狐は守り続けたい (メヴィ)
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Prolog

ヒロアカが大好き過ぎて書いてしまった………初めてだからガバ、矛盾は赦してニキネキ


ドゴン!

 「……んぅ?なに……?」

 

深夜に物音が鳴りふと目が覚める。

 

 「なんだろ………おとうさん帰ってきたのかな…?どうしたんだろ…」

 

 もしかして酔っぱらって帰ってきて転んじゃったのかな……いってみようかな

ガチャ ギシ……ギシ……

自信の長い銀髪とその上に生えた銀色の《狐耳》と自分の背丈とほぼ変わらない《9つの尻尾》を揺らしながらリビングへ向かうと

 リビング電気ついてる…やっぱり帰ってきてたんだ。

ガチャ

 

 「おかえり、おとうさ………え?」

 「ゆず!?起きたのか!逃げなさい!早く!」

 

リビングではおとうさんとおかぁさんが知らない男と険しい表情でテーブルを挟んで向かい合っていた。

 

 「アン?ガキがいたのかよ!ヒヒヒ!ますますたのしめそうだなぁ!しかも狐娘ときたモンだ!こりゃぁアタリだなぁ!」

 「黙れ!ヴィラン!直美!楪を連れて逃げろ!俺が時間を稼ぐ!」

 「わかったわ!楪!こっちにきて!」

 

おかぁさんが突然ボクを抱き上げて走り出そうとする

 「行かせるとおもってンのかぁ?」

 

 ドン!!「グァッ!?」

 「!?楪!きゃぁぁ!!」

 

ザク

 男がおとうさんを殴り飛ばしナイフを持っておかぁさんとボクに向かってくる。おかぁさんはボクを深く抱きしめて庇った。

 

 「いっ…………ぐぅぁぁァ………」

 

 おかぁさんから赤い血が溢れ出した。

 

 「直美ぃぃ!」

 「おかぁさん!!おかぁさん!大丈夫!?」

 「大丈夫よ…早くにげなさい!急いで!もうすぐヒーローが来てくれるわ!」

 「直美!糞!お前ェ!」

 ガツン!

 「グェ!?」ドスン

 

男が後ろからおとうさんが持ち上げた椅子で男の頭を殴られて崩れ落ちた。おとうさんはすぐにボクとおかぁさんに駆け寄ってくる。

 

 「おとうさん!おかぁさんが!」

 「すぐに家の外に出るぞ!」

 

おとうさんがおかぁさんを抱き抱えてドアを開けようとした瞬間

 「いってェなぁ……てめぇ……ぶっ殺してやるよ!」

 

後ろで踞っていた男がナイフを投げ、おとうさんの背中に深く突き刺した。

 

 「ぐぁ!?」

 

ナイフを刺されバランスを崩す。抱き抱えられていたボクとおかぁさんは玄関に投げ出された。

 

 「あなた!」

 「おとうさん!」

 「ハァ…俺を怒らせるからだ……馬鹿が。アぁ……いってぇなぁ……もういいわお前ら。ガキもやっぱ要らねぇわ。おつかれさん。 死ね

 

ザシュッ!

 

 

 おとうさんとおかぁさんがナイフで切りつけられ血が流れ落ちる。

 

 「う………ぐぁぁ……」

 「いっ………ゆず……りは……にげ……て………」

 

おかぁさんが口から血を吹き出しながら言ったくる。でも怖くて足が言うことを聞いてくれない…にげなきゃ…行かなきゃ………!

 

 「にがさねぇっていってんだろガキがよ」

 

気づいたら目の前に男がいた。

 あぁ……ボクも………ドガンッ!!!!

 

 「大丈夫k…ッ!!!クソッ!!」ドガ!

 

急にドアが開いたと思ったらまた知らない人がいた。でもその人は男を殴り飛ばしてボクと男の間に入る。

 

 「大丈夫!絶対に助ける!」

 

その人はそういうとボクを安心させるように笑ってくれた。そこでボクは意識を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がついたら真っ白なところに居た。回りを見渡してもなにもない。ただただ真っ白な空間が続いている。

 

 「ここどこ………?なんでここに?……………ッ!!!」

 

 思い出した!あの男が!!

 

 「おとうさん!!!!!おかぁさん!!!!どこ!!!???おとうさん!!!おかぁさん!!!」

 

 ひたすらにおとうさんとおかぁさんを呼び続ける。すると後ろからおかぁさんの声がした。

 「楪。」

 

 「!!!!!!おかぁさん!!!!!おとうさん!!!」

 

後ろにはおとうさんとおかぁさんが居た。

 

 「ここはどこなの!!あの男どうしたの!?」

 

泣き叫ぶようにおとうさんとおかぁさんに聞くとおとうさんが

 

 「大丈夫だ!ゆず!ヒーローが来てくれたんだ。ゆずは無事だよ」

 

おとうさんが微笑みながら教えてくれる。でもどこか悲しそうな顔をしている。 それにボクは安心しながら違和感に気づいた。

 

 「………おとうさん……《ゆずは》ってどういうこと………?」

 「………………」

 

おとうさんに問いただすと申し訳なさそうに。悲しそうな顔をした。

 

 「楪………ごめんなさい………」ポロポロ

 

おかぁさんが謝りながら泣き出した。

 

 おかぁさんなんで泣いてるの…?なんで?………うそだ……まさか……

 

 「ゆず」

 「ごめんなぁ……」ボロボロ

 

 うそだうそだうそだうそだ

 

 「おとうさんとかぁさんは………なぁ?ダメだったみたいだ………ごめんなぁ…………う………くそ…………」ボロボロ 

 「…………な……んで……なんでよ!!!」

 

受け入れられない。

 

 「なんでおとうさんとおかぁさんが死ななきゃいけないの!何も悪いことしてないのに!なんでよ!!……………なんで………ボクだけ助かっちゃったんだよ………」

 「ゆず「楪」」

 

だんだんおとうさん達の姿が消えかかってきた。

 

 「まって!!おいていかないでよ!……………ひとりにしないでよ………ひとりにしないで!!!」

ひたすらに涙が溢れだし、顔をくしゃくしゃに歪めなから泣き叫ぶ。

 「………ごめんなぁ」

 「一緒には…いけないの」

 「ゆず「楪には生きててほしいから」」

 

 …………わかったよ………おとうさんとおかぁさんはボクを助けるために死んだんだ………

 

 「わかった………ボク………生きるよ…….!おとうさんとおかぁさんの分まで生きる!そして……ヒーローになるよ!!」

 

もう涙は止まりかけていた。最後は笑った顔で見送りたいから。

 

 「がんばれ」

 「頑張ってね」

 「「ゆず」」

 

もうおとうさんとおかぁさんの姿は光の粒子みたいになってほぼ消えてしまっていた。でも、声はまだ聞こえた。

 

 「もう私たちは楪の側にはいれない……だから………私たちの力《個性》をあげる」

 「忘れるなよ。ゆず。とうさんたちの力はずっとゆずの味方だ」

 「うん!忘れない!!絶対に忘れないから!!」

 

ニカッと笑ってくれたおとうさんが見えたような気がした。だからボクも答えるようにボクもニカッと笑う。そこでまたボクの意識は無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん………」

 

 また知らないところだ………でも今度は寝てたみたい………なんか口に付いてるし…………病院かな…?まぁ良いや………ッ!!

 

 「ッアッ!!あ…たっま………いた……い……!!」

 

 なんで?なんで頭痛いの!?わかんないわかんないわかんない!何か入ってくる!!!こわいこわいこわい!!!

 

目が覚めた瞬間に頭が割れるのではないかという頭痛に襲われバタバタとベッドの上をのたうち回る。

 

 「いッ!ぐぁあ!!!!」

 「どうしたの!?…!おい!鎮静剤を持ってこい!あの娘が暴れてるぞ!急げ!!!」

 「は、ハイッ!」

 

まだ小学3年生の楪の体は医者に簡単に押さえつけられる。

 

 「落ち着け!大丈夫!大丈夫だから!」

 「ッッッッッッ!!!アアア!!」

 いたいいたいたいたいたいたいいたい!!

 「先生!持ってきました!」

 「よし!私が押さえているうちに早く!鎮静剤を!!」

 

鎮静剤を打たれた楪は再び意識を手放した。

 

 「…………ゥあ…………」

 「…………効いてきたか…」

 「また今度起きたときに暴れるかもしれない……看護師達で交代で様子を見続けてくれ。」

 「はい………わかりました。でも先生、この娘大丈夫なんでしょうか………起きた瞬間に暴れるなんて………」

 「この娘はヴィランに目の前で親を殺されたんだ……フラッシュバックしてしまったのかもしれない……」

 「そう………ですね………かわいそうに………」

 「ともかくこの娘を一人にしないように頼む。」

 「はい、わかりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「う………ん………」

 

 眩しいな………ここは…あぁそうか病院だ………もう頭は大丈夫みたいだけど…けど………

 

 「おとうさん…………おかぁさん…………」

 

目尻に涙が溜まる

 

 「目が覚めたの?」

 

 ッ!!誰かいるの?誰?

 

 「だ、だれ………?」

 「あっ安心して!私は看護師よ!待ってて、すぐに先生を呼んでくるから!」

 「は、はい…」

 

 

それからしばらくすると先生が来て体に異常は無いか検査が終わって先生お話をすることになった。

 

 「とりあえず検査結果に異常は無いね……良かったよ。さて、自己紹介をしようか。私は佐藤 幸太って言うんだ。君は…時守楪ちゃんで合ってるかな?」

 「はい。ゆじゅ………楪です。」

 

 噛んじゃった………恥ずかしい………

 

 「うん、問題無さそうだね。」

 「それじゃぁ、今からとても大事なことを言うね。」

 あ、眉間にシワが寄ってる………おとうさん達のことかな……

 「お、おとうさん達のお話をですか……?」

 「ッ!………うん……そうだよ……君のお父さんとお母さんは…助けられませんでした………すまない…」

 

 あぁ……….やっぱり夢じゃなかったんだ……夢だったら良かったのに…!

俯いて溢れそうになる涙をぎゅっと堪えていると

 

 「ごめんね……先生も頑張ったけど助けられなかったんだ………ごめんね………!」

 

側にいた看護師さんが涙を滲ませながら楪をぎゅっと抱きしめていた。

 優しい人なんだな………

 

 「…………はい…………そう………ですか………」

 

 やっぱり夢じゃなかったんだよね………でもおとうさんとおかぁさんはボクに力を残してくれた………ッ!?頭に何か………何か聞こえる……?じげんしゅうのう?……しゅうふく?ふくげん…?なんだろこれ………

 

 「……い……お…いおい!大丈夫か!?」

 「は、はいぃ!」

 

 びっくりした!!急に大声出さないでよ……

 

 「先生!落ち着いてください!ゆずちゃんがびっくりしちゃってるじゃないですか!」

 「す、すまない。話しかけても反応が無かったから何か異常があるのかと心配になってな……楪ちゃんもごめんね?」

 

 そういうことなんだ……確かにボーッとし過ぎてたかな。でもびっくりするから大声を出すのはやめてほしいな。

 

 「だいじょぶです。おとうさんとおかぁさんのことを思い出してたら急に声が聞こえて…….」 

 「声が?なんて聞こえたんだい?」

 「なんか………じげんしゅうのう?とかしゅうふくとふくげんって聞こえました。」

 「じげん………次元収納かな……修復と復元……………ん?まてよ」

 

ブツブツ言っていたら突然書類を漁り出す医者が持っていたのは時守と書いてある書類だった。

 

 「先生?どうしたんですか?」

 「楪ちゃんの親御さんの《個性》だったような気がしてね………やっぱり……どちらも親御さんの個性だ……だけど復元?復元の個性は無かったはず……」

 

 あ、そういえば夢でおとうさんとおかぁさんに会ってお話したの先生に言ってなかったな……話した方が良いかな?

 

 「あ、あの、せんせい?」

 「うん?あぁごめんね。どうしたんだい?」

 「最初に起きたときに凄く頭が痛くて、その前にに夢でおとうさんとおかぁさんに会ったんです。」

 「最初に起きたとき………暴れていた時の前……運び込まれた時か………

 

 またブツブツ言ってる………話し聞いてほしいんだけどなぁ……

そう思っていると看護師さんがもう我慢ならんと言うように

 

 「先生!いい加減にしてください!」ベシッ!

 「あた!?」

 

 殴られてる……びっくりした顔になってる

殴られた先生の顔が面白かったのか楪はクスクスと笑っていた。するとこっちをみていた先生が「笑わなくても……」と小声で言っていたのを楪は聞いていた。

 

 「ごめんなさい。びっくりした顔が可笑しくて」

 「まぁ良いよ。もとはと言えば私が話を聞かなかったんだから。それで、夢でお父さんとお母さんに会ったんだね?何か言っていたかな?」

 「はい。一人にしてごめんなさいって言ってました。あと、もう側にいられないから力をあげるって言ってました。」

 「力を………?力………個性のことか……?まさか………だが個性の譲渡なんて聞いたこともないな………その他に何か言ってなかったかい?」

 あとは………なかったよね……?あ、でも

 「おとうさん達の力はボクの味方だっておとうさんが言ってました。」

 「味方………か………なるほど……話してくれてありがとう。それと……君」

 

 ボクの後ろを見てどうしたんだろ?あ、看護師さんか!看護師さんがいるのすっかり忘れてたな……

 

 「わかっていると思うが今聞いた話、それと今から話す話は絶対に他言無用だよ。わかっているね?」

 「は、はい!わかってます!もし漏れたら大変なことになりますからね……絶対に喋りません。」

 

 なんか先生のしゃべり方が怖かったな……どうしたんだろ?

 

 「よし…じゃぁ楪ちゃん。今から言う話をしっかりと聞いて欲しいんだ。」

 「は、はい」

 

 先生本当にどうしたんだろ……?顔もちょっと怖いままだし………怖い…

 

 「まだ予想でしか無いんだけど、多分楪ちゃんには今、《三つの個性》があると思うんだ。」

 「三つの個性……ですか?それってもしかして」

 「うん。多分楪ちゃん自身の《九尾の狐》とお父さんの《次元収納》そしてお母さんの《修復》この三つのがあると思うんだ。でも、復元については検討もつかないんだけどね」

 

 おとうさんとおかぁさんの個性がボクの中に……そっか…味方ってそういうことだったんだね

 

 「それで、今の話を聞いた上で何か体に異常は無いかな?」

 異常かぁ……特に何も無いけど……でも…….なんだろう?何かわかるような……

 「う~ん……わかるような…わからないような………」

 「そっか………とりあえず今日はここまでにしようか。部屋まで送るよ。」

 「あ、はい!ありがとうございます。」

 

そのあと部屋まで送ってもらってから看護師さんが重湯を持ってきてくれた。わりと美味しかった。重湯を食べたあと、しばらく先生に言われたことを考えていた。

 

 「おとうさんとおかぁさんの個性…か……」

 

 ボクに使えるようになるのかな………どうやったら使えるんだろう?よく考えてみたらおとうさんとおかぁさんが個性を使ってるのみたこと無かったな……

そんなことを考えているうちに楪は眠ってしまった。 

 

 

 

 「楪ちゃん。起きて」

 「んぅ?」

 

 ゆさゆさと体を揺すられて目を覚ます。眠いときに体を触られるのは嫌いだ…………とても嫌い……

 

 「……起きたから触らないで………ふぁ………」

 「あ、ごめんね?おはよ楪ちゃん。」

 

 声のする方向に目を向けると昨日の看護師さんが笑顔であいさつをしてきた。

 

 「おはようございます。どうかしたんですか?」

 「もう八時半だよ?朝ごはん持ってきたから食べてね?」

 

 ベットにテーブルをガシャッと設置し、目の前に朝ごはんが置かれた。ごはん、豆腐の味噌汁、鮭、サラダ、牛乳、とても健康的だね。鮭と牛乳は好きだから嬉しいな。

 

 「ありがとうございます。」

 「どういたしまして!じゃあ九時過ぎくらいにまたくるから、それまでにご飯食べて、歯磨きとかしといてね?」

 

 じゃあねと言うように手を振りながら病室をでていく看護師さんを見送り、ご飯を食べ始める。病院食って味薄くて美味しくないって聞いてたけど、普通に美味しいじゃん。でも確かに味噌汁とか鮭は味薄いけどね。

 

 「ふぅ……ご馳走さまでした!」

 

 今って何時だろ…………ゲ……もう五十分過ぎてるじゃん……ゆっくりし過ぎたね。ちょっと急ごう。

 

 「洗面台は………と、ここか」

 

 口を軽く濯いでから置いてあった歯ブラシに歯磨き粉をつけて歯を磨く。あ、甘いな、イチゴかな?そう思いながら歯を磨き終わり再び口を濯ぎ、最後に水で顔を軽く洗い、洗面台をあとにする。

 

 「さて、何時かな?…9時五分くらい…だね。もうそろそろ看護師さんがくるかな?」

 

 あ、そういえばブラシ無いかな?尻尾ブラッシングしたいんだけどな……

 ドアがガラっと開き、看護師さんが入ってきた。ノックくらいしてよ……ちょっとびっくりしちゃったじゃん……

 

 「どうしたの?尻尾逆立てて」

 「急に入ってきたからびっくりしただけです!ノックくらいしてください!それよりブラシとかありません?尻尾の手入れをしたくて」

 「ごめんごめん……ブラシかぁ、確かに立派な尻尾だもんね。後でブラシ持ってくるよ。他の支度は終わった?」

 

 まぁ、無いよね。手入れは後でいっか。

 

 「はい。終わってます。なにか用事ですか?」

 「うん。実はね楪ちゃんに会いたいって言うひとが来てるんだ。会っても大丈夫かな?」

 

 ボクに会いたいひと………誰だろ………ボクにおばぁちゃんとか親戚とかいないっておかぁさんが言ってしな………

 

 「は、はい、大丈夫です。でも、誰ですかね……ちょっと予想つかないです。」

 「とりあえず合ってみよっか。じゃぁ入って貰っても良いかな?」

 

 えぇ……もういるの…………?まぁ良いけどさ

 

 「……はい」

 

 看護師さんがボクの返事を聞いて、病室の外へ「入ってきてください」と声をかける。そして入ってきたのは……

 

 「おはよう楪ちゃん……久しぶりだね。覚えているかな?」

 「え………と……みどりや………おじちゃん?」

 

 入ってきたのはおとうさんとおかぁさんの友達の緑谷久と緑谷引子だった。

 

 「覚えていてくれたんだね………その……次元たちのことは……」

 「良いんです。ちゃんと夢でお別れしましたから。」

 「ゆ、夢で………?………ハハ、次元らしいな」

 

 夢でと言うことに若干驚きつつも納得してくれた。でもらしいって何?らしいって。もしかしておとうさん何かやらかしてたの?

 

 「そういえばどうしてボクに会いたかったんですか?」

 「あ、ああ、そうだったね。楪ちゃん、僕たちの《家族》にならないかい?」

 

 ………え?家族に?

 

 「……え、と、な、家族に、ですか?」

 「…………楪ちゃん。」

 

 今まで黙っていた引子さんが突然ボクの名前を呼び、それに反応して引子さんを見ると、目に涙を滲ませながら抱きしめてきた。

 

 「え、引子さん?どうしたんですか?」

 「次元さん達に親戚がいないのは私たちも知っているわ。このままだと楪ちゃんは……孤児院に行くことになるわ………それなら、私たちと一緒に…………家族にならない?」

 

 震えた声で家族にならないかと言ってくる引子さん。確かにこのままだと孤児院に行くことになるよね………なら……それなら……!

 

 「………ボクが家族になっても良いんですか……?」

 「良いよ!」

 「ボクは一杯迷惑掛けると思います」

 「子供は迷惑駆けてなんぼだろ?」

 「…………ボクで良いんですか?」

 「「楪ちゃんが良いんだよ」」

 ……ッッ!!やっぱりこのひと達は優しいなぁ………

 「………おじちゃん、引子さん………ボクを

 

   家族にしてくださいッ!!!」 

 

 

 

 

 

そしてボクは、緑谷楪になった。

 

 

 



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ボクの大事な家族

前のはかなり読みづらいと思い、今回から少し書き方を変えてみました!


「………ゆ………きて」

 「んう………」

 「ゆず、早く起きてよ……」

 

 体をゆさゆさと揺さぶられる。体を触られるのはあまり好きではないが、これは別だ。

 

 「撫でてくれたら起きるよぉ~……」

 「なに言ってるの……早く起きて離れてくれないと僕も起きられないってば……」

 

 彼は緑谷出久。ボクの兄にだ。ボクがこの家に来た時、恥ずかしくてそっけない態度を取っちゃっても、明るく接してくれて、今では大好きな家族だ。まぁ、ベットに潜り込んで抱きついて眠るくらいには大好き   

 (あとで引子さんに聞いたけど、尻尾をもふもふしたくて仲良くなりたかったんだって。まぁ、悪い気はしないよ?むしろちょっと嬉しかった。)

 

 「ゆずもいい加減に自分の部屋で寝なよ……もう良い年なんだからさぁ…」

 「なら寝るときに追い出せば良いじゃん」

 「抱きついて寝るから追い出そうにも出来ないんだよ!」

 

 声を若干荒げながら反論してくるいずにぃ

 でもボク知ってるんだよ?ボクが抱きついてから暫くするとこっそり尻尾触ってるの。最初はびっくりしたけど、優しく撫でてくれて気持ちいいから見逃してるのに。まぁいずにぃは気づかれてないって思ってるから黙ってるんだけどね。

 

 「ハイハイ、とりあえずおきよ?学校遅れるよ?」

 

 ベットから尻尾を揺らしつつ降りながらそう言うと「どの口が……」と言っていたが気にしない気にしない気にしない♪

 

 「ボク着替えて来るからいずにぃも早くね?」

 「もう………」 

 

 そう言いながらいずにぃの部屋を出て自分の部屋へ戻り、ダボダボでユルユルなパジャマを脱いでロッカーから制服を出し着替えはじめる。

 

 「………もうちょっと育ってくれてもなぁ………はぁ……」

 

 自分の《慎ましやかな》胸を見て、愚痴をこぼしながら制服に着替え終わり、鏡の前でくるりと回りながら自分の姿を確認していく。

 む、尻尾がちょっとボサボサだな………ブラシ掛けしないとな。あ、いずにぃにも手伝って貰お♪

 そう思い、鼻歌を歌いながらリビングへ向かう。そこでは引子さんが朝食を用意してくれていた。

 

 「おはよ、引子さん。」

 「あら、おはよ!ゆず」

 

 引子さんに挨拶をし、テーブルに用意されていた朝食を食べはじめる。暫くするといずにぃも制服に着替えてやってきて、引子さんに挨拶をし、同じく朝食を食べはじめる。

 あ、いずにぃに今のうちに言って置かないとな。

 

 「ふぃずぃ?」

 「飲み込んでから喋りなって」

 「モグモグ…ンクッいずにぃ、準備終わったらブラシ掛け手伝ってくれない?」

 

 そう言いながら九本の尻尾をいずにぃに見えるようにフリフリと振って見せる。いずにぃはボクの尻尾を見てから

 

 「わかった。なら早く食べないとね」

 「せんきゅーぶらざー」

 

 ボクがおどけながら返事をすると「はいはい」と流された。

そして朝食を食べ終わり、他の身支度を済ませてからブラシを二つ用意し、片方をいずにぃに渡していずにぃに尻尾を向けてソファーに座る。

 相変わらず上手だなぁ………優しくやってくれるから気持ちいいなぁ……

 そう思いながら自分ももうひとつのブラシを使い尻尾を整えていく。九本の尻尾を整えるのは中々に大変だが、幼い頃からやってくれていたお陰でさほど時間はかからなかった。暫くしていずにぃが「おわったよ」と言ったので尻尾でいずにぃの頬を撫でるようにし、

 

 「ありがと、いずにぃ」

 

 と、お礼を言うと、いずにぃは「どういたしまして」といい、時計を確認すると、

 

 「げ!ゆず急ぐよ!あんまり時間ない!」

 「え、本当じゃん!急ご!引子さん!「いってきます!」」

 「いってらっしゃい!気を付けてね!」

 

 バタバタと、家を出て二人一緒に駆け足で学校へ向かう。学校についたのは予鈴がなるギリギリのことだった。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 「えぇ~…、お前らも三年と言うことで、本格的に将来を考えていく時期だ。今から進路希望のプリントを配るが………だいたいヒーロー科志望だよネ?」

 

 「「「「「「「「「は~~い!!」」」」」」」

 

 先生が確認を取るように言うとクラスの皆は自分達の個性を発動させながら大きな声で返事をした。

 うるさい……こういう時は自分の個性が嫌になるな………普通の人よりよく聞こえちゃうし………うるさいのは嫌いだ………耳が凄いキンキンする………

 そう思いながらペチャッと狐耳を倒して少しでも騒音を防ごうとしていると一人、声をあげて先生に反論するのがいた。

 

 「センセー!皆とか一緒くたにすんなよ。俺ァ仲良く底辺なんざ行かねぇよっ!」

 

爆豪勝己、いずにぃの幼なじみだ。普段からいわゆる俺様系でわがままな奴だ。いずにぃはかっちゃんと呼んでいるので僕もそうよんでいる。

 クラス全員を馬鹿にしたかっちゃんに対してクラスからは

 

 「そりゃぁねぇよ勝己!」

 「そうだそうだ!」

 

 と、ブーイングが上がり始めたがら「モブがモブらしくうっせぇ!!」とさらに馬鹿にして流していた。すると先生が

 

 「あ~、爆豪は確か雄英高校だったな」

 「雄英って国立の!?」

 「偏差値79だぞ!?」

 「倍率も毎度やべぇって話だろ!?」

 

 と、更にざわつく。うるさい。そう思いながらいずにぃの方をちらっと見てみると、机に顔を伏せていた。

 いずにぃも雄英志望だもんね……まぁ僕もなんだけどさ。こんな騒がしい中注目集めたく無いもんね………ボクも伏せてようかな?

 そんなことを思っているとかっちゃんが「その騒がしさがモブたる由縁だ……」と言い、机の上に乗った。

 

 「模試じゃA判定!俺は唯一の雄英圏内!あのオールマイトをも超えて!俺はトップヒーローになり!必ずや!高額納税者ランキングに名を刻むのだ!!」

 

 お、おう、頑張ってね。でもその前にその人格と言葉遣いと顔を直そうね。

 そんなことを思っていると担任が「確か、緑谷兄妹も雄英志望だったな」と、爆弾発言をした。いや、何で今言うのさ。そう思っているとクラスの皆がいずにぃを見て笑い出した。

 あぁ………またか………本当にうるさい………そしてイライラする………また皆していずにぃを馬鹿にして………

 

 「緑谷は無理ッしょW」

 「楪はともかくお前には無理だって!」

 「勉強だけじゃ雄英に受かるわけねぇじゃん!」

  

 いずにぃを馬鹿にされ、ボクは怒っていた。もう限界だと立ち上がろうとすると先にいずにぃが立ち上がった。

 

 「そ、そんな規定はもうないよ!た、ただ、前例が無いってだけで…」

 「オラァ!!」

 「ッ!」

 

 いずにぃが弁解をしているとかっちゃんが個性を使っていずにぃに向かっていた。ボクはとっさに尻尾に妖力を込めて硬質化させ、いずにぃとかっちゃん間に入り、尻尾でかっちゃんの個性:爆破をガードする。

 

 「いきなりなにしてんのさかっちゃん!危ないでしょ!」

 「邪魔だどけェ!!女狐がぁ!!」

 「俺ァそこのデクに用がアンだよぉ!!」

 「あ、こらぁ!!」

 

 そう言いながらかっちゃんはボクを押し退けていずにぃに詰め寄っていく。

 

 「こらぁ!!デク!ボツ個性どころか《無個性》のてめぇが!なに俺と同じ土俵にたてるんだぁ!?アァン!?」

 「ち、違うよかっちゃん!別に張り合おうとか別に全然……本当だよ!?た、ただ、昔からの夢なんだ……それに、その、やってみないとやってみないと解んないし……」

 「なァにがやってみないとわからないだぁ!?記念受験か!?」

 「てめぇが何をやれるんだ!?無個性のくせによぉ!!」

 

 そう、いずにぃは無個性だ。誰よりもヒーローに憧れ、小さい頃からヒーローになりたいと言ってきたいずにぃだけど、現実は無慈悲だった。何で神様はいずにぃに個性をくれなかったの?

