Q.コクコク(刻々)の実を食べたメイド長って? (政田正彦)
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始まり
光より速い!?コクコク(刻々)の実の少女誕生!(1/2)


続くかは……未定!







 私は人間である。

 名前は思い出せないが、もし名乗る事があれば「サクヤ」とでも名乗ろうと思う。

 

 どこで生まれたか(とん)と見当がつかず、両親や親族の記憶はすっぽりと抜け落ちてしまったが、ここが『ONE PIECEの世界』……否、『ONE PIECEに私と言う不純物が混ざり込んだ紛い物の世界』であるという事は分かっている。

 

 ニュース・クーが空を飛んで新聞を届けに来ているのを見たり、大海原に幾つもの海賊船が我が物顔で航海しているのであったり、見覚えのあるキャラクターの手配書であったり、海軍という組織が治安維持の為に街を走り回っているのを見て、何故か見覚えが……デジャヴュを感じるなと思っていた。

 

 そして、つい今しがた、空腹に耐えきれず拾って食った明らかに食える感じのしない木の実を嚥下した結果……とてつもないエグみ、苦み、渋み、臭みをこれでもかと凝縮したかのような味が口内を襲ったその瞬間、私は不味過ぎて走馬灯を見た。そして、その走馬灯の中には今世の私の知らない記憶が混じっていた……そう、つまり()()()()()を思い出したのだ。

 

 思い出したと同時に私は蒼褪めた。

 

 悪魔の実の不味さで蒼褪めたのではない。

 この世界はモブに割と容赦が無いタイプの漫画の世界だという事実を思い出した為だ。

 

 その上、ここまでの私の独白から察しているだろうが、私は所謂頼れる存在の居ない立場の人間……捨て子の家無き孤児、その上まだ未成熟な子供(推定4~5歳程度)である事が状況の過酷さを際立たせていた。

 

 今の私の唯一の希望、それは、たった今口にしたとてつもなく不味い木の実……悪魔の実に宿る人知を凌駕した超能力の存在である。

 

 これが、作中に存在するゴロゴロやピカピカ、グラグラやマグマグといった最強格の悪魔の実なら、如何に私がガリガリの孤児であったとしても、能力に物を言わせて生き残る事が可能だ。

 

 逆にヒソヒソ(動物達の声を理解出来る能力)やヒトヒト(動物が口にすると人間のような知性と特徴を会得する)だったりといったロクでもない能力だったら単に泳げなくなっただけで何の意味も無かったりする訳だが。

 

 私は自身に宿った能力の確認の為、街から離れ、森の中、何が起こっても大抵は問題ないであろう岩場付近まで訪れた。

 

 メラメラやマグマグのように能力を発現させた瞬間周囲に危害が及ぶような能力だった場合、最悪海軍のお世話になる可能性があった為だ。

 

 そして……訪れたはいいが、自分が食った悪魔の実がなになにの実だったのかが分からないのでどうやって自身の能力を確認すればいいのかが分からずに居た。

 

 とりあえず頬を引っ張ったり抓ったりしてみるも、伸びたり溶けたり燃えたりはしない。

 

 自然(ロギア)系ではないのだろうか、とちょっとだけ肩を落とす。

 であるならば、超人(パラミシア)系か、あるいは動物(ゾオン)系であると絞れるわけだが……。

 

 力めばいいのだろうか? あるいは「力を使うぞ」という意志が大事なのだろうか? 色々と試してみるものの、自分の身体にも、自分の身体以外にも、大した変化は訪れない。

 

 もしや、とんでもない外れ能力を引いてしまったのでは、と冷や汗を流してから少しして……。

 

 

 周囲が異様なほど静かになった事に気付く。

 

 

 いくらここが人気が無く動植物も少ない岩場であるとはいえ、風の音ぐらいはするハズ、だが、それすら私の耳には届かず、するのは着ているボロの衣擦れの音と、自分の心音と息遣いの音だけ。

 

 まるでこの世界に私しか存在しないかのような静寂の中、私は「もしかしたら、ナギナギの実かもしれない」と推察する。

 

 ナギナギの実は……一言で言ってしまえば、音を消す程度の能力が手に入る悪魔の実だ。

 

 自身が出す音も、自身の行動が要因で出る音も、他人が出した音すらをも消す事が可能な能力。

 

 ……と聞けば一見強力……いや、実際音も無く行動できるのは見ようによってはかなりのアドバンテージだが、それが今、この私にとって何の役に立つだろうか?

