

 

(・・・イカサマ?、しかし、ジャンケンでイカサマなんて)

 

レルートが思いついたのは、

 

「後出しよ!」

「え!?」

 

レルートに確証はなかった、しかし考えられるのはそれしかないから発した言葉だ、その言葉にゴンは明らかに動揺していた。

 

「オ、オレ後出しなんてしてないよ」

「おい!難癖つけてんじゃねーよ」

「難癖ではないわ」

「証拠でもあんのかよ」

「無いわよ、だからやり直しするしかないわね」

「ふざけんな!!」

 

確かに証拠はない、しかしイカサマをしていない証拠もないのだ、難癖と言われようと、時間をかけたくない受験者側はいずれは折れなくていけない、というのがレルートの考えだった。

 

「試験官さん判定していただけませんか?」

 

そう言ったのはナナミ。

今回の勝負も試験官は見てたはず、正確な判断ができるだろう。

 

「二戦目で口を出したのですから、今回はしないとは言わないですよね」

『・・・・・・わかった、少し待て』

 

痛いところ突かれたからというわけではないだろうが、試験官が了承する。

そして少しの間があって、

 

『私が見たところ、後出しはしていない、よってこの勝負、受験者側の勝利!』

 

「やった~!!」

「くっ!、・・・でもまだ三戦目の決着は着いてないままよ、せいぜい彼が起きるのを祈るのね」

 

悔し紛れにそう言って戻っていくレルート、ゴンも橋を渡りみんなのところへ戻る。

 

 

レルート言う通りマジタニがずっと気絶していたら時間がなくなる。

だがそれは杞憂となる。

 

なぜなら、

 

「ちょっと何を!?」

 

レルートの声を無視し、フードを着たままの試練官が橋を渡る。

マジタニの近くにまで行ったその者は、頭部を掴んで持ち上げ、そして、

 

「え!?、ま、まt!!?」

 

 

グシャッ!!!

 

 

「さぁ、五戦目をはじめるぞ」

 

最後の試練官、ジョネスがマジタニの頭部を握り潰したからだ。

 



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