ポケットモンスターHUNTER アルセウス (箱厨)
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LEGENDS アルセウス
【緊急】我らモンハン部異世界支部【招集】


初投稿にして、多分これっきりになると思います。
感想、駄目出し、お手柔らかにお願いします。
とりあえず言いたいことは……何事も、初めてって怖いね、ってことですね。
初投稿で掲示板形式って、だいぶ無理があっただろうか……。


1:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

突然スマヌ

 

2:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なんじゃらほい

 

3:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おうどした

 

4:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

食事中なので、手短に頼む

 

5:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ヒャッハー!ニューラは消毒だぁー!!

 

6:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ほら、昨日のことだが空の色変わったやん?てことは、よ

そろそろ主人公くんちゃんが追放されるんちゃうんかなって思って

 

7:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あー、あれかー

 

8:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

デンボク殺るんか?

 

9:空の王者 ID:MH2nddosHr8

殺意マシマシで草

 

10:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やはりコトブキムラか……いつ出発する?私も同行する

 

11:空の王者 ID:MH2nddosHr8

流静院

 

12:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

肉置いてけ! なあ!

イノムーだ!!

イノムーだろう!?

なあ イノムーだろうおまえ!

肉置いてけ!! なあ!!!

 

13:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

イノムー逃げて超逃げて

 

14:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ついさっきまでギャラドスを踊り食いしてたやつに言われてもなあ

 

15:空の王者 ID:MH2nddosHr8

完全ブーメランで草絶えずww

 

16:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

どうしてここまでまともなやつが揃わないのか……

 

17:空の王者 ID:MH2nddosHr8

で、何事?

 

18:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

手短に頼むと言ったよな?

 

19:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やっと原作そこまで来たか……それで?

 

20:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

急にまともになるなよ

 

21:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ガブリアスてめえぇぇ!ちょっと環境良くて好待遇されてるからって調子乗んな!

下りて来いよド三流!格の違いってやつを見せてやる!!

……いや、待て。やっぱこっちから行くわ。待ってろよそこで……!

 

22:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まだまともじゃない奴おるんだがw

 

23:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ちゃんと聞いて!大事な話なの!!

 

24:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ハッ、一昨日きやがれボケがよぉ、四倍弱点に勝てるわけねえだろ!

……ところでどしたん?

 

25:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

もうやだこいつら……

 

26:空の王者 ID:MH2nddosHr8

光輝、泣いてないで説明をどうぞ

 

27:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ノッケからボケ無しで相談を持ち掛けたところ、よほどの事態と見える。

 

28:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ああ、うん

……その、今って丁度主人公くんちゃんがコトブキムラを追放されるタイミングやん?

皆がデンボクに殺意沸いた例のイベント

 

29:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やっぱデンボク殺るんか?

 

30:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

殺らんが!?……話を戻す

この作品の二次創作って、俺が知る限りでは大抵主人公くんちゃんが闇落ちしてる話ばっかりなんだよね

 

31:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それは俺も思った

ぶっちゃけそうならなかった原作の方がよほどの奇跡だと思ったが

 

32:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そうそう

それでさあ、俺たちみたいなイレギュラーがいる以上、この世界がどんなパラレルワールドになるかなんて想像つかんやん

 

33:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そうだな、剛太は深紅沼の支配者になってるし

 

34:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それを言うなら流静だって群青の海岸の食物連鎖の頂点じゃねえか

しかも現地民から熱烈なラブコール受けてるって話だぞ

 

35:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ずいぶん昔に溺れたウインディを助けて以来、現地のシンジュ団キャプテンからの熱い視線から逃げ続ける今日この頃

 

36:空の王者 ID:MH2nddosHr8

目ぇ付けられてて草

 

37:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

話の腰を折るな!

それでだ……もしかしたら、この世界が主人公くんちゃん闇落ちのパラレルワールドって可能性も否定できないだろ?

だからさぁ……

 

38:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あっ(察し)

 

39:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

見えた、見えたぞ……光輝の次の台詞!

 

40:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

次にお前は「主人公助けちゃった!てへっ☆」……と言う

 

41:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

主人公助けちゃった!てへっ☆

……はっ!

 

42:空の王者 ID:MH2nddosHr8

うわっ

 

43:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うわっ

 

44:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

原作崩壊の音がする

 

45:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

この野郎……やりやがったな!この野郎!!

転生してすぐは「原作に関わりたくねぇな……」って言って奥の森に引っ込んだくせに!

そのくせ良心の呵責に苛まれれば結局助けに行きやがった!

 

46:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんだよ悪いかよ!

十代半ばの女の子が雨降りの蹄鉄ヶ原で蹲って泣いてんだぞ!

無視できるかよ!?

 

47:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

女主人公……!?

よくやった

 

48:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

でかした

 

49:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ナイスゥ

 

50:空の王者 ID:MH2nddosHr8

さすがは光輝!俺たちにできないことを平然とやってのける!

 

51:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そこに痺れる!

 

52:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

憧れるぅ!!

 

53:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

掌クルックルやんけ

 

54:空の王者 ID:MH2nddosHr8

伊達に俺たち、前世で人間の雄やってないんで

 

55:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

年も近けりゃなおのことよ

 

56:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

つーか、どうやってお近づきになれたん?

俺らって主人公の元居た時代どころかヒスイにすらおらん、次元を超えて完全異世界の生物なわけで、彼女から見ても未確認生物だろ?

 

57:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、特になんもしとらんが

岩にもたれて蹲って泣いてたから、そっと近づいてそのままお座りしてじっと見つめてただけやで

そしたら向こうが勝手に喋り出して、適度に相槌打って話し終えたタイミングで「ほっぺすりすり(非帯電)」したらべらぼうに懐かれた

 

58:空の王者 ID:MH2nddosHr8

クッソ

 

59:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

これだから牙竜種は……

 

60:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あーハイハイ、イケメンは何やっても許されるってわけねハイハイ

 

61:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なお、鎧竜の人気ランキング

 

62:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!

 

63:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あっー!あっー!困りますお客様!熱線を吐かないでください!あっー!

 

64:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

強く生きろ……

再び話を戻すが、さすがに雨に打たれるのはよくないので今は奥の森のさらに奥の方で作った俺の巣で雨宿りしている

主人公ちゃんの名前は聞いてないが原作デフォならおそらくは「ショウ」

今は手持ちポケモンに事情を説明してるところ

 

手持ちポケモンは

ヒスイダイケンキ

ライチュウ

ゴウカザル

色ミミロップ

オヤブンロズレイド

オヤブンガブリアス

 

メンバーからしておそらく旅パと思われる

 

65:空の王者 ID:MH2nddosHr8

お持ち帰りぃ~!

 

66:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そういやちょっと空飛んでるときに見たわ俺

「誰かがオヤブンガブリアスと喧嘩してんなぁ~」って……あれ主人公だったんか

 

67:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ミミロップは色ちか

 

68:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ガブリアス手持ちは正解

アイツは強いからよほどのことがなければ生き残れそうだな

 

69:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……俺のボケ、スルーされたんだが

 

70:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ボケてる場合とちゃうで、焔

 

71:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

十五歳の少女がこの先生き残るための、割と真面目なターニングポイントだぞ

 

72:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

見殺すにせよ助けるにせよ、ここで一人の少女の心が死ぬようなことがあってはならん

 

73:空の王者 ID:MH2nddosHr8

スマヌ

正直、重い空気に耐えられんかった

 

74:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ユーモアは時には必要

古事記にもそう書かれてある

 

75:空の王者 ID:MH2nddosHr8

サンキュー、剣介

 

76:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

こちら現地

一応、俺のこともポケモンたちに説明してもらってるんだが……ダイケンキとガブリアスがガン飛ばしてきててめっちゃ怖いです

ミミロップとロズレイドとライチュウなんて完全に俺にビビってます

あとゴウカザルがそんな面子見て笑ってる

 

77:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ゴwwwウwwwカwwwザwwwルwww

 

78:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そのゴウカザルの性格絶対に「ようき」だろww

 

79:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

絵面が容易に想像できて草

 

80:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ポケモンがめちゃくちゃ警戒したりビビったりするあたり、やっぱ俺らはこの世界にとって完全にイレギュラーな生物なんやな

 

81:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そりゃ全長およそ20mの巨大狼が上から見下ろしてきたら警戒もビビりもするわ

この世界に出てくるポケモンの最大サイズでもハガネールの11mなのにそれ以上にデカいんだからな

でてこんやつでも20mのムゲンダイナでさえ金冠サイズの俺よりも小せえんだから

 

82:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ポケモン界以上に殺伐としてるからな、モンハン界は

なんなら人間とポケモンで殺し合いをしてるって言ってるようなもんだし

 

83:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

伝ポケも真っ青な古龍という名の天然自然災害生物

 

84:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それな

 

85:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんとかポケモンたちにも俺の存在を認めてもらえた

正直安心してる……後、自己紹介はちゃんとしてもらったよ

やっぱ名前はデフォだったわ

 

86:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

「ショウ」ちゃんか

 

87:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さて、次の問題に移ろう

 

88:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まだなんかあったっけ

 

89:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ある

ショウちゃんの心の向かう先だ

 

90:空の王者 ID:MH2nddosHr8

復讐させるべきか、否か……ってか?

 

91:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それは大事だ

 

92:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

今、ショウちゃんの心は葛藤している

デンボクをはじめとして、自身を体よく利用するだけ利用してあっさりとムラを追い出した連中が許せないという憎しみ

ただ、村の長として、組織の長としてのデンボクの判断は全てが間違いというわけではないということを理解しているからしょうがないという諦め

なまじ現代を生きていただけにどちらか一方の感情に寄ることができずに滅茶苦茶悩みまくってる←今ココ

 

93:空の王者 ID:MH2nddosHr8

既にギリギリすぎて草も生えん

 

94:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ここが正念場だな、そして分水嶺でもある

 

95:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

問:身寄りの無い15歳の少女の心が壊れない最善の選択を選べ

 

96:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

難問すぎてそれ一問ですべてが決まるんだが

 

97:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やっぱデンボク殺るわ

紅蓮の湿地からコトブキムラまで熱線って届くか?

 

98:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

落ち着け

復讐すれば気は晴れるだろうが、晴れるだけで、それだけだ

自分を見捨てた連中なんて放っておいて、とりあえず元の時代に帰ることを優先すべき

 

99:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

思春期のJCがやられたらやられっぱなしで済ますとは思えんが?

主人公よりポケモンの扱い上手い奴なんておらんのだから、目に物見せてからでもよくね?

 

100:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺は復讐肯定派だが、殺しはNGだゾ

それやったら最後、二度と後戻りできんくなるし、何より15歳の少女とその相棒たちに殺人の重みを背負わせたくない

そういうのはむしろ、俺らのような化け物の領分だろ

 

101:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なるべく早めに答えを頼む

ショウちゃん、今にも泣きそうな顔で俺の前脚に縋って

「どうすればいいの……?」

って見上げてきてるんだが

 

101:空の王者 ID:MH2nddosHr8

可愛い

 

102:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

可愛い

 

103:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

可愛い

 

104:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

可愛い定期

 

105:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お  ま  え  ら

 

106:空の王者 ID:MH2nddosHr8

割と真面目に答えを言うなら復讐はさせないならそれに越したことはない

 

107:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

JCにやらせることではない

 

108:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺も反対だ、ショウちゃんにやらせてはいけない

俺が殺る

 

109:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

デンボク絶対殺す鎧竜は置いといて、俺もそれだけはダメだと考える

ムラの人間達が優しかったのも間違いなく事実

見捨てるほど薄情な連中……と、それがすべてではないだろうからな

 

110:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

りょ

とりあえずその旨を伝えてみるわ

 

111:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おう、頑張れ

 

112:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

さて、ここからコトブキムラまで何日かかるかな

 

113:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お前、ショウちゃんが復讐を選ばなかったら絶対に殺るなよ?

 

114:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そこは本人の意思に従うわ

 

115:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

意外と冷静だな、例のイベントで一番ブチギレていたやつが

 

116:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あーほぅ、俺だってそこまで馬鹿じゃあねえ

一番復讐を望むべき人間が「復讐しない」って言ったなら、その感情に従うべきだろ

無視していい筈がねえ

 

117:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それはそう

 

118:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ただいま

 

119:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おかえり~

ちゃんと伝わったんか?

 

120:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんとかな

「今はやるべきことを優先すべき。君は何のために、誰のために今まで頑張って来た?他ならぬ自分自身の為だろう?」って言っといた

ニュアンスだけでなんか伝わったんだが

 

121:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ナイスゥ

 

122:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ショウちゃんは何て?

 

123:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

すっごいいい笑顔で「ありがとう」って言ってくれた

あーあ、お前らにも録画して見せてやりたかったわー!15歳の美少女の笑顔!!

 

124:空の王者 ID:MH2nddosHr8

お前を殺す

 

125:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ハイクを詠め、カイシャクしてやる

 

126:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

逆さ鱗に触れたのだ……相応の覚悟はできておろうな?

 

127:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

死にたいらしいな([∩∩])

 

128:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ゴメンて(´;ω;`)

 

 

 

 

 

499:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やっとダイケンキも寝付いたわ

 

500:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お疲れ様、そして夜番頑張れよ

 

501:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

前世じゃ貫徹一週間を達成した俺だ、モンハンモンスターになった今では隙は無い

 

502:空の王者 ID:MH2nddosHr8

所でどうすんのお前?

どこまでショウちゃんに付き合うん?

 

503:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

乗り掛かった舟だしなぁ……

正直、ショウちゃんのポケモンになってもええかなって思ってる

 

504:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

完全に信頼されてたもんな

今だって尻尾の上で寝てるし

 

505:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それはそうなんだが、ここまで信頼されると逆に言えばそれだけショウちゃんの心もギリギリだったんだなって思うわ

まだ15歳だもんなぁ……

 

506:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

所で原作はどうする?

ウォロのやつ、今頃ショウちゃんを探してあちこち駆けずり回ってると思うが

 

507:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それは中々に滑稽な絵面w

 

508:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

一度助けると決めた以上、最後まで貫くしかないだろ

というか、光輝がここまで懐かれるのはこっちとしても完全に想定外だわ

これ、人間不信に陥ってたりせんよな?

 

509:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そこは俺もマジで思った

彼女らに配慮してちょっと巣を出ようとしたら目が完全に「行かないで……」って訴えてたからな

未知の生物相手にここまでとなるともう……

 

510:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そりゃあ、まだまだ子供だからな

今は光輝が心の拠り所になるほかない

 

511:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そういうことで、俺はショウちゃんの仲間入り不可避です

そっちはどうする?

 

512:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺は仲間になろう

とりあえず紅蓮の湿地に来てくれ

 

513:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

りょ

流静は?

 

514:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺は……とりあえず、ショウちゃん自身の気持ちを知りたい

本人の口から直接、だ

 

515:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

わかった、そっちにも会いに行くわ

焔、どうする?

 

516:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ただ同情心で仲間になるのは、なんか違う気がする

仲間になってもいいが……俺はちょっとやり方を考えるわ

 

517:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

焔に同じく

「可哀想だから仲間になろう」というのは、ショウちゃんに失礼な気がするし

まあ、要するに哀れみだけで助けたくないんだよな、なんかスマン

 

518:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

気にすんな

前向きな答えがもらえただけでもありがたい

とりあえず、原作順に会いに行くからそのつもりでいてくれ

 

519:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

じゃあ、最初は俺か

 

520:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

その次が俺

 

521:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

次が焔で……

 

522:空の王者 ID:MH2nddosHr8

最後が剣介だな

 

523:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺がトリね。

 

524:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それじゃ、今日は解散ってことで

 

525:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

 

526:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

乙、夜番頑張れよ

 

527:空の王者 ID:MH2nddosHr8

乙~

 

528:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

 

529:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あい、乙で~す

 

 

 

 




とりあえず、設定をば、(。・ω・)σ ⌒*

モンハンモンスター
命名は光輝。由来は原作の「ポケットモンスター」の響きに合わせようとして。
いずれも最大金冠サイズとなっている。「ポケモンの技(P技)」の他にも「モンハンの技(M技)」を使うこともできるが疲労度が半端なく、使い続けるとすぐにバテてしまう。
P技に限り、別属性(タイプ)の技が使える。
ポケモン世界の人間から見たモンハンモンスターの印象は「禍々しく恐ろしい怪物」。


ジンオウガ 高さ:19.25m
黒曜の原野に転生した元高校生「稲妻 光輝(いなづま こうき)」。生息地は奥の森。
転生後はなるべく原作とかかわらないように奥の森のさらに奥まった場所で隠れ潜んでいた。しかし空の色が変わり「主人公が追放される」場面になると、主人公が闇落ちする二次創作に影響されてか主人公を助けてしまう。
その後は主人公のポケモン(ポケモンではない)となり、時空の裂け目の問題を解決するべく他の転生者たちの下を訪ねて回ることとなる。
ポケモン世界に雷光虫がいないためか、十分な発電機能が体内に備わっている。主食はガーグァにそっくりなコダック。


グラビモス 高さ:26.23m
紅蓮の湿地に転生した元高校生「岩木 剛太 (いわき ごうた)」。生息地は深紅沼。
他のポケモンたちと仲良くしようと考えてはいるものの、当初はその巨体と威圧感で周囲のポケモンが悉く逃げて行くせいで深紅沼からポケモンがいなくなるという事態に。現在はグレッグル、スカンプーと共生関係にある。主食が鉱物なので、もっぱらいわタイプ・はがねタイプのポケモンを襲っては食べている。
擬態能力を用いて時折やってくる調査団の目を掻い潜り深紅沼に居座っていたが、ジンオウガ(光輝)から「主人公保護」の報を受けて合流を決意した。


ラギアクルス 高さ:33.10m
群青の海岸に転生した元高校生「水橋 流静 (みずはし りゅうせい)」。生息地は静かな内海。
静かな内海を中心に群青の海岸の広い海を常に移動し続けている。本人曰く「泳ぎの練習」。途中で遭遇したポケモンは襲ってこない限り無視するが、襲ってきた場合は容赦なくムシャムシャしている。最近はギャラドスと激しい縄張り争いをしているらしい。
いつも通り歯向かってきたギャラドスを迎撃してムシャムシャしていたところ、ジンオウガ(光輝)から「主人公保護」の報を受け、主人公と問答をするべく連れてくるように伝えた。


リオレウス 高さ:21.30m
天冠の山麓に転生した元高校生「赤羽 焔 (あかばね ほむら)」。生息地はカミナギ寺院跡。
当初は転生したことに戸惑ったり死んだ事実に怒ったりしていたが、すぐに順応した。リングマ、レントラー、オドシシなどを狩って生活している。事実上、天冠の山麓のヌシとして君臨している。
本格的にワールドツアーでもしようかと考えていたところジンオウガ(光輝)から「主人公保護」の報を受け、条件付きで仲間になることを決めた。


ベリオロス 高さ:26.13m
純白の凍土に転生した元高校生「氷室 剣介 (ひむろ けんすけ)」。生息地は極寒の荒地。
転生してすぐに食生活について考えたり、身の振り方を考えたりなど、転生者たちの中でも特に順応性が高い……が、荒ぶりやすさも転生者一。極寒の荒地を中心に広範囲に移動して狩りをしている。ミミロップやイノムー、ビーダルなどを主食としている。
ヒスイニューラと縄張り争いをしている最中にジンオウガ(光輝)から「主人公保護」の報を受け、条件付きで仲間になることを決めた。


ショウ
「ポケットモンスターLEGENDS アルセウス」の主人公(女)。
時空の裂け目から落ちてきた現代人(異世界)。身元不明の怪しい人物という疑いを晴らすべく、ギンガ団団長のデンボクの指示に従い馬車馬の如く働いていた。ところが時空の裂け目に変化が起こり空の色が変わるという異常が発生すると、難癖をつけられて悪党扱いされた挙句村を追いだされてしまった。
傷心のまま雨降りの蹄鉄ヶ原を彷徨っていたところ、ジンオウガ(光輝)と遭遇。見たことも聞いたこともない未確認生物である彼の優しさに触れているうちに心を癒され、奥の森にあるジンオウガの巣まで同行した。
元居た世界で親の手伝いをしていたこともあって家事はある程度できる。




こんなところでしょうか。まぁ、続き書かないんでこんなものでいいでしょう。
それでは皆様、ここまで読んでいただきありがとうございました。ノシ


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其の邂逅(であい)は霹靂と共に

書いてしまったぞ、どうしてくれる。
こちらはショウちゃん視点となります。


「ギンガ団を退団してもらう」

 

その一言に、私の頭の中は真っ白になった。

アルセウスを名乗る何者かによって、着の身着のままこのヒスイ地方に飛ばされた私は、コトブキムラの人達に拾われた。

知ってる人が誰もいない中、私はムラの人の信頼を得ようと必死になって働いた。死に掛けたことだって数えきれないほどある。……なのに、ムラのみんなはあっさりと私を見捨てた。

 

信頼を得るために、皆の頼みだって嫌な顔一つしないで請け負った。依頼だってどんなに困難だろうと、一生懸命にやってきた。なのに、なのに……その結末が、こんなのって……そんなの、あんまりだよ……。

荒ぶるキングを鎮めてこいと命令したデンボク団長に至っては、鎮めた結果時空の裂け目が悪化したことをすべて私のせいだと決めつけてきた。

「お前の実力は認めているから身の潔白を証明するための調査の機会を与える」……と、体のいい言葉を使っているけど、15の娘をムラの外に放り出して一人で調査しろだなんて……それってつまり、「死ね」ってことでしょ?

直接手を下すのは後味が悪いからなのか……どちらにしても、良い意味ではないのは間違いないだろう。

 

セキさんとカイさんは団長を宥めようとしていたけれど……二人にもそれぞれの団長としての責任があるからか、それ以上は何もできず。また、私を受け入れることさえできなかった。

博士やテル先輩は団長に抗議すると息巻いていたけど、さすがにそれは二人に迷惑を被ってしまうので私とシマボシ隊長で止めておいた。

シマボシ隊長も、門までで良かったのにわざわざ原野ベースまで同行してくれて、しかも絶対死なずに問題を解決して帰って来いと激励までしてくれた。調査のための便宜も図ってもらった……何から何まで、頭の上がらない素晴らしい隊長だ。

 

そうして私は三人に見送られ、一人で削り橋の上に立っていた。時空の裂け目から落ちてきてから、今に至るまで……本当に、目まぐるしい日々を送っていた。思い出すのは忙しくも充実した日々……嬉しい悲鳴という言葉の意味がよく分かる、そんな毎日。

 

先が見通せないこれからのことに不安を抱いていると、野生のコリンクが声をかけてきた。

「何してるの?」と言いたげな純粋な目に、私はほんの少しだけ心が癒された。そのコリンクは、すぐに仲間のルクシオたちと共に去って行ってしまったけど。

 

「……頑張ろう」

 

先のことなんてわからない。

どうすればいいのかわからない。

何をすればいいのかわからない。わからないことだらけで、この場に突っ立ったまま一日が過ぎてしまいそうだ。

……ともかく、ここにはもういられない。あまりじっとしていると、野生ポケモンに襲われる可能性がある。私はすぐさま移動を始めた。一先ずは雨風を凌げるような、隠れられる場所を探そう。

 

「絶対に、負けない」

 

決意を胸に、私は歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

何とか、一日は乗り越えた。

ただ、この一日を乗り越えるのに随分と神経がすり減ったように思える。

どこに行ってもポケモンだらけで、少なくとも調査のおかげですぐに襲ってくるポケモンとそうでないポケモンの区別はついていたから、その知識を頼りに野宿できる場所を探した。ただ、やはりポケモンたちにもそれぞれのテリトリーがあるわけで、私が何もしてこないとみるや否や、大人しい筈のポケモンたちでさえ私をテリトリーから追い出そうと襲い掛かってきた。

そうして一日中、黒曜の原野を駆けずり回った。ポケモンたちにも見張りを頼み、休める時に休んで英気を養う。……あまり養えた気はしなかったが。

 

そして、私は一日を生き延びた。でも、だけど。

たかが一日、されど一日……その一日で、私の心は散々に打ちのめされた。帰る場所がある事のありがたみと、それを奪われた怒りが心を満たしてくる。

今、私は蹄鉄ヶ原にいる。オヤブンギャロップが縄張りとしている場所に生えている、きのみが狙いだ。空は赤いままだが、今は曇天が広がっているのでその赤は見えない。多分、この様子だと雨が降るはず。雨が降ればポニータやギャロップは姿を消すので、それまで待つことにした。

 

「…………」

 

岩にもたれかかり、脚を抱えて座り込む。小山座りと呼ばれる座り方だ。そのまま雨が降るまでじっとする。万が一にもバレないように、息を殺して身を潜ませる。

ぐぅ、とお腹が鳴った。私は咄嗟に周りを見渡し、気づかれていないか確認する。よかった、バレてないみたい。

 

「はぁ……」

 

憂鬱な気持ちをため息にして吐き出す。ため息を吐くと幸せが逃げるとは言うが、この状況ではため息の一つでも吐かないとやってられないのである。

 

「……どうして」

 

どうしてこんなことになってしまったんだろう。昨日からずっと呟き続けてきた、私の気持ち。

もう何度目かなんてわからない、たった一日で随分と同じことを言い続けてきた気がする。

 

「こんなはずじゃ、なかったのにな……」

 

何が悪かったんだろう?私がもっとムラに貢献すればよかった?

何がいけなかったんだろう?私が時空の裂け目から落ちてきたから?

何が足りなかったんだろう?言われたこと、何一つ過不足なく果たしてきたのに?

 

「……うっ、くっ……。ひっく、えぐっ……うぐっ……」

 

辛い。憎い。悲しい。許せない。苦しい。怖い。

様々な負の感情が私の頭をグルグル回る。涙が溢れて止まらない。あれだけ覚悟して、決意したと思ったのに……存外、私はただの15歳の小娘に過ぎないらしい。何もかもが足りなかった、決意も覚悟も。

この広大な世界で、ポツンと一人ぼっちになってしまった。行く当ても頼れる人もいない、この世界で。

雨が、降ってきた。まるで、私の気持ちを表すかのように。ギャロップもいなくなるだろうけど、私は動くことすらできなかった。どうやら……私の心は、折れてしまったらしい。

 

「寒い……」

 

雨に濡れた体から、体温が奪われていく。冷たくなっていく感覚に、私は死を予感した。

……死ねば、元の世界に帰れるのかな?実は今までのは全部夢で、ここで寝て覚めたら、全てが元通りになったりしてないかな?

 

「……帰りたい……。お母さん……お父さん……会いたいよぉ……」

 

誰か。

 

「だれか……」

 

だれか……。

 

「たすけて……」

 

そう呟いた、その直後だった。

 

 

 

 

ドガアァァンッ!!!!!

 

 

 

 

一瞬、目の前が真っ白になったかと思うと同時に、すぐ背後で爆音が響いた。落雷したのかもしれない。私は状況を確認しようと立ち上がろうとして……すぐにその動きを止めた。

 

ズシンッ。

 

足音。それも、かなり大きい。この足音は明らかに蹄ではないから、オヤブンギャロップではない。その足音が、徐々にこちらに近づいてくる。そして……

 

「グウゥゥゥ……」

 

「……ッ!!」

 

ソレ(・・)は、姿を現した。

胴体部を覆う青緑の鱗。

頭部や背面、腕部などに立ち並ぶ黄色の甲殻。

そして腹部や首回りなどを中心に生え揃った白色の体毛。

頭の二本角に、団長の体程はありそうなほどに太い前脚。

あらゆるものを切り裂いてしまいそうな鋭利な爪。

何よりも、ハガネールは優に超えるであろう、その巨大な体躯。

そんな見たことも聞いたこともないポケモンが、岩陰からのっそりと姿を現した。

 

「あ……」

 

どうやらここにきて、腰を抜かしてしまったらしい。私の体は動かなくなってしまった。

謎のポケモンは、オヤブンギャロップの首を口に咥えている。ギャロップは絶命しているのか、炎の鬣は消え失せ、ぐったりとしていた。

 

「グルゥ……」

 

そのポケモンは私に気付いたようで、実に緩慢とした動きでこちらへと首を回した。蒼い瞳と目が合う。

しばらくこちらを見つめた後、ポケモンは首を一振り回し、咥えていたオヤブンギャロップを川へと投げ捨ててしまった。そしてゆっくりとした動作で私の正面へと回り込んできた。

 

……死。私の脳裏にそんな言葉がよぎるとともに、心内には諦めにも似た感情が沸き上がる。

おそらく、私はこのポケモンに食われて死ぬ。相棒のポケモンたちを繰り出すよりも、おそらく目の前のポケモンの方が速い。だから、せめてみんなを巻き込まないようにそっと腰からモンスターボールを外す。よかった、バレていない。

 

そして、私は迫り来るであろう死を覚悟して、膝を抱えてそこに顔を埋めた。死の瞬間を見続けられるほど、私の心は強くないから。

 

「……?」

 

しばらく待ち続けるも、一向にその瞬間が来ない。私がそっと顔を上げると……なんと、謎のポケモンはお座りのような姿勢で私をじっと見つめていたのだった。

この時、初めてこのポケモンの尻尾も見たが、こちらも長く太い。棘状の突起が多いから、振り回すだけで脅威だろう。

何でこのポケモンは、何もしてこないんだろう。ギャロップを咥えていたから、肉食系のポケモンだと思ったのに……それに、あの目は……。

 

「(どうして……そんなにも優しい目で、私を見るの……?)」

 

まるで、幼子を見るような……悲しそうで、優しそうな目で、私を見ていた。

どうして、このポケモンが私をそんな目で見るのかはわからない……だけど……。

 

「……ねえ……」

 

「……?」

 

「……聞いて、くれる……?」

 

「……(コクン)」

 

「ありがとう……」

 

気が付いたら、私は目の前のポケモン……彼に、これまでのいきさつをすべて話していた。

時空の裂け目から落ちてきたこと。

コトブキムラに拾われたこと。

ムラの人たちの信頼を勝ち取るために頑張ってきたこと。

その結果、時空の裂け目に変化が起きたこと。

その原因が私にあるんじゃないかと疑われ、追い出されたこと。

全部、全部、話してしまった。目の前の、何者かもわからない謎のポケモンに。

 

「私、わたし……頑張ったんだよ?頑張って、頑張って……がんば、って、きたんだけどなぁ……」

 

「……クゥーン……」

 

そうして私が再び涙を流すと、彼はそっと顔を近づけて頬ずりをしてきた。

これって、もしかして……。

 

「……慰めて、くれるの……?」

 

「ウオオォーン……」

 

そう尋ねれば、そうだと言わんばかりに遠吠えをする彼。初めて出会うはずの未知のポケモンが、私のことを思いやり、心配すらしてくれている。

 

「……ハハッ……」

 

人間に捨てられた私が、今度はポケモンに助けられるなんて……。

 

「ありがとう……」

 

「…………」

 

彼はさらに姿勢を低くするように座り込むと、尻尾をこちらに差し出してきた。さらに彼は首の動きで自身の背中を示している。

 

「……もしかして、乗れってこと?」

 

「……(コクン)」

 

「……!!」

 

相変わらず、その目は優しさを湛えている。私も小さく頷くと、一度外したモンスターボールを再び腰に装着して、尻尾から乗ってそのまま背中まで一気に登った。かなりの高さがあるから、意外と眺めが良かった。

 

ウオオォォォーーーンッ!!

 

「きゃっ!」

 

彼は大きく鳴くと同時に、一気に駆けだした。

アヤシシにライドしている時とは全然違う!アヤシシが跳ねるように駆けるなら、彼は力強く踏み込み駆ける。多分だけど、彼の太い前脚だからこそこれだけの力が発揮できるんだと思う。

 

川だって簡単に跳び越えて、崖だって一度のジャンプで簡単に越えてしまった。その度に上下に揺さぶられる私だけど、彼も気を遣ってくれているのか、飛んだり跳ねたりするたびに首を動かしてこちらへと視線を投げかけてくれた。その度に大丈夫だと知らせるように、彼の背中を何度も撫でた。

それと、彼に乗っている間はとても不思議だった。道行く先にいるポケモンたちが、我先にと逃げて行ったのである。私が乗っているこのポケモンのことを、とても恐れているようだった。

 

そうしてシシの高台も越えて行って、奥の森に辿り着いた。巨木の戦場を通り過ぎて、奥の森のさらに奥へと向かって行く彼。やがて彼の体がすっぽり入ってしまいそうな、大きな穴へとたどり着いた。そのまま穴の中へとゆっくりと入っていく。

どうやらここが、彼の住処らしい。ゆっくりと座り込むと、尻尾を滑り台のようにしてくれた。彼に感謝しながら、私は彼の背中から降りた。

 

改めて、彼の姿をよく見てみる。どことなくライボルトのような印象を抱きそうだけど……もしかして、ライボルトのリージョンフォームなのかな?それにしてはライボルトの姿からあまりにもかけ離れすぎだけど。

走っている時、足元を電撃が走っていたから多分だけどでんきタイプ。でも、それ以外のことはまだわからない。もっと調査しないと……って、あぁ、ダメだなぁ。

すっかりギンガ団としての職業病が染みついちゃってる。けど、それとは別に彼のことは純粋に気になっている。一体どんなポケモンなんだろう。

 

「……っと、そうだった」

 

今の状況をポケモンたちに説明しないと。私は手持ちのポケモンたちを外に出し、この状況を説明することにした。した……の、だけど……。

 

「「「!?!?!?!?」」」((((;゚Д゚)))))))ガクブルガクブル

 

「「グルルルル……!!」」

 

「ウキャキャキャキャッ!!」((*´゚∀゚`*))wwww

 

全員を外に出した途端、彼を見た反応は様々だった。

ミミロップとロズレイドとライチュウはお互いに身を寄せ合って彼に対して怯えているし、ダイケンキとガブリアスは彼を見るなり威嚇し始めてしまった。ゴウカザルに至ってはそんな皆を見て笑ってるし……。

 

「…………」

 

そして彼は彼で、なんかすごく微妙な表情で私の手持ちを見ていた。

 

「もうっ!みんな、彼は敵じゃないわ!雨に降られたところを助けてくれたんだから、そんな反応しないの!」

 

「「「「「…………」」」」」(・ω・`)

 

「ウキャキャキャキャッ!!ギャッハハハハハ!!」

(。 ノ∀<)σwwwwwwww

 

「ゴウカザルッ!いつまでも笑っていないの!!」

 

それにしてもゴウカザルは笑いすぎよ!何がそんなに面白いのよ……。

 

「クックッ……」

 

「……!」

 

挙句、彼にまで笑われてしまう始末……うぅ、凄く恥ずかしい……。

とにかく、必死に彼が敵ではないことと、彼を怖がったりしてはいけないことをしっかりと説明した。ダイケンキとガブリアスは未だ警戒状態だけど、他のみんなは私の言葉に一先ず納得してくれたのか頷いてくれた。

あっ、そうだ。

 

「私、ショウ。これからよろしくね」

 

「ガウ」

 

挨拶は大事だ、それを忘れるなんて……まして相手は恩人ならぬ恩ポケモンなのに。

……さて、これから先はどうしよう。

私としては勝手な都合でこちらを利用するだけ利用して、あっさりと捨てたムラのみんなやデンボク団長のことが憎いという思い。

そして村の長としてギンガ団の団長として、それら全部を守らなければならないという団長の想いもわからなくはないからしょうがないという思いの、二つの思いに揺れている。

組織とは、社会とはそういうものだ。まして、上に立つ者ならば下々にいる人たちのことを考え、守るための行動をとらなければならない。現代を生きてきた者として、そういった社会的な問題は理解できる。けど……理解はできても、感情が従ってくれない。

 

どうすればいい?復讐をするべきなの?それとも目の前の事態を解決するべき?

不安になった私は、思わず彼を見上げてしまう。私の視線に気づいたからか、彼は「どうした?」と言いたげに私の方へと顔を向けてくれた。それだけで安心感を覚えた私は、そのまま彼の前脚に縋りついた。

 

「ねえ……どうすればいいのかな?」

 

「……?」

 

「私、自分を追い出した人たちが許せない。でも、彼らが私を追い出す理由も理解できるの。

だけど……理解できても、納得できない。許せないって思うし、しょうがないとも思う。

ねえ……私、どうすればいいの?わからないよ……」

 

しばらく彼の目を見つめ続ける。彼は変わらず優しい眼差しを私に向けてくれる。しばらく考え込むように目を細めた彼は、唐突に外へ向けて歩き出した。

 

「あっ……」

 

私も慌てて後を追う。手持ちを代表してなのか、ダイケンキもついて来てくれた。

外に出た彼は、ある一点へと目を向けていた。同じ場所へ目を向けると、その先には時空の裂け目が。

 

「グルル」

 

「え?」

 

彼の方へ振り向くと、彼は器用に指を丸めて私の胸へとそっと押し付けてきた。それからダイケンキの方にも視線を向けてから、再び時空の裂け目へと目を向ける。

 

「私と、ダイケンキと、時空の裂け目……?」

 

あの時空の裂け目は、私にとって始まりも同然の場所。ダイケンキとだって、ミジュマルだった頃に落ちてきた場所で……始まりの浜で出会った。私にとっての、全ての始まり……って、あれ?

 

私、最初はどんな気持ちで、あの場所にいたんだっけ……?

 

「…………」

 

「……?」

 

気付けば彼は、今度は巣穴の方へと目を向けていた。

彼にとっての住処……彼にとってここは、いつでも帰ってこられる場所……あ!

 

「そうだ、私……!」

 

元の世界に、帰りたい。お母さんと、お父さんに、会いたい……!

 

「帰りたいんだ……私の、家に……!」

 

アルセウスは言っていた。全てのポケモンに出会え、と。

そして、その後にまた会おう、と。だから、私は……!

どうして忘れていたんだろう。私にとっての原初の願い、元の世界への帰還。とても大切な願いだったのに……!

 

「(それだけ余裕がなかった……ってことかな。まぁ、そんなこと考える暇もないほどに忙しかったし……)」

 

けれど、今……はっきりと思い出した。村の信頼を得るためだとか、困っているコンゴウ団やシンジュ団を助けるだとかあったけど、一番根っこにある感情――帰巣本能と言ってもいい――こそが、私にとって一番重要だったんだ。彼は、それを思い出させてくれたんだ。

結局のところ……私は徹頭徹尾、自分自身のために頑張ってきたんだ。そう考えると、急に肩の力が抜けていった。何というか、気が楽になった。

 

「(そうだよね……私は、私自身のために頑張ればいい。その結果、この状況が良くなればそれでよし。そうでなくとも、元の世界に帰る私には関係の無い話ね)」

 

頭の中がスッキリしていく。「きりばらい」の技を使ったような気分だ。

 

「ありがとう」

 

「……!」

 

なんだか、久々に笑ったような気がする。見れば彼も、わかりやすく笑みを浮かべていた。ダイケンキも安心したように微笑んでいる。どうやら手持ちのみんなにも心配かけていたみたい。後で謝って、そしてお礼を言おう。

 

再び巣穴に戻る。この時、彼が一時的に席を外したけど、ものの数分で戻ってきた。……ボロボロになったオドシシを咥えたまま。そのままオドシシを放ると、器用に前脚でオドシシの解剖を始めた。私でも一口で食べられるようなサイズにまで肉片を小さくすると、それを私に差し出した。

 

「……食べろ、ってこと?」

 

「……(コクン)」

 

「……ゴウカザル、火をお願い」

 

「ウキャ」

 

ポケモンを食べる、というのは中々にない経験だ。食用のポケモンはいるとは聞いていたが、ポケモンが常に隣にいる環境が当たり前だった私にとって、ポケモンは食べ物だ、などと考えたことはない。けれど、生きるためにはポケモンですら食す必要がある……彼はそれを教えようとしているのだろうか。

私はゴウカザルに頼んで火を起こしてもらった。彼が小さくしたオドシシの肉を必要な分だけ木の棒に突き刺して、火に晒す。ポケモンたちは事前に集めた木の実を食べていたが、彼は私が食べなかった分のオドシシの肉の余りを容赦なくバリボリと食べていた。

ポケモン同士の間では食物連鎖が成立するというのは話には聞いていたけど……こうして現実を目の当たりにすると、中々にショッキングな映像だ。

 

血のにおいが充満しないようにと、わざわざ外で食べてもらったことに感謝しながら、私も空っぽの胃の中に食べ物を放り込む。さすが食欲は人類の三大欲求の一つに数えられるだけあって、お腹が満たされると自然と気持ちも落ち着いた。みんなでお腹を満たした後、彼が戻ってきたのを確認してから寝る準備に入る。

 

すると、彼は何を思ったのか巣穴から出て行こうとした。また、見捨てられるかもしれない……そんな風に思いつつも、けれどここは彼の巣穴だからどこへ行こうとも彼の自由なのだと、自分を納得させるような考えがいくつも浮かぶ。けど……。

 

「…………」

 

「……ガウ」

 

じっと彼を見つめていると、私の不安を感じ取ってくれたのか、彼が戻ってきてくれた。そのことに感謝と申し訳なさを感じながら、私は何とか寝る態勢に入る。

 

「…………」

 

ふと、彼の尻尾が目についた。私の体よりも広い幅を持つ、大きな尻尾。

 

「ねえ」

 

「?」

 

「その……尻尾の上、で……寝て、いい?」

 

「!?」

 

我ながら、なんて変なことを聞いてるんだろう……。彼の方からも驚きが表情から伝わってくる。けど、しばらくして尻尾をこちらに差し出してくれたことから、大丈夫、ということだろう。

 

「……おやすみなさい」

 

「ガウ」

 

予想通り、彼の尻尾はかなり幅広く、私が横になってもわずかに余裕がある。尻尾は真ん中に左右を分けるように棘が生えているけど、それを避けて寝ても問題はなかった。

 

次第に睡魔が襲ってくる。こんなにも安心感に包まれて眠れるなんて、ムラの中にいてもそうなかったのに……なんだか……ふしぎ、だ……なぁ……。

 

 

 




と、いうことでショウちゃん視点でした。
多機能フォームとやらを使ってみたはいいものの……上手いこと使えてますかね?自分ではわかりかねます。
それでは、このへんで……ありがとうございました。ノシ


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【原作改変の】我らモンハン部異世界支部【朝が来た!】

お気に入り……400突破……!?
信じられん……ありえるのか、こんなことが……?
でもそれだけ見てくれているということなので素直にありがとうございます!


1:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おはっすー

スレという名の脳内会話、はっじまっるよ~

 

2:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おはぉ~……あ"ぁ"、ねみぃ……

 

3:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おはよう。そっちは眠れたか?

 

4:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おかげさまで

ショウちゃんは快眠だったご様子

俺はというと若干寝不足

 

5:空の王者 ID:MH2nddosHr8

女の子の安眠を守ったんだ、名誉の寝不足だな

 

6:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

名誉の寝不足か……いや、称号としては微妙だな

 

7:空の王者 ID:MH2nddosHr8

報酬は美少女の笑顔

 

8:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いやー、マジで羨ましいわー!

 

9:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

必死すぎワロタww

……あ、ウリムー

 

10:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

今日の予定を確認すっぞー

 

メインクエスト:紅蓮の湿地に向かい、剛太と合流する

 

サブクエスト:可能な限りの情報収集(主にウォロ関連)

 

11:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あのアルセウスガチ勢、今頃どこで何してるやら

 

12:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そりゃあ、ショウちゃんを探してるんでしょーよ

ショウちゃんがプレート持ってるんだから

 

13:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ゲームではどこからともなく現れるくせして、こういうときに限って出遅れやがってよォ

そんなんだから光輝に先を越されるんだろうがよ

というか、主人公の闇落ちの原因って大半が

1.ムラ追放

2.ウォロに会えなかった

なんよな

二次創作の中のウォロって何やってんだよ

 

14:空の王者 ID:MH2nddosHr8

プレート探し

 

15:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

的確過ぎて草

 

16:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そこはプレート持ってる主人公を助けろよ……

 

17:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おー、よちよちウリムーちゃんかぁいいねぇ

お鼻ムズムズなの?お鼻ムズムズ?

かぁいいねぇかぁいいねぇおーよちよtいただきまーす

あーむあむあむあむあむあむあむあむ

 

18:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ジュンサーさんこいつサイコパスです

 

19:空の王者 ID:MH2nddosHr8

やめーや、本気でゾッとする

 

20:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ごちそーさん……っと、そういえば流静は?

あいつ、まだ寝てんの?

 

21:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そういえばまだ一言もコメ来てねぇわ

寝てんのかもね

 

22:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

死ぬほど疲れてるんだろ

 

23:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それもう死んでるやつww

 

24:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

朝飯終わったー

これから紅蓮の湿地に移動するわ

 

25:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おーう、待ってるぜー

 

26:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

移動開始

しばらく落ちるわ、大体四、五日くらい

 

27:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

道中、気を付けてな

 

28:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はいよ

 

 

――「無双の狩人」が退室しました――

 

 

29:空の王者 ID:MH2nddosHr8

さて、一人抜けたか……しばらくどうする?

俺は当然、狩りに向かうが

 

30:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺も行くわ

ウリムー一匹じゃあ腹の足しにもならん

 

31:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

というか、流静がここまで寝過ごすとは本当に珍しいな

……いや、マジで生きてる?

 

32:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、生きとるわ

勝手に殺すn――ぎゃあっ!?

 

33:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あっ、死んだ

 

34:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

だから死んでねーわ!

びっくりしたびっくりした、いやほんとびっくりした

 

35:空の王者 ID:MH2nddosHr8

何があったん?

 

36:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いやあのね、久々に陸で寝てたのよね

そして、それ忘れてて海ん中だと思って

泳ごうとしたら

動かないから

アレッって思って

ここどこだっけ

目ぇ開けちゃって

もうガラナさん

 

37:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

寝起きに美人ドッキリですねわかりますが納得いかん

 

38:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そうそう、目の前にガラナさんがいて死ぬほどびっくりした

危うく咆哮で吹っ飛ばすとこだったわ

 

39:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それはマジでアブねぇやつやん

というか、ずっとつけられてたんか

 

40:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

視線はずっと感じてたからな

近づかれたら離れるようにしてたんだが、まさか寝こみまで張られているとは思わなんだわ

完っ全に油断し――っと、あぶね

 

41:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ん?どした?

 

42:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、ガラナさんの向こうにギャラドスが見えて、それが「はかいこうせん」ぶっ放してきたからガラナさんを庇っただけやで

とりあえず仕返しの雷ブレス……もってけやぁ!!

……ふぅ、1HIT、1KILL

 

43:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ビューティフォー……

 

44:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

とりあえず、今朝のご飯は確保っと

それじゃあガラナさん、さよーならー……あ

 

45:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おいおい、まだ何かあるのか?

 

46:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや……さっきの一撃で鱗の一部が剥げたっぽい

ちらっと振り返ったら古い鱗が剥げてて、それをガラナさんに拾われてた

 

47:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それはモッチャモッチャ……研究案件モッチャモッチャ……では……?

 

48:空の王者 ID:MH2nddosHr8

食べるか喋るかどっちかにしろ

……と言うか、脳内会話にまで咀嚼音を出すな

 

49:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

悪い悪い、脂ののった活きの良いビーダルがいたもので

 

50:空の王者 ID:MH2nddosHr8

飯テロやめろォ!……くっそ、俺も腹減って来た

そういうわけで……突撃!リングマ!お前が俺の朝ごはん!!

 

51:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺もゴローンを探しにゴロゴロ坂にでも行ってくるかね

うーむ……最低でも四日は待つのか……長いなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

134:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なあ、突然なんだが

 

135:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

本当に突然だな、どうした?

 

136:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、みんなって現地のキャプテン及び所属団体の人達とどう接してんのかなって

 

137:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

逃げてるが?

 

138:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

擬態してやり過ごしてる

 

139:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ハマレンゲニキと喧嘩したりワサビちゃんと遊んでる

 

140:空の王者 ID:MH2nddosHr8

剣介ェ……

 

141:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

一人だけ自由すぎんか?

 

142:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

自重しろバカタレ

 

143:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

流静にだけは言われたくねぇわ!

ハマレンゲニキは俺を見るなり嬉々としてポケモン嗾けてくるし

なんならワサビちゃんとは初見で仲良くなれたからな

 

144:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

千里眼持ってるって言うし、お前がいい奴って未来でも見えたんじゃね?

 

145:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

かもなぁ

「今度お友達も紹介してよ!」って言われたし

 

146:空の王者 ID:MH2nddosHr8

未来予知だけで認知されてるんだが

 

147:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お前はどうしてんだよ焔

 

148:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺ぇ?

いやぁ……ハハッ

 

149:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

誤魔化してねぇで喋れや

 

150:空の王者 ID:MH2nddosHr8

キングをぼっこぼこにしたのをキャプテンにめっちゃ根に持たれてる

 

151:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それは大分前に終わった話だろ?

なに?まだ因縁つけられてるのか?

 

151:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あぁ、その話か

それってたしか、焔が空飛んでるときに荒ぶるキングの電撃の流れ弾を食らってイラッとした焔が仕返しにフルボッコにした話だよな?

 

152:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そうそう上空から不意打ちかましてさ

毒爪喰らわせて尻尾で吹っ飛ばした後に追撃の火炎ブレスの三連コンボ

 

153:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

普通にオーバーキルなんだよなぁ……

 

154:空の王者 ID:MH2nddosHr8

流石にキングが相手だから、原形が残らないほどの全力は出してないがな

 

155:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だが、そのせいで一部のコンゴウ団員からのヘイトがMAXに、と

 

156:空の王者 ID:MH2nddosHr8

やりすぎた感は否めないから謝る

何ならもう鎮められてるんだから許してヒヤシンス

 

157:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

というか、焔……と言うより、リオレウスってやっぱり電気に弱いんだな

 

158:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……ん?焔ってたしかタイプは「ほのお・ドラゴン」だったよな?

 

159:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そうなんだがなぁ……どうやらモンハンの肉質設定もタイプ相性に影響してるらしいんよ

リオレウスはポケモンとしては「ほのお・ドラゴン」なんだが……モンハンの肉質の関係上、雷属性に弱いからでんきタイプが事実上等倍なんだよ

 

160:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そして龍属性……つまりドラゴンタイプは四倍と

 

161:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そうそう

原作モンハンの肉質表の数値が20未満の属性は半減、20以上の属性は二倍って扱いになるらしい

数値0はおそらく「こうかがないようだ……」だと思う

 

実際に喰らったことのある俺が保証する

 

162:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

じゃあ俺は「でんき・ドラゴン」にラギアの肉質をプラスして……

 

四倍:なし

二倍:じめん、フェアリー

半減:くさ、ひこう、はがね

効果なし:でんき、みず

等倍:上記以外全部

……って感じか

 

163:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おぉ、タイプ相性だと不利なこおりとドラゴンが等倍で受けられるとは

 

164:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ただ、本来は半減になるはずのほのおタイプが等倍になるんよ

 

165:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺はどうなる……?

えっと、キュレムと同じ「こおり・ドラゴン」にベリオの肉質が加わると……

 

四倍:なし

二倍:ほのお、かくとう、いわ、はがね、フェアリー

半減:みず、でんき、くさ

こうかなし:こおり

等倍:上記以外全部

こんな感じだな

 

166:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

えっ、強すぎんか?

フェアリー以外はほぼこおりタイプの弱点なんだが

 

167:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ドラゴン同士の殴り合いで強いのは本当に強い

そりゃあ、オヤブンガブリアスなんて返り討ちにできるわけだわ

 

168:空の王者 ID:MH2nddosHr8

改めてリオレウスも載っけとくわ

 

タイプ:ほのお・ドラゴン

四倍:ドラゴン

二倍:いわ、じめん

半減:みず、くさ、こおり、むし

こうかなし:ほのお

等倍:上記以外全部

 

169:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いやぁ、強い強い

 

170:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

種族値も概ね600超えてるだろうしな、俺ら

 

171:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

夢の700族とかありうるか?

 

172:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そこまで来たらただのぶっ壊れじゃねえかよ

ほら、次は剛太の番だぞ

 

173:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

えっ、これ順番制だったの?

まぁいいや……ほれ、これがグラビモスのタイプ相性じゃい

 

タイプ:いわ・ドラゴン

四倍:ドラゴン

二倍:みず、じめん、かくとう、はがね、フェアリー

半減:ノーマル、でんき、どく、ひこう

こうかなし:ほのお

等倍:上記以外全部

 

174:空の王者 ID:MH2nddosHr8

普通だ

 

175:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

普通だな

 

176:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ただのガチゴラスじゃねえか

 

177:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

しかもグラビの肉質のせいで無駄にみずタイプが弱点になっとるし

 

178:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

うるっせぇわあぁぁっ!!

俺だって思ったわ「あっ、これガチゴラスの下位互換じゃん」ってさぁ!!

むしろガチゴラスより質悪いわこの相性!!

ほのお無効なんて完全に腐ってるしさぁ!!

唯一の利点がこおり等倍だけってなんなのさぁ!?

 

179:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だったら光輝は?

俺、アイツのタイプとか何も聞いとらんのだが

 

180:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺、知ってる

とりあえずタイプ相性をドンッ!

 

四倍:なし

二倍:じめん、エスパー、こおり、フェアリー

半減:ほのお、みず、むし、いわ、あく、はがね、ドラゴン

こうかなし:でんき

等倍:上記以外全部

 

181:空の王者 ID:MH2nddosHr8

は?

 

182:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おい、タイプバグってんぞ

 

183:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

エスパー弱点……?でもくさとどくは等倍だろ……?