 

 私は途方に暮れたまま、街へと戻る。

 能力を解除するのをすっかり忘れたまま。

 

 私は街に入ってすぐ違和感に気付いた。

 消音したままだった為、街に入っても人の声や音が一切耳に届かないのだ。

 

 即座にやってしまった、と気付く。

 もしかしたら耳に入っていないだけで、街では突然声や音が消えた事で大騒ぎになっているかもしれないと思い至った為だ。

 

 私は自らの失態を呪いながら能力を解除する。

 すると、いつも通りの喧騒が耳に届く。

 

 そう、いつも通りの喧騒であった。

 私が音を消していたハズなのに、である。

 

 おや? と思い私はもう一度能力を発動させた。

 もしかすると、音を消している……というより、他者の音が自分の耳に届かなくなる、みたいなナギナギの実の完全下位互換みたいな能力である可能性すら頭に浮かんでしまった。

 

 発動させると、また静寂が世界を支配する。

 

 私は物影からこっそりと顔を出して街の様子を伺う。

 これでもし、私以外の全員が動揺した様子も無く普段通りに過ごしている姿が目に映ったのなら、私の能力はゴミ以下。単に難聴になるだけのカス能力である事が確定する。

 

 ……しかし、そんな杞憂とは裏腹に、目に映った光景は正に、目を疑うような光景であった。

 

 

 駆けだした子供達が、歓談する婦人が、おじさんの吐き出したタバコの煙が、風に揺れる洗濯物が、空を飛ぶニュースクーが……全て、その空間に固定されているかのように停止していたのだ。

 

 私は、恐る恐る停止した街の中へと足を踏み入れる。

 だが、誰も私の事を見ない。

 

 誰も私に石を投げたり、糞を投げたり、悪意のある目を向けたり、蹴ったり殴ったりしない。

 

 私は、こっそり市場から、今度は普通の果実を手に取ったあと、停止した街の中を全速力で走り去り、誰も居ない裏路地、世界は停止させたまま、盗んだ果実に口をつけた。

 

 

 空腹を満たした私は、未だに停止している世界の中で、考えをまとめ始める。

 

 つまり、私は自分が食べたのがナギナギの実だと思っていたがその実、食べたのは時間を止める事が出来る能力を持つ悪魔の実であった、という事だ。

 

 ……しかし、それっぽい能力を持ってそうな悪魔の実である「トキトキの実」は、時間を操る能力ではなく、未来へとタイムスリップする能力を持つ悪魔の実である事が明らかになっていたハズ。

 

 となると、私が食べた悪魔の実は、トキトキの実ではないか、トキトキの実モデル時間停止とでも呼ぶべき悪魔の実であると言えるだろう。

 

 ただトキトキの実モデル時間停止、では長くて呼びづらく、かといってトキトキの実では未来へタイムトラベル出来る方のトキトキの実と混同し分かりづらいので、私は自身が食べた実をコクコク(刻々)の実と仮の名を付けた。

 

 この世界には「図鑑にも載っていない悪魔の実」とかいうのがあるらしいので、そういった類の悪魔の実だったらこのまま正式な名称として名乗ってしまっても問題無いだろう。

 

 ……ところで私は一体いつまで時間を止められるのだろうか? と気付くまで結構な時間長考していたのだが、時間は未だ止まったまま。

 

 何となく、自分の中で「こうかな?」という時間を止めている感覚があり、それを解くとまた街がいつも通りの日常を送り始め、「こうだな」と時間を止めると再び世界は停止し静寂に包まれた。

 

 私は、停止した世界の中で歓喜した。

 

 思わず諸手を上げて大きな声でやったあ! と言ってしまいたい程だ。

 ナギナギの実の完全下位互換だなんて考えていた杞憂の事など、今や記憶の外。

 

 私は私が知るONE PIECEを含むあらゆる創作物の中でも最強格、その上位に食い込むであろう強能力……時間停止の能力を手に入れることに成功したのだ。

 

 

 そうと分かってからは、私は本当の意味で自由になった気分だった。

 

 露店から果実を盗んでも、悪ガキの背中に虫を突っ込んでも、野犬の鼻をギュッと摘まんだ後暇そうなおじさんのお尻の前に置いたりしても、誰も私の事を責めたりしない。

 

 私がそれをやったとも知らずに、露店はいつも通りに営業するし、悪ガキは悲鳴を上げ、おじさんは尻を手で押さえながら街中を犬と鬼ごっこをする羽目になっていた。

 

 ああ、なんて全能感、なんて気分が良いのだろう。

 ……と同時に自分はなんて下らない事をしているのだろうかと考え直し、子供っぽいイタズラはそれきりやらない事を誓った。

 

 そもそも私に石を投げたりご飯を横から奪ったりタバコを押し付けようとしたあいつらが悪いのだから罪悪感は塵ほども湧かないが。

 

 私はこの日を境に生活にかなり余裕が出来た。

 

 停止した世界の中、時に市場で食べ物を盗んだり、時に森の中で動物を狩ったり、時に停止した世界の中で寝て起きたり、夜は時間が余るのでトレーニングをしたり、その過程で、洞穴を寝床にしていた熊っぽい生き物との生存競争に打ち勝って洞穴というマイホーム? も手に入れ、雨風を凌げる住居(森の中)まで手に入れたのだ。

 

 熊っぽい何かは……出来る限り美味しく頂いた。

 次はもっと肉の前処理の方法を勉強してから頂きたいものである。

 

 

 そんな生活が続いてどれくらい経ったか。

 

 体感では数年、実際には1年経ったか経っていないか、あるいはもっと短い期間……次第にガリガリだった身体に肉が付き始めたのと同時、私はふとガラスを見ると、そこには髪が少し白っぽくなり、虹彩(黒目の部分)が赤っぽく変色している事に気付いた。

 

 恐らく、この停止した世界の中だと、紫外線の影響も少なく、長時間そんな環境で過ごしていたせいで色素が落ちて白くなってしまったのかもしれない、と冷静に判断する私だったが、ガラスに映る自身の姿に何やら既視感があって、じっとその顔を眺めていた。

 

 ……そして、ふと思い立ち、もみあげ辺りの髪を三つ編みにし、頭の天辺を手でカチューシャ風に押さえてまとめてみた。

 

 すると、そこには『ロリ十六夜咲夜っぽい誰か』が居た。

 

 そこで私はハッと気づいたのだ。

 

 そういえば、私が知る時間操作系の能力者の中でも、かなり印象深いキャラクターに十六夜咲夜というキャラクターが居たという事に。

 

 もしかするとこれは……『ガワ(容姿&能力)だけクロスオーバー』という奴なのではないか?

