ノアに転生したので多元宇宙を廻ろうと思う (ウエストモール)
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プロローグ
第1話 転生からの初戦闘
人間だったはずの俺は、気づいたときには宇宙を流れていた。否、飛んでいた。しばらくの間、星々の間を飛んでいたのだが、やがて氷で構成されている惑星に辿り着いた。
氷面に映る自身の姿。銀色の体に、背中に生えた一対の銀の翼、光に満ちた両目、胸には赤いY字のコアがある。なんと、俺はウルトラマンノアになっていたのだ。
伝説の超人、ウルトラマンノア。銀の翼ノアイージスによって時空を越え、全ての宇宙の平和を守り、決して希望を捨てない者の前に現れて力を貸す存在。そんな最強のウルトラマンに、俺はなってしまった。平凡な一般ピーポーだった俺に、その役目が務まるだろうか?だが、なってしまった以上はやるしかない。
現時点ですぐに行うべきことは、自身の能力と今居る宇宙の状況の両方を把握すること。
超がつくほど手加減して放った稲妻超絶光線ライトニング・ノアで小惑星を粉砕したり、ノア・インフェルノで大きめな隕石を叩いて砕く。キャシャーンがやらねばd・・・すいません、ふざけ過ぎました。とにかく、それら以外にも様々な技を使ってみたり、ネクサスへの変化も試した。
この宇宙を回ってみたのだが、地球らしき星を発見した。宇宙から地上を見下ろしていたら、中東の辺りに怪獣に襲われている古代文明があったので、ウルトラマンとしての初陣も兼ねて助けにいくことにした。
「キャオォォォンッ!」
まるで金属を切っているかのような鳴き声を上げながら、蟻地獄のような怪獣である磁力怪獣アントラーはバラージを蹂躙していた。
すでに国の象徴である王宮も破壊されてしまい、抗う術のない人々は逃げ惑い、祈ることしかできなかった。
「神よ、我々をお救いください・・・」
神に祈っているのは、この王国の王女。アントラーは祈っている彼女の方へと向かい、踏み潰そうとしていた。しかし、そこで乱入者が現れる。
天から舞い降りてきた赤い光球は、ちょうど王女を踏み潰そうとしていたアントラーを体当たりで撥ね飛ばす。直後、赤い光球の中から銀色の巨人が降臨した。
「シェアッ!」
ウルトラマンネクサスの基本形態、アンファンス。流石に普通の怪獣相手にノアの姿では過剰すぎるため、この姿で地上に降り立った。
「シェッ!」
アンファンスは、アントラーと相対する。アントラーは突撃し、頭部の大きなハサミで攻撃しようとするのだが、アンファンスはアームドネクサスを交差させると、体を光らせて高速移動し、アントラーの背後に回り込んだ。
「デアッ!」
背中に飛び蹴りをお見舞いし、アントラーを転倒させる。さらに、アントラーの両足を掴んで回転し、遠心力をのせて投げ飛ばす。アントラーは、盛大に地面に叩き付けられた。
ここで、ネクサスはアンファンスからジュネッスブルーへと変身する。これは、アンファンスのクロスレイシュトロームではアントラーの甲殻に効果がないだろうと判断した上での行動だ。
青と銀を基調とする姿、ジュネッスブルーになったネクサスは、アローアームドネクサスから光の剣を発生させる。シュトロームソードを構えたジュネッスブルーは、フラフラと立ち上がったアントラーへと走っていった。
「ハアァァァァッ!!シェッ!」
両者が交差した刹那、ジュネッスブルーはシュトロームソードを振るい、アントラーを一刀両断した。
「キャオォォッ!?」
断末魔が響いた後、残心をとるネクサスの背後で、ゴトリと音を立てて地面に落ちるアントラーの上半身。直後に下半身も倒れ、アントラーは完全に分子分解された。
「あぁ、神よ・・・」
この戦いの顛末を見ていたバラージの民は、ネクサスを神だと認識し、一斉に祈り始めた。居心地が悪かった俺は宇宙へと飛び去った後にノアに戻ると、破壊されたものを修復する光線を地上に降り注がせた。
後に、この戦いのことは伝説としてこの地球の歴史書に記されることになるらしいが、俺に知るよしはなかった。
あれから、数百年、数千年もの年月が経過した。俺は様々な宇宙を廻り、色々な奴と出会った。とはいっても、知的生命体を襲うような連中の方が比較的多かったが。
宇宙球体スフィアにスペースビースト、根源的破滅招来体、ギャラクトロン軍団、インベーダー、STMC、アンチスパイラル、BETA等々、危険な連中と遭遇している。俺は、人類をはじめとする知的生命体に味方し、本当に危ないときに介入するという方針で動いた。
その世界を一時的に去った後も、複数の宇宙を監視し、それに加えて現地の人間をデュナミストにすることで、いつでも助けに入れるようにしていた。
だが、これを何百年、何千年も続けるのは意外にもキツイ。別の宇宙を見るだけでもエネルギーは消耗するし、デュナミストに力を与えるのも弱体化に繋がる。本物のノアならばこんなことは考えないだろうが、俺は元人間だ。自ら介入するのも割りと面倒になってくる。
そこで俺は考えた。自分の代わりに戦ってくれる者を送り込むということを。要するに、宇宙正義を司るデラシオンのようなやり方だ。大量の雑魚敵を殲滅するのに、ウルトラマンの力では過剰すぎるし、効率が悪い。俺は、手駒として使えそうな存在を探す旅に出ることにした。
これは、ウルトラマンノアに転生した一般人の男が多元宇宙を廻りながら、戦いに介入したりしなかったりする物語である。
こんなのウルトラマンノアじゃないわ!
ただの面倒くさがりな人間よ!
