第31S部隊 (セントレイズム)
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day0
day0 始まり


何だこの作品はぁ...スコダァという感じで書き始めました。他のも書かないとなのになぁ...(遠い目


「_____っ! __________!」

 

誰かの声が聞こえる。

白い部屋中で、聞き覚えのある優しい声が叫んでいる。

 

「...ぁ」

 

声が出ない。あと少しなのに、喉まで来ているはずなのに、出てくる声は息が抜けているかのように音を発してくれない。

 

「____!? ___!」

 

声は叫ぶ。

なんて言っているかもわからないまま、自分に叫び続ける。

反応なんて出来やしない、声は出ないし身体も動かない。意識だって朦朧としているし視界だってぼやけてよく見えない。

 

(ごめん)

 

動かない身体で、ただ()は謝ることしかできない。

 

 

 

_______________

 

「___んぅ...?」

 

 窓の先から挨拶をしてくる太陽。

それを反射して眩しい木の床。そして多くの人々に見られながら話し続ける紫っぽい髪色をした女性。

 

(寝てたのか)

 

 少し、記憶がない。

なんで自分はこんな場所にいるのだろうか?

思い出そうとして考える。

 

(そう、あれは確か36万___いや違うな。間違いなく違う)

 

首を振って謎の思考を変える。

 

(確か昨日の晩御飯はカレーだったな)

 

「このように本基地は学校としての体政が整っています。

詳細は後ほどあなたたちの担当教官から説明があるので確認しておくように」

 

(え、なに? 教官? 基地?)

 

何のことか分からない。

壇上で話す女性の言葉に疑問符が量産される。

教官というのは、おそらく目の前の壇上で話している女性のことだろうと予想できる。

そして基地というのもこの今いる建物のことだろう...しかし、なぜ自分がこんな場所にいるのだろうかと思い出そうとして見れば、記憶の戸棚に鍵をかけられたかのように思い出すことが出来ない。

 

「ここって、なんかすごい才能を持った___」

「...?」

 

思考に耽っていれば壇上とは別の方向から声が聞こえた。

 

 周囲を見渡してみる。

 

声の主が気になって周囲を見てみることにした。

 

(うわっ、顔面偏差値高っ!)

 

上下左右前後どこを見ても美少女ばかりじゃないか。なんだここはたまげたなぁ。

 

(...いや、そこじゃないな)

 

少し目を凝らせば二人、声の主と思わしき人が話していたのが見えた。

 

(メガネの知的そうな少女とクール系だと思わしき少女...やっぱ顔面偏差値高いな)

 

普通の学校ならクラス関係なく注目の的になるであろう二人。

だが彼女らはどうやら何か話が盛り上がっているらしい。

【ギャイアグレイーイボドドドゥドオー】なんていう呪文みたいなものを発しているほどだ。間違いなく話に熱中してる。

 

『そこ、ぎゃーぎゃーうるさいぞ』

(あ、怒られた)

「ぎゃーぎゃーなんてひとことも言ってねぇよ」

(逆切れした!?)

 

注意した教官に興奮したのか、またあの呪文のようなものを言って反論しているクール系みたいな見た目だった少女。

 

(...曰く、魂の叫びらしい)

 

逆切れした少女に周りの人の視線が刺さる。だが少女はそんなこと気にせず熱い表情で立っている。

 

(メンタルオリハルコンか?)

 

自分だったら倒れそうだ、なんて思う。

そもそもそんな経験したことないから実際はどうなるかわからないが。

 

落ち着いたらしい、ボドドドゥー系少女は椅子に座る。

 

(そういえば説明、全然聞けてなかったな)

 

話し声の主を探すために周囲を見ていたため教官の話が全くと言っていいほど記憶にない。

自分のせいと言えば間違いなく自分のせいなのだが、なんか解せぬ。

 

しかしまだ話はある。

この入隊式の時間もまだ続くのだろうからその心配はいらないはずだ。

しっかり話を聞こうと思いながら気合を入れて集中して_____

 

 

 

 ___視界が赤くなった。

 

 決して血とかその手のものではない。

何処からともなく聞こえる警報音。それはまるで緊急事態だと言わんばかりに鳴り響いている。

 

「全員、防衛態勢へ移行してください」

 

自分より少し背の低い、幼いイメージを持たせる少女が指示を出している。

...おそらくその少女も上司にあたるのだろうが、これが噂の合法ロリ?

 

(いや今はそれどころじゃないな)

 

正直、いきなり防衛態勢とか言われてもピンとこないし現状の理解も全くできていない。

だが、それでも外へ出ることにした。

 

 

__________

 

 

 自分のほかにも入隊式に参加していた人は全員外に動いているのが分かった。

だから、そんな状況下で自分一人だけ動かないというわけにもいかず、流れに乗る様に気が付けばヘリの中にいて

 

「...泣きたい」

 

少し後ろ向きな言葉を吐く。

それくらいは許してほしい。だって今自分のいる場所___

 

「なんで前線にいるんだよぉぉぉーーーっ!!」

「おっ、元気になった」

「安心しなさい、ここは激戦区じゃないわ」

 

先ほどまで壇上で話してた教官が気休めにもならない言葉を言う。

 

「激戦区じゃないけど前線ですよね!?

ここ明らかに前線にいますよね自分たち!?」

「えぇ、でもあなたたちの役割はあくまでも後方支援。

集中して戦えば、命を落とすことはないわ」

「そんなの、何の気休めにも____って、あれはもしかして!?

 

横にいたメガネの...メガネの?

若干の嫌な予感をバリバリ感じさせながら、もう片方の人を見る。

 

「よっ」

「ボ、ボドドドゥー系少女だっ!」

 

驚いている自分にフレンドリーな感じで挨拶をしてくる少女。

片方隠れた赤い瞳、一見クール系に見えるその見た目は間違いなく先ほど教官に対して逆切れをしていた本人だ、間違いない。

 

(まさかさっきの罰で前線送りにされたのに巻き込まれたのか?)

 

嫌な考えがよぎる。

流石にそんなことはないと思いたいが否定できるほどの情報がないのが悲しいところ。

 

そんな、ものすっごく帰りたい本音を抑えて歩き出した。

 

 

 

 ...ボロボロになったビル、割れた窓ガラス。

久々に見る街並みは過去を思い出せる程度は原型を残しているが、それでも実際に見ると言葉には表せない感情が湧いてくる。

 

「あれがあなたたちの敵、キャンサーよ」

 

走りだしたメガネの少女に追いつけばソレはいた。

黒い、多脚の異形。

この街並みを作った原因。

虫を連想させるフォルムをしたソレが意味もなく徘徊していた。

 

「...データでしか見たことなかったけど、目の当たりにするとでけーな」

 

いや、意味がないというのは間違いかもしれない。

あの巨体、人の三倍以上だろうか? 間違いなく歩いているだけでも普通の人は近づかないだろう。存在するだけ価値があるってやつだ。

 

「あんなのに対して何で戦えって言うのさ」

「確かに」

 

自分の言いたかったことだけにボドドドゥー系少女の言葉に同意の声が出てしまった。

 

「こちらへ来なさい。立ち向かう術を教えるわ」

 

気が付けばメガネの少女と共に岩陰にいた教官がこちらに手招きをしていた。

 

「立ち向かう術...?」

 

キャンサーと呼ばれるあの巨体と戦う方法などあるのだろうか。

そんなことを考えつつ、教官のいる場所まで音をたてないように歩く。

 

「あなたたち、電子軍人手帳は持っているわよね」

「でんし...え、なに?」

「いやそれくらいは聞き取れよ」

 

「聞き取れなかったのではなくその存在を知らなかっただけです」

と胸を張って言えば、またメガネの少女はこちらにツッコミを入れる。

 

「これだよ、この青い板のこと。腰につけてるだろ?」

「「あ、ほんとだ」」

「お前もかよ!」

 

大丈夫なのだろうか?

そんな視線を教官から感じながら、その【電子軍人手帳】を手に取る。

 

「あなたたちはセラフと呼ばれる武器を扱えるようにすでにこちらで手配済みなの」

 

(セラフ?)

 

口に出して聞きたいが、そんな時間もないので口は開けない。

...だがあの巨大なキャンサーと戦える武器、と言われるとなかなか想像できないもので少し不安になるのも事実。

 

「あとは電子軍人手帳を天にかざし、セラフィムコードを口にすればいいだけ」

 

そうすればセラフと呼ばれる武器が所有者の下に舞い降りる、らしい。

武器召喚とはなかなかロマンあふれるものなのは分かるが...実戦で急に出せと言われてもタイムラグが生じるのではなかろうか。

 

「いきなり中二病ワードが飛び出してきたな...」

「___【約束はここに、私はここに】」

「はえーよっ!」

 

 ただ、脳裏に浮かんだ言葉を発する。

自分からすれば意味のない言葉だったソレを、遠い過去の何処かに置いてきてしまった記憶を掘り起こすために大切になってしまった言葉の筈だったソレを。

 

 空に、穴が開いた。

ブラックホールのような穴。

突然開いた非現実的な状況の中で、その中から武器が舞い降りる。

 

「それがあなたたちの武器...最終決戦兵器セラフよ」

「これが?」

 

高圧的な返しをしてしまうが仕方ないことだと思う。

手に握られた、小さなダガーは少なくとも最終決戦兵器という大それた名前を使えるほど強そうには見えない。

誰だってこの、きれいな装飾が付いただけの武器であの巨大なキャンサーに対応できる武器だと説明されて納得できないだろう。 間違いなく自分は納得できないし、これに命を懸けようとも思えない。

 

「__【Hello world】」

「___【あたしの伝説はこれから始まる】」

 

自分に続くように二人もセラフを召喚するした。

メガネ少女の方は楽器のようなイメージを持たせる大砲、ボドドドゥー系少女は二刀の剣。

 

「...すっごく不平等な感じだ」

 

それと比べて自分の武器はこの小さなダガー二本。比べるのもおこがましいほどに差がありすぎる。

 

 武器はどういう選ばれ方をするのか。

選んだ人に小一時間問い詰めたい気分になるが、やはり今はそういう状況でもないので後にする。

 

「行くぞっ!」

「おう!」

 

それでもボドドドゥー系少女の声は、自分の不安に思う心を後押ししてくれた。

 

「...行きます」

 

自分より先に出た二人を追いかけるために、巨大なキャンサーに向けて走り出した。



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day0 私のセラフ

なんか結構感想とか評価もらえてうれしいような...怖いような...期待に応えられなかったらすいません。((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル


 虫のような巨体から繰り出される攻撃。

二人で互いにヘイトを取り合い、狙われてない人と遠距離の人が狙うシンプルな作戦。だが___

 

「______きゃっ!?」

 

 無意識に張られたシールドが避けられなかった攻撃を反射的に防ぐ。

だが、キャンサーという巨体から放たれる攻撃は自分の軽い体を吹き飛ばすには十分すぎた。

 

「大丈夫か?」

「ご、ごめん」

 

 飛ばされた自分を受け止めたメガネの少女に頭を下げて、態勢を立て直す。

 

「まだ戦える」

 

再度、キャンサーに対してダガーを構える。

...先ほどはデフレクタと呼ばれるシールドで防御することが出来た。だがそれにも限界がある。

 

(大丈夫。残量に余裕は、ある)

 

キャンサーは一体のみ。

ボドドドゥー系少女は危なげなく回避しながら的確に攻撃を入れている。メガネの少女も、前衛のであるボドドドゥー系少女に当てないように一発一発弾を撃ちこんでいる。

このままいけばキャンサーは倒せる。

自分などいてもいなくても関係なく、眼前の戦闘は終了するだろう。

 

(自分は...何をしているのだろうか)

 

戦いたいわけではない、死にたいわけでもない。

でも、この戦いで何か役に立っただろうか?

 

「本当に大丈夫か?」

 

いつの間にか戦闘は終わっていたらしい。心配そうな表情をした二人がこちらの顔を覗いているのが見えた。

 

「いきなりの戦闘なんだ。ダメそうだったら教官に言った方がいい」

「大丈夫だから、心配かけてごめん」

 

「おいおい、大丈夫かよ」なんて言うメガネ少女の言葉を聞き流しながら深呼吸する。

 

「不味いな、ここの空気」

「確かにな。湿っぽくて埃っぽい、なるべく長居はしたくない場所だ」

 

それなりに放置されてきたからか、苔や水漏れ部分からは湿った匂いが来るし、風が吹けば埃やら砂が舞って咳をしたくなる。

 

 

 

「___ここに前まで人が住んでたんだよな」

 

誰が言ったか、その言葉に唾をのんだ。

 

キャンサーによって、人のいたはずの場所がここまで人に適さない場所になった。

そして今、この場所を取り戻せるかどうかが自分たちの手にかかっている。

 

その現実は、自分が考えていたよりも重くのしかかっている。それを今、実感している。

 

「いたぞ、新手だ」

 

メガネの少女が言えば、全員が同時にその方角を見る。

数十メートル先、キャンサーが二体こちらに向かって歩いてきているのが見えた。

 

「二体か...どうする?」

「あたしが「自分に片方相手させて」...大丈夫か?」

 

心配そうな目で見てくる二人。

無理もない、先ほどの戦闘ですぐにリタイアした人間が時間稼ぎだなんて無理だろうという心配は理解している。

だが、それでも自分が時間稼ぎをする利点の方が大きい。

 

「相手はさっきの奴とは別のキャンサー。だったら時間をかけて二体を倒すよりも一体一体を短時間で狩った方が危険性は減るはず。

...それに二人が速攻で片方倒してくれれば安心」

「おうさ、あたしたちが組めば秒で倒せるね」

「いや待て二人とも、簡単に言うがあたしたちも戦いは初心者だ。ここは各個撃破より全員でサポートできる場所で戦った方が安定する」

「「確かに!」」

 

盲点だった。慣れていないせいもありその考えが浮かばなかった。

戦いとはチーム戦だ。誰かが動くよりも、誰かと動く方がいいに決まっている。

 

「前衛は二人に任せる...が」

「?」

 

何か言いたそうにこちらを見るメガネ少女に首をかしげる。

 

「いや、そういえば名前聞いてなかったと思ってな」

「あ、ほんとだ」

 