 

 その予想及び願望を裏付けるかのように、私の身体はどんどん変化していった。

 髪色は色素が抜け落ち段々銀髪に、最初は赤茶色っぽかった目は、能力発動中は真っ赤に、発動していない時は青色へと変色していた。

 

 メタ的に考えるならば、悪魔の実はあくまで私に『時間を操る程度の能力』を与える為のファクターであり、そこから私が「十六夜咲夜」へ変化する為の理由付けの一つだったのだろう。

 

 ……我ながら馬鹿げた考えをしている事は分かっている。

 

 実際にこの世界に住んでいる住人の一人である以上、自身が創作物の一人であるかのような考え方に至ってしまうのは、現実が見えていないか、病的な夢見がちな馬鹿としか言いようがない。

 

 だが、この世界が未だに漫画の世界で、私がその世界の異物であるという考え方は馬鹿げているとも思う一方で、実際この世界(の元)が漫画やアニメとして世界中から大人気だった前世を知っているとどうしても「自分が生きている現実」の前に「ONE PIECE」が来てしまう。

 

 それも、ONE PIECE大元ではなく、ONE PIECE好きな誰かが生み出した、私と言う異物をねじ込んだ所謂二次創作のような世界。

 

 故に、この世界に私をねじ込んだ『誰かが』私を『こう』したのだと考えるようになってしまうのは必然とも言えるのではないだろうか。

 

 その上、私は停止した時の中で……人とは違う時の流れの中で生きている。

 どうしたって現実感の無いその世界で私だけ『現実(リアル)で居ろ』と言うのは無理があるのだ。

 

 そこに来て、私が知る印象的なキャラクターと自身が被るとなっては、「あ~なるほど悪魔の実って私が十六夜咲夜になる為の物だったんだ」等とメタ的に考えてしまうのも許してほしい。

 

 そして「私は十六夜咲夜になるかもしれない」と思ってから、私はトレーニングの一環として「能力開発」を取り入れる事とした。

 

 何故かというと、私が知る十六夜咲夜の能力は『時間を操る程度の能力』であり、今の私のような『時間を止める能力』ではないのだ。

 

 なら、もしかすると……能力を鍛える事で、文字通り時間を操る程度の事が出来るようになるのではないか? と私は考えたのだ。

 

 実際、ONE PIECE作中にも、主人公のルフィも、身体がゴムであるという特性を利用し、足をポンプ代わりにして血流を急速に速め、身体能力を爆発的に向上させるギアセカンドがあったり、本来の能力を進化させ、開発し、鍛える事で、更なる真価を発揮する悪魔の実が存在するのも事実。

 

 であるならば、私も能力を鍛えれば、林檎ジュースを林檎酒にしたり、ワインを造ったり、熟成肉、発酵食品、煮込み料理…………ハッ!? 何故か能力の使い道が食に偏っている……いけないいけない。

 

 他にも例えば……そう、人を強制的に老いさせるだとか、鉄を酸化させるとか、建築物を風化させるとか、木を枯れさせるとか……今度はえげつない方向に偏ってしまった。

 

 後は、時を止めるだけじゃなく、自分以外の時を緩やかにすることで高速移動したり、時間と密接に関係する空間も操作して空間を拡張させる、なんて事も出来たはずだ。

 

 …………でもそれって、どうやって鍛えれば良いのだろう? 特に空間をどうこうするなんて、今の私では無理だ……そもそも広げて良い空間が無い。

 

 しかし物の時間を強制的に進めたり、時間を止めずにゆっくりにするのは修行次第では出来そうだ。

 

 せっかく手に入れた能力なのだから、最大限まで極めてみたいと思った。

 なんだかんだでこういう能力に憧れを持っていた為、テンションが上がってしまったというのもあるかもしれない。

 

 

 結果(体感数年後)……。

 

 

 自分以外の時間を極めて緩やかにしたまま物を投げる事で投げた物が超高速で飛んでいき、超破壊力を持つ投擲となり。

 

 物の時間を早める事で植物はグングン伸びて生い茂り、鉄や石は風化し、肉は腐敗し、果実は木になり可愛らしい花を咲かせた。(生き物に使うのはあまりに残酷だったので使わなかった。)

 

 ……アカン、やりすぎた。(キャラ崩壊)

 

 私は能力開発の為に変わり果ててしまった周囲の様子を見ながら茫然と立っていた。

 身体は小学校高学年ぐらい(推定11~12歳程度?)まで成長していたが、その年頃の子供が持っていい力を遥かに凌駕している。

 

 十六夜咲夜もこんな事が出来たのだろうか?

