異世界は超神見習いと一緒に (仮面ライダーペンギン)
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嫁リスト1

はい。とりあえず今考えているレイガの嫁さんたちを書き込みました。これからも物語の都合上増えるかもしれません。出す際に喋り方も変なところがあるかもしれませんが、暖かい目で読んでください。反対意見もあると思いますが、
だって好きなキャラを出したいんです。そこら辺はお願いします。
追記、更新しました。まだ設定が甘いので、後日また更新します。
更新しました7/16


レイガのお嫁さんリスト

レイガがキング爺ちゃんたち光の超神と任務で惑星に行った際に出会って彼を愛した人達。(レイガの任務期間は約10~100年間である。)今では、惑星レイガで仕事をしている。彼女らの故郷である星は全てレイガが保有している星となっているので、いつでも帰省することが可能である。結婚式は惑星レイガで行われており、恒例行事として『超神の加護授与』というものがある。これは四人の超神から加護を授けられ、永遠の愛が守られるらしい。

 

【戦国恋姫x】

『織田家』

・久遠、結奈、壬月、麦穂、和奏、犬子、雛、桐琴、子夜叉

『玲我隊』

・ひよ子、転子、詩乃、梅、雫

『足利家』

・一葉、双葉、幽

『浅井家』

・眞琴、市

『松平家』

・葵、悠季、綾那、歌夜、小波

『長尾家』

・美空、柘榴、松葉、秋子、空、愛菜、名月、沙綾、貞子

『鈴木家』

・烏、雀

『武田家』

・光璃、夕霧、薫、春日、粉雪、心、兎々、一二三、湖衣

『北上家』

・朔夜、朧、十六夜、三日月、暁月、姫野

『その他』

・鞠、白百合、エーリカ 

[出会い]わかりやすく書くと、戦国恋姫の世界で主人公がレイガになっただけです。桐琴に関しては、あの戦いにレイガも加わり彼が本気を出して鬼を一掃したが、体力を使い果たし倒れる。その後は桐琴に背負われ、レイガ隊に合流した。任務としては吉野を倒すことであり、当初はノア兄と倒す予定であったが、彼がレイガの怒りにふれ、レイガの必殺技「アルティメットブラスター」で消滅した。その後は全員と結婚し、何人かは惑星レイガヘ行き、残りは元のの星に残ったが、その星はノア兄により、レイガの所有する星となったので、いつでも会いに行けるようになった。

 

【戦国恋姫オンライン】

・ちい子、茶々良、弥耶、和泉

 

【インフィニット・ストラトス】

・束、箒、千冬、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、刀奈、簪、本音、虚、クロエ

[出会い]レイガが休暇をもらった時に訪れた星で、束のISの話を聞き彼女とISに興味ができ、個人的に彼女と仲良くなった。彼女経由で千冬とも仲良くなった。しかし、ある企業がISを戦争の道具として利用するために、束の家族を人質にされたが、レイガによって助けられた。それからは束と箒の家族、千冬は惑星レイガに移住することになった。それからは束と共にISがからんでいる事件を解決し、シャルロット、ラウラ、刀奈、簪、本音、虚、クロエはその時に出会い、保護する形として星に連れて行った。ある時に、告白され、彼女らと結婚した。なおこの世界戦では一夏はおらず白騎士事件も起こっていない。さらにIS学園はなく、惑星レイガに小規模として建てられている。

 

【ハイスクールDxD】

・リアス、朱乃、アーシア、黒歌、白音、ゼノヴィア、イリナ、ロスヴァイセ、レイヴェル、ソーナ、椿姫、グレイフィア、セラフォルー、ガブリエル、オーフィス、リリス、八坂、九重

[出会い]キングと任務で向かった際に、二天龍の争いを一人で鎮め。その後キングがその星を管理している。その後、何度か一人で行った際に、悪魔に追われていたグレイファアと八坂を救い、彼女らを保護した。その後は、グレイフィアはレイガのメイド。八坂は元の世界に戻った。またある時には実験で苦しんでいた猫又姉妹を助け、姉妹を一時的に惑星レイガに保護した。その後は黒歌は星に残り、白音は元の星で当時仲が良かったグレモリー家の眷族となった。またある時はグレードレッドを倒して、静寂な世界に戻りたいとオーフィスがお願いしてきたが、「静寂な世界よりももっと楽しい世界にいかないか」と提案を出したレイガと共に惑星レイガへ向かった。その後は「我の居場所ここ。レイガと一緒の場所」という告白まがいのことを言われ惑星レイガに移住することになった。それを聞いた他のメンバーが急いで彼に告白をして、数日後に結婚した。

 

【ラブライブ!】

・穂乃果、海未、ことり、花陽、凛、真姫、にこ、希、絵里

[出会い]サーガと任務へ行った際に出会ったメンバーであり、当時は彼女らのマネージャーをしていた。スクールアイドルに興味を持ったレイガは彼女たちと共にラブライブを目指した。別れの際に自分の正体を話したが、その後全員から告白された。しかし三年生は大学進学があったので、結婚式は全員が大学をした後になった。結婚後は全員が惑星レイガに移住し、穂乃果は饅頭屋、海未は道場、ことりは服屋、花陽は保育園の先生、凛はレストラン、真姫は医者、にこはアイドル店の店主、希は神社の巫女、絵里は学校の先生をしている。ちなみに親御さんもたまに遊びに来る。

 

【ラブライブ!サンシャイン‼︎】

・千歌、梨子、曜、ルビィ、花丸、善子、鞠莉、果南、ダイヤ

[出会い]ほぼ上記の【ラブライブ】と同じで、穂乃果たちと結婚してから十年後の世界。当時は彼女らのマネージャーをしており、全員から告白もされた。全員が大学卒業後に結婚し、惑星レイガで移住している。千歌は旅館の女将、梨子はピアニスト、曜は水泳教室の先生、ルビィはにこの店の店員、花丸は作家、善子は映画の俳優、鞠莉はホテルの社長、果南はダイビングショップの店主、ダイヤは絵里と同じ先生になった。

 

【ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会】

・歩夢、侑、かすみ、しずく、果林、愛、彼方、せつ菜、エマ、璃奈、栞子、ミア、嵐珠

[出会い]ほぼ上記の【ラブライブ】と同じである。千歌たちと結婚してから十年後の世界。大学卒業後に結婚。歩夢はメイド、かすみはパン屋、しずくは演劇人、果林は女優、愛は花陽と同じ保育園の先生、彼方は保健室の先生、せつ菜はにこの店の店員、エマはペットショップ、璃奈は束の助手、栞子はレイガの秘書、ミアは作曲家、侑と嵐珠はアイドルプロデューサーである。

 

【Toloveる】

・セフィ・ミカエラ・デビルーク、ララ、モモ、ナナ、涼子、村雨静、ティアーユ、ヤミ、古手川、西連寺、芽亜、ネメシス

[出会い]セフィに関しては、ある星で襲われているところを助けた。その後チャームが効かなことを彼女に聞かれ、理由を話すと彼女に好かれ結婚した。その後は、彼女の親戚の三姉妹と共に星に住んでいる。涼子、ティアーユはある兵器を作っている組織を壊滅した後保護した。その兵器がヤミのことである。その後涼子とティアーユは先生となり、ヤミは生徒となった。しばらくして三人から告白され結婚した。

 

【転スラ】

・シオン、ミリム、ヴェルザード、カレラ、テスタロッサ、ウルティマ

[出会い]シオンに関して、リムルと共に戦ったオーガの村の一人でその後の名付けで全員の名前をレイガが付けた。その後はレイガ専属の秘書のなった。三人の異世界人襲撃の際には、子供を庇って殺される瞬間にレイガに助けられた。それからは、レイガに対して恋心を抱き、今では秘書兼妻であり、レイガ隊第ニ隊長でもある。

ミリムに関しては、当初は自分よりも強いレイガに興味を持ってはいたが、恋愛までいっていない。その後、レイガが自分と同じ唯一無二の存在だと知り、さらにレイガに興味を持った。それからレイガといる時間が1番の楽しみになり、これからもずっといたいという理由で結婚した。

 ヴェルザードに関しては、ある時暴走していたところを止めたことがきっかけである。兄と同じもしくはそれ以上の力もまた彼女はそれ以降レイガを観察することにした。月日が経って彼に対する恋心に気づいた彼女は周りからの声援もあって結婚した。

 原初の悪魔三人は、リムルがディアブロを召喚した時と同じ時に召喚した。原作よりも実力は上である。

 

【ありふれた職業で世界最強】

・ユエ、シア、ティオ、レミア、香織、雫、恵里、愛子、リリアーナ、ノイント、ミュウ?

[出会い]ありふれの世界で、ハジメがレイガになった世界線です。当初はサーガと共に行動するはずが、なんらかの不具合でレイガだけ子供の姿で転生してしまった。それから、地球で香織と雫と出会い、親から虐待されていた恵里を救う。異世界に飛ばされてからは、ユエ、シア、ティオ、レミア、リリアーナ、ノイント、ミュウと出会い、最終戦のエヒトをワンパンしてしまう。その後は、一度地球に帰ってきて、自分の正体を明かした。その後は全員で惑星レイガに、移住して結婚している。ちなみにミュウは娘であり、未来の妻になる予定?

 

【デートアライブ】

・十香、折紙、琴里、四糸乃、狂三、耶倶矢、夕弦、美九、七罪、ニ亜、六喰、澪、エレン、真那、令音

 

【地獄先生ぬ~べ~】

・ゆきめ

 

【ゲゲゲの鬼太郎】

・葵(雪女)

 

【トリニティセブン】

・リリス、アリン、レヴィ、ミラ、アキオ、ユイ、リーゼロッテ、セリナ、聖、ソラ、イリア、アナスタシア、

 

【バトルスピリッツ】

・メガネコ(音無フミコ)、紫乃宮まゐ、ギルファム、キザクラ、アマレロ、グレナダ、エリス、早雲

[出会い]バトルスピリッツの作品でのそれぞれの主人公がレイガとなった。バトルスピリッツブレイブでは人柱になった際、神の力を使用して、消えることなく世界を救った。また、グレナダとの間に二人の息子(ヤイバとツルギ)がおる。それぞれが惑星レイガに来てすぐに結婚した。ほとんどのキャラが超神たちの惑星と同盟・移住しており、月に一度バトスピ大会も開催している。ちなみにレイガは強すぎて殿堂入りしている。

 また、スピリットたちが生息している惑星『スピリット』はレイガの担当地域である。

【ワンピース】

・ナミ、ロビン、ハンコック、ヤマト、日和、ウタ、うるティ

【ブラッククローバー】

・メレオレオナ、ミモザ

【SPY×FAMILY】

・ヨル




はい。我ながら多すぎて全員出せるか不安です。後ほとんどがパッと思いついたことを書いただけなので、設定とかガバガバです。わからない部分、文句がある部分、嫌いな部分があったと思いますが、そこは申し訳ございません。いずれ読みやすいリストに書き換える予定なので頑張ります。


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嫁リスト2

嫁リスト2を作成しました。これはどっちかというと読者からの希望作品を中心に載せようと思います。


【超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです】

・林檎、忍、桂音、葵

[出会い]超人高校生たちが子供の頃、その超人さから周りから避けられ、家族からも避けられていたところをレイガが保護した。それからは惑星レイガで各々の才能を伸ばすことを積極的に行った。18歳になってからは他の超神たちのところへ行ってもらうはずだったが、女性メンバーは全員レイガのお嫁さんになった。それからはそれぞれレイガ隊の部署で活動している。ちなみに司はレジェンド、暁はサーガ、勝人はノアの惑星へ修行しに行った。

 

【BLEACH】

・織姫、乱菊、夜一、ティア・ハリベル、ネル・トゥ、卵ノ花烈

[出会い]BLEACHの世界へサーガと行った際に、多くの事件を解決後、嫁となった。ハリベルに関しては虚圏を自然豊かな世界にして、さらにレイガ所有という形となったことで今では他の仲間たちと共に惑星レイガに住んでいる。

 

【鬼滅の刃】

・カナエ、しのぶ、真狐

[出会い]鬼滅の世界で、一人の鬼殺隊として活動していて、鬼舞辻無惨の戦闘にも加わっている。童磨に関しては、カナエが接触した時、カナエを助けた後ぶった切った。真狐を襲った鬼も倒してある。その後、惑星レイガに帰還してから結婚した。なぜか他の鬼殺隊のメンバーも惑星レイガに転生というか形で住んでいる。全員がレイガ隊に加わっている。

 

【ソードアートオンライン】

・アスナ、シノン、リーファ、リズベット、シリカ、ユウキ、アリス、ファナティオ・シンセシス・ツー、ソルティリーナ・セルルト

[出会い]ソードアートオンラインに似た異世界で出会った。ゲームではなく、実際に魔法が使える世界。様々な事件解決後惑星レイガに移住して結婚。

 

【Fate/Grand Order】

『セイバー』

・アルトリア、セイバーオルタ、アルトリアリリィ、ネロ、アルテラ、沖田総司、モードレッド、宮本武蔵

『アーチャー』

・アタランテ、織田信長、クロエ

『ランサー』

・エリザベート、スカサハ、アルトリア(槍オルタ)、アルトリア(ランサー)、サンタリリィ

『ライダー』

・メドゥーサ、ブーディカ、牛若丸、マルタ、ドレイク

『キャスター』

・玉藻、メディアリリィ、二トリクス、ダヴィンチちゃん、イリヤ、紫式部

『アサシン』

・ステンノ、謎のヒロインX、酒呑童子、静謐のハサン

『バーサーカー』

・清姫、タマモキャット、ナイチンゲール、源頼光、ヒロインXオルタ

『エクストラ』

・マシュ、ジャンヌダルク、ジャンヌダルクオルタ、BB

[出会い]ある世界でサーヴァントたちをまるで道具のように操っていた神がいて、その行いにレイガの怒りが頂点に達してそのマスターは存在自体が消えた。その後は彼らを自由にしたつもりが全員が惑星レイガに移住する形となった。男性メンバーはレイガ隊へ女性メンバーは嫁となった。

 

【フェアリーテイル】

・ルーシィ、エルザ、ウェンディ、ジュビア、ミラジェーン、リサーナ、ウルティア、カグラ、ユキノ、メルディ、アイリーン、ウル、ソラノ

[出会い]フェアリーテイルの世界へ行った際に、最初に出会ったアイリーンを保護し、ドラゴンの力を浄化した。その後はエルザが生まれるまで惑星レイガに住んでもらった。その後は修行としてエルザをフェアリーテイルへ送った。その際に、記憶を失ったウルを保護した。ウルから娘のことを聞かされたレイガはすぐにウルティアを保護し、フェアリーテイルへ送った。その後、レイガ自身もフェアリーテイルに加わって、事件を解決した。ちなみにイグニールたちは消えずに今では惑星レイガに住んでもらっており、フェアリーテイル第二拠点が惑星レイガに建てられておる。その後、結婚した。

 

【戦国bazaar】

・かすが

 

【恋愛暴君】

・グリ、茜、柚、樒

[出会い]グリの父親がキングの知り合いのということで、幼馴染という関係であった。最初こそ友達のような存在だったが、ある事件を機に恋をした。最初こそ混乱はしていたが、徐々に恋人関係になっていき、結婚した。魔王とは仲が悪い。

茜、柚、樒はある事件で知り合った。茜に関しては一目惚れでその場で告白され、スピード結婚した。※ヤンデレ率上位。

柚はお姉さまを奪った不届者と言われ、嫌われていたが、徐々に認めてもらい、さらには好きになってしまい、結婚した。樒に関しては興味本位。

 

【食戟のソーマ】

・えりな、アリス、田所、榊、竜胆、緋紗子

【出会い】創真の兄弟子ポジション。料理の見聞を広げるために修行しにきた。幼少期のえりなに偶然出会って料理を振る舞うとなぜか気に入られた。※気付いていないが、レイガの料理知識はほぼリムルから来ている。さらに料理技術は星一。しかし彼は気付いていない。

高校生になると学園に入り、様々な事件を解決していく。卒業後は惑星に帰って結婚した。今では料理の先生を行なっている。定期的に学園生活で出会った人たちと料理勝負をしている。

 

【くじ引き特賞:無双ハーレム権】

・エレノア、ミウ、ヘレネ―、イオ、デルフィナ、ナナ、メリッサ、オルティア、リカ、アウラ、

【出会い】主人公ポジション。ある魔王事件後は、全員で惑星レイガに移住した。

 

【ようこそ実力至上主義の教室へ】

・堀北、軽井沢、佐倉、椎名、伊吹、一ノ瀬、

【出会い】主人公ポジション。卒業後に正体をばらすが、全員がそれでもいいと言って、惑星レイガに移住した。




正直言いますとFateはキャラは知っていますが、ゲームをしていないでしゃべり方とかわからないです。あと、知らない作品でも自分なりに知らべて書こうと思いますが、追加してほしいキャラはいたらコメントしてください。


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原作前 レイガ 超神(見習い)となる
超神見習いになる


初めて小説を書きました。正直へたくそだと思います。
温かい目で読んでくれるとありがたいです。
お願いします。


この宇宙には多くの生命が誕生している。それらを生み出し、見守る存在が神と呼ばれる高次生命体である。神々の中でも序列があり、多くの神は一番が最高神だと思っている。しかし、その上の存在がいることを彼らは知らなかった。

 

その名は光の超神

 

現在までに光の超神は4人いる。彼らは何度も宇宙の危機を救ったことがあり、その影響で彼らを崇拝しているものは多い。彼らを知っている神々は皆、口をそろえて言う。

『光の超神はこれ以上増えない』

これは彼らの実績と存在の重さを知っているからこそ言える言葉である。しかし,誰も知らなかった。いずれ新たな光の超神の一人が現れるのを。

 

〈???サイド〉

ここは光の超神が会議のために集まる部屋である。この場所は彼らと彼らの眷族、最高神しか知らない。

今この場には光の超神の4人、ウルトラマンキング、ウルトラマンレジェンド、ウルトラマンノア、ウルトラマンサーガがいる。

 

?「ねーねーそろそろ正式に決めてもよくない」

?「そー簡単に決めるわけにはいかないだろうが馬鹿ノア。」

?「そーですよノアさん。僕もレジェンド先輩に賛成です。せめてあと1万年後にした方がいいと思います」

?「わしはノアの意見に賛成じゃ。もう彼も1人で仕事できるだろう」

 

彼らは絶賛会議中である。内容はある者の加入である。いつもならすぐに会議は終わるが、今回はいつも以上に時間がかかりそうである。

その内容とは[ウルトラマンレイガを光の超神に加えるか]である。 

ウルトラマンレイガとはこの物語の主人公であり、いままで多くの戦士とともに宇宙の危機を救った戦士である。タイガたちニュージェネレーションがグリムドことトレギアを倒す際に誕生した光の戦士。それがレイガである。その戦いの後に彼はタイガたちと分離して超神たちに拾われた。

その後は彼らのことを家族と思い、ともに行動してきた。今では自分の惑星をもち、そこで新たな家族と出会い、今では神兼王様をしている。そんな彼も序列では上級神である。超神たちは彼の実績と人柄を踏まえて,彼を超神の一人にしようと考えていた。

だが問題はいつ彼を超神にするかである。そこで意見が割れ、キングとノアは今すぐにと考えている。対してレジェンドとサーガはまだその時ではないと考えている。彼らもレイガのことを自分たちの子供や弟、後輩のようにかわいがっている。なのでしっかりとした答えを出そうと必死である。この会議は100回以上行われているが、いつも決まらない。今回も決まらないと部屋の外の眷族たちは思っていた。

しかし今回は違った。なぜなら彼らはレイガを部屋に呼んだからである。

 

 

 

 

 

 数分後

 

レイガ「失礼します。レイガ入ります」

 

部屋に青髪の少年が入ってきた。彼こそがウルトラマンレイガである。人間の姿の場合青髪の身長が170cmぐらいである。顔はとてもイケメンである。

 

レジェンド「来たかレイガ」

サーガ「まってたよレイ君」

ノア「急に呼びだしてごめんねレイガ君」

キング「おーきたかレイガ、見ない間に大きくなったな」

 

上からレジェンド、ノア、サーガ、キングが彼にあいさつした。レイガも彼らにあいさつをした。

 

レイガ「おはようございます。レジェンド先輩、ノア兄、サーガお兄さん、キングじいちゃん」

 

そこから少しの間世間話をして時間をつぶした。

 

サーガ「レイガ、今日来てもらったのは君に伝えたいことがあってね。」

 

サーガが話を会議の内容に移した。

会議の結果、レイガを光の超神見習いに任命した。

 

レイガ「超神見習い?」

ノア「そう、み・な・ら・い」

サーガ「現状それが一番の案だと思ってね」

レジェンド「ただし、見習いだと言ってもやることは俺たちとほぼ同じことだけどな」

 

レイガは見習いという言葉に少しの疑問をもった。いままで先輩たちと一緒に任務をしてきたが、これからは一人で行くのかと少し不安を感じた。

 

レイガ「あのー、もしかして一人で任務に行ったりしますか?」

サーガ「あーその予定だけど」

レジェンド「・・・やっぱり不安か?」

レイガ「はい、正直不安です。いままで先輩たちがサポートしてくれたから失敗しなかったけど、自分一人でどこまでやれるか」

キングたち「「「「・・・・・・」」」」

 

レイガのこの一言に超神の四人は唖然した。なぜならレイガは自分たちがサポートしたと言ったが、実は違う。確かにすべての任務でレイガは超神たちと一緒に行動したが、ほとんどレイガ一人だけで任務をこなしたことが多い。彼の戦いを見て超神たちは同じことを思った。

 

キングたち『『『『いや、レイガどんだけ強いん(よ)(だよ)』』』』

 

そう、レイガの強さは超神たちから見ても異常いや異次元である。なぜなら、彼はウルトラマン、スーパー戦隊、仮面ライダーの力をすべて使っていたからだ。バルタン星人に対してレオキックとライダーキックの合わせ技、キングジョーに対して戦隊ロボを召喚したりと、普通ではありえない光景に超神たちは驚いた。

 そのあとすぐにレイガからどこでその力を手にしたか聞いた。その答えに再び超神たちは驚いた。

 

レイガ「えっと、戦隊の力はアカレッド、ライダーは戦友のオーマジオウからもらって、ウルトラマンは光の国へ行って修行したら使えるようになりました」

キングたち「「「「・・・・・・・」」」」

 

この答えがとんでもないものであった。アカレッドは超神たちも知る伝説の宇宙海賊の船長であり、オーマジオウは超神たちもうかつに手が出せない魔王である。この二人に出会ったことも驚きだが、オーマジオウと戦友であることが一番の驚きであった。そのことを追求しようとしたが

 

レイガ「ごめんなさい。そのことはまだ話すことができません」

 

ならば仕方ないとその時は四人とも思った。

 

話を戻すが、彼らはレイガ一人でも任務を達成できると思っている。しかし、当の本人は不安でいっぱいだった。もとから彼は自己評価が低い方である。なので、最初の単独任務で自信をつけさせようと彼らは考えていた。

そこでキングのアイデアを採用した。

 

キング「大丈夫じゃよレイガ、最初の任務はわしの友人が関わっている星じゃよ」

レイガ「え!ほんとですかキングじいちゃん」

 

この一言にレイガは心から安心した。誰も知らない星より、何倍も安心できるから。

 

レジェンド「では、どうするレイガ。その任務を受けるかどうかはお前しだいだ」

 

レジェンドの一言にレイガは考えた。初めての任務で不安でもあるが、この任務をすることによって変われるかもしれない。だからこそレイガは力強く言った。

 

レイガ「やります。その任務、いや、やらせてください」

 

この一言に彼らはそれぞれ言葉を言った。

 

サーガ「レイガくんならそう言うと思っていたよ」

ノア「頑張ってね、レイ君」

レジェンド「その言葉をまってたぜ。レイガ」

キング「これでようやくレイガも独り立ちか。ほんと大きくなったな」

サーガ「じゃあ、これで今回の会議を終了します」

レジェンド「レイガ、1週間後には任務に行ってもらうからな」

レイガ「はい」

 

ここから始まる新たな物語

何が起こるかわからない。ただし、これだけはわかるこの任務でレイガは一回り成長するだろう。

 

 

 

 

 

 

 

ノア「そういえば、レイ君、任務に一人で行くことお嫁さんたちにちゃんと報告してね」

レイガ「あっ!」

 

ノアの一言にレイガは先ほどの会議よりも緊張した。

 

サーガ&レジェンド「「がんばれ。レイガ(君)」」

キング「青春じゃのー」




どうでしたか。超神と書いてちょうしんと呼びます。これからはいっぱいスーパー戦隊と仮面ライダー、ウルトラマンを出そうと思います。
次回から本編に入ろうと思います。
次回も見てくれるとありがたいです。


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世界神と出会う

序章の続きです。
原作でいうところのプロローグのところを書きました。
なので文は短いです。
あとお気に入りが1人いたのにビックリしました。



会議から1週間後レイガはいま雲の上にいた。

 

レイガ「初めまして、超神見習いのレイガです。今回は宜しくお願いします」

?「おー元気が良いね。初めましてレイガ君」

 

二人は畳の上に座って自己紹介をしている。レイガがあいさつした相手はキングの友人、世界神である。彼はキングたちの次に序列が高く、多くの惑星を眷族たちと共に見守ってきている。実は今回の任務は彼が出した案である。なんでも彼を一度自分の惑星へ行かせたいと考えていた。そこで、友人であるキングに相談したら、今回の話がでできた。

 

世界神「キンちゃんの言う通り元気があっていい子じゃの」

レイガ「ありがとうございます」

世界神「やっぱり若い子は元気がいいね」

 

そこから二人は互いの惑星や眷族についての話で盛り上がった。

 

 

 

 

 

数時間後

 

世界神「いやーすまない。ここまで話が長くなるなんて」

レイガ「いえ、僕も神じいちゃんとの話が楽しかったので、お互い様です」

 

この会話の中でレイガは最高神のことを神じいちゃんと呼ぶようになった。なんでも席神は孫のような存在が欲しかったようだ。

 

世界神「では、そろそろ任務について話そうか」

レイガ「はい。あの僕が行く惑星って、どんなところですか?」

世界神「レイガ君の好きな地球に似た惑星じゃよ」

レイガ「⁉。本当ですか!」

世界神「あー。確か地球でいう中世時代、半分くらいはそれに近い」

 

その言葉にレイガは心が躍った。レイガは地球という惑星が好きである。自分が生まれた場所でもあり、超神たち先輩も第2の故郷としていることから、レイガは何度も地球へ行ったことはあるが、住んだことが一度もない。

なので、今回の任務で地球に似た惑星に行けることが一番の喜びであった。

 

世界神「それで、何か必要なものはあるか?」

レイガ「んーとくにありま、あ!じゃあ一つだけお願いがあります」

世界神「ん、なんじゃなんじゃ。なんでもよいぞ」

レイガ「はい。僕の使う武器やロボをあっちでも使えるようにしてくれませんか?」

世界神「それなら可能じゃ」

レイガ「あと自分の家族と定期的に連絡したいんですけど?」

世界神「それもできるようにしよう」

レイガ「ありがとうございます」

世界神「さて、そろそろ惑星に転移するか」

レイガ「いろいろお世話になりました」

世界神「一度転移してしまうとワシは下界に干渉があまりできない。相談に乗るぐらいはできるから、困ったらいつでも連絡しなさい」

レイガ「はい」

世界神「では元気でね」

 

そういうとレイガは光に包まれていった。

 

世界神「キンちゃんたちの言う通り面白い子じゃ。しかもあの若さですでに王の風格もでできている。これからの成長が楽しみじゃ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けるとそこには青い空が広がっていた。




どうでしたか。短い文で申し訳ございません
最高神はキングの友人枠にしました。
次はあの姉妹と出会うところまで進みたいです。


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第一章
異世界に立つ


ごめんなさい。ほんとは姉妹を出したかったけどそこまでいきませんでした。
本当にごめんなさい
どうか温かい目で読んでください。


<レイガサイド>

目を開けたら空が見えた。どうやら今仰向けになっている。立ち上がって周りを見渡すと、山々や草原が広がっていた。

 

レイガ「なんか懐かしいなこの景色」

 

初めて自分の惑星を見たときと同じ景色に少し懐かしく思った。

 

レイガ「ここが神じいちゃんの星か」

 

大きな木が遠くに見え、近くに道のようなものが見えた。

 

レイガ「とりあえず道なりに進めば人に会えるかな?」

 

そう判断し、僕は歩き出した。やがて道が見えた。

 

レイガ「さてと、町はどっちかな?」

 

右へ行くか左へ行くかで悩む。早くこの星の人に会いたい気持ちがいっぱいだった。

 

レイガ「仕方ない、これを使うか?」

 

そう言って、僕はあるアイテムを取り出そうとした。その時、僕の愛用の携帯がなった。ちなみにこの携帯は僕の家族の一人が発明したもので、どこの宇宙でも使える便利なものだ。僕の星だけでなくキングじいちゃんたちの星でも使われている。

いったい誰だろうと思い、取り出してみると神じいちゃんからであった。

 

レイガ「もしもし神じいちゃん?」

最高神『おお、繋がった。無事着いたようじゃな』

レイガ「はい。けどちょうど道に迷ってて」

最高神『そうか。ならちょうどよかったの。さっき、君のお嫁さんの一人が君の携帯にそっち世界用のマップや方位を作ったからダウンロードしてねと連絡が入ってね』

レイガ「そうなんですか!」

 

神じいちゃんの言葉に驚いたが、何となく予想はできた。彼女は任務へ一人で行くことを聞いてから、僕から内緒で用意していたんだろう。本当に彼女は天才だ。あとで感謝の言葉を伝えよう。

 

レイガ「連絡ありがとうございます。神じいちゃん」

最高神『いいんじゃよ。君は妻に愛されてるね。』

レイガ「はい(/ω\)」

最高神『マップを使えば迷わず町に着くじゃろう。では頑張ってな』

レイガ「ッ! はい、では」

 

電話を切って、すぐに僕はデータをダウンロードした。

 

数分後

 

レイガ「よし、じゃあ行きますか」

 

僕はダウンロードしたデータをもとに西の方にある町へ向かった。

 

 

 

 

 

しばらく歩いていると後ろから音がしてきた。なんだろうと思い振り返ると遠くから馬車が向かってきた。多分だれか乗っているだろうと思い、話しかけようと思ったが、どうしたものか。

 

止める? 呼びかける? どうしようか迷っていたら馬車が僕を通り過ぎた。

 

レイガ「はー、仕方ないか、今回はあきらめよう」

 

そう思い、また歩き続けようとした。その時、馬車が急に停まった。なぜだろうと思ったその時

 

?「君! そこの君!」

 

馬車の扉から白髪と立派な髭をたくわえた紳士がでてきた。

 

レイガ「何でしょうか・・・?」

 

ガシッと肩を掴まれ、ジロジロと僕の体いや服を見ていた。

 

?「こっ、この服はどこで手に入れたのかね⁉」

レイガ「えっと・・・」

 

どう答えようか僕は迷った。この世界の物ではないと言っても信じてもらえるか。

そんな間も紳士は僕の服を眺めていた。

 

?「見たことのないデザインだ、そしてこの縫製・・・いったいどうやって・・・うむむ」

 

いったいどうしようか。この服は僕の嫁が作ったものの一つだから渡したくない。迷っていたがいい案を思いついた。

 

レイガ「あのー、この服は渡せませんが、これ以外の服なら渡しましょうか?」

?「本当かね⁉」

 

そう言って僕は異空間から何着か星で売られている服を取り出して渡した。

 

?「⁉ 君は収納魔法を使えるのかい」

レイガ「はい」

 

これは僕が使える魔法の一つでなんでも収納できる。ちなみに服以外にも武器やロボ、食べ物も入っている。

 

?「そうか。しかし、どの服も見たことのないデザインばかりだ。本当に全部もらっていいのか?」

レイガ「はい。その代わり次の町まで乗せてもらえませんか?」

?「よかろう!馬車に乗りたまえ。次の町まで乗せてあげよう。そこでその服を売ってくれればいい」

レイガ「ではお願いします」

 

僕は紳士の人と固い握手を交わした。そのまま馬車に乗り,次の町まで三時間ほど揺られた。その間お互い自己紹介をした。紳士の方ザナックさんと言い、服飾に携わっているのだそうだ。ちなみに僕はこの星で光神 玲我(こうじん れいが)という名前にした。これは以前ノア兄が考えてくれた名前だ。

 

そのあとはザナックさんは僕の渡した服を受け取り、手触りや縫い目などを興味深く確認していた。

 

僕は何をしていたかだって? 僕はずっと外の風景を見ていた、見たことがない世界。今日から僕はここで新たな生活を過ごすんだ。




どうでしたか。
今回でレイガの嫁が一人分かった人がいるかもしれません。
次回こそは姉妹を出したいです。


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宿屋に泊まる

はい、ようやく町に着きます。
最後の方にはようやくあの姉妹が出ます。
原作とセリフがほぼ一緒ですが、温かい目で見てください。


<レイガサイド>

ザナックさんと出会ってから三時間。馬車は目的の町”リフレット”に着いた。

町の門番にあいさつと軽い質問され、早々に入ることを許された。兵士たちの態度からどうやらザナックさんは結構有名らしい。

町中を進んで行くと、商店が並び、大通りに入ると一軒の店の前で馬車は止まった。

 

ザナック「さあ、着いたぞ、降りてくれ」

 

ザナックさんに言われるがままに、僕は馬車を降りた。店の看板を見て少し驚いた。

 

レイガ(『ファッションキングザナック』ってネーミングセンスが・・・)

 

ザナックさんはこの店のオーナーなのかな。でも、ネーミングセンスがちょっと残念だなと思ってしまった。

そしてザナックさんと一緒に店内に入ると数人の店員たちが僕らを迎えた。

 

店員「お帰りなさいませ、オーナー」

 

この光景に少し懐かしいと思った。僕の星にも服屋はあるが、毎回僕が入ると店員全員が僕を迎えた。何度も「全員で迎えなくてもいいよ」といっても毎回行われる恒例行事となった。

 

そのあと僕はザナックさんに服を渡した。

 

ザナック「それでいくらで君の服を売ってもらえるかね。むろん、金に糸目はつけんが、希望額はあるかい?」

レイガ「と言われても・・・相場がわからないので何とも言えません。実は僕、一文無しなんですよ」

ザナック「そうかね・・・そりゃ気の毒に・・・よし、じゃあ金貨十枚でどうだろう?」

レイガ「では、それで」

 

僕は金貨十枚を渡された。金貨にはライオンのようなレリーフが彫られていた。このライオンの顔どっかで見たことがあるな?。どこでだろう?

ん・・・あッ! この顔ギンガレオの顔に似てる。いいなこれ、僕の星でも作ろうかな。

そんなことを考えていると、ザナックさんに一つ聞きたいことを思い出した。

 

レイガ「ところでこの町の有名な宿屋はどこですか?」

 

ダウンロードしたマップには宿屋の情報も載せてあるが、どうせなら現地の人から聞いてみたいと思った。

 

ザナック「宿屋なら前の道を右手にまっすぐ行けば一軒あるよ。『銀月』って看板出てるからすぐわかる」

レイガ「わかりました。ではこれで」

ザナック「ああ。また珍しい服を手に入れたら持ってきてくれたまえ」

 

ザナックさんに別れの挨拶をしてから外を出た。

 

 

 

 

 

しばらく歩くと宿屋『銀月』の看板が見えた。看板は三日月のロゴマークの形をしていた。建物は三階建てで、煉瓦と木でできた、がっしりとした造りであった。

両開きの扉をくぐると、一階は食堂らしき感じとなっていた。

 

?「いらっしゃいませ。食事ですか。それともお泊りで?」

 

赤毛のポニーテールのお姉さんが声をかけてきた。

 

レイガ「えっと、宿泊をお願いしたいんですが、一泊いくらになりますか?」

?「ウチは朝昼晩食事付きで銅貨二枚だよ。あ、前払いでね」

 

まだこの星の金銭感覚がわからないので、金貨一枚で確認しようと思った。

 

レイガ「すいません。金貨一枚で何泊できますか?」

?「何拍って・・・五十泊でしょ?」

レイガ「へぇ⁉」

 

お姉さん不思議そうに僕を見てきた。金貨一枚で五十なら銅貨百枚ということか。

 

レイガ「変なことを聞いてすみません。ひと月分お願いします」

?「はいよ。ひと月ね。最近お客さんが少なかったから助かるわ。ありがとうございます。ちょっと今、銀貨切らしているから銅貨でお釣りね」

 

金貨一枚を渡すと、お姉さんはお釣りに銅貨四十返してきた。

その後お姉さんは宿帳とインクの付いた羽ペンを取り出してきた。

 

?「じゃあここにサインをお願いしますね」

レイガ「わかりました」

 

名前を書いてお姉さんに渡した。

 

?「えっとー、光神玲我(こうじんれいが)コウジン?珍しい名前ね」

レイガ「いや、名前が玲我で、苗字・・・いや家の名前が光神です」

?「ああ、家の名前と家名が逆なのね。イーシェン生まれ?」

レイガ「あー・・・まあ、そんなところです」

 

なるほどここでは名前が先で家名は後なんだ。それにしてもイーシェンって地球でいうところの日本なのかな?後で調べようか。

僕はそう思い、この後することを決めた。

 

?「はい。部屋の鍵ね。場所は三階の一番奥、陽当たりが一番いい部屋よ。あとトイレと浴場は一階、食事はここよ。あ、どうする、お昼は食べる?」

レイガ「せっかくなのでお願いします」

?「じゃあなにか軽いものを作るから待ってて」

レイガ「その間部屋で休んでてもいいですか?」

?「いいよ。出来たら教えるから」

レイガ「ありがとうございます」

 

そう言って、鍵を受け取り自分の部屋へ向かった。部屋は六畳くらいで、ベッドと机、いすとクローゼットが置いてあった。窓を開けると宿の前の通りが見えた。

子供たちがはしゃぎながら道をかけていく姿を見て

 

レイガ「やっぱどこの世界でも子供の元気に遊ぶ姿はいいな」

 

とつぶやく。

それからお姉さんに食事ができたと呼ばれたので食堂へ向かった。

 

?「はいよー。お待たせ」

 

食卓の上には、サンドウィッチとスープ、そしてサラダが置かれていた。この世界初めての食事はとても満足で、おいしかった。

完食後は町の様子を見るために散歩に出かけた。

 

レイガ「では、行ってきます」

?「はいよー、行ってらっしゃい」

 

 

 

 

 

しばらく町を歩いてみると、武器を持ち歩いている人が多いことがわかった。

なるほど、これがこの世界の常識なのか。

と僕は思いながら歩き続けた。

 

レイガ「まずお金をどうやって稼ごうか? しばらくこの世界で住むから、お金は必要だよなー」

 

そう言い、何かいい案はないかと考えていた時

 

「ん?」

 

何だろう。あそこの裏路地から言い争うような声が聞こえる。

 

「・・・行ってみるか」

 

そうして僕は裏路地へ入った。

そこで、二人の少女と二人の男が言い争っていた。




どうでしたか。
次回は姉妹との会話を入れたいです。
後、あのアイテムも出そうと思います。
お気に入りが一人増えていたのでビックリしました。
ありがとうございます。


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姉妹との出会い

こんばんわ、今回で姉妹の招待が分かります。
あとお気に入りがまた増えました。本当にありがとうございました



〈レイガサイド〉

 

裏路地に入っていくと、二人の少女と二人の男が言い争っていた。男はどちらもガラが悪そうに見えた。一方、少女のほうはどちらもかわいかった。にしてもあの二人はかがそっくりだ。双子かな?髪型がショートとロングの違いがあるが、髪の色が同じ銀髪だし。見た感じロングのほうは活発で、ショートのほうは清楚さ、その性格の違いがわかる。

 

?「約束が違うわ!代金は金貨一枚だったはずよ!」

 

ロングの子が男たちに向かって声を荒げた。それに対して男たちはニヤニヤと馬鹿にした薄笑いを浮かべていた。

 

男「何を言ってやがる。確かにこの水晶鹿の角を金貨一枚で買うと言ったが、傷物でなければ、だ。よく見ろよ。ここに傷があるだろう?だから銀貨一枚さ」

 

そう言って銀貨一枚を足元に投げた。

 

?「そんな小さな傷、傷物に入らないわよ!あんたたち初めからっ・・・!」

 

ロングの子が悔しそうな目で男たちをにらんでいた。ショートの子も後ろに隠れて悔しそうに唇を嚙んでいた。

 

レイガ(はあ、どこの世界にもあんな奴らはいるんだな)

 

と僕はあきれながらそう思った。

 

? 「・・・もういい。お金はいらない。そのかわり角は返してもらう」

男「おっと、そうはいかねえ。もうこれはこっちのもんだ。お前らに渡すつもりは」

レイガ「ちょっといいですか?」

男「!?」

 

さすがに見過ごせないと思い、僕はある武器を取り出してから男に話しかけた。

すると全員の姿勢が僕に集まった。少女たちはキョトンとしていたが、男たちは険悪な目を向けてきた。

 

男「あ?なんだテメエは?俺たちになんか用か?」

レイガ「いえ、用があるのはそちらの彼女たちで」

?「え?あたし?」

 

男のほうを無視して、ロン毛の子に声をかけた。

 

レイガ「そう。あなたの角を金貨一枚で売ってくれませんか?」

 

しばらくポカンとしていた彼女だが、理解した瞬間僕の提案に笑顔で返事をしてくれた。

 

?「売るわ!」

男「テメエら、何勝手なことを言ってやがる! これはもう俺たちのもん」

 

バンッ!

 

男「ッ⁉」

 

男が角を持ち上げた瞬間、それは粉々に砕け散った。

なぜ?

答え簡単。

僕がそれを撃ったから。全体が赤く、鳥の顔が描かれた機関銃。

このギアトリンガー

この銃は僕が戦隊やライダー、ウルトラマンの力を使う際に必要となるアイテムであり、武器でもある。

 

男「なっ・・・⁉ なにしやがる!」

レイガ「だってそれはもう僕の物だから、何をしようが僕の勝手だよね。あ、お金はちゃんと払うから」

男「野郎!」

 

男の一人がナイフを取り出し、襲い掛かってきた。なので、僕はすぐにギアトリンガーで彼を撃った。

殺してないよ! 非殺傷モードだから一日気を失うだけだから。

 

レイガ「ふう」

 

そう言って、もう一人の男のほうを向くと、ロングの子が戦っていた。よく見たら彼女は両手にガントレットをつけていた。

しばらくすると男の顔に彼女の右ストレートが炸裂し、男は倒れた。おーお見事。

彼女中々強いなーと思いながら、僕は財布から金貨一枚をロングの子に渡した。

 

レイガ「はい。金貨一枚」

?「・・・いいの?あたしたちは助かるけど・・・」

レイガ「いいの。構わないから」

?「じゃあ・・・遠慮なく」

 

そう言って彼女は受け取った。

 

エルゼ「助けてくれてありがとう。あたしはエルゼ・シルエスカ。こっちは双子の妹、リンゼ・シルエスカよ」

リンゼ「・・・ありがとうございました」

 

ぺこりと後ろにいたショートの子が頭を下げて小さく微笑む。

やっぱり双子だったか。ロングの子がエルゼ、ショートの子がリンゼ。

 

レイガ「僕は光神玲我。玲我が名前ね」

エルゼ「へえ。名前と家名が逆なんだ。イーシェンの人?」

レイガ「まあ、そんなとこ」

 

 

 

 

 

エルゼ「そうかー。玲我もこの町に来たばかりなんだ」

 

と、ジュースを飲みながらエルゼが話しかけてきた。

あれから僕たちは宿屋『銀月』に戻ってきた。ちょうど彼女たちも宿屋を探していたようだ。なのでここを紹介したら宿の姉さんミカさんはホクホクしていた。

そのまま三人で食事をすることになり、いろいろ話をしながら夕食を食べ終え、お茶を飲んでいた。

 

エルゼ「あたしたちもあいつらの依頼でここに水晶鹿の角を届けに来たんやけど、ひどい目に合ったわ。なーんか胡散臭いなーとは思っていたんだけどさ」

リンゼ「だからやめようって私は反対したのに。お姉ちゃん、いうこと聞いてくれないから」

レイガ「んーなんで二人はあいつらの依頼を受けたの?」

 

疑問に思ったことを聞いてみた。だっていかにも怪しい奴らだったから。

 

エルゼ「ちょっとしたツテでね。あたしたち、前にも水晶鹿を倒して角を手に入れたんだけど、欲しいって話が来てね。でもだめだねー。やっぱギルドから依頼を受けないとトラブルに巻き込まれるね」

 

ため息をつきながらエルゼが目を伏せた。

 

エルゼ「この機会にギルドに登録しよっか、リンゼ」

リンゼ「その方がいいと思う。安全第一。明日にでも登録しに行こうよ」

 

ギルドか。僕の星にもあったが、僕は入ってないんだよな~。

なぜかみんな反対するんだよな~。

これも何かの縁だし、僕も入ってみようか。

 

レイガ「良かったら明日、僕もついてっていいかな。ギルド登録したいんだ」

エルゼ「いいよ。それなら一緒に行こう」

リンゼ「うん。一緒に行こう」

 

二人とも快く承諾してくれた。これでこの世界に棲むためのお金を稼ぐことができる。

その日はそれで二人と別れ、自分の部屋に戻った。

ようやく一日が終わる。初めての単独任務で、最初こそ不安であったが、この星の人のおかげで楽しく過ごすことができてる。自分の星意外とこれほどの関係を築くのは初めてだ。

だからこそ感謝の言葉を言いたい

 

レイガ「ありがとうキングじいちゃん、ノア兄、レジェンド先輩、サーガお兄さん、神じいちゃんそして僕の星のみんな。僕一人でも頑張るよ。この星でいっぱい多くのことを経験して、いつか絶対五人目の光の超神になるよ」

 

そう呟いて、僕はベッドにもぐりこんで、寝た。




どうでしたか
今回やっとスーパー戦隊ネタを出すことができました。ギアトリンガーは次回からも多く出させようと思います。


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ギルド登録

こんばんわ
今回話の中でいろいろと省いているところがあります。
原作好きの方は申し訳ございません。


〈レイガサイド〉

次の日

ベッドから起きて顔を洗い、身支度を整え、食堂に降りていくと、エルゼとリンゼ二人が食事をとっていた。僕も席に座り朝食を取った。ちなみに今日はパンにハムエッグ、野菜スープにトマトサラダ。とてもおいしかった。

食べ終えて早速三人で町の中央にあるギルドへ向かった。

ギルドの一階は飲食店になっており、とても明るい雰囲気だった。うちの星と雰囲気が似ていてちょっと懐かしくなった。カウンターへ向かうと受付のお姉さんがにこやかに微笑んでくれた。

 

レイガ「あの、ギルド登録をお願いしたいのですが?」

受付「はい。かしこまりました。そちらを含め、三名様でございますか?」

レイガ「はい。三人です」

受付「三名様ともギルド登録は初めてでしょうか?でしたら簡単に登録の説明をさせていただきますが?」

レイガ「じゃあ、お願いします」

 

それから説明が小一時間程度の説明を聞いた。

 

受付「以上で説明を終わらせていただきます。わからないことがあればその都度、係りの者にお尋ねください」

レイガ&エルゼ&リンゼ「「「わかりました」」」

受付「ではこちらの紙に必要事項をご記入ください」

 

僕たちは用紙を受け取り、記入をした。

お姉さんに登録用紙を渡すと、彼女は真っ黒なカードをその上にかざし、呪文を唱えた。どんな呪文かは僕にはまだわからなかった。だってまだこの星の呪文知らないもん。

その後小さなピンをもらい、自分の血をカードに染み込ませるように言われた。

 

受付「このギルドカードは偽造防止のためご本人以外が触れますと数十秒で灰色になる魔法が付与されております。また、紛失された場合速やかにギルドに申し出てください。お金はかかりますが、再発行させていただきます」

レイガ(へ~そんな仕掛けがあるんだ。これはいいな。うちのギルドにも導入しようかな)

 

と、僕は自分の星の新しいギルドカードの案を考えていた。

 

受付「以上で登録は終了です。仕事依頼はあちらのボードに貼られていますので、そちらをご確認の上、依頼受付に申請してください」

 

三人で依頼が貼りだされているボードの前に立った。僕らのギルドカードは黒色、つまり初心者を表している。ランクが上がればカードの色が変わっていくらしい。ちなみにうちのギルドは初心者が水色であり、一番上が金色だ。

三人で考え込みながら一枚一枚読んで検討している。本当に様々な依頼があるな。ありきたりなドラゴン討伐や薬草取り。その中でも今回僕たちが選んだのは魔獣の討伐だ。

 

エルゼ「ね、ね、これどうかな、リンゼ。報酬もそこそこだし、手始めにいいんじゃない」

リンゼ「・・・うん。悪くないと思う。玲我さんはどうですか?」

レイガ「うん。僕も最初はそれぐらいでいいと思うよ」

 

依頼内容は一角狼という魔獣を五匹。報酬は銅貨十八枚であった。

 

エルゼ「オッケー。じゃあ受付に申請してくる」

 

エルゼが依頼の貼り紙を引っぺがし、受付に申請しに行った。この星での初めて依頼僕は心の中でわくわくしていた。

 

そのあとは武器屋へ行き、エルゼは脚甲をリンゼは銀のワンドを買った。どうやら、エルゼが前衛での打撃攻撃、リンゼが後衛での魔法攻撃らしい。あと、ここの店主の熊さんと仲良くなった。

その次は道具屋へ行き、水筒、携帯食、釣り針や糸、はさみ、ナイフ。マッチなど便利なものがセットになったツールボックス、薬草、毒消し草などを僕は買った。エルゼたちはすでに持っていたのでここでの買い物は僕だけだった。よし準備は整った。いざ出発!

 

 

 

 

 

東の森に向かって歩いて約二時間。今僕たちは森の中で一角狼を探していた。

しばらく歩いてみると右手前方から二つの敵意を感じた。

 

レイガ「気を付けて。何かいる」

 

僕がそういうと二人は戦闘態勢移行した。僕も左手にギアトリンガーを持った。

すると、森の中から黒い影が飛び出し、襲い掛かってきた。

 

レイガ「ッと!」

 

その攻撃を回避して姿を見ると、一角狼であった。名前の通り見た目が狼に額から角が生えたものだった。

一角狼はすぐに攻撃に移ろうとしたが、僕はその前にギアトリンガーで狼を撃った。

その間にもう一匹がエルゼに向けてとびかかったが、彼女はそいつに正面から向かい合い、渾身の一撃を狼の鼻面に叩き込んだ。まさに一撃必殺。狼はそのまま動かなくなった。

その後にすぐ新手の狼が四匹現れ、うち二匹がこちらに向かってきた。

 

リンゼ「【炎よ来たれ、赤の飛礫、イグニスファイア】」

 

その声が聞こえたと同時に、狼の一匹が炎に包まれ火だるまになった。おーまるでクウガアルティメットの超自然発火能力みたいだ。あれはあれでやばいからな。

 

エルゼ「片付いたわね。依頼は五匹討伐だったけど一匹多く仕留めちゃったね」

 

そう言ってエルゼがガントレットをガンガン打ち鳴らす。全部で六匹、一人二匹ずつ倒したことになる。

さて、討伐した証拠に狼たちの角を持ち帰らなければならない。角を切り落とそうとしたとき

 

リンゼ「・・・あのー玲我さん」

レイガ「ん、何リンゼ?」

リンゼ「玲我さんが持っているその武器は何ですか? 最初に出会ったときにも使っていましたが、・・・そんな武器初めて見ました」

エルゼ「あっ、それ私も思った」

レイガ「あ・・・」

レイガ(どうしようか。この世界の物じゃないって正直に言うべきか。いやでも)

 

困ったことが起きた。そうリンゼがギアトリンガーについて聞いてきたからだ。やっぱりこんな派手なものだからいつか聞いてくるとは思っていたけど、こんな早く聞いてくるなんて。迷った挙句

 

レイガ「これはギアトリンガーと言って僕が作ったものなんだ。武器以外にも様々な使い方があるんだけどそれはまた明日でもいい?」

リンゼ「・・・はい。わかりました。ごめんなさい。急に聞いてしまって」

レイガ「全然いいよ。どうせ仲間なんだし聞きたいことがあったら何でも聞いていいよ」

リンゼ「///はい」

今回はそう言って話を終わらせた。

 

 

 

 

 

ギルドへ帰ってきて依頼完了の手続きと一角狼の角五本を受付のお姉さんに渡した。残った一本は記念に取っておくことにした。

 

受付「はい、確かに一角狼の角五本、受け取りました。ではギルドカードの提出をお願いします」

 

僕らがカードを渡すと受付はその上に判子のようなものを押し付けた。ある程度溜まるとランクが上がってカードの色が変わるんだとか。

 

受付「それではこちらが報酬の銅貨十八枚です。これにて依頼完了になります。お疲れさまでした」

 

受付のお姉さんから報酬を受け取ると、三人で六枚ずつ分けた。

 

エルゼ「ねえねえ、初依頼成功を祝ってどこかで軽く食事でもしていかない?」

 

ギルドを出ると、エルゼがそんなことを言い出した。いい考えだと思った。それにちょっと頼みたいこともあった。

僕らは町中にある喫茶店に入ることにした。僕はホットサンドとミルク、エルゼはミートパイとオレンジジュース、リンゼはパンケーキと紅茶をそれぞれ注文した。

 

レイガ「あのさ、二人に頼みがあるんだけど」

エルゼ「頼み?」

リンゼ「うん、魔法も教えてもらえないかな」

エルゼ&リンゼ「「え?」」

ハモった。なに? そんなに変なお願いした?




どうでしたか
リンゼの魔法がクウガの必殺技T似ていたので書いてみました。
ちなみに、レイガが持つ携帯をスマホにしました、
次回はあの侍の子を出したいです。


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指輪の魔法

こんばんわ
侍の子までいけませんでした
予想よりもゲートの下りが長くなった。
今回も結構省いているところが多いです。ごめんなさい


〈レイガサイド〉

 

エルゼ「魔法を教えてほしいって・・・玲我、適性あるの?」

レイガ「適性?」

 

なんだそれ?

 

リンゼ「魔法は、生まれ持った適性によって大きく左右されるん、です。・・・。適性がない人は、どうやっても魔法を使うことはできません・・・」

 

なるほど僕の星ではどんな人や魔物も努力次第では魔法が使える用になる。でもこの星では生まれた時点ですでに決まっているんだ。

 

レイガ「適性があるかどうか、わかる方法ってないの?」

 

僕の質問にリンゼは腰のポーチからいくつかの透明感のある石を取り出した。色はさまざまで赤や青、黄色に無色まである。

 

「これなに?」

「これは魔石です。これを使って適性を調べることができます。大雑把にです、けど」

 

そう言って、リンゼは青色の魔石をつまみ上げ、空のコップの上に持ってきて

 

リンゼ「【水よ来たれ】」

 

リンゼがそう言葉をつぶやくと、魔石から水が流れ出てきた。おお、こうやって適性を調べるんだ。

次にエルゼがリンゼと同じようにしたが、水は出なかった。

 

エルゼ「水の適性がないとこうなるの、だからあたしは水の魔法が使えないわけ」

 

なるほど、適性がないと魔石からは何も出ないのか。

 

「お姉ちゃんは、水の魔法を使えない代わりに身体強化の魔法が使えます・・・。逆に私は身体強化ができません。身体強化の魔法にもその適性が必要です、から」

 

なるほど身体強化か。

僕はわくわくしながらリンゼから魔石を受け取り、適性を調べた。

 

 

 

 

 

結果? 全部の属性の適性があったよ。まあなんとなく全部使えると僕は感じていた。なぜって?僕一応神様なんで。これで一個も適性なかったら泣くぞ。

全部の適性がわかったとき二人とも目を見開いて唖然としていた。なんでも全部の属性を使える人は一人もいなかったらしい。最大でも六つらしい。さらに言えば僕の魔力量も異常だと言われた。異常はさすがに言いすぎだと思った。

宿に着いた後はそれぞれ部屋に戻った。僕は気になったイーシェンの場所を調べた。すると、ここからだいぶ東、大陸の果てを超えた島国だとわかった。ウルトラマンになればすぐに行けるけどどうせならエルゼとリンゼの三人で行きたいので、いつか行く機会があったら行きたい。そのあとはすぐに就寝した。

 

 

 

 

 

次の日

今日はリンゼと(この星の)魔法についての勉強だ。ちなみにエルゼはやることがないから、一人でできる採取の仕事をしてくるって朝からギルドへ出かけて行った。

 

リンゼ「えっと・・・では、始めます。」

レイガ「はい」

 

少し緊張しているか、リンゼがたどたどしく宣言する。どうも彼女は人見知りというか、おとなしすぎる印象がある。でもそこがかわいい。

おっと失礼。でも出会ったときからしたら、だいぶ打ち解けてきたと思う。けどまだなんかよそよそしい。

それからリンゼとの魔法勉強は楽しかった。とても分かりやすかった。中でも僕が興味を引いたのは無属性魔法である。どうやら無属性は特殊な魔法で同じ魔法を自分以外持っていることが珍しい。エルゼも無属性魔法を持っていて【ブースト】という身体強化魔法らしい。その中で【ゲート】と呼ばれる魔法は自分が行ったことがある場所なら遠くでも移動できるらしい。それを聞いた僕は

 

レイガ(いや、ウィザードのコネクトやん)

 

と思ってしまった。多分この魔法も僕は使える。理由?何となくです!

 

レイガ「じゃあやってみよ!」

 

その時僕は思いついたこれを利用してギアトリンガーの力を教えるということを。

 

レイガ「リンゼ今からギアトリンガーの力を見せてもいい?」

リンゼ「⁉ほんとですか」

レイガ「うん。とりあえずまずはエルゼを呼んでからね」

リンゼ「・・・はい?」

 

そう言って僕はギアトリンガーと銀色の歯車。ライダーギアを取り出した。その中央には仮面の戦士の顔が描かれていた。

ギアトリンガーの上部の蓋を開けてギアをセットし、閉じた。

 

「チェンジ 全開!」

 

横のハンドルを回した。その最中リンゼは唖然としていた。

 

『カメンライダー』

 

ギアトリンガーから音がなり、音楽が流れた。

 

リンゼ「ッ⁉」

 

リンゼは突然の音にびっくりしていた。これからもっと驚くよ。

 

レイガ「ハッ」

 

僕はトリガーを引くと

 

『ババン! ババン! ババン! ババン! ババババーン! ウィ・ザード!』

 

銃口から大きな歯車のエフェクトが出てきて中央には仮面ライダーウィザードが決めポーズを決めていた。その後僕の体に吸い込まれた。

次の瞬間、僕の腰にはウィザードライバー、左右の中指にはウィザードリングがはまっていた。

 

リンゼ「・・・玲我さん、今のは」

レイガ「もうちょっとまってね」

 

そういうと僕は右手の指輪をドライバーにかざした。

 

『コネクト! プリーズ!』

 

音声がなると、僕の真横には魔法陣が展開された。

僕が魔法陣に顔を突っ込むと、視界に飛び込んできたのは広がる森と、尻餅をついたエルゼだった。

 

レイガ「・・・なにしてんの、エルゼ?」

エルゼ「なっ、なっ、なにって・・・玲我⁉ どうなってんの、これ⁉」

 

一旦顔を引っ込め、リンゼの手を引いて一緒に森の中へ移動した。

パ二クるエルゼにリンゼが説明した。どうやらギルドの依頼で薬草を採取していたところ、謎の魔法陣が現れ、僕の顔が出てきて腰を抜かしたらしい。まあ、そうなるか

 

リンゼ「玲我さん、これは【ゲート】ですか?」

レイガ「あー、一応そうかな」

エルゼ「それにしても全属性使えるって・・・あんたちょっとおかしいわよ」

 

呆れたようにエルゼがつぶやいた。別にいいじゃん。泣くよ。

 

リンゼ「全属性使える人なんて聞いたことがありません。すごいです。玲我さん。」

 

エルゼとは逆に感心しきりのリンゼ。ちょっとうれしかった。

その後ギアトリンガーの力について二人に話した。話した内容としては[ギアトリンガーにギアをはめることでその人物の力を使うことができる]ということにした。今回使用したギアは上級魔法使いの力とした。二人はそれを聞いてさっきの全属性の時よりも驚いていた。「どうやって作ったんですか?」と聞かれた際には、「ある遺跡の設計図を利用した」と答えた。二人はこれで納得できたので良かった。他にもどんな能力があると聞かれたときは「それは後のお楽しみ」とにやけ顔で言ったら、エルゼに腹パンされた。なんで!そこで一応話は終わった。

とりあえず帰りはそのまま【ゲート(仮)】で帰ってきた。

 

エルゼ「行く時は二時間かかったのに、帰りは一瞬。便利ね、この魔法」

 

そう言うとエルゼは、依頼を終わらせてくる、とギルドへ行ってしまった。

あー-疲れた。今日のお昼は何だろう




どうでしたか
ギアトリンガーとウィザードの説明は難しかったです。アドバイスがある方は教えてください。
一応ライダーのギアは銀色にしました。
次回は侍の子を絶対に出します。


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アイスクリーム

本当にごめんなさい
この話を入れたら侍の子まで行きませんでした。本当に申し訳ございません。



<レイガサイド>

僕らが食堂に戻ると、ミカさんと少しウェーブがかかった黒髪の女の子がいた。いったい誰だろう? 白いエプロンをしているから料理関係の人だろうか?

 

レイガ「ただいま。ミカさん」

ミカ「おかえりなさい。ああ、ちょうどよかった」

レイガ「なんですか?」

 

僕らの前に隣の彼女を連れてきた。

 

ミカ「この子はアエルって言ってね。町で『パレント』って喫茶店をやってるんだけど・・・」

レイガ「ああ、昨日行きました。いい雰囲気のお店ですよね」

ミカ「その店で新メニューを店でだろうかと考えているんだけど、あんたたちにも聞いてみたいと思ってさ。別の国の人なら、何か珍しいメニューを知ってるかもと思ってね」

アエル「何かいい料理があれば教えてほしいんです」

そう言ってアエルさんは頭を下げた。僕はリンゼと顔を見合わせ小さくうなずいた。

 

レイガ「僕らでよければ」

リンゼ「・・・はい」

エルゼ「ところでどんなものを出そうと思ってるんですか?」

アエル「そうですね・・・やっぱり軽く食べられるもの、ですかね。女子受けするもの、例えばデザートとかがいいんですが・・・」

 

デザートか。うーん? 何だろう?

あっ! そういえばあれはこの世界にあるのかな。まだ一度も見かけていないし、聞いてみようか。

 

レイガ「すいません。アイスってありますか?」

アエル「アイス? 氷ですか?」

レイガ「いえ、アイスクリームのほうです」

アエル「アイスクリーム?」

 

ん? これはもしかしてこの世界にないのかな?

 

アエル「どんな料理何ですか?」

レイガ「甘くて冷たいデザートです」

アエル「・・・いえ。聞いたことないです」

 

おーまじか! ならこれを紹介しよう。久しぶりに食べたいし。

 

レイガ「じゃあ、今から作り方を教えるのでちょっとまっててください」

 

そう言って僕ばスマホを取り出し、料理アプリを開いて、アイスクリームの作り方を調べた。

 

リンゼ「・・・それ、何ですか」

 

スマホを操作する僕に、不思議そうにリンゼが尋ねてきた。

しまった!ギアトリンガーばかり気を取られていたけど、これの存在を言うのを忘れていた。どうしよ!

 

レイガ「えっとー、これは僕が作った魔法の道具でギアトリンガーと同じ時に作ったんだ。僕にしか使えないけど。あまり詮索はしないでもらえるなら助かるよ」

 

リンゼは訝しげな顔をしつつも、それ以上は聞いてこなかった。ほんといい子だな。

そのあとは材料とレシピを教えて、アエルさんとミカさんの二人はアイスクリームを作っていた。出来上がったものをまずは僕が試食した。

 

レイガ「うん。おいしい」

 

久しぶりに食べるとやっぱりおいしい。

僕の後にアエルさんが食べてみると、彼女は直ぐに目を見開き、笑顔で

 

アエル「おいしい・・・」

 

と言った。よかった。お気に召したようだ。

ミカさんとリンゼも食べたが、二人とも気に入ってくれたようだ。あっそうだ。どうせならエルゼにも食べさせよう。そう思い、アイスを一つ保冷庫に入れた。

その後、アエルさんはこれを新メニューに決め、さっそく自分で一から作ってみたいと、店に戻っていった。

のちにギルドから戻ってきたエルゼにもアイスを食べさせたら、三人以上においしそうな顔をしていた。この時のエルゼの顔を見て

 

レイガ「かわいい」

とつぶやいたら、エルゼに腹パンされた。本当のこと言っただけなのに。なんでー---⁉




どうでしたか。皆さんは何味のアイスクリームが好きですか?僕はミントです。
あとお気に入りが二桁言って驚きました。えー--
あとアドバイスをもらいました。どこかで使おうと思います
次回から第2章侍の子絶対に出します。


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第二章
侍との出会い


こんばんわ
ようやく出せました


<レイガサイド>

あれからギルドの依頼をこなしていたら僕らは、昨日ギルドランクが上がった。色が黒から紫になった。

うれしい気持ちでいっぱいだったが、一層気を締めていこうと思った。

 

レイガ「ん~~」

 

僕たちは今依頼をどれにするか迷っていた。スライムの討伐も観たときはこれだけは絶対いやだと思った。なぜって?僕の友達がスライムだから。彼には僕の留守の間、惑星『レイガ』を守ってもらっている。まあ、襲い掛かって来る相手はいないんだけど。

そんなこと思っていたら

 

エルゼ「これは? 王都への手紙配送。交通費支給。報酬は銀貨七枚。どうかしら?」

レイガ「銀貨七枚か・・・三人で割れないな」

エルゼ「別に残りはみんなでなにか使えばいいじゃない」

 

それもそうか

エルゼの指定した依頼を見ると、依頼主はザナック・ゼンフィールド・・・え! これってあのザナックさん?

住所を確認してみるとザナックさんの店で間違いなかった。

 

レイガ「王都ってここからどれくらいかな?」

エルゼ「んー、馬車で五日ぐらい?」

 

結構遠いな。でも長旅か。楽しみだな。

 

レイガ「うん、じゃあこの依頼受けよう。この依頼人、僕の知っている人なんだ」

エルゼ「そうなの? じゃ決まりね」

 

エルゼが依頼書を受付に持って行った。ザナックさん元気かな。

 

 

 

 

 

ザナック「やあ、久しぶりだね。元気だったかい?」

レイガ「はい。その節はお世話になりました」

 

店に入るとザナックさんは僕に気づき、声をかけてきた。ギルドの依頼で来たことを伝えると、奥の部屋へと僕らを通した。

 

ザナック「仕事内容はこの手紙を王都にいるソードレック子爵へ届けること。私の名前を出せばわかるはずだ。子爵からの返事ももらってきてほしい」

レイガ「急ぎの手紙ですか?」

ザナック「急ぎではないが、あまりゆっくりされても困るかな」

 

ザナックさんは笑いながら、短い筒に入った手紙をテーブルの上に置いた。

 

ザナック「それとこっちが交通費。少し多めに入れといたから。余っても返さなくてもいいよ。王都見物でもしなさい」

レイガ「ありがとうございます」

 

手紙と交通費を受け取って店を出ると、旅の支度にとりかかった。

一時間後、すべての準備が整い、僕らは王都へ向けて出発した。

 

 

 

 

 

馬車は順調に街道を進み、時折すれ違う他の馬車にあいさつもしながら、北へと向かった。ちなみに馬車の運転は三人で交代することになっている。

リフレットの町を出発して、次のノーランの町を素通りし、アマネスクの町に到着したとき、ちょうど日が暮れていた。今日はこの町で宿を取ることにした。

えッ⁉ 【ゲート】は使わないのか?

だって始めてくる町だよ。旅の楽しみを捨てたくないもんヽ(`Д´)ノプンプン

そのあとは、宿を取って、馬車を預け、食事をとることにした。部屋は僕と彼女たち二人の二人部屋にした。

手ごろな店に入ろうと町中を散策していたとき、道端から争う声が聞こえた。

 

レイガ「何だ?」

 

興味を持った僕たちは、人混みをかきわけ、騒ぎの中心を見た。そこには数人の男たちに取り囲まれた異国の少女がいた。

 

リンゼ「あの子・・・変わった格好してますね・・・」

レイガ「さむらい⁉」

 

薄紅色の着物に紺の袴、白い足袋に黒鼻緒の草履。そして腰には大小の刀。流れるような黒髪は眉の上で切り揃えられている。後ろはポニーテールに結わえられて、その先も肩の上で真っ直ぐ繰り揃えられている。控えめな簪がよく似合う。

その侍の少女を取り囲むように、十人近い数の男たちが剣呑な視線を向けていた、ケンやナイフを抜いている者もいた。

 

男「昼間は世話になったな、姉ちゃん。お礼に来てやったぜ」

?「・・・はて?拙者、世話などした覚えはないのでござるが」

男「すっとぼけやがって・・・!俺らの仲間をぶちのめしときながら、無事で帰れると思うなよ」

?「・・・ああ、昼間警備兵に突き出しT奴らの仲間でござるか。あれはお主たちが悪い。昼間っから酒に酔い、乱暴狼藉を働くからでござる」

男「やかましい! やっちまえ!」

 

男たちが一斉に襲い掛かった。んーでもあの子勝つな。だって見た感じあの子のほうが数倍強いもん。

実際、彼女は男たちの攻撃をかわし、投げ飛ばしていた。

しかし、なぜか不意によろめき、動きが鈍った。その隙をついて、背後から剣を構えたやつが斬りにかかった。

その瞬間、僕はその男に向かってギアトリンガーを撃った。非殺傷モードなので気を失っているだけだ。

男たちが驚いている最中、僕は別の男に飛び蹴りをかました

突然の乱入者に侍の子はびっくりしたが、敵ではないと判断したのか、他の男たちに注意を戻した。

 

 

 

 

 

そのあとはエルゼも加わり男たち全員のびたあと警備兵がやってきたので、後を任せた。

 

八重「ご助勢、かたじけなく。拙者、九重八重(ここのえやえ)と申す。あ、ヤエが名前でココノエが家名でござる」

 

そう言って侍の女の子、九重八重が頭を下げた。なんかデジャブ。

 

レイガ「ひょっとして君。イーシェンの出身?」

八重「いかにも。イーシェンのエドから来たでござる」

 

へー。江戸もあるんだ。

 

レイガ「僕は光神玲我。玲我が名前で光神が家名ね」

八重「おお、玲我殿もイーシェンの生まれでござるか!?」

レイガ「あー、まあ似ているけど違う国から来たんだ」

エルゼ&リンゼ「「え⁉」」

 

あーそういえば、この二人にはイーシェン出身にしたんだった。忘れてた。

 

レイガ「それよりさっきの戦いでふらついていたけど大丈夫?」

八重「いや、身体は問題ないのでござるが、そのうー・・・拙者、ここに来るまでに、恥ずかしながら路銀を落としてしまい、それでー・・・」

 

ぐうぅぅぅ

八重のお腹が鳴った。なるほど、腹ペコなんだ。




どうでしたか
やっと出せてよかった
次週はあの娘を出したいです。
そして、あのチートラマンと侍の力を出します


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巨人の力

こんばんわ
予想以上に長くなってしまいました。
ほぼ原作通りですが、最後だけ改善しました。


<レイガサイド>

その後僕たちは八重と一緒に食事をすることになった。彼女は見ず知らずの人に施しを受けるわけにはいかないと言って、食事を取ろうとしなかった。だから、僕たちは八重に食事を提供する代わりにイーシェンの話を聞きたいと取引をした。

それなら、と注文をし始めた。チョロくてかわいいなと思ってしまった。

八重の話をまとめると、彼女は武者修行の旅をしているらしい。なんでも彼女の家が代々武家の家柄で、腕を磨くために旅に出たらしい。

 

エルゼ「なるほどねー、苦労してるね、あんた。偉いわ」

 

エルゼは感心していた。

 

レイガ「で、八重はこれからどうするの?」

八重「・・・王都に、昔、父上が世話になった方がいるので、そこを訪ねてみようと思ってるでござる、よ」

 

なるほどね。

 

エルゼ「奇遇ね、あたしたちも王都に仕事に行くのよ。ね、良かったら一緒に行かない?まだ一人ぐらいなら馬車に乗れるし、その方が八重もR区でしょ?」

八重「ッ! まことでござるか。願ってもないことでござるが・・・はふっ、拙者などが、んぐっ、よろしいので?」

 

エルゼの提案に目を丸くした。

 

リンゼ「かまわない、ですよね、玲我さん」

レイガ「うん、いいよ」

 

そのあとは食事を終え、僕たちは宿に戻った。ちなみにこの会話中八重はずっと食事をしていた。食費が結構飛んだが、女の子がいっぱい食べる姿はよく見るので、たいして動揺はなかった。だって八重より食べる人を僕は知っている。しかも全員僕の嫁だ。

その後八重が野宿すると言って、エルゼとリンゼが一緒に泊まろうと提案したが、彼女は断った。なので

 

レイガ「八重、僕にその簪を売ってくれないかな?」

八重「簪・・・でござるか?こんなものでよければ拙者は構わないでござるが・・・」

レイガ「じゃあ交渉成立。はいこれ代金」

 

僕は彼女に金貨一枚を渡した。

 

八重「こっ、これはもらいすぎるでござるよ! こんなに受け取れないでござる!」

レイガ「いいから、いいから」

エルゼ「そうよ。受け取っておきなさいよ。ほらほら宿屋へ行くわよ」

八重「いや、ちょっ・・・エルゼ殿」

 

エルゼが強引に腕を引いて、八重を引っ張っていった。二人が遠くなっていくのを見ながらリンゼが尋ねてきた。

 

リンゼ「・・・その簪って本当に高いんですか?」

レイガ「さあ?」

リンゼ「わからないのに金貨一枚も?」

レイガ「まあ、いいものらしいし、それなりに高いと思うよ。それに僕は損したとは思ってないし」

 

その後は八重も無事に僕らと同じ宿屋に部屋を取り、一晩ぐっすり眠った。

 

 

 

 

 

次の日

僕たちはアマネスクの町を出て、さらに北の国、ベルファスト王国へ向かった。八重も馬車を運転でき、四人で交代することになった。

 

八重「そういえば、玲我殿一つ気になったことを聞きたいのでござるが?」

レイガ「ん? 何?」

八重「あの時使った武器は何でござるか。拙者初めて見たでござる」

レイガ「あ~これ」

 

そう言って僕はギアトリンガーを出した。

 

八重「それでござる。見たことない形でござる」

 

八重がギアトリンガーについて聞いてきたので、エルゼたちと同じ説明をした。それを聞いた後、やっぱり八重は驚いていて、「侍の人物はいるでござるか」と聞いてきた。

 

レイガ「いるよ。いつか使ってみようか?」

 

と答えたら、八重の目がキラキラした。

 

レイガ(あーこれは早めに出した方がいいな)

 

と僕はどこで使おうかと考えた。

 

 

 

 

 

出発してから三日たった。マップで見ると半分の距離は超えたようだ。

すると突然、血の匂いがした。僕は常日頃まわりの状況を把握するために感覚を研ぎ澄ましている。これはレジェンド先輩とサーガお兄さんに教えてもらった技である。

僕は視覚を血の匂いがした方に向けた。すると、高級そうな馬車、鎧をまとった兵士、そしてそれを取り囲むリザードマン。一人だけ黒いローブを着た男の姿が見えた。

兵士の大半が倒れ、残ったものはリザードマンたちと切り結び、馬車を守っている。

 

レイガ「八重! 前方で人が魔物に襲われている! 全速力!」

八重「ッ⁉ 承知!」

 

八重は馬に鞭を入れ、速度を上げた。その間も僕は状況を把握していた。

 

レイガ(馬車の中にけがをした老人と子供がいる! まずい、間に合うか、いや間に合わせて見せる)

 

・・・見えた!

 

リンゼ「【炎よ来たれ、渦巻く螺旋、ファイアストーム】」

 

リンゼが炎の呪文を唱え、リザードマンたちの中心から、炎の竜巻が燃え上がった。

それをきっかけにエルゼ、僕、八重の順番に馬車から飛び出した。手綱はリンゼに任した。

 

リザードマン「キシャアアア」

 

一匹のリザードマンがこちらに向かってきた。僕はそれをギアトリンガーで撃ち抜いた。

 

エルゼ「ハッ」

 

横を見るとエルゼがリザードマンの攻撃をガントレットで受け止め、その隙に八重が相手の横腹を切り裂いた。いいコンビだな。

とよそ見をしていると、リンゼが魔法で作った氷の槍で僕の死角のリザードマンの胸を貫いた。

僕たちは次々とリザードマンたちを倒していった。

それにしても数が多いなと思っていたら

 

男「【闇よ来たれ、我が求めるは蜥蜴の戦士、リザードマン】」

 

黒いローブの男がそうつぶやくと、そいつの脚下の影から数匹のリザードマンが這い出てきた。もしかしてあいつが召喚していたのか!

 

リンゼ「玲我さん、召喚魔法です! あのローブの男がリザードマンを呼び出しています!」

 

リンゼが叫んだ。やっぱりそうか。よし。

僕はリザードマンから距離をとり、金色の歯車センタイギアを取り出した。中央には「33」の数字と人物の顔が描かれていた。

僕はそれをライダーギアと同じようにギアトリンガーの蓋を開けギアを入れ、蓋を閉じ、

 

レイガ「チェンジ 全開!」

 

ハンドルを回した。

 

エルゼ&リンゼ&八重「「「!!!」」」

 

この行動にみんな驚いていた。

 

『33バーン!』

 

音声が鳴り、トリガーを引いた。

 

『ババン! ババン! ババン! ババン! ババババーン! シンケンジャー!』

 

銃口から五人のカラフルな戦士が飛び出した。彼らはシンケンジャー、33番目のスーパー戦隊だ。その中の一人シンケンレッドが僕の体に吸い込んだ。

すると、僕の右手には日本刀のような『シンケンマル』が握られていた。

 

エルゼ&リンゼ&八重「「「・・・」」」

 

この時点で、ここにいる全員が唖然としていたが、僕はそれを無視してシンケンマルの中央にある『秘伝ディスク』を回した。

するとシンケンマルが変化し、二メートルを超える巨大刀に変化した。

 

レイガ「烈火大斬刀(れっかだいざんとう)

 

これはシンケンレッドの専用武器である。これを見て、さらにみんなが唖然としていた。

正直めっちゃ重いけどしょうがない。

 

レイガ「エルゼ! リンゼ! 八重! 離れてて!」

 

僕は烈火大斬刀を思いっきりリザードマンと黒いローブの男に向けて横に振った。

 

リザードマン&男「「「ギャアアア」」」

 

すると、リザードマンと男は斬撃で燃え上がった。しばらくして召喚主が死んだため、他のリザードマンたちも消えた。

 

レイガ「あー、重い」

 

と言い、僕は烈火大斬刀をシンケンマルに戻した。

 

レイガ「これで終わりか・・・。みんな大丈夫か?」

エルゼ「大丈夫じゃないわよ! 今の何! あんなの聞いてないわよ」

 

エルゼの言葉にみんなうなずいていた。まあ、言ってないからね。

 

リンゼ「玲我さん。あれもギアの力何ですか?」

レイガ「うん。そう侍の人の力」

八重「⁉ 本当ですか。玲我殿!」

レイガ「う、うん。そうだよ」

 

八重がめっちゃ喰いついてきた。まあ、いつか見せようとは思っていたけど、こんな早くなるとは。

と四人で話していると、兵士の一人が足を引きずりながら僕に声をかけてきた。

 

兵士1「すまん、助かった・・・」

レイガ「いえ、それで被害は?」

兵士1「護衛の十人中、七人がやられた・・・くそっ、もう少し早く気づいていれば・・・!」

 

悔しそうに兵士が握ったこぶしを震わせていた。

 

?「誰か!誰かおらぬか!爺が・・・爺が!」

 

不意に響いた女の子の叫びに、僕らは一斉に振り返る。馬車の扉を開けると、十歳くらいの白い服を着た長い金髪の女の子が泣きながら叫んでいた。

馬車にはさっきの女の子の他に、黒い礼服を着た白髪の老人が横たわっていた。胸からは血を流している。

 

?「誰か爺を助けてやってくれ! 胸に・・・胸に矢が刺さって・・・!」

 

涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、懇願する女の子。たぶんこの子の大切な人なんだろう。兵士たちが老人を馬車から下ろし、草むらに横たえる

 

レイガ「リンゼ! 回復魔法を!」

リンゼ「・・・ダ、ダメです。矢が体に入り込んでしまっています。この状態で回復魔法をかけても体内に異物が残ってしまいます。・・・それにここまでの怪我は・・・私の魔法では・・・」

 

リンゼが申し訳なさそうにつぶやいた。それを聞いた女の子が次第に絶望に染まってゆく。涙があふれ、震える手で老人の手を握りしめた。

 

?「・・・お嬢様・・・」

?「爺・・・っ、爺っ・・・!」

?「お別れで…ございます…。お嬢様と過ごした日々…何よりも大切な…私めの…ごふっ…!」

?「爺! もういいからっ…!」

 

もう駄目だと全員思っていた。ただ一人、僕を除いて

 

レイガ「すいません。なくなった兵士をこの人と同じく草むらに横にしてもらえんせんか?」

兵士「⁉ なぜそんなこと?」

レイガ「お願いします!」

 

僕は兵士の一人にお願いして、老人のまわりに七人の兵士を横にしてもらった。

 

リンゼ「…玲我さん。何を?」

レイガ「ちょっとね」

 

僕は再び左手にギアトリンガーを、右手には青色の歯車ウルトラマンギアを取り出し、セットした。

 

レイガ「チェンジ全開!」

 

ハンドルを回した。

 

『ウ・ル・ト・ラ・マン!』

 

金髪の少女以外は僕に視線を向けた。

僕はそれを無視して、空に向けてトリガーを引いた。

 

『ババン! ババン! ババン! ババン! ババババーン! シャイニングゼロ!』

 

すると銃口から銀色に輝く巨人。シャイニングウルトラマンゼロが現れ、僕の体に吸い込まれた。

 

全員『!』

 

これに金髪の子さえも驚いていたが、それを無視して僕はシャイニングゼロ最強技を使用した。

 

レイガ「対象は七人の兵士と一人の老人!」

僕は右手を思いっきり上に振り上げ、叫んだ。

 

シャイニングスタードライブ!

 

 

 

 

 

〈三者視点〉

玲我が叫んだあと、彼らの頭上に太陽のような光球が現れた。これに全員が烈火大斬刀よりも驚いていたが、驚くのはこれからであった。

光球が光り出し、周りが一瞬暗くなり、また明るくなり、光球は消えた。この現象に全員何が起きたかわからないでいた。

そして、驚くべきことが起こった。

 

?「…おや?痛みが、引いて…? これはどうしたことか…治って…。治ってますな、痛くない」

?「爺っ!!」

全員『!』

 

なんと老人に刺さっていた矢が消え、傷が消えていたのだ。いったい何が起きたのか玲我に聞こうとした兵士。しかし、もっと驚くことが起きた。

 

兵士2「んっ、ここは」

兵士3「俺たちどうして横になっているんだ」

兵士1「な!!」

兵士4「お、お、お前たちどうして?」

 

そう、死んだはずの七人の兵士が生き返った。最初こそ生き残っていた三人の兵士は混乱していたが、徐々に涙があふれてきて、生き返った兵士たちに飛び込んだ。

 

リンゼ「・・・玲我さん。さっきの。何が起こったのですか?」

 

リンゼが僕に聞いてきたので彼は答えた。

 

 

 

 

 

 

 

レイガ「時間を巻き戻した」

 

この答えにエルゼ、リンゼ、八重は

 

エルゼ&リンゼ&八重「「「はあッ⁉」」」

 

と叫んだ。




どうでしたか
原作では爺だけなのでどうせならと兵士たちも生き返らせました。
いやーながい。どっか間違ってそうで怖い。
次回はあの人の病気を治します。


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公爵の令嬢との出会い

こんにちわ
今回で王都につきます。



<レイガサイド>

はあ~大変だった。お爺さんと兵士たちの時間を戻した後、エルゼたちに説明をしたんだが、これも一番大変だった。とりあえず、シャイニングゼロのことを時間を操る魔術師ということにした。何とか説明を終えた後は、兵士たち全員が僕に感謝していた。僕は当然のことをしたまでだけど。兵士たちの何人かは僕のことを神様と言い出して、正直焦った。だって、当たってるもん。

兵士たちの後はお爺さんも頭を下げてきた。

 

爺「本当に助かりました。なんとお礼を言ってよいなら…」

レイガ「いえ、気にしないでください。」

 

頭を下げ続けるお爺さんに、僕は慌てて声をかける。

 

?「感謝するぞ。玲我とやら!お主は爺の、いや爺でけではない、わらわたちの命の恩人じゃ!」

 

偉そうな言葉づかいで、お礼の言葉を発する金髪の少女。たぶん貴族の令嬢だろう。僕の知っている貴族の雰囲気に似ているから。

 

レイム「ご挨拶が遅れました。私、オルトリンデ公爵家家令を務めております。レイムと申します。そしてこちらのお方が公爵家令嬢、スゥシィ・エルネア・オルトリンデ様でございます」

スゥ「スゥシィ・エルネア・オルトリンデだ! よろしく頼む!」

 

やっぱり。貴族であった。しかし公爵の令嬢とは驚いた。

納得する僕の横では、エルゼたち三人が固まっていた。

 

レイガ「どうしたの三人とも?」

エルゼ「どうしたって…なんであんたはそんなに平然としてるのよ!公爵家よ! こ・う・しゃ・く!」

リンゼ「・・・公爵は、爵位の一番上・・・他の爵位と違って、その爵位を与えられるのは基本的に王族のみ、です」

 

うん。知ってる。

 

スゥ「いかにも。わらわの父上、アルフレッド・エルネス・オルトリンデ公爵は国王陛下の弟である」

レイガ「ということは国王の姪ってことか」

スゥ「あんまり玲我は驚かんのじゃの。大物じゃな」

 

まあ、これでも一国の王様だし。あれ? でも、この星では平民かな?

 

レイガ「えっと・・・スゥシィ・・・様?」

スゥ「スゥでよい。公式の場ではないのじゃ、せんでよい。敬語もいらん。さっきも言った通り、玲我たちはわらわの命の恩人じゃ。本当なら頭を下げるのはこちらの方なのだ。お前たちも顔を上げてくれ」

 

えっ? 横を見ると三人とも両膝をつき、頭を下げていた。やっば、忘れてた!

スゥがそう言うと三人とも頭を上げて立ち上がった。緊張が解けたようだ。いや、まだ表情に硬さが残っている。

 

レイガ「でも、なんでここに公爵のご令嬢様が?」

スゥ「お祖母様・・・母上の母上のところの帰りじゃ。ちと、調べ物があっての。ひと月ほど滞在して、王都へ戻る途中じゃった」

レイガ「そこを襲われたのか。単なる盗賊じゃないよな。やっぱり」

 

多分意図的に彼らを狙っていたな。目的は暗殺もしくは誘拐かな。

ああ、襲撃者が死んでしまったから、何も聞けないな。失敗。

 

レイガ「これからスゥはどうするの?」

レイム「そのことでございますが・・・玲我さんたちに護衛の仕事を頼みたいのです。お礼は王都へ着きしだい、払わせていただきますのでどうかお願いできないでしょうか?」

レイガ「護衛ですか・・・?」

 

僕はいいけど、三人にも聞いてみたら

 

エルゼ「いいんじゃない? どうせ王都へ行くんだし」

リンゼ「私も、かまいません」

八重「拙者は乗せてもらっている身でございますので、玲我殿に任せるでござるよ」

 

反対の意見はなかった。

 

レイガ「わかりました。お受け致します。王都まで宜しくお願いします」

スゥ「うむ、こちらこそよろしく頼む!」

 

そう言ってスゥは満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

スゥ「おお! 見えてきたぞ! 王都じゃ!」

 

僕たちはスゥたちと一緒に王都へ着いた。その道中、僕はスゥに昔話として、仮面ライダーの話をしら、とても気にいってくれた。今度はスーパー戦隊かウルトラマンの話をしようと思う。

王都アレフィス。滝から流れ込むパレット湖のほとりの位置するこの国の首都である。「湖の都」とも呼ばれている。

 

レイム「この橋を渡った先が、貴族たちの住居なのでございます」

 

レイムさんが解説してくれる。なるほど、庶民と貴族で別れているんだな。

門の前に辿り着くと、五、六人の門番が、重そうな扉をゆっくり開いき、屋敷が見えた。結構でかいな。

 

メイド「おかえりなさいませ、お嬢様!」

スゥ「うむ!」

 

メイドさんたちが一斉に頭を下げる。僕の家でもメイドさんたちが出迎えてくれていたな。

僕たちは馬車を降り、玄関のアーチをくぐると

 

?「スゥ!」

スゥ「父上!」

 

大きな階段から、一人の男性が駆け降りてきて、スゥを抱きしめる。

 

?「良かった。本当に良かった・・・!」

スゥ「大丈夫、わらわはなんともありませぬ。早馬に持たせた手紙にそう書いたではないですか」

?「手紙が着いたときは生きた心地がしなかったよ…」

 

この人はスゥの父上だ。だって顔が似ているし、見た目が似てる。

 

アルフレッド「…君たちが娘を助けてくれた冒険者たちか。礼を言わなければな。本当に感謝する、ありがとう」

 

スゥの父さん、王様の弟、公爵様は僕たちに頭を下げた。

 

レイガ「頭を上げてください。僕らは当然のことをしただけですから」

アルフレッド「そうか。ありがとう。謙虚なんだな。君は」

 

そう言って公爵様は僕と握手をした。

 

アルフレッド「改めて自己紹介をさせてもらおう。アルフレッド・エルネス・オルトリンデだ」

レイガ「光神玲我です。玲我が名前で、光神が家名です」

アルフレッド「ほう、イーシェンの生まれかね」

 

はい。デジャブ!このくだり、僕が自己紹介すると毎回の反応かな。イーシェンの人は大変だな。




どうでしたか
最近あとがきで書くことを実施できていないので、申し訳ございません
次回こそ、あの病気を治します


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慈愛の勇者

こんばんわ
遅くなりました。
結構長かった。



<レイガサイド>

「なるほど、君たちはギルドの手紙を届ける依頼で王都へ来たのか」

 

庭に面した二階のテラスで僕らは公爵とお茶を楽しんでいた。

その間例のごとく、得るエルゼたち三人はガッチガチに緊張していた。

 

「その依頼を君たちが受けてなければ、スゥは誘拐されていたか、殺されていたかもしれん。依頼したものに感謝だな」

「襲撃してきたものに心当たりはないんですか?」

「ない…とは言えない。立場上、私のことを邪魔に思っている貴族もいるだろう。娘を誘拐し、脅して、私を意のままに操ろう…と考えた輩がいたのかもしれん」

 

公爵は苦い顔で紅茶を飲んでいた。とてもよくわかる。僕のことを脅そうと、僕の国の人を人質にしようとした輩もいた。まあ、そいつらには後で厳しいohanashiをした。

 

「父上。お待たせしたのじゃ」

テラスにスゥがやってきた。薄桃のフリルが付いたドレスに、金髪を飾るカチューシャには同じく薄桃の薔薇が付いていた。よく似合ってて、かわいかった。

 

「エレンとは話せたかい?」

「うむ。心配させててはいけないので、覆われた件は黙っておいたのじゃ」

「エレン?」

「ああ、私の妻だよ。すまないね、娘の恩人なのに姿を現さず…。妻は目が見えないのだよ」

「目が見えないのでござるか?」

 

八重が心配そうに尋ねる。

 

「五年前に病気でね…一命は取り留めたが、視力を失った」

 

辛そうに公爵が視線を下げる。それを見て、スゥが自分の手を彼の手の上に重ねた。優しい子だな

 

「…魔法での治療はなされたのですか?」

「国中の治癒魔法の使い手に声をかけたがだめだった。病気による後遺症は効果がないらしい」

 

リンゼの質問に公爵は力なく答える。治癒かー。あっ!あのウルトラマンなら

 

「すいません。アルフレッドさん、僕なら治せるかもしれません」

「本当か!!!」

「母上を治せるのか!玲我!?」

 

公爵は信じられないといった面もちで、スゥは喰いつくように僕の腕をつかんだ。他の三人も公爵と同じ反応だった。

 

 

「あら、お客様ですか?」

 

ベッドに腰かけていた貴婦人はよくスゥに似ている。見た感じまだ二十代だと思われる。

しかしその若さが、見えない目を逆に引き立ててしまう。瞳が開かれていたが、視点が定まっていない。

 

「光神玲我と申します。始めましてエレン様」

「初めまして。あなた、この方は?」

「ああ、スゥが出会った大変世話になった人で…お前の話を聞いて、目を見てくださるそうだ」

「目を…?」

「母上、少し楽にしてくだされ」

 

僕はギアトリンガーとウルトラマンギアを取り出す。初めてこれを見たアルフレッドさんは驚いた。

いつも通りで手順で、ギアトリンガーにギアをセットする。

 

「チェンジ 全開!」

 

ハンドルを回す。

 

『ウ・ル・ト・ラ・マン』

 

僕はトリガーを引く。

 

『コ・ス・モ・ス』

 

銃口からは青いウルトラマン。慈愛の戦士ウルトラマンコスモスが現れ、いつものように僕の体に吸い込んだ。

僕はエレン様の目に静かに手をかざす。

 

「フルムーンレクト」

 

柔らかな光が僕の手のひらからエレン様の目に流れていく。この技はコスモスの技で、相手の感情を鎮めるものである。僕はこの技を独自にアレンジして、どんな病気も治す技にした。言うなら、『フルムーンレクト改』だ。

しばらくすると、エレン様の視線が定まってきた。

 

「…見える…見えます。見えますわ、あなた!」

「エレン…ッ…!」

「母上ッ!!」

 

三人は抱き着いて泣き始めた。レインさんも、エルゼたちも泣いてみた。

僕?もちろん

 

 

泣いてたよ

 

 

 

 

 

「君たちには本当にせわになった。感謝してもし切れないほどだ。娘だけでなく妻まで…本当にありがとう」

 

応接間で公爵が深々と頭を下げる。スゥはエレン様の寝室にいる。

 

「本当に気にしないでください。スゥも無事、奥様も治った。それでいいじゃないですか」

「いや。そんなわけにはいかない。君たちにはきちんと礼をしたいのだ。レイム、例の物を持ってきてくれ」

 

レイムさんが銀の盆を持ってくる。上には何かいろいろなものが置いてある。

 

「まずはこれを」

 

と言われ、スゥの護衛に対する謝礼をもらった。おそらくお金が入っているのだろう。

 

「中に白金貨で四十枚入っている」

「「「!?」」」

「白金貨?」

 

なんだ。金貨より上の貨幣が出てきた。

 

「エルゼ、白金貨って金貨何枚分?」

「…一枚で金貨十枚分」

「十!?」

 

うそ、そんな大金。

 

「こんなにもらっていいんですか?」

「ああ。君たちがこれから冒険者として活動していくなら、きっとその金は必要となる。その資金だと思えばいい」

「はあ…」

「それとこれを君たちに贈ろう」

 

まだあるの!?渡しすぎだよ、公爵。

いや、よく考えたら、キングじいちゃんたちもお年玉と言って、ものすごい金を僕に渡していたな。ノア兄なんてが惑星を持ってきたよ。正直どうすればいいかわからなかったから、レジェンド先輩に相談したんだよな。そのあと、二人は喧嘩していたし。

 

っと話を戻すと、僕たちは公爵のメダルをもらった。これがあれば、検問を素通りでき、貴族のエリアも利用できる。おー、これは便利なものをもらったな。

メダルにはそれぞれ文字が書かれており、僕は「平穏」、エルゼは「情熱」、リンゼは「博愛」、八重は「誠実」であった。うんうん、平穏が一番。

 

 

 

 

 

その後僕たちは依頼のために屋敷を出た。スゥに

 

「また遊びに来るのじゃぞ! 絶対じゃからな!」

 

と言われた。

 

「絶対にまた来るよ」

 

と言って、公爵家の熱烈な見送りを受けながら、僕たちは手紙を渡す相手、ソードレック子爵の屋敷に向かった。

 

 

僕たちがソードレック子爵の屋敷に向かう途中、八重に手紙を渡す相手を話すと、なんと八重の父上が世話になった人、つまり八重が王都で訪ねる予定だった人だ。

これは驚き、世間は狭いなぁ。

ソードレック子爵の屋敷に着き、門番に依頼を伝えると屋敷内に通され、そこからは執事が応接間まで案内してくれた。

しばらくして、赤毛で壮年の方が入ってきた。あーこの人が八重が言っていた人か。確かに強いな。

 

「私がカルロッサ・ガルン・ソードレックだ。お前たちがザナックの使いか?」

「はい。この手紙を渡すように依頼を受けました。子爵に返事をいただくようにと言付かっています」

 

カルロッサさんは手紙を読み、返事を書くために部屋を出て行った。

 

 

「待たせたな。これをザナックへ渡してくれ。頼んだぞ。それから…」

 

カルロッサさんから手紙を受け取った後、彼は八重を見る。

 

「さっきから気になっていたが、そこのお前。どこかで…いや会ったことはないな。しかし…名前は何という」

「拙者の名は九重八重。九重重兵衛の娘でござる」

「…九重か!お前、重兵衛の娘か!」

 

子爵は破顔して膝をたたくと、嬉しそうにまじまじと八重の顔を眺め始める。

 

「間違いない。若いころの重兵衛殿に瓜二つだ。母親似でよかったな!」

 

 

そのあとは、カルロッサさんと重兵衛さんとの関係を聞くと、どうやら重兵衛さんはソードレック子爵の剣術指南役だったそうだ。それで若いころにこっぴどくしごかれたらしい。へえーそんなに強いのか重兵衛さんは。いつか戦ってみたいな。

と思っていたら、八重とカルロッサさんが試合をすることになった。八重には勝ってほしいけど、たぶん、いや百パー、負ける。

 

 

試合の結果。八重は負けた。試合を見た感じ八重の攻撃は無駄がないが、正直すぎる。もう少しフェイントを入れた方がいいと思う。カルロッサさんも気づいていたな。さすがだ。試合後カルロッサさんは八重にアドバイスをしていたが、本人はわかっていないようだ。あとで僕からもアドバイスしようかな。実は僕もカルロッサさんと戦ってみたくお願いしたら了承してくれた。エルゼたちは「やめておきなさい」と言っていたが、強者がいたら挑まずにはいられない。

 

 

でも、試合はしてくれなかった。なぜか、僕が木刀を持った瞬間にカルロッサさんが降参した。(なんでー)

と思いながらも今回はあきらめた。その時、エルゼたちは啞然としていた。その反応にも慣れてきたな~~。

 

 

<カルロッササイド>

なんて闘気なんだ。木刀を持った瞬間別人になったように気が変わった。こんな人間初めて見た。重兵衛殿を遥かに凌駕している。戦う前から負けるイメージしか出なかった。世界の広さを改めて知った。しかし、彼が近くにいれば彼女はいずれ私いや…重兵衛殿も超えるだろう。

 

 

<レイガサイド>

八重の試合の後、王都で買い物をしようと馬車に乗っていた。その間に僕はこっそりスマホで録画した試合映像を八重に見せた。まあ最初は動画に驚ろいてパニックになっていたが、僕がギアの力というと納得してくれた。二、三回動画を見た後、八重はカルロッサさんが言っていたアドバイスを理解することができた。僕も少し助言をした。

 

「拙者、もっともっと修行して強くなるでござるよ。みんなと一緒に」

 

こうして八重は僕たちと一緒に旅を続けることになった。

うん。八重なら強くなれるよ。

どうせなら、僕の星の五剣豪にでも頼もうかな。




どうでしたか
コスモスの必殺技を治癒能力に変えました。


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迷子に出会う

こんばんわ
遅くなりました。


<レイガサイド>

僕たちは今、王都で買い物をしている。理由としてはせっかく王都へ来たし、お金も結構あるから。

宿に馬を預かってもらい、三時間後集合にした。三人は一緒に買い物をするみたいだ。僕は別行動をすることにした。ちょっと寄ってみたいとこがある。

 

「あった。ここだ」

 

僕が寄った店は防具屋だ。防具が必要?全然いらないよ。これでも体は丈夫なんだ。

(`・∀・´)エッヘン!!

まあ、冗談はさておき。ここに来た理由は、防具を調査したいからである。僕の星にも防具屋がある。そこの店主とは友達で、今回の任務について話したら、

 

「ぜひ、その星の防具を調べてきてくれ。頼む。神様仏様レイガ様」と言われた。

 

まあ友達のお願いなら断れないので了承した。

 

 

 

 

 

(よし、これぐらいでいいだろう)

 

僕は防具の調査を終え、手間をかけさせた詫びに、銀貨でチップを払って店を出た。

そのあとは別の店によるために王都を歩いた。こうしてみると、ちらほら亜人族特に獣人族がいることがわかった。リフレットでは全く見なかったなから、この星にはいないのだと思った。

そう思っていると、キョロキョロして何かを探している狐の獣人の女の子がいた。もしかして…迷子なのか?

ものすごく困った顔をしている、のにだれも声をかけない。この町の人は冷たいな。僕の国じゃありえない光景だ。

…声かけるか

 

「君、もしかして迷子?」

「ひゃ、ひゃい!なんでしゅか!?」

 

あ、噛んだ。てかめっちゃびくびくしてる。

 

「ごめんね、何か困っている様子だったから、迷子だと思ってね」

「あっ、あの、あのわた、私、連れの者とはぐれてしまって…」

 

やっぱ迷子か。

 

「はっ、はぐれたときのために、持ち合わせの場所を決めたといたんですけど、その場所がっ、どこかもわからなくて…」

 

しゅんとして声が小さくなる狐さん。

 

「待ち合わせの場所は?」

「えっと…確か『ルカ』って魔法屋です」

 

魔法屋『ルカ』か。マップを開いて確認する。ここか。寄る店の近くだからちょうどいい。

 

「その店なら案内するよ。僕も同じ方向に行くところだから」

「本当ですか!?ありがとうございましゅ」

 

また噛んだ。なんか和むな。

 

 

 

 

 

待ち合わせの場所まで行く途中、お互い軽く自己紹介をした。彼女の名前はアルマというんだそうだ。お姉ちゃんの仕事でついてきたそうだ。

っとさっきまでの話を思い出していると、目的の場所まで着いた。

 

「アルマ!」

「あ、お姉ちゃん」

 

魔法屋の前にはアルマと同じ獣人の女の子がいた。アルマは彼女を見ると、彼女の胸に飛び込んむ。彼女もぎゅっと抱きしめる。

この人がお姉ちゃんか。大人っぽいけど、凛とした雰囲気はなんとなく軍人みたいな印象を受ける。

 

「心配したのよ!急にはぐれたからっ…!」

「ごめんなさい…。でも玲我さんがここまで連れてきてくれたから大丈夫だったよ」

 

その時にばって初めてお姉さんは僕の存在に気付いた。

 

「妹がお世話になりました。感謝します」

「いえいえ、会えてよかったです」

 

ぜひお礼を!と言われたが、用事があるので、と断った。

彼女たちと別れた後、僕は服屋「ベルクト」の店の中で服の調査をしていた。ここに来たのも防具屋と同じ要件だ。

綺麗な服が多いな。さすが貴族のエリアだな。

 

 

 

 

 

「あ、やっと来た。おーそーいー!」

 

「あれ、みんな早いね?まだ集合時間じゃないよね」

服屋の調査を終え、馬車を預けた宿屋へ向かったが、その場所には、彼女たちがすでにいた。

馬車には彼女たちが買った荷物が乗せてある。結構買ったね~~。

そのあとは馬車に乗り込んで王都をでて、【コネクト】で帰ってた。

【コネクト】を初めて見た八重は驚いていたが、魔法陣をくぐった後、景色が変わったことに二度驚いていた。

もう暗くなっているので、ザナックさんの報告は明日にして、僕たちは『銀月』に向かった。

ミカさんに帰ってきた報告をしようとしたら、宿の中に入ったら

 

「いらっしゃい。お泊りで?」

(え、誰?)

 

がっしりとした身体付きの赤毛のひげ男が出迎えた。一瞬驚いたが、冷静に考えると、ミカさんの家族かな?

 

「僕らはここに泊まってて、仕事から帰ってきたんです」

「ああ、泊っているお客さんたちかい。すまんな、見たことがなかったもんで」

「あの、ミカさんは?」

「あれ、みんな帰ってきたの?ずいぶんと早かったね」

 

厨房から、ミカさんが現れた。

 

「ミカさんただいま。えっと、この人は」

「ああ、会ったこと無かったっけ。うちのお父さんだよ。あなたたちのと入れ替わりで遠方かの仕入れから帰ってきたの」

「ドランだ。よろしくな」

「はい。よろしくお願いします」

 

僕とドランさんは握手した。そのあとは、ドランさんに八重の部屋をお願いし、ミカさんたちには王都のお土産を渡した。

無事の帰還を祝ってミカさんが夕食をご馳走してくれた。

その後は八重だけは食費代を宿泊代に追加されることになった。

理由?

八重食べ過ぎだよ。




どうでしたか
次回の章からはこの小説の主な敵を出したいです。
あと、変身したいです。何に夏なるかは考え中です


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将棋と天才発明家

こんばんわ
今回はいっぱいネタが入ります


<レイガサイド>

 

翌日、依頼を完了させるべく、僕らはザナックさんの店にやってきた。あまりにも早い帰還にザナックさんは驚いていたが、僕が【ゲート】に似た能力を使えることを教えると納得してくれた。

 

「これがソードレック子爵からの返信の手紙です」

「確かに。お疲れさまでした」

「それとこれを。交通費の半分です。使わなかったにでお返します」

「律儀だね。【ゲート】のことを黙っていれば、この金を返すこともなかったろうに」

「こういった仕事には信頼が一番ですから、ザナックさんも商人ならわかるでしょう?」

「・・・そうだね。信頼こそ商人の財産だ。それなくして商売は成り立たない。それを踏みにじれば自分に返ってくる」

 

そう言ってザナックさんはお金の入った袋を受け取ってくれた。

依頼完了の報告のため、ザナックさんからギルド指定のナンバーが打たれたカード受け取り、ギルドへ向かった。

職員にカードとギルドカードを差し出し、報酬の銀貨七枚をもらった。

ついでに八重のギルド登録もお願いした。

 

「登録したでござるよ~」

 

八重が嬉しそうにカードを振りながらやってきた。

僕らは次の依頼を決めるために依頼書を見る。

まだ、スライムの討伐ある。彼は元気かな?

 

 

 

 

 

その後、タイガーベアの討伐の依頼を受けた。

結果、八重がほぼ一人で倒した。

倒した証拠にタイガーベアの牙を持ち帰り、ギルドへ帰った。帰りはもちろん【コネクト】を使った。依頼を受けてからここまでたったの二時間。はや!

さすがには依頼を終わらせるのが早すぎたので、職員に怪しまれたが、僕が転移魔法を使えるとこっそり教えると納得してくれた。

依頼の後は喫茶店「パレント」で軽めの食事と飲み物、そしてアイスクリームを食べた。まだバニラしか味はなかったが、これから徐々に増えていくだろう。

初めてアイスクリームを食べた八重は気にってくれた。だって十個頼んだんだよ。狩る際に、アエルさんに新メニューを考えてくれと頼まれたので、後で嫁たちに聞いてみようかな?

 

 

 

 

 

王都から帰還して二週間。外は雨。今日は依頼もなく暇な時間を過ごしている。暇なときはスマホを使って無属性魔法を調べている。嫁の一人が調べてまとめサイトを作ってくれた。本当感謝しかない。まあほとんどギアの力で代用できるものはほとんどだなとスマホを見ながら思った。

お腹が減ったので、食堂に向かったら、ドランさんと武器屋の店主バラルさんが将棋をしている。

なぜ将棋を?答えは僕が作ったから。無属性魔法の【モデリング】を見たとき、能力があるライダーに似ていると思い、試しに何を作ろうかと思った。その時に、この世界の娯楽は何があるんだろうと思った。ドランさんに聞いたら、あまり娯楽がないらしい。なので、僕の星で人気のある「将棋」を作ることにした。これはキングじいちゃんと地球に行ったときに教えてもらったものだ。

試しに作って、ドランさんに教えたら、その面白さにハマり、知り合いを引っ張りこんでまでの熱中である。同じようにバラルさんもハマり、暇さえあれば勝負していた。

僕?いや強すぎてなんか彼らの中では、「将棋王」と呼ばれるようになった。いやーなんかはずい。

 

「バラルさん、お店の方はいいんですか?」

「この雨じゃ客もたいしてこないから。女房にまかせてきた。それよりも玲我さん、将棋盤、もう一セット作ってもらえないか?」

「え?バラルさんの分はもうあげましたよね?」

「道具屋のシモンが自分も欲しいって言いだしてさ。頼むよ」

「…わかりました」

「いや、ありがとう。これで「王手」ぬっ!?」

 

あらら。

 

「はいよ!お待たせ。父さんたちもいい加減にしなよ!」

「わりぃ。この一番だけな」

 

拝むような仕草でドランさんがミカさんに顔を向ける。…仕事してください。

 

「そういやミカさん、他のみんなは?」

「リンゼちゃんは部屋居ると思うけど、エルゼちゃんと八重ちゃんは出かけたよ」

「この雨の中を?」

「パレント新作のお菓子を買いに行ったよ」

 

あーあれか。僕はあの後、バニラ関連で、バニラロールケーキを作ってみたのだ。これも嫁が出してくれたアイデアだ。

アエルさんに材料と作り方を教えて、一緒に作って食べたら、おいしかった。その後、調子乗ってイチゴロールケーキも作った。みんなにも食べてもらうと、絶賛だった。

美味しそうに食べるエルゼと八重に思わず

 

「かわいい」

 

とつぶやいたら、八重とエルゼに腹パンされた。

 

(なんでー----)

 

 

 

 

 

「ただいまー。うあー、濡れたー」

「ただいまでござる」

「おかえり。ケーキ買えた?」

「ばっちり。雨で逆に人が少なかったから助かったわ!」

 

良かったね。それにしても、いい笑顔だな。

 

「おいしかったでござる」

「ねー、はいこれ、ミカさんの分」

 

エルゼは持っている袋から四つの白い箱を出して、そのうちの一つをミカさんに手渡した。

 

「残りのは?」

「一つはリンゼの、もう一つは私たちのよ。残りの一つは公爵様に届けて」

「ん、OK」

 

そうだ。お土産に将棋も持っていくか。裏庭に出て、ギアトリンガーとライダーギアを取り出す。

セットし、ハンドルを回す。

 

『カ・メ・ン・ライダー』

 

トリガーを引く

 

「ビ・ル・ド」

 

半分赤色もう半分が青色の天才物理ライダー。仮面ライダービルドの力を使って、将棋盤と駒を二セット作る。十分で完成。食堂に戻って一セットをバラルさんに渡して、もう一セットとロールケーキの入った箱を袋に入れて、手に持った。

 

「じゃあ、行ってきます」

 

傘を持って、【コネクト】を発動する。ちなみに【コネクト】は使う頻度が高いので、常にベルトと右手に指輪を着けている状態にしている。

 

 

 

 

 

「うまあ!これうまあ!」

「はしたないですよ、スゥ。でもホントにおいしいわ。このロールケーキというの」

 

エレン様とスゥは大喜びでロールケーキを食べている。持ってきた甲斐があるな。

 

「お前らもおいしいか?」

「ギャウギャウ」

「キューン」

「ヒヒーン」

 

おお、この子たちにも好評だな。

ん?誰これだって?

これは僕がスゥたちの護衛と思って彼女たちに渡した。恐竜型のギア「ゼンカイジュウギア」、宇宙怪獣「リムエレキング」、プラモンスター「ブルーユニコーン」だ。

まあ、襲撃のこともあったし、念には念をと一週間前にスゥたちに渡したのだ。最初見せたときは、アルフレッドさんとエレンさんは驚いていたが、スゥは

 

「かわいいのじゃ」

 

と言い、三匹に近づき、抱きしめた。彼らも嬉しそうだ。

さて、ゼンカイジュウギアは僕が作った強化アイテムだが、今回のはまた別なものである。チェンジできない代わりに、戦闘時には人間と同じ大きさになるシステムを加えた。リムエレキングは僕の星の親エレキングに確認したところ了承してくれたので連れてきた。本人も喜んでいるようだ。ブルーユニコーンは僕の魔力で呼び出した使い魔である。

それぞれゼンカイジュウギアはアルフレッドさん、リムエレキングはスゥ、ブルーユニコーンはエレンさんが護衛となっている。

 

「いや。これをいつでも食べられるとは、リフレットの人たちが羨ましいな。君みたいな転移魔法が使えれば毎日買いに行くんだが」

「よろしければ、材料と作り方を屋敷の料理人に教えますよ。秘密ってわけでもないので」

「本当か、玲我! 母上、ジュウ、リム、ユニ、これから毎日食べられるのじゃ!」

 

おーい。よだれ出てるよ。ちなみにジュウとはゼンカイジュウギア、リムとはリムエレキング、ユ二とはブルーユニコーンのことである。

 

「もう、スゥったら。毎日食べていたら太ってしまいますよ。一日おきにしておきなさい」

 

はは。いい家族だな。

それから、僕はアルフレッドさんに将棋を渡し、遊び方を教えた。スゥが「わらわも」と言っていたが、途中で寝てしまった。リムを抱き枕にして。

 

 

 

 

 

あれから、深夜になるまでずっと将棋をしていた。あー王都でも、流行る予感がする。




どうでしたか
ビルドの使い方をもう少し考えたいと思います。
次回はようやく変身したいです


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第三章
水晶と悪魔


こんにちわ
今回で初の変身をします、


<レイガサイド>

 

「八重、そっちに行ったぞ!」

「承知!」

 

僕たちは今ギルドの依頼としてデュラハンと戦っている。こいつ結構めんどいな。八重の刀で腕を切っても、すぐに再生する。ほんと面倒だな。

僕がまた、シンケンマルで右腕を切ったタイミングで、横から飛び込んだ影が、デュラハンの脇腹を拳で抉り、体勢を崩したすきに、鋭い回し蹴りを炸裂させた。

 

「エルゼ!一角狼の方は!?」

「なんとか片づけた!ったく二十匹近くにいたわよ、もう!」

 

遠くからリンゼも駆けてくる。よし、ここから本番だ。

 

 

 

 

 

「片付いたわね」

「疲れたでござるよ!」

「だね」

 

そのあと四人で戦ったが、結構時間がかかった。結局、リンゼの魔法で足止めをしてもらい、その間に僕が『ウルトラマンゼットギア』を使い、ゼスティウム光線を放った。

さすがにもう三人とも驚くことはなかった。

 

「一角狼の大群が一緒にいたってのは誤算でしたね。危なかったです…」

 

そうだよね。まさかあんなにいるとは思わなかった。

僕らはここ数か月でギルドランクが下から三番目の緑になった。たまには違う町のギルドで依頼を受けてみようか、とエルゼが提案してきた。そこで王都まで行って、緑の依頼を受けてこの廃墟に巣くう魔物の討伐を選んだのだ。

 

「しかし、昔の王都って言っても何にもないな…」

 

まわりを見渡しても、あるのが崩れた壁しかない。ここが昔の王都って言われても信じられないな。昔何かあったのかな?

 

「王家の隠し財宝とかあったら面白いんでしょうけどね」

「いや、それはないでござろ」

「いや、財宝じゃないけど、歴史的に価値があるものはあるよ」

「「「え!?」」」

 

そう、僕がここにきてからずっと何かの気配がする。討伐した後、感覚を研ぎ澄ましたら魔石っぽいものが埋まっていることが分かった。

 

「どっ、どっちでござるか!?」

「こっちだな。結構大きいな、何だこれ?」

「「「大きい!?」」」

 

廃墟の中を感じるがままに進む。僕の後にみんなも続く。

 

「この瓦礫の下かな?」

 

気配が瓦礫の下から続いていた。

 

「リンゼお願い」

「【炎よ爆ぜよ、紅蓮の爆発、エクスプロージョン】」

 

ものすごい爆発音とともに、瓦礫が粉々に吹っ飛ぶ。

 

「ありがとうリンゼ」

「…いえそれほどでも」

 

そう言って、瓦礫の下をのぞくと、地下へと続く石の階段が、不気味に僕らを迎えた…。

 

「【光よ来たれ、小さき照明、ライト】」

 

リンゼが魔法で作り出した明かりを頼りに僕らは地下へと進んでいる。

 

「な、なんか…気味、悪いわね…幽霊でも出そう…」

「なっ…なにを言ってるんでござるかエルゼ殿!まさか、ゆっ、幽霊など出るわけないでござるよ!…ね?」

 

幽霊か?いるなら会ってみたいな。それより二人とも僕の服を引っ張るのやめて、歩きづらい。でも、そこがまたかわいいな。

と思っていると、大きな広間に出た。

 

「なんだこれ…?」

 

そこにあったのは正面の壁いっぱいに描かれた、何かの文字らしきものであった。あれ読めない?

 

「リンゼ…なんて書いてあるか読める?」

「いえ、まったくわかりません。古代魔法言語…とかでもなさそうです…」

 

リンゼも読めないか。なんでだろう?後で神じいちゃんにも聞いてみようかな?

一応この文字を知っている人がいるかもしれないので、写真を撮っておこう。

僕は『ゴーバスターズギア』を使ってイチガンバスターを取り出し、カメラモードにして写真を撮った。なお、写真のデータは僕の持っているスマホと連動している。

カメラの音にみんなはビクッとなったが、僕がギアの力というと安堵のため息をついた。

壁画をすべて撮影をしていくと

 

「ねえ、ちょっと!みんなちょっと来て!」

 

広間を探索していたエルゼが突然声を上げる。どうしたんだろう?

 

「ここ、何か埋まっているわ」

 

彼女は壁の一部を指し示した。確かに何か埋まってる。なんだこれ?

 

「これは…魔石ですね。土属性の魔石です。おそらく魔力を流すと何かの仕掛けが起動するのでしょう」

「何かって…罠とか?」

「その可能性もないとは言えませんけど…こんな見え透いた罠とか、普通ありえません」

 

なるほどね。でもなんか引っかかるな。まあとりあえず魔力を流してみよう。

すると、前の壁がすべて砂になって流れ落ち、ぽっかりと穴が開いた。壁の奥をのぞき込むと、部屋の中央には、コオロギの形をした物体が置かれていた。

 

「なんなの、これ?何かの像かな」

 

エルゼがいろんなっ角度からのぞき込む。この素材、ガラスに似ている。しかも物体の中には赤い球体が透けて見える。

しかもさっきからなんか嫌な予感が

 

 

 

 

 

「玲我、いますぐそこから離れろ」

 

突然、頭に声が響いた。この声は。僕は周りを見渡すと、リンゼが出した【ライト】が赤い球体に吸い込まれるのが見えた。

こいつ、まさか魔力を吸収しているのか!

 

「みんな、早くここから出ろ!!!」

 

僕の叫びに三人は驚いていたが、それは急に動き出した。

 

キィィィィ!

 

耳鳴りのような、甲高い音があたりに響き渡った。

 

「まずい!【コレクト】!」

 

僕が魔法陣を出現させ、みんなを次々と地上へと送り、最後に僕が門をくぐろうとしたとき、それは見えた。コオロギの形をした水晶の魔物。それと水晶の中の赤い球体が光り輝いていた。その魔物の足が一本、僕に向かってものすごいスピードで伸ばしてきた。ヤバッ!

僕は転がるように魔法陣を抜け、地上に出た。

 

「何だったの、あれ?」

「あんな魔物、見たことないでござるよ…」

「いや、まだだ」

 

僕がそういうと、廃墟が崩れてそこからさっきの魔物が出てきた。

 

「【炎よ来たれ、赤き連弾、ファイアーアロー】」

 

リンゼがコオロギに向かって炎の矢を連続で打ち出した。しかし、そいつはそれを受け止め、吸収した。

 

「魔法が吸収された!?」

「くっ…なら」

 

八重が抜刀し、コオロギの本体に一撃を放ったが、その攻撃で奴につけることができたのは、わずかなかすり傷一つだけであった。

 

「なんて硬さでござるか!」

「っこのッ…!」

 

次いでエルゼがコオロギの側面から正拳突きを放つが、やはり大した傷をつけることはできない。

 

「どうしたらいいのよ、これ!?」

 

くそ!どうすればいいんだ。いろいろ選択はあるが、得体のしれない相手だからどれを選べばいいか。どうすれば。

 

「玲我、俺っちに行かせてくれよ」

 

そうか、なら

 

「一緒に行こうぜ

 

 

 

 

 

バイス

 

「おう」

 

僕はギアトリンガーと『リバイスギア』を取り出す。

 

『ババン!ババン!ババン!ババン!ババババーン リ・バ・イ・ス』

 

ギアから二人の仮面の戦士が出てくる。そしたら、僕の手には「50」と書かれたベルト『リバイスドライバー』と、紫色の恐竜が描かれたハンコ『レックスバイスタンプ』が握られている。

僕はベルトを腰へ巻く。

 

「わいてきたぜ!」

 

バイスタンプのアクティベートーノックを押す。

 

『レックス!』

 

僕の後ろにラインのやり取りの映像が出た。相手はバイスだ。

 

『しゃ。久しぶりの戦闘。暴れるぜ!』

『ほどほどにな。バイス』

『わかってるぜ。玲我』

 

僕はバイスタンプのゲノミックスタンパーをリバイスドライバーのオーインジェクターに押し込んだ。

 

『カモン!レ!レ!レ!レックス!カモン!レ!レ!レ!レックス!』

 

突然の愉快な音声に三人と、コオロギは僕の方を見る。

 

「変身」

 

バイスタンプをバイスタンプゴースロットにセットし、倒す。

 

『バディアップ!オーイング!ショーニング!ローリング!ゴーイング!仮面ライダー!リバイ!バイス!リバイス!』

 

音声が終わるとそこには二人の仮面ライダー。仮面ライダーリバイと仮面ライダーバイス。




どうでしたか
今回でようやく仮面ライダーになりました
次回H戦闘です、


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仮面と悪魔と相棒

こんばんわ
今回はリバイスの戦闘を書きました。



<レイガサイド>

 

「いやー、どうも。初めまして俺っちの名前は仮面ライダーバイス。それであっちが仮面ライダーリバイ。二人合わせて仮面ライダーリ・バ・イ・スよろしくな」

「バイス。自己紹介もほどほどにな。イッキに行くぜ!」

 

俺たちは、コオロギの怪物に向かって駆け抜ける。あいつも俺たちが危険だと判断したのか、足で攻撃してきた。

 

「バイス。俺が奴の足を攻撃するから。お前は本体に攻撃しろ」

「OK。まかせろ」

 

俺は、リバイの武器『オーインバスター50』を、バイスは『オストデルハンマー50』で攻撃してきた。

 

「ハアッ」

 

俺はオーインバスター50で足を切り裂く。オーインスタンプを取り出してオーインジェクサターに押印する。

 

『スタンバイ』

『♪♪♪』

 

俺はオーインバスターのトリガーを引く。

 

『オーイングスラッシュ』

 

斬撃がコオロギの足を切り裂く。

その間にバイスがコオロギに近づく。

 

「へへー。コオロギちゃん。これでもくらえ」

 

コオロギをオストデルハンマーで打ち上げる。

 

「おお。とんだとんだ」

「バイス、決めるぞ!」

「おお」

 

俺はバイスタンプを倒して、再び倒す。

 

『レックス!スタンピングフィニッシュ!』

 

俺たちはコオロギに向かってライダーキックをした。

 

「「ハアーー-」」

 

攻撃を喰らったコオロギもどきは赤い球体とともに砕け散った。

 

「やったな。バイス」

「おう」

 

俺は変身を解除して、三人のところに向かった。

 

「大丈夫。三人とも」

「「「…」」」

「ん、どうしたの?」

「「「いや、さっきの何なの(ですか)(でござるか)!!!」」」」

 

と大きい声で驚かれた。あー-。どうやって説明しよう。

 

 

 

 

 

そのあとの説明がホント大変だった。リバイスのことはギアの力ということで話はついたが、バイスのことを説明したら、過去一番に驚かれた。

 

「ちなみにこいつは俺の相棒で、悪魔のバイスね」

「俺っち悪魔のバイス。よろしくな」

「「「…えー--!!!」」」

 

そのあとはみんながバイスに質問攻めであった。バイスどんまい。

あと、今回のことは公爵様に伝えることにした。

 

 

 

 

 

「そうか、旧王都にそんな遺跡が…」

 

公爵が考え込むように腕を組んで、椅子の背にもたれる。スゥとエレン様はリムとユニと一緒に出掛けたらしい。

 

「わかった。これは王家に関わりのあることかもしれない。国の方から調査団を出し、調べてみよう。もろん、その魔物もな」

「あー…地下遺跡の方は崩壊してしまったので、調べるのは難しいかも…」

「なに?そうか…その壁画に何が書かれていたか興味があったのだが…」

「あ、それは大丈夫です」

 

僕は公爵に撮った写真を見せる。

 

「こっ、これ何だね!?」

「画像を記録できるギアの力です」

「ほ、ほう~…、相変わらず凄いな君は…」

「時間をいただければ書き写してお渡ししますよ」

「頼む。ひょっとして千年前の遷都の謎が記されているかもしれないからな」

こっちでも色々調べてみよう。あの魔物の正体。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時の僕はまだ知らなかった、今回の敵がこれからこの星を脅かす存在であることを。




どうでしたか
次回はあの姫様が出ます


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姫様との出会い

こんばんわ
今回は王様を助けます


<レイガサイド>

数日後、僕は例の地下遺跡の壁画を紙に写し終わった。

まあ、ほとんど彼がしれくれたんだけど。彼は『カラフルコマーシャル』と呼ばれるシフトカーである。

ドライブギアの力で呼び出した僕の仲間で、見た目は小さい車だが、意思を持っている。

彼の能力でスマホの写真を紙に写し出してもらった。これからも彼の力は借りるだろう。

ついでに、何種類かお菓子のレシピを作ったので、アエルさんに渡したら、喜んでくれた。

また、エルゼと八重が通う続けるな。

 

 

 

 

 

公爵様に写した紙を私に【コネクト】で公爵家の正門前に出た。

 

「うわっ」

「あ、すいません」

 

突然の僕の出現に驚く門番さん。毎回この反応だな。いい加減慣れてほしいな。

あれ、正門が開き、中から馬車が出てきた。お出掛けかな?

 

「玲我殿!?ありがたい!乗ってくれ!」

「はい?え?なんですか!?」

 

馬車の扉から公爵が瞬く間に腕を引っ張って、僕を馬車に引きずり込んだ。

 

「いや、このタイミングで玲我殿が訪ねてくれるとは!おそらく神が君を遣わせてくれたのだろう。感謝せねば」

(すいません。目の前にいます。一応神様ですよ)

 

と思っていたが、何か焦っているように見える。何かあったのかな?

 

「いったい何があったのですか?」

「兄上が毒を盛られた」

 

あー-毒を…はあ--!?

だって公爵の兄といえば国王様だよな。

 

「幸い対処が早かったのでまだ持ちこたえている。だが…」

 

なるほど、毒がまだ消えていないのか

 

「犯人に心当たりは?」

「・・・思い当たる人物はいる。だが、証拠がない。君も覚えているだろう、スゥが襲われたことを。おそらく同一犯だと私は考えている」

「でもどうして国王様を? あ、他の国からの刺客とか」

「それならまだ分かり易かったんだがね」

 

ん?違うのか?

話をまとめると、西の国リーフリース皇国とは友好で、東のレグルス帝国とは不可侵条約を結んでいる。しかし、南のミスミド王国とは条約を結べていない。どうやら古い貴族が亜人のことを気にいらないらしい。要するに差別だ。国王様は逆にミスミド王国と友好を結ぼうとしている。だから、国王様を暗殺して、一人娘を自分たちの子と結婚させ、権力を得ようとしている。スゥを襲ったのもこれのためだろう。

 

「ホント最低な奴らだな」

(お前もそう思うかバイス)

「ラブ。コブコブ。クズ」

「本当クズな奴らって言ってるぜ」

(ラブコフもか。まあそう思うよな)

 

僕の悪魔のバイスとラブコフに言われたら、もうどうしようもないよ。

 

「それで、僕は何をすれば?」

「兄上の毒をけしてほしい。エレンにかけたあの魔法で」

 

確かに『コスモス』の力なら毒程度なら、簡単に治せる。

 

 

 

 

 

そうこうしている間に、僕たちは王城へとたどり着いた。白の中に入っていくと

 

「これはこれは公爵殿下、お久しぶりでございます」

「ッ!…バルサ伯爵…!」

 

にらむような視線で公爵は目の前の男を見た。小太りで派手な服を着た、髪の薄い男だ。ニタニタとした締まらない笑みを浮かべ、こちらを眺めている。

 

「うっわ。見た感じヤな奴だぜ」

 

バイス、僕も同感。

 

「ご安心ください。陛下の命を狙った輩は取り押さえましたぞ」

「なんだと!」

「ミスミド王国からの大使です。陛下はワインを飲んでお倒れになりました。そのワインがミスミド王国の大使が贈ったワインだと判断したのです」

「馬鹿な…」

「…いや絶対にこいつが殺しただろう。なー玲我」

(いや、バイス証拠もないのに疑ったらだめだよ。まあ僕もこの人が犯人だと思うけど)

 

もし、犯人がその大使なら、戦争になりかねない。

 

「大使は別室に拘束しております。獣人風情が大それたことをしたものですな。首をはね、ミスミドへ送りつけて…」

「ならん!すべては兄上が決めることだ!大使にはしばらく部屋に留まってもらうだけにしろ!」

「そうですか。獣人ごときにもったいないお言葉で…。ではそのように、しかし、陛下にもしものことがあらば、他の貴族の方々を私は止めることができませんぞ?おそらく私と同じことを言い出すと思いますがね」

「クッソムカつく。玲我絶対こいつが犯人だぜ」

(犯人かはともかく、こいつ確かにムカつく)

「では私はこれで。これから忙しくなりそうですからな」

 

そう言ってそいつはのっしのっしと長い階段を降り始めた。

ちょっと懲らしめるか。僕は下に敷いてある絨毯にレックスバイスタンプを押印する。すると、バイスが絨毯に憑依する。

 

「まかせたぞ。バイス」

「まかせろ」

「うおわッ!?」

 

バイスは絨毯を操り、足を滑らせて、階段を勢いよく転がり落ちていった。

 

「ぐぎゃッ!」

 

まわりのメイドさんや、警備の騎士たちが笑いをこらえて震えている。

「ナイス。バイス」

「あいよ」

 

ポカンとしていた公爵が、僕に尋ねる。

 

「君か?」

 

僕は無言で親指を立てて、さわやかな笑顔を返す。公爵はあきれたような表情をしたが、やがて同じような笑顔を返してくれた。

 

 

 

 

 

「兄上!」

 

部屋の中に公爵が飛び込むと、ベッドのまわりには何人か集まっている。全員、横たわる人物、多分あの人が王様だろう、を悲愴な面持ちで眺めている。

ベッドにすがりつき、横たわる王の手を握りしめる少女。その傍らで涙をこらえて椅子に座る女性。沈痛な面持ちで佇む灰色のローブを着た老人、黄金の杖を持ち、目を伏せている翡翠色の紙をした女性、怒りに肩を震わせている軍服をまとった立派な髭の男。

公爵は灰色のローブを着た老人に声をかけた。僕も準備しとこう。

 

「兄上の容体は?」

「いろいろと手を尽くしましたが、このような症状の毒は見たこともなく…このままでは…」

 

老人は瞼を閉じ、首を静かに横に振る。この人は医者か。そのとき、かすれるような声で王様が口を開いた。

 

「アル…」

「兄上!」

「…妻と娘を、頼む…お前が…ミスミド、王国との同盟を…」

「玲我殿!頼む!」

『ババババーン! コ・ス・モ・ス』

「はい」

 

僕が駆けよると、軍服の人がそれを咎めようとしたが、公爵に阻まれた。

王様は僕は見つめ、誰だ?と口を動かすが声になっていない。危険だな

 

「【フルムーンレクト】」

柔らかな光が僕の掌から王様へと流れていく。

やがてそれが終わると、パチパチと瞬きを繰り返し、目には正気がよみがえり、ガバッっと上半身を起こした。

 

「お父様!」

「あなた!」

「…なんともない。先ほどの苦しみが嘘のように消えている」

「陛下!」

 

医者が王様の手を取り、脈を測ったり、目をのぞき込んだりしている。

 

「…ご健康そのものです。まさか、こんなことが…」

 

唖然としている医者をよそに、王様は僕の方へと目を向けた。

 

「アル…アルフレッド。この者は?」

「我が妻の目を治された光神玲我殿です。偶然、我が屋敷へおいでくださったので、お連れしました。彼なら兄上を救ってくれると」

「初めまして。光神玲我と申します」

「そうか、エレン殿の…助かったぞ、礼を言う!」

 

僕も返事を返そうとしたら、後ろからパンパンと軍人の人が叩いてきた。

 

「よくぞ陛下を救ってくれた!玲我殿といったか!?気に入ったぞ!」

「将軍、そのへんで。それよりもさっきの魔法は?」

「ああ。無属性魔法の【リカバリー】と似たものです」

「そうですか。興味深いですね」

「兄上、それでミスミド王国の大使についてですが…」

「大使がどうした?」

「兄上暗殺の首謀者としてバルサ伯爵に拘束されております。いかがいたしましょう?」

「馬鹿な!ミスミドが私を殺してなんの得がある!これは私を邪魔に思う別の者の犯行だ!」

 

やっぱりそうだよな。怪しいのはもうバルサ伯爵しかいないけど。

 

「しかし事実、大使から贈られたワインを飲んで陛下はお倒れになられた。その現場を多くの者が見ております。その容疑が消えない限りは…」

「ううむ…」

 

なるほど、証拠ね。

 

「どんな毒が使われたのか、それさえ分からなかったのです。獣人が使う特殊な毒カもしれません。まずはそれを調べませんと…」

 

毒か?確か普通の回復魔法では麻痺や毒などの状態異常は回復できないってリンゼが言っていたな。

 

「とりあえず大使に会おう。呼んできてくれ」

「は」

 

軍服の人が出ていく。濡れ衣を着させられたんだろう。かわいそうに。

 

「あの…」

「ん」

 

僕が考えていた時、おずおずと声がかけられた。この子。確かお姫様だよな。スゥと同じ金髪で大きな瞳がかわいらしい。よく見るとオッドアイで、右が碧で左が翠。どうしたんだろう?

 

「お父様を助けていただき、ありがとうございました」

「いえ、気にしないでください。お父さん元気になられてよかったですね」

 

僕が笑顔でそういうと、お姫様はじっ…と僕の方を見つめ続けている。

 

じー------

じー---------

じー---------

・・・どうしたんだろう?

 

「あの…何でしょうか?」

「…年下はお嫌いですか?」

「…はい?」




どうでしたか
明日はドンブラザーズが放送します。
いつかこの話でも出したいです。


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事件即解決

こんばんわ。
今回はドンブラザーズ要素を少し入れました。


<レイガサイド>

 

彼女の質問の意図がわからず、首を傾げていると獣人の女性が入室してきた。

 

「オリガ・ストランド、参りましてございます」

 

王様の前で、片膝をつき、頭を下げる。あれこの人どっかで?

 

「単刀直入に言う。そなたは余を殺すためにこの国に来たのか?」

「誓ってそのようなことがございません!陛下に毒を盛るようなことは断じて!」

「だろうな。そなたはそのような愚かなことをする者ではない。信じよう」

 

国王の微笑みに、安堵するミスミド大使。んー-、最近見たような?

 

「しかし、大使から贈られたワインに毒が仕込まれていたのは事実。これはどうなされます?」

「そ、それは…」

 

杖を持ったお姉さんの言葉に、力なく狐の獣人はうなだれる。ん?狐の獣人…あ!思い出した。アルマのお姉さんだ

 

「ちょっとすいません」

「玲我殿?」

「あ、あなた…!」

「君は大使と知り合いだったのかね?」

「妹さんと仲良くなりまして。その時に少しだけ。」

 

それよりも気になったことを軍服の人に聞いた。

 

「王様が倒れたところはどこですか?」

「要人たちと会食をするための大食堂だが…それがどうした?」

「現場は倒れたときのままですか?」

「ああ、そのままだが…いや、ワインだけは持ち出して毒の判定のために、検査を続けているが…」

「わかりました。じゃあ、その部屋に連れて行ってもらえませんか?大使の潔白が分かるかもしれません。」

 

みんな顔を見合わせていたが、王様の許可が下りて、軍服の人、レオン将軍にその部屋へと案内された。

 

 

 

 

 

部屋に入ると、長いテーブルの上には食器類が置かれている。将軍に頼んで、例のワインを持ってきてもらう。

 

「このワインは珍しいものなんですか?」

「よくわからんがそうらしい。かなり貴重なものと大使が言っていたぞ」

「なるほどね」

 

僕は事前に『ダブルギア』で召喚したデンデンセンサーで見てみる。

んー-このワインには毒らしき物の反応はしないな。じゃあどこかな?

 

「こういう時はグラスが怪しいぜ。玲我。刑事ドラマでそう言ってたぜ」

(いや、刑事ドラマって。まあ確かに次に怪しいところはそこなんだけど)

 

僕は王様が使用したグラスを見ると…

 

「なるほどね…これで分かった。将軍、王様たちとバルサ伯爵をここに呼んできてください。あと、ひとつ頼みたいことがあります」

「頼み?」

 

さてと、じゃあ事件を解決しますか?

 

 

 

 

 

「へ、陛下!お身体の方はもうなんとも!?」

「おう、バルサ伯爵。この通りなんともない。心配かけたようだな」

「そう、ですか。ははは、それはそれは。何よりでございます…」

「一時はもうダメかと思ったが、そこの玲我殿がたちまち毒を消してくれたのだ。いや、余は運がいい。危ないところだった」

 

王様の発言を聞いて、僕の方を憎々しげに睨みつけてくる伯爵。

いや、見るからに動揺しまくりでしょう。隠す気ないでしょう。

しかも、すんげー睨んでくるし。

 

「それで玲我さん。みんなを集めてどうするつもりですか?」

「はい。実は王様に毒を持った犯人が分かったんです」

 

この発言にオリガさんが顔を青ざめ、それを見てバルサ伯爵の口元が吊り上がる。うっわ、ムカつく顔。

 

「まず、この毒が入ったワインですが」

 

ワインの瓶を手に持って指め示す。

「これはオリガさんの贈られたワインで間違いありませんか?」

「た、確かに私が贈ったものですが、私は毒など…」

「黙れ!この獣人風情が!まだシラを切るとは!恥知らずにもほどが「うん、うまい!」…な!?」

 

みんなあんぐりとくちを開けて僕の方を見ていた。

なぜって?僕がそのワインを飲んでいたから。

 

「玲我殿!?だ、大丈夫なのか!?」

「大丈夫ですよ。だって最初からこのワインには毒が入ってないんですよ。」

「なに!?」

 

みんなは疑問を浮かべているが、伯爵は尋常ではない汗をかいてある。焦りすぎでしょ。

 

「さて、ここに取り出したワインは僕の故郷で作られたワインですが」

 

これは僕の星でみんなが作ってくれたワイン。キングじいちゃんたちの星では高級ワインで売られている。

僕はテーブルに置いてあるワイングラスを持ち、ワインを注ぎ将軍に渡す。

 

「飲んでみてもらえませんか?」

 

将軍は訝しげにしていたが、そのまま飲み干した。

 

「むう!コレは素晴らしい!今までに味わったことのない味だな!うまい!伯爵もどうだ」

「は?はあ、では…」

 

うなずいた伯爵の前に僕は国王が使ったグラスにワインを注ぎ渡す。すると、はくしゃくの顔色が変わった。

 

「はい。どうぞ伯爵様。」

「いやっ、私は…」

「まあまあ。ぐっと一気に」

 

満面の笑顔で伯爵に声をかける。

 

「どうした、伯爵。飲まんのか?」

「はっ、いや、その…」

「飲めませんか?では僭越ながら私が手伝って差し上げましょう」

「はっ!?ムグッ!うぐう!?」

 

僕はグラスを取り上げると無理矢理伯爵の口に流しこんだ。

 

「う!うあ!うああ!た、助けてくれ!毒が!毒がまわる!死ぬ!死ぬうぅぅぅ!」

 

喉元を押さえ、ワナワナと腕を震わせ、もがく伯爵

 

「う、苦しい!毒が!毒があぁぁぁ!助け…「大丈夫ですよ。さっきのグラス、新品のグラスですよ」…なに?」

 

伯爵はキョトンとした表情で、のたうちまわるのをやめる。起き上がり、喉元を軽くさする。

 

「…なんともない」

「そりゃそうでしょ。普通のワインですから。無理やり飲ませたのは謝りますよ。

 

でも、

 

なんで毒が入っていると思ったんですか?

 

「う!?」

 

伯爵の表情が凍り付く。

 

「…どういうことだね?」

 

公爵が僕に尋ねてくる。僕はデンデンセンサーを取り出して説明する。

 

「これは僕の魔法具で、毒の反応を見ることができるものです。これを使い、ワインを覗いても反応がなく、王様の使用したグラスの中を覗くと、

 

反応がありました」

 

「グラスに…?なるほど、道理でワインからは毒が検出されなかったのか」

「はい。そして実行犯はコックか給仕係あたりでしょう。あとは事件の真犯人ですが、もうわかりますよね?」

 

そういうと、みんなが伯爵を見つめた。

 

「…くっ!」

 

伯爵は逃走しよとしたが、残念。

 

「ギャオーーン!」

 

扉から巨大化したゼンカイジュウギアが伯爵の前で吠えた。

 

「ギャアーーー」

 

これにより、伯爵が勢いよく転んだ。

 

「ッの!」

 

そこにオリガさんが横腹に強烈な蹴りを炸裂させた。まあ、ここまでしたんだから恨まれても仕方ない。

 

 

 

 

 

そこからは迅速で、実行犯も捕まり、伯爵は処刑。家族は国外追放となった。国王様は今回の報酬は何がいいか聞いてきたが、断っておいた。

なんで?だって助けたいから助けただけだし。見返りを求めたら、それは正義ではなくなる。

その後、公爵がシャルロッテさんに僕が無属性魔法をすべて使えることを言うと、ものすごいスピードで部屋を出て行った。えっこわ!確かに無属性魔法に似た魔法は使えるが何か嫌な予感が

彼女が出て行ったあとは、国王様に贈り物として『ビルドギア』を使い、家族のフィギュアを作った。ついでに、公爵の家族も作ることになった。

すると、半皮紙を大量に持ったシャルロッテさんが戻ってきて、僕に迫ってきた。何怖い!

 

「こっ、これが読めますか?」

「え、と…『魔素における意味のある術式を持たないデゴメントは、魔力をぶつけたソーマ式…』ってなんですかこれ?」

 

まったく意味が分からない。僕の星の魔術師ならわかるかな?

 

「読めんですか!玲我さん!すごいです!これで研究が飛躍的に…すいません、こっちのも読んでもらえませんか?」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!」

 

その後、古代魔術の翻訳家になりそうだったので僕は『ドンブラザーズギア』を使って、あるサングラスを召喚した。これは、異次元空間がみえるサングラスだが、僕が改良して、異次元空間が見えない代わりに「古代精霊言語」を翻訳できるようにした。

それを渡すと、シャルロッテさんは喜びまくって出て行った。あー、さすがに疲れた。犯人を見つけるよりも疲れた。

 

それより、

じー------

じー-------

じー--------

さっきから、姫様が僕のことを見つめ続けている。僕なんかしたかな?

 

(まじか玲我、お前気づいていないのかよ。この鈍感!)

ん、何か言ったバイス?

そんなことを思っていると、姫様は立ち上がって、国王様と王妃様の方に向いた。

 

「どうしたユミナ?」

「お父様、お母さま。私決めました」

 

何を決めたんだろう?

 

「こっ、こちらの光神玲我さんとっ…けっ、結婚させていただいたく思いますっ!」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ⁉

 

 

 

 

 

えー------------------------------------⁉

こうして、この星について新たに嫁が増えたのかな?




どうでしたか
ドンブラザーズ面白かったです。
次回、レイガ結婚するのか?


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姫様と結婚⁉︎





<レイガサイド>

初めまして僕はウルトラマンレイガ。五人目の光の超神になるべく、今はある星の平和を守っている。だが、今重大な問題を抱えている。

それは、・・・・・結婚を申し込まれたのだ。

 

 

話を戻そう、僕は王様暗殺事件を解決した後、王様の娘、つまりこの国の姫様に告白されたのだ。会ってまだ二時間ぐらいしかたってない。いったいどうして!?

「…すまんが、もう一度言ってもらえるかな、ユミナ」

「ですから、こちらの光神玲我殿と結婚させていただきたいのです。お父様」

「あらあら」

うん。聞き間違いじゃない。・・・・じゃないよ!どうしてこんな見ず知らずの男に結婚を申し込むのお姫様!

「理由はなんだ」

「はい。お父様を救っていただいた、というのもありますが…玲我殿は周りの人を笑顔にしてくれます。アルフレッド叔父様や、シャルロッテ様、みんなを幸せにしてくれます。そのお人柄もとても好ましく、私はこの人と一緒に人生を歩んでみたいと…初めてそう思えたのです」

「…そうか。お前がそう言うのなら反対はしない。幸せにおなり」

「お父様!」

「ちょっと待ってください!」

親娘の会話を中断させる。このままじゃ、ややこしい事態になる。

「あのですね。こんな見ず知らずの男を信用していいんですか!」

「その辺は間違いない。ユミナは人の性質を見抜く『魔眼』持ちなんだ。そんなユミナが認めたのだから、最低でも君は悪人ではない」

いや、それでも・・・・・あー-このままいっても拉致があかない。それなら、

「正直に言います。細かい理由は言えませんが、僕にはすでにお嫁さんが五十人以上いて、僕と結婚すると不老不死に近い状態になりますが、それでもいいんですか?」

僕は割と脅迫っぽく王様家族に言う。これは事実だ。神と結婚すると言うことは、その人は半分神になるのと同じ。つまり死ぬことがないのだ。それに僕にはすでに嫁がいるのだ。

「玲我様は私がお嫌いですか…?」

・・・・えッ!斜め上の返事が来た。

「私は玲我様にどれだけお嫁さんがいても気にしません。ちゃんと、私個人を愛してくれるなら。それに玲我さんと過ごせるのなら、不老不死でも構いません!」

・・・この子マジだ。あー---どうしよう?嫁さんたちには『その星で嫁を増やしてもいいよ』と言われてはいたが、まさかこんなにも早くなるとは。

「・・・・・・わかりました。ですが僕はまだユミナ様のことを知りません。なので彼女のことを知ってから返事を出してもよろしいでしょうか?」

「わかった。ユミナのことを知ってみて、そのうえで結婚は考えられないというんら諦めよう。まずはそこからということでどうかな」

「はい」

今僕が出せる最大の答えだ。結婚するということは、彼女のこれからの人生すべてを背負うことだから。

「良かったですね。ユミナ。玲我さんの心を射止めなさい。それができなかったときは、修道院で一生を送ることを覚悟するのですよ!」

「はい!お母さま!」

これからもっと疲れるかも。

 

 

 

「なにやってんのよ。あんたは?」

僕は今銀月に帰って、今までの話をエルゼ、リンゼ、八重に話した。

「玲我殿が結婚でござるか…」

「びっくりですね…」

ホントビックリ。みんな呆れるのも分かるよ。しかもその原因のお姫様は今

「ユミナ・エルネア。ベルファストです。皆様よろしくお願いいたします」

僕の左腕にしがみついている。なんでここにきているのかだって?

だって、彼女のことを知っていくのならこれがいいって王様が言い出したんだもん。

で、これから一緒に暮らしていくので彼女もギルド登録をするらしい。これには三人とも驚いていた。僕は反対したが、ユミナは一切引かないので仕方なく。ちなみに、僕のことを旦那様と言うのをやめる代わりに、彼女のことをユミナと呼ぶようになった。彼女中々策士。

ユミナは弓と魔法を使えるので、遠距離攻撃担当にした。彼女の魔法の適性は風と土と闇で、リンゼが使えない属性であった。

明日は彼女のギルド登録と実力を確認するためにギルドへ向うことが決まったので、ユミナの部屋を新たに取りそれぞれ自分の部屋に戻った。

あー-なんか今日一段と疲れたな。

僕は部屋に入ってベッドに飛び込むと、着信音が聞こえた。ん、神じいちゃんからか

「もしもし」

『おお、久しぶりじゃな。レイガ君、婚約おめでとう』

「あー、ありがとございます?でもまだ結婚するとは決めてませんよ」

『そうか、君のことだから結婚すると思っていたが?』

「彼女は確かにいい子ですよ。でもまだ彼女のことを知らないので、これからの旅次第ですね」

『そうか、まあ、君がこれからどうなるかみんな楽しみにしているんでな、頑張ってくれよ』

「はい。ありがとう神じいちゃん。・・・・・・え、ちょっと待って、今みんなって言いました?」

『わしの眷族たちじゃよ。君のことを話したら、皆君に興味を持ちだしてな』

「なるほど・・・」

『君のこの星での結婚式には親戚一同として出席しようとみんなで盛り上がってな。あ、わしは祖父役で出るから』

「はあ。わかりました。その時はキングじいちゃんたちも呼んでください」

『わかった。ではまたな』

結婚か・・・。久しぶりに嫁さんたちに電話するか、今回のことも話さないと

 

 

 

 

 

 

その後、嫁たちに今回のことを話したら、皆彼女のことを受け入れてくれた。惑星レイガに連れてきたら、会いに来てとも言われた。帰ったら大変なことになりそう。

 

 

 




どうでしたか
今回、文を作るのが難しかったです。ところところ変でしたが、これで勘弁してください。
次回は、白いあの子がでます


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白帝と契約

こんばんわ
今回あのかわいい虎ちゃんがでます


<レイガサイド>

翌日、僕らはギルドへ向かった。ギルドへ向かう間、ユミナはめっちゃ目立っていた。いやー、王族のオーラが出てるのかな。

ギルドに向かう途中「武器屋熊八」によって、ユミナの弓と百本の弓と矢筒をセットで購入し、白い革鎧の胸当てと、おそろいでブーツも買った。

ギルドへ着き、僕がユミナウを連れて受付のお姉さんに彼女の登録をお願いしている間に、エルゼたちは依頼書のボードのところに行き、内容をチェックする。依頼は緑色にする予定だ。なんでも僕たちと同じ色の依頼を受けたいとユミナがお願いしてきたからだ。まあしょうがないか。危なかったら守ればいいし。

ユミナの登録を終え、エルゼたちのところに向かうと、エルゼが一枚の依頼書を持っている。

「なんかいいのあった?」

「んー、まあこれとかどうかなって」

「キングエイパム五匹…これでいいと思うけど、ユミナは?」

「問題ありません。大丈夫です」

よし、これにしようとエルゼは受付に依頼書を渡しに行った。。

 

 

馬車を使って、依頼場所のアレーヌ川を渡り、南の森へと到着した。

さて、キングエイパムはどこかな?僕が視覚を森へと向けようとしたが、ユミナがそれを止めた。

「すいません、森に入る前に召喚魔法を使ってもいいですか?」

「召喚魔法?なんか呼ぶの?」

「はい。キングエイパムを探すのに多分役に立つと思います」

ユミナは僕らから離れて魔法を発動させ始めた

「【闇よ来たれ、我が求むは誇り高き銀狼、シルバーウルフ】」

呪文を唱え終わると、ユミナの影から銀色の狼が五匹と現れた。一匹だけ少し大きく、額に十字の模様がある。彼がリーダーかな。それにしてもかわいいな。

「この子たちにも探してもらいます。離れていても私と意思の疎通が」できるので、発見したらすぐにわかります。じゃあ、みんなお願いね」

ユミナが命じると、みんな森の中へと駆けていく。

しばらく森の中を進んでいると、ユミナが急に立ち止まる。

「…あの子たちが見つけたようです。あ、でもちょっと多いですね。七匹います」

「七匹ね。わかった。ユミナ、キングエイパムたちをこっちにおびき寄せることってできる?」

「可能ですけど…どうするんですか」

「罠を張っておこう。」

そう言って、ユミナと一緒に土魔法を使って落とし穴を作って、僕らは木の陰に隠れた。やがて、キングエイパムたちが狼たちを追いかけて姿を現した。

ゴリラよりも少し大きく、牙が長いな。耳も尖ってて、目が真っ赤な猿だ。

しばらくして、猿たちが落とし穴に落ちた。

「ゴガァオォ!?」

「今だ!」

木の陰から僕と八重、エルゼが飛び出した。罠にはまったのは三匹。そのうちの一匹の目に、深々と矢が刺さる。ユミナか。その猿の死角から八重が斬りかかり、首の頸動脈を断ち切った。

「【炎よ来たれ、渦巻く螺旋、ファイアストーム】」

罠にかかったもう二匹をリンゼが呼び出した炎の竜巻が襲う。弱まったキングエイパムに僕とエルゼがとどめを刺した。

一息つく間もなく、森の奥から残りの四匹が姿を現す。僕は一匹をギアトリンガーで撃ちぬいた。

「ウガッ!?」

怯んだすきに、八重が体重をかけて刀を突き刺し、猿の心臓はその動きを止めた。

「【ブースト】」

残りの三匹のうち、一匹はエルゼが身体強化の魔法を使い、腹部を連続で強打していた。その攻撃に耐えれず、猿は動きを止めた。

残り二匹。

「【雷よ来たれ、白蓮の雷槍、サンダースピア】!」

「【炎よ来たれ、紅蓮の炎槍、ファイアスピア】!」

ユミナとリンゼの魔法が猿たちの胸に突き刺さった。

おお、すごい。魔法の腕はリンゼと同じか。

「あの、私、どうでしたか?」

「実力的には問題ないわね」

「魔法もなかなかのもの、です」

「やはり後方支援は助かるでござるなあ」

「うん、これからもよろしく頼むよ。ユミナ」

「はい!おまかせください」

こぼれるような笑顔で、僕に抱き着いてくるユミナ。あー、勘弁して!みんな見れるよおおお!

なんとか彼女を引きはがし、依頼確認達成確認のため、耳を集めていく。

「しかし、今思うと可愛い女の子に囲まれているな~僕は」

「「「!!!」」」

僕がそういうと、エルゼ、リンゼ、八重が固まった。ん?どうかした?

「ま、また、なにを言っているのよ、玲我。冗談ばっかり可愛いとか…」

「え、僕は事実を言っただけだけど」

「「「・・・・・」」」

なんでみんな顔が赤くなるんだ?

「じ、じゃあ、か、帰ろうか!」

「そ、そうだね、お姉ちゃん!」

「か、帰るでござるよ!」

「えへへ」

みんなどうしたんだろう?

(まじか玲我、鈍感にもほどがあるぞ?こんな子に育てた覚えはありませんよ。バイス母さんは?)

(ラブ。コブコブ。ラブラブ、バカ)

(えっとなになに、そんなふざけた芝居をする暇があるなら真剣に考えろバカ、だって、・・・ちょー-とラブコフさんひどくありませんか?)

 

 

 

 

ギルドの依頼完了を受付に伝えた後、僕たちは銀月に帰ってきた。僕はユミナに召喚魔法の仕方を聞いている。この星の眷族を一匹でもいた方がいいと思ったから。

銀月の裏庭では、ユミナが地面に大きな魔法陣を描いている。説明によると、契約には相手の条件を飲む必要があって、簡単なものから、絶対に不可能なものまであるらしい。ユミナが契約した銀狼の条件は『お腹いっぱい食べさせてくれること』だったらしい。条件が満たなかったら、召喚したモノは去ってしまうらしい。まあ何が来てもいいんだけど。

「とりあえずやってみるか」

完成した魔法陣の前に立ち、闇属性の魔力を流し、魔法陣の中心に集めていく。しばらくすると、突如、爆発的な魔力が生まれた。

『…我を呼び出したのはお前か?』

魔法陣の中央には、一匹の白い虎がいた。こいつ結構強いな。ビリビリとした魔力の波動を感じる。

「この威圧感、白い虎…まさか『白帝』!」

『ほう、我を知っているのか?』

ユミナが僕の後ろで銀狼に抱き着き、しゃがみこんでいる。てか、こいつ睨みすぎだろう。

「あんまり睨まないでくれるかな?怖がってるじゃないか」

『…お前は平然としているのだな。我の眼力と魔力を浴びて立っていられるとは…面白い』

「まあね。君よりヤバい存在を知っているからね。で『白帝』ってなに、ユミナ?」

僕がユミナに聞いてみるが、震える声で何かを話そうとしてるが、声にならない。この白虎の威圧のせいか。

「おい。ちょっとそれやめろ。話が進まないだろう?大丈夫かユミナ?」

僕がちょっと怒った声で白虎に話しかける。

『…よかろう』

僕はユミナの背中をさすりながら、彼女の話を聞く。

「で、ユミナ。『白帝』って?」

「はい。召喚できるものの中で、最高クラスの四匹、そのうちの一匹、です…西方と大道、の守護者にして獣の王…魔獣ではなく、神獣、です」

へー、神獣か。面白いな。

「それで、どうすれば契約してくれるんだ?」

『…我と契約だと?ずいぶんと舐められたものよな』

「とりあえず言ってみてよ」

『ふむ…奇妙だな。お前からはなにかおかしな力を感じる。精霊の加護…いや、それよりも高位の…なんだこれは?』

たぶん。超神の加護かな。キングじいちゃんたちにもらったことがある。

『…よし、お前の魔力の質と量をみせてもらう。神獣である我と契約するのだ。生半可な魔力では使いものにならんからな』

「魔力?」

『そうだ。我に触れて魔力を注ぎ込め。魔力が枯渇するギリギリまでだ。最低限の質と量を持っているのなら、契約を考えてやろう』

ふふん、と虎が笑ったように見えた。舐めてるな。

僕は虎の頭に触れて、魔力を流した。

「じゃあ、いくぞ」

『む…これは…なんだ。この神々しい魔力の質は…?』

「もう少し流し込むか」

『ふぐっ…これは。ちょ、ちょっとま…まっ…まってく…これ以上は…あううっ!』

「あれ?」

白虎ちゃんが急に倒れた。やばっ!すぐに『フルムーンレクト』を使って、白虎を回復させた。

『…ひとつ、聞きたいのだが…先ほどの魔力量で、まだ余裕があったのか?』

「うん。ちょっとだけ。でも今はもう回復してるよ」

『なんっ…!』

虎が絶句する。そんな変なことかな?

「それで契約だけど」

『お名前をうかがっても?』

「名前?僕の名前は光神玲我だけど」

てか、口調変わったね。

『光神玲我様。我が主にふさわしいお方とお見受けいたします。どうか私と主従の契約をお願いいたします』

「契約ってなにを?」

『私に名前を。それが契約の証になります』

「名前か…?」

こういうの友達のスライムのほうが得意なんだよな。うー-ん?あっ!

「コハク。琥珀ってどう」

『こはく?』

僕は琥珀の意味を教えると、気に入ってくれた。よかった。喜んでくれて。

そこから琥珀の存在を常に維持する許可を聞いてきたので、許可した。どうやら維持するにはそれなりの魔力が必要だったが、まあ魔力はすぐ回復するから大丈夫でしょ。

「あ、あとさ、その姿じゃ町中歩きずらいから、ちょっと…」

『ふむ…では姿を変えましょうか』

琥珀がそういうと、なんと大きさが小型犬ぐらいになった。

なんてかわいいんだ!思わず抱き上げてしまう。うああ、もふもふだ~。

『この姿なら目立たないと思いますが』

「うん。確かにこの姿なら大丈夫でしょ」

『ありがとうございます。ではこの姿で「きゃー--っ、かわいいー---っ!!」ぐふっ!?』

僕の手から琥珀が奪い取り、抱きしめるユミナ。うんその気持ちよくわかるよ、ユミナ。

『ちょっ、こら離さんか!なんなんだお主は!?』

「あ、まだ自己紹介がまだでしたね、私はユミナと言います。玲我さんのお嫁さんです」

『主の奥方!?』

「まあ、一応ね」

そのあとユミナのなでなでが終わった後、帰ってきたエリゼたちからもモフモフされた。

『主お助けー』

「頑張れ、琥珀。ついでに僕も後でモフさせて」




どうでしたか
琥珀の名前はそのままにしました。案が出なかったです。
次回からは、原作の二巻にいきます

追記 読者の誤字脱字報告を受け、修正しました。


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とある日常 八重

<レイガサイド>

琥珀と契約してから数日、僕は琥珀と一緒に町の市場を歩いている。

≪なかなか賑わっていますね≫

≪一応、この町の中心地だからね。≫

琥珀と僕は他人には聞こえない声で話している。召喚獣と召喚者である僕らは、心の中で意思の疎通ができるのだ。人混みの中は、琥珀を抱き上げて腕に抱えて歩いている。はじめは遠慮していたが、やがて大人しくなった。

しばらくすると、抱かれていた琥珀が顔を上げ、右手の人混みの方へ顔を向ける。

≪どうした琥珀?≫

≪主、あそこにおられるのは八重殿では?≫

≪え?≫

琥珀の視線を追っていると、通りの端に八重がしゃがみこんでいる。彼女の前には泣きじゃくる四歳くらいの女の子がいて、彼女はその子を一生懸命なだめようとしているみたいだ。

「どうしたの?八重」

「玲我殿?琥珀も一緒でござるか」

「うん。で…この子は?」

「それが迷子らしいんでござるよ」

迷子か。まあこの人混みじゃはぐれるよな。

「ねえ君、名前は?」

「うぐっ、ふぇぇ…おかあさぁん…」

ダメだ。泣き止んでくれな。

「先ほどから拙者も名前とかどこから来たのかとか聞いたんでござるが、まったく答えてくれないんでござるよ」

困ったな。なんかいいアイデアは…あっ!僕は琥珀を女の子の前に持ってきて、琥珀にお願いした。

『お前の名前は何という?』

女の子はキョトンした顔をしている。

『お前の名前は?』

「…リム…」

『そうか、リムと言うのだな』

それから琥珀に協力してもらい彼女の母親を無事探すことができた。よかったね。また会いに行こうね琥珀。

 

 

家族を見送った後、八重と一緒に喫茶店に入って、彼女の家族について話を聞いていた。

「兄上は普段は穏やかなのでござるが、こと、剣のことになるともう夢中になって仕方ないのでござる。本当に剣が好きで、食事を忘れるほどでござった」

そんなにか。僕の星の五剣豪と同じ性格してるな。まあ彼らは三度の飯より、剣・剣・剣だから。

「八重はお兄さんのこと好きなんだね」

「…そうでござるな。強くて優しくて、人の好い兄上が拙者は大好きでござる。そう言えば、玲我殿は兄上にどことなく似てるでござる。穏やかなところとか、人の好い所ところとか」

「大好きな兄上に似てるとは光栄だね」

「そうでござるな、大好きな…」

と八重のつぶやきが止まる。ん、どうしたの八重?

「ちっ、違うでござるよ!?拙者は、玲我殿と兄上が似てるということを言いたかったのであって…その」

それから、八重は慌ててていたが、どうしたのかな?

(玲我、ここまでいくと鈍感を通り越して、無関心の域だぞ)




どうでしたか
あと三回は日常会です。次回はワンセブンさんのアイデアを入れたいです


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とある日常 リンゼ

こんばんわ
今回説明が変なところがありますが、温かい目で読んでください


<レイガサイド>

八重と銀月に戻ってきてから、自分の部屋に戻って、ギアトリンガーとギアの調整と掃除をしている。いざというとき使えなくなったら、大変だからな。

しばらくすると、リンゼが扉を叩いてきた。

「…玲我さん。いいですか?」

「どうしたの。リンゼ?」

部屋に入ってくると、リンゼは手に木製の筒を持っていた。

「…今日、骨董屋でこれを見つけて買ってきたんです、けど…書いてある文字が古代魔法言語なので一部しか読めなくて…」

と、リンゼは筒から羊皮紙のようなものを取り出した。なるほどね。シャルロッテさんと同じ要件だな。

「わかったよ。ちょっと待ってね」

僕はベッドの上に置いてあるギアトリンガーと『ドンブラザーズギア』を取り使う。

『1000バーン ババババーン! ニューヒーロー』

僕は召喚したサングラスをリンゼに渡す。

「これ着けて読んでみて」

眼鏡をかけたリンゼはめっちゃ可愛かった。文学少女みたい。

「…!すごい、ですね。話には聞いていましたけど、スラスラと読めます」

「良かった。それで何が書いてあるの?」

「古代魔法のひとつ、水属性の魔法みたいです…『バブルボム』…攻撃系の魔法でしょうか」

バブルボムか。水爆弾かな?結構強そうだな。

リンゼはすぐにでも試してみたいと言い出したが、時間もないので、明日また付き合うことにして、今日は諦めてもらった。

 

 

次の日、僕とリンゼは東の森で魔法の練習をすることにした。

「【水よ来たれ、衝撃の泡沫、バブルボム】」

リンゼが構えた銀の杖の周りには、小さな水の塊が集まり出すが、すぐに弾けて地面に落ちた。これは失敗だな。

しばらくリンゼは挑戦していたが、何度も失敗に終わった。ん-、後何か足りないな?

十回を超えたあたりで、リンゼはふらっとよろめいて、膝をついて倒れそうになったが、僕は直ぐに受け止めた。

「大丈夫!?リンゼ!?」

「…だ、いじょうぶです…ただの魔力、切れです、から…。しばらく安静に、していれば…治ります…」

今日はもう駄目だな。

「…あ?れ、玲我、さん…!?」

僕は彼女を横抱きして、【コネクト】で銀月に帰って、彼女をベッドに寝かせた。その間、リンゼの顔がずっと赤かった。風邪かな?でも熱は高くないな。

 

 

次の日、リンゼはすっかり良くなっていた。

「…昨日はっ、ごっ、ご迷惑をかけて、すいませんでしたっ!」

「別に大丈夫だよ。それより、なにか掴めそう?」

「…いえ、なにも。魔法の発動にはその魔法の知識、が大きく左右されますから、やっぱり見たこともない魔法は難しい、です…」

魔法の知識か。何かいいギアはないかな?ウィザード?いやあれ結構魔力使うし。ウルトラマンで魔法系は思いつかないし。

スーパー戦隊には・・・・・・あっ!いた。

「ねえ、リンゼ。ちょっと渡したいものがあるから、昨日と同じ森に行こう」

「…はい。わかりました…」

 

 

僕たちは昨日と同じ東の森に来た。

僕はギアトリンガーとあるセンタイギアを取り出す。

『29バーン! ババババーン! マ・ジ・レンジャー』

僕が召喚したのは魔法戦隊マジレンジャーの使う魔法ステッキ『マジスティック』だ。

「リンゼ、これをもってみて」

僕はリンゼにマジスティックを渡す。

「それで魔法を撃ってみて」

「…はい。【水よ来たれ、衝撃の泡沫、バブルボム】」

すると、昨日までと違い、杖の周りに一個の水の塊…いやシャボン玉か。大きさが直径二十センチほど。ふわふわと漂い始めた。どうやら、リンゼの意思で移動させることができるらしい。やがてリンゼは一本の木めがけてその玉をぶつけた。瞬間、とてつもなく衝撃音が響き渡り、ぶつけた木が粉々に吹っ飛ぶ。

「…できた…」

「成功したね。リンゼ」

「…はい。でも昨日と違って…バブルボムのイメージが頭に浮かびました…。でもどうして…」

「それはね、その杖のおかげだよ」

「…これですか…?」

そう。今回リンゼに渡したマジスティックには、発動した魔法の概要と具体的なイメージが頭に浮かぶ能力がつけられている。分かり易く言うと、リンゼが【バブルボム】の魔法を唱えたとき、彼女の頭にはバブルボムの概要と発動したときのイメージ。つまり、泡の爆弾が爆発する映像が頭の中に流れ込んだのだ。

それを説明すると

「…なるほど、だから…魔法がうまく…発動したのですか…」

「まあ、そんなとこ」

「玲我さんのおかげで完成させることができました。ありがとうございます」

「いや、リンゼの努力が実を結んだんだよ。僕は少し手伝っただけ。これからもそれを使っていいよ」

「…!ホントですか。玲我さん!」

「うん。これからも頑張ってね。応援するよ」

「はい」

それからリンゼは何度も【バブルボム】の練習していた。彼女は本当に努力家だな。リンゼの新たな一面を知れてよかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか
マジスティックの説明が難しかったです。いいアドバイスがあるなら教えてください


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とある日常 エルゼ

<レイガサイド>

ある日、僕とエルゼは王都に来ている。昨日の依頼でエルゼ愛用のガントレットが壊され、新しいガントレットを買いに来ている。『武器屋熊八』に新しいものを頼んでも、エルゼと同じタイプのガントレットの仕入れは五日後になるらしい。そこで、以前王都を散歩したときにガントレットを売っている店『ベルクト』を見たので、そのことをエルゼに紹介してみたら、すぐに行くことになった。

 

 

「いらっしゃいませ、『ベルクト』へようこそ」

以前、僕が来店したときに接客してくれたお姉さんが出迎えてくれた。

「それで本日はどのようなご用件でしょうか?」

「以前ここで見た『剛力の籠手』ってまだありますか?」

僕がエルゼに紹介したガントレットは『剛力の籠手』である。なんでも筋力増加の付与がされているらしい。

「申し訳ございません。その商品はすでに売られてしまいまして…」

そうか、残念。エルゼもええ~っと声をあげた。ごめんね。

「手甲をお探しですか?」

「はい。戦闘打撃用のガントレットを探しているんですけど」

「打撃用のガントレットですが。魔法効果が付与されたものが何点か?」

「!それ見せてもらえる?」

「かしこまりました。ではこちらにどうぞ」

僕たちはお姉さんに案内され、奥のコーナーへ連れてこられた。そこには二つのガントレットが飾ってあった。

お姉さんの話をまとめると、一つはメタリックグリーンのカラーリングで風魔法が付与されている。物理的な遠距離攻撃を逸らすことができ、高い魔法防御を兼ね備えている。もう一つは金と赤のカラーリングで一撃の破壊力が増す効果が付与されている。魔力を多少時間がかかるが蓄積でき、硬化の付与も展開される。

んーどっちも強いから。迷うな。エルゼはどっちを?

「両方もらうわ」

「・・・」

あっ、両方ですか。まあそれが一番いい案かもね。左右で違うガントレットだから攻撃の幅も広がりそう。

「それでこちらの緑の方が金貨十四枚、金と赤の方が金貨十七枚となっております」

おお、結構高いな。

「…玲我」

「ん、何?」

「…金貨一枚貸して。持ち合わせが足りない」

「…いいよ。はい」

僕はエルゼに金貨一枚を渡す。

「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」

店員に見送られながら『ベルクト』を出る。

「さて、エルゼ、そこの路地から…」

横のエルゼに話しかけようとすると、そこには誰もいなかった。

「あれ?」

辺りを見渡すと、エルゼが服屋の前に立っていた。引き返して、エルゼの背中越しから何を見ているか確認すると、白いフリルがついた黒の上着。胸元にはおおきなリボンタイ。レースをあしらった黒の三段フリルのミニスカ。

いわゆるゴスロリだな。

「…ほしいの?」

「へ?はうあ!?れ、玲我!?」

「これエルゼに似合うと思うよ」

「な、なに言ってるのよ。こういうかわいいのが似合う子とは違うタイプだし…」

「そうかな?エルゼはかわいいんだし、そんなことないと思うよ」

「かっ、かわっ…!?って、なんのはなしよ!」

ぐふっ!エルゼに腹パンされた。これで三回目だぞ。

「あたしなんか着ても、似合うわけないじゃない…」

「?そんなことないだろう」

「気を使わなくても「気なんて使ってない」!」

「さっきから聞いていたら、似合ってない?違うタイプ?エルゼはかわいいい!。そこまで言うなら試着させてもらおう!」

「え!ちょっ…「店員さん、この服試着させてもらうよ」玲我!?」

何も言わせず、エルゼに試着させる。しばらくして

「おお」

服を試着したエルゼが出てきた。

「ほら、似合ってない「めっちゃ、かわいい。店員さんこの服もらえる!」れ、玲我!?」

「ん?」

「ちょ、ちょっと玲我!?あたし買う気は「これは僕がエルゼにプレゼントする」…!」

こんな似合うか服を、このまま買わずに帰れるか。みんなにも見てもらおう。

店を出ると、俯いていたエルゼが顔を上げて礼を言ってきた。

「あるがと…」

「うん。どういたしまして。帰ったらみんなにも見てもらおう」

「え!?ちょ、ちょっとそれは恥ずかしいかも…」

 

 

 

その夜、みんなに新しい服を着たエルゼを見せると、全員似合ってると褒めてくれた。ほらやっぱり。その後、三人にも似合う服を買っていたので、着てもらった。うん、やっぱり似合う。でも、なんで四人とも顔を赤くしているのだろう?

 

 

 

「はーい、こんばんわ、バイスです。はい、今回の出来事で俺っちが言いたいのは一つ

 

玲我のバカヤローー---

です。もう全員嫁にしちまえ」

 



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とある日常 王宮

こんばんわ
遅くなって申し訳ございません


<レイガサイド>

とある日。

「お父様からです。これを読んだら王宮の方へ来ていただきたいとのことです」

先ほど「銀月」へ早馬で届いた手紙

「なんでまた?」

「例の事件解決の謝礼として、玲我さんに爵位を授与したいと」

「「「爵位!?」」」

エルゼたちが驚きの声を上げる。そういえば、そんなこと言ってたな。

「断ることってできるの?」

「断ってもいいそうですが、その場合、きちんと公式の場で理由を挙げて辞退していただきたいとのことです」

「「「辞退!?」」」

「うん。やっぱり僕には冒険者稼業が合っているから。貴族になるのは似合わないと思うし」

「それで構わないと思います。お父様も無理強いはしてこないでしょうから」

「じゃあ、それでいこうか。琥珀も一緒に行こう」

『わかりました。主』

さっそく、【コネクト】で王宮のユミナの部屋まで向かう。前もってユミナと【コネクト】を使うときは、この部屋へ出てもよいと王様から許可はもらってる。

しばらく歩いて回廊の奥にある部屋に辿り着くと、そこには国王陛下とレオン将軍、ミスミド大使のオリガさんがいた。

「お父様!」

「おお、ユミナか。元気そうでなによりだ」

「玲我さんのそばにいるのですから、元気が無いなんてことはありません」

「そうか。久しぶりだな、玲我殿」

「お久しぶりです。国王陛下」

「後ろの方々は仲間かな?硬くならんでいい。顔を上げてくれ」

横を見ると、三人ともスゥと最初に会った時と同じ反応をしていた。

「玲我さん」

オリガさんがそばに来ていた。

「今回の件は本当に感謝しています。あなたはこの国の国王陛下の命の恩人であると同時に、我がミスミド王国の恩人でもあります。いつか我が国に来ることがあれば、国をあげて歓迎しますよ」

「いえいえ、当然のことをしただけですよ。そういえばアルマは元気にしてますか?」

「ああ、元気ですよ。今日、玲我さんが来るとわかっていれば、個々に連れてきたのですが」

あれ、さっきまで残念そうに笑っていたオリガさんが、琥珀を見た途端固まった。

「…玲我さん。その子は?」

「ああ、僕が飼っている虎の子で、琥珀っていいます。ほら琥珀、ご挨拶」

『がう』

琥珀に関しては、子供の虎のフリをするように頼んである。その琥珀を眺めながら、オリガさんは怪訝そうに首を傾げた。

「どうかしましたか?」

「あ、いえ、我がミスミド王国では白い虎は神の使いとされ、神聖視されてるもので、白虎は神獣『白帝』の眷族とも言われていますから」

(…あ、ご本人です。)

と思っていると、後ろからレオン将軍が叩いてきた。

「久しぶりだな、玲我殿!まさか姫様の婿におさまるとは予想外だったぞ!なかなかお前さんは見どころがある!どうだ、儂が鍛えてやろうか?」

「いえ、遠慮します。それとまだ婿になるとは決めていません」

あれ、将軍の腰に、ガントレットがつるされている。

「将軍それって?」

「ん?ああ、このあと軍部での訓練があるのでな。儂は武闘士だからガントレットくらい…って知らんのか?『火焔拳レオン』の名を?」

初めて聞きました。強いとは思っていたが、二つ名まであるとは。

「あ、あたし知ってます!炎を纏うその拳で、メリシア山脈に巣くう大盗賊団を、たった一人で壊滅させた火焔拳の使い手!そのほかにもストーンゴーレムとの死闘とかいろいろ」

へえ?そんな伝説まであるんだ。・・・あっ!いいこと思いついた。

「レオン将軍、エルゼをその訓練に参加させてもらえませんか?」

「え!れ、玲我!そんなの無理に「いいだろう」っていいんですか!」

「おう。同じ武闘士同士興味があるからな」

そのまま、エルゼとレオン将軍は訓練所まで向かった。頑張ってねエルゼ。

「ところで、玲我殿、爵位授与の件だが…」

「あー、ご厚意は嬉しいのですが…」

「まあ、そう言うと思っていたがね。国王が命の恩人に対して、何も報いないというのも、イメージが悪いのでな。一応、『爵位を授与しようとした』という形が欲しいのだよ。むろん、本当に受けてくれるのなら、それにこしたことはないが」

すいません。一応、あっちでは王様やっているので。

と考えていると、突然バンッ!と扉が開かれた。あー、何か嫌な予感が。

「ここに玲我さんが来ていると聞いたのですが!」

あたってしまった。シャルロッテさんちゃんと寝てる?髪ボサボサだし、目の下には隈ができてる。目は赤く血走ってるし、ちょっと怖いよ。

「あのっ!このサングラス!あと三ついただけないでしょうか!?」

「えっ!なんでです!?」

「なんで!?解読が全然追いつかないからですよ!一人でやるにも限界があります!無理!もう無理!いくら解読しても解読しても、終わらないし!どれだけあると思っているんですか!どれだけあると思っているんですか!」

逆ギレですか!?僕にそんなこと言われても。はあ・・・、僕は同じサングラスを三つ召喚してシャルロッテさんに渡した。

「ありがとございます!」

すごい速さで部屋を出ていこうとするシャルロッテさん。

「一応、それの管理はきちんとしておけよ、シャルロッテ。もし帝国にでも流れたら面倒なことになりかねん」

「了解です!」

シャルロッテさん、怖い。王様に元気よく返事をしながら、風のように去っていく。

「まったくシャルロッテにも困ったものだ。あの道具を手に入れてから、研究室にこもりっきりだし、そのうち本当に身体を壊すぞ」

本当にすいません。

この後八重とリンゼはエルゼの訓練を見に行き、琥珀はユミナと一緒に、僕は授与式で着る服を選びに行った。

 

 

その後、授与式で爵位をもらう代わりに・・・家をもらった。・・・まじですか。もう一度言います。マ・ジ・で・す・か。

しかも王金貨二十枚もらった。もう一度言います。マ・ジ・で・す・か!

家を見ると大きかった。失礼なこと言うと、僕の家の半分ぐらいの大きさだ。

まあ、五人で住むには大きすぎるよな。

そのことを言うと、エルゼ、リンゼ、八重が驚いていた。どうしてだろう?みんなのことは同じくらい好きだし。家族みたいに思ってるよ。そのことを伝えると、三人の顔が赤くなった。

その後、ユミナは三人と話をしに行った。

 

 

しばらくすると

「あっ、あの、玲我…。本当にあたしたちもここに住んでいいの?」

「?もちろん」

「…あとで出ていけとか、その、ないですよ、ね?」

「言うわけない」

「ユミナ殿と、その…一緒の扱いをしてくれるのでござるか?」

「当然」

んーどうしたんだ。三人ともさっきから変な質問して。

「ではみなさん、ここに一緒に住むということで。急ぐことはないので、さっきの話は気持ちが固まってから、と言うことにしましょう」

「ええ」

「はい」

「わかったのでござる」

「さっきの話って…?」

「「「「秘密」」」」

その後それぞれ部屋を決め、ユミナと相談して人を雇うことにした。それにしてもさっきの話って?

 

 

 

 

 

 

 

「なあ。今夜、俺っち玲我と話してきていいか?」

「急にどうしたんだ」

「いやーここまでいくとそろそろ答えを出さなちゃダメだろう?カゲロウ、ラブコフ」

「ラブ。コブコブ。ラブラブ」

「俺もラブコフに賛成だ。今更、嫁が増えようが気にしねえ」

「だよな」

「ただ、それは全部あいつが決めることだ」

「コブコブ」

「それはそうだけど、俺っちは・・・」

「まあ、あいつ自身うすうす気付いているだろうし。あとは背中を押すだけだな」

「コブ。ラブラブ」

「・・・わかったぜ、その役目は俺っちに任せろ」

「はあ・・・光が鈍感だと、闇も苦労するぜ」

「コブー」




どうでしたか
次回は、原作よりも早く告白するつもりです


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愛の告白

こんばんわ。遅くなりました
レイガが告白します
原作よりも早めにしました


<レイガサイド>

家をもらって、下見した夜。僕はいつも通りベッドで寝ようとしたら

「玲我、俺っち話があるんだ」

「ん、バイスどうしたんだ?」

僕の相棒悪魔バイスが話しかけてくる。どうしたんだろう?外出たいのかな?

「バイス、話って何?」

「単刀直入に聞くぜ。玲我、お前はユミナちゃんたちのことが好きなんだろう?」

「?そうだけど…突然どうしたんだよ?」

「俺っちが話したいのは嫁にするかどうかのだ」

「!」

「俺っちから見ても、ユミナちゃんたちはお前に惚れている。確実に」

「惚れているって…ユミナはともかくエルゼたちは…」

「ああもう、気づけよ!この鈍感神。今日の家のくだり思い出せ」

「家?・・・秘密の話のこと?」

「そうだぜ。あれはエルゼちゃんたちが嫁になるかの話に決まってる!

「・・まじで」

「当たり前だろ!ユミナちゃんは三人のお前に対する恋心に気付いているから、三人にも嫁になってほしいと考えているだろうな。少なくとも、どっかの鈍感神はそれにすら気づいていなかったしな」

「・・・ごめんなさい」

「はあ、しっかし玲我。お前自身はどうしたいんだ?」

「・・・」

「もし、エルゼたち三人が告白してきたらどうするんだ」

「それは・・・」

「・・・あーもう、いい加減にしろ!この鈍感神!好きなのか嫌いなのかはっきりしやがれ!

好きだよ

そっから僕は爆発したかのように今までの思いをぶちまけた。

「エルゼは自分が思っている以上にかわいいし、甘いものを食べたときの笑顔が僕は好きだ。リンゼは努力家で、自分のことよりもみんなのことを先に考えるところが僕は好きだ。でも自分のことも考えてほしい。八重は子供好きで家族思いで、特に食べる時の姿は僕は好きだよ。ユミナはこんなダメな僕をサポートしてくれるし、エルゼたちのことを考えてくれるところが好きだよ」

「・・・で結局、どうなんだ?」

僕は四人とも好きだよ。嫁にしたいよ。結婚したいよ

あー-、今まで溜まった思いを全部ぶちまけた。恥ずかしいけど、これが僕の本心だ。

「・・・それを聞けて俺っちは嬉しいぜ」

「・・・バイス」

「言ったからには、有言実行。絶対に幸せにしないとな。これから一生な。玲我」

「・・・ああ、ありがとうバイス。決心がついたよ」

「おう。これでも俺っちは玲我のあ・い・ぼ・うだからな」

そのままバイスは僕の体に消えていった。ありがとうバイス。もう迷わないよ。

 

 

 

僕らが王都へ引っ越す日。「銀月」のミカさんとドランさん、「パレント」のアエルさん、「ファッションキングザナック」のザナックさん、「武器屋熊八」のバラルさん、その他にもお世話になった人たちへ別れの挨拶をしてリフレットの町を旅立った。みんなには餞別として様々なものをプレゼントした。喜んでくれてよかった。みんなと別れて王都に戻ると、家の前には数台の馬車が停まっていた。家具を運んでくれている。ユミナは家具の搬入を指示していたが、家の庭に現れた僕らに気が付くと足早に駆けてくる。

どうやら、雇う人が決まったらしい。執事はライムさん。なんとスゥのとこのレイムさんのお兄さんである。確かにめっちゃ似てる。あとはメイドギルドからラピスさんとセシルさん。ラピスさんは黒髪のボブカットで真面目そうな雰囲気の人。対してセシルさんは明るい茶髪でほわほわした笑顔の人。二人ともいい人だと思うけど、なんでだろう?戦闘経験がある雰囲気がする。この星のメイドは戦闘もするのかな?あとは庭師のフリオ、調理師のクレア。この二人は夫婦である。人の好さそうなくすんだ金髪の青年と赤毛の女性。どちらものんびりしてそう。屋敷の門番と警備には、元・王国重歩兵トマスさんと元・王国軽騎兵のハックさん。最近王国騎士団を引退したらしい。

トマスさんとハックさんは王都に自宅があるので、他の四人はここに住むらしい。

 

片づけが終わった後にみんなで休憩していると、オルトリンデ公爵殿下とスゥがやってきた。遊びに来たと思ったが、どうやら違うらしい。

「やあ、引っ越しお疲れ様。これからはご近所だからよろしくな」

「久しぶりですね、スゥ」

「こんにちわじゃ、ユミナ姉さま。しかしユミナ姉さまが玲我と婚約するとはのう。びっくりしたぞ」

「まあ、僕が一番驚いたけど」

「玲我殿はスゥの婿にと考えていたのだがなあ。先を越された。ユミナも兄上も抜け目がない」

「そんなことを考えていたのか、父上?まあ、玲我ならわらわも大歓迎じゃが。一緒にいると楽しそうじゃしのう」

「おお、そうか。じゃあ、ユミナと一緒にスゥももらってくれんか、玲我殿?」

「まあ、考えておきます」

「おお、そうか。考えておいてくれ。それで今日は君たちにひとつ頼みがあるのだがね」

その依頼とはミスミド王国と同盟を結ぶために僕たちがミスミド王国へ行くことだ。まあ、僕の【コネクト】を使うには行ったことがある場所しか使えないからね。

「わかりました。出発はいつ頃ですか?」

「そうだな…三日後ということにしとこう」

「わかりました」

「いいのう、わらわもミスミドの王都に行ってみたかった」

「旅から帰ってきたらいつでも行けるから、今度スゥも一緒に行こう」

「ホントか!やはり玲我は頼りになるのう!」

満面の笑みを僕に向けてくるスゥ。喜んでくれてよかった。

僕らはそれからミスミド行きの打ち合わせを公爵と夕方までした。

 

 

 

その夜僕は庭にユミナたち四人を呼んだ。

「どうしましたか、玲我さん?」

「うん。実はみんなに伝えたことがあって・・・」

やばい。緊張する。

「僕、光神玲我はユミナ・エルネア・ベルファスト、エルゼ・シルエスカ、リンゼ・シルエスカ、九重八重のことが好きです。僕と結婚してください

「「「・・・え!?」」」

「同時に四人に告白する最低な男だと思うけどこれが僕の答えです」

「私は玲我さんの意見を尊重します。何人お嫁さんがいても、その子たちを不幸にしない限り文句はありません。どうしますか。三人は?」

「…私も玲我さんのことが好きです…!」

「わ、わたしも玲我のことがす、好きよ!」

「せ、拙者も玲我殿のことが好きでござる!」

「では、私を含めた四人を嫁に貰うということで」

「うん。ありがとうユミナ」

この星でお嫁さんが四人増えた。

「では皆さんが玲我さんのお嫁になった記念に一人ずつ抱きしめてキスをしましょう」

「「「えっ!?」」」

「僕ばいいけど」

「では早速!」

「「「えー-!?」」」

ユミナ、リンゼ、八重、エルゼの順で抱きしめてキスをする。エルゼに関しては、顔を赤くして腹パンされた。・・・もう慣れたよ。




どうでしたか
次回はあの竜を出します


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第四章
ミスミドへ


<レイガサイド>

みんなに告白してから、三日たった。その間みんなとはいつも通り生活していた。まあ変化したことといえば一人一人の時間を確保したぐらいだ。町に出かけたときは、手を繋いだりもした。ユミナ以外は毎回顔を赤くするのがそこがまたかわいい。ちなみに告白したことを国王様たちにも伝えた。ユミナ以外の三人とも結婚することを怒られると思ったが、逆に喜んでくれた。よかった、怒られなくて。僕の星の嫁さんたちにも報告したら、『帰ってくるときにはつれてきなさい』と言われた。わかりました。ユミナ以外の三人にも僕の星の嫁のことと不老不死のことを説明しようと思っていたが、どうやらすでにユミナから話を聞いたらしい。なんでも銀月で会ったその日の夜に話したとか、用意周到すぎる。

 

 

 

話は代わって、今僕らは馬車でミスミド王国まで向かってる途中だ。向かう間は暇なので、八重とユミナ、そして一緒に来たオリガさんの妹、アルマは僕が作ったトランプでさっき遊び方を教えた神経衰弱をしている。僕はオリガさんと将棋をしている。エルゼとリンゼは運転席にいる。琥珀は僕の隣で寝ている。気持ちよさそうに。

「また負けたでござる…」

「八重は神経衰弱に向いていないみたいだね。はい、王手」

「あっ…!」

一通り遊び終わると、僕と八重は代わった。次はババ抜きでもやろうかな。

 

 

その日の夜には、みんなで焚火を囲んで、スーパー戦隊の動物戦隊ジュウオウジャーのお話をした。

「面白かったです!玲我さん!」

おお、アルマは気に入ってくれたようだ。

「素晴らしいお話でした、玲我さん。しかし、この話はどこで?」

「僕の住んでいた町の人気な物語で、おばあちゃんが教えてくれました」

真っ赤な嘘です。

「他にも玲我さんは、いろいろなお話を知っているんですよ」

「本当に!?聞かせてください、玲我さん!」

隣で座っているユミナの言葉に、目を輝かせて身を乗り出すアルマ。この二人はこの旅でとても仲良くなった。

「今日はもうここまで。また明日ね」

僕はアルマのお願いをやんわりと断った。ごめんね、てか誰かいるな?

そう思っていると、一人のミスミド兵士が立ち上がり、みんなに黙るように自らの口の前に指を立てた。

「何者かが複数近づいています…。気配を消して少しずつ…明らかに我々を狙っています」

その言葉に周りの兵士たちがオリガさんとアルマを囲み、静かに剣を抜き辺りを警戒した。

「何者かな?」

「おそらく街道の盗賊団でしょう。数が多いと厄介ですね」

僕の質問にミスミド護衛兵士の隊長さんが答えてくれた。

≪主、確かに何者かがこちらに向かっています。友好的なものとはとても思えません。彼らの言う通り、十中八九盗賊の類でしょう≫

琥珀もそう思うか。僕もそう思うよ。

スマホを取り出し、マップを開き、『盗賊団』と検索してみるとマップ上にピンが次々と落ちてきた。こんな便利な機能もあるんだな。

「北に八人、東に五人、南に八人、西に七人。合計二十八人だな」

「わかるので!?」

隊長さんが驚いて僕の方を振り返る。どうしようかな?【コネクト】使えば余裕だが、あまり見せない方がいいし。あれでいくか。僕はダブルギアを使って、トリガーマグナムとルナメモリを召喚した。なお、ギアトリンガーの音が相手にばれないように音は出ない設定にしてある。トリガーマグナムにルナメモリを装填して、空に向かって撃つ。

『ルナ マキシマムドライブ』

「トリガーフルバースト」

放たれたエネルギー弾は軌道を変え、隠れていた盗賊団全員に命中する。次の瞬間、周りの森からは重なるように梅ぎ声が聞こえてきた。

「うぐっ!」

「ぎゃっ!」

「はう!」

続いてバタバタと倒れる音が聞こえてきた。どうやら成功したようだ。今回僕が使ったのは仮面ライダーダブルのルナトリガーフォームの必殺技だ。まあ本家はトリガーメモリを装填するが、威力が強いのでルナメモリで代用した。

「な、なにをしたんですか?」

「追尾できる麻痺の魔法を撃ったんです。多分倒れて動けなくなっていると思いますよ」

「全員か!?」

「はい」

「すごいですね…!これだけの数を一瞬で…」

オリガさんとその他全員が唖然とした表情をしている。ユミナたちはもう飽きれていた。

「誰一人、魔法防御の護符(タリスマン)とか持っていなかったのは助かりましたね」

・・・多分持っていても、効いていましたよ。

「いや、助かりました。まったく驚きましたな」

「いえ、最初にあの人が気づいてくれたおかげですよ。よくわかりましたね?」

ここは気付かなかったことにしとこう。

「ああ、レインですか。あいつはウサギの獣人ですからね。地獄耳何ですよ」

なるほど、ウサギの獣人なのか。それなら耳がいいはずだ。小柄でサラサラの赤毛。隊長さんは狼の獣人である。

そのあと、リオン・ブリッツさんとガルンさんと相談して盗賊団は縛り上げ、この先の町の警備兵に引き渡すことになった。リオンさんは王国第一騎士団所属で、レオン将軍の息子である。信じられない。

「リオン殿、お手数をかけます」

オリガさんが近寄ってきて微笑みながら礼を言う。

「あ、いや、これっ、これが私の任務ですから!どうか、お気になさらず!」

あ、この反応、もしかして?二人から離れて観察してみる。

「「「「青春ね(でござる)(、です)(ですねえ)」」」」

僕の嫁さんたちも二人を見守っていた。

「・・・なんで、他人の恋路は気付けるのに、自分の恋は自覚できないのかね~~」

(うっ!やめてよバイス。割と傷ついてるから)

「ラブ。コブコブ。クズラブ」

「えっと、自分に向けられた恋心に気づけなかった奴は、クズ神だ、と言ってるぜ」

(う~、ラブコフまで)

しばらく、バイスとラブコフの説教が始まった。本当にごめんなさい。

 

 

 

しばらく進んでいるとベルファスト王国最南端の町、カナンに到着した。ここから船に乗り、ミスミド王国の町、ラングレーを目指す。船の手続きをしてる間に、僕とユミナ、アルマはカナンを観光していた。お土産屋が多く出店していた。

「あら?玲我さん、あれ…」

「ん?」

ユミナの視線の先にはアクセサリーが売られている店の前で、難しい顔をしながら悩んでいるリオンさんがいた。はっはー、なるほどね。

「リオンさん、ご家族にお土産ですか?」

「え?と、玲我殿!?いや、なに、その~、は、母上に…そう!母上にですね。なにか買っておこうかと思いまして…」

「へえ、そうなんですか。そうだ。アルマ、一つ選んでよ。ベルファストの思い出に、プレゼントするよ」

「いいんですか!?」

僕がうなずくと、アルマは葡萄の実の形をしたブローチを選んだ。実のところには紫水晶が嵌め込まれている。

「よく似合っているよ!?」

「えへへ、ありがとうございます」

「オリガさんもこういうブローチが好きなのかな?」

「ん-、お姉ちゃんは花とかの意匠の方が好きです。特にほら、このエリウスの花とかが大好きで、よく買っています」

アルマは一つの髪飾りを指さす。その言葉にリオンさんが嬉しそうな表情になる。やっぱりね。

「それじゃ、僕らはこれで。リオンさんも早めに船の方へ戻った方がいいですよ。そろそろ出発ですから」

「あ、はい。すぐに戻りますので」

僕らがその場を離れ、しばらくして後ろを振り返ると、リオンさんがエリウスの髪飾りを買っていた。

「お見事です、玲我さん」

「ありがとう。あとで、ユミナたちにも手作りのアクセサリーを作って渡すから、まっててね」

「!ありがとございます。玲我さん。エルゼさんたちも喜びますよ」

そういい、僕たちは船に戻った。

 

 

船に乗ってに二時間後にはラングレーの港に着いた。リンゼは船酔いになってしまったので、ウィザードの魔法【スリープ】を使って眠らせてあげた。着いた時に起こしたが、体調は万全ではなかったので、降りるときは彼女を背負った。

「あ、もう、大丈夫、です。船から降りたら、楽になりました」

「大丈夫リンゼ?無理しないでね」

「はい、玲我さん…」

リンゼはそう言い、僕の背中から降りる。一時間後に出発なので、買い物をすることにした。僕とユミナは、琥珀を連れて、非常食を買っていた。

・・・ん?何かの気配がして辺りを見渡す。

「どうしました?」

「いや…誰かに見られているような気がしたんだけど」

「琥珀ちゃんが珍しくて見ていた人じゃないですか?」

いや、琥珀じゃなくて僕を見ていたような?それにこの気配どっかで?

≪主。確かに何者かがこちらの様子をうかがっておりました。私ではなく、主たちの方を。今は完全に気配を消しておりますが≫

琥珀もそう思うか。一応注意しとくか。

馬車に戻るとみんなそろっていた。ちょうどよかったので、僕は船で作っていた髪飾りを四人にプレゼントした。とても喜んでくれて、さっそく着けてくれた。よかった。

オリガさんの方を見ると、先ほどリオンさんが買った髪飾りを着けていた。渡せたんだね、リオンさん。

 




どうでしたか
今回はダブルのルナトリガーを出しました。竜のとこまで行けず、申し訳ございません。
次回は、あの巨人に変身します。


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黒竜

こんばんわ
今回は変身します


<レイガサイド>

ラングレーの町を離れると、ベルファストと違って、緑が多く道が荒い。まるでジャングルのようだ。魔獣もベルファストよりもミスミドの方が多いらしい。

 

「日暮れまでにエルドの村に着くのは無理そうだね」

 

オリガさんの言う通りだ。マップで確認すると、この速度では、真夜中に辿り着いてしまうな。

 

「ミスミドはいくつもの種族が集まってできた、いわば群体のようなものです。今でも種族ごとに村や町を形成していて、互いに友好的な種族もあれば、互いに相手を毛嫌いしている種族もいます。それをまとめているのが、国王陛下を含めた七族長なのです」

 

へえー。リムル・テンペストみたいな国なんだな。帰ったらリムルに伝えてみるか。

やがてだんだんと日が暮れてきた。暗くなる前に、少し道が開けた場所で馬車を停め、野営の準備に取り掛かった。

 

「ちょっと怖いですね」

 

ユミナが僕の作ったスープを飲みながら、身体を寄せてきた。

 

「通常の獣なら琥珀がいれば近寄ってこないってさ」

 

琥珀が念話で伝えてきたことをユミナに話す。すると彼女は横にいた琥珀を抱き上げ、ぎゅっと抱きしめた。

 

「ありがとう、琥珀ちゃん」

『安心してください、奥方。私がいれば大丈夫です』

 

その言葉にユミナは微笑んで、琥珀の頭を撫でた。

 

「そろそろ八重とエルゼを迎えに行ってくるよ。琥珀、ユミナとリンゼを頼むよ」

≪御意≫

 

僕はみんなから離れ、大きい客車の中に入り、【コネクト】を使って、自宅まで戻った。

リビングではエルゼと八重がくつろいでいた。ライムさんも傍で控えていた。

 

「あ、もう時間?」

「忙しないでござるな…。まだ髪が乾いていないでござるよ」

 

この二人は風呂に入りに戻っていたのだ。

 

「ほら、怪しまれないうちに戻るよ。ライムさん、今日はなにかありましたか?」

「いえ、これといって。ああ、フリオが庭の隅に家庭菜園を作ってはどうかと申しておりましたが、いかがいたしましょうか?」

「いいよ。好きなようにしてください」

「では、そのように。あ、ラピスさんとセシルさんは?」

「ラピスは明日朝早く市場に用があり、セシルは王都に来ている知り合いに会いに行きました。なにか御用があれば伝えておきますが」

「いや、ちょっと気になっただけだから。ほら、行くと二人とも」

「「はーい」」

 

そうか、あの時の気配が二人に似ていると思っていたけど、気のせいかな。

 

 

 

 

 

【コネクト】を使って、三人で帰ってくると、なんだか様子がおかしかった。どうしたんだ?みんなのもとに走ると、護衛の人たちが剣を構え、辺りを警戒している。

 

「玲我さん!」

「なにがあった!?」

「わかりません。急に森の動物たちが騒ぎ出して…」

 

ユミナが困惑した表情で駆けてくる。そのとき、巨大な気配が上からきた。レインさんも何かに気づいたのか、顔を上げた。

 

「なにか大きなものが来ます…空だ!」

 

レインの叫びにみんなが空を見上げると。黒い影が見えた。いか違うあれは。

 

「竜だ…まさか、こんなところに!?」

 

ガルンさんは信じられないものを見た、とばかりに見開かれている。

 

「なんでこんなところに竜が…」

「どういうことですか?普通はここまで来ないってことですか?」

 

震える声でつぶやくオリガさんに尋ねると、彼女はおびえた妹を抱きしめながら口を開く。

 

「竜…ドラゴンは普通、この国の中央にある聖域で暮らしています。そこには竜のテリトリーとして誰も立ち入ることはなく、また、竜たちも侵入者がなければ、そこから出て暴れるようなことはないのです。そうやって我々は住み分けてきたはずなのに…」

「誰かが聖域に踏み込んだのですか!?」

「いえ、そうとは限りません。何年か一度、若い竜が人里に現れ、暴れることがあるからです。聖域を離れた竜は我々が撃退しても、他の竜から報復されることはありません。この場合は向こうが侵入者だからです。ですが…」

「竜ってのは撃退できるものなのですか?」

 

僕の質問に答えたのはガルンさん。

 

「我々の王宮戦士中隊…選り抜きの戦士百人もいれば、なんとか。しかし中途半端な攻撃はかえって怒りを買うことになりかねません」

 

そうなんだ。迷惑な竜もいるんだな。僕の知っている竜はそんなことしないけど。

 

「おい…あいつエルドの村にまっすぐ向かってるぞ…!」

「何だって!?」

 

僕のつぶやきにみんなが驚きの声をあげる。

 

「なんだってエルドの村に!」

「あそこは牧草地帯が南に広がっている。家畜を狙っているんじゃないか!?」

 

このままでは村は壊滅ってことか…!

 

「どうします?我々の任務は大使の護衛です。大使を危険な目に遭わすわけにはいかない…」

「くっ…」

 

リオンさんお言葉にガルンさんが歯を食いしばる。

 

「なら、大使を安全なところに送れば、村に向かってもいいんですね?」

「「「!!!」」」

 

僕は客車からドアほどもある大きな姿見を一枚出してくる。

 

「玲我殿、これは!?」

「これは『転移の鏡』と言いまして、僕が作りました。二枚で一セットのもので、もう片方はベルファスト王宮に置いてあります。この鏡を使えば一瞬で王宮に転移できます。これを使ってオリガさんとアルマを王宮へ避難させるというのはどうでしょうか?」

「そんなものを持ち込まれていたのですか…」

「これをミスミド国王に届けるのが僕らの仕事でして、緊急時の使用許可はベルファスト王からいただいています」

「…わかりました。それを使って私たちはいったん王宮の方へ避難しましょう。そしてみなさんはエルドの村の人たちをどか安全に…」

「わかりました。玲我殿、頼みます」

 

オリガさんの決断にガルンさんがうなずく。

 

「わかりました。ではオリガさんとアルマとユミナ、向こうの確認のためにガルンさんも来てもらえませんか?」

「私ですか?はあ…」

 

僕は鏡の魔法を発動する。ユミナ、ガルンさん、アルマ、オリガさんの順番で入る。

 

「こ、ここは…」

「ベルファストの王宮です。それじゃ、ユミナ、国王陛下に説明を頼むよ」

「はい。…玲我さん、お気をつけて…」

「うん。ガルンさん、戻りますよ」

「あ、はい。行きましょう!」

 

僕とガルンさんは鏡を使って、戻ってきた。

 

「よし、みんな!これで大使は安全だ!我々は竜から村の人たちを避難させるために、エルドへ向かう!」

「リオンさんはどうしますか?」

「こんな状況で、『我関せず』を貫いたら父上に炎の拳で殴られますよ。私たちも行きます。おそらく陛下もそうおっしゃると思います」

 

そうか。よしでは行きますか。

 

 

 

村が炎に包まれ、逃げ惑う人々。上空には我が物顔で炎弾うを放つ黒い竜がいた。

 

「村人の救出を優先させろ!動けない者を運び出せ!」

「我々も救出を手伝うぞ!一人残さず救い出すんだ!」

 

ガルンさんとリオンさんが叫ぶ。

 

「僕らはあの竜をこの村から離さないとな。リンゼ!」

「はい。【光よ穿て、輝く聖槍、シャイニングジャベリン】」

 

光の槍が竜に向かったが、黒竜はすべて躱し、炎弾を放ってきた。僕たちは何とかよけれたが、ここで戦闘したら、さらに被害が増えてしまう。

 

「琥珀!」

『御意』

 

僕が琥珀を呼ぶと、琥珀は通常の大きさに戻る。

 

「リンゼ!乗って!」

「は、ぁい…」

 

僕は琥珀の背に跨ると、さらにリンゼを引き寄せ、僕の前に座らせる。そして一気に村の南へと駆けだした。

今、遠距離攻撃できるのは僕とリンゼだけだから。まずはあいつの翼をどうにかしないと

 

「ゴガアァァァ」

 

竜が咆哮する。その声を聞いた琥珀が、低く喉を震わせて竜を威嚇する。

 

『貴様…我が主を侮辱するか…!たかが空を飛ぶトカゲの分際で!』

「!琥珀、あいつの言葉が分かるのか!?」

 

驚いて琥珀から降りながら尋ねると、竜の言葉を通訳してくれた。

『「我が享楽を邪魔した小さき虫よ。その身体を八つ裂きにして喰らってくれる」だと?人の言葉も話せぬ鼻垂れ小僧が…!これがから「蒼帝」の眷族は気にくわんのだ!』

 

 

 

 

 

「・・・はあ?享楽・・・遊びや楽しみで村を襲ったって言うのか?」

生きるためとか聖域を穢された報復とかなら理解できるけど、快楽のために?

ふ・ざ・け・る・な!