自分の中では彼女らが名前以上のイメージで固まっていたせいで気にしていなかったが、確かに自分たちは互いに自己紹介をしていない。

それでは流石に今後ともよろしく!と出来ないから自己紹介はしっかりした方がいいだろう。

 

「自分は湊本、湊本舞(みなもとまい)。二人は...?」

 

少し不安になりながら言う。

 

「あたしは茅森月歌(かやもりるか)、んでこっちが___メガネのツッコミ役」

「メガネのツッコミ役違うわ!...和泉(いずみ)ユキだ。よろしくな」

 

茅森月歌、和泉ユキ。その二人の名前を記憶に書き残す。

 

「さて、作戦だがさっき同じで茅森と湊本が前衛...ん?茅森、月歌...?」

 

「いや、今はそれどころじゃないな」と誤魔化す様に和泉さんはそのまま話を続ける。

 

「あくまでもあたしたちは初心者だ。デフレクタが危険になったら周りに声をかけて後ろに下がること」

 

そう言って和泉さんは確認を取る。

 

 

 前衛として戦える自信があるか、と聞かれれば「ない」と答える。

先ほど戦ったキャンサーでさえ弱い方の個体だ。それなのに自分は、戦えなかったのだから。

 

「大丈夫だよみなちゃん」

「み、みなちゃん!?」

「うん、湊本―って呼ぶよりはいいだろ?」

 

気が付けば茅森さんが肩に手を置いて、勝手に付けたあだ名で嬉しそうに話してきた。

その行動に和泉さんもお手上げだと言わんばかりに手を上げているのが横目で見える。

 

「もしみなちゃんがやられそうになったら、あたしたちが助けるから。

だから、あたしたちがやられそうになったらみなちゃんが助けてよ」

「...茅森さん」

 

近づいた彼女の瞳が、自分を見ている

約束をするように、願うように思えるその言葉。だからこそ今、自分は約束する。

 

「自分と約束を「話の途中で悪いが二人とも、来るぞ」___っ!」

「行くぞ皆!」

 

茅森さんの掛け声とともに走りだす。

敵は先ほどまで少し遠くで動いていた二体のキャンサー。こちらを認識したのか走ってきているのが見えた。

 

「予定通りいくぞ。

茅森、湊本。前衛を頼む」

「「了解!」」

 

和泉さんが足を止めて射撃体勢に入ったのを確認してから、茅森さんと左右に分かれる。

 

(やっぱりデカい)

 

先ほどとは異なる緑色の何かを付けた敵。

 

改めて対峙して実感する敵への恐怖。

それ以前から恐怖がなかったと言えば嘘になるが、自分たちがこれから戦う存在がいかなる存在なのか。それを考えると足がすくんでしまいそうになる。

 

(来るっ!)

 

最初に相手したキャンサーとは違い、その行動速度は遅く鈍い。

 

「まずは一発!」

 

イメージするのは茅森さんがしていた動き。

攻撃を避けてすれ違いざまに足を斬る。それだけの筈なのに、自分では外殻に邪魔されて浅い斬り込みしか入れられない。

 

「もう一発っ!」

 

そのままの勢いで後ろに付く。

キャンサーは多脚。旋回速度は二脚よりも遅いはずだと、そう願いながら地面を蹴る。

 

 踏み込み、速度、バランス。

全てが嚙み合った攻撃はキャンサーに傷を与えるには十分すぎた。

 

斬られた部分から消えていくキャンサーに安堵の息を吐く。

 

(勝てた...? そうだ茅森さんたちは!?)

 

戦闘時間は数秒。

勝てたという実感が湧かない勝利。だが、今は勝利を喜んでいる場合ではない。

 

周囲を見渡せば、戦闘をしている茅森さんたちを見つけた。

有利にことが進んでいるのか、危なげなく戦っている二人は安定したコンビなのだろう。

 

ならば今、自分のすべきことは自分で考えなければならない。多分、今はそういうことなのだ。

 

(なら二人の援護を)

 

援護に入るまでもなく終わりそうな戦闘に参加する必要はないかもしれない。

でも、それを理解していても自分は二人を助けたい。

 

「援護します」

 

茅森さんの攻撃に合わせる様に、キャンサーの背後から一撃を入れる。

 

(思ったより硬い!?)

 

先ほどのとは違い硬い外殻で覆われた身体にダメージを負わせることは叶わなず、有り余った勢いで体勢を崩す。

 

「みなちゃん危ない!」

 

体勢を崩した自分に攻撃を仕掛けてくるキャンサー。

それを邪魔するように茅森さんが外殻を切り裂いた。

 

「湊本、そいつは強敵だ! 一度こっちにこい!」

 

追撃と言わんばかりに砲撃を撃ち込む和泉さんの横に逃げる。

 

「ごめん。結局助けてもらっちゃった」

「いや、こっちのセリフだ。おかげでヤツの外殻は削りきったからな」

 

「え、凄い」と言う自分に和泉さんは「お前が来なかったらもっと時間がかかっていた」と笑う。

 

少しは助けになったという現状が、自分にはとても大きなものに感じた。

 

「和泉さん、自分に考えがあります」

 

気合を入れる。

まだ戦いは終わっていないのだから、自分のやれることはまだある。

 

「自分が囮になります」

「本当に、大丈夫なんだな?」

 

死ぬつもりはない。

その意思を汲み取ったのか、提案をのんでくれた和泉さんに心の中で感謝する。

 

「行きますっ!」

 

全力で地面を蹴り、身体を加速が襲う。

かろうじて自分で扱いきれるほどの速度は、少し気を抜くだけで暴走してしまいそうだ。

でも___

 

「___これでっ!」

 

速度を生かした陽動。

擦り傷程度しか入らない攻撃だが、それでもキャンサーはこちらに気が向いている。

 

「茅森さんっ!」

「任せろ!」

 

まさに連携だった。

キャンサーの後方から、茅森さんの攻撃が直撃した。

 

「二人とも下がれ!」

 

瞬時に和泉さんの声がし、共に二人が下がれば、倒れ込むキャンサーのいる場所に砲撃の雨が降り注ぐ。

 

「よし!」

 

消えてゆくキャンサー。

撃破の証明であるその現象を確認して、自分たちはハイタッチをした。

 




戦闘時にギャグが入れられない...反省


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day0 帰投

いい加減day0終わらそうぜ!(三話でも終わっていない)
そして今回も詰込みで書きましたのでミスたっぷりです。ではどうぞ!


「とりあえず周囲の敵は倒せたかな?」

 

広場周辺にある建物の屋上。

そこから周囲を見渡し、キャンサーがいないことを確認して安堵の息を吐く。

 

「お疲れ、みなちゃん、ユッキー」

「ついにあたしまであだ名で呼びだしたか」

 

「やっぱあだ名で呼んだ方がいいじゃん」なんて言いながら笑顔で話す茅森さんを見ながら笑う。

さっきまで戦闘をしていたとは思えない緊張感のなさ、それが彼女の美点なのだろう。

 

「はぁ...一通り倒し終わったんだし、教官に報告しに行くか?」

「そうだな。 みなちゃんもそれでいいだろう?」

 

「そうしましょう」と茅森さんの言葉に返事をしながら、もう一度街を見た。

 

(たくさんの人が、ここに居たはずなんだ...)

 

今は崩れて過去の繁栄を思わせるくらいしかできない街並み。

...自分は街に行ったことがない。

小さな村で暮らしてきた自分にとって、大きな街というのは憧れの対象で、でも遠くて届かない空の太陽のようなものだった。

 

「おーいみなちゃん、置いてくぞー」

「今行く」

 

既に建物から降りている茅森さんに返事をして、もう一度街を見た。

 

「___約束、果たせなかったな

 

無意識に出た小さな声。

いっそ消えてしまえばよかった呟きに答えるものは何処にもいない。

後悔として、懺悔として、この約束はずっと自分の中に残り続ける。

 

 

 

 

「あれ、この人たちは?」

「さっき会った。

華奢でかわいい方が朝倉可憐(あさくらかれん)で、諜報員っぽいのが東城(とうじょう)つかさ」

 

建物から降りて最初に目に入ったのは、新しく増えていた二人を紹介してくる茅森さんだった。

 

「あのな茅森、それだと紹介になってないからな」

「そんなっ!? あたしの完璧な紹介が!?」

 

おそらくパーカーを着た少女(朝倉可憐)金髪の少女(東城つかさ)であっているのだろう。

それぞれがそれぞれの表情をしながら茅森さんと和泉さんのコントを見ている。

 

「あー...自分は湊本舞。湊本とか舞とか好きに呼んでくれればうれしいかな」

 

挨拶と自己紹介。

これ以上待っていても進まないだろうから無理やり気味に話を進めれば、二人がこちらに視線を向ける。

 

「あ、うん。あたしが朝倉可憐、FPS系のゲームが得意なだけの元女子高生」

「わたしは東城つかさ、諜報員よ」

 

それぞれの自己紹介。

その名を、声を記憶にしっかりと刻み込む。

 

「二人もキャンサーを狩ってここまで?」

「うん、いきなり戦闘だからびっくりしちゃったけど」

 

「確かに」そう同意しながら二人のセラフを見る。

 鎌と小銃。

バランスがいいかと言われれば近接とそのサポートをする遠距離でバランスはいいと答えられる。

 

 見た感じ怪我も無いようだ。

戦闘慣れしているかは分からないが少なくても自分よりも上手く立ち回って戦っていたことに間違いはないだろう。

 

「とりあえず周囲のキャンサーは倒せたみたいだし、教官に言って退却。みんなもそれでいい?」

「ほんとに切り替えが早いな、お前」

 

和泉さんとのコントが終わった茅森さんの言葉に、そこ場にいた全員が頷いた。

 

____________________

 

 

 

「あなたたち、整列しなさい」

「え? あたしら?」

 

帰投してすぐ、教官の言葉に茅森さんが首を傾げた。

 

「今日はよくやってくれたわ」

 

そんな姿を気にもせずに話し続ける教官に思わず笑いそうになるもそれを我慢。

顔に出ないようにするのに精いっぱいで話なんて碌に聞けていなかった。

 

「湊本さん、あなたは別部隊だから今からナービィー広場に行ってもらえる」

「え?」

 

唐突な移動命令に自分以外も全員が驚いた。

 

「えっ! みなちゃん別部隊なのっ!? ブーブー!」

「...そうか。服が違うから何かあるかと思ったが、別部隊だったか」

「教官。ちなみに自分は何部隊なのですか?」

「31S部隊よ。

31Aよりは前線に行く機会が少ない部隊だけど、その分他の部隊へのサポートが中心になるわ」

 

ブーイングをする茅森さんを横目に教官に問えば、自分が所属する部隊の情報が話された。

 

 第31S支援部隊。

名前の通りで他の部隊を支援することを中心とした後方部隊であること。

隊員は他部隊と同じく六人、それぞれが特化した人材であること。

単独での他部隊支援を行う場合や、埋め合わせとして他部隊に一時的な所属をすることがあること。

 

「つまりは派遣会社みたいな感じですか...?」

「多少差はあれど大まかにはそんな感じね」

 

「ある意味では31Aよりも大変な部隊になるわ」と教官は言う。

そんな部隊に所属するのかと考えると恐ろしい。自分が戦えるのかと、不安になる。

 

「大丈夫です。作戦前には訓練もありますから」

 

気が付けば目の前に少女がいた。

 

(確かこの子は___)

 

「___例の合法ロリ?」

「何が例の、かは分かりませんが違います」

 

違ったらしい。

 

「すみません。 出撃時に指示を出していた人ですよね?」

「はい、そちらの茅森さんたちの世話役をする七瀬七海(ななせななみ)です」

 

ペコリというよりもシャキッとした感じの一礼をする七瀬さんに、自然とこちらも一礼をする。

 

「さて、茅森さん、31A全員が入舎したら私に報告して」

「え? なんであたしが?」

「あなたが部隊長だからです」

「嘘」

「本当です」

「さっき了解したんじゃないのかよ」

 

なんて和泉さんのツッコミが冴えわたりながら

 

「では宿舎まで案内します。茅森さんたちはついてきてください」

 

話は進んで気が付けば教官と自分の二人きりになっていた。

 

「教官、ナービィー広場って何処でしょうか?」

「案内するわ。ついてきて」

 

「は、はい」と返事をして、前を歩く教官についていく。

 

(...奇麗な景色だな)

 

橋の上から見える景色。

崩れた街がこの基地からも見える。

先ほどまで自分たちはそこにいた。あの崩れた街の中、キャンサーと戦っていた。

 

「湊本さん」

「な、なんでしょうか...?」

「31Sはその役割上、特殊な役割をこなすことになるわ」

「他部隊の支援など、ですよね?」

「えぇ」

 

肯定する教官の素振りに違和感を覚えた。

きっと役割はそれだけではないのだろうと、直感が言う。

 

「他に、何か役割があるんですか?」

「...それは___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___亡くなったセラフ部隊員の遺品回収よ」

 

 

__________________

 

「ここがナービィー広場になるわ」

「...」

 

目的地に案内された自分に、反応する余裕はなかった。

 

「新人である31Sに課す任務ではないと思っている。

でも、誰かがやらなければならないのも事実なの」

「...他の部隊員は知ってるのですか」

 

答えは沈黙。

自分以外は知らないのだろう。

 

「それが自分の、隊長としての初仕事なんですね」

「いきなり大変な仕事を任せて悪いわね」

「...いえ、別に」

 

怒るという選択肢が出なかった訳ではない。

本当は怒りに身を任せて「なんでこんな仕事を自分たちにまかせるのか」と言いたかった。

でも、誰かがやらなければならないというのは本当の話だったから、何も言えなかった。

 

「もう少しで他の部隊員が来るわ」

 

「あとは任せるわね」と一言言って、教官は広場からいなくなった。

 

(...遺品、か)

 

 誰もいなくなった広場で一人、思考に耽る。

 