 

 「うるさい!」

 

 気づいたら声を出していた

 

 「無個性だからってヒーローになれないの!?」

 

 いずにぃを馬鹿にするのもいい加減にして

 

 「無個性だからって馬鹿にする奴よりも!」

 

 いずにぃはボクの大事な家族だ

 

 いずにぃは良いヒーローになれるよ!~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

  学校が終わり、用事を済ませ、教室に戻るとかっちゃんがちょうど教室を出て行くところだった。教室へ戻ると、いずにぃが暗い顔をしていた。見ると、いずにぃがいつも持っているはずの《将来のためのヒーローノート》がなかった。

 

 「…………ノート、どうしたの?」

 「…………」

 「…………はぁ、かっちゃんか………」

 「……ごめんゆず…今日は先に帰ってて……ね?」

 「………わかった。早く帰ってきてよ?」

 「うん、わかってるよ。じゃあね」

 

 そう言っていずにぃは一人で教室を出ていった。

 

 「先に帰ってって言われても…そんな暗い顔してたらほっとけないよ……いずにぃ………」

  

 こっそりいずにぃのあとをつけていると、外鯉のため池から何かを拾い上げた。それはいずにぃのヒーローノートだったが黒い煤をつけて所々焦げてしまっている。

 

 「やっぱりかっちゃんか……」

 「………神様………何でいずにぃなの………?」

 

 いずにぃは幼稚園のころからヒーローを尊敬し、自分もなりたいと思っていたそうだ。幼稚から帰ってかてはオールマイトのフィギュアを片手に引子さんにパソコンでオールマイトの救助活動の動画を見たいとせがんでいたらしい。それをとてもキラキラとした目で見ていた。よく、

 「僕も個性が出たら、こんな風になりたい!」

と、言っていたのに………いずにぃには個性が発言せず、検査をした結果、無個性だとわかったのだ。

 

 

 

 引子さんに聞いた話を思い返しながらいずにぃのあとをつけて、トンネルに差しかかった当たりで急に立ち止まった。どうしたんだろ?なにかあったのかな……?そう思ったが今度は小さくガッツポーズをして

 

 「ハ~ハッハッハッハッ!

 「えぇ……??」

 「!?だれ!? ゆず!?何でいるの!?」

 

 急に笑い出したので思わず困惑して声を出してしまい、バレてしまった。驚いた顔も面白くて好きだなと思いながらいずにぃに

 

 「や、ヤッホー?」

 

 と、へんてこな挨拶をした。

 

 「何でいるの!?先に帰ってって言ったじゃないか!」

 

 ん?顔が少し赤いな……あ、もしかして笑ってるのを見られて恥ずかしくなったのかな?

 

 「だ、だってあんな暗い顔してるんだもん……ほっとけないよ……」

 「……心配してくれてありがとう。もう、大丈夫だよ」

 「うん、そうみたいだね。あんなに笑えてたんだしニヤニヤ」

 「み、見てたの!?」

 「バッチリと♪」

 「はずかしぃ…………///」

 「………うん?なんのおと?………ッ!!いずにぃ!!」

 

 そんな茶番をしていると後ろから変な男が聞こえ、振り返ってみると、大きなヘドロが蠢いていた。ボクはとっさにいずにぃを突飛ばしてヘドロから距離を取らせる。

 

 「いったいなぁ!って………ヴ、ヴィラン!!」

 「Sサイズの隠れ蓑………」グワッ!

 「いずにぃ!逃げて!」

 

 ボクは再びいずにぃを突飛ばし、ヘドロから離すが、ボクがヴィランに捕まってしまった。

 

 「うッ!!………ウッお………え………」

 「ゆず!!!」

 

 ヘドロに捕まり、からだの自由を奪われ、口にヘドロを流し込まれる。

 (い、息が出来ない………!!苦しい!気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い)

 

 「大丈夫!体を乗っとるだけさァ!落ち着いてェ?苦しいのは約四十五秒!すぐに楽になるさ!」

 

 楪は何とか呼吸をしようと抵抗するが

 (いッ息が!!掴めない!?)

 

 「掴めるわけないだろう?流動的なんだから!助かるねぇ君は俺のヒーローだ!」

 

 (い……意識が……うすれて………ちから………はいらない………!し………しぬ………の?や………やだぁ………!いずにぃたすけて………!!)

 

 ボスッ!! 

 

 「あぁ?なんだぁ?」

 「ゆずを離せ!」

 

 いずにぃが自分のバックを投げつけてボクを助けようと必死でヘドロを掻き分けようとしていた。

 

 「だからァ!掴めないって!流動的なんだからさぁ!!」

 「うぁ!?」

 

 いずにぃが吹き飛ばされトンネルの壁に叩きつけられ気を失った。その時、

 

 

        もう大丈夫だ少年少女、

 

 

          私が来た!

 

 

 

 「テキサススマッシュ!!!」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 「い……にぃ………いずにぃ!」

 「HEY!HEY!HEY!」ペチペチペチ

 「いずにぃ起きてってば!!」

 「へぁ!?」

 「やっと起きた………心配しちゃったよ………」

 「ゆ、ゆず!?何で!?大丈夫!?さっきのヴィランは!?」

 

 起きるなり騒ぎはじめるいずにぃ。うるさい………それより目の前の人に気づかないのかな………

 

 「ボクは大丈夫だよ。ヒーローが助けにきてくれたんだ。」

 「ひ、ヒーローが?お礼を言わなきゃ!どこに!?………!!?!?」

 「ハッハッハッハ!よかったよかった!」

 「ほわぁぁぁぁ!?????」

 「いずにぃうっさい!!!」

 

 急な裏声絶叫に思わず声をあらげてしまった。

 

 「お、オオオオオオ、オールマイト!??!?」

 「元気そうに何よりだ!いやぁ~悪かった!ヴィラン退治に巻き込んでしまった。いつもはこんなミスはしないんだが、ボクとしたことが慣れない土地で浮かれちゃったのかなぁ!?あっはっはっはっはつ!」 

 

 いずにぃもオールマイトも何でこんなにテンション高いの………耳キンキンする………

 

 「でもありがとう!君たちのお陰だ!無事つめられた!」キュピーン!

 

 凄い自慢げにコーラのペットボトルに詰められたヘドロをみせてくる。いやどうやって詰めたの?掴めないのをどうやって詰めたの?

 

 「お、オールマイト!本物だ!!画風が全然違う!!」 

 「…………….はぁ………ほらいずにぃ、サイン貰わなくて良いの?」

 「ハッそうだったサイン貰わなきゃ!サインサイン……どっかに………あっ!!あのノートに!!」 

 

 そういって煤だらけのヒーローノートにサインを!と、ノートを開いてみると、デカデカとALLMIGHTと書かれていた。いや、そのまんまなのね………

 

 「してあるぅぅぅ!?」

 

 既にサインをしてあったことに器用に驚きながら感動しているいずにぃはあかべこよりも早く「ありがとうございます!!」と何度も頭を下げていた。

 

 「じゃ、私はこいつを警察に届けるので、液晶越しにまた会おう!

 「え、そんな!まだ聞きたいことが……!」

 

 ん?まだあるの?でもオールマイト話聞いてなさそうだし………もう大ジャンプしようとしてるんだけど………え?もしかして捕まっていくつもり?え?え?え?てか起きてからボクのこと忘れかけてない?あんまり心配してくれてないような気がするんだけど……(ハイライトオフ)

 

 「それでは応援よろしくぅ!!」

   バビュン!!

 

 

 

 

 

 

 「て、」

 「くぁwせdrftgyふじこlp」

 「こらこらこらこらぁ!!離しなさい!熱狂が過ぎるぞ!狐少女も!冷静におんぶの体制に入ってるんじゃない!」

 

 いずにぃが急にジャンプしようとするオールマイトの足にしがみついたのでボクも置いていかれる訳には行かないので、オールマイトの背中にしがみついていた。

 というかいずにぃの顔がすごい。風圧で目蓋と唇が目くれ上がってクリーチャーになってる。

 

 「ほら!早く降りなさい!

 

 え?降りろと?こんなに高さで?死ぬよ!!

 

 「今降りたらしんじゃう!!」

 「た、確かに……」

 「ぼぼぼ僕!あああああなたにちょちょちょちょ直接いいいいいいい言いたいことがぁぁぁ!!」

 

 ごめんその顔で喋らないで………!風圧のせいでなに言ってるかわからないし。

 

 「OKOK!口とじなぁ!!」

 

 いずにぃはオールマイトに言われてようやっと顔をしたに下げた。

 

 「まったく……狐少女もそんなに冷静なら少年をとめてくれ!」

 「ボクにはいずにぃをとめることなんて出来ません!」

 「自信満々に言わないでくれ……フム……」キョロo(・ω・= ・ω・)oキョ  

 

 どこに着地をしようかと言わんばかりにキョロキョロし始めるオールマイト。そのときオールマイトの口から血のようなものが垂れた。

 「sit!」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

  どうにかビルの屋上に着地したあと、いずにぃの顔をみたら死にかけのゾンビのような顔をしていた。

 

 「ブッあはははは!なんて顔してるのいずにぃ!!うひひひひひひ!だめ!おなかいたいぃぃぃ!!」

 「コヒューコヒュー………」

 「あひははひははふ!」

 「狐少女は何でそんなに平気なんだい………とりあえず!ビルの人に話せば下ろしてくれるだろう!じゃ!」

 

 そう言って再び去ろうとするオールマイトをいずにぃは必死に止める。でもはっきりと「no!待たない!」って言われて動きが止まる。

 時間が無いのはわかるけど無慈悲過ぎないかオールマイト……

 

 「個性は無くても!ヒーローはできますか!?」

 

 いずにぃの問いかけにピタリと動きがまる。

 

 「個性が無い人間にも、貴方みたいになれますか!!」

 

 オールマイトがゆっくりと振り返り、いずにぃを横目でみる。

 

 「個性が………?ウグッ!?」

 「え?」

 

 急に苦しんだと思ったらオールマイトから大量の煙がで出来た。

 え、いや、何でいずにぃは普通にしゃべってんの?気づいてないの?

 

 「恐れ知らずの笑顔で助けてくれる。貴方みたいな最高のヒーローに、僕も!……!?」

 

 煙が晴れたと思ったらオールマイトの代わりにヒョロガリの骸骨が出てきた。……何で?もしかしてオールマイトしぼんだ?あの筋肉風船なの?

 

 「nooooooooo!?」

 「いずにぃ、ボクも驚いてるけど横で騒がないで、うるさい」

 

 「だから何で狐少女は冷静なんだ………」

 

 

 

 

 

 

  「うわぁぁぁぉぁぁ!?し、しぼんでるぅ!?な、なんで?さっきまで!え!?偽物!?ほっそぉぉぉ!?」

  「失礼な……私はオールマイtゴポォ……」

 「うわぁぁぁあ!?吐血したぁぁぁ!?」

 

 ……もう突っ込まなくて良いかな……いずにぃ表現に忙しそうだし………

 

 「見られた次いでだ少年少女、間違ってもネットに書き込まないように」

 

 そう言いながらオールマイトは座り込み、ダボダボのシャツをめくり、脇腹の痛々しい傷痕をみせてきた。それから色々な話をされた。  

 一つはオールマイトには活動限界があること、

 一つはあの笑顔はヒーローの重圧、そして、内にわく恐怖から自分を欺くためということ。

 最後に、「プロはいつだって命懸けさ。ちからが無くとも成り立つとは口に出来ない」

  

 そのときのいずにぃの顔は見てられなかったとてもショックを受けて、また暗い顔をしてしまっていた………そのとき、遠くで爆発が起きた。それにいずにぃは反応して、「どのヒーローが現場に!」と駆け出したが、さっきの言葉を思い出したのか、とぼとぼと歩き初めてしまった。

 

 それから再び一人にしてほしいと言われた。流石にまた後をつけるのは悪いと思い、ボクは帰り道で待つことにした。

 

 「帰り道で待っているくらいは良いよね……?」

 

 そう思いながら帰り道で待っているといつの間にか夕焼けになってしまっていた。

 

 「いずにぃまだかな………あっ!」

 

 いずにぃとかっちゃんの声が聞こえた。最後にかっちゃんが

 

 「クソナードがッ!!」

 

 と、悪態をついて帰っていった。

 何があったんだろう………心なしかいずにぃもスッキリした顔になってるし………後で話を聞いてみようかな………

 そう思っているとオールマイトが飛び出してきていずにぃに話しかけていた。

 

 「よく聞こえないな………仕方ない………」

 

 妖力を耳に込めて聴力を強化する。すると聞こえてきたのは

 

 「ち、力を受け継ぐ?」

 「はーハッハッハッ!何て顔をしてるんだ?提案だよ本番はここからさ。良いかい?少年。私の力を君が受け取ってみないかという話さ!!」

 「えぇ………?」

 

 いずにぃがオールマイトの力を受け継ぐ?どうやって?

 

 「私の力は聖火のごとく受け継がれてきた力なんだ!!」

 「力を受け継ぐ……?そんなの聞いたこともブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ………いや、ゆずも確か……」

 「君はとりあえず否定から入るな………ナンセンスだ!!

 「な!?」

 「私は隠しはするが嘘はつかん!力を譲渡する力を!冠された名は   ワンフォーオール」

 「ワンフォーオール……?」 

 

 ボクは力の譲渡と聞いて、おとうさんとおかぁさんを思い出していた。まさか受け継がれてきた個性があるなんて………「あの場の誰よりもヒーローだった!」あ、そういえばまだ話聞いてる途中だったね。

 

 「よろしく、お願いします!!」

 

 話終わったみたいだね。詳しいことは聞こえなかったけど、つまり、

 「いずにぃがオールマイトから個性を受け継ぐってこと………?それってつまり…………いずにぃがヒーローになれる………てこと………?」

 

 声に出してやっも理解ができ、ふつふつと嬉しさが沸き上がってきて、思わずいずにぃの方に走り出していた。すると、

 

 「ゆ、ゆず!なんでここにいるの!?」

 「Watts!?!?き、狐少女!いつからそこに!?」

 「さいしょから!」

 「な!?」

 「そんなことよりいずにぃ!!」

 「な、何!?」

 「一緒に、ヒーローになろ!!絶対に!!」

 「!!!うん!」

 

 

 そうして、いずにぃはオールマイトの弟子になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ところで狐少女…………最初というのはどの当たりから……?」

 「力を受け継がないかってところからです。」

 「oh ………誰にも言わないでくれよ?」

 「て言うか住宅街で話すことじゃないですよね?

 「……………ごもっともです…………」

 

      勝った!

 

 

 

 

 

 

 



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主人公説明

そろそろデク君の筋トレ生活が始まります。
そこにチョロッと主人公を介入させたいので取り敢えずここで説明しておきたいと思います。(本編でも主人公の個性説明はします。)

主人公のイメージです。おもいっきり作者の性癖がはいってます。

【挿絵表示】

作って遊べる診断メーカーで作りました!


旧名:時守 楪

新名:緑谷 楪

 

身長142

  スリーサイズ79/62/86

  尻尾の長さ140 

 

 好きなモノ 家族(特に出久)

       友達

       牛乳

       鮭

       雨、天気雨

       自然の音(特に雨の音)

       出久がプレゼントした首輪

(出久はチョーカーをプレゼントしようとしたが、チョーカーと首輪の区別がつかず犬用の首輪をプレゼントしてしまった。これはこれで気に入っていたので、ずっとつけていようとしたら、引子に言われ家の中でのみ付けるようになった。後日ちゃんとしたチョーカーを出久に渡された。)

 

 

 嫌いなモノ 眠気が強いときに体を触られること(緑谷家は除外)

       騒がしい人、場所

       しつこい人

       自身の動きを阻害するモノ

       

              

          《個性》

 

          九尾の狐

 

九尾にできることはなんでもできる。(九尾による伝承は曖昧かつ、逸話が多いため、詳細は不明)

 

常人より優れた五感、運動能力、自然治癒能力

 

 

妖力を使った身体強化

 妖力が続く限りパワーを上げることができる。しかし込めすぎると骨や筋肉が妖力に耐えられなくなり、自壊してしまう。

 

妖力を体に纏いバリアのように守る

 強度は強化ガラスほど。受ける威力が高過ぎると割れる。

妖力が続く限り何度でも張り直せるが、再び張り直すにはCTが存在し、基本CTは15秒、妖力が少なくなるほどCTが延びていく。

 

尻尾に直接妖力を流し込み、毛を硬質化させることが出来る。

 

妖力は休息、睡眠、食事をすることで回復する。

 

 

    時守次元から受け継いだ《次元収納》                 

            (ディメンションストレージ)

 

 楪は収納されているモノを全て把握している。(楪にはマイクラのストレージのように脳内に浮かんでいる。その脳内で選択をしてストレージに念じることで出すことが出来る。)

 

  自身の周囲半径3メートル内にストレージを展開することができる。

  

  展開することが出来るのは片手につき1つ、計2つ展開できる。

  展開するには中指と薬指のみを合わせ、他の指は中指と薬指から離さなくてはなら無い。

  展開するには微量の体力を使う。

  見た目は黒い球体。展開すると黒い霧が球体の回りを漂う。

  球体の大きさは野球ボールから無限。大きくすればするほど体力を使う。

 

  収納出来る要領は不明

  生物を収納することは出来ない

  ストレージの中では時間、慣性も停止されるがストレージから出ると慣性が復活する。

  例としては、飛んでくる弾丸をストレージで収納保存し、脳内で弾丸を選択し、ストレージから出ろと念じると弾丸が発射さる。  

 

 

 

     時守直美から受け継いだ《修復と復元》

  自身の体内で変換したエネルギーを使い、修復、復元をすることができる。

  変換するエネルギーは楪が食べたもの、脂肪等を使う。食べたものを変換するため、体外へ排出する必要が無い(うんちとおしっこするひつようが無いよ!やったねたえちゃん)

  修復に使うエネルギーは修復するモノによって消費量が変わる。

  復元にはとても大量のエネルギーが必要になる。

 

  修復、復元できるものは自身が触れているもの、生物、非生物は可能(食べ物は修復、復元できない。)

 

 

 

楪の全ての個性は体力をベースとしエネルギー、妖力に変換するので大量の体力が必要になる。なので普段から多く食事を取っている。 

 

 

 

 

 

  




取り敢えずこんな感じですね………今後変更する場合があるかもしれません。
また、今後矛盾が出てくるかもしれないのでその際はご指摘をお願いしたします。


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目指せ!雄英高校!

今回から出久の筋トレ物語ですが、ごめんなさい!最初と最後だけです!!


 「ゆず、起きて!」

 「………もう朝………?てか今日休みじゃん……ファァ……」

 

いつものように出久のベットで抱きつきながら寝ていた楪は突然出久に起こされ、時間と日付を確認するとまだ5時過ぎで土曜日だった。

 なんで休みの日にこんな早く起こすかなぁ………

 

 「今日オールマイトに呼び出されるんだ!早くいかないと!」

 「えぇ?まだ日昇ってないよ?」

 

出久は呼び出されてると言っているうちにパジャマに手を掛け着替えはじめていく。それを見た楪は急ぎすぎでしょ……と、若干引き気味に思いながら自分の部屋に戻る。

 

 「目覚めちゃったしなぁ………あ、いずにぃに付いていこうかな。あの慌てぶりだとご飯食べて行かないだろうし、サンドイッチでも作ってから行こうかな」

 

閃いた!といわんばかりに指をならし、自分もパジャマから普段から使っているトレーニングウェアに薄めで大きめのパーカーを着込み部屋を出て、まだ出久の部屋で物音がするのを確認し、ノックをする。

 

 「いずにぃ?」

 「な、なに?」

 「今日どこに何しにいくの?」

 「オールマイトに六時頃 市営多古場海浜公園 にくるように言われたんだ。……まさか付いてくるの?」

 「ついては行かないよ?引子さんには言っておくから、気をつけてね?(まぁついては行かないで後から行くんだけどね。)」

 「う、うんありがと」

 

ガチャリとドアが開き、ALL Mと書いてあるシャツとジャージ姿で出てきた出久は駆け足気味に家を出ていく出久を見送り、顔を洗い、

 

 「そんじゃまぁ、作りますかぁ」

 いずにぃはカツ丼好きだからなぁ………昨日のカツ残ってるじゃん、じゃあこれを挟んで………あとはタマゴとかキャベツでいっか

 

作るサンドイッチがきまり、手際よくサンドイッチを作っていく楪、30分ほどして、四十個ほど作り終えて楪はアッと声を出した

 

 「これ入れるやつどうしよ………なにか大きめのあったっけかなぁ………ガサゴソガサゴソ……あ、これ入りそうだね、余ったらタッパーにでも入れて持ってこ」

 

運良く大きめのランチボックスを見つけた楪はそこにサンドイッチを挟んだ具材が崩れないようにいれていく。予想どおり十二個ほど余ったので六個ほどをタッパーへ詰め、残りは引子の朝食に置いていくことにした。

 

 「サンドイッチは準備出来たし、引子さんの分も出来たし……あ、飲み物用意しなきゃ」

 

そう言いながら水筒を二つ用意し、片方はスポーツドリンクを入れ、もう片方は [[[牛乳]]] をいれた。

 

 「やっぱり牛乳は美味しいからね~♪朝には牛乳だよ!」

 

そう言いながら1Lの牛乳の半分ほどを水筒へ移し、残りはその場でゴキュゴキュと飲んでしまった。

 

 「じゃボクもそろそろ行こうかな。置き手紙をして……と」

 

楪の準備が出来たのは六時間近だった。

 まぁボクは呼ばれて無いからそんなに急がなくても良いよね

楪はサンドイッチと水筒を [[ディメンション]] へ入れ、家を出る。まだ六時で日が昇りきっていないからか空気が冷たかった。

 

 「うへぇ~………流石にまだ寒いよね………でもトレーニングウェアはお腹出てるやつの方が動きやすいからなぁ………走っていけば体暖まるかな………」

 

楪のトレーニングウェアは胸を隠すスポーツブラ風の物とスパッツの上にショートパンツ、薄めで大きめのパーカーと、かなり露出が高い服装だった。それにパーカーを来ているから太ももの半分ほどをまで隠れているため、見方によってはズボンを履いていないように見えてしまう。だが本人は気にせずに尻尾を揺らしながら走り出す。公園へ向かっている途中、楪よりも小さい頭がポンデリングのような少年がランニングしており、通りすぎる楪の太ももを凝視し、ロリの太もも………と呟いているのを耳で拾い

 

 「ロリって言うな!」

 「聞こえてんのかよ!?」

 

そう言うと少年は走り去っていった。

 あのポンデリング許さない………

楪が不機嫌になったのは話すまでもない。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「うわぁ……相変わらずゴミでいっぱいだなぁ……いずにぃはどこだろ………あ、あ?なんでわざわざゴミの中心にいるんだろ?」

 

楪が公園へ到着すると出久がオールマイトからなにやら紙の束を受け取っていた。

 

 「おーいいずにぃー!!」

 「え?ゆず!?」

 

 ボクがいずにぃに声をかけるといずにぃは驚いたように声をひっくり返した。朝からよくそんな大声だせるね……

 

 

「なんで?ついて来ないって言ってたじゃないか!」

 「ついて行かないとは言ったけど後で来ないっては言ってないでしょ?それにいずにぃご飯食べないで行っちゃったからサンドイッチ作ってきたんだ!」

 「あ、そういえば食べるの忘れてたや……」

 「HEY!HEY!HEY!緑谷少年!朝食を食べないなんてナンセンスだ!朝食を食べないと一日しっかりと活動出来ないぞ!狐少女も緑谷少年に朝食を持ってきてくれてセンキュー!」

 

オールマイトが出久が朝食を、食べてこなかったことを少し咎め、楪には感謝を述べていた。

 

 「ところでいずにぃ、その紙何?」

 

楪が出久の持っている紙に興味を示すと、オールマイトが説明をはじめてくれた。

 

 「それは私が考案した目指せ!合格!アメリカンドリームプラン!ゴミ掃除をより確実にクリアするためのトレーニングプランだ!これから緑谷少年はこれにしたがって生活して貰おうと思ってね!」

 「いずにぃちょっと貸してね……寝る時間まで………すごい徹底してるね……かなりハードだけど大丈夫なの?」

 

 「ぶっちゃけ私もハードだと思っている!だが入試まで残りは十ヶ月だ!それまでに体を鍛え上げねばならない!」

 

 えぇ……オールマイトですらハードって言ってるよ……いずにぃ大丈夫かな?壊れちゃわないかな?

 

 「いずにぃ大丈夫なの?」

 「大丈夫とかじゃないんだ。他の誰よりも頑張らないと、僕はダメなんだ!!」

 「そっか………ならボクも協力するよ!一緒に雄英合格しよ!」

 

楪がそういってガッツポーズをするとオールマイトは少し驚いた様子で楪に声をかけた。

 

 「狐少女も受験生だったのかい?てっきりまだ中学一年生くらいかと……」

 「アッ」

 

 

 

ピシッと楪の動きが止まる。それをみた出久はアッと声を出して少し怯えた顔で楪を見る。

 「お、オールマイト!楪僕と同い年でしゅ!」

 「Watts!?こんなに小さくて華奢なのにか!?」

 「ゆ、ゆず……?」

 やばいやばい!ゆずは幼く見られるの嫌いだから!!

 

 ………ふ、ふふふふ……そっかぁ…オールマイトにもそうみられてたんだ………制服来てたのに……じゃぁちょっとみて貰えばいいかなぁ……???

 

出久が焦っていると楪がゆっくりと動き出し、オールマイトへ歩いていく。楪はにっこりと笑いながら近づきそして

 

 「き、狐少女?顔が怖いぞ………?こ、子供扱いしたことは謝るから………だからそんなに怖い顔をしないでくれないか……?」

 

ヴィランのまですら崩さない笑顔をひきつらせながらオールマイトが言うと

 

 「別に怒ってないですよ?ただ、少し見て貰おうかと?」

 「み、みる?何をだ?」

 「これです……よっと」

 

何かをみて貰うと言いながらオールマイトをに近づき、パーカーを脱ぎだす。

 

 「ちょ!?狐少女!?」

 「大丈夫ですよ?ちゃんとしたトレーニングウェアですから…ね!!」

 「!?」

 

そういいながらパーカーを脱ぎ捨てた瞬間、楪は回し蹴りをオールマイトに向けて放った。伊達にNo.1ヒーローをやっていないオールマイトは回し蹴りを受け止めるが、

 

 「ブファツ!?」

 

追撃で固い何かがオールマイトの顔面を捉えていた。その光景を見ていた出久は頭をかかえていた

 

 流石にボクの尻尾までは防げなかったか……まぁ初見で避けれる人なんてそんなにいないとは思うけどね……

 

 「い、今のはなんだい?何かを固いので殴られたような気がしたんだが……」

 

 尻尾のダメージからすぐに回復したオールマイトは若干困惑気味に楪に訪ねる。

 

 「ボクの尻尾です。それよりどうでしたか?防がれたとは言え、なかなか良いの入ったと思ったんですが?」

 

 「あ、あぁ、良い回し蹴りだったよ。それよりもどうしてそんな柔らかそうな尻尾で殴られたのにあんなに固かったんだい?」

 

 「ボクの個性は九尾の狐です。九尾ができることは何でもできると思います。それで妖力使って、体を強化したり、攻撃を防いだり、尻尾を硬質化できたりします。」

 

 「な、なるほど……強力な個性だね、それに体も良く鍛えられて引き締められている……………ん?でも緑谷少年とは兄妹なんだろう?緑谷少年から聞いた限りは家族に動物系の個性はいなかったのではないか?」

 

オールマイトが疑問をそのまま口に出すと、それまで頭をかかえていた出久が説明をしだした。

 

 「ゆずとは血は繋がってないんです。わけあって、僕の家に引き取って家族になったんです。」

 

 「そ、そうか………すまないが、それにヴィランは関係しているのか?」

 

 「……………」

 

 オールマイトがそう訪ねると出久は黙ってしまった。その反応をみてオールマイトは心の中で聞いたことを後悔した。

 

 「………狐少女、その「ヴィランおとうさんとおかぁさんは殺されました。ボクの……目の前で」…………すまない………辛いことを聞いてしまって……すまない……」

 

 「貴方が謝ることじゃないです。それにもう大丈夫ですから。ボクには、家族が…いずにぃがいますから。」

 

 「ゆず……」

 

 「それに、約束したんです。おとうさんとおかぁさんに。ボクはヒーローになるって、約束したんです。もう、誰も失いたくないから、皆を傷つけられたくないから、それにおとうさんとおかぁさんは最後にボクに《個性をくれました。》この力を使って、皆を守りたいんです。」

 ……アッ個性のことは勢いで言っちゃった!…………でもオールマイトなら………大丈夫だよね…….?