ひこうが等倍でむしに耐性がある……はっ?

かくとう入ってる!?

 

184:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

正解

ジンオウガ「でんき・かくとう」

 

185:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

意☆味☆不☆明

 

186:空の王者 ID:MH2nddosHr8

仮にも牙竜種が……ドラゴンどこ行った

 

187:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

奴は聖剣士だったのか……?

 

188:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺も最初は「は?」ってなったけど、光輝の持論と俺の考察で概ね納得いく理由にはなった

 

189:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

説明ヨロ

 

200:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

りょ

まず俺たちだが……リオレウス、ラギアクルス、グラビモス、ベリオロスの四匹は一貫して「パッと見てドラゴンだとわかる」という共通点がある

 

201:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

はぁ

 

202:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ではここで質問

 

事前の予備知識なし完全初見状態でジンオウガを見た際に「アレは竜種です」と言われて納得できるか?

 

203:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、犬って答えるわな

 

204:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ワンオウガ!

 

205:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いやむしろ狼……あぁ、そうか

見た目が完全にドラゴンではないからか

 

206:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

竜種に分類されこそすれ、ポケモン界では認められんかったんじゃねえかな

ネコ目イヌ科の狐が「犬の仲間」って言われてんのと似たような理由で

 

207:空の王者 ID:MH2nddosHr8

世界に修正されたわけだ

 

208:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

世界に修正……ところで俺らってモンスターボールに入るんか?

アレはポケモンが「小さくなる」という性質を持ってるからであって、ポケモンではない俺らは小さくなれんくて、モンスターボールに入れないんでは?

 

209:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あっ

 

 

 

 

 

 

 

 

1433:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ついに四日目が来たわー

ようやっとショウちゃんに会えるんやな、俺

 

1434:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ずーっと同じスレで喋り続けたわけだが、そろそろ新しくスレ立てた方がいいか?

 

1435:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、ここまで来たら光輝が復活するまで待とうや

その内アイツが新スレ立てるやろし

 

1436:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

長かったなー

あ、ハマレンゲニキ対ありでした

 

1437:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

またバトルやってんのか

剣介もそうだが、ハマレンゲも性懲りもないというか……

 

1438:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いやぁ、エンジョイ勢よろしくバトルを楽しんどるだけやで

ただハマレンゲニキ、こおりタイプ使いだから俺が余裕でマウント取れるんだけどな

 

1439:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

オニゴーリもユキメノコもベリオ相手じゃ不利だわな

唯一、オニゴーリが「アイアンヘッド」で弱点を突けることだけが幸いか

 

1440:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ヒスイ産ユキメノコは「めざましビンタ」覚えないから……

 

1441:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

アレがあったらきつかったわー

そういうわけでニキ相手でも連戦連勝よ

ただしワサビちゃんテメーはダメだ

 

1442:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あの子の手持ちは技構成次第で全員がベリオの弱点突けるしな

 

1443:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺なんかしょっちゅうツバキがスカタンク連れて喧嘩売ってくるわ

その度に尻尾でビシバシあしらっちゃいるがいい加減に諦めてくれんかね……

 

1444:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

めっちゃ恨まれてるやん

 

1445:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おかげさまで毒耐性値は限界突破よ

 

1446:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

喰らいすぎていよいよ「どく状態」にならなくなったか

状態異常の耐性値までもがモンハン準拠とは本当に恐れ入るわ

 

1447:空の王者 ID:MH2nddosHr8

喰らえば喰らうほど耐性がついて、効かなくなるからな

 

 

 

――「無双の狩人」が参加しました――

 

 

 

1448:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あっ

 

1449:空の王者 ID:MH2nddosHr8

お?

 

1450:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

やっと来たか

 

1451:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おっすー、四日ぶりー

 

1452:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

こんの、裏切り者がよおおぉぉぉっ!!

 

1453:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ファッ!?

なんやねん急に

 

1454:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

テメェ、仮にも竜種のくせして「ドラゴン」じゃねえってどういうことだ!

なんで「かくとう」入ってんだよいい加減にしろ!!

世界に竜種と認められなかった駄犬がよォ!!

 

1456:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

俺に聞くなよ!?

あと、駄犬とか言うなっ!!

 

……えー、話を戻す!

こちらは現在、試練の中州に到着したところ

ルートとしてはベースキャンプとコンゴウ集落を避けるために

 

試練の中州

クマの稽古場

羽音の原

毛槍の草原

↓ 川をジャンプ!

深紅沼

 

ってルートで行くわ

 

1457:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

バレへんかそれ?

コンゴウ集落からゴロゴロ坂方面は意外と見晴らしがいいぞ?

 

1458:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

知ってる

なのでー、時間調節しつつ夜には深紅沼に着くようにするわ

 

1459:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まぁ、夜に紛れるなら大丈夫か

それじゃあ、待ってるわー

 

1460:空の王者 ID:MH2nddosHr8

意外とバレないものなんだな

俺も空高く飛んでても割とバレないこと多いわ

 

1461:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そう考えたら、よくまあ俺たちはショウちゃんの行動中ずっと大人しくできたよな

 

1462:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

みんなショウちゃんの行動に注目してたし、俺らみたいな巨体でも隠れられる場所なんて探せば見つかるしな

 

1463:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺もショウちゃんの目は誤魔化せたで

ただゴローンを食べる都合上、どうしても集落の人らには見られるけどな

 

1464:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんもされんのか?

 

1465:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

意外と何もされん

ただ、目が合ったら一目散に逃げられるけどな

やっぱ熱線で山の一部ブッ飛ばしたのはまずかったかもしれん

 

1466:空の王者 ID:MH2nddosHr8

竜の嫉妬は醜いぜ?←人気上位モンスター

 

1467:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ブッコロスぞテメェッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【初めまして】我らモンハン部異世界支部【鎧竜編】

 

1:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さて、状況も変化したことだし新しくスレ立てるわ

 

2:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ありがたい

 

3:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

夜になったし高速で移動するわ

全速☆前進だー!

おらぁ!ショウちゃん俺の背中に乗るんだよあくしろよ

 

4:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

はよしろ、ねみぃ

 

5:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

せっかちだなぁ

 

6:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ハマレンゲニキ対ありでしたー……って、お?

なんだいカイちゃん、君もやる気かい?

いいよいいよ、お兄さんが相手をしてあげよう

 

7:空の王者 ID:MH2nddosHr8

シンジュ団の団長が出張って来てるやん

 

8:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

しばらくカイちゃんと喧嘩してますわ

 

9:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やりすぎんなよー

 

10:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ついたー!

おはよー!!

おきてー!!

 

11:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

土の中からこんばんわー!! ドッカーン

グラビだよ!

 

12:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ショウちゃんもようビビっとる

リアクションとしては完璧だな

 

13:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

んー、どうやらショウちゃんってば俺のことをコンゴウ団から軽く聞いてたみたいね?

でも動いてるところを見るのは今日が初めて、と

いやぁー!頑張って隠れた甲斐があったわー!!

 

14:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

「深紅沼にヤベーポケモンがおるぞ」って?

 

15:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、「あのでっかい岩を刺激するな」って感じみたい

 

16:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

扱いが完全に危険生物で草

 

17:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

古龍よかマシやろがい!

 

18:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さて、剛太は予定通りショウちゃんの仲間になるんだよな?

 

19:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

モチのロンよ

おらおら早く出すもん出さんかい

 

20:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そう急かすなや……っと?

 

21:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あっ、セキニキ

 

22:空の王者 ID:MH2nddosHr8

こっちもこっちで団長のお出ましか

 

23:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

「そんなポケモンを連れて、何をする気だ?」だとぉ?

そんなんショウちゃんの勝手やろがい、口出ししてんじゃあねえよ部外者がよォ?

 

24:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

めっちゃ喧嘩腰じゃねえかよ

 

25:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ショウちゃんも負けとらんで

ちゃんと自分の目的や願いを言葉にできてる

 

26:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だいぶ持ち直したな、ショウちゃん

 

27:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おぉおぉ、ショウちゃんってばすっかり強気に……いや、待て待てここでボールを出すな

なんでバトルする流れみたいになってんだ、やらねぇが!?

 

28:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

「邪魔者は排除」思考が強まってるな……教育間違えたんじゃね?

 

29:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

育ての親は俺じゃないが……いや、ここはセキが身を引いたか

まぁ、たしかにここでバトルなんかやったって時間の無駄だしな

時間を大切にするセキだからこその合理的判断か

 

30:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ショウちゃんも元々バトルする気自体はなかったみたいだな

カイちゃんならこうはいかなかった

 

31:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おかえり、カイちゃんは?

 

32:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まぁ、余裕のよっちゃんよ

バトルの流れとしては

対グレイシア→口に咥えて高速空中遊泳、結果気絶

対エーフィ→エスパー技を腕力でゴリ押し

対ブースター→ほのお技を避けつつ氷ブレスの竜巻に乗って突進ワンパン

 

33:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

グレイシアだけバトルしてねぇ

 

34:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

カイちゃんの一番のパートナーだし、なるべく傷つけないように……と思ったらこうなった

それで、今はどうなってんの?会えたん?

 

35:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、それがセキニキが現れてな……

光輝と剛太を警戒してて、それでショウちゃんが何をしようとしてるのかって聞いてるところ

 

36:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

面倒くさいことになってるな……

 

37:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

セキニキ帰ってったわ

……と言うか、ストーリー的にはセキかカイのどっちかと協力しながら「あかいくさり」を作る流れなのに、今回は帰ってしまわれたんだが

 

38:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

だが、今回のやりとりではっきりしたわ

 

 

ショウちゃんは人間不信に陥ってます

 

 

39:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

「まだ彼らの方が信頼できます」って言われて嬉しいような悲しいような……

 

40:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あー……これだとカイちゃんとの協力も難しいか……

 

41:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

「あかいくさり」に関しては俺たち全員が合流するまでは考えなくてもいいだろ

まぁ、問題は合流後にどう動くべきか、だがな

 

42:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

合流後ならまだ原作復帰は出来ると思われ

それまではウォロとの遭遇や合流も控えるとしよう

 

43:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そうだな

……ん?どうしたショウちゃん?あぁ、モンスターボール?

いやぁ、入れるかどうかなんてわからんよ、俺らモンハンモンスターだし

まぁ、試せるだけ試してm――

 

 

――「無双の狩人」が退室しました――

 

 

44:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

光輝いぃぃぃぃぃっ!?

 

45:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

光輝の霊圧が……消えた……?

 

46:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おい現地!何があった!?

スレから光輝が消えたんだが!?

 

47:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

な、何って……光輝がモンスターボールに入っただけやで?

 

48:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なんだそうなのか……

……は?

 

49:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

モンスターボールに入っただけか、驚かすなよ……

……え?

 

50:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あ、モンスターボールに入れるんですねやったー

……あ?

 

51:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えぇ~~~~~~!?

入れちゃうんですかモンスターボールにっ!?

 

 

――「無双の狩人」が参加しました――

 

 

52:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

――はぁっ

びっくりしたー、まさか本当に入れるとは

 

53:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おぉ光輝、大丈夫か?

ボールの中どうだった?

 

54:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

心配無用だで、結構居心地はよかったよ

ただ皆の声が聞こえなくなってめっちゃ焦ったけど

 

55:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

どうやらモンスターボールには入れるものの、入ってしまうとこの脳内スレに参加できなくなるようだな

便利なんだか不便なんだか

 

56:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まぁ、ショウちゃんの満面の笑顔に比べたら、その程度の不便なんてどうとでもなるもんよ

そういうわけで……俺も入りまーす!

 

 

――「鎧の覇者」が退室しました――

 

 

57:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

よしっ、無事に剛太もショウちゃんのポケモンになったところで……

 

次は群青の海岸に行くぞっ!

 

58:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あぁ、首を長くして待ってるぞ

 

59:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えっ、奇怪竜?

 

60:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

誰がフルフルじゃい!

 

61:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

一先ず今日は霧の遺跡辺りで一泊としようかな

それからまた山越えをして群青の海岸に……って予定だな

 

62:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そこってちょっと北上した先にコギトさんがいる隠れ里あるが大丈夫か?

 

63:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁ、コギトさん自身は問題ないがウォロがな……でも大丈夫だろ

 

64:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

フラグ立った?

 

65:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ヤメロォ!!

 

66:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

だが、近くを通るわけだからな……十分に注意するようにな

 

67:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

了解

寝床見つけたらそのまま落ちるわ

 

68:空の王者 ID:MH2nddosHr8

りょ

乙~

 

69:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おつかれさん

 

70:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おつかれ……ん?ワサビちゃん?

あぁダメダメ俺の背中は乗せらんねーの、人間用じゃないから翔蟲連れて出直しな

いや、だからダメだって……ダメだっつって……やめ、ヤメルルォッ!!

 

71:空の王者 ID:MH2nddosHr8

最後まで締まらんなぁ、剣介……

 

 

 

 

 




ヤバい……どこまで書けばいいんだ……


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其の遭遇(であい)は激震と共に

お、お気に入りが、900……!?
…………。

(。・ω・)
箱厨の
なげつける!


(。・ω・)σ ⌒最新話
箱厨は
最新話を 投げつけた!


 

また、朝が来た。けれど今日の朝は、昨日の朝とはまるで真逆の朝。

 

「……おはよう」

 

「ガウ」

 

寝ぼけ眼を擦りつつ、少し見上げて声をかければ……彼はゆっくりこちらを振り返りつつ、小さく鳴いた。

 

昨日のこと。コトブキムラを追放された日の次の日に出会った、未知のポケモン。電撃を操る巨大な狼のポケモンは、行くあても頼れる人もない私を助けてくれた。何も言わず、そっと寄り添い話を聞いてくれて……私の境遇を悲しんだり怒ったりしてくれた、優しいポケモン。

 

ムラへの復讐か、事態の解決かで悩んでいた私に、もうひとつの別の道……すなわち、「元の世界に戻りたい」という原初の願いを示してくれた。おかげで私は、色々と吹っ切れることができた。今まではムラのみんなのため、困っている人たちのためと、「誰かの為に」頑張り続けていた。

けれど、「元の世界に戻りたい」というヒスイ地方に来たばかりの頃はいつも考えていたことを思い出したことで、これからは「自分自身のため」だけに頑張ればいいんだと思うようになってからは、肩の力が抜けていつもよりもだいぶ楽になった。

 

彼の尻尾の上も、意外と寝心地は悪くなく気持ちよく眠ることができた。彼には本当に感謝してもしきれない。

……それにしても、彼は一体いつから起きていたんだろう。一緒に寝ずの番をしていたはずのダイケンキは先に寝ちゃってるし……まさか、貫徹!?

 

「……あの、ひょっとして……寝てなかったりする?」

 

「ガウ」

 

一つ頷くとほぼ同時に、クアァッ、と大あくびをする彼。一睡もしないまま寝ずの番をしてくれてたなんて……!

 

「ちゃ、ちゃんと寝なきゃダメじゃない!」

 

「……グルル」

 

「あいたっ」

 

慌てて彼の正面に回り込んで、今からでもいいから少し眠るように言い含める……けれど、彼は鼻先で私の頭を軽く小突くと、そのまま微笑んで見せた。

「気にするな」と、「良く眠れたか?」と……そう言いたいのだろうか、彼は。一体彼は……彼はどこまで私のことを気遣ってくれるのだろう。

 

「……うん、ありがとう。お陰様で良く眠れたよ。あなたのおかげ……本当にありがとう」

 

「ガウ」

 

お礼を言えば、彼は人懐こく鼻先を押し付けてきた。それが彼の信頼の証なのだと思うと、私も嬉しくなって彼の頬をそっと撫でた。

あっ、そういえば……

 

「私、あなたの名前を知らないね」

 

「…………」

 

たった今思い出したようにそう告げれば、彼は気まずそうにそっと目を逸らした。

彼はポケモンだから、人間の言葉を理解できても話すことは出来ない。自分の名前を告げられないことを理解していたのだろう……だから申し訳なさそうに目を逸らしたんだ。

 

「大丈夫だよ。なんなら私が名前をつけて……あれ?」

 

私が彼に名前をつけてあげようかな、と考えたちょうどその時だった。いつからそこにいたのか、巣穴の入口の前にアンノーンが一匹いた。

アンノーンはズイの遺跡で石版を見たあたりから、いつの間にかヒスイ地方の各地に出現するようになったよくわからないポケモンだ。私も任務や図鑑作りの途中で見かけることがあったので、28種類すべてを捕まえた。それ以降はズイの遺跡に複数出現するようになったので、勉強も兼ねて複数匹捕まえていたんだけど……まさか、放牧場にいたのが、ここまで出てきちゃったのかな?

 

「どうしたの?」

 

「ノーン」

 

私が問いかけると、さらに入口の脇から複数のアンノーンが飛び出してきて、それらが一斉にこちらに向かってきた。アンノーンたちは規則正しく整列すると、彼の前で立ち止まって並んでいた。

ちょうど私が彼の方へ振り返ると、アンノーンたちが何か言葉を表していることに気がついた。アンノーンたちの並びを左から読んでみると……

 

ZIN OUGA

 

「じん……おうが……。『ジンオウガ』……?」

 

「ガオウッ!」

 

私がアンノーン文字を解読すると、彼が嬉しそうに吠えていた。まさか、これって……!

 

「これ……もしかして、あなたの名前……!」

 

「……!!」

 

私がそう尋ねれば、彼は満面の笑みを浮かべて大きく頷いた。

ジンオウガ……ジンオウガ!!なんて力強い名前……まさに彼の姿、あり方をわかりやすく体現する名前。素直にかっこいい……そう思える名前だ。

 

「これからよろしくね!ジンオウガ!!」

 

「ガオウッ!」

 

元気よく吠える彼……ジンオウガ。ただ、いまの鳴き声で私のポケモンたちがみんな起きちゃったのはご愛嬌……かな。

アンノーンたちは「やりきった」と満足気な笑顔を浮かべたまま、どこかへ飛び去っていってしまった。放牧場に戻った……と、思いたい。

 

 

 

 

それぞれ朝食を終えたところで、今後の事を考える。

私は元の世界に帰るためにも、ひとまずは時空の裂け目の問題をどうにかしなければならないかもしれない。あの赤くなった空がこの世界に破滅的影響を齎すのだとしたら、あれを放置するわけには行かない。

放置した結果、この世界が崩壊したり私が元の世界に帰れない……なんてことになっては困るから。

 

なにをどうすればいいのかはわからないけれど、最終目的地はおそらくテンガン山。テンガン山は時空の裂け目に一番近い場所だから、元の世界に帰りたい私としても避けては通れないだろう。ただ、問題はこの赤い空をどうにかしなければならないんだけど……。

 

「……なんにも見当がつかないんだよね……」

 

ある意味、詰み状態に近いかも知れない。とりあえず、テンガン山を目指してみようかな……。

 

「ガウ」

 

「ジンオウガ?」

 

どうしようと頭を抱えていると、頭上から声がかかった。見上げれば、ジンオウガが何かを言いたげに私を見ていた。

 

「どうしたの?もしかして、なにか心当たりが?」

 

「グルゥ……」

 

尋ねてみるが、彼は力なく首を振るばかり。けれど、彼は巣穴の外をジッと見つめている。

……彼も彼で、なにか思う所があるのかもしれない。あるいは、彼なりの考えがあるのかな……?

 

「正直、私はどうすればこの状況を変えられるのかなんて、さっぱりわかんない」

 

「…………」

 

「どうすればいいのかさえわからない……けど、ジンオウガはそうじゃないよね?」

 

「……!!」

 

「行きたいところ、ある?それなら私、ついていきたい」

 

そう伝えてみれば、彼は小さく頷いた。……本当は、私がジンオウガから離れたくなくて咄嗟にウソとホントを混ぜただけなんだけど。

ジンオウガは巣穴から出ると、ある一方向へと顔を向けた。あっちって……方角的には東、になるのかな?黒曜の原野の東方面にある場所って……。

 

「紅蓮の湿地?」

 

「ガウ」

 

なるほど、ジンオウガは紅蓮の湿地に行きたいらしい。今は手段が全く見えてこない状況だし、もしかしたら行った先でなにか攻略の糸口が掴めるかもしれない。

 

「それじゃあ、行ってみようよ。紅蓮の湿地に!」

 

「ウオオォォーン!」

 

ジンオウガは遠吠えしながら尻尾を真っ直ぐに下ろしてくれた。私は尻尾から再び彼の背中に乗り移ると、彼は一気に加速して走り始めた。

……それにしても、わざわざ紅蓮の湿地になんて、一体何の用があるんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

ジンオウガの背中に揺られ、休みを挟みつつ走り続けることおよそ四日。私たちは紅蓮の湿地にたどり着いた。今は試練の中洲の崖上にいる。紅蓮の湿地にたどり着くなり、彼は体を横たえた。アヤシシにライドするよりもずっと速かったから、一週間もしないうちにたどり着けたのもほとんど彼が走り続けてくれたおかげ。

だから、彼がここで休むというのなら、それに従うつもり。そもそも私が寝ている間はずっと寝ずの番をしてくれているし、何徹もした上に走り続けてきたのだから、そろそろ寝たほうがいいんじゃないかなとは私も思っていたところだ。だから、彼が素直に眠り始めたときは、とても安心した。私のために無理ばっかりしてほしくは、ないから。

私も彼の尻尾にもたれかかって、そのまま一眠りすることにした。……っと、その前に。

 

「しばらく寝るから、何かあったら教えてね」

 

「ロゼ!」

 

手持ちからロズレイドを出して、周囲の警戒に当たらせるのを忘れない。普段はジンオウガにしてもらってばかりだから、今度は私の番だよね。

 

 

 

 

少しだけ仮眠を取って、ロズレイドに起こされた頃にはすっかり夜になっていた。ロズレイドが起こしてくれた理由としては、ほかならぬジンオウガが起きようとしていたから、とのこと。

私が体を起こして伸びをしている間に、彼もゆっくりと体を起こした。

 

「良く眠れた?」

 

「ガウ」

 

「そっか。よかった」

 

ジンオウガも、ここ数日の疲れが無事に取れたようでなによりだ。彼が真っ直ぐに尻尾を下ろしたのを見て、ロズレイドをボールに戻して彼の背に乗った。しっかりと捕まってから合図を出して、ジンオウガは走り出した。

 

まず、彼はクマの稽古場の方向へ走った。川を飛び越えて羽音の原を北上し、毛槍の草原へとたどり着くと、再び川を飛び越えて深紅沼へとたどり着いた。ここは……以前、荒ぶったクイーンの件についてヒナツさんを探す時に、セキさんに忠告された場所だ。

 

『深紅沼の中心に小山のような岩があるんだが……いいか?アレを絶対に刺激するな。

不用意に触れたりしなけりゃ問題はないが……まぁ、とにかく近づくなよ』

 

深紅沼の中心にある岩……グレッグルたちが集まって日向ぼっこをしている岩だ。ジンオウガの向かう先には、あの岩がある。いや……ジンオウガ、あの岩を見てる……?

 

「(もしかして……?)」

 

私が考え事をしている間にも、ジンオウガは例の岩の方へと歩いていく。途中、オヤブンスカタンクがこちらに気づいて威嚇してくるも、例の岩が一瞬だけ動いた(ような気がした)と思うと、そのまま引き下がっていった。

日向ぼっこをしていたグレッグルたちまで散ってしまうと、ジンオウガは尻尾を真っ直ぐに下ろした。促されるまま私もジンオウガから降りると、彼は一際大きな声で鳴き声をあげた。

 

「ウオオォォォォォォォォォンッ!!」

 

深紅沼に、ジンオウガの咆哮が木霊する。それからしばらくすると、目の前の岩が激しく動き始めた!!それに合わせて大地が激しく揺れ始め、私は立ってることも困難になってジンオウガの前脚にしがみついた。

 

「な、なに……?」

 

 

ドッゴオォォンッ!!

 

 

「ギシャアオォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

大地を割いて現れたのは、一匹のポケモンだった。

全身に岩石を纏ったかのような威容のある姿。

棍棒のように太く大きな尻尾と、翼膜まで硬そうな翼。

ジンオウガよりも一回り以上は大きい巨体。

一歩踏みしめるたびに大地を揺らす超重密度。

またしても見たことのないポケモンが、その姿を現した。

 

「お、大きい……」

 

ジンオウガの時も驚いたけど、まさかそれ以上の大きさのポケモンがいるなんて。以前、群青の海岸の静かな内海に30m級のドラゴンポケモンが棲んでいるという話をガラナさんとススキさんから聞いたことがあるけど……多分、あれは胴長という意味での大きいということだろう。

果たして、目の前のポケモンはどうか。目の前のポケモンの膝下なんて私の身長を優に超えている。カビゴンやハガネールも相当に重いポケモンだが、このポケモンはその比ではないだろう。だって、自重で若干だけど足元沈んじゃってるし。

 

「こんな大きくて重くて、ただ存在するだけで危険が付き纏うポケモンなんて、そりゃあセキさんも警告するよね……」

 

「……?」

 

「あ、えっと……貴方のこと、ちょっとだけ話に聞いてたの。コンゴウ団って人たちにね。遠目からは時々見てたけど、こんなに大きいなんてちょっと予想外だったよ」

 

「ヴゥゥ……」

 

それにしても、グレッグルやスカンプーたちはこんな巨大ポケモンがすぐ近くにいても、全く恐れていた様子がなかった。むしろ、このポケモンの存在に頼っていたようにも思える。もしかすると、共存していたのかもしれない。

しばらく呆然と眺めていたけれど、ジンオウガがゆっくりと目の前のポケモンに歩み寄った。合わせて、巨大ポケモンの方もジンオウガに近づいていく。すると、二匹はお互いの頬を摺り寄せ合い始めたではないか。見た目からして何もかも違うのに、もしかして仲間意識があるの……?

この二匹に、一体どんな関係が……。

 

「ショウ……?」

 

「……っ!!」

 

ジンオウガともう一匹について思考を巡らせていると、後ろから声をかけられた。咄嗟に振り返ると、そこにいたのはコンゴウの長であるセキさんだった。

相棒であるリーフィアも、すぐそばに控えている。

 

「……セキ、さん……」

 

「……よう、ショウ。……なんとか、元気でやってるみたいだな」

 

「……ええ、おかげさまで」

 

「「…………」」

 

会話が続かない。けれど、それも仕方のないことかもしれない。

片や組織のために恩人を見捨てた者。

片や恩を仇で返され信頼を失った者。

お互いの距離感が掴めず、ただ無為に時間が過ぎていく。セキさんはこういうの、好きじゃないはずなのに。

 

「グルルルル……!」

 

「ヴゥ"ゥ"ゥ"ゥ"ゥ"……」

 

同じくセキさんに気づいた二匹が、唸り声を上げている。ジンオウガに至っては、私を守るように立ち塞がってくれた。ハガネールよりも大きい二匹のポケモンに睨まれては、さすがのセキさんといえどたじろいでいた。

 

「……っ。そっちのデカイ狼ポケモンは、初めて見るな。ショウ、一緒にいるところを見るに、あんたのポケモンか?そんなポケモンを連れて、何をする気だ?」

 

「グルァッ」

 

「……大丈夫だよ、ジンオウガ。私は平気、だから」

 

「…………」

 

セキさんがジンオウガを見て、警戒しているようだった。ジンオウガもジンオウガで、セキさんの警戒心を感じ取ったのか「やんのかコラァッ」と言わんばかりに低い声を出した。

私はジンオウガを宥めると、彼の前へと歩み出た。守ってもらってばかりじゃダメ。ジンオウガにも、後ろにいるもう一匹にも、私の覚悟を見て欲しいから。

 

「……何を、ですか。そんなの決まってますよ。私が時空の裂け目から落ちてきてから、ずっと考えていたことです。

ギンガ団の仕事が忙しすぎて、一度は忘れちゃいましたけど……彼が、ジンオウガが私に思い出させてくれたんです」

 

「ジンオウガ……聞いたことのない名前だな。そんなポケモンがこのヒスイ地方にいたとは……」

 

セキさんは驚いている。たしかに、ギンガ団よりも早くからこのヒスイ地方で生きているコンゴウ団やシンジュ団の人たちすら知らないというのも、不思議な話だ。けれど……そんなことは私にとってはどうでもいいことだ。

ジンオウガは私の心を救ってくれた。裏切られて傷ついた私に寄り添ってくれた。私にとって、手持ちポケモンたちと同じくらいにかけがえのないポケモンなんだ。

 

「……私の目的は、ただ一つ。私のたった一つの願い……そう、元の世界に帰りたい」

 

「……!!」

 

「あの時空の裂け目を通って、元いた私の時代に、世界に帰りたい。たったそれだけ……それ以上もそれ以下もなく、それ以外もない。私は、私が生きる場所に戻りたいだけなんです。

……その邪魔をするなら、セキさんといえど容赦はしません」

 

私はモンスターボールを構えてセキさんを脅しつける。黒曜の原野から紅蓮の湿地までの道中でたくさんのポケモンと戦ったし、なんなら手持ちポケモンたちはジンオウガに稽古をつけてもらってから目に見えて急成長している。今なら誰にも負ける気がしない。

セキさんの相棒であるリーフィアが、私がボールを構えると同時に前に出てきた。戦うつもりなら、私は……!

 

「よせ、リーフィア。下がるんだ」

 

「……フィ」

 

しかし、セキさんがリーフィアを宥めて下がらせてしまったので、バトルの空気は一瞬で霧散した。私もモンスターボールを腰につけなおす。まぁ、バトルをしないで済むならそれに越したことはないので、正直ホッとしている。

……心なしか、後ろにいるジンオウガたちがてんやわんやしているような気がするけれど、気のせいだろうか。

 

「ショウ、オレは別にあんたの邪魔をするつもりはない。だが、ギンガ団を追放されたあんたを心配していなかったといえば嘘になる。コンゴウ団もシンジュ団も、みんながあんたの身を案じている……それは本当だ」

 

「私を受け入れられなくても、ですか?」

 

「……そうだ」

 

ああ、セキさんごめんなさい。本当はこんな意地悪な事を言うつもりはないのに、どうしても口を突いて出てしまう。吹っ切れたつもりでいたけれど、やっぱり私はまだまだだ。

カイさんの「世界は広くて私は小さい」という言葉を思い出した。ジンオウガたちみたいな大きな存在に対して、私は随分とちっぽけだ。感情一つに振り回されて心を荒立たせているうちは、己の願いを成就するなど夢のまた夢だ!しっかりしろ、私!

 

「あんたはこの赤い空をなんとかしようとしてるんだろ?……表立って助けることはできないから、こっそりと助けてやるよ」

 

「セキさん……お気持ちは、嬉しいです。けど……」

 

私は後ろから顔をのぞかせたジンオウガの頬をそっと撫でた。目を細める様子は「それでいいのか?」と問われているように感じる。うん、わかってる。でも、もう決めたんだ。

 

「セキさんの手は、私……まだ、取れません。

同じ人間よりも、まだ彼らの方が信頼できますから……」

 

「……っ。そう、か……」

 

私はムラでの一件から、人を信じることが怖くなっていた。また裏切られたら、また利用されたら、また傷つけられたら……そんな悪い想像ばっかりが脳を支配して、私を臆病にさせてくる。

セキさんのことも、シンジュ団のカイさんのことも、本当は信じたい。けれど、怖い。テル先輩やラベン博士やシマボシ隊長、それにみんなも……信じたいけど、怖い。

今の私にとって信じるのも、信じられるのも、ポケモンだけだ。

 

「ただ、まあ何かあったら必ず駆けつけてやるからよ……それだけは覚えておいてくれ」

 

「……はい。セキさん、ありがとうございました」

 

ごめんなさい、セキさん。こんなにもいい人であるあなたを信じられなくて。臆病な私でごめんなさい。

セキさんはリーフィアを伴って集落の方へと去っていった。正直、これでよかったのかなんてわからないけれど……でも、私自身の心を守るには、おそらくこれが最善手。ほかに方法なんて思いつかないよ。

……あっ、そういえば……。

 

「ごめんね、ジンオウガ」

 

「……?」

 

「あ、その……ゲットしてないのに、私の手持ちみたいに思われたから……。

えっと……嫌、かなって……思って……」

 

「…………」

 

ジンオウガはフルフル、と首を横に振ると、またいつかみたいに微笑んで見せた。よかった……どうやら嫌じゃなかったみたい。

……ゲット、しなきゃダメかな。これからしばらく一緒に行動するうえで、捕獲していないというのは危険かもしれない。私が、というより、彼らが。

コンゴウ団とシンジュ団はともかく、ギンガ団はモンスターボールによるポケモンの捕獲術を持っている。もし彼らが未捕獲状態で、ギンガ団の誰か――それこそテル先輩のような手馴れた人――に捕らえられたら?今は私の味方であるジンオウガが、私の下を去ってしまうのではないか……そう思うと、途端に怖くなってきた。

 

かといって、無遠慮に捕獲するのも気が引ける。彼は私の手持ちでないにも関わらず、私のために動いてくれた。それを、捕獲して強制するというのは、彼に対して失礼なのではないかと考えてしまう。……セキさんとリーフィアや、カイさんとグレイシアは、きっとこんな関係だったんだろう。

ボールを使わずとも、協力し合える関係……私とジンオウガは、まさにそんな関係だ。

 

そもそも、彼らはポケモンなんだろうか……?ヒスイ地方が完全な並行世界だというのなら納得出来るけど、私が生きた時代・世界と直結した過去だというのなら、どうしてこれほどの存在感を持つポケモンが未来の時代に存在していないのだろう?なにより、未来においても彼らのようなポケモンが過去に存在したという話すら、ひとつとして聞いたことがない。

何かしらの理由で絶滅したなら、化石ポケモンとして発見されてもおかしくないだろうに……彼らの存在があるからこそ、私は一概にここが過去の世界だと決めつけられないでいる。

まぁ、いいや。その時は私が彼らの存在を絶やさず伝え続けるだけだし。……できるだけ未来と整合性が取れるような伝え方をしないと。

 

……って、違う違う、話が逸れた。彼らを捕獲していいのか、そもそも捕獲できるのか……ここは本人に聞いてみようかな。

私は空のモンスターボールを取り出すと、それをジンオウガに突きつけた。

 

「ねえ、ジンオウガって捕まえても大丈夫?そもそも捕まるのかわからないんだけど……。

もしよかったら、私の仲間になって欲しいな……」

 

「グル……」

 

ジンオウガは私が持つボールにそっと近づくと、鼻先でボールのスイッチに触れた。その直後――

 

――ポシュン

 

「あ」

 

「ヴァ」

 

一瞬、光に包まれたかと思うとジンオウガがボールの中に入ってしまった。私と、隣にいる岩ポケモンの声が重なる。小さく揺れたあと、捕獲を示す花火がボールから打ち上がり、ジンオウガを捕獲……出来てしまった。

 

「捕まっちゃった……」

 

「ヴァー……」

 

隣にいる彼も、心なしか呆れたような声を出している。私は改めて彼をボールから出そうとして身構えて……一瞬だけ考えてから、ボールを投げた。

 

「出てきて!ジンオウガ!!」

 

「ウオォォンッ!」

 

私がその名を呼べば、ボールから出てきたジンオウガが勇ましく吠えた。

……ヤバイ、どうしよう、すごく嬉しい。油断するとにやけちゃいそうになっちゃう。私と彼との間に、明確な『仲間』としての繋がりが出来たのだと思うと、安心と喜びの感情が大挙して押し寄せてくる。

 

「ヴァー、ヴァー」

 

「あっ……あなた、も?」

 

「ヴゥアア!」

 

感動に浸っていると、岩のポケモンが「自分にも!」とばかりに私に顔を寄せてきた。どうやら、彼も仲間になってくれるみたい……嬉しい!

私はもう一つボールを出すと、スイッチを彼に押し付けた。そのまま中に入ると、小さく揺れた後に花火が上がる。未知のポケモン、二匹目捕獲。ラベン博士が二匹を見たら、驚いて腰を抜かしちゃいそうだね。

 

すると、ジンオウガが尻尾を真っ直ぐ下ろしていることに気がついた。

これは、ジンオウガが移動を考えている合図!私はすぐに尻尾から背中へと乗り移る。

 

「行こう、ジンオウガ!」

 

「ガウッ!!」

 

ジンオウガは再び走り出す。

今、私の心はとても充実している。やはり、ジンオウガともう一匹の彼が仲間になってくれたこと……これほどに嬉しいことはない。夜の紅蓮の湿地を駆け抜け、私たちは霧の遺跡へとたどり着いた。……どうやら、ここで一泊する予定らしい。

 

「……そうだ」

 

ジンオウガから降りて食事の準備を終えたところで、私は例のもう一匹をボールから出した。

「何か用?」と言いたげに首を傾げるそのポケモンは、見た目の厳つさに反して可愛らしさがあり、なんかギャップが凄かった。

 

「自己紹介、しようと思ってね。私、ショウっていうの。よろしくね」

 

「ヴゥア!」

 

「あなた、ジンオウガとは知り合いなの?出会った時、すごく仲よさげだったし」

 

「ヴァ」

 

ジンオウガとの関係を尋ねればはっきりと頷いてくれた。そうだったんだ……!

やっぱりジンオウガがここに来た目的は、この目の前のポケモンに会うためだったんだね!

 

「それで、あなたの名前は……あ」

 

「ガ」

 

「ヴァ」

 

名前についてジンオウガの時のように考えようとしたら、彼の顔面に何かが張り付いた……って、アンノーン!?

 

「あ、アンノーン?」

 

「ノーン」

 

「もしかして、放牧場からわざわざ飛んできてるの?」

 

「ノン、ノーン」

 

「あっ、お疲れ様です」

 

また、アンノーンだ。しかも、ジンオウガの時と同じく放牧場から直接飛んできてるみたい。

……遠いだろうに、お疲れ様。

また、複数のアンノーンが飛んできて、岩ポケモンの前に整列した。私はアンノーンたちの並びを、再び左から解読した。

 

GURABI MOSU

 

「ぐらび、もす……あなたの名前は『グラビモス』ね!」

 

「ヴアアォォォ!」

 

私がそう告げれば……グラビモスは嬉しそうに鳴き声をあげた。けれど、それからすぐにジンオウガの方へと睨みつけた。

睨まれたジンオウガは一瞬だけビクッ、と反応するとそろりそろりとその場を離れようとする。

 

「ギシャアアアォォォ!!」

 

「グルアアァァッ!?」

 

それから、なぜか怒り始めたグラビモスがジンオウガを追いかけ始め、ジンオウガもジンオウガで必死に逃げ出す、というよくわからない鬼ごっこが始まった。霧の遺跡をグルグルグルグル……霧の遺跡に生息しているラルトスやキルリアたちが突然のモンスターチェイスに怯えたように一ヶ所に集まっていた。

 

「こら、二人共ー!その辺にしなさい!!」

 

私が大声で叫ぶと、二匹はピタリ、と動きを止めた。そのまま目の前まで来るように促すと、二匹をそのまま地面に座らせた。

 

「……よくわからないんだけど、ジンオウガがグラビモスを怒らせるようなことをしたんだよね?」

 

「ヴァ、ヴァ」コクコク

 

「ガウ」フルフル

 

私が確認をすると、グラビモスは頷き、ジンオウガは首を横に振った……直後、グラビモスがジンオウガを尻尾でしばいた。すると、掌を返したようにジンオウガも勢いよく頷いた。

 

「じゃあ、ジンオウガはグラビモスに謝って、それで仲直りしよう?」

 

「ガウガウ」

 

「ヴァー」

 

ジンオウガがグラビモスに頭を下げて、グラビモスが器用に翼でジンオウガの頭をポンポンと叩く。なんだか、すごく軽快なやりとりだなぁ……これは相当、付き合いが長いに違いない。

アンノーンたちにも感謝を忘れない。どうしてアンノーンがジンオウガたちの名前を知っているのかは謎だけど……この際、些細なことだ。気にしないでおこう。

コトブキムラに飛んでいくアンノーンたちを見送ってから、私たちは食事を取ることにした。

 

「それじゃあ、ご飯にしよう。……グラビモスは、何を食べるの?」

 

「ヴァウァ」

 

のそのそと立ち上がったグラビモスが、続いてドタドタと走って行き……戻ってきた時には、その口にサイホーンを咥えていた。

 

「……岩ポケモンが主食なのね?」

 

「ヴァウ」

 

岩ポケモン……つまり、鉱物ってこと?鉱石や鉱物をご飯にするなんて、すごい食事事情だ。

……そうか、深紅沼のすぐ近くにはゴローンが生息するゴロゴロ坂がある。だから深紅沼に棲んでたんだね。

私の手持ちポケモンたちも含めて、食事を開始する。私の今日の夜ご飯は、すぐ近くに生息するベロリンガだった。……ベロリンガのタンって、あんなに美味しかったんだね。ヤドンの尻尾と同じか、それ以上だった。

 

それから、今日の寝ずの番は私のポケモンたちにしてもらうことにした。……ジンオウガとグラビモスが文句を言いたげにしてたけど、ジンオウガはつい数日前まで何徹もしてるから絶対にダメです!グラビモスも、出会ったばかりなのにそこまでしてもらうわけには行かない。

二匹を説得して、なんとか納得してもらえたところでボールに戻す。私は手持ちを総動員して寝ずの番を頼むと、すぐに就寝した。

 

……次は、どんなポケモンに出会えるんだろう。もしかしたら次は、群青の海岸かも知れない。

静かな内海の30m級ドラゴンポケモン……どんなポケモンなんだろう。不安と楽しみ、まだ見ぬポケモンに思いを馳せながら、私の意識はゆっくりと沈んでいった。

 

 

 

 

 




気づけば感想を確認する日々……これが感想乞食……これが沼か……


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【初めまして】我らモンハン部異世界支部【海竜編】

皆様があまりにも期待してくださっているので……
頑張って続き書いた!!
次のショウちゃん視点は今週の土日くらいになるかな
そんなこんなで、前話に比べてだいぶ短いけど五話目をどうぞ!


 

1:空の王者 ID:MH2nddosHr8

今回のイッチは……俺だ俺だ俺だ俺だ俺だーっ!

 

2:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おや、珍しい

イッチは光輝の役割では?

 

3:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、俺もさっきから呼びかけてんだが応答がねぇんだわ

多分だが、モンボの中にいると思われ

 

4:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なるほど、さっき確認したが剛太の方も無反応だわ

こりゃ、二人共モンボの中やね

 

5:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そういうわけで、俺がイッチを務めたわけだ

 

6:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

二人揃って寝ずの番をしないとは……

 

7:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、あの二人に限って自分からサボるとは思えんし、ショウちゃんになんか言われたんじゃね?

光輝は今日までで何徹もしとるし、流石に止められたんだろ

 

8:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なるほど納得

それなら、しばらくはこの三人で語っていくか

 

9:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

オッケオッケ――っと危ない

残念でしたワサビちゃん~、俺の背中に乗ろうなど百年早い!

 

10:空の王者 ID:MH2nddosHr8

剣介、まだ狙われてんのかお前w

 

11:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、ベリオの毛ってふわふわしてそうだしな

操竜するたびに「体毛、柔っこそう」って思うし

 

12:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

鞍もなけりゃ翔蟲もいねぇのに、モンハンモンスターの背中にゃ乗せらんねぇでしょ

おまけにワサビちゃんはちっちぇえしさ……そういうわけで、俺は不撓不屈の精神で以て、これを断るのであった

 

13:空の王者 ID:MH2nddosHr8

大人だねぇ

 

14:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

フッ

……?え、あ、ワサビちゃん……?

 

15:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おや……?

 

17:空の王者 ID:MH2nddosHr8

流れ変わったか?

 

18:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あ、ちょ、まっ……まっ、まっー!!

泣かんといて!泣かんといてって!?

俺は君の安全のために断っているのであって、決して意地悪とかそういうんじゃ……

 

19:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なーかした、なーかした!

 

20:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

リーダーにー、言っちゃーろー!

 

21零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お前ら……他人事だと思って……!!あ、ハマレンゲニキ……

いや、ちゃうんすよ、これは違うんですよ別にそういうわけじゃ……誤解!激しく誤解だから!?

やめてくれカイちゃん、その責めの視線は俺に効く!

ハイッ!分かりました!乗せます乗せます乗せましょう!

ついでにカイちゃんも乗ってってください!

安全運転で飛行させていただきます、サー!

 

19:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

不撓不屈の精神(笑)

 

20:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ぅゎょぅι゛ょっょぃ

 

21:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

幼女の涙にゃ勝てんて……

すまん、しばらく遊覧飛行しますんで抜けます

 

22:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

事故にだけは気を付けろよー

 

23:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あいよー

 

 

――「零下の白騎士」が退室しました――

 

 

24:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……結局、二人だけになっちまったなぁ

 

25:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まったく……下手に関わりを持つから、こうなる

後先考えないところはモンスターになっても変わらんな、剣介のやつ

 

26:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だが、いの一番にあいつが動くから、俺たちも後に続けるんだよな

 

27:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺ら五人の中では、だいたい光輝か剣介が最初に動くんだったな

 

28:空の王者 ID:MH2nddosHr8

んで、俺と剛太が二人のフォローをして

 

29:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

最終的に俺が解決策を講じると

 

30:空の王者 ID:MH2nddosHr8

頭脳プレーを丸投げしてすまんなぁ

 

31:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

考えること自体は嫌いじゃない

謝るようなことではないぞ

 

32:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、申し訳なさは欠片も感じてないけどな

 

33:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そこは感じろ

 

34:空の王者 ID:MH2nddosHr8

WWWWWWWW

 

 

――「無双の狩人」が参加しました――

 

 

35:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おはよー

……あれ、剣介おらんくね?どこ行ったあいつ

 

36:空の王者 ID:MH2nddosHr8

幼女と美少女と空の旅

 

37:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

えー……?なにやってんだよ……

 

38:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」←これで察しろ

 

39:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あっ(察し)

 

40:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そういうわけで、二人だけで駄弁ってたわけよ

そっちは?光輝だけが来て剛太がおらんってことは、やっぱモンボの中?

 

41:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ、そのことで報告が一つ

 

 

 

 

モンボの中だと、中の者同士で脳内会話が可能な模様

 

42:空の王者 ID:MH2nddosHr8

へぇ?

 

43:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それじゃあ、さっきまで剛太と喋ってたのか?

 

44:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

喋ってた喋ってた

あと、剛太にしこたま怒られたのでここでもう一つお知らせ

 

 

 

 

俺らの名前を何故かアンノーン氏がご存知のようです

 

45:空の王者 ID:MH2nddosHr8

アンノーン!?

なぜに?

 

46:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、こっちも滅茶苦茶気になってるんだがな……

俺らの名前を知ってからというものの、ショウちゃんが全然気にした様子がなくて……

 

47:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、良いことや嬉しいことがあると細かいことは気にならなくなるしな

光輝たちの名前が知れたことが、よっぽど嬉しかったんじゃないかね

 

48:空の王者 ID:MH2nddosHr8

どうせあの邪神が絡んでるんだろ

 

49:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あぁ、なるほど

 

50:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それは一理あるな

それじゃあ、朝食を終えたところで群青の海岸まで行くわ

 

51:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

イチョウの浜辺で合流な

 

52:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

りょーかい

 

 

――「無双の狩人」が退室しました――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

167:空の王者 ID:MH2nddosHr8

今度は二日くらいの旅になりそうだな

 

168:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

生前に見たヒスイの地図、覚えてて良かった

ネットは偉大だな

 

169:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だなー

 

 

――「零下の白騎士」が参加しました――

 

 

170:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

や、やぁっと終わったぁー……

 

171:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おせーぞロリコン

 

172:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

殺すぞ?

 

173:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

はいはい、氷が炎に勝てるわけねぇから落ち着け

 

174:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

クソッタレェーーーー!!

……はぁ、それで?光輝は?

 

175:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

既に移動を始めてる

それと、光輝からいくつか朗報があったぞ

 

一、モンボに入ると、入ってる者同士で脳内会話可能

二、アンノーンがなぜかモンハンモンスターの名前を把握済み

 

以上の二つだ

 

176:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……ンンンンンッ?

アンノーンが俺らの名前を知ってるってことは、俺らも自己紹介可能なわけ?

 

177:空の王者 ID:MH2nddosHr8

光輝のジンオウガの名前も、剛太のグラビモスの名前もそれで知ったらしい

どうせ邪神絡みだろうよ

 

178:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

アルセウスか……

なんだかんだで、あん畜生が一番なに考えてんのか謎よな

 

179:空の王者 ID:MH2nddosHr8

「全てのポケモンに出会え」とは言うが……ぶっちゃけ「出会ったところでどうしろと?」としか思えんかったわ

 

180:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ディアパル二匹がいれば、ワンチャン帰れるとはいえ……な

ましてや今回、ショウちゃんはゲーム主人公とは違って明確に

「帰りたい」

という意思を示しているから、原作と同じオチになると……

 

181:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……なぁ、もしかせんでも光輝ってばやらかした?

 

182:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

その判断は早計だ、まだオチがそうとは決まってない

 

183:空の王者 ID:MH2nddosHr8

原作との最大の違いとして、俺らがいるわけだしな

できる限り自重しているとはいえ、俺らの存在が原作にどう影響するかわからんし

 

184:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

早合点が過ぎたか……いや、それでも考えうる未来を想定したら怖いもんよ、コレ

 

185:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……そこは光輝に任せるしかない

ショウちゃんの心は今、完全に光輝に傾いてるからな

 

186:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺としては、帰れんかったとしてもこの広大なヒスイ地方をショウちゃんと一緒にワールドツアーしてみたいところだがな

 

187:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

空の王者の面目躍如だな

 

188:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

リオレウスに乗って空を飛ぶんだから、楽しくないわけがない

 

189:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なんなら俺らも生前には「乗ってみてぇ!」って思ったくらいだしな!

 

190:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

モンハンST時空に近づいてきたな

 

191:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まぁ、ダメだったとしても俺らが全力でアフターケアして何とかするしかないな

 

192:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

どうするにせよ、全てはショウちゃんとオチ次第……だな

 

193:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なぁ、冗談抜きで闇落ちだけは勘弁だぞ?

 

194:空の王者 ID:MH2nddosHr8

先のことなんてわからんよ、特に人の心なんてな

 

195:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

その時その時で、即時対応するほかあるまい

 

196:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

是非もねぇ、ってか

 

 

 

 

 

 

 

 

――「無双の狩人」が参加しました――

 

 

726:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

えー……

こちら、エイパム山のジンオウガこと光輝……

到着しましたー!

 

727:空の王者 ID:MH2nddosHr8

お疲れぇーい

 

728:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

想定より早かったな

まだ一日半しか経ってないぞ

 

729:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そりゃあ

 

黒曜の原野→紅蓮の湿地

 

 

紅蓮の湿地→群青の海岸

 

では、越える山の数が違うからな

前者のほうが高い山が多くて……

 

730:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

結局、ここまで剛太が一回も会話に加わっていない件ww

 

731:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

んー……そろそろコツを掴んで、自力でモンボから出てきそうではあるがな……

とりあえず、渡りのなぞえ方面からイチョウの浜辺に行くわ

 

732:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それじゃあ、俺もスタンバっておくか

 

733:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そういや流静、ガラナさんは?

 

734:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……そういや、今日はまだ見てないな

俺は昨日はしまなみ浜の方面にいたから

 

735:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

案外、あの人もイチョウの浜辺でスタンバっていたりして

 

736:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あるかもなぁ……

 

737:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

こちら光輝、イチョウの浜辺に到着した

……あと、ガラナさんとエンカウントしてもうたんだが

 

738:空の王者 ID:MH2nddosHr8

 

739:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

やっぱおったか

 

 

――「鎧の覇者」が参加しました――

 

 

740:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やっとコツ掴んだ!

いやぁ、長かった長かっ――って、アイエエエ!?

ガラナさん!?ガラナさんなんで!?

 

741:空の王者 ID:MH2nddosHr8

間、わっるww

 

742:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うおおぉ……ガラナさん、絶句してしまわれておる

 

743:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そして追い打ちとばかりに……俺、参戦!!

 

744:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

余計にややこしくなるわ!!

 

745:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……とりあえず、俺は大人しくモンボに戻るわ……

 

 

――「鎧の覇者」が退室しました――

 

 

746:空の王者 ID:MH2nddosHr8

剛太ェ……ww

 

747:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ガラナさん……まぁ、気になるわなぁ……俺らのこと

 

748:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

んー……ガラナさんの想像は半分正しい

俺ら、モンハン世界じゃ同じ「竜種」だしな、仲間と判断するのは間違ってない

 

749:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ま、今回はシンプルに邪魔だからどいてもろて……って、アンノーン?

 

750:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おぉ、アンノーンが横一列に整列して……ははぁん、こうして名前が分かるわけか

 

751:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ショウちゃんはもとより、ガラナさんも心なしか嬉しそうだな

 

752:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、俺はガラナさんとススキさんともある程度交流があったしな

といっても、向こうからの一方的なものではあったが

 

753:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それよりほれほれ、とっとと人竜問答やらんかい

 

754:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おぉ、トークデッキはちゃんと用意したか?

 

755:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、配信かよww

 

756:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

んー、しかしどうやって伝えたものか……あ、アンノーン

通訳してくれるのか、ありがてぇ!

それじゃあ、問一

人は憎いか?

 

757:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いきなり核心を突くやん

 

758:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ふむ……ショウちゃんは「憎いが、それだけではない」と。

 

759:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なるほどなー……

んじゃあ次、問二

世界を犠牲にする覚悟はあるか?