 

「琥珀はリンゼを連れて、エルゼ、八重と合流して」

『御意。我が主は?』

「僕はちょっとあいつと戦ってくるよ」

「…玲我さん」

「大丈夫だよ、リンゼ。必ず勝つから」

 

僕はギアトリンガーと『トリガーギア』を使って、二つのアイテムを召喚する。一つは白色の銃『GUTSスパークレンス』、もう一つは紫色の小さな『GUTSハイパーキー』。

僕はGUTSハイパーキーを起動する。

 

『♪♪ ウルトラマントリガー マルチタイプ』

 

GUTSスパークレンスのグリップにハイパーキーを装填し、スパークレンスモードに変形させる。

 

『ブートアップ! ゼペリオン!』

「未来を築く、希望の光!!」

 

僕はGUTSスパークレンスを天に掲げ、トリガーを引く。

 

「ウルトラマン トリガー!」

『♪♪ ウルトラマントリガー マルチタイプ』

 

僕は光に包まれ、竜と同じ大きさの赤と青をベースにした巨人。ウルトラマントリガーに。

 

 

「デュワ!」

 

この星に現れた。

光の巨人が

 

 

 




どうでしたか
次回は黒竜とトリガーの戦いです。


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光の巨人

<第三者サイド>

琥珀とリンゼは走っているエルゼと八重と合流した。

「お姉ちゃん!」

「リンゼ!琥珀も!」

「大丈夫でござるか!」

「うん…私は無事だよ…」

「そう、よかった。…あれ玲我は?」

『主は今、黒竜と戦っています』

「「え!」」

二人は琥珀の言葉を聞いて、唖然したが、すぐに玲我の場所まで向かおうとした。その時、黒竜がいる場所から、突然光が現れた。

同じ頃、ガルンとリオン、兵士たちは村の人々を救出していた。しかし、突然黒竜がいる場所が光り出した。いったい何が起こったのか、とその場の全員が目を向けると、そこには黒竜と向かい合っている巨人がいた。皆が唖然としている中、誰かがつぶやく。

「神様だ」

 

 

<レイガサイド>

久しぶりウルトラマンになったけど、やっぱりこの姿が落ち着くな。さてと、僕は黒竜に向き、構える。

黒竜は最初こそ驚いていたが、すぐに僕に向かって炎弾を放ってきた。僕は避けず、すべて受けた。

「ゴガアァァ」

黒竜は僕を倒せたんだと思ったんだろう。でも、煙から出てきたのは、無傷の僕だ。

「ゴガアァァ!?」

驚いているな。まあ、あれくらい避けれたけど、森に被害は出したくなかった。

再び黒竜は炎弾を放ってくるが、

「サークスアームズ!」

僕はトリガー専用の武器『サークルアームズ』を呼び出し、マルチソードで炎弾を切り裂く。

「デュワ!!」

「ゴガアァァ!?」

黒竜は信じられないものを見たように驚いている。そろそろ倒させてもらうよ。

僕はスパークレンスに装填してあるハイパーキーを取り出し、サークルアームズに装填する。

『マキシマムブートアップ!マルチ!ゼペリオン!ソードフィニッシュ!』

サークルアームズの剣部分が紫色に光り輝き、僕は片方の翼を切り裂いた。

「ゴァオァァ!」

痛みによるものか、人際大きな叫び声を上げて、竜が飛び立とうとしたが、バランスを崩し少し浮かび上がって、すぐさまその場に落下する。

僕はサークルアームズを地面に刺し、両腕を前に突き出し交差させてから大きく横に広げてエネルギーを溜めた後、L字に構えて光線を放つ。トリガーの必殺技の一つ『ゼべリオン光線』だ。

「シャア!!」

光線が黒竜の胸元に風穴を空ける。竜はそのまま前のめりにぐらりと傾き、盛大な地響きを立てて地面に倒れる。

倒したようだ。さてと、僕は村の方へ行き、緑色の光線をカラータイマーからだし、燃えていた家をすべて復元させた。それに村の人々と兵士たちが盛大に歓喜している。

なんか神様って言ってる人もいるし。

そのあとは、竜のとこに戻るとエルゼ、八重、リンゼ、琥珀が走ってきた。僕はウルトラマンから人の姿に戻った。

「「「玲我(さん)(殿)!!!」」」

『我が主!』

「ん、ただいま。みんな」

その後は質問の嵐だ。さっきの巨人は何だとか、あの武器はとか、とにかく全部に答えるのが大変だ。

『さすが我が主』

ようやく質問が終わり、安心していると地面に黒い影が落ちる。顔を上げると、そこには月を背にして空に浮かぶ、二匹目の竜がいた。

「まじですか…もう一匹…!」

見た目は赤く、さっきの黒竜よりも大きい。

『こちらに戦う意思はない。我が同胞が迷惑をかけたようだな。謝罪する』

「話せるのか、あんた!?」

『我が聖域を統べる赤竜。暴走した者を連れ戻しにきたのだが、どうやら遅かったようだ』

そうか連れ戻しに来たのか…やりすぎたかな。

『赤竜よ。「蒼帝」に出会うことがあったら言っておけ。自らの眷族ぐらいちゃんと教育しとけとな』

『なに…?この気配…まさか…貴方は「白帝」様か!?なぜこのようなところに…!?』

琥珀が赤竜に話しかける。さっきも思ったけど「蒼帝」って誰?琥珀のお友達?

『なるほど…黒竜を倒したのは「白帝」様であらせられましたか…どうりで黒竜ごときでは相手にも…』

『勘違いするでない。そやつを倒したのは我が主、玲我様だ。恐れ多くもこの小僧は我が主を侮辱しおったのでな。当然の報いよ』

『なんと!?『白帝』様の主ですと!?人間が、ですか!?』

赤竜は僕を見つめ、やがて静かに地面に降り立つと、身を屈めて頭を下げた。

『重ね重ねのご無礼、ひらにご容赦を願いたく…。此度のことはこの黒竜一匹が起こしたこと。何卒温情をもって…』

「別にいいよ。あなたは優しそうだし。でも、今回だけだからね」

『は。必ず。直ちに聖域へ戻り、皆に伝えましょう。それでは失礼いたします』

赤竜は立ち上がり、もう一度頭を下げると、飛び去って行った。

『まったく迷惑な。これだから「蒼帝」は…』

まあまあ、そんなに怒らないの。蒼帝とは仲が悪いのか。

琥珀が子供の虎サイズになったので、抱き上げて頭をポンポンする。

周りを見渡すと三人が地面に座り込んでいた。

「あれ、どうしたの、みんな?」

「どうしたのって…うごけなかったのよ…」

あー、琥珀を最初に見たユミナ状態か。

「玲我さん、は…大丈夫だったんですか?」

「うん。全然。なんとも」

「なんか理不尽さを感じるでござるよ…」

 

 

「あー疲れた!」

僕は草むらに身体を投げ出し、大の字に寝転んでいる。黒竜を倒した後は、けがをしている人を治したり、動けない村人の代わりにご飯を用意したりもしていた。建物は大体トリガーの力で復元させたが、治っていない部分を治したりもした。黒竜の死体はエルド村に渡すことにした。素材を売って村のために使ってほしい。あ、でも竜の角だけは村長からお礼としてもらった。なんか武器でも作ろうかな。あと、その村ではウルトラマントリガーが神様と言われ、像まで建てられた。

「少し寝るか」

しばらくして起きたときには、ユミナが膝枕をしている。

「お目覚めになりましたか」

・・・何があったんだ?

身体を起こすと、周りの村人や、すでに起きている護衛の人たちがニヤニヤと生暖かい目を向けてきた。・・・(/ω\)!

「あら、お目覚めのようね」

「…よく、眠っていました、ね」

「気持ちよさそうでござったな~」

ん~、もしかして、ユミナだけ膝枕してくれたのかな?

「ユミナ?」

「はい、玲我さん」

「エルゼたちにも膝枕してほしいんだけど、ダメかな?」

「「「えっ!」」」

「いいですね。そうしましょう」

そうして、交代交代で出発まで膝枕をしてもらいました。今度は僕がやるべきかな



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獣王様と縁結び

こんばんわ
遅くなりました。
今回はさっそく変身しようと思います


<レイガサイド>

黒竜を討伐して村を救ってから、再びミスミド王国へ向かって二日が経つ。

 

「おー・・・真っ白な宮殿だな」

 

僕たちは王都ベルジュに着いた。町へ入って最初に見たのは、町の奥の真っ白な宮殿だ。結構でかいな。街並みはベルファストに比べてまだまだ未開発といった感じがするが、そこに住んでいる人の活気はそれに劣らない。本当に様々な種族が生活しているんだな。なんかジュラテンペスト連邦国みたいで懐かしいな。みんな元気かな?

 

 

 

 

 

宮殿に着いて、オリガさんと僕ら、そしてガルンさんとリオンさんの八人が馬車を降り、宮殿の庭を横目に歩道を歩いていく。しばらく歩き、僕らは大きな扉の前まで来る。扉を門番の兵士さんが開け謁見の間に入ると、そこには様々な亜人が並んでいる。この国の重臣だろう。謁見の間の奥には玉座にこの国の王様、雪豹の獣人で獣王ジャムカ・ブラウ・ミスミドが座っている。んーなんでだろう?どことなくノア兄に雰囲気が似ている。獣王の前で僕らは全員片膝をつき、頭を垂れた。

 

「国王陛下…オリガ・ストランド、ベルファスト王国より帰還してございます」

「うむ、大儀であった。ガルン、そしてベルファストの騎士殿もオリガの護衛を無事果たしてくれたことをうれしく思う」

「「ははっ」」

「そなたたちがベルファスト王からの使いの者たちだな?なんでも旅の途中、そなたたちだけでエルドの村を襲った竜を倒したとか。それは事実か」

「はい。その通りでございます。ここにいる玲我さんが、村を襲った黒竜を退治いたしました」

 

ユミナの言葉にその場にいたリオンさん、ガルンさん、オリガさん以外の全員が驚き、僕に目を向ける。この三人には、王国に向かう途中にあの巨人の正体を伝えておいた。最初こそ疑っていたが、目の前で変身したら信じてくれた。まあ疑うよね。

 

「…そなたは?」

「申し遅れました。ベルファスト王国国王、トリストウィン・エルネス・ベルファストが娘、ユミナ・エルネア・ベルファストでございます」

 

再び謁見の間にどよめきが広がる。

 

「なんと…ベルファストの姫君がなぜ我が国に?」

「ミスミドとの同盟は我が国にとってそれだけで需要ということですわ。これは父上からの書状でございます」

 

そう言って懐から一通の手紙を取り出す。側近の一人が恭しくその書状を受け取り、獣王へと手渡す。

 

「なるほど…あいわかった。ここに書かれている内容を前向きに考え、近いうちに答えを出そう。それまでは姫君とそちらの方々もゆるりと我が宮殿で過ごしてくれ」

 

書状を側近に手渡し、獣王は静かに僕らに向けてそう言葉をかけた。

 

「と、堅苦しい話はここまでにしてよ。さっきから気になっていることがあるんだが…そこの白虎はお前さんたちの連れか?」

 

獣王が琥珀に目を向ける。この国じゃ、琥珀は人気ものだな。

 

「はい。ここにいる玲我殿の…従者のようなものですね」

『がう』

 

肯定するように琥珀が短く答える。

 

「…なるほど。白虎を従えた勇者が竜を討ったか。ふふふ、久しぶりに血が滾るのう。どうだ、玲我とやら。ひとつワシと立ち会わんか?」

「…は?」

 

なんか勝負することになってしまった。

 

 

 

 

 

僕たちは王宮の裏手の闘技場に向かっている。それにしても、いきなり王様と勝負なんて。

 

「申し訳ない、玲我殿。獣王陛下は強い者を見ると、手合わせをせずにはいられん気性でな。正直我らも困っている」

 

あーそのタイプか。僕の星にもいますよ。

 

「ここはひとつ、ガツンと痛い目にあった方がいいと思うのでな。全力でやってくだされ」

「いいんですか、それで?あなた方の王様でしょう」

「かまわん、思いっきりやってくれ。だいたい陛下は国務をなんだと思ってるか!ふらりと居なくなったと思えば戦士団の訓練に参加して、全員ぶちのめしているし!」

 

そこから、みんな獣王様の悪口を言い合っている。みんな苦労してるんだな。僕もみんなに苦労させてばかりだから。とりあえず、木剣とある武器を持って闘技場の中央に向かう。獣王様は片手に木剣、片手に木の盾を持っている。観客席にはユミナたちとミスミドの重臣たち、そしてミスミド戦士団の隊長クラスがいる。

 

「勝負はどちらかが真剣ならば致命傷になる打撃を受けるか、あるいは自ら負けを認めるまで。魔法使用も可。ただし本体への直接的な攻撃魔法の使用は禁止。双方よろしいか?」

 

審判役の人が、獣王と僕、両方に説明する。

 

「…本当にやるんですか?」

「ふふふ、手加減は無用。実践と思ってあらゆる手を使い、ワシに勝ってみせるがいい!」

 

なるほど、それなら僕もこれを使おうかな。僕は木剣を一旦腰に納め、一緒に持ってきた赤と黄色の銃『ドンブラスター』と赤いギア『アバタロウギア』を取り出し、構える。ギアをセットし、ディスクを思いっきり回す。

 

「アバターチェンジ!」

いよおー!

 

ドンブラスターから音声が鳴ると、闘技場の中央に突如、和風の波のエフェクトが現れた。

 

「これは!?」

 

驚く獣王と観客たち。でもまだまだ。僕は再びディスクを4回回す。

 

どん! どん! どん! どんぶらこ! アバタロウ!

 

僕は上に向かって撃つ。すると、空から扉が現れ、開かれると、ギアが出現し、僕に落下してくる。

 

『♪♪♪ドンモモタロウ! よっ!日本一!

 

音声が終わると、僕は赤い戦士。ドンモモタロウに変身した。これには皆が唖然とした。

 

「なんだそれは!?」

「これは僕の鎧みたいな物ですよ。さあ、獣王様!勝負!勝負!」

「では、始め!」

 

そこから、僕と獣王の木剣がぶつかり合う。中々攻めきれないな。あっちには盾もあるから、攻撃が入ったと思っても盾でガードされる。

 

「ふむ、なかなかやるな。なら【アクセル】!」

 

獣王がつぶやいた次の瞬間、その姿が消え失せた。

 

「な…!?」

 

僕の背後から気配を感じ、反射的にしゃがむと、頭の上を獣王の木剣が水平に振りぬかれる。てか、はや!

 

「今のを避けるのか!やるな、玲我とやら」

「今のは!?」

「ワシの無属性魔法【アクセル】だ。身体の素早さを上げる。それだけの魔法だ」

 

素早さを上げる魔法か。なら、目には目を、豹には豹、速さには速さだ。僕はドンブラバックルから、あるアバタロウギアを取り出し、セットしディスクを回転し、トリガーを引く。

 

「アバターチェンジ!」

『いよおー! ゴーバスターズ! It's MORPHIN'TIME! いよおー!特命戦隊!』

 

僕は特命戦隊ゴーバスターズのレッドバスターにアバターチェンジする。

 

「また、変わった!」

「バスターズ レディーゴー!」

「【アクセル】!」

 

ならこっちも、レッドバスターの高速移動を使い、獣王の【アクセル】に追いつく。

 

「なッ!?」

 

僕は【アクセル】を上回るスピードで獣王の背後に回り、その首にピタッと木剣を押し付けた。

 

「これで終わりですね?」

「そうだな、ワシの負けのようだな」

 

両手を上げて獣王陛下が負けを認める。それを見て審判が大きく右手を上げた。

 

「勝者、光神玲我殿!」

 

審判のその声をきっかけに、闘技場の観客席から一斉に拍手が送られる。僕も変身を解除する。

 

「まさかお前も【アクセル】の使い手だとはな。ワシはどこか自分の魔法に絶対の自信を持ち、思いあがったようだ。戒めなければならんな」

「いや、まあ、ははは」




どうでしたか
戦闘描写が難しいです。今のところ、ドンブラスターは戦隊変身用、ギアトリンガーは必殺技かアイテムを召喚することにしようと思います。


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妖精族との出会い

<レイガサイド>

その日の夜は王宮で軽いパーティーが行われた。せっかくだからパーティーにふさわしい服を着替えさせられた。僕は早く終わったが、ユミナたち女性陣はまだ来ていない。

「やあ、玲我殿。似合ってますね。その衣装」

「ありがとうございます。リオンさんも似合ってますよ」

「ありがとう。それで、その、オリガ殿はどこですかね?」

「僕は見てませんけど…」

そういえば彼女も来ていないな。

「玲我さん!」

急に後ろからすっと腰の辺りに抱き着かれた。

「やあ、アルマか」

河合らしいドレスに身を包んだアルマの頭を撫でる。と、アルマの後ろに紳士が立っている。あれこの人?

「初めまして、アルマの父のオルバと申します」

やっぱりか。オルバさんと握手する。

「どうも、光神玲我です。玲我が名前で光神が家名です」

「ほう、イーシェンのお生まれで?」

久しぶりだな。このフレーズ。

「べっ、ベルファスト王国第一騎士団所属、リオン・ブリッツでありましゅ!」

噛んでるよリオンさん。テンパりすぎだよ。まあ、アルマの父親ということは、オリガさんの父上と同じ意味だからね。

「娘たちを護衛していただき、本当にありがとうございます」

「い、いえっ、それが我々の任務でしゅから!」

噛んでる嚙んでる。はあ、しょうがないな。

「オルバさんはお仕事は何を?」

「私は交易商をしております。ベルファストからもいろいろと良いものを仕入れさせていただいてますよ」

へえー交易商人か。

「最近では『将棋』というものを何とか手に入れて、こちらで売ってみようかと思っています。なんでもベルファスト国王陛下も気に入って嗜んでいるものだとか」

「え!将棋を?」

これは驚いた。ベルファストだけでなく、国をまたいで人気を呼んでいるとは!

「将棋なら一ゼット持ってますからお譲りしますよ」

「おお、本当ですか!それはありがたい。本物を一度見てみたかったのですよ」

・・・!いいこと思いついた。

「では明日にでも届けましょう。僕はちょっと用事があるので、リオンさん、オルバさんのところへ届けてもらえませんか?ルールはオリガさんが知ってるので、教えてもらえると思います」

「え!?私がですか!?」

「リオンさんの父上は国王陛下の信任厚いレオン将軍でして。将軍の相手もよく務めているそうですよ」

「ほう、あのレオン将軍ですか!それはそれは、ぜひ我が家にきていただいてお話をうかがいたいものですな」

オルバさんに気に入ってもらえるといいね、リオンさん。

「は!それでは後日、うかがわせていただきます!」

相変わらず堅いね。頑張てね。と思っていると、会場がざわめき始めた。どうしたんだ?

ざわめいた会場入り口に行ってみると、オリガさんとユミナたちがドレスを着てやってきた。そばには琥珀が付き従っている。

「おう、玲我殿。なかなか似合ってるじゃないか。ミスミドの貴族といわれてもおかしくないぞ」

「そうですか?」

にやにやしながら僕を眺める獣王陛下。こうゆうのは何度やっても慣れない。

ふと横を見るとドレスを纏ったオリガさんに、目を奪われているリオンさん。オリガさんんもいつかの髪飾りを着けている。これはもう・・・

「似合ってますよ、玲我さん。素敵です」

「うん、バッチリじゃない?」

「…いつもと、違う魅力があります」

「かっこういいでござるよ玲我殿」

「ありがとう。みんなもよく似合ってるよ。あ、どうせなら写真撮ろうか」

僕はダブルのコウモリカメラ『バットショット』を取り出し、写真を撮る。僕らはなんともなかったが、会場のみんなは写真のフラッシュに驚き、会場内の兵士たちが腰の剣に手をかける。あ、忘れていた。

「なんだ今のは?」

樹生陛下が尋ねてくる。

「すいません、これは僕の無属性魔法でその場面の映像を記録して保持するものなんですよ」

「?よくわからんが…」

樹生陛下に今撮った画像を見せる。

「ほう!一瞬で絵を描く魔法か?同じような魔法を使うやつがリーフリース皇国にいると聞いたことがある。これは取り出しできるのか?」

へえ皇国にも同じ魔法が使える人がいるんだあ。初耳だ。

「できますよ。紙とか転写できるものがあれば」

獣王陛下が持ってこさせた紙に、カラフルコマーシャルにお願いして転写させてもらう。

「おお!これはすごいな!玲我殿、ワシも描いてもらえるか?」

「いいですよ」

そこから獣王陛下の写真やオルバさん家族の写真など、会場内の人全員の写真を撮った。正直疲れた。カラフルコマーシャルも『もう無理』と言っている。

 

 

 

一息つこうと会場の外に出て、廊下の角に設置しているソファに腰掛け休む。あー今日も疲れたな。ぼー--っと廊下を眺めていると、

「え?」

隈のぬいぐるみがひょこひょこと歩いている。・・・いやなんで?しかも

じー---。

じー-----。

じー-----。

めっちゃ見てる。・・・なんかデジャブだな。ん、手招きしている。・・・ついていこうか。

歩くクマについていくと薄暗い部屋に辿り着いた。そのままクマと一緒に入ると、

「…あら?奇妙なお客さんを連れて来たわね、ポーラ」

辺りを見渡すと、赤いソファにひとりの少女が腰かけていた。ツインテールにした白い髪に黄金色の瞳。フリルが付いた黒いドレスに黒い靴、そして黒のヘッドドレスとまるでゴスロリ衣装だな。

「それで?貴方はどなたかしら?」

「僕は玲我。光神玲我。名前が玲我ね」

「イーシェンの生まれ?」

ん、デジャブ。

「なるほど、今日のパーティーに来ているって言ってた、話題の竜殺しで光の巨人ね?」

「竜殺しって・・・ん、てか光の巨人って?」

「ある人から聞いたのよ。竜を討伐したのは光の巨人だって。あら、ごめんなさい。自己紹介が遅れたわね。私は妖精族の長、リーンよ。こっちの子はポーラ」

妖精族の長。なるほど、妖精族か。

「こう見えてあなたよりずっと年上よ?妖精族は長寿の一族だから」

「年上・・・」

たぶん、僕の方が年上だと思うけど、今年で一万歳だけど。

「六百は確実に超えていると思うけど、面倒だから百十二歳ってことにしといて」

「・・・わかったよ。ところでそのポーラなんだけど…ひょっとして召喚獣なの?」

「違うわよ。正真正銘クマのぬいぐるみ。動いているのは私の無属性魔法【プログラム】が働いているからよ」

「【プログラム】?」

「無属性魔法【プログラム】は、無機質なものにある程度の命令を入力して動かすことができる魔法よ。そうね」

そう言って、リーンは椅子に【プログラム】を発動させ、その椅子に腰掛けると、ゆっくりと前に進んでいき、二メートルほど進むと動きを止めた。

「速度の指定を忘れたわね。まあ、こうやって魔法による命令を組み込むことができるのよ」

結構便利な魔法だな。

「それってポーラに『飛べ』って命令を組み込めば飛ぶことができるの?」

「それは無理ね。そこまでの力はないわ。【プログラム】でできるのは簡単な動きくらいだから。でも、鳥の模型の羽を動かして、飛ばせるとかならできるわよ」

なるほど、制限はあるんだな。これに似たギアは・・・あ!あれだ。

「僕もやってみようかな」

「え?」

僕は『ゼロワンギア』を使う。

『ババババーン! ゼ・ロ・ワ・ン!』

僕は【プログラム】プログライズキーを作り出す。これは無属性魔法【プログラム】をゼロワンのアイテム『プログライズキー』にしたものだ。僕はそれを椅子に置き、さっきのリーンと同じ命令をする。すると、プログライズキーと椅子の下に魔法陣が広がる。魔法陣が消えてから、プログライズキーを手に持ち、椅子に腰掛ける。

「おお、成功した」

「あなた…今なにをやったの?」

「ん、無属性魔法【プログラム】と同じことを、これを使ってやっただけ」

リーンが訝しげな視線を向けてくる。

じー--。

じー---。

じー----。

ポーラと同じじゃないか。

「いろいろ聞きたいことはあるけど、今はやめときましょう。…ポーラに気に入った人間がいたら、連れてきてと言っておいたけど、また面白いのを連れて来たわね。シャルロッテ以来の掘り出し物かもしれないわ、あなた」

「シャルロッテ?」

聞き覚えがある。まさかね?

「私の弟子の一人よ。今はベルファストで宮殿魔術師をしてたわね、確かに」

あー-、知ってます、その人。

「それで、玲我、あなたの魔法の才能は素晴らしいわよ。無属性魔法以外ではどの属性使えるの?」

「全属性使えるけど」

「…もう驚かないわよ」

しばらくため息をついて考え込んでいたリーンだったが、ゆっくりと金色の目をこちらに向けると、自らの目の前でパンっと両手を打った。

「決めたわ。あなた、私の弟子になりなさい」

「はい?」




どうでしたか
【プログラム】をゼロワンのプログライズキーで代用することにしました。


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とある日常 ミスミド

<レイガサイド>

昨日の妖精族の長、リーンに「弟子のなれ」と言われた僕。一応承諾はしたが、まだみんなと旅をしたいので、一通り旅を終えてから弟子になることにした。このことにリーンとポーラも了承してくれた。その後、バーティもつがなく終了して、僕らは割り当てられた部屋に戻り、柔らかいベッドで眠りについた。

 

 

次の日、オルバさんに将棋で町興しをしてもらうことを頼んだ。それから僕はユミナとリンゼ、琥珀と一緒に城下町に出かけている。エルゼと八重はミスミドの戦士長たちと闘技場で合同訓練をするんだそうだ。最初は武器屋や服屋を周り、途中森によってユミナとリンゼにゴーカイジャーの武器『ゴーカイガン』を渡した。理由は護身用である。変身武器でもよかったが、間違って変身したら大変である。安全性を考えて銃弾は当たったら一日麻痺するゴム弾にした。二人とも喜んでくれた。

そのあとは、四人で再び城下町を歩いている。

「せっかく城下町に来たんですから、なんか食べていこうか?」

「いいですね。この国の郷土料理を食べてみたいです」

「確か『カラエ』という料理が有名、です」

『カラエ』か、何かどっかで聞いたことがあるような?

さっそく屋台で『カラエ』を注文して、屋台横のテーブルで食べることにした。あ、これ地球の『カレー』と似ている。まさかここで食べれるとは驚いたな。・・・うん、辛いけどおいしい。僕の星でも『カレー』に似た料理があるが、それと同じおいしい。

「おいしいね、これ。でもちょっと」

辛いと言おうとしたが、すでに遅かった。

「「ッ!?」」

ガタッ!と口を押さえて立ち上がり、涙目になる二人。あー、やっぱり辛かったか。二人は直ぐにコップの水を飲み干す。

「しゅごい味でしゅた…」

「みゃだ、舌がぴりぴりしまふ…」

呂律が回らなくなるほど辛かったか。屋台をあとにした僕らは、口直しに別の屋台で売っていた果実ジュースを買って飲んでいた。

「慣れるとそれほどでもないんだけどね」

「玲我しゃんは食べたことがあったんでしゅか、カラエ?」

「似たようなものならね」

辛いものはベルファストでも見なかったな、と思っていると

(…!この気配)

≪主。何者かがこっちを監視しております。おそらく以前の奴らと同じかと≫

琥珀が念話で僕に話しかけてくる。

≪彼らか…よし、ちょっと挨拶に行ってみるよ。どこにいるかわかる?≫

≪主から見て右手、一番高い建物の上です≫

築いていないフリをして、それとなくその建物の上を見てみる。確かにいるね。

ギアトリンガーを取り出す。

「玲我さん?」

二人が不思議そうな目で観てくるが、説明はあとだ。

≪琥珀は二人を守ってて≫

≪お気をつけて≫

よし、行くか。ゴーバスターズギアの高速移動を使って、彼らがいる建物の上まで移動した。

「や」

「「!」」

軽く挨拶をした僕の来訪に、そこにいた二人の監視者は驚いていた。

「何をしてるんですか、ラピスさんにセシルさん?」

「「!」」

やっぱりこの二人だったか。気配が同じで不思議だったが、本人で合っていた。

「ここじゃ、話ずらいから別の場所で話しましょう」

僕の提案に二人はうなずいてくれた。

 

 

「我々は『エスピオン』。ベルファスト国王陛下直属の諜報員です」

「国王陛下の?」

「はい。今は王女様の身近警護を任じられています」

なるほど、ユミナの護衛か、それなら納得。

「警護はラピスさんたち二人だけじゃないよね?」

「はい~、あと数人いますよ~。みんな女の子ですよ~」

やっぱり、まだいたのね。しかも全員女子。

「いつから気付いていたのですか?」

「うん?最初に気配を感じてから、確信を持ったのは一度家に帰ってから二人が出掛けていると知ってから」

「そうですか。それで、あのぅ~…やっぱりクビですかねぇ~…」

「?なんで?」

「だってぇ、旦那様に雇われてメイドに来たのに、こんなことしてたわけですしぃ~…」

「別にクビにする気はないよ。王様だって娘を心配して君らをよこしたんだろうし。そんなんでクビにしてたら、ライムさんもクビにしなくちゃならないだろ」

そこまで心が狭い人間いや神ではない。

二人はほっと胸を撫で下ろしたように息を吐いた。

「それでこれからどうするんですか?」

「今まで通り陰からユミナ様をお護りします…が、旦那様にひとつ「正体は隠しておくよ」!ありがとうございます」

それぐらいは隠しておくよ。とりあえず、今まで通りと言うことにして、二人と別れ、ユミナたちの元へと戻る。

琥珀には念話で事情を話したが、ユミナとリンゼには「逃げられちゃった」と嘘の報告をした。不思議そうな顔をされたが、なんとか誤魔化し、その日は城に戻った。

 



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とある日常 蛇と熊

<レイガサイド>

次の日、ベルファストとミスミド同盟内容を話し合うため、国王同士が会談することになった。どちらがどちらに来るかで少しもめたが、ベルファスト国王がミスミドに来ることになった。もちろん僕の【コネクト】でだ。

会議室には僕らと一緒にやってきたベルファストの騎士たち、獣王陛下と宰相のグラーツさん、ガルンさんを隊長にした戦士団何名かが控えている。

鏡の上で【コネクト】を開き、その中から、国王陛下と弟のオルトリンデ公爵が現れる。あ、あとジュウもいる。

「ようこそミスミドへ、ベルファスト王よ」

「お招きに感謝する、ミスミド王」

お互い握手を交わす。ここからは国同士の話し合いだし、部外者は外に出ようか。

廊下に出ると、ひょこひょこ歩くポーラとリーンがやって来た。

「ベルファスト国王がやって来たみたいね」

「うん、さっきね。今中で会談中」

会議室の扉を指さしながら、リーンに答える。

「しかしポーラはぬいぐるみなのにホント生き生きとしてるな…まるで生きてるみたいに」

「そういう風に【プログラム】を重ねてきたから。もう二百年近く、いろんな反応、状況から自分の行動を起こせるようにしてあるのよ。人間だって叩かれて痛ければ泣くし、バカにされたら怒るでしょう?」

二百年か。だからこんなにも感情豊かに見えるのか。あ。そういえばラブコフがポーラに会いたいってバイスが言ってたな。僕はコブラの絵が描かれたバイスタンプ『コブラバイスタンプ』を取り出し、自分の胸に押印する。

『コブラ! ♪♪』

「コブコブ」

「「!」」

バイスタンプを押印した箇所から青いコブラの悪魔『ラブコフ』が出てくる。相変わらずかわいいな。でもリーンは突然の登場に驚き、ポーラも驚いてるジェスチャーをしてる。

「あなた、それ何?」

「ん、この子は僕の…召喚獣でラブコフって言うんだ。ポーラに会ってみたいって言うから呼び出したんだ」

悪魔って言おうとしたけど、召喚獣って言った方がよさそうだし。僕がそういうと、ポーラはラブコフに近づき、おびえながらも握手を求める。

「ラブ~」

ラブコフはポーラと握手をする。お、これは仲良くなれそうだな。そっからはポーラとラブコフは仲良く遊んでいた。遊ぶって言っても、かけっこしたりじゃれついたり見てて癒される。

「あの子、ラブかコブしかしゃべないの?」

「うん、基本的にはその二つ、でもなんとなく言いたいことはわかるんだ」

「玲我殿、ベルファスト国王陛下がお呼びです。こちらへ」

しばらくして会議室の扉が開かれて、中からミスミド宰相のグラーツさんが僕を呼ぶ。終わったのか。僕はラブコフをリーンに預けて部屋に入る。

「やあ、玲我殿。話は滞りなく済んだよ、ありがとう」

「それはよかった」

「では我々はベルファストへ戻るよ。あとのことを頼む。ミスミド王、これにて失礼」

別れの挨拶を軽く済ませると、僕が開いた【コネクト】を使って帰っていった。

さてと、僕はギアトリンガーで鏡を撃つ。

「れ、玲我殿!?いったい何を…!?」

「あー大丈夫です。見ててください」

慌てふためくグラーツさんを背に向けて、ビルドギアを使用する。

『ババババーン! ビ・ル・ド』

ビルドギアの力を使って、割れた鏡と木片をいくつかの小さな横長の鏡に作り直す。

「これらの鏡はベルファストにつながっています。これからなにか重要な連絡などをするとき、ここに手紙を差し入れて連絡をとるといいでしょう。あ、もちろん、向こうもこちらも本物だとわかる公的な書類を使ってもらわないといけないでしょうが」

「な、なるほど。往復二十日もかかる連絡が一瞬でできるわけか。確かに便利だな。両国の交友に大いに活用させてもらう」

鏡を獣王に渡す。あーこれで僕の仕事は完全に終わった。帰ったら家でゆっくり休もう。

 

 

 

リーンのもとに行き、ラブコフを連れて帰る。帰る際、ラブコフはポーラに向かって『バイバイ』と手を振っていた。ポーラも手を振っている。この二人短時間でずいぶん仲良くなった。あとは【コネクト】を使って、帰るだけだったが、問題が一つ発生した。ラピスさんとセシルさんがまだここにいるのだ。僕たちが先に帰ると、家には二人がいないのでユミナにばれる危険がある。なので、みんなに待たせて、先に二人を【コネクト】で帰すことにした。二人とともに我が家に帰ると、ライムさんに出くわした。事情を知ってるライムさんは苦笑いし、あとは彼に任せた。

ミスミドに戻り、ユミナたちのところに戻ると、エルゼにむくれながら文句を言われた。こっちにも事情があるので。五人で【コネクト】を通り家に帰ると、ラピスさんとセシルさんがメイド服で出迎えてくれた。さすが、メイド。素早い着替えだな、と思った。家に入りみんなにミスミドの土産を手渡す。ライムさんにはネクタイとカフスボタン。ラピスさんとセシルさんには色違いのティーカップ。フリオさんとクレアさん夫婦には麦わら帽子とミスミド料理の本。あと、夫婦茶碗。トムとハックには装飾が施されたナイフを渡した。スゥのお土産は後日渡すことにした。

自分の部屋に入ると、眠気に襲われそのまま寝てしまった。

 

 

その後、風呂場でユミナたちの下着姿を見て、みんなから説教された。あー最後の最後で、やってしまったな。




どうでしたか
次回から少し日常会です。
今更ですが、評価してくれた人がいてうれししかったです。


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とある日常 自転車

今回は短めです。
あと今更ですが、・・・と…がランダムに使われていますが、気にしないでください


<レイガサイド>

ミスミドから帰った翌日、依頼の報酬を受け取りに、僕らは王都のギルドへ向かった。受付のお姉さんに依頼書とギルドカードを渡すと、今回の依頼で全員のギルドランクが上がった。ユミナ以外は青に、ユミナは緑にランクアップした。それから、黒竜を討伐した功績として、『ドラゴンスレイヤー』の称号をギルドから贈られた。これに関しては、僕だけだ。いつかみんなでドラゴンと戦いたいな。ギルドを出た後、ユミナたちは買い物をしに、僕は別行動であるもの作るために鍛冶屋に向かう。

 

 

「ただいま」

買い物が終わって、【コネクト】で家の庭に帰ってきた。庭にはちょうど花壇を手入れしていた庭師のフリオさんがいた。

「おかえりなさませ、旦那様、それは何ですか?」

僕が抱えているものを見てフリオさんが尋ねてくる。

「鋼とゴム、それと革が少し。これで自転車を作ろうと思ってね」

そう、僕が作ろうとしたのは自転車である。この星での乗り物が馬車しかないから、どうせなら何か作ろうと思ってね。バイクや自動車は持っているが、どうせなら簡単に乗れる自転車を作ろうと考えた。これならスゥも乗れるし。

「じてんしゃ?」

「乗り物だよ。それに乗ればかなり速く走れるようになるんだ」

「はあ…?」

まあ説明だけじゃわからないよね。取り合ず作るか。ビルドギアを使っていつも通り作るか。

『ババババーン! ビ・ル・ド!』

えっと、まずはタイヤから。作業を始めてしばらくすると執事のライムさんがオルトリンデ公爵殿下を連れてやってきた。

「旦那様、オルトリンデ公爵殿下がいらっしゃいましたが…なにをされてますので」

「やあ。なんだい、それは?」

「自転車・・・新しい乗り物を作っているんです。それで公爵殿下は何をしにこちらへ?」

「いや、今回の依頼のお礼を言おうと思ってね。それとあの手紙を送れる鏡。アレを一つもらえないかと」

「ゲートミラーを?なんでです?」

鏡の名前は適当に決めておいた。だって名前があった方がいいでしょ?

「いや、妻にね。遠方の妻の母親と手紙で頻繁にやり取りできれば喜ぶかな、と」

なるほど、妻思いですね。僕はライムさんにお願いして、僕の机の引き出しから、ミスミドで作ったゲートミラーの一セットを持ってきてもらい、昨日の夜作った『コネクトバイスタンプ』を鏡に押印する。ゲートミラーを作ってから、一枚一枚に【コネクト】を付与させるのが面倒なので、リバイスとビルドそれとウィザードのギアを使って『コネクトバイスタンプ』を開発した。これで楽に【コネクト】を付与できる。ちゃんと僕しか押印できないようにしてある。盗まれたら大変だから。

「一応、内緒にしといてくださいよ?変なのに目をつけられるのは嫌ですから」

一応くぎを刺しておく。

「ああ、その点は大丈夫だ。妻も妻の母もそういう約束は必ず守るから」

ついでだったので、スゥのお土産も持って行ってもらうことにする。みんなと合わせて髪飾りにしたが、気に入ってもらえるかな?

「ところでこの自転車?は、どれくらいで出来るのかね?」

「あと三十分くらいですかね」

「なるほど。では完成まで見学させてもらおうかな」

・・・暇なのかな。まあいいや、あとはフレームとサドルを作ってそれから・・・・

 

 

 

「よし、とりあえずこれで完成かな」

「ほう、これが自転車かね」

ようやく完成した自転車を見て公爵とライムさん、そしてフリオさんが興味深そうに眺める。作ったのは一般的なママチャリだ。レジェンド先輩が好きなんだよな。

さてと、さっそく試しのりをしてみよう。

しばらく庭の中を自転車で漕ぐ。うん、問題はなさそうだな。

「玲我殿!それは私にも乗れるものかね!?」

「はい。一応誰でも乗れすけど。たが、初めてのときは何回も転んで練習しないと乗れませんけど・・・やってみます?」

「もちろん!」

結果、公爵様は最初こそ何回も転び、ライムさんが慌てて助け起こしていた。五十回目ぐらいかな?ようやく乗れてうれしそうに庭を漕いでいた。その間、僕ばアドバイスをしながら追加の自転車を作っていた。スゥのための補助輪も。次は仮面ライダーのバイクをモデルに作ろうかな?

「やった!やったぞ!はははは」

嬉しそうな表情で、ぐるぐると庭を走る続けている公爵。服や顔が泥だらけだけど、大丈夫かな?

「え、なにそれ?」

「なんでござる!?」

「乗り物…?」

「叔父様!?」

あ、みんな帰って来た。みんな初めて見る自転車に驚いている。ユミナは公爵に驚いているけど。

やがて公爵が自転車を停めて、

「玲我殿!この自転車を私にも譲ってくれ!」

・・・言うと思った。

「そう言うと思って作っておきましたよ。スゥの分もね。あ、一応材料費はいただきますよ?」

「さすが玲我殿!」

スゥの分は後で【コネクト】で送ろうか。

「みんなも乗ってみる?」

「「「「はい」」」」

そっからは庭で自転車教室みたいなことになった。最初はやっぱり転んでいたが、最後は全員が乗れるようになった。

・・・・・もっと自転車増やすか。




どうでしたか


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とあり日常 レネ

<レイガサイド>

はあー困ったことが起きた。財布を盗まれた!

 

 

数時間前に遡る。今日はユミナとリンゼが買い物、エルゼと八重は騎士団と訓練をしに行き、僕は暇なので王都の東区で買い物をしようと思った。東区は西区に比べて安い酒場や劇場がある歓楽街が多い。しかし治安が悪いので今まで行かなかったが、一回は経験しようと思い【コネクト】でまずは南区に出た。賑わう表通りを出て、お金を下ろそうとギルドへ向かう途中、ドン、と人にぶつかってしまった。幼い男いや女の子か。薄汚れたキャスケットを目深に被り、ヨレヨレのジャケットとズボンを着ている。

「っとゴメンよ」

「ボケっとしてんなよ。兄ちゃん。気をつけなよ」

そう言い残すと女の子はさっさと人混みに紛れて行ってしまう。急いでいたけど用事かな?

・・・あっ、財布盗られた。

 

 

 

時は戻り、現在僕はさっきの女の子を探している。正直見つけるのは簡単だが、その後どうしようか迷っている。見逃すか警備兵に突き出すか、と考えていると、路地裏でガラの悪い男二人が女の子を何度も足蹴している。

「また俺たちの縄張りで仕事しやがったな、このクソガキ!テメエのおかげで警邏が厳しくなっちまったじゃねえか!」

「好き勝手にやられるとこっちが迷惑なんだよ。覚悟はできてるだろうな」

一人がナイフを取り出し、女の子の腕を押さえる。

「やめて!やめてよ!謝るから!謝るからぁ!」

涙を流し懇願する女の子、だが二人の男はせら笑うだけで、押さえる手をどかそうとはしない。

「もうおせぇんだよ。同業者のよしみ「そこまでにしてくれませんか」!」

チンピラ二人と女の子が、声をかけた僕の方をギロリと睨む。あれ?これどっかで。

「なんだテメエは?邪魔すんじゃねぇよ、殺すぞ?」

「子供をよってたかって痛めつけるのを見たら邪魔すんだろ。会話からしたら、あんたたちもスリのようだけど間違いない?」

「だったらどうだって「別に。撃つのに躊躇いがなくなると思ったから」!」

そう言って腰からギアトリンガーを引き抜き、二人のチンピラを容赦なく撃つ。

「ゴウッ!?」

「ガハッ!?」

崩れ落ちるチンピラ。チンピラにはやっぱり麻痺だよね。

「大丈夫か?」

涙でグシャグシャになった顔で女の子はこくんと頷く。身体にはいたるところにアザヤ怪我のあとがあった。

「フルムーンレクト」

コスモスの必殺技でアザや怪我のあとを治す。女の子は自分の体に起こった変化を、驚きの目で見ていた。

さてと、チンピラは警備兵に突き出すとして

「僕の財布、返してくれるかな?」

「あ・・・」

そう言うと、女の子はごそごそと懐から僕の財布を取り出し、震える手で渡してきた。

「財布も返してもらったし、今回は警備兵に通報はしないよ。じゃあね」

「あっ、あの!」

立ち去ろうとした僕を女の子が呼び止める。なんだ?

「助けてくれて、ありがとう・・・」

「どういたしまして、もうスリはやめな「ぐうぅぅぅうぅぅ」・・・お腹空いているのか?」

「もう三日食べてない」

「三日も!・・・おいで。なんか食べ物買ってあげるよ」

「ホント!?」

嬉しそうに駆け寄って来る。走ったはずみでキャスケットがずれ、肩口をこえるぐらいまで伸びた明るい亜麻色の髪が出てくる。やっぱり女の子か。雰囲気がさっきと変わったな。

 

 

「なあなあ、兄ちゃん。なに食わせてくれるんだ?」

「そうだな。なんか適当に屋台で買うか?」

ギルド前の屋台でまずは魚介スープを買い、カップに入れて手渡す。ここまで来る道中、彼女についていろいろ聞いた。彼女の名前はレネと言って、お父さんとお母さんが幼い時に亡くなり、そっからは街で仲良くなった旅のおばあさんにスリの技を教えてもらったらしい。

悲しいな。どこの星でも彼女のような子は必ずいる。僕の星では今のところいないが、いつか・・・いや絶対に出さない!、と考え屋台で串焼きを数本買って、広場のベンチで食べることにした。

「慌てないでも大丈夫だから、ゆっくり食べな」

「ん」

よほどお腹が空いているのか、ガツガツと串焼きを咀嚼し、胃の中へ飲み込んでいく。

これからこの子どうしようか・・・はあ、甘いと言われても仕方ないよね。

「レネ、うちで働く気はある?」

「え?」

「住むところも食べ物も心配しないでいい。ただ、きちんと働いてもらうよ。それに見合った借金もちゃんと払おう。どうだ?」

「えっ?えっ?働かせてくれるの?ホントに?」

「ああ、ただし、二度とスリの技術を使わないことが条件だ。それを破ったら君に仕事をしてもらうわけにはいかない。守れるか?」

「う、うん!二度と使わない!約束する!」

「そうか。よしなら家に連れてくよ」

レネを連れ家まで帰る。帰る途中向かう先が西区と気付くと、レネは僕を貴族と思って驚いたが、全然違うよ。

 

 

それから家に帰り、ライムさんとラピスさんにレネのことを伝えると、家でメイドとして働くことが決まった。最初こそライムさんはレネを疑っていたが、結局はレネのことを信じてくれた。頑張れよレネ。その後身体をきれいにと風呂に入ったが、風呂場にいた琥珀に驚き、さらに琥珀が話したことにさらに驚き、ホントにぎやかになったな。

と思っていたが、一つだけ気になったことがあった。彼女の着けていたペンダントだが、紋章が彫られておりライムさんに聞いても知らなかった。なんか気になるな?

 



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第五章
フレイズ


<レイガサイド>

レネを連れてきて次の日。

「うん、よく似合ってるじゃないか」

「そ、そっかな」

メイド服を着込んだレネがスカートを軽くつまみ上げ、くるりと回る。首にかけたペンダントがそれに合わせて大きく揺れる。

「そのペンダントは仕事の邪魔になるから服の中に入れとくといいよ」

「あ、そっか。わかったよ、玲我兄ちゃん」

僕の横に立っているライムさんがレネを真っ直ぐ見つめる。

「レネ、これからお前はこの家の使用人なのです。お客様の前では『玲我兄ちゃん』ではなく『旦那様』と呼ぶように」

「あ、えっと、はい。ライムさん」

「よろしい。お前の仕事はここで働く使用人たちのサポートです。とりあえず朝昼夜の食事前はクレアに、それ以外はラピスたちに付いて学びなさい」

「わかっ…わかりました」

しっかりと返事をするレネ。大丈夫かな?

「じゃあ、レネちゃん行こうか~」

「うん。いってくるね、玲我兄ちゃ、旦那様」

「がんばれよ~」

セシルさん連れられてレネが)食堂を出ていく。

「心配しないでも大丈夫だと思うわよ」

「私も、そう思うわよ」

朝食後のお茶を飲みながら、エルゼとリンゼが太鼓判を押した。みんなには昨日、レネを雇うことになった経緯を説明している。

「芯の強そうな子でござるし、きちんと自分で考えるタイプでござろう、あの子は」

言いながらまだ朝食を食べている八重。すると食堂の扉からユミナが入って来た。

「お父様からです。玲我さんに今日暇ならば王宮に顔を出してほしいと」

王宮との連絡用ゲートミラーがユミナの部屋の設置してある。

「王様が?何の用だろ?」

「最近、叔父様に自転車を自慢されたと言っていたから、それじゃないですか?」

確実にそれだ!まあ自転車は多めに作ってあるからいいけど、ついでにレネのことも伝えよう。

「じゃあ行ってくるけど、誰か一緒に来る?」

「お供します」

「あ、あたしも行く。将軍と手合わせしてもらいたいから」

二人だけね。じゃあ届けに行きますか。

 

 

 

「いや、そのなんだ、アル「そう思いまして、一つ持ってきましたよ」おお!それはありがたい!してどこに」

収納魔法で自転車を取り出す。

「相変わらず玲我殿は規格外だな。これは【コネクト】とは違うのか?」

「はい。こっちは収納魔法で、いろんなものを入れておけるんです」

王様が呆れたように声を漏らすが、その目は出てきた自転車に釘付けだった。

「オルトリンデ公爵には乗せてもらったんですか?」

「うむ、だが乗れなんだ。練習が必要だとアルは言っていたが、どれぐらいかかる?」

「そうですね。公爵様は一日かかりましたが、うちのメイドは三時間で乗ってましたね。まあ長くても三日あれば乗れますね」

嬉しそうにサドルに跨る王様に、僕は聞きたいことを話した。

「それでですね。僕の方からもお願いと言いますか、相談があるのですが…」

「ほう?玲我殿の方からとは珍しい」

少し驚いた王様にレネのことを話した。

「罪は罪だ。償わなければならない。しかし、その少女の境遇も考慮するに、情状酌量の余地はあると思われる。玲我殿が責任を持ってその少女を監視し、更生させるというのなら、今回のことは高額の罰金と注意のみということにしよう。しかし二度目はないぞ。よく聞かせるようにな」

良かった。王様も賛成してくれて。多分リムルも賛成してくれるよな。

「うむ…やはり解せんな」

「何がですか?」

「そこまで浮浪児が多いということがだよ。王都の孤児院には充分な支援金を出しているはずだ。これはひょっとすると…」

パンパンッと王様が手をたたくと天井裏から白い仮面を被った黒ずくめの人間が降りて来た。さっきからずっといたよね。

「孤児院への基金管理はだれの担当だった?」

「セベク男爵だったかと。…ここ数年、妙に羽振りがよいとの噂です」

「金の流れを徹底的に調べて、横領の事実があったのなら直ぐに拘束しろ」

「は」

また天井裏に戻っていった。忍者だな、ここまでくると。

「すまんな。ひょっとしたら玲我殿が保護した子の境遇も、こちらの落ち度だったかもしれん。許してほしい」

「いいですよ。国王陛下も大変ですね」

「まったくだ。早く誰かにあとを譲って隠居したいもんだ」

・・・あ、ユミナと子供作れと? それは結婚式やってからですよ。

 

 

 

「ただいま!」

【コネクト】でユミナと二人で家の玄関先に出る。エルゼは訓練が終わったら歩いて帰って来るそうだ。

扉を開けるとライムさんが出迎えてくれる。

「お帰りなさいませ、旦那様」

「ただいまライムさん。レネのことはなんとかなったよ」

「それはようございました。ああ、旦那様にお客様がいらしております」

「客?」

そう言って、廊下を見ると、ひょこひょことクマのぬいぐるみが歩いてくる。え!

「ポーラ!?」

「ラブ~!」

ちょっ!ラブコフいきなり。ポーラを掴めて、抱え上げる。

「お前がいるってことはもしかして?」

「ええ、私のお供でついて来たのよ」

「やっぱり、それでリーンはどうしてここに?」

「ちょっと調べ物にね。あとシャルロッテにお仕置きをしにきたってところかしら。もうひっぱたいてきたけど」

?・・・シャルロッテさんなんかやらかしたのかな?

そう思っていると、くいくいっと、ユミナに袖を引かれた。

「玲我さん?こちらはどなたですか?」

「ああ、ユミナは初めてだったか。この人はミスミドの妖精族の長で、名前はリーン」

「妖精族…?でも」

あれ、そういえば羽は?

「ああ、羽は光魔法で見えないようにしているのよ。こっちの国じゃ目立つから」

あー確かに目立つね。

「でもなんでウチに?よくここがわかったね?」

「シャルロッテから聞いたのよ。それと貴方に聞きたいことがあってね。今から数か月前、貴方が倒したっていう『水晶の魔物』について」

「なんだって!?」

「ミスミドにも出たのよ。その水晶の魔物がね」

まじか!?なんか嫌な予感が。

「貴方たちが帰る前の日にね、ミスミドの西側にある、レレスという町から急使がきたの。数日前から奇妙な現象が起こってるってね」

「奇妙な現象?」

リビングの椅子に腰掛けたリーンが紅茶を飲む。対面には僕とユミナ、左右にはリンゼと八重が座っている。ポーラは・・・ラブコフと遊んでいる。

話をまとめると、レレス村の近くの森で小さな亀裂が宙に浮かんでいるを発見したらしい。超獣?

・・・話を戻すと、日に日にその亀裂が大きくなって、リーンと戦士団が調査をしに行ったけど、着いたら水晶の魔物が村を蹂躙していた。戦士の半数が再起不能で村は壊滅。リーンが土魔法で頭に岩をぶつけたら、体の中にあった核が砕け散ったので倒すことができた。村人の話では亀裂が破壊されて、その中から水晶の魔物が出たらしい。特徴は似ていたが、なんと姿は違っていた。僕らが倒したのはコオロギに対して、リーンが倒したのは蛇だった。いろんな形があるのか?あとそいつらの名前は『フレイズ』ということがわかった。なんでもリーンが幼いころ一族の長老から聞いたお話に出て来たらしい。この世界を滅ぼしかけたとか…

まさかレジェンド先輩たちはこれらを見越してこの星に僕を向かわせたのかも。



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イーシェンへ 前編

こんばんわ
今回から原作3巻に入りました。



<レイガサイド>

さっきのフレイズの話が終わっれから、一休みしている。途中お茶のお代わりにセシルさんとレネがやってきた。レネはめっちゃ緊張していたけど。 

 

「ところで貴方、無属性魔法ならすべて使えるらしいわね?」

 

「あー、使えるけど、ほぼギアの力で代用してるよ」

 

「そう、なら【ゲート】は使えるの?」

 

「うん。【コネクト】で代用してるけど、一度行ったところしか行けないよ」

 

「無属性魔法【リコール】って知ってる?他人の心を読み取って記憶を回収する魔法なんだけど。これを併用すれば、読み取った他人の記憶からその場所へ飛べるはずよ」

 

へえー、あの魔法と同じか。

 

「その魔法と【コネクト】を使って、貴方に連れて行ってもらいたいところがあるのよ。その国にあるっていう古代遺跡を調べてみたくてね」

「いいけど…どこに連れて行けばいいの?」

 

「遥か東方、東の果て。神国イーシェンへ」

 

「イーシェン!?」

思わず八重の方へ向けてしまう。まさかイーシェンに行く機会ができるとは。

 

「こっちの子はイーシェンの生まれでしょう?この子の心を読み取れば【コネクト】でイーシェンに行けるわ」

 

「ちょ、待つでござる!心を読み取るって、拙者のでござるか!?」

 

「心配しないで。ちゃんと意識を保っていれば、【リコール】は渡す方が許可した記憶しか回収できないから。だから見られたくない記憶まで読まれることはないわ」

 

八重がなんともいえない顔で悩んでいる。まあ他人に記憶を見られるのはだれでも嫌だよね。さてと、僕も準備しますか。たぶんあのギアで代用できる。

僕はギアトリンガーとマジレンジャーギアを使う。

『ババババーン! マジレンジャー!』

ギアからは金色の魔法使い『マジシャイン』が現れる。そして僕の手には『グリップフォン』と『マジチケット』が握られている。

 

「それがギアの力?」

 

「そう。今回はこれで代用する。八重は目をつぶってイーシェンの風景を思い浮かべて」

 

「…わかったでござる」

八重が目をつぶったので、グリップフォンでマジチケットに小さな穴を開ける。そしてチケットを八重の額に当て自分も当てる。

 

「「え!」」

 

「あらあら」

 

ユミナとリンゼは驚き、リーンはニヤニヤしてる。ポーラとラブコフも恥ずかしそうに目を手で隠している。

「【記憶よ、我に移れ。ルーマ・ゴルド】!」

マジチケットを通して頭の中にぼんやりと何かが流れ込んでいる。大きな木…楠かな?それと鳥居か。左右には狛犬。日本でいう神社か寺か?

「見えた」

「ふう・・・えっ!」

眼を開いて正面の八重と見つめあう。八重は驚き動揺している。まあ目を開けたらいきなり額をお互い当てているからね。すぐに離れる。

「イーシェンが見えたのなら【コネクト】をひらいてほしいんだけど。いいかしら?」

いいけど、そのニヤニヤ顔やめてほしい。(/ω\)

浮かび上がった赤い魔法陣をくぐると、そこには先ほどの風景が見える。

「間違いでござらん。ここは拙者の生まれ故郷、イーシェンでござる。実家のあるハシバの外れ、鎮守の森の中でござるよ」

同じように【コネクト】を抜けて来た八重が、周りを見渡し断言する。ここがイーシェンか。

 

 

 

 

一旦ベルファストの家まで帰り、きちんと準備してから行くことにした。行くのは僕と八重、エルゼとリンゼ、ユミナとリーンそして琥珀だ。八重の案内に従って森を抜けていく。

 

「おお…」

 

見えた景色は、大きな街並みと水田が広がっていた。日本の城も建っている。イーシェンには国王がいるらしいが、あまり政治には関わっておらず、九人の領主が好き勝手に幅をきかせている。

 

「リーンが行きたい古代遺跡ってどこにあるんだ?」

 

「場所はわからないわ。ただ、『ニルヤの遺跡』としか」

 

「八重は知ってる?」

 

「ニルヤ…?聞いたことがあるような、無いような…。父上なら知っているやもしれませぬ」

 

とりあえず八重の故郷オエドに向かうことにした。道中、侍姿に着物姿、町人のような者もいれば、着流しの素浪人までいる。ここは日本の江戸時代そのものだな。

エルゼやリンゼ、ユミナはいろいろ聞いてくる。まあ初めて見る物しかないからね。しかし、町の人たちがあまり楽しそうじゃない気がする。

八重の案内で神社の鳥居を横切り、竹林の道を抜けると、開けた場所に塀で囲まれた大きな屋敷が現れた。看板には「九重真鳴流剣術道場 九曜館」と書かれている。門をくぐり、玄関に着くと、八重は大きく声を張り上げた。

 

「誰かいるか!」

 

しばらくすると奥からバタバタと音を立て、黒い髪を後ろでひとつにまとめた女中さんがやって来た。

 

「はいはい、只今…まあ、八重様!」

 

「綾音!久しいな!」

 

綾音と呼ばれた女中は驚きながらも笑顔で駆け寄り、八重の手を取った。

「お帰りなさいまし、八重様!七重様!八重様がお戻りに!」

 

綾音さんが奥に向けて声をかけると、再びバタバタと足音が響き渡り、薄紫の着物を着た優しそうな女性が姿を現した。この人、八重のお母さんかな?

 

「八重…よくぞ無地で…お帰りなさいませ」

 

やっぱり八重のお母さんか。久しぶりの再会に、母は娘をしっかり抱き寄せる。

 

「八重、こちらの方たちは?」

 

「あ、拙者の仲間たちです。大変世話になっている人たちでござるよ」

 

「まあまあ、それはそれは…。娘がお世話になりまして、ありがとう存じます」

 

「いえ、こちらも世話になっていますので、どうか顔を上げてください」

 

お母さんに結婚相手を紹介しないのか?さすがにあっていきなり「娘さんを僕にください」って言えないよ。だから今回は話さないと八重と話し合っていた。

 

「ときに母上、父上はどちらでござるか?城の方にでも?」

 

八重の言葉に綾音さんと七重さんが顔を見合わせ、表情を曇らせる。ん何か嫌な気配が。

 

「父上はこちらにはいません。殿…家泰様と共に合戦場へ向かいました」

 

「合戦ですと!?」

 

合戦…つまり戦か。

「いったいどこの領主と!?」

 

「武田です。数日前、北西のカツヌマを奇襲にて落とし、今はその先のカワゴエに向かって進軍しつつあるそうです。それを食い止めるために、旦那様と重太郎様がカワゴエの砦へ向かいました」

 

八重の質問に綾音さんが答えた。

「兄上も戦場へ向かわれたのか…。しかし、わからぬ。武田はなぜそんな侵略を急に始めたのか…。武田領主の真玄殿が、そのような愚行を犯すとも思えるが…」

 

「最近、武田の領主に妙な軍師が付いたそうです。山本某と言う者だそうで。色黒隻眼で不思議な魔法を使う人物だとか…その者に妙なことを吹き込まれたのやも知れませぬ」

 

さっきから出てくる名前が僕の嫁たちと同じだが、気のせいかな?・・・いや江戸時代の時点で同じか。

「それで戦況はどうなの?」

それまで黙っていたリーンが聞く。足元ではポーラと琥珀、ラブコフは首を小さく傾げている。え!なにこのかわいい景色!いやそんな状況ではなかった。

 

「なにぶんにも急なことだったので、充分な戦力を集められず、このままではカワゴエの砦が落とされるのも時間の問題だという噂です」

 

「それでは父上や兄上は…」

 

綾音さんの口から漏れた状況に八重が愕然とする。

 

「八重!カワゴエ砦に向かうよ!」

 

「玲我殿…!」

 

僕は八重の手を握り、はっきりと自分の思いを伝える。

 

「まさか戦場に行くことになるなんてね。ま、気持ちはわかるから私も付き合うわ」

 

エルゼとリンゼ、ユミナとリーンも賛成してくれた。ポーラとラブコフもやる気満々といった感じで、シャドーボクシングを始めた。八重にカワゴエ砦の場所を知ってるか聞くと、近くの峠なら行ったことがあるので、ルーマ・ゴルドで記憶を見た。ここか。

八重と離れ、家の玄関前に【コネクト】を開く。真っ先に八重が飛び込み、エルゼたちも次々と【コネクト】に入り、消えていく。

その光景に呆然と眺めている九重家の二人に、最後に残った僕が声をかける。

 

「必ずご主人と八重のお兄さんを連れて帰ってきます。みんなで無事に戻ってきますから、心配しないで」

 

「貴方はいったい…」

 

「通りすがりの冒険者ですよ」

 

そう言って、僕は【コネクト】をくぐり抜けた。







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イーシェンへ 後編

<レイガサイド>

【コネクト】を抜けた峠の先から見えたのは黒煙を上げ、攻められている砦の姿だった。僕は事前に『リュウソウジャーギア』で召喚したリュウソウゴールドの専用武器『モサブレード』を取り出し、恐竜の頭部を模したアイテム『リュウソウル』をセットする。

「ミエソウル!」

『いただきモッサ!』

ミエソウルは視覚の鋭い騎士竜の力が宿っている。これにより望遠鏡のようにはるか遠くを見通すことができる。砦を見てみると、八重のお兄さんらしき人が城壁の前で左右に動いていることが見えた。

「お兄さんは無事みたいだよ。お父さんの方はわからないけど…」

「っ!早く砦に向かわないと…!」

「待ちなさい。貴方、あの中に飛び込んで無事でいられると思ってるの!」

直ぐにでも砦に向けて駆けだそうとする八重をリーンが止める。

「まずは僕一人で砦に向かうよ。改めてここに【コネクト】を開くから、みんなはここで待っててほしい」

「なるほどね。それが一番確実かしら」

「琥珀。みんなのことを頼むよ。何かあったら連絡を」

『わかりました』

「⁉この子、喋るの⁉」

あれ、琥珀のことは説明してなかったけ?まあ後でいいや。

「じゃあ行ってくる」

僕は【コネクト】を開いて砦まで向かう。道中仮面をつけた敵兵を見たので一応麻痺させておいた。しかし、僕はその後の光景に驚いた。

「⁉なんだ、こいつら⁉」

彼らに麻痺が効かなかったからではない。彼らの姿が落ち武者のようだ。皮膚は赤く、足を引きずりながら歩いている。それに声をださない。一番驚いたのは彼らのお面だ。赤い鬼のようなお面、それがとても不気味であった。そんなことを思っていたが、彼らは僕に攻撃してくる。試しに仮面をギアトリンガーで壊してみよう。仮面にヒビが入ると、さっきまで動いていた彼らが膝から崩れ、力なくばったりと倒れた。

「なんだったんだ、こいつらは…」

よく見てみると、彼らはすでに死んでいたようだ。それも一週間以上前に。誰か死体を操る奴がいるのか?まあ考えてもしかたない。詳しいことは八重のお兄さんに聞こう。

『【コネクト】』

魔法陣をくぐるとそこには八重のお兄さんらしき人が身体中返り血に塗れ、周りのみんなを励ましていた。

「ッ!何者だ⁉武田の手の者か⁉」

刀を構え、八重のお兄さんが誰何してくる。

「待ってください。敵じゃありません。あなたは九重八重のお兄さん、九重重太郎さんで間違いないですか?」

「確かに私は重太郎だが…なぜ八重を知ってる…?」

「僕はベルファストという国で八重と知り合った彼女の仲間ですお兄さんに危険が迫っているというので助けにきた次第でして」

「八重の⁉」

「そして未来の八重の結婚相手で~す」

(バイス!今はそれどころじゃないでしょ!)

「へへへ、悪い悪い」

「はい。彼女も近くに来ています。今から僕が転移魔法で呼びますが、よろしいですか?」

ざわざわと周りの兵士が重太郎さんに視線を向ける。やがて重太郎さんが刀を下ろし、ゆっくりと頷く。

『【コネクト】』

僕が開いた魔法陣から一人の少女が飛び出し、重太郎さんの胸に飛び込む。

「兄上!」

「八重…? 本当に八重か?」

「はい!」

兄妹が再開を懐かしんでいるのを横に【コネクト】からぞろぞろとエルゼたちが現れる。

「あの者たちは?」

「拙者の仲間たちでござるよ。みんな頼りになる者たちでござる。それよりも兄上、父上は? ご無事なのでござるか?」

「ああ、無事だから安心しなさい。父上はいま家泰様の警護をしている。後で会うといい」

父親を心配する妹に優しく話しかける兄。感動的だな、とそれよりもけが人だな。これだけ多いとコスモスでも時間がかかるな。じゃあ、あれで行きますか!

『ババババーン!リュウソウジャー!』

僕は再び『リュウソウジャーギア』を使って、次に召喚したのはリュウソウジャーのメイン武器『リュウソウケン』、そして白いリュウソウル『カガヤキソウル』だ。僕はリュウソウケンの恐竜の頭部を模したソウルスロットを開き、リュウソウルをセットする。

「カガヤキソウル!」

『カガヤキソウル! カガヤキ!』

「ハアッ!」

僕は剣を振るって聖なる光を怪我人に放つ。この光は仲間の傷を治すことができるのだ。やがてそれが怪我人を包むと傷がみるみる塞がり回復していった。

しばらくすると砦のいたるところから歓声が上がり、目の前にいた怪我人の兵士も不思議そうに立ち上がって身体を動かした。

「ちょっと…なにしたの?回復魔法をかけたのはわかったけど、まさか…」

「ん?砦の怪我人全員治したんだけど」

「怪我人が…これは一体…?」

「玲我殿の回復魔法でござる」

「傷が塞がっただけですから、あまり無理はさせないようにして下さい」

「あ、ああ、わかった。ちゃんと通達しておこう」

「ありがとうございます。ところで敵兵に混じっている、鬼の仮面を被ったやつらは何ですか?」

気になったことを重太郎さんに聞いてみる。

「わからない。あの仮面を壊すまでは何をしようが動きを止めない。まるで生ける屍なんだ」

やっぱり仮面か?ふと横を見ると城壁から身を乗り出したリーンが、仮面の兵士たちを睨みつけてなにやら考え込んでいる。

「ふうん…。何かの無属性魔法か…で、なければ魔道具(アーティファクト)かしらね」

「アーティファクト?」

「古代文明の遺産、強力な魔法の道具よ。あなたのそれもアーティファクトなんじゃないの?」

「ああ、そうだね…」

とりあえず誤魔化しておこう。

「まあ、なんにしろ仮面の奴らは厄介だと。…やっぱり一気に殲滅したほうがいいか」

「…なんだって?」

不思議そうに重太郎さんが僕を見ているのをよそに、『ジードギア』をギアトリンガーにセットする。

『ババババーン! ジード!』

僕はウルトラマンジードの変身アイテム『ジードライザー』と専用武器『ジードクロー』を召喚する。

僕は片側の刃にジードライザでリードした後クローの中心を押してクローを展開する。

『シフトイントゥマキシマム!』

トリガーを三回引いてボタンを押す。

「ディフュージョンシャワー!」

僕は空に向けて撃つと、無数に分散した光線が敵兵の頭上に落ちる。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッと地響きが鳴る。

やがて音が止むと、あとには武田勢がすべて倒れ、動けなくなっている。一応あたっても気絶するようにしたけど、大丈夫だよね?

しばらく唖然としていた砦の徳川軍だが、状況が把握できてくると、皆一斉に勝鬨の雄たけびを上げた。

「今のは…君がやったのか…?」

「まあ、一応」

僕がそう答えると、そばにいたエルゼが腰に手を当て、大きく息を吐いた。

「なんかもう驚くのが馬鹿らしくなったわよね」

「いまさらって気が、するね」

・・・やっぱりやりすぎたかな?




どうでしたか
いつの間にかお気に入りの数が40人を超えていて驚きました。
これからもこの作品をよろしくお願いします


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徳川と武田

こんばんわ。遅くなりました。文字数があまり増えずすいません。中々大変
今回でたくさんレイガの嫁の名前が出ます。元ネタはあれです。


<レイガサイド>

「ますは此度の助太刀、心から御礼申し上げる」

 

砦の天守閣で、上座に座る恰幅のいいちょび髭男の徳川家泰さんにお礼を言われた。・・・同じ家泰でもここまで違うのか!

 

「いえ、こちらに出向いたのはたまたまのことです。どうかお気になさらぬように」

 

僕らの前に座っているユミナが答える。僕たちはあくまでユミナの護衛、ということにした。

 

「それにしても八重がユミナ姫の護衛とは…驚いたぞ、まったく」

 

家泰さんの横に座っている男性が驚く。この人が八重のお父さんで九重重兵衛さん。今は徳川家の剣術指南役を務めているらしい。この人雰囲気がハクロウに似ているんだよな・・・いつかゴブタに会わせようかな?

 

「して、そちらの…我が砦を救っていただいた彼は…?」

 

家泰さんが僕に視線を向ける。

 

「この方は光神玲我さんと申しまして、私の護衛・・・もとい未来の旦那様です」

 

ここまではっきり言われるとさすがに(/ω\)恥ずかしい。

 

「いや、なるほど。ベルファスト王女の許嫁であれば、あの偉業も納得できますな。実に素晴らしい」

 

「ええ、私もこの方を誇りに思いますわ」

 

・・・恥ずいー--、とても居づらいよー-

 

「ところでひとつお聞きしたいのですが…『ニルヤの遺跡』なる場所をお知りではないでしょうか?我々はそこを目指してイーシェンへ来たのですが…」

 

「ニルヤ…?ああ、『ニライカナイの遺産』があるという遺跡のことですな。私は詳しくは存じませぬが…。重兵衛はどうだ?」

 

「確か…ニルヤの遺跡は島津の領地にあったかと。しかしあそこは海の底ですぞ。入ることさえままならないと思いますが…」

 

「海の底⁉」

 

それってつまり・・・海底神殿⁉そんなとこにあるのか。ま、どっちにしろ行ってみないとわからないけど、今はそれより、

 

「武田軍ですが、あれで引き下がると思いますか?」

 

僕が家泰さんに尋ねる。

 

「確かにまた態勢を整えて攻めて来るやもしれぬ。鬼面の兵士たちをさらに増やし、大砲を持ち出してくるかも…」

 

ですよねー。光璃でもそうするよ。

 

「しかし、此度の鬼面兵といい、突然の侵略といい、わけがわからぬ。武田の領主、真玄殿は武田四天王と呼ばれる四人の武将を率いる猛者ではあるが、今回の戦いはどこか真玄殿らしくないように思える。やはり噂は本当なのだろうか…」

 

・・・え、ちょっとまって。武田四天王もいるの⁉春日や粉雪たちもいるの⁉うっそ。・・・いやまて今はそれどころじゃないぞ。

 

「噂?」

 

「すでに真玄殿は亡くなっているという噂があってな。そしてその死体を操り、武田軍を意のままにしているのが、闇の軍師・山本完助だと」

 

え⁉湖衣!だめだ混乱してきた。さっきから嫁と同じ名前が出すぎて頭がパンクしそう。

 

「あの鬼面兵を見ていると、あり得ない話じゃないわよね。死体を操ることに特化した魔法、もしくはアーティファクト使いなのかもしれない」

 

重兵衛さんの話を聞いて、リーンが自らの考えを述べる。

 

「その山本完助を捕まえれば丸く収まりますかね?」

 

「それはそうかもしれんが…あくまで真玄殿が亡くなっているというのは噂に過ぎないからな。それに完助は武田の本陣、ツツジガサキの館にこもって出てこないらしい。まさかこっそりと忍び込んで捕まえてくるわけにも「できますよ」!」

 

「リーンの羽みたいに透明になれれば可能だよね?」

 

僕の考えを述べると全員が唖然とする。

 

「潜入、する気ですか?」

 

リンゼがこちらの考えを読んだように口を開く。

 

「それが一番簡単な方法だと思うんだけど…」

 

「それはそうですが…」

 

僕を心配してくれてありがとうリンゼ。でも大丈夫だよ、多分。

 

「問題はそのツツジガサキまでどうやって行くか。八重は行ったことはある?」

 

「いや、拙者はござらん。父上は?」

 

「ワシもないが…それがどうしたのか?」

 

「ツツギガサキに行ったことがある者がいれば、玲我殿の魔法で一瞬で転移できるのでござるよ」

 

「なん「ねえ、さっきから覗き込んでいる人。僕たちになんか用?」…!」

 

僕はギアトリンガーを高欄付きの周り廊下に向ける。僕の発言にその場の全員が廊下に目を向ける。

すると、高欄付きの廻縁の陰から一人の人物が姿を現す。え⁉忍者!しかも女の人。

 

「私は武田四天王がひとり、高坂政信様配下、椿と申します。徳川家泰様宛に密書をお持ちいたしました」

 

「なに高坂殿の⁉」

 

え⁉兎々の!・・・ダメだ。全然集中できない。

椿さんは懐から密書を取り出し、家泰さんはそれを読んでいく。しかし、その顔が驚きから厳しいものへと変化していく。

「殿。密書にはなんと?」

 

「どうやら噂は本当だったらしい。武田軍は今や傀儡の軍と化しているようだ」

 

「なんですと…⁉」

 

重兵衛さんが絶句する。やっぱりか。

 

「真玄殿はすでに亡くなり、武田四天王も高坂殿以外、全員地下牢へ投獄されているらしい。なんとか完助を止めて武田をすくってくれとある」

 

「高坂殿は完助に従うフリをして、武田奪還を考えております」

 

なるほどね。しかしすでに亡くなっているとしたらまずいな。

 

「正直に言えば徳川は武田のためにそこまでする義理はない。だが、このままでは完助が操る鬼面兵に徳川がやられてしまうだろう。なんとも情けない話だが、徳川を救うのも武田を救うのも、すべての決定権はベルファストから来た客人たちにあるようだ」

 

この展開、光璃たちと出会ったときと同じだな。まあその時は長尾家だったけど。

 

「どうします、玲我さん?」

 

ユミナが僕に聞いてくるが、答えは決まってる。

 

「やりますよ。でも椿さんにも協力はしてもらいますよ。唯一ツツギガサキの案内をできる人ですから」

 

「感謝します」

 

椿さんが頭を下げる。

 

「じゃあ、あまり大人数で潜入するわけにはいかないから、僕と椿さん、リーンの三人で夜に潜入しよう」

 

魔法に長けたリーンがいれば何とかなるでしょう。あ、ポーラとラブコフは留守番だ。そのことを伝えると二人は地団駄踏んで、ムキーッと怒りを全身で表した。ゴメン、怒ってても仕草が可愛すぎる。

あとは夜が来るのを待つだけなので、昼の間にいろいろと準備した。僕は【コネクト】で重兵衛さんと重太郎さんの無事を知らせに八重の家に行ったり、ベルファストの家へ帰って一泊することをライムさんに知らせに行った。

 

 

 

 

 

「もしもし、レジェンド先輩」

『あーレイガか。どうした?』

「実はですね

 

 

 

少しばかし無茶してもいいですか?

 

 

 

 




どうでしたか
どっかのタイミングで嫁リストを出そうと思い、製作中です。
次回はセイバーのネタをいれていきたいです。


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文豪✖️剣豪

遅くなりました。
一回で終わるつもりはありませんでしたが、終わってしまいました。正直疲れました。所々原作と同じセリフです。誤字は多いと思いますが、温かい目で読んでください。


<レイガサイド>

「それじゃ椿さん、ツツギガサキの館が見える場所を思い浮かんでください。なるべく人がいないところをお願いします」

 

「わかりました」

 

八重の時と同じようにルーマ・ゴルドで記憶を見る。知り合いならいいけど、さっき会った人とは緊張するな。それにユミナたちの目が刺すような目付きが怖い。それはさておき、ぼにやりと複数の堀に囲まれた大きな平屋の館と、それを取り巻く城下町が見えた。あれが武田の本陣か。

 

『【コネクト】』

 

「じゃあ行ってくる。琥珀、なにかあったら連絡を頼む」

 

≪わかりました≫

 

開いた【コネクト】にまずリーンが、続いて椿さん、最後に僕が飛び込んだ。

 

「あそこに潜入するのか…」

 

とりあえず様子を見ようと【ミエソウル】で様子を見てみる。結構な数の兵士がいるな。しかも結界まで張られているし、大変だな。

 

「なんか結界が張られているんだけど?」

 

護符(タリスマン)による結界ね。おそらく転移魔法による侵入を阻むためよ」

 

「おそらく完助の手によるものでしょう。私だけなら高坂殿の使いと偽って中へ入ることが可能ですから、その護符とやらを破壊してきます」

 

そう言って館の方へ歩き出そうとする椿さんを、腕を組んでいたリーンが制止した。

 

「やめときなさい。結界を壊せばそれを仕掛けた本人にバレる可能性が高いわ。誰が壊したかまではわからなくても、警戒されるのはあまり得策じゃないわよ」

 

「では、どうするので?」

 

「これを使うのさ」

 

僕はモサブレードからミエソウルを外し、黄緑色のリュウソウル『カクレソウル』をセットする。

 

「カクレソウル!」

『いただきモッサ!』

 

騎士竜カクレソウリュウはかくれんぼが得意な騎士竜で、カクレソウルを使うことで周辺の景色に溶け込むことができる。いわゆる透明化だ。

 

「消えた…」

 

「効果は僕とリーンだけにしたから、僕からはリーンは見えるけど、椿さんからは見えません。まあ声は聞こえるけど」

 

僕がそう言うと、リーンはニヤリと笑い、椿さんの背後に回ったかと思うと、いきなり両手で彼女の胸を揉みしだいた。・・・はあ⁉︎

 

「ふひゃあぁあぁあああぁッ⁉」

 

「ちょっと玲我ー、見えないからってなにしてるのよー」

 

「れ、玲我さん⁉」

 

「ハア・・・いい加減にしなさい」

 

リーンの頭にチョップを叩き込む。この人は一体何をしてるんだ、こんな大変な時に。一旦カクレソウルを解除したが、椿さんは顔を真っ赤に染めて胸を押さえたまま後ずさる。

 

「ホントーにごめんなさい!」

 

なんで自分がやっていないのに土下座をしたのか、あとで気づいてしまった僕である。

 

 

 

 

 

「高坂様からの使いだ。通していただきたい」

 

「確かに。しばしお待ちを」

 

門番に通されて三人で中に入る。もちろん僕とリーンは透明になっている。とりあえず地下牢に捕まっている武田四天王の残り三人を助けるか。もし戦えるのなら、味方にできれば心強いし。椿さんも僕の案に賛成である。

 

「地下牢はこっちです」

 

椿さんの後を追いかけて、地下牢に向かう。

中で待機している番人の部屋を通り抜け、石で組まれた地下へ向かう階段を下りていく。そこは石と木で作られた座敷牢であり、その中で一人の老人が目を閉じ、座禅を組んエいた。老人は白髪交じりの長い髭の巨漢で、顔には深い皺が幾つも浮かんでいる。

 

「誰だ」

この人気配だけで僕らのことを察したのか。

 

「馬場様、椿です。高坂殿の命にて助けに参りました。内藤様と山県様はどちらに?」

 

「高坂の…?ふん、やはりあやつが完助の軍門に下ったは偽りであったか。まったく食えぬ奴よ」

 

・・・この人がこの星の春日なの!・・・もうこの反応疲れたな。

「内藤と山県は奥の牢にいる。それよりいい加減に姿を見せんか」

 

カクレソウルを解くと馬場は肩眉を上げて、視界に入ったであろう僕らを眺めた。

 

「そこの二人は誰だ?見たことがないが」

 

「こちらは徳川殿の客人で、光神玲我殿とリーン殿です。光神殿は徳川に攻め込んだ鬼面兵一万五千を一人で打ち倒したほどの実力者です」

 

「なんだと⁉」

 

馬場さんが信じられないといった感じで僕を見てくる。まあ、とりあえずここから出さないとな。僕は『ルパンレンジャーギア』を使い、『ダイヤルファイター』を召喚する。今回は無難に『レッドダイヤルファイター』だ。僕は錠前にレッドダイヤルファイターを貼り付ける。

 

『0・2・9』

 

すると、錠前が外れ馬場の爺さんは牢から出てきた。

 

「ずいぶんと不思議なことができるんだな、小僧」

ダイヤルファイターはどんな錠前も簡単に開けることができる。とても便利なものである。でも・・・小僧って、初めて言われた、なんか新鮮でいいね。

口の悪い爺さんを連れておくの道を進み、別の座敷牢へと移動する。そこでは左右別々に座敷牢が作られており、右には穏やかな顔をした男と、左には全身傷だらけの目付きの鋭いおっさんが座っている。

 

「おお、馬場殿。お元気で何より」

 

右手の男がにこやかに声をかけてくる。

 

「なんか面白そうなことになってるみたいだな、馬場殿。暴れるんなら俺も交ぜてくれよ」

 

左手のおっさんが楽しそうな笑みを浮かべ、立ち上がって格子の方へ寄って来る。この人戦闘狂だな。

「内藤。お前はもうちょっと緊張感を持てや。いつもにこにこ緩んだ顔をしやがって。逆に山県。お前はもうちょっと考えろ。なんでもかんでも戦えばいいってもんじゃねえぞ」

 

・・・もう驚かないぞ、さすがに耐性がついたよ。

 

「小僧、悪いがこいつらも出してやってくれや」

 

「いいですよ」

 

僕は馬場さんの時のように錠前を外した。その間にリーンが、

「一応その子、ベルファストの次期国王候補だから、口のきき方には気をつけた方がいいわよ」

と彼らに説明した。この言葉に三人が絶句していた。そんなに驚くことかな?

 

「そうなのか?うーむ、しかし今さら変えるのも「そのままでいいですよ」そうか、ならそのままで」

 

「私は玲我殿と呼ばせてもらいますよ」

 

「んじゃ、俺は玲我で」

 

呼び名は何でもいいんだけど、とりあえずみんなで地下牢から脱出しようか。

 

 

 

 

 

「それでこれからどうする気ですか、次期国王陛下」

 

脱出してから内藤さんがにこやかに聞いてくる。

 

「とりあえず、あなたたちを館の外へ逃がしたあと、僕らで山本完助を捕らえるつもりですが…」

 

「おいおい、そりゃねえぞ。俺も連れてけよ玲我。あの野郎にゃ俺たちは借りがたんまりあるんだからよ」

 

山県さんが指の骨を鳴らしながら、不敵な笑みを浮かべる。さすが戦闘狂。

 

「完助の周りは鬼面兵で固められ、奴自身も奇妙な魔法を使うぞ。あいつは人間じゃない。倒せるのか?」

 

馬場さんが妙なことを言ってくる。すると、内藤さんが口を開く。

 

「かつて山本完助は軍師として真玄様に仕えていました。優れた人物で頭も良く、軍師として申し分のない男でした。しかしある時、彼は悪魔の力を宿した『宝玉』を手に入れたのです。それからだんだんと彼はおかしくなっていきました。何かを試すように猫や犬を殺し、やがてそれが人間になるまで時間はかからなかった。そして死んだ身体を操る『鬼面』を生み出し、強力な力を手に入れたのです。私たちには止められなかった。あの『宝玉』の力にはとてもかなわない…」

 

その宝玉のせいなのか。もしかしたらそれがアーティファクトかもしれないな。

 

「どう思う、リーン?」

 

「その宝玉とやらでおかしくなったのは間違いなさそうね。強すぎるアーティファクトは、時として意志を持つこともあるというわ。製作者の怨念か執念か、そういったものが宿ることもあるのかもしれない」

 

まるで呪いのアイテムみたいだな。それを壊せばすべて解決か。

 

「それで完助は今どこに?」

 

「おそらく中曲輪の屋敷にいると思われますが…」

 

僕の質問に椿さんが答える。

 

「椿さん、中曲輪ってどっち?」

 

「えっと…あちらの方向です」

 

「あっちね、リーン。結界を壊すにはどうすればいいの?」

 

「おそらくこの館の四隅に魔力を込めた護符が配置してあるのよ。それをひとつ破壊するだけでいいわ」

 

「その場所ならわかるぜ。こっちだ」

 

山県さんの先導に僕らはついていく。カクレソウルのおかげでだれにも気づかれることなくその場に着いた。

壁の隅、小さくスペースが取られたところに、石でできた地蔵が置いてあった。

 

「間違いないわね。この地蔵自体が護符のひとつよ」

 

「じゃあこれを壊して、すぐに完助のところへ転移するけどいい?」

 

「いやちょっと待て、小僧。さすがに丸腰では儂らでもきつい。なにか武器はないか?」

 

「武器ですか?何かリクエストはありますか?」

 

「なら儂は槍で、内藤は短剣二つ、山県の奴は大剣があるとありがたい」

 

なるほど槍に短剣に大剣か。じゃあ早速作りま・・・ちょっと待て、あれで代用できないかな。僕以外は変身できないようになってるし。

僕は手をかざし、彼らを呼ぶ。この行動に全員が不思議そうに僕を見ている。

 

「来い!

土豪剣激土

風双剣翠風

時国剣界時

僕がそう叫ぶと、地面から大剣、つむじ風から短剣、そして上から槍が現れた。これに全員が驚く。

 

「あなた、それは?」

 

「これは僕の持っている剣だよ」

 

僕は一つずつ手に持って、馬場さんたちに渡した。

 

「これはなんと!」

「信じられんほど軽いな、この見た目で」

「すごい業ものだ」

 

武田四天王がそれぞれ剣を持ってさらに驚く。まあ、剣士ならこの剣の凄さがわかるでしょう。

 

「じゃあ準備はいい?」

 

僕の確認にみんな小さく頷く。確認を終え、僕は地蔵をギアトリンガーで壊す。

結界を破壊したことを確認した後僕らは、完助がいる中曲輪まで向かった。途中遭遇した鬼面兵はほとんど馬場さんたちが倒した。山県さんに関しては激土を振り回して、大喜びしていた。さすが戦闘狂。

 

 

 

 

 

「なるほど、誰の仕業かと思えば四天王のみなさんでしたか。いや、これは驚いた。いったいどうやったんですか?」

 

「テメエに教える義理はねえよ。さっさとくたばりな!」

 

しばらくして僕たちはようやく完助のいる中曲輪に着くことができた。そこで待ち構えていたのは完助本人と、

 

「なっ⁉」

「御屋形様…」

かつての武田の領主、武田真玄であった。見た目は赤い鎧に身を包んでいて、獅噛の兜をしていた。

 

「完助、テメエ!御屋形様を盾にする気か!」

 

完助に出会ってすぐ攻撃を仕掛けた山県さんだが、その攻撃を真玄さんが防いだ、完助を守るように。

 

「盾だなどと。御屋形様が私をお護りくだされただけのこと。しかし御屋形様の手を煩わせるのは申し訳ありませんね。代わりの者を呼びましょう」

 

完助の周りに魔力が集まる。これは召喚魔法か!

「【闇よ来たれ、我が求むは骸骨の戦士、スケルトンウォーリアー】」

骸骨の戦士か。こっちは僕とリーンでどうにかしよう。

 

「【光よ来たれ、輝く連弾、ライトアロー】」

リーンが光の矢で攻撃してくる。僕もギアトリンガーで撃ちぬいていく。本当なら彼を使いたいんだけど、今は別行動中。

 

「面倒ね。一気に終わらせるわ。【光よ来たれ、輝きの追放、バニッシュ】」

おお、一気に殲滅!さすが妖精族の長だね。

「くっ、光の浄化魔法ですか。やりますね。ですが」

 

完助の前には彼を守るように真玄さんが立ちふさがる。

「御屋形様!どいてくれ!」

「真玄様!くそっ、卑怯な真似をしやがる!」

「私たちの気持ちを踏みにじるとは…外道め…!」

 

「フフフ、無駄ですよ。御屋形様は私を護って下さる。あなたたちが大恩ある御屋形様に刃を向けられないのはわかってるんですよ。つまり私には「無駄口はそこまでにしといたほうがいいよ」!」

 

「来い!闇黒剣月闇

 

僕が叫ぶと暗闇から一つの剣が現れる。それこそ『闇』属性の聖剣『闇黒剣月闇』である。僕は月闇を手に取って、ポケットから取り出した『ジャアクドラゴンワンダーライドブック』をジャガンリーダーに接触させる。

 

『必殺リード!ジャアクドラゴン!月闇必殺撃!習得一閃!』

暗竜呪縛斬!

 

僕が剣を振るうと、黒い霧が真玄さんを包み、彼の動きを止める。その光景に全員が驚く。

 

「フ、フフフ、なかなかやるじゃ「だから無駄口はもういらないよ」なに⁉」

 

 

 

ユーリ!

『最光発光!』

「まかせろ!光あれー」

僕が空に向かって叫ぶと、その場に突然光が照らしだされた。

 

「なっ⁉」

 

事前に知ってる僕以外全員が数秒間目を閉ざす。僕はその隙を狙って完助の懐に入り、一瞬で彼の左目から宝玉を奪った。

 

「きっ、貴様⁉」

「さっきのは?」

「ああ、僕の仲間で・・・あとでちゃんと教えるよ。それよりはい、これ」

 

説明は後にして、リーンに宝玉を渡す。

 

「ふん、ダメねこれは。周りの負のエネルギーを取り込んで、持ち主の心を濁らせる呪いがかかってるわ。どこかで変な魔法使いにでも呪いをかけられたみたいね。そいつがおかしくなったのもこれが原因でしょうよ」

「そんなことまでわかるの⁉」

「妖精族を舐めないでよね」

 

自慢げに胸を張るリーン。さすが妖精族の長だな。これ今日二回目だな。

 

「アーティファクトは古代文明の魔法具。とても貴重なモノだけど、これは長い間悪意を吸って災いを呼ぶ類のモノに変化しているわ。破壊したほうがいいわね」

そう言うと彼女は宝玉を握った右手を壁に向かって大きく振りかぶった。

 

「何をする⁉やめろ!」

「嫌よ」

 

必死になって声を上げる完助を横目に、リーンは人の悪い笑みを浮かべた。あーその顔、たまにうちの嫁さんもするわ。

力一杯投げられた宝玉が壁にぶつかり、粉々に砕け散る。

 

「うがぁあぁあぁあぁあぁッ!!!」

 

血を吐くほどの絶叫を上げ、その場に倒れる完助。しばらく悶え苦しんでいたが、やがて動かなくなり、最後には塵となって風に吹かれ、空へと消えていった。

『あり、が…とう…』

 

この声は⁉

 

「こりゃあ…どういうことだ?」

「元々山本完助という人間の身体は、すでに死んでいたということね。魔力、気力、体力、いろんなものをあの宝玉に吸い上げられていたのよ、きっと」

もうすでに死んでいたんだな、あの人は。

「あ、御屋形様が…!」

 

椿さんの小さな声に振り返ると、真玄や他の鬼面兵たいの身体も、完助と同じように塵と化し、風に吹かれて夜空に消えていく。四天王や椿さんは手を合わせ死者へ祈りをささげるが、

 

 

 

 

 

まだ終わってない!僕はギアトリンガーとシャイニングゼロギアを取り出す。シャイニングゼロの力は時間を戻すことができるが、最大でも一日前にしか戻せない。そう人間のままでは

リミッター解除。ハイパーチェンジ全開!

ババババーン!ハイパー!シャイニングゼロ!

僕が叫ぶと四天王と椿さん、そしてリーンが僕に視線を向ける。

「あなた、何をしているの?」

リーンが驚いた顔で僕に聞いてくる。まあ、仕方ないか。だって今僕の身体は

 

 

黄金色に輝いているから。

「説明はあと、対象は『不死の宝玉』によって操られた人全員、時間は宝玉を発動するまで! 宝玉は対象外

 

 

シャイニングスタードライブ!!!

僕が右腕を上に振りかざすと、空に突如太陽のように明るい球体が出てきた。

 

 

 

<第三者サイド>

「な⁉」

 

「なんだあれ⁉」

 

その場にいた全員が突如空に出現した球体に驚く。しかし球体は驚く人を後に、さらに光り輝く。さらにまぶしくなって全員目を閉じる。

しばらくして目を開けると、周りは暗くてさっきの光の球体が消えていた。

 

「いったい何だったんだ?」

 

「小僧、今のはいった「…ん」⁉」

 

馬場さんが玲我にさっきの出来事を聞こうとしたが、後ろから声がしたので振り向くと、驚くべき光景が見えた。

 

「…ん、ワシは何を?」

 

なんと先ほど塵となって消えた武田真玄が身体を起こしていたのだ。

 

「「「「御屋形様⁉」」」」

 

この状況に武田四天王と椿さん、さらにはリーンが驚く。しかし、まだ驚くべきことが起きた。

なんと鬼面兵となっていた兵士たち、さらには今回の事件の首謀者の完助が生き返ったのだ。

さすがに唖然としていた五人ではあったが、リーンだけは冷静になり、この状況を生み出した玲我に聞こうと振り向いた。

 

「ちょっと、あなたこれどういう・・・玲我!」

 

リーンは声を荒げた。その声に続くように四人も振り返ると、

 

「小僧!」

「「玲我殿!」」

「玲我!」

 

彼は地面に倒れていた。いや横になっているという表現の方が正しいか。なぜなら

 

「ったく無茶しやがって、このバカ神が!」

「しかたないだろう。しかしとんでもないことをしたな、レイガ。さいこーだな!」

 

玲我の近くには二人の男がおり、うち一人は古そうな格好で顔を隠している。もう一人は全身が黒い格好で・・・顔が玲我と瓜二つであった。




どうでしたか。
結構セイバーネタを多く使いました。最後はレイガらしく無茶させました。


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玄帝VS子育て王

こんばんわ。遅くなって申し訳ありません。今回はあのライダーに変身します。
追記、少しユーリのところを変更しました。


<レイガサイド>

あれから三日が過ぎた。いやー今回は無茶しすぎたな。目が覚めると、目の前で泣いているユミナたちの顔が見えた、そのあと、ユミナたちから抱き着きながら怒られた。まあ、事件解決後に帰ってきたら倒れていたんだから心配するよね。本当にごめんなさい。説教がおわったあとは、ユーリとカゲロウのことを簡単に説明した。カゲロウは悪魔でユーリは精霊と言うことで話した。カゲロウに関しては最初双子だと主にエルゼとリンゼに思われたが、そのことに関してカゲロウがめっちゃ不機嫌になって大変だった。対してユーリに関してはカゲロウよりも驚かれた。リーンによると精霊と契約するどころか精霊と会うことも難しいらしい。まあユーリの正体は聖剣なんだけど今は精霊ということにしとこう。みんなと別れたあとユーリから話を聞くと、僕は二日間寝ていたらしい。あと武田についても話を聞いた。生き返った武田真玄さんは馬場さんから話を聞いた後、領主の座を息子に渡したらしい。どうやら武田四天王の高坂さんはその息子を匿っていたのだと。その息子も中々頭が切れ、今回のことをきっかけに徳川と連盟を組むらしい。

そして今回の事件の首謀者である完助は宝玉を手に入れた後の記憶がないらしい。まあ宝玉に操られていたから記憶がないのも納得。それでこれまでのことを馬場さんから聞くと、すぐさま自害しようとした。それを止めたのが真玄さんでも馬場さんでもなく、カゲロウであった。

「テメエ!ふざけるなよ!いつ死のうが俺には関係ねえが、救ってもらった命をあっさり捨てるのだけは許せねえ!どうせ捨てるなら価値のある場所で捨てやがれ!」

この言葉で完助さんは自害をやめ、真玄さんから「息子を支えてくれ」と言われ、改めて息子さんに忠誠を誓った。

しばらくたって、棒の部屋に真玄さんと完助さん、四天王と椿さん、家泰さんと重兵衛さんが入って来た。そっからは感謝されまくって大変だった。真玄さんなんて僕のことを神様なんて言い出したし、あってるけど。それで真玄さんはこれからどうするか聞くと、隠居生活を送るらしい。頑張ってください。それでニルヤの遺跡のことを聞くと、馬場さんが知っていたのでルーマ・ゴルドで場所を教えてもらった。

 

 

 

 

 

「では父上母上、それに兄上と綾音も。行って参ります」

「ああ、気をつけてな」

「玲我さん、娘をよろしくお願いしますね」

三日の朝に、僕らは八重の家で別れの挨拶をしている。

「今度また、遊びに来ますね。その時はベルファストの我が家へご招待しますね」

「楽しみにしているよ」

重太郎さんと握手を交わし、僕らは【コネクト】で遺跡に向かう。

うわあ、めっちゃきれいだな。どこまでも広がる海と白い砂浜。

「わああ、綺麗ですねえ!」

ユミナが砂浜を歩きながら、目の前に広がる海に目を奪われている。足下では琥珀が歩きづらそうにしている。一方ポーラとラブコフははしゃぎながら駆けている。楽しそうだね。

「海なんて久しぶりね!」

「そうだね、お姉ちゃん」

「熱っ!あちっ!あちちち!」

エルゼとリンゼが潮風を受けながら歩いている。八重もその後に続こうと素足になる。でもすぐに足をやけどする。気をつけてよね。

海の底って重兵衛さんが言っていたけど、ミエソウルで見てみると本当に海の底に遺跡みたいなのがあった。奥まで見てみると、中央に魔法陣が描かれている部屋を見つけた。でもその魔法陣の周りには六属性の色と同じ魔石が置かれていた。これについてリーンに聞いてみた。

「おそらく転送陣ね、それは」

「転送陣?」

「たぶん六つの属性を起動させると、中央に魔法陣がどこかへ転送するのよ。貴方の【コネクト】のようにね」

なるほど。とりあえずあそこまで行くのは簡単だが、せっかく海に来たんだから。

「みんなで遊ぼうか」

 

 

 

 

 

僕の提案にみんなが賛成して、結果我が家からはライムさんやセシルさん、ラピスさん、レネ、クレアさんにフリオさん。ユミナの家からは国王陛下とユエル王妃、レオン将軍、スゥ、公爵殿下、エレンさんにレイムさん。エルゼとリンゼはミカさんとアエルさん。あとリーンはシャルロッテさんを呼んできた。水着はザナックさんの店で購入して、着替えることにした。

正直に言えば、エルゼとリンゼ、八重とユミナたち嫁さんたちの水着が可愛すぎた。無茶苦茶褒めました。バイスに「嫁のことになるとレイガはおかしくなるよな」と言われた。自覚しています。なぜか褒めずにいられない。はあ~、そういうところを直していかないといけないよね。でも本当にみんなが楽しそうに遊んでいたからよかった。一部悲鳴をあげていた人はいたけど、シャルロッテさん大丈夫かな?まあそれは置いといて、今度は僕の星の海にみんなを行かせてあげたいな。

 

 

 

 

 

次の日、ユミナたち以外を家まで送ったあと、遺跡に向かうことにした。どうやって行こうか迷っていたところ琥珀がある案を出してきた。

砂浜から離れ、岩場の近くの地面にリーンが魔法によって大きな魔法陣が描かれた。

「通常、召喚魔法は特定の相手を呼び出すなんてことはできないのよ?」

『主の魔力に私の霊力を混ぜます。その状態で呼びかければ、奴らは必ず反応し、呼び出しに応じるでしょう』

まるで裏技だな。

「にしても『玄帝』を呼び出すって…その子が『白帝』ってだけでも驚いたけど、さらにもう一匹とかありえないわよ」

「まあまあ、玲我殿のそういったことを気にしたら負けでござるよ」

まだぶつぶつ言っているリーンを八重がなだめ、魔法陣から退去させる。

『呼び出すことはできると思いますが、奴らがなにを契約の条件に求めてくるかわかりません。気性の荒い奴らではないのですが、ちょっと変わっていますから』

「さっきから思っていたけど一匹じゃないの?」

『なんと言いますか、奴らは二匹で「玄帝」なのです。まあ、呼び出してみればわかります』

まあそうだね。とりあえず魔法陣に闇属性の魔力を集中させる。すると、琥珀を呼び出した時と同じように黒い霧が出始めた。

「冬と水、北方と高山を司る者よ。我が声に応えよ。我の求めに応じ、その姿をここに現せ」

充満していた霧から突如莫大な魔力が生まれる。霧が晴れると、そこには巨大な亀と亀に巻き付いている巨大な大蛇がいた。

『あっらぁ?やっぱり白帝じゃないのよぅ。久しぶりぃ、元気してた?』

『久しぶりだな、玄帝』

『ん、もう、「玄ちゃん」でいいって言ってるのにぃ、い・け・ず』

・・・あー、そういう感じですか・・・はい。

『それでそちらのお兄さんはぁ?』

『我が主、光神玲我様だ』

『主じゃと?』

あ、亀の方は普通だ。亀が僕をにらみ、値踏みするような視線を向ける。

『このような人間が主とは…落ちたものだな、白帝よ』

『なんとでも言うがいい。じき、お前たちの主にもなられるお方だ』

『戯言を!』

うわあ、亀めっちゃ怒ってるよ。

『よかろう、玲我とやら。お前が我らと契約するに値するか、試させてもらう』

「いいけど、何するの?」

『我らと戦え。日没までお前が五体満足で立っていられたなら、力を認め契約をしようではないか。しかし、魔法陣から出たり、気を失ったり、我らを攻撃することができなくなれば契約は無しじゃ』

「いいよ。じゃあやろうか」

「れ、玲我さん、大丈夫なんですか?」

ユミナが心配そうに聞いてくる。

「大丈夫。まあ、なんとかなるよ」

そう言って魔法陣の中に入る。

『意外と落ち着いているのねぇ』

「その度胸だけは褒めてやろうかの。では参るぞ!」

亀が戦いの開始を告げるように、ゴガァァアァァ!と咆哮をあげる。じゃあ僕も

「来い、土豪剣激土

僕が叫ぶと、下から大剣。『土』属性の聖剣、土豪剣激土が現れる。

「あれは⁉」

「リーンさん、知っているんですか?」

「ええ、イーシェンの時に彼が武田四天王に渡していた剣よ」

初めて見るユミナたちと玄帝は驚いているが、実はあの時は力の半分も解放していないのだ。僕は激土を地面に刺し、一冊のワンダーライドブックをポケットから出し開く。

玄武神話! かつて四聖獣の一角を担う強靭な鎧の神獣がいた

『なに⁉玄武じゃと⁉』

僕は本を閉じ、激土のゲキドシェルフににセットする。すると、僕の後ろにどでかい『玄武神話ワンダーライドブック』が現れる。再び激土を持ち、トリガーを引く。

『玄武神話!』

「変身!」

目の前に現れた亀の甲羅をモチーフにした石を切り裂く。

一刀両断! ブッた斬れ! ドゴドゴ!土豪剣激土! 激土重版! 絶対装甲の大剣が北方より大いなる一撃を叩き込む!

音声が終わると、僕は土の剣士「仮面ライダーバスター」に変身した。

『『な⁉』』

「え⁉」

これにはリーンと玄帝は驚き、ユミナたちも唖然としていた。

「さてと、まずは小手調べだ」

僕はゲキドシェルフにセットしてある。玄武神話WRBを取り、シンガンリーダーに読み込ませる。

『玄武神話! ドゴーン!』

激土に石が纏わり、もとの数倍の大きさになる。

「大・断・断」

『会心の激土乱読撃! ドゴーン!』

僕は激土を上に振りかざし、玄帝に向けて振り下ろす。

『ぬぉおおおおおおぉぉぉぉ⁉』

『うにゃえああああぁぁぁぁ⁉』

当たった後に煙が舞い悲鳴が聞こえる。煙が消えるとそこには気絶した玄帝がいた。・・・もしかしてやりすぎた⁉




どうでしたか
玄帝はバスターと最初から決めていました。文字数は少なく、海での出来事は省きました。申し訳ございません。


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遺跡と庭園のお嫁さん

こんばんわ。
今回は原作とは違って彼女を嫁にしました。


<レイガサイド>

「ゴメンね。こんなことになるとは思わなくて」

あの後、玄帝が気絶し魔法陣が消えたので、すぐに彼らをフルムーンレクトで回復させた。

『ああ、酷い目にあったわぁ。白帝が主と認めたってのも納得ねぇ』

そう呟きながら、玄帝が起き上がる。僕もやりすぎたし、反省だな、と思いながら亀と蛇の頭を撫でる。

『光神玲我様。我が主にふさわしきお方よ。どうか我らと主従の契約を』

そう言って、二匹が頭を深々と下げる。

「確か名前を付けるんだよね?」

『そうよぉ。素敵な名前を下さいな、ご主人様』

『こやつらなど「蛇」と「亀」で充分です』

『おめぇは黙ってろや!やんのか、ああ⁉』

名前か、うーん。

「じゃあ『黒曜』と『珊瑚』でいい?」

『コクヨウ?』

『サンゴ?』

蛇が『黒曜』で亀が『珊瑚』。地面に名前を書いて教える。

「どうかな?」

『喜んで「黒曜」の名前をいただきますわぁ』

『ではわらわもこれからは「珊瑚」と名乗らせていただきます。よしなに』

「うん、よろしく。あと琥珀と同じ姿になってほしんだけど」

さすがに大きな亀と蛇がいたら大変だから。

『白帝…琥珀ちゃんみたいに小さくなればいいのかしらん?それならすぐに…ねっ!』

ポンッ、と珊瑚と黒曜は一瞬にして、姿が琥珀と同じ大きさに変化した。しかもふわふわと宙を浮いている。

「宙に浮けるんだ」

『この大きさなら、なんとか、速くは動けませんが…』

「なるほどね。改めて宜しくね、珊瑚、黒曜」

僕の肩に手をかけて乗っかる珊瑚と黒曜の頭を指先で軽くなでる。

『この珊瑚、お役に立って見せましょう』

『アタシもお役に立つわよぅ!』

 

 

 

 

 

『海に入っても呼吸ができるようにすればいいのですね?』

「うん、できる?」

『楽勝よぅ。守りに関してはアタシたちに並ぶ者はいないんだからぁ』

最初は僕と珊瑚、黒曜だけで行くことにした。リーンの話によれば僕一人で起動させれるから、移動してから【コネクト】でみんなを連れてけばいいし。

「何かあったらすぐに【コネクト】で戻ってきなさいよ」

エルゼたちの心配を受けながら、肩に珊瑚と黒曜を乗せて服のまま海へと入る。海の中では身体から一センチほど離れたところに魔法障壁が張られている。

「これってどれくらいの強さまで大丈夫なの?」

『そうねぇ。物理的攻撃ならドラゴンの一撃も通さないけどぅ、魔法だと相手の質にもよって変わってくるわねぇ』

黒曜が頭を揺らしながら答える。

『いくら我らでも障壁の限界を超えた一撃や、障壁自体を消し去る魔法を使われたらどうしようもないですから』

珊瑚の解説を聞く。なるほど、障壁を消す魔法もあるのか。

しばらく歩いていると、目的の遺跡までたどり着いた。遺跡の中央の階段から中へ入る。『ゴーストギア』で召喚したクモランタンで明かりを灯し、暗い地下へと進む。

やがてミエソウルで見えた魔法陣のある部屋に辿り着いた。魔法台に近寄り、取りついている魔石にそれぞれ色に合わせた魔力を流し込む。

すると、台自体が輝き始めた。すべての魔石に魔力を流し、最後に台に上がり無属性の魔力を流す。これで完成だと思うけど、思っていると足元の魔法陣から爆発的な輝きが襲いかかり、僕はその場から転送された。

 

 

 

 

 

眩しさに閉じた目をゆっくり開けると、そこは庭園だった。一応月闇を腰に差しておく。

『ご主人様ぁ…ここどこかしらぁ?』

「さあ…ん?」

魔法陣から降りて、庭園を見回していると、遠くから誰かがこちrへ歩いてくる。翡翠色の短く切り揃えられたサラサラの髪、白磁のような肌に金色の双眸。・・・でもこの子の雰囲気が人間とは違うんだよな。それにしても・・・

「初めましテ。私はこの『バビロン』の『庭園』を管理する端末の『フランシェスカ』と申しまス」

「はあ~、あのさ」

「はイ。なんでしょウ?」

「なんで下…穿いてないんですか?」

目を逸らしつつ、彼女がスカートもズボンも穿いていないことを質問する。

「なンでと言われましテも…勤務?」

「はあ~、フランシェスカだっけ?」

「はイ。シェスカとお呼び下さイ」

「シェスカね。とりあえずなんか穿いてきてくれない?目のやり場に困るから」

「ぱんつは穿いてまスが?」

「スカートもはいてください、お願いします」

頭を下げて懇願する。

「まア、そこまで言うのなら穿きまスが」

いや、持ってるのかよ!

「…なにもしないんでスか?」

「しません!」

「ちょっとダケならさわ「いいから早く穿きなさい!」」

はあ~疲れた。なんだろう、この感じ。どっかで?

 

 

 

 

 

そっからシェスカにこの場所についていろいろ聞いた。どうやらこの『バビロン』はレジーナ・バビロン博士が五〇九二年前に作ったもので、彼女も人間ではなく、アンドロイドで博士が作ったらしい。厳密には魔法生命体と機械の融合体とか。あと、僕はこの庭園の適合者として相応しい人間だとシェスカに言われた。理由は魔法陣かな、と思っていたがなんと・・・さっきのスカートだったらしい。これで確信したそのレジーナ博士は絶対に束と気が合う。それで彼女は僕の所有物になったとか、なんか前途多難だな。話を終えた後は【コネクト】でみんなを呼び出した。

 

 

 

 

 

「『庭園』…ね。古代文明パルテノの遺産とも言えるわね」

辺りを見回しながらリーンが感慨に浸っていた。みんなも「庭園」を見て回っている。さっきのシェスカの話によると、「庭園」のマスターが僕になっているので、これからいろいろな植物も育ててみようかな。

「それでリーンの手に入れようとしていたものはここにあるのか?」

「さあ。私は古代魔法のいくつかを発見できたらいいなと思ってたんだけど、それ以上のものが見つかっちゃったからねえ」

確かにね。結構すごい発見をしたのかな?

「そういえば、シェスカ。バビロンって他にもあるの?」

「はイ。バビロンはいくつかのエリアに分散されて空を漂っていまス。私の管理する『庭園』の他にも、『研究所』や『格納庫』、『図書館』などが、私の姉妹によって制御、管理されておりまス。全て合わせて『バビロン』なのでス」

色々な施設があるのか。リンゼやリーンは図書館に興味ありそうだけど。さらに話を聞くと、他にも『格納庫』、『塔』、『城壁』、『工房』、『錬金棟』、『蔵』の合計九つあり、バビロンには外部からの視認を妨害する魔法障壁が張られている。他のバビロンとは連絡もできないので、無事なのかもわからないらしい。

「さっきから思ったのですが…マスターって何ですか?」

「マスターとは『愛しの旦那様』という意味でス」

「違う!『主人』とか『頭領』って意味です」

「…主人ってどういうこと、です」

やばい。リンゼが怒っている。その後、シェスカの説明によってリンゼが怒り、正座しながら説教されました・・・理不尽。

 

 

 

 

 

「それで玲我。この子どうするの?」

「どうするって言ってもな…シェスカはどうする?」

エルゼに言われて僕は悩み、シェスカ本人に聞いてみる。

「私はマスターと共にいたいと思いまス。おはよウからおやすみまデ。お風呂から「はい。そこまでにしようか」ムグ」

何かやばそうなことを言いそうなのでシェスカの口をふさぐ。

「でもここから離れるのはマズいんじゃないの?」

「ご心配なク。『庭園』になにかあったラすぐにわかりますシ、私には『庭園』への転移能力がありまス。『庭園』の管理はオートで充分ですカラ、何も問題はありませン」

なるほど、なら・・・ん、今月闇から少し先の未来を見せてもらった。

「つきまシては『庭園』へのマスター登録を「キスするつもりだろう?」…はイ」

「「「「え⁉」」」」

はあ、危なかった。月闇から未来を見てなかったらキスされているところだった。

「言っとくけど、僕は嫁意外とキスするつもりはないからな。もしキスするならここのマスターにはならない」

これは僕のルールでもある。嫁意外とは絶対にキスしない。

「なら、お嫁さんになればいいですカ?」

・・・そう来ますか。はあ~

「みんなはどう?」

僕の後ろにいるユミナたちに聞いてみる。彼女たちが反対ならマスターにはならないけど、彼女を我が家に連れていくぐらいはしてあげよう。

「私は玲我さんに任せます」

「あたしも」

「…私も」

「拙者も」

「よくできた、お嫁さんだな。お前と違って!」

ホントだよ、カゲロウ。

「・・・わかったよ。シェスカ、今日から僕の嫁として宜しくお願いね」

「はイ。マスター」

そう言って、シェスカは僕にキスをした。

「登録完了。マスターの遺伝子を記憶しました。これより『庭園』の所有物は私のマスターである光神玲我に移譲されまス」

これでこの星での五人目のお嫁さんができました。その後は嫉妬で顔を膨らませているユミナたちにもキスをしました。こんなダメな男ですいません。

 

 

 

あとで思ったんだけどシェスカのような子があと八人いるってことは彼女らも・・・まさかね。




どうでしたか
シェスカを嫁にしました。告白が原作よりも早くしたので、次の嫁騒動が亡くなったので、次は結構飛ばします。


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恋愛神と博士とマフラー

こんばんわ
今回はようやくレイガの嫁さんが出てきます。


<レイガサイド>

シェスカを我が家に連れてきて、彼女のことをライムさんに伝えるとメイドとして雇うことになった。

そして次の日に、お客様用の焼き菓子をお土産にあるところに向かった。

『【コネクト】』

「失礼します」

「おー、待っておったぞ。レイガ君」

「お久しぶりです、神じいちゃん」

僕は最高神、神じいちゃんに会いにやって来た。実は久しぶりに話しがしたく前日に電話をした。

「どうぞ」

「おお、ありがとう。じゃあ、お茶でも出そうかの」

湯呑にお茶を注いでくれる。

「実はお話があって」

「ふむ、何じゃ?」

「実は・・・お嫁さんが増えました」

「ほっほ、良かったのー。お幸せに」

「ありがとうございます」

そっからはこの星に来てからの旅の話で盛り上がった。神じいちゃんの眷族たちも僕の活躍をいつも見ているらしい。

しばらくすると雲海の中から一人の女性が浮き上がって来た。ふわふわの桃色の髪に、ふわふわの薄衣を白い衣装の上に纏って、手足や首には黄金の環を着けている。

「お待たせなのよ」

軽い挨拶をして、ちゃぶ台の前にふわりと座る。

「えっと、この方は?」

「恋愛神じゃよ」

恋愛神⁉

「初めましてなのよ。貴方のことは前から注目していたのよ」

「前から?」

「そうなの、最高神様から聞いていつか会ってみたかったのよ」

話を聞くと、最高神様から聞いて僕を見たとき、今までにない恋愛のパワー?が見えたらしい。そこからはずっと僕の恋愛を観察していたとか。

「そういえば、貴方に会わせたい人がいるのよ」

「会わせたい人?」

恋愛神がそういって、指を鳴らすと扉が現れ、そこから出てきたのは

「久しぶりね。レイガ?」

「え!・・・ゆ、ゆ、ゆ、

結奈⁉

僕の妻である斎藤結奈が現れた。

 

 

 

 

 

「で、いろいろ聞きたいことがあるのだけど」

「・・・はい」

今僕は正座をしながら結奈に説教をされている。彼女は僕の妻の一人で、日本でいう織田信長の妻でもある。僕がある星にノア兄と任務をしに行った際に出会った。当初は僕のことを疑って信じようとしなかったが、ある時を境に彼女に告白され、そこからは僕の妻となった。今では、僕の星で嫁を取り仕切る「嫁の法度」の管理をしている。

「私たちは確かにお嫁をふやしてもいいと言いました。だけど、この短期間でなんで五人も増えるの?」

「・・・はい」

うぅ~、怖い。この時の結奈はとてつもなく怖い。怒らせると怖い妻ランキング上位に入ってるよ。

そこからはこれまでの出来事を彼女に話した。

「はあ~、貴方がどれほど優しい人かはみんなが知っているけど、これだけは忘れないでね」

そう言って、結奈は僕に抱き着きキスをする。

「チュッ、私たちのことを忘れたら許さないからね♡」

「うん。ありがとう結奈」

「キャー!とても強い恋愛なのよ」

「ほっほ、青春じゃの」

・・・うわー!二人のことを忘れていた!今の見られた⁉とんでもなく恥ずかしいー-

 

 

 

 

 

そのあとは久しぶりに結奈と話をし、別れの際にはまたキスをされた。そして、我が家に帰って来た時にはすでに夜になっていた。

はあ~疲れたな、と思いながら自分の部屋に戻ってベッドにダイブする。

しばらくすると、誰かが扉をノックしてきた。

「マスター、シェスカでス」

「ん、シェスカ?」

こんな時間にどうしたんだろう、と思いながら彼女を部屋に招き入れる。

服を見てみると、ラピスさんたちと同じメイド服で合った。

「で、どうしたの?」

「夜這いに「冗談だろ」はイ。今日はする気はアリませン」

「で、本当は?」

「少し話があって来まシた。マスター宛てにメッセージがありまス」

「メッセージ?…誰からの?」

「レジーナ・バビロン博士のでス」

どういうことだ?あの人ってもう死んでいるんじゃ、と考えていたらシェスカの左手首の内側が開き、コネクトのあるケーブルが出てきた。てかこれって!

「これ、どうして」

「さア?新しくマスターになった者に渡せばわかル、と博士が」

なんで束が開発したスマホと同じコネクトケーブルをバビロン博士が持っていたのかが謎だが、それよりもこれをスマホに差してみよう。

すると、スマホの画面が輝き始める。光がおさまると、なんと画面の上には小さな人間が立っていた。ホログラムかな?そしてたぶんこの人がバビロン博士。シェスカにも確認しておく。

「レジーナ・バビロン博士でス」

「やっぱり」

気怠そうにしていた博士の顔が、不意にこちらを見上げて笑う。

『やあやあ、初めまして。ボクはレジーナ・バビロン。まずは「庭園」及び、フランシェスカを引き取ってくれた礼を述べよう。ありがとう、「光神玲我」君』

「⁉」

なんで僕の名前を⁉まさかこの人。

『わかるよ。君の疑問はもっともだ。それを知りたくなるのも当然だよね。君は「そういう人間」なのだから』

・・・神であることは知らないのか。

『君の疑問に答えようじゃないか。じっくり「パンツなら見ないぞ」はっはっは。君ならそう返すと思っていたよ』

はあ~やっぱりシェスカのこともあったから予感はしていたけど、まさか的中するとは。

『きちんと君の疑問に答えるから許してくれたまえ。まず、なぜボクが君のことを知っているのか?それはボクが未来の出来事を覗くことができる道具を持っているからだ』

やっぱりか。それでようやく辻褄が合う。それから彼女の話を聞くと、彼女はどうやら僕のことを気に入ったらしく、僕たちの冒険を眺めていたらしいが、ある時それが見えなくなったらしい。どうやら未来が不確定になったとか。そして驚くべきことを知った。彼女はなんとフレイズと戦ってた。しかも一体や二体どころではなく、軽く万は超えていた。だがおかしい、それならなぜこの星は滅亡していないのか。博士によればある時を境にフレイズたちが世界から消えてしまったらしい。誰かがやったのか。それとも・・・

フレイズという存在がさらに謎になったな。しかし残念だな。一度でもいいから博士と会って話したかったな。この時の僕はまだ知らなかった。この言葉が実現することを。

 

 

 

 

 

翌日、僕は一人で王都の商業区である南区で買い物をしている。今更だがユミナたちに指輪を渡そうと思い、どうせなら一から作ろうと材料を買おうとしている。

しばらく店を回っていると、揉めている声が聞こえた。どうしたんだろう?と思いながら声がする方向へ向かうと、屋台の店主が腕組みをして客をにらんでいる。

「あのな、兄ちゃんよ。それがどこの金かわからねえが、それじゃ支払えねえの。わかる?」

「困ったなあ。僕、これしか持ってないんだよね…」

白いシャツに黒いジャケット、黒いズボンに長い白いマフラーを着込んだ少年が困ったように頭を掻く。

「金が無いなら無銭飲食だ。警備兵のところへ突き出してやる」

「ええっ、だからこれで払えないの?これもお金だよ?」

「だからこの国ではそんな金使え「すいません」なんだい、アンタは?」

「通りすがりの者ですけど、その代金、僕が払いますよ。それならいいでしょう?」

「そりゃ金さえもらえりゃ文句はねえが…」

銅貨一枚を払って、さらに二つのクレープを貰う。

「ありがとう。助かったよ」

「いいよ、困ったときはお互い様だし。それより君、共通通貨を持っていないのかい?」

イーシェンさえ共通通貨なのに、どうして持っていないのか聞いてみた。

「前はこれで買い物ができたんだけどなあ」

マフラーの少年はポケットから銀色のコインを出して見せる。

「変わった形だね」

僕たちが使っている通貨は丸い。それに比べ彼が出した通貨は六角形であった。

「気に入ったのならあげるよ。さっきのお礼にさ。どうせここじゃ使えないんだし」

「そう?じゃあ遠慮なくクレープ代として貰うよ」

なんか気になるな、この通貨。

「僕は光神玲我。君は?」

「エンデ。よろしく、玲我」

僕はエンデと握手する。なんか手が冷たいな。

これが僕とエンデの初めての出会いであった。




どうでしたか
結奈は戦国恋姫のキャラです。
嫁リストも近い時期に出したいです


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指輪と正体

今回は短めです


<レイガサイド>

「うーん、これからどうしようか。お金がないといろいろ困るよね?」

 

「そりゃまあ。なんか仕事して稼ぐしかないだろうけど」

 

お互いクレープを頬張りながら話す。

 

「玲我はなんの仕事をしてるの?」

 

「僕?僕は冒険者ギルドの仕事をこなしてお金を貰ってるかな。魔獣とか倒したり、商人の護衛とかしてさ」

 

「ああ、なるほど。それなら僕にもできるかもしれない」

 

「ギルド登録するのか?武器はあるの?」

 

「武器なんていらないよ。ドラゴンを倒すわけじゃないし」

 

「そうか。ならギルドまで案内するよ。僕もギルドに用があるから」

 

「悪いね」

 

食べ終わったクレープの包み紙をくずかごに入れて、ギルドへ向けて歩き出す。それにしても、エンデのことをどこかで見たような、気のせいかな。

 

「そのマフラーはどこで買ったの?」

 

「これは大切な人からのもらい物なんだよ」

 

「そうなんだ。僕も大切な人からもらったんだ、この服」

 

お互いの藩士をしていると、やがてギルドに到着した。受付のお姉さんにエンデのギルド登録をお願いして、僕はお金を下ろしに行く。

下ろしたお金を手に、エンデのところへ向かう。

 

「登録できた?」

 

「うん、おかげでね。あとは依頼をこなすだけだよ。ギルドって世界中にあるみたいだから助かるよ。僕はあまりひとつのところにいないから」

 

黒いギルドカードを見せてくるエンデ。旅人かな。

 

「じゃあ僕はこれで初めは簡単な依頼にしときなよ。無理はしないようにね」

 

「うん、わかった。ありがとう玲我。また、どこかで会えたらいいな」

 

「ああ、またどこかで」

 

エンデと別れ、目的の宝石店まで向かう。

 

 

 

 

 

正面に座る四人は左手の薬指に光る指輪をそれぞれ嬉しそうに眺めていた。プラチナリングにダイヤモンドのシンプルな指輪にした。店員によれば、サイズが指に合うようになっている魔法が付与されているらしい。これに加えて僕はエグゼイドギアを使って三つのエナジーアイテムを付与した。一つ目は『高速化』文字通りスピードが上がる。二つ目は『回復』通常は回復量はランダムだが、僕が改良して毎回全回復するようにした。最後に『収納』これは僕のオリジナルで、収納魔法を誰でも使えるようにした。このことを全員に説明した。シェスカにはここまでいらないと思ったけど念のため。

 

「ありがとうございます、玲我さん」

 

「いいよ、僕こそ遅くなってごめんね。あと、これエルゼに」

 

僕はポケットから細いアクセサリーの鎖を取り出した。

 

「あたしに?」

 

「指輪を着けたままじゃガントレットを付けられないだろう?それに指輪を通して首から下げるといいかなって」

 

「そっか。ありがとう玲我。嬉しい」

 

鎖に指輪を通して首から下げて見せるエルゼ。うん、こっちも似合う。

ふとポケットからエンデから貰った通貨を取り出し、テーブルに置く。

 

「なんですか、それ?」

 

「今日会ったエンデって奴から貰ったんだ。どっかの国のお金みたいだけど、知ってる?」

 

リンゼは興味深そうに通貨を手に取り、目の前で眺め始める。

 

「見たことない、ですね…。とても精巧な刻印がされてます。けっこうな価値があるんじゃ…」

 

うーん、そうかな。なんかエンデの言葉が気になるな。

そんなことを思っていると紅茶のカップとポットを持ったシェスカが部屋に入って来る。

 

「お茶をお持ちしまシた」

 

「あ、シェスカにもこれ」

 

カップを並べてくれるシェスカにも指輪を渡す。

 

「とうとう初夜です「違う」はイ」

 

最近彼女の発言に慣れてきた自分がいる、と思っていると僕の横にレネがやって来る。なんかもじもじしている、どうしたんだ?

 

「あのさ、玲我兄ちゃ…旦那様。お願いがあるんだ…です「ライムさんもいないし、普通に話してもいいよ」あのね、あたしも自転車に乗りたいんだけど…」

 

自転車に?そういえばレネ用の自転車を作っていなかったな。

 

「わかった、スゥと同じ大きさのレネ専用の奴を作っておくよ。色はなにがいい?」

 

「ホント⁉じゃ、じゃあ赤がいい!」

 

「お安いご用」

 

「わーい!ありがとう¹」

 

ソファを超えて、レネが抱きついてきた。ライムさんがいたら怒られているぞ。

 

「…ロリコ「違うぞ!」…」

 

はあ~慣れてはきたが、やっぱり疲れる。しばらく変な目で見ていたシェスカだが、何事もなかったようにカップに紅茶を注ぎ終わる。それからテーブルの上にあった通貨を見て小さくかしげた。

 

「今でモこの国ではこちらの通貨が使われているのでスか?」

 

「今でもって…シェスカ、このお金知ってるの?」

 

「はイ。パルテノ銀貨でス。五二八四年前に初めて鋳造され、この辺りデも使われていまシた。イマだに現存してイタとは驚きでス」

 

はあ⁉五二八四年前だって、なんでそんな前の通貨をエンデが、

 

・・・いや待てよ、エンデはあの時

『前はこれで買い物ができたんだけどなあ』

・・・もし僕の考えが合っているのなら、すべての辻褄が合う。

エンデ、お前はもしかして

 

 

 

『渡る者』なのか⁉



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とある日常 ゴーレム

こんばんわ
今更ですがお気に入りの登録が50人以上超えました。嬉しいし、驚きです。
これKらもよろしくお願いします。


<レイガサイド>

次の日、みんなを連れてギルドへ向かう。もしエンデがいれば、僕の疑問に答えてくれるかもしれない。後は、ギルドランクを上げたい。どうせなら一番上まで行きたい。

ギルドへ辿り着き、僕は受け付けのお姉さんにエンデのことを聞きに、みんなは依頼書ボードへ向う。

 

「ああ、あのマフラーの方ですか。ええ、昨日一角狼の討伐依頼をこなして、依頼料を受け取って行きましたよ」

 

一角狼か。黒ランクなら妥当かな。

 

「ただ、ちょっと…」

「?なんかあったんですか?」

「依頼は一角狼の討伐、討伐数は五匹だったんですが、あの方はその…五十匹以上狩ってきてしまいまして…」

 

五十か、でもエンデがもし『渡る者』なら当然かな。

話を切り上げて、僕は依頼ボードに向かう。

 

「どう?なんかいいのあった?」

「あ、玲我さん、これなんですけど…」

 

ユミナが赤い依頼書を指さす。でも僕たちの最高が青色だから受けれないんじゃ。とにかくその依頼書を見てみる。

 

「ミスリルゴーレムの討伐。場所はメリシア山脈の麓、報酬は白金貨五枚…赤ランクの割には安い気が…」

「たしかに安いですけど、相手はミスリルゴーレムです。その体は素材として破格の値段で取引されます。大きさ次第ではとてつもなく金額になりますよ」

 

なるほど、体が素材として使えるんだな。でも受けられないんじゃ…ん?

 

「なお、B級以上の称号持ちであれば、この依頼はランクを問わない?」

 

僕は『竜殺し』の称号を持っているけど。

 

「『竜殺し』はA級称号に当たります。ですから…」

「じゃあこの依頼、僕らでも受けられるの?」

 

でも称号を持っているのは僕だけだから受けれるのかな、と思い受付のお姉さんに聞くと、大丈夫であった。なんでも僕たちの実力はほぼ赤ランクより上らしい。

依頼内容を聞くと、メリシア山脈の麓、ステア鉱山の採石場にミスリルゴーレムが居ついてしまい、鉱山での採掘が全く出来なくなってしまったそうだ。体は硬くしかも動きは速い。すでに何人かの犠牲が出ている。改めてみんなに確認してから依頼を受けることにした。

 

 

 

 

 

「では出発いたシまス。座席から立たないヨウにお願いいたしまス」

 

僕らは目的の場所まで『庭園』で向かうことにした。

 

「予定では一時間ほどで到着しまス」

『庭園』の中央に設置された制御装置の前で、シェスカがそう言った。シェスカに運転を任せ、『庭園』の片隅でシートを敷いて、お茶会を開いているみんなのところへ戻る。

「あと一時間ほどで着くってさ」

 

ユミナと八重の間に座ると八重がサンドイッチを渡してくれた。ハムとチーズのシンプルなものだ。早速一口食べる。

 

「ん、おいしい。ありがとう八重」

「そ、そうでござるか」

「八重の手作りでしょ?」

「そ、そうでござる。剣だけではなく、玲我殿の、つ、つ、妻として、料理のひとつも出来ねば、と…クレア殿にご教授を…」

「そっか、ありがとう八重」

 

そう言って、八重の頭を撫でる。

 

「あたしもこれ作ったのよ。食べてみて」

「エルゼも。じゃあ遠慮なく」

「あっ、それは…」

 

差し出された鶏肉の唐揚げを食べる。何かリンゼが言いかけたが、どうしたんだろう?

 

「ん。結構辛いけど、これはこれでおいしいよ」

「え!」

 

カラエよりは辛いが、これはこれでおいしいと思うけど。

「お姉ちゃん、辛いの異常に強いんです。それと料理すると、なんでも辛くする癖があって、実家でも絶対にキッチンに立たせませんでした」

 

まじか!じゃあ、そこらへんはまたエルゼと相談しよう。

 

「おい。俺にも食わせろ!」

 

ん?カゲロウも食べたいのか。僕は懐からコウモリの絵が描かれたバイスタンプ『コウモリバイスタンプ』を取り出し、僕の胸に押印する。

 

バット!♪♪』

「ふう~」

 

僕の影からカゲロウが出てくる。みんなは最初こそ驚いていたが、カゲロウだと知ると安堵する。

「エルゼ、カゲロウにも食べさせていい?」

「あたしはいいけど」

 

エルゼがそう言うと、カゲロウが唐揚げを一つ手に取り、口に入れる。

 

「! こいつは・・・脳がしびれるぜえ

 

カゲロウはそう言って、地面に倒れた。・・・あーこれは思っていた以上に辛いのかな。

 

 

 

 

 

メリシア山脈に着き、ステア山脈の上空に『庭園』を制止させ、僕らはミスリルゴーレムを探しに向かう。シェスカは留守番だ。

 

「誰もいないんでしょうか?」

「そりゃあ、ゴーレムの縄張りに近づく奴はいないわよ。アレは自分のテリトリーに侵入する者を排除しようとする習性があるらしいからね。多分、あたしたちにも気付いたら向こうからやってくるわよ」

 

ユミナとエルゼの会話をしながら進む。

しばらく進んでいると、ズシン、ズシンと足音が近づいてくる。あれでも足音が一体にしては多いような。

 

「来たでござる!」

 

坑道の入り口から太陽に照らされた銀色のボディが現れた。足が短く腕が大きくて長いな。

 

「れ、玲我さん、あれ!」

 

ユミナが指差す坑道からもう一体のミスリルゴーレムがのそりと姿を現した。もう一体いたとは。どうしようか、片方は僕だけでもいいけど、もう片方はユミナたちじゃきついな。なら、

 

「僕はあっちのミスリルゴーレムをやるから、みんなでもう一体のゴーレムを任せる」

「玲我さん。でも」

「大丈夫」

 

僕はギアトリンガーと二つのギア『シンケンジャーギア』と『ガイムギア』を取り出し使う。

 

『ババババーン! シンケンジャー! ガイム!』

 

僕は召喚した『シンケンマル』を八重に『ソニックアロー』をユミナに渡す。

 

「八重!ユミナ!これ使って」

「玲我殿、わかったでござる」

「わかりました。玲我さん」

 

さてとあっちはみんなに任せて僕は『トリガーギア』を使って、『GUTSスパークレンス』と『GUTSハイパーキー』を召喚する。

 

『♪ ウルトラマントリガー! マルチタイプ! ブートアップ! ゼペリオン!

 

スパークレンスを展開し、トリガーを押す。

 

「未来を築く 希望の光 ウルトラマントリガー!」

『♪♪♪ ウルトラマントリガー マルチタイプ!

 

僕は再び光の巨人『ウルトラマントリガー』に変身した。大きさはミスリルゴーレムと同じ大きさだ。

 

「デュワ!」

「あれが、玲我さん」

 

初めて見るユミナは目をキラキラして僕を見る。一応エルゼたちから聞いていたはずだけど、目の前で見たら驚くよね。

 

 

 

 

 

「デュワ!」

 

僕はミスリルゴーレムに対して蹴りやチョップ、パンチを攻撃していたが、あまり効いていないようだ。光線技をここで使えば崩落の危険があるので使えない。

 

「やばっ!」

 

僕が考え言をしていると、ミスリルゴーレムから強烈なラリアットをされ地面に倒れる。

 

「ダアァッ!」

 

見た目通り力が強いな。ならこっちもパワーで押し切ってやる。僕はスパークレンスからマルチタイプキーを外しベルトに差し、赤色のハイパーキーを取り出し起動する。

 

『♪ ウルトラマントリガー! パワータイプ!

 

パワータイプキーをスパークレンスに差す。

 

『ブートアップ! デラシウム!

 

スパークレンスを上に掲げ、トリガーを押す。

 

「勝利を掴む 剛力の光 ウルトラマントリガー!」

 

トリガーである僕は両手を顔の前でクロスし、思いっきり広げる。するとトリガーの色が赤色に変わり姿も変わる。

 

『♪♪♪ウルトラマントリガー パワータイプ!

 

さっきまでの紫色のマルチタイプがバランス型なら、こっちのパワータイプは文字通りパワー型である。

 

「デュワ!」

 

僕はさっきのラリアットのお返しにと、ゴーレムにパンチを一発当てる。すると、さっきまでとは違いゴーレムが壁に向かって吹き飛んだ。ゴーレムも何が起きたかわからない雰囲気を出していた。体にはヒビも入っている。僕は止めにもう一発パンチを当てる。今度は体内の核が壊れ、そのまま動かなくなった。

 

「ふう~、さてとみんなの方は、大丈夫そうだね」

 

戦闘が終わってウルトラマンから人に戻り、みんなの方を見るとすでにゴーレムは倒れていた。

 

『見事でした』

「ありがとう、みんなはどうだった?」

 

近寄って来た琥珀にみんなの戦闘を聞いた。リンゼが魔法ユミナがソニックアローで攻撃をしつつ、八重がシンケンマルで足と腕を斬り、最後にエルゼが腹を【ブースと】を使って殴ると核が壊れたらしい。いい攻撃の布陣だと思うよ。

 

「お疲れ様。みんな」

「玲我、そっちもね」

「お疲れ様でした…玲我さん」

「玲我殿。この剣の切れ味とんでもないでござるよ!ミスリルをあんな簡単に斬れるなんて」

「私もです。光の矢を魔法詠唱なしで撃てるなんて」

 

予想以上に八重とユミナが驚いている。

 

「なんならこれからも使う?」

「「いいんですか(ござるか)!」」

「うん」

 

まあ、一応力の半分は出せないようにしてあるから、大変なことにはならないよ。さてと討伐確認のためのミスリルを収納して帰りますか。シェスカも待っているだろうし。僕は収納魔法でミスリルを収納し、シェスカが待っている『庭園』に帰った。




どうでしたか
トリガーパワータイプの登場です。短めですが。そして八重とユミナの武器を強化しました・原作ではミスリルの剣を作りましたが、この作品では作りません。あとエルゼにも武器を持たせたいのですが、何にしようか考えています。


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とある日常 怒り

追記、誤字があったので直しました。


<レイガサイド>

「ミスリルゴーレムが二体ですか…。申し訳ございません。こちらの調査ミスのようですね」

 

そう言ってギルド受付のお姉さんが頭を下げる。僕らはベルファストの我が家に帰ってきてからギルドへ向かい、依頼達成を受付のお姉さんに伝えた。

 

「この場合、きちんと二体分の討伐部位もございますし、こちらの手落ちでもございますので、報酬の二倍、白金貨十枚を支払わせていただきます。もちろんギルドカードへのポイントも二倍にさせていただきます」

 

おお、これでギルドランク上がるかな?

 

「このポイントで全員のギルドランクが上がりました。おめでとうございます」

 

返されたギルドカードがユミナが青、それ以外は赤に変わっていた。赤ってことは一流冒険者か。

 

「さらに今回の討伐により、ゴーレム討伐の証、『ゴーレムバスター』の称号をギルドから贈らせていただきます」

 

そう言われカードを見ると、ゴーレムの頭のようなシルエットにヒビが入っているシンボルが追加されていた。

その後は、リンゼとユミナと琥珀は魔法屋へ、エルゼと珊瑚と黒曜はレオン将軍と訓練へ、僕と八重は家に帰ることにした。帰り道は八重と手を繋いで帰りました。その間八重はずっと顔を赤くしていた。・・・かわいい!

 

「…やっぱ最近玲我おかしくないか?」

 

「嫁のことになるといつもこんなだろう」

 

「コブ。コブコブ」

 

「確かに嫁に関して怒ったときは…マジで怖え」

 

「あの時の玲我の顔は今でも覚えてるぜ。二度とあんな玲我は見たくないぜ」

 

この時のバイスたちは知らなかった。近いうちに誰かが彼の逆鱗に触れることを。

 

 

 

 

 

次の日、僕とユミナとエルゼはベルファストの王宮へ向かった。エルゼはまたレオン将軍と訓練に、僕とユミナは王様に会いに行った。エルゼたちとも結婚することを報告し、途中からは王様が子供の話をし初めて、ユミナに怒られていた。気が早すぎると思うんだけど。ユミナと結婚することはしばらく伏せて置くが、早めに発表することを王様と話して決めた。

国王陛下と王妃様のところにユミナを残し、僕は訓練場の方に向かった。エルゼがいると思ったが、残念ながらどこにも姿が見当たらなかった。訓練場ではいたるところで模擬戦が繰り広げられていた。この光景は僕の星でもよく見かけるな。

 

「おい貴様、ここで何をしている」

 

声をかけられ振り向くと、若い騎士たちが十人ほどこちらをうかがっていた。若手の騎士だね。

 

「見慣れん顔だな。誰かの使用人か?ここは貴様のような者が来るところではないぞ!」

 

「ああ、いや、知り合いがいるかと思いまして。ちょっと見ていただけです」

 

先頭にいた金髪の若い騎士が僕にそう言い放つ。なんか見下した言い方だな。めんどそうだし適当に返事をして退散するか。

 

「知り合いだと?」

 

「おい、あいつじゃないのか?最近レオン将軍が連れている武闘士の女」

 

金髪の後ろの赤毛が答える。エルゼのことだな。

 

「ああ、あの女か。ははあ、お前もうまいこと将軍に取り入ろうってハラか。まったく下賤な輩は節操がないな」

 

金髪の横の茶髪がいやらしい笑みを浮かべながら話す。

 

「こいつも軍に入ろうとしてるんだろ。あの女のツテで」

 

「軍の方は数を揃えないと格好がつかないからな。平民どもでもいないよりはマシなのさ。我々騎士団のような少数精鋭、選ばれた名誉ある者とは違う」

 

そう言って何がおかしいのかゲラゲラと笑い出す騎士たち。いい加減ウンザリしてきたので、その場を離れようとした。

 

「おいお前、ひょっとしてあの女の男なのか?」

 

「…だったらなんです?」

 

引き止めるように声をかけて来た茶髪にイライラしながら答える。いい加減ウンザリだな。

 

「あの女を探すなら将軍のところのベッドの中でも捜すんだな。今ごろいい声を挙げて、ぐぼぇえ⁉」

 

「「「あッ!(コブ!)」」」

 

・・・こいつ今なんて言った。僕の、俺のエルゼになんて言った!!

僕はそいつの言葉を最後まで待たず、茶髪の顔面に拳を叩き込む。歯が折れ、鼻血を出しながら地面に転がるそいつの横腹に追い打ちで蹴りを入れる。

 

「おげぇ!な、何のつも「うるせえよ、今からお前ら全員ぶちのめすんだよ」!」

 

さっきからうるさいな。いいから黙ってろよ!俺のことならいいけど。嫁を侮辱することだけは許さない!

 

「あーダメだ!玲我が自分のことを『俺』って言ってる!」

 

「おい、これマジでやばいぞ!このままじゃ暴走するぞ」

 

「コブ。コブコブ。怖い」

 

「面白そうなことになってるな」

 

「うっせ!今出てくるなよベイル」

 

「貴様!その者はバロー子爵家の次男「だからうるせえって言ってんだろう!同じこと言わせるな!今から消す奴らの存在なんて知らねえよ!」なんだと!」

金髪の取り巻きが一斉に剣で攻撃してくるが、僕は斬りかかって来る奴ら全員ギアトリンガーで撃ちぬいていく。はあ~弱いな。こんなんで精鋭かよ。残りは金髪だけか。

 

「うっ、うわあぁあぁ「逃げんなよ」!」

 

大声を上げて一目散に逃げだした金髪の背中に一発を浴びせる。

 

「はげぁ⁉」

 

「ひっ⁉」

 

意識があるのは茶髪だけになった。さてとあとはこいつらをまとめて。

 

「玲我!やめろ。そこまでいったらエルゼちゃんだけでなくユミナちゃんたちも星の妻たちも泣くぞ!」

 

バイスの言葉が頭に響く。俺は、僕は何を?もしかしてまた暴走を?

 

(ゴメン、バイス。僕また暴走して)

 

「いいんだよ。俺っちたちもこいつらにムカついていたし!」

 

(うん、ありがとう)

 

バイスが止めていなかったら、今頃彼らの存在は消し飛んでいただろう。

 

「そこまでにしてくれないか」

 

声をかけられ振り向くと、銀髪の騎士と。

 

「リオンさん…」

 

「やあ、玲我殿。久しぶり」

 

リオンさんがいた。

 

「ふ、副団長!こ、こいつが、こいつがいきなり!」

 

「…お前たちが普段から市民に乱暴狼藉を働き、迷惑をかけていたのは俺が知らないとでも思っているのか?」

 

どうやらこいつらは普段からあんな態度なんだな。

 

「今までは実家の方がうまくもみ消していたようだが、今回はそうはいかないよ。集団で一人に襲いかかり、挙句返り討ち。情けないことに一人は仲間を見捨てて逃げ出す始末だ。とても騎士とは言えないね」

 

リオンさんが厳しい言葉を口にする。

 

「お前たちの処分は追って通達する。倒れている奴らにも伝えておけ。言っておくが、意趣返しなどは考えない方がいいぞ。彼に手を出せばお前たちだけでなく、家が取り潰しになりかねんからな。これは冗談でも何でもないぞ?」

 

目を丸くする茶髪をよそに、副団長さんが僕の方へ視線を向けて、深々と頭を下げた。

 

「すまない、迷惑をかけた。騎士団の者が全てこんな奴らではないとわかってほしい」

 

「…いえ、こちらも少し頭に血がのぼってやりすぎました。どうかお気になさらず」

 

はあ~ユミナたちに見られなくてよかった。見られていたら失望されていたかもしれない。まだまだ修行が足りないな。

 

「そう言ってもらえると助かる。王国騎士団副団長、ニール・スレイマンだ」

 

「光神玲我です。よろしく」

 

「知ってるよ。知る人ぞ知る有名人だからね」

 

僕はニールさんと握手して、今の騎士団の現状を聞いた。騎士団の多くは貴族の次男、三男である。その立場から責任感がなく、家柄を誇るだけの我儘な奴らがいるとか。

「かく言う僕も次男ですけどね。まあウチは他の家と違って、人様に迷惑をかけるような間違ったことをすると鉄拳制裁が待っているので…」

確かにレオン将軍ならやりそうだ。てかリオンさんとニールさんも次男なんだ。

 

「少数だがやはり家柄とかにしがみつく者がいてな。伯爵家の新兵が男爵家の隊長に従おうとしなかったり、また逆に隊長の方が新兵に媚びたりな。まったくくだらない話さ」

 

ニールさんが苦々しく話す。

 

「まあ、今回は渡りに船だったよ。あいつらは騎士団にとって獅子身中の虫になりかねんからな。今までは実家の手回しで躱してきたが、今回はそうはいかん。なにせ姫様のフィアンセに手を出したのだから。首がつながっているだけありがたく思ってもらいたいもんだ」

 

「本当に驚いたよ。玲我殿の口調が急に変わって」

 

・・・見ていたなら止めてくれてもよかったのに、この人ら確信犯だ。まあ、やってしまった僕も僕だが。

 

「それよりも、だ。先ほど見せてもらったのだが、その武器…それはなんだね?」

 

ニールさんが興味深そうに僕のギアトリンガーを眺める。

 

「これですか。これは僕専用の武器です。僕にしか使えないし、作れません」

 

「ふむう。すごい武器だな。私にも作ってはもらえないか?もちろん代金は払わせてもらう」

 

「いいですけど、こんな銃じゃなくて、変形する武器や、麻痺の能力を付与したものなら作れます」

 

「本当か⁉ならお願いしたい!」

 

僕は収納魔法から鋼のインゴットを取り出す。

 

「ニールさんはどういう武器を得意としているんですか?」

 

「そうだな、やはり槍だな。むろん剣も使えるが」

 

剣と槍か。なら『界時』がぴったしだな。一から作るのは初だけど。属性である『時』は付与せず、代わりに『雷』を付与しよう。あとはプログラムブログライズキー・・・長いな略して『Pライズキー』と呼ぼう。ライズスターターを押して、

 

『プログラム!』

 

武器に当てる。思いついたプログラムを剣にインストールする。数秒待つと

 

『フィニッシュ!』

「っと、これで一応完成かな」

 

僕は完成した剣『界時』いや『界雷』を持ってみる。うん、初めてにしては上出来かな?

 

「スピアモード」

『槍時刻!』

 

僕がそう言うと、刀身が分離して上下逆になり、『カイジスピア』に変形する。おお、刀身を持たなくても変形できた。成功するか不安だったけど、成功してよかった。

 

「ソードモード」

『剣刻!』

 

最初の剣状態に戻る。変形機能はこれで問題ないな。あとは…

 

「スタンモード」

「え!」

 

ニヤリと笑い、リオンさんの肩を剣先で軽く叩く。

 

「はうっ⁉」

 

リオンさんがその場に崩れ落ちる。

 

「麻痺効果も問題なし、と」

「おいおい…」

 

ニールさんが呆れたような声を上げる。

 

「ちょっと勘弁してくださいよ!」

「すいません、試したくて」

 

不満をぶつけるリオンさんに謝りながら、ニールさんに渡す。剣を受け取ったニールさんはそれを構え、動きを確認したり、武器変形をしていた。

 

「スタンモードでの麻痺効果は相手が護符などで防御してると効果がないので気を付けてくださいね。また、一旦麻痺させると普通なら一時間は効果が切れないので、味方を痺れさせないように気を付けて」

 

「なるほど、承知した」

 

ニールさんは嬉しそうに剣を眺める。

 

「もちろんリオンさんのも作りますよ」

 

「さすが玲我殿!」

 

界雷をもう一つ作り、リオンさんに手渡す。さっきのニールさんと同じように武器を振り回したり変形させたりしている。

 

「いや、これは素晴らしい。それで代金はいかほどになるのかな?」

 

「別にいいですよ。あ、でもさっきの奴らとなんか問題があったら間に立ってくれれば」

 

「わかった。約束しよう」

 

まあ、あいつらもそこまで馬鹿じゃないだろう。



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とある日常 バイス?

こんばんわ
今回は短めです


〈バイスサイド〉

は~い、イカした悪魔バイスで〜す。今回はレイガサイドじゃなく俺っちサイドで話すぜ~。みんな前回の出来事覚えてる〜?読んでない人のために説明するぜぇ〜。前回、王宮の訓練場を訪れた玲我の前に、金髪のムカつく奴を中心としたメンバーがあろうことか玲我の逆鱗に触れ星の破壊を招いたんだが、最強の悪魔、俺っちの活躍でなんとか星を守ることができたんだ〜。俺っちマジ有能で愛らしくて最強で

「ラブ。コブコブ。ザコ」

何々?いい加減本編に入りやがれザコ、だと・・・おー--い。今俺っちがしゃべってるのに罵倒してくるなよ~!

さて、イカしてない悪魔はほっておいて今の状況を教えるぜ~。

「ラブ。コブコブ。ラブラブ。コラ」

えっと、夜中にレイガの家に五十人ほど襲撃者が現れて中にはあの時の金髪たちがいたんだでけどレイガたちがそれをあっけなく返り討ちにしたんだ。ってなんでラブコフが説明するんだよ!

「お前らさっきから何コントしてるんだ?」

コントじゃねえよ!こいつの名は『カゲロウ』。俺っちたちと同じ悪魔で唯一人間の姿の悪魔なんだ。しかもレイガに姿が似ているから、星では人気者でしかもファンクラブまであるんだぜ!なんで俺っちのファンクラブはないんだよ!

「さっきからうるさいぞ」

なんで俺っちに優しい悪魔はいないんだよ!こいつは『ベイル』。こいつも俺っちたちと同じ悪魔なんだけど、めったに出てこないんだよ。なんでって?こいつは戦闘狂でしかも相手の全てを殲滅しないと気がすまないヤベー奴で、レイガも苦労してるんだ~。

おっと説明が少なかったな。こいつらは今仮面ライダーの姿でよ。それぞれ『仮面ライダーエビル』と『仮面ライダーベイル』って名前なんだよ。

今回の襲撃者を主にこの二人が迎え撃ってよ、俺っちから見てもかわいそうなぐらいの蹂躙だったな。

「お前らなにをやったかわかってる?剣だ斧だ、ぶら下げて。これ襲撃だよね。強盗未遂に暴行未遂、あと殺人未遂もだな」

「片付きましたか、玲我さん」

おっと、ここでユミナちゃんが出てきました。面白くなりそう。

「はい、そうです。君らのしたことは王家への裏切り、謀反、反逆だね。残念ながら君のせいで家はお取り潰し、君たちはめでたく斬首刑だ。ご苦労さん」

「おいおい、そんなんじゃつまらないだろ。今ここで俺が潰す

おっとベイちゃんの一言で金髪が白目を剥いて気絶した。さすがベイちゃん。

「この人たち、どうするんですか?」

「まあ、ほとんど被害はないから死刑ってのは無いように頼むけど。こいつらの家の方にも罪は及ぶだろうね。爵位を剥奪され、二度と大きな顔はできなくなるね」

「ふん、つまらん」

これで今回の襲撃は終わったのさ。・・・って俺っちも戦いたかったー-!

「さっきから思ったけどバイスはだれと話してるの?」

 

 

 

 

 

<レイガサイド>

「久しぶりに見ると、やっぱり面白いな」

映し出された映像を見てつぶやく。

「さすがだねバガミール」

「キュキュ///」

僕は久しぶりの点検として『フォーゼギア』でバガミールを召喚し、星でも有名だったアニメを見ている。いつもならカラフルコマーシャルに頼んでいたが、彼は最近写真の印刷で仕事をたくさんしてもらったので、休暇中である。そういえばこの星ではテレビすらないな、と考えているとコンコンと扉をノックする音が聞こえた。

「玲我兄ちゃん、お昼ごはんが…うわあ、なにこれ⁉」

カーテンを閉めて暗くした部屋に入って来たレネが、空中に映し出されていたアニメに目を見張る。一緒に入って来た琥珀も驚いている。

「ね、ね、玲我兄ちゃん、これなに⁉」

「これはそうだな…動く紙芝居かな。この子が出しているんだ」

「キュキュ!」

「へえー」

バがミールを見た後、キラキラした目でレネは映像に釘付けになっている。内容はネコがネズミを追いかけているもので、リムルが考案したアニメだ。二人とも夢中だな、これはしばらく見続けるな。しばらくすると再びコンコンと扉をノックする音がした。

「旦那様ぁ~?レネちゃんがこっちに…うわあ、なんですかぁ~!これぇ~!」

扉を開けたセシルさんが映像を見て、レネの横に駆け込み座った。

「バガミール、しばらくは続きを再生してくれる?」

「キュ~」

ここはバガミールに任せて僕はテラスに向かった。

テラスに着くと、みんながすでに食事をしていた。今日はクラブハウスサンドとオニオンスープ、野菜サラダとチーズか。

「いただきます」

うん、おいしい。

「レネとセシルはどうしたのでしょうか?」

僕のグラスに果汁水を注ぎながら、ラピスさんが聞いてくる。

「僕の部屋である手伝いをしてもらってるから、行ってみるといいよ」

「はあ…?」

わけのわからない顔で僕の部屋に向かうラピスさん。たぶんラピスさんも釘付けだな。

「玲我は午後からどうするの?」

紅茶を飲みながらエルゼが聞いてくる。

「そうだね…重兵衛さんと七重さん、それにリンゼとエルゼの叔父さんにいつ挨拶しに行けばいいかな?」

「あたしたちのところは別に後回しでもいいけど。ベルファストのお姫様と同じところにお嫁に行くって知ったら、叔父さんも叔母さんも卒倒しかねないし」

エルゼとリンゼの出身は、西の国リーフリース皇国である。二人はそこの東、小さな町サレットで農園を営んでいる叔父夫婦に育てられたそうだ。ご両親は幼少の頃、どちらも病気で亡くなったそうだ。

「それでも会いに行かなくちゃ。ご両親のお墓にも報告しないといけないだろう?」

「…ありがとうございます、玲我さん」

向かいに座るリンゼが嬉しそうに微笑む。

「さてと、メイドさんたちの様子を見て来ますか」

食事が終わり、みんなと連れ立って僕の部屋に入ると、三人とも夢中になってアニメを見ていた。琥珀もレネの膝の上で映像を眺めている。エルゼたちもアニメに夢中になり、さらにフリオさんクレアさん夫婦にライムさん、珊瑚と黒曜加わり、その日の午後はアニメ鑑賞会となった。・・・今度はバガミールに休暇をさせてあげよう。




どうでしたか
原作ではつぎは温泉の話ですが割愛させていただきます。
次回からは原作四巻です。
これからもよろしくお願いします


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第六章
砂漠と奴隷


<レイガサイド>

「見つかったわよ!場所はサンドラ王国の南東、ラピ砂漠!」

 

ある日朝食を食べている時に、突然食堂の扉が開いてリーンとポーラが飛び込んできた。見つかったってもしかして?

 

「残りのバビロン?」

 

「ええ、昔砂漠の中にあった古代遺跡にニルヤの遺跡と同じ、六つの魔石が埋め込まれていた石柱があったそうよ!今は砂漠に呑み込まれて砂の下らしいけど!」

海の次は砂漠か。

 

「じゃあ、食べ終わったら出発しようか。シェスカ、『庭園』の用意を」

 

「イエス、マスター」

 

そこにもシェスカみたいな子がいるのかな?・・・普通の子であってほしい。

 

 

 

 

 

 

ベルファストから出発して、僕たちはミスミドの南、サンドラ王国へ向かう。

 

「目的地までおよそ四時間かかりまス」

 

けっこう時間があるので、僕たちは庭園にある二軒の空き家を掃除して別荘にすることにした。まずは大きい家の方だ。

 

「じゃああたしは二階を掃除するわね」

 

「私はキッチン周りと、食堂を」

 

「拙者は一階のリビングを中心に片づけるでござるよ」

 

「では私は玄関と廊下を。玲我さんは壊れている箇所の修理と、水回りや明かりなどを改良してください」

 

「わかったよ。みんなもお手伝いお願いね」

 

『キュー!』

 

僕たちは役割を決め、一人ずつ手伝いとして『オーズギア』でカンドロイドを召喚した。エルゼにはゴリラカンドロイド、リンゼにはタコカンドロイド、八重にはトリケラカンドロイド、ユミナにはタカカンドロイド、僕には電気ウナギカンドロイドだ。それぞれ二十体ぐらい召喚したかな。

 

 

 

・・・思ってたよりも早く作業が終わったな。全部カンドロイドのおかげなんだけど。そういえばリーンとポーラ、それとラブコフはどこ行ったのかな?

三人を捜しているとモノリスの前に捜していた三人と琥珀、珊瑚と黒曜、そしてシェスカがいた。みんなモノリスに映る画面をじっと見ている。

 

「何してるの?」

 

「面倒なものを発見したのよ。多分遭難者ね。ここはサンドラ王国の手前だけど、すでに砂漠地帯。こんなところ誰も通らないのに」

 

画面を見てみると、十人くらいの男女が砂漠の中を歩いていた。

 

「遭難者なら助けないとマズいんじゃ?」

 

「どうやって?この『バビロン』の存在を明かすの?行きずりの遭難者に。もしあれが悪人やおたずね者だったら?こんなところを進んでいるなんて普通じゃないわ。面倒なものって言ったのはそういうことよ」

 

「うーん?・・・とにかく助けよう。『庭園』に連れてこなくても、【コネクト】でミスミドやベルファストへ送ることも可能だし」

 

「それなら急いだ方がイイかもしれませンよ」

 

「え?」

 

シェスカの指差す画面には、遭難者の目の前に巨大な怪物が砂の中から現れた。

 

「サンドクローラーね。砂と一緒に獲物を呑み込む砂漠の魔獣よ」

 

リーンが説明してくれたが、その間にも遭難者の中の三人が武器を構え、怪物に向かっていたがあのままじゃやられるな。

 

『【コネクト】』

 

「行ってくる!」

 

【コネクト】を開いてサンドクローラーの上空に転移した。

 

僕は空中で『ウィザードギア』を使い銀色の武器『ウィザーソードガン』召喚し、ギアトリンガーと共にサンドクローラーに向けて弾丸の雨を降らした。これでも倒れないか。

砂漠の上に着陸してウィザーソードガンをソードモードにし、ハンドオーサーを起動する。

 

『♪キャモナスラッシュシェイクハンズ!!』

 

左手に填めておいた『ウォーターウィザードリング』をハンドオーサーに翳す。

 

ウォーター! スラッシュストライク スイスイスイ! スイスイスイ!

 

「ハアァ!」

 

水を纏った刃がサンドクローラーの首・・・首だよね?・・・を跳ね飛ばした。結構グロイな。

ウィザーソードガンを消すと、遭難者の一人がこちらに歩いて来た。手には長剣を持ち、顔はフードで隠れているが女性のようだ。

 

「…君は?」

 

「光神玲我と言います。たまたまあなたたちを見かけたので、戦闘に介入させていただきました」

 

「いや、感謝する。おかげで助かった。私は冒険者のレベッカだ」

 

フードを外すと褐色の肌に、アッシュカラーの長髪。

 

「あんたすげえな。あんな魔獣をあっという間にやっちまうなんてよ」

 

レベッカの後ろにいた戦斧を持った男がフードを外しながらやってきた。夢精髭を生やしたがっしりとした男。その横には少年が剣を持ったまま、肩で息をしている。

あの武器彼に合っていないと思うんだけど、と考えていると少年が剣を投げ捨ててこちらへ駆けてきて僕の足元に膝をついた。

 

「あっ、あの!さっきの魔法は水属性の魔法ですよね⁉でっ、でしたら水をだしてもらえないでしょうか⁉」

 

そう言われ彼らを見ると、誰も水筒らしきものを持っていなかった。

 

「いいよ。ちょっと待ってね」

 

僕は収納魔法に入れてある金だらいとコップ数個とルパンコレクション『紫色の雨』を取り出す。これ空気中の水分を内部に転送して水を撃ち出すものである。これと同じルパンコレクションはアルセーヌ・ルパンから譲られて今では僕の収納魔法の中で保管されている。

 

「ああっ!」

 

水の音を聞き分けて、他の人たちが一斉にこちらへ向かってくる。よほど喉が渇いているんだな。それにしてもさっきの少年と戦斧を持った人以外が女の人で、しかも首に黒光りする大きな首輪をしている。これってもしかして…。

 

「そうだ。彼女たちは奴隷だ。私たちが奴隷商人から奪ってきた」

 

・・・マジですか⁉

 

 

 

 

 

彼らから話を聞くと、さっき見た首輪は『隷属の首輪』と呼ばれるもので、元々はアーティファクトだが何百年前にサンドラの大魔法使いが量産化に成功した魔道具らしい。最初こそは魔獣に使われていたが、徐々に人間が対象になった。最初は犯罪者、今では罪のない人を奴隷にする道具となっている。彼らは元は奴隷商人の護衛として雇われていたが、彼女らの事情を知ってどうにか解放しようと考えていた。その矢先盗賊に襲われ商人は死に、盗賊を倒した彼らは今に至る。

 

「ということですか?」

 

「まあ、そういうわけだ」

 

正直言って、反吐が出る。僕の嫁にも元奴隷の子がいるが、どこの星でも下種なことを考える輩はいるんだな。今すぐにでもサンドラ王国は潰したいけど今はどうでもいいな。

 

「『隷属の首輪』ねえ・・・」

 

外そうとすると装着車に激痛が走り、最悪死に至るらしい。外せるのは主人である商人だけだが、もう死んでいるからな。よく見るとさっきの少年ウィルが一人の奴隷の女の子の手を握っていた。その光景が昔の僕と彼女と重なった。

 

「その首輪、外せますよ」

 

「なに?」

 

「本当ですか⁉」

 

僕がそう言うと、戦斧を持っている男性ローガンさんとウィル君が僕に食いつく。僕は『マジレンジャーギア』を使って『マージフォン』を召喚する。ダイヤルファイターでもいいかもしれんが念のためこっちにした。最初はウィルと手を繋いでいる少女から。マージフォンを『ワンドモード』にし、2と6の番号を押し、中央のボタンを押す。

 

「ジルマ・マジーロ」

 

マージフォンから出た光が少女の首輪に当たると首輪は消え僕の空いている左手に握られている。

 

「えっ⁉あ、あれっ⁉」

 

僕が首輪を握っているのを見て、ウィルは少女を見た。

 

「取れてる!取れてるよ、ウェンディ!」

 

「え…?」

 

ウェンディと言われた少女が自分の首をさすると、ぽたぽたと涙を流し、口元を押さえた。そんな彼女をウィルがしっかりと抱きしめる。

 

「…おいおい、いったい何をしたんだ」

 

「ちょっとした魔法です」

 

驚いているローガンさんを置いて他の人たちの首輪を外す。首輪はあとでダイヤルファイターでも外せるか実験だな。

 

「…一体君は何者なんだ?」

 

「僕も冒険者ですよ。ほらギルドカード」

 

「赤⁉」

 

僕が出したギルドカードに冒険者である三人が驚く。

 

「ドラゴンスレイヤーにゴーレムバスター⁉マジかよ」

 

「サンドクローラーをあっさりと倒せるはずだ…」

 

「わああ…初めて見ました…」

 

「それでこれからどうするんですか?」

 

「奴隷から解放されても、登録が抹消されたわけではないからな。この国にいては面倒なことになるだろう。やはり他の国へ連れて行こうと思っているが…」

 

「なら、ベルファストへ来ますか?しばらくはウチにいてもいいですし」

 

「いや、ちょっと待てよ。ベルファストまでどれだけ離れていると…」

 

ローガンさんの言葉を遮って、目の前に【コネクト】を開きユミナを呼びだす。

 

「だっ、誰だ⁉」

 

「初めまして。ベルファスト王国王女、トリストウィン・エルネス・ベルファストが娘。ユミナ・エルネア・ベルファストでございます」

 

「「「え⁉」」」

 

「みなさんの事情は全て聞いておりました。我が国はあなたたちを受け入れることができますが、いかがいたしますか?」

 

ユミナは一人一人に魔眼を使って視線を向けた。全員と視線を合わせた後、僕の方へ向けてにっこりと微笑んでくれた。問題なさそうだな。

そのあとは彼女らを僕の我が家へ【コネクト】で連れていき、彼女らをライムさんに任せた。

連れて行ったあと僕とユミナが庭園に戻ってくると、

 

≪主!≫

 

「?琥珀?」

 

いきなり琥珀が念話してきた。

 

≪どうした琥珀、なにかあったのか?≫

 

≪砂漠に突然変な魔物が現れたのよぉ。キラキラ光って水晶みたいな…≫

 

返ってきたのは琥珀ではなく、黒曜の声。それよりも水晶の魔物って⁉

【コネクト】を開き、『庭園』のモノリス前へ転移すると、画面には今までにない巨大なマンタの姿をしたフレイズであった。




どうでしたか
お気に入りが60を超えていて驚きました。100を目指したいです。
次回のフレイズ戦ですが、ロボを出そうと思います。


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マンタ対ロボ

こんばんわ
今回はスーパー戦隊のロボが出ます


<レイガサイド>

デカい。そのフレイズは前見たコオロギよりもはるかに大きく、しかも空を飛んでいた。

 

「どうする?」

 

リーンが僕の方を振り向き、判断を求めてくる。

 

「やろう。あいつをここで放っておくわけにはいかない」

 

ここで止めないと、いずれ僕の知り合いにも被害が出るかもしれない。

 

「だけど、どうやって?アレが前と同じ能力を持っているとすれば魔法は吸収されるし、ものすごく硬いはずよ?しかも今回のは空まで飛んでるわ」

「直接攻撃じゃない魔法で攻めるしかない、です。【アイスロック】や【ロッククラッシュ】をぶつけるとか、で」

 

エルゼの疑問にリンゼが答えると、リーンとユミナが頷く。どうにかしてあいつを叩き落して僕、エルゼ、八重が直接攻撃を仕掛ける。これしかないか。

 

「よし、行こう!」

 

【コネクト】を開いて、地上の砂漠へと全員で飛び出した。

頭上にはゆっくりとした動きで水晶マンタが輝いている。直に見ると大きいな。

ギアトリンガーで撃ったみるが、ほとんどダメージが効いていないように見える。

 

「【氷よ来たれ、大いなる氷塊、アイスロック】!」

 

リンゼの魔法を発動させるとマンタの上空に巨大な氷塊が現れ、そのまま落下する。しかし攻撃を喰らってもビクともしない。あの滑らかボディは厄介だな。

マンタがゆっくりとこちらを向くと、左右の核の入った水晶体の間に光が集まっていた。マズイ!

 

「みんな、散開しろ!」

 

僕の言葉に全員がその場から駆け出すと、次の瞬間、マンタから光の弾丸が撃ち出され、凄まじい爆音と共に巨大な砂柱が立った。

 

「マジか…」

 

あの攻撃は数秒の溜めが必要らしい。しかし今度は尻尾が伸びて、その先が腹の下にくるように曲げると、先端から何かが襲ってきた。

 

「くっ⁉」

 

攻撃を躱して砂漠に突き刺さったものを確認すると、それは水晶の矢であった。

 

「みんなだいじょ…リンゼ!」

 

「大丈夫、です。かすっただけ、ですから…」

 

みんなの無事を確認するために回りを見回すと、リンゼが足を押さえていた。しかしマンタはリンゼに尻尾の先を向けた。マズイ!

 

『【高速化】』

 

僕があげた指輪の能力を使い、エルゼがリンゼを抱えて攻撃を避けた。

 

「玲我殿!拙者を【コネクト】でヤツの頭上へ!」

 

「わかった!」

 

言われた通り【コネクト】を開いて、マンタの数メートル上空に転移させた。

 

「覚悟ォォ!!」

 

八重が振り下ろしたシンケンマルがマンタの背に食い込んだが、致命的なダメージには程遠い。

マンタの背を蹴って八重が離れる。僕はすぐに【コネクト】を開いて、僕の隣に転移させる。

 

「大丈夫、八重」

 

「大丈夫でござる」

 

しかしシンケンマルでもほとんどダメージが入らないのか。どうする、またウルトラマンになるか、と考えていると尻尾の先がこちらを向いた。またか!

 

「【風よ渦巻け、嵐の防壁、サイクロンウォール】!」

 

ユミナの魔法で矢の攻撃は防げたが、次は光の玉を撃ちだそうとしていた。

 

『【高速化】』

 

八重を抱き上げ、その場から離脱する。背後から大音響の爆音が襲ってきた。

 

「【岩よ来たれ、巨岩の粉砕、ロッククラッシュ】!」

 

リーンの魔法がマンタの頭上に巨大な岩を叩きつけるが、さきほどのリンゼと同じように大した効果は出なかった。

このままじゃマズイな・・・あれを使うか。

 

僕は八重を降ろして、ギアトリンガーと『ゼンカイジュランギア』を取り出す。今までとは違いギアを裏面にして使う。

 

『ビーックバーン! ゴー!ゴー!ゴゴッゴー! ゼンカイジュラン!

 

「グァァァァオ!」

 

ギアトリンガーから撃ち出された巨大なギアから赤いティラノサウルス『ジュランティラノ』が現れた。

 

「「「「「⁉」」」」」

 

さすがにジュランの登場には全員が驚いているが今はそれどころじゃない。

 

「ジュラン!しばらくあいつの攻撃を引き受けて!」

 

僕がそう言うと、ジュランは頷き、マンタの向かっていく。

 

「さてと、お次はこれだ。アバターチェンジ!

 

ドンモモタロウ!よっ!日本一!

 

ドンブラスターを使ってドンモモタロウにチェンジして、ドンブラバックルからロボの顔が描かれている黄色のギア『ロボタロウギア』をセットし、ギアディスクを回す。

 

『いよおー! どん!どん!どん!どんぶらこ! ゼンカイジャー!』

 

すると、次はギアから赤いバイク『エンヤライドン』が出現した。

 

「ドン全開合体!」

 

ドンブラスターのトリガーを引くと、エンヤライドンが巨大化し右半身に変形する。それに合わせてジュランティラノは左半身に変形する。そして二体が合体し、一体の人型ロボとなった。

 

「ドンゼンカイオー!」

 

ドンゼンカイオー!よっ!全力全開!』

 

「「「「「えー----⁉」」」」」

 

全身赤の巨大ロボ『ドンゼンカイオー』に完成した。僕はロボの中のコックピットに転移して、マンタを見る。

 

「さて、こっからこれで勝負だ!」

 

僕はマンタに向かって駆け抜ける。マンタは水晶の矢で攻撃してくるが、全て左腕に装着してあるアバターシールドで防ぐ。

 

「そんなんじゃ効かないぜ!」

 

矢の攻撃が終わると、僕はマンタの上空に飛び、踵落としを食らわせ、マンタを地上に叩き落した。

 

「オリャァァ!」

 

それでもマンタの核まで攻撃が届かなかった。相当堅いな、と思っているとマンタが光の玉を撃ち出す構えをとった。

 

「それならこっちは」

 

僕は右腕に装着してあるアバターソードを天に掲げエネルギーを溜める。

 

数秒後お互いの必殺技がぶつかる。

 

「ドンゼンカイクラッシュ!」

 

ドンゼンカイオーの必殺技『ドンゼンカイクラッシュ』とマンタの光の玉がぶつかる。お互いの攻撃が均衡していたが、最後にはこちらの必殺技が光の玉とマンタを切り裂いた。

 

「大勝利!」

 

見事フレイズを倒すことができた。

 

 

 

 

 

フレイズを倒した後、ジュランとエンヤライドンを帰して、僕は一人フレイズの残骸を見ていた。今回のは前回よりもはるかに大変だったな、と思っていると

 

「あれ?誰かと思ったら玲我かい?」

 

「⁉」

 

突然背後から声を掛けられ振り向くとそこには

 

「エンデ!」

 

「やあ」

 

以前、街で出会ったマフラーの少年エンデがいた。

 

「久しぶり。フレイズの気配がしたから来てみたら、玲我に会えるなんてね。それにしても…君が倒したの?」

 

「あのフレイズなら僕が倒したよ。それよりもフレイズのことを知ってるのか?」

 

「知ってるよ?まあいろいろあってね。それにしても『中級種』までこっちに来てるとはね。『世界の結界』とやらももう限界みたいだな」

 

・・・⁉『世界の結界』を知っているのは神か、もしくは彼らしかいない。やっぱりエンデは…

 

「エンデはこいつらの目的を知ってるの?」

 

「うん。眠れるフレイズの『王』を捜すことさ。僕と同じ目的だよ」

 

「そうか」

 

「おっと、そろそろ行かないと。ちょっと約束「最後に一つ聞いていいか」何?」

 

「エンデ、君は・・・・・・『渡る者』だろう」

 

「⁉・・・玲我、どこでそれを」

 

「お互い隠したいことの一つや二つあるだろ?今は話さなくていいから、いつか話してくれないかエンデ?」

 

「・・・わかったよ。じゃあ玲我、またね」

 

そう言ってエンデは消えた。これで彼が『渡る者』であると確認が取れた。しかしフレイズの『王』か・・・やっかいなことになりそうだな。



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工房と仕事

<レイガサイド>

「怪しすぎる」

 

リーンが腕を組んで結論を述べた。

 

あの後『庭園』に戻り、エンデとの会話をみんなに話した。『渡る者』に関しては伏せて置いた。あと『ドンゼンカイオー』に関しても質問攻めだったが、いつも通りギアの力にしておいた。・・・いつまでもこの説明じゃだめだな。

 

「あの水晶の魔物…フレイズって言ったかしら。結局アレってなんなの?」

 

根本的な疑問をエルゼが口にする。

 

「みんな、実はさ…」

 

僕はあの夜のバビロン博士の話をみんなに話した。

 

「幾万ものフレイズの侵攻…それが古代文明滅亡の原因だったのね。でも五千年前にはそんなにたくさんいたというのに、今は目撃情報がほとんどいない…。そして今になって現れ始めた。いったいどういうことなのかしら…」

 

「生き残り、か、封印されたやつが出てきたのでは?」

 

悩みだしたリーンにリンゼが自分の考えを述べる。

 

「エンデって子が言った『結界』とやらが引っかかってるのよね…。私が出会った蛇のフレイズは割れた空間から現れたらしいし。ひょっとしてフレイズはどこか別の次元に封印されているのかしら…」

 

「それを誰かが破ろうとしている…とかでござるか?」

 

「確証はないけどね」

 

リーンの足下ではポーラが腕を組んでうんうんと頷いている。

 

それよりもエンデはあのマンタを「中級種」と呼んでいた、ということはその上の「上級種」もいるだろう。もしその「上級種」が現れたら…

 

「シェスカ。五千年前にはフレイズと人類は戦ってはいなかったのか?」

 

「いえ、戦ってはいまシた。かなり戦況は悪かったでスが。博士も対フレイズ用の決戦兵器を開発してはいたのでスが、完成したときにはすでにフレイズは一匹残らずいなくなっていまシた」

 

「決戦兵器?」

 

「博士が生み出した搭乗用人型戦闘兵器でス。『フレームギア』と申しまス。さっきのマスターが使っていた物よりも小さいでスが」

 

マジか。あの人そんな物まで開発していたのか。束と同じじゃん。

 

「それってそのあとどうしたの?」

 

「確かバビロンの『格納庫』に保管されていたかト」

 

エルゼの質問にシェスカがそう答える。なら今最優先は『格納庫』と『図書館』か。

 

『主、目的地に着いたようですが』

 

『なにも無いみたいだけどねぇ?』

 

『砂の下に埋れてるみたいだの』

 

モノリスの画面を見ながら琥珀たちが告げる。

 

「わかった。とりあえず降りてみるか。黒曜と珊瑚は『庭園』の護衛を頼むよ」

 

そう言って、僕は琥珀とリーンを連れ【コネクト】を開き、地上へと転移する。

 

「やっぱりここだな。この下かぁ…」

 

「風魔法で砂を吹き飛ばすわ。少し離れてて」

 

どうやって掘るか考えていると、リーンが一歩進み出た。

 

「【風よ渦巻け、風の旋風、サイクロンストーム】」

 

巻き起こった竜巻に砂がどんどん吸い上げられ、上空へと舞い上がる。

 

やがて半球状の遺跡が現れ始めた。

 

みんなで扉の前に立つが、なんの反応もない。取っ手も無いのにどうやって開けるか?

 

何気なく扉に触れると

 

「うお⁉」

 

「玲我さん⁉」

 

すり抜けて遺跡の内部に入り込んでしまった。目の前にはあの時と同じ転送陣があった。一旦戻ろうと扉に触れるが、今度は硬い感触があった。・・・戻れなくなった。

 

≪主⁉大丈夫ですか⁉≫

 

≪なんともないよ、琥珀。中に転送陣があるから、ちょっと行ってみるよ。心配ないってみんなに伝えておいて≫

 

≪わかりました。お気をつけて≫

 

琥珀に念話で無事を伝えて、『庭園』と同じように転送陣を起動させた。

 

 

 

 

 

転送されると目の前には真っ白いサイコロのような立体の建築物が建っている。その建物に向かい歩くと、突然女の子が飛び出してきた。

 

「そこで止まるのでありまス!」

 

右手を翳し、僕を止めようとする。その少女はオレンジの髪を両サイドでお団子状にし、リボンのついたシニヨンカバーでまとめていた。シェスカと同じ白い肌に金色の瞳。服も同じデザインだが、長袖で黒のニーソックスを履いている。

 

「ようこそ、バビロンの『工房』へ。小生はここを管理する端末、ハイロゼッタでありまス。ロゼッタとお呼びくださると有難くありまス」

 

『工房』か。

 

「ここから先は『工房』の中枢でありまス。現在『適合者』以外は立ち入ることを禁じられているのでありまス!」

 

「そうなの、一応シェスカからは『適合者』と認められているんだけど…」

 

「シェスカ…フランシェスカでありまスか?なるほど、すでに『庭園』を手に入れているのでありまスね。それならば話が早い。『適合者』の資格があるか否か、小生も試させてもらうでありまスよ」

 

「試す?」

 

「そこから一歩も動かずに、小生のパンツの色を当てるでありまス!」

 

・・・はあ~、あの博士ホントに束と気が合うよ。

 

「答えるのは一回のみ。制限時間は五分。さあ、何色でありまスか⁉」

 

束ならこの場合黒や紫、いやあえて白・・・いやこの場合は、

 

「無色・・・穿いていないだろう?」

 

「正解でありまス!あなたを適合者と認め、今現在より個体名『ハイロゼッタ』は、あなたに譲渡されたでありまス。末永く宜しくお願いするでありまス!」

 

・・・当たっちゃったよ・・・とりあえず穿こうか。

 

 

 

 

 

そのあとは『工房』の説明をされたが、文字通り物を作ることに特化した施設であった。試しにギアトリンガーを複製できるか試したが、エラー表示が出た。やっぱこの星の素材じゃないから無理か。あとフレイムギアについて聞いてみたが、ここで作ってはいたが設計図は『蔵』にあるらしい。優先順位に『蔵』も追加しとこう。

そのあとはみんなを連れて来たが、

 

「『工房』かぁ~…」

 

「…なんだかイラっとするでありまス」

 

残念さを隠そうとせずにつぶやいたリーンを、横目でロゼッタがじろりと睨む。

 

「単独では意味がない『庭園』よりも遥かに役に立つでありまス」

 

「おっと、心の安らぎ、癒しの空間、ヒーリングガーデンである我が『庭園』こそ、マスターの心の支え。勘違いも甚だしイ」

 

「はいはい。どっちも役に立つんだから喧嘩しないの」

 

その後は『庭園』と共にベルファストへ向かった。合流したら合体させようかな?

 

 

 

 

 

珊瑚と黒曜を拾って我が家の庭へと転移し、リビングに入ると、レベッカさん、ローガンさん、ウィル君がものすごい速さで土下座をし始めた。

 

「え⁉」

 

「セシル殿に聞きました!次期国王陛下へのご無礼、何卒ご容赦いただきたく…!」

 

「あ~、あんまり気にしないでください。こっちも堅苦しいのは苦手なんで」

 

「はあ…」

 

渋々といった感じで三人とも立ち上がる。

 

「あたしたちはお風呂に入ってくるわね」

 

エルゼたちはぞろぞろと自分の部屋へと向かった。リーンもフレイズのことなどを報告にポーラと一度王宮へ戻った。シェスカはロゼッタを連れて自分の部屋へ向かった。

 

「それで他のみんなは?」

 

「疲れたのだろ…でしょう、泥のように眠ってる…であり「無理して敬語使わなくてもいいですよ」そうか?ではそうさせてもらうか」

 

「おいおい、いいのかよ?」

 

「本人がそう言ってくれてるんだ。構わんだろう」

 

慌てるローガンさんの言葉を無視して、レベッカさんがニヤリと笑う。

 

「それで、このあと皆さんはどうしますか?」

 

「それなんだが、彼女たちは元々村娘だからな、特別な技術を持ってるわけではないし、戦闘などもできるわけがない。なにかこの都で仕事を見つけるまで、置いてやってはくれないだろうか…」

 

「いいですけど・・・仕事か?」

 

なにかいい仕事が見つかればいいけどな




どうでしたか
今更ですg、文章を一行開けるか、開けないか。どっちの方が読みやすいのか。どっちの方がいいですか?


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娘⁉

遅くなりました
今回オリジナルキャラとして娘を出します。


<レイガサイド>

いい仕事が思いついたので元手のために自転車百台ほどを交易商人オルバさんに買い取ってもらった。思っていた以上に高額で売ることができたな。資金を持ってミスミドにイーシェン、リーフリースで最後にベルファストに行き、物語の本を何冊も買った。ただし完結したものに限る。合計五百冊ぐらいになったな。

 

「こんなに本を集めてどうするんです、か?」

 

リンゼがテーブルの上に山のように積まれた本を見ながら尋ねてくる。とりあえず買ってきた本全てにビルドギアで召喚した『掃除機フルボトル』の成分を付与する。これで何があっても清潔を保つことができる。

そこへドアを開けてエルゼが入って来た。

 

「言われた通りの物件を探してきたわよ。ちょうどいいのが一軒あったわ。南区中央通りの端っこだけど、けっこう広いし立地条件は悪くないわよ」

 

「よし、じゃあ見てから良さそうならそこを買おう」

 

「本屋でも開業するんです、か?」

 

「いや、本屋じゃなくて喫茶店。入店するのにお金がかかるけど。時間制でその間は喫茶店内の本をどれでも自由に読んでいいんだ」

 

僕の星でも有名な「漫画喫茶」だ。これもリムルのアイデアが考案した店である。この国には図書館すらないからこういったものがあれば便利だし。

 

「なるほど。たくさんの本を自由に読めて、食事もできる…私なら、入り浸ってしまいそう、です」

 

「で、その喫茶店をあの子たちに任せるわけ?」

 

「そう。まあ他にやりたいことが見つかったら辞めてもいいし、そうなったら別の人を雇えばいいし」

 

サンドラの砂漠で助けた彼女たちはそれなりに料理もできるし、そこらへんは大丈夫なはずだ。あとは防犯だな。

 

 

 

 

 

物件を見てみると、中々良かったので一階を本棚で一杯にして、二階と三階は個室にしようか。個室使用は値段を高めにして・・・リムルも同じことを考えてそうだな。

 

「問題なさそうだ。ここに決めよう」

 

不動産屋にサインをし、権利を買い取る。では改装するか。今回もカンドロイドたちに手伝ってもらおう。

ウェンディたちを屋敷から呼んできたが、ウィルもついて来た。これはこれは(・∀・)ニヤニヤ。ウェンディとウィル以外の六人全員に上の階での掃除を頼む。そっちにはタコとゴリラ、トリケラカンドロイドを向かわせた。

僕は一階の改装を担当する。ふかふかのソファーやリクライニングシートなどを作った。ウィルとウェンディには買ってきた本を本棚に並べていってもらう。

 

「旦那様、一つ質問があるんですけど。お客さんの中にはこっそり本を持ち帰ってしまう人も出てくるんじゃないですか?」

 

「あ、俺もそう思った。例えば個室で入店して、バックとかに本を入れてさ、そのまま何食わぬ顔で出ていくヤツとか出そう。そこらへんどうするんですか?」

 

「そこらへんの防犯対策はバッチリだよ」

 

対策としてすべての本にウィザードの『サンダー』とエグゼイドのエナジーアイテム『セーブ』を付与してある。これにより建物から持ち出すと『サンダー』が発動して対象を一日麻痺させる。さらに建物から十メートル離れると『セーブ』によって本棚のもとの位置に戻る。二重の防犯だ。あと番犬としてウィザードの『ブラックケルベロス』も置いておこう。

 

「確かにそれなら盗むことはできませんね」

 

「盗んだ奴は警部兵に突き出す。もちろん二度と出入り禁止だ。それでもなにかトラブルがあったときのために、レベッカさんや、ローガンさん、ウィルに警備の仕事を頼みたいなるべく知り合いの方がいいしね」

 

「俺は構いません。週に三日はギルドで別の依頼をこなして、残りの三日はここの警備をしようと思います」

 

「残りの一日は・・・デートかな?」

 

ウェンディとウィルを交互に見る。二人とも赤くなって初々しいね。他人の恋もだけど、自分に向けられた恋も自覚できるようにしないとな。またバイスとラブコフに怒られる。

 

しばらく作業をしていると

 

「旦那様は無属性魔法が使えていいよな!俺はなんの適性もないから羨ましい…」

 

ウィルが手を止めてこちらを見てつぶやいた。

 

「ウチの亡くなったじいちゃんは無属性魔法を使えたんだけどね。魔法の資質ってやっぱり遺伝しないんだなあ」

 

ウィルがため息をつきながらまた本を並べる。確かにエルゼとリンゼで魔法の適性が異なるし、そう考えるとこの星での魔法は生まれた瞬間に決まるな。

 

「おじいさんはどんな魔法を?」

 

「じいちゃんの無属性魔法は大した魔法じゃなかったですけどね。触ったものをちょっとだけ重くできる魔法だったんですよ」

 

「重く…?」

 

「はい。【グラビティ】って言うんですけど」

 

それって・・・とんでもなく強い魔法では?

まあ、それは後だ。あとは料理のメニューとか考えないとな。ケーキとか甘いものがいいかな。

 

 

 

 

 

開店まで数日、僕たちは仕事内容の練習や確認をした。分担としてはカウンターの受付に二人。茶髪でショートのスラスさんと、ふわふわウェーブロングのベルエさん。この二人は人当たりがよく明るいのでここにした。

厨房には黒髪姉妹のシアさんとミアさん。この二人はある程度料理ができたので、クレアさんからさらに教えてもらった。

そして接客にはリーダー格のシルヴィさん、体力がる元気いっぱいのマリカさん、そしてウェンディだ。

みんなの衣装はザナックさんに頼んだ。とりあえず子の布陣で営業を始めよう。休みは水曜と日曜。営業時間は午前九時から午後七時。入店時にはカードを作ってもらい、入店時間を記録する。利用時間の料金は前払いしてもらい、延長したらその分を帰りに追加でいただく。個室はさらに追加料金で、飲食代も帰りに一括だ。

あとはビラを配って千円をしよう。

ひと通りの確認が終わって、屋敷に戻って自分の部屋に入る。

椅子に座ってスマホを開くと

 

『お帰りなさいパパ。食事にします?お風呂にします?それともわ・た・し?』

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・え⁉・・・・・・・・・・・・・・・・えー-----------------------⁉

 

「な、な、なんでここにいるのハクちゃん⁉」

 

スマホには僕の娘であるハクちゃんがいた。

 

 

 

 

 

 

説明した方がいいね。まずこの子は僕の妻である篠ノ之束が作った『インフィニット・ストラトス』通称『IS』に眠る人口知能である。束によるとすべてのISにはこの人工知能がいるが、それと対話できるのが束本人しかいなかった、そう僕が来る前は。僕が彼女らと話せることを聞いた束は最初こそ驚いたが、僕なら当然ということにした。それからは束と結婚して、

 

「これからはこの子たちは私とレイ君の子供だね」

 

と言われ、一気に467人娘が増えた。まあ最初こそ動揺はしたが、徐々に慣れてきて今では僕の大切な娘たちである。しかし問題が一つ残ってしまった。それは僕が当時束から受け取った専用機「白桜」の人工知能「ハク」である。問題というのはハクが自分の体を作って実体化したのだ。これに関してはホントに大変で、他の娘たちも実体化したいと言い出しいて本当に苦労したよ。なんとか収まったが、今でも何人か言い出してくるし、パパホント大変。

 

「それでなんでハクちゃんがここにいるの?」

 

『お母さまに頼みました』

 

「束か・・・でもどうして?」

 

『パパに会いたくて…』

 

そういうところはかわいんだよな。

 

『あと、結奈お母さまから新しい妻の報告もするように言われました』

 

・・・絶対それがメインだよね。まあ、とにかくこのまま帰すのもかわいそうだし、このまま僕のサポートをしてもらおう。

 

「それでいいハクちゃん?」

 

『はい、パパ』

 

こうして僕の娘のハクちゃんが加わった。

 

 

 

 

 

 

しばらくして一階に降りると、ちょうどウィルが帰ってきた。

 

「ちょうどよかった。これからウィルに見せたいものがあるんだ」

 

「見せたいもの?」

 

テラスを抜けて庭に出る。僕はウィルから剣を貸してもらい鞘から抜いて地面に刺す。

 

「抜いてみみて」

 

「え?はあ…」

 

ウィルがすんなりと刺さった剣を抜く。問題なく抜けるよね。僕は【コネクト】ウィザードリングを外し、黄色のドラゴンが岩を持ち上げている絵が彫られている指輪【グラビティ】ウィザードリングを填める。

 

『【グラビティ】! プリーズ』

 

「抜いてみて」

 

「?」

 

ウィルが先ほどと同じように剣を抜こうとしたがビクともしない。

 

「な…!くっ、重ッ…!」

 

「この魔法は対象の『重さ』を変化させることができるんだ。ウィルのお祖父さんと同じ魔法で、少ししか重くできなかったのは、おそらく魔力量のせいだと思う」

 

剣を横に倒すとドズンと音を立てて倒れた。ウィルが持ち上げようとするがビクともしない。

 

「お祖父さんはものすごい魔法を使えたんだよ。ただ魔力量のせいでその効果が顕著に出なかっただけ」

 

「じいちゃんの魔法がそんなすごいものだったなんて…」

 

僕は収納魔法からミスリルの塊を取り出し、『ビルドギア』でウィルに合わせた胸当てと手甲を作る。

 

「これ・・・貰ってもいいんですか?」

 

「うん、ウィルにはこれからも頑張ってほしいし。・・・そうだ、あそこにでも行こうか?」

 

「え?」

 

 

 

 

 

「と、いうわけで、この子をシゴいてください」

 

「なるほど」

 

ウィルを連れて騎士団の練習場へやって来た。目の前にはニール副団長、横ではウィルが緊張でガクガク震えていた。

 

「ウィルと言ったかな?騎士団に入るかどうか置いといて、強くなりたいか?」

 

ニールさんがウィルを睨みながら聞く。

 

「それは・・・なりたいです。守りたい人がいるんです、俺。そのためにもっと強くなりたい。力だけじゃなくて、いろんなものから守れる男になりたい」

 

震えてはいたがハッキリと自分の意志を言えて、ウィルはこれからもっと強くなれるよ。

 

「けっこう!何かを誰かを守るために戦うのが騎士の本分。素質はありそうだな。朝か夕方、時間がある時に訓練に参加させてやる。存分に強くなると言い」

 

「はい!」




どうでしたか。
ハクちゃんの立ち位置はリムルでいうところの大賢者にしよう思います。
アイデア増加として、ギアのアイデア、出してほしい武器や技がある方はメッセージをお願いします。
募集の仕方が分からず申し訳ございません


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母と娘と蟹

短めです。
評価で星10が合ってうれしかったです。
評価設定とかまだよくわからないけどこれからも評価お願いします


<レイガサイド>

予想外にオープンした読書喫茶「月読」は評判が良かった。さすがリムルのアイデアだね。なんでも居心地の良さについつい長居してしまう人が続出したらしい。

そのため、三日後には一日フリーパスコースを作ることにした。やや金額が高くなるが、普通コースで一日中いるよりもかなり安くなる。部屋の数も足りないので晴れの日限定で庭を解放して長椅子でも読めるようにした。

女性が多く利用するので、女性受けしそうな本棚を作った。その中でもリンゼが選んだ本が人気だった。花丸の本も並べようかな?

売り上げも十分稼げたので、給料でみんなそれぞれ宿を見つけることができた。

 

「さてと、久しぶりにギルドに行こうかな」

 

他のみんなは予定があるそうで、ユミナだけが空いていた。早くギルドカードのランクを僕らと同じ赤にしたいらしい。

 

「じゃあ行こうか?」

 

「はい。討伐デートですねっ!」

 

あ~、二人じゃなくて三人だからデートでは・・・

 

『パパ、こういう時はデートでいいんです!』

 

はい、わかりました。

ギルドに着いて依頼ボードの前に向かおうとすると、ずいっと目の前に大男が立ちはだかる。なんだ?

腰に両刃の大斧を下げている男がニヤニヤした笑みを浮かびながら、

 

「おい、ガキがガキを連れてこんなところでなにやってやがる?ここは子供の遊び場じゃねえぞ?」

 

と言ってきた。新入りかな?周りも彼を見てニヤニヤしている。

 

「てめえ、聞いてんのか⁉痛い目に遭う前に、ぐぎゃッ⁉」

 

そいつがユミナに触れようとしたので躊躇なく撃った、麻痺断で。意識はあるだろうから、目の前に僕のギルドカードを出してやる。

 

「見た目で判断すると痛い目に遭うよ!」

 

ランク赤のギルドカードを見て目を見開いているそいつをギルドの外へ放り出す。ギルド内に戻るとさっきまでニヤニヤしていた彼らが大爆笑していた。

 

「『竜殺し』に絡むたあ、度胸のある奴だな!」

 

「誰か教えてやれよ。みんな黙っていやがって!」

 

「馬鹿野郎!それじゃ楽しめねえじゃねえか!」

 

違いない、とみんな笑い出した。あのさ・・・

 

『パパ、カッコよかったです!さっきの映像をみんなに拡散しました!』

 

・・・え⁉つ・ま・り466人の娘に報告しちゃったのこれを⁉

 

と僕がびっくりしている間にユミナが依頼書を持ってきた。

 

「玲我さん、これはどうですか?」

 

「えっと?ブラッディクラブ…いいと思うよ」

 

蟹か・・・久しぶりに食べたくなったな。依頼書を持って受付のお姉さんに渡すと

 

「あのー…光神さんって読書喫茶『月読』のオーナーさんなんですよね?」

 

と聞いて生きた。

 

「そうですけど」

 

「あのっ、リーフリース皇国の本で『薔薇の騎士団』ってシリーズがあるんですけど、入荷する予定とかありますかっ?」

 

「えーっと、その本って完結してます?」

 

「はいっ!全十五巻で完結しているはずです!」

 

「じゃあ仕入れときます。明日には並ぶようにしときますよ」

 

「そんなに早く⁉わあっ!すっごい楽しみにしてます!明日は私、仕事がお休みだから一日中楽しめますね!」

 

とても喜んでいたなお姉さん、でもさっきからユミナがちらちらとこちらを見ている。

 

「あのー…玲我さん。『薔薇の騎士団』ってどんな話か知ってます…」

 

「ん、知らないけど。有名な作品なの?」

 

その後ユミナに聞くと、まああれですよ。B〇ですよ。しかもその作者がリーフリース皇国の第一皇女である。・・・言ってはいけないと思うけどその国大丈夫?

 

『緊急事態!発生!ママ!パパがパパがBに』

 

ハクちゃん⁉違うからね。絶対にそれ報告しないで!

 

 

 

 

 

ハクちゃんの勘違いを解いてから僕たちはブラッディクラブの生息地まで向かって、しばらくして荒野が見えてきた。

 

「ハクちゃん、ブラッディクラブを検索してくれる」

 

『はい、パパ。・・・ここから南西に一体表示します』

 

目の前にこの辺りの地図が映像で表示させる。ここか?

 

「玲我さん、いまパパって?」

 

「ああ、紹介するよ。僕の娘で『白桜』略して『ハクちゃん』」

 

「娘⁉」

 

『初めまして、ユミナお母さま。パパの娘のバクと申します。これからもよろしくお願いします』

 

しばらくユミナとハクちゃんが楽しく話をしていた。

 

「いい娘さんですね。玲我さん」

 

「うん。自慢の娘だよ」

 

話を終えて僕たちはブラッディクラブの討伐に向かう。やがて赤い甲羅も巨大な蟹がいた。こちらに気づくと体の向きを変えて僕らの正面に立った。

僕はギアトリンガーを、ユミナはゴーカイガンを取り出し撃ち出すが、甲羅に傷一つつかない。

 

「【土よ絡め、大地の呪縛、アースバインド】」

 

ユミナの唱えた呪文でブラッディクラブの足元の土がそれぞれ脚に絡みつき、動きを鈍らせる。

そのあとはユミナが蟹の関節部分を撃ち、僕は【グラビティ】で蟹自身の重さを重くして倒すことができた。

結構あっさりと終わったな。脚一本だけ家で食べるとして、残りはギルドで換金しよう。

 

ギルドに戻り依頼完了を伝えると、

 

「このポイントでユミナ様のギルドランクが上がりました。おめでとうございます」

 

ユミナのランクが僕らと同じ赤になった。

 

「これでみなさんと同じランクですね」

 

『おめでとうございます。ユミナお母さま』

 

「ありがとう、ハクちゃん」

 

この二人はこの数時間でホントの母と娘のようになったな。

その後、さっきの受付のお姉さんにこれからの参考として入荷してほしい本を聞いたが、その~ほとんどがB系であった。

これ全部リーフリース皇国で買うのか・・・はあ~



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リーフリースへ

短めです
とりあえず行間隔をこれからもこれにしようと思います。


<レイガサイド>

リーフリースの首都、皇都ベルンに着いたが、すべてが白い。建物も階段も見渡す限りすべて白。

さて観光は次の機会にして、プリムさん(ギルド受付のお姉さん)に聞いた本を買いに行こう。

 

「すいません、本を探しているんですが」

「はい、タイトルをお教え下さればお探しいたしますが?」

「これなんですけど」

 

懐からメモを取り出し、カウンターのお姉さんに渡す。

 

「えーっと・・・、」

 

メモのタイトルを見ながら僕の顔をキラキラした目で見る。

 

「あの~その本は注文されて捜しているものでして」

「…なるほど。はい、わかっておりますよ。揃えてきますので少々お待ちくださいね」

 

店員さんが本を揃えている間、店に置く本でも物色する。

ひと回りしてカウンターに戻ってくると、本が山積みになっていた。でも店員さんと女性客が揉めていた。

 

「申し訳ございません。こちらが最後の在庫でございまして、次の入荷は未定となっております」

「そんなぁ~・・・」

 

見た感じ貴族の人っぽいけど。

 

「あ、お客様、ご注文の品が全て揃いました。そちらもお求めですか?」

「あ、はい。一緒にお願いします」

「え?『薔薇マジ』買ったのってこの人?」

 

さっきの女性客が僕を凝視する。

 

「いったいどうしたんですか?」

「はあ・・・お客様が注文された『薔薇色マジカル』の最終巻なんですが、こちらが最後の在庫になっておりまして、そちらの方もこちらをお買い求めに来たと・・・」

 

ああ、そういうことか。どうしようか・・・あんまり使いたくないんだけど仕方ないか。

 

「すいません。最終巻だけお金を二倍出すので今からすることは内緒にしてくれませんか?」

「「え⁉」」

 

僕は収納魔法から黒いWRB『ブランクワンダーライドブック』を取り出し、薔薇マジに添える。するとブランクWRBが薔薇マジの最終巻へと変わった。

 

「「えー-⁉」」

「さて、こっちの方はあなたに。これは僕が買いますね。このことは内緒でお願いします」

 

僕はオリジナルの本を女性客にブランクWRBを僕が買うことにした。

 

「いいんですか?」

「はい。この方が誰も損しないし、もちろんお金は払いますよ」

「ありがとうございます!」

 

女性客は本を脇に挟みながら僕の両手を掴みブンブンと腕を振る。

 

「・・・『薔薇の騎士団』も買ったんですか?」

「え?そうですけど」

 

腕を振るのを止め、山積みの本を見て僕のことをキラキラいやギラギラした目で見てくる。

 

「『薔薇マジ』といい・・・なかなか目の付け所がいいですね」

「はあ~、ありがとうございます?」

 

選んでくれたのはプリムさんだけど。

 

「『薔薇マジ』のお礼に『薔薇の騎士団』の全巻にサインを書きましょうか?」

「・・・え?」

 

サイン?まるで作者本人のような言い方・・・・・・え⁉まさか⁉

 

「あの~もしかしてあなたはリリエル皇女さまですか?」

「え?」

 

僕が尋ねてみると女性の顔からダラダラと汗を流して、口をパクパク開いたり閉じたりし始めた。

 

「どっ、どっ、どどど、どうしてそれをっ・・・!お父様でさえ知らないハズなのにっ・・・!」

「あの~僕は光神玲我と申しまして、ベルファスト王女、ユミナ姫の婚約者です。非公式だけど」

「ええッ⁉ベルファストのユミナっ⁉しかも婚約者⁉あの子結婚するの⁉」

「とりあえず本を買ってから話しましょう?」

 

そう言ってリリエル皇女を落ち着かせ、お互い本を買って外に出て、店の陰で【コネクト】を開き、ユミナと琥珀を連れて来た。

 

「お久しぶりです。リリ姉様」

「ユミナ⁉え?いつリーフリースに⁉」

「ごめん。ユミナ、説明頼むよ。琥珀は護衛をお願い」

≪かしこまりました≫

 

しばらくして話が終わり帰ることになった。

 

「じゃあリリ姉様、お元気で。また会いましょうね」

「ユミナも。結婚式には呼んでね」

 

【コネクト】を抜け、自宅に戻る。

家に帰ると、リンゼが山積みの本をじっと見ていたので、ロゼッタにお願いして『工房』で本を増やしてもらうことを提案すると、ものすごい早さでロゼッタを捜しに行った。

ブランクWRBは個数が少ないので『工房』でコピーしたほうが手っ取り早い。

ちなみに今日の夜ご飯はカニ鍋でした。久しぶりに食べるとおいしいかった~。

 

次の日、「月読」はかつてないほどの盛況ぶりを見せた。開店前には長蛇の行列ができたとか、二号店も考えようかな

さらに数ヶ月後にはリリエル皇女様が新シリーズを発売したらしい。でもなんで挿絵が僕に似ているんだろうか?なんかとてつもなく不安である。



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新作と拳

〈レイガサイド〉

朝、目を覚ますと目の前にロゼッタがいた。

 

「ふわあ〜、おはようロゼッタ。朝からどうした?」

「はイ。マスター登録をしに来たのでありまス」

 

あ〜そういえば登録してなかったな。

 

「キスするんなら、妻以外「妻になるのでありまス」・・・返事早くない」

「シェスカから話は聞いていたでありまス」

「・・・そうですか」

 

なんとなくそんな気がしていたけど、当たるとは。

 

「わかったよ。これからもよろしくね、ロゼッタ」

「はイ。マスター」

 

ロゼッタとキスをし、『工房』の所有者となった。ちなみにロゼッタはメイドになるのではなく、『工房』で作業するらしい。

 

「マスター、実は鋼と銀が欲しいのでありまスが・・・」

「?いいけど、何を造ってるの?」

「それは完成するまで秘密でありまス」

 

別に何を造ってもいいけど、危険な物はやめてよね。僕はロゼッタに鋼と銀を渡す。

 

「あ、それとお客さまが来てるでありまスよ」

「お客?こんな朝早くに?」

 

着替えを済ませ、リビングに向かう。中に入ると、ライムさんとレオン将軍がいた。

 

「おう。玲我殿。朝からすまんな」

「お客って将軍でしたか。どうしたんですか、朝早くに?」

「いや、ちょっと頼みがあってな」

 

頼み?