 

楪が自分の思いをオールマイト伝え、勢い自分の個性の秘密を言ってしまい焦っていると、オールマイトは真剣な表情で語りかけてきた。

 

 「狐少女、君にはとても辛い思いをさせてしまった。本来守るべき人々を守れなくて何がヒーローか、君の言葉でまた考えさせられたよ。血は繋がっていなくても、君たちはよくにている。緑谷少年も、狐少女も。

 

  君たちはヒーローになれる

 

 

 

 

 

   「………ありがとう……ございます」

 気づいてたらボクは涙を流していた。何故かはわからなかったけど、多分嬉しかったんだと思う。ボクが泣いている間、ずっと背中を擦ってくれた。ボクが泣き止んでしばらくしてからオールマイトが訪ねてきた。

 

 「そして、狐少女君は個性を貰ったと言ったね。それはどういうことかな?君はもともと無個性だったと言うことか?」

 「……いえ、ボクの九尾の狐はもともとです。多分、先祖がえりだと思います。ボクが貰ったのは、おとうさんの次元収納、おかぁさんの修復と復元の個性です。」

 ボクが個性の説明をするとオールマイトは考え込んで何かぶつぶつと考え込み、いずにぃを呼んでボクから離れて話し始めた。ボクに聞かれたく無いことなのかな……いずにぃは良いのに……ボクの個性の話のはずなんだけどな……

 

楪が疑問に思っていると、オールマイトと出久が戻ってきて、オールマイトが骸骨に戻った。

 

 「狐少女、君はその話を私と家族以外にしたことはあるか?」

 え、と………うん。無いね。ボクが離したのは久おじちゃん、引子さん、いずにぃ、あと……あっ!病院の先生と看護師さんも知ってる!!

 「あ、あの!後二人います!!ボクが入院していた時に担当してくれてた先生と看護師さんが知っています!」

 

一瞬め目を見開いたオールマイトは「そうか……」とまた考え込む表情をしてから自分のシャツをめくりあげ

 

 「この傷を修復することはできるか?」

 

オールフォーワンとの傷跡を見せてきた。この傷を見るのは二回目だが、近くで見ると痛々しい傷跡だった。

 

 「………肺が半壊、胃を全摘出でしたっけ………?」

 「あぁ…そうだ……私はこの傷を受けたことで活動限界がある。この傷を癒せれば私はまた………」

 

オールマイトの話を聞き、楪がペタペタと傷跡を触ったり時折耳を押し当てて音を聞いていた。

 

 「……………正直。今のボクには出来ないです………この傷はとても時間がたってしまっています………それに内蔵の欠損となると……復元できるかどうか全くわかりません……貴方が体がこの状態を受け入れてしまっていては体がもとよりそうだったと、錯覚してて、修復も、復元もできるかは…………ごめんなさい……」

 

楪が申し訳なさそうに眉をハの字に歪めているとオールマイトに頭を撫でられた。

 

 「そう………か………もしかしたらと思ってしまってね………君が気にやむことはない………」

 どう、したら良いんだろう………でも………もしかしたら……

 

自分にできることは無いかと必死に頭を回す楪。そのときハッと思い浮かんだことがあった。

 

 「オールマイト……治せなくても………もしかしたら……これ以上の悪化を緩和できる……かもしれません」

 「な!で、できるのか!?」

 「はい……でも、もしこの手段を取ってしまったら、ボクが復元できるようになっても、復元も出来なくなってしまうかもしれません………ボクが今この傷をその状態で治したら、悪化は緩和できると思いますが、内蔵が欠損したまま治してしまうので、復元が出来なくなります………」

 

 ボクがそう告げると、オールマイトは「すこし、一人にしてくれ」と、一人でゴミの影へ隠れてしまった。

 

 「ゆず」

 「ど、どうしたのいずにぃ?」

 ボクがオールマイトの隠れた方向を見ているといずにぃがボクに真剣な表情で話しかけてきた。 

 「ゆずの個性が万能じゃないってことはわかっているんだ……オールマイトもきっと、それをわかってる………けど、やっぱり諦め切れて無いんだと思うんだ。オールマイトは平和の象徴で、No.1ヒーローだ。だから………できる限りで良いから………オールマイトを助けてくれない?」

 

 ボクはいずにぃがオールマイトにとても強い尊敬と憧れを持っているをボクは引き取られた時からわかってた。だから、オールマイト、ボクも貴方のこと、結構好きなんだよ?いずにぃがここまでずっとヒーローに憧れ続けて来れたのは、オールマイトのお陰なんだから。だから、ボクの答えは決まってるよ。

 

 「うん。わかってるよ。できる限りの………最大限で、助ける」

 「うん………ありがと……ゆず」

 

それからしばらくして、オールマイトは覚悟を決めた顔をして戻ってきた。

 

 「狐少女」

 「はい」

 「結論から言おう。私の傷を……このまま治してくれ」

 「………いいん……ですね?」

 「あぁ………時代は常に変わるものだ。これからの未来を担うのは私じゃない。君たちだ。それに、次は………君だ……緑谷少年」

「ぼ、僕……ですか?」

そういいながらオールマイトは出久を指差した。

 

 「次の継承者は君だ。ワンフォーオールは私のものじゃない。未来を頼む。だから………やってくれ。緑谷楪君。」

 

己の覚悟示し、次に託すことにしたオールマイトは絶対に揺るがない、絶対に折れない平和の象徴としてのオーラが感じられ。

 

 「わかりました。では、始めます。」

 「あぁ…やってくれ!」

 

そして楪がオールマイトの傷跡に触れ、徐々に傷跡が消えていった。

 「ありがとう。狐少女」

 

 

 

 

そして、オールマイトの傷は無くなり、出久に取って、地獄の用な十ヶ月が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

そして月日はあっと言うまに流れ、入試当日、二月二十六日早朝の朝六時

 

オールマイトが浜辺へ来ると、楪が一人で浜辺を見ていた。

 

 「おはよう狐少女、緑谷少年は?」

 「あ、おはようございます。いずにぃはあそこですよ」

 

楪がそう言って指を指すと雄叫びが聞こえてきた。

 

 ウアアアアアアア!!!

 

そこでは出久がゴミの上に立って汗だくで雄叫びをあげていた。

 

 「オイオイオイ!マジかよ!区画外までやりやがった!塵一つないじゃないか!ギリギリで仕上げやがった!!」

 「これがいずにぃ本気と覚悟です。いずにぃは貴方のことを尊敬し、敬愛しています。オールマイトの期待に答えたかったんです。だから早く行ってあげてください。」

 「あぁ!行ってくる!!」

 

 ボクがそう言うとオールマイトはマッスルフォームに変わり、いずにぃのところへものすごいスピードで飛んで行った。急に変わったり飛び出していくから凄いびっくりした………ボクもいずにぃのとこ行こっと、いずにぃ半裸だし、汗だらけだし、

そう思いながら楪もゆっくりとだが出久のもとへ歩みを進めた。

 

 「オール………マイト………」

 「お疲れ」

 「僕………できた………!できました……!!」

 「あぁ!驚かされた!十代とは素晴らしい!!良く頑張った!本当に!」

 「ようやく入り口の蜃気楼がうっすら見えてきた程度だが、確かに器は成した!」

 「なんだか………ズルだな…….僕は………」

 「Watt?」

 「ズルってどういうこと?いずにぃ?」

 「オールマイトにここまでして貰えて………ゆずにも支えられて………恵まれ過ぎてる…………!」ボロボロ

 

そういいながらボロボロと涙を流し始めた出久に楪とオールマイトは

 

 「いずにぃだから頑張れたんだよ?もっと胸をはって!」

 「HAHAHAHA!その泣き虫治さないとな!さぁ!授与式だ!緑谷出久!!」

 「はい!」

 ……うん?授与式?何かいずにぃにあげるのかな?

 

そう楪が思っているとオールマイトは自身の髪の毛を一本抜き取り

 

 「胸に刻んどきな。これは、君自身が勝ち取った力だ!」

 いずにぃに凄い良いこと言ってるけどなんで髪の毛持ってるの……?どうするの?あれでミサンガでも作れって言うのかな……?だとしたら認識改めなきゃなんだけどな………「食え!」…………

 

 「「ヘァ?」」

 

 ボクといずにぃの声被っちゃった………いやいや!それより食えってどゆこと!?いずにぃも凄いバカみたいな顔になっちゃってるし!いや!ボクを見られても困るよいずにぃ!?

 

 「別にDNAなら何でもいいんだけどね?」

 「だからって急に髪食えってのは無いでしょう!?ちゃんと説明してから言って下さい!ほらいずにぃもいつまでそんな顔してんの!」

 「思ってたのと違いすぎて………」

 「さぁ!試験に遅刻するぞ!さぁ!さぁ!さぁ!」

 …………髪の毛を持ちながらいずにぃに迫っていって口に髪の毛を押し付けてる…………何を見させられてるんだろう………感動するシーンの筈なんだけどなぁ………ハハハ………        




だいたい7500文字位を目指して書いてますがなん文字くらいが良いんですかね………?


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入学実技試験!!…………はぁ………ナンでボクだけ………

いずにぃがオールマイトの髪をモッシャモッシャと食べてる光景を見させられた気分を教えてあげようか?無だよ!!でも何かもやもやするんだよね…………それになんか一瞬うらやましいって思っちゃったし………もしかしてボク、ヤンデレの気質あるのかな………?

あるで!


 いずにぃが髪モッシャモッシャし終わるとオールマイトが試験会場近くまで送っていってくれることになった。いずにぃが「オールマイトに送って貰えるなんて!」って感激してたけどいずにぃが嬉しいなら良しとしよう。そしてオールマイトの車にいずにぃが乗り込んだところで、オールマイトがボクに話しかけてきた。なんだろ?

 

 「狐少女ちょっとこちらに」

 「?わかりまた」テクテク

 「狐少女、君の試験は特殊なことになった。これを読んで欲しい。」これを読んで欲しい。

 「……………?る??」

 特殊ってどう言うことだろ?…………………え?どゆこと?筆記無しでに実技二回目があるの??ボクだけ?なんで??

 

 紙には [緑谷楪クン!君は普通の入学試験ではなく、特別で特殊な試験を受けて貰うのサ!その内容は筆記を無くして実技二回の試験を受けて貰うのサ!詳しいことはオールマイトに聞くと良くわかる筈サ!] と書いてあった。冗談とか無しでカタカナ入ってるしびっくりマークいっぱい書いてあるよ

 

 「え、と、どういうことですか……?なんでボクだけ筆記無しって………実技二回って何ですか?嫌がらせですか?」

 

楪が困惑しながらオールマイトを問い詰めると、部が悪そうに

 

 「あ~………その……私は今年から雄英の教師を勤めることになってね?それで去年辺りから雄英に出入りしていたんだが……傷のことを保険の先生に知られてしまってね……あ、その先生もプロヒーローで、信用できる人だから安心して欲しい………それで問い詰められてつい君の事を話してしまって……何としても雄英に入れさせて自分の後継者にしたいらしいんだ………それと、君は無機物も修復できるだろ?そういった個性はとっても貴重でね、校長先生もこの個性の子が入ってくれたら学校の経費が浮く筈サ!って言ってて………校長先生は生徒は平等にを心がけていて君の中学の成績を見る限りでは筆記試験は必要ないと判断して、変わりに実技二回の試験になったんだ」

 

 ……………つまりオールマイトが口を滑らせてボクの秘密を喋ってそこに大人の事情が絡んでどうしてもボクを入学させたいから特別な試験にすると??

 えぇ………なんで??ナンでしゃべっちゃったの??もしボクが試験に受からなかったらどうするの?

 

 「…………オールマイト…………」

 「は、はい……?」

 「ナンで喋っちゃったんですかぁ……もひ…もし落ちたらどうするですか…….」

 「そ、その点は大丈夫だ。何でも落ちても保険の先生が自分の助手として雇うそうだ」

 「それだめでしょ………いろいろあうとですよあ!う!と!」 

 「正直私もそう思ってる」

 「はぁ………もう良いですはやく試験会場行きましょう………ボクは最悪いずにぃと一緒に学校に行ければ良いですから……」

 

楪が呆れたようにため息をつきながら言うとオールマイトが赤いカードをくれた。

 「これを受付の人に見せてくれ。そうすればわかってくれるさ」

 「………パシッ」

 「そ、それじゃぁ車に乗ってくれ」

 「………ガチャッバタン!」

 エ,ユズドウシタノ?エ,チョマッテ!カマナイデ!ドウシタノ!?ク,クビハダメダッテ!セメテミエナイトコニ!

オールマイト助けて!!

 

 「………oh………….強く生きてくれ緑谷少年……」

 

楪は出久を甘噛(強)のあと満足したのか出久の膝を枕にして出久に頭を撫でられ、

 

 「オールマイト……ゆずに何したんですか………最近噛まれなかったのに……」

 「(前までは噛まれてたのか……)いや……私は……いや、私も原因ではあるが………勝手に理由を言ったら狐少女に怒られてしまいそうだから言えないな……本人に聞いてくれ」

 「本当になにしたんですか………首がヒリヒリします……襟にあたって痛いです……」

 しかし首に歯形が着いてしまってるな……襟でギリギリ隠せているが……見方によってはキスマークに見えてしまうな。

 「緑谷少年、大きい絆創膏をあげるからこれを張っておきなさい。張っておけば襟にも当たらないし、隠せるだろう。」

 

そういいながら大きめの絆創膏を渡そうと後ろを見る楪が薄目を開けてまだ許してないと言わんばかりに睨んでいたので絆創膏を渡すのをやめた

 

 「…………すまない緑谷少年。絆創膏を切らしていたようだ」

 「えぇ………もうゆずが起きたら治して貰うしか………今回は治してくれるかな……」

 緑谷少年も難儀なものだな………

 「そろそろ着くぞ緑谷少年、狐少女を起こしてくれ」

 

そして出久が楪を起こすと楪は無言でまた出久の首に顔を近付けて歯形があった場所を舐めて修復する。オールマイトはわざわざ舐めて治す必要があったのだろうか……と疑問に思ったがまだ楪の目が怖かったので口には出さなかった。

 

 

 

試験会場付近に着き、出久と楪は車から出てオールマイトにお礼を言う。

 

 「じゃぁ二人とも頑張ってな!」

 「はい!がんばります!」

 

楪がオールマイトに顔を近付け

 

 「…………次は叩きます」

 「……………ok」

 

そして二人は試験会場へ足を踏み入れると

 

 「どけッ!デク!」

 「かっちゃん!」

 「俺の前に立つな殺すぞッ!」

 「お、おはよう!がが頑張ろうね!」

 「…………」

 

勝己が出久に挨拶(意味深)をすると無言の楪を見て機嫌が悪いと察したのか何も言わずに舌打ちをして一人足早に試験会場に入っていった。

 

 「以前とは違うんだ……踏み出せ……ヒーローの第一歩をッ」

 

そういいながら歩きだそうとした瞬間、足が縺れ転びそうになるのを楪は

 

 「え?いずにぃ!?」

 

と、驚きながら尻尾を出久に回そうとするが間に合わなく、出久は転んだ…………かと思ったが、近くにいた女生徒が出久に触れ、浮かせて転ぶの助けていた。一瞬驚いたが直ぐに理解し、空中で斜めの出久に尻尾をを巻き付け、地面と垂直に戻す。

 

 「大丈夫?ごめんね?勝手に個性使っちゃって!ウチいらん感じだったもんね!でも転んじゃったら縁起悪いもんね!」

 「いや、ありがと、ボクじゃ間に合わなかったら助かったよ。ほら、いずにぃも、お礼言って」

 「え!?え、ええと……」

 「お互い頑張ろう!じゃぁ!」

 

笑顔で手を振って立ち去っていく女生徒を見送った後

 

 「いずにぃ何鼻の下伸ばしてるの?」

 「え!?の、伸ばしてなんかないよ!」

 「……ハァ、はやく行くよ」

 鼻の下伸ばしちゃって………あとでまた噛んでやる……

 「ちょ、ちょっと!自分で歩けるから!」

 

また噛んでやると思いながら出久の手をつかみ引っ張られていくのを見た他の男子達からは[[[[[[[リア充落ちろ!!!!]]]]]]]]と、滅茶苦茶睨まれていた。

 

 

 

試験会場の受付へ行き、楪はオールマイトにいわれた通り赤いカードを提示した。すると裏方から女性職員が出てきて、試験会場とは別の場所に案内されることになった。

 

 「え?ゆず?どうしたの?」

 「………家に帰ったら話すよ」

 「?わ、わかった」

 「さ、こちらです」

 

楪が案内されたのは会議室と書かれた札が張ってある部屋だった。そこでは小さな服を着たネズミ?と小さなおばぁちゃんとオールマイトが待っていた。

 

 「よくきてくれたね!ボクが雄英高校の校長の根津サ!」

 「私はここの保険医をやっているリカバリーガールだよ」

 「さ、さっきぶりだな!狐少女!」

 

一瞬キョトンとしていた楪だが、直ぐに再起動し、自分の自己紹介を始めた。

 

 「はじめまして、緑谷楪です」

 ね、ネズミ………なのかな?でも小さくてぬいぐるみ位の大きさかな………

 「さて!早速本題に入らせて貰うのサ!オールマイトから聞いていると思うけど単刀直入に言うと、君の入学はもう決まっているのサ!」

 「……….やっぱりですか……最悪落ちてもリカバリーガールの助手として雇われると聞いてましたから……」

 「話が早くて助かるのサ!君の個性は事前にオールマイトから聞いているけど、念のため一度君から直接聞きたいのサ!」

 「…わかりました。ボ…私の個性は九尾の狐、九尾にできることは何でも出来ます。主に妖力を使った身体強化とバリア、あと尻尾の硬質化です。」

 まずはここまでかな………事前に知っていると言ってもね……

 

そんなことを考えていると校長先生から声がかかった

 

 「あと二つの説明をお願いするのサ!」

 「あたしからも頼むよ。大丈夫さ、ここにはあたしらしかいないからねぇ」

 「………わかりました。おとうさんの次元収納、おかぁさんの修復と復元です」

 

そういいながら「黒い球体」ディメンションを片手に発生させ、ディメンションの中にもう片方の手を突っ込み、中から先日作ったクッキーを取り出し、校長、リカバリーガール、オールマイトの順に渡していく。

 

 「まだ暖かいね!話に聞いていた通りだ!」

 「随分と便利な個性だねぇ……買い物に便利そうだ。重量に制限はあるのかい?」

 

リカバリーガールの質問に対して「今のところは無いです」と答え、次に折れた鉛筆とただの鉛筆を取り出し、

 

 「今から最後の修復と復元の力を見せます………この鉛筆を確認してください」

 

といい、折れた鉛筆を校長に手渡し、確認して貰い、「完璧に折れているのサ!」と言われ鉛筆を返される。

 

 「では今からこの折れた鉛筆を修復します…………どうぞ」

 

近くに寄ってきていたリカバリーガールに修復した鉛筆を渡すと

 

 「随分と早いね…………あらまぁ、完璧にくっついてるじゃないか!ね」

 「続けますね、次にこの折れた片方の鉛筆を復元します。もう片方は机に置いておきますね」

 「片手で折るとは……体もしっかり鍛えているみたいだね!」

 

片手で折ったことによく鍛えていると誉めてくる校長を尻目に楪はめを閉じ、意識を集中させ鉛筆を復元させていく。

 

 「おぉ………鉛筆から鉛筆が生えているようだね………」

 「………修復でオールマイトの傷を修復したのは知っていたが……この復元は生物にも使えるんだろ?」

 「修復は傷を何度も治したりして鍛えていたので出来ますが、復元に関してはまだ生物に使ったことはありませんし、使おうとは思いませんでした。復元が必要な怪我なんて、そうそうできるものでは無いですから。」

 

楪がリカバリーガールの質問に答えるとリカバリーガールは

 

 「確かにそうさねぇ………校長、やっぱりお願いできないかい?この子に実戦させるにはやっぱり………」

 「それはボクもわかっているサ。でもそこはやっぱり本人の意思次第なのサ」

 リカバリーガールはボクをどうしたいんだろ?助手にしたいってのはオールマイトから聞いていたけど、他に何かあるのかな?

 

楪がリカバリーガールと校長のやり取りを聞いてまだ他に何かあるのか?と、違和感を覚えていると校長がこちらを向き話を始めた。

 

 「さて、楪くん。実は君にまだ伝えていなかったかったけど、まだ他に選択肢があるのサ!」

 「他の選択肢…ですか?えぇと……たしか、保険の先生……リカバリーガールの助手でしたっけ?」

 「そうさね。でもそれだといろいろと不便なこともあるからねぇ。そこでもう一つの選択肢だ。それは、あたし、プロヒーローリカバリーガールの正式な後継者として、雄英に特別入学するということさ」

 ??わっつ?オールマイトからチラッと後継者にしたいって言っていたの聞いてたけどそれとは違うの?

 

 「普通に入学するのとは何か違うんですか?」

 「全く違うのサ!恐らくオールマイトからリカバリーガールが後継者を欲しがっているのは聞いてる思うけど、それは雄英を卒業してからの話なのサ!」

 「あたしの後継者として入学するっていうのは、つまり生徒としてではなく、あたしのサイドキックとして雄英に就職するってことさね。その場合、私が病院とかにいく場合は着いてきて貰うけどね。あ、もちろんお給金は出るよ」

 

 「ッ!?」

 え、それって生徒じゃなくて職員としてってこと!?お金払ってくれるのは良いけど……それだといずにぃと一緒にいられないんじゃ……

 

 「出久君と一緒にいられないんじゃ無いかって考えているね?」

 「心を読まれた!?」

 

楪が心を読まれたことに驚愕していると校長はハハッと某ネズミのような声で笑った。

 

 「君が考えることはお見通しなのサ!僕の個性はハイスペック!何でもわかっちゃうのサ!それに、その点に関しては問題ないのサ!君には出久君が入るクラスの形だけの副担任になって一緒に行動して貰おうと思っているからね!」

 

 い、一旦整理しよう!!

 ボクは入学は絶対に決定している。

 その理由は雄英の経費が浮き、リカバリーガールの後の後継者としての教育も出来るから。

 それとは別に最初から後継者として雄英に就職する。(出久とは離れないココジュウヨウ)それに加えてお金も貰える。 

 

 ってところかな?お金貰えるってのは凄い魅力的だな………高校に入ったらいずにぃと部屋借りてそこから通うつもりだったし………

 

そう、楪と出久は雄英に合格したら、雄英の近くに部屋を借りてそこで <二人で> 暮らし、そこから通うということを引子に言っており、承諾して貰っていた。その理由は緑谷家から通うには電車通学をしなければならない、ということにあった。電車通学をするということは毎朝満員電車に乗らなければならないということで、身長が低く、尻尾が長く、万が一人混みに押し潰されたり、電車のドアに尻尾が挟まってしまう、というのを防ぐためであった。そこで楪は「雄英に合格したら」一人暮らしをしたいと引子に思いを告げた時に、一人では心配だから出久と一緒にという条件を着けてきていたのだ。

 

 う~ん………条件は悪くないし………いずにぃと通えるし………リカバリーガールのサイドキックになるってことは、ヒーローになるってことだから………ボクの夢も叶えられるし……いいかもね……

  

 「形だけの副担って詳しいことは何をするんですか?」

 「形だけだからさほどして貰うことは無いよ。たまに担任と予定を確認したり、会議とかに出て貰うかもしれないけど、普段は生徒と一緒に授業に出て貰うのサ。あ、でもリカバリーガールからの授業にも出て貰うよ」

 

 なるほど………本当に形だけだね………ならリカバリーガールの後継者として就職した方が良いよね……よし、決めた。

 

 「わかりました。ボクはリカバリーガールの後継者として、雄英に就職したいと思います」

 

楪が自分の決断を伝えるとリカバリーガールはにっこりと微笑んで

 

 「そうかい!!嬉しいねぇ!そんじゃあ!さっそく手続きをするさね!あ、でもその前に実技試験を受けないとね。ほら、オールマイト!早くて連れていきんさいな!」 

 「わ、わかりましたリカバリーガール!さ、行くぞ!狐少女!」

 「は、はい!失礼します」

 

そして楪はオールマイトにつれられ会議室を後にした。そのあと更衣室でジャージに着替え、試験会場へ行き、試験を受けた。試験内容は制限時間内に仮想ヴィランロボットを倒してポイントを集める試験と、制限時間内に壊れた物をどれだけ直せるかの試験だった。

試験が終わり、別室に案内されそこでは自信のヒーローコスチュームの要望を書いて欲しいといわれ記入し終わった辺りでリカバリーガールが部屋に入ってきた。

 

 「はい、試験お疲れ様。ハリボーお食べ」

 「あ、ありがとうございます」

 「さて、試験が終わったところで悪いけどさっそく手伝って貰うよ。着いてきておくれ」

 「わかりました」  

 

リカバリーガールに着いていくと行き先は他の受験者の試験会場だった。

 

 「毎年この試験では怪我人は絶対に出るからね。それを治して回ってるんだよそれを手伝って貰いたいんだ」

 「なるほど………サイドキックとしての最初の仕事ですか?」

 「よくわかっているじゃないか、なら話が早いね。しっかりと頼むよ?」

 「わかりました」

 

そして楪とリカバリーガールは試験会場を回り、怪我人を治して回っていた。そして最後の会場になった。

 

 うぇ………ちょっとエネルギー使いすぎたかな………こんなにエネルギー使うのははじめてだしな……でもこの会場で最後だし、頑張らないと

 

 「はいはい、ハリボーお食べ~」

 「あ、あざっす」

 「ありがとうございます?」

 

リカバリーガールがハリボーを私ながら歩いていると一人の少年が右腕と両足をあらぬ方向へ曲げてうつ伏せで転がっていた。

 

 「おやまぁ…自身の個性でここまで傷つくとは………」

 「え?………ッ!いずにぃ!?どうしたの!?」

 

その少年は出久だった。それを見たボクは一直線に駆け寄って傷を修復していく。

 

 「あ、ありがとうございま……ゆ、ゆず!?なんでここに?試験はどうしたの!?」

 「そんなことは後で!何でこんな大怪我してるの!!」

 「はいはいちゃっちゃと行くよ、まだ怪我人はいるからね」

 「わ、わかりましたあとで話聞かせて貰うからね!」

 

 

 

 

 

 

そして試験が終わり、家帰ったが出久は心ここに有らずとの感じで、夕食の焼き魚とにらめっこを続けていた。楪が大怪我の理由を聞くと

 

 「………一ポイントも………取れなかったんだ………ずっと敵に会えなくて……試験の最後で…今朝、助けてくれた女の子が……怪我で動けなくなってて……それで助けようとして、0ポイントを倒したら……からだが、堪えられなくて……」

 

 「………そっ………か……でも、いずにぃはその人を助けたんだよね?なら………それをきっと評価してくれるよ。ボクはいずにぃのこと、信じてるからさ」

 

 

 

 

そして一週間後、雄英から手紙が届いた。

 

 「ゆ、ゆず!出久!て、手紙!来てたよ!!」

 

引子に雄英からの手紙を渡され、それぞれ自分の部屋で手紙をから出てきた円盤を起動させ、ホログラムのオールマイトから合格の言葉を貰った。それと同時に楪は出久が合格したこと、そして、ヒーローポイントのことも聞いた。そして最後に、楪の手紙にのみ入っていたもうひとつの円盤を家族の前で起動させるように指示され、部屋の前で合格を喜びあっていた出久と引子を部屋へ入れて、円盤を起動させると、オールマイトと根津校長が浮かび上がった。

 

 「やぁ!僕は雄英の校長をしている根津サ!今回は楪君の雄英合格に着いての話をさせて貰うのサ!」

 

校長の話を聞くと引子と出久はまさか落ちたのではと心配するが

 

 「楪君は雄英の職員として雇うことにしたのサ!」

 「「………ふぁい???」」

 まぁこんな反応するよね………

 

合格でも不合格でもなく雇用するという答えに親子揃って困惑してしまった。

 

 「正確には、楪君をリカバリーガールのサイドキックとして雇うことになったのサ!もちろん!給料も出させて貰うのサ!では!」

 

そしてホログラムが消え、暫く放心していた二人がうごきだし、楪を問い詰め始めたのは二十五分ほどしてからだった。それに楪はリカバリーガールに修復の力を買われて後継者になることになった等の説明をしたがそれでも問い詰められ、

 

 「あぁもう!結局雄英に通えるんだから良いじゃん!ほら!荷造りもあるんだからもう部屋に戻るからね!ほら!いずにぃも早く!」

 

と言って部屋に戻り、荷造りを始め、数日後、楪と出久は新居での生活を始めた。そして四月、とうとう雄英に通う日が来た。出久と楪を心配した引子は前日から新居に来て、世話を焼いていた。もう制服を来て、出発するだけだと言うのに出久に忘れ物がないかをしつこく聞いていた。

 

 「出久!ティッシュ持った?」

 「うん!」

 「ハンカチも?ハンカチは!?ケチーフ!!」

 「持ったってば!時間が無いんだ!急がないと!」

 「出久!」

 「なに!?」

 「ちょーかっこいいよ!」

 「ッ!行ってきます!!」

 「行ってらっしゃい!楪も初出勤頑張ってね!」

 「はい、引子さん!しっかり稼いで、いずにぃを養います!」

 「えぇ……そんなこと言わないでよ……」

 でも実際これからボクが稼いだお金で生活していくんだからね?ふっふっふ………これでいずにぃはボクの………

 

 「ゆ、ゆず?おくれるから早く行くよ?」

 「あ、うん、じゃぁ、「「行ってきます!!」」

 

 

 




滅茶苦茶迷ったけど、楪を教員(仮)にしました!たぶん納得言ってない人とか、そうはならんやろ………ってなってる人いると思いますがユルシテ

あと、UA2500、お気に入り34ありがとうございます!更に評価や感想を着けてくれると、今後の励みになりますし、感想でストーリーへのアドバイスを下さればそれを採用させて頂くかもしれません!