 自分たちは軍人となった。

たとえ自覚がなくてもそれは事実で、セラフをもってキャンサーを狩る兵士となった。

その中で亡くなった人が多数いる事実から目を背けるというわけではない。人類を守るために戦った多くの人を疎かにしていいはずがない。

遺品回収という役目は、そんな英雄たちを供養するために必要不可欠な行為だ。

 

support(サポート)scavenger(スカベンジャー)その両方の意味でのS部隊なのかもしれない。

だが何故自分がその役目を負う形になったかは、きっと司令部しか分からない。

 

「おっ、もう人がいたのか」

 

後ろから声が聞こえて意識を戻せば、二つの影がこちらに歩いてきているのが見えた。

 

「31S部隊の部隊員ですか?」

「あぁ、そっちは部隊長って感じ?」

「えぇ、自分は31S部隊長、湊本舞です。お二人の名前は?」

 

現れた白い髪の少女と黒い髪の少女。

顔は似ていないのに背丈がほぼ同じというのもあってか、創作作品にある姉妹みたいだ。

 

()高橋悠奈(たかはしゆうな)

 

「俺っ子...?」なんて小さな声で言うが、幸いにも聞こえなかったらしい。

話は途切れることなく「んでこっちは」と言いながら黒い髪の少女、高橋水瀬は白い髪をした少女の方に視線を向けた。

 

「私は霜山颯(しもやまはやて)

「これでも俺たちセラフ部隊に所属する前から知り合いなんだ。

...初めて話すの結構疲れるからな、ほんと助かったわ」

「それはお前がコミュ障なだけだろ」

「んなっ!?」

 

霜山さんの言葉に反応する高橋さん。

そんな光景に笑みがこぼれて少し安堵した。

この人たちはいい人そうだ、と。

 

「他の部隊員はまだ到着していないから、二人はベンチとかで待ってて」

 

少し話しが盛り上がる。

まだ到着には時間がかかるだろう。

残りの三人らしき姿は何処に見えないのを確認してから二人に指示を出すことにした。

 

 一応誰かは見える範囲にいた方がいいだろうから、自分はナービィー広場の大きな木の下から動かない。

 

「さっきの戦闘、二人はどうだった?」

「ん? あ、あー、うん。ぼちぼちだったな」

 

高橋さんの頬をかきながら答える。

 

(なんか随分と言いづらそうに言うな)

 

「霜山さんは?」

「...」

 

(...返事がない)

 

「霜山さん?」

「...すぴぃー...すぴぃー」

ね、寝てる!?

 

振り返ってベンチに座っている霜山さんを見れば、寝息を立てて気持ちよさそうに___

 

___って、そもそも座ってない! 寝っ転がってるっ!

 

(もしかして、初めての戦いだったから疲れてたのかな?)

 

戦いなんて体験したことがある人の方が少ない。

自分だって、戦いを経験したことなどないはずだ。頭では疲れてないと思っていても、身体は悲鳴を上げているなんてありえない話じゃない。

 

「にしてもぐっすり眠ってる」

「昔からすぐ寝れるんだよコイツ」

 

「寝つきの悪い俺にはうらやましくて堪らん」と一言。

気が付けば先ほどまで笑っていた高橋さんの表情は硬いものになっていた。

 

「なぁ、湊本部隊長」

 

先ほどとは打って変わって真面目な雰囲気に息をのむ。

 

自分たちは軍人だ。

いつ死ぬのか分からない。

だから、こんな真面目な表情で言われることなんて限られるだろう。

 

「なに? 高橋さん」

「俺、頼まなきゃいけないんだ。

みんなに迷惑かけないために、俺一人のせいで甚大な被害を出さないために」

 

甚大な被害。

考えられる要因が思考をよぎり、また息をのんだ。

 

「ゴクリ...いったい何をすれば...?」

「朝、起こしてくれ」

 

「えっ」と声に出さなかった自分を褒めてほしい。

凄く真面目な表情で頼まれたことがそんなことなのかと、聞かないでいる自分を褒めてほしい。

 

「どした? そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔して」

「あ、あっと...その」

(あっと)?」

「そっちじゃなくて、朝って...朝だよね?」

「そそ、俺、朝弱いんだ。だから頼む! こいつは起きたら勝手にどっか行くし頼める相手がいないんだ」

 

こいつと言いながら霜山さんの頭をぐりぐりやる高橋さんに苦笑い。

朝が弱いというのは仕方のないこと...かはわからないが、せっかくのお願いだ。聞かないわけにもいかないだろう。

 

「まぁ、そのくらいはいいんだけど」

「...?」

 

首を傾げて不思議そうな表情でこちらを見る高橋さん。

 

「せめてもう少し...言い方は変えてね」

 

「遺言とかその類の話かと思ったから」と、そう言って空を見上げた。

 




ギャグ...やっとギャグが多少入れられた...でもツッコミ役は誰になる?
しかし遺品回収ってどうなんだろうか? 設定が分からねぇ!...そうだ独自解釈があった!()
ps.二章終了。これ二次創作と言えど救えるか...?

第31S部隊 部隊長
湊本 舞(みなもと まい)
セラフィムコード:【約束はここに、私はここに】
使用セラフ:ダガー型 ×2
一人称:自分 
身長:161cm
出身地:???
生月日:??月??日

第31S部隊の部隊長。
被害の少なくするためには自分を犠牲にするのも厭わない性格。
部隊の中では唯一の戦闘向けのセラフ持ち。しかしその能力を発揮できているとは言いづらく、戦闘能力は部隊内で2位となっている。

見た目イメージ(現状)
青い肩程度まで伸びた髪に茶色の瞳。
丸っこい感じの目。きりっとはしていない(語彙力消失)


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day0 第31S部隊

い つ も の 未 調 整 作 品


遠くから虫の声が聞こえ始める春でも、そこそこの冷え込みで体を震わせるには十分な寒さである。

 

「すみません、遅れました」

 

高橋さんと話して十数分。

そろそろ一度連絡を取ろうと思ってきたところで、広場の外から声が聞こえた。

 

「ようやく来たか...これで飯食いに行けるな!」

 

と、言ったのは高橋さん。

現在時刻を確認しながらその言葉に同意して、到着した残りの三人に視線を向けた。

 

「途中でこれ(・・)が壊れてしまいまして、修理していたらこんな時間に」

 

そう言いながら声の主、小さな少女の足元に付いている機械に視線を向ける。

動くたびに駆動音を出しながら曲がる機械は、足にくっついているのだろう、足と同期して同じ動きをする。

 

「え、ナニコレ?」

「パワードスーツです」

 

「は...?」と声が出た。

先ほどまで話していた高橋さんも同様で、目を点にしてこちらを見ている。

 

「と言っても、これはパワードスーツよりも歩行補助の機械ですね。まだ実験段階ですから」

「え? ...え?」

 

(ぱわーどすーつ...?)

 

そう思うのは自分だけではなかったようで、隣の高橋さんも頭の上に疑問符を浮かべている。

 

「知貴、普通はそんな風に言われてもピンとこないだろ?」

「しかしそれ以外の表現方法はないですよ。 我々の提出した資料も結局パワードスーツで通してしまいましたし」

 

後ろにいたメガネをかけた女性が言えば、知貴と呼ばれた少女は困ったように頬をかいた。

 

「と、とりあえず、お互いに自己紹介しませんか? これから同じ31Sのメンバーですし」

「そうしましょう。 ぼくは知貴、釜屋(かやま)知貴(ちき)

「自分は湊本舞。こちらの黒髪の子が高橋悠奈で、白い髪をしたのは」

「___霜山颯だ」」

「ホいつの間に!?」

 

いきなり後ろから声がして、驚いた自分に彼女は「さっきから起きていた」とジト目で言った。

本当にいつの間に起きていたのだろうか。気が付いたら後ろにいるというポル〇レフ体験をしたような気分になりながらも、一拍おいて話を続ける。

 

「そちらのメガネの方は?」

「あたしか。あたしはエル・ハーシェル。同じ部隊だ、気楽にエルとでも呼んでくれ」

 

その長い茶髪を揺らしながらこちらに手を差し出す彼女は、メガネも合わさり知的で年上に見えてしまう。

勿論、見た目で判断するなどあまり褒められた行為ではない

しかし、海外の人なのだろう。 日本人とは異なる外見である彼女に対するイメージは、すっかり年上として固まってしまっていた。

 

「では自分も舞と、親しい人にはそう呼ばれていましたから。

...ところでもう一人の方は?」

 

そう言いながら二人の影に隠れている最後の一人に視線を向けた。

包帯のようなものを身体に巻き付けているその見た目は、一瞬怪我をしているのかと心配になるがよく見ると血が滲んでいるようなことはなく、巻き方も緩めになっている。

おそらくファッションで巻き付けているのだろうが。

 

(なんで巻き付けているの? と聞くのは野暮なのかな)

 

一部一部に巻き付けられているチェーンがそれを物語っている。

電子軍人手帳を身体につける際の固定具もすでに弄られており、ジャラジャラな銀の鎖が街灯に照らされて眩しい。

 

「クックックッ...ようやく我が出番のようだな!」

 

そう言いながら片手を大きく振り上げて、謎の動きをした後に天を指さす。

何度も行った行動なのだろう。 一連の動きには慣れを超えた武術の型に似た何かを感じさせる。

 

「我が名は比良坂愛奈(ひらさかまな)! この部隊随一の強者であり、汝らが導であるっ!」

「「「「・ ・ ・」」」」

「___何か言ってよっ!?」

 

「いや、何かって」困惑を隠さず呟く高橋さんを、横から霜山さんが小突いているのを横目に比良坂さんを見た。

折角の名乗りへの反応が薄かったのか。オドオドとした反応をしている彼女の特徴はやはり、そのわざとらしく巻かれた包帯だろう。

中二病...そう呼ばれる古くから伝わる病、きっと彼女はソレを患っているのだ。

 

(>そっとしておこう)

 

脳内の選択肢が答えを出したところで現実に意識を戻す。

 

「とりあえず全員そろったから部屋に行こうか」

「待ってなんでみんな全然反応してくれなないのぉぉぉ____!」

 

後ろから聞こえる悲痛な叫びから、自分たちはは目をそらすことしかできなかった。

 

 

 

______________________

 

 

「___もうヤダ、死にたい」

 

そう呟く彼女に罪悪感を覚えながら進む先は、自分たちがこれから暮らすことになる部屋。

曰く部隊それぞれに割り当てられたものらしく、他部隊同様の一部隊一部屋の編成らしい。

 

「ここが31Sの部屋かな」

 

建物通路の真ん中あたりだろうか?

地形的に比較的出入りしやすいのは助かるが、それはきっとこの部隊が多忙だからこそなのだろう。

 

中に入れば二段ベッドが三列に、何の装飾もないシンプルな部屋と積み上げられた段ボールがお出迎えする。

 

「よし! 飯食い行こうぜ!」

「寝るか」

「機械の整備をだな」

「待て知貴、その前に道具のチェックだ」

「...もういいやふて寝しよ」

「その前に持ち物チェックだよ」

 

「「「「「えぇー」」」」」

 

「えぇー、じゃないわ」

 

不満そうに全員がこちらを見る光景に思わず笑いながらやるべきことを確認する。

 

「とりあえず全員、部屋に置かれたものが全部あるかの確認をすること」

 

非常食、飲料水、ライトetc...

災害用のセットから現在支給されている衣服の替えなど、確認すべきものは多くあった。

 

「確認しないとご飯にも食べに行けないからね」

「よし! みんな早く確認するぞ!」

「そうそう、それくらいやる気を出して___」

「___終わった!」

って、はやっ!?

 

満足そうに頷く高橋さん。

 

「え、本当に確認終わったの...?」

「しっかり確認したぞ。 衣服も非常食なども全部ある」

 

「何なら確認するか?」とバッグを開いて確認させようとするのを拒否しながら、全員に確認を促しつつ自分も確認作業を急いだ。

 

...

 

___数分後。

 

「全員、確認終わったかな?」

 

確認のために声をかければ全員が頷く。

 

「時間もいい感じだし、そろそろ夕ご飯に行こうか」

「ようやくだ―っ!」

「...あはは」

 

オーバーな反応をする一人に笑いながら、予定を確認する。

 

夕ご飯を食べ、その後は各自風呂などの自由時間。そして日付が変わる前に就寝。

 

これが、本日残り時間の大まかな予定だ。

 

(これから話さないと、か)

 

31S部隊の仕事(役割)

自分たちがこれから行う作戦の重要性を、彼女たちに伝えなければならなないし、納得させなければならない。

自由時間が若干ある。

本来はあそこで戦闘などなかったのだろうから、もっと時間があってそれぞれの部隊での交流を深めるはずだったのだろう。

 

(...もう少し時間があれば)

 

あまりにもできたタイミングでのキャンサーの襲撃を思い出して、窓の外を見た。

日が沈みかけているのか若干暗い外を。

決して街が見えるわけではない。 何かに違和感があったのだ。

 

「大丈夫か? 舞」

「え、あ、うん。 大丈夫」

 

気が付けばエルが目の前で心配そうな表情をしていた。

 

「キミが私たちの部隊長なのは状況から理解している。

ただ、一人ですべてを背負い込む必要はない。 それだけは伝えさせてくれ」

 

まっすぐとこちらを見つめるその瞳をこちらに向け、自分を正面に捉えて話す彼女の言葉にはどこか説得力がある。

 

「あたしもお腹がすいたのでな。 先に失礼させてもらう」

 

返事を言う前にエルは廊下の先へと歩いて行った。

 

 

...残った自分は、一人で薄暗い廊下に立っている。

みんなも先に食堂に向かったのだろう。

 

グゥゥゥ、っとお腹のなく音が聞こえた。

出撃により食べるタイミングを逃していたのだ、お腹が鳴るのも無理もない。

 

(自分も行くかな)

 

『本日入隊をされた皆様はカフェテリアにお集まりください。 夕飯の用意が出来ています』

 

歩き出そうとしたところでタイミングよくアナウンスが流れた。

 

______________

 

 

大きな建物、広い室内。

高い天井からぶら下がるライトが、優しく自分たちを照らすこの場所。

これから自分たちが毎日食事をすることになるであろうカフェテリアに着けば、

 

「席、取っておいたから」

 

と、全員分丁度の椅子のある席でこちらに話す霜山さんと、その目の前に置かれた刀削麺が視界に入った。

 

「ありがとう、他の人は?」

「多分選んでるんじゃない?」

 

素っ気ない反応をしながら刀削麺を食べていく光景を見ながら、カフェテリアの先に置かれた豪華な料理に視界を動かす。

 

(食べ放題形式なのか)

 

煌びやかに配置された料理は、今が人類の危機だとは思えないほどに多い。

勿論、これから自分たちは人類を守るために戦うのだからいい食事くらいは出来ていいだろう。いつ死ぬのか分からない身なのだから、それくらいの贅沢は許してもらいたい。

 

(...だけど妙ではある)

 

食べ放題、ソレは多少なり廃棄が確定するものだ。

それを出すというのはいくら新入隊員をお出迎えするための食事だとしてもやりすぎだと思う。

 

(とりあえず、何があるのかな)

 

折角の食事。考えるだけで何も食べないのは勿体ないと料理の置かれている場所に歩いていけば、少し遠い窓際に見慣れた数人が見えた。

 

(あ、茅森さんたちだ)

 

二人ほど見たことのない顔が見えたが、それはおそらく残りの31Aの部隊員なのだろう。

挨拶をする前に分かれたからそこらの状況はわからないが、少なくとも仲は悪くなさそうだ。全員が全員楽しそうに話しているのが遠くからでも見て取れた。

 

(挨拶は、明日以降でいいか)

 

今は部隊同士での親睦を深めるべきであって、他部隊とのかかわりは今取るべきものではないだろう。

実際、自分も今優先すべきなのは31S部隊全員にこの部隊の役割を説明と仲を深めることなのだから。

 

「舞さん、来ないから心配してましたよ」

「すいません、ちょっと考え事してて」

 

後ろからお盆に食べ物を乗せて持ってきた嘉山さん。

 

「嘉山さんはカレーなんだね」

「うん、安価で量も作れてアレンジも利く。 昔からカレーだけは嫌いになれないよ」

「あー、一人暮らしとかだと重宝するらしいもんね」

「...だからから、気が付いたら自然とカレーを選んでしまった」

 

そう苦笑いをしながら彼女は取られた席に移動していった。

 

(刀削麺...カレー...)

