【GOD EATER】短編集。 (堤防道路)
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ピクニックに行こう【GOD EATER 2】

ピクニック隊長が発した言葉が、ブラッド皆の絆をふかめるほのぼのしたお話です。
ちょっとだけ片想いの女の子が……
そこはオリジナルですけど。

※作中の"緋風ライム"は主人公の名前です。
私のゲームデータをそのまま使用しました。


【小説】ピクニックにいこう【GOD EATER 2】

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「まるでピクニックだな……」

 

フェンリル極地化技術開発局所属の特殊部隊『ブラッド』の隊長、ジュリウス・ヴィスコンティ。

落ち着いた金色の髪、整った紺色の服を着た青年である。仲間とともに任務を終えた彼が呟く。

 

「本当にピクニックならいいんだが」

 

そういいながら、ブラッドでは一番年長のギルバート・マクレインが目標だったアラガミ、ガルムからコアを抜き取る。

 

「いいねーピクニック、おでんパン持っていきたいなぁ〜」

猫耳のような髪型が特徴の、香月ナナが楽しそうに言う。

 

ギル「前から思ってたが、おでんパンって汁たれないか?」

 

ナナ「その汁が染み込んで美味しいんですね!」

そんな会話を聞いていた所で、ジュリウスの無線に通信が入る。

 

『こちらブラッドβ、これから合流するよ』

 

ブラッド副隊長、緋風ライムからだった。

 

ジュリウス「ああ、回収班も間もなく到着する。そっちが到着次第、帰投しよう」

 

ライム『りょーかいっす』

 

 

帰投途中、ヘリの中で。

 

「そりゃ無理だろナナー」

 

ブラッド一のムードメーカー、ロミオ・レオー二が言った。

 

ナナ「えーでも行きたいー」

 

ピクニック談義で彼らは盛り上がっていた。

 

ライム「んでも、ピクニックってなにすりゃいいんだ?」

 

ナナ「えっと、お弁当もって行くんだよ!」

良く分からない。

 

「それならレーションが……」

 

意見を述べたのはブラッドの頭脳とおっぱいのシエル・アランソン。的確な意見と思えたが……

 

ギル「あれを弁当と呼べるか?」

 

シエル「……それは無いですね。私としたことが」

 

そんな会話をしていた所で、意外な人物から言葉が出た。

 

ジュリウス「ならば、任務が終わったあとに、皆そこでサンドイッチでも食べるのはどうだ?」

 

ナナ「それいいよジュリウス!さんせい!」

 

ロミオ「お、確かにいいな!公園のとことか、空母んとこも景色いいよな」

 

ライム「サンドイッチってなに?」

 

シエル「薄切りのパンに、ハムやレタスやトマト、チーズなどを挟んで食べる料理ですよ。」

 

ジュリウス「元は貴族が遊びの最中に片手で食べたいが為のものだったらしいな」

 

ギル「お前物知りだな」

 

ライム「へぇ……じゃあジュリウス、誰かに作ってもらおうよ。誰にお願いする?」

 

ジュリウス「それは聞く必要が」

 

ライム「誰にお願いする?」

 

ジュリウス「……ムツミ……ちゃん?」

 

ライム(ジュリウスかわいい面白いやべぇ)

 

ジュリウス以外のブラッドのメンバー、さらに会話を聞いていたヘリの操縦士までが肩を震わせた。

 

 

数日後、ブラッド全員での、2チームに分かれた任務が再びやってきた。場所は黎明の亡都。標的はヴァジュラ、コンゴウ堕天、シユウとその堕天の4体とそのほか周囲に湧いた小型アラガミ。

そして、終了後には、例のピクニックが予定されていた。

 

ナナ「楽しみだな〜」

 

ロミオ「ナナそればっか」

 

シエル「その前にまず任務ですよ」

 

ギル「引き締めていくか」

 

ナナ「ラジャ!」

 

ライム「ジュリウス、編成どうすっか」

 