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第2話 手下ができた
遥か先の未来
敵の攻撃によって瓦礫に化してしまった新宿の市街地。そこにたたずんでいるのは1体の異形の黒き巨人、ダークルシフェル。ビースト・ザ・ワンの如き背中の突起物に、首にはファウストとメフィストの仮面、口には鋭い牙、目は青く、体全体に走るのは血管のような赤いライン。禍々しく、いかにも悪であることが分かる。
ルシフェルの前に立ちはだかるのは2体の巨人。銀色の巨人ウルトラマンノア、そして黒色の巨人ウルトラマンザギ。
ザギはノアの模造品として造り出されたウルティノイドであり、ノアを敵対視していた。だが、ノアに敗北した後に和解し、共に多元宇宙を守るようになっていた。
「いくぞ、ザギ。ルシフェルを倒すぞ」
「ふん、言われなくても分かっている、ノア。あんな奴は多元宇宙に存在してはいけない」
と、ザギはノアに返事を返す。そして、ダークルシフェルは口を初めて開いた。
「貴様らなど、究極の闇にへと至った我の前では有象無象に過ぎぬ。お前達の信じる絆共々、闇に呑まれて消えるがいい!」
ダークルシフェルはそう言うと、体から闇のオーラを発し、周囲は闇に染まった。
「絆を信じ、決して諦めない者がこの多元宇宙にいる限り、私達も諦めずに戦い続ける」
「そうだ。俺は知った、絆と呼ばれるものの良さを。絆は光であり、大いなる力だ。絆を否定するお前に、勝ち目などない」
「ヴォォォォォァァァァァァァァァッ!」
それに対するルシフェルの返事は、激しい咆哮のみ。対話の道など、すでに存在しないのだ。そして、その直後に熱線という否定を2人に叩き付ける。
迫り来るは極太の超強力な熱線。ノアとザギは、互いのバリアーを重ね掛けし、真正面から防御した。避けてもよかったのだが、後ろには守るべき人々がいたため、防御することにしたのだ。
「本当の戦いは!」
「これからだ!」
何とか熱線を防ぎきった2人は、ダークルシフェルへと向かっていった。これは、遥か未来で起こるかもしれない可能性の1つである。
多元宇宙には様々な勢力が存在し、俺は基本的に4つに分類している。
1つ目は地球系勢力。地球上の諸国や地球連邦、地球連合、地球帝国などの名を持つ統治機構。さらに、地底や海底の国家や宇宙コロニー等もこれに含まれる。
2つ目は地球外勢力。ガミラス帝国やボラー連邦、銀河帝国、銀河共和国、コヴナントといった地球外の知的生命体による勢力だ。これらは地球系勢力と敵対することが多いが、それに干渉することはほぼ無い。ただ、話し合いの余地もないガトランティスの侵略に対しては、例外的に干渉することがある。
3つ目は知的生命体に敵対的な生物群。スペースビーストや宇宙球体スフィア、STMC、BETA、インベーダーといった話し合いの余地がない集団だ。地球の内外問わずに様々な勢力が手を焼いているため、これらに対しては、普通に干渉する。
4つ目はグレーゾーンな生物群。ELSやフェストゥムが代表的だ。接触した当初は武力衝突になってしまうことが多いものの、話し合い次第では味方になってくれるケースがある。どっかの宇宙じゃ、上記の連中が協力して人類の艦を助ける様子もあり、感動したものだ。
俺は、仲間とする生物として金属生命体であるELSに目を付けた。俺と同じ銀色であり、複数体で合体すれば、様々な形になれるからだ。
とある宇宙では、宇宙開発にロケットを使っているレベルの地球と、ELS群が接触することは時間の問題になっていた。その地球にはELSと対話できるような存在は居らず、間違いなく両者は戦闘になると予測した。
俺は、ELSが地球と接触する前にELSと接触することにした。彼らにテレパシーで話しかけ、地球人は群より個を重視していることを説明したら、何故か仲良くなれた。それに、しばらく交流していると、何体かのELSはノアの協力者になることを選んだ。
協力者となったELSは、ウルトラマンと同じサイズのヒト型金属生命体に合体変形し、ノアの姿を真似たのか胸には赤いV字のコアが、背中には小さい突起物が2つ存在していた。俺は、彼らの4体をウルティロイドと呼ぶことにした。
代理人として派遣した4体のウルティロイド達は、よく働いてくれた。いつしか、ウルティロイドは様々な宇宙でノアの使徒と呼ばれるようになったらしい。
最近、思うことがある。それは「俺なんかがウルトラマンノアで良いのだろうか?」ということ。戦いの一部をウルティロイド達に任せるほど面倒くさがりで、力を消耗することを嫌う。
まぁ、こちらの考えていることを知的生命体達は知らない訳で、それに俺のことを神様だと思っている。別に、俺は神秘的な存在でもないし、精神は人間と全く変わらない。初代マンも言ってたでしょ?「ウルトラマンは神ではない」ってね。
俺は、人間らしくやっていこうと思う。知的生命体を助けるという仕事をしながらも、たまにはウルティロイドやデュナミスト達に任せて別の宇宙で休暇を楽しむのもありかもしれない。あぁ、そうだ。今度はコスモスペースの遊星ジュランにでも行って、コスモスとカオスヘッダー、怪獣達に挨拶でもしてくるかな。
○ノア&ザギvsルシフェル
こんな未来があってもいいかも
○4体のウルティロイド
イメージとしては、ウルトラ兄弟(マン、セブン、ジャック、エース)のウルトラマンスーツを全身銀色にして、胸部に赤いV字のコアを、背中にノアイージス風の短い突起物を2つ付け、大きさをウルトラマンと同じサイズにした感じ。もしかしたら数がもっと増えるかも。
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第3話 え?コスモス不在?