 だとしたら、そりゃ、運命を操る吸血鬼も傍に置いておきたくなる気持ちも分かるし、元ヴァンパイアハンター説も無理がある話ではないと思ってしまう。

 

 そして、容姿は元の地味な髪色とありふれた目の色の残滓は完全に消え去っていた。私のかつての姿を知る人が私を見ても私だと分からないのではないだろうか……。

 

 まぁ、私の姿については置いておいて……せっかく手に入れた力なのだから、この力を有意義に使った方が美味しいご飯……いや、豊かな生活が手に入るのではないだろうか?

 

 というか、そろそろ文明的な生活がしたい。切実に。洞穴以外の所で寝たい。メイド服とは言わないから、ボロ布じゃなくてちゃんとした洋服が着たい。

 

 例えば、ヴァンパイアハンターならぬ、バウンティハンターになってお金を稼ぐ、とか。

 

 いっそ海軍になれば、とも思うが……あの人間の屑共に頭を下げる犬に成り下がるのは、ちょっと……プライドというか、そもそも無理というか……ともかく海軍は無理だ。

 

 六式とか修得したさはあるけれど、そもそもこの能力があれば六式ほぼ要らないし……嵐脚も指銃も時間を緩めて直接殴ったらそれで充分だし、紙絵も鉄塊もそもそも時間停止で避けられるし、剃は一番必要無い。

 

 月歩は悪魔の実能力者として海に落ちる危険性が減るからかなり欲しいけど、それだけの為に海軍に入るのはちょっと、リターンが小さすぎる。

 

 海賊もなってもいいけど……ルフィ達みたいないい仲間に出会えるならいいけど、基本海賊ってカスかクズばっかりなんだよな……私がバウンティハンターならいいかも、と思った理由も「あいつらならボコボコにしてもいいかも」と思ったからだし。

 

 ……まぁ、ネームド級の海賊に出会って「いいかも」と思ったらその時は……うん、その時になったら考えよう。

 

 私は、賞金が手に入ったら買えるであろう服や美味しい物を夢想しながら、停止した時間の中、手ごろな海賊が都合よく来てたりしないかな、と港へと向かうのだった。

 

 

 

= = = = = = = = =

 

 

 

 海賊とは、要するに海賊旗(髑髏の描かれた旗)を掲げた集団の事を指している。

 そしてこの世界でいう所の海賊は、『海を荒らす犯罪者』であり、同時に『海軍によって淘汰されてしかるべき存在』もっと言えば『仮に特に何か犯罪行為に手を染めていた訳では無くても、海軍によって検挙されたり、あるいは略奪、奴隷、殺人などの被害に遭っても文句は言えない人権を失った存在』である。

 

 海賊旗を掲げたその瞬間、人は人権を失うのである。

 

 それでもなお、今、この時代を『大海賊時代』と呼ぶのは、爆発的に海賊たちが急増している為だ。

 

 急増した海賊たちの中には、夢……つまりワンピースを求め航海し、海賊王となるべく冒険をする海賊達が居る一方で、ただただ好きに生きたい、宝を、金を、女を、ありとあらゆるものを略奪し、殺害する、そんな連中も勿論存在する。

 

 そう言った人道に反した事をしない海賊も勿論居る。だが、大多数がこの海賊を称する略奪者であるというのもまた事実。

 

 海賊ではない一般市民達にとって、海賊とは『極めて迷惑な犯罪者集団』に他ならない。

 

「ヒャーハハ! ようやっと新しい島に着いたぜ! 野郎共! 仕事の時間だァ!」

 

「アイアイサー!」

 

 そんな迷惑集団である海賊達が、平和だった島の港に海賊達が強引に港に船を停め、錨を降ろす。

 

 港に居た人々は、海賊船が向かって来るのを見て、悲鳴を上げながらどこかへと逃げ去っており、港には海賊達と……物陰に隠れた少女しか居ない。

 

 海賊たちの数は、100数名。

 本来であればたった一人の少女にどうにか出来る数ではない。

 いや、そもそも一人の海賊とすらまともに戦えないのだから、数の問題ですらない。

 

 しかし、如何に『()』が多くとも、それが『()()()』でなければ、『圧倒的な()』に勝てないのがこの世界の常。

 

 そして、この少女は文字通り『住む世界の違う個の存在』であった。

 

 

 少女は、特に隠れる訳でも、奇襲を仕掛けるでもなく、海賊の前に躍り出た。

 そして、海賊達の波を縫うように海賊船へと向かい、よじ登り、船の内部を探索する。

 

 その間、海賊たちは少女の存在にすら気付けない。

 

 何故なら、少女の持つ能力によって彼女以外の時間と言う概念が停止してしまっている為である。

 

 こうして少女が堂々と船に乗り込もうとしている横では、島に上陸した海賊達が嬉々とした、やや狂気の混じった表情で、金品や女を略奪する事を考えたまま、まるで絵画に描かれた人物のようにピタリと静止して動かない。

 

 少女はそのまま海賊船を探索し、保管庫を発見した。

 その中には食料や衣服、武器もある。

 食料(漫画肉)に齧り付きながら、金品をその辺にあった小袋に詰め込み、ボロの中に隠し持ち、少女の手でも辛うじて使えそうなナイフをいくつか拾ってその場を後にする。

 

 さて、取るべき物は取った。あとは海賊の制圧を……しようとして、気付く。

 

 あれ? 金品が目的ならもう目的は達成されたのでは? と。

 海賊たちが溜め込んでいた金貨はそれなりの量があった。

 数えてはいないが、数か月は贅沢な生活が出来そうな程の量だ。

 

 それに、よくよく考えると、自分が今からこの海賊達を一挙に縄で縛って海軍に突き出したとして、それを私がやったと信じてくれるだろうか?