ジュリウス「ブラッドαが俺、ロミオ、シエルでβがお前とギルとナナ、でどうだ?」

 

ライム「OK、問題ないと思う」

 

ジュリウス「ところで、……アレは持ったか?」

 

ライム「もちろん。絶対忘れらんないよ」

 

ジュリウス「よし、それではブラッド隊、出撃!」

 

ライム(内心ぜってぇ楽しみにしてるよなジュリウス……素直じゃねーなまったく)

 

 

作戦開始から約一時間。ブラッドβ(ライム、ギル、ナナ)はシユウ種2体と交戦していた。

 

ライム「かッたいな!攻撃通んねえ!」

 

ナナ「どんどんいくよー!」

 

ライムはショートブレード、ナナはブーストハンマーでシユウとその堕天を一体ずつ相手をしていた。ギルは珍しく、リンクバーストと銃撃による援護を行い、遊撃的に立ち回っていた。

 

ギル「こういう動きも、勉強になるな」

 

ライム「せぁあっ!」

 

ライムの相手をしていたシユウの通常種がダウンする。

 

ギル「使え!」

 

ギルがもっていたアラガミバレットをライムに三連射で受け渡しをし、ライムがリンクバーストLv.3状態に。さらにギルが血の力"鼓吹"を発動し全員の攻撃力が上昇する。

 

ライム「終わりだッ!!」

 

ライムがブラッドアーツ"スパイラルメテオ"を発動、シユウの弱点の頭部に必殺の一撃を放った。

シユウが絶命する。

見ればシユウ堕天も、ナナの猛攻により既に瀕死状態だった。

 

 

一方、ブラッドα(ジュリウス、ロミオ、シエル)はヴァジュラとコンゴウを相手にしていた。

遭遇直後、シエルのスナイピングにより部位を破壊され、2体とも防御が脆くなっていた。

既にコンゴウ堕天は絶命。シエルの血の力"直覚"により、ヴァジュラも大分弱っていることが分かった。

 

ジュリウス「ここで一気に!」

 

ジュリウスが隙を突き、血の力"統制"を発動、全員がリンクバーストLv.1状態になり、自身はブラッドアーツ"疾風の太刀・鉄"により、一瞬でヴァジュラを切り刻む。

大きくのけぞったヴァジュラ。すかさずロミオが力を溜め、

 

ロミオ「いっけえええ!」

 

ヴァジュラの顔面目掛けて、チャージクラッシュを放つ。頭部を粉砕され、ヴァジュラは沈んだ。

 

ロミオ「よっしゃア!」

 

コアを回収、ジュリウスが別働隊に無線を繋ぐ。

 

ジュリウス「こちらブラッドα。標的を撃破した」

 

ライム『こちらブラッドβ。こっちも終わったよ。今から合流する』

 

ジュリウス「よし、待ってるぞ」

 

ライム『ああ』

 

 

数分後、両チーム合流した……のだが。

 

シエル「何故そんなに息が切れているのですか?」

 

シエルが聞くが、しばらくだれも答えられない。

 

ライム「いやさ……ナナがさ……早く行こう早く行こうって言ってブースト起動してさ……」

 

ギル「それでライムも……エリアルステップまで使って飛んできがって……」

 

ライム「ギルだってチャージグライドしまくってたじゃん……」

 

ロミオ「なんか凄い光景だなそれ」

 

神機使いの全力のかけっこ。

 

ジュリウス「フッ、なら早く食べるとしよう」

 

ジュリウスが笑う。

 

ナナ「さんせーい!」

 

シエル「どんなサンドイッチか、楽しみですね」

 

ロミオ「やっとだぜ〜」

 

ギル「任務終わりの一時、悪くねぇな」

 

ライム「場所どこにする?」

 

ナナ「そこの水辺の所とか」

 

ギル「図書館も悪くないかもな」

 

シエル「あ、シートかなにかあれば良かったですね……」

 

ロミオ「あーまぁしょうがないか」

 