一応、現在の時系列としてはウルトラギャラクシーファイト大いなる陰謀の1章の辺りを想定してます。
この前、漂流していたとある宇宙船を拾った。全長2500mを誇る船体に書いてあったのは、「Spirit of Fire」の文字。
スピリットオブファイア。それは、Halo世界のコロニー船を改造したUNSCの強襲揚陸艦だ。あの世界では行方不明になっていたらしいのだが、どうやら別宇宙に流されていたらしい。
最初に内部をELSに調べさせたが、もぬけの殻で人っ子一人もいなかった。さらに、UNSCの艦艇なら存在するはずのスリップスペースドライブを喪失していた。
とりあえず、光線を使って可能な限り修復し、ELSとも融合させた。喪失していたドライブの代わりには、ネオフロンティアスペースで入手したネオマキシマエンジンとゼロドライブを謎パワーで複製して搭載した。武装に関しては、ELS達に任せることにした。
この船にはスペースノアと名付けた。え?万能戦闘母艦と名前が被ってるって?気にしたら負けだよ。とにかく、この船は知的生命体の保護に有効活用しようと思う。
スペースノアによる知的生命体の保護活動として、とある宇宙で母星を失ったバルタン星人の保護を行った。下手したら、彼らの船団が地球と接触して戦争になる可能性、というかM78スペースでは前例があったため、介入させてもらった。
バルタン星人達を連れていったのは、別宇宙。その宇宙にある惑星をいくつか確保しておいたので、その惑星の1つに住まわせた。それにしても、大体の宇宙でバルタン星人は母星を失っている。各宇宙のバルタン星人を助けるとなると、どれだけの人数になるのやら・・・それに、バルタン星人のみを助けるわけにはいかないというのが現実だ。
俺には、人間態も一応存在している。地球人の体の構造や仕組みも精巧に再現しているため、地球人と変わらぬ生活をすることもできるし、大きな声で言えないが男女の交わりだっていける。また、状況によっては性別や容姿も変えられる。つまり、男の娘にもなれる。
人間態の髪の毛は銀髪であり、白いTシャツの上に着ているのは銀のジャケットで、ジーンズを履いている。首にはY字のコアを模した赤いクリスタルが付いたネックレスをかけている。
そして、今は人間態(男)で活動している。え?どこにいるかって?前に言った通り、今は休暇でコスモスペースの遊星ジュランにいます。
突然、俺の目の前で隆起する地面。そのまま地面を突き破って現れたのは、モグラのようなピンク色の鼻先が特徴的な頭部とシャベルのような大きな前足、青い体を持つ怪獣。
それは、地中怪獣モグルドン。イルカとモグラとカツオを混ぜたかのような容姿の怪獣で、地中を音速以上の速さで掘り進めることができる。かつて、チームEYESによる怪獣一本釣り作戦で地上に引きずり出され、ウルトラマンコスモスによる沈静化の後、保護された。また、カオスダークネスとの決戦には他の地球怪獣と共に参戦している。
「モグルドン、来てくれたのか」
俺は、モグルドンの鼻先を撫でる。すると、モグルドンは長い舌で舐めてきた。
「アッハッハ、くすぐったいな」
そうこうしていると、今度は森の奥から厳つい顔の四足歩行の怪獣が姿を現す。電撃怪獣ボルギルス、体が赤い刺に覆われたトカゲのような怪獣であり、高エネルギーを主食としている。
ボルギルスは、モグルドンと仲が良い。モグルドンが地上に上がって俺と仲良くしているのを見て、やって来たようだ。
「ボルギルス、元気にしてたか?」
ボルギルスは、俺に鳴き声で答えた。腹が減っている様子は無さそうだ。まあ、コスモスに保護されたときに700年分の高エネルギーを与えられている筈なので、腹が減ることはないのだろう。
「久しぶりだな、ノア」
突然、声と共に空から金色に光る何かが舞い降りる。別に、「あなたはそこにいますか?」と聞いてくるようなケイ素生命体ではない。それは、カオスヘッダー0。遊星ジュランの守護者である。翼を開いている姿は、女神のようにも見える。
カオスヘッダーは、とある星で秩序をもたらすために作られた生命体であったが、いつしか生命体の住む星を滅ぼしていくようになってしまった。地球にも襲来するが、争いの末にコスモスとムサシによって改心した。その後、スコーピスによって死んでしまった遊星守護獣パラスタンの代わりに、遊星ジュランの守護者となった。
カオスヘッダーはウルトラマンノアである俺のことを呼び捨てにしているが、堅苦しくされるのは居心地が悪いので、名前で呼ぶようにお願いしていた。
カオスヘッダーに初めて会ったのは、コスモスペースにスペースビーストが侵入したときだ。スペースビーストに苦戦していたので、俺は助太刀した。
「カオスヘッダーか、久しぶりだな。そういえば、この宇宙にコスモスの気配がしないのだが」
「ああ、ムサシとコスモスはデラシオンの意思によってジャスティスと共に別の宇宙に行ってしまった」
どうやら、記憶が正しければM78スペースではルーゴサイト討伐隊がルーゴサイトを捜索・交戦している頃らしい。アブソリュートなタルタルソース野郎を倒しに行こうかと思ったが、流石に可哀想なので止めた。
「コスモスがいないのは残念だな。コスモスが帰ってきたら、よろしく言っておいてほしい」
「次はどの宇宙に?」
「そうだな、行くならばスペースビーストの気配がある宇宙だ。特に決まってるわけではない」
俺はリドリアスやゴルメデとも交流した後、遊星ジュランを去った。とりあえず、保護したバルタン星人の居住地がある宇宙に戻ることにしよう。さて、お仕事頑張りますか。
コスモス怪獣の中だとモグルドンとボルギルスが好きなので、この話で出しました。
自身の知らないところで、ノアの慈悲によって命拾いしたアブソリュートタルタロスであった。