 

 ……いや、信じてもらえないだろう。

 というか、信じてもらったとしたら、この年齢の少女が海賊団を壊滅させるほどの能力を持っている事が海軍にバレる。

 

 バレたらどうなる?

 知らんのか?

 目をつけられて海軍に連行される。(多分)

 

 まともな食べ物を食べたことで回転を始めた脳が「悪い奴をやっつけてお金をもらったらいいじゃん!」という考えが極めて短絡的で浅慮な考えであった事に気付き始めた。

 

 ……だからと言って、この海賊達をそのままにするのも夢見が悪い。

 都合よく現れてくれた所申し訳ないが、少女はまだ子供で賞金稼ぎになるには幼過ぎたのだ。

 どうしたものか……と考え、少女は結局、海賊たちを捕まえるのは諦めた。

 

 そもそも百数人の男達をいちいち縛り上げて海軍基地(港の近くにあるとはいえ、人ひとり運ぶには無理がある距離)まで運ぶのがめんどくさい……というか男一人運ぶ事自体この身体じゃ無理なのでは、と目の前の海賊(結構な大男)を見上げながら今更過ぎる事実に気付く。

 

 我ながらあまりにも無計画だったと溜息をついた後、少女は盗んだナイフや置いてあった剣で海賊達の足の腱を切り付ける。これで、時間停止を解除したら海賊達は一斉に地面をキスをして、ロクに起き上がったり走ったりすることも出来なくなるだろう。

 

 船に残っている海賊達も、丁寧に腱を切ったのを確認したら、その過程で見つけた、水を保管した樽から水を拝借。汗だくになった身体……ついでに今までの生活で汚れ切った髪や肌を徹底的に洗う。

 

 そうして長い時間をかけてさっぱりした彼女は、今まで着ていたボロを捨て、比較的綺麗なシャツとズボンを奪い、身に纏う。ダボダボだったが、ナイフで切ったり折ったりして、裾を引きずらないようにした。

 

 さて、用は済んだ。

 

 足の腱が切れているとも知らずに、今まさに下品な顔で街へ略奪しに走りだそうとしている男達の間を縫い、街へと向かい……。

 

 ここまで来れば海賊の誰も自分の姿など見えないだろう、という所で時間停止を解除する。

 

 港からは男達の困惑と悲鳴、怒号、叫び声が響き渡り、少しした後、海軍達が港へと走っていくのを横目に、市場へと向かった。

 

 

「おばちゃん、これ頂戴?」

 

「え!? あ、いいけど……今、海賊が来てるんでしょう? 早く逃げないと……。」

 

 

 そこは、少女が普段、停止した時間の中で果実を何度も盗んでいた露店。

 海賊がやって来たと聞いて、店も品物もそのままに、金だけ持ってどこかへ逃げようとしている最中に、突然見たことの無い少女が現れ、店主の女性は驚きつつも「迷子かしら」と少女に対応する。

 

「海軍が向かったから、もう大丈夫だよ。それより早く。」

 

「え、ええ~……? ほ、ほら、あげるから、さっさと逃げな? 海賊はおっかないんだから。」

 

「うん、ありがと。これ、御代ね。」

 

「はいよ……って! これ、多すぎるわよ!」

 

「いいのいいの。()()()()()も含まれてるから。」

 

「……ええ……?」

 

 

 露店の女性が不思議な銀髪の少女を茫然と見送ってから程なくして「何故か突然足が切れて動けなくなった」と主張する海賊達が海軍によって一人残らず捕らえられ、海賊騒ぎは少女一人を除いて誰もが首を傾げる形で収束する。

 

「(服もお金も手に入れたし、どこかで職を探そう……将来的には海に出るのもいいけど、賞金稼ぎになるのはもっと大きくなってからにした方が良さそうね。)」

 

 少女は今回の失敗と、初めてちゃんとお金を払って購入した果実を糧に、そんな事を考えながら未だ喧騒の収まらない街を歩く。

 

 

 

 




十六夜咲夜もどき:

十六夜咲夜の『時を操る程度の能力』を持つ『コクコク(刻々)の実』の能力者。
時間を停止させる(ほとんど制限が無い)、自分以外の時間をゆっくりにして高速移動する(この状態で物を投げると超高速で投擲出来る)、物の時間を進めたり戻したりする(ただし壊れていたり、食べてしまった食べ物を元には戻せないし、死んだ生物を生き返す事も出来ない)などのぶっ壊れ能力を持つ。