ジュリウス「フッ……」

 

ライム「ジュリウスどした?」

 

ジュリウス「そう思って、シートを持ってきた。」

 

ライム「すげええええええええ」

 

ーーー

ーー

 

 

ブラッドのメンバーがアナグラに帰ってきたのは、その日の夕方だった。あの後、回収されたヘリの中で、別の場所でアラガミが発見、極東支部に向かって侵攻しているという報告が入り、急遽出動中だったブラッドに連続で任務がアサインされた。ヘリは進路を変え、ブラッドは廃寺エリアにてもう一つ任務をこなしたのである。

アイテムが補充できない環境においてのこの成果は、流石はブラッドと誇れるものであった。

 

ジュリウス「俺が報告をしておく。みんなは休んでくれ」

 

ライム「ん、ありがとなジュリウス。みんな、ラウンジ行こうぜ」

 

報告こそ任せたものの、ラウンジでジュリウスをまって皆でリラックスしようというライムのささやかな配慮である。ライムのこういうところが、ブラッドや極東支部のメンバーにも好かれている理由なのである。

 

 

「あ、ブラッドの皆さん、お帰りなさい」

 

元気な声。ここラウンジで料理を振舞う、千倉ムツミのものだ。9歳にして調理師の免許を持ち、その料理の腕前は神機使い、スタッフなどから大好評である。

 

ライム「ただいまムツミちゃん、今日はありがとね!」

 

ライムがサンドイッチのお礼を言う。他のみんなも口々に、ありがとう、おいしかった、などと言っているナナが「次はどこで食べる?」といい、ピクニック談義が再び巻き起こった。そこへ、

 

ムツミ「ねぇねぇ、ライムさん」

 

ムツミがカウンターに寄りかかっていたライムの袖を引き、こそりとライムを呼んだ。

 

ライム「ん?」

 

ムツミは声をおさえてライムに聞く。

 

ムツミ「……ジュリウスさんは、サンドイッチおいしかった、って、言ってた?」

 

ライム「あぁ、そりゃ---、」

 

ライムが言おうとして、ラウンジに入ってきた足音に気がついた。

 

ギル「お、報告ありがとな、ジュリウス」

 

ジュリウス「構わないさ。今回は少し状況が複雑だったからな」

 

ジュリウスの存在を後方に確認、さらにムツミをみると、若干頬が赤く染まっている。

ライムはニヤリと笑った。

 

ライム「ジュリウス!」

 

ジュリウス「ん?」

 

ライムが少し大きめの声でジュリウスを呼ぶ。少し場が静かになった。

 

ライム「ムツミちゃんが、サンドイッチおいしかった?だって!」

 

ムツミ「らら、ライムさん!」

 

他のメンバーは、流石はブラッド、何かを察し、黙った。

 

ジュリウス「……ああ、とてもおいしかった。また別の機会にも、作ってほしい」

 

そう言ってジュリウスは爽やかに笑った。

それを聞いてムツミは、ぱあっと明るい顔になって、

 

「あ、ありがとうございます!」

 

と笑った。

それを見ていたラウンジの他の神機使い、スタッフは、

 

(ムツミちゃんマジかわいいわぁ)

(ジュリウスさん羨ましぃ……)

(これは、意外な人物が……!)

 

などと考えていたとか。

 

ジュリウス「……ん、何だどうした?」

 

ジュリウスが他のメンバーの様子に戸惑う。

 

ロミオ「いやぁ?なんでもないですかもねぇ?」

 

ギル「ロミオ顔ニヤけてる上に言葉がおかしいぞ」

 

シエル「このサンドイッチ、メニューに追加してみては?」

 

ナナ「シエルちゃんナイスアイデア!ブラッドお墨付き、特製サンドイッチ、とか!」

 

ライム「良かったな、ムツミちゃん」

 

ムツミ「うん!」

 

ラウンジは、明るい声に包まれた。

 

 

end.