 

「ウチのリオンに変な武器をやったろう?槍になったり、剣になったりするヤツだ」

「ああ、界雷ですか、なにか問題でもありましたか?」

「いや、別に問題はない。ただ、儂もあんなガントレットが欲しい」

「・・・は?」

「今日、軍と騎士団が合同訓練をするのだ。息子とやりあったときに親父として負けるわけにはいかんだろ」

「あ〜、そうですか・・・でも今のガントレットにもなんか魔法付与が付いてましたよね?」

 

僕が尋ねると将軍は赤銅色のガントレットを取り出す。

 

「確かにこいつには炎の魔法付与があるが、生身の相手以外にはあまり効果が無くてな。できれば破壊力の増す付与が欲しい。防御力も高めたいところだが」

「なるほど、うーん?コレに手を加えます?それとも新しいのを作りますか?」

「こいつにはそれなりに思い入れがあるからな。これはこれでとっておきたい。新品のを作ってもらえるか?」

「了解!」

 

エルゼ用のガントレットを作る予定だったからちょうどよかった。ミスリルの塊を出してと、形のモデルは仮面ライダーナックルの『クルミボンバー』にして、盾は左手にしようか。フォーゼの『シールドモジュール』がちょうどいいかな。右手にはの『サゴーゾコンボ』の重力を操る能力を付与しよう。麻痺にはスーパー1の『エレキハンド』で、ついでに炎属性の付与として『クローズマグマ』も入れておこう。それぞれのギアを同時に使う。

『ババババーン! ビルド! ナックル! フォーゼ! オーズ! スーパー1! クローズ!』

「とりあえずこんなもんかな」

「おお、できたか!」

 

作った黄色のガントレットを手渡す。

 

「ふむ、さすがにミスリルだけであって軽いな」

「使い方を説明しますから移動しましょうか」

 

【コネクト】で前回ブラッディクラブを討伐した荒野に移動する。

 

「まずは、左手のガントレットは盾に変形します。『シールドオン』という言葉で発動、『シールドオフ』で戻ります」

「ほう。『シールドオン』。おおっ!」

 

将軍の声に反応して左手のガントレットが小型の盾になる。見た目はかわいい宇宙船だが、防御力は大丈夫である。

 

「次に攻撃時ですが、『インパクト』の言葉で、ガントレット自体の重さが瞬間的に二百倍になります。危険なので軽装備の人には使用しないでください」

「二百倍⁉」

 

僕がそう言うと、将軍が大きな岩壁に向けて構えをとる。

 

「『インパクト』!」

 

将軍の拳が当たった瞬間、目の前の岩壁が粉々に砕け散った。

 

「ふむ!いいな、これは!魔獣や重装歩兵とやり合うときには助かりそうだ!」

「あと『エレキモード』の言葉で麻痺効果、『マグマモード』で炎の付与が追加されます。『モードオフ』で全て通常効果に戻ります」

「おお、炎の付与も付いているのか。『火焔拳レオン』としてはありがたいな」

 

将軍は嬉しそうに笑った。訓練場に転移し、ガントレットを打ち鳴らしながら、喜々として息子のリオンさんを捜しに行った。リオンさん、ごめん・・・

 

「あれ、玲我?」

「ん?エルゼ?」

 

軍の朝訓練を終えたエルゼが汗をタオルで拭きながらこちらに歩いてきた。

 

「どうしたの、こんなところで?」

「将軍から武器を作ってくれって頼まれてさ」

「ふうん・・・そうだ、玲我。これから【コネクト】で帰るなら、いっそ『銀月』に行かない?温泉入りたい」

「温泉か・・・いいね。じゃあ行こうか」

「やった」

 

温泉はこの前お試しで『銀月』で作ったのだが、思っていた以上に人気が出て、今では人気スポットになった。

『銀月』に着いてエルゼを送ると、男性湯からザナックさんが現れた。

 

「あれ、ザナックさん?」

「おや、久しぶりですね」

 

 

 

 

 

 

 

「で、これ」

「そう、僕からのプレゼント」

 

僕はザナックさんからさっき受け取った新しい服をエルゼに着替えてもらった。いわゆるチャイナドレスだ。

 

「似合ってるよ。可愛い」

「なっ、なに言ってるのよっ!」

 

顔を赤くしてエルゼがうつむく。

 

「受け取ってくれる?」

「・・・うん。ありがと・・・」

 

可愛くて思わず抱きしめてしまう。人目?・・・そんなの関係ない!

さすがにこの格好で家まで歩くわけにはいかないで【ゲート】で転移した。

家の庭に出ると新しい靴に慣れていないせいか、歩きにくそうなエルゼが僕の腕にしがみついてきた。

 

「し、しばらくこのままで・・・いい・・・?」

 

もちろん・・・断る理由はありません!

 

「玲我、そこまでいくとさすがに・・・ヤバいぞ」

(なんか言ったバイス?)

「いや、なんでも」




次回からは帝国編
悪魔が出るということなので
彼ら関係が多く出そうと思います


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帝国の姫との出会い

帝国編に入りました。


〈レイガサイド〉

「どうも最近、帝国の動きがおかしいんだよな」

 

八重と二人でギルドの依頼をこなしたあと、喫茶店でばったり出会ったローガンさんがそんなことを言い始めた。

 

「おかしいって何がですが?」

「なんとなくだが・・・妙だ。最近、帝国の軍の戦力強化が目立つらしいんだが、今のところ帝国には表立って敵対している国はない」

「どこかの国に攻め込もうとしているのでは?」

 

隣に座る八重がローガンさんに聞くが、答えたのはレベッカさんさった。

 

「それはないな。帝国では今、皇帝が病に臥せているという。時期皇帝である皇太子はまだ二十歳を超えたばっかりで、正直まだ帝国を背負うには力不足だ。いま戦争を起こしてもなんの得もないだろうよ」

「皇帝が防御したのちに、他国から攻め込まれることを懸念しているのでござろうか・・・?」

「今の状況で帝国に喧嘩を売ってもどこの国も得はないと思うけどな」

「そのあとの帝国領をどう分けるかでかなり揉めそうだし」

 

笑いながらローガンさんに答える。

二人と別れ、「月読」に寄ると入会依頼が来ていた。ただ、どれも帝国の出版物であった。

 

「帝国か・・・まあパパッと行って買ってくるだけだし、八重はどうする?」

「二階にリンゼ殿がいるようなので、誘って家に帰るでござるよ。そろそろおやつ時でござるし」

「わかったよ。じゃあ行ってくるよ」

 

リンゼを八重に任せて【コネクト】を開き、レグるシ帝国の帝都、ガラリアへと転移した。

 

 

 

 

 

「なんだこりゃあ・・・?」

 

転移して見えた景色は燃え盛る家並みと飛び散る火の粉。ただの火事じゃないな。一番高い建物の屋根の上から見ると

 

「まじか・・・」

 

見えたのは逃げる一般人と、それを無視して城へ向かう黒い軍服の兵士たち。そしてそれを食い止めようとする黒い鎧の騎士たち。まさか・・・戦争⁉

と考えていると近くで黒い軍服二人が一人の黒騎士を追い詰めていた。ヤバい!

兵士たちの背後に降り立ち、驚いて振り向く二人に向けてギアトリンガーを撃つ。

 

「「ぐはっ⁉」」

 

あっさりとくずれおちる兵士たち。それを見て騎士が倒れる。

 

「大丈夫ですか⁉」

 

コスモスギアを使い、傷を治すが意識が朦朧としている。血を失いすぎたのか。血までは回復できないからな。

 

「いったいなにがあったんですか⁉」

「軍部が・・・帝国に謀反を・・・」

 

そう言うと騎士は気を失った。

まさかこれ・・・クーデターか⁉

とりあえず騎士を近くの家で下ろし、護衛として『ジャスティスハンター』を置いていく。

 

「この人を頼むよ」

『♪♪』

 

家を出て、状況を判断する。

 

「ハクちゃん。軍人と騎士を検索して」

『はい、パパ。・・・完了しました。地図を表示します。赤が軍人一二六五四人、青が騎士で一一六五人です』

 

ほぼ十倍かよ。周りも火事で覆われているし・・・とりあえずクーデターを起こした奴らの目的は十中八区皇帝だろう。

 

「城に向かって皇帝をベルファストまで連れて行こうか」

『それが一番の案です、パパ』

 

僕は国の中央にある城を目指すことにした。

 

 

 

 

 

「さてと、どこが皇帝の部屋かな?」

 

なんとか城の中に侵入することができが、部屋がわからず近場から開けていくと、人が室内に転がり込んできた。

 

「うおあ⁉」

 

転がってきたのは女性の騎士であった。扉に背をもたれていたようだが、動かず目だけこちらを向いている。首筋を見るとなにか針のようなものが刺さっている、毒針か。

 

「今から治してあげますけど、僕は敵じゃないので斬りかからないでくださいよ?、フルムーンレクト!」

 

柔らかい光が女騎士を包む。しばらくすると彼女は起き上がり、いきなり腰の二本の剣を抜き放ち、僕に振りかぶった。はあ⁉

 

「ちょっと⁉僕は敵じゃないって言いましたよね」

「貴方は誰です!騎士団の者でなければ軍の者だしょう!軍の者であれば今は敵です!故に斬ります!」

 

・・・この子・・・頭が悪いのかな?

 

「あのさ、僕が軍の者ならあなたを助ける必要ありますか?」

「そう言えば・・・」

「それに帝国の人間でもありません。僕は光神玲我。ベルファストの冒険者です。今日たまたま帝都に来たらこの騒動に巻き込まれました。城には皇帝陛下やこの国の重要人物を逃がそうと思いい転移魔法で来ました」

 

僕が説明すると、女騎士の表情が疑念から希望に変わった。

 

「転移魔法・・・それは本当ですか⁉本当なら頼みます、力を貸してください!」

「いいですけど、もう襲ったりしないでください」

「わかりました。双剣に誓って」

 

二本の剣を収め、僕の方を向く。

 

「玲我さん、でしたね。私はキャロライン・リエット。キャロルとお呼びください。帝国第三騎士団所属、第四階級の騎士です」

 

僕はキャロルさんと握手する。

 

「皇帝陛下の元へ急ぎましょう!私が案内します!」

 

彼女が走り出す際に見えた剣の塚尻に描かれていた紋章を見て驚愕した。

 

(え⁉あれってレネのネックレスと同じ紋章⁉)

 

それを確かめようとする時間もないので後で聞くことにした。

 

 

 

 

 

皇帝陛下の部屋に向かう途中、どこからか女の子の悲鳴が聞こえた。

 

「ハクちゃん!」

『はい。目の前の部屋の奥からです!』

 

僕は扉を蹴破り、その先の扉も同じように蹴破る。そこには銀色の髪をした少女に馬乗りになり、その子の首を押さえて、今にも短剣を胸に突き刺そうとしている軍服の男がいた。

 

「ぬ、誰「うっさい!」ぐほあっ⁉」

 

面倒なので、一瞬で近づきそいつの腹を蹴る。手加減できなかったので壁まで吹き飛んだが、どうでもいい。助けた少女は自分の身をかき抱き、ガタガタと震えていた。無理もないよね。

 

「大丈夫?」

 

静かな声で話しかけると、初めて僕の方に顔を向けた。

深い翡翠のような双眸と白磁のような肌。サラサラの銀髪と白いシルクのようなドレス。だがよく見るといたるところが切り裂かれ、腕にも切り傷ができていた。このままじゃ痕になってしまう。

 

「フルムーンレクト!」

 

僕の言葉に一瞬怯えた表情に浮かべるが、自分の傷が治っていくのも見ると、驚きの表情へと変わった。

 

「あ・・・貴方は・・・?」

「僕は光神玲我。冒険者だよ」

「光神、玲我様・・・」

「立てる?」

「はい・・・」

 

手を取って立ち上がられる、あれ、この子もしかして?

 

「あのー・・・」

「はっ⁉いえっ、な、なんでもありませんわ!」

 

少女は頬を染めながら、今度はこちらをちらちらと見ながら小さく口を開いた。

 

「わ、私、あまり殿方と触れ合う機会がなかったものですから・・・ちょ、ちょ、ちょっと緊張いたしまして・・・」

「そうなんですか」

 

とりあえず名前を聞こうとしたが

 

「姫様⁉」

「キャロル⁉」

 

部屋に飛び込んできたキャロルさんに阻まれた。やっぱり姫様だったか。

 

「お姫様だったんだね」

「レグルス帝国第三皇女、ルーシア・レア・レグルスですわ。・・・玲我様はあまり驚かれないのですね?」

「君の他にも二人ほどお姫様の知り合いがいるからね。ある程度慣れているよ」

 

ホントは星にもたくさんいるが。

 

「そんなに王家の姫と知り合いとは・・・あなたは何者なんです?」

「それはあとで説明するので、今はどうします。ルーシア姫だけでも安全な場所に転移しますか?」

「そうですね・・・」

「私は後でかまいません。それよりもお父様とお兄様が心配ですわ。一緒に参ります」

「わかった。逃がすのはその二人でいいの?」

「とりあえずは。宰相や大臣もその場にいれば、ついでに逃がしたいところですけど」

「わかった」

 

僕らは皇帝陛下がいる寝室に向けて走り出した。

 

 

 

 

 

しばらく走っていると、皇帝陛下がいる寝室にようやくたどり着くことができた。

部屋に入ると、そこには軍人兵士が三人、士官が二人、将軍みたいのが一人。そして数人の死体。護衛の騎士だろう。その中でベッドの下に転がる老人の人が見えた。あの人がレグルス帝国の皇帝だろう。・・・見た感じまだ生きているな。

 

「何者だ?騎士団の者ではないな?」

 

将軍みたいなのが誰何する。

 

「バズール将軍!皇帝陛下を手にかけるとは気でも触れたのですか!」

「お父様・・・!」

「む、これはルーシア姫とリエット家の馬鹿娘か。妙だな、二人とも『テレポート! プリーズ』!」

 

話を聞くのが面倒なので、『テレポートウィザードリング』を使って皇帝陛下を僕らの近くに転移させる。これ射程距離は短いけど、【コネクト】のような魔法陣をくぐる必要が無いのでこうゆう時に便利だ。これに対して全員が驚いていた。

 

「よっと、ユーリ!この人の治癒任せる!」

「任せろ!」

 

僕の身体から光の剣が現れ、人の姿に変わった。ユーリに皇帝陛下の治癒を任せて僕はバズール将軍の方を見る。

 

「さてと、いったいどうやって戦争に勝つつもりなの?」

「貴様が何をしたかわからないが、勝てるさ。これを使えば」

 

バズール将軍が窓の方へ右手を翳し、魔力を集中させ始めた。あれ、周りの魔力があいつに集まってきてる?

 

「【闇よ来たれ、我が求むは悪魔の公爵、デモンズロード】」

 

バズール将軍が呪文を唱えた瞬間、壁一面の窓が吹き飛び、辺りが閃光に包まれた。

光が消えると。そこには巨大な悪魔の姿がいた。でもあの悪魔の魔力どっかで?

 

「そんな・・・あれほどの悪魔と契約するにはどれだけの代償が必要になるか・・・。それに存在を維持するための魔力だってどこから・・・」

 

ガクガクと震えながらルーシア姫がつぶやく。

 

「悪魔との契約は簡単だ。生贄だよ。帝都の犯罪者を生贄にささげた。一体でも上位の悪魔と契約できれば、それより下位の悪魔を自由に呼び出せる。そして魔力はこの『吸魔の腕輪』を使えば他人から魔力を吸い出すことができる。この場にいる全員が魔力を少しずつ吸い取られ、あのデモンズロードの糧となっているのだ」

 

・・・他人の魔力ってことは僕のもか。でも吸われてる感じはしないけどな。

 

「俺が与えた」

(・・・何してるんだよ、ベイル!)

「どういうつもりだよ、ベイちゃん!」

「面白そうだからな」

 

・・・だからあの悪魔からベイルの魔力を感じるんだな。

 

『パパ、他にも・・・です』

 

ハクちゃんによれば、あの悪魔『魔法無効化』を持っているし、バズール将軍のもう片方には『防壁の腕輪』と呼ばれる魔力量により強力な障壁を生み出す腕輪も持っている。

面倒だな。

 

「【コネクト】」

「ユーリ!先に三人を連れて行ってくれる」

「わかった」

 

ルーシア姫たちをユーリと共に家に避難させる。さてと、

 

「また来るけど、最後にこれを。ミガケソウル」

『ミガケソウル! ツルツルッ!』

 

懐からリュウソウル『ミガケソウル』を取り出す。リュウソウケンにセットし剣先を床に当てる。すると床がツルツルになる。このリュウソウルは対象の摩擦係数をほとんどゼロにする。

 

「「「「「「うわっ⁉」」」」」」

 

その場にいる全員が豪快にコケる。

さらに虫が描かれWRB『昆虫大百科』を取り出し開く。

 

『昆虫大百科! この薄命の群が舞う、幻想の一節・・・』

 

すると本から大量の虫が現れ、床を這いまわる。

 

「ひいっ!」

「虫が!虫があぁぁぁ」

「貴様あぁぁ!覚えてろよッ!」

 

・・・リムルが考案した嫌がらせだけど、相当な効果を与えているな。今度お礼言わないと。

僕はその場を後に我がYに帰った。



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報告と紋章と真実

大変遅くなりました
これから投稿ペースが遅くなると思いますが、これからもお願いします。
追記いろいろ変更しました


〈レイガサイド〉

ベルファストの我が家に転移した後皇帝をベッドを転移し、ライムさんに医者を呼んでくるよう頼み、ルーシア姫とキャロルさんを移動させた部屋へと案内した。

 

「・・・まったく・・・もう・・・なんだって玲我はこう面倒ごとに首を突っ込むのかしら」

 

エルゼが呆れたようにため息をつく。いや~なんでだろうね?

 

「・・・それにしても帝国がそんなことに・・・皇太子はどうなったんでしょうか・・・」

「しかしこれはとんでもない事件でござるぞ。本当に帝国がベルファストに攻めてきたら・・・」

「悪魔の軍団による侵攻、ですか。その前になんとか手を打たないとですね・・・」

「悪魔か・・・」

 

そう呟いてバイスたちを見る。・・・・あッ!いいこと思いついた

 

 

 

 

 

「じき、意識も戻りましょう。さすが玲我殿だな」

 

ライムさんが連れて来たラウル医師はそう言って聴診器をテーブルに置いた。治したのはユーリだけど、しれっと病気も治しているし。

 

「それにしても・・・まさか帝国の皇帝陛下を診ることになろうとは・・・。人生面白いものですな」

 

苦笑しながらラウル医師は口を開く。あれからルーシア姫はずっと父親の看病を続けている。その隣ではキャロルさんも付き従っていた。

 

「ルーシア姫。そろそろ休んだらどうかな。君まで倒れては元も子もないだろ?」

「はい・・・あの、私のことはルー、とお呼び下さいませんか?」

「わかったよ。ルー。これでいい?」

「はい。嬉しいですわ」

 

そう言って微笑むルー。ふと視線を逸らすと部屋の扉の隙間からユミナがこちらを見ていた。どうしたんだ?

 

「お初にお目にかかります。ベルファスト王国国王、トリストウィン・エルネス・ベルファストが娘、ユミナ・エルネア・ベルファストでございます」

 

ユミナが名乗りを上げると、ルーとキャロルさんが目を見開き驚いていたが、やがてルーが慌てて立ち上がり、同じように一礼した。

 

「初めまして、ユミナ王女様。レグルス帝国皇帝、ゼフィルス・ロア・レグルスが第三皇女、ルーシア・レア・レグルスですわ」

「この度は大変でしたね。ご無事で何よりです」

「はい。玲我様に助けていただいて、窮地を脱することができましたわ」

「それは良かったです。私も玲我さんのフィアンセとして嬉しく思いますわ」

「えっ・・・。そ、そうなんですか・・・?」

「ルーシア姫。少しお話があるのですが、私の部屋へおいで下さりませんか?」

「?ええ、構いませんが・・・」

 

ユミナのあとについていくルー。

 

(ねえ、バイス。聞きたいことがあるんだけど・・・)

「お~なんだ、レイガ?」

(・・・ルーは、その~僕に好意ある感じ?)

「・・・」

(・・・バイス?)

えー-------------------------!

(え⁉ちょっ、バイス。どうしたのいきなり叫んで⁉)

「どうしたのじゃないぞ!あの鈍感神が、あれだけ自分への好意を知らなかった鈍感神が⁉」

(そこまで言わなくてもー)

「これは大変だ。今すぐ報告しないと!帰っていますぐ宴の準備を!」

(そこまでする⁉)

 

 

 

 

 

「帝国がそのようなことになっているとはな・・・」

 

国王陛下に事情を話し、帝国領土と接している砦の防御を固めるように進言した。あと「ゲートミラー」も何個か渡しておいた。これで連絡がスムーズになる。

 

「しかしいい知らせと悪い知らせを同時に聞くことになろうとはな・・・。今日はなんて日だ」

 

うん?いい知らせ?

 

「あ・・・。ユミナに弟か妹ができた」

「へえー、おめでとうございます・・・・・・はあ⁉」

 

詳しく話を聞くとなんとユエル様が妊娠されたとか。いきなりで驚いたな。

そのあとは生まれた子が女の子の場合、国を受け継いでほしいと懇願されたがさすがにお断りした。まだ自分の星以外の国の王様になるつもりはないからな。

 

 

 

 

 

王様に報告(皇帝と皇女のことは内緒した)した後『工房』へ行き準備をしていた。

 

「しかし、『吸魔の腕輪』に『防壁の腕輪』でありまスか・・・」

「心当たりでもあるの?」

「確か、バビロンの『蔵』にそのような能力を持ったアーティファクトがあったような気がするんでありまスよ」

「・・・はあ⁉」

 

詳しくロゼッタから聞くと、その二つはバビロンの『蔵』に保管されていたとか・・・しかも『不死の宝玉』まで。しかも『蔵』の管理者はうっかり屋の粗忽者らしい。・・・・残念な子もいるんだな。

 

 

 

 

 

夕方になってロゼッタと共に自宅のリビングに戻るとキャロルさんが皇帝の意識が戻ったことを教えてくれた。

皇帝陛下に当てがった部屋に入ると娘のルーと穏やかに話す皇帝の姿があった。

 

「玲我様!お父様がお目覚めに!」

「・・・そなたが光神玲我殿か?」

 

見た感じ元気そうだね。

 

「まずは礼を言わねばな。余の命とルーシアの命を救ってくれたこと、感謝しても、し足りぬ・・・」

「お気になさらず。たまたまあのとき帝都に買い出しに行っていただけですので」

「そう言ってもらえると助かる。此度の騒動は余の不徳と致すところだ。まこと口惜しい・・・」

「それでこれからどうします?まだベルファストには知らせていないので、どこか行く当てがあるならお送りしますが?」

「いや・・・玲我殿はベルファストの人間ではないのか?」

「住んではいますけど、国に仕えているわけではないですし。国王陛下とは仲良くさせていただいていますが、国家問題となると違ってきますから」

「それなら、ベルファスト国王に会わせて欲しい。できるのであれば内密に話をしたいのだが、どうだろうか?」

「たぶん大丈夫だとは思いますけど・・・いいんですか?」

「この際だ。今までのことや、これからのことを話し合いたい」

 

 

 

 

 

それからすぐにユミナと共に国王陛下のところへ向かい、このことを伝えるとまた驚かれた。やっぱり報告しておいた方がよかったかな。しばらくして国王陛下とユミナを皇帝がいる部屋まで連れて行った。僕は廊下に出て気になったことをキャロルさんに聞いた。

 

「すみません、キャロルさん。その剣の紋章なんですけど・・・」

「我がリエット家の紋章ですが、何か?」

 

間近でよく見せてもらう。やっぱりだ。

 

「この紋章と同じものが彫られたペンダントを見たことがあります」

「ッ!それは風の魔石が嵌め込まれたやつですか⁉どこで⁉その人は⁉」

 

それから話を聞くと、そのペンダントの持ち主はキャロルさんのお姉さんであった。幼いころに父に反発して家を飛び出したらしい。

 

「そうですか・・・姉上は亡くなったのですか・・・。父上も亡くなる寸前まで姉上と喧嘩別れしたことを悔やんでいて・・・。向こうで二人とも仲直りしているでしょうか・・・」

「・・・実はお姉さんなんですけど、娘さんが一人いまして。その子が今ウチにいるんですが・・・」

「・・・え⁉」

 

キャロルさんが目を丸くして絶句する。そんなところに

 

「玲我兄ちゃ・・・っと、旦那様、お食事の用意ができました!」

「ありがとうレネ。あとでいただくよ」

 

レネがやってきて僕とキャロルさんに頭を下げてから廊下に戻っていった。

 

「あの子です。名前はレネ。ここに来る以前は貧民街でスリをしていました。そうでもしないと生きていけなかったんですよ」

「そんな・・・!」

 

廊下の先を見つめていたキャロルさんが僕の方へ視線を戻した。

 

「・・・そのうちあの子と話してみたいんですが、いいでしょうか?」

「いいですよ」

 

それがレネのためになればいいな。



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悪魔ライダー

遅くなりました。


〈レイガサイド〉

「玲我さん、お父様と皇帝陛下がお呼びになっています」

「僕を?」

 

しばらくするとユミナが僕を呼んできた。中へ入るとベッドには皇帝が、その隣の椅子には国王陛下が座っていた。

 

「玲我殿、昼間の話だが・・・」

「昼間のアレですか?」

 

確かバズール将軍を倒す話だっけ?妊娠の話の後にさらっと言ったけど。

 

「将軍を倒すことはできますよ。他の軍人も無力化できますし、明日にでも実行しようと思います」

「「「な⁉」」」

 

驚きに固まるユミナを除いた三人。ユミナは当然とばかりに胸を張っていた。

 

「あ、でも一つだけ。今回の反乱に加わった軍人たちはどうする気ですか?」

「いや、将軍をはじめ主だった幹部は死刑をやむをえないが、ただ従っただけの者は軍務を解き、帝都を追放とするに留めるつもりだ」

「そうですか」

 

それを聞いて僕は納得した。

 

「ハクちゃん。レグルス帝国のマップを表示して」

『はい。マップを表示します』

 

部屋の中央に帝都の地図を映し出す。

 

「な、なんだ、これは⁉」

「帝都の地図ですわ。それもこんなに細かい・・・」

「あー、僕が持っているギアの力の一つです」

 

驚く皇帝陛下とルーに説明する。さすがにハクちゃんのことは話さない。

 

「騎士団員を青、軍人を赤で表示して」

『はい。表示します』

 

映し出された地図に赤い点が広がる。一方城の隅の一角に青い点が固まっていた。

 

「ここは?」

「・・・地下牢だな。おそらく騎士団の者は捕らえられているのだろう。だが全員ではない。少ないな。他の者は逃げたが、殺されたか・・・」

 

悔しそうに拳を握る皇帝。それを見ておずおずとルーが僕に声をかけてきた。

 

「あの、玲我様。お兄様を捜すことはできますか?」

「お兄さん?」

 

ルーから聞くとなんとあの場にいたらしい。

 

「わかったよ。ルー、目をつぶってお兄さんのことを思い浮かべて」

「は、はい」

 

目をつぶって集中しているルーのおでこにイーシェンの時と同じようにマジチケットを当て僕のおでこも当てる。

 

「ふわわっ⁉」

「集中して」

「は、はいぃ!」

「【記憶よ、我に移れ。ルーマ・ゴルド】」

 

僕の頭に皇太子のイメージが流れてくる。うん?てかこの人・・・・

 

「この人なら僕、会ったことある・・・」

「「「「え⁉」」」」

 

あの時のお兄さんが皇太子さんだったんだ。ジャスティスハンターを傍に置いておいて正解だった。早速ハクちゃんにお願いして検索してみる。するとピンが帝都の一角に落ちた。

 

「ここってどこですか・・・?」

「帝国西方軍司令、ロメロ将軍の屋敷だな・・・。なるほど、皇太子は無事らしい」

「将軍ですか?」

「彼は悪魔召喚による他国への侵攻策に一番反対していた。だから皇太子(むすこ)もそこへ逃げ込んだのだろう」

 

なるほど、軍人全員がバズールに従っているわけではないんだな。

 

「じゃあ明日朝イチで帝都に乗り込みますね」

「ちょっ、待ってくれ!今更だが、本当に大丈夫なのか⁉相手は一万以上の軍隊と召喚悪魔の軍団だぞ⁉そなた一人で・・・!」

 

皇帝陛下が慌てたように僕を引き止める。

 

「大丈夫ですよ。僕には心強い仲間がいますから」

 

ユミナとバイスたちに視線を向けると全員力強く頷いた。

 

「・・・明日の朝、余も帝都に連れて行ってくれないか」

「危険じゃないですか?」

「いや、事の結末を見届けたい。それがせめてもの皇帝としての余の務めだ」

「なら皇帝の護衛にはベルファストの騎士団をつけよう。自分も玲我殿の戦いぶりを見てみたい」

 

国王陛下がそう言いだしたので、了承した。明日の朝、騎士団の数十名と共に帝都に乗り込むという事で話は決まった。【コネクト】で王様を王宮へ送り、皇帝の部屋を後にした。

僕はテラスに出て琥珀と黒曜、珊瑚にお願いして召喚魔法について聞いてみた。

 

「じゃあ悪魔と同じで上級種と契約していれば、その眷族や下級種を自由に呼び出せるのか」

『はい。主は私と契約しているため、ほぼすべての獣魔種を召喚できます』

『私たちとも契約しているから甲鱗種も呼び出せるわよぉ』

『一応そに種族ごとに契約する必要がありますがの。頭目である者に名前をつければ、その種族は主の手足となり従いましょうぞ。悪魔なぞ、ものの数ではありませぬ』

 

それぞれ琥珀と黒曜、珊瑚が教えてくれる。

 

「とりあえずやってみるか」

 

その日は夜遅くまで魔獣を呼び出し名付けを繰り返した。この作業は昔リムルと一緒にしたから慣れたな。ゴブリンの時やオークの時や・・・・懐かしいな。

 

 

 

 

 

次の日の朝。僕らは帝都の片隅、高台にある建物の屋上に来ていた。こちらの面子は僕の他にエルゼ、リンゼ、八重、ユミナ、琥珀に珊瑚と黒曜。それとレグルス皇帝陛下とベルファスト国王陛下、レオン将軍と二ール副団長。リオンさんにベルファスト軍と騎士団から十名ずつ。あとルーとキャロルさん。

 

「まずは宣戦布告といきますか。ハクちゃんお願い」

『はい。再生します』

 

すると、帝都の空に大きな画面が広がる。続けて大音量で音楽が流れ、帝都中の住民が注目し始める。やがて画面の中に皇帝陛下が現れる。

 

『帝都民に告ぐ。余はレグルス帝国皇帝、ゼフィルス・ロア・レグルスである。此度の騒動は一部の群が暴走したことが発端である。皆に迷惑をかけたこと、深く詫びよう。しかし、それもすぐに鎮圧される。安心してほしい。今をもって帝都奪還の行動に移る。決して家から出ないように願いたい』

「余はあんな声なのか?」

 

事前に録画した映像を見て皇帝陛下が娘に首をひねって尋ねる。

 

『そして反乱を起こした軍の者に告ぐ。余にもいたらぬところがあったのだろうが、今回のことを見逃すわけにはいかん。しかし、投稿は認めよう。今より十数える間は軍服を脱ぎ、余に従うのであれば咎めはせぬが、十数え終わった時、まだ軍服を着ている者には容赦せぬ。よく考えて行動せよ。ひとつ・・・ふたつ・・・』

「ハクちゃん、どんな感じ?」

『はい』

 

僕らの横にサブモニターが映し出され、マップには軍属を表す赤い点がいっぱい表示出されていたが、少しずつ消えていった。

 

「十まで数えてまだ軍属にいる者には攻撃を加えますが、よろしいですか?」

「やむを得ん。ただし、命を奪うのはなるべく避けてほしい」

「わかりました」

 

僕は皇帝陛下の返事を聞いて待機する。

 

『九つ・・・十。譲歩はここまでだ。これより実力行使で帝都を奪還する』

 

画面より皇帝が消えると、再び大音量でトランペットのファンファーレが鳴り響く。

 

「さてと、ハクちゃん。お願い」

『はい。・・・ターゲット捕捉完了。【サンダー】発動します』

 

帝都のあちらこちらで小さな悲鳴と倒れる音がする。徐々に赤い点が黄色に変化していく。結構残ったな。まあ弱めの麻痺にしたから護符でも持っているのか。

 

「玲我殿!あれを!」

 

八重の指し示す城の方を見ると、例のデモンズロードが現れた。空や大地にも様々な悪魔の眷族が現れる。

 

「じゃあこちらも呼び出すとしますか」

 

召喚魔法を使って召喚獣を呼び出す。リザードマン部隊、グリフォン部隊、アーマータートル部隊・・・・いろいろ契約したな。

 

「さてと、じゃあこっちも」

 

僕はバットバイスタンプを起動させ、胸に押印する。

 

バット! ♪♪』

「よっと」

 

僕の影からカゲロウが現れる。バットバイスタンプとツーサイドライバーをカゲロウに渡して僕は月闇と『こぶた3兄弟WRB』を取り出し開く。

 

こぶた3兄弟! とある三兄弟が繰り広げる、お家を守る戦いの物語・・・

 

本を閉じ、ジャガンリーダーに接触させる。

 

『必殺リード!ジャアクぶた三! 月闇必殺撃! 習得一閃!』

「暗黒分身斬!」

 

剣を振るうと僕は三人に分身する。

 

「「「「え⁉」」」」

「玲我様が三人に!」

「うそ!」

 

エルゼ、リンゼ、八重、ユミナ、ルーとキャロルさんを始めに全員がこの状況に驚いた。

僕は分身した一人Bにコブラバイスタンプと『リベラドライバー』を渡し。もう片方Cにスパイダーバイスタンプと『デモンズドライバー』を渡す。

僕らはそれぞれのベルトを着けバイスタンプを起動する。

 

「それじゃ、行くよ!沸いて来たぜ!」

レックス!』

「白黒つけようぜ!」

バット!』

「さくっと行くよ!」

コブラ!』

「ああ」

スパイダー!』

 

僕とカゲロウ、僕Bはそれぞれのバイスタンプをベルトのオーインジェクターに、僕Cはデモンズレッドパッドに押印する。

 

♪♪♪カモン! レ! レ! レ! レックス! ♪♪♪カモン! レ! レ! レ! レックス!

Confirmed! ♪♪♪ Eeny,meeny,miny,moe♪Eeny,meeny,miny,moe♪

♪♪♪ What's coming up?What's coming up?

Deal! ♪♪♪

 

「「「「変身!」」」」

 

僕はバイスタンプをバイスタンプゴースロットに差し込み倒す。カゲロウはバイスタンプスロットを差しベルトと分離しツーサイドトリガーを引く。僕Bはバイスタンプスロットに差し込んだバイスタンプを横に倒す。僕Cはオーインジェクターに押印する。

 

バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!

バーサスアップ! Madness! Hopeless! Darkness! バット! 仮面ライダーエビル!

リベラルアップ! Ah Going my way! 仮面ライダー! 蛇! 蛇! 蛇! ジャンヌ!

Decide up! Deep深く. Drop落ちる. Danger危険. 仮面Rider. Demons

 

ここにいま五人の仮面ライダーが現れた。




どうでしたか
次回は戦闘描写ですが、たぶん難しいので駄文になると思われますが、よろしくお願いします


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帝国決着と執事⁉

大変遅くなりました
書ける時間がなく大変でしたが、ようやく出せます。
今回であるキャラが出ます。


〈レイガサイド〉

「さてと、じゃあ昨日の打ち合わせ通り召喚獣は琥珀、珊瑚、黒曜、エルゼ、八重に従ってくれ。ユミナとリンゼ、ケルベロスはここで待機しつつ魔法や銃で援護射撃。僕はデモンズロードと将軍を叩く。カゲロウと他の僕は残りの悪魔を頼むよ」

 

ポンッと煙を上げて、琥珀たちが元の姿へと戻る。神獣モードだ。

 

「じゃあ、ちょっと行ってきます」

「・・・頼む」

 

皇帝にそう告げて、僕らは帝都の敵陣目指して駆けだした。

 

 

 

エルゼと八重、珊瑚に黒曜、ジャンヌとラブコフにデモンズは地上部隊を連れて、帝都の市街地に降りていく。

僕とバイス、エビルと琥珀、グリフォン部隊は空を飛ぶ悪魔と対峙した。

 

「無理して倒す必要ないからね。悪魔の羽を狙って攻撃して。下に落とせば何とかしてくれるから」

 

グリフォンたちにそう命令する。クアァ!と鳴いてグリフォンたちの一部が左右に分かれて攻撃を始めた。

残った僕たちは屋根から屋根へと疾走しながら迫り来る悪魔に向かっていく。

 

「ハアァ!」

 

オーイングバスター50で悪魔を倒していく。他のみんなのそれぞれの武器を使って戦っている。

 

「そろそろかな。琥珀!エビル!ここは任せた!」

『御意!ご武運を』

「任せろ」

「バイス!城に向かうよ!」

「おうよ」

 

その場を琥珀とカゲロウに任せて僕とバイスはデモンズロードに向かう。

 

 

 

 

 

〈カゲロウサイド〉

さてと、あの二人が親玉に向かったから、俺たちは小物でも倒すか。

 

「おい。ジャンヌ、デモンズ。一気にやるぞ」

「OK」

「わかった」

 

俺がそう言うと、ジャンヌがクジャクバイスタンプをデモンズがモグラバイスタンプを取り出し起動する。

 

クジャク!』

モグラ

 

ジャンヌはベルトを戻して、すでにセットしてあるコブラバイスタンプを外し、クジャクバイスタンプをセットし、アクティベートノックを押し、再び倒した。

 

リスタイル! ウエポンポンポーン!(ポンポン!)ウエポンポンポーン!(ポンポン!) リバディアップ! Ah クジャク! ダダダダーン!』

「ラブ~」

 

音声が終わると、そばにいたラブコフが二つの扇子『ラブコフクジャクゲノム』に変身する。

 

「いくよ!ラブちゃん」

「コブ!」

 

一方デモンズはデオンズノックを押して、モグラバイスタンプをデモンズレッドパッドに、次にオーインジェクターに押印する。

 

『Add! Dominate up! モグラ! ゲノミクス!』

 

すると、デモンズの右腕からドリル形状の武器『モグラドリル』に変化する。

 

「これで決めるぜ」

 

俺はエビルブレードにセットしてあるバットバイスタンプのアクティベートノックを押し、ジャンヌはベルトを戻して再び倒す。デモンズはデモンズノックを2回押し込んだ。

 

『必殺承認! バット! ダークネスフィニッシュ!』

『クジャク! スタンピングスマッシュ!』

『More モグラ! デモンズレクイエム!』

 

それぞれの必殺技が悪魔にぶつかると、いたるところで爆発が起こった。半数いやそれ以上倒した。ていうか同じ悪魔なのにこんだけの力しかないのかよ。もっと強い奴と戦いたいな。

 

 

 

 

 

〈レイガサイド〉

デモンズロードに向かいながら道中の悪魔を倒している。

すると、デモンズロードはこちらに向かって目から熱線を放ってきた。

 

「あぶなっ!」

 

とっさに躱すと地面が熱で焼け焦げていた。近づきたいが、デモンズロードを守るように下級悪魔が僕たちを襲ってくる。それなら、僕はオーイングバスターを横に持ち、『メガロドンバイスタンプ』を起動させ、オーインジェクターに押印する。

 

『♪メガロドン』

『スタンバイ!』

 

メガロドンバイスタンプをバイスタンプスロットに差し、銃口をデモンズロードに向け、トリガーを引く。

 

『必殺承認! メガロドン! スタンピングストライク!』

「くらえ!」

 

銃口から巨大なサメ、メガロドンが現れ悪魔たちをかみ砕く。その勢いはデモンズロードまで届いた。

 

『Gyaaaaaaaa!』

 

予想できなかった攻撃にデモンズロードが絶叫する。

 

「よし、バイス。最後はあれでいこう」

「OK。あれな」

 

僕はバイスに声をかけ、ベルトのバイスタンプを倒し、アクティベートノックを押して再び倒す。

 

『リミックス! バディアップ! 必殺! 繰り出す! マックス! レックス!』

 

僕とバイスは組体操のサボテンと同じ体制になる。すると、徐々に姿が変わって、巨大なティラノサウルス『リバイスレックス』となった。ちなみにバイスが下で僕が上だ。

 

「一気に行くぜ」

「おうよ」

 

僕たちはデモンズロードに突っ込み、口で挟んで上空に投げ飛ばした。僕たちも上空に飛ぶ。

 

「これで終わりだ」

『レックス! スタンピングフィニッシュ!』

 

全体重を乗せたキック『レックススタンピングフィニッシ(リミックス版)』をくらったデモンズロードは地上にものすごいスピードで落ちた。

 

「よっと」

「それでは皆さんご一緒に、3 2 1」

 

バイスのカウントダウンが終わると、デモンズロードは爆発した。毎回思うけど、なんでライダーキックで爆発するんだろう?

まあ、それは置いといて残りは

 

「あとはあなただけですね。バズール将軍」

「おっ、お前は何者んなんだ⁉あれは上級悪魔だぞ!倒すことなんてできるはずが」

「そんなこと言われても」

「くっ…だが私には『防壁の腕輪』と『吸魔の腕輪』がある。上級悪魔もまた呼び出せばいい。皇帝はどうやら死ななかったようだが、もはや帝国は私のものだ。私が新たな「そろそろこの者をやっていいですか? レイガ様」なに!」

「いいよ。後のことは頼むよ」

「仰せのままに」

 

僕はバズール将軍の後ろにいる黒服の執事にそう言うと、彼はバズール将軍の頭を鷲掴みにして持ち上げる。

 

「それでは・・・さようなら。儚き皇よ」

「ぐあぁぁぁぁ!」

 

バズール将軍は叫び出すが、しばらくすると静まった。そのままバズール将軍を降ろすと白目を剥いて気絶していた。

 

「ありがとう。協力してくれて」

「いえいえ。これぐらいのことならいつでも」

「あいかわらず惨いことするな」

「なにか言いましたか、バイスさん?」

「いえ!何も」

 

彼にお礼を言って周りを見てみると、帝都中の悪魔が消えてしまっていた。おそらく魔力供給が絶たれたからだな。

悪魔に関しては問題はもうないな。あとは軍人たちか。とりあえず皇帝陛下たちを呼び寄せるか。

 

「今回は本当にありがとう

 

 

ディアブロ

 

僕は改めて黒服の執事またの名を聖魔十二守護王の一人『魔神王ディアブロ』に感謝の言葉をかけた。

 

 

 

 

 




キャラを出すのはいいけど、喋り方が難しいです。
次回の更新は未定ですが早めに出したいです。
これからもよろしくお願いします。


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新国と妻たち

遅くなって申し訳ありません。
今回で新たな妻が出ます。
それに加えて嫁リストも更新します


〈レイガサイド〉

「本当に一人で片付けてしまうとは…」

 

皇帝陛下は呆れたような口調で、白目を剥いたまま気絶している将軍を見た。ちなみに僕の分身は消え、変身も解いている。ディアブロもあの後星に帰って行った。

ベルファストの騎士たちが城の地下牢へ帝国騎士を解放しに行った。

その間に皇帝陛下をバルコニーの隅へ連れ出し、事態が終息したことを帝都民に知らせるために再び映像を流すことをハクちゃんに頼んだ。今回は生中継だ。

 

『帝都民よ。迷惑をかけた。既に反乱の首謀者は捕らえられ、帝都は我らの手に戻った。安心してほしい』

 

同時に気絶している将軍の姿を映す。この姿を見たら他の軍人たちも投降するだろう。

 

『二度とこのようなことの無きよう、襟を正すことにしよう。いま一度、謝罪の意を示したい。すまなかった』

 

小さく皇帝陛下が頭を下げる。僕も何度か星のみんなに頭を下げたな。そのあと、毎回みんな土下座するからどっちが謝罪しているかわからなくなるよ。

中継を終えると、皇帝が物憂げな眼差しで将軍を見つめている。

 

「どうかしましたか?」

「いや…。こやつが哀れに思えてな。こやつは強き帝国を目指して邁進し、犠牲など省みることなく突き進んでいた若かりし頃の余を見て軍に入ったという。いわばこやつは余の若かりし時の鏡よ。余も病にならなければ、こやつのようになっていたかもしれん。そう思うと哀れでな…」

「それでもこの人がやった罪は赦せるものじゃないですよ?」

「わかっておるよ。罪は罪。償わなければならん。此度のことでいろんな迷惑や借りを作ってしまったしな。ケジメはつけるべきだ」

 

皇帝が寂しそうに笑う。この人も犠牲者なんだよな。

 

「陛下!」

 

バルコニーへドタドタと黒い鎧を着たままの騎士たちが雪崩れ込んできた。地下牢に閉じ込められた帝国の騎士たちか。その中でもリーダーらしき人が皇帝陛下の前で膝をつく。よく見ると隻眼だね。

 

「陛下…よくぞご無事で!しかもお身体も良くなられているご様子…いったいこれは…⁉」

「おう。ガスパル騎士団長か。そこの玲我殿のおかげでな。健康にしてもらった上に、バズール将軍も倒してもらったぞ」

「なんと⁉」

 

驚きの眼差しで帝国騎士団長が僕の方と、気絶している将軍を交互に見た。

そこへ大虎となった琥珀に乗ってエルゼと八重がやって来た。遅れて黒曜と珊瑚もミニサイズでやって来た。

 

「一応、片付いたわよ。軍属の兵士たちはほとんど気絶している状態ね」

 

エルゼが琥珀から降りながら報告する。残りの兵士たちも片付いたようだ。二人も無事でよかった。

 

「よし、倒れている兵士たちを捕縛しろ。事前に投降した兵士たちには手を出さぬように」

「はっ!」

 

皇帝の命により、ガスパル騎士団長を先頭に騎士たちがバルコニーを出ていく。これでとりあえず解決したかな。

 

 

 

 

 

倒れていた兵士たちは全て捕縛され、地下牢などへと入れられた。彼らは軍属を剥がされ、その上で罪を吟味されるんだそうだ。

全員がそれなりの罰を受けるらしい。死刑でないだけマジだろう。

捕らえられていた重臣たちも解放され、ロメロ将軍と共に皇太子も城へやって来た。

 

「この度は本当に世話になった。玲我殿は余の命の恩人というだけでなく、姫や皇太子…いや、帝国の恩人とも言える。なにかお礼がしたのだが、望みはあるだろうか?」

「いや、今回のことは流れというか、たまたまそうなっただけですし。気にしないでください」

 

皇帝陛下の申し出をやんわりと断る。

 

「変わらんな、玲我殿は。ベルファストでも玲我殿に爵位を授けようとしたのですが、このように断られましてな。結局、金と家を受け取ってもらえただけで。まあ、娘をもらってくれたのが一番でしたがね」

「ほほう。では余の方もルーシアをもらえるのかな。ベルファストとレグルス、両方の姫を娶ったとなれば、これほど両国の同盟に象徴的な存在はないしのう」

 

あー、この流れは…

 

「ルーシア姫が私たちと同じく、玲我さんの婚約者となることに私は賛成します。ご本人に確認をとっていますが、彼女もそれを望んでおりますし。何より両国の友好のため、これは良いご縁ではないかと」

「あー、あたしも賛成」

「私も、です」

「拙者もかまわないでござるよ」

「シェスカとロゼッタもすでに賛同しています」

 

他の婚約者たちも賛同してくれる。いつのまにシェスカとロゼッタに聞いていたのユミナ⁉

 

「ルーシアはどうだ?玲我殿のもとへ嫁ぐのは嫌か?」

「いいえ、お父様。嬉しすぎて気絶してしまいそうですわ!こんなに幸せなことはありません!喜んで玲我殿のところへお嫁に行きます!」

 

鼻息を荒く両手を胸の前で組み合わせながら、キラキラとした瞳をこちらへ向けてくる。

 

「・・・ルーが自身で決めたことなら、僕の返事は決まってます。これからもよろしく、ルー」

 

僕がそう言うと、ルーははしゃぎながらユミナたちの輪に加わっていく。

 

「むろんそれとは別に、謝礼としていくらか贈らせてもらうぞ。どちらにしろこれで対等な関係として、ベルファストとレグルスの同盟を結ぶことができる」

「ところでこの際だからユミナとの婚約もルーシア姫との婚約も、国内外に正式に発表してはどうかと思うのだ。しかしそうなると玲我殿にそれなりの身分が必要となってくる。そこでレグルス皇帝と協議をした結果、玲我殿には両国から領地を分割譲渡することに決まった」

 

・・・へ?

 

「…どういうことです?」

「拝頭ではない、譲渡だ。つまり、レグルスとベルファストの境に小さな国を建国する。そしてそこの国王として玲我殿に即位してもらう、とこういうわけだ」

「はあ⁉」

 

嘘でしょ⁉

 

「まあ、建国と言っても国民は玲我殿の身内だけだが。だが、小さくても独立国である以上、ベルファストやレグルスの法律に縛られることはない。その建国の後ろ盾には両国がなるし、むろん不可侵とする。その国でどんなことが起ころうが、こちらは一切干渉しない。玲我殿の自由だ。これなら立場的にも問題ないし、両国の姫と結婚するにもふさわしい身分となる」

 

 

 

 

 

それから詳しい場所を地図で教えてもらう。

でも一つ問題が、そこは魔獣が多い場所の地域であった。いや、これ住むために魔獣をどうにかしないといけないじゃん。

 

「なんか騙されているような?」

「いやいやいや。土地が豊かなのは確かだし、国土としてもそれなりに広い。ここが安全地帯となれば、交易路を安心して人々は利用できるし、玲我殿も土地と身分を手に入れることができる。いいことずくめじゃないか」

 

うー-ん・・・。二つ目の国か・・・

 

「わかりました。その土地を安全にしてくればいいでしょ。やりますよ」

「すまんな。そのあと両国の後ろ盾をもって、正式な声明で新国家樹立を宣言すればいい。両国と同盟関係にある国は承認するだろう」

 

これはまたみんな驚くな・・・

 

「とうとう王様でござるか・・・。拙者たちの旦那様はすごいでござるなあ」

「ねー。ここまでになるとは思ってもみなかったわよ」

 

八重とエルゼが顔を見合わす。

 

「国の名前とか、どうするんですか?」

 

リンゼが僕に尋ねてくる。国名か・・・リムルの国はジュラ・テンペスト・・・テンペスト・・・

 

「テンペスト・レイ公国」

「テンペスト・レイですか?」

「うん。テンペストは僕の友達の名前からとって、レイは僕の名前からとったんだ」

「テンペスト・レイ公国、か。悪くない。ベルファスト王国はテンペスト・レイ公国の建国を支持し、同盟国として承認する」

「レグルス帝国も同じく」

「では、これで「すばらしい!」!」

 

突然の大声にその場の全員が声をした方向を向く。いや、この声ってもしかして

 

「さすがはレイガ様、二つ目の国を作るとはこのディアブロ、感服いたします」

「誰だ貴様!」

「いつここに!」

 

レオン将軍とロメロ将軍が叫びながら攻撃態勢をとる。他のみんなも臨戦態勢をとる。

 

「みんな大丈夫だよ。僕の知り合いだから」

「玲我殿の⁉」

「うん。というか。ディアブロどうしたの?帰ったと思ったけど」

「はい。今回のことをリムル様に伝えた後、レイガ様の妻方に連れて行ってほしいと言われ」

「・・・え⁉今何って「お久しぶりです。レイガ様」! うそでしょ⁉」

 

ディアブロの後ろを覗くとそこには銀髪のメイドと金髪の少女、黒髪の成人女性。

 

「あ、あ、あ、あ、グレイフィア!、ユエ!、ヨル!

 

僕の妻が三人そこにいた。とびきりの冷たい視線を向けて。




どうでしたか
ハイスクールdxdからグレイフィア
あるふれからユエ
スパイファミリーからヨルを出しました。
喋り方とか変かもしれないので、そこらへんはご了承ください


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妻たちの会合

遅れてごめんなさい
ようやくできました。ヒロインの喋り方が合っているかわかりませんが、そこらへんはお願いします。
ウルトラマンデッカー第1話最高でした。いつかこの作品でも出したいです


〈バイスサイド〉

みんなー、俺っちイケてる悪魔バイスでーす。今回は俺っちから始まるぜー。前回は、レイガと俺っち、その他大勢の奴らと一緒に帝国を乗っ取ろうとした・・・ハスール?将軍って奴をぶっ倒したお礼に国を作ることになったんだ。いやー俺っちの活躍見てくれたか?

 

「ラブ。コブコブ!」

 

え?大した活躍もしてないくせに、何前回のおさらいしてんだよ、馬鹿って、・・・なーに!俺っちだって活躍したし、ってか、ラブコフの方が活躍してないだろ!扇子になってただ振り回されてただけだろ!

 

「ラブ!コブコブ!クズ!」

 

あー!そこまで言うんならやってやろうじゃねえか!

 

「何言い争いしてんだよ。仕方ないから、続きは俺が、そのあと国を作ることにはなったが、惑星レイガから帰ってきたディアブロのせいで、騒動が起きた。いや現在進行形で騒動が起きてるな。見てる分には面白いけどな笑」

 

おい、カゲロウ何おさらいやってるんだよ!

 

「うっせえ、お前らが言い争いしてるのが悪いんだよ。てかもう終わるぞ」

 

なに⁉待ってまだ俺っちの活躍の話・・・

 

 

〈レイガサイド〉

なんだろ?バイスの叫び声が聞こえたような?

 

「レイガ様、話を聞いていますか?」

「はい!」

 

そう言われ、僕は背筋を伸ばして三人の妻の前で正座している。まさか、妻が来るとは思わなかった。いつの間にかディアブロは帰ったし。

 

「レイガ・・・どうして報告しなかったの?」

「ユエさんの言う通りです。新しい妻ができたら報告するように約束しましたよね。それがどうしていきなり六人もいるんですか」

「はい」

 

ユエとヨルの視線が痛い。

 

「レイガ様。私たちは貴方様に妻が増えてもそれを受け入れます。貴方様は一人一人妻を大事にしています。私もレイガ様を、愛しています。ただ、約束は守ってください」

「はい。今回はごめんなさい」

 

グレイフィアにそう言われ、自分が情けない。妻を大事にしてるつもりだったけど・・・

 

「顔を上げてください。貴方様が私たちをどれだけ愛しているか、大事にしているか知っています」

「うん・・・レイガ私たちのこと・・・愛してくれてる」

「私たちも愛しています」

 

本当僕には素敵な妻たちがいるんだな。今もこれからもずっと愛しているよ。

 

「あのー、お話は終わりましたか?」

「・・・あ!」

 

やばい!ユミナたちに説明しないと・・・てかさっきまでの会話全部聞かれてた・・・あーーー!

 

 

 

 

 

「初めまして、玲我様のメイド兼妻のグレイフィアです。これからも同じ夫の妻としてよろしくお願いいたします」

「うん・・・同じく妻のユエ・・・よろしく」

「同じく妻のヨルと申します。これからもよろしくお願いします」

 

その後、一旦自分たちの屋敷に戻って、お互い自己紹介をした。

まあ、この自己紹介のあと,ユミナたちに尋問されまくった。「妻ってどうゆうことよ!」「あと何人いるでござるか!」「メイドってそういう趣味を持っているのですか」「マスター、やっぱりロリコンでスか?」といろいろ質問されまくった。あとシェスカ確かに妻の中には体が小さい人もいるけど、決してロリコンではありません!

ようやく事態が収まった後、女子メンバーは女子会ならぬ妻会が行われた。僕の今までの活躍や出来事を・・・・あー---!(/ω\)。

だけどみんなが仲良くなって良かった。・・・これいつか全員紹介しないといけないよね。どうしよう⁉

 

 

 

 

 

次の日、僕たちは譲り受けた土地の魔獣の清掃をしていた。清掃といってもお互いの力を確認する見せ合いっこみたいな感じになったけど。グレイフィアとユエは魔法で、ヨルは武術で魔獣を圧倒した。その戦いからリンゼとユミナはグレイフィアとユエに,エルゼと八重,ルーはヨルに惚れ込んだ。惚れ込んだと言ってもお姉さん的存在として。

 

「やっと終わったぁ・・・」

 

清掃の後、魔獣の後始末として毛皮を剥ぎ取っていた。結構な数だったから途中から王都からレベッカさんにローガンさん,それにウィルを連れて来て手伝ってもらった。剥いだ素材の半分は各々自分のものにしてもいいといったら、喜んで手伝ってくれたので助かった。

同じように手が空いていたメイドのセシルさんや、庭師のフリオさん、非番だったリオンさんにも手伝ってもらった。とくにリオンさんが剥いで剥いで剥ぎまくっていたが、オリガさんへのプレゼントかな?

しかし、最もすごかったのはヨルであった。だって30秒で1匹ペースだったからね。ルーも最初は手こずっていたが、僕とヨルが教えてあげるとすぐに上達した。

 

「こういうの初めてでしょ?」

「はい。でも、こういうのも勉強になりますわ。いろいろ学んで他の皆さんと同じように早く玲我様のお役に立ちたいんですの」

 

そう言って笑うルーの頭を撫でてあげると、照れたように頬を染めた。うん、可愛い。でもその光景を見て、他の妻たちが物欲しそうな視線を向けてきたので、全員の頭を撫でた。やっぱりかわいい。

ちなみにルーは「双剣使い」らしく、八重が一度手合わせをしてみたら、ルーの腕前はそこそこあるとのこと。双剣なら翠風かな。

 

「さて、これで危険な魔獣はいなくなったかな?」

『パパ。森の一角に数人固まっています。盗賊団かもしれません』

「盗賊団?」

 

画面を見ながらハクちゃんが教えてくれる。

 

「あらハクちゃん。元気にしていましたか」

『はい。グレイフィアお母さま、ユエお母さま、ヨルお母さま。お久しぶりです』

「うん・・・久しぶり」

「束さんが駄々こねていましたよ。「ず~る~い~私もレッくんに会いに行きたい。ハグハグしたい~」と言ってました」

「あ~束なら言いそう」

 

そんな家族話を切り上げて、僕は盗賊団のところに向かおうとすると

 

「玲我殿。私もついて行っていいですかね」

 

リオンさんが名乗り出たので、一緒に向かうことにした。

 

「で?賞金首が目当てですか?」

「え?あー、ははは。やっぱりわかります?」

「はい。オリガさんにプレゼント、婚約指輪ですか?」

「あ、や、そっちの方はもう贈ったんでいいんですけど。結婚資金と当座の生活費用、それとできれば新居がほしなあって・・・」

「そうですか、おめでとうございます。実家からの援助は?」

「いや、ウチは『自分の力で切り開け』って家風だし、向こうは『お金は自分で稼ぐもの』ってのが信条ですからね・・・」

 

確かにあの二人ならそう言うな。

 

「二人とも実家暮らしでしたからね。私は次男ですし、結婚するなら家を出ないといけないんで」

「オリガさんがベルファストに来るんですよね?」

「私が商人を継ぐわけにもいかないですしね。しかしこの分ではオリガさんをこちらに呼ぶのがいつになることやら・・・」

 

ため息をつくリオンさん。うーん、僕も支援したいけどたぶんレオン将軍に怒られるかもしれんし。

 

「盗賊団が奪った金品とかってどうなるんですか?」

「出自がわかるものは持ち主に返却されますよ。それ以外は盗賊団を捕まえた者の所有物になります。そうでもしないと盗賊団を退治する旨味がないから、長いこと放置されてしまいますし」

「ってことはこの先の盗賊団がたんまりお金をもっていたら」

「実はそれを期待しています。もちろん持ち主がわかるものは返却しますけど」

 

会話しながら僕たちは盗賊がいる場所まで向かった。あるといいな。

 

 

 

 

 

その後はあっさり盗賊団を退治してみんなのところに戻ると素材の選別がちょうど終わっていた。僕はルーとリオンさんを連れてギルドへ向かい、素材換金とルーのギルド登録をした。あと、悪魔を討伐したことにより、僕のランクが銀ランクになった。あとデーモンバスターの称号も手に入れた。

リオンさんもけっこうな収入を得ることができた。

結婚のお祝い何を贈ろうか?




どうでしたか。
これから嫁リストを更新する予定です。今回で一区切りするつもりです。
作品に出せるかはわかりません


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お家建設

おひさしぶりです。ようやくテストが終わりました。これからは2日に一回出せるようにしたいです。


〈レイガサイド〉

帝国の反乱騒動から一ヶ月がたった。皇帝陛下は僕のことを帝都を救った冒険者または英雄として称えた。

これを機に、帝国はベルファストとの友好・同盟を発表、同時に互いの国から領土を分割した「テンペスト・レイ公国」の建国を許可した。

もちろんその国の王「公王」は僕である。

新国家樹立には皆驚いたようだが、現状はなにも無い平原だから、興味は続かなかった。リムルにも相談しようかな。てかまずこのこと報告しないと。

ユミナとルーとの婚約発表は先送りとなった。ベルファストのユエル王妃が産む子によって僕の立場も変わってくる。そのためユミナとの婚約発表は延期となり、ルーだけではどうかということになったわけだ。あとグレイフィアたちは僕のサポートとして残ることに決まった。なんでもあと何人かこちらに来るかもしれないとあとで結菜に電話で伝えられた。誰が来るだろうか?

 

「・・・結局、あの国に引っ越すんですか?」

「ん、その予定は無いけど?」

 

リンゼの言葉に応えながら、リビングでライムさんが持ってきてくれた紅茶を飲む。ちなみにグレイフィアはこの屋敷でメイドとして活動している。主にレネのメイド教育をしている。ユエとヨルはそれぞれ魔法と武術をユミナたちに教えている。

 

「しかし・・・今はいいでござるが、どのみち引っ越すことになると思うでござるよ」

「だよね」

「ここに住んでたらベルファスト寄りって思われるでしょうね」

「うーん・・・この屋敷ごと向こうに転移しようかな」

「ここはここで王都の拠点として残した方がいいんじゃないでしょうか。テンペスト・レイ公国大使館として」

 

そっか、そういう形もありだな。と、なると向こうで新しく建てるか・・・、と考えているとユエが腕をつついてくる。

 

「レイガ・・・お城を建てるのはどう?」

「城か・・・いいね、それ」

「いいですね。ユエお姉さん。綺麗で真っ白なお城とか素敵です」

「はい。とても素敵です」

 

ユエの提案にユミナとルーが応え、きゃっきゃっとはしゃぎ始めた。本当に仲良くなったね。ユミナたちがあの妻会からグレイフィアたちのことをお姉さん呼びになった。

 

「じゃあ、城のデザインでも考えるか。ハクちゃん、城のカタログをお願い」

『はい。こちらになります』

 

僕はハクちゃんにお願いして城の画像を映し出してもらった。

 

「イーシェンのような城もあるでござるな」

「このお城とか白くてキレイですわ!」

 

全員がそれぞれ城の感想を言い合う。

 

「うーん、デザインだけでなく大きさも考えないとな・・・どうしようか」

「こんなこともあろうかと、でありまス!」

 

と、考えていると作業服を着たロゼッタが部屋に飛び込んできた。

 

「今こそ!今こそ『工房』の実力を示すとき、でありまス!」

 

ぐっ、と力強く拳を握りしめ、天にかざす。やたらテンションが高い。

 

「『工房』には複製機能の他に、自動改造機能が備わっておりまス!スキャンした対象を自分好みに改造して、製作することができるのでありまスよ!」

 

むふーっ、ロゼッタが鼻息荒く一気に説明する。そんな便利な機能があるんだ。

 

「さあ、行くでありまス!我が『工房』へ!」

 

 

 

 

 

初めて見る『バビロン』に驚きを隠せないルーとグレイフィア、ユエとヨルを連れて、みんなで真白き立方体『工房』の中に入った。

床からモニターが出て来て、ロゼッタが手に触れる。

 

「とりあえずこの国のお城をスキャンするでありまスよ」

 

モニターに上空からのベルファスト城が映る。緑の光が城を包むと、次に画面上にその城の立体映像が浮かんだ。

 

「スキャン終了。自動改造に移行するでありまス。何か注文はあるでありまスか?」

 

そう尋ねてくるロゼッタ。

 

「そうだね。まず城の大きさを小さくして。いくつかの部屋を削ってもらえるかな?」

「了解でありまス」

 

それから各々の希望の内装を言い合った。僕はどんな城でもいいけど、ユエさん、ベッドの耐久度や大きさにそこまで追求しなくても・・・

 

 

 

 

 

「ここか」

 

今僕たちはできた城・・・ではなく大きな城塞の前にいた。理由は城を作るための素材集めだ。そこで使わない城を探していると、ルーがここを提案してくれた。最初はよかったけどここ・・・幽霊が出るらしい。

 

「それがあの城か」

「だいたい百年ほど前のお話らしいですわ」

 

城に来たのはいつものギルドメンバーにグレイフィアたち、そしてルーに召喚獣トリオ。

 

「皇帝陛下に許可はとってあるんだよね?」

「はい。壊すなり立て直すなり、自由にしてよいと」

 

そうか、なら遠慮なくいただきますか。

 

「じゃあ【テレポート】で、城ごとテンペスト・レイへ転移させるか」

「待ってください。その前に城内を確認したほうが、いいかと。盗賊たちや、魔獣、アンデットなどが巣食ってる可能性もあるかも、です」

「あと幽霊もね」

 

リンゼの忠告をエルゼが笑いながら混ぜっ返す。

 

「じゃあ三人で三組ずつ分かれて見回ろうか。何かあったら琥珀や珊瑚たちを通して連絡してくれればいい。ユミナとルー、ユエに琥珀、リンゼと八重、ヨルに珊瑚と黒曜。エルゼとグレイフィアは僕と回ろう」

「えっ、あ、いいわね。じ、じゃああたしたちはあっちから回ることにするわ!」

 

そう言ってバタバタしながら城内に入っていったエルゼ。それに続くように僕たちも入っていった。

 

「で、エルゼは幽霊が苦手なの?」

「なっ⁉なに、なにを言ってるのよ⁉ゆっ、幽霊なんて、幽霊なんて…」

「あら、エルゼ様後ろに白い影が・・・」

「っきゃあああああああああ⁉」

 

悲鳴をあげながらエルゼが僕に抱きついてくる。

 

「あら、よく見たらカーテンでした」

「・・・カーテン?」

 

そう言ってゆっくりと振り返ってカーテンを見ると、エルゼがパッと腕を放し、僕を解放する。

 

「カ、カーテンかぁ…」

 

ホッと胸を撫で下ろし、安堵の表情を浮かべるエルゼ。

 

「グレイフィア、今のはやりすぎだよ」

「申し訳ございません。レイガ様、エルゼ様」

 

僕は安心したエルゼの手を握る。

 

「ひゃっ・・・⁉」

「大丈夫。怖いならこうやって手を握っててあげるから」

「…うん…」

「あら、それでも私も」

 

そう言って、グレイフィアも手を握る。僕たちはそのまま城内を歩いた。

 

 

 

 

数時間後、僕たちは城内を見終わった。結果、幽霊は・・・いたよ。それが今目の前にいる肖像画の女の子だ。正確には肖像画の『額』が本体の魔法生物らしい。しかも驚いたのはこの子を作ったのはあの・・・レジーナ・バビロン博士だった、あの人は・・・。しかもここに住んでいる理由は『蔵』から落ちてきたらしい・・・また『蔵』か・・・

でもこの子はただ自分の本体『額』を守りたかっただけだし、だから城をいただく代わりに僕たちの城に住まないか聞くと、すぐに了承してくれた。

そうして僕たちの国テンペスト・レイに城が建てられた。




幽霊城のところを大幅に省きました。正直原作とあまり変わらなかったから。
予定では次から2~3人嫁を出したいのでアンケートを出そうと思います。
そしてお気に入りが100人いきました。本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。


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とある日常 建国親善パーティー

今回は短めで、あまりストーリーは進めませんでした。


<レイガサイド>

城ができてからみんなで中を見回った。結構広くなったから人でも雇おうと考えたら、グレイフィアが耳打ちで惑星から何人か連れてくると言ったので、一旦グレイフィアは惑星に帰った。

 

「あら?何かしら、あれ…。仔犬…ではないですわね?熊…仔熊?」

 

バルコニーにいたルーが不思議そうな声を上げる。仔熊?まさか…。

足早にバルクに―へ向かい、ルーが視線を向ける方へと目を凝らす。そこにはとてとてと歩くクマのぬいぐるみ、ポーラとリーンがいた。

 

「まったく…しばらく目を離したら王様になってるとか…どんな出世よ。驚きよりも呆れるわ」

 

ソファーに座って紅茶を飲みながらリーンが僕にそう言い放つ。その横ではポーラとラブコフが遊んでいる。

 

「しかもレグルス帝国の姫までもらったとか?左うちわでいいわね?ま、建国したばかりで忙しいところ悪いけど、私、ミスミド大使としてこの国に来ることになったから。住むところよろしくね」

「別に空き部屋はあるからいいけど…ベルファストの大使の方は?」

「そっちは別の者に丸投げしたわ。こっちの方が面白そうだし。で、一つ個人的な相談なんだけど。ここに仕えたいって子たちがいるんだけど雇ってもらえるかしら」

「仕えたいって…ここに?」

「そう。テンペスト・レイ公国に」

「うーん、わかった。とりあえず会ってから決めるよその人たちはどこに?」

「城門の外で待たせているわ」

 

ユミナとリーンを連れて城門の前まで転移した。そこには三人の若者がいた。三人とも僕の姿を見ると膝をついて頭を下げる。兎と狼、狐の獣人たちだ。確かこの人たち…

 

「レインさんですよね」

「お久しぶりです。玲我様」

 

やっぱりミスミドへの旅で狼の獣人ガルン隊長の部下だったはず。

 

「ミスミドの兵士職は辞めてきました。どうかこの国に仕えさせてください」

「なんでまた?」

「玲我様があの光の巨人と知って、本当にすごい人だと感動したんです。その方が建国した国とあっては、もう居ても立ってもいられずリーン様にお願いした次第で…」

 

それを聞きながら隣の狼獣人の少女がくすくすと笑う。

 

「レインちゃん、落ち着いて。玲我様が引いてるわよ」

 

真っ赤になって俯くレインさん。それを横目に銀髪の髪をアップに纏めた狼少女が小さく佐俣を下げる。

 

「ノルンと言います。兄がお世話になりました」

「兄?」

「ノルンはガルン隊長の妹なんです」

 

あー、確かに雰囲気が似てる。残る狐少年も頭をぺこりと下げる。

 

「二コラ・ストランドです。宜しくお願いします。陛下」

 

そう言ってビシッと直立不動の体勢をとる。あれ?ストランドって

 

「ストランドって…。オリガさんとこの家となにか関係が?」

「オリガは父方のいとこです。交易商人のオルバ・ストランドは伯父に当たります」

 

あーやっぱりか。

 

「この三人はそれなりに腕も立つし、この城の警備にぴったりだと思うけど」

 

リーンの推薦を聞きながら、ユミナへと視線を移す。彼女は静かに微笑んで小さく頷いた。どうやら大丈夫そうだ。

 

「それじゃあ、これからよろしくね」

「「「宜しくお願いします」」」

 

 

 

 

 

新しく入った三人はなかなかの腕前で、レインさんが剣、ノルンさんが双剣、二コラさんがハルバードを得意とし、全員八重と戦ってもらったが、三人ともなかなか腕前だった。

 

「陛下、この城には馬はいないでしょうか?」

「馬?」

 

ある日の午前、二コラさんからそんなことを言われた。

 

「必要かな、馬」

「騎兵として戦うのであれば。戦いなど無いにこしたことはありませんが、有事の際に訓練しているのといないのでは雲泥の差です」

「それに馬がいれば国内の見回りもできますよ。僕らもこの国の地形とか把握しておきたいですし」

 

なるほどね。レインさんと二コラさんが言うことももっともだ。

 

「ならもっと便利な乗り物のほうがいいでしょう」

「え?」

 

僕の言葉の意図がわからない二コラさんを置いて、『ウィザードギア』を使って、金色の獅子『仮面ライダービースト』のドライバー『ビーストドライバー』とビースト専用のリング『ビーストリング』を召喚する。そしてグリフォンの絵が描かれたグリフォンリングを右手の中指にはめ、ベルトの右の溝に嵌め込む。

 

「【グリフォン! ♪♪ Go】」

魔法陣から一匹の緑色のグリフォン『グリーングリフォン』が現れた。(大きさは人間が乗れるサイズ)

 

「うわあ!」

「すごい…」

「これは…」

 

三人とも目の前に現れたグリフォンにみんな目を奪われていた。

 

「君はこれからこの二コラさんの相棒だ。仲良くな」

「クアァ」

 

そのあと、二コラさんとグリは空へと飛び立った。それを見れ自分たちを乗りたいと言い出したノルンさんとレインさんにもプラモモンスターのペガサスを二頭呼び出して、それぞれに渡した。(イメージはブルーユニコーンの角がなく、レッドガルーダ―の羽が生えたイメージ)三人とも楽しそうに空を飛びまわっていた。午後からは乗り慣れる練習も兼ねて、国の様子を見て回ってもらおうかな。

 

 

 

 

 

午後からは、城の一階、奥の一部屋を改装し、人が通れるほどの姿見を設置し、その横には金属のプレートも設置した。

 

「玲我兄ちゃん、その金属板はなに?」

「これに触れることで【コネクト】が開くんだ。もちろん許可されている人しか通り抜けられないし、誰が最近使ったかも記録される」

 

不思議そうに鏡を見つめるレネに簡単な説明をする。セキュリティもプログラムキーを使っているから、大丈夫だ。

 

「それに行き先も指定できるんだ。まだベルファストだけだけど」

 

ベルファストの屋敷にも同じものを設置してある。そのうちミスミドとかレグルスにも置こうかな。

 

「とりあえず試してみよう。レネ、その金属板に手を触れてみて」

「こう?」

 

素直にレネが爪先立ちになって片手を金属板に当てる。もうちょっと低くするか。レネが触れると金属板が光り、そこにレネの名前が浮かび上がった。

すると鏡がぼんやりと光り、【コネクト】が準備完了となる。

 

「そしたら行き先を告げて」

「え?えっと、ベルファストのお屋敷!」

 

レネの言葉に反応して、鏡が一層輝く。レネと一緒に鏡の中に入ると、ベルファストの屋敷の一部屋に出た。ふー、転移成功かな。

レネと一緒に扉を開けて廊下に出るとトムさんと出くわした。

 

「あ、玲我様。お手紙です」

「手紙?」

「はい・王宮の方からです」

 

トムさんから手紙を受け取って読むと、ベルファストの王宮の方へと来てほしいとのこと。

何の用だろ?

 

 

 

 

 

「おうおうおう。お前さんが噂の光神玲我殿か!いや、もう公王陛下かな?」

「はあ…」

 

目の前にいるベルファスト国王陛下から昇華されたスキンヘッドのおっさん。この人がリーフリース皇国の皇王、リグ・リーク・リーフリースらしい。

 

「活躍はベルファスト国王からいろいろと聞いてるぞ?しかし帝国の反乱を一人で止めるとか、とんでもないな!」

「いや、それほどでも」

 

僕がそう言うとリーフリース皇王がニヤリと悪い笑みを浮かべる。

 

「…なるほど。ベルファスト国王の言う通りだな。どうやらお前さんには変な野心はなさそうだ」

「野心?なんでそんな話になるんですか?」

「一人で帝都の一万の兵と悪魔の軍団を相手に余裕で勝利し、ベルファストとレグルスの姫を娶った男。他国からしたら脅威以外のなにものでもあるまいよ」

 

んーハタから見たらそうなるのか。

 

「まあ。だからといって他国からも虎の尾を踏むような真似はしないと思うがな。お前さんを怒らせて国を滅ぼされたら本末転倒だ」

「しませんよ、そんなこと」

(いや、玲我。怒った時国どころか惑星5個ぐらい破壊したよな)

(過去に何度も宇宙の危機を呼んだ奴が何言ってんだ?)

(ラブ。コブコブ。コワイ)

 

この会話に悪魔三人は心の中でそう思った。

 

「と、いうわけでリーフリース皇国としては貴国と友好を深めたい。本来ならウチぁらも娘を「ご遠慮します!」?そうか。まあウチのは一応嫁ぎ先が決まっているからな。それを反故にもできん。残念だが」

 

さすがにあの人は僕でも無理です。

 

「そこで、だ。テンペスト・レイの城も完成したそうだし、ひとつワシらを招待してくれんかね。政治的な集まりではなく、国王同士、友好を深めるということで」

「招待って西方同盟の王様たちをですか?」

「うむ。ベルファスト、リーフリース、ミスミド、レグルスだな。国王同士が仲良くなるのはいいことだろう?」

「・・・本当は?」

「「王様だって羽を伸ばしたい!」」

 

・・・はあー----

 

「わかりました。ご招待しましょう。でも国家同士の争いや、政治的思惑を持ち出すのは無しにしてください」

「むろんわかってるさ。それと家族も一緒に行っていいだろうか?」

「構いませんよ。ただ、王様を含めて五人くらいにしていただければ。こちらも人手が足りないので」

 

娯楽施設かー、リムルに聞いてみようかな。忙しくなりそう。




次は嫁メイドと初の他作品から男キャラを出したいと思ます。


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とある日常 パーティまでの準備

結構原作通りになってしましました。


<レイガサイド>

親善パーティーが決まってから、リムルに相談して様々な娯楽施設の案を出してもらった。ボーリング場、ビリヤード、全自動麻雀卓、卓球台、その他もろもろの室内遊戯を作った。あとは食べ物のレシピを新たに数種類考案した。女性陣にはスイーツ系を、男性陣には駄菓子系を用意した。

今は当日のために、みんなに遊び方を教えて、練習している。うーん、もうちょっと教えれる人を増やしたいな。

そう思っていると。

 

「玲我様。只今お戻りしました」

「グレイフィア、お疲れ様。ちょうどよかった。実はね」

 

僕は惑星から帰って来たグレイフィアに今回の親善パーティーのことを説明した。

 

「なるほど、では皆さんにも協力してもらいましょう」

「ん?みんな『玲我様!』え⁉」

 

声がした方を見ると、そこには僕の惑星でメイド兼妻の、ピンク色のツインテール『ロゼ』、犬耳が生えた『ミウ』、青髪で右目が隠れている『レム』、雰囲気がおっとりしている『布仏本音』の四人がいた。

 

「四人ともどうしたの?」

「玲我くんが王様になったと聞いたので」

「お手伝いに来ました」

「本当はれいれいに会いたかっただけだけど」

「「ちょっと本音さん!」」

 

レムとミウが説明してくれるが、本音の言葉に顔を赤くしておろおろする。

 

「そっか、ありがとう」

 

そう言って四人にお礼のキスをする。

 

「「「えへへ」」」

「玲我様、私には?」

「もちろん忘れてないよ」

 

そう言って、グレイフィアにもキスをする。

グレイフィアとロゼ以外の三人は完全にデレている。

 

「マスター、私たちはいつまでもマスターとともにあります」

 

ロゼがそう言って、一歩前に出る。

 

「そうか、じゃあお願い」

 

「「「「はい!」」」」

 

そう言って、五人には他のみんなに遊び方を教えることをお願いした。

また、新たにきた四人とも僕の妻と教えると、その夜二回目の女子会(妻会)があったらしい。

 

 

 

 

 

 

グレイフィアたちを遊戯室に連れて行ったあと、城壁内の訓練場に行くと、ウチの新人騎士三人が荒い呼吸をしながら地面にのびていた。

それを見下ろしながら八重が笑っている。

三人を叩きのめしたのは彼女でなく、その横にいる厳つい白髪交じりで長い髭の爺さんと、全身傷だらけのおっさん、馬場信晴と山県政影。イーシェン武田領の武将で、武田四天王の武闘派二人だ。

 

「よう、小僧。どうした?」

「いや、どんな様子かなと思って」

 

あいかわらず馬場さんは僕を小僧呼ばわりする。ま、今まで呼ばれていないから新鮮でいいけど。

 

「おう、玲我。こいつらなかなか見どころあるぜ。ま、もっともまだまだひよっこだけどな」

 

山県さんが大剣を担いでにやりと笑う。

三人を鍛えてもらおうと二人にわざわざ来てもらった。本当ならハクロウのじいちゃんにお願いしようと思ったけど、なんかゴブタがやらかしたらしい。それでいまお説教中らしい。

あ、それと新しく当主となった武田克頼が、なんでも真の当主になると言って武者修行中らしい。常に完助さんがそばにいるから大丈夫らしいけど。

 

「しかし小僧が王様ねえ…ちっこい国だけど大したもんじゃねえか。まあ、あんだけすげえ魔法が使えんだから、なってもおかしくはないが…」

「こいつらがちょっと羨ましいぜ」

「それで克頼さんはどうなの実際」

「いや、御屋形様ほどではないが、結構努力はしてる。しかし」

「しかし?」

「小僧にどうにかして恩返ししたいとさ」

「恩返し?」

「ああ、それでどうすればいいか。完助と一緒に考えているよ」

 

そんなことまで考えてくれてるんだ。

 

「さて、休憩は終わりだぜ。さっさと同じく三人でかかってきな」

「「「はい!」」」

 

元気よく返事をして三人とも立ち上がり、武器を構える。これなら警備の方も安心かな。

訓練場をあとにして城内に戻ろうとすると、大扉が自動で開き、僕が玄関ホールに入ると今度は後ろで扉が閉まる。別に自動ドアではない。

僕は玄関ホールから二階へと上がる踊り場にかけられた一枚の絵の前に止まる。

 

《なんか城の中が慌ただしいですねぇ、マスター》

 

絵の中から白いドレスを着た少女が上半身だけ出てくる。この子は例の幽霊騒ぎで回収した額縁のアーティファクトである。シェスカたちと同じように僕のことをマスターと呼んでいる。元の絵を売り払って、新しい絵を額の中に入れた。その結果、白いドレスを身にまとい、桃色の髪をリボンでまとめた二十代後半の少女に生まれ変わった。名前はリプルと名付けた。

 

「王様たちを迎える準備で忙しいのさ。リプルも頼むぞ?」

《はい。何か怪しい動きがあればお知らせしますよぉ。このお城には常に私の目が光ってるんですからぁ。あ、今レネちゃんがお皿割りました》

 

よくわかるな。リプルは『工房』で複製した同じ額縁の中を自由に行き来でき、その感覚を共有できるらしい。頼もしい。

ようやく明日か。

 

 

 

 

 

<?サイド>

その夜テンペスト・レイ公国の近くの山で、一匹の馬と一人の男がいた。

 

「ここか、結構緑豊かだな」

 

ヒヒーン!

 

「お前もそう思うか。シルバー」

 

その男は相棒の馬の頭をなでながら城を見る。

 

「久しぶりに会えるな、レイガ」




どうでしたか。
異世界魔王からロゼ、リゼロからレム、インフィニットストラトスから本音、くじ引き特賞からミウを出しました。ほぼ嫁リストに描いていないメンバーでした。少ししたら更新しようと思います。
アンケートの結果からデアラから出したいと思います。


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とある日常 親善パーティー開催

ほぼ原作通りになってしまいました。
あと短いです。


<レイガサイド>

「おおお!なんかわからんが楽しそうだな!」

 

パーティ当日、遊戯室に入るやいなや、ベルファスト国王はビリヤード台へ、ミスミド国王はボーリング場へ向かった。続いて入室してきたリーフリース皇王とレグルス皇帝はキョロキョロと物珍しげに室内を見渡した。

 

「これが全部遊ぶためだけのものなのか…なんとも贅沢な気もするな」

 

つぶやく皇帝陛下の後ろからぞろぞろとそれぞれの家族と護衛の者が入ってくる。

ベルファストからは国王陛下、ユエル王妃、オルトリンデ公爵、エレン公爵夫人、スゥ、ジュウ、リム、ユニ。

レグルス皇国からは皇帝陛下、ルクス皇太子、サラ皇太子妃。

リーフリース皇国からは皇王陛下、ゼルダ王妃、リリエル皇女、リディス皇太子。

ミスミド王国からは獣王陛下、ティリエ王妃、レムザ第一王子、アルバ第二王子、ティア第一王女。

これだけで総勢十七+三匹。これに追加で数人の護衛がつく。

ベルファストからはニール副団長、リオンさん。

レグルスからはガスパルさん。

ミスミドからはガルンさんなど。

リーフリースからは知らない人しかいない。

それぞれの国から五、六人くらいかな。

もちろん武器は取り上げられているし、攻撃魔法を使おうとすれば、【サンダー】が発動するようにしてある。

ウチの三騎士も警備という形で遊戯室に控えている。グリフォンとペガサスも小さくなって彼らの肩に座っている。

庭にはカンドロイドたちがいる。保険のためにベイルとカゲロウも潜んでいる。

 

「ようこそ、我が遊戯室へ。みなさんに楽しんで遊んでいただくために、ここではいろいろ取り揃えております。遊び方はウチの者に聞いていただければ説明いたしますので」

 

ユミナたちにグレイフィアたちメイドに、助っ人として『月読』からも何人か手伝ってもらった。

 

「また、あちらでは食事や飲み物、甘いものなどを用意しております。ご自由にどうぞ」

 

遊戯室の隅には大きなテーブルと椅子、そしてリクライニングシート、マッサージチェアなどを用意しておいた。テーブルには様々な料理やお菓子が並んでいる。

国王たち男性陣は気になるゲームへと散らばり、みんなから説明を受けていた。一方、王妃たち女性陣はお菓子に興味があるらしく、そちらの方へ集まっている。

 

「おうりゃ!」

 

お、さっそく獣王陛下が勢いよくボーリング球を投げていた。きれいにガタ―だった。レムザ王子も揃ってガタ―だった。たしかレムザ王子が九歳、アルバ王子が六歳だったはず。あの二人も雪豹の獣人だった。

エアホッケーではベルファスト国王陛下とオルトリンデ公爵が熱い兄弟対決を繰り広げている。

雀卓ではレグルス皇帝陛下とルクス皇太子、リーフリース皇王陛下とディス皇太子の親子対決だった。

リディス皇太子は十二歳だったはず、年齢の割に大人びて見える。お姉さんがあれだから大変そうだね。あとルクス皇太子は結婚してたんだ。知らなかった。

雀卓のそばにはラピスさんいて質問に答えている。麻雀はルールが難しいからね。

護衛の人たちも王様たちのゲームを見て楽しんでいるようだ。

 

食事のテーブルでは王妃様たちが料理に舌鼓を打っていた。スゥとリリエル皇女、ティア王女はトランプのテーブルでレネを含めて四人でババ抜きをしている。ティア王女はたしか十歳ぐらいだっけ。

 

「しかし信じられない光景だな…」

 

そばにいたニール副団長がぼそりとつぶやく。それに反応したのはガスパルさんだ。

 

「確かに。ほんの少し前までは西方諸国の王が一堂に会するなどあり得ないと思っていた。それが一緒になって遊んでいるのだからな」

 

二人とも苦笑いしながらビリヤードを楽しむ自分たちの主君を眺める。

勝敗がつくと、すぐに別の遊びをこなしていってるようだ

 

「玲我殿、あれはなんだ?」

 

獣王陛下が部屋の壁側に置いてあったモグラたたきを指さす。

 

「これはモグラたたきと言って、ここから出てくるモグラを叩いて点数を競うんですよ。力いっぱい叩かなくても大丈夫ですから」

 

はじめは順調であったが高速モードに入った途端点数が伸びなくなった。

 

「くっ、もう一回だ!」

 

獣王はムキになってモグラを強く叩きだす。

食事のテーブルの方を見ると王妃様たちがデザートを口にしながらおしゃべりをしている。

あちらはセシルさんとライムさんに任せよう。

 

「公王陛下、これはどうやって遊ぶんですか?」

 

レムザ王子とアルバ王子が尋ねてきたのは、トランポリンだ。

 

「あーそれは、中に入って跳ね回って遊ぶんだよ。大人二人まで大丈夫だから」

 

そう言うと、二人はトランポリンをポンポンと楽しそうに跳ね回り始めた。少しすると、バク転や空中ひねりをし始めた。

 

「おお、楽しそうだな。ちょっと余にはキツそうだが…」

 

笑いながら皇帝陛下が跳ね回る子供たちを眺める。

 

「それなら体の疲れを癒す椅子があちらにあるので試してみます?」

「ほう?」

 

 

 

 

 

そうして楽しい時間が過ぎていった。途中でリムルの提案したビンゴゲームをすると、とても盛り上がった。全員に景品が当たるようにしたから、終わった後はみんなホクホク顔だった。

 

「夜も更けて参りました。最後に余興として用意したものをご覧になっていただき、お開きとさせてもらいます」

 

みんなを連れて、城のバルコニーへと向かう。そこには月のない夜空が広がっていた。

不意にその夜空に大きな音をたてて大輪の花が咲く。一瞬、護衛の人たちが身構えたが、僕が手をかざして押しとどめた。

 

「あれは花火といいます。見て楽しむもので、イーシェンでは夏に打ち上げるそうですよ」

 

八重に確認したら、イーシェンに花火は存在していたので、惑星から取り寄せた。

夜空に次々と花火が広がる。それを眺めている皆さんに、ウチのメイドさんたちがシャンパンを配り、それを飲みながらまた夜空の花火を眺める。子供たちははしゃぎながら花火を見上げていた。

こうしてテンペスト・レイの親善パーティーは大成功で幕を閉じた。

最後にそれぞれの国へ、マッサージチェアをプレゼントした。



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第七章
大樹海での出会い


<レイガサイド>

親善パーティーが終わってから、まずルーとロゼッタにユミナたちと同じ結婚指輪を渡した。

二人とも喜んで受け取ってくれた。

 

「これでやっと胸を張って玲我様の婚約者だと言えますわ」

 

本当に嬉しそうに指輪を眺めている。喜んでくれてよかった。

バルコニーに置かれた椅子に座って傍らのルーを覗き見ていると、リーンがポーラとラブコフを連れてこちらへやってきた。

 

「フレイズが現れたわ。場所は大樹海の中央あたり。そこに住んでいる部族からミスミドへ救援の知らせが来たの」

 

僕は椅子から立ち上がる。一人だけわからないルーはキョトンとしている。

 

「それでフレイズは?倒したの?」

「いいえ、部族の村々を潰しながらまだ居座っているわ。ご丁寧に視界に入る人間や亜人たちを皆殺しにしながらね。なんでも大きな蜘蛛のような形をしているそうよ」

 

蜘蛛のフレイズか。大きさから中級かな。

 

「行こう。ほっとくわけにはいかない。それに…」

「あの子に会えるかもしれないものね」

 

リーンの言葉に小さく頷く。エンデ、今のところフレイズのことを一番知っているのは彼だからな。

 

「とにかくバビロンで大樹海へ向かおう」

 

僕らはフレイズを討つべく、それぞれ準備を始める。

 

 

 

 

 

「古代文明を滅亡させた水晶の魔物ですか…」

 

バビロンで移動中、ルーやグレイフィアたちにこれまでの経緯をざっと話す。すると、グレイフィアが僕にこそこそ話す。

 

「玲我様、それはレジェンド様たちにもわからない存在なのですか?」

「わからない。神じいちゃんは知らなかったからし」

 

たぶん、レジェンド先輩たちはこれの対処のために僕を贈ったのかもわからない。でも、困った人がいるなら僕は手を伸ばすよ。

 

「マスター。目的地上空でス」

 

シェスカに呼びかけられて、モノリスに映る地上に視線を向ける。すると、大樹海の樹々を切り倒しながら、蜘蛛のような八本の細い足を伸ばした水晶の怪物が、大樹海に住む部族の人々を串刺しにしていた。

 

「大きいな。前のマンタと同じくらいはある」

「でも前と違って空を飛ばないだけでもありがたいでござるよ」

 

確かに。前は飛んでたからで攻撃手段が減少したからな。

 

「とにかく急ごう。早くしないとあの村が全滅してしまう」

 

地上に転移した時、部族の女性たちが弓を射かけたり、魔法を発動させたりしてフレイズに抵抗していたが、フレイズには魔法が効かない。魔力ごと魔法を吸収してしまう。

褐色の肌をした女たちが湾刀を持って立ち向かっていくが、次々とフレイズの伸ばした鋭利な腕に切り伏せられていく。

 

「イツ!ミヨマナ、タコヂジカシガリノ!」

 

若い部族の少女が何やら命令を下してるようだが、まったく聞き取れない。でも見た感じ彼女がリーダーだろう。

その少女に狙いを定め、蜘蛛フレイズの足が槍のように伸びる。

 

「危ない!」

 

ザングラソードを取り出して、腕槍を弾く。いきなり現れた僕に驚いている少女を抱き上げて、そのまま後方へ大きくジャンプする。

 

「ここは任せて早く避難・・・あ!言葉通じないか!」

 

とりあえずジェスチャーであっちに逃げろと伝えるが、彼女は目を釣り上げて僕に迫って来た。

 

「エモウ、オルテトトコイチメコ!?サナトアネコ、ボコ!」

「ごめん。まったくわからない」

 

少女を見ると、片手に斧を持ち、身体中を赤い塗料でペイントしていた。褐色の肌にほぼ半裸の衣装。歳はユミナより上だと思う。

 

「エモウメナグリヲド!オアチナクヲホカノア!ケレソルリゼ!」

 

何かまくし立てているが、さっぱりわからない。とりあえず、ザングラソードを構え、近くにいたユエにしゃべりかける。

 

「ユエ、試しに魔法打ってみて」

「うん…わかった。『緋槍』!」

 

ユエは炎の槍を作り出し、フレイズに向かって投擲する。この世界以外の魔法なら効くかどうか気になったので、ユエに頼んだが、結果は変わらず、ユエの魔法を吸収している。

 

「だめ…魔法吸収している」

「そうだね。魔法ならなんでもいいらしい」

 

ユエは残念そうな顔をするが、すぐに頭を撫でてあげると喜んでくれる。さて、これ以上暴れさせると危険だな。やるなら空かな。

僕はトリガーギアを使ってGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーを召喚する。

 

『♪♪ ウルトラマントリガー マルチタイプ ブートアップ!ゼペリオン

「未来を築く、希望の光!!ウルトラマントリガー!」

『♪♪ ウルトラマントリガー マルチタイプ

 

僕はウルトラマントリガーに変身する。

 

「デュワ!」

『!!!』

「あれは」

「あれは玲我さんよ。ルー」

「え!」

 

初めて見るルーや部族の少女たちは驚き、ルーはユミナに教えてもらいさらに驚く。

 

「今回は周りは森だから、空中で勝負だ」

 

僕はGUTSスパークレンスからマルチタイプキーを外し、青色のハイパーキー『スカイタイプキー』を起動する。

 

『♪♪ウルトラマントリガー スカイタイプ

 

GUTSスパークレンスに装填する。

 

『ブートアップ! ランバルト!

「天空を駆ける、高速の光! ウルトラマントリガー」

『♪♪ウルトラマントリガー スカイタイプ

 

トリガーの姿が青色に変わり、プロテクターも変化する。スピードに秀でたウルトラマントリガースカイタイプだ。

 

「シュワ!」

 

僕は高速移動で空中に飛ぶ。そしてサークルアームズを呼び出し、剣を180度に展開する。すると、サークルアームズが弓の形に変形する。

 

『スカイアロー!』

 

僕はスパークレンスからスカイタイプキーを外し、サークルアームズに装填する。

 

『マキシマム! ブートアップ! スカイ! ランバルト アローストライク!』

 

サークルアームズに光の弦と矢が形成され、僕は弦を引き、矢を蜘蛛フレイズの三つの核に向けて射出する。

 

「シュワ!」

 

射出された矢はものすごいスピードでフレイズの三つの核に当たり砕かれる。そのままフレイズは動かなくなる。

 

 

 

 

 

僕が人間に戻り、コスモスとシャイニングゼロのギアを使って、回復・蘇生を行う。それを見ていた少女が驚きながらも仲間に駆け寄っていく。

 

「けっこうあっさり片付いたわね」

 

僕のところにリーンがやって来た。まあ、今回は被害もひどかったから早く片付けたかったからね。

リーンは散らばっているフレイズのかけらを左右の手に拾い、軽く叩き合わせた。かけらは容易く砕けてしまう。

 

「ガラス並みの強度しかないわね。この破片で武器がつくれないかと思ったのだけれど」

 

ふむ。確かにあの硬さなら武器にすればエルゼや八重たちにもフレイズの討伐が可能になる。僕もウルトラマンになる必要がなくなる。

 

「そもそもなんであんなに硬いんだろうな、こいつらは。防御魔法でも使ってるんじゃ…」

「…それよ!魔力による硬化魔法!この体に魔力を増幅し、蓄積、放出する特性があるとすれば…!」

 

リーンはもう一度かけらを両手に持ち、今度はその破片に魔力を流しながらそれらを強く打ち合わせた。ガキィィン、と澄んだ高い音が出たが、そのかけらが砕けることはなかった。

 

「やっぱりだわ。この材質は魔石に似た特性を持っている。しかもはるかに魔力伝導率がいい。術式転換がほぼ百%だわ。魔力によっての結合がここまでの強度を保てるなんて信じられない」

「まじか!」

 

僕もクロベエとカイジンから聞いたことあるけど、まさかここにそんな素材があるなんて。

 

「ハクちゃん、周辺のフレイズのかけらを回収してくれる」

『わかりました。パパ』

 

ハクちゃんにお願いして、フレイズのかけらをすべて回収する。あー、今までのかけらも回収しておけばよかったな。

 

 

 

 

 

「エア、エモウ」

 

振り向くとさっきの褐色少女が立っていた。

 

「マヲノネクゴワノエサツキルトネホエモウノネコ?」

「ごめん、なに言ってるのかやっぱりわからん」

「『みんなの怪我と死んだ仲間を生き返させたのはお前なのか?』って言ってるわよ」

「言葉わかるの?」

 

リーンの通訳に思わず目を見張る。

 

「何年生きてると思ってるのよ。彼女たちラウリ族が使う言葉は、ミスミドでもわかる人間はけっこういる方よ」

 

リーンが褐色の少女に話しかける。

 

「あなた名前、えっと…オノト、メモウホ?」

「パム」

 

彼女の名前はパむというらしい。うーん、言語学もうちょっと勉強すればよかったな。

 

「結局エンデは現れなかったし、フレイズも派手に壊しまわったな」

 

周りを見渡すと、壊された家の残骸などがあちらこちらに散らばっている。

この村はどうやら木の上に家を建てる、ツリーハウスのような造りをしているらしい。

 

「それにしても…パムの種族は女性しかいないの?」

「ラウリ族ってのは女性のみの戦闘民族よ。そもそも男はいないわ。さっきのパムって子が族長の孫らしいわよ」

 

なんでも子供を作れる歳になったら、他の部族から男をかっさらってきて「つがい」をするらしい。

そして生まれてきた子供が男だったら父親と一緒に村から追い出し、女だったら村の子として戦いを教え、育てるんだそうだ。この場合も、結局父親は追い出される。

正直苦手だなそんな風習は。

すると、こちらをじーっとみつめる視線を感じた。パムから。

 

「なに?」

 

訝しげにパムを見ていると突然僕の方へ駆け出してきて、そのままの勢いで飛びついてきた。

 

「え⁉」

 

いきなりのことでとっさにパムを受け止めるが次の瞬間、

 

「いった!」

 

首筋に噛みつかれた。え、なんで!

噛みつかれた首筋に手を当てると血が滲んでいた。

すぐにパムは引き下がったけど、一体?

それを見ていた周りの部族の人たちが、ざわざわと落ち着きなく騒ぎ出す。

 

レイガは気付いていなかったが、その光景を見て、ユエとロゼがパムを睨んでいた。

 

(レイガの首を噛んでいいのは私だけ(# ゚Д゚))

(マスターの首に噛みつくなんて、あのメス(# ゚Д゚) )

 

ひそかに二人の怒りの矛先はパムに向けられていた。

 

「大丈夫ですか、玲我さん?」

 

その間リンゼが回復魔法で首の傷を治してくれる。

 

「気に入られたみたいね」

「?なんで?」

 

リーンから説明を聞くと、気に入った男の印らしい。てかさっきから周りの視線が僕に…これはすぐ帰ろう。

僕はパムたちに手を振って、すぐに【コネクト】を開き、バビロンに帰る。そのままシェスカとロゼッタを連れてテンペスト・レイに帰還した。

 

《あーマスター、お帰りなさぁい》

 

踊り場に着くと、リプルが出て来て僕らに手を振る。

 

「ただいまリプル、なんか変わったことはなかった?」

《えっと、お客様が来てますよぉ》

 

お客?はて?いったい誰だろう?




次回に、前回の最後に出たキャラにプラスして別作品のキャラを出します。


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友との再会

<レイガサイド>

「あれ?椿さん?」

「お久しぶりでございます」

 

みんなはお風呂に行ったので、一人で謁見の間に来た。

するとそこにはイーシェンのくノ一、椿さんがいた。白い上着に黒のマフラーと、黒のキュロット姿。その恰好から長旅をしてきたことがわかる。

 

「こんなところまでどうしたんですか?何かの任務ですか?」

「いえ、私はもはや武田忍びではございませぬ。こちらでお仕えさせていただきたく思い、推参仕りました」

「え?」

 

椿さんから話を聞くと、克頼さんが恩返しとして椿さんを僕に仕えてもらおう、という案が出たらしい。これには本人自身も了承していて、表向きには解雇という形になったらしい。

 

「それっていつの話?」

「三ヶ月ほど前です。そのあと、すぐに私は旅に出ましたので…」

「なるほどね…椿さんはそれでよかったの?」

「はい。玲我様は御屋形様の命の恩人でもありますし、何よりあなたの人柄に惚れました」

 

何だろう。少し責任を感じてしまう。

 

「僕でよければこれからよろしくね」

「はい、玲我様」

 

まさか騎士だけでなく、忍びもくるとは、あっちから呼ぶ手間が省けたからいいかな。

 

「では一族の者を城内に入れていただきたく…」

「あーいい・・・・一族の者?」

「はい。武田忍びの一族全員でこちらへ参りましたので」

 

どうやら椿さんだけでなく椿さんたち一族も恩返しに含まれていた。あんまり言いたくないけど、そっち大丈夫け、克頼君?

 

「ちなみに全員で何人?」

「子供も合わせると全員で六十七人ほどになります」

 

六十七か、思ったより少なかったな。オークやゴブリンの時は百人単位だったからな。全員に名前をつけるのは本当に懐かしいな。

 

「わかった。仕事とかどうしようか?」

「それなら心配いりません。忍びの一族は大概が副業持ちでございます。食っていけるだけの術はありますので」

「そっか、わかったよ。じゃあこれからよろしくね」

「はい」

 

食料はいいとしてそのほかの物が少ないからな。ザナックさんかオルバさんにでも商売の相談しようかな。

 

「一気に国民が増えましたね」

「そうだね」

 

傍らに控えるライムさんの言葉に応える。正直リムルみたいに住民が増えて嬉しい。とりあえずは三騎士にお願いして、椿さんの一族たちを城内に入れてあげて、使っていない兵舎の方を宿として貸そう。

一応、レインさんにおかしな行動をする輩がいないか頼んでおこう。

 

「マスター、お手紙が届いていまス」

「手紙?」

 

シェスカが一通の手紙を手に、謁見の間にやって来た。たぶん「ゲートミラー」を使ったのだろう。

手紙を受け取り、中身を読む。一瞬、固まってしまう。

 

「どなたからの手紙ですか?」

 

ライムさんが尋ねてくる。僕は手紙を渡して、読むように勧める。

 

「これは…」

「さすがにこれは予想外」

 

差出人は高坂政信。馬場さんに渡した「ゲートミラー」からだ。

なんと、克頼さんが完助さんと共に帝さんのところで修行するらしい。そのため武田領地に住む人々をテンペスト・レイに移住することを決めたらしい。それも含めて僕への恩返しらしいけど、やりすぎじゃない。

 

 

 

 

 

「まずは街道の整備からですな。人の訪れなくして町の発展はあり得ません」

 

テンペスト・レイの地図を見ながら高坂さんはそう口を開いた。手紙を受け取ってから、すぐにイーシェンに転移し、高坂さんたちを迎えに行った。そこで克頼さんから住民を頼むと土下座しながら言ったので、いろいろ大変だった。真玄さんにもお願いされた。それからはお互いこれからのことを話し合って、克頼さんが立派になったらテンペスト・レイと同盟を結ぶこととなった。

 

「街道なら僕がすぐできるけど」

「ベルファストからレグルスへの街道だけは早急に必要ですからお願いいたします。しかし、それ以外は玲我様…陛下はあまり手を出してはなりませぬ。なんでもかんでも陛下がしてしまえば、人はそれに頼りきりになってしまいます。どうしても彼らの手に余るときにだけ、助けてあげる程度で良いのですよ」

 

高坂さんの見た目は馬場さんよりも若そうに見えるが、六十は超えているだろう。白髪交じりの総髪で、一見穏やかそうに見えるがその眼光は鋭い。それにレジェンド先輩と同じことを言っている。

 

「次に国の東都を農業地として開拓します。川から水路を引き、水田をいくつか作ってみましょう。こちらの上に合うといいですが。あとは商人に何を売り、国の収入とするかですか…」

「しばらくは自転車で稼ごうと思う。その間に何か特産品を探そうか。高坂さんには農耕地の方を任せるから好きにやってみて。ダメだったらそのときは考えよう」

 

僕は高坂さんと別れて訓練場に行くと、ウチの三騎士が馬場さんたちにいいようにあしらわれてた。一応、馬場さんと山県さんに戦闘教官みたいなことを頼んでいる。

 

「おう、小僧。高坂との話は終わったのか?」

「うん、一応一区切りはついたよ。ところでそろそろ昼だから、食糧を調整しにいこうと思うんだけど。訓練も兼ねてレインさんたち三人にも付き合ってもらえないかな?」

「狩りか?そりゃいいが、こいつらこんな有様だぜ?」

 

山県さんが指し示す先には、地面に伸びている三人がいた。ただ一人二コラさんだけ震える足で立っている。

 

「カガヤキソウル!」

『カガヤキソウル! カガヤキ!』

 

僕はリュウソウケンとカガヤキソウルを使って三人の体力を回復させる。

 

「疲れが取れてます…」

「うわあ、陛下の魔法?すごい!」

「くっ、ふがいない。申し訳ございません、陛下」

「別にいいって、お疲れ様」

「相変わらずとんでもねえなあ、うちの大将は…」

「さて、昼ご飯だけど、なに食べたい?候補としては猪か鳥・・・あ、蟹も「「「「「蟹!」」」」」じゃあ蟹で」

 

満場一致で蟹に決まった。

 

「あ、狩ってもらうブラッディクラブって、冒険者ギルドだと赤ランクだから頑張ってね」

「「「え⁉」」」

 

三人とも目が点になる。

 

「大丈夫だよ。山県さんも馬場さんも手伝ってくれるから」

「俺らもか⁉」

 

 

 

 

 

結局、荒野にいたブラッディクラブのうち、一匹は僕が単独で倒して、残りの一匹は五人に任せた。時々フォローして、三十分かけてやっとブラッディクラブを倒すことができた。甲羅硬かったから。相性悪かったかな。

 

「みんなお疲れ!」

「…大将が…どんだけ化け物か、わかったぜ…」

 

失礼な、化け物じゃなくて、神様だけど!

馬場さんと山県さんは立ってはいたけど、三人は完全にグロッキー状態だった。さっきとおなじくカガヤキソウルを使う。

 

「じゃあ、帰ろう…うん?」

 

僕は後ろから気配を感じ、振り返るとそこには先ほどのブラッディクラブの5倍ほどの大きさをした蟹がいた。

 

「「「「「な⁉」」」」」

 

五人はその大きさにすぐに武器を構えるが、僕はそれよりも後ろの二人と一匹の馬に驚く。

 

 

 

 

 

「パルチザン!」

バン!

 

次の瞬間、巨大な蟹は体に穴が開き、さらに真っ二つに斬られた。

 

「「「「「・・・・」」」」」

 

その光景に、五人とも唖然する。僕はそれよりも後ろにいた二人に笑顔で挨拶する。

 

「久しぶり! 

レイン! ジョニー!

「久しぶりだな、レイガ」

「お久しぶりです。レイガさん」

 

左右で髪色が異なり、両目から一本ずつアザがある黒ローブを着た男『レイン・エイムズ』と僕が生み出した最高で最強のガンマン『ジョニー・ザ・ジョニー』、そしてその愛馬「シルバー」がいた。




デュエルマスターズからジョニーをマッシュルからはレインを出しました。
デュエマは最近ジョー編が終わって今までのシリーズの中で一番好きだったので出しました。
待っシュルも最近のジャンプ作品で好きになったので、出しました。
一応、デュエマはジョラゴンやモモキングをマッシュルからはシスコンと自称主人公を出したいと思います。


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対決 戦の神杖

はい。遅くなって申し訳ございません。ちょっと忙しくて


<レイガサイド>

「まさか二人に会えるなんて思わなかったよ」

「まあ、俺は旅の途中に寄っただけだからな」

「俺は護衛で」

「護衛?」

 

僕たちはブラッディクラブの討伐の後、城に戻って昼ごはんを食べ終わってからリビングで話をしている。この場には僕とユミナたち、グレイフィアたちメイドと三騎士に高坂さんたち武田四天王がいる。

 

「はい。リムルさんから頼まれました」

「リムルから」

 

話を聞くと、リムルが僕を心配・・・じゃなく、僕が何かやらかさないか不安で頼んだらしい。失敬な、今のところやらかしてないよ。

この時、グレイフィアたちは同じことを思った。

いや、もうやらかしてる、と。

 

「グレイフィアお姉様。あのお二方と玲我さんのご関係は?」

 

僕が二人と話していると、ユミナたちが不思議そうにグレイフィアたちに質問する。

 

「彼らはレイガ様のご友人です。黒のローブを羽織ったお方の名前はレイン・エイムズさん。魔法使いで、剣を操る魔法を扱います。またの名を戦の神杖(ソードケイン)と呼ばれています。もう一方はジョニーさんでガンマン、いわゆる銃使いです。またの名を『銃王』と呼ばれています。そして、この場のレイガ様以外の全員で挑んでも、あのお二方には勝てないでしょう」

 

グレイフィアの説明にユミナたちは驚く。特にグレイフィアたちよりも強いことに驚いた。ユミナたちはグレイフィアたち実力を知っているからこそ驚いた。

 

「それにしても俺たちより強いとは・・・ますます化け物だな、大将は」

「そうだな。・・・なあ小僧」

「うん、どうしたの馬場さん」

 

馬場さんに言われ振り向く。

 

「頼みがあるんだが、その二人の実力を見せてくれないか?」

「あー、いいけど。どうしようか?」

 

二人の戦いを久しぶりに見たいけど、相手がなー。

 

「俺に案があるぜ」

「なに?ジョニー」

「レイガとレインで戦うのはどうだ?途中で俺も参加する形で」

「いいね、それ。レインは?」

「俺はそれでいいですよ」

「じゃあそれで」

 

こうして、レイン対僕の対決が決まった。

 

 

 

 

 

 

それから、僕たちは訓練場に向かい、対決の準備を行う。僕とレインは訓練場の中心に向かい、他のみんなは離れたところで座っている。念のため結界を張っておく。

 

「レインとは久しぶりにするね」

「そうですね」

「本気でやってもいい?」

「レイガさんが本気出したらこの星壊れますよ」

「知ってる」

 

さてと何で戦おうかな。レインは剣だしな。あれかな。

 

「来い。火炎剣烈火!」

 

僕がそう言うと、目の前の炎の柱が現れるがすぐに消える。消えた場所には一本の剣『火炎剣烈火』が刺さっている。

 

「よっと、そして」

『ババババーン! セイバー!』

 

『セイバーギア』を使って赤い竜が描かれた本『ブレイブドラゴンWRB』を召喚する。すでに腰にはソードライバーバックルが巻かれている。目の前の火炎剣烈火を抜き、ドライバーに納刀する。そしてWRBを開く。

 

かつてすべてを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた…。

 

本を閉じ、ドライバーのライトシェルフに装填する。

 

『♪♪』

 

音楽が鳴り、僕の後ろに大きなWRBが現れる。

 

「変身!」

烈火抜刀! ♪♪ ブレイブドラゴン! 烈火一冊! 勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時真紅の剣が悪を貫く!

 

烈火を抜刀し、目の前で×を描くように大きく振る。すると、ブレイブドラゴンの力と烈火の力が一つとなった炎の剣士、『仮面ライダーセイバー』に変身する。

 

「よろしくな。烈火」

 

準備が整うと、審判役の高坂さんが手を上げて試合開始の合図を出す。

 

「では、はじめ!」

 

僕はレインに向かって駆け出す。

 

「パルチザン!」

 

するとレインは杖の先端を僕に向け魔力で創り出した剣を僕目掛けて投げる。

 

「よっと!」

 

僕はそれを受け止めて後ろに跳ね返すが、

 

「!」

 

剣の後ろにもう一本の剣が隠れて飛び出す。

 

「あぶな!」

 

横に飛んで避ける。

 

「さすがレイン」

「まだまだいきます。パルチザン テン!」

 

さっきと同じ剣が十本同時に向かってくる。

 

「ならこれで」

 

ドライバーの装填してあるWRBを押し込む。

 

「ドラゴンワンダー!」

 

右手を前に翳すと、ブレイブドラゴンが現れ、剣に向かう。

 

ドン!

 

相殺できたが、レインはすぐに魔法を使う。

 

「パルチザン ハンドレッド」

 

次は百本の剣が来る。すぐに僕はドライバーの左右についてある必冊ホルダーから黄色の本『ニードルヘッジホッグWRB』を取り出し、烈火のシンガンリーダーに当てる。

 

ヘッジホッグ! ふむふむ! 習得一閃!

「火炎針剣斬」

 

烈火に纏った針を剣に向けて振る。すると無数の針が飛び出し、レインの剣とぶつかる。

 

「ならば、パルチザン ラージ!」

 

次はさっきよりも5倍以上の大剣が横からくる。

 

「ぐはっ!」

 

烈火で受け止めようとしたが、勢いを受け止めきれずそのまま横に吹っ飛ぶ。

 

「玲我さん!」

 

吹っ飛んだ僕をユミナたちや武田四天王、三騎士たちが驚く。

 

「今のはさすがにヤバかったな」

 

そう言って立ち上がり、烈火をドライバーに納刀し、僕はもう片方の必冊ホルダーから青色の本「キングオブアーサーWRB」を取り出し開く。

 

とある騎士王が振り下ろす勧善懲悪の一太刀!

 

本を閉じ、さらにドライバーに装填したブレイブドラゴンWRBも閉じる。そしてキングオブアーサーWRBをドライバーのレフトシェルフに装填する。

 

「ハア!」

 

烈火を抜刀する。

『烈火抜刀! 二冊の本を重ねし時聖なる剣に力が宿る!ワンダーライダー! ドラゴン! アーサー王! 二つの属性を備えし刃が研ぎ澄まされる!』

 

すると二冊の大きなWRBが後ろに現れ、キングオブアーサーから巨大剣『キングエクスカリバー』が現れる。同時に左手には小さくなったキングエクスカリバーがある。

 

「いくよ、レイン」

 

僕はレインに向かってキングエクスカリバーを振るうと、連動して巨大剣も動く。

 

「パルチザン ラージ」

 

レインと僕の剣がぶつかり合う。

 

「もういっちょ!」

 

エクスカリバーのトリガーを5回連続で引く。

 

『ジャキーン! 必殺読破! キングスラッシュ!』

 

徐々に押し切って、レインの剣を破壊する。

 

「さすがですねレイガさん。なら俺も」

 

レインがそう言うと、魔力が増幅する。もしかして

 

「パルチザン セコンズ! 

 

ド!




レインの魔法は全て勝手に名前を考えてつけました。


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絆の力がクライマックス

<レイガサイド>

「来たね。セコンズ」

 

レインの第二段階の魔法『セブンロード』正直今のままじゃなヤバいかも。

 

「いきます」

 

そう言って再び剣を飛ばしてくる。一見さっきまでと同じように見えるが

 

「サンダー!」

 

レインが唱えると剣に雷が纏う。そしてさっきとは比にならない速さに変わる。

 

「くっ!」

 

咄嗟に避けたが避けきれず、足にかすってしまう。しかも

 

「やば!」

 

雷付与によって足が痺れてしまう。これぐらいなら1秒で治るけど今のレインに一秒は致命的である。

 

「アース! アクア! フレイム!」

 

それぞれ土、水、火が付与された剣が僕ではなく足元に刺さる。そして瞬時に地面がドロドロになり、すぐに固まる。これじゃ身動きが取れない。

 

「ライト! ダーク!」

 

光と闇が付与された剣が同時に向かってくる。しかも回転しながら。

 

「カオス!」

 

セコンズでも上位の技が僕に向かう。足も動かないから避けれない。

 

ドカーン!

 

大きな爆発と共に訓練場は煙に包まれた。

 

 

 

 

 

<ユミナサイド>

私たちは今目の前で起こっている光景に驚いていました。玲我さんの仲間であるレインさんの実力が私たちの想像よりはるか上でグレイフィアお姉さまの言う通り私たちでは敵わないことが分かりました。

 

「パルチザン セコンズ! セブンロード!」

 

レインさんがそう魔法を唱えた瞬間彼の魔力が増幅したのを感じました。正直あれほどの魔力を持っている人が玲我さん以外にいることに驚きました。

次の瞬間さっきまでとは比べ物にならないほどの速さで戦闘が開始されました。

 

ドカーン!

 

何が起きたかわかりませんが突然爆発音とともに煙で前が見えなくなりました。

 

「玲我さん!」

 

私たちは玲我さんが心配で叫びますが、グレイフィアお姉さまたちがそれぞれ私たちの肩に手を置いてくれました。

 

「大丈夫ですよ。ユミナさん」

「グレイフィアお姉さま」

 

グレイフィアお姉さまがそう言って煙が晴れて中心を見ると、玲我さんが何もなかったかのように立っていました。

 

「玲我さん!」

 

 

 

 

 

<レイガサイド>

ふー、危なかった。「カオス」が来る前に咄嗟に『ジャッ君と土豆の木WRB』をシンガンリーダーに読み込ませ地面に突き刺すと、固まった地面ごと巨大な木で持ちあげて避けることができた。ちなみに「カオス」は僕が避けたらすぐに消えた。さすがレインだな。

 

「さすが、レイガさん。「カオス」は避けられましたか」

「危なかったよ。足が動かなかったときは」

 

そう言って、僕は烈火を納刀し新たなWRBを取り・・・出さずドライバーに装填してあるWRBを閉じ外す。

 

「?レイガさん」

「うん?そろそろいいかなーと思って」

「・・・なるほど」

 

僕は変身を解除する。それにユミナたちは驚いていたが、ジョニーだけは僕の行動に気づいてすぐに僕に向かう。

 

「レイガ、俺の番か」

「うん、どうせならあれでいこうかなと思って」

「あれか?」

「うん、あれ」

 

そう言うと、ジョニーが一枚のカードに戻る。これに惑星レイガ出身以外の人たちは驚く。

 

「え!」

「ジョニーさんが」

「消えた」

「いえ、紙になったでござる」

「魔法?いえそんな感じじゃないわね」

「今のは一体?」

 

エルゼ、リンゼ、ユミナ、八重、リーン、ルーが同じ反応をする。

 

「いくよ。ジョニー!」

 

僕はカードになったジョニーを天高く投げる。するとカードが大きな光のゲートに変わる。

 

「よっと」

 

僕はゲートをくぐると、そこはまるでガンマンたちがいる荒野であった。すると、一つの山に僕が通ったものと同じゲートが現れる。

 

「待ってたぜ!レイガ!」

「ジョニー!」

 

そこには先ほどの姿とは異なり、青色の鎧を纏ったジョニーの姿がいた。

 

「お前となら」

 

そのままジョニーと共に飛び上がり、再びゲートに向かう。

 

「限界なんて無い!」

「「友情マックス! クライマックス!」」

 

そして再び訓練場に現れたのは青色の鎧を纏ったジョニーと

 

「え!」

「玲我さんが」

「光ってる!」

 

金色に包まれた僕、スターマックス進化した状態だ。

 

S-MAX(スターマックス)進化! MAX・ザ・ジョニー!」

 

さて、今からが第二ラウンドだ。

 

「いくよレイン!」

「はい」

 

僕とジョニーは刀身が光り輝くMAXソードを持ってレインに斬りかかる。

 

「ウィンド!」

 

風魔法が付与された剣がレインを囲み、暴風の壁が作られる。

 

「いくよ。ジョニー」

「おう」

 

僕はジョニーと共に暴風を斬る。

 

「「MAXスラッシュ!」」

 

暴風を斬りさく。

 

「くっ!」

 

レインはすぐに後ろに飛び、こちらを見る。

 

「さすがですね。レイガさん、ジョニーさん」

「そっちこそ。斬りかかる瞬間、すぐ後ろに飛んでいたでしょ」

 

二人で話しながら、最後の準備をする。

 

「そろそろ最後にしようか」

「そうですね。さすがにもう訓練場がもたないですから」

 

そう言って、レインは魔力を増幅する。こちらもMAXソードの刀身を消して、MAXガンに変形する。

 

「行きます。パルチザン エレメンツ!」

 

炎、水、風、雷、土属性が交わった剣が向かってくる。威力はさっきのカオスより上だ。

 

「いくよ、ジョニー。ファイナルマキシマムキャノン!」

 

僕とジョニーの必殺光線がぶつかる。

 

ドカーン!

 

再び訓練場は煙に包まれる。数分後、煙が晴れるとそこには無傷の三人と間に大きな穴、クレーターができていた。

 

「ふぅ、これでいいかな」

「俺は大丈夫です。久しぶりにレイガさんと戦えて」

「俺もだぜ」

 

そう言って、僕はスターマックス状態を解いて、ルーブギアを使って、ビクトリークリスタルを召喚して、穴をふさぐ。

 

「終わったよ。みんな」

 

僕が穴をふさいだ後、みんなの方に振り向いて手を振ると

 

『終わったじゃ、ない!』

 

みんなから盛大に怒られました。なんでー----⁉

 

ちなみにあのあと、レインはウチの三騎士を鍛えることになった。三人とも毎日レインの剣で振り回されている。うーん頑張ってね。

あとジョニーはしばらく滞在するらしいから、ユミナたちに拳銃の練習をお願いしたら了承してくれた。

 

「あ、そういえばレイガさん」

「うん?何」

「結奈さんからあと何人か嫁が来るらしいです」

「・・・え⁉」

 

この後波乱はあったことを僕はまだ知らなかった。




次回はデアラから一人出したいと思います。
たくさんのコメントありがとうございます。
作品はわからない者は自分なりに調べるので、喋り方がおかしいなどのコメントもお願いします。


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時の精霊と氷の竜

今回は予告通りデアラと他作品から一人と一匹を出しました。しゃべり方は・・・温かい目で見てください。


<レイガサイド>

レインとの対決から数日が経った。あれから様々なことがあった。

ザナックさんがやってきて服飾店の支店をお願いされた。服飾店のことを考えていたので、喜んで了承した。

それから『銀月』に行って、支店を頼んでみたら、ミカさんは了承してくれた。なんでも最近ドランさんがタニアさんという女性と仲がいいらしい。へー。

今はどちらも建設中である。うーんゲルドたちも呼びたいけどあっちはあっちで忙しいだろうし、こっちはこっちで頑張るか。

 

あとある昼にルーが作った弁当を食べて、とてもおいしかった。どうやらルーはこれから料理を極めたいらしいので、結奈に頼んで料理が得意な人を連れて来てもらおうか考えている。

 

 

 

 

 

「帝国の北、極寒の凍土が広がるエルフラウ王国に陛下のおっしゃる転送陣らしきものがあると耳にしました」

 

ある日、リビングで昼食を食べている時椿さんが情報を持ってきてくれた。新たなバビロンか。

 

「ありがとう、椿さん」

「いえ」

「コれでマスターの愛玩人形がまた増エるわけでスね」

「せめてお嫁さんと言いなさい」

 

しれっとつぶやくシェスカにツッコむ。ホント不安なってくるよ。せめてもっとマシな子はいないのかバビロンには。

 

「とりあえずロゼッタとシェスカはバビロンで先行してくれる。寒かったら『庭園』の家に入っててね?」

「ご心配なく。バビロンでは適温に保たれる障壁が展開しておりますので、暑さ寒さもへっちゃらでありまス」

 

という事で僕たちは第三のバビロンへ向かうことになった。今回はユミナたち全員と、ユエとヨルそして琥珀だ。なんでもグレイフィアたちは城のメイドさんを教育するらしい。珊瑚と黒曜は寒さが苦手なので今回は留守番してもらうことにした。

 

 

 

 

 

「おー寒そうな風景」

 

エルフラウの地に降り立った僕は、降り積もった雪の中で思ったことをつぶやく。

 

「みんなは平気?」

「温暖魔法を使ってるからね。あなた以外は普通の常温状態よ。」

 

リーンが教えてくれる。そんな便利な魔法もあるんだ。

 

「それより、あなたは大丈夫なの?」

「うん、これぐらいなら慣れてるし」

 

そう言うとみんな驚くように僕を見る。

 

「…うん私たちも慣れてる」

「そうですね。よくここよりも寒いところ行きますし」

 

ユエとヨルの説明でユミナたちはより一層驚く。

 

「あなたもだけど、あなたの妻も中々ね」

「そう?」

 

そう言って僕たちはバビロンを探しに歩き出す。

 

「ん?」

「どうしました、レイガさん?」

「いや、何か知ってる気配を感じたんだけど」

 

そう言って気配が感じる方を向く。この気配どっかで?

と思っていると、地面から何かが僕の胸に飛び込んでくる。

 

「ユーン!」

「ごはっ!」

 

勢いを流せずそのまま後ろに転がる。

 

『玲我さん!』

 

ユミナたちが心配そうに僕を呼ぶが、

 

「あー大丈夫だよ、みんな。それより久しぶりだな、ユン」

「ユーン!ユンユン」

 

僕に飛びついて来たのは僕の家族であるピンク色のペンギン、正式名称は『ウォールペンギン』の子供のユンだった。

 

「よいしょっと、急に抱き着くとびっくりするだろう」

「ユーン!」

 

そう言って僕の顔を突くユン。

 

『か』

「うん?」

『かわいい!』

「!」

「玲我さんその子なんて言うんですか」

「かわいいねお姉ちゃん」

「そうね」

「かわいいでござる」

「はい」

 

そう言って、ユミナたちはユンを見ながら質問や感想を述べる。

 

「あーこの子はね」

 

しばらくユンの説明をする。

 

「この子ユンって言うんですね」

「かわいい名前です」

 

そう言いながらユミナとルーがユンを撫でる。

 

「ユーン!」

「そう言えば、ユンはどうしてここに」

「それはわたくしたちと一緒に来たからですわ」

 

僕の質問に誰かが応えたので、その方向を向くと、そこには黒髪のロングで左目が隠れている少女と白髪ロングで深海色の瞳をした少女

 

「狂三!、ヴェルザード!」

 

まさかの嫁二人がいた。

 

「お久しぶりですわ、玲我さん」

「会いたかったですわ、玲我」

「久しぶりだね、二人がユンと一緒に?」

「はい、結奈さんに言われて」

「なるほど」

 

久しぶりに出会った二人と話す僕にユミナたちはユンを撫でながら聞いてくる。

 

「玲我さん、その方たちはもしかして」

「うん、僕のお嫁さんの時崎狂三とヴェルザード」

 

紹介後はユンを囲みながら自己紹介と今回のことについて話し、その後二人も一緒にバビロンを探すことになった。

 

 

 

 

 

しばらくすると、氷で覆われた洞窟を見つけた。

 

「ここかな?」

 

ゴーストギアで召喚したクモランタンとフォーゼギアで召喚したフラシェキーを先頭に少しずつ進んで行く。

 

「ユーン!」

「ラブ―!」

 

緊迫した雰囲気でもユンとラブコフ、さらにポーラは楽しそうに下ってく。てか最近ラブコフ勝手に出てくるよね。僕は別にいいけど、あとからバイスがうるさいしな。

 

「…高いですね」

 

リンゼが上を見上げてつぶやく。洞窟内の高さは結構あって腰を低くしなくてもいいから楽だけど、結構奥まであるな。

 

『主。前方になにかあります。例の遺跡と思われますが、これはちと面倒なことになっているようで…』

 

クモランタンと共に先頭を歩いていた琥珀から連絡が来る。面倒?いったい何だろう

そう思いながら進んで行くと、黒光りする円筒型に大きな物体が、途轍もなく分厚い氷で覆われている。なんだこれ?

 

「氷かな?カチンコチンだな。これ、普通に砕けるか?」

 

ギアトリンガーで撃ってみるが、弾かれる。これ結構硬いな。

 

「リーンこれ、魔法で溶かせることできる?」

「うーん、やってみるけど…」

 

リーンが炎魔法で試すが、氷は溶けない。

 

「やっぱりダメね。この氷は普通の氷じゃない。魔氷よ」

「まひょう?」

「天然の魔素が蓄積されてできた氷。半端な力じゃ砕けないし、魔法の炎でも簡単には溶けないわ」

 

うーん困ったな。氷自体を壊す手段はあるけど、それだと洞窟自体も壊れるかもしれないし、溶かす方がいいよな。

 

「トンネルでも掘れればあっさりと辿りつくんですけどね…」

「トンネル…あ!」

 

良いことを思いついた僕はキラメイジャーギアを使用してキラメイシルバーの専用武器『シャイニーブレイカー』を召喚する。

 

『ババババーン! キラメイジャー!』

『シャイニーブレイカー!』

 

中央のエンブレムを二回押してドリル先を氷に当てる。

 

『ドリル一発!入りまーす!オイ!オイ!オイ!オイ!』

「よっと!」

 

トリガーを引くと氷が削られていく。数分後には大きなトンネルができた。

 

「これでいいかな」

「相変わらずね、玲我」

「お姉ちゃん今更だよ」

「そうでござるよ」

「はい、これが玲我さんです」

「はい」

「愛されてるわね」

 

みんながそれぞれ感想を述べるが、そこまで変なことしたかな?

 

「さて、これがバビロンへの転送陣なのかどうか…」

「大きいですわねえ」

 

ルーの言う通り、円筒状の遺跡の大きさは直径六メートル、高さ三メートルぐらいかな。ツナ缶みたいな形をしている。

うーん上からなんか感じるな。みんなには待ってもらって、僕だけ上に登ってみる。

 

「うーん、あ、あった」

 

遺跡の上には中央に直径一メートルほどのくぼみがあった。触れてみると、すり抜けた。そこにはいつもの転送陣があった。

 

「入り口を見つけた。これから入ってみるよ。みんなは少しの間待機していて。何かあったら琥珀に連絡するよ」

 

下にいるみんなにそう告げてから、いつもの通り転送陣を起動して、転送される。

 

 

 

 

 

目の前に広がるのは、いつものバビロンの風景であった。無事転送できたらしいな。

さてと、ここはどこかな。『図書館』ならリーンの機嫌が上がるけど、まあ僕は何でもいいけど、せめてマシな子なら。

辺りを散策してみると、三階建ての建物を発見した。煉瓦造りのような壁に、赤い屋根。横には八角形のトンガリ帽子のような形をした塔が伸びでいた。

 

「バビロンの施設で合ってるよね?」

「その通りでスの。ようこそ我が『錬金棟』へ」

 

声を掛けられ振り向くと、そこには金色の瞳に白皙の肌、サラリとしたピンク色の髪をサイドテールにした少女が立っていた。歳はシェスカよりも上だと思われる。

黒い上着に胸元には大きな薄紅色のリボン。白のスカートに黒いタイツと最初に出会ったシェスカたちと同じである。

 

「私はここ『錬金棟』を管理する端末、ベルフローラでスの。フローラ、とお呼び下さいでスの」

「わかった、よろしくフローラ」

 

錬金棟かまたリーンの機嫌が・・・あまり考えないようにしよう。

 

「ここへやって来たといウことは、貴方は博士と同じ全属性持ちでスの。ですが、『錬金棟』も使用許可は『適合者』にしか与えることはできませン」

「知ってる。シェスカとロゼッタの時も同じこと言われた」

「シェスカとロゼッタ・・・『庭園』と『工房』でスの?」

「そう」

「まあまあ、四九〇七年ぶりでスの。お懐かしい。二人が認めたのなら、『適合者』の資格は充分お有りだと思いまスの。でも一応、私も判断させてもりまスの」

「判断って?」

 

むにょん。

 

聞こうとした瞬間に、僕の右手に柔らかな感触が伝わる。

 

「まさか、これかよ」

「うふふ。合格でスの。ここで野獣化するような方なら資格ナシとしましたの」

「あんまり言いたくないけど、これでいいの?」

「はいでスの。次は生肌で」

「やめなさい」

 

上着のボタンを外そうとしたフローラに軽くチョップする。

 

「そうでスの?」

「妻でもない女の胸を触る趣味はありません。あと登録のためのキスも嫁じゃない限りしないから」

「わかりました。ならあなたのお嫁さんになりまスの」

「即決かよ…これからよろしくフローラ」

「はいでスの」

 

そう言って『錬金棟』の登録も終了した。




トリコからユン、転すらからヴェルザードをデアラから狂三を出しました。


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情報交換

今回キリが良かったので短めです。


<レイガサイド>

毎度恒例の登録接吻を終えてから、『錬金棟』の施設について説明を受けた。

簡単に説明すると、ここでは異なるモノを掛け合わせて新たなモノを生み出す。医療施設をあり、腕や足ぐらいなら再生できるらしい。

あと、博士が作った薬もあったが、媚薬やら興奮剤やら精力剤やら・・・・ホント頭痛くなりそう。

 

 

 

 

 

「『錬金棟』・・・テンペスト・レイ公国としては活用できそうな施設よね・・・」

 

ため息をつきながらリーンがそうつぶやく。そんな落胆しなくても。

あの後みんなを呼び寄せて、バビロンへ合流すべく今テンペスト・レイ公国へ向かっている。

 

「あの…私、何かしまシたの?」

「ああ、こっちの問題だから大丈夫」

 

困った顔をしたフローラがこちらを窺う。『図書館』みつかるまでずっとこれだな・・・困ったな。

 

「で、あなたが『錬金棟』の管理人さんですか…」

「フローラとお呼び下さいでスの」

「おっき!」

「くっ・・・なんて存在感なの」

「勝てない。さすがに…」

 

・・・なんだろう、ユミナとルー、エルゼとリンゼはさっきからフローラ本人よりも胸の方を見ている気が・・・気にしないでおこう。

平然としているのは八重とリーン、ユエたちだけだった。

 

「玲我殿も大きい方がお好みで…」

 

ルーが泣きそうな顔でこちらを見てくる。

 

「うーん、正直好きになった人ならどんなことでも好きになっちゃうし、惚れた弱みかな。あ、でもダメなところはちゃんと注意するけど」

 

自分の思ったことを述べると

 

『玲我さん(殿)(〃▽〃)ポッ』

 

なんかみんな顔を赤くしている。あれ、変なこと言ったかな。

 

「あなたも大概ね」

「・・・うん。さすがレイガ」

「ふふふ、そうですわね。ユエさん」

 

なんか後ろではユエや狂三たちが嬉しそうにこちらを見ている。

しかしこの笑みも次の瞬間終わりを迎えた。

 

「私さきほどマスターに胸を揉んでいただいたでスわ。キスも」

 

・・・終わった。そっとその場を離れようとしたが、もう遅かった。

 

「あらあらどういう事かしらレイガ」

 

ヴェルザードが笑顔をこちらを見るが、笑ってない。凍てつく氷が後ろから出てくる。あ、終わった。

 

「あの~」

「いいわけはあとでいくらでも」

 

そのあと、数時間も及ぶ説教時間を迎えた。結局最後は、みんなにキスをすることになったけど、理不尽。

 

 

 

 

 

『錬金棟』をテンペスト・レイ公国上空で『庭園』と『工房』にドッキングさせた。

フローラもシェスカたち同様に着替えてもらったが・・・・なぜナース?

まあ、とりあえず城にも医療室を作製した。あと『錬金棟』を使って早速新種の稲を開発した。イーシェンの稲を疫病に強く、実が多くつくように改良した。それをイーシェン出身の人に育ててもらっている。

街もだんだん充実してきて、最近ようやくザナックさんの服飾店と『銀月』をオープンすることができた。これでさらに街が充実してくれるだろう。

 

「なかなか順調にテンペスト・レイは発展してきておるようだな、っと…」

「まあ、玲我殿の作る国だ。心配はしておらんかったが…」

「おっと獣王陛下、それポン。んーと」

「ふっふっふ。鳴いて飛び出る当たり牌っと。皇王、当たりだ」

 

遊戯室で各国の王様たちが麻雀をしながら僕の国の感想を述べている。

 

「それでみなさん、今日はなんの集まりで?」

「ん?いや別に。みんなで麻雀をしたかっただけだが」

 

ベルファスト国王陛下がさらりと答える。いやそんなわけ

 

「ま、ちょっとした情報交換くらいはしてるがの」

「情報交換というと?」

「そうだな、最近だとやはりラミッシュ教国か」

 

皇王陛下とベルファスト国王陛下が応える。ラミッシュ?

 

「そのラミッシュ教国がなにか?」

「教国の首都イスラでな、吸血鬼が出るんだそうだ」

「吸血鬼⁉」

 

え、ユエと同じ種族がここにもいるの、結構驚きだな。

 

「噂では夜な夜な犠牲者が出ているそうでな。全身の血を抜かれたのか干からびた遺体が見つかるらしい」

「そうなんですか」

「それで吸血鬼・・・・ヴァンパイア族の仕業じゃないかと噂になっているわけだ」

「事件が起きたのがラミッシュってのが面倒だな。あそこは光の神・ラルスの信仰国だ。闇に属する者への敵愾心はとんでもないからな。なんでも属性に闇魔法の適性があっただけでも、白い目で見られるってくらいだ」

 

皇王と獣王がそれぞれ応えてくれるが、どちらも苦い顔をしている。ふーん光の神ね

 

そこで光の神・ラルスについて話を聞いたが、どうやら昔のラミッシュの地は魔物の住処になっていたが、その地を浄化したのが光の神・ラルスらしい。そこからラミッシュが建国されたとか。ふーん

 

「あの国は付き合いづらくてな。なんでも教義ありき、だからの。全て『光と正義の名の下に』では、堅苦しいだけだわい。特にあの教皇は苦手でのう」

「ああ、ワシも苦手だ。あの教皇様は説教くさくていけねえ。キツイんだよなあ、あの婆さん。悪気はねえんだろうけど」

 

苦笑しながら皇王と獣王が顔を見合わせる。教皇?

 

「すいません、教皇って?」

「ラミッシュ教国ってのは王家が世襲制の国じゃなくてな、高位司祭の中から最高位の教皇が選ばれるんだ。任期は死ぬか自ら退位するまで。で、現在ラミッシュの最高位にいる教皇こそが、エリアス・オルトラ。女教皇だ。確かこの間、即位二十周年だったと思うから六十は超えてるがな…っと」

 

ラミッシュ教国か、気になるけど、まあ関わることはないだろう。

 

この時僕は思っていなかった。まさか僕がその国と関わり大事件を起こすことを

そして僕の正体がバレルことを




次回はラミッシュ編、当然巨人を出す予定です。
明日はデザイアドライバー販売日、楽しみです。


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ラミッシュ教国からの使者

<レイガサイド>

「あー、また負けた!」

「へーか、つぎ俺!俺の番!」

 

街道の隅で子供たちの笑い声が上がる。

今僕は子供たちと一緒にベイゴマをしている最中だ。つい最近子供たちに遊びの道具として渡したが大盛況である。僕も参加したら、いつの間にかみんな僕を倒すことを目標としている。ちなみにモデルはリムルが教えてくれたもので、なんでも一定のダメージを与えると爆発するとか・・・よく分からないけど、それに似たものを作製した。

 

「今日はここまで。ほら、みんなにひとつずつベイゴマをあげるから、今日はもうおしまい」

「ほんとに⁉」

「やった!」

「俺、大きくなったらへーかの家来になるよ」

「おー、期待してるよ」

 

嬉しそうに去っていく子供たちを見送っていると、そこには見知った人が立っているのが見えた。

 

「オルバさんじゃないですか。いつこっちに?」

「お久しぶりです、玲我殿。いえ、テンペスト・レイ公王陛下」

 

ミスミドの交易商人、オルバさんだ。

 

「いや、まさか公王陛下自ら子供たちとこんな道端で遊んでいるとは。思わず立ち止まって拝見させていただきましたよ。しかし…」

 

笑いつつもベイゴマをひとつ手に取る。

 

「これはまた見たこともない遊び道具です。しかも造りは単純。どうですかな、これを我が商会で売り出してもかまいませんか?」

「いいですよ。これは友達が教えてくれたものだし、秘密の製造技法なんてないですし。できれば子供でも買えるような値段にしていただけると」

「ううむ。それだとひとつ買ったきりその後は売れないかもしれませんな。となると…」

「様々な種類を出すのはどうですか?」

「というと?」

「実はこれ、今はひとつしかないけど、例えば、素材を重くしたパワータイプやディフェンスタイプ、逆に軽くしたスピードタイプなどもあるんですよ。あとは一つ一つモチーフや色を変えるのはどうですか。動物や魚などでシリーズ化するとか」

 

僕の惑星でも使われているものと同じベイゴマの説明をする。まあこれもリムルのアイデアだけど。

 

「なるほど!それなら一人で何個も欲しくなりますな!揃えたくなる…そこにつけ込む、いや、それはいい手だ!」

 

あー、オルバさんの顔がリムルがなにか企んでいる時と同じ顔してる。

 

「この国は素晴らしいですな。商売の種が溢れている。しかもまだその価値に気付いている商人があまりいないというのが、また素晴らしい!」

 

ということでオルバさんの『ストランド商会』の支店を出すことになった。土地とかは内藤さんと二コラさんに任せよう。

のちにこのベイゴマが大人気となり、国全体を巻き込んでの大会が開催されることをこの時の僕はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

オルバさんと話したあと、僕はバビロンの『工房』で新しい武器を作成している。素材はフレイズの結晶である。魔力を流すほど強度が増すフレイズの結晶を使えば、これまで以上に戦力が上がると思ったからだ。また壊れても外部からの魔力を取り込んで再生できるようにプログラムもした。一生使える武器が生まれた。

まあ、第一弾としてまずはユミナたちの分だけ作成した。

それぞれ八重には刀、エルゼにはガントレット、ルーには小剣を二つ、リンゼには杖、ユミナには弓と矢を渡す。あとリンゼとユミナにはフレイズの結晶で作った銃弾も渡す。

 

「まあ、簡単に説明すると八重とルーの剣は斬れ味が今までよりはるかに上だから戦闘以外は斬っても麻痺するだけのエレキモードを使ってね。エルゼのは戦闘では破壊力を増すために左右に円錐形の突起をつけたけど、普段は出ないようにしてるから出すときはバスターモードって言ってね。リンゼの杖は今までよりも少ない魔力で魔法を発動できるようにしたよ。最後にユミナの弓は自動的に相手に照準が合うように設定してあるし、矢は飛ばしたら自動的に持ち主に戻るように設定してあるから。あとこの銃弾は着弾した瞬間に爆発するようにしてあるから注意してね」

 

と、説明をしたあとすぐにお試しがてら近くの岩や木に攻撃をし始める。

 

ドガーン!ドカーン!

 

「すごいわね。普段より遥かに砕きやすいわね」

「いつもの三分の一ぐらいで魔法が撃てます!」

「これならあのフレイズをも斬り裂けよう。玲我殿、ありがとうでござる」

「すごいです、玲我さん。狙ったところに当てれますし、いままでよりも攻撃力が上がっています」

「すごいですわ!こんなに太い木が大根みたいに切れますわ」

「あー、試すのはいいけど、ほどほどに」

 

武器の性能を試した後僕らは城へ戻ると、慌てた様子でラピスさんが駆け寄っていた。

 

「旦那さ、いえ、陛下。他国より使者の方がいらしています。すぐさま正装に着替えて高坂様のところへ」

 

他国からの使者?初めてだな、一体どこからだろう?

 

 

 

 

 

「お初にお目にかかります、テンペスト・レイ公国公王陛下。ラミッシュ教国教皇、エリアス・オルトラの使いで参りました、ネスト・レナードと申します」

「同じくフィリス・ルギットでございます」

「ん」

 

僕は謁見の間に置かれた玉座に座って、短く答える。まさか最近話していたラミッシュ教国の方から来るとはな。隣には武田四天王の高坂さんとグレイフィア、ヴェルザードが控えている。

まあ、僕はしゃべらず対応はほとんど高坂さんかグレイフィアがしてくれるから楽だけど。

 

「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。して、ラミッシュ教国からわざわざいかなるご用件でしょうか?」

横にいた高坂さんが口を開く。改めて見るとネストとやらは白いローブを纏い、金色の短髪をしたおっさん。対してフィリスは薄紫の髪をボブカットにした静かな雰囲気の女の子である。

 

「我が教国の教皇、エリアス・オルトラはテンペスト・レイ公国と深く誼を結びたく思っております。ついてはこの地にて我がラルス教を広く布教するため、どうかラルス教を国教と認めていただきたく。されば姉妹国として我がラミッシュは公国への援助を惜しみません」

 

・・・はあ?この人何言ってんの?

横を見るとグレイフィアとヴェルザードも目を丸くして驚いている。

 

「公王陛下にも洗礼を受けていただき、この地に教会の建設をお願いしたいのです。光の神・ラルス様の教えが広まれば、この地はさらには豊かに発展を遂げることでしょう」

 

こっちが聞いてもいないことをずっとしゃべっているが、興味ないんだけど。

 

「我らが神、ラルス様の教えは邪悪を滅し、光と正義の名の下「いらない」・・・は?」

 

僕の言葉に熱弁を振るっていたネストの口が止まる。

 

「いらない・・・とは?」

「その言葉の通り僕の国には必要ないから」

「我が神の教えを必要無いといっしゃる?陛下は神を信じないと」

「いや神は信じてるよ」

 

だって僕本人だし、キングじいちゃんたちは家族だから信じない方がおかしい。すると、さっきまで控えていたフィリスが口を挟む。

 

「ならば何故です?神を信じてると言いながら、その教えを広めようとはしない。矛盾していませんか?」

「していないね。そもそもなんで光の神・ラルスしかいないの?他の神は?」

「海の神、山の神、大地の神、様々な神がおられましょう。しかし、その神々の頂点に立つ至高の神こそが、光の神・ラルス様なのです。闇の神でさえ敵わぬ正義の絶対神で「くだらないな」なんですと⁉」

 

ネストは声を荒げて立ち上がり、怒りを表すがこっちの方が怒っている。

 

「陛下は我が神を無能だとおっしゃるか⁉」

「じゃあ聞くけど、正義の絶対神なら、なんでこの世に犯罪者や悪人がいるの?」

「そ、それは・・・そのために我々がいるのです!悪を裁き滅することを神になりかわり、その役目を「それは君たちの力で合って、神の力じゃないだろう」⁉」

 

顔を真っ赤にしてネストのおっさんは肩を震わせている。

 

「では陛下の信じる神は何を我々にもたらしてくれると言うのです!」

「なにも。そもそも神が自分たちに何かをもたらせてくれるという考え自体がおこがましいよ。あの人たちはただ見守りその世界に住む人々の幸せのためにいるものだと僕は思うよ。別に君たちの教えを否定するわけではないから誤解しないでね」

 

これはレジェンド先輩の受け降りだけどね。極論僕たちはその世界の人々に関わってはいない・・・と言われているけど、僕はがっつり関わっているな。反省しないと

と思っているとネストのおっさんが憎々しい眼差しでこちらを睨み、口を開く。

「・・・どうやら陛下は悪しき神に魅入られているようだ。浄化の洗礼が必要なようですな」

「・・・あ?

 

今この人間なんて言った。俺の家族を・・・なんて言った?

 

「琥珀。そいつ押さえろ」

『御意』

「うわあっ⁉」

 

琥珀を本来の姿に戻ってもらい、おっさんを取り押さえてもらった。

そしてゆっくりとそいつの前まで歩きしゃがみ込んで怯えるおっさんと目を合わす。後で聞いたらどうやらこの時僕は覇王色の覇気を気絶しない程度に出していたらしい。

 

「あんたがどこぞの神を信じるのは勝手だが、俺の(かぞく)を邪神扱いするのは許せねえ。あの人たちのことを知らねえ奴が勝手なことを言うな。消すぞ!

 

おっさんを睨みつけ、床に【フォール】を開いて落とす。場所は城外の適当な場所にした。

 

「レイガ様。もう終わりましたよ」

 

グレイフィアにそう言われ、冷静になると、結構ヤバいことしたな僕。振り向くと高坂さんが額を押さえて長い溜息をついていた。あー、ごめんなさい高坂さん。そして残されたフィリスは驚きのあまり声が出ないようだ。

 

(あなたにしては我慢していたほうよ。わたしなら氷漬けよ)

(ありがとう、ヴェルザード。少しは我慢強くなったかな?)

(そうかもね)

 

念話で励ましてくれるヴェルザード。

 

「あの・・・ネスト司祭は…」

「あー、ムカついたから城の外へ転移させた。多分怪我はしていないから」

「申し訳ございません。この度の無礼、どうかお許し下さい。そもそも今回の謁見はネスト司祭の強い要望で進められたもので、教皇様はあまり気ではなかったのです」

 

フィリスが頭を下げるが、そうなの?

 

「この国の国教をラルス教に定めることができれば、これ以上の功績はありません。おそらくそれをネスト司祭は狙っていたのでしょう」

 

なんだ、結局出世狙いかよ。

 

「ともかく、うちの国は国教を決めるつもりはない。教皇にもそう伝えておいてくれ」

「はい、それはもう。ただ、あの…先ほどの話ですが・・・ひょっとして陛下は神に会われたことがあるのですか?」

 

・・・あれ?さっきの会話で気づかれること言ったかな?

 

「すみません。変なことを言って・・・。私・・・神が本当にいるのか、わからなくなってしまって」




ベイゴマはベイブレードを意識して書きました。自分はバースト世代です。


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正体をバラした

短めです


<レイガサイド>

前回までのあらすじ

ラミッシュ教国から使者が二人来たが、そのうちの一人にムカついて城外へ追い出した。以上

とまあ簡単に説明したけど、今はそれよりもフィリスさんの方だな。てかさっきまで呼び捨てにしててごめんなさい。

 

「ずっと疑問に思っていていました。正義の名の下に悪を裁く。それは素晴らしいことだと思う反面、ただ魔族や闇の者だというだけで悪と決めつける・・・それは正しいのでしょうか?一度過ちを犯した者はもう許されることはないのでしょうか?そんな疑問が次々と湧いてきて・・・」

 

なるほどね。神を信じているはずなのに、自分たちの行いは正しいのか迷っているのか。

 

「ヴェルザード、ちょっと時間止めてくれる」

「?いいけど、何をするの」

「ちょっと無茶ぶりを」

「わかったわ」

 

ヴェルザードに頼んで世界の時間を僕とグレイフィア、ヴェルザードとフィリスさん以外停止させる。

 

「え? 今何が」

「大丈夫、ちょっと時間止めてもらっただけだから」

「・・・・え⁉ 時間を・・・え⁉」

「単刀直入に言うけど、実は僕神様なんだ」

「・・・・」

 

あれ反応薄いな。もしかして信用されていない。てか自分が神様って言って信じる方がおかしいか。

 

「この姿じゃわからないよね」

 

そう言って僕は本来のウルトラマンの姿に戻る。

 

「これで信用してくれた?」

「・・・」

 

あれまた反応ないな。

 

「レイガ様その姿ではオーラが溢れすぎているので元の姿の方がよろしいかと」

「あーそうか」

 

人間の姿に戻り、改めてフィリスさんに話しかける。

 

「あのー、大丈夫ですか?」

「は、はい…」

 

さっきまでよりは話せるがせれでも精一杯のようだ。

 

「ここで話すのもなんだし。どこかで休みながら話そうか。えっと今なら応接室が空いていたはず」

「は、はい!」

 

【コネクト】を使用して応接室へ転移する。そこにはすでにお茶やお菓子がすでに用意されていた。

 

「用意しておきました。レイガくん」

「ありがとう、レム」

 

でもフィリスさんはまだガチガチである。あ、そうだ。

僕はいい案を思いついて電話する。その相手は、

 

『おー、久しぶり』

「久しぶりです、神じいちゃん。ちょっとお願いがあって」

『ふむふむ』

 

最高神である神じいちゃんだ。

 

「あの・・・誰と話を?」

「最高神の神じいちゃん」

「最高・・・え⁉」

 

すると部屋にまばゆい輝きに包まれた神じいちゃんが現れる。

 

 

 

 

 

「神じいちゃん、ひとつ質問なんだけど?」

「はいはい、なんじゃね?」

 

フィリスさんと対面する形で神じいちゃんはソファ座っている。僕はその間に小さな椅子に座っている。

 

「光の神・ラルスっているんですか?」

「おらんよ。正直、聞いたこともない。中級神はもとより、下級神でもそんな名の者はおらんな」

 

やっぱり。隣を見るとフィリスさんがショックを受けていた。

 

「じゃあ光の神ってのはいるんですか。火や水の神は聞いたことはあるけど」

「それもおらんな。まあ、強いて言うならワシじゃな」

「で、では、千年前、光の神官。ラミレス様が呼び出したという光の神。ラルス様とはいったい・・・」

「呼び出した、のう。人間に神を呼び出せる者など滅多におらんのじゃが。まあ、気まぐれで降臨する神もおるからなんとも言えんが」

「じゃあ、やっぱりラルスってのは光の精霊ですか?」

「おそらくそうじゃな」

 

光の精霊なら納得できるな。

 

「ならば・・・我々の教義とはいったい・・・」

 

神じいちゃんに完全否定され、落ち込むフィリス。

 

「別に神がいなくてもいいんじゃない。神を信じるのはいいけど、頼っては人は成長しないし、僕たちだって何もしない。僕たちはただ人々を見守ることしかしない」

 

・・・ヤバい。自分で言ってみると、僕結構やらかしている。

 

「いいんですか、それで・・・」

「うーん、酷い言い方になるが、この世界が滅んでも、それはこの世界の人間たちの責任。基本、神々はなにもせんよ。いや、もちろん神の干渉によって起こった滅亡の危機なら責任は取るがの。邪神降臨なら」

「ま、基本はこの世界のことはこの世界の人間になんとかしてもらいたいと思ってるよ」

「私はこれからどうしたらいいのでしょう…光の神・ラルス様は存在しない。その教義は人によって作られたまやかしだった。我々の行いはすべて無意味だったのでしょうか?」

「無意味ではないと思うよ。実際それで救われた人もいると思うし。これからは『人々のために』してあげればいい。教義なんかに縛られずにね」

「・・・はい」

 

今までの考えを変えるのは大変だと思うけど、これから少しずつ変えていけばいいよ。

 

「さて、それじゃあお暇するかの」

 

僕たちは謁見の間に戻る。

 

「ではの。強く生きなさい、お嬢さん。元気でな」

 

にこやかに微笑むと神じいちゃんは光の粒になって消えていった。

 

「あ、フィリスさん。僕の正体は内緒にしておいてね」

「は、はい!」

 

そうして時間は再び進んだ。琥珀たちが動き出す。

 

「まるで夢のようです。先ほどまでのことは、本当にあったことなのか・・・」

「現実だよ。君は神様に会った。今の目の前にいるし」

「・・・そうですわね」

 

彼女の静かな微笑みに、先ほどまでとは違う意思の光を僕は感じた。

それから一通りの謝罪を述べて彼女は去っていった。

まあ、この後高坂さんとグレイフィアにこっぴどく怒られました。

フィリスさんが心配だったので、電話してラミッシュ教国に忍びの者を派遣した。

 

数日後、ラミッシュ教国司祭、フィリス・ルギットはその地位を剥奪され、処刑することを言い渡されたことを僕は知った。




次回はお嫁さんの中から忍びを出そうと思います。


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道場破り

今回は嫁を一人出します。


<レイガサイド>

「それで処刑の日は」

『三日後の早朝らしいです。どうやら処刑をとどまるように働きかけている一派もいるようで、即処刑とはならなかったようです』

 

はあ、ヤバい。久しぶりにキレそう。なんでフィリスさんが処刑されないといけないんだ。

 

「ありがとう、忍。続けて探りを入れて、なにかあったら連絡お願い」

『はいっす。あ、今回のご褒美にデートかキスを』

「わかったよ」

『やったー!』

 

電話を切る。今回任務に就いているのは僕の嫁である猿飛忍。情報収集なら彼女の専売特許だから頼んだ。

 

「ったく、これだからあの手の人たちってのは厄介よね。なんでもかんでも自分たちが正しいって思いこんでいるんだから」

 

バルコニーのテーブルに肘をついて、怒りを隠そうともしないエルゼ。みんなにもフィリスさんのことを話しておいた。

 

「それでどうするんです?」

「正面から行って処刑を止めてくる」

 

リンゼの質問に端的に答える。

 

「具体的にどうする気でござる?」

「牢屋ぶち壊してフィリスさんをさらってくる」

「国際問題になりますよ?」

 

確かに言う通りだけど、正直あの国を消さないだけましだと思う。

 

「あの国に嫌われて、なにか問題ある?」

「まあ、今のところは何も。信者を送り込まれて嫌がらせをされるかもしれませんが」

 

隣に控えている高坂さんに確認を取るが、それぐらいならいくらでも対処できるからいいや。

 

「正義のためならどんなことでも許される。そんな考えなのかもしれませんわね。全く便利な言葉ですわね」

 

呆れたようにルーがつぶやく。

 

「じゃあ、ちょっと行ってくるね」

「では私たちも・・・」

「いや、今回は僕と琥珀だけで行くよ。あっちがに何をしてくるかわからないし」

 

さて、とりあえず滅ぼ・・・じゃなく行ってこようか。

 

 

 

 

 

「なんだと?お前がテンペスト・レイ公王だ?馬鹿の相手をしてる暇はないんだ、とっとと帰れ!」

 

バビロンを使ってラミッシュ教国の首都、イスラの大神殿の前で、門前払いを食らった。

 

「とにかく教皇とか偉い奴を呼んで来てくれない。話があるんだけど」

「貴様!教皇様を呼び捨てにするか!」

「知るか!僕は信者じゃないし、この国の民でもないぞ?」

 

すると、門番の騎士が怒り出し、剣を抜いて斬りかかって来た。はあ⁉

剣を躱し、そのまま手刀で獲物を叩き落す。しかし剣が落ちた音で神殿奥にいた騎士たちがぞろぞろとやって来る。

 

「どうした⁉」

「侵入者だ!教皇様を侮辱し、テンペスト・レイ公王を騙る不届き者だ!」

「なんだと!」

 

あーめんどくさいな。

 

「ちょっと寝てろ!」

 

覇王色の覇気を出して囲んだ騎士を全員気絶される。

 

『面倒な連中ですね』

「まったくだ」

 

僕の後ろからちょこちょことついてくる琥珀の言うことに頷く。

 

(それにしても何もせず気絶させるとは。さすが我が主。全くそこが見えん)

 

と琥珀が内心思っていることを僕は知らなかった。

 

「これは・・・テンペスト・レイ公王陛下⁉」

 

すると、騒ぎを聞きつけてネスト司祭がやって来た。ちょうどいい

 

「教皇に話があって来た。この人たちはいきなり襲ってきたから撃退しただけ。人の話を聞かなすぎ」

 

気絶している騎士たちを指差してネスト司祭に説明する。

 

「わかってるんですか?貴方は他国の兵士を打ち倒し、無理やり神殿内へ侵入しようとしたんですよ?」

「他国の王様にいきなり剣を向けて襲い掛かって来るのも国際問題じゃないのか?そっちこそわかってるの?」

 

睨みつけるネストに同じように視線を返す。別にあんたらに好かれたいとは思ってないよ。早く案内しろよ。

 

「何をしている」

「ゼオン枢機卿・・・」

 

神殿の奥から煌びやかなローブを着た壮年の男が現れた。枢機卿?たしか教皇の次に偉い位だっけ?

 

「この者は何だ、ネスト司祭。神聖なるこの神殿で騒ぎを起こすとはまったく不愉快な」

 

ちっ、と舌打ちしながらその枢機卿はネスト司祭に視線を向ける。なんだこの態度。

 

「こ、この者、いや、この方はテンペスト・レイ公王陛下であらせられます。教皇猊下にご面会を求めておられます」

「なんだと・・・!」

 

目を見開いて僕の方へ視線を向けた後、じろじろと値踏みするように観察している。

 

「テンペスト・レイ公王陛下であらせられるか?」

「そうです」

「一国の王が、直接わが教皇猊下になんのご用でございましょう。よろしければ私がお伺いいたしますが」

「それは教皇猊下に直接お話しさせていただきたく。ご案内を頼めますか?」

「・・・こちらへ」

 

枢機卿に促されて神殿内へ入る。

 

 

 

 

 

「ようこそわが神殿へ、テンペスト・レイ公王陛下。突然の訪問で少々驚きましたが、教皇として歓迎いたします」

「初めまして教皇猊下。このような来訪になったことをお許し下さい」

 

大きな広間に連れてこられると、そこには大きな長い帽子をかぶり、純白のローブに身を包んだ目つきの鋭い老女が座っていた。この人が女教皇、エリアス・オルトラ。

別に謝る必要は無いけど、ここで面倒なことを起こす方が大変だからな。

 

「・・・いろいろと申し上げたいことはございますが、まずはお話をお伺いいたしましょう。なにゆえ我が神殿に?」

「こちらの司祭、フィリス・ルギットの処刑を中止していただきたい」

 

その名を口にすると広間がざわざわとざわめき出した。

 

「これはおかしなことを。他国の罪人への処罰に干渉しようとは。とても一国の王の行動とは思えませんね」

「罪人ですか。いったいなんの罪で?」

「主神であるラルス様をまやかしの神だと標榜。それは司祭に許されぬ背信。重ねて人々を襲ったヴァンパイアである嫌疑もかけられています。闇の者の邪悪な魂は浄化されなければいけません」

 

・・・は?この人何言ってんの?

 

≪琥珀。フィリスさんは人間だったよね?≫

≪はい、主≫

 

琥珀からも確認は取れた。ということは、こいつら

 

「じゃあなんで今まで彼女がヴァンパイアであることを見抜けなかったんですか?」

「・・・ラルス神は決して悪をお許しになりません。必ず天罰が下ります。今回のように」

「その割にはずいぶん被害者がでたそうじゃないですか?もっと早く天罰を下していれば、その人たちは被害にあわずにすんだのでは?」

「被害者もなにかしらの罪を重ねていたのでしょう。信心深い者ならば必ず助かったはずです」

 

あー話にならない。後付けの理由ばっか。

 

「もう、バカらしい。あんたらまじで救いようがないな」

「な!」

 

僕の言葉に周りが凍り付く。教皇でさえも目を丸くしている。

 

「言っとくけど、光の神・ラルスなんていない。すべて作られたまやかしの神だ。フィリスさんはそれに気付いただけに過ぎない。あんたらがどこぞの神を信じようが合ってだが、信じない者を悪だと決めつけるのはやめろ。自分たちだけが特別だとは思うな」

「貴様!我らの神を愚弄するのか!」

「そんなん知るか!そんなに言うならその神を連れて来いよ。いくらでも謝罪してやるよ。連れて来れればな。何度でもいうお前たちの神は存在しない」

 

 

 

 

 

「たぶん、この国には裏がある。そう思ったからわざと捕まったにさ」

『はあ・・・』

 

あの後僕たちは地下の鉄格子に入れられた。まさか牢屋に入れられるとは久しぶりだな。

 

『で、これからどうなさるおつもりで?』

「とりあえずフィリスさんの安全確保と情報収集。まずはここから脱出するか」

 

懐から『カラフルコマーシャル』を取り出して僕と琥珀のホログラムを生み出す。

 

「ありがとう、カラフルコマーシャル」

『♪♪』

「さてと、そろそろかな」

『?主誰かと待ち合わせを』

「うん。たぶんそろそろ」

「ニャハハ~来たよ、レイちゃん!」

「お、来た来た」

 

鉄格子の向こうにはピンク色のショートでセーラー服を着た少女、猿飛忍が右手に鍵を持って参上する。

 

「どうだった?」

「うん、黒も黒。大黒だったよ」

「やっぱり、それでフィリスさんたちはどこにいるかわかった?」

「うん。ここから右手奥の『8』番の扉にいたよ」

「OK。そんじゃ出ますか」

「おー」

 

忍は扉を開ける。僕はエナジーアイテム『透明化』を使用して全員を透明化させる。

少しすると、フィリスさんがいる『8』番の扉の前に着くが、他に誰かいるな。誰だろう?

 

「フィリスさん・・・フィリスさん」

 

囁くように声をかける。何回か呼びかけたところで、フィリスさんがゆっくりと顔を上げた。

 

「声が・・・誰?誰ですか・・・?」

 

『透明化』を消して姿を現す。

 

「テンペスト・レイ公王陛下!」

 

驚くフィリスさんを置いて、鍵を使って中に入る。

 

「なぜここに?」

「君を助けに来た。僕のせいで処刑されるって聞いたから」

「いいえ、陛下のせいなどでは!私が・・・」

「しーっ、静かに」

 

慌てて口を両手でふさぐフィリスさん。

 

「ところでそこで寝ている人は、誰?」

「この人は・・・いえ、この方は・・・この国の教皇猊下、エリアス・オルトラ様でございます・・・」

「・・・え⁉」

 

思わず声を上げてしまったが、すぐに自分の口をふさぐ。

エリアス・オルトラ⁉じゃあさっき出会った人は・・・偽物⁉

 

「じゃあ僕がさっき出会った教皇って人は?」

「・・・それは別の人です」

「確か、キュレイ枢機卿って言う人で、ゼオン枢機卿の姉らしいです」

 

忍が真実を教えてくれるが、まさかあの現場にいたやつら全員グルだったのか。

 

「ごめん、話が見えないんだけど。どういう事?」

 

フィリスさんの話によると、あの後帰国してから事の仔細を教皇たちに伝えたところ、枢機卿の怒りをかって、即刻死刑を宣告されたらしい。しかし、それを取り成したのは本物の教皇であり、一部の司祭たちであった。でも結局は全員捕まって牢屋にぶち込まれた。

 

「でも、なんで教皇を牢屋に?」

「それは、この国の秘密を守るため、です・・・」

 

教皇猊下が目を開き、僕の方を見た。教皇の眼はユミナに似たオッドアイであった。右眼は青く、左眼は薄い翠色であった。

 

「テンペスト・レイ、公王陛下、ですね・・・・エリアス・オルトラでございます」

 

力なく身を起こして名乗る教皇猊下。だいぶしんどそうだな。

エナジーアイテム『回復』とコスモスギアを使って、体調を回復させる。

 

「・・・ありがとうございます。すっかり良くなりました」

「それはよかったです。で、なぜあなたがここに連れられたのですか?国の秘密って?」

「・・・・」

 

しばらく沈黙していたが、意を決して顔を上げた、

 

「これは我が教国の建国にまつわる秘密ですが・・・もうあなたたちには隠していてもなんの意味もないでしょう。フィリスが言った通り、光の神・ラルスという神は存在しません」




はい。超人高校生から猿飛忍を出しました。他の高校生もいつか出したいです。


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闇の真実

<レイガサイド>

「このことはすべての枢機卿が知っています。私も司祭から枢機卿になった時に、前教皇から教えられました」

 

まさかすでに知っている人が何人もおるとは意外だったな。てか知っていて神がいるように信者に振るまっていたということか。

 

「じゃあ昔この地を浄化したのは一体?」

「はい。この地を浄化したと言われたラミレス様は本当は神官などではなかったのです」

「神官じゃない?」

「ラミレス様は神官などではなく、実は召喚術師でした。闇属性の魔法使いだったのです」

「え!」

「ラミレス様がこの地を浄化すべく呼び出したのが光の神・ラルス様と言われていますが、真実は・・・彼が召喚した闇の精霊でした。その闇の精霊の力をもってこの地の魔物や魔獣を討伐した後、ラミレス様は一つの計画を思いつき、実行に移しました」

「計画?」

「ラミレス様は闇の精霊が持つ力、精神に干渉する力を利用して、この地に王国を築くことを考えました。そこで作られたのがラルス教です。闇の精霊はこの地に住む者の精神に干渉し、ラミレス様の考えに同調していくように仕向けました。大半の人々はラミレス様の教えを疑うこと無く受け入れ、ラミッシュ教国という国が生まれたのです」

 

・・・それって洗脳じゃんまじかそんなことまでしてたんだ。

 

「そんなにも闇の精霊の精神干渉は強いんですか?」

「魔力抵抗に優れたものには効果が薄かったようです。そのため、光の神・ラルスという存在が生み出されました。精神干渉と神。この二つを操ることでラミレス様は人々の心を掌握したのです」

 

とんでもないな、改めてラミレスって奴がどれだけヤバいことをしたのか分かったな。

 

「・・・教国の秘密はわかりましたが、なんで教皇猊下はここに閉じ込められたのですか?」

「私がフィリスをかばったので、秘密を漏らそうとしているのでは、と疑ったのでしょう。キュレイ枢機卿とゼオン枢機卿の姉弟はもともと教皇の地位を狙っていましたから、渡りに船とばかりに私を弾劾してきました。やがて変な薬を飲まされ、気がつけばこの有様です。私に教皇を譲位させるために、殺しはしなかったようですが」

 

なるほど、結局は地位のために実行したんだな。

 

「でもなんで教皇猊下はフィリスさんの話を信じたのですか?」

「・・・私は神を信じ、司祭となりました。しかし、神がいないという事実を知らされました。それからはただ教国のために働きました。そして気付けば教皇の地位に立っていました。虚しい地位でしたが、それでも放り出すことはできませんでした。そして先日、フィリスの話を聞いたのですよ。神が存在するという話を」

 

そう言って教皇はフィリスの方へ視線を向ける。微笑みながら嬉しそうに声を弾ませて、僕に語りかけてきた。

 

「その時の私の気持ちがわかりますか?光の神・ラルスは存在しなかった。けれど、神は確かに存在し、神に会ったという少女がいる。その彼女が聞いたという神の言葉を、もっと聞いてみたいと思っても不思議はないでしょう?」

「嘘をついているとは思わないんですか?」

 

そう問いかけると教皇は自分の左眼を指差す。

 

「私は人の嘘が見抜ける魔眼を持っているのですよ。これが教皇に選ばれる理由のひとつでもありますが・・・。フィリスが嘘をついていないことはすぐにわかりました。神が本当にいるということを知って、とても嬉しかった。そして彼女が羨ましかったのです。私も神にお会いしてみたかった・・・」

 

しんみりとつぶやく教皇猊下。僕は自身の究極能力(アルティメットスキル)白氷之王(ヴェルザード)』を通して、ヴェルザードに話しかける。

 

『ヴェルザード聞こえる?』

『ええ、どうしたの?』

『前と同じように時間停めてくれる?』

『わかったわ』

 

横の琥珀を見ると止まっている。

 

「もう会ってますよ」

「え!」

「僕実は神様なんだ」

 

そう言って、僕は本来の姿を見せる。

 

「・・・」

 

すぐに人間の姿に戻る。

 

「・・・本当だったのですね。神々しい光を感じられるとは」

「ごめんね。だまってて」

「いえ、貴方様に出会えただけで私は・・・」

 

そう言って、ぼろぼろと涙を流す教皇。

 

「話はきいておったよ」

「え⁉神じいちゃん」

 

突然隣に神じいちゃんが現れる。

 

「どうしたの?」

「ずっと見ておったのだが、レイガ君が正体を現したからの~。ついでに儂もと思って」

「レイガ様。その方は」

「別に今まで通り公王陛下でいいですよ。で、この人は神じいちゃん。僕の祖父の友達で最高神」

「最高⁉」

 

すると、教皇猊下とフィリスさんは頭を下げる。

 

「二人とも顔を上げておくれ。お二人には悪いことをしたな」

「いっ、いえ!どうかお気になさらず!」

「お、恐れ入ります」

 

二人は頭を上げた。教皇猊下は再び涙を流す。

 

「さて、これからどうしようか。枢機卿たちもだけど、問題はこの下だよな」

 

僕はそう言って下を見る。すると、教皇猊下が顔を強張らせる。

 

「気付いておられましたか・・・。この国を建国したラミレス様が呼び出した闇の精霊・・・それがこの神殿の地下にまだいることを」

 

そう。実は地下に連れてこられた時から何かの気配を感じていた。そして教皇猊下の話からこの下に闇の精霊がいることが推測できた。

 

「ラミッシュ教国を建国したラミレス様は、少しずつ闇の精霊に逆に支配され、やがて精神を侵食されてしまったのです。そして精霊と一体化したラミレス様は、当時の枢機卿たちのよってこの地に封印されてました。これは枢機卿たちにとって都合がよかった。なぜなら精神に干渉する精霊の特性は失わず、この国においては教団の力となり得たからです。生かされず殺されず、今でもラミレス様は教団の礎となっているのです」

 

なんてこった。この秘密を枢機卿の奴らは今まで隠していたのかよ。

 

「レイガ君やそこのお姉さん、忍者の子のように、魔力への抵抗が強い者には闇の精霊の力も及ばないが、普通の人たちはそうはいかん、今でも知らず知らずのうちに、そのラミレスとやらへの意識に引っ張られているのじゃろうな」

「なら、その闇の精霊をなんとかすれば・・・過剰な信仰心は消える」

「そう。そこからは当人の気持ちや考え方次第じゃが」

 

じゃあ、闇の精霊を何とかしないとな。

 

「しかし、急いだ方がいいかもしれんぞ?封印といってももうすでにガタがきとる。闇の力が漏れ出しとるからな」

「その通りです。そのせいで都のあちこちで人々が生命力を奪われる現象が起きています。表向きはヴァンパイアのせいとなっておりますが」

 

ヴァンパイア事件の真相もこれのせいかよ。

 

「闇の精霊はどうにかするとして・・・教皇猊下の味方になってくれそうな人っていますか?」

「何人かの枢機卿は私と同じように変革を望んでいます。ゼオン枢機卿らの一派と比べると少数ですが・・・」

 

それでもいないよりはマシだな。

 

「じゃああとは僕たちに任せてください。神じいちゃん」

「ああ、後は任せたぞ。レイガ君」

 

神じいちゃんは光の粒と共に消えてしまった。

 

『もういいよ。ヴェルザード』

『あらそう?でもタダっていうわけには』

『わかってる。何がご要望は』

『もちろん・・・』

『わかったよ』

『うふふ。楽しみにしてるわ』

 

時間が再び進み、琥珀がキョトンとしている。

 

≪主。なんか今、変な感覚が?≫

≪気にしなくていいよ。害はないから≫

≪はあ・・・≫

 

さっきまでと位置やポーズが変化していて琥珀が疑問に思っているが、今は説明が面倒だから、また今度に。

 

「・・・夢を見ていたような気持ちです・・・」

「私もそう思いました。教皇猊下」

 

神じいちゃんに出会えた嬉しさから、興奮した気持ちを落ち着かせようと呟く教皇を見て、フィリスさんがクスっと笑う。

その時下からザワッとした感覚が襲ってくる。

 

「マズイな。闇の精霊の封印が外れかけている」

「そんな⁉」

 

フィリスさんの顔が青ざめる。すると地下から低い地鳴りが聞こえてきた。マズイな。しかもだんだん大きくなってる。

牢屋から出て外を目指す。

 

「なんだ貴様⁉「うっさい」はあっ⁉」

 

上への階段を上っていると、牢屋番に出会ったが時間がないのでギアトリンガーで麻痺らせる。

 

「琥珀!元のサイズに戻ってくれ!」

『御意!』

 

琥珀を大きくなってもらい、さっきの牢屋番を乗せて外を目指す。

 

 

 

 

 

「教皇様!いったいなにが起こっているのですか⁉」

「落ち着いてください。まずは安全のため、ここから離れて・・・」

 

あの後脱出してから街の中心へ【コネクト】を使って転移した。街の人々はこの地鳴りに慌てふためいていたが、教皇を見るとあっという間にみんなに取り囲まれてしまった。教皇が避難をするように説明しかけた時、ものすごい爆発音と共に、神殿の一都が吹っ飛んだ。そこから立ち込める煙から黒い何かが這い出てくる。

煙が消えるとそこには

 

gyaaaa!

 

巨大なアンモナイト状の怪獣が現れる。

・・・え、てかあれって『ガタノゾーア』じゃん。めっちゃ似てる。

と、心の中でツッコんでいると、触手を振り回して街を破壊する。

しかも口から吐き出された黒い液体がポタポタと落ち、鳥のような形を形成する。

いや、あれ『ゾイガー』じゃん。いや小さいから『シビトゾイガー』か・・・てかここってルルイエ⁉

と、一人混乱はしていたが、小型のゾイガーみたいな鳥があちらこちらで暴れて、人々の悲鳴が聞こえる。

 

「化け物だ・・・」

「神よ・・・助けて下さい・・・どうか・・・!」

 

周りからは祈るような声が聞こえてくる。あれがその神だとは知らずに。

 

「千年前みたいに封印はできないんでいか」

「無理だと思います。当時の枢機卿たちの力にはとてもかないません。今の枢機卿は魔法も使えない者が大半を占めていますし・・・」

 

そうか、なら仕方ない。

 

「琥珀と忍はフィリスさんと教皇猊下と一緒に人々の避難をお願い」

「了解~」

『主は?』

「僕はあいつを倒すよ」

「「え⁉」」

 

僕はトリガーギアでGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーを召喚する。

 

『♪♪ ウルトラマントリガー マルチタイプ ブートアップ!ゼペリオン

「未来を築く、希望の光!!ウルトラマントリガー!」

『♪♪ ウルトラマントリガー マルチタイプ

「シャア!」




はい。闇の精霊ならと思い、ガタノゾーアを出しました。
次回は、エタニティの光を


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超古代の光

戦闘描写が難しい


<フィリスサイド>

「デュワ!」

 

突然公王陛下が光輝くと、次の瞬間私たちの目の前に巨人が現れました。

 

「・・・あれはもしかして」

「公王陛下」

 

私と教皇猊下は驚きました。これほどまでに自分達より大きく、そして希望を与えてくれる存在を。

 

「あっちはレイちゃんに任せて私たちは避難誘導を」

「は、はい!」

 

なんででしょう。さっきまでの不安が今は微塵も感じません。あの方なら大丈夫だと信じられる。

 

 

 

 

 

<レイガサイド>

 

ウルトラマントリガーに変身して、闇の精霊に向かい合う。

街では人々の歓喜の声が響き渡ってる。正直早く避難してほしい。

 

『さてと、まずは小型のゾイガーからだな』

 

僕は一枚のカードを天に掲げる。空に光の門が浮かび上がり、扉が開かれる。そこからは光のドラゴンが無数に現れる。その内の一体に念話で話しかける。

 

≪サッヴァーク。ここら一体の闇の精霊が生み出した敵を倒し、街の人々たちを守れ≫

≪は!我が主≫

 

光のドラゴンのリーダーである煌龍(キラゼオス)サッヴァークに命令を伝える。

あっちはサッヴァークたちに任せて、僕はこいつだな。

 

gyaaaaaaa

 

闇の精霊は先制攻撃に触手を伸ばしてくるが、僕は手の先から青白い光弾『トリガーハンドスラッシュ』で触手に当てる。

 

「シェア!」

 

gyaaaaaaa

 

触手は千切れたが、まったく怯まず口から電流を吐いてくる。

 

「ドゥワァ!」

 

攻撃を喰らってしまい、後ろに倒れる。結構威力あるな。ならこっちは

マルチタイプキーをスパークレンスから外し、ベルトのスロットに填め、パワータイプキーを取り出す。

 

『♪ ウルトラマントリガー! パワータイプ!ブートアップ! デラシウム!

「勝利を掴む 剛力の光 ウルトラマントリガー!」

『♪♪♪ウルトラマントリガー パワータイプ!

 

両手を顔の前でクロスし広げ、トリガーパワータイプに変わる。

 

「ダアァ!」

 

表皮に向かって殴りかかる。何度も殴っているが、効いている感じがしない。硬さもガタノゾーアと一緒かよ。

 

「!ドゥワァ」

 

攻撃を緩めた瞬間に下から触手が顎目掛けて飛んできた。避けることができず、後ろに大きく倒れ込む。

くそ。ならこれで

僕は跳ね起きて、両腕を斜めに広げる。腕を上へ大きく回し、胸の前で左右の掌を向かい合わせる。凝縮されたエネルギーが赤い光球となる。それを右手に宿し、大きく振りかぶってまっすぐ闇の精霊に伸ばす。パワータイプの必殺技『デラシウム光流』だ。

 

ドカーン!

 

大きな爆発音と共に、煙が立ち込めるが、嫌な予感がする。

 

gyaaaaa

 

嫌な予感が的中した。まったく効いていない。表皮に傷すらついていない。

 

gyaaaaaaa!

 

闇の精霊は口を開け、闇のエネルギーをため込む。ヤバい、あれってもしかして。

瞬間、闇の光線が発射される。咄嗟に両腕をクロスしてガードするが、勢いが強くそのまま後ろに後ろに飛ばされる。

 

「ダアァァ!」

 

攻撃が強かったため、元のマルチタイプに戻ってしまう。起き上がろうとすると、胸のカラータイマーが青色から赤色に変わり、点滅し始める。

 

ピコーン!ピコーン!

 

くっ!このままでは本当にヤバい。それならこれだ。

 

僕は右手を前に出す。するとそこに眩い光が現れ、僕の右手に収まる。そこには今まで使用していたGUTSハイパーキーとは形が違う物、その名を『グリッタートリガーエタニティキー』が現れ、キーを起動する。

 

「よし」

『♪♪ グリッタートリガーエタニティ! ブートアップ! グリッターゼペリオン!

 

キーを装填し円を描くように右手を回す。

 

「宇宙を照らす、超古代の光! ウルトラマントリガー!」

『♪♪ グリッタートリガーエタニティ!』

 

今までより強き光が街を照らす。エタニティの光を得たウルトラマントリガー、グリッタートリガーエタニティ。

 

「デュワ!」

 

gyaaaaa

 

闇の精霊は光に怯え、電撃で攻撃してくる。僕はあえて避けず受け止める。

電撃は僕に当たった瞬間、周りに弾け飛ぶ。もちろん人に当たらないようにしている。

 

gyaaaa!?

 

時間があまりないのでこれで決める。

僕は右手を構えると、カラータイマーから三つのクリスタルが付いた剣『グリッターブレード』が現れる。

 

グリッターブレード!

 

僕はグリッターブレードのボタンを長押しし、クリスタルを一周させ、紫色のクリスタルに合わせ、再びボタンを押す。

 

『♪♪ バイオレット! エタニティゼラデス!

 

グリッターブレードに紫色の光刃が纏われる。

闇の精霊も先ほどの闇の光線を放とうとしている。

 

「デュワ!」

gyaaaa

 

紫色の光線を撃ち放ち、闇の精霊の光線がぶつかり合う。

同じ威力に見られたが、すぐに均衡が崩れた。

徐々に僕の攻撃が闇の精霊の光線を押している。

そして

 

gyaaaaaaa!

 

攻撃が通り、表皮にひびが入る。闇の精霊が怯んだすきに、グリッターブレードを消して、両腕を前方に交差し、左右に大きく広げてエタニティの力を集約する。そしてL字型に腕を組んで光線を放つ。『グリッターゼペリオン光線』

 

「デュワ!」

 

攻撃は闇の精霊に当たり、光と共に爆発する。

暗かった空が明るく照らされる。同時に小型ゾイガーたちも塵となって消えていった。

 

『ありがとう』

 

⁉今のってラルス?でも声が女性のような・・・・・そうかもしかしたら

 

「次に出会えたら、ゆっくりお茶でもしよう・・・闇の精霊」

 

 

 

 

 

「やった!やったぞ!」

「光の神・ラルス様万歳!やはり悪は滅びるのだ!」

「邪悪な悪魔め!我らの神の怒りを見たか!!」

 

・・・なんだろう、ものすごくイラっとする。精神干渉のせいなのは知ってるけど、勝手なことばかり言いやがって。お望み通り神の怒りをみせてやろうか。

 

『サッヴァーク、人に当たらない程度に街に裁きの槍放って』

『は!』

 

天空からサッヴァークの背中から裁きの槍が都中に降り注ぐ。再び悲鳴や叫び声が聞こえる。

 

「ハクちゃん、ラミッシュ教国全体に映像をつなげて」

『はい、パパ』

 

ラミッシュ教国全体に僕の映像を映し出す。

 

『軽々しく正義を語るな!お前たちの歪んだ正義があの怪物を生み出したことにまだ気付かぬか、愚か者め』

 

喋り方これでいいかな。キングじいちゃんが怒った時と同じ喋り方してみたけど。とりあえず今からすることを教皇様に忍と琥珀経由で教える。

 

『教皇を我が前に』

『は!』

 

僕の目の前に教皇猊下を呼び出して、言葉とともに跪き、頭を下げてもらう。

 

『御身は光の神・ラルス様であらせられますか?』

『否。我は光の神・・ラルスなどではない。ラルスなどという神は存在しない』

 

都中がどよめきに包まれる。そりゃ今までいると信じていた神がいないと知ったらこの反応になるよね。

 

『我はそなたに神託を与えに来た。前へ』

 

進み出た教皇の額に手を当て、眩い光が二人を包む。まあ神託はないけど。

光が消えたあと、教皇は頭を地面につけてひれ伏す。そこまでしなくても。

 

『もうひとつ、正義の名の下に神の名を騙り、罪を重ねた者に罰を与えねばならぬ』

 

そう言って、謁見した時にいた面子全員を強制的に目の前に転移させる。

 

『罪を認めるか』

「わっ、我々は何も罪など犯してはおりませぬ! 神の敬虔なる僕として・・・!」

 

ゼオン枢機卿がひれ伏しながら訴えかける。まだそんなことを言うのか、あきれるな。

 

『愚かな。無実の少女に罪を被せ、処刑しようと計画した挙句、教皇であるこの者を地下牢に閉じ込めたこと、知らぬと思うてか』

「そっ、それはっ・・・!」

『それだけでなく、神を騙った数々の罪状をここでひとつひとつ暴いてやるか?』

「うぐっ・・・!」

 

枢機卿が黙り込む。神の名を利用していろいろあくどいことをしてきだんだな。・・・あきれた。

 

『悔い改めよ』

『うぐうっ!』

 

【サンダー】を使い、全員麻痺させる。その場に倒れた枢機卿たちを一瞥し、教皇に語り掛ける。

 

『この者らの処置はそなたに任せる』

『はい』

『光と闇は表裏一体、正義も悪もすべて人間の心が生み出すもの。過ぎたる正義は身を滅ぼすものと心得よ。我はそれを望まぬ』

 

人々に向けて言い放つ。

 

『さらばだ、人の子らよ』

 

光のドラゴンたちと共に空に飛び立つ。

教皇は立ち上がり、声高らかに宣言する。

 

「神は去られた!我々はこれから罪を償い、神の意に反していたことを悔い改めなければならない! 神はおっしゃった。自らの力で歩き、苦難も試練も己で切り開くように努力せよ、と。神は我らを見守って下さる!感謝の祈りを!」

 

おおおおおおおお! と人々の歓喜の声が都中に響き渡る。

 

これなら大丈夫そうかな。僕はフィリスさんと琥珀、忍のところへ転移する。

 

「神様・・・いえ陛下・・・ありがとうございました」

 

僕の姿を見るなり、フィリスさんは涙ぐんで頭を下げてきた。

 

「これからはもっと大変だと思うけど、大丈夫そうだね」

「はい、神様が見守って下さいますから」

 

うん、これからのラミッシュ教国を僕は見守っていこうと思った。

フィリスさんに連絡用のゲートミラーを渡し、短い別れの挨拶をして、僕たちはテンペスト・レイ公国へと帰った。

 

 

 

 

 

数日後、ラミッシュ教国に神が降臨なされ、邪神を打ち倒した、という噂が流れた。それ以降、教国の教義が変わり、信仰の対象も「光の神」へと変わった。「光と正義の名の下に」という言葉は消えたとか。

 

「まさか神様のフリをするなんて・・・罰が当たるわよ、玲我」

 

エルゼが冗談めいて口を開く。みんなにはラミッシュ教国で起こったことを全部話した。もちろん神については伏せて話した。まあ、いつかは言わないといけないけど。

 

しばらくして再び、フィリスさんがラミッシュ教国の使者としてやって来た。

 

「元気そうだね」

「公王陛下もおかわりなく」

 

今回は前回と同じく深く誼を結びたいという旨であった。僕は喜んで受け入れた。

 

「神なんているのでしょうかね?」

 

謁見の間からフィリスさんが去った後、高坂さんが僕に聞いて来た。

 

「いると思うよ」

「陛下は神を信じておいでで?」

「うん、神はいつだって僕たちを見守ってるよ、きっと」




はい。これでラミッシュ編は終わりです。次からはまた日常回を予定しています。
デュエル・マスターズからはサッヴァークを出しました。


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とある日常 騎士団

〈レイガサイド〉

「そろそろ騎士団を作ろうと思うんだけど」

 

ある日会議室の円卓でこれからの政策について話していた。

どうして僕がこの話を持ち出したのか、理由は昨日に遡る。

 

 

 

 

 

「ヤッホー!」

 

僕は昨日、気分転換に国の上空を飛んでいた。飛ぶ方法?そんなのいくらでもあるよ。ウルトラマンだからね、飛ぶには慣れてるよ。

そんでデートがてらユミナたちを一人ずつお姫様抱っこして空の散歩をした。

ちゃんと風の対策は万全で行ったので、みんな楽しかったと言ってくれたのでうれしくてついみんなにキスをしてしまった。

いやー我ながら恥ずかしいことをやっていたなと後から気付いた。

 

その後時間が空いていたので街道沿いを飛ぶことにした。上から見るとけっこう町並みが広がったなあ。国が出来てく喜びを得ることができた。リムルのこんな感じだったのかな。

商店街に入ると、喫茶店から野太い男の声が聞こえた。

 

「ああ⁉この店は客にこんなものを出しておいてすみませんで済ますのか⁉」

 

何やら揉めているようだ。近くの路地裏に着地して覗き込む。大柄な戦士服の男が二人、喫茶店のテラスでウェイトレスに詰め寄っていた。

 

「飯の中にタバコの吸い殻が入っているじゃねえか!こんなもんに金なんか払えるかよ!」

「この落とし前はどうしてくれるんだぁ⁉俺たちが気付いたからいいものの、食ってたら腹を壊してたかもしれねえんだぞ⁉わかってるのか、ああ⁉」

 

ガラが悪い連中だな。言いがかりだろ、あれ。

僕はその店の前まで行って、ウェイトレスさんに話しかけた。

 

「どうしたんですか?」

「あ・・・!こ、この方たちが食事の中に吸い殻が入っていたって・・・でも、嘘です。この店にはタバコを吸う店員はおりません!」

「と、言うわけだけど?お二人のどっちかが間違って落としたんじゃないのかな?」

 

ウェイトレスさんを庇いながらそう言うと、椅子を蹴倒して僕を睨んできた。

 

「あぁ⁉おう、ガキ。随分と舐めたこと言ってくれるじゃねえかよ」

「よっぽど痛い目にあいたいようだなァ・・・⁉」

 

指をポキポキ鳴らしながらこちらへ歩み寄ってくる。ここじゃあ、店に迷惑だな。

僕は男たちの腕を取って街道の真ん中に放り投げた。

 

「ぐえっ⁉」

「おぶうっ⁉」

 

とりあえず、ドライブギアでシフトカーのひとつ『ローリングラビティ』を召喚して、男たちの重力を三倍にする。

 

「うぎぎ・・・」

「僕の国でああいうことされると迷惑なんだ。一応王様としてはさ、見過ごせないわけ」

「「⁉」」

 

身分を教えると二人は目を見開き、心底驚いた顔をしていた。本当に迷惑な奴らだな。

『ジャスティスハンター』と『デコトラベラー』を呼び出して、ハンターに即席の牢屋を作ってもらい、二人をそこに閉じ込める。そんで中からデコトラの大音量の歌を流してもらう。これに懲りたらもうこんなことするなよ。

 

数分後には警備係の者が駆けつけてきたので、頃合いを見て解放してやるように伝えて、鍵を渡した。

これからは国の治安の方も考えないとな。・・・・・騎士団作るか。

 

 

 

 

 

回想終了!

 

「現在の国益から無理のない範囲で申しますと、まず元武田の希望者が三十名。こちらはもともと我々の部下なので、身元もハッキリしております。これを十五名ずつ馬場、山県の配下につけます。それと椿が率いる元武田忍びの隠密部隊が十名ほど。そして新規に募集する定員は六十名前後。まずはこの計百名ほどでどうかと」

 

六十名を募集するのか・・・そんなに集まるのかな?

会議室には僕と高坂さん、馬場さん、山県さん、内藤さん、椿さん、レインさん、ノルンさん、二コラさん、レインが揃っていた。

 

「応募資格とかはどうするんだ」

 

馬場さんの質問に僕が答える。

 

「とりあえず、犯罪者やお尋ね者は却下。男女も種族も問わず。身分も年齢も問わない」

「そんな募集かけたらわんさと来るんじゃないのか?」

 

そうなの⁉山県さんの言うことに少し驚く。できたばっかりだからあまり来ないと思っていた。

いい人材がおればいいなあ。

 

「ところで団長とかはどうするんですか?」

 

内藤さんが軽く手を上げて発言する。確かに決めてなかったな。

 

「馬場さんか・・・山県さん?」

「ワシらはゴメンだぞ。そんな面倒なこと。一隊長で充分だ」

「俺も。性に合わねえし、若い奴らの方がいいだろ」

「そう?なら三人の中から選ぶってことか」

「僕らですか⁉」

 

レインさんがウサ耳をピンと伸ばして立ち上がる。ノルンさんも二コラさんも目を丸くしている。

 

「まあ、他にいないし」

「で、でも、僕らには団長なんて無理ですよ! あ!レインさんなら」

「俺もパスだ」

「「「え⁉」」」

「元々俺はレイガさんを護衛するためにここにいる。団長まで務める必要はない」

「レインの言う通りだよ。せっかくならやってみるといいよ」

「ですが・・・」

 

三人とも一長一短あるからなあ。二コラさんは真面目だけど融通がきかないし、ノルンさんは人当たりがいいけど大雑把だし、レインさんなんでもそつなくこなすけどちょっと引っ込む思案だし。

 

「なら、君らのうち一人が団長で残りの二人が副団長ってことにしよう」

 

僕がそう言い放つと、二コラさんが手を上げた。

 

「私は団長にレインを推薦します」

「あ、あたしも~。レインちゃんがいいと思う」

「ええっ⁉」

 

レインさんが二人を睨んでいるが、推薦してくれるなら揉めないですむんだけど。

 

「ふ、二人ともなに言ってるの⁉僕なんかより二コラさんの方が向いてるでしょう⁉」

「いや、冷静に考えて君の方がいい。ノルンは大雑把だから団長としてはいささか問題がある。サボりぐせもあるしな。私では柔軟な発想はできないし、たぶん部下に厳しく接すると思う。団長としてはそれはまずい。よく人を従わせるには飴と鞭というが、間違いなく私は鞭の方だ。騎士団の団長はなるべくなら飴の方がいい」

 

ちゃんと客観的に捉えているな、二コラさん。

 

「じゃあ、レインさんが団長ということで」

『異議なし』

「ええっ⁉待ってください!」

「まあまあ、団長と言っても他の国で言ったらまだ小隊長クラスだから、そんなに気負わないでも。二コラさんとノルンさんは副団長としてサポートお願いね」

「はっ」

「任せてくださいよ!」

 

ということで騎士団長はレインさんと決まった。

そのあとみんなで話し合って、選考会は一ヶ月後ということで決まった。

 

 

 

 

 

「陛下、私に相談とは一体?」

 

会議を終えた後、僕は椿さんと高坂さんと一緒に会議室に残っている。

 

「実は隠密部隊の件だけど、人数を増やそうと思ってるだ」

「人数ですか?」

「陛下、誰か心当たりが」

「うん、実は」

 

言いかけた時、天井から数人降りて来た。

 

「何奴!」

 

椿さんと高坂さんが臨戦態勢を取ったが、僕はそれを制止する。

 

「大丈夫だよ、二人とも。彼らがさっき紹介しようとした隠密部隊の人だよ」

「彼らが?」

「そう、じゃあまずは自己紹介から」

『は!』

 

それからは軽い自己紹介が行われる。まずは白髪で左目が隠れている少女。

 

「私の名は服部小波正成、ご主人様には小波と呼ばれています。これからよろしくお願いします」

 

次はセーラー服で茶髪で同じく左目が隠れている少女。

 

「じゃあ、次は自分っすね。自分は風間レヴィっす」

 

次は前回のラミッシュ教国で活躍した

 

「知ってると思うけど、改めて猿飛忍だよ。これからよろしくね~ニンニン」

 

次は金髪でロング、黒色の黒色のボディスーツを着用した女性。

 

「私の名はかすが。よろしくお願いします」

 

最後は狐耳がトレードマークの少女。

 

「拙者の名はユキカゼ・パネトーネでござる。皆からはユッキーと呼ばれているでござる。よろしくでござる」

 

とは、よく考えたら全員女性だな。今更だけど。

 

「というわけで五人を隠密部隊に加えてほしいと思ってるんだけど」

「私としてはいいですけど」

 

そうして計五人のくノ一が増えました。

なぜ忍以外のメンバーがここにいるかというと、最近隠し部屋を作ってそこの部屋の扉一つを惑星レイガと繋げたんだ。まず部屋に入れるのは僕と惑星レイガ出身の妻だけだ。

まあ、普通の人には部屋を見つける事態無理だと思う。

理由としては他の妻たちがユミナたちに会いたいって言うし、リムルからもお願いされた。

というわけで、繋げたのはよかったが、最初はこっそり来る妻が多くて大変だった。

それからは通る際のルールを作ったが、毎日のように嫁が代わり代わり来ている。そのため毎回みんなに説明をしている。

※レイガは知らなかったが、毎日のように妻会が行われている。

 

 

 

 

 

〈第三者サイド〉

 

「ここか」

 

さきほどの秘密の部屋にはマントを羽織って顔が隠れた謎の人物が三人いた。

 

「噂ではレイガ様が兵士を募集しているとか」

「面白いな。俺たちもそこに参加するか」

 

騎士団募集が思いがけない事態を招くことをレイガは知らなかった。




はい。
戦国恋姫から小波、トリニティセブンからレヴィ、戦国basaraからかすが、Dogdaysからはユッキーを出しました。
ということで毎回固定メンバーであった妻を毎回変えようと思います。
キャラについてはコメントしてください。
喋り方とか変なところはあると思いますけど、そこらへんは暖かい目で読んでください。


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とある日常 騎士団試験

試験内容はほぼ原作です。


〈レイガサイド〉

あれから一ヶ月後。

 

「希望者の数は定員六十名のところ千人以上の希望者が集まっています。これは予想外でした」

「・・・・・・え⁉」

 

高坂さんが告げた人数に思わず驚きの声を漏らした。そんなに来たの⁉

 

「なんでそんなことに・・・」

「陛下はベルファストでは唯一の銀ランクの冒険者、レグルスではクーデターを鎮圧した英雄、ミスミドでは竜殺しですからな。その名声に引かれてやってきたのでしょう。もちろん冷やかしや、他国の諜報員もいるかもしれませんが」

 

・・・・そこまで考えていなかった。まあ諜報員ぐらいなら変なことしない限りこちらからは何もしないけどね。

 

「それで陛下はどのように選考なさるおつもりで?」

「あー、一応考えていたけど、まさかここまで人数が増えるとは思わなくて」

「いえ、レイガ様の国なら当然、むしろ少ない方です」

 

そう言ってくるのは、僕の隣にいる紫色で額から角が出てる女性、シオンだ。今週は彼女が僕の秘書である。

 

「まあ、とりあえずはやってみようか」

 

 

 

 

「テンペスト・レイ騎士団希望者はこちらへおこし下さーい。順番、順番にお願いしまーす」

 

城の城門前に設置された受付で希望者が書類に名前、性別、種族、出身地、自己アピールなどを書いてもらい、受付のラピスさんから番号札の書かれたバッジを受け取る。そのあと手の甲にも同じ番号のスタンプを押してもらい、初日は終了だ。選考会は明後日となっている。バッジは常に胸とかわかりやすいところにつけてもらう。

実はこれが一次審査だ。やっぱり戦闘能力よりもその人の印象は普段の生活だと思うんだ。だからわざわざ時間を空けたんだ。前来たチンピラみたいに乱暴を働くとか、女性店員に手を出すとか、そんなことをすればすぐに脱落。

さらに椿さんの配下の忍びたちにもマジフォンで変身魔法『マージ・マジーロ』を使用して、獣人や魔族になってもらい、町をうろついてもらうことにした。やっぱり種族で差別うるのは大嫌いだからなあ。目指すならリムル・テンペストと同じ差別がない国がいいからね。

あとは猫の使い魔やらカンドロイドやらディスクアニマルを町に放って情報を得る。その情報を元に一次審査通過者を決めよう。

あ、そう言えば何人か知ってる気配を感じたんだけど・・・・気のせいかな?

 

 

 

 

 

選考会当日。みんなからいただいた情報を元に合格した者を城内に入れた。何人か納得しなかった者もいたが、理由を事細かく話すとすごすごと帰って行った。

失格者は五十名ほどで、残りは九五〇人。まだまだいるな。

城内に入り、訓練場のスペースに希望者を集める。急遽作ったステージの上には、僕とレインさん、ノルンさん、二コラさんの団長と副団長、あと馬場さんと山県さんもいる。ステージの横にはエルゼやリンゼ、八重にユミナ、ルーと椿さんなどが控えている。

僕はパトレンジャーギアで召喚した『パトメガボー』をメガオンモードにする。ちゃんと催眠効果は抜いてある。

 

「まずはようこそ。テンペスト・レイ公国へ。この国の公王、光神玲我です。これから我が騎士団員の選考を行いますが、正直言うと、ウチは給料は高くないです。騎士団として国の警護の他にも雑用などもあります。僕の後ろの獣人たちを見てもわかるように、身分や種族で贔屓したりもしません。それでもいいって方だけ残って下さい」

 

僕がそう言い放つと、会場がざわめき出して、数人が城門の方へと引き返していく。まあ、嫌々に入っても迷惑だしね。

 

「それではまずは、みなさんの体力を見せてもらいます。城門から出て、城の堀の周りを一周してきて下さい」

 

僕の言葉に希望者は微妙な表情をしていた。この城の周りはだいたい二キロぐらいの距離だ。体力を見るには短すぎるとでも思っているのだろう。

 

「あと、順位は関係ありません。自分のペースで回ってきてもらえれば充分です。キツくなって棄権する場合は、身につけているバッジを外せばここに転移して戻ってこれるので、それでは」

 

僕の言葉を聞き終えると、すぐに駆け出そうとするが、あと一つ。

 

『ぐあっ⁉』

 

突然希望者全員が地面に這いつくばる。

 

「みなさんに加重魔法をかけました。その状態で一周して来て下さい」

 

実はこの試験はただ走るのではなく重力を増やしている。いや~これはいつも以上に体力を使うんだろうな。

 

「ありがとう。ユキノ、ライブラ」

「いえいえ、私は何も」

 

そう言って後ろに振り返って、水色で短髪の女の子『ユキノ・アクリア』と彼女が契約している星霊、天秤宮の『ライブラ』にお礼の言葉を言う。今回の試験を考案した際に、協力をお願いしたら、すぐに了承してくれた。まあ、僕がすればよかったんだけど、どうせならっと思って。

ちゃんと動けないほどの重さを加えていないので、何人かは立ち上がって歩いている。

 

「順位とかはあまり関係ないのですか?」

「ある程度は見るけど、この試験では体力だけじゃないんだ」

 

レインさんの問い掛けにさらりと答える。

 

「体力を見る試験じゃなかったら、何を見るためにこんなことを?」

「ずばり、根性」

「根性?」

「そ、挑戦もせず、投げ出す奴を僕は求めない」

 

結局は本人のやる気を見たいんだ。それにゴールできなくても最後まで諦めなければ、その人も合格にする予定である。

 

「まあ、予想外のことが起きる場合もあるけど」

「予想外とは?」

「例えば、あれとか」

「あれ・・・⁉」

 

僕が指を差すと、そこにはすでにゴールした希望者がいた。しかも三人。全員マントで顔は見れなかったが。

 

「いつの間に⁉」

「加重魔法をかけた瞬間にすでに猛ダッシュしてゴールしてたよ。あの三人で競争でもしていたんじゃない」

 

やっぱりあの三人からなんだよな。懐かしい気配を感じるのは。

 

 

 

 

 

試験終了後、約九五〇人いた希望者は四八〇まで減った。結構減ったな。

合格した希望者全員に『フルムーンレクト』をかけて体力を元に戻す。

さて、次の試験は。

 

「次は実技試験となります。武器は好きな物を使ってかまいません。三十分以内に僕たちに一撃を加えることができれば合格とします。僕たちは木刀で相手をします」

 

木刀を手にして訓練場内に入る。今回参加するメンバーは僕とユーリ、そしてあと一人は

 

「本当に私でいいの?」

「うん、今回は雫が適任だと思ったからね。そこまで気負わなくていいよ」

「そう、わかったわ」

 

黒髪をポニーテールの女の子、『八重樫雫』だ。今回の試験を考えた際に、何人か候補は出たがほとんどが手加減できない人ばっかりなので、今回は彼女を選んだ。

 

「それでは始めます」

 

木刀を手にして開始の宣言を告げたが、誰も向かってこない。あれ?