 

760:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おぉ、そうか

場合によっちゃあ、帰還を優先してこの状況を放置するのも選択肢としてあるからな

 

761:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……「覚悟はある」ってさ

 

762:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふむふむ……

それじゃ、最後だ

自分の選んだ道に後悔はしないな?

 

763:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いっちばん重い質問きたな

 

764:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ほぅ……「後悔はするかもしれない」と来たか

 

765:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

「それでも、やり直したいとは思わない」……ね

ふむぅ……うん、合格!

 

766:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

仲間が増えるよ!

 

767:空の王者 ID:MH2nddosHr8

やったねショウちゃん!

 

768:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お、お前らショウちゃんに何の恨みがあるんだ!?

 

769:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さて、と……とりあえず仲間になる前に一つ……やるべきことがある

 

770:空の王者 ID:MH2nddosHr8

はい?

 

771:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えぇ?

 

773:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まだ何か?

 

774:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なぁ、光輝……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喧嘩しようや

 

775:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……え?

 

 




次回、無双の狩人 VS 大洋の支配者
デュエルスタンバイ!


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其の逢着(であい)は荒波と共に

改めて戦闘描写って難しすぎる……
上手く書けたか、ちゃんと伝わってるか怪しいですが、どうぞ!

ラギアクルスとジンオウガ
共に3を冠するシリーズ(triとthird)の看板モンスターかつ雷属性
果たして、勝者は……



注意! 技を4つ以上使います!……モンハンモンスターのスペックならむしろ普通か……?


紅蓮の湿地で岩を纏う竜「グラビモス」を仲間にして、霧の遺跡で一夜を明けた。

新しい仲間が増える、というのはいつだって嬉しいものだ。特にグラビモスはジンオウガとは浅からぬ仲であり、ひと目で仲間だとわかる関係だった。

ジンオウガも仲間に会えて嬉しかったろうし、私もジンオウガの仲間が手持ちに加わってくれたことがすごく嬉しかった。何気に手持ちを六匹以上持ち歩いているけど……ジンオウガとグラビモスは物分りが良く賢いから、むしろ「もっと手持ちに構ってやれ」とばかりに背中を押されることが多い。……時々、人間を相手にしているみたいに感じるのは内緒だ。

 

今日の朝ご飯は手持ちのみんなが採ってきてくれたきのみ……と、ガブリアスが狩ってきたオヤブンベロベルトだった。手持ちのみんなにも、私のポケ食が馴染んできたみたいで、なんだかなぁ……。でも、人間の私とポケモンの自分たちとでは食生活が異なるということを正しく理解してもらえていると思うと、良い意味でも悪い意味でもクルものがある。

……ベロベルトの舌のほうが歯応え凄い……でも、ほとんど筋肉みたいでちょっと硬い……。脂身……は、進化系の方が上。でも進化前の方がその分あっさりしてていいかも。

 

朝食を終えて、ボールからジンオウガを出す。……この瞬間って、いつもそうなんだけど嬉しさがすごく溢れるんだよなぁ……わかるかな?

 

「おはよう、ジンオウガ。今日はどこに行くの?」

 

「グルル……」

 

ジンオウガが顔を向けた方向にはリッシ湖がある。……いや、ジンオウガが見ているのは、もっと先……。

私はアルセウスフォンを取り出してマップを広げる。すると、ジンオウガが後ろからひょっこりと顔をのぞかせた。

 

「……?ジンオウガ、気になる?」

 

「ガウ」

 

ジンオウガがアルセウスフォンに興味津々だったから、思い切って見せてあげた。ふんふん、と頷く様子はとても人間味があってちょっと面白い。……というか、アルセウスフォンを理解できてる?……どれだけ賢いんだろう、彼は。

私は彼が示す次の目的地である群青の海岸を画面に映した。

 

「次はこの、群青の海岸ってところ?」

 

「ガウ!」

 

「そっか……それなら、早く移動しないとね」

 

彼が尻尾を下ろしたのを見て、私はすぐさま乗り込んだ。……最近、カミナギの笛を吹く機会が減ってきたな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

群青の海岸には一日半で到着した。山も上り下りが比較的少なかったから、早く着くことができたのかな。

私たちがいる場所はエイパム山。すぐ麓にはススキさんの家があるけど……。

 

「ジンオウガ、あそこ」

 

「……?」

 

「人間の家があるの、あそこ。……避けて通ろう」

 

「ガウ」

 

ススキさんがジンオウガを見た日には、恐怖のあまり失神してしまうかもしれない。そうでなくともついこの間のセキさんの時みたく、知ってる誰かと遭遇するのは怖いし、なにより彼らを見られてしまうのは非常に良くない気がするから。

私はジンオウガに指示を出して、ススキさんの家を避けるルートを通ってもらうことにした。渡りのなぞえを経由して、ジンオウガはイチョウの浜辺へと向かっていった。なんとか人目を避けてイチョウの浜辺についた私たちだけど……

 

「……っ!?ショウさま……?それに、そちらのポケモンは……」

 

「……ガラナ、さん……」

 

なんと、たまたまそこにいたのかイチョウの浜辺にシンジュ団のキャプテンであるガラナさんがいた。

ガラナさんとはこの群青の海岸に住む島キングのウインディが荒ぶった際に一緒にシズメダマを作ったり、海に棲む30m級のポケモンのことを教えてもらったりした。私としても決して悪い印象のない人だ、ススキさんとも良い仲だし。

ただ、ちょっとマズイ事になった。見られないようにしたいと思っていた矢先に、ガラナさんにジンオウガを見られてしまった。どうしよう――

 

ポンッ

 

「ギシャアァァァオッ!!」

 

「あ」

 

「!!」

 

ちょ、グラビモス!?なんで急に出てきて……あ、ガラナさんを見て固まった。

 

 

バッシャーンッ!!

 

 

「グルオオオオオォォォォォォォォォッ!!」

 

グラビモスが勝手に出てきたと思ったら、今度は海から別のポケモンが!!

 

話に聞いていた通りの長大な体躯。

頭部後方に伸びる巨大な角。

美しく蒼く光る外殻。

背中に並ぶ赤色の突起。

 

ガラナさんの言うとおり、30mに届くであろう巨大なポケモンが姿を現した!

 

「こ、これが……!ガラナさんが言ってた30m級ポケモン……!!」

 

「あなた様……」

 

海から現れたポケモンは、ゆっくりとこちらに近づいてくる。その際、脇に避けたガラナさんに対して一瞥を投げると、すぐに私の方へと目を向けた。

しばらく固まったままだったグラビモスが、再起動と同時に私の方に顔を寄せてきた。心なしか、ボールを見ているような……。

 

「あ、戻るのね」

 

「ヴァー」

 

「じゃあ、はい」

 

ボールを突き出せば、グラビモスは自分からボールに戻っていった。……ちょっと、空気を読んで欲しいなと思ったら本当に読んでくれた。後でいっぱい遊ばせてあげるからね……。

 

「……ショウさま、そのポケモンは……?それに、先ほどのドラゴンらしきポケモンも……」

 

「……それは……」

 

「もしや、"彼の御方"と同郷のポケモンなのですか?そちらの狼ポケモン……どことなく、雰囲気が"彼の御方"と似通っています」

 

「えっと、後で話します。今は……」

 

「グルルルル……」

 

目の前のドラゴンポケモンが唸り声を上げると、どこからともなくアンノーンが三度飛来した。

ガラナさんが、不思議そうな顔でアンノーンを見つめていた。

 

「ポケモン……?」

 

「アンノーンって言います。ラベン博士が言うには、異国の文字を象っているのではないか、とのことですが……」

 

「文字?」

 

「はい。……私、少しは読めますので解読できますよ。……あ」

 

しばらくあたりを漂っていたアンノーンたちが、規則正しく並び始めた。首長ポケモンの前で整列したアンノーンたちの文字を、私は左から翻訳した

 

RAGIA KURUSU

 

「『ラギアクルス』……それが、あなたの名前なんだね」

 

「グルララ」

 

「ラギアクルスさま……ようやく、あなた様の名前を知ることができましたね」

 

「グルァ」

 

見れば、ガラナさんも嬉しそうにしている。

それもそうだ……ガラナさんは、先代島キングのウインディを助けてもらってから、ずっとラギアクルスを追いかけていたから。名前も何も知らない存在を追い続けて……今、ようやくその名を知ることができたんだ。嬉しさも一入だろう。

 

自己紹介を終えたので、アンノーンは解散……と、思いきや。アンノーンはすぐさま飛んでいかず、なぜかラギアクルスの方を見ていた。ラギアクルスもアンノーンを見て小さく唸ると、アンノーンたちはウンウンと頷いている。

そうしてラギアクルスとアンノーンのコミュニケーションが終わると、アンノーンたちが再び並び始めた。私は並び始めたアンノーンたちの文字をすぐに解読した。

 

TOU

 

「……問う?」

 

どうやらラギアクルスは、私に聞きたいことがあるらしい。再びアンノーンたちが動き始めた。

 

NINGEN GA NIKUI KA?

 

「……っ!!」

 

どうして知って……いや、きっと彼にはお見通しなんだろう。ジンオウガだって、私の悲しみと苦しみを察知して、傍に寄り添ってくれたんだから。グラビモスやラギアクルスが同じことをできないなんて、誰が決めつけた?

 

「……たしかに、ムラのみんなが憎い、って気持ちはある、よ。でも、憎いばっかりじゃない……ムラの中には、優しかった人達もいる。

テル先輩、ラベン博士、それにシマボシ隊長……ちゃんと、優しい人もいるって、知ってるから」

 

「グル……」

 

ラギアクルスは、ひとつ頷いた。アンノーンたちは再び、せわしなく動き出す。

 

SEKAI WO

GISEI NI SURU

KAKUGO HA ARUKA?

 

「犠牲……」

 

今一度、改めて考えさせられる問いだった。私自身、元の世界に帰れさえすれば世界なんてどうなってもいいとさえ考えている。けど、助けられたはずなのに助けなかった、というのはなんとも後味の悪い結末を迎えそうで嫌になる。

……それ、でも。それでも、私は。

 

「……覚悟は、ある。私は、元の世界に帰りたい。たとえ、その過程で問題を解決できなかったとしても……私は、私の願いを成就する」

 

「ショウさま……」

 

ガラナさんの悲痛に満ちた視線を感じる。ごめんなさい、ガラナさん……でも、私はもう決めたので。後戻りするつもりはありません。

ラギアクルスは僅かに目を細めるも、すぐに小さく頷いた。そして、アンノーンがもう一度動き始めた。

 

SAIGO NI TOU

 

ZIBUN NO

ERANDA MICHINI

KOUKAI HA

SINAI NA?

 

「後悔……」

 

ラギアクルスの、最後の問い。私自身、まだこの選択が完全に正しいかどうかなんてわからない。歩みそのものはまだまだ途中だ……けれど、どこかでその選択を後悔する日が来るかも知れない。

確かに私はここに至るまでずっと助けられ、導かれるがままだった。……ジンオウガに、依存すらしているかもしれない。それでも……彼について行くと、共に行くと決めたのは私自身だ。

 

「後悔は、するかもしれない。けれど、その後悔をする道を選んだのも私自身だから……。

失敗するかもしれないし、取り返しのつかないことになったとしても……それでも、やり直したいとは思わないよ」

 

「……グルラ」

 

ラギアクルスは大きく頷くと、その顔には小さな微笑みが浮かんでいた。ジンオウガとちょっと笑い方が似てるかも。

そう考えていると、ラギアクルスがジンオウガの方へと向いて小さく吠えた。……なぜか、ジンオウガが酷く動揺しているような気がする。私がジンオウガに尋ねるよりも早く、ラギアクルスは動き始めた。

 

「グルオオォアァ!!」

 

ラギアクルスが一際大きく吠えたかと思うと、アンノーンたちがまたまた一斉に動き始めた。

 

KETSUI WO IDAKE

KAKUGO WO SHIMESE

CHIKARA WO MISERO

WARE HA

KISAMA TONO KETTOU WO NOZOMU

 

「け、決闘……それって、バトルってこと!?」

 

「グルラ」

 

まさか、ここでラギアクルスとバトルすることになるなんて……!ジンオウガとの稽古を通じて、ジンオウガの強さというのは恐ろしい程に目にしてきた。そのジンオウガの仲間であろうラギアクルスの実力は、きっと並大抵のポケモンは凌駕するに違いない。

そんなポケモンとバトルなんて、どうすれば……!

 

「ガルルル……」

 

「ジ、ジンオウガ……?」

 

私が動揺していると、ジンオウガが前に出てくれた。それから、私の方へと振り返り、そしてラギアクルスを睨みつけた。

 

「……戦って、くれるの?」

 

「ウオオォォォンッ!!」

 

私が尋ねれば、「任せろ」とばかりに吠えるジンオウガ。……そうだ、弱気になっちゃいけない。私にはジンオウガと、グラビモスがいる。二匹がいるのに、負けるわけにはいかないんだ!

 

「お願い、ジンオウガ!」

 

「ガオウッ!」

 

私がジンオウガを選出するのとほぼ同時に、ラギアクルスはガラナさんの方へと振り返った。ジッと見つめてくるラギアクルスに、ガラナさんはおおよそ何を言いたいのかを察したらしい。

 

「……まさか、あたくしに背中を預けて下さるのですか……?ラギアクルスさま」

 

「グラァ」

 

「……!!……分かりました。シンジュ団キャプテン、ガラナ。

不肖の身なれど、あなた様を全面的にサポートいたします!」

 

「…………」コクリ

 

どうやら、ラギアクルスは一時的にガラナさんを主人と定めたらしい。ガラナさんもガラナさんで、すっかりやる気に火がついている。目がガチだ。

お互いに距離をとり、バトルの用意に入る。近くにいたタマザラシたちは一斉に逃げ出し、夜になってもなお野生ポケモンが近づけない重々しい空気がイチョウの浜辺に広がっている。

……大丈夫。ジンオウガの技は、稽古の間に概ね把握している。あとは、指示を出す人間次第だ!

 

「……準備はいいですか、ショウさま?」

 

「もちろんです」

 

「ラギアクルスさまに頼られた以上、一切の手加減は致しません。覚悟はよろしいですね?」

 

「ここまで来た以上、逃げも隠れもしません。私は、私の願いを成就します!」

 

「……よろしい、良い覚悟です。それでは、参りましょう……ラギアクルス!」

 

「グルオオオオオォォォォォォォォォッ!!」

 

「やろう、ジンオウガ!私たちの力を、ラギアクルスに示すために!!」

 

「ウオオオオォォォォォォォーーーンッ!!」

 

勝負だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※お好きな脳内BGMでお楽しみください

……音楽次第であなたがハンターかトレーナーかわかるかも……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先手を取ったのはガラナさんだ!

 

「まずは小手調べです。ラギアクルス、スピードスター!」

 

「グララァ!」

 

ラギアクルスの口から、複数の星型弾が発射された。スピードスターは必ず命中する技……なら、撃ち落とすのみ!

 

「ジンオウガ!かみなり!!」

 

「ガオオォウ!!」

 

ジンオウガから放たれた強烈な雷撃はスピードスターを撃ち落として、ラギアクルスに直撃した!だけど……

 

「……フンッ」

 

「ラギアクルスに電撃は無意味ですよ」

 

まったく効いた様子がない!ジンオウガとの稽古中に気づいたことだけど、彼らはタイプ相性とは別にほのお・みず・でんき・こおり・ドラゴンの五つのタイプにのみ限り、別の相性を持っている。

ジンオウガのタイプは「でんき・かくとう」(稽古中に知った)だけど、じめんやフェアリーの他にこおりタイプにも弱い……といった風に。

でんき技を受けたラギアクルスが無傷であるところを見るに、ラギアクルスは間違いなくでんきタイプを持ってる!

 

「ラギアクルス、10万ボルト!」

 

「グララァ!!」

 

今度はラギアクルスの電撃が襲い来る。けれど、ジンオウガは全く堪えた様子はない。完全な無傷だ。

 

「ふむ、そちらもでんきタイプは効かない……と」

 

「確認のつもりですか」

 

「えぇ、お互いに得手不得手なタイプを把握できていないでしょうから。

けれど、これでお互いがでんきタイプで、それゆえでんき技は使えない……ということがわかりました」

 

ガラナさん、そこまで考えてわざとでんき技を……。

さすがはキングのお世話を任されているキャプテン……やっぱり一筋縄じゃ行かないな。

 

「ラギアクルス!アクアテール!!」

 

「ジンオウガ!アイアンテール!!」

 

ラギアクルスのアクアテールと、ジンオウガのアイアンテールが激突し、激しい衝撃を巻き起こす。ただでさえ大きな体の二匹が暴れまわるものだから、その威力は凄まじい。並のポケモンだと、一撃で瀕死になってしまいそうだ。

ぶつかり合う二匹が、同時に弾かれる。今度はこっちから攻める!

 

「素早く、きりさく!」

 

「ウオォンッ!!」

 

早業で一気に仕掛ける!一瞬で間合いを詰めたジンオウガの爪が、ラギアクルスを切り裂く。このまま一気に!!

 

「力強く!インファイト!!」

 

「ガウ!ガウ!ガウッ!!」

 

「グルオォァァ!!」

 

守りを捨てて一気に攻めるインファイトが、ラギアクルスへと一気にダメージを与える。

このまま押し切れば……!

 

「ラギアクルス!海へ!!」

 

「……ッ!!」

 

ガラナさんの指示を受けたラギアクルスが尻尾を振り回してジンオウガを弾き飛ばすと、そのまま身を翻して海へと飛び込んでいった。

速い……!あれだけの巨体なのに、あんな素早く動けるなんて……!

 

「気をつけて、ジンオウガ!」

 

「グルルルル……」

 

この勝負の最大の決め手は、如何に相手よりも早く相手の弱点を知るかだ。

ガラナさんはジンオウガがでんきタイプであることは知ったけど、かくとうタイプとの複合であることや体質的にこおりタイプに弱いことを知らない。

反対に私もラギアクルスがでんきタイプであること以外に複合タイプなのか単タイプなのか、どんなタイプに弱いかを把握できていない。だからこそ、ジンオウガが使える様々なタイプの技を、全部ぶつけていくしかない。

 

ラギアクルスが海に潜ってから、数分が経った。どこから来る?どんな技で来る?

ジンオウガともども、ラギアクルスが飛び出してくる時を待つ――

 

「……今です、こおりのキバ!!」

 

「グルオォォッ!!」

 

ジンオウガの目線が右へ向いた直後、向かって左側からラギアクルスが飛び出してきた。しかも、その牙には氷の力が宿っている……まずい!!

 

「ギャンッ!?」

 

「ジンオウガッ!!」

 

避けられなかった!ラギアクルスはジンオウガの左前脚に噛み付き、苦手なこおりタイプの激痛にジンオウガが悲鳴を上げる。

 

「負けないでっ!ほのおのキバ!!」

 

「……!」

 

ジンオウガの牙に灼熱の炎が溢れ、その牙でラギアクルスの首へと噛み付いた。流石にこれは効いたようで、ラギアクルスは口から前脚を離すとそのまま距離をとった。

 

「ジンオウガ、大丈夫?」

 

「ガルル……」

 

マズイな……しもやけ状態になってる。対して向こうはやけど状態にならなかったみたい……。

加えてあの反応……ダメージはあるけど弱点ではない、か。

 

「……先ほどの反応から察するに、そちらのジンオウガはこおりタイプが苦手のようですね」

 

「バレましたか……けれど、次からは当たりませんから!」

 

「ガオウッ!!」

 

「その意気です。あたくしとラギアクルスも、まだまだ全力ではありませんから!」

 

「グルラァ!!」

 

それにしても、ガラナさんとラギアクルスのコンビ……とてもさっき組んだとは思えないほどの連携だ。きっとガラナさんは、とても根気強くラギアクルスを観察していたに違いない。覚えられる技を把握できてしまうほどに……。

 

「今度はこちらからです。……素早く、ウェーブタックル!!」

 

「グルルル……グラァ!!」

 

水流を纏ったラギアクルスが、一気にこちらへ突撃してきた!それなら、こっちも!

 

「素早く、アイアンヘッド!!」

 

「ウオオオオォォォンッ!!」

 

同じように鋼の力を纏ったジンオウガが突撃し、両者共に激しく激突した。力は拮抗し、またもや弾かれた。

……いや、僅かにラギアクルスの体勢が崩れている!

 

「ライジングテール!」

 

「ウオォン!!」

 

ジンオウガが一気に接近し、攻勢に出る。

ライジングテールはジンオウガ専用の技で、内容としては体を捻ってから周辺を尻尾で素早く薙ぎ払い、その反動で空中に飛び上がる攻撃だ。稽古中も頻繁に使ってきていて、そのあとの空中からの追撃はわかっていても対応が難しかった。

尻尾攻撃がラギアクルスの顔を直撃し、ジンオウガは空中に躍り出た。このまま追撃をする!

 

「ジンオウガ!シャドークロー!!」

 

「……!ラギアクルス、かみくだく!!」

 

影の爪で強襲しようとしたジンオウガだけど、それよりも早くガラナさんの指示が飛んだ。ラギアクルスも素早く反応し、ジンオウガの首元へと思い切り噛み付いた!

 

「ガッ!?」

 

「ジンオウガ!!」

 

「そのまま叩きつけなさい!」

 

「グルルルラァ!!」

 

「ガアァァッ!!」

 

ラギアクルスが渾身の力でジンオウガを叩きつけた。背中から思い切り倒されたジンオウガは苦しみもがいている!

 

「ラギアクルス、れいとうビーム!」

 

「っ!?かみなりパンチ!!」

 

「……!ガウァ!!」

 

「グルァ!?」

 

咄嗟に指示をしたかみなりパンチが上手く決まった!ダメージこそはないけれど、ジンオウガの前脚はラギアクルスの顎を思い切りかち上げた……直後、はかいこうせんもかくやとばかりの極太のれいとうビームが空に向かって放たれた。

……あ、あんなの当たったら死んじゃう……。

ジンオウガはなんとか体勢を立て直して距離を取ることができた。ここは遠距離から牽制を!

 

「はどうだん!」

 

「力強く、シャドーボール!!」

 

ジンオウガのはどうだんと、力業で放たれたラギアクルスのシャドーボールがぶつかり合い、激しく爆発した。ここだ!!

 

「じゃれつく!!」

 

「ウオオォン!!」

 

「グルオォォ!?」

 

「ラギアクルス!?」

 

ジンオウガのじゃれつくが命中し、ラギアクルスが苦しそうに声を上げた。ガラナさんが驚愕に顔を歪めている。

フェアリーが弱点……見た目とも相まって、やっぱりドラゴンタイプか!

 

「みずのはどうで引き離すのです!」

 

「グルァ!!」

 

咄嗟に足元へみずのはどうを放ち、その衝撃でジンオウガは距離を取らざるを得なくなった。

けれど、収穫は十分にあった……!

 

「弱点、見つけましたよ」

 

「くっ……さすがはショウさま、バトルはお手の物ですね」

 

「ありがとうございます」

 

ジンオウガもラギアクルスも、お互いに息が上がっている。まして、ジンオウガはしもやけ状態のままだ……このままでは、先にこっちの体力が尽きてしまう。

体力が尽きる前に、一気呵成に攻めるしかない!!

 

「決着をつけます……!つるぎのまい!!」

 

「ウオオオオォォォォォォォンッ!!

 

激しく踊り、力を高めるつるぎのまいで攻撃力を上げて、一気に攻める!!

 

「させない……!ラギアクルス、りゅうのはどう!!」

 

「グルオオォォォォォ!!」

 

力を高めたポケモンに近づかず、しかし威力の高い技での攻撃。

 

……読んでいた!!

 

「でんこうせっか!!」

 

「ガオウ!」

 

りゅうのはどうを紙一重で回避し、一気に突撃!

 

「グラッ!?」

 

「そんな!」

 

こちらの読み通りの回避に、ラギアクルスとガラナさんが同時に驚き声を上げた。

その隙、もらった!

 

「ジンオウガ!メガホーン!!」

 

「ガアアアアッ!!」

 

ジンオウガ渾身の一撃が決まった!

 

「グルァッ!」

 

「しまった!?」

 

メガホーンを受けて怯んだ隙を逃さない!

 

「ジンオウガ!トドメの……はかいこうせん!!」

 

「ウオオオオォォォォォォォンッ!!」

 

これで、終わりっ!!

 

「グルアアァァァァァッ!?」

 

「ラギアクルスッ!!」

 

トドメの破壊光線も決まった!!爆煙が晴れると、そこには力なく体を横たえたラギアクルスの姿があった。

 

「あぁ!ラギアクルス!!」

 

「グルルル……」

 

ガラナさんが急いで駆け寄り、そっと傍に寄り添う。ラギアクルスは「問題ない」と言うように、ガラナさんの方へと視線を寄越していた。

 

「……ごめんなさい、ラギアクルスさま。あなた様の背中を預けられながら……」

 

「グルラ」

 

「……えぇ、ありがとうございました。あなた様とともに戦えたこと、一生の誇りですわ」

 

結果的に敗北ではあったけれど、ガラナさんは清々しい表情だ。そんなガラナさんを見てか、ラギアクルスもどこか満足気にしていた。

 

「ガラナさん、かいふくのくすりです。使ってあげてください」

 

「ありがとうございます、ショウさま」

 

私はジンオウガに、ガラナさんはラギアクルスにそれぞれ回復アイテムを使ってあげる。二匹の傷もすっかり治り、元気になってもらえた。

 

「どうだったかな、ラギアクルス。私はあなたのお眼鏡にかなったかな?」

 

「グルル」コクコク

 

「それじゃあ、改めて……私に力を貸して、ラギアクルス!」

 

「グルオォォア!!」

 

ラギアクルスの咆哮が、夜のイチョウの浜辺に木霊する。私はモンスターボールを取り出すと、それをラギアクルスに押し付けた。一瞬にしてラギアクルスがボールの中に収まり、捕獲の合図の花火が打ち上がった。

 

「これからよろしくね、ラギアクルス」

 

「……ショウさま」

 

三匹目となる、新たな仲間……ラギアクルスに思いを馳せていると、ガラナさんが声をかけてきた。

 

「……はい、ガラナさん」

 

「ラギアクルスさまのこと……どうかよろしくお願いしますね」

 

「もちろんです、任せてください」

 

「…………」

 

ガラナさんは、何かを言いたそうにしている。しばらく葛藤するように目を閉じていたガラナさんだったけど、小さく息を吐くと目を開けた。

 

「……ギンガ団追放の件、理不尽極まりなしとカイから伺っております。

尽くしてきたムラ、組織の突然の裏切り……。ショウさまがその胸に抱いた憤怒、憎悪、悲哀、艱苦……十代半ばにして一人、野に放たれたその心中、察するに余り有る……。

カイもまた、一組織の長としてあなたを助けられない事を嘆いておりました」

 

「カイさんが……」

 

「ショウさん。お辛いでしょうが、今は雌伏の時……耐え忍び、機を窺うのです。あるいは、この空をどうにかできれば……」

 

「……そのためにも、力が必要なんです。そのための、彼らなんです」

 

「……!なるほど……それでは、ショウさまは最初からラギアクルスさまを目的に?」

 

「いえ、その……それは、ジンオウガが連れてきてくれたといいますか……。私はただジンオウガの背に乗ってきただけなので……」

 

「ジンオウガ……?あの狼のポケモンが?」

 

「はい……」

 

思えば、ジンオウガの行き先は常にはっきりとしていた。深紅沼にいるグラビモスに会いに行く時も、イチョウの浜辺でラギアクルスと出会った時も……まるで、最初からそこで会うつもりだったかのようで。

私、まだまだジンオウガたちのことを知らないなぁ……今度、私なりにジンオウガたちのことをまとめたポケモン図鑑でも作ってみようかな?ラベン博士の図鑑作り、楽しそうでちょっと興味があったんだ。

 

「ジンオウガ……それに、岩のドラゴンポケモン……」

 

「あ、あの子はグラビモスって言います」

 

「そう、グラビモス……そして、ラギアクルスさま……どの方々も、不思議と浮世離れしたかのような、似通った雰囲気をお持ちですね。この世ならざるもの、とでも言いましょうか……見目にとどまらず、その力もまた過剰とも言うべきものです」

 

「…………」

 

ガラナさんの言葉を受けて、私の脳裏をよぎったのはラギアクルスのれいとうビームだ。あのれいとうビーム、かなり殺意が高かったな……。

それだけじゃない。ジンオウガの技も、ラギアクルスの技も、同じポケモンが使ったとは思えないほどに威力が高かった。体が大きいから、という理由だけではない。おそらく秘められた潜在能力が、普通のポケモンよりもずっと高いからだ。事実、今日のバトルで見たラギアクルスのアクアテールとダイケンキのアクアテールでは、威力にかなりの差があった。

 

「彼らはどこから来たのか、いつからこのヒスイの地にいるのか……疑問は尽きませんけれど、彼らがいてくれたからこそあたくしは先代の島キングを救われ……そして、ショウさまもまた、救われた。……そうでしょう?」

 

「はいっ」

 

あの時の蹄鉄ヶ原での出会いは、偶然かも知れない。けれど、その偶然があったからこそ、今の私がある。ジンオウガと初めて出会ったあの日のことを、私は一生忘れないだろう。

 

「ショウさま、忘れないでください。あなたを疑う者もいれば、あなたのことを信じている者もいることを」

 

「ガラナさん……」

 

「……おぉーい!」

 

「「?」」

 

ガラナさんの言葉を噛み締めていると、遠くから誰かが呼んでいた。揃って声の方へ振り向けば、見慣れたイチョウ商団の服を着た男性が走ってきていた。

 

「ウォロさん?」

 

「はぁ……はぁ……。いやぁ、やっと見つけましたよショウさん!ジブン、あなたをずっと探していたんですよ!お得意さまがいなくなると、ジブンも困りますからね」

 

「えぇ……?」

 

走ってきたのはウォロさんだった。若干、息が上がってる……どれだけ走り回ってたんだろう?

ウォロさんはイチョウ商会という組織に所属する人で、よく私に絡んでくる人だ。人差し指を立てて話す不思議な癖がある。

 

「えっと……なんだか探してもらってたみたいですみません」

 

「いえいえ!これくらいの労力なら大したことありませんよ。実は、ギンガ団、コンゴウ団、シンジュ団のいずれにも居場所がないショウさんのために、いい場所の情報を持ってきましたよ!」

 

「そうなんですか?」

 

「えぇ、それは――」

 

ポンッ

 

「――え」

 

「ガオウッ!!」

 

「のわぁっ!?」

 

ウォロさんが持ってきたという情報を話そうとした、その時だ。ボールからジンオウガが飛び出して、ウォロさんを咆哮の圧で軽く飛ばしてしまったのだ。

ゼロ距離で咆哮を浴びせられたウォロさんは、ジンオウガの威圧感もあって腰を抜かして倒れこんでしまった。

 

「ジ、ジンオウガ?」

 

「グルル……」

 

パクッ。

 

「へ……うひゃあっ!?」

 

ジンオウガの突然の行動に驚いていると、今度は私の服を口に咥えるとそのまま私を持ち上げてしまった。しかもジンオウガは私を宙に放り投げるとそのまま自身の背中に私を乗せて、一気に走り出してしまった。

 

「え、ちょ、ジンオウガ!?」

 

「あっ!?ちょっと!ショウさーんっ!?」

 

「ご、ごめんなさーい!!」

 

ジンオウガが止まってくれる様子もなく、せっかく私を見つけてくれたウォロさんを置いてけぼりにしてしまった。

ウォロさん、ごめんなさい……。この埋め合わせは……まぁ、いつかします。いつか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行ってしまわれましたね」

 

「…………」

 

「本当に不思議なポケモン……ショウさんはどこへ向かわれるのでしょう」

 

「…………」

 

「それでは、あたくしも失礼しますね」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「……………………」

 

「……なんなんだ、あのポケモンは」

 

「いや……あれはポケモンというより、むしろ……」

 

「……クックック」

 

「これも、全なる神の思し召し……か」

 

 

 

 

 




バトルシーン、ちゃんと皆様に伝わったでしょうか?
モンハンの攻撃にポケモンぽい名前を付けるのがなにげに一番難しい……

ちなみに今回登場したライジングテールはいわゆるサマーソルトです
由来としては超帯電状態で雷属性を得るので「強化=ライジング」となります

あっ、アンケートの件、ありがとうございました!
みんな、ショウちゃんのこと好きすぎんか……?


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【初めまして】我らモンハン部異世界支部 inモンボ【火竜編】

今回、焔くんがはっちゃけます。
そして思わぬ再会も……?


1:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

流静お前マジでふざけんなよ?

 

2:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まさかあっこからバトルの流れになるとはな

 

3:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そもそも俺は「バトルしない」とは一言も言ってないぞ

 

4:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

報連相を忘れんなっつってんの!!

 

5:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

報復、連敗、相殺?

 

6:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

報告!連絡!相談!

なんで今更小学生レベルの話をせにゃならんのだ!!

 

7:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、光輝に喧嘩を売った理由はちゃんとある。

ショウちゃんに俺らの身体スペックを理解してもらうことだ。

 

正直、このままバトルなしで仲間になってちゃ、いざ俺らをバトルで使うとなった時に加減がわからんだろ。

今回は俺も光輝も電力ノーチャージ縛りでバトルしたから、基本的な戦闘力は伝わったはずだ。

強化状態については、また別の機会にでも知ってもらえればいい

 

8:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

言わんとすることはわかるが、それでもやはり事前に相談はしてくれ

こっちにも段取りというものがあってだな……

 

9:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そんなあってないようなものなんて考えるだけ無駄だろ

それよりも次は焔の番だが……あいつ、普通に仲間になる気なさそうだよな

何をやらかす気だ?

 

10:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そっちに関してもなんにも聞いてないんだよなぁ……

やっべぇ、不安になってきたわ……

 

11:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

んー……でもまぁ、悪いようにはせんだろう

やり方はどうあれ、仲間にはなるつもりだしな

 

12:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……だが、焔が考えているであろうことは、おおよそだが予測が付く

 

13:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんぞや?

 

14:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まず、前提として焔の転生先はあの「火竜リオレウス」だ

モンハンを代表するモンスターの一体で、メインシリーズは皆勤賞

派生作品だけにとどまらず、外部作品にも引っ張りだこ

そんな超有名モンスターに転生したんだぞ?

 

「はじめましてこんにちは、どうぞお友達になりましょう」

 

……と、なるとでも思っているのか?

 

15:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ないな

 

16:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

焔の性格上、絶対にないわ

 

17:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

だろう?

ましてや空の王者と呼ばれる身でありながら、その空中機動をお披露目しないまま終わるわけない

 

18:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

襲撃か

 

19:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、絶対に襲撃かけるわアイツ

 

20:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

えぇ……俺、焔のブレスを避けながら天冠の山麓を走り回らにゃならんの?

いくらジンオウガでも、登れない場所は登れないんよ

 

21:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まぁ、襲われるのは光輝だからいいとして……

 

22:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

良くないが!?

 

23:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そもそも焔ってコンゴウ団からマークされてんだろ?

……いや、あそこはノボリもいるからシンジュ団からもか?

 

24:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そこはわからんな……焔がちょっかいかけたのは洞窟キングのマルマインだけらしいし

シンジュ団側に実害がないなら、意外と無警戒かもしれんな

 

25:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おーい、俺が火球の雨霰に打たれかねない状況について何か言う事はないのか?

 

26:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ド☆ン( ゚д゚)マ☆イ

 

27:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

(´p・ω・q`)ガンバ♪

 

28:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ぶち殺すぞお前らマジで!!

 

29:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

どうでもいいが、クダリじゃなくてノボリを採用した理由ってどう考えても名前だよな

 

30:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

本当にどうでもよくて草

 

31:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ねええええええええええええええええっ!!

 

32:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

うるさっ

 

33:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

悪かった悪かった、だから落ち着け

 

34:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はあぁぁぁ……まったく――おっ

 

35:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おや、この反応……

 

36:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

お呼ばれか?

 

37:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

みたいだな……それじゃあ、行ってくるわ

 

 

――「無双の狩人」が退室しました――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【初めまして】我らモンハン部異世界支部 【火竜編】

 

 

――「無双の狩人」が参加しました――

 

 

54:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おはよすー

さてさて、いよいよ次は焔の番だな

 

55:空の王者 ID:MH2nddosHr8

イエエエェェェェェェェイ!

俺の出番きちゃあああああ!!

 

56:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

朝からうるせぇなぁ……気持ちはわかるが

 

57:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はいはい……それで、焔

お前、前に「ちょっとやり方を考える」って言ってたよな?

具体的にはどうするんだ?

 

58:空の王者 ID:MH2nddosHr8

どうって……別に、俺の住処であるカミナギ寺院跡まで来てもらうだけやで

ただし!迎月の戦場に置いてある火竜の天鱗を持って来てもらうがな!

 

59:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えぇ……?

アルセウスフォンのワープで一発やん

 

60:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そうは問屋がってやつよ

俺が空から常に見張ってっから、ワープなんてさせんよ

それに、ただ持って来てもらうのもつまらんしな……

 

61:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おい、頼むからあんま変なことを考えんなよ?

ただでさえ昨日は流静といきなりバトルすることになって疲れとんのに……

 

62:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやいや、割と普通のことしか考えとらんから安心せい

 

63:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

本当だろうなぁ……?

 

64:空の王者 ID:MH2nddosHr8

信じなさい……信じなさい……

 

65:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

むしろ怪しさ満点だがww

 

66:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

頼むから、無茶だけはせんといてくれよ……?

 

67:空の王者 ID:MH2nddosHr8

はっはっは!この俺に任せとけー!

さて、と。それじゃあ俺は準備があるから一旦抜けるわ

 

68:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

はいよー

 

 

――「空の王者」が退室しました――

 

 

69:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ……胃が痛い……

 

70:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おいおい、今からそんなんで大丈夫か?

 

71:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

わかっちゃあいるんだがな……流静の時もあるし、心臓に悪いサプライズがいらんのよ……

 

72:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

だが、実際のところバトル自体は無駄じゃなかったんだろ?

サマーソルトなんて「ライジングテール」とかいうバカカッコイイ名前つけられちゃってさ

 

73:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

実際、超帯電状態で強くなるしな

間違いではない

 

74:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いいなー、いいなー

俺もそんなカッケエ名前つけられてーわー

 

75:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

言ってろ

……ところでお前今なにやってんの?

 

76:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えー?

……幼女の子守ですが何か?

 

77:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お疲れ様です、お父さん

 

78:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うるせぇ、氷ブレスぶつけんぞ

 

79:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

サーセンorz

というか、完全に懐かれてんな

 

80:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

朝になって目が覚めたら、もう背中にくっついてるからな

起きるまでそこら辺ウロウロしてるんだが、まるで起きる気配がない

 

81:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ベリオロスの背中って、普通は甲殻・堅殻まみれだよな?

なんで剣介って幼体ばりにふっさふさなん?

 

82:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そんなんこっちが聞きたいわ

牙の色は変わらず琥珀色だから「氷刃佩くベリオロス」とはちゃうし

 

83:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

けど、甲殻はしっかり発達してるんだろ?

 

84:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そーそー。

あれだ、コンクリのベッドの上にトゥルースリーパーを敷いてるみたいな、そんなイメージだ

 

85:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

だからワサビちゃんも引っ付いて寝っ転がってるわけね

 

86:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ソーナンスよ

 

87:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

こおりタイプが唐突にギャグをぶっこむのやめろ

 

88:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

はっはっは

……あ、セキニキにカイちゃん、ふたり揃っての参上とは珍しい

 

89:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

何しに来たんだ?

 

 

――「鎧の覇者」が参加しました――

 

 

――「大洋の支配者」が参加しました――

 

 

90:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

(朝の)8時だョ!

 

91:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

全員集合!!

 

92:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ちょっと黙ってもろて

 

93:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いきなり厳しい……

 

94:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

何かあったのか?

 

95:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

剣介ン所にコンゴウ・シンジュの両団長登場

 

96:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なん……だと……?

 

97:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ふんふん……あー、なるほどな

ワサビちゃんが俺にくっついてるって聞いて飛んできたのか

んで、事情を知ってるカイちゃんが案内してきたと

……ちょっとお二人さん、幼女寝てるんで痴話喧嘩は余所でやれ

 

98:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

剣介はいつからベビーシッターを始めたんだ?

 

99:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

すっかり板に付いちゃってまぁww

 

100:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あーあ、ワサビちゃん起きちゃった

……おう、おはよう

まさか一番最初に俺に挨拶をするとは

 

101:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

きのみうまうま

 

102:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

うまうまきのみ

 

103:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

美味い!美味い!美味い!

 

104:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

飯テロやめろぉ!

……とりあえずワサビちゃんは降りてくれ、こっちは朝ごはんまだなんだよ

……あぁはいはい、ご飯食べたら遊んでやるからとりあえず降りてどうぞ

 

105:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

イノムーでも狩りに行くんか?

 

106:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まぁそんなところかね

……え、あ、おう、どうもどうも

それじゃあいただきます

 

107:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

飯もらったん?

 

108:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

カイちゃんがきのみくれたー、うまうま

 

109:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

餌付けされてて草

 

110:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ところで焔のやつ、準備しにスレを出て行ってから随分と経つな

モグモグ……いつまでかかってんだ?

 

111:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

さてなぁ……アグアグ

 

112:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それなぁ……ングング

 

113:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

モグモグ……ゴックン

さて、ご飯を食べ終えたのでそろそろ出発するかねー

 

114:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あいよー

 

115:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

戻りまーす

 

 

――「鎧の覇者」が退室しました――

 

 

 

――「大洋の支配者」が退室しました――

 

 

 

116:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それじゃあ、俺も移動に集中するんで抜けるわ

 

117:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おう、気をつけてなー

 

118:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ほーい

 

 

――「無双の狩人」が退室しました――

 

 

119:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ふぅ……ん?アレ?

ちょっとまって、今このスレって俺一人じゃね?

 

待て待て待て、それってつまり次の焔が捕まったら俺がボッチになるのでは!?

おーい!だれかー!返事をくれー!

焔!焔ー!!戻ってこーい!俺を一人にするなぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【初めまして】我らモンハン部異世界支部 inモンボ【火竜編】

 

152:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

今頃剣介のやつ、ボッチって事実に気づいて慌ててそうだな

 

153:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

( ゚∀゚)o彡゜ぼっち!ぼっち!

 

154:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

光輝は移動に集中するからスレから抜けるし、焔が捕まれば剣介がボッチになるは必定

外に出られるうちはしっかり話をしておかないとな

 

155:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そんな可哀想なものを見る目をするのやめたげて……ww

 

156:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

wwwwwwwwww

 

157:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

しっかし、光輝のやつ……まさか、ウォロから逃げ出すとはな

 

158:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

逃げた理由も「なんとなく」だったしな

いや、個人的には焔と剣介がまだ仲間になってないから合流は早すぎると思ってたんで良き、とは思ったが

 

159:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

けど、あんにゃろうの正体を考えると俺らの存在が知られるのは結構マズイのでは?

 

160:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ウォロ自身に特別な何かがあるわけもなし、心配は無用だろう

古代シンオウ人の血を引くだけの、ただの人間だろう?

 

161:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まぁ、ただの人間だがな

 

162:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

「由緒正しき血筋の現地民」より「異世界より来訪せし転移者」の方が良ブランドって、それよく言われてるから

あとは……単純にアルセウスが「ストーカーお断り」だったからでは

 

163:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ポケモンの感性の方がまともとか、終わってるわ……

 

164:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いずれは知られることになるんだろうが、まだ時期尚早だ

ショウちゃんの人間不信も、ガラナさんとのやり取りで多少は緩和しただろうが……

 

165:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ウォロの話も、「ちょっと怪しかった」って言ってたもんな

ゲームだと迷わず着いて行ってたのに、やっぱ現実は甘くねえや

 

166:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ショウちゃんには俺らを介してでもええから、もっと多くの人と触れ合わないとな

ボロボロの刀も、何度も打ち直し続ければ立派な刃を取り戻す

ショウちゃんの心も、きっとそんな状態だろうよ

 

167:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おっと……心は硝子だぞ

 

168:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やめれ、今のショウちゃんは本当にボロボロなんだから

 

169:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

しっかし、流静が思うに焔は襲撃をかけるつもりなんだろ?

そりゃあ、試すという意味合いで言えば襲撃もまた一つの手だが、他に方法なくないか?

 

170:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、焔の襲撃には、焔自身がショウちゃんに知ってほしいこともあると踏んでいる

 

171:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

襲撃の中に?……俺には皆目見当つかんぞ

 

172:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺までいい調子で仲間を増やしてきたからな……ちょっと忘れそうになってる節もある

ある意味、それを思い出してもらうという意味でもこの襲撃は大事な要素だ

 

173:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

忘れ……?いや、さっぱりわからん

答えをプリーズ

 

174:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ショウちゃん……いや、ショウちゃんに限った話じゃない

このヒスイの地に住む人々が忘れがちになってて、思い出してもらわなければならないこと……それは……

 

175:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

何です?

 

176:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

モンハンモンスターへの……

 

 

 

 

恐怖だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【初めまして】我らモンハン部異世界支部 【火竜編】

 

206:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ついに到着!天冠の山麓だー!!

五日間の長旅でした……

 

207:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

無事に着いたようでなにより

 

208:空の王者 ID:MH2nddosHr8

待ってたぞオラァー!

 

209:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

えー、現在地は離れ湧水

とりあえず、カミナギ寺院跡へ行きたいが焔の条件もあるしな……

このまま迎月の戦場へ行くかぁ……

 

210:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ジンオウガの脚力なら、あっという間――

 

211:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!?!?!?!?

 

212:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

わあああぁぁぁぁぁ!?

……びっくりしたぁ、何事だ!?

 

213:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……突然の大声、スマン

だって、これから走ろうかってタイミングでいきなり声かかってさ

誰だと思って振り返ったら……

テルくん、ラベン博士、ノボリ、ツバキ、セキニキ

の、五人が勢ぞろいだったもんだからそりゃあ、びっくりするわよ

 

214:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あーあ、出会っちまったか

 

215:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ほぉ……

 

216:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、あのラベン博士、自分ライボルトちゃいますねん

ライボルトは角もなけりゃ甲殻だってないですよね?

テルくん、俺を警戒して危険を促すのは結構だが、今のショウちゃんには逆効果……あ、ショウちゃんキレた

事情を知ってて間を取り持つセキニキ、乙です

 

217:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

完全にカオスwwwww

 

218:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

とりあえず皆々様、落ち着いてもろて

うんうん、テルくん素直に謝れるのはいいことだぞ

というか、なんで博士とテルくんはここにおるの?

 

219:空の王者 ID:MH2nddosHr8

もしかして:俺

 

220:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

絶対にそうだww

 

221:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ふんふん、少し前からここらで巨大なドラゴンポケモンが見つかっていたと

見た目は「腕のないリザードンのよう」と

カミナギ寺院跡を中心に飛び回ってて、ポケモンの生態系に影響がでかねないと

最近は特に活動が活発化していて、人的被害が出ないとも限らないと

そのポケモンを調査して、可能なら捕獲すると

 

222:空の王者 ID:MH2nddosHr8

もしかしなくても:俺

 

223:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

wwwwwwwwwwwwwwwwwwww

 

224:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あ~……なるほどね

でもね、そいつはショウちゃんが捕獲の予約を入れてるんすよ

ほら、ショウちゃんも「自分が捕まえるから帰れ(意訳)」って言ってるじゃん

 

225:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ムラの中でも比較的信用できるからか、結構いい方がマイルドなんだな

 

226:空の王者 ID:MH2nddosHr8

じゃじゃ~ん、正義の味方登場~!! デンドンデンドンデンドンデンドン

 

227:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ツバキ落ち着け、露骨にバケモノ扱いするんじゃないよ

ほら、ショウちゃんからのヘイト溜まってんぞ

 

228:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

荒ぶるキングを速攻確3で叩き潰すのはバケモノではないと?

 

229:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺がバケモノ……?違う、俺はモンスターだ!!

 

230:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おぉおぉ、ツバキのやつ勇ましいねぇ、スカタンクを嗾けちゃって

おい、セキニキが止めてんだから聞いてやれよ

 

231:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ツバキww

 

232:空の王者 ID:MH2nddosHr8

邪魔 ピロロロロロロロロ

 

233:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

はwかwいwこwうwせwんw

 

234:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ちょww

ツバキ、ヘドばくの指示出してる途中なんだがww

普通にオーバーキル……

 

235:空の王者 ID:MH2nddosHr8

テメェにゃ用はねぇよ、三下がよォ

すっこんでろ、ボケ

 

236:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

辛辣すぎんかw

容赦ねえなぁ

 

237:空の王者 ID:MH2nddosHr8

カモン、アンノーン!!

ショウちゃん!俺の名を言ってみろー!!

 

238:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ノリノリだな、焔のやつ……

 

239:空の王者 ID:MH2nddosHr8

さあさあ、アンノーン!通訳よろ!!

 

勇気ある者よ

我が業火を潜り抜け

戦場にて鱗を手にし

我が下へ参れ

 

以上!終わり!閉廷!!

 

240:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

言うだけ言って帰りやがった……

おっ、なんか考察が始まったぞ

……そうそう、さすがはセキニキ、カミナギ寺院跡で合っとるよ

それじゃあ行こうかショウちゃん……ん?なんだいテルくん、君も来るのか?

やめとけやめとけ危ねえって、焔のはかいこうせんを見たやろ?

今のあいつはショウちゃん以外には血も涙も容赦も慈悲もないよ?

 

241:空の王者 ID:MH2nddosHr8

せやで~

……邪魔するんならプチッ、と殺るよ?

 

242:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おいばかやめろ

……いや、マジでやめろよ!?

 

243:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ほほぉ、「これ以上、ショウばかりに背負わせたくない」と来たか

ここで男を見せるか、テルくん!

 

244:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あっ……ふーん

……まぁよかろう、せいぜい付いてきたまえよ

 

245:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ショウちゃんもめちゃくちゃ揺れてるなぁ……よしっ、ここは俺が一肌脱いでやりますか!

オラァ!テルくんテメェも俺に乗るんだよあくしろよ!!

 

246:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

でたぁー!光輝の「ちからずく」だ!!

 

247:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

テルくん……俺に乗れて地味に興奮してるやん、やっぱ男の子やなぁ

それじゃあ、出発!!

 

248:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

安全運転でな

 

249:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

オッケィ!(全力疾走)

 

250:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

安全とはww

 

251:空の王者 ID:MH2nddosHr8

安全……と思っていたのか?

ここで乱入だァ!!

 

252:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

クッソ、もう来やがったか!

まだカミナギ山道に入ったばかりだってのに!!

 

253:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そぉれ、逃げろ逃げろー!

火炎の嵐が襲い来るぞー!

 

254:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おまっ、本当に容赦ねえな!?

 

255:空の王者 ID:MH2nddosHr8

はーっはっはっは!

……あ?オヤブンハガネール……邪魔

 

256:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あっ、ちょ……

容赦なくほのお技を……

 

257:空の王者 ID:MH2nddosHr8

気分は「火遁 豪火滅失」!!

 

258:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ……オヤブンハガネール、溶けてしもうた……

周りの地表も熔解しとる……

 

259:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

鬼!悪魔!焔!!

マジで容赦ないやん……

 

260:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ショウちゃんもテルくんも顔が真っ青なんだが……

おーい、しっかりしろよお二人さん!

 

261:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ふっふっふ……思い出せ、原初の恐怖を

かつてお前たちは、火竜の姿に興奮と恐怖を抱いていた……

俺が想起させるは、その恐怖!

一方的に襲われる恐ろしさを、しかと思い出すがいい!!

 

262:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

焔のテンションバリ高やん

 

263:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ククク……では、一時退散としよう

また来るからな!

 

264:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ふぅ、当面の危機は去った

せやなショウちゃん、次にあいつがいつ来るかわからんから、慎重に行こうな

 

265:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ヒヤヒヤするわぁ……氷属性だけど

 

266:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

だからこおりタイプがギャグをぶっこんでくるなっつの

 

267:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

メンゴメンゴ

 

268:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……あー、テルくんはずっとショウちゃんが心配だったのね

先輩で男なのに、ショウちゃんに何もかも背負わせて……気にしてたんか

 

269:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そーなのかー……俺も現地で会話に参加してぇ……

 

270:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

今なにしてるの?

 

271:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

幼女とシエスタ中

 

272:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

完全に保護者やんww

 

273:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

最近、ハマレンゲニキとの喧嘩中に指示を出してくるんだよな

……従っちゃう俺も大概だが

 

274:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……もう面倒くさいからワサビちゃん指示の下でバトルでもするかぁ

 

275:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そうするかぁ……実際、ワサビちゃんってトレーナーの天才よな

ドサイドン、エレキブル、ブーバーンとの3VS1は笑った

 

276:空の王者 ID:MH2nddosHr8

イヤッッホォォォオオォオウ!

 

277:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うわっ、来た

 

278:空の王者 ID:MH2nddosHr8

このままカミナギ山道を抜けられると思うなよ!

これでも喰らええぇぇぇ!!

 

279:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おいィィィィ!それヌシの技なんですけどォォォォ!?

あっぶぁ!あっぶな!?死ぬ!マジで死ぬぅ!!

 

280:空の王者 ID:MH2nddosHr8

わーい!たーのしー!!

 

281:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お前!今すぐ降りて来い!!

ぶっ飛ばしてやる!!