ムツミちゃん可愛いです。
ラウンジでご飯食べてる人達は幸せですよほんとに。
そこにジュリウスをくっつけてみたらなんかすごい妄想が進みましたw
こんかい、皆をたくさん喋らせるよう意識しました。下手するとジュリウス黙っちゃいそうで…(^_^;)
ブラッドは家族、みたいなのも意識して書きました。ラケル先生、これでいいですか?


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巨星墜つ【GOD EATER 2】

極地化技術局、通称「ブラッド」は、現在は極東支部に籍を置いている。
ブラッドの隊長「緋風ライム」はこのところ、新しいバレットの開発に熱中していた。
これはそこで起きたある事件のお話である。


螺旋の樹が形成され、黒蛛病被害が完全になくなって。

ある日の夕方、極東支部内エントランスホールにて。

 

「シエルちゃん、隊長しらない?」

 

極致化技術局所属の部隊、通称"ブラッド"のメンバー香月ナナは、部隊のリーダーである緋風ライムの姿を探して、同部隊所属のシエル・アランソンに声をかけていた。

 

「たしか一時間程前に、単独任務に向かったと思います。妙に張り切っていましたけど」

 

シエルは一時間前の光景を思い出しながらナナに伝える。あの時ライムは、よっしゃ、と声を上げてから出撃していた。

 

「彼に用事があったのですか?」

 

「んー、最近の隊長さ、バレットの開発に凝ってるじゃん?だから、敵に当てやすいバレットとか教えてもらえないかなーって」

 

「なるほど、そういえば以前彼に、バレットの挙動についての質問を受けましたね」

 

このところライムは、バレット開発に力を入れている。自室のターミナルでバレットエディットの編集に時間を費やし、気づけば朝になっていたこともあるとか。

ナナはそれとは対照的で、銃自体の使用が少ない。ブラッドにシエルが加入して間もない頃、シエルに銃の特訓をさせられそうになったことが今では懐かしい。

 

ライムは主に、ブラスト型銃身をメインに使用している。ミッション次第では他タイプの銃身も使用するが、その場合のバレットは基本的なもので済ませていることが多い。

ブラスト型銃身は、バレットを構成するモジュールの数が最も多く、また"オラクルリザーブ"によって使用できるオラクルも格段に多い。そのため、非常に自由度の高いバレット開発が可能な銃身だ。ライムはショートブレードの機動力を生かし、素早く敵を切りつけオラクルを貯め、銃の使用時は高威力の追尾弾や爆発弾を連射する、といったスタイルをとっている。

味方の使用武器はお互い知っている。ナナも、ライムがショットガンをあまり使わないことを知っていただろう。だがナナも彼女なりに、弱点の克服を考えていた。

 

「そっかー、じゃあおでんパン食べて隊長の帰りを待とうかな」

 

「私でよければ、お手伝いしますよ?ショットガンのバレットも少しだけ触ったことがあります」

 

「ホント!?私バレットの作り方もよくわかってないのでそこからお願いします!」

 

そこに、ミッションを終えた男性がやってくる。同ブラッド所属、ギルバート・マクレインだ。

 

「あ、ギルお帰りー!そうだギルもちょっと手伝って?」

 

「悪い、今日はちょっと勘弁してくれ…結構キツかった」

 

「ギル、大丈夫ですか?そんなに大変だったのですか?」

 

「あのハルさんが軽口叩けなくなるくらいにはな…」

 

丁度その時、エントランスのカウンターにいた、オペレーターのフランの元に、管制室にいる先輩オペレーターのヒバリから指令が飛んできた。

 

「え…!?」

 

普段は冷静なフランの焦燥に、すぐ近くにいたブラッドの3人はよくないものを感じる。

 

「ブラッドに緊急出動要請、平原エリアでウロヴォロスと交戦中だった緋風ライムさんの無線応答が消失、その場を動きません!」

 

瞬間でシエルが思考、状況を把握するための情報を求める

 