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ウルトラマンZ
第4話 スペースビーストに逃げられました
ウルトラマンZ。彼はM78星雲光の国の宇宙警備隊に所属する新人隊員である。ウルトラマンゼロに憧れ、勝手に弟子を名乗っているのだが、ゼロから言わせてみれば彼は三分の一人前とのこと。
光の国を襲撃してウルトラゼットライザーとウルトラメダルを飲み込んだ怪獣、ゲネガーグを追ってZとゼロは別の宇宙へと向かったのだが、ゲネガーグの吐き出したブルトンによってゼロが戦線離脱。Zはゼロに託されたライザーとメダルを持って地球へと向かった。
ゲネガーグとの戦闘の過程で死んだ対怪獣ロボット兵器のパイロット、ナツカワハルキと一体化したZはメダルの力を借りてゲネガーグを撃破した。その後も、先輩ウルトラマンとの共闘など様々な戦いを経験したハルキとZはグリーザという強力な怪獣を倒すまでに至っていた。
「ここは、ウルトラマンZのいる地球か」
ビースト振動波を検知した俺は、それを追って別の宇宙へと転移した。一番反応が強かった場所は、地球の日本。その日本には、世界で唯一の対怪獣ロボットを運用する組織、ストレイジが存在しており、ここがウルトラマンZが守っている地球であることが分かった。
「あの新人にビーストの相手は荷が重そうだ」
今のZにはデルタライズクローという最強形態とベリアロクがあるが、現時点でベリアロクが手元を離れてしまう可能性が0ではないし、もう少し先に来るであろうバラバ戦のようにウルトラフュージョンが解除されてしまうことだってあるだろう。できる限り、自分だけでビーストを排除したい。
「ん?」
手に持っていたエボルトラスターのクリスタルが点滅し、それと同時にドクン…ドクン…という心臓の拍動のような音が響く。これは、ビーストを探知した合図。俺は気配のする方へと向かった。
とある山にて、息を切らせながら3人の登山客が逃げるように走っていた。その後ろから迫ってくるのは、ネズミを怪物にしたかのような、二足歩行の醜悪な化け物。上級スペースビーストの一種、ノスフェルである。サイズは小さいものであったが、非武装の一般人からすれば脅威であった。
ノスフェルは、口から長い舌を伸ばし、登山客の1人を捕獲する。抵抗もむなしく、引き寄せられた登山客は口へと放り込まれ、バリバリと咀嚼されてしまった。
「そんな・・・」
残された1人は、その光景を見て腰が抜けてしまい、立ち上がれない。完全に、恐怖に支配されていた。
再び舌を伸ばしたノスフェルは、それを生き残りの足に巻き付けると、引き摺る形で引き寄せようとする。
「イヤァァァァァァァ!」
もはや絶望だった。しかし、突然引っ張られている感覚が無くなる。見ると、舌が切断されていた。
「大丈夫か!」
登山客の前に銀髪の青年が現れる。その手に持っているのは、白い銃のような武器。銃撃によって舌を切ったのだと予測された。
「でも、仲間が・・・」
「それは諦めろ、命が大事ならすぐに山を降りた方がいい。それと、防衛軍に通報するんだ」
登山客は急いで山を降りていく。俺はノスフェルの方へと振り向くが、そこにいたはずのノスフェルは居なくなっていた。
「やっちまった!逃げられた!」
さっきの登山客が危ないかと思い、密かに尾行したが、結局ノスフェルがその登山客を襲うことはなかった。そして、ビースト捜索は振り出しに戻ってしまった。
その日、人が怪物に食われたという通報が防衛軍に入った。最初はあまり本気にしていなかった防衛軍だったが、同じような通報が何件か入ると、重い腰を上げて調査を始めた。
ストレイジ本部
「最近物騒っすね、隊長」
珍しく新聞を読んでいたハルキは、相次いで怪物に人が食われたという記事を見て言った。その記事には、目撃された怪物の特徴も記されていた。
「ハルキ、そのうちストレイジも動くことになるかもしれないな」
ストレイジの隊長、ヘビクラショウタの正体はジャグラス・ジャグラーという名の宇宙人である。ヘビクラは、今回の騒動を起こした犯人の正体について見当が付いていた。
(こいつはスペースビーストか・・・もしかすると、あのウルトラマンが来るかもしれないな)
ヘビクラの言うあのウルトラマンとは、ウルトラマンネクサスのことである。彼が宇宙を転々としていたとき、スペースビーストとウルトラマンネクサスの戦いを目撃したことがあったのだ。
(こいつは面白くなりそうだな)
その時だった。
「βエリアに怪獣出現!目撃された怪物と特徴が一致!モニターに出します!」
基地の中に響き渡るサイレンと緊急の放送。そして、大型モニターに怪獣の姿が映し出された。それは、鋭い爪を持つ醜悪な異生獣。ついに、人を喰らったノスフェルは巨大化したのだ。
(上級スペースビーストのノスフェルか、こいつは厄介だな)
「ハルキはウインダム、ヨウコはキングジョーで出撃!未知の怪獣だ、油断するな!」
「押忍!」
「了解!」
2人の特空機パイロットは各々の機体の方へと駆けていく。特空機2号ウインダムと特空機3号キングジョーストレイジカスタム、2体の特空機は整備班の手によって、完璧に整備されていた。
「フォースゲートオープン!フォースゲートオープン!」
格納庫上のゲートが開き、特空機は太陽の光と外の空気にさらされる。
「ウインダム、キングジョー、リフトアップ」
二体の乗っている床がどんどん上昇していき、特空機は完全に外に出た。
「ウインダム、出撃!」
「キングジョー、出撃!」
二体の特空機はジェットを吹かし、目的地へと飛んでいった。
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第5話 ノスフェル「何度でも蘇るさ!」
「ウインダム、着陸します!ご注意ください!」
「キングジョー、着陸します!ご注意ください!」