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個性把握テスト

 主人公の説明に抜けている説明があったので、加筆しておきましたスイマヘン


今回から楪はコスチュームを来ていることになりますが、コスチュームのイメージとしては パニシンググレイレイヴン の21号というキャラクターの衣装となっています。私自身が絵を描けたら………くそう………画力がほしい………


楪と出久が家を出て雄英へ向かっていると出久は楪に唐突に話しかけた。

 

 「ゆずは最近凄い忙しそうにしてたけど、何をしてたの?新居に着いてからあんまり家に居なかったし、帰ってきたと思ったら直ぐに寝ちゃってたし、何かあったの?」

 あれ、言ってなかったっけ?何も聞いて来ないから知ってるもんだと思ってたんだけどな。

 「言ってなかったっけ?一応雄英の職員になるから教育免許とかの試験を受けるために勉強とか試験とかで雄英の先生達にしごかれてたんだ」

 ヒーローの仮免許に関してはクラスでの自己紹介の時に言えって校長に言われてるからまだ秘密だけどね。それに、リカバリーガールの後継者ってこともあって異例中の異例だっていってたしね。

 「そ、そっか、凄いねゆずは………僕もオールマイトみたいになれるように頑張らなくちゃね!!」

 

そう言いながら軽くガッツポーズをする出久。そんな話をしているうちに雄英に着いていた。

 

 「じゃ、ボクは職員玄関からだから、あと、学校にいる間はちゃんと <楪先生>って呼ぶんだよ?言いね?」

 「わ、わかったよ」

 「よろしい!じゃまたあとでね!出久君!」

 

先生と呼ぶようにと言われ、出久は若干複雑そうにしながらも納得し、手を振りながら楪と別れた。

 

 「まずは、リカバリーガールのとこに行けば良いんだったかな?」

 

職員玄関で靴を履き替え、まずは自分の師匠兼上司であるリカバリーガールのところへ向かった。

 

 「おはようございます!楪、ただいま出勤しました!」

 「おや、おはようさん。さっそくだがこれに着替えて貰うよ」

 「え?」

 

そういって手渡されたのはアタッシュケースだった。

 

 「これって何ですか?」

 「校長から聞いてないかい?あんたは今日から雄英の職員になるんだ。それもあたしのサイドキックとしてね。雄英にいる間はヒーローコスチュームを来て行動して貰うよ」

 「えぇ………聞いてないですよ……」

 「ちゃっちゃと向こう着替えな、ほら、カーテンの奥さね」

 「はい……」

 聞いてないよぉ………まぁ学校に来るときは私服で良いって言われたから不思議だと思っていたけど、こういう事かぁ………

 

予想外のことに驚きつつアタッシュケースを開け、コスチュームに着替えていく。

 楪のコスチュームは腕の部分は上半身の服とは分離しており、自身の手がすっかり隠れてしまうほど長くなっている。これはディメンションを使う際にヴィランに見られないように、と楪が考えた構造だ。服の部分はワンピースの様になっているが、中には衝撃を緩和してくれるプロテクターや、強い衝撃を受けた場合にのみ硬く固まり、音をたてながら崩れる様になっている。下半身は白いスパッツとニーソックスのみという心もとないように見えるが、楪自身の身体能力を活かすための作りになっている。全体的に見ると白いワンピースを着ているように見える。

 

コスチュームに着替え終わり、カーテンを開け、リカバリーガールにコスチュームを見せる。

 

 「着替え終わりました。リカバリーガール。変なところはありますか?」

 「おやまぁ、かわいらしいコスチュームだねぇ…しっかりと似合っているよ」

 か、可愛いって言われるの嬉しいけど恥ずかしいな……///

 

リカバリーガールに可愛いと誉められて恥ずかしがっていると、

 

 「ほら、もうすぐ入学式が始まるから職員室に相澤先生を迎えに言っとくれどうせまだ寝袋に入って移動しようとしているからね」

 「ははは……あい変わらずですね相澤先生は、わかりました。では失礼します」

 

楪は教員免許、ヒーロー仮免許を取得する際に相澤に教育をして貰い面識があった。相澤は最初こそ「七光りが」と言っていたが、楪と接しているうちに実力や真剣な姿勢が気に入られ、軽口を言う位には仲良くなっていた。初対面の時から寝袋に入っていたため、楪は相澤が寝袋に入っているのがデフォルトだと思っている。

 

 

 

 

 

そして職員室に行くと相澤先生が寝袋に入ったまま転がっていた。

 

 「おはようございます。相澤先生」

 「あぁ、おはよう楪、さっそくで悪いがこの体操着を収納して俺を1_Aまで運んでくれ」

 「えぇ………人使い荒くないですか……それに今から入学式とガイダンスじゃないんですか?」

 「そんな非合理的な事をしている暇は無い。ほら、台車はそっちの隅にあるだろ、早くしてくれ時間は有限だ」

 「わかりましたよ……」

 

体操着を収納し終わり相澤を台車の上に載せ教室へ向かっていく。教室の前では数人の生徒がまだ屯っていた。それを見た相澤は小さくため息をつきながら

 

 「楪、早くしてくれ」

 「はいはい……」

 

相澤は楪を急かし、屯っていた生徒の後ろに着くと急に喋り始めた。

 

 「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け、ここはヒーロー科だぞヂュッ」

 

 そう言いながら寝袋の中から取り出したチャージゼリーを一瞬で飲み干した。

急に現れた相澤にクラス全員が「何かいる!?」というような驚いた表情をしていた。この時、相澤のインパクトが大きすぎたのか楪に気づいている生徒は誰も居なかった。

 あれ?いずにぃだったのか。あ、この茶髪マッシュの子はいずにぃ助けてくれた人だね

 

 「はい、静かになるまでに八秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠けるね」

 

そう言いながら流れるように寝袋を脱ぎ、飲み終わったゼリーの空を楪に渡してきた。

 

 ボクは先生の付き人じゃないんだけどなぁ……

 

そう楪は思ったが素直にゴミを受け取り、ついでに寝袋も収納していく。

 

 「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 「!?ザワザワ……」

 まぁ、こんな不審者みたいな人先生には見えないよね……まぁ僕も副担任だなんて言われないとわからないだろうけど……てゆうか皆ボクに気づいてないよね?目の前にいるいずにぃ達ですら気づいてないっぽいし、ボクも自己紹介しといた方良いよね

 

そう思い、自身も自己紹介のをすることを決めた

 

 「人に運んどいて貰って合理性を語らないで下さい。皆さん初めまして!副担任の緑谷楪です!よろしくね~!」

 

相澤に小言を言いながら自己紹介を済ませると更にザワザワと教室が騒がしくなった

 

 「うっそ!あんなにちいせぇのに副担任かよ!」

 「尻尾もふもふした~い!めっちゃ可愛い!」

 「緑谷ってもしかして……」

 「ゆ、ゆず!?もしかして僕のクラスの副担任になったの!?」

 

楪の姿を見て皆思ったことを口にし始めていると再び相澤が口を開いた

 

 「俺は睡眠を取れて移動でき、合理的だろう。それにさっきも言ったが時間は有限だ。さっそくだが着替えてグラウンドに集合しろ。以上だ。着替えは楪から受けとれ」

 

そう言いながら相澤は一人で去っていってしまった。一人残された楪は生徒に詰め寄られ質問責めにされていた。

 

 「ねね!先生って何歳!?」

 「その格好どうしたの?スッゴク似合ってて可愛いよ!!」

 「楪先生!緑谷君と同じ名字ということは緑谷君の親族でしょうか!!」

 「おいこら女狐!なんでてめぇがセンコーなんざになってるんだ!?あぁん!?」

 

 「ボクは聖徳太子じゃないんだから一人ずつ喋ってよ!」

 

楪がそう声を出しながら生徒の波から逃れ、出久の後ろへと隠れてしまった。そして聞こえていた質問に答え始めようとするといつぞやのポンデリング少年が

 

 「ロリボクッ娘属性……イイ」

 「ロリっていうなポンデリング!」

 「聞こえてるのかよ!地獄耳じゃねぇか!」

 「ハァ……とりあえず質問に答えるよ?ボクは皆と同じ年だよ。そしていずにぃの妹で、リカバリーガールの後継者なんだ。あ、ちゃんと教員免許持ってるよ。あ、ボクのことは好きに呼んで良いよ」

 

そう言いながら近くにいた飯田に免許証を渡して皆に回して見て貰うことにした。

 

 「俺たちと同じ年なのに本当に先生なんだな!すっげぇ!俺は切島鋭児郎ってんだ!よろしくな!ゆず先生!」

 「よろしくね切島君、皆と挨拶したいけど相澤先生に言われてるから他の皆はまた後で自己紹介しようね!はい!出席番号一番の人から受け取っとね!」

 

そう言いながら隠れている右手にディメンションを展開させ、もう片方の手で体操着を引っ張りだす。楪の個性を知らない生徒からしたら自分の袖に手をいれたと思ったら体操着が何着も出てきているように見えたからか、

 

 「すげぇ!マジックかよ!」

 「ゆずちゃん先生すごーい!」

 「先生の個性は何なのかしら?ケロ」

 「はい、質問はあとでね~」

 

そして黙々と体操着を配り終え、更衣室に向かうように指示をする

 

 「女子更衣室にはボクも一緒に行くからついてきてね」

 「「「は~い!」」」

 皆元気だなぁ……まぁ、元気なのは良いことだけどね。とりあえずiPad取り出して……と、皆の名前を確認しておこうかな

 

そう思い袖のディメンションからiPadを取り出し名前の確認をしていると直ぐ後ろを歩いていた八百万百から質問された

 

 「あの、楪先生はわたくし達と同じ年齢なんですよね?なぜその年齢で教職につく事が出来たんですか?」

 「君は……八百万百さんだね、ボクはね、リカバリーガールの後継者になんだ」

 「リカバリーガールの!?」

 「うん。ボクの個性はちょっと複雑でね?傷を治したり出来るんだ。それでリカバリーガールに目をつれられて、リカバリーガールの後継者として、サイドキックとして、雄英に就職しないかって言われてね」

 「なるほど………先生さ見たところ異形系の個性かと思っていたのですが、治療が出切るんですね。他にはあるのですか?」

 「他には………と、更衣室に着いたね、また後で教えてあげるから皆早く着替えて着てね!」

 「「「「はーい!」」」」

 

そして着替え終わり、グラウンドへ向かうとそこでは相澤が待っていた。

 

 「「「個性把握テストォ??」」」

 入学初日からテストかぁ………皆も大変だな………

 「入学式は!?ガイダンスは??」

 「ヒーローになるんならそんな行事出る時間無いよー雄英は自由な校風が売り文句、お前らも中学の時やったろ?個性禁止の体力テスト、おい爆豪、中学のボール投げ、何メートルだった?」

 「………六十七メートル」

 かっちゃん結構飛ばしてたしなぁ、性格以外は無駄にスペック高いからね

 「じゃ、個性使って投げてみろ。円から出なきゃなにしてもいい。楪、記録頼む」

 「了解です」

 

 相澤先生にボールを渡され、かっちゃんが円の中に入る。何気に個性を使った測定はみたこと無いから、ボクもどんな記録が出るのか楽しみだな。そして

 

 「ほんじゃまぁ……死ねぇ!!」

 「まずは自分の最大限を知ろう。それがヒーローを形成する合理的手段だ」

 凄い威力だけど、し、死ね?それ掛け声としてはどうなのな……… 

あ、記録出たね

 「七百五メートル!」

 

 ボクが記録を読み上げると、皆は歓声をあげて「まじかよ…」とか、「個性思いっきり使えんだ!さすが雄英ヒーロー科!」とか聞こえてきて、最後に「おもしろそう!」って言葉を聞いて相澤先生がにやぁっと、悪い顔になった。目付き悪いし目赤いからヴィランみたいだね。

 

 「ヒーローになる為の三年間、そんな腹積もりで過ごすつもりか?よし………トータル成績再開は見込み無しと判断し、除籍処分としよう……!」

 

 えぇ………初日から除籍は………あ、でも相澤先生前にのクラス丸々除籍にしてる………いずにぃ……頑張ってね…!!あ、いずにぃもヤバいって顔してる。ちょっと面白いかも

 

 「楪も記録取って貰うからな。もしお前が最下位だったら副担任から降りて貰うニヤニヤ」

 

 「ヴェ!?」

 この鬼畜!!!!

 

 「除籍って、まだ入学初日ですよ!?初日じゃなくても理不尽過ぎる!」

 「自然災害、大事故、身勝手なヴィラン達、日本は理不尽で溢れている。ピンチをひっくり返していくのがヒーローだ。放課後マックで談笑したいたいならおあいにく、これから三年間全力で君たちに苦難を与え続ける。さらに向こうへ、Plus Ultraだ」

 

 確かにそうだけど洗礼にしては重すぎないかな………それにボクを副担任から外すってことは………いずにぃと……ハイライトオフ

  本気でやるか

 

 

 

 「楪は一番最後に記録を取る。それまではこいつらの記録をしてやってくれ」

 「………わかりました」

 ボクは最後か………なら、もし器具を壊しちゃっても大丈夫だよね?なら限界まで妖力で強化して……うん、イケるね

 

一種目目 五十メートル走

 一番目は飯田君か、足にエンジンついてるし、まぁ早いよねでも五十メートルだとトップスピードに入りきれて無さそうだね

 3秒04っと

 

 一緒に走……いや飛んでたね。たしか個性は………蛙か、なるほど、

 5秒58っと

 

 えっとあの金髪は…青山君か、おぉ、レーザーの反動で飛んでったのか、凄い発想だね

 5秒51っと

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「よし、とりあえず五十メートル走は終わったな。じゃ楪お前の番だ」

 やっとボクの番だね……目標は飯田君の3秒台………

 「はい、楪行きます」

 妖力を足に貯めて………「イチニツイテ、ヨーイ、ドン」

 「フッ!!!」

 ガゴンッ!!!

 「ピッ2秒46」

 「おいおいマジかよ!」

 「どこからあんなスピード出せるんだよ!」

 「スターディングブロックがぶっ飛んじまってるじゃねぇか………おい緑谷、お前の妹なにもんだよ?」

 

 ちょっとやり過ぎちゃったかな?でも目標の飯田君の記録は越えられたからいっか、まだ一種目だしね。この調子で頑張っていこう!

 

 「楪、次器具壊したら失格で最下位な」

 …………やっぱり壊すのは不味かったみたいだね……反省はするけど後悔はしないよ!ドヤァ

 

 二種目目 握力

 「すげー!540㎏ってあんたゴリラ!?」

 「タコってエロいよね……」

 なにいってるんだあのポンデリングは、絶対頭の中え、エッチなことばっかりなんだ…!!!ていうか……八百万さん?それ万力だよね?それ握力測定………個性で出したものだから良いのかな?

 

 楪 777kg

 

 「ラッキーセブンかよ……」

 「あっちがゴリラだったな」

 うっさいよ!

 

 

 三種目目 立ち幅跳び

 青山君、かっちゃん、蛙吹さんがずば抜けてるね。

 

 楪 26m

 

 

 四種目目 反復横飛び

 変態ポンデリングが左右に自分の頭から取ったポンデリングを地面にくっつけて自分をバウンドさせて凄い記録を出してた。でもあの格好でバウンドし続けるってかなり体幹と足の筋肉なきゃ無理だよね?

 

 楪65回

 

 「何か普通だったな」

 「何なら低いしな」

 「背ちっちゃいから一回が大変なんだよ!」

 「ごめんて……」

 

 語種目目 ボール投げ

 八百万さんは……….うん…大砲かぁ……うわぁスッゴい飛んでる~

 あの麗日さんは無限だしたし…よくわかんなくなっちゃったなぁ

 

 「おい楪」

 「?何ですか?」

 「今回は緑谷の前にお前がやれ」

 「え、何でですか?」

 「見ればわかる」

 「わ、わかりました?」

 何でだろう………でもいずにぃ今まで結果出せてないからなぁ……いずにぃが除籍になったらどうしよう……ううん、あんだけ頑張ってたんだ。ボクがいずにぃを信じてあげなくちゃ!

 「じゃあ行きます!」

 「フンッらぁぁぁぁあ!!」

 

 楪 1683m

 

 「一キロ越えやがったよ………バケモンだろ…」

 「糞がッ!!」

 

 いずにぃ、がんばってね

 

 「……緑谷君、このままでは不味いな」

 「アァン?たりめーだろ!無個性の雑魚だそ!」

 「な、無個性!?彼が入試の時何をしたのか聞いていないのか?」

 「ハァ?」

 

出久の番になり、円の中に立つ。しばらくボールを見つめたあと意を決したようにボールを投げるが……

 出久 46m

 「いずにぃ…?」

 「な、何で!確かに今使おうって!」

 確かにワンフォーオールの光が見えたはずなんだけど……っ!もしかして相澤先生が?

 

 「個性を消した」

 

相澤を見ると髪が逆立ち、目が赤く光っていた。その真っ赤な目は出久をしっかりと見つめていた。

 

 「つくづくあの入試は合理性に欠けるよ。お前のようなやつでも入学できてしまう」

 

 「個性を消した……?ハッあのゴーグルは!そうか!見ただけで個性を消すヒーロー!抹消ヒーロー!イレイザーヘッド!」

 「イレイザー?」

 「俺知らない」

 「聞いたことあるわ、アングラ系ヒーローよ」

 見ただけで個性を消す……か、個性社会の現代じゃ強力だね……あとオールマイト、なんでわざわざマッスルフォームでこっち見てるの?バレバレだよ?

  

 「見たところ、個性が制御できないんだろ?また行動不能になって、誰かに、妹の楪にでも助けて貰うつもりだったか?」

 「そ、そんなつもりじゃ!!」

 「どういうつもりでも、回りがそうするしかなくなるって話だ。昔、大災害から一人で千人を救いだす伝説を作った男がいた。同じ蛮勇でも、お前は一人で救っただけででくの坊になるだけだ。

緑谷出久おまえの力ではヒーローになれない。個性は戻した。さっさと二回目を済ませろ」

 

 なるほど……いずにぃにこれを言いたかったからボクを先にしたんだ……確かに、今のいずにぃのままじゃ、ボクがいないとろくに個性も使えない。ここが踏ん張り時だよ。いずにぃ、ボクは絶対にいずにぃがヒーローになれるの信じてるから。

 

いずにぃ、がんばって……

 

 

暫く考え込んでいた出久だが、唐突にボールを握りしめ、フォームを構えた。だが、今度は腕全体にワンフォーオールを使うのではなく、最後にボールを押し出す人差し指にのみにワンフォーオールを使いボールを天高く押し飛ばした。その瞬間は軽い衝撃波が回りに伝わるほどの威力だった。

 

 「「「「おぉ!!」」」」

 「なッ!?」

 腕!壊れてない!やったんだね!いずにぃ!

 

 出久 705m

 

 「先生………まだ動けます!!」

 「こいつ……!!!」

 相澤先生もわかってくれたかな………?うわ、目見開いてちょっとニヤニヤしてる………ッて!!ちょ、その指握り込んだらダメだって!今も絶対いたいはずでしょ!絶対に折れてるし、後遺症でも残ったら……!!!

  

 「ちょっといずにぃ!!そんな握り込まないで!」

 「え!?あ、ご、ごめん!嬉しくてつい…」

 「ついじゃないよ!絶対折れてるんだから!神経が傷ついたらどうするの!」

 「ご、ごめん!気を付けるよ!」

 

折れた指を握り込み続ける出久に慌てながら駆け寄っていき、軽く説教をする楪。その姿は子供を叱るお母さんそのものだった。

 

 「700メートル越えたぞ!」

 「指が腫れ上がってしまっているぞ、入試のときといい、おかしな個性だ」

 「ッな!!なんだあのパワーは!!個性の発現は漏れなく四歳までだ!あり得ねぇ!でも実際!」(言って貰ったんだ!ヒーローになれるって!!)

 

爆豪はこの時、ヘドロから出久に助けて貰った時を思い出していた。今まで無個性だと思っていた出久に助けられるのは爆豪にとって、屈辱でしかなかった。 

 

 「どういう……….ことだ………ッ?」ボンボン!ッ

 「ふぁ!?」

 「コラァ!訳を言え!デクてめぇっ!!」

 「ッ!?いずにぃ!」

 

個性を爆発させながら突進してきた爆豪に驚き後ろにつまづいて転んで動けない出久を庇うように抱きしめ、尻尾を硬質化させ、盾にする。しかし、くるはずの衝撃が来なかった。

 

 「………あ、あれ?」

 振り向いてみたらかっちゃんが相澤先生のマフラー?を体に巻き付けられ身動きが取れなくなっていた。とっさにいずにぃを守ろうとしたけど、大丈夫だったみたいだね。それにしてもかっちゃんが暴れてもびくともしないなんて、何の素材で出来てるんだろ?

 

 「炭素繊維に特殊合金を編み込んだ捕縛武器だ。ッたく、何度も個性使わせんな!俺はドライアイなんだよ!」

 

 「「「「個性凄いのに勿体ない!」」」」

 

 「楪!仮にもお前は今教師だ!生徒の呼び方に気を付けろ!それといつまで抱きしめてんだ、離してやれ」

 「ご、ごめんなさい!………!?」

 離してやれと言われてボクの胸を見ると、そこには顔を真っ赤にしたいずにぃの顔が押し付けられていた。

 「わ!?ご、ごめん!」

 すぐに謝って抱きしめていた手を離すと、いずにぃは手で顔をパタパタと仰いで「大丈夫」と言っていた。

 

 「時間が無い。楪、さっさと緑谷の指を治してやれ」

 「わ、わかりました!」

 「ほら、いずに…出久君!手出して」

 「は、はい……」

 そのあと袖を捲るのが面倒でいずにぃの手を袖の中には入れ手を握り治しているとポンデリングが血涙を流しながらこちらを睨んでいた。何で? 

 

 

そして残りの種目も終わり、結果発表となった。最下位は出久だったが……

 

 「あ、除籍ってのは嘘な」

 「「「は?」」」

 「君たちの最大限を引き出す合理的虚偽」

 「「「「「「はぁぁぁぁぁ!?」」」」」」

 「あんなの嘘に決まってるじゃない。ちょっと考えればわかりますわ」

 いや…相澤先生は本気で除籍するつもりだったはず……いずにぃが除籍されないのはよかったけど……そういえば、見込み無しと判断し、だったね………つまりいずにぃは見込みアリって思ってくれたんだ……良かった………

 

 「じゃ、これにて終わりだ。教室に今後のカリキュラムの書類があるから目通しとけよ。あとは楪の指示にしたがえ」

 「え?」

 「じゃぁあとは頼んだ」

 「えぇ………え、えと~とりあえず他に怪我した人はいない?」

 「!!俺!俺!手擦りむきました!!」

 「ん、ポンデリング君か、じゃぁ見せて……うわぁ…結構やっちゃってるね……一旦消毒しないとダメだね」

 消毒液とガーゼを出してっと、

 「え、ポンデリング?消毒?」

 「ちょっと染みるよ~」

 「いってぇ!!!!」

 「は~い、じゃ、治すよ~」袖でパクッ

 「あっ…….///やわらけぇ……イイッ」

 ?何か言ってるけどどうしたんだろ?

 

楪がポンデリング(峰田)の反応を頭に?マークを浮かべているうちに傷を治し終わり、ポンデリングは離れていった。

 

「峰田、流石にねぇわ」

     「お前らには袖パクの良さがわからんのか」

 

 

 「とりあえず皆着替えて教室に戻ってね?」

 「「「「は~い」」」

 「ゆずちゃん先生も一緒にいこーよ!」

 「そうね、ゆず先生にまだ聞きたいことあるしケロ」

 「わ、わかったからひっぱらないで!」

 

そして女子達に更衣室の中にまで連れ込まれ今朝のように質問責めをされていた。

 

 



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閑話 楪と1_A

メヴィ「身長150cm台はロリというには大きすぎるのではといわれ    たから142cmに縮めるでゆずちゃん

楪  「理不尽!」





まったく………ロリは最高だぜ!!







 更衣室に連行され質問責めにされたあと、今日はもう終わりらしいので、ボクは相澤先生の代わりにホームルームをしていた

 

 「はい、皆揃ったね?じゃ、軽くホームルームやって今日は終わりにしようか」

 「あれ?ゆずちゃん先生なんかちっちゃくなってない?」

 「気のせいだよ」

 「え、でも朝よりぜったい……」

 「気のせいだよ」

 「んん~??」

 「キノセイダヨ」

 

 芦戸さんはフレンドリーに接してくれるけどずかずかくるね。とりあえずiPadディメンションから出してっと、明日からのことを連絡しとかないとね。

 

 「まぁ、気を取り直して、早く終わらしてかえろっか。とりあえず皆手元にあるプリントは目を通しておいてね?明日からは本格的に訓練をしながらの学校生活になるから。あ、因みにボクは基本皆と行動するけど、たまにリカバリーガールの手伝いだったり授業を受けに行くからいなくなる時は声をかけるからね」

 

 説明が終わり、ディメンションにiPadを収納すると砂藤から質問された。

 

 「朝に聞きそびれたけどよ、ゆず先生の個性って結局何なんだ?袖から物出したりしまったりしてるけど、体力テストの時すげー記録出してたしよ」

 「あ、確かに!あと、緑谷の折れた指もすぐに治しちゃってたもんね!」

 

 あ、そういえばまだ詳しい説明してなかったね。八百万さんにも後で話すって言ってそのまんまだったし

 

 「そういえば朝の質問にまだ答えて無かったね。ボクの個性は…」

 「けっ!てめぇの個性の話なんざどうでも良いんだよ!そんな話するんだったら俺は帰らせて貰うからな!」

 「わりぃ、俺も帰らせて貰う」

 「お、おおぅ、そうだね。とりあえずホームルームは終わりだから帰りたい人は帰って良いよ」

 

 かっちゃんは相変わらずだなぁ……轟君は基本表情崩さないからなに考えてるかわかんないや

 

 「楪先生、早くお話してほしいわ」

 「あ、うんそうだね、ボクの個性は 九尾の狐 九尾に出来ることは何でもできる…………と思ってるよ」

 「フム………東方の伝承に名高き妖狐か………」

 「楪先生の尻尾はとても素晴らしい毛並みです」

 「そんなの見ればわかるわ!たかが狐に何であんなゴリラ見たいな力出したり傷を治したりできんだよ!おいらなんてくっつく玉だぞちくしょー!」

 「楪先生!出来ると思っているというのはどういうことですか!是非ご説明頂きたい!」

 

 飯田君はロボット見たいにカクカクしてるなぁ……

 

 「出来ると思っているってのは、ボクにもまだ詳しくは分かってないから何だ。常闇君が言ったように色んな伝承に九尾は出てくるでしょ?伝承によって別の事書いてあるから、今のところはだいたいの伝承に共通している 妖力を使う ことしか出来てないんだ」

 

 「なるほど、確かに九尾は伝説の存在……何が出来るかは変わるか…ご説明ありがとうございます!」

 「ん~?でもようりょく?しか使えないんでしょ?なんで収納したり傷治したりできるの???」

 

 芦戸さんは良いところ聞いてくるね………でもなんて説明しようかな?あんまり人に話したりできるような話じゃないしなぁ………あ、全部妖力ですって言い張ればいけるかな?