「隊長の周辺にアラガミの反応は?」

 

「あ…至近距離にはありません、戦闘エリア外、南西方向に小型数体のみです」

 

「腕輪の反応はロストしていないんですね?」

 

「そう、です」

 

「交戦開始からどのくらい経過していますか?それと偏食因子供給までのタイムリミットを」

 

「ライムさんが交戦を始めて…まだ10分少々のはずです。偏食因子にはまだ時間的余裕があります」

 

質問に答えるうちに、フランが冷静さを取り戻す。シエルは質問を終え、3人は飛び出した。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

三人は輸送ヘリで救援に向かう。任務からの帰投直後で疲れきっていたギルも、ライムの危機に、先ほどまでの疲れは今では嫌な焦燥感に塗りつぶされた。その焦燥はいま眉間の皺を生んでいる。

 

現場に急行するヘリの中で、暗い表情と共にナナはシエルに不安を告げた。

 

「最悪の場合を、お話してもいいですか?」

 

シエルが慎重にナナに尋ねる。ナナは頷く。ギルも話を聞いている。

 

「最悪の場合…彼は死亡、しています」

 

ナナの表情がさらに陰る。ギルの眉間にさらに皺が寄る。

 

「腕輪反応が動かない、そして交戦していたウロヴォロスの反応がないということは、すなち、」

 

シエルも、言うのを躊躇う。だが伝えねばならない。シエルは口を再び開く。

 

「彼の身体の大部分が、腕輪を残して捕食された、という可能性が最も高いです。ウロヴォロスはその後、戦闘エリア外へ移動したものかと」

 

「…っ、でもさ、隊長がもうやっつけたちゃっただけかも」

 

ナナが不安を払拭しようと希望的観測を口にする。

 

「そう、であればいいのですが。交戦開始から10分で、いくら彼でもウロヴォロスを倒せるとは…」

 

ウロヴォロスは、強大なアラガミである。ライム等の部隊長・エース級の神機使いであれば単独交戦もあろう。(過去にも第二世代神機使い・雨宮リンドウが単独交戦を行っている)ただそのような力のある神機使いだとしても、10分で倒せるような相手では、ない。

 

また、この状況で、ライムが生存していて、なのに微動だにしないというのは不自然である。神機使いの治癒力、回復力なら足を挫く程度ならすぐに治る。それ以上の怪我でも回復錠の投与で事なきを得る。これがそれをさらに超える重篤な負傷ーー半身を失うとかーーであった場合、神機使いであっても生存は困難を極める。

これらを鑑みると、シエルの言う"最悪の場合"の蓋然性は著しく高いことになる。

シエルもナナも、不安が大きく口を開けられなくなってしまう。

会話には出なかったが、3人の脳裏にはもう一つ、"アラガミ化"という言葉も浮かんでいた。緊急時の簡易用偏食因子補給セットがいやに不安を煽る。

 

ヘリは現場へ急行した。

 

 

 

 

「もうすぐ着くな…」

 

ギルが硬い声で言う。シエルは自身の血の力"直覚"で、索敵範囲内のアラガミの反応を探し始める。

 

「付近にアラガミの反応はありません」

 

それを手放しで喜べる状況ではない。

 

ヘリが近くに降りる。ギルがヘリの側に残り周囲を警戒し、ナナとシエルの二人が、腕輪反応のあった地点へと向かう。

 

 

「!いた!」

 

ライムは廃ビルの側で、神機を掴んだままうつ伏せになって倒れていた。二人が駆けつける。ライムの服は破損が目立つ。

 

「ライム?きこえる!?」

 

ナナがライムに声をかけるが反応はない。シエルがナナをその場に待機させ、自分は無線でヘリに待機している救護班に連絡をとりながら一度ヘリに戻る。その後、救護班とともにライムを回収、全員極東支部へと帰還した。

 

 

ーーーーーー

 

 

日付のかわった、深夜二時。

夜間待機以外のメンバーは就寝し、遠くで動くボイラーの音が聞こえる極東支部の、医務室。

 

「ん…?」

 

ライムが目を覚ました。

 

「医務室、か…?」

 

横になっていた身体を起こそうとするが、痛みが走り諦める。

 

(あー、どうなったんだこれ?)

