ベロニカバレンタイン (日之谷)
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ベロニカバレンタイン

「勇者様、ここにいましたか!」

 

女騎士が浮遊城の噴水近くで寛いでいると、ベロニカから声をかけられた。

 

何かあったの?と尋ねる女騎士。

 

「ええ、実は勇者様にお渡ししたい物がございまして…ところで勇者様はバレンタインをご存知ですか?」

 

バレンタイン…詳しい事は知らないが、親しい者同士で贈り物をする日とは認識している。

 

ベロニカは手に持ったバスケットの中から箱を取り出し、女騎士に渡す。

 

箱を開けると、小さなチョコレートが9個入っていた。

 

「こちらは勇者教で信者の方に販売しているチョコレートでございます。今日は親しい方に贈り物をする日、ぜひご納め下さい」

 

ありがとうとお礼を言う女騎士。

 

「勇者様から感謝のお言葉を頂けるなんて光栄です!早速ですがお1つどうですか?」

 

ちょうど小腹が空いていたので、食べようと箱からからチョコを1つ取り出そうとする。

 

 

 

 

 

 

「いただき!」

 

突然背後からデザートエルフの男が現れ、女騎士を突き飛ばし箱を奪いとる。

 

「勇者様!ご無事ですか?」

 

起き上がる女騎士、怪我は無いが持っていたチョコレートは先ほどのデザートエルフに取られてしまったようだ、周囲を見渡すが犯人の姿も無い。

 

せっかくベロニカから貰ったのに申し訳ない気持ちになってしまう。

 

「勇者様…いえ、勇者様は悪くありません、きっとあのデザートエルフもお腹が減っていたのでしょう、私はそれも責めたりはしません」

 

ベロニカは女騎士にまた機会があれば贈ると伝え、その場で解散したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「しめしめ…いかにも高そうなチョコレートじゃないか、これは俺が食べちゃうもんね」

 

浮遊城の外れで1人のデザートエルフが女騎士から奪ったチョコレートを1つ手に取り、口に入れる。

 

 

「こ…これは…美味い!」

 

チョコの中にはジャムが入っており、それがアクセントとなる。

 

「ふむふむ、味はマスカットにメロンに抹茶か」

 

あまりの美味しさに9つあったチョコレートはあっという間に全部食べてしまった。

 

「久々にこんなに美味いモンなんて食べた…ぜ…あれ?」

 

急に意識がぼやけ始めたかと思うとそのまま昏睡していしまう。

 

 

 

 

 

 

「全く…勇者様の為に用意した特製のジャム(グリーンチケット)入りのチョコを盗むだなんてとんだ不心得者ですね」

 

邪悪な笑顔を浮かべているベロニカは倒れたままのデザートエルフに近づく。

 

「でもこれで勇者教にまた1人、信者が増えたので良しとしましょうか」

 

ベロニカが手を鳴らすと何処からともなく勇者教の信者が現れ、デザートエルフの男を担ぐとそのまま何処かへと去っていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜勇者教特製チョコ〜

勇者教内で信徒向けに販売しているチョコレート。

売上は全て勇者教の活動資金に使われる。

中心にはジャムが入っており、味はマスカット、メロン、抹茶の3種類。

あまりの美味しさに他の食べ物がいらなくなり、異端者達も心を入れ替え、勇者教を信仰し始めるほどだとか。

なお、1度に大量に食べると[何故か]昏睡してしまうので注意。

ジャムは何で緑色なのか、成分はどうだとか調べようとすると天罰が下るとも言われている。



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