 

ゴクリと、つばを飲み込んだ。

真逆のジャンルの料理に、いったいどれほど料理の種類があるのかと期待に胸を膨らませる。

 

「おぉ!」

 

思わず声が漏れた。

そこにあるのは料理の列。

食べ放題というのは知識のみで実際に行ったことはないが、おそらくそれらを凌駕するであろう種類、そして量。

 

「...焼き鯖」

 

ポツリと端の方に置いてある焼き鯖がその脂身を神々しく輝かせながら食べてほしそうしている。

 

(でも今は鯖の気分ってわけじゃないから)

 

そう思い別の方向に視線を向けようとして見るが、何故だろう? 視界の端には先ほどの鯖のきらめきが見えて仕方がない。

かと言って真逆の方を見てみれば鯖の匂いが鼻を襲う。

 

「___はぁ」

 

諦めのようなため息とともに、輝く鯖の方に足を進めた。

 




三章進めないと...進めないと...エルデンリングアッアッアッ


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day0 閉幕

い つ も の
...の前に、一気に評価が増えて驚きを隠せない状況です。本当にありがとうございます<(_ _)>


「...あの覚悟を返してほしい」

 

近くの自動販売機で購入したコーヒーを一口喉に流し込み、ため息を吐いた。

 

時間はすでに23時をまわり、多くの人は部屋に戻っているこの時間帯。

それなのに自分は一人で星が見える道端のベンチに座り込んでいた。

 

(楽に終わったのはいいことなんだけどさ、なんか釈然としない)

 

思い出すのは一時間ほど前の部屋での出来事。

意を決して31S部隊の役目の役目を説明してみれば各員の反応はこんな感じ。

 

一人は“少し悩んだ”のちに覚悟を決めて自分の手を取った。

一人は“そういうものだと”最初から達観したかのように頷いた。

一人は“試験にはちょうどいい”とイキイキした表情で何か作業をし始めた。

一人は“それが仕事なら”と大人の余裕で受け流した。

一人は“我に不可能などない”と自信を持った笑顔で高らかに宣言した。

 

だけど自分は___

 

「ヘイ、お嬢ちゃん。 今暇かい?」

 

(___っ!)

 

急に話しかけられたために身体がビクリと反応する。

そのまま声の主の方面に顔を向ければ、見慣れた人物がコーヒーをもって立っていた。

 

「か、茅森さんか。 驚かさないでよ」

「ごめんごめん。 たまたま外に出たら見かけて、隣いい?」

 

「いいよ」そう返事をすれば茅森さんは隣に座った。

 

「シガレットチョコいる?」

「やめておく。 チョコ、あんまり好きじゃないんだ」

「そっか」

「...茅森さんはどうして外に?」

 

シガレットチョコを食べながらコーヒーを飲む茅森さんに対して疑問をぶつけた。

 

23時を過ぎたこの夜遅くに態々外に出る理由なんてない。

外に出ている自分が言っても説得力はないが、普通はこの肌寒い時間帯に外に出るなんて本当に理由がない限りは避けたいだろう。

 

「いやぁ、寝れなくって」

「出撃があったんだから疲れてるでしょ」

「それをいうならみなちゃんだって、疲れてるはずなのにここにいる」

「うっ」

 

それを言われてしまえば何も言い返せない。

そんな感じの声を上げて空を見た。

 

「夜風にあたってさ」

「ん?」

「夜風にあたって、これからのことを考えてた」

 

ここら周辺は夜でも明るい。

街灯がいくつも設置してある基地内は夜遅くになっても明かりが消えることなく照らし続けている。

だから星はあんまり見えなかった。

村にいたころはあんなにも見えていた星は、今では半分も見えないで空の何処かに隠れているから。

 

「不安なんだ。 これから先が」

「そう? あたしはここに来てからいい予感しかしてないけど」

「それは茅森さんが強いからだよ」

 

「それに比べて自分は全然」と、空を見上げていたはずの顔は気が付けば手元を見つめていた。

 

「でも、あたしはみなちゃんも凄いと思うけどな」

「えっ?」

「だってさ、あたしとユッキーが戦ってる間に一体倒してたじゃん」

「でもあの個体は弱いやつで」

「そんなの関係ないって、強かろうが弱かろうがキャンサーなんだから」

 

ズズッとコーヒーを口に含み、茅森さんはこちらを見る。

真っすぐな瞳。決して嘘なんてついていない潔白の視線が自分に向けられる。

 

「ねぇ、茅森さん」

「なに? みなちゃん」

 

空を、見上げた。

 

「あの時に言ったこと、自分と___わたしと約束してほしいんだ」

「あの時って?」

「もしわたしがやられそうになったら茅森さんが助けて、茅森さんがやられそうになったらわたしが助けるって、自分に話したでしょ? それを約束したいんだ」

「...わかった。約束しよう、あたしたちだけの約束だ」

 

互いに手を取り合った。

その瞬間だけは不安も焦りも感じなかった。

 

星が輝いている。

何処までも、何処にでも、最も明るい月を守る様に輝いている。

 

「...やっぱりチョコ、貰っていいかな」

「はいよ」

 

準備していたかのように、茅森さんはシガレットチョコを渡してくれた。

 

渡されたチョコは、自分にとって甘すぎて___

 

「ありがとう」

 

___懐かしい味をしていた。

 

 

____________

 

 

「おかえり」

「まだ起きてたんだ」

 

時刻はすでに一周回り、カレンダーは次の日を迎えている、そんな時間。

それなのに部屋に戻れば、外出前と同じように机の上をライトで照らしながら作業をしている嘉山さんがいた。

 

「ぼくの作業はこれからだから」

「作業って、あのパワードスーツのこと?」

 

疑問を投げかければ嘉山さんは「あぁ」と答えて手招きをする。

 

「ぼくは、これの製作が続けられればそれでいい」

「言ってたね。 31Sの役目もその試験になるって」

 

机に乗せた機械をいじりながら話す彼女と、机を挟み対面する形で座る。

 

「そもそも、ぼくはセラフ部隊に入るつもりはなかったんだ」

「入るつもりがなかったって、人類がピンチなのに?」

「ぼくとしてはこれさえ完成させればキャンサーの撃退は可能だと考えている。

だから、セラフ部隊に入るつもりはなかった」

 

キャンサーの撃退が可能、その言葉に耳を疑った。

セラフでしか倒すことのできない存在であるキャンサーをどうやって倒すのかなんて、自分には考えつかないのだから。

 

「でも、なんでセラフ部隊に?」

「...資金面だ」

 

「あー」と声を出して納得する。

何というか、世の中世知辛いというべきか、目の前にいる彼女はそんな表情でうなだれていた。

きっと今までも苦労をしてきたのだろう。

そんな光景が目に浮かぶ。

 

「そもそも資材だって足りていない。 大体の資材はセラフ部隊に入ってしまうからね」

 

キャンサーを倒すことのできる存在。

そんな唯一無二の部隊に資材などが集まるのは無理もないことだろう。

 

(でも...)

 

「キャンサーを倒すことが出来るかもしれないなら、多少は融通を聞かせてくれるんじゃ...?」

「いや無理だ」

 

なんで? そう聞こうとする前に彼女は話を続ける。

 

「今必要なのは未来の技術よりも現在の技術で敵を倒す方法。

もしまだセラフが開発されていなかったら、このパワードスーツは役に立ったが...その可能性はセラフの開発と共に潰えたよ」

「嘉山さん...」

 

語る彼女は真剣で、でも何処か虚ろに見えた。

それはまるで火の消えかかるろうそくの様で、今すぐにどこかいなくなってしまいそうなほどに虚ろだった。

 

「少し話過ぎた、今日は寝る」 そう言って嘉山さんはベッドに潜る。

 

「自分も寝ようかな」

 

そうだ、自分も眠ろう。

 

明日から訓練が開始される。

寝られるうちに寝なければ耐えられないだろうから。

 

___________

 

 

___夢を見た

 

温かい光の中にたくさんの人がいる

 

そこに自分は存在しなくて、でもそこにいる人たちを自分は知っている

でも、何かが違う

自分が知っている人たちの筈なのに、何かが違う

それが何なのか自分にはわからない

 

一人、いなくなった

温かな光は、微かに光力を弱めた

 

また一人、いなくなった

光はさらに弱まって、さらに寒くなった

 

また一人、いなくなった

また一人、いなくなった

また一人、いなくなった

 

 

 

___そして気が付くと一人、誰もいない何処かに立ち尽くしていた

そこに温かかったはずの光はあらず

冬のような寒さの中にいる彼女はただ、空を眺めていた

 

キミは誰?

 

自分の口から声が出ることはなかった

言葉が出るはずの場所からは風が吹くだけで何も伝えられない

 

彼女が一歩、前に進んだ

それを追うように動こうとするが、なぜか体が動かなかった

 

...待って

 

動かない、動いてくれない

いくら体を動かそうとしても、体が言うことを聞いてくれない

 

待ってよ

 

彼女が、こちらを向いた

やっぱり見知った顔だった

 

『_______________』

 

彼女の口が動いた

でも、聞き取ることは出来なかった

 

 




day0終わらせるのに5話もかかる小説があるらしいぜ!(自虐
ちなみにこの話の書き方がおかしいのは仕様です()


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一章
day1 早朝


ちょっと遅れました。
そして多分次回も遅れます!(`・ω・´)ゞ


「...朝、か」

 

少し眠気の残る体を起こしながら、目を擦る。

 

とても嫌な夢を見た。そんな気がする

具体的な内容は覚えていなかった。

それでも、あの夢のような光景は二度と見たくないと心から言える、そんな夢を。

 

(...あれ? 霜山さんがいない)

 

立ち上がってベッドを見てみれば、霜山さんの姿が見えなかった。

 

(どこ行ったんだろ?)

 

高橋さんが言ってた通りにどこか行ってしまうのか、と驚いた。

時刻はまだ4時。

起床時間にはまだ早いが___

 

(__探しに行こう)

 

外はまだ肌寒い。

ハンガーにかけてある自分の上着に手を伸ばして身に纏った。

こういう時は特に自分の服であるスカートが丈の長いもので良かったと心から思う。

 

「寒いっ!」

 

音を立てないように外に出れば、春になったばかりなのに寒い外の空気が出迎えた。

暖かくなるように腕を服の上から擦りながらあたりを見渡しても、霜山さんらしき姿は見当たらない。

それどころか人一人見当たらない現状に眉をひそめる。

 

「こんな寒い時間にどこいるんだろ?」

 

当然の疑問だ、と自分で肯定したかった。

誰も好き好んでこんな寒い時間帯に外には出ない、そう思いたかったが実際に霜山さんは外にいる。好き好んでこの時間帯に外にいるのだから肯定できなかった。

 

(でも、なんでこんな時間帯に外に...?)

 

お店もカフェテリアもやっていないこの時間帯に彼女は何を求めて外に出たのか。

無性にそれが気になった。

 

(自主トレーニング、ただの散歩...流石にこの気温で外で寝るのは危険だよね?)

 

探しながら思考する。

体感的には一桁ほどの気温ではなかろうか?

そんな気温の外で眠るなんて自殺行為だと思う。

前者であるトレーニングや散歩はまだ可能性があるが...それもこんなに寒い時間帯にやるべきものかと言われれば、そこはその人の予定的な部分もあるから何とも言えない。

どちらにせよ本人を見つけて聞かなければ分からないのが現実だった。

 

(トレーニングと言えば広場...)

 

「よし、ナービィー広場に行こう」

 

このあたりで広場と言ったらあそこしかない。

直感がそう叫んでいる。 もうこれ以上ないほど叫んでいる!

 

「そうと決まればダッシュだ! みんな! 自分に続けぇ!」

 

 

______

 

「いや待って、みんなって誰」

 

ふと冷静になって足を止めた。

それでも目的地には着いていたらしい。気が付けばナービィーたちがその可愛らしい瞳を輝かせながら思い思いの場所にいる、唐突な野球にも対応できそうな広さの広場に立っていた。

 

「しかしこう見ると広い」

 

(本当に野球くらいならできるんじゃないだろうか?)