 

静かな医務室のベッドでライムはひとり、自分の記憶をたどる。

 

(確か、ウロヴォロスと戦ってたんだよな)

 

ーーー

ーー

 

 

記憶は一日前の深夜に遡る。

 

ライムは自室ターミナルでバレット開発に熱中していた。

 

「この角度で発射して、上空で待機、一秒後追尾弾を発射、ここまではいい…」

 

そこに、ブラスト銃身特有の"特異モジュール"である「抗重力弾」を組み込む。

この特異モジュールは、第三世代神機使いの発現する"血の力"が銃形態に現れる"ブラッドバレット"、そこから抽出した、バレットに特異な効果をもたらすモジュールである。

この「抗重力弾」とは、バレットの重力方向への運動量に比例して威力を増大させる、という性質を持っている。

ライムは、一旦上方向に打ち上げたあと、軌道をかえ敵にむかっていく、打ち上げ追尾弾のようなものを作成していた。ここに「抗重力弾」

を組み込むことで、威力の増大を計った。しかし。

 

「ここに抗重力弾を組み込む…やっぱだめか、追尾機能が失われるな」

 

抗重力弾には、バレット全体の追尾機能を失活させる性質もあった。

 

「なら強制的に下を向かせると…これは下になるな」

 

敵への追尾をあきらめ、とりあえず地面に着弾させることにした。着弾時に爆発させ、少しでも効果範囲を広げる。抗重力弾での威力上昇は効果範囲の拡大をももたらした。

最後にライムは、上空での待機時間を長めにし、そこに「充填」の特異モジュールを加える。これは、バレットが長い時間存在するほど威力が上昇する効果をもつ。

 

「よし…あとは試射か、図体のでかいウロヴォロスならやりやすいだろ」

 

ウロヴォロスの弱点属性に合わせ、バレットのモジュール全てを"神"属性にする。消費オラクルポイントは実に500超。抗重力弾と充填により大幅に威力を上昇させる、脳天直撃系の巨大バレットが完成した。

 

「名前は…【カミカゼ】」

 

 

そしてその日の午後、ライムは新作バレット【カミカゼ】の試射のため、単独でウロヴォロス討伐任務に出ていた。

ちなみに、極東支部の施設にはバレットを試射する施設もある。しかし上空に打ち上げるタイプのバレットの試射はどうしても高度に限界があるため、実地での任務を兼ねた試射の必要あった。

 

ウロヴォロスとの交戦が始まった。ライムはまず、500を超えるオラクルを貯めなければならない。ウロヴォロスを切りつけてはオラクルリザーブを繰り返す。そして必要量のオラクルが溜まり、ライムは【カミカゼ】を発射した。

 

仰角80度で"弾丸:射程長"が直進、その自然消滅後、"制御:下を向く・生存時間極長"が滞空。ここからおよそ1分、バレットにオラクルが「充填」される。

 

ライムは1分間を回避に専念し、なるべく落下予想地点にウロヴォロスを誘導できるようにする。しかし、あと僅かというところで、間の悪いことにウロヴォロスは捕食場所へ向かい始めてしまった。

 

(しまった、剣のダメージが大きすぎたか!)