 

 「全部妖力の応用だよ」

 「怪力も?」

 「妖力で体を強化したよ!」

 「収納も?」

 「妖力で次元歪めてるよ!」

 「傷治すのもかしら?」

 「妖力を使って細胞を活性化させたり妖力で細胞を治したりしてるよ!」

 「…………………」

 

 なんでそんな心配そうな目してんのさいずにぃ。うまくそれらしい説明出来たじゃん………

 

 「つまり妖力があれば怪力だせて収納できる、更には治癒までできんのか!アタックもサポートも出来るとかチートかよ…はぁ~…ヤダヤダ」

 「そんなにチートじゃないよ?妖力にも限度があるし、ボクもそれなりに鍛えてはいるけど、やっぱり妖力頼りだからね。妖力が切れちゃえばボクは非力な女の子だよ」

 「非力な女の子ねぇ………あ、じゃぁヤオモモと腕相撲してみてよ!ヤオモモも結構鍛えてるって言ってたし!勿論妖力なしでね!」

 

 アシドサン?なに勝手に決めてるの?

 

 「おぉ!腕相撲か!漢らしいな!俺もやりてぇ!」

 

 ボク女の子だよ?漢じゃないよ?切島君?

 

 「腕相撲ですか………良いでしょう。受けてたちますわ!」

 

 八百万さんもなんでやる気だしてるの……別に嫌じゃ無いんだけどさ…

 

 「さ、準備出来ましたわ楪先生。始めましょう!」

 「……うんそうだね…」

 

八百万や切島達によって机を合わせられ、特設の腕相撲ステージが出来上がる。八百万によってご丁寧に掴むバーも設置されている。そして楪は腕を組むのに袖が邪魔なので右腕の袖をまるごと外す。

 

 「うっわ!ゆずちゃん先生手ちっちゃ!腕ほっそ!」

 「綺麗な肌をしているわ」

 「よし!では俺!飯田が勤めさせて貰う!」

 「「「いえ~い!」」」

 とりあえず八百万さんがどれだけの腕力分からないし、一瞬で決めさせて貰おうかな

 「ではlady………GO!!」

 「ッフ!」

 

 ドゴン!

 「いったぁ!?」

 

 「「「…………え?」」」

 「い、痛いですわ楪先生………」

 「ご、ごめん八百万さん。ほら、手出して………赤くなっちゃってるね」

 「まったく………その細い腕のどこにあんなパワーがあるのですか……」

 

楪が八百万に力加減ができなかった事を謝罪しながら赤くなった手の甲を治癒して赤みをとっていると今に理解ができていなかった峰田が驚愕の声をあげた。

 

 「いや何で二人だけで納得してんだよ!おいら達にも何があったか説明しろ!

 「説明と言われても、私が一瞬で負けただけですわ」

 「一瞬って、ヤオモモって推薦入学者でしょ?それが一瞬って……ゆずちゃん先生、本当に個性使ってない?嘘ついたら良くないよ?」

 「使ってないよ……ほら、葉隠さんもやってみる?今度は力加減がするよ?」

 「ん~私はいいや!それより次は切島君だからね!期待してるぞ!切島君!」

 「おっしゃぁ!たとえゆずちゃん先生相手でも本気でやるぜ!」

 

 切島君は元気だね………いやクラスの皆元気だねうん。でも切島君かぁ、八百万さんよりは力あるだろうけど、少しゆっくり力いれていこうかな。

 

 「では両者!lady………GO!」

 ガッ!

 「う、おおお!!」

 「ッ!!(一瞬でやらなかったのは流石に駄目だったか!キッツい!)」

 「うぉらぁ!!」

 「うにゃ!?」

 バシン!

 「ッシャァ!」

 「いてて……」

 「流石に切島は無理だったか」

 「流石になぁ」

 「いやいや、勝ったのは俺だけど、結構ギリギリだったぜ?それになんか最初の方はあんまり力入ってなかったしよ、たぶん八百万みたいに一瞬で力入ってたら普通に負けてたぜ?」

 「切島がぎりぎりねぇ……着替えてるとき見たけどかなり鍛えられて、がっしりしてたんだがねぇ……どんな鍛え方したら細い腕にそんな力がつくのかねぇ」

 

瀬呂が切島と楪を見ながら疑問の言葉をこぼし説明を求めるように楪の目を見つめる。

 

 「別にそんな大したことではないよ?トレーニングしたあとって筋肉痛とかあるでしょ?筋肉痛って何でなるか知ってる?」

 「ん~…なんでだろ?」

 「考えたこと無かったな」

  

 皆知らないのね……確かに筋肉痛はそういものって感じはするけどさ、

楪が若干あきれたように思っていると出久が口を開いた

 

 「筋肉痛は筋肉繊維の損傷を修復しようとして起こる痛みだよ」

 「ん、いずにぃ正解。さっきいったとおりボクは治すことができる。つまり、筋肉痛を強制的に治してたら何でか筋肉の密度が上がって、力持ちになったんだ」

 「ほえ~……筋肉痛を治してたらそんな力を……ん?ってことは筋肉痛の辛さ分からなかったり?」

 「うん、まぁ普通の人よりは感じたこと無いね。でも筋繊維が治せるってことはクールダウンが必要ないってことだから………ね?」

 「な、なるほど……疲労さえ取れればすぐにトレーニングを再開できると……」

 「ゆずそんなことしてたんだ……」

 「とりあえずボクの腕力についてはもういいよね?えと、どこまで話したっけ?」

 「確か、妖力には限度があるってところまでだと思うわ」

 「ありがと蛙吹さん」

 「梅雨ちゃんと呼んで」

 

 今度から梅雨ちゃんって呼んであげよ

 

 「それで、妖力の限度の話だけど、もちろん無限にあるって訳じゃないんだ。妖力はボクのエネルギー、体力を変換して作ってるんだ。だからボクは日頃からいっぱい食べて、妖力を貯めておかないといけないんだ」

 「へぇ、何か八百万と似てるな」

 「ええ、私の場合は脂質ですけれど、体のなかで変換して使うと言うことは同じですわ」

 「何か、うんこみてぇだな笑」

 

瀬呂が笑いながら例えると女子達が一瞬凍りついたように動きを止めた。

 

 「瀬呂ちゃん。その例えば下品よ」

 「そうだよ!デリカシーがないよ!」

 「う、うんこ………ふふ……」

 「ほら!ヤオモモ凹んじゃったじゃん!」

 「わ、わりぃ八百万そんな気は無かったんだ」

 本当に凹んじゃってるね……ここはボクの出番かな?

 「ほ、ほら八百万さん元気出して!ほら!もふもふだよ?」

 

楪が八百万を慰めようと自分の九本の尻尾で八百万を捕食するかのように包み込むと八百万は元気を取り戻しもふもふを堪能し始める   

 

 「も、もふもふですわ……!なんて素晴らしい毛並みなんでしょう………」

 「あ、それと瀬呂君。ボクは排泄する必要が無いからね?その例えは当てはまらないよ?」

 「そこかよ!?てかトイレ行かねぇのかよ!」

 「行かないんじゃなくて、行く必要が無いの!食べたものを全部妖力に変換すればいいんだから」

 「………ちょっと待ってゆず先生。食べたものを変換するってことは、太らないってこと?」

 「「「「ピク!」」」

 

楪が瀬呂の例えを否定しながら説明を続けると考えるように口元に手を当てたままの耳郎から疑問が寄せられるとそれを聞いていた女子達は動きを止めた

 

 「あ~そうだね。それに無駄に脂肪が付いちゃったらそれを妖力に変換すればいいから……やろうと思えば体脂肪0%にも出来るんじゃないかな?まぁ、危ないからやらないけどね?」

 「「「羨ましい…………!!!!」」」

 「なんでヤオモモもゆずちゃん先生もそういうこと出来んの!?」

 「で、でも胸の大きさなら……」

 「好きなものを好きなだけ食べられるのは羨ましいわ」

 

 そんなに言うことか………あと耳郎さんは胸で張り合わないでよ!多分勝ってるけど!………勝ってるよね?

 

 「はいはい、とりあえずこの話は終わらなくなりそうだからもう終わりにしよっか、他に質問ある?」

 

楪が他の質問があるか求めると全員が一瞬考え込むようにして静かになった。そして数秒がたったあとに砂藤が手を上げた

 

 「そういや緑谷とゆず先生って兄妹なんだよな?ぜんっぜん似てねぇけど、緑谷が父親似で、ゆず先生が母親似ってところか?あと緑谷もすげー力が出してたし、も妖力使ってるのか?」

 

 あ~…そこ聞いちゃうか……どうしようかな?こればっかりはいずにぃに相談してからにしようかな?

 

 「いずにぃ、ちょいちょい」

 「わ、わかった」

 「「「??」」」

 

楪が話すべきかを出久に相談しようと一緒に教室を一旦出る。その光景を見た砂藤達は不思議に思っていた。

 

 「話しちゃって良いのかな?」

 「う~ん……ゆずが良いなら僕は話しても良いと思うよ」

 「そっか、なら話しても良いかな、これから三年間一緒になるわけだしね。じゃ戻ろっか」

 ガラガラ

 

 「あ、戻ってきた。緑谷なに話してたんだ?」

 「うん、ちょっとね」

 「ちょっとってなんだよ……」

 「よし、じゃぁボクといずにぃのことについて話すね?ボクといずにぃは血は繋がってないんだ」

 「「「え?」」」

 「た、確かに似てないと思ってたけど、血繋がってないの?すごいなか良さそうなのに」

 「うん、ボクは小さいときに親が死んじゃってね。親の親友だったいずにぃの家に引き取って貰ったんだ」

 「あ……そ、そうだったんだ……その…」

 

楪が自分の事情を話すと質問をした砂藤や葉隠が少し申し訳なさそうにしていた。

 

 「別に気にしなくて良いよ。いずにぃがいるから悲しくない」

 「ゆず先生……」

 「はい、とりあえずボクの説明はおしまい!湿っぽくなっちゃったね、あ、そろそろ下校時間過ぎるから皆帰ろっか、明日はちょっと楽しいことがあるから、ちゃんと来るんだよ?」

 「は、は~い!先生さよなら!」

 「また明日な!先生!」

 

そして続々と帰っていくクラスメイト達、最後に残っていたのは出久と麗日だった。

 

 「あれ、デク君帰らんの?」

 「あ、う、麗日さん!その、ゆずって今日は何時ごろに帰れるのかなって思って!もう帰れるようなら一緒に帰ろうと……」

 「お、おぉ、ホントになか良いんやね!」

 「ん~……確認してみるね、え~と」

 

楪が自分の予定を確認しようとiPadを出して確認していると麗日がふりふりと揺れている尻尾をロックオンしていた。

 

 「とりゃ!」

 「ふにゃぁ!?」

 「おぉ!すっごいもふもふ!気持ちいい……八百万さんが触ってた時から気になってたんよ……」

 「び、びっくりしたよ、もう、ちゃんと言えば触らせてあげるのに、あ、ボクももう帰れるみたい。じゃ着替えて来るからいずにぃは校門で待ってて?」

 「わ、わかったよ。う、麗日さんも一緒に帰る……?」

 

 女の子耐性皆無ないずにぃが自分から誘った!?

 

 「あ、せやね、うちもそうさせて貰うね。じゃゆず先生も早くね!」

 

 

そして出久と麗日が教室を出て行き、楪は着替えるために自分の私服を置いてある保健室へ向かっていた。

 

 「あ、相澤先生に寝袋返すの忘れてたな。返しとかないと」

 ボクが相澤先生の寝袋持ってたのすっかり忘れてたな。先生も忘れてるんじゃ無いかな?

 「失礼しま~す。相澤先生~寝袋返しに来ました~」

 「ん?あぁ、楪か、そういえば寝袋預けたままだったな。助かる。ほら、手早く出せ」

 「んむ!?」

 

相澤が楪の手首つかみ袖の中には手を入れる。まだディメンションを展開していなかったため、袖のなかで相澤と握手をすることになってしまっていた。

 

 「ん?何してる早く出せ」

 「いや!それボクの手です!出しますから離してくだい!セクハラで訴えますよ!」

 「…ほう?やれるものならやってみるといい」ニヤニヤ

 笑顔こっわ……もう左手から出そう……

 「………はい、どうぞ…」

 「フッ,合理的な判断だな」

 「………失礼しました」 

 

職員をあとにし、保健室で私服に着替えたあと校門へ向かっていた

 

 

 

 「はぁ、相澤先生の悪ノリも大概だね。とりあえずいずにぃは、と、あそこだね。麗日さんもいるし」

 「あ、ゆず先生!」

 「あ、や、やっと来た……」

 「おまたせ、あと麗日さん、もう学校の中じゃないから先生付けなくていいよ?」

 「ん~分けるの大変そうだからいいや!」

 「たしかにね~あ、そういえば麗日さんって独り暮らしだったよね?どこに住んでるの?」

 「すぐ近くのところよ、ほらあそこのマンション!」

 

あそこ!と指を指した先には建ってからそれなりにたっているマンションであり、楪と出久が住んでいるマンションでもあった。

 

 「え、ボク達と同じマンションじゃん!」

 「う、麗日さんもあのマンションなの!?」

 「おぉ!?凄い偶然やね!じゃぁ明日一緒に登校せぇへん?」

 「おっけ!明日からよろしくね!」

 「よ、よよよよよろしくおねがいひまひゅ!」

 いずにぃ噛みすぎでしょ……

 

そしてマンションについた楪達だったが、流石に部屋までは近く無かった。麗日は二階で楪達は四階の部屋だった。

 

 「じゃぁ明日の朝にマンションの出口でね?」

 「うん!また明日~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




テストだったのです……失踪はしないよ……タブン



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出久の個性特訓

どうもお久しぶりです。ブラウザの操作ミスで丸々消えて不貞腐れてました。さて、今回は短めです。


麗日と別れた楪と出久は自分達の住んでいる部屋に帰り、出久が制服から部屋着に着替えている間に楪は夕飯の支度をしていた。

 

 

 ん~と、今日はどうしようかなぁ、冷蔵庫には豚ブロックあるし……トンカツにして……明日にカツ丼でいっか、よし、じゃぁブロック、卵、パン粉……パン粉どこだっけ?………あ、この前コロッケ作ったときに使いきったんだっけ

 

 「いずにぃ~??」

 「どしたんゆず」

 

 いやだれ君?いやいずにぃだけどさ、もしかして麗日さんの口調うつった?

 

 「麗日さんうつってるよいずにぃ」

 「せやな~」

 「…………」

 「ごめんなさい」

 「謝るなら最初からしないでよ……パン粉買ってきてくれる?切らしちゃったみたいだからさ」

 「普通ので良いんだっけ?」

 「そそ、なるべく早くね?夕飯作るの遅くなっちゃうから」

 「わかった。行ってくるよ」

 

 

 「じゃぁ待ってる間にサラダでも作ろうかな、玉ねぎとか、かいわれ菜あるし、オニオンサラダかな」

 

 もともと引子さんの料理を手伝っていたこともあって、手際は良い……と思う。でも玉ねぎ切るの苦手なんだよなぁ……

 

 「……グズ」ポロポロ

 

 涙止まんないよ……五感鋭いんだから余計にね……やっと切り終わった……顔洗ってアイボンしよ……

 

 「ただいま~ゆず」

 「あ、お帰り、早かったね」オメメマッカッカ

 「目真っ赤だけど何かあったの?」

 「玉ねぎ切ってたの」

 「……今度から切られてるの買ったら?最近はよく売ってあるし」

 「そうしようかな………でもそういうの高いからなぁ……考えてはみるよ。それよりパン粉ちょうだい」

 「はい」

 「てんきゅー」

 

 よし、パン粉も揃ったし、始めようかな。

 

  料理&食事シーンは

 

  キングクリムゾン!

 

 

 「ご馳走さまでした!」

 「はい、お粗末様」

 「相変わらずゆずは料理上手だね」

 「そりゃど~も♪」

 「洗い物は僕がやるから休んでて良いよ?」

 「りょーかい」

 

 まぁほぼ毎日洗い物はいずにぃがやってくれるから楽だね。さて、洗い物終わったら少しお話しようかな。とりあえず部屋に戻ろっと

 

 「いずにぃ洗い物終わったらボクの部屋に来てくれる?」

 「ん?わかった」

 

 そういって先に部屋に戻ったボクは普段使っているトレーニングウェアに着替え、マット、ダンベルを用意していく。(因みにダンベルは40kgである)準備が終わりまだいずにぃは来そうに無いから柔軟でもしておこうかな

 

 

 

ーー出久sideーー

 

 

 

洗い物が終わった僕はゆずに言われた通りゆずの部屋に来ていたそこではゆずがトレーニングウェアの姿でヨガのようなことをしている。ヨガ……?もしかして僕も一緒にやれってこと?僕はあんまり体柔らかくないんだけどなぁ

 

 「えっと、やれってこと?」

 「ミュッ!?」

 

 僕がそう声をかけると気づいていなかっのか尻尾と耳がピンッと伸び、体をビクッと震わせる。実はゆずは急にくるドッキリ等が凄く苦手なのだ。それが面白くてたまにわざと驚かしているのは秘密だ。

 

 「来てるんなら言ってよ!急に声かけるからびっくりするんだってば!」 

 「ごめんごめん、それで何か用があるの?」

 「………いずにぃはさ、オールマイトの力制御できてないでしょ?」

 「……うん。まったくって言って良いほど制御は出来て無いんだ」

 

 そう、僕はオールマイトに貰った力、ワンフォーオールの制御がきかない。使えばワンフォーオールの力に体が耐えきれずに壊れてしまう。

 

 「だよね、今日も指さつまいも見たいになってもんね」

 「さ、さつまいも?なんかひどいような………」

 

 いやまぁさつまいも見たいには見えなくもなかったけど……そんなことを考えているとゆずに肩を掴まれマットの上に押し倒された

 

 「え~と、どういうつもりなの?」

 

 僕が状況を理解できずにいるとゆずはにんまりと笑い倒れた僕の上に跨がり馬乗りになる。いや、どいてほしいんだけど、て言うか力強くない?絶対個性使ってるよね?それにいつもより重い気がするんだけど?あ、尻尾で重り持ってるのか!器用だね!

 

 「特訓だよ。それとさっきの仕返し」

 「と、特訓?」

 「そ、特訓。ワンフォーオールのね?」

 

 ワンフォーオールの特訓?どういうことだ?ワンフォーオールの特訓をするなら公園とか外で……

 

 「いずにぃはさ、ワンフォーオールをどういうものだと思ってるの?」

 「ワンフォーオールは………オールマイトから受け継いだ力で、オールマイトの必殺技で「はいストップ」え?」

 「ワンフォーオールはすっごい強力だよ?まぁそのせいでいずにぃは体壊しちゃうからね、でもね?個性は体の一部であって、ただの必殺技ってわけじゃないよ?」

 「!!!」

 

 そうか!なんで僕は気づかなかったんだ!!個性は使えば使うほど強化されていく筋肉のようなもの!それならワンフォー

 

 「はいまだ話しはまだ終わってないよ?」

 「いたぁ!?」

 

 僕がそんなことを考えているとゆずはまだ話の続きだというようにデコピンをしてきた。絶対に個性使ってるよね?!すっごい痛いんだけど!?

 

 「い、いたいよゆず………何で個性ずっと使ってるの?」

 「いずにぃはどういうイメージで個性使った?」

 「え、えっと、僕は卵を電子レンジで卵が破裂しないイメージで……」

 「………なんて?」

 「え、だから卵を電子レンジで…」

 「何でぇ……?」

 

 ゆずに自分のイメージを伝えると余程困惑したのか押さえつけていた力がふと抜ける。あ、これなら逆転できるかな?そう思って上半身を起こそうと力を入れると

 

 「え?うわ!」

 

 余程力を抜いていたのかあっさりと起きられた。その代わりゆずは僕の膝の上に倒れてしまった。

 

 「急に起きないでよ!」

 「いや、今なら行けるかなぁって」

 「特訓だって言った!でしょ!」

 「うわ!?」

 

 また押さえ込まれちゃった………マットの上でよかったな、床だったら絶対に頭痛くするよ

 

 「さて、話を戻すけどいずにぃは何でレンチン卵なの?実際にやったら爆発するよ?」

 「確かに爆発するけど……なんだろう……なんか、最初に使ったときに腕と両足を壊しちゃって、それで壊れないように………それで電子レンジで卵が爆発しないように電子レンジを調整してみたいな……」

 

 自分でもうまく纏まらないな……それになんか引っかかる……なんだろうこの違和感は……?

 

 「あ~……いずにぃが制御できない理由がなんとなくわかったよ」

 

 若干呆れつつ納得したように頷くゆずに僕はゆずにまくしたてるように「教えて!」と大きな声を出してしまい耳に響いたのか、ゆずが顔をしかめてしまった。

 

 「え、えっとね、卵を電子レンジでやると普通は爆発するよね?それを爆発しないようにってことは凄く難しいことだと思うんだ。だからまずはそのイメージを変えなきゃいけない」

 「確かに……元から失敗するのが前提みたいな物だから………ゆずはどんなイメージで個性を使ってるの?」

 

 ゆずも妖力で体を強化しているから増強系と同じことが出来るはずだから、ゆずのイメージを参考にできればワンフォーオールを制御できるかもしれない

 

 「ボクはね体全体に力を纏うってイメージでやってるよ」

 「体に……纏う?」

 「うん、でも腕だけを強化したい時とかは鎧の籠手をイメージをしたりしてるよ」

 「なるほど……やってみるよ」

 

 ワンフォーオールを………纏う………

 

 「はいストップ」

 「え?」

 

 ワンフォーオールを纏うイメージをしながらワンフォーオールを発動させようとするとゆずが止めてきた。なんで?

 

 「今100のワンフォーオールを使おうとしたでしょ?それじゃぁ体が持たないよ?纏うって言ったってワンフォーオールは体の中で使うエネルギーなんだ。過充電した電池みたいになっちゃうよ?」

 「た、確かに……」

 

 今僕の体はワンフォーオールを扱えるギリギリの器……ならどうやって……

 

 「100から1じゃなくて、0から1にしよ?いずにぃは100のワンフォーオールを1に押さえようとしてるから難しいことって感じてると思うんだ。とりあえずワンフォーオール1%を使えるようになろ?」

 

 なるほど………ゆずには驚かせられてばっかりだな。確かに100から1より0から1のほうが遥かに簡単だ。よし!

 

 「お?おおお??」 

  ドスン

 

 「よし!できた!」

 「おぉ~かなりあっさりできたねぇ、じゃぁ今日は終わりにしよっか、明日は5%を維持できるように頑張ろうね」

 「明日は5%か……て、維持?今日のとは違うの?」

 「うん。明日は5%の維持をして貰うよ。一瞬しか使えませんじゃ使い物にならないからね」

 「あぁ……先は遠いなぁ……」

 「いずにぃなら出来るよ。それよりもさ……その……そろそろどいてくれないか…な……?ちょっとはずかしいな~て…\\\」

 「え?」

 

 よくみると僕はゆずを押し倒したままだった。さっきとは逆にゆずに馬乗りになっている。はたから見たら 襲っている ようにしか見えない格好だった。

 

 「ご、ごめん!」

 「う、うん……ありがと……」

 「………」

 「………」

 

 き、気まずい!!!どうしよう……あ、そうだ!

 

 「ぼ、僕お風呂入ってくるね!」

 「あ、う、うん、いってらっしゃい」

 

 

  かぽ~ん

 

 

 

  「はぁ……」

 やっちゃったなぁ……事故?とはいえ、ゆずも女の子だし……嫌われたく無いなぁ……まぁゆずもこんなことじゃ嫌いにならない……と思うけど……はぁ………それにしてもゆずもおっきくなったなぁ……あんなに小さかったのに……いやそんなに変わってないか、でも髪もさらさらて肌もすべすべで………

そんなことを考えていると先程の押し倒されたゆずを思い出した。恥ずかしいのか顔を赤らめているゆずは心なしか色っぽくて……………

 

いやいやなに考えてるんだ!妹だぞ!?義理とはいえ、ゆずは僕の妹だ!!ゆずは僕の家族で!大事な妹で!大事な人で……人……

 

 「………なんだろう……また、もやもやするなぁ……」

 

 

ーーー楪sideーーーーー

 

 

 「…………」

 いずにぃがお風呂に行ってボクは一人で部屋に残っていた。さっきいずにぃに押し倒されてたとき、正直嫌では無かった。むしろ、嬉しかった。ボクはいずにぃが好きだ。兄としても、男としてもだ。いつからはわからない。いずにぃの側にいると凄く安心するし、ずっと側に居たいと思ってしまう。いずにぃの側にいられるなら……ボクは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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合理的な鬼畜

|д゚)チラッ


PiPiPiPiPiPiPiPi!

 

 とても高い音を発しているのは雄英から支給された教師専用スマートフォンだった。

 校長曰く、

 「その人が絶対に起きる周波数の音が鳴り響くのサ!」

だそうだ。寝起きの悪いボクにとっては控えめに言っても殺意の塊しかお礼にあげられないよ。

 

 「う、うるさぁい……」

 

 いずにぃとのトレーニングの後珍しくボクは自分の部屋で寝ていた。だっていずにぃと顔合わせるの恥ずかしかったし……

 

 「まだ5時じゃん………相澤先生……?なんでこんな時間に…」

 

 無視したはまたグチグチ言ってくるんだろうなぁ……はぁ……出るか……

 

 「営業時間はまだですよ」

 『ヒーローチャージゼリー四つ』

 「えぇ……」

 

 本当に変なところでノリ良いんだから……

 

 『お前今日6時前には雄英に来とけよ。そんじゃ』

 「は?どういう……切れた……」

 

 6時前って……はぁ……なんでそんな早くにいかなきゃならないの……とりあえず支度しよう…

 

 「……ボクも寝袋買おうかな……」

 

 朝の支度を済ませて、いずにぃの朝ごはん用意した後置き手紙をして家を出た後、ボクはとあることに気づいた。

 そう言えば朝一緒に行くって話を昨日約束してたな……まぁいずにぃが説明してくれるか。

 

 兄に放り投げて雄英へ向かう途中、相澤先生に言われた通り、コンビニによりヒーローチャージを四つ買った。するとどうやら一番くじを開催してるようで、一枚引けることになった。一等賞はコンビニ限定オールマイト(コンビニバイト服)だった。

 当たったらいずにぃにあげよ。そして軽い気持ちで引いたら……

 

 「一等賞おめでとうございます!」

 「えぇ……」

 

 あたっちゃった……

 

 

 

 5:40

 

 ゼリーとオールマイトフィギュアを収納して雄英に着いて保健室に行くとリカバリーガールの代わりに相澤先生がいた。

 

 「おはよーございますあいざわせんせー」

 「……やっぱり眠いか?」

 「当たり前でしょう……これゼリーです」

 「助かる。ほら代金だ」

 

 相澤先生にゼリーを渡して代金を受けとる。良く考えれば………未成年にパシらせるって教師としてどうなのかな……

 

 「それで何でこんな早くに呼んだんですか?ゼリー為だけならSNSに書き込みますよ」

 「それはやめろ。理由は雄英の入学式の次の日は校門に報道陣が押し寄せるからだ。お前はどうせ私服で来るだろうから目をつけられるから暫くはこの時間に来い。眠いならベッドを使って良いとリカバリーガールに許可はとってあるぞ」

 

 要するにボクを報道陣から守る為と?相変わらず遠回しに言うなぁ……少しは労ってあげるかな。

 

 「ならボクは寝ます。相澤先生も暇ならボクが寝ている間に尻尾のブラシ掛けしといてください。はい、おやすみなさい」

 「………」

 

 ブラシを相澤先生に投げつけて尻尾だけをベッドの外に出すようにして毛布を被る。程なくして相澤先生は無言でブラシ掛けを始めた。

 

 相澤先生こう見えてふわふわしたの好きだからね……因みに猫派らしい。勉強みて貰ってた時にもたまにブラシ掛けして貰ってたけど、上手で気持ちいいんだよね……

 

 

 

 「はいはいおはようさ……イレイザーあんた……」

 「誤解しないで下さいリカバリーガール。俺はやれと言われたからやってるだけです」

 「…………チラッ」(*´ー`*)スヤァ………

 「……鍵くらいは閉めておかないとブラド辺りが叫ぶよ」

 「……以後気をつけます」

 

 

ーーーーー

 「おい楪起きろ。時間だ」

 「んぁい……」

 

 もう時間か……てことは8時かな……?あれ?まだ7時すこし過ぎた辺り……

 

 「まだ始業時間じゃないですよ?」

 「生徒をマスコミから守るのも仕事だ。早くにコスチュームに着替えろ」

 

 そういって相澤先生は保健室から出ていった。

 

 おぉ……凄い尻尾艶々だ……相澤先生はトリマーとかになった方が良いんじゃないかな?……いやあの目付きと格好じゃ動物に威嚇されてショボンってなりそうだね。

 

 コスチュームに着替え終わり保健室を出ると、扉の隣に相澤先生がボクのブラシを片手に待っていてくれた。

 

 「お待たせしました……あ、ありがとうございます。それで、今から何をするんですか?」

 「マスコミから生徒を守るのも仕事だ。お前も仮にも教師なら手伝え」

 「ゴウリテキー」

 「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うわぁ……」

 

 相澤先生と校門に行くとマスコミがうじゃうじゃといて雄英生徒が捕まり、質問責めをされていた。

 正直凄い鬱陶しそうにしてるし、校門の前だから後ろ手固まってる生徒もいた。

 

 「ほら、出番だぞ」

 「……出番とは?」

 

 ………まさかとは思うけど、ボクにマスコミの気を引けと……?