すると、そのうちの一人がおずおずと手を上げる。

 

「あの、順番は?」

 

・・・あー、そういうことね。

 

「順番はないです。全員でかかってきてください。もちろん全力で」

 

僕の言葉に馬鹿にされたと思ったのか、一斉に向かってくる。ありゃ、怒らせたかな。

まあ、僕らの役目はただ攻撃を避けて、隙があれば打ち据えていくだけだ。

この試験では馬場さんや山県さんmエルゼや八重、僕の妻たちに、参加者の技量を審査してもらい、一定のレベルに達していると判断されれば、合格という事にしてある。

要するに、僕ら三人は攻撃を喰らわない前提となっている。

 

 

 

 

 

結構な数倒したな、まだ立っている参加者はほとんどいない。でもさっきの試験でゴールした上位三人は全く動いていない。

 

「あの~そちらの三人は向かってこないんですか」

 

僕は挑発がてら三人に向かって言い放つ。あの三人以外の参加者はユーリと雫に任せよう。

 

「なら僕から」

 

そのうちの一人が向かってくる。

 

「ハア!」

「よっと!」

 

武器は剣のみか。しかも結構重いな。木刀じゃもたないかも。

 

「今度はこっちから」

 

木刀を振るうと、剣と剣がぶつかり合う。こっちは木刀だから鈍い音しかでないけど、こいつ結構な手慣れだな。

 

「結構やるな」

「そちらもね」

 

一旦離れて話しかける。それにしてもこの声って。それにその剣の感じ。

 

「みんな元気にしてる?」

「!・・・はい。おかげさまで」

 

確定だな。僕が笑いかけると、剣を収めて二人の場所まで戻る。選手交代かな。

 

「どうせなら二人同時に来てもいいよ」

「なら遠慮なく」

「行かせてもらう」

 

木刀を構える。どちらも剣を持っているようだ。片方は剣は剣でも日本刀のような形をしている。

 

「・・・!」

 

もう片方を見ようとした瞬間、彼は消えた。

 

「どこに!」

 

咄嗟に剣を後ろに回してガードする。今の一瞬で移動したのか⁉

 

「受け止められましたか」

「いや、結構ぎりぎりだね」

 

またすぐに消え、後ろを見ると元の位置に戻っている。

 

「ハアァ!」

「!ハアァ!」

 

日本刀を持つ彼が斬りかかってくる。受け止めるが、剣が躱され流れるようにこちらの胴体に向かってくる。

 

「あっぶな!」

 

木刀を上に投げ、身体の捻って回避する。その勢いで後ろに下がり、落ちてきた木刀を受け止める。さっきの動きは、

 

「そこまで。時間です」

 

追撃しようと思った矢先、レインさんが試験終了を告げた。ありゃ、もう終わっちゃった。

とりあえず倒れている参加者を全員『フルムーンレクト』で回復させる。中にはラビ砂漠で助けた冒険者のレベッカさんとローガンさんを見つけた。二人も来ていたんだ。

 

「三人ともまたね」

 

先ほどまで戦っていた三人に軽くあいさつをしてステージの上に戻る。

 

「それでは結果をお伝えします。番号を呼ばれた方はこちらへ、呼ばれなかった方は残念ながら失格となります。城門の方からお帰り下さい。では発表を行います」




色々キャラは出してはいるが、話している箇所が一つしかないので、次から最初に嫁たちの出会いでも書こうと思います。


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とある日常 騎士団始動

ごめんなさい。嫁のミニコーナーは次回かもしくはその次になると思います。


〈レイガサイド〉

試験の結果、約百人が残った。だいぶ絞り込めたな。

最後は面接である。

合格者を引き連れて城内の騎士棟へと向かう。彼らを別室で待たせている間に、面接の準備を行う。

面接担当者は僕とレインさん、ユミナ、そしてもう一人。

 

「わざわざすいません」

「いえいえ、これくらいなんでもありません。あなた様には返しきれないほどのご恩がありますから」

 

ラミッシュ教皇猊下である。事前に協力をお願いし来てもらった。教皇猊下の嘘を見抜く魔眼とユミナの本質を見抜く魔眼で最終面接を行う。

一応教皇猊下にも『マージ・マジーロ』で姿を変えてもらっている。

 

「では五人ずつ呼んできます」

 

二コラさんが部屋を出ていき、五人を引き連れて戻ってきた。

まあ質問することはある程度決まっている。ここで何をしたいのか、長所や短所、種族による差別に対してどう思っているのか、その場その場で質問をしていく。

 

 

 

 

 

「あー疲れた」

 

全員の面接が終わってぐったりと机に突っ伏す。名前付けの時も大変だったけど、これも疲れるな。

 

「普段はあまり発動させないようにしていますね。知る必要のないこともありますから」

 

そうだよな。毎日発動してたら人間不信になっちゃうよ。

とりあえず、合格者は男性三十七名、女性二十七名、合計六十四名となった。定員オーバーしたけど、まあいいでしょう。あと合格者のうち二十二名が獣人や魔族たちであった。いつかは街にも住んでほしいなあ。

 

「あれ?陛下この三人はまだやってませんよね?」

 

お茶で一服しているとレインさんが三名の紙を見せながら聞いてくる。

 

「あー、その三人は最後にしてもらったんだ」

「?なんで最後にしたんですか、玲我さん」

「あー、その三人僕の友人でさ、実力も上の方だから騎士団とは別にしようと思って」

「では呼んできましょうか?」

 

二コラさんが聞いてくるが、その必要はない。

 

「連れてきました。レイガさん」

 

部屋に入って来たのはレインは、先ほどの三名を連れて入って来る。

 

「ありがとう、レイン。さて、そろそろ顔を見せてもいいんじゃない、三人とも」

 

そう言うと、三人はマントを脱いで顔を見せる。

 

「ひさしぶり、裕斗、アビス、錆兎」

「さっきぶりだね、レイガ君」

 

そう答えるのは金髪で制服を着た男、『木場裕斗』。ある世界で共に戦った剣士いや騎士である。

 

「さきほどはすいませんでした」

「いいって、本気でやる試験だったし」

 

頭を下げたのは、薄青色の長髪で髪を束れている男、『アビス・レイヤー』。ある世界で孤独である彼を拾い育てた。今ではレインと同じくらいの実力を持っている。

 

「俺は攻撃が当たらなくて、ムカついているけどな」

「・・・拗ねてる?」

「拗ねてねえよ!」

 

文句を言っているのは、宍色の髪で狐のお面を被った男、『錆兎』。ある世界で僕の嫁の師範と会った際に出会った。僕にとって弟的存在である。

 

「それにしてもなんで三人は騎士団に募集したの?」

「実は噂になってて何人も来ようとしてたんだけど・・・」

「ベニマルさんやハクロウ師範が怒って・・・行くなら私らに一撃を、となって」

「結果、ほとんどの奴らが脱落。今いる俺らが合格したって感じ」

「・・・なんか大変だったんだね」

「「「はい(おう)」」」

 

あっちではそんなことなっているんだ。今日でもリムルに電話しようかな。

 

「でも、三人とも実力は上だから騎士団とは別にしようと思ってるけど、それでもいい?」

「僕はそれでもいいよ」

「私も」

「俺もいいぜ」

 

という事で残りの三人も決まった。

 

「じゃあ、そのリーダーはレインね」

「は⁉」

「「「え⁉」」」

 

あれ、四人とも驚いているな。

 

「べつにいいでしょう?」

「・・・はあ、わかりましたよ。やればいいでしょう」

「お願い!」

「というわけだ。言っとくけど、毎日しごきまくるからな」

「「「はい!」」」

 

さて、これでようやく騎士団が始動できる。

 

三人の所属が決まった後は、合格者を発表して軽く労いの挨拶をした。あと、騎士棟をひとつ増やした。ここに住むのもいいし、自腹で城下町に住むのも良いことにした。

あと地下に修練場とトレーニングルームを造った。ここは主にレインさんたち団長と副団長が馬場さんと山県さんが訓練する場所となっている。レインたちもここで訓練してもらうことにした。あとこの四人には騎士団の訓練サポートもとい指南役

として、騎士団のレベルアップをしてもらうことになった。

後に、四人は騎士団の中でイケメン四天王の呼ばれるとか。

 

 

 

 

 

「久しぶりだなあ、イーシェン」

 

騎士団試験から一週間後、僕は婚約のご報告をしようと、まずは八重のご両親に挨拶と八重と共にイーシェンに来ている。八重の実家に着き、重兵衛さんと七重さんに婚約のことを打ち明けると、二人はさほ驚いた様子もなく、黙って顔を見合わせていた。

 

「ほら、ごらんなさい。私の言った通りになったでしょ?」

「本当になあ。まあ、こうなったからには他の婚約者と同じように八重をよろしく頼む、玲我殿」

 

二人に頭を下げられ、僕も下げる。絶対に幸せにします!

 

「しかし、まさか玲我殿が一国一城の主になっているとはなあ。そして八重がその王様に嫁入りとは・・・人生なにがあるのかわからんな」

 

感慨深そうに重兵衛さんが息を吐く。実は一星一神なんだけどねえ。この言葉合ってる?

 

「ねえ、玲我さん。その、テンペスト・レイ?って国にちょっと連れて行ってくれないかしら。八重の暮らしている国を見てみたいわ、私」

「いいですけど、まだたいして発展してませんよ?」

 

それでいいと言うので、我が国に招待することになった。八重の兄である重太郎さんが帰宅するまでまって、綾音さんも一緒に転移した。

 

「お帰りなさいませ、陛下~」

「お帰りなさいませっ」

「ユ~ン」

 

城の中に入ると、セシルさんとレネ、ユンが出迎えてくれた。最近ではユンはレネと一緒に行動することが多くなった。重兵衛さん、七重さん、重太郎さん、綾音さんはみんなポカンとして城の中を眺めている。

 

「こちら八重のご家族。二、三日滞在するからよろしく頼むね」

「まあまあ、八重様の~。ではこちらへ~。お部屋にご案内させていただきますね~」

 

セシルさんに連れられて客室の方へと案内されていく。どこに案内しようかな?城下町か、重兵衛さんと重太郎さんは訓練場の方がいいかもな。

結果、重兵衛さんと重太郎さんは予想通り訓練場へ、七重さんと綾音さんは城下町へ行くことになった。七重さんと綾音さんは八重とミウに任せて、僕は重兵衛さんと共に訓練場へ向かった。

 

「ここが訓練場です」

 

訓練場に着くと、新しく騎士団に入った団員たちが訓練に励んでいた。いや~今までレインが三騎士をボコボコ・・・ではなく頑張っている光景しか見てなかったのでなんか新鮮だな。そう言えばレインたちの姿が見えない。どこ行ったのかな?

 

ドカーン!

 

訓練場を見渡していたら、大きな音と共に何かがこちらへ向かってくる。いや転がってるのかな。

 

「あれ錆兎?」

「・・・レイガか、やべーまじ死ぬ」

 

不吉なこと言うな。

 

「レインにしては怪我が多いな」

「レインじゃねーよ」

「え!じゃあ誰?」

「ほっほっほ、儂ですよ、レイガ様」

 

呼ばれて振り向くとそこには白髪で額から角が生えた老人、『ハクロウ』であった。

 

「ハクロウ!来てたんだ」

「はい。今日来たばかりでシオンに案内されここに来てみたらこいつらがいたので、軽く稽古を」

「なるほど」

 

騎士団試験が終わったその日の夜にリムルに電話して、だれか騎士団の指南役で来れないか聞いてみたら、誰か呼んでくると言われて楽しみにしていたが、まさかハクロウだとは思わなかった。

 

「でもよかったの?あっちのほうは」

「あっちはあやつらに任せればよいのですよ、それによりこちらの方が面白そうですしな」

 

軽く話していると、ハクロウの後ろから裕斗とアビスが斬りかかってくる。

 

カッ!

 

しかしハクロウは後ろを見ずに刀で受け止めた。おお!

 

「まだまだ甘いぞ」

 

そう言って、刀を振り向いて二人を訓練場まで吹き飛ばす。いつの間にか騎士団のみんなも見ている。

 

「レイガ殿。あの方は」

「ハクロウは僕の仲間で、剣の腕前からみんなからは剣鬼と呼ばれているんです」

 

教えると、興味が湧いたのか重兵衛さんと重太郎さんは稽古を申し込んだ。ハクロウは了承し、そこからは一対五の試合が始まった。

剣技の応酬にみんな目を奪われていた。試合が終わると騎士団全員が重太郎さんやハクロウに教えを請いに集まっていった。

そこからはハクロウによる訓練が始まった。これはみんなボロボロになるな。

僕はベンチに座って訓練を眺めている。

 

「暇そうだな、玲我殿。おっと、陛下と呼ばないといけないか」

 

向こうからレベッカさんが笑いを浮かべながらやってきた。

 

「それにしても、陛下の友人は全員ヤバいね」

「そう?いつも見てる光景だから何とも思わなかったけど」

 

苦笑いを浮かべるレベッカさん。

 

「そう言えばレベッカさんがこの国に来るとは思わなかったですね。なんでまた?」

「もともと私は騎士団志望だったんだよ。だが女性騎士ってのは貴族の出かコネでもなけりゃ入れなくてな。腕を磨くために冒険者をしていたが、ここの募集を聞いて迷わず飛びついたってわけだ」

「なるほど、そういえばウィルは来なかったんですか?」

「あいつはベルファストのニール副団長に気に入られてるからな。あっちの騎士団に入ることになると思う。それにウェンディもあの国にいるし、離れる理由じゃないだろ」

 

そうだね、あの二人の結婚式はぜひテンペスト・レイ公国でやってほしいな。そのうちこの国で二号店でも出そうかな。

 

「で、だな。公王陛下にお願いがあるんだが・・・」

「お願い?」

「ほら、この騎士団の人間だってわかる装備というか。鎧とか盾とか剣とか。あと旗とか?そういったものがあった方がいいんじゃないか、と」

 

あー紋章か、そう言えば作るの忘れていたな。

 

「じゃあ作ろうか」

「え?今か?」

 

驚くレベッカさんをよそに、収納魔法からミスリルを取り出して、『ビルドギア』で大雑把に鎧を作っていく。ゴーバスターズのパワードカスタムや鎧武の鎧をイメージしてあるので多種多様になってしまった。試しにレベッカさんに着けてもらう。

 

「これはいい!まるで紙のような軽さだな!」

 

うん、良さそうだな。鎧の形とかはあとで一人一人聞いてこようか。

次に武器だな。収納魔法からフレイズの欠片を取り出し、魔力を込めて変形させて、剣と盾と鞘を作り上げていく。モデルはさまざまになってしまった。アイデアが爆発している。盗まれないように盗難対策も考えないとな。

最後にエナジーアイテムの【重力操作】で重量軽減の付与をして完成!

 

「どうです?」

「最高だな!」

 

嬉しそうにレベッカさんが盾を構えたり剣を抜いたりしている。ふと訓練場を見てみるとほとんど疲れて倒れていた。せっかくなので【カガヤキソウル】で回復させ、休憩ながら全員の意見を聞こうと思った。全員が嬉しそうに鎧を着込んだり、武器を持って振ってみたりしていた。

これで騎士団って感じがするな。

 

後にこの騎士団は「水晶騎士団」と呼ばれることを僕はまだ知らなかった。




今回はハイスクールDxDから木場裕斗、マッシュルからはアビス・レイヤー、鬼滅の刃から錆兎、転すらからハクロウを出しました。


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とある日常 ご挨拶へ

〈レイガサイド〉

八重の家族に報告をしたので、今度はエルゼたちの方へ挨拶をしに行くことになった。

 

「あたしたちの方は別にいのに・・・」

 

なぜだがエルゼの方は渋っていたが、ちゃんと挨拶しないと失礼だし。僕が公王であることはすでに手紙で伝えている。

エルゼたちの叔父さんはリーフリース皇国のベルファスト寄り、コレットという小さな町で農園をやっているらしい。二人は十二歳までそこで暮らしていたが、自立のために出たんだそうだ。

初めていく場所なので【ルーマ・ゴルド】でリンゼからコレットの町の記憶を貰い、【コネクト】を使って五人で転移することになった。

本当なら僕とリンゼとエルゼだけだったけど

 

「提案。夕弦たちも行きます」

「我も同行しよう」

 

とオレンジに近い髪でサイドはゆるい縦ロールに、バックは三つ編みの少女『八舞夕弦』と同じ髪色で髪を後頭部で結い上げた『八舞取倶矢』も一緒に行くことになった。

※服須は原作の制服

同じ双子という点で四人は出会ってからすぐに仲良くなった。

というわけでこの五人で向かうことにした。

 

 

 

 

 

転移した先には見渡す限り畑が広がっていた。なんかテンペストの畑を思い出すな。

 

「いいな~この景色」

「同意。心が和みます」

「我もよ。中々いい景色だ」

「久しぶりねー、ここも」

「変わらない、ね」

 

景色に見とれている僕と八舞姉妹、懐かしそうに畑を眺めるエルゼとリンゼに連れられて、遠くに見える赤い屋根の家へ向かう。あれが叔父さんの家らしい。

家の手前の畑で誰かが二人、作業をしていた。近づいてくる僕らに気付くと、麦わら帽子をかぶった男の人が頭を上げてこちらの方へ目を向ける。

 

「・・・?エルゼ? リンゼ?」

「久しぶり、ジョゼフ叔父さん」

「久しぶり」

 

エルゼたちが手を上げて挨拶する。それに反応して、隣にいた女性も顔を上げた。

 

「エルゼ! リンゼ! わあ、帰って来たの⁉」

 

顔をほころばせて、その女性が畑から飛び出してきた。その女性がエルゼとリンゼの二人に抱き着いた。

 

「エマ姉さん、ただいま」

「ただいま、エマ姉さん」

「もう、全然帰って来ないんだから!たまには戻ってくるようにって約束したのに!」

 

・・・置いてけぼりなんだけど。

 

「玲我、この人はエマ姉さん。叔父さんの娘であたしたちの従姉妹」

 

あ~、確かに二人に似ているな。

ぼんやりとそんなことを考えていると、叔父さんも二人の下へ歩いて来た。

 

「よく帰って来たなあ、二人とも。みんなも喜ぶぞ。・・・ところでこちらの方たちは?」

 

僕たちの方を見て叔父さんがエルゼたちに尋ねる。

 

「手紙に書いたでしょ、この人が光神玲我。その、あ、あ、あたしたちの旦那様になる人」

「婚約者、です」

 

二人とも顔を赤くしながら、僕のことを叔父さんたちに紹介する。僕も恥ずかしい(/ω\)。

 

「手紙の・・・って、この人が最近話題のテンペスト・レイ公国ってところの・・・」

「テンペスト・レイ公国公王、光神玲我です。エルゼとリンゼにはいつも助けてもらって「ははぁー-------------ッ!!」⁉」

 

握手しようと手を伸ばしたら叔父さんはいきなり土下座をされた。・・・・え⁉

 

「あーあ、もう。やっぱりこうなった」

「予想通り、だね」

 

二人が苦笑いしながらため息をつく。その間も叔父さんは土下座をしている。すると、エマさんが口を開く。

 

「すみません、父さんって貴族とかそういった人種に弱いんです。子供の頃なんかあったみたいで、ものすごく苦手なんですよ」

 

・・・苦手ってそんなレベルではないと思うんですけど。いったい何があったんですか⁉

 

「こっ、この度はわざわざ御足労いただき、おありがとうございますっ! な、なにもおもてなしはできませんが、何卒お怒りを鎮め、寛大なご処置をお願い申し上げたてまつる!」

 

いやいやおかしいでしょう。本当になにがあったんですか⁉叔父さん!

 

「あの~、お邪魔だったでしょうか?」

「いいえぇ。父さんはこんなだけど、みんなは喜んでくれますから。お邪魔だったでしょうか?」

 

それならいいけど・・・・みんな?

そう思っていると、家の扉が開かれて、子供たちが次々と現れる。

 

「ホントだ!エルゼ姉ちゃんとリンゼ姉ちゃんだ!」

「お帰りなさい!」

「おーいエルゼ姉!リンゼ姉!」

 

おお!子供たちが駆けてきて、二人に抱き着いていく。男の子が二人、女の子が四人。

 

「全員わたしのきょうだいです。上からシーナ、アレン、クララにキララ、アラン、リノです。本当は私のすぐしたにアロンっていう弟もいるんですけど、去年町へ出て行ったので今はいません」

 

まさかの八人兄弟。驚いた。

 

「おやおや、エルゼにリンゼじゃないか。帰って来たのかい?」

「ラナ叔母さん!」

「ただいま。ラナ叔母さん」

 

家から現れた女性にエルゼとリンゼが駆け寄り、抱き着く。二人を撫でて、話をしていた叔母さんは僕を見ると、ゆっくり歩み寄って来る。

 

「あんたが玲我さんだね。二人の手紙に書いてあった通り、なかなか「いい男だねえ。二人が手紙でのろけるのもわかるよ」

「ら、ラナ叔母さん!」

「秘密だって、書いたのに」

 

二人が顔を赤くして、叔母さんに抗議の声を上げる。手紙になんて書いたのだろう。

 

「初めまして、光神玲我です」

「あの子たちの叔母のラナだよ。王様なのにずいぶんと腰が低いんだね、あんた」

「僕自身はまだまだ未熟ですから、そんな横柄にふるまえませんよ」

「王様と結婚するなんて書いてあったから心配していたんだけど、どうやら取り越し苦労だったようだね。二人を見ればよくわかるよ」

「そう思っていただけると助かります」

「それでその子たちは?」

「この二人も僕の妻です」

「紹介。エルゼさんたちと同じく、妻の八舞夕弦です」

「我も同じく妻の八舞耶倶矢だ」

「あらあらそうかい。中々モテるんだね~あんた」

 

二人のことを紹介したらニヤニヤ顔で見られる。これは一応認められたのかな?

 

「母ちゃん、この人、王様なのか?」

「そうだよ。ここから遠く離れたテンペスト・レイって国の王様だよ」

「王様なら強い?雷熊倒せる?」

「かみなりぐま?」

 

確か、身体から雷撃を放つ魔獣だったはず。

 

「雷熊が出るんですか?」

「ああ、最近目撃したって話があってね。夜中に山の中で光る雷撃を見たって人も言う人もいるんだよ。畑を荒らされたりもしてるんで、ここらの住民で金を出し合って、冒険者ギルドに討伐依頼を出したところさ」

 

なるほど、雷熊自体も強いが、もし群れで動いているのならギルドでも多くの人数が必要になるな。

 

「その雷熊、僕が倒してきますよ」

「王様がかい?大丈夫かね?」

「これでも銀ランクの冒険者ですからね」

 

怪訝そうな顔をしたラナ叔母さんに、懐から銀色のギルドカードを取り出して見せる。

 

「私たちも行きますか?」

「いや、リンゼたちは叔父さんたちと積もる話もあるだろう?僕と夕弦たちで行くよ」

 

リンゼの申し出を断って、空を飛んでいくと、子供たちがうわあ、と驚きの声を上げるのを聞きながら、雷熊が出る山まで向かった。

 

 

 

 

 

「結構手こずったな」

 

あれから僕たちは雷熊を討伐した。僕はドンモモタロウに変身してザングラソードで斬りまくり、二人には精霊の力『颶風騎士(ラファエル)』を解放してもらった。二人は元々一つの存在であったが、今では前よりも力を出せている。頼もしい妻たちだよ。

雷熊をすべて討伐した後は僕はギルドへ、二人にはエルゼたちのもとへ行って、結果を伝えてもらった。

 

「いらっしゃいませ」

 

ラナ叔母さんたちが頼んだセンカの町のギルドの中に入る。

 

「魔獣の素材を買い取ってもらいたい。それとまだ届いていないと思うけど、明日届くはずのコレットの町の依頼書のキャンセルを頼みます」

「どういうことですか?」

 

怪しまれたので、すぐにギルドカードを提出する。目を丸くした職員に事情を説明し、なんとか納得してもらった。

その後は雷熊の死体を渡して換金してもらう。換金までに時間がかかるそうなので、依頼書が貼ってあるボードを見て暇潰しをしようとしたら、入り口から知っている気配を感じる。

 

「あれ、玲我じゃないか。どうしてこんなところに?」

「エンデ!」

 

そこにはトレンドマークの白いマフラーを巻いたエンデがいた。

 

「久しぶり、エンデ」

「久しぶり、玲我」

 

軽く挨拶をすると、エンデは受付に行き、依頼完了の確認と報酬を受け取り、僕が座っているテーブルの向かい側に座る。

 

「エンデに聞きたいことがあるんだけど」

「聞きたいこと?」

「そう、フレイズのこと」

「あー、話せることと話せないことがあるけどいいかな?」

「いいよ。話せることだけ聞かせてくれ」

 

エンデは深く椅子にもたれると話を始めた。

まとめると、奴らは自分たちの『王』を探しているらしい。そんでなんで人間を殺しているのかというと、その『王』の核を探しているとか。その『王』の核はいま休眠状態で成長するのを待っている。その際に発生する波動がフレイズたちを呼び寄せている。それが今まで多くの世界で起こっているとか。そんな情報は知らないな。エンデも『王』の核を探しているらしいが、その宿主を殺すまではいかないと言っている。

 

「僕からも一つ」

「なに?」

「玲我は何者?ただの人間じゃないでしょ?『渡る者』っていう言葉も知ってるし」

「・・・エンデは『光の超神』を知ってる?」

「⁉・・・まさかここでその名前を聞くとはね。うん知ってる、まあ名前だけで見たことは無いけど」

「実は僕・・・その見習いなんだ」

「そうなんだ・・・・・・・え⁉・・・・えー-------------------!」

「ちょっ! エンデ静かに!」

 

急に叫ぶから急いで手で口をふさぐ。

 

「叫ぶよ! だってあの絶対なる神だよ! 四人しかいない神だよ! しかも見習いって五人目で確定じゃん」

「いや、まだ決まっては」

「・・・まさかこんな場所で会うなんて、これからは敬語で」

「別に敬語にしなくていいよ。僕にとってエンデは友達だから」

「・・・まさか『光の超神』と友達なんてこんな日か来るなんて」

 

なんかゴメン。

 

「さてと、僕はそろそろ他の依頼をするよ」

「ああ、またねエンデ」

「またね、神様」

「ちょっと!」

「冗談、またね玲我」

 

僕たちはそこで別れた。




デートアライブから八舞姉妹を出しました。


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とある日常 炎帝

〈レイガサイド〉

エンデに出会ってからフレイズに対する対策を考えていた。最初に思いついたのはレジーナ博士が作ったフレームギアの量産だが、

 

「量産するのは難しいでありまスよ?」

「工房のコピー機能を使っても?」

「素材の量が半端ないし、複雑なのでありまスよ。それに汎用量産型のフレームギアでも『工房』のみの力で一から製造するとなると、一日かけて一機か・・・よくて二機造るのが精一杯でありまス」

 

素材の問題が発生した。なんの素材が必要かもわからないので、『格納庫』が『蔵』を探さないとなあ。

 

「『格納庫』には何機くらい保存されているの?」

「さあ、小生はあまり他の『バビロン』に関わってなかったので、整備した限りではタイプ別に四機から六機かと思われるでありまスが」

 

うーん、やはり優先的に探さないと、リーンには申し訳ないけど。

『工房』を出て歩くと『錬金棟』からシェスカとフローラが歩いて来た。二人の手には何本かの薬の瓶が入った籠がある。

 

「それなんの薬?」

「うふふ、これは風邪薬とか、頭痛薬、胃腸薬などの一般的なお薬でスの。お城に備蓄があまりなかったので作ってきましたの」

 

なるほど、薬か。

 

「フローラ、その薬って『錬金棟』しか作れないの?」

「これは普通の薬ですので、特に手を加えていませんの。手間を省くために素材から錬成しましたが、時間をかければ普通に造れまスの。純度が落ちるので多少効果は下がるかもしれませんけど」

 

なるほど、リムルが作ったポーションみたいなもんか。ベスタ―も苦労してたからな。でもこれ商売になるな。

そこでフローラに相談して椿さんの部下にも製造方法を教えてもらうことにした。

その後、シェスカと共に城に戻っていると、

 

「レイガ様。お待ちしてました」

 

金髪で縦ロールのドリルヘアーの女性、『レイヴェル・フェニックス』がいた。

 

「レイヴェル! どうしたの?」

「はい。今週はわたくしが秘書の番ですので」

「そっか、じゃあ宜しくね」

「はい」

「マスターはあと何人妻がいるんでスか」

 

レイヴェルと話していると、シェスカがつぶやくが、あと50人はいると思う。

 

 

 

 

 

そのあと、シェスカはメイドの仕事をしに、僕とレイヴェルはリーンのエンデから聞いた話を伝える。

 

「長年生きてきてこんな話を聞かされたのは初めてだわ、普通ならなんの冗談かと思うところだけど・・・いろいろと確証になるものが揃い過ぎているし、本当のことなんでしょうね」

「エンデは嘘をついていないよ。全部本当のことだと思う」

「それが事実だとしても、たぶん他の人たちはそう簡単に信じないでしょうね。フレイズたちの侵攻が始まらない限り」

 

そうなんだよな。僕とゆかりがある国ならともかく、他の国ではまず無理だろう。

 

「それにしても、その子も」

「はい。皆さまから話を聞いております。レイガ様の妻のレイヴェル・フェニックスと申します」

「はあぁ~、もうあなたの妻何人いるのよ」

 

シェスカにも同じこと言われた。

 

「まあいいけど、情報は集めているけど。それらしきものは無かったり、ただの廃墟だったりして、徒労に終わってるのよ」

 

うーん、リーンの配下の人たちばかり頼って探してもらうのも申し訳ないし、僕でもなんか方法を考えよう。

リーンと別れて、僕らは琥珀たちのところへ行って相談した。

 

『そういうことならやっぱり空を飛べる者がいいと思うわぁ。速いし、いろんな場所へ向かえるしねえ』

 

黒曜がそう提案する。そうか鳥類か、それいいな。

 

『一匹一匹召喚して契約していたら時間がかかりますぞ、主よ。ここは眷族を束ねる者と契約なされませ』

『む。珊瑚よ。お主、あいつを召喚しろと言うのか?』

 

珊瑚の言葉に琥珀が口を挟む。この感じは知り合いかな。

 

『≪炎帝≫。我らと同格にして、炎を司る翼の王。やつを召喚し契約成せば、幾千の鳥を一気に呼び出すことが可能でしょう』

 

・・・炎を司る鳥。それってフェニックスじゃん!僕はレイヴェルの方を見る。レイヴェルもビックリしている。

 

「どういう子なの?」

『その能力に反して穏やかな者です。我らの中では一番の人格者ですね』

『そうかしらぁ?私の方がよっほど人格者だと思うけどぉ?』

『黙れ。瞬間沸騰鍋が』

『んだとゴラァ!』

 

はいはい、落ち着いて琥珀と黒曜の頭を撫でて喧嘩を止める。とりあえずその子を召喚しようか。

城の中庭に召喚陣を描き、いつものように召喚の準備をする。

 

「夏と炎、南方と湖畔を司る者よ。我が声に応えよ。我の求めに応じ、その姿をここに現せ」

 

いつも通り霧から爆発的な魔力が生まれ、紅蓮の火柱が立ち上がり、炎の渦が霧を吹き飛ばし、火柱が消えると、そこには真っ赤な一羽に鳥が佇んでいた。この子が

 

『やはりあなたたちでしたか。これはまた懐かしい』

『久しぶりじゃな、≪炎帝≫』

『炎ちゃん、おひさ~』

『相変わらず派手な登場だな、≪炎帝≫よ』

 

珊瑚の言う通り、落ち着いた声をしてるな。

 

『私を呼び出したのは貴方ですね?』

「そうだよ」

『我らの主、光神玲我様だ』

 

琥珀の言葉に炎帝は驚いたようなそぶりを見せたが、やがてこちらをじっと眺め、ゆっくりとその瞳を閉じた。

 

『なるほど。≪白帝≫、≪玄帝≫を従えるほどの方に、いまさら私がなにをしようと結果は変わらぬでしょう。主従の契約をいたしましょう。光神玲我様、私に契約の名を』

 

あれ?ずいぶんとすんなりだな。いつも通り力を見せるかと思ったんだけど・・・・まあいいか。

 

「じゃあ、紅玉。赤い宝石の名前、どう?」

『コウギョク・・・。承りました。私のことは紅玉とお呼びください』

 

そう言うと、琥珀たちみたいに小さな姿に変身した。

 

『すいませんが、あなた。私の似た力を感じますが』

 

紅玉はそのまま僕の肩に止まり、レイヴェルの方を見ながら質問する。

 

「初めまして紅玉様。わたくしはレイガ様の妻レイヴェル・フェニックスと申します」

『なるほど、フェニックス。それで、私の方からもよろしくお願いします。主の奥方』

 

やっぱりフェニックス同士だからわかったのかな。とにかく紅玉にお願いして眷族たちに『バビロン』の詮索をお願いした。

 

 

 

 

 

「現在、フレイズの大群が来た場合、戦闘できるのは個人ではレイガ様、木場様、アビス様、錆兎様、レイン様、ジョニー様、ユミナ様達、あとはチームを組んで倒す方法がありますが」

「それだと戦力的にはやっぱり少ないよね」

 

あれから紅玉で頼んで『バビロン』の遺跡を探してもらっているが、収穫はない。次にフレイズが来た場合のことを考えて、レイヴェルと訓練場のベンチで相談している。

 

「大将! それなら俺たちやヴァ―リ達、柱、黒の暴牛を呼べばいいじゃねえか」

 

目の前でキャッチボールをしてる青髪で長く伸ばした髪をポニーテールにしてる、『クーフーリン』がそうつぶやく。

 

「確かにそれは考えてるけど、それじゃダメだよ」

「なんでだ?」

「クーフーリンたちサーヴァントが出れば確かにフレイズは倒せれると思うけど、それじゃあこの星の人たちは何もしなくなる。この星のことはこの星で生きている人が解決するべきだと思うんだ」

「そういうもんか?」

「俺もその意見には賛成だ」

 

そうつぶやくのはクーフーリンのキャッチボール相手で白髪で短髪、『エミヤ』である。二人は今回騎士団の先生として来てもらっている。今は休憩中なので遊んではいるが、僕の頼もしい仲間である。

 

「だが、一人でフレイズとやらを倒せるまで鍛えるのは彼らにも酷だろう」

「そこまでは考えてないよ。とにかくやっぱり『フレームギア』が必要かな」

 

と軽く会議をしていると

 

「陛下?なんスか、それ?」

 

いつの間にかローガンさんが来ていた。視線は僕が持っているグラブに向けられている。

 

「あ~、これはグラブっていって、町の子供たちに野球を教えてあげようと思ってね」

「ぐらぶ? やきゅう?」

「そう、今目の前で二人がやっているようなことを」

 

そう言うと、ローガンさんがエミヤたちを見る。

 

「実際にやってみる?」

「はい!」

 

ローガンさんにもグラブを渡して僕と軽くキャッチボールをする。最初こそ投げる・取るが大変そうだったが、呑み込みが早くすぐにできるようになってきた。

 

「あれ?レイガ君」

 

裕斗達が休憩から帰って来る。

 

「おう、さび坊。俺とキャッチボールしようぜ」

「え⁉なんで俺が」

「そういうなって、行くぜ!」

「⁉」

 

そう言って、クーフーリンは錆兎に向かって思いっきり投げる。すぐに錆兎は近くのグラブを取ってキャッチする。

 

「いって!相変わらずだな!」

「おうおう、早く投げて来いよ!」

 

と、二人は目に見えないほどの速さでキャッチボールをしている。どうやら他の兵士たちも休憩から帰ってきてる。訓練も終わって自由時間なので、せっかくなら試合でもしようか。そう思い、ベースやらバット、マウンドを作ってみんなで野球をすることになった。

 

 

 

 

 

 

「打った!打った!」

「走れーっ!」

「がんばってー!」

 

あれからしばらくすると、町の子供たちも夢中になって応援をし始める。最初こそは試合にはならなかったが、みんな呑み込みが早く今では普通に野球の試合を行っている。

 

「なにやってんだ、そこは一塁に投げろよ、バカ野郎!」

「あー!よく球を見ろってば!手ぇ出すかね、今の」

「俺と交代しろーっ!」

 

・・・兵士たちはほとんどがヤジであった。子供たちを見習ってよ。

 

「まあ、楽しんでくれてるみたいだからいいけど」

 

この日からテンペスト・レイでは野球が流行り始め、騎士団ではそれぞれレインたちがキャプテンとしてチームが作られ、毎週試合が行われている。子供たちも参加したり、観戦したりして野球を楽しんでくれてる。

あと、月一回の西方同盟会議の時に、野球の試合を見せたら、全員が夢中になり、それから同盟の中でも野球が流行り、今では試合が毎日行われている、




fateからクーフーリンとエミヤを出しました。


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第八章
新たなバビロンへ


まず最初にグレイフィアが恋をした時を書きました。


〈グレイフィアとの出会い〉

わたくしとレイガ様の出会いは最初は二天龍の戦いでした。あの戦いは今でも鮮明に覚えています。あの二匹の龍によって悪魔、堕天使、天使、さらには神まで蹂躙されました。私たちはどうにかして倒そうとしましたが、何度も反撃をくらい、わたくしとセラフォルー・レヴィアタン様は赤龍帝『ドライグ』に止めを刺されそうになりました。私はその時死を感じ目を閉じました。ここで死ぬと、数秒後それは叶いませんでした。目を開けるとそこには謎の悪魔のような仮面をつけた人が攻撃を受け止めて立っていました。

 

「大丈夫?」

 

わたくしは驚きのあまり声が出ず、頭を下げるので精一杯でした。

 

「そっか、よかった」

 

そう言って彼は赤龍帝をもう一匹の龍のところまで蹴り飛ばしました。それから彼の龍も加わりこの戦いに終止符をうつことができました。

それでも驚きではありましたが、彼はさらにこの戦いで死んでいった悪魔、堕天使、天使さらに神を蘇生しました。それには全員が驚いていたが、すぐに蘇った仲間を安全な場所まで連れて行きました。その時のリーダーであったサーゼクス様、アザゼル様、ミカエル様はすぐに彼の正体を聞こうとしましたが、彼はすぐに帰ろうとしていました。なので名前だけを尋ねました。

 

「僕はリバイ、仮面ライダーリバイ」

「そして俺っちの名前はバイス。二人合わせて仮面ライダーリ・バ・イ・ス」

「それじゃあまた会う日まで」

 

その言葉を残して彼らは去ってしまいました。それから彼らは伝説となり、未来永劫書き残される人物となりました。そして同時にわたくしは恋に落ちてしまいました。それはたぶんセラフォルー様とガブリエル様も同じだと思います。なぜなら二人も顔を赤くしていたので、わたくしは決めました。あの方と結婚することを

それから数年後私の妹的存在のリアスの結婚問題で彼と再会し、そして一年後には結婚することができました。わたくしはいつまでも貴方様の妻であり女王であります。

レイガ様。

 


 

〈レイガサイド〉

「んう・・・・・」

 

いつも通り朝、いつも通り目を開くと正面には女の子の顔が見えた。すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てて、僕の横で眠りについている。

 

「・・・ユミナか・・・」

 

婚約者であるユミナの顔に安堵して、手を伸ばして抱きしめる。頭を撫でると、

 

「ん・・・」

 

と可愛い声を漏らす。まるで小動物みたいで、抱きごこちはまるでぬいぐるみのようだ。

・・・・ん、なんで驚かないって、こんなの惑星レイガでは日常茶飯事だからな、もう慣れてる。

まあ、最初こそは驚いてベッドから落ちたり、一日おどおどしたしたけど。今ではもう大丈夫。

例えば、きよぴーや貞子、黒歌やティオあたりがいつもベッドに忍び込んでいたな。

 

「おはようございます。ますたあ(旦那様)今日は一日、私とここで」

「おはようございます。レイガ様。今日は一日貞子と」

「おはようにゃ~、レイガ」

「おはようなのじゃ、ご主人様。さあ朝のご褒美を」

 

という感じで最初こそどう反応すればいいかわからなかったが、今でももう手慣れてる。

 

「う・・・ん・・・? あ、玲我さん・・・おはようございます」

「おはよう、ユミナ」

 

眠そうな目をこすりながら、ユミナが起きる。

 

「誰かから聞いたの?」

「はい。グレイフィアお姉さまたちからお話を聞いて」

「そっか、じゃあ今度からは日替わりで頼もうかな」

「はい」

 

僕たちは起き上がり、リビングで朝食を食べに行く。

 

 

 

 

 

今日は午前の間にユミナと共にベルファストの城を訪ねた。妊娠中のユエル王妃は元気そうだったが、国王陛下がおらず場所を聞いたら、なんと一部の城壁を躱して野球場を作ったらしい。

その行動力には驚かされる。なんでも近々リーフリース皇国と試合をするらしい。ちなみに野球の詳しいルールを教えるために西方同盟に加入してある国にコーチを僕の惑星から派遣した。誰かというと黒の暴牛、『マグナ・スウィング』である。よく僕の惑星でも子供たちに教えてくれている彼に頼んだら、最初こそ睨みながら文句を言っていたが、すぐに了承してくれた。今では鬼コーチとも呼ばれている。

 

『主、先ほど斥候の一羽から知らせがきたのですが・・・』

 

ベルファストの城からユミナと戻ってくると、紅玉が羽ばたいて来て、僕の肩に止まり、報告する。

 

「なんか見つけたの?」

『それが判断できないのだそうで。奇妙な材質でできた真っ黒い四角錐だそうですが』

「たぶんそれだ。その遺跡はどこに?」

『ここより南南西の海に浮かぶ小さな孤島です。位置的にはサンドラ王国の西に位置します』

 

遠いからいつも通りバビロンで向かうか。今回のメンバーは僕にユミナたちと、今週滞在しているレイヴェル、空色の髪でうさ耳の『シア・ハウリア』、長い髪に頭の左右に桃色の蝶の髪飾りをつけた『胡蝶カナエ』である。

マップで確認しながら向かっている。リーンがマップに映った島を覗き込む。

 

「小さな島ね。この国よりもだいぶ小さいんじゃないかしら」

「人とか住んでるのかな」

「さあね。少なくともこっちの国とかと国交はないでしょうよ。こんな島聞いたこともないし」

 

空を飛べる鳥の召喚獣だからこそ見つけられたなあ。紅玉と契約できてよかった。

 

「四つ目のバビロンか・・・シアは何だと思う」

「はいで~す。私は『格納庫』だと思います」

「『図書館』でもいいわよ。むしろそっちの方がありがたいわ」

「拙者は『塔』じゃないかと思うでござるよ」

「わ、私は『研究所』じゃ、ないかと・・・」

「じゃあ、あたしは『城壁』に賭けるわ」

「なら私はシアと同じ『格納庫』にします」

 

いや賭けの対象にしないでよ。どうか『格納庫』か『蔵』でありますように。

 

 

 

 

 

その島はまさに絶海の孤島とも言うべき存在だった。ハクちゃんに検索してもらったが、人は住んでいないとわかった。この島を見つけた召喚獣の鳥に案内してもらっている。

 

『ここからまっすぐ行った森の中にその遺跡はあるようです』

 

肩に止まった紅玉が僕にそう伝える。

 

「しかし本当に誰も住んでいないんでござるか?」

『検索した限りでは少なくとも人間はいないと思います』

 

八重とカナエを先頭にジャングルの中を進んで行く。人間はいなくても動物や魔獣がいるかもしれないので注意しながら進んで行くが、すぐに二人は進行を止める。

 

「あら、さっそく何か来ましたよ」

 

カナエがそう呟き、二人が刀を構える。みんなが戦闘態勢へと移行し、それぞれの武器を手に辺りに注意を向ける。ポーラも戦うの?シャドーボクシングしてるけど。

現れたのは犀のような魔獣が現れる。でも角が三つある。トリケラトプスだな。

と思っていると、すぐに魔獣は突進してくる。

と同時にカナエは魔獣の間合いに踏み込み、近距離から9連撃の斬撃を同時に繰り出す。

 

「花の呼吸 伍ノ型 徒の芍薬!」

 

その斬撃の軌道はまるで『芍薬の花』のように美しい。カナエの花の呼吸は斬撃の軌跡が花を思わせるようにきれいで美しい。

 

「相変わらずきれいな動きだね」

「ありがとう」

 

カナエを褒めていると、八重がカナエに向かってくる。

 

「カナエ殿!先ほどの剣技は」

「今の?私が使ったのは一種の呼吸法よ」

「呼吸でござるか?」

「はい。私だけでなく錆兎さんも使っています」

 

そこからカナエによる全集中の呼吸についての説明会が行われた。みんな興味深く聞いていたが、リーンだけは倒した魔物を見ていた。

 

「鎧犀に似ているけど・・・この魔獣は見たことがないわね。新種かしら」

 

そう言って、僕に回収するように言ってきた。なんでもあとで調べるらしい。

その後も様々な魔獣を倒して進むがすべて見たこと無い新種だったので全て回収していった。

 

「お」

 

やがて僕らはジャングルの中でも少し開けた場所に出た。そこには黒光りするピラミッドがあった。しかし出入口は見つからない。

 

ドーン!

 

考えていると、シアがハンマーで叩いていた。

※ハンマーはボウケンジャーのラジアルハンマーがモデル

 

「う~ん、びくともしないです」

「びっくりした」

 

でもシアのハンマーでもヒビが入らないとは、結構硬いな。とりあえず周りを歩いて探ってみると、一部分だけ手が入れそうな幅の溝があった。ここに手をいれればいいのかな?

とりあえず入れてみると、水が緑色に光り、目の前のピラミッドの一部が上に可動して扉らしきものが現れた。

 

「前と同じものか」

 

壁に触れてみると、いつも通り壁の向こう側にすり抜ける。そして目の前には恒例の転送陣がある。

 

≪紅玉。これから転移するからみんなを頼んだよ≫

≪わかりました。お気をつけて≫

 

そうして、僕はいつも通り転送陣を起動させ、転移する。

 

 

 

 

 

光が収まるとそこは見慣れたバビロンの風景だった。

周辺を見回すと右手に黒い建物が見えた。とりあえずそこに向かおうとすると、横の茂みから何者かが飛び出してきた。

 

「とあー-------ッ!!」

 

手に持った金属棒を僕目掛けて振り下ろしてくる。咄嗟にザングラソードで受け止めて後ろに飛ばす。

 

「よく受け止めたナ。オレの必殺の一撃を受け止めたのはお前が初めてだぜ」

 

振り下ろしたパイプレンチを地面に突き刺しながら、その襲撃者はニヤリと笑う。赤毛のロングで、ボサボサの髪。アーモンド形の目と不敵な笑みはまるで猫科の動物みたいだ。

 

「まあ、お前しかここに来たことがないがナ!」

 

そう言ってカラカラと笑う。おそらくこの子がバビロンの管理者だろう。

 

「えっと、君は?」

「オレはフレドモニカ。モニカって呼べ! このバビロンの管理者だ! お前は?」

「僕は光神玲我。『庭園』、『工房』、『錬金棟』のマスター・・・をしているのかな」

「『庭園』・・・シェスカたちか。なるほど、すでに複数のバビロンを手にしているってわけだナ。ならおまえの実力、見せてもおらうぜ!」

 

パイプレンチを握り直し、再びモニカは襲い掛かって来た! なんか今までの管理者とかまったく違うタイプだな。

僕は避けてドンブラスターとアバターギアを召喚して、

「アバターチェンジ!」

いよおー!

どん! どん! どん! どんぶらこ! アバタロウ!

♪♪♪ドンモモタロウ! よっ!日本一!

 

ドンモモタロウに変身する。

 

「・・・か・・・・か」

「ん?」

「かっけー---!」

 

・・・はあ?急に叫んだモニカはパイプレンチを捨てて、僕の銃と体を触る。

 

「なんだこれ! こんなのみたことねえ! しかも姿が変わるとかっけー--!」

 

なんか気に入られた。

 

「よし。お前を適合者として認めてやる!これより機体ナンバー28、個体名『フレドモニカ』は、お前に譲渡されるッ!」

 

・・・なんかマスターになっちゃった。なんだろう今まで一番苦労しなかったような。

・・・まあいいか。僕は変身を解除すると、モニカは残念そうな顔をする。

 

「・・・また変身しようか?」

「頼むゼ! マスター」

 

そう言って、モニカは僕の首にしがみついてくる。これは!

 

「待った!」

「なんだマスター!」

「登録のためのキスなら嫁以外しない」

「なら俺も嫁になるゼ!」

 

・・・思うけど、本当にすぐ決めていいの?

 

「わかった。これからもよろしくね。モニカ」

「おう」

 

そして僕はキスされる。

 

「登録完了。マスターの遺伝子をきろくしたゼ。これより『格納庫』の所有者はマスターに移譲されるからナ」

「うん、ありが・・・・『格納庫』⁉」

 

まさかのお目当ての『格納庫』を見つけてしまった。




ありふれからシア、鬼滅からカナエを出しました。


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フレームギア起動?

まず最初にユエとの出会いを書きました。ネタバレを含んでいると思うので、飛ばしても結構です。


〈ユエとの出会い〉

私の名前はユエ。本当は違う名前だけど、今ではこの名前の方が好き。この名前はレイガがつけてくれた。彼の好きな星で月を表すらしい。彼との出会いはあるダンジョンであった。私はある神から逃れるためにダンジョンのある場所で封印されていた。その時の私はそのことを知らず、裏切り者として封印されていた。誰かに助けてほしかった。私はずっとそれだけを願っていた。

 

ある日、私がいる部屋の扉が開かれた、入って来たのは一人の男だった。私はどうすれば助けてくれるのか考えたが、この状況に不安と恐怖も感じていた。彼に無視されたら私はまた独りぼっち。

 

「助けて」

 

弱弱しくつぶやく。彼には聞こえなかいぐらいの声量。私はもう一度扉の方を見ると、彼は消えていた。また私は一人。

 

「わかった」

「え⁉」

 

次の瞬間、私は封印から解放されて彼に抱きしめてもらっていた。

 

「あの」

「ん?」

「なんで?」

「助けてって聞こえたから」

 

私は彼の胸に抱き着いて泣きながら

 

「ありがとう」

 

私は彼、レイガに助けてもらった。その時の彼の優しい目は今でも覚えている。それから私はレイガのことが好きになって、ダンジョンをクリアした時彼に告白した。それからの旅で彼に恋する人は増えていって独占欲はあったが、楽しい旅であった。

そして最後に私は真実を知り、ある神に身体を乗っ取られるところまでいった。私はレイガの敵になるのかな。そう思っていたら、私の身体は乗っ取られなかった。

 

「なぜだ⁉体を乗っ取られないだと⁉」

「お前いい度胸だな。オレの嫁の身体をどうするって?」

 

私はいや私たちはレイガに守られていた。彼に抱きしめられているかのように暖かい。

それから神を倒した後は、全員で彼の惑星で結婚式を行った。本当にうれしかった。

いつまでもレイガのそばにいたい。

 


 

〈レイガサイド〉

モニカに案内されて、黒い建物の中に入ると、結構広いことがわかった。

『格納庫』の名前の通り、中はまるで倉庫街のような造りになっている。向こうの端が見えない。

 

「すごいな、ここ」

「驚いたろ? 『格納庫』の中は空間魔法が使われていて、見た目よりはるかに広いんだ。って言っても、全部のハンガーが埋まっているわけじゃないからあまり意味がないけどナ」

 

僕の収納魔法と似た原理か。僕の方は時間も止まっているけど。これだけ広いとなんでも収納しておけるな。

 

「そうだ! フレームギアってここにあるんだよね⁉」

「ん? フレームギアか? あるゼ、こっちだ」

 

ハンガーのひとつに辿り着くと、その横にあったボタンのようなものを背伸びして押そうとしていたが、わずかに届かない。

 

「ッのやろ!」

 

代わりに押そうとしたら、モニカが手にしたパイプレンチでボタンを思い切りブッ叩いた。いや何してんの⁉完全にボタン壊れたよ⁉代わりにシャッターは開いたけど、これもう使えないでしょ。

まあ後で直すとして薄暗い内部を覗いて見ると、そこには巨大な騎士が立っていた。高さは十五メートルで、灰色の機体色をした西洋の騎士。

 

「これがフレームギア・・・!」

「こえは初期のフレームギアで旧型機だけどナ。五千年前、あのまま戦争が続いていたら量産される予定だったんだゼ」

 

量産型か。束のISとは違って搭乗者が中に乗り込むタイプだから、タイムマジーンの方に似ているな。

 

「これの他にもあるの?」

「タイプ別に何機かあるゼ。指揮官用とか、高機動型とかナ。それの上位機体もあるんだが作られなかった。設計図は『蔵』に入っているはずだゼ」

 

あ~あの問題児の『蔵』か。

 

「これって動くの?」

「いや、燃料がねえから動かねえゼ」

 

やっぱりロゼッタから量産が難しいと聞いてからたぶん燃料も入手困難だと思っていたからな。

 

「燃料って何を使ってるの?」

「こいつの燃料は『エーテルリキッド』だゼ」

「エーテルリキッド?」

「特殊な加工を加えられたエーテル鉱石に魔力を加えて抽出した燃料だ。ま、燃料っていうよりかは触媒なんだけどよ。そいつと搭乗者本人の魔力を連動させて動かすわけだナ」

 

エーテル鉱石・・・聞いたこと無いな。あとで検索して探してみようか。

 

「作り方はモニカは知ってる?」

「わかんね。魔法畑じゃねえんだよ、オレ」

「じゃあ、誰か作れる人は知ってる?」

「あー・・・『研究所』の管理人なら作れると思うけど、オレ、アイツ苦手なんだよなあ」

 

え⁉なにそんなにヤバいの、その管理人。

 

「じゃあ、フローラなら知ってるかな?」

「『錬金棟』か、そうだな。『錬金棟』は『研究所』と密接な関係にあるからナ。持ちつ持たれつ、互いに必要な素材のやりとりもあったみたいだし。オレの『格納庫』とロゼッタの『工房』も同じようなもんだけど、アイツは『工房』から出てこねえからナ」

 

確かにロゼッタなら出てこないな。とりあえず、みんなを連れて帰ってからフローラに聞いてみようか。

 

 

 

 

 

テンペスト・レイ公国に帰ってから、さっそくフローラがいる『錬金棟』へ向かう。

 

「エーテルリキッドでスの?」

「そう、作れる?」

「できないことはないと思いまスの。ただ、『研究所』の管理人が作るものより劣化したものになると思いまスの。それでもよければ、でスが」

「それでもいいけど、必要なものってエーテル鉱石?」

「はいでスの」

 

みんなにも聞いてみるが、

 

「エーテル鉱石なんて聞いたことないわ」

「珍しい鉱石、なんでしょうか?」

 

という結果にハクちゃんに検索してもらっているが結果は不明。マジでわからない。

 

「その・・・エーテル鉱石の特徴とかはある?」

「エーテル鉱石とは様々な色をシた透明感のある鉱石で、案力を増幅、蓄積、放出できる性質を持ってまス。五千年前にはそれなりに入手できたのでスが」

 

シェスカが答えてくれる・・・あれどっかでその石のようなものを見たような。

 

「・・・あのう、それって『魔石』、じゃないですか?」

「・・・それだ!」

 

そうだよ、最初に自分の適性属性を調べる時に使ったんだ。リンゼは腰のポーチから小さな魔石を取り出してひとつフローラに渡す。

 

「間違いありませンの。これがエーテル鉱石でスの」

 

なるほど、ならあとはこれを探すだけだ。ハクちゃんに頼んで、さっそく探してみると、偶然にもテンペスト・レイ公国の近くにあることがわかったので早速向かうことにした。

 

 

 

 

 

「獲ったどー!」

 

ハクちゃんの検索から魔石を掘り返した。結構大きなサイズを発掘したな。シャイニーブレイカーやらホルワンコフやらグビラを使ったり助けてもらったりしてようやく見つけることができた。掘っていたのは僕だけで、他の人は自由時間を取っている。エルゼと八重はカナエとシアと一緒に訓練をリンゼとユミナはレイヴェルと魔法の勉強をルーは田所と一緒に和食の料理を作っている。あ~帰ったら和食食べたいな。

 

「あらまあ、かなり大きいでスの」

 

採掘後は収納魔法を用いて『錬金棟』に持ち込んでフローラに見せる。とりあえず大きかったので斬って、二つに分ける。

完成まで一ヵ月かかるそうなので、あとはフローラに任せることにした。

その後僕は『格納庫』へと向かった。中に入ると、

 

「およ? マスターでありまスか?」

「ん? マスターか?」

 

後ろにロゼッタとモニカがそこにいた。ロゼッタはいつも通り作業着服で、モニカは迷彩服を着ていた。なぜに特殊部隊の恰好?

 

「どうしたの? 二人とも」

「五千年前も経っているから軽く整備しようと思ったでありまスよ。『格納庫』の中でも腐食や劣化がしないように魔法付与がされてはいるでありまスが、埃などは溜まるでありまスかえら」

「だから埃なんてねえって言ってるだろうか。ちゃんとオレが管理してたんだからナ」

 

・・・どうしよう、シャッターのボタンをパイプレンチで押した当たりすごく心配なんだけど。

 

「う~ん、燃料はいいとして、操縦の練習はどうしようか? いきなり本体を動かすのは危険だしな」

 

フレームギアのコックピットってあんな構造なんだ束とクロエが見たら徹夜でも解析するだろうな。二人がフレームギアの掃除をしているのを見ながらつぶやく。

 

「こんなこともあろうかと! 実はこっそりと作っていたものがあるのでありまスよ!」

 

びしぃっと! とポーズを決めるロゼッタ。そう言えば、前々から何か作っていたのは知ってるけど。

ロゼッタに連れられて『工房』の方へと向かうと、そこには卵を横にしたようなカプセルが二つ並んでいた。ちょうど人ひとり入れそうな大きさだ。

 

「これこそがフレームギア訓練用のシミュレーションシステム『フレームユニット』でありまスよ!」

 

シミュレーションシステム?

 

「ということはこれ動くの?」

「動力はエーテルリキッドではなく、普通の魔力だけでありまス。実際に動かす必要はないでありまスから」

 

ロゼッタが卵の側面に触れると前面の方が上下に開き、そこから現れたのは先ほどのフレームギアのコックピットだった。

なるほど、これに乗り込んでまるでフレームギアを動かしているような体験ができるのか。

 

 

 

 

 

実際に乗ってみると、結構操縦は難しかったが慣れると自由に動かすことができた。これはいい。あとでユミナたちにも体験してもらおうか。

ロゼッタに感謝して僕は二人に一つお願いを頼んだ。

 

「なんでありまスか。マスター」

「実は一つ整備してもらいたい機械があるんだけど」

「機械?」

 

僕たちは再び『格納庫』に戻っている。僕はジオウギアを使って2018と描かれた時計『ジオウライドウォッチ』を召喚する。リングパーツの『ウェイクベゼル』を回してライダーの顔の柄を揃える。そして上部のボタン『ライドオンスタ-ター』を二回押す。

 

『♪ タイムマジーン!』

 

空いてある倉庫の上にゲートが開き、一体のロボが着地する。その顔は僕が使ったライドウォッチの顔と同じものが描かれており、中心にはカタカナで「ロボ」と書かれてある。そう、これはオーマジオウから受け取ったタイムマシン『タイムマジーン』である。最近整備してなかったし、二人にも見てもらおうと思い呼び出した。

 

「これなんだけど?」

「これは」

「すげえゼ」

 

二人とも目を輝かせて見とれている。それから二人は一ヵ月部屋から出てこなかったらしい。これって僕のせい?




名前だけですが、食戟のソーマから田所を出しました。


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スゥとの結婚⁉

最初にヨルさんとの出会いを書きました


〈ヨルとの出会い〉

私はレイガさんと会うまではある組織の殺し屋をしていました。周りからは『いばら姫』と呼ばれ、裏の世界では有名でした。本当は殺し屋なんてなりたくなかった。でも早くに家族を亡くした私は生きるためにその道に進むしかなかった。

ある時、組織の依頼で彼を殺すように言われた。なんで彼が標的になったかは、知らなかったが、私は依頼をこなすだけ。

いつも通り一人のところを正面から暗殺する。そしていつも通り私の手に赤い液体が・・・なくて彼に抱きしめられていた。

 

「え⁉」

 

彼の顔を見た瞬間に私は今まで感じたことがない感情が芽生えました。この時は気付きませんでしたが、今はわかります。あれは恋だったと。

でも依頼に失敗した私は組織から消される。次は普通の生活がしたいです。

 

「それなら普通の生活をしよう」

「・・・そんなこと私には」

 

彼は優しく提案してくれますが、私には普通の生活を送る資格なんて

 

「それなら僕も背負うよ」

「・・・そんなこと、言われたの」

 

私は嬉しくて泣いてしまいました。どうして初めて会った私にそこまで言ってくれるのかわかりませんでしたが、私はその瞬間から彼に救われました。

その後は本当にあっという間で、彼と彼の仲間たちが組織を壊滅させ、私を惑星まで連れて行ってくれました。

決して私の罪は消えません。でもこんな私でも結婚してくれたレイガさんのためにも

これからは彼の妻として生きていきたいです。

 

〈レイガサイド〉

フレームユニットを『工房』で何台かコピーして、他のみんなにも手が空いた時に訓練してもらうようにした。

設置場所は遊戯室にして誰でお気軽にできるようにした。みんなすぐに慣れてきたが、ユミナたちは優れた順応性を見せた。

 

「うわーん、負けたー!」

 

右端のユニットが開き、中からうちの副団長のノルンさんが飛び出してきた。その横からは同じく副団長の二コラさんが出てくる。

 

「自分の身体とは違うんだから、それを考慮して動くべきだ。感覚で躱していると、わずかなズレが致命傷になるぞ」

「ぶーぶー。私あんなに太ってないもん」

 

フレームユニットでの戦闘は外部モニターで写してある。これもロゼッタにお願いして開発してもらった。これで訓練後の反省も様々な意見を貰える。

そのため、遊戯室は曜日制で訓練後の夕方から夜まで、騎士団のみんなに解放してある。ちなみにレインたちにもやらせたが、30分ですぐにプロ並みに上達した。これにプロがあればの話だけど。それに彼らならフレームギアなくても生身でフレイズを倒せると思うけど。

そんなことを考えていると、遊戯室に団長のレインさんが入ってきた。

 

「あ、レインちゃん! 対戦しよ、対戦!」

「おい、団長と呼べというのに」

 

相変わらずノルンさんと二コラさんの性格は対比だな。

二人に対して苦笑しながらレインさんは僕の方へやってくる。

 

「陛下。交易商人のオルバ氏が陛下にご面会を願っておりますが」

「わかった」

 

依然頼んだ鋼材を持ってきてくれたのかな。これでフレームギアの量産ができる。まあ、今ロゼッタとモニカは『工房』に僕が渡したロボの整備?を一日中しているからな。これで何日目だ。そろそろ外の空気を吸ってほしい。

応接室に行くと腰かけていたオルバさんが立ち上がり、僕に挨拶をしようとするが、僕はそれを制止して正面のソファーに座る。

 

「お約束の鋼材をお持ちしました。こちらが明細になります。まずは馬車五台分ですが、続けて納入しますので」

 

渡してくれた紙に目を通す。頼んだ鋼材が書かれているが、どれも量が多いな。

 

「こんなに持ってきたんですか? ずいぶん多いようですけど」

「陛下に教えてもらった品がどれもこれも人気でして。どこの国に持っていっても売れて売れてありがたい限りです。お礼として少し多めに都合させていただきました」

 

そんなに売れたんだ。リムルのアイデア恐るべし。

 

「まあ、同じような商品を真似て売り出す商人もいますが、この手のものは先に売ったもん勝ちですから」

 

やっぱり真似する商人もいるのか、まあ別に真似してもいいけど。

 

「しかしとてつもない量の鋼材ですが、何に使うんです? 鉄の城でも作るんですか?」

「ごめんなさい。今はまだ秘密ってことで、そう言えば、服飾店のザナックさんがオルバさんに話があるそうですよ。野球の試合のときに着るユニフォームや帽子を大々的に売り出したいんだそうで」

「ほほう。それはまた興味深い。野球関連のものは今のところ外れ無しですからね」

 

そうして、ザナックさんと打ち合わせするために一緒に店に向かった。ついでに鋼材が運び込まれた訓練場にも向かう。確か錆兎とカナエが希望者を集めて全集中の呼吸の特訓を行っているとか、たぶんあそこだな。全員ぶっ倒れている。

荷物を受け取って全て『工房』まで転移させる。

その後オルバさんと別れて中庭で休もうと向かっていると、後ろからけたたましく駆け寄る足音が聞こえる。

 

「玲我あああああぁぁぁぁ!!」

「ぐふうっ⁉」

 

振り向きかけた僕の横原に強烈なタックルが浴びせられる。痛!

誰だと思い、僕の上に馬乗りしている人を見ようとしたが、胸ぐらを掴まれてぐいっと引き寄せられる。

 

「スゥ・・・どうしたの?」

「玲我! わらわもお前の妻にしてくれ! 結婚しよう!」

「いいけど・・・ゴメン。とりあえずその経緯を教えて」

 

まさかタックルされて結婚を申し込まれるとは思わなかったけど、まあ公爵様にも以前言われてたからいいけど。なんか吹っ切れたな僕。

 

「ほんとか! なら今すぐ」

「お嬢様、そこまでなされませ」

 

レイムさんが突然現れスゥを引き剝がしてくれる。

 

「ありがとうございますレイムさん。それで話が見えないんですけど」

「実はスゥシィお嬢様に縁談の話が持ち上がりまして」

「わらわは玲我以外と結婚なぞせん! お断りじゃ!」

「縁談ですか・・・それでお相手は?」

「リーリエ王国の第一王子、ザブン殿下です」

 

リーリエって確かリーフリース皇国から北の・・・海を渡ったところにある国だよな。リーフリースだけでなく、ベルファストやレグルスとも傍系していたはず。

 

「公爵殿下は何て?」

「まだ返事はしておりませぬ。国のことを考えると悪い話とも言えませんので」

 

まあ、両国の親密のためなら考えられる話だよな。

 

「でもここにスゥがいることを公爵殿下は知ってるんですか?」

「知っております。置き手紙という形ですが。なにぶんお嬢様が飛び出してしまったので・・・。それに私個人としてはこの縁談、反対でございますれば」

「?反対 何でですか?」

「ザブン王子の評判があまりよろしくございません。特に女性関係が。ベルファストの諜報部隊『エスピオン』の情報によれば、何名かのリーリエ貴族の息女や城のメイドが手籠めにされたとか、そのため三十を過ぎた今でも上位を継げないとのもっぱら噂です」

 

まあ僕も歳のことを考えると、みんなと五桁ぐらい離れているから何も言えないな。まあ愛に歳は関係ないし。

 

「玲我、お願いじゃ、わらわをもらってくれ。ユミナ姉様と同じでなくてもいい。側に置いてくれるだけでいいのじゃ。ダメか、玲我?」

「ダメ」

「え⁉」

「結婚するんだからユミナたちより立場が上とか下とか関係ない。スゥもみんなと同じくらい愛する。差別なんて絶対にしない」

「玲我!」

 

そう言うと、思いっきり抱き着いてくるスゥ。これはとりあえず相談してみるか。あと

 

「レヴィ、いる?」

「は~い」

 

物陰から登場する。さすが忍者。

 

「リーリエ王国の調査っすね」

「うん、お願い」

 

そう言うとすぐに姿を消すレヴィ。

 

 

 

 

 

ユミナたちの相談すると、全員すぐに了承してくれた。もし反対されていたら、リムル直伝の土下座をするところだった。

 

「とりあえず問題はどうやってザブン王子とやらの縁談を断るか」

「じゃから玲我のところに嫁にいくので、と断ればよかろう」

「ベルファスト王国としては少々面倒なことになりかねませんな。ザブン王子は執念深い性格と聞いております。最悪、国王になった暁には、我が国と国交を断絶とか言い出しかねません。そうなれば国としては大打撃です」

 

レイムさんが眉をしかめてそう発言する。腹いせにそこまでするかな。

 

「国のことを考えるとどうしようか・・・」

 

悩んでいると、シェスカが小さく手を上げた。

 

「その王子の息の根を止めてシまえば万事解決でスが」

「うん物騒」

 

確かに解決するけど、さらに問題が発生するよ、それ。

 

「いい歳しテ我儘ばかりのバカ王子など百害あって一利無シ。女を弄ぶ迷惑な変態ロリコン三十男などサクッと殺ってシまえばいいのでスよ」

「あまり聞きたくないけど、どうやって殺る気なの?」

「スナイパーライフルを作るでありまス」

「シアン化カリウムでイチコロでスの」

「パイプレンチで一撃だゼ!」

「邪魔者は斬る」

「ここはわたくしのスキルで」

「うん、とりあえずこの案はやめよう。特に最後の二人!」

 

射殺、毒殺、撲殺、斬殺、惨殺。本当にやりそうで怖い。てかロゼッタたちの方がまだマシだよ。

 

「やらないでよね。アカメ、テスタロッサ」

「わかった」

「はい。レイガ様」

 

黒髪ロングで刀を腰かけている『アカメ』と白髪で赤い瞳を持つ『テスタロッサ』に注意する。この二人ならまじでやりそうなので怖い。

 

「とりあえず公爵のところへ行こう。スゥの気持ちを伝えてなんとか方法を考えてもらおう。僕らも協力するから」

「・・・うむ」

 

スゥが静かに頷く。なんとか和解できる方向で解決できればいいな。

 

(レイガ、それフラグじゃ~)

(ラブ。コブコブ)




アカメが斬るからアカメ、転スラからテスタロッサを出しました。
ヨルとの出会いが思った以上に変な感じになったので、いつか書き直したいです。


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リーリエ王国の兄弟

最初にレムとの出会いを書きました。
あと今回はほぼ原作通りです。


〈レムとの出会い〉

私の名前はレムと申します。レムがレイガ君と出会ったのは、子供の頃です。レムは子供の頃は鬼族の村で父と母、それと姉様と住んでいました。レムたちは双子でしたが姉さまの方が優れていて、逆にレムは劣っていました。鬼族の強さでもある角が姉様は長く、レムは短かったので、村から差別されていました。唯一の味方は家族だけでした。

でもある時事件が起こったのです。ある魔女教徒の襲撃でレムたちの村は壊滅しました。レムも死ぬはずでしたが、姉様が自分の命をレムに与えることで生き残ることができました。でもその代わりに姉様の力は亡くなって、角も亡くなってしまいました。レムたちはこのままどうなるか不安でいっぱいでした。

 

「ここからです。レイガ様」

「これは・・・」

 

すると、若い男と女が突然現れました。レムはさきほどの襲撃者だと思い、姉様を守るために前に立ちました。これ以上何も失わないために。でも彼は私を見るとすぐに近づいて倒れている姉様と共に抱きしめました。

 

「もう大丈夫」

 

レムはその温かい声に安心したのか大声で泣き

 

「姉様を助けて」

「わかった」

 

レムは意識を失いました。

そこからは驚く連続で、彼は村人を全員生き返らせ、さらには新しい住居を用意してくれました。彼はそのあとすぐに帰ろうとしましたが

 

「待って!」

「うん?」

「あの、私レムと言います。あの・・・貴方は」

「僕はレイガ。ただの旅人だよ」

「あの・・・レムはあなたのそばにいたいです」

「・・・いいの?家族と離れることになるけど」

「はい!」

 

そうして、レムはレイガ君について行くことにしました。あと姉様も一緒に行くことになりました。それからはグレイフィアさんのもとでメイドの教育を受けました。

それから数年後にレムは姉様と一緒に結婚しました。家族も今では惑星レイガに移住しています。

レイガ君これからも姉様ともども宜しくお願いします。

 


 

〈レイガサイド〉

「この問題には私も抱えていてね」

 

ため息をつきながら公爵はソファの背もたれに座る。公爵邸の応接室には僕と公爵殿下しかいない。

 

「スゥの幸せを願うならこんな縁談などくそくらえだ。図々しいにもほどがある。目の前にそのバカ王子がいたら間違いなく殴ってるね」

 

うん、僕も同意。

 

「ところが国同士の関係を考えると悪い話ではない。ところが我が国にとって大いに利益を生み出しえる申し出だ。貴族の縁談には政略結婚も含まれる。この場合見事にそれだ」

「でもユミナが婚約していることはまだ他国には知られていないんですよね?こういう場合はユミナに来ると思ったんですけど?」

「今のところ王位継承権第一位はあの子だからな。他国へ嫁ぐわけにはいかないだろうと向かうも考えたんだろう。実際はとっくに嫁いでいるも同然なのにな」

 

なるほどね。貴族の中ではそういうことも考えないといけないのか。まあ僕は政略結婚は大っ嫌いだから興味ないけど。

 

「そういえば、リーフリースのパーティーでスゥを見初めたとか・・・」

「忌々しい。パーティーなんぞに出すんじゃなかったよ」

 

顔を顰める公爵殿下。

 

「これが三十男であろうと品行方正な人物ならまだ検討の余地はあった。だが調べれば調べるほど、この王子がどうしようもない問題児であることがわかったんだ。とてもスゥを幸せにできる人物だとは思えない」

 

相当な問題児だなその王子。

 

「なんでそんな王子が廃嫡にならないんですか?」

「リーリエ宰相、ワルダックの力だよ。リーリエの権力はほぼ男に掌握されているんだ。国王は飾りに過ぎないとの噂だ」

 

ワルダック・・・わるだくみ・・・悪巧み・・・いやそのまんま!

 

「このワルダックとザブン王子の母、ダキア王妃の関係は従兄妹でね。それを盾にやりたい放題ってわけさ。ダキア王妃はザブン王子を溺愛し、なんでも望むものを与えてやった。結果、そのようなバカ王子が誕生したってわけだ」

「なるほど・・・でこの縁談どうします」

「・・・どうしたらいいと思う?」

「・・・殺ります?」

「・・・冗談だろうけど、そうしたくなるよ」

「ですよね」

 

冗談だけど暗殺で解決するんなら暗殺部隊を送るよ。でもそんな簡単な話じゃないよな。

 

「玲我殿がスゥを嫁にもらってくれればまだやりようはあるんだが」

「あ! 言い忘れていましたがスゥと結婚したいです。宜しくお願いします。お義父さん」

 

思い出して立ち上がり頭を下げる。

 

「! それは本当かね。玲我殿」

「はい。いきなりで申し訳ないですが」

「いや、こちらこそありがとう。玲我殿ならスゥを任せられる」

 

よかった。これでダメと言われたらどうしようかと思って。

 

「と、なるとこのことをバカ王子が知ると」

「テンペスト・レイ公国に攻めてくるとか?」

「おそらくそうだろう」

 

あっちが攻めてくるならこっちもこっちで迎え撃つけど

 

「ほかに方法はありませんか?」

「うーん・・・思いっきり他国へ内部干渉することになるが・・・第二王子を王位に据えてしまうって方法がある」

「他にも王子がいるんですか?」

「妾腹の子だがね。王宮でも離れに住まわされ、肩身の狭い思いをしているらしいが、これがなかなかの人物という話だ。まあ、あのバカ王子と比べれば凡庸な王子も立派に見えるだろうが」

 

母親が違うのか。でもそんな優秀な子が今までよく生き残っているな。

 

「事実、そう言いだす貴族もいたらしいが、宰相が握り潰した。第二王子h母親が病気で隔離されているらしいし、後ろ盾もない。そんな王子に何ができると、ほとんど飼い殺し状態だとか」

 

なんとも悲惨な話だ。

 

「その第二王子を王位に据えるということですか?」

「ま、そう言う考えもあるってことだがね」

 

僕的にはそっちの方がいいな。

 

「国王陛下はなんて言っているんですか?」

「即刻断れと。国に利益などあの国に頼らずとも上げてみせると啖呵を切ったよ」

 

苦笑しながら誇らしげに兄のことを公爵が語る。兄弟で助け合うか。僕もノア兄たちにたくさん助けてもらっているからわかるな。

 

「じゃあお断りの返事をするんですね?」

「うむ。そうすることにするよ」

 

これでスゥも安心して僕に嫁ぐことができるな。まあなんかあったら全力で対処するけど。

そんなことを思っていると、執事のレイムさんがドアをノックして部屋に入って来た。

 

「旦那様、リーリエからの使者の方がお越しになられてますが」

「しびれを切らして来たか。ちょうどいい、正式に断ってやる。通してくれ」

「かしこまりました」

「じゃあ僕はここで」

「いや、玲我殿はここにいてくれ」

「?わかりました」

 

 

 

 

 

「オルトリンデ公爵殿下。この度はご縁談のお返事をいただきたく、失礼ながら罷りこしました」

「わざわざのお越し、痛み入る。まずは中へ」

 

僕が座っているソファーから少し離れた別のソファーに二人向かい合って座る。左手がリーリエの使者で右手が公爵。

使者の方が僕のことを尋ねるよりも早く公爵が切り出した。

 

「此度の縁談、まことに光栄ながら、お断りさせていただく」

「・・・理由を窺ってもよろしいでしょうか?」

 

あれ?視野の青年今薄く笑ったよね。嘲笑いではなく苦笑い。まるでこうなるとわかっていたような。

 

「間から失礼します。僕はテンペスト・レイ公国公王、光神玲我です。此度スゥの結婚相手になりました」

「この方が、テンペスト・レイ公国の公王陛下・・・⁉」

 

僕が横から自己紹介すると目を丸くして床に跪く。う~ん、もしかして?

 

「まさか、ここで公王陛下にお会いできるとは・・・精霊の導きに感謝します!」

「頭を上げてください・・・リーリエ王国の第二王子」

「! どうして⁉」

「いえ、なんとなくさっきの苦笑いや僕の名前を知ってからの対応から」

「はい・・・私の名はクラウド・ゼフ・リーリエ。リーリエ王国の第二王子にございます」

 

言ってみるもんだな。まさか当たるとは。

 

「公王陛下! どうか我が母をお救い下さい!」

「母・・・確か病気の」

「母は病気で隔離されているのではありません。幽閉されているのです。宰相ワルダックの手によって!」

 

顔を上げたクラウドさんの目には、怒りの感情が込められていた。

 

「詳しく聞いてもいいですか?」

「はい」

 

 

 

 

 

話を要約すると、クラウドさんが生まれた時はまだ王子だとは知らなかったらしいが、それを知ると兄であるバカ王子がネチネチと干渉してくるようになって、自分のことはいいが、母のことまで侮辱するようになって怒りを表してもすぐに兵士たちに取り押さえられる。蔑まれる生活を送っていた。

 

「正直、あんな兄のいる国など何度出ていこうとしたことか。しかし母を置いてはいけません。それを見越してたのでしょう。母は病気だと偽りの診断をされ、兄に隔離されてしまいました。伝染するかもしれないので近づくなと」

 

母を盾にされ、さらには会うこともできない・・・苦しい生活を送っていたんだ。

 

「生きてはいるんですか?」

「はい。幽閉先の場所で母を世話している娘がおります。この娘は私が世話になっている貴族の配下の者で、母のことをそれとなく教えてくれるのです」

「そこまでいってるのに、リーリエ国王はなにも言わないのですか?」

「父は宰相ワルダックに逆らえません。変に反抗すればひょっとして殺されるかもしれないと私は思っています。父を擁護する貴族たちは次々と城から追い出され、今では味方がほぼいない状態なのです」

 

僕の質問に答える王子の手が震えている。

 

「もしかして今回の縁談って?」

「たぶん、結婚の発表とともに王位の継承を行うのが狙いかと」

 

なるほどね。じゃあ婚約の相手は誰でもよかったんだ。結婚できれば王位を継承できるから。

 

「この縁談の使者に命じられたとき、逆にチャンスだと思いました。オルトリンデ公爵殿下はテンペスト・レイ公王陛下と親しい仲と聞いておりましたから、なんとか公王陛下に面会をお願いできるのでは、と。まさかこうも早く願いが叶うとは」

「それで、僕の母親を助けるために手を貸してほしいと」

「はい! なにとぞ!」

 

クラウドさんがまた土下座を始めた。

 

「いいよ、でも僕だけじゃ心配だから西方同盟にも聞いてみないとね」

 

そうして急遽西方同盟の会議を行うことを決め、それぞれに手紙を送った。

結果、僕たちはクラウドさんに王位を継承することに決まり、後日作戦を実行した。



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王族の秘密 前編

最初にミウとの出会いを書きました。


〈ミウとの出会い〉

 

私の名前はミウと申します。私はもとは奴隷で獣人だったこともあり、高値に取引されていました。本当は奴隷なんてなりたくありませんでした。私もどっかで運命的な恋愛をしたかったです。運命は残酷だと思っていましたが、その時にご主人様と出会いました。ご主人様の印象はとても優しい男の人でした。

ご主人様は私を見てすぐに私を買いました。契約後はすぐに、首輪を外して私に

 

「君はこれで自由だけど、これからどうしたい?」

「私は・・・ご主人様と一緒にいたいです」

「・・・わかったよ」

 

ご主人様の質問に答えると、頭を撫でてくれました。この時から私はご主人様に恋をしたのでしょう。

それからはご主人様と一緒に過ごしましたが、ご主人様の周りでは事件がたくさん起きて、さらには女性の方も増え続けてきました。

でもご主人様は私のことも愛してくれて、数年後には自身の正体も教えてくれました。最初は神と言われても分かりませんでしたが、私はご主人様が神でもついて行きます。

今ではご主人様のメイドとして、ご主人様をサポートしています。

ご主人様、これからも愛しています。

 


 

〈レイガサイド〉

早速リーリエ王国へ向かうために【コネクト】を使う。場所がわからないためクラウド王子・・・ではなくちょうど帰って来たレヴィから【ルーマ・ゴルド】で記憶を読み取る。なんでクラウド王子じゃないって・・・そりゃあ気分!

クラウド王子の母親救出メンバーはクラウド王子、僕、エルゼ、八重、アカメ、レヴィ、それと琥珀である。機動力があるメンバーを揃えました。残りはお留守番という事で。

【コネクト】で一気にリーリエの王都、ニムエへと転移する。

 

「すごい・・・本当に一瞬でリーリエに・・・」

 

とりあえず人目につかない場所に出て、城に行きクラウド王子には縁談の申し込みの結果を報告してもらう。

クラウド王子以外はエナジーアイテムの『透明化』を使用して姿を消す。

 

「すごい魔法ですね・・・どこにいるのかさっぱりわかりません」

「見えなくなっているだけで、触れられれば気付かれてしまうけどね。じゃあ案内をお願いします」

 

ゆっくりとした足取りで城へと歩き始める。

城の中に入るが、誰もクラウド王子に何も言わない。本当に無いものとして扱われているんだ。

城のホールに入ると向こうからやって来た人物をみてクラウド王子が一瞬固まった。そして深々と頭を下げる。

 

「・・・ただいま戻りました、兄上」

「クラウドか。ずいぶんと早かったじゃないか。愚図のお前にしては珍しい。明日は雨かな」

 

こいつがザブン王子か。

 

「悪趣味~・・・」

 

エルゼの小さな声が聞こえるが、すぐにアカメがエルゼの口を手で覆う。声は聞こえるから静かに。

ザブンの後ろにはいつぞやの『隷属化の首輪』をつけた女性と、おそらくザブンの取り巻きの男が二人。

え! なんで呼び捨てだって・・・どうでもいいよ、あんな女性を大切にしない奴。

 

「それで先方の返事はどうした? もちろんいい返事をもらってきたんだろうなぁ?」

「いえ・・・残念ながら、オルトリンデ公爵令嬢にはすでに許嫁がいるとのことでお断りになられました」

「・・・あ? すまないな、聞こえなかった。なんだって?」

「ですから縁談の話をお断りに・・・」

 

パァンッ! とクラウド王子に最後まで話させず、ザブンの平手が飛んだ。

 

「使えないなあ、お前は! だったら公爵令嬢をかっさらってくるとか、少しは考えろよ!連れて来て『隷属化の首輪』をはめてしまえば僕の奴隷になるんだからさあ!」

 

・・・こいつスゥを奴隷にするともりだったのか!

 

「あのガキはリーフリースのパーティーで僕を見て笑いやがったんだ。たかが公爵の娘のくせに。一生、僕に逆らえないように躾をつけてやるはずだったのにさァー!」

 

・・・そりゃあテメエの服見たらだれでも笑うだろうが。

 

(ヤバくないか。レイガ。結構怒ってるぞ!)

(結構なんて問題じゃねえ。あともう少しで殺しにかかるレベルだぞ)

(ラブ!ヤバい)

 

「チッ、これぐらいの使いもできないとは、役立たずの弟を持つと苦労が絶えないね。それで? 公爵令嬢の許嫁ってのは誰だよ?」

「・・・テンペスト・レイ公国公王、光神玲我陛下です」

「テンペスト・レイ・・・? ああ、あの最近できたっていう成り上がりのちっちゃい国か。あんなちっぽけな国に嫁がせたところで何の得にもならないだろうに」

 

・・・こいつ今なんて言った? 俺の国に対してなんて言った?

 

(ヤバーい! レイガ爆発まで十秒前!)

(あのデブ空気読めろ!)

(ラブ!デブ!)

 

「おい、クラウド。お前、もう一度ベルファストまで行って、噂を流してこいよ」

「噂?」

「テンペスト・レイ公王は女好きで、今まで泣かされた女がたくさんいるってなぁ。公爵令嬢もそこに嫁がせなんかしたら、不幸になるのが目に見えてるって噂だよ。そうすりゃ婚約解消になるかもしれないじゃないか。いい考えだろう?」

 

・・・あー、こいつ殺そう・・・今目の前で!

 

(ストップ! レイガちょっと止まれ!)

(ラブ、ダメ!)

 

止めんなよ! バイス、ラブコフ、あの豚は今すぐにでも地獄に送ってやる! 

 

「・・・その噂を流せば母上に合わせていただけますか?」

「ああ? だから言ってるだろう? お前の母親は病気なんだよ。びょ・う・き。伝染したらどうするんだ。兄のありがた~い配慮だろうが。まあ、いつ死ぬかわからないから会いたい気持ちはわかるけどなぁ」

 

上等だ。テメエを病気にしてやろうか! 穴という穴から血が出て、身体が二度と動けねえ体にしてやるよ!

 

(発想が怖えよ! 落ち着けレイガ)

(怒りすぎて考え方が怒ったときの束に似てるぞ!)

 

「なんだよ、その目はァ!」

 

突然激高したザブンがクラウドの腹に向かって蹴りを入れる。一発だけでなく、二、三発と蹴りを入れる。

 

「生まれの卑しいクズのくせに立場をわきまえろッってんだよ! お前は僕の命令を黙ってきいてりゃいいんだ! 生かしてやってるだけありがたく思え! わかってんのか、ああ⁉」

 

お前こそわかってるのか! 今すぐその存在事消してもいいんだぞ! 

もう押さえられない殺意を発散しようとしたら、隣にいたレヴィとアカメにキスされた。

 

チュッ!チュッ!

 

!!

 

エルゼと八重は驚くが、僕は徐々に怒りが収まって行き、冷静になる。

 

(・・・ありがとう、二人のおかげで冷静になったよ)

(いいっすよ~、自分のあのままレイガさんが暴れたら嫌ですし)

(あなたには憎悪は似合わない)

 

ああ、本当にみんなには迷惑かけっぱなしだな。

それからザブンの母親やワルダックも現れて、さらにクラウドさんの顔が険しくなってくる。

奴らが去っていく際に、奴隷の子を【コネクト】を使ってテンペスト・レイ公国に送った。ちゃんと『隷属化の首輪』を外して、

しかし、ワルダックがクラウド王子にパルーフへ行け、と命令してきたので、バッタカンドロイドを召喚してエナジーアイテム『透明化』を与えて、ワルダックを追跡してもらった。

 

『ワルダック、今度はクラウドをパルーフ王国へ使いに出すのか? あの国に僕好みの王女や貴族の娘がいたっけ?』

『いいえ、縁談の使いではありませんよ』

『違うのか?』

『クラウド王子には宣戦布告をしてきてもらうのです。パルーフ王国にね』

 

今度は戦争かよ。

 

 

 

 

 

「宣戦布告なんて普通第二王子にやらせる?」

「表面上は親書の受け渡しという事にして、中身は宣戦布告の内容。相手が激昂してその使いである第二王子をバッサリ、という筋書きでござろうか?」

「そうっすね~。第二王子はどうなってもいいって考えが丸見えっすね」

「あり得なくはないですね。それ自体が目的ではないでしょうが、私が斬られたとしても、『第二王子を手にかけた憎しきパルーフを許すな』などとワルダックが白々しくわめくのが目に見えるようです」

 

ワルダックの悪巧みを思い浮かべて、クラウド王子が自嘲気味に笑う。

 

「とりあえず行動を開始しよう。クラウド王子、もう一度言うけれど、ここから先は完全に宰相たちと対抗することになる。いいんですね?」

「わかっています。母を救い、私は宰相と戦います」

 

僕に向ける視線には揺るがない決意の光が見えた。まず最初に力になってくれる前宰相のクープ侯爵の元へと行こう。

 

「それよりも」

「うん?どうしたのエル」

 

チュッ!チュッ!

 

振り向こうとしたらエルゼと八重にキスされた。

 

「さっき、アカメさんとレヴィさんもしてたから」

「拙者たちも、と」

「ありがとう二人とも」

 

ホント頼もしい妻たちだよ。

 

 

 

 

 

「よくぞ決意して下された、クラウド王子。しかも西方諸国の協力を得た今となってはんいも怖れることはありません」

 

クープ侯爵の屋敷に訪れてクラウド王子の王位継承について伝えると、クープ侯爵はクラウド王子に跪き、深々と頭を下げる。

 

「協力と言っても、なるべくこの国に被害を出したくはありません。武力によって制圧というのは避けたいです」

「そうなるとやはり宰相の拘束、ザブン王子の王位継承権の剥奪、それが鍵となりますな」

 

クープ侯爵が立ち上がり、僕に視線を向けてくる。

 

「宰相の拘束はさほど問題ではないと思うんですけど。どっちかというと、ザブン王子の王位継承権剥奪の方がいいかと」

「今までの所業から廃嫡を決定することはできないのでござるか?」

「明確な証拠がありません。全て宰相が握りつぶしていますからな。被害にあった者も宰相やザブン王子の報復を恐れて証言することもしないでしょう。となると、あとは濃国王様自らがザブン王子の廃嫡を命じでもしなければ・・・」

 

でもその国王もザブンの母親、ダキア王妃には逆らえない。でもどうしてだろう?

 

「最悪、王様を脅して権利を剥奪・・・でも、これじゃこっちが悪者だな」

「・・・必要であるならば、それをすることも辞しません。たとえ後世に父親から王位を奪った王子だと罵られても」

「・・・わかりました。何よりまずはクラウド王子の母上を救出しましょう」

「エリア王妃はワルダック宰相の領地にある、ガリア砦に軟禁されています。私の手の者が潜入していますが、エリア王妃は宰相の言うような病気ではありません。しかし、あそこはあまり環境がよろしくない。そのうち本当に病気になりかねません」

 

それは急がないとな。さっそく僕たちは【コネクト】で転移する。うん?どうして場所知ってるって?・・・またレヴィから記憶を読みました。・・・(∀`*ゞ)テヘッ

 

 

 

 

 

クラウド王子の母、エリア王妃が軟禁されている塔まで転移する。見聞色の覇気で塔内の人の気配を探ると、最上階にベッドで横たわっている女性がいた。この人がエリア王妃だろう。

 

「ここからはかなり厳重な警備のはずです。ですが、陛下の「もう終わりました」・・・え⁉」

 

クラウド王子が説明している間に、覇王色で塔内の兵士を気絶させる。確かクラウド王子に味方している人もいるはずだったので、最上階付近以外にに向けて放った。

 

「じゃ、行きましょうか」

「・・・・」

 

ポカンとしているクラウド王子に声をかけて僕は歩き出す。

 

「気にしたらキリがないでござるよ」

「そうっすよ」

 

・・・気にしないでおこう。

中に侵入して、螺旋階段を上がっていく。と途中でメイドの服を着た黒髪女性と出くわした。

 

「誰です⁉ 兵士を呼びますよ!」

「僕はクラウド。この国の第二王子だ。ここにいる母を迎えに来た。通してくれないか」

「クラウド王子⁉」

 

メイドは跪き、顔を上げた。あー、この人が協力者か。

 

「失礼致しました。私はエリア王妃様の世話係をさせていただいてます、アンジェと申します。クープ侯爵の命により王妃様の安全を守っておりました」

「そうか、君がアンジェか。クープ侯爵から聞いている。いつも母のことを知らせてくれてありがとう。心から感謝している」

「そんな、もったいない・・・王妃様はこの上におります。さ、お早く・・・」

「なんだお前たちは!」

 

あ!範囲内にいた兵士が二人が僕らを見て構える。すると、アカメが一人の兵士の後ろに回り、鞘で気絶させる。もう一人はアンジェさんが強烈な蹴りを顎に食らわせていた。

 

「アンジェさん、武闘士ね。しかも結構な使い手みたい」

「アカメ殿も、拙者が動くよりも早く対応も」

「相変わらずっすね~アカメさんは」

 

と、感想をつぶやくエルゼ、八重、レヴィ。僕は倒れている兵士から鍵を奪って、僕らは最上階に向かう。




追記:感想よりザブンの見た目について質問がありました。体型については原作では痩せ型でしたが、この作品では太っちょにしました。原作好きな方には申し訳ございませんが、あと一、二話はこれでいきます。


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王族の秘密 後編

最初にロゼとの出会いを書きました。


〈ロゼとの出会い〉

私のマスターは世界一、いえ宇宙一、いえ次元一です。今でも覚えています、私、ロゼとマスターの出会いを。

あれは私がまだ自我が目覚めていない時でした。

私はメイドロボとして作られましたが、性能の問題から私は廃棄されました。

その時の私は自分が捨てられたゴミとして認識していました。でもそれに対して悲しいや嫌だとかの感情はありませんでした。

そんな時私はマスターと出会いました。

 

「君、どうしてここにいるの?」

「ワタシハゴミ」

「・・・そんなこと言わないで」

 

そっとマスターは抱きしめてくれました。そこから私はマスターのメイドとなりました。

当初は機械的にマスターだけでなく、他の方のサポートもしていました。特に束様のサポートが一番多かったです。

そんなある日、

 

「ねえねえ、ロゼちゃん」

「ハイ、ナンデショウカ」

「ロゼちゃんようにあるプログラムを作ったんだけど・・・使う?」

「ドノヨウナモノナノデスカ」

「それはね~。感情だよ!か・ん・じ・ょ・う」

「カ・ン・ジ・ョ・ウデスカ」

「うんうん」

「ソレハマスターガノゾンデイルノデスカ」

「う~ん? レイ君はともかくロゼちゃんはどうしたいの」

「ワタシハ」

 

私は考えました。これまでマスターのために働いてきましたが、もし私に感情が芽生えたらマスターは私をどう思うのだろうか・・・私は・・・

 

「オネガイシマス。タバネサマ」

「OKなら早速!」

 

私は束様の提案に了承しました。理由は単純、私はマスターが好きなのです。助けられたあの日から今まで、たぶんこれからも。だからこそ、私自身の言葉で伝えたい。

その日から私に感情が芽生え、すぐにマスターに報告もとい、結婚を申し込みました。

急な話に驚いていましたが、すぐに式まで挙げてくれました。

マスター、私はいつまでもあなたと共に。

 


 

〈レイガサイド〉

前回までのあらすじ

リーリエ王国の王位継承権をクラウド王子にするために、クープ侯爵を仲間にした。それからクラウド王子の母、エリア王妃が幽閉されている砦まで向かった。

以上!

 

最上階の扉の前に着き、鍵を開けて、クラウド王子が部屋に飛び込む。そこには椅子に腰掛け、編み物をしていた四十代の女性がいた。目元がクラウド王子と似ている。

 

「母上!」

 

久しぶりの再会に、親子が涙を流しながら抱き合う。ヤバいもらい泣きしそう。(´;ω;`)ウゥゥ

 

「クラウド、こんなに大きくなって・・・今日まで生きてきたかいがあったわ」

「母上、すぐにここから脱出しましょう。陛下、お願いします」

「(´;ω;`)ウゥゥ。うん」

「陛下?」

 

僕を怪訝そうに窺うエリア王妃の前で【コネクト】を開く。とりあえずクープ侯爵の屋敷までつないだ。

クラウド王子が驚く母親の手を取り、【コネクト】をくぐる。僕らも後に続く。

これで救出完了。

あとはクラウド王子を第一王子にするだけ・・・待ってろよ、あのバカ王子。スゥのことや僕の国のことやらさんざん言ってくれたなあ・・・後悔させてやる!

 

「玲我が悪い顔してるわ」

「またえげつないことを企んでるのでござろうなあ・・・」

「いや~あの顔の時はもうエグイことしか起きないっすね~」

「仕方ない、レイガを怒らせた方が悪い」

 

今に見てろよ(# ゚Д゚)

 

 

 

 

 

さて、突然の第二王子失踪に、王宮内ではひと騒動があったようだ。誰もクープ侯爵の屋敷に来なかったのはよかった。まあ来たとしても殲滅するけど。

それで今は騒動の様子を見ている。

 

『ガリア砦からエリア王妃が消えただと⁉ クラウド王子が連れ去ったというのか⁉ 砦の兵士はなにをしていたのだ⁉』

『は、はい、伝書鳩からの知らせでは全員突然気絶して、何があったかわからないと・・・』

 

伝令の言葉にいらだたしげにワルダック宰相が机を拳で叩く。あらら怒っていますね~

 

『だから言ったでしょう、ザブン。さっさとあんな子、消してしまえばよかったのに!』

『クラウドのやつ! 飼い主に逆らってタダにすむと思うなよ!』

 

ダリア王妃とバカ王子も怒ってる。その三人の慌ててる様子を覗く、小さき緑色の監視者。ジオウギアで召喚した『コダマスイカアームズ』である。AIが搭載されているコダマに潜入してもらっている。映像は携帯で見られるので、奴らの動きは筒抜けである。

 

『クラウド王子がクープ侯爵と手を組んで、地方の貴族たちを抱き込むと面倒なことになりかねない。・・・ここは急ぎ、国王陛下に王位をザブン王子に譲るよう願い出ましょう。その上で、クラウド王子を捕らえます。罪状はなんとでもなりましょう』

『パルーフとの戦争はどうするのさ、ワルダック』

『残念ですが後回しです。まずは反逆の芽を摘むのが先かと』

『チェッ、せっかくパルーフの王女を手に入れられると思ったのになァ。まあ、やっと国王になれるからいいかあ』

 

浮かれた様子でバカ王子が部屋を出て行った。さてと、どうやって王位継承権をクラウド王子にするか。

 

『・・・エリア王妃を奪われたのはまずい。いずれ国王の耳にも届くかもしれん。その前にザブンに王位を譲らせねば・・・』

 

おや? ワルダックの口調が変わった。これが本性だな。でもダキア王妃がいるのに素を出すか普通?

 

『こんなことならさっさと王位を継がせるべきだったか。クープ侯爵らを押さえつけるのに国王の力が必要だったとはいえ・・・くそっ! 幸い、エリア王妃を奪われたことはまだ知られていないだろう。強引にでも認めさせねば。認めねばエリア王妃の命はないと脅せば間違いあるまい』

 

国王も脅さられていたのか!これはもしかして・・・決定的な証拠のためすぐに録画をする。

 

『エリア王妃とクラウドに国王の元へ行かれてはマズい。王宮を完全に封鎖し、その間に国王を脅して、王都の貴族の前でザブンに王位を譲らせねば』

『王位をザブンに譲らせたら国王はどうするの?』

『消えてもらうさ。今すぐ死んでもらってもかまわんのだが、きちんと王位をザブンに譲り渡してからでないと、クラウドを担ぎ上げる面倒な奴らが出てくるかもしれんからな』

 

国王暗殺計画の証拠いただきました! てかダリア王妃も同罪だろうこれ!

 

『どっちみち後顧の憂いを断つために、なんとしてもクラウドには死んでもらう。王家の血筋は一人たりとも残すわけにはいかん』

 

・・・? 血筋って国王とクラウド王子を消してもザブンが・・・まさか! だとすればクラウド王子への仕打ちも。

 

『やっと我が一族がこの国を手に入れられるのだ。誰にも邪魔はさせん』

『私とあなたの息子が、もうすぐこの国の王となるのね』

『ああ、新しい王家の誕生だ』

 

そう言って二人は口の端を釣り上げ、歪んだ笑いを浮かべていた。

 

 

 

 

 

『やっと我が一族がこの国を手に入れられるのだ。誰にも邪魔はさせん』

『私とあなたの息子が、もうすぐこの国の王となるのね』

『ああ、新しい王家の誕生だ』

 

録画した映像をバガミールに頼んで空中に映してもらい再生をする。映像が終わると誰も声が出ない様子だった。

 

「そんな・・・ザブン王子がワルダックとダキア王妃の息子だと⁉ ならば・・・ならばこれは王家乗っ取りではないか!」

 

椅子から立ち上がり、クープ侯爵が叫ぶ。確かに乗っ取りだな、今までの出来事すべてが計画されていたのだろう。

 

「驚いたわね・・・でもなんか納得しちゃったわ」

「で、でござるな・・・。クラウド殿とあのバカ王子はあまりにも似ておらぬ。片親どころかまったくの赤の他人なら、それも当然でござるな」

 

エルゼと八重の言うことももっともだ。僕自身も納得できた。だって全く似てないじゃん、あの二人!

 

「兄・・・いやザブンと私は何の繋がりもなかった。もう何も躊躇する理由はありません。私は国のため、父のため、母のため、国を乗っ取ろうとする国賊と戦います」

「よくぞ申された。クラウド王子! 正しい王位継承者はあなたなのです! この国をあのような輩に渡してはなりません」

 

クープ侯爵の言う通りだ。クラウド王子を脅迫する材料はもうない。これからは僕たちのターンだ。

僕はさらなる証拠のために、コダマに取っ手来てもらったザブンとワルダックの髪の毛を『錬金棟』のフローラの元へと持っていき、DNA鑑定をお願いした。結果は二人h親子であるという結論が出た。これでさらに証拠も集まった。

 

「うふふ。マスターの子供が生まれた時も調べてあげまスの」

「冗談でもやめて。心臓に悪い」

 

そんなこと気にしたらまじで死んじゃう。

 

「マスターはお嫁さんがたくさんいるから子供もたくさんでスの。博士が言ってたでスの」

「バビロン博士が? 確かに嫁はたくさんいるし、子供もいるけど」

「九人のお嫁さん、それぞれに子供がいるみたいでスの。子宝国王様でスのね」

「へえ~九人・・・うん?」

 

あれ、百人はいるはずなのに、九人? もしかしてグレイフィアたちを除いてかな。

 

「それってフローラたちも入ってる?」

「いえ、私たちを除いて九人でスの」

 

それだと今エルゼ、リンゼ、八重、ユミナ、ルー、スゥの計六人、あと三人・・・誰だろう?

 

 

 

 

鑑定の結果をエルゼたちに伝え、僕は単独である人の下へと向かった。

その夜、僕は自分の部屋である男と話をしていた。

 

「久しぶりだね・・・僕」

久しぶりだな・・・俺

「今日は相談が合って」

言わなくても分かる・・・あの豚だろう

「そっ」

お前はどう考えてるんだ

「平和的に解決すればそれでいいよ」

そうか・・・だが俺はそれだけじゃ足りない・・・あんな奴は死ぬよりも壮絶に苦しめるべきだ

「・・・じゃあさ、もしもの場合は任せてもいい?」

誰に言ってんだ・・・任せとけ

 

そう言うと彼は消えていった。ホント彼には毎回汚れ仕事をしてもらっている。本当に感謝している。




最後に謎の人物を出しました。
だれかは次回で書きます。


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今回はヒロインの出会いを省きました。すいません


〈レイガサイド〉

二日後、リーリエの王宮には王都に住む全ての貴族たちが集められていた。表向きは国王による召集だが、実際は宰相ワルダックの召集である。

僕らはクラウド王子、クープ侯爵と共に王宮へと忍び込んでいた。ちゃんと『透明化』で姿を消している。

ワルダックとザブンの両者は不敵な笑みを浮かべていた。

ざわつく謁見の間に突然わっぱの音が響き渡る。

 

「国王陛下の御成りにございます」

 

ざわついていた貴族たちが静まり、皆その場で臣下も礼をとる。現れたリーリエ国王はクラウドさんに似て長身で、どこか頼りない印象の人だった。

国王はそのまま黄金の王錫を片手に玉座に座る。

 

「忙しいところ皆に集まってもらったのは他でもない。私はそろそろ王位を譲り、退位しようかと考えている」

 

リーリエ国王の言葉に、再び貴族たちがざわめく。動じなかったのは、事前に知っていたあの三人だけ。三人とも共通の笑みを浮かべて、国王を見ていた。

 

「ここで皆に次の国王を発表したいと思う。私は全ての公務をその息子に譲り、王位を退く。次期王位継承権はリーリエ王国第一王子・・・」

 

貴族たちの目がザブンに集まる。ザブンもにやついた笑みを浮かべる。

 

「第一王子、クラウド・ゼフ・リーリエに王位を譲ることとする」

「「「なッ⁉」」」

 

貴族たちよりも大きな声で驚く三人。

ここで『透明化』を解いて、クラウド王子の背中を押す。真っ直ぐに玉座の前へと歩むクラウド、その後に続くようにクープ侯爵も歩む。

僕らは消えたまま見守る。

 

「なっ、クラウド! お前っ・・・!」

 

クラウド王子はザブンをよそに国王の目で恭しく膝を折る。

 

「謹んでお受けいたします、父上。これからは国王として一層の努力を惜しまぬ所存でございます」

「うむ、頼んだぞ」

「ちょっと待てよ! どうなってるんだよ、これわぁ!」

 

ザブンがわめく。周りの貴族たちも狼狽えはじめ、ワルダックが前へと進み出た。

 

「陛下! 御言葉ではございますが、国の定めに従えば第一王子たる者が王位を継ぐのが定石。それを捻じ曲げることはたとえ国王陛下でも・・・!」

「なるほど、道理よな。だからこそ私はクラウドに王位を譲るのだ。言ったはずだぞ? 『リーリエ王国第一王子、クラウド・ゼフ・リーリエに王位を譲る』とな」

「っ! なにを馬鹿なことを! 第一王子はザブンですわ! ザブンが国王になるのが筋でしょう⁉」

 

隣にいたダキア王妃が声を荒げる。それを聞いた功旺陛下がおかしそうに笑み始め、やがて笑い始めた。

 

「それが筋と申すか、ダキア。よくもまあ言えたものだ」

 

リーリエ国王・シェラフは立ち上がり、鋭い目付きで王妃を睨む。

 

「皆は知っておるだろうか。ベルファストとレグルスの間にできたばかりの公国を。テンペスト・レイ公国のことを。公王は銀ランクの冒険者であり、ミスミドに現れた悪しき黒竜を屠った。さらにレグルス帝国の反乱を鎮圧し、帝国をも救った人物。彼が我が国も救ってくれたのだ」

「公王陛下、こちらへ」

 

クラウド王子に呼ばれ、僕らも『透明化』を解除してみんなの前に現れる。僕の左右には八重とエルゼ、後ろにはテスタロッサ、前は白虎モードの琥珀である。

 

「テンペスト・レイ公王。あの時、私に見せてくれた『あれ』をここで皆にも見せてはくれないだろうか」

「わかりました」

 

そう言って、僕は『バガミール』を召喚して、空中に映像を映し出す。

 

『王位をザブンに譲らせたら国王はどうするの?』

『消えてもらうさ。今すぐ死んでもらってもかまわんのだが・・・』

「こっ、これは⁉」

 

突然映し出された自分たちに、ワルダックもダキア王妃も慌てふためく。そりゃ国王暗殺を話し合っているからな。

 

『私とあなたの息子が、もうすぐこの国の王となるのね』

『ああ、新しい王家の誕生だ』

「やめろ! 今すぐにこれをやめる!」

 

僕に向かってくるワルダックを琥珀が押さえつける。暴かれた真実に貴族たちはざわめく。

 

「これはその時の出来事を記録して、もう一度見られるようにできる魔道具です。あんたらの会話はしっかり録画させてもらったよ」

「馬鹿な! 陛下、これは何かの間違いで・・・!」

 

言い訳をするワルダック。まあ普通なら信じるだろうが、なにせ今まで脅迫してきたヤツの言葉だ。信じれるはずない。

実は『錬金棟』でDNA鑑定した後に僕が会いに行ったのは、リーリエ国王である。今回の真実を伝え、エリア王妃の無事を伝えた。

 

「間違い、か。三十年前に気付くべきだったな。お前たちの目には私はさぞ滑稽に映っていただろう。自分たちの息子を何も知らずに第一王子として扱い、その所業に悩まされる私の姿は笑えたか?」

 

国王の言葉にワルダックが押し黙る。明らかに動揺しまくってる。

 

「エリアが救出された今、お前に遠慮することも亡くなった。ワルダック、この場でお前から宰相の地位を剥奪する。国民を優先すべき国王でありながら、エリアの身を案じて貴様の言いなりになってしまったこの十年・・・悔やんで悔やみきれぬ。私には国王の資格はない。が、貴様にも宰相の資格はないぞ」

「父上・・・」

 

悔しそうに俯く国王をクラウド王子がなんともいえない表情で見つめる。ダキア王妃の方は力無く座り込み、呆然としていた。自業自得だ。

 

「こんなのは出まかせだ! 第一王子は僕だぞ! 国王には僕がなるんだ! クラウドが国王なんて許すもんか! 暗殺を企んだのはワルダックと母上じゃないか! 僕じゃないぞ! 僕には関係ない!」

「本当に救いようがない馬鹿だな」

 

喚きだすザブンに、呆れ果てる。

 

「馬鹿だと! お前みたいなちっぽけな国の国王に言われる筋合いはないぞ! 僕からベルファストの公爵令嬢を奪ったくせに偉そうにするな!」

「【グラビティ】」

「うぐぅー--⁉」

 

うるさいバカ王子を床に押さえつける。本当にうるさい。

 

(なあ、なんか今日レイガ冷静じゃないか?)

(確かにな、いつもならもう一人称変わっていたはず)

(ラブ。成長)

(そうだといいが)

 

「陛下、魔法を解いてもらえますか」

「・・・いいんですか?」

「お願いします」

 

クラウドの申し出に【グラビティ】を解除する。とたんに、ザブンが勢いよく立ち上がり、クラウドに向けて満面の笑みを浮かべた。

 

「よくやったぞ、クラウド! お前も僕が国王になるのが一番いいってわかってるんだな! 今までのことは許してやるから、僕に王位を」

「黙れ」

 

怒りを震わせてクラウド王子がザブンの前に立つ。ゆっくりと上げた右手に拳が握られる。

 

「・・・おい、なんだその手は。僕を殴ろうっていうのか⁉ 兄であるこの僕を殴るなんて許さないぞ!」

「貴様を兄だと思ったことなど、一度もない」

 

バキィィィ! と全力で振りぬいた右拳が馬鹿の顔面をとらえ、床に倒れる。

 

「ザブン!」

 

鼻血を出しながら倒れている息子の元へダキア王妃が駆け寄る。それを冷たい目でリーリエ国王が眺めていた。

 

「お前のような女でも自分の息子は可愛いか。わかるぞ。私も自分の息子が大事だからな。お前たちが他人のクラウドに冷たい仕打ちをしたのも、仕方のないことだったのかもしれんな。私もザブンが殴られても何も感じぬわ」

 

・・・もし国王陛下がザブンの教育に関わっていたら、少しは変化があったかもしれない。

 

「くっ」

 

ワルダックが謁見の間から逃げ出そうとする。

 

「【グラビティ】」

「うぐうー----⁉」

 

ザブンと同じように床に這い蹲る。さすが親子だな。同じような反応をする。

 

「あんたの屋敷も調べさせてもらったよ。ずいぶんと悪どいことをしてたみたいだねえ。贈収賄、公金横領、密貿易、出るわ出るわ。証拠の品はもう国王陛下に渡したから」

「それに追従した者もわかっておる。今さら言い逃れができると思うなよ」

 

クープ侯爵がざわつく貴族たちを睨みつける。

これで一件落着かな。後はこの三人をどうするか。今も喚きだしているしあのバカ王子・・・いや王子でもないからただのバカか。

 

「リーリエ国王陛下。この三人はどうするおつもりで?」

「罪状から考えるなら全員死刑だ。取り繕ってもしかたあるまい。国外に恥を晒すことになるが、それも甘んじて受けよう」

 

それなら僕からは何も言うまい。

 

「なんで僕が死刑にならないといけないんだ! ふざけるな!」

 

・・・まだわめき散らしているよ、あのバカ。

 

「ふざけているのはどっちだ。今度はお前が今までやってきたことの報いを受ける番だろ? もうお前は王子でもなんでもない、ただの犯罪者だ。誰も守ってくれない。いい加減認めろ」

「うるさいうるさいうるさい!! お前! 必ず殺してやるからな! 覚えてろよ! お前の国も、女も、メチャメチャにしてやるからな!」

 

 

 

その言葉を待っていたぜ!

 

〈???サイド〉

 

周りの時間が止まり、景色も変わる。そこは空が暗く、周りには草木一つない。人が住める環境ではない場所にいるのは、先ほどまでわめき散らしていたザブンともう一人。

 

「なんだよ、ここは⁉」

「誰が口を開いていいと言った?」

 

声がした方向を見ると、そこには自分たちを追い詰めたテンペスト・レイの公王がいた。

 

「お前! ここは「だから誰が口を開いていいと言った! 豚が」⁉」

 

すると、ザブンがしゃべらなくなった。正確に言うと、声を出せなくなった。ここでは彼が絶対だから。

 

「さて、では豚よ。お前は今まで多くの罪を犯したようだな。だが貴様が死ぬだけでは俺は納得しない。だから」

 

そう言って、男が腕を横に振る。

 

「⁉」

 

すると、ザブンの右腕が切断された。しかし、切れた断面からは血は出なかった。

 

「安心しろ。ここではどんな生命も死ぬことはない。そしてすぐに貴様の腕も復活する。喜べ、ここでは貴様は不老不死だ」

 

言い終わると、ザブンの右腕は再生した。

 

「⁉」

「さてと、腕が治ったところで、次は両足だな」

「⁉ー-----」

 

次に両足が切断された。

 

「痛いか? ここでは死なない代わりに痛覚は数十倍になっている。ではなぜ貴様が気絶していないと思う? 答えは俺がそうならないようにしているからだ」

 

ザブンの周りを歩きながら彼は答える。

 

「さて、準備体操はここまでにしよう」

 

そう言って、指パッチンする。すると、三人の人間が現れる。顔は見えないがそれぞれがベルトを巻いている。

 

「今からが本当の地獄だ」

 

三人がそれぞれ異なるアイテムを取り出す。ある者はプログライズキー、またある者はワンダーライドブックを、ある者はバイスタンプを

 

アークワン!

グリモワール! WHEN THE HOLY SWORD AND THE BOOK INTERSECT REWRITE THE WORLD

トライキメラ!

 

ベルトに装填する。

 

『♪』

『♪』

オク! サイ! ムカデ! Come on! キメラ! キメラ! キメラ!

「「「変身!」」」

シンギュライズ! 破壊…破滅…絶望…滅亡せよ…! コンクルージョンワン!

♪ OPEN THE GRIMOIRE THE END OF THE STORY! KAMENRIDER STRIUS!

スクランブル! オクトパス! クロサイ! オオムカデ! 仮面ライダーダイモン! ダイモン! ダイモーン!

 

禍々しい仮面を着けた戦士。仮面ライダーに変身した。

 

「まずはお前だ、アークワン!」

「・・・」

 

『仮面ライダーアークワン』はザブンに向かいながら、ベルトの上部『アークローダー』を押し込む。

 

悪意・・・恐怖・・・憤怒・・・憎悪

 

すると、ザブンの周りに人が現れる。

 

「⁉」

 

そう、これまでザブンによって不幸になった人たちが現れた。中には死亡した人もいる。

 

「お前のせいで」

「なんで私が」

「お前が憎い」

「お前なんて」

 

ザブンは怯えていた。なぜなら彼らがザブンの身体にまとわりつき、噛んだりもした。それが想像以上に痛い。

 

絶望・・・闘争・・・殺意・・・破滅・・・絶滅・・・滅亡

 

歩みを止め、ザブンの前に着くと、彼は既に顔面が崩壊していた。涙や鼻水、血でもはや顔がわからない。

そんなことも関係なく、アークワンは装填してある、プログライズキーを押し込む。

 

パーフェクト コンクルージョン! ラーニングエンド!

 

そのまま顔面に向けてライダーキックを喰らわす。

体は消滅するが、すぐに再生される。

 

「次はストリウス」

「はい」

 

次は『仮面ライダーストリウス』。ベルトにセットした『グリモワールWRB』を閉じる。

 

「あなたの物語はつまらない。私があなたの結末を考えてあげましょう」

 

バックルのボタンを三回押す。

 

GRIMOIRE READING! THE END OF THE WORLD!

「あなたの結末は、新の王を際立たせるだけどのただのやられ役。そして新の王の前で誰にも目を向けられず死んでいく」

 

ストリウスはザブンの頭に触れ、彼が創造した物語がザブンの頭の中に流れる。そう自分の無様な最後を。何度も何度も・・・何度も。

 

「最後はダイモン」

「YES」

 

『仮面ライダーダイモン』は『トライキメラバイスタンプ』を倒し、連続で五回倒す。

 

「貴様にジャッジを下す!」

トライキメラエッジ!

 

赤黒い波動を放ち、ザブンの身体から何かが出てくる。

 

「それは貴様の悪魔だ」

 

ダイモンの技は相手の悪魔を強制的に開放し暴れされる物だ。ザブンからでた悪魔は理性はなく、ただ目の前のザブンを喰らい始める。

例え喰われても、すぐに再生する。何度でも何度でも再生し、そして再び死ぬ。

 

「これはまだプレリュードだ。さあ、まだまだ」

 

彼の背後には多くの人間だけでなく、怪獣や宇宙人もいた。もはやザブンには希望など無い。

 

「終わりのないのが『終わり』。お前は『死ぬ』という真実に辿り着くことは決して・・・絶対にない」

 

 

 

 

 

再び時が進む。

 

「ザブン⁉」

「な⁉」

 

その場にいる全員が彼の姿に絶句する。なぜなら彼の特徴的な体が急にがりがりになって、黒髪は白く、目は生きているのかがわからないほど光を失っていた。

どうしてこうなったかを知っているのは二人だけ。

一人は我らが光の超神見習い『レイガ』

そしてもう一人は

・・・・彼の中に潜む邪神『リテス』。レイガのもう一つの人格である。



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王子誕生

今回は最初、レイガのとある朝を書きました。こんな朝羨ましい。


〈ある日のレイガ〉

これはレイガがまだ超神見習いになる前のお話。

ある日の朝、いつも通り目を覚ます。

 

「ん?」

 

起き上がろうとすると、誰かが上に乗っていた。さらに左右の腕にも誰かが頭を乗せていた。いわゆる腕枕だ。

目を開けると、上に乗っているのは金髪ロングの女性。

 

「・・・アーシアか。それと」

 

次に左右を見ると、右側には緑のメッシュが入った青髪の女性『ゼノヴィア・クァルタ』。左側には茶髪ロングの女性『紫藤イリナ』いつもツインテールだが、寝るときはしていない。

 

「ゼノヴィアにイリナ・・・昨日は四人で寝たっけ?」

 

・・・いつものことだが、毎回ランダムで妻と寝てはいるが、最初こそおどおどしていた僕だが、今ではもう慣れている。逆に誰もいないと心配するようになっていた。

さて、三人を起こすのは申し訳ないので、起きるまで待ちますか。

しばらくすると、

 

「ん・・・あ、レイガさん・・・おはようございます」

 

アーシアが眠たそうな目をこすりながら、僕に顔を向ける。

 

「おはよう、アーシア」

「ん・・・もう朝・・・ダーリン、おはよう」

「おはよう、イリナ」

 

次にイリナが目を覚ます。二人ともまだ眠そうだな。

 

「ん・・・おはよう、レイガ」

「おはよう、ゼノヴィア」

 

最後にゼノヴィアが目を覚ます。さてこのまま二度寝もいいけど早起きは大切だからね。

 

「三人ともおはよう」

 

そっと三人にキスをする。すると、三人とも抱き着いてくる。五分ぐらいすると、四人で一緒に朝ご飯を食べに向かう。今日も一日頑張りますか。

 

〈レイガサイド〉

リーリエ王国の新たな国王が決まってから数週間がたった。あれからクラウド王子とクープ侯爵はザブンが所有していた奴隷の開放やワルダックとつるんでいた商人や貴族を捕らえたりした。結果、リーリエの国力はかなり下がったが、幸いにもパルーフ王国と戦争しなかっただけよかった。

 

「それでも以前よりはパルーフ王国と友好的な関係を築けるようになれると思います。いろいろ大変ですが、やりがいがありますよ」

「それはよかった。それで前国王はどうしています?」

「父上は母上といつも一緒に過ごしています。ワルダックの専横な振る舞いを防げなかったとして、自ら蟄居いたしました」

 

テンペスト・レイの会議室で、新しいリーリエ国王のクラウドがそう語った。

ちなみに、今回の主犯であるあの三人は死刑にはならず、代わりに『隷属化の首輪』を着けてサンドラの採掘場に売り渡したらしい。ある意味死刑よりもつらいだろう。それでザブンに関してだが、あの時のことはクラウドと相談して僕の闇魔法による呪いということにしてもらった。ホントはリテスがやったことだけど、彼がやったことは僕の責任である。あの後、帰った後にキングじいちゃんたちに報告したら、レジェンド先輩とサーガ兄さんにこっぴどく叱られました。あと嫁たちにも心配されました。中にはリテスの存在を知っている子もいるので一旦惑星レイガに帰って、説教とキスを全員にすることになりました。本当にごめんなさい。帰ったらユミナたちにもちゃんと説明をしてキスもしました。まだリテスのことは言えないので僕の闇魔法にしたけど、いつかは言わないとな。

 

「玲我殿、そろそろいいかな?」

「あ、すいません」

 

咳払いをしてベルファスト国王が椅子から立ち上がる。今この場には西方同盟の首脳陣がおられる。今日はある議題があって集まってもらった。

 

「リーリエ王国の西方同盟への参加を認めぬ者は挙手を」

 

全員手を上げなかった。

 

「ではリーリエ王国を西方同盟の同盟国として迎えよう」

 

みんなから拍手があがるなか、クラウドが深々と頭を下げた。

 

「と、今日の議題も終わったところで」

「『親睦を深める』としましょうか」

「よっしゃ、今日は負けんぞ!」

 

そう言って、リーリエ国王とミスミド国王が連れ立って会議室を出て行った。

 

「すでに選手たちは転移しときましたよ」

「今日はミスミドとベルファストで試合を行う予定でな。リーリエ国王も観戦に来たまえ」

「試合? 剣術試合の観戦ですか?」

「野球だよ、野球! 知らんのか? なあワシがルールを教えてやるから、さっそく行こう!」

 

クラウド王子がレグルス皇帝とリーフリース皇王に連行されて行った。ラミッシュ教皇も一緒について行く。

僕も向かおうかな。そう言えば野球観戦と言えば、ポップコーンかビールがいいとリムルが言ってたな。ちょうどいいから作って行こうかな。

そんなことを考えていると、背後からけたたましく駆け寄る足音が聞こえた。まあ事前に見聞色で未来を見たから知ってるけど。

 

「玲我ああああああぁぁぁ!!」

「ほい」

 

タックルしてきたスゥを軽く受け止める。ミュウで経験済みだからね。何度も喰らったよ。

 

「父上から聞いたぞ! わらわのためにバカ王子をぶん殴ってやっつけてくれたのだな! やっぱり玲我は最高じゃ! わらわの最高の旦那様じゃ!」

「当たり前だろ。スゥは僕の嫁なんだから。嫁を奴隷にするなんて言う奴はたとえ神でも魔王でもぶん殴るから。これからもよろしくね」

「玲我!」

 

スゥは僕の首に飛びついて小さな手で抱きしめてくる。そのままスゥを抱き上げて、僕たちは厨房へ向かった。

 

 

 

 

結果、ポップコーンとビールは予想以上に売れた。ポップコーンの味は塩とキャラメルにしたが、偏らず両方人気だった。ビールの方は特に大人の男性に人気があった。

スゥをユミナたちに任せて僕は首脳陣がいるVIP席に行くと、全員がボップコーンを食べて観戦していた。周りにはそれぞれの国の騎士団長クラスが警備についている。

 

「どうですか、野球は?」

「ああ、公王陛下! いや、面白いですねえ! いつか我が国も余裕が持てるようになったら、こんな試合を国民たちに見せたいものです!」

 

興奮気味にクラウド王子いやクラウド王が目を輝かせている。

試合は3-2でミスミドが勝っている。獣人の身体能力が高く、攻撃力が強いが、ベルファストの方も変化球を投げて攻撃を防いでいる。これは最後まで分からないな。

 

「あの、玲我様」

「はい? あと様はつけなくてもいいですよ」

「いえいえ、貴方様を呼び捨てになどできません」

「ん~、それなら様でいいですけど」

 

そういえば僕のことを崇拝している人たちにも様付けをやめるよう言っても、まったく聞く耳持たなかった。まあ別にいいけど。

 

「このキャラメルと言う食べ物、我が国でも作れますか?」

「キャラメルですか? 作れますよ。簡単ですからね。あとで作り方を書いた手紙をお渡ししますから、お城の厨房にいる僕の妻に渡して下さい。あとこれもどうですか?」

 

収納魔法から一口サイズのキャラメルと飴を教皇猊下に手渡す。

 

「美味しい・・・! これは子供が喜びそうですね。孤児院の子供たちに配ってあげたいですわ」

「いいですね。じゃあこれも作り方を書いておきますね。子供たちに喜んでもらえれば何より・・・」

 

と、そこで、ジーッと教皇猊下の背後からこちらを見ている三人の視線を感じた。

 

「はい。お三方にも」

 

レグルス皇帝たちにもキャラメルと飴を渡す。

しばらく試合を見ていると、ライムさんが慌ててVIP席にやってきた。

 

「どうしたんですか? ライムさん」

「先ほど、ゲートミラーで、ベルファストからこれ、が、送られてきました」

 

呼吸が荒い。よほど急いでいたのだろう。手紙を受け取り目を通す。

・・・え⁉・・・・えー-------------⁉

 

「大変だ!」

 

【コネクト】を使って、一気にベルファストベンチまで転移する。本当ならここでは魔法は使えないが、今は緊急事態なので、反則だが神の力を使用した。

ベンチには弟のオルトリンデ公爵を座っていたが、全員僕の登場に驚いていた。

 

「うおっ、玲我殿か。なんだ、応援「それどころじゃないですよ! 子供が・・・国王陛下の子供がもうすぐ生まれるんですよ!」・・・そうか子供か・・・な、なにいぃぃー----」

 

慌てふためくベルファスト国王陛下を【コネクト】でベルファストの城に送り、試合の方を公爵に任せた。僕も何人か妻に電話して出産のサポートをお願いした。

ユミナたちにも伝え、出産の手助けをしてもらっている。僕はその間隣の部屋で公王陛下と共に待っている。

あれから数時間経ったが、その間ずっと国王陛下は部屋の中を歩き回っている。その間僕は選手を送り返したり、公爵とスゥを連れてきたりして時間を潰した。

もうしばらくすると隣の部屋から元気な声がかすかに聞こえて来た。

すると、すぐに国王陛下が部屋に飛び出していく。僕も慌ててそれに続く。

部屋の前で待っているとリンゼが顔を見せた。

 

「生まれました。元気な男の子、ですよ。母子共に健康、です」

「そうか! そうか!! 男か!!」

 

公王陛下が嬉しそうに中へ入っていく。僕は公爵と共に廊下で待つことにした。

やがて扉が開き、赤ちゃんを抱いて、国王陛下が姿を現した。

 

「見てくれ! 我が国の跡取りだ!」

「おめでとうございます、兄上」

「おめでとうございます」

 

本当におめでたい日だ。

 

「それでな、玲我殿。玲我殿にこの子の名付け親になってもらいたいんだが、何かいい名前はないか?」

「え⁉ 僕がですか⁉」

 

急に言われても・・・・そうだな。

 

「レイト・・・ってのはどうですか?」

「レイト・・・レイトか。レイト・エルネス・ベルファスト・・・うん、悪くない。悪くないな。よし、この子はレイトだ! レイト王子だ!」

 

ゼロ兄のパートナーと同じ名前にしたんだけど、喜んでくれてよかった。

この時、レイガは気付いていなかったが、レイガが名前をつけたことによって微量だがレイガの魔力がレイトの体内に入った。どうしてこうなったかわからないが、この後レイトは神の申し子と言われる存在となるのを誰も知らなかった。

 

 

 

 

 

それから王子誕生の発表がなされた。瞬く間に城下町に広がり、夜にはそれを祝う人で街に人が溢れた。僕もお祝いとして『キラメイジャーギア』を使って、疑似花火をプレゼントした。

同時にユミナちルーの婚約も発表された。これで悪い虫も来なくなるだろう。

それ以外のみんなは発表なんかなかったが、気にしている様子はなかった。いや、スゥだけはちょっと膨れていたが。

スゥに関してだがテンペスト・レイに連れて帰ることはしなかった。僕としてはまだ公爵やエレン夫人と一緒にいてほしかったので、スゥの部屋と新しくテンペスト・レイに用意するスゥの部屋を【コネクト】でつなぎ、スゥ本人と許可した人間だけ自由に行き来できるようにした。

 

「はあ・・・無事に産まれてよかったわね」

「拙者、ちょっと感動してしまったでござるよ・・・」

 

レイト王子の出産に立ち会ったみんなが与えられた客間の長椅子で脱力している。ユミナとスゥ以外のメンバーが安堵と喜びを味わっていた。

 

「私たちも、そのうち子供を産むんですか、ね」

 

リンゼがぼそりと放った呟きに、みんな赤面して目をあらぬ方向へと向ける。

 

「あらあら可愛らしいわね」

「ほんとね」

 

そう呟くのは別の場所で紅茶を飲んでいる黒髪ロングで巫女服を着た女性『姫島朱乃』である。本当は朱乃の母『朱璃』が来るはずだったが、用事があったため代わりに朱乃が来てくれた。もう一人は緋色の髪を四つ編みにしている女性『アイリーン・ベルセリオン』

 

「二人とも来てくれてありがとう」

「いえいえ」

「それにしても懐かしいわね。私たちの出産の時も全員が喜んでくれましたね」

「そうだね」

 

僕は紅茶を飲みながら惑星で元気に暮らしている息子、娘を思い浮かべた。元気かな~




ハイスクールdxdから朱乃、フェアリーテイルからアイリーンを出しました。これから更新が遅くなると思いますが、よろしくお願いします。


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フレームギア始動

遅くなりました。


〈ある日のレイガ〉

ある朝、いつも通り目が覚め、起き上がると左右には僕の妻が寝ていた。片方は紫色の髪にロング、そして頭にうさ耳のカチューシャを着けている女性『篠ノ之束』

もう片方は長い黒髪を一本結びにした女性『織斑千冬』

 

「今日もいる・・・昨日は一人で寝てたはずだけど・・・まあいっか」

 

いつも通りの朝だ。ただ違うとすれば毎日寝ている妻が違うだけ。

二人を起こすのも申し訳ないので、起きるまで二人の髪を撫でていた。しばらくすると、先に束が目を覚ました。

 

「ん・・・レッくん・・・おはよう」

「おはよう」

「えへへ」

 

目が覚めるとすぐに抱き着いてくる束。

 

「朝のハグハグ」

「ほう・・私がいる前でイチャイチャするとはな」

 

・・・千冬さんも起きていましたか。

 

「ちーちゃん、おはよう」

「おはよう、束、レイガ」

 

そう言って、束に対抗するように反対側から抱き着き千冬。

 

「ちーちゃん! 今は束さんの時間だよ!」

「束は昨日二時間していただろう! 今日は私だ」

 

そう言って二人が力いっぱい抱き着いてくる。あの~二人とも抱き着くのはいいけど、力加減考えて。骨までいってる。

朝から波乱のレイガであった。

 


 

〈レイガサイド

レイト王子が生まれてから数日が経った。その間僕はザブンが奴隷にしていた女の子たちを故郷に送ったり、仕事を紹介したり、またフレイズも出現したので討伐をしにロードメア連邦まで向かったりして忙しい日々を送った。

そんな忙しい日々を終えてある日フローラが例の物が完成したと報告があり、『錬金棟』に向かった。

 

「これがエーテルリキッドか」

 

フローラから渡された『エーテルリキッド』は五〇〇ミリリットルのペットボトルほどの大きさの透明な筒の中には液体は緑色。

 

「これ一本でどれくらい動くの?」

「純正品ではないので、おそらく一ヵ月程度でスの」

「結構動くんだね」

「エーテルリキッドは燃料とは言ってまスが、実際には人間の血管や神経みたいなものでスの。操縦者の意思や反応の隅々まで行き渡らせる触媒みたいなものでスのよ」

 

なるほど、燃料と考えていたけど。実際は血管や神経みたいな感じか。

 

「それで何本できたの?」

「今はそれ一本でスの。でも明日から一本ずつ、全部で十本できまス。予備のエーテル鉱石・・・魔石も使えば、もう十本追加できまスの」

 

十本もあれば今のところ十分かな。フローラに感謝しつつ、『錬金棟』を後にし、僕は『格納庫』に向かった。

完成した『エーテルリキッド』を渡すと、量産型のフレームギア、機体名『シュバリエ』にセットした。

 

「よっしゃ、これでいつでも起動できるゼ。でも、ここで動かすのは勘弁してくれよナ、マスター。倒れでもされたらオレの大事な『格納庫』に傷が付いちまう」

 

・・・モニカがそれを言う? ペンチでボタン壊していたのに。

でもフレームギアを見せるってことは西方同盟はともかく他の国が知ったら奪い来るかも・・・・まあ奪いに来ても容赦なくぶっ潰すけど。

とりあえず試運転がてら訓練場で動かすか。

 

 

 

 

 

「陛下・・・これは」

「うっわー! 本物だ! 本物のフレームギアだ! 作っちゃったの、陛下⁉」

「これ幻影じゃないですよね・・・?」

 

ポカンと口を開けたまま公国の訓練場に立つシュバリエを見上げる騎士団長と副団長たち。同じように絶句している他の騎士団員たち。国民のみんなもちらちら見ている。

 

「おいおい、なんだよこりゃあ・・・。動くのか? これ?」

「それを今から試すんだろ。しかし小僧、とんでもねえモン作ったな・・・」

 

山県さんと馬場さんもみんなと同じような顔で見上げている。

 

「まあ確かに大きいけど」

「あれと比べると・・・」

「小せえなあ」

 

と呟くのは僕の隣でシュバリエを見ている裕斗、アビス、錆兎の三人だ。三人とも僕が使っているロボを知っているから、そんなに驚いてはいない。

 

「あれ、そういえばレインとジョニーは?」

「レインさんなら近況報告をしに、一旦帰りました」

「ジョニーさんはこの星を探索しに旅だったよ」

 

僕の質問に答えるアビスに裕斗。まあジョニーなら大丈夫でしょう。

 

≪そろそろ準備は大丈夫? 八重、紅玉≫

≪大丈夫です。いつでもいけると言っています≫

 

今回の操縦者は八重にお願いした。理由としては八重が一番魔力量が少なかったからである。八重にも自由に動かせるなら、他の人たちにも動かせる。あとは連絡用に紅玉にも乗ってもらっている。

機体同士の通信装置も作らないとなあ。これでは毎回面倒。

 

≪よし、じゃあ重騎士(シュバリエ)、起動!≫

 

ヒュオオオ

 

と音がなり、機体の各部に光が浮かび上がる。

やがてシュバリエがゆっくり右足を前に出し、重い一歩を踏み出した。

 

「動いた・・・」

 

誰かがそんな声をつぶやいた。その言葉は全員の心情を表している。

さらに一歩一歩歩み進めるシュバリエ。

それからはいろいろな動きをしてもらい性能を確かめた。機動性も耐久性もあるし、操縦者の安全性も確かめることができたので、今回の試運転は成功だな・・・ここまでは

次に待っていたのはシュバリエに乗りたいと長蛇の列・・・これいつ終わるのかな?

と、みんなが乗り終わるまで待つ僕でした。

 

 

 

 

 

「初めてお目にかかります、テンペスト・レイ公王陛下。冒険者ギルド統括責任者ギルドマスターが一人、レリシャ・ミリアンと申します」

 

そんな試運転が終わってから数日後、ある人が尋ねてきた。今謁見の間頭を下げているレリシャ・ミリアンさん。それにしてもあの耳、エルフ族の方かな。

 

「それで今日のご用件は?」

「は。テンペスト・レイ公国にも、我が冒険者ギルドの支部を置かせていただきたく、お願いに参上仕りました」

「あ~ギルドね。いいよ。建築する場所などはうちの内藤さんと相談してください」

「ありがとうございます。それともうひとつお願いが」

「・・・依頼ですか?」

「はい。ギルドから銀ランク冒険者である。光神玲我様への依頼でございます。巨獣の討伐をお願いしたく」

「巨獣ですと⁉」

 

高坂さんが驚いたように声を上げる。巨獣・・・字のごとく大きな獣かな?

 

「何ですか? 巨獣って」

「その名の通り、巨大な魔獣です「。突然変異種ともいいますが、稀に通常の種よりも大きな個体が現れることがあるのです。その大きさは大きな屋敷ほどにもなると言われています」

 

・・・怪獣じゃん。

 

「なるほど、それでどこに出現したんですか」

「はい。場所は大樹海です。しかし観測者の情報によりますと、この巨獣はまっすぐ東へ向かっており、いずれはライル王国へと出るでしょう。進行方向にはテムの町があり、このままでは町は壊滅してしまいます」

 

ライル王国って確か大樹海の東に位置する国だったはず。

 

「なんでまたその依頼を僕に?」

「公王陛下は巨大なる騎士をお持ちとか。さらには巨人にもなられるお方。そのお力をもってすれば巨獣をも倒せるのではないかと」

 

・・・バレてる。フレームギアの存在を。まあこんなことにいずれはなるとは思っていたからいいけど。

 

「ハクちゃん。ライル王国の周辺を検索して」

「はい。マップ表示します」

 

マップが浮かび上がり、今の状況を確認する。ゆっくりとだが着々とテムの町に向かっている。さらに嬉しいことに魔石も確認できた。

 

「すいません。報酬の方なんですけど、追加でいただきたいものがあるんですが」

「・・・なんでしょうか?」

「この三ヶ所ほど掘り起こす許可をいただけないかと。そこに埋まっている魔石をいただければ」

「それくらいならば多分許可をいただけると思いますが、一応、先方に聞いてみます。少し時間をいただけますか」

 

そう言ってレリシャさんは懐から薄い黒い板を取り出し、なにやらペンで書きこんでいた。

 

「それは?」

「これは『伝文の書』というアーティファクトで、ここに書いた文章は。遠く離れた同じ『伝文の書』に届くようになっています。我々のギルドではこれで依頼などをやりとりしているのですよ。と、言っても貴重品なのである程度の役職の者しかもっておりませんが」

 

へえ。僕が持っている携帯のメールだけの物と同じか。

連絡が届くまで応接室で待つことにした。待つ間巨獣について説明を受けた。

今回の巨獣は尾が二つある蠍らしい。毒液も出すとか。

そうだな。シュバリエの戦闘訓練にはもってこいの相手だな。

 

 

 

 

 

それから数時間後正式にギルドから採掘の了承を貰ったので、すぐにバビロンで移動する。今回はフレームギアを使うので僕だけで向かうことにした。

今は大樹海の上を通っている。もうじき例の巨獣がいる場所に辿り着く。

 

「ロゼッタ、通信機は取り付けたの?」

「バッチリでありまス。バビロンや他の機体にも送れるでありまスし、プライベートチャンネルもありまス。外部スピーカーも取り付けたでありまスよ」

 

それはありがたい。これで楽に通信できる。

 

「聞こえる、モニカ」

『聞こえるゼ、マスター。バッチリだ』

 

正面モニターに映るモニカが大きく手を振る。向こうの声も聞こえるし、問題は無いな。

 

『マスター。目的地上空でス。ターゲットは前方の大樹海を抜けテ、ライル王国の荒野へと侵入しまシタ。ターゲットを追い越してから降下願いまス』

「OK」

 

コックピット内にシェスカの声が響き渡る。さて行きますか。

フレームギア『黒騎士(ナイトバビロン)』を起動する。『格納庫』の出入り口まで移動し扉が開く。そのまま地上にへと飛び降りた。

ホバリングしながら地上に着地する。正面には蠍がこちらへ向けてやってくるのが見える。

 

「さて、それじゃあ行きますか」

 

右手にはメイス(モデルはバロンのマンゴーパニッシャー)、左手に盾(モデルはステゴシールド)を構え、巨獣に向けて走る。巨獣はこちらに気付くと、二つの尾をこちらに向け、その先から毒液を噴き出した。それを僕は盾で受け止める。

 

「これ普通の盾だったら溶けてたな」

 

ポタポタと垂れ落ちた毒液は地面に触れるとプスプスと煙が立ち上がっている。あらかじめ盾に僕の魔力を少し流しておいて正解だったな。

 

「さて、悪いけどこれで終わらせる」

 

上に飛び、メイスを蠍の顔面に向け振り下ろす。

 

ズドォォンッ!!

 

・・・やりすぎた。内臓がぶちまけられ、身体が真っ二つに千切れ飛んでいる。

 

『ひゅー。やったナ、マスター』

 

モニカからそんな通信が入る。思ったより手こずらなかったな。ちょっと武器強くしすぎたかな。あとで検討しよう。

 

 

 

 

 

あの後、レリシャさんに依頼報告を行い、僕はギルドランクが最高の金になった。ちなみに他の金ランクは騎士王国レスティアの先王陛下のみらしい。一度会ってみたいなあ。

あとレリシャさんにもフレイズのことを説明して、これからのフレイズの情報を受け取ることにしてもらった。

それからは早速魔石を掘りに行き僕は三個の魔石を入手した。

 

「マスター、今回の武器はどうだったでありまスか?」

 

採掘後、僕は『格納庫』でロゼッタとモニカにこれからのフレームギアの相談をしていた。

 

「よかった、というよりやりすぎたね。もう少し調整したほうがいいかも」

「そうか? これでも十分だと思うけどナ」

「う~ん、そう?」

「それよりもマスター他のロボも見せてくれよ! 新作の装備やフレームギアの参考にしたいゼ」

「いいけど、また『工房』に籠るのはやめてよね。心配するから」

「わかったゼ」

「はいでありまス」

 

二人にスーパー戦隊のロボのデータと仮面ライダーのデータを渡して僕は久しぶりに国内を回ることにした。



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ゴーレム戦

遅くなりました。


〈ある日のレイガ〉

パパ

 

うん? 誰だろう。誰かが上に乗って叫んでいた。まだ頭がぼんやりしていたが、徐々に目覚めると、目の前には

 

「パパ おはようなの」

 

僕の娘の「ミュウ」がいた。

 

「おはようミュウ」

 

そう言ってミュウの頭を撫でる。

 

「みゅう」

 

可愛いな。すると隣から

 

「うふふ、おはよう あ・な・た」

 

と聞こえ振り向くと、ミュウの母「レミア」が僕の腕を枕にして横になっていた。

 

「レミアもおはよう」

「はい。おはようございます」

 

僕は起き上がりミュウを抱える。

 

「パパ 朝ごはんなの」

「わかった。それじゃあ三人で行こうか」

「はいなの」

「はい。あなた」

 

そう言ってミュウを抱え、三人で朝食を取りに向かった。

 

 

 

〈レイガサイド〉

 

ロゼッタたちと別れた後、僕は校内を見て回っている。今は東部の農業地に来ている。水田や畑ができており、順調に作物が育っている。

 

「あれ、陛下ではないですか」

 

突然声をかけられ振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。翡翠のような緑色の髪に花の髪飾り、花びらのようなスカートと背中から伸びた羽のような葉、そして身体のいたるところに巻きついている蔦。そう彼女はアルラウネである。

この国の騎士団にやってきた魔族五人のうちの一人である。

 

「確かラクシェだよね?」

「はい。騎士団所属、アルラウネのラクシェです。なんでこんなところに陛下が?」

「いや、ちょっと散歩がてら視察にね。ラクシェは?」

「私は今日は非番なんで、こちらの畑のお手伝いをしようかと」

「そうなんだ。この国の生活はどう? もう慣れた?」

「はい。皆さん親切で。よくしてもらってます。たまに旅人とかに怖がられることがあるけど、なんてことありません」

 

まだ魔族への偏見は多く、忌避する存在として疎んじられることがある。いつかはこんな差別もなくしたいな。

 

「ラクシェは魔族の国からやって来たんだっけ?」

「はい。ここからずうっと北東の海を越えたところにあります。ゼノアスって国です。厳しい環境の国ですが、魔族だからへっちゃらです」

 

魔族の国か。いつかは訪れてみたいな。なんでもこの国を治めているのは魔王と呼ばれる存在らしい。魔王には興味あるからいつかリムルと一緒に尋ねようかな。

 

「この国は自然も豊かで素晴らしいです。思いっ切って騎士団に入ってよかったと思います」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。これからも頑張ってね」

「はい」

 

ラクシェと別れて、街の方へ戻ってくると、ギルドの建設現場で働いている魔族の姿を見かけた。

彼は二メートルの巨体で赤褐色の肌、白い髪から伸びる二つの二本の角。彼の種族はオウガである。

 

「あ、陛下ぁ。こんにちはぁ」

「お疲れ、ザムザ。君も非番か?」

「はぁい。自分は人の三倍食べるもんでぇ。給金だけではきついって言ったら、内藤様がここの仕事を手伝えばいつも腹一杯食わせてくれるってぇ」

 

確かに彼のパワーならこの仕事は合ってるし、内藤さんもいい仕事を教えたな。

 

「頑張ってね。これは差し入れ。終わったらみんなで食べてね」

「わぁあ。ありがとうございます」

 

僕は収納魔法から巨大イノシシの肉を二匹分渡し、僕はその場を去った。

彼を見てると、ゲルドたちオーク族を思い出す。彼らの過去を思い出すと、本当に胸が苦しくなる。二度とあんな出来事を起こしたくない。

 

 

 

 

 

「うっわーッ! すっげえ! 本当に飛んでる!」

「ねえねえnへーか! 魔法⁉ これ魔法⁉」

「魔法じゃないよ。これは風の力で飛んでいるだけだよ」

 

次の日、僕は今子供たちと一緒に凧揚げをしている。なぜって?・・・・なんとなく作りたかったから。それに子供たちが喜んでくれるから・・・・いいでしょう。

集まっている子供たち全員にプレゼントして僕は飛んでいる凧を見ながらこれからのことを考えてた。

フレームギアの機体を増やしたいが、素材の問題もあるが、やっぱり問題はスタッフがいないことだ。いまのところロゼッタとモニカしかいないので、彼女らをサポートするロボットがあればいいが、ロゼッタに聞けばその設計図も『蔵』にあるらしい。・・・なんでもかんでも『蔵』にあるから難しいな。バビロンは全部探すつもりだけど狙ったものを見つけることはできないから苦労するな。

そんなことを考え、ぼんやりしているとどこからか僕を呼ぶ声が聞こえて来た。

 

「玲我さーん!」

「玲我様!」

「ん? ユミナ? ルーもか」

 

立ち上げると、両サイドから抱きつかれた。

 

「どこに行ったかと思っていたら、あれが見えまして。絶対にここにいると思いましたわ」

 

ルーが凧揚げを指差す。

 

「私たちのこと放っておいて子供たちと遊んでいるなんて。玲我さんはもっと奥さんを大切にするべきです」

 

ぐはぁ! 精神的ダメージが!

 

「ごめんなさい」

 

僕は謝礼としてそのまま二人とデートしました。もちろん抱きついたままで。

それから一時間散歩して城に帰宅すると、

 

≪主、聞こえますか?≫

「うん? 琥珀? どうかしたの?」

 

琥珀から念話が来たので、二人にもわかるように声を出して答える。

 

≪マスター、ロゼッタでありまス。フレームギアの量産に使うオリハルコンが切れたので、補充してほしいのでありまスが≫

 

琥珀を通してロゼッタの声が聞こえてきた。オリハルコンか・・・う~んどこで手に入れようか。

 

「わかったよ。こっちでどうにか用意してみるよ」

≪宜しくお願いするでありまス≫

「どうかしたのですの?」

 

ルーが不思議に思ったのか尋ねてきた。

 

「ロゼッタからオリハルコンの注文。さて、どこで手に入れるか・・・」

「鉱石場に行けば売ってもらえると思いますが。たぶんそれじゃ足りないんでしょうね」

「オリハルコンは希少金属ですものね。値段もかなりいたしますし」

「そうだよね~。一度でどかんと一杯もらえないかな~。ミスリルのゴーレムみたいに・・・あれ?」

 

そう言えばミスリルのゴーレムはいるけど、他の金属のゴーレムはいるか知らないな。

 

「オリハルコンのゴーレムっているのかな?」

「オリハルコンゴーレム、ですか? 聞いたことないですね・・・」

「私も。いてもおかしくないような気もしますけれど」

「う~ん、ハクちゃん。オリハルコンゴーレムっているか検索できる?」

『はい。検索してみます・・・できました。表示します』

 

展開したマップにストトトッ、とピンが落ちる。

 

「・・・けっこういるね」

「いますねぇ」

『はい。けっこうな数が検索にヒットしました』

 

予想以上にいてびっくりしたけど、これだけいるなら問題ないな。

 

「それじゃ、ひと狩り行ってくるよ」

「あ、じゃあ、私たちも・・・」

「いや、一人で大丈夫だよ。行ったことない場所だし飛んで行こうと思うから」

 

僕はそう言うと二人とも押し黙る。二人にそっとキスをして僕は出発した。

 

 

 

 

 

「おー-、金ピカだぁ」

 

イーシェンのオエドから西に数キロ、険しい山中の渓谷にそいつはいた。ミスリルの時よりもひと回り大きく、金ピカのボディが眩しい。これがオリハルコンゴーレムか。

 

「さて、今回はこれでいくか」

 

僕は『リバイスギア』で召喚したリバイスドライバーを腰に巻き、レックスバイスタンプともう一つ卵の柄が書かれたバイスタンプ『バリッドレックスバイスタンプ』を取り出す。

 

「沸いて来たぜ!」

 

バリッドレックスバイスタンプの尻尾型起動スイッチ『アクティベートクラッカー』を押す。

 

『♪ バリッドレックス!

 

次にレックスバイスタンプをバリッドレックスの上部『バリッドスキャナー』に当てる。

 

バリバリ!

 

スキャンした後、バリッドレックスバイスタンプをオーインジェクターに押印する。

 

バリバリCome on! バリッドレックス! バリバリCome on! バリッドレックス!

 

最後にバリッドレックスバイスタンプをバイスタンプゴースロットにセットする。

 

「変身!」

 

バリッドレックスバイスタンプを倒す。すると僕の足場が凍り、巨大な卵が降って来て僕を包む。

 

バリバリィアップ! My name is! 仮面ライダー! リバ! バ! バ! バイ! リバイ! リバイ! リバ! バ! バ! バイ! リバイ!

「「ハアァ!」」

 

今までの紫色を強調した色とは違い、水色を強調した仮面ライダー、『仮面ライダーリバイ バリッドレックスゲノム』

 

「・・・何でこっちなんだよ!」

「ん? どうしたの? バイス」

「いやいや、どうせならボルケーノだろ! これじゃあ俺っちなんも変わってないじゃん」

「いやボルケーノだったら、あれ溶けるかもしれないし」

 

そうこのフォームだとバイスの姿は全く変わっていない。変わっているとしたらリバイの顔がモチーフの盾『バリッドシールド』を持っているとこしかない。

 

「・・・俺っち泣くぞ! さすがに泣くぞ!」

「わかったよ。今度はジャックの方にするから」

「マジか! よっしゃー! やったる」

 

ドーン!

 

「あ!」

 

バイスが言い切る前にゴーレムに殴り飛ばされた。壁にめり込んで、よくガビルもあんな風に地面にめり込んでいたな。懐かしい。

 

「・・・大丈夫バイス?」

「っだぁー! 人が喜んでいる時に」

「人じゃなくて悪魔だけどね」

 

他愛無い話をしていると次にゴーレムは僕に向かって攻撃してくる。

 

「よっと」

「!」

 

が、僕は向かってくる拳を受け止める。すると徐々に拳が凍り付く。ゴーレムも自身の拳の変化に気付き後ろに下がろうとするが、僕はその瞬間にゴーレムに蹴りを入れ、後ろに蹴り飛ばす。壁にぶつかり座り込むゴーレム。

 

「さて、バイスさっさと倒すよ」

「OK」

 

ゴーレムは立ち上がり凍っていない方の腕で攻撃してくるが

 

「させねえよ!」

 

バイスが受け止める。受け止められたことに驚くゴーレムを無視し、僕はバイスタンプを倒し、『ブラキオバイスタンプ』を取り出す。

 

バ! バ! バリ! バ! バリ! バーリバリバリ!

 

ブラキオバイスタンプをバリッドレックスの上部に当てる。

 

『オー! オー!』

 

スキャンし、再びバイスタンプを倒す。

 

リボーン! オー! オー! バリバリスタンプフィーバー!

 

これによりリバイの周辺に『マグネティックフィールド』が展開され、僕たちの後ろに巨大なブラキオサウルス『リバイスブラキオ』が現れる。これこそバリッドレックスの最大能力である『リミックス召喚』である。

ブラキオは長い首を活用してゴーレムに攻撃する。攻撃が終わるとすぐにブラキオは消えるが、この攻撃でゴーレムの胴体にヒビが入った。

 

「バイス! これで決めるよ」

「おう」

 

バイスタンプを2回倒し、僕はバイスに向かって走る。バイスは走って来る僕に対して盾を構える。僕はその盾を踏み台にして高く飛び上がる。

 

バリッドレックス! フィニフィニフィニッシュ!

 

ゴーレムにライダーキックをする。正確にはヒビに。徐々にヒビが広がり、最後には核ごと貫通する。

 

「それではみなさんご一緒に3 2 1」

 

ゴーレムは倒れる。これでオリハルコンはしばらく大丈夫だろう。

僕は変身を解いてオリハルコンゴーレムの残骸を集める。

帰ろうとした時、近くの茂みから音がして振り返ると、一匹の鹿がいた。

 

「・・・鹿か。この星にもいたんだ」

 

たぶん鹿に似た動物ではあるけど、

そんなことを思っていたら、試しに見聞色の覇気を使って鹿の感情を読んでみようと思った。

僕はこの時本当に運がよかった。いつもなら見聞色の覇気を使って動物の感情を読もうとしなかっただろう。でも本当に運がよかった。なぜなら

 

「嘘だろ」

 

今にも死にそうな彼女を助けることができたから。




はい。最後に出した彼女とはあの子のことです。原作を読んだ方はわかりますよね。


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第九章
謎の女性との出会い


遅くなりました


〈ある日のレイガ〉

ある日、僕はある人たちのとこで修行をしていた。

 

「本日はここまでじゃ」

「やっと終わった」

 

座り込む僕。修行は楽しいけど、やっぱり疲れるな。

 

「まだまだじゃな」

「はい、マスターシャーフー」

 

今日は七拳聖の一人であるマスターシャーフーとの稽古。内容自体は掃除などの日常生活を送るだけだが、修行中は常に激気と臨気を出し続けなければならない。最初の頃は片方だけでも一時間しか保てなかった。今では一ヵ月が限界だ。

 

「これなら次の段階に進めるの」

「え⁉ 次って?」

「過激気と怒臨気じゃ」

「・・・」

 

これはもう疲れるどころじゃなくなる。

 

「ふん! この程度で疲れるとは、まだまだだな」

「まあそこまで言わずともよいだろう、マクよ」

 

シャーフーの隣で胡坐をかいて僕を睨む大地の拳魔『マク』。この二人はもともと敵対関係であったが、キングじいちゃんの計らいで今では僕の師匠仲間である。

今では七拳聖と三拳魔との間で争うことはなく・・・・なったわけではない。そうなぜなら

 

「あら今日はもう終わったのダーリン」

「あ、マスターラゲク」

「もう名前じゃなくてハニーって言って」

 

そう、なぜかラゲクに気に入られた。というより結婚を申し込まれた。理由を聞いたら昔のシャーフーに似ているからという何とも言えない理由だった。

 

「ちょっとラゲク! レイガは困っているからやめなさいよ!」

「うるさいわね、ミシェル。私たちはもう夫婦なんだから外野は黙ってて」

「外野じゃないわよ! 私だってレイガの妻なんだから」

 

そう、七拳聖の一人である『ミシェル・ペング』。毎回この二人が僕を巡って喧嘩をする。これだけはたぶん一生行われると思う。

 

「大変じゃな、レイガ。だがこれも修行じゃ」

「はい!」

 


 

〈レイガサイド〉

「それでその子は?」

「『錬金棟』の再生カプセルの中で眠っているよ。今はフローラとルーがついているから何かあったら連絡するように伝えたから」

 

オリハルコンゴーレム討伐した後、僕は近くの川で重症の女の子を助けた。身体中に痣や切り傷があり、右手と両足が無かった。何があったかわからないが僕は直ぐに彼女を助けることにした。本当なら回復系のギアを使おうと思ったが、ほとんどが傷は治せるが、両足までは蘇生できない。シャイニングゼロでも最大一日前しか戻れない。彼女の怪我からおそらく一日よりも前の傷だったので今回は使えなかった。リミッター解除してもよかったが、戻す時間によってはしばらく動けないので、すぐに『錬金棟』へ連れてった。

 

「どれくらいで再生が終わるのでござるか?」

「明日には完了するらしいよ」

「無くなった手足を治すのにたった一日ってすごいわね…」

 

ホント今回は開発したバビロン博士に感謝だな。とりあえず回収したオリハルコンをロゼッタに渡しに『格納庫』へ向かい、その後『錬金棟』に寄るか。

ロゼッタにオリハルコンを渡して、ついでに様々な武器のアイデアを考え、新たな武器の製作が決まった。

フローラの方では、どうやら順調に怪我が治ってきているが問題は心、精神的な部分だな。あとルーから彼女が着けていたメダルを受け取った。紋章が描かれていたがどこのかまったくわからないので、あとでみんなに聞いてみよう。

城に帰って来ると、ラピスさんたちがやってきて、本格的にラピスさんとセシルさんがテンペスト・レイの一員となった。今まではユミナの護衛という名目でベルファストの諜報機関『エスピオン』所属だったが、僕とユミナの婚約を機に辞任し、正式にウチのメイドとして採用したのだ。今のうちのメイド長はグレイフィアなのでラピスさんを副メイド長に、メイドの教育兼戦闘をお願いした。僕の妻兼メイドはやりすぎなとこあるから。

 

 

 

 

 

「・・・毎度のことながら、玲我殿が玲我殿でよかったと思うよ」

「・・・まったくだな。我らは運がいいのだろうなあ」

「? なんですか、それは」

 

そびえ立つ重騎士(シュバリエ)を見上げながら話す。レグルス皇帝とベルファスト国王の言葉に思わず首を傾げる。

 

「いやいや、もし玲我殿が野心家であったのなら、とっくにこの世界は征服されていたかもしれんぞ。こんなの見せられて歯向かおうとか思えんよ」

「だなあ・・・。でなくても反則に近いほど強えしな・・・。今更だがお前さん、いったい何者だ?」

(・・・神なんだけどなあ)

 

リーフリース皇王とミスミド獣王の言葉に心の中で説明する。

 

「玲我様は野心を持たれることなどありませんよ。玲我様が何者だろうと、私たちの友人であることに変わりはありません」

 

この中で唯一僕の正体を知っているラミッシュ教皇が落ち着いた表情でそう語る。

 

「すごいですねえ・・・。これ、本当に動くんですか?」

「動きますよ。フレームユニットと同じ操作で動きます」

 

子供のように目を輝かせているリーリエ国王のクラウド王子。

今日は西方同盟のみんなを集めてフレームギアをお披露目している。それぞれ各国のお供の騎士たちもあんぐりと口を開けて呆然と立ちすくんでいた。

 

「しかし、なんだってこんなものを?」

「そうですね・・・今のところは巨獣用といったところですかね」

「巨獣か。確かにこいつなら被害も少なくできるだろうな」

 

納得してくれてよかった。ギルドマスターのレリシャさんには真相を話したが、各国にはまだ伏せておく。いつかはちゃんと伝えないとな。

と、内心不安を感じていたが、すぐさまフレームギアの操縦で大騒ぎになりながらも楽しんでいたのでよかった。

 

 

 

 

 

次の日、イーシェンで助けた子が目覚めたと連絡が来たのですぐに『錬金棟』に向かうと、彼女はベッドの上い起き上がっていた。右手と両足も元通りになっていてホッとした。

 

「・・・あ・・・」

 

僕を見た途端、彼女は小さく声を漏らした。

 

「無事に治ったみたいだね」

「あー・・・それが~・・・でスの」

 

フローラが歯切れ悪く言葉を詰まらせた。

 

「どうやら彼女・・・記憶をうしなっているようでスの」

「・・・え⁉」

 

どうやら僕が助けるまでの記憶が全くないらしい。

 

「僕に会ったのは覚えてる?」

 

こくん、と少女は小さく頷く。あの時のことは覚えているのか。

 

「名前は?」

「・・・わからない」

「なんであんな怪我を?」

「・・・知らない」

 

うーんこれは困った。記憶を蘇られることはできるけど、それは同時に彼女に起きた怪我の原因を思い出すことになる。それで彼女が苦しんだら本末転倒だ。

 

「・・・あなたは・・・」

「ん?」

「・・・あなたはだれ?」

「僕は光神玲我。テンペスト・レイ公国の国王だよ」

「・・・王様・・・ここはそのテンペスト・レイ?」

「うん。イーシェンの山奥で倒れていた君を連れて来た。ひどい怪我だったから」

「どうやって・・・」

「転移魔法で」

 

うん、話している感じ感情はあるね。だってさっきから驚いた顔をしているから。とりあえずずっとここにいるのもなんだし、ベッドごと城の一部屋に転移した。

 

「これは・・・」

 

少女はキョロキョロといきなり変わった部屋の中を見回している。しばらくはここを彼女の部屋にしよう。

 

「でも名前はないと不便だな」

「名前・・・。なんでもいい。王様が決めて」

 

ありゃ、ユエと同じパターンになった。そうだな・・・

 

「それじゃ『桜』で」

「桜・・・」

「綺麗な桜色の髪をしているからさ。いやなら別の名前を」

「桜でいい。ありがとう」

 

 

 

 

 

あれからしばらく経ったが、いまだに桜の記憶が戻る気配はなかった。あとメダルも渡したがやはり何も覚えていなかった。でも彼女の唯一の持ち物だから、常に身につけておくことにした。桜は動けるようになると国を見て回りたいと言い出したので、護衛として珊瑚と黒曜をつけて毎日見て回っている。あとユエも常に傍にいた。たぶん自分と桜が似ている部分があるからだろう。すぐに仲が良くなって、今では姉妹のようだ。

その間、僕は西方同盟の問題を手助けしていた。最近ではリーリエとパルーフの関係を良い方向に向かうためのアイデアを考えたりした。今まで敵対関係だったから友好的にばればいいな。

あとフレームギアを量産し、今のところは重騎士(シュバリエ)が九機に対して黒騎士(ナイトバロン)が一機という比率になっている。黒騎士が攻撃力、重騎士が防御力に優れており、さらに新たな機体をロゼッタとモニカが整備している。そのガレージには赤い騎士が立っていた。

さらに他の二つと違い、両足の先端と踵の左右には大きな車輪が取り付けられており、腰の横と後ろには大型のバーニア。

・・・ただ見た目がものすごく見たことがある。てかこれって『ゴーバスターエース』だよね⁉ てか両足の車輪もよくみると『ゼンカイオーブルマジーン』のものだし。

 

「まさか渡したデータからロボを作るとは」

「マスターがくれたロボを参考にしたゼ!」

「とてもよくできたでありまス」

 

うん、一からここまで再現が高いものを作れるのは驚いた。ただ見た目だけでなく、機動力も本物と同じぐらいだった。正直乗りこなせる人が少ない。どうしよう・・・まあいつか見つかるでしょう。

 

 

 

 

 

『格納庫』を後にし、城へ戻ってくると、廊下から紅玉が飛んできた。

 

「紅玉? どうしたの」

『斥候隊から情報が入りました。以前サンドラ王国の西の孤島で発見したものと同じような遺跡を発見したそうです』

「場所は?」

『ライル王国の東、騎士王国レスティアです。その南方に位置する廃墟の遺跡に』

 

レスティアか、確か金ランクの冒険者が先王様の国の。

さっそく五つめのバビロンが見つかったことをみんなに伝え、一人で行くことを告げた。最初こそ反対されたが、結局遺跡に入れるのは全属性持ちの僕だけなので、渋々了承してくれた。

みんなに桜のことを頼んで、僕は以前巨獣と戦った大樹海とライル王国の境目に転移した。

そこから一気に東の方へ飛んで行く。

マップを確認しつつ向かっていると、途中煙が見えた。火事かと思い、近づくと町が燃えていた。それだけでなく逃げ惑う人々と、それを庇うように鎧を纏った騎士たちと、村人を襲っている水晶の魔物が見えた。フレイズだ。

 

「なッ・・・!」

 

幸い中級種はおらず、僕が最初に出会ったコオロギと同じサイズのフレイズがいた。形はカブトムシに似ている。

そしてそのカブトムシフレイズに立ち向かっている金色の髪の女性。

 

「怯むな! 騎士たちよ、街の人々を逃がすための時間を稼ぐのです! 一歩も退いてはなりません!」

 

振り返り、周りの騎士たちに檄を飛ばす。いや解説している場合じゃない。

僕も猛スピードで現場に向かった。



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姫騎士との出会い

短めです。
今回は前半に食戟のソーマメンバーを入れました。


〈食事の問題〉

僕の妻たちはいつも様々な仕事をしている。例を挙げるのも大変なくらいだ。最初こそ僕の正妻争いで大変なことはあったが、今では全員仲良く過ごしている・・・といいたいがたまに喧嘩が起こる時もある。その中でも毎回上位に上がるのが・・・僕の食事である。

妻たちの半数以上は料理が得意で毎日僕の食事で争っている。それに僕の星ではリムルのおかげで料理のレベルも高いので妻以外の料理もこの争いに含まれている。

 

〈第三者サイド〉

 

ある日の昼食

 

「ちょっとアリス! 今日は私がレイガ君の料理当番よ」

「なによ! えりなは三日前も当番だったじゃない! だから今日は私よ」

 

レイガの家(ほぼ城)の厨房で二人の女性が口論している。片方は金髪ロングの女性『薙切えりな』、もう片方は銀色の髪でショート『薙切アリス』である。

 

「えりな様もうすぐ昼食の時間です!」

「! ならアリス今から食戟よ。審査員はレイガ君でテーマは自由」

「良いわよ! 今日こそ私が勝つわ」

「頑張れお嬢~」

 

えりなの傍で時間を確認した桃色髪のショート女性『新戸緋沙子』、一方アリスの横で気の抜けた言葉を漏らす黒髪男性『黒木場リョウ』。二人は各々の秘書である。

 

「ど、ど、どうするっぺ」

「恵落ち着いて!」

「そうよ私たちが加わったらさらに悪化するわ」

「そうだ。今回は諦めよう」

 

近くでこのバトル雰囲気におどおどしていたのは青髪おさげの『田所恵』。その近くで田所を落ち着かせようと抱き着いているのがお団子頭の女性『吉野悠姫』。田所に様子に慌てているのが紫髪でロングの女性『榊涼子』。同じく慌てていたのが褐色肌にショートヘア―の金髪女性『水戸郁魅』

普段ならもっとメンバーが多いが、今回は仕事でこれだけ。だが食事特にレイガに関してはこの争いがもはや当たり前である。ちなみに女性陣は全員レイガの嫁である。

 

そのころレイガは

 

「・・・おなかが・・・・へった」

 

一人ソファに座って食事を待っていた。彼が昼食を食べるのは今から一時間後だった。

 


 

〈レイガサイド〉

カブトムシフレイズにレスティア騎士団が集団で襲い掛かる。しかしフレイズの体を傷つけることはできず、何人かが鋭利な角で鎧ごと串刺しにされた。

 

「くっ・・・なんて硬さ・・・!」

 

少女騎士がフレイズの背後に回り込みながら攻撃するが、まったく攻撃が効いておらず、逆に少女の剣が真っ二つに折れた。

 

「なっ・・・⁉」

 

あまりのことに動きを止めた彼女に、別の個体の角が猛スピードで伸びていく。

 

「しまっ・・・」

 

攻撃が彼女に当たる瞬間

 

『必殺奥義! アバタロ斬!

快桃乱麻!(かいとうらんま)

 

僕は少女の前に降りてザングラソードで伸びた角を切り落とし、そのまま核を斬り裂く。

核が砕かれたフレイズは全身にひび割れを起こして崩れ落ちた。

 

「あ、貴方は・・・」

「ここは僕に任せて住民の避難を。話はその後で」

「わ、わかりました。頼みます!」

 

彼女が去った後、携帯を取り出す。

 

「ハクちゃん。残りのフレイズの数は?」

『はい。残り十一体です』

 

十一・・・ここには六体だけ。あと半分か。

僕はドンブラスターとドンモモタロウギアを取り出す。

 

「アバターチェンジ!」

ドンモモタロウ よっ!日本一!

 

ドンモモタロウに変身し、近くの六体をザングラソードとドンブラスターで倒していく。

街中を駆け抜け、残りの六体を探しつつ倒す。街の中心に向かう途中ニ体を倒したので、残り三体。

街の中心では残り三体が暴れていた。

僕は伸びている角を斬り裂きながら、ドンブラバックルからリュウソウジャーギアを取り出し、ドンブラスターにセットし、ギアディスクを回す。

 

「アバターチェンジ!」

『どんぶらこー! リュウソウジャー! リュウ so cool! よっ! 騎士竜戦隊』

 

リュウソウレッドにチェンジし、リュウソウケンとザングラソードの二刀流で残り三体を倒す。

周りの騎士団が唖然としていた中、僕は倒したフレイズの欠片を回収する。

回収を終えてチェンジを解くと先ほどの少女騎士がこちらを見つめていた。

 

「被害はどれくらい?」

「え? あ、ああ、何名かが亡くなりました。町の者も騎士団の者も。怪我人も多数出ています」

「そうか・・・それなら全員治すよ」

 

少女は、え? という顔をして、横で怪我をして倒れていた騎士を見た。僕はシャイニングゼロとコスモスのギアを使い、蘇生と回復を行った。範囲はレスティア全範囲。

怪我が治ったり、亡くなった者が蘇る光景を見て、全員が目を見開き、驚きの表情で眺めていた。

 

「・・・助けてもらってなんですが、貴方はいったい・・・」

「僕は光神玲我。たまたまこの近くを通りかかったんだ。君は?」

「あ、ああ、これは失礼。私はこのレスティア騎士団の第一王女、ヒルデガンド・ミナス・レスティアです。助けてくれて礼を言います」

 

・・・まさか王女様だったとは・・・僕ってなんで王女様と出会う機会が多いのだろう。

 

「レスティアの姫とは知らずにご無礼を。私はここより西方、ベルファストとレグルスの間に位置する。テンペスト・レイ公国公王、光神玲我と申します」

「テンペスト・レイ・・・! 話には聞いております・・・冒険者から身を起こした少年王・・・西方諸国をまたにかけ、国々の問題を解決する『調停者』だと・・・」

 

・・・え! 、まって『調停者』ってなに⁉ そんなの初めて言われたんだけど。

と、思いながら一応ギルドカードを見せてほしいというので、手渡した。

 

「お祖父様と同じ金ランクのカードです。ご無礼を致しました。どうぞお許しを」

「いえいえ。お祖父様というと先王様ですね。同じ金ランクの先輩として一度お会いしたいものです」

「・・・いえ・・・あまり期待はされない方がよろしいかと思いますが・・・」

「え?」

 

なんか引きつった笑いを浮かべるレスティア姫。なんだろう? 

それから簡単にフレイズの説明をする。どうやらフレイズは今回は初らしい。あとフレイズの欠片の特性も教えた。

 

「なるほど・・・ひょっとしてその剣もフレイズから作られたのですか?」

 

ヒルデガルドが興味深そうに僕のザングラソードを見つめる。

 

「いえ、これは僕のお手製で、また違う素材を使っています。でも我が国の騎士団はフレイズの欠片から作った剣と盾が通常装備で、僕の無属性魔法でしか作れません」

「そうですか・・・羨ましいですね。一人の騎士としていつかそんな剣をもってみたいものです」

 

・・・あ!いいこと思いついた。

僕は収納魔法からフレイズの欠片を取り出し、ビルドギアで水晶剣を二つ、リュウソウケンを一つ作り、剣の柄にレスティア王家の紋章を彫り込み、ヒルデガルド姫に差し出す。

 

「出会いの記念にこれをどうぞ。姫と国王陛下、そして先王陛下に」

「え⁉」

 

貰えるとは思っていなかったのか、受け取ったヒルデガルドはおたおたと焦っていた。

 

「い、いいんですか⁉ これは御国の国家機密なのでは・・・」

「いえ、僕にしか作れないので秘密も何も。それに僕の国では騎士団全員が持っていますし、一応性能は抑えているので、鉄くらいなら刃を乗せただけで切れますし、刃こぼれもしないと思います」

 

姫騎士は受け取った三本の内の水晶剣を抜き払って、太陽に翳す。そのまま魔力を流して、近くの瓦礫に軽く剣を当てた。まるで豆腐のように切られていく。

 

「すごいです・・・。しかも重さを感じません。それにこの斬れ味・・・もしまたフレイズが現れても今度は負けません」

 

嬉しそうにはしゃぐ姫を見ながら、中級種以上だと無理だと思った。

さて僕はそろそろ目的の場所まで向かおうと再び空を飛ぶ。

帰ったら高坂さんに相談しよう。・・・たぶん怒られるだろうな。

 

「では自分は用がありますのでこれで失礼します」

「素敵な贈り物をありがとうございました。いずれ公国の方へ今回のお礼をお送り致します」

 

さて、またいつか出会える日を。



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新たなバビロンへ②

遅くなって申し訳ございません。今回は試しにセリフの前に人物名を書きました。


〈ある日のレイガ〉

レイガの妻はほとんどが戦闘できる人が多いが、必ずしも戦えるというわけではない。例えば彼女らである。

 

ある日のレイガの家。

 

穂乃果「レイく~ん」

海未「ちょっと穂乃果! 人の家で大声は」

ことり「でも海未ちゃん、ここは私たちのお家でもあるし」

 

玄関の扉を開いて入って来た三人の女性。大声を出してレイガを呼んだ茶髪でサイドテールの女性『高坂穂乃果』。彼女を注意したのは幼なじみの一人である黒髪ロングの女性『園田海未』。もう一人も幼なじみのベージュ色の髪を独特の結び方をした女性『南ことり』。(惑星内ではことりのとさかと呼ばれている)

 

凛「レイくん、いたかにゃ?」

真姫「不在らしいわね」

花陽「事前に連絡した方がよかったかな?」

 

次に入って来たのは穂乃果たちの後輩でもある三人。語尾に「にゃ」をつけているのはオレンジ色の髪でショート『星空凛』。レイガの不在を口にしたのは赤紙のセミロングボブ『西木野真姫』。最後は凛の大親友である茶髪のショートボブ『小泉花陽』。

 

にこ「もうこんな大事な時にどこ行ったのよ」

希「まあまあにこちゃん。レイガ君も忙しいからしゃあないやん」

絵里「そうよ、にこ。連絡もなく来た私たちも悪いわよ」

 

最後に入って来たのは穂乃果たちの先輩である三人。黒髪ツインテールの『矢澤にこ』。紫色の髪をツインテール(おさげ)の『東條希』。金髪ポニーテールの『絢瀬絵里

』。彼女ら9人はある世界で『スクールアイドル』と呼ばれる活動をしていた。今では惑星レイガでそれぞれ仕事をしている。

 

ディアボロ「おや皆さま」

穂乃果「あ、ディアボロさん」

ディアボロ「どうされたのですか?」

「実はレイガ君に相談したいことがあって」

ディアボロ「相談ですか? ですがレイガ様は只今会議中でもう少し時間がかかると思われますが?」

「そうですか・・・ではまた」

レイガ「ただいま!」

 

帰ろうとしたが、ちょうど天井からレイガが帰って来た。

 

レイガ「あれみんなどうしたの?」

穂乃果、ことり、凛「「「レイく~ん(にゃー)」」」

レイガ「どわっ!」

 

帰って早々穂乃果とことり、凛に抱き着かれるレイガ。

 

海未「ちょ! 三人ともはしたないですよ!」

ことり「え~、じゃあ海未ちゃんも抱きつけばいいじゃん」

海未「な、なにを言ってるんですか!」

ことり「だって私たちレイくんのお嫁さんだし」

凛「かよちんも」

花陽「凛ちゃん⁉」

希「ほんならウチらも抱きつく? 絵里?」

絵里「希⁉」

穂乃果「ほらにこちゃんも真姫ちゃんも」

にこ「に、にっこにこ~に」

希「にこちゃんそれで逃げるのは無理があるわよ」

真姫「べ、べつに私は抱きつきたいなんて思って」

凛「安定のツンだにゃ」

レイガ「それで今日はどうしたの? 全員集まって?」

穂乃果「あ、そうだった。実はレイ君に相談があって」

レイガ「相談?」

穂乃果「うん。みんなでライブがしたいの!」

 

このあと、他のスクールアイドルを集めたライブが行われたが、それはまた別のお話で。

 


 

〈レイガサイド〉

ヒルデガルド姫と別れてからしばらく南下すると、目的の遺跡が見えてきた。何かの廃墟のようだ。

そこに降り立つと、廃墟の方向から青い小鳥が一匹飛んできた。おそらく紅玉の配下だろう。

そのまま小鳥の案内に従って中に入ると、

 

レイガ「なんだ・・・これ?」

 

遺跡の中心には大きなリング状の物が立っていた。半分くらいは地中に埋まってるからアーチにも見えるな。

くぐってみるが何も起こらない。リングの周りを調べてみると、

 

レイガ「あ!」

 

毎度おなじみの6つの魔石が側面に埋め込まれていた。魔石にいつも通り魔力を流すと、リングの中央は光り輝く。

 

レイガ「よし」

 

リングをくぐると、僕はその場から転移した。

 

 

 

 

 

目を開くと馴染みのバビロンの光景が広がっていた。にしても

 

レイガ「・・・なんか広くない?」

 

いつもより倍くらいに広く感じる。なんでだろう? とりあえずあたりを見渡すと、大きな白い塔が立っていた。

 

?「ようこそ、バビロンの『塔』、そして我が『城壁』へ」

 

不意にかけられたその声の方へ振り向くと、そこには僕より少し低いくらいの長身の少女が立っていた。はじめ出会った時のシェスカたちと同じ服装に胸元には大きめのリボン。青みがかった短い髪は軽くウェーブがかかっていた。

 

?「私はここの『城壁』を管理する端末、『プレリオラ』でござイます。『リオラ』とオ呼び下さイませ」

レイガ「よろし・・・うん? ここって『城壁』なの? でもさっき『塔』って」

リオラ「現在、ここは『塔』でもアリ、『城壁』でもアるのです。五二七年前に『塔』へと繋がる地上の転送リングが、火山の爆発によって消滅してしまったので。偶然、三七四年前に出会った私たちはドッキングを果たし、『城壁』の転送陣から適合者が来るのをオ待ちしてオりました」

 

リオラはそう言って頭を下げた。なるほどバビロン自体は頑丈でも、転送陣自体は頑丈ではないんだな。でもある意味ラッキーかな。同時に二個増えたから。

 

リオラ「貴方が全属性持ちだとイウことはわかってイます。ですが、『塔』も『城壁』も『適合者』にしか使用許可を与エられませン」

レイガ「一応『庭園』、『工房』、『錬金棟』、『格納庫』の管理人には認めてもらえたけど」

リオラ「四つのバビロンを、ですか。なるほど、ならば問題は無さそうです。『適合者』として認めます」

 

・・・あれ、いつもなら何かしら試練みたいなものがあったはずだけど・・・まあいっか。

 

リオラ「ではこれより機体ナンバー20、個体名『プレリオラ』は、貴方に譲渡されます。よろしくオ願いします、マスター」

 

深々と頭を下げるリオラ。機体ナンバーから考えるとフローラよりお姉さんなんだろう。

 

リオラ「ではマスター。『塔』の管理人のところへ案内イたします。こちらへどウぞ」

 

リオラの進む方向へついていくと、一本の木の木陰に誰かが横たわっていた。いや近づいてみると寝ているようだ。

リオラたちと同じ服装で、身長はリオラよりも低そうである。腰のあたりまで伸びているアメジストのような色の髪は、両肩の前で髪留めによって留められている。

・・・それよりも

 

レイガ「スカート・・・」

リオラ「アア、オ気になさらず、イつものことですので」

レイガ「いや、さすがに」

 

パンツ丸見えだからね!

 

レイガ「とにかく起こしてやって」

リオラ「わかりました。ノエル、起きなさイ。パメラノエル」

 

リオラが肩を揺らすが一向に起きる気配がない。

 

レイガ「この子、いつもこうなの?」

リオラ「はア。我々バビロンの管理人は、博士の人格を一旦様々に切り分けて統合し、その人格を形成してイるのですが、どうもこの子・・・ノエルには、ものぐさな部分が強く出てしまってイるみたイなのです」

 

へーバビロン博士の人格ね~。

 

リオラ「マスター。何か食べ物を手持ちになってオりませンか?」

レイガ「え~っと、あるにはあるけど、どうするの?」

リオラ「この子を起こすのに必要なのでござイます」

 

起こす?よくわからないけど、とりあえず、魔国連邦特製串焼きを何本か取りだし、リオラに渡す。これも懐かしいな。初めてリムルと一緒に食べたっけ・・・久しぶりにゴブイチの串焼き食べたくなったな。

そんなことを思っていると、リオラは串焼きを左手に持ち、右手をパタパタと団扇のようにして匂いをノエルの元へと送る。

すると、ピクッと鼻が動いたと思ったら、首が匂いのする方へと伸びていく。やがて身体をずらしながらリオラの方へズリッ、ズリッと移動を始めた。

でも瞼は閉じたままだ。

 

リオラ「起きなさイ、ノエル。目を覚ましたらこの串焼きをアげましょウ」

 

リオラがそう言うと、カッ! とノエルの両目が開く。そしてバッ! と起き上がると、串焼きに視線をロックした。

 

ノエル「・・・私は空腹を感じてイル。まともな食べ物は四九〇七年ブリ。食べてよイカ?」

レイガ「どうぞ」

 

僕の返事を聞くなりノエルはリオラの手にあった串焼きを奪って、もぐもぐと食べ始めた。

 

ノエル「美味シイ。これは美味」

レイガ「それは良かった」

 

串焼きを食べ終えると彼女は僕に視線を向ける。

 

ノエル「貴方の名前は?」

レイガ「光神玲我。さっき『城壁』の適合者として認められた。『塔』も認めてほしいんだけど」

ノエル「・・・それには『塔』の適合者として相応しい条件がアル。それを満たせば適合者として認メル」

レイガ「その条件とは・・・」

ノエル「お腹いっぱいの食事。暖かい寝床。それさえあればなにも文句はナイ」

 

そう言われ、収納魔法からシュークリームを取り出し手渡す。

 

レイガ「わかった。ちゃんと手配するよ」

ノエル「了解。条件を満たしたと認メル。これより機体ナンバー25、個体名『パメラノエル』は、貴方に譲渡さレル。食事をよろしくお願いしマス、マスター」

 

そう言ってシュークリームを食すノエル。追加で10個出しとこ

 

ノエル「マスターは約束を守ッタ。これも美味」

レイガ「まだまだあるから。あ、あと機体登録するなら僕は妻以外絶対にしないから」

 

僕がそう言うと二人は少し考え、結果二人とも妻になると言われたので、そのまま機体登録のためのキスをしたが、リオラはヤバい。とにかくヤバかった。

 

その後は『塔』と『城壁』の説明を聞いた。『塔』は大気の魔素を魔力に転換させる施設らしい。他の施設をサポートしてくれる。一方『城壁』はその名前の通りバビロンのっ防御システムの中核である。あらゆる攻撃に対するシールドを展開するらしい。

簡単な説明を聞いたあとはテンペスト・レイ公国に向かい発信させた。僕はみんなを迎えるために【コネクト】を開いた。

 

 

 

 

 

リーン「これは・・・すごいわね。私はポーラをここまでにするのに二百年もかかったのに」

 

リーンがそう呟きながら抱えているのはさきほどのバビロンで見かけた小型の自立型ロボットである。このロボット今のところ15体だけだけど、フレームギアの整備もしてくれるから量産を考えたけど、設計図は『蔵』・・・最近求めている物すべて『蔵』のような気が

 

そんな中ポーラはリーンの足元で「負けたッ!」とばかりに床に膝をつき、拳を叩きつけていた。後ろにはラブコフがポーラを慰めていた。

 

リオラ「ではユミナさン、ルーシアさン、八重さン、エルゼさン、リンゼさンがマスターの奥方ですか?」

エルゼ「奥方って・・・まあ、いずれはそういうことになるんだろうけど」

 

リオラはユミナたちと話をしていた。

 

リオラ「他の奥方はどこに?」

八重「・・・他の? ああ、スゥ殿なら、まだベルファストの方で暮らしてるんでござるよ」

リオラ「それでも六人ですね。では残りの三人はまだ・・・」

レイガ「・・・あ」

 

リオラの言葉に僕らは固まった。しまった・・・みんなに言うのを完全に忘れていた。

 

ユミナ「リオラさん。先ほどの残りの三人というのは?」

リオラ「博士から聞イたのですが、マスターは、」

レイガ「・・・終わった」

 

僕は何も言わずその場で正座して逃げるのを諦めた。リーンはにやにやと悪い笑みを、ポーラは僕を慰めてくれる。ありがとポーラ。

結果僕はユミナたちに言うのを忘れていた罪としてこの場の全員にキスをするキス罪?となった。

いいよ、みんなのこと好きだからいいけどさ、八重投げないで、エルゼパンチはほどほどに、回転がかかったからパンチはもう死ぬ一歩手前だよ。

これですべて丸く収まった、はずはなく、この景色を影から見ていた小波が妻全員に伝え、その夜は全員にもキス罪をすることとなった。次の日は眠かった。




μ'sのメンバーを出しました。話し方が合ってるか不安です。


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刺客

今回はレイガ隊の一部を乗せました。


〈レイガ隊の秘密〉

レイガ隊はある星で作られた組織で当初は五十人しかいなかったが、今では千人を超えるほどの勢力となっている。惑星レイガでは全員がその存在を知っている。しかし一部の人間しか知らない部隊が三つある。

一つは暗殺部隊である『(ゼロ)隊』。主にレイガに対する敵対勢力の暗殺を目的としている。

もう一つは情報部隊である『対魔隊』。零《ゼロ》隊と同じで敵対勢力の情報集めを目的としている。

最後はその複合でもある『(シャドウ)隊』。零《ゼロ》隊と対魔隊のサポートを行っている。

以上の三つを知るのはレイガとその妻、リムルとリムルリムル十二守護王だけである。

もう一つの特徴はその三つともメンバーがほとんど女性であり、レイガの妻である。

 

構成メンバー

零《ゼロ》隊

・アカメ、クロメ、レオーネ、シェーレ、チェルシー、セリュー、ナジェンダ(隊長)、スサノオ、ブラート

対魔隊

・アサギ、さくら、紫、イングリッド、アスカ、ゆきかぜ、凛子、不知火

(シャドウ)

・アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン、ゼータ、イータ

彼女らのお話はまたどこかで

 


 

〈レイガサイド〉

バビロンも前回でようやく六つ揃った。『城壁』で働いていた十五体のミニロボのうち、十体は『格納庫』でロゼッタとモニカの手伝いをしてもらうことにした。

リオラとノエルのの服装はピンストライプのジャンパースカート、ジャージに決まった。ザナックさんのレパートリーも増えたね。

そういえばそろそろ冒険者ギルド支店が完成すると報告があったので、今日は視察しに出かけることにした。

ギルドの外観はすでに出来上がっており、細かい装飾や内装の作業に入っていた。結構立派な建物だな。あとでリムルに写真でも送ろうかな。

 

レイガ「あれ?」

 

ふと、作業現場を見ている桜の姿を見つけた。傍らには珊瑚と黒曜、ユエがいた。

 

黒曜『あら~、主だわぁ』

桜「・・・王様」

 

桜は未だ記憶が戻っていない。だけどそのままにするのは嫌だったので、彼女には自由に過ごしてもらっている。

 

レイガ「こんなところでなにしてるの?」

黒曜『さっきまで「銀月」で食事をして、帰ろうとしたらこの子が急に立ち止まっちゃったのよう』

 

僕の質問に黒曜が答えてくれる。

 

レイガ「食事ってお金は?」

『主のツケでいいって店長が』

 

・・・まじっすか。

 

レイガ「それで桜は何をしてたの?」

桜「あれ・・・」

 

桜が指差す方向には楽しそうに材木を運ぶオウガ族のザムザがいた。

 

レイガ「? 彼がどうしたの?」

桜「彼は魔族・・・。なのに誰も気にしてない。珍しい」

 

・・・珍しい? あー、魔族と人間の偏見のことかな。う~んでも僕にとっては普通だしな。

 

ユエ「・・・レイガの故郷じゃ、そんな差別はしない。魔族だからって警戒もしない」

レイガ「ユエの言う通り。僕の故郷じゃあ魔族も人間も一緒に暮らしているからね。僕もそんな国にしたかったんだ」

桜「・・・この国は変わっている。王様からして変わっているけれど。でも、とてもいい国。国のみんなが助け合って生きている」

レイガ「ありがとう」

 

そう言われとても嬉しかった。

そのあとは三人と一匹いや二匹?で街を見て回った。途中野菜畑によって野菜も少し貰った。

ある程度見て回り、城に帰ろうとした時、

 

『主』

レイガ「わかってる」

ユエ「・・・うん」

 

妙な気配を感じた。周りには僕と桜、ユエに珊瑚と黒曜しかいないはずなのに。

 

レイガ「ユエ」

ユエ「うん」

 

ユエに合図を送った瞬間、近くの木の上から放たれた矢が僕らを襲った。

 

桜「ッ⁉」

ユエ「・・・絶界」

 

驚きに息を呑む桜をよそに、矢はユエの魔法『絶界』によって阻まれ弾かれる。矢が放たれた木の上を見ると、仮面を被った黒ずくめの者がいた。

 

レイガ「あのさ、下の人もいい加減出て来いよ」

 

僕は木の上を見ながら、土の中にいる奴らに告げる。

すると、土の中から同じ仮面を被った黒装束の男たちが三人現れた。手には短刀を持っていたが、何やら刃には何かが塗られている。おそらく毒だろう。わかりやすい。

 

黒装束の男「・・・巨人兵はどこだ」

レイガ「巨人兵? ああ、フレームギアのことか?」

黒装束の男「質問に答えろ」

レイガ「なんで答えないといけないんだ? それよりお前らどこの国から来た?」

 

目の前の三人に尋ねるが、答えはない。じゃあ敵ってことでいいな。

 

ドライバー音『【グラビティ】』

黒装束の男達「「「ぐふうっ⁉」」」

 

【グラビティ】で目の前の三人を這いつくばらせる。するとその光景を見た木の上の四人目が逃走を図ろうとした。

 

レイガ「いや逃がすかよ」

黒装束の男「ぐがっ⁉」

 

四人目が地面に降りた瞬間にギアトリンガーを撃ち込む。運悪く後頭部を強打した。

あっちはいいとして、まずは地面にはいつくばる三人に目を向け、仮面を剥がそうと近づく。

 

桜「ダメッ!」

 

いきなり桜に腕を引かれるのと同時に未来が見えた。まじか! すぐに後ろに飛ぶ。

次の瞬間、四人の仮面が爆発した。

 

レイガ「まさかこうなるとは」

 

四人は自爆した。自爆でいいのか、誰かが遠隔で爆発したか。

それにしても、まるで使い捨ての道具みたいにしやがって、どこの国か知らんが、売られた喧嘩は買うぞ。

 

 

 

 

 

二コラ「三人の死体から身元がわかるようなものは何も見つかりませんでした」

 

会議室で副団長の二コラさんが報告する。あのあと僕らはすぐに城に戻り、緊急会議を行った。

 

馬場「んで? 小僧に心当たりはねえのか?」

レイガ「ないと思います。でもあいつらフレームギアが狙いなのは間違いありません」

馬場「それじゃ全部の国が疑わしくなっちまうわなあ」

 

馬場さんが腕を組んでふむう、と椅子にもたれた。

 

グレイフィア「しかし、西方同盟の国ではないと思います。彼らがそれほど愚かなことをするとは思えません」

 

グレイフィアの言う通り。反乱ならともかく、みんながそんなことをするとは思えない。それにあいつらフレームギアのことを『巨人兵』って言ってた。名称を知らない可能性が高い。

 

椿「ひとつ、気になるのですが。陛下は刺客が仮面を付けていたと仰られましたが・・・」

レイガ「確かに仮面は被っていたけど、それがどうかしたの?」

椿「その仮面からなにかわからないか、と・・・」

 

と言われたので、僕は仮面を取り出してみんなに見せる。

 

馬場「! 小僧その仮面どうした⁉」

レイガ「ん、仮面だけ時を戻したんです。ちゃんと仮面の爆破魔法は取り除いたから大丈夫ですよ」

 

あの爆破後、僕は仮面だけ時を戻した。まあ実際シャイニングの力は僕は本当に助けたいって思いがないと発動しないからな。無機物はこのルールに当てはまらない。

 

小波「ご主人様」

レイガ「ん、小波。どうしたの?」

小波「その仮面に見覚えが・・・確かユーロンという国の諜報員『クラウ』のものかと」

レイガ「ユーロン?」

椿「天帝国ユーロン。イーシェンの西に存在する国家です。天帝が治める国で、海を渡り、イーシェンに何度か攻め込んできたこともあります」

 

ユーロンか・・・今のところ警備を強化するとして、ユミナたちにも護衛をつけよう。あーいうやつらは僕はダメだと気づいたら僕の身近な人物を狙うからな。まあもしユミナたちに傷でもつけたら・・・まじで消そう ユーロンごと。

それにしてもなんで桜はあの時爆破するとわかったんだろう? 

 

 

 

 

 

あれから数日が経ち、ユミナたちにはそれぞれ僕の妻が護衛することになった。

エルゼ→ヨル

リンゼ→アイリーン

八重→カナエ

ユミナ→リリス

ルー→グレイフィア

スゥ→ウルティマ

ということになった。これで安全だと思う。それであれから襲撃がなく平和に過ごしていた・・・・はずだった。

 

ドット「てめぇ 今なんつった!」

ランス「うるさいと言ったんだ」

 

現在訓練場で二人の男が喧嘩していた。片方は逆立つ赤髪にヘアバンド、左頬に1本アザがある男『ドット・バレット』。もう片方は水色がかった銀髪で右頬に2本のアザがある男『ランス・クラウン』である。二人もレイガ隊の一員なのだが、なぜ喧嘩をしているのかは数時間前に遡る。

数時間前

 

レイガ「あ、おかえりレイン」

 

自爆事件から二日後、レインが惑星レイガから戻って来た。

 

レイン「ただいま戻りました」

レイガ「それで向こうはどうだった?」

レイン「はい。いつも通りみんな元気に過ごしていました」

レイガ「そっか~それでリムルは」

レイン「・・・ヴェルドラさんとラミリスさんに振り回されていました」

レイガ「あ~どんまいリムル」

 

そんな近況報告を聞いていると、扉から誰かが入って来た。

 

レイガ「あ! ランスにドット」

レイン「お前らどこに行ってたんだ」

ランス「どっかのバカが城中のメイドに手当たりしだい告白して全敗して燃え尽きたから引っ張って来た」

ドット「・・・」

 

そこには白く燃え尽きたドットと彼の首根っこを掴んで引っ張って来たランスがいた。

 

ドット「・・・どうしてモテないんだ」

ランス「貴様がバカだから」

ドット「あぁッ! てめぇ今なんつった」

ランス「バカと言ったんだ」

レイガ「まーた始まった。あの二人っていつもこうだよね」

レイン「はい」

 

この二人、ランスとドットは超絶仲が悪い。二人の時はいつも喧嘩している。でも二人が協力して戦ったら強いんだよな。コンビネーションが抜群で。

 

ランス「相変わらず貴様といると疲れる。なあ アンナ」

アンナ(ランスの裏声)「だめだよお兄ちゃん。友達にバカって言ったら」

ランス「ああ、アンナは優しいな」

ランス以外の三人「「「・・・」」」

 

今の場面を初めて見る人はこいつなにしてるんだ、と思うだろう。そうランスは超がつくほどシスコンなのである。いつも妹のアンナの写真入りのペンダントを着けている。ここまではいい、ただランスは何かあるといつもペンダントに話しかけている。しかも裏声で。もう恐怖のなにものでもない。

 

ランス「さて、今回は妹のアンナに免じて貴様のバカを取り消そう」

ドット「いや、やっぱ怖えよ! お前のシスコン度が!」

 

となにやら解決したように見えたが、数分後にはまた喧嘩になって現在に戻る。

 

ドット「【エクスプロム!】」

ランス「【グラビオル!】」

 

訓練場は今二人の喧嘩でめちゃくちゃになっている。止めようと思ったけど、二人の実力を見せるのもいいかな、と思い騎士団のみんなも集めて見学している。

 

裕斗「今回はどっちが勝つと思います?」

アビス「魔力ならランスに分があるでしょう」

錆兎「ただ威力ならドットだろうな」

 

裕斗たちも見学している。まあ結局後から来たハクロウに怒られ、しばらく正座&説教をされた二人であった。

 




ご要望からかげじつからシャドウガーデンのメンバーを嫁に追加しました。


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ユーロンへのお返し

今回は長めです。


ランスとドットが来てから二日経った。二人も裕斗たちと同じように騎士団に入団してもらったが、まあ問題は多数あった。例えば、ドットが騎士団の女性全員に告白したり、ランスによる「妹のアンナのすばらしさを知ってもらおう講演会」を開催して全員に引かれたり・・・あの二人問題児じゃん。

まあ二人とも騎士団には馴染んでいるから大丈夫でしょう。

 

そんなある日、訓練場で裕斗達と訓練を終えた後、琥珀から念話が入った。

 

琥珀≪主、城の方に客が来ているのですが・・・≫

レイガ≪客?≫

琥珀≪そのう、主の姉だと申すお方で≫

レイガ≪あ~姉ね・・・え!?≫

 

姉って・・・僕には姉はいない。いや確かにいると言えばいるのかな。妻の中にはお姉ちゃん力が強い人もおるから二人っきりの時はお姉ちゃん呼びを強制されたり、『お姉ちゃんビーム』と呼ばれる絶対不可避の攻撃を喰らったり・・・今は思い出さないでおこう。

 

レイガ≪その人ってどんな人? 金髪? それとも黒髪?≫

琥珀≪いえ、桃色の髪をした、主より五歳ほど歳上に見える・・・ちょ、な、なにを!≫

?≪なになに、琥珀ちゃん何してるのよ。あ、念話してるのよ? 私にも玲我君と話させるのよ。もしもーし、聞こえますかーなのよー≫

 

この声どこかで・・・あ、あーーーー⁉

僕はその声に聞き覚えがあり急いで城に戻った。

 

 

 

 

 

花恋「玲我君の姉のー、光神花恋なのよ」

ユミナ「花恋さんですか」

 

あの後すぐに城に転移したが、時すでに遅く、恋愛神さんはユミナたちに自己紹介していた。

さてこの場合はどうするか、パターン1「姉ではないといって遠ざける」。パターン2「姉と判断して抱き着く」。パターン3「強制的に帰らせる」

パターン3はさすがにかわいそうなので却下。残された選択肢は1か2・・・今回は

 

レイガ「久しぶりお姉ちゃん」

花恋「久しぶりー会えて嬉しいのよ。ぎゅーっなのよー」

 

2を選択して思いっきり抱き着いた。ジャンヌで対策済みさ。お姉ちゃんキャラには先手に抱き着く。

ユミナたちの方を見ると、みんな微笑ましそうな表情でこっちを見ていた。作戦成功。

 

ユミナ「ではお義姉様、私たちはこれで。今日の晩餐は盛大にいたしますので、期待して下さいね」

花恋「あらー、それは楽しみなのよ」

 

みんなの配慮のおかげで、部屋には僕と恋愛神だけが残された。

 

レイガ「それで花恋姉さんはどうして降りて来たの?」

花恋「お姉さんって言ってくれるの?」

レイガ「いいですよ。慣れてますし」

花恋「ありがとうなのよー」

 

さらに抱き着いてくる恋愛神いや花恋姉さん。一旦離れてソファに座る。

 

レイガ「それで結局どうして降りて来たの?」

花恋「んーとね、捕獲なのよ」

レイガ「捕獲?」

花恋「従属神をなのよ」

レイガ「従属神がここに降りた? でもどうして?」

花恋「それがわからないのよ。降りてくる事態は問題は無いのよ。ただ、従属神の力を使ってこの世界に干渉すrのは許されないから、それを心配してるのよ」

レイガ「う~ん、でも神力は感じないけど」

花恋「おそらく変質して存在してるのよ」

レイガ「そうか、それなら探すのに苦労するね」

花恋「そう、だからしばらくここでおせわになるのよ」

レイガ「それなら他の人にも報告しないと」

花恋「ありがとうなのよー」

 

そうして花恋姉さんが住むことになった。その日の晩餐は豪華なディナーになった。

そのあとは花恋姉さんにより恋愛相談会が行われた。ユミナたちの質問にも答えていたが、なんかやら予感がして僕は早めに寝ることにした。

次の日からユミナたちのスキンシップが激しくなった。

 

 

 

 

 

レイガ「ユーロンが戦争を始めた?」

椿「はい。隣国のハノック王国へ宣戦布告し、侵攻を開始しました」

 

椿さんの報告に僕はハクちゃんに頼んで、ユーロン周辺のマップ投影とユーロン軍とハノック軍の検索をお願いする。

 

ハク『表示します』

 

マップが投影され、戦況を見ると、どうやらユーロンが優勢で進んでいるようだ。

 

レイガ「戦争の原因ってなんなの?」

椿「ユーロン側の言い分としては、ハノックの地はもともとユーロンの領土だったと。それを後から来た移住者が図々しくも居座り、勝手に国まで作ったので、それを奪い返えそうとしているだけ・・・そういうことになっています」

レイガ「? そういうことってどういうことですか?」

椿「言ってるだけですから。自分たちは古代文明時代にも栄えていた脈々と続く天帝国ユーロンだと。七千年の歴史があり、その歴史は代々口伝として受け継がれてきたと、そういうことらしいです」

レイガ「へえ~、シェスカ。それって本当の話?」

シェスカ「いいえ。そンな国は聞いたこともありませんね。だいたいあの辺りはフレイズの大襲来で、人が住める場所ではなくなっていましタし」

小波「おそらく資源が目的かと。ハノックはここ数年、新たなオリハルコンやミスリルの鉱脈が発見され、資源を算出して景気が上がっています。その資源目的なのではないかと」

 

結局は侵略目的の戦争か。正直あの事件以来ユーロンは嫌いになっている。かといって僕自身戦争には興味もないからこの戦争に介入するつもりもない。

現在の戦局を見るとユーロンの方が優勢だしな。他の国もこの戦争に介入する可能性もないし。このままいくとユーロンが勝つかな。

 

レイガ「そう言えば騎士団の中にハノック出身の人いたよね?」

グレイフィア「はい。一名おられますが」

レイガ「その人呼んで来てもられる?」

グレイフィア「わかりました」

 

いつもの僕なら介入はしないけど、あの事件のお返しを考えてたんだ。ちょうどよかった。

 

 

 

 

 

パオロ「騎士団所属、パオロであります!」

 

呼び出された騎士はその場で跪き、首を垂れた。栗色短髪の青年である。彼はよく裕斗と訓練しているので知っている。動きが俊敏で真面目な性格だと聞いている。

 

レイガ「パオロさん、あなたはハノック王国の出身だそうですが、故郷はどこですか?」

パオロ「は・・・? あ、はい、東都の外れにあるクイント村ですが、それがなにか・・・」

 

マップでクイント村を探す。マズイな。ユーロン軍か迫ってきている。ここを攻めるつもりか。

 

パオロ「あのう・・・いったいなにが・・・?」

 

マップを睨む僕を、不安そうな表情でパオロさんが見てくる。

 

レイガ「まだ情報が伝わっていないみたいだけど・・・ユーロンがハノックに攻め込んでいる」

パオロ「なんですって!」

 

思わず立ち上がるパオロさん。その顔から驚愕と焦燥、不安が見られる。

 

レイガ「ここがクイント村で、この赤い光がユーロン軍。たぶん明日には村へ到着するだろう」

パオロ「そんな・・・」

レイガ「でも村人も抵抗さえされなきゃ、酷いことはしないと思うけど」

パオロ「・・・いえ。おそらく村人は全員、男は殺され、女は慰み者にされて、奴隷にされるでしょう・・・」

レイガ「・・・」

 

そこから詳しく聞くと、ユーロンでは侵攻した際には兵にヨル略奪を許可しているらしい。過去にもザラムという村ではひどい略奪があったとか。しかもユーロンでは厳しい身分制度があって奴隷には所有物を示す刺青があるとか。

 

パオロ「おそらくクイントの村もザラムのように蹂躙されるでしょう・・・。くっ・・陛下! 陛下のお力で、なにとぞ、なにとぞクイントを救っていただけませんでしょうか⁉」

レイガ「いいよ」

パオロ「・・・は?」

 

ぽかんとした顔でパオロさんがこちらを見上げる。

 

レイガ「パオロさんを呼んだのも初めからこの話をするためだったし。村で事情を説明するために一緒に来てくれる? 僕だけだと信じてもらえるかどうかわからないし」

パオロ「は、はい! よろこんで!」

 

喜んで立ち上がるパオロさんからクイントの場所を【ルーマ・ゴルド】で読み取り、【コネクト】を開く。

 

レイガ「あ、シオン。みんなに伝えといてほしいんだけど」

シオン「なんでしょうか、レイガ様」

レイガ「うん。ユーロンを僕の敵と認識する。何人か呼んで来ておいて、今回はまじで殺るから」

 

ユーロン、お前らの国は消すことにした。僕がいっちばん嫌いなタイプの国だから。

 

 

 

 

 

そっからは僕とパオロさんはクイント村へ行き、事情をすべて説明した。最初は皆さん信じてはいなかったが、パオロさんの説得もあって、最終的には信じてくれた。これからどうしようか考えた時、名案を思いついた。それで今その案を実行中である。

 

レグルス皇帝「とんでもないことを言い出したもんだな・・・」

レイガ「あくまで一時的なものですよ。安全が確保されたら破棄しますよ」

 

僕はレグルス皇帝陛下にある紙を見せる。

 

レグルス皇帝「まあ、玲我殿が出てきたのならこの戦争も心配することもないな」

 

別れ際にそう言われ、僕は再びクイント村に戻った。

 

クイント村長「こっ、これっ、これ本当なんですか⁉」

レイガ「本当ですよ。ここにハノック国王のサインがあるでしょう。ちゃんと国印も押してもらったし」

 

クイント村の村長に先ほど皇帝陛下にも見せた紙を見せる。そうこれはハノック国王の証明書である。内容はハノックの一部の土地の所有権をテンペスト・レイ公国に譲渡するものである。その一部がクイント村周辺である。

 

レイガ「さて、かすがは城に戻って高坂さんや騎士団のみんなにこのことを伝えておいて。僕はユーロン兵と遊んでくるから」

かすが「はい」

 

そうして僕はパオロさんを村の守りとして置いて、かすがを城へ、僕はユーロン兵の上空に降り立った。

僕は【コピー】と【テレポート】を併用して兵をすべてユーロンへ送り返した。これで時間を稼げる。ここからが本当の作戦だ。

十日後

 

ユーロン兵「な、なんだこれは⁉」

 

十日かけてハノックに戻って来たユーロン兵が見たのは、国境に巨大な壁がそびえ立っていた。その城壁の上には我がテンペスト・レイ公国の旗が掲げられていた。その横に僕は立っていた。

 

ユーロン兵「どういうことだ、これは⁉」

レイガ『ユーロン軍の諸君、ここまでのご移動お疲れ様。でも、ここからは我がテンペスト・レイの領土。これより先に進むことはまかりならない』

 

混乱しているユーロン軍に証明書を拡大して空中に投影する。

 

ユーロン兵「な、なんだと⁉ こんな・・・こんなことが・・・」

レイガ『言っとくけど、この壁はユーロンとの国境全てに続いているから』

 

そうこの十日間で僕はウィザードのランドやウルトラマンビクトリー、ゴセイジャーのランディック族などの力総動員してこの壁を作ったのだ。

 

「いいえ、あのような壁、壊すなり乗り越えるなりしてしまえ! 全軍突撃!」

 

一人の将軍の号令に、一斉にユーロン軍が壁に向けて進軍してくる。あ~あ、攻めてくるんだ。なんの仕掛けもしないと思わないのかな。

何人かの兵士が壁に到達して登ろうとした時、兵士たちが忽然と地面に吸い込まれるように消えていった。

 

ユーロン兵「なっ⁉」

 

その後も壁に触れた兵士たちは消えていった。この壁には【テレポート】が付与してある。壁に触れた者に発動するようにプログラムされている。矢で僕を攻撃しようとする者もいたが、すべて壁に付与したウィザードのハリケーンの風で吹っ飛ばされる。

 

レイガ『言っとくけど壁に向けて魔法とか放つと、全部君たちの王宮に返されるから注意してね』

 

僕が忠告すると魔法使いたちがゆっくりと杖を下げた。

 

レイガ『これ以上の侵略は我が国に対する侵略行為とみなすから』

 

僕が指を鳴らすと空中から次々とフレームギア・重騎士が降りてくる。操縦者はうちの騎士団である。

 

ユーロン兵「な、ななっ、なっ・・・!」

レイガ『戦う気があるなら、我が国の騎士団が相手になるよ』

ユーロン兵「た、退却っ! 退却ーっ!」

ユーロン兵「に、逃げろっ! 潰されるぞっ!」

ユーロン兵「うわああぁあぁ!」

 

一斉にユーロン軍が退却していく。ここの進路はもう大丈夫だろう。もし仮に海を渡ってきても、そこには海の怪獣たちを呼んでいた。これでどこからも攻めてくることはないだろう。

 

次の日にはユーロンから抗議の手紙が来たが、そんなのは知らん。本格的にユーロンに売られた喧嘩を返そうとした時、予定外のことが起きた。




色々省略させていただきました。


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フレイズの侵攻①

今回は最初にクリスマス回を書きました。


〈クリスマス〉

地球ではクリスマスというイベントがある。サンタと呼ばれる偉人さん? が子供たちにプレゼントを渡すらしい。

 

レイガ「リムルはその人に会ったことあるの?」

リムル「ん、あるよ」

 

ある部屋で僕はソファに座りながら、僕の膝に置いてあるスライムのリムルに話しかける。

 

レイガ「すごいな、サンタさんって。一度は会ってみたいな」

リムル「良い子のところには来るから、レイガの元にも来ると思うよ」

レイガ「そっか」

 

そんな他愛無い話をしている。

 

レイガ「それじゃそろそろ行く?」

リムル「そうだな」

 

そう言って、リムルはスライムから人の姿に変わる。

 

リムル「そんじゃサンタの代わりにプレゼント渡しに行きますか」

レイガ「うん」

 

僕らは大きな白い袋を持ち、外に出る。

 

リムル「行くぞランガ」

ランガ「ハッ! 我が主」

レイガ「こっちも行くよ、フェンリル」

フェンリル「がう」

 

僕らはそれぞれのソリに乗り、プレゼントを配りに行く。

 

レイガ、リムル「「メリークリスマス」」

 


 

〈レイガサイド〉

それは僕がユーロンにお返しを考えていた時だった。

 

パオロ「陛下!」

 

いきなり扉が開いてパオロさんが室内に飛び込んできた。

 

高坂「騒がしい。どうしたというのだ」

パオロ「あ、す、すみませんっ! ユーロン側でおかしな煙がいくつも立ち昇っているんです。ユーロン軍が攻めてきたのではないでしょうか⁉」

 

なに? 僕らは急いで城壁の上に出る。するとユーロン側を見るといくつもの煙が立ち昇っている。あっちこっちに散らばって、遠くだったり手前だったり。

 

レイガ「なにかの狼煙? それとも山火事・・・なわけないよね」

パオロ「あれ・・・何ですかね? なんかキラキラしたものがたくさん見える・・・」

 

キラキラしたもの? パオロさんが指し示す方へ目を凝らす。確かになにかがキラキラ光っているような・・・!あれって

 

レイガ「全員今すぐフレームギアに搭乗! 戦闘準備! 攻撃に備えろ!」

 

気付いた瞬間、僕は叫び、キラキラする場所まで一気に飛んでいく。

 

レイガ「嘘だろ、このタイミングでかよ」

 

眼下にはまっすぐ城壁の方へ突き進んでいるフレイズの大群がひしめいていた。小型のやつから中型、巨大なやつも十体以上いて、形も多種多様。

速度は速くないが、数が多すぎる。百体近くいるぞ。

 

レイガ「片っ端から倒すしかないか」

 

僕は白い銃『マグナムシューター40X』とギアトリンガーを左右に持ち、フレイズの核を撃ちぬいていく。

半分ぐらい倒した時に、背後からレインさんの白騎士(シャインカウント)と二コラさんの重騎士(シュバリエ)、それに重騎士たちがやって来た。中にはアビスと裕斗もいた。

 

レイガ「大型のやつは率先して倒して! 僕と裕斗、アビスは小さいのを叩く! 再生能力を持っているが、身体の中にある核を砕けば倒せる! みんなにも通信でそう伝えて!」

全員『わかりました!』

レイガ「行くよ裕斗、アビス」

裕斗、アビス「「はい」」

 

手近なフレイズたいの群れに突っ込む。裕斗は自身の能力で剣を創造し核を斬り裂き、アビスも自身の加速魔法で俊敏に動き核を斬り裂いてく。僕は二人の援護をしつつ周りをサポートする。

 

レイガ「これで・・・ラストォッ!」

 

数十分に及び戦闘が終わり、ようやくすべてのフレイズを倒すことができた。レインさんたちの方は最初こそ苦戦していたが、レインさんと二コラさんを先頭に、全員が二、三人のグループで戦い、中級種も倒すことができるようになった。

核を砕き損ねているかもしれないので、警戒は解かず、その場で待機する。

しばらく待つが、なんの反応もないので、打ち止めのようだ。

こちらの被害はあまりないと言いたいが、武器の方が剣が折られたり、盾が砕かれたりと、これロゼッタとモニカ泣くな。

 

レイン「陛下。一体この魔物はなんなのですか?」

 

白騎士のハッチが開いてレインさんが顔を出す。

 

レイガ「こいつらは『フレイズ』。かつて古代王国を滅ぼした異界からの侵略者だよ。もともとフレームギアはこいつらと戦うために作られたんだ」

 

それにしてもレスティアの時よりも比較にならない数だったな。

 

レイン「さっきの煙はこいつらがユーロンの村を襲っていたのでしょうか?」

レイガ「多分そうだろう・・・ってマズイな。全員退却してくれ。完全に領土侵犯だ。あっちから何を言われるかわかったもんじゃない」

 

あっちから何を言われるか、村を襲ったのはテンペスト・レイだと言われるかもしれない。とりあえず、大量のフレイズを半分だけ回収して、携帯を取り出す。

 

レイガ「いったいどこまで被害出してんだよ」

 

マップでユーロン全体を見れるようにする。

 

ハク『パパ、悪い知らせがあります』

レイガ「・・・聞きたくないけど、内容は?」

ハク『フレイズの反応を確認しました。その数一万三一六九体です』

 

・・・嘘だろ。さっきの百倍以上かよ。

 

レイガ「くそっ!・・・どうすれば・・・!」

?「ああ、やっぱり玲我だったのか」

 

背後から聞き覚えのある声をかけられて振り向くと、そこには白髪の少年が立っていた。

 

レイガ「エンデ!」

エンデ「たくさんのフレイズの『音』が消えたからさ。ちょっと気になって来てみたんだけど。そっか、玲我が倒したんだね」

 

そう言ってこちらに歩いてくるエンデ。そして僕の後方に立つ白騎士を珍しそうに見上げる。

 

エンデ「すごいね、これ。玲我が作ったの? ちょっと乗せてもらえないかなぁ」

レイガ「いや、それは僕が作ったわけじゃないけど・・・乗せる代わりに一つ聞きたいことがあるんだけど」

エンデ「なに?」

レイガ「結界綻びてるの?」

エンデ「おそらくね。偶然結界が緩んだところに大量のフレイズが落ちた感じだから。まだ結界が破られたわけじゃない」

レイガ「やっぱりか」

 

こんな数のフレイズ、結界が綻びている以外考えられない。

 

レイガ「どうにかしてあいつらを一か所に集められないかな」

エンデ「ああ、それならいいものがあるよ」

レイガ「いいもの?」

エンデ「うん、これ」

 

そう言い、エンデは細長い薄いガラスを取り出す。

 

レイガ「ガラス?」

エンデ「ただのガラスじゃないよ。これには『王の声』が封印されているんだ」

レイガ「王ってフレイズやエンデたちが探しているあの王?」

エンデ「そう。フレイズの「核」はほんのわずかに「音」を出しているんだ。これは固有ごとに違う音の波で、「王」のkもしれないので核も例外じゃない。まあ「王」はこの音を寄生者の心音に隠しているんだ。それでもし「王」の音が鳴ったら?」

レイガ「・・・そうか。フレイズたちがその音を聞いたら、一斉に音が鳴った場所に向かう」

エンデ「正解」

 

これならフレイズたちを誘導できる。

 

レイガ「ありがとう、エンデ。じゃあこれ」

 

僕は【コネクト】で『格納庫』から赤いボディカラーの豹騎士(エース)を呼び出す。

 

エンデ「え! これくれるの」

レイガ「渡すけど、どっかの国に売るなよ。あとあげるのも盗まれるのもダメだから」

エンデ「売らないし、あげないし、盗ませない。僕の愛機として大切にすると約束するよ」

レイガ「ならいいけど、こいつは高機動用フレームギア、名前は豹騎士《エース》」

 

簡単に操縦の仕方を教えて、実際に運転させる。てか初めてだよね?