 

そんな思考がよぎる。

 

(いや、ナービィーズが邪魔で野球は危険だ)

 

が、こんな思考が邪魔をした。

 

 

 

「...霜山さん、いないな」

 

考えるネタが無くなって現実を見ることにした。

探していた霜山さんらしき姿は何処にもおらず、見えるのはたくさんのナービィーたち。

もしかしたら既に部屋に戻っているのではなかろうか? と思い、走って疲れたからベンチに座ることにした。

 

「ふぅー」

 

ため息を一回。

久々に走って痛む足を摩りながら、思い思いに飛び交うナービィーたちを見た。

 

「この子達は人類のピンチとか分からないんだろうなぁ」

 

何を考えているのかわからないその謎生物。

その実態は司令部さえも理解していないのか、大事に扱えとしか電子軍人手帳には書いていなかった。

 

「___ん?」

 

誰もいない広場の近くから、音が聞こえた。

水面に何かが落ちるような音だ。

 

(ここらに池なんてあったっけ...?)

 

一度しか来ていないこの場所に詳しいわけではないが、それでも周囲に水の貼ってあるような場所があるとは思えない。

 

(とりあえず音の発生源を探そう)

 

音が聞こえるということは音が聞こえる距離に発生源があるということ。

それはつまり音を辿ればいるはずだ、霜山さんが。

 

(目を閉じて...空を見上げて耳を澄ませる...)

 

心を無にして、精神を統一する。

聞こえる音すべてに耳が反応するように、聞こえない音さえ聞こえる様に集中。

 

____チャポン

 

(聞こえたっ! 多分こっち)

 

...

 

「霜山さん、おはよう」

 

広場を出てすぐの道を曲がった先。

木の生い茂る森に足を進めば、彼女はいた。

 

長い髪が地面に触れ、それでもそれを気にせず地面に座る彼女は、何やら棒のようなものに糸を付けた代物を池に垂らして何かを待っている。

 

「おはよう」

 

少しこちらに視線を向けて短く挨拶をすると彼女は、また池の方に視線を戻した。

 

「何してるの?」

「釣り」

「いるの? 魚」

「さぁ?」

 

「さぁ、って」と苦笑いをしながら霜山さんの横に座った。

一瞬、霜山さんは自分の方を見て、すぐに釣り竿に視線を戻した。

 

「釣り竿、まだある?」

「ない」

「ないかぁ」

 

流石に二本目はなかったらしい。

木と糸で作られた簡素な釣り竿は一本のみで、自分が使えそうなものはなかった。

 

「...なら横で見てるかな」

 

「部屋に戻っても暇なだけだし」と言えば彼女は「勝手にすれば」と言って少し姿勢を前のめりにする。

 

「...」

「...」

 

無言が続く。

霜山さんとしては釣りに集中するために無言なのだろう。

 

(...暇だなぁ)

 

空を見た。

木であまり見えない空は、それでも隙間から光が漏れて自分たちを照らしている。

まだ太陽が昇っているわけではないから、その光は決して強いものではないけれど、それでも自分たちは照らされている。

 

「___来た」

 

横からそんな声が聞こえた。

 

「ホントに来たの!?」

「間違いない」

 

心なしか嬉しそうな霜山さんの声。

力みながら器用に自作釣り竿を扱って、ものの十秒ほどで魚が一匹釣り上げられた。

 

「おぉ...」

「まさか本当に魚がいるとは」

「あそこまでやって確証なかったのか」

 

自作の釣り竿まで用意してなお、確証のない釣りをしていたという真実に驚きながら、釣られた魚を見た。

 

「この魚、種類は?」

「ブラックバスとかじゃない?」

 

若干緑っぽい色をした魚は、ぴちぴちと動いて手から逃れようとしている。

そんなことを気にせず霜山さんは刺さった針を抜き、その魚を池に返した。

 

「返しちゃうんだ」

「別に、食べるわけでもないし」

 

そう言って霜山さんは置いてあった道具たちをバッグに詰め始めた。

 

「帰るの?」

「もう十分」

「いつから釣りしてたの?」

 

小さく「ん」と声を出しながら指を三本、目の前で出す。

 

「そんなに朝早くから...って、もう部屋に戻るの?」

「寝る」

 

一言、たった一言そう言って霜山さんは来た道を戻っていった。

その背中を見ているだけで自分は動くことが出来なかった。

いや、一緒に帰るほど仲が良くないのだと、心の何処かで思っている。そんな気がする。

 

「___あの子だったら、こんな風にはならないのに」

 

_______________

 

 

時刻は5時30分少し前。

 

さてみんな! そろそろ時間だから起きてー!

 

部屋に戻っての第一声はみんなを起こすためのモーニングコールだった。

 

「おはよう。 舞」と、もとから起きていたエルが挨拶をする。

 

「おはよう、エル。 早起きだねぇ」

「本当はあたしが皆を起こしたかったんだがな。 二人の方が早かったらしい」

 

苦笑いをしながら、用意していたのか飲み物を手渡された。

 

「あ、ありがとう。 これは?」

「安心してくれ、緑茶だ。

部屋に二人がいなかったから外にいると思ってな。 春と言っても朝は冷えるだろう?」

 

そういうとエルはそのまま全員分の飲み物を用意し始めた。

 

よく見れば先に帰ってた霜山さんも同じように飲み物を貰ったらしい。

コップに入れられた飲み物を飲みながら電子軍人手帳をいじっている姿が見えた。

 

正直言ってしまえば、凄い助かる。

部屋に戻ってきたと言えど、未だ体は外の寒さを残しており、若干震えている。

いっそ外の自動販売機で温かい飲み物でも買ってこようかと思うほどには温かさに飢えていた。

 

「...あ、おいしい」

「そうか、それはよかった...あまり他の人に飲ませることはないからな」

 

一口飲めばちょうどいい温度に調節されたお茶が喉を通る。

ぬるいわけでも熱いわけでもない、飲めるちょうどの温度のお茶が。

 

(慣れてるのかな?)

 

疑問が生まれる。

彼女は飲ませることは少ないと言っているが、それでも慣れているように感じたからだ。

詮索すべきことではないが、それでも気になってしまう。知的好奇心というのは誰にだって存在するし、誰にだって止めることは出来ない。

たとえここで自分が全員の過去を聞き出そうとしたところで答えるか答えないかなど関係なく、気になってしまうものは気になってしまうのだ。

 

「ふぁぁ___っ! クックックッおのれ太陽、我が地を統べたら次は貴様を...」

「おはよう、比良坂さん」

「あぁ、おはよう。 しかしおぬしらは早いな」

 

目を擦りながら起きてきた比良坂さんは、こちらを認識すると例の病特有の話し方に戻る。

 

「おはよう、愛奈。 目覚めのモーニングティーだ」

「モーニング...ティー...! なんと心惹かれるワードか!」

 

目を輝かせながらエルのお茶を貰うとそのままグイッと飲み干す。

 

「うまい!」

「そう喜ばれると照れるな。 コップは置いておいてくれ、あとで洗っておく」

「...なんかホントに慣れてるね。 エル」

 

「そうか?」と言いながら起きた嘉山さんにコップを渡す動作は本当に慣れた人間にしか出来ないものだろう。

無駄がないとかの話じゃない。

無意識に行われるその行動たちは彼女がどれほどその行動を行ったかを表していた。

 

「彼女はここに来るまで、ぼくの世話をしてたからね」

 

受け取ったお茶を一口飲み、息を吐いた嘉山さんはそう呟いた。

 

「世話って...嘉山さんとエルが一緒にいたのは予想できたけど、そんな間柄だったの?」

「あぁ、キャンサーが侵略してくる以前からぼくたちは共にいた。

彼女が慣れているのもそのせいさ」

「知貴。 あたしとしてはきみの世話をしなくてもいいくらいにしっかりとしてくれればいいんだけど?」

 

「うぐっ」とわざとらしく声を出す嘉山さんを横目に、エルの方に視線を向けた。

 

「___腐れ縁のようなものだよ」

 

照れているのか、怒っているのか、顔を隠しているため判断が出来ないが彼女はそう言った。

 

 

 

 



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day1 午前

急いで書きましたね...急いでしまいました。なので高らかに言います。

未 調 整 で す !


早朝六時、宿舎廊下。

 

「では、点呼を」

「いち」

「にー」

「さん___」

 

 

...

 

 

 

「ふぁぁぁ」

「ごめん、高橋さん。 起こすの遅れちゃって」

「いやいや、助かったよ」

「確かに、あんなに大きな音が鳴ってたのに全然起きなかったもんね...」

 

思い出されるのは今朝の光景。

朝の目覚まし代わりのトランペットも、自分たちの会話も、高橋さんはそれらを全く気にすることなく寝ていた。

起こすのも苦労した。

声をかけても揺らしても起きる気配を感じさせない彼女の睡眠は想像をはるかに超えていたのだから。

 

「それより、みんなは先に行ったの?」

「時間だからね。 自分たちも用意してさっさと向かおう」

「用意って...もう行くぞ?」

「え?」

 

寝起きだからか寝ぐせのついた髪は、あちらこちら跳ねている....のだが、高橋さんはもう行くとドアノブに手を伸ばしていた。

 

「待って、その寝ぐせで行くの?」

「あぁ」

「昨日はなかったよね?」

「昨日はたまたま寝ぐせがなかったからな」

 

目の前の少女はなぜか胸を張っている。

...が、圧倒的存在感を放つ寝ぐせがぴょこりと動いていた。

 

 

__________________

 

 

「朝食がバイキングじゃないっ!?」

 

この世の絶望と言わんばかりの表情で倒れそうになる高橋さん。

それを横目に苦笑いで頬をかく。

 

「ま、まぁずっとバイキングだと廃棄が多くなるからね」

それでも! それでもバイキングなんだよっ!?

「...何がそれでもなのかはわからないけど」

「好きな食べのモノを好きなだけ食べられる! そんな素晴らしい食事が_____」

 

熱弁している。それはもうアニメとかに出てくる熱血指導をする先生キャラの様に熱弁している。

きっと食べ物に関しての熱弁でなければ心打たれるモノだったと確信を持って言えた。

 

「二人とも遅かったじゃないか」

「あぁ、エルさん。実は強敵との戦いをしていたんだ...」

 

どこか遠くを見つめる高橋さんにエルは首を傾げる。

 

「寝ぐせだよ。 ほんと、全然はねてるのがとかせなくって」

 

そう言えば納得したように声を出す。

 

「そんな事はどうでもいいんだ。

ご飯! 今日の朝食は何だ!?」

「今日は___」

 

...

 

 

「「「「「「___ごちそうさまでした」」」」」」

 

空になった皿をまとめ、全員が両手を合わせて言う。

 

「食った食った!」

「昨日もそうだったが、貴様は随分と食べるな」

 

机の上、高橋さんの座っていた場所に置いてある皿を見て比良坂さんはそう呟く。

四つほどだろうか?

五人しかいないはずの机にはなぜか九つのお盆があり、その四つが高橋さんの座っていた場所に集中している。

 

「これで腹七分目くらいだな。 もう一品は食べたかった」

「あんなに食べてか? 恐ろしいな」

やはり暴食...クククッやはり我がここに来るのは運命だったようだ...!

 

(七分目...満腹はどれくらい食べるんだろう?)

 

そんな疑問が浮かぶ。

七分目で四つなら五つは食べられるのだろう。 こんなご時世でなければ一度満腹まで食べる高橋さんを見てみたい。

 

「しかし、今日から本格的な訓練の開始になるのか」

「いざ訓練って言われても、具体的に何をするかピンとこないよね」

 

外を見ていたエルが、ふと疑問を声に出した。

その不安に同意する。 兵士としての役割をもってここにいる自分たちが、一体どんな訓練をするのか全く知らされていないのだから不安にもなるだろう。

 

「最初の訓練。 いきなり大変なものをやるってこともそうないと思いたいけど...」

「そうだな」

 

不安にお互いため息をつく。

 

自分たちがこれから戦うことになるキャンサーという存在。

そして自分たちの武器であるセラフという存在。

それらに関する知識は全く存在しないと言っていい。

知識を得るための勉強、戦いを覚えるための訓練。

それらをこれからする必要があるのだから不安にもなるだろう。

 

「考えても仕方ないでしょ」

「え?」

「先行ってる」

 

一言小さく、霜山さんは呟いて席を離れた。

 

「気にしないでくれ、あいつは考えるより行動派なんだ」

「そうなの?」

「あぁ、昔っから何考えてるかよくわからなくてな。

気が付いたら行動してるんだよ」

 

高橋さんの言葉に「へー」と反応を返しながら、遠くを歩く霜山さんを見る。

思い出すのは早朝の釣りをする姿。

何を考えているのかわからない。 そう言ってしまえばその通りだが、それだけで済まされてしまう程度にしか彼女を理解できていない現状に寂しさを覚えた。

 

「あたしたちも教室に行こう。 そんなに時間の余裕はないからな」

「え? あ、うん、そうしよう」

 

エルが仕切るように指示を出し、自分たちも食器の片付けを開始した。

 

________________________

 

31Sは現在、午後の訓練に移動する前にベンチに座っている。

 

「...なんか、普通だったね」

 

午前に行われた座学はいたって基礎的な普通の座学。

それこそ学校などで行われる授業と大差ないレベルの代物だったのだが...二名の周りだけ悲壮感が可視化されそうになっている。

 

「なぁ数学いるか? この状況で数学とかやる必要ないよな!?」

「我なら勉強などする必要はないのだ...だから勉強は、勉強はぁぁ...」

 

頭を抱える二名。

残りの隊員はというと勉強が苦手というわけでもないらしく、ケロッとしているのがさらに悲壮感をマシマシにしていた。

 

「お前らいいよなぁ!? 俺なんて勉強しても全然頭に入らないんだからなっ!」

「それは勉強に集中しきれてないからでは?」

「うぐっ」

 

勢いよく立ち上がり叫んだ高橋さんの言葉は嘉山さんの言葉でノックアウトされそのまま倒れ込む。

まるでギャグの光景だなぁなんて思いつつ。ふと、霜山さんの方を見た。

 

(笑ってる...?)