 真顔で相澤先生の事を見るとニィッと不気味に笑い始めた。

 いやだぁ!!ボクはマスコミは嫌いなんだ!!

 

 「ボク授業の準備をしてきます!」

 

 足を妖力で強化して逃げようとするが…

 

 「に"ゃ"ぁ"あ"!!!」

 

 すぐに個性を抹消されて捕縛布でぐるぐる巻きにされて捕獲された。やっぱり抹消ってチートだよ!!

 

 「離して!!鬼教師!!鬼畜!悪魔!」

 「なんとでも言え。これも合理的な行動だ。観念しろ」

 「ンノォォオオ!?ノットゴウリテキ!!」

 「は~い皆さん、コレがリカバリーガールの後継者です。どうぞお好きにしてください」

 「糞教師ぃぃ!!!」

 

 ボクの抵抗も虚しく、校門にから少し離れた所に投げ飛ばされて何とか空中で体勢を立て直して着地する。ドドドドと背後から嫌な音を感じて壊れたロボットみたいに振り向くと……

 

 「貴女が噂のリカバリーガールの後継者ですね!?」

 「特例での雄英教師とのことですが!?」

 「リカバリーガールの指導はどのように!?」

 「いやぁぁぁあ!!!!」

 

 結局ボクはオールマイトが探しに来てくれるまでインタビューと言う言葉の追い剥ぎから逃亡をし続けた。

 私が来た!って言うオールマイトが凄くかっこ良く見えた。

 相澤先生絶対に許さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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戦闘訓練1

 「わ~た~し~が!楪少女を抱えて来たぁ!!」

 「オールマイト!ってゆずちゃん先生どうしたの!?」

 「朝からずっといねぇと思っていたがどうしたってんだ!?」

 「あ、相澤先生許さない……」

 「「「「「は?」」」」」

 

 

 やっほ~皆、楪だよ。オールマイトに助けて貰うまでの午前中ずっと逃走していたからボクの体力はすっからかんです。

 とはいえ二日目で授業をサボるわけにはいかないからオールマイトに米俵みたいに抱えられて授業に登場だ。

 

 「楪少女はマスコミに襲わ……インタビューをされていてね。走り回って疲れてしまったようだ!!」

 「「「「「今襲われたって……?」」」」」

 

 事実襲われました。インタビューを建前にした言葉の追い剥ぎに!!

というかそろそろ下ろしてくれて良いんですよ…??

 そんなことを思っているといずにぃがいつもより大きな声で発言した。

 

 「お、オールマイト!取り敢えずゆず…先生を下ろしてあげませんか……?」

 「む!確かにそうだね!え~と………よし!では授業を始めよう!」

 ((((なんでそこに下ろした???))))

 

 オールマイトはボクの脇にを掴んで猫みたいに持ち上げると教卓の上に上半身をうつ伏せにして足だけががぷらぷらするように下ろした。

 すこし息苦しいけどそれ以上に疲れてるから妥協しよう。

 

 「私の担当はヒーロー基礎学!ヒーローの基礎を作るため様々な訓練を行う!範囲も最も広いぞ!そしてこれ!」

 「戦闘訓練!!」

 「おぉ!?」

 

 オールマイトが突然壁に向かってスイッチを押すと壁からアタッシュケースが入ったロッカーが出てきた。

 

 「入学前に送って貰った個性届けと要望に沿ったコスチュームだ!!着替えたらグラウンドβに集まるんだ!」

 「「「「うぉぉおおお!!!」」」」

 「うるさい……」

 

 あまりの声量に思わず耳をペタンと押さえるが全く効果が無かった。それに愚痴を漏らしても声量に書き消されてしまった。

 

 「って、オールマイトゆずちゃん先生置いてってんじゃん!?」

 「…ぇ?」

 

 歓声が収まってきた頃に芦戸さんの言葉を聞いて首を上げて見渡すと既にオールマイトの姿は無かった。それに絶望していると八百万さんが話しかけてきた。

 

 「楪先生は一体何があったのですか?物凄くお疲れの様ですけれど……」

 「……今朝…相澤先生から呼び出されて簀巻きにされてマスコミの生け贄にされて……逃げてた……」

 「ま、まさか午前中ずっとですか……?」

 「……」

 

 ボクが何も言わずにいると話を聞いてた全員が戦慄していた。

 

 「相澤先生ってかなり鬼畜よね」

 

 梅雨ちゃんって凄いストレートに物事言うよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボクは結局一人でグラウンドβに向かった。途中相澤先生と鉢合わせになり、ボクを生け贄にした代償として一発蹴りでもいれてやろうかと思ったけど

 

 「詫びだ。これで勘弁してくれ」

 「?…ッ!……次は無いですからね」

 

 なんと高級チョコレート専門店の"アデライル"が作っているチョコレートバーを数本渡してくれた。

 

追い剥ぎ(マスコミ)から逃げる時に疲労で壊れたり使い物にならなくなった筋肉を修復しながらだったから修復に使うエネルギーがすっからかんだったから有難い。

 それに甘いのは正義。

 

 アデライルは他にもカロリーや体力を多く使うような個性を持つ人の為にお手軽に高カロリーを摂取できる食品を販売していてプロヒーローにも大人気なのだ。

 

 相澤先生からのお詫び(チョコバー)をむしゃむしゃと食べながら少しご機嫌にスキップをしながらグラウンドβに着くとオールマイトが仁王立ちしていた。

 

 「あ、楪少女!置いていってすまなかった!」

 「良いですよ別に良い物(チョコバー)貰えたんで」

 「?そう……か??」

 

 そして残りのチョコバーを食べながら皆を待っていた。

 ボクだけ食べているのも何かあれだったから半分オールマイトにあげるととても美味しそうに食べていた。

 聞いてみたらオールマイトも甘党らしい。今度マカロンでも作ってお裾分けしよう。

 

 「む、皆来たみたいだぞ楪少女」

 「了解です。おぉ……皆似合ってますね」

 

 グラウンドに来た皆はそれぞれ自分で要望したコスチュームに身を包んでいた。

 ロボットみたいなコスチュームだったり洋風の鎧みたいなの、そして

 

 「う、麗日さん……?そのコスチューム……」

 「あ、うんもうちょっと細かく書けば良かった~ッピチピチスーツみたいになっちゃった//」

 

 「格好から入るのも大事だぜ少年少女達よ!自覚するんだ!今日から君たちはヒーローなんだと!!最高にカッコいいぜ有精卵共!!」

 

 オールマイトが誉めると皆からは嬉しそうな声が上がった。

 そしてオールマイトが今回の訓練について説明を始めた。カンペを見ながら。

 

 今回の訓練は戦闘訓練。生徒がそれぞれ二人一組に組分けされて、ヴィラン側、ヒーロー側に別れて訓練する。

 

 ヴィラン側は核兵器を持っていて、ビルに立て籠っているという設定で、核兵器を制限時間まで守る。もしくはヒーローの捕縛、撃退、戦闘不能にすることでヴィラン側の勝利となる。

 

 対してヒーロー側は核兵器を持ち、籠城しているヴィラン捕まえる為に急遽編成した、所謂有り合わせチームという設定でオールマイトが適当に分けた。

 ヴィランからの核兵器を奪還、ヴィランの捕縛、戦闘不能にすることでヒーロー側の勝利だ。

 

 そして別れた組は

A組:緑谷、麗日

 

B組:轟 障子

 

C組:八百万 峰田

 

D組:爆豪 飯田

 

E組:芦戸 青山

 

F組:砂藤 口田

 

G組:上鳴 耳郎

 

H組:常闇 蛙水

 

I組:尾白 葉隠

 

J組:瀬呂 切島

 

 になり、それぞれが自分のペアと話していると上鳴君が近寄ってきた。

 

 「なぁオールマイト先生、ゆずちゃん先生は参加しねぇの?」

 「「え?」」「はぁ?」

 「いやだってよ、一応先生だけどよ、言っても俺らと同い年だろ?それに昨日の腕相撲で力強いのはわかったけど、どんくらい強いかわかんねぇし」

 「いや上鳴、昨日ゆず先生教員免許持ってるって言ってただろ」

 

 上鳴君の発言が他の皆にも聞こえていたのか、いつの間にか集まっていた。

 確かに昨日は体力テストして簡単な自己紹介と腕相撲をして終わりだったから……アッ仮免許持ってること言ってなかった……

 

 「HAHAHA!確かに楪少女は()()()一緒だ!けれど楪少女は私を除いてここにいる誰よりも強いぞ?何せ楪少女は既にヒーロー仮免許を持っているからね!!」

 「……特例で、ですけどね……」

 

 一応耳を塞いでおこう……

 

 はぁぁぁぁあッ!?

 

 ボクの予想通り一泊置いてから絶叫が聞こえた。耳を塞いでて良かった本当に。

 

 「おい女狐てめぇ!!どういうこったッ!?何でてめぇが免許を持ってるんだ!?あ"ぁ"ッ!?」

 「ちょ!?だから特例でって言ったでしょ!?リカバリーガールの助手みたいなこともしなくちゃいけないからどうしても免許が必要だったの!」

 「爆豪少年!楪少女から一旦離れなさい!」

 「……ちッ!」

 

 ボクに掴みかかかってくるかっちゃんをオールマイトが制して何とか落ち着いてくれた。

 

 「私から説明したほうが良さそうだね。おほん、楪少女の個性は皆も知っているよう身体強化、治療の両方ができるとても貴重な個性だ。故にヴィラン側に狙われやすいから早急に力をつける必要があった」

 「まぁそれもそうかも知れねぇけど、それなら俺たちと一緒でも…」

 「確かにそうだ。しかしリカバリーガールも後継者を欲しがっていてね。それに"仮免許を持っている〟という事実だけでヴィランに狙われる危険性が減るんだ。楪少女は去年から私を含めた雄英の教師に指導を受けていたからそれなりの実力もある」

 「ま、マジかよ……」

 「それ実質先輩じゃね……?」

 「ちッ!!」

 

 オールマイトが説明するとかっちゃんは一応は納得してくれたようでボクから離れていった。皆はそれぞれボクのことについて言い合っている。

 

 「ふむ……楪少女!久しぶりに組み手でもしようか!」

 「……え?」

  

 

 

 

 

 

 



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戦闘訓練2

m(__)m


 「私と組み手でもしようか!」

 「__は?」

 

 とんでもないことを言い出すオールマイト。

 ボクは慌ててみんなの方を見るとまだざわざわと喋っているおかけでオールマイトの言ったことは聞こえていなかったみたいだ。

 

 「ち、ちょっとこっちに!」

 「ぬぉ?どうしたんだい?」

 

 ボクはオールマイトを引っ張って遠くへ連れていった。

 いや本当に何を考えているんたこの人わッ!!

 

 「あの、オールマイト?さっきみたいな爆弾発言はやめてくださいよ…」

 「何が……アッ」

 

 オールマイトはやっと自覚したのか、やっべやらかした…というような顔をした。いや本当にこの人天然だよね……

 

 「わかってくれたなら良いですけど……皆にも聞こえて無かったみたいですし」

 

 ほら、と皆がいる方を指差すとまだ話しているみたいでボクたちがいないのに気づいてる人はいなかった。

 

 「すまなかった……いや本当に…」

 「まぁ放課後とかなら頼むかもしれませんけど……それより」

 

 ボクは足の代わりに尻尾で体を浮かべてオールマイトの胸辺りまで体を持ち上げた。それでもオールマイトの耳までは届かずにオールマイトに耳を貸すように言って屈んで貰う。

 

 「制限時間、ギリギリですよね?授業が終わるまでは持たせて下さい。いざというときはボクも協力しますから」

 「……はは…君にはバレるか」

 

 オールマイトは雄英に出社?するまでの間にヒーロー活動をしてしまう事が多い。その結果、一日のマッスルフォームの制限時間が授業の間持つかどうか……と言うようになってしまっている。

 まぁボクがわかったのはリカバリーガールの指導を受けているときに愚痴みたいに言われたからでもあるけどね。

 でも去年の入試から今年まで体術とかを指導してくれたのは相澤先生とオールマイトだから何となく顔色もわかるようになった。

 

 「無理をするなとは言いませんけど………ボクがやったのは()()()()()()()()()()()()()()()()事ですけど、傷が広がればそれは意味が無くなるんで」

 

 早く戻りましょうと付け加えてボクとオールマイトは皆の所に戻った。そのあとは何とか皆をオールマイトと一緒に説得して何故か一番優秀だったチームとボクが一緒に訓練することで納得して貰えた。……なんで?

 

 

 

 

 

 

 「では第一戦目は~Aチームがヒーロー!Dチームがヴィランだ!他の者はモニタールームへ向かってくれ!」

 

 オールマイトに言われていずにぃ、麗日さん、かっちゃんと飯田くん以外はモニタールームへ向かった。

 そしてボクたちは今回の舞台のビルに着いた。

 

 「飯田少年!爆豪少年!ヴィランの思考をよく学ぶように!訓練と言えどもほぼ実践だ。怪我は楪少女が治してくれるから恐れずに思いっきりな!」

 「ハイ!」

 「いや、度が過ぎたら駄目だからね…?」

 「ハイ!」

 

 飯田くんは元気よく返事はしてくれた。かっちゃんは…何か不機嫌だ。流石にやらかしはしないと思うけど……

 多少違和感を感じつつもボクはオールマイトと共にモニタールームへと向かった。

 モニタールームについてオールマイトからインカムを渡された。どうやらモニタールームではビルの中でのチームの会話が聞こえるらしい。

 

 「それではAチームとDチームによる、屋内戦闘訓練スタート!」

 

 オールマイトが宣言をするといずにぃ達は窓から侵入して順調に進んでいたけれど、曲がり角でかっちゃんが奇襲をした。いずにぃが麗日さんを抱えて避けたけど、いずにぃのコスチュームの顔半分が爆発で吹き飛ばされたいた。モニタールームでは切島くんが「奇襲なんてずっけぇ!」と言ったり、芦戸さんが「緑君すごい!」と、各々が感想をのべていた。

 

 「奇襲も戦略、今彼らが行っているのは実践だ」

 「少し悪く言えば、勝てば良かろう。だね」

 

 モニターではいずにぃがかっちゃんの腕を掴んで背負い投げをした。インカムからは

 

 『僕は頑張れって感じのデクだ!!』

 『デク……びびりながらよぉ……そういうところが…ムカつくなぁッ!!』

 

 声色は震えているもののはっきりと言いきったいずにぃと苛立ちと怒りを露にしたかっちゃんの声が聞こえてきた。

 そのあとはいずにぃが麗日さんに何か指示を出したようで別行動になった。かっちゃんがいずにぃに追撃をしようとするとすぐに逃走して通路でかっちゃんをまいた。それに苛立ったかっちゃんは手のひらで小さな爆発を起こしていた。

 

 『おい出てこいやデクッ!!騙してたんだろ今までよォッ!楽しかったか糞がァッ!!!』

 『随分と派手な個性だったよなァ!?使えよ!!俺が上だからよォ!!』

 

 「うっわ、なんかすっげぇイラついてる!こっわ!」

 

 モニタールームでは上鳴くんがそんなことを言っていた。まぁ、かっちゃんの顔は怖いよね……

 それより、まずいな……いずにぃは個性を使わないんじゃなくて使えないんだから。昨日は一瞬だけワンフォーオールを制御することはできたけど、それは冷静に集中出来た状態で、だ。

 

 「ゆず先生、浮かない顔ね」

 「蛙水さん…うん。ちょっと心配になっちゃって」

 「梅雨ちゃんと呼んで」

 

 どうやら表情に出てしまっていたらしい。自分では気づいてなかったけど尻尾も垂れ下がってしまっていた。

 

 「きっと大丈夫よ。いざとなればオールマイト先生もいるわ。それに、ゆず先生もいるでしょう?」

 「うん、そう、だね」

 

 そうだ。そのために、助けるためにボクはヒーローになったんだ。

 

 『カシャン』

 「ッ!?」

 「けろっ!?ど、どうしたの?尻尾がボワって…」

 

 インカムから何かの音が響いた瞬間、ゾクリと蛇に舐められるような嫌な感覚が全身を襲った。モニターを見るとかっちゃんのコスチュームの籠手が赤く輝いてさらに嫌な予感がした。

 すぐにタブレットを取り出してかっちゃんのコスチュームの詳細を確認すると

 

 手榴弾をモデルにした籠手

 汗腺から分泌された爆発性の汗を籠手に貯めてピンを引いて爆発させる。

 

 その文章を読んだ瞬間、オールマイトが叫んだ。

 

 「よせッ!爆豪少年!!殺す気か!?」

 『当たんなきゃ死なねぇよッ!!』

 

 一瞬でモニターが爆炎に飲まれノイズが走る。それと同時にモニタールームにも物凄い爆音と衝撃が襲ってきた。

 

 「ッ!!あの馬鹿!!」

 

 ボクはそう叫んでタブレットを放り投げてモニタールームから全力でビルへ走った。ビルには大穴があいていてそこから黙々と黒煙が上がっていた。いずにぃの安全を確認するために飛び込もうとすると、インカムからオールマイトの声が聞こえてきた。

 

 『待て!楪少女!緑谷少年は無事だ!!楪少女はそこで待機していてくれ!!』

 「ッ!!___わかり、ましたッ!」

 

 歯を噛み締めて中で暴れる感情をどうにか押さえつけて返事をする。

 

 本当は今すぐ駆けつけたい。本当に、怪我はしてほしくないんだ。

 ふと、前にオールマイトから言われたことを思い出した。

 

 (楪少女、君は少々緑谷少年に対して過保護な所がある。誰かを守りたいというのはヒーローの本質を捉えてはいるが、同じヒーロー志望の緑谷少年から成長の機会を奪うことになるかもしれない。助けるなとは言わないよ。ただ、見守って応援してはくれないか?)

 

 ………いずにぃから、ボクが奪っちゃ駄目だ。

 

 「がんばれ、いずにぃ……」

 

 

 

 

 そして数分後、ビルから空へ衝撃波が飛んで

 

 『ヒーローチーム!Win!!!』

 

 いずにぃ達の勝利の宣言が聞こえた。すぐにいずにぃのところへ行くと呆けたかっちゃんはの前に倒れたいずにぃがいた。

 

 すぐに状態を診ると気絶はしているものの脈拍は正常。右腕の骨にひび、加えて血管の損傷による鬱血、左腕は打撲と火傷だった。

 

 ボクは左腕を修復して右腕は最低限の修復だけにして脱いだ袖を右腕に巻き付けて妖力を流して硬化させてギプスにした。

 ボクのこの長い袖は尻尾の毛を培養して作ってあって、妖力を流せば硬化する性質を持っている。さっきみたいにギプスにしたりするのが主な使い方だ。

 ギプスをしたあとは救護ロボットが運んできた担架に乗せて保健室に運んで貰った。本当は完全に修復してあげたいんだけど、

 

 「リカバリーガールに言われてるからなぁ…」

 

 リカバリーガールにはある程度の大怪我に関しては最低限の応急処置をして後はリカバリーガールに任せるように言われているんだよね……なんでも個性以外での処置方法を覚えるためだとか。

 

 「おろろろ……」

 「あ~……はい、この水で口ゆすいでね、あ、あと飴あるけど何がいい?」

 「み、みかんで……」

 

 あとは個性の使いすぎで吐いている麗日さんに水と飴をあげて終わりだった。飴はリカバリーガールに言われて持ち歩いているけど、確かにこういうときは役に立つね。

 

 

 そのあとは特にこれといった怪我は無くて順調に進んでいった。けど、

 

 「へ、へくちッ!!」

 「さ、さみぃ……」

 

 モニタールームは冷気で包まれていた。オールマイトを含めた全員がガタガタと震えていた。あす…梅雨ちゃんは個性が蛙と言うことがあって冷気に弱くて、冬眠しそうになっていた。ボクも尻尾を全身に巻き付けて毛玉みたいになっていたから少しでも暖めてあげようと梅雨ちゃんを抱き抱えている。

 こうなった原因は轟くんだ。轟くんの個性は半燃半冷、炎と氷を操る個性で、たった今ビルを凍らせて相手チームを動けなくして勝利した。

 

 「な、なぁゆずちゃんせんせぇ…き、狐火とかだせねぇ…?さむくてしかたねぇよ……」

 「え?う~ん…」

 

 上鳴くんがガタガタと震えながら聞いてきた。

 狐火かぁ……今まで試したこと無かったな……取り敢えず火を出すイメージで……………結構難しいな……え~と《こんなことも出来ないのか……こうやるのだよ?》っえ?

 

 「梅雨ちゃん?」

 「zzzz……スヤァ」

 「誰……?」

 「なんだできるじゃんか!サンキュー!」

 「????」

 

 上鳴くんが感謝してきたと思ったら近くに50cmくらいの火が浮かんでいた。

 急に声が聞こえて梅雨ちゃんかと思ったら違うし、勝手に火ついてるし……えぇ……?

 

 「こわ……」

 

 後で相澤先生に相談しておこう…なんだかんだ相談とかには乗ってくれるからね……

 

 その日の訓練での負傷者は葉隠さんと尾白くん、轟くんの氷で足の皮が軽い凍傷になっていた。重症はいずにぃはだけだった。それと、芦戸さんの酸に溶かされた青山くんのマントを復元して、全ての組の対戦が終わって……

 

 「では今回優秀だったB組の轟少年と障子少年は楪少女との訓練だ!さっきはヒーロー側だったから次はヴィランだ!ルールはさっきと同じ!先にビルに入っていてくれ!」

 「ヒーロー仮免許の業!見せて貰うぜゆずちゃん先生!」

 「あはは……はぁ……」

 

 切島くんがそう言ってくれるけどボクはやる気出ないなぁ……仮免許(特例)だからね…?

 そうこうしているうちにヒーロー側の準備が整ったようでビルの前で待機するように言われた。

 

 『それでは、楪少女 VS D組!スタート!!』

 

 さて……やるからには本気でやらなきゃね……え~と、核の初期位置は3階の部屋のどこか……か。まぁ取り敢えずはビルに入らなきゃね。__この音は…!!

 

 「あ、あっぶな……そっか、逆も叱りだもんね」

 

 ビルに入った瞬間ピキピキと音が聞こえて急いでビルから飛び出ると、先程と同様にビルが凍りついていく。どうやら轟くんがまたビルごと凍らせて無力化しようとしたみたいだ。タイミングが良かったのは障子くんの索敵かな?

 

 「ま、まぁ仕切り直して__あっつ!?」

 

 すぐに妖力を体に纏って障壁を展開熱を遮断する。すると今度はまた凍らされて……なんと言うか、いやらしい攻撃だね。

 でも障壁を張ってるから氷で動けなくなる、なんてことは無くて妖力で強化した筋力でゴリ押しして難なくビルに入れた。

 

 相変わらずビルは凍ったままだけど、特に何も起きずに2階から3階への階段がある曲がり角を曲がろうとした瞬間。氷が迫ってきた。それをジャンプして壁を蹴り、反対側の壁に硬化させた尻尾を刺して壁に張り付くと、階段の前では轟くんが一瞬驚いた顔をしていた。

 その一瞬を見逃さずに壁を蹴ると同時に刺した尻尾を使ってパチンコの要領で突撃し、右脇腹に回し蹴りをして、怯んだ所に足払いをして空中に浮かべてから鳩尾に一撃入れて気絶させる。もちろんそのあとは修復をかけながら捕縛テープを巻いておいた。

 因みに今のコンボは相澤先生から教わった。ボクにコンボをかけながらの実践で。

 

 轟くんにテープを巻いている間に耳に集中して物音を聞いていたけど、3階の奥の部屋から声が聞こえてきた。急に轟くんの返事が無くなったから驚いているみたいだね。

 さっきの余波で更に凍った階段で滑らないように注意しながら登っていって、物音のする部屋の前に来た。

 でも障子くんの個性ならバレてるだろうしなぁ……よし。こういう時こそだね。

 ボクはストレージからフラッシュバンを取り出してドアにフラッシュバンが入るくらいのストレージを展開してドアの一部を収納して穴を開ける。間髪いれずにピンを抜いたフラッシュバンを入れて破裂音がした瞬間にドアを蹴破って突入する。

 突入した先では障子くんがうずくまっていた。……正直ごめんなさい……フラッシュバンきついよね……ボクも相澤先生との訓練で同じことされたからよくわかる……けど、今は

 

 『ヒーロー!Win!!』

 

 核に触れて勝利条件を達成すると放送が流れた。

 

 「う、ぐぉぉ……」

 「えっと、ご、ごめんね?」

 「い、いや、大丈夫、だ……」

 

 本当にごめん障子くん……

 

 

 

 気絶させた轟くんはオールマイトに任せてボクはふらふらしている障子くんを支えながらモニタールームに戻った。

 

 「え~、では講評を始めるぞ!気づいた事がある人は手を上げてくれ!」

 「ハイ!」

 「八百万少女!」

 「まず楪先生の反射神経、判断力と俊敏性、障子さんの索敵能力を逆手に取った戦術、どれも素晴らしいものでした。それに加えて轟さんを気絶させた体術、あれは相手を確実に刈り取る為に洗練された動きで無駄が少なくよく洗練された体術で素晴らしかったです」

 「……また全て言われてしまったな!HA!HA!HA!八百万少女の言った通り楪少女の体術は相澤君によって鍛えられた物だ!訓練を初めてからまだ半年程しか経っていないがね。実力だけなら特例ではなく正規のヒーロー仮免許を持っていても可笑しくないんだ。その実力は全て楪少女の血反吐を吐くような努力結果だ。決して才能とかそんな生易しいものじゃない。まぁ、つまり何が言いたいかっていうと____

 

 努力を惜しむな有精卵共ッ!常にPlus Ultraだ!