 

エンデ「動かしやすいね、これ。気に入ったよ」

レイガ「初めてでこれだけ動けるとか・・・相性良すぎだろう」

 

まあ豹騎士《エース》自体乗りこなせる人もいないから、エンデに渡して正解かも。

 

エンデ「こいつ、武器とかないの?」

レイガ「一応剣はあるけど、何か要望ある?」

エンデ「う~ん、なんでもいいけど小回りが利く武器がいいな」

 

小回りか・・・ならこれかな。

フレイズの欠片を使って、タイムシャドウの武器『シャドウカッター』モデルの二振りの小太刀を作る。ついでに鞘も作り、豹騎士の背中に取り付ける。

 

エンデ「ほい、これでどう」

レイガ「ありがとう、玲我。僕からも」

 

エンデからは「王」の音が封印されたガラス三枚を貰い、使い方を教えてもらう。

 

レイガ「そうだ、エンデ。これも渡しておくよ」

 

僕は収納魔法から戟を模した形状の武器を渡す。

 

エンデ「これって?」

レイガ「お礼だよ。情報料として受け取ってくれ」

エンデ「ありがとう、それじゃ試し乗りのついでにフレイズを退治してくるよ」

 

そう言ってエンデは豹騎士と共に去っていった。さて僕もやるべきことをしないと。

 

 

 

 

 

レイガ「というわけで協力してほしんだけど」

馬場「・・・なんつーか・・・話がでかすぎるぜ」

 

城へ戻ってみんなに説明したが、全員が呆然としていた。

 

レイガ「信じられないのもわかるけど」

高坂「いえ、おそらく真実なのでしょう。異界からの魔物、このままではいずれ古代王国滅亡と同じ悲劇が繰り返されることも」

 

高坂さんだけはあっさりと信じてくれた。

 

高坂「とりあえず、まずは今も行われているユーロンでの殺戮をどうするかです。陛下としてはユーロンの国民たちを救いたい、と?」

レイガ「うん」

高坂「私は反対です」

 

きっぱりと高坂さんが言い切った。

 

高坂「自国が襲われたのなら戦いましょう。しかし、友好国でもない、どちらかといえば敵対国、そこに乗り込んでいって命をかけてまで戦う必要があるのでしょうか? 陛下のお優しいお心は素晴らしいと思います。しかし・・・」

レイガ「僕は別に優しくないよ」

全員『え⁉』

レイガ「ただ僕は助けたいと思って行動しているから、優しい心を持つ人はその後もユーロンを支援をすると思うけど、僕はそんなことしないよ」

高坂「ではなぜ?」

レイガ「う~ん 強いて言えば僕のエゴかな」

馬場「エゴ?」

レイガ「うん、僕はただ目の前で助けられる命を救うだけ。その後なんてその人の勝手だし、僕がその後も関わると束縛しているみたいだし。だから僕は勝手に助けて、勝手に帰るだけ。僕って身勝手でしょ」

 

笑いながら説明する。実際だれかを助けるって聞こえはいいけど、実際自己満足がほとんどだ。だからこそ僕は僕自身を優しい神だとは思わない。

 

全員『・・・』

 

ありゃみんな黙っちゃった。まあ王様がこんなこというとは思わないよね。

 

高坂「わかりました。しかし事にのぞむに至って、我が国だけで行動するのは望ましくないと思います。西方同盟の君主にも事情を話し、我が国がこの事変に介入することを宣言したほうがよいでしょう」

レイガ「いいの?」

高坂「ここに来るときに覚悟は決めましたから」

 

そうして僕たちは緊急会議を始める準備を行った。




ハイスクールdxdからフェンリルを出しました。娘二人も出したい。


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フレイズの侵攻②

今年初の投稿。遅れてしまいごめんなさい。
会話の中で国王たちの会話を国の名前で固定しました。


〈新年〉

 

レイガ「新年」

リムル「あけまして」

レイガ・リムル「「おめでとう」」

みんな『おめでとうございます』

 

新しい年となった一日目、僕とリムルはジュラ・テンペスト連邦国で新年を祝っていた。今は街の中央でみんなに新年の挨拶をしていた。

 

ミリム「リムル~レイガ~あけましておめでとうなのだ~」

レイガ「ミリムーおめでとう」

 

城に戻ると僕の妻で魔王のミリム・ナーヴァが着物を着て抱き着いて来た。

 

ミリム「今年もよろしくなのだ~」

レイガ「こっちこそよろしくね」

リムル「相変わらずラブラブだな~」

 

リムルがニヤニヤ顔で見てくる。

 

リムル「ほら、みんな待ってるから早く行ってやれよ」

レイガ「わかったからそのニヤニヤ顔やめてよ」

 

ミリムを連れて僕は妻たちが待っている部屋に向かった。今年もよろしくお願いします。

 

〈レイガサイド〉

 

ベルファスト「なるほど。フレイズ、か。そんな魔物が相手では玲我殿がフレームギアを作ったのも頷ける」

 

ギッ、とベルファスト国王が椅子にもたれる。この場には西方同盟の君主たち。ベルファスト国王、レグルス皇帝、リーフリース皇王、ミスミド国王、ラミッシュ教皇、リーリエ新国王の六人。六国の代表者がおられる。

とりあえずみんなにはフレイズについて説明し、フレームギアを作った理由を話した。

 

リーリエ「その、フレイズってやつですか? そんなに手強いんですかね?」

ミスミド「実はうちの国にも出現している。一体だけだがな。魔法が通じず、とても硬く、おまけに再生能力まで持っていたそうだ」

 

リーリエ新国王の質問にミスミドの獣王が答える。

 

リーフリース「そんなのが一万もユーロンに出現したのか・・・。玲我殿、これは一時的なものか? それともこれからこういったことが続くのか?」

レイガ「今回の場合はかなり稀なケースですから、これから数は少なくてもちらほらと現れるかもしれません。何かの拍子に、また今回のような大襲来がある可能性もあります」

リーフリース「そうか」

レイガ「正直、皆さんの国にも出現することがあるかもしれません。それを踏まえt上でこれを見てください」

 

会議室の壁に映像が浮かぶ。先ほどバガミールとタコカンドロイドが協力して撮影した動画である。

そこにはフレイズの大群が村を襲い、無慈悲に人々を惨殺していく映像が流れていく。一切の容赦がなく、作業のように、逃げ惑う人々を殺していく殺戮者の姿があった。みなさん額に汗を浮かべながら、それでも映像から目を離すことなくフレイズたちを凝視していた。

 

レグルス「これが、フレイズ・・・」

レイガ「これは一時間前の出来事です。フレイズたちはこの村を滅ぼすと、次の村を目指して進軍を開始しました」

 

この映像を見た瞬間すぐにでも助けようと思ったが、今は力の温存をするべきだと言われてアイリーンに止められた。

この映像を見せた理由は危機感を持ってほしいというのもあるけど、想像してほしかった。もし、これが自分の国で起きたらどう思うか、と。

 

リーフリース「ユーロンの首都、シェンハイはどうなっている?」

 

リーフリース皇王の質問を受けて、映像をマップ表示に切り替える。小さな赤い光がフレイズである。おそらく人間の住む村や町に向かっている。

すでにシェンハイは赤く染まりつつある。

 

レイガ「なんとか抵抗しているみたいですが、陥落するのは時間の問題でしょうね。フレイズの目的は人間を殺すことです。この都中の人間を一人残らず皆殺しにするまでここから動くことないでしょう」

ラミッシュ「なんてこと・・・」

 

ラミッシュ教皇が口を押さえて慄く。

 

ベルファスト「玲我殿、そこの・・・シェンハイの右下の方・・・そこらのフレイズが少しずつ消えていっているみたいですが・・・?」

 

そう言われマップを見ると次々に赤い光が消えていっている。

 

レイガ「あー、実は協力者がいまして、その者にフレームギアを提供しました。おそらくその者が戦っているのだとお思います」

ベルファスト「なるほど。フレームギアは充分対抗手段になり得るということか」

レイガ「はい。テンペスト・レイはフレームギアをもってこれよりフレイズの殲滅戦を行います。つきましては西方同盟各国には、これを承認していただきたい」

ミスミド「ちょ、待て! あれを全部相手にするってのか⁉」

 

獣王陛下が驚くのも無理はない。

 

「一応、フレームギアのコックピットには緊急脱出のための転移魔法を用意しておきます。機体が大破された場合、搭乗者が特定の場所へと転移されるようになっています。今はまだコックピットを潰された場合や即死だった場合の対策はできていませんが・・・」

 

機体数に問題は無いが、安全面をもう少しだけ工夫したい。

 

ラミッシュ「玲我殿、ひとつ質問が。このフレイズという魔物は『あの方』にとって敵でしょうか?」

レイガ「・・・敵かどうかはわかりません。知らないとも言っていましたし、干渉することはないとでしょう。あっちの方は干渉する気満々ですけど」

リーフリース「なんの話だ?」

 

僕らの会話が理解できないリーフリース皇王が首を傾げる。まさか神の話をしているとは思わないだろうな。

 

ラミッシュ「わかりました。我がラミッシュ教国もテンペスト・レイ公国と共に戦いましょう。幸い、玲我殿に貸していただいた魔法道具『フレームユニット』で、聖騎士団の何名かはそのフレームギアを乗りこなせると思います」

レイガ「・・・え?」

ミスミド「おっと、そういうことならミスミドも力を貸すぞ。こんな面白いこと放っておけるかよ」

ベルファスト「ベルファスト王国ももちろん参加する」

レグルス「レグルスも同じく」

リーフリース「リーフリースもだ」

リーリエ「り、リーリエも、です!」

レイガ「・・・いいんですか、皆さん。相手は危険な相手ですよ」

 

僕が注意すると「お前が言うな」と口を揃えて返された。

 

ベルファスト「理由はいくつかある。まず、これだけの打撃を受けたのでは、おそらくユーロンは元のような勢力を保てず、諸外国に頼ることになるだろうということ。恩を売っておくにこしたことはない。次に、フレイズとの闘いを自国の騎士団に経験させておきたいということ。いつ自分の国がユーロンと同じ目に合うかわからないからな。最後に、テンペスト・レイ、というか、玲我殿を守るためだなこの国の技術や文化は素晴らしい。万が一こんなことで玲我殿が死にでもしたら、それを学ぶ機会も失われ、国としても大きな損害となりかねん。まあ、そんなところかな」

 

確かにただフレイズを倒すだけならともかく、その後のことはまだ考えていなかった。実際ユーロンには命は狙われてはいるけど、国民には関係ないしな。

 

リーフリース「問題は、事がおさまったあとだな・・・」

レイガ「それって弱ったユーロンを狙って隣国が動くと?」

ミスミド「あり得ない話ではあるまい? しかしこうなると、ハノックとの間にあるテンペスト・レイの領地は、かなり役に立つな」

 

ユーロンの隣国は現在六か国。イーシェンを入れたら七か国にもなる。

 

レイガ「では協力していただけると言う事で、それぞれの国に、指揮官用の黒騎士を2機、重騎士を18機、計20機を貸し出します。搭乗者を選出しておいてください。テンペスト・レイ公国からは90機、西方同盟からは合計120機、前210機で臨みます」

リーフリース「10000対210・・・一機当たり50対近く倒さなくてはならないわけか。これだけだととても勝てそうにないが、なにか策はあるのかね?」

レイガ「はい。現在フレイズには9割が下級種で残りの1割が中級種だと確認されています。フレームギアなら下級種にはそれほど手こずることなく倒せると思います」

リーフリース「1割か。一機で五体倒せばいいところだな。それならなんとかなるか?」

レイガ「実際はわらわらとやってくる下級種を蹴散らしながら、ですから、そう簡単ではないでしょうが。ひとつ作戦があります」

 

作戦の説明をする。エンデから貰った『王』の音を使い、フレイズたちを三方向に分断する。一つのグループがフレイズを壊滅させたら、すぐさま転移魔法で他のグループへ分散して送る。

 

ラミッシュ「ちょっと待ってください。では玲我殿は今回フレームギアに乗らないという事ですか?」

レイガ「はい。僕は戦場を飛び回って、その都度みんなのカバーをして、支援に回ろうと思います。僕なら生身でもなんとかフレイズとも渡り合えますし」

 

ラミッシュ教皇の質問に僕が考えていたことを述べる。

 

ベルファスト「それもなんか釈然としないがな・・・。玲我殿にフレームギアって必要あるのか?」

レイガ「フレームギアの方がサクッと倒せるからあれば楽ですよ。それでは一時間後に迎えに行きます。それまで事情説明と、フレームギアの搭乗者の選出を終えておいてください」

 

【コネクト】を開き、国王たちとお供の騎士たちをそれぞれの国へ送り出す。

僕もやれることをしよう。

 

 

 

 

 

レイガ「ということで今回は攻撃と守備に分けようと思ってるんだ」

 

ある部屋でグレイフィアとアイリーンの三人で秘密の会議を行っている。

 

グレイフィア「玲我様のお考えをお聞きしても」

レイガ「攻撃にはレイン以外の男性陣と桐琴、メレオレオナ、ヨルに葵、あとスカサハに」

アイリーン「ちょっと何人言うつもりなの」

 

候補を挙げていたらアイリーンにほっぺを突かれた。

 

アイリーン「それにそんな多数だと私たちの戦争になっちゃうわよ」

レイガ「・・・確かに」

グレイフィア「それでは選別は私たちの方でしますのでレイガ様はほかのお準備を」

レイガ「それなら後はお願いね。二人とも」

 

そう言って僕は部屋を出て、各所を回った。

バビロンではロゼッタとモニカ、ミニロボたちが最終調整を行っていた。所属国を分かり易くするために肩パーツのカラーも変えてくれた。

武器の方も量産が進んでいる。

宿舎では騎士団たちが戦いの準備をしていた。全員が乗るわけではないが、その者たちもサポートに回り、みんなの手助けをしていた。

暖炉のあるリビングルームではエルゼたちが待っていた。今回の戦いではエルゼと八重の二人だけ加わってもらうことにした。

リンゼとユミナ、ルーは本陣で待機してもらい、けが人が出た時の対応に回ってもらう。

 

ルー「わたくしも戦えますのに・・・」

レイガ「ルーは立場上、レグルスの姫だからさ。レグルス騎士団の人たちが自分の命よりルーの方を優先させると困るんだ」

 

ユミナの場合も同じようなものだ。リンゼの場合は魔法が効かないので今回は光属性の回復に千年してもらうことにした。

 

レイガ「エルゼと八重、そしてレインさん、三人には別々の戦場に配置して、エルゼは珊瑚と黒曜、八重は琥珀、レインさんには紅玉と一緒に乗ってもらって、戦局に何かあれば僕に報告してもらいたい」

 

念話ならどこでも意思疎通ができる。

 

ユミナ「玲我さん、無理はしないで下さいね」

レイガ「大丈夫、みんな無事に戻ってくるよ。そろそろ時間だ、行こうか」

 

これから長い戦いが始まる。




次からは戦闘会、特撮ネタ書きます。


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フレイズの侵攻③

送れてしまい申し訳ございませんj。アンケートを追加したのでお願いします。


〈ある日のレイガ〉

今日は月に一度のブラッシング日。いつもは他の人が代わりにしてくれているが、月に一回は僕が当番である。

 

レイガ「気持ちいい? 黒歌」

黒歌「にゃあ~」

 

主に獣人の子の髪をブラッシングしている。今は僕の嫁である猫又の『黒歌』の番である。

 

白音「姉様、早く変わって下さい」

黒歌「いやにゃあ。あと一時間くらい」

レイガ「はい終了」

黒歌「え~」

レイガ「はいはい続きはまた今度」

 

黒歌は残念ながらも椅子から立ち上がりどこかへ去っていく。

次から次へと何人かをブラッシングする。黒歌の妹『白音』や狐人の親子『八坂』に『九重』。人間だけでなく普通の動物も来ている。

 

ハティ、スコル「「わん」」

 

フェンリルの娘であるパティとスコル。

 

イーブイ「い~ぶい」

 

イーブイを筆頭にブイズたちもやってくる。もちろんランガたちテンペストウルフもやってくる。

いや~楽しいからいいんだけど・・・みんな膝に乗るのは順番にして。何人も乗ると足が痺れる。

 


 

〈レイガサイド〉

みんなを連れて【コネクト】から本陣、元ハノック領土に造った長城前である。

そこにはすでい二五〇機のフレームギアが立ち並んでいる。各国の騎士たちはフレームギアに乗り込み、出撃の時を待っている。本陣の方では各国の王たちが大きな映像版でフレイズの動きを監視していた。映像はコダマスイカアームズとタカカンドロイド、タコカンドロイドたちに任せている。

 

リーフリース「こちらの方でも戦局がわかるのはありがたいな」

ラミッシュ「ええ、どうなっているのかわからないまま、待っているだけではたまりませんからね」

 

リーフリース皇王とラミッシュ教皇が話している横で、僕はバイスたちを呼び出して戦う準備をしていた。

 

レイガ「今日はバイスとデザストにも戦ってもらうね。カゲロウとベイル、ユーリにラブコフはレインと一緒にここの防衛ね」

バイス「よっしゃーー!」

ベイル「ふん、それでデザストはどこだ?」

レイガ「ああ、戦うときに呼び出せって」

ユーリ「相変わらずだな」

ラブコフ「ラブラブ」

ベイル「まあ、戦いになったら大丈夫だろう」

レイガ「そうだね。じゃあそろそろ行きますか」

 

僕は各国の騎士たちの前に向かう。

 

レイガ「では作戦を伝えます。まず、テンペスト・レイの九〇機を三〇機ずつ三つに分け、ユーロンの首都から離れた三方へと配置します。この戦場をA、B、Cとして分け、Aにはベルファストとレグルス、Bにはミスミドとラミッシュ、Cにリーフリースとリーリエの四〇機ずつを配置、各七〇機で待ち構えてもらいます」

 

空中にユーロンのマップを映し、三方にマークを表示する。

 

レイガ「作戦開始と同時にAに向けてフレイズたちの大移動が始まります。これを引きつけて、A部隊とフレイズたちの戦闘が始まったら、続けて今度はBでフレイズを引き寄せます。さらに同じようにCからも呼び寄せ、なるべく均等に三方向へ分散させます。均等に分かれなかった場合は、僕が対処します。連絡方法は通信チャンネルを使用してください。範囲はそれほど広くないので他の戦場までは届かないので注意してください。もし何かあったら・・・こちらの八重、エルゼ、レインさんの三人に連絡を入れてもらえれば、僕に伝わるようになっています」

 

画面を切り替えて三人の機体を表示する。レインさんは白騎士、八重は黒騎士を紫色に、エルゼの黒騎士も赤色に塗装されている。八重の機体にはフレイズの欠片で作ったシンケンオーの『ダイシンケン』をエルゼの両拳にはこちらもフレイズの欠片で作ったキシリュウオーパキガルーの『ナイトグローブ』を持たせている。レインさんにも八重と同じ剣を持たせている。

 

レイガ「基本的に現場で状況判断し、動いてください。不審な点やおかしな現象が起こったら僕の方へ連絡を。あ、あとすでに一機の赤いフレームギアが戦闘に入っていますが、一応味方です。あと、何名かはフレームギアなしで戦うけど、そこは気にしなくていいですよ。質問は?」

レイン「空を飛ぶフレイズもいると聞いたのですが、それはどのように対処したらよいのですか?」

レイガ「それに関しては僕が迎撃に当たります。やられないように気をつけて下さい。中には矢を撃ち出してくるものもいますので、油断はしないように。機体がやられても搭乗者が無事ならここに転移されるようになっていますが、コクピットを直撃されたらなんにもなりませんから」

 

作戦説明を終え、隊長たちもそれぞれの黒騎士へと乗り込む。A部隊にはレインさん、B部隊には八重、C部隊にはエルゼを配置する。僕も三人に分身して【コネクト】で二人の僕を送り出す。本陣には警護役として数基のフレームギアと、椿さん、馬場さん、山県さん、グレイフィアにアイリーンそしてレイン。カゲロウにベイル、ユーリにラブコフ。

部隊をそれぞれの現場へと【コネクト】で転移させる。

僕もA部隊と共に戦場に向かった。

 

レイガ≪これより作戦を開始する。通達宜しく≫

琥珀≪御意≫

珊瑚≪承知しました≫

黒曜≪了解よ~≫

紅玉≪主、ご武運を≫

 

マップを表示し、フレイズたちの現在地を確認する。懐からエンデからもらったプレパラートを取り出す。

 

レイガA「さていきますか」

 

パキッとプレパラートを砕く。音が鳴らないがマップを確認するとフレイズたちの動きが止まり、数秒すると再び動き出し、ユーロン中のフレイズが、こちらへ向かって移動を始めた。

 

レイガA「ハクちゃん。非行型のフレイズは何体?」

ハク『はい。全部で二〇体です』

 

二〇体か。それなら一気に叩くか。

 

レイガA≪紅玉、こちらへ向かっている非行型のフレイズを叩いてくる。地上からは第一陣が十五分後くらいにこっちにやってくるから≫

紅玉≪承知しました。お気をつけて≫

レイガA「それじゃあ露払いといきますか」

 

今回は力を三分割にしたから僕はウルトラマンの力を使うか。僕は右手にサークルアームズを、左手に金色の刀身に赤い柄の武器『ウルトラデュアルソード』を取り出す。

 

トリガーモード!

レイガA「戦闘開始だ」

 

 

 

 

 

レイガA「よっと!」

 

向かってくるフレイズを斬り裂いていく。サークルアームズを上に投げ、デュアルソード専用のGUTSハイパーキー『ウルトラデュアルキー』を取り出し起動する。

 

デュアル スタンバイ! レディ!

 

キーを剣にセットし、一枚のカード『ウルトラディメンションカード』を取り出す。

 

レイガA「今回はこれで」

 

そのカードにはウルトラマントリガーマルチタイプが描かれている。カードを剣の中央のカードリーダー部位に読み込ませる。

 

トリガーマルチ!

 

続いてデュアルソードを上に投げ、サークルアームズを受け止め、マルチタイプキーを起動し、セットする。

 

ウルトラマントリガー マルチタイプ! マキシマム! ブートアップ! マルチ!

 

サークルアームズを右手に構え、落ちてくるデュアルソードを左手で受け止めトリガーを引く。

 

ゼペリオン! ソードフィニッシュ!

デュアル! ゼペリオンブレイク!

レイガA「ツインゼペリオンスラッシュ!」

 

二本の刀身に纏ったゼペリオンエネルギーを斬撃にして飛ばす。

残りはフレイズは核ごと綺麗に斬り裂かれ、次々と地面に落下していった。

 

レイガA「そろそろA地点で戦闘が始まるな。サポートお願いね。アルファ」

アルファ「ええ任せて」

レイガA「あとデルタもあんまり暴れないでね」

デルタ「はいです! ボス」

 

僕はいつの間にか隣にいた金髪のエルフ女性『アルファ』、黒髪ロングの狼獣人女性『デルタ』。今回の選別で選ばれたメンバーの二人である。

 

レイガA「僕、そろそろそっちに呼び寄せて」

レイガB「OK、僕」

 

 

 

 

 

〈Bサイド〉

レイガB≪これからここへフレイズを呼び寄せる。各自散開、戦闘に備えよ≫

琥珀≪御意≫

 

琥珀に念話を送る。

 

レイガB「飛行型は全部倒したから残りは陸だけ、行こうか。バイス、デザスト」

 

僕は懐から一冊のWRBを取り出す。それは今までのWRBとは違って禍々しい形をしていた。その本を開く。

 

デザスト

 

すると、本のエフェクトが現れ開かれると、無数の紙切れが舞い、一つの形に纏まる。そこには骸骨の顔に、赤いマフラーを着けた怪物、メギド『デザスト』が顕現した。

 

デザスト「匂うなぁ・・・。世界と剣が擦れ合う、最低で最高に楽しそうな匂いだ・・・!」

レイガB「久しぶり、デザスト」

デザスト「・・・なんだか楽しそうな雰囲気だな」

レイガB「まあね」

デザスト「それにバカもいるのか」

バイス「(# ゚Д゚)喧嘩売ってんのか」

レイガB「はいはい。会って早々喧嘩はしないで、するならあれを倒した数で競ってね」

 

フレイズがいる方向を指差すと、デザストが笑みを浮かべる。

 

デザスト「いいねぇ~。楽しめそうな、獲物だな」

バイス「ふん、俺っちが全部倒すからお前はそこで指くわえて見てろよ」

レイガB「はいはい。喧嘩はそこまで。あとデザストは見た目が怖いからライダーになってね。ほらこれ」

デザスト「あいよ」

 

僕はあるベルトを取り出し腰に巻く。バイスもリバイスドライバーを巻き、デザストは剣を受け取り、オレンジ色の聖剣そードライバーに似たベルトを巻き、剣をベルトに納める。

 

『DESIRE DRIVER』

『リバイスドライバー』

無銘剣虚無

 

僕は狐の柄が描かれたコア。『コアID』をドライバーの中央『パーフェクターコア』に差し込む。バイスは黒いローラー『ローニングバイスタンプ』のトリガーを押し、デザストはWRB『エターナルフェニックスWRB』を開く。

 

『♪ ENTRY』

俺っち! スイッチ! ワンパンチ!

エターナルフェニックス! かつてから伝わる不死鳥の伝説が今、現実となる・・・

 

続いて僕は見た目がリボルバーの物を取り出し、デザイアドライバーの右スロット『ホップアップアセンブル』に差し込む。バイスは×を描くようにローラーを滑らせベルトに押印し、スロットにセットする。すると、後ろの変身チャット画面が真っ黒に塗りつぶされる。デザストはWRBを閉じ、ベルトに差す。

 

『SET!』

♪ Come on バ! バ! バ! バイス! Roling! バイ! バイ! バイ! バイス!

『♪♪』

 

僕はリボルバーを回し、トリガーを引く。バイスはバイスタンプを倒し、デザストは剣を抜刀する。

 

レイガB、バイス、デザスト「「「変身!」」」

『♪ MAGNUM! Ready Fight!』

バイスアップ! ガッツリ! ノットリ! クロヌリ! 仮面ライダーリバイス! バイス! バイス! バイス!

抜刀!・・・エターナルフェニックス! 虚無! 漆黒の剣が無に帰す・・・!

 

白いキツネがモチーフの仮面ライダーギーツ。外見が仮面ライダーリバイに似ており真っ黒なボディカラーに刺々しい左半身、仮面ライダージャックリバイス、黒とオレンジを主体に幻獣フェニックスをモチーフとした、仮面ライダーファルシオン。三人の仮面ライダーに変身する。

 

バイス「うっひょ~ 暴れちゃうぜ!」

デザスト「さあ・・・楽しませてくれよな」

レイガB「それじゃあ、いくよ」

 

僕はプレパラートを砕く。

A地点へ向かっていたフレイズの内、B地点に近い群れから分岐し、全体の半分がこちらへ向かってくる。

僕は八重が乗る機体の肩に立つ。

 

レイガB「あと数分すると、ここへフレイズの一群がやってくるよ」

八重「わかったでござる」

 

僕は肩から降り隣の女性に話しかける。

 

リリス「リリスも準備はいい?」

リリス「ええ、いいわよ。レイガもあまり無茶はしないでね」

レイガB「わかってるよ」

 

赤毛のロングヘアに右片方のみをお下げというヘアスタイルで、ベレー帽を着用している女性、『浅見リリス』。彼女は僕の嫁であり、一応魔王の娘である。

 

リリス「『色欲(ルクスリア)』の書庫(アーカイブ)に接続! テーマを実行します」

 

掛け声と共にリリスの服装が変わり、所持している本が銃へと変わった。

 

レイガB「あれリリムは?」

リリス「あの子は今日、ミュウちゃんたちと一緒に遠足に行ったわ」

レイガB「・・・平和だね」

リリス「そうね」

 

そんな微笑ましい話をしていると、遠くから大きい音が近づいてくる。

 

レイガB「それじゃ・・・さあ、ここからがハイライトだ」

バイス「よっしゃ行くぜ!」

デザスト「んじゃ行くか」




トリニティセブンからリリス。ハイスクールDxDから黒歌、白音にパティ、スコル。かげじつからアルファとデルタを出しました。


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フレイズの侵攻④

今回はオリジナルキャラを出しました。名前は安直ですが、よろしくお願いします


〈Cサイド〉

 

レイガC「B地点の方もうまくいってるようだね」

 

C地点の僕はエルゼの機体の肩に乗っている。隣には水晶のパイプレンチを持ったモニカ機、そして二コラ機が並んでいる。

 

レイガC≪A地点ではすでに戦闘開始。B地点でもすぐに開始する。ここへも残りを呼び寄せる≫

珊瑚≪御意≫

黒曜≪了解よ~ん≫

 

珊瑚と黒曜の返事を聞きながら、後ろに振り向く。

 

レイガC「そろそろ来るから準備はいい?」

?「いいでござる」

?「・・・おう」

?「はい!」

?「わかったのじゃ」

 

背後には空中に浮かんでいる四人がいた。語尾にござるをつけた着物を着た青髪男性、『ルサ』またの名を猿神。間を開けて返事をした黒いロングストレッチコートを着た黒髪男性、『ヌイ』またの名を犬神。気合十分に返事をした学生服を着た茶髪男性、『リト』またの名を鳥神。語尾に「じゃ」をつけたセーラー服姿の金髪女性、『二―オ』。彼女はある鬼神の娘であり、レイガの嫁である。

 

レイガC「そんじゃ行くよ」

 

全員がドンブラスターを持ち、それぞれ専用のアバタロウギアをセットする。

 

五人「「「「「アバターチェンジ!」」」」」

いよぉー! どん! どん! どん! どんぶらこー! !』

ドンブラコ! ドンブラコ! ドンブラコ! ドンブラコ!

ウッキウキ! ウッキウキ! ウッキウキ! ウッキウキ!

フクはうち! オニもうち! フクはうち! オニもうち!

『ワンだふる! ワンだふる! ワンだふる! ワンだふる!』

トリッキー! トリッキー! トリッキー! トリッキー!

 

 

各々の頭上に扉のエフェクトが浮かび上がり、上に向かってトリガーを引く。扉が開き、それぞれのギアエフェクトが降りてくる。

 

ドンモモタロウ! よっ! 日本一!

サルブラザー! よっ! ムッキムキ!

オニシスター! よっ! オニに金棒!

『イヌブラザー! よっ! ワンだふる!』

キジブラザー! よっ! トリッキー!

 

 

赤き桃の戦士『ドンモモタロウ』。青き両腕ムッキムキのおサルの戦士『サルブラザー』。黄色の鬼戦士『オニシスター』。ピンク色の長身『キジブラザー』。黒き小さな戦士『イヌブラザー』。ここに五人のアバタロウが集結した。

 

レイガC「暴太郎戦隊!」

五人「「「「「ドンブラザーズ!」」」」」

 

ドカーン!

 

名乗りと同時に後ろが爆発する。毎回思うけどこの爆発はどこから?

 

モニカ「おお! かっけーーー」

エルゼ「なんで爆発するのよ」

レイガC「さあ? 僕にもわからない」

ルサ「これに関しては本家に直接問い合わせるのが一番かと」

ヌイ「それ言っちゃダメだろ」

リト「そうですよ。それはメタ発言に該当します」

二―オ「そんなことよりレイガ、このあとデートするのじゃ」

 

と、爆発について雑談していた。

 

レイガC「さてと、それじゃ」

 

僕はプレパラートを割る。B地点へ向かっていた何割かがこちらへ方向転換を始めた。

 

レイガC「よし、それじゃあみんな行くよ」

 

こうしてすべての地点で戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

〈A地点〉

 

デルタ「アッハッハッハ 獲物が一匹・・・二匹・・・三匹・・・いっぱい」

 

笑いながらものすごいスピードで次々とフレイズを砕いていくデルタ。いやあのね、デルタ。倒すのはいいけど、後ろのみんなにも残しておいてよね。これじゃあフレイズとの戦闘経験を得られないから。

 

アルファ「デ・ル・タ(# ゚Д゚)」

デルタ「ひゃい!」

 

と、僕が思っているとアルファも同じことを思っていたらしく、デルタのことをものすごい剣幕な顔で見ていた。その怒りのオーラを感じ取ったのかデルタはすぐにしゃがみ込んだ。

 

デルタ「ア・・・アルファ様(´;ω;`)ウゥゥ」

アルファ「あなたこの戦いの意味を覚えてる?」

デルタ「お、覚えているのです」

アルファ「なら教えて」

デルタ「え! えっと~」

アルファ「・・・」

デルタ「(´;ω;`)ウゥゥ」

レイガA「アルファ、そこまでにしとこう。デルタも次からは気をつけようね」

デルタ「ボス(´;ω;`)ウッ…」

 

さすがにこのままだと可哀想なので、話を終わらせようとしたが

 

アルファ「あなたもよ、レイガ」

レイガA「はい?」

アルファ「空を飛ぶ相手を全て倒して、彼らに一匹はやらせるべきよ」

レイガA「・・・はい」

 

僕にもとばっちりが来た。あのね、今戦闘中だから、正座させるのはやめよう。

 

 

 

 

 

〈B地点〉

 

バイス「よいっしょー!」

 

B地点ではジャックリバイスに変身したバイスがフレイズたちを次々とフレイズたちを倒していく。時にはラリアット。時にはドロップキック・・・全部プロレス技じゃん。

 

バイス「おいしょー! へへ、俺っち最強!」

レイガB「バイス~油断していると」

バイス「どわぁ!?」

レイガB「あ」

 

僕が言い終わる前にバイスはフレイズの足に捕まり飛ばされる。飛ばされた場所には

 

デザスト「ふん」

バイス「ぐはぁ!」

 

戦闘中のデザストがいた。しかしデザストは冷静に飛んでくるバイスを蹴って壁にぶつける。

 

バイス「おいーーー!!何普通に蹴ってるんだよ!?」

デザスト「あぁ、敵かと思ってな。まあお前だから蹴ったけど」

バイス「それってわざとだよね。わざとだよな!?」

デザスト「うるさいな。口より手を動かせよ」

 

口喧嘩しつつデザストは向かってくるフレイズを無銘剣虚無と愛刀グラッジデントで斬り裂いている。

 

バイス「わかってるよ」

 

バイスもリバイスドライバーからローリングバイスタンプを外し、フレイズを殴っていく。

 

必殺黙読!

ナックルアップ!

 

デザストは無銘剣虚無を納刀し、トリガーを引く。バイスもローリングバイスタンプのローラー部分を三回回す。

 

・・・抜刀! 不死鳥・・・! 無双斬り・・・!

ローリング! ライダー! パンチ!

 

デザストの斬撃、バイスのパンチがフレイズらを倒していく。

 

レイガB「二人とも倒すのはいいけど、倒しすぎないでね」

 

そんな中僕はリリスと共に八重たちの援護をしていた。

 

RIFLE

 

マグナムシューター40Xの銃口を伸ばし、ハンドガンからライフルに変形する。

 

レイガB「よっと」

 

スコープから覗きフレイズの足を撃ち抜く。

 

レイガB「そっちのほうは大丈夫、リリス?」

リリス「ええ、こっちも大丈夫よ」

 

リリスもスナイパーライフルでフレイズの足を撃ち抜いている。

 

レイガB「しかし数が多いな」

リリス「ええ、でもみんな戦えているわ」

レイガB「うん、このままなら大丈夫だけど」

 

このまま上手くいくかな。

 

 

 

 

 

 

〈C地点〉

 

レイガC「アッハッハッハ祭りだ!祭りだ!!」

 

C地点ではドンモモタロウにチェンジしたレイガCがザングラソードで無双していた。

 

レイガC「お供達行くぞ! アッハッハッハ!」

ルサ「始まったでござるなぁ~。殿様モード」

ヌイ「ああなったらしばらくはあのままだな」

 

力を分割したことにより、ドンモモタロウの殿様感が強くなったため、いつもよりも元気いっぱいなレイガCである。

 

二―オ「いつもの優しいレイガもよいが、荒々しいレイガも我は好みじゃ」

ルサ「こっちもこっちですごい光景でござるな」

ヌイ「ああ、見惚れながら棍棒振り回してるし、あれで何体か地面に叩き潰してるし」

 

横ではオニシスターにチェンジした二―オがレイガを見ながらフルコンボウでフレイズを倒していた。しかもノールックで。

 

レイガC「リト、戦況はどうなってる」

リト「はい! あと数百体が二つに分かれて向かってきます」

 

キジブラザーにチェンジしたリトは空に飛んで、上空から戦況を見ている。

 

ルサ「それでは拙者らはあっちへいくでござるよ」

ヌイ「ああ」

 

ドンブラザーズは二方向から向かってくる片方へ向かう。もう片方はエルゼたちが向かう。

 

 

 

 

 

〈A地点〉

 

アルファからの説教も終わりフレイズを倒すのを再開した。

今のところ死者はいないが、みんな疲れで見え始めている。まあ~疲れていない人もいるけど。

やはり中級種相手には苦戦していたが、なんとか倒せている。

 

レイガA「あともう少しかな・・・あれ?」

 

辺りを見回すと、向こうからものすごい速さで戦場を駆け抜ける赤い機体が見えた。あれはエンデに渡した機体だ。

エンデの方へ向かって飛んで行くと、胸部ハッチを開けてエンデが顔を出した。

 

エンデ「やあ、玲我。そろそろ僕はお暇しようと思うんだけど」

レイガA「そうか。もうちょっと手伝ってくれるとありがたいんだけど」

エンデ「いやいや、ちょっと事情があってね。時間的に無理なんだよ。その代わりに忠告を一つ」

レイガA「忠告?」

エンデ「『上級種』がちょうどここから北西の方にだいたい五分後に出現する。みんなを一旦下げた方がいいよ」

レイガA「『上級種』かわかった・・・はあ⁉ 上級種が」

 

嘘だろ。まさかの予定外が発生した。

 

レイガA「まさかこれだけの数が出現したから結界の綻びが大きくなったのか」

エンデ「多分そう、とにかく気をつけてね」

レイガA「あ、ちょっと⁉」

 

すうっ、と目の前から豹騎士と共にエンデが消えた。

 

レイガA「聞こえた? 僕」

レイガB『ああ、全部聞こえてた』

レイガC『今琥珀に念話を送った』

 

情報が伝わったのか、北西にいたフレームギアが次々と退避していく。その間にも周りのフレイズたちを砕きつつ、マップのフレイズ数を見ると二五一七まで減っていた。

あと少しだっていうのに、すでに三時間近くもみんな戦ってくれてる。今から上級種なんて

と、思っていると不意に大気を震わせるような振動音が鳴り響いた。ビリビリとする空気の震えの中で、目の前の空にひびが入っていく。

 

レイガA「え! まさかの超獣システム⁉」

 

そんなツッコみをよそに空間の一部がパチンと割れて、そこから巨大な鉤爪が現れる。

握り潰すようにパキパキと空を砕き、その奥に見える歪んだ空間から、その巨体がこちらの世界へと姿を現す。

その姿はまるでワニだ。足は六本だし、角は生えてるし、尻尾に突起物もあるし、背中に背びれもあるけど、たぶんワニだ。

今までの下級種、中級種と比較にならないほどの大きさ。

 

レイガA「怪獣と同じ大きさ・・・これは予想外過ぎる」



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上級種

早めに終わらせました。急いで作ったので不備があると思うので、ご了承ください。


〈レイガサイド〉

突如現れたワニ型の上級種。今までのフレイズとは全く違う大きさにプレッシャー。

⁉ 最悪だ。嫌な未来が見えちまった。

 

レイガA≪琥珀! あいつの口の前面にいるみんなを退避させろ!≫

琥珀≪え?≫

 

念話を飛ばしたが、すでに遅く水晶のワニがガパアッと、顎を大きく開く。喉の奥にある場所に光が集まり出し、次第にその強さが増していく。

 

ギーツ「ヤバい!」

 

僕Bが【エクスポート】で前面にいるフレームギア数機と僕たちの位置を交換し、僕らはフレイズの前面に転移する。

僕Aはディメンションカード『トリガーパワータイプ』を取り出し、デュアルソードにリードする。

 

レディ! トリガーパワー!

 

僕Bはベルトにセットしたマグナムレイドバックルを外し、マグナムシューター40Xのホップアップアセンブルにセットする。リボルバーを回転し、トリガーを引く。

 

MAGNUM

 

僕Cはドンブラスターを取り出し、天面の青いボタンを押す。

 

『パァーリィータァーイム! ドンモモタロウ~!

 

レイガA「合わせるよ」

ギーツ&ドンモモタロウ「「おう」」

 

フレイズの口から光の奔流が撃ち出された。それに合わせるように僕らもトリガーを引く。

 

デュアルデラシウムインパルス

MAGNUM TACTICAL BLAST

『ヘイッ!カモォーン! ぃよぉ~ッ!ドンブラコ~!』

 

レイガ's「「「ハアァ!」」」

 

三つの必殺技が重なり、フレイズの光線とぶつかり合う。

 

ドガガガガガガガガァッ!!

 

相殺することができ、後ろに被害は出なかった。しかし僕らとフレイズの中間地点は大きなクレーターができていた。

咄嗟の判断で動いたが、危なかった。あのまま後ろに逸らしたら射線上全てのものが消え失せていた。

この世界に来てから一番の威力だよ。チャージには時間がかかるのはマンタの時と同じだが、威力がケタ違いだ。フレームギアも大破じゃすまないな。

 

レイガA「あれが上級種」

 

 

 

 

 

 

収納魔法からレシーバーを取り出し、共用チャンネルに合わせる。ホントはしたくなかったけど、状況が状況だ。

 

レイガA『テンペスト・レイ公国から操縦者全員に告ぐ! 上級種フレイズの前面には立つな! 予備動作があるから発射前にはわかるが、首を振られたら広範囲にわたって巻き込まれる恐れがる! 常に真横か背後に回れ!』

 

ザザザッ、と前面近くにいたフレームギアたちが大きく退避して上級種の真横へと回る。

それを見計らったように、ワニ型フレイズは身体を反転させ、鞭のように唸りをあげた尻尾を一機の重騎士にぶつけようとした。

 

バイス「あぶねえ!」

デザスト「くッ!」

 

その瞬間、バイスとデザストが受け止めようとしたが威力が強かったため重騎士ごと吹き飛ばされた。地面を盛大に転がって、そのままバラバラにパーツが砕けていく。バイスたちも変身が解け、デザストは本に、バイスは僕Bに戻った。

 

レイガA「バイス! デザスト!」

ギーツ≪本陣! 誰か聞いてるか⁉ そちらにいま誰か転移したか⁉≫

ユミナ≪玲我さん、ユミナです。いま転移されてきた方はバイスさんたちのおかげで重症ですがなんとか生きています。フローラさんが治療に当たっていますのでご心配なく≫

 

ケルベロスを通してユミナからの念話にホッと胸を撫で下ろす。バイスたちもダメージは酷いが無事である。

威嚇するようにワニは尻尾を左右に振りながら、こちらへ向かってくる。動くスピードはさほど速くはない。

避けようとした瞬間、尻尾の先端にあったスパイク状の突起物が、まるでミサイルのように撃ち出された。

一旦それは上空高くに打ち上がり、突起物ひとつひとつが爆発したかと思うと、無数の水晶の矢が雨霰と地上に降り注ぎ始めた。

 

レイガA「マジか!」

ギーツ「くッ!」

 

僕Bはマグナムシューター40Xをハンドガンにし、後ろのレバーを引く。

 

HANDGUN BULLET CHARGE

ギーツ「ハアッ!」

 

威力を高めた連射攻撃で水晶の矢を撃ち砕く。

 

ドンモモタロウ「お供達を避けながら撃ち落とせ」

 

僕Cはザングラソードを投げながらドンブラスターで撃ち落とす。他の四人も避けながら撃ち落としている。

僕Aはディメンションカード『デッカーミラクルタイプ』と『トリガースカイタイプ』の二枚のカードをリードする。

 

レディ! デッカーミラクル! トリガースカイ! ウルトラコンボ! デュアルミラクルスカイスクラム!』

 

ウルトラデュアルソード状のエネルギー体を大量に生産し、円状に展開してバリアを張る。

他のみんなも盾を構えて、なんとか水晶の矢を凌いでいた。

 

レイガA「マジで勘弁しろよ・・・」

 

クラスター爆弾なんて攻撃もできるのかよ。しかもいま撃ち出した突起物が尻尾からすでに再生され始めている。

同時に口も開き、その奥に光を集め始めた。またあの攻撃かよ。しかも今度は溜めが速い。威力をある程度下げて連射を重視したか。

 

ギーツ「さすがに二発目は嫌だぞ」

レイガA「変身したいけど、時間が」

 

その間にも光線が撃ち出される瞬間、僕たちの後ろから赤い光線がフレイズの口に直撃した。そのおかげでフレイズは口を閉じ、後ろに倒れた。

 

レイガA「いまのって」

 

後ろを振り向くと、赤い機体が飛んでいた。

 

レイガA「あれってGUTSホーク!」

ギーツ「ってことは」

ドンモモタロウ「HANE2(ハネジロー)⁉」

ハネジロー『レイガ! 今だ!』

レイガA「ありがとうハネジロー」

 

僕Aは左腕を突き出す。すると光が集まり出し変身アイテム『ウルトラDフラッシャー』が出現する。同時に腰には『ディメンションカードホルダー』が出現する。Dフラッシャーのトリガーを引き、カードホルダーを開き、一枚のカードを取り出す。Dフラッシャーの後部のカードスロットにリードする。

 

『ウルトラディメンション!』

 

下部のレバーを引き、本体からクリスタルが展開される。Dフラッシャーを顔の前にかざし、トリガーを引く。

 

レイガA「輝け! フラッシュ! デッカー!

 

僕の周りに光が集まり出し、その光は新たな巨人へと変身する。

 

ウルトラマンデッカー! フラッシュタイプ!

 

光の巨人『ウルトラマンデッカー』が上級種の前に立つ。

 

 

 

 

 

〈本陣〉

ベルファスト「あれは」

リーリエ「きょ、巨人⁉」

ミスミド「あれは確か黒竜の時と同じ巨人、ということは」

ラミッシュ「・・・玲我様」

全員『え⁉』

リーフリース「あれが玲我殿・・・」

 

本陣では映像越しから全員が戦いを見ていたが、突如現れた上級種に恐れてはいたが、次に現れた巨人の正体に全員が驚いていた。

 

ドット「あれってデッカーだよな」

レイン「ああ、たぶんみんなあれがトリガーだと思ってるな」

ドット「まあ・・・別にいいかな」

 

と惑星レイガ出身のみんなは内心デッカーのことを教えようか迷っていた。

 

 

 

 

 

〈レイガサイド〉

 

デッカー「デェヤ!」

 

デッカーの出現に上級種が驚いてはいたが、すぐに咆哮をあげて突進してきた。

こちらも上級種に向かい走り出し、ぶつかり合う。

 

ドーン! 

 

その衝撃で周りの木や岩が吹き飛ぶ。

蹴り飛ばし、壁にぶつける。よろめきながらも尻尾の突起物を再び撃ち出してくる。

僕はそれをすべて受け止める。爆発の煙で見えなくなり、全員が倒されたと思い込んだが、煙が晴れた場所には無傷の巨人がいた。

上級種を驚いていたが、すぐに尻尾で攻撃してきた。僕はそれを受け取めて、逆に尻尾を掴み振り回す。そして、誰もいない場所に投げ飛ばした。

 

デッカー「デュワ!」

 

ドーーン!

 

身体にヒビが入るが、すぐに再生していく。やはり核を狙うしかないか。

 

ドンモモタロウ「中々やるな。ならばお供達俺たちも行くぞ!」

サル・イヌ・キジブラザー・オニシスター「「「「え⁉」」」」

 

僕Cはバックルから黄色のギアを取り出し、ドンブラスターにセットし、ギアディスクを回転する。

 

『いよぉ~っ! ドン! ドン! ドン! ドンブラコ! ロボタロウ~! ドン! ブラボ~! ドン! ブラボ~!

ドンモモタロウ「アバターチェンジ! ロボタロウ!」

ドン! ロボタロウ~! よっ! 世界一!!

 

ドンブラスターのトリガーを引くと、周りに装甲が現れ、ドンモモタロウの全身に纏う。『ドンロボタロウ』にチェンジした。

 

ドンモモタロウ「アッハッハッハ! 祭りだ!祭りだ! ロボタロウ祭りだ!」

サルブラザー「そういうことでござるか、なら」

サル・イヌ・キジブラザー・オニシスター「「「「アバターチェンジ! ロボタロウ!」」」」

 

ドンモモタロウに続くように他の四人もドンブラスターにロボタロウギアをセットする。 

 

サルロボタロウ~! よっ! ムッキムキ!!

オニロボタロウ~! よっ! 鬼に金棒!!

イヌロボタロウ~! よっ! ワンダフル!!

キジロボタロウ~! よっ! トリッキー!!

 

四人もそれぞれ装甲を纏い、それぞれのロボタロウ形態にチェンジした。サルブラザーはよりゴリラらしく、イヌブラザーは犬らしく四足歩行。キジブラザーは鳥になって羽ばたいている。

 

ドンモモタロウ「さらに行くぞ! 大合体だ」

サル・イヌ・キジブラザー・オニシスター「「「「え⁉」」」」

 

すでにロボタロウギアをセットした状態で再びギアディスクを回す。

 

『いよぉ~っ! ドン! ドン! ドン! ドンブラコ! 大合体!』

 

すると、どこからともなく巨大な船が現れ、全員が乗り込む。

 

ドンモモタロウ「いざ! 大合体だ!」

『大·合·体!(ワンワン!) 大·合·体!(ウッキー!) 大·合·体!(ケンケーン!) 大·合·体!(ガオオー!)』

 

イヌブラザーとオニシスターが足に変形して、ドンモモタロウの足と合体して新たな足となる。

 

ドンモモタロウ「お供達! 足となれ!」

イヌブラザー「また足かよ!」

オニシスター「旦那様の足・・・興奮する!」

イヌブラザー「やめろ! 変態!」

 

『大·合·体!(ワンワン!) 大·合·体!(ウッキー!) 大·合·体!(ケンケーン!) 大·合·体!(ガオオー!)』

 

サルブラザーは左右に二つに分かれ、巨大な腕となる。キジブラザーも二つに分かれ、巨大な肩パーツとなる。そしてドンモモタロウの腕と合体して巨大な腕となる。

 

ドンモモタロウ「お供達! 腕となれ!」

キジブラザー「了解しました」

サルブラザー「またでござるかーーー!」

 

ドンモモタロウの胸部に桃の絵柄が浮かび上がり、最後に兜を被る。

 

『完·成! ドン!オニタイジン~!! よっ!銀河一!!』

ドンモモタロウ「いざ!出陣~!」

 

謎の煙幕と共に新たな巨人いやロボ『ドンオニタイジン』が合体した。

(いつもは人間サイズだが、今回は最初からウルトラマンと同じ大きさである)

 

本陣『な⁉』

 

本日三度目の本陣での驚きである。

 

ギーツ「ドンオニタイジンか・・・ならこっちもこれ使うか」

 

ギーツはドライバーにセットしてあるマグナムレイズバックルを外し、ベルト横に取り付けているバックルホルダーから赤色のバックル『ブースとレイズバックル』を取り出す。

 

ギーツ「行くぜ!」

『SET』

 

黒色のハンドルレバー『ブーストスロットル』を思いっきり捻る。そしてブレイキングカウルが上下に展開される。

 

『♪♪ BOOST! READY FIGHT!

『BOOSTRIKER』

 

先ほどの白いボディーとは違い、今回は真っ赤なボディー『ブーストフォーム』へと変わる。

同時に後ろからブースト専用バイク『ブーストライカー』が現れる。

 

ギーツ「さてとそれじゃあ行きますか」

 

ブーストライカーに乗り込み、上級種に向かって走る。

 

 

 

 

 

バエ「みなさん、こんにちわ。わたくし巨大戦実況を務めます。バエと申します。今回の戦いわたくしも微力ながら応援させていただきます」

 

あれ?どっかでバエの声がしたような~・・・気のせいか。

とりあえず今は目の前の敵だな。

 

レイガA(いくよ、ドンオニタイジン)

ドンモモタロウ「ああ! いざ尋常に勝負! 勝負!」

バエ「おっと、ウルトラマンデッカーとドンオニタイジンが巨大フレイズに向かって走り出した。そして両者のパンチが当たった。これは強烈! しかしフレイズも怯みますがすぐに尻尾の突起物を飛ばして反撃してきます」

サルブラザー「同じ攻撃は喰らわないでござる。キジンソード!」

 

ドンオニタイジンの肩から二つの剣を取り出す。

 

バエ「おっと! ドンオニタイジンの武器『キジンソード』を装備した。そして攻撃を斬って斬って斬りまくりだ!」

レイガA(とりあえず、あのヒビの再生力を上回らないとな)

 

僕はDフラッシャーのトリガーを引き、カードホルダーから一枚のカードを取り出し、カードスロットにリードする。

 

ウルトラディメンション!

 

クリスタルを展開し、トリガーを引く。

 

レイガA「弾けろ! ストロング! デッカー!

ウルトラマンデッカー! ストロングタイプ!

 

力が溢れる赤色、『ウルトラマンデッカーストロングタイプ』にタイプチェンジ。

 

バエ「おっと! ここでデッカーがタイプチェンジした。今回はストロングタイプだ!」

デッカー「デュワ」

 

思いっきり右腕を振りかぶって、フレイズの胴体にパンチし、そのまま上空にアッパーで殴り飛ばす。

 

バエ「飛んだ!」

ドンモモタロウ「お供達飛ぶぞ!」

サル・イヌ・キジブラザー・オニシスター「「「「え⁉」」」」

 

そう言って、肩に取り付けられている翼を広げ、天高く飛んだ。

 

イヌブラザー「ギャアアーーーー 高所恐怖症だから飛ばないでーーー」

サルブラザー「キャラがぶれているでござるよ、ヌイ殿!」

ドンモモタロウ「アッハッハッハ! 行くぞ!」

バエ「ドンオニタイジン、フレイズよりも天高く舞い上がった」

サルブラザー「天空サル連撃! でござる」

バエ「ドンオニタイジンの連続パンチがフレイズに直撃だ! そのままフレイズは落下。おっとその落下先にはギーツが向かっている」

ギーツ「ヒビは治る前に叩く!」

 

ギーツは腕部の装備『ブーストパンチャー』を発動し、超高密度エネルギーを放出してスピードを上げる。そのスピードを利用して、バイクごとジャンプし、フレイズの上を駆け回る。そしてヒビが入った箇所へ向かう。

 

ギーツ「よっと!」

 

バイクからジャンプし、ベルトの『リボルブアンロック』を押し、ベルトを回転する。

 

『REVOLVE ON』

 

身体が回転し、先ほど上半身にあったブーストアーマーが下半身に移動する。そして脚部の『ブーストキッカー』を発動し、超高密度エネルギーを放出してスピードを上げる。そのスピードを利用して、ヒビに向かってキックする。

 

グアァァァァ!!!

 

ヒビが広がったことにより、叫び出すフレイズ。ギーツは着地と共に、バイクに乗り込み、一旦その場を離れると再びバイクから降りて、ホルダーからマグナクレイズバックルを取り出し右側のスロットにセットする。

 

『SET』

 

マグナムのシリンダーを回転し、トリガーを引く。次にブーストのハンドルを回転する。

 

『♪ DUAL ON! GET READY FOR BOOST & MAGNUM!』

 

上半身が白、下半身が赤の『マグナムブーストフォーム』にチェンジする。

 

ギーツ「さあ、盛大に打ち上げだ」

ドンモモタロウ「決めるぞ! お供達!」

デッカー「デア!」

 

ギーツはマグナムのシリンダーを回転し、トリガーを引く。次にブーストのハンドルを二回捻る。するとブーストライカ―がキツネに変形し、ギーツを上空まで上げる。

 

BOOST TIME!

 

ドンオニタイジンは二本のキジンソードを交差し、巨大な一本の刀を形成。

 

ドンモモタロウ「一騎桃千!」

 

デッカーは肘を曲げて額に両手を当てるように腕を上げ、円を描くように両腕を外側に回す。

 

バエ「おっと! これは三位一体の必殺技だ!」

 

ギーツはハンドルを回転する。ドンオニタイジンは無数の桃を突き刺し巨大な桃を作り出し、縦に真っ二つに斬る。デッカーは腕を回して十字に腕を組む。

 

MAGNUM BOOST GRAND VICTORY』

ドンブラザーズ「「「「「ドンブラパラダイス!」」」」」

デッカー「デア!」

 

ギーツのライダーキック、ドンオニタイジンの必殺技、デッカーの光線がフレイズのヒビに当たる。徐々にヒビは広がり、中心の三つの核にまで達した。

爆発と共にフレイズは欠片となって二度と再生しなかった。

 

バエ「勝者! ギーツ&ドンブラ&デッカー」



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新たな同盟

ほど原作通りです
あと嫁リストを抜けば、100話いきました。これからもよろしくお願いします。


〈ある日のレイガ〉

僕には母はいない。僕の生みの親はいないし、どうして生まれたかもわからない。

だからなのか僕の妻には僕の母親代わりになりたい人もいる。

 

「マスタぁ~♡お昼ですよ~」

 

薄紫色の着物を着た艶やかな妙齢の女性『源頼光』。僕のことをホントの子のように接してくれてる。

 

「僕ちゃ~ん♡ 一緒に食べましょう」

 

白いドレスを着た女性『大好真々子』。彼女も僕のことを子のように接してくれる。

正直、母という存在がどのようなものかわからなかった。

最初こそどう反応すればいいかわからなかった。彼女らには失礼な態度をしていたかもしれない。

それでも今は。

 

「わかったよ。お母さん」

 

母という存在を大切にしたい。母として妻として

 


 

〈レイガサイド〉

あれから数日が経った。上級種を倒した後は、レインさんたちを中心に残りの残党の討伐が行われた。全体として大破したフレームギアは三六機、軽傷者が二四人、重傷者が四人、死者は〇人。死者が出なかったのは本当に良かった。あの後力の分割と使い過ぎで数日まともに動けなかった。その間の世話はユミナたちがしてくれたのでホントに感謝している。

ユーロンに関しては首都は壊滅、町や村も数多く地図上から消えた。

 

レイガ「それでこれからのユーロンはどうなるんですかね?」

ミスミド「さあな。儂等はもう干渉せんでもいいだろう。もともと関係ないんだからな」

 

会議室に並ぶ西方同盟の面々のうち、ミスミド国王が僕の質問に興味なさそうに答える。

 

レイガ「しかしこれにより、ユーロンを巡って諸国の争いが始まったりしませんか? ただでさえフレイズによりユーロンの人々が傷ついているというのに、この上戦争が始まったりでもしたら」

 

僕の質問に関してはその可能性はないらしい。

 

リーリエ「じゃあユーロンは今、統治者がいない状態なんですか?」

ベルファスト「いや、それがな。天帝には三人の息子がいたんだが、そのうち一人はシェンハイにいたために天帝と運命を共にした。もう一人は別の都にいたんのだが、これもフレイズに襲われ死んでいる。最後の一人が運よく生き残り、新たな天帝を名乗っているそうだ」

 

リーリエ国王にベルファスト国王がユーロンの現状を語る。それならユーロンも再びまとまることができるかもしれないな。

そう思った矢先、ベルファスト国王が苦虫を嚙み潰したような顔をする。

 

ベルファスト「ところが、だ。この新天帝が言うには今回のユーロン壊滅はすべてテンペスト・レイ公王、つまり玲我殿の仕業だと言いふらしているらしい」

レイガ「へえ~僕が・・・・はあ⁉」

 

え! どっからそんな話になるわけ⁉

 

ベルファスト「なんでも召喚術でフレイズを呼び出した玲我殿が、シェンハイや町を襲わせたと言うんだな。その証拠に前線となる砦をハノック側の国境に築きあげたと。それに玲我殿がフレイズを呼び出すところを見たという証人もいるとか」

 

・・・な、なんじゃそりゃ⁉ 捏造の域超えてるだろ。

 

レイガ「ずいぶん詳しいですね?」

ベルファスト「いや向こうがな、書状をよこしてきたんだよ。今回のことは玲我殿の自作自演であり、自分たちは被害者だと。今回のことは自国の軍事力を誇示し、西方同盟の主導権を握るために起こしたことだとな」

レグルス「あのような軍事力をそんなテンペスト・レイに持たせておくのは危険だ。取り上げて大国であるベルファストやレグルス、そしてユーロンが管理するのが一番だと、そうも書いてあったな」

 

ベルファスト国王に次いで、レグルス皇帝も口を開く。

 

レイガ「それで返事は?」

ベルファスト「返事も何も。もしそれが本当だとしたらとても敵うはずがない。ユーロンの首都を消してしまうほどの相手に対抗できようか。テンペスト・レイにおとなしく降伏することにしよう、と」

レグルス「余の場合は、それが事実なら由々しきこと。この書状をテンペスト・レイ公王に見せ、真偽のほどを確かめよう。公王は短期ゆえ、何かの間違いであった場合、貴国に怒鳴り込むかもしれないが、真実を明らかにするのは大国の務め。万事任されよ、と」

 

全部丸投げかよ!

 

リーリエ「とりあえずユーロンに関しては放置でいいんじゃないですかね? 国にああなっては、こちらに何かをする余裕もないでしょうし。我々はユーロンと国境を接しているわけでもないですから」

 

リーリエ国王の言う事を採用して、ユーロンに関しては僕は放置することにした。

しかしこの時僕は気付かなかった。側に立っていたグレイフィアが静かに怒りを出しており、その怒りがほかの僕の妻にも伝染することを。そしてその伝染が僕の星にまで行くとはこの時の僕は知らなかった。

あとに知ったが、新たな新天帝も覇権争いが起こり暗殺されたらしい。その暗殺も僕の仕業になっているが、その間零隊と陰隊との連絡ができなかったが・・・まさかね。

 

 

 

 

 

 

スゥ「それで、どうしたのだ?」

レイガ「どうもしないよ。相手するだけ損だから、言わせておけばいいよ」

スゥ「ぶー。玲我ならユーロンなんかちょちょいのちょいでやっつけられるだろうに」

 

椅子に座る僕の右膝の上でスゥがむくれた。久しぶりにスゥが遊びに来たので相手をしていたが、ユーロンとの話を聞くと僕以上に腹を立て始めた。

 

スゥ「だいたい玲我はユーロンを助けてやったのだろう? それがなんで非難されねばならん。ろくに調べもせんで自分たちの都合のいいことだけ並べ立てる。中身が空っぽの張子の虎のくせに、吠えるだけは一人前じゃな!」

レイガ「まあ、これ以上厄介なことを増やしたくないし」

スゥ「それはいかんぞ。怒る時は怒る。こちらが本気だと示さねば舐められ続けるだけじゃ。『なあなあ』の歓喜は互いにいい結果を生まぬ。一度ガツンと殴らねば目を覚まさん愚か者もいるのだ」

レイガ「そうか~。じゃあどうすればいいかな?」

スゥ「そのユーロンの新天帝を名乗る奴らを片っ端から思いっきりぶん殴って、説教してやるのじゃ。恥知らずなことはやめよ! とな」

 

その解決方法は更なる争いを生み出すからやめようね。

そう思い、スゥの頭を撫でる。

 

レイガ「ありがとう。でも本当に大丈夫だから」

スゥ「・・・玲我は優しすぎるのじゃ。でもまあ、そこがいいところじゃが・・・。心配する身にもなれ」

白音「(もぐもぐ)・・・先輩はそういうところがまだ甘いんです(もぐもぐ)」

レイガ「・・・ようやくしゃべったね。白音」

 

そう、さっきからスゥが座っている逆側の左膝の上でスイーツをぱくぱく食べ続けている白髪ショートの『塔城小猫』がやっとしゃべった。さっきからスイーツに夢中になっていた。

 

スゥ「おお! 白音姉様そのスイーツおいしそうじゃ」

白音「・・・あげる」

スゥ「ありがとうなのじゃ!」

 

そう言って、二人ともおいしそうにスイーツを食べる。僕はその微笑ましい景色を見ながら、二人の頭を撫で続けるのであった。

 

 

 

 

 

フレイズの大襲来からひと月が経った。あれから特に変わった情報はなかった。

あるとしたら、ギルドマスターのレリシャさんが来て、ユーロンで起こった出来事の説明を求められたくらいか。

どうやらユーロンにもギルドが会って、結構な打撃だったらしい。

いまだにユーロンでは内戦が起こっているらしいが正直興味がない。

今はフレームギアの武器の量産と新作の発明を『工房』で行っていた。

そんな時、

 

琥珀≪主、よろしいですか?≫

レイガ≪ん? 琥珀か。どうした?≫

 

王城にいる琥珀から念話が入る。

 

琥珀≪主に面会を求めて他国の使者が来ているそうで≫

レイガ≪他国の使者?・・・ユーロンなら追い払って≫

琥珀≪いえ、レスティア騎士王国とかいう国だそうですが≫

 

レスティアって確かフレイズに襲われていたところを助けたヒルデガンド姫がいる国か。確かフレイズの欠片を使ったリュウソウケンをあげたらすごく喜んでくれたな。それをお礼かな?

とりあえず待たすのも悪いのですぐに【コネクト】で王城の謁見の間へ向かったが、そこには誰もいなかった。

 

ラピス「あ、陛下。こちらです」

 

辺りをキョロキョロしていると、メイド長のラピスさんが手招きをして僕を促す。

 

レイガ「ラピスさん、レスティアから使者が来ているんじゃなかったの?」

ラピス「それが・・・陛下がいないので少々お待ちくださいと伝えると、騎士団の訓練を見たいと仰られまして」

レイガ「あ~騎士団の・・・・え、まじ?」

 

本当ならマズイ。

急いで訓練場へと向かう。確か今日の訓練内容は

訓練場に辿り着くと、ヒルデガンド姫が訓練場を見ていた。

その訓練場では

 

gyaaaaa!

 

中級種と同じくらいの大きさのブイレックスと騎士団が戦っていた。

上級種との戦いからみんなと話し合って、週に一度は巨大戦を行うことにした。今日はブイレックス。本当ならフレームギアに乗って行いたかったが、フレームギアも有限のため大きさを中級種ぐらいにして行うことにした。

ただそれを見せるのはマズいと思った。

 

ハクロウ「陣形を乱すな! 相手の行動だけでなく味方の行動も先読みし最適な攻撃を考えろ!」

騎士団『はい』

ハクロウ「指揮官たちも冷静な判断を瞬時に考え、作戦も練りなさい」

騎士団『はい』

 

訓練場では騎士団とレインさんを中心に指揮官がブイレックスと戦っていた。そしてその戦いを見ながら改善点をハクロウを中心に惑星レイガ出身のみんなが教えていた。

 

レイガ「あの~」

ヒルデガンド「へ、陛下! お久しぶりです!」

 

唖然としていたヒルデガンド姫に話しかける。

 

レイガ「お久しぶりです。それで今日はどうしたんですか?」

ヒルデガンド「あのときのお礼と、聞きたかったことがありまして・・・。ここへきてさらに増えましたが、でも私は付き添いで来ただけなんです」

レイガ「付き添いって・・・誰のです?」

?「ワシじゃよ」

 

レスティア騎士の後ろから、一人の老人が進み出た。この雰囲気もしかして

 

ギャレン「お初にお目にかかる、テンペスト・レイ公王。ワシの名はギャレン・ユナス・レスティア。レスティア騎士王国の先王にて、公王陛下と同じ金ランクの冒険者じゃよ」

レイガ「これはどうも。光神玲我です。ギルドマスターのレリシャさんから先王陛下のことは聞いていました」

 

やっぱり僕と同じ金ランクの先王陛下か・・・一人だけ纏ってる空気が違う。

 

ギャレン「ホッホッホ。先日はけっこうな物をいただき、感謝しておりますよ。お礼も兼ねて、テンペスト・レイに物見遊山に参ろうかと思いましてな」

レイガ「それはそれは。あまり見物するところなどないでしょうが、くつろいでいただければなによりです」

 

先王陛下が差し出された手を握ろうと手を伸ばしたら、空振りした。

 

ギャレン「・・・なんと」

 

と思いきやすぐに先王陛下の手を握る。

 

レイガ「…あんまりそのようなことはしない方がいいと思いますよ?」

ギャレン「これはこれは失礼」

ヒルデガンド「お祖父様!」

 

空振りした瞬間に目で追って、先回りしたがあのままだとラピスさんのお尻を触っていた。

 

ヒルデガンド「すみません! これはその・・・お祖父様の発作のようなものでして!」

レイガ「それは・・・難儀ですね」

ヒルデガンド「はい・・・それよりお祖父様の発作を初見で止めた人は初めて見ました。どうしてわかったんですか?」

レイガ「いや空振りした瞬間に目で追っただけですよ」

ヒルデガンド「あの動きを目で・・・ですか」

 

ヒルデガンド姫は驚きながらも尊敬の眼差しを僕に向ける。

 

「あ、そういえばあの訓練は何をしているのですか?」

 

そう言い、訓練場を向くヒルデガンド姫。

 

レイガ「あ~・・・あの訓練は巨獣との闘いの際の立ち回りを練習しているんです」

ヒルデガンド「巨獣ですか・・・それなら納得です。それで相手にしているあのワニですか? あれは一体?」

レイガ「あれは僕が・・・開発した機械です」

ヒルデガンド「なるほど玲我殿は発明家でもあるんですね」

 

と、一応機械ということにしたが、これでいいだろうか。

 

 

 

 

 

あのあととりあえず城の方へ戻ることにしたが、ギャレンさんの発作が出てそれをすべて止めるので、すごく疲れた。さすがに僕の妻は触れさせない。

 

花恋「およ? 玲我君なのよ。おはようさんなのよ」

 

と、苦労していたら廊下の曲がり角で花恋姉さんと出会った。次の瞬間にまたギャレンさんの発作が出たが、その刹那先王陛下がひとりでにぐるんと回転し、床に転がされていた。

 

ギャレン「・・・なんと!」

花恋「玲我君、この人誰なのよ?」

レイガ「レスティア騎士王国の先王陛下だよ」

花恋「ふうん、元気なおじいちゃんなのよ」

 

未だに目をぱちくりさせているレスティアの人たち。

 

レイガ「姉さんの無礼をお詫びします。申し訳ない」

ヒルデガンド「いえいえ! 元はと言えば全面的にこちらの方が悪いのですから! お祖父さまにはいい薬です。天罰です」

 

実際はマジで天罰だけど。

 

ヒルデガンド「しかしさすがは陛下のお姉様。お祖父さまを撃退した女性は初めて見ました。・・・あの、なんでしょうか?」

 

花恋姉さんがじーーーーっ、とヒルデガンド姫を見つめていた。

 

花恋「貴方・・・恋をしてるのね?」

ヒルデガンド「ふえあっ⁉ なっ、なんにょことでしゅかっ⁉ こっこっ恋とかっ! しょんな、しょんなことわ!」

花恋「ぬふふふふ。恋愛ごとで私に見抜けぬものはないのよ。相談に乗るのよ? あとで私の所へ来るといいのよ」

 

そう言い残し、姉さんは食堂へと去っていった。それよりさっきから顔を真っ赤にさせているヒルデガンド姫。ぶつぶつと何やら小さく呟いている。

 

レイガ「大丈夫ですか?」

ヒルデガンド「ふ、ふえっ!! あ、あ、だ、大丈夫です! 大丈夫! はふう・・・」

 

全然大丈夫そうには見えないが・・・今にも頭から煙が出そうな感じなんだけど。

しかし恋か・・・なんだろうこの感じ・・・デジャブな気が。

 

レイガ「では先王陛下、ヒルデガンド姫。行きましょうか」

ヒルデガンド「あっ、あのっ、ヒルデガンド、でなく、ヒルダとお呼び下さい! その、親しい者は皆そう呼ぶので・・・」

 

もじもじしながら姫がそう言ってきた。あ~これは十中八九・・・

 

レイガ「わかりました。ではヒルダ姫、どうぞこちらへ」

ヒルダ「はっ、はい!」

ギャレン「ホッホッホ」

 

 

 

 

 

レイガ「それでお聞きしたいこととは?」

 

城内の応接室で二人の話を聞くことにした。

 

ヒルダ「実は先日のユーロン崩壊の件で・・・」

 

やっぱりその話か・・・なんとなくそんな感じはしていたけど。

僕はユーロンで起きた出来事を事細かく話した。

 

ヒルダ「やはりあのフレイズの大襲来があったのですね。それにしてもベルファスト、レグルス、ミスミド、リーフリース、ラミッシュ、リーリエの連合軍ですか・・・」

レイガ「それぐらい力を合わせないと勝てない相手だったんですよ。実際、上級種の一撃でシェンハイは吹き飛んでしまいましたし」

ギャレン「恐ろしい話じゃの・・・。それで、同じようなことがまた起こる可能性は?」

レイガ「しばらくはないと思います。しかし、いずれ同じような大襲来が起こることは充分あります。そのためにいろいろと戦う準備を進めているところで」

ギャレン「フレームギア、という巨人兵のことじゃな?」

レイガ「はい。おっしゃる通りです」

 

実際に見せた方がいいので、全員を城の北に広がる平野に転移する。そしてバビロンから黒騎士を転移する。

 

レイガ「これがフレームギア『黒騎士』。フレイズに対抗するための最終兵器のひとつです」

 

みんなあまりの衝撃に声も出ないようだった。とりあえずモニカを呼んで操縦してもらう。

 

レイガ「ひと通り動いて見せてくれ。無茶はしないでね」

モニカ『了解だゼ、マスター』

 

数分後、ある程度の動きを見せた後

 

ギャレン「この・・・フレームギアとやらは、ユーロンでの戦いで何機ほど投入されたのかの?」

レイガ「予備機も含めて二五〇機です。フレイズも一万三〇〇〇ほどいましたので、大変でした」

ギャレン「これが、二五〇・・・。それだけの兵力を持ってテンペスト・レイ陛下は何をなさるつもりかな?」

 

先王陛下がこちらを探るような眼を向けてくる。

 

レイガ「これを他国への侵略に使う気はありません。でもウチに攻め込まれたら使いますけど。一番の目的はフレイズ戦ですから、西方同盟の各国にもよほどの状況でなければ貸し出すことはしません」

ヒルダ「よほどのこととは?」

レイガ「例えば、巨獣の討伐や、山崩れなどの災害に対しての救出などですね」

ギャレン「なるほど、仮に我らレスティアも貴国らとの同盟を結べば、こいつを貸してもらえたりはするのかの?」

レイガ「はい。それが戦争や非合法の用途で無ければ」

ギャレン「そうか・・・実は今回テンペスト・レイにやってきた目的の一つは貴国と友好関係を結びたいと思ってのことじゃ。同盟に加入するかは国王である倅に一応聞かんといかんが、まず反対はすまい」

レイガ「こちらとしても喜ばしいことですが、他の国とも協議してからになりますね」

 

そうなると、西方同盟の名前変えないとなあ。




fgoから源頼光、通常攻撃がから大好真々子、ハイスクールdxdから子猫を出しました。


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試練

〈自己紹介〉

フレイズ戦後僕はユミナたちを集め、アルファたちを紹介した。

 

アルファ「初めまして、私の名はアルファ」

デルタ「デルタなのです。よろしくなのです」

リリス「リリスと申します。宜しくお願いします」

二―オ「わらわは二―オ。見ての通り鬼人族じゃ。よろしくなのじゃ」

ルサ「拙者の名はルサでござる」

ヌイ「俺はヌイ」

リト「僕はリトです」

 

と、簡単な自己紹介を済ませた。

 

八重「ルサ殿はイーシェンの出身でござるか?」

ルサ「え? イーシェンでござるか?」

 

しまった! あの着物からこの質問がくるのを予想してなかった。

 

八重「あれ違うのでござるか?」

ルサ「えっと~そうでござるな~」

 

ルサは嘘をつくのができないのだ。すぐに嘘だと気づかれる。

 

ヌイ「こいつは親がイーシェン出身だから服も着物が多いんだ」

八重「そういうことでござるか」

 

なんとかヌイのおかげできりぬけられた。

 

ルサ「え! 拙者の親はこの星では」

リト「ああ! そういえば皆さんは着物を着てみませんか?」

 

ルサがいらんことを言う前にリトが口をふさいで話の話題を変える。

 

ルー「リリスさんは教師をしているんですか?」

リリス「はい。私は錬金術を教えています」

リンゼ「錬金術ですか?」

 

リリスはルーとリンゼと話をしていた。

 

エルゼ「でやあぁぁぁ!!」

デルタ「アッハッハッハ!」

 

エルゼはデルタと拳と拳で語り合っている。・・・ん、考えるのはやめよう。

 

ユミナ「アルファ姉様はエルフの方なんですか?」

アルファ「ええ、それより姉様はやめて」

ユミナ「嫌です」

アルファ「貴方レイガと同じで頑固ね」

 

と、ユミナとアルファも会話している。

その間僕は

 

二―オ「んっふ~」

 

二―オに抱き着かれている。みんなが話をしている間にある部屋まで転移した。

このあと、アルファが気付いたことにより、盛大にみんなから怒られました。

 


 

八重「せやあぁぁぁぁ!!」

ヒルダ「はあぁぁぁぁっ!!」

 

互いの剣が互いの身体に触れる直前で止まった。ヒルダ姫の木剣は八重の横腹を。八重の木刀はヒルダ姫の首筋ギリギリで停止していた。

 

レイガ「それまで!」

 

審判役の僕が地下の訓練場に響く。

ヒルダ姫がこの国で一番の剣の使い手と戦ってみたいというので、八重を呼んだ。実際八重の実力は上がっている。まあもっとすごい人もいるけど・・・この国だからいいでしょう。

ハクロウやカナエにも指南をお願いしたおかげで今では、彼女の実家の『九重真鳴流』とはだいぶ外れた流派になっている。

その八重と引き分けるヒルダ姫もすごい腕前だ。これはハクロウがまた指南に力がはいるぞ。

 

ヒルダ「楽しい試合でした。陛下は素晴らしい騎士をお持ちなのですね」

八重「いや? 拙者は騎士団の者ではないでござるよ?」

ヒルダ「え?」

八重「拙者は玲我殿の許嫁にござる」

ヒルダ「いいなずけ?」

レイガ「婚約者ってことですよ」

 

横から口を挟むとヒルダ姫の動きが止まる。ギ、ギ、ギ、とぎこちなく首が回り、視線がこちらへ向かれる。

 

ヒルダ「婚約、者、がおられた、のです、ね?」

レイガ「え? 聞いてませんか? ユミナとルーの時に婚約自体は大々的に発表されたはずだけど」

ヒルダ「ユミナ? ルー?」

八重「ベルファストとレグルスの姫でござるよ。二人とも拙者と同じ玲我殿の婚約者でござる」

ヒルダ「はいぃ⁉ さ、三人も婚約者が⁉」

八重「正確には二十人ほどいるでござる」

ヒルダ「に、じゅう・・・⁉」

 

絶句してしまうヒルダ姫。ホントの所五十人ぐらいはいるけど、今は黙っておこう。

 

ヒルダ「私は・・・どうすれば・・・予想外・・・いや、まだ・・・」

 

またぶつぶつ呟き始めた。

 

花恋「そこでお姉ちゃんの登場なのよ!」

レイガ「! びっくりした!」

 

背後からいきなり声をかけられ、思わず引き下がってしまった。

そこには右手を高々と上げて、むふー、と鼻息荒く仁王立ちになる花恋姉さんがいた。

 

花恋「そこのあなた! ズバリあなたの片想いのお相手は玲我君なのね!」

ヒルダ「ふぉあっ⁉ にゃっ、にゃに、にゃにお言って、言ってるんでしゅかっ⁉ そんな、そんなつもりは! つもりは!」

 

ビシッ! とお姉さんに指を差されたヒルダ姫が、ボッ、と火がつくように顔を真っ赤にして慌てている。・・・わかりやすい。

 

八重「ヒルダ姫は玲我殿が好きなんでござるな?」

ヒルダ「ひえっ!? いえ、あのっ! それはですね・・・。八重さんという婚約者がいるとは思わなかったもので・・・なんというか・・・その・・・迷惑ですよね・・・」

レイガ「全然迷惑じゃないよ?」

ヒルダ「え⁉」

レイガ「正直僕を好きになってくれた気持ちは嬉しい。僕自身はヒルダ姫の気持ちを尊重したい」

八重「そうでござるよ。だからヒルダ姫も同じく玲我殿の婚約者になればいいのでござるよ」

ヒルダ「はいぃ⁉」

八重「ちなみに玲我殿の婚約者枠はあと三つでござる」

ヒルダ「つっ、つっ、つまり愛人やお妾さんではなく! なります! 私、玲我殿のお嫁さんになります!」

八重「ではあとでほかのみんなにも紹介するでござる。心強い仲間ができて、拙者、うれしいでござるよ」

ヒルダ「ありがとう、八重さん」

レイガ「これからよろしくね、ヒルダ」

ヒルダ「は、はい///」

花恋「相変わらずモテモテなのよ。お姉ちゃんも鼻が高いのよ」

 

と、ハッピーエンドで終わると思っていたら

 

ギャレン「話は聞かせてもらったッ! だが、その結婚、すんなり許すわけにはいかぬ!」

ヒルダ「お祖父様⁉」

 

どこから聞きつけたのか、先王陛下が現れ、手を翳す。

 

ギャレン「騎士王国の姫が嫁ぐからにはそれなりの覚悟を示してもらおう! ワシと勝負じゃ!」

 

ま・さ・かの展開。

仕方ない。ここは本気で

 

ギャレン「この試練を受け、見事ワシを倒してみせよ! 勝負じゃ、ヒルダ(・・・)!」

レイガ「わかりま・・・え?」

ヒルダ「はい! お祖父様!」

 

・・・(/ω\)。

 

 

 

 

 

ユミナ「では玲我さんとレスティア騎士王国の第一王女、ヒルデガンド姫の婚約に反対の者は挙手を」

 

厳かなユミナの声に対し、誰も手をあげる者はいなかった。

 

ユミナ「では満場一致でヒルデガンド姫を私たちの同士と認めます。共に夫を支え、良き妻、良き母とならんことを願います」

ヒルダ「ありがとうございます! 粉骨砕身頑張ります!」

 

涙を浮かべながら頭を下げるヒルダに、他の六人の婚約者から拍手が送られる。

現在「嫁会議」で、正式にヒルダの嫁入りが許可された。

でも問題は

 

レイガ「ヒルダ。先王陛下との勝負だけど、勝算は?」

ヒルダ「正直、難しいと思います。お祖父様と戦って勝ちを拾える確率は一割くらいかと・・・」

 

一割か・・・低いな。

試合は確か武器は剣、魔法無しの身体能力のみを使った戦い。

 

八重「玲我殿、なんとかならないでござるか?」

玲我「・・・方法は何個か思いつく。けどほとんど時間がかかるものばっかりだ。明日までには間に合わない。だから今回はこれを使う。」

 

そう言って僕はリュウソウジャーギアをみんなに見せる。

 

ヒルダ「それは?」

レイガ「ヒルダ以外は知ってると思うけど、これは歴代の戦士の力が宿ってるアイテムで、僕以外にも力を譲渡することはできる。でも相性が合って、合わないと使えない」

八重「相性でござるか」

レイガ「そう、で今のところこのギアがヒルダと相性が良くてね。ただ武器が使えるだけでなく、能力も使える」

ヒルダ「しかし、それでは私の力で勝ったとは言えないのでは?」

レイガ「そう。だから今回はこの力をヒルダのものにするために修行する」

ヒルダ「? ですが時間が」

レイガ「そこはなんとかする。ということで修行へレッツゴー」

 

僕は指を鳴らす。

 

 

 

 

 

僕らは謎の空間へと転移する。

 

ヒルダ「ここは?」

レイガ「ここは僕が作った空間、今回はここで修行しよう」

 

みんなキョロキョロと周りを見る。

 

リンゼ「玲我さん、どうしてここで修行を?」

レイガ「まあ一番の理由はここは元の場所とは時間軸が異なっていてね」

エルゼ「時間軸?」

レイガ「そう。ここでの一時間は向こうで一分になるんだ」

ユミナ「! そんなことできるんですか、玲我さん」

レイガ「まあこれにも制限があって」

ルー「制限?」

レイガ「うん。まず入れる人数は十人が限界。あとこの空間を作った後しばらくは作れない。インターバルが一日必要なんだ」

八重「それだけ聞くと便利そうでござるが」

レイガ「あとこれ僕と僕のお嫁さんしか入れないから椿さんやレインさんたちは入れない」

ユミナたち『え!』

レイガ「ん? どうしたの。結構な弱点でしょ」

ユミナたち『う~』

 

急にみんな顔を赤くする。

 

リンゼ「玲我さん、不意にそんなこと言うのは反則です!」

レイガ「・・・ごめんなさい」

 

しばらく熱が治まるまで待った。

 

レイガ「そろそろいい?」

ヒルダ「はい。すみません私のために作ってくれたのに」

レイガ「いいよ。それじゃ早速やろうか」

 

僕はギアトリンガーにリュウソウジャーギアをセットする。

 

『ババババーン! リュウソウジャー!』

 

空中にリュウソウケンと数個のリュウソウルが浮かぶ。

 

レイガ「では、まずはこの力を説明するね」

ユミナたち『はい』

レイガ「あれ? みんなも」

ユミナ「はい。どうせですし」

レイガ「わかったよ」

 

ということで簡単にリュウソウジャーの力を説明する。ミエソウルの時はみんな服を隠しながら僕のことを睨んでいたが、使わないからやめて! 精神ダメージが! 

 

説明後・・・

 

ヒルダ「すごいですね。このリュウソウルの力は」

レイガ「じゃあ試しに何個か使ってみる?」

ヒルダ「はい」

 

そうして何個か使ってみる。まあ中には戦闘不向きのものもあった。

 

レイガ「今のところは攻撃力アップの『ツヨソウル』。防御力アップの『カタソウル』。速度アップの『ハヤソウル』かな。明日の試合では」

ヒルダ「そうですね。後のは使えないと思います」

レイガ「よし、次は実践だね」

ヒルダ「はい。では八重さんお願いします」

レイガ「いや、今回は本人にお願いするよ」

ヒルダ「え⁉」

 

僕はギアトリンガーとは色が異なる紫色の『ギアトジンガー』を取り出し、リュウソウジャーギアをセットする。

 

レイガ「暗黒召喚」

『43バーン! リュウソウジャー!』

 

銃口から巨大なギアエフェクトが出現し、そこからリュウレッドが現れる。

 

ヒルダ「! 彼は確かリュウソウレッドですよね」

レイガ「正確に言えば違くて、これを使うことでギア内の戦士を召喚することができるんだ。戦闘レベルも十段階で選択できるし、これ以上の相手はいないでしょ」

ヒルダ「はい!」

 

そうしてヒルダとリュウソウレッドの模擬戦が行われた。

 

八重「玲我殿。拙者も」

エルゼ「あたしも」

リンゼ、ルー「「私も」」

ユミナ「私もお願いします。玲我さん」

 

と、八重、エルゼ、リンゼ、ルーにユミナも模擬戦を希望した。

 

「いいけど、じゃあまずは簡単にギアの説明しないとな」

 

ということで、さらにすべての戦隊の説明会をすることになった。正直しんどい。

 

エルゼ「じゃああたしはゲキレンジャー」

リンゼ「私は・・・マジレンジャーで」

八重「拙者はシンケンジャーにするでござる」

ユミナ「私はニンニンジャーで」

ルー「私はゴーカイジャーにします」

 

説明後、全員がそれぞれ修行したい相手を選択した。

 

レイガ「長居するのは良くないから。一日だけね」

ユミナたち『はい』

『31バーン! ゲキレンジャー!』

『29バーン! マジレンジャー!』

『33バーン! シンケンジャー!』

『39バーン! ニンニンジャー!』

『35バーン! ゴーカイジャー!』

 

それぞれのギアからゲキイエロー、マジレッド、シンケンレッド、モモニンジャー、ゴーカイブルーが現れる。

それから各々修行を始める。

エルゼはパンチ力強化にパンチスピードの向上。

リンゼはマジレッドの魔法取得。

八重はシンケンジャーの剣技の取得。

ユミナは弓攻撃の向上にシュリケン忍法の取得。

ルーはゴーカイブルーの二刀流。

それぞれの課題を行う。

ちなみにスゥは

 

ティラミーゴ「ティラ~! スゥはレイガのお嫁さんなのか」

スゥ「そうなのじゃ。レイガはわらわのことを好きなのじゃよ」

チビガルー「へっへ~、レイガはモテモテだからな」

ピーたん「あいつは幼女にもモテるからな」

 

リュウソウジャーの説明の時になぜか出てきたティラミーゴ、チビガルー、ピーたんと戯れていた。あとピーたん言い方に気をつけろよ!

 

 

 

 

 

そうして元の世界に戻って、次の日地下の競技場ではヒルダと先王陛下の試合が行われていた。

どうにか先王陛下の攻撃を木剣で躱したり、捌いたりして、耐えていたヒルダ。

 

ギャレン「どうした! お前の公王陛下への想いはそんなものか!」

ヒルダ「・・・私は玲我様を信じております。玲我様が私に与えてくれたこの力で、お祖父様に勝ちます!」

ギャレン「ではやってみせよ!」

ヒルダ「はい」

 

ヒルダは左手に填めている緑色の『プロトリュウソウチェンジャー』にハヤソウルをセットする。

 

『ハヤソウル!』

ヒルダ「はああぁぁっ!」

 

ヒルダのスピードが上がり、ギャレンさんに攻撃する。最初こそそのスピードに驚き攻撃を受け止めていたギャレンさんだったが、徐々にそのスピードにも慣れてきてヒルダの攻撃を避け始めた。

 

ギャレン「そのスピード、最初こそ驚いたが、もう慣れたぞ」

ヒルダ「くっ!」

 

再び押され始める。

 

八重「強いでござるな。騎士の剣でありながら、荒々しい実戦の激しさも感じるでござる。ヒルダ殿が柔とすればまさに剛。技というよりゴリ押しの剣でござるな・・・」

エルゼ「でもなんとか堪えているじゃない? けっこういい勝負に持ち込めてると思うけど」

ルー「それは完全に徹しているからですわ。ハヤソウルで攪乱はできましたが、すぐに対応されて。このままでは崩されて、倒されるでしょう」

 

八重、エルゼ、ルーが試合を分析する。確かにこのままでが勝てない。

 

レイガ「一瞬の隙さえあれば、いける」

ユミナ「でも先王陛下が隙なんて作りますかね。いくら格下で孫娘が相手と言っても・・・」

レイガ「それを作るのはヒルダ本人だよ」

 

え? という顔をしたユミナを置いて、ヒルダは攻撃を防ぎ続けている。

 

ギャレン「終わりだ! ヒルダ」

ヒルダ「まだです」

 

ヒルダはギャレンさんが攻撃のモーションに入る前に

 

『カタソウル』

 

カタソウルを使って、木剣を硬くする。さらに

 

『ツヨソウル』

 

ツヨソウルで自身の攻撃力を上げる。

 

ヒルダ「はああぁぁ!」

ギャレン「な!」

 

両者の木剣がぶつかった瞬間、片方の木剣が折れた。その木剣はギャレンさんのだ。

 

ギャレン「ぐふうっ⁉」

 

その勢いでヒルダは先王陛下の身体へと打ち込む。

これは僕が教えた二つのリュウソウルを一度に使う技で『ツインソウル』である。

修行で一回だけ使えるようになったから、あとはタイミングだけ問題だったが、ヒルダなら大丈夫だと思っていた。

 

ヒルダ「玲我殿! 勝ちました! これで私も玲我殿と添い遂げることができます!」

ギャレン「うむ。よくぞワシを倒した」

 

床に倒れた先王陛下を回復させる。

 

ギャレン「己の未熟さを痛感したの。負けは負け。お前の覚悟、とくと見定めた。結婚を許そう。倅にも文句は言わせぬ。今よりお前はレスティアではなく、テンペスト・レイの騎士となれ」

ヒルダ「お祖父様・・・」

ギャレン「玲我殿、剣しか振るえぬ孫娘ですが、末永くよろしくお願いいたします」

レイガ「わかりました。ご安心を」

 

そうして正式にヒルダが僕のお嫁さんとなった。

 


 

『プロトリュウソウチャンジャ―』

リュウソウチェンジャーのカラーを緑色にした物。リュウソウルをセットすることで、一時的に力を使うことができる。

現状強リュウソウルは使うことができない。




誤字報告ありがとうございます。


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聖剣

〈ある日のレイガ〉

 

桐琴「ヒャッハー!」

叶「はああぁぁぁ!」

 

ただいま惑星レイガのジュラテンペストの訓練場では二人の女性が戦っていた。片方は金髪で前を大胆に開ける服装をしている『森 桐琴 可成』。いわゆる戦闘狂である。相手をしているのは腰まで届く長き藍色の髪を後ろに束ねた女性『光神 叶』。(姓は家族と縁を切ったため光神を受け取った)

彼女もまあ戦闘狂で暇さえあればいつも誰かと戦っている。桐琴は槍『蜻蛉止まらず』を、叶は刀『白狐』を使っている。

お互い攻撃を繰り出しているが、両者攻撃をすべて受け流したりして未だ無傷である。

 

叶「さすが桐琴殿、まだまだ行きます!」

桐琴「アッハッハッハ! もっと行くぞ叶!」

 

かれこれ一時間は戦っている。

 

メレオレオナ「楽しそうだな。私も混ぜろ!」

ヴァ―リー「私も混ざる」

デルタ「デルタも混ざるのです!」

 

途中から女獅子の二つ名を持つ女性『メレオレオナ・ヴァーミリオン』。戦闘狂の銀髪女性で白龍皇『ヴァ―リー・ルシファー』。デルタも加わった。片や熱血、片や露出狂。まさにカオス。

 

レイガ「てかこれってなんの争い?」

ディアボロ「確か今日レイガ様と一緒に寝る人を決めるとか」

レイガ「・・・僕聞いてないんだけど」

ディアボロ「誰かに聞かれたらさらに増えると思いますが?」

レイガ「・・・確かに」

 

なんか先が思いやられるな。

 


 

〈レイガサイド〉

 

ヒルダが僕の嫁に決まってから数日後、レスティアの人たち全員を連れて【コネクト】を開き、騎士王国へと転移した。

今回で二度目だ。前回はフレイズのせいでゆったりできなかった。

王城へと案内され、国王陛下である騎士王、レイド・ユナス・レスティア陛下、加えてその家族と応接室で対面する。先王陛下のご了承はいただけたけど、ご家族へと挨拶はしとかないとな。

 

レイド「ふー・・・。父上の突拍子の無さは今さらですが、今回はまた極めつけですな。まあ、ヒルダの結婚自体は何も反対はしませんよ。渡りに船というか、ヒルダのようなじゃじゃ馬を乗りこなせるのは、公王陛下のような方が相応しいと思いますしね」

エステル王妃「わたくしもそう思いますわ。良かったわね、ヒルダ。幸せになるのですよ」

ラインハルト王子「おめでとうヒルダ。公王陛下、妹をよろしくお願いいたします」

 

・・・まともだ。とてもまともだ。先王があれだからて、変人ばかりだと思ったけど・・・いたって普通の家族だ。

国王陛下は短い髭や濃い茶髪に白髪が交わり始めている。エステル王妃はどこかセシルさんや真々子に感じが似ている。

ヒルダの兄、ラインハルト王子は母親譲りの金髪。

 

ヒルダ「父上、母上、兄上・・・。私、必ず幸せになります!」

 

ヒルダが大粒の涙を流し、母親の胸に飛び込んだ。(´;ω;`)ウッ…感動。

 

ギャレン「で、じゃの。事を早急に進めたのには実はわけがあってな。近々、倅が王位をラインハルトに譲り、退位しようと思ってるのじゃ。が、その式典で使う宝剣に少し問題が起きての」

レイガ「宝剣・・・ですか」

ヒルダ「王家に古くから伝わる聖剣です。聖剣レスティア。国名を与えられた、我が国の象徴とも言える剣です」

 

ヒルダの説明を聞くと、一人の騎士が部屋に入ってきて、恭しく封印の施された長い箱を国王に手渡して去っていった。

騎士王が短い呪文を唱えるとカチッと何かが外れる音がして、蓋の封印が解ける。箱を開けると一本の剣が収められていた。

金と銀の装飾で彩られた美しい剣だ。

 

レイガ「でもこれって」

 

剣が真ん中でポキリと折れているのだ。

 

ギャレン「この聖剣レスティアはよほどのことが無い限り、封印を解くことはない。王位継承の儀式や、国をあげての戦いの時とかじゃ。最近では三年前のヒルダの騎士叙勲式典で使われたのが最後じゃった」

レイド「ラインハルトに王位を譲ることを決め、その式典の準備のために久しぶりに封印を解いてみたら、この有様だ。なぜ折れたのかわからぬ。わからぬが、これでは式典が行えぬ。最悪レスティアに似せた紛い物でやるしかないと残念に思っていたところ、ヒルダから公王陛下の話を聞いての」

 

騎士王が腰の剣を手に取って説明する。あれは僕がヒルダにあげた剣だ。

 

ギャレン「このような素晴らしい剣を自ら作る方ならば、レスティアの修復もできるのではないか。そう思い、テンペスト・レイへワシが出向いたわけじゃよ。まあ、それもついでで、ワシの興味はお前さんにあったがの。ヒルダが夢中になる男がどれほどの者か、見極めてやろう、とな」

ヒルダ「お、お祖父様⁉」

ラインハルト「ここ数か月、口を開けば公王陛下のことばかり、いただいた剣を眺めてはため息をつき、旅の商人や吟遊詩人にはテンペスト・レイのことを根掘り葉掘り聞いて一喜一憂、あんな姿を見ていれば僕だって気がつくよ」

ヒルダ「あ、ああ、兄上まで⁉」

 

あたふたと狼狽するヒルダを横目に、目の前の聖剣に注目する。この古代文字って

 

レイガ「手にしても?」

レイド「構わんよ」

 

折れた柄の方を手に取り、古代文字を解読する。

 

レイガ「これって・・・」

『レジーナ・バビロン作』

 

・・・あの博士かよ。

 

ヒルダ「どうしました、玲我様?」

レイガ「この剣・・・どうもフレームギアを作った人の作品らしいんだよね・・・」

ヒルダ「なんと・・・!」

 

でもどうしてここにバビロン博士の作品が・・・まさか『蔵』か・・・『蔵』だな。『蔵』しかないよ!

 

レイガ「まあとりあえずこれなら直せますよ」

 

僕は早速修理しようとギアトリンガーとビルドギアを取り出そうとしたが

 

レイガ「あれ?」

 

取り出したギアはボウケンジャーギアであった。おかしいな、と思っているとギアが勝手にギアトリンガーにセットされる。

 

『ババババーン! ボウケンジャー!』

 

ギアから出てきたのは黄金に輝く聖剣。

 

レイガ「ってズバーン⁉」

 

僕が驚いていると、聖剣の中心エンブレムが回転し、聖剣が人型の変形をする。

 

ズバーン「ズバーン!」

ヒルダたち『え⁉』

 

ヒルダたち全員がその光景に驚く。

 

ヒルダ「玲我様・・・その剣は」

レイガ「ああ~これは僕の剣で、意思を持ってる剣なんだ」

ヒルダ「意思を⁉」

ズバーン「ズン! ズン!」

 

そんな中ズバーンは僕に話しかける。

 

ズバーン「ズバ! ズバ! ズバーン!」

ヒルダ「えっと~玲我様。剣はなんと?」

レイガ「・・・まったくわからない」

ヒルダ「え⁉」

レイガ「いや~いまだズバーンが言ってることは何となくしかわからないんだ。ユーリ翻訳お願い」

ユーリ(はあぁ~わかった)

 

すると、僕の中から光の玉が飛び出し人の形になる。

 

ユーリ「よっと」

ヒルダたち『え⁉』

 

本日二度目の驚きの声である。

 

レイガ「それじゃあユーリ、翻訳お願い」

ユーリ「ああ」

ズバーン「ズン! ズン! ズバババーン!」

ユーリ「えっと~、この聖剣修理に自分の力を使え、だとさ」

レイガ「え! それは嬉しい提案だけど、どうしていきなり?」

ズバーン「ズバ! ズバ! ズバーン!」

 

ヒルダの方を指差しながら何かを伝えるズバーン。

 

ユーリ「なになに、そこのヒルダのことが気に入った。特にレイガの話になるとたじろぐところとか」

ヒルダ「ふえあっ⁉」

ズバーン「ズン! ズン!」

ユーリ「そこが高ポイントだ、と」

 

・・・いやそこ⁉

 

レイガ「ズバーンって結構乙女な感じ・・・いままで知らなかった」

ユーリ「まあここまで聖剣から好感をもてるのも珍しいからな」

 

と、いうことで僕はズバーンから力の一部を貰い、ビルドギアで聖剣レスティアを修復する。

 

レイガ「っと、これで完成です」

 

完成した新たな聖剣は黄金に輝いていた。ズバーンの力を加えたことにより、従来の金と銀の装飾がほぼ金になってしまい、ところどころ緑と赤が含まれている。

 

レイド「おお・・・! ありがたい。これで式典も滞りなく進められる。感謝しますぞ!」

 

国王陛下に手渡す。

 

レイガ「以前の物とはだいぶ違いはありますが・・・」

レイド「いや、充分です。感謝しますぞ」

 

国王陛下は聖剣を鞘に納める。

それから僕からも新国王の即位を祝って、一本の晶剣を贈ることにした。モデルはジュウレンジャーの龍撃剣にしてみた。

 

ラインハルト「いや、素晴らしい。実は羨ましかったんですよ。みんなが持ってる水晶の剣が。しかし、これはそれ以上です。何よりの祝いの品ですよ」

 

喜んでくれてよかった。

数日後、新たなレスティア騎士王国の国王が誕生した。その式典の中で、第一王女、ヒルデガンド姫とテンペスト・レイ公王である僕の婚約も発表され、ヒルダは名実共に僕の婚約者となった。ヒルダだけ正式に決まるのが長かったな~。

 

 

 

 

婚約発表から数日後。

僕は訓練場を見つめていた。そこには騎士団のみんなが訓練をしていた。今日は巨獣対策で『サイバーゴモラ』を相手に特訓している。

いや~みんな巨獣にも慣れてきたな。レインさんたちも指示が的確になっている。

 

ハクロウ「いやはや、皆巨獣相手にも苦戦しなくなりましたなぁ~」

 

すると、ハクロウが横からやって来る。

 

レイガ「ハクロウ。みんな強くなったね」

ハクロウ「はい。さすがはレイガ様が選出した兵士たちです」

レイガ「僕はただ選んだだけだから、その先はみんなが頑張ってくれたおかげだよ。ハクロウもありがとう。みんなを鍛えてくれて」

ハクロウ「ありがたきお言葉」

レイガ「そこで、一つ話したいことがあるんだけど」

ハクロウ「お話とは?」

レイガ「みんなチームワークは格段に上達した。これならフレイズが来ても中級種なら苦戦することなく戦える。ならここからは個人のレベルアップだと思うんだ」

ハクロウ「それはワシも思っていました。しかし個人ともなると人数も多く、練習内容も考えないといけません」

レイガ「そうだよね。そこでなんだけど一つ提案なんだけど」

ハクロウ「それは?」

レイガ「柱稽古はどうかな?」

惑星レイガ出身のみんな『⁉』

 

その単語を発した瞬間、惑星レイガ出身の者は全員僕の方を見た。

 

ハクロウ「うむ・・・柱稽古ですか。確かに今の騎士団なら多少の無茶でも乗り越えれるかもしれませんな」

レイガ「だね。じゃあ早速みんなに連絡しとくよ」

ドット&錆兎『ちょっとまった!!』

 

と、話が決まりそうなとき、ドットと錆兎がものすごい勢いで迫って来た。

 

レイガ「どうしたの二人とも?」

錆兎「どうしたじゃねーよ!」

ドット「まじで柱稽古するのか!」

レイガ「そうだけど」

ドット&錆兎「「はんたーーーーい!」」

レイガ「え~どうして」

ドット「あんなの命がいくつあっても足らないぐらいきついんだよ」

レイガ「でもそのおかげで二人とも強くなったじゃん」

ドット「同時にトラウマ植え付けられたわ」

レイガ「錆兎だって義勇も参加するからいいでしょう」

錆兎「いや義勇はともかく他の連中は嫌だ。特に小芭内とか実弥とか悲鳴嶼さんとか」

レイガ「う~ん。そこまで言うならしょうがないな」

ドット&錆兎「「よっしゃー!!」」

レイガ「縁壱たち五剣豪に頼むよ」

ドット&錆兎「「柱稽古でお願いします!!!」」

 

二人ともものすごい勢いで土下座までしてお願いしてきた。

 

レイン「はあ~最初からそう言えばよかったんだよ」

裕斗「まあ縁壱さんたちが来てくれたら嬉しいけど」

ランス「確実に騎士団の何人かはトラウマになるな」

アビス「なんならやめる人もいるかも」

レイガ「そうなの? 僕は楽しかったけど」

惑星レイガ出身のみんな『それはお前(レイガ様)(レイガ君)が規格外だからだよ(ですよ)!』

レイガ「ええ~」

 

みんなから盛大にツッコまれた。




戦国恋姫から桐琴、ムシブギョーから叶、ブラッククローバーからメレオレオナ、ハイスクールdxdからヴァ―リーをTS化して出しました。
次回は柱稽古編


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柱稽古前編

〈第三者サイド〉

惑星レイガと繋がっている部屋に複数の声が聞こえる。

 

グレイフィア「皆さまお待ちしておりました」

しのぶ「グレイフィアさん。お迎えありがとうございます」

 

会話をしているのはグレイフィアと蝶の髪飾りを着用した女性『胡蝶しのぶ』

 

実弥「それよりレイガの奴はどこにいるんだァ」

グレイフィア「レイガ様は只今会議中でしてもう少しで来ると思います」

実弥「ッチ! なんだよ。俺たちを呼んでおいて、本人は遅れてくるのかよォ」

 

舌打ちをしたのは痛々しい傷だらけの凶悪な面相をした男性『不死川実弥』

 

小芭内「おい、不死川。いい加減にしろ。お館様を名前で呼ぶのは」

実弥「(# ゚Д゚)アアァ! 別にあいつが呼び名はどっちでもいいって言ったから、名前で呼んでんだよ。それに俺はあの方以外にお館様は使わないって決めてんだよォ」

 

不死川に文句を言うのはオッドアイで口元を布で隠している男性『伊黒小芭内』

 

蜜璃「ねえねえ伊黒さん。修行の後は自由に過ごしていいってお館様が言ってたから。どこかに行きましょう。(〃▽〃)ポッ」

小芭内「・・・そうだな」

 

伊黒に可愛らしく話しかける女性『甘露寺蜜璃』。この二人は夫婦である。

 

天元「おいおい。ド派手にいちゃつくのはいいが、修行は忘れるなよ」

杏寿郎「うむ! 相変わらず伊黒と甘露寺はいい夫婦だな」

行冥「夫婦としての時間も大切だが、我らの任務も大切」

無一郎&義勇「「・・・」」

 

額に輝石をあしらった額当てを着けたこの場で一番派手な男『宇髄天元』

炎を思わせる焔色の髪と眼力のある瞳を持つ男『煉獄杏寿郎』

涙を流しながら数珠を持って合掌する男『悲鳴嶼行冥』

天井を見上げてボーっとしている男『時透無一郎』

同じくこの騒ぎの中でも無言でいる男『冨岡義勇』

彼らはある時レイガとともに戦った組織のトップ『柱』と呼ばれる剣士である。

そんな騒いでいる中

 

レイガ「ゴメン! みんな遅れた」

 

我らが主人公光神玲我改めウルトラマンレイガが入室してきた。

すると、先ほどまで騒いでいた全員が一斉に跪く。

 

行冥「お待ちしておりました。お館様」

レイガ「久しぶりみんな。元気にしてた?」

行冥「はい。お館様も元気そうで何より」

レイガ「まあねえ」

「じゃあ明日の予定について話し合おうか」

『はっ!』

 

そこから彼らは明日行われる柱稽古の内容について話し合い、その後すぐに訓練場を改築した。

訓練場は地獄へと変わる瞬間であった。

 

 

 

 

 

〈レイガサイド〉

しのぶたちが来てから次の日、僕は騎士団を全員訓練場に集めた。中には高坂さんたち武田四天王に椿さんもいる。もちろんレインたち惑星レイガ出身もいるが、ほとんど顔が暗い。

 

レイガ「みんな今回は集まってくれてありがとう。みんなも知っていると思うけど今回は全員の能力を底上げする目的として一ヵ月の稽古を行うことにしました。それで今回皆さんを指南する指導者を紹介します」

 

僕の横にしのぶたちが並ぶ。

 

レイガ「それでは右から基礎体力の向上を担当する宇髄天元。見た目は派手だけど、一応忍びだから。椿さんたちは得る物が多いと思うから頑張って。それでは天元なにか一言」

天元「俺様は派手を司る神、宇髄天元。稽古中は俺の機嫌を常に窺い、全身全霊でへつらえ!」

騎士団『・・・』

 

すごい。みんな口を開けて唖然としている。

 

レイガ「こんな人だけど、稽古はまともだからみんな安心して」

騎士団(安心できるかーー!)

 

みんな内心ツッコんだ。

 

レイガ「次に高速移動の稽古を担当する時透無一郎」

無一郎「時透無一郎です」

騎士団(・・・え⁉ それだけ)

レイガ「無一郎は普段無口だけど、稽古中はちゃんと話すからみんなもよろしく」

 

無一郎の頭を撫でてあげると、無一郎は顔がにやける。

 

騎士団女性陣(かわいい!)

 

女性陣からポイントが爆上がりした無一郎。

 

レイガ「次に柔軟稽古担当の甘露寺蜜璃」

蜜璃「みんなこんにちわ~。稽古中はよろしくね~」

 

元気な挨拶をする蜜璃に男性陣の胸がキュンとなった。

 

レイガ「あと、蜜璃は結婚しているから。男性陣は夫からの復讐を気をつけてね~」

騎士団『え⁉』

 

そう言った瞬間に男性陣に殺気が向けられた。

 

レイガ「次に太刀筋矯正稽古を担当する伊黒小芭内。蜜璃の夫ね」

小芭内「伊黒小芭内だ。甘露寺に話しかけたら殺す!」

 

違う意味で男性陣の胸がキュンとなった。

 

レイガ「殺すのは冗談だと思うけど、まあ稽古が厳しくなると思うけど、頑張れ」

騎士団(他人事!)

レイガ「次に無限打ち込み稽古を担当する不死川実弥。見た目は怖いけどおはぎが好物だからなにかあればおはぎを渡して」

実弥「うるせえぇぇ!」

レイガ「あっぶ」

 

実弥が急に斬りにかかってきた。

 

レイガ「このようにすぐに頭に血が昇ると思うからおはぎを」

実弥「死ねえぇぇ!」

 

と、5分ぐらい実弥からの攻撃を避け続けた。

 

レイガ「次に筋肉強化を担当する悲鳴嶼行冥」

行冥「よろしく頼む・・・」

騎士団(なんで泣いてる⁉)

騎士団(この人、強い!)

 

何人かは行冥の強さを感じたっぽい。まあ柱の中でも最強だからな。

 

レイガ「最後にこれまでの稽古の集大成をこちらの二人、煉獄杏寿郎と冨岡義勇の実践で終わりとします」

杏寿郎「うむ。どれだけ強くなったか楽しみにしている」

義勇「・・・」

レイガ「義勇なにか一言お願い」

義勇「・・・待ってる」

騎士団(それだけ⁉)

錆兎「相変わらずだな。義勇」

レイガ「あと、治療担当の胡蝶しのぶ」

しのぶ「よろしくお願いします」

 

こうして柱稽古全体の説明を終える。

 

レイガ「詳しい修行内容は担当の者に任せているから、各自で聞いてください。あと稽古中は国の監視は僕の友人に頼むから、みんなは稽古に集中してください」

騎士団『はい』

レイガ「最後に」

騎士団『?』

レイガ「みんな、死んでも生き返らせるから頑張って」

騎士団『・・・』

 

この時みんなは僕の言葉を理解できなかった。いや理解したくなかったんだろう。

 

 

 

 

 

〈基礎体力向上稽古〉

 

基礎体力向上稽古では主に訓練場を走り回る。ただ、いつもの平らな訓練場ではなく山のように上り下りがあるように造った。

 

天元「おらおら、走りやがれ!」

騎士団『はい!』

 

現在騎士団の半分ぐらいが走っている。さすがに全員が走るわけにもいかないので、初日にテストを行って、クリアした人だけ次の稽古に行くことにした。まあ何人かは自主的に残ったが。ちなみに惑星レイガ出身者は強制的に残らされている。

 

天元「お前らはまだまだ走れ!」

ドット「なんで俺たちだけ周回数多いんだよ!」

天元「しゃべる暇あるなら走れ!」

ドット&錆兎「「ギャアア―――!」」

 

文句を言う奴は問答無用で天元から攻撃を喰らっている。まあ喰らってるのはドットと錆兎だけなんだけどね。

 

レイガ「頑張れーみんな」

 

僕も仕事を終わらせて走っている。まあみんなだけ稽古して僕だけしないと不公平だし。

 

騎士A「なあ、陛下あれで何周目だ?」

騎士B「わからん、だってもう三桁いってるだろう」

 

なんか騎士団からは遠い目をされたが、なぜだろう?

僕は三日ほどでこの訓練を終えた。

 

 

 

 

 

〈高速移動稽古〉

 

高速移動稽古では、無一郎に何度も打ち込みながら彼の相手を翻弄する歩法を学ぶという内容である。

 

無一郎「もっと筋肉の弛緩と緊張の切り替えを滑らかにするんだ」

レイン「はい」

 

今は無一郎とレインさんが打ち合っている。他の所では無一郎を模倣したロボで全員が打ち合っている。場所だけは無駄に広くして正解だった。

 

レイガ「無一郎、次お願い」

無一郎「はい。お館様」

 

レインさんとの打ち合いが終わった時に、無一郎にお願いした。その際、周りのみんなも打ち合いを止めて僕らの試合を見ようと壁際で座った。

 

レイガ「いくよ」

無一郎「・・・」

 

次の瞬間、互いの木剣が何度もぶつかりあう。周りのみんなは口を開けてポカーンとしている。

 

無一郎「霞の呼吸 壱ノ型 垂天遠霞」

レイガ「神の呼吸 参ノ型 光陰矢」

 

互いの突きの技がぶつかり合う。その風圧で何人かは後ろに倒れる。

 

ハクロウ「それまで」

 

次の攻撃を使用とした瞬間、たまたま見に来ていたハクロウに止められる。

 

ハクロウ「それ以上だと屋敷が壊れますぞ」

レイガ「ああ・・・確かに」

 

上を見るとちょくちょく屋根の一部が壊れている。

 

レイガ「今度は外でしようか」

無一郎「はい。お館様」

 

ということで僕は屋敷を治したあと、次の稽古場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

〈地獄の柔軟〉

 

地獄の柔軟では体の関節や動きを柔らかくする為に、音楽に合わせて新体操を踊るというすべての稽古の中で意味不明の内容である。なぜ新体操なのかはよくわからなかったが、効果は絶大である。

屋敷の内装も新体操用にしてある。

 

蜜璃「みんな今日も頑張りましょうね。えいえいおー」

騎士団『おー』

 

この稽古では午前にはダンス、午後には柔軟体操となっている。今回の稽古中最も楽そうに見えるが、実際は違う。

 

ぺガさん「おら! 今日も踊るぞ! お前さんら」

騎士団『はい』

 

ダンス担当はなぜか『ぺガさん』。僕呼んだ覚えないけど来た時にはすでにいた。

 

ぺガさん「ダンスと言えばわいやろ」

レイガ「ぺガさん、心読めたっけ?」

ぺガさん「あほ抜かせ、読めるわけないやろ。顔にでてるわ」

バイス「それより・・・なーんで俺っちに着いてんのこのおっさん」

ぺガさん「おっさんちゃうわ! ぺガさんや。いい加減名前で呼ばんかい」

バイス「なら、俺っちから離れろよー!」

 

と、なぜか稽古が始まってからずっとぺガさんに纏わりつかれているバイス。(ペガサスシシレッド状態)

 

レイガ「まあ・・・頑張ってバイス」

バイス「まってくれよ、レイガ!」

 

バイスを置いて、ダンスをし始める僕。

時間が過ぎて、午後に入る。

 

騎士団『ギャアアアアアアア

 

いたるところで悲鳴が聞こえてくる。

 

蜜璃「頑張ってー」

 

優しそうに話しかける蜜璃。だが、その光景は蜜璃の筋力で力技で関節や筋肉を無理矢理ほぐされるというもの。身体が固い人はまさに地獄である。

その笑顔が逆に怖い。

 

蜜璃「みんなお疲れ~、お風呂入ったら夕食だからね」

騎士団『はい』

 

蜜璃の稽古では、彼女の好物であるパンケーキが出される。その美味さに騎士団の中ではパンケーキがブームとなった。パンケーキ専門店でも考えようかな。

 


 

『神の呼吸』

レイガが使う呼吸法。今のところ十まで作ろうと考えている。

『参ノ型 光陰矢』

突き技。ことわざ『光陰矢の如し』をイメージして作りました。その意味らしく型の中では最速。攻撃範囲は狭い。

 

 




鬼滅の柱集結。どこかで柱との出会いも書きたいと思います。


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柱稽古後編

大変遅くなりました。いろいろ忙しくて4月投稿できませんでした。
短いですが投稿します。


〈レイガサイド〉

 

柱稽古が始まってから二週間が経過した。みんな最初の頃より格段にレベルアップしている。何人かは脱落すると思っていたけど、今のところは脱落者はゼロ。みんながんばってるね~。まあ最初の三つは楽な方だからな~。あとの三つはまさに地獄だからな~。

 

〈太刀筋矯正稽古〉

 

レイガ「やっほ~、小芭内。稽古はどんな感じ?」

小芭内「お館様。何人かは見所があるが、大半はまだまだ」

 

太刀筋矯正稽古では多数の障害物がある稽古場で小芭内と打ち合う。障害物を避けながら打ち込むという非常に難易度の高い稽古である。

従来はこの障害物に人間を縛り付けていたが、さすがに今回は無しにしてもらった。

 

レイガ「なるほどね~そ・れ・で、そこで気絶している彼らは?」

 

稽古場の一角では山のように積み上げられている騎士団のメンバーがいた。しかも全員気絶しているし

 

小芭内「・・・蜜璃に話しかけた」

レイガ「それだけ⁉」

小芭内「重罪」

 

まただよ小芭内は蜜璃のこととなると、マジで見境なしだからな。え? 僕も・・・そっかな~

 

レイガ「会話ぐらいは許してあげなよ。みんな強くなりたいだけだから」

小芭内「・・・努力します」

 

とりあえず気絶しているメンバーを医務室まで転移させて僕は小芭内と向かい合う。

 

レイガ「それじゃあ、僕にも稽古をつけてよ。小芭内」

小芭内「はい」

 

僕らはお互いに木刀を構える。

 

レイガ&小芭内「「ッ!」」

 

互いに木刀で攻撃する。普通なら障害物のせいでまともに木刀を振ることができない。

しかし

 

兵士A「うそだろ⁉ まともに攻撃ができないあの場所で攻撃し合ってる」

兵士B「しかもお二人ともその攻撃をすべて避けてるし」

 

僕らは互いに狭い空間で攻撃をしつつ、その攻撃を避けている。

 

レイガ「よっと、やっぱり久しぶりにすると難しいな」

 

それにしても小芭内は相変わらず正確に木刀を振ってくるな。何本かは避けるのが遅れて服の端が斬れてる。

 

レイガ「もっとスピードあげてもいいよ小芭内!」

小芭内「御意!」

 

さらに速度をあげて攻撃を繰り返す。ようやく目も慣れて来て余裕がでてきた。

打ち合いを初めて五分後

 

レイガ「木刀がさきにいったか」

 

突き技で互いの木刀が当たった瞬間に真っ二つに折れた。

これ以上は続行不可能である。

 

小芭内「さて今の打ち合いを見たならもうできるだろう。休んでる奴らは今すぐ再会しろ。出来ん奴は縛り付け」

レイガ「やめなさい」

 

 

 

 

 

〈無限打ち込み稽古〉

 

小芭内の稽古場を離れ、次の稽古場である実弥のもとを訪ねた。

 

実弥「よーやく来やがったなぁ、レイガ!」

レイガ「どうしたの実弥? そんな怖い顔して」

実弥「どうしたもこうしたも来る奴ら全員おはぎもってくるんだよ! ご丁寧になぁ!」

レイガ「よかったじゃん。実弥おはぎ好きだから」

実弥「そういう問題じゃねぇぇ!」

 

と、なぜか怒りながら攻撃をしてくる実弥。この稽古はシンプルで全員がかりで永遠に不死川に打ち込み続けるという内容である。ただし失神するまで休みがないから『無限打ち込み』なのである。クリア条件?・・・そういえばこれってどうすれば達成なのかは知らなかったな。

実際稽古場にいる騎士は全員失神していた。まるで覇王色の覇気だな。

 

レイガ「本気でするのはいいけどやりすぎは禁物だよ実弥」

実弥「じゃあお前でストレス発散だぁ!」

レイガ「え~~」

?「ちょっと待った―――」

 

実弥と打ち合っていると、実弥の後ろから声がした。声がする方向を見ると、ボロボロの姿をした裕斗、アビス、錆兎、ランスにドットが立っていた。

 

実弥「なんだお前らてっきり失神していたと思ってたがなぁ」

ドット「あの程度でこの主人公が気絶すると思っていたか」

ドット以外『・・・』

錆兎「こいつマジでバカだな」

裕斗「いやーそこまで自分が主人公だと言われたらね・・・」

ランス「・・・アホドット」

ドット「おいーーーーー聞こえてるぞ! 脇役その1、2、3」

錆兎「誰が脇役だ!」

ドット「うるせー脇役のくせに全員イケメンって・・・この世は不平等だーーーー」

レイガ「ドットどんまい」

ドット「うるせーーお前だけには慰めもらいたくないんだよ、このハーレム野郎。そのモテ期を少しはよこせ」

 

なんか逆切れされたんだけど!

 

レイガ「まあそんなことより」

ドット「そんなこと⁉」

レイガ「実弥が向かってくるよ」

ドット「え?」

レイガ「おらぁぁぁぁぁ」

 

ドットが一人嘆いてるときに実弥が攻撃を仕掛けてきた。

 

実弥「よそ見してる暇あるならぶち殺すぞぉ」

ランス「上等だ。貴様は俺が殺す」

 

ランスが前に出て杖を構える。てかなんか殺気漏れてるけど、どうしたの?

 

ランス「貴様だけは許さない

妹のアンナをたぶらかした貴様を

ランス以外『・・・』

レイガ「えっと~実弥。アンナちゃんをたぶらかしたの?」

実弥「そんなことするわけねえだろう」

レイガ「でも実弥前にも禰豆子ちゃんをたぶらかしたって善逸が」

実弥「それはあいつの勘違いだ! ただ頭を撫でただけで」

レイガ「女の子の頭を撫でるのは有罪だと思う人」

錆兎&ドット「「はい!」」

ランス「妹に手を出した奴は死刑」

裕斗「う~ん僕は無罪で」

アビス「じょ・じょ・じょせいの頭をな・なで・なで

レイガ「アビスがショートした」

 

と、なんか身内だけで盛り上がっている。

 

ランス「死刑執行【グラビオル】」

 

ランスが杖を振り下ろすと、実弥周辺の重力が強くなる。普通なら立っていられないほど強い重力魔法だが、実弥は堪えている。

 

実弥「動機は意味不明だが、殺るならなってやるよぉ。風の呼吸弐ノ型 爪々・科戸風」

 

重くなっているはずの木刀を無理やり持ち上げて斜めに振り下ろす。四本の斬撃が襲い掛かる。

 

ドット「【エクスプロム】!」

 

が、ドットの魔法とぶつかり相殺する。

 

ドット「てめえの相手は俺だろうが」

実弥「あ?

ドット「なんで身体中傷だらけのやつがモテて、この俺はモテねえんだ・・・

不公平だろう

ドット以外『・・・』

 

本日二回目の沈黙である。

 

実弥「どいつもこいつもうるせえなぁ。気に食わねえなら二人まとめでかかってきなぁ! 捻り潰してやるよ」

ドット「上等じゃオラァ!」

ランス「こいつと共闘するのは嫌だがしかたない」

 

と、ドット&ランスVS実弥の戦いが始まった。

 

レイガ「三人はいかなくていいの?」

裕斗「僕は無罪派だからね」

錆兎「どうせなら一対一でやりたいしな」

アビス「・・・」

レイガ「まだショートしてるよ。おーい帰ってこーい」

 

ということで僕ら四人は周りで気絶しているみんなを運びながら戦いを観戦した。

結果は実弥の勝ちだった。 

 

 

 

 

 

〈筋肉強化稽古〉

 

実弥の屋敷を離れ、最後の稽古場である滝へ向かう。

 

ドット「ていうかなんで滝があるんだよ⁉」

レイガ「そういえばドットとランスは行冥の稽古は初めてだっけ?」

ランス「前回はオーターのところで修行したからな」

ドット「あの人の稽古も地獄だったぜ。まじで死ぬとこだった」

錆兎「じゃあもう一度死ぬことになるな」

ドット「あん? どういうことだ」

錆兎「見ればわかるさ」

 

 

 

 

ドット「ってなんじゃこれーーーー」

 

そんな叫び声をだすドット。まあこの景色を見たら叫ぶのもしかたないよ。

なんせ念仏を唱えながら滝行をしている人たちを見たらね。

 

行冥「最も重要なのは体の中心・・・足腰である。強靭な足腰で身体を安定させることことは正確な攻撃と崩れぬ防御へと繋がる。まずは滝に打たれる修行、丸太三本を担ぐ修行、最後にこの岩を一町先まで。私の修業はこの三つのみの簡単なもの・・・」

ドット「・・・簡単ってなんだ」

 

と、説明を聞き終わったあと、かれこれ十分ほど呆然としているドット。ランスも明後日の方向を向いている。一度体験した三人も思い出したのか暗い顔をしている。

 

レイガ「ということでほら早く滝に浸かって」

 

ずっと遠い目をしている五人を転移魔法で強制的に浸からせる。

 

ドット「ってさっむー! どんだけ寒いんだよ」

レイガ「まあ念仏唱えればなんとかなるよ」

ドット「念仏ってそんな便利なものじゃねーし、てかこんなんで強くなれんのかよ」

レイガ「マッシュだって言ってたじゃん体幹はすべてを解決するって」

ドット「そんな脳筋の話信じれるか―」

 

と、ひと悶着あったけどなんとか稽古を始めることはできたけど

 

レイガ以外『・・・』

 

みんな滝行をしてから目が死んでいる。ずっと岩に張り付いているし

 

レイガ「みんな大丈夫?さすがに三時間以上もその状態だと心配するんだけど」

ドット「もう無理なんだよこの修行てかあんな大きな岩どうやって動かすんだよ」

レイガ「まあ行冥は教えるのは苦手だからね」

ドット「それでもだろう!」

アビス「二回目でもやっぱり慣れない」

裕斗「いつも三途の川を渡りかけるよ」

レイガ「とりあえず簡単なもの作ったから食べていって」

ランス「何を作った?」

レイガ「えっと塩おにぎりに焼魚、あと味噌汁」

みんな『!』

 

と、品目を言った瞬間全員がごはんに向かって走り、ものすごい勢いで食べている。しかも泣きながら

 

ランス「アンナの手作りおにぎりを食べたい」

ドット「どうせなら女性の手作りを」

レイガ「行冥! 修行内容倍にして」

ドット「いやーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

 

 

 

 

あっという間に一ヵ月が過ぎた。

最初の頃は何人か脱落最悪の場合辞めていくかと思ったけど全員が稽古をやり遂げた。

みんな格段にレベルアップしており、今ならフレイズもフレームギアなしで倒せると思うほど強くなった。

え? 最後の稽古はどうしたんだって?

それ聞いちゃう?

まあ結果だけ言えば義勇と杏寿郎の全勝だったけど惜しいとこまでいったんだけどね。

結果柱稽古はうまくいったのでまた次回開催しようかな。

 

みんな『絶対に嫌です』

 

・・・そこまで否定する⁉

 



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第十章
まさかの再会


原作とほぼ同じです


〈ある日の城下町〉

これは柱稽古が行われている最中の話である。

 

?「いや~平和だね」

?「そうですね」

 

テンペスト・レイのあるところで二人の男がのんびりと過ごしていた。

 

?「いまごろ柱稽古か~あれは俺でもきつかったからな」

?「ジャグラーさんでも」

?→ジャグラー「宇宙人でも死ぬぐらいきついんだよ。あいつら頭のネジ外れてるだろう」

?「まあ彼らの実力は元から桁違いでしたが、レイガさんのおかげでさらに強くなりましたしね」

ジャグラー「よく言うよ。その柱全員がかかっても余裕で勝てるオマエの方がバケモンだよ。五剣豪の縁壱さんよ」

?→縁壱「今の時点ではですよ。あと数年後にはわかりませんよ」

ジャグラー「へえ~五剣豪の座を渡すんだ」

縁壱「そう簡単に渡すつもりはありませんよ」

ジャグラー「そうじゃないとな・・・てかあいついつまで買いに行ってるんだ?」

縁壱「もうそろそろ」

?「ただいま」

ジャグラー「ようやくかよ・・・てかもう食ってんのかよ!」

?「ここのシュークリーム美味しい」

縁壱「それは良かったです」

ジャグラー「ったく俺にも食わせろよマッシュ」

?→マッシュ「・・・なくなってる」

ジャグラー「おい!」

マッシュ「もう一回行ってくる」

縁壱「私もお願いします」

マッシュ「りょ」

 

〈レイガサイド〉

柱稽古を終えてから数ヵ月が経った。テンペスト・レイはそろそろ冬に入る頃だろう。だんだん寒くなって来た。

 

レイガ「寒さ対策は大丈夫かな?」

高坂「この国の家には全て暖炉がありますから大丈夫かと。薪なども充分ですし。ただ火事には気をつけなければいけないでしょうね」

 

確かに火事には気をつけないとな。消防団も作ってあるし、ポンプも開発しておいたから大丈夫だろう。一応見回りとかもさせようか。

書類仕事を終わらせて、中庭の訓練場へと向かうと、ヒルだとレベッカさんが打ち合いをしていた。

ヒルダとの婚約発表後、この城に住み始めている。

 

ヒルダ「玲我様!」

レイガ「お疲れ様、ヒルダ」

 

ヒルダにタオルを手渡す。彼女は暇さえあればここに来て訓練をしている。今ではレスティアの鎧ではなく、テンペスト・レイの軽装鎧を身につけている。彼女は騎士ではあるが、ウチの騎士団には所属しておらず、僕の騎士だそうだ。このセリフどっかで聞いたことあるんだよな~どこでだっけ?

 

ヒルダ「どこかへ行かれるのですか?」

レイガ「ちょっと冒険者ギルドまでね。テンペスト・レイ支部ができたっていうから様子見に」

ヒルダ「あのっ、ついて行ってもいいですか・・・?」

レイガ「もちろん。一緒に行こう」

 

と、いうことでヒルダと一緒に城を出る。・・・これってデートだよね?

城下の方へ向かうと子供たちが走り回っていた。

 

子供1「へーか、こんにちわー!」

子供2「こんにちわ、へーか!」

レイガ「こんにちわ。あんまり遠くへ行くんじゃないぞ」

子供たち「「はーい」」

 

元気に挨拶をして子供たちが平原の方へと駆けていく。うーん本格的に学校でも作ろうかな。でも先生がいないんだよな~。何人か来てもらおうかな。

 

ヒルダ「子供たちが楽しそうですね。良い事です」

レイガ「そうだよね。子供は労働よりも遊んでいる方が楽しそうだし」

 

テンペスト・レイは比較的裕福な国とも言える。食べ物で飢えることはないし、仕事もそれなりにある。だけど産業がない。あるとすれば自転車ぐらいだろう。何か新しいことでも始めようか。

そんなことを考えていると目的地のギルドに着いた。すでに運営は開始しており、それなりに賑わっている。

とりあえず騒ぎが起きないようにフードをかぶって中に入り、受付まで向かう。

ヒルダは初めてのギルドで、入ってからずっとキョロキョロしている。

 

受付「いらっしゃいませ。初めての方ですか?」

レイガ「いや、ちょっと見学に来ただけで、支部長はいるかな?」

 

受付の猫耳お姉さんに曖昧に事得て、こっそりとギルドカードを見せる。

 

受付「ごっ・・・! はわわ・・・! しょっ、少々お待ちください!」

 

猫耳お姉さんが慌てて奥の階段に登っていくのを、他の同僚たちがきょとんとした顔で見ていた。

しばらくすると、猫耳お姉さんが降りて来て、僕にこっそりと小声で話しかけた。

 

受付「支部長室へとご案内しますっ。公王陛下っ!」

 

猫耳お姉さんに連れられて、支部長室へと入ると、

 

レイガ「あれ? レリシャさんが支部長なんですか?」

 

なんとそこにはギルドマスターのレリシャさんが微笑んで佇んでいた。

 

レリシャ「違いますよ。ギルドマスターはそれぞれの拠点になる支部を選べるのですが、私はまだ決めてなかったのです。そこに、ここが開設されると聞いてこれを幸いと乗り込んできたわけです」

レイガ「そういうことですか・・・」

 

フードを外して、勧められた椅子に座る。

 

 

 

 

 

そこからはフレイズの話やユーロン、あと僕とヒルダの婚約のお礼をいただいた。

フレイズに関してはユーロン以来いまだ出現していない。嬉しいようなまた大量発生のための準備か、いろいろ複雑である。

ユーロンに関してはいまだに僕の仕業だと言っているらしい。正直どうでもいいし、興味ない。

そんな感じで時間を過ごしているとドカドカと表へ何人か出ていく足音が聞こえた。

 

レイガ「もしかして乱闘?」

レリシャ「どうやらそのようですね」

 

部屋の窓から通りを見下ろす。

 

ヒルダ「むう。一人にあんな大勢で恥ずかしくないのでしょうか。しかも相手は女性じゃないですか」

 

興味を惹かれたのか、窓から外を見下ろすヒルダ。

 

レリシャ「しかし、実力ではあの女性の方が上のようですよ。ほら、一人やられた」

ヒルダ「確かに。腰の武器から斧使いのようですが、あれを使いこなすなら相当の膂力の持ち主なのでしょうね。動きもいい。くんれんされた動きというより、あれは自然に身についたものですね。しかし変わった格好をしてますね、あの人」

レリシャ「あれは確か大樹海に住む部族のひとつ、ラウリ族の民族衣装ですね。まさかこんなところで見るとは」

 

へえ~ラウリ族・・・らうりぞく?

まさかだよね。二人とは別の窓から覗き込む。四人もの男を地面に這いつくばらせ、五人目を相手に大立ち回りをしている褐色色の肌をした少女の姿が見えた。

ちょ!うそでしょ!

 

ヒルダ「玲我様?」

 

ヒルダの声を背に受けながら、部屋を飛び出し外に出る。その時、ちょうど少女の鮮やかな蹴りが相手の男の横っ面に炸裂したところだった。周りからの歓声を受けながら、ギルドから出てきた僕と視線が合う。やっぱり、あの時僕に噛みついて来たパムだ。

 

パム「・・・見つけた」

 

あれ? いま共通語でしゃべった。リーンはしゃべれないって言ってたけど。

タッ! と駆け出すtpいきなりパムが僕に抱きつき、勢いで倒れそうだったが、なんとか踏みとどまる。スゥのタックルに慣れたからかな。

そんなことを思っている間もパムは僕に頬ずりをしてくる。

 

ヒルダ「な、な、な、なにやってるんですかぁ⁉」

 

声がした方へ視線を向けると、顔が真っ赤なヒルダはわなわなと震えていた。

あ~修羅場だな。

 

ヒルダ「ちょっとあなた! 玲我様から離れなさい!」

パム「何だオマエ? コイツはパムのだ。パムはコイツの子を産むのだ」

ヒルダ「なっ、な、な、な⁉」

 

なにこの展開⁉

 

 

 

 

 

ユミナ「それは認められません」

パム「何故だ? レイガとパムの間にできた子が女なら我らの部族で育てる。男ならオマエたちが育てればいい」

 

話にならない、とばかりにユミナがため息をついた。

 

ユミナ「残念ですが、あなたに玲我さんのお嫁さんになる資格はありません。お引き取りを」

パム「嫁になる気は無い。子供だけ作ればいいのだ。レイガとの子なら樹海を統べる女王となろう」

 

さっきからコレの繰り返しだ。パムが言うには僕を探しに大樹海を出てきたらしい。旅の途中で共通語を覚えたらしい。

 

パム「オマエたちが何を反対しているのかわからん」

ユミナ「あなたが子供を生むのは勝手です。しかし、それが玲我さんの子供でもあるなら、話は別です。あなたは玲我さんの幸せより、部族の繁栄を選ぶ。そんな人に玲我さんの子供なんて生んで欲しくありません」

リンゼ「・・・少なくとも、戦闘能力だけで子供を作ろうというのなら、玲我さんでなくてもいい、はず。他の強い人と子供を作ればいいじゃ、ないですか」

パム「そうはいかん。すでにレイガには「誓いの牙」を立てた。レイガはパムのものだ」

ヒルダ「勝手なことを。玲我様はそんなものを認めてはいません」

 

ユミナ、リンゼ、ヒルダが意見を言う。そういえば黒歌も昔は強い子供を生むために近づいて来たな。まあ今では可愛い妻なんだけど。

 

八重「そもそもなんで玲我殿との子供を欲しがるのでござるか? どうもそこからして、何か理由がありそうな気がするのでござるが」

 

八重がパムに尋ねると、彼女は唇を噛み、顔を顰めて小さく呟いた。

 

パム「・・・我々は戦闘部族だ。だが他の部族と違い、子を得る時以外、自分達から攻めるようなことはしない。あくまで自分たちの集落を守るために戦ってきた。しかし近年、他の部族からの襲撃が厳しくなってきている。大樹海の中でその地位を保つためには、もっと強い血が必要なのだ。「剪定の儀」を勝ち抜くためにも」

スゥ「せんていのぎ? なんじゃそれは?」

 

スゥが首を傾げて聞き返す。

 

パム「「剪定の儀」とは、大樹海に生きる部族の戦い。十年に一度、部族を代表する者たちが戦い、部族の優劣を決める。そこで勝ち残った部族が全ての部族の頂点に立つ「樹王の部族」となり、大樹海の掟をひとつ定めることができるのだ」

 

十年に一度か。でもそれだと部族同士の争いとか頻繁に起こりそう。

 

エルゼ「その掟ってどんなものでも許されるの? 例えば「なんとか部族は大樹海から出ていけ」とか」

パム「大神樹に認められればな。部族の誇りを穢すものでなければ通ることが多い」

スゥ「だいしんじゅ?」

パム「大樹海の守り神だ。全ての部族に加護を与え、精霊の恵みを与えてくれる存在だ」

 

精霊か・・・パッと思いつくのはラミッシュで出会った闇の精霊だな。今頃元気かな。

 

パム「我々の部族はもう70年も「剪定の儀」で負け続けている。他の部族も新たな血を取り込み始めているのだ。パムとレイガの子ならきっと「剪定の儀」を勝ち抜き、部族に栄光を取り戻してくれる。このままではバルム族に我らラウリ族は滅ぼされてしまう」

リンゼ「パルム族・・・大樹海に住む他の部族ですか?」

パム「女は男に従うべきという部族だ。他の部族から女を攫い、子を産ませて男なら戦士にして育て、女ら母親と共に放逐する」

 

いやラウリ族と変わんないじゃん!男女逆転しただけ!

 

パム「今回の「剪定の儀」はもうすでに諦めた。バルム族が勝ち残り、「樹王の部族」にならないことを祈るのみだ。しかし、その次の「剪定の儀」ではパムとレイガの子が勝ち残り、我らラウリ族が「樹王の部族」となるだろう」

 

なんて気の長い話だ。てかそんな戦いのために子供作るなんて絶対に嫌だ。

 

ルー「次の「剪定の儀」はいつなんですの?」

パム「一月後だ。戦わずにして負けるのは部族の恥だろうから参加はするだろうが、負けるだろうな。パムもここにいる以上参加はできない。「剪定の儀」は部族同士が五人の勇者を戦わせるのだ。運が悪ければ死ぬこともある」

 

うん物騒

 

ユミナ「・・・・」

ルー「ユミナさん?」

 

なにやら考え込んでいるユミナ。

 

ユミナ「その「剪定の儀」でバルム族が勝った場合、どういう掟を追加するか予想できますか?」

パム「おそらくはラウリ族を樹海の外れへと追いやるような掟であろうな。狩場も少なく、生きていくのが困難なところへ。これならば部族の誇りも傷付けず、緩やかに滅びの道へと導ける。そして自分たちは元ラウリ族の狩場を手に入れるだろう」

ユミナ「では逆にラウリ族が勝った場合は」

パム「逆にバルム族を樹海の外れへ追い払う」

 

どっちもどっちだな!

 

ユミナ「結局、あなたはそのバルム族を追い払うために、玲我さんとの子供を欲しがっている、と、こういうわけですね?」

パム「それだけが目的ではないが、概ね間違ってはいない」

ユミナ「・・・わかりました。では取引をしましょう。我々がラウリ族をこの度の「剪定の儀で勝たせ、「樹王の部族」へと導きましょう。そのかわり、貴方には玲我さんとのことを諦めてもらいます」

 

・・・・マジですか。まじですかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

パム「・・・勝てるのか?」

ユミナ「さあ。でもこのまま負けるのを待って、十年後に賭けるよりいいと思うますが」

 

ユミナが薄い微笑みを返す。雰囲気が暗躍を考えているアルファに似ている。

ということで、ユミナたちが助っ人という形でラウラ族に加わることになった。てかパム以外助っ人って、それでいいの?

ちなみに僕は賛成している。まあ今のみんななら大抵の相手なら勝てると思うし、断る理由もないし

 

ユミナ「我々がラウリ族代表として「剪定の儀」を勝ち抜き、「樹王の部族」の称号を勝ち取る。このメンバーだと出場者は限られてくるでござるな」

エルゼ「そうね。パムは部族代表者として出るとして、残りは私、八重、ヒルダ、ルーってとこかしら」

 

うん僕も同じ意見だな。魔法が使えないからユミナとリンゼは不利だからね。

 

スゥ「なあユミナ姉さま、ひとつ疑問なんじゃが・・・」

ユミナ「なんですか?」

スゥ「その「剪定の儀」とやらに、戦わないわらわたちも行くのか?」

ユミナ「それはまあ。その時だけはラウリ族の者として応援ぐらいはしないと。それになにかあった場合、代わりの者も必要かもしれません」

スゥ「玲我もか?」

ユミナ「それは一番の関係者ですし。やはりみなさんも応援してほしいでしょうし、何かあった場合、心強いですからね」

スゥ「しかし玲我は男じゃぞ?」

スゥ&パム以外『あ』

 

僕を含めみんなが声をもらした。そうだラウリ族は女性しかいないんだ。

 

レイガ「・・・しょうがない。ラブコフ」

ラブコフ「ラブ?」

レイガ「いつものあれお願い」

ラブコフ「ラブ! ラブラブ~ やった!」

レイガ「みんな少しの間席外すね」

 

みんなに一言言って、部屋から出る。

数分後

 

?「みんなおまたせ~」

ユミナたち『・・・』

 

部屋に入るがみんななぜか絶句している。

 

?「? どうしたの」

ヒルダ「あの~どなたですか」

レイガ「どなたって僕、じゃなくて私だよ。れ・い・が」

ユミナたち『・・・えーーーーー!』

 

めっちゃ驚いている。

 

ユミナ「レ! 玲我さんなんですか?」

レイガ「さっきからそう言ってるじゃん」

リンゼ「とても・・・綺麗です」

レイガ「そう? まあメイクはラブちゃんに頼んだからね」

ラブコフ「ラブラブ! かんぺき」

エルゼ「なんか負けた」

八重「拙者もござる」

ユミナたち『うんうん』

 

みんななぜか落ち込んだいるが、はて?

 

ユミナ「でも・・・」

 

なぜかユミナ、エルゼ、ルーが僕の胸を見てくるがなんか変かな。

 

ユミナ「勝ちました」

エルゼ「あたしも」

ルー「わたしもです」

八重「? なんの話をしているでござるか?」




ウルトラマンオーブからジャグラーさん、鬼滅の刃から縁壱、マッシュルからマッシュを出しました。


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剪定の儀

〈レイガサイド〉

 

レイガ「おお~」

 

僕らは「剪定の儀」のために大神樹の根元へとやって来た。それにしても立派だな。

根本には大小さまざまな切り株があり、小さなものでも直径20メートルはある。それらひとつひとつが戦いのステージである。

大樹海の部族はおよそ240ほどおり、その中のジャジャ族がこの「剪定の儀」を執り行うらしい。彼らは何代もこの「剪定の儀」を司り、唯一、精霊から大神樹の根元、「神樹域」で暮らすことを許された部族なのである。その代わり「剪定の儀」への参加は許されていない。

 

レイガ「しかし、いろんな部族がいるのねえ・・・」

 

辺りを見回すとホント多種多様な服装や特徴を持っている。

 

八重「これなら拙者たちも目立たないので、ちょっと安心でござるが・・・」

ルー「玲我様? あまり女性をジロジロ見ない方がよろしいかと。外見上では同性なのですから変に思われます」

 

ルーに言われて視線をみんなに戻す。みんなもラウリ族の姿をしている。胸覆いと下帯姿だ。でもそんな姿を他の男に見せたくないから、腰にパレオのようなものを巻き、上には短いポンチャもようなものを羽織ってもらっている。ちなみに私も同じ格好をしている。しゃべり方も一人称も変えている。まあ素が出ちゃう時もあるけど・・・そこは許してね。

 

エルゼ「それで、あの切り株の上で戦うわけ?」

パム「そうだ。あそこは精霊の加護が働いていて、生命を奪うような攻撃は全て軽減される。例え真剣で首を斬りつけようとな。死ぬほどの攻撃だから、むろん相手は気絶するが」

 

凄い魔法だな。さすが精霊の力。

 

エルゼ「魔法も使えないのよね?」

パム「ああ、それも無効化される。それと、ここでは小さな火でも使わない方がいいぞ。使うなら神樹域の外に出ろ。審判の部族に睨まれる」

 

確かにこんな森の中で火は厳禁だよな。

 

レイガ「試合はいつ始まるの?」

パム「じきに始まる。今日は三つの部族に勝てば終わりだ。それで明日の戦いへと進めるようになる」

 

今日は予選で明日が本選か。

シャリーンッ、と、どこからか鈴の音が響く。ざわついていた辺りの喧騒が消え、朗々とした声が上がった。

 

部族の男「時間だ。出場者以外はこの場から去れ。あとは全て精霊の導きのままに」

 

「審判の部族」の男が厳かに告げる。それと同時に他の部族のみんながぞろぞろとツリーハウスのようになっている観客席や、木の間に渡された吊り橋、あるいはそのまま大木の枝の上に移動していった。

私たちも行くか。

 

レイガ「じゃあみんな、がんばって」

八重「わかったでござる」

エルゼ「大丈夫よ」

ヒルダ「お任せください」

ルー「全力を尽くしますわ!」

パム「行くぞ」

 

パムに連れられて八重、エルゼ、ヒルダ、ルーの四人が戦いのステージになる切り株の方へと歩いていく。僕らも観客席に移動する。

それにしてもさっきから妙に視線を感じるような4いや5人かな?

 

スゥ「なんだかわくわくするのぅ」

レイガ「そうだね」

リンゼ「あ、見てください、玲我さん。あれ」

レイガ「お?」

 

リンゼの指し示す先では、それぞれの部族代表にまるでスポットライトのように木漏れ日の光が差し込んでいた。やがてそれがゆっくりと動き出し、代表たちをそれぞれのステージへと導いていく。

 

レイガ「試合形式は一対一の対戦を全員分やるのか」

ユミナ「先に三勝したら、起こりの二人は戦わないでも勝ちという事ですね」

 

戦闘不能、あるいは降参するかで負け。また、場外に落ちることでも負けとなる。

反則は基本的にな無いが、大樹海に生きる部族として著しく誇りを穢す行為をした者は失格となる。

あるステージでは大男が振りかぶった斧が、相手選手の頭をカチ割ったように見えたが、実際頭が砕かれなかった。これが精霊の加護か。

 

ユミナ「あ、ラウリ族の試合が始まるみたいですよ」

 

ユミナが指し示した場所を見ようとするが、ここからじゃ見えにくいので、空中にステージ上の映像を映し出す。

おおっ、と他のラウリ族の人たちkら驚愕の声があがる。みんなのために画面をもう一回り大きくした。

 

 

 

 

 

一日目は順当に勝ち進んでいき、難なく三勝をあげることができた。というか先鋒、次鋒、中堅、のルー、エルゼ、八重以外は戦っていない。全ての試合を三勝で終わらせた。ストレート勝ちである。

 

レイガ「この調子で明日もいければいいんだけどね」

 

日が暮れる太陽を眺めながら私は呟く。ここは神樹域から離れた川のそばにある森の中。全ての試合が終わり、みんな食事を始めている。

試合で負けた部族も帰ることなく、それぞれ食事の用意をしていた。最後まで観ていくのだろう。

私たちもバーベキューセットを取り出して、調理の準備をする。

やがてラウリ族の人たちが、獲物を持ってきてくれた。

 

レイガ「たまにこういう野趣溢れる料理ってのもいいもんだね」

ユミナ「そうですね。あ、玲我さん、こっちも焼けてますよ」

 

ユミナが甲斐甲斐しく僕の世話をやいてくれる。いや~ホントいい妻だよ。

肉だけじゃ栄養不足なので野菜も何種類か取り出す。

 

ルー「こういうのも初めてですが、なんか楽しくていいですわね」

 

ルーが自分の受け皿に肉を取り分けながら笑う。

姫として暮らしてきた彼女には珍しいのだろう。楽しんでもらえて何よりだ。

それにしても一番の驚きはバルム族が予選で敗退したことだ。これにはパムも驚いていた。どこの部族が勝ったのか聞くと、ガレイ族って新しい部族らしい。ガレイ族・・・どっかで聞いたことがあるようなないような。なんでもフードを被って戦っていたそうなので正体がわからない。

なんか気になるので、僕は正体を聞くために食後あるところへ行くことにした。

 

レイガ「僕の声が聞こえるか?」

 

念のため男に戻って森の奥の開けた場所で立ち止まる。

闇の中の僕を月光が照らし出す。ざざざざ、という木々のざわめきが辺りを包む。月光の中にぼんやりとした緑色の光が浮かんだ。

 

?『貴方は誰ですか』

 

緑色の光が少しずつ形を変えていく。やがてエメラルド色の髪をした少女の姿へと変化していった。

 

レイガ「精霊・・・だよね」

大樹の精霊『はい。私はこの大樹海を司る大樹の精霊。大神樹の化身でもあります』

レイガ「やっぱり闇の精霊と似た気配を感じたから」

大樹の精霊『闇の・・・では、あの子を解放してくれたのは貴方ですか?』

レイガ「まあ確かに解放? かはともかく戦ったのは事実ですけど」

大樹の精霊『精霊は不滅の存在。やがて闇の精霊もまたこの世界に戻って来ることでしょう。それよりも・・・貴方は誰ですか? その姿は見せかけの姿ですよね? そして全身から僅かに漏れるその力はいったい・・・?』

レイガ「ああ、えっとね~ちょっと待ってて」

 

僕は急いで『コネクト』を開いて花恋姉さんの部屋まで転移する。

 

レイガ「花恋姉さん起きてる?」

花恋「ん、玲我君なの~どうしたの~眠れないの~? お姉ちゃんと一緒に寝るの~?」

レイガ「それはまた別の機会に。今回はごにょごにょ」

花恋「面白そうなの~私も行くの~」

 

と、今までの事態を説明して一緒に大樹の精霊のところへ戻る。

 

レイガ「お待たせ」

花恋「貴方が精霊さんなの」

大樹の精霊『貴方様は?』

レイガ「僕たちは神様だよ」

 

と、一緒に 神威解放を行う。

 

 

 

 

 

大樹の精霊『では玲我様は花恋様の・・・』

花恋「地上での弟なのよ」

レイガ「そういうこと。それで僕が聞きたいのはガレイ族のことなんだけど」

大樹の精霊『それは・・・精霊女王からの頼みで・・・』

花恋「精霊女王なの?」

大樹の精霊『はい。私たちにとってあの方は母のような存在です。その方からのお願いを断るのは』

レイガ「・・・」

花恋「ん? どうしたの玲我君」

レイガ「いや、もしかしてさ。その精霊の女王って『ラミリス』って名前じゃない」

大樹の精霊『! どうしてその名前を』

レイガ「その~ラミリスは・・・僕の友達なんだ」

花恋「えーーー」

大樹の精霊『ほ、ほんとうなんですか玲我様⁉』

レイガ「うん、というかラミリスここに来てたんだ。知らなかった」

大樹の精霊『いえ、来たというよりラミリス様からのお手紙を貰いまして』

レイガ「その手紙の内容は」

大樹の精霊『えっと~『やっほ~神樹の精霊ちゃん。実はお願いがあって今から来るメンバーを次の選定の儀で出してほしいんだ。名前はガレイ族で登録してね~。正体は絶対ぜ~~ったいに内緒にしてね』と』

レイガ「相変わらずだなラミリスは。じゃあ正体は楽しみに待つことにするよ」

花恋「面白そうだし、私もその「剪定の儀」を見ていくのよ。八重ちゃんたちが出るなら応援もしないと!」

レイガ「そうだね。花恋姉さんの応援ならみんなも喜ぶよ」

花恋「そうと決まればレッツゴーなのよ!」

 

そうして結局ガレイ族の正体は判明しなかったが、まあ明日もあるしそん時にでも話してみるか。ラミリスの手紙の内容から惑星レイガの出身だと思うけど。

 

 

 

 

 

剪定の儀 二日目

勝ち残った部族同士が、再びその武勇を競う。今日は二回戦い、勝ち残った8部族が明日の決勝日へと駒を進める。

正直ラウリ族は決勝へと進めれるだろう。今日も女性になっている。

 

レイガ「前回の「剪定の儀」はどこの部族が勝ったの?」

パム「パナウ族と言うそうですが、すでに敗退しているそうですよ」

 

そっか、バルム族も敗退したいし、あとはガレイ族だけなんだよな注意するのは。

 

花恋「ほらほら八重ちゃんの試合が始まるのよ! 応援するのよ‼ かっ飛ばせーッ、八・重・ちゃーん!」

レイガ「姉さん、野球じゃないんからその応援は・・・」

 

そんなツッコみをよそにあっさりと八重があいとぉ倒してしまった。

 

レイガ「というか今更だけどみんな僕たちの眷族になってるよね」

花恋「気付いていたのね、さすが玲我君なのよ」

 

そう、前から感じてはいたが今回の試合を通してようやく判明した。神の眷族とはわかりやすく言うと神に愛される人を言う。それで眷族化した者の能力を向上、またはスキルを与えることがある。おそらくユミナたちは最初は僕の眷族化し、最近では花恋姉さんの眷族化もしているだろう。まじでこの星で最強クラスになってきた。

 

ユミナ「玲我さん。見てください、あれ」

レイガ「ん?」

 

観戦しているユミナに袖を引っ張られ、指し示す先を見ると、あるステージで二人の男が戦っているのが見えた。

大剣を振り回す男とそれをひらりひらりと躱す棒術使いのスキンヘッドの男。

 

レイガ「あの棒術使い強いね」

 

あの試合は棒術使いが勝った。私たちと同じく助っ人なんだろう。

次の選手が出場したがその姿に驚く。

 

ユミナ「竜人族ですね」

 

ユミナの言う通りその女性は、金の瞳に尖った耳、赤褐色の肌とそこに浮かぶウロコの模様。そして短い黒髪から伸びる二つの角と腰のあたりから生えた太い尻尾。特徴が僕の星の竜人族に似ている。

 

ユミナ「竜人族は数が少なく、ミスミドの主要七種族の中でも最も数が少ない種族です。でうが、高い戦闘能力を持ち、誇り高い武人の種族だとか。私も初めて見ます」

 

そう言えばミスミドに行った時も見かけなかったな。まあドラゴンがいたからいると思ったけど、見れるとは思わなかった。

どうやら彼女はエルゼと同じくガントレットを使うらしい。それにあの氣の流れは何かしての流派を会得しているのだろう。

 

レイガ「こりゃあ、簡単に勝ち抜けるわけでもないようだな」

ユミナ「みたいですね」

 

他のステージを見てみると、ちらほらと実力派が見え隠れする。それにガレイ族も気になる。

 

花恋「なあっ⁉」

 

会場を見回していると、横の花恋姉さんが変な声を上げた。

 

レイガ「どうしたも花恋ねえ・・・うそ」

 

花恋姉さんの視線の先を見てみると、剣と剣で戦う二人がいたが、その一人、白磁の肌にショートカットの紫がかった銀髪の女性。あの人強い。五剣豪いやそれ以上に強いかも。

その試合を瞬きを忘れるほどじっくい見ていた。相手の攻撃を最小限に避ける動き。

結果その女性剣士がいる部族は他の三人が破れたため敗退となったが、間違いなくこの大会で一番の強さだといえる。

 

花恋「んもー、なんでこんなところにいるのよ、あの子は」

レイガ「・・・」

 

ヤバい。さっきから胸がバクバクしている。

 

花恋「玲我君、ちょっと来るのよ。ユミナちゃん、玲我君をちょっと借りるのよ」

ユミナ「え? あ、はい」

 

花恋姉さんの連れられて、神樹域の外に出る。だいぶ外れの大木の下で、先ほどの女性が腰に手をやり、不敵な笑みを浮かべて待ち構えていた。

 

?「や」

花恋「や、じゃないのよ。なんで貴方がここにいるのよ?」

?「表向きは君の手伝い。本音は面白そうだったから」

花恋「んも~」

レイガ「あの」

?「ん?」

レイガ「もしかして剣神ですが」

?→剣神「へえ~さっきの試合を見て分かったのかな? 初めまして、かな。ちょくちょく君のことは聞いていたけど会うのは初めてだね」

レイガ「初めまして、光神玲我です」

剣神「ああ、よろしく」

 

予想通り剣神だった。ヤバいさっき手が震えている。

 

剣神「そう言えばさっき遠くから聞こえたけど、「花恋姉さん」ってのは何だい?」

花恋「地上(ここ)では私は玲我君のお姉さんなのよ。光神花恋。ふふん、いいでしょう」

剣神「いいな~。あ、じゃあ私もお姉さんで」

花恋「ダメなのよ~。お姉さんは私のポジションなのよ~」

剣神「いいじゃないか。あ、じゃあ二番目のお姉さんだから、君の妹ってことでさ。頼むよ、花恋姉さん」

花恋「私が一番上のお姉さん? なのよ?」

剣神「うん、そう。私が妹」

花恋「まあ、それならいいのよ。特別なのよ?」

剣神「やったね。と、いうわけで私もお姉さんだからよろしく」

 

と、いう感じで剣神が二番目のお姉さんになったが、僕は二人の会話がまったく頭に入らなかった。

 

 

 

 

 

〈ガレイ族サイド〉

 

ガレイ族に登録された五人は密かにレイガとその妻たちを見ていた。

 

?「中々に面白そうなやつらを娶ったな我らが夫は」

?「そうですね。次鋒の剣士も中々の実力です。無意識ですが全集中の呼吸も少しは使えています。おそらくカナエが教えたんでしょう」

?「今のところ三人しか戦っていませんが、残りの二人も中々の実力でしょう。戦うのが楽しみだ」

?「それにしても大将が女になっているは一番の驚きだな。笑いこらえるの大変だったぜ」

 

フードを被ってはいるが二人とも笑みを浮かべてエルゼと八重とヒルダを見ていた。

 

?「女の子になってもレイガ君素敵。早く会いに行きたい。会ってキスして抱き着いて、そしてそのまま・・・」

?「おーい目が怖いぞ~」

 

一部暴走しそうなメンバーがいるが、彼女らがレイガと会うのはまた次回のお話



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剣神VS光神見習い

〈レイガサイド〉

 

リンゼ「玲我さんの二番目のお姉さん、ですか⁉」

花恋「そうなのよ。名前は光神諸刃(こうじんもろは)。諸刃ちゃんなのよ。私の妹なのよ」

諸刃「よろしく」

 

諸刃姉さんは花恋姉さんに紹介されて、リンゼと握手していた。突然の二人目の姉出現にみんなびっくりしていた。僕は違う意味でびっくりしたが。

 

ユミナ「ご挨拶が遅れました。私たちは玲我さんと婚約させていただいた者で・・・」

諸刃「知ってるよ。君がユミナで、こっちの子がリンゼ、その子はスゥだね」

ユミナ「私たちのことをご存知で?」

諸刃「ああ、上からよく見て・・・」

レイガ「じゃなくて、手紙で教えたんだ」

 

危ない! 上から見ていたなんて意味わかんないから!

 

スゥ「しかし、なんで玲我の姉君がこんなところにいたのじゃ?」

諸刃「んー、ちょっと面白そうだったから無理矢理参加してみたんだけどね。勝ち抜き戦じゃなかったから負けてしまったんだ。まあ、ここに来たのは武者修行のため、かな」

 

諸刃姉さんは適当な理由をつけて、スゥの質問を躱す。

 

ユミナ「武者修行というと、ひょっとして玲我さんに剣を教えたのは諸刃義姉様ですか?」

諸刃「あー・・・玲我君のは色々と自己流だから私は基本しか教えてないよ」

花恋「剣の腕なら諸刃ちゃんに敵う相手なんかいないのよ。世界一なのよ」

 

花恋姉さんが自分のことのように自慢する。世界一・・・

 

スゥ「お、八重たちの試合が始まるぞ。これに勝ったら明日の最終日に出場できるのじゃろ?」

 

スゥの言う通りこの試合に勝てば明日の決勝戦へと進める。ガレイ族も決勝へと進むだろう。そんなことをよそに八重の試合が始まったが

 

レイガ&諸刃「「八重の勝ちだな(ね)」」

 

僕と諸刃姉さんの声が重なる。

その数分後には八重が勝利した。

 

諸刃「八重のあの刀じゃ斧のような破壊力がある武器とは切り結ぶわけにはいかない。刀が破損する可能性もあるからね。そのまま攻撃しても斧で防がれたら、同じこと。だから逆に斧を無効化するタイミングを狙ってたんだろう。しかし、防御さえもさせずに一気に抜き打ちを決めれば、もっと早く済んだのにね。あれはちょっと遊んでいたな。振り回す斧を切り落とせるか試したんだろう。そこらへんがまだまだかな」

 

・・・まったく同じ意見です。

そのまま試合はパムとヒルダとこれまたストレート勝ち、ラウリ族は最終日へと駒を進めた。

決勝に進んだのは毒を使うリベット族と、棒術使いと竜人族がいた種族、そしてガレイ族に決まった。

 

 

 

 

 

レイガ「本当にいいんですか?」

諸刃「遠慮はいらないよ。かかっておいで。あ、一応魔法はなしでね」

 

と、そのまま無事ごはんを食べるはずだったが、出場していた八重たちに、諸刃姉さんを紹介したそのあと、ヒルダと八重がぜひ手合わせを、と言ってきた。

剣の腕間を花恋姉さんが吹聴したから、どうやら火がついたらしい。でも仮にも明日の決勝戦に出る彼女たちを戦わせるわけにはいかない。何かあったら困る。

・・・ていうのは建前で、僕自身、剣神と戦ってみたい。会ってからずっとわくわくしているのだ。

そして夕食後に模擬戦をすることになった。

 

レイガ「それじゃあ行きますよ」

諸刃「どっからでもかかっておいで」

 

とりあえず僕は真っ直ぐ突進して剣を振り下ろす

・・・と思わせて、数メートル手前で姿勢を低くして滑り込む。

その勢いで諸刃姉さんの足元に滑り込みながら斬り上げる。

 

諸刃「やるね」

レイガ「ッ!」

 

が、剣は空を斬る。姉さんはジャンプして剣を躱した。

初手で破られるなんていつぶりだ。

と、驚くのをよそに、姉さんは着地と同時に僕の背後に近づき、横薙ぎに剣を振る。

 

レイガ「あぶな⁉」

 

咄嗟に身体をひねって、回避を試みるが、少し服が破れてしまった。

 

諸刃「おお! 今のを躱すか」

レイガ「躱せてませんよ。少し服が破けました」

 

今の動きで分かる。今の僕では諸刃姉さんの勝つことはできない。魔法ありでは勝てるかもしれないけど、剣技だけでは絶対に無理だ。

 

レイガ「ふー」

 

で、そのままあきらめるわけないじゃん! 

僕は剣を構え、呼吸を整える。

 

諸刃「ん?」

レイガ「神の呼吸 伍ノ型 神風神嵐(しんぽうからん)

 

低い姿勢で下から上に向けて、舞い上がるように斬撃を繰り出す。無数かつ不規則な斬撃がまるで猛烈な嵐のように諸刃姉さんを襲う。

 

諸刃「へえ~面白い!」

 

と、笑いながらなんと諸刃姉さんは斬撃を受けるのではなく避けた。

まじか、あんな不規則な斬撃を避けるかよ。

 

諸刃「さて、あれ?」

 

と、僕の姿を探す諸刃姉さん。そう先ほどの技はおとりで僕は技を放った瞬間に上に飛んだのだ。

 

レイガ「神の呼吸 弐ノ型 光輪 天(こうりん あまつ)

 

腰を回す要領で空に円を描くように剣を振るう。本来なら一回転する攻撃だが、今回は半回転にして垂直方向への強烈な斬撃を繰り出す。

はずだった

 

諸刃「いや~今のは驚いたよ」

レイガ「嘘でしょ⁉」

 

なんと諸刃姉さんは攻撃を受け止めた。

 

諸刃「よっと」

レイガ「ッ!」

 

僕が驚愕している隙に諸刃姉さんは剣を引いて僕の態勢を崩す。咄嗟のことで判断が遅れた僕に容赦なく諸刃姉さんの剣が迫って来る。

 

レイガ「ッ! ぐッ⁉」

 

なんとか剣で防御できたが、威力までいなせず、ステージの端まで吹っ飛ばされた。

 

レイガ「・・・」

八重「すごい戦いでござる!」

ヒルダ「はい。ほとんど攻撃が見えませんでした」

ルー「玲我さんがここまで苦戦するなんて」

エルゼ「諸刃姉様すごい」

 

と、みんなそれぞれ感想をつぶやく。実際にそうだよ。諸刃姉さんはものすごく強い

 

だからこそ燃える。

 

いつもそうだ。強い奴と戦うほどわくわくする。もっと強くなりたい。

 

レイガ「自分より強い奴と戦って勝つ。それが

勝負の醍醐味だろう

 

僕は立ち上がって、剣を握る。

胸が高鳴る! 心臓がバクバクいってる! 心が燃える!

 

そうだよ、いつもこうだ。自分より強い相手と戦うときはいつもこうだ。

身体が熱くなる。

 

レイガ「まだまだいけますよ。俺は」

 

僕は居合の構えを取る。

 

レイガ「神の呼吸 陸ノ型 光神速(こうじんそく)

諸刃「ッ!」

 

諸刃姉さんのすれ違い様に一閃する。

気付いたときは僕は諸刃姉さんの後ろにいた。

 

ヒルダ「・・・今の見えました」

八重「まったく」

ルー「一瞬光ったと思ったら玲我さんがあそこまで」

諸刃「まさか私でも躱せないなんて」

 

僕の攻撃は諸刃姉さんの服を破くことができたが、諸刃姉さんは確かに攻撃を躱さなかった。が、攻撃を逸らすことはできた。

 

諸刃「噂通りだね。それにその痣は?」

レイガ「ああ、これは熱くなると勝手に出てくるんです」

 

諸刃姉さんの言う通り僕の左頬には光のロゴ✨のような痣が出現している。

この痣に関しては縁壱たちに聞いたことはあるが今はどうでもいい。

 

レイガ「まだまだ行きますよ。諸刃ねえ」

諸刃「ふふっ 面白い」

 

僕は剣先を諸刃姉さんに向ける。

 

レイガ「神の呼吸 参ノ型 光陰矢」

 

最速の突き技を放つが、簡単に避けられる。

 

諸刃「まだまだ」

 

と、がら空きの側面から剣を振って来た。

 

レイガ「神の呼吸 漆ノ型 神隠し」

諸刃「⁉」

 

僕はそれを躱す。高速の捻りと回転、さらには闘気をゼロにした状態で相手の攻撃を躱す技。相手から見たらいきなり人が消えた感覚になる。

 

ユミナ「え⁉ 玲我さんが」

スゥ「消えたのじゃ⁉」

諸刃「まったくさっきから驚かされてばかりだよ」

レイガ「神の呼吸 捌ノ型 八岐大蛇」

諸刃「⁉」

 

と、一瞬の隙をついて最大火力である技『八岐大蛇』を繰り出す。この技は八人の僕(本体1+残像7)がそれぞれ異なる技を繰り出す技。身体に相当の負担がかかるが、今はどうでもいい。

 

レイガ1「日の呼吸 円舞」

レイガ2「水の呼吸 捌ノ型 滝壺」

レイガ3「雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷」

レイガ4「風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ」

レイガ5「霞の呼吸 弐ノ型 八重霞」

レイガ6「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり」

レイガ7「月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り」

レイガ8「花の呼吸 陸ノ型 渦桃」

 

八人の僕がそれぞれ異なる技を繰り出す。

 

 

 

 

 

 

諸刃「さすがに今のは本気で受け流したよ」

レイガ「はあ~ 参りました」

 

結果、すべての技が受け流されて呼吸が安定できなくなった。

完全に僕の負けだった。八岐大蛇まで出しても勝てないのか。

地べたに大の字になる。

 

諸刃「それにしても噂以上に強かったよ。このままいったら私と同じ域に達するんじゃないかな?」

レイガ「精進します。でもやるなら諸刃姉さんを絶対に超えます」

諸刃「ほ~」

 

と、新しい課題を見つけた僕。それにしても身体重い。

 

八重&ヒルダ「「・・・」」

 

なんとか重たい身体を起き上がらせ、みんなの方を見ると八重とヒルダが呆然としていた。

 

八重「最後のあの技拙者は二つしか見えなかったでござる」

ヒルダ「私もかろうじて三つ目が見えたかどうか」

 

ああ~もしかして最後の八岐大蛇のことかな。

 

諸刃「へえ、二つも見えていたんだ。なかなか有望じゃないか、二人とも」

 

楽しそうにヒルダたちを眺める諸刃姉さん。対する二人はキラキラした瞳で見上げている。

 

諸刃「そのうち二人とも手取り足取り教えてあげるよ。しばらく玲我君のところにお世話になるつもりだから」

ヒルダ「本当ですか! 諸刃お義姉様!」

八重「義姉上! 感謝するでござる!」

 

さらにキラキラした眼差しを向ける二人。

 

花恋「むう〜。諸刃ちゃんに義妹を二人取られたのよ……」

リンゼ「わっ、私は、花恋お姉さんのこと、尊敬してます、よ?」

花恋「リンゼちゃ〜ん。いい子いい子、ぎゅーなのよ〜」

 

なんかわからんけど花恋姉さんがリンゼにい抱きついている。ルーも二人ほどではないが諸刃姉さんに興味をもっているようだ。まあどっちかというと彼女は料理の方に興味を持っているからね。

 

玲我「そういえばさっきから周りがうるさいな」

 

いつの間にか周りにはギャラリーが集まっており、ヒソヒソ話が聞こえてくる。「誰だアイツは」とか、「なんで出場していないんだ」とか。

そんな中遠巻きにこちらを見ているあのスキンヘッドの棒術使いと、竜人族の女性武闘士がいた。あと後ろからなんか斧を振り上げている男がいたので、剣を投げた。大丈夫ちゃんと鞘にしまっているから死ぬことは無い・・・はず。まあいっか。

男が気絶した後に二人に近づく。

 

レイガ「見覚えは?」

?「・・・先ほど対戦した部族の一人です」

 

逆恨みかよ! めんどくさい事起こすな~

 

ソニア「助かりました。私はソニア・パラレムと申します。ルルシュ族に厄介になっております」

蓮月「自分は蓮月と申します。ソニアさんの危ないところを助けていただきありがとうございました」

レイガ「いえいえ、それより蓮月は出身は?」

蓮月「え? イーシェンですが、それは?」

 

よかったー。もしユーロンだったら面倒だからね。

 

レイガ「僕は光神玲我。ラウリ族の客人でして男性です。ラウリ族には女性しかいないので今は女性になっています。一応黙っていてくれると助かります」

ソニア「では、先ほどはこちらが助けてもらいましたから、これで貸し借りなしということで」

 

よかった。これで僕に女装の趣味があると思われるのはきつい。

 

蓮月「先ほどの玲我さんの手合わせを見せてもらいました。正直私たち二人がかりでも玲我さんには勝てないでしょう」

レイガ「僕も修行不足ですよ。まだ姉には勝てませんでしたし」

 

とりあえず明日、もし当たったらその時はよろしくと、互いにエール交換をして二人と別れた。

 

パム「ここにいたのか」

レイガ「ん? パムか」

 

二人と別れた後にパムがやってきた。

 

パム「さっきの戦い見ていた」

レイガ「パムも見ていたのか」

パム「私は見誤っていた」

レイガ「ん、なにを」

パム「お前の強さをだ。あの戦いお前はまだ全力じゃなかっただろう」

レイガ「まあ魔法無しの勝負だったし、仮に全力出したらこの樹海が消し炭になると思うよ」

 

まじで本気でやりあったらたぶん周りとか関係なしに暴れまくるからな。

 

パム「そうか。私は最初こそ種族の繁栄のためにお前の近づいた」

レイガ「知ってるけど?」

パム「だが、今は違う。個人的に玲我のことが気になっている」

レイガ「えっと~」

パム「私はお前との子供が欲しい」

レイガ「・・・でも男性だったら野放しにするの?」

パム「それは種族の掟。だが私は関係なく育ててみたい」

レイガ「・・・そこら辺の話は剪定の儀が終わってからでお願いします」

パム「わかった」

 

なんだろう。問題解決のために来たのに、更なる問題が増えたような。

 

 

 

 

 

剪定の儀三日目。ようやく今日が決勝戦である。

決勝は

女性上位のラウリ族。

毒を操るリベット族。

武術に長けるルルシュ族。

そして謎のガレイ族。

 

リンゼ「注意するとしたらリベット族でしょうか」

レイガ「んー、ソニアさんのところのルルシュ族もなあ。対戦相手次第じゃギリギリかもしれないし」

 

でもやっぱりガレイ族だよな。一番注意するのは。

最初の試合は蓮月さんとソニアさんのいるルルシュ族であった。

蓮月さんVSルー

ソニアVSエルゼ

が一番の見所だろう。

 

結果を言えば、ルーは負けてしまったが、エルゼが勝ちその勢いでラウリ族が決勝へと駒を進めた。え? 手抜きしすぎだって? ・・・疲れたからしょうがない。

そしてみんなで次の試合リベット族VSガレイ族をみていた。

 

リンゼ「ガレイ族・・・今回から出現した新しい部族でしたっけ」

パム「そうだ。どんな部族かもわからない」

エルゼ「ずっとフード被ってるから男か女かもわからないし」

八重「でも拙者と同じように予選はすべてストレート勝ちでござる」

ヒルダ「剣士や武闘もいたらしいです」

スゥ「どんな相手か楽しみじゃ」

ユミナ「玲我さんはどう思いますかこの勝負」

レイガ「・・・ガレイ族が勝ち上がって来る」

ルー「なんでそう思うのですか?」

レイガ「それはこの試合を見ればわかるよ」

 

そう、確実に決勝に上がって来る。

いよいよ試合が始めった。と同時にガレイ族の選手が全員マントを外した。

 

レイガ「・・・まじですかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

その五人の姿に見覚えがあった。

あるに決まってるだろう。だって全員

 

 

 

僕の妻じゃん

 

八重「すごい美人でござる」

リンゼ「はい。それにすごい気迫です」

ヒルダ「ここまで殺気が飛んでくるなんて」

エルゼ「それに」

ユミナ「胸が」

ルー「でかい」

 

と、後半はほぼ妬みのような感想を漏らしている。

 

ユミナ「そういえば玲我さんさきほど「マジですか」と言っておりましたが、知り合いですか」

 

みんなが興味深そうにこっちを見てくる。

 

レイガ「・・・全員僕の妻です」

ユミナたち『・・・えーーーーーーーーーーーーー!?』

 

そりゃ驚くよ。僕だって驚いているんだから。

今いるメンバーは赤髪を後ろに結んでいる女性「緋山茜」

橙色のショートヘアー「メレオレオナ・ヴァーミリオン」

赤髪のロングヘア―「エルザ・スカーレット」

八重と同じように黒髪ポニーテールの女性「一条葵」

最後に黒髪ロングの「不動アキオ」

 

もれなく全員僕の妻でした・・・・じゃないよ!

何やってるんのみんな! あと何してくれちゃってるのラミリス⁉

そのあとの試合結果はガレイ族のストレート勝ちだったが、試合内容はまったく頭に入ってなかった。

次回妻(現地)VS妻(故郷)

タイトルがひどい!

 


 

『神の呼吸 伍ノ型 神風神嵐(しんぽうからん)

相手の周囲を無数の斬撃で囲む技。不規則に動くため抜けることは困難(諸刃姉さんには簡単に抜かれたけど・・・)

『神の呼吸 弐ノ型 光輪(こうりん )

自身の前方に円を描くように斬る技。天は上空から敵を真下に斬る技。

『神の呼吸 陸ノ型 光神速(こうじんそく)

居合技。霹靂一閃から派生させた技。相手が瞬きをした瞬間に攻撃をすることで、まるで瞬間移動したかのように見える。

『神の呼吸 漆ノ型 神隠し』

回避技。日の呼吸幻日虹から派生させた技。捻りに加えて、自身の気配をゼロ状態にすることで、相手からはその場から消えたように感じる。

『神の呼吸 捌ノ型 八岐大蛇』

一瞬にして八人に分身する技。当初はこの型を使用した状態で全集中の呼吸は使えなかったが、今では八人が異なる呼吸を使うことができる。ただし、威力は劣る。(使う呼吸によっては体力を大幅に使用する)




恋愛暴君から緋山茜。フェアリーテイルからエルザ・スカーレット。超人高校から一条葵。トリニティセブンから不動アキオを出しました。
次回妻(現地)VS妻(故郷)
タイトルが今までで一番ひどい!


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妻VS妻

〈レイガサイド〉

修羅場っていつどこで起きるかわからない。なぜ唐突にこんなことを語っているのか理由は目の前で起こっている光景である。

 

茜「私の方がレイガ君のことを愛しているのよ」

ルー「いいえ、私たちの方が玲我さんのことを愛しています」

 

と、絶賛妻たちがお互いを睨み合っている。どうしてこうなったのか

 

一時間前

 

ガレイ族とリベット族との試合が終了した直後である。

 

茜「レイガく~ん」

レイガ「んッ⁉」

 

猛スピードで茜が僕に抱き着いて来た。抱きつくというより茜の胸に僕の顔をうずめる状態である。

 

ユミナたち『な⁉』

茜「もう何日も会えなくて寂しかったんだから」

レイガ「ん⁉ んッ⁉」

 

しゃべりたくてもしゃべれない状態である。

 

ルー「ちょっ⁉ ちょっと何しているんですか⁉」

茜「なにって愛の抱擁だけど?」

ルー「今すぐやめてください!」

茜「嫌よ我慢してた分レイガリウムを摂取したいのよ」

ルー「レイガニウムってなんですか⁉」

 

と、謎の会話をしながらずっと茜の胸にうずくまっている僕。

 

茜「それにレイガ君はこの状態が一番すきなの知らないの?

あ~その胸じゃ逆にレイガ君が痛がるわね」

ユミナ&エルゼ&ルー「「「(# ゚Д゚)」」」

 

何だろう? 周りの温度が少し寒くなったような。

 

ルー「わかりました。あなたに決闘を申し込みます! 例え私たちと同じ玲我さんの妻でも今の発言は許せません」

茜「いいわよ。どうせあなたと戦うつもりだったから都合がいいわ。正妻としての実力を見せてあげる」

ユミナ「頑張って下さいルーさん」

エルゼ「あたしの分もお願い」

ルー「はい。必ずお二人の分も雪辱を果たします」

 

と、なんか茜とルーが火花を散らしているが、会って数分でなんで喧嘩腰なの二人⁉

 

メレオレオナ「あはは相変わらずだな我が夫は」

レイガ「んッ⁉ メレオレオナ⁉」

 

茜に解放されたと思ったら次にメレオレオナにも抱きつかれた。もちろん顔を胸にうずめる状態で

 

メレオレオナ「それよりそこの小娘!」

エルゼ「え⁉ あたし?」

 

メレオレオナがエルゼのことを指差す。あ、これってもしかして

 

メレオレオナ「今までの試合を見て気に入った! 次の試合は私と戦え!」

エルゼ「ッ! いいわよ!」

メレオレオナ「いい度胸だな! ますます気に入った」

 

なぜかエルゼとメレオレオナも火花を散らしている。まさかこの光景をあと三回見ないといけないのかな?

 

八重「・・・」

葵「・・・」

 

と、メレオレオナから解放されて周りをみると、八重と葵がお互いを無言のまま向かい合っていた。そういえばこの二人の服装といい、髪型といい、似ている部分が結構あるな。

 

葵「そなたも剣士か?」

八重「はいでござる」

葵「そうか・・・明日の決勝戦中堅で待ってる」

八重「ッ! はいでござる」

 

・・・なんか話し終わったんだけど⁉

 

八重「玲我殿あの方は?」

レイガ「・・・彼女の名前は一条葵。僕が知る中で最強の五人の剣士『五剣豪』の一人」

八重「五剣豪でござるか・・・」

 

八重は葵のことを憧れるように見ている。

また別の所では

 

リンゼ「あの、もしかしてアイリーンさんの娘さん、ですか?」

エルザ「母上をご存じで?」

リンゼ「はい。前に一度お会いして、それから定期的に、魔法を教えてもらっています」

エルザ「そうか」

リンゼ「その、エルゼさんも魔法使い、なんですか?」

エルザ「私か? 私は魔導士で様々な武器や防具を使うが、今回は剣しか使っていない」

ヒルダ「剣ですか⁉」

 

あ、ヒルダが喰いついた。

 

エルザ「明日の決勝、私は次鋒で出ようと思っている」

ヒルダ「⁉」

 

宣戦布告じゃん。口に出していないけど、次鋒で戦おうと実質言ってるもんじゃん。

 

ヒルダ「わかりました。お待ちしてます」

エルザ「ああ」

 

エルゼとヒルダの方もそれで話は終わったようだ。

 

アキオ「いや~モテる男はつらいね」

 

疲れている僕の肩に手を置くアキオ

 

アキオ「大将はあと何人妻を増やすのさ」

レイガ「・・・考えたくはないけど最低でもあと四か五人かな」

アキオ「おお! さすが大将」

 

先が思いやられる。

 

 

 

 

 

決勝戦

ラウリ族とガレイ族の対戦が始まろうとしていた。みんなやる気まんまんだ。一部私怨が含まれているが、終わってから仲良くできるかな?

ちなみに組み合わせは

先鋒:ルーVS茜

次鋒:ヒルダVSエルザ

中堅:八重VS葵

副将:エルゼVSメレオレオナ

大将:パムVSアキオ

 

となった。

 

〈先鋒〉

 

ルー「・・・」

茜「・・・」

 

ルーと茜の試合が始まろうとしていたが、二人ともさっきから睨み合っている。その目には憎悪が含まれている。

 

ルー「あなたにだけは絶対に負けません」

茜「あら奇遇ね。私もあなたには絶対に負けたくないわ」

 

二人ともさっきより悪化してない⁉

 

ユミナ「ルーさん頑張ってください」

エルザ「ルー絶対に勝ちなさい」

 

ユミナとエルゼも応援はしているが、二人とも気迫がすごい。逆にルーにプレッシャーを与えてないか。

 

ルー「はい! お二人の分まで戦います」

 

・・・どうゆう感じでこの試合を見ればいいのだろうか。

 

審判「それでは試合開始!」

ルー&茜「「ッ!」」

 

試合開始の合図と共に両者の剣がぶつかり合う。いまさらだが茜も双剣使いだったな。じゃあ双剣対決ってことか。

両者ともに互角のように見えるが、若干茜の方が押しているように見える。

 

茜「あらこの程度なの?」

ルー「くッ!」

 

それにしても珍しく煽るな茜。普段はあんな態度しないのに。

 

ルー「負けません。私だって玲我さんの妻なんですから」

 

ルーはジャンプし、片方の剣を右向きに、もう片方を上向きに構える。すると、ルーの持っていた剣が一瞬だが、タイムレンジャーのダブルベクターに変化したように見えた。

 

レイガ「あれって⁉」

ルー「ベクターエンド・ビート9

 

そうタイムレンジャーのタイムグリーンが使う必殺技だ。練習していたのは知っていたけど、まさか実戦でするとは

 

茜「くッ⁉」

 

予想以上の攻撃が決まり、茜は後退する。しかしルーも体力を大幅に消費し、地面に肩膝をつく。

 

ルー「はーはー」

茜「・・・私の負けよ」

ルー「え⁉」

 

なんと茜が降参した。

 

ルー「どうして?」

茜「・・・本当は貴方を元気づけたかったからよ」

ルー「!」

 

それだけ言って茜はステージから降りた。なるほど、準決勝で蓮月さんに負けたルーを慰めようとしたのか。

・・・慰めなのあれって?・・・考えるのは止そう。

 

〈次鋒〉

 

次はヒルダとエルザの対決だ。エルザの魔法は騎士(ザ・ナイト)だから騎士対決だな。

 

ヒルダ「お手合わせお願いします」

エルザ「ああ、私も父の前だ。全力で行かせてもらう」

ヒルダ「・・・父?」

レイガ出身者たち『あ』

ユミナ「玲我さん今あの方から『父』と聞こえましたが」

 

ユミナがこちらに顔を向けるが、その目がものすごく冷たい。

 

レイガ「い、いや~なんのこと(((((((( ;゚ω゚))))))))ガクガクブルブルガタガタブルブル」

ユミナ&リンゼ「「とぼけないでください」」

花恋「ユミナちゃん迫力がすごいのよ」

レイガ「えっとですね~エルザは僕の娘だけど血は繋がってないしそれに結婚もしてるから僕の妻で~」

ユミナ&リンゼ「「・・・」」

レイガ「黙っててごめんなさい!」

 

すぐに土下座する。わざと黙ってたわけじゃないけど、この話結構複雑だからな。

 

ヒルダ「えっと玲我様の娘なのですか?」

エルザ「半分正解だな。私は確かにレイガの娘だが、今は妻として戦おう」

 

と、あちらの方は大丈夫そうだけど、こっちはダメっぽい。しばらくは正座しておこう。

 

エルザ「では参る!」

ヒルダ「ッ!」

 

二人の斬り合いが始まった。お互いの剣がぶつかり合う。

 

ヒルダ「ツヨソウル!」

『オラオラ!』

 

先にヒルダが仕掛けた。ギャレンさんの決闘と同じようにツヨソウルをプロトリュウソウチェンジャーにセットし、攻撃力を上げた。

 

ヒルダ「ハアァッ!」

エルザ「換装」

 

ヒルダの攻撃が迫った瞬間、エルザは自身の魔法を発動した。すると、エルザの服装が黒き鎧へと変わった。

 

エルザ「黒羽の鎧」

ヒルダ「服が変わった⁉」

エルザ「それだけではない」

 

互いの剣がぶつかり合い、吹っ飛ばされた。

ヒルダが

 

ユミナ「ヒルダさんが押された⁉」

レイガ「エルザの魔法『騎士』は自身の装飾品を一瞬で変化させる魔法。あの鎧は黒羽の鎧で、攻撃力を大幅に引き上げる効果を持っているんだ」

 

ユミナたちに説明する。ホント中には結構ヤバめな鎧もあるから大変だよ。

 

ヒルダ「ならこれです。ハヤソウル!」

『ビューン!』

 

今度はハヤソウルでスピードを上げた。

 

エルザ「今度はスピードか、ならば換装 飛翔の鎧」

 

エルザも魔法を使用し、先ほどの黒い鎧から豹柄の鎧へ変わった。

 

エルザ「ハアァ!」

ヒルダ「ぐッ!」

 

両者ともに速度を上げて攻撃を繰り返すが、やはりヒルダが押され始めている。

 

エルザ「飛翔・音速の爪(ソニッククロウ)

 

エルザの攻撃が決まり、ヒルダが飛ばされるが、なんとか場外まではいかず、踏みとどまった。

 

エルザ「もう終わりか」

ヒルダ「まだです!」

 

ヒルダがなんとか立ち上がるが、もう体力の限界だ。

 

ヒルダ「一回しか使えませんが、これを使います」

 

そう言ってヒルダが取り出したのは、今までのリュウソウルとは違う、『強リュウソウル』のひとつ『メラメラソウル』である。

本来、強リュウソウルはそのモデルとなっている騎士竜に認めてもらうことで使うことができるようになる。

が、ヒルダはまだディメボルケーノとは出会っていない。

あれはプロトタイプ、まあ簡単に言えば一回しか使えないお試し版である。

 

ヒルダ「メラメラソウル!」

メラメラ!

 

ヒルダのプロトリュウソウチェンジャーから炎が舞い上がり、剣に纏まりつく。

 

リンゼ「剣に炎が⁉」

諸刃「さながら炎剣か」

エルザ「なるほど、それなら換装」

 

続いて、エルザの鎧も赤い鎧へと変わる。

 

エルザ「炎帝の鎧」

 

炎対炎の対決となった。

※炎が一部のみにしか見えないようにした。大樹海の部族にばれたら試合が中断されるから

 

エルザ「行くぞ!」

ヒルダ「はい!」

エルザ&ヒルダ「「ハアァ!」」

 

互いの炎がぶつかり合い、煙が広がる。

煙がだんだんと消えていき、ステージには立っていたのはエルザだけであった。

 

審判「勝者! エルザ・スカーレット!」

 

うぉぉぉぉ

周りの観客たちが盛り上がる。

 

ユミナ「ヒルダさんが」

レイガ「・・・残念だったね」

諸刃「ヒルダも強かったけど、相手の方が何枚も上手だったね」

 

ユミナたちが悲しんではいるが、僕的にはエルザと戦えてよかったと思う。おそらくだがヒルダとエルザは似た戦法になるだろう。自分の戦法の上位互換を見ることで、明確にこれからの修業もできるし、強くなりたい気持ちも向上できるし、一石二鳥だね。

 

ヒルダ「負けました」

エルザ「・・・最後の一振りは見事だった」

ヒルダ「⁉ ありがとうございます」

 

お互いに握手をする両者。これからどっちも強くなるだろう。

 

〈中堅〉

 

続いては八重と葵の勝負だが

 

レイガ「八重には悪いけどこの勝負葵が勝つな」

ユミナたち『⁉』

 

僕のこの言葉にユミナたちが驚く。

 

リンゼ「ひどいです! 玲我さん」

スゥ「妻の勝利を願わぬのか!」

 

と、リンゼとスゥに怒られたが

 

諸刃「いや、私は玲我君に賛成」

ユミナたち『え⁉』

 

諸刃姉さんも僕の意見に賛成した。

 

花恋「どうしてなのよ! 八重ちゃんだって」

諸刃「ああ、姉さんの言う通り八重も強いけど」

 

目線を葵に向ける諸刃姉さん

 

諸刃「あの子は強さの次元が違うよ」

ユミナ「強さの」

リンゼ「次元ですか?」

諸刃「ああ、あらゆる人または物でもある程度の域が存在する。どれほどの努力や才能をもってしてもその域を超えることはない。でもあの子はそれを超えている。あの域はもはや神と同等」

ユミナたち『・・・』

 

諸刃姉さんの説明にみんな絶句する。

確かに葵の実力は僕たち神に匹敵する。そのせいで苦しい過去もあったけど

 

レイガ「八重は負ける・・・けどおそらく人生で一番の経験を得ると思うよ」

 

僕たちの話は終わり、試合が始まった。

 

試合はすぐに決着がついた。

 

八重「・・・拙者の負けでござる」

 

数回打ち合いをした後に八重が降参したのである。

 

葵「そなたの剣、まだまだ未熟・・・だが、某と同じ愛する者のための剣。これから共に精進しましょう」

八重「! はいでござる」

 

二人は握手をする。

 

〈副将〉

1勝2敗で向かえた副将戦。ここで勝てなければガレイ族の優勝で決まってしまう大事なエルゼとメレオレオナの試合。

 

メレオレオナ「ハアァァ!」

エルゼ「やあぁぁ!」

 

試合が始まってから両者殴り合っている。

 

エルゼ「ブースト!」

 

エルザが加速魔法を使うが、

 

メレオレオナ「ぬるいぬるい」

 

メレオレオナはその速度にすぐに追いつき、攻撃する。

 

エルゼ「ぐっ!」

メレオレオナ「まだまだ炎魔法灼熱腕(カリドゥス・ブラキウム)

 

メレオレオナの腕が炎に包まれる。てか炎使うなよ! 隠すの大変なんだから!