ただし身体能力はお察し。
停止中何度も休憩を挟む程度の体力。

悪魔の実のあまりの不味さに前世を含む走馬灯を見た結果前世を思い出し、ここ大海賊世界やんけと気付く。

その後生活が充実し余裕が生まれたので「十六夜咲夜っぽい事出来るかも」と思ってやってみたら出来た。

現在は推定12歳前後で、海賊が貯めてたお金とナイフや服を略奪し、その後は適当な職を探しに街へと消えた。

オリジナルと決定的に違うのは、悪魔の実の能力である為カナヅチになってしまった事と、極度の飢餓状態で過ごしていた期間があったため、食事に関しての執着心が凄い事。ついでにまだメイドですらない。





(2023/04/11)
内容を少し修正。
悪魔の実の能力者である為、身体を洗い流す際に少しずつ洗い流した、という風に書き換えたほか、同じ話の焼き増しになってる部分は随分前に消しました。

(2023/04/20)
感想での指摘を受けて身体を洗い流す描写で少しずつ洗い流した、という風に書き換えたのを無かった事にしました。


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光より速い!?コクコク(刻々)の実の少女誕生!(2/2)

1話更新時ぼく「やりたい事がいっぱいあるけどひとつやるともう片方が無理になる……」

1年後ぼく「ルート分岐すればやりたい事全部やれるじゃん?」



と言う訳でね。






 偉大なる航路(グランドライン)前半の海。

 

 偉大なる航路(グランドライン)とは、凪の帯(カームベルト)と呼ばれる、文字通り風が無く、その上海王類と呼ばれる狂暴かつ強大な海獣が無数に生息する海域に挟まれる形で世界を一周する航路の事を指し、更にこの航路に対して直角に世界を一周する巨大な大陸、赤い土の大陸(レッドライン)で二つに分かれている。

 

 そしてここは二つに分かれたうちの前半の海。

 

 前半とは言え侮ってはならない。

 

 何故ならこの海にはひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を目指して世界中の海賊が集う他、偉大なる航路の外、4つの海ではめったに見られない『悪魔の実の能力者』が数多く存在し、その上でたらめな気候、異常な生態系、様々な理由により、一般常識が全く通用しない。

 

 更にここに加えて『三大勢力』と呼ばれる3つの強大な勢力、「海軍本部」「王下七武海」「四皇」が君臨しており、これらの理由から偉大なる航路は別名『海賊の墓場』と呼ばれる程である。

 

 故に、この海で生き残れる者達は悪魔の実の能力であったり、卓越した身体能力であったり、あるいは優れた頭脳、あるいは並外れた運、あるいは、その全てを持つ者だけがこの海で名声を手に入れるに値するのだ。

 

 

「その点、貴方達は良い線行ってたと思うわ。悪魔の実の能力を持った船長に、卓越した肉体を持つ部下に、優れた頭脳を持つ参謀、他にも様々な面を一人一人がカバーし合うようになっていて良いと思う。けど、絶望的に運が無かったわね

 

 

 何故ならこの私に遭遇してしまったのだから。

 そう言い放つ銀髪の美少女は、冷たく足元の海賊達を見下ろす。

 

 彼女の名はサクヤ。

 賞金稼ぎのサクヤである。

 

 

 彼女はある時ひょんな事から悪魔の実を口にし、その結果『時間操作人間』としての異能を手に入れた少女である。

 

 数年の間は海へ出る為、船や記録指針(ログポース)を手に入れる為に宿屋や飲食店等で働き、数年で準備を整えた後、自身が生まれ育った島を後にした。

 

 ……辞める際に店主に全力で止められたが、金銭以上の価値が見いだせない職場に留まっている理由など無かった。

 

 それから彼女は、自身の能力を活かして賞金稼ぎで日銭を稼ぐ日々を送っていた。

 時間を操作する能力を持つ彼女にとって、ならず者の賞金首を捕縛するのは赤子の手を捻るように簡単な事。

 

 その結果、彼女は前半の海ではそれなりに名の知れた賞金稼ぎとなっていた。

 

 曰く、銀髪の美しい少女である。

 曰く、彼女の投げるナイフから逃れられた者は居ない。

 曰く、戦闘は始まった時にはもう終わっている。

 曰く、なんなら始まる前から終わっている。

 曰く、というより気付いたら終わっていた。

 

 などなど、様々な噂が噂を呼び、今では『銀髪のサクヤ』と呼ばれ海賊達の間で恐れられるようになった。『銀髪の女を見かけたらとにかく逃げろ』というのが、海賊達の間で密かに広まる程に。

 

 その結果……。

 

「お、おい……聞いたか? 例の噂!」

「ああ……ここに来たんだろ? あの銀髪が……!」

「に、逃げようぜお頭! アイツはヤバすぎる!」

「ば、馬鹿野郎! ったりめーだろ! さっさとトンズラする準備しろ!」

 

 ある者は彼女を畏れ……。

 

「ククク……銀髪ねえ……一体どんな奴なのか、今から楽しみだぜ」

「少しは歯ごたえがある奴だと良いんだがなあ」

「どうせ大したこたあねえだろ? 少なくとも、この俺には勝てねえ!」

 

 またある者は彼女との闘いを求め……。

 