現場へと到着したウインダムとキングジョーストレイジカスタムは、何回か逆噴射した後に地上へ着陸する。目の前には、逃げ遅れた人間を舌で絡めて補食するノスフェルがいた。
「ヨウコ先輩!あいつ人を食ってますよ!」
「ハルキ、これ以上の被害を防ぐためにとりあえず怪獣をここから引き離すよ!」
「押忍!」
ヨウコが選んだのは、飛び道具による攻撃で注意をこちら側に引くということ。ウインダムは額からレーザーショットを撃ち、キングジョーはペダニウム粒子砲による単発射撃を行う。一応、ノスフェルに直撃こそしたが、傷を負わせるに至らなかった。だが、注意を引くことはできた。
「キシャァァァオォォォ!」
咆哮したノスフェルは跳躍すると二体の特空機の目前に着地する。そして、体から複数の赤黒いエネルギーの球を発射。至近距離から放たれた全てのエネルギー球が次々とキングジョーに直撃し、赤黒い電撃がキングジョーに走った。
案の定、キングジョーの堅牢な装甲には傷一つ付かない。だが、ここで異常事態が起こる。
〈キングジョー、システムに異常発生!制御不能です!〉
何と、先ほどの攻撃でシステムに異常が起きたらしく、キングジョーが操作を受け付けなくなってしまったのだ。直後、キングジョーは直立不動のまま前方に倒れてしまった。
「ヨウコ先輩!?」
「自分の回りに集中しなさい!ハルキ!」
倒れたキングジョーに意識を向けてしまったのが命取りであった。すでにノスフェルはウインダムに接近しており、腹部に爪を振るったのだ。
「うわぁ!!」
ウインダムの腹部に火花が散り、よく見ると爪が当たった部分の装甲が削り取られていた。
間髪入れず、ノスフェルは腹部に爪を突き刺す。そのままウインダムを押し倒すと、手を引き抜くと同時にウインダムの配線やパーツを爪で引っかけてズタズタに引き裂き、外に引きずり出してしまった。
「この前みたいにウインダムが壊れたぁ!」
ハルキの言う〈この前〉とは、グルジオライデンとの戦闘のことであり、ウインダムは腹部を抉り出されるという酷い目に遭っていた。
〈ウインダム、内部構造を破損!戦闘の続行は不可能です!〉
戦えなくなったウインダムは、ここで退場することになった。だが、ハルキには戦う手段が残っていた。
『ハルキ、ここはウルトラフュージョンだ!』
「押忍!」
ハルキはウルトラゼットライザーを取り出すと、トリガーを押してインナースペースに突入した。
《Haruki Access granted.》
ウルトラアクセスカードをライザーに挿入する。
「宇宙拳法、秘伝の神業!」
腰のケースから取り出したゼロメダル、セブンメダル、レオメダルをライザーにセット。
「ゼロ師匠!セブン師匠!レオ師匠!」
そして、ブレード部分をスライドさせてメダルをライザーに読み込ませる。
《Zero、Seven、Leo.》
「ご唱和ください、我の名を!ウルトラマンゼーット!」
「ウルトラマァァァン!ゼーット!」
ハルキがトリガーを引くと、飛び交う青、白、赤の光芒が一か所に集まっていき、そこからウルトラマンZアルファエッジが出現。そのままグングンと巨大化していった。
《UltramanZ Alpha Edge.》
「ヘェアァァッ!」
ウインダムの中から出現したZによって、ウインダムに馬乗りになっていたノスフェルは吹き飛ばされる。ウルトラマンZとノスフェルは互いに向かい合った。
Zは頭部のスラッガーに手を添え、2つのゼットスラッガーを出現させる。そして、その2つを稲妻状のエネルギーで連結させることで、ヌンチャクのように扱えるアルファチェインブレードに変化させた。
「イィィィィヤットウァァァァ!」
Zはアルファチェインブレードを回転させ、ノスフェルへと向かう。何度も振り回してノスフェルを斬りつけていき、手数で圧倒した。だが、そこまでダメージが入っている様子はない。
「アルファバーンキック!」
今度は、炎を纏った足による回し蹴りの連撃をくらわせる。ノスフェルは今まで以上に大きく怯んでいた。
『こいつ、炎が苦手みたいっすね』
「そうだな、ハルキ。炎の攻撃ならあれでいくぞ!」
Zが右手を空に掲げると、何処からか現れた槍のような武器、ゼットランスアローを掴み取る。そして、ランスのレバーを1回引くと、ランスの先端に炎が纏われた。
「ゼットランス・・・!!」
先端に炎を纏ったゼットランスアローを振り回し、炎でZの形を作る。そして・・・
「ファイヤァァァァァー!」
ゼットランスアローを突き出すとZの形の炎が飛んでいき、ノスフェルに炎が纏わり付く。そのまま、体が炎上したノスフェルは倒れ、煙でその姿は見えなくなった。
『Zさん、意外と呆気なかったですね』
「たしかに、ウルトラ脆かったな」
普通のスペースビーストなら、これで良かったのかもしれない。だが、彼らは知らない。ノスフェルはこの程度で死ぬスペースビーストではないということを・・・
「それじゃ、帰りまs・・・なっ?!」
飛んで帰ろうと思い、背中を向けていたのが失敗だった。突然、背中と腹部に激痛が走る。よく見てみれば、背中から体を貫通した野獣のような鋭い爪の先端が、腹部から飛び出ていた。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
倒したはずの怪獣が何故か生きており、その怪獣の爪が自分の体を貫通するなんて、Zにとっては初めての経験である。彼は、明らかに恐怖していた。やがて、ノスフェルは爪を引き抜くのだが、その傷口からは大量の光の粒子が吹き出ていた。
『これヤバいっすよ、Zさん!』
Zは傷口に手を添えて傷を直そうとするのだが、ノスフェルが爪を連続で振るってきたことで妨害される。さらにカラータイマーも鳴り始め、避けることで精一杯になっていた。
まさにピンチ!どうする!?ウルトラマンZ!?すぐに助けに行け!ウルトラマンネクサス!