 

282:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なぁーにぃー?聞こえんなあー?

 

283:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

んのやろう……!!

 

284:空の王者 ID:MH2nddosHr8

はーはっはっは!

はーはっはっはっはっは!!

はーはっはっはっはっはっはhh……げほっ!げほっ!おえっ

 

285:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

脳内会話で咽るやつ、初めてだわ……

 

286:空の王者 ID:MH2nddosHr8

はぁ……モンハンの技って再現するとめちゃくちゃ疲れるんだよな……

ちょっと休憩……さいならー……

 

287:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はぁ……はぁ……し、死ぬかと思った……

 

288:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お疲れさん、今どの辺?

 

289:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はぁ……フェアリーの泉の手前の橋んとこ

ここを渡って……やっとカミナギ山道を抜けたぁ……

 

290:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

地味に長かったなww

 

291:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

焔が手加減せんからやで

 

292:空の王者 ID:MH2nddosHr8

手加減ってなんだぁ?

 

293:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

クソッタレ……

とりあえず、お前が休んでる間にゴロゴロ山地、そして列石峠を抜けさせてもらうぞ

 

294:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ところがぎっちょん!

そうは問屋が卸さんぜ!!

 

295:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

今度は何をする気なんだよ……

 

296:空の王者 ID:MH2nddosHr8

とりあえず疲れたんで技は使わない方向で

というわけで……喰らえ、「いわなだれ」!!

 

297:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、リオレウスがどうやって「いわなだれ」を――

おいバカバカやめろやめろ!ゴローンを投げるな!ゴローンを!!

 

298:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

普通にクズで草

むしろそれは「なげつける」では?

 

299:空の王者 ID:MH2nddosHr8

フゥーハッハッハッハ!

勝てばよかろうなのだァァァァッ!!

 

300:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

くさりきってやがるぜーーッ!!

 

301:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まさかモンハンの顔とも言うべきリオレウスが一番卑劣なことをするとはww

 

302:空の王者 ID:MH2nddosHr8

これだけやれば、改めて俺らモンハンモンスターが「怖くてヤベーやつ」と理解できただろ!

 

303:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まぁ、ぶっちゃけ流静まではヌルゲーだったと思わなくもない

 

304:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

だからってやりすぎには気をつけろっての!!

 

305:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ふぅむ、これすらも突破するか……

んじゃあ、一時退却とするかね……

 

306:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ぐはぁ……いや、マジで疲れたわ……

あ、ショウちゃん?ふむ……焔に投げつけられたゴローンたちが気になるのね

いいよいいよ、行ってきな行ってきな……あ、俺はボールで休めと

了解でーす

 

 

――「無双の狩人」が退室しました――

 

 

307:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それじゃ、しばらくインターバルでも挟むかね

 

308:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お前さぁ……下手にヘイトを高めないほうがいいぞ?

いくらモンハンモンスターがポケモン以上に危険で怖い生き物だって教えるためとはいえ、ここまですることはなくないか?

 

309:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、俺は必要だと感じた、だから実行した

力、知能、技……あらゆる面においてポケモンを凌駕する存在として、改めて俺らモンハンモンスターのことを知っておいてもらいたかった

流静とのバトルだけじゃ全然足りない

それどころか、そのバトルのせいで「善良な生き物」と思われてもむしろ迷惑

あとはモンハンモンスターになったというちっちゃなプライド

そんだけ

 

310:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、言わんとすることはわからんでもないが……

まぁでも、俺や流静みたく、人間と友好的な関わりがなかった焔だからこそできることだな……流静はガラナさんやススキさんに、俺はワサビちゃんやハマレンゲニキと親しくなりすぎた

今更悪者ぶったところで、微妙な空気になること請け合いだわ

 

311:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そうそう

現地民の誰とも特別親しくない俺だからこそ、今のうちにやっておかんと、と思ったのよ

 

 

 

 

 

 

 

312:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ショウちゃんとテルくん、戻ってきたな……おや?

 

313:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なんか出た?

 

314:空の王者 ID:MH2nddosHr8

野盗三姉妹

 

315:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ありゃりゃ、予定外の邪魔者か

 

316:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ふぅん……ちょっと試してみようかね

 

317:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なにを?

 

318:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ショウちゃんの人間性を……な!!

とおぉぉりゃああ!!

 

319:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

人間性?唐突なフロム要素に俺氏、困惑

何をする気だ?

 

320:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ショウちゃんってさ、今も人間不信のままだろ?

原作の流れを考えれば、ショウちゃんの人間不信は治療案件なわけだ

このままだと、伝ポケイベントの時に多少なりとも人間と関わるわけだから、困るだろう?

 

321:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それは、そう

 

322:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そこで、俺は考えた

 

 

 

 

今から野盗三姉妹をガチで殺しに行ったら、ショウちゃんは助けてくれるかな?

 

323:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お前……っ!荒療治にも程がある!!

 

324:空の王者 ID:MH2nddosHr8

非難も誹謗も軽蔑も、甘んじて受け入れよう

俺は荒療治しか治し方を知らんでな……今、邪龍になる覚悟を決めた!!

 

325:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

正気か……!?とんだヤブ医者じゃあねえか!!

ショウちゃんが助けなかったらどうするつもりだ!!

 

326:空の王者 ID:MH2nddosHr8

その時はその時よ、自害でもなんでもして見せよう

……ほほぅ、一丁前にポケモンなんぞ繰り出しおって……

挑むつもりか、天空の王者リオレウスに

 

327:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

こっちもこっちでマジか……

 

328:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ドクロッグ、ユキノオー、サイドン……主の意思に答え、無謀にも怪物に向かってくるとはな

フッ、素晴らしい勇気だ、感動的だ……だが、無意味だ

アイアンテールでまとめてくたばれ

 

329:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うわっ、うわっ……

 

330:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ハッ!背後からの不意打ち……気付いていないとでも!?

サマーソルトアイアンテール!!

……ほぉら、ゲンガーだ、返すぜ

 

331:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あわわわわ……

 

332:空の王者 ID:MH2nddosHr8

お前たちの連携は素晴らしかった!先ほどの不意打ちもそのための囮作戦も!

 

だが

 

しかし

 

まるで全然!

 

この俺を倒すには程遠いんだよねぇ!

 

333:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あばばばば……

 

334:空の王者 ID:MH2nddosHr8

んじゃ、そういうことで……

 

 

逝っちまえ

 

 

 

 

 

 

 

 

――「鎧の覇者」が参加しました――

 

 

335:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

――何やってんだ焔ぁぁぁぁぁぁッ!!

 

 

 

 




野盗三姉妹の運命は……そして、ショウちゃんの選択は……


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其の相見(であい)は劫火と共に

リオレウスの攻略

リオレウス戦はフェーズごとに分かれています。

phase1は、襲い来るリオレウスの猛攻を避けながら迎月の戦場へ向かいます。
この時、発見状態になっているためアルセウスフォンによるワープは使えません。また、アヤシシやオオニューラで崖を登ろうとすると強制的に地面に落とされます。

道中、オヤブンハガネールとのバトルに突入するとイベント。
オヤブンハガネールがリオレウスによって倒される代わりに、リオレウスの襲撃が一時的に止みます。
先へ進み、ヒスイニューラの出現地点に着くとイベント。
リオレウスが再び飛来し、攻撃が始まります。先にある橋の手前まで来ると再びイベントが発生し、リオレウスが一時撤退します。

ゴロゴロ山地に入るとイベント。
ゴロゴロ山地から列石峠にかけて、リオレウスがゴローンを投擲してきます。一定回数の攻撃をやり過ごすか、列石峠を抜けるとリオレウスが撤退。
余談ですが、ここのゴローンは捕獲可能です。図鑑タスクが埋まっていない人は、ぜひ捕獲していきましょう。

phase2は、迎月の戦場前でのリオレウスとの前哨戦です。
このバトルは特殊なルールが設定されており、
1.リオレウスのHPを半分以下にする
2.手持ちポケモンが半数ひんしになる
3.リオレウスとプレイヤーがそれぞれ三回行動する
のいずれかを達するとイベントが発生し、戦闘が強制終了します。
その後、イベントで「火竜の天鱗」を入手したら、カミナギ寺院跡へ向かいましょう。

phase3は、カミナギ寺院跡でのリオレウスとの決戦です。
こちらもクリア条件が二通りあり、
1.リオレウスを倒す
2.リオレウスを捕獲する
の、いずれかを達するとクリアとなります。

1.はHPを削りきるとイベントが発生し、捕獲となります。
なお、他のボールを使いたい場合は2.の条件でクリアしてください。
倒してしまうと強制的にモンスターボールでの捕獲になりますので、注意してください。

……攻略サイト風にまとめるとこんな感じかな?ゲームだとこんなふうになると思います。



新たな仲間にラギアクルスが加わり、私を探し回っていたというウォロさんと合流した……かと思ったら、ジンオウガが私を連れて爆速でウォロさんから逃げ出してしまったので、そのまま合流とはならなかった。

今はエイパム山のかなり高い所にいる。ジンオウガがそこまで走ってしまったので、自然とここにたどり着いてしまった。

一先ず、その場で一夜を明かして朝……改めてジンオウガをボールから出した。

 

「ジンオウガ……」

 

「クゥン……」

 

ジンオウガには、どこか思うところがあったようだ。

いきなり人の話を遮った上にいきなり逃げ出してしまった時は、「なぜ?」と思ったものだけど……ジンオウガが、今の私の状態を理解している上での行動なら、むしろお礼を言わないといけない。

 

「……私がまだ、人を信じきれないことを、分かってたの?」

 

「ワン」

 

「……そっか。ありがとう、ジンオウガ」

 

「ガウ!」

 

「正直な話……あの時、ウォロさんの話は半信半疑だったんだ。いや、少し怪しいかなってくらいかも」

 

「ワゥン……」

 

私はまだ、人を信じきれていない。ガラナさんの話を聞いて、確かに私のことを信じてくれる人はいるんだということは理解できた。

けど……私を信じてくれる人たち以上に、私を疑う人たちの方が多すぎる。ひょっとしたら、あの人も……なんて、そんな疑心暗鬼が私の心を苛んでいる。

それがとてつもなく苦しくて……だから、ガラナさんの言葉は嬉しかったし、同時に辛かった。

 

「そうだ……」

 

今なら、みんなを出しても問題ないかな。

 

「みんな、出てきて!」

 

ダイケンキ、ライチュウ、ミミロップ、ゴウカザル、ロズレイド、ガブリアス……私の手持ちたちを全員ボールから出す。そして……

 

「グラビモス!ラギアクルス!」

 

まだ手持ちたちと顔合わせをしていなかった二匹を出す。グラビモスはのんびりとあくびをしていて、ラギアクルスは出てくると同時に首を傾げて……すぐにジンオウガに首を噛まれた。

 

「ジンオウガ!めっ!!」

 

「……クゥ」

 

「フンッ」

 

「ガルルル!!」

 

「ジンオウガ!」

 

「ヴァー……」

 

もしかして、昨日のバトルのことを根に持ってるのかな……。なんだか、ジンオウガがラギアクルスに恨めしそうな目を向けている、気がする。

ジンオウガ、グラビモス、ラギアクルスの三匹が互いに顔を突き合わせてはじっとしている。何やってるんだろう……顔馴染み同士による、独自のコミュニケーション?

……っと、いけない。今から手持ちのみんなにグラビモスとラギアクルスを紹介するんだった。

 

「みんな、紹介するね。新しい仲間のグラビモスとラギアクルスだよ」

 

「ヴァー」

 

「グルラ」

 

……よかった、手持ちのみんなも受け入れてくれたみたい。……ジンオウガで耐性がついたのかな。

今から下山して餌を獲ろうにも、ジンオウガたちは動く気配がない。イチョウの浜辺の方を見ているから、ひょっとしてウォロさんを警戒している……?……ジンオウガだけじゃなく、グラビモスとラギアクルスにも警戒されているの……?ウォロさん、あなたは一体……?

仕方がないので、手元にあるきのみで食事を済ませることにする。……何気にジンオウガたちがきのみを食べるところを見るのは初めてなので、口に合うかはわからないけど……ほとんどすべての種類のきのみを食べていた。好き嫌いがないのかな……またひとつ、彼らについて知ることができた。

 

一先ず、食事を終えた私は次の目的地について、ジンオウガに尋ねる前に自分なりに考えてみる。次の目的地……おそらく、天冠の山麓か純白の凍土のどちらかだろう。距離的に近いから、天冠の山麓かな?

 

「ジンオウガ。次の目的地は天冠の山麓?」

 

「……!!」コクコク

 

「わかった。それじゃあ、出発しよう!」

 

手持ちのみんなと、グラビモスとラギアクルスをボールに戻して、ジンオウガの背中に乗り込む。私がしっかり乗ったのを確認してから、ジンオウガは走り出した。

天冠の山麓……たしか、以前セキさんから何か言われていたような……なんだっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

ジンオウガの背に揺られること五日間。たどり着いた場所は天冠の山麓にある離れ湧水という場所だ。

一度、ジンオウガから降りて辺りを見回す。その時、切り立った崖の上をジンオウガが見つめていることに気が付いた。その先は崖登り崖……そして、そのさらに先には……。

 

「カミナギ寺院跡……」

 

そうだ、思い出した。セキさんが言っていたこと……カミナギ寺院跡に危険なドラゴンポケモンが住み着いたから、近づくなという警告だった。けれど、ジンオウガがそっちの方を見ているということは……いるんだ、ポケモンが。ジンオウガと近しい存在のポケモンが。

 

「……行こっか、ジンオウガ」

 

「ガウ」

 

「――ショウっ!!」

 

ジンオウガが移動を開始しようとした、まさにその時だ。聴き慣れた声が耳を打つ……それと同時に、私の体は震えが止まらない。

振り返るのが怖い。思考が停止して、上手く呼吸ができない。震え続ける私に、そっと頬を寄せてくれたのは……。

 

「ジンオウガ……」

 

「ガウ」

 

そうだ、私にはジンオウガがいる。それに、この声の主はムラを去る瞬間まで私のことをずっと心配し続けてくれた人だ。だから、私は……恐怖を振り切って、背後へと振り返った。

 

「……テル、先輩……それに、ラベン博士も……」

 

「ショウ……ッ!」

 

「ショウくん!無事だったんですね……って、なんですかそちらのポケモンは!?」

 

振り返った先にいたのは、テル先輩とラベン博士だけじゃなかった。

 

「ショウさん、お久しぶりですね」

 

「あ、あのドラゴンと似た気配のポケモン……!」

 

「落ち着けツバキ」

 

ノボリさん、ツバキさん、そしてセキさん……みんなが揃っているなんて珍しいな。何かあったのかな……。

 

「別地方にライボルトというポケモンがいますが、もしやリージョンフォーム……?」

 

「多分だけど違います」

 

「見たこともないポケモン……!そんな怪しいポケモンの近くにいたら危ないよ!?」

 

「……っ。へぇ……彼よりも怪しくて危ない人間がここにいるわけですけど、それについてはどうなんですか?」

 

「そ、それは……」

 

「落ち着け、テル。ショウもだ、無駄に煽るんじゃない」

 

「セキさん……」

 

「……すいません。うちのジンオウガを侮辱された気がしたので、つい」

 

ラベン博士は純粋にジンオウガが気になるようだけど、テル先輩の発言は看過できなかった。

ジンオウガは私を助けてくれたポケモンだ……彼を馬鹿にする奴は絶対に許さない。

 

「ジンオウガ……それが、そのポケモンの名前なのか?」

 

「そうですよ、先輩。そして、路頭に迷った私を助けてくれたポケモンでもあります」

 

「そうだったのか……ごめん、ショウ。ジンオウガ……だっけ、君もごめん」

 

「ガウ」

 

「……ジンオウガが許すなら、私も構いません……」

 

ジンオウガが気にした様子がないことから、きっと先輩を許したんだろう。だから、私も先輩を許すことにした。それよりも気になるんだけど……。

 

「博士たちはどうしてここに?それに、キャプテン二人にセキさん勢揃いで……」

 

「ショウ。あんたが初めてここに来たとき、オレが伝えた警告を覚えているか?」

 

「……カミナギ寺院跡に住み着いたっていう、ドラゴンポケモンのことですか?」

 

「そうだ。……最近になって、そいつが活発に活動を始めたとツバキから連絡を受けてな。

そのドラゴンポケモンは、当時まだ荒ぶっていたマルマインをほとんど一方的に叩きのめすほどに強力なポケモンだ」

 

「不意打ちとはいえ、このツバキの目を掻い潜りマルマインを一時的に戦闘不能にしてみせたんだ。とてつもなく恐ろしいポケモンだ、とだけ言わせてもらうよ」

 

「そのポケモンについては、こちらシンジュ団の方でも伺っております。その容姿、腕が退化したリザードンの如き姿、と言うべきでしょうか」

 

キングを鎮めに行った時には聞かされなかった話が、次々と目の前で飛び交っている。

カミナギ寺院跡に住み着いていたドラゴンポケモンが、天冠の山麓の空を頻繁に飛び回るようになったんだとか。それによって野生ポケモンたちが戦々恐々といった様子でピリピリし始めてしまい、普段よりもずっと神経質になっているそうな。個体によってはより凶暴化している、という話もある。

あと、ノボリさんが言ってた「リザードン」だけど、ラベン博士に曰く「カントーに住むほのおタイプのポケモン」とのことで、ドラゴンタイプではないらしい。

 

「こうも頻繁に空を飛び回られちまったら、野生ポケモンだけじゃなくて人間のほうだって神経質になっちまう。いつ襲われるかと、怯えている者たちもいる……そこで」

 

「……ギンガ団を、頼ったわけですか」

 

「……そうなるな」

 

私がいなくなったあとの、ギンガ団……正直、興味なんて欠片もないけれど、テル先輩がどれだけ成長したのかはちょっと気になる。自惚れでなければ、私の次に捕獲が上手いのはテル先輩だと思ってるから。

 

「セキさんの仰るとおり、件のポケモンの調査のためにボクとテルくんは派遣されました」

 

「めちゃくちゃ大きいドラゴンポケモン……とは、聞いているんだ。けど、天冠の山麓に住むポケモンやほかの人たちのためにも……おれは、絶対にそのポケモンを捕獲してみせるよ」

 

「……止めたほうが、いいかもしれませんよ」

 

「……っ!どうして?」

 

どうして、と聞かれても……一言では説明しきれない。なんて説明しようか……とにかく、思いつく限りに説明するしかない。

 

「まず、大きいです。私が従えているこちら、ジンオウガですが……およそ20m弱は体長があります。つい五日前まで群青の海岸にいましたが、そこでは30m級のドラゴンポケモンが海を泳いでいましたよ。紅蓮の湿地にだって、25mは優に超える岩のドラゴンポケモンがいました。

……今、全て私の手持ちに加わっています」

 

「ほ、ほかにもそんなポケモンがいたのですか!?」

 

「見せるつもりはありませんけれど。

……私は、彼らとともにバトルをしたこともあります。普通のポケモンでは、まともに戦ってもまず絶対に勝ち目はありません。それほどまでに、全体的なポテンシャルは彼らの方が上回っています。

野生ポケモンでさえ、彼らがただ移動するだけで逃げ出します。……きっと、本能的に恐れているのかもしれません。私も手持ちのポケモンたちを鍛えてはいますが……正直、バトルで勝てるかと言われれば、断言はできません。

もしも、そのドラゴンポケモンと戦うというのであれば……ジンオウガのような、同格のポケモンが必要になるかと思います。そして、そんなポケモンを連れているのは、私一人……ですので、例のポケモンは私に任せてもらいたいと思います」

 

「ショウくん……」

 

任せて、とは言ったものの……本音で言えば「手を出すな」と、「首を突っ込むな」と声を大にして言いたい。

おそらく……いや、十中八九、そのドラゴンポケモンはジンオウガたちと深い関わりのあるポケモンだ。なら、他の人たちには絶対に捕獲されたくない。そのために、ジンオウガはここまで私を連れてきたんだ。やることは変わらない……ドラゴンポケモンに私のことを認めてもらって、力を貸してもらうんだ!

 

「だから――」

 

 

 

 

「グオオオオオォォォォォォォォォォッ!!」

 

 

 

 

その時だった。天を裂くような、甲高い咆哮が天冠の山麓に響き渡った。

 

「こ、この声……あいつだ!あいつが来たんだ!!」

 

「落ち着け、ツバキ!……くそっ、よりにもよってこのタイミングとは……!」

 

「声は天より聞こえた……皆様、頭上にご注意ください!」

 

ノボリさんの言葉に反応して上を見上げれば、はるか上空から何かがこちらに向かって飛来してきていた。徐々に近づくにつれて、それが大翼を広げた巨大なドラゴンポケモンだということがわかった。

 

全身を覆う物々しい紅蓮の外殻。

巨大な刃のような刺を側面に持つ尻尾。

燃え盛る炎のような模様が浮かぶ皮膜を携えた雄大な両翼。

人間なら容易く握りつぶせてしまえそうな足の爪。

口元から燻る灼熱の炎。

 

「グゥル……」

 

ひと目でドラゴンだとわかるポケモンが、上空から急降下して目の前へと姿を現した。ドラゴンは地上へと着地すると、小さく唸り声を上げた。

 

「これが、カミナギ寺院跡のドラゴンポケモン……!」

 

「こいつだよ、ショウ!洞窟キングを一方的に攻撃してきたポケモン!なんて恐ろしい造形……まるでバケモノだ!!」

 

「…………」

 

バケモノ、とツバキさんが呼んだことに、一瞬だけ過剰に反応しそうになった。あのドラゴンポケモンを見た時から、彼がジンオウガと関わり深いポケモンだということは魂で理解した。

そんな彼をバケモノ呼ばわりする……遠まわしにジンオウガたちをバケモノ呼ばわりされた気がして、腹立たしくて仕方が無かった。

 

「人が管轄する地域で、次々とポケモンを襲う蛮行……キャプテンとして、見過ごすわけには行かないね!スカタンク!!」

 

「……っ!バカ、止せツバキ!!」

 

「止めないでくれアニキ!マルマインの時の借りだって返せていない……今が千載一遇のチャンスなんだ!」

 

そうこうしている間に、ツバキさんが相棒のスカタンクを嗾けていた。セキさんがツバキさんを止めるも、ツバキさんは既に止まる気配はない。

……!ドラゴンの口元にエネルギーが……!!

 

「やれ、スカタンク!ヘドロば――」

 

「グオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォッ!!」

 

今まさに、ツバキさんがスカタンクの指示を出そうとした、その時だった。それよりもずっと早く、ドラゴンが放ったはかいこうせんが一瞬でスカタンクを包み込み、そのまま壁へと叩きつけたのだ。しかも、叩きつけられた壁も一秒と持たずに一瞬で崩壊してしまった。

 

「……フッ」

 

ドラゴンはそのままはかいこうせんを上空へ薙ぎ払うように首を振ると、まるでこちらを小馬鹿にするかのように口角を釣り上げた。

 

「あ……あぁ……!す、スカタンクー!?」

 

「言わんこっちゃない……!」

 

ツバキさんが慌ててスカタンクの方へ駆け寄るも、こちらは誰一人としてその様子を気にかける余裕はなかった。

このドラゴン……今まで会ってきたジンオウガたちとは全然違う!なんの躊躇もなく、はかいこうせんを撃ってきた……!!

 

「グオォォォラアアッ!」

 

ドラゴンが吠えると同時に、アンノーンが姿を現した。テル先輩とラベン博士が驚いている。そうだった、二人は放牧場にいる私のアンノーンたちを見たことがあるんだった。一応、二人にはわざわざ放牧場から飛んできているのだということを説明したところで、アンノーンたちが整列を終えていた。

 

RIO REUS

 

「『リオレウス』……」

 

「リオレウス……?それが、このポケモンの名前なんですか?」

 

「そうです、博士。……なぜか、アンノーンたちが知ってるんですが、それについては私も知りませんのであしからず」

 

「ギギャオォォン!!」

 

リオレウスが再び吠えると、さらに数を増やしたアンノーンたちが大急ぎで整列を始めた。

……あ、何匹か慌てすぎてぶつかってる。ちょっと可愛い。

 

YUKIARU MONOYO

WAGA GOUKAWO KUGURINUKE

SENJO NITE UROKOWO TENISHI

WAGA MOTOHE MAIRE

 

「『勇気ある者よ』……『我が業火を潜り抜け』……『戦場にて鱗を手にし』……『我が下へ参れ』……」

 

「……試そう、ってのか。オレたち人間を」

 

アンノーンが散らばっていくのと同時に、リオレウスも飛び上がった。そのままどこかへと飛んでいってしまい、姿が見えなくなってしまった。

立ち去る様子を見送ってから、セキさんがこちらへと振り返った。

 

「……さて。なぜわざわざ別のポケモンを使ってまでこちらに意思を伝えたのかは不明だが……あのポケモン――リオレウスだったか――の言う『我が下』ってのは、間違いなくカミナギ寺院跡のことだろう。奴はあの場所を住処にしているからな」

 

「それについてはボクも保証する。何度か奴の後を追い、あの場所で休んでいるところを見ているからね」

 

「ツバキ、スカタンクは?」

 

「かろうじて、ってところだよ。今は回復させて、休ませているよ」

 

「そうか……」

 

ツバキさんも戻ってきた。どうやらスカタンクは無事だったらしい。……間違いなく消し炭になったと思ったんだけど、思いのほか気の回るポケモンなんだね、リオレウス。

ツバキさんが戻ってきたタイミングで、顎に手を当てて考えていたノボリさんが口を開いた。

 

「『勇気ある者』……この場合、我々のいずれかなのか、あるいは特定の個人を指しているのかは現段階ではわかりかねますね」

 

「……これはオレの考えだが、オレはショウのことを指していると考える。リオレウスも心なしか、ショウの方を見ていたような気がするしな……」

 

「ショウくんを!?ポケモンがただの個人を強く意識することがあるのでしょうか?」

 

ラベン博士の疑問も尤もだ。今日、出会ったばかりの野生ポケモンが人間に興味を持つならまだしも、それが一個人に向けられているとなると特異すぎるというもの。けれど、セキさんは確信に満ちた表情で続けた。

 

「考えてもみな、学者先生。オレはさっきのジンオウガの他にもう一匹、ショウに懐いている巨大ポケモンを知っている……ショウの言ってた25m級の岩ポケモンのことだ。

深紅沼に棲み着き、寄ってくる人間を無視するか片っ端から追い返すような暴れん坊が、ショウにだけは心を開いた。ショウには人間だけじゃなく、ポケモンを惹きつけるような何かがあるんだろうよ。

紅蓮の湿地、群青の海岸……そしてここ、天冠の山麓。それぞれに棲んでいる正体不明の巨大ポケモン……元々いたのか、それともいきなり現れたのかは、わからねえけどな」

 

「……それは、たしかに。あれだけの体格のポケモンが、我々人間の目を欺き今の今でどこに隠れていたのやら……疑問が尽きませんね」

 

……あれ?ラギアクルスのこと、ひょっとしてガラナさん……伝えていない?いや、それを言うならススキさんも、か。セキさんはラギアクルスのことをたった今知ったような反応だし、きっと二人はラギアクルスのことをそれぞれの団に黙っていたのかもしれない。ガラナさんはもとより、ススキさんはガラナさんの意を汲んだのだろう。

 

「……とりあえず、私は行きますね。行こう、ジンオウガ」

 

「ガオウッ」

 

「……っ!待って!!」

 

ジンオウガの背中に乗り込んで、いざカミナギ寺院跡へ……と、向かおうとしたところでテル先輩に呼び止められた。私はもうジンオウガの背中に乗ってしまったので、ジンオウガが体ごと振り返った。

 

「頼む、ショウ!おれも一緒に連れて行ってくれ!!」

 

「……危険ですよ、先輩。お願いですから、ここで待っててください」

 

「いいや、待たない!……これ以上、ショウばっかりに背負わせたくないんだ!!

だから、頼む……おれも連れて行ってくれ!!」

 

真摯な思いを告げられた上に頭を下げられて、私の心は大きく揺れていた。

正直、本当に危険だろうから先輩にはここに残って欲しい。けれど、私のことを真剣に想って同道を願い出る先輩の思いを無下にするのは気が引ける。どうすれば……。

私が迷いに迷っていると、ジンオウガが動き出した。

 

「……え、ちょ、ちょっと……?」

 

「ガウ」

 

「うわぁ!?」

 

テル先輩の下まで歩み寄ると、群青の海岸で私にしたように、服を口に咥えて持ち上げるとそのまま宙へ放り投げて私のすぐ後ろへと乗せたのだ。放られた時はすごく驚いていた様子だったけど、乗り込んでからは冷静になったようで……あ、顔がすごく嬉しそうになってる。

 

「あ……うわぁ、うわぁ……!す、凄い!おれ、ポケモンに乗ってる……!!」

 

「……あの、先輩。そろそろ出発しますよ」

 

「……っと、そうだった。おれはいつでも大丈夫だぞ!」

 

「わかりました。……ジンオウガ、お願い!」

 

「ウオオォォォンッ!!」

 

ジンオウガが雄叫びを上げると、力強く大地を蹴り上げ走り出した。……全力疾走で。

 

「うわあああぁぁぁあぁあぁああぁぁぁあぁぁぁぁっ!?」

 

「先輩黙って!舌を噛みますよ!!」

 

「……っ!!」

 

ジンオウガが全力で走るなんて珍しい。……いや、きっとリオレウスを警戒しているんだ。道中で襲ってこないとも限らない……だから、ジンオウガはなるべく速くカミナギ寺院跡に着くために全力なんだ。

カミナギ山道に入ってしばらく……空高くから、あの咆哮が聞こえてきた。

 

「グオオオオオォォォォォォォォォォッ!!」

 

空から飛来してきたリオレウスが滞空すると、口からひのこなんて比じゃないほどの巨大な火球を次々と放ってきた!

 

「先輩、しっかり捕まってください!……ジンオウガ!!」

 

「ガオウッ!」

 

「わ、わかった!!」

 

ジンオウガは右へ左へと、左右にステップを踏みながらリオレウスの攻撃を躱す。対するリオレウスも、知恵を使ってくる。わざとタイミングをずらして、ジンオウガのステップを乱してくるのだ。

天を舞う業火が大地に降り注ぎ、地を這う稲妻は必死にその火炎から逃げる。このままだとジリ貧だ……なんとか、なんとかしないと……!!

 

「ガネールッ!!」

 

「……っ、ハガネール!」

 

なんとか前に進んでいたところで、オヤブンハガネールが立ち塞いできた。空からリオレウス、地上はハガネール……オヤブンハガネールの大きさはジンオウガの半分ほどとはいえ、ここで道を塞がれるのは痛すぎる!!

 

「……!ショウ、リオレウスが!!」

 

「えっ……!?」

 

テル先輩の声に釣られて前を見ると、空にいたリオレウスが地上に降りてきていて、ハガネールと睨み合っていた。

 

「グラオオォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

長く睨み合っていた両者だが……決着は一瞬だった。

リオレウスが、先ほど放ったはかいこうせんを遥かに超える熱量と威力を持ったかえんほうしゃ――いや、あれはもはや爆炎だ――をハガネールめがけて放ったのだ。

 

「ガアアアアアアアアアッ!?」

 

炎に押し込まれ、ハガネールは壁に叩きつけられた……にも関わらず、リオレウスは攻撃を止めない。それどころか、より火力を底上げしてハガネールに炎を放ち続けたのだ。

リオレウスの口から放たれた灼熱はハガネールを包み込み、ついにはその姿が見えなくなるほどの炎がカミナギ山道に広がっている。

 

「や、やりすぎだ……!」

 

「……っ」

 

オーバーキル……なんて言葉が陳腐に思える程の過剰威力。もはやハガネールの生存は絶望的だろう。

リオレウスが、放射をやめた。後に残ったのは……かつて、ハガネールだった何かが、骨すら残さずドロドロに溶解した跡だった。それどころか周囲の地形すら、その熱量で熔けてしまっていた。

 

「「!?」」

 

私も先輩も、おそらくは顔面蒼白になっていることだろう。普通、ほのおポケモンが全力で炎を吐いたとしても、溶岩もかくやというほどに熔かすほどの威力が出せるだろうか?仮に出来たとしても、リオレウスのように一瞬でそれほどの火力が出るのだろうか。

違いすぎる……他のほのおポケモンとなんて、比較することすら烏滸がましい。それほどにリオレウスの炎が規格外過ぎるのだ。

 

「ガウッ!」

 

「っ。ジンオウガ……」

 

突然、ジンオウガの肩が跳ねたかと思うと、彼はこっちを見ていた。どこか厳しさを含んだその目は「しっかりしろ!」とこちらを鼓舞しているようだった。先輩もジンオウガの激励で我に返ったらしい。ジンオウガの背中を撫でていた。

 

「グウゥ……」

 

ハガネールを熔かしたあと、リオレウスは一瞬だけこちらを見るが、すぐに飛び去ってしまった。私と先輩は同時に息を吐き、ジンオウガも僅かに体の力を抜いた。

 

「……なん、て、やつだ……。ハガネールを、たった一撃で……」

 

「……これが、彼らの力です。今、私たちが乗っているジンオウガも、その気になればこれくらいはできると思いますよ」

 

「!?」

 

あ、生気が戻った先輩の顔がまた青く……ジンオウガがなんとなく恨めしそうな目を向けてきている。……ごめんね、せっかく励ましてくれたのに。

 

「急いでても襲って来るなら、襲ってきた時に備えたほうがいいかも……慎重に行こう、ジンオウガ」

 

「ガオウッ!」

 

私の指示を受けたジンオウガは最初ほどの全力疾走ではないものの、襲われてもすぐに回避が取れるように軽くスキップをするような足取りで走り出した。

……後ろに乗っているテル先輩が、ちょっと心配。ポケモン同士、弱肉強食の関係である以上は殺し殺されというのは自然界だからよくあること。けれど……少なくとも、それを間近で見る機会なんてそうそうにない。ましてリオレウスのアレは暴力で一方的に捩じ伏せているのと何ら変わらない。

人間とポケモンだけじゃない。ポケモン同士にだって、残酷な世界が存在する。

 

「テル先輩、大丈夫ですか?」

 

「えっ……あ、あぁ。大丈夫だ、問題ない」

 

「…………」

 

「…………」

 

か、会話が続かない……。どうしよう、流石にあんな場面を見たあとで話題転換は無理がありすぎる気もするし……。

 

「……すごいよな、ショウは」

 

「えっ……?」

 

思わず振り返った。見れば、先輩はどことなく寂しげな笑みを浮かべている。

ジンオウガが、走るペースを落とした。

 

「おれさ、自分がすごく情けないなって思ってるんだ。おれのほうが先輩で、男で、もっとしっかりしなきゃなって思っててもさ……キングのことも、あのリオレウスのことも、全部ショウに任せっきりになってる。

挙句の果てにはこの空の異変のことで団長がショウを疑ったばっかりに、追放なんてされちまって……。あの時、さ……おれ、何度も考えたんだ。『ショウの言葉を無視してでも、ついて行くべきだったんじゃないか?』って……」

 

「先輩……」

 

「何もかもを後輩のショウに背負わせて、先輩のおれはマイペースに図鑑作り……こんなの、全然カッコつかねぇよ……。だからおれ、図鑑作りもポケモン捕獲も、バトルの腕だってめちゃくちゃ鍛えまくったんだ。いつかまたショウに会えた時に、少しはかっこいい先輩にならなきゃなって。

けど、こうして生きて、またショウに出会えた……それだけで、おれはもうすっごく嬉しかった。先輩としてのメンツがどうのこうのってさっき言ったけど……本当は、もう一度ショウに会いたかっただけなんだ。

だから、これだけは言わせて欲しいんだ……ショウ、生きててくれてありがとう」

 

「……!!」

 

本当に嬉しそうに笑う先輩の顔を見て、私の心の中は感情が「だいばくはつ」を起こしていた。思わず先輩から顔を逸らして正面に向き直る。今の私は、多分、顔が真っ赤だ。あと、少しだけ……泣きそうになってる、と、思う。

 

「……し、も」

 

「え?」

 

「……私、も。もう一度だけ、先輩と、博士と、シマボシ隊長に、会いたいって……思って、ました」

 

「ショウ……!」

 

今度は、さっきとは違う――良い意味で、と言えばいいのか――気まずさがお互いの間に流れていく。またしても会話の糸口を見失ってしまった私たちだったが……その気まずさをまるごと叩き潰さんとばかりに、咆哮が響き渡った。

 

「グオオオオオォォォォォォォォォォッ!!」

 

「……ッ!!」

 

「この声……あいつか!」

 

再び空を見上げれば、リオレウスが姿を現した。もうすぐカミナギ山道を抜けられるというのに……!

リオレウスは上体を大きく反らすと、その口に溜め込んだ豪火球を次々と放ってきた!

 

「来るぞっ!」

 

「避けて、ジンオウガ!!」

 

「ガオウッ!!」

 

迫り来る火球を次々と回避するジンオウガ。……けれど、おかしい。火球が地面に突き刺さったまま残っている……?

 

「ショウっ!離れたほうがいい!!嫌な予感がする!!」

 

「……っ!ジンオウガ!!」

 

「ガウッ!」

 

テル先輩の言葉を頼りにジンオウガに指示を飛ばし、火球の着弾地点から大急ぎで離れる。その直後……。

 

ドカアァァンッ!

ドカアァァンッ!

ドカアァァンッ!

 

 

地面に着弾していた火球が、時間差で次々と爆発し始めた!!リオレウスはこれが狙いだったんだ!爆発しないからと油断したところを時間差で……とんでもない技だ。

時間差で爆発するなら、爆発する前に駆け抜けるしかない!そんな私の意思が伝わったのか、ジンオウガもまた走るペースを一気に上げた。そうして橋の手前までたどり着いたところで、唐突に火球の雨が止んだ。空を見れば、絶え間なく火球を放ち続けていたはずのリオレウスが、若干だが息が上がったように荒い呼吸を繰り返していた。そして、そのままリオレウスは再びどこかへ飛び去ってしまった。

 

「また、どこかへ飛んでいったな……」

 

「……私たちも少しだけ、休憩しましょう。とくにジンオウガはずっと走り続けているし……」

 

「ガウガウ」

 

「だーめ。カミナギ山道をずっと走ってきたんだから、休憩しよう?」

 

「クゥン……」

 

ジンオウガは先へ先へと急かすけど、休める時にはしっかり休まないと。それに……襲撃のタイミングからして、おそらくリオレウスは私たちを上空から見張っている。私たちの接近に合わせて、襲ってきているんだ。

そうでなければ、今こうして動かないタイミングを狙ってくるはずだから。

 

「ジンオウガ、素直に休もう。こうなったら、ショウはてこでも動かないぞ」

 

「む……心外ですよ、先輩。まるで私が頑固者みたいじゃないですか」

 

「いや、実際すごく頑固なところあるだろ」

 

「ガウ」コクコク

 

「ほら、ジンオウガも『ある』って」

 

「えー?」

 

うぅん、そんなこと……ない、と思うんだけどなぁ……。

数分程度の休憩を挟み、私たちは橋を渡ってカミナギ山道を抜けた。迎月の戦場に行くには、この先のゴロゴロ山地と列石峠を抜けなければならないんだけど……リオレウスがどんな手を使ってくるのかはわからない。ジンオウガの疲れ具合も心配だし……抜けられるうちに抜けてしまわないと。

ゴロゴロ山地に入って少しして、私はすぐに違和感を覚えた。

 

「……おかしい」

 

「……あぁ、たしかにおかしい。このあたりに生息しているゴローンが、一匹も見つからないなんて」

 

「リオレウスを恐れて隠れているなら、まだいいけど……気配が少しもないのは、少し気になる……」

 

「グオオオオオォォォォォォォォォォッ!!」

 

咆哮が聞こえ、そちらの方へと目を向ける。列石峠の崖上に、リオレウスがいた。どうしてあんなところに……?と思っていると、徐にリオレウスが空へ飛び上がった。

 

「何をする気だ……?」

 

「……!先輩、あれを!リオレウスの足に!!」

 

「え?……え、あぁ!?」

 

先輩も気がついたみたい……そう、リオレウスの足に、ゴローンが捕まっていることに!

ある程度の高さまで飛ぶと、リオレウスは体を大きく揺らして勢いよくゴローンを投げつけてきた……って、ちょっと!?

 

「えぇ!?」

 

「そんなのありかよ!?」

 

「ウオォンッ!!」

 

ジンオウガはすぐさま回避に移る。投げ飛ばされたゴローンは軒並み弱っている……もしかして、このあたりに生息しているゴローンが、リオレウスが投げ飛ばすための砲丸として捕まってしまったってこと!?

そうこうしている間に、リオレウスは次々とゴローンを放り投げてくる。火球の攻撃に比べればだいぶ緩やかな攻めだけど、ポケモンを直接武器として投げてくるなんて、とんでもない発想力だ……。

 

こちらは難なく突破できた。ただ……リオレウスに投げられたゴローンたちが気になる。あんな雑な扱われ方、いろんなポケモンをこのヒスイ地方で見てきたけど初めてだ。

 

「グルル?」

 

「ジンオウガ……ごめん、ちょっとゴローンたちを見てきてもいい?」

 

「ガウ!」

 

「ありがとう……それじゃあ、その間はジンオウガはボールで休んでて」

 

「ワン」

 

ジンオウガをボールに戻して、テル先輩の方へと振り向く。

 

「すみません、先輩。ちょっとゴローンたちを見てきます」

 

「おれも行くよ。正直、あんなことがあった後で無視はできないしな」

 

「ありがとうございます」

 

来た道を戻り、回復道具を使ってゴローンたちを回復させていく。ゴローンたちはお礼を言うように何度も頭を下げると、そのまま転がって行った。全員を回復させたあとで、再び迎月の戦場へ戻ってきた。

 

「たしか、迎月の戦場に鱗があるんだっけ?」

 

「そうですね……早く取って、それからカミナギ寺院跡に行きましょう」

 

私たちが迎月の戦場の入口に近づいた、その時だった。

 

「無様だねぇ、小娘」

 

「……っ!!」

 

背後から声がかかり、先輩とともに素早く振り返る。そこにいたのは……

 

「常盤木と呼ばれる松のようにいつまでも若く美しい、長女のオマツ」

 

「枯れるどころか次々と新芽を咲かせ繁栄を体現する次女、オタケ」

 

「寒い冬に春の訪れを知らせる可憐にして気高さの象徴、三女のオウメ」

 

「「「あたくしたち野盗三姉妹 その名もショウチクバイ!」」」

 

そこにいたのは、野盗三姉妹のオマツ、オタケ、オウメの三人だった。ズイの遺跡の時といい、ガーディの時といい、どうして間の悪いタイミングで邪魔をしてくるんだ。

 

「野盗三姉妹……!」

 

「無様って……どういう意味ですか?」

 

「そのまんまの意味だよ」

 

私があの人たちの言葉の意味を問えば、オマツが一歩前に出て答えた。

 

「聞いたよ、あなた。あれだけ他人さまのためにとあくせく東奔西走し、馬車馬の如く働いてきたというのにねえ……その末路が、コレとはね」

 

「……っ」

 

その言葉に、思わず唇を噛み締める。事実、デンボク団長はムラのためとはいえ私を追放した。誰よりもムラのために貢献してきたはずの、私を……。

 

「前にうちが言ったこと、覚えてるだろ?結局のところ、あんたがギンガ団に必要とされていたのは上っ面程度のもんで、信頼なんて欠片もなかったってことだね!」

 

「そんなこと……っ!」

 

「だったら、なんでそいつは追放された?ギンガ団として事態の調査を任されるでもなく、容疑者としてこの広い大地にほっぽり出しておいて、否定もくそもないだろう」

 

「ぐっ……」

 

オタケが言っていた言葉は覚えている。私がギンガ団に必要とされているのか?というものだ。信用がなかったんだと嗤うオタケの言葉を先輩が否定しようとするも、すかさずオウメの言葉に黙らされてしまった。

 

「挙句の果てに、あんな見たこともない巨大なドラゴンに追っかけ回されて……ほんと、不憫だこと」

 

「…………」

 

「……ねえ、あなた。よかったらあたくしたちと来ない?」

 

「えっ……?」

 

オマツの言葉に、俯きかけていた顔を上げた。私が、彼女たちと……?

 

「……ギンガ団に恨み辛みのあるあたくしたちだけど、そのギンガ団から追放されたあなたは、いわばあたくしたちと同類……同じはみ出し者ってわけ。あんなせせこましい集団から自発的に抜けたあたくしたちとは違って、あなたはその集団から追い出された。

憎いでしょう?許せないでしょう?組織とはひとえにそんなもの……大のために小を容易く切り捨てられる、非情な連中さね」

 

「むしろ気になるんだよね。そんな目に遭っておきながら、なんで仕返しの一つもしないわけ?うちなら絶対にやり返すね。ましてや、あんたは荒ぶるキングやクイーンを大人しくさせてきたわけでしょ?

人に頼まれたことをやっておいて、恩を仇で返すような連中だよ?復讐にムラの一つや二つ焼いたって、誰も文句を言う資格なんてないよ」

 

「きさまは義理人情を重んじる主義なのだろうが、その義理人情を先に裏切ったのは奴らの方だ。本当にきさまが疑わしいというのなら、身の潔白が証明されるまで拘束するなりなんなりする方がよほど現実的だ。

それを、よりにもよって追放とはな。きさまだって、とっくに気が付いているんだろう?ギンガ団の望みが……他ならぬ、きさまの死であることを。きさまが死んで空が晴れれば万々歳、そうでなかったとしても他の手段を模索すればいい……どう転んでも、ギンガ団が損をしない。……汚い連中だ」

 

「…………」

 

私は、何も言い返せない。先輩も言い返そうとはするが、言葉が見つからないのか口を開いては閉じる、を繰り返すだけ。

それもそうだ……私は実際にギンガ団を追放されていて、隣にいる先輩は現役のギンガ団だ。何を言っても、ただただ空虚で説得力の欠片のない、見苦しい言い訳にしかならない。

わかっている。デンボク団長の考えなんて、追放されたその日に察したし、理解している。それを仕方ないと割り切ることも、普通なら絶対にできないだろうってことも。ひょっとすると、私が復讐のためにコトブキムラを焼く、なんて可能性もあったかもしれない。

 

「ふざけるな……!ショウは絶対に、お前たちの仲間なんかにはならない!!」

 

「さぁて、どうかしら?たとえあたくしたちと同じ道を進まずとも、復讐を選ぶだけの動機はいくらでもあるけれど」

 

「つーかさ、ギンガ団のあんたに言われたくないんだけど?あんたの親分がそいつ追放したんでしょうが」

 

「人の心など、いくらでも変わるものだ。……あたいらのようにね」

 

「……私は」

 

けれど。けれども、私はそうしない。

そうしないだけの理由が、私の腰に付けられたモンスターボールにある。

 

「あなたたちの言うとおり、ムラのみんなやデンボク団長が憎いと思ったことは、ある。それは否定しない」

 

「ほら、やっぱり」

 

「けど……憎しみだけじゃない。恨みも辛みもあるけれど、決してそれだけじゃない。この世界に落ちてきた私を拾ってくれたのはギンガ団で、私に生活の場を与えてくれたのもギンガ団です。

そして……たとえ、ムラや組織の人たちが私を疑っても……隣に立ってくれる彼のように、私のことを信じてくれる人だって、います!」

 

「ショウ……!」

 

「……ふん!なにさ、そんなのは所詮、ほんのひと握りの人間だけだろうに!」

 

「それでも、構いません。……いえ、むしろ今の私にはその『ほんのひと握り』の人間だけで十分です。

私を信じてくれる人が居る限り、私の心は決して折れない!!」

 

そして、それは人間だけじゃない。ポケモンたちだって同じことだ。

ダイケンキ、ゴウカザル、ライチュウ、ミミロップ、ロズレイド、ガブリアス……。

そして……ジンオウガ、グラビモス、ラギアクルス……。

みんながいてくれる限り、私は何度でも立ち上がれる。私の心の支えは、決して一つだけじゃないんだから!

 

「……フッ、いい顔つきになったじゃないさ」

 

「姉上?」

 

「いえ、なにも。……最後にもう一度聞きましょう。あたくしたちと来る気は?」

 

「ないっ!!」

 

「……そう。ならば……力ずくでも黙らせてやろうかしらね!」

 

三姉妹が同時にボールを構え、それに合わせて私とテル先輩もボールを構えた……その時だ。

 

「グオオオオオォォォォォォォォォォッ!!」

 

また、あの咆哮が聞こえてきた。よりにもよってこのタイミングで……!

 

「……!?な、なに?このバカでかい鳴き声は……?」

 

「……まさか」

 

「……!姉上、あそこ!」

 

オウメが指した方向……迎月の戦場の入口の上に目を向けると、リオレウスがそこにいた。リオレウスは私たちを三姉妹の間に降り立つと、一度こちらの方を見て……すぐに三姉妹の方へと目を向けた。

 

「……ちっ!このクソデカドラゴン、なんでこっちを見てるのよ!さっきまであっちを襲ってたでしょ!?」

 

「……遠目から見ても大きいとは思っていたけど、これほどの大きさとはねぇ……」

 

「姉上、ヤバイです……少なくとも、想像の云十倍は……!」

 

「だね……ここは逃げるよ!」

 

三姉妹が逃げ出そうと走り出した、その直後だ。

 

「グルォアッ!!」

 

なんと、リオレウスが口から火球を放ち、三姉妹の行く手を遮ってしまったからだ。どういう原理なのか、地面に着弾し爆破した火球の残り火が、いつまでも地面に残ったまま消えないでいる。

 

「くっ……逃がすつもりはないってことかい!」

 

「ね、ねえさん、どうしよう……!」

 

「どうもこうもない……戦って、隙を作るよ!」

 

三人が一斉にボールを投げた。

 

「ゆけ、ドクロッグ!」

 

「行って、ユキノオー!」

 

「サイドン!」

 

「……フ……」

 

ドクロッグ、ユキノオー、サイドンの三匹が一斉に飛び出した。リオレウスはそんな三匹に一匹ずつ目を向けると、「笑わせるな」とばかりに鼻を鳴らした。

 

「余裕をかまして……ドクロッグ、どくづき!!」

 

「ユキノオー、れいとうパンチ!!」

 

「サイドン、10まんばりきだよ!!」

 

三姉妹のポケモンが同時に襲いかかり……鋼の力を纏ったリオレウスの尾が、全てを薙ぎ払った!三匹は背後の岩に叩きつけられて……ダメだ、一撃でやられている……!

 

「ドクロッグ!!」

 

「ユ、ユキノオー!?」

 

「……まさか、一撃とはね。大したもんだ、見た目通りのバケモノってわけ……」

 

「グルルルル……」

 

「……けどね!」

 

……?リオレウスの背後、足元が変……?

そう思っていたら、ゲンガーが地面から勢いよく飛び出した!オマツの二匹目のポケモン、いつの間に……!

 

「どうやら頭の中身は、単細胞だったみたいだね。ゲンガー、シャドーボール!!」

 

「ゲンゲン!ゲーン……!」

 

ゲンガーが、シャドーボールを放つべく影の力を収束している。リオレウスはわずかに後方へ首を動かし、ゲンガーの姿を視界に収めた。

 

「……!あれは避けられない!」

 

「(でも、リオレウスなら)」

 

ゴローンを投げるという発想でこちらを襲ってきたリオレウスが、バカ正直にあの攻撃を受けるとは思えない。なにか、考えがあるのでは……?

 

「ギャオオオォォォンッ!!」

 

リオレウスが大きく咆吼し、半歩足を引くと――

 

宙返りをした。

 

「え?」

 

「なっ?」

 

「「「は?」」」

 

突然の奇行に、誰もが二の句を告げなくなる。そして、宙返りによって大きく尻尾が振られて……。

 

「ガッ!?」

 

そのまま、後方上空にいたゲンガーを大地に叩き落とした。

 

「ゲンガーっ!?」

 

かなりの勢いで地面へと叩きつけられたゲンガー。リオレウスは難なく着地すると後ろを振り返り、ゲンガーを口に咥えるとそのまま三姉妹の方へと放り投げた。力なく転がるゲンガーに、三姉妹は完全に絶句しているようだった。

 

「待てよ……そんなのありかよ……!?」

 

先輩も、突然のリオレウスの宙返りによる反撃に驚いている。……かくいう私も、驚きのあまりに言葉を失ってしまった。

 

「グルルルルル……」

 

リオレウスの口から、炎が漏れ出ている。……ハガネールを熔かした、あの炎だ!

 

「や、やだ……死にたくない!死にたくないよぉ!?」

 

「あ、姉上……!姉者……!」

 

「……ここまで、か……」

 

どうする?どうする?どうすればいい?

あの三姉妹によって実際に被害を受けた人たちだっている。三人がいなくなることで、困っている人の中には助かる人もいるのでは?

けど……そうまでして、あの三人を排除する必要があるの?今後も妨害をしてこないとも限らないし、人様に迷惑をかけない保証もない。

……私は……。

 

「ショ、ショウ……」

 

先輩もまた、どうすればと悩んでいる。……いや、違う。先輩の、先輩の目は、助けることを前提にした「どうすれば」だ。私は……私は、どうしたいの?