「コイツを一味に加えられたら、俺達ゃ海賊王も夢じゃねえ!!」

「海軍に彼女をスカウトするだと? うーむ……確かに彼女の能力があれば海賊達への抑止力になる、か……一度検討してみよう」

「へえ、そんな奴が居るのか……どれ、面白い奴だったら仲間に誘ってみようかね」

 

 そしてある者は彼女の力を欲した。

 しかし肝心の彼女はと言うと……。

 

 

= = = = = = =  = = = = = = = = = = = =

 

 

「今後どうしようかしら」

 

 私は人間である。

 名前はサクヤ。

 

 あれから数年が経ち、既に十二分に金は稼いで、一人で使うには少し広いぐらいの船に、文明的な生活も手に入った、この海域で生き残るための術も本で学び、これで余程の事が無ければ海でも困る事は無い、そしてその身体にはほぼ無敵の能力。

 

 いつかは完全で瀟洒、という二つ名にも届くかもしれない。

 

 ……さて、ではどうしよう。

 私は、今後の身の振り方について悩んでいた。

 なんならいっそ暇ですらあった。

 

 海賊として活動している訳ではないので、海軍からは腕の良い賞金稼ぎとして顔が知られているものの、別に犯罪を犯している訳ではないのであちらから何か言われる事はほとんどない。

 

 一度スカウトされたこともあるがその程度のモノである。

 以前は、海軍なんてゴメンだと考えていたが、安定した収入と衣食住が保証された環境というのも良いものだと思うようにもなった。

 

 一方で海賊と言うのも、気の合う仲間さえいれば悪くないと思うようになった。

 

 ……というか、海軍とか海賊とか関係無く……そろそろぼっちが辛くなってきたのだ。

 

 

 考えてもみて欲しい、今までは確かに一人で生きるのに必死であれこれ努力していた訳だが、いざ安定した暮らしが手に入ったその瞬間、振り返っても誰も居ないという孤独感を。

 

 この大きな海に、船の上で一人きり。

 ぽつんと浮かんだその場所で、海賊でも居ないかと眼を凝らすも、そうそうこの広い海で遭遇するばかりではなく、一週間に一度会えば良い方だ。彼らにとっては良い方どころかたまったものでは無いだろうが。

 

 なんなら最近私の事が噂になっているらしく、弱い海賊は私の姿を望遠鏡か何かで確認すると一目散に逃げてしまう。

 

 時間を止めて追いかければいいじゃないかって?

 

 

 残念ながら、そういう訳にもいかない理由がある。

 

 それは私が手にした十六夜咲夜の能力が、あくまでも悪魔の実の能力に過ぎないという事実。

 

 停止した世界の中でも、私は普通に物に干渉する事が出来るが、それは逆に、水や海にも干渉するという事。つまり、海に落ちたら普通に溺れるという悪魔の実の能力者特有の弱点が発覚したのだ。

 

 そして、世界が停止すると当然船も停止する。風も波も海流もピタリと止まるから、推進力が失われるのだ。

 

 それこそ凪の帯(カームベルト)でも進む事が出来るような、例えばエンジンとスクリューが搭載されている等の推進力を持つ船でも持っていたら話は変わるかもしれないが、現状「ウォーターセブンに行ったらあるかな?」ぐらいの認識である。

 

 ロープでも投げて引っ掛けて、停止した世界の中で手繰り寄せて船を乗り付ければあるいは、と考えたこともあるけど、腕力が足りなくて投げても届かない事から諦めた。

 

 ナイフを目一杯投げて沈没させると賞金が手に入らないかもしれないし、難しい。

 

 なので今は、上陸している海賊を主に狙っているというのが現状だ。

 

 

 弱点と言えば、他にもある。

 

 

 出来るかもしれないと考えていた「他人の時間を進めて老人にしてしまう」という事は不可能であるという事が分かった。

 

 一度それとなく試そうとしてみたのだが、生命あるものの時間は、操作できてもかなり制限がありそうという事が判明したのだ。

 

 植物等の成長を早めたりはたかだか数週間や数か月、長くても数年単位の時間操作で済む為に可能だったが、人の成長は数十年。

 

 老い、というレベルにまで成長させるのにはかなりの時間と集中力を必要とする。

 

 端的に言えば、身体の何処かに触れっぱなしで一晩中能力を行使してようやっと無力化できるかどうか、といった所である。

 

 相手の年齢にもよるだろうが……実用的でないのは言うまでもない。

 

 では停止した世界の中でやればいいではないか、と思うかもしれないが、それもまた不可能である。

 

 というのも、今の私の力では、同時に二つ以上の時を操る事が出来ないのだ。

 

 時間停止しながら他の物だけ時間を早くする、といった事も出来ないし、逆に、指定した範囲内だけ時間停止して、自分だけ動くという事も出来ない。

 

 感覚的に説明すると、右を向きながら左を向くぐらい難しく、ほぼ不可能。

 

 そもそも時間停止の原理が「自身が無質量で超スピードで動く事に過ぎない」というのが大きい。

 

 早めたり遅くしたりもその応用に過ぎない為、器用な真似は出来ないというのが実情だ。まあ、この世界の事だからもしかしたらいつか能力が覚醒して出来るようになるかもしれないが。

 

 私が能力を開発すればあるいは、と思わないでも無いが……能力を強くするってどうやるのよ? いっぱい使えば良いのかしら?