 

一目では見えない、でも確かにその口が笑っているのが見えた。

 

「だが...! だが実戦で結果を出せば勉学など励まなくても何とかなるはずだろうっ!?

それなら我らが勉学に励む必要はないはずだっ!」

「昨日の戦闘で真っ先にやられた奴が何を言っているんだ」

「うぅっ」

 

目を離していれば、それに続くように叫んだ比良坂さんも、同じようにエルの言葉でノックアウトされていた。

 

ふふっ

 

まわりに見えないように小さく笑う霜山さん。

そんな姿に安堵した。 彼女も笑うのだと、楽しんでいるのだと。

 

「みんな、そろそろ時間だよ」

 

電子軍人手帳に示された時間を見た。

もうすぐ午後の訓練が始まる。そんな時間を示すデジタルの時計はゆっくりする時間はないと急かしてくるようだ。

 

_____________________

 

基地の端に位置するアリーナと呼ばれる施設。

午後の訓練で使用される大きな建物は外見の奇妙な見た目からさえも想像できない内装だった。

 

「おぉ! なんだこれすっげぇっ!」

「世の中にこれほど奇妙な光景が広がっていようとは...!」

 

 

「ほほう、これで疑似的な地形を作るのか」

「ちょっ、勝手に触らない方がいいんじゃ」

 

目を輝かせながら走りだす二人を見ながら、壁や床を調べ出す嘉山さんを抑える。

 

自分も周囲を見渡した。

 

一面の青。そう言うのが最も正確に表しているだろう。

建物や橋を再現しているのか大まかな形をとる青い四角が自分たちを取り囲むように出ているこの光景は、きっとセラフ部隊に入らなければ見ることが出来なかった。

 

「...疑問に思ったか?」

「え?」

 

隣にいたエルが声をかけた。

 

「目の前に広がる技術は間違いなく存在する技術。

だが、あたしたちの記憶にこんな技術はないだろう?」

「それは...」

「セラフも同じだね」

 

気が済んだのか、立ち上がっていた嘉山さんは満足そうに声を出した。

 

「セラフも?」

「うん、セラフの制作過程もそうだが、今はセラフィムコードの方も謎なんだ。 

自分たちの最もやる気の上がる言葉なんて言われていたけど、いったいどうやって調べたか。 ぼくたちは知らないだろう?」

 

「31Aの彼女もそう思っているだろうね」と言葉を繋げた嘉山さんは、そのまま奥に歩き出す。

 

「彼女?」

「東城つかさ、きみはもう会ってると思うけど」

「あ、あの諜報員って自己紹介してた人」

 

思い出されるのは昨日の防衛戦。

終了前に挨拶をした東城つかさはそう名乗っていた。

 

「諜報員を自称するだけあって、彼女は気づいているだろうね」

「というか、知り合いだったんだ」

「昨日の防衛戦は彼女ら二人と組んでいたから。 まぁ、途中で別れることにはなったけど」

 

「流石31Aというべきか、その戦闘能力は高いものだったがね」と言いながら、嘉山さんは自身の手を見ている。

 

「やっぱり、パワードスーツは難しいのだと実感したよ」

「____話しているところ悪いが訓練を始めるぞ」

 

出入口__後方から声がかかった。

赤い髪に特徴的な眼帯をした人物がこちらを見ている。

 

「浅見教官?」

「湊本、お前が部隊長なんだからもう少し部隊員を纏めておけ」

「うぐっ...はい」

 

(耳が痛いところを...)

 

31Sの現在地はそれぞれバラバラ。

施設を調べていた嘉山さんをはじめとした四人はここにいるが、高橋さんと比良坂さんは見学しようぜと言わんばかりに走って行ってしまった。

 

「仕方ない、あたしが呼びに行こう」そう言ってエルが呼びに行ってくれた。

だがそれは本来自分の仕事なのだろうと思うと、申し訳なさと共に自分の不甲斐なさが強くなる。

 

...

 

 

「視力を奪われた身だがお前たちの指導できないほどではないからな。

全員、ビシバシ行くから覚悟しておけ」

 

そう宣言した浅見教官は、31S部隊員が全員戻ってきたところで説明を開始した。

 

その内容はこのアリーナと呼ばれる訓練用の施設の注意事項や、その使用ルール。 どういう原理でキャンサーを投映しているかなどの詳しく説明。

技術的な問題は分からないが、ルールなどは今後使うことになるため重要な内容だった。

 

(浅見教官、竹刀でも持てば似合うのではないだろうか?)

 

話を聞いて最初に思ったのはそんなこと。

浅見教官は、実際そう思うほどには熱血だ。

人類を守るというこの役割に誇りを持っているのだろう。

 

(...浅見教官も自分たちと一緒だったのかな?)

 

何かしらの才能をもって選ばれた者たち。

自分たちと同じようにセラフ隊員であった教官であれば何か知っているのかもしれない。

 

「___では訓練を開始する。

湊本、自分のセラフィムコードは覚えているな?」

「へ...? あ、はい。 覚えてます」

 

「考え事か」と呆れたような反応をする浅見教官が視界に入り思考が中断される。

 

「すいません。 少し考え事をしてて」

「実戦での考え事は生死に関わる。

考えるのもいいが、思考するタイミングは理解した方がいいぞ」

「...そう、ですよね」

 

分かっている。

そう言いたくなった口を閉ざす。

 

つい思考に脳を取られてしまうのは悪い癖なのだ。

たとえそれが実戦だろうと、窮地だろうと、自分は思考してしまう。

直さねばならないと自覚していてもここまで直すことのできなかった自分の問題なのだと、頭の中では理解しているのだ。

 

「考えるのが悪いとは言ってないさ」

 

浅見教官が何かを懐かしむように頭を撫でてくる。

 

「きょ、教官っ!?」

「それに直すための訓練でもあるんだ。 そこまで気負わなくてもいい。

あたしが教官なんだ。 誰も死なせる気はないし、実践で死なせるような訓練もしないから安心しろ」

 

ニッコリとした笑顔。

笑顔とは本来威嚇が目的なんて言われているが、教官の笑顔は間違いなく安堵させるためのものだった。

 

 

 

 

 




次回より31S部隊初戦闘です。
訓練なので戦闘と言っていいかは不明ですが、描写はそこまで変わらないので戦闘です。

あ、たくさんのお気に入りや評価ありがとうございました!
今後も頑張って書こうと思います!(プラス思考

その後期待に応えられるかは不明ですが(マイナス思考


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day1 午後 アリーナ

自分には、これが限界だった...後で直す、かなぁ?


「訓練内容は出現したキャンサーの撃破だ。

初めてだからそこまで強い敵ではないが、慢心しないように」

 

そう言って浅見教官は自分たちから少し下がり、何か機械を操作する。

 

視界の色が変わった。

青だった周囲は赤くなり、建物らしき形をとっていた凹凸が形を変えていく。

 

全身がゾワリと震える。

人よりも大きな体、虫の特徴を持った多関節の足。

少し遠くに投映された影は、気が付けば自分たちの敵であるキャンサーがその形をとっていた。

 

31S! 総員戦闘準備っ!

 

即座に声を上げて全員に注意を促す。

訓練だから手を抜くなんて考えは全く存在しない。

自分たちが生き残るための手段を逃すなんて無駄は愚者でなければ行わない。

 

「___【約束はここに、私はここに】っ!」

 

目を閉じ、祈るように小さく、力強く呟く。

 

確かな重みを感じ、その武器を構える。

短小なセラフだ。

二刀あっても、戦うにも守るにも適しているようには見えない。だが、それでも自分にとっては唯一無二の武器であることに変わりはない。

 

「セラフ召喚後、全員の武器をチェック、陣形を決める」

「「「「「了解!」」」」」

 

まずは全員分の返事が返ってくることに安堵する。

そして思考。目の前の敵を倒す方法を、模索する。

 

周囲を見渡す。

形を変え、入ってきた際の地形とは大きく異なる外見のアリーナは、おそらく市街地を模したものなのだろう。

崩落した建物や瓦礫のせいで決して視界がいいわけではなく、遭遇戦や不意打ちの多くなる見晴らしの悪い地形は数で劣ることになる自分たちには適した戦場ではない。

 

(...ならできる方法は)

 

簡単な作戦を考えて思考を終える。

これ以上はまだ考えない。この先を考えるには情報が足りなすぎる。

 

「全員セラフの展開が終わった。 どうする?」

 

丁度いいタイミングで後ろからエルの声が聞こえた。

 

「まず全員のセラフを確認させて」

 

確認のための第一声。

全員のセラフが何なのか、それによってまた作戦は大きく効果を変える。

遠距離が多ければ前衛の時間稼ぎが重要になり、近接が多ければ速攻で勝負をつけることが重要になる。

 

それを決める自分は重要な立ち位置にいるのだ。

思考に思考を重ねて悪いことはない。

 

「俺は銃だな、支援なら任せてくれ」

 

そう言って高橋さんは手に握られたライフル型のセラフをこちらに見せる。

 

「防衛戦ではまったく当たらなかったがな」

「うっせぇ」

 

鎌のような形状をしたセラフを持つ霜山さんががそれを担ぎ高橋さんに言う。

やはり二人は仲がいいのか、それともまた何かあるのか会話が多くなる印象がある。慣れ親しんだ仲だというのもあるのだろうが。

 

「それで、作戦はどうするんだい? 隊長」

 

わざとらしく嘉山さんが聞いてくる。

だが気になるのはその手に握られているのは巨大な銃だ。

高橋さんのものとは異なる巨大なソレは、嘉山さんの体だけでは扱いきれないのだろう。手足には先ほどまで装着されていなかったはずの補助機材が付いており、全力で駆動しているのか音を発し、煙の方なものも出ているのが見えた。

 

「煙出てるけどそれ、大丈夫なの?」

「...そのための実験さ」

 

(なんか目をそらしてるように見えるんだけど)

 

心なしかこちらに視線を合わせていない嘉山さん。

本当に大丈夫なのだろうか? もし途中で不備が起きても助けに行くのは至難の業なのだが。

 

「危険になったらあたしが止めるから、舞は安心してくれ」

「なら今すぐにでも止めてもらいたい光景なんだけど」

 

盾だろうか? 後方に展開されたビットのようなものはエルに追尾するように動いている。

 

「ん? あぁ、見た目通りこれは盾だな。

これでも持久力には自信があるんだ。 ヘイトを取るなら任せてくれ」

「盾か...エル。 悪いけど今回は後ろにいてもらいたい」

 

「どういうことだ?」とエルは問う。

作戦に必要な前衛は二人。残りの四人はそれぞれ守り合う形にしたい。だからこそ彼女には守りに入ってもらう。

だから、

 

「比良坂さん、頼める?」

 

大剣を担いでこちらに歩いてくる比良坂さん。

自分とと共に前に出る人に必要なのは一撃で大きく敵の体勢を崩せるセラフを持った人物、つまり大剣のセラフ持ち。

その条件に合っているのは彼女以外にいない。

 

「任せておけ、我が真の力を発揮するには奴は役不足だがな!」

 

ようやくの出番にうれしいのだろう。

今すぐにでも戦わせろと言わんばかりにこちらに顔を近づける。

 

「___というか近すぎるっ!

「む、そうか?」

「いや近いよ! おでこぶつかりそうだったからね!?」

 

「そうだったか」と言いながら離れる姿に安堵しながら、作戦を確認する。

 

幸い遠距離と近接のバランスはいい。

遠距離組を近接二人で援護しながら残りの二人がヘイトを取るという最も理想的な戦い方ができるであろう人数分布は考えうる中の最善の戦闘方法だ。

 

「エルと霜山さんはそれぞれ嘉山さんと高橋さんの援護をお願い。

自分と比良坂さんが前に出て敵キャンサーの足止めとヘイト取りをするから、遠距離組の二人は隙をついて射撃して」

「前衛から抜けた敵をあたしたちが撃破、か。 了解した」

「...よし、全員質問はある?」

 

最終確認。

初めての訓練だろうと完璧な勝利を手にするために、できる最大の準備を行う。

 

「質問はないみたいだね。じゃあ___

 

 

___ミッションスタートだ」

 

 

...

 

 

 

__走る。

目標は目の前のキャンサー、その数は3。

大きな腕を持つキャンサー(ノッカー)特徴的な緑の物体を体につけたキャンサー(ヒールホッパー)

|四足歩行の蜘蛛のようなイメージを持たせるキャンサー《クレストホッパー》

二体は防衛戦で見たことがあったが、ノッカーに関しては電子軍人手帳に書かれた情報でしか見たことがない。

 

「ヤツの相手なら任せておけ」

「比良坂さん?」

「前に見たことがある、と言っても負けたがな。 今度こそ奴に地面の味を味わわせてやる」

 

ふんす、と言わんばかりに比良坂さんは気合を入れている。

確かに前に負けたと言っていても自分の様に初めて戦うよりは可能性は高いはずだ。

 

「なら残りの二体はこっちで相手するよ」

 

二体の相手をとることになる。

後方にいるヒールホッパーは名前の通り回復を行うキャンサー。

放置するのは危険だろう。

 

前方、ヒールホッパーを守護するように待機するクレストホッパーはキャンサーの中でも標準、機動性は高いがその分火力は低い。

時間稼ぎは自分一人でも可能なはずだ。

 

「カウントダウン、3」

 

息を整える。

初めての31S部隊としての戦闘、緊張しないわけがない。

 

「2」

 

少し遠く、建物の上に配置した遠距離チームに視線を向ける。

準備は終わっているらしく、それぞれセラフを構えこちら動きを待っている。

 

「1」

 

構える。

ここからは戦い。

死ぬことのない訓練ではあるが、それでも命を懸けた戦いだ。

 

「0」

 

飛んだ。

デフレクタの残量を使用した短距離ワープ。

一瞬の視点の移動は吐き気を催すには十分なほどの酔いを発生させる。

決して連続での使用はできないが、

 

(奇襲のためのワープなら!)