とうとう、リオレウスの口からは溢れんばかりの炎が滾っている。これ以上押さえ込めないほどにまで、力を溜めているようだった。三人の悲惨な末路を想像して、思わず私は目を閉じた。

 

 

 

 

――脳裏に、ジンオウガの笑みがよぎった――

 

 

 

 

「ショウ!!」

 

気づけば私は走りだしていた。リオレウスが炎を吐き出すのとほぼ同時に腰につけたボールのうちの一つを引っつかむと、これ以上ないほどの全身全霊全力全開で投げつけた!

 

「グラビモスーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

「ギシャアオォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

私の呼びかけに応じて、ボールからグラビモスが飛び出した。グラビモスはリオレウスの豪火を真正面から受け止めてみせた!

以前、ジンオウガの特殊なタイプ相性の一件から、私はグラビモスとラギアクルスが得意としているタイプ、苦手としているタイプを一つ一つ調べ上げたのだ。

その結果……グラビモスには、ほのお技が一切通じないことを知った!!

 

「……え?」

 

「……生き、てる……?」

 

「……っ、このポケモンは……?」

 

三姉妹は、呆然とした様子で炎を受け止めるグラビモスを見ている。このままだと、まだ危ない……!

 

「グラビモス!すてみタックルッ!!」

 

「ヴゥ"ゥ"ゥ"……ヴォォォアアアァァァァッ!!」

 

「ギャオォッ!?」

 

グラビモスはリオレウスに炎を浴びせられながらも、猛然とその豪火を突っ切って行き、リオレウスにすてみタックルをぶちかました!グラビモスほどの超重量級ポケモンの全身を使った攻撃だ……想定以上のダメージが見込めるはず!

グラビモスに突き飛ばされたリオレウスは、切り立った崖に突っ込んだ。土煙と瓦礫で、一瞬だけリオレウスの姿を見失うが……リオレウスはゆっくりとした動作で姿を現した。……いや、若干だが足元がふらついている!!

 

「グラビモス、ギガインパクト!!」

 

「ヴヴヴ、ギシャアアアオォォォォッ!!」

 

すかさず指示を出して、グラビモスに追撃をさせる。しかし、そこで我に返ったリオレウスが空を飛んだことで躱されてしまった。グラビモスが崖に突っ込むが、それによって崖は完全崩壊してしまった。

ふらつきながらも空を飛び、リオレウスはカミナギ寺院跡へと飛んでいく。けれど、崖から抜け出したグラビモスが、何やら様子がおかしい……?

 

「グラビモス……?」

 

「ヴヴヴヴヴヴヴヴ……」

 

グラビモスの様子が変だ!喉元からまるで熱されたように赤くなっている……何をする気――

 

 

 

 

「ヴルアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

 

 

グラビモスの口から、極太の熱線が放たれた。リオレウスには回避されてしまったが、グラビモスが放った熱線は崖上に積もった雪を解かし、雲を突き抜けて……光線の先端が見えなくなるほどに遥か遠くへと伸びていった。

 

「……えー……」

 

まるで、かえんほうしゃをさらに高密度に圧縮させたかのような一撃だった。

さしずめ「ごうかえんほうしゃ」といったところかな。

攻撃を外したグラビモスは悔しそうに地団駄を踏んでいるけど……それだけで軽い地震が起こっているのでそろそろ止めてほしい。

 

「ありがとう、グラビモス。……リオレウスのやり方に、怒ってくれてるんだよね」

 

「ヴァー!」

 

「うん、その気持ちだけでも嬉しいよ。……ありがとう、ゆっくり休んでね」

 

「ヴァヴァ」

 

私はグラビモスをボールに戻し、三姉妹の様子を見る。……座り込んではいるようだけれど、テル先輩の声掛けに応じている様子からしてきっと大丈夫だろう。

 

「大丈夫ですか?」

 

「……あなた、本当に奇天烈なポケモンを従えているのね。あのドラゴンと同格のポケモンが、他にもいたなんて……」

 

まぁ、普通は驚くよね。……正直、私もあのグラビモスのビームには腰が抜けるかと思った。

 

「どうして、あたくしたちを助けたんだい?あなたには見捨てるという選択もあったと思うけれど」

 

「……どうして、ですか。たしかに、皆さんの日頃の行いを思えば、あそこで見殺しにするのは簡単だったかもしれません。

けど……もしもそうしてしまえば、きっと私は元に戻れなくなると思ったんです。……まだ、心のどこかで人間を信じたいと思っている、私に」

 

「…………」

 

私の言葉を聞いたオマツは小さく息をつくと、ゆっくりと立ち上がった。オタケとオウメの二人も、それに続いて立ち上がる。

 

「……今回の件、いずれ必ず返す。覚えておきなさいな」

 

「はい」

 

「行くよ、二人共」

 

「「は、はい!」」

 

三姉妹の姿が見えなくなるまで見送ったあと、改めてカミナギ寺院跡へと目を向ける。……あの時、リオレウスは一体何を考えていたんだろう。火を吐く直前、彼は私の方を見ていた。まるで、私がどう動くのかを、試そうとしていたかのように……。

 

「……ショウ」

 

「行きましょう、先輩」

 

「……あぁ!」

 

……答えはきっと、リオレウスが持っているはず。必ず問い詰めてみせる……だから、そこで待っててね。

迎月の戦場で真紅に輝く綺麗な鱗を拾い、再びジンオウガを繰り出してその背に乗り込み、私たちは走り出した。次はいよいよ……リオレウスとの決戦だ。

 

 

 

 

 




やっべ、自分文字数とかなんも数えとらんかった。ニア20000文字で短編とかよくほざくわ、こりゃ……。
と、いうことで……めちゃくちゃ長くなったので前後に切ります。プロットなしで書くからこうなるんやで……みなさんも書きものをする時はしっかりと予定を立ててから書きましょう。



リオレウス襲撃時、みなさんはきっとあのBGMが聞こえてきたことでしょう……。


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決戦!リオレウス ~天冠山に紅蓮咲く~

いよいよリオレウスとの決戦です。


迎月の戦場でリオレウスを撃退し、無事に鱗を手に入れた。いつ襲撃が来るともわからないので、慎重に歩を進めていく。

 

「……ところでさっき拾った鱗、すごく綺麗だったな。あんなに綺麗に光っている鱗、初めて見たよ」

 

「私も初めて見ました。……『りゅうのうろこ』とは、また違った存在感ですね」

 

私はポーチから鱗を取り出し、空に翳してみたりして眺めてみる。先輩もしげしげと鱗を見ていて、本当に珍しい物なんだと改めて実感する。

輝く真紅の鱗……多分これは、リオレウスの鱗だ。触れてみた感じからして、過度に力を加えると砕けてしまいそうな気がする。それに、心なしか熱を帯びているような気もする……このことから、リオレウスはほのおタイプを持っている可能性があることがわかった。

ラギアクルスと同じと考えるなら「ほのお・ドラゴン」、リザードンの亜種的なものと考えるなら「ほのお・ひこう」といったところだろうか。

 

「それにしても、さっきショウが繰り出したグラビモス……だっけ。ハガネールでさえドロドロに熔かしたリオレウスの炎を真正面から受け止めて、しかも無傷なんて……」

 

「グラビモスは、体内に熱エネルギーを溜め込む習性があるんです。その習性のためなのか、グラビモスにほのお技は効果がないんです」

 

「そうなのか。……最後のビームも、凄かったな。リオレウスのはかいこうせんよりもずっと強そうだった」

 

「……あのビーム、実はただの排熱行為だって言ったら……信じます?」

 

「え?いや、まさか……え、マジで?」

 

「マジです」

 

「うっそだろ……?」

 

私も初めて知ったときは、先輩と同じような反応だった。

時折、岩ポケモンを捕食したグラビモスが定期的に口から炎を吐いたり、下腹部から高熱のガスを噴き出しているところは、移動中の訓練や野営で何度か見たことがある。

それが熱エネルギーの排出だと知ったのは、食後と排熱後でグラビモスの体温に変化が生じていることに気づいたからだ。岩ポケモンの中には「じばく」の技を使うポケモンもいるので、その自爆エネルギーが熱エネルギーとしてグラビモスの体内に溜まってしまうそうで……だから時折ボールから出して、排熱させてあげないといけない。それとは別に、白色の催眠性の効果のあるガスを噴き出すこともある。これは食後によく見られるので、食事の際に発生したガスなのだろう、と考えられる。

ただ、あの時リオレウスに向けて放つほどの威力になったのは初めて見た。岩ポケモンを食べただけでは熱で体表が赤くなるような変化は起きていなかったから、極端に熱を溜め込み過ぎるとあんなふうに変化してしまうのかもしれない。ますます排熱の必要性が高くなったわけだ。

……何かこういうの、図鑑タスクを埋めているみたいでちょっと楽しくなってしまう。最近では思い立ったが吉日とばかりに、ポケモン図鑑の空いたスペースにジンオウガたちの生態を書き記している。もちろん、グラビモスの排熱も記入済みだ。

 

「他のポケモンも、グラビモスのようなすごい生態があるのか?」

 

「そうですね……例えば、電気を操る海竜ポケモンに、ラギアクルスというポケモンがいます。このポケモンは背中にある背電殻という器官に、電気を溜めることができるんです。この電気を限界まで溜めて放たれる一撃は、同じでんきタイプのライチュウですら受けきれませんでした」

 

「えぇ!?ライチュウは無事だったの?」

 

「もちろん無事でしたよ。……ひんし状態にはなりましたけど」

 

でんきポケモンがでんき技を受けても自分のエネルギーに変換したり、ダメージが少なく済むけれど……ラギアクルスのソレは過剰供給とばかりにライチュウに浴びせられた。結果、電気を過剰に溜め込んだライチュウは高熱を出してぶっ倒れてしまい、二日ほど寝込んでしまった。

……ライチュウですら受けきれなかったラギアクルスの電撃、ジンオウガは全く無傷だったから行ける、と思ったけど……やっぱりそんな簡単に済む話ではなかったみたい。

 

「すごいんだなぁ……グラビモスも、そのラギアクルスってポケモンも。ひょっとして、ジンオウガも?」

 

「それは、まだ……ジンオウガのことは、まだまだ知らないことだらけです」

 

「ガウ?」

 

ジンオウガが「どうした?」と言いたげに振り返るけれど、「なんでもないよ」と伝えれば直ぐに前へと向き直った。

ラギアクルスは背電殻へと電気を溜めることができる……それなら、ジンオウガは?ジンオウガにもおそらくだけど、ラギアクルスと同じように電気を溜める器官が存在するはず。ジンオウガのでんき技を見た感じ、発電能力が欠けているというわけでもない。けれど、ジンオウガは電気を溜めるようなことをしない。でんき技を受けても、周囲に放出することで電気が溜まらないようにしているのだ。

どうしてそんなことをするのか、気になって聞いてみたところ……しきりに背中を気にしているようだった。どうやら電気が溜まりすぎると、私を乗せるのに支障をきたすそうだった。そういう事情があるなら仕方ない、と諦めたけれど……いつか、限界以上に電気を溜めたジンオウガの様子を見てみたいと思う。

 

「……もうすぐ、カミナギ寺院跡です」

 

「いよいよか……絶対に勝とうな、ショウ」

 

「もちろんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ、カミナギ寺院跡が見える崖の上にたどり着いた。そこは……。

 

「これは……」

 

「ここが、カミナギ寺院跡……?」

 

そこはかつて、私が訪れた時とはひどく様変わりしていた。

私が初めて訪れた時は、たまたまリオレウスが留守だったのか不在であり、所々に昔の建物の名残のような石柱がいくつも立っていた。

しかし、今はどうか……石柱は尽く破壊され薙ぎ倒されていて、無理やり広いスペースを作ったかのような印象を受ける。唯一無傷だった建造物は、古代のポケモンを象ったと思しき二つの石像のみだ。その石像は地面から強引に引っこ抜かれたのか、隅の方に二つ揃って並べられていた。……どうしてアレらだけ破壊しなかったんだろうか……。

リオレウスは、カミナギ寺院跡の中央で蹲って眠っているようだった。体力を回復しているのだろうか……やはり彼らといえど、決して無敵の存在というわけではないようだ。

 

「リオレウスだ……眠っているのか?」

 

「おそらく、グラビモスのすてみタックルが相当効いているんだと思います。泥沼だと自重で沈んでしまうほどに重いポケモンですからね、グラビモスは」

 

「……そんな奴に全体重をかけてぶつかられたら、死ぬほど痛いだろうな。実際、食らってすぐはだいぶふらついていたし……」

 

「体力回復のために休眠が必要なほどのダメージなら、今すぐ仕掛けたほうがいいかもしれません……」

 

「だな……よし、行こう!」

 

「ジンオウガ!」

 

「ウオオオォォォォンッ!!」

 

ジンオウガがわざとらしく大きな声で咆哮を上げると、一気に崖から飛び降りた。ジンオウガの咆哮で飛び起きたリオレウスはすぐさま周囲を警戒し、そして私たちに気がついた。

 

「リオレウス!あなたの言うとおり、戦場に置いてあった鱗をこうして持ってきたわ!」

 

「…………」

 

「……私の話を聞いて欲しいの、リオレウス」

 

「グォン……?」

 

首をかしげながらも小さく頷くリオレウス。私は少しばかり深呼吸をしてから、話し始めた。

 

「……あの時、あなたが殺そうとした三人の人間たちのことなんだけど。あの三人は人から物を盗ったりする悪い人たちなの。だからあの時、あなたが三人を殺そうとした時に……考えてしまったの。あのまま殺されたら、それをありがたいと思う人が居るんじゃないか……って」

 

「……グヌゥ」

 

「けどね、同時にそれは、今の私自身にも当てはまることなんだってことにも気づいたんだ。この赤い空の異変……私が原因なんじゃないかって考える人達もいる……。そういう人たちにとって、私が死んだ方が安心できるんじゃないかって……」

 

「グオオォンッ!グル、グルオォォアッ!!」

 

オウメが言っていた言葉……「ギンガ団が私の死を望んでいる」という言葉が、今も頭にこびりついて離れない。もちろん、先輩がいるようにギンガ団全員がそう考えているとは微塵も思っていない。

けれど、もし。あの時空の裂け目から落ちてきた私に、直接的な要因でなくても何かしらの因果関係があったとしたら……そう考えると不安に駆られてしまう。ついその不安を弱音として吐いてしまったけど、リオレウスは首がちぎれんばかりにブンブンと横に振っていた。まさかの全否定だった。

 

「ガウガウ」

 

「ジンオウガ……」

 

見れば、ジンオウガも首を振っている。「それは違う」と、「そんな訳がない」と、私の不安を否定してくれる。

 

「馬鹿なことを言うなよ、ショウ。もしもお前が死んじゃったら、泣くぞ、おれ」

 

「先輩、泣いちゃうんですか?」

 

「あぁ、泣くよ泣く。男泣きの大泣きだ。ひょっとしたら恥ずかしくなってショウが化けて出てくるかもな」

 

「あぁ、それは……たしかに、恥ずかしいですね」

 

思わず苦笑いを浮かべてしまう。私なんかのためにコトブキムラで大声を張り上げて泣き喚く先輩の姿を想像すると、考えるよりもずっと恥ずかしい。今、私の周りにはこんなにも私のことを思ってくれる人やポケモンたちがいる……それだけで、とても安心することができた。

 

「大丈夫です、先輩。私、ちゃんと気付けましたから。……あの三人を助けたこと、私は間違ったことはしていないと思っています。

あの時も言いましたけど……あそこで三人を見殺しにしていたら、私は人の命を奪うことに躊躇がなくなってしまうかもしれませんでした。ともすれば、復讐のためにコトブキムラを襲撃していたかもしれません。

でも、私はまだ人を信じたいんです。今はまだ、自分が信じたい人だけを信じたい……そんな私ですが、いつかはかつてのようにみんなと信じ合っていけたらな……って、思ってます」

 

人を信じることは、まだ怖い。けど、それならせめて私を信じてくれている人たちだけは、信じていたい。

 

「リオレウス……あなたはあの時、私を試そうとした。人を信じることに臆病になっている私が、人を助けたいと思うだけの心があるのかどうかを。人に裏切られた私が、未だに人を憎んでいるのかどうかを。だから、あの三人を殺そうとした。私の反応を見るために」

 

「…………」コクン

 

「私の不安、私の悩み……全部気づいていて、どうにかしようとして、結果的にあんなことをしたのは、わかる。でもね……私、すごく怒ってるの。わかる?」

 

「……ッッ」ギクッ!

 

「どんな理由であれ……あなたは人を傷つけ、あまつさえ殺そうとした。それは、それだけは、許すことはできない。だから……」

 

その言葉とともに、ジンオウガが前に出た。全身に青い稲妻を奔らせながら敵意を剥き出しにしていた。

 

「ここからは、全力でお説教をしてあげる。……バトルをしよう」

 

「ウオオオオォォォォォンッ!!」

 

「グルオオオオォォォォォッ!!」

 

私の宣戦布告に合わせて、ジンオウガが咆哮を上げた。対抗するようにリオレウスも咆哮を上げると、その場で飛び上がって空中に滞空した。

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【咆哮】~モンスターハンター~

【陽昇る水景】~モンスターハンター3rd~

【戦闘!伝説のポケモン】~ポケットモンスター LEGENDS アルセウス~

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジンオウガ!かみなりパンチ!!」

 

「ウオオォォォン!!」

 

まずは先制攻撃、とばかりにジンオウガにかみなりパンチを指示した。ジンオウガは一気に駆け出して距離を詰めると、右前脚に電撃の力を込めて思い切り振り上げた。リオレウスの顔面めがけて振り下ろされた脚は、しかしわずかにバックステップをしたリオレウスに躱されてしまった。

空に逃げられる前に、なんとしても一撃を!!

 

「素早く!でんこうせっか!!」

 

「ウオォン!!」

 

「グゥ……!」

 

でんこうせっかの早業!先手を取れる技であるでんこうせっかを、素早く行動ができる早業で繰り出すという荒業で強引に先手を取りに行く。こちらの手持ちに飛行能力を持ったポケモンはいないし、なによりリオレウスとまともに戦えるポケモンが少なすぎるという問題もあった。

でんこうせっかが命中し、ジンオウガはすぐさま体勢を整える。このまま攻める!

 

「げきりん!!」

 

「グルルルゥゥオオオオォォォォォォンッ!!」

 

「ギギャアアァァッ!?」

 

リオレウスのタイプを予測して、げきりんを繰り出したけど……この反応、かなりいい!四倍弱点を突いた時と、似たような反応だ!リオレウスは、ドラゴンタイプに極端に弱い!!

 

「ドラゴンクロー!」

 

「ウオオォン!!」

 

「グルッ……グオオォォ!!」

 

攻め手を緩めず果敢に攻撃を仕掛けるも、リオレウスの強烈な羽ばたきで、ジンオウガの足は止まってしまった。あれは……たつまきの技か!いけない、ジンオウガが怯んでしまった……!

 

「グオオオォォン!!」

 

一瞬の隙を突き、リオレウスは飛翔した。低空をホバリングするように飛んでいるけど、空に上がられるだけで厄介だ……!

 

「ジンオウガ!10まんボルト!!」

 

「ガウ!ウオォン!!」

 

「グオンッ!!」

 

ジンオウガの放った10まんボルトが、尽く躱されていく……!?なんて空中機動!あれだけの巨体なのに、あそこまで機敏に動けるなんて……!!

 

「グオオォ!グオオォ!!」

 

リオレウスの翼から、空気の刃が大量に放たれた。エアスラッシュ……!?数が多すぎる!ジンオウガは躱しきれずに受けてしまった!

 

「グルグル……ッ!」

 

「ギャオオオォン!!」

 

続いて、リオレウスは翼から黒い風を放ち始めた。あやしいかぜも使えるのか!

 

「グオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

リオレウスの声が、力強くカミナギ寺院跡に響く。この感じ……攻めと守り、二つの力が上昇しているかもしれない……!

リオレウスは二度の羽ばたきで大きく上昇すると、全身に炎を纏った。マズいっ……あれは、フレアドライブだ!!

 

「ジンオウガ!ワイルドボルト!!」

 

「ウオオオオオォォォォォォンッ!!」

 

リオレウスの飛行能力を考えれば、回避は難しい……ならば、正面から迎え撃つ!!炎を纏ったリオレウスと、電撃を纏ったジンオウガが激突し、大爆発を起こした。炎と雷が激しく飛び散り、爆煙の中からジンオウガとリオレウスが飛び出した。

……ジンオウガよりもリオレウスの方がダメージを多く受けているような気がする。ジンオウガにほのおタイプは効きにくいけど、リオレウスはドラゴンタイプでありながらでんきタイプが通じるようだ。それなら、ひこうタイプとの複合……?いや、判断するにはまだ早計だ。

 

「ジンオウガ!らいこうだん!!」

 

「……!グルウゥオォン!!」

 

ジンオウガは電気を集めるとそれを弾丸のように形成し、小さく飛び上がって着地と同時に前方へ放った。この技は雷光弾(らいこうだん)といって、ジンオウガのみが使える特別な技で疲れやすい代わりに威力はお墨付きの強力な技だ。

弧を描くように迫る複数の電撃の弾を、リオレウスは素早く火球を連射することで撃ち落とした。あの火球……ポケモンが使うひのこよりもずっと強力だ。リオレウスの専用技なのかもしれない。

 

「一気に行くよ!素早く、きりさく!」

 

「ウォン!!」

 

再び早業を指示して、次の行動を予測し選ぶ技を決めていく。彼らとのバトルは、思考にすら一瞬の隙を作ってはならない。わずかでも思考が逸れれば、その合間を縫うように攻撃が差し込まれてしまう。攻められるときに、一気に攻める!

ジンオウガの爪による攻撃は、リオレウスが空を飛ぶことで回避されてしまった。さらに、その隙を突くようにリオレウスの足に頭を掴まれた!

 

「ウオォンッ!?」

 

「ジンオウガ!!」

 

なんて力……!掴まれたジンオウガの体が持ち上がってる!ジンオウガも必死に抵抗するけれど、一番力が入る前脚が宙に浮いている時点でどうにもならない……!

 

「グオォォオッ!」

 

「ガアァァッ!!」

 

リオレウスはジンオウガの頭を掴んだままさらに上昇すると、そのまま勢いをつけてジンオウガの顔面を思いっきり地面に叩きつけた!あれはマズイ……ダメージが大きすぎる……!

 

「負けないでジンオウガ!振り切って!!」

 

「グウゥ……!」

 

頭を叩きつけられて動きが止まったジンオウガだけど、私の声はちゃんと届いた!ジンオウガは強引に頭を振ってリオレウスを地面へと引き剥がした……着地直後、隙あり!

 

「アイアンテールッ!!」

 

「ゥワォンッ!!」

 

隙を晒したリオレウスにアイアンテールが直撃して、なんとか吹っ飛ばすことに成功した。リオレウスはすぐさま態勢を立て直し、両者は睨み合いとなった……いや、待って。

 

「ジンオウガ……?」

 

「グゥ……」

 

ジンオウガの様子が変だ……。ダメージ以上に何か、手痛い一撃をもらったかのような……いや、ジンオウガの体が一瞬、紫に光った……って、まさか!?

 

「(まさか、毒!?一体どうして……っ!リオレウスの爪!!)」

 

冷静に考えれば、どこから毒をもらったのかは容易に想像がついた。ジンオウガとリオレウスが接触したのは、フレアドライブとワイルドボルトの衝突時と、ジンオウガがリオレウスの足に捕まった時の二回。

一回目の接触で毒を付与できるとは思えない……そうなると必然、二回目の接触時だ。ジンオウガに触れていたのはリオレウスの足……そして、爪だ。そうか、リオレウスは爪に毒を持っているのか……!

加えて、ジンオウガは迎月の戦場に来るまでにリオレウスの攻撃を回避していて体力を消耗している……。

 

「(ジンオウガはもう戦えない……これ以上戦えば瀕死になる……!)戻って、ジンオウガ!」

 

「グッ……!」

 

一瞬、何か言いたげに振り返ったジンオウガだけど、無理をさせたくないから無視をしてボールに戻す。……まずい、本格的にまずい。

リオレウスの制空能力……そして、空中機動能力はこれまで見てきた飛行能力を持つポケモンたちをはるかに凌駕している。これに対抗するには、同等以上の制空能力を持つポケモンか、機動能力を持ったポケモンを出すしかない。

けれど、普通のポケモンではまず勝ち目がない以上、同格のポケモンを出さざるを得ない……でも、私の手持ちでリオレウスと同格のポケモンはグラビモスとラギアクルスのみだ。ジンオウガは毒で弱ってしまっているため、しばらくボールから出すことはできない。

グラビモスはリオレウスの得意タイプであるほのおタイプに対して絶対優位に立てる……けれど、グラビモスは超重量級ポケモン。リオレウスの機動力には明らかについていけない。

ラギアクルスはリオレウスが苦手であろうでんきタイプもドラゴンタイプも両方使いこなせる。……だが、ラギアクルスの本領は水中戦において発揮される。宙を舞うリオレウスを相手に、対等に戦えるだろうか。

……いや、悩んでいる場合じゃあない。私自身、分かっていたはずだ。この状況で誰を選ぶのか、だなんて。迷いは一瞬、けれど、決断はもっと早く!

ボールを手に取り、力強く投げつける!!

 

「ラギアクルス!!」

 

「グルオオオオオォォォォォォォォォッ!!」

 

私の意思に答え、ラギアクルスがボールから飛び出した。たとえ戦場が地上で、敵が空中にいようとも、戦意が衰える様子はない。むしろ、群青の海岸でバトルをした時と同じか、それ以上に滾っている!

 

「やるよ、ラギアクルス!チャージビーム!!」

 

「グルラァ!!」

 

攻撃と強化を同時に行えるチャージビームを先手に放つ!攻撃自体はリオレウスに回避されてしまったが、チャージビームの本命は自己強化にある。逃げるというのなら、逃げられない技で!

 

「りゅうのはどう!」

 

「グラアァ!!」

 

「……ッ!グオオォン!!」

 

りゅうのはどうは必中技……決して避けることはできない。以前は、ギリギリまで引きつけて高速で移動することで強引に回避したけど、リオレウスはそこまで器用にできないはず!

案の定だ、リオレウスは回避ではなく迎撃に出た。使った技はりゅうのはどう。おなじ技同士がぶつかるけれど……今、ラギアクルスの攻めの力は増している!押しきれ!!

ラギアクルスのりゅうのはどうが……リオレウスのりゅうのはどうを打ち破った!

 

「ギャアオオォン!?」

 

「素早く!10まんボルト!!」

 

「グラララララ!!」

 

「グオオォォンッ!!」

 

りゅうのはどうのダメージで怯んだ隙を逃さない!早業で繰り出した10まんボルトも命中して、リオレウスに連続でダメージを与えられた!

たまらずリオレウスは地上へと降り立った。攻め手を緩めちゃダメだ!!

 

「アクアブレイク!!」

 

「グルオオォォ!」

 

水の力で相手にぶつかるアクアブレイクで、リオレウスの守りを崩す!ラギアクルスが一気にリオレウスへ突っ込んでいく……いや、リオレウスが足を半歩引いて……しまった!!

 

「マズっ……止まって!ラギアクルス!!」

 

「グオオオオオオオ!!」

 

「グラッ!?」

 

リオレウスが、オマツのゲンガーを叩き落とした宙返り……サマーソルトを放ってきた!リオレウスの尻尾は的確にラギアクルスの顎をかち上げ、ラギアクルスの動きを完全に止めてしまった。

 

「グオオオンッ!グオオオンッ!グオオオンッ!」

 

「グラアアアアッ!?」

 

「ラギアクルスッ!!」

 

サマーソルトから体勢を整えてホバリングをすると、リオレウスはそのまま火球を三連発で放ってきた。すべてがラギアクルスに直撃し、彼が悲鳴を上げる。ここで動きを止められたら……!!

 

「グオオオッ!」

 

リオレウスが、足の爪を構えている。まずい、あの毒の爪だ!躱せない……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライチュウ!力強く、かみなりだ!!」

 

「ラーイ……チュウゥーーーー!!」

 

「グオッ!?」

 

と、ここで突然横合いから電撃が差し込まれてリオレウスは動きを止めた。まさか……。

 

「先輩、どうして!?」

 

「どうして?……言っただろ、ショウ。これ以上、ショウばっかりに背負わせたくない、って。

おれも、力になる。ショウ、お前はひとりじゃないんだぞ!」

 

「……!!」

 

そうだ……私には、頼れる先輩がいるんだった。どうして忘れていたんだろう。

今まで、ずっと一人で彼らと相対してきた。ジンオウガと出会った時も、グラビモスと出会った時も、ラギアクルスとバトルした時も……私は、自分と自分のポケモンたちだけで、ここまでやってきたんだと思っていた。

でも、今回は違う。私の後ろには、ずっと先輩がいてくれた。先輩が、私のことを見守っててくれた。彼らとまともに戦えるのは自分だけなんだと、いつの間にか独りよがりになってたみたい……あーあ、カッコ悪いなぁ、私……。

 

「……先輩、お願いします。力を貸してください」

 

「……任せろ!ライチュウ!」

 

「ライラーイ!!」

 

ライチュウは勢いよく走りだすと、そのままジャンプしてラギアクルスの背中に乗り込んだ。ラギアクルスはわずかに背中を気にしたように振り返ったが、すぐにリオレウスの方へと向き直った。

対して、リオレウスは……意外、と言うべきか、先輩の参戦に関して何も言ってこなかった。むしろ、「かかってこい」とばかりに首をクイッ、クイッ、と動かしている。

 

「先輩!ラギアクルスの背電殻に電撃をお願いします!!」

 

「わかった!……ライチュウ!ラギアクルスの背中の突起に10まんボルト!!」

 

「ライ、チュウ!!」

 

ライチュウが放った電撃が、四本の背電殻へと直撃した。みるみるうちに電撃が溜まり、背電殻は青く輝き始めた。これなら……!

 

「ラギアクルス、10まんボルト!!」

 

「グルルルル……グルアアアアアァァ!!」

 

ラギアクルスから放たれた10まんボルトは、先程よりも明らかに威力が増していた。電撃の一つ一つが太く力強くなっていて、攻撃の威力だけでなく範囲も広がっているようだ。現に、リオレウスは先程よりも回避しづらそうに旋回している。

 

「ライチュウ!お前からも10まんボルトを喰らわせてやれ!!」

 

「チュウーーーー!!」

 

先輩のライチュウもまた、10まんボルトで支援してくれる。ライチュウの10まんボルトが羽先を掠め、リオレウスが僅かに体勢を崩した!その直後、ラギアクルスの電撃が一斉に襲い掛かり、リオレウスに多大なダメージを与えていく!!

 

「先輩!!」

 

「わかった!ライチュウ!もう一度、力強く!かみなりだ!!」

 

「ラーイライライ!チュウーーーー!!」

 

ライチュウの力業で放たれたかみなりが、ラギアクルスの背電殻へと伝わっていく。背電殻の輝きが、ついに限界まで達した!!

 

「行って、ラギアクルス!!」

 

「グルオオ!!」

 

ライチュウが飛び降りると同時にラギアクルスが腹這いで素早く移動し、未だに空中で停滞するリオレウスの真下へと滑り込んだ。……今だ!!

 

「ラギアクルス!せんらんばんらい!!」

 

「グルオオオオオォォォォォォォォォッ!!」

 

ラギアクルスが使える最強の技……それが、旋嵐万雷(せんらんばんらい)だ。

体を丸めたラギアクルスが、自信を中心に広範囲に雷を一気に放出する大技で、懐近くで放てばおいそれと回避できない強力な技!

ラギアクルスが解放した電撃は力強い旋風となって渦を巻き、真上にいるリオレウスに直撃した!!

 

「ギャアオオオオオオオオオォォォッ!?」

 

強力な電撃を浴びせられたリオレウスが、力なく墜落していく……ここだ!!

 

「行け!モンスターボール!!」

 

私が投げたモンスターボールが、リオレウスを格納した!ラギアクルスの背中の上で、激しく揺れるボール……。

 

「お願い……!」

 

「頼む!頼む!頼む!!」

 

私も先輩も、祈るようにボールを見つめる。やがて、ボールがぴくりとも動かなくなると……捕獲を示す花火が打ち上がった。

 

「あ……」

 

「……や、った……?」

 

「……や、やった……。やった……!やりました!先輩!!」

 

「あぁ!やったんだな、おれたち!!」

 

「「リオレウス、ゲットだぜ!!」」

 

思わず声が揃ってしまったけど……けど、ここまで本当に緊張しっぱなしの苦労の連続だった。

 

「「……あ」」

 

と、ここで。私と先輩がお互いに抱き合った状態になっていたことに気がつき、慌てて離れた。……なんか、すごく顔が熱いんだけど……。

 

「……行こう、ショウ」

 

「あ、はい」

 

一先ず気まずさはさておいて、背中からボールを落とさないようにゆっくりと戻ってくるラギアクルスのもとへと駆け寄った。

 

「お疲れ様、ラギアクルス。ライチュウもありがとう」

 

「お手柄だったぞ、ライチュウ」

 

「ライラーイ♪」

 

……って、あれ!?そういえば!

 

「先輩!ピカチュウが……」

 

「えっ、進化させたんだけど……って、今更!?」

 

「えぇっと……なんか、色々ありすぎて完全にスルーしてました……」

 

そうだ!先輩のピカチュウ、なんか進化してるんだけど!?そういえば、カミナギ山道で先輩、『バトルの腕をめちゃくちゃ鍛えた』って言ってたけど……ピカチュウの進化も、その一環ってコトォ!?

 

「言っただろ、ショウ。おれ、強くなったんだって」

 

そう言って、先輩がボールを五つ放り投げた。……え、五つ?出てきたのは……。

 

「ヌメルゴン、トゲキッス、ガチグマ、ゴウカザル、ジュナイパー……」

 

「そして、おれの相棒のライチュウ。……今は、この六匹でパーティを組んでるんだ」

 

「へ、へぇ……」

 

やばい、ちょっとバトルするのが楽しみになってきた。しかもヌメルゴンとガチグマはオヤブン個体だ……先輩、相当血の滲むような努力をしたんだろうなぁ……。

 

「ショウくん!」

 

「あ……」

 

声がして振り向いたら、ラベン博士が走ってきていた。その後ろをキャプテンの二人とセキさんが歩いていた。全員が合流してから、話し合いとなった。

 

「まさか……まさか、まさか!捕らえたのか!?あのバケモノを!?」

 

「ツバキさん」

 

「えっ?……ヒェッ」

 

「次はないです」

 

私、相当怖い顔になっていたのかツバキさんが怯えた表情になっていた。ちょっとセキさん、なんでそんな引いたような顔をしてるんですか。

 

「ショウ、あんたのバトル見ていたぜ。……凄まじいな、ジンオウガにラギアクルスにリオレウス……本当に同じポケモンなのか、ちょっとばかし疑わしいくらいだぜ」

 

「はい。三匹が繰り出す技は、通常放たれるポケモンの技の威力を凌駕しています。少なくとも、わたくしの記憶には一切ございませんね。思い出すこともなにもありませんでした」

 

「ボクもポケモン博士としていろんな地方に出向いてきましたが……先ほどの三匹のような強力かつ巨大なポケモンは見たことも聞いたこともないのです。もしや、古くからヒスイ地方に根付く特殊な個体なのでしょうか……?」

 

みんな、どうやら背後にある崖の上からバトルを見ていたみたい。……別に、見られたところで減るようなものは……あー、あるかもしれない。

 

「しっかし、ショウは本当にスゲェな!あのリオレウスに勝っちまうんだからな!」

 

「加えて捕獲まで……やっぱり、ポケモン図鑑の完成にはショウくんの存在が欠かせないのです!あと、できれば先ほどのジンオウガ達のことももっとよく観察させてもらえると……」

 

「ダメです」

 

「即答ですか!?」

 

ラベン博士、ごめんなさい。反射的にNOと答えてしまうくらいには、ジンオウガたちのことをあまり多くの人に知られたくはないんです。……少なくとも、今は。

 

「……ふむ。ショウよ、次に向かうのは純白の凍土だな?」

 

「え……いえ、それは……。いつも向かう先はジンオウガに任せていたので……」

 

「そうか……それなら、ちょうどいいかもな」

 

セキさん……?なにがちょうどいいんだろうか……。

 

「離れ湧水では黙っていたんだが……実は、ジンオウガやリオレウスに似たポケモンが、純白の凍土にも一匹存在する」

 

「えっ!?」

 

いや、仮にそれが本当だとして……どうしてセキさんがそのことを?

 

「どうして知ってるのか、って顔をしてるな?……いや、実はそのポケモンとだな……ウチのワサビがべらぼうに仲良くなっちまってな……最近では日がな一日、一緒に行動をするようになっちまったんだ」

 

「ワサビちゃんが!?」

 

「危なくねぇか、何度か様子見には行ってるんだが……ハマレンゲさんはともかく、あのカイまでそのポケモンと打ち解けちまってるんだよ……はぁ……」

 

「えぇ!?」

 

なんか疲れきったようにため息をつくセキさんだけど……いや、こっちはそれどころじゃない情報を聞いちゃったんだけど!?

次の目的のポケモンは純白の凍土にいて(暫定)、しかもそのポケモンはジンオウガたちと違って人間に対してすごいフレンドリーなの!?

人目を避けて過ごしてきたであろうジンオウガ、グラビモス、ラギアクルス……そして、人を積極的に襲ってきたリオレウス……次のポケモンは、この四匹とは気色が明らかに異なるようだ……。

 

「……わかりました。とりあえず、私は純白の凍土に向かいます」

 

「頼む。……そいつは琥珀色の牙を持ったポケモンで、体長はグラビモスとそう変わらん。あんたならすぐにわかるだろうよ」

 

「はい」

 

「ボクとテルくんは、報告のためにムラに戻るのです」

 

「ショウ……次の場所でも、気をつけてな」

 

「わかってます。……先輩、いつか、バトルしましょうね」

 

「……!あ、あぁ!!」

 

「ブラボー!!スーパーブラボー!!未知のポケモンとのバトル、しかし臆することなく捕獲する勇気……リオレウスが求めた勇気を、あなたさまは見事に示したということですね!」

 

「ありがとうございます、ノボリさん」

 

「ショウ、次に会うまでにリオレウスのことをもっと調べておいてくれよ。そのときは、このツバキとスカタンクで、必ずやリオレウスにリベンジをしてみせる!」

 

「……頑張ってください」

 

ノボリさんは素直に賞賛してくれて、ツバキさんはなにやらリオレウスに再戦をしたいと意気軒昂だ。……まぁ、頑張ってください。

博士とテル先輩は報告のためにムラに戻る、と……。どうしよう、くちふ――じゃない、口止めをしておくべきだろうか。

 

「先輩、あの……」

 

「ショウくん……白状すると、ボクたちだけではジンオウガたちのことを隠しきれる保証はないのです。ギンガ団の団員は、各地に散らばって点在しています。どこの団員が見ているのかは、流石にボクらでもわからないのです」

 

「あ……」

 

そうだった……失念していた!私も調査の途中でほかのギンガ団員と会うことがたまにあったりするけれど……ひょっとしたら、この二人以外のギンガ団員がジンオウガたちを見ていて、それを団長に報告しないとも限らない……!

 

「だからこそ、ボクたちが先んじて団長に報告するのです!」

 

「ジンオウガたちに悪い印象が植え付けられないように、おれたちも頑張るから……ショウも、頑張ってくれ」

 

「……はい。お二人共、ありがとうございます」

 

「困った時はお互い様なのです!」

 

ラベン博士の笑顔に、思わず釣られて笑みがこぼれる。よかった、私はまだ人を信じられる……まだ、誰かの為に頑張れるんだ。

ジンオウガをボールから出して、かいふくのくすりでラギアクルス共々回復させる。その後、ラギアクルスをボールに戻して……あ。

 

「そうだ。ジンオウガも戻っていいよ」

 

「ウォン!?」

 

「なんで!?」と言いたげに声を上げたジンオウガをボールに戻し、代わりに出したのは……。

 

「リオレウス!」

 

リオレウスをボールから出して、すぐに回復をさせてあげる。そして……。

 

「それじゃあ、お約束のお説教ね」

 

「グオン!?」

 

「お黙り!そこにお座り!!」

 

リオレウスを無理やり座らせて、懇懇とお説教をする。時間にして三十分くらいかな……途中からセキさんとノボリさんも加わってお説教をしたあと、十分に反省したようなので許してあげた。ツバキさん?煽りそうだったからテル先輩に止めてもらってた。

 

「リオレウス。次は純白の凍土に行きたいの。あなたの背中に乗せてもらえる?」

 

「グオオオオオォォォォォッ!!」

 

そうお願いすれば、まるでテンションが上がったように声を上げたリオレウス。……意外と、人を乗せて飛ぶことが好きなのかもしれない。姿勢を低くしたリオレウスの背中に乗ってから、私はみんなの方へと振り返った。

 

「それでは、私は行きますね」

 

「あぁ、オレも後でそっちに行く。終わる前には合流する……つもりだ」

 

「待ってますね、セキさん」

 

リオレウスが飛び上がり、一気に空へと飛翔した。

 

「気をつけてなー!」

 

「先輩こそー!」

 

先輩の言葉を最後に見送られながら、私を乗せたリオレウスは一路、純白の凍土へ向けて翼をはためかせた。

 

 

 

 




そういえば、レジェンズの主人公の身長っておよそ1.5m半って感じですよね。
オヤブンワンリキー(1.6m)と並べたら、そこそこ身長が近かったので……。


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【初めまして】我らモンハン部異世界支部【氷牙竜編】

本日、満を持して……


【初めまして】我らモンハン部異世界支部 inモンボ【火竜編】

 

338:空の王者 ID:MH2nddosHr8

本当にすみませんでしたーっ!!

 

339:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

有罪

 

340:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

執行猶予なし、疾く死ぬがよし

 

341:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺もう瀕死状態なのにこれ以上の死体蹴りは勘弁してください……

 

342:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

死体蹴り以前にオーバーキルかまそうとしたのはどこのヘタレウスだぁ?あぁん?

 

343:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺なんて心底驚いたからな?

出てきた瞬間に炎を浴びせられて、何事かと思えば背後には野盗三姉妹がいて

思わず叫んだわ「何やってんだ焔」って

ショウちゃんの指示もあったので、遠慮なくすてみタックルをぶちかまさせていただきました

 

344:空の王者 ID:MH2nddosHr8

その後のグラビームはぶっちゃけ要らなかっただろ!?

 

345:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ダメージはないんだからいいじゃないか

 

346:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ダメージがなくても衝撃はあるんだっつの!墜落するわ!!

 

347:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

チッ、墜ちてくれりゃよかっ――

 

 

――「無双の狩人」が退室しました――

 

 

348:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あっ、呼ばれた

 

 

――「大洋の支配者」が参加しました――

 

 

っと思ったら帰ってきた

 

 

349:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふぅ……海の王者としての意地を見せてきたぜ

 

350:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

キャー ラギアクルス カッコイー

 

351:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ドロポンブチ込むぞ

 

352:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんて理不尽……

 

353:空の王者 ID:MH2nddosHr8

くっそー……調子に乗ってテルくんの参戦許しちゃ――

 

 

――「無双の狩人」が参加しました――

 

 

――「空の王者」が退室しました――

 

 

354:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんか予告なしの出し入れが激しいな……

 

355:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

どうした、光輝?

 

356:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

足役、盗られた……これからは空路の時代だそうです

 

357:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ楽だしなぁ、空路

 

358:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

山越えとかしなくていいしな

 

359:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

くそがよぉぉぉぉぉ!!

 

360:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……ってことは、今頃は純白の凍土へ向けて移動中か……

 

それなら、ほい

 

 

 

 

 

 

 

 

【初めまして】我らモンハン部異世界支部 inモンボ【氷牙竜編】

 

1:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

こんなこともあろうかと、新スレの準備だぁ!

 

2:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

モンボ用の脳内スレでか?

 

3:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はいはい、伝説のブロッコリーは帰ってどうぞ

 

4:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、こればっかりはしょうがないだろ

空路には勝てんよ、さすがにな

 

5:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ましてや、こんな時代じゃあねえ

だから拗ねんなって

 

6:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

拗ねてないやい!バーカ!!

 

7:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

子供かwwww

 

8:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そういや、さっきまで外にいて色々と話を聞いたんだが、聞くか?

 

9:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

聞く

 

10:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

立ち直り早っ!いや、俺も聞くけど

 

11:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おkおk

えぇっと……まず最初に、剣介は完全に現地民と馴染んでいる模様

最近はワサビちゃんと常に行動している

 

12:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ょぅι゛ょ には勝てなかったよ……

 

13:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それから、ハマレンゲニキとカイちゃんとも良好な関係の様子

壁として立ちふさがる気満々だった焔とは真逆の状態になってる

 

14:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁ、あんな殺意増し増しで襲って来るよりかはマシだけど

 

15:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

増し、だけに?

 

16:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

えぇ~……

 

17:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うわぁ……

 

18:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お前が言ったんやろがい!!

 

19:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

意図しないギャグはノーカン

 

20:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ずっこいんじゃが!?

 

21:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それよりちょっと心配事が

あんまり仲良くなりすぎても、それはそれで別れがしんどいんだが大丈夫か?

 

22:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ワサビちゃん泣きそう

 

23:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

実際、背中に乗せてくれんからって泣いたしな

 

24:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、あれは「泣き落しで乗せてくれた」未来を予知した可能性が微レ存

 

25:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いやいや、まさか、なわけ……ないよね?

 

26:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

え、ないよね?違うよね?嘘だと言ってよワサビィ!

 

27:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ゲーム本編でもそのへんは曖昧だったから、なまじありそうで怖いんだよな

 

28:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

つーか、俺らの存在は既に未来予知で認知済みじゃねえか

……つまり?

 

29:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あっ

 

30:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あっ

 

 

 

 

 

 

 

 

122:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そろそろ着いたかね?

 

123:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そういえば光輝、ジンオウガは寒冷地って平気か?

 

124:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うーん、わからん

だが、Xでは、普通に寒冷地に出現するクエストあったし、いけるくね?

 

125:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、行けばわかるだろ

それとさ、実はショウちゃんとテルくんが結構いい雰囲気になってたんよね

 

126:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

先に言えよぉ!?

 

127:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お赤飯炊かなきゃ(使命感)

 

128:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あと、テルくんのパーティーがDLC前にも関わらず変わってたんだが

 

129:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

んー?でもライチュウは固定だろ?

あとはムクホークとバリヤードも固定として……

 

130:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、ライチュウは固定で残りのメンツが

 

ヒスイヌメルゴン(オヤブン)

ガチグマ(オヤブン)

トゲキッス

ゴウカザル

ヒスイジュナイパー

 

だった

 

131:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

テルくん、それ旅パちゃう!ガチパや!!

 

132:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

これって普通に強くないか?

……いや、強くなりすぎィ!?何があったんや……

 

133:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なんか原作と違って、ショウちゃん絡みで覚悟キマってるんだよなテルくん

光輝、心当たりあるんとちゃうか?

 

134:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あー……言われてみれば確かに

ショウちゃんが追放された時について行けば良かったとか、後悔してたり

生きてショウちゃんに会えただけで嬉しかったとか、ラノベ主人公みたいなこと言い出したり

 

135:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

焔とのバトル中に乱入して一人じゃねえぞ!ってめっちゃかっけぇこと言ってたしな

あとはあれだ、二人で抱き合いながら揃って「リオレウス、ゲットだぜ!!」は超微笑ましかった

 

136:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

てぇてぇ!

 

137:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

てぇてぇ!

 

138:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そんで、お互いに抱きついていたことに気づいてから顔を真っ赤にしてそそくさと離れるさまなんて、もう……

 

139:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

てぇてぇっ!!

 

140:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

てぇてぇっ!!

 

141:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

極めつけは手持ちポケモンのうちゴウカザルとライチュウが被ってて

なおかつライチュウがお互いに雌雄で分かれてるんだよなぁ

 

142:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

てぇてぇえええええぇぇぇっ!!

 

143:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

てぇてぇえええええぇぇぇっ!!

 

144:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

青春してるなぁ!!

 

145:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やっぱりショウちゃんは幸せになるべき、はっきりわかんだね

 

 

――「空の王者」が参加しました――

 

 

146:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ただいまー、無事に純白の凍土に着きましたぜ

 

147:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ご苦労さん、やっぱり速いな空路

 

148:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そら(崖も山も邪魔な野生ポケモンもいないんだから)そうよ

……ところで、なんか空気が甘ったるい気がするんだが?

 

149:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さっきまで「ショウテルてぇてぇ」を満喫してたからな

 

150:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あぁ、なるほどねぇ

 

151:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……そっちはなんか疲れてないか?

 

152:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……剣介のやつが「ボッチやんけ俺ぇ!?」ってずっと拗ねてたぞ

冷静に考えたら俺も納得できたけど

 

153:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

計画通りww

 

154:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ショウちゃんにモンボに戻される直前まで「行かないでぇ!?」って泣きついてきてたからな

悪いなぁ、剣介

俺はショウちゃんのポケモンだから決定権はショウちゃんにあるんだ

 

155:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……そのことで、ちょいと気になったことがあるから話しておくわ

 

156:空の王者 ID:MH2nddosHr8

どのこと?

 

157:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

モンボの外と中のことだ

この先のことを考えたら、モンボの中にいる組が外の様子を感知できないのはきつくなるかもしれん

逆に、外にいる組が中にいる組に状況を伝えられんのもよろしくない

 

158:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

たしかになぁ

 

159:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

剣介がボッチな件は

 

160:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

知らん

 

161:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

鬼!悪魔!光輝!!

 

162:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、ジン(迅)オウガ(鬼)だからな、間違いではない

 

163:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

場合によっては、外と中でつぶさに連絡を取り合い、情報共有を密にする必要が来るかもしれん

そうなったとき、モンボの外と中で脳内スレが共有できんのは痛すぎる

俺としてはこの問題をどうにか解決できんか、と考えてはいるんだが……

 

164:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あいにくと、この中にエスパーポケモン及びモンスターは存在しません

 

165:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

モンハン界には超常じみたモンスターはおっても超能力者はおらんからな

 

166:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

光輝の懸念はわかる

モンボから繰り出されてから状況を把握するには、場合によっては遅すぎこともある

一番いい例が、ついさっきのことだな

 

167:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺がボールから出されてすぐ、焔の攻撃を受け止めたやつか?

 

168:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それだ

あの時、ショウちゃんの攻撃指示があったからすぐに動けたものの、それがなかったら剛太は戸惑いで動けなかったろうな

 

169:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

実際、めっちゃ困惑したからな

 

170:空の王者 ID:MH2nddosHr8

トレーナーの指示ありきとはいえ、俺らも生き物だからな……自分で考えて行動できる分、トレーナーの指示でさえ吟味してしまう悪癖みたいなものがある

 

171:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺の時みたいに、「考えるまでもない」ような指示ならバッチコイだが

 

172:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

だが、もしモンボの外と中で情報が共有できたとしたら?

 

173:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

外の状況に対応して、俺らが自発的にモンボから飛び出すことができるようになる

ショウちゃんが迷ったり考えたりする時間が減らせるから、より正確かつ素早く最適解を選ぶことができるようになる

……だからこそ、脳内スレの共有は必要なんだけどなぁ……

 

174:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

どうするか……

 

175:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……あ、出番っぽい

ちょっと行ってくるわ

 

176:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

行ってらー

 

 

――「空の王者」が退室しました――

 

 

177:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……(#^ω^)ビキビキ

 

178:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……まぁ、その、なんだ

 

179:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やっぱ空路には勝てんて、諦めよう

 

180:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ディグショーガヨォー!

 

ソラドオルジャガナンボドボンジャイベダリルズガヨォー!!

 

オリドボルガショルディャンドゥヨディナガグヨディオオグイッショディコルドルシデドゥボンベー!!

 

バーカバーカボヴラドバーカ!

 

ヴムクディア゙ヴラリデヅイラグシディバエ!!

 

181:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

このスレでは人間の言葉で話せ

 

182:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ボヂヂバンデパパンゾロボデデロサデデバギンザグ

 

183:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

このスレではリントの言葉で話せ

グロンギ語もやめろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

257:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ん?

 

 

――「空の王者」が参加しました――

 

 

258:空の王者 ID:MH2nddosHr8

さむさむさむさむさむ!!

ただいまー!!

 

259:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おぉ、帰ってきた

……あ

 

 

――「無双の狩人」が退室しました――

 

 

260:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おかえりー、そして行ってらー

よう、焔、外では何やってた?

 

261:空の王者 ID:MH2nddosHr8

剣介半端ないってもぉー!

 

262:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

アイツ半端なかったの?ほんとに?

 

263:空の王者 ID:MH2nddosHr8

アイツ半端ないって!

 

264:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

意味わからんのだが?

 

265:空の王者 ID:MH2nddosHr8

後ろ向きで火球めっちゃ回避するもん……そんなんできひんやん普通、そんなんできる?

言っといてや、できるんやったら……

 

266:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、マジで?

 

267:空の王者 ID:MH2nddosHr8

マジもマジよ……ワサビちゃんがライドしてるとはいえ、ノールックで回避されるとは思わなんだ……

オデノプライドヴァボドボドダ!

 

268:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

このスレでは人間の言葉で話せ……って、何回言わせるんだ!

いや、千里眼のフル活用ですか?

 

269:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、リオレウスの聴力によればそんな雰囲気ではなかったな

普通にワサビちゃんがこっちを見て、合図を出して回避してた

 

270:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

相性が良すぎて草も生えん

 

バトルの天才+モンハンモンスター=最強では……?

 

271:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

何をしてたんだ?