 

メレオレオナ「どうした! その程度か小娘!」

エルゼ「! 舐めないで」

 

エルゼも奮闘するが圧倒的に実力差がある。

 

メレオレオナ「これで終わりか!」

エルゼ「・・・まだよ。あたしだって玲我の妻なんだから」

 

エルゼの言葉と共に僕のポケットから一つのギアが飛び出す。

 

レイガ「え⁉ ビクトリーギアが」

 

それはウルトラマンビクトリーギアであった。ギアはそのままエルゼの方まで向かい、ガントレットに吸収?された。

 

『ウルトランス EXレッドキング ナックル

 

なんと、エルゼのガントレットがEXレッドキングのようなマグマを纏った拳へと変化した。

 

エルゼ「これならまだいける」

メレオレオナ「ふ あっはっは さすが我が夫の妻だ! 面白い。お前の全力をぶつけてこい」

エルゼ「言われなくなって!」

 

再び両者殴り合う。

 

エルゼ「ハアァァ!」

 

エルゼが地面に拳をぶつける。すると、そこからメレオレオナに向かってマグマが向かってくる。

 

メレオレオナ「甘い!」

 

メレオレオナの拳とぶつかり、マグマは弾け飛ぶ。

 

エルゼ「やあああ!」

 

すると、マグマの弾け飛んだ瞬間、エルゼが向かってくる。そしてエルゼの拳がメレオレオナの腹にぶつかる。

 

メレオレオナ「・・・」

 

メレオレオナは後ろに下がることもせずエルゼの攻撃を受け止めた。

 

エルゼ「うっ!」

 

エルゼのガントレットがもとに戻り、体力の限界か膝をつく。

 

メレオレオナ「あははは! ここまで楽しんだのは久しぶりだな。小娘名前は」

エルゼ「・・・エルゼ。エルゼ・シルエスタよ」

メレオレオナ「エルゼか! 今回は私の負けだ」

エルゼ「え⁉」

 

なんとメレオレオナが降参した。

 

メレオレオナ「元は夫の妻に相応しいか、見定めようと思っていたが、思った以上に楽しませてもらった。これからは私は直伝に鍛えてやろう」

 

そのままメレオレオナは高笑いをしながらステージを下りて行った。

 

レイガ「相変わらずだなメレオレオナは」

 

〈大将〉

2勝2敗を向かえた最終戦。結果はすぐについた。

 

アキオ「この勝負ガレイ族は降参する」

 

アキオが開始前に降参した。これには全員が驚いたが、まあガレイ族はラミリスが勝手に出場させた部族だから、僕的には納得した。

そうしてラウリ族が「樹王の部族」となり、新たな掟として「剪定の儀」を男女別にすることが宣言された。

これで一件落着と思ったが、

 

パム「玲我よ、いずれお前の子供を生みに行くから待っていろ」

 

と、パムに言われた。これ結局解決できたのか?




八重VS葵のところだけ結構省略しましたが、申し訳ございません。


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〈レイガサイド〉

 

レイガ「ううっ、寒くなって来たな」

 

大樹海での一件が終わってから、テンペスト・レイ公国は冬に突入してきた。この世界では地球でいうところの季節がある国とない国が極端らしい。僕の国は前者である。

 

レイガ「それにして濃い三日間だったな」

 

あれから「剪定の儀」も終わり、ラウリ族が優勝したのはいいが、パムは僕との子を諦めてはくれなかった。まあ来た時に考えよう。

 

レイガ「朝早くからやってるね」

 

訓練場では諸刃姉さんがルーと対戦していた。違う場所では八重と葵、ヒルダとエルザ、エルゼとメレオレオナも対戦していた。なんでもこれからは専属として残るらしく、アキオだけ帰って残りはしばらく滞在することになった。

そういや諸刃姉さんと葵たちを連れて帰ってきたら、城のみんなに驚かれたな。グレイフィアたちは苦笑いをしていた。まあこのメンバーを見たらそうなるよね。

あと、実力を見せるために騎士団との乱取りを行ったが、5対80であっさり勝ってしまった。エキシビジョンで錆兎、裕斗、アビス、ランス、ドットとも戦わせたが、諸刃姉さん一人に全員ぼっこぼこ。いつか超えたいな。

 

高坂「さすが陛下の姉君・・・」

 

まあそんな感じで暇があれば諸刃姉さんは騎士団相手に訓練をつけてもらっている。柱稽古の次に、剣神直伝の訓練・・・うちの騎士団この星で一番の騎士団になるんじゃないかな。

 

レイガ「おはようー」

ユミナ「おはようございます。玲我さん」

 

着替えを済まして、食堂に着くと、ユミナとリンゼ、花恋姉さんが席についていた。

席に着くと、レネがハーブティーを持ってきてくれた。

ありがとう、と礼を言ってレネの頭を撫でてあげたら、扉が開いてルー、八重、ヒルダ、エルゼ、諸刃姉さん、葵、エルザ、メレオレオナがやって来た。

だが、八重とヒルダ、エルゼのメンバーはボロボロの姿をしている。いや朝っぱらからどんな稽古つけたのよ!

 

メレオレオナ「いやーつい力が入ってな」

葵「某も」

エルザ「私も」

 

まあとにかく八重たちを回復させて、食事をとる。ウチは七時に朝食と決まってはいるが、別にみんな揃って食べなくてもいいというにしている。今日はたまたま揃ったみたいだ。

たまにスゥも加わるが、どうやら今日は来ていないようだ。スゥの部屋にも【コネクト】が付与された部屋があるので、いつでも来れる。もちろんスゥ以外は通れない。

 

 

 

 

 

さて、今日は謁見の予定もないので、ある物を作ろうと思う。

 

レイガ「これをこうして、あとはこれで」

 

ビルドギアを用いて、作製を始める。

一時間後

 

レイガ「思ったより上手くできたな」

 

僕が作ったのはピアノである。僕の星の城と同じものを作った。楽器のひとつはほしいと思ったので作ってしまった。とりあえず何曲か弾いてみようか。

 

数分後

 

思わず5曲弾いてしまった。すると、どこからか拍手が聞こえてくる。振り返ると紅玉を連れた桜が拍手を送っていた。

 

桜「それは楽器?」

レイガ「うん、「ピアノ」って言ってね。打楽器と弦楽器の間の楽器かな」

桜「もっと聞きたい。なにか別の曲を」

レイガ「お任せを」

 

僕は妻が歌う曲を弾く。桜も紅玉も目を閉じて聞き入ってくれてるようだ。思わず歌を口ずさんでしまった。

歌い終わるとまた拍手をしてくれた。

 

桜「その歌、教えて。桜も歌いたい」

 

瞳を輝かせて桜がそう頼んできた。珍しいと思ったが、これもいい機会だと思って歌詞を教えた。

最初にゆっくりと弾きながら、始めから歌詞をしっかりと歌う。桜がそれを追うように口ずさんでいく。一通り歌い終わると、

 

桜「もう覚えた」

 

と、言われた。早いな!

つぎに元のテンポで再び弾き始めると、桜がそれに合わせて歌い始めたが、メチャメチャ上手だった。桜が歌が上手かったのは知らなかった。

 

レイガ「桜ってもしかして歌い手だったのかな?」

桜「よくわからないけど、歌うのは好きかもしれない。もっと教えて」

 

桜に他の曲を教えたが、すべて歌詞を一回聞いただけで正確に覚えてしまった。この子は歌の才能があるようだ。つい僕も楽しくて何曲も教えてしまった。

演奏が終わると拍手の雨が僕らに降り注ぐ。桜はどこか照れくさそうに俯いていたが、仲のいいリンゼとユエに褒められて満更でもない笑顔を浮かべていた。

それからしばらく桜の身にリサイクルが続けられた。てか途中で気づいたけど、『ベートーベンアイコン』がリズミカルに動いていたが、何してるの⁉

 

 

 

 

 

二日後、僕は桜を連れて城下町を歩いていた。一緒にユエもいる。今回はある場所まで向かっている。

 

桜「王様、今日はどこに行くの?」

レイガ「今日はね。桜に会わせたい人がいるんだ」

桜「?」

レイガ「会えばわかるよ」

 

しばらく歩いていると、ある歌声が聞こえる。

 

桜「⁉ この歌」

ユエ「レイガ、もしかして」

レイガ「ユエはわかった。そうあの二人だよ」

 

歩くスピードを速めて、歌声が聞こえる場所まで向かうと

 

 

そこには簡易的に設置されたステージで優雅に歌う二人の女性がいた。

片方は髪色は右側が鮮やかなポピーレッド、左側は淡いピンクホワイトのツートンカラーで、髪型はツインテールを上部でうさみみ型のリングにまとめヘッドセットのバンド部分で留め、更に肩から胸にかけて下ろした髪の先を2つずつシズク型。バイオレット色の瞳をした美少女。

もう片方は紫銀の髪に銀色の瞳を持った美少女。

 

レイガ「相変わらず歌えばどこでも人が集まるね」

 

ステージの周りには多くの観客が二人を応援していた。中には騎士団もいるけど、これって仕事放棄・・・まあ護衛として認めようか。

 

レイガ「桜ってあれ?」

 

桜を呼びかけようとしたら隣にいなかった。

 

ユエ「レイガ、桜ならあっち」

レイガ「もう行ったの」

ユエ「ステージ見たらすぐに走った」

 

ユエの指さす方を見ると、桜がステージの近くで二人を凝視している。

数分後、ライブが終わり、全員が拍手を送る。

 

レイガ「王様、すごかった」

 

桜はキラキラした目で帰って来た。喜んでくれてよかった。

 

桜「あの人たち王様の知り合い?」

レイガ「知り合いっていうか」

?「レイガ!」

?「ダーリン!」

 

説明をしようとしたらステージにいたはずの二人が僕に抱き着いてくる。

 

レイガ「っと⁉ 二人とも急に飛びついたら危ないよ」

?「だってダーリンがいたから」

?「久しぶりなんだからいいでしょ」

レイガ「はあ~わかったよ」

桜「王様?」

レイガ「ああ、ごめんね桜。この二人は僕の妻で」

ウタ「ウタだよ。よろしくね」

美九「誘宵美九ですわ。はじめまして桜さん」

桜「桜です。はじめまして」

美九「きゃーー、この子可愛いいです」

 

と、桜に抱き着く美九。

 

レイガ「てか二人だけで来たの?」

ウタ「違うよ。ちゃんと護衛もつけてるよ」

レイガ「護衛って?」

?「やっほ~会いに来たよレイ君」

レイガ「え⁉」

 

声がした方を見ると、そこには銀色の短髪で長身の男性がいた。てか

 

レイガ「ノア兄⁉」

 

なんと、僕の兄でもあり、光の超神『ウルトラマンノア』が立っていた。

 

レイガ「え⁉ なんで」

ノア「はっはっは、実は報告を聞きに来たんだけど、それは建前でサボりに来た」

 

いつも通りのノア兄だ。

 

ノア「それにしてもこの町は面白いね~。ジュラテンもいいけど、ここもいいよね」

レイガ「それよりサボっていいの?」

ノア「いいのいいの、僕らにも休暇は必要だからね。仕事はレジェンドに振って来たから大丈夫!」

レイガ「大丈夫な未来が見えないけど⁉」

 

と、いつもこんな感じのノア兄。レジェンド先輩にサーガ兄さんお疲れ様です。

 

 

 

 

 

それから数日後。レスティア騎士王国が西方同盟に加入し、名称が「西方同盟」から「東西同盟」と改めた。今日はヒルダの兄で新たなレスティア国王であるラインハルト聖騎士王を会議に迎える。

 

レスティア「若輩ゆえ至らぬこともありましょうが、よろしくお願いいたします」

ラミリス「まあ、堅苦しい挨拶は無しにしましょう。ここでは誰もが平等に意見し、話し合い、助け合う場なのですから」

 

礼儀正しく一礼した騎士王を教皇猊下が優しげに微笑む。

 

リーリエ「私も新米国王です。よろしくお願いします、レスティア国王」

レスティア「ありがとうございます、リーニエ国王」

 

リーニエとレスティアの若き新国王同士が固い握手を交わす。

 

ミスミド「しかしレスティアのこともそうだが……聞いたぞ、冬夜殿。なんでも大樹海の部族たちを味方につけたそうじゃないか」

 

ミスミドの獣王陛下はそんなことを口にする。情報が早いな。

 

ミスミド「だが、一番気になるのはガレイ族だな。今ではその部族を一人も見なくなったが、相当の実力だと聞いた」

レイガ「ぶふぅ⁉ さあ? どこへ行ったのかは僕にも」

 

城の中にいるなんて言えるわけないじゃん。

それからユーロンから流れた難民の状況や、山崩れにより通行不可になった街道処理用のフレームギア貸し出しなど、ひと通りの話を終えると、さっそくみんながラインハルト騎士王を球場へと引きずって行った。今日は歓迎試合と称してリーフリース対レグルスの野球試合があるのだ。

各国護衛の兵士たちもぞろぞろと球場へ向かう中、僕はラミッシュ教皇猊下に声をかける。

 

レイガ「教皇猊下・・・実は今、この城に二人神様が来てるんですけど。会ってみます?」

ラミッシュ「え⁉」

 

驚きつつもこくこくと頷く教皇猊下を連れて、花恋姉さんと諸刃姉さんがお茶をしている席へ連れて行った。二人に教皇猊下を紹介し、がちがちに緊張している彼女に、今度は二人を紹介した。

 

レイガ「僕の姉さんたちで、恋愛神の花恋姉さんと剣神の諸刃姉さんです」

花恋「初めましてなの」

諸刃「初めまして、ああ、そんなに畏まらないでいいからさ。楽にして、楽に」

 

床にひれ伏そうとする教皇猊下を、姉さんたちが立たせてテーブルにつかせる。

 

レイガ「あともう一人いるんですけど」

花恋「もう一人?」

諸刃「誰か降りて来たのか玲我君」

レイガ「僕の兄です」

花恋&諸刃「「兄?」」

ノア「やっほ~呼ばれて飛び出たノアだよ~」

 

天井から飛び降りてきたノア兄を見て、固まる三人。

 

花恋「の・ノア様なの⁉」

諸刃「これはまた規格外の人が来たものだ」

ラミッシュ「・・・」

 

花恋姉さんは慌てて、諸刃姉さんも驚き、ラミッシュ教皇はいまだ固まっている。

 

ノア「いや~少し見ない間にレイ君に新しい姉がいるなんてお兄さん感激!」

 

そこからはようやく動き始めた教皇猊下がいろいろと質問し、花恋姉さんと諸刃姉さん、ノア兄がクッキー片手にかる〜くそれに答え、なんだかんだで話が弾んだ。

途中で抜けて、球場で向かうとレスティア騎士王が食い気味に試合を見ていた。なんかデジャブ。

 

 

 

 

〈リスト〉

メイド:グレイフィア、ロゼ、ミウ、レム、本音

騎士団:レイン、裕斗、アビス、錆兎、クーフーリン、エミヤ、ランス、ドット

護衛兼先生

エルゼ:メレオレオナ、ヨル

リンゼ:アイリーン、朱乃、

八重:葵、カナエ

ユミナ:リリス、アルファ

ルー:茜、恵

スゥ:ウルティマ

ヒルダ:エルザ

桜:ユエ、ウタ、美九

秘書(日替わり)

月:シオン

火:レイヴェル

水:緋紗子

木:虚

金:栞子

土日はランダム。

忍び:小波、レヴィ、かすが、ユキカゼ

以下は自由組

ジョニー(シルバーと共に放浪中)

名前が無いキャラは惑星レイガに帰宅中。




ワンピースからウタ、デアラからは美九を出しました。
また今回からリストを作り、現在滞在中のキャラを書きました。


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新たなバビロンへ③

今回は短めです。


〈レイガサイド〉

 

レイガ「バビロンの遺跡が見つかったって? 場所は?」

紅玉『はい・魔王国ゼノアスの中央部、その山岳地帯に』

 

紅玉からの報告を聞き、僕は考える。

魔王国ゼノアスか。確か魔族たちの住む閉ざされた王国で魔王と呼ばれる者により統治され、他国との関わりをあまり望まない国だという。天険の地による過酷な環境でありながら、様々な種族が暮らし、また魔獣やその亜種たちが多く跋扈する魔境の地とも言われる。

全くの未知の国にいきなり行ってもいいものか・・・とりあえずうちの騎士団にいる魔族の者を呼び出した。

 

?「ゼノアスのことでありますか?」

 

呼び出したのはヴァンパイア族の青年、ルシェードである。

 

レイガ「ゼノアスには魔族以外の人間はいるの?」

ルシェード「はい、少数ではありますが人間や、亜人なども普通におります。積極的に他国との関わり合いを持たないだけで、別に鎖国というわけではないので。ただ、いろいろと暮らしにくいので、住むものはあまりいないかと」

レイガ「というと?」

ルシェード「まず気温の変化が極端ですね。昼は真夏のような暑さかと思えば、夜は極寒の冬といった感じで。魔獣が多く、街から一歩出た途端に襲われる可能性が跳ね上がります。それと食事ですね。あまり人間が食べるようなものはないかもしれません。スライムゼリーやオーク肉なんて食べたいと思いますか?」

レイガ「絶対に無理!」

 

ゲルドやリムルを連想するから却下。

 

ルシェード「私もこちらの食事に慣れてしまうとなかなか・・・たまに食べたくなる料理もあるのですが」

 

そう言ってが苦笑いを浮かべるルシェード。

まあ、とにかく行っても問題は無さそうなので遺跡へ向かうとしよう。今回は僕一人で向かうので琥珀たちの中から一人連れて行こうとしたが、ここで問題が、誰がついていくかで喧嘩し始めた。

ユミナお手製のくじで、連れて行くのは琥珀に決まり、さっそく向かうことにした。

まずはユーロンまで【コネクト】で向かい、そっからは琥珀を抱えてゼノアスまで飛んで行く。念のため【透明化】をしておく。

数分ぐらい飛んではいるが、地上へ目をやると荒野と岩山、そして鬱蒼とした森などが広がっていた。確かにここで暮らすのは大変な気がする。

一応道らしきものはあるのだが、整地されているとはとても思えない。

 

レイガ「かなり未開な感じだなあ。まあ王都の方に行けばまた違ってるんだろうけど」

琥珀『魔素の濃度も濃く、魔獣の数が多いようですね。ここは人が暮らすには難しい場所のようです。魔族のように強靭な身体を持つ種族でないと・・・』

 

なるほどね。魔族の国らしいといえばらしいか。それにしても暑いな。

飛行しながら地上を眺めていると、向こうからなにかが飛んできた。あれは鳥だな。青いコンドルのような鳥だ。

コンドルは僕らの方を先導するように飛んでいく。やがて山岳地帯へと差し掛かり、その一角にある谷へと僕らを導いて行った。

 

レイガ「これは・・・」

 

岩山の間に挟まるように。凱旋門のような遺跡があった。

地上に降りて、門の材質を調べてみる。

 

ハク『パパ。一致したよ』

レイガ「やっぱりか。ありがとう。ハクちゃん」

 

どうやら材質は同じようだ。高さは三メートルくらいで、中に入ると六畳一間のような部屋gあり、壁にはなにか文字が刻まれていた。その左側にはなにかの図形が五つ盾に並んでいる。

中央には石柱が一本だけで、その上には火属性の魔石が輝いている。いつもならすべての属性の魔石があるはずなんだけど

 

レイガ「まあ、とりあえずいつもどおり」

 

魔石に魔力を流すと、ブブーッ、というブザー音が聞こえてきた。

 

レイガ「あれ、違うのか。じゃあこの文字がなにかしらのヒントか」

 

解読用のサングラスをつけて壁の文字をよく見てみると、

 

『右の図形を正しい順番に上から並べよ。実際に並べ替える必要はなく、頭に思い浮かべ、魔石に触れて魔力を流せばよい』

 

と、問題文が出てきたが、

 

レイガ「右の図形・・・右?」

 

文章の左には図形はあるが、右にはなにもないけど・・・

 

レイガ「とりあえず、右にはなにも無いっと」

 

頭に思い浮かべ魔石に魔力を流すと、

ピンポンピンポンピンポーン。

正解のような音が聞こえ、壁が横へスライドするように動いた。次の部屋に続いているようだ。

 

レイガ「なるほどね。ここの試練はなぞなぞか。面白そう」

 

わくわくしながら次の部屋へと進んで行く。

 

数分後

全ての問題を解いていつも通りの転送陣がある部屋へとたどり着いた。

 

レイガ「いや~結構面白かったな」

琥珀『さすがです主。すべて秒殺で終わらせるなんて』

レイガ「いや~昔あんな感じの問題を解いたことがあるから慣れたよ。案外博士と波長があうのかもしれないね」

 

いつも通り六柱の魔石に魔力を流し、転送陣の中央に琥珀と共に立つ。転送陣を起動させる。

 

 

 

 

 

光の奔流が収まり、目を開くといつものバビロンの風景だ。木々が風にざわめき、彼方に雲海が広がる。

辺りをキョロキョロと見回ると、木々の向こうに建物が見えた。

建物へ向かい、中に入ると

 

レイガ「うわ・・・」

琥珀『これは・・・』

 

見渡す限り本、本、本。ここは『図書館』だな。絶対にそうだ。

しばらく進むと、急に辺りが開け、机や椅子がそこらに見られるようになった。机の上にはいろんな本が山積みになっていて、その奥のソファーには一人の少女が腰掛けていた。

持っている本に視線を落とし、こちらを見ようともしない。栗色の髪はショートカットに切り揃えられ、眼鏡をかけた横顔は、他のバビロンナンバーズと共通した面影がある。着ている服もみんなと同じだし、この子が『図書館』の管理者なんだろう。

 

レイガ「あの・・・」

?「アト30分ほどで読み終わりますので話かけないでください」

レイガ「あ、はい……」

 

完全に邪魔者扱いだ。待ちますか。とりあえずその辺の本を眺めてみる。

 

『夜の手ほどき 初級者編』

 

ふむふむ。なるほどなるほど。

 

?「ナニを読んでいるので?」

レイガ「うん? ちょっとばかし参考に・・・」

 

背後から声をかけられて、答えるが・・・やっちゃった。

 

ファム「ヨウこそバビロンの『図書館』へ。私はこの『図書館』を管理する端末、名前をイリスファムと申します。ファムとお呼び下さい」

レイガ「僕は光神玲我。よろしく」

ファム「ココへ来たということは、博士の問題を解いて来たということですね。条件を満たしたと認め、コレより機体ナンバー24、個体名『イリスファム』は、貴方に譲渡されます。ヨロしくお願いします、マスター」

レイ「よろしく、あと登録するのはいいけど、僕は嫁としかキスはしないから」

ファム「ワカりました」

 

返事をし、すぐにキスをされる。毎回思うけどなんでこんな決断早いの!

 

ファム「登録完了。マスターの遺伝子を記憶いたしました。これより『図書館』の所有権はマスターに移譲されます」

レイガ「これからよろしくね。ファム」

ファム「ソレで現状、バビロンはいかほど揃っているのですか?」

レイガ「えっと『庭園』『工房』『錬金棟』『格納庫』『城壁』『塔』の六つ、この『図書館』で七つめだな」

ファム「ナルほど。ではそちらの方へ向かうとしましょう」

 

机上の端末に何やら打ち込んで、『図書館』が静かに動き出した。どうやらテンペスト・レイの上空に向かっているようだ。

 

ファム「マスター。お願いがあります。この『図書館』に新たな本を入荷していただきたいのですが・・・」

レイガ「いいけどここに何冊あるの?」

ファム「ザッと2000万冊は下らないかと」

 

僕の星の図書館と同じくらいか。

 

レイガ「わかった。とりあえず百冊ぐらい用意するよ」

 

とりあえず本は用意するとして、リーンの念願だった『図書館』が見つかったことだし一応報告しておくか。

 

 

 

 

 

リーン「ついにキタ───────ッ!!」

 

両拳を振り上げて、全身で喜びを表現しているリーン。その横では同じように両拳を振り上げて喜びのボーズをとっているポーラ。

 

リーン「古代叡智の結晶! 知られざる知識と歴史! その全てがこの手に!」

レイガ「盛り上がってるとこ悪いけど、一応『図書館』の本は閲覧制限かけるよ?」

リーン「なんですと⁉」

 

目を見開いて僕の方をぐりんと振り向くリーン。今は応接間へリーンを呼び出し、『図書館』が見つかった話を切り出した。

 

レイガ「だってリーンはミスミドの大使なわけだし。古代の叡智やらを簡単に渡したらダメだと思うよ。普通に」

リーン「そうきたか・・・。まあ、わからないでもないけど。・・・そうね、じゃあこうしましょう。私をテンペスト・レイの宮廷魔術師として迎えてちょうだいな」

レイガ「いやそっちの仕事の方はどうするの?」

リーン「問題ないわね。一応妖精族の長として名前を連ねてはいたけど、実質上はほとんど名誉職みたいなものだったし。実務の大半はエリスがやっていたから」

レイガ「エリスって?」

リーン「現ミスミドの宮廷魔術師よ。この際だから妖精族の長の座を彼女に譲ってしまいましょう。これで完全に隠居して、知識の探究に没頭できるわ」

 

何か話がどんどん進んで行くんだけど。

 

リーン「失礼ね。やる気になったらすごいわよ、私は。『図書館』で得た知識をテンペスト・レイの糧となるようにうまく活用してみせるわ。あ、なんなら私も貴方の奥さんになりましょうか?」

レイガ「・・・その手があったか~これからよろしくねリーン」

リーンレイガ「あら貰ってくれるの?」

レイガ「うん」

リーン「ありがと。愛してるわ、ダーリン」

 

なに?ずいぶんあっさりと返事したと・・・ほっとけ!

 

 

 

 

 

リーン「ふおおぉぉぉ・・・」

ヒルダ「はわあぁぁぁ・・・」

 

リーンとヒルダの声が『図書館』に響く。他のみんなも驚いてはいるが、そこまでではないようだ。

 

ヒルダ「いったいこれってどうなってるんです!? 空に浮いてるって・・・! あ、フレームギアもここから⁉」

ファム「スミませんが『図書館』ではお静かにお願いします」

ヒルダ「あ、すいません・・・」

 

大声を上げたヒルダに、ソファーで本に視線を向けたままのファムが注意する。ファムは今、惑星レイガから持ってきた本を読んでいる。ちなみに作者は僕の妻である「国木田 花丸」である。

 

リーン「ところでこの上の方の本ってどう取るのかしら? 階段とか脚立は?」

レイガ「確か棚に手を触れて、見たい段を念じてみて」

 

僕の言う通り、リーンが棚に触れるとゆっくりとその本棚だけが地下へ沈んでいき、ある高さでピタリと止まる。

 

リーン「なるほど。こういう仕組みなのね。これは・・・!」

 

本棚から一冊の本を手に取る。

 

レイガ「何の本?」

リーン「古代魔法の教本よ! 古代魔法言語で書かれているけど、なんとか読めるわ。今使われている魔法の大元になった魔法や、もう伝わっていない魔法も載っているわ! これってすごいことなのよ⁉」

ファム「スミませんが『図書館』ではお静かにお願いします」

リーン「あ、ごめんなさい・・・」

 

ヒルダと同じようにファムに怒られるリーン。

 

八重「それにしてもすごい本の数でござるな・・・。これでは目的の本を探すのもひと苦労なのでは?」

レイガ「ああ、それも大丈夫。例えば・・・「剣に関する本を検索」」

 

僕がそう発言すると、床の絨毯に矢印が浮かび上がった。これを辿って行けば目的の本を探せるってわけだ。簡易版の『星の本棚』だね。

 

レイガ「あと翻訳のための眼鏡を置いておくから」

 

恒例のサングラスを用意してある。

みんながそれぞれ興味のある本を探したり読んでいる間、僕はフレイズについて調べてみた。

 

レイガ「これは・・・」

 

一冊の本を手に取って読む。過去に現れたフレイズについて書かれた本だ。

そのなかには飛行型のマンタや昆虫、それに上級種のことも書かれていた。

 

レイガ「嘘だろ・・・」

 

読んでいくとそこに描かれていたのは『人型』のフレイズ。上級種を遥かに超える戦闘力と知性を持っているらしい。

 

 

 

 

 

 

〈リスト〉

メイド:グレイフィア、ロゼ、ミウ、レム、本音

騎士団:レイン、裕斗、アビス、錆兎、クーフーリン、エミヤ、ランス、ドット

護衛兼先生

エルゼ:メレオレオナ、ヨル

リンゼ:アイリーン、朱乃、

八重:葵、カナエ

ユミナ:リリス、アルファ

ルー:茜、恵

スゥ:ウルティマ

ヒルダ:エルザ

桜:ユエ、ウタ、美九

秘書(日替わり)

月:シオン

火:レイヴェル

水:緋紗子

木:虚

金:栞子

土日はランダム。

忍び:小波、レヴィ、かすが、ユキカゼ

以下は自由組

ジョニー(シルバーと共に放浪中)

名前が無いキャラは惑星レイガに帰宅中。



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蒼帝

〈レイガサイド〉

 

リーンと婚約が決まってから数週間がたった。あれから僕はギルドと連携して冒険者のためのダンジョンを作ることにした。

構造はラミリスたちが作ったダンジョンを参考にした。一から作っても良かったが、作業効率のために地帝竜ヴェルガイアに手伝ってもらった。

 

ガイア「きゅうう!」

レイガ「あっはっは! 元気そうだなガイア」

ガイア「きゅうう!」

 

久しぶりに会ったからか、甘えるように頬ずりするガイア。もうかわいいな!

ガイアのスキル『万物具現』で簡単にダンジョンは製作することができた。

早速人気になってテンペスト・レイの名物となった。

こんな平和な生活が続けばいいな。

 

 

 

 

 

レイガ「って数秒前までは思っていたんだけどな」

 

今僕の目の前には「飛竜(ワイバーン)」が迫って来た。

なんでこんなことになっているのかというと、久しぶりにリフレットに来て『銀月』の改装を手伝ったり、ザナックさんの店を久しぶりに尋ねて、新たな服をアイデアを提供したりしていたが、

 

バラル「ザナックの旦那! 竜だ! 竜が現れた! 早く逃げろ!」

レイガ「なッ⁉」

 

武器屋のバラルさんが店内に入って報告してきた。急いで店の外へ飛び出すと、確かに緑色の二本足の竜が迫ってきていた。

 

飛竜「ゴガアァァ!!」

 

飛竜が咆哮するたびに、町中がパニックに陥る。飛竜めんどいからワイバーンにしよう。ワイバーンは地上へ鎌首をもたげると、その口から大きな炎弾を吐き出した。

僕はその炎弾の正面に立つ。

 

レイガ「【コネクト】」

 

魔法陣を二つ展開して片方で炎弾を吸収し、もう片方で炎弾をワイバーンに送り返す。

 

飛竜「グギャアアア!!」

 

攻撃を喰らって怒りを露わになるワイバーン。怒りたいのはこっちの方だぞ。

こちらの方へ下降してくるワイバーン。僕はザングラソードを出し、ダイヤルを一回回し、居合の構えを取る。

 

『秘技!・・・』

レイガ「心桃滅却! アバター光刃!」

『キアイ! イサイ! イアイ斬!』

 

僕の一閃がワイバーンの身体を真っ二つに斬り裂く。ワイバーンは絶命した。

 

レイガ「人騒がせな竜だな」

 

町中から歓声が起こった。安堵した町の人々が僕と倒されたワイバーンの元へと寄ってくる。

 

ザナック「いやはや・・・やはりすごいですなあ。飛竜をあっという間に・・・。陛下がこの町に居てくれて助かりました」

 

ザナックさんが死んだワイバーンを眺めながらつぶやく。バラルさんは目を見開いて僕の方を見ていた。見物人の向こうからミカさんとドランさんも駆け寄ってきた。

 

ドラン「こりゃまた・・・とんでもないのを倒したもんだな。町が被害を受けなくてよかったが……ところでこれ、どうするんだ?」

レイガ「まあ、僕は別に要らないんで。肉はドランさんのところに差し上げますよ。たしか竜肉は美味だって聞いたことがあります。皮はザナックさんに。レザージャケットとか作る素材になるでしょう。骨はバラルさんに。武器の素材としてはかなり役立つと思いますよ」

 

僕の言葉にみんなポカンとしていたが、やがてミカさんが慌てた様子で詰め寄ってきた。

 

ミカ「ちょ、ちょ、ちょっと、わかってる⁉ 竜って最高素材なのよ⁉ それをポンとあげてもいいの⁉」

レイガ「僕は今のところ必要ないし。みなさんにはお世話になったからね。恩返しってわけじゃないけど、受けとってください」

 

この町で過ごした期間は短かったけど、いい思い出がいっぱいだからね。

ドランさんがさっそく剥ぎ取り用のナイフで飛竜を捌いていく。

しかし、なんでワイバーンがこんなところに来たのか。竜のことは前の黒竜で解決したと思ったんだけどな。

なんでもレリシャさんから聞いたら、このごろ頻繁に竜が目撃されているらしい。

 

ドラン「なんだこりゃ?」

 

剥ぎ取りをしていたドランさんが声を上げる。ちょうど首を切り落とし、頭の皮を剥ぎ取ろうとしたところだった。

ドランさんが見ていたところを覗くと、ちょうど頭蓋骨の中央に当たる部分になにかが打ち込まれている。慎重にそれを引き抜くと、長さ30センチばかりの長い針だった。おそらく脳まで達していたと思われるそれには、なにやら魔力を帯びているのが感じられた。

 

レイガ「ひょっとして、これで竜を操っていたのか?」

 

もしかしてまた『蔵』。いやなんでだろう、詳しくは言えないが、これはレジーナ博士のではないと思う。僕の勘がそう言っている。調べてみるか。

 

 

 

 

 

シェスカ「はッきり言いまスと、これはバビロン博士の作品ではアりませン」

レイガ「やっぱりか」

 

僕はすぐにバビロンへ向かい、シェスカに見せると、彼女はそう断言する。

 

ロゼッタ「これは「支配の響針」でありまスな。エルクス博士の作品でありまス」

レイガ「エルクス?」

シェスカ「デボラ・エルクス博士。パルテノで一流の魔法工芸師と呼ばれていた人でス。まあ、バビロン博士には遥かに及びませんでしタが」

 

へえ~そんな人もいたのか。

 

シェスカ「エルクス博士はなンと言いまスか、バビロン博士に強い敵愾心を持っていまシて。彼女の作る作品は、バビロン博士に言わせルと、「強力ではあるが安全性に難あり」「汎用性に富むが使用者に負担を強いる」「目新しさが無く面白くない」と、こンな感じでしタ」

ロゼッタ「バビロン博士がそのエルクス博士の作品より出来がいいものを、あっさりと作るもので、余計に敵意を向けられていたようでありまス」

レイガ「ああ、なんとなく思い浮かぶよ。それでこの「支配の響針」ってのは?」

ロゼッタ「これは魔獣を使役するための魔道具でありまス。魔力を込めて頭に打ち込むと、その魔獣を自由に操れる代物でありまスが、その魔獣の力を限界まで引き出す代わりに寿命を削り、魔獣と使用者の精神を無理矢理つなぐことから、使用者の精神に障害を与える可能性が判明したので廃棄処分になったと聞いたでありまスよ」

 

なるほどね。博士の言う通りだな。それにしても今回の問題どうしようか。

 

紅玉『主。よろしいでしょか』

レイガ「紅玉? どうしたの?」

 

窓から紅玉が入ってくる。

 

紅玉『竜のことならば「蒼帝」を呼び出し、聞いてみるのが良いかと愚考します』

 

名前的に琥珀たちのお仲間か。

 

紅玉『厳密に言うと竜は魔獣ではありません。それ自体が一つの種であり、蒼帝の眷属です。それ以外には蜥蜴や鰐わになどがいますね。ここらへんは黒曜たちの域に少し被ってますが。どちらにしろ、竜を相手にするのであれば、呼んでおいて損はないかと。私も久しぶりに顔を見たいので』

レイガ「確かに一理あるね」

琥珀『主! 私は反対です!』

 

ドガンッ! と扉を体当たりで開けて大虎のままの琥珀が飛び込んでくる。久しぶりにその姿を見たな。

 

琥珀『あんな嫌味ったらしいのを呼び出さなくても、主なら問題を解決できます! どうかご再考を!』

珊瑚『嫌味かどうかは置いといて、蒼帝なら適任ではないか』

黒曜『琥珀ちゃんは蒼ちゃんと仲悪いからねぇ。まあ必死だこと。プププ』

 

空中を泳いで珊瑚と黒曜もやってくる。

 

琥珀『ぐっ、確かにそうだが・・・。我々の中にあいつが入ると面倒なことになるのがわからんのか! 屁理屈ばかり抜かすひねくれ者だぞ! ああ、思い出したら腹が立ってきた!』

 

琥珀が小さくなったかと思ったら、駄々をこねる子供のように絨毯の上で暴れ始めた。この光景はかわいいな。

 

紅玉『直情的な琥珀と理性的な蒼帝は水と油です。仲が悪いというよりは馬が合わないと言いますか。それぞれ良いところを認め合ってはいると思うのですが、なにぶん二人とも頑固で』

琥珀『誰が! 認めてるとしたらあの達者な口と空気を読まない無神経さぐらいだ!』

 

琥珀がテーブルの上に乗り、紅玉を怒鳴りつける。

 

レイガ「琥珀の言い分はわかったけど、まあとりあえず召喚してみるよ」

琥珀『そんなー』

レイガ「まあ、別に無理に仲良くしろとは言わないからさ。でも口喧嘩ぐらいならいいけど、本気で喧嘩するならどっちもお仕置きするからな」

 

渋々といった感じの琥珀を連れて、中庭の方へ僕らは出て行った。いつも通り召喚陣を描き、その中へと闇属性の魔力を注いでいく。召喚陣の中に現れた黒い霧が次第に濃くなっていくのを確かめつつ、そこへ琥珀たちの魔力をゆっくりと混ぜていった。これで準備完了だ。

 

レイガ「春と木、東方と大河を司る者よ。我が声に応えよ。我の求めに応じ、その姿をここに現せ」

 

召喚陣の中の魔力が一気に膨れ上がり、黒い霧の中から巨大な青い竜が現れた。

 

?『・・・ふむ。懐かしい気を感じてみれば君たちか。こんなところで出会うとはね。いったいどういう状況なんだ、これは?』

 

青竜から落ち着きはらった声がした。・・・てか琥珀たちって全員メスだったのね。

 

珊瑚『久しぶりじゃ、蒼帝』

黒曜『蒼ちゃん、お久しぶり〜』

紅玉『お元気そうで何よりです、蒼帝』

 

珊瑚、黒曜、紅玉が挨拶をする中、琥珀だけ顔を背けて舌打ちしていた。

 

蒼帝『ふむ。挨拶もできない小物がいるようだが、まあ許そう。私は心が広いからな』

琥珀『ぬかせ! この青トカゲが! 心が広いだと⁉ 陰湿な言葉を吐く根性曲がりがよくも言えたものだ!』

蒼帝『私が根性曲がりと? なら君は根性が曲がりすぎて輪になってるんじゃないのかね?』

琥珀『なんだと⁉』

レイガ「はいはい、そこまで」

 

今にも飛びかかりそうな琥珀を抱き上げ、青龍を見上げる。青竜は訝しげな目をこちらへ向けていたが、やがて口を開いた。

 

蒼帝『察するに君が私を呼び出した者か。名前は?』

レイガ「光神玲我。この国の国王をやっている」

蒼帝『ほほう。炎帝はまだわかるとしても、どうやって白帝や玄帝たちの協力を仰いだか気になるところだが』

黒曜『協力も何も。彼は私たちのご主人様よぅ?』

蒼帝『・・・なに?』

 

黒曜の声に青龍の動きが止まる。まるで信じられないものを見るかのような目で僕を見てくる。

不意に青龍からものすごい威圧感が発せられる。初めて出会った時の琥珀を思い出す。やがて青龍は威圧感を放つのをやめ、小さく息を吐いた。

 

蒼帝『・・・確かに妙な気配を感じるが・・・君は何者だ?』

レイガ「ん~とね僕は」

琥珀『疑問に思うならば自らで確かめてみたらどうだ、蒼帝。我が主はお前とも契約を結ぶつもりだからな。我らを従えたその力、試したくはないか?』

蒼帝『む・・・。君の口車に乗るのは癪だが・・・確かに気になるな。よかろう。この者の実力を試してみようじゃないか』

 

お~い琥珀。悪い顔になってるよ。

 

 

 

 

 

中庭は狭いので、西の平原にあらためて青龍を召喚した。観客は他の神獣とバイスたちだけ。

 

レイガ「で、どうするの? 戦えばいいの?」

蒼帝『ふむ。まあそうだね。君の実力がわかればいい。ああ、殺しはしないから安心したまえ』

 

そのセリフを聞くや神獣たちやバイスたちが、ぷっ、と噴き出した。

 

レイガ「いいけど。じゃあ、いくよ」

 

僕は『クローズギア』を使い、『ビルドドライバー』と青い竜が描かれたボトル『ドラゴンフルボトル』を召喚する。空中には青いドラゴン型ロボ『クローズドラゴン』が飛んでいる。

僕はベルトを腰に巻き、ボトルを振る。

カシャカシャ

キャップを閉める。

キュッ!

すると、空中に浮かぶクローズドラゴンをガジェットモードに変形させ、ボトルをセットし、赤いボタンを押す。

 

『ウェイクアップ!』

 

ベルトにセットする。

 

クローズドラゴン!

 

ドライバーのレバーを回す。すると、僕の周りに管を無数に現れ、青いボディーが形成される。

 

『Are you ready?』

レイガ「変身!」

Wake up burning! Get cross-z DRAGON! Yeah!

 

青いドラゴンの仮面ライダークローズへ変身する。

 

蒼帝『なッ・・・⁉』

レイガ「今の僕は、違う俺は負ける気がしねえぜ!」

 

僕はドラゴンフルボトル専用武器『ビートクローザー』を召喚する。

 

『ビートクローザー!』

 

僕はビートクローザーのグリップエンドを一回引く。

 

『ヒッパレー!』

 

刀身に蒼炎が纏う。

 

『スマッシュヒット!』

レイガ「ハアッ!」

 

蒼炎の斬撃を飛ばす。

 

蒼帝『ぐっ・・・!』

 

斬撃はそのまま青龍の身体に当たる。

 

レイガ「まだまだ!」

 

僕は鍵が描かれたボトル『キーフルボトル』を装填し、グリップエンドを三回引く。

 

『スペシャルチューン!』

『ヒッパレー! ヒッパレー! ヒッパレー!』

 

刀身に蒼炎が纏う。

 

レイガ「おりゃああぁぁ!」

『メガスラッシュ!』

 

鍵型のエネルギー斬撃が青龍を襲う。

 

蒼帝『ぐあぁぁぁ!』

 

僕はビートクローザーを収納し、ベルトのレバーを回す。

 

レイガ「おらおらおら」

『Ready go』

 

僕の背後にクローズドラゴン・ブレイズが出現する。

 

『ドラゴニック! フィニッシュ!』

レイガ「はあぁぁぁ!」

 

クローズドラゴン・ブレイズの吐く火炎に乗り蒼炎を纏った右脚で青龍を攻撃する。

 

蒼帝『ぐあぁぁぁ!』

 

攻撃が当たり、青龍が地面に倒れ込んだ。・・・あれ? またやりすぎたかな?

 

蒼帝『ぐっ・・・! な、なんだこの威力は・・・! こんな、こんな強力な威力の魔法を何発も使ってなんでそんな平然と・・・』

琥珀『くははは! 蒼帝よ、主の実力を見誤ったな! 召喚されたはずの我らがこうして普通に顕現していることに疑問を持たなかったのか?』

蒼帝『!』

 

青竜が驚きに目を見開く。動けない青竜の周りを駆け回りながら琥珀が楽しそうに語りかけていた。いや琥珀はしゃぎすぎ。

 

蒼帝『そういえば・・・! バカな・・・君たち全てを呼び出したまま、顕現させておくなど・・・! どれだけの魔力を消費してるのだ⁉』

琥珀『くっくっく。いいこと教えてやろう。我らを呼び出し、自由に存在させた上で、なお主の魔力は少しも減ってはおらん。それどころか他に何百体もの召喚獣を使役してもなんともないのだ』

蒼帝『バ、バカな・・・!』

琥珀『ふはははは! ざまあないな! 思い知ったか! これが我が主、光神玲我様の実力だ! 殺さないから安心しろ? どの口が言ったのやら!』

黒曜『嬉しそうねぇ、琥珀ちゃん』

珊瑚『まあ、わからんでもないが・・・』

紅玉『ちょっとアレは引きますね・・・』

 

琥珀、みんな引いてるよ。そんな間も琥珀は煽っている。青龍も立ち上がろうとするが、まだ力が入らないようだ。

 

蒼帝『ぐ、ぐふうっ・・・!』

レイガ「あの~そろそろ降参してほしんだけど?」

蒼帝『・・・わかりました。私の負けです。貴方と契約、いたしましょう』

 

その言葉を聞いて、変身を解いて、青龍を回復させる。

 

蒼帝『そのお力を見抜くことができず、失礼をいたしました。光神玲我様。なにとぞ私と主従の契約し、どうか私に新たな名を授けて下さい』

レイガ「名前か。そうだな・・・。琥珀、珊瑚、黒曜、紅玉ときたからな・・・ここはやっぱり「瑠璃(るり)かな」

蒼帝→瑠璃『「瑠璃」・・・でございますか?』

レイガ「そう。どうかな?」

瑠璃『わかりました。以後、私を「瑠璃」とお呼びください』

レイガ「ん。よろしく。あ、あと琥珀とあんまり喧嘩しないようにね。喧嘩両成敗だからね」

瑠璃『なるべく我慢いたしましょう』

琥珀『我慢するのはこっちだ!』

 

言ってもう琥珀が噛みついた。瑠璃も琥珀たちと同じように小さな小竜の姿へと変化した。その状態で睨み合っている二匹を見てため息をつく。

この光景をこれからも見るのかな。まあ癒されるからいいのかな?

 

 

 

 

 

〈第三者サイド〉

ここは惑星スピリット。レイガが管理している惑星のひとつであり、その星にはスピリットと呼ばれる生き物が生息している。この惑星では六つの国に別れており、それぞれを『赤』『紫』『緑』『白』『黄』『青』の色で分かれておる。

 

その中で赤と呼ばれる国のある山の山頂に、鎧を纏った一体の竜が立っていた。

 

?「・・・」

 

その竜は空を眺めている。いやもっと遠くを見ているようだ。

そこに一匹の赤き小竜がやって来た。

 

?「なあなあどうしたんだよ、ソウルドラゴン。そんな遠くを見てよ」

?→ソウルドラゴン「・・・ムゲンか。遠くで我が主の怒りを感じた」

?→ムゲン「レイガか? まああいつのことだし。なんか喧嘩でも売られたんじゃないか?」

ソウルドラゴン「・・・近いうちに出番があるだろう」

 

そう言ってソウルドラゴンと呼ばれる竜は立ち上がり、どこかへ向かう。まるで戦の前の準備をするように。

 

ムゲン「俺もそろそろレイガのところへ向かおうかな」

?「それなら私も連れてって」

ムゲン「!」

 

急な声に驚くムゲン。振り向くと、そこには黄色の小竜がいた。

 

ムゲン「ショコラか。どうしてお前が?」

?→ショコラ「久しぶりにママと一緒にパパのところへ行こうと思ってたの」

ムゲン「エリスと」

ショコラ「ええ」

 

また新たな妻が来ることをレイガは知らなかった。




毎回と言いましたが、リストは追加、または省の終わりに描こうと思います。


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戦龍

〈レイガサイド〉

瑠璃『竜にも様々な種がいて一概には言えないのですが』

 

そう前置きをして瑠璃は語り出した。どうやら「支配の響針」で竜が支配されていたとしたら、瑠璃としては何も出来ないらしい。しかし、上位竜の、いわゆる老竜と呼ばれる種になれば強い精神力を持っているため、おそらく支配されないだろうという話だった。

竜は幼竜(インファント)若竜(ヤング)成竜(アダルト)老竜(エルダー)の順に成長する。それ以上になると古竜(エンシェント)までに至る。

知能も差が激しく、人間の言葉は理解できるが、話すことができないらしい。

 

琥珀『そもそも竜はそれほど数がいないので心配することもないのでは?』

瑠璃『竜は幼竜でも単体で強く、倒される危険が少ないのだよ。故に君たち弱い獣のように数多く子を生なす必要がないだけさ。それに数が少ないといってもそれなりの数はいる。放置しておくのは愚の骨頂だと思うがね』

琥珀『なんだと⁉』

レイガ「は~い。すぐ喧嘩するんだから。ともかく事情を聴きに、ミスミドの聖域に行ってみるか。赤竜がいるし」

 

二人の喧嘩を止め、僕は瑠璃を連れてミスミドまで転移して、そこから飛んで向かうことにした。

しばらく飛んでいると、向こうから赤い竜がやって来るのが見えた。すると、すぐに瑠璃が元の大きさに戻る。

 

赤竜『蒼帝様におかれましては、此度の顕現、おめでとうございます』

瑠璃『呼び出された理由が君たち眷属の尻拭いってのがアレだけどね。で、我々が来た理由はわかっているのかな?』

赤竜『は。一部の者がしでかした不始末、まことに申し訳なく』

 

赤竜が眼を閉じ、首を垂れる。そのまま僕らは下に降り、その場で赤竜に話を聞くことにした。

だいたいは若い竜の反抗期らしいが、どうやら今回のきっかけは

 

レイガ「え、僕⁉」

 

どうやら僕があの時倒したあの黒竜らしい。

 

赤竜『あの黒竜は若い竜の中でも下っ端ではありましたが、それでも自分たちの仲間を殺されて黙っていられなかったのでしょう。すぐさま報復するべきだとの声が若い竜から上がりました』

レイガ「はあ~⁉ 何言ってんだ」

赤竜『むろん、そんなことを言い出したのは若い竜の一部だけで、あとの者は人間たちと諍いを起こすべきではないと諌めました。そのときは奴らも不承不承の態ではありましたが、引き下がったのです』

 

しかし、話はそれだけでは終わらなかった。ミスミドの聖域に住む竜とは別に、世界には幾つか竜たちの住む地域がある。

そのうちのひとつがここより南西、大樹海を越えた先にあった。ちょうどサンドラ王国とライル王国の間の海にあるドラゴネス島と呼ばれる小さな島だ。

ある日、聖域へとドラゴネス島から使いの竜がやって、ドラゴネスの竜は「竜王」の配下となった。以後干渉不要、と。

 

レイガ「竜王って、瑠璃のことじゃないの?」

瑠璃『普通の状態であれば。つまり普通の状態ではなかったってことですね。そもそも人間たちと、なるべく余計な争いをするべきではないと定めたのは私です。こうも露骨に逆らわれたのは初めてですね』

赤竜『蒼帝様がお隠れになってすでに何千年も経っておりますからな。若い竜はその存在さえも知らない者もおりますから』

レイガ「なるほどね。それでその「竜王」ってのは何者なんだ? 古竜の一匹とか?」

赤竜『いえ、竜人族の男だそうです。ドラゴネス島へやって来るや、その島の若い竜たちを支配して、島にいた「老竜」たちを皆殺しにしたとか。そして残る成竜たちをも力づくで従えたと聞き及んでおります』

 

竜人族ね~。そいつが「支配の響針」を使って竜を支配しているんだな。

 

赤竜『竜王に限界を超えた力と、掟に縛られぬ自由を与えられると聞き、我が聖域に不満を持っていた若い竜たちはこぞって島へと赴き、奴らが戻って来た時には我々では押さえられない力を得ておりました。今はまだこちらへ戻って来ている者は数匹に過ぎませんが、やがてこのあたりでも暴れ始めるかもしれません』

 

もうすでに若い竜たちの暴走は各地で始まっているけど。

 

瑠璃『なんとも情けない話ですね。わずか数千年の間に、我が眷属はここまで馬鹿になったとは』

赤竜『返す言葉もございません・・・』

レイガ「なるほどね・・・だいたいの話はわかった。元凶はその「竜王」とやらだが、竜たちは自ら望んで人間と喧嘩をし始めている。ってことは、そいつらを退治しても文句はないな?」

赤竜『・・・「誇りを忘れた竜は蜥蜴にも劣る」。蒼帝様のお言葉でこざいますが、もはやあやつらは竜にあらず。いかようにご処分されてもその意に従いましょう』

瑠璃『誇りと傲慢さは似て非なるもの。自らを誇るあまり、他人を見下したその瞬間からそれは傲慢さに変わる。私も最近痛い目にあったばかりです』

 

瑠璃が僕を見てそう言った。はて?

 

レイガ「まあとりあえず、竜の動向を見てこれからのことを考えるか」

 

僕はハクちゃんに頼んで竜の動きをマップで検索してもらってる。

 

ハク『パパ、大変です!』

レイガ「どうしたのハクちゃん?」

ハク『竜たちは・・・テンペスト・レイに向かっています』

 

 

 

 

レイガ「あ?

 

俺への復讐か、竜王の提案か知らねえが、どこに喧嘩を売ったかわかってんのか。

 

レイガ「・・・ありがとうハクちゃん」

ハク『はい。(怒ったパパもかっこいい)』

レイガ「瑠璃戻るぞ」

瑠璃『仰せのままに』

 

お前らの思い上がりぶっ潰す。

 

 

 

 

 

レイガ「というわけでまもなく竜の大群がこちらへくるので、サクッと殺りましょう」

山県「馬場殿・・・俺、なにから突っ込めばいいかわからねぇよ」

馬場「安心しろ山県。儂もわからん」

 

会議の席で山県のおっさんと馬場の爺さんが呆れたような目を向けてくる。

【コネクト】を使ってテンペスト・レイへと先回りした僕らは、すぐさま騎士団の幹部連中を集め、話を切り出した。突然のことにみんな目を点にしていたが、やがて副団長のニコラさんが、はっ、と我に返り、椅子から慌てて立ち上がった。

 

二コラ「ちょ、ちょっと待って下さい、陛下。竜って、あの空飛んで口から火を吐く、あの竜ですか?」

レイガ「うん、その竜。どうやら一部の糞いや馬鹿が調子に乗って、僕らの国を滅ぼそうとこっちに向かって来るらしい」

レイン「あの・・・大群って、何匹くらいなんです・・・?」

レイガ「通常の竜が50、あとはワイバーンみたいな翼竜が200くらいか。こないだのフレイズに比べたら大した数じゃないだろ?」

レイン&二コラ「「いやいやいや」」

 

レインさんと二コラさんが目の前で手を振って否定してくる。

 

ノルン「これってあれよね? 陛下がサクッと殺っちゃうってことよね?」

 

若干引き攣った顔でノルンさんが口を開く。

 

レイガ「そんなわけないじゃん」

レイン「え⁉」

レイガ「あれだけきつい稽古したんだから半分は騎士団に任せる」

レイン「ええっ⁉」

 

レインさんが驚きの声を上げる。

 

レイン「うちの騎士団は諜報部隊を合わせても百人いかないんですよ⁉ 一人一匹以上倒すなんて無理です! それに空を飛んでる相手とどうやって戦うんですか⁉」

レイガ「飛んでるのはランスとドットが落とす。あとはブレスに気をつけてね。騎士団の盾には耐熱障壁ついてるんだから、なんとかなるだろう」

二コラ「なんとか、って・・・」

ノルン「ま、まあ、フレームギアがあれば竜ぐらい倒せますよね。なら・・・」

レイガ「フレームギアは出さないよ」

ノルン「ええ⁉」

 

あいつらに人間の底力を見せつけなければならない。

 

レイガ「それと、これが一番大事なことなんだけど・・・」

レイガ以外『?』

レイガ「竜の素材はお金になる」

レイガ以外『・・・』

レイガ「お金があればいろいろと助かる」

レイガ以外『・・・』

レイガ「みんなにボーナスも出せる」

馬場「やるか!」

全員『おおっ!』

 

・・・チョロい。

 

 

 

 

 

瑠璃『見えました。あと三分ほどでここに来るかと』

 

瑠璃に言われた方向を見ると、竜の群れがこちらへ向かっているのが見えた。

僕らはテンペスト・レイの城下町から南にある平原で、襲い来る竜たちを待っている。ここなら町へ被害が出ないだろう。てか出さねえよ。

 

レイガ「なんかギャアギャアうるせえな」

瑠璃『「皆殺しだ!」とか「焼き尽くせ!」とか言ってますね。あとは「ギャハハハハ」とか下品な笑い声が。我が眷属とはとても思えぬ落ちぶれようです。それともあの魔道具になにか狂気をもたらす効果があるのか・・・』

レイガ「あっそ」

 

竜語はわからないが、今だけわからなくてよかったと思う。

 

レイガ「さて、確か自分たちは最強とかなんとか抜かしているが、

格の違いを見せてやるよ

 

僕は一枚のカードを手に取り、天に投げる。すると、カードの周りが炎に囲まれ、一体の竜が顕現する。

 

レイガ「赤き鎧を纏いし竜よ、我らが目指すは天下布武。顕現せよ、

戦国竜ソウルドラゴン!

ソウルドラゴン「gyaaaaaaa」

 

炎が収まると、そこには赤き鎧を纏った竜「戦国竜ソウルドラゴン」がこの惑星に顕現した。

 

ソウルドラゴン「我が主よ。今宵の戦はどのような?」

レイガ「簡単だ。今から向かってくるトカゲどもを半数倒せ」

ソウルドラゴン「は!」

 

そう言って、ソウルドラゴンは薙刀を構え、竜の群れへと飛び込んだ。

 

レイガ「ランスとドットは魔法で撃ち落とせ」

ランス「ああ」

ドット「おうよ」

レイガ「裕斗、アビス、錆兎は騎士団のサポートを優先しつつ、倒せ」

裕斗「わかったよ」

アビス「任せてください」

錆兎「こんなん朝飯前だ」

 

そう言って三人は戦場へと向かう。

 

レイガ「さて、誰に喧嘩売ったか思い知らせてやる」

 

 

 

 

 

 

「ギャオァアア!」

「グギャオオォォ⁉」

ソウルドラゴン「我が主に戦を申し出たんだ。命を取られる覚悟はできているだろうな」

 

ソウルドラゴンは薙刀を振るい、竜たちを斬りつける。傷を負い、地面に落ちる竜たち。だがまだ息の根はある。まあわざとだけどね。

 

ランス「【グラビオル】!」

ドット「【マシンガン・エクスプロム】!」

 

ドットの重力魔法、ドットの爆発魔法で残りの竜たちも地面に叩き落される。

 

レイン「テンペスト・レイ騎士団、全員突撃ぃーーーーーーっ!!」

騎士団『おおおおおおーーーーーッ!!』

 

地面に怯んでいる隙に団長のレインさんの命令で、騎士団が一斉に竜へ向けて突撃していく。

竜たちも首だけを向け、ブレスで反撃してくるが、

 

黒曜『残念でしたぁ。そう簡単にはさせないわよぉ』

珊瑚『我らはもともと守りの方が得意じゃからな』

 

黒曜と珊瑚の水の魔法に阻まれ、威力が半減する。てか炎しか吐けないのかよ。

騎士団に負けじと琥珀も大虎に変化してワイバーンへと駆け出す。

 

瑠璃『では私も参ります。琥珀(あやつ)ばかりに任せてはおけませんからね』

レイガ「ああ、みんなのサポートを頼むよ」

瑠璃『心得ております』

 

瑠璃も元の姿に戻り、天に向かって咆哮する。

 

レイガ「リンゼとユミナもサポートお願い」

リンゼ&ユミナ「「はい」」

リンゼ「【炎よ退け、防炎の障壁、ファイアレジスト】」

ユミナ「【風よ与えよ、祝福の追風、テールウインド】」

 

騎士団のみんなに赤と緑の二つの燐光に包まれる。炎耐性の補助魔法と、スピードを上げる補助魔法。どちらも『図書館』で会得した魔法だ。

 

レイン「大盾隊前へ! 突撃隊、その後に続けえッ!」

騎士団『おおっ!』

 

防御障壁を展開しながら、盾を構えた十人が横一列に並び、竜のブレスを受け止める。そしてその盾と盾の間から長い水晶槍を構えた騎士たちが一緒になって竜へと突っ込み、その体を容易く貫く。

 

「ガアァアアアアァァ⁉」

レイン「はああああああッ!!」

 

竜が攻撃を受けて怯んでいる隙にレインさんが晶剣を竜の脳天へと深々と突き刺す。竜は二、三度大きく痙攣し、静かに倒れた。

 

レイン「よし! 次に行くぞ!」

騎士団『おう!』

 

中々いい連携になってきたな。まあ、あれだけしごかれたら強くなるよ。

 

アビス「【アクセライズ】」

 

あっちではアビスが加速魔法で竜たちを斬りつけている。

 

レイガ「裕斗はなるほど炎凍剣(フレイム・デリート)か。確かにトカゲどもには有効だな」

裕斗「はああぁぁ!」

 

裕斗は魔剣を創造して、炎のブレスを凍らし、持ち前のスピードを生かして攻撃をしている。

 

錆兎「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮」

 

錆兎も竜の死角を突きながら攻撃をしている。相変わらず戦いになると冷静になるよね。いつもは荒々しいのに。

 

諸刃「玲我君」

レイガ「・・・いいよ。でもサポートだけだからね諸刃姉さん」

諸刃「ありがとう。なんか剣を!」

 

さっきからうずうずしている諸刃姉さん。しょうがないから行かせることにした。

 

レイガ「えっと~あれ?」

 

剣を取り出そうとすると、一枚のカードが光り輝き、諸刃姉さんのところまで飛んで行く。光が収まると美しい日本刀が現れる。

 

諸刃「これは」

レイガ「雷命刀ミカヅキ。諸刃姉さんに興味が湧いたのか」

 

僕の星で天下五剣と言われる剣の一つである雷命刀ミカヅキ。天下五剣のなかで最も美しく、持ち主の動きを極限まで速くする力を備わっている。

 

諸刃「おお、これはとても手に馴染むよ。ありがとう玲我君」

 

そう言って、戦場に向かう諸刃姉さん。てかはやっ! 剣神に天下五剣って、まさしく鬼に金棒じゃん。

 

エルザ「あたしたちは行っちゃダメなの?」

レイガ「君らまで行ったら騎士団の出番がなくなりそうだからダメ」

 

エルゼ、八重、ルー、ヒルダがぷうっとふくれる。もうかわいいな!

 

レイガ「今回はこれで許してね」

 

そう言って、四人にキスをする。

 

エルゼたち『ッ⁉』

 

みんな顔を赤くして、かわいいな。まあ、ユミナとリンゼには睨まれたが、後でするので許してほしい。

そんなことを考えていると、他の所でも戦いが終わりを迎えていた。てか弱いな。これで復讐とか、舐めすぎだろう。

 

レイガ「さて、勝鬨をあげろーーーっ!!」

騎士団『おおおおおおーーーーッ!!』

 

いくつもの竜の屍が晒された平原に勝利の雄叫びが響き渡る。

まあ、本番は明日だけどね。

 

 

 

 

 


戦国竜ソウルドラゴン

レイガのキースピリットの一体。赤き鎧を纏った竜。薙刀と刀の二本を使って戦う。五剣豪の一体である。普段は惑星スピリットの赤の大陸で修行をしている。

 

雷命刀ミカヅキ

天下五剣のひとつ。雷を操ることができ、所有者の速度を極限まで上げることができる。刀自身が所有者を選ぶため、認められなかった場合、雷に打たれる。



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邪龍と神龍

〈レイガサイド〉

 

竜の襲撃を返り討ちにしたその日のうちに、僕はレリシャさんにお願いして竜の素材を換金してもらった。まあさすがに一日では解体も難しいため、数日に分けて解体を行い、お金の方はすぐにでも渡すそうだ。騎士団もボーナスが入って嬉しそうだ。みんなが国のために頑張ってくれて嬉しかったので次の日は休みにした、というのは建前で

 

 

 

次の日

僕は今日、例のドラゴネス島に来ていた。ここに住む竜たちは、主に島周辺の海にいる、大型魚や魔怪魚などを食べていたらしい。ときたま島の外へ出て、近くの国の人のいない森などで魔獣を狩ったりもしていたという。つまり、人との距離をある程度はとっていた。

しかし最近は人里の家畜を襲ったり、港に向かう漁船を狙ったり、好き放題に暴れているらしい。

まあ、原因は島にいた「老竜」が一匹も残らずいなくなり、統制が取れなくなっている。

そんな島の砂浜に僕と瑠璃は来ていた。島に着くと、横にいた瑠璃が島全体に聞こえるような大声で咆哮する。

するとすぐさまギャアギャアと鳴き声が聞こえてきて、島のいたるところから竜がその姿を現す。飛竜に、海竜、地竜と言った下位竜の亜種に加え、若い上位竜の群れがこちらへと向かってくる。

 

瑠璃『囲まれましたね』

レイガ「そうだね。ちなみに今、なんて言ったの?」

瑠璃『誇りを忘れた愚竜共よ、粛清の時は来た。死ぬ覚悟はよいか、と』

レイガ「良いこと言ったね。それにしても・・・ギャアギャアうるせえな」

 

例え竜語がわかったとしても、ただただうるさいだけだ。

 

?「これはこれは。いったいどこの竜使いがやって来たのかな」

 

砂浜に並んだ地竜の群れを掻き分けて、一人の竜人族がこちらにやってくる。

 

レイガ「あんたが「竜王」か?」

竜王「ほう? 早くも我が名が広まっているとは喜ばしい限り。それで君は何者かな?」

レイガ「テンペスト・レイって小さい国の王様さ」

 

ピクッと男の眉が動いた。なんだ僕のこと知ってるんだ。

 

竜王「・・・ほう。このようなところで出会えるとは。先日は我が配下の者が大変お世話なったようで」

レイガ「お世話ねえ~。あんなの飛んできたハエを追い払ったもんだよ。ああ、ゴメン。実際には全員潰したんだけどね。あと、あんたが使ってる「支配の響針」って、不良品らしいから、そんなガラクタ捨てた方がいいと思うよ」

竜王「なっ・・・!」

 

竜を操るタネを明かされて、男が狼狽する。

 

レイガ「一応聞くけどさ、あんたが竜を操っている黒幕で間違いない?」

竜王「操っているとは心外だな。私は解放してやっただけさ! 古き竜の掟に縛られていた彼らをね! 竜とは何よりも強く、何よりも気高く、何よりも賢い生物なのだよ。その竜が、なぜ人間なんかに遠慮しなければならない⁉」

レイガ「賢い・・・ここにいる竜は全員馬鹿だと思うけど?」

瑠璃『同感です』

 

瑠璃も賛同する。

 

レイガ「その「人間なんか」にあんたのところの竜は負けたわけだけど・・・」

竜王「うるさい! 一対一なら戦闘能力で竜が負けるわけがない! 繁殖力しか能がない人間風情が偉そうに語るな!」

レイガ「その理屈でいくとさ、個々の強さが竜の特性なら、繁殖力が人間の特性で強さなんだよ。それにこの程度の竜なら僕一人で倒せるぞ」

竜王「それでこの島へ乗り込んできたわけか。大した自信だが、これだけの竜相手にどうにかできると信じているなら頭がおかしいと言わざるを得んな。これだけの竜の力を持ってすれば、世界をこの手にするのも難しくはないのだぞ?」

 

明らかに動揺しているけど。

 

竜王「どうだ? 私の味方になるなら世界の半分をお前にやろうじゃないか。だから」

レイガ「プーッ!」

竜王「なにがおかしい!」

レイガ「あっはっは~、いや~こんなに笑ったのに久しぶりだな。なんでそんな馬鹿なことが言えるのさ」

竜王「なに⁉」

レイガ「だって実際には若い竜しか操れないし、できても一匹二匹が限界なんでしょ? それ以上になると頭痛とか身体の不調が出たんだろ?」

竜王「うぐっ!」

 

図星らしい。シェスカたちの言うとおりらしい。

 

竜王「ふ、ふふふ。操る必要などないだろう。あんたはこれら竜の仇、「竜殺し」。ここにいる全ての竜があんたを殺そうとしているんだ。私が一言命令すれば────え?」

レイガ「ありゃりゃ」

 

次の瞬間、目の前の男の上半身が消えた。いや、消えたというか、後ろに控えていた黒竜に食いちぎられた。おお~グロい。

 

レイガ「自業自得だな・・・でもこれでもう問題は解決したってことにはならないんだろうな」

瑠璃『「血祭りにあげろ!」とか「人間風情が!」とか、相変わらずの罵詈雑言です』

レイガ「そうだな。じゃあとりあえず現実を見せてやるか」

 

僕は究極能力のひとつである『竜種之王(ドラゴンマスター)』を使い、ある魔法を使う。

 

レイガ「さあ、竜たちの宴だ。いまこそ開け竜王降臨(ドラゴンズゲート)

 

天空に巨大な門が現れ、静かに開き始める。周りの竜たちもさっきまでうるさかったのがウソのように黙っている。

そして門が開き終わると、そこから三匹の龍が降臨する。

一体は黒い鱗に銀色の双眸を持つ龍。

もう一体は三つの首に六枚の羽を持つ黒い龍。

最後の一体は他の二体と異なり、全身が骨だらけの龍。

 

レイガ「お前らに見せてやるよ。本物の

闇って奴をよ

 

『gyaaaaaaaaaa』

 

三体の龍いや邪龍が咆哮する。

 

?『なあレイガ! こいつら殺していいのか』

 

そう楽しそうに質問するのは大罪の暴龍(クライム・フォース・ドラゴン)のグレンデル。

 

レイガ「ああ、バカは死ぬまで馬鹿だからな」

グレンデル『いやっほ~、殺戮だ! 殺戮だ!』

?『獲物は我らにもよこせよ』

?『そうだぞ。グレンデル』

グレンデル『うっせえな~。お前ら首三つあるんだから、仲良く三等分しろよ』

?『なにを!』

 

グレンデルと口喧嘩しているのは魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)のアジ・ダハーカである。名前の通り千の魔法を使うと言われている。

 

?『それよりレイガ。我に捧げよ極上の肉を』

レイガ「あとでたらふく作ってやるよ」

 

そんな二体が争っている中、自分の食事にしか興味がない邪龍ジャブラッド。

 

瑠璃『まさか邪龍とも契約をしているとは』

 

そんな邪龍たちとの会話をしている中瑠璃は驚いていた。

 

グレンデル『おっ! なんだ雑魚の中にもいい奴がいるじゃねえか。俺と殺り合おうぜ!』

レイガ「グレンデル。瑠璃は仲間なんだから今日は周りの奴らで我慢して」

 

今にも瑠璃に襲い掛かりそうなグレンデルを止める。

 

グレンデル『ちぇっ、なんだ。じゃあ周りの奴らで楽しませてもらうぜ。少しは俺を楽しませてくれよな』

 

そう言って、一足先に駈け出すグレンデル。なんとなく向かっていった方向にいた竜が悲鳴をあげたと思うけど、まあいいや。

 

アジ・ダハーカ『なら我らも向かうか』

 

次にアジ・ダハーカが飛翔し、グレンデルとは別咆哮へ向かう。

 

ジャブラッド『貴様らに破滅と絶望をくれてやろう!』

 

最後にジャブラッドが駆け出す。

 

瑠璃『主。あの者の処罰は私に。大した覚悟もなく、竜としての誇りを汚したこやつに真の竜の強さを思い知らせてやります』

レイガ「いいよ。本物の竜の力を見せてやれ」

瑠璃『感謝します』

 

そう言って大きく息を吸うと、またしてもガラスが割れそうなほどの咆哮を黒竜へ向けて放った。

それに対し黒竜も咆哮するが、瑠璃のと比べると迫力もない、情けない声だな。

一瞬たじろぐが、すぐに火焔弾を放ってくるが瑠璃は避けずに受け止める。

もちろん瑠璃には一切効いていない。

あきらかい狼狽えた黒竜が一歩下がる。逆に一気に飛び出した瑠璃が黒竜の喉笛に食らいつき、断末魔が島中に響き渡る。あっけない終わり方だな。

その間もグレンデルたちの殺戮は終わらない。この数なら一時間くらいかな。

 

 

 

 

 

〈第三者サイド〉

 

『アッハッハッハ! おいおい! どうしたもっと俺を殺しに来いよ』

 

グレンデルは持ち前の強力な火炎を吐きながら、竜たちを蹂躙している。竜たちも反撃はするが、攻撃がまったく効いていない。

 

『そんな程度じゃ、俺には効かねえぞ!』

 

グレンデルは高い攻撃力を持ちながら、防御力も高く。レイガと死闘を繰り広げた結果、「竜殺し」への耐性もついている。もはや竜殺しの意味をなさない。

 

『なんだよ! こんなんじゃ楽しめねえぞ。なら』

 

グレンデルは火炎を吐くのをやめ、肉弾戦に持ち込んだ。近づいてくるグレンデルに、竜たちは恐怖した。自分たちはとんでもない相手に喧嘩を売ったんだと、気付いたが、時すでに遅し。

 

『頼むから、少しは持てよな!』

 

まだまだ続く蹂躙。

 

 

 

一方、アジ・ダハーカは三つの首からそれぞれ異なる魔法を使って、竜たちを蹂躙していた。

 

ハーカ『その程度か。この星の竜よ』

ハーグ『この程度で、竜とは嘆かわしい』

ダハ―『殺戮! 殺戮!』

 

彼らは竜の中でもっとも魔法を使いこなし、その領域は神に達している。その数、優に千は超える。

今も三つの首からそれぞれ異なる魔法を放っている。

ハーカは炎を吐いているが、触れた竜は燃えるのではなく、凍っていた。

ハーグは風のブレスを吐いており、その風に触れた竜は倒れ込み、身体中に呪詛が刻まれている。

最後にダハーは何を吐いていない。ように見るが、実際は音を発しており、その音を聞いた竜は突然周りの竜たちに攻撃をしてきた。これは竜にしか聞こえない音を発して、対象の相手に幻を見せる。これは彼らの力の一端である。彼らが本気を出せば、この星は終焉を迎えるだろう。

 

 

 

最後にジャブラッドは

 

『絶望を! 混沌を!』

 

空を飛び、死のブレスを吐いている。そのブレスに触れた竜は身体が解け、骨だけになる。

 

 

 

 

 

〈レイガサイド〉

レイガ「すごい光景だな・・・ん?」

 

不意に天空に浮かぶ門を見ていると、三人ほどの影が見えた。

 

?&?&?「「「レイガ!(旦那様!)」」」

レイガ「うっそ!」

 

すごい勢いで落ちてくる三人の受け止める。

 

レイガ「あっぶな~」

 

安堵する僕をよそに、三人がこちらに顔を向ける。

 

?「わっはっは! さすがレイガなのだ」

?「レイガ久しぶり」

?「会いたかったですわ旦那様♡」

レイガ「・・・少しは心配してください」

 

門から来たのは三人の妻。

一人は桜金色の髪をツインテールにした少女、魔王ミリム・ナーヴァ。

もう一人はゴスロリ衣装の少女、無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィス。

最後の一人は頭に白い角が生え、着物を着た女性、バーサーカーの清姫。

 

レイガ「どうしてって・・・そう言えばあの門、竜ならだれでも通れたっけ?」

 

忘れていたが竜王降臨(ドラゴンズゲート)は僕とのつながりがある()ならだれでも通ることができる能力だったのを忘れていた。

 

ミリム「わっはっは! 詰めが甘いなレイガ」

レイガ「てか、ミリム・・・仕事は?」

ミリム「なっ! ちゃ、ちゃんと終わらせたぞ!」

レイガ「本当に?」

ミリム「うっ! うっ~」

レイガ「はあ~、わかったよ。あとで一緒にしようね」

ミリム「レイガ~」

 

僕の胸に頭をぐりぐりするミリム。

 

オーフィス「我も」

 

隣のオーフィスも頭をぐりぐりする。

 

清姫「旦那様♡ 旦那様♡ わたくしにはなでなでをお願いしますわ」

 

そんな中清姫は僕に抱き着きながらおねだりをする。

 

レイガ「はい。どうぞ」

清姫「(〃▽〃)ポッ」

 

そんな甘い空気が充満している中、周りでは竜たちの悲惨な光景が広がっている。

 

清姫「そう言えば、旦那様。周りのあれは何ですか?」

レイガ「ん? あ~そう言えばもう終わったのか」

 

清姫に言われて、周りを見渡すと、竜たちの死体で埋め尽くされていた。

 

オーフィス「全部竜?」

レイガ「そうそう、僕に復讐するって言って集まって来た奴ら」

清姫「旦那様に?」

オーフィス「復讐?」

ミリム「バカかこやつら?」

 

ごもっともな意見。

 

レイガ「さて、もう一仕事しますか」

 

僕は立ち上がり、シャイニングゼロギアを使って、黒竜以外の竜すべての時を戻し、生き返えさせる。

 

レイガ「最後にチャンスをやる」

 

僕は覇王色の覇気を放ちながら、竜たちに伝える。

 

レイガ「これ以上被害を出さないと約束できるなら今回のことは水に流そう。ただし、また同じことを繰り返すのであれば

今度は容赦なく殺す。

 

竜たちは一斉に震えだす。さきほどの殺戮を思い出したのだろう。全員が一斉に頭を下げ、降伏した。

 

レイガ「さて後のことは瑠璃や赤竜、他の老竜に任せるよ」

瑠璃『お任せを』

 

さて、後は帰ると

 

グレンデル『まてよ!』

レイガ「ん」

グレンデル『こんなんじゃまだまだ足りねえよ!』

レイガ「って言われても」

ミリム「おお、グレンデルか」

グレンデル『あぁ⁉ なんだミリムにオーフィス、それにストーカーもいるじゃねえか』

清姫「誰がストーカーですか!」

 

怒った清姫を宥めながら、どうしょうか考える。

プラン1、僕が戦う。たぶんこの島がもたない。却下!

プラン2、ミリムたちが戦う。たぶん僕怒る。却下!

プラン3、このまま強制的に帰らせる。文句ばっかり言って、暴れる。却下!

ダメだ。いい案が思いつかない。

そんなとき、懐かしいい気配を感じて、空を見ると、門からなにかがくぐって来るのが見えた。

それは神々しく光り輝く一匹の龍だった。

 

レイガ「まさかお前まで来たのかよ」

 

その龍は静かに僕らの前に着地した。

 

?『お久しぶりです。我が父』

レイガ「久しぶりだな。ヴェルゴッド」

 

その龍の名はヴェルゴッド。僕が生み出した最初の龍、『神滅龍ヴェルゴッド』

 

アジ・ダハーカ『大物のご登場だな』

ミリム「久しいな。ゴッド」

オーフィス「お久」

ヴェルゴッド『お久しぶりです。ミリムお母さま。オーフィスお母さま。清姫お母さま』

ハク『ゴッドお兄様。お久しぶりです』

ヴェルゴッド『ハクも久しぶり』

レイガ「それにしてもどうしたんだ? ゴッドが来るなんて珍しい」

ヴェルゴッド『あっちで邪龍三体が門をくぐったと聞いて、面倒なことが起きる前に来ました』

レイガ「・・・我が子がいい子すぎる」

 

ヤバい。泣きそう。

 

ヴェルゴッド『ではグレンデル、アジ・ダハーカ、ジャブラッド。帰るぞ』

グレンデル『へっ! 嫌なこった!』

ヴェルゴッド『帰ったら、私が直々に戦うぞ』

グレンデル『よっしゃー! すぐに帰ろうぜ!』

 

そう言うと、すぐにグレンデルは門をくぐった。

 

『我らも行くか』

ジャブラッド『いいが、その前にレイガ! 我に極上の肉を』

レイガ「はいはい。どうぞ」

 

僕は収納魔法から極上の肉、タコさんウインナーを取り出す。

 

ジャブラッド『おお、ウインナー!』

 

ウインナーに食らいつくジャブラッド。これだけ見ると邪龍には見えないな。

 

ヴェルゴッド『では、我が父。またいつか』

レイガ「ああ、またな」

 

そして、四体の龍は門を通って行き、門はその姿を消した。

 

レイガ「じゃあ僕らも帰るか」

 

こうして、竜の問題が解決された。

 

 

 

 

 


グレンデル

ハイスクールDxDに登場した邪龍の一体。元は数年前に死んだ竜だが、ある事件で蘇り、レイガと対決する。本来ならグレンデルは死ぬはずだったが、グレンデルの戦闘狂に興味を持ったレイガは他の邪龍と共に新たな生命を与え、自分の保有する星に住まわせた。毎日のように他の竜、またはレイガと対決した結果、生前より攻撃力も防御力も強くなった。

 

アジ・ダハーカ

ハイスクールDxDに搭乗した邪龍の一体。(モデルはバディファイトの終焉魔竜アジ・ダハーカ)。グレンデルと共に蘇り、レイガと対決した。まだ見ぬ魔法を見たアジ・ダハーカに興味を持ったレイガは、グレンデルと同じように声明を与え、自分の保有する星に住まわせた。グレンデルとは違って、人の姿に変わって、新たな魔法を作っている。三つの首にはそれぞれ意思を持っており、リーダーはハーカ。参謀のハーグ。戦闘狂のダハー。人の姿になると、リーダーのハーカの人格となり、他の二人は眠っている。

 

ジャブラッド

リテスが生み出した邪龍。ある事件でリテスが暴走した時に、生み出された邪龍。好物はタコさんウインナー。普段はグレンデルたちと同じ星に住んではいる。

 

ヴェルゴッド

レイガが生み出した最初の龍。ヴェルダナーヴァ、ヴェルザード、ヴェルグリンド、ヴェルドラ、ヴェルガイアに続く第6の竜種。ヴェルダナーヴァと友達になった証に貰えたスキル『竜種創造』で生み出した龍。神を滅ぼすほどの力を持っていることから『神滅竜』の二つ名を持っている。今はグレンデルらがいる龍の惑星でレイガの代わりに管理をしている。竜種のなかでは末っ子だが、レイガの子供の中では長男。みんなに慕われている。

 

 

 

 

〈リスト〉

メイド:グレイフィア、ロゼ、ミウ、レム、本音

騎士団:レイン、裕斗、アビス、錆兎、クーフーリン、エミヤ、ランス、ドット

護衛兼先生

エルゼ:メレオレオナ、ヨル

リンゼ:アイリーン、朱乃、

八重:葵、カナエ

ユミナ:リリス、アルファ

ルー:茜、恵

スゥ:ウルティマ

ヒルダ:エルザ

桜:ユエ、ウタ、美九

秘書(日替わり)

月:シオン

火:レイヴェル

水:緋紗子

木:虚

金:栞子

土日はランダム。

忍び:小波、レヴィ、かすが、ユキカゼ

以下は自由組

ジョニー(シルバーと共に放浪中)

ミリム、オーフィス、清姫(来たばかり)

名前が無いキャラは惑星レイガに帰宅中。



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第十一章
冒険者失踪事件


遅くなりました。


〈レイガサイド〉

竜の事件が終わって一週間が経った。あれから竜たちの暴走はなくなっている。

新しく来た妻に関してはミリムはなんとフレイさんからお許しが出た。最初は驚いたけど、たぶん僕に押し付け・・・じゃなくて! 丸投げ・・・じゃなくて! とにかくミリムはしばらく僕の城に住むことになった。

オーフィスに関しては普段も暇なのか、たいしていつもと変わらない生活を送っている。

まあ、この二人はよく食べるから、ご飯の時は毎回大食いである。八重といい勝負だよ。

清姫に関しては

 

清姫「あなたたちが旦那様にふさわしいか! わたくしが見定めます!」

 

と、感じでなぜか上から目線である。

まあ、それ以外は平和な生活を送っている。

 

 

 

 

 

レイガ「と、思って・・・デジャブってない?」

リーン「あら、なんの事かしら?」

 

僕は今、リーンとポーラと共に、ダンジョンを探索している。なぜ今更ダンジョン? と、思われるかもしれないから、説明すると最近何人かの若手冒険者が死亡しているらしい。若手の冒険者が亡くなることは珍しくもないが、なぜか死体が見つかっておらず、防具や武器だけ残っていた。それが十件ほど続いているらしい。

そこで僕は調査をすることにした。その時、ちょうど買い物帰りのリーンとポーラと出会ったので、一緒にダンジョンに潜ることになった。

 

ここで簡単にダンジョンを説明すると、階層は十階層構成であり、下に行くほどレベルは上がる。まあ定番のルールだね。

五階層以降にボスを配置しており、それより上は簡単に階層移動ができる。それより下の場合はボスを倒さない限り下がれない。

が、僕は階層ごとのボスを知らない。なぜなら、その部分はなぜかラミリスとヴェルドラが勝手に配置したらしい。てかいつ来たの⁉

 

リーン「ダーリンの友達も大概ね」

レイガ「まあ、あの二人はダンジョンに情熱をそそいでいるからね」

 

そんなわけで、僕らは今三階層のフロアを歩きつつ、行方不明者が出たという四階層へと向かっている。

 

レイガ「っと、四階層到着!」

リーン「案外、簡単なのね」

 

五分ぐらい歩いていると階段があり、降りていくと四階層へと到着した。ポーラもよっしゃー、と両手を上げている。さて、どのへんで人が消えているのかな。

 

レイガ「ん? 向こうで誰か戦っているのか?」

 

しばらく四階層のフロアを探索していると、奥で七人の冒険者が戦っている気配を感じた。それにしても魔物の気配は感じないのに、なんで戦っているんだ。仲間割れ?

 

リーン「即席のパーティーなのかしら?」

レイガ「う~ん、少なくても四人はド素人って感じだね」

 

四人は素人だが、残りの三人は戦い慣れているな。

 

レイガ「・・・もしかして仲間割れじゃない」

リーン「どういうこと?」

レイガ「あの三人は計画的に四人を襲っている」

 

僕らは急いで現場へと向かった。

 

 

 

 

 

襲われている場所へと向かうと、短槍を持っていた少年が吹き飛ばされたところだった。周りを見渡すと、すでに弓使いの少年と魔法使いの少女は傷ついて倒れている。なんとか剣士の少女と槍の少年が二人を守っているといったところだ。

 

?「おいおい、あんまり傷付けんなよ。大事な商品なんだからよ」

?「わかってるっつーの。ったく、お前が麻痺毒忘れてきやがるから、こんな面倒なことしなきゃならねえんだぞ」

?「いいから早くしろよ。魔獣なんか出て来たらさらに面倒なことにィィッ⁉」

 

あっ! つい見張りのデブのおっさんの顔面を蹴り飛ばしてしまった。しかも部屋の中まで吹っ飛ぶとは、反省反省。

 

?「なっ、なんだテメエは⁉」

レイガ「あぁ? なんか言ったかこの糞野郎ども」

 

デブにガリガリノッポにハゲ。もれらく胡散臭い奴らのバーゲンセールかよ。

さきほど蹴られたデブが鼻血を吹きながら立ち上がった。

 

リーン「あら、どうやら間に合ったようね」

 

リーンとポーラもやってきた。それを見た三人の顔がいやらしく歪んだ。三人のうち、ガリガリノッポが僕とリーンの方へ剣を手にしたまま近づいてくる。他の二人も武器を手にこちらに向き直った。僕が丸腰だと思ったんだろう。先ほどと違って余裕を見せながら、値踏みするような視線をリーンへと向けていた。

 

ガリ「ひひ、なかなかの上玉じゃねえか。こりゃツイてるな。おい、お前。命が惜しけりゃその娘を置いて行きな」

レイガ「・・・あ?」

ガリ「聞こえなかったのかよ。その娘を俺らに渡して出て行けって言ってんだよ! 殺されてえのか、ああ⁉」

レイガ「・・・」

 

僕は無言でガリガリ野郎に近づき、自分の足に武装色を纏って、そいつの足の骨を踏む砕く。

 

ガリ「ギャアアアアアーーーー⁉」

 

足を抑えながらのたうち回るガリガリ。僕はさらにそいつの鳩尾へ蹴りを入れる。

 

ガリ「ウゴエエエエエッ!!」

 

他の少年少女だけでなく、僕の嫁に手を出すだと・・・殺すぞ!

 

デブ「て、てめえ! 何」

レイガ「黙れ」

デブ「グガアアァァァ⁉」

 

うるさいデブの膝頭を正面から蹴り砕く。さっきのガリガリと同じように門前し始めるデブ。

 

デブ「膝、膝がァァ!!」

ハゲ「ひ、ひっ!」

 

ハゲが二人を置いて逃げ出そうと背中を向ける。すぐにギアトリンガーを取り出して、背中を撃ち抜く。

 

ハゲ「グハッ⁉」

 

麻痺断を喰らい、バッタリとハゲが倒れる。仲間を置いて逃げるなんて大した冒険者だ。

 

リーン「・・・ずいぶん過激なことするのね。ちょっと意外だったわ」

 

今だにうずくまりながら嗚咽を上げるガリガリノッポとデブを見ながらリーンがつぶやく。

 

レイガ「妻を奴隷にする、て言われて怒らない夫いる?」

リーン「私のために怒ってくれたのね、ありがとう」

 

リーンの微笑みを見て、少し冷静になる僕。あー、またやっちゃったよ。とりあえず、冒険者たちに向き直る。

 

レイガ「大丈夫?」

?「あ、はい! オイラは少し怪我をしてますが大丈夫です。でもクラウスとイオンが・・・」

 

槍の少年が倒れている二人に目を向ける。気を失っているだけだと思うが、一応「フルムーンレクト」をかけると二人とも意識を取り戻した。

四人にあらためて礼を言われたが、適当に流し、こうなった経緯を尋ねる。

なんでもダンジョン内で声をかけて来たあいつらが、安全な狩場を教えてくれるというのでついて行ったそうだ。不用心だな。

結果、ここに連れてこられて襲われたというわけだ。前衛じゃなかった二人はいきなりの攻撃に、あっという間に意識を刈られ、倒されたらしい。

 

リーン「さっきの会話内容からしてこいつら人攫いかしらね。ダンジョンで行方不明になっても派手な血痕やギルドカードを落としておけば、魔獣に食われたと判断されてそれ以上は捜索もされないし」

?「はい。あたしたちを奴隷商人に売るって言ってました!」

 

元気に手を上げるポニーテールの少女剣士。

 

レイガ「そっか、じゃあ詳しくは本人たちに聞くか」

 

僕はいまだに呻いてるガリガリの前にしゃがみ込み、こめかみにギアトリンガーの銃口を当てる。

 

レイガ「YesかNoで答えろ。今まで死んだと思われていた冒険者はお前たちが攫ってたんだな?」

 

脂汗を流しながらガリガリノッポが勢い良く頷く。やっぱりか。

それを聞いてリーンが首を傾げる。

 

リーン「でも攫ったところで転移門からは連れて行けないでしょう? いったいどうやって・・・」

レイガ「簡単だよ。おそらく船で直接ここまで来てるんだよ。奴隷船がね。そうなんだろ?」

 

再びガリガリが勢い良く頷く。やっぱりな。

この島々は位置的にはサンドラ王国の真南に位置する。そしてそのサンドラ王国は奴隷制度が未だに根付く国だ。

あの「隷属の首輪」という魔道具で人の自由を奪い、品物として扱う制度の国。そこへまとめて売ろうというわけだ。僕が一番嫌いなタイプの国だ。

 

レイガ「で? 今まで攫った冒険者たちはもうサンドラへ送ってしまったのか?」

 

ガリガリノッポが今度は首を横に振る。まだ送っていないということか。おそらく彼らを最後に攫って運び出す予定だったんだろう。ハクちゃんに頼んで船を検索してもらう。すぐにヒットした。

 

?「あの・・・どうするんですか? ギルドか騎士団の方に連絡するなら私が行ってきますけど・・・」

 

少女剣士がおずおずと尋ねてくる。

 

レイガ「連絡はこっちでするから大丈夫。そういえばまだ自己紹介してなかったね。そっちの子がリーンで、小さなクマがポーラ。で、僕は光神玲我。この国の王様をしている」

冒険者たち「「「「王様っ⁉」」」」

 

四人が一斉に目を見開いて立ち上がり、そのあと慌ててまたしゃがみ込んでの土下座。

 

レイガ「いいよ、立って立って。そういうの気にしないから。僕が今でも冒険者なの知ってるでしょう?」

 

僕は金色のギルドカードを見せる。

 

少年A「金色だあ・・・」

少年B「すげえ・・・」

少女A「り、竜とかゴーレムとか大悪魔とか倒してる・・・」

少女B「お父さんたちに自慢できるよぅ・・・」

 

どうやら信じてもらえたようだが、いまだにガチガチしている。そこから自己紹介があった。全員レグルスのピュトンという村の出身で、揃ってこの国へやって来たらしい。

短剣に鱗鎧の少年、ロップ。

鉄の剣と革鎧の少女、フラン。

短弓と同じく革鎧の少年クラウス。

杖にローブの少女、イオン。

 

リーン「それでどうするの? もちろん捕まっている冒険者たちを助けるんだろうけど」

レイガ「もちろん。奴隷船の位置もわかったし、乗り込んで殲滅してくるよ」

フラン「あっ、あの! あたしたちに何かできることないですか⁉」

ロップ「お、おい、フラン!」

 

慌てるクラウスを横目に少女剣士のフランが声をかけてくる。んー本当は断りたいけど、この子引かなそうだな~。

 

レイガ「じゃあ偵察してもらえる?」

ロップ「偵察ですか?」

レイガ「そう、僕が姿をこいつらに似せるから、やってみる? もちろん断っても」

冒険者たち「「「「やります!」」」」

 

元気のいい四人の声が返ってきた。じゃあしかたないな。

 

レイガ『リテス聞こえてる?』

リテス『あ? どうした』

レイガ『僕はこれから奴隷を解放してくるから。この三人任せるよ』

リテス『はいよ』

 

僕は新人冒険者四人とリーン、ポーラを連れてダンジョンの外へ転移する。僕らが消えた後、その場には一人の男が三人を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

レイガ「あれが奴隷船か」

 

日が暮れるのを待って、僕らは奴隷船が停泊している島まで全員で【コネクト】で移動する。

 

レイガ「さて、それじゃあ武器は回収するね。捕まった相手が持ってたらおかしいからね」

 

四人とも素直に武器を渡してくれたので、それを一旦収納して、代わりにロープと猿轡を取り出した。それで四人を縛り上げていく。もちろんすぐ解けるような縛り方だ。

あとは、念のため『ミッドナイトシャドー』を召喚して、先に船内を調べてもらう。

仕上げに『カラフルコマーシャル』で姿をあのハゲに変える。

 

レイガ「どうかな?」

ロップ「そっくりです・・・。さすが王様、すごいですね・・・」

 

ロップが素直に感想をくれる。残りの二人の幻影を左右に映し出して準備完了。

 

レイガ「リーンはどうする?」

リーン「私は船から逃げ出す奴がいないように見張っておくわ」

 

ポーラがしゅたっ、と手を上げる。よしそれじゃあ向かいますか。

近くの浜まで歩くと、周りには屈強な男たちが即時の準備をしていた。全員戦闘奴隷だろう。そんな中、一人だけいかにも下っ端そうな出っ歯の男がいた。僕らはそいつらに近づく。

 

?「おーう。今日もご苦労なことだな。一気に四人たあ、頑張ったねえ」

 

出っ歯の男が僕らを見つけ、締まらない笑顔を向けながらへらへらと歩み寄ってくる。

そのまま出っ歯は縄で縛られた四人を値踏みしながら、ぐるりと僕らの周りを一周する。

 

出っ歯「男は金貨2枚、女は金貨5枚ってところか」

レイガ「それでいい。金をくれ」

出っ歯「おろ? 今日は粘らねえんだな?」

レイガ「ちょっと急いでいる」

 

というか、あまり話すとバレる。僕は出っ歯から金貨を受け取り、踵を返してその場から離れた。

これ以上、あの顔を見てたら絶対に殴る。

リーンが待っている森へ戻り、幻影を解除して元の姿に戻る。

船へ視線を戻すと、どうやら食事が終わり、二隻のボートにそれぞれ二人ずつ乗せて、沖へと漕ぎ出している。

 

レイガ「まずは潜入成功かな」

リーン「あとはうまく他の捕まっている冒険者たちと接触できればいいんだけど。死んだとされているのは何人なの?」

レイガ「レリシャさんに確認したらやっぱり10人らしいよ。全員血だまりの中にギルドカードだけが見つかって死亡扱いになったらしい。たしか男が4人、女が6人だったはず」

レイガ「女の方が多いのね」

リーン「単純に金になるのと、捕まえやすいからじゃないかな。全員、ランク黒のド素人だったし」

 

全員無事でいればいいが。商売道具だから殺したりはしないと思うけど。

視覚をロップに持たせた『スパイダーショック』と同調させる。今はまだ腕についているから床の景色しか見えない。

さらに聴覚も同調。あたりの声が聞こえてくる。

 

出っ歯「ジャベール様。今日は四人でした」

ジャベール「ほほう? なかなかじゃないか。男も女も若いし、高値で売れそうだな」

 

四人を引き連れた出っ歯が、甲板にいた小太りの男に揉み手で近づいていく。どうやらこいつが奴隷商人らしいな。

 

出っ歯「ほらこっちだ! グズグズするな!」

 

出っ歯に繋がれたロープを引かれ、四人は船内へと連れて行かれる。

船内の最下層、船底に狭い牢屋があって、そこへ四人とも入れられた。牢は左右に二つあり、男と女で分けられている。男が四人、女が六人。おそらく攫われた冒険者たちだろう。ロップたちも男女で分けられて、牢屋へと放り込まれた。

出っ歯が船底から出て行くのを確認してから、ロップとクラウス、フランとイオンは、そ攫われた冒険者たちの名前を教えておいたので、全員無事なのかの確認だ。

何人かは体力が落ちて元気がないが、とりあえず手荒い扱いは受けてないようだ。れぞれ同じ牢屋に入っているみんなの名前を聞いて回る。

 

レイガ「全員無事みたいだ。本当ならこのまま【コネクト】で転移したいけど」

リーン「あの子たちにも経験を積ませてあげなさいな」

レイガ「経験って・・・船から脱出するだけだろ?」

リーン「あら、敵に見つからず、周囲に気を配り、その都度状況を班案して行動する。大事な経験よ?」

 

リーンがそう言って微笑む。確かにそんな経験はめったにないからいいか。

船底のロップたちが脱出の準備を始める。あらかじめ四人にはそれぞれ二つのアイテムを渡しておいた。

一つはフレイズの欠片で作った小さな折りたたみナイフ。もう一つは長さ1メートルほどの巻尺。引き出して伸ばせば付与された麻痺の効果が発現する鞭として使える。

さっそくロップたちはそれらを使って、静かに牢屋を抜け出した。

 

レイガ「じゃあ僕もそろそろ動くよ。その方があの子らも動きやすいだろうし」

リーン「いってらっしゃい」

 

スパイダーショックとの同調を切り、リーンに見送られて森から飛び立つ。奴隷船の上空に静止する。

 

レイガ「それじゃあ始めるか」

 

 

 

 

 

派手な爆音をあげて、メインマストの根元が吹っ飛ぶ。マストはベキベキと音を立てて倒れていき、勢いよくぶっ倒れた。突然のことに船上はパニック状態だ。

 

ジャベール「な、なにが起こった⁉」

出っ歯「わかりません! いきなり爆発が・・・!」

 

船内へと続く前方の扉から、奴隷商人のジャベールとやらが飛び出してきた。それを見計らって、僕は船首の方へと降り立ち、月光の下に姿を晒す。

 

ジャベール「だっ、誰だ⁉」

レイガ「テンペスト・レイ公国公王、光神玲我」

 

甲板のみんなが息を飲むのがわかった。中でも奴隷商人がみっともなく狼狽えて、辺りに目をキョロキョロと泳がせている。

 

レイガ「この島はテンペスト・レイの領地だ。勝手な商売はやめてもらいたい」

ジャベール「かっ、勝手な商売⁉」

レイガ「とぼけるなよ。ダンジョンの新人冒険者を攫って、奴隷として売ろうとしたのはわかってるんだ」

 

奴隷商人の口元が引きつる。わかりやす

 

レイガ「正直さ。ウチは小国だから、法とか刑罰とかハッキリとしたものは今までなかっから。今回のことはとても反省しているよ」

 

早めにルールを設けるべきだった。よく考えればリムルも最初に法を考えているのを思い出す。これが終わってからでも遅くはないし、早急に考えよう。

ん? 船から四艘のボートが離れて行ってる。ロップたちが脱出したのか。

 

レイガ「これで遠慮しなくていいね」

ジャベール「くっ、公王がこんなところにいるはずがない! お前たち、やってしまえ!」

 

奴隷商人のジャベールが命令すると、三人の戦闘奴隷が、湾曲した刀を抜き放ち、こちらへ切りつけて来た。

 

レイガ「なんの策も無く来るわけないじゃん」

 

次の瞬間船が大きく揺れ始めた。

 

奴隷1「な、なんだ⁉」

奴隷2「なんで急に揺れが⁉」

 

彼が動揺している隙に僕は三人に近づき腹を殴る。もちろん武装色で。

 

ジャベール「な、なにをしている! 早く」

レイガ「うっさい」

 

さっきから後ろで命令しかしてない奴はだまってろ!

思いっきり甲板に叩きつける。

 

ジャベール「お、お許しを! ほんの出来心で・・・!」

レイガ「出来心だ? お前のその出来心とやらで、罪もない人を奴隷に落とし、自らの利益のために他人の人生を食い物にしてきたとしたら、赦す価値はあるのか?」

ジャベール「た、助けて・・・」

レイガ「お前は奴隷にされた人たちを助けたことはあるのか?」

 

もう一発そいつの顔面に拳を叩きつけ・・・ようとしたが手前で止める。こんな奴名ぐう価値もない。てかいまので気絶したし。

 

レイガ「ハクちゃん。船内にまだ乗船員はいる?」

ハク『検索中・・・船内には三人。いずれも麻痺しています。パパ』

 

ロップたちがやったんだな。とりあえず船内を散策して麻痺ってる人たちを探す。

あれ? 見つけたけどロップたちを連れて行った出っ歯がいない。どこいった?

 

出っ歯「ふぎゃっ!」

 

陸の方から小さな悲鳴が聞こえた。悲鳴が聞こえた方へ視線を移すと、煙をあげて倒れた出っ歯と、こちらへ向けて小さく手を振るリーンが見えた。ナイスリーン!

ロップたちも上陸し、リーンの方へと向かっている。とりあえずこれで片付いたか。僕は視線を陸から海、厳密に言うと船の下に視線を移す。

 

レイガ「ありがとうね。エレキングママ」

エレキング「キキーッ!」

 

僕はそう言うと、海面から頭に三日月形の角がある生き物、いや怪獣『宇宙怪獣エレキング』。この子はスゥのところにいるリムエレキングのお母さんである。さきほどの船の揺れはエレキングが下から船を揺らしていた。本当なら全員海に落として感電させようと思たが、リーンにダメだと言われた。まあ他の生物にも影響あるからしかたない。

陸の方へ視線を戻すと、森の奥から騎士団がやってくるのが見えた。

 

レイガ「ヤバ! 戻ってエレキングママ」

 

僕は『ネオバトルナイザー』を取り出し、エレキングへと向ける。すると、エレキングの姿が変わり、データとなってネオバトルナイザーに吸収させる。

 

レイガ「ごめんね。少しの間我慢してて」

 

僕はすぐに船を下りて、騎士団の方へ向かう。これで一件落着。

 

ユミナ「おかえりなさい、玲我さん。遅かったですね?」

 

新たな事件が舞い降りた。

 

 

 

 

〈リテスサイド〉

 

リテス「あ~あ、面倒なことになったな」

 

俺は今、冒険者攫いの三人のクズどもに悪夢を見せている。内容は適当に怪物に襲われ喰われるっていうグロい内容だ。もちろんレイガから受けた怪我は治していない。

 

リテス「それよりあのミリム(小娘)」までくるなんてどれだけ暇なんだよ」

 

俺は叫び続けているクズどもをよそに、椅子を取り出して座る。

 

リテス「それにしても奴隷なんて面倒な物、どうして作るのかな。報復が絶対にあるとわからねえのか、こいつら」

 

そんなことを言いながら、今までレイガの前で捕まっていった奴隷商人たちを思い出す。どいつもこいつも自分のことばっかり考えて、他人のことなんて一切考えていない。

 

リテス「それにしても相変わらずあいつの周りでは問題が起こるよな」

 

あいつの闇から生まれた俺はすべてを壊す邪神となった。最初こそあいつの身体を乗っ取って、すべての星を破壊しようと思った。

が、あいつはこんな俺を受け入れやがった。

 

レイガ「だって、僕でしょ? 闇だろうが光だろうが関係ないし。てか僕だって怒るときは怒る!」

 

って言いやがった。こいつバカだと思った。それから少しの間こいつを観察していたが、こいつは他の奴みたいに自分の闇を受け入れている。こんな奴がいるのか最初こそ疑っていた。どうせ言葉だけだと。だが、こいつは目的のためなら殺すことも厭わない。漆黒の意思を持っている。

いつからだろう。こいつに、レイガに相棒と呼ばれて嬉しかったのは。

 

リテス「こんな邪神(やつ)を信じれるのはお前だけだよ」



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OHANASHI

遅くなりました。


〈レイガサイド〉

 

その事件が起きたのは冒険者失踪事件が解決した直後に起こった。僕とリーン、ポーラは奴隷商たちを騎士団に任せて家に帰った時である。

 

リプル「マスター! 緊急事態ですぅ! マスターの身に危険が迫ってますぅ! 早く速やかに対処を・・・あああ、もはや手遅れですぅ・・・」

レイガ「なんだ、いったいどうしたの?」

 

玄関ホールまでやってくると、壁に飾ってある絵から、魔法生物であり、我が城内の防犯カメラでもあるリプルが飛び出してきた。こんなに焦って、しかも僕の身に危険って?

 

ユミナ「おかえりなさい、玲我さん。遅かったですね?」

レイガ「ユミナ。ただい・・・ま?」

 

階段の上から声がして、そちらを見上げた僕の声が小さくなる。

そこにはユミナ、ルー、エルゼ、リンゼ、八重、ヒルダの六人が勢揃いしてこちらに視線を向けていた。スゥはいないようだが。

みんな笑顔のはずなのに目が笑っていない。あれ? 怒ってます・・・?

 

レイガ「あの・・・どうしたの?」

ユミナ「ちょっとお話があります。こちらへ。あ、リーンさんも」

リーン「え? あ、うん」

 

リーンがわけのわからないと言った感じで返事をする。八重とヒルダが降りてきて、僕の両脇をがっちり掴んだ。

 

レイガ「えっと・・・? なにこれ連行?」

ヒルダ「すみません、玲我様。決定事項ですので」

八重「まあまあまあ。玲我殿。観念するでござる」

レイガ「いやなんの話⁉」

 

こうして僕はユミナたちに連れていかれました。どうしよう、なにかやらかしただろうか・・・

 

 

 

 

 

ユミナ「この前から二人の間になにか変化があったのは気付いてました」

 

テーブルに腰掛けたユミナがそう切り出した。リーンも他のみんなと同じくテーブルについている。僕? もちろん正座中である。慣れたよ。

 

ユミナ「リーンさんも玲我さんを好きなんですね?」

リーン「ええ。貴女たちほど情熱的に、とはいかないけれど、私は私なりに彼を気に入っているし、添い遂げたいとも思っているわ」

ユミナ「それは・・・」

リーン「もちろん、彼の地位とかバビロンの遺産が目当てなんじゃないわよ? それも魅力的なのは確かだけれど、私が好きになったのは彼という一個人。そこに嘘はないわ」

 

ユミナの言葉を遮って、リーンがそう言葉を繋ぐ。その目は真っ直ぐにユミナの眼差しを受け止めていた。

やがてユミナの目が柔らかなものになり、微笑みが浮かぶ。

 

ユミナ「わかりました。私はリーンさんが玲我さんのお嫁さんになることに賛同します。皆さんはどうですか?」

八重「拙者も構わないでござるよ」

リンゼ「わっ、私も問題、ありません」

エルゼ「あたしも構わないと思うけど」

ルー「私も異存はありませんわ」

ヒルダ「わ、私も同じく」

 

ユミナに続いて、八重、リンゼ、エルゼ、ルー、ヒルダが賛成し、満場一致で決まった。

 

ユミナ「この場にスゥはいませんが、おそらく反対することはないと思います。リーンさん、これからもよろしくお願いしますね」

リーン「ええ。よろしく」

 

二人とも和やかに握手を交わし、微笑み合う。僕蚊帳の外。

 

ユミナ「さて、これでりん酸は私たちと同じ、玲我さんの婚約者です。仲間です。同志です」

リーン「え? あ、そ、そうね」

ユミナ「で・・・今の今まで二人きりでどちらへ?」

リーン「ふえ?」

 

リーンから間の抜けた声が発せられる。いつの間にか他の五人にも囲まれて、にこにこと無言のプレッシャーを放たれていた。

 

リーン「ち、ちょっと待って。貴女たち、なにか勘違いしていない?」

八重「このような深夜まで二人きり・・・その他にどのような理由があるでござる?」

 

詰め寄る八重に、僕もいたよー、と必死にポーラがアピールするが、リーンを囲んでいるみんなには全く見えていなかった。さらに双子がリーンへとずずいっと迫っていく。

 

エルゼ「ひ、ひょっとして・・・」

リーン「し、しちゃったんですかっ⁉」

レイガ&リーン「「はあっ⁉」」

 

何言っちゃてるの二人とも⁉

 

リーン「なっ、なっ、なにを、なにを言ってるのよ! そっ、そんなわけないじゃないの!」

 

茹でダコみたいになったリーンが慌てて否定する。リーンさん落ち着いて。

 

レイガ「僕は結婚式挙げるまではするつもりないけど」

グレイフィア「そうですよ皆さん」

 

グレイフィアが部屋に入り、テーブルに紅茶が入ったカップを置いていく。

 

グレイフィア「皆さんは大きな勘違いしていますが、レイガ様は・・・

 

 

ヘタレなおです!

 

・・・うん、グレイフィア。あなた何言ってるの⁉

 

ミリム「わっはっは、レイガはヘタレなのだ」

オーフィス、「ヘタレレイガ」

ヨル「あまりヘタレ、ヘタレと言わない方が」

エルザ「まあ事実ですし」

 

さらにミリムにオーフィス、ヨル、エルザ

泣くよ! そこまで言われたら僕のライフゼロになるよ。

 

ユミナ「わかりました。が、こんなに遅くなるなら連絡のひとつもよこすべきでは?」

レイガ「すいません・・・」

ユミナ「琥珀ちゃんたちを通せば連絡をよこせたのでは?」

レイガ「・・・あ」

 

その方法は頭になかった。以後気をつけよう。

 

エルゼ「放っておくと何をするかわからないからね、あんたは」

八重「で、ござるなあ」

ヨル「ある時は喧嘩で一つの山を壊して」

エルザ「またある時は街を壊滅させて」

 

エルゼと八重、ヨル、エルザに溜め息をつかれる。山に関しては喧嘩を先に売ったアクロノギアが悪いし、町だってあいつが僕に喧嘩ふっかけてきただけだし。

 

ユミナ「とにかく、これからは遅くなるなら連絡を入れること。できる限りでいいですから。わかりましたね?」

レイガ「わかりました」

 

れからお説教を一人一人受け、解放されてベッドに沈んだのは明け方近くだった。いろんな約束をされたが、自業自得なので仕方ない。

それにしても久しぶりにあいつのことを思いだしたな・・・なんだろう、嫌な予感が。

 

 

 

 

 

ある惑星で

 

?「今レイ君が僕のこと考えた!」

?「またですか、今日でもう何回目ですか?」

?「今ので二百六回目!」

?「なんで覚えているんですか」

 

二人の男がしゃべっていた。

 

?「ああ、やっぱり僕とレイ君は相思相愛なんだ」

?「レイガ様も大変ですね。このような変態に好かれるなんて」

 

一人の男はまるで恋する乙女のように頬を赤く染め、もう一人の男は溜め息をついて呆れていた。

 

?「ああ、早く会いたいな。会ってすぐに

 

 

 

殺し合いたいな

 

ぶるっ⁉

 

レイガ「なんだろう、寒気が」

 

二人が出会うのは時間の問題だ。

 

 

 

 

 

次の日

みんなからのOHANASHIが終わってから寝て起きてすぐに高坂さんと法律について相談した。ベルファストの法律に基づいて、ある程度の案を考えてくれるそうだ。

方に関しては高坂さんに丸投げして、僕は奴隷船に捕まっていた冒険者たちと話に『銀月』まで向かった。幸い全員冒険者を続けるということで安心した。

 

レイガ「へえ、君らの住んでいた村にもダンジョンがあったのか」

ロップ「ダンジョンってほどじゃないですけど。小さな洞窟って感じで。でも何かの遺跡だったのは確かです。子供のころから入り込んで冒険ごっこをして遊んでました」

 

ちょうど昼食の時間だったのでロップたちと一緒に昼食を取ることにした。他の冒険者たちは失くしたギルドカードの再発行のためにギルドへ向かった。

 

フラン「何回か狼とか大コウモリに遭遇したこともありましたけど、あたしら四人で退治したりしてました。だからちょっとは自信があったんですけど……。ここに来て、どれだけ自分たちが甘かったか思い知りました」

 

悔しそうに剣士のフランがそう語る。

 

レイガ「まあ、無理はしないで出来る事からコツコツとね。失敗から学び、自分たちのできる範囲でやれることをやることだよ。あとうまい話には乗らないこと。僕の友達の言葉だけど、うまい話には裏がある、綺麗な花には棘がある、タダより高い物はない、ってね」

 

四人は神妙に頷いていた。まあ、今回のことで懲りたと思うけど。

 

イオン「あの、陛下。それでこの子のことなんですけど・・・」

レイガ「ん?」

 

魔法使いのイオンが、僕が召喚したスパイダーショックを手に乗せて差し出してきた。ああ、念のため護衛に持たせたのを忘れていた。う~んどうしようか。スパイダーショックは索敵もできるし、蜘蛛糸で捕縛もできる優秀な子だ。本来なら専用のメモリを挿すことで腕時計から蜘蛛に変わるが、この子は蜘蛛固定である。

 

レイガ「その子は君たちに預けるよ。けっこう頭がいいし、危険を察知することができるから、探索の役に立つと思う。それと僕との連絡役にもなるから、もし、なにかあったらそいつに頼むといい」

 

僕の言葉にイオンは笑顔で頷いた。どうやらこの子を気に入ったらしい。

食事を食べ終わると四人と別れた。スパイダーショックはちゃっかりイオンの頭の上に乗っていて僕に手を振っていた。

そういえば、さっきの会話で、四人が子供のころに入って遊んでいたという洞窟。そこに遺跡の様子が、どうもバビロンの遺跡に似ている気がする。

 

レイガ「時間もあるし、行ってみようか」

 

 

 

 

 

四人が住んでいたピュトン村はレグルス南西部、ベルファスト寄りの山間にひっそりとある目立たない村だった。そこから近くの洞窟をハクちゃんに頼んで検索する。あと、今回はちゃんとみんなに遠出することを伝えた。

 

レイガ「意外と近いな」

ハク『子供たちが遊び場にするくらいだからね』

レイガ「そりゃそうか」

 

村外れの山の中腹にその洞窟はあった。確かに小さい。入り口は人がひとり通れるくらい。中に入ると思ったより広かった。

そのまままっすぐ進む。途中大コウモリが襲ってきたが、返り討ちにした。やがて黒い立方体が見えてきた。表面を触るとひんやりとした大理石だった。まちがいないバビロンの遺跡だ。

 

レイガ「さて、と・・・。どこかに中に入るスイッチみたいなものがあるはずだけど・・・」

 

立方体をくまなく調べてみる。が、どこにもそれらしきものはなかった。いろんな場所を触っても、通り抜けることはできなかった。

 

レイガ「んん・・・。どうなってるんだが・・・」

 

その後もくまなく調べてみるが、全然入口らしきものが見つからない。

 

レイガ「どうなってんだ? 前後左右、上もないなんて・・・あ」

 

もしかして下か?

試しに【ドリル】を使って、立方体の底まで潜り、そこを確認する。

・・・あったよ、そこに円形の溝が。

 

レイガ「おそらくここから入れるはず・・・」

 

円形の場所に手を当てると、するっと引き込まれるように、立方体の中へと持ち上げられた。

周りを見回すと、いつもの六柱が取り囲む転移陣があった。ぼんやりとした明るさの中で各属性の魔石が輝いている。

が、いつもと違うのは、転移陣が床にではなく、側面にあるということだ。魔石がはまった柱も横から六本伸びている。

 

レイガ「え! ちょっと待てよ。これって本来こっちが下なんじゃないのか? それなら真横から入れるだろ」

 

この立方体を設置するとき、明らかに間違えたんだと思う。

 

レイガ「事故かそれともたまたまなのか、とりあえず入るか」

 

僕は身体を浮かせながらいつも通り順番に魔力を注ぎ込んで、転移人を起動させる。やがて眩い光の渦に包まれて転移が無地に完了した。

 

 

 

 

 

?「ようこそバビロンの、はわっ⁉」

レイガ「え? うぐうっ⁉」

 

転移を終え、光の奔流がおさまったかと思ったら、いきなり腹に頭突きをくらった。ぐ、不意打ちはキツイ!

どうやらここの管理人が、僕に突っ込んだようだ。てかこのドジっぷり。

 

?「わわわ、申し訳ないっス! 出迎えようと思ったら、つまずいてしまったっスよー!」

レイガ「わかったからとりあえずどいて」

 

体当たりをかましてきた少女と地面に倒れこんだ僕は、まるで押し倒されたような格好になっていた。慣れてるからいいけど、初めてだと恥ずかしよこの格好。

 

?「すぐどくっス。と、ととっ!」

レイガ「なにやって・・・え?」

 

最悪の未来が見えた。

慌てて立ち上がった少女がよろけ、全体重をかけたその右足が、僕の股間を的確に踏みぬく。はずだった

 

レイガ「あっぶな⁉」

 

踏む直前に【リキッド】を使ってなんとか抜け出す。危うく未来が死ぬとこだった。

 

?「あの・・・大丈夫っスか?」

レイガ「大丈夫だよ。とりあえず今は・・・」

 

とりあえず立ち上がった僕に、少女がビシッと敬礼のようなポーズをとる。身長はシェスカよりも少し低いくらいか。元気いっぱいの笑顔で口を開いた。

 

パルシェ「ではあらためまして、ようこそバビロンの『蔵』へ! 自分はこの『蔵』を管理する端末、『リルルパルシェ』っス。『パルシェ』と呼んでくださいっス」

レイガ「ああ。よろし・・・今『蔵』って言った?」

パルシェ「はいっス」

レイガ「そうか・・・とりあえずそこ座れ」

パルシェ「え⁉ 何で」

レイガ「いいから座れ」

 

笑顔で話す僕。(本当は怒っている。この芸当はユミナたちからの見様見真似である)

それから一時間ほど説教をした。

 

レイガ「反省したか?」

パルシェ「っス・・・。申し訳なかったっス。まさかそんなことになってるとは思いもしなかったっスよ」

 

パルシェはしょぼんと肩を落とした。瞳は伏せられ、ポニーテールにした灰色の髪が小さく揺れる。ちょっと言い過ぎたかな?

 

レイガ「まあ、これからは気をつけてね。バビロンのみんなだって、『蔵』が墜落したんじゃないかって心配してたから」

 

パルシェの頭を撫でる。

 

パルシェ「およ? 自分以外にもバビロンのみんながいるっスか?」

レイガ「『研究所』以外はね。紹介が遅れたけど、僕は光神玲我。バビロンのみんなは僕をマスターとして認めてくれたよ」

パルシェ「ほうほう。では自分も適合者として認めざるを得ないッスね。了解っス。これより機体ナンバー26、個体名『リルルパルシェ』は貴方に譲渡されるっス。よろしくっス、マスター」

 

再び元気に立ち上がり、ビシッと敬礼のポーズをとるパルシェ。

 

レイガ「あと、機体登録するためのキスなら、僕は妻以外しないから」

パルシェ「わかったっス」

 

そう言って、パルシェが僕に近づき、唇を寄せてくる。これで八人目だよ。あと一人か~この調子だと最後の一人ともキスするんだろうな。

あとさ、さっきから右足踏まれているんですけど⁉ こんなの初体験! どこの世界でキスしながら足踏まれる、なんてことある⁉

 

パルシェ「登録完了したっス! マスターの遺伝子を記憶したっスよ。これより『蔵』の所有権はマスターに移譲されるっス!」

レイガ「ああ、よろしく」

 

念のため武装色纏って正解だった。

 

パルシェ「じゃあ『蔵』へ案内するっスよ。こっちっス!」

 

生い茂る低木を抜けると、そこにはドーム状の建物が建っていた。大きめの扉を開けて中へ入ると、そこは真白い空間で、一片が50センチほどの、腰掛けるにはちょうどいい白い立方体がいくつが転がっているだけ。部屋の中央には黒いモノリスが一枚立っている。

 

パルシェ「博士の開発した魔道具(アーティファクト)や個人的なコレクション、お金、素材、各種の記録などは全部この地下に保存されてるっスよ。一回、外壁ごと壊してしまったっスが、もう修理済みっス」

 

じゃあその時に「不死の宝玉」やらなにやらいろいろ落としたんだな。

 

パルシェ「この装置で地下の保存倉庫から呼び出すんスよ。えーっと・・・」

 

パルシェがモノリスに魔力を流し、何やら操作すると、床に転がっていた立方体のひとつがストンと床の中に落ち、代わりに僕の目の前に床から同じような立方体がせり上がってきた。こうやって物を取り出すんだ。便利

 

パルシェ「この箱は自分かマスターでなければ開けられないッス。例えバビロン博士がいたとしても、開けることはできないっスよ」

 

盗まれても大丈夫ってことか。

 

レイガ「っとそうだ。ここに新型フレームギアの設計図ってあるか?」

パルシェ「フレームギアの設計図っスか? あるっスよ。えーっと……」

 

そこから何種類かフレームギアの設計図を見たが、そのほとんどが途中で終わっていた。博士のことだからめんどくさくなったのか、はたまた別のことに興味を持ち出したか。ちゃんと書き終わっているのが2,3枚あるし、作るのが楽しみだ。

 

 

 

 

 

〈第三者サイド〉

 

?「へえ~この世界には面白いものがあるね」

 

ある男が森で立っていた。その周りには無残な姿のフレイズ。

 

?「これを使ったら、新しいおもちゃが作れそうだ」

 

男はフレイズの核を右手で持ち上げて、笑みを浮かべる。左手にはなぞの人形を持っている。

 

?「楽しんでくれるかな・・・レイガ」




オリキャラを三人ほどを出しました。


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来襲の予言

〈とある日常〉

みなさんは彼らを覚えているだろうか・・・そう悪魔のバイスたちである。最近登場していないと思った人は多いだろう。

なぜなら彼らは今

 

バイス「いっやほーーーーーーーー」

 

・・・バカンス中である。

 

バイス「いや~やっぱり夏と言ったら海だよな」

ラブコフ「ラブラブ! 海サイコー」

 

惑星レイガのある海で悪魔たちが楽しんでいた。そう、休暇中である。バイスとラブコフは海水浴中である。

 

カゲロウ「それにしても暇だな」

ユーリ「それが休暇というものでないのか」

 

カゲロウとユーリは海の家で食事中。

 

ユーリ「それにしても海まで来て激辛カレーを食べるのか」

カゲロウ「俺にとってはこれが普通なんだよ」

ベイル「・・・意味がわからん」

 

カゲロウはなぜか海の家で販売している激辛カレーを食べ、それを見ながらユーリとベイルは汗をかいていた。普通は逆のハズ。

 

カゲロウ「俺よりお前の方がヤバいだろ。それで何杯目だよ」

ユーリ「十杯目だ」

カゲロウ「いやどんだけ食べんだよ!」

 

ユーリはかき氷を食べている。十杯も。なんでも全種類の味を食べるとか。

 

ベイル「俺にとってはお前ら二人とも変人だ」

 

そんな中、デザストは木陰に座りながら、紅ショウガ入りの豚骨ラーメンを食べていた。

 

「・・・うま」

 

食事に関しては全員偏食すぎる。

 

〈レイガサイド〉

レイガ「こいつでどういったことができる?」

ロゼッタ「そうでありまスな・・・。まず、エーテルリキッドを不要にできるでありまスな。あ、いや、要らなくなるというわけではなく、交換する必要が無くなるという意味でありまス」

 

『工房』の机に、『蔵』で手に入れた設計図を広げながらロゼッタが説明する。エーテルリキッドの役割は搭乗者の魔力を増幅し、機体の隅々まで行き渡らせることだ。今までは魔力に満ちたリキッドを消費して動かしていたが、今回の新型の中核には光や大気から魔力を取り込み、増幅する装置が取り付けられるらしい。しかもその装置の素材に使われているのはフレイズの欠片である。博士もフレイズの特性に気付いていたのだろう。

 

ロゼッタ「新型はメインシステムとなる中枢のコア、それと骨組みになる数種のボーンフレームに、それぞれ特性のついたパーツを組み立てて作り上げていくコンセプトになっているでありまスよ。つまりはこれと言って決められた形がない、ということでありまス」

レイガ「自由に作れるのか、でもどんな機体にするか決めないと、作りようがないってわけだよね?」

ロゼッタ「その通りで。適当に作れと言われたら作れるでありまスが、使えない駄作ができるだけでありまスよ」

 

そんなもったいない無駄使いはできない。まずはわかりやすいのを作りたいが。

 

ロゼッタ「機動性、出力、装甲、魔力変換率、精密性、装備、いろんなバランスを取らないといけないでありまスが、当然のごとく、装甲を厚くすれば機動性が失われ、出力を上げれば魔力変換率が悪くなったりするでありまス。マスターのようなバカみたいな・・・いや、えー、すごい魔力量があれば、いろんな補助魔法を起動して、なんとでもなるでありまスが」

 

今バカって言ったよね⁉ 言ったよね⁉

 

ロゼッタ「とりあえずは『蔵』にあったミニロボを回収して、手伝わせるでありまスよ。小生とモニカだけではとても手が回らないでありまス」

 

あのミニロボたちは確かに器用だし、助手としてはかなり有能である。

あとは新機体を作るのに『工房』はフル稼働してしまうので、しばらくは重騎士なんかの量産は中止だ。まあある程度の量産は済んでいるので問題はない。

 

レイガ「そうだな・・・。やっぱりまずはエルゼの機体から作ってみよう。パワーとスピードを重視して、腕部と脚部の装甲を頑丈に。魔力変換率はそれほど気にしなくていい。あとは作ってから調整かな」

ロゼッタ「わかったでありまス」

 

理由としては戦い方がわかりやすいからである。戦い方が殴って蹴って、相手を破壊する。そのバトルスタイルなら余計なバランスもいらないだろう。

開発の方はロゼッタに任せて僕は『蔵』へと向かう

 

パルシェ「およ? マスター、お疲れっス」

 

『蔵』の入るとパルシェがモノリスに向かいながら出迎えてくれた。その姿は典型的な巫女装束だった。巫女さんにポニーテール・・・ほぼ箒じゃん。

 

パルシェ「『蔵』にあるものの一覧表を作っておいたっス。全部で1093点っスね」

レイガ「けっこう多いな」

 

渡された一覧表をペラペラとめくり、確認する。ある程度わかるのもあれば、全くわからない物もある。なんだ『決戦用下着』や『危な過ぎる下着』に『豊胸剤』⁉ 

 

レイガ「パルシェ、このリスト及び、『蔵』に収めされているアイテムは、僕の許可無しに誰かに漏らしたり、渡したりは厳禁とする。いいな」

パルシェ「? 了解っス」

 

こんなの必要ない! 封印!

 

レイガ「そういや、ここにエーテルリキッドも備蓄されているよね。それ『工房』のロゼッタと『格納庫』のモニカの方へ渡しといてくれ」

パルシェ「了解っス」

 

パルシェがモノリスを操作すると、床から立方体が9個せり上がってきた。中身はエーテルリキッド。それを九体のミニロボたちが頭に乗せて、とてとてと『蔵』を出ていく。

 

レイガ「パルシェ、このリストにある斜線が入ったのは・・・」

パルシェ「はあ、落っことした数点っス」

 

肩を落としてパルシェがつぶやく。仕方ないので頭を撫でながらリストを見る。

 

レイガ「なるほど・・・この『治癒の剣』ってのが聖剣レスティアか。じゃあリプルは『生命の額縁』かな」

 

他にも関わったことがある物もある。『吸魔の腕輪』とか『防壁の腕輪』とかはバズール将軍が持ってたな。『不死の宝玉』は・・・名前が違うけど『亡者の瞳』とかかな。それらを除いても数点行方不明のものがある。まあ探すのはまた今度にしよう。

 

琥珀『主』

レイガ『ん? 琥珀か、どうしたの?』

 

突然、城にいる琥珀から念話が入ってきた。

 

琥珀『城の西平原に赤いフレームギアが立っているとの報告が』

レイガ『赤いフレームギア?』

 

それってエンデにあげた豹騎士(エース)じゃないか?

僕は急いで【コネクト】で転移すると平原の真っ只中に豹騎士がポツンと立っていて、その肩の上でエンデが寝転がっていた。

 

レイガ「エンデ!」

エンデ「あ、玲我。久しぶりー。ここで待ってればそっちから来てくれると思ったよ」

 

豹騎士の肩から長いマフラーをなびかせて、エンデが地上に降り立つ。

 

レイガ「いったい何でこんなところに?」

エンデ「いや、豹騎士こいつがね、急に動かなくなったからさ。玲我なら直せるかと思って」

 

動かないって・・・ああ、エーテルリキッドが切れたのか。

 

レイガ「この際だしエーテルリキッドが要らないように改装するか。いちいち来られても面倒だし・・・」

エンデ「そうしてもらえるとありがたいね」

レイガ「三日くらいかかるけどいい?」

エンデ「構わないよ。その間、僕はこの国を見て回るから」

 

それは嬉しいな。自慢の国を見てほしい。

 

エンデ「三日で直るならありがたいね。さすがに生身で上級種と戦うのは面倒だからさあ」

レイガ「生身だときついよな・・・え?」

 

今なんて言った。

 

レイガ「今・・・上級種って・・・」

エンデ「たまたま空間の歪みを見つけてね。あの様子だと一週間から十日後ってところかな。この前よりは少ない出現数だと思うけど」

レイガ「どこに歪みが見えたの⁉」

エンデ「え? えーっと、ここから東の・・・あ、地図ある?」

 

急いでマップを展開する。

 

エンデ「ここだね。少しはズレるかもしれないけど、確実に出現すると思う。知り合いがいるなら早いうちに逃がした方がいいと思うよ」

 

エンデが指差した場所。そこは

 

レイガ「ロードメア連邦・・・」

 

レグルス帝国の東、七つの州が集まった連合国家。その中央州から少し外れた場所をエンデは差していた。

まずいな・・・首都から離れているとはいえ、現れた上級種が前のワニみたいなのだったら。あの荷電粒子砲をぶっ放されたらひとたまりもない・・・。

確実に被害が出る。なんとか近くの住民を避難させて、被害を少なくした上で倒したいところだが、なにぶん他国の領地だ。

警告をしてもきちんと受け取ってもらえるかどうか。信じてもらえない可能性の方が高いか。ユーロンの例があるから、まったく信じてもらえないってのはないと思いたいけど。

 

レイガ「・・・確実に出現する?」

エンデ「確実に出現する」

 

断言された。

とりあえずどうにかしてロードメアの国王、じゃなくて全州総督だっけ? に話を聞いてもらうしかないな。

そのためにはレスティアの先々王か、ギルドマスターのレリシャさんに頼むしかないか。

避難を優先するために、まずはレリシャさんか。ロードメアにも冒険者ギルドがある。ユーロンの時のような壊滅的な被害を食う前に避難できるかもしれない。

そこを通して冒険者たちにも情報を流せば、いくらかは避難してくれるかもしれないしな。

そうとなれば急いだ方がいい。豹騎士を【コネクト】で『工房』へと送り、僕はレリシャさんのいるギルドへと向かおう。

 

?「へえ~、そのフレイズってのが一週間後にここに来るんだ」

レイガ&エンデ「「⁉」」

 

急な声に驚いて振り向くとそこにはノア兄がいた。

 

レイガ「ノア兄! いつの間に」

ノア「いや~、なんか懐かしい気配を感じて来てみたら・・・まさか『渡る者』がいるとはね」

 

ノア兄はエンデを見ると、エンデは後ろに下がる。

 

エンデ「・・・レイガ、この人一体何者?」

 

エンデが僕を見ながら、戦闘態勢に入る。

 

レイガ&「この人は僕の兄さんで、光の超神の一人。ウルトラマンノア」

エンデ「・・・え⁉ 噓でしょ」

ノア「まさかの本当、驚いた?」

 

エンデは唖然としている。まあ本物の神、さらには光の超神がいたら驚くよね。

 

ノア「じゃあ僕はエンデ君と話したいことがあるから、レイガ君は早くギルドに向かってね」

レイガ&「はい。じゃああとは頼みます」

 

僕は【コネクト】でギルドのレリシャさんまで転移する。

 

エンデ「・・・それでそのノア様? が僕に何のお話を」

ノア「ん? 別にただ僕の弟のレイガ君のお友達と世間話がしたいと思って」

エンデ「・・・光の超神と世間話って、なんかここに来てからとんでもない人に出会ったばっかりだ」

ノア「もしかした他の三人にも会えるかもね」

 

 

 

 

 

エンデから聞いた情報をギルドマスターであるレリシャさんに伝えたところ、彼女はすぐさま動いてくれた。

ロードメア連邦担当のギルドマスターと連絡を取り、なんとかロードメア全州総督、フォルク・ラジールに面会ができないかと働きかけてくれた。

小国とはいえ国王からの申し入れと、同盟国として並ぶ各国の名前が効いたのか、全州総督がすぐに会ってくれることになったのは正直助かった。

その連絡をギルドから受けると、すぐさま僕は、事情を聞いたベルファスト国王とレグルス皇帝と共に、「東西同盟」の代表として、護衛の人たち共々ロードメアへと乗り込んだのだが・・・。

 

レイガ「避難しないってどういうことなんですか⁉ ユーロンの時のようなことがまた起こるかもしれないんですよ⁉」

?「いえ、避難しないというわけではなく。状況を正しく判断して、それから国として発表したいと考えているわけでして」

 

応接室の椅子に座る僕の正面には、一人の男が同じように座っていた。

この男がフォルク・ラジール。ここ中央州の州総督であり、全州総督と呼ばれるこの国のリーダーである。

 

ロードメア全州総督「そもそもその情報はどこから入手したのですかな?」

レイガ「詳しくは教えることができませんが、協力者がいまして。その者から・・・」

ロードメア「協力者、ですか。その者は信用できるのですか? 失礼ながらそれをそのまま鵜呑みにするにはいささか問題があるのでは?」

 

確かにエンデの正体は『渡る者』以外わからないけど・・・

 

ロードメア「正直、他の州総督たちの中でも意見が分かれています。直ちに避難するべきだという者、そんな必要はないという者、我らの手で討伐すべしという者・・・様々でしてな。すぐに決断することはできません」

 

なに悠長なこと言ってるの⁉ そんなの考えてる暇あるなら今すぐ避難させろよ。

僕が内心イラついていると、レグルス皇帝が口を挟んできた。

 

レグルス「全州総督は今、討伐する、と仰ったが、フレイズの力を知った上でのお言葉か?」

ロードメア「我が国にもフレイズという水晶の魔物は現れております。さらにあなたたちのユーロンでの戦いの情報から、ある程度の対策は考えていますよ。対抗する方法がないわけではないのです」

 

そう言えば、ロードメアにもフレイズが出現したって噂は聞いたけど・・・

 

ロードメア「そうですな。実際に見てもらいましょう。その方が早い」

 

薄い笑いを浮かべながら、総督は僕らを王宮の外へと連れて行った。

全州総督とロードメアの警備兵に先導されて、その王宮の裏手に広がる広場に僕らは案内された。そしてそこに立っていたのは・・・

 

レイガ「・・・ゴーレモン?」

 

なぜか見た目が僕の知ってるデジモンのゴーレモンの瓜二つだった。でもこっちの素材が木だから・・・ウッドゴーレモン? にしてもこれどっかで見たことあるような?

 

ガスパル「なぜこんなところにウッドゴーレムが⁉ 危険ではないか!」

ロードメア「ご安心を。あのゴーレムは完全に支配されております。我々の命令以外はききません。暴れるようなことはないですよ」

 

皇帝陛下の護衛、騎士団長のガスパルさんが声を荒げるが、総督はなんでもないというように、ゴーレムの足をペチペチと叩く。

ベルファスト国王陛下もゴーレムを見上げ、眉を顰めている。

 

ベルファスト「しかしこの大きさは・・・。本来ウッドゴーレムは10メートルもないはずだ。どうしてこんな・・・」

レイガ「おそらく巨獣化してるんですね。品種改良かな?」

?「ほう。さすがは噂に名高いテンペスト・レイ公王陛下だ。ご存知でしたか」

 

国王陛下の疑問に答えた僕に、誰か後ろから声をかけてきた者がいた。

振り向くと背の低い四十手前の小太り男が立っていた。いかにも博士っぽい人・・・髪の毛は寂しそうだけど。

 

レイガ「・・・総督、こちらは?」

ロードメア「ああ、我がロードメアの若き天才魔工学士、エドガー・ボーマン博士です。このウッドゴーレムの生みの親ですよ」

 

・・・若き?

 

レイガ「失礼ですけどボーマン博士はおいくつで?」

ボーマン「私ですか? 今年で24になりましたが、それが?」

 

うっそ! 

隣を見ると国王と皇帝、両陛下も目を丸くしていた。

 

ボーマン「こいつのベースはリベット族の改良したウッドゴーレムの種が元になっている。闇ルートで入手したその種に、僕の持つ知識を加えて、さらに改良を重ね、ついに完成した作品です。装甲板はミスリルを使い、特に火属性の魔力耐性を備えていましてね。成長過程で「隷属化の首輪」を融合させ、完全に命令に従うようにさせました。弱点である核は何重にも強固な殻で覆い、もちろん再生能力も備えていますよ。おまけに低コストで量産することもでき、すでに数十体の武装ゴーレムが完成しています。たとえフレイズといえど、僕のこのゴーレム軍団にはひとたまりもないでしょう。なにか質問はありますか?」

 

ああ思い出したよ。そういえば樹海の剪定の儀をしていた時に見かけたわ。ちょうど夜で、物騒だったから全部細切れにしたけど、これリベット族のだったんだ。知らなかった。でも見た目こいつ機動力なさそうだけど。

 

レイガ「魔工学博士ってことは、専門は魔道具研究ですか?」

ボーマン「いかにも。古代パルテノの遺産を研究しております。今はデボラ・エルクスの残した魔学書を研究中です。今回のゴーレム制作にもその成果が活かされてますよ」

レイガ「デボラ・エルクスって・・・」

 

龍王騒動で使われた『支配の響針』を作った人だ。でもあれ結構不良品だったと思うけど。

 

ボーマン「公王陛下の所有する巨人兵もデボラ・エルクスの作品じゃないかと僕は睨んでいるんですよ。あのような作品は彼女のような天才でなければ作れないと・・・」

レイガ「え、違いますけど。フレームギアはレジーナ・バビロンって博士の作品ですよ」

ボーマン「バビロン博士・・? 聞いたことが無いが・・・いずれの書物に記載されている人物です?」

レイガ「えーっと・・・。それは秘密ということで」

 

うやむやに誤魔化す僕に、ボーマンは不満そうな眼差しを向けてくる。どうやらデボラ・エルクスに心酔しているようだ。

 

レグルス「しかし総督。はたしてこの武装ゴーレムでフレイズの襲来を防げますかな。我々はユーロンでフレイズとの戦いをこの目で見た。あまり過信しすぎるのはいかがなものかと」

 

皇帝陛下の言葉に全州総督の眉がぴくりと上がる。しかしその言葉に強く反応したのは総督・・・ではなく、ボーマンの方だった。

 

ボーマン「聞き捨てなりませんな。皇帝陛下は我が技術の粋を集めたこの武装ゴーレムが、フレイズに及ばないとでも? 失礼ながら、テンペスト・レイの巨人兵より、こいつの方が優れていることをお分かりにならないとは・・・」

ガスパル「貴様ッ・・・!」

 

どこか馬鹿にしたような言葉に、皇帝護衛のガスパルさんが思わず剣の柄に手をかける。今のは僕もムカついた。

 

ロードメア「ボーマン君、口を慎み給え。失礼だぞ。申し訳ありません、皇帝陛下。しかし彼の言うこともわからないでもありません。このゴーレムになにか不安な点でも?」

 

言葉は丁寧だけど、総督の目はどこか挑戦的な色がうかがえる。

 

レグルス「不安な点と言うか、な。命を預けるわけでもない操り人形で、果たして国民を守る戦いができるのかと疑問に思ったまでよ」

ロードメア「ほほう。では人が操るテンペスト・レイの巨人兵はこの武装ゴーレムを上回ると?」

 

・・・なんか皇帝陛下も挑発的になってない⁉ でも僕も賛成。

 

ベルファスト「玲我殿。ここはひとつ、フレームギアの力を見せつけた方が良いのではないか?」

レイガ「・・・いいですけど、面倒なことになりませんかね?」

 

こそっと僕につぶやいてきた隣のベルファスト国王に、正面で静かに睨み合うロードメア、レグルス両陣営を見ながら、そう返す。

 

ベルファスト「面倒なことなら、もうなっとる。ならいっそ、フレイズに対する認識の甘さを正した方がよかろう?」

 

まあ確かにあちらが戦ったっていうフレイズもどうせ中級種より下でしょ。

 

レイガ「【コネクト】」

 

空中に転移陣が開き、その中から灰色のフレームギア、重騎士が落ちてくる。

ズシンッ! と大地を響かせて、広場に重騎士が着地した。

突然の巨人兵出現に、ロードメアの面々が目を見張る。

 

レイガ「これが量産型フレームギア、重騎士です。性能の上では我が国のフレームギアの中で一番低く、操作しやすいことだけが特徴の機体です」

ロードメア「これが・・・」

 

ロードメアのみんなが重騎士を見上げる。まあ大きさはあちらの方が大きいけど。てかボーマン笑ってなかった?

 

レイガ「この重騎士とそちらのゴーレムで模擬戦をしましょう。そのゴーレムがフレイズに対してどれだけの性能を持っているか、我々も知りたいですし。総督、構いませんか?」

ロードメア「ほほう。いや、こちらは構いませんが。ボーマン君、どうかね?」

ボーマン「面白い。こちらもフレームギアとやらが、どれだけの力を持っているのか気になりますからね。では用意してきましょう」

 

眼鏡をくいくい直しながら、ボーマンが自信満々の笑みを浮かべて、警備兵になにかを伝え、ゴーレムの方へ歩いて行った。あの笑顔ムカつく。

模擬戦は10分後と決まり、総督は僕らから離れ、ボーマンと何やら話している。

 

レイガ「さてと、こちらも用意しますか。ニコラさん、行ける?」

二コラ「はい。問題ありま

ガスパル「公王陛下。その役目、我輩に任せてもらえませぬか?」

レイガ「えっとガスパルさん?」

 

帝国騎士団長ガスパルさんが、僕の前に進み出てきた。

 

ガスパル「あのような木偶の坊に決して遅れはとりませぬ。帝国の誇りにかけて必ず勝利を手に入れてみせます」

 

周りを見ると他の帝国騎士も真剣な目でこちらを見つめていた。ボーマンのさっきの態度がよっぽど腹に据えかねたんだろうな。

ちら、と皇帝陛下を見ると、大きく頷いていた。

 

レイガ「わかりました。では頼みますよ。装備は槍でいいですか?」

ガスパル「はい。それではお願いします」

 

【コネクト】を開いて、『格納庫』からフレームギア用の槍を取り出す。

 

レイガ「さて、ぞれじゃあ始めますか」



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新機体①

〈レイガサイド〉

ボーマン「バカな! どうなっている⁉」

 

脂汗を流しながら叫ぶボーマン。いや見たらわかるでしょう。あなたのゴーレムが重騎士にぼろ負けしているところが。右肘から下を切り落とされて、再生しようとしたところを次は肘から下を切り落とす。

正直弱すぎる。動き遅いし、パワーもないし。てか弱点わかりやすいし、喉元って。動きが大きいから狙い放題じゃん。

 

ボーマン「くっ、当たりさえすれば・・・!」

レイガ「いやそれは無理だと思うけど・・・ほら」

ボーマン「なッ・・・⁉」

 

ボーマンのつぶやきに僕が答えた矢先、襲いくるゴーレムの拳を重騎士が片手で受け止めた。そのまま重騎士がもう片方の手で持った槍を勢いよく突き出し、かがんでいたゴーレムの喉元を貫く。

喉元の核を砕かれたゴーレムはそのままゆっくりと傾き、地面へと倒れた。あっという間にゴーレムは枯れ木のようにバラバラに砕け散り、その残骸を辺りにばら撒くことになった。

それを信じられない目で眺めながら、ボーマン博士が膝から崩れ落ちる。

 

ボーマン「バカな・・・。私の最高傑作が・・・」

 

・・・あれで最高傑作⁉ あんなんじゃ中級種どころか下級種でも集団で襲われた終わりだぞ。

 

レイガ「総督。ちなみにフレイズの中級種はあの重騎士数体がかりでやっと倒せる強さを持っています。それが数千、さらにそれよりも桁違いに強い上級種を伴って、このロードメアに出現するのです? やはり住民たちを避難させた方がいいと思いますけど」

ロードメア「あ、ああ。他の州総督とも検討してみますよ。・・・決まったら、連絡をいたします」

レイガ「よろしくお願いいたします」

 

引きつった顔の全州総督と、地面に膝をついたまま動かないボーマンを残して、僕らは重騎士から降りたガスパルさんの元へと向かった。

 

ガスパル「少々やり過ぎましたかな?」

レイガ「いえ、他国とはいえ人の命がかかってるんです。中途半端はよくありません。これで避難することを考えてくれるといいけど・・・」

 

そう簡単にできうことじゃないのはわかってる。まず情報を信じられるかどうかになるし、避難しても、今まで住んでいた町や村を捨てることになる。

時間を戻せば元通りだが、そんなの住民たちに信じてもらえる保証もない。そう簡単に割り切れないよな。もしかしたら住んでいた場所を失うかもしれないから。

僕らはフレームギアを『格納庫』に戻して、お暇しようかと思っていたら、僕らの前に二人の女性が現れた。

 

オードリー「お初にお目にかかります、テンペスト・レイ公王陛下。私はロードメア連邦丘陵州総督、オードリー・レリバンと申します。こちらは丘陵州騎士団団長、リミット・リミテクス」

レイガ「あ、どうも・・・」

 

いきなりだったのでなんとも間抜けな返事になってしまった。丘陵州? って、確かロードメアにある七つの州のうちのひとつか。そこの総督ってことは・・・この国でさっきの全州総督の次に偉いんじゃないか⁉

 

オードリー「このたびはお伺いしたきことがあり参りました。少々時間をいただけますか?」

レイガ「はい、構いませんが。いったい何でしょうか?」

オードリー「フレイズが現れるという出現位置を正確に教えて欲しいのです。そしてその後の行動予測なども」

 

オードリー総督の話に従い、マップを空中に投影させる。州総督とお付きの女騎士が驚いていたが、構わず操作して、エンデに教えてもらった正確な場所を指し示す。

 

レイガ「ここですね。多少ズレるかもしれませんが、一週間から十日後にフレイズが出現します」

オードリー「これは・・・やはり・・・」

リミット「総督・・・!」

 

ん? 二人が考え込むようにマップに見入る。

 

レイガ「どうかしましたか?」

オードリー「・・・失礼しました。この場所は位置的には中央州なのですが、すぐ隣は我が丘陵州。もしここにフレイズが出現した場合、公王陛下はどう動くと見ますか?」

レイガ「そうですね・・・フレイズは人間や亜人の殺戮を目的に行動します。もしここに出現したとすれば、すぐ近くの村や町へと向かうでしょう。ここからだと・・・ん?」

 

マップを縮小してロードメア全体を表示してみると、フレイズの出現場所は中央州なのだが、そこから一番近い町となると、お隣の丘陵州となってしまう。つまり、州と州の境目近くなのだ。

 

レイガ「このリムルードの町? へとまっすぐ向かうと思います」

オードリー「やはりそうですか」

 

オードリー総督が深くため息をつく。そりゃそうだよ。自分の治める領地へと攻め込んでくるんだからな。

 

オードリー「リムルードの町から全ての住民を避難させれば、その進軍ルートは変わるんでしょうか?」

レイガ「そうなると・・・次に近いこの丘陵州のエミナスの村か、同距離にある中央州のレセプトの町かと。ですが、さきほども言った通り、多少のズレがあるので、どちらに向かうかは断言できません」

オードリー「なるほど・・・。では出現したフレイズを東西同盟の方々で撃退してくれるとのことですが、それに対する見返りはなんでしょうか?」

レイガ「見返りですか? そんなの必要ありません。そのような段階の話ではないからです。何もしなければ、他の国もすべて古代文明崩壊の再現となるでしょう。ユーロンの時は間に合いませんでしたが、今回は事前に出現が予測されています。なんとか被害を最小限で食い止めたいです」

 

オードリー総督の視線を真っ正面で受け止めて、しっかりと言葉を紡ぐ。

 

オードリー「・・・わかりました。我が丘陵州は独自に避難を敢行いたします。また、東西同盟の立ち入りも全面的に許可します。全州総督の許可はまだですが、反対されたとしても、これは丘陵州の決定です。文句は言わせません」

リミット「総督・・・よろしいのですか? それでは全州総督の決断次第では、その命に背くことになるかも・・・」

 

心配そうに背後のリミットさんがオードリー総督に話しかける。

 

オードリー「町や村の住民を一気に避難させるには時間がありません。すぐさま行動を起こさなければ。全州総督の決断を待ってはいられません。責任は全て私が取ります」

レイガ「あ、いや。許可さえいただければ避難はなんとかします僕の転移魔法でこう・・・」

 

あれ? そういえばなんで僕は・・・人しか転移できないと勘違いしていたのか。

 

レイガ「そうだよ・・・町ごと転移すればいいじゃん!」

ベルファスト&レグルス&オードリー「「「は⁉」」」

 

ベルファスト、レグルス、ロードメア丘陵州、それぞれのトップが奇妙な声を上げた。

今まで人しか転移してこなかたっけど、別に人以外でもできる。これなら時間もかからず、町にも被害も出さずに済む。そのことを町の人たちに説明してもらいたい。

 

オードリー「わかりました。それで戦闘はどれだけの規模になりそうですか?」

レイガ「ユーロンの時よりは小規模・・・としか言えません。もっともあれは出現がわからなかった上に、全くユーロン側の協力が得られなかったので、あれだけの惨事になってしまったとも言えますが」

 

言い訳をしたってしょうがないが。今度は事前に戦う準備ができる期間がある。やれることはやっておかなければ。

とりあえずオードリー総督には町に説明をしてもらい、僕らはテンペスト・レイで作戦会議だ。

 

 

 

 

 

ロードメアから戻って来た僕らは、すぐさま東西同盟の国主たちを集めて会議を開いた。

大まかな方針は決まっていても、ロードメアの状況とか、細かい打ち合わせをしないといけない。

 

レイガ「レスティアの聖騎士団はフレームユニットに慣れましたか?」

レスティア「はい。みんなある程度乗りこなせるようになりました。実際に乗ってみないとなんとも言えませんけど」

 

軽く笑いながらレスティア新国王が返事をよこす。前回も思ったが、フレームユニットを乗りこなせるなら、ぶっつけ本番でもなんとか大丈夫だと思う。

これでテンペスト・レイ、ベルファスト、レグルス、リーフリース、ミスミド、ラミッシュ、リーニエ、レスティア、計八カ国もの同盟軍だ。

 

レイガ「とりあえずユーロンの時のように、各国に指揮官用の黒騎士を2機、重騎士を18機、計20機を貸し出しますので、搭乗者を選出しておいてください。テンペスト・レイからは60機、各国合わせて140機の計200機で」

 

問題は今回も出てくる上級種だ。最悪飛行型だったら・・・僕がやるしかない。

 

ミスミド「しかし・・・ユーロンに続いてロードメアもかよ。こりゃあますます他人ごとじゃあなくなってきたな」

リーフリース「なあ、玲我殿。今回のように事前にフレイズどもの出現がわかるような道具はないもんかな?」

 

確かにリーフリース皇王の言うとおりだ。出現場所がわからなければ、準備のしようがない。国中に配備するのもできないし。

 

ベルファスト「その今回の出現を教えてくれたという者はこれからも協力してもらえんのか?」

レイガ「うーん、難しいと思います? なんせ風来坊なんで・・・。それに完全にこちら側というわけでもないですし」

ベルファスト「そうか・・・」

 

エンデに頼り切りになるのもな~。あ、ひょっとしたら『蔵』にその手の察知系のアーティファクトがあるかもしれない。今度探してみるか。

 

ラミッシュ「で、ロードメアから連絡はあったのですか?」

レイガ「まだ正式な許可はありませんね。丘陵州の州総督からは暫定的に許可はもらいましたけど。最悪、中央州に踏み込めば領土侵犯となる可能性もあります」

リーフリース「案外それを狙っているのかもしれませんねえ。全てが終わってから、自分たちで何とかできたのに、と言われるんじゃないですか?」

レイガ「そこまで厚顔無恥ではないと思いますが。実際放っておけばかなりの被害になるわけですし。ただ、出現するまで回答を伸ばすってのはありえますね」

 

結局は信じてもらえるかが問題である。

会議を終えて、僕は別の会議を始めに向かう。

 

 

 

 

 

レイガ「それじゃ僕らの会議も始めますか」

 

さきほどの部屋とは違う場所で、惑星レイガ出身者だけの会議を行う。

今回在籍しているのは、メイド長グレイフィア。騎士団団長レイン。魔法講師アイリーン。お菓子を食べる魔王ミリム。お菓子を頬張る龍王オーフィス。

 

レイガ「なんか後半おかしくない?」

グレイフィア「ツッコみはそれぐらいにして会議を始めましょう」

 

僕の発言を無視して、会議が始まった。

 

グレイフィア「まず今回のフレイズ来襲については、事前予測もあったため、私たちは介入しないことを薦めます」

アイリーン「私も賛成。今回は新たなフレームギアも投入予定もあるし、騎士団も強くなってる。私たちは傍観に回るべきだわ」

 

グレイフィアとアイリーンは非介入派

 

ミリム「嫌なのだ! 我も戦うぞ」

オーフィス「我も」

 

お菓子を食べながらグレイフィアたちとは反対の意見を述べるミリムとオーフィス。てかお菓子食べながらしゃべったらダメでしょ。

 

グレイフィア「ですが、ミリム様。ここは私たちの住んでいた星とは違うのです。ここは彼らに任せるべきです」

ミリム「ぐぬぬぬ!」

 

悔しそうにお菓子をさらに頬張るミリム。今はそれで我慢してくれ。

 

レイガ「それよりも今回はなんか胸騒ぎがするんだ」

レイン「胸騒ぎか?」

 

そう、なんだろう、さっきから嫌な予感がする。

 

レイガ「何もなければいいけど」

 

・・・フラグである。

 

 

 

 

 

懐疑を終え、僕は宿屋「銀月」に泊まっていたエンデを呼び出す。改修し終わった豹騎士を渡すためだ。

 

エンデ「おお⁉ 色まで変えちゃったのかい? へえ、赤もよかったけど確かにこっちの方が僕好みだな」

 

城の西平原に立つ、新しい豹騎士は真っ赤なカラーリングから黒と金の配色へと変えられていた。

まあ、エルゼの機体と色が被るから、配色をタテガライオーにしてみた。

 

レイガ「改良はしておいたから、もう燃料補給はいらないはず。動かなくなっても何日か放置しておけば、勝手に魔力を取り込んで変換すると思うから。あと、エンデ以外が動かしても、まともには動かせないから他人には譲渡できないぞ」

エンデ「そんなことしないって。これでもかなりこいつを気に入っているんだよ?」

 

それならいいけど、まと通信装置もちゃんとつけたから、来るなら来るで連絡しろよ!

 

エンデ「そういえばノア兄とどんな話したの?」

レイガ「ん? 本当に世間話。あんだけ緊張したのがバカらしいよ」

 

恋バナや他の『渡る者』の話や、好みの料理とかごくごく普通の世間話だった。

 

レイガ「そういやエンデはなんでフレイズの出現を予知できるんだ? なにか出現する前触れみたいなものがあるのか?」

エンデ「今回のはたまたまだけど。まず空間に微妙な歪みができるね。まず、これで何日くらいでここに空間の綻びができるかわかる。それと「音」。フレイズは特殊な「共鳴音」を放って仲間を判別している。それは空間を超えてこちら側にも聞こえているんだよ。これである程度の数と種類がわかる。と言っても人間の耳じゃ聞き取れないだろうけどさ」

 

「歪み」と「共鳴音」か。それならそれを感知する道具があれば、今回みたいに予測を立てられるかもしれないな。

そんなことを考えていたら、エンデがさっさと豹騎士に乗り込んでいた。

 

エンデ「じゃあ、僕は用事があるんで行くよ。何日後かにフレイズが現れたら駆けつけるから」

レイガ「わかった。じゃあ当日はよろしく頼むな」

 

胸部ハッチが閉じると、豹騎士が高機動モードに変わって、あっという間に砂埃を上げながら平原の彼方へと消えて行った。

 

レイガ「さてと・・・。あとは上級種の対策だな」

 

あの荷電粒子砲みたいなもんをなんとかできるかどうか・・・。前みたいに三人で攻撃して打ち消すかしかないか。それとも跳ね返すか。とりあえず対策を考えておこう。

 

今度は『工房』へと向かい、ロゼッタとモニカの作業を視察する。工房の中はチビロボたちが所狭しとちょこまか走り回っていた。

作業中のガレージの中を覗くと、そこには骨組みだけの機体がクレーンで吊り上げられている。右腕が外されていて、ロゼッタとモニカがなにか悩んでいるようだった。

 

レイガ「どうしたの? 二人とも」

ロゼッタ「エルゼ殿の機体でありまスが、近接格闘戦用となると、主な武器は拳になるのでありまスが・・・」

モニカ「ただ硬いだけの拳で殴るってのも芸がないと思ってナ。やっぱりこういうのは一撃必殺の威力が必要だろ?」

 

確かにエルゼの機体は接近戦でこそ、その威力を充分に発揮できる。一撃で相手を潰し、そしてすぐさま次の相手へ、そんなスタイルが合っているは思うけど。

 

ロゼッタ「一撃目でフレイズの身体を砕き、二撃目で核を砕く……拳だとどうしても二つの工程が必要になるでありまス」

モニカ「これが剣や槍なら、身体ごと核を破壊ってのもありなんだけどナ」

ロゼッタ「こう……拳を撃ち込んだあとに、核へ向けて何かを発射すれば一撃で仕留めることが可能だと思うのでありまスが」

レイガ「う~ん」

 

拳を打ち込んだ後に発射する物・・・

 

レイガ「パイルバンカーとかは?」

ロゼッタ「なんでありまスか? それは」

 

僕はアバレンジャーギアでアバレブルーの専用武器『トリケラバンカー』を召喚する。

 

レイガ「パイルバンカーってのは装甲を打ち砕いてから本体を貫くための武器で、槍や杭を高速射出することにより敵の装甲を打ち砕く武器なんだ」

 

僕はトリケラバンカーを使って、手頃な岩を取り出しt、殴ってみる。最初こそ先端で殴っただけで、ヒビが少しだけ入る程度だったが、ボタンを押して、先端のバンカーを射出する。すると岩は砕け散った。

 

レイガ「これをエルゼの機体の腕に装備させることは可能かな?」

モニカ「できるんじゃねえかナ。火薬とかじゃなくて、魔力による射出にして、杭……というか手甲もだけど、晶材で作れば破壊力は申し分ねえだろ。ちっとばかしゴツくなるかもしれねえけどナ」

 

それくらいですむなら問題ないだろ。

 

ロゼッタ「しかしなんとも奇抜な武器でありまスな・・・。マスターはどこでこんな情報を?」

レイガ「え⁉ えっと~ま、気にしないで」

ロゼッタ「はあ・・・」

 

はあ~いい加減僕のことを話したほうがいいのかな。

 

モニカ「よし、じゃあパイルバンカーとやらを作ってみるカ! おい、みんな集まれ!」

 

モニカが号令をかけるとテケテケとミニロボたちが集まってきた。彼女が説明しているのを小さく頷きながらおとなしく聞いている。

 

ロゼッタ「かなり凶悪な武器になりそうでありまスな」

レイガ「・・・いいんじゃないの」

 

こうして作られたエルゼの新機体は真紅のカラーリングを施された・・・ゲキファイヤーになっていた。・・・もうツッコまないよ。これで足にペンギンかガゼルがいたらもう本家そのもの。

名前はどうしようか・・・うん、これにしよう『ランドグリーズ』。『楯を壊す者』

 

 

 

 

 

レイガ『どう? エルゼ?』

エルゼ『ちょっとバランスが違和感あるけど、動きには支障ないわ。黒騎士より反応が早いし、動かしやすいわね』

 

エルゼが完成した新型フレームギア、『ランドグリーズ』を動かしながら答えた。

 

エルゼ『ふっ!』

 

ランドグリーズが荒野にあった巨大な岩壁に拳を突き立てて粉々に砕く。瞬間、腕部に装備されたパイルバンカーから、轟音と共に槍のような杭が撃ち出された。

杭は空中に飛んだ巨岩のひとつを一撃で粉砕すると、すぐさま腕に収納される。肘の先から杭の反対側が飛び出した。

てかパイルバンカーのモデル、ワイルドトウサイジュウオウキングのビックキングソードなんだよな・・・盛り合わせ過ぎじゃない。

 

レイガ『ん、パイルバンカーも問題ない。狙ったところに撃ち込めるわ。これなら中級種でも一撃で倒せそうね』

 

ただひたすらに一撃で仕留める。ランドグリーズの動きはそれに集約されている。もちろんスピードもパワーも黒騎士より上である。

 

エルゼ『ブースト!』

 

ゲルヒルデの多層装甲の各所から、魔力の残滓が溢れ出る。まるで機体が赤く燐光を纏っているみたいに見える。

身体強化魔法を発動させたランドグリーズは、一段と速さを増し、突き出した拳とパイルバンカーの一撃は、残っていた岩壁を木っ端微塵に粉砕した

 

レイガ『身体に変調はない?』

エルゼ『ものすごく魔力と体力を持ってかれるわね。放出系の魔法じゃないからかしら。連続使用はキツイかも』

 

機体の方には問題はなさそうだ。エルゼがブーストを解除すると、ランドグリーズの燐光も消えた。

 

ロゼッタ『マスター、データ収集完了でありまス』

レイガ『OK』

 

上空のバビロンで、モニタリングしていたロゼッタから連絡が入る。

あとはこのデータで調整をして、次の機体の製作に活かすことができる。

 

レイガ『そこまで! お疲れ、エルゼ』

 

停止したランドグリーズのハッチが開き、中からエルゼが飛び降りてきた。

 

レイガ「これでエルゼの機体はとりあえずこれで完成だね」

エルゼ「次は誰のを作る予定?」

レイガ「いまのところ戦闘をメインにした機体を揃えたいから。八重とヒルダかな。どっちも剣がメインだし、比較的戦闘スタイルも似ているからね」

 

八重は侍型、ヒルダは騎士型にしようかな。

 

紅玉『主。ロードメアの丘陵州総督から連絡が入りました』

レイガ『紅玉。ロードメアの中央州にフレームギアの立ち入りが許可されたかな?』

紅玉『いえ、助けを求めております。

レイガ『え、なんで?』

紅玉『中央州が武装したウッドゴーレムの暴走により、かなりの被害が出ているとのことで・・・』

レイガ『・・・はあ⁉』

 

武装ゴーレムって、あの若ハゲボーマン博士が作ったやつか⁉ なんでこんなときに! よりにもよって、フレイズの来襲が明日、明後日にもあるかもしれないのに!

すぐさまランドグリーズを『格納庫』へと戻し、僕らはロードメアの方へと向かう。

 

レイガ「なんだよこれ・・・・」

 

美しいバロック様式の建物が粉々に砕かれ、人々が逃げ惑っている。

あちこちで火の手が上がり、黒煙が高く空へ上っていた。街のいたるところで何体もの巨大な武装ゴーレムが、その拳を振り回しながら、建物を破壊している。

 

エルゼ「ねえ、あれどっかに転移できないの⁉」

レイガ「どっかってえっと・・・とりあえず今はあの平原に」

 

とりあえず町の被害をこれ以上出さないために、ゴーレム12体を数キロ先にある平原まで【コネクト】で転移させる。これでしばらく時間は稼げるはず。

 

オードリー「公王陛下!!」

 

突然かけられた声に振り向くと、王宮の門へと続く長い階段を、オードリー州総督、それに護衛騎士を引き連れた騎士団長のリミットさんが降りてきた。

 

レイガ「州総督、いったいこれはどうなっているんですか⁉ なんで武装ゴーレムが街を破壊してたんです⁉」

オードリー「暴走です。陛下のフレームギアに負けたのがよほど悔しかったのでしょう。ボーマン博士が無茶な改造を武装ゴーレムに施したらしいです。結果、失敗し、ゴーレムを制御することができなくなってしまったらしいです」

 

はあ⁉ バカかあの若ハゲ野郎は⁉

 

レイガ「それでそのハゲ・・・じゃなくてボーマンは今どこに⁉」

オードリー「行方不明です。全州総督が必死で探しておりますが、ひょっとしたらすでに死んでしまっているやも・・・」

レイガ「ハクちゃん、ボーマンっていう奴検索して」

 

僕はスマホを出してマップを投影し、ハクちゃんに検索してもらう。

 

ハク『パパ、ここです』

レイガ「オードリーさん、ボーマンはここにいます」

オードリー「ここは・・・使われていない倉庫です。どうしてこんなところに・・・? と、とりあえず身柄を確保してこい!」

リミット「はっ!」

 

リミットさんの命令で、何名かの騎士が慌ただしく街中を走っていく。

街はゴーレムが消えたことでいくらかの落ち着きを取り戻したが、まだ火災などは続いている。

 

レイガ「とりあえず火を消さなちゃ」

 

僕はニンニンジャーギアを使って一本の刀『忍者一番刀』と二つの手裏剣『五トン忍手裏剣』と『風雷忍手裏剣』を召喚する。

 

水の術!

風マジック!

レイガ「上級手裏剣忍法 大雨どしゃぶりの術! 水の術! 風の術! ミックス!」

 

二つの手裏剣を使って、雨雲を出現させる。すぐに雨が降り始め、火が消えていく。

火がすべて消えると、雨雲も同時に消えていった。

 

レイガ「これで火は消えたと思います。あとは怪我人の救助を。僕らは転移させたゴーレムを片付けてきます」

オードリー「あ、は、はい。わかりました。お気をつけて」

 

オードリー州総督に見送られて、僕らは首都郊外の平原へ転移した。目の前には再び首都へと向かおうとする武装ゴーレムの群れ。こちらへ重い足音を響かせながら進軍して来る。よく見ると後ろになんか植物? みたいのを背負っているが、この前見なかったが、あれが暴走の原因か。

 

レイガ「一人で行ける?」

エルゼ「任せなさいよ。ちょうどいい前哨戦だわ。軽くひねってやるわよ」

 

『格納緒』からランドグリーズを転移させると、エルゼはすぐに乗り込む。

 

エルゼ『行くわよ、ランドグリーズ』

 

ドンッ! っと背中のバーニアを吹かせながら、武装ゴーレムの群れの中へ向けて、真紅のフレームギアが一気に飛び出す。

10分もかからずすべてのゴーレムは木っ端微塵となった。




機体の名前ですが、終末のワルキューレからワルキューレ姉妹の名前を採用しました。


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上級種そしてイレギュラー

〈レイガサイド〉

ボーマン「わ、私のせいじゃない! これは不幸な事故が重なっただけなんだ!」

 

暴走ゴーレムを殲滅してから『ランドグリーズ』を『格納庫』に戻して、ロードメアに帰ってから倉庫に隠れていたボーマンを尋問していた。

なんでも潜在能力を引き出す代わりに、養分を摂取するという寄生植物の一種を改良して巨獣化、それを武装ゴーレムに取り付けたらしい。

ところがこの寄生植物が武装ゴーレムの意識を乗っ取り、暴走を始めた。「隷属の首輪」の効果も無くなり、まったく命令が効かなくなって、暴れ出したと・・・

 

リミット「ゴーレムの方はともかく、その寄生植物の方はまだ試験段階だったようです。それを強制的に成長、巨獣化させて、かなり無茶な融合をさせたみたいですね。研究所員の反対を押し切っての独断のようです」

 

ボーマンの研究所から押収した資料を見ながら、騎士団長のリミットさんが教えてくれた。

 

オードリー「なんてことを・・・。こうなる可能性を考慮しなかったのですか? あなたの軽率な行動がどれだけの被害者を生み出したと・・・!」

ボーマン「寄生植物による暴走が起こる可能性は低かったんだ! だいたいゴーレムの意識まで乗っ取るなんて誰が予想できる⁉ この暴走は事故なんだ! 私は悪くない! 街を破壊したのは私じゃないぞ!」

 

オードリー州総督の言葉に逆ギレ気味に答えるボーマン。

 

オードリー「そもそもゴーレムを今すぐ改良する必要性はあったのですか? フレイズのことはテンペスト・レイ公国の力を借りるということで、ほぼ話が進んでいたはずです。明日にでも州総督全員で決を取り、正式な発表を、となっていたではありませんか」

 

なんでも七つある州のうち四つまでがテンペスト・レイの協力を仰ぐという方向でまとまりつつあったらしい。最終的には明日の州総督会議で決を取るとか。

 

リミット「公国のフレームギアに負けたことで、武装ゴーレムに対する研究に疑問の声が上がっていましたからね。国の予算を無駄に使うべきではない、と。せめて武装ゴーレムを強化してこちらもフレイズを倒さないと、研究費が下りなくなる・・・そんなところでしょう」

 

冷たい眼差しを向けてリミットさんが口を開くと、ボーマンはビクッと身体を竦ませた。図星かよ。

 

エルゼ「どのみちあんなゴーレムじゃ話にならないわよ。あたし一人で全部片付けちゃったし。弱すぎ」

 

エルゼの言葉にボーマンが俯いていた顔を上げる。傷口に塩を塗る言葉。

 

ボーマン「あの強化した武装ゴーレムを倒した・・・? たった一人で? そんな・・・」

オードリー「制御できない力など使うべきではなかった。この罪は重いですよ、ボーマン博士。独断でゴーレムを改良し、この惨劇を生み出した責任は取ってもらいます。全ての役職を解任、博士号を剥奪の上、山岳州の鉱山行きです。いいですね、全州総督?」

ロードメア「あ、ああ、そうだな。責任は、取らなくては」

 

オードリー州総督の厳しい声に、ただ黙って目を泳がせていた全州総督が小さく頷きながら、引きつった笑顔を浮かべた。

それはそうか。なんせこの被害を生み出した若ハゲを採用したのは中央州の州総督なんだから、自分だけ責任逃れはできまい。

 

オードリー「それと全州総督。中央州、レセプトの街から住民の避難を。事態は一刻を争います。早馬を出してください」

ロードメア「ちょ、ちょっと待ちたまえ。避難させておいて、もしも何もなかったらどうするのかね? 街の住民が黙っちゃいないぞ⁉」

オードリー「この期に及んで何を馬鹿なことを・・・。何もなかったら騒がせたことを詫びて、賠償し、責任を取ればいいだけのことです。むしろ、出現を知っていながら何もしなかったと、あとでわかった場合どうなるか・・・。そちらの方が大問題ですよ?」

 

・・・これ、どっちが立場上なの?

 

オードリー「公王陛下、丘陵州のリムルード、エミナス、中央州のレセプト、ここから全ての住民を避難させます。それと、フレームギアの国内配備を期間限定で許可いたします。全州総督、いいですね」

ロードメア「あ、ああ。もちろん」

 

・・・本当にどっちが上⁉ 

 

レイガ「あ、ありがとうございます。全力をもって対処に当たらせてもらいます。では、すぐにでもフレイズが出現する近辺に我が国のフレームギアを配備いたします」

 

僕は王宮を立ち去り、すぐさまテンペスト・レイの城へ戻り、部隊を編成した。

騎士団長のレインさん、副団長のノルンさんとニコラさん、それぞれに19機ずつ付けて、本人の機体と合わせて20機の小隊が三つ。これを現場に駐屯させ、三交代制で見張る。

今回、国の防衛をレインたち頼むことにした。

東西同盟各国には18機の重騎士と2機の黒騎士を貸し出し、自分たちの国で待機してもらうことにした。

ユミナたちh揃って出撃したいと言い出したが、得意の土下座でどうにか、スゥとリーンには遠慮してもらうことができた。

エルゼは専用機ランドグリーズ、八重とヒルダは晶材の刀と剣、ルーは晶材の短刀二刀流、ユミナとリンゼは新兵器『飛操剣(フラガラッハ)』を装備した。(モデルは仮面ライダーゼロワンのシャイニングアサルトホッパーのシャインシステムを採用)

それぞれ黒騎士をベースとした機体に乗り込むこととなった。

ロゼッタとモニカにも手伝ってもらい、後方でミニロボたちとフレームギアが壊れた時などの緊急事態に備えてもらうことをお願いした。

そして絶賛ユミナたちを鍛えている僕の妻たちは、弟子の成長を見守るとかなんとかで観戦することになった。

 

ロゼッタ「今回は全てのフレームギアに晶材による武器を装備させたから、かなり有利だと思うでありまスよ」

 

前回の戦いから反省して、武器をすべて晶材にした。

フレームギア師団を伴って、ロードメアのフレイズ出現現場より少し離れた森の手前に転移する。

目の前には平原が広がり、その向こうには山々が連なっていた。雲が静かに流れ、小鳥が囀る。

 

レイガ「ここが明日か明後日には戦場になるのか」

 

バビロン博士が作ったコンテナハウスを何個か設置する。これすごく便利。

中は思った以上に広く、中は常温に保たれ、見張りの騎士たちの休憩所としても使える。毛布も用意してあるので、仮眠するのにもいいだろう。

壁に名称もつけてこれで完成。

ロードメアの避難はもう終わっているので、出現場所から一番近いところにいる人間たちは僕らになる。そうなれば、まっすぐにこちらへ向かってくる・・・はずだ。

 

二コラ「来ますかね」

レイガ「来なきゃそれでいいけどね。ここまでお膳立てした以上、来てくれないと、こっちが大変なんだけどね」

 

コンテナハウスの平らな屋根にテーブルと椅子を用意して、ニコラさんと差し向かいで将棋を差す。

 

二コラ「今回の戦いに諸刃様は参加されないのですか?」

レイガ「ん〜、諸刃姉さんが出ると、すぐに終わっちゃうからね~それじゃあみんながこれまで訓練したことが無駄になっちゃうでしょ」

 

諸刃姉さんにずっと頼むのも変だし。

 

レイガ「でも、参加はするとは言ってた。剣も渡してあるし、それなりに働いてはくれるんじゃないかな」

二コラ「参加って・・・もしかして生身でですか?」

レイガ「ん? そうだけど」

 

姉さんに関したらフレームギアに乗った方が弱くなるし

 

二コラ「陛下の姉君ならありえるか・・・」

レイガ「ん? なんか言った?」

二コラ「いえ」

 

 

 

 

二日目

その時がようやく訪れた。

朝食用のシチューが煮込まれている時に、フレームギアのモニターで監視していた者からとうとう報告があがった。

 

騎士兵『空間に亀裂を確認! フレイズが出現しようとしています!』

 

本陣に警報が鳴り響き、仮眠していた者も跳ね起きて、それぞれ自分の機体へと乗り込んでいく。

まだ少し時間はある。その間に僕は各国に回ってフレイズ出現の報告と、準備していたそれぞれのフレームギアを現場へと転移させ送り出す。

亀裂が入った場所に向けて、計200機のフレームギアが弓状に展開し、その迎撃準備を整える。

 

騎士兵『陛下! 亀裂が広がっていきます!』

 

亀裂の方へ視線を向けると空間の亀裂が少しずつ広がり、中からフレイズの身体の一部が突き出しているのが見えた。やがてガラスが割れるような大きな破壊音があたりに鳴り響き、それと同時に雪崩れ込むようにして、その場にフレイズたちが次々と出現する。

いつ見ても超獣みたいな登場の仕方だな。

 

レイガ「ほとんどが下級種と中級種・・・やっぱり上級種は遅れてくるのか」

エンデ「そう、レイガもわかってきたね」

レイガ「まあな。それといきなり横にいるのやめてくれ、エンデ」

エンデ「ごめんごめん。あと出現までの時間は30分ってとこか。それまでにあいつらを片付けておきたいところだね」

 

エンデは手の中のプレパラートを割り、金と黒の豹騎士を呼び出した。そしてさっさと乗り込んでしまう。

 

レイガ「ハクちゃん。確認できるフレイズの数は?」

ハク『検索中・・・合計で8142体です、パパ』

レイガ「その中の中級種は?」

ハク『809体です』

 

全体の約一割か。ユーロンよりは数も少ないし、油断しなければ大丈夫か。

 

ユミナ『玲我さん、フレイズたちが動き始めました』

 

耳に装着したレシーバーからユミナの声が聞こえてきた。今回はエルゼのランドグリーズと黒騎士タイプには僕と通信できるように改造し、なにかあった場合すぐにわかる。

前方を確認すると、ユミナの言う通り、確かにこちらへ向かって進軍を開始していた。

先行して飛行タイプのマンタとイルカかな? それっぽいやつが向かって来る。

 

レイガ「それじゃあ始めますか」

 

ザングラソードとウルトラデュアルソードを取り出し、左右に構える。

 

レイガ『全機戦闘開始! 各指揮官に従い、フレイズを殲滅、掃討せよ!』

全員『おおおおッ!!!』

 

地響きをあげてフレイズの群れへと、フレームギア部隊が駆けていく。

僕も空を飛び、飛行型のフレイズを倒しに行く。

 

 

 

 

 

 

レイガ「おりゃあ!」

 

マンタとイルカの攻撃を避けながら、斬り裂いていく。スピードはマンタの方が早く。マンタの方を優先的に倒していると、遅れて飛んできたイルカ型の頭部に光の玉が現れる。そのまま僕に向けて光の球が発射された。

 

レイガ「よっと」

 

次から次に発射される球を避けながら、一旦ザングラソードとデュエルソードを収納し、『VSチェンジャー』と黒いダイヤルファイター『シザーハンズダイヤルファイター&ブレードダイヤルファイター』を取り出し、VSチェンジャーにセットする。

 

『シザース!』

 

ダイヤルを回転する。

 

『9・6・3 マスカレード!』

 

トリガーを押して、銃口を回転する。

 

『怪盗ブースト!』

 

トリガーを押すと、シザーダイヤルファイターの形をした巨大な盾が左腕にとブレードダイヤルファイターの形をした巨大なブーメランが背中に装着させる。

盾で攻撃を防ぎながら背中のブーメランを取り出し、思いっきりフレイズに向けて投げる。

 

レイガ「せーのッ!」

 

投げ飛ばしたブーメランは飛んでいるフレイズたちの核に向かって飛び、フレイズの身体を削って、さらに核まで粉砕する。ブーメランは軌道を変え、僕に帰って来る。

僕はそれをキャッチし、

 

レイガ「よっと、もういっちょ!」

 

同じことを繰り返す。それを何十回か繰り返すと、あっという間に全滅していた。

 

レイガ「ふ~いっちょあがり」

 

装備を外すと、盾もブーメランも消える。あれけっこう重いんだよな。

視線を地上に向けると、北側にはエルゼを先頭にブリュンヒルドとレスティアが対処にあたり、中央にはベルファスト、ミスミド、リーフリース、南側はレグルス、リーニエ、ラミッシュが陣取っていた。南側にはエンデの姿も見える。

フレイズの群れをなんとか押しとどめているようだ。みんなの動きも以前より良くなっているし、フレームギアでの戦闘が初めてのレスティア騎士団の人たちも、なかなかうまく乗りこなしている。

 

エルゼ『片っ端から砕いて砕いて砕いて砕く! 止められるものなら止めてみなさい!』

 

エルゼのランドグリーズがパイルバンカーを撃ち込みながら、フレイズの中級種をメインに打ち倒していく。それに追従して、ブリュンヒルドの重騎士たちが次々と下級種を斬り伏せていた。

 

レイガ「あっちは大丈夫そうかな」

 

視線を北側に向けると一斉に襲いかかる下級種フレイズ目掛けて、三つの飛操剣が飛び、見事同時に核を貫いた。あれは・・・ユミナの機体か。

飛操剣は戦場を縦横無尽に駆け巡り、次から次へとフレイズの核を砕いていく。それから大きく弧を描いて、ユミナの機体の背中へと帰還した。あれも作っておいてよかったけど、予想以上に頭を使うから、疲れるんだよな。

今のところ使いこなせるのはユミナとリンゼだけだろう。リンゼはユミナより一本多い、四本を操っている。おそらくリーンも使いこなせると思う。

その横では八重とヒルダのコンビが中級種を斬り伏せていた。ルーの双剣も下級種相手に派手に振るわれている。

 

レイガ「北側も大丈夫そうだね」

 

南側にはエンデの豹騎士が、高速移動をしながら、滑るように中級種を二刀の小太刀で屠っていく。本当に豹騎士を使いこなしているな。

 

レイガ「あっちはエンデ一人で大丈夫だろう」

 

中央部は・・・諸刃姉さんが対応していた。今では愛刀化している雷命刀ミカヅチを持ち、遅い来るフレイズたちを片っ端から斬り刻んでいた。

鬼に金棒、剣神に天下五剣。もう姉さんは止められなさそう。

 

レイガ「ミカヅチはもう使えないかも」

 

ちょっと嫉妬。

、とそんなことを考えているとバキャッ! という音がして、中央部にいた重騎士の首が飛んだ。たちまち機体の色が変わり、地面へと倒れていく。倒すのに夢中になるあまり、後ろから攻撃を受けたようだ。

 

レイガ『全員、周りの仲間たちをよく見ろ。互いにフォローしながら戦え。フレイズの狙いは僕たちだ。できる限り二人一組、背中合わせで対処しろ。あと、テンペスト・レイの騎士団、腑抜けな戦いをしたら稽古二倍だと、ハクロウからの伝言な』

 

そう伝えると、ウチの騎士団の動きが急によくなりだした。みんな嫌なんだ。

 

レイガ「ハクちゃん、現在のフレイズの数は?」

ハク『残り4318体です』

 

戦闘開始から20分でようやく半分か。あと10分ぐらいで上級種が来るから、片付けたかったけど、それは無理かな。

 

エンデ『あーあー、玲我。聞こえる?』

レイガ『エンデか? どうした?』

エンデ『そろそろ上級種が出現しそうだ。ここから北東の方、空間に歪みがあるのがわかるかい?』

 

エンデからの通信に、思わず地上に視線を向ける。

エンデのいるところから北東というと・・・あっちか。

視線を向けると、そこらへんの空一帯が歪んで見える。おそらくあそこから亀裂が入り、現れるのか。

 

レイガ『北側に展開中のブリュンヒルド、及びレスティア部隊に通達。そこから西方面へ移動せよ。そして全部隊へ通達。今より10分ほどで上級種が出現する予兆あり。注意されたし』

 

その通信を受けて、戦闘をしていた部隊がじりじりと西側へと後退して行く。

すべての機体が移動し終えた直後だった。

ピシッ、と、さほど大きい音でもないのに、辺りになにかが割れ始める音がハッキリと聞こえた。

エンデの指定した空に、大きな亀裂が入っている。

それはゆっくりとひび割れていき、亀裂がだんだんと大きくなっていく。

 

レイガ『上級種出現真近。各自これより更に注意して動くように。互いに連絡を取り合い、指揮官の指示に従え』

 

通信を聞いて、エルゼやエンデが出現場所へと向かう。

すでにひび割れはかなりの大きさに広がり、部分部分が欠け始めていた。

 

 やがてその空間を突き破って、大きな太い水晶の腕が伸びてきた。壁をぶち破るようにして、その上級種のフレイズが出現する。

デカい。フレームギアの四倍以上の高さがある。逆三角形の体格に、太く長い大きな腕は地面につけられている。足は短く、常に前傾姿勢を取っていた。頭部は首周りがなく、胴体と一体化しているようにも見える。分厚い胸部に核はひとつ。

 

レイガ「ゴリラ型のフレイズ・・・」

 

そのフォルムはまさしくゴリラ。その背中になぞの突起物、尻尾も長い。

ゴリラフレイズは二対の腕で自らの胸を叩き始めた。あれってドラミングか?

 

レイガ「って⁉」

 

全身に衝撃が走り、吹っ飛ばされる。見えない張り手をされたような、衝撃波のようなものがここまで飛んできた。あれはワニの時にもあった衝撃波か。

ってもしかして⁉

 

レイガ『全員、上級種の正面から散開! 逃げろ!!』

 

脇腹から伸びた複腕が、胸部の部分を中央から観音開きに開いていく。やがてそこにあった核に光が収束し始める。今度は荷電粒子砲かよ!

正面にいたフレームギアたちは散開し始めているが、あの方向だと丘陵州の方向へ発射されてしまう。このままだと丘陵州が全滅してしまう。

僕は急いで上級種の正面に向かいつつ、腰にデザイアドライバーを装着し。青い小型のバックルを右側のスロットにセットする。

 

『SET』

 

青い盾を押し込む。

 

レイガ「変身!」

ARMED SHIELD! READY FIGHT! 』

 

青い盾を装備した『仮面ライダーギーツアームドシールド』に変身する。

もちろんこれだけじゃ絶対に防げない。

 

レイガ「これもこれも追加!」

 

エナジーアイテム『反射』と『鋼鉄化』に『巨大化』。さらにラウズカード♡の8『リフレクトモス』の力を『レイズシールド』に集中させる。

強化を終えた同時にゴリラフレイズの胸部から光の大砲が放たれた。光の奔流がシールドにぶち当たると、その方向を変えて、上空へと消えていく。

 

レイガ「くっ! 重すぎだろ!」

 

なんとか踏ん張るしかない。本当なら全部あいつに返してやりたいが、それだと今度は中央州に被害が及ぶからな・・・本当こっち不利すぎでしょ!

荷電粒子砲が撃ち終わると、胸部装甲を閉じたゴリラフレイズは再びドラミングをすると、北西に展開していた部隊へ向き直り、突進を開始した。

どんどん近づき、ある程度近くまで来ると巨大な拳を打ち下ろす。

大きく地面を砕き、小さなクレーターを生み出した。

 

エルゼ『もらったあっ! 「ブースト」ッ!!』

 

打ち下ろした右手に素早く接近したエルゼのランドグリーズが、「ブースト」で強化したパイルバンカーの一撃を側面から叩き込む。

ビキキキッ、と亀裂が入り、前腕部の真ん中から先が砕け散った。

 

エルゼ『やったっ!』

 

エルゼが喜びの声をあげた瞬間、ゴリラフレイズの複腕がまたしてもドラミングを始め、ランドグリーズがその場から吹っ飛ぶ。

 

エルゼ『うっぐっ⁉』

 

飛ばされても体勢を立て直し、なんとか着地するランドグリーズ。

それに構うことなく、ゴリラフレイズは砕けた自らの右手を目の前にもってくる。同時に胸の奥の核がオレンジ色に脈動しながら点滅し始めた。

たちまち砕かれた右腕の先が再生していき、数秒で巨大な腕が元通りになってしまった。

再生した腕を振り回し、再びランドグリーズを狙って拳を突き落ろしていくゴリラフレイズ。「ブースト」を発動させたままのランドグリーズが、右に左によけながら後退していくのをひたすら追いかけていく。

 

レイガ「ミガケソウル!」

『つるつる!』

 

僕はリュウソウケンにミガケソウルをセットし、地面に突き刺し、ゴリラフレイズの足元をつるつるにする。すると足を滑らせ、横転する巨大ゴリラ。その隙にランドグリーズはなんとか逃げ切ってくれた。

転倒したゴリラの胸めがけて、どこからか飛び込んできた諸刃姉さんが剣を突き刺す。が相手が悪い。いくら姉さんでも剣一本だけじゃ核までの分厚い胸部を貫くには長さが足りない。

しかし姉さんは突き刺した剣の柄尻にミカヅチの剣先をぶつけ、先に突き刺した剣をさらに胸の奥へと強引に押し込んだ。それでも核には届かない。

 

諸刃「ふむ、二本分でも足りないか。思ったより胸板が厚いね」

 

胸の上に乗る姉さんをフレイズが手で払い除けようとする。それより先に、ひょいっと諸刃姉さんは自ら飛び退き、地面へと着地していた。

僕も諸刃姉さんの横に降り立つ。

 

諸刃「お、玲我君、さすがにこれは私でも手に余るなあ。力を使わない状態では無理っぽいよ」

レイガ「さすがにそこまで頼むつもりはないよ」

 

神力を使って、それはそれでフレイズよりも面倒なことになる。

 

ギィィィィィィィィィィィィン!!

 

そんなことを考えていると突然、ゴリラフレイズから大音量の共鳴音が放たれた。それに背中の突起物が大きく振動している。なんだよ一体⁉

次の瞬間、ゴリラを中心にして地面が大きく波打った。

 

レイガ「ッ⁉ ごめん諸刃姉さん」

 

僕は咄嗟に隣の諸刃姉さんを抱え上げて、空中へと避難する。

まるで津波だ。ゴリラフレイズを囲んでいたフレームギアがまとめて跳ね上げられ、地面に叩きつけられる。

何機かはとっさに跳び上がり、ダメージを減らすことに成功したようだが、かなりの数のフレームギアのボディカラーが叩きつけられたあとに変色してしまった。

 

レイガ「こんなこともできるのかよ!」

 

土砂に埋まった中から、なんとか脱出転送を回避した機体が這い上がってくる。エルゼのランドグリーズも無事のようだ。

しかしそこに長い尻尾が迫って来る。先端には尖った分銅のようなものがついていて、これが土砂から出て来た何体かのフレームギアをなぎ倒した。

荒らされた地面に叩きつけられて、装甲を壊しながら何体かが転がっていく。機体の色は変わっているので搭乗者は脱出したと思うが、無事かどうかはわからない。

そんば不安をよそに、ゴリラフレイズがまたしても複腕で胸部装甲を開く。核にオレンジ色の光が再び集まり始めた。

 

レイガ「またあれかよ!」

 

僕は諸刃姉さんを降ろして、再びゴリラフレイズの正面に向かう。

こうなったら本体に向けてはね返すか? いや、もしも中央州になにかあったらとんでもないことになる。

ここはやはりさっきと同じように上空へ

 

レイガ「ッ⁉ 嘘だろ」

 

今最悪の未来が見えた。毎回思うけど僕の見聞色、未来は見えるけど自分が見たいときには見れず、不定期だから不便だ!

それよりコイツ、荷電粒子砲を自分の腕に当てて、光の屈折を利用して四方八方に攻撃しようとしていた。こいつ今までのフレイズと比べて知能高いのか!

 

レイガ「そんなことさせるかよ!」

 

僕はデュアルソードと一枚のカードを取り出す。そこには鳥型のロボが描かれていた。カードをデュアルソードのリーダーにスラッシュする。

 

レイガ「サイバーベムスター! 発動!」

『CYBER-BEMSTAR!』

 

トリガーを引く。

 

『DUAL CYBER MONS ATAACK!』

 

ゴリラフレイズの周辺に紫色のシールドが配置される。

それと同時にフレイズの荷電粒子砲が四方八方に反射される・・・はずだったが

すべての攻撃が先ほどのシールドにすべて吸収された。

これがベムスターの腹部をモチーフにして開発したシールド。どんな攻撃でも吸収できる。ただ本家同様跳ね返すことはできない。吸収だけ。そこはエックス兄さんのアーマーよりは性能は劣っているが。

 

レイガ「なに驚いてるんだ⁉ こんなもんじゃないぞ!」

 

ゴリラフレイズは自慢の荷電粒子砲を吸収されて、驚いている。その隙に僕はドライバーの右側スロットに装填しているシールドバックルを取り外し、紫色の大型バックル。『ゾンビバックル』をセットする。

 

『SET』

 

次にゾンビバックルに付いてある鍵『ウェイキングキー』を回す。

 

『♪ ZONBIE! READY FIGHT!』

 

バックル中心の扉から紫の手が伸びる。

そして紫の装甲『仮面ライダーギーツゾンビフォーム』へと姿を変える。

僕の姿を見て、すぐに攻撃態勢に入るゴリラフレイズ。

でももう遅い! 僕はもう一度バックルの鍵を回す。

 

『ZOMBIE STRIKE!』

 

右手の『バーサークロー』を地面に思いっきり突き刺す。

すると、地面から無数のバーサークローが生え、ゴリラフレイズを拘束する。

ゴリラフレイズは突如現れた腕を払いのけようとするが、数の暴力。背中から地面に倒れ込み、無数の腕によって起き上がることができない。

その時、僕の背後から豹騎士が高機動モードで駆け抜けて、仰向けになったゴリラフレイズの上に飛びかかり、右手に持った小太刀を胸部装甲へと突き刺した。

でもさきほどの諸刃姉さんの時と同じく分厚い胸板に阻まれ、刀身が核へと届いていない。

 

エンデ『シャール』

 

エンデがなにか唱えると、小太刀が刺さった周りの胸部が粉々に砕け散った。なぜか突き刺した竜騎士の右手もバラバラに砕けている。核が剥き出しになりつつも、ゴリラフレイズがバーサークローの拘束を無理やり剥がし、上にいる豹騎士をどかそうと手を払った。それをかわして豹騎士が後退する。

と、その入れ替わりで、今度は赤い燐光を発したランドグリーズが疾風迅雷の飛び込みをもって剥き出しの核に迫り、その拳を振りかぶった。

 

エルゼ『一撃、粉砕ッ!!』

 

渾身の力を込めた必殺のパイルバンカーが、剥き出しの核に撃ち込まれた。

オレンジ色の球体に一瞬で亀裂が入り、木っ端微塵に粉砕された。同時に上級種の全身にも無数の亀裂が走り、ガラガラとその身体を崩壊させていった。

 

エルゼ『ぃよっし!』

エンデ「ははは・・・やってくれたなあ・・・」

 

砕けて散った上級種の残骸の上で拳を突き上げるランドグリーズ。

僕も安堵し、変身を解除しみんなに通信を入れようとした。

 

 

 

 

 

全員が安堵した隙をあいつは見逃さなかった。

 

 

 

 

 

〈?サイド〉

 

?「ありがとうね。レイガ。君のおかげで僕のおもちゃは完成するよ」

 

あの時の個体よりも遥かに強い個体を見に来てよかった。これなら

 

「僕のおもちゃに耐えられる身体は手に入った」

 

まずは試運転だ。楽しんでねレイガ。

壊されたはずの上級種の核が輝き始める。

 

さあ始めようか! 第二ラウンドを!

 

 

 

 

 

〈第三者サイド〉

場面は変わって拠点。

拠点ではみんなの戦いを見守っていたメレオレナ、アイリーン、葵、エルザ、ミリムがいた。

 

メレオレナ「あれがフレイズっか確かに面白そうな怪物だな」

アイリーン、「あれを見て面白そう、と言えるのは貴方だけよ。メレオレナ」

葵「それにしても魔力を吸収する怪物か・・・」

エルザ「母上のような魔法使いでは苦戦しますね」

 

四人とも戦場を見ながら各々の感想をつぶやく。

 

ミリム「我も戦いたいのだ~」

 

約一名不機嫌な魔王はいるが。

 

アイリーン、「それにしてもあの子たちも強くなったわね」

メレオレナ「鍛えがいがあったからな」

葵「同意」

 

教え子が成長して嬉しそうなお三方。

 

アイリーン、「それにしても何人もここに来過ぎよ。しれっと来て、すぐ帰るならともかく。長い間滞在する人が多すぎ!」

 

何名かの同じ夫を愛している女性の顔を思い出して、怒りを露わにするアイリーン。

 

エルザ「それにしても・・・上級種ですか。あれには驚きました」

葵「確かにあの光のビームに衝撃波。どれをとっても協力」

アイリーン「あれがこれから二体も三体も連続で出現するってなったら。さすがに今の戦力では難しいわね」

 

上級種の感想をつぶやく三人。しかし事態は思わぬ方向へ進んで行った。

 

ミリム「ん? なんかあの破片光ってないか?」

 

それに最初に気付いたのは魔王ミリムだった。

 

エルザ「破片ってどこのですか?」

ミリム「あの、じょーきゅーしゅ? とやらの破片だ」

 

全員がミリムの言うすでに破壊された上級種の核の方へ顔を向ける。

そこには徐々に再生していく核の光景だった。

 

 

 

 

 

〈レイガサイド〉

 

嫌な胸騒ぎがして、後ろを振り返る。

 

レイガ「・・・え⁉」

 

腑抜けた声を出してしまった。だってそうだろ。破壊したはずの核が光り輝き、再生しているのだから。

前回はこんなこと起きなかったのになんで

 

レイガ「・・・なあ、エンデ」

エンデ「ん? どうしたのれい・・・⁉」

 

エンデも気付いたようだ。

 

レイガ「・・・エンデ、一応聞くけど・・・上級種って中には核壊されても復活する個体いるのか?」

エンデ「いや、フレイズは姿は違えど、核が壊されたら、生命活動が止まる。復活なんてありえない」

 

じゃあ今起こってるのは、なんだよ。イレギュラーか?

 

レイガ「とにかくなんかヤバい。二人ともここは一旦離れ」

ハク『パパ!』

レイガ「⁉ どうしたのハクちゃん」

 

急なハクちゃんの声に驚く。

 

ハク『残りのフレイズ、約2000体が急に方向を変え、こちらに向かっています』

レイガ「はあ⁉」

 

嘘だろ。いったいどうして?

 

レイガ「くッ! 二人とも今すぐここから離れるぞ」

 

僕は二人の有無も聞かず、【コネクト】で強制的にユミナたちのいる場所まで転移させ、僕は空を飛ぶ。

その直後2000ものフレイズが一斉に上級種の核に群がる。

 

レイガ「なんだよ、これ」

 

核を守ろうとしているのか、一体何をしようとしているのかわからない。

だが、次の光景を見て、わかった。

 

レイガ「核が・・・フレイズを吸収している⁉」

 

なんと上級種の核が群がる他のフレイズたちを吸収しているのだ。

ものの数分で2000もいたフレイズすべてが吸収された。

そして今もなお輝き続けている核。完全に元、いやなんなら前よりも大きくなってる。

 

レイガ「一体なにが」

?「僕の新しいおもちゃだよ、レイガ」

レイガ「⁉ お前は」

 

急な声に驚き、そちらを向くと、そこには

 

レイガ「・・・レイド」

レイド「久しぶり」

 

僕をつけ狙うストーカー一号、レイドがいた。

 

レイガ「なんでここにいるって聞きたいけど、今はどうでもいい。それよりこれはお前はやったのか」

レイド「そうだよ。僕の新しいおもちゃ。あの結晶のモンスターを利用した、新しい怪獣。楽しんでくれるかな?」

 

相変わらず怪獣研究してるのか。

 

レイド「前は失敗したけど、今回の個体なら上手くいくでしょ」

 

レイドは手に持ったなにかを核に向けて投げる。

 

レイガ「1? 今何投げた?」

レイド「ん、モデルだよ」

 

モデル? 一体なんの

 

レイド「これから生まれる怪獣のモデルさ」

レイガ「なに⁉」

 

次の瞬間、核が一段と光り輝き、周りから結晶がどんどん生え、一匹の大きな生物へと姿を変える。

 

レイド「君にも馴染みがある物にしたよ。さあ現れろ。

『結晶合成獣 フレイズゴモラ』!!」

 

gyaaaaaaaaaaaaaaa

 

それは姿が、僕の知っている『古代怪獣ゴモラ』に似ている。ただ違うと言えば、身体がすべて結晶。そうフレイズであることだけ。




オリキャラ、レイドをだしました。詳しくは次回にでも書きたいと思います。


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結晶怪獣

今回少なめです。


〈レイガサイド〉

突如現れたレイドによって生み出された、新たな怪獣。フレイズゴモラ。ゴモラに姿が似ているが、身体はフレイズの結晶で、体の中には核も見える。だが大きすぎる。

さっきのゴリラフレイズの三倍にも大きい。実査のゴモラと同じかそれ以上だ。

 

レイド「おお、上手くできた。よかったよかった」

レイガ「よくねえよ!」

 

そんなツッコみをよそに、フレイズゴモラが咆哮する。

 

gyaaaaaaaaaa!

 

って衝撃波もあるのかよ! 身体がもっていかれる。さっきのゴリラより何倍も強くなってる。

 

レイド「ふむふむ、どうやら素材となった結晶モンスターの特徴を受け継いでいるようだね」

 

なに悠長に観察してるんだよ!

 

レイガ「って、フレイズの特徴・・・まさか」

 

そのまさか、フレイズゴモラは僕らを無視して、北側のユミナたちのいる方角へと足を進める。

 

レイガ「くっそ! そんなとこも似ているのかよ」

 

僕は地面に降りて、すぐにデッカーギアでウルトラディーフラッシャーを召喚し、トリガーを押す。

 

『♪』

 

ベルトのホルダーから『ウルトラディメンションカード』を取り出し、フラッシャーに差し込む。

 

『♪ ウルトラディメンション!』

 

レバーを引く。

 

レイガ「輝け! フラッシュ! デッカー!

『ウルトラマンデッカー! フラッシュタイプ!

 

光の巨人『ウルトラマンデッカー』に変身する。

 

デッカー「デュワ!」

 

フレイズゴモラの進行先に飛び出し、出会い様に腹部へキックし、フレイズゴモラを後退させる。

 

レイガ(インナースペース内)『今回ばかりはみんなには荷が重いからね。相手は僕がするよ』

 

今ここにデッカーVSフレイズゴモラの戦いが幕を切った。

 

 

 

 

 

〈第三者サイド〉

 

バエ「さあ始まりました。巨大戦! 今回は光の巨人『ウルトラマンデッカー』VS謎の怪獣、姿はゴモラに似ていますが、身体は結晶。これは一体なにが起こっているのか⁉」

ミリム「おお、ハエではないか」

バエ「ミリム様。私はバエです。間違わないでください」

ミリム「わかったのだ。ハエ」

 

拠点では急に現れたバエによる巨大戦実況が開幕した。

そんなことをよそにデッカーとフレイズゴモラは戦い始めた。

 

デッカー「デュワ!」

 

両者がぶつかりあう。最初こそお互いの力が均衡していたが、徐々にデッカーが押され始める。

 

レイガ『くっそ! パワーが本家より強いのってありかよ!』

 

反撃しようと力を入れるが、フレイズゴモラはデッカーの身体を持ち上げて、後ろに投げつける。

 

デッカー「ドワッ⁉」

 

そのまま倒れ込み、すぐに起き上がろうとするデッカー。そこにフレイズゴモラの追撃がやってきた。

 

デッカー「グワッ!」

 

フレイズゴモラの尻尾攻撃が、起き上がったデッカーの腹部へとヒットする。

そのまま横に倒れ込む。

 

レイガ『パワーならこっちだって』

 

レイガは一枚のディメンションカードを取り出し、ウルトラディーフラッシャーのトリガーを押し、カードを差し込む。

 

『♪ ウルトラディメンション!』

 

レバーを引く。

 

レイガ「弾けろ! ストロング! デッカー!

『ウルトラマンデッカー! ストロングタイプ!

 

赤い姿『ウルトラマンデッカー ストロングタイプ』にチェンジした。

 

バエ「おっと! ここでデッカーがストロングタイプへチェンジした! パワー対決だ」

 

再び立ち上がり、フレイズゴモラに突進する。

今度はお互いの手を握り合っての力比べ。

 

レイガ『こっちだってパワーで来てるんだ。二度も負けるかよ』

 

力が均衡しているため、お互い動けないでいる。その隙にレイガは核を破壊しようと考えた。

しかし、

 

レイガ『⁉ さっきまで胸のところにあった核がない⁉』

 

核の場所を探そうと、フレイズゴモラの身体を探すが、見当たらない。自然と頭部へ視線を移すと、

 

レイガ『嘘だろ⁉』

 

ゴモラの特徴のひとつでもある三日月型の巨大な双角と鼻先の一本角の核があった。

 

レイガ『まさか核が分離したのか⁉』

 

一個だったはずの核が三つに分離したようだ。そして核がオレンジ色に光輝く。

 

レイガ『ッ⁉ まさか』

 

嫌な予感がし、すぐに回避しようするレイガ、しかしフレイズゴモラはその手を離さない。 

その間にも核に光が集まり始め、その時がきた。

 

ズッドーーーーン!

 

デッカー「デェア⁉」

 

その音と共にデッカーは後方へ大きく飛ばされた。

 

 

 

〈レイガサイド〉

 

気付いた時には腹部の痛みと背中から伝わる地面の感触。そしてさきほどまで近くにいたフレイズゴモラが遠くに見える。

 

レイガ『痛った! なんつー威力だよ!』

 

今のは上級種のフレイズが持つ荷電粒子砲と、ゴモラの必殺技でもある『超振動波』の合わせ技。ノーガードで腹部に受けたから、腹痛え!

でももし避けれても後方にとんでもない被害が出ていたから、良しとするか。

 

レイガ『でも身体が起き上がらねえ!』

 

ダメージが予想以上にあったから、起き上がることができない。その間にもフレイズゴモラは僕に止めを刺そうと向かってくる。

 

ピコーン!ピコーン!

バエ「これは⁉ デッカーのカラータイマーが点滅しだした! これはマズイ!」

ミリム「なんとかするのだ。ハエ」

バエ「ぐえッ! ミリム様。どうするもなにも私実況者なので」

 

なんか、あっちではミリムがバエの首絞めて、ぶんぶん振り回しているけど、

 

レイガ『そんなことより、これ結構ヤバいかも・・・』

 

なんとか起き上がろうとするが、身体に力が入らない。万事休すか・・・

 

と、思っていたら

 

gooooooo!

 

懐かしい鳴き声と共に、フレイズゴモラに突進する赤いクワガタムシが見えた。フレイズゴモラは突然の攻撃に対応できず、後ろに倒れ込んだ。

 

レイガ『クワゴン⁉』

 

突如現れたのは僕の星の守護神『シュゴッド』の一体、クワガタムシをモデルとした『ゴッドクワガタ』、愛称『クワゴン』。クワゴンはそのまま空を飛びながら僕の方へ向かってきて、傍で着地する。

 

レイガ『クワゴン、どうしてここに?』

goooooo!

レイガ『え⁉ 僕がピンチだから助けに来たって?・・・ありがとうクワゴン。一緒に戦おう』

 

僕は分身を一人だし、クワゴンのコックピットに乗る。

 

レイガ「いくよ! クワゴン!」

goooo!