 

 後は、元から分かっていた事だけど、時間を戻して起こった事を無かった事には出来ないって事。

 

 まとめると、『停止した世界でも海には落ちる』『生命ある者の時は操作できない』『同時に二つ以上の操作は出来ない』『範囲を決めて止めるといった器用な操作は出来ない』と言ったものだ。

 

 ……後は、純粋な攻撃力不足とか。

 

  海楼石で出来た武器でもあれば、能力者に対しても優位に動ける……かもしれない。触れた途端私の能力も解除されたら意味無いけど、グローブや布越しなら平気なら、検討する価値はある。

 

 

 ……なんて長々と振り返ってみたは良いものの、やはりやる事が無い。

 

 やる事が無いというのは、意外と致命的に精神に来る。

 趣味に釣りでも始めようかと思って実際に手を出したら案外ハマッてしまったぐらいには。

 

 そもそもの話、私にはこの世界で生きている彼らほど、目標とか夢とか、生きて行くだけに必要不可欠な『熱』が足りないように思える。

 

 海賊王に俺はなるとか、世界一の剣豪にとか、オールブルーを見つけたいだとか、世界地図、偉大な海の男……。

 

 どれも私にとっては輝かしいと同時に、興味も無い目標であった。

 賞金稼ぎになったのだって金が欲しかったからであって、その金だって、自身の生活の質を向上させるために必要だったに過ぎない。

 

 しかし今後生きて行くにあたってずっとこのままでいいのか、と思うのだ。

 

 彼らのように、違う目的であっても、同じく夢を叶える仲間同士で結束し、同じ釜の飯を食う、そんな、友達や仲間が居たら、少しは変わるのかもしれない。

 

 

 ともかく、今のままじゃダメだ。

 私はもっと具体的に目標を定めるべきだと考え、いくつか候補を考えた。

 

 

 まず一つは『完全で瀟洒なメイドとしての完成』

 これは、私が私を形作るのに、憧れと言う形で夢見ていた物だ。

 十六夜咲夜みたいに、信頼できる主に仕えるメイドになってみたい。

 これが出来たらどんなに良いだろうと私は本気で思っている。

 

 

 そして二つは『原作への介入及び鑑賞』

 これは、この世界に生まれ落ちた以上は、この世界を、ワンピースを知る誰もが思う事ではないだろうか。

 

 例えばエースを救いたいだとか、ルフィの隣で冒険の手助けになりたいとか、原作で起こったあらゆる不幸をこの手で払ってあげたいと思うのは、読者なら自然な事では無いだろうか。

 

 だからこそ、その理不尽な不幸を拳で殴り倒す彼らの姿に興奮と感動を覚えるのだから。

 

 そしてその興奮と感動を目の前で体感したいと思うのもまた自然な事だと私は思う。

 

 他にも、謎の第三者ムーブで『ドン!』『!?』ってやってみたかったり。

 海賊団に入っておとぼけ天然キャラ(戦ったら一番強い)みたいなムーブしたかったり。

 海軍に入って正義の為にその身を捧げたり捧げなかったり。

 

 

 やるからには、それこそ命を懸ける覚悟が必要だ。

 そして今の私にはそれが無い事も自覚している。

 

 だが、だからこそ、命を懸けて何かを成そうと思う程の『熱』が欲しい、だから今、私は一歩踏み出す必要があるのだ。

 

 

 

 そうして考えて考えて考えて、私は……。

 









次回からルート分岐、分岐後は3~5話ぐらいかな?という構想で書いていきます。
ルートによっては時系列がシャボンディ諸島で再会した後だったり前だったり、グランドライン突入前だったり後だったりするかもしれません。

これから先色々戦い方とか模索していくつもりなんですけど「頭悪いなお前wこう戦えばいいじゃんw」とかあったら遠慮せず教えてください。

あと1話で海賊船で盗んだ水で身体を洗うシーン、よく考えたら全身が濡れたらダメなんじゃね?(にわか)と思ったんでこっそり「少しずつ洗った」っていうふうに書き換えたりなどしてます。姑息だねえ……。感想で「別にいんじゃね」との事なので無かった事にしました。




(2023/04/13)追記

時間停止中や加速中の物理法則に関してですが、これ系の感想ばっちくそに来てたけど(停止してんだから光とか空気も止まってるハズだ~から始まるうんぬんかんぬんみたいなやつね)少年漫画の冒険バトル漫画の世界なのと、原作(東方)でも「その辺の理屈はこうこうこうなってますよ」という具体的な解説が(調べた限りでは)無い為、光がどうのとか熱がどうのといった細かい理屈は当作品では「悪魔の実の力だから」「十六夜咲夜だから」でゴリ押します。すみません。
この世界は『心が燃え滾っているから』という理由で足とか腕が燃えたりする世界だし、これくらい許し亭許して……。


(2023/04/20)

感想にて、植物は成長させられるのに人は出来ないのは納得がいかないとの事なので、植物と人間では成長速度に差があり、無力化するまで老化させるには集中力と時間を要する(時間停止中に二つ以上の操作は出来ない為停止中に老化させることも出来ない)と言う事にしました。


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