 

272:空の王者 ID:MH2nddosHr8

純白の凍土全体を使った「ルール無用の鬼ごっこ兼追いかけっこ」

こっちが剣介達を鬼ごっこ的な意味で捕まえるか、剣介達よりも先に凍土をぐるっと一周したら勝ち

……でも、ワサビちゃんは「まずは一回戦」って言ってたし、多分次がある

 

273:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それで光輝の呼び出しか……ワサビちゃんはどうなんだ?

剣介の件で、ショウちゃんと一悶着起きてないか?

 

274:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやぁ、あったもあった、なんとか凍土を先に一周した後なんだがな

先にゴールして、遅れてワサビちゃんと剣介が来て、ワサビちゃんが開口一番

「この子を連れて行かないで」

だからなぁ

ショウちゃんもめっちゃ苦い顔してたしな……

 

275:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

うわ……マジか、いやマジなやつだな

 

276:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ドサイドン達は「仲間」だが、剣介は「友達」だそうだ

んで、なんか俺達絡みで恐ろしい未来が千里眼で見えちゃったそうで……

詳しくは話してくれんかったけど、なんかそれが理由で剣介が連れて行かれるのをめっちゃ嫌がってる

 

277:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……なるほど

 

278:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それで、剣介を連れて行きたければバトルをして勝て、とのこと

↑今ここ

 

279:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

凍土でベリオロスと一騎打ち……しかもワサビちゃんのサポート付きだろ?

勝てるんか、これ?

 

280:空の王者 ID:MH2nddosHr8

正直、厳しいと言わざるを得ん

ワサビちゃんを後押しするかのように、いま外は猛烈な吹雪状態だし

 

281:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

こおりタイプポケモンのすばやさが上がる天気……対峙するは氷が弱点のジンオウガ……勝機は薄いな

 

282:空の王者 ID:MH2nddosHr8

しかして、吹雪だと俺は飛びづらいし、ショウちゃんの判断も間違いじゃないんだよな

できれば雪ぐらいには天気が落ち着くと俺も飛び回れるんだが……

 

283:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

現状、剣介……というより、ワサビちゃんに有利ってことか

……焔はスタンバってたほうがええかもな

 

284:空の王者 ID:MH2nddosHr8

せやな、ショウちゃんからも

「この吹雪の中は飛ばせられない」

って言われて戻されたし……準備はしとくわ

 

285:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

他に機動力で張り合えるのは光輝のみ……しかし、その光輝はタイプ相性では絶対的に不利……

 

286:空の王者 ID:MH2nddosHr8

頼む、光輝……できる限りでいいから時間を稼いでくれ!

 

287:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

しっかし、意外……でもないか

ワサビちゃんにここまで抵抗されるとはな

 

288:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

正直、説得でどうにか出来たら御の字とは思っていたが……そうはいかんかったな

 

289:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ワサビちゃんが見たっていう怖い未来も気になるし……勝負に勝ったら、情報収集もせんとな

 

290:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それと、「モンボの外と中」問題もな

 

291:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そりゃあ、共有できたら便利といえば便利だが……

現状、その手段がなんにも思い浮かばんのも問題だな

 

292:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

293:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

とりあえず、出来た場合で考えるか

光輝と焔は移動手段として常に外にいることになるだろうからいいとして……

 

294:空の王者 ID:MH2nddosHr8

せやな、なんなら俺がヒスイ中を飛び回って様子見なんかしてもいいし

 

295:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

焔が哨戒に当たれば、光輝も一応は移動手段として生きてくるか

 

296:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

297:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それじゃあ、剣介が捕まったあとの原作の流れのおさらいでもするか

 

298:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

予定は立てて置くに越したことはないな

 

299:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……なぁ

 

300:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あ?

 

301:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ん?

 

302:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんか変な声が聞こえんか?

 

303:空の王者 ID:MH2nddosHr8

は?

 

304:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……え……すか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

305:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ほら!なんか変な声聞こえたって!?

 

306:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやいや、今モンボの中は俺とお前と流静の三人だけやで?

 

307:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……いや、待て

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……きこ……すか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

308:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

聞こえる……俺らの他に誰かおるぞ!

 

309:空の王者 ID:MH2nddosHr8

(どこの誰だか知らん)きさま!見ているなッ!

……え、マジで!?

 

310:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

誰だお前!!

隠れてないで出てこいやぁ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

311:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

きこえますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




びっくりした?


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創造神は斯く語りき

創造神、介!入!
果たして創造神は何を語るのか……。


【緊急招集】我らモンハン部異世界支部【邪神参戦】

 

1:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

新スレ立てたぞ……!

オラァ!邪神テメェ、どういう了見だコラァ!!

 

2:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

とつぜんのかいにゅう、もうしわけありません

しかし、じゃしんとは……?

 

3:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

今回のあなたの行動……それを知った異世界人達があなたを勝手にそう呼んでいるだけです

・別時代ないし別世界から子供を拉致し、ヒスイ地方に放り出す

・創造神の言葉通りに行動した子供を元の時代に帰さない

・件の子供以外に創造神によってヒスイ地方に飛ばされた者がいる(暫定)

主にこの三つですね……思い当たることがあるのでは?

 

4:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

なるほど……じゅんをおってせつめいをするひつようがあるのですね

 

5:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

説明するまでもない!大体全部お前が悪い!!

 

6:空の王者 ID:MH2nddosHr8

落ち着け剛太!

……初めましてだな、創造神

いや、アンタが俺たちを前世から認識していたなら久しぶり、の方が正しいか?

 

7:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

そうなりますね、あまたのわたしをとらえしてんじょうびとたちよ

 

8:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

コイツ……ッ!俺らの前世のことまで!

 

9:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……とりあえず、そのままだといまいち伝わりづらいのでこちらの話し方に合わせてもらっても構いませんか?

 

10:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

しょうしょうおまちください

 

 

……はい、問題ありません

 

11:空の王者 ID:MH2nddosHr8

オッケィ

とりあえず聞きたいことがテンガン山レベルに山ほどあるが……実は言うほど時間ないな?アンタ

 

12:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

えぇ……願わくは、手短に済ませられると幸いです

 

13:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

フッザけんな……!テメェの都合で不幸になった人間がいるってのに、今更テメェの都合なんて知るかよ!!

 

14:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

剛太はとにかく落ち着け!

あの創造神がこっちの話し方に合わせるのを忘れていたことを思い出せ、そんなうっかりを創造神がするわけがない

つまり、飛び込みでこのスレに凸してきたってことだ、よほどの事態に違いない

 

15:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……いいぜ、話せよ

ただしくだらねぇことだったら速攻でグラビームをぶち込んでやる

 

16:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

感謝します、鎧竜に宿りし者よ

 

17:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

モンスターもご存知ですか……

 

18:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

存じていますよ

我々ポケットモンスターとは異なる存在……人類がモンスターと呼ぶ数多の竜種と時には共存し、時には鎬を削る、そんな世界があることを

 

19:空の王者 ID:MH2nddosHr8

とりあえず時間もないし、いくつか質問するから答えてくれ

 

20:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

えぇ、私が答えられる範囲であれば

 

21:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

テメェに拒否権があると思うなよ……!

 

22:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

剛太はもう黙れ!マジで話が進まんから!!

……身内が失礼した、創造神よ

 

23:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

構いませんよ

私は、私が思う以上に人間に対して悪意ある存在と認識されているようですね

 

24:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、それも止むなし……自業自得だと思って受け止めるんだな

 

25:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

肝に銘じます

 

26:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それじゃあ、質問をします

我々の転生に対する因果関係にあなたは関わっていますか?

 

27:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

いいえ

 

あなた方が各々のモンスターに憑依転生したのは偶然です

ただ、件のモンスター群を連れてきたのは、私です

 

28:空の王者 ID:MH2nddosHr8

オマエノシワザダタノカ……

 

29:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

えぇ……ですが、私が連れてきたのは息絶えた彼らの遺骸です

ヒスイの大地で生きる上で各地に適応した者達を厳選し、こちらの世界へ呼び込みました

そして命を吹き込み、ポケットモンスターとして再誕させるはずだったのですが……

 

30:空の王者 ID:MH2nddosHr8

異世界で死んだ俺たちが、あんたが連れてきたモンスターの死体に乗り移ったと

 

31:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

その通りです

肉体を再生させ、魂を入れる段階で異世界から迷い込んだ魂が入り込んでしまったのです

それが、あなた方です

 

32:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

モンスターはポケモン以上に獰猛で、危険な存在です……それを承知の上で?

 

33:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

無論です

……しかし、それほどの危険を冒さなければ、アレは……

 

34:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

"アレ"、とは?

 

35:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

いえ……今のあなた方が知るには時期尚早です、お気になさらず

 

36:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……ッ!この期に及んで……!!

 

37:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

剛太っ!!

……了解した、創造神よ

では次です

シンジュ団という組織に、ノボリという人物がいます

彼は記憶を失い、このヒスイ地方に流れ着きました

このことについて、何かしらの関与はありますか?

 

38:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……おそらくは、あります

私とアレの戦闘の余波に巻き込まれた可能性がありますね……

 

39:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なん……だと……?

創造神と何者かがリアルファイトして、その衝撃で時空の裂け目が開いたってことか?

 

40:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

そうなります

……ただ、私もアレの対処に追われる一方で、ノボリという方に関しては今しがた初めて知りました

申し訳ございません……

 

41:空の王者 ID:MH2nddosHr8

冗談だろ……アンタ、自分の分身を作れるくらいにはスゲェんだろ?

そんなアンタが、形振り構わず対応せざるを得なかった"アレ"っていったい……?

 

42:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

それを知るにはまだ早すぎます、火竜に宿りし者よ

ただ……いずれ、あなた方とも相対する、ということだけは覚えていてください

私はそれを伝えるために、ここに来たと言っても過言ではありません

 

43:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……もう、いい

話せないことに関してはこっちも一切聞かねぇ

俺からも一個だけ聞かせろ、どうしてショウちゃんを選んだ?

 

44:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

あの少女ですか……

 

45:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そうだよ

どこにでもいる十代半ばの女の子で、普通に家族がいて、普通に友達がいて、元の世界での暮らしが当たり前にある女の子で……そして、テメェに拉致されて全部ぶち壊された被害者のことだよ

もしも見ていたなら、わかったんだろ?お前、一人の人間の人生をめちゃくちゃにしたんだぞ!どういうつもりなのかって聞いてんだよ、こっちはよぉ!

 

46:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……彼女は、このヒスイの大地に呼び込む上でもっとも私と縁の近い者だったのです

彼女ならば、ヒスイの地と、そこに住まう者たちの意識を変えることができる……導くことが出来るはずだ、と

 

47:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

質問の答えになってねぇぞ……!

 

48:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……なぁ、アンタ

 

49:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

なんでしょう?

 

50:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ヒカリって名前の女の子を知ってるか?

 

51:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……!!

 

52:空の王者 ID:MH2nddosHr8

オーケー、もういいわかった満足だ

 

53:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんっ……!?は?え、マジか……?

 

54:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なんつー因果だ……

 

55:空の王者 ID:MH2nddosHr8

全部、そこから始まってんだな

アンタは彼女を知っていて、だからショウちゃんを……

 

56:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おいおいおいおいおい!

マジか、マジなのか……!

 

57:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

繋がってた、ということか……

いや、だからこそショウちゃんじゃなきゃダメだったんですね

 

58:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……えぇ、その通りです……

 

59:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

む……創造神、声が……

 

60:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……もうすぐ時間のようですね

皆様、この度は私事に巻き込んでしまい申し訳ございませんでした

 

61:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

許す、といえば嘘になる

テメェに関しちゃ、まだまだ疑わしいことやそのことで許せねぇことがたくさんあるからな

疑わしきは罰せよ、って言葉がある……場合によっちゃ、問答無用でぶっ飛ばすからな

 

62:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

勘違いしないでいただきたい、創造神よ

剛太のようにあなたを許せないと思う人間もいれば、そうではない者もいる

 

63:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺はむしろ、アンタには感謝してるぜ?

どんな意図があれ、アンタがなにかしなきゃ俺らがショウちゃんと出会えることもなかったわけだしな

たとえこの世界が並行異世界として剪定事象に巻き込まれたとしても、俺はショウちゃんとの出会いを後悔なんてしない

何気にショウちゃんを乗せるって目標も達成できたし!

 

64:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

今、外で戦っている二人に関しても同じです

言葉が届かないので、如何ともしがたいですが……

 

65:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……それなら

 

 

――「無双の狩人」が参加しました――

 

 

――「零下の白騎士」が参加しました――

 

 

66:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

これで、いかがでしょうか?

 

67:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おらああああああああああ!!

必中ふぶきは痛いよなああぁ、光輝いぃぃぃ!!

 

68:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うるっせぇわ!ハメ技やめーやてめぇ!!

 

69:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

残念でしたー!

ぜーんぶワサビちゃんの指示でーす、僕は何も悪くありませーん!

 

70:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

幼女に罪を擦り付けたぞこのロリコン!

大人の風上にもおけねークソヤローが!!

 

71:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

誰がロリコンだコラァーッ!?

 

72:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……度々、身内がすまない

 

73:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

いえ、お気になさらず

 

74:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……あれ、流静?なんでこのスレにおるの?

モンボから出てないのに?

 

75:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あれ、ホントだ……え、ホントだ!?どういうこと!?

なんかスレタイ変わってるし!?

 

76:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺らもおるで

 

77:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いいなあ、いいなあ

俺もショウちゃんの指示でバトルしたい!

 

78:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

何が起きた……!?待て、一旦ストップバトルストップ!!

待って、何事?なにがどうなってこうなった?

 

79:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……私だ

 

80:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お前だったのか

 

81:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まったく気がつかなか――いや、誰だぁ!?

 

82:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

えっと……ドーモ、光輝=サン、剣介=サン、創造神です

 

83:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ドーモ、創造神=サン、稲妻光輝です

 

84:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……ドーモ、創造神=サン、氷室剣介です

 

85:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふざけとる場合かぁ!?時間がねぇんだルルォ!?

 

86:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

火竜に宿る者がやれって……

 

87:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

焔、お前後でマジで殺す

 

88:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやぁ、ちょっとは印象が良くなるといいなぁって思って

 

89:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、おかげで冷静になれた……どうして創造神がここに?

俺らがモンボの外と中でスレに参加できてるのもお前のおかげ?

 

90:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

それは……

 

91:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

待て、もう本当に時間がない

創造神よ、二人にはこちらから事情を話しておきます

一先ず御身はここからの離脱を

 

92:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

わかりました

……再びアレが動き出したか……早急に対処を……

 

 

――「始まりの創造神」が退室しました――

 

 

93:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

行っちまった……

 

94:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんだったんだ、いったい……?

 

95:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そちらについては、後で話す

とりあえずお前らはやることをやれ

 

96:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おう、了解――っと、吹雪が止んだな

 

97:空の王者 ID:MH2nddosHr8

出番か!?

 

98:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そのようだ!

 

99:空の王者 ID:MH2nddosHr8

よっしゃああぁぁぁ!!

剣介ぇ、勝負じゃいいいぃぃぃ!!

 

100:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えぇー!?なんで吹雪止むねんこのタイミングでぇ!?

 

101:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……で、話してくれるんか?

 

102:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……とりあえず、待つか

 

103:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

二人を?

 

104:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

その通り

……お話はバトルのあとで、ってな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

454:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……と、まぁ

創造神と話をした結果、分かったことは以上だな

 

455:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

信じられん……

 

456:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ……だが、あの創造神ならそれもありうる

 

457:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ショウちゃんを選んだのも、「たまたま一人ピックアップした」んじゃなくて、「自分に最も近しい人間を選んだ」とはなぁ……

 

458:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

かつて結んだ縁が、ここで繋がったってことだよな

 

459:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

けど、俺らがガキの時分に獲った奴さんはいわゆる分身で、この世界線の主人公が獲ったのがオリジナルだったってのはちょいショックだったわ

 

460:空の王者 ID:MH2nddosHr8

その辺は話してみた感じから考えた俺の妄想やで?

 

461:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

信憑性は十分あるけどな、じゃねえとバグやらなんやらで大量捕獲出来るわけねえだろあの邪神

 

462:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ん……まぁ、よくわかったわ

とりあえず考えるべきは一つだけ

 

 

 

 

あのオリジナル創造神と現在進行形でタメ張って絶賛喧嘩中の何者かは誰なのか、だ

 

463:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

煌黒龍

 

464:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

スネ夫だろ

 

465:空の王者 ID:MH2nddosHr8

アルバ一択

 

466:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

全属性を操るポケットモンスターVS全属性を操るモンハンモンスター

 

ファイッ!!

 

467:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

迷わねぇなお前らww

……というか、オリジナル創造神とタメが張れる古龍種で一番まともなのが禁忌のモンスターのアルバトリオンとはな……

 

468:空の王者 ID:MH2nddosHr8

禁忌じゃない他の古龍種は創造神が頑張って「さばきのつぶて」で弱点特効すれば勝てなくもないからな

 

469:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

逆に言うと、それしか打つ手がないんだがな

 

470:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

だが、禁忌のモンスター……とりわけ、モンハン世界のすべての属性を操るアルバトリオンなら、創造神の対抗馬となりうる

 

471:空の王者 ID:MH2nddosHr8

というか、技と技でまともに戦ったらって話なんだよな

ほかの禁忌のモンスターが相手だと、能力とか関係なしに物理的に叩き潰されそう

 

472:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

バチュルにポケモンでバトルを仕掛けるか

バチュルを人間が直接踏み潰しに行くか

……みたいな話か?

 

473:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そうそれ

 

474:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……たしかに、そうなるとわからんな

肉体的なスペックは俺らモンハンモンスターの方が上だけど、持ちうる能力的には一部ポケモンの方が上、ってこともある

レジェンドプレートで弱点を突いたり耐性を得られる創造神の方が、少なくとも俺ら一般モンスターよりは一歩先を行く

 

475:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

たしかにな

そこらへんは流石は創造神なだけある、ポケモン勢のプライドを守ったな

 

476:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ところで、話題にも上がらないあの龍は?

 

477:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ヤメロォ!

 

478:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

今、考えないようにしてたんだよぉ!!

 

479:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それが来たら、終わり

 

480:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

一切合切シャレにならん

神域から動かないアルバに対して、奴は積極的にこっちを滅ぼしに来るぞ

 

481:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だよな

 

……冗談抜きで、あの龍の話をしようとすると体の震えが止まらん

「俺」がというより、「リオレウスの体」が本能的に恐怖してる

 

482:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

俺も

 

483:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺もだ

 

484:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

同じく

 

485:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

以下同文

 

486:空の王者 ID:MH2nddosHr8

じゃあ、この話は終わり

剣介、とりあえずお前は後腐れなくワサビちゃんとお別れしろよ

 

487:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

わかってる

わざわざキッサキ神殿で一泊を選んでくれたショウちゃんには感謝してる

 

488:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

創造神のおかげでモンボの外と中でスレが共有できるだけでなく、スレを通じてボールの中から外の様子がわかるのは本当にありがたいわ

 

489:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ただし、スレに参加しないとわからないままだがな

 

490:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ワサビちゃん、泣いとったなぁ……

 

491:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

よっぽど恐ろしい未来でも視えとったんかな

 

492:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……俺も詳しくは聞いてないから、何とも言えんが

 

「俺たちの死骸が積み重なって、その頂点に何かがいた」

 

……という内容としか聞いてない

頂点にいたのが何者なのか、なぜ俺たちは死んだのか、何もわからんままだけど……ワサビちゃんが俺を死なせたくないという想いだけは、しっかりと伝わったよ

 

493:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ショウちゃんも

 

「絶対に死なせたりなんかしない。私を信じて」

 

って言ってたしな

……人を信じることが一度は怖くなった彼女が、「信じてくれ」と言える日が来るとは

 

494:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ショウちゃんの心は、もう大丈夫だな

 

495:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あぁ、間違いない

 

496:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……ところでさ、バトルのあとでひょっこり顔を出したアイツ、いつからいたと思う?

 

497:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

アイツって?

 

498:空の王者 ID:MH2nddosHr8

イチョウ商会の創造神狂信派の人さ

 

499:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ああ!それってウォロ?

確かにアイツいつからいたんだ?

 

500:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それは知らんが……けど、アイツが来たのが剣介がモンボに入った後で良かったわ

これで少なくとも、ウォロが直接目にしたモンハンモンスターは俺だけになる

 

501:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ウォロ個人に対する徹底的な情報規制……やはり、来るべき決戦に備えてか?

 

502:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁな

ウォロだって七匹目というインチキを使うんだから、こっちだってセーフだろ

 

503:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それはそう

 

504:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……今回は驚きの連続だった

創造神からのコンタクトに加えて、ワサビちゃんが視たという恐ろしい未来……なにか、原作改変より質の悪い原作崩壊の予感がする

 

505:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

少なくとも、DLCが始まるまでは大人しくしていて欲しいもんだな……

 

506:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それな

ディアパルにウォロとその協力者であるはんこつポケモンだけならまだしも……

 

507:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それ以上に面倒な……それこそモンハン絡みの事件が起きたら厄介だぞ

 

508:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そうだな……原作本編が終わった頃ならまだ対処できるわ

それまでは本当に何もしないで欲しい

 

509:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そのへんは俺らで精一杯警戒するしかないわ

今夜はキッサキ神殿で一泊した後、ウォロについて行って古の隠れ里へ、だな

 

510:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やっと原作合流か

いや、寄り道しまくったのだいたい俺らのせいだけど

 

511:空の王者 ID:MH2nddosHr8

古の隠れ里……個人的には、ここにはウォロ以上に恐ろしいと感じる人物がいる

 

512:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ズバリ?

 

513:空の王者 ID:MH2nddosHr8

コギトネキ

 

514:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

コギト姐

 

515:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

コギトちゃん

 

516:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

コギト婆

 

517:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

とりあえず剣介はアウトな

 

518:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なんでぇ!?

 

519:空の王者 ID:MH2nddosHr8

女性に年齢の話はNG

 

520:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

デリカシーのないやつめ

 

521:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

つまり俺が優勝だな

 

522:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

剛太は露骨に馬鹿にしている感があるのでNG

 

523:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんでぇ!?

 

524:空の王者 ID:MH2nddosHr8

とにかくだ!

先祖からの言い伝えや知識を受け継いでいるコギトネキから見て、俺たちがどんなふうに見えるのかわからんから怖いって話よ!

心臓に悪いから下手に核心を突かれるようなこと言われたくねえし!

 

525:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ある意味、あの人が一番厄介だな

先祖からの情報が一切存在しない未知の生物……何も起こらないはずがない

 

526:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

しかも従えているショウちゃん自身から見ても正体不明という

 

527:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

間違いなく、ポケモンではないことがバレる覚悟はしておかんとな

 

528:空の王者 ID:MH2nddosHr8

絶対に言われるわ

 

529:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うーん……今更だが、ショウちゃんにポケモンじゃないってバレるのが怖くなってきた

 

530:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

嘘を吐いたわけじゃないのでノーカン……とはいえ、良心が痛む

 

531:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

しょうがない……こればかりは行き当たりばったりだ、覚悟を決めよう

 

532:空の王者 ID:MH2nddosHr8

んじゃ、今日はここまでか

 

533:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

久々に「乙」で終われそうだな~

 

534:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

何の話?

 

535:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

はぁ?何のって……あれ、何の話だ?

 

536:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

しっかりしてくれよ剛太、ボケたのか?

 

537:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

歳ちゃうわ!!

 

538:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

とりあえず、今日はもう終わろう

乙でした

 

539:空の王者 ID:MH2nddosHr8

お疲れ~

 

540:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

 

541:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

乙っした~

 

542:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

何の話だっけなぁ……あ、乙乙

 

 

 

 

 




ここで、不肖自分の「主人公に対する考察」を述べていきたいと思います。
結論から申し上げますと、「LEGENDS主人公はDPt主人公の親族説」というのが自分の考えです。
根拠としましては、作品内に登場する機械製品と主人公の年齢にあります。
DPtで登場するのは腕時計のようなポケッチ。
LEGENDSでは一転してスマートフォンという最新鋭機が登場します。
ポケッチはさておき、スマホに関してはその利便性などはリアルに用いている我々ならば十二分に熟知しているはず。
DPtとLEGENDSが同じ世界線上に存在する物語である場合、ポケッチの登場からスマホの普及までにどれだけの時間が必要になるのか。ポケモン世界でも明確にスマホが使われるようになったのは、我々がすぐ思い出せるのは剣盾の「スマホロトム」を指すでしょう(スマホ自体の初出はSM)。
我々の世界の時間軸に当てはめるなら、DPtの発売が「2006年」、剣盾が「2019年」なので、DPt主人公も二十代前半と食べご――ゲフンゲフン、いい歳になってくるころでしょう。
ここで私が疑問に思ったのが、「LEGENDS主人公=DPt主人公」の場合、機械製品の台頭時期的に歳が合わないのではないか、ということです。ゲームにおけるポケモン世界では「園児」も含めてどの年齢層でもポケモンを持つことが許されています。主人公もポケモンを持って旅に出ていますが、主人公の年齢はゲーム版以外のほとんどの作品群で設定されている「法律上で成人として定められている10歳」程度の年齢に見えますね。
そして、LEGENDS主人公はシマボシ隊長から「15歳(十代半ば)」と推測されていまが……この推測が正しくなおかつ「LEGENDS主人公=DPt主人公」の場合、主人公が冒険を終えてから4~5年でスマホが登場しているということになります。……いくらポケモン世界でも、そんな短期間でスマホが開発できるの?リアルでも日本最古の携帯電話が登場したのが1970年、「携帯電話」のサービスが始まったのが1987年。ガラケーが1999年、スマホが2009年と、10年の歳月を有しているのにその半分で?……無理じゃないかな。
まぁ、金銀のポケギアがガラケーポジションだとしたら
ポケギア→ポケッチ→スマホ
となって、その間に10年以上経っていれば可能性はありますね。

「ガバガバすぎんだよバーカ!俺の考察を見ろ!!」……という方はぜひにご意見ください。
……正直、自分でも語ってて「穴だらけすぎワロタ」ってなりましたので。


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幕間 少女ワサビと氷牙竜、時々千里眼

幕間です。そして連投です。
いや、幕間なんであんまり間を空けなくてもいいかなって思って。文字数だって少ないし←オイ


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コンゴウ団のキャプテンに、ワサビという少女がいる。最年少でキャプテンを任せられた少女であり、嘘か真かは不明ながら本人曰く「千里眼」を持っているという、少々変わった人物である。そんな彼女がお世話を任せられているポケモンが、ウォーグルである。

ヒスイの地に生まれたヒスイウォーグルと共に空を駆けたり、時折集落に帰省したり、相棒のポケモンたちと戯れたり……そんな日々を過ごす中、キッサキ神殿を訪れた彼女は、普段から目にしている景色の中に異物が混じっていることに気がついた。

 

「なにあれ」

 

クレベース氷塊に林立する氷塊の中でも一際巨大な氷塊……その氷塊の上に、何かがいる。遠目でもはっきりとわかるほどの存在感から、かなりの巨体であることが分かる。

 

「行こっ!ウォーグル」

 

ウォーグルにライドし、早速巨大生物の元へ向かうワサビ。着いてみれば、その大きさはより顕著であった。眠っているらしいその生物は、猫のように体を丸めていた。それでも口元から覗く巨大な一対の琥珀色の牙は、触れるだけでなんでも切り裂いてしまいそうな雰囲気さえある。

 

「なんだろう、このポケモン……?」

 

ワサビでさえ見たことのないポケモン。千里眼で何度か視た未来に、このポケモンの姿はなかった。隠れていた?最近になって現れた?疑問とともに好奇心が溢れてきて、気が付いたらワサビは巨大ポケモンに手を伸ばしていた。そこへ――

 

パチッ。

 

「……ガウ?」

 

「あ」

 

巨大ポケモンが目を覚まし、ゆっくりと体を起こした。ワサビとウォーグルを交互に見やるも、興味なさげに大あくびをしてから氷塊から飛び降りてしまった。

 

「あ……ウォ、ウォーグル!」

 

慌ててウォーグルに乗って後を追うワサビ。巨大ポケモンは極寒の荒地へとゆったりとした足取りで向かう……かと思えば、突然走り出して眼前にいたイノムーに飛びかかった。

鋭い牙を用いて噛み付き、毛深いイノムーの体をあっさりと引き裂いた。周りのウリムーたちが逃げ惑うのも無視して、一心不乱にイノムーを喰らう。

……と、その背後からオヤブンオニゴーリが接近していた。縄張りに侵入した外敵に威嚇するオニゴーリだが、全く意に介されていない。怒ったオニゴーリが飛びかかるも、巨大ポケモンは見向きもしないままアイアンテールでオニゴーリを軽く叩き潰した。

 

「すっごい……」

 

ワサビは上空から、その一部始終を見ていた。イノムーを喰らいながらも、背後のオニゴーリへ絶えずアイアンテールをビッタンビッタンと振り下ろし続ける。この世に己の敵はいないと、そう知らしめるかのように力を振う様は、まるで生態系の頂点に君臨する王者の如く。

食事を終えると同時に、アイアンテールによる攻撃も止んだ。すっかり骨だけになったイノムーと、地面にめり込んで動かなくなったオニゴーリだが、そのどちらにも目を向けることなく巨大ポケモンは極寒の荒地を練り歩く。巨大ポケモンが近づくと、大半のポケモンが怯えたように逃げ出し、次々と離れては遠巻きに動向を見守っている。

 

「(なんだろう、アレ。ポケモン?でも、あんなポケモン見たことも聞いたこともない)」

 

寝転がり、のんべんだらりと爪研ぎを始めるポケモンを見つめながら、ワサビは決心した。

 

「(もっと近づいてみよう!)」

 

普通、あんな光景を見てからこんな事を考える者はそういないだろう。だが、そこは千里眼を持つ少女、ワサビ。既に先の出来事を、予知を通して知っていた。

巨大ポケモンの目の前に降り立ったワサビ。巨大ポケモンはチラリ、とワサビを見やるがすぐに爪研ぎに集中し始める。

 

「初めまして!あたし、ワサビ!」

 

「……ガウ」

 

声をかければ、普通に反応が返ってきた。千里眼で見た通りの展開に笑みを浮かべながら、ワサビは話を続けた。

 

「あなた、すっごく強いのね。どこから来たの?」

 

「ガ」

 

「空?時空の裂け目?あそこから来たの?」

 

「……ガゥ?」

 

「あ、そこは自分でもわかんないんだ……。ねえねえ、いつからここにいたの?あたしが生まれる前から?」

 

「ガウガウ」

 

「へぇ~、違うんだ。それじゃあ結構最近?」

 

「ガウ」

 

「そうなんだ!」

 

爪研ぎをしながらも、ワサビの一言一言に丁寧に反応を返してくれる巨大ポケモン。恐ろしい形相の割に愛嬌のあるその仕草に、ワサビ自身も会話が楽しくなってきていた。

……と、その時だった。ワサビの視界に、別の景色が写りこんだ。ワサビ自身が持つ異能、千里眼による未来予知。その未来の中には目の前の巨大ポケモンの他にも、大きなポケモンたちが写りこんでいた。

 

電撃を操り、大地を駆ける狼のポケモン。

全身に鎧のように岩をまとった竜のポケモン。

広大な海を泳ぎ、電撃を纏う首長のポケモン。

雄大な翼で天を舞い、炎を吐く赤い竜のポケモン。

そして、目の前の巨大ポケモン。これら五匹のポケモンたちが一堂に会している場面だった。そして、その中央には、一人の人間の姿……。

 

と、そこで映像は終わってしまった。最後に出てきた人間の正体などはわからなかったが、それでもわかったことがひとつある。

 

「あなた、お友達がいるのね」

 

「ガウ?ガウガウ!」

 

「えへへ……今度お友達も紹介してよ!」

 

「ガーウ」

 

これが、少女ワサビと巨大ポケモン……異世界にて「氷牙竜」と呼ばれ恐れられるモンスター、ベリオロスのファーストコンタクト。この日を境に、ワサビは度々ベリオロスに会いにいくのであった。

 

 

 

 

各地のキング・クイーンが荒ぶろうが、それを時空の裂け目から落ちてきた(・・・・・・・・・・・・・)ギンガ団の人間が鎮めて周ろうが、突然空が赤く変容しようが、ワサビとベリオロスの関係は変わらない。件のギンガ団が雪原キングを鎮めるために滞在している間、ベリオロスが一切姿を見せなくなったのはさすがに気になったが、キングが鎮められてギンガ団が去るといつも通りに姿を見せてくれたのでワサビはほとんど気にしなかった。

 

キングのお世話をしているシンジュ団のキャプテンのハマレンゲがベリオロスに勝負を挑んでいることを知ったときは、素直に勝負を見学させてもらった。ベリオロスはその巨体からは想像がつかないほどの速さで俊敏に動き回り、そして想像通りの強力な威力でもって技を繰り出し、ハマレンゲのポケモンを次々と鎧袖一触で撃破していったのだ。ハマレンゲは決して弱くはない。むしろシンジュ団の中ではノボリに次いで強者として知られている。だが、そんなハマレンゲでさえベリオロスには敵わない。ベリオロスが強すぎるのだ。ポケモンという枠組みに収まりきらないほどに。

 

ワサビ自身も手合わせさせてもらったが……ワサビの相棒たちはベリオロスと戦うには鈍足過ぎたようで、動きについていけずあっさりと下されてしまった。途中、シンジュ団の長もベリオロスと手合わせをしたのだが……なんというか、彼女は相棒を遊覧飛行へ拉致されたり、超能力すら腕力でゴリ押しされたり、一撃も加えられないまま一撃で倒されてしまったりと、終始遊ばれているような気がして少々可哀想であった。それでも、ベリオロスと戦うのは純粋に楽しかった。戦いを通して、ベリオロスのことを次々と知ることができたからだ。

 

そんな毎日が、当たり前のように目の前にある。充実した日々をワサビが実感し始めた、そんな時だった。ベリオロスと遊びすぎて長く集落に帰っていなかったワサビが、久々に集落へと帰省し、そこで一泊過ごしている間のこと。眠っている間に、その予知は見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死が、目の前に広がっている

 

燃え盛るヒスイの地に、死が広がっている

 

積み重なる竜の死骸、流れ出る夥しい血

 

竜によって築かれた屍山血河、その頂点

 

と、呪いと、憎悪を撒き散らすソレ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ"あ"ぁ"あ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"ぁ"っ!?!?!?!?」

 

そこまで見て、ワサビは絶叫とともに飛び起きた。心臓が早鐘を打ち、嫌な汗が全身から溢れ出す。体の震えが止まらず、荒く吐く息は整える暇もない。いてもたってもいられなくなり、ワサビは集落を飛び出した。

純白の凍土に着くなり、ワサビは血眼になってベリオロスを探した。探して、探して、探し続けて……氷河の段丘でヒスイニューラの群れと争っているところを発見した。複数のニューラに飛びかかられ、攻撃を受けるベリオロス。当人には大したことはないようだが、現場を目撃したワサビにとっては全く問題ではなかった。

 

 

――千里眼で視えた、血みどろのベリオロスの姿が――

 

 

「ブーバーンッ!!ニューラを全部やっつけてっ!!」

 

勢いのままブーバーンに指示を出し、サイコキネシスでベリオロスに肉薄するニューラを片っ端から吹っ飛ばす。突然、四方八方へと吹っ飛んでいくニューラの様子に呆気に取られるも、ベリオロスは声でワサビを認識したようでそちらへと振り返っていた。

ワサビはすぐさまベリオロスにしがみつく。そこには確かに温もりが、生きているという証がある。そのことに安堵すると、より一層力強くしがみついた。

 

「ガウ?ガウガー」

 

「ブバー……」

 

「ガウ……」

 

ベリオロスがブーバーンに「どうしてこんなことに?」と尋ねるも、ブーバーンも「わからない」と首を横に振る。突然のワサビの変貌に、ベリオロスは愚か相棒のブーバーンすらついていけていない。

 

「(守らなきゃ……)」

 

千里眼で視えたモノ……あれは地獄だ。ベリオロスやその仲間でさえ敵わないナニカがこのヒスイ地方に現れ、ベリオロスたちを皆殺しにしてしまう。それどころか、このヒスイの大地を劫火で包み込み、すべてを破壊しつくしてしまう。そんな未来が……有り得てしまう。その事実に、ワサビは体の震えが止まらない。

ベリオロスとその仲間が共に倒れていたところを見るに、おそらく彼らは誰かの相棒になったのではないか、と推測される。その誰かと共にあのナニカに挑み、そして……敗北した。

 

「(守らなきゃ)」

 

幸いにして、その誰かというのが誰なのかは、おおよそ見当が付いている。己の千里眼による未来視と、地獄の未来を見る前に様子見に来た団長のセキから得た情報からアタリをつけていた。

 

「(守らなきゃっ)」

 

それは、ギンガ団のショウ。キング・クイーンを鎮め、一度は己に勝利した少女だ。たしか、現在はこの赤い空の異変の責任追及によってギンガ団を追放されたと聞いた。そして、今の彼女は目的は不明だが各地を転々としていると聞いている。

おそらく目的は、ベリオロスとその仲間たち。彼らの力を集めて、この事態の収束に乗り出そうという魂胆だろう。

 

「(守らなきゃっ!!)」

 

だが、もしそれが叶ってしまったら?ワサビが見た地獄の未来が、より現実味を帯びてしまう。ショウによって集められた彼らがナニカに挑み、そして……。

ワサビは己の意思で、未来視を使う。見えた未来は、赤い竜に乗って純白の凍土に降り立つショウの姿と、アンノーン文字を解読したショウが呟いた彼の名前……ベリオロス。

 

「絶対にやらせない。ベリオロスはあたしが守る。絶対絶対、絶対に……っ!!」

 

「…………」

 

ワサビは決意した。必ずベリオロスを守ってみせると。そのためにも、今の相棒たちだけでなく、新しい仲間が必要だ。幸い、ショウがやってくるまでに時間はある。それまでに、己の相棒たちを最高の状態に仕上げてみせる。早速ワサビは仲間集めのために踵を返し、歩き始めた。

悲壮な決意を胸に抱く己の姿を、不安に満ちた目で見るベリオロスに気が付くことなく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たのね」

 

運命の時は、近い……。

 

 

 

 




この後あなたは感想で「ワサビちゃん頑張れ……!」……と言う!


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その会遇(であい)は吹雪と共に

???「前書きは どうでも いいか ほら 本文 読もうや!」


激闘の末にリオレウスを新たな仲間として加えた私は、早速そのリオレウスの背中に乗って空を飛んでいた……これ、すごい!

 

「(ウォーグルより速い!)」

 

リオレウスの飛行速度は、私の想像を超えていた。ライドポケモンとして力を貸してくれるウォーグルは、飛ぶというよりも滑空する、という表現が正しい。果たして、リオレウスはどうか。

その大きな翼で力強く羽ばたき空へと舞い上がり、一路純白の凍土へと向かうまでの一連の流れは完璧で淀みなく、私を背に乗せてもものともしていない。陸路ではジンオウガだけど、空路なら間違いなくリオレウス一択だ。

そしてなんと、ほぼ丸一日飛び続けてもリオレウスはへっちゃらで、しかもそのまま純白の凍土に到着してしまったのだから大したものだ。

 

「ありがとう、リオレウス。ゆっくり休んでね」

 

「グオン」

 

リオレウスをボールに戻し、辺りを見渡す。

今、私がいるのは豪雪谷と極寒の荒地のちょうど中間地点、その東側にある崖の上だ。ここなら、ベースキャンプが手前の崖で死角になっているから安全に着陸できるのだ。

 

……セキさんは、ここに私が求める五匹目のポケモンがいるって言ってた。そのポケモンはワサビちゃんとハマレンゲさんの現地キャプテンの二人、そしてシンジュ団の長であるカイさんと大変良好な関係を築いているんだとか。

うーん……ワサビちゃんはキッサキ神殿にいることが多いし、ハマレンゲさんといえばクレベース氷塊にある一番大きな氷塊の近くだろう。カイさんは……きっと、集落だ。接触はできない。

 

「……よしっ」

 

オオニューラにライドして崖を降りて、極寒の荒地に到着。とりあえず、ハマレンゲさんを訪ねにクレベース氷塊へ……。

 

「来たのね」

 

「……っ!?」

 

……っと、そちらへ足を向けた直後、背後から声をかけられて心底ビックリした!多分、ビクッ!ってなったと思う。それくらいには驚いたから。

恐る恐る振り返ると、そこにはワサビちゃんがいた。……ただ……。

 

「ワサビちゃん……?」

 

「……っ」

 

あれは、本当に私が知るワサビちゃん……?

私が知るワサビちゃんは千里眼を持ってて(本当かはちょっと曖昧)、二択を迫るような独特な言い回しをするちょっと不思議ちゃん……そんな印象だった。

けれど……今、目の前にいるワサビちゃんはそんなかつての印象を霧散させるほどの気配を身に纏っている。幼い顔には似合わないくらいに眉間にシワを寄せていて、まるで何かに耐えているような、泣きたいのを堪えているような……そんな印象がある。

 

「ワサビちゃん、どうしたの?」

 

「……ショウさん、あなたのこと、聞いたよ。ギンガ団、追い出されちゃったね……あたしはとっくに千里眼で視えてたけれど」

 

「……うん、そうなんだ。でも……追い出されちゃったおかげで、素敵な仲間に出会えたんだ。今度、ワサビちゃんにも紹介してあげるね」

 

「ううん、必要ないよ。だって、全部、視えたから」

 

そういうと、ワサビちゃんは目を閉じて何かを思い出すように何度か首を傾げていた。

 

「雷の狼の子、岩の竜の子、海の竜の子、そしてここに来るまでに乗ってきた炎の竜の子……みんな、ショウさんの新しい仲間なんだよね?」

 

「……うん、そうだよ」

 

「あのね、あたしも新しいお友達ができたんだ。……今、呼んであげるね」

 

「え」

 

呼ぶ……?新しく仲間になったポケモンかな……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいで!ベリオロス!!」

 

「ガオオォッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワサビちゃんが片腕を上げながら呼びかけると、どこからともなく鳴き声が聞こえた。どこから聞こえたのか、声の主を探していると突然空から何かが降ってきて地面に激突、それと同時に私たちの周りを氷の渦がたくさん巻き起こった。

その暴風に耐えているとワサビちゃんの後ろから何かが姿を現した。ゆっくりと近づくそれは、ワサビちゃんのすぐ真後ろで足を止めた。

 

 

 

 

「ガオオオオオオオォォォォォォォォッ!!」

 

 

 

 

竜巻が消え、吹雪が止むと同時に聞こえた咆哮。そこには一匹のポケモンがいた。

 

雪原に溶け込む白銀の体躯。

いくつもの鋭い刺が生えた腕。

先端が二股に割れている長い刺付きの尻尾。

口外にまで伸びるほど巨大に発達した一対の琥珀色の牙。

 

セキさんから聞いていた、特徴……琥珀色の牙が話の内容と一致する。あれが、五匹目のポケモン……!

アンノーンたちが飛来して、すぐさま整列した。

 

BERIO ROSU

 

「お疲れ様」

 

ワサビちゃんがアンノーンを労うと、彼らはニコニコと笑顔を浮かべて飛んでいった。ワサビちゃんは、既に名前を知っていた……。ベリオロス……あのポケモンの名前を。

 

「ベリオロス……」

 

「そうだよ。この子の名前はベリオロス、あたしの大切な友達」

 

「友達……」

 

「千里眼で視えちゃった。ショウさん、この子の力を貸して欲しいんだよね。ウォーグルの時と一緒」

 

「うん、そうなの。だから、私にベリオロスと話をさせてもらえないかな?」

 

さすがはワサビちゃん……千里眼で全部視えているんだ。これなら、話も早くて済むかも……。

 

「……今はダメ」

 

「えっ!?」

 

え、ちょ、まさかのノー!?

 

「ど、どうして!?」

 

「……それよりさ、あたしとまた勝負しましょ!あたしに勝てたら、ベリオロスとお話をさせてあげる!どう?」

 

「ど、どうって……」

 

そりゃあ、勝負して勝ったら話をさせてもらえるなら、別に……。いいか、受けてたとう。ワサビちゃんとは一度勝負して勝っているし、彼女が連れているポケモンも把握している。油断しなければ負けないはずだ。

 

「いいよ、勝負しよう」

 

「ふふっ!それじゃあ、まずは競争ね!」

 

「きょ、競争!?」

 

「そう、競争!準備していいよ、待っててあげるから」

 

「あ、うん。えっと……リオレウス!」

 

「グオオォン!!」

 

競争するといきなり言われたら慌てるでしょ!こっちはポケモンバトルだと思ってたのに!私は慌ててリオレウスをボールから出した。

リオレウスは出てきてすぐに私の方を見て、それからワサビちゃん、ベリオロスの順に顔を向けた。そして、ベリオロスを見るやいなや戦闘態勢に移った。

 

「落ち着いて、リオレウス。競争するだけだから」

 

「グオ?」

 

「ふふっ、リオレウスってばせっかちさん!見た目はごついのに、可愛いね」

 

「…………」

 

なんとなく、可愛いと言われたリオレウスが不服そう……。まぁ、リオレウスは「かっこいい」が似合うポケモンだからね……。

 

「それでワサビちゃん、競争って?」

 

「うん。……内容は、ルール無用の鬼ごっこ兼追いかけっこ!」

 

「る、ルール無用……」

 

「ここ、極寒の荒地からスタートして鬼氷滝を経由して雪崩坂、氷山の戦場、氷河の段丘に向かうの。そこからエイチ湖方面に向かってシンジュ集落を飛び越えて心形岩山に着いたら、クレベース氷塊にある一番大きな氷塊の上を目指す……そこがゴールだよ。

そこに着くまでにショウさんがあたしを捕まえるか、あたしより先に氷塊の上に着いたら勝ち。簡単でしょ?」

 

「……まぁ、うん。聞く分にはね……」

 

「……あたしはショウさんとの競争を楽しみにしてる?してない?さて、どっち?」

 

「少なくとも、ワサビちゃんは楽しそうだよね」

 

「…………。……うん!」

 

さてさて、ワサビちゃんはウォーグルに乗るのかな。だとしたら、私もリオレウスを戻さないとフェアじゃな――

 

「行こっ!ベリオロス」

 

「ガオ」

 

「――へっ?」

 

私が呆気にとられている間に、ワサビちゃんは軽快な足取りでベリオロスの背中に乗った……って、えぇ!?

 

「べ、ベリオロスに乗るの!?」

 

「……?うん、そうだよ。だから、ショウさんもリオレウスに乗っていいよ」

 

「ああ、うん、ありがとう……じゃなくて!私が想像しているよりもずっと仲良しだね……?」

 

「そりゃあもう。ショウさんが来るずっと前から、あたしとベリオロスは一緒だもん」

 

私がジンオウガや他のみんなと会ってる間に、絆を深めたんだ……。これは、手強そうだ……!

私がリオレウスに乗り込んでから、ワサビちゃんは続けた。

 

「さっきも言ったけどルール無用……いくらでも妨害していいよ。……けど、妨害程度で、あたしとベリオロスを止められるとは思わないでね」

 

「ガオ」

 

「……もちろん、思ってないよ。けど、私だって負けるつもりはないから」

 

「……そうこなくっちゃ。ブーバーン!合図をお願い」

 

「ブバ」

 

ワサビちゃんの相棒であるブーバーンが、片腕を上げた。あそこから炎が出たら、それが合図みたい。

スタートの時を、今か今かと待つ。そして――

 

「……ブーバー!」

 

ブーバーンの腕から、炎が放たれた!!

 

「ベリオロス!」

 

「ガオォン!」

 

「リオレウス!」

 

「グオォオ!」

 

それぞれ乗り手の声に応え、二匹は一斉にスタートした!

リオレウスは空を飛び、ベリオロスは地を駆ける。……ベリオロスの移動速度、思った以上に速い!鬼氷滝への道を曲がり、そのまま滝に向かって走っていくベリオロス。あの両腕の刺、武器じゃなくてスパイク……滑り止めの役割があるのか!

このままじゃまずい……ワサビちゃんには悪いけど、早速妨害だ!

 

「リオレウス、ひのこ!!」

 

「グオォ!」

 

さすがにリオレウスの特技である豪火球は過剰威力……だからひのこを選んだけど、それでも直撃したらタダじゃ済まないので牽制の意味も込めてベリオロスの移動先に撃ち込んでみる。

 

「……っ!くるよ、ベリオロス!右!!」

 

「ガオッ!」

 

「次は左!」

 

「ガオガオッ!」

 

「そこで一時停止!」

 

「ガオン!」

 

「走り抜けて!」

 

「ガオオン!」

 

けど、尽く躱されてしまった!ワサビちゃんはこっちを見ながらベリオロスに指示を出して、ベリオロスはワサビちゃんを完全に信頼しているようでこっちに振り向くことなく指示通りに動いてみせた。

なんて連携だ!群青の海岸で即席の連携でバトルしたガラナさんとラギアクルスもすごかったけど、ワサビちゃんとベリオロスはもっとすごい!!

 

「そんなんじゃ妨害にならないよー!」

 

「うっ……言ったなー!」

 

当てるにはもっと接近しなければ。そう思って近づけば、ワサビちゃんから挑発されてしまった。まぁ、当てるつもりのない攻撃じゃ妨害にならないのは事実なので、簡単に言い返すだけにして競争に集中する。

ベリオロスの身体能力……想像以上だ。オオニューラと同じように崖登りをするのだけれど、まるで跳ねるように軽快にジャンプしながら登っていくのだ。ジンオウガは飛び越えるといったイメージだけど、ベリオロスは文字通り登るのだ。

鬼氷滝をあっという間に登りきったベリオロスは進路を西へと変更し、雪崩坂の方へと走っていく。リオレウスも負けじと飛ぶが、今はわずかに向こうの方が速い……!

 

崖からジャンプして雪崩坂に降り立ったベリオロス。そのまま勢いを落とすことなく方向転換して、一気に北上を開始した。このままじゃまずい……こうなったら!

 

「リオレウス!ブレイブバード!!」

 

「グオオオオオォ!!」

 

ひこうタイプ技の中でも屈指の威力を誇る突進技、ブレイブバード。その勢いを利用して、一気に加速を狙う!……よしっ、ベリオロスを抜いた!!

 

「むむっ、それならこっちは……でんこうせっかだよ!」

 

「ガオン!」

 

ワサビちゃんも判断が早い!でんこうせっかならかなりの加速が乗る……けど、この先には氷山の戦場がある……つまり、崖がある!でんこうせっかの勢いだと、崖にぶつかるかもしれ……って、えぇ!?

 

「ベリオロス!ジャンプ!!」

 

「ガオ!」

 

ワサビちゃんの指示を受けたベリオロスは、でんこうせっかの勢いを落とすことなく跳躍し、氷山の戦場の崖を乗り越えてしまった!嘘でしょ、そんなの……!

 

「止まらないよっ!あたしも!ベリオロスも!!」

 

「ガオオン!!」

 

「……っ。リオレウス、もう少しだけ頑張って!」

 

「グオオン!!」

 

競争はまだまだ続く。現在のところ、ワサビちゃんとベリオロスが若干の優勢。度々こちらかもひのこによる妨害攻撃を仕掛けているけど、まったく当たる気がしない……!

ベリオロスはエイチ湖の滝口を跳躍して乗り越えると、そのまま翼を広げて飛翔し始めた。……しめた!飛行速度ならリオレウスの方が速い!ベリオロスもウォーグルと同じで、滑空する飛び方をしている!

 

「リオレウス!」

 

「グオンッ!」

 

私の言葉に応えたリオレウスが、ここまで温存していた体力を使いきらんとばかりに一気に飛行速度を上げた。最悪、私のことは度外視して全力で飛んで!

 

「……っ。やっぱり、速いね!」

 

「雪原ではベリオロスの方が速くても、空の上ならリオレウスの方が速いよ!」

 

「勝負はまだついてない!」

 

シンジュ集落の上空を通過すると、ベリオロスは素早く降下して着地すると、すぐに走り出した。やっぱり地上での移動速度はベリオロスの方が上……でも!