 

ホールドトラップでもしかけておくべきだったと反省した

 

次の瞬間

 

巨星が、墜ちてきた

 

 

ーー

ーーー

 

「…ってことで、自爆してぶっとんで意識が飛んだ、ってことなんだけど…みなさん怒ってます?」

 

「当たり前だ!」

「当たり前です!」

「当たり前だよ!」

 

ライムに意識がもどった後の朝。ブラッドの面々が病室に来たので、ライムはことの経緯を話す。するとライム以外の三人は呆れ、怒った。

 

「腕輪だけ残して死んだかと思ったじゃん!ばか!」

 

「そうですよ!私も考えうる最悪の事態ばかり想像してしまって、なのに連れて帰ってきたらもう意識もどってけろっとしてますし…!」

 

シエルとナナは、病室だというのに途端にまくし立てる。

 

「うん、ごめん、ほんとごめんね?いやほんと、ごめん、あの、シエル泣かないではいティッシュ」

 

「ありがとうございます!」

 

シエルがティッシュをかっさらい物凄い勢いで鼻をかむ。

 

「シエルちゃんどうします?この人どうします?」

 

「カルビの餌一ヶ月分で」

 

「じゃあ私は夕ご飯一ヶ月分で」

 

「まって、ナナのご飯一ヶ月分は財布がマッハで死ぬから、ナナ、ナナー?…ギルー…」

 

「知るか。そんくらい払ってやれ。後俺はアルコール一ヶ月分だ」

 

「嘘でしょ」

 

 

ーーーーーー

 

 

ライムが退院したその後、神機使い一同を招集したブリーフィングが開かれた。

今回の件を受け、神機に、バレットの威力のべらぼうな上昇を抑えるためのリミッターが付加されることになった。

 

「でももったいないですねー、ウロヴォロスをほとんど一撃で倒しちゃうくらい強いのに…」

 

そう話すのは極東支部の548姫、台場カノンだ。

その言葉に周囲は、頼むからやめてくれと戦慄する。

 

「まあライムも、たまにはポカやるんだなぁ」

 

第一部隊隊長の藤木コウタは笑いながら言う。

 

「ああ、反省してるよ…」

 

「なに、珍しいじゃん」

 

「消費オラクルが多すぎてとても実用的じゃないんだ。かと言ってトリガーハッピーのスキルを使うと、すぐに息切れを起こして動けなくなるから、問題は山積みだな」

 

「こりてねぇぞこの人」

 

 

ーーーーーー

 

 

そしてまた、ライムは任務の傍ら、新作バレットを試すようになった。

 

【カミカゼ】は別属性の同じバレットも制作し、火属性は【ダイキリ】、氷は【雪国】、雷は【ギムレット】と命名したとか。

 

ギルいわく、「ライムらしい名前」だとか。

 

また、一ヶ月分の餌、ご飯、酒をライムは負担したが、強力なバレットのお陰で簡単に稼げるようになったので、あまり苦労しなかったとか。

 

そんな感じで、一連の自爆騒動を受け、バレットのダメージに上限がつけられたのである。

 

 

(終)

 

 

 

 




ナナ「【雪国】と【カミカゼ】はわかるけど、【ダイキリ】と【ギムレット】ってどういう意味なんだろ?」

ギル「酒の名前だよ。ダイキリの由来は熱い鉱山、ギムレットは鋭い錐だな」

ナナ「へー(小並感)」


ーーーーーー


お酒についてはにわかです。wiki見ました。のんだこともない。未成年だからね。

さて、GOD EATER 2が発売されてから僅か2日足らずでしたかね。「メテオ」が開発されたのは。
ラスボスをワンパンキルするあまりの強さに、アップデートでは調整が入った、と。

今回はそれをお話にしてみました。

それにしてもバレット開発って楽しい。
特に名前をつけるのが楽しい。
アレなんですよね、属性をちょっとかっこいい色の漢字で表現しようとして、火なら朱とか紅とか緋、氷なら蒼とか藍とか碧、神は色というか、私は天とか帝とかつけてるんですけど。
雷だけ色漢字が…黄、はぱっとしないけど他に何があるのだろうか?
そんなかんじで私は雷は、輝、光、等にしています。
雷にぴったりなかっこいい色漢字がありましたら教えてほしいです。

さて今回は長めになりました。1話の長さとしては自己最長です。書くのに3日かけました。楽しかったですありがとうございました!

ご感想お待ちしております。<(_ _)>


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