 

僕はギアトリンガーで一本の剣を召喚する。

 

『ババババーン! キングオージャー!』

『オージャカリバー!』

 

クワゴンたちシュゴッドと一緒に戦うために必要な剣『オージャカリバー』。鍔にはクワガタの顎、トンボの腹、カマキリの鎌、蝶の羽、ハチの腹の五つのスイッチが取り付けられている。

僕はその中のひとつ、クワガタの顎を手前に引く。

 

『♪ クワガタ!!』

 

待機音がなり響く、次にトンボのハンドルを180°回転させる。

 

『♪』

 

次にカマキリのハンドルをグリップ側に引く。

 

『♪』

 

次に蝶のスイッチを中に押し込む。

 

『♪』

 

次にハチのスイッチを押す。

 

『♪』

 

最後にもう一度クワガタの顎を引く。

 

「王鎧武装!」

『♪』

 

僕は琥珀のようなバリア『シュゴッドソウルフィールド』に包まれ、僕に向かってクワゴンのエネルギー体が僕に向かって飛んでくる。

 

『You are the KING, You are the, You are the KING! クワガタオージャー!

 

クワゴンのエネルギー体が琥珀を壊すと、僕は赤い鎧『クワガタオージャー』へと変身する。

 

「行くぞ! クワゴン!」

 

僕は剣のクワガタの顎を再び引く。

 

『シュゴッード!』

 

すると、空に門が現れ、扉が開かれると、トンボ、カマキリ、チョウ、ハチ、テントウムシ(二体)、クモ(二体)、アリ。合計九体のシュゴッドが出現する。

 

「みんな行くよ! 降臨せよ! キングオージャー!

 

僕の掛け声と共に十体のシュゴッドが空に舞う。

 

ゴッドクワガタ!』

 

クワゴンの身体がボディに変形する。

 

ゴッドカマキリ!』

 

ゴッドカマキリが足に変形し、クワゴンの右足に合体する。

 

『ゴッドハチ!』

 

ゴッドハチが足に変形し、クワゴンの左足に合体する。

 

ゴッドテントウ!

 

ゴッドテントウはクワゴンの両腕に合体する。

 

ゴッドパピオン!』

 

ゴッドパピオンは羽と腹に分離し、腹がクワゴンの頭部へと合体する。

 

ゴッドトンボ!』

 

ゴッドトンボも分離し、頭部と羽がクワゴンの背中に合体する。

 

ゴッドクモ!』

 

ゴッドクモ二体はクワゴンの胸部に合体する。

 

『ゴッドアント!』

 

ゴッドアントとゴッドパピオンの羽、ゴッドトンボの腹が合体し、巨大な剣『昆虫剣シュゴッドソード』へとなる。

 

『KING! KING! KING-OHGER!』

 

守護神『キングオージャー』が降臨する。

 

バエ「これは⁉ まさかのキングオージャーがでてきました。これは予想外! 二体巨人。夢のコラボだ!」

 

フレイズゴモラに向かい合うキングオージャー。先に攻撃を仕掛けたのはキングオージャーだ。

 

レイガ「行くぞ!」

 

シュゴッドソードを構え、フレイズゴモラに向かって走る。

フレイズゴモラも尻尾を振り回して、攻撃してくる。

 

レイガ「ハアァ!」

 

シュゴッドソードとフレイズゴモラの尻尾がぶつかり合う。

 

レイガ「これでどうだ!」

 

僕は尻尾の攻撃を受け止めながら、右足でキックする。

それに連動して、キングオージャーの右足でもあるゴッドカマキリがフレイズゴモラの尻尾を斬り裂く。

 

gyaaaaaaaaaa!

 

尻尾を斬られて、咆哮するフレイズゴモラ。その隙にシュゴッドソードで腹部を斬り裂く。

 

gyaaaaaaaaaa!

 

再び咆哮するフレイズゴモラ。しかし先ほどの隙を今度は見せずすぐにこちらにタックルをしてくる。

 

レイガ「ぐッ⁉」

 

シュゴッドソードのパピオンの羽で防御する。少し後退することになったが、さきほどよりもパワーが少ない?

もしかして尻尾と腹部を斬られたからか?

フレイズゴモラはタックルを終えると、後退する。すると、胸にある核が光輝くと、斬られた尻尾と腹部が再生していく。

 

レイガ「そりゃ、フレイズだから再生するよね」

 

でも、見た目は変わってもフレイズはフレイズ。こいつの弱点も核なのはわかるが、さっきまでのゴリラより分厚い壁をどうするれば・・・

 

レイガ「って考える時間もくれないのね!」

 

フレイズゴモラは再び核を分離して、角にエネルギーを溜めている。さっきの荷電粒子砲と超振動波の合わせ技か⁉

 

レイガ(デッカー)『二度も同じ技食らうかよ!』

 

デッカー(僕B)が隣にくる。

 

 

 

 

 

〈デッカーサイド〉

 

僕はウルトラマンディーフラッシャーのトリガーを押し、ホルダーから一枚のカードを取り出し、セットする。

 

『♪ ウルトラディメンション!』

 

レバーを引く。

 

レイガ「飛び出せ・・・ミラクル! デッカー!」

『ウルトラマンデッカー! ミラクルタイプ!』

 

赤い装甲が青い装甲へと変わり、奇跡の力『ウルトラマンデッカーミラクルタイプ』へとチェンジする。

 

バエ「おっとここでデッカーが姿を変え、青い巨人『ウルトラマンデッカーミラクルタイプ』へと変わった!」

デッカー「デェア!」

gyaaaaaaaaaaaaa!

 

フレイズゴモラの荷電粒子砲+超振動波が襲い掛かって来る。

 

デッカー「デェア!」

 

その攻撃をミラクルタイプの必殺技『レアリュートアブソーブ』で、プロテクター型の異空間ゲートを開き、エネルギーを全吸収する。

 

レイガ(デッカー)『どんなもんだ!』

レイガ(クワガタオージャー)「行くよ! デッカー」

レイガ(デッカー)『ああ』

 

デッカーはデュアルソードを、キングオージャーはシュゴッドソードを構え、フレイズゴモラに向かって走る。

 

gyaaaaaaaaa!

 

フレイズゴモラも二体に向け咆哮し、再生した尻尾で攻撃してきた。

それを二体の巨人はジャンプして避け、上から下へ斬りつける。

 

gyaaaa!

レイガ(デッカー)『時間もないんだ。これで決める!』

『ウルトラマンデッカー! フラッシュタイプ!』

 

ミラクルタイプからフラッシュタイプへタイプチェンジし、デュアルキーを起動して、デュアルソードに装填する。

 

デュアルスタンバイ! レディ!

 

三枚のディメンションカードを取り出り、一枚ずつリードする。

 

『デッカーフラッシュ! デッカーストロング! デッカーミラクル! ウルトラコンボ!』

 

剣先をフレイズゴモラに向け、核に向け突進する。姿がフラッシュタイプ→ストロングタイプ→ミラクルタイプへと変え、最後にフラッシュタイプへと戻る。

 

『デュアル! トリプルデッカースクラム!

 

デッカーの必殺技がフレイズゴモラの腹部を貫通する。

そこに追撃、五体のシュゴッドが発光し、上空から青色のエネルギーを纏ったシュゴッドソードを振り下ろすキングオージャー。

 

レイガ(クワガタオージャー)「捻り潰してくれるわー!」

『KING-OHGER FINISH!』

 

キングオージャーの必殺技がフレイズゴモラの核はもちろん、胴体までも真っ二つに斬られ、フレイズゴモラは身体を崩壊させていった。

 

バエ「決着! 勝者! ウルトラマンデッカー&キングオージャー!」

 

 

 

 

 

〈レイドサイド〉

 

レイド「さっすがレイガ! あの程度のおもちゃじゃ楽勝か」

 

残念そうにフレイズゴモラの亡骸を眺める。まあ実際は倒された怪獣(おもちゃ)になんの感情も向けてないけど。

 

レイド「まあまた新しいおもちゃを作るか。次はどの子にしようか~」

?「そこまでだ」

レイド「ん?」

 

後ろを振り向いたら、レイガのところの魔法使い君がいた。

 

レイド「たーしーかーレインだっけ? なんでここにって、そうかレイガか」

レイン「そういうことだ」

 

そいつは僕に向かって何本もの剣を飛ばしてくる。

 

レイド「危ないな~。少しは手加減しtくれてもいいんじゃない?」

レイン「あんたに手加減するほど余裕ないんでね」

 

一本の剣が迫って来るが、僕はそれをジャンプして避けて、木の枝に着地する。

 

レイド「よっと、しばらくは滞在するから、レイガにそう伝えておいてね。そんじゃまたね」

レイン「待て!」

 

そのまま姿を消したレイド。

 

ノア「まさか彼までいるとはねえ」

 

そんな光景を遠くから見ていたのはウルトラマンノアだった。

 

「レイブラッドの意思か、それとも彼の意思か。どちらにしてもこれはもう休暇どころじゃないね」

 

レイド。すべての怪獣を操るほどの力をもつ全知全能の宇宙人、『レイブラッド星人』。彼はその子孫であり、誰よりも濃く彼の力を受け継いでいる。彼の野望とはいったい?

 

 

 

 

 

〈レイガサイド〉

 

ようやくひと段落がついたので、変身と分身も解いて、地面に倒れる。

 

レイガ「結構しんどかったな。みんなもありがとう」

 

お礼を言うと、キングオージャーは合体を分離し、みんな来た時と同じ門をくぐって帰っていた。

みんなの帰りを見ていると別の方向から豹騎士が近づいてきた。胸部のハッチを開けてエンデが飛び降りてくる。

 

エンデ「大丈夫! レイガ」

レイガ「ああ、大丈夫。こんなの慣れてるから。それより豹騎士の腕、派手に壊れたな」

エンデ「まあね。そこはごめん」

レイガ「いいよ、別に。それよりあの時なにしたんだ?」

エンデ「魔力の音・・・というか振動をね、一点集中させて直接撃ち込もうとしたんだけど、その前に腕が吹っ飛んじゃったんだよ。加減を間違えた」

 

なるほど、振動か・・・それなら納得。でもあんなの何度もしたら豹騎士が持たないな。もっと耐久面を改善するべきかな?

そんなことを思いながら、豹騎士を見上げたそのとき、空に妙な感覚を感じた。なんだ?

 

エンデ「・・・玲我。ちょっとマズイことになりそうだよ・・・」

 

いつの間にか隣に来て、同じように空を睨みつけていたエンデが口を開く。

 

レイガ「・・・さっきまでのことでも充分マズイ状況だったけど、まさか上級種のおかわり?」

エンデ「上級種じゃないよ。あれは・・・来る」

 

上級種が現れた時よりも大きい破壊音が辺りに響き、空が砕け散る。

空間の裂け目から飛び出したそれは、地上へと優雅に降り立った。

額から臍のあたりまで、身体の前面以外が水晶のような結晶で覆われた「人型」。

目は赤く、長い髪もバキバキに結晶化している。膨らんだ胸と身体つきからして女性型なのだろうか。胸は左右の脇から結晶が登頂部までを覆っている。大きさは僕ら人間と変わらない。

 

レイガ「・・・本で見たけど、まさか実在するのかよ。エンデあれって・・・」

エンデ「上級種より上のフレイズ・・・支配種だよ」

レイガ「・・・支配種」

 

辺りを見回し、そいつの赤い目をこちらへと向かれた。

 

?「#om@e€h@……*e€nd#e!」

エンデ「ちぇっ。よりにもよって出てきたのが彼女とはね・・・」

 

なんて言ったかわからないが、どうやらエンデの知り合い?、か。

苦々しく笑いを浮かべたエンデへと、フレイズの女は一瞬で飛びかかるように接近し、その結晶化した拳をあり得ない速度で叩きつけた。

その拳をエンデが右手で受け止める。今のでこいつが上級種よりも圧倒的に強いことが分かった。

 

レイガ「エンデの知り合い?」

エンデ「まあね。だけど仲は良くないんで、退いてはくれないと思うよ」

 

それは見ればわかる。だってあんなに顔に出てるんだよ! 目吊り上がってるし、どうみても怒ってますよね⁉

 

?「#k∋#is@m@$! o¥uwo*d◎okΩo≒hey+@tΣt@!」

エンデ「いや、僕に聞かれても」

 

相変わらず女の話す言葉がまったくわからない。

エンデに掴まれていた拳を振り払うと、フレイズの女は後ろに飛んで距離を取り、大きく口を開く。

口の中に光の粒子が集まり、眩い光が煌めき始める。

え⁉ うそでしょ

次の瞬間、エンデ目掛けて上級種よりも凄まじい粒子砲が爆発的な威力をもって放たれた。

 

レイガ「くッ⁉ 『鉄壁』!」

 

突然のことに、咄嗟にエナジーアイテムの『反射』の上位アイテム『鉄壁』を発動した。

粒子砲を空へと跳ね返すことができたが、反動で腕が痺れる。

 

レイガ「ッ⁉ なんつー威力だよ⁉」

 

女は仕留め損なったとわかると、今度は右手を剣のように変化させ、斬りかかってくる。

それをエンデがかわしながら、女の手首を掴み、なんとか動きを止めた。

 

エンデ「玲我、悪いけどこれで失礼するよ。豹騎士は後日取りに行くから修理をよろしく」

レイガ「はあ⁉ おい、ちょっと」

 

フレイズの女を掴まえたまま、エンデの足下がゆっくりと霧のように消えていく。エンデに巻き込まれるように、同じくフレイズの女もその場から消えていった。

 

レイガ「・・・あのバカ・・・」

 

僕は二人が消えた足元へ行き、胸に手を当てる。

 

レイガ「第一神門 解放!」



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桃龍共闘

長らくお待たせして申し訳ございませんでした。
諸事情で中々書くことができませんでした。


〈エンデサイド〉

 

まさか彼女が現れるとはね。よりにもよって、「王」の側近の中で一番僕を恨んでいる彼女が目の前に現れるとは、まったくついてない。

なんとか次元転移で結界の外側・・・次元の狭間へと連れ出したけど、あまりこれは使いたくないところだ。あっちの世界へ戻るための力を取り戻すのに時間がかかるしね。

何もない薄暗い空間の狭間で、僕と彼女は対峙する。相変わらず僕を睨む目付きが鋭い。僕らの間には二人の隔たりを示すかのように、格子のような結界が張り巡らされている。

 

?「結界を抜けて行った先行部隊の数に比べて、生きている人間どもが多いと思ったら・・・貴様の仕業か、エンデミュオン!」

エンデ「まあ、間違っちゃいないけどね。君らに出て来られると厄介だからさ、片っ端から潰してたけど。支配種である君が抜けられるようになったんじゃ、結界の崩壊は時間の問題かもしれないね」

 

と言ったって、そんな簡単に抜けられるわけじゃないだろうけど。世界へ通じる綻びを見つけるのだって大変だからね。

 

?「まあいい。貴様には聞きたいことが山ほどある。「王」はどこにいる。知っているんだろう!」

エンデ「なんども言ってるけど知らないって。あの世界のどこかにいるのは確かだろうけどさ。だいたい向こうは君らに会いたいとは思ってないと思うよ?」

?「黙れ! 貴様にそそのかされなければ「王」が狂うこともなかった! 全ての元凶が偉そうに抜かすな!」

 

そそのかすとか・・・人聞きの悪い。これは本人が決めたことだし、僕はそれを見守っているに過ぎない。まあ、かなり手助けしてる自覚はあるけど。

 

エンデ「一応聞くけど・・・この世界から退散する気はない?」

?「ふざけるな! 我らの目的は「王」を取り戻すこと。引き下がるわけにはいかん!」

エンデ「取り戻す・・・ねえ。「取り込む」の間違いじゃないの?」

 

僕の言葉に憎々しげな目を向けて、彼女・・・ネイが怒りと共に口を開く。

 

ネイ「あいつらと一緒にするな・・・! 私たちは「王」の力が欲しいのではない。「王」が必要なのだ!」

 

フレイズたちは「王」を探し求めている。が中には自らが「王」にならんと野望を抱く者もいることを僕は知っている。彼女は違うらしいが、フレイズの「王」として引き戻そうとしている以上、僕とは相容れない。

 

エンデ「なんにしろ放っておいて欲しいね。僕もあの世界がけっこう気に入っているんだ。変わった友達もできたしね」

 

光神玲我。まさか世界を旅して神、それもあの『光の超神』に出会う日がくるとはね。そんで友達にもなったし、本当人生なにが起こるかわからないね。

そういえば彼が「姉さん」とか呼んでいたあの女性も異常だったな。まさか同じ神様だったりして。

・・・できるなら彼と「王」を会わせてやりたいくらいだ。

 

ネイ「あの世界に生きる人間どもを根絶やしにしても「王」を取り戻す。貴様が何をしようともだ」

エンデ「どうかな。僕なんかよりも手強いやつがいるかもよ?」

ネイ「あの世界の人間どもに我らを止める力があるのか?」

エンデ「事実、上級種は倒されているだろう?」

ネイ「フン、貴様が余計な入れ知恵でもしたのだろう。この邪魔な結界がなければ一気に殲滅してやるものを!」

 

ガッ、と闇の中でネイが結界を叩く。

今現在、同じ次元の狭間でも、僕がいるのは結界の内側。彼女は外側。僕のように次元転移ができない彼女たちは、結界の隙間からあっちの世界へとすり抜けることはできない。偶然に出現する綻びを見つけ、飛び込むしかないのだ。

これでしばらくは時間が稼げるだろう。こうしてる間にも、他の支配種が結界を抜けようとしているかもしれないが。

 

エンデ「前にも聞いたけど、僕に協力する気は・・・」

ネイ「無い! リセのように丸め込めると思うなよ!」

エンデ「それは残念。彼女も会いたがっただろうに」

ネイ「・・・リセは元気なのか?」

エンデ「ああ」

 

こうしてる間にも彼女は僕の帰還を待っているだろう。今回は少し帰るのが遅くなりそうだが。まあ、あの子なら平気だろう。

そんなことを思っていると、少しだけ結界の隙間に綻びが現れた。

 

エンデ「くッ! こんな時に!」

 

その綻びをすぐに見つけた彼女は、小さな穴に腕を通し、穴を一瞬だけ大きく広げ、こちら側。結界の内側に潜り込んでくる。

 

ネイ「お前の運も尽きたようだな、エンデミュオン!」

 

このままじゃ彼女は僕を倒して、あっちの世界に侵入するかもしれない。

 

エンデ「しょうがないか」

 

一つ方法を思いついたが、正直やりたくない。・・・彼女と一緒に結界の外側に飛び込むこと。ただこれをすると、あっちの世界に帰るためのエネルギーが二倍必要になる。

 

エンデ「・・・しばらく会えないと思うけど、そっちは任せたよ・・・玲我」

 

 

 

 

 

レイガ「そういうのは面と向かって言えよ!」

エンデ「え⁉」

 

突然の怒鳴り声に驚く。声が聞こえた方、後方を振り向く。すると

 

デスシウムスラッシュ!

 

なにも無い空間に突如黒い穴が広がり、そこから

 

レイガ「エンデ!」

エンデ「ええーーー!」

 

僕の友達、光の超神見習いの玲我がやってきた。

 

 

 

 

 

 

〈レイガサイド〉

数分前

 

レイガ「第一神門 解放!」

 

胸の中にある枷を一つ外す。普段から力をセーブするために、僕自身に枷をつけている。全部で5段回まである。

何年ぶりかの最初の枷を解く。

 

レイガ「さてと」

 

第一の門は僕自身の身体能力の解放と、武器の使用権限の解放。身体能力は通常の二割から五割へと増える。まあこれはおまけで、本命は武器の使用権限。僕が使う武器の中には惑星一つを簡単に破壊するほどの武器が何個かあり、少しでも加減を間違えたら、大惨事になるので、いつもは封印している。

今回はそのうちの一本を使う。

 

レイガ「よっと、久しぶり、べリアロク」

べリアロク『ふん! しばらく何も斬れずイライラしていたところだ』

 

今僕と話をしているこの剣『幻界魔剣べリアロク』。ウルトラマンベリアルの顔をした剣? って言い方で合ってるかな? でもベリアルさんとは別に関係ないらしい。

たぶん、おそらく。

 

レイガ「早速で悪いけど空間の結界を斬るのを手伝って」

べリアロク『面白い。斬ってやろう』

 

僕はべリアロクの剣先を下にして持ち、レバーを三回押す。

 

べリアロク『デスシウムスラッシュ!

 

剣を持ち換えて、エンデたちが消えた場所に振り下ろす。

すると、空間に裂け目ができ、目の前にはエンデとさっきの女フレイズの姿が見えた。

 

エンデ「・・・しばらく会えないと思うけど、そっちは任せたよ・・・玲我」

レイガ「そういうのは面と向かって言えよ!」

エンデ「え⁉」

 

裂け目の中に入り込み、エンデとフレイズの間に降り立つ。

 

レイガ「エンデ!」

エンデ「ええ⁉」

 

時間は戻り、現在。

 

レイガ「ったく一人で、解決しようとしやがって」

エンデ「どうしてここに?」

レイガ「そんなことはどうでもいい。それより、あとで一発殴らせろ!」

エンデ「えっ⁉ それは嫌だよ!」

 

そんな会話をしていると、女フレイズはこちらに攻撃をしてくる。

 

レイガ「なんか不機嫌だし、エンデ! お前一体この女性になにしたんだよ!」

エンデ「なにもしてないよ」

レイガ「嘘だろ! じゃあなんでこんなに怒ってるんだ!」

ネイ「貴様! 一体何者だ! ただの人間がここに入ることなんてできるはずがない」

エンデ「彼は特殊なんだよ」

レイガ「なに? 僕の話?」

 

なんか僕の話になったっぽいけど、以前攻撃の手を緩めないフレイズさん。

 

レイガ「エンデ! どうにか彼女を落ち着かせる方法ないの!」

エンデ「ないね! 彼女を落ち着かせるには「王」が必要だ!」

レイガ「嘘だろ!」

 

「王」って言ったって今いないじゃん!

 

エンデ「あとは彼女を結界の外側に送るしかないけど、この通り彼女結構強いから」

 

結界の外側って、向こうの方か。

 

レイガ「ならそのアイデア採用!」

エンデ「でもどうする?」

レイガ「こうするんだよ」

 

僕らは彼女から一旦離れて、僕はドンブラスターを取り出し、アバターギアをセットする。

 

レイガ「アバターチェンジ!」

いよおー! ドンブラコ! ドンモモタロウ!

 

すぐさまドンモモタロウに変身し、右手にザングラソード、左手にべリアロクを持つ。

 

レイガ「ハアッ!」

 

女フレイズに近づき攻撃する。

 

レイガ「エンデ! この前渡した武器今出せる?」

エンデ「えッ⁉ 出せるけど」

 

エンデは一枚のガラス板を取り出す。

 

レイガ「じゃあすぐに出して!」

エンデ「・・・わかった」

 

エンデが取り出したガラス板を割ると、一本の黒い戟がエンデの手の中に収まる。

 

レイガ「よし、武器の権限を今から「ウルトラマンレイガ」から「エンデ」に変更」

 

僕がそう言うと、さっきまで黒かった戟が赤色と金色に変わる。

 

之戟!』

エンデ「これって・・・」

レイガ「僕からの餞別。あとこれ」

 

僕は驚いているエンデをよそに一枚のアバターギアを手渡す。

 

レイガ「これをそこの刃の根元にセットして」

エンデ「刃の根元って・・・ここ?」

ネイ「なんのつもりだ! 人間!」

レイガ「悪いけど、邪魔はさせないよ。何言ってるかわからないけど!」

 

エンデはそのまま根元のギアテーブルにアバターギアをセットする。

 

『♪ ドラ! ドラ! ドラゴン! ドラ! ドラ! ドラゴン!

 

音声と共に上空に畳を乗せた雲が現れ、エンデのところへ向かう。

 

エンデ「え⁉ ちょ、ちょっと玲我! これどうなってるの⁉」

レイガ「説明はあと、早くそこのトリガーを押して!」

 

その間にもこちらに攻撃してくる女フレイズ。本当ならべリアロクを使って斬りたいけど、友達の知り合い?を殺すのは無理だ。

 

エンデ「ああ、もうわかったよ!」

 

そう言って、エンデがトリガーを押す。

同時に畳が開かれ、中からギアが飛び出すと、エンデの身体を覆うように降りてくる。

 

超一龍! アチョーーー!

 

エンデの姿が龍を彷彿とさせる金の装甲と赤い装飾『ドンドラゴクウ』へと変わる。

 

エンデ「えッ⁉ なにこれ⁉」

ネイ「なんだその姿はエンデミュオン!」

エンデ「僕の方が聞きたいよ!」

 

なんか二人で会話してるけど、一向にわからん。

 

レイガ「よっと!」

ネイ「ぐッ!」

 

よそ見しているフレイズの腹部を蹴り上げて、後退する。

 

エンデ「玲我! これなに! 説明してほしいけど!」

レイガ「だから説明はあとでいくらでもしてやるから、今は彼女を結界の外側まで誘導するのが優先」

エンデ「わかったけど、本当にあとで教えてね」

 

女フレイズが右腕を剣に変えて攻撃してくる。

しかし、

 

ネイ「ッ⁉ なに⁉」

エンデ「嘘⁉」

レイガ「いやなんでお前も驚いているんだよ!」

 

エンデが龍虎之戟の持ち手の部分で攻撃を防いだ。てか防いだ本人が驚いてどうする。

 

レイガ「おりゃあ!」

ネイ「ッ⁉」

 

エンデの背中から飛び越えて、フレイズに斬りかかる。僕の攻撃に瞬時に反応したフレイズはもう片方の腕も剣に変形して、攻撃を防ぐ。

が、その一瞬の隙に

 

エンデ「せいッ!」

 

エンデはフレイズの剣を折り、その勢いで女フレイズの腹部に傷をつける。エンデの攻撃を喰らって怯んだフレイズに畳みかけるように、ザングラソードとべリアロクを振り下ろす。

 

レイガ「ナイス! エンデ!」

ネイ「ぐッ⁉」

 

後ろに下がるフレイズ。すると、体内の核が光り輝き、すぐさま傷ついた箇所が再生する。

 

レイガ「さすが支配種。再生力も上級種より上か」

エンデ「いやそれより! 玲我なんなのこの武器!」

 

僕が冷静に分析していると隣でエンデが龍虎之戟を指差ししながら話してくる。

 

レイガ「何って? 武器だけど?・・・もしかして戟って初めて?」

エンデ「そんなことじゃないよ! 普通に支配種の攻撃に耐えれるし、傷つけるし、なにこれ神器⁉」

レイガ「いや~神器だったらもっとすごいからね」

べリアロク『おい! 俺様にも斬らせろ!』

レイガ「はいはい。あとでいくらで斬らせるから、今は我慢してください」

エンデ「・・・さっきから思っていたけど、その剣・・・しゃべってない?」

レイガ「ん? しゃべってるけどそれが?」

エンデ「それがって・・・なんだろう。たまに玲我って常識というか世間を知らないところあるよね?」

レイガ「ん? そうか?」

 

そんな会話の中、再生を終えたフレイズがこちらを睨む。

 

ネイ「どういうわけが知らぬが、エンデミュオン! それに人間! 私の邪魔をするならここで殺す!」

レイガ「やれるもんならやってみろよ!・・・返答これで合ってる? エンデ」

エンデ「一応・・・」

 

よかった! もし「見事な連携だった」、なんて言って返答がこれなら恥ずかしかった。

フレイズは今度は腕を大剣に変え、こちらへ向け走って来る。

 

レイガ「行くぞ! エンデ!」

エンデ「ああ」

 

こちらも武器を構えて走る。

 

ネイ「ハアッ!」

レイガ「とりゃあ!」

 

女フレイズは大剣を横に振ってくる。僕はその攻撃を二本の剣で受け止め、その隙にエンデが龍虎之戟で攻撃する。

 

ネイ「二度も同じ手を喰らうか!」

 

だが女フレイズは脚を剣に変形させ、攻撃を受け止める。

 

エンデ「二度も同じ攻撃をすると思うかい?」

 

エンデは龍虎之戟をわざと引き、片足で立っている女フレイズの態勢を崩す。

大剣もバランスがとれず、地面に突き刺さる。

その隙に僕とエンデで女フレイズの腹部を斬る。

 

レイガ&エンデ「「ハアッ!」」

ネイ「なッ⁉」

 

大きく後退する女フレイズ。しかし、すぐに口を開くと荷電粒子砲を放ってくる。

 

レイガ「させるかよ! べリアロク!」

 

左手に持っているべリアロクを前に掲げる。すると、べリアロクの口が開き、荷電粒子砲が吸い込まれる。

 

ネイ「なに⁉」

レイガ「うっし! ありがとうべリアロク」

べリアロク『ふん! こんなものより俺様にあいつを斬らせろ!』

レイガ「わかったから少し落ち着いて」

 

これだからべリアロクは使いたくなかったんだよ。出すと何か斬るまで怒るし。

 

レイガ「とりあえずあいつの動きを止めるよ」

 

僕はべリアロクのレバーを長押しする。

 

べリアロク『フン! デスシウムクロォォォォ!!

 

トリガーを押し、剣先を地面に突き立てる。

地面から蠢く爪のようなエフェクトが現れ、フレイズの足元を拘束する。

 

ネイ「ッ⁉ なに⁉」

レイガ「エンデ! 結界に穴開けるから、二人で穴まで飛ばすぞ!」

エンデ「え⁉ 穴・・・どうやって?」

レイガ「こうやって」

 

再びべリアロクのレバーを長押しする。今度は三回

 

べリアロク『フン! ヌゥア! ハァッ! デスシウムスラァァァァッシュ!

 

Zを描く剣を振る。すると、その斬撃がフレイズの後ろで止まり、大きな穴を生み出す。

 

エンデ「・・・嘘でしょ」

レイガ「数分で閉じるように斬ったから。最後の仕上げだ。行くぞエンデ!」

エンデ「う、うん・・・で、どうやって」

レイガ「そこのトリガーを長押しして」

エンデ「ここ?」

 

龍虎之戟の柄部分のトリガーを長押しするエンデ

 

ドラゴン! 奥義ィィ!

エンデ「なにこれ⁉ ちょっと玲我!」

レイガ「僕が合図したらトリガーを押して」

 

エンデをよそに僕はザングラソードのギアディスクを三回回す。

 

どん! どん! どん! どんぶらこぉ!

レイガ「桃代無敵・アバター乱舞!」

 

ザングラソードの刀身が七色に光り輝く。

 

レイガ「今だ! エンデ」

エンデ「うん」

 

互いの武器のトリガーを押す。七色の光と龍のエフェクトがフレイズに向かう。

 

『必殺奥義! モモタロ斬!

激龍之舞! ア~タタタタッ!

ネイ「なにッ⁉」

 

同時に拘束から解放されたフレイズ。しかし逃げる時間もなく攻撃を喰らい、後方の穴に吸い込まれるように吹き飛ばされる。

 

『再见・・』

ネイ「くッ! 覚えていろ! 人間! エンデミュオン!」

 

最後になんか言ってたけど・・・捨て台詞ってやつ?

穴が閉じるのを見終わると、元の姿に戻る。

 

レイガ「あ~疲れた」

エンデ「本当、別のことで疲れたよ」

 

地面に座り込む僕ら。

 

エンデ「・・・彼女のことは聞かないの?」

レイガ「ん。今は別にいいや。またいつか聞かせてくれよ」

エンデ「・・・わかったよ。まあ僕も色々聞きたいこといっぱいあるし」

レイガ「それじゃあとりあえずここから出て色々話すか。べリアロク、もう一回お願い」

べリアロク『まあいいだろう』

 

立ち上がってべリアロクを構える。

 

レイガ「帰るぞエンデ」

エンデ「うん」



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後日談 前編

前編と後編で分けます


〈レイガサイド〉

 

レイガ「つ~か~れ~た~

 

あれから一週間経ってようやく落ち着くことができた。

突然の支配種の出現。中継を見ていた各国の国王から質問の嵐が飛んできたが、唯一説明できるエンデは帰ってきて、すぐどっか行きやがった。あのやろー今度会ったらマジで殴ってやる!

とにかくわかっていることだけ話して、どうにか収まった。

被害に関してはロードメアの被害もユーロンと比べると、遥かに少ない。まあ、山の登頂がひとつ吹き飛んだし、上級種の拡散粒子砲で戦場は完全に荒地となってしまったし、あのゴモラもどきのせいで地面に大きな穴が開いたけど。

こちらの被害としても、死者はいなかったけど、重傷者はかなり多かった。

上級種の陸津波でかなりの負傷者が出たのだ。本陣へ転送後に、スゥやリーンが回復魔法を使い、フローラが薬で手当をしたので、すぐに良くはなったので良かった。

ロードメアの方では、フレイズより被害が出たゴーレモンもどきの方でまたひと悶着あったらしい。

責任者でもある、ハゲ・・・じゃなくてボーマン博士は鉱山送り。10年以上の強制労働だそうだ。

同じく全州総督、フォルク・ラジールもほかの州総督たちから糾弾されたらしく、今では丘陵州総督、オードリー・レリバンさんがロードメアの全州総督に選ばれた。抜け目がない。

就任してからすぐに武装ゴーレムの開発中止。他の州総督らと話し合い、満場一致で東西同盟への参加を決めた。一番の理由はフレームギアを使って瓦礫の撤去をしたいらしい。もちろん喜んで貸した。まあ操縦できる人、まだロードメアにいないからウチの騎士団を派遣したけど。

今で撤去も終わり、街は穏やかさを取り戻している。

今でも思い出すよ。あの忙しかった一週間前を

 

 

 

 

 

一日目

 

ロゼッタ「マスター、ちょっとよろしいでありまスか?」

レイガ「ん?」

 

『格納庫』でエンデの豹騎士を修理していたロゼッタに呼び止められた。てかあいつこれ治してから持って帰れよ!

 

ロゼッタ「実は先日の戦いでちょっと妙なことが」

レイガ「妙なこと?」

 

あの日、ロゼッタとモニカには予備機の整備・調整を担当してもらっていた。

と、同時に実はフレイズたちの観測・調査・行動記録も担当してもらっていた。正確には観測の方は担当補佐であるのだが。パルシェ一人に任せるのは・・・不安だった。あの子筋金入りのドジっ娘だからな。

 

ロゼッタ「今回の戦いで大破、中破し、本陣へと転送された人数は36名。そして、戦闘終了後、戦場でマスターが回収された壊れたフレームギアが35機。1機足りないのでありまス」

レイガ「・・・うそ?」

ロゼッタ「正確には頭部、胸部メインユニット、左上腕部、右全脚部とバラバラでありまスが。全部重騎士の部品でありまスね」

レイガ「バラバラに・・・」

ロゼッタ「パーツごとにバラバラということから見て、壊れたフレームギアを他の誰かが回収したのではないかと。これを見てください」

 

ロゼッタがガレージの隅に置いてあったモニターの電源を入れる。すると先週の戦いを映した上空映像が流れ始めた。まだ上級種が出現する前だな。これがどうかしたのか?

 

ロゼッタ「ここでありまス」

 

ピッ、とロゼッタが映像を止めた。画面の端に壊れたフレームギアの胴体が映っている。

 

ロゼッタが一時停止を解除してまた映像が流れ始める。すると、そこにあった壊れたフレームギアの胴体が消えてしまっていた。

 

レイガ「・・・これって収納魔法?」

ロゼッタ「いえ、これを魔力感応画像に切り替えると・・・」

レイガ「あ」

 

数人の人間がフレームギアの胴体を運び出そうとしている姿が映し出された。

 

ロゼッタ「どうやら姿を消す魔法かアーティファクトを使っているようでありまス。魔力感知にはバッチリ引っかかっているでありまスが。フレームギアまでバッチリ映っているでありまスな」

レイガ「てか、普通に泥棒じゃん。ったくようやく落ち着けると思ったのに、ハクちゃん検索できる?」

ハクちゃん『検索中・・・ダメです。おそらく何かしらの妨害をかけた中にあると思います。お母さんに頼みますか?』

レイガ「いや、それならいいよ。それにどうせ、フレームギアを作れるとは思えないし」

ロゼッタ「そうでありまス。そりゃ時間をかければ壊れたやつを元の重騎士に組み立てるぐらいはできるかもしれないでありまスが、量産は不可能でありまスよ」

 

だよね。だってあれエーテルリキッドないと動かないし。

 

ロゼッタ「ただ、フレームギアに使われている技術は応用される恐れがあるかと。粗悪な類似品なら作られる可能性があるかもでありまス」

レイガ「結局、面倒なことになるのか~」

 

溜め息をつくと、同じく竜騎士の整備をしていたモニカが竜騎士の肩に跨ったまま、上から口を挟んできた。

 

モニカ「一応各国には盗まれたってことを伝えておいた方がいいんじゃねえのか? ニセモノの重騎士が暴れまわるなんてことになって、濡れ衣を被せられたらたまったもんじゃないゼ?」

レイガ「それもそうだね。にしてもパチモンか~」

ロゼッタ「それと八重殿とヒルダ殿の機体でありまスが、今のままで進めるでありまスか?」

レイガ「そうだね。特に変更はない。八重は特化型でいいと思うし。器用な方じゃないしな。ヒルダの方もあのままで大丈夫だと思うよ」

ロゼッタ「で、ありまスか。では、そのあとは誰の機体を?」

スゥ「わらわじゃ!」

 

『格納庫』のガレージ入口に、仁王立ちになったスゥとその後ろにメイド姿のシェスカが立っていた。

スゥはダッシュしてくると、いきなり僕に抱きついてくる。

 

スゥ「いいかげんわらわにもフレームギアに乗せんか! もうフレームユニットで練習は飽き飽きじゃー!」

 

ぐりぐりと頭を僕の腹に押し付けてくるスゥ。ううん、スゥのかー。

正直スゥの機体のイメージができない。これと言って、戦闘スタイルがあるわけじゃないからな。

 

レイガ「わかった。なにか要望ある? 正直スゥの戦闘スタイルがわからないんだ」

スゥ「とにかく強いのじゃ!」

 

漠然としすぎ!

 

スゥ「あと、クワゴンのような合体がいいのじゃ」

 

あ~キングオージャーのことを言ってるのか。まあ確かに10体も合体してるからね。

 

ロゼッタ「なんとかなると思うでありまスよ。『蔵』に確かちょうどいいのがあったかと」

レイガ「まじ! じゃあ、物は試しだ。やってみるか」

スゥ「やった! やっぱり玲我は最高の旦那様じゃ!」

 

僕の首に抱きついてきたスゥを受け止めると、唇に軽いキスをされたのでちょっと驚く。そしてそのまま頬ずりまでされてしまう。

・・・おいシェスカ。まさかお前の入り知恵か!

 

 

 

 

 

ユミナ「じゃあ次はスゥのフレームギアを?」

レイガ「うん。基本システムから作るから少しばかり時間がかかるけどね。ユミナのは後になっちゃうけど、ごめんね」

ユミナ「私のは最後の方でもかまいませんよ。その方がいいものができそうですし」

 

今は紅茶を飲みながら、城の小さなサロンで久しぶりにゆっくりとした休憩をとっている。ソファーの横にはユミナが座り、同じようにくつろいでいた。

 

ユミナ「久しぶりですね、こういうの」

レイガ「そうだね~最近事件ばっか起きて、全部解決してるから」

ユミナ「そうじゃないですよ。二人っきりだってことです」

 

そう言って、こてん、とユミナは僕の肩に小さな頭を預けてくる。

そういえば二人っきりの時間っていつぶりだろう。

 

ユミナ「こういう時間は貴重なので、思いきり甘えてもいいですか?」

レイガ「遠慮なく」

 

ユミナの方に目を向けると、瞼を閉じて顔を上げてきた。僕はそんな彼女の姿に小さく笑うと、肩に手をやり、ゆっくりと唇を合わせる。

そして唇が静かに離れると、彼女は頬を染めて、笑顔で僕にぎゅうっと抱きついてきた。

 

ユミナ「えへへ。玲我さんを独り占めです」

 

たまにはこんな時間もいいな~

 

ユミナ「最近変なんですよね」

レイガ「変ってなにが?」

ユミナ「私の魔眼って、人の本質というか、善悪を見抜くんですけど。最近、違う能力がたまに出てくる時があって」

レイガ「違う能力・・・って魔眼の?」

ユミナ「はい」

 

ユミナは僕から離れ、うーん、と首を傾げる。

 

ユミナ「玲我さん、「じゃんけん」しましょう」

レイガ「唐突だね。その能力に関係あるの?」

ユミナ「はい。あ、少しだけゆっくりやって下さいね」

レイガ「OK、じゃん、けん、ポイ」

 

負けた。続けてユミナが手を振る。どうやら続けるようだ。

 

ユミナ「じゃん、けん、ポイ」

 

また負けた。その次もその次も、何十回やったかわからないが、全部負けた。

 

レイガ「もしかして人の考えも読めるようになったの?」

ユミナ「考えは読めません。けど、見えるんです。数秒後に玲我さんが何を出すか。ほんのわずかな先のことがボンヤリと視覚として」

 

・・・え⁉ それって見聞色の覇気⁉ いや未来予知なら、上達した見聞色の方か。

にしてもどうして突然・・・いや僕じゃん原因。

そう言えば、妻の何人かは結婚してから覇気使えるのを完全に忘れてた。でもそれでも最初から未来予知できる子なんていなかったはず。

 

ユミナ「それともうひとつ見えるものが」

レイガ「まだあんの⁉」

ユミナ「玲我さんにボンヤリと金色の光が見えることがあるんですよね。花恋お姉様が女性騎士の恋愛相談をしている時にもちょっとだけ見えましたけど。これってなんなんでしょう?」

 

あーそれ「神力」ですー。まさかユミナにも見えるとは少し抑えることにしよう。

 

レイガ「それについてはごめん。今はまだ言えないけど、必ず教えるから」

ユミナ「はい。約束ですよ?」

 

そう言ってまた、こてん、とユミナは頭を預けてくる。

そうだよな。ずっと先延ばししてきたけど、もういい加減言わないといけないよな。

 

ルー「ああーっ! ずるいですわ、ユミナさん! 玲我様を独り占めなんて! 私もお仲間に!」

 

サロンに入ってきたルーが僕らを見るなり、こちらへ足早に向かって来て、ユミナとは反対側の席にぽすんと座った。そしてそのままユミナと同じ様に、ぎゅうっと僕に抱きついてくる。

 

ユミナ「あらら。短い独占時間でした」

 

ユミナが小さく舌を出しておどけて見せる。

あの時のユミナの顔可愛かったな。

 

 

 

 

 

二日目

 

パルシェ「これがフレイズの音の波長っス。こっちが中級種でこっちが上級種っスね。どうやら出現前になると空間を飛び越えても聞こえるみたいっスから、それを利用すれば、だいたいの数とか級種がわかると思うっス」

 

『蔵』のモノリスに浮かぶ映像を操作しながら、パルシェが説明していく。

 

レイガ「出現場所や時間の確定はできる?」

パルシェ「空間の歪みを測定し、その大きさや歪曲率からいつ空間が裂けるのか、予測は立てられるっス。二、三日のズレはありましょうが、そんなに大きくズレることはないと思うっスよ」

 

二、三日か・・・結構なズレだけど、無いよりましか。

 

レイガ「このデータを使ってフレイズの出現を予測するレーダーみたいなものは作れるかな?」

パルシェ「できると思うっスよ。ただ、そんなに広範囲をカバーすることはできないと思うっスけど」

 

 

 

 

 

リオラ「それで私に?」

 

僕はさきほどのデータを城にいたリオラに頼むことにした。

 

レイガ「うん、今ロゼッタの方は新型のフレームギアで手一杯だから」

リオラ「わかりました。これでも博士のサポートを務めてましたので、アる程度の手伝イはできるでしょウ」

レイガ「ありがとう・・・そういえばノエルは?」

リオラ「寝てます」

レイガ「相変わらずだね・・・。ああ、これ、クレアさんが作った弁当。ノエルに渡しといて。リオラの分もあるから」

 

持っていた二つの風呂敷の包みをリオラに渡す。リオラのは普通サイズだが、ノエルのはその五倍はある。八重並みに食べるからな、まあ一番はオーフィスだけど。今朝なんて食べ終えた皿で天井まで届いていたんだから。

 

リオラ「アりがとウござイます。わたくしたちは食べなくても平気なのですが、美味しイ食事はやはり嬉しイですね」

 

風呂敷を受けとってリオラが微笑む。

基本リオラとノエル、それにファムは地上に降りてこないからな。

地上の城へ戻るとちょうど紅玉を連れた桜とユエに出くわした。

あれから一向に彼女の記憶が戻る予兆がない。いつもユエがそばにいるから安心だけど。

 

桜「王様。よかった、探してた」

レイガ「ん? どうかしたのか?」

 

少し慌てた様子で桜が駆け寄ってくる。この子がこんな表情するのは珍しいな。

 

レイガ「ちょ、どうしたの?」

紅玉『病人です』

レイガ「病人?」

 

走る僕らの横を飛んでいた紅玉が桜の代わりに答えた。

 

ユエ「城下を散歩している時に、倒れている人も見つけた。今は『銀月』で休ませてるけど、病気にかかってて、危ない状態」

レイガ「病気って、どんな?」

桜「魔硬病。魔族だけがかかる病気。感染率は高くないけど、接触感染するから魔族は近づかないように言っておいた。発症から一ヶ月以内に死に至る」

 

手を引いて走りながら桜が解説する。やけに詳しくない?

 

レイガ「でもなんで僕を? 病気ならフローラの方に来てもらえば・・・」

桜「魔硬病は状態変化の病。治すことはほぼ不可能。でも王様の魔法なら」

 

確かにコスモスのフルムーンレクトなら大抵の病気を治すことはできる。

走る桜の前に【コネクト】を開き、一気に『銀月』の前に転移する。

従業員のフルールさんに案内されて、三階の一番奥の部屋へと入ると、ベッドの上にその人は横たわっていた。

ボロボロのマントに身を包み、身体のいたるところを包帯でぐるぐる巻きにしていた。包帯のはだけたところの肌は、赤茶けたカサブタのようになっており、剥がれた肌の欠片らしきものが、ベッドのシーツに無数に落ちている。

長い銀髪はざんばらになって痛みまくっているし、顔まで包帯で覆われているのでわからないが、おそらく女性だ。浅い呼吸と共に、小さく上下する大きな胸がそれを肯定している。

それにしても酷いな、これは・・・。剥がれ落ちたところが赤くぐちゅぐちゅと爛れている。

 

桜「魔硬病は身体の皮膚が硬化し、どんどん剥がれ落ちていく病気。剥がれ落ちた皮膚はまた硬化し、いつまでも治らない。それは患者の体力と精神を蝕んでいき、やがて命を奪う。でもまだ彼女は間に合う。王様早く!」

 

桜に促されて、急いで『フルムーンレクト』を彼女に施す。

柔らかな光に包まれて、彼女の皮膚が次々と剥がれ落ちていく。一瞬、失敗したかと思ったが、剥がれ落ちたあとの皮膚は艶やかに汗で光沢を放っていた。健康的な小麦色の皮膚が包帯から覗く。どうやら成功したようだ。

 

レイガ「もしかしてダークエルフ?」

桜「ん」

 

剥がれ落ちた皮膚から褐色の肌と長い耳が見えた。

 

ユエ「レイガ、えい!」

レイガ「え⁉」

 

その瞬間、僕の視界が暗くなった。

一体なにが起きたんだ・・・てかどうして目潰ししたのユエさん⁉

 

ユエ「女性の裸はダメ」

レイガ「せめて何か一言言ってからしてくれない」

 

ここは、フルールさんと桜に任せて、僕とユエ、紅玉は外に出る。なお、しばらく目が見えなかったので、ユエに手を引いてもらった。

 

ルシェード「陛下!」

レイガ「ん?」

 

この気配はうちの騎士団の魔族たちだな。ヴァンパイア族の青年・ルシェード、オウガ族のザムザ、アルラウネのラクシェ、ラミア族の双子・ミュレットとシャレット。

 

ルシェード「か、担がれていった人はどうなりました? って、陛下⁉ 目どうしたんですか⁉」

レイガ「ああ、大丈夫。病気は治ったし、しばらくすれば動けるようになるだろ。目はしばらくすれば治るから気にしないで」

 

僕の言葉を聞いてみんな安心したのか、息を吐いて胸を撫で下ろす。それにしてもみんな随分と大仰だな。

 

レイガ「ひょっとしてみんなの知り合いなのか?」

ルシェード「いえ、でも同じ魔族ですからね。魔族が魔王国を出てくると人種差別や迫害もたまにありますし・・・。それにあの人は魔硬病だったから相当辛い目にあったんじゃないかって・・・」

 

心配そうにルシェードがつぶやく。

 

ラクシェ「ダークエルフが魔王国を出るなんてよっぽどのことがあったんでしょうね」

レイガ「ん? どういうこと?」

ラクシェ「ダークエルフはヴァンパイア族と同じく長命種ですから、名家の貴族が多いんですよ。大半が国の重要職についてたりしますからね」

 

・・・え、また面倒ごとに巻き込まれる⁉

 

 

 

 

 

 

三日目

 

八重「おお・・・」

ヒルダ「これが私たちの・・・」

 

目の前に立つ二体のフレームギアを見上げながら、八重とヒルダが声を漏らす。

片や藤色の鎧武者。日本鎧のようなデザイン、というかほぼ『シンケンオー』をモデルとした機体で、兜には細長い三日月の飾りが付いている。腰にはダイシンケンをモデルにして作られた大太刀と脇差を装備し、背中と足には機動性を高めるバーニアが取り付けられている。

魔力スロットに込められた【高速化】の効果により、瞬間的な超加速を生み出すことができ、これにより、抜き打ちで敵を仕留めたり、連撃を繰り出すことも可能だ。

欠点は防御力がそれほど高くはないことだが、反面、素早い動きと、鋭い斬れ味の晶刀により、一瞬で敵を倒す神速の機体。

これが八重の専用フレームギア、「フリスト」だ。

 

 

対するやその横に立つオレンジの機体。重厚な鎧を身に纏い、メインカラーのオレンジに黒の装飾で彩られた騎士。こっちは『キシリュウオー』にすごく似ている。幅広の長剣と大きめの盾を装備し、八重の機体より防御力の方を高めにしてある。

背中から大きく伸びたサメの背ビレのような部分は、変形して対上級種用の巨大な大剣になる。【巨大化】や【伸縮化】などのエナジーアイテムを付与もしてあるので、倍の長さの長剣にも変化する。

また、盾も螺旋を描いた円錐状に変形し、腰の後ろに装備してあるメイスと組み合わせて先端に取り付けると、ドリルランスへと姿を変える。若干タイガランスに見えなくもない。魔力を加えると高速回転をし、敵を粉々に粉砕できるのだ。

これがヒルダの専用フレームギア、「ゲイレルル」である。

 

二人は二体のフレームギアにそれぞれ乗り込み、剣を振ったり、走らせたりと動きを確認しながら、慣らし運転を続けた。

てかここまで来ると、他の機体も絶対僕のロボから持ってくるよね。

 

八重『反応速度が黒騎士とは段違いでござるな・・・。まるで自分の身体のように操れるでござるよ』

ヒルダ『力も比べ物にならないくらい上です。これなら上級種相手でもどうにか・・・』

レイガ『あんまり調子に乗らない。向こうだってさらに強い上級種がいるかもしれないんだ。油断大敵だぞ』

 

それにレイドのこともあるし、アイツ絶対また新しい怪獣呼んでくるよ。面倒だな。てかアイツ、姿くらませていまだ見つけられていないし。

フリストとゲイレルルrの稼動テストが終わり、城へと戻ってくると、僕はその足で桜とユエ、紅玉を連れて、城下の『銀月』へと向かった。魔硬病が治ったダークエルフのお姉さんが目を覚ましたと、今朝城の方へ『銀月』の従業員が知らせに来た。

 

スピカ「命を救っていただき、お礼の言葉もございません。まさかブリュンヒルド公王陛下に治していただけるとは・・・。このスピカ・フレンネル、陛下のために命を捧げましょう」

 

部屋に入った瞬間に両膝をついて深々と頭を下げてきた。もうなんか慣れたよこの光景には

 

レイガ「あんまり深く考えなくていいから。とにかく病気が治ってよかった。なんなら魔王国ゼノアスまで転移魔法で送るけど?」

スピカ「いえ・・・国には帰る場所がないので・・・。この国でなにか仕事を見つけようかと思います。他の国では魔族はなかなか雇ってもらえないので」

 

辛そうにスピカさんが小さく笑う。なにか帰れない理由でもあるんだろうか。

 

レイガ「わかりました。理由は聞きません。仕事と言っても・・・なにか得意なことでもあるんですか?」

スピカ「ゼノアスでは軍籍に身を置き、護衛兵を勤めていました。できるのであれば、こちらでも同じような仕事をさせていただきたいと・・・」

 

護衛兵か。ってことはやはりあっちではエリートだったんだ。そんな人が帰る場所がないか・・・

 

桜「王様・・・この人の仕事、なんとかならない?」

レイガ「え? んー・・・まあ、騎士団で雇えるかもしれないけど・・・」

 

桜が他人を気に掛けるなんて珍しい。

 

スピカ「なんとかお願いできないでしょうか・・・」

レイガ「いいですけど・・・給料はあっちより安いと思いますけど大丈夫ですか?」

スピカ「構いません。必ず陛下のお力になってみせます」

レイガ「わかりました。一応入団テストをしてみましょうか。僕だけでは決められないので」

スピカ「よろしくお願いします!」

 

再び頭を下げるスピカさん。土下座はもういいです!

 

桜「・・・よかったね」

スピカ「はい! ありがとうございます、桜様、ユエ様」

桜「様はいらない」

スピカ「え? しかし陛下の婚約者であるならば、それなりの敬意を持って・・・」

 

いやいやいや。違うから。いっぱいいるけどこの子は違うから。

ちょっとユエさん。どうして腕を抓るんですか⁉ 痛い痛い!

僕が桜の事情を話すと、スピカさんは納得したように頷いた。

 

スピカ「そうでしたか。記憶を・・・。さぞお辛いことかと・・・」

桜「全然。この国はいろんなことがあってとても楽しい。きっとスピカも好きになる。断言する」

 

なんでもないことのようにさらりと返す桜。それを聞いて、一瞬、スピカさんは面食らった表情を浮かべたが、やがて懐かしいものを見るような笑顔を浮かべた。

 

スピカ「同じようなことを以前言われたことがあります。・・・桜様は不思議な方ですね。私の知り合いに似ています」

桜「様はいらない」

スピカ「いえ、貴女様も命の恩人。恩義を失しては家名に傷が付きます。地に落ちた家名ですが、それぐらいは・・・」

 

ん? 問いに落ち立ったってどういうことだ? どうやらなにか魔王国で家名に泥を塗るような出来事があったようだ。まあこれ以上は追及しないけど。

【コネクト】を開き、城の中庭に出る。初めての転移に驚きながらも辺りをキョロキョロしているスピカさんを置いて、紅玉にユミナを呼んでくるように頼んだ。

しばらくしてユミナがやって来ると、今度こその婚約者の出現にスピカさんは畏まって膝をつき頭を下げる。ユミナは僕の婚約者であると同時に、ベルファストの姫君でもあるわけだから、無理もないけど。

 

ユミナ「立って下さい。スピカさん、とおっしゃいましたね?」

スピカ「はっ」

レイガ「ユミナお願い」

ユミナ「はい、玲我さん」

 

立ち上がったスピカさんを、ユミナの視線がまっすぐに射抜く。しばしの沈黙のあと、ユミナはにっこりと微笑んだ。

 

ユミナ「問題ありません。ブリュンヒルドの騎士として、相応しい心の持ち主だと思います」

スピカ「ありがとうございます・・・?」

レイガ「じゃあ次は実力を見せてもらうか。ついてきて下さい」

 

中庭を抜けて、裏手の訓練場の方へと向かう。

相変わらず今日もみんな訓練に励んでいるな。まあ中には訓練? ていうほどのことをしてるけど。ありゃりゃ、結構遠くに飛ばされたな、錆兎にドット。上手く着地できればいいけど。

あとはなんか力尽きて伸びているのが・・・いや何人いんだよ⁉ さては諸刃姉さんだな!

訓練場へやって来た僕らを見て、みんな手を一度止めようとするが、僕が構わず続けるように合図すると、再び訓練を始めた。

それでもスピカさんが気になるのか、ちらほらと視線を向けてくる。ダークエルフなんて珍しいし、美人さんだからな。しょうがないか。

 

レイガ「さて、と。おーい、ニコラさん」

二コラ「はい。なんでしょう、陛下」

 

ちょうど隅のベンチで訓練用のハルバードを磨いていた副団長のニコラさんを呼ぶ。

スピカさんの入団テストをするので、相手を何人が見繕ってもらうように頼む。

得物を選んでもらおうと、訓練用の武器置き場に連れて行くと、スピカさんは剣と盾を手に取り、重さを確かめるように少し振り回してから、訓練場へと向かう。

ニコラさんが選んだ対戦相手と対峙し、互いに礼をしてから武器を構える。相手は槍の使い手だった。

試合が始まると同時に、スピカさんへ目掛けていくつもの突きが繰り出される。彼女はそれらを全て盾で防ぎ、懐へと潜り込むと、鋭い剣撃を放っていった。上手いな。

槍の攻撃は全て盾で防がれ、全く届いていない。その隙をついてスピカさんが盾ごと突っ込み、相手のバランスを崩しながら足を払う。

倒れこんだ相手に剣を突きつけて、勝負はついた。

 

レイガ「盾の使い方上手いな」

八重「盾でござるな」

ヒルダ「盾ですね」

 

ちらっと横を見ると、八重とヒルダがいた。

 

レイガ「護衛兵をしていたと言っていたけど、結構な腕前だね」

八重「そうでござるな。あれは敵を倒す剣術というより、誰かを護る護衛術でござる。敵の攻撃を受け止め、逸らし、それ以上進めなくさせる。後の先を取る剣術でござるな」

ヒルダ「すごいのは盾で受け止める位置をずらし、受け流して、力を分散させてしまうところですね。あれでは手応えが無いどころか、体勢までも崩しかねません。やりにくそうです」

 

お二人の言う通りだ。まああの戦法の最大の強みは盾だけど、逆に最大の弱点でもある。

盾がなければその効果は半減、いやそれ以上になる。

 

桜「本来ならあの剣術専用の盾がある。魔族の中で鉄壁の防御術を誇るのが、彼女のフレンネル家。魔王を補佐する五貴族のひとつ」

 

・・・よく知ってるね桜。

 

桜「・・・と本に書いてあった。フレンネル家は有名。多分、彼女もその出身」

レイガ「そっか。そんな名家の人がなんでまたこんなところに流れてきたのかな・・・」

 

人に言えない理由があるようだが、詮索するのはよしとこう。ユミナが太鼓判を押した以上、悪い人間ではないのは確かだ。なにか向こうで取り返しのつかない失敗をして、ここで人生をやり直そうとしているなら、それでもいいと思うし。

試合を見て、実力は充分だとニコラさんが判断したため、僕はスピカさんのブリュンヒルド騎士団への入団を認めた。

 



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後日談 後編

とうとう使ってしまった。あの作品を


〈レイガサイド〉

 

五日目

 

ミュレット「ふうん。あの人フレンネル家の人だったんですねー」

レイガ「知ってるの?」

ミュレット「そりゃあゼノアス五武家のひとつ、「盾」のフレンネル家っていったら有名ですよぅ」

 

城の一室で図面を片付けながら、ラミアの姉妹、ミュレットとシャレットがそう語った。彼女たちは農林・建設機関の長である内藤さんの部下として働いている。町割りや、建築物の申請、手続きの書類などの整理を主にしていた。

内藤さんに会いにきた帰りに、たまたま二人を見かけて、ちょっと気になっていたスピカさんのことを聞いてみた。

本当は詮索はしないつもりだったのだが、あれだけの実力と家柄がありながら、なぜ国を出たのかどうも気になってしまった。

 

シャレット「フレンネル家っていったらゼノアス王家の護衛を務める家系で、王家の一人一人にフレンネル家の者が影のように付いているという話ですよ。あくまで噂ですけどー」

レイガ「・・・ひょっとしてスピカさんも王家護衛者の一人だったのかな?」

シャレット「んー、どうですかねぇ。確かフレンネル家の護衛者って、それぞれ王家の者と同じ性別の者が選ばれると聞きましたけどぉ。今ゼノアス王家の女性っていなかったんじゃないですかねぇ」

 

ん〜、とミュレットが考えるように腕を組んで、蛇の尻尾でピタピタと床を叩く。

 

レイガ「女性がいないって・・・王妃様も?」

ミュレット「確か第一王妃、第二王妃、共に病気で亡くなっているはずですよー。王子はそれぞれ一人ずついますけど、王女はいなかったはずですしー」

 

んー、それなら護衛すらなかったと思うけど、「地に落ちた家名」か・・・

 

レイガ「フレンネル家って、最近なにかあった?」

ミュレット&シャレット「「さあー。私たちもゼノアスを出て長いのでー」」

 

結局何もわからないってことか。

ラミア姉妹と別れて訓練場へ行ってみると、ちょうどスピカさんが訓練を終えてベンチで汗を拭っているところだった。

 

レイガ「お疲れ」

スピカ「こ、これは陛下。なにかご用でしょうか?」

レイガ「特にないけど、どう? 何か困ったことはない?」

スピカ「いえ、みなさん新参者の私にいろいろと親切にしてくれます。魔族とか女性とか、そういったこと区別なく接してくれるのはありがたいですね」

 

まあウチの騎士団は他と比べて女性の比率が多いし。

 

スピカ「それにしてもこの国の騎士団は強さの水準が高いですね。驚きました。特に諸刃様の強さは・・・」

 

あの人は剣神だから、みんなと一緒にしないであげて。

 

レイガ「てかもうやりあったんだ」

スピカ「今までの自信が全て崩れ去りました・・・。我が「盾」が何の役にも立たなかったのは初めてです・・・。いくら使い慣れない盾とはいえ・・・」

レイガ「まあ姉さんは規格外だからあまり比べない方がいいよ。そういえば、桜から聞いたけど、レンネル家専用の盾があるって聞いたけど、どんなものなの?」

スピカ「緩いカーブを描いたドーム状の盾です。中心に刺突用の突起があって・・・」

レイガ「ふむ」

 

収納からフレイズの欠片を取り出して、ビルドギアで変形させていく。

 

レイガ「こんな感じ?」

スピカ「ここのカーブをもうちょっと緩やかにしてもらえますか? あと、全体のサイズをもうちょっと小さく・・・」

レイガ「こう?」

 

言われるがままに変形させていき、終わったら【グラビティ】で軽くしておしまい。

スピカさんが出来上がった盾を手に取って、ひと通り撫でてみた後、構えたり振り回したり、いろんな動きを試していた。

 

スピカ「透き通っているから盾の背後でも視界が塞がれないのがいいですね。それに信じられないくらい軽い。素晴らしい盾です」

レイガ「それだけじゃないぞ。ほとんどの刀剣類は傷ひとつつけることができないし、魔法の攻撃もある程度跳ね返したり吸収したりする付与がついてる。そうだこれも渡しておくね」

 

まだ、スピカさんには他に晶剣と鎧、騎士団員の装備一式を給付してなかったので今ここで手渡した。

 

スピカ「このような武具が・・・あの時にあれば・・・」

 

彼女がポツリと呟いた言葉を僕は聞き逃さなかった。

 

シェスカ「マスター」

 

背後から声がかけられる。振り向くとメイド姿をしたシェスカが立っていた。

 

シェスカ「リオラから連絡です。例の物が完成したと」

レイガ「本当⁉」

 

もうちょっとかかるかと思ってたんだけど。よし、じゃあ午後の会議でお披露目といきますか。

僕はスピカさんと別れ、シェスカと共にバビロンへと向かった。

 

 

 

 

 

ベルファスト「玲我殿。これがフレイズの出現を予測できる魔道具か?」

レイガ「はい。『感知板』と名付けました」

 

それは黒い板状の形をしたものである。僕が持っている携帯を大きくしたものである。

フレイズの出現音を察知すると、その方向、距離、出現する予測時間、個体種別、出現数を表示してくれる便利なものだ。

ただ、測定範囲がそれほど広くなく、テンペスト・レイだけならひとつで問題ないのだが、ベルファストやレグルス、レスティアといった大国どころか、ウチの次に小さいリーニエでさえ複数必要になる。

 

レイガ「これを各国の冒険者ギルドに設置してもらい、下級種のみであった場合、ギルドからの依頼として冒険者に、中級種を含むのであれば、フレームギアでその国を上げて対処、上級種を含むのであれば東西同盟全体で事に当たるとしたく思っています。もちろんあまりにも数が多ければこの限りではありませんが」

レリシャ「ギルドとしては問題ありません。ユーロンの時のように、予測できずに被害をこうむるのは勘弁してもらいたいところですからね」

 

ギルドマスターのレリシャさんが口を開く。

ギルドに協力を仰いだのは、東西同盟に入っていない国の内部まで、いろんな土地に拠点を持っているということにある。それと連絡網の確かさだな。

 

レグルス「ふむ。これがあればフレイズの襲撃があっても、ある程度国内で処理できるな」

ミスミド「それとフレイズの破片……「晶材」だったか? それも使いようによってはなにかと使えそうだし」

 

レグルスの皇帝とミスミドの獣王がそんな会話を交わす。当然のことながら、各国には「晶材」の特性を教えている。まあ、フレイズとウチの騎士団の装備やフレームギアの武器を見てたら察しはつくよね。

 

レイガ「ということで今日の会議はこれで・・・」

ロードメア「すいません、ひとつ報告が」

 

締めようと思った僕の言葉を遮って、新ロードメア全州総督のオードリーさんが手を上げる。

 

ロードメア「一応、伝えておいた方がいいと思いまして。先日起きた、我が国においての武装ゴーレム暴走事件……このゴーレムの研究・培養の全責任者であったエドガー・ボーマンが鉱山収容所より脱走いたしました」

 

え⁉ あの若ハゲ野郎、脱走したの⁉

 

ロードメア「どうも外部からの手引きがあったらしく、その行方は未だつかめません。国外逃亡もありえますので、一応報告をと」

 

うわ~絶対に面倒ごとじゃん。

 

レイガ「ハクちゃん、一応検索できる」

ハク『検索中・・・ダメです。該当者がいません』

 

これは死んだが、妨害魔法の中にいるか・・・後者だったら面倒だな。

 

 

 

 

 

現在

 

と、まあこんな感じの一週間だった。他にも各国の移動を容易にするためトロッコとそのためのレールを開発。

城下の中央広場に巨大な時計塔の設置。あれは今ではウチの二大シンボルの一つになったからな。

あとは冒険者の奴隷事件で出会ったロップたちと再会した。今ではランクが紫に昇格し、立派な冒険者になった。今回はその昇格祝いに武器や防具をプレゼントした。もちろん、僕のお手製だ。

 

と、まあここまでが良い話。残りは面倒な話・・・はあぁ。

なんでもイーシェンでは戦が激しくなっており、いつかは八重の家族も関わるかもしれない。

あとは、フェルゼン。ユーロンの下に位置する、二つの国の一つで、なんでも最近オリハルコンを大量に購入したとオルバさんから聞いた。オリハルコなんて珍しい金属がそうそう出回るわけがない。それに売った先が存在しない工房の名前。余計怪しすぎる。

 

 

 

 

 

レイガ「けっこうスピードが出るもんだな」

モニカ「だろ?」

 

僕は『格納庫』に眠っていた高速飛行艇に乗って空を飛んでいた。現在レグルス上空。操縦はモニカが担当している。

今はスゥの専用機の合体パーツの試運転である。

 

レイガ「この機体がスゥのフレームギアと合体するんだろ?」

モニカ「この機体は背中のパーツに変形するナ。もっともその時は自動操縦で合体するから、俺たちは不必要だゼ」

 

これが背中にか。他の合体パーツは知らないけど、スゥ喜ぶだろうな。

そのままグングニルはロードメアを抜けて、ユーロン上空へ辿り着く。

 

レイガ「荒野と廃墟が目立つなあ・・・」

 

フレイズが踏み荒らした大地となぎ倒した木々、打ち壊した家屋、そんなものがやけに目に入る。

そんな中ちらほらと復興している町や都市を見かける。あんなことがあっても、懸命にこの地で生きていこうと決めて生活している人々もいるんだな。

そんな人たちに目の敵にされているのかと思うと・・・罪悪感があるな。

 

琥珀『主』

レイガ「ん? 琥珀か?」

 

眼下に広がる光景を眺めていると琥珀から念話が入ってきた。

 

琥珀『八重様が主と話したいと申され……ぐうぇ!』

八重『玲我殿! 聞こえるでござるか!』

レイガ「ちゃんと聞こえるからあんまり琥珀を乱暴に扱うなよ」

 

八重の声が琥珀の念話に混じって聞こえてくる。さっきの悲鳴は琥珀のだな。

 

レイガ「一体どうしたの?」

八重『先ほどゲートミラーで母上から手紙が届いたのでござる! オエドへと羽柴軍が侵攻を開始し、戦が始まったと! 羽柴軍は20万、徳川・伊達連合軍は6万・・・三倍以上の戦力差がある上、初戦で家泰様が怪我を負ったと・・・!』

レイガ「なんだって!」

 

椿さんが言っていた羽柴軍のことを思い出す。

 

八重『拙者が「フリスト」で乗り込み、羽柴軍を蹴散らすござる!』

レイガ「少し落ち着いて八重。モニカ、イーシェンのオエド方向へ進路変更」

モニカ「了解だゼ」

 

ここからなら10分ほどでオエド近辺へ着くな。

 

レイガ『とにかく【コネクト】を開くから』

 

操縦室から離れて客室へと向かい、【コネクト】を開くと、中から八重と琥珀が飛び込んできた。飛び込んできた、というか、琥珀は首根っこを掴まれて引っ張られてきたという感じだったが。

 

八重「玲我殿! ・・・って、ここはどこでござる?」

 

船内をキョロキョロと見回す八重の手から琥珀が落ちた。床に落ちた琥珀がよろよろっと仰向けになり、ひっくり返る。

 

琥珀『ぐうぅ・・・』

 

小さな呻き声をあげて、琥珀が目を回してのびていた。ごめんね琥珀

 

レイガ「ここは飛行艇の中だよ。テスト飛行中だったんでね。今イーシェンに向かっているから」

八重「かたじけない・・・。父上と兄上も戦に向かったとのことだったので・・・」

 

前にもこんなことあったら、あの時は武田の鬼面兵が相手だったけど。

でもな・・・同盟国ならいいけど、国内の戦争だからなあ。僕が関わっていい物か。

 

レイガ「ここは正体隠すか」

 

僕はギアトリンガーを使って、あるベルトを召喚する。

 

『ババババーン! 鎧武!』

 

僕の手には片方に刀がついてあるベルト『戦極ドライバー』とオレンジの絵柄の錠前『オレンジロックシード』が召喚された。

 

レイガ「戦には戦国武将でしょ」

 

戦極ドライバーを腰に巻き、ロックシードの側面にある開錠スイッチを押し込む。

 

レイガ「変身!」

♪ オレンジ!

 

すると、上空にオレンジのアームズ(鎧)が出現する。

ロックシードをベルトにセットし、錠前をロックする。

 

『ロックオン!』

 

待機音が鳴り響く。ベルトに付いてる『カッティングブレード』を倒す。すると、絵柄のオレンジが切られ、断面が露わになる。

 

『ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道オンステージ!

 

上空のアームズが僕の頭目掛けて落ち、ゆっくりと開かれていく。すると、オレンジが鎧になり、上半身を覆う。

鎧を纏った『仮面ライダー鎧武』

 

八重「また奇天烈な戦士でござるな」

モニカ「おお! かっけぇゼ」

 

モニカ、叫ぶのは良いけど、前見てね。

 

モニカ「オエドの西北にある平原に人が集まってやがるナ。おそらくここが戦場だゼ」

レイガ「よし、そこへ急行してくれ。全速力」

モニカ「あいよ。1分で着くゼ」

 

やがて広がる平原の中に、丘を背にして建つ城が見えてきた。

そしてそれを取り囲むように弓を射かける幾万の兵士たち。兵士たちの何人かは、黄金の瓢箪が並んだ旗を背に差していた。あれが羽柴軍か。とても二十万には見えないが、先行部隊かな。それでも数万はいるだろう。

堀に渡された橋の先、城門前には破城槌と呼ばれる丸太を手にした兵士たちが勢いよく何度も突進していた。それを目掛けて城側から矢が放たれるが、風が巻き起こり、矢が逸れてしまう。風属性の魔法使いがいるな。

そうしてる間にも丸太は城門を砕いていく。急がないと。

 

レイガ「八重は城内に入って重兵衛さんや重太郎さんを探して、僕が来たことを伝えてくれ。あ、他の人たちには内緒な。僕は琥珀と城門前にいる奴らを蹴散らす」

八重「わかったでござる」

 

八重を【コネクト】で天守閣近くの場所へ送り、僕は大きくなった琥珀を連れて城門の上へ転移する。

 

兵1「なっ⁉」

兵2「なにっ⁉」

 

目の前に突然現れた白虎と謎の人間?に、両陣営が驚いていたが、気にも留めず、僕は城門前へと降り立った。

 

武将「ええい! 邪魔だ! どけえぇ!」

 

破城槌を指揮していた武将が、兵士たちに突撃の命令を下す。僕ごと城門を破ろうってこと魂胆か。

勢いをつけて迫ってくる丸太に僕は右手に持っているオレンジの断面をモチーフにした武器『大橙丸』で縦に一閃する。

 

レイガ「ハァ!」

 

すると、迫って来る丸太が縦半分になる。

 

武将「な、ななっ⁉」

 

すこし驚きすぎじゃないか? たかが丸太が半分になった程度で?

慌てふためく羽柴軍に対し、今まで城壁の上から僕に弓矢を突きつけていた徳川・伊達連合軍は、敵じゃないと判断したのかその狙いを下げていた。

琥珀の凄まじい咆哮が衝撃波となって、橋の上にいた羽柴軍を一気に吹き飛ばす。

 

 

レイガ「ここからすぐに撤退しろ! さもないと・・・」

武将「さ、さもないと、なんだと言うのだ!」

 

堀の向こうから腰が引けている指揮官が尋ねてきた。

僕は腰に納刀してある『無双セイバー』を持ち、二刀流で構える。

 

レイガ「今ここで・・・俺と殺る?」

 

殺気も込めた覇王色を敵陣に放つ。すると、前方から何人か泡を吹いて気絶し、それが連鎖的に後方まで向かっていく。結果、残ったのは全体の半分以下。

そうなったら、もう冷静にはいられない。

 

兵1「バ、バケモンだ!」

兵2「殺されるぞ! みんな殺されるぞ!」

 

残った数人の兵が腰を抜かして撤退しようとする。

 

レイガ「・・・やりすぎたかな?」

 

 

 

 

 

八重「玲・・・!」

レイガ「しーっ!」

 

一応終わって、城門の方へ視線を向けると、こちらへ駆けてくる八重と重太郎さんの姿が見えた。うっかり僕の名前を叫ぼうとした八重にジェスチャーで口止めする。近づいてきた二人に小声で話しかけた。

 

レイガ「お久し振りです、重太郎さん」

重太郎「玲我殿、お力添えかたじけない。本当に助かった」

 

八重の兄、重太郎さんが深々と頭を下げる。

 

重太郎「にしても、その格好は・・・」

レイガ「一応僕にも立場があるし、テンペスト・レイが絡むと面倒なんで謎の鎧武者ってことで」

重太郎「はあ・・・。まあこちらとしては構いませんが、なんとお呼びすれば?」

レイガ「そうですね・・・じゃあガイムで」

 

仮面ライダー鎧武だし、いいでしょ。

 

レイガ「それよりも家泰さんは大丈夫なんですか? 怪我したって聞きましたけど」

重太郎「あ、はい。殿は肩に矢を受けて負傷しましたが、命に別状はありません」

レイガ「会わせてもらえます。回復魔法で治せると思うので」

 

イーシェンは魔法の属性を持ってない人たちがほとんどだし、希少な光と闇の属性に至っては滅多にいないだろう。

 

重太郎「それはありがたい。城で父上も待っています。行きましょう、玲・・・ガイム殿」

 

重太郎さんに連れられて、徳川の兵士たちの注目を集めながら、僕は琥珀に乗った八重と共に城門をくぐった。

 

 

 

 

 

〈とある日のレイガ〉

 

これは後日談の間に起こった四日目の出来事だ。

 

四日目

 

レイガ「今日もいい天気だな」

 

昨日スピカさんの騎士団入団も決まって今日は久しぶりの休暇。なので今日は久しぶりに惑星レイガ出身の妻たちと街を巡ることにした。

今日のメンバーはグレイフィア、ヴェルザード、茜、リリス、清姫。計五人と僕で回っている。

なんでも教のデートのために壮絶な戦いがあったとか。

 

茜「ふふ~ん、楽しいね、レイガ君」

ヴェルザード「そうね。今日はちょっと暑いから、私がいてよかったわね」

 

すぐ横には茜とヴェルザードが胸を押し付けながら腕を絡める。(/ω\)。ハズイ!

後ろでは僕を睨んでくる三人。修羅場過ぎる。

 

レイガ「それにしてもいろんな店が増えたな」

 

改めて見ると、いろんなジャンルの店が増えたのが一目瞭然。ザナックさんの服屋、宿屋『銀月』、喫茶店『パテント』、食事処『遠月』、読書喫茶店・・・ん? 

今一瞬聞き覚えのあるのがあるような。

もう一度店を見直す。

 

レイガ「・・・食事処『遠月』⁉」

 

まさかの名前に驚く。だってこの名前は僕の妻の母校と同じもんだよ。僕は気になってその店に入ることにした。

 

?「いらっしゃいませ!」

 

僕たちを出迎えてくれたのは。桃色の髪をショートにした女性『新戸緋沙子』がウエイトレスの服装で立っていた。

 

緋沙子「おや、レイガ様。全部で六名でよろしいですか?」

レイガ「いや冷静に対応しないで! え⁉ どういうこと⁉」

 

僕は慌てふためいていると、後ろからグレイフィアが声をかける。

 

グレイフィアが「レイガ様、今は他のお客様の邪魔になるので、席に着きましょう」

レイガ「え⁉ わかった・・・て、なんでそんな冷静に対応できるの⁉」

 

なんかそのまま流されて席に着いた僕たち。

 

レイガ「・・・もしかしてみんな知ってた?」

グレイフィア「知らなかったのはレイガ様だけだと思います」

 

みんなを代表してリリスが答える。なんでも街の普及を考えた時にこの案が採用されたとか。

てか他にも何店舗かあるの⁉

 

緋沙子「こちらがメニューです。本日のおすすめはスープ・ド・ポワソンラーメン、女王のエッグベネディクト、うずらの詰め物リゾットと卵 生意気小僧風。デザートにはセミフレッドがございます」

レイガ「ちょっとまてーーーー!!」

 

メニュー全部聞いたことあるし、一個僕が作ったやつあるよね。

 

グレイフィア「では私は女王のエッグベネディクトを一つ」

ヴェルザード「私は冷たいものを貰おうかしら」

茜「私はおすすめのラーメンで」

リリス「化けるふりかけご飯をお願いします」

清姫「うずらの詰め物一択ですわ」

緋沙子「かしこまりました」

レイガ「なんで冷静に注文してるの⁉」

 

なんか僕だけ何も知らない状態なんですけど⁉

 

緋沙子「レイガ様はどういたしますか⁉」

レイガ「・・・鶏卵の天丼でお願いします」

緋沙子「かしこまりました」

 

そう言い、緋沙子は厨房へと向かった。

 

レイガ「で、ここっていつからあったの?」

リリス「先月からです。今では街一番の定食屋ですよ」

レイガ「定食と言うより、もはや普通にレストランでしょ! スープ・ド・ポワソンラーメンや女王のエッグベネディクト、それにうずらの詰め物リゾットなんて普通の定食屋にはありません」

リリリス「まあ確かにそうだけど」

清姫「おいしければ、なんでもいいんですよ! 旦那様!」

レイガ様「結局、それに辿り着くのね!」

 

そんな会話をしていると、厨房の方から騒ぎ声が聞こえた。少し気になって厨房の方へと近づくと、二人の影が僕の身体へとぶつかる。

 

?「れいく~~~ん!」

?「れいが!」

レイガ「ごふっ⁉」

 

猛烈なタックルを受け止めると、ようやく二人の顔が見える。

一人は濃いピンク色の髪をぱっつんの前髪にショートの髪型

もう一人は、赤茶色の髪をセミロングにし、右側が隠れるような前髪にしている

 

レイガ「って⁉ 二乃に三玖⁉」

 

その正体は僕の妻である、『中野二乃』と『中野三玖』だった。二人ともコックコートを着ているが、もしかして

 

レイガ「ここで働いてるの?」

二乃「うん! 」れいくんに美味しい料理を食べてもらうために働いてるの」

三玖「私たちが作った料理食べていってね」

 

そう言い、ほっぺにキスをする二人。

そんな中、二人の後ろには

 

?「何をしてるののよ、あなたたち!」

二乃&三玖「「痛っ⁉」」

 

二人に拳骨をしたのは金髪ロングの女性、『薙切えりな』だった。

 

二乃「何するのよ! えりな」

三玖「う~~痛い」

えりな「何してるのはこっちのセリフよ! 早く調理を再開しなさい」

 

ごもっともな意見。

 

二乃「もうわかったわよ。じゃあねれいくん」

三玖「美味しい料理作って来るから」

 

そう言って厨房に戻っていく。

 

えりな「さて、私も向かうから。またあとで」

 

えりなも厨房へと戻っていく。

数分後

 

緋沙子「おまたせいたしました」

『おお』

 

テーブルの前には僕らが頼んだ料理はいっぱい。中には頼んだ覚えのない料理もあるけど・・・

 

レイガ「まあいっか。いただきます!」

『いただきます』

 

もぐもぐ

 

レイガ「うまっ!」

 

久しぶりに食べたけど、やっぱり天丼美味しい。

そのまま料理を食べ終えた僕らは、食後のデザートとコーヒーを楽しんだ。




正直迷いましたが、出版当初から大好きな作品だったので、出しました。


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従属神

今回、ネタバレ要素があるかも


〈レイガサイド〉

 

あれから重太郎さんに案内されて城内に入ると、家泰さんが出迎えてくれた。ちなみに変身は解除しているけど、みんなにはガイムの姿に見えている。いつもどおりカラフルコマーシャルでね。

まあ話より先に家泰軍全員の傷を癒した。

戦況について聞いてみると、気になることを言ってた。

 

家泰「秀義は黄金の瓢箪で不思議な術を使うという。その力には誰も逆らえず、皆、従うしかないらしい。織田信永殿が暗殺されたのも、その力に明智満秀が操られたからという噂もある」

 

黄金の瓢箪・・・まさかまたバビロン博士の魔道具⁉

何イーシェンはバビロン博士関係の問題ばっかりだな。

 

レイガ「じゃあ秀義の持っている黄金の瓢箪をなんとかすれば、相手側は瓦解するわけですね?」

家泰「おそらく。と言っても、秀義は自分の城から一歩も出たことがない。同じ領主のこの私でさえ姿を見たことがないのだ。これも噂じゃが、かなりの猿顏らしいので、人前に出たがらないとか」

 

猿顔で、しかも引きこもり・・・ますます怪しい。

 

レイガ「それで秀義はどこに?」

家泰「オオサカ城。秀義が作らせた黄金の城に」

レイガ「じゃあもう面倒なので直接やっちゃいますね!」

レイガ以外『・・・』

 

あれ~なんか静まり返った。

 

家泰「聞くのも今更だが、そんなことができるのかね?」

レイガ「できますよ。こっちにはいろいろと奥の手があるんで。作戦としては、城に乗り込んで、秀義を探して、その黄金の瓢箪を破壊するだけです」

?「その作戦、拙者も連れていってもらえぬか」

 

廊下からの突然の声に、皆の視線が集まる。

そこにいたのは目が細い長身の従者を従えた、僕と同じくらいの一人の少年であった。黒い袴に黒い鎧、紫にカラフルな水玉模様の陣羽織。そして右目につけられた眼帯。

 

 

伊達「ガイム殿と申したか。先ほどの戦い実に見事であった。申し遅れたが、拙者、伊達領主・伊達冬次郎正宗と申す。以後お見知りおきを」

 

・・・はあ~デジャブ。また妻の名前に似てるパターンだよ。

 

レイガ「そちらの方は?」

伊達「家臣の片倉弧十郎蔭綱だ」

片倉「お初にお目にかかります」

 

なんとなくわかってました。

 

レイガ「連れて行ってくれって・・・オオサカ城にですか?」

伊達「いかにも。一度秀義とやらを拝んで見たかったのでな。それとその黄金の瓢箪とやらに興味がある」

 

めっちゃわかりやすい不敵な笑み。

 

家泰「正宗殿。大方、黄金の瓢箪を手に入れて、自分で利用しようとか考えてるのであろうが、やめておいた方が良い」

伊達「ぬうっ⁉ なぜ拙者の心の内を⁉」

片倉「正宗様。考えが見事に顔に出ておりました」

 

あんなにわかりやすかったらね・・・

 

レイガ「言っときますけど、瓢箪は破壊しますよ。どうやら禄でもないアーティファクトらしいですし」

伊達「むうう・・・。仕方あるまい。ガイム殿の言うことももっともだ。従おうじゃないか」

 

そう言うわりに正宗の顔がニヤついている。ホントわかりやすい人だな。

 

レイガ「・・・壊す直前になって、横からかっぱらおうとか考えてるでしょ?」

伊達「ぬうっ⁉ なぜ拙者の心の内を⁉」

片倉「ですから正宗様。考えが見事に顔に出ております」

 

さっきと同じやりとやりとり。

 

レイガ「しかし家泰さん、伊達の領主を敵陣の真っ只中へ連れて行っていいんですかね?」

家泰「それに関しては伊達家の問題なのでワシにはなんとも、な」

 

ダメか・・・

 

家泰「と、いうか、オオサカ城へはワシも行きたい。戦いを全て客人に任せてふんぞり返っているほど恥知らずではないぞ」

 

確かに僕一人でカタをつけてしまうのもな。

 

レイガ「じゃあ、オオサカ城を包囲して城の兵士の気を引いてもらえますか。その隙に僕が瓢箪をなんとかするんで、あとは家泰さんたちにお任せするってことで」

家泰「それは構わんが・・・ここからオオサカ城までどれだけあると・・・。ああ、玲・・・ガイム殿は転移魔法を使えるんだったな」

 

ここをカラッポにするのもまずいから、徳川・伊達、合わせて三万ほどの兵を遠征させることにした。急襲するのだから、これだけいれば充分だろう。

 

レイガ「ところで秀義をなんとかしても、この内乱は治まるんですかね?」

家泰「もともとは織田が始めた争いを羽柴が引き継いで今の状態になっておる。羽柴をなんとかすれば戦いは終わると思うんじゃが・・・」

伊達「しかし、帝にこの国を治める力はない。さて、天下の紙風船は誰の手に落ちるのかのう」

 

正宗がそう言って腕を組む。おいおい悪い顔になってるぞ。

まあ、順当にいったら家泰さんが一番力を持つ領主となるかな。

 

 

 

 

 

 

レイガ「あれがオオサカ城か・・・」

 

無駄に金ぴかだな。

とりえず城をぐるりと取り囲む堀と城壁のさらに外側、その四方に徳川・伊達連合軍の兵たちを転移させると。

やがてどこからか法螺貝の音が聞こえてきて、陣太鼓が打ち鳴らされた。一斉に四方からオオサカ城へと兵士たちが押し寄せ、すぐさま弓矢の撃ちあいとなった。

 

レイガ「よし、今のうちに城へ侵入するか」

家泰「あのう・・・。オオサカ城は結界が張られていて、転移魔法では入れないんでござるよね? となると、どうやって・・・まさか・・・」

レイガ「もちろん飛んで」

 

僕は八重をお姫様抱っこし、琥珀には僕の頭に乗ってもらう。

 

八重「れ、玲我殿⁉」

レイガ「じゃあ行くか。しっかり捕まっててね」

 

琥珀が乗ったのを確認し、僕は空を飛んで城へと向かう。その間八重は終始顔を赤くしていた。当然、姿は『透明化』で消しているので弓矢で射かけられることもない。

天守閣から内部へ乗り込むと、そこは広い板張りの部屋だった。中まで金ピカかって趣味悪いな。

 

八重「悪趣味でござるなあ・・・」

レイガ「同感」

 

とにかくここに秀義はいないようなので、階段から下へと降りていく。

下にも誰もいなかった。それにしても長い板張りの廊下を抜けてく途中で、さっきから妙な気配を感じる。

気配のする方へ向かい、金箔で覆われた襖をひとつひとつ開けて、そこへ近づいていく。

 

レイガ「これって・・・」

八重「どうしたでござる?」

 

襖を開けていくごとに気配が強くなっていく。すると、その時が来た。

襖を開けると、そこには赤や紫と派手な色で染められた小袖と、金の奴袴と胴服を着込み、腰には黄金の瓢箪が括り付けられていた

・・・・サルがいた。

 

八重「・・・猿でごさるな」

レイガ「・・・」

 

猿よりも僕は瓢箪に着目する。

 

?『ほう。男に女に白虎かえ。これはまた珍しい客人だ。表で騒いでる奴らの仲間か』

レイガ「・・・お前が秀義か?」

秀義『かかか、いかにも。ワシが羽柴筑善守秀義よ』

 

・・・なるほどな。

 

秀義『よくぞここまでこれたものだ。褒めてやろう。褒美にワシの側近に取り立ててやろうぞ』

レイガ「そんなの断るに決まってるだろ」

秀義『断れんよ、お前らは』

 

秀義の目が一瞬だけ赤く光る。それと同時に僕は八重と琥珀に究極能力『白氷之王』を使い、二人の時間をわざと止める。

 

秀義『ぬ⁉なぜ貴様は平気でいるのだ⁉』

レイガ「うっさいな。いい加減猿芝居はよせよ」

秀義『な、なにを⁉』

レイガ「正体はわかってんだよ。お前いやそっちの瓢箪に姿を変えた従・属・神」

秀義『貴様ッ! 何者だァーーーーッ!』

 

猿の目が真っ赤に染まる。そして瓢箪からわずかに漏れ出したのは紛うこと無き神気。でも濁って見えるけど。

 

レイガ《瑠璃、聞こえるか》

瑠璃《はい、主。なんでしょうか》

レイガ《今すぐ花恋姉さんか諸刃姉さんを探して伝えてくれ。従属神を見つけたって言えばすぐわかる》

瑠璃《御意》

 

こいつは神気を察知されないギリギリのラインで使ってたに違いない。

僕はいつもゼロにしてるから、こいつはわからなかったようだけど、

久しぶりに解放するか。全体の10%でいいか。

すると、僕の身体が光輝く。

 

秀義→従属神『きっ、貴様っ! その、その神力は! 神界の遣いか⁉』

 

猿が怯えるように後ずさる。瓢箪が猿の腰から転がり落ち、濁った金色の輝きを放ちながら、だんだんと人の形をとっていく。

そこには憎々しい目でこちらを睨む、痩せぎすな白髭の老人が立っていた。

 

従属神「しぇやッ!!」

 

いきなり掌から神気を放ってきたが、僕はそれを同じように掌で受け止める。同時に部屋全体にも防御壁を張った。念のため八重と琥珀は味方の陣に転移させて、時間も戻しておく。 

 

猿「ウキャ───ッ!!?」

 

猿は邪魔だから城の外へと転移させておく。

そんなことをしていると、髭のカマキリ老人が口を開いた。

 

従属神「貴様いったい・・・。神界からワシを捕まえに来た下級神か従属神・・・」

レイガ「どっちでもねえよ。それは僕の役目じゃないし。ってかおとなしく捕まった方がいいぞ。勝手に地上に降りてくるわ、干渉しまくりやがっって、イーシェンがメチャクチャじゃんか」

従属神「うるさい! 来る日も来る日も退屈な日々を享受する苦痛が貴様にわかるか! 何の神にもなれない虚しいワシらの渇きを!」

 

ハア⁉ こいつ子供かよ。

 

従属神「ワシはまだ本気を出してないだけだ! 相応しい立場と力があれば誰もが崇める神になれるものを・・・!」

 

こいつの言い訳を聞くとイライラしてくる。

結局こいつは自分の実力を認めない神界に不満を持ってこの世界に降りて、こっそりと世界を変革させようとしてたわけか。

そんでそれを手土産に下級神になろうなんてことを考えていたわけだ。

 

レイガ「どのみちお前のやったことは神界のルールに触れる。おとなしく自首しろ」

従属神「ふん、感じるぞ。貴様の神気はまだムラがある。大方、神になってまだ日が浅い新神だな? そんなやつにワシが捕まると思うてか」

 

だめだな。相手の力量も確認できないのかよ。

僕が従属神の言葉に呆れていると、突然僕らの周りの景色が歪んだ。

気がつくと、周囲が乳白色の空間にキラキラとした光の粒が回る世界へと変わっている。美しい不思議な空間がどこまでも限りなく広がっていた。地面などはなく、宇宙空間のように僕らは漂う。

 

レイガ「ここって・・・」

花恋「精霊界なのよ。ここなら神力を使っても地上に影響を与えることはないのよ」

 

僕の横にヒュッと花恋姉さんと諸刃姉さんが現れた。姉さんたちが転移させたのか。

 

従属神「恋愛神様に剣神様⁉ な、なんでこんなところへ・・・⁉」

諸刃「なんでもなにも、地上に迷惑をかけているお前を捕らえにきたに決まってるだろう? なかなかうまく私たちの目をごまかしていたみたいだけど、年貢の納め時だね」

 

諸刃姉さんが腰から剣を抜く。なんてことはない、ただの鋼の剣だ。ミカヅチ抜かないんだ?

 

花恋「地上で神の力を行使するにはいろんなルールがあるのよ。あんたはそれを破ったのよ? っていうか無職なんだから使っちゃダメなのよ」

従属神「ぐぬぬ・・・!」

 

花恋姉さんの言葉に歯噛みする従属神。基本、姉さんたちはそれぞれ、恋愛や剣に絡むこと以外での力は使わないようにしている。

 

諸刃「さて、おとなしく捕まってくれると私たちも楽なんだけどな。聞く限り情状酌量の余地はなさそうだけど」

花恋「下等生物への転生刑一億年くらいなのよ」

従属神「くっ、ふざけるなっ!!」

 

従属神がまたしても神力を放ってくるが、それよりも速く諸刃姉さんが動き、伸ばしたその右腕を肘から一刀両断に切り捨てた。

 

従属神「ぐうううっ!!」

 

切断された腕からは血が流れるということはなく、切り落とされた腕はそのまま宙を漂っていた。

 

諸刃「これ以上ゴネるとその首を落として連れて行くよ。きちんと罪を償えば、また神として転生されるかもしれないけど、消滅の方をお望みかい?」

従属神「下等生物なんぞに生まれ変わるくらいなら、最後まで足掻かせてもらうぞ! はあッ!!」

諸刃「むっ⁉ そうはいかないぞ!」

 

突然眩い光が従属神から放たれたと思ったら、諸刃姉さんの剣がその従属神を頭から一刀両断に真っ二つにした。それと同時に僕の意識が遠のく。

ってリテス⁉

 

リテス『悪いなレイガ。ちょっと身体借りるぞ』

 

その言葉を最後に、僕の視界が真っ暗に・・・

 

 

 

 

 

〈花恋姉さんサイド〉

 

従属神「くふっ、次はこうはいかんぞ・・・」

諸刃「次だと?」

花恋「諸刃ちゃん、そいつの腕!」

 

倒れながら笑う従属神をよそに私は諸刃ちゃんに叫ぶ。

切り落とされて漂っていた腕がブレながらその場から消えた。やがて切り倒された従属神の本体が、砂のように崩れていく。

 

諸刃「くっ。悪知恵の回る奴だな」

花恋「・・・ダメなのよ。神気を絶ってるのよ」

諸刃「まさか自分の神格や神力をほとんど右腕に移し替えて、分身として地上へと転移させるとはね。しかもまた神力を消し、何かに擬態している」

花恋「初めっからやり直しなのよ」

 

せっかくここまで追い込めたのはよかったけど、しょうがないのよ。

そんなことを思っていると、突然膨大な神気を感じたのよ!

 

リテス「ちっちぇえな・・・」

 

その方向に向くと、そこにはレイガ君がいたのだけど、違うのよ。今までの優しい雰囲気は感じず、そこには邪悪な気配しか感じなかったのよ。それと後ろには赤い巨人が何かを握っていたのよ。

 

 

 

 

 

〈従属神サイド〉

 

成功した!

まさか恋愛神と剣神に出会うとは思わなかったが、まあいい。

今はとにかくここから離れることを優先しよう。

それにしてもさっきのガキめ!

このワシを馬鹿にしよって! 今に見てろよ! ワシはいずれ下級神いや上級神にだって

 

リテス「ちっちぇえな・・・」

 

その言葉と同時に何かに捕まれ、上へと引っ張られる。

 

従属神「な、なんだ⁉」

 

しばらくすると、先ほどいた精霊界まで戻された。そして、ワシを捕まえた正体がようやく見えた。

 

従属神「な、なんだこいつは⁉」

 

そいつは真っ赤な巨人だった。

 

 

 

 

 

〈諸刃姉さんサイド〉

 

突如精霊界に現れた赤い巨人が握っていたのは、さっちの従属神だった。

 

諸刃「いったい何が・・・」

花恋「諸刃ちゃん、それよりあれ」

 

恋愛神もとい花恋姉さんが指さす方を見ると、巨人の前にはレイガ君がいたが、違う。

 

諸刃「レイガ君・・・なのか?」

リテス「ん? あ~確か、恋愛神と剣神か・・・」

 

違う。いつもの優しい声じゃなく、邪悪な声。

 

リテス「言っとくけど、あんたらに対して敵対心はない、だからなにもすんなよ」

 

そう言って、レイガ君? は巨人を操って従属神を握り潰す。

 

従属神「ぎゃあ――――!」

リテス「うっせえな。耳障りなんだよ」

 

次の瞬間、握っていた手から炎が広がった。

 

リテス「ぎゃあ――――、熱い! 熱い!」

リテス「ったく、こんな奴が、未来で邪神になるとか、邪神の質も落ちたもんだな」

 

ッ⁉ 今なんて言った⁉

 

花恋「今なんて言ったのよ⁉」

リテス「あッ? こいつは近い未来、邪神になって世界をめちゃくちゃにするって言ったんだよ」

諸刃「・・・どうして君にそれがわかる?」

リテス「俺も同じ

 

 

 

 

 

邪神だからわかるんだよ

花恋&諸刃「「⁉」」

リテス「なんだレイガから聞いてなかったのか? まあちょうどいいし、自己紹介しとくか

俺の名はリテス。邪神リテス。またの名を『神殺しのリテス』」

諸刃「神殺しの・・・リテス」

リテス「まあ誰かが勝手につけた二つ名だ。例えば」

 

再び従属神を握る潰す巨人。

 

従属神「ぐぎゃああーーーーー」

リテス「コイツみたいに将来邪神になる奴をいっぱい殺ったらいつの間にかそう呼ばれた」

諸刃「邪神になる神を?」

リテス「ああ、俺にはわかるんだ。気配かそれとも勘か・・・見た神が邪神になるかどうかわかるんだ」

花恋「そんなの⁉」

リテス「信じられないってか、そうかもな。ただ、邪神になるやつは大抵コイツみたいにどうしようもねえ奴しかいねえけどな。

それにな・・・邪神はこの世で俺一人で充分なんだよ」

 

そう言い放ち、巨人は握っていた従属神を空へと投げる。

 

O.S.(オーバーソウル) スピリット・オブ・ファイア。すべてを燃やせ『天照(アマテラス)』」

 

巨人の手の平から小さな玉?が現れ、それが従属神に向かってゆらゆらと飛んで行く。

従属神まで近づくと

ボンッ!

 

奴を覆うように爆発が起きた。

 

「な・・・んで・・・ワシが・・・」

「オマエみたいな奴は自分を過剰評価しすぎだ。安心しろよ。お前の魂はこいつがおいしく喰らってやるから」

 

そう言って、赤い巨人の口が開き、今も燃えている従属神を喰らう。

 

リテス「マズい魂食わして悪いな、されこれで終わりだな」

花恋&諸刃「「・・・」」

リテス「後処理は任せたぞ」

 

そう言い、地面に倒れ込む。

 

花恋「ど、どうしよう、諸刃ちゃん」

諸刃「・・・とにかくレイガ君を連れて、八重たちの元へ戻ろう。あと最高神様にも報告しよう」

 

こうして従属神問題は解決された。




今回で一つのフラグがなくなりました。
これからどうしよう・・・・


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記憶

〈レイガサイド〉

 

レイガ「春がキターーーーーー!」

 

この星来て初の春である。いや~いいね春。ポカポカする天気。そしてこのために植えた満開な桜。これはもう花見をするしかないでしょう。

 

バイス『いや、省略しすぎだろ!』

レイガ「久しぶりのツッコみだな。バイス」

 

さて、あの従属神問題からもう一ヵ月。あれからいろんなことをした。例えば、フェルゼン王国も遊びに行ったり、レスティア、ロードメア、ライル、フェルゼンの四ッ各国を繋げる橋を作ったり、カレーライスを作ったりした。

あとよくわからん、黄金結社とかいうのもあったとかなかったとか、まあいまは良いでしょう。

あとリテスに聞いたら、従属神は魂ごとS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)が喰らったらしいので、解決? したのでいいのかな。

まあ暗い話はあとにして、今は宴会を楽しもう。

 

 

 

 

 

レイガ「では皆様の益々のご発展と、ご多幸を祈念いたしまして・・・乾杯!」

全員『乾杯!!』

 

テンペスト・レイの城の中庭で、テンペスト・レイ、ベルファスト、レグルス、リーフリース、リーニエ、ミスミド、ラミッシュ、レスティア、ロードメア、九ヶ国の代表が集まっている。

食卓には、クレアさん率いる厨房部隊と、出張食事処遠月から何人かが腕を振るった力作が所狭しと並んでいる。

 

レグルス「しかしちょっと前までは信じられない光景だな」

ベルファスト「まったくですな。ベルファストとレグルスの騎士たちが共に酒を飲んでいる。ミスミドの獣人とラミッシュの聖騎士が同じ皿で食べ物を分け合っている。いやはや、玲我殿と出会ってから、いろいろと変化が激しすぎて、なにが普通かわからなくなってきました」

 

レグルス皇帝とベルファスト国王がそう話してるところへ、二人の娘が横に座る。

 

ユミナ「これが玲我さんの普通ですわ、お父様。生まれや身分、種族や国家など、些細なことでしかないのです」

ルー「玲我様は皆様の仲を取り持ち、幸せにしてくれますわ。なにせ私たちの婚約者(フィアンセ)ですから!」

 

ユミナとルーの言葉に苦笑する父親二人。(/ω\)恥ずかしいからもうやめて。

 

ミスミド「玲我殿! ここにフレームユニットを出せんか? ちょっと騎士王と対戦したいんだが!」

レグルス「そう言うと思って、すでに何台か用意しておきましたよ」

 

指差した方向には、事前に用意した数台のフレームユニットと大型モニターが設置されている。機体も同じ設定にしておいたし、武器も多数登録しておいた。

あっという間に騎士団たちの勝ち抜き戦が始まり、それぞれが自分の腕前を披露していく。フレイズの実践もあったからか、みんな操作はもう手慣れている、

そのうち飲んでいた諸刃姉さんに、一手ご指南を、と言う者が出てきた。よく見ると申し込んでいるのは他の国の騎士たちだ。同じ剣士として、ウチの最強剣士と戦いたいらしい。それを見て、ウチの騎士団の連中が苦笑したり、同情の眼差しを送る。まあ・・・頑張れ。

一方、花恋姉さんの方は女性騎士たちになにやら吹き込んでいる。おそらく恋愛事で相談にのっているのだろう・・・あれ? あれってロードメアの騎士団長、リミットさんか? ものすごい真剣な顔して花恋姉さんの話に喰いついているけど・・・頑張ってください。

あっちでは女性騎士とお話をしている裕斗と錆兎、アビスにランスを見かけた。あれはもはや合コンだな。まあランスは妹の話しかしないし、アビスはずっとパニクってる。いい加減女性なれしといたほうがいいかもな。それを見て、血の涙を流し続けているドット。いつか貧血なるんじゃないか。

 

ロードメア「こう綺麗な花を見ていると、音楽が欲しいですね。そう言えば陛下。この国には楽団はいないのですか?」

 

舞い落ちる桜を見ながらロードメアの全州総督が尋ねてくる。

 

レイガ「楽団は今はいませんね。いつかは作ろうと思いますけど、今日の所は僕が弾きますね」

 

【コネクト】を開き、ピアノを中庭に引っ張り出す。突然現れた黒い物体に全州総督が驚いていた。

 

リンゼ「わあ、なにか弾いてくれるんですか⁉」

スゥ「おお、玲我のピアノは大好きじゃ! 何の曲を弾いてくれるのじゃ?」

 

ピアノの長椅子に座るとリンゼとスゥが駆け寄ってきた。

ちょこんとスゥは僕の隣に腰掛ける。そうだな・・・じゃああれにしよう。

静かに弾き始める。優しげなメロディが桜の花びらに合わせるように流れると、みんなが僕の方へ視線を向けた。

リムルオススメ曲の一つ、「愛の挨拶」。

たしか年下の婚約者に送るラブソングだったはず。

演奏が終わると、周りから拍手が送られた。感激したのかスゥに突然飛びつかれ、抱きとめる。

 

ラミッシュ「これはすごいです。演奏もそうですが、この楽器は素晴らしい・・・。玲我様、これは?」

レイガ「ピアノといいます。鍵盤を叩くことで様々な音がでる楽器です」

 

ピアノを眺めるラミッシュ教皇に、笑いながら説明する。そうか、教会なら賛美歌とかあるのか? スゥを地面に下ろし、尋ねてみる。

 

レイガ「ラミッシュでは教会の賛美歌に伴奏とかあるんですか?」

ラミッシュ「簡単な楽器でならございます。ここまで多彩な音を一人で出せるようなものではないですが」

レイガ「じゃあ一台プレゼントしますよ。音楽家の方なら弾きこなせると思いますし」

ラミッシュ「本当ですか⁉」

 

ビルドギアで簡単に作れるから、真姫か梨子にでも頼もうかな。

 

桜「王様・・・」

レイガ「ん? どうしたの、桜?」

 

いつの間にか桜がピアノの横に来ていた。足元には琥珀が付き従っている。

 

桜「私も歌う。「あれ」弾いて」

レイガ「OK。あれね」

 

歌のことになるとホント押しが強くなるね、桜は。

僕はフォーゼの『ビートスイッチ』とビルドの『マイクフルボトル』を使って、複数のスピーカーと二つのマイクを召喚する。スピーカーを広範囲に設置し、マイクを桜の口元とピアノの手前に置く。

椅子に座り直し、アップテンポで弾き始める。前奏の音を軽やか刻んでいき、スピーカーからピアノの音が響き渡る。ノリはいい曲なので自然と身体が動き、楽しくなってきた。桜も身体を左右に揺らしていた。

桜がマイクに向けて歌い始める。いつもの軽やかな声じゃなく、腹に響くような声だ。

引き込まれるように、聞いているみんなの身体が左右に揺れてきた。曲名は「新時代」。

サビになり、普段の桜からは想像もつかないソウルフルな歌声が響く。いいね! こっちも乗ってきた。

桜が歌う歌詞に合わせて、みんなも声を出して歌う。自然と手拍子も生まれ、みんな桜の歌にノリノリになっていた。

曲が終わると、大きな拍手と歓声が僕らに贈られてきた。桜もどこか嬉しそうだ。

 

ラミッシュ「素晴らしい歌です! この者は?」

レイガ「うちの歌姫ですよ」

 

ラミッシュ教皇に答えると、いつもの無表情に戻り、桜は小さくお辞儀をすると、すぐさま僕の背中へ隠れてしまった。

 

スピカ「へ、陛下!」

 

ん? 僕の所へうちの騎士団のスピカさんが駆けてくる。

 

レイガ「どうしました?」

スピカ「あのっ・・・! 桜様は記憶を無くしているんですよね⁉」

レイガ「そうですけど?」

 

僕の背後に隠れる桜をじっと見ながら、スピカさんが口を開く。

 

スピカ「ファルネ様なのですか・・・?」

桜「?」

 

キョトンとしている桜を見て、肩を落とすスピカさん。

 

レイガ「ファルネ様って?」

スピカ「あ、ああ。すみません。魔王国ゼノアスで、私が仕えていたお方です。ファルネーゼ・フォルネウス様。歌がお好きな方で・・・今の歌声がそっくりだったのです。それで、思わず・・・。申し訳ありません。ありえないことを・・・。ファルネ様はもうこの世にはいらっしゃらない・・・顔も髪の色も違いますのに・・・」

 

寂しそうに笑うスピカさんから、よほど大切な人だったことがわかる。

 

スピカ「桜様と同じ名前のこの花を見ているとファルネ様を思い出します。あの方の髪もこのような美しい薄桃色でありました」

 

遠く離れてしまった人を想い、スピカさんが風に舞う桜の花びらを目で追いかける。

そうか・・・同じ歌声で髪色も同じだと、面影が重な・・・うん?

 

レイガ「・・・ちょっと待って。薄桃色? ファルネ様ってのは薄桃色の髪をしていたの?」

スピカ「そうですが・・・それがなにか?」

レイガ「え⁉ だってさっき桜とは「髪の色が違う」って」

スピカ「ええ。桜様の綺麗な黒髪(・・)と見間違えるなんて、どうかしてました」

 

どういうことだ? スピカさんには桜の髪が黒髪に見えているのか?

でも桜が魔法を使っているようには感じないし・・・

 

レイガ「スゥ、ユエ。桜の髪の色って何色に見える?」

スゥ「? 桜色ではないのか? この花の色と同じだから、玲我がそう名付けたのだろ?」

ユエ「私も桜色だと思う」

スピカ「あッ⁉ ひょ、ひょっとして・・・! 陛下! 桜様はなにかメダルのようなものを持ってませんでしたか⁉」

 

スゥとユエの答えになにか思い出したのか、スピカさんがそんなことを尋ねてくる。

メダルって確か桜を助けた時に身につけていた銀色の・・・。

 

桜「・・・これ?」

 

胸元から桜が紐についた直径10センチほどの銀色のメダルを引っ張り出した。

 

スピカ「・・・それ、を・・・外して、もらえますか・・・」

 

渇いた声でスピカさんが桜に声をかける。意図が分からず小首をかしげながらも、僕が促すと桜は素直に首からそのメダルを外した。

 

スピカ「あ、ああ・・・」

 

スピカさんの目から大粒の涙がとめどなく流れていく。桜の前に跪き、その手を大切そうに取り、自らの額に押し付けた。

 

スピカ「ファルネ様・・・。間違いありません・・・この方はファルネーゼ・フォルネウス様です。生きて・・・生きておられた・・・」

桜「ファルネ・・・?」

 

相変わらず首をかしげる桜の前で、スピカさんは涙を流し続けた。

 

 

 

 

 

レイガ「それで結局、桜はその・・・ファルネーゼ・フォルネウスって人物と同一人物なの?」

スピカ「間違いありません。この方はファルネ様です。小さい頃より護衛をしてきた私が間違えるはずがありません」

 

城の広間の椅子に、僕と対面に座るスピカさんがキッパリと断言する。

 

バイス(でもさっきまでわからなかったよな)

レイガ(バイス・・・今はそれ言わない)

スピカ「この「変幻の瞳」は特定の者たちの認識を歪ませて、存在を偽るアーティファクト。その対象設定が魔族となっていたのでしょう。おそらく他の魔族の方々にも、ファルネ様は黒髪に見えていたはずです」

 

そう言ってテーブルの上にある、桜の持っていたメダルに視線を向ける。

なるほど。これのせいで魔族には別の顔、別の髪に見えていたわけか。

 

レイガ「桜はどう? ファルネーゼって名前に聞き覚えはある?」

 

僕の隣に座っていた桜がふるふると首を横に振る。

 

桜「何も。スピカのことも、この国で出会う前のことは思い出せない。断言する」

スピカ「そんな・・・いえ、生きていてくれただけでも幸運と思わなければならないのでしょうね」

 

スピカさんが落ち込む。そう言えば・・・

 

レイガ「確かスピカさんのフレンネル家って、代々ゼノアス王家の護衛を務める家系じゃなかった? ってことは、ファルネーゼ・・・つまり桜はゼノアスの王女ってことなの?」

 

しまった、という顔をして目を泳がせるスピカさん。ありゃ聞いちゃまずかったか?

そのうち大きく息を吐くと僕へ向けて語り始めた。

 

スピカ「・・・そうですね。私はすでにゼノアスの人間ではないですし、事が事なので、話しても構わないと思います。確かにファルネ様は、魔王、ゼルガディ・フォン・ゼノアス様の庶子であらせられます」

 

桜はイマイチ自分のことと把握できてないのか、相変わらず僕の方を見て首を傾げている。

 

レイガ「庶子ってことは、正妻以外の子供ってことか・・・でも隠しておくようなことなの」

スピカ「ファルネ様の存在はごく一部の者しか知りません。それはファルネ様には魔王族の証たる王角が無かったため、存在を抹消されたからです」

レイガ「おうかく?」

スピカ「本来魔王の血を引く者は、男女関係なく角を持って生まれてくるのです。しかしファルネ様にはそれが無かった。魔力の質から間違いなく魔王様の子であるのに、魔王族の証を持たぬ忌み子。ファルネ様の存在は王家の記録から抹消され、存在しないことにされました」

 

はあッ⁉ たかが角があるかないかで自分の娘の存在を否定するのか⁉

僕が顔を顰めていると、それを察したのかスピカさんがすかさずフォローする。

 

スピカ「魔王様はその方がファルネ様にも母上様であるフィアナ様にも良いとされたのです。角の無い魔王族など軽蔑の対象でしかありませんから……。奇異の目を向けられるよりも、普通の人間として生きた方が幸せになれるとお考えになられたのでしょう」

レイガ「人間? 桜・・・ファルネのお母さんは人間なのか?」

スピカ「はい。本来、魔王族との間に生まれる子は、配偶者がいかなる種族でも魔王族の子が生まれてきます。ですので角の無いファルネ様は母上様と同じ人間だと判断されました。おそらくなにかの突然変異で、母方の血が強く出たのだと。ですが・・・」

 

スピカさんが桜をちらりと見て言い淀む。

彼女が言うには、桜のお母さんは側室になることを拒んだらしい。理由は側室になったら桜とは離れ離れになってしまうからだそうだ。

それから数年間は親娘共々、表向きはフレンネル家の客人として暮らし、何事も無く平穏な暮らしだった。

しかし桜が10歳のときに変化が起きた。無かったはずの王角が生えてきたのだ。これにはフレンネル家も魔王も驚き、困惑した。何故なら桜の王角が伸びるにつれて、その魔力も増大していったからだ。

ゼノアス王家では男女関係なく魔力の最も高い者が次代の魔王となるそうだ。そして桜は皇子たちよりもはるかに高い魔力を有してしまった。

桜の母親は娘を魔王の後継者などにさせる気はなかったが、貴族たちはそうは思ってはくれず、特に皇子たちの母親である、王妃たちの実家の者は疑いの目を持つだろう。

自分たちの皇子を差し置いて魔王の座に着く気ではないか、と。

第一皇子、第二皇子、共にそれぞれ母親を病気で亡くしていたため、その実家が皇子の後ろ盾として幅を利かせていた。

そんな者たちにとって桜の存在は邪魔者でしかない。

桜の身を守るため、魔王は先ほどの「変幻の瞳」を渡した。魔力を吸い取り、周りの者に偽りの姿を見せるアーティファクト。桜が成長すれば王角は自らの意志で縮ませることができるようになるので、それまでの処置としてだったらしい。

ところがある日、二人で買い物に出かけた桜とスピカさんは、突然仮面を被った襲撃者たちに襲われた。

相手は武器を持った手練れの者たちで、スピカさんには剣はあったが盾が無かった。なんとか自らを盾にし、桜を逃がすことができたが、そのあと仮面の襲撃者による自爆に巻き込まれ、意識を失ったらしい。

 

レイガ「その仮面の襲撃者って・・・もしかして」

スピカ「あとでわかりましたがユーロンの暗殺者でした。それがユーロンの命令だったのか、なにか取り引きによるものだったのかはわかりません」

 

やっぱりか。だからあの時桜は僕を助けようとしてくれたのか。あれは自分が襲われたときの記憶が一部蘇ったのだろう。

 

スピカ「その後、私が目を覚ますと屋敷のベッドの上で、私の父からファルネ様の死を知らされました。屋敷の庭にファルネ様の身体の一部が投げ込まれていたのです。あの右脚と右手を見たときの絶望を私は今だに忘れられません」

 

それから護るべき者を護れなかった後悔を背負い、スピカさんは家を出た。建前上はフレンネル家になんの落ち度もないけどスピカさんにはそれが許せなかった。なにより自分自身を許せなかったから家を出た。

当然、自らの主を殺した奴らの足取りをスピカさんは追った。仮面をつけた奴らがユーロンの暗殺者だとわかるのにそう時間はかからなかったが、いざ、その核心に迫ろうとしたところに、あれが起こった。そうフレイズの大侵攻だ。

結果ユーロンは滅びてしまい、黒幕はわからず終い。これからどうするべきかと自問自答していたところへ、追い打ちをかけるように魔硬病が発病し、死に場所を求めてこの国へ辿り着いたということらしい。

 

レイガ「ざっと聞いたところでいくつか疑問点があるんだけど」

スピカ「と、いうと?」

レイガ「まず一つ、僕が手足を無くして、死にかけていた桜を拾ったのは、ゼノアスではなくイーシェンであるということ。二つ暗殺者がユーロンの者だとして、ユーロンに桜を殺す理由があるのかということ。最後に桜に角なんか初めからなかったということ・・・」

桜「あの、ね、王様。私、角出せる」

レイガ「ほら、角出せるって・・・へぇ⁉」

 

横に座っていた桜がもじもじと言いにくそうに口を開いた。

桜が目を閉じる。すると彼女の耳の上あたりから小さな白銀の角が伸びてきた。

 

レイガ「これが・・・王角」

スピカ「やはり角を隠してましたか」

 

桜をファルネだと断定したスピカさんにはわかっていたらしい。

 

レイガ「・・・どうして黙ってたの?」

桜「最初は・・・自分が他の人と違うことが怖かった。あとになってこの国では魔族も差別しないってわかったけど、言い出すきっかけが無くて・・・」

レイガ「そっか・・・行き倒れていたスピカさんを助けたのも魔族だったから?」

 

こくりと桜は頷く。

 

レイガ「となると、桜・・・っと、ファルネか。ファルネはこれからどうしたい?」

桜「桜でいい。王様がくれた名前。気に入っているから」

レイガ「そっか、ありがとう」

 

彼女がそう言うならウチの国にいるときはその方がいいかもしれない。

 

桜「記憶が戻ってないから、あまり実感が無い。ゼノアスに戻りたいとも思わないし、私を殺そうとした人たちに復讐しようとも思わない。ただ・・・」

レイガ「ただ?」

桜「お母さん、には・・・会ってみたい」

 

僕の方をじっと見上げて、桜がそう告げる。

 

レイガ「あれ? お父さんの魔王は?」

桜「よくわからないし、どうでもいい」

 

バッサリだな。う~む、まあ、いっか。

 

レイガ「それでスピカさん、桜のお母さんは今どこに?」

スピカ「多分、我が家に今もご滞在かと。ファルネ様が亡くなられて、ショックのあまり、寝たきりになってしまいましたが・・・」

 

無理もない、か。じゃあ顔を見せて、元気なところを見せてあげないとな。

 

レイガ「本当はあまりしたくなかったけど、桜の記憶を戻すか」

桜&スピカ「「え⁉」」

 

僕の言葉に驚く二人。

 

スピカ「そ、そんなことができるのですか、陛下」

レイガ「まあね。でも嫌な記憶も戻るから躊躇っていたけど・・・桜はどうしたい?」

桜「うん・・・お願い、王様」

レイガ「わかった」

 

 

 

 

 

追いかけて来る。仮面を被った黒装束の男が、腰の湾刀を振りかざし、背中をバッサリと斬られる。

背中の衝撃に倒れ込み、それでもまだ逃げようと立ち上がろうとした所を、今度は横薙ぎに右足を斬られた。膝から下が斬り落とされる。再び振り下ろされる刀を防ごうと無意識に上げた右手の手首から先が落ちた。真っ赤な鮮血が裏路地に飛び散り、視界を染める。

死ぬ。殺される。嫌だ。死にたくない。逃げなきゃ。奴らが追ってこれないほどに遠くへ、遠くへ逃げなくては。死にたくないなら、逃げなくては。

そう思ったとき、頭に浮かんだ言葉をとっさに桜はつぶやいていた。

 

桜「テレ、ポート」

 

次の瞬間、桜は水の中に投げ出されていた。何が起こったのかわからぬまま、もがいて手足を動かすが、何もできない。身体が流れに逆らえず、息もできなくなり、痛みと苦しさの中で桜の意識はぷっつりと途切れた。

 

 

 

 

 

桜の両手を握り、額を合わせて【ルーマ・ゴルド】で記憶を辿っていた僕は、目を開いた。

 

桜「・・・思い出した。私は・・・ファルネーゼ・・・ファルネーゼ・フォルネウス・・・。あの日、スピカと一緒に襲われて、私は・・・」

 

自分の記憶を確認するかのように、桜は言葉を紡いでいく。

疑問の一つであった桜がなぜイーシェンにいたのか見当がついた。おそらくは襲われた恐怖から、無意識に無属性魔法に目覚めたんだな。【テレポート】とは、たぶん言葉そのままの転移魔法だ。それによりイーシェンへと転移し、川に落ちたんだ。角は魔力の消耗により、一時消えたと思う。

 

スピカ「記憶が・・・戻ったのですか?」

 

恐る恐るスピカさんが桜に声をかける。

 

桜「まだぼんやりとだけど・・・わかる。スピカのことも、お母さんのことも。思い出した。いろんなこと」

スピカ「ファルネ様っ・・・」

 

スピカさんがぽろぽろと涙を流す。それを見た桜が小さく笑っていたが、手をつないでいる僕には彼女が少し震えているのがわかった。

 

レイガ「桜・・・ひょっとして怖い?」

桜「ん・・・少し・・・。斬られるところは思い出したくなかった、から」

 

少し青ざめている顔でぎこちなく彼女は笑った。無理もない。自分が殺されかけた瞬間の記憶を、鮮明に甦らせてしまったのだから。

 

レイガ「ごめんね。でも大丈夫。桜のことを傷付けるような奴は、僕が片っ端からぶっ飛ばす。もう怖がらないでいいよ」

 

そんな桜の頭を撫でて、安心するように言い聞かせる。

 

桜「ん・・・。王様なら安心・・・」

 

微笑んだ桜が、ぎゅう、と抱きついてくる。

ん? 何か視線を感じる・・・ばっ、と部屋の扉の方を見ると、少し開いた隙間から、ユミナたちの顔が見えた。

 

ユミナたち『9人目・・・?』

 

声を揃えてつぶやく僕の婚約者たち。・・・定員埋まったな。

 

 

 

 

 

リーン「【テレポート】は転移魔法の中でも扱いが難しい魔法ね。正直、ダーリンの【コネクト】の方が使い勝手はいいと思うわ。まああれは例外だけど」

 

紅茶を飲みながらリーンが説明してくれる。

 

レイガ「具体的にはどう違うの?」

リーン「【テレポート】は移動する「方向」、「距離」を把握してないといけないのよ。転移先に別の物体があると移動できないし、基本的には術者しか対象にならないの。手をつないだりしてれば同時に移動できるけど、せいぜい他に二人がいいとこ限界なんじゃないかしら」

レイガ「じゃあ桜がイーシェンに転移したときは・・・」

リーン「「方向」はデタラメ、「距離」は魔力が尽きるまで跳んだんじゃないかしら。よかったわよね、海の真上とかじゃなくて」

 

一歩間違えば、危ない場所に転移することになるな。

 

リーン「逆に視界に入る位置なら【テレポート】の方が使い勝手はいいかもしれないわね。不意打ちや攻撃手段としては使えるんじゃない?」

 

なるほど。そっちの使い方が本来の使い方なのかもしれない。

 

リンゼ「桜さ・・・ファルネ、さんは使えるんですか? 【テレポート】」

桜「桜でいい。私は魔力の使い方がわからないから、今はたぶんできない」

 

リンゼの質問に桜が答える。そうか、桜は魔法の使い方自体がわからないのか。襲われたときは無我夢中だったから使えたっぽいな。偶然の発動が結果、生命を救ったわけだ。

 

エルゼ「無属性魔法って覚醒したばっかだと、感覚がうまく掴めないのよね。気合い入れて発動しても失敗したり、適当に発動したら成功したり。そのうちコツみたいなものを掴めてくるんだけど」

 

エルゼがクッキーをつまみながら、口を挟んでくる。どうやら彼女も「ブースト」をものにするまで、結構苦労したようだな。

 

ルー「それで、どうするんですの? 桜さんはゼノアスへ帰るのですか?」

 

ルーが核心を突いてきた。そうなんだよな。結局は桜の気持ち次第だけど、一応ゼノアスの姫で、王位継承者でもあるし。

 

桜「・・・私はゼノアスに残るよりもこの国で暮らしたい。もし、できるのならお母さんとスピカと一緒に」

スピカ「わっ、私もファルネ様とこの国でこれまで通り騎士として働きたいと思っています。どうせ実家は兄が継ぎますし、なんの問題もないです!」

 

桜の言葉にスピカさんが立ち上がり、自分の意思を示す。

とはいえ最低でもスピカさんのご両親には説明しないとダメだろう。魔王陛下は・・・どうしようか? 結婚してないなら別に、桜のお母さんを連れて行くのに許可なんかいらないかな?

 

レイガ「桜には魔王を継ぐ気は無いんだよな?」

桜「無い。天地がひっくり返っても嫌」

 

それなら大丈夫か。最悪また刺客が来たら、やり返せばいいし。

 

レイガ「どっちにしろ一回ゼノアス・・・というより、桜のお母さんの所、つまりはスピカさんの実家、フレンネル家へ行かないとな」

スピカ「そうですね。まずフィアナ様にこれからのことを相談するのがいいかと思います」

 

スピカさんもこう言ってることだし、さっそく桜のお母さんに会いに行くか。

メンバーは僕と桜、ユエとスピカさんに、連絡役として琥珀について来てもらおう。

スピカさんにゼノアス王都にある実家の記憶をもらい、【コネクト】を開いた。

【コネクト】を抜けるとそこはスピカさんの実家であるフレンネル家の中だ。桜の姿を見られるとまずいから、直接屋敷内へと転移した。

 

桜「懐かしい・・・。思い出した。私はここで暮らしていた」

 

桜が小さくつぶやく。記憶がはっきりとしてきている証拠だ。

突然、辺りを見回していた桜が、廊下を右手の方へ全力で駆け出した。

 

スピカ「あっ、ファルネ様っ⁉」

 

スピカさんが慌ててそれに続く。僕とユエ、琥珀もよくわからないが、とにかく駆け出した。

廊下を駆けていく僕らを、通りがかった洗濯籠を持った若いメイドさんが目を丸くして立ち尽くす。

 

メイド1「ふ、ファルネ様っ⁉ と、お嬢様っ⁉ え⁉ ええっ⁉」

 

驚いているメイドさんを無視して、ある部屋の前で桜が立ち止まり、その扉を勢いよく開け放った。

追いついた僕らが桜の肩越しに部屋の中を覗き込むと、柔らかな光が差し込む白いカーテンの前、そこに置かれた大きなベッドの上で、一人の女性が上半身を起こし、こちらを見ていた。この人が・・・。

 

?「ファル、ネ・・・?」

桜「おかぁ、さん・・・お母さんっ!」

 

桜が真っ直ぐにお母さんの元へ駆けていき、その胸に飛び込んだ。ぼろぼろと泣きじゃくりながら、母親に抱きつく。

 

フィアナ「そんな・・・本当にファルネなの? 生きて・・・本当に生きて・・・!」

桜「お母さん・・・!」

スピカ「フィアナ様。その方は本当にファルネ様です。生きておられたのですよ。ここにおられるテンペスト・レイ公王に救われたのです」

 

スピカさんの声を聞き、本当に娘が戻ってきたと確信したのか、涙を流しながらお母さんも娘を抱きしめた。

死んだと思っていた娘が帰ってきたのだ。邪魔しちゃ悪い。

僕たちはしばらく二人を見守ることにした。

 

メイド「で、あなた誰ですか?」

 

僕はメイドさんに怪しい人物として見守られるハメになった。

 

バイス(締まらない最後だな)

カゲロウ(だな)

ラブコフ(ラブ)



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第二の支配種

〈レイガサイド〉

フィアナ「本当になんとお礼を言ったらいいのか……。娘を救けていただき、ありがとうございます」

レイガ「気にしないで下さい。当然のことをしたまでですから」

 

さっきから頭を下げっぱなしの桜のお母さん、フィアナさんに僕は気にしないように声をかけた。

体調が悪そうだったので『フルムーンレクト』をかけたら、ずいぶんと顔色が良くなった。

でも一番の薬は隣に腰掛けている実の娘の笑顔だろう。

 

スウェラ「私も娘を助けてもらい、お礼の言葉もございません。娘共々感謝しております」

 

同じように頭を下げてきたのは客間の椅子に腰掛けたダークエルフの女性。スピカさんの母である、スウェラさんだ。

旦那さん、スピカさんの父親は留守だそうで、今は僕とユエ、琥珀と桜母娘、スピカさん母娘でお茶をいただいているところだ。

 

スウェラ「まさか魔硬病を治せる方がいたとは・・・」

レイガ「うちの国で病原体を研究したら、なんとか特効薬を作れるみたいなので、できたらお渡ししますよ」

スウェラ「重ね重ねありがとうございます」

 

スウェラさんが頭を下げる。

フローラがスピカさんの剥がれ落ちた皮膚から回復薬を作れそうだと言っていた。うちの国だって魔族は少人数ながらいるから、いつかかったっておかしくはない。

さて、それよりも本題に入ろう。

 

レイガ「それでですね。桜・・・ファルネの希望で、よろしければフィアナさんにテンペスト・レイへ来てもらえないかということなのですが・・・」

フィアナ「私が、ですか?」

 

フィアナさんが驚いたように目を見張る。

 

レイガ「事情は伺っています。失礼ですが、ここにいてまた桜が襲われないとも限りません。脅すわけではないですが、逆に、肉親であるあなたが狙われる可能性もないとは言えません。今のところ、桜は死んだとされているので、大丈夫だとは思いますが・・・」

 

この屋敷の人たちは味方だと思うけど、どこから漏れるかわからないから。ま、漏れてもテンペスト・レイにいればそう簡単に手は出せないでしょう。フレイズ退治やら竜殺しやらで、うちの国名もかなり轟いているみたいだし。

不安げな表情でフィアナさんは桜に語りかける。

 

フィアナ「あなたはそうしたいの?」

桜「うん。テンペスト・レイはとてもいい国。魔族だとか獣人だとか関係なく、仲良く暮らしてる。お母さんもきっと好きになる。断言する」

フィアナ「そう」

 

きっぱりと言い切った娘に微笑むフィアナさん。僕の方を向き、口を開く。

 

フィアナ「その国で私にもなにかできることがありましょうか?」

レイガ「なにか得意なことはありますか?」

フィアナ「そうですね・・・。裁縫や刺繍を少々。それと昔、フェルゼンにいたときは子供たちに勉強を教えていましたけど・・・」

レイガ「それならこちらからお願いがあります。実はうちの国の子供たちに、勉強を教える施設を作ろうかと考えていて、よろしければそこで教えていただけませんか」

フィアナ「専門的な学問で無ければ大丈夫だとは思いますが・・・」

レイガ「そうですね、読み書きに計算、歴史に道徳、今のところそんな感じですかね。もちろん他にも教える人員は増やすつもりです」

フィアナ「それならなんとかなると思います」

 

学校は絶対に作ろうと思っていたから。フィアナさんがそこの先生になってくれるならありがたい。

 

フィアナ「ですが陛下。私たち親娘は、今までこの子の父親である魔王陛下に頼って生きてきました。その庇護を離れるのなら、きちんと説明をしてこの国を去りたく思います」

レイガ「やっぱりそうですよねえ・・・」

フィアナ「それにあの人もファルネが生きていたことを知れば喜ぶはずです。亡くなったと聞いたときは、それは荒れに荒れたそうですから」

 

それなりに娘のことを心配はしていたんだ。まあ僕だったらユーロンに殴り込みにいくけど。

 

レイガ「魔王陛下に会うことってできますか?」

 

スピカさんの隣に座るスウェラさんに聞いてみる。

 

スウェラ「主人が帰ってきたら聞いてみます。たぶん大丈夫だと思いますけど」

 

スウェラさんが言うにはスピカさんのお父さんは、魔王陛下の護衛をしているんだそうだ。子供の頃から一緒らしく、気安い関係らしいので、おそらく会わせてもらえるとのことだ。

 

レイガ「それじゃあ一回テンペスト・レイに戻って」

 

ドガァァァンッ!!

 

突如地面が大きく揺れた。なにか大きな物が落ちたような衝撃に、部屋中のガラスがビリビリと震える。

 

レイガ「なんだ⁉ 地震か⁉」

 

突然の出来事に、僕らがその場で様子を窺っていると、扉を勢い良く開けて、フレンネル家のメイドさんが飛び込んできた。

 

メイド「お、奥様! し、城が・・・万魔殿パンデモニウムが!!」

 

庭へ飛び出し、空を飛んで魔王国ゼノアスの王城を見る。そこでは万魔殿パンデモニウムが炎を上げていた。

右側の塔が崩れ落ちる。いったいなにが起きているんだ⁉

 

レイガ『ユエに琥珀、二人はここでみんなを守って。僕は城へ行って様子を見てくる』

琥珀『御意。どうかお気をつけて』

ユエ『気をつけてね、レイガ』

 

念話でユエと琥珀に連絡して、一気に城の方へ飛んでいく。

上空から見える城は、至るところから煙が上がり、そこらじゅうに屍が転がっていた。全部ゼノアスの騎士や衛兵らしい。

地上に降りて息のある者を探そうとしたが、誰一人として生きてはいなかった。

万魔殿パンデモニウムの中を、進んで行くと、死体がいたるところに転がっている。これは一方的な殺戮だ。どれもこれも心臓をひと突きにされている。

 

ユーリ(ひどいな、これは)

カゲロウ(あきらかに楽しんで殺しているな)

騎士「ぎゃああああああああッ!₁」

 

叫び声が聞こえてきた方へ向かう。中庭のような開けた場所に、たくさんの魔族の騎士たちが誰かを囲んでいた。

額から臍まで以外の身体が鋭角な結晶で覆われた「人型」。

赤い眼と、逆立った結晶化した髪。

 

レイガ「支配種・・・」

 

なんちゅー間の悪いタイミングだな。これで二体目か。

しかもあいつは笑っていやがる。笑いながら目の前の騎士たちに向けて、槍のように尖って伸びた右腕を繰り出し、殺していく。間違いないあっちのタイプだ。

 

レイガ「いい加減やめろよ!」

 

ガシッとそいつの槍となった腕を掴む。すると笑みを消した顔がこちらに向けられた。

 

支配種「#im*@n+oh@o々m@〆ek@?」

レイガ「・・・相変わらず何しゃべってるかわからねえな」

 

支配種の男は標的を僕に変え、右腕をこちらに伸ばしてくる。

 

レイガ「結構早いな」

 

が、僕にとっては遅い。攻撃を避けながら、もう一度腕を掴み、中庭の壁に向け思いっきり投げつける。壁がガラガラと崩れ落ちた。やべ! あとから修理しないと。

すぐさま瓦礫が吹っ飛び、中から土で汚れた支配種が立ち上がった。

 

支配種「*y@r€un#@、o×m=@〒e」

レイガ「だからわからねえって言ってんだろ」

 

支配種が近くに倒れていた死体の頭に、突然右腕の槍を突き刺した。すぐさま腕を引き抜くと、その死体の頭からなにかが芽吹く。それは瞬く間に育っていき、美しい結晶の花を咲かせた。しかしその花もすぐに砕け、花のあった中央にアーモンド状のなにかがぶら下がる。あれは・・・果実か?

支配種はそれをもぎ取ると、口の中に放り込み、バキバキと咀嚼して飲み込んだ。

 

支配種「+no#dom¥o÷tu々ku=rik%@ene△eto€ik〆en*eek@」

 

ゴキゴキと喉の辺りを左手で砕いたりしている。なんだ?

 

支配種「#t€o、@、@……あー、こうか?」

レイガ「喋った・・・」

支配種「お、繋がったか。俺様の言葉がわかるな?」

 

ニヤリと笑いながら支配種が僕の方へ赤い眼を向ける。

 

支配種「やるじゃねェか、お前。殺しがいがある奴だ。面白ェ」

レイガ「お前・・・支配種だろ。また結界は綻びたのか」

支配種「あ? 結界のこと知ってんのか。そうだよ。「揺り戻し」が起こる前に、ここの奴らを全員ぶっ殺す予定だったのによォ。ま、面白くなったから構わねェけどな」

 

支配種の男は右腕の槍を薄い形状の剣に変形させる。

 

レイガ「それより、お前・・・ただ話すためだけにそこの人の頭を突き刺したのか・・・」

支配種「あ? そうだけど、それがどうした? 死体になにをしようが勝手だろ!」

レイガ「そうか・・・」

 

僕は静かにギアトリンガーにあるギアをセットし、ある道具を召喚する。

 

レイガ「魔王国だから、ちょうどいいや」

 

僕はそれを腰に巻く。

 

『ジクウドライバー!』

レイガ「お前も「王」の核を探しているのか?」

ギラ「おうよ。邪魔なこいつらを殺しまくって、「王」の核はこの俺様、ギラがいただく。誰にも邪魔はさせねェ。だから─────死ね」

レイガ「死ぬのはテメエだよ!」

 

飛び込んできたギラの剣を紙一重で躱し、僕は時計型変身アイテム『ライドウォッチ』のリングパーツ『ウェイクベゼル』を回し、上部のボタン『ライドオンスターター』を押す。

 

『♪ ジオウ』

 

 

攻撃を躱しつつ、ライドウォッチをベルトの右側スロットに装填。

 

『♪』

 

音声が鳴り、僕の後ろに大きな時計のエフェクトが現れる。ベルト天面のボタン『ライドオンリューザー』を押す。

 

レイガ「変身!」

 

ベルト本体を反時計回りに回転させる。

 

『♪ ライダータイム! 仮面ライダージオウ!』

 

大きな時計の文字盤に『ライダー』の文字が出現。文字盤から僕の顔に飛んでくる。

最高最善の時の魔王『仮面ライダージオウ』の誕生。

 

ギラ「おいおい、なんだよそれ」

レイガ「お前に教えるつもりはねえよ」

『ジカンギレード!』

 

『ケン』と書かれたジオウ専用武器『ジカンギレード』を構え、ギラの剣を受け止める。

 

ギラ「はははッ! いいねいいねェ! 久しぶりに熱くなれそうだぜ! お返しだ、受け取れよ!」

 

そう言って僕に向けた左手の指が、五本、弾丸のように撃ち出され、こちらへと飛んできた。

僕はジカンギレードをジュウモードへ変形させる。

 

『ジュウ』

 

こちらに飛んでくる弾丸をすべて撃ち落とす。

左手の指を再生させて、ギラが斬りかかってくる。

 

『ケン!』

『♪ エグゼイド!

 

ジカンギレードをケンモードに変形し、ギラの剣を受け止めつつ、エグゼイドウォッチを起動し、左側のスロットにセット。ベルトを回転させる。

すると、僕の前にエグゼイドをモチーフとしたライダーアーマーが現れ、僕の身体に纏う。

 

『アーマーターイム! ♪ レベルアップ! エ・グ・ゼ・イー・ド!

 

仮面ライダージオウエグゼイドアーマーにチェンジし、両腕の『ガシャコンブレイカーブレイカー』でギラの身体をぶん殴る。

 

レイガ「おらッ!」

ギラ「がッ!」

 

咄嗟に両手をクロスして防いでいたギラ。

だが、両腕はひび割れ、今にも折れそうな状態だった。しかしみるみるうちに再生してしまう。

 

レイガ「相変わらず、支配種は再生早えな」

ギラ「てめェ、やってくれるじゃねェか。まさか俺様の腕を砕くとはなァ。こりゃあ本気を出さねェといけねェなァ」

 

ガキャァァンッ! とガラスの割れるような音と共に、ギラの左右の空間が割れ、コオロギ型の下級種が出現する。こいつ、他のフレイズを呼べるのか⁉

その二体を左右の手で掴むと、バキバキバキと、下級種がそれぞれの腕に取り込まれていく。融合とでも言うのか、ギラの両腕は、バルタン星人の両腕のようにハサミ状態になっていく。その中にある下級種の核に、光が収束していく。

 

ギラ「吹っ飛びやがれッ!」

レイガ「お前がな!」

 

ベルトにセットしたライドウォッチのライドオンスターターを二つとも押す。

 

『フィニッシュタイム! エ・グ・ゼ・イ・ド!

 

ベルトを回転。

 

クリティカーーール! タイムブレーーーイク!』

 

向かって来る粒子砲に向かって、思いっきりガシャコンブレイカーブレイカーでぶん殴る。

前回の支配種戦を活かして、パワーを上げておいたおかげで相殺することができた。

 

ギラ「てめェ・・・なにモンだ?」

レイガ「光神玲我。通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」

 

ガラガラとギラの両腕から下級種が砕け散る。その顔には先ほどまでの笑いは無くなっていた。

不意にその姿が小さく揺れる。

 

ギラ「チ、「揺り戻し」が来やがったか。面白ェところだがここまでだな。レイガ、だったな。次に会うときは必ずぶち殺してやンよ」

レイガ「それはこっちのセリフだ。次会ったら絶対倒す」

 

ギラがふっ、と消え去る。

後には砕けた下級種が残されたのみだった。

 

レイガ「はあ・・・・」

 

大きく息を吐きながら、ベルトのライドウォッチを二つとも外して、変身を解除する。

 

レイガ「ん?」

 

周りを見回すと、今度は僕を怪しい人物だと様子をうかがっている騎士たちが目に入る。そりゃそうか。

 

レイガ「えっと・・・テンペスト・レイ公国公王、光神玲我です。ゼノアス魔王陛下にお目通りってお願いできます?」

 

最悪なファーストコンタクト。

 

 

 

 

 

?「ファルネーゼ!」

 

バンッ! と扉を開けた魔王国ゼノアスの魔王陛下、ゼルガディ・フォン・ゼノアスは、フレンネル家の居間にいたフィアナさんの隣に座る桜の姿を見て、喜びの声を上げた。

そのまま娘を抱き締めようと腕を広げて向かっていったが、桜に綺麗に躱され、頭からソファーに突っ込む。

 

?「何故っ⁉」

桜「怖い。あと汚い」

 

あー……まあ、確かに涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった人に抱きつかれたくは・・・無いな。

すすす、と父親から離れるように、桜は後から室内に入ってきた僕の背に隠れる。

 

ゼノアス「テンペスト・レイ公王! ファルネーゼを救ってくれたことに関しては心から感謝しているが、親の前でイチャつくのはどうかと思うが!」

レイガ「これをどう見てイチャついているように見えるの」

 

ビシィッ! と指を突き立てながらまくし立てる魔王。魔王って聞いてどんな人かと思ったけど・・・親バカだな。

 

バイス(それレイガが言えたことか)

カゲロウ(娘たちに甘いくせにな)

ラブコフ(ラブ! あまあまラブ)

 

何か三人ほどうるさいけど、無視無視。

あのあと、事情説明と桜のことを伝えるため、魔王陛下に会った。一緒にフレンネル家の家長であり、魔王陛下の護衛にしてスピカさんの父親でもあるシリウスさんにも会った。

そこで今までの説明と戦闘の経緯、そしてあいつが楽し半分に殺しまくった人たちの蘇生を行った。一番重要な桜のことを話し終えた瞬間、魔王陛下が万魔殿パンデモニウムを飛び出してしまい、それで、そのままフレンネル家に飛び込んだってわけ。

突然入ってきた魔王に、スピカさんとスウェラさんもびっくりして動けないでいる。

 

?「まあまあ、落ち着いて下さい、陛下」

ゼノアス「む・・・。シリウスは公王の肩を持つのか」

シリウス「公王様の、というよりファルネーゼ様の、ですな」

 

僕の背後から現れたダークエルフの青年がスピカさんの父親、シリウスさんだ。褐色の肌に綺麗な銀の長髪を後ろでひとつにまとめている。

 

シリウス「それに公王陛下にはファルネーゼ様だけでは無く、我が娘、我が国をも救ってもらいましたし。それは陛下とてお認めになるでしょう?」

ゼノアス「うぐぐぐ」

 

渋い顔をして黙り込む魔王陛下。あんまり失礼なことは言いたくないけど・・・この人が魔王で大丈夫なのか?

魔王陛下の前へフィアナさんが進み、膝を折って言葉を紡ぐ。

 

フィアナ「陛下に申し上げます。ファルネーゼはもう一人前であり、自分のことは自分で決めることができます。娘はテンペスト・レイ公王の元へ行くことを願っており、私も娘と共に参ろうと思う所存にてございます。陛下の今までの厚き御恩情は深く感謝いたしておりますが、どうかお許し下さいますよう心よりお願い申し上げます」

 

突然のお別れ宣言にポカンと口を開いたまま、魔王陛下は固まっていたが、やがて顔を震わせて意識を取り戻した。

 

ゼノアス「ちょ、ちょちょ、ちょっと待て! ファルネーゼもフィアナもテンペスト・レイに行くというのか⁉ 許さん! それは許さんぞ!」

フィアナ「ですが陛下。私は陛下の妻ではございません。私の人生は私のものでございます」

ゼノアス「それはっ!・・・そうだがっ・・・!」

 

立ち上がり、凛として宣言するフィアナさんにたじろぐ魔王陛下。

 

バイス(怖え! レイガの妻も怒った時と同じくらいじゃないか)

レイガ(おい! いま失礼なこと言ったでしょ バイス!)

ゼノアス「で、では我が妃としてそなたを迎えよう! すでに第一、第二王妃もおらぬゆえ、そなたを正室として・・・」

フィアナ「お断りでございます」

ゼノアス「即答っ⁉」

 

にっこりと微笑みながらバッサリと魔王陛下のプロポーズを切り捨てる。

この人が学校の先生になったら、生徒たち逆らえない。

 

フィアナ「陛下と私が結婚すれば、ファルネーゼは魔王とならねばなりません。それは私わたくしも娘も望んではおりませんので」

ゼノアス「ぐ・・・しかし、ファルネーゼが余の娘であることは変わりないはず・・・」

フィアナ「ええ。その通りです。ですからどうぞ娘にお会いに来て下さい。テンペスト・レイへ」

ゼノアス「ぬ、ぐ・・・」

 

魔王陛下はニコニコと笑顔を浮かべているフィアナさんに言葉を詰まらせ、やがて、はあっ、と深く息をついた。そして僕の元まで来ると、深々と頭を下げた。これは・・・折れたな。

 

ゼノアス「娘を、よろしく頼む」

 

そこには一国の国王では無く、一人の娘を心配する父親の姿があった。いいお父さんだな。こういうところは僕も見習わないと。

 

レイガ「わかりました。お二人のことは任せ・・・」

 

下さい、と言いかけた僕の肩をガシッと掴み、顔を上げた魔王陛下の視線が僕を貫く。

・・・前言撤回・・・この人・・・ダメなタイプだ。

 

ゼノアス「娘を不幸にしたら許さんからな・・・?」

レイガ「・・・わかってます」

 

僕の後ろにいた桜がひょこっと顔を出し、魔王陛下へ向けて口を開く。

 

桜「私は王様と一緒にいられれば幸せ。みんなから許可はもらってるから、リンゼたちと同じお嫁さんになる。あと魔王ウザい」

ゼノアス「うえっ⁉」

フィアナ「あらあら。孫の顔が楽しみですわね」

 

ニコニコするフィアナさんとは対照的に、膝をつき崩折れる魔王陛下。

 

ゼノアス「ウザ・・・ウザい・・・。ファルネーゼが、ウザいって・・・」

 

僕もわかるよ。仮に娘たちにウザいって言われたら・・・・・・ダメだ、想像しただけで気絶しそう

それはさておき

 

レイガ「実はスピカさんもうちの国の騎士団に入ったのですが・・・」

 

僕の言葉にスピカさんがシリウスさんの前へ出る。

 

スピカ「父上。私はテンペスト・レイで今度こそファルネーゼ様を守ります。フレンネル家の名誉と盾にかけて必ずや・・・」

シリウス「わかっている。お前はお前の道を行きなさい。遠くにいても私たちはお前の幸せを願っているよ」

スピカ「父上・・・」

 

涙ぐむ娘を抱きしめるシリウスさん。

シリウスさんはずいぶんと理解のある父親だ。それにひきかえ・・・

 

ゼノアス「・・・ウザい? ウザくないよ? だってほら父親だし? 心配するのは当たり前だし? 普通。うん普通・・・」

 

ぶつぶつとなにかつぶやき始めた魔王陛下。僕もああならないようにしよう。

 

バイス(もう遅いわ!)

 

 

 

 

 

暗い路地を抜けて男は一人、その場所へと辿り着いた。魔王国ゼノアスの王都、ゼノスカルの商業地区に位置する、寂れた倉庫街の一角。

この倉庫、以前は大商家のひとつが所有していたものだが、その商家が手放してから放置されているものであった。

そんな誰も寄り付かない倉庫に、フードがついた黒いマントをまとった男が重い扉をこじ開け、中へと入った。

なにも無いガランとした倉庫の天井には大きな穴が空いていて、月の光が差し込んでいた。

その月光の下、男は探していた相手を見つける。

黒装束に仮面を被った男。

 

?「どういうことだ。仕事が終わったらもう会わない約束だろう。それともユーロンがあんなことになったから、雇って欲しいのか?」

?「・・・もう一人邪魔な奴がいるんじゃないのか?」

 

くぐもった仮面の男の声を聞き、やってきた小太りの男がフードを外しニヤリと笑う。青白い、三十路を過ぎた脂ぎった顔がテカテカと光った。

 

?「・・・ほう。お前たちが第一皇子を消してくれるならありがたいが、見返りはなんだ? 前のように武器の横流しか?」

 

そう言った小太り男の背後から、第三者の声が飛ぶ。

 

ゼノアス「・・・なるほど。それが取り引きの内容か。お前がゼノアスの武器をユーロンに横流し、その見返りに仮面の黒装束らに依頼した、というわけだ」

 

倉庫内に響いたその声に、驚きのあまり、後ろを振り返る小太り男。そこに立っていた、いるはずのない人物にさらに目を見開いた。

 

?「ま、魔王陛下⁉」

 

倉庫の入り口に立つ人影は、まさしくこの国の魔王、ゼルガディ・フォン・ゼノアスだ。

僕も変装を解く。

 

男「なっ、き、貴様・・・っ⁉」

レイガ「悪いが引っ掛けさせてもらったよ。あんた。セブルス・アルノスだっけ? 親父さんは何も知らないみたいだけど。仮面と手紙を見ても首を捻るだけで何もわからないようだったし」

 

そう。僕らは桜の暗殺を企てた奴を探すために、怪しい奴ら全員へ、仮面と「前の仕事のことで話がある」という内容、そしてここの住所を示した手紙を、それぞれの個室へ忍ばせておいた。タカカンドロイドに監視をしてもらいながら。

大半はわけがわからず首を捻ったり、誰のイタズラだと家の者に怒りを振りまいたりしたが、その中で一番挙動不審だったのがこいつ、セブルス・アルノスだ。

こいつだけ手紙を読んだ後、誰にも知られぬように仮面を机の引き出しに隠し、そそくさと手紙をポケットにしまった。

この男は第二皇子、ファレスの母の実家である商家、アルノス家の嫡男、つまり第二王妃の弟、ファレスにとっては叔父に当たる。いずれアルノス商会のトップとなる男であった。

 

ゼノアス「貴様が犯人とはな。さぞかし父のアルノス商会長も残念に思っていることだろう」

男「ち、違います、陛下! 私は姫君を殺害してなど!」

ゼノアス「ほう? 余は「殺害した」などとは一言も言っておらんが。それにファルネーゼのことをなぜお前が知っている?」

 

全身が凍りついたように動けなくなるセブルス。桜のことは一部の人間しか知らないし、知らないのだから殺されたなんて情報も入って来るはずが無い。

確かに第二皇子が魔王となれば、セブルスは魔王の叔父となる。その地位は商売人では収まらず、政務にも口を出せるほどの権力を持つかもしれない。そんな狙いがあったのだろうが・・・。

倉庫内に親衛隊長であるシリウスさんが率いた部隊が雪崩れ込んで来る。年貢の納め時だな。

 

ゼノアス「そいつを捕らえろ。本来ならこの場で八つ裂きにしてやるところだが、まだ聞くことがあるからな」

シリウス「はっ! 縄を打て!」

 

シリウスさんの命令により、呆然としていたセブルスは抵抗することも無くお縄になり、兵士たちがセブルスを連行して行く。

 

ユエ「何もしないの?」

レイガ「今回はね。現実では何もしないよ。現実ではね」

 

あいつが処刑されるまで夢の中で四肢が切り裂かれる悪夢でも見せてやる。

 

レイガ「これで一件落着ですかね」

ゼノアス「馬鹿を言ってもらっては困る、テンペスト・レイ公王。ここからが本番だ。まず、あいつの罪状を決定的にするためには、ファルネーゼの存在を公表せねばならん。しかし、ファルネーゼが魔王になることはフィアナが許さんときた。ならば、公表と同時に王家から切り離さねばなるまい」

レイガ「それってつまり・・・」

シリウス「公王陛下とファルネーゼ様の婚約発表ですな」

 

シリウスさんがズバッと切り込んできた。

 

レイガ「一応言っておきますが、すでに僕には婚約者が居まして・・・」

ゼノアス「ぬ・・・? まあ、おかしいことでは無いか。余も二人いた。王たるもの妻のひとりやふたり・・・」

レイガ「8人います」

ゼノアス「はちぃ⁉」

 

と、驚いていた魔王陛下の目がすぐさま座る。力強く肩を掴まれ、引きつった笑みを浮かべて語りかけてきた。

 

ゼノアス「公王陛下。ちょおっと詳しくお話ししようじゃないか。なあに朝までには終わるよ。これから長い付き合いになるわけだし、酒でも飲みながらどうかね?」

 

今日は眠れないかな

 

 

 

 

 

結局、桜の存在を公表すると同時に、僕との婚約も発表された。

その裏ではセブルスの犯した罪が明るみとなり、これにより第二皇子の祖父であるアルノス家当主は隠居、家は末娘の結婚相手が婿に入って継ぐことになった。

本来なら一族全員処罰されても文句を言えないほどの大罪であるのだが、仮にも第二皇子の血縁であり、第二皇子自らが王位継承権を放棄したことにより、減刑となった。

第二皇子はもともと魔王の座にはあまり関心が無いようで、それが逆にセブルスの焦りに繋がったのかもしれない。もちろん、セブルス本人は断頭台の露と消えることになる。

フィアナさんと桜の親子は、すぐさまテンペスト・レイへお引越し。

 

エルゼ「これで9人揃ったわけだから、もうこれ以上は増えないってことよね」

八重「変な人が入ってこなくてよかったでござるよ」

リーン「どうかしら? 嫁は9人でも愛人ポジションとかありそうよね・・・」

 

エルゼ、八重、リーンがなんかひそひそと話している。絶対にそれはない。愛人作るなら嫁にします!

そう言えば魔王国ゼノアスは相変わらず他の国とは交流を持たない方向らしいが、うちとは人材派遣という形で人をよこすようだ。

未だ魔族差別が残る他国に比べ、うちの国なら安心して働けるからな。まあそれにつけ込んで桜に会いに来そうだけど・・・大丈夫かな。

 

 

 

 

 

レイガ「とりあえずここに学校を建てようと思ってるんですよ」

フィアナ「いいですね。町に近いし、通うのにもちょうどよさそうです」

 

僕はフィアナさんを学校の建設予定地に案内していた。建設責任者の内藤のおっさんとボディガードの紅玉も一緒だ。

 

レイガ「まずは小さい校舎から始めて、少しずつ増築していこうと思います。教師はフィアナさん以外、何人か呼ぼうとは思いますが、最初は少人数の方がいいと思います」

フィアナ「そうですね。20人ほどから始めたいと思います。それぐらいならなんとか」

 

内藤のおっさんがフィアナさんの要望に応えて、細かいところを摺り合わせていく。これで子供たちの将来の選択肢も増える。

ここは二人に任せて僕は城に戻る。

城に戻ると桜とリンゼが何やら中庭で話し合っていた。

 

レイガ「なにしてんの?」

桜「王様」

リンゼ「あ、玲我さん。桜ちゃんが魔法を習いたいっていうから、属性を調べてたんですよ」

 

ああ、懐かしいな。あの魔石で判別するやつか。

 

レイガ「それで適性はいくつあったの?」

リンゼ「無属性と水属性、それと闇属性ですね」

 

三つもあるのか。

 

リンゼ「魔力もかなりあるみたいです。さすがにリーンさんほどはないですけど、私よりは多いかと」

 

一応魔族の頂点に君臨する魔王族だからな。それぐらいはあるだろう。

 

リンゼ「水属性は私が教えてあげることができますけど、無属性は自分で覚えるしかないですね。こっちは魔力の使い方さえ覚えれば問題はないと思いますけど、闇属性はユミナか玲我さんに教えてもらうしかないと・・・」

 

そうか、リーンは闇属性を持って無いんだっけ。

ちなみに僕らの属性は、

 

玲我=全属性

 

エルゼ=無属性 (ブースト)

 

リンゼ=火、水、光属性

 

ユミナ=風、土、闇属性

 

八重=無し

 

ルー=無し

 

スゥ=光属性

 

ヒルダ=無し

 

桜=水、闇、無属性 (テレポート)

 

リーン=火、水、風、土、光、無属性 (プログラム、トランスファー、プロテクション、?)

 

ってな感じ。

確かリーンの無属性魔法、四つあったはずだけど一個だけ聞いてないな。

 

リーン「あら、みんな集まって何してるの?」

 

噂をすればなんとやら。ご本人がやってきた。当然、ひょこひょことポーラもやってくる。

おっす! と言うように、しゅたっと腕を上げるポーラ。相変わらず元気だな。

 

レイガ「リーンの無属性魔法って四つだったよね? 「プログラム」と「トランスファー」、「プロテクション」と、最後は?」

 

疑問に思ったことを率直に聞いてみた。

 

リーン「あら、言ってなかったかしら? 「ディスカバリー」って言うんだけど」

 

ディスカバリー?

 

リーン「見つけたいものを明確にイメージすることで、その場所がだいたいわかるのよ。といっても本当に詳しく思い描かないと効果が薄いから、使いどころが難しいんだけど」

レイガ「探し物には便利そうだけど?」

リーン「例えばテーブルにリンゴが置いてあって、私がそれを「ディスカバリー」で探したとする。何も変わって無ければ見つけることができるかもしれないけど、もしもあなたが一口でもこのリンゴを齧ってたらアウトね」

 

判定厳しいな。

 

リーン「正確に言えば、リンゴだと他のリンゴもひっかかる可能性があるから、どのみち見つけにくいんだけど。私もどっかに行ってしまったポーラを探すくらいしか使わないわ」

 

迷子探しか。んー、確かに使いどころが難しいかな。

リーンの謎も解けたところで桜の魔法の練習に戻る。

まあ闇魔法って今は召喚魔法が主流だから・・・まずは召喚魔法からかな。

 

レイガ「とりあえず試しに何か召喚してみたら? 魔力を操る練習にもなるし」

桜「ん。やってみたい」

 

桜が小さく頷く。リーンが召喚の手順を教え、その間に僕とリンゼが召喚陣を中庭に描く。ポーラ手伝ってくれた。

準備が整い、桜がリーンの指導のもと、魔力を流し込みながら集中している。魔法陣の中には薄っすらと黒い靄もやが漂い始め、次第にそれが円陣の中心に集まり始めていた。

 

リンゼ「どんな子が出てくるんでしょう」

レイガ「もふもふの子だったりして」

 

ポーラを抱いたリンゼと小さな声で囁き合う。歌が得意な桜だから、セイレーンとか? 合唱隊とかできたら面白そうだが。

やがて黒い靄もやが晴れると、そこにうずくまっていた小さな影は、勢いよく立ち上がり、細身の剣を抜いて天高く掲げ、叫び始めた。

 

?「猫は人のために! 人は猫のために! 天知る、地知る、猫が知る! 我が猫騎士道、とくと御照覧あれ! ニャ!」

 

長靴。長い羽飾りのついた帽子。手袋。マント。レイピア。鞘付きのベルト。そして・・・黒猫。

 

レイガ「ずいぶんとテンション高い猫だね」

リーン「ケット・シー。猫の召喚獣ね」

ケット・シー「おっと、猫騎士だニャ。そこ大事ニャところだからニャ」

 

リーンの解説に訂正を入れる猫騎士。

 

桜「あなたと契約をしたい。条件を提示して」

 

桜の言葉に猫騎士は仰々しく帽子を脱いで一礼すると、

 

ケット・シー「条件ニャどとんでもニャい。か弱き女性を助けるは騎士の務め。貴女(あニャた)に喜んで剣を捧げましょう、ニャ」

レイガ「もし男だったら?」

ケット・シー「引っ掻いて帰るニャ」

 

突っ込んだ僕にしれっと答える猫騎士。

 

リーン「なら名前をつければ契約は完了よ」

桜「名前・・・王様、なんかいいのない?」

 

リーンの説明を聞いて、桜がこっちに振ってきた。

ところがケット・シーがちっちっちっ、と指を横に振って待ったをかける。

 

ケット・シー「男に名付けられるニャんて、ゴメンだニャ。こう見えても我輩、気位が高いからして。どこの馬の骨ともわからん輩に、」

レイガ「・・・【コネクト】」

 

ケット・シーの目の前に【コネクト】を開き、琥珀を呼び寄せる。

いきなり現れた琥珀を見た瞬間、気取っていた猫騎士の動きがピタッと止まった。やがて身体がガクガクと震え出し、歯がカタカタと鳴り出した。全身の毛と言う毛が逆立ってボワッとなっている。

 

ケット・シー「ニャ、ニャ、ニャんで、「白帝」がっ・・・!」

琥珀『主。なんですか、この猫は?』

レイガ「桜の召喚獣だよ。お気に召さないようだけど、今から僕が名前をつけようかなと思っていてね」

 

ジロリと琥珀が睨むと猫騎士がものすごい勢いで平伏し、額を地面に擦り付けた。

 

琥珀『我が主が名付けるのが不服なのか?』

ケット・シー「と、とんでもこざいませぬ! ニャ、ニャにとぞご随意に! ニャ!」

 

ものすごい手のひら返しだな。

 

レイガ「う~ん ニャンチューニャース、タマ・・・ニャンタロー」

 

ケット・シーが絶望溢れる顔をする。

 

レイガ「ダルタニャンのどっちがいい?」

ケット・シー「ダルタニャンの方でお願いします、ニャ!」

 

平伏する猫騎士に桜が命名すると、ホッとした様子で魔法陣の中から出てきた。若干、僕と琥珀からは距離を取っているが、まあ、仕方ないか。

 

レイガ「ところで桜、ニャンタローの消費魔力はどれくらい?」

桜「ん。それなり。1時間も持たないと思う」

ニャンタロー「名前が変わってるニャ! ニャンタローじゃニャくて、ダルタニャン、ニャ! 作者も間違ってるニャン!」

 

メタい発言をするな。

だってニャンタローの方が言いやすい。

僕はポケットからみんなにも渡してある指輪を取り出して、桜に渡す。

 

レイガ「この指輪に魔力が蓄えてあるから、ここからニャンタロー用に魔力を引き出すといいよ。半年くらいは持つと思う。なくなったらまた補充するから言ってね」

作者「ん。ありがと」

ニャンタロー「ダルタニャン、ニャ!」

 

まだ言ってる。けっこう面白い奴だから常駐させておこう。とか考えていると、どこからか紅玉が飛んできて、僕の腕にとまった。

 

ニャンタロー「えええ、炎帝までいるニャ! いったいどうニャっているニャ、ここは⁉」

 

腰を抜かしているニャンタローを一瞥し、そちらには関心がなさそうに、紅玉が口を開く。

 

紅玉『主。最後の遺跡らしきところが見つかりました』

レイガ「本当か?」

 

ようやくすべてのバビロンが揃うのか!



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最後のバビロン

ようやくここまで来た。


〈レイガサイド〉

僕らが向かっているのは大陸の南西、縦に長い大きな島と、それより小さな島が二つ並んでいる。

長い方の島はイグランド。小さい方の島はマルレット。二つの島を合わせてイグレットと呼ばれる王国だ。

イグレット王国は特に突出した資源はないが、海に囲まれた温暖な気候と風光明媚な景色が素晴らしい国だそうだ。

それとこの国の有名なものが海竜(シーサーペント)の存在である。

この竜はイグレット近海に住み、イグレットの民から守り神として敬われている。なんでも百年ほど前にサンドラ王国が侵略して来たときも、サンドラの船だけを沈めたと伝わる伝説の竜だ。

この島では海竜が見られた日は、大漁になるという言い伝えもあるらしい。

 

レイガ「それで、瑠璃はこの海竜とは知り合いなの?」

瑠璃『はい。眷属の一匹です。もともと人と付き合うのが好きな種でありまして、大方その島の人間たちを気に入ったのでありましょう』

 

竜がいると聞いて、僕は瑠璃をお供にそのイグレット王国へと向かっていた。空を飛ぶ巨大な竜と化した瑠璃の背中に乗って、その島へと向かっている。

 

レイガ「お、見えてきたな」

 

水平線の彼方にポツンと島が見えてきた。あれがイグレット王国か。

 

瑠璃『主。海竜が出迎えております』

レイガ「え?」

 

瑠璃の声に眼下を見下ろすと、海面から一匹の竜が顔を覗かせていた。蛇のような体をくねらせて、海面を浮き沈みしている。瑠璃よりも大きい。

 

瑠璃『久しいな。海竜』

海竜『蒼帝様におかれましてはご機嫌麗しく。そして蒼帝様の主たる光神玲我様、ようこそイグレットへ』

レイガ「僕のこと知ってるの?」

海竜『はい。ドラゴネス島での一件は竜の間で広められておりますゆえ』

 

あらら。ずいぶんと噂になってたみたいだな。まあ島の半分以上の竜を倒したりしたからな。僕じゃなくてあの三体がだけど・・・。恨まれたりしてないのは、瑠璃のおかげってのもあるんだろうけど。

 

レイガ「それにしてもよく僕らが来ることがわかったね?」

海竜『使い魔の鳥に話を聞きましてございます。玲我様のお探しの遺跡とやらは、自分の寝ぐらにしている洞窟の奥にありましたゆえに』

レイガ「あ、そうなんだ。じゃあ案内してもらってもいいかな?」

海竜『御意』

 

ザザザッと反転して泳ぎ始めた海竜に僕らはついていく。

海竜はイグレット王国の小さい方の島、マルレットの岸壁に近づくと、岩と岩の間にあった細い洞窟へと入っていった。僕たちも続いて洞窟の中を進んでいくと、かなり開けた場所へと出た。

僕は瑠璃の背中から洞窟の岩場に降り立った。

 

海竜『そちらの奥にある洞窟の先にお目当ての遺跡がございます』

 

海竜の視線の先にはさらに奥に続く洞窟が見えた。この先か。

瑠璃を海竜のところへ残し、僕は一人で洞窟の奥へと進んで行く。

その通路のような洞窟をしばらく進んで行くと、ある物が見えた。

形としては真球。一見、直径五メートル以上もある黒い球体にしか見えないが、球の側面にビー玉ような魔石が埋め込まれ、細いスリットが幾何学模様のように入っている。

 

レイガ「とりあえず、魔力を流せばいいんだよな?」

 

いつものようにすべての魔石に魔力を流してみると、パズルのようにガシャガシャと表面がパーツごとにスライドして小さな入り口が開かれた。

中へと足を踏み入れると静かに入口が閉まり、薄ぼんやりとした光の中に、床に描かれていた魔法陣が見えた。バラバラで。

 

レイガ「これって・・・スライドパズル⁉」

 

マス目にされたタイルのようなものに模様が描かれている。一個一個は独立していて、移動できるようになっていた。

まさしくスライドパズル。

 

レイガ「まあ最後だし、気ままに頑張るか」

 

数分後

 

レイガ「これで最後」

 

最後のパネルを揃えるといつも通り光の渦に飲み込まれて、眩しさに眩んだ目が慣れてくると、視界にはいつも通りバビロンの風景が広がっていた。

風に揺れる木々の間から、白亜の建物が見える。あれが『研究所』か。

そこへ歩いていこうとすると向こうの方から誰かが歩いてきた。茶色の髪を三つ編みにしてひとつにまとめ、キビキビとした動きでこちらへと向かってくる。

 

ティカ「ようこそ、『研究所』へ。私はこの『研究所』の端末、及び管理人、アトランティカと申しまス。ティカ、とお呼び下さい」

 

礼儀正しく腰を曲げて挨拶する少女。ピシッとして真面目そうな子だな。

 

レイガ「ティカね。よろしく。僕は・・・」

ティカ「光神玲我様、でスね。お話は博士から伺っておりまス」

レイガ「博士から?」

ティカ「はい。博士のお造りになった「未来視の宝玉」で、玲我様が少なくとも『庭園』と『研究所』に来られることだけはわかっておられました」

 

そんな魔道具もあったな。

 

ティカ「それで玲我様はいくつバビロンを見つけられましたか?」

レイガ「ここで最後だよ。他は全部見つけてあるから」

ティカ「なるほど。適合者としては充分。それでは『研究所』と私、アトランティカの譲渡、及びマスター契約を」

 

そう言うとティカは胸ポケットから、丸い綿のような物が取り付けられた小さな棒を取り出して、手渡してきた。

 

ティカ「それを咥えてください」

 

言われるがままに棒を咥え、しばらくしたら出すように言われた。

出した綿棒の親分を受け取ると、ティカはパクッとそれを自分で咥えてしまう。

 

ティカ「登録完了。マスターの遺伝子を記憶いたしました。これより『研究所』の所有権と、私、バビロンナンバー22、アトランティカはマスターに移譲されまス」

レイガ「・・・え? これで終わり」

ティカ「そうでスけど」

レイガ「・・・」

 

今までみたいにキスじゃないんだな。なんか拍子抜けしたというか。じゃあこの子を妻にしなくてもいいのか。

 

ティカ「ではこちらへ。『研究所』を説明スる前にマスターにはしてもらいたい仕事がございまス」

レイガ「仕事?」

 

ティカに案内されて『研究所』のひとつに入っていく。

『研究所』は幾つかの建物に分かれていて、それぞれの用途によって使い分けるらしい。

ティカは一番奥の部屋に設置されていた円筒形の機械の前まで僕を連れて行き、そこに棺桶の窓のようになっている部分を指し示した。

ガラス越しに見えるのは薄い緑色に光る溶液に浮かぶ幼い少女の顔。プラチナブロンドの髪は長いようにも見えるが、窓からは額から顎の部分までしか見えないのでなんとも判別しようがない。瞳を閉じているためわかりにくいが、なんかバビロンのみんなに似ている。

 

レイガ「この子って・・・」

ティカ「バビロンナンバーズ、ラストナンバー29。私たちの最後の妹でス」

レイガ「10人目いたんだ」

ティカ「と、同時にこの子は我々の生みの親、レジーナ・バビロン博士でもありまス。マスターにはその覚醒を手伝っていただきたいのでス」

レイガ「なるほど、バビロン博・・・へえ⁉」

 

聞き間違いかな

 

レイガ「えっと・・・この子がバビロン博士・・・ってどういうこと?」

ティカ「はい。簡単に申し上げまスと、肉体を新たに培養し、そこに博士の身体から摘出した脳を魔法で移植、融合してから最適化し、長い時間をかけて魔力同調させた個体がこれになりまス」

 

要するにクローン人間か。

 

レイガ「でもこの子十歳くらいだけど・・・」

ティカ「それ以上成長させると魔力同調が難しくなり、博士の記憶が阻害される恐れがありまスので」

 

話を聞くと、どうも寿命で死んでから移植したわけじゃなく、生きてるうちに自らの意思でこうなったらしい。

バビロンナンバーズの肉体は、普通の人間に比べてはるかに耐久性が高い。ファムの話を聞く限り、5000年稼動し続けてたらしいからな。ほぼ不老不死じゃないのかと思う。

 

レイガ「それで、僕はなにをすればいいの?」

ティカ「覚醒するための魔力を注ぎ込んでいただきたいのでス。元のバビロン博士と同じ生体波長を持つマスターなら、間違いなく目覚めさせることができまスので」

レイガ「いいけど、どこに流せば?」

ティカ「こちらにあるカプセルの魔石に手を当てて、少し流していただければ」

レイガ「OK」

 

ティカが指し示す水晶のような魔石の球に手を乗せて、軽く魔力を流す。しばらくして、カプセルの周りの機械が点滅したり、低い唸りを上げ始めた。水平だったカプセルが自動で動きだし、垂直になっていく。

カプセル内を満たしていた燐光を放つ水溶液が、ポンプによって排出され、ガシュンッとなにかが止まるような音がした。

 

ティカ「生体波動正常値、魔力同調問題無し。身体機能正常に稼動中」

 

カプセルの横にあるパネルをみながらティカがスイッチをパチパチと操作していく。最後に彼女が大きなボタンを押すと、プシュッと空気の抜けるような音がして、カプセルの蓋が横にスライドし収納されていった。

そこから現れたのは10歳ほどの全裸の少女。金色の髪が腰まで伸びている。

 

レイガ「・・・それでなんでそんな鼻息荒くしてんの?」

ティカ「ハァハァ・・・。お気になさらず! どうかお気になさらず!」

 

フンスフンスと鼻息荒く、全裸の少女を凝視している隣の三つ編み少女が鼻血まで流し始めた。・・・やっぱりまともなのはいないのか・・・はあ~

少女の目が開かれていく。翡翠色の目をぐしぐしと擦り、周りを見渡し始めた。やがて目の前にいる僕に気づくと、ニンマリとした笑顔を浮かべ、ぴょんとカプセルから床へと飛び降りた。

 

?「やあやあ、光神玲我君。初めまして、になるのかな? ボクの方はちょくちょく「未来視の宝玉」で君たちを見させてもらっていたから、初めて会ったという気はしないんだけれどね」

レイガ「・・・本当にバビロン博士なのか?」

 

僕の質問にニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら少女が答える。

 

バビロン「そうとも。ボクがレジーナ・バビロン。パルテノ聖王国の魔工学者にして魔工技師、そして君の永遠の恋人ーーーー」

レイガ「恋人止まりでいいの、てっきり嫁かと思ったけど、あと外はちょっと肌寒いから服は着た方がいいよ」

バビロン「あれ⁉ 思っていたより反応が良くないか?」

 

博士は研究室の壁にかけてあった白衣を引っ張って手元に寄せると、ぶかぶかのそれを羽織ったが、この白衣は前ボタンがないので全く隠れてない。

 

レイガ「あまり着た意味ないな・・・」

ティカ「逆にイイ!」

 

鼻血を垂らしながら親指を立てているティカを見て

 

レイガ「博士、もしかしてこの子・・・幼女趣味か?」

ティカ「ああ、アトランティカは幼女趣味だ」

レイガ「やっぱし」

 

だから他の子みたいにキスしないんだね

 

バビロン「ちなみにボクも嫌いじゃない」

レイガ「だろうね」

 

だって、あなたをモチーフに作られたんだからね

 

バビロン「参ったな。当たり前だがこのサイズの服なんかボクは持ってないぞ。これは予想外」

 

城に戻ってレネかスゥにでもお願いするか。

とりあえず『研究所』をテンペスト・レイへ向かわせてもらうか。

ティカが部屋の隅にあったモノリスを操作すると、『研究所』が動き始めた。あと鼻血拭けよ。

 

バビロン「思ったよりこの身体は動かしやすいな。成長がここで止まってしまうのが残念だが。まあ、代償として受け入れるしかないか」

レイガ「もう成長しないのか?」

バビロン「この身体は人とは違った組織でできている。成長させられるのはカプセルの中でだけで、一度覚醒させてしまうと固定されてしまうのさ。アトランティカだってずっとあの姿だろう?」

 

確かにみんな永遠に生きられるわけではないのだろうが、おそらく死ぬまであの姿なんだろう。

 

バビロン「さて、ボクは「未来視の宝玉」で、君の行動をちょこちょこ見ていたが、断片的な記憶しかない。君自身にも興味があるが、それよりも興味があるのは君が持つアーティファクトにある」

レイガ「アーティファクトってなんのことだ?」

バビロン「黒い板状の通信機みたいなものだよ。「ケイタイ」とか言ってたか」

レイガ「ああ、これのこと」

 

僕は懐から携帯を取り出して、博士に見せた。

 

バビロン「そうそう、これこれ。似たようなものを作ってみたけど、イマイチ機能がわからなかったのでね。ちょっと貸してもらえるかな?」

レイガ「いいけど」

 

おそらく大体の機能は理解しているのだろう。でなけりゃシェスカに携帯に接続させて、魔法を起動させるなんて真似ができるわけがない。機能の方に興味があるのだろう。

 

バビロン「む。なんだこの文字と絵は・・・。ふむ、触ることによって操作するのか・・・。この文字はどこの国の文字だい?」

レイガ「モチーフは地球の日本」

バビロン「ニホン? 聞いたことがないが、この時代の国かな? 玲我君の出身地か?」

レイガ「・・・そうだなあ、いい機会だからみんなにも話そう。いつかこの時が来ると思ってたし」

バビロン「?」

 

僕の言葉に首を傾げながらも、バビロン博士はスマホの機能を確かめ続けていた。

 

 

 

 

 

リーン「はあ~・・・。まさかあの子がバビロン博士本人とはねぇ・・・」

 

リーンが自分とそう変わらない姿の博士に驚いている。バビロンナンバーズに囲まれている博士を見ながら、エルゼと八重も同じような驚いた顔をしていた。

 

リンゼ「まあ、今までのいろんな物をみてるとねえ・・・」

八重「あり得なくはないと思ってしまうでござるな」

 

そのつぶやきにリンゼやヒルダ、ルーがうんうんと頷く。

当の博士はシェスカやロゼッタ、フローラなんかと話しこんでいた。博士はスゥから借りた服を着ている。

ソファーではモニカがティカに後ろから抱きつかれてもがいている。ティカの鼻に詰められたティッシュは、すでに真っ赤に染められていた。

 

モニカ「いいかげん放せぇ! 気持ち悪ィ!」

ティカ「ウフフフフフフフフ」

 

モニカが苦手って言った意味がわかった。あのロリ趣味のティカにとって、モニカは絶好の獲物なわけだ。ちなみに、先ほどいきなり抱きつかれたスゥは、怖がって僕のそばから離れない。

婚約者たちとバビロン関係者に城の一室に集まってもらったが、『塔』のノエルだけはソファーで座る『城壁』のリオラの膝枕でずっと寝続けている。

 

『空中庭園』のフランシェスカ。

『工房』のハイロゼッタ。

『錬金棟』のベルフローラ。

『格納庫』のフレドモニカ。

『城壁』のプレリオラ。

『塔』のパメラノエル。

『図書館』のイリスファム。

『蔵』のリルルパルシェ。

『研究所』のアトランティカ。

そしてバビロン博士。

 

人数増えたな。まあファム、ノエル、リオラは基本、地上に降りてこないけど。

モニカとロゼッタも開発にかかりきりなんであまり降りてはこないし。

パルシェは・・・なるべく降りてこないようお願いしている。ドジで被害が出るのを避けたいからな。

嫌がるモニカを抱きしめるティカを見ていると、こいつも降りてこないようにした方がいいか思ってしまう。レネとかに何かして、もしもトラウマにでもなったら、申し訳なさすぎる。てかいつか来る僕の娘たちに被害出したら、まじで監禁させる。

 

ユミナ「それで玲我さん、みんなを集めてなんの話ですか?」

 

スゥと僕を挟んで横に座っていたユミナが尋ねてくる。

 

レイガ「うん。博士にも聞かれたけど、どうせいつかみんなにちゃんと話そうと思ってね。今まで黙っていた僕のことについて」

 

周りの視線が僕に集まる。立ち上がり、みんなを見渡して覚悟を決めた。

 

レイガ「話さなかったのは、言っても信じてもらえないと思ったし、その―――結構壮大な話だし、はあ~やめやめ、引き伸ばしても意味ないし」

 

僕はこの部屋以外の時を止め、みんなをあるところまで転移させる。そう宇宙

 

レイガ「僕はね・・・元々この星の出身じゃなく、そもそも人間ですらなくてね」

 

姿を人間からウルトラマンレイガの姿に戻る。

 

レイガ「僕の本当の名前は『ウルトラマンレイガ』。一応・・・神様なんだ」

 

 

 

 

 

僕はみんなにこの世界に来るまでのことをすべて話した。

自分がどうやって誕生したか、自分の惑星レイガについてや他の妻たちのこと、超神の見習いってこと、洗いざらい全部話した。

みんなさすがに唖然としていた。まあいきなり神様って言われたらそうなるよね。

 

ユミナ「そうだったんですか・・・。玲我さんの規格外さがわかった気がします」

八重「まさか神様とは・・・びっくりでござるよ」

 

ユミナと八重が大きく息を吐いて、驚きの声を漏らす。

 

リンゼ「ということは、じゃあ花恋さんや諸刃さんは・・・」

レイガ「血が繋がった姉じゃない。でも間違いなく僕にとっては家族だよ」

 

リンゼの疑問に正直に答える。

 

ルー「ではあの自転車とか銃とかは、玲我様の星の技術なんですの?」

レイガ「そう。あっちじゃ普通にあるものだよ。まあ考案したのは僕の友達だけど」

 

ルーの質問に答える。全部日本の物だけどね

 

リーン「まあでも、神様って言われても、何かが変わるわけじゃないわよね」

ヒルダ「ですね。私たちが玲我様のことをお慕いしていることに変わりはないですし」

エルゼ「むしろなんでもっと早く言わなかったのかって、ちょっと腹立つわ」

レイガ「逆に告白の時に「実は僕は神様なんだ」って言ったら、引かれると思うんだけど」

 

リーン、ヒルダ、エルゼが口々に言葉をかけてくる。その表情からは戸惑いとか、遠慮とか、そういったものは感じられない。僕が神様でも関係ないという思いの表れだろう。

 

スゥ「玲我は玲我じゃ。わらわは話してくれて嬉しいぞ?」

桜「ん、私も」

レイガ「ありがとう。スゥ、桜」

 

受け入れてもらえたのは嬉しい。正直、離婚も考えていたからよかった。

 

バビロン「素晴らしいッ!」

 

突然大声をあげた幼女博士に僕らは身体を硬直させてしまう。びっくりした!

 

バビロン「神の来訪! まだ見ぬ技術と文化、知識と歴史! これほど心躍ることがあろうか! いや無い! 玲我君、ボクと結婚しよう!」

ユミナたち「「「「「「「「「ダメ!」」」」」」」」」

 

うおう。婚約者全員からのダメ出しだ。

 

レイガ「僕はいいけど」

ユミナたち「「「「「「「「「え⁉」」」」」」」」」

レイガ「どうせシェスカたちとも結婚するし、個人的には博士のことは気に入ってるし」

ユミナたち「「「「「「「「「ならいいです」」」」」」」」」

レイガ「ごめんね、みんな」

ユミナ「でもこれ以上は玲我さんのお嫁さんは増やしません。余計な問題を省くためです。他の国の王族とか貴族たちからしつこいくらいに「うちの娘を」なんて面倒ですから」

ルー「それと子供が生まれたときの王位継承問題もありますし」

バビロン「よし、奥さんたちの許可ももらったし、これでボクらも夫婦だ! ああ、そうそう、王位継承問題は心配ないよ。君らの子供たちは一人を除いて全員女の子だから」

ユミナたち「「「「「「「「え⁉」」」」」」」」

 

すごいこと言ったな、博士

 

八重「どっ、どういうことでござるか⁉」

バビロン「どうもこうも。未来を覗いた時にそういう会話があったんだよ。「王妃9人みんなに子供ができたけど、王子は一人だけだった」って」

 

まあウチにも娘はいるから、仲良くしてくれたら嬉しいな。

 

リーン「ふうん・・・でもこれってすごいことかもしれないわね」

ヒルダ「どういうことですか? リーンさん?」

リーン「いい? 娘ならいずれ嫁にいくでしょう? 仮にも一国の姫、相手は他国の王子の可能性がかなり高いわ。と、いうことは、その王家それぞれに玲我の血筋が受け継がれていくってことよ」

ヒルダ「なるほど・・・。親戚だらけになるかもしれませんね。将来、玲我様の孫たちが各国の王となり得る・・・確かにこれは・・・」

 

リーンとヒルダがなにやら話してる。まあ娘たちが幸せなら僕はいいけど。

 

バビロン「とにかくボクらは身内になったんだから、その異世界の知識を教えてくれたまえ! さあさあさあ! あの高い建物はなんだい⁉ 三色の光る街灯にはなんの意味が⁉ あの走る鉄の箱は魔力で動いているのかい⁉」

レイガ「はいはい、少しずつ説明するから、その前に」

 

僕はギアトリンガーに『ガッチャードギア』をセットする。

 

レイガ「リミッター解除! ハイパーチェンジ全開!」

『ババババーン! ガッ・チャード!』

 

ギアの力を解放。同時に僕の身体も光り輝く。

 

レイガ「人体・・・錬成!」

 

掌から10個の光の球をだし、それが一つずつバビロンのみんなに向かい、胸の中に入り込む。

 

バビロン「ッ⁉ これは⁉」

リンゼ「どうしたんですか?」

レイガ「みんなの身体を人間にしたんだ」

全員『え⁉』

レイガ「いや、なんとなくそっちの方がいいかなって思ったんだけど、嫌だったらまた戻すよ。あと博士にはこれ」

 

博士の左薬指に指輪をはめる。

 

バビロン「おや、これは嬉しいね。式はいつ挙げるのかな」

レイガ「まだ未定、あとそこに時の魔力を付与してあるから、試しに右に回してみて」

 

そう言って、博士が指輪を右に回すと、彼女に変化が現れる。さきほどまでの幼女の身体からみるみる大人の姿になっていく。

 

全員『えーーーーッ⁉』

バビロン「これはこれは」

ティカ「ガーーーン!」

 

みんな博士の変貌に驚く。一名だけ変な反応したが、無視無視。

 

レイガ「どう違和感ないか」

バビロン「これはさすがに驚いた。まさかもう一度この姿に戻るとはね。これはますます君に夢中になったよ」

 

そう言って、僕に抱き着くバビロン博士。

 

レイガ「ちょっ⁉」

バビロン「君のような素敵な旦那様に会えるとはこれも運命なのかもしれないね」

 

そう言い、僕にキスしてくる博士。

 

バビロン「これからもよろしくね」



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天災現る

〈レイガサイド〉

 

バビロン「さて、じゃあ早速いろいろなことを教えてもらおうか」

レイガ「いいけど、これについては僕より開発者に聞いた方がいいと思うけど」

 

僕はスマホを指差しながら答える。

 

バビロン「おや、てっきり君が作ったんだと思ったんだけど」

レイガ「それね、僕の妻が作ったんだ」

バビロン「へえ~それならぜひ会いたいね」

レイガ「安心してたぶんそろそろ来るから。だいたい噂すると急に来るから」

みんな『?』

 

みんなが首を傾げている。

 

?「やっほ~、呼ばれて飛び出た束さんだよ~」

みんな『⁉』

 

急な大声にみんながびっくりする。ほらいった通り。

声がする方を見ると、ちょうどフレームユニットと同じくらいの大きさの・・・ニンジンが現れる。そして、ニンジンの表面が開き、中から誰かが飛び出る。

 

束「みんなハロハロ~れっくんの妻、『篠ノ之束』だよ。ただいま登場ーーー!」

 

頭にうさ耳を装着した女性、天災『篠ノ之束』だった。

 

レイガ「やっぱり、噂するといつも突然来るよね、束は」

束「れっくん!」

レイガ「ッぐ⁉」

 

束は僕を見るや抱き着いて来て、さらにキスまでしてくる。

 

束「会いたかったんだかね。もう離さないよ!」

 

ぎゅっと抱き着いてくる束。

 

ユミナ「あの~レイガさん」

レイガ「あ~ごめん。束はいつもこんな感じだから気にしないで」

束「おや、みんなが新しいれっくんの妻たち?」

 

束の質問に頷くユミナたち。

 

レイガ「改めて、この人は篠ノ之束。僕の星で発明家をしてて、このケイタイや、ロボなどを作ってるんだ」

バビロン「ほお~君がこれを作ったんだ」

 

束に興味を示すバビロン博士。

 

バビロン「よければこれの仕組みを教えてもらえないかな」

束「いいよ~、減るもんじゃないし、どうせならバビちゃんのフレームギア? だっけ。あれについても教えて」

 

それから二人はお互いの発明品について話し合った。もう完全に二人だけの世界だ。途中から下着やら媚薬など、あっち方面の話になったけど、大丈夫だよな?

 

 

 

 

 

あれから一週間が経ち、なんとスマホの量産化に成功してしまった。あの二人やりすぎだろ。まあバージョンダウンしたものだからいいかもしれないけど。念のために東西同盟国の代表者たちとユミナたちだけにしておいた。

ユミナたちが僕の正体を知ってから、より一層グレイフィアたちと仲良くなったと思う。なんでも僕の出会いや告白の話などで女子会が盛り上がっているらしい。

あと、学校についてはなんと希望者が80人もいたらしい。フィアナさんだけだったら大変なことになっていた。

 

レジーナ「と、いうことで二人には臨時で教師をお願いします」

 

僕は今、二人の妻に臨時の教師をお願いしている。

 

?「いいですよ、最近は仕事も落ち着いたし」

?「久しぶりに先生の仕事も楽しみですし」

 

片方はトレンドマークのピンクのスーツを着た茶髪ショートの女性、『畑山愛子』。見た目はちっこいけど、これでもちゃんと成人している。

 

愛子「レイガ君。今ちっこいって思いました?」

レイガ「そ、そんりゃことは、ありましぇん」

 

愛子に気付かれたのか、頬を引っ張られる。

 

ロスヴァイセ「愛子先生、それ以上は頬が赤くなりますから」

 

そういい、愛子を宥めるのは銀髪のロングヘア―女性、『ロスヴァイセ』。

 

レイガ「いてて、ごめんね愛子。という事で二人ともお願いします」

愛子&ロスヴァイセ「「任せてください」」

 

後に二人は学校では結構有名な先生になって、生徒からも好かれるようになった。

また生徒数が倍以上になり、先生の数がまったく足りなくなることをレイガたちは知らなかった。

 

 

 

 

 

レイガ「はあ~めんどうだな~」

 

目の前の光景を見て溜め息をつく。ウチの国目掛けて向かって来る鉄機兵と武装ゴーレム。その数3000。

なんでこんなことになっているかって? 簡単に説明すると、ユーロンの新しい天帝? だっけそいつが黄金結社と手を組んでテンペスト・レイを打ち落とす計画を立てていたらしい。その情報を陰隊から知らさせ、ちょっとイラついたので、迅速に殲滅することにした。

そんで、新しい天帝やらはぼっこぼこにしたが、二手に分かれて行動したらしく。そいつは要するに捨て駒だった。

まあ捨て駒にすらならなかったけどね。

 

アルファ「それで残党はどうするの?」

レイガ「たかが3000でしょ? エルゼたち専用機とスゥの専用機の試運転ぐらいにはなるでしょ」

 

3000の敵VS妻たちのフレームギア4機で迎え撃つことにした。

 

レイガ『みんな準備はいい?』

ヒルダ『はい』

エルゼ『いつでも』

八重『いいでござる』

レイガ『よし、じゃあランドグリーズ、フリスト、ゲイレルル、出陣!』

 

僕の掛け声と共に三機のフレームギアが敵陣へ向かう。

あっちも気付いたようだ。武器を構えている。

 

エルゼ『砕いて砕いて砕いて砕く! 粉、砕ッ!』

 

ランドグリーズのパイルバンカーが武装ゴーレムの核を打ち砕く。

それに負けじと戦場を風のように駆け抜け、すれ違いざまに鉄機兵を一刀両断。紫電一閃のフリスト。

対照的に、相手の攻撃を盾で受け止め、一撃で斬り伏せる堅実な動きをする、ゲイレルル。

もう全体の四分の一まで削ったな。

 

スゥ『玲我玲我! まだかのう! わらわの出番はまだかのう!』

 

僕の隣で待機している黄金色の機体『スルーズ』から操縦者のスゥの声が漏れる。

スゥの機体は防御に特化し、他の機体より装甲を厚くしてある。金のボディに黒の装飾と、モデルは・・・キングオージャー。いやこの配色だとキングオージャーZEROだな。配色は逆だけど。もうスゥの一目惚れで作った機体だ。

 

レイガ「よし、じゃあお披露目といくか。シェスカ、ロゼッタ、モニカ、準備はいい?」

シェスカ『カブタン、問題ありませン』

ロゼッタ『スコピ、準備完了でありまス』

モニカ『バッタン、いつでもいけるゼ!』

レイガ「よし。スゥ、合体開始!」

スゥ『うむ! フレームチェーンジッ!』

 

スゥの声に合わせて空の彼方から巨大なカブトムシ「カブタン」

後方からぴょんぴょん跳ねながら向かってくる巨大バッタ「バッタン」。

そして地底から大地を貫き、飛び出してくる巨大スコーピオン「スコピ」。

ここまで言えばわかるでしょ。そうキングオージャーの三大守護神をモデルにしたのである。もうスゥにこれ見せたら、これにしてと言われたので急遽製作に取り組んだ。シュゴッドソウルが無いため、操縦者は必要だが、それ以外はほぼ性能は同じである。配色もスルーズに合わせて逆にしてある。

三体はフレックに近づくと、それぞれ巨大な大砲、アーム、装甲に変形し、スルーズの右腕にカブタン。左腕にスコピ。胴体にバッタンがドッキングする。

 

スゥ『完成ッ! レジェンド・スルーズ』

 

・・・いつの間にレジェンドって名前つけたの⁉

ズシィンッ! と大地を唸らせて、レジェンド・スルーズがその勇姿を現した。

その大きさは通常のフレームギアの二倍以上。重厚さと力強さ溢れる金色の巨神。

 

敵1「な、なんだあれば・・⁉」

敵2「大きい・・・あれが戦うのか⁉」

 

フェルゼンの魔法兵から驚きの声が漏れる。

 

スゥ『いくのじゃ! カブトキャノン!』

 

レジェンド・スルーズの右腕に装着された大砲からレーザービームが、直線方向の武装ゴーレムを一掃する。

 

スゥ『次じゃ! スコーピオンクロー!』

 

続いて、スルーズは敵陣まで近づき、左腕のアームで武装ゴーレムを薙ぎ払う。

 

レイガ「スゥ。周りのみんなを巻き込まないようにしてね」

スゥ『わかっておる。そこらへんはロゼッタが見てくれておるので大丈夫、じゃ!』

 

返事を返しながら掴んだ武装ゴーレムの頭を握り潰す。

合体に使用するカブタンったちは自動操縦にする予定だけど、可能な限りシェスカたちに乗ってもらう方向で話を薦めようかな。

 

スゥ『カブトキャノン!』

 

あらら、また武装ゴーレムが塵となった。これやりすぎたかも・・・あっちもう戦意喪失状態だもんな。

戦闘開始から一時間後、ついに敵兵に動いているものはいなくなった。

これにてユーロンの問題も解決。

 

 

 

 

 

国同士の問題が終わっても、まだまだ問題が残っている。僕の国の警備兵についてだ。最初は騎士団から数名交代交代で行う予定だったが、最近ではニャンタ

 

ダルタニャン「ダルタニャン、にゃ!」

 

そう、ダルタニャンが協力してくれた。街の猫たちを集めた猫警邏隊がとても有能である。

中でなにかトラブルがあると、すぐさま騎士団の詰所へ走り、騎士達を呼んでくる。怪しい人物がいるとそれとなく追跡し、その行動を見張る。子供たちが危ない遊びをしようとすると、大人たちに注意を促す。

これには本当に感謝している。しばらくはダルタニャンと呼ぶことにしよう。

彼らの活躍もあってか、今日もギルドでの酔っ払い騒動を速やかに解決することができた。

 

?「ひとつ聞くが」

レイガ「ッ⁉」

 

いきなり後ろから声をかけられて、びくっとなる。背後に立っていたのは酒場のカウンターで飲んでいた、あの不審者だった。そう、彼女のことをダルタニャンから聞いていた。なんでも普通はするはずの匂いがしなかったらしい。それだけではただ匂いを消す魔法を使っていると思ったけど、彼女を見た瞬間、なにか嫌な予感がしたので、見張るのをお願いした。

 

?「陛下、というのはこの国の「王」で間違いないか?」

レイガ「そうだけど・・・?」

?「ならばお前がコウジンレイガ、か?」

 

フードの不審者にこくんと頷いてみせる。改めて彼女の気配を感じてみると、至近距離だからわかる。この子・・・

 

?「人のいないところで、少し話せるか。時間は取らせない」

レイガ「・・・わかった」

 

僕を連れて東側の運河のそばの森へと入っていく。

誰もあたりにいないことを確認すると、目の前の女はフードを後ろへと落とし、その顔を陽の下に晒した。

 

レイガ「やっぱり支配種だったか・・・」

 

赤く光る眼と頭から伸びる硬質的な髪。キラキラと水晶のように輝くその髪を、僕は以前にも二度ほど見ている。最初はロードメアで、その次はゼノアスで。

 

?「待て。こちらに戦う意思はない」

レイガ「見ればわかるよ。だって君他の二人と違って、殺気なんて感じないもん」

 

でも、なんでこの子はここに来たのだろうか?

 

リセ「私はリセ。お前がコウジンレイガならエンデミュオンを知っているな?」

レイガ「・・・エンデのことか?」

リセ「エンデミュオンが次元の狭間から帰ってこない。少々抜け出るのに時間がかかっているようだ。そこでお前に救助を頼みたい」

レイガ「救助?」

 

あいつどこ行ったかわからなかったけど、また次元の狭間に行ったのか。

リセと名乗った支配種はローブの下から何かを投げてよこした。反射的に受け取ると、それは長さ10センチほどの水晶の三角柱プリズムだった。

 

リセ「それに魔力とやらを注ぎこめ。ある一定量を越えればエンデミュオンをこちらへ引き戻せる・・・らしい」

レイガ「らしい?」

リセ「エンデミュオンがそう言っていた。あいにく魔力とやらを私は持っていない。困ったらこの国の「王」であるコウジンレイガを頼れと言われた」

 

あいつ~と思いながら、渋々少しずつ魔力を流し込み、次第にその量を強めていった。やがてプリズムが粉々に砕け散った。

キラキラと小さな破片となったそれが大きな輪となり、その中からエンデがひょいっと顔を出し、なんでもないかのように、こちら側へ抜けてきた。

 

エンデ「お。やっぱり玲我だったのか。助かったよ。あのままじゃ、あと半年は出られなかったからね。おっと、ただいま。リセ」

リセ「戻ったか、エンデミュオン」

 

相変わらずの白いマフラーをなびかせて、笑顔を浮かべながらエンデがこの世界に帰還した。

とりあえず

 

レイガ「てい」

エンデ「いたっ⁉」

 

一発ぶん殴ってやった。

 

 

 

 

 

エンデ「さて、なにから話したもんかなあ」

レイガ「まあ話せるところだけでいいから、話してくれ」

 

城の一室でグレイフィアに淹れてもらった紅茶を飲みながらエンデがつぶやく。その横にはフードを外したリセ、支配種の女性が座っていて、酒を飲んでいた時のようにチビチビと紅茶を飲んでいた。

 

レイガ「じゃあ、質問形式にするぞ。その隣の彼女・・・リセは支配種か?」

エンデ「そうだよ」

 

紅茶を飲みながらあっさりとエンデは認めた。

 

レイガ「なるほど・・・彼女も「王」を探しているのか?」

エンデ「そうだね、彼女は僕の協力者だね」

レイガ「根本的なこと聞くけどさ、エンデとフレイズってどういう関係なんだ?」

エンデ「・・・玲我は僕が「渡る者」ってことは知ってるよね」

レイガ「ああ」

エンデ「いろんな世界を巡っている時に、僕はある世界へとやってきた。そこがフレイズたちの世界、「結晶界」とでも言うかな。そこで僕は「王」と出会った。「王」と言ってもそれは名称のようなもので、「彼女」なんだから「女王」と言うべきかもしれないけど」

 

フレイズの「王」って女性だったんだ。

そんでエンデの話を簡単にまとめると

たまたま来た世界でフレイズの王と意気投合。お互いを意識する。

彼女と共に生きようと世界を渡る存在へと至る方法を探す。

高位の次元へと進化する方法を発見。ようやく二人で生きていけると思ったが、他のフレイズたちから反対させる。特に反対していたのが、最初に出会った支配種の女性、ネイって言うらしい。

 

リセ「エンデミュオン、ネイに会ったのか?」

 

クッキーを齧る手を止めて、隣のリセが口を挟む。

 

エンデ「え? ああ。元気そうだったよ」

リセ「そうか」

 

それだけ言うと、リセはまたクッキーを齧り始めた。知り合いなのかな?

 

レイガ「そのあと支配種のギラって奴に襲われたぞ」

エンデ「ギラ? ああ、彼は典型的な野心家だね。「彼女」の力を取り込もうとしている一人だ」

 

それは見ればわかる。僕が嫌いなタイプ。

 

話を戻すと

彼女は自分の後継者に後を任せ、二人で駆け落ちみたいに世界を渡り歩いて行った。彼女の進化のために。

けどある時、フレイズが世界の結界を破壊して、彼女を探しに来た。

それから、エンデたちとフレイズの追いかけっこが始まった。

そして5000年前のこの世界崩壊が始まった。

そして今に至る。

 

レイガ「とりあえず、フレイズの「王」を探すか。今はそれが第一優先かな」

エンデ「・・・協力してくれるの、玲我」

レイガ「現状、それが一番だと思うし。「王」の核がフレイズに渡ったら、この世界も終わりだし。まあフレイズたちにやられる気もないけどな。現れるフレイズは上級種だろうが支配種だろうが、片っ端から潰す。お前たちがなんと言おうともだ」

 

目の前にいる同じ支配種にそう言い放つ。

 

リセ「賛同はできないが、それも止むをえない。お互いが覚悟の上で戦うのなら、私は傍観者となろう」

レイガ「僕らがフレイズたち全てを滅ぼしても文句は無いんだな?」

リセ「もともとはよその世界に攻撃を加えた我らに非がある。それで滅ぶならそれがフレイズの命運だったということだ」

 

リセに続き、エンデも口を開く。

 

エンデ「僕も出来るなら、ここで「彼女」を狙う輩には消えてもらいたい。そのためには玲我の力を借りるのがいいと思ってね」

レイガ「じゃあそう言う事で」

 

これからすることは決まった。

 

 

 

 

 

あれからエンデたちと別れて様々なことに取り組んだ。主にの残りの妻たちの専用機の作製。新騎士団の採用試験。

騎士団についてはまた別の機会で話そう。

今回はリーンとリンゼの専用機が完成した。今日はその試運転。

リーンの機体は今までと違って遠距離タイプ。全身に装備されあガトリング砲やミサイルポッドで攻撃する。黒き機体、「サングリーズ」。モデルはゴーゴーファイブのグランドライナー。列車にはさすがに変形はしないけど。

この前拝借した鉄機兵で試し撃ちをしてみたところ、もう跡形もなく消え去った。これもう無敵じゃないかと思うじゃん。

 

ロゼッタ「しかしそれなりに弱点もあるでありまスよ? まず、転送されるバビロンの弾倉が空にならない限り、基本的に弾切れはないでありまスが、機体の方が連続射撃に耐えられないでありまス。全力斉射すると、ああやって何分か冷却モードに入る必要があり、隙ができるでありまス」

バビロン「あとは機体自体が魔力をかなり消費する構造なんで、乗り手の疲労もかなりのもんじゃないかな。リーンか玲我君、あとはリンゼでなんとか活用できるレベルだろうね」

 

と、いうのがロゼッタと博士の説明。まあ撃ってる間、ずっと【エクスプロージョン】を発動しているようなもんだからな。

 

リーン「あっつい!」

 

鳩尾の開閉ハッチが開き、リーンとポーラが飛び出してきた。勢いが付いて、ポーラがコクピットから転げ落ち、地面に激突する。

 

リーン「ちょっと! まるで蒸し風呂みたいになってるわよ!」

ロゼッタ「あー、コクピット周りを冷却するのを忘れていたでありまスな」

 

むむう、とロゼッタが腕を組む。

 

リーン「あと爆発音がすごくて通信とか聞き取れないと思うわよ、これじゃ」

束「なるへそ~、それなら防音障壁も必要だね。自由に展開・解除できるように改造しとくよ、リーちゃん」

リーン「ちょっと! その呼び方子供っぽいからやめてほしいのだけど」

束「え~いいじゃん、可愛いよリーちゃん」

 

束がリーンをからかって遊んでいる。あんまりいじりすぎるとあとで痛い目に合うぞ。

 

ゴガアァァァァ!