 

「リオレウス!ブレイブバード!!」

 

「グオオオオオオオ!!」

 

「あっ……!」

 

心形岩山を越えたタイミングで、ブレイブバードで一気に突っ込む!!リオレウスはぐんぐん加速すると、一番大きい氷塊の真上に到着した。そのままゆっくり降下していき、最後は静かに着地した。……少し遅れてから、ワサビちゃんとベリオロスも到着した。

 

「……負けちゃった。やっぱり飛ぶのはリオレウスの方が速いね」

 

「でも、ベリオロスも速かったよ。走る速さなんてこっちの想像以上で、焦っちゃった」

 

「そっか……それじゃあ、二回戦だね。氷山の戦場で待ってるよ」

 

ま、まだあるのか……。

 

「……この子を連れて行かないで……」

 

「えっ」

 

「……ううん、なんでもない。行こっ、ベリオロス」

 

「ガオガオ」

 

再びベリオロスに乗り込んだワサビちゃんが、そのまま氷山の戦場へと飛んでいった。……二回戦……か。いよいよバトルの時が来た、ってわけね。

それにしても、「連れて行かないで」……か。仲のいいポケモンが連れて行かれるのが嫌……ってわけじゃなさそう。いったい、どんな理由が……。

 

「負けないぞ……」

 

私もリオレウスに乗り込み、氷塊から降りた。すると……。

 

「やあやあ、おまえさん!お久しぶりですね」

 

「ハマレンゲさん!」

 

「おぉ、これはまた大きなドラゴンポケモンですな。もしや、ノボリさんが言っていたドラゴンポケモンとは……?」

 

「はい、このリオレウスのことです」

 

「グオグオ」

 

氷塊から降りた先に、ハマレンゲさんがいた。後ろには相棒のオニゴーリにユキメノコ……あと、クレベース!新しい仲間が増えたんだ……。

 

「ハマレンゲさん、どうしてここに?」

 

「ふむ……説明するのも吝かではないですが……とりあえず」

 

「……とりあえず」

 

「「ポケモン、だしますか/ポケモン、だそうや」」

 

なんとなくわかってたよ……会話の流れからして、バトルになるだろうなぁって。

あぁ、リオレウスってばあくびなんてしちゃって……ごめんね、ちょっとだけ待たせちゃうね。

 

「ルールを決めましょう。……ルールは一体一の決闘方式!よろしいか!」

 

「望むところです」

 

「「行って!ミミロップ!/先手はユキメノコ!お願いします!」」

 

「ミミ~!」

 

「メーノ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【戦闘!キャプテン】~ポケットモンスター LEGENDS アルセウス~

【怒れる雪獅子】~モンスターハンターポータブル2ndG~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先手必勝!ミミロップ、ほのおのパンチ!!」

 

「後手必殺!ユキメノコ、こおりのキバです!」

 

ミミロップで的確に弱点を突く技を指示したけど、ユキメノコは軽やかな動きでこれを回避すると反撃にこおりのキバを放ってきた。耳を噛まれたミミロップは頭を振って強引にこれを振りほどいた。

……おかしい。初めて戦った時よりも明らかに素早さが上がっている!

 

「驚いているな?わたしもポケモンたちも、ただただ無為に時間を過ごしていたわけではない!おまえさんに敗れてからというもの、彼の白騎士と常日頃より一手交え、己を鍛え上げてきたのだ!」

 

「白騎士?……!ベリオロスと!?」

 

「その通り!白騎士はこの雪原においても身のこなしは実に軽やか!故にわたしは白騎士に対抗すべく、オニゴーリやユキメノコの素早さを徹底的に鍛え上げた!その成果、おまえさんにも味わってもらうとするかぁ!」

 

「くっ……ミミロップ、戻って!……お願い、ゴウカザル!!」

 

「ウッキャア!!」

 

ベリオロスの速さに対応するために特訓したなら、技構成の都合上、ユキメノコ相手にほのおのパンチしか出せないミミロップは不利だ!ここは戻して、ゴウカザルで行く!

 

「やはり出したな、ゴウカザル!ユキメノコ、みずのはどう!!」

 

「メー……ノー!」

 

「シャドークローで打ち消して!」

 

「ウキャキャア!」

 

ほのおタイプ対策のみずのはどうが迫って来るけど、シャドークローで相殺できた!

 

「ゴウカザル!フレアドライブ!!」

 

「ウゥキャキャキャキャキャアアアァァッ!!」

 

炎を纏ったゴウカザルが、ユキメノコに突進していく。これで……!

 

「フッ……ユキメノコ、足元に向かってシャドーボール!!」

 

「メノォ!!」

 

「ウキャ!?」

 

ハマレンゲさんの指示で、ユキメノコが足元にシャドーボールを放った!その衝撃によってあたりに雪による粉塵が舞い上がり、視界が完全に封じられてしまった。ゴウカザルも驚いて足を止めてしまった……まずい、術中にハマる前に抜け出さないと!

 

「ゴウカザル!直ぐにそこから離れて!!」

 

「遅い、遅いなぁ!ユキメノコ、みずのはどう!!」

 

「メノー!」

 

「ギャウ!?」

 

粉塵に紛れたユキメノコが物凄い速さで動いているのか、全方位からみずのはどうが飛んできていてゴウカザルは完全に逃げ場を失っている……!防御力が高くないゴウカザルじゃ、この状況は長くは持たない……!

 

「これも、対白騎士対策に考案した戦術!……当の白騎士には通用しませんでしたが、おまえさん相手には効果覿面だな!」

 

「くっ……」

 

この粉塵をなんとかしないと……でも、どうすれば!?……そうだ!

 

「ゴウカザル!その場で回転しながらフレアドライブ!!」

 

「ウキャアアアアアァァァァ!!」

 

「なんと!?」

 

ゴウカザルがすごい勢いで回転しながら、フレアドライブを発動する。すると、回転と高熱によって上昇気流が生まれ、氷の粉塵が見る見るうちに空に向かって吸い込まれていった!それによって、動き回っているユキメノコの姿も見えた!

 

「見えた……そこだよ!力強く、シャドークロー!!」

 

「ウキャア!!」

 

「メノォー!?」

 

「っ!ユキメノコ!!」

 

シャドークローが決まった!元々、防御力の高くないユキメノコに力業シャドークローの一撃は痛すぎたようで、一撃で倒れた。ユキメノコ、戦闘不能だ。

 

「しまった……ユキメノコ、下がりなさい」

 

「まずは一匹……戻って、ゴウカザル」

 

ハマレンゲさんはユキメノコを後方に下げ、私もゴウカザルを一旦戻した。あのみずのはどうの連撃がかなり効いていて、フレアドライブでも使おうものなら反動でそのまま倒れてしまいそうだ。……ということで、初戦の汚名返上!

 

「「ミミロップ!/クレベース!」」

 

私は最初に出したミミロップを再び出し、ハマレンゲさんはクレベースを選択した。……雪原キングと同じ、ヒスイ地方のクレベース。油断はできないな……けど、ここはセオリー通りに!

 

「ドレインパンチ!」

 

「力強く、てっぺきで受けるのです!」

 

「ミミー!」

 

「レベースッ!!」

 

ミミロップのドレインパンチ!かくとう技ならこおり・いわのクレベースには効果は抜群!……いや、これは……!?

 

「ミィッ!?」

 

「レベ」

 

「効かん効かん!かくとうタイプでもないミミロップのかくとう技なんぞ、わたしのクレベースの前では無力!伊達に白騎士に殴られ続けていないのでな!!」

 

手応えが、ない……!?弱点としては四倍の威力になっているはずなのに……!

 

「反撃だ、ひょうざんおろし!!」

 

「レベースー!!」

 

「ミミィッ!!」

 

「ミミロップッ!」

 

一瞬で作られた巨大な氷塊が叩きつけられ、ミミロップは吹っ飛んでしまった。ミミロップは……ダメだ、完全に目を回している。まさか、一撃で倒されちゃうなんて……。

 

「戻って、ミミロップ!……強い、ですね」

 

「無論!これも全て、いずれは白騎士に勝利するため!

氷塊を登りきる目標は達成されてしまったので、少々手持ち無沙汰になっていたところ……かの白騎士と出会い勝負を仕掛け……まぁ、ものの見事に返り討ちに遭ってしまってな!」

 

「はぁ……」

 

「しかし、おかげでわたしには新たな目標ができた……そう、白騎士に勝利すること!わたしのクレベースは白騎士の物理攻撃に打たれ続けた結果、尋常ならざる防御力を獲得したのです!」

 

「レベー!!」

 

「……物理に強いなら」

 

ベリオロスの物理攻撃を受け続けた結果、タイプ不一致とはいえ弱点のかくとう技を受け切れるほどの防御力を獲得した、というのなら……!

 

「特殊で攻める!お願い、ロズレイド!!」

 

「ロゼ!」

 

私が繰り出したのはロズレイド。お互いにくさとこおりが弱点同士、火力と速さ……なにより、技を当てた方が、勝つ!!

 

「クレベース、いわなだれ!」

 

「ベース!!」

 

「マジカルシャインで全部撃ち落として!!」

 

「ローゼー!」

 

迫り来る岩の群れを、マジカルシャインの輝きがひとつ残らず打ち落とす。まだまだ……!

 

「ひょうざんおろし!」

 

「足元に素早く、シャドーボール!!」

 

「なにっ!?」

 

「ロゼー!」

 

先ほどの意趣返し!ロズレイドは足元にシャドーボールを放ち、粉塵に紛れた。標的を見失ったクレベースのひょうざんおろしは空振りに終わり、クレベースは敵を探しに必死で顔を動かしている……けど!

 

「……!!クレベース、上です!」

 

「遅いです!エナジーボール!!」

 

「ロー……ゼッ!!」

 

ロズレイドは一瞬のうちに、クレベースの頭上をとっていた。気づいたハマレンゲさんがクレベースに知らせるけど……もう遅い!ロズレイドの放ったエナジーボールが、クレベースに直撃した!!

 

「レベーッ!?」

 

「クレベース!!」

 

粉塵が晴れると、そこには目を回して倒れるクレベースの姿があった。

 

「うむぅ……下がるのです、クレベース」

 

「レベー……」

 

……やっと、二体。初めて戦った時は、二対一という状況下ではあったけどここまで苦戦することはなかった。私もポケモンを相当鍛えていたし、当時主力だったオニゴーリを下してからは楽に戦闘を運ぶことができた。

それが、今はどうだ?ベリオロスとの戦闘を経て強くなったハマレンゲさんのポケモンたちを相手に、一匹は追い詰められ、もう一匹は倒されてしまった。ジンオウガたちと訓練をして、私自身も強くなったと実感した矢先に、これじゃあ……いや、違う。ただ単に強くなっているのは私だけじゃない、ってことだ。自惚れるな、私!

 

「あれだよ、あれ。おまえさんも随分と強くなったようですね。白騎士との戦いで鍛えられ、わたしも強くなったつもりでいたが……おまえさんはそのさらに上を行く!」

 

「まさか、それはこちらのセリフですよハマレンゲさん。正直に言いますと、苦戦はしても数を減らされるとは思ってもみなかったです。ハマレンゲさんこそ、こっちの想定の範疇を超えて強くなっていますよ」

 

「はっはっは!一度は己を負かしたおまえさんにそう言われたなら、一層自信がつくというもの!さて、次のわたしの一手は……おまえだ!」

 

ハマレンゲさんがそう言うと同時に、ハマレンゲさんの背後から何かが飛び出した!

三本の鋭い鉤爪、頭部や首回りの鳥の羽根のような扇状の飾り……あれは……!

 

「マニューラ!」

 

「マニュ」

 

「マニューラ!?」

 

どうしてマニューラが!?マニューラは黒曜の原野で発生する時空の歪みの中でしか出現しないポケモン……どうしてハマレンゲさんが……?

 

「どうして……?」

 

「どうしても何もなぁ……ある日突然、白騎士がわたしの前に引きずってきたんだよ。まるでわたしとマニューラを引き合わせようとしたかのようにな」

 

「…………」

 

それってつまり、純白の凍土にいたベリオロスが黒曜の原野の時空の歪みの中に出現するマニューラをハマレンゲさんと引き合わせるためにわざわざ黒曜の原野まで来てマニューラをとっ捕まえてきた……ってコトォ!?

……いや、黒曜の原野にはジンオウガがもともと生息していた。すると、ジンオウガがマニューラを捕えて、途中でベリオロスに引き渡し、そのままハマレンゲさんの元へ?

時空の歪み内に出現したポケモンは、時空の歪みが消滅すると一緒にいなくなるけれど……このマニューラは時空の歪みから離れすぎて消えなかったのかな?いや、考察は後だ、後。マニューラは素早さ、物理攻撃ともに高水準の高速アタッカーだ。これに対抗するには……。

 

「ライチュウ!」

 

「チューウ!」

 

マニューラの素早さについていけるのは、私の手持ちではゴウカザルとミミロップ、そしてライチュウくらいだ。ミミロップは倒れ、ゴウカザルはユキメノコ戦で弱ってしまったから、ライチュウで行くしかない!

 

「いわくだき!」

 

「躱して、れいとうパンチ!」

 

「チュ、チュウ!」

 

「マニュマ!!」

 

ライチュウのいわくだきによる礫がマニューラに降り注ぐけれど、マニューラは持ち前の速度ですべて回避してみせた。そのままマニューラのれいとうパンチがライチュウに繰り出された……けど!

 

「じゃれつく!」

 

「チュウ~!」

 

「マ、マニュ!?」

 

素早いポケモンとの戦いにおけるセオリーは、無理に相手を追うことをせずに出方を伺うことだ。そして、相手が近接タイプなら攻撃のために必ず接近する必要がある……つまり、攻撃の瞬間こそが最大の隙!

れいとうパンチを受けてしまったものの、こっちのじゃれつくもヒットした!あくタイプのマニューラには効果は抜群だ!

 

「なるほど……肉を切らせて骨を断つ、ときましたか」

 

「高速近接型のマニューラは、攻撃のためにどうしても相手に接近する必要があります。……けれど、それこそがマニューラの弱点。如何に素早くとも、攻撃のためには足を止める必要がありますから」

 

「はっはっはっ!なるほど、いや、お見事!あれだよ、あれ。おまえさんは勝負の天才だな、ワサビさんと同じように!!しかししかし!こちらとて黙ってやられるだけではない!」

 

じゃれついてくるライチュウを、強引に引き離したマニューラが攻撃の構えを取った。なにを……?

 

「マニューラ、力強く、どくづき!」

 

「マニュマニュマニュ!!」

 

「チュ、チュウッ!」

 

「ライチュウ!」

 

マニューラのどくづきが直撃してしまった!どうする……一度距離を置く?いや……でも!

 

「この距離なら、いわくだき!!」

 

「チュチュウー!!」

 

「マッ、ニュッ……!」

 

「ぬぅ、それは痛い!だが……つじぎりだ!!」

 

「ニューラッ!!」

 

「チュウッ!!」

 

咄嗟に選んだいわくだきは正解だった!ほとんどの礫を回避できず、マニューラはかなりのダメージを負った。けど、こっちも反撃のつじぎりを受けてしまった。……ライチュウもマニューラも、お互いに息が上がっている。おそらくは、次で最後……お互いに後一撃でも受けてしまえば、終わりだ。

ライチュウが、こっちに振り返って小さく頷いた。……わかった、ライチュウ。あなたの意を汲むよ!

 

「マニューラ!力強く、れいとうパンチ!!」

 

「ニュラー!」

 

「ライチュウ!ボルテッカー!!」

 

「チュウ!ラーイライライライライ……ヂュウ!!」

 

マニューラが両手を合わせて放ったれいとうパンチと、ライチュウのボルテッカーが激突し、激しい爆発を起こした。

煙が晴れ、二匹の様子は……どちらも倒れている。両者戦闘不能だ。

 

「なんと……引き分けに持ち込むために確実に当てられる技を選ぶとは、見事だよ!」

 

「いえ……本当は勝ち越すつもりでいたんですけど、なかなか思い通りにはいきませんね」

 

「そう簡単に負けてしまっては、白騎士に顔向けができない!だからこそ……オニゴーリ!ここで、勝つ!!」

 

「オニー!」

 

「それならこちらは……ガブリアス!!」

 

「ガブァ!!」

 

ハマレンゲさん最後の一体はオニゴーリ。対してこちらはガブリアス……タイプ相性の上では不利だけど、そこは技を駆使して乗り越えるしかない!

 

「さあさあさあ!決着としよう!オニゴーリ、ふぶき!!」

 

「オニイィーッ!!」

 

「ガブリアス!ストーンエッジで壁を張って!!」

 

「ガブガブア!」

 

槍型の岩を次々と地面から生やし、それを何十にも重ねて分厚い壁とする!目論見は成功、ストーンエッジによる岩の壁は、オニゴーリの吹雪を防ぎ切った!

 

「なんと!?」

 

「力強く、アイアンヘッド!!」

 

「ガアブアァ!!」

 

「ならばこちらも、力強く、アイアンヘッド!!」

 

「ゴリイィ!!」

 

アイアンヘッド同士による頭突き合い……オニゴーリにとっては効果抜群のはずなのに、ほとんど互角に打ち合ってる!

 

「かみくだく!」

 

「オニィ!!」

 

何度目かの衝突のタイミングで、指示が変わった!ガブリアスの頭突きが空振り、逆にオニゴーリに噛み付かれてしまった!あのオニゴーリも、初戦に比べて素早い!

 

「ストーンエッジ!」

 

「ガブッ!!」

 

咄嗟に自身の周囲にストーンエッジを放つことで、オニゴーリを吹き飛ばすことに成功した。これも効果抜群……一気にとどめを刺す!!

 

「ふぶきだ!」

 

「力強く、ドラゴンクロー!!」

 

「オニイイィィ!!」

 

「ガブァアア!!」

 

打ち上げられたオニゴーリが体勢を整えて、すぐさまふぶきを放ってきたけど……ガブリアスはすんでのところで回避して懐に飛び込み、オニゴーリにドラゴンクローを叩きつけた!!

 

「オニゴーリッ!!」

 

地面に叩きつけられたオニゴーリの姿が見え始めて……目を回して倒れている!戦闘不能だ!

 

「ふぅ……ご苦労さん、オニゴーリ」

 

「ガブリアス、ありがとう」

 

お互いにバトルに出したポケモンたちを回復させてから、ハマレンゲさんが声をかけてきた。

 

「あれだよ、あれ。相も変わらずお見事だよ!一度ならず二度までも……硬いだけでなく、鋭さを増した氷を砕きやがったな!」

 

「私にも、負けられない理由がありますから。……ところで、ハマレンゲさん?」

 

「うん?なんですかな?」

 

「どうして私に勝負を?たまたま偶然……にしては、ちょっと準備が良すぎな気がするんですが……」

 

「ほう……お見通しですか」

 

そう言うと、ハマレンゲさんは腕を組み目を閉じた。

 

「おまえさんは、あの白騎士……否、ベリオロスを仲間に加えようというのですね?」

 

「えぇ、はい」

 

ハマレンゲさんも、ベリオロスの名前を……ワサビちゃんから聞いたのかな。

 

「……あのポケモンは、強すぎる。その気になれば、この純白の凍土の生態系を破壊してしまいかねないほどに、です。ほかならぬベリオロスがそうしないが故に雪原キングもまた動かないだけで、この地に棲むポケモンたちの大半がベリオロスを脅威に感じています。現に、かつてベリオロスはわずか一夜にしてこの地に棲むすべてのオヤブンポケモンを倒してしまいました。

わたし自身、何度もベリオロスと戦っているからこそ、かの者の強さ、そして恐ろしさを身を持って痛感しています。そして……おまえさんは、そんなベリオロスを仲間にしようとしている。ポケモン達にとっても、人間達にとっても、強大極まりない力を持つベリオロスを」

 

「…………」

 

目を開いたハマレンゲさんが、まっすぐにこっちを見つめてくる。

そうだった……ベリオロスは、普通のポケモンたちからすると強すぎる生き物なんだ。それは、ジンオウガたちにも同じ事が言える。

 

「おまえさんの境遇はよくよく把握しています。そこへ来て、ベリオロスを求める……なにか、良からぬことが起こるのではないかと懸念しているのです。おまえさんが、復讐の道に走るのではないか、と。

もしもそうならば、わたしは意地でもおまえさんをここで食い止めねばならん!そう思い、おまえさんに勝負を仕掛けたんだよ。勝負は正直だ。人間の心とポケモンの心、その両方がわかりやすく表に出やすい」

 

「では、勝負を通じてハマレンゲさんは、私に何を見出しましたか?」

 

「うむ……勝負の間、おまえさんからは怒りや憎しみといった、負の感情は感じられなかった。それどころか、わたしとの勝負を楽しんですらいたなぁ!ポケモンたちも特に悪感情を抱いている様子もなかったし……おまえさんになら、むしろベリオロスを託しても良いとさえ感じたぞ!」

 

「だって……ハマレンゲさん、想像以上に強くなってますもん。私は元々、バトルは好きな方ですし……やっぱり、実力の近い者同士のバトルって手に汗握るし緊張でドキドキするんですけど……その分、やっぱり楽しくなるんですよ」

 

「はっはっはっ!やっぱりおまえさん、そのあたりは正直だよなぁ!」

 

豪快に笑うハマレンゲさんに釣られて、私も思わず笑みが浮かぶ。確かに、バトルの間って気持ちがすごく表れやすいと思う。楽しんだり、怒ったり、喜んだり、焦ったり……そういった感情が、戦っているポケモンにも伝わっていってバトルに大きく影響したり……やっぱりポケモンバトルって、最高のコミュニケーションツールだ。

 

「……実はおまえさんに勝負を仕掛けたのは、ワサビさんたってのお願いだったんだよ」

 

「ワサビちゃんが?」

 

「うむ。……なにやら良くないことでもあったのか、最近は特に曇った表情を見せることが多くなりましてな。それに伴って、ここ最近は毎日のようにベリオロスと一日ともに行動するようになりましたぞ。

ポケモンたちとも、よく鍛錬をするようになりましたな。……あの鬼気迫る表情、はたして何者と戦うつもりでいるのか……」

 

「…………」

 

「ワサビさんはたしか、キング場で待つ、とのことでしたな。ワサビさんとベリオロスによろしく!私も寸暇を惜しまず、再び己とポケモンたちと向き合いますので!!」

 

「はい……ハマレンゲさん、ありがとうございました」

 

ハマレンゲさんにお礼を言って、リオレウスとともに氷山の戦場に向けて移動を始める。セキさんからは日がな一日一緒にいる、という話は聞いていたけど……ワサビちゃんが元気がないって話は初めて聞いた。

ワサビちゃんは嘘か真か、千里眼の持ち主だ。未来を見通す力を持った人が、元気をなくすということは……なにか、良くない未来でも視えてしまったのだろうか……。

氷山の戦場へ繋がる戦場への道に差し掛かったところで、意外な人物がそこにいた。

 

「あれ……カイさん?」

 

「ショウさん」

 

坂道の一番手前にいたのは、シンジュ団の長であるカイさんだ。ちょっと自分の自信がなくて、けれど仲間への思いが一番強い人だ。

メン――いや、何でもない。

 

「カイさん、どうしてここに?」

 

「……とりあえず、キング場に行こっか」

 

「え、はい」

 

カイさんは踵を返して歩きだし、私も慌てて後を追った。そのまま二人で横並びに歩いて、氷山の戦場へと向かう。

 

「……ショウさん、ごめんね」

 

「え?……あぁ、気にしないでください。カイさんも長としての責任があるでしょうし……大丈夫、ちゃんとわかってますから」

 

「ありがとう……」

 

開口一番、謝罪されてしまった。一瞬なんのことかと考えたけれど、ガラナさんの言葉を思い出して、私を助けられないことを謝ったんだと察した。

 

「……ワサビちゃんから聞いたよ。彼を……ベリオロスを捕獲しに来たんだよね」

 

「えぇ、はい。……ひょっとして、なにかマズイ理由でも?」

 

「まさか、とんでもない。彼がショウさんの力になってくれるなら、どれだけ心強いことか……けど、ワサビちゃんが……」

 

「……ワサビちゃん、なにか良くないものでも視えたんですか?」

 

「ううん、わからない。ワサビちゃん、何も教えてくれなくて……でも、最近は一日中ベリオロスと一緒にいるの。まるで、ベリオロスを守ろうとしているかのよう……」

 

「…………」

 

ベリオロスを、守る?ベリオロスの強さならむしろ守るというよりこっちが守られるのほうが正しいのでは……。少なくとも、この純白の凍土でベリオロスを脅かすようなポケモンなんていないだろうし、まともに対抗できるのはそれこそ雪原キングくらいだろう。

しばらく歩き続けて、氷山の戦場に到着した。キングの好物を納める台座の前で、カイさんは私の方へと振り返った。

 

「ショウさん、どうかワサビちゃんとベリオロスのことをお願い。ワサビちゃんとはベリオロスを通じて友達になれた仲……最近のワサビちゃんは何かに追い詰められているみたいで、見ていられないの。どうか、お願い。同じ友達であるあなたにしか頼めないの」

 

「カイさん……!」

 

あなたという人は……!

 

「……私たち、いつの間にか友達だったんですね」

 

……え。え、あれ?うそっ、ちょっとまって。あれっ、嘘でしょ?友達だと思ってたのわたしだけだったの!?ねぇショウさん!ねぇ!!友達だよねわたしたち!?ねぇっ!?

……そうだよね、友達一人の悩み一つ解決できないんだもん……こんなわたしなんかが友達じゃ嫌だよね……。友達が苦しんだり悩んだりしているのになんの力にもなれないわたしなんて……

 