「では、助太刀するとしよう」
ノアは、ようやく重い腰を上げた。
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第6話 ZとN
この前、マクロスF(劇場版)を初めて見ました。テレビ版だと話の展開が違うらしいので、テレビ版の方も見ていこうと思います。
「まぁ、新人警備隊員がノスフェルの攻略法を知っている筈が無いか」
俺は、戦いを近くのビル屋上で見学していた。普通なら、最初から俺がスペースビーストの相手をするのだが、経験を積んでもらうためにわざと放置した。別に、サボっているわけではない・・・とでも言っておこうか。
ノスフェルの口内には、再生器官が存在する。それを破壊した上で必殺技を叩き込まれなければ、叩き込んだのがオーバーレイシュトロームであっても、ノスフェルは何度でも復活してしまうのだ。
「では、助太刀するとしよう」
俺の両目が赤く輝き始めると、体が赤い光に包まれて赤い光球へとその姿を変えた。そのまま、Zへと爪を振り下ろそうとしているノスフェルへと光球の状態で体当たりして、ノスフェルを吹き飛ばす。そして、Zの前に降り立った。
「シェアッ!」
「あなたは、一体・・・?」
「来たか」
現れたネクサスを見たヘビクラは、笑みを浮かべて呟いた。
「私はウルトラマンネクサス。あのスペースビーストを追って来た。遅れてすまない」
俺はZに歩み寄ると、傷を直すと同時にエネルギーを分け与える。
「Z、だったか?」
「はい、ウルトラマンZと申します」
「Z、あのスペースビースト・・・ノスフェルを倒すには口内の再生器官を破壊する必要がある。私がノスフェルを押さえる、その間に君は再生器官を破壊してくれ」
「分かりました、ネクサス先輩!」
『Zさん、あのウルトラマンってメダルに居ましたよね?どんなウルトラマンなんすか?』
ネクサスのメダルは、メビウスとコスモスのメダルと共にライトニングジェネレードを使用するときに使われているメダルだ。
「俺もよく知らないんだが、ゼロ師匠によるとウルトラ凄いウルトラマンらしい」
『Zさん、それ説明になってませんよ』
「キシャァァァオォォォ!」
立ち上がったノスフェルは俺を見るなり怒り狂い、複数の赤黒いエネルギーの球をネクサスへと飛ばす。
「フンッ!」
だが、サークルシールドによってネクサスに直撃することはない。さらに、防御しながらアンファンスからジュネッスへの変化を遂げた。
飛び道具が効かないと分かったノスフェルはネクサスへと突進し、鋭い爪の付いた腕を振りかざす。
「フンッ!ヘアァァァァ!」
姿勢を低くすることで爪の一撃を躱して懐に潜り込むと、拳にエネルギーを集めて放つパンチ、ジェネレードナックルを下から突き上げるようにノスフェルの顎に叩き込む。
そして、ノスフェルが怯んだ隙にヘッドロックを仕掛け、空いている片方の手を使って無理矢理に口をこじ開けた。
「今だ!Z!」
「ゼスティウムメーザー!」
Zは額のビームランプから緑色の光線を放ち、光線は寸分の狂いもなくノスフェルの口内に直撃、再生器官を完全に破壊する。俺はヘッドロックを解除するとノスフェルを投げ飛ばし、Zの隣に並び立った。
「止めをさすぞ」
Zは再びゼットランスアローを取り出すと、レバーを1回引く。一方俺は、オーバーレイシュトロームの発射準備に入る。
アームドネクサスを下で交差させた後、両腕を立てる。両腕の間に走るのは電撃のようなエネルギー。
「ウオォォォ・・・・・・!」
V字に両腕を広げると、そのまま両腕をL字に組み、オーバーレイシュトロームを発射した。
「フンッ!ディャァァァ!」
「ゼットランスファイヤァァー!」
再びZが放ったゼットランスファイヤーによって炎に纏わり付かれ、炎上するノスフェル。そこに、両腕をL字に組んで放つ光線、オーバーレイシュトロームが直撃する。ノスフェルは分子レベルに分解され、青い粒子が大気に広がった。
すでに人々は避難し、誰もいなくなった路地裏に光が満ちる。その光の中から現れたのは、2人の男だった。
1人は灰色のストレイジの隊員服を着た男、ウルトラマンZと一体化しているナツカワハルキ。もう1人はノアの人間態である銀髪の青年だった。
「さっきは助かりました、ええっと・・・」
「人間態の時はノアールと呼んで欲しい」
この名前は今考えた。ウルトラマンノアだから、ノアール。うん、適当すぎですね。
「助かりました、ノアール先輩」
「こちらも遅れてしまってすまない。実は、一度取り逃がしてしまってね、あれの相手は本当なら最初から私がするつもりだった」
「でも、最終的に倒せてよかったじゃないっすか」
「ありがとう、ハルキ。それと、我が儘かもしれないが、君の変身アイテムを見せて欲しい」
「いいっすよ」
すると、ハルキはウルトラゼットライザーを手渡してきたので、俺は手に取った。
「へえ、最近のウルトラマンはこんなものを使って変身するのか。すごいな」
これを作ったウルトラマンヒカリにウルティメイトイージスをプレゼントしたいくらいだ。ただ、さらにセキュリティを強化することをオススメする。
実を言うと、この世界に来た理由の1つにウルトラゼットライザーを複製するというものがある。ジャグラーだって闇の力でコピーしていたんだから、光の力で出来ないはずはないだろう?
俺は、ライザーを観察しているふりをして光のエネルギーを流し込み、コピーを取ることに成功した。そのまま、ハルキに返却した。
「ありがとう。私はまた別の宇宙に行かなくてはならない、ここでお別れだ。また、何処かで」
そのまま、ハルキと握手する。
「それと、Zにもよろしく言っておいてほしい」
俺は、ネクサスに変身すると宇宙へと飛び去った。
「完成だ・・・」
俺の手に銀色のウルトラゼットライザーが実体化する。俺は、これにウルトラノアライザーと名付けた。ゼットライザーには青でZの文字が入っているが、ノアライザーには赤でNの文字が入っている。使い道はあるかもしれない。
もう1つ、俺はアイテムを製作した。その名はノアランスアロー。ゼットランスアローを参考に製作した槍だ。アームドネクサスと同じ素材で構成されていて、相手を分子分解する必殺技を放てる。オーバーレイシュトローム以外の決め手に欠ける赤いジュネッスに丁度いい武器だ。
これらが、Zの世界に行った成果である。
ネタが切れた
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GATE
第7話 GATEの世界になぜ怪獣?