 

「___ハァッ!」

 

一閃、速度を殺さずセラフを振る。

すれ違いざまに振られるセラフは通常よりも高い威力を発揮するのだろう。だが、一撃でその外殻を破壊できるわけもない。

 

チラリと比良坂さんを見る。

その巨大な剣のセラフを盾代わりにしつつ時間を稼いでいるが、おそらく長くは持たないだろう。

 

(指示は...出せないな)

 

射撃体勢に入っている二人に指示を出そうと思ったが、行動に移すことはなかった。

 

電子軍人手帳は通話も出来る便利な代物だが使用に制限がある。

使いすぎればGPと呼ばれる現在のお金の役割を持つモノを払うことになり、だからこそなるべく連絡なしで作戦を遂行できるようにすべきだ。

 

「もうい___っ!?」

 

もう一撃、態勢を崩したヒールホッパーに接近しようとしたところで足を止める。

 

「予想よりも動きが速い...?」

 

守るように現れたクレストホッパー。

互いを守るように動く二体は、仮に片方を攻撃しようにもどちらかに反撃される。

 

ならば自分も比良坂さんと同様に時間稼ぎに徹するべきなのだろう。

 

(...でも、それじゃあ遅い)

 

もし敵が追加出来たら、もし作戦時間が限られていたら、もし比良坂さんが耐えきれなかったら、もし、もし、もし_____

 

「___だったら無理やり押し通る!」

 

もう一度、短距離のワープを使用する。

目的地はヒールホッパーの真後ろ、そこで倒せれば状況は限りなく優勢になる。

 

一瞬の浮遊感が襲い、視点が移動する。

喉の奥から来る吐き気を飲み込んで、そのセラフを強く握る。

 

「まずは一体っ!!」

 

崩れ落ちるヒールホッパーを横目に、そのままクレストホッパーの背後に着く。

 

「一発っ!」

 

鋭い斬撃は確かにクレストホッパーの外殻を斬る。

だが切り裂くことは出来ず、後方に跳躍して距離を取った。

 

圧倒的な火力不足。

防衛戦から薄々感づいていたが、自分のセラフはキャンサーを斬るには少し足りない。

後方にいる柔らかいキャンサーであれば倒すことは可能だが、前衛である硬めのキャンサー相手では力不足だ。

 

「...無理か」

 

目を閉じる。

何も見えない。どこまでも暗い闇の中で、音が聞こえた。

遠くから何かが風を切って飛んでくる音。

その音の予想はついている、順番は前後してしまったがそれでも。

 

「___今だ!」

 

目を開ける。

衝撃が奔り、その風が頬を撫でる。

 

おそらく嘉山さんの援護射撃である爆発に隠れるように近づき、そのまま態勢を崩したクレストホッパーにとどめを刺せば作戦終了のアナウンスが鳴り響いた。

 

「ふぅぅ」

 

残滓を解き息を吐く。

 

部隊員であるみんなは、自分が頼んだ役割をしっかりと果たしていた。それは間違いない事実だ。

...だが、完全な作戦通りとはいかなかった。

 

何処でミスを犯したのか。

敵の戦力を甘く見ていた? 自分たち前衛が分かれるのではなく、二人で三体を相手にしていればよかった? 後方への連絡をすべきだった?

いや、そんな難しい話ではない。

 

(原因は間違いなく自分)

 

自分の力不足なのは目に見えている。

セラフを使用する戦闘でも、指示を出す部隊長としても自分はもっとうまくやれたはずだ。

 

「みんな、お疲れ様」

 

全体が青に戻ったアリーナ。

スタート位置に戻った自分たちは一息つく。

 

「楽勝だったな」

「三発」

「え?」

「三発外した」

数えられてた!?

 

なんて話をしていたり、

 

「やはりぼくの射撃は援護向きではない」

「そうだな。 制圧射撃...いや、足止めの方がいいかもしれない」

「次の訓練からその方針で行こう。

隊長、次の作戦はその方針で頼んだよ」

 

と、先ほどの戦闘から次の戦闘の動きを考えたり、

 

「ハァ...ハァ...勝った! 勝ったよ!」

「えっと、お疲れ様? 比良坂さん」

「うん!....ハッ、違うぞ! 今のは違うぞっ!」

 

そんな他愛のない話をして

 

「今日の訓練は終了だ」

 

という教官の言葉を最後に、午後の訓練は終わりを告げた。

 

 




訓練での作戦への指摘に関してはカットしました。
カット...というか書き終わった後に気づきました()

PS.ユイナ先輩ガチャ五十連して旧めぐみん一人でした。欲しかったなぁ...


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day1 放課後

自分思ったんです。原作キャラとのかかわりをもっと増やしたいって


「お疲れ様」

 

自分以外の31S部隊が退出したのち、そう言って浅見教官はこちらに近づく。

 

「教官...」

「湊本、お前が何を考えているかわからない訳じゃない」

「っ」

 

見透かされている。

そう、理解できた。

 

「だが、さっきの訓練。

あのまま時間を稼げば勝てただろう。何故攻勢に出たんだ?」

 

それをわからないお前ではないはずだ?

そう言いたそうな目でこちらを見てくる。

 

実際、あのまま時間を稼げば勝てた。

それを理解していたし、そうしようとも考えた。

 

でも現実の自分は攻勢に出た。

少しでも戦闘の時間を減らすなんていう考えでもなく、味方の負担を考慮して動いてしまった。

 

「...仲間を、信じられなかったんだと思います」

「そうか」

 

自分の本音に教官は怒りを見せることはなかった。

ただ優しく自分を見て、アリーナを去る。

 

31S部隊のみんながそう簡単にやられるような人たちではない。

楽観的な思考をしているはずなのに、心の何処かでは彼女たちを信じることのできない自分がいる。

 

「分かっているはずなんだけどなぁ」

 

搾りだした声に答えるものはおらず、悲しくアリーナに木霊した。

 

 

__________________

 

 

 

(___ジムか)

 

ナーヴィ広場を少し進んだ先にある小さな建物を見て少し感動した。

戦闘だけで実戦に適した調整ができるとは考えていなかったからこそ、この手の施設があるのは非常にありがたい

 

「おぬしもトレーニングか?」

「あ、比良坂さん」

 

近くの自動販売機で買ってきたのか、スポーツドリンクを片手に持った比良坂さんが目の前にいた。

 

「そういうわけではないんだけどね。 そっちはトレーニング?」

「我こそが最強だからな! あのような訓練だけで満足するものか」

 

胸を張り、より多くの訓練を求める姿は心強いものに思える。

表情に無理をしている様子もないことから、本当に自主練をしたいだけなのだろう。

 

だとすればそれは自分も同じだ。

疲れはそれほど溜まっていないし、できるうちに訓練をしておきたい。

 

「なら自分も一緒にいいかな?」

「えっ?」

 

目に見えて少し嫌そうな...というより、心配そうな表情を比良坂さんはした。

 

(何かあるのかな?)

 

「ごめん、何か用があるならやめておくよ」

「い、いやちが__そういうわけではなくてな」

 

何か言いずらそうにもじもじするその姿に首を傾げる。

 

「トイレならジムの中にあると思うよ?」

違うよっ!?

 

「違うのか」と少し残念に思う。

以心伝心とはいかなかったらしい。

 

「ゴホン...なるべく訓練しているところを見られたくはなかったのだ」

 

苦笑いをしながら比良坂さんはそう言う。

 

その感性を理解できないわけではない。

影での努力、隠れたトレーニング。胸を張って言えることでも彼女にとってはあまり見せたくない行動なのだろう。

 

「でもみんなでトレーニングした方が楽しいと思うけど」

「それは分かってるのだが...どうも慣れぬのだ。 誰かと共に動くのは」

 

「うーむ、うーむ」と比良坂さんは唸る。

彼女の過去を知っているわけではない。

だけど、きっと集団行動をあまりしてこなかったのだろう。

 

「ごめんね比良坂さん。

セラフ部隊としても長く付き合うんだろうし、今度よさそうなタイミングで一緒にトレーニングしよう」

「む、むぅ。 気を遣わせたようで悪いな」

 

少しばつの悪そうな表情で頬をかきながらジムの中に入っていく比良坂さんの背中を見送って、また一息ついた。

 

(...やることがない)

 

夕食にはまだ時間があり、ジムに入るのは先ほどの比良坂さんとの会話の流れ的にダメな気がする。

そんな状態で行ける場所なんてあまりなく、呆然とするにも有り余った体力を消費する方法が欲しい。

 

(そういえば、他の部隊の人たちは何をしてるんだろう?)

 

ふと、そんな疑問が脳裏をよぎった。

これまで31A部隊以外とは関わりのなかった。

本音で言えば、今まで31S部隊内の関わりを増やすためと意図的な接触はしなかったわけだが、そろそろ同僚となる彼女たちの情報を自分は全く知らないのはまずい気がする。

 

(そうと決まれば交流しよう!

どこか手軽に交流できそうな人は....いた)

 

少し歩いてナービィ広場についてみれば、それらしい人が数名程度見つけられた。

どこの部隊かは不明だが、珍しいものを見ているかのようにナービィたちを見ていることから先輩部隊というわけでもなさそうだ。

 

(え、あれが同僚...?)

 

口に出てしまいそうな言葉を飲み込んだ。

 

眼帯にカニの腕にメイド。

恐るべき個性派集団、と言えるその部隊はいったいどこのものなのか、まったく見当がつかない。

 

少なくとも自分たちよりも個性の立っている彼女たちは、間違いなく自分たちよりも強いと胸を張っていける気がした。

 

 彼女たち比べて自分たち31S部隊はどうだろう?

服装は一般的な制服のような見た目にカーディガンを羽織ったもの。

多少長めのスカートは自分だけだが、基本的にはミニスカートとは言いずらい丈だ。

特徴らしい特徴はあまりない。それどころかキャラクター的な濃さだけだったら茅森さんたちにも負けているから実質モブみたいな存在だ。

 

「...そんな、それじゃあ自分たちは表舞台に上がれないっ!?」

 

 絶句した。

自分たちがメインのストーリーにろくに関われない〈最初の方にちょっと出てきてそれ以降実装とかも全くされないチュートリアル用モブ〉みたいなビジュアルという現実に絶句した。

 

これはもうチームの作戦とかよりも重要な案件だ。

今後の自分たちの存在を左右する。今すぐにでも話し合わなければならないほどの重要な話だろう。

 

「...」

 

(そういえば、みんなは何処にいるんだろう)

 

比良坂さんは先ほどあったため居場所は分かるが、他の部隊員の場所は分からなかった。

これではこの、目の前に立ちはだかる巨大な問題を話し合うことは出来ない。

 

「くっ...! まさかこんなところで終わってしまうなんて...」

 

自分たちは名前がろくに出ないモブとしての一生で終わってしまうのか。

そう思うと悔しい。贅沢言わないから本編にずっと出てるくらいの活躍が欲しい。

 

「___そもそも本編ってなにっ!?

 

変な電波を受信していたのか、一度冷静になれば、思考は正常に戻った。

このままでは不思議ちゃん扱いされるのも時間の問題になってしまう。そうなればこの、31S部隊の部隊長は頼りない的な噂が立ってしまうかもしれない。

 

(それだけは避けないと)

 

唐突に電波を受信する隊長の部隊なんて危なっかしいことこの上ない。

もし自分が上司だとして、その部隊に何かを任せるという話になったら全力で回避するだろう。

 

(...でも、個性か)

 

よくよく考えれば、自分以外は31S部隊の全員個性的なのかもしれない。

 

比良坂さんにはあの特徴的な話し方。

高橋さんと霜山さんにはコントのような会話があり、嘉山さんにはパワードスーツ。

エルはその見た目が最たる特徴であり、冷静な判断はチームの中でも重要な役目を持っている。

 

(...そして最後は自分の個性)

 

悲しいことに、すぐに思いつく個性はなかった。

 

(悲しい)

 

いや空しいというべきだろうか。

考えても一向に浮かんでこない自分の個性と言える部分を探し続けるさまは。

 

(とりあえず今はアリーナに行こう)

 

暇な時間を埋めるため、無駄な思考を中断するために自分は逃げることにした。

 

 

___________________

 

 

改めて来てみれば、そのチグハグさがよくわかる。

アリーナに来て最初に思ったことはそんな疑問だった。

 

エルたちとの会話。

このアリーナと呼ばれる場所に使用される技術。

近しい技術を知ってはいるが、それらは間違いなく自分の記憶にはない。

 

「____訓練ですか?」

「えっ」

 

ふと、後ろから声が聞こえた。

 

「えっと...」

 

黄色い髪をした少女。

あまり動かない表情で、こちらを見ている。

確か名前は...

 

「...七瀬さん、でしたっけ?」

「はい、七瀬七海です。

湊本さんはどうしてここへ?」

 

合っていたらしい。

安堵の息を吐き、周囲を見渡す。

 

「いつ見ても不思議な空間だな、と思いまして見学を」

「そうですか。

一応、機密もありますのでくれぐれも変な場所に行かないようにしてくださいね」

「あ、はい」

 

会話終了。

自分はアリーナを見渡し、七瀬さんはそんな自分を見ている。

無言で何の進展のない時間が続く。

 

(無言つらい!)

 

心の中で叫ぶ。

自分はまぁ多少なり話す方だ。

しかし今、自分の後ろでガン見してくる七瀬さんはあまり会話をしない人らしい。

無言の時間が大体二分ほど続きそろそろ限界、会話したい。

 

「あのー、七瀬さん?」

「何でしょう」

「機密って、具体的になんですかね?」

 

何を聞いているんだろうか自分は。

 

「それも機密なので言えません」

「で、ですよね」

 

そりゃそうだろう、とどこかからツッコミが聞こえた気がして周囲を見渡す。

 

「どうかしましたか?」

「誰かツッコミをした気がして」

 

意味が分からない、と言わんばかりに七瀬さんは首を傾げる。

無理もない。自分だってそのツッコミがどこから聞こえたのか全く分からないのだから。

 

「七瀬さん、少し訓練してもいいかな?」

「わかりました。

しかし、大丈夫ですか?」

「なにが?」

「もう少しで夕食の時間なので」

「え、うそっ!?」

 

電子軍人手帳を取り出し時間を確認すれば、もう少しで17時30分。

今から向かえばちょうど夕飯の時間になるであろう時刻だった。

 

「考え事で時間取られちゃってたか...無駄にしたな」

「なにか悩み事でも?」

 

心配そうな...顔かはわからないが、少なくとも声色は心配そうな感じで七瀬さんが聞いてくる。

 

「うーん」

 

果たしてこれは相談するべき内容なのかと考える。

これは個人的な悩みであり、相談するべき内容かと聞かれれば首を横に振るだろう

 

だが、それでも誰かに相談すれば何か別の活路が見出せるかもしれない。

 

そんな淡い希望が胸の中にあった。

 

...