「嘘です嘘です、私もカイさんとは友達だと思ってましたよ。ただ、『友達だよね?』って確認するのが気恥ずかしくって」

 

~~~~っ!!はぁ~……もう、心臓に悪いことを言わないでよ……」

 

「ごめんなさい」

 

やっぱりカイさんってメン――いや、何でもない。

 

「……わかりました。ワサビちゃんのこと、任せてください」

 

「……お願いね、ショウさん」

 

カイさんに見送られて、私とリオレウスは戦場へと足を踏み入れた。……かつて、雪原キングを鎮めるために立ち回った高台から降りた先、戦場の一番端っこの方に、ワサビちゃんが立っていた。私が近づくと、察知したのか振り返った。

 

「……ハマレンゲさんにも勝っちゃったんだね。あの人、ベリオロスとの戦いですごく強くなったのに」

 

「いや、実際ものすごく強くなってたよ。私の手持ちも二体倒されちゃったし……。

負けるかも、って思ったの本当に久しぶりだった」

 

「そっか。……あたしはショウさんがここにたどり着くのを期待してた?してなかった?さて、どっち?」

 

「えっと……してた、かな?」

 

「ふふ……」

 

……あれ?そういえばベリオロスは?どこを見てもベリオロスの姿が見当たらない……どこかに隠れてる?それとも、もうバトルは始まってる?

リオレウスもキョロキョロと首を動かしているけれど……リオレウスが存在を察知できないところを見るに、この辺りにベリオロスはいないみたい……。

 

「ベリオロスを探してる?やっぱり彼に会いたいんだ」

 

「まぁ、うん。そのためにここに来たんだし……」

 

「そっかぁ……それじゃあ、今度はあたしと勝負だよ!」

 

「えぇ!?」

 

「みんな、おいで!!」

 

ワサビちゃんの呼び声に応じて、ポケモンたちが姿を現した。

ドサイドン、ブーバーン、エレキブル……えっ、クロバットにフーディンにルカリオ!?

まさかのフルメンバー!?

 

「えっ……ワサビちゃん、本気モード?」

 

「うん、もう本気も本気。……全力で叩き潰してあげるから、覚悟してね?」

 

ヤバイ……ワサビちゃん、本気モードだ。最初の三体に加えて後半の三体……なんか殺意が高すぎない?大丈夫?

 

「ふふふ……かかってくる……?」

 

心なしか、ワサビちゃんの圧もすごい!?……いや、せっかくここまで来たんだ。今更逃げも隠れもしない!リオレウスはそこで見ててね!

 

「わかった……ワサビちゃんに、挑むよ!」

 

「そうこなくっちゃ……!」

 

最初の一匹目を吟味しつつ、ワサビちゃんの様子を観察する。……たしかにカイさんの言う通り、今のワサビちゃんからは焦りのようなものを感じられる。きっと、ワサビちゃんが視たかもしれない未来に原因があるかもしれない……それを確かめるためにも、ここで勝つ!

 

「「行けっ!ゴウカザル!!/お願い、クロバット!!」」

 

「「ウキャア!/バット!」」

 

勝負だ、ワサビちゃん……!!

 

 

 

 




カイを揶揄って不安にさせたあとでドロドロに甘やかしたいだけの人生であった……。

はい、ということで今回バトルしたハマレンゲニキの手持ちはこちら

ハマレンゲ 手持ち一覧(対ベリオロス戦用強化版)
※レベルはみなさんのご想像におまかせします!

オニゴーリ ♂
がんばレベル
攻撃:3
特攻:3
素早さ:6
わざ
ふぶき/かみくだく/じならし/アイアンヘッド

ユキメノコ ♀
がんばレベル
攻撃:3
特攻:3
素早さ:6
わざ
こおりのキバ/シャドーボール/10まんボルト/みずのはどう

クレベース ♂
がんばレベル
攻撃:3
防御:10
わざ
かみくだく/てっぺき/ひょうざんおろし/いわなだれ

マニューラ ♀
がんばレベル
全ステ:3
わざ
れいとうパンチ/つじぎり/どくづき/つばめがえし


なんで戦闘描写って書いてるだけで文字数が勝手に増えるんだろうか……。
ワサビちゃんの手持ちの詳細は次回の前書きにて!


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雪原の決闘! VSワサビ

決意を抱くキャプテンの ワサビが
勝負をしかけてきた!▼

ワサビ(決意を抱くキャプテン) 手持ち一覧
※レベルは自由に決めてね

ドサイドン
がんばレベル
全ステ:10
ストーンエッジ/10まんばりき/かみなりパンチ/メガホーン

ブーバーン
がんばレベル
HP:2
特攻:4
素早さ:4
かえんほうしゃ/サイコキネシス/10まんボルト/アイアンテール

エレキブル
がんばレベル
HP:2
攻撃:4
素早さ:4
かみなりパンチ/ほのおのパンチ/れいとうパンチ/はかいこうせん

クロバット
がんばレベル
攻撃:4
素早さ:6
クロスポイズン/つばめがえし/きゅうけつ/しねんのずつき

フーディン
がんばレベル
特攻:10
サイコキネシス/エナジーボール/シャドーボール/マジカルシャイン

ルカリオ
がんばレベル
攻撃:5
特攻:5
はどうだん/ラスターカノン/いわなだれ/どくづき


書いといて言うのもアレだが、まともに戦うと勝てる気しねぇや……。




推奨BGM

【戦闘!キャプテン】~ポケットモンスター LEGENS アルセウス~

【凍てつく海の浮島】~モンスターハンターF~

【凍て地に轟きし猛哮】~モンスターハンターW:I~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先手はクロバット……!ゴウカザルにはひこう対策にかみなりパンチを覚えさせているから負けることはないだろうけど……なにぶん、初めて戦うワサビちゃんのポケモンだ。ワサビちゃんがどんな技を覚えさせているのか……。

 

「クロバット!素早く、クロスポイズン!!」

 

「クロバッ!!」

 

「……!シャドークローで迎撃!」

 

「ウッキャ!」

 

初手から早業!?早業で繰り出された毒の刃を、影の爪で迎撃する!間に合った、けど……!

 

「しねんのずつき!!」

 

「バットォ!」

 

「ギャウ!?」

 

「ゴウカザル!!」

 

「そのまま力強く、つばめがえし!!」

 

「バトバット!」

 

「ギャアゥッ!!」

 

「あぁ!?」

 

しねんのずつきからのつばめがえしの連続攻撃!どちらもゴウカザルには効果は抜群……お願い、耐えて……!!

 

「……ウキャアアッ!!」

 

「……しっ!ゴウカザル、かみなりパンチ!!」

 

「ウキャキャア!!」

 

「バットォッ!」

 

「クロバット……!」

 

なんとか耐えた!反撃のかみなりパンチも急所に当たったみたい!……それでも、クロバットはしっかりとした様子で羽ばたいている……これは、本当に手ごわい……!

 

「……流石だね、ショウさん。今のでゴウカザルを仕留めたつもりだったんだけど」

 

「私のゴウカザルは、弱点を突いたくらいで倒せるほどヤワじゃないよ」

 

「ふふふ……そっか、そうだったね。……だから、あたしも本気で倒すって決めたんだもん」

 

「ワサビちゃん……」

 

「クロバット、戻って!ブーバーン、お願い!!」

 

「バット」

 

「ブバー!」

 

クロバットが一旦下がり、今度はブーバーンが前に出た。ゴウカザルは……やはりダメージが気になる。まして、ワサビちゃんのポケモンの中にはドサイドンとルカリオがいる。この二匹への打点のためにも、ゴウカザルは温存しないと……。

 

「ゴウカザル、戻って!行って、ガブリアス!!」

 

「ガブアァ!!」

 

ワサビちゃんがブーバーンなら、私はガブリアスを出す!ワサビちゃんとの初バトルでも、向こうの相棒三体を相手に一匹で無双したガブリアスだ。今度だって……!

 

「ガブリアス、じならし!」

 

「ガブッ!」

 

「させない……!ブーバーン、地面に向かってかえんほうしゃ!」

 

「ブーバーッ!!」

 

ブーバーンが腕を下ろして目の前の足元に向かってかえんほうしゃを放った?なにを……いや、これは……!

 

「炎が……!」

 

「ガゥ……!」

 

両腕から地面に放たれたかえんほうしゃは、途中でぶつかり合って地面を這うように扇状に広がって行っていた。ダメージこそはあまりないものの、カブリアスの動きが阻害されている……!

 

「動きを止めた!ブーバーン、サイコキネシス!!」

 

「ブバー!!」

 

「ガブァ!?」

 

「ガブリアス!!」

 

ブーバーンのサイコキネシスで、ガブリアスが持ち上げられた……!

 

「そのまま叩きつけちゃえ!!」

 

「ブーッ!バーッ!」

 

「ガブ……ッ!!」

 

「負けないで、ガブリアス!ストーンエッジ!!」

 

「ガッ……ガッ、ブアァ!!」

 

地面に叩きつけられたガブリアスだったけど、そのままの姿勢で大地へと力を送り、ストーンエッジを発動させた!迫り来る岩の刃……ワサビちゃんはどうする?

 

「くっ……躱して、ブーバーン!」

 

「ブバッ!」

 

回避を選んだ!集中力が切れたのか、サイコキネシスも解除された。これで動ける!

 

「ドラゴンクロー!」

 

「ガブガブゥッ!」

 

「アイアンテールで迎え撃って!!」

 

「ブバー!!」

 

ガブリアスのドラゴンクローと、ブーバーンのアイアンテールがぶつかり合う!けど、威力ならこっちのほうが上だ!ドラゴンクローがアイアンテールを打ち破った!!

 

「今度は力強く!ドラゴンクロー!!」

 

「ガッブゥアッ!!」

 

「ブバー!?」

 

「ブーバーン!!」

 

力業によるドラゴンクローが決まった!力業として放つことで急所に当てやすくなるこの攻撃、並大抵のポケモンなら一撃で倒せる高火力技だ!吹っ飛んで仰向けに倒れ込むブーバーン……目を回している、戦闘不能だ!

 

「ブーバーンは戦闘不能だね」

 

「そうだね……下がってて、ブーバーン。よく頑張ったね」

 

「ブブ……」

 

「ガブリアスも、一旦戻って」

 

「ガブ」

 

私もガブリアスを戻し、次に繰り出すボールを手に取る。

 

「「ミミロップ!/ルカリオ!」」

 

「ミーミー!」

 

「クォン!」

 

私はミミロップを、ワサビちゃんはルカリオを選択した。ルカリオ……私もルカリオを捕獲したことがあって、今は放牧場にいる。主力メンバーではないけど、場合によっては手持ちに加えたりもする交代要員だ。結構強いんだよね、ルカリオ。

……っと、考えている場合じゃなかった!ルカリオははがねタイプを持っているから、ミミロップが覚えている技ならはがねの弱点を攻められる!

 

「ルカリオ、いわなだれ!!」

 

「クオオォン!!」

 

ルカリオは思い切り両腕を地面に叩きつけ、大量の岩石を降らせてきた!ただ、いわなだれの岩石はミミロップには当たらずに周りに次々と降り注いで突き立っている。これはいったい……?

 

「いいよ、ルカリオ。そのまま岩の上に乗って!」

 

「クォン!」

 

ルカリオが岩の上に……それにしても、随分と大きい岩だ。ミミロップの高さの半分以上は優にある……これじゃあ、ミミロップが動きにくい――しまった!そういうことか!?

 

「よしっ、そこからはどうだん!!」

 

「クゥゥ……ォン!!」

 

ルカリオから放たれたはどうだんが、岩の壁を避けながらミミロップに迫って来る!!マズイ、はどうだんは必中技……さらに周りは障害物が多すぎてミミロップも動けない!

こうなったら、迎撃するしかない!!

 

「ミミロップ!かみなりパンチで打ち落として!!」

 

「ミッミー!」

 

ミミロップのかみなりパンチではどうだんを打ち落とせた!なんとか接近したいけど、これだけ大きな岩がたくさんあるとすぐには難しい……!

 

「ルカリオ!はどうだん、連続攻撃!」

 

「クォォン!クォォン!クォォン!」

 

「くっ……ミミロップ!可能な限りでいいから迎撃して!!」

 

「ミミッ!」

 

ミミロップは次々といろんな方向から襲い来るはどうだんを次々と打ち落とす。けれど、このままじゃジリ貧だ……先にミミロップが疲れ果ててしまう……かくなる上は!

 

「ミミロップ!ちょっとだけ無茶してもらうよ!」

 

「ミッミー!」

 

「よぉし……突撃!ギガインパクト!!」

 

「ミー……ロオオォォォ!!」

 

すべての力を込めて突撃する大技、ギガインパクト。オーラを纏ったミミロップが、壁となる岩を次々と破壊しながらルカリオに向かって突撃していく。

 

「ルカリオ、いわなだれ!」

 

「クォン!」

 

ワサビちゃんは冷静にルカリオへと指示を出している。岩から飛び降りたルカリオが、再び拳を地面に叩きつけて岩石を降らせてきた。しかも、すべての岩石を自身の眼前へと配置するように降らせている……ミミロップのギガインパクトの威力を、少しでも減衰させる気か!

 

「ミミロップ!!」

 

「ミミィー!!」

 

ミミロップは私の声に応え、ルカリオが配置した岩壁の目の前でジャンプした。……!ルカリオが……!

 

「そこなら避けられないよ!ルカリオ、力強く、はどうだん!!」

 

「クォォォン!!」

 

まさか、ここまで読んでいたの!?……だけどぉ!!

 

「なめんなぁ!!ミミロップ!力強く、ドレインパンチ!!」

 

「ミッ……ミィー!!」

 

力業ではなたれたはどうだんを、同じく力業のドレインパンチで対抗する!……よしっ、打ち落とせなかったけど軌道は反らせた!あとは戻ってくる前にケリをつける!!

 

「そのまま、行っけぇー!!」

 

「ミー!!」

 

「クォォ!?」

 

「ル、ルカリオ!」

 

よしっ!ドレインパンチが命中した!はどうだんが戻ってくる……このまま仕留めるしかない!!

 

「「ミミロップ!!/ルカリオ!!」」

 

「「力強く!」」

 

「「ほのおのパンチ!!/どくづき!!」」

 

「「ミミローッ!!/クォォアッ!!」」

 

同時に指示が飛び、同時に技が繰り出され、そして同時に直撃した!そしてその直後、軌道を逸らしたはどうだんが戻ってきて両者の間に着弾した。

煙で見えない……どうなった……!煙が徐々に晴れてきて……二匹とも、目を回して倒れている。

 

「両者共に、戦闘不能……戻って、ミミロップ」

 

「ルカリオ、お疲れ様」

 

ここまでで私が一匹、ワサビちゃんが二匹減った。……強い、あの時と比べ物にならないほどに。まだ二匹しか倒してないけど、こっちだって一匹減らされている。戦い方だってそうだ。あの時はキッサキ神殿内でのバトルだったから、ひょっとしたら建物に気を遣ってあまり本気を出せなかっただけかもしれない。

 

「……強いね、ワサビちゃん。なんか、キッサキ神殿で戦ったのが全然本気じゃなかったみたい」

 

「ううん、あの時も全力だったよ。やりすぎると神殿が壊れちゃうから、程々に全力だったけど」

 

「(やっぱりか……)」

 

……久しぶりだ、こんな感覚。元いた世界でも、親から借りたとはいえポケモンを戦わせたりすることはやっていたから、勝負の駆け引きとか難しさとかはわかっている。

特に、お母さん。お母さんは故郷の地方でチャンピオンになったこともあるほどの実力者だから、そんな人と年がら年中バトル三昧の日々を送っていた私から見ても、ワサビちゃんの実力は凄まじい。もしも現代にワサビちゃんがいたら、四天王くらい余裕でなれそうだ。

次はどうする?特に警戒しなきゃならないのはエレキブルとフーディンだろう。実際にこの二匹を捕まえて、交代要員として控えさせている私だからこそわかる、この二匹の脅威……それは、技範囲の広さだ。様々なタイプの技が使えるというのは、それだけで強力なアドバンテージになる。同じポケモンでも覚えさせる技をバラバラにすれば、様々なタイプのポケモンに対応できるからだ。

実際、私もタイプ一致技を固定していろんなタイプの技を覚えさせたサーナイトを複数体用意している。サーナイトのタスク中に手強い野生ポケモンや野盗三姉妹と遭遇した時に備えてのことだ。……この話をしたとき、テル先輩に若干引かれたのは未だに解せぬ。

 

さて、考えよう。私の手持ちはダイケンキ、ロズレイド、ライチュウが健在で、ガブリアス、ゴウカザルが手負いの状態。対してワサビちゃんはドサイドン、エレキブル、フーディンが健在で、クロバットが手負いの状態。……ならば、ここは。

 

「お願い、ライチュウ!/出番だよ、フーディン!」

 

「チュ、チュウ!」

 

「フー」

 

私はライチュウ、ワサビちゃんはフーディンか。私のライチュウは物理攻撃特化だから、物理防御が弱いフーディンが相手でも立ち回れそう。

 

「一気に攻める!ライチュウ、ボルテッカー!!」

 

「チュウ!ラーイライライライライ……!!」

 

「フーディン!力強く、シャドーボール!!」

 

「フー……ディンッ!!」

 

ライチュウの突撃に対し、フーディンは力業による特大のシャドーボールを放ってきた!ボルテッカーとシャドーボールが激突し、激しい爆発が起こる。どうなって……って、えぇ!?

 

「チュ、チュウゥ~……」

 

「ライチュウ!?」

 

そんなっ!?ライチュウが、一撃で……!!

 

「あたしのフーディン、特殊攻撃能力は限界まで鍛え上げてるの。半端な守りじゃ、簡単にやられちゃうよ?」

 

「くっ……戻って、ライチュウ!ダイケンキ、お願い!!」

 

「……ッシャ!」

 

フーディン……!想像を遥かに超える強さだ……ここはセオリー通りにあくタイプのダイケンキを出すしかない!けど、フーディンはくさ技のエナジーボールやフェアリー技のマジカルシャインを覚えることは知っている……どちらもダイケンキには効果は抜群だから、油断は一切できない……!

 

「フーディン!素早く、エナジーボール!!五連打ッ!!」

 

「フーディーッ!!フッ!フッ!フッ、フッ、フッ!!」

 

フーディンが両手に持ったスプーンを振るうと、一瞬で五つのエナジーボールが形成された!フーディンの腕の動きに合わせて、エナジーボールが連続で飛んでくる!

 

「ダイケンキ!アシガタナで打ち落とせ!!」

 

「ルシャア!」

 

ダイケンキは自身の前脚の鎧に仕込まれたアシガタナという名の刀を抜刀、迫り来るエナジーボールをすべて斬り捨ててみせた。

 

「シザークロス!」

 

「シイィア!」

 

「マジカルシャイン!」

 

「フーディ!!」

 

そのままシザークロスの指示を出し、ダイケンキが突撃していく。けれど、ワサビちゃんもマジカルシャインの指示を出し、接近するダイケンキを迎撃しようとする。……甘いよ、ワサビちゃん!

 

「ダイケンキ、どくづき!ぶん投げろおお!!」

 

「ルッシャアアア!!」

 

マジカルシャインを発動したフーディンだけど、そんなのじゃ甘い!私の指示通り、どくづきを発動したダイケンキは毒の力が込められたアシガタナを思い切りぶん投げた!!技と技がぶつかり合うけど、技同士のタイプ相性はどくタイプであるこちらが有利!

どくづきがマジカルシャインを突き破り、フーディンに命中した!

 

「フゥッ!?」

 

「……っ!?そんなのアリっ!?」

 

「今だっ!ひけん・ちえなみ!!」

 

「シャアッ!!」

 

「フーゥッ!!」

 

「あぁ、フーディン!!」

 

懐まで飛び込んだダイケンキが、もう一本のアシガタナを抜刀して自身の専用技であるひけん・ちえなみを放つ!攻撃は見事に命中、フーディンは倒れた!

 

「……お疲れ様、フーディン。ゆっくり休んでてね」

 

「フゥゥゥ……」

 

「ダイケンキ、ありがとう。戻って」

 

「シャッ」

 

よかった……なんとか一発も被弾しないで勝つことができた。さて、次に出すポケモンは……

 

「ガブリアス!!」

 

「ガブァ!」

 

「ならこっちは、エレキブル!」

 

「ブルルルッ!!」

 

ガブリアスを相手にエレキブルを対面に出す……やはり、こおり技のれいとうパンチを覚えさせているんだね!だからって、負けるつもりはない!

 

「ガブリアス!力強く、ドラゴンクロー!」

 

「ガッブァア!」

 

「エレキブル!素早く、れいとうパンチ!」

 

「エレッブ!」

 

竜の爪と氷の拳が激しくぶつかり合う。ただ、こちらは威力重視の力業で放ったのに対し、ワサビちゃんは速度重視の早業を指示している。この違いが、どう影響するか……。

何度も何度も、ガブリアスとエレキブルがぶつかり合う。……けど、これは……判断を誤ったか……!少しずつだけど、力業と早業の影響が現れ始めた。徐々に動きが遅くなるガブリアスに対して、逆にエレキブルは加速している!

 

「エレッブル!」

 

「ガッ……!?」

 

まずい、均衡が崩れた!

 

「エレキブル!力強く、れいとうパンチ!!」

 

「エレッ……ブルルル!!」

 

「ガッブァッ!?」

 

「ガブリアスッ!!」

 

エレキブルの力業によるれいとうパンチが、ガブリアスを顎から勝ち上げて吹っ飛ばした!そのまま宙を舞い、地面に倒れるガブリアス……くっ、戦闘不能だ……。

 

「ごめんね、ガブリアス……ゆっくり休んでて」

 

「ガブゥ……」

 

これで私の手持ちは無傷のダイケンキとロズレイド、手負いのゴウカザルのみとなった。まさか、半分も倒されてしまうなんて……完全に想定外だ、緊張で冷や汗が流れる。

 

「これで、ガブリアスにはキッサキ神殿での借りが返せたね」

 

「エレブルル!」

 

「……っ、勝負はまだついてないよ、ワサビちゃん!お願い、ロズレイド!!」

 

「ロゼー!」

 

私が選んだのはロズレイド。ほとんど消去法に近い形になってしまったけど、現状エレキブルとまともに戦えるのはこの子しかいない!

 

「ロズレイド、エレキブルはあなたの弱点を突く技を覚えている……気をつけて戦おう!」

 

「ロゼロゼ!」

 

「どんなポケモンが来たって、負けない……絶対に、負けない!

エレキブル、ほのおのパンチ!」

 

「エレブル!」

 

「ロズレイド、シャドーボールで弾幕を張って!」

 

「ローゼ!」

 

エレキブルが炎を宿した拳を振るって接近してくる。ロズレイドもシャドーボールを放ち攻撃するけど、シャドーボールのいくつかはエレキブルの拳に打ち消されてしまった。

 

「躱して!」

 

「ローズレッ!」

 

迫り来るほのおのパンチをジャンプして躱す!ここだ!

 

「ロズレイド、フィールド全体にヘドロばくだん!」

 

「ロー……ゼゼゼゼゼッ!!」

 

ロズレイドがヘドロばくだんを辺り一面にばらまく。これにより、エレキブルの足元は簡単な毒沼が広がったような状態に仕上がった!

 

「……っ、動きを封じたんだね……!」

 

「その通り!ロズレイド、エナジーボール!!」

 

「ローゼッ!!」

 

「さすが……でも!エレキブル、はかいこうせん!!」

 

「エーレ……ブルアアッ!!」

 

動きを封じたエレキブルにエナジーボールを放つ……が、さすがはワサビちゃん、対策してきたね!エレキブルのはかいこうせんが地面に向かって薙ぎ払われ、大きな爆発を起こした。毒沼を吹き飛ばしたエレキブルは、すぐに飛んできたエナジーボールを躱した!

 

「これで動ける!エレキブル、れいとうパンチ!!」

 

「エレブルー!」

 

「ロゼッ!?」

 

まずい、れいとうパンチが命中した!あれはかなりダメージがある……けど、今なら当てられる!

 

「負けないで、ロズレイド!ヘドロばくだん!!」

 

「……ッ!ロゼー!」

 

「ブルッ……」

 

よしっ!ヘドロばくだんが命中!しかもエレキブルは毒を負ったみたい……このままロズレイドで、一気にエレキブルを下す!!

 

「下がって、エレキブル!交代だよ、クロバット!!」

 

「ブルル」

 

「バットォッ!」

 

くっ……なんて的確なタイミングでの交代……。けど、クロバットは手負いの状態だ、なんとかロズレイドで押し切れれば……。

 

「ロズレイド、シャドーボール!」

 

「躱して!クロバット!」

 

「ロゼーッ!」

 

「バット!」

 

ロズレイドがシャドーボールを連射するけど、掠りもしない……!?

 

「そこだよ、つばめがえし!」

 

「クロッ……バットォ!!」

 

「ローゼーッ!?」

 

「ロズレイドッ!」

 

しまった、クロバットのつばめがえしが決まってしまった!ロズレイドは……ダメだ、戦闘不能になってる。

 

「ありがとうロズレイド、お疲れ様」

 

ロズレイドをボールに戻し、一度思考に沈む。

ワサビちゃん、本当に強い。繰り出されるポケモンたちもさる事ながら、ワサビちゃん自身も戦いの駆け引きを熟知している。交代のタイミング、覚えさせる技の構成、そしてタイプバランス……すべてが最高レベルで完成されている。ハマレンゲさんに曰く、「ワサビちゃんは鬼気迫る表情でポケモンたちを特訓していた」らしいけど……これほどのレベルになっているなら、一体どれだけ特訓をしたんだろう。どれほど濃密な内容をこなしてきたんだろう。

なによりも……何がそこまでワサビちゃんを追い詰めているんだろうか。曇った表情を見せるようになったり、一日中ベリオロスに付きっきりだったり、鬼気迫る表情でポケモンを鍛えたり……今だってそうだ、上手く隠しているように見えるけど、ポケモンが倒されるたびに悲痛に顔を歪めては焦りが顕わになっている。……やっぱり、ワサビちゃんの千里眼で良くないものが視えたのかもしれない……。

 

「グオン」

 

「リオレウス……?」

 

……っと、ここでずっと後ろでバトルを見守っていたリオレウスが声を上げた。首をクイクイと動かして……なんか、「早くしろ」とでも言いたげな……いや、違うな。「目の前のバトルに集中しろ」と……そう言いたいのかな。

 

「集中力が欠けてる……って?」

 

「グオ」コクン

 

「そっか……ありがとう、リオレウス」

 

「グオグオ」

 

そうだ、まずはバトルを終わらせよう。聞きたいこと言いたいこと……そんなもの、バトルが終わったあとで全部すればいい。ハマレンゲさんも言ってたじゃないか、「勝負は正直だ」って。心の奥深くに隠しているものも、バトルを通じて全部吐き出してしまえばいい!

 

「ショウさん?」

 

「スゥー……ごめん、ワサビちゃん。ちょっとボーッとしてた」

 

「ううん、別にいいよ。それで、次は何を出すの?」

 

「次は当然、ゴウカザル!!」

 

「ウッキャアッ!!」

 

ワサビちゃんのことだ、エスパー対策にきゅうけつの技を覚えさせている可能性が高い……ダイケンキはあくタイプだから、普通に弱点が刺さってしまう。ここはゴウカザルで行く!

 

「……今度こそ、仕留めてあげる!クロバット!力強く、つばめがえし!!」

 

「バットォ!!」

 

クロバットが物凄い速さで接近してくる……。

 

「ゴウカザル!」

 

「ウキャ」

 

まだだ!まだ、まだ……引きつけて……タイミング……!

 

「……今っ!!」

 

「ウッキャッ!」

 

クロバットが翼を振り下ろそうとした、そのタイミング!ゴウカザルはギリギリまで引きつけて、わずかに体をずらすことで回避した!!

 

「なっ……!?」

 

「バッ!?」

 

「かみなりパンチィッ!!」

 

「ウゥッキャアアァッ!!」

 

「トォッ!!」

 

「クロバット!?」

 

ゴウカザルのかみなりパンチが、クロバットに抉り込むように打たれた!そのまま天高く打ち上げ、クロバットはワサビちゃんの前に墜落した。判定は……戦闘不能だ!

 

「そんなっ、クロバットが……!」

 

「ありがとう、ゴウカザル。私の思いに応えてくれて」

 

「ウキャキャ」

 

ワサビちゃんは……ほとんど顔面蒼白だ。どうして……ただバトルをしているだけなのに、そんな顔をするの?私が勝利することは、ワサビちゃんにとってそんなに良くないことなの?あるいは……ワサビちゃんが視えた未来では、私の勝利がなにか悪いものを引き付ける要因になるんだろうか……。

 

「そんな……そんな……どうしよう、どうしよう……!このままじゃ……!」

 

「ドッセイ」

 

焦りを隠せないワサビちゃんだけど、そんな彼女の肩にそっと手を添えるポケモンがいた。彼女の残り二匹の内の一匹、ドサイドンだ。

 

「ドサイドン……」

 

「ドサ、ドッセイ」

 

「……うん、そうだね。まだ、終わってなかった。ありがとう……エレキブル、お願い……!!」

 

「エレブル!!」

 

エレキブルが前に出た。ドサイドンは最後まで温存するみたい……エレキブルはロズレイドから喰らった毒が残っている……できればゴウカザルで、エレキブルを倒す!

 

「一気に……」

 

「決着にする!!」

 

「ゴウカザル!力強く、フレアドライブ!!」

 

「エレキブル!力強く、かみなりパンチ!!」

 

「ウッキャアアアアッ!!」

 

「エレッブルルルルッ!!」

 

炎を纏ったゴウカザルと両腕に雷の力を宿したエレキブルがお互い一気に肉薄し、お互いに力業をぶつけ合う!お互いの実力は互角……いや!

 

「ブルッ……!」

 

「グゥゥオオオカアアアアァァァッ!!」

 

押し……きれっ……!!

 

「エレブルーッ!!」

 

「……!!エレキブル……!」

 

「よっし……!」

 

競り勝った!ゴウカザルの勝ちだ!!ゴウカザルに押し切られて吹っ飛んだエレキブルは、すっかり目を回して倒れている。ワサビちゃんの呼びかけに応じて、エレキブルはゆっくりと後退していった。

 

「……スゥー……ハァー……。よしっ……ドサイドン!!」

 

「ドォサァ!!」

 

ついに来た、ドサイドン……!キッサキ神殿でのバトルでも、ドサイドンが一番強かった……多分、ワサビちゃんのポケモンの中でも一番強くなっているはずだ……!

 

「ゴウカザル――」

 

「ウキャ!ウキャキャア!!」

 

ゴウカザルを戻そうとすると、ゴウカザルはこっちに振り返り首を横に振った。……まさか、自分がもう体力の限界だと気づいて……少しでもドサイドンの体力を削ろうって言うの……?

 

「……わか、った。けど、最後の一撃だからね。負けても負けなくても、次の攻撃の後にボールに戻すから」

 

「ウッキャア!」

 

「それじゃあ、行くよ……!力強く、インファイトォッ!!」

 

「ウキャアアアッ!!」

 

ゴウカザルが一気に突撃し、ドサイドンに乱打を浴びせる!!かくとう技は効果は抜群、この一撃で倒せれば御の字……!

 

「……え?」

 

「ウキ?」

 

けど、そこには……眉一つ動かさず、無表情のままゴウカザルを見下ろすドサイドンの姿が――

 

「10まんばりき!!」

 

「ドッセイ!」

 

「ウギャッ!!」

 

「ゴウカザルッ!?」

 

ドサイドンの一撃でゴウカザルが吹っ飛んだ!!私の背後にまで飛んでいったゴウカザルは……よかった、リオレウスが口でキャッチしてくれたみたい。ゆっくりとリオレウスが下ろしてくれた……ゴウカザルは戦闘不能になってしまった。

 

「……ドサイドンは、あたしが一番限界まで鍛え上げたポケモンだよ。ベリオロスにもたくさん協力してもらったんだ……絶対に負けられないの」

 

「ドサァイ!!」

 

「……っ!ダイケンキ!!」

 

「ッシャア!!」

 

これで、お互いに一匹ずつ……。心臓がバクバクとうるさい、耳鳴りさえしているような気がする。緊張と興奮で、目の前のバトルのこと以外何も考えられなくなる。

 

「……勝つよ、ワサビちゃん」

 

「……うん。あたしだって」

 

「ダイケンキ!素早く、どくづき!!」

 

「迎え撃って、ドサイドン!かみなりパンチ!!」

 

「ルッシャア!!」

 

「ドッセェイ!」

 

毒状態を狙ってどくづきを早業で繰り出す!ダイケンキの毒づきがドサイドンに当たった……けど、毒にはなっていない!反撃のかみなりパンチがくる……!

 

「躱してアクアテール!!」

 

「ルルシャッ!」

 

かみなりパンチを躱して、アクアテールを……!

 

「捕まえて!!」

 

「ドセェイァ!!」

 

「ルシャッ!?」

 

受け、止めた……!?ダメージは入っているはずなのに、なんてタフなの……!?

 

「力強く……メガホーンッ!!」

 

「ドォ……ッセエェイッ!!」

 

「ジャウッ!!」

 

「ダイケンキッ!?」

 

しまった!力業のメガホーンが直撃……これは痛すぎる……!!ほとんど頭突きのように食らわされたダイケンキが地面に叩きつけられる。それでも……なんとか立ち上がった!

 

「かみなりパンチで止めをっ!!」

 

「ドッサイ!!」

 

「……!懐に飛び込め!素早く、ひけん・ちえなみ!!」

 

「ッ!ルシャアッ!!」

 

拳が叩きつけられるよりも私の指示の方が速い!ドサイドンの拳を紙一重で回避し、ダイケンキは一瞬で懐に飛び込んでアシガタナを振るった!幾重にも重なるような無数の斬撃が、ドサイドンへと一気に襲いかかる!!

 

「ドサ……!」

 

「負けないで、ドサイドン……!10まんばりき!」

 

「ドサァ……!!」

 

「回避!」

 

「シャ!」

 

ドサイドンの10まんばりきが迫って来るけど、難なく回避できた!ひけん・ちえなみは斬撃の際に飛び散った貝殻の破片が相手に食い込んで、継続ダメージを与えることができる技だ。貝殻の破片が痛むのか、ドサイドンは動きにくそうにしている!

 

「どくづき!」

 

「近づけないで!ストーンエッジ!!」

 

「ドッ……サアイッ!」

 

「……ッ」

 

ダイケンキがどくづきを構えて突貫するも、壁のように出現した岩の刃に進路を塞がれてしまった……これって!!

 

「私の真似!?」

 

「参考にさせてもらったよ!」

 

「ドォ……ドサァ!!」

 

まさか、私とハマレンゲさんのバトルを見て?……っ、ドサイドンが強引に体を振るって破片を飛ばした……!

 

「シザークロス!!」

 

「ルシァ!!」

 

「10まんばりき!!」

 

「ドッセイ!!」

 

シザークロスと10まんばりきが激突し、互いに拮抗する!

 

「……気づかない?ショウさん」

 

「なにを……」

 

「シザークロスってカマのような、刃を交差させながら繰り出す技……つまり、今のダイケンキは両腕がふさがっている状態なんだよ。対してこっちの10まんばりきは片腕で繰り出されている……つまり?」

 

「……っ!しまった!?」

 

盲点だった!互いの実力が拮抗している以上、どちらかが力を抜けば均衡が崩されてしまう……つまり、この時点で動けなくなるも同然!ダイケンキは技の都合上、両手を使わなければならない……けど、ドサイドンは片腕が空いている!!

 

「ドサイドン!力強く、かみなりパンチ!!」

 

「ドオォッセエェイッ!!」

 

「ルジャアァッ!!」

 

「ダイケンキィッ!?」

 

力業のかみなりパンチでダイケンキが天高く打ち上げられてしまった……!!まずい、このままじゃ……いや、待て!利用するんだ、この状況を!!

 

「止めだよ……ストーンエッジ!!」

 

「ドサァイッ!!」

 

「ダイケンキ!ストーンエッジの上を走れ!!」

 

「……!ルシャア!」

 

「そんな!?」

 

下から迫り来る岩の刃……でも、体勢を戻したダイケンキは逆にストーンエッジの上に乗り、そのまま逆落としを仕掛ける!!これにはワサビちゃんも、ドサイドンも驚いている!

 

「いっけえええ!ダイケンキ!力強く、アクアテールッ!!」

 

「ルルッシャアッ!!」

 

「返り討ちに……!ドサイドン!力強く、メガホーン!!」

 

「ドッセエエエイ!!」

 

ダイケンキのアクアテールと、ドサイドンのメガホーンがぶつかり合う!!激しく閃光を散らした末、大きな爆発を生み出した!!

 

「うっ……ダイケンキ……!」

 

「きゃっ……ドサイドン……!」

 

大きな爆発とともに、煙が戦場を包み込む。……やがて、煙が晴れていき、そこには……。

 

「ダイケンキ……っ!」

 

「……や、った……」

 

倒れ伏すダイケンキと、それを見下ろすドサイドン……。そん、な……負け、た……?

 

「サァイ」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ガッ」 ズゥゥン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドサイドンが、倒れ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ル、シ」 ムクリッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え」

 

「ダイケンキ!」

 

――ダイケンキが……立ち上がった!!やった!私の、ダイケンキの勝ちだっ!!

 

「……やった。やった、やった!ダイケンキッ!!ありがとう、ありがとう!」

 

「ルシ」

 

「……そんな、ドサイドン……っ」

 

ワサビちゃんは悔しさを耐えるように唇を噛み締めて……小さく息を吐くと、私の方を見た。

 

「……ショウさん。やっぱり、強いや。勝てると、思ったんだけどなぁ……」

 

「ワサビちゃん……」

 

「……約束、だよね。わかった、ベリオロスに会わせてあげる」

 

「ありがとう、ワサビちゃん」

 

「……あのね、ショウさん」

 

「はい?」

 

どうしたんだろう、ワサビちゃん……。

 

「あたし、やっとわかったよ。ショウさんやギンガ団の人がボールを使う意味」

 

「え?……えぇっと、ありがとう?」

 

「ふふ!……ボールって、ポケモンを閉じ込めているようで正直好きにはなれないなって思ってたんだけど……ショウさんや、ショウさんのポケモンを見ててわかったの。ボールって、人とポケモンを繋ぐ絆、なんだよね?」

 

「……そうだね。少なくとも、私はそう思ってるよ」

 

「うん……わかるよ」

 

そう言いながら、ワサビちゃんはゆっくりと戦場の端へと移動していく。……本当にどうしたの?さっきからまるで要領を得ないけど……。

 

「……ポケモンをボールに入れるとね、"ああ、ここにちゃんといるんだ"って思えて、こっちもすごく安心するの。この思い、もっと早くに知りたかったな……」

 

「え……?」

 

さっきから、何を言ってるんだろう……?その言い方……まるで、ワサビちゃんがボールを使ったことがあるみたいな……。

 

「……だから」

 

振り返ったワサビちゃんが、徐に帽子を脱ぐ。

 

――頭の上に、モンスターボールがあった。

 

「えっ、ボール……?」

 

どうして、ワサビちゃんがモンスターボールを……ちょっと待って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――氷山の戦場という広いフィールド――

 

――姿が見えないベリオロス――

 

――ワサビちゃんのモンスターボール――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ま……さか……」

 

「あたしは、あたしの絆をかけて、あなたに最後の勝負を挑む」

 

まさか、そんな、そのボールには、まさか……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出て来いっ!ベリオロスッ!!」

 

「ガオオオオオオオォォォォォォォォッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モンスターボールから、ベリオロスが繰り出された……。

 

 

 

 




次回、決戦!ベリオロス




ワサビちゃんとのバトルで丸々一話……正直、3話も跨ぐとは思わなんだ、なんて言えない……


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決戦!ベリオロス ~白騎士 対 狩人 そして王者~

~前回のあらずじ~

ワサビとの勝負、六匹のポケモンすべてを倒したショウ。
しかし、勝負はまだついてない。ワサビが徐に取り出したモンスターボールから現れたのは、なんとベリオロスだった!?

決戦の時!


ワサビちゃんが投げたボールから出てきたのは、ベリオロスだった……!?

 

「そんな……!どうして、ベリオロスが……っ!?」

 

「"どうして?"……そんなの、決まってるよ。ベリオロスを守るためだよ」

 

「ま、守る……?」

 

「ショウさんにはわかんないよ。どうにもならない巨大な絶望を……救いなんて欠片もない未来を視せられた、あたしの気持ちなんて」

 

「絶望……?な、何を言ってるの……?」

 

「……これ以上の問答に、意味はないね。さあ、かかっておいでよ。この子を連れて行きたければ、あたしに勝ってみせて。あたしとベリオロスが……全身全霊で捻り潰してあげる」

 

「……ダイケンキ、戻って」

 

ダイケンキをボールに戻す。ポケモンたちを回復させないままベリオロスを繰り出してきたあたり……ワサビちゃんは相当本気らしい。そして、同時に……後がないと、焦っている。

 

「くっ……」

 

「ふふっ……いい感じに吹雪いてきた。天は、運は、あたしたちの味方だね」

 

「グルルル……」

 

「リオレウス、ダメ」

 

「…………」

 

リオレウスが前に出ようとするけど……ダメだ。これだけ強い風で吹雪いていたら、むしろ飛ぶと危ないかも知れない。

 

「いくらあなたでも、この吹雪の中は飛ばせられない。大人しく戻ってて」

 

「グオン……」

 

「大丈夫。……吹雪が止めば、必ずあなたの力が必要になるから」

 

「グオグオ」

 

リオレウスも納得したようで、大人しくボールに戻ってくれた。……こういう時、一番頼りになるポケモンは……!

 

「ジンオウガ!!」

 

「ウオオォォォォォンッ!!」

 

地上における機動力なら、ジンオウガはトップクラスだ!ベリオロスがこおりタイプであればあまり長期戦は望めない……吹雪が止めばリオレウスに交代できるから、それまでは……!

 

「あたしは、運命を変える!誰にもあたしの邪魔はさせないっ!!」

 

「ワサビちゃんにも勝って、ベリオロスにも勝って、二人に認めてもらう!!」

 

「ベリオロスッ!凍伐(とうばつ)せよっ!!」

 

「勝利を狩り獲れっ!ジンオウガッ!!」

 

「ガオオオオオオォォォォォッ!!」

 

「ウオオオオオオォォォォンッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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まずは先制攻撃……!

 

「ジンオウガ!アイアンヘッド!!」

 

「ウオオォンッ!!」

 

「躱して!」

 

「ガオン!!」

 

ジンオウガの突撃が、あっさりと回避された……!やっぱり、ベリオロスは素早さも高い……!!

 

「こおりのつぶて!!」

 

「ガオガオ!」

 

「ギャウッ……!」

 

「ジンオウガ!!」

 

「続いてこおりのキバ!!」

 

「……っ!ならこっちは、ほのおのキバ!!」

 

「ガオオオ!」

 

「ウオォン!」

 

こおりのつぶてでダメージが入りつつも、続けて放たれたこおりのキバの指示には間に合った!ベリオロスは氷、ジンオウガは炎の力で相手に噛み付く!爆発が発生して、煙の中からベリオロスとジンオウガが飛び出してくる……!

 

「ジンオウガ!きりさく!!」

 

「ウオンッ!」

 

「こっちもきりさくだよ!」

 

「ガオッ!」

 

ジンオウガのきりさくと、ベリオロスのきりさくがぶつかり合う!ベリオロスは爪だけでなく、翼についている刺にも力が宿っているみたいだ……。

一つ、二つと攻撃が交わり、迫って来るベリオロスの右前脚をジンオウガが左前脚で抑えて、右前脚でベリオロスを顎からかち上げる。一瞬怯むベリオロスだけど、持ち堪えてすぐに左前脚でジンオウガをきりさいた。激しいぶつかり合い……ラギアクルス、リオレウスと続いて三戦目だけど、やっぱり迫力が桁違いだ……!

 

「インファイト!!」

 

「ウオオォォォン!!」

 

長引くと厄介かも……出来るだけ早く、決着をつけないと!ジンオウガが一気にベリオロスへと接近していく!

 

「ふぶきだよ!」

 

「グァアオオオオオオ!!」

 

「ガッ!ウッ……!!」

 

「ジ、ジンオウガっ!!」

 

しまった、ふぶきが直撃……!まずい、抜け出さないと……!!

 

「ジンオウガ、はどうだん!」

 

「ウオォン……!」

 

空中に向かってはどうだんを放つ!はどうだんは必中技……どこへ向けても必ず命中する!天に向かって登っていくはどうだんは軌道変更をすると上からベリオロスへと向かっていく!

 

「アイスボールで撃ち落として!」

 

「ガオガオッ!」

 

ふぶきを中断して、ベリオロスはアイスボールではどうだんを撃ち落とす……ここだ!

 

「ドラゴンクロー!!」

 

「ガウッ!!」

 

「ギャオオッ!」

 

よしっ、ドラゴンクローが決まった!反応からして効果は抜群みたいだ!!

 

「くっ……ベリオロス!サイコカッター!!」

 

「グッ、ガッ!オオオオォ!!」

 

「ギャンッ!!」

 

サイコカッター!?そんな技を覚えるなんて……!完全に計算外だ、かくとうタイプのジンオウガには効果は抜群だ……!!

 

「大丈夫!?ジンオウガ!」

 

「ガウ!ワウワオンッ!!」

 

「よしっ……でんこうせっかだ!」

 

「ワウンッ!!」

 

「近づけないで!こごえるかぜ!!」

 

「フンフアッ!」

 

ベリオロスが口から冷たい吐息を吐き出してきた。当たると厄介だ……!

 

「ジンオウガ!ジャンプ!!」

 

「ワオウンッ!」

 

ジンオウガの跳躍なら、これくらい回避することは容易い!!高く跳んだジンオウガは、既に攻撃態勢に入っている!!

 

「力強く!ドラゴンクロー!!」

 

「ゥワオオオンッ!!」

 

「グギャオオオオッ!?」

 

「べ、ベリオロス……!!」

 

力業のドラゴンクローが頭部に直撃!!いくらベリオロスでも、これは効いたはず!!

 

「負けないでベリオロス!力強く、れいとうビームッ!!」

 

「グッ……!グガオオオォォォンッ!!」

 

「ギャウウウンッ!!」

 

「ジンオウガッ!!」

 

押さえつけている前脚を強引に振り切り、ベリオロスが至近距離から力業のれいとうビームを放ってきた!直撃したジンオウガは空中に押し上げられたあと吹っ飛ばされ、私の目の前に落下してきた。

 

「ジンオウガ……!」

 

「グルル……」

 

ジンオウガはまだ戦えそうだけど……やっぱりワサビちゃんは強い。ベリオロスのことをよくわかっているし状況に合った技選択も完璧。相手の技選択を見てからの判断も早く、即断即決で最適解を導き出せるさまは正しく天才。……同じ時代のトレーナーじゃなくてよかった……同世代にこんな子がいたら、トレーナーとしての自信をなくしちゃいそうだよ……。

 

「……強いね。その子を繰り出してきたあたり、ショウさんにとって一番信頼するポケモンだろうとは思ってたけど、本当に息ピッタリ」

 

「こっちのセリフだよ、ワサビちゃん。ベリオロスのこと、たくさん知ってるんだね」

 

「毎日毎日、一日中一緒に居ればいろんな事がわかるよ。……だから、何も知らないショウさんには、安易に託したくはないな」

 

「……それは、これから知っていくよ。どれだけ時間がかかっても、私は彼らのことを知りたいし、彼らには私のことを知って欲しい……ワサビちゃんとベリオロスのように、きっと分かり合うことが出来るはずだから」

 

「…………」

 

ワサビちゃんは、まだ難しい表情をしている。……大丈夫、ポケモン勝負は最高のコミュニケーションツールだ。きっと、ワサビちゃんもわかってくれるはず……だから、今はそれを信じて、バトルするしかない……!

 

「勝負を続けよう、ワサビちゃん。勝負を通して、もう一度私のことを知って欲しいんだ!」

 

「……!いいよ……あなたにベリオロスを託しても大丈夫なのかどうか、しっかりと見極めてあげる……!!」

 

……!ベリオロスが僅かに体を引いている……何をする気……!

 

「ベリオロス!ひょうらんほう!!」

 

「ガオオンッ!!」

 

ベリオロスの口から、アイスボールのような氷の塊が発射された……!

 

「躱して!」

 

「ガオウ!!」

 

ジンオウガがサイドステップで回避し、塊が着弾した、その直後……!猛烈な勢いで、氷の竜巻が発生した!?

 

「うっ!?これは……」

 

「着弾することで氷の竜巻を発生させる竜のブレス……氷の嵐を起こす大砲、氷嵐砲(ひょうらんほう)だよ!

さあ、ベリオロス!もっともっと撃ち込んじゃえ!!」

 

「ガオッ!ガオッ!ガオッ!!」

 

「くっ……躱して!」

 

「ウオォンッ!!」

 

次々と打ち出される氷の大砲を、ジンオウガはなんとか避けていく。けど、着弾するたびに氷の竜巻が残留して段々と動きにくくなっている……!!

 

「……準備は出来た。ここで一気に仕留めるよ!!ベリオロス、しょうりゅうひょうが!!」

 

「ガオオオオオンッ!!」

 

……っ!?ベリオロスが竜巻に向かって飛んで……気流に乗ってる!?

 

「いっけぇ!!」

 

「ガオオオオオオオオオ!!」

 

竜巻の気流に乗っていたベリオロスが、その勢いを利用して飛びかかってきた!!

 

「ガウッ!!」

 

「ジンオウガっ!?」

 

ベリオロスの爪に切り裂かれたジンオウガ……ダメだ、全く反応できていない!?ベリオロスは再び別の竜巻の気流に乗り、また飛びかかってきた!

 

「ジンオウガ!かみなりパンチ!!」

 

「ガッ!ガウッ、ギャンッ!!」

 

「無駄だよ!この氷の嵐と、そこから放たれる連続する斬撃からは逃れられない!!

……昇り竜は氷爪を研ぎ、牙の如き刃で敵を裂く!これがっ!昇竜氷牙(しょうりゅうひょうが)だっ!!」

 

「くっ……」

 

そんな大技を隠していたなんて……!!ジンオウガはすっかりボロボロになってる……ここは強引にでも竜巻をどうにかしないと、ジンオウガが負けてしまうっ!!

 

「ジンオウガ!!辺り全部にはかいこうせんっ!!」

 

「グルルル……ガオオオウッ!!」

 

ジンオウガがはかいこうせんで周囲一帯を薙ぎ払い、爆発が起こった!その衝撃で竜巻はすべて消滅、なんとか状況を変えられた……!

 

「ベリオロス!素早く、ふぶき!!」

 

「ジンオウガ!かみなり!!」

 

「ガオオオオンッ!!」

 

「ウオオオオンッ!!」

 

ふぶきとかみなりの激しいぶつかり合いで、再び大爆発が起こる。ワサビちゃんは早業を指示していた……はやく次に備えないと……!

 

「もう一度っ!ふぶき!!」

 

「ガオオオオンッ!!」

 

「グルウゥゥ……!」

 

「くぅっ……!!」

 

ジンオウガはもう限界だ……!これ以上戦わせるわけには……え?

 

「…………」

 

「…………」

 

「ジ、ジンオウガ?」

 

「ベリオロス……?」

 

ジンオウガもベリオロスも、突然戦闘態勢を解いて空を見つめ始めた。一体どうしたの……?今までこんなこと、ましてや戦闘中になんて一度もなかったのに……。

 

「ど、どうしたのベリオロス!?」

 

「ジンオウガ……」

 

……いや、待って。二匹が見つめる先……雲に、切れ間が……!

 

「……!吹雪が……!?」

 

「止んだ……!!」

 

いつの間にか吹雪は止み、空から分厚い雲が流れて消えていく。まさか、二匹はこれを察知して……とにかく、今がチャンスだ!!

 

「ジンオウガ、戻って!出番だよ、リオレウス!!」

 

「しまった……!」

 

「グオオオオオオオオオオオォォォォンッ!!」

 

吹雪が止んだことで、気流が安定した……これなら、リオレウスは十全に空を飛べる!私は即座にジンオウガをボールに戻して、リオレウスを繰り出した。リオレウスも「やっと出番だ!」とばかりに高らかに咆哮を上げている!

 

「戦いを通してわかった……ベリオロスはこおりタイプを持つポケモンで、ドラゴンタイプにも弱い。そして、私のリオレウスはほのおタイプを持っている!タイプ相性でなら、完全に上を取った!」

 

「タイプ相性だけで勝てるだなんて思わないで!苦手なタイプが出てくることくらい、あたしもベリオロスも想定していなかったわけじゃない!!」

 

「勝つよ……ベリオロスに認めてもらって、ワサビちゃんに安心してもらうために!そのために、ここまで来たんだ!!」

 

「負けない……あたしには、負けられない理由がある!だから……!」

 

リオレウスで挑む以上、負けるわけにはいかない!

 

「リオレウス!ごうかきゅう!!」

 

「ベリオロス!ひょうらんほう!!」

 

「グオオオオオ!!」

 

「ガオオオオオ!!」

 

火球と氷砲の激しい撃ち合いが始まった!リオレウスは宙を自在に舞い、地上に居るベリオロスに向けて得意技の豪火球(ごうかきゅう)を放つ。ベリオロスは火球を避けつつ時には直接リオレウスを狙い、時には地面に撃ち込んで竜巻を起こし動きを封じようとする。負けじとリオレウスも火球の威力で氷の竜巻を吹き飛ばしたりしている。お互い、完全に一進一退の攻防を繰り広げている……!

 

「リオレウス!つばめがえし!!」

 

「グオン!」

 

「ギャオッ!」

 

リオレウスが一瞬でベリオロスに接近すると、足の爪で一気に急襲した!ベリオロスが怯んだ隙を突き、リオレウスはベリオロスの背中を掴むと一気に持ち上げた!!

 

「よしっ、そのまま投げ飛ばして!」

 

「グオオオ!!」

 

「ガフッ……!」

 

「ベリオロス!」

 

地面に叩きつけられたベリオロスはかなり苦しそうだ!一気に追撃を!!

 

「追撃して!ドラゴンクロー!!」

 

「ギャオオオンッ!!」

 

「……!!躱して!!」

 

追撃のドラゴンクロー……は、回避された……!!

 

「躱された……!」

 

「かみなりのキバ!!」

 

「ガオン!!」

 

回避されたことで着地後の隙を突かれてしまった!リオレウスはベリオロスに飛びかかられ、背中から倒れこんでしまった。さらにベリオロスのかみなりのキバが、リオレウスの首に突き立てられる……!

 

「振り払ってリオレウス!シャドークロー!!」

 

「グ、オ……オオオオッ!!」

 

「ギャオンッ!!」

 

リオレウスは首を振ってベリオロスの牙から逃れられると、影の力を込めた足の爪でベリオロスを思い切り蹴り飛ばした!!すぐに体を起こして、ベリオロスを睨みつけるリオレウス。対するベリオロスも、ジンオウガとの戦いも含めてかなりのダメージを負っているので、息が上がり始めている。

ここで一気に仕留めるには……この連携技で!

 

「リオレウス!ぼうふう!!」

 

「グオオオオオオオ!!」

 

「ガッ……!」

 

「ベリオロス!」

 

リオレウスの強烈な羽ばたきで起こった暴風がベリオロスを包み込みダメージを与える……まだまだ、すかさずこの技!

 

「続けてかえんほうしゃ!!」

 

「ギギャオオオンッ!!」

 

ぼうふうの技が続いているうちに、一気に炎を浴びせる!!リオレウスが吐いた炎がぼうふうの風に乗せられて激しく渦を巻く……名付けて、「なんちゃってほのおのうず」!

……どうしてこの時代のほのおポケモンはほのおのうずを覚えないんだろうか……。

 

「ガウウゥッ……!!」

 

「べ、ベリオロスッ!?」

 

「今だ……!力強く、だいもんじ!!」

 

「グルルル……グオオオオオオオオンッ!!」

 

「ガアアアアァァッ!!」

 

力業だいもんじが炸裂した!!激しい爆発に飲み込まれ、ベリオロスは力なく倒れた……やった、勝った!!

 

「よしっ!ベリオロス、戦闘――」

 

「……だ」

 

「――え?」

 

「まだだ」

 

ワサビちゃん……?何を言って……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだだよ、まだ……まだ、負けていない」

 

 

「負けられない……負けるわけにはいかない……」

 

 

「あたしは……あたしたちは、負けるわけには、いかない……!」

 

 

「負けるわけにはいかないんだっ!!」

 

 

「お願いっ!負けないでっ!立ち上がってぇっ!!」

 

 

「ベリオロスうううぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ガオオオオオオオオオンッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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そんな……ベリオロスが、立ち上がった……!?もうすでに満身創痍、戦闘不能もいいところ……どこにそんな力が……!!

 

「ベリオロスッ!!」

 

 

キャプテンの ワサビは

かいふくのくすりをつかった!▼

 

相手のベリオロスは

かいふくのくすりで 体力を回復した!▼

 

 

なっ、回復……!?

 

「あたしたちは勝つっ!負けるわけにはいかないんだからっ!!」

 

 

――少女の慟哭が木霊する……▼

 

 

「……っ、それはこっちのセリフだよ!!」

 

「ベリオロス!つじぎり!!」

 

「躱して!」

 

「ガオッ!!」

 

「グオォッ!」

 

体力が回復したことで動きにキレを取り戻したベリオロスが、一気に急襲してくる!回避を指示したけれど、躱しきれずに受けてしまった……!

 

「リオレウス!エアスラッシュ!!」

 

「グオオオッ!グオオオッ!!」

 

「力強く、クロスポイズン!!」

 

「ガオオン!」

 

リオレウスによるエアスラッシュの弾幕が、ベリオロスへと襲い掛かる!ベリオロスも力業クロスポイズンでいくつか迎撃するけれど、全ては捌ききれない!

 

「サマーソルトアイアンテール!!」

 

「かみくだくで受け止めて!!」

 

「ガオウンッ!」

 

「グオッ!?」

 

なっ……リオレウスのサマーソルトによるアイアンテールを牙で受け止めた!?

 

「引きずり倒して!!」

 

「ガオオウ!!」

 

「ギャオッ!?」

 

「リオレウスッ!」

 

「追撃のふぶき!!」

 

「ガオオオオンッ!」

 

「グオオン!?」

 

仰向けに倒されたリオレウスがふぶきで吹き飛ばされて、ゴロゴロと転がって私の目の前で止まった……が、すぐに何事もなかったかのように起き上がった。

リオレウスはドラゴンタイプを持っているけれど、ほのおタイプを併せ持つ複合タイプ……加えて、リオレウス自身の体質でこおりタイプが効きにくいおかげで、ドラゴンタイプなのにこおりタイプを半減で受けることができる!……こおりタイプが「効果は今ひとつ」のドラゴンってちょっとずるくない?

 

「リオレウス!きりさく!!」

 

「それならこっちは、つばめがえし!!」

 

「グオン!」

 

「ガオッ!」

 

リオレウスの爪とベリオロスの爪が衝突し、お互いに弾かれる。攻めるなら、ここ!

 

「れいとうビームッ!!」

 

「力強く、オーバーヒート!!」

 

「ガオオッ!!」

 

「グオオオオンッ!!」

 

ベリオロスがれいとうビームを放つけれど、リオレウスの力業オーバーヒートが一瞬で押し返す!オーバーヒートが直撃し、ベリオロスは大ダメージを受けた!!

 

「ギャオウッ!!」

 

「……っ!ベリオロス!!」

 

「素早く、めいそう!そして、りゅうのはどう!!」

 

「グルル、グァオオンッ!!」

 

「ガアアァ……!!」

 

「あぁ……!ベリオロス……ッ!!」

 

オーバーヒートの使用で失った力を早業めいそうで取り戻し、すかさずりゅうのはどうを放つ!攻撃は命中……ベリオロスは再び倒れた!

 

「まだまだ……!!」

 

 

キャプテンの ワサビは

かいふくのくすりをつかった!▼

 

相手のベリオロスは

かいふくのくすりで 体力を回復した!▼

 

 

「負けられない……負けられないんだ……!

ここで負けたらベリオロスが、みんなが……!!」

 

 

――少女の慟哭が木霊する……▼

 

 

「まだ、来る……!?」

 

「ベリオロス!りゅうせいぐん!!」

 

「ガオオオオオオオォォォォォンッ!!」

 

「グオオアァッ!?」

 

「リオレウスッ!!」

 

「つるぎのまい!」

 

「ガオガオガオ!」

 

再び回復したベリオロスのりゅうせいぐんが命中した!ここでこのダメージは痛すぎる……!!しかもりゅうせいぐんの効果で弱体化した攻撃力も、つるぎのまいですぐに復活させた……!

 

「「りゅうのはどう!!」」

 

「ガオオオオ!!」

 

「グオオオオ!!」

 

りゅうのはどう同士がぶつかり合い、大きく爆発する……いや、何か来る!

 

「みずのはどう!!」

 

「ガオンッ!」

 

「グオッ……!」

 

「続けてドラゴンクロー!!」

 

「くっ……させるかっ!フレアドライブ!!」

 

「ガオガオォッ!!」

 

「グオオラアアァッ!!」

 

みずのはどうは受けてしまったけど、追撃のドラゴンクローは喰らってやれない!咄嗟の判断で出したフレアドライブが功を奏し、ベリオロスのドラゴンクローとぶつかり合って爆発を起こした!

 

「はねやすめ!」

 

「グルル」

 

一瞬の隙を突いて、はねやすめで体力を回復する。……よしっ、態勢は整った!

 

「リオレウス!たつまき!!」

 

「こおりのつぶてで牽制して!!」

 

「ガオッ!」

 

「グッ……!」

 

こちらがたつまきで攻撃しようとするも、こおりのつぶてを差し込まれてしまい攻撃を止められてしまった!

 

「ベリオロス!シャドークロー!!」

 

「エアカッターで近づけさせないで!」

 

「グオオォォ!」

 

「ガオウッ……!」

 

ベリオロスのシャドークローを、今度はこっちのエアカッターで止めることができた!ここは畳み掛ける!!

 

「まだまだぁ!インファイト!!」

 

「グオオオォォッ!ギャオオオォォッ!!」

 

「ガアアッ!!グウゥゥ……!」

 

脚の爪や翼爪、尻尾を駆使した攻撃がベリオロスに直撃!再三、ベリオロスは倒れた!

 

「負けないっ!!勝つっ!!」

 

 

キャプテンの ワサビは

かいふくのくすりをつかった!▼

 

相手のベリオロスは

かいふくのくすりで 体力を回復した!▼

 

 

「運命をっ!未来を変えるんだっ!!

あたし達は絶対に!負けたりなんかしないっ!!」

 

 

――少女の慟哭が木霊する……▼

 

 

「力強く、リーフブレード!!」

 

「グアアオオンッ!!」

 

「ガッ、グッ!」

 

「まずい、急所……!」

 

くさ技のリーフブレードは効果はいまひとつとはいえ、急所に当たれば威力はバカにならない……!

 

「ベリオロス!アクアテールッ!!」

 

「リオレウス!アイアンテールッ!!」

 

「「ガオンッ!/グオンッ!」」

 

お互いに尻尾をぶつけ合い、激しく火花が散る。ここまで……ここまで戦おうとするなんて……!

 

「どうして、そこまでっ!!」

 

「ベリオロスを守るためっ!これから起こりうる未来を、避けるために!!」

 

「いつからベリオロスをボールにっ!?どうしてボールを使おうだなんて!」

 

「ショウさんが来る前日に、あたしからベリオロスに持ちかけたの!ベリオロスは戸惑っていたけれど、最終的には納得してボールに入ってくれた……このボールは、あたしとベリオロスを繋ぐ唯一無二の絆!!誰にも断ち切らせないっ!!ベリオロスッ!!」

 

「ガオン!」

 

「くっ……リオレウス!」

 

「グオン!」

 

「「はかいこうせん!!」」

 

「ガオオオオッ!!」

 

「グオオオオッ!!」

 

はかいこうせん同士が激突、大きな爆発を生んだ!……まだだ!

 

「「エアスラッシュ!!」」

 

「「ギガインパクト!!」」

 

「「ブレイブバード!!」」

 

同じ技が何度も連続でぶつかり合う。最後のブレイブバードは二匹が天高く飛び上がり、空中で何度も激しくぶつかり合っている。赤と白の軌跡がぶつかっては光が弾けて離れていって、またぶつかっていく。

何度目かの激突の後、二つの光がものすごい勢いで戦場へと落下してきた!煙が晴れた先では……リオレウスが、ベリオロスを押さえつけている!

 

「勝負あり!」

 

「いや、ないっ!ベリオロス、りゅうせいぐん!!」

 

「正気!?」

 

「正気も正気、本気も本気!あたしたちは、絶対に勝つんだっ!!」

 

「ガオオオオオオオッ!!」

 

ベリオロスがりゅうせいぐんを降らせてきた……!ベリオロスを押さえつけている関係で、リオレウスは逃げられない……!!

 

「グオッ!?ギャオ!ギャアウッ……!!」

 

しまった!りゅうせいぐんに押しのけられてベリオロスへの拘束が解けた……!

 

「今だ……!ベリオロス!!」

 

「リオレウスッ!!」

 

体力的にも、二匹共もう限界だ!これが正真正銘、最後の一撃っ!!

 

「「力強く!げきりんッ!!」」

 

「ガアアアオオオオオォォォォォォッ!!」

 

「グオオオアアアアアァァァァァァッ!!」

 

竜のオーラを纏った二匹が激しく激突し、戦場全体を包み込むほどの爆煙が発生した!

 

「リオレウス……!」

 

「ベリオロス!」

 

煙幕が、晴れていく。

 

「……グゥ」

 

……!リオレウスが、膝をついている……!!

 

「あ……あぁ……!」

 

けど、ベリオロスは……。

 

「……ガ……オォ……」

 

倒れ伏していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どう……して……」

 

 

ベリオロスを やっつけた……▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく、決着……本当に長かった。ワサビちゃんは何度も回復してくるし、ベリオロスも何度も何度も立ち上がってきて……勝ちへの執念、そんなものが垣間見えた気がした。

 

「……なんで?」

 

「え?」

 

「なんで……どうして!?たくさん修行だってしたのに!あんなに考えてきたのに!どうしてなにも変えられないの!?……あたしじゃ、あたしなんかじゃ……未来を変えることは……できないの……?」

 

「ワサビちゃん……」

 

フラフラとした足取りで、ワサビちゃんは倒れているベリオロスのもとへ歩いていく。ゆっくりと開かれたベリオロスの目……その近くにそっと手を当てると、ワサビちゃんは膝をついてしまった……。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい、ベリオロス……。あたし、負けちゃった……負けちゃったよぉ……!ごめんなさい……!」

 

「……ガ、オ」フルフル

 

ベリオロスに謝るワサビちゃんだけど、ベリオロスも「君は悪くない」と言うように、ゆっくりと首を横に振る。

 

「……ワサビちゃん。ベリオロスや他のポケモンたちを、回復させてあげよう?」

 

「……う、ん。あ……あたし、回復道具、切らしちゃった……」

 

「大丈夫。私の分があるから、それをあげるよ」

 

「うん……」

 

私はワサビちゃんに回復道具を分けてあげて、それを使ってワサビちゃんはベリオロスと自分のポケモンたちを回復させてあげた。私もリオレウスとジンオウガ、そしてダイケンキたちを回復させる。

 

「ワサビ!」

 

「ワサビちゃん!」

 

……と、ちょうどポケモンたちを回復させてボールに戻したタイミングだった。背後から声をかけられたので振り返ると……セキさんとカイさんの、コンゴウ・シンジュ両団長がそろって現れた。その少し後から、ハマレンゲさんもついてきている。

 

「……セキ、さん……」

 

「ワサビ……見てたぜ、おめえとショウの勝負。知らなかったな……まさかおめえがあのベリオロスを捕獲するばかりか、十全に使役し共に戦うことができたなんてよ。カイから聞いていたとはいえ、実際にこの目で見ても未だに信じられねえ」

 

「ベリオロスもリオレウスも、共に凄まじいポケモンだった……そんな凄いポケモンと共に戦うことが出来るなんて、二人とも本当に凄いよ。そんな二人が友達であることを、わたしは誇りに思うよ!」

 

「カイさんも……」

 

後ろにいるハマレンゲさんも含めて、バトルを見ていたのか……。バトルに夢中になりすぎて、気配とか全然わからなかった……。

 

「……先に謝っとく。ワサビ、すまなかった」

 

「え?」

 

「勝負の最中の二人の会話、全部聞こえてたのよ。……ワサビが何か思いつめたように悩み果てていることは、他の団員から聞いていた。だが、この赤い空の事態もあって、おめえ一人に時間を割いている余裕はなかった。……現実は、オレたちが思ってる以上に深刻なようだがな。

なあ、ワサビ。教えてくれよ。なにか千里眼でよくないモンでも視えたんじゃねえのか?それは誰にも言えないようなことなのか?あるいはこの赤い空と何か関係があるのか?」

 

「……ううん、この赤い空は関係ないよ。でも、アレはあまりにも恐ろしくて、悍ましいモノだった……」

 

「お、悍ましい……?」

 

カイさんが、ワサビちゃんの言葉を復唱する。一体、なにが視えたっていうの……?

 

「うん。……このヒスイ地方が、端から端まで燃やし尽くされるの。生きてるものが、何一つ存在しないかのような、一面火の海に……。ジンオウガ、グラビモス、ラギアクルス、リオレウス……そして、ベリオロス……みんな死んじゃって、山のように積み重なって……その頂点に、ソレはいたわ」

 

「ソレ、ね……いったいなんだったんだ?」

 

「わからない……姿までははっきりとは見えなかった。けど、この世を滅ぼし尽くさんとばかりの強い意思と、恐ろしさははっきりと感じられたよ……」

 

……そんな存在が、このヒスイ地方に現れる……ワサビちゃんが言っていた"どうにもならない巨大な絶望"、"救いなんて欠片もない未来"って、このことなの……?

 

「……なるほど、わかった。とりあえず、ワサビ」

 

「うん……」

 

「バカヤロウ」

 

「えっ……?」

 

セキさんは難しい顔をしながら、ワサビちゃんにそんなことを言った。いや、いきなりバカはちょっと……。

 

「ちょっと、セキ!いきなりなにを……」

 

「カイは黙っとけ。いいか、ワサビ?オレたちコンゴウ団が崇めるシンオウ様が司るものはなんだ?」

 

「……時……」

 

「そう、時だ。……時は常に移ろい、変化を続けるものだ。決して止まることはなく、また戻ることもない。生き物の如く変化を続けるものだ。それは当然、未来にだって言えることだ。

今を生きるオレたち一人ひとりの行動が、いくつもの未来を作り出している。おめえが千里眼で視る未来だって変化させることができるモンだ。未来は変わる、変えられる……そうじゃねえのか?ワサビ」

 

「あっ……!」

 

「それにな、何もおめえ一人で背負い込む必要はねえ。ここにはオレもいる、カイだっている、ハマレンゲさんだっている。なにより勝負の腕なら天下一のショウがいる!コンゴウ・シンジュ・ギンガの垣根を越え、オレたち全員とポケモンたちの力を合わせれば、どんな困難だって乗り越えられるだろ!」

 

「そうだよワサビちゃん!ベリオロスという共通点を経て、わたしはワサビちゃんと友達になれた……友達のワサビちゃんがなにか悩みを抱えているなら、わたしは力になりたい!一組織の長としては頼りないわたしかもしれないけれど、一人の友人としてわたしはワサビちゃんにもっと頼られたいよ!」

 

「ワサビさんとベリオロスの連携、実に素晴らしい!おまえさんとベリオロスは、本当に心の底から通じ合っている!なによりもベリオロスの強さを知っている者同士として、おまえさんが懸念する未来がどれほどのものか……もはや想像すらつかん!

しかし、しかしだ!あれだよ、あれ!この世には絶対なんてものはないってことだよ!セキさんの言う通り、未来は変えることができる!ならば、我々ができる最善を尽くし、来るべき未来に備えるとしようじゃないか!」

 

「……!!」

 

ワサビちゃんの目が、大きく見開かれた。……そうだね、未来は変えることができる。だって、『()()てない』から未来(・・)って言うんだもの。

 

「ワサビちゃん」

 

「ショウさん……」

 

「ワサビちゃんの懸念も、予知された未来への不安も、わかるよ。先が見えないと不安になることもあるけど、見えたら見えたで不安になることだってあるよね。……でも、大丈夫。セキさんも言ってたけど、未来はいくらだって変えることが出来るんだから。

たとえこの世の終わりのような未来が待ち受けていたって、私たちには心強い仲間と、ポケモンたちがいる!ジンオウガたちも、絶対に死なせたりなんかしない。私を信じて、ワサビちゃん」

 

「……っ!!」

 

「ずっと、一人で不安だったんだよね。でも、その不安も仲間たちと分け合おう。ワサビちゃんは、決してひとりじゃないんだから」

 

「……う、うぅ……

うわああぁあぁあああぁぁんっ!!

ああぁああぁあぁぁああああんっ!!

 

一人だけ視てしまった、絶望の未来……その不安と恐怖に押しつぶされそうになりながらも、手の届く存在だけでも守ろうとワサビちゃんは必死にもがいて足掻いていたんだ。でも、ワサビちゃんだけに何もかもを背負わせるつもりはない。みんなと一緒なら、どんな重荷だって背負っていけるんだ。

その想いを伝えると、不安から解放されたからかワサビちゃんは大声を上げて泣き始めてしまった。カイさんが膝をついてワサビちゃんを正面から抱きしめて、セキさんが後ろからワサビちゃんの頭を撫でていた。

おぉ……こうして見るとセキさんとカイさんとワサビちゃん、なんだか家族みたいだ。当然、セキさんとカイさんがふう――

 

「おっと、お前さん。それ以上は考えなさるな。……察知されたら面倒だぞ、いいね?」

 

「アッハイ」

 

そこまで考えたところで後ろからハマレンゲさんに声をかけられてしまった。……いや、確かに二人の関係を勝手に妄想してそれに気づかれたら、絶対に面倒くさいことになる。私は考えるのをやめた。

 

 

 

 

しばらくの間、泣き続けていたワサビちゃんがやっと泣き止んだ。でも、その表情は随分とスッキリしたものとなっている。……うん、いい顔になった。

 

「ショウさん、ごめんね。あたし、意地になってた……未来を見知ることができるあたしにしか、運命を変えることができないんだって、自惚れて……」

 

「ううん、それはしょうがないよ。それに、今度からは悪い未来が見えたら、みんなで解決しようね」

 

「うん!」

 

さて、と。あとはワサビちゃんからベリオロスを譲ってもらうだけなんだけど……。

 

「あの、ショウさん……」

 

「…………」

 

……うーん、よしっ!決めた!

 

「……今日は、ここに一泊しようかな」

 

「は?ここにって……この凍土にか?」

 

「え、そうですけど?」

 

「いやいや待て待て。ショウ、おめえどこで寝泊まりする気だ?カイだってメンツがあるから集落には入れてやれねぇし、ほかに寝られる場所なんて……」

 

「いや、セキさん。キッサキ神殿があるじゃないですか。あそこでいいですよ、私」

 

「マジかよ……」

 

いやいや、ほかに寝られる場所なんてないじゃないですか。だからセキさん、ドン引きしないでください、普通に傷つきますって。

 

「あ、あたしも一緒に寝る!いい?」

 

「もちろん!私の手持ちにグラビモスがいるから、彼に暖かいガスを出してもらって暖を取ろう!」

 

「やったぁ!」

 

「……あー、あの岩の竜か。アイツ、そんなことまでできんの?」

 

「ただの排熱行為ですけどね」

 

出力を限界まで絞ってガスを噴出すれば、暖房くらいにはなる……はず!そうじゃなくてもグラビモス自身が相当暖かいから、近くで寝るだけでも十分暖は取れる……ふっ、余りにも完璧な計画、自分が少しばかり怖いわ。

 

「それじゃあ、わたしは集落からお布団を持ってくるね。名目上は、ワサビちゃんへってことで」

 

「確かにそれなら筋が通る。ワサビさんもショウさんも、冷たい床石で寝なくて済むということですな」

 

「……はぁ。こりゃあ、てこでも動かねぇやつだな……しょうがない。ショウ、今夜一晩の間、ワサビのことを頼むぜ」

 

「任せてください」

 

トントン拍子に話が進み、私はキッサキ神殿で夜を明かすことが決定した。カイさんも気を遣って布団を持ってきてくれるそうなので、本当にありがたい。

カイさんとハマレンゲさんは先んじて布団の用意をしてくるために集落へと戻っていった。セキさんも、ワサビちゃんの一件が解決したことをほかの団員さんに話すために集落へ戻るそうだ。集落内でも、焦燥に駆られるワサビちゃんの身を案じる人が多数いたそうで、セキさんも度々相談を受けていたんだって。

ワサビちゃんもライドポケモンのウォーグルと一緒に、先にキッサキ神殿で待ってる、とのこと。氷山の戦場には私一人しかいない。さて、私も移動しようかな。

 

「やっと見つけました!」

 

……と、思いきや。

 

「……えーっと、ウォロさん?」

 

ぜーっ……ぜーっ……。ふぅ……いやぁ、ホント……探しましたよショウさん!一体どこにいるのやら、東奔西走してみれば……まさか純白の凍土にいらっしゃるとは!……はぁ……

 

「あの、ちょっと落ち着きません?」

 

「ですね……」

 

タイミングがいいのか悪いのか、ウォロさんが声をかけてきた。どうやら群青の海岸で別れてから、ずっと私を探し続けてくれていたらしい。……めちゃめちゃ呼吸が乱れてるじゃないですか。どれだけ探してたんですか……。

 

「……あの狼ポケモンはいないようですね」

 

「あ、あの時はジンオウガがすみませんでした。なにぶん、気まぐれな子でして」

 

「ジンオウガ……と、仰るのですか。いや、失礼!見たことも聞いたこともないポケモンでしたので、ついついっと興味が惹かれまして」

 

「あぁ……やっぱりウォロさんも知らないんですね……」

 

イチョウ商会がどこまで手を広げているのかは知らないけれど、そこに属しているウォロさんですら知らないときた。……ジンオウガ、あなたは……あなたたちは一体何者なの……?

 

「ウォロさんが私を探し続けていた、ということは……」

 

「えぇ、お察しのとおり。以前にも言いました、いい場所の情報です!ジブンが案内しますので、付いてきていただけると幸いです」

 

「……あの、ちょっとだけ待ってもらえませんか?今夜はキッサキ神殿で一夜を明かすと決めているので……」

 

ワサビちゃんとの約束もあるので、これだけは譲れない。……ワサビちゃんがベリオロスと一緒に過ごす、最後の夜になるかもしれないから。

 

「ふむ……なにやら、事情がおありのご様子。わかりました!それならジブンは、シンジュ集落の方で一泊させていただきますかね」

 

「すみませんウォロさん、お手数をおかけして……」

 

「いえいえ!群青の海岸でも言いましたが、これくらいの労力なら大したことありません。ショウさんは大切なお得意様ですからね。それでは、ジブンは集落の方へ向かいます。また明日、ここで落ち合いましょう」

 

「わかりました」

 

それでは!と言い残して踵を返すウォロさん。……さて、私もキッサキ神殿へ向かわないと。ワサビちゃんも待ってるだろうし!カミナギの笛を吹いてアヤシシに久しぶりにライドすると、私は一路神殿へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、これは面白い」

 

氷山の戦場を眼下に見て、男は呟いた。

気づけば見知らぬ土地に放り出され、己が知るソレとは全く異なるモンスター郡が跋扈するこの世界を彷徨い歩くこと幾年。あまりにも懐かしい存在を目にした男は喜色を隠せない。

 

「雷狼竜、氷牙竜……そして火竜、か。驚いたな、この狭く穏やかな世界にすら、彼らは存在できるのか。生物としての規格からして、彼らに比べればこの世界の生き物は脆弱に過ぎるというのに」

 

それが、この世界で生きてみた結果得られた男の所感だ。この世界の生物たちはお互いを無理にとって食ったりはしない。なんなら、きのみを食って腹を満たす個体だっているほどだ。血肉を喰らわずとも生きていけるなど、『あの世界』を知る者としては生温いと言う他ない。

 

「なによりも、彼らがああも人間に対して従順になるとは……やはり、この世界の在り方そのものが、この世界に生きるものらに何かしらの影響を与えているのか?あのようなボール一つで捕獲できてしまうとは、この世界の技術力は凄まじい……我々では、決して得られぬものだろう」

 

男はモンスターボールに強く興味を惹かれている。使っている人間は極僅かなようだが、それ一つで生物を収納・運搬・解放できるという点は、男にとって全くの未知の技術であるからだ。そして、そんなボールを使って竜を使役する少女たちの姿は、男の記憶に強く焼き付いている。

 

「ふっふっふ……急げ、少女よ。終わりは刻一刻と迫っている。その終わりが、この赤い色の空によるものか、あるいは別の……。なんにせよ、全てはひとりの少女の両肩に託されたわけだ。これからも彼女のことを、見守ってみるとしよう。

ふむ……狩人(ハンター)でもなく、騎手(ライダー)でもない……さしずめ、使役者(トレーナー)と言ったところか」

 

男はその身に纏った赤い衣を翻して立ち去っていった。

 

 

 

 

 




やっと終わった氷牙竜編……。
これもう(ショウちゃんとワサビちゃん、どっちが主人公なのか)わかんねえな。
次からいよいよ原作合流です!








最後の登場人物をどのように捉えるかは、あなた次第……


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【つくってあそぼ】我らモンハン部異世界支部【あかいくさり】

ここからようやく、原作が動き出す……が……

どうしたことか!ショウちゃんサイドが濃くなるほどに、掲示板サイドが薄くなる……けど、掲示板サイドで喋りすぎるとショウちゃんサイドで二度手間になるし……ぐぬぬ


1:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おいばかやめろ

 

2:空の王者 ID:MH2nddosHr8

スレタイからすでに喧嘩を売りに行くスタイル

 

3:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いやなんでだよ、誰だこんなスレタイつけた奴!

 

4:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

 

5:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺に負けたのが悔しかったからってここで八つ当たりすな

 

6:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やっぱタイプ相性はどうにもならんって、しょうがないよ剣介

 

7:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それもあるが、一番はワサビちゃんの期待に応えられんかった俺自身が許せん

 

8:空の王者 ID:MH2nddosHr8

やっぱり八つ当たりじゃあねえか!

 