 

レイガ「お?」

 

咆哮音がする上空を見上げると、青い龍が飛んでくる。瑠璃だと思った? 違うんだな。

速度を緩め、こっちへ下降してくると、戦闘機は空中で変形を始め、細身の人型へとその姿を変えて着地した。

リンゼの可変型フレームギア、「ゲンドゥル」だ。

機体胸部ハッチが開き、リンゼが降りてくる。ゲンドゥルは鋭角なラインを持つフレームギアで、モデルはマジレンジャーのマジキング。そんでさっきの龍はマジドラゴンをモチーフにしてある。左手にキングカリバーをモチーフにした剣を装備している。

 

レイガ「どう? 空を飛ぶのは慣れた?」

リンゼ「そうですね。まあ、なんとか。まだ、あまり速度は出せません、けど」

 

リンゼがどこか苦笑気味に答えた。

ゲンドゥルはさらに変形して、エルゼのランドグリーズと合体、飛行サポートメカとなる予定だ。今はまだその機能は追加してないけど。

 

ロゼッタ「リーン殿とリンゼ殿の機体はほぼ完成でありまスが、残りの桜殿とルー殿、ユミナ殿の機体はどうするでありまスか?」

 

ロゼッタが僕にたずねてくる。

 

レイガ「二人はどれからにするか決まっているのか?」

バビロ「今のところ候補は桜かな。「音」を利用した支援魔法を使える機体はどうかと考えていてね。フレイズには魔法は効かない。だけど味方のフレームギアに魔法をかけることは可能だ。機体速度を上げたり、個体障壁を展開したりね。音に乗せて広範囲にそれを付与できれば、と」

ロゼッタ「集団戦支援型でありまスな」

束「あとは歌によっては付与する効果も変えようかな~」

レイガ「それはいいな。じゃあ桜の機体からお願いするよ」

バビロ「了解」

 

サングリーズルとゲンドゥル共々、バビロン博士と束、ロゼッタをバビロンへと転移させて、僕はリーンとリンゼ、ポーラを連れて【コネクト】をくぐって城へと戻った。

転移して城の訓練場の前を通ると、死屍累々とした新人騎士たちが転がっていた。今日も激しそうだなあ。

新人のための恒例柱稽古はもうすでに終わったけれど、当然ながら朝夕の訓練は毎日ある。

一部の者たちは免除されてはいるが、それでも大半の者たちは朝と夕方に、こうして諸刃姉さんかハクロウにシゴかれるのだ。

 

レイガ「【フルムーンレクト】」

 

訓練場に転がる騎士団みんなの傷と体力を治してあげる。

怪我や疲れが治ったみんなは、僕の存在にやっと気付き、一斉に頭を下げた。

 

諸刃「よし、じゃあ朝の訓練はここまで。それぞれ順番にシャワーを浴びて朝食を取り、持ち場へつくように」

騎士たち「「「「はいっ!」」」」

 

諸刃姉さんの言葉にみんなが騎士団男女別々の宿舎にあるシャワー室へと向かう。



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神の宴

〈レイガサイド〉

ある日

 

レイガ「うん?」

 

突如、ここから東南方向から神気の気配を感じた。

 

レイガ「また従属神か?」

花恋「違うのよ!」

 

花恋姉さんがいつも通り登場する。

 

花恋「この気配は確かに私たちと同じ下級神のものなのよ。まさかと思ったのだけれど・・・」

 

・・・まさか

 

花恋「三人目が降りて来たみたいなのよ」

 

嘘でしょ・・・

 

 

 

 

 

気配を感じたのはここから南東の方向、ラミッシュ教国を越えて、ライル王国に差し掛かる間の大樹海の中。

 

レイガ「とりあえず、悪い感じはしないから会いに行ってみるか」

 

僕は仕事を終えて、花恋姉さんと諸刃姉さんを連れて大樹海へ向かう。

 

花恋「むうう・・・鍛冶神や農耕神はまだいいけど、商業神は・・・うっとおしいのよ」

諸刃「花恋姉さんは商業神と相性悪いよね。私としては刀神とか槍神、武神あたりが来てくれると退屈しないんだけどね」

 

向かう道中、二人はだれか来たかを予想している。

ちなみに僕らが今乗っているのは空飛ぶ魔法の絨毯。WRBの『ランプドアランジーナ』で呼び出した物だ。

 

花恋「へえ。これは楽チンなのよ」

レイガ「問題はこの子結構面食いだから」

 

やがて大樹海上空へと辿り着き、一旦絨毯を止めて、空中に静止する。

 

レイガ「ここらへんでちょっと神気を放ってみるよ」

 

軽く「神威解放」をすると、遠くの森から同じような神気が放たれた・・・が

 

レイガ「あれ?」

花恋「んん?」

諸刃「おや?」

 

三人して怪訝そうな顔をしていた。

 

レイガ「ね~、いまの神気なんだけど・・・」

花恋「複数感じられたのよ」

レイガ「やっぱり」

 

複数の神がいるってのか?

 

レイガ「どういうこと?」

花恋「さあ・・・。とにかく行ってみればわかるのよ。玲我君、発進なのよ!」

 

絨毯を進ませて神気の感じた方へと飛ばしていく。

森の開けている場所に誰ががいるのが見えた。いや、数人いるのが見えた。

その近くへと下りていくと、賑やかな音楽が聞こえてくる。楽しそうな笑い声と美味しそうな匂い。

 

レイガ「・・・どういうこと?」

諸刃「これはこれは・・・」

花恋「あちゃあ・・・なのよ・・・」

 

そこでは宴会が行われていた。

森の中でマンドリンのような楽器を奏でている青年と、赤い顔で酒を飲んでいる幼女、焚火の上で肉を焼く女性、そして笑顔を浮かべながら木の実や果物を食べている壮年の男性。

いやなにこれ?

絨毯から降り立ち、僕は後ろの花恋姉さんに視線を向ける。

 

花恋「音楽神に酒神、狩猟神に農耕神なのよ」

 

四人も降りて来たの⁉ 僕が唖然としていると、こっちに気づいた幼女が大きく手を降ってきた。

 

酒神「おおおー! 恋愛神と剣神なのだー! 一緒に呑むのだー!」

 

スゥよりも小さい、7歳くらいにしか見えない透き通るような青い長髪の幼女が、どう見ても酒瓶にしか見えない大きな徳利を振っている。見ればわかるあの子が酒神だな。

そんでマンドリンみたいなのを持っているのは当然、音楽神だろう。二十歳前後の金髪イケメン青年だ。こちらに柔和な笑みを浮かべて微笑んではいるが、楽器を奏でるその手は止まることがない。

あっちで果物を食べている壮年の男性は、農耕神かな。

残ったあの緑ポニーテールの女性が狩猟神か。傍らには急拵えで作ったような弓があるし。

肉を焼いているけど、自分で狩ってきた獲物かな。

 

花恋「あなたたち、なんでこんなに揃って降りてきてるのよ。従属神はもう解決したのよ」

狩猟神「うんにゃ、違うよ。ウチらはそれ関係で来たんじゃないよ」

 

焼けた肉をもぐもぐと噛みちぎりながらポニーテールの狩猟神が、花恋姉さんに答える。

 

農耕神「自分たちの担当は君だよ。ウルトラマンレイガ君」

レイガ「え、僕⁉」

 

農耕神のおじさんが僕に向けて指を差す。

 

諸刃「玲我君が担当ってどういうことだい?」

農耕神「うん。彼の仕事ぶりの観察と手伝いのために我々は来たんだ」

酒神「って、ことにしとこうって、さっき決まったのだー! 遊びに来たー!」

 

ぶっちゃけたな! 酒神さんよ、

じゃあなにか? 人をダシにして地上に降りて来たわけ?

 

狩猟神「いやー、地上に降りたのって数万年振りだから、「人化」してもまだ身体が慣れねえや。ちょいと魔獣の二、三匹狩ってみたけど、神力を使わず狩るのも面白いもんさね」

酒神「あちしもー! 神酒ネクタル以外のお酒なんて久しぶりー! 酔うねー! 素敵だねー!」

農耕神「自分も久しぶりに大地の恵みを感じていますよ。実に美味い」

音楽神「・・・」

 

いや、しゃべれ!

 

花恋「呆れたのよ。よく世界神様が許したのよ」

狩猟神「いやいや、世界神様じゃなくて」

ノア「おやおや、楽しそうな予感したら、みんなで宴?」

レイガ「ノア兄!」

 

いつのまにか宴に混ざっていたノア兄。

 

ノア「それじゃあ、僕もお酒を」

?「おい、なにしてる、ノア」

レイガ「あっ」

ノア「へえ⁉」

 

突如現れた人に僕らは身構える。そこには怒りの般若。じゃなくめっちゃ怒っているレジェンド先輩だった。

 

レイガ「れ、レジェンド先輩、来ていたんですか・・・」

レジェンド「ああ、そこの四人を呼んできたのは俺だからな。そりより・・・ノア」

ノア「は、はい」

レジェンド「てめえ、仕事サボりやがって・・・いい加減しやがれーーーーー!」

ノア「ぐぼべえ!」

 

思いっきり殴られて、遠くまで飛ばされるノア兄。

・・・どんまい、ノア兄。

 

 

 

 

 

あれからレジェンド先輩はボロボロになったノア兄を引きずって帰って行った。

そして四人の神も表向きには僕の家族となった。

 

叔父、光神耕助(農耕神)

長男、光神奏助(音楽神)

長女、光神狩奈(狩猟神)

次女、光神酔花(酒神)

 

名前は以上となった。

四人は来てからすぐに有名人となった。

耕助叔父さんは僕の国の農業を手伝ってくれて、今では野菜や果物の種類が倍以上に増えて、料理のレパートリーも増えた。

奏助兄さんは僕の国で路上演奏をしてて、通る人たちを引きつけている。いつかコンサートもしてみようかな。

狩奈姉さんは暇さえあれば狩をしていた。そこで試しに冒険者に狩猟の講座を頼んでみたら、結構人気だったので、定期的にでも頼もうかな。

それで・・・問題なのが酔花姉さん。あの人・・・一日中酒ばっかり飲んでいる。なのでとくに何もしていない。以上!

 

 

 

 

 

そんな中、また面倒なことが起きた。そうフレイズの出現だ。

今回はレグルス帝国中央、帝都ガラリアより北西、イスルム平原だ。しかも上級種付だ。

来るまではユミナたちとイチャイチャして時間を過ごそう。・・・なに、いきなり大胆な行動だと思った? 最近は色々あって疲れたんだからいいでしょ!

 

レジェンド「ようやく来たか」

 

その時がやってきた。空が割れ、大量のフレイズが向かって来る。

 

レジェンド「作戦、開始!」

 

まずはリーンのサングリーズで遠距離攻撃をし、残りをみんなで殲滅する。

ガトリング砲から何百発という晶材の弾丸が撃ち出され、目の前に広がるフレイズたちが粉々に砕かれていく。

 

リーン『あら案外と脆いのね』

 

そう呟くと、リーンの重火器装備のフレームギア、サングリーズが今度は上空を飛ぶマンタ型フレイズにガトリング砲を向けて撃ち落とした。

さらに地上の別方向にも胸部装甲を展開し、二連ガトリング砲を斉射する。

ある程度撃ち終わると、オーバーヒートしないようにクールタイムに入った。

そのタイミングで何体かの重騎士がサングリーズが壊し損ねたフレイズの核を確実に仕留めていく。

動きが止まったサングリーズを、上空から飛行型フレイズが襲いかかってくるが、飛んでくる火炎弾に撃ち抜かれ、失速して地面に激突する。

 

リーン『助かったわ、ありがとう』

リンゼ『どういたしまして』

 

サングリーズに近寄るフレイズを撃ち倒しながら、飛行形態のゲンドゥルが飛んでいく。

リンゼの機体はその能力を活かし、戦場を飛び回って、いろんな場所のサポートをしていた。

同じく地上ではルーの乗る緑の豹騎士が二振りの小太刀を両手に持ち、高機動モードで縦横無尽に戦場を駆けていた。

リーンたちの展開した後方ではまた別の戦いが繰り広げられている。

 

スゥ『ホッパーシールド!』

 

スゥの叫びとともに、レジェンド・スルーズの胴体から無数の光が生まれ、瞬く間に整然と並んで黄金の防御壁が生まれる。

宙に浮かぶ鯉型の中級種フレイズが放ったビームを、その星屑の防御壁が完全に防いだ。防ぎ切った次の瞬間

 

スゥ『カブトキャノン!!』

 

右腕に装着したキャノン砲から撃ち出された粒子砲が鯉型フレイズを打ち砕く。

相変わらず凄い威力だな。

 

レイガ『第5部隊、下級種だからって一人で倒そうとするな! 目の前の敵だけじゃなく、周りの仲間にも注意を払ってお互いにサポートしろ!』

騎士団『『『はいっ!』』』

 

スマホから命令を飛ばす。第5部隊は新人騎士の部隊だ。どうもまだ一対多数の戦いには慣れてないようで、こういう局面では、囲まれないように周りをよく見て動かないといけないんだけどな。

 

『【チョーいいね! ブリザード! サイコー!】』

 

第5部隊のフレイズへ向けてウィザードの氷魔法を発動する。フレイズたちの足元が凍り付き、動きが一時的に止まる。あいつらなら自らの足を破壊して脱出するだろうけど、こっちの狙いは一時的な足止めだ

止まったフレイズたちを第5部隊の重騎士たちが、次々と核を破壊していく。こっちはこれで大丈夫だろ。

そう思ったとき、本陣から紅い機体と藤色の機体、そしてオレンジの機体が飛び出してきた。

 

エルゼ『ごめん、遅くなったわ!』

八重『すまんでござる!』

ヒルダ『申し訳ありません!』

 

エルゼのランドグリーズ、八重のフリスト、ヒルダのゲイレルルだ。

三人は城で寝ていたからな。しょうがないか。

 

椿『陛下。本陣正面1キロ先に大きな歪ひずみを確認。上級種出現の兆候と思われます』

レイガ「きたか・・・全部隊に通達。上級種出現ポイントから距離を取るように」

みんな『はっ』

 

本陣にいる椿さんからの連絡に、僕はギアトリンガーを手にする。

空間の亀裂が発生。

パキキキキッ、とガラスにひびが入るように、亀裂が広がっていく。やがてそれは轟音と共に派手に砕け散り、大きく空いた次元の裂け目から、上級種が姿を現した。

 

『ゴガァァァァァァァァッ!!』

 

ズシン、と大地が響き、小山のような巨体を輝かせて天空へ向けて咆哮を上げる。

なめらかな丸い曲線を描いた背中。太く短い六本の足。無数の棘のついた尻尾、甲羅のような胴体から伸びた頭。

大亀だな。まあ亀には甲羅の縁にノコギリのような鋭い刃がついていないけど。

核は・・・甲羅の奥にひとつか。鈍くオレンジ色の光を放っている。

しかし、咆哮した後から甲羅に閉じこもった。

 

レイガ「相変わらずデカいな・・・」

 

そんなことを思っていると、閉じこもり状態の亀が長い尻尾だけをピンと立てた。先端にある無数の棘がミサイルのように四方八方に発射される。

 

レイガ「っ、回避しろ!」

 

棘からさらに分離した何百もの水晶の矢が、クラスター爆弾のように周囲に降り注ぐ。

みんな距離を取っておいたのが幸いしたのか、さほどの被害はなかった。

 

エルゼ「っの、砕けろッ!」

 

亀の足元へ飛び込んだエルゼのランドグリーズが、右手のパイルバンカーを渾身の力を込めて真ん中の足に撃ち出す。一撃では無理だったが、二撃めで足のひとつが砕け散った。

だが、六本足のため、片側の一本が潰れてもバランスは崩さない。

すぐさまエルゼがその場から後退し、彼女が砕いた側の残りの足のひとつを、ヒルダと八重の二人がかりで左右からズパンと斬り裂く。

片側三本の足を二本失った亀がバランスを崩し、八重たちの側に倒れこむ。二人は下敷きにならないようにすぐさま脱出した。

亀は動けないながらも口を大きく開けて、光の玉を集め始めた。マズい。あれを放つ気か⁉

リーンのサングリーズがリクガメにガトリング砲を食らわせるが、甲羅に当たった弾はその方向を変えて、あさっての方へ飛んでいく。面倒だな、あの甲羅。

 

スゥ『スコーピオンクロー!!』

 

本陣前からスゥのスルーズが放ったスコーピオンクローが亀の頭部を粉々に打ち砕く。

しかし、足と共に頭もすでに再生が始まっている。早いとこ核を砕かないと。

そんな時、懐のスマホが着信を告げた。

 

バビロン『玲我君、アレを使ってみないか?』

レイガ「アレって・・・例のアレ? でもあれまだ実戦で使ったこと無いんじゃ」

束『リンちゃんとリーちゃんの二人がかりでやっと一発撃てるかな、でもやらないよりはマシでしょ? ちなみに二人にはもう確認を取ってあるよ。あとはれっくん次第だよ』

 

ぶっつけ本番か・・・仕方ない。

リンゼとリーン、二人の前にある物を転送される。それを左右から挟むようにサングリーズとゲンドゥルの機体が支える。

これが秘密裏に制作した巨大魔砲、名を「ギガブースター」である。そう名前の通りカーレンジャーの必殺武器そのものである。

撃つために魔力をチャージするのに時間がかかるのと、その莫大な消費魔力のため、連射はできない。

 

レイガ「二人とも準備はいいか?」

リンゼ『大丈夫、です』

リーン『任せなさい』

 

リンゼが火属性、リーンが風属性の魔力を「ギガブースター」へと注いでいく。砲身側面にある魔力充填のメーターが次第に上がっていく。

 

バビロン『充填率75%・・・80・・・85・・・90・・・』

 

博士の声を聞きながら目の前の亀に視線を向ける。狙いは核へ一直線に向かう喉元。甲羅から首が伸びているその付け根。ここなら弾かれまい。

頭と足の再生が進んでいる。

 

バビロン『充填率100%!』

レイガ「よし、発射ッ!!」

 

「ギガブースター」が凄まじい轟音を響かせて盛大に火を吹いた。

撃ち出された粒子砲は、亀の首元に炸裂する。

真っ直ぐに核へと辿り着くと、そのままの勢いでオレンジの核を粉々に粉砕し、尻尾の方へ突き抜けていった。

核を砕かれた上級種は全身に亀裂を生じさせながら、ガラガラと派手に崩れていく。

 

レイガ「うまくいった・・・」

 

ブシューッ! と「ギガブースター」が蒸気の白煙をあげる。冷却装置が発動したのだろう。サングリーズもゲンドゥルも片膝をつき、動きを止めている。

 

レイガ「二人とも大丈夫?」

リンゼ『な、んとか・・・』

リーン『これ、ヤバイわね・・・。魔力をごっそり持っていかれたわ。とても二発目は無理ね』

 

ウチのメンツで使えるとしたらあとはユミナと桜くらいか。まだ改良の余地はあるし、もっと使いやすく改良しようか。

 

レイガ「よし、上級種は片付いた。掃討戦に移れ」

みんな『了解』

 

残りのフレイズたちを、各国のフレームギアが倒していく。

今回はどうやら支配種もレイドも来なさそうだ。




今回はさらっと終わらせます。
次からはちょっと視点を変えます


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奴隷王国

ここはテンペスト・レイ公国にある、とある建物。

その建物のある一室に多くの女性が椅子に座っていた。

 

アルファ「それではこれから会議を始めるわ」

 

一人の女性が立ち上がる。陰隊の隊長「アルファ」である。

 

ガンマ「はい、アルファ様。以前まで計画していた、テンペスト・レイの活性化ですが、順調です。食事処遠月を始め、ミツゴシ商会やアイドル店『ニコ』など、様々なジャンルを展開しています」

 

アルファの質問に答えたのは藍色の髪をロングにしたエルフ『ガンマ』である。

 

ベータ「読書喫茶では、私や花丸さんの小説が人気で、近いうちにはサイン会を行おうと思います」

 

同じく答えたのは白銀の髪をショートにしたエルフ『ベータ』

 

アルファ「よろしい、なら次に国際問題について、ゼータ」

ゼータ「はい。アルファ様」

 

金色の猫耳が特徴の獣人『ゼータ』が立ち上がる。

 

ゼータ「東西同盟に加盟している、ベルファスト、ミスミド、リーフリース、レグルス、ラミッシュ、リーニエ、レスティア、ロードメア、フェルゼン、エルフラウは今のところ問題はありません。もちろんイーシェンとゼノアス・・・ユーロン(・・・・)もです」

 

ユーロンという単語を出した瞬間、その場の全員から殺気を出る。誰かこの場にいたら、息もできないだろう。

 

デルタ「あのゴミども。ボスが助けてやったのに、難癖つけて嫌いなのです」

 

犬の獣人『デルタ』の言葉に全員が頷く。

 

イプシロン「レイガ様に感謝の一言もない。ましてやレイガ様に剣を向けた。いっその事、滅ぼした方が手っ取り早いのでは?」

 

水色の髪をツインテールにしたエルフ『イプシロン』の質問に対して、一人が手をあげる。

 

イータ「それなら・・・最近開発した・・・殺人・・・ウイルス・・・を使う?」

 

桑の実色の髪を伸ばしてるエルフ『イータ』がだるそうに答える。

 

アルファ「ダメよ。そういうやり方は彼は嫌いだから、今はあれのことは無視して話を進めましょう。ゼータ、まだ関わったことの無い国で彼に危害を加える可能性が高い国は?」

ゼータ「それなら、サンドラ王国です」

ベータ「サンドラ・・・確か今だ奴隷制度が残っている国ですね」

ガンマ「「娘が消えたなら、まずはサンドラに向かえ」という言葉があるくらい、ある意味有名な国ですね」

イプシロン「国の人口の三分の一が奴隷と言う話も聞きます」

ベータ「逆にテンペスト・レイに行けば奴隷から解放されると、奴隷の一部から希望の国、という話も聞きます」

アルファ「それは嬉しい報告ね」

 

愛しの夫の顔を思い出して笑顔になるアルファ。他のみんなもそんなアルファを見て、自分たちの夫の顔を思い出す。

 

アルファ「さて、惚けるのは後にしてゼータ。サンドラの戦力は?」

ゼータ「ッ⁉ はい。戦力と言っても首輪をつけた魔獣戦士団くらいです」

アルファ「そう・・・なら対魔隊と零隊と協力して情報収集を行うわ。仮にレイガに危害を加えるなら・・・わかってるわね、みんな」

ベータたち「「「「「「はい(なのです)」」」」」」

レイガ「それじゃあ、今日は解散。久しぶりにみんなでレイガの寝床へ向かうわよ」

ベータたち「「「「「「ッ⁉」」」」」」

 

・・・これはまた別のお話。

 

 

 

 

 

数日後

彼女らは再び例の建物のある部屋に集まった。

 

アルファ「それで情報はどうなってるの?」

ゼータ「はい。ユーロンが消えてから、サンドラではますます奴隷商人が集まるようになっています。さらに東西同盟の加盟国にも被害が出ています。さらに明日には大樹海の部族を攫う計画を企てているらしいです」

アルファ「そう、ならちょうどいいわ。それでイータ。例のあれは?」

イータ「はい・・・それについては・・・できる」

アルファ「そう、なら決行は二日後。レイガには私が伝えておくわ」

全員『はい』

 

 

 

 

 

ガタゴトと馬車がサンドラ王国の首都・キュレイの街中を行く。

 

アルファ「ひどい街並みね」

?「何度も潜入しているけど、全然慣れないわ」

 

馬車の窓から見える街並みは、古めかしい。所々はげがかった壁や、崩れた屋根が見える。赤茶けたレンガ造りの家に混じって、掘っ建て小屋のような木造の家もある。

 

?「ここはいわゆる下層階級の住宅地で、まともに働くことができない人が多いから、建物を修理するお金もないのよ」 

アルファ「そう・・・人々が幸せそうじゃないわね」

?「まぁ、こんな生活じゃ・・・」

 

馬車にはアルファと、サンドラに何度も潜入を行っている二人。零隊から『チェルシー』、対魔隊から『水城不知火』が乗っている。

他にも四人ほどいるが、全員後ろに続くもう一台の馬車に乗り込んでいる。

今回潜入できた理由としては「樹王の部族から抗議文を預かってきた、テンペスト・レイの使者」となっている。

 

アルファ「やはり奴隷が多いのね」

不知火「はい。満足に食事も与えられず、痩せ細っている者が多く見られます。戦闘奴隷はそれなりに食事を与えられているみたいですけど」

チェルシー「まあ、戦うための奴隷だからね。いざとなった時、空腹で戦えないんじゃ仕方ないし。その代わり、命を盾にされるけど」

 

二級市民でも奴隷たちを所有でき、街中にちらほらと姿を確認できる。屈強そうな奴隷は店の用心棒などの戦闘奴隷だろう。

奴隷たちの中には獣人などの亜人たちもいた。その光景を見て、舌打ちをするアルファ。

 

アルファ「さて、じゃあ手筈通り私の名は「シャドウ・レイ」で」

 

ちなみに彼女らの外見はチェルシーの帝具『ガイアファンデーション』で男に見えるようになっている。

馬車は二級市街を走り抜けて、一級市街の門へと辿り着いた。

上等な革鎧を身につけた兵士たちが立ち塞がり、馬車を止める。

 

兵士1「ここから先は許可ある者しか通れぬ! 何処いずこの者だ、名乗れ!」

アルファ「これはこれは。私たちはテンペスト・レイ公国から参りました者です。私たちの来ることは事前に御国へ報せてあるはずですが」

兵士1「テンペスト・レイ・・・? チッ、ここで待っていろ、確認する」

 

窓からこちらを覗き込み、威丈高に声をかけて来た兵士が、舌打ちしながら門の奥へと消える。

その舌打ちが彼女らの怒りのトリガーだとも知らずに。

 

アルファ「どういう教育をしているの?」

チェルシー「サンドラはほとんど他国との交流がないから、こういったことには不慣れなんです」

アルファ「そう」

 

それからだいぶ待たされて、やっと許可が下りた。

 

兵士1「通れ。騒ぎを起こすなよ」

 

馬車が走り出すと、様変わりした街並み。さっきの二級市街とはうって変わって、整備された石畳の通りと、白い壁がまばゆい家並み。贅沢な装飾品を身につけた身なりのいい住人が、奴隷を引き連れて歩いている。

 

アルファ「格差が酷いとは聞いていたけど・・・ここまでとはね」

 

窓の外を覗きながらアルファがつぶやく。

道の先、緩やかな坂を登ったところに堅固な石壁でできた、豪勢な城が建っている。

城門に着くと今度は連絡が届いていたのか、すんなりと通された。門番には顰めっ面で睨まれるが。

馬車を降り、城から出てきた不機嫌そうなローブ姿の男に案内されて、王宮の回廊を進んでいく。アルファたち、計6人は、謁見の間の前で短剣以外の武器を取り上げられた。

謁見の間に通され、跪かされる。周りはサンドラの重臣と将軍、それに警護の奴隷兵士がずらりと並んでいた。

 

?「して、その方がテンペスト・レイから来たという使者か。なんでも樹海の民からの要求を受けて来たとか。ご苦労なことだ」

 

宰相と思われる赤と黒のローブを着込んだ禿頭の男が口を開く。

その奥のキンキラキンに光る玉座には、眠たげな目で煙管をふかしながら、ブクブクと太った男が座っていた。

玉座の隣には、ほとんど半裸のような薄い衣と「隷属化の首輪」を付けられた奴隷の女性が、灰皿を持って跪いていた。

オーク似の薄毛の頭上には、純金の王冠が載せられている。サンドラ王国国王、アブダル・ジャーバ・サンドラ三世。

玉座の両サイドにはこれまたキンキラの鎧兜と剣が飾られている。

そんなことはどうでもよく、アルファはサンドラ国王に向けて話し始める。

 

アルファ「シャドウ・レイと申します。さっそくですが樹海の民からの要求は、こちらの魔獣戦士団が連行した部族の者を、即刻返していただきたいと、」

サンドラ「断る」

 

用件を述べ始めたアルファの言葉を遮って、国王は煙管を奴隷が持つ灰皿に叩きつけた。そして奴隷の女性に煙草の葉を詰め替えさせると、火を付けた煙管を再び受け取り、またプカリと煙を吐き出す。

 

サンドラ「奴隷の数が不足している。返せんな」

アルファ「・・・奴隷として捕らえるために樹海の部族を襲ったと?」

サンドラ「それがどうした。他国に指図されるいわれはないぞ。まあ、できたばかりの小国がしゃしゃり出てきても関係ないが」

 

ニヤニヤとした笑いを浮かべながら、サンドラ国王が言葉を投げかける。

 

アルファ「・・・樹海の部族と戦争をお望みで?」

サンドラ「戦争? 戦争になどなるわけがない。奴らは所詮、少数部族の集まりにすぎん。我らの魔獣戦士団にかなうものか」

アルファ「樹王の部族は我がテンペスト・レイと友誼を結んでおります。我らとも事を構える所存ですか?」

 

ピクリと眉を跳ね上げた国王が、椅子に座ったまま前に身を乗り出してきた。

 

サンドラ「調子に乗るなよ? お前たちの王は、なにやら勘違いをしているようだが、巨人兵などをいくら持っていようと関係ない。サンドラと敵対すると言うのなら、せいぜい寝首をかかれないように気をつけることだ。我らはありとあらゆる暗殺に長けた者をも支配下に置いている。貴様の王などいつでも殺せるのだぞ」

 

サンドラ王の言葉に周りから含み笑いが漏れる。この時点で彼らの結末は決まってしまった。

サンドラ国王が指を鳴らす。周りの奴隷兵士たちが一斉に剣を抜いた。

アルファらも立ち上がる。

 

アルファ「これはなんの真似ですかね?」

サンドラ「なに、使者なんぞこの城には来なかった、ということだ。アスタルの都が潰れてから奴隷の数が不足しているのでな。他国からもかき集めているが、ひと月もすればお前たちも従順な奴隷へと生まれ変わるわ。我が国には優秀な調教師が揃っているからのう」

 

くっくっく、と笑う国王に、アルファらは呆れ果てて声も出ない。

 

アルファ「・・・ホント、上が愚かだと国も愚かね」

サンドラ「なに?」

 

ため息をついて、チェルシーの帝具の能力を消してもらい、全員の姿が露わになる。

 

アルファ「こうも馬鹿ばかりだと相手するこっちも馬鹿らしくなるわ。みんな、お芝居はもういいわ」

サンドラ「貴様ら、女だったのか⁉ それより、どういうつもりだ!」

 

国王が立ち上がり、こちらを睨んでくる。

 

アルファ「愚かな国王に馬鹿な臣下。もうこの国は終わってるわ」

サンドラ「こいつらを捕らえろ! 奴隷にしてくれるわ」

アルファ「デルタ」

デルタ「がるッ!」

 

切りかかってきた奴隷兵士たちを、爪で斬り裂くデルタ。辺りは血で一杯。

 

サンドラ「なっ⁉ き、貴様、シャドウとか言ったな! 何者だ⁉」

アルファ「それ偽名よ。私の名前はアルファ。貴方がいつでも殺せるといったテンペスト・レイの王、光神玲我の妻の一人よ」

サンドラ「バカな、こんなことして、戦争でもするつもりか」

アルファ「あら、あなたが先に言ったのよ。戦争をするって」

 

煙管を握りしめて、歯をギリギリと鳴らしているオーク国王から、奴隷女性が恐怖の表情を浮かべながら後ずさっていく。

 

サンドラ「なにをしている! やってしまえ!」

 

命令を下したハゲ宰相の言葉に、再び奴隷兵士や将軍たちが向かってくる。

 

アルファ「レオーネ」

レオーネ「あいよ」

 

デルタに続き、零隊のレオーネも戦闘に加わる。

 

魔術師1「炎よ来たれ、赤き連弾、ファイアアロー!」

 

サンドラの魔術師が、火炎呪文を唱えながら炎の矢を飛ばしてきた。

 

不知火「水鏡」

 

が、それを不知火の水遁の術で作った水の鏡によって跳ね返り、魔法を放った術者とその両脇にいた家臣に当たり、吹っ飛んでいった。

 

アルファ「もう一度聞いてあげるわ。戦争をしたいの?」

サンドラ「うるさい! 我が国には魔獣戦士団と奴隷兵団がいる。死ぬまで戦い続ける兵隊がな。そちらも我らサンドラを敵にして無傷で済むと思うなよ?」

アルファ「はあ~あなたと話すと疲れるわ。悪いけど、テンペスト・レイはサンドラを相手にする気はない。正確には、相手にする必要もないわ」

サンドラ「なんだと?」

 

訝しげにサンドラ国王が眉を寄せる。

アルファはポケットから腕輪をを取り出し腕につけ、サンドラ国王の方へ手のひらをかざす。

 

アルファ「キャプチャー」

 

手の中に「隷属化の首輪」が現れる。サンドラ国王から離れて、キンキラの鎧兜に隠れるようにしていた奴隷女性が、突然、首輪のなくなった感覚に驚いていた。それを見た国王が、目を剥いて驚く。

 

サンドラ「なっ⁉」

アルファサンドラ「この「隷属化の首輪」・・・首輪に記憶された主人以外に最上位マスターとも言える魔力波動が記憶されているのがわかったわ。つまりサンドラ国王、あなたの魔力波動ということ」

 

アルファは首輪を見えながら説明する。

 

アルファ「つまりあなたはすべての奴隷に命令を下せるということ」

サンドラ「そ、そうだ。私の命令ひとつですべての奴隷が貴様らに牙を剥く。観念するがいい」

アルファ「でもそのマスター権限が乗っ取られたらどうなるのかしら?」

サンドラ「なに?」

アルファ「ハッキング」

サンドラ「どうしたお前たち! やってしまえ!」

 

サンドラ国王の命令に従い、奴隷兵士たちが剣をアルファたちに向ける。が、そこにいた兵士全員が、なにか戸惑った様子でお互いの顔を見合わせた。

 

サンドラ「斬りかかれ! そいつを殺せ!」

 

サンドラ国王が叫ぶが奴隷兵士たちに反応はない。首輪が外れたのか、と首に手をやる奴隷もいたが、首輪は元のままだ。

 

奴隷1「こ、これはいったい・・・」

サンドラ「いったいどうしたのだ⁉ なぜ奴隷たちが従わない!?」

アルファ「無駄よ。「隷属化の首輪」をした奴隷は主人以外の命令を受け付けない。そして彼らの主人は、先ほどから私になった」

サンドラ「なっ、なんだと⁉」

アルファ「サンドラにいる人間、亜人の三分の二は奴隷らしいわね。そのほとんどが私に絶対服従。わかりやすく言うと・・・この国は私たち陰隊が乗っ取った」

サンドラ「なん・・・だと・・・⁉」

 

一瞬、呆然としたサンドラ国王だったが、すぐさま腕に付けていた金色の腕輪に魔力を通し、「再登録」をしようとする。

だがもうすでにマスター登録は上書きできないように書き換えられている。これが事前にアルファがイータに頼んでいた仕事だ。

 

サンドラ「そんな馬鹿な・・・! 「隷属化の首輪」の主人登録は、この「奴隷王の腕輪」と我が王家の血筋の者しかできないはず・・・! ハッ! まさか貴様、我が王家の血を引いて・・・」

アルファ「・・・はあ⁉(# ゚Д゚)」

 

アルファのまじの殺気に周りが全員震えあがる。味方まで。

 

アルファ「奴隷兵士、私たちはあなたたちになにも命令はしないわ。犯罪奴隷で無いのなら、奴隷からの解放も約束しましょう。何処かの国から連れて来られたというのなら、その故郷へ帰るのも自由」

 

周りの兵士たちに話しかけるアルファ。すでに剣は下ろされていた。中には泣き出している者もいる。

 

奴隷2「本当に・・・解放されるのですか・・・?」

アルファ「約束しましょう。あなたたちは自由になれる。もう奴隷じゃない」

 

話しかけてきた奴隷兵士の一人にそう答えてやる。すると他の兵士たちも嗚咽を含んだ声で、口を開き始める。

 

奴隷3「奴隷じゃ、ない・・・」

奴隷4「俺たちは奴隷じゃないんだ・・・」

奴隷5「・・・普通に、生きて、いいんだ・・・」

奴隷6「故郷に帰れる・・・人生を取り戻せる・・・」

 

堪えるように声を震わせて、男たちが涙を流す。喜びや悔しさ、怒りや虚しさ、いろんな感情が入り混じっている。

 

サンドラ「馬鹿な・・・奴隷たちが、奴隷たちが・・・」

アルファ「キャプチャー」

サンドラ「は⁉」

 

玉座に倒れこむように座ったサンドラ国王の右腕から腕輪が消え、アルファの手の中に現れる。

 

サンドラ「か、返せ!」

アルファ「もう必要ないでしょ」

 

腕輪を放り投げ、落ちてきたところをスライムソードで斬る。床に落ちた腕輪は見事に真っ二つになる。

 

サンドラ「貴様! 貴様、なんということを! なんの権利があって、我が国から奴隷を取り上げるのだ!」

アルファ「逆に聞くけど、あなたはなんの権利があって、彼らから自由を奪ったのか答えてもらえるかしら?」

サンドラ「うぐぐっ・・・!」

 

周りにいる奴隷兵士たちが、国王に向けて激しい怒りの目を向けている。理不尽に人生を奪われ、人の尊厳を穢された。怒りを覚えるのは当然のことだ。

と、そのとき表からたくさんの悲鳴と、獣のいななく声が聞こえてきた。同時に、なにか暴れるような衝撃も響いてくる。

 

サンドラ「な、なんだ⁉ なにが起こっている⁉」

 

わけがわからず慌てふためく重臣たち。その謁見の間に、ローブを着込んだ男が、慌てふためいて転がり込んできた。

 

兵士2「たっ、大変です! 魔獣戦士団の操る魔獣たちが暴れています! まったく言うことを聞きません!」

サンドラ「な、なんだと⁉」

アルファ「言ったでしょ? もう「隷属化の首輪」は私の支配下にある。私以外の命令は受け付けない」

サンドラ「ぐぐぐ・・・! 貴様ッ・・・! よくもよくもよくも・・・!」

アルファ「だから言ったでしょ。戦争がしたいのか? って。彼は平和主義者だけど、無抵抗主義者じゃない。やられたらやりかえす。彼に宣戦布告をしたのはあなた。もう後には戻れないわよ」

サンドラ「黙れ黙れ黙れ!」

 

憎々しげにこちらを睨み付けて来るサンドラ国王。

そんな中サンドラ国王の横にいた女性奴隷が、いつの間に手にしたのか、宝石細工の剣を横に力一杯振り抜こうとしていた。

 

サンドラ「ふひぇ?」

 

そんな間抜けな声が聞こえたと思った次の瞬間、オークにも似た人間の首は、見事に宙を飛んでいた。

飛ばされた首は見事に宰相のハゲ頭の下へ飛んでいき、その場に転がって止まった。

 

宰相「ひいぃぃぃぃぃ!!」

 

宰相は腰を抜かしてその場に倒れ、それに続くように、首から勢いよく血を吹き出した国王の身体も、玉座の前に崩れ落ち、壇上からゆっくりと流れ落ちる。

 

アルファ「・・・はあ~、ゆきかぜ。周りをお願い」

ゆきかぜ「は~い」

 

その場にいた重臣たちがゆきかぜの雷遁を使い、麻痺らせる。

呆然と力を無くしたように、その場で座り込んでいた女性奴隷が、頭を下げてきた。

 

女奴隷「・・・おかげで姉妹たちの仇が討てました・・・。ありがとうございます、ありがとうございます……」

 

この人、元は姉妹で冒険者をしていたが、レグルスで盗賊団に襲われ、奴隷商人に売られた。

姉妹全員美しかったので、国王へと献上された。慰み者にされる中で、姉と妹が国王の勘気に触れて、いたぶられながら殺された。その恨みをいつか晴らすためだけに、生き長らえてきたのだと言う。

 

ゆきかぜ「とことんクズね」

アルファ「そうね。さて、じゃあ工場に案内してもらおうかしら」

 

そうして、サンドラにあった工場はすぐに廃業となった。

 

アルファ「あとはお願いね。レイガ」

みんな『え⁉』

レオーネ「はあ~最後までばらさないって言って無かったっけ?」

 

僕は被っていたフードを脱いで顔を出す。

 

デルタ「ボ――――――ス!」

 

すぐにデルタが抱き着いてくる。

 

レイガ「よしよし、相変わらずもふもふだな、デルタは」

デルタ「えへへへ」

ゆきかぜ「ちょっと! 私だっているんだから」

 

そう言って、ゆきかぜも抱きついてくる。

 

不知火「あらあら、なら私も」

レオーネ「おう、抱き着きあいか。ならあたしも」

 

さらに覆い被るように不知火とレオーネも抱きついてくる。ここまで来ると暑い。

 

アルファ「あなたたち、いい加減にしなさい」

デルタ&レオーネ&ゆきかぜ「「「ひッ!」」」

不知火「あらあら」

 

アルファの殺気がこもった言葉にデルタにゆきかぜ、レオーネがすぐに僕から離れる。

約一名だけは去り際に僕の頬をキスする。

 

アルファ「さて・・・じゃああとは任せるわ、レイガ」

レイガ「お任せを」

 

こうして、残りは僕が解決しました。

奴隷については故郷へ帰したり、僕の国へ移住したりした。

ちなみに何人かはなんと、うちの陰隊に入隊することになった。



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謎の島

ほぼ原作通りで申し訳ございません。


〈レイガサイド〉

サンドラ王国が崩壊してから一週間が経った。本当ならゆっくりしたいところだが、問題は次から次へとやってくる。

 

レイガ「あれが例の島か」

 

僕は今ある島の調査をしている。そこは以前バビロン博士が言っていた謎の島。

 

バビロン「この島は当時、魔の島と呼ばれていてね。周りの海域には海の魔物、セイレーンがいて全く船を寄せ付けず、飛行艇で近づいても、原因不明の障害が起きて墜落する始末でね。深い霧と雲に覆われたその島を目指して帰って来た者はいない。誰ともなく「帰らずの島」と呼ばれるようになったのさ。でもその島が現代には何故か存在しない。沈んだのかとも思ったのだけれど、ちょっと気になってね。ここら一帯を魔力検知してみたんだよ」

 

その結果、なんとバビロン博士の開発した魔力遮断と似た結界が張られていることがわかった。

問題は、だれが、何のために、それをしたのかだ。そこで博士が思い当たる人を言った。

 

レイガ「「時の賢者」?」

バビロン「そのまま、その通りさ。彼は時空魔法を操る。未来視、瞬間移動、時間停止、時間逆行、空間切断……。とんでもない爺さんだったよ。ま、操るといっても自由自在に操れるわけじゃなくて、いろんな条件や準備が必要だったみたいだし、どれもこれも極めて短時間だったけど」

 

そんなすごい魔法使いが過去にはいたんだ。

 

バビロン「その爺さんの弟子とかが張ったのかもしれないな」

レイガ「弟子・・・か。この島へ行ければなにかわかるかもしれないけど」

 

とりあえず今は島の偵察だけを紅玉に頼もうか。

 

 

 

 

 

それから数日後

 

紅玉『主』

レイガ「どうした紅玉?」

 

回廊を歩いていると、紅玉が翼をはためかせてやってきた。

 

紅玉『例の島へ放った眷属から連絡が入りました。なんとか侵入はできたそうなのですが・・・』

レイガ「なにかあったのか?」

紅玉『はい。島中、巨獣だらけだとか』

レイガ「はあ⁉」

 

巨獣だらけって、まるで怪獣島だな。

 

レイガ「それで人は住んでいるのか?」

紅玉『巨獣も入り込めないいくつかの結界の領域で、それぞれの集落に分かれ、生活を営んでいるようです。いわゆる都市国家といった規模ですが。それぞれ東西南北に四つ。島の中央地域には神殿のようなものが建てられています』

 

独自に文化が発展しているのか。ますます博士の言ってた「時の賢者」が絡んでいそうだ。

 

レイガ「結界の方は「魔力遮断」?」

紅玉『いえ、空は「魔力拡散」で、海は「進路誘導」かと』

レイガ「そうか・・・とりあえず、そのまま情報収集をお願い、どういった文化や社会を築いているか調べて。もちろん、安全第一でね」

紅玉『かしこまりました』

 

 

 

 

 

それで現在に戻る。

 

レイガ「そんでなんで巨獣が暴れているんだよ!」

 

紅玉から急な念話がきて、内容を聞くと、

都市の一部に三体の巨獣が入り込み、暴走している。

 

レイガ《なんでまた複数の巨獣に襲われるようなことになってんだ?》

紅玉《なんでも一部の者が巨獣狩りに失敗し、追われて逃げ込んできたとか。しかも間の悪いことに、逃げ込んできた者たちが三組いたのです》

 

南の都で鉢合わせした巨獣たちは、なぜか互いに争うようなことはせず、都に攻撃を加え続けているらしい。

そんで暴れている個体は

 

猿人型の巨獣、ヘビィコング。

猪型の巨獣、グランドボア。

牛型の巨獣、パワーバイソン。

 

と、言うらしい。

しょうがない。本当はもっと時間をかけて友好を築こうと思ったけど、もういいや。

 

 

 

 

 

その島へ渡った召喚獣の視覚を少し拝借して【コネクト】を開く。

 

レイガ「派手にやってるなあ」

 

そこには城塞都市といった感じの都市があった。高い壁がぐるりと街を囲み、壁の上や側面に大型弩砲が設置されている。

そしてその都を三匹の巨獣が取り囲んでいる。

ひたすら魔力障壁を殴りつける、赤銅色の毛並みをもった、猿人型の巨獣ヘビィコング。

距離を取り、猛ダッシュで突撃を繰り返す、猪型の巨獣グランドボア。

ドリルのような大きな角を叩きつける、牛型の巨獣、パワーバイソン。

そのうちのグランドボアに、城壁から大型弩砲の矢が雨霰と放たれていたが、効いている感じがまったくしない。

 

レイガ「事前に話す余裕もなさそうだな」

 

懐からスマホを取り出し、電話でテンペスト・レイにいるみんなの準備を確認したところで、目の前の空に【コネクト】を開く。

開いた転移門から次々とフレームギアが降下してきた。その数、百機。

 

レイガ「よし、じゃあエルゼはヘビィコングを、八重はグランドボアを、ヒルダはパワーバイソンを。他の者はそのまま待機。他にも巨獣がいるかもしれないから気を抜かないように」

エルゼたち『了解』

 

エルゼたち三機がそれぞれの巨獣へ向けて駆け出す。

巨獣たちもこちらへ気付いたようで、各々へ向かってくるフレームギアに対し、攻撃体勢を取り始めた。

まず、ヘビィコングがエルゼのランドグリーズに襲いかかる。が、コングの強烈な右ストレートをひらりと躱し、クロスカウンター気味に相手の胸に一撃を入れる。

 

エルゼ『爆砕!』

 

ドンッ! と打ち出されたパイルバンカーが、ヘビィコングの胸板を貫く。おびただしい量の血飛沫を上げて、地面に盛大に倒れた。

一方では八重の方は、弾丸のように、八重が操るフリストに突っ込んでいったグランドボアは、真っ正面から一刀両断にされた。綺麗な切断面を晒しながら、真っ二つにされた猪が倒れる。

ヒルダが乗るゲイレルルも同様に、突っ込んでくるパワーバイソンを盾で受け止め、その首を剣でギロチンのように切り落とした。

 

レイガ「もう終わっちゃった」

 

三機が城塞都市から少し離れ、正門前に並んで立つ。その後ろにズラリと並んだフレームギアの中から、真白き団長機、白騎士が前に進み出た。

僕はその機体の肩に飛び乗り、都市全体へ聞こえるように、街の空中にスピーカーをいくつも投影させる。

 

レイガ『我々は南の大陸から来たテンペスト・レイ公国の者である。こちらに敵対の意思はない。都の代表者と対話を望む。1時間以内に返答されたし』

 

1時間以内、と指定したのは、とりあえず有無を言わさず誰でもいいから引っ張り出すためだ。

一番いいのは市長とか領主とか、そういった者に出て来てもらいたい。

 

レイン「出て来ますかね?」

レイガ「どうだろうね。もし出てこなかったら、別の都に行ってみるか」

 

レインさんの問いかけに軽く答える。。

できればこの都を取っ掛かりにして、他の都にも話を伝えてもらえるとありがたいんだけどな。

紅玉を呼び出し、都の中の状況を伝えてもらう。

 

紅玉『都中大騒ぎのようです。遠眼鏡でこちらを監視しながら、大型弩砲や投石機の用意もしているようで』

レイガ「だよなぁ・・・」

 

ファーストコンタクト失敗したかな。

 

レイン「陛下。門が開きます」

レイガ「お、出て来てくれたの?」

 

白騎士のコクピットから監視していたレインさんの言葉に、僕は跳ね起きてそのまま地上へと飛び降りた。

城門からはぞろぞろと馬に乗った騎士たちが、こちらへ向けてやって来る。全員全身鎧姿の完全装備。

僕らから10メートルほど離れたところで、騎士たちは静止し、その中から一際ゴツそうな板金鎧に外套を身につけた鎧騎士が進み出てきた。

やがてその鎧騎士は僕の前まで来ると、馬から降り立ち、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。

よく見ると、厳めしい顔をした大男だった。

 

ディエント「南の都メリディエスの代表、四高弟の一、フライエント・サウスが末裔、ディエント・サウスである。この度のご助勢、感謝する。して、そこもとは?」

レイガ「テンペスト・レイ公国公王、光神玲我です。初めましてディエント代表」

 

僕が名乗るとまさか国王とは思わなかったみたいで驚いてはいたが、差し出した手を握り、とりあえず友好的な態度を示してくれたのでひとまず安心。

 

ディエント「公王陛下は南の大陸から来たと申されたが・・・。世界は滅んではいないのですね?」

レイガ「・・・なるほど。やはりこの島はパルテノが滅ぶ前に、外界との繋がりを断ったのですね。世界は滅んではいません。多数の国家が存在しています」

 

携帯からこの島も加工して加えた完全版の世界地図を空中に投影する。

 

レイガ「これが今の世界です」

ディエント「おお・・・」

 

空中に映し出された地図を見上げるディエント代表。

 

レイガ「ここがこの島ですね。テンペスト・レイ公国はここになります」

ディエント「我々はてっきり外界は水晶の悪魔に滅ぼされ、支配されているのだと・・・」

レイガ「確かに文明としては一度滅びました。しかし、こうして復興しています。とりあえず、お互い疑問に思っていることを話し合いませんか? その上で聞いてもらいたい話があるのですが」

ディエント「・・・ふむ。確かに」

 

収納魔法から大きなテーブルと椅子を取り出し、その場に設置する。突然現れたテーブルに、ディエント代表は目を白黒させていたが、おずおずと椅子に座ってくれた。

 

 

 

 

 

まずわかったことをまとめると、この島の名前はパレリウス島。これは時の賢者、パルテノの魔導師、アレリアス・パレリウスからとったらしい。

5000年前、この島に単身乗り込み、自然結界とも呼べる構造を発見したパレリウスは、ここを自分の魔法の実験場とすることに決めた。

やがてパレリウスがパルテノで亡くなり、フレイズの侵攻が始まると、危険を察したパレリウスの弟子たちは、いち早く家族と故郷の仲間たちをこの島へと避難させた。

フレイズたちが侵入できないように、パレリウスが残した秘宝をも使い、結界を強化したという。結果、この島は外界とは遮断され、島を抜け出すこともできなくなった。

フレイズたちの恐るべき侵攻から、人間の世界は滅び、フレイズの支配する世界になってしまったと思い込んだ四人の弟子とその仲間たちは、この島で生きていくことを決意、現在に至るというわけだ。

 

レイガ「やっぱり閉じ込められていたんですね」

ディエント「いや、我々は外の世界が水晶の悪魔・・・フレイズでしたか。それに支配されたとばかり思っていましたから・・・。閉じ込められたとは思わなかったのですよ。過去、何人かは外の世界へと船出した者もいましたが、全て元の場所へと戻ってきてしまったし」

 

それは「進路誘導」の結界のせいだね。

僕は、この結界を取り除き、他の国々と交流する気はないかということと、結界を取り除けば、巨獣が生まれる可能性が減ることなどを話した。

 

レイガ「問題は一つ。結界を取り除けばフレイズが出現する可能性も出てくるということですが・・・」

ディエント「いや・・・それはおそらく関係ないでしょう。なぜならすでにフレイズとやらはこの島に出現していますからな」

レイガ「え⁉」

 

ここ二年ばかりの間に、二度ほど現れたらしい。それって結界の意味ある?

 

ディエント「確かにその通り。ただ、気を悪くしないでほしいのですが、我々はまだ、公王陛下の言葉を全て受け入れるわけにはいかない。どこまでが真実なのか、我々には確かめる術すべがないのでね」

 

まあ、確かに。言えてる。突然やってきて、すべてを信じろって難しいからね。

 

ディエント「それにこのことを私一人で決めるわけにもいかん。北と東と西の代表にも話し、中央神殿のセントラル様にもお伺いを立てねば・・・」

レイガ「セントラル様?」

ディエント「セントラル・パレリウス様です。時の賢者、アレリアス・パレリウス様の末裔で、この島の結界とパレリウス様の遺産である、「門」を守っている方です」

レイガ「「門」?」

ディエント「パレリウス様が生涯をかけて作り上げようとした魔道具でしてな。それが完成すれば我々は新天地へと旅立てると言われています。四高弟がその後を継ぎましたが、完成させることはできなかったのです」

 

なにかの転移門だろうか?

 

レイガ「わかりました。まずはそのセントラル様と他の代表たちと話し合ってもらえませんか。この話を断るのならそれでも構いません。この土地へ、少なくとも僕らは二度と立ち入らないことを約束します。結界が破られなければ、他の国々も手出しはできないでしょう」

ディエント「・・・わかりました。個人的には結界からの解放を望んでいます。巨獣に怯え暮らすのはもううんざりでしてな」

レイガ「もちろん、その暁には巨獣退治を請け負いますよ。報酬は巨獣の素材をいただければ充分ですので」

 

南の都メリディエスの代表、ディエントと、二週間後の来訪を約束し、僕らは島を後にすることにした。

 

 

 

 

 

バビロン「にしてもパレリウス爺さんの遺産か。ちょっと……いや、かなり興味あるね」

レイガ「博士は面識があるんだっけ?」

バビロン「まあね。なかなかの変人だったよ。ボクが君を見つけた未来視のアーティファクト。あれもパレリウス爺さんの理論を元にしているんだよ」

 

博士に変人呼ばわりされるって・・・どんな人だよ、一体。

 

バビロン「玲我君、そのパレリウス島にボクも連れて行ってもらえないかな? その遺産とやらを見せてもらえれば、なにかわかるかもしれない」

レイガ「いいですけど・・・変なことはしないでくださいよ」

バビロン「わかってるわかってる。そこらへんはわきまえているさ。君の妻を信じたまえよ」

レイガ「・・・不安だ」

 

 

 

 

 

あっという間に二週間が経った。前と同じ場所へ転移すると、以前のような鎧騎士が数十人並び、先頭にディエントが待ち構えていた。

こっちも以前と同じように百機のフレームギアを引き連れている。

 

レイガ「こんにちは、ディエント代表。それで、話はしてもらえましたか?」

ディエント「とりあえず、セントラル様を含め、皆と会っていただきたい。その上で返事をさせていただこうということに決まりました。お手数ですが、島の中央神殿までお越しいただけませんか?」

レイガ「中央神殿ですか。わかりました。それでは転移魔法で向かいましょう」

ディエント「え?」

 

その場にいた全員を、【コネクト】で一気に中央神殿のある丘の近くへと転移させた。中央神殿の場所は、すでに紅玉の眷属から記憶を回収済み。

 

兵士1「こっ、これは・・・!」

兵士2「ち、中央神殿だ! 一瞬で・・・!」

 

ざわめく南都の騎士たち。ディエントも少し動揺を見せつつ、中央神殿へ使いを走らせる。すでに他の都の代表たちは集まっていたらしく、僕らはすんなりと中へ向かうことになった。以前のサンドラとは大違い。

レインさんたちを残し、神殿へ向かうのは、僕と博士、それに護衛として、八重とシオン(今日の秘書担当)、琥珀。

中央神殿は円形五階建てで、塔のような形をしていた。

神殿の中へ入り、二階へと向かう。二階の回廊にある重々しい重厚な扉を開けると、そこはかなり広めの部屋だった。

中央に置かれた円卓に男性と女性が二人ずつ、それと周りには数人の護衛が待っていた。

ディエントと同じような鎧を身に纏った三人、老齢の男性と青年、そして短い赤髪の若い女性であった。

おそらくこの三人が残る都の代表なのだろう。

そして残る一人、その女性は白いローブを着込み、節くれだった木の杖を手にしていた。腰まで伸びた少しウェーブがかかった栗色の髪に青い双眸。年の頃は20代半ばくらいか。隣の赤髪の女性よりは年上に見え、優しそうな微笑みを浮かべている。

全員が入室すると、白のローブを着た女性が立ち上がり、僕に手を差し伸べる。

 

セントラル「初めまして、テンペスト・レイ公王陛下。私はアレリアス・パレリウスが末裔、セントラル・パレリウスと申します。この島の導師をしております」

レイガ「初めまして、セントラル導師。光神玲我です」

 

互いに軽く挨拶をして握手する。

次いで、後ろの三人も紹介された。

白髪と髭の老人が東の都代表、モルガン・イースト。

眼つきの鋭い茶髪青年が北の都代表、サジッタ・ノース。

そして赤髪の女性が西の都代表、ミリー・ウエスト。

それにディエント・サウスを加えて四代表ってことか。

僕は空いていた円卓の席に座ると、まず、僕からもう一度ディエントに話したことを説明する。

空中に地図を展開し、世界情勢やフレイズのこと、結界の影響によって、巨獣がかなり高い頻度で生まれていること、そしてそれを解除する方法を。

 

レイガ「ディエント代表にも申しましたが、この話を断るのならそれでも構いません。我々はこの島と付き合えたらいいと考えてはいますが、強制するものではないからです。むろん、その際は我々は引き上げ、この島に一切干渉しないことを約束します」

ミリー「二、三、質問してもよろしいか?」

 

西の都のミリー代表が軽く手を上げた。

 

レイガ「どうぞ」

ミリ―「断った場合、他の国からの干渉もなくなると見てよいのでしょうか?」

レイガ「この島の結界は強力です。正直にいいますと、我々テンペスト・レイの力なしでは、他国は到底たどり着けません。よって、その心配はありません」

ミリー「結界を解いたとして、我々の領土に他国が攻め込む可能性は?」

レイガ「この島を攻めるには、よほどの大船団で攻めてこないと難しいでしょう。仮に攻めてきたとしても、都の結界は破壊できないでしょうし、巨獣の多いこの島で長期に渡る侵略は無理です。絶対とは言えませんが」

モルガン「結界を解けば、公王陛下が島の巨獣を退治してくれると聞いたが本当ですかな?」

 

東の都代表、モルガンも質問を投げかけてきた。

 

レイガ「僕らが所有しているあの巨人兵・・・フレームギアと言いますが、あれは対フレイズ用の兵器です。その訓練、あるいは新型機のテストに巨獣はうってつけなわけでして。もちろん巨獣の素材はいただきますが、何割かはお渡しします。そちらの土地で勝手させてもらうわけですから」

 

ふむ、とモルガンは椅子に持たれて沈思して黙り込む。今度はセントラル導師から手が上がった。

 

セントラル「この島の結界を消す、と申しましたが、どのような方法ででしょう? この島はアレリアス様の施された結界で覆われております。その中枢となる魔道具はこの神殿の地下にございますが、幾重にも結界が施され、誰も触れることも破壊することもできないのですが・・・」

 

僕は懐から注射器に似た魔道具を取り出した。

 

レイガ「この魔道具は他の魔道具の効果を打ち消す効果を持っています。つまり、魔法の付与をすべて剥ぎ取ってしまうのです。これを使えば結界の魔道具は全ての力を失い、二度と元に戻ることはありません。一回限りの使い捨てですが」

 

テーブルに置いた小さな魔道具にみんなの視線が集まる。

僕はそれをセントラル導師の方へすっと差し出した。

 

レイガ「差し上げます。使うか使わないかはあなたたち次第です」

 

セントラル導師がこちらをしっかりと見据えてくる。

 

セントラル「もしも、ですが。結界はこのままにして、外界への脱出を望む者だけを陛下に転移してもらうことは可能でしょうか。その際、出て行った人々を受け入れてくれる国はありましょうか?」

レイガ「できないことはありません。受け入れてくれる国もあるでしょう。しかし、あまりお勧めはできません。ここと同じような暮らしはできないでしょうし、全て一からやり直しになるでしょう。どちらにしろ、もうすでにその魔道具を渡した以上、決めるのはそちらです。結界を消すか、消さないか。僕らはあなたたちの出した答えをできるだけ尊重したいと思っています。よくお考えください」

セントラル「・・・ありがとうございます。もう一度、よく話し合ってみたいと思います」

 

魔道具を手に取り、セントラル導師が頭を下げる。

とりあえず、あとは向こうに任せて、僕は気になることを質問する。

 

レイガ「ひとつこちらからも質問があるのですがよろしいですか?」

セントラル「なんでしょう? 我々に答えられることでしたら」

レイガ「「時の賢者」アレリアス・パレリウスが残したという遺産・・・「門」。それを見せてもらうことはできますか?」

セントラル「「門」ですか。構いませんよ。いただいた魔道具のお礼といってはなんですが。特に隠してあるわけでもないので」

 

セントラル導師がにこやかに微笑むが、それを聞いて、北の都代表のサジッタが口を挟んできた。

 

サジッタ「セントラル様。アレリアス様の遺産とも言うべき「門」に、部外者を近づけるのはどうかと思いますが。万が一破壊でもされたら・・・」

セントラル「5000年もの間、何の用途で造られたかもわからない、未完成の物を壊してなんの得があるのです。それよりも私は陛下に見せることで、なにか「門」についてわかるのではと思っているのですよ」

 

セントラルの言葉にサジッタが口を噤む。

 

セントラル「どうぞこちらへ。「門」は神殿の最上階に設置してあります」

 

僕らはセントラル導師に連れられて、神殿の最上階へと螺旋階段を登っていく。

新天地へ導くとされた「門」。

これがまた新しい物語の始まりになることをこの時の僕は知らなかった。



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新世界

〈レイガサイド〉

 

神殿の最上階へ向かった僕ら。

最上階の中央に「それ」はあった。

扉は無く、アーチ状の入り口が見える白銀に光る「門」。

 

 

レイガ「触っても?」

セントラル「どうぞ、ご自由に」

 

セントラル導師に許可をもらい、手を触れる。ふむ、魔力が込められていて、複雑な流れを作っているようだ。

 

八重「硬そうでござるなあ」

 

同じように門に触れていた八重の感想に頷く。確かに硬いけど、これってなんの素材だ?

 

バビロン「ふむ。「クロノチウム」か。ここまで純度の高いものは初めて見たな」

 

バビロン博士がペタペタと門を触る。その言葉を聞いて、セントラル導師が目を見開く。

 

セントラル「ひと目で見抜くとは……。陛下、この人はいったい?」

レイガ「この人はレジーナ・バビロン博士。うちの魔工学士ですよ。彼女の無属性魔法でこの門を分析してもいいですか? きっとなにかわかると思うんですが」

バビロン「え⁉ あ、ああ、はい、それは構いませんが・・・」

 

博士は目の前の「門」に両手で触れて、魔力を集中し、分析魔法を発動させた。

 

バビロン「解析(アナライズ)

 

頭に流れ込んできた情報を整理しているのだろう。博士は時折、ふむ、とか、む? とか呟きながら、眉を寄せたりしている。

 

バビロン「見たこともない構造式だ。確かにこれは大したシロモノだよ。転移魔法と時空魔法・・・「ゲート」と同じような効果を持つ魔道具なのは間違いないんだが・・・なぜ、座標軸が指定してないんだ? いや、指定されてないというよりも、初めからそのことを考慮していないような・・・。起動させる魔力消費量があり得ないほど高い。これでは・・・」

 

ぶつぶつと自分の世界に入り込んでしまった博士を放っておいて

 

レイガ「この魔道具はアレリアス・パレリウスが遺したものなんですね?」

セントラル「はい。我が祖、アレリアス・パレリウスはこのパレリウス島を自らの魔学実験場にしておりました。この神殿自体がこの「門」のための土台でもあるそうです。完成を前にパレリウスは息を引き取り、そのあとを高弟の四人が引き継ぎましたが、結局完成することはなかったと伝えられて、」

バビロン「いや、ある意味完成はしてるよ。これは」

 

セントラル導師の話をぶった切るように、「門」から手を離した博士が白衣の袖で額の汗を拭う。

 

バビロン「効果とか用途は発動してみないとわからないけど、魔力発動の起動式とかは完成しているよ」

レイガ「じゃあなんで魔力を流しても発動しないの?」

バビロン「簡単さ。発動に必要な魔力が足りないんだよ」

 

シンプルな問題だな。

 

セントラル「起動魔力が足りない・・・? 私はそれなりに魔力量が高い方なのですが、それでも足りないと言うのですか?」

バビロン「察するに君の魔力が高いと言っても、せいぜい2、3人分くらいだろう? 桁が違うよ。この魔導式を起動させるには、少なく見積もっても10万人規模の魔力がいるね」

セントラル「じゅ・・・ッ⁉」

バビロン「しかもそれで一秒足らずの起動だ。普通になんか起動できっこない。一人で魔力を毎日込め続けても300年くらいかかるね」

 

効率悪いな、それ

 

バビロン「その魔力量を得るために、魔力増幅の魔導式を組み込もうとしていたみたいだけど、うまく噛み合っていないのさ。たぶんここさえ完成させることができたなら、百分の一くらいで済むだろうね」

セントラル「完成すれば三年間で起動させることができるというわけですか?」

バビロン「ま、理論上はね」

 

3年・・・まあ、まだ現実味があるかな。

 

セントラル「それで未完成、と・・・」

バビロン「完成はしているが未完成。まあ、玲我君がいれば起動できるだろうけど」

レイガ「・・・やっぱりそうなるのね」

 

博士の悪戯めいた視線に、僕は頭を掻く。

 

セントラル「その・・・あれだけの巨人兵を転移させたことから、公王陛下の魔力量が高いことはわかっていましたが・・・。いったいどれほどの魔力量を・・・」

レイガ「結構ありますよ。たぶん、これを起動させても余裕なぐらい」

セントラル「なッ・・・⁉」

 

琥珀たち神獣五匹にその眷属合わせても、減った気がしない。

 

レイガ「起動させることはできると思いまけど、一応聞きますけど、起動しても?」

セントラル「は、はい。アレリアス・パレリウス様が何をなさろうとしていたのか、それを知ることができるのなら・・・」

 

セントラル導師に一応許可をもらったので、色々と準備をすることにした。

 

八重「護衛としては玲我殿を危険に晒すことは許可できないのでござるが・・・」

レイガ「大丈夫だよ。どこに跳んでも僕なら戻ってこれるしね。なにかあっても対処できるし。もしもの場合、シオンお願いね」

シオン「はい、レイガ様」

 

渋る八重にここで待ってくれるようになんとか説得して、僕らは「門」の周辺360度に防護結界を張った。もし海中だったとしても、この半ドーム状の結界で防げる。そうしたらすぐ「門」を閉じればいい。

 

レイガ「じゃあやってみますか」

 

みんなを下がらせて、「門」に手を触れる。そのまま、魔力を流し始めると、「門」の上部にある回転盤が回り出し、中央に設置されたメーターの針が動き出した。は一気に魔力を注ぎ込むと、回転盤が猛スピードで回転し始め、メーターがギュンッと半分ほど上がった。それに伴い、門の床下に刻まれた魔法陣が輝きを帯びて広がっていく。

 

ディエント「おお・・・!!」

セントラル「これは・・・!」

 

周りの人たちが驚いている。どんどん魔力を注ぎ込み、やがて魔法陣だけでは無く、神殿自体が光を帯び始めた。メーターはすでに80%に突入している。

「門」の中の空間に揺らぎが生じる。

やがてメーターが完全に100%を示した時、「門」の中の空間に別の風景が現れた。木々と空が見える。

 

レイガ「繋がったか?」

 

魔力を流すのをやめると閉じてしまうかもしれないので、手を触れたそのままの状態で正面に移動する。

 

レイガ「じゃあ行ってきます」

 

みんなに軽く告げると、僕は「門」の中へと足を踏み入れた。すると、まるで身体が引っ張られるような感覚が襲ってくる。

 

?「あなたを待っていた

レイガ「え⁉」

 

聞き取れない声。それと共に、僕の身体は門を通り抜ける。

 

 

 

 

 

大地を踏みしめる感覚、僕は見知らぬ森の中に立っていた。

振り返るが、そこには何もない。やはり一方通行の転移門なのだろう。

さて、ここはどこだろう。大樹海・・・じゃなそうだな。普通の森って感じ。

早速ハクちゃんに頼んでマップを表示してもらおうとするか

 

レイガ「ハクちゃん、マップを出してくれる?・・・・・・ハクちゃん?」

 

妙だ。いつもならすぐ返事が返って来るのに。

 

レイガ「ハクちゃん!」

 

携帯を操作するが、ハクちゃんがそもそもいない。おかしい。束のところに行ってるなら連絡ぐらいするはずだけど、

試しに八重に連絡を入れようと電話をかけるがそれも繋がらない。琥珀への念話も同様だった。

おかしい、多少の結界ぐらいなら、連絡だってできるはずなのに

 

レイガ「どういうことだ?」

 

そんなことを考えていると、手前の森の奥から誰かの悲鳴と、木の倒れるような音が聞こえてきた。

僕はすぐにそちらの方へと駆け出し、深い森を走り抜けると、やがて街道のような場所へと出る。周りの木々が根元からなぎ倒されていた。

そして僕は驚くべきものを見つけた。大きな金属製の馬車に襲いかかる、小型の双頭の恐竜。そこはまあ、いいとして、その馬車の目の間にいる動物だ。

 

レイガ「え⁉ メカニッカニ⁉」

 

思わず叫んでしまった。だって、馬車って普通馬でしょ。ユミナたちと出会ってからずっと馬だったのに、いきなり蟹って、しかも結構大きいし。しかも見た目がケミ―のメカニッカニって。

 

レイガ「せめて馬にしてよ」

 

思わずつぶやいていると、双頭竜が強い体当たりで蟹もろとも馬車に一撃を食らわせる。と、同時に馬車の中から幾つかの悲鳴が響いてきた。

僕はギアトリンガーで双頭竜に対し威嚇射撃をする。突然の攻撃に馬車から離れたところを狙って、ザングラソードで首を二つとも一気に刎ね飛ばす。

機械仕掛けの蟹が体勢を元に戻し、馬車の中から数人の人間たちが顔を覗かせた。どうやら無事のようだな。

そのうちの一人の男がこちらへ歩いてきて、僕に向かって笑顔で話しかけてくる。

 

?「atihsamirakusat.uotagiraomuod」

レイガ「・・・え?」

 

聞き取れない言葉。おかしい来る前にこの星の語学が全部習ったつもりだったけど・・・え、もしかして

僕は嫌な予感がして、すぐ収納魔法から束が開発したこんにゃくを取り出す。なんでこんにゃくって、それは束のセンス。これ食べれば瞬時に星の言葉をしゃべれる優れもの。

 

レイガ「僕の言葉、わかりますか?」

?「あ、アレント語が話せるんですね! よかった、どうしようかと・・・」

 

ああ、今の反応で、あの「門」の座標がわかった気がする。

 

サンチョ「私は旅の商人でペドロ・サンチョと言います。助けてくれてありがとうございました」

レイガ「いえいえ、どうかお気になさらず。あ、僕は光神玲我と申します」

サンチョ「レイガさんですか。珍しい名前ですね。どこのお生まれですか?」

 

久しぶりに聞かれたデジャヴ。

 

レイガ「生まれはイーシェンで、今はテンペスト・レイに住んでいます」

サンチョ「イーシェン? テンペスト・レイ? 聞いたことのないところですね。辺境の方の村ですか?」

 

ああ、まじか。やっぱり

 

レイガ「すみません、遠い田舎から来たもので、ここってどこが教えてくれませんか?」

サンチョ「ここは首都アレンから馬車で一日ばかり東に来た街道ですよ」

レイガ「よければ地図を見せてもらっても」

サンチョ「あ、ちょっと待ってて下さいね」

 

サンチョさんは馬車の方へ戻ると、地図を持ってきてくれた。

 

サンチョ「地図です。ここがアレント聖王国。そしてここが首都アレンですよ」

レイガ「・・・やっぱり」

 

手渡された地図を見て納得とする。それは世界地図に間違いはなかった。

・・・すべてがひっくり返った、まるで鏡。ここは僕が来た星の、つまりユミナたちがいた世界の左右逆転した世界。

あの「門」は別の世界、異世界に繋がる扉だった。

 

レイガ「ありがとうございます。サンチョさん」

 

王都まで連れて行ってくれるというサンチョさんの申し入れを断って、僕らは別れた。

王都で店を出しているというサンチョさんに、王都に来たら寄ってくださいと念押しされながら、遠くなるカニバスを見送った。

さて、

 

バイス「どうすんだーーーーーー、これからーーーーーーーーー」

ラブコフ「ラブーーーーーーーーーー」

「いや、落ち着いてよ。とりあえず【コネクト】」

 

いつも通り【コネクト】を発動する。いつも通り魔法陣が出る。試しに腕を伸ばすが、いつもなら魔法陣を通り抜けるが、今回は魔法陣を通り抜けない。

座標をテンペスト・レイの城の訓練場にしたが、これではだめ。

 

レイガ「まあそれなら、こっちだって考えはあるけど」

 

一つ目、べリアロク。無理やり次元の狭間を斬って、帰る。

いやこの星に変な影響を与えるかもしれないから却下。

 

二つ目、元の姿に戻って、直接帰る。

これでもいいけど、時間が掛かるな。却下。

 

今頃、琥珀たちもいないだろし、みんなに迷惑かけてるから最速で帰らないと。

 

レイガ「じゃあ、これだな」

 

僕はギアトリンガーとゼンカイジャーギアを取り出す。

 

 

 

 

 

〈八重サイド〉

 

玲我殿が門を起動して、すぐでござる。突然傍にいた琥珀が消えてしまったでござる。

 

八重「琥珀⁉」

 

すぐに玲我殿に電話したが、繋がらなかった・・・拙者の目の前が急に暗くなったでござる。

 

八重「れ、玲我殿・・・(´;ω;`)ウゥゥ」

 

絶望感に力が抜け、膝から崩れ落ち、涙を流してしまう八重。

そんな悲しい空気の中、

 

レイガ「ただいま」

八重「れ、玲我どの・・・? 玲我殿!」

 

愛する夫の声が最上階に響き渡った。

 

 

 

 

 

〈レイガサイド〉

 

声をかけると、八重が弾かれたように立ち上がり、僕へ向けて抱きついてきた。

 

八重「し、心配・・・心配したんでござるよぅ・・・。琥珀も消えてしまうし、連絡もつかないしぃ・・・。もっ、もう帰ってこないかと・・・ううう〜」

 

僕は泣きじゃくる八重を抱きしめながら、サラサラの黒髪を撫でた。

 

レイガ「僕がみんなをおいてどこかに行くわけがないだろ?」

八重「ぐすっ・・・そうでごさるな・・・」

バビロン「いい雰囲気のところ悪いんだがね・・・その玲我君の頭に乗ってるその子は?」

 

博士の言葉にみんなが僕の頭の上を見る。まあ帰ってきたら、上に鳥型のロボットがいたら、びっくりするよね~

 

レイガ「この子はセッちゃん。僕の友達で、あっちの世界から帰って来る時に手伝ってもらったんだ」

セッちゃn「オイラ、セッちゃんチュウ。よろしくっチュウ」

 

そう。僕があの異世界から帰って来る手段として、用いたのが、セッちゃんに搭載された並行世界間ゲートである。あとでちゃんと介人の元まで送り返さないといけないな。今頃、あっちはパニックしてると思うし。

 

 

 

 

 

 

そのころ、とある場所では

 

介人「えーーー!! セッちゃんが消えた!」

ジュラン「おいおいマジかよ。留守番はガオーンだったよな」

ガオーン「ぼ、僕は人間ちゃんたちと遊ぶ約束してたから、マジーヌに頼んだよ」

マジーヌ「な、わ、私は、占いで・・・今日の留守番はブルーンが良きってでたから、ブルーンに任せました」

ブルーン「わ、わたくしは、ヤツデさんにお買い物を頼まれたので、ジュランに任せましたよ」

ジュラン「つーことは、俺って・・・・えーーーーー!」

みんな「「「「ジュラン!」」」」

 

・・・うん、大丈夫だよな。たぶん。おそらく

 

 

 

 

 

セントラル「異世界・・・? 別の世界へ転移する「門」だったと・・・?」

 

セントラル導師以下、四代表は元より、博士も驚愕の事実に目を見張っていた。

 

レイガ「裏世界、とでも言えばいいんですかね。僕らの世界とは似てはいますが、いろいろと違う世界のようです」

 

サンチョさんに見せてもらった地図を、カメラで撮っていたので、それをカラフルコマーシャルに印刷してもらった。

 

ディエント「アレリアス・パレリウス様が仰っていた「新天地」とは、このことだったのか・・・」

 

ディエントが小さく呟く。おそらくそれは正しい。

 

レイガ「さて、これであなたたちには選択肢が増えました。今まで通り、巨獣と戦いながら暮らしていくか。結界を壊し、外の世界と関わり合って生きていくか。結界はそのままで、外の世界に行きたい者だけ解放するか。それとも「門」をくぐり、異世界へと旅立つか」

 

会議室の中がシンと静まり返る。それに構わず僕は言葉を続けた。

 

レイガ「言っておきますが、異世界へ行くなら最後、二度と戻って来れないと思ってください。僕は戻れますが、あなたたちではほぼ不可能です。向こうでは言葉も通じませんし、世界情勢もわかりません。そこを覚悟した上で答えを出してもらいたいのです」

セントラル「・・・今すぐには答えは出せません。幾日かいただけますか?」

レイガ「構いませんよ。特に急いでいるわけではないので。じっくりと話し合って下さい」

 

セントラル導師の言葉に僕は静かに頷く。彼女の言うことももっともだし、この島の住人のこれからの運命を決めることだ。ちゃんと話し合った方がいい。

とりあえず今日のところは帰ることにしよう。

そして帰ったあと、みんなから泣きながら抱きしめられることになる。

本当にごめんなさい。

 

 

 

 

 

数日後

 

セントラル「協議の結果、この島の結界を解き、外の世界と交流して行こうということになりました。よろしくお願いいたします」

レイガ「ありがとうございます。我がテンペスト・レイもパレリウス島の平和のために協力させていただきます」

 

差し出されたセントラル導師の手を握る。パレリウス島は結界を解き、外の世界と付き合うことになった。

早速、結界の要となっていた魔道具の機能を停止させるため、僕らは中央神殿の地下へと向かった。地下の階層中央部に、赤く輝く大きな魔石の埋め込まれた、黒い石板が立っていた。

 

レイガ「これが結界の発生源・・・」

セントラル「島の各地にある同じような石板モノリスが、ここと連動して結界を発生させているみたいです。なので、中心のこれを停止させれば全ての結界が消えるはずです」

 

セントラル導師の説明を聞きながら、石板に手を伸ばすが、あと数センチのところで、手がそれ以上石板に近づかない。魔法障壁か。

注射器型の魔道具「初期化」を構え、その先が魔法障壁へと触れた瞬間、導師が注射器の押し子を親指で押し込む。

「無」の付与が上書きされていき、輝きを放っていた魔石が光を失っていく。

5000年間この島を覆っていた、いや守っていた結界がたった今消えたのだ。

確認のため、島の上空にいる紅玉と海にいる珊瑚&黒曜に念話を飛ばす。

 

レイガ「三人ともどう? 結界は消えたか?」

紅玉『はい。島上空を包んでいた魔力拡散の結界が霧散したようです』

珊瑚『こっちも同じよぅ。霧が晴れたわ。これなら外の船も接岸できそう』

 

召喚獣からの報告をセントラル導師に伝える。これでこの島は解放された。

あとは大掃除が残っているな。

 

 

 

 

 

ハリネズミのような巨獣が体から放つ針の散弾を、右に左に素早いフットワークでルーの乗る専用機「フレック」が躱していく。

背中に装備された「Mユニット」の効果だ。大きな翼によって、素早い移動と加速を可能にする、フレック専用支援装備である。ちなみにMはマジレンジャーのM。

わかったとおもうけど、フレックのモデルは「ゴーカイオー」である。元々フレックはあらゆる状況に応じて装備を変えて戦う、のをコンセプトにして作られた。それを束とバビロンが勢い余って、あれを完成させてしまった。まあ。まだいいよ、胴体から竜の顔が出てないんだから。

おっと、話がそれた。フレックの装備は今のところ三つで、飛行特化の「Mユニット」、近接特化の「Gユニット」

今もハリネズミに近接で、背中のMユニットを送還し、背中と腰に四本の剣が納まっている「Gユニット」を召喚した。ちなみにGはゴーカイオーのG。

これはわかりやすいね。

すぐさま腰の短剣を左右から引き抜き、逃げようとするハリネズミの体の針を、次々と斬り落としていく。

突然、ハリネズミが体を丸め、ボールのようにフレックに飛びかかってきた。その攻撃を難なく躱したフレックだが、ハリネズミはそのまま転がり続け、その場からの逃走を図る。

しかし、ルーは慌てることなく腰のGユニットを消し、左右の肩にガトリング砲を出現させる。あれが三つ目遠距離射撃特化の「Dユニット」だ。ちなみにDはデカレンジャーのD。

無数の弾丸が、逃げるハリネズミを撃ち抜き、その場に倒れる。

 

レイガ「おみごと」

 

巨獣の絶命を確認すると、ディエント代表の合図で南の都の兵士たちがハリネズミの処理に向かっていく。

素材の剥ぎ取りだ。モノがモノだけに、手間がかかる作業だが、素材は全てあちらに提供するので、僕らは手を出さない。

Dユニットをバビロンに送還したフレックから、ルーが降りてくる。

 

レイガ「お疲れ様。どうだった?」

ルー「問題ありませんわ。換装も滞りなく行えましたし、思う通りに動かせました。充分に戦場の皆さんをお助けすることができそうです」

 

ここと同じく東と北、そして西方面にも、それぞれ巨獣狩りの部隊を派遣済みだ。巨獣の所在は結界が解けたことで、バビロンからサーチできるようになっている。巨獣がこの島から駆逐されるのも時間の問題だろう。

とりあえず、これで巨獣の脅威も減るし、まずはエルフラウから商船団が近日中にやってくるから、あとはお互い話し合いでいろいろ決めてもらえれば。通貨が違うので最初はいろいろと大変だろうけど。

そんなことを考えていると、博士から電話がかかってきた。

 

レイガ「はい、もしもし」

バビロン『玲我君かい? パレリウス翁の研究書の中に気になるモノがあってね。ちょっと見てもらいたいんだが・・・』

レイガ「わかりました。こっちもひと段落したし、少ししたらそっちに向かいます」

 

休みたい

 

 

 

 

 

バビロン「これを見てくれ」

 

『研究所』の第二ラボ、その机の上でノートのようなものを見せられた。

開かれたそのページには、なにやら鎧のようなモノが描かれている。ただ、関節や部分的なパーツが妙に機械的だ。

 

レイガ「これって・・・フレームギア?」

バビロン「いや、違う。フレームギアはボクが一から造りあげたオリジナルだし、5000年前、一応の完成はさせたがどこにもお披露目はしていない。それにこれはサイズが小さすぎる。せいぜい人間と同じくらいの大きさだよ」

 

小さい? 確かに規格が人ぐらいの大きさだ。

 

レイガ「門以外にもこんなものまで作ろうとしたんだね。パレリウスさんは」

バビロン「だとしたらこの魔道具に書かれている文章は少々おかしい。自分で作ったものに、「動力源は大気魔素と太陽光か?」だの「自律型、独自の思考、人より意識を抽出か?」とか書くかね。まるで、見たことも聞いたこともないモノを書き留めたという感じだよ。それにここだ」

 

博士がノートの端に書かれている一文を指差す。

 

バビロン「「時の歯車と次元の門、隣り合う世界の来訪者」。パレリウス翁は次元門を研究していた。あくまで可能性なのだが・・・パレリウス翁は別の世界へ旅立つことはできなかったが、別の世界からその世界の者を呼び出すことに成功したのではないだろうか」

 

ふむ、なるほどつまりは召喚者か。

 

レイガ「でもあの門の魔力量を考えると、そんなこと一人で出来るかな?」

バビロン「あるいは別の世界から来た来訪者と出会っていたか、だね」

レイガ「まだそっちの方が可能性があるような気がするけど・・・」

 

なーんか、気になるんだよな。

 

バビロン「ひょっとしたら、その来訪者と会ったことで、パレリウス翁は次元門を作ろうとしたのかもしれないね」

 

うーん、これは本格的に5000年前の結界修復について調査する必要があるかもしれないな。なにかしらパレリウス翁が関わっていたような気がするな。

 

レイガ「ところで次元門の方は完成した?」

バビロン「そっちの方は束に頼んだけど、玲我君、彼女何者なのさ。次元門をつくるの協力してょしいって言ったら、「OK。バビちゃん。じゃあ明日には設置しとくから。あと魔力じゃ燃費を悪いし、こっちでエネルギーシステム変えとくね」って、それで今日出来てるし、エネルギーもオリジナルの百分の一、いやそれ以上だ。リーンちゃんやリンゼちゃんでも開くようにできてて、正直ようやく君の妻たちが人外だってわかったよ」

 

凄い言われよう。

 

バビロン「それで「門」の起動実験をしてもらいたいんだが」

レイガ「いいよ、どうせ一緒に行きたいって言うと思ったから、林檎にお願いして、簡易版並行世界間ゲートを作ってもらったんだから」

 

そう言って、僕は収納魔法からWRB「ブックゲート」を取り出す。林檎にお願いして、この世界とあっちの世界だけ往復できるように改良してもらった。

 

バビロン「ありがとう、旦那様」

 

僕と博士は『庭園』に建ててもらった次元門へと向かう。

ちゃんと電話でユミナたちにそのことを話した。正直止められかなと思ったけど、あっさりと許可をいただけた。まあバビロンh枷と行くって話したら、帰った後に全員分のデートを申し込まれたけどね。

期間は一日。

向こうに一人知り合いができたし、その伝手で土地や資材を確保できれば御の字かな。

『庭園』に設置された次元門の複製に魔力を流し込んでいく。

門に取り付けられているメーターが100%を指し示すと共に、門の中に風景が現れた。

 

レイガ「それじゃ行きますか」

バビロン「さあ、まだ見ぬ地へいざ」 

 

二人で門をくぐる。ちなみに手を繋いで。

 

 

レイガ「あれ、森じゃない」

 

前のような森の中じゃなく、海岸みたいな岩山が見える。

今回は謎の声はしなかったけど。

 

バビロン「おお、ここが異世界」

レイガ「感動してるとこ、悪いけど。とりあえず、ここが何処かわからないとな。ハクちゃん、マップ表示」

ハク「はい、パパ」

 

ハクちゃんもバージョンアップし、こっちの世界でも繋がるようになった。前回しれっとこっちの世界の地図も取っておいたので、これで迷子になることはない。

とにかくサンチョさんが店を構えているという、聖王国アレントの王都アレンへと向かおう。

現在地は元の世界でフェルゼン王国のあたり、聖王国アレントはロードメア連邦のあるあたりだな。

 

「よし、じゃあ行ってみるか」




改めて、ルーの機体をフレックにし、スゥの機体名を「スルーズ」にする予定です。そのため、今までの名前を随時書き直していきます。


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異世界デート

〈レイガサイド〉

 

バビロン博士を連れて聖王国アレントに到着する。が、さっそく問題発生。

 

レイガ「まさか身分証が必要なのか」

 

都へ入るためには身分証か、一定額のお金が必要なようなのだ。門の前には人が並んでいる。

もちろんこの世界の身分証もお金も持っていない。

 

レイガ「しょうがない、これはあんまり使いたくなかったけど」

 

姑息な手だが、【透明化】を使って、僕らの身体を透明化させる。そして、門番の横をすらりと通りぬく。

これ、神様がやっていいことかな(´;ω;`)ウゥゥ

通りから離れた路地裏で、人目がないことを確認し、【透明化】を解く。

あらためて通りへと出て行くと、人の賑わいが肌で感じられた。建物や通りは煉瓦造りや石畳で、あっちの世界とは大差ないように思える。

 

バビロン「おや、玲我君。あれを見た前」

レイガ「うん?・・・なんだあれ?」

 

博士が指さす方を見ると商人風の男がダチョウのような機械にまたがって、横切って行った。

今度は向こうから足の先に八つの車輪をつけた蜘蛛のような機械が地面を滑るように走ってくる。その背中には馬車のようなシートが取り付けられており、金持ちそうな男女が笑い合いながら話していた。

 

バビロン「これはこれは、いきなり面白そうなものと出くわしたね」

 

・・・もうこれ以上のことはないよね。

とりあえずまずはサンチョさんに会いに行こう。

僕らは歩き出し、近くの店に入る。

 

商人「へい、らっしゃい」

レイガ「すみません。実は人を捜していて、この都にペドロ・サンチョって商人がいるはずなんですが、わかりますか?」

商人「なんだ、サンチョさんかい? 旦那の店ならこの前の通りを北へ真っ直ぐいったところにあるよ。「サンチョ商会」って書いてあるから」

レイガ「ありがとうございます」

 

店主にお礼と別れを告げて、通りを北へと歩き出す。

 

レイガ「お、「サンチョ商会」。ここか」

 

高級そうな煉瓦造りのその店の横には駐車場のようなスペースがあり、そこにはあの時のカニバスが停まっていた。間違いない。ここがサンチョさんの店なんだろう。

階段を登り、お洒落な装飾をされたドアを開ける。ドアベルがちりりんと鳴り、店内にいた20代後半のエプロンをした女性がこちらに目を向けて来た。

 

?「いらっしゃいませ。・・・あら? あらあらあら! あなたはいつぞやの!」

レイガ「うん?」

 

僕の顔を見るなり、栗色の髪を大きな髪留めでアップにまとめたその女性が笑顔で近づいてきた。そして僕の前で軽く頭を下げる。

 

?「その節はお世話になりました」

レイガ「えーっと・・・?」

バビロン「おや~玲我君は私たちの知らないところで不倫をしていたのかな?」

レイガ「それは絶対にない」

モナ「あ、覚えていませんよね。主人しか話してなかったし。私はペドロの妻でモナっていいます。あの時、ゴレム馬車の中にいたんですよ?」

レイガ「ゴレム?」

モナ「ほら、表に停まっている、あの」

 

モナさんが指を指す先には、店内からのガラスを通して横付けされたカニバスが見えた。

あれってゴレムっていうのか。

 

モナ「いま主人を呼んできますね」

レイガ「ありがとうございます」

 

パタパタとモナさんは奥にある階段の方へと走って行った。

 

バビロン「ふむふむ、どうやらこの世界ではあの「ゴレム」というのが、日常生活をサポートしているようだね」

レイガ「それに自動操縦か・・・」

 

二人でガラス窓の先にあるゴレムと呼ばれた機械のカニをなにげに見やる。

一応、スマホのカメラで撮影しとく。

 

サンチョ「やあ、よくいらっしゃいました、レイガさん! またお会いできて嬉しいです!」

レイガ「ああ、サンチョさん。こんにちは」

 

声をかけられて振り返ると、そこにはサンチョさんが立っていた。

差し出された手を握り、再会を喜ぶのもそこそこに、僕はこの店に来た理由を話しだした。

 

レイガ「実はお金に困ってまして。ここで金や銀を買い取ってもらえませんか?」

サンチョ「買い取りですか? 構いませんよ。とりあえず現物を見せていただけますか?」

 

僕は収納魔法から金のインゴットをひとつ取り出す。

するとサンチョさんが目を丸くしていた。

 

レイガ「あの・・・なにか?」

サンチョ「いや、魔獣を倒したお手並みを拝見して、只者ではないとは思ってはおりましたが・・・かなり魔法に精通したお方のようで・・・驚きました」

 

この世界ではさほど魔法が発達していないのか。

 

サンチョ「カードも使わず収納魔法を使うとは・・・」

レイガ「カード?」

「これですよ。知りませんか?「ストレージカード」。よほど遠くから飛ばされて来たんですね」

 

サンチョさんは懐から一枚のカードを取り出すと、カウンターの上で軽く振った。するとカードから数枚の銀貨が落ちてくる。

 

バビロン「おお、まるで紙に付与したような物だね」

サンチョ「おや、こちらの女性は」

サンチョ「ご紹介が遅れました。私の名前はレジーナ・バビロン、光神玲我の妻です」

 

博士、しれっと妻宣言したな。

 

サンチョ「おお、これはこれは。その若さで」

モナ「あなた、失礼よ」

レイガ「いえ、よく言われるんで大丈夫です」

バビロン「それより、その「カード」についていくつか質問しても」

 

話を聞くと、この「カード」はいろんな魔法が付与されているものもあって、レア度によっては能力も性能も変わるらしい。

そのあと、無事金のインゴットを白金貨十枚で買い取りできた。

 

レイガ「あと、一つ聞きたいのですが、ゴレムって僕でも買えますか?」

サンチョ「買えないことはないと思いますよ。ただ、白金貨十枚じゃあまりいい物は買えないと思いますけど」

 

うむむ、まあ研究用に買ってもいいかな。

 

サンチョ「どうやらレイガさんはゴレムに関してあまり知らないようですね? よろしければ説明いたしましょうか?」

バビロン「それはぜひ」

レイガ「すいません。よろしくお願いします」

 

どっちかって言うと、博士が乗り気だ。

 

 

 

 

 

以下、サンチョさんに聞いたゴレムについて。

 

かつて戦争があった。二つの古代王国の諍いが、やがて世界をも巻き込む大戦争へと発展。その中で、人に従い、人の代わりに戦う機械仕掛けの自動人形が生まれる。

それがゴレムと呼ばれる機械人形。次々と多種多様なゴレムが生み出され、戦争はゴレムの力によりどんどん拡大していった。

結果、この世界は一度滅んだ。

しかし、人類はそこから再び立ち上がり、新たな文明を築き上げる。

太古の遺産であるゴレムを発掘し、レガシィと呼ばれる機体を解析、複製して、グレードダウンした量産型を作り上げることに成功。ファクトリーと呼ばれるものが、現在一般的に普及しているゴレムなんだそうだ。

 

レイガ「ファクトリーとレガシィってそんなに性能が違うんですか?」

サンチョ「それもありますが、レガシィは別名「能力持ち」とも言いましてね。特殊な能力を持っていることが多いんですよ。雷を放ったり、氷を操ったりね。魔法を使えるレイガさんには、あまり必要ないかもしれませんが」

 

そんな受け答えをしながら、サンチョさんから僕は白金貨十枚を貰い受けた。

能力持ちか・・・結構興味深いな。

それから僕らは本屋に尋ね、この世界の歴史や文化、ゴレムについての本を買い占めた。

 

レイガ「さて、あとは食事かな。お腹減ったしなにか食べよう」

 

どこか食事の取れるところはないかと街をぶらつく。

そのうち一軒のオープンカフェを見つけて、そこのテラス席で軽食を頼んだ。

出てきたモノは鳥肉のようなサンドイッチと、葡萄のような紫のジュースだった。

実においしかった。

 

女性「誰かー! そいつを捕まえてくれ! ひったくりだぁー!」

 

楽しい食事の中、通りの向こうからそんな声がして、バッグを抱えた茶髪の若い男がテラスの前を全力疾走で横切っていく。

 

レイガ「・・・はあ、【ブリザード】」

男「ぐはあっ⁉」

 

地面を凍らせて、ひったくり男を滑らせる。思い切り後頭部を地面に打ち付けて悶絶する。

追いかけてきた金髪の違う男が茶髪の男に飛びかかり、後ろ手にひったくり犯を押さえつけた。

それを見届けた僕らは食事の代金を払って、カフェをあとにする。

そのあと、みんなへのお土産を買いつつ、いろんな店を覗いて回った。

そんな中、

 

バビロン「つけられてるね」

レイガ「うん、三人」

 

先程から僕らを付かず離れず監視している奴らがいる。

 

レイガ「狙われる覚えは無いんだけどなあ・・・」

 

いろんな店で物を買っていたから、金持ちと間違われたか? ショーウィンドウの商品を見るフリをして、ガラスに映った背後の尾行者を確認する。フードをかぶっていて顔はよくわからないが、そこらのチンピラとも思えない。

ま、そこらへんは直接聞けばいいか。

僕らは小走りに裏路地へと入った。角を曲がって人がいないのを確認すると、すぐに【透明化】で姿を消し、追跡者を待ち受ける。

同じように角を曲がり、三人の人物が裏路地へ踏み込んだところで、その退路を断つ。

突然背後に現れた僕らに、フードがついた、何やらローブのようなものを着込んだ三人がギョッと驚く。

 

レイガ「僕らになにか用か?」

 

慌てふためく三人のうち、二人が残りの一人に視線を向ける。どうやらそいつがリーダーのようだな。

 

レイガ「用がないならあとを付けるような真似はやめてもらいたいけど。それとも・・・

痛い目に合わなきゃわからないのか?

 

少し殺気も込めて脅してみる。

 

?「待って下さい。後をつけたことは謝ります。少し話を聞いていただけませんか?」

 

リーダーと思われる人物がフードを外すと、20歳くらい赤茶髪の女性だった。

 

?「先程、カフェのテラス席でひったくりに魔法を使いましたね?」

レイガ「そうだけど、それがなに?」

?「あなたは他の魔法も使えますか?」

レイガ「・・・まあ、ある程度は」

?「・・・解呪魔法は?」

レイガ「使えるけど。誰か呪われている知り合いでも?」

?「はい。我々の客人が呪いの魔道具にかかり、昏睡状態になってしまったのです。すでに数週間意識が戻らず・・・その方にまだ我々は大きな恩を返していません。どうか彼女の呪いを解いて下さいませんでしょうか。お礼は何でも致しますので」

 

頭を下げるショートカットの美女に、慌てて後ろの二人もフードを外して同じように頭を下げる。

 

バビロン「やってあげれば玲我君」

レイガ「まあいいけど」

?「ありがとうございます」

?「ありがとうっス」

?「感謝しますぅ」

 

再び三様に頭を下げられる。

 

エスト「では我々の寝ぐらへ案内します。申し遅れました、私はエスト・フローティア。義賊団「紅猫(あかねこ)」の副首領をしております」

レイガ「僕は光神玲我。今のところ旅人ってとこ、それでこちらはレジーナ・バビロン」

バビロン「よろしくね」

レジーナ・「それでどこへ向かえばいいの」

エスト「わかりました。ではこちらへ」

 

そう言ってエストさんが歩き始めた。相変わらず面倒ごとが舞い込んでくるな。

 

 

 

 

 

アレントの王都、アレンの東地区。

「紅猫」副首領のエストさん、ポニテ少女のユニ、ロングウェーブのユーリに連れられて、僕らはそのエリアへと足を踏み入れる。

やがて僕らは通りから外れ、寂れた裏路地に入る。角を曲がるとそこは行き止まりだった。

行き止まりの壁には大きな空の木箱がいくつか積み上げられている。

その木箱の裏手に回ると、ちょうど表からは見えない地面に、マンホールの蓋があった。

 

レイガ「これは・・・」

エスト「王都に昔からある地下道への入り口です。こういった場所がこの都にはいくつかあるんですよ」

 

蓋を開けてエストさんが地下へと下りていく。僕らもそれに続き、地下への階段をまっすぐに下りていくと、すぐに広めの通路へと出た。

通路は地下にもかかわらず明るい。十メートル置きぐらいに、何やら光るものが紐で壁面に引っ掛けてあるのだ。

手に取ると、円筒形のガラスで中には何やら液体と石が入っていた。

 

レイガ「これは?」

ユエ「え? 知らないんスか? 魔光石っスよ。街中でもあるでしょ?」

レイガ「あーーー、王都には今日ついたばかりでね。田舎者なんで」

 

ユニの訝しげな視線を受けながら、エストさんの先導で通路を歩いていく。

通路の曲がり角でエストさんは立ち止まると、手にしていた小刀の柄で、壁をカツカツ叩き始めた。すると壁の一部がスライドし、新たな通路が現れた。

新たな通路に踏み込むと、裏にいた二人の男が扉を再び閉めてしまう。

新たな通路を進んでいくと、やがて通路のくぼみなどに座り込む赤いバンダナをした男たちがちらほらと見え出した。

そのまま通路をまっすぐ進むと、重そうな鉄の扉があり、その前に、赤い鎧武者が立っていた。身長は二メートル以上ある。

あれもゴレムなのか。

 

ユエ「副首領のゴレム、「アカガネ」っス」

 

僕に向けてそっとユニがつぶやいてくる。

「アカガネ」は、重そうな扉を開き、中へと僕らを導く。全員が中へと入ると再び扉がしまった。

扉の中は乱雑な物が散らかった広い部屋で、天井には蛍光灯のようなものが光っている。あれも魔光石が使われているんだろう。壁面にはいくつかパイプが取り付けてあり、生活水も引いてあるようだった。

部屋の真ん中に置かれた机の上には、通信機器や、どこかの屋敷の見取り図といったものが散乱していた。それよりも目を引いたのは机の前で、大きめの椅子にだらしなく座り、顔を天井へ向けて、大イビキをかいて寝ている少女である。

 

レイガ「誰あれ?」

ユーリ「・・・うちの首領、ニア様ですぅ」

 

ユーリが答えてくれた。

首領って・・・あれが紅猫のトップなのか

イビキをかき続ける首領ニアの元へ、エストさんがスタスタと歩いていくと、小気味良い音と共に、首領の頭をひっぱたいた。

 

ニア「ふぶおっ⁉」

 

バターンッ! と椅子ごと後ろにひっくり返った首領ニアが、寝ぼけ眼でエストさんを見上げる。

真っ赤な長い髪をツインテールにした少女だ。赤いジャケットとショートパンツを着込み、動きやすいラフな格好をしている。

 

ニア「何すんだこら!・・・って、エストか」

エスト「だらしない顔で寝てるんじゃありません。乙女にあるまじき姿でしたよ、ニア」

ニア「別にいーだろー? 誰が見てるわけでも・・・」

 

口を尖らせてそう反論しようとしたニアの目が僕らを見て止まる。

 

ニア「誰だ? こいつら?」

エスト「博士の呪いを解けるかもしれない方ですよ。街で見かけてお連れしました。光神玲我さんです」

ニア「本当か⁉」

 

ガタンッと椅子を蹴とばしてニアが立ち上がる。

 

ニア「お前が本当に治せるのか? なんか頼りねー感じだけど・・・」

 

失礼な言い方だな。

 

ニア「まあいいや。とにかく博士を診てくれ。言っとくが、おかしな真似しやがるとタダじゃ、あいた⁉」

 

おお、キレのあるチョップ。

 

エスト「立場がわかってるんですか、あなたは。こちらは無理言って彼に頼んでいるんですよ? 考え無しに行動するのはやめなさいといつも言っているでしょう?」

ニア「あいたッ! あいたッ! わかっ、わかった! わかったって! やめっ、」

 

・・・なんかかわいそう。

 

エスト「とにかくまずは診てもらいましょう。こちらへ」

 

司令室の奥にあった扉を開き、細い通路を抜けると、そこにはまた鉄の扉があった。その部屋の中へと入と、壁際に据え付けられたベッドには誰かが横たわっていた。

そしてその下には一匹の狼が、部屋に入ってきた僕らを見つめている。

 

?『ニア殿、エスト殿、そちらの方はどなたかな?』

レイガ&バビロン「「喋った⁉」」

エスト「こちらは光神玲我さんとレジーナ・バビロンさんです。博士の呪いを解けるかもしれない方ですよ。玲我さん、こちらはフェンリル。博士・・・呪いを受けている方のゴレムです」

 

この狼もゴレムなのか? しかもしゃべれるって。

 

フェンリル『そうか! それはありがたい。マスターが目覚めてくれぬことには、旅に出ることもできんのでな』

 

嬉しそうに尻尾を振る狼型ゴレム。

 

レイガ「・・・まあ、とりあえず見ますか」

 

ベッドに横たわる女性を確認する。年齢は20代前半、ボサボサの長そうな銀髪が布団の中まで入っている。ベッド横のサイドテーブルには分厚い丸メガネが置いてあった。

 

レイガ「先手必勝、フルムーンレクト!」

 

症状とか正直なんでも、治せるからとりあえずこれで。

 

?「う・・・」

フェンリル『マスター! 我輩だ、わかるか?』

?「うう? フェンリル? ごめん、あと五分・・・」

フェンリル『寝ぼけるでない!』

?「ぐふうっ⁉」

 

また寝ようとした女性に、フェンリルが布団の上からジャンピングボディプレスをかました。

えーーーーー⁉

 

 

 

 

 

話を聞いてみると、彼女の名前はエルカ・パトラクシェ。この世界では有名なゴレム技師らしく。

首領ニアのゴレムが壊れて、その修復をエルカ技師に頼んだらしい。

その修復に必要な素材を集めている最中、魔道具の呪いに見舞われ、昏睡に陥ったというわけ。

話を聞いた後は、ずっとニアが魔法を教えろ、と言ってきて正直めんどくさい。

 

エルカ「面白そうな話をしてるわね、私も興味あるわ」

 

声に振り向くとそこには狼型のゴレム、フェンリルと、呪いから解き放たれたエルカ技師がいた。

 

エルカ「あらためて自己紹介するわね。エルカ・パトラクシェよ。ゴレム技師をしているわ。助けてくれてありがとう」

レイガ「光神玲我です。お気になさらず。それでこちらが」

バビロン「レジーナ・バビロン。ただのしがない発明家さ」

ニア「いやー、博士が治ってよかった。これでルージュも直るよな?」

エスト「だから、考えて話せと・・・。博士をついでみたいに言うのはやめなさい」

ニア「あいてっ⁉」

 

この光景、ここじゃ日常茶飯事なんだろうな。

 

エルカ「まだ材料が少し足りないけどね。中でもオリハルコンを手に入れるのは大変よ。この国の王なら持っているでしょうけど・・・」

エスト「この国の王が暴君なら遠慮なく奪うんですがね」

ニア「なんだよー。またどこにあるか情報集めかー?」

レイガ「オリハルコンならあるけど」

 

収納魔法からオリハルコンのインゴットを取り出す。

ニアとエストさんは驚くが、エルカ技師がそれを手に取り、ポケットから取り出した棒のようなものをあててなにやら調べている。

 

エルカ「本物だわ。こんな純度の高いオリハルコン初めて見た。・・・ひょっとしてアダマンタイトやヒヒイロカネも持ってる?」

レイガ「はい、どうぞ」

 

同じように収納魔法から取り出す。

 

エスト「玲我さん、失礼ですがこれを売ってはいただけないでしょうか。きちんと適正な価格で代金は払いますので」

レイガ「別に大したことないよ。減るもんじゃないし」

ニア「お前、どっかの金持ち貴族の息子か・・・?」

 

王様で神様です。

 

エルカ「なんにしろこれで「ルージュ」の修復ができるわ。一日もあれば───」

男「た、大変です!」

 

突然、鎧武者のゴレム、アカガネが開いた扉から、一人の男が転がり込んでくる。

 

男「北の山の隠れ家が襲われます! 騎士団の奴らが大勢で向かっていて・・・!」

ニア「なんだと⁉」

男「向こうにも伝令を走らせましたが、逃げ切れるか・・・」

 

立ち上がったニアが表情を変える。

 

ニア「くっ、ルージュは使えねえし・・・アカガネだけでもあっちに残しとくべきだった・・・。どうする、エスト?」

エスト「今から戻っても間に合うかどうか・・・。彼らを見捨ててここから逃げるというのが最善の手ですが・・・」

ニア「そんなことできるか!「紅猫」は仲間を見捨てたりしねえ!」

 

ダンッ! とニアが机を叩く。

 

レイガ「手を貸そうか?」

ニア「あ⁉」

 

気が立ってんな。

 

レイガ「ハクちゃん。マップ表示。王都アレン周辺」

ハク『はい、パパ。表示します』

ニア「うおっ⁉」

 

空中に投影されたこの都周辺の地図を見て、ニアたちが驚きの声を漏らす。

 

レイガ「北の山の隠れ家はこれか」

 

マップを拡大し、紅猫の隠れ家を探す。

 

レイガ「マーカーを表示。騎士団員を青。義賊団員を赤に」

ハク『はい』

 

マップに赤と青のピンが表示される。

 

レイガ「さて、とりあえず【テレポート】」

 

赤ピンを対象に【テレポート】を発動させる。

すると、部屋の外から複数の声が聞こえてきた。

 

レイガ「ほい、みんなを転移させておいたから、あとはよろしく」

ニア「へえ⁉」

レイガ「あの隠れ家って爆発しても大丈夫」

エスト「えッ⁉ 大丈夫ですけど」

レイガ「OK。ほんじゃ【エクスプロージョン】」

 

これで隠れ家も爆発。ちゃんと騎士団も巻き込まないようにしたし、念のため、室内の道具や書類も全部転移いといた。

 

 

 

 

 

エスト「今回は本当にありがとうございました」

ニア「お前、やっぱりすごいな」

レイガ「いいよ別に。さて、そんじゃ僕らはそろそろ帰るよ」

バビロン「え~もう少し堪能しようよ、玲我君」

 

わがまま言う博士を引っ張って今回の異世界旅行は終了しました。



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パルーフ王国

〈レイガサイド〉

異世界へ行って三日が経った。博士はもう一度行きたいと言って来るが、次はだいぶ先かな。少し休みたい。

 

レイガ「久しぶりにゆっくり朝食が取れる」

 

朝食はルーが作った和食。ご飯に大根の味噌汁、ダンジョン島でとれた焼き魚に、卵焼き、きんぴらごぼう、冷奴、カブの漬物。

心が休まる。

朝食を食べ終え、午前の執務をこなしていると、レスティア騎士王のラインハルト義兄さんから電話がかかった。

 

レイガ「もしもし?」

レスティア『ああ、公王陛下。お忙しいところ申し訳ない。少し相談に乗って欲しいのだけれど・・・リーニエ国王のことで』

レイガ「クラウド王子?」

 

ラインハルト義兄と、クラウド王子は、歳が近いこともあってか、親しい付き合いをしているのは知っているが、

その友の相談に乗ってくれとは、なんかあったのだろうか?

 

レイガ「10分ほどしたらひと段落するので、そちらでお話を聞きますよ。レスティア城の城門前に行きます」

レスティア『わかった。待っているよ』

 

電話を切り、書類をまとめ、宰相の高坂さんに一応行き先を伝えておいて、

レスティアまで【コネクト】で転移する。そこには二人のレスティア騎士が待っていた。彼らに案内されて、城の中へと進み、奥まった一室へとたどり着くと、先頭を歩いていた騎士が恭しく扉を開く。

 

レスティア「やあ、わざわざ申し訳ない。誰に話を聞いてもらっていいものか、わからなくてね」

 

部屋のソファに腰掛けていたラインハルトが立ち上がり出迎えてくれた。

勧められるままに義兄さんの向かいのソファに腰を下ろす。部屋の中にいた騎士を下がらせたあと、レスティア国王が僕に向けてその相談とやらを口にし始めた。

 

レスティア「リーニエとパルーフが、以前、戦争一歩手前までいってたのは知ってるだろう?」

レイガ「ああ、ワルダックの企みによってですよね。危なかったけど、リーニエ国王が即位してから、友好路線に切り替えて、なんとか回避されたんでは?」

レスティア「パルーフとの関係は概ね良好なんだ。パルーフ国王が亡くなり、王子が王として即位して、内政的には落ち着いてきている。交易も順調だしね。ただ、ちょっと問題があって・・・」

レイガ「問題?」

レスティア「前パルーフ王には子供が二人いてね。一人はリュシエンヌ・ディア・パルーフ王女。もう一人はその弟のエルネスト・ディン・パルーフ王子。この姉の方のリュシエンヌ王女とリーニエ国王が仲良くなってね。いい感じなんだ」

レイガ「ほほう」

 

いい話っぽいけど。

 

レイガ「それで問題って?」

レスティア「さっき言った弟のエルネスト王子。この王子が王位についたわけだが、まだ10歳の子供でね。摂政となった前王弟や、周りの重臣たちに支えられてはいるが、まだまだ子供なわけさ。そしてこの子が姉上にべったりときている」

レイガ「・・・姉を取られるかもしれないとリーニエ国王を嫌っている?」

レスティア「ま、わかりやすく言えばそうだね」

 

そう言って苦笑気味に笑うレスティア王。

 

レイガ「それでパルーフの重臣たちのお考えは?」

レスティア「重臣たちにとっては二国間の絆を深めるいい機会だと、好意的に捉えられているそうだよ」

レイガ「本人たは?」

レスティア「少なくてもリーニエ国王はリュシエンヌ王女に王妃になってもらいたいと思っているようだが、肝心の王女の方がね・・・」

レイガ「結婚したくない、と?」

レスティア「そうではないが、まだ幼い弟を残しては嫁げない、といったところかな。王女は確か今、19・・・だったかな。エルネスト国王の成長を待っていてはかなりの晩婚になるし、リーニエ国王だって、世継ぎの問題もある。待ち続けるのは難しいかもしれない」

 

う~む、確かに。

 

レスティア「第一王妃が貴族で、第二王妃が王女ってのはさすがにまずい。パルーフの人間にしてみれば軽んじたと思われかねないしね。公王陛下のように、王女を複数娶ることができれば話は別なんだけど」

 

なんか僕に振られたんですけど

 

レイガ「話はわかりましたけど・・・それで僕にどうしろと?」

レスティア「実はこのエルネスト国王なんだけど・・・ひどく公王陛下に憧れていてね。普段はあまりリーニエ国王と話をしようともしないんだが、テンペスト・レイや公王の話となると、食いついて聞いてくるらしい。やっぱり子供は英雄に憧れるものなのかな」

レイガ「・・・マジですか? えっと、じゃあ相談というのは・・・」

レスティア「公王陛下にエルネスト国王を説得してほしい、ということさ。パルーフとリーニエの明るい未来のために」

 

ですよね~。

 

レイガ「わかりました。とりあえずリーニエ国王のところに行って話を聞いてみましょう。向こうにも考えがあるのかもしれないし」

 

ケイタイでリーニエ国王に連絡を取り、ちょうどこのあとの予定がキャンセルになったらしいので、面会を取り付けた。逆にレスティア騎士王の方はこのあと予定があるそうなので、僕一人で行くことにする。くれぐれもよろしく頼むと言われてしまったが。いい友達を持ったね、リーニエの王様は。

【コネクト】で久しぶりにリーニエ城の城門前に転移すると、二人いる門番の一人が腰を抜かしていた。もっと人気ひとけのないところへ出るべきだったな。失敗失敗。

もう一人の門番は僕のことを知っていたようで、すぐに城内へと連絡を取り、しばらくすると見覚えのある老人がやってきた。

 

クープ「これはこれはテンペスト・レイ公王陛下。お久しぶりでごさいます」

レイガ「クープ宰相、いきなりの訪問で申し訳ございません。ちょっとレスティア騎士王に頼まれましてね。こちらの王様と隣の国の王女様のことで」

クープ「なるほど。確かに我々も悩んでいます。国王陛下は他に妃を持つ気はさらさらないようで・・・。まあ、先王陛下のこともありますからな。望まぬ結婚は不幸を呼ぶだけだと思っているのかもしれません」

 

確かに、あんなこと体験したら、そう考えるよな。

ま、その先王陛下もクラウドの母であるエリア王妃と楽隠居して、今は幸せらしいけど。

とにかく本人に聞いてみないことには始まらない。

クープ宰相に案内された城内の応接間で、僕はクラウドと面会し、彼の本心を聞くことにした。

 

リーニエ「確かに僕はパルーフ王国王女リュシエンヌを妃にと望んでいます。しかし、そのために幼いパルーフ国王の心を傷付けたくはない。僕が待てばいいだけのことです」

レイガ「なるほど・・・リーニエ臣下としては?」

クープ「正直、個人としてはそれで構わないと思うのですが・・・やはり国内の貴族たちからいろいろと突き上げをくらっているのも事実です。我が国にとってお世継ぎは何よりも先行すべき事案ですからな」

 

クープ宰相が難しい顔をして答えた。

 

レイガ「とりあえず婚約だけしておくのは?」

クープ「婚約はしたが、結婚まで五年も待つというのですか? いずれその理由に国民も気付くでしょう。それではパルーフ国王が姉から離れたくないわがままな国王ということを喧伝するようなものですよ。向こうが難色を示すんじゃないでしょうか」

 

クープ宰相の言うことももっともだ。

 

レイガ「向こうの重臣たちはお二人の婚姻を望んでいるのでしょう?」

クープ「大半はそうですね。一部、王女を息子の嫁にと考えている貴族たちは反対のようですが」

 

ああ、あの偽馬鹿王子のせいでリーニエ王家の評判はあまりよろしくないからな。

 

レイガ「とりあえずリーニエ国王の気持ちはわかりました。それとは別に、パルーフ国王にも会ってみたいのですが、面会の橋渡しを頼めますか?」

リーニエ「パルーフ国王に? それはありがたい。大変喜ばれますよ。憧れの公王陛下に会えるのですから」

 

何かいい解決方法を見つけないとな。

 

 

 

 

 

パルーフ「はっ、初めまして公王陛下っ! パルーフ王国国王、エルネスト・ディン・パルーフ、ですっ! ・・・はぁ、言えたぁ・・・」

 

パルーフ城の中庭で、決死の思いを告げるように一気にそうまくし立てた少年は、すぐさま気が抜けたように息を吐いた。

ものすっごく緊張しているようだが。

 

レイガ「初めましてパルーフ国王陛下。テンペスト・レイ公国公王、光神玲我です。このたびは突然の訪問をお許しいただき、ありがとうございます」

パルーフ「いっ、いえっ、こちらこそ!」

 

軽く一礼すると、パルーフの少年王が慌てたように首をブンブンと振る。リアクションが大きい少年だな。

歳は10歳って聞いていたが。金髪の髪を切りそろえていて、身体に不釣り合いな礼服と真っ白いマントを身に纏っていた。

 

リーニエ「パルーフ国王は公王陛下に会えるのを楽しみにしてたんですよ。いつも私からお話を聞いていたので」

 

僕の横にいたリーニエ国王クラウドがそう話しかけてくると、少年王は真っ赤になりつつ、そばにいた女性の後ろへと隠れた。

困ったような顔で笑顔を浮かべ、女性の方が僕へ小さく頭を下げる。

 

リュシエンヌ「申し訳ありません。少し人見知りする子ですので・・・お気を悪くしないで下さい」

レイガ「いえいえ、かまいませんよ」

 

この女性がリュシエンヌ・ディア・パルーフ。現パルーフ国王少年の姉にして、リーニエ国王クラウドの意中の人だ。

緩くウェーブがかった弟と同じ金髪と、翡翠色の瞳。

 

リュシエンヌ「ほら、公王陛下にお願いがあるんでしょう? 自分の口から言わないと」

レイガ「お願い?」

 

姉に言われておずおずと少年王が前に進み出てくる。

 

パルーフ「あっ、あのっ! 巨人兵を見せてもらえませんかっ!」

レイガ「・・・巨人兵ってああ、フレームギアのことですか。構いませんけど・・・ここに呼んでも?」

 

一応許可をと、中庭の隅に並んでいたパルーフの重臣たちに視線を向ける。

その中の一人、五十近い白いローブを着た、優しそうな男性が口を開いた。確かあの人が摂政のドノバン・レンブラント公爵だったか。

 

レンブラント「構いませぬ。陛下に見せてあげて下さい。楽しみにしてらしたので」

 

許可がいただけたので、空中に【コネクト】を開く。

そこからズンッ! という地響きとともに現れた、灰色のフレームギア・重騎士がパルーフの大地に降り立った。

 

パルーフ「うわあぁぁぁ・・・!」

 

パルーフの少年王は重騎士を見上げて固まっている。

携帯で操作して、重騎士に片膝をつかせ、コクピットのハッチを開く。

 

レイガ「乗って見ますか? さすがに迷惑になるので動かしたりはできませんが」

パルーフ「・・・っ! はいっ!」

 

少年王を抱え、コクピットに乗せる。シートに座ったパルーフ王エルネストは、キラキラした目でフレームギアの操縦桿を握り締めていた。

 

パルーフ「これで公王陛下は巨獣や水晶の魔獣を倒したんですよね。これに乗ったら僕も戦えるかな・・・」

レイガ「失礼ですがそれは無理ですね。このフレームギアを乗りこなすにはそれなりの訓練がいります。フレームギアを操る技術だけじゃなくて、自らの基本的な武術訓練もないと厳しいでしょう」

パルーフ「う・・・」

 

悪いがパルーフ王は華奢な身体付きから典型的なもやしっ子に見える。事実、身体を動かすことより、本を読んでいる方が好きなんだそうだ。

 

パルーフ「・・・公王陛下は人を傷付けるのって怖くないですか? そのことによって恨みを買ったり、人に嫌われるのって辛くないですか? 僕は殴るのも殴られるのも・・・怖いです」

レイガ「・・・そうですね。正直言えば僕は誰も傷付けたくはないです。だけど・・・そうしないと守れないものもある。僕は誰かを失うのが怖いんです。力がなく、大切なものを守れない。それだけは絶対に嫌だ。パルーフ王にも守りたいものはあるでしょう?」

パルーフ「・・・はい」

 

少年王は少し視線を地上に向けて小さく頷く。そこにはリーニエ国王と楽しそうに談笑する、彼の姉の姿があった。

 

レイガ「お姉さんが大切ですか?」

パルーフ「・・・はい。姉には幸せになってほしいです。リーニエ国王が姉を妃にと望んでいることは知っています。だけど、不安なんです。姉がいなくなることが。姉無しで僕は国王としてやっていけるのでしょうか・・・」

 

この子はちゃんとわかっているだ。見た目より大人びているんだな。

正直安心した。

 

レイガ「パルーフ国王は剣とか魔法とか、なにか得意なものってありますか?」

パルーフ「と、得意なものですか? 剣はあまり得意じゃありませんし、魔法もひとつの属性しか適性がありません・・・」

 

そう言った少年王はしょぼんと落ち込んでしまった。逆に自信を無くしてどうするんだ、僕!

どうやってフォローしようか考えていると、外部カメラに映った外の映像に、エルネストが目を向けた。

 

パルーフ「あ」

レイガ「ん?」

 

少年王が漏らした声に、僕もモニターに視線を向ける。そこには摂政であるレンブラント公爵と、その横に立つ、小さな女の子が映っていた。あれ? なんかこっちを見上げて睨んでる?

 

レイガ「あの子は?」

パルーフ「叔父上レンブラント公爵のところの令嬢で、レイチェルっていって・・・その、僕の婚約者候補の子です」

レイガ「あの子、いくつです?」

パルーフ「僕と同い年です」

 

なんか雰囲気が我儘お嬢様っぽい感じ。

 

パルーフ「レイチェルはすごいんです。魔法の適性も四属性持ってるし、剣の腕も大人に負けないくらい強いんです。百年に一人の天才って言われてるくらいで……」

それはすごいけど・・・

 

レイガ「なんでこっちを睨んでるんですかね?」

パルーフ「その・・・たぶん、僕のせいです。本当は今日、彼女とお茶会の予定だったんです。でも公王陛下が急遽ご訪問なさるってことになったから……」

 

・・・それ完全に僕のせいじゃないか!

パルーフ国王陛下とともに地面に降り立つと、つかつかとカチューシャの子がこちらへやってきて、僕の前へ立ち、スカートの裾を両手でつまんで優雅に一礼して見せた。カーテシーってやつだな。

 

レイチェル「お初にお目にかかります。テンペスト・レイ公王陛下。レンブラント公爵家長女、レイチェル・レンブラントと申します。エルネスト国王陛下の婚約者でございますわ」

レイチェル「これはこれはご丁寧に」

 

うん? エルネストは婚約者「候補」と言っていたけど・・・

 

レイチェル「突然のご訪問、碌な歓迎もできず申し訳ございません。もう少し余裕を持ってご連絡をいただけたら、このようなことにはならなかったのですが」

レイガ「あー、では次はそうすることにしましょうか」

 

顔は笑顔だが、やっぱり怒ってるなこりゃ。

 

パルーフ「レ、レイチェル、そんな言い方は・・・」

レイチェル「なによ? エルは公王陛下の味方なの?」

パルーフ「う・・・別にそういうわけじゃ・・・」

 

これ結婚したら、王様・・・尻に敷かれるな。

レイチェルは、言葉を濁している少年王にむすっとしていたが、やがて両手をポンと叩いて、僕の方へと視線を向けた。

 

レイチェル「そうだわ。確か公王陛下は金ランクの冒険者でもあるとか。ひとつ、私にご指南していただけたらと思うのですけど」

レイガ「・・・え?」

レイチェル「お噂に名高いその強さを見せていただきたいわ。お願いできますか?」

 

少女が獰猛そうな笑みを浮かべる。ひょっとして・・・ケンカ売られてる?

 

 

 

 

 

レイガ「妙な話になってきましたけど、本当にいいんですかね?」

 

パルーフ騎士団の訓練場へ向かう途中で、前を歩いていたレンブラント公爵にこそっと話しかける。

 

レンブラント「構いませぬ。親の贔屓目を除いても、あの子は確かに強いです。しかし、そのせいで少し増長しているところがございます。その鼻っ柱を公王陛下が叩き折って下さればありがたい。あの子のためにもその方がいいでしょう」

 

訓練場へ着くと、ジャージのような動きやすい訓練着と革鎧姿に着替えてきたレイチェルは、手慣れた感じで木剣を振り回し、準備運動をしている。やる気満々だ。

仕方ない。僕は木剣を取り出し、訓練場で待ち構えるレイチェルの元へ向かう。

 

騎士「両者、準備はよろしいか? では、始め!」

 

騎士が放った開始の合図と共に、レイチェルが突っ込んでくる。なかなか速い。そのまま真横に振り抜かれる木剣を僕はひょいと躱し、木剣で頭頂部を叩こうとするが、直前で止める。

 

レイチェル「ッ⁉」

レイガ「いい速さだけど、相手の出方もわからない以上。無闇に飛び込むのは悪手だよ。それでも飛び込むなら、なにか別の手を用意しておくのが定石」

 

 バッ! と後方へ一足飛びに離れたレイチェルが今度は左手を翳し、魔法の詠唱を始める。

 

レイチェル「炎よ来たれ、紅蓮の炎槍、ファイアスピア!」

 

左手から僕目掛けて炎の槍が撃ち出される。

迫り来る炎の槍を右へステップして、なんなく躱す。炎の槍はそのまま結界へ当たり見事に爆散した。

 

レイガ「スピア系の魔法は軌道が読みやすい。追撃に使う、もしくは、バインド系で相手の動きを阻害してから使うとか工夫した方がいい」

レイチェル「くっ・・・!」

 

顔を顰めたレイチェルが、再び突進してこようと木剣を構える。

 

レイガ「【ブリザード】」

レイチェル「うきゃっ⁉」

 

勢いよく転倒したレイチェルに接近し、その頭頂部に木剣を振るうが、また寸止め。

 

レイチェル「いっ、今のはたまたま転んだだけです! 無効です!」

レイガ「今のは僕の魔法で滑らせた。それに今のがたまたまでも戦場じゃ、そんな言い訳通用しないよ」

レイチェル「っのおっ!」

 

立ち上がり、木剣を右に左に打ち付けてくる。なかなか鋭い打ち込みだな。単調な中にもフェイントを入れたりしてる。確かに10歳の少女としてはとんでもない逸材なのかもしれない。

しかし、まだまだあまい。

 

レイチェル「土よ絡め、大地の呪縛、アースバインド!」

レイガ「お?」

 

地面から盛り上がった砂が、僕の足首を固定する。

 

レイチェル「雷よ来たれ、白蓮の雷槍、サンダースピア!」

 

おお? さっき教えた通りに攻めてきたな。ぴりぴりしてるけど・・・人の話を聞く素直な子だ。

 

レイガ「【ディフェンド】」

 

僕が発動した水の防壁に雷の槍が吸収され、消滅する。

 

レイチェル「やあっ!」

 

水の防壁が消滅するタイミングを狙って、レイチェルの鋭い突きが繰り出される。

うんうん、相手の隙を狙ったいい攻撃だけど、僕はそれを避け、頭頂部に木剣を振るう。また寸止めで。

 

レイガ「相手の隙を狙ったいい攻撃だけど、それが相手の誘いってこともある。不用意に飛び込まないほうがいいよ」

レイチェル「うっさい! ちまちま打ってばかりいないで、そっちからもちゃんと攻撃してきなさいよ! 逃げてばかりいないで!」

 

おお、口調が変わっとる。っていうか、こっちが素だな。

それから、三十分ほど、彼女の攻撃を避けて、僕が木剣を寸止めするが繰り返された。

 

レイガ「ま、こんなもんか。そろそろ終わりにしようか」

レイチェル「まだ負けてない!」

レイガ「・・・ふ~ん」

 

あれだけ、したのに負けていないか・・・

 

レイガ「普通なら相手の力量もわからないのか、って怒るところだけど。それでいいと思うよ。どんなに負け続けても、自分が負けていないと思う限り、負けじゃない。勝つまでやり続ける。そういう強い意志は最後、必ず自分を勝利に導く」

 

僕はそういって、彼女の背後に回り、気絶する程度に木剣を振るう。

それをくらい、彼女は気絶した。

 

 

 

 

 

気絶したレイチェルをパルーフ国王に任せて僕らはパルーフ城のバルコニーでお茶を飲んでいる。

 

リュシエンヌ「この度は従姉妹のレイチェルが失礼なことを・・・申し訳ありません」

レイガ「いえいえ。子供のしたことですから」

 

あれくらいなら慣れたもんですから。

 

リーニエ「公王陛下はパルーフ国王をどう思われました?」

 

リーニエ国王の発言に、バルコニーに置かれた丸いテーブルに座る二人の視線が僕に向けられる。

 

レイガ「そうですね・・・。素直な方だとは思いますよ。自分のするべきことをちゃんとわかっている。あの子が王ならパルーフは安泰だと思いました。でも自分に自信がないのか、ちょっと考え方が後ろ向きなのが気になりましたけど」

 

なにか自信を持たせる方法があればいいけど。

 

レイガ「パルーフ国王にはなにか得意なことってないんですか?」

リュシエンヌ「得意なことですか? これと言って・・・。あの子は剣術も魔法もあまり得意な方ではありませんし。少々笛を吹けますけど、それも得意というほどの腕前ではありません」

 

う~む、何かきっかけがあればいいのだが。

 

リュシエンヌ「あ、でも・・・」

レイガ「なにかあるんですか?」

 

何かを思いついたようにリュシエンヌ王女はバルコニーから室内へ戻ると、小さな箱と折りたたまれた板を持って戻ってきた。え、それって・・・。

 

レイガ「将棋、ですか?」

リュシエンヌ「はい。公王陛下もご存じでしたか」

 

そりゃ・・・それ作ったの僕だから。

 

レイガ「パルーフ国王がこれを?」

リュシエンヌ「はい。一時期、朝から晩までやっておりました。ただ、対戦相手に困っていたようですけど」

 

困っていた?

 

リュシエンヌ「もっぱら私か叔父様を相手にやっておりました。もっとも私は弱すぎて相手にならなかったみたいですけど」

レイガ「レイチェル嬢とはやらなかったんですか?」

リュシエンヌ「やったのですけど、レイチェルが完膚なきまでに負けて、盤をひっくり返し、二度とやらないと・・・」

 

ああ、なんとなく思い浮かぶ。

しかし将棋か・・・どれだけの腕前なのかちょっと気になるな。

そんな僕の考えを知ってか知らずか、バルコニーへ少年王がやってきた。

 

パルーフ「お待たせして申し訳ありませんっ!」

レイガ「いえいえ、お気になさらず。レイチェルの方はどうですか」

パルーフ「はい。今はまだ寝ているので大丈夫だと思います。あれ? それって・・・」

 

少年王が僕の手元にある自分の将棋セットに目を留める。

 

レイガ「ああ、リュシエンヌ王女からパルーフ国王が夢中になってやっていたと聞きまして。実はこれ、僕が作ったものなんですよ。パルーフまで浸透していたとは驚きです」

パルーフ「そうなんですか⁉」

レイガ「・・・どうです? 一局指しませんか?」

 

どれくらいの実力か見てみたい。

 

 

 

 

 

パルーフ「・・・参りました」

レイガ「ありがとうございました」

 

先に頭を下げたパルーフ王に続き、僕も頭を下げる。これで僕の二勝一敗。

 

レイガ「なかなかお強い。僕が対戦した相手でも、一、二を争う実力ですよ」

パルーフ「ほ、本当ですか? ほとんど叔父上としか対戦したことがないのですが」

 

ふむ。これはいいことを思いついた。

 

レイガ「実はテンペスト・レイで十日後に将棋の大会があるのですが、陛下もこっそり参加なさいませんか?」

パルーフ「えっ⁉ で、でも僕なんかが参加していいんでしょうか⁉」

レイガ「問題ありません。他にも他国から貴族の人や王族の人がこっそり参加しますし。安全は絶対に保証します」

 

今思いついたけど、どうせベルファスト国王やオルトリンデ公爵なんかがも参加するだろうし。

 

パルーフ「どっ、どうしようかな・・・」

 

おろおろと考え込んでいるパルーフ国王に、姉のリュシエンヌ王女が話しかけた。

 

リュシエンヌ「深く考え込まなくていいんじゃない? ちょっとテンペスト・レイへ遊びにいくと思えば。もちろん私もついていくから大丈夫よ?」

パルーフ「・・・じゃ、じゃあ参加してみようかな・・・」

リュシエンヌ「決まりですね」

 

僕は、はい決定、と手を叩く。

忙しくなりそうだな・・・自分から休みを潰していくとか・・・トホホ。



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祭り開催

〈レイガサイド〉

 

レイガ「・・・とまあ急ですが、将棋の大会を開くことになりました」

ドラン「本当に急だな」

 

久しぶりのリフレットの町、宿屋「銀月」の本店。ドランさんに将棋大気の話をしに来た。

 

ドラン「で、その大会に招待枠として俺たちに参加してほしいってんだな?」

レイガ「はい。招待枠って言っても予選免除ってだけで、そんなに有利ってわけじゃないですけど」

 

宿屋「銀月」のドランさんを含め、武器屋「熊八」のバラルさん、道具屋のシモンさんらをシードエントリーしておいた。彼らはこの世界で将棋を始めた初期プレイヤーで、少なくとも僕と同じくらい実力は上だ。

 

レイガ「それで、参加します?」

ドラン「ったりめぇだ。将棋発祥の地、リフレットの名にかけて、絶対に優勝はいただくぜ」

 

・・・発祥の地?

 

ドラン「あとはどんな奴が出場するんだ?」

レイガ「まだ、数名しか決定してませんけど、それなりにみんな実力者ですよ。一日目は予選で、二日目が本戦を予定してます。ドランさんたちはどうします? 二日目から来ますか?」

ドラン「冗談じゃねえ。対戦相手になるかもしれない奴の試合を見逃せるかよ。初日から行くぜ。宿はミカのところがあるしな」

 

ドランさんは初日から、っと。予選当日に迎えに来ることを告げて、リフレットを後にする。

帰ってからはベルファスト国王やオルトリンデ公爵、その他、他の王様たちに電話をかけて、出場希望者を募った。

それと、同時に武術大会と野球大会も行うので、各国の騎士たちに、よければ参加してほしい旨を頼んでおく。

将棋だけでは地味なので、他のこともやろうと思う。

 

レイガ「それがこの結果」

ユミナ「なんですか、この参加者表は・・・」

レイガ「うん、気持ちはわかる」

 

書き出したリストを目にしたユミナが引きつった笑いを浮かべる。

 

 

 

 

 

・将棋大会出場希望者

 

 ベルファスト国王 (ベルファスト)

 

 オルトリンデ公爵 (ベルファスト)

 

 レグルス皇帝 (レグルス)

 

 リーフリース国王 (リーフリース)

 

 パルーフ国王 (パルーフ)

 

 レンブラント公爵 (パルーフ)

 

 ロードメア全州総督 (ロードメア)

 

 

 

・武術大会出場希望者

 

 ミスミド獣王 (ミスミド)

 

 レスティア騎士王 (レスティア)

 

 ガスパル騎士団長 (レグルス)

 

 レオン将軍 (ベルファスト)

 

 騎士リオン (ベルファスト)

 

 ガルン護衛隊長 (ミスミド)

 

 馬場信晴 (テンペスト・レイ)

 

 山県政景 (テンペスト・レイ)

 

 九重重太郎 (イーシェン)

 

 

・野球大会出場チーム

 

 テンペスト・レイ

 

 ベルファスト

 

 ミスミド

 

 レグルス

 

 レスティア

 

 リーフリース

 

 リーニエ

 

 ロードメア

 

 

 

 

 

各国の関係者知り合いだけでもこんなにいる。

 

ユミナ「警備とか大丈夫でしょうか?」

レイガ「そこらへんは抜かり無い。王様たちには特定の人物以外、別人に見える魔道具を身につけてもらうし、各国から同じように目立たなくした、護衛の人たちも付くしね。もちろん、僕らも陰ながら警護するけど。ニャンタローの猫部隊にも手伝ってもらうし」

 

琥珀たちの眷属にも手伝ってもらうしな。

 

ユミナ「こうなってくるとお祭りですね」

レイガ「ッ! そうだよ。これはお祭りだ! よっしゃーーー、久しぶりの祭りだ! 露店もイベントもやりまくるぞ! アハハハハハハ!!」

ユミナ「・・・」

バイス「ああ、そういえばユミナちゃんは、あのハイテンションレイガを見たこと無かったっけ?」

ユーリ「最近、祭りなんてやってなかったからな」

ラブコフ「ラブ、お祭り魂、ラブ」

ユミナ「えっと~、皆さんは知っているんですか」

カゲロウ「ああ、あいつ、お祭りみたいな行事が好きでな。よく祭りをするときはいつもあんな感じでハイテンションなんだ」

レイガ「アッハッハッハ!」

バイス「・・・ハイテンション通り越して、変人みたいだけどな」

ユミナ「でも」

バイスたち『うん?』

ユミナ「子供っぽくて可愛い」

バイスたち『・・・』

 

完全に恋する乙女のユミナを見て、バイスたちは絶句してしまう。

少し興奮が収まるまで数分がかかった。

 

レイガ「興奮しすぎた」

ユミナ「ああ、そういえば、ラミッシュ教皇猊下と花恋お義姉様が、城下の教会を貸してほしいと言ってましたよ」

レイガ「教会を? 礼拝でもするのか?」

ユミナ「なんでもお悩み相談所をやるんだとか。あとは神様のお話を」

 

すると、ポケットに入れたあった携帯から着信がきた。名前は世界神・・・って神じいちゃん⁉

 

レイガ「もしもし?」

世界新『おお、レイガ君。ワシもそのお祭り、ちょっとだけ参加していいかな。なに、少しだけ見物したいのと、教会で軽くお話するだけじゃから迷惑はかけんよ』

レイガ「・・・マジですか?」

世界新『降りた神々にも会いたいしの。ひとつよろしく頼むよ』

 

・・・うっそ。

そんなことを思っていると、また電話がかかってきた。名前は・・・キングじいちゃん⁉

 

レイガ「もしもし」

キング『おお、久しいな、レイガ。さっき聞いたと思うけど、ワシらも参加するからな』

レイガ「え⁉ キングじいちゃんたちも」

サーガ『うん、一応仕事は全部終わらせてから行くよ』

ノア『もちろん、僕も』

レジェンド『お前は早く仕事をしろーーーーーーー』

ノア『ぎゃああああああ!』

 

電話の向こうでは久しぶりに聞いたサーガ兄さんと、なんかノア兄の悲鳴とレジェンド先輩の怒号が聞こえたけど・・・祭りに来てくれるなら楽しみだけど。

すると、また電話がかかって来た。えっと~リムル・・・え⁉

 

レイガ「もしもし」

リムル『よっ! レイガ。そっちの生活はどうだ。さっきシオンから聞いたけど、そっちで祭りをするって聞いたから、俺も参加するな』

レイガ「それは嬉しい。ぜひ来てよ」

ヴェルドラ『はっはっは! 我も参加するから待っておれよ、レイガ』

リムル『ヴェルドラ! 勝手に電話を取るなよ!』

 

リムルたちも来てくれるなら、嬉しいな。

 

レイガ。「よし! お祭り頑張るぞ!」

 

 

 

 

 

祭りの準備は着々と進んでいった。

日程は全部で四日間。

 

 

 

・一日目

 

開会式

 

野球大会(初戦)

 

 

 

・二日目

 

野球大会(決勝まで)

 

将棋大会(予選)

 

 

 

・三日目

 

将棋大会(本選)

 

武術大会(予選&エキシビション)

 

 

 

・四日目

 

武術大会(決勝戦)

 

閉会式

 

 

 

といったところか。

他の国からの参加者の要請もあった。

基本は東西同盟の参加国だけを招待するつもりだったのだが、パルーフ王国はまだ同盟国ではない。となると、他の国をスルーするのもいかがなものか、となり、とりあえず顔を合わせたことのあるハノック、フェルゼン、ライル、ゼノアス、エルフラウの国王には招待状を送ることになった。

イーシェンについては、帝に会ったことはないので、一応、家泰さんには招待状を送っといた。

結果、全ての国が招待に応じてくれた。

 

二コラ「招待に応じないと陛下の機嫌を損ね、フレームギアで攻め込まれるとでも思ったんじゃないですかねえ」

 

二コラさん! そんなこと言わないで! 

さらにその各国からも騎士や武闘家が武術大会に出場する。もちろんそれぞれの国王推薦者だが、フェルゼンに至っては、国王自ら参加するつもりらしい。

目指せ! トラブルZERO!

 

 

 

 

 

桜「魔王来るの・・・?」

レイガ「そんな嫌な顔しなくても」

 

桜が珍しい渋面を作る。魔王が知ったら泣くぞ

 

桜「お母さんに避難するように言っとかないと・・・」

レイガ「いやいやいや、さすがにかわいそうだから。会わせてあげて」

桜「むう・・・」

 

桜が拗ねながら紅茶を啜る。ま、確かにあの魔王陛下は面倒くさいと思うけど。

 

ヒルダ「ウチはお兄様はいいんですけど、お祖父様まで来るのが悩みの種です・・・」

レイガ「ああ、あの強烈な・・・」

 

ため息をついているのはヒルダである。

 

八重「拙者は兄上が家泰様に付き従って来るでござる。久しぶりなので楽しみでござるよ」

 

反対にニコニコしているのが八重。

 

エルゼ「うちのラナ叔母さんやエマ姉さんたちも来るって」

レイガ「あの叔父さんは?」

 

エルゼの発言に、あの過剰なほど貴族にビビりまくっていた叔父さんを思い出す。

 

リンゼ「叔父さんは来ませんよ。お城になんか呼んだら、魂が抜けて戻ってこないかもしれませんし」

レイガ「ああ」

 

リンゼの言葉に納得してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祭り当日。

 

朝から様々な国を転移し、ゲストを御招待する。

王侯貴族の方々には、城内にあるそれぞれの個室と大広間を解放し、すでにそこでは歓談をしている者や、知己を得ようと挨拶に回っている人たちもいた。

すでに変装の着替えを終えていて、見たところ普通の市民にしか見えない。

 

パルーフ「公王陛下、これは持っているだけで発動するのですか?」

 

パルーフの少年王が先ほど渡した腕輪を見ながら質問してくる。

見た目がギンガマンの『ギンガブレス』。本体には金色のベゼルがあり、その下には赤、黄色、青の三色が配置されている。

 

レイガ「それに自分の魔力を少しだけ流して下さい。そうすることで腕輪のベゼルに彫られている矢印が「赤」から「黄色」へと回転して移動します。その状態になれば、パルーフ王の姿が別人に見えるようになります」

リュシエンヌ「でも公王陛下、私にはエルネストがなにか変わったようには思えませんけど・・・」

 

横に立つ姉のリュシエンヌ王女が、ベゼルが「黄色」に移動した弟を眺めながら首を捻る。彼女の胸にも同じ星型のバッジが光っていた。色は「赤」のままだ。

 

レイガ「発動に関係なく、同じ腕輪を持っている者には効かないのですよ。でないと誰が誰かわからなくなりますからね。試しにその星を外して、パルーフ王を見てみればわかりますよ」

 

言われた通り、腕輪をテーブルに置いた王女が、弟を見て驚いていた。全く見たこともない少年が見えたのだろう。

ちなみに僕も腕輪を付けている。

 

レイガ「この腕輪には転移魔法も備えていて、さらに魔力を加えるとベゼルの矢印が「青」に移動します。この状態になると、魔法だろうが剣だろうが、装備者に危害が加えられそうになったとき、自動的にこの部屋に転移されるようになっています。祭りの間は「青」にして、絶対に外さないようにして下さいね」

 

もちろん、各国が連れてきた護衛たちには「黄色」固定の腕輪を渡してある。

 

れ「それとこの子を連れて行って下さい」

 

僕は茶色の体毛を持ち、ウサギのような長い耳、首周りを覆う襟巻きのような毛が特徴的な動物、『イーブイ』を呼び出した。東西同盟参加国以外の国家代表の人たちには、イーブイを一匹付ける。

 

レイガ「何かあったら、この子に触れて話せば僕に連絡がとれます。それなりに強いから護衛にもなりますよ」

パルーフ「ありがとうございます! わあ、かわいいなあ」

 

パルーフ王がしゃがみ込み、イーブイの頭を撫でてやると、イーブイも嬉しそうに目を細め、尻尾をブンブンと振っていた。

イーブイを見て、さっきから部屋の端でちらっちらっとこちらを気にしているのは、レイチェルだ。パルーフ王と同じようにイーブイをかまいたいようだが、僕がいるので来にくいらしい。完全に苦手意識を植え付けてしまったようだな。

僕が一礼してパルーフ陣から離れると、すぐさま少年王の元へ行き、同じようにイーブイを撫で始めた。

あとは、ユミナやルーたちにこの場は任せて、僕はもう一方のゲストが集まっている城下の宿屋「銀月」へと転移する。

宿の大食堂へ行くと、すでに朝食を食べている人たちが何人かいて、その中にエルゼとリンゼの姿が見えた。

周りには二人の叔母さんであるラナさんと、その子供達がいる。僕らより歳上の、長女であるエマさんを入れて七人。すでに独り立ちしたっていう長男以外の全員が朝食を取っていた。

 

エルゼ「あ、玲我。お城の方は終わったの?」

レイガ「とりあえず一通りはね。こっちの方は?」

エルゼ「まあ、特には。あっちと違ってお忍びってわけでもないし」

 

軽くエルゼと言葉を交わし、ラナ叔母さんやエマさんにも挨拶をする。

食堂には他にも、リフレットから招待した武器屋のバラルさんや道具屋のシモンさんがいた。軽く手を上げてこちらにも挨拶をする。

彼らを含めて、招待した人たちの宿代食事代はこちら持ちだ。

 

レイガ「そういえばドランさんの姿が見えないけど、どうかしたのかな?」

リンゼ「ドランさんなら厨房でミカさんの手伝いをしてましたよ。お祭りのために客が満員で、人手が足りないらしくて」

 

リンゼが僕にそう教えてくれる。

 

エルゼ「お祭り開始って何時からだっけ?」

レイガ「八時だから、あと一時間くらい。軽い挨拶を放送したあと、北の大訓練場でサプライズを用意したんだ」

 

北の大訓練場は、城下町から少し離れたフレームギア用の広大な訓練場のことだ。特に秘密にはしていないから訓練の時には、訓練場の外に人だかりができて、その戦いぶりを観戦するのが町の人たちのひとつの娯楽になっているようだ。

今回は別なことでサプライズをしようと思う。

 

レイガ「そのあと最初の野球大会の第一回戦に入る。第一野球場と第二野球場、午前と午後で一試合ずつ。今日だけで四試合だね。これで明日の試合に進む四チームを決める」

リンゼ「対戦相手はもう決まっているんですか?」

レイガ「まだ。あとで公平にクジ引きで決める」

 

ラナ叔母さんと子供たちには、テンペスト・レイの露店に限り、半額になる割引き券を数枚プレゼントして、次に城下町の学校へと転移する。

 

レイガ「ニャンだこれ?」

 

校庭にずらりと揃った大勢の猫たち。猫たちの視線の先には、みかん箱に乗って剣を天に翳すニャンタローの姿があった。

 

ニャンタロウ「諸君! 今日は我らの晴れ舞台ニャ! 今現在、この町の平和は我らにかかっていると言っても過言ではニャい! 各々、気合いを入れてパトロールをするニャ!」

猫たち『ニャー!』

ニャンタロウ「怪しい奴は片っ端から監視ニャ! 何かあったらすぐさま騎士団詰所に駆け込み、先導するニャ!」

猫たち『ニャー!』

ニャンタロウ「猫は人のために! 人は猫のために! 我が精鋭たちよ、任務の果てには栄光が待っているニャ! 具体的に言うと鰹節一本ニャ! そら行くニャー!」

猫たち『ニャーッ!』

 

猫たちが一斉に町の方へと駆けていく。

 

ニャンタロウ「おお、これは陛下ではニャいですか。視察ですかニャ?」

レイガ「まあ、そんなとこだけど。どうやら心配いらないみたいだな」

ニャンタロウ「いかにも! 祭りの間、町の平和と姫の母上様の安全は、このニャンタロ・・・もとい! ダルタニャンがお守りするニャ!」

 

え、今ニャンタロウって言いかけたよな。

 

レイガ「フィアナさんを訪ねてゼノアスの魔王が来ると思うんだけど・・・」

ニャンタロウ「姫から伺っておりますニャ。母上様に不埒ニャ真似をしたら斬って構わニャいと・・・」

ニャンタロウ「いや物騒!」

 

国際問題になるから絶対にやめてよね。

懐のスマホにバビロン博士からメールが届いたので、城の方へと戻ることにする。どうやら準備が整ったようだ。

城へ戻ると、琥珀、紅玉、珊瑚、黒曜、瑠璃、の召喚獣チームが勢ぞろい。

 

琥珀『主。これから我らの眷属も街で警備と監視に当たります』

レイガ「うん。お願いね」

 

琥珀は犬やネズミなどの動物、紅玉は小鳥たち、珊瑚と黒曜は小さい蛇などの目を通して町を警備する。瑠璃はさすがに眷属である竜を呼ぶわけにもいかないので、町の上空で監視してもらう。

城門前に来ると、ちょうどラミッシュ教皇猊下の一団が、町へと下りて行くところだった。すでに何人かの他国グループは町へと繰り出したらしい。

教皇猊下は僕に気がつくと、フィリスさんを連れて僕の方へやってきた。

二人とも、例の腕輪を付けている。よし、ちゃんと「青」になっているな。

 

ラミッシュ「こ、公王陛下。「あの方たち」はいつ来られるのでしょうか?」

 

教皇猊下の言う「あの方」とは世界神様のことだ。地上に降りて来ると教皇猊下に伝えた時は、かなりパニックになっていたけど、幾分かは落ち着いたらしい。それでもまだ落ち着きがないが。

 

レイガ「少なくとも今日は来ないと思います。前日に連絡をいれるって言っていたので明日以降だと思います。ちゃんと連絡しますから安心して下さい」

フィリス「わ、私のこと覚えてて下さってるでしょうか・・・?」

 

心配そうに今度はフィリスさんが口を開く。

 

花恋「大丈夫なのよ。世界神様はまだボケちゃいないのよ?」

 

フィリスさんの質問に、僕の背後に急に現れた花恋姉さんが答える。

 

花恋「私も今日は教会で恋愛相談所を開くのよ。片っ端から解決してやるのよ。腕が鳴るのよ!」

 

確か恋愛相談所をするんだっけ?

 

花恋「さあ、二人とも出陣なのよ! 迷える子羊が待っているのよー!」

ラミッシュ「あ、ま、待って下さい、花恋様!」

フィリス「す、すいません、公王陛下! ではこれで!」

 

二人の手を引きながら、花恋姉さんが町の方へと歩いていく。それに伴い、護衛の聖騎士たちも慌てて三人を追いかけて行った。

あ、言い忘れたけど、明日僕の妻が何人かそっち行くけど・・・大丈夫か。

それから何組かのグループが城下へと向かい、開催の時間を迎えた。

町の中央にある時計塔が八時を示し、決めてあったバビロンからの花火が、いくつも空で弾ける。

それと共に奏助兄さんの奏でるバイオリンの曲が時計塔から大音量で流れてくる。

そして

 

goooooooooo!

 

空からクワゴンと共に登場する僕。

 

レイガ「アッハッハッハ! これより我がテンペスト・レイ公国の祭典を行う、心ゆくまで楽しむといい。アッハッハッハ」

 

これにて、テンペスト・レイの祭りが始める。



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祭り一日目

〈レイガサイド〉

 

祭り一日目。

クワゴンのサプライズ開催宣言も終わり、城下町はいつも以上に賑わっていた。

通りには様々な露店が並び、旨そうな匂いがそこかしこから漂ってくる。じゅるり

街中には祭りを楽しむために、警備の騎士たちが、観光客に混じって巡回している。

路地裏や塀の上にはニャンタロー配下の猫たちが、屋根の上や木々の梢には紅玉配下の小鳥たちが監視カメラのように目を光らせて、なにか非常事態があれば、すぐさま近くの騎士を呼んでくるように手配されている。

 

レイガ「祭りだ、祭りだ。めいっぱい、楽しむぞ」

リーン「ユミナの言う通り、テンション高くなってるわね」

 

今は僕とリーン、ポーラとラブコフで祭りを回っている。

他のみんなはそれぞれやって来た家族に付き合っていて出払っていた。一部、話しかけてくる父親をうっとおしそうにしていたけど。

時折りポーラとラブコフが子供たちに絡まれそうになり、必死で抵抗していたけど。

どうにかして、僕らは第一球場へと向かう。

今日は第一球場と第二球場でそれぞれ午前と午後に一試合ずつ、計四試合行われる。

対戦の組み合わせは、クジ引きで決まって、

 

 

 

第一球場

 

午前 ・テンペスト・レイVSレスティア

 

午後 ・ミスミドVSリーフリース

 

 

 

第二球場

 

午前 ・ベルファストVSロードメア

 

午後 ・レグルスVSリーニエ

 

 

と、なっている。

我がテンペスト・レイの初戦は騎士王国レスティア。攻撃の方に重点を置いたチームである。強打者が多いというわけではないが、出塁率に優れている、着実に一点を取っていくチームだ。

第一球場ではすでに試合が始まっており、まだ二回表で0対0、レスティアの攻撃が終わったところだ。

僕が一塁側の観客席に向かうと、反対側、三塁側の観客席にレスティア騎士王の姿が見えた。右隣にはヒルダが、左隣には先々代のレスティア国王である、ギャレン爺さんが座っている。

テンペスト・レイ側には四天王の一人、内藤のおっさんが部下数名を引き連れて、ビール片手に試合を観戦していた。

騎士団や城内勤めの人たちには、今回の祭りで四日間のうち、二日は休みを与え、彼らにも楽しんでもらいたいからな。

 

内藤「おや、陛下。巡回ですか?」

レイガ「ちょっと様子見に。みんなは楽しんでる?」

内藤「そりゃもう。自分たちが作り上げた町での祭りです。最高ですな」

 

内藤組はこの国の建設、農地開発などを担当しているから、その喜びもひとしおなのだろう。

この球場も基礎は僕が作ったが、そこから手を加えて大きくしたのは彼らだ。本当に感謝している。

とりあえず僕らも少し観戦することにして、売り子のお姉さんからポップコーンと飲み物を買うことにした。

 

 

 

 

 

リーン「惜しかったわね」

レイガ「そうだね。あそこで一発が出ていればなあ」

 

レスティアとの試合は2対3でレスティアの勝ちとなり、残念ながら我がテンペスト・レイは敗退となった。決して相手より劣っていたわけではないが、まあ、こればっかりは仕方ない。あとで選手たちによく頑張ったと、差し入れでもしとこう。

第二球場、午前中の試合ベルファスト対ロードメア戦はベルファストの方に軍配が上がったようだ。

このあと午後からはミスミド対リーフリース、レグルス対リーニエの対戦が始まる。勝ち残った四チームで明日の優勝決定戦に臨むのだ。

それはそうと、そろそろどこかでお昼でも取ろうかと街中をブラブラしていたら、角のオープンカフェで食事をとっているパルーフ勢を見かけた。パルーフの少年王とその姉、叔父である公爵とその令嬢、そして護衛の方々が軽い食事を取っている。

 

レイガ「お食事ですか? パルーフ王」

パルーフ「あ、公王陛下! はい、一回ぐるっと回ったので・・・」

 

僕が声をかけると、少年王が隣の席を勧めてきたので、遠慮なく座る。少年王の向かいに座っていた公爵令嬢のレイチェルが、僕が預けたイーブイを抱きしめたまま、目を逸らす。やはり嫌われてるな。

 

レイガ「みなさんは午後からはどうするんです?」

リュシエンヌ「リーニエの試合を観に行くつもりです。まだ私たちはちゃんとした野球を観たことが無いので・・・」

 

姉のリュシエンヌ王女が楽しそうに答える。リーニエ国王に誘われたのかな。どうやらこちらも楽しんでもらえているようでなによりだ。

 

レンブランド「いや、物珍しいものばかりで、あっという間に午前中が終わってしまいました。我が国にも取り入れたいものがいろいろあります。実に素晴らしい町ですな」

 

摂政であるレンブラント公爵がカフェから見える景色を眺めながらこの町の感想を述べる。他国の人に褒められるとやはり嬉しいものがあるな。

 

「ただひとつ、ちょっとお金を使いすぎてしまうところが悪いところですかね」

「あう・・・」

 

小さく笑った公爵にしょぼんとする少年王。ん?

 

レン「何かあったんですか?」

レイチェル「エルったら商店街の店先にあったカプセルを何回も何回も回しちゃったのよ。別にお金はいいんだけど、他の欲しい人たちに迷惑だって、さっきお父様に怒られたの」

パルーフ「なかなか白騎士が出なくて、つい・・・」

 

説明してくれたレイチェルの視線の先を見ると、椅子に置いてある紙袋の中がカプセルトイのカプセルでいっぱいになっていた。こりゃまた、回したなあ。

ん? それにしてもレイチェルは僕に対して嫌っているわけじゃないのか?

目線をちらりと向けると、やはり気まずそうに目を逸らされる。ん?

 

レイチェル「それで、全部揃ったんですか?」

パルーフ「ええと、このサングリーズってのがまだ・・・」

リーン「あら、私の?」

パルーフ「え?」

 

カプセルの中に入っているラインナップを見ていた少年王が、リーンの声に顔を上げる。

そのサングリーズという機体の操縦者がリーンであることを説明すると、他のみんなも含めて驚いていた。

 

リーン「貴方、ひとつくらい持ってないの?」

レイガ「そうだね、じゃあこれは記念にどうぞ」

 

収納魔法から、黒い重火力武装フレームギア、サングリーズのフィギュアをテーブルに取り出す。それを受け取ったリーンがパルーフ王へと手渡した。

 

レイガ「どうぞ。大切にしてね」

パルーフ「ありがとうございます! うわあ、これで全部揃った!」

レイガ「まあ、来月にはルーの「フレック」と桜の「アルヴィト」が加わるから、全部はまだまだだね」

パルーフ「ええー・・・」

 

僕の発言を受けて、少年王の漏らした情けない声に、みんな笑っていた。

ちなみに桜の機体はまだ開発途中である。

みんなで食事を取ったあと、リーニエの試合を観に行くというパルーフ勢と別れ、僕らもどこへ行こうかと足を踏み出そうとすると、

 

レイチェル「あっ、あのっ!」

 

呼び止められた声に僕が振り向くと、そこにはレイチェルの姿があった。相変わらイーブイを抱きしめている。

 

レイチェル「こっ、この間は、ごめんなさい・・・。自分がどれだけ弱いんだってことがわかっ、わかりました・・・」

 

なるほど、嫌っているんじゃなくて、気まずかったのか。

 

レイガ「そうだね。自分が一番強いって思ったら、そこで終わり。世の中にはもっともっーーーーーーと強い人がいる。ちなみに僕も全く勝てない人がいるよ。毎日やっても百回中一回勝てるかどうか」

レイチェル「ええっ⁉ そ、そんな人がいるの⁉」

 

うん、他にも僕より強い人がやまほどいるから。

 

レイチェル「私、エルを守ってあげないといけないから・・・。誰にも負けられないって・・・でも公王陛下に負けて、私の力ってなんだろうって思って・・・」

レイガ「・・・力だけが強さじゃないよ」

レイチェル「え?」

リーン「貴女が強くなれば外敵からパルーフ王を守れるのは確かでしょう。でもそれは騎士や護衛兵でもできるわ。でも貴女にしかできないこともあるのよ?」

レイチェル「私にしか・・・?」

リーン「その人の心の支えになりなさい。大切な人のそばにいて、一緒に悩んで、考えて、笑って、喜んで・・・。それがその人の力になるのって素敵だと思わない? それは彼の伴侶となる貴女にしかできないこと。その人の心を守る盾となりなさい。私のように」

 

そう言ってリーンが僕の腕を取る。僕もそっと手を握る。足下ではポーラとラブコフが、きゃーーー、と言う感じで顔を隠してうずくまる。

 

レイチェル「なれるかな・・・。私、エルの盾に・・・」

リーン「いい女ってのは男を立てるものよ。誰にも代わることのできない存在になれるの。貴女にはその素質が充分ある。私が保証するわ。王の心を支え、共に歩けるのは貴女だけなのよ? しっかりなさいな」

レイチェル「・・・っ、はい!」

 

嬉しそうに僕らに頭をひとつ下げると、レイチェルは勢い良くパルーフのみんなの方へと走っていった。

 

レイガ「いいアドバイスだったね」

レイチェル「ま、受け売りだけどね。貴方のお嫁さんの」

 

・・・一体誰のことかな?

 

リーン「さ、これからどこに行きましょうか」

レイガ「そうだね、まあ、ゆったりデートでもしようか」

リーン「そうね」

 

そう言い、四人で再び祭りを回ることにした。

 

 

 

 

 

しばらく回っていると、

 

レイガ「お、あったあった」

 

目の前には『出張店 遠月』と書かれた露店があった。

 

?「いらっしゃいま・・・あ! レイガ君」

レイガ「どう、繁盛してる? 恵」

 

店を伺うと、出迎えてくれたのはエプロン姿の『田所恵』。

 

?「恵、今はレイガって・・・」

レイガ「お、郁魅。久しぶり」

 

恵の後ろから、同じくエプロン姿の『水戸郁魅』。

 

?「いくみっち、どうしたの?」

 

郁魅の後ろからはこれまたエプロン姿の『吉野悠姫』。

 

悠姫「レイガっちじゃん。どうしたどうした。嫁のうちらに会いに来てくれたの? (・∀・)ニヤニヤ」

レイガ「そうだけど・・・ダメだった?」

悠姫「も~、なんで平然と言えるかな、そのセリフ」

 

三人とも頬が赤くなっている。

 

リーン「その気持ちよーーーくわかるわ」

 

リーンのセリフにポーラもこくこく、と頷く。

 

レイガ「・・・とりあえず、何食べよっか?」

 

メニュー表を見ると、食べ歩きできるような料理もある。さっき食べてから結構時間たったからな。

露店の後ろには座って食べれるように机と椅子も並べられているので、せっかくならここで食べて行こうか。

 

リーン「私は胡椒餅(フージャオピン)? これを頂こうかしら」

レイガ「僕は麻婆カレー麺にしようか」

恵「ありがとうございます」

 

待ってる間、椅子に座って待っている。すると、

 

「「にゃあ~~」」

「「わん!」」

レイガ「うん?」

 

声がする方、つまりは僕の足元を見ると、

二匹の猫と仔犬がいた。

 

リーン「あら、かわいいわね」

レイガ「・・・」

 

いや、なにしてるの、お二人とも⁉

 

?「「にゃああ~~~」」

 

そんなことを考えていると、二匹?の猫が僕の足にすりすりしてきた。

それに対抗するように、二匹の犬がジャンプして僕の膝の上に着地する。

 

レイガ「よしよし、スコルとハティも来てくれたんだね、お父さんとお母さんはどうしたの?」

スコル「わんわん!」

ハティ「くぅ~~ん」

 

頭を撫でてあげると、二匹ともとても嬉しそうだ。尻尾をめっちゃ左右に振ってる。

 

リーン「ずいぶんあなたになついてるのね」

レイガ「うん、この子たちは僕の星から来た子なんだ。こう見えてフェンリルなんだ」

 

そう、この二人はある事件で戦ったフェンリルの娘なのである。フェンリルは神喰狼と呼ばれ、神からしたら天敵でもあるけど、僕にとってはかわいいワンちゃんである。

ちなみに家族構成は、父親のフェンリル、母親のアングルボザことアンさん、長女のスコル、次女のハティである。

 

レイガ「リーンも撫でてみる?」

 

そう言い、二匹を抱き上げ、リーンの膝上に乗せる。

 

スコル&ハティ「「わん?」」

リーン「まじかで見るとかわいいわね」

 

静かに二匹の頭を撫でるリーン。二匹も嬉しそうに撫でられている。

 

レイガ「それで、お二人はどうしてその姿なのかな?」

 

足元にいる二匹? の猫を抱き上げ、膝の上に降ろす。

 

?「にゃんでって、こっちの方が驚くでしょ」

?「久しぶりに会うのだから、これぐらいせんとな」

 

二匹の猫が急にしゃべり出し、スコルたちを撫でているリーンの手が止まった。

 

リーン「・・・あなたたちしゃべれたの?」

?「それだけじゃにゃいにゃん」

 

ポン、という音がなり、二匹の猫を覆うように煙が舞う。

煙がなくなると、そこには猫が消え、代わりに二人の女性が立っていた。

 

黒歌「やっぱ、こっちの方が落ち着くにゃん」

 

黒色の着物をなぜか着崩し、猫の耳、尻尾が出ている女性、『塔城黒歌』。白音のお姉さんである。

 

夜一「驚く旦那様の顔も可愛かったぞ」

 

僕の顔を指で突くのは紫色の髪をポニーテールにした女性、『四楓院夜一』。

 

レイガ「そりゃ、妻が猫の姿で来たら普通驚くでしょ」

夜一「かっかっか、最近は会えていないから、スキンシップをするのは決まっておろう」

黒歌「そうにゃん、妻をおいて、新しい女を作る悪い旦那様にはお仕置きにゃん」

 

僕の左右に座り、腕に抱きつく二人。胸当たってますけど!

 

リーン「いいじゃない、妻のお願いを聞くのもダーリンの務めよ」

 

リーンはスコルとハティのことを気に入ったのか、料理が来るまで撫で続けていた。

その後は、みんなで料理を食べて祭り一日目は無事終了した。



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祭り二日目

祭り二日目。

 

今日は野球の決勝と将棋の予選日。

野球は朝から、第一球場でレスティア対ミスミド、第二球場でベルファスト対レグルスがそれぞれ行われる。

勝ち残ったチームが午後に決勝戦を行う。

お昼あたりには三位決定戦も行う。

 

一方将棋の方は、朝から夕方まで予選が続く。

持ち時間は一手二分以内にした。

特殊な駒を使って、相手が指してから一分経つと灰色になり、二分経つと自分の駒が黒くなる。それで時間切れになり敗退になる。

黒になる前に差せば、色は普通に戻る。

結構な人数が参加したから、そこから数名の予選通過者と、シード招待者で明日の本戦を勝ち抜いて貰う。

会場にはすでに参加者と見学者で賑わっていた。シード招待である「銀月」のドランさんや、ブレスで偽装したパルーフの少年王が、予選参加者の対局を覗き込み、気になった対局を観戦している。

僕は参加しないので、軽く見回っている。

 

レイガ「うーん・・・やっぱ少し地味かな」

八重「でもみんな楽しんでいるようでござるよ。ほら、あの席などおじいさんと子供が仲良く対局してるでござる」

 

八重が指差している席には、確かに老人とその孫という二人が対局していた。

 

レイガ「ところで八重は重太郎さんに付いてなくていいの?」

八重「兄上は明日からの武術大会に集中するため、今日も朝から騎士団の訓練場で特訓してるでござるよ。邪魔するのもなんなので、その・・・今日は玲我殿と一緒にいようと思ってでござるな・・・」

 

頬を赤らめながら、八重はもじもじと両手の指をせわしなく絡ませる。嫁が可愛すぎる件。

 

レイガ「じゃあ、野球の方を観に行こうか。そろそろ決勝に進むチームが決まる頃だし」

八重「あ、あ、だったら拙者、ちょっと着替えてくるので、その、「銀月」で少し待っててほしいのでござるが……」

レイガ「? 別に構わないけど・・・」

 

そう言うと、八重は大急ぎで城の方へと駆けて行った。

 

 

 

 

 

八重「お待たせしたでござる」

 

後ろからかけられた声に振り向くと、そこには浴衣姿に、髪をアップにまとめた八重が立っていた。

藤色の生地に朝顔が描かれた浴衣、水色の帯、そして小さな下駄。

 

八重「お祭りだと言うので、母上が兄上に持たせてくれたのでござるよ。ど、どうでござる・・・?」

レイガ「・・・すっごく似合ってるよ」

八重「そ、そうでござるか」

 

嫁の浴衣姿が可愛すぎる件。

 

レイガ「とりあえず球場の方へ行こう。もう決勝進出チームは決まっているかもしれないけど、三位決定戦が始まってるかもしれない」

八重「そうでござるな。・・・あ、あの、その、玲我殿。て、手をつないでもいいでござるか・・・?」

レイガ「もちろん」

 

おずおずと差し出される八重の手をしっかりと握り、僕らは歩き出した。

はにかみつつも嬉しそうな八重を伴って、屋台の並ぶ街中を進む。

第三位決定戦が行われる第二球場の方へやって来ると、さっそく入り口の看板に試合結果が張り出されていた。

 

レイガ「第一球場はミスミド、第二球場はベルファストの勝ちか」

八重「ということは、負けたレスティアとレグルスで三位決定戦でござるな」

 

観客席へ入るとすでに試合は始まっていて、三回裏、0対0でレグルスの攻撃だった。

僕らが椅子に座ったと同時に、バッターボックスから快音が響き、見上げると白球が青い大空を舞っていた。

途端に湧き上がる歓声。見事なホームラン。

打った選手が拳を突き上げて、ベースを回る。

ランナーが二塁にいたので、これで0対2。まだまだ試合は序盤、この点差なら充分逆転もありうる。しばし僕らは試合の行方を見守ることにした。

 

 

 

 

 

結果から言えば、あのままレグルスは二点のリードを守り切り、レスティアを下した。

これで第三位が決定したわけだ。

そしてこのあと、第一球場でミスミド対ベルファストの決勝戦が行われる。

 

八重「どっちが勝つでござるかな」

レイガ「身体能力はミスミドの方が上だけど、ベルファストは攻、守、走、バランスがいいチームだ。どっちも捨てがたいな」

 

第二球場からぞろぞろと出てきた観客たちが、今度は第一球場へと向かう。大半の客はこのまま決勝戦を観に行くつもりだろう。

僕らもその流れに乗っていたが、途中、ベルファストの一行に出くわした。

ユミナが付き添っているベルファスト国王に声をかけた。

 

レイガ「さすがに決勝戦は観にきましたか」

ベルファスト「将棋の方も気になるんだがなあ。玲我殿、次にやるときは日程をズラしてくれ。忙せわしくていかん」

 

ベルファスト国王の言葉に苦笑する。それは申し訳ない。

ベルファストの王様は明日の将棋大会に出るため、今日の予選をできるだけ観ておきたかったようだ。

代わりと言ってはなんだが、弟のオルトリンデ公爵が将棋会場に残っているらしい。公爵も明日の大会に出るので、敵情視察だろう。こりゃ、ついて行ったスゥがそのうち飽きてこっちに来るな。

そんな話を八重や、ベルファスト組についていたユミナとしていると、

 

スゥ「あ、じい! 玲我じゃ! 伯父上たちも!」

 

オルトリンデ家執事のレイムさんに付き添われて、後ろからやってきたスゥが僕の背中に勢いよく飛びつく。

 

レイガ「やっぱりきたか。将棋は飽きたかい?」

スゥ「パチパチはもうたくさんじゃ。父上は盤を見て一人でぶつぶつ言っておるし、つまらんのじゃ」

 

ぷう、とスゥは頬を膨らませる。スゥは短気だからな。一緒に野球を観にいくことにしよう。

僕の背中から下りたスゥが、その隣にいた八重に目を向ける。

 

スゥ「八重のその服、綺麗じゃのう。キモノ、じゃったか?」

八重「これは浴衣でござる。イーシェンではお祭りはこういうのを着るんでござるよ」

ユミナ「確かに素敵ですね。次のお祭りにはみなさんでこの服を作って、お揃いで着ましょうか?」

スゥ「いいのう。わらわも着てみたい!」

八重「では拙者の母上に習うといいでござるよ。これも母上作であるからして」

 

いつの間にか始まったガールズトークに微笑ましい視線を向けながら、僕らは決勝戦が行われる第一球場へと向かっていく。

決戦の火蓋は今まさに切られようとしていた。

 

 

 

 

 

走る。二塁を蹴り、三塁を蹴り、無謀とも言える勢いでホームへと突き進む。

センターの強肩から放たれる、送球が、キャッチャーへと伸びていく。

滑り込んだミスミドのランナーと、ボールを受け取ったベルファストのキャッチャーとのクロスプレー。

土煙が巻き上がり、倒れた二人の姿が一瞬見えなくなった。固唾を飲んで見守っていた観客席は静まり返り、そして審判の大きな声がその静寂を打ち破る。

 

「セェェェェェェフ!!」

 

途端に津波のような歓声が、観客席から響き渡る。ミスミドのベンチから選手たちが駆け出し、ホームに滑り込んだランナーを胴上げしていた。

今の1点が決勝点となり、1対2でミスミドのサヨナラ勝ちとなった。

第一回野球世界大会は、ミスミド王国が優勝。準優勝はベルファスト王国、第三位はレグルス帝国となった。

球場に銀のテープが打ち出され、選手たちの頭上には紙吹雪が舞う。

とてもいい試合だった。

そのまま、授賞式へと移行し、僕は開催国代表として、記念のトロフィーと盾をチームのキャプテンに、それぞれ順位ごとに、三位にはヒヒイロカネ、二位にはミスリル、一位にはオリハルコン製のメダルを選手全員に授与した。

トロフィーやメダルには第一回世界大会と刻まれている。

今だ興奮冷めやらぬ観客席からは、拍手の雨が降り注ぎ、戦い抜いた選手たちを包んでいた。

これにて野球大会の方は幕を下ろした。

時間はもうすぐ午後四時になろうとしている。将棋大会の予選は問題なく進行しているだろうか。

八重やユミナ、スゥらを伴って、将棋予選会場へと向かう。

会場は朝よりも人が少なくなってはいた。すでに勝ち抜きを決めた者や、敗退が決定した者が抜けたからだろう。

 

スゥ「あ、父上じゃ!」

 

会場の見学者の中に、スゥがオルトリンデ公爵を見つけ、駆け寄っていく。

 

オルトリンデ「やあ、野球の方はミスミドの優勝で決まったそうだね。こっちまで話が伝わってきたよ」

レイガ「ベルファストは残念でしたね」

オルトリンデ「まあ、勝負ごとに絶対という言葉はないからね。しかし、たとえ二位でも充分に胸を張っていいことだと私は思うよ」

 

確かにあの試合はどっちに傾いてもおかしくなかった。それはあの試合を観た人たちなら、全員がわかっていることだと思う。

 

レイガ「こっちの予選の方はどうですか?」

オルトリンデ「なかなかだね。数人、油断のならない相手もいたよ。正直言って当たりたくはないね」

 

今日の予選通過者とあらかじめ招待しておいた推薦者、合わせて32名で明日の朝から対局してもらう。

うまく行けば夕方ごろには優勝者が決まるだろう。もう少し日程を考えておけばよかったな。

明日の対局はスクリーンで投影して、より多くの人たちに観戦してもらうつもりである。その設置はこの後、モニカやロゼッタにやってもらうが、いろいろと大変なので僕も手伝う予定だ。

そんなことを考えていると、懐のスマホに着信の振動があったので、取り出して確認。

 

レイガ「こっちも大変だな」

 

僕はユミナたちにこの場を任せて、町外れの丘に立つ教会へと向かう。

 

 

 

 

 

ラミッシュ「あっ、明日ですか⁉ じ、時間は⁉」

レイガ「正午ごろになるそうです。多少ズレるかもしれませんが」

 

教会で神様の教えを説いていた教皇猊下に、先ほどの電話の相手の来訪予定を伝えると、興奮したのか息が荒くなってきた。

 

フィリス「ど、どうしましょう、教皇猊下」

ラミッシュ「落ち着きなさい、フィリス。今さら慌てても仕方ありません」

 

話の内容がわからないラミッシュの聖騎士たちは、皆キョトンとしているが、唯一の理解者である枢機卿のフィリスさんだけが同じように慌てていた。

その様子をうかがいながら花恋姉さんが一人つぶやく。

 

花恋「それにしても珍しいのよ。世界神様が下界に降りてくるなんて、何億年に一回あるかどうかなのよ」

レイガ「それを言ったら、光の超神が降りてくるのも一生で一回あるかどうかだよね」

ラミッシュ「な、なにか失礼があったなら、そこで世界が終わったり・・・」

レイガ「大丈夫ですよ。もともと不干渉を是としてるんだから。そんなに気負わなくてもいいと思うけど」

アーシア「そうですよ、皆さんお優しい方なので」

フィリス「そ、そうですか、聖女様」

 

教皇猊下とフィリスさんがおどおどしているのを宥めようとする女性、『アーシア・アルジェント』。二日目の朝からここ、教会を訪れて、僕の妻と言うわけか、それとも持ち前の優しさからか、数時間後にはみんなから聖女様認定をされている。

 

アーシア「明日は他にも何人か関係者が来るから大丈夫ですよ」

レイガ「僕も立ち会うし。姉さんもいるから」

 

どうにか落ち着かせようとする。すると教会の向こうからなにやら猫の鳴き声がしてきた。

ふと見ると、教会へと続く丘の道を数十もの猫が駆け上がってくる。

そのまま猫たちは僕へ飛びかかり、にゃあにゃあと鳴き声を上げる。異常事態か?

とりあえず『コネクト』で城にいた琥珀を呼び出して、猫たちの言葉を聞いてもらう。

 

レイガ「で、なんだって?」

琥珀『はあ、その・・・ニャンタローめが決闘しているとか。止めてほしくて主の元へ来たようです』

レイガ「へえ~決闘・・・はあ⁉ 誰と⁉」

琥珀『魔王だそうで』

 

・・・頭が痛い

 

 

 

 

 

サーベルとレイピアが火花を散らす。手数の多いニャンタローの突きが魔王へと向けて放たれる。そのレイピアの先端を魔王がサーベルで弾き飛ばし、返す刃で横薙ぎにするが、猫の敏捷さでニャンタローはそれを素早く躱し、体勢を整える。

 

ゼノアス「やるな、猫騎士!」

ニャンタロー「この程度も捌けニャいようでは母上様の護衛は務まらんニャ!」

 

ニヤリと笑った魔王にニャンタローが目を細めて言い放つ。

互いにジリジリと足を運び、学校の校庭に浮かぶ夕焼けをバックにして対峙する。

二人とも同時に大地を蹴り、相手へ向けて距離を詰め、必殺の一撃を交わさんと。

 

レイガ「なにやってんだ、あんたら!」

ゼノアス「がふっ⁉」

ニャンタロー「ブニャン⁉」

 

したところで、僕が二人の間に割り込んで、拳骨する。

地面に倒れ込み、頭を抑える二人に向けてため息をつく。

 

レイガ「なにをやってるんですか? 魔王陛下?」

ゼノアス「て、テンペスト・レイ公王⁉ これはだな! フィアナの護衛だというこの猫めの実力をみようとしたのであって、他意はない!」

 

他意ありまくりでしょ! 

 

レイガ「それで、お前もなにをやってるんだ!」

ニャンタロー「ニャッ⁉ 姫様から魔王が来たら遠慮は無用と言われてますニャ! できるニャら祭りの間、足腰立たなくしてしまってもかまわニャいと!」

ゼノアス「ぐふうっ⁉」

 

あ、とどめの一撃。

 

桜「・・・ニャンタロー、終わった?」

 

教室の窓を開けて桜が顔を覗かせる。

途端に魔王が跳ね起きて、一目散に桜の下へ駆け寄って行った。

 

ゼノアス「ファルネーゼ! せっかくここまで来たのだから、一目だけでもフィアナに会わせてくれ!」

桜「お母さんは忙しい。魔王邪魔」

 

ピシャッ! と窓が閉められる。魔王の方を見ると、真っ白に燃え尽いていた。

 

ゼノアス「テンペスト・レイ公王・・・余は娘に嫌われているんだろうか?」

レイガ「あんな感じですけど、本当に嫌いならもっとキツいと思いますよ」

ゼノアス「あれでキツくないのか⁉ 余の胸は張り裂けんばかりに痛んでいるぞ⁉」

 

正直嫌っているより、貴方の行動が問題だと思いますけど。

 

ゼノアス「これでも余は陰ながらフィアナとファルネーゼが幸せに暮らせるように心を砕いてきたつもりだったのだがなあ……。あの子は王角が無く生まれて来た。魔王の血筋を引いていながら角が無い・・・そんな娘をほとんどの貴族どもは受け入れないだろう。蔑まれ、忌み子の姫と陰口を叩かれるくらいなら、手元から離し、普通の庶民として生きて欲しいと願ったのだが・・・ままならぬものだ」

 

一人でしょんぼりしている魔王。すると学校からフィアナさんと桜が連れ立って出てきた。

 

ゼノアス「お・・・おお! フィアナ! 久しぶりだな!」

フィアナ「お久しぶりです。魔王陛下。ようこそテンペスト・レイへ」

 

にこやかに答えるフィアナさんに対して、桜は明らかに憮然としていた。

 

フィアナ「この子がなにか迷惑をかけたみたいで申し訳ありません。どうかお許し下さい」

ゼノアス「あ、いや、いいのだ。いきなり会いに来た余が悪かった。昨日も来たのだが、ファルネーゼに追い返されてな」

フィアナ「まあ」

 

フィアナさんが軽く睨むと、桜はバツが悪そうに目を逸らす。どうやらフィアナさんにはなにも伝わっていなかったらしい。

 

桜「・・・だって絶対お母さんの邪魔になる。ただでさえ子供会の準備で忙しいのに」

ゼノアス「子供会?」

 

桜が口にした言葉に魔王が反応する。

 

フィアナ「明日、明後日と、学校や町の子供たちを招いて、物語の朗読会をしようと思ってるんです。これなら文字を読めない子たちも楽しめると思いまして」

ゼノアス「ほう」

 

この世界では文字を学ぶ機会が極端に少ないので、こういう場を設けて学ぶ機会を増やしていこうと考えていた。

 

ゼノアス「よし、ならばその子供会とやら、余も手伝おう!」

 

急に魔王陛下がそんなことを言い出し、胸をひとつ叩いた。

 

フィアナ「いえ、そんなわけには・・・」

ゼノアス「気にするな。忙しいのであろう? 猫の手よりは役に立つぞ?」

ニャンタロー「おっとそれは聞き捨てニャらニャいニャ・・・。我輩の方がずっと役に立つニャ」

 

バチバチと見えない火花を散らす一人と一匹。

 

レイガ「手伝ってくれるというなら、いいじゃないですか。人手は多いに越したことはないし」

フィアナ「ですが・・・」

レイガ「それにこの学校の在り方や教育方針など、ゼノアスでも活用できることは多いと思います。これも文化交流の一つと見れば、悪い話ではないかと」

ゼノアス「うむ! 確かに!」

 

そんな僕の提案を無視して、桜が憮然として反論してきた。

 

桜「手伝いならニャンタローにさせる。ニャンタローなら本だって読める」

レイガ「だけどニャンタローは発音がはっきりできないだろう?」

ニャンタロー「そんニャことニャいニャ! どんニャ言葉もペラペラニャ!」

 

心外とばかりにニャンタローが声を上げる。

 

レイガ「試しに「なた豆七粒生米七粒七粒なた豆七粒生米」って言ってみ?」

ニャンタロー「ニャたまめニャニャつぶ、ニャまごめ、ニャニャつぶ、ニャニャニャつぶニャたまめニャニャニャごめ・・・ニャァ──────ッ!!」

 

ありゃりゃ、膝から崩れ落ちるニャンタロー。桜もぐむむ、と唸る。

 

レイガ「まあそれはそれとして、手伝ってくれるっていうものを、無下に断ることもないと思うよ。桜だって子供会を成功させたいだろう?」

桜「・・・わかった。手伝ってもいい」

 

しぶしぶといった感じで桜が了承し、それを聞いた魔王が嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 

桜「でもお母さんの邪魔はしないこと。あと子供たちに変なこと吹き込むのもダメ」

ゼノアス「うむ、約束しよう」

 

二人の会話を聞きながら、フィアナさんがにこやかに微笑んでそれを見ていた。これも親子のひとつの形なのかな。

 

レイガ「そんで・・・さっきから何見てんだ? 戦闘狂の赤魔王様」

みんな『?』

?「やはり気付いていたか」

みんな『⁉』

 

僕らの後ろから声が聞こえ、全員が僕の後ろを振り返ると、そこには赤髪をロングに伸ばした・・・女性がいた。

 

レイガ「リムルが来るのは知ってたけど、お前まで来るなんて聞いていないんだけど」

?「面白そうなものには目にないからな、特にお前関係はな」

 

そういい、プレッシャーを上げる女性。

 

桜「・・・王様、この人も・・・王様の妻?」

 

後ろにいる桜が僕の裾を引っ張りながら聞いてくる。

 

レイガ「悪いけど・・・それはない。てかなに女体化してるんだよ、ギィ」

ギィ「ふん」

 

ギィの周りが光り輝く。光がはれると、そこには先ほどの女性はなく、代わりに同じ髪色でロングの男性が立っていた。

 

レイガ「やっぱそっちの方がしっくりくるわ」

ギィ「俺にとってもどっちでもいいけどな」

 

この男、『ギィ・クリムゾン』。魔王リムルと同じく、惑星レイガの八星魔王の一人、暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)のギィ。

ミリムとラミリス同様、古くから魔王を名乗っている一人。

 

ギィ「まあ、祭りを楽しみに来たのは目的の一つだが、もう一つは」

 

桜のお父さんを見つめるギィ。

 

ギィ「魔王の定義も星ごとに変わる。今回は外れか」

レイガ「その言い方は失礼だと思うけど」

ギィ「それより・・・ッ!」

レイガ「ッ!」

 

いきなり拳を振るってくるギィ。それを受け止める僕。

 

ギィ「お前と一勝負するのもいいな」

レイガ「悪いけど、今は祭り中なんだ。そういうのはまた今度にしてくれよ!」

 

受け止めた手とは逆の腕で、ギィをぶん殴る。

 

ギィ「中々いい攻撃だな」

 

すました顔で僕の拳を受け止めるギィ。

お互いに手を離し、後ろに下がる。

 

レイガ「言っとくけど、まだやるなら、こっちだって話は別だぞ」

ギィ「ほう」

 

お互い臨戦態勢をとる。その時

 

?「そこまでにしなよ、二人とも」

レイガ&ギィ「「ッ⁉」」

 

上空から声が聞こえ、上を向くと、そこには銀髪の少年が空に浮いていた。

 

レイガ「遅かったな、ヴェル。もう少しでやり合うとこだったし」

ヴェルダナーヴァ「ごめんごめん、少し身支度で時間がかかった」

 

空から降りてくる少年を見て、お互い臨戦態勢を解く。

 

ギィ「お前まで来たのが、ヴェルダナーヴァ」

ヴェルダナーヴァ「まあ、レイガ君の祭りなんだから来ないわけにはいかないよ」

 

この少年、ヴェルザードの兄、『星王竜ヴェルダナーヴァ』。いわゆる創造神っぽい竜である。

 

ヴェルダナーヴァ「それに僕が止めなかったら、二人ともここぶっ壊してたでしょ」

 

・・・たぶんしてないと思うけど。

 

ヴェルダナーヴァ「ほら今日は帰るよ、ギィ」

ギィ「ふん、まあいいだろう」

ヴェルダナーヴァ「それじゃあ、明日にでもまた来るよ」

 

そう言って、二人の姿が消える。ちょっとハプニングがあったが、祭り二日目は終了した。



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祭り三日目 前半

大変おそくなりました。


〈レイガサイド〉

 

祭り三日目。朝早くから将棋大会の決勝戦は始まっていた。

会場に設置された四つの大型モニターには16の対局が映し出されている。

それを遠目で観ながら、僕らは早朝から並ぶ屋台の椅子に座り、朝ごはんを食べていた。

 

ユミナ「今日は将棋大会の決勝戦と武術大会での予選が行われるんですよね?」

レイガ「うん、ベルファスト、レグルス、リーフリース、パルーフ、ロードメアはそれぞれ王様たちが出場してるから将棋大会の方に、ミスミドやレスティア、イーシェン、フェルゼンは武術大会の方に行ってるよ」

 

武術大会の方にはウチから馬場さんと山県さんが出ている。

優勝候補としてはやはりレスティア騎士王かな。魔法も使ってOKだったら、「アクセル」を持つミスミドの獣王もあるけど。

他にも隠れた強者が出場しているだろう。タダでさえこの街は冒険者が多いんだ。腕試しに出場しようという者もいるだろう。

 

ルー「玲我様は今日はどうなされますの?」

 

同じく朝食を食べているルーが僕の予定を聞いてきた。

 

レイガ「将棋大会は夕方にならないと決着がつかないと思うし、武術大会は・・・言っては悪いけど予選よりもエキシビションの方が興味あるかな。それに今日は娘たちが遊びに来るからね」

 

武術大会の審判は諸刃姉さんと狩奈姉さんが引き受けてくれたし、心配ないだろ。将棋大会の方もウチの副団長のニコラさんが仕切ってくれているし。

ん? 二人とも固まったけどどうしたんだ?

 

ユミナ「玲我さん、今娘がくるって」

レイガ「うん、今日は四人ほど来るらしいから分身使って全力で家族旅行を楽しまないと。今でも10人ほど分身しているからさらに増やさないと」

 

この2日で10人に分身してるから結構大変。まあ妻一人ひとりとデートするいい機会だし。

 

ユミナ「いえ、そんなことより!」

ルー「娘がくるってなんで教えてくれなかったんですか!」

レイガ「え⁉ だって聞かれなかったから」

 

お二人ともめっちゃ怒っているけどどうして⁉

 

ルー「いつ来るんですか?」

レイガ「えっと、時間的にそろそろ」

?「「「「パパ!(ちち!)(パパ様!)」」」」

レイガ「お?」

 

時間を見ようとしたら、こちらに向かって来る四人の少女。

 

?「「「「パパ(ちち!)(パパ様)!」」」」

 

同時に胸に飛び込んでくる少女たち。

 

?「ボフ!」

レイガ「ぐほっ!」

 

プラス一匹。

 

 

 

 

 

レイガ「それじゃあ、みんな自己紹介して」

 

腹をさすりながら、みんなに促す。

 

ユイ「初めまして、ユイです。いつもパパがお世話になっております」

 

この中では年長者、白いワンピースに黒髪ロングの少女、『ユイ』。

 

リリム「リリムです。初めまして、ユミナママ様。ルーママ様」

 

次に白髪でリリスと同じ髪型の少女、『リリム』。

 

アーニャ「ちちのむすめのアーニャです。よろろすお願いするます」

 

続いて、ピンク色の髪をボブにした少女、『アーニャ』。

 

ミュウ「みゅう、パパの娘のミュウなの、よろしくなの」

 

最後にエメラルドグリーンの髪に、特徴的な海人族の耳の少女、『ミュウ』。

今日はこの四人が遊びにやってきた。

 

ユミナ&ルー「「かわいい!!」」

 

自己紹介が終わると同時に四人に抱き着くユミナとルー。

今日はこの四人と母親の四人、ユミナとルーで回ろうと思う。

母親はそれぞれ

ヨル→アーニャ

リリス→リリム

と、残りはまだ会っていないこの二人。

 

明日奈「初めまして、ユイちゃんの母親の『結城明日奈』です」

レミア「ミュウの母の『レミア』です」

 

一人は栗色の髪の女性、剣士の『結城明日奈』。

もう一人は娘と同じくエメラルドグリーンの髪色で海人族の持つ特徴的な耳を持っている女性『レミア』。

それと、

 

?「ボフ!」

レイガ「アーニャ、ボンドのこと忘れてるぞ」

アーニャ「! そうだった。こいつのなまえはボンド。みらいをみることができるいぬさんだ」

ボンド「ボフ!」

 

白い大型犬、『ボンド』。アーニャの言う通り未来を予知することができる超能力犬である。

今日はこの11人+1匹とで祭りを回ることにしよう。

 

 

 

 

 

レイガ「今日も奏助兄さんの演奏は人気あるね」

 

時計塔では初日からずっと奏助兄さんこと音楽神のコンサートが開かれている。

よく見ると、奏助兄さんの他にもギターのような弦楽器や太鼓のような打楽器を演奏している人たちがいる。

 

レイガ「あれは・・・」

耕助「旅の楽団らしいですよ。たまたまこの国に通りかかったそうで。昨日も奏助君と一緒にここで演奏してました」

レイガ「へえ・・・って、耕助叔父さん⁉」

 

僕のつぶやきに答えてくれたのは、時計塔の片隅で椅子を並べて屋台を開いているうちの農耕神、耕助叔父だ。

 

レイガ「何を・・・ってカレーですか?」

耕助「そう。私たちの農作物で作ったカレーを売っているんですよ。私もお祭りに参加したくなりましてね」

ユイ「カレー・・・食べたいです! パパ」

リリム「私も!」

アーニャ「アーニャも」

ミュウ「ミュウもミュウも!」

レイガ「はいはい、それじゃあ耕助叔父さん、カレーを11人分」

ボンド「ボフ!」

レイガ「いや、ボンドは食べれないでしょ」

ボンド「ボフッ⁉」

レイガ「それじゃあ、彼専用の料理を作りましょう」

レイガ「お願いします」

 

ちょっと早めのお昼ご飯をみんなで食べることにした。

 

 

 

 

 

カレーを食べ終えると、ちょうど例の時間になったので僕らは教会の方へと向かう。

 

ラミッシュ「へっ、陛下! ひょっとしてもうあの方たちがこちらに⁉」

レイガ「あと・・・もう少しですかね」

 

僕の言葉を受けて、がっくりしている二人にあらためて声をかける。

 

レイガ「まあまあ、そんな焦らないでもそのうちに来ますから・・・」

世界神「もう来とるよ」

レイガ「ほら」

 

真横から聞こえた方に振り向くと地味な服をまとい、いつもと同じ飄々とした笑顔を浮かべた世界神こと神じいちゃんが立っていた。

 

レイガ「お久しぶりです。神じいちゃん」

世界神「ほっほっほ、久しぶりじゃのレイガ君。それとお二人さんも久しぶりじゃのう」

 

世界神様が教皇猊下とフィリスさんに声をかける。すぐさま二人とも慌ててその場に跪こうとしたが、やんわりとそれを世界神様が止めた。

 

世界神「お二人さんの立場というものもあるじゃろ。ここではそんな気遣いはいらんよ。誰も気にせんしな」

ラミッシュ「は、はいっ・・・!」

 

いかん、二人ともガチガチじゃないか。花恋姉さんや諸刃姉さんで免疫力がついたかと思ってたんだけど。

このままじゃ残り四人も来たら、二人とも気絶するんじゃ

 

ユミナ「あのう……玲我さん、こちらの方は?」

 

後ろから僕らを見ていたユミナが尋ねてくる。その横でルーも不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。

 

世界神「こんにちは、お嬢さん方。ワシは一神神之助(いちかみしんのすけ)。ここにいる光神玲我君の祖父の友達じゃよ」

?「そしてワシが祖父の光神(きんぐ)じゃ」

全員『⁉』

 

突然の言葉に全員が後ろを振り向くと、そこには神じいちゃんと同じ背丈で特徴的な髭を生やしたおじいちゃん。『ウルトラマンキング』ことキングじいちゃんだった。

 

レイガ「キングじいちゃん! 久しぶり」

キング「久しぶりじゃの、レイガ」

 

そういい僕の頭を撫でるキングじいちゃん。

 

ユミナ「玲我さんのお祖父様・・・」

 

その言葉にユミナはあることを思い出したようだ。僕の正体を言ったときに、みんなには光の超神(家族)については教えてある。

 

ユミナ「こ、これは失礼致しました。玲我さんと婚約させていただきました、ユミナ・エルネア・ベルファストと申します」

ルー「お、同じく婚約させていただきました、ルーシア・レア・レグルスですわ。ご挨拶が遅れまして申し訳ありません」

キング「気にせんでいいよ。お二人とも別嬪さんじゃな」

 

深々と頭を下げた二人に、キングじいちゃんが笑いながら答える。別嬪さんと言われたのが嬉しかったのか、二人とも顔を赤くして照れていた。くッ! かわいい。

 

娘たち『キングおじちゃん!』

キング「おお、かわいい孫娘たち。みんなも元気そうじゃな」

 

ユイたちにとってはキングじいちゃんはおじいちゃんみたいなもんだから、久しぶりに会えて嬉しそうに抱き着いている。

 

サーガ「いや~それにしてもみんなで旅行は久しぶりですね」

レジェンド「そうだな、どこかのバカはいつも仕事サボって遊びに行ってるがな」

 

キングじいちゃんの後ろから聞き覚えのある声が聞こえ、顔を向けると、そこには三人の男性がいた。

一人は銀の髪を短くそろえた男性、『ウルトラマンノア』

一人は銀と蒼が入れ混じった髪を肩にかかるほどの長髪男性、『ウルトラマンレジェンド』

最後に中くらいの長さの虹色の髪の男性、『ウルトラマンサーガ』

ここに光の超神全員が揃った。てかいつ見てもサーガ兄さんの人間の姿の髪色すごいな。

 

教皇&フィリス「「・・・・・・・・」」

 

ああ、教皇もフィリスも固まっちゃった。

 

 

 

 

 

キングじいちゃんと神じいちゃんは教会で昔話をしに、レジェンド先輩たちは露店を回りに向かったので、僕らは将棋大会の会場へと向かう。たぶん娘たちは暇になると思うから。そこから別行動にした。

会場に着くと、朝に比べ観戦している人は多くなったようだが、すでに試合を終えている者たちも多く、モニターには勝者と敗者の名が示されていた。

 

レイガ「結構決まっちゃってるなあ」

 

知り合いだと、リフレットのバラルさんとシモンさん、リーフリース皇王、ロードメア全州総督がすでに敗退しているな。

 

ルー「お父様も敗退していますね」

 

レグルス皇帝の名前(偽名)を見つけたルーがそうつぶやく。

っていうか、皇帝陛下の相手、パルーフ国王じゃん。頑張っているようだな。

会場を見回すと、近くのモニターの前で椅子に座り、画面を食い入るように見つめている集団がいた。あれって、レグルスとリーフリースの集団だな。

僕らはその集団の元へ向かい、皇帝と皇王の二人に声をかける。

 

レイガ「こんちわ。残念でしたね」

レグルス「おお、玲我殿か。いや、なかなか楽しめたよ。来年は麻雀大会も開催してほしいな」

リーフリース「負けたのは残念だったが、自分の欠点もわかったし、次は負けんさ」

 

二人ともあまり負けたことを気にしていないようなので、ホッとした。

モニターに映る画面をふと見ると、パチリと「銀」の駒が動いた。それに反応して、両陛下がむう、と難しい声を漏らす。

 

レイガ「この対局って・・・」

レグルス「パルーフ国王とベルファスト国王だ。いや、なかなか面白い対局だぞ」

 

あの二人か。レグルスの皇帝陛下を負かす腕前だ。ベルファスト国王も苦戦してるんじゃないか?

 

レイガ「・・・あれ、誘ってますよね」

リーフリース「そうだな。迂闊には手を出さん方が懸命だろう」

 

僕の言葉にレグルス皇帝が頷く。パルーフ王、見かけによらず腹黒いよな。

 

 

 

 

 

決勝戦まで時間があるので僕らは闘技場へと向かった。

闘技場の上では六人の出場者が鎬を削っていた。

攻め、守り、躱し、受け、突き、斬りかかる。やがて一人、また一人と倒れていく。

最後に残ったのは大剣使いの冒険者と、刀を構えた青年の二人。

青年の方は誰あろう、八重の兄である九重重太郎さんだ。

出場者の武器類はこちらから貸し出されている。しかし、刃引きしてあるとはいえ、あんな大剣を食らったら、良くて骨折、悪きゃ死ぬ可能性もある。

本当に危険と判断したら、審判である諸刃姉さんが止めるだろうが。

振り回される大剣をひらりひらりと躱し、重太郎さんが後退していく。

見た目には大剣使いの方が押しているように見えるが、あれはタイミングを窺っているんじゃないかな、と、僕が思った瞬間、重太郎さんが突如前へと踏み出した。

稲妻のような踏み込みから放たれた刀は、相手の胴を正確に捉える。

ドンッ! と衝撃音がしたと同時に、大剣使いが前のめりに倒れ、場外へと転移した。

 

諸刃「そこまで! Gブロック勝者、九重重太郎!」

 

審判である諸刃姉さんの声を受けて、観客席から歓声と拍手が送られる。

重太郎さんはその場で一礼すると、闘技場から降り、出場者控え室の方へと去っていった。

 

ユミナ「危なげなく勝ちましたね」

八重「兄上ならあれぐらい余裕でござる」

 

ユミナが漏らした言葉に、八重がうんうんと誇らしげに頷いている。

武術大会の予選を見に来た僕とユミナ、ルーの三人は、すでに会場の観客席にいた八重とヒルダたちに合流した。

予選大会は順調に進んでいるようで、半数近く本戦出場者が決まっていた。出場者数が多いため、予選はバトルロイヤルになってしまったが、これはこれで盛り上がるな。

 

レイガ「ラインハルトさんは予選を抜けたんだよね?」

ヒルダ「兄上ならAブロックだったので、早々に。今頃下で試合を見ているんじゃないでしょうか」

 

ヒルダがコロッセオ型の闘技場である試合会場の一階、控え室のある方を指差す。

あ、そうか。組み合わせ次第では八重とヒルダの兄上同士が戦うこともありうるのか。どっちを応援すりゃいいんだ?

 

レイガ「知り合いの中であとは誰が予選突破してる?」

八重「レグルスのガスパル騎士団長と、ベルファストのレオン将軍、あとはうちの馬場殿でござるな」

 

馬場さんも勝ち残ってるのか。さすがは武田四天王の一人ってことか。

 

ヒルダ「玲我様、あれは・・・」

 

ヒルダの指し示す方向、闘技場に立つ次のHブロック予選出場者の中に、見知った顔を見つける。

尖った耳と鱗模様の浮かぶ赤銅色の肌。竜人族であることを示す頭から伸びた二つの角に太い尻尾。

 

レイガ「ソニアさんも出てたのか」

 

大樹海の武術大会である「剪定の儀」で知り合った竜人族の女性武闘士。

相方の蓮月さんも出場してるな。

そんなことを考えている間に闘技場では試合が始まり、あっという間に乱戦が繰り広げられていた。

ソニアさんに襲いかかった斧使いがガントレットの拳をまともに受け、試合場ギリギリまで飛ばされる。

なんとか踏みとどまったかと思いきや、斧使いはさらに正面から見えない衝撃を突然受けて、場外へと吹っ飛ばされた。むろん、場外に落ちれば失格である。

ソニアさん御得意の「発勁」。中距離から飛んでくるアレは厄介だよなあ。

結局Hブロックはソニアさんの独壇場で、本戦出場を決めた。同じ武闘士としてはベルファストのレオン将軍が出場しているけど、それでも将軍の方がまだ上かな・・・。

ま、勝負は時の運だし、その時にならないとわからないけど。

 

八重「拙者も出場したかったでござるなあ・・・」

ヒルダ「私も・・・」

レイガ「・・・うん?」

 

あれ、なんか誤解してるような。

 

レイガ「確かに本選には出場できないけど、エルゼも合わせて三人にはエキシビションに出てもらう予定だけど・・・話さなかったっけ?」

八重&ヒルダ「「え⁉」」

 

伝えてなかったかな。

 

レイガ「だから、準備はしといてね。・・・相手めっちゃ強いから」

 

 

 

 

 

〈サイドストーリー〉

 

ユイたちと別れた時間に遡る。

 

ミュウ「♪♪」

レイガ「楽しそうだなミュウ」

ミュウ「うん♪ だってみんなと祭りを回るの久しぶりだもん」

レイガ「久しぶりって・・・ウチじゃあ結構な頻度で祭りしてると思うけど」

ミュウ「それとは別なの!」

 

別行動する際に、分身している僕に肩車しているミュウ。僕の左右にはユイとリリムが手を繋いでいる。

アーニャはボンドに乗っている。

 

ヨル「それにしてもお店増えましたね」

リリス「そうね、アイスやケーキ・・・だんだんと私たちの街と同じになってない?」

レイガ「・・・気のせいじゃない?」

 

そんな感じで露店を回っていると、

 

明日奈「・・・ねえあの店見覚えがあるんだけど?」

 

明日奈の言葉にそのお店を見てみると

 

レイガ「『マッシュ―クリーム』・・・」

レミア「あらあら」

リリス「ネーミングセンス」

ミュウ「壊滅なの」

 

みんなも同じ意見だろう。微妙な顔をしている。

 

レイガ「えっと~とりあえず食べる? シュークリーム」

娘たち『食べる!』

 

 

 

 

 

レモン「いらっしゃいませ! 私のマッシュ君のマッシュ君によるマッシュ君のシュークリーム屋さんへ」

全員『・・・』

 

会合一発目がこれ⁉

 

フィン「あ~いらっしゃいませ、レイガさん」

レイガ「あ~大変そうだね、フィン」

 

疲れているフィンの顔を見て、同情してしまう。

 

マッシュ「いらっモグモグしゃいモグモグませ!」

レイガ「なんでシュークリーム食ってんだよ!」

マッシュ「いま休憩中、モグモグ」

レイガ「はあ~とりあえずシュークリーム9個ください」

フィン「ありがとうございます」

 

この店、やっていけるのか。

 

レイガ「もぐもぐ・・・うま!」

 

どうやらっやっていけそうだ。



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