 

 オールマイトがそういうと皆の息を飲み込む音が聞こえてきた。オールマイトの言葉には形容し難い重みと心を奮い立たせる何かがあった。

 ボクもオールマイトに今までの努力を認めて貰っていたことがわかってものすごく嬉しい。本当に血反吐を吐いたかいがあった……

 あの相澤先生にシゴれ続けて血を吐いてガチ泣きしてミッドナイト先生に慰められて……

 

 「ゴホッんん!もうこんな時間だ!私は一足先に緑谷少年の様子をみてくるから君たちは教室に戻るようにッ!」

 「え、はや!?」

 

 オールマイトは物凄いスピードで走り出してあっという間にいなくなってしまった。皆には次の授業に遅れないように早く着替えて教室に戻るように言ってからボクも保健室へと急いだ。

 

 「ですからワンフォーオールをあまり大声でわぁぁあ!?」

 「わッ!?」

 「あんたが騒いでどうするんだい……楪もお疲れさん、緑谷の手当ては上出来だったさね」

 

 保健室のドアを開けるとナチュラルフォームになったオールマイトがダボダボのコスチュームを着たままでいた。いや本当にビックリした……

 

 「す、すまない楪少女。しかしリカバリーガール、私のこの姿と怪我は雄英の教師や一部のプロヒーローには周知の事実、ですが私の個性ワンフォーオールは貴女と校長、そして親しき友人、緑谷兄妹(きょうだい)のみの秘密なのです」

 「あぁはいはい、No.1ヒーロー、平和の象徴様々……トップで胡座掻いて居たいって訳じゃ無いだろうがさ………そんなに必要かね、平和の象徴ってのは」

 「居なくなれば超人社会は悪に拐かされますッ。これは、この力を持った者の責任なのです」

 「はぁ……ならもっと導く立場ってのをちゃんと学びなさいな!」

 「ハイ!」

 

 オールマイトは最後に噛み締めるように返事をして更衣室に入っていった。するとさっきまでパソコンと向き合っていたリカバリーガールがくるりと椅子ごと回転してボクと向き合った。

 

 「さて、緑谷の怪我の具合はわかっていると思うけど見た目に対してそんなに重症じゃないさね。あんたの処置も適切だったよ。ただ、体力がすっからかんだから私じゃ完全に治癒してやれないから点滴が全部入ったら治して良いよ。___それにしても()()便利だねぇ」

 

 リカバリーガールがいずにぃに巻いていたの袖を見ながら言った。

 袖は妖力が抜けて既に普通の袖に戻っていた。

 

 「固めるのは楪の個性が必要だが解くのは紐を引っ張れば良いだけ……サポート会社も凄いのを作るものだよ」

 

 そう言って渡してきた袖を腕につけ直しながら確かに、と相づちを打つ。改めて考えると不思議だよね。肩に掛ける紐を引っ張れば妖力が抜けるってどうなってるんだろ?

 そんな事を考えているとリカバリーガールは椅子から飛び降りて鞄を持った。

 

 「じゃぁ私は病院に行ってくるからね。多分今日は帰ってこれないと思うから頼んだよ」

 「………え?ボクがですか!?」

 

 あんた以外に誰が居るんだと真顔でリカバリーガールが言った。

 

 「あんたは私の後継者だよ。(リカバリーガール)の代わりに保健室を運営する。これくらいできるだろう?そのために全部教えたんだ」

 

 頼んだよと言い残してリカバリーガールは保健室から出ていって保健室には出久と楪が残され、呆気に取られている楪は数分経ってからどうしようかと頭を抱えた。そして

 

 「……いずにぃの様子を見よう…」

 

 楪は考えるのをやめた。

 

 

 



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保健室

 リカバリーガールから保健室を任されてから最初こそはどうしようかと頭を悩ませたが暫くいずにぃを見つめて落ち着ちついた。

 リカバリーガールの机を探ってみるとやっておくことのリストが置いてあった。

 

 「え~と、各用品の補充(包帯や消毒液等)……怪我の手当て…個性を使って良いんだね」

 

 以外にも怪我をした生徒には個性を使って全快させて良いみたいだ。まぁ個性は成長するものだからどんどん使えって前にも言われたから、個性伸ばせってことかな?

 メモを見ながら作業をしていって用品の補充はすぐに終わった。

 ……つまりやることが本当にない!

 

 「ん~…暇だねぇ…」

 

 椅子をぐるぐると回転させてそう呟いても聞こえるのはいずにぃの心臓の音と寝息、点滴の音……わりといっぱい聞こえるね。

 ドクン、ドクン……意識を集中させれば更によく聞こえる心臓の音。ボクが一番安心できて、大好きな音。暫く聞いているとだんだん眠気がやってきて

 

 『勤務中に居眠りとはぁ、感心しないねぇ?』

 「ッ!?」

 

 また、あの声だ。戦闘訓練中に聞いた、あの声。

 きょろきょろと周りを見ても違和感を感じる場所はない。

 

 『やだなぁ随分と警戒するじゃない?そんなに警戒しなくても、何もしないよぉ』

 

 すっごい胡散臭い話し方するから信用しないもんね

 

 『そ、そんなにかなぁ?本当に何もしないよ?あ、ほら狐火出してあげたじゃないかぁ!』

 「…まぁ、それはそうだけど、それだけだよね?そのあとは何も無かったし…そもそもあんたは誰?」

 

 信用してほしいなら名乗ってよ。て言うか姿を見せて!

 

 『うッ、あ~……それもそうなんだけど……まぁ、いいか、よし!じゃぁ!ご対面~ 』

 「は?なに言っ…」

 

 聞いた瞬間に力が身体から抜けていって、椅子から落ちると思った瞬間に保健室ではないどこかにいた。

 

 「ここ…は…?」

 

 辺りを見回せば泉に囲まれている孤島のようになっていて泉の先は藍色に淀んでいて見えない。

 逆に島の中心には大きな岩の上に大きな枝垂桜が根を張っている。……綺麗だけど、現実離れしているね。

 

 『やぁやぁ!誉めてくれるなんて嬉しいねぇ!頑張って作ったんだよぉ!』

 「誰!?」

 

 振り替えるとそこにいたのは()()だった。

 でもよくよく見てみれは決定的な違いがあった。それは……()()()()()

 

 「……ふんッ!!」

 『なぁんでぇッ!?』

 

 反射的にたゆんたゆんしている脂肪の塊を平手打ちすればぷよよぉ~ん…と揺れた。……なんかもっと腹が立ってきた。もう一発…

 

 『いやまってまってぇ!?痛いんだよぉッ!?』

 「おおきいから悪い」

 『理不尽だよぉッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふぅ……」

 

 とりあえず追加で15発くらい叩くと落ち着いた。目の前のボクは胸を押さえてシクシクと泣いている。

 

 「それでさ、あんたは誰?ここは何処なの?」

 『……こ、ここは私の魂の領域だよぉ…それで私は君たちの言う神様だよぉ……グスッ』

 「神様?……もしかして、お稲荷様?」

 

 泣いているお稲荷様を見ればボクの同じ狐耳があった。だけど、尻尾は無いし、耳と髪の色は藍色だった。

 実は前にいずにぃと一緒に九尾の狐について調べたときに狐の神様についても調べたことがある。

 ()()()0()()

 ()()()()()()

 もしかして、

 

 「もしかして、空狐(そらぎ)様、ですか…?」

 『グスッ…うん……』

 

 いずにぃ……ボク、神様の乳を叩いて泣かせました……

 それからボクは空狐様をよしよししたり抱き締めたりして必死で慰めた。

 

 うん。だって空狐様は天狐様が3000年生きてなれるとされている狐の神様だもん。

 ボクは個性の影響か、かなり神様(狐関連の)が好きだ。でも一番好きなのは伏見稲荷大社のお稲荷様だ。正確に言うとお稲荷様は神様じゃなくて神様の眷属の狐だけど、そこは置いておいて、ボクの憧れの存在を泣かせたのは凄い罪悪感が……

 

 『う、うん。わ、わかったから!も、もう大丈夫だから離してぇ!そういうところはそっくりなんだから…

 「あ、はい」

 

 空狐様は顔を真っ赤にして離れて、顔をぱたぱたと扇いだ。

 

 『うん、よしでは改めてぇ!私は空狐!空狐の幸福(こふく)だ!』

 「え、えっと緑谷楪です」

 『まぁ知ってるけどねぇ!』

 

 ……なんだろう、全然神様って感じがしない…

 

 『失礼だなぁ……ッて、まぁいっか、あ~それでなんだったかなぁ…あ、そうだった!んっとね、ここは私の魂の拠り所であって、私の魂と君の魂の交わっている場所だよぉ』

 「うん……うん?』

 

 むふ~んと得意気に言う幸福様。いや話が突然すぎて何がなんだか……

 

 『まぁ今日話しかけたのはやっと準備が整ったからだよぉ、また近いうちに呼ぶからね!またねぇ~』

 「え、いやちょっとそれはどういう……」

 

 言いきる前に目の前にいる幸福様が薄れていった。

 ……やっぱり幸福様は神様だ…話が通じないよ……

 

 

 

 「Hey楪ァ!!good morning!!」

 「ッ~~~!?!?」

 

 突然の大声に思わず耳を押さえて体をのけ反らせる。その拍子にいつの間にか抱えられていたボクの身体はバランスを崩して床に叩きつけられた。

 

 「い、い"だい"…」

 「あ、すまん!いやぁ~しかしなんで床とKISSしてたんだ?」

 「あ~……ちょっと神様に呼ばれて……?」

 

 ボクがどういったらわからずにそう答えるとマイク先生は一瞬で真顔になって頭を撫でてきた。

 

 「いや、まじでごめん。ちょっとリカバリーガール呼び戻すからベッドに座ってろ」

 「え……あ!違うんですって!頭がおかしくなったとかじゃなくて!」

 

 

【少女弁解中】

 

 「……本当かぁ?うさんくせぇ…まぁ、お前がそういう冗談言うやつじゃないのはわかってるけどyo…」

 「ボクだってよくわからないんですよ…いきなりすぎて」

 

 マイク先生に今日急に火が出たこと、幸福様について話すと物凄く疑われた。説明中も残念なものを見る様な目をしてた。

 

 「ま、おれにゃなぁんもできそうに無いなぁ……ま、相談には乗るぜ」

 「わ、なんですかこれ」

 

 マイク先生は何かが沢山入った紙袋を押し付けてきた。どうやら校長先生からの贈り物らしい。

 

 紙袋を渡してAddu!と言いながらマイク先生は保健室を去っていった。…あ、これアデライル*1のカロリーバーだ。

 中には校長先生からの手紙が入っていて、どうやらボクの個性の補助として送ってくれたらしい。

 しかも種類がかなり豊富なのを選んでくれてて中には一本10000万円近くするものもあった。……今度校長先生にチーズケーキでも作ってお返ししとかないとね。

 

 カロリーバーを食べながら暇をもて余していると、保健室に初めてのお客さんが来た。

 保健室利用者表に名前を書いてもらうと三年のヒーロー科で先輩だった。

 

 「いや~!蝶々が足元にいてね!避けようとしたら頭をね!」

 「み、ミリオ!しょ、初対面の人にそんな態度は……えっと、ゆずりは…さんですか?ミリオが頭と足を…」

 「はい、ボクが楪ですよ。それとボクは年下ですから大丈夫です」

 

 適当に返しながら表に目を通すと、3年通形ミリオ、付き添いが3年天喰環、と書いてあった。

 USJでの災害救助訓練中に蝶を避けて額に切傷と右足の捻挫……と。

 リカバリーガールのパソコンに利用者の詳細を打ち込んでから額の切傷を消毒液とガーゼで綺麗にしてから修復する。

 右足を触診すると「痛いです!!」と笑顔を崩さずに言い放った。完全に油断してたから驚いて尻尾がブワッっとなっていた。

 

 「み、ミリオ!動物系の個性の人の前で大きな音は」

 「あごめんなさい!

 「だ、大丈夫です。では足の治療をするんで動かさないでくださいね…………と、どうですか?」

 

 ミリオ先輩は足踏みをすると治った!とサムズアップを向けてきた。それにサムズアップで返すとまた怪我したらお願いします!と言って出ていった。

 なんか、すごい元気な人だったなぁ、ずっと笑顔だったし、もしかしてミリオ先輩もオールマイトのファンかな?なんとなく雰囲気が似てたし。

 

 まぁ結局その日の利用者はミリオ先輩だけで、様子を見に来てくれたミッドナイト先生とか、ハウンドドック先生と話しているだけで、その日は下校時間になった。

 いずにぃの点滴はもうちょっとで無くなるというところでiPadに相澤先生から代わりにホームルームをしろとメールが来ていた。

 一応いずにぃが目を覚ましたとき用のメモを残しておいて教室に向かうと麗日さんや梅雨ちゃんにいずにぃの事を聞かれたりして、明日の事を伝えてホームルームは終わった。どうやら放課後は皆で今日の反省会をするみたいで帰らずに残っていた。

 保健室に戻ろうとすると、芦戸さんに引き留められた。

 

 「ゆずちゃん先生!」

 「ん?」

 「ねぇねぇ!轟君のあれ!どうやって防いだの!?」

 

 あれ……あれって言うと、凍結攻撃かな?

 

 「えっとね、こう、妖力を体を全体に纏ってバリアを張って……触ってみて?」

 

 そういうと芦戸さんはボクの肩に触れようとするけど、数センチの所で手が止まった。

 

 「えっ!?なにこれ!なんかある!」

 

 更に触ろうとして両手でペタペタしたり、軽く小突いたりしてきたこど、ボクには何も感じない。暫くそうしているといつの間にか囲まれてて動こうにも動けなくなっていた。すると尾白君が手を上げて質問をしてきた。

 

 「ところでゆず先生のあの格闘術って、前々から何か習ってたりしたんですか?」

 「いや?ランニングとか筋トレはしてたけど格闘技とかはやってないよ……全部、相澤先生に仕込まれた…」

 「そうですか…その、どうでした?」

 「……まぁ、ご想像にお任せするよ」

 

 そう答えると聞いていた皆は察してくれたようで哀れみの目を向けられた。

 

 「やっぱり相澤先生って鬼畜なのね」

 

 

 

 

 




空狐の読み方とか容姿に疑問が出るかも知れませんが私の知っている伝承だとこうなのでご了承ください。


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家話

幸福(こふく)様の名前は狐(こ)福(ふく)をかけたみたいにしたかったんです…つまんないですよね……


 その日の夜、夕飯を作っているといずにぃから話をされた。

 どうやらワンフォーオールの事をかっちゃんに話したらしい。

 オールマイトに貰ったことはぼかしたみたいだけど、オールマイトからはお叱りを受けたらしい。

 

 「当たり前でしょ……まぁあんなに凹んだかっちゃんは初めて見たけどね。これでやっといずにぃのこともライバル視してくれたんじゃない?」

 「そ、そんな…僕なんて、まだまだかっちゃんの足元にも…」

 

 その言葉にボクはムッとした。いずにぃの自己肯定感覚が低いのは前からだけど、今回はかっちゃんが敗北を認めたんだから。

 

 「いずにぃはもっと自分を認めてあげなよ…言い方は悪いけどさ、今まで場外だったいずにぃがかっちゃんとやっと同じ土俵に立ってるんだから、それに、今の自分を認めないのはワンフォーオールを認めてないのと同じだよ?」

 

 今のワンフォーオールはいずにぃの個性なんだからと付け足して言うと、いずにぃは持っていたお皿を落とした。それは尻尾でキャッチできたからいいけど、落とした本人は口を開けてポカーンとしていた。

 

 「……いずにぃ?」 

 「……ぁご、ごめん!うん…そうだよね…!」

 「……納得してくれたなら良いけどさ?早くご飯食べよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 それからお風呂に入り、いずにぃに手伝って貰いながら尻尾を乾かしている時に幸福様の事を思いだしていずにぃに言ってみると

 

 「大丈夫?のぼせてないよね…?」

 「何でマイク先生と同じ反応するの……?」

 

 心配そうに首やおでこを触ってきた。先にお風呂に入っていたいずにぃの手はすこし冷えてて気持ちいい。まぁそんなことは置いておいて、

 

 「ボク真面目に言ってるんだけど……」

 「ご、ごめん。でも内容もそうだし、ゆずって普段そう言う冗談とか言わないからさ…いたッ!?」

 「ぼごはばびべびふぃべひぇるほ!!(ボクは真面目に言ってるの!)

 

 再びおでこを触ろうとしてきたからおもいっきり噛むとすこし血の味がした。さすがに怪我をさせたい訳じゃないから噛んだまま舐めて傷口を修復した。

 

 「ゥ"ウ"ウ"ウ"ウ"ゥ"…」

 「ご、ごめんって…」

 

 一分程噛みついた後、ソファに座っているいずにぃの膝にお腹を乗せるようにしての寝転がってドライヤーでボサボサになった尻尾をいずにぃの前に出すと苦笑しながらブラシをかけてくれた。

 

 「……今までさ、いずにぃと一緒にボクの個性について調べた時って何回かあったよね?」

 「え?…あぁうん。そうだね」

 「今考えたらその時に狐火とか、妖術とかさ、色々のってる文献あったのに、何で今までそれを再現とかしてみよう!ってならなかったんだろうって、いずにぃのノートにも、そう言うの書いてないでしょ?」

 「ッ!!た、確かに!何でだろう……も、もしかして」

 

 ピタリとブラシをかける手が止まってチラリといずにぃを見ると、驚いた顔でボクを見ていた。

 

 「「幸福様がその時から干渉してたんじゃないか」」

 

 同時言って、暫く間が空いた。

 

 「……」

 「あはッ、まぁだからどうすれば良いとかわからないんだけどね」

 「いやそうなんだけどさ……だとしたらさ、何のためにそんなことしてたんだろ?だって、今日はあっちから干渉してきたんだから何かしら目的があるはずだから、幸福様が空狐だとしてもゆずに干渉し続ける意味は同じ狐関係「あ~もう知らない知らない!」

 「考えたって仕方ないんだって…あと、貧乏揺すりしないでよ…」

 

 いずにぃは考察モードになると指を動かしたり貧乏揺すりをする癖がある。ボクが膝に乗ってたりしても問答無用でするから、今みたいな状況だと膝がお腹を刺激してきて痛いんだよね。それに…()()()()()ちょっと危ないし……ちょっと、お腹の奥熱くなってきちゃったな……

 

 「……先、寝てるよ~」

 「う、うん。お休み」

 

 一旦部屋に戻って薬飲まないと……はぁ……早く終わらないかな…発情期…

 ため息をつきながら机から瓶を取り出し、カプセル型の錠剤を3粒取り出して噛み砕いてから水で流し込む。暫くまっているとお腹の熱がだんだんと消えていった。

 

 ボクの個性の【九尾の狐】は動物系の個性で、つまり動物だ。結局は九尾のと付くけど、結局狐で動物だから……発情期がある。

 これは動物系個性の多くの人が悩む事で、過去一時期は発情期の人達の性犯罪、性被害が多かったこともあった程だ。

 だから動物系個性の人の殆どは薬を携帯している。それは錠剤だったり、粉末だったり注射だったり……まぁとても多くの種類がある。

 

 最初は中学生になって、生理が始まったときだった。

 今日みたいに膝に寝転がってて、いずにぃがヒーローノートを書いている時だった。そのころはいずにぃの貧乏揺すりは全く気にしてなかったから特に何も言わないで本とかを読んだり、一緒にノートを書いてたりしてた。

 一瞬だけ、態勢を変えようとした時に膝が丁度子宮がある場所を突き上げて、それがスイッチだった。

 ズンッて響いてどんどん熱くなっていって、体が疼いてそれが凄く怖くて泣いていたのをいずにぃが気づいてすぐに引子さんを呼んでくれて病院に行った。

 その日は粘液を採取して、ホルモン注射をして1日入院。翌日に発情期について説明された。

 発情期には3種類があって、人間の様なトリガー式の発情、動物と同じ季節による発情期、そして、そのどちらも持ち合わせている混合型の発情。

 3つ目が一番厄介で、動物と人間が合わさった個性を持つ人だけがなるもので、動物系個性全員がなるわけではなくて、だいたい1/4位の確率らしい。

 ボクがその混合型だ。

 発情期の季節中はとても発情しやすくて、妊娠しやすい。季節が違っても発情してしまったら、発情期と同じ状態になる。

 

 

 「……はぁ…」

 

 ふと時計を見れば10時。薬を飲んだのが9時20分だっから40分経ったことになる。お腹の熱もすっかりなくなって、逆に寒いくらいだ。部屋を出るといずにぃも部屋に戻ったみたいでリビングは真っ暗だった。

 そしていずにぃの部屋に入るといずにぃはもう寝てた。

 暫くいずにぃの寝顔を見つめてからベッドに潜り込んで定位置(胸と腹辺り)で体を丸めると暫くしていずにぃが尻尾ごと抱き締める。

 いずにぃに包まれるようにして、ボクは眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『~~♪』

 

 青い耳をピコピコと動かしながら桜の木が生えている岩に座る幸福がいた。視線の先には出久の共に寝る楪の姿が映像として写し出されていた。

 

 『いやぁ~相変わらず仲が良いねぇ~♪』

 

 パシュンと映像が途切れる。すると幸福は岩の上から飛び降りて空を見上げる。とても、寂しそうに。

 

 『……なぁんであの子を置いていったかなぁ…次元、なお…』

 

 名前を呼びながら空の星を掴むように腕を伸ばすが、その手は何も掴まずに空を切る。

 

 『…安心してよ。絶対に、絶対に孫が生まれるまではそっちに行かせないからね……手を出してくれるなよマビト』

 

 

 

 

 

 




捕捉説明
 発情を押さえる薬は性欲をほぼ完全に押さえる効果と鎮静作用があります。なので楪は性について知識はありますが疎いところがあるみたいですね。
 恋愛は肉欲と性欲があってこそなので……ね?


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委員長

 翌朝、前日の様に相澤先生からのモーニングコールで目が覚めた。

 

 「んぁい…」

 『昨日と同じだ。はやく来いよ』

 

 それだけ言われてプツリと電話は切れた。  

 スマホをベッドのに放り出して上を見上げるとまだスヤスヤと寝ているいずにぃの顔があった。

 頬っぺたを軽くつついてから支度をしていると、テラスからはうっすらと明るくなってきていることがわかった。

 テラスに出てみると、気持ちの良い空気だ。

 深呼吸をすると体の中がすっきりとした。

 

 「久しぶりに走ろうかな」

 

 そう思って今度はスポーツウェアに着替えた。

 流石に今日はそのまま学校に行くからビキニタイプじゃなくて半袖タイプのに。

 着替えを収納してから家を出て、走り始める。

 徐々にスピードをあげながら走っていくと昨日行ったコンビニが目についた。

 

 「そういえば、相澤先生昨日と同じだって言ってけど……ゼリー買って行った方が良いのかな………一応買ってこうっと」

 

 コンビニでゼリーを買うとまた一番くじが引けるみたいだった。

 

 「そのゼリーを3つ以上買うと一回引けるんですよ。昨日お客さんが引いていった後は結構人が来たんですけど、もう一等が無くて絶望してる人の顔が傑作でしたね」

 

 笑いながら言う店員は本当に本当に面白そうだった。

 

 「まぁオールマイトは人気ですからまだ良いのは残ってますし……はい、どうぞ!」

 「あはは……じゃぁこれで」

 

 店員さんはウキウキした様にくじが入った箱を出してきた。

 多分また良いのを引いてみろって事なんだけど……流石に二日連続は……うん。3等ならまぁ…普通かな。

 

 「どれどれ……お、タオルですか~、オールマイト、エンデヴァー、ホークスの柄がありますけどどれにします?」

 「それじゃぁ…無難にオールマイトで」

 

 多分いずにぃも欲しいだろうからね。あ、そういえばフィギュアあげるの忘れてた。

 今日こそはあげようと考えていると店員さんはタオルを持って来てくれた。

 

 「そういえば、貴女ってあれでしょう?リカバリーガールの後継者の!」

 「ま、まぁそうですね」

 「やっぱり~その尻尾と耳目立ちますからね~、ほら、昨日のトレンドなんですけど……あ、まだ入ってますね」

 

 店員さんは取り出したスマホの画面を見せてきた。

 今仕事中でしょ……良いのかな?___うわ、

 画面にはマスゴミ・ストーカー・狐と書いてあった。

 それをタップするとマスコミに追いかけられるボクの写真や動画が大量に出てきた。

 他にはオールマイトに連れ去られる動画が一番♥️を獲得していて、26万なっていた。

 

 「うわぁ…」

 「いやぁ大変でしたね~、あの数に追いかけられるの怖くないですか?」

 「すんごい怖かったです」

 「ですよねぇ!?」

 

 本当に最近のマスゴミは…と店員さんはぶつぶつと言い始めた。まるで自分も体験したことがあるみたいに。

 あ、そう言えば時間……すこしペースを上げれば間に合うかな。

 時計を見てみればかなりの時間がたっていた。

 軽く言葉を交わしてからコンビニを出ようとすると呼び止められた。

 

 「あの、ツーショットお願いして良いです?」

 「……ボクとですか?」

 「ハイ!将来大物になりそうな気がするので!」

 

 まぁ写真ぐらいなら時間もかからないし、良いかな。

 ボクが了承するとすぐにレジから出てきて写真を撮った。

 ……いや近くない?

 

 「ではまたの来店をお待ちしております~♪」

 

 やけに上機嫌な店員さんを背に雄英に向かった。

 ……間に合うよね?

 

 

 

 

 

 妖力を使って走れば余裕で間に合った。

 本来は未成年の私有地以外での個性使用は禁じられているがそれは個性社会の中では"バレなければOK"という認識になっている。

 

 保健室に向かうと相澤先生が何故かリカバリーガールの机に座ってパソコンを弄っていた。

 

 「おはようございます相澤先生。これどうぞ、あと何でリカバリーガールのパソコンを?」

 「助かる……昨日の戦闘訓練の録画だよ。これでも担任だから確認しなきゃならん。それにしても、お前の兄と幼なじみには問題児しかいねぇのか?緑谷はまた腕をぶっ壊すわ、爆豪は癇癪を起こすわ……ガキか」

 

 相澤先生はうんざりした顔でVTRを見ながら言った。

 

 「今回お前が駆けつけようとした判断は正しいよ。けどなこれが逆の立場でもお前は「行きますよ」」

 「ボクがなりたいのは"倒すヒーロー"じゃ無いです。"助けるヒーロー"になりたいんですから」

 「……そうだったな、だが」

 「わッ!?」

 

 相澤先生はボクの頭をクシャクシャに撫でながら立ち上がった。

 そのせいでオウムみたいなアホ毛がたったのがわかった。

 

 「お前がブラコンなのは知ってるが、緑谷が怪我するごとに冷静さは欠くなよ」

 「……わかってますよ」

 

 正直、いずにぃには怪我をして欲しくない。けど、相澤先生が言いたい事は怪我をしないヒーローなんていないってことだ。

 

 「にしても…お前、熱でもあんのか?」

 「へ?」

 

 熱?多分無いと思うけどな……

 相澤先生はおでこやら首に手を当てて確かめてきた。

 

 「……そういえば獣人の平均体温は高いんだったか?」

 「そうですね、因みにボクの平均体温は38°から39°ですよ」

 

 相澤先生が勘違いした理由がわかった。

 ボクみたいな動物の部分が強く出ている人は他の人に比べて体温が高い。それと相まって、さっきまで走っていたボクの体温は40°近くあるから相澤先生からしたら高熱な訳だ。

 

 「今日はランニングしながら来たのでそのせいで体温が上がってるんだと思います」

 

 簡単に説明すると相澤先生は納得したみたいだった。

 それから暫く考えて保健室の角を親指で指しながらシャワーを浴びてこいと言った。

 保健室にシャワーなんてあるの!?

 

 「逆に無いと思ったか?雄英たぞ。そこらのマンションよりは良い設備がある。乾かすのは手伝ってやるからさっさと行ってこい」

 

 そういわれてつれていかれたのは保健室の角で、相澤先生が壁を押すと仕掛け扉みたいに回転して通路が出てきた。

 何で仕掛け扉なの?普通の扉で良いと思うんだけど

 

 「保健室のシャワールームは主に女子生徒専用だ。校内にも別にシャールームはあるが保健室のはその、」

 

 あ~と言い淀んでいる相澤先生をみて察した。

 つまり、月のモノで汚れてしまったりした時用ってことかな。

 相澤先生にお礼を言ってシャワールームに入るとシャンプーやリンス、更には化粧水等も置いてあった。

 これ、使って良いのかな?