ウルトラマンZのいる宇宙から去った後、俺は何回か並行世界への移動を繰り返したのだが、そこでファンタジーのような惑星を見つけたので降り立つことにした。
ところで、ここは正にファンタジーの世界だったのだが、この世界には異世界との間を繋いでいる門が存在する。しかも、それが繋がっている先は日本の銀座であった。
はい、ここはGATEの世界でした。アルヌスの丘に自衛隊が存在していることを確認したので、間違いない。
アルヌスの戦いを遠くから見てたけど、異世界の軍勢は丘の上から一方的に殴られてましたね。中世の軍勢が現代の銃砲火器で武装した軍隊に勝てるはずがなく・・・御愁傷様です。
異世界を繋いでいるゲートは、危険なものであると考えている。だいたい、並行世界同士を繋ぎっぱなしにするなんて、どちらかの世界に悪影響を及ぼしかねないからだ。まあ、技術のレベルによっては悪影響を抑え込むことも可能なのだろうが。
俺は今、異世界の軍勢が乗り捨てていった馬を集めて飼っています。今のところはこの世界に長居する気はないので、馬達を売ったら立ち去ろうと思う。
「ねえ、ノアール。本当にこの世界を去るつもりなのぉ?」
突然、黒いゴスロリ風の服を着た黒髪の美少女が、声をかけてくる。その細い手には、その手では持てなそうな程の重厚なハルバートが握られていた。
彼女はロゥリィ・マーキュリー。エムロイという神様に仕える亜神と呼ばれる存在で、不老不死らしい。
実は、この星に来て最初に会ったのが彼女である。出会って早々にハルバートで斬りかかってきたのだが、特に殺意は感じなかったため、ノアランスアローを召喚して遊んであげた。まぁ、孫と遊んでいる感覚で楽しかったよ。
実は、今まで人間体で対人戦をしたことはほぼ無かった。だから、今回の遊びは良い経験だと思っている。
その後、彼女に「主神と似た気配がするけど、あなたは神様なのぉ?」と聞かれたが、俺は否定した。ウルトラマンは神ではないのだ。とにかく、紆余曲折あって彼女と共に行動することになった。
「今のところ、この世界に長く残る理由がないからな。それに、何らかの異変が起これば以前いた世界に戻ることだってある」
「ふーん、そうなんだ。1つだけ言っておくけど、この世界でそのうち異変が起こるらしいわよ?」
この世界で異変?思い付くのは、予定より早く目覚めた炎龍と帝都を襲う地震くらいだろう。まさか、原作に無い出来事が起こるのか?場合によっては、ウルトラマンの力を使うこともありそうだ。
しばらくして、ロゥリィと共に行動していた俺は、避難民を助けていた自衛隊の偵察隊に出会った。俺自身は日本語を話せるが、ややこしいことになるので話せないふりをした。
そして、炎龍がやってまいりました。逃げ惑う避難民を襲う炎龍に対し、果敢に立ち向かっていく自衛隊。流石は怪獣退治が伝統の自衛隊である。
ウルトラマンの力・・・・仮にネクサスではなくウルトラマン・ザ・ネクストであっても炎龍を倒すことは容易だろう。だが、簡単にポンポンと力を出してしまうのは、人々が自分の身は自分で守るという心を忘れることに繋がってしまうのだ。
目覚めたエルフの少女によって目が弱点であることを伝えられた自衛隊は目の付近に集中砲火を浴びせ、怯ませる。そこに対戦車ロケット弾が命中し、左肩をまるごと持っていかれた。ここまでは、知っている通りの展開であった。
手負いの炎龍は、咆哮で自衛隊員を怯ませると逃げるように飛び去っていく。だが、ここで想定外のことが起きた。なんと、突然空から飛んできた複数の光弾に撃墜されたのだ。
そして、攻撃の主が地面に着陸する。それは、身長57mの翼のあるスラリとしたシルエットの巨大生物。
「伊丹二尉!あれって!?」
それを見た運転手の倉田三等陸曹が、隊長の伊丹二等陸尉に対して叫ぶ。
「倉田、間違いない。あれは・・・」
伊丹と倉田は、その正体を知っていた。
「空を切り裂く龍、伝説の片割れが目覚めたのねぇ。主神が言っていた通りだわ」
一方、ロゥリィは、それを見て楽しそうにしている。
「メルバだ!ウルトラマンティガ第1話の!」
炎龍を倒したのは、超古代竜メルバであった。ウルトラマンティガの第1話で青いティガに倒されて以降、まったく後の作品で出番がない不遇な子である。
「これが、異変なのか?」
メルバの出現。こんなことは本来この世界で起こることではない。ここは、GATEの世界に酷似した世界に過ぎないらしい。自衛隊隊員達は消耗している。ここは、俺がやるしかない。
気配を消してこっそりと車列から離れると、ウルトラノアライザーを取り出してトリガーを押す。出現した入り口から別空間に突入した。
「二尉、あれに勝てると思えますかねぇ?」
「倉田、本物の怪獣に勝てるわけないだろ・・・」
伊丹は内心、頼むからウルトラマンでもグリッドマンでもミラーマンでも何でもいいから、正義の巨人に助けに来て欲しいと思っていた。
「伊丹二尉!攻撃来ます!」
自衛隊の車両は急速に後退し、先ほどまで居たところに光弾が降り注ぐ。しかし、次の攻撃はすでに飛んできており、車両が移動した先に飛んできた。
伊丹達は、もうダメだと思って目を瞑る。だが、いつまで経っても衝撃は来なかった。恐る恐る目を開けると、間に割って入った光の柱が攻撃を防いでいた。そして、光は巨人の形になる。それは、赤いコアを持つ銀色の巨人だった。
「あれはウルトラマン!ウルトラマンネクサス!」
ついに、ウルトラマンネクサスはファンタジー世界の大地を踏んだ。そして、メルバに対してファイティングポーズで構えるのであった。
「シェッ!」
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第8話 空を切り裂く龍
久しぶりの投稿です!お待たせしました!