 

「湊本さんの個性ですか?」

 

少し説明すれば、七瀬さんは顎に手を当てて考え始めた。

 

「茅森さんたちと比べると、やっぱりキャラが薄い気がして」

「31A部隊と比べるのはさすがにどうかと思いますが」

 

「でも、手にカニを付けた女の子もいたし」

「31C部隊の豊後弥生(ぶんごやよい)さんですね」

 

「メイド服着てる子もいたし」

「同じく31C部隊の佐月(さつき)まりさんですね」

 

「眼帯付けてる子もいた」

「話の流れからして、31C部隊の山脇(やまわき)・ボン・イヴァールさんですね」

うそっ!? 31C部隊しかいないっ!?

 

衝撃の真実に驚愕する。

確かに自分が見たのは一つの集団でしかなかったが、それでも全員が同じ部隊だとは思ってもいなかった。

 

「ですから、あまり自分の個性について悩む必要はないかと」

「そうかな...そうかも...」

「はい、なので今は夕食を食べに行きましょう」

 

言われたとおりにアリーナから出る自分の足は、間違いなく軽いものだと胸を張って言えた。



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day1 フリータイム

まだ忙しい状況が続きますがとりあえず完成したので投稿します。


 アリーナから出て、食事を終えて一息。

自分は31S部隊のみんなと別れて、再度アリーナに足を運んでいる。

 

「湊本さん、訓練ですか?」

「さっきはできなかったから、少しだけ」

「そうですか。 では少し待ってください」

 

そう言って、少し離れてから機械をいじり始める七瀬さん。

 

「...」

「どうかしましたか?」

「いや、ちょっと。

その小さな端末でここの制御をしてるんだなって思って」

 

七瀬さんたちがアリーナを起動する際に操作しているのは、電子軍人手帳と同様のサイズの小さな機械。

あんな小さなものでよくここの制御をしているのかと思うとその技術は驚くべきほど高いだろう。

 

「では、訓練を開始します」

 

少し離れた場所にいる七瀬さんから声が聞こえた。

 

同時に視界は赤く染まり、周囲の地形が変わっていく。

気が付けば広場のような何もない広々とした地形の中には自分とキャンサーがいる。

 

「【約束はここに、私はここに】」

 

電子軍人手帳を掲げ、いつものようにセラフィムコードを呟く。

現れたセラフはいつも通りの頼りないものだが、それでもこれが唯一の自分の武器なのだ。

 

(...さて)

 

 投映されたキャンサーを見て思考する。

 

敵はノッカー。

午後の訓練では比良坂さんが時間稼ぎを行った。その巨大な腕が特徴的なキャンサーだ。

 

 相性としてはそこまで悪くはないはずだ。

スピード重視の自分と破壊力重視のノッカー。

当たらなければどうということはないという何処かの仮面よろしく戦えば、勝てない敵ではない。

 

「行きますっ!」

 

 地面を蹴る。

身体への強い加速が襲うのを我慢しつつ、目標に近づく。

これが唯一の自分の武器、スピードだけなら誰にも負けないと胸を張って言える自分の個性。

 

「___だからっ!」

 

だから、この戦い方を止める気はない。

 

スピードを生かしてすれ違いざまに一撃入れる。

 

だが、手ごたえがない。

まるで石を包丁で切ろうとしているかのように弾かれる痺れるような感覚が手に残っている。

 

 セラフを地面に刺し、スピードを殺して着地する。

攻撃した外殻を見てみるが、ノッカーの外殻は少し切れ目が入った程度でダメージらしいダメージにはなっていない。

 

目の前のキャンサーをどうやって倒すかを思考する。

外殻への攻撃は高い確率で意味を成してくれない。それはつまり単独での戦闘ではキャンサーを倒すのは難しいと言われているも同義であり、自分一人では無力なのだと言われているようなものだ。

 

「それは嫌だ」

 

力が足りなければ誰かを守ることは出来ない。

 

もう、あんな思いはしたくない

 

「...?」

 

一瞬、脳裏に何かがよぎって動きが止まる。

 

それが悪かったのだろう。

よぎった何かが消えたころには、目の前でノッカーがその大きな腕を振り上げていて___

 

「__カハッ!」

 

セラフを構えデフレクタが攻撃から身を守るようにクロスする。

だが、薄いデフレクタでは守りきれず体は宙を舞う。

 

 たとえ投影された実体のないキャンサーだとしても、地面や壁にぶつけられた痛みはある。

だから地面に叩きつけられる前に態勢を立て直して着地するが、ノッカーはそれを予想しているかのように再度、その巨大な腕を振り上げていた。

 

「くっ!」

 

無理やり身体を捻るようにその巨大な腕を避ける。

反撃する余裕はない。

防戦一方としか言えない状況に焦りが募る。

 

(じり貧だ)

 

距離を取ろうとしても先ほどのダメージのおかげか思うように身体が動かず、ノッカーとの距離を離すことが出来ない。

 

「だったら!」

 

後ろに下がるのではなく、前に出る。

ノッカーとすれ違うように脇を通り、握っているセラフで一発攻撃を入れる。

 

「よし」

 

小さくガッツポーズをしながら距離を取る。

悲しいことにノッカーへのダメージはなく、自分も吹き飛ばされただけなのでデフレクタ残量がちょっと減っただけでほぼダメージはなく。状況は振出しに戻ったのだが、ここからどうやって倒すかを考えるもの部隊長としての仕事だ。

 

 考える、思考する。

目の前の敵を倒す方法を模索する。

ダメージを与える方法を、31S部隊全員がいるならばどうするか。自分一人ならどう戦うかを脳内でまとめ上げる。

 

(いけるか...?)

 

 足に力を入れる。

目の前にいるキャンサーは一体だけなのだから、時間をかけるより一撃で倒した方がいい。

たとえ攻撃が通りづらいとしても、セラフにはそれをも貫く力があるはずなのだから。

 

 

デフレクタ残量を使用する短距離ワープは使用しない。

この足で、目の前のノッカー向けて走り出す。

 

 脳裏に浮かぶのは、防衛戦時の茅森さんの技。

前にやったすれ違いでの一撃ではなく、正面からの一撃。

 

(確か、名前は___)

 

足に入れた力を一気に解放する。

ノッカーへの距離は一気に縮まり、両手に握った二刀のセラフを大きく振り上げて、そして目の前のキャンサー(ノッカー)

 

「___クロス切り!」

 

全力で振り切った。

 

 確かな感触。

それは冷凍された餅を切るような鈍いものだったが、それでもキャンサー相手に自分の斬撃が意味を成したという真実を表していた。

 

「よし!うまくい___ってうわぁぁっ!」

 

有り余った力は逃げ場をなくしたのか、跳躍からの斬撃だったからか身体はバランスを崩す。

セラフを重心に回転しながら重力に従って落ちていく自分の身体は、顔面から地面に激突する。

 

「いっててて...」

 

痛む鼻を摩りながら態勢を正して座り込む。

幸い、目標だったノッカーは撃退できたらしい。周囲の警戒として一度見渡してみるがノッカーの姿が見えないので安堵する。

 

「倒せたー!」

 

座ったまま、大きくガッツポーズをする。

中型のキャンサー一体の撃破という小さな結果だが、それでも自分にとっては大きな一歩なのだ。

 

(これでみんなの負担を減らせるかな?)

 

今日の訓練、もっと自分が頑張ることが出来れば計画通りに戦えたはずなのだから。

今よりももっと力をつけていかなければ、戦いは終わる。誰かの犠牲が増える前に。

 

「ん? おっ、みなちゃんじゃん!」

 

聞きなれた声が、ガッツポーズをしている自分の後ろから聞こえた。

 

「あれ...茅森さん?」

 

 見慣れた姿。

小麦色の髪の毛から見える赤い瞳の少女が、片手を自分に向けて挙げながらこちらを見ていた。

 

「やっほ、アリーナにいるってことはみなちゃんも訓練?」

「少しね。 今日の訓練で思うような動きが出来なかったから」

「真面目だなー。 もう少し気楽に動いてもあたしはいいと思うんだけど」

 

茅森さんの言葉に苦笑いをしながら目をそらす。

確かに、自分でももう少し気楽にいてもいいとは思う。

だけどそれは、それはなぜかやってはいけないのだと、自分の中で誰かが言っているように感じるのだ。

 

「そういえば茅森さんはどうしてアリーナに?」

「あたしも訓練をしようかなって」

 

当たり前のように答える茅森さん。でも茅森さんが訓練ってイメージが湧かない、と考える。

防衛戦での戦いは今の自分よりも圧倒的に強かった。それこそ、そこらの中型のキャンサー程度であれば一人で倒すことが出来るのではないかと思うほどに、彼女はキャンサーと戦えていた。

それに彼女の性格。

楽観的と言っていいのかはわからないが、自分の様に考え込む性格ではないと短い付き合いの中でも理解できた。

だからこそ茅森さんが自主的に訓練するというイメージが湧かなかった。

 

「みなちゃんも一緒に訓練するかい?」

 

セラフィムコードを唱え、その特徴的な二刀のセラフを出した茅森さんはこちらを見てそう言った。

 

 誰かとの連携の訓練もしておくべき、これはそのいいチャンスなのかもしれない。

 

「なら自分も一緒にやらせてもらうかな」

 

立ち上がり、もう一度セラフを握る手を強める。

先ほどの訓練で多少なり疲れはあるが、一戦程度なら問題なくこなせるだろう。

 

「いいね。じゃあななみんお願い」

「わかりました」

 

茅森さんが少し遠くにいる七瀬さんに合図を送れば、また視界が赤く染まる。

 

自分と茅森さんそれぞれが同時にセラフを構える。

 

「行くよみなちゃん!」

 

出現したキャンサーに、自分たちは走りだした。

 

 

 

_______________

 

 

「ふぃー、お疲れ様」

 

出現したキャンサーは三体。

そのうち自分が撃破したのは一体、茅森さんが二体撃破した。

 

「ハァ...ハァ...、やっぱり強いね」

「それほどでもある」

「...そこはそれほどでもない、じゃない?」

 

おちゃらけながら答える茅森さん。

そんな彼女の様子に、どこか安心する。

 

「でもみなちゃんだって結構戦えてると思うよ?」

 

そう言ってくる茅森さんに、少し考えこむ。

 

〈戦えていた〉

 

それは確かにそうだ。

自分は茅森さんと共に投影された偽物ではあったがキャンサー三体と戦い、撃破した。

互いにカバーし合い、それぞれが互いの動きを見て行動をして戦えていた。

でも、それでも足りないと、自分の力が足りていないのだと強欲に力を求めてしまう。

 

「...もっと強くなれるはずだから」

「みなちゃんは何を目指してるのさ...?」

「え? あ、声に出てた!?」

「そりゃもうバッチリと声に出てたよ」

 

口に手を当ててみれば、バッチリ口が開いていた。

それは息をしていたとかそういう話ではなく、しっかり自分の考えていることを口にしていたという証拠でもある。

 

「やっぱりさ、みんなを守るためには力がないと駄目だと思うから。

 人類最後の希望。

自分たちはそう呼ばれる【セラフ部隊】だから、強くなりたい。みんなを守れるくらいには」

 

心の何処かでつっかえる何かが、強迫観念の様にそう言い続けている。

強くなれと、守れと。そう言い続けている。

 

「...そっか」

 

小さく返答する茅森さん。

 

「本当に大変な時はあたしに頼ってよ」

 

そんな彼女に、自分は感謝を言うことしかできなかった。

 

___不安そうにこちらを見ている茅森さんに気づかないまま。

 

 

________________

 

 

 茅森さんがアリーナを出た後。

その背中を見送るようにアリーナから出れば、既に太陽は沈み、空には月が浮かんでいた。

 

 たとえ太陽が無くても、街灯がついて明るい寮への道。

今日は少し遠回りをしようとナービィー広場の方へ足を進めることにした。

 

「やっぱり少し冷えるな」

 

腕をさすりながら目を閉じる。

 

もう桜の咲いている季節だというのに、服を貫通して肌に触れる風は冬を連想させる冷たさで通り抜けていく。

 

いい時間だからだろう。ナービィー広場方面には誰もおらず、そこはまるで自分以外の人がいなくなってしまったのではないかと錯覚してしまいそうな光景だった。

 

(...もっと、強くなれるのかな)

 

全てが足りていない。そう、思えてしまう。

たとえ本当は足りているとしても、どれだけ頭がよくてもテストで不安になる高校などの期末の様に、不安で不安で仕方ないのだ。

 

「セラフ、か」

 

セラフやデフレクタ。

自分は知らない技術であるそれらを信用しきれない。

 

 確かに便利な装備だろう。

唯一キャンサーを撃退することが可能な武器(セラフ)と、圧倒的な質量とスピードで攻撃してくるキャンサーから身を守るための(デフレクタ)

これらが無くてはキャンサーの撃破など到底不可能だ。

それはこれまでの戦闘や、それらの資料から分かっている。

 

では逆に、一般人である自分がこれらの装備を使用しないでキャンサーを倒せる方法を思いつくかと言えば思いつくことはないだろう。

 

(...調べてみよう)

 

セラフを使用してキャンサーを倒す部隊の中には必ずセラフに関する知識を持った人物がいるはずだから、まずはその人物を探して聞き出す。

 

(セラフについて知っている人物...嘉山さんなら何か知っているかも)

 

パワードスーツの時にセラフについて話していた嘉山さん。

彼女なら何か知っているかもしれない。

 

そんな希望を胸に、31Sの部屋である自室に足を進めた。

 

 




感想とか貰えると嬉しいです。主にやる気的な意味合いで。

PS.数日飛ばすかもしれません。
day3とか下手したらもっと飛ばすかも


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