 

 『そこに置いてあるのは学校の備品だから好きに使えよ』

 

 良いんだ…これ、結構良いやつばっかりだけど…あ、これ睡さんのシャンプーと同じ匂いがするってことは、睡さんが揃えてるのかな?

 

 そんなことを考えながらシャンプーやリンスはありがたく使わせて貰った。

 数十分かけて尻尾まで洗い終わって保健室に戻るとまたVTRを見ている相澤先生がいた。

 

 「相澤先生、上がりました」

 「ん、そう、か…?」

 「どうかしました?」

 「……いや、何でもない…」

 ボクを見るとピタッと動きが止まった。視線を追ってみると視線はボクの尻尾に向かっていた。

 あぁ、多分萎んでる尻尾をみて驚いたのかな。相澤先生モフモフしてるの好きだし。

 すこしションボリした雰囲気を纏った相澤先生に手伝って貰いながらドライヤーとブラシで整えていくと、朝より艶々でモフモフになった尻尾に戻った。

 リンスを変えただけでここまで変わるなんて…馬鹿にできないよね、ホント。

 

 「ん、もう時間か……行くぞ楪……楪?」

 

 相澤先生についていこうする足を止めて、相澤先生を睨む。

 昨日のやったことは忘れてない。

 

 「……またボクを生け贄にするんでしょ!」

 「しねぇよ…悪かったって」

 

 渋々ついていくと相澤先生がボソボソと喋りだした。

 相澤先生も流石にあそこまでマスコミが追いかけるとは思ってなくて、SNSでの反響もここまで大きくなるのは予想外だったらしい。……まぁ、そういうことなら…悪意2割偶然8割なら…

 

 そのままついていって校門へ行くと校門前には既にマスコミが集まっていて登校してきた生徒を捕まえていた。

 マスコミの中には昨日ボクを追いかけ回した人たちもいた。

 よく筋肉痛とかにならないね…?

 

 「相変わらずご苦労なことだな……ほら、行くぞ」

 「……あぃ…」

 

 あの中に行くのやだぁ……

 

 

 「あの、オールマイトの、って小汚…!?君!リカバリーガールの!」

 「うへぇ…」

 

 相澤先生に話しかけた女性がボクの存在に気づいてボクに近寄って来ようとすると相澤先生が止めてくれた。

 

 「彼は今日は非番ですからお引き取りを。それと彼女にはあまり強引な事はしないでください。昨日の取材方法は強引過ぎます。これ以上は私たちヒーローも警察も出るとこに出ますよ。それじゃ」

 「あ、ちょッちょっと!」

 

 相澤先生に腕を引っ張られてすぐに後ろ手警告音と重い音が鳴った。振り返って見るとさっきまで開いていた校門が鉄の扉で閉じられていた。

 

 「対侵入者用防壁だ。通行許可証か生徒手帳を持ってなきゃ防壁が作動して入れなくなる。オールマイトさんが殴っても耐える代物だ」

 「オールマイトのパンチを耐えるんですか!?」

 

 パンチ一つで地形を変えたり、天候を変えたりする威力を……それってどんな素材を使ったらそんな耐久力に……

 

 「まぁ本人曰くデトロイトならイケるらしいがな。それにしても、よくあんなのに囲まれてヒーロー活動できるな…」

 「それは同感です」

 

 ボクは絶対に無理だよ。あんな迫ってくる人たちを捌くのなんて…

 

 

 

 そのまま一緒に教室へ行くと皆は既に着席していた。

 

 「おはよう。そして昨日の戦闘訓練お疲れ、VTRと成績を見させて貰った。爆豪お前は力はあるんだからガキみたいなことすんな」

 「…わかってる」

 

 かっちゃんは唇を噛んで自分に言い聞かせるようにそう言った。

 どうやら立ち直ってはいるみたいだ。

 

 「それと緑谷、また腕をぶっ壊して一件落着か。個性の制御ができないのは仕方ないでは通させねぇ」

 「クゥッ……」

 

 いずにぃは相澤先生に言われると悔しそうに俯いた。

 相澤先生の言っていることは正しい正論だ。

 

 「俺は同じことを何度も言うのが嫌いだ。腕を壊さなきゃやれることは多い。焦れよ緑谷」

 「……!ハイッ!」

 

 今日からまたワンフォーオールの%制御練習の再開だね。

 相澤先生はかっちゃんといずにぃ以外には特に何も言わずに成績表をおろした。

 

 「ホームルームの本題だ。急で悪いが今から君たちには学級委員長を決めて貰う」

 

 そして一呼吸が空いた後にクラスの全員が挙手した。

 普通の学校なら学級委員長なんて面倒なだけだけど、雄英では違う。雄英のヒーロー科なら尚更だ。

 トップヒーローに欠かせない集団を導くいう能力を鍛えられるし、何より()()()()()()()()()()()という箔が付く。

 

 「静粛にしたまえ!」

 

 突然飯田君が演説を始めた。飯田君が言いたいことを簡単に纏めると、責任重大な役目はやりたい人がやれるわけではないから平等に投票でやろうと言うことだった。

 やりたい人全員が自分にいれると思うけどな……

 

 「時間内に決まれば俺はどうでも良いよ。俺は寝るから何かあったら楪に言え」

 

 相澤先生はそれだけ言うと教卓のしたに寝袋を来て寝転がって寝始めた。

 とりあえず飯田君が言った通り投票にすることになって、八百万さんが小さい紙を人数分創造してくれて、それをボクが回収して黒板にかくことになった。

 いざ書こうとすると切島君と上鳴君が話しかけてきた

 

 「あ、ゆずちゃん代わりに書こうか?届かないっしょ」

 「確かに!ゆずちゃん!俺も手伝うぜ!」

 「上鳴君!切島君!呼び方は自由とは言われたが先生と呼ばないか!失礼だぞ!」

 

 飯田君が言う二人はブーイングをした。

 まぁボクとしては良いんだけどね。

 

 「あはは…まぁ確かに立場上は先生だけど、結局は同い年だし、皆ともっと仲良くなりたいから良いよ、別に」

 「せ、先生が言うなら…」

 

 ボクがそういうと飯田君は席に座った。

 そしてボクは尻尾の先を硬化させて体を持ち上げ、投票用紙を見ながら黒板に名前を書き始める。

 

 (何か身長伸びた!?)

 

 なんだろう、急に視線が……まぁ気のせいか

 名前を書き終えて後ろを向くと視線がいつもより高いからか、遠くがよく見えた。

 それと同時にいずにぃとかっちゃん以外がなんとも言えない表情でボクを見ていた。

 

 「どうしたの?」

 「い、いやちょっと衝撃的って言うか……尾白、お前あれできる?」

 「一瞬なら……なんとか」

 「何か、俺たちより高くね?」

 「楪ちゃん、それ転んだりしないかしら?見ててすこし不安になってくるわ」

 「慣れてるから大丈夫だよ?それよりほら、」

 

 ボクが黒板を指差すとやっと皆見たようで、特にいずにぃは驚いていた。

 

 「僕に3票!?」

 「馬鹿な!?誰がデクにッ!お前か女狐ッ!」

 「そんなわけないでしょ…」

 

 いずにぃに入れたのは一人は飯田君だった。投票用紙に丁寧に名前まで書いてあったからね。

 そんなこんなで委員長はいずにぃに決まり、副委員長は八百万さんに決まった。

 ……いずにぃ大丈夫かな……

 相澤先生を起こして結果を伝えると寝袋に入ったまま器用に立ち上がった。

 

 「そんじゃ委員長は緑谷、副委員長は八百万で決定だな。よしホームルーム終わり」

 

 



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マスコミ騒動

相澤先生と一緒に教室をでて相澤先生は職員室へ、ボクは保健室に戻った。

 今日はA組は校内を出るような時間割じゃなくて、ボクはブラド先生に頼まれて戦闘訓練の付き添いや訓練で壊れた建物を修復したりしていた。

 あっという間に午前中が終わってお昼休みの時間になった。

 多くの先生は職員室で昼食をとる。

 コンビニ弁当だったり、ランチラッシュが用意しておいてくれたお弁当だったりもする。

 ボクはランチラッシュが用意してくれたお弁当が好きだ。

 ボクが相澤先生と訓練しているときも良く差し入れを持ってきてくれてたし。

 

 普通に食堂で食べればいいのにと思われるかもしれないけど、それはボクにとってある意味拷問だ。

 簡単に言えば耳が良すぎて食器の音や咀嚼音が聞こえてしまう。 

 動物系個性の人が外食を好まない大きな理由の一つでもある。

 

 「楪、一緒に外で食べないか?」

 「ハウンドドッグ先生」

 「別に外食をって訳じゃない。今日は天気も良いから気持ちが良いぞ」

 

 ハウンドドッグ先生に言われて窓を見ると良い感じの木陰と風が吹いていて確かに気持ち良さそうだった。

 

 「確かに気持ち良さそうですね……うん。じゃあ一緒に食べましょう」

 

 そのまま職員のテラスを開けるとフワッと気持ちの良い風と木の良い匂いがした。

 コスチュームの靴は外中併用だから問題無い。

 そのまま外を暫くま歩いていると二人座れそうな木陰を見つけた。

 ちょうどハウンドドッグ先生はも同じ場所を見ていたみたいでそこで食べることに決まった。

 そのまま座っても良いけど…毛に草とか虫付くの嫌だな。

 

 「何かシートとか敷きます?」

 「あるのか?」

 「まぁ大体のはありますよ」

 

 ストレージから大きめのレジャーシートを取り出して敷いて腰を下ろすと隣にハウンドドッグ先生も座り、包みを開いた。

 ハウンドドッグ先生の昼食お弁当で、毎朝奥さんが手作りしてくれている。

 こう見えてハウンドドッグ先生は既婚者で双子の娘がいる。(名前はカガリとセイラ)

 最初聞いた時は驚いたけど、ハウンドドッグ先生と関わっていればわかるよ。

 ハウンドドッグ先生はものすごくいい人だから逆に結婚してないのかって思うレベルでいい人だもん。

 

 「あ、今日は焼き肉丼ですか?」

 「そうみたいだな。一口食うか?」

 「良いんですか?じゃあ……ランチラッシュのですけど、揚げ卵をどうぞ!」

 「頂こう」

 

 お互いに交換しながらお弁当を食べているとハウンドドッグ先生は先に食べ終わってそのすこし後にボクも食べ終わって最近起きた事を話していた。

 

 「この間、カガリの尾を手入れしていたら下手くそと怒られてしまってな…セイラには上手いと言われるのだが…やはり難しくてな」

 「あ~…そういえばカガリちゃんの尻尾ってボクと同じタイプでしたっけ?」

 

 聞くとハウンドドッグ先生はすこし耳を倒して頷いた。

 尻尾の毛並みのタイプは大きく分けて3つあり、モフモフ、サラサラ、ボサボサに別れている。

 ボクとカガリちゃんがモフモフで、ハウンドドッグ先生の尻尾はサラサラの毛並みだからブラシのかけ方も手入れの仕方も違うから

ハウンドドッグ先生が下手なのはある意味仕方ない事だ。

 

 「ならボクの尻尾で練習します?」

 

 尻尾を一本揺らしながら聞いてみるとハウンドドッグ先生は驚いたように目を丸くしていた。

 まぁ普通は家族か親しい人にしか手入れなんて頼まないのが獣人の暗黙の了解になっているから驚くのも当たり前なんだけどね。

 

 「良いのか?」

 「ボクも前にカガリちゃんとお互いにやったことありますから。それにこう言うのは同じタイプの人が実演しないとわかりませんからね」

 「いやしかし……本当に良いのか?」

 「ハウンドドッグ先生なら乱暴にやったりしないと思ってますから。あ、最初はカガリちゃんにやっているみたいにやってみてください」

 

 ハウンドドッグ先生はボクからブラシを受け取ってすこしおっかなびっくりに尻尾にブラシをかけ始めた。

 ……確かに下手くそだね……逆に毛が絡まってすこし痛いし、カガリちゃんが怒るのも納得いく。

 

 「……どうだ?」

 「まぁ、正直に言えば逆に痛いです__ちょッ!そんなにションボリしないでくださいって!まず、最初はブラシで表面を本当に軽く撫でるんです」

 

 ブラシを持っている手掴んでそのまま一緒にブラシをかける。

 

 「じゃないと外の毛と中の毛が混ざって絡まっちゃうんです。モフモフタイプは意外に外側の毛が乱れてるだけで、中の毛は整ったままな事が多いんですよほら、」

 

 尻尾を少し割って内側を見せるとまっすぐな毛が見えた。

 それを見たハウンドドッグ先生は初耳だと驚いていた。

 

 「外側が整ったら少し力を強くしてブラシの先を中に入れる感じです。そしたらこうやって短くシャッシャッシャッとやって終わりです」

 「なるほど参考になっジリリリリリリッ!》警報!?」

 《セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは屋外に速やかに避難してください。繰り返します。セキュリティ……》

 

 突然警報が鳴り響いて徐々に学校からも騒ぎ声が聞こえてきた。

 セキュリティ3って確か…許可証を持っていない人が校内に侵入した時になるはずだ。ということは、

 

 「侵入者ぁ!?」

 「バウ!(そうだ!)

 「それってまずくないですか!?」

 「バウッバウ!ババウッバウッ!!(数年で初めてだ!)

 

 警備が厳重な雄英に侵入者なんて…もしかして、ヴィラン……ん?相澤先生から着信?

 

 「はい楪です!いまどうなってるんですか?」

 『聞いてたろ今の警報。あれは只のマスコミだよ。ったく、どうやって防壁を突破したんだかな…ハウンドドッグは近くにいるか?いるなら代われ』

 「今代わります。ハウンドドッグ先生相澤先生からでッ!?」

 

 代わろうとして相澤先生の名前を出すとハウンドドッグ先生はボクの手からスマホを奪い取って話し始めた。

 待っていると急に光とカメラの音が聞こえてきた。

 見てみればカメラを持った男が興奮したように叫んでいた。

 侵入者って……あの人かな?

 

 「やったぞ!大スクープだ!やっぱりリカバリーガールの後継者はハウンドドッグの子供だ!」

 「!?!!グルゥァァアッ!!(違うわぁあ!!)

 「ひぃぁぁぁあ!?」

 

 ハウンドドッグ先生はスマホ放り投げて写真を撮ったマスコミを追いかけて走り出した。スマホを拾って暫くそれを眺めていると今度はリカバリーガールからメールが届いた。

 【今の警報で驚いた生徒が大勢怪我したみたいだから早く戻ってきておくれ】

 

 急いで回りの物を収納して保健室に向かおうとすると、廊下は生徒で詰まっていてとても進めそうになかった。

 仕方なく保健室の外に回って窓をノックした。

 丁度リカバリーガールが個性を使ったタイミングで、タコの様に伸びた口をこちらに向けていた。

 

 「ちゆ~…ほらさっさと入ってきなさい。何で窓から入ってくるかね」 

 「廊下が詰まってたんですよ……それより、怪我人ってどのくらいですか?」

 

 聞けば正確にはわからないが聞く限り大勢、だそうだ。

 

 「警報でパニックになって通路ですし詰め状態になったみたいでね。今まできた子達は殆どが捻挫だったよ。さて」

 

 急に立ち上がって保健室を出ていこうとするリカバリーガールを引き留めながら理由を聞くと、怪我人は教室に戻るように指示されたらしい。

 

 「大勢が保健室に押し掛けてきたらキリが無いよ。だから私たちが教室に行って治療した方が早いさね。あたしは1年から回るからあんたは3年の教室からやってくれ。あぁ、廊下で見つけた怪我人は治療して良いからね」

 「わかりました」

 

 3年教室に向かい、廊下にまだいた怪我人を治しながら行くとだんだん人は減ってきていた。

 

 「失礼しま~す、怪我人の治療に来ました~」

 「あ、来たみたいだよ環!すみませ~んこっちで~す!」

 

 呼ばれて行くと、どうやら足を捻挫しているみたいだった。

 修復して顔を見ると昨日保健室に来た先輩だった。

 

 「あれ、昨日の」

 「いやぁ昨日はありがとね!」

 「あ、ありがとうございます……あの、3年の怪我人は僕だけです…ミリオが確認したので…すいませんご迷惑かけて……」

 「あ、そうなんですか?ありとうございますミリオ先輩」

 

 ミリオ先輩にお辞儀をしてお礼を言って教室を出て念のために各教室を確認すると本当にいなかった。  

 そして2年の教室を回っているとリカバリーガールと鉢合わせした。

  どうやらいま回っている教室が最後みたいで二人でやれば3分程でおわった。

 

 「ちょっと校門に行くよ」

 「え?」

 

 いいから早くとリカバリーガールに連れられて校門に行くとそこにはバラバラになった防壁の残骸が落ちていた。

 

 「オールマイトのパンチにも耐えるんじゃ…」

 「その筈さね。けどこれは…」

 「どうしたら只のマスコミにこんな事ができる」

 

 急に声がして後ろを振り替えると睡さんと13号先生を引き連れて校長が来ていた。

 「唆した者がいるね。邪な者が入り込んだか、もしくは宣戦布告のつもりか………楪君。これは修理できるかな?」

 「や、やってみます」

 

 残骸を触って修復を発動させると徐々に残骸が集まっていって最終的に防壁の中央に穴が空いた状態に戻った。

 修復されないってことは……離れた場所にあるか、存在しないってこと?

 

 「楪君、この穴は」

 「たぶん、ですけど残骸が遠いか存在してないんだと思います。後復元するので」

 

 復元しようと防壁に手を当てると睡さんがちょっと待ってと言った後にカメラの音がした。

 

 「一応ね、中央の瓦礫だけが無くなるなんておかしいからね。あ、もう良いわよ」

 

 

 

 

 

 

 「あ、ハウンドドッグ先生ってどこにいますか?」

 「彼なら写真を撮ったマスコミを警察に突き出しに行ったのサ」

 

 ……ハウンドドッグ先生のお弁当箱どうしようかな……午後も授業の予定は無いし……洗っておこうかな。

 

 

 

 




追記
狐は犬科なので動物の犬の言葉がわかります。なのでハウンドドッグ先生のバウバウも理解できます。

 「逆になんでわからないの……?」
 えぇ………


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USJ

 「飯田君が非常口?なにそれ、ボクも見たかった」

 

 夕食を食べながらマスコミ騒動の時のことを聞くと飯田君がドアの上に張り付いた事を聞かされ、委員長は飯田君になってもらったことを聞いた。

 飯田君が非常口……違和感ないな。うん。

 

 「ゆずの方は大丈夫だったの?」

 「へーきだったよ、でもマスコミにハウンドドッグ先生と一緒にいるところ写真に撮られた。なんかボクを先生の娘と勘違いしてたみたい」

 「そういえばゆずについての考察でそんな説が……」

 「……え?」

 

 問い詰めた結果どうやらマスコミに追いかけられていた動画や写真が出回って、加えてリカバリーガールの後継者ということも広まって掲示板?やらヒーローサイトでも話題になっているみたい。

 

 そんな中同じ獣系個性であるハウンドドッグ先生が血縁じゃないかって話らしい。

 いずにぃに掲示板を見せて貰うと[ワンチャンミルコ]とか他の獣系個性のヒーローの名前がちらほら上がってた。

 ……尻尾の付け根触りたいとか耳に突っ込みたいとか、いずにぃ以外に言われてると思うと気持ち悪い…ぞわぞわする…

 

 

 

 

 「う~……」

 「ど、どうしたの?」

 

 あれからお風呂に入ってもぞわぞわが残ったままで気持ち悪くていずにぃにくっついてないと落ち着かなくて、ソファに座ってるいずにぃに正面から抱きついている。

 首を軽く噛みながら、掲示板の言葉が喜町悪かったと言うとごめんって謝ってきた。

 

 「…別に、いずにぃが悪いわけじゃ、ないし…いずにぃなら良いもん…」

 「ゆずがああいうの嫌いなのに見せた僕が悪かった」

 「んッ…うゃ……」

 

 撫でてくれている時に耳に手が当たって声が漏れる。

 いずにぃも触るつもりはなかったみたいですぐに耳から手遠ざけようとするのを頭を動かして阻止する。すると「いいの……?」と不安そうに聞いてきた。今は触って欲しい気分なんだよ。

 

 

 恐る恐ると言った感じで耳を両手で触ってくるいずにぃ。

 触られ馴れていなくて不思議な感じだったけど、耳と手が擦れる音と皮膚が薄いからかいずにぃの手の暖かさよく伝わってきてきて心が落ち着いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「楪、ちょっとこい」

 「?はい」

 

 

 相澤先生に言われてついていくとサポート科の倉庫に連れてこられた。中には沢山のアイテムがおいてあって、中にはダンボールに入ったままのもあった。整理しろってことなのかな?

 

 「違う、これらはお前のサポートアイテムだ」

 「………ボク、こんなに頼んだ覚えないんですけど…」

 「根津校長の指示だよ。持てるもんに制限無いんだから持っておきなさい、だとよ」

 「な、なるほど……?」

 「一通り使い方には目を通しておけ。婆さんには話を通してある」

 

 そう言って相澤先生は出ていった。

 軽く50以上あるんだけど……ていうかリカバリーガールに言ってあるってことは、午後の救助訓練までここで…?

 

 「……よーしがんばるぞー」

 

 

 

 「うわこれ……フラッシュバンの追加?スッゴい沢山ある…他には…スタン、スモーク、催涙?ボクを武器庫だと思ってないかな?」

 

 

 

 

 「捕縛用ネット…?射出ランチャーまで…」

 

 

 

 「これは……ウォール、シールド?」

 

 段ボールには英語でそう書かれていた。

 中には一メートルくらいの盾みたいな物と説明書が入ってた。全部英語で書いてあったけど、相澤teacherの鬼指導のおかげでスラスラ読めた。

 

 要約すると『側面下部に衝撃を加えると縦横にシールドが展開されます。展開後回収する場合は上部に衝撃を与えてください。オールマイトの一発くらいなら耐えてやるわ!!』

 だった。いやオールマイトの一発耐えれるなら凄いんだけど、展開と回収が力業……それで良いのかサポートアイテム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「朝からずっとあそこに居たんですか!?」

 「あはれは、まぁそうですね」

 

 午後になると13号先生が迎えに来てくれて、一緒にUSJ(嘘の災害や事故ルーム)でA組を待っていた。

 

 「校長先生はボクを武器庫か何かだと思ってるんじゃ無いですかね、デイザーガンもありましたよ」

 

 後グレネード一式とかも、付け加えて言えば13号先生は苦笑いをしていた。

 

 「ですがその考えも間違ってないと思いますよ。楪さんの個性は多くの物を運べる。災害時に楪さん一人がいれば、医療器具、食料、更には仮設施設まで」

 「確かに……」

 

 収納の大きさの限界はまだわからないから、施設も収納できるかも……?今度相澤先生に言ってみよう。

 

 

 

 「楪、13号、オールマイトは?」

 「先輩それが、活動限界が来てしまったらしく……仮眠室で休んでます」

 

 相澤先生達が到着して救助訓練の打ち合わせをする。

 ボクと相澤先生が救助者役で、13号先生とオールマイトが救助指南をするはずだったんだけど……教師としてそれはどうなのかな……?

 

 「はぁ……じゃ指南は13号に任せる。俺と楪が救助者だ。うし、始めるか」

 

 

 

 

 

 

 「え~、では僕から始める前にお小言を一つ、二つ、三つ……四つ、五つ……」

 「「「「増えた!」」」」

 

 13号先生の個性は《ブラックホール》あらゆるものを吸い込んで塵にしてしまう強力な個性。

 その個性で災害で多くの人の命を助けてきた。逆に簡単に命を奪える個性でもある。

 

 「今の超人社会は一見成り立っているように見えますが、一歩間違えれば容易に人が殺せるような状況にあります。そのような個性を個々が持っている事を忘れないようにしてください」

 

 そして、個性に救助の活用法を見出だしましょう!と声高らかに言った。

 

 「君たちの力は人を傷つける為にあるのでは無い。助ける為にあるのだと思って下さい。以上、ご静聴ありがとうございました」

 

 13号先生が右手を胸に添えてお辞儀をすると皆は拍手で答えた。

 飯田君に限ってはブラボー!と大きな声をだしながら大袈裟に拍手をしていた。

 

 「そんじゃまずは…」

 「ッ!せんせ!!」

 

 ゾクリと、嫌な予感がした後にぶわっと何かが広がる音がして、振り替えるとそこには

 

 「全員一塊になって動くなッ!!」

 

 巨大な靄から数えきれない程のヴィランが出てきていた。

 

 「楪はシールドを出せ!」

 「皆下がって!!」

 

 相澤先生と皆の間に取り出したウォールシールドを叩きつけてシールドを展開させる。

 ガシャガシャと音を立ててシールドの展開が完了すると切島君や上鳴君が興奮した声をあげた。

 

 「うわなにこれかっけぇ!!」

 「てかあれなに?入試みたいなもう始まってるぞパターン?」

 

 そう言って動きだそうとする切島君を尻尾で制する。

 

 「違う……あれは、本物のヴィランだよ…!!」

 「は、はぁ!?雄英に攻めてくるヴィランとかいんの!?」

 

 今もなお黒いモヤからヴィランは出続けている。

 中央には全身に手の人形を着けたヴィランがこっちをジッと見ていた。

 

 「先生、侵入者用センサーは?」

 「勿論ありますが…」

 「……駄目です、学校にも繋がらない…!!」

 「何にせよセンサーも反応してねぇ、連絡も妨害されてるなら、向こうにそういう事が出来る個性ヤツがいるって事だな。バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」

 

 轟君が冷静に分析したことを言うと緊迫した空気になった。

 すると微かにヴィランの会話が聞こえてきた。

 

 「情報では13号と後継者、オールマイトの筈なのですが」

 「どこに目ぇついてんだ黒霧、いねぇじゃんオールマイト。はぁ~……ガセネタかよ……」

 

 オールマイトが狙い?それより、何で今日の事が漏れて……とにかく、相澤先生に教えなきゃ

 

 「せんせ、今日の予定が漏れてます。それとあいつらオールマイトが狙いみたいです」

 「なに……?」

 

 先生だけに聞こえるように言うとじろっとボクを見た。

 

 「あの手がいっぱいついてるやつと、黒いもやもやのが主犯っぽいです」

 「…わかった、13号と楪は生徒達を避難させろ!急げ!」

 「せ、先生は!?一人で戦うつもりなんですか!?」

 

 ゴーグルを着けて捕縛布を構える相澤先生にいずにぃが叫ぶ。

 ヒーローオタクないずにぃは相澤先生の抹消と戦闘スタイルを知っているからこそ、心配をしてる。

 

 「正面からの戦闘なんて!」

 「一芸でヒーローは勤まらん。13号、楪、生徒を頼む」

 

 相澤先生は階段から飛び降りてヴィラン達に突っ込んでいく。

 個性を消されて困惑しているヴィランを捕縛布で捉えて次々と無力化させていく。

 

 「凄い…!多対一が先生の得意分野だったんだ」

 「……はやく、避難するよ!」

 「あ、ご、ごめん!」

 

 ……本当は得意分野なんかじゃない。本当に得意なのは奇襲からの短期決戦。あの数のヴィラン相手に短期決戦なんて…

 皆を安心させるために、先生は飛び込んでいったんだ。

 

 「……だい、じょうぶ、大丈夫……」

 

 今、ボク達がやることは、相澤先生に言われた通り皆を避難させること、それが終わったら救援要請……

 

 

 「行かせませんよ」

 

 出口に向かっていると目の前にあの黒い靄のヴィランが現れた。

 

 「皆!耳塞いで!!」

 

 スタングレネードをヴィランに向かって投げる。

 

 「おっと……流石プロヒーローの後継者は判断が早い…」」

 

 ヴィランに向かって投げた筈のスタングレネードは出口近くで破裂した。

 その瞬間に切島君とかっちゃんが飛び出した。

 

 「駄目!」

 「駄目だ!退きなさい二人とも!!」

 

 

 かっちゃんの爆破で土煙が上がってヴィランの姿が見えなくなる。これじゃ、次の攻撃を見ることもすることもできない……!!

 

 「危ない危ない……子供とはいえ、ヒーローの卵……私の役目は」

 

 ぶわりと靄が広がり、ボク達を包む

 

 「散らして、嬲り、殺す」

 

 

 

 

 

 




【メヴィのトリセツ】
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