「シェアッ!」
「ピャアァァァ!」
睨み会うネクサスとメルバ。先に動き出したのは、メルバだった。
「ピャァアアアッ!」
メルバはその翼を広げると、低空飛行でネクサスの方へと一直線に向かい、体当たりを仕掛けてくる。直線的な攻撃であるため、決して避けられない攻撃ではない。だが、ネクサスの背後には自衛隊と避難民がいる。そのため、真正面から突進を受け止めることを選択した。
ネクサスはメルバの頭を掴んで突進を受け止めると、力を込めてその頭を上方向に撥ね退ける。そして、右の拳に光のエネルギーを集中させると、メルバの胴体に思いっきり叩き付けた。
「フンッ・・・!ヘアァッ!」
エネルギーを纏った拳によるパンチ、ジェネレードナックルの直撃を胸部に受けたメルバは大きく怯む。そして、ネクサスは飛び蹴りをメルバにお見舞いした。
「デアッ!」
だが、メルバもやられっぱなしではない。ネクサスが着地した瞬間を狙い、嘴による突きを繰り出す。ネクサスは上半身を振って回避するが、次の瞬間に両手の爪で攻撃してきた。
スラッシュクローによる斬撃が胸部に直撃し、火花が散る。更に、山吹色の光弾であるメルバニックレイを至近距離から浴びせられ、ネクサスは後方に吹き飛ばされてしまった。
そのまま、メルバは翼を広げて飛び上がると、倒れているネクサスを目掛けて得意の空中殺法を見舞おうとする。ネクサスに迫るメルバの急降下しながらの蹴り。だが、両足による蹴りが直撃する前にネクサスは起き上がり、前転で回避した。
メルバは反転して再び空中殺法を繰り出すが、ネクサスはすでに待ち構えており、メルバはその両足を掴まれてしまう。
「フンッ!」
ネクサスは足を掴んだまま、メルバにジャイアントスイングを行い、そのまま投げ飛ばす。メルバは、地面に叩き付けられた。
「ピャアァァァ!?」
その後、起き上がったメルバはフラつきながらも空に飛び上がり、逃走を図ろうとする。それを逃がすまいとネクサスも飛んだ。空を駆ける銀色の流星は高速でメルバを追う。メルバはメルバニックレイを放って迎撃するが、バレルロールで回避されてしまった。
「ディア!」
ネクサスは高速で飛行する勢いのままに突っ込み、飛び蹴りでメルバを撃墜する。メルバが墜落した直後、ネクサスも地面に着地した。
「ウオォォォ・・!ディアァァァ!」
ネクサスは両手の間にスパークを走らせた後、両腕を十字に組んで赤みがかった白い光線、クロスレイシュトロームを発射する。それを受けたメルバの体は小規模な爆発を何度も起こしてバラバラに粉砕され、その破片が異世界の大地にばらまかれた。
メルバの死を見届けたネクサスは人々の方へ振り返ってサムズアップすると、何処かへと飛び去って行った。
「ウルトラマンが勝ちましたね!伊丹二尉!」
倉田は興奮の混じった喜びの声を上げる。
「倉田、本物のウルトラマンを見て興奮するのは分かるんだが・・・」
何故か、伊丹の返答は暗い。彼自身、ウルトラマンと怪獣の戦いに興奮していた。だが、いざ戦いが終わってみれば、現実が伊丹を襲った。その現実とは・・・
「だが?・・・」
「どうやって上に報告するか、悩みどころなんだよな・・・」
まだ、炎龍と避難民に関することだけなら報告は楽だった。しかし、そこに怪獣とウルトラマンの戦いという、銀座のゲート以上に非現実的なことが転がり込んできたのだ。
炎龍を追い払ったと思ったら怪獣が乱入し、更にウルトラマンまで現れて怪獣を倒して帰っていった。そんな報告、誰が信じるだろうか?
伊丹は報告に悩みながらも、炎龍の被害を受けた避難民達に対する救護活動を指揮する。なお、上への報告に関しては、連れて帰った避難民の証言と桑原曹長が何枚か撮っていた写真によって行われた。
この日、人々はそれを見た。あの炎龍よりも強大な龍を倒した銀色の巨人を。避難民の1人がまだら模様の兵士達・・・自衛官から聞いた話によると、その巨人はウルトラマンという名前らしい。特地では、この避難民達を中心にウルトラマンに対する信仰が始まったという。
少し離れた場所に一筋の光が降り注ぎ、そこからノアの人間態であるノアールが実体化する。直後、彼は背後に気配を感じて振り返る。その目線の先には、木に寄りかかるロゥリィの姿があった。
「ねえ、ノアール。あれが本当の姿なのぉ?」
「いや、違う。力の半分も出していない。あれは不完全な姿に過ぎない」
ノアールは否定する。あの姿は、ノアの不完全な姿であるウルトラマンネクサスの初期形態、アンファンスなのだから。メルバとの戦いではジュネッスへの変化もしておらず、彼は本気を出していなかった。
「その内、本当の姿を見せて欲しいわぁ」
「多分、世界が滅びそうな時に見られるかもな」
彼がウルトラマンノアの姿で戦うのは、世界を軽く滅亡させるような存在と対峙するときか、宇宙全体の存亡に関わる事態といった場合だ。
「ロゥリィ、聞いておきたいのだが」
「何?」
「あのような怪獣は他にいるのか?」
メルバの存在から、ノアはゴルザやゾイガーといった超古代怪獣の存在を予想していた。仮に邪神ガタノゾーアが関わっていた場合、ノアの姿で戦うことになるだろう。
そして、ロゥリィは口を開いた。ノアは、彼女の話でこの世界の過去を知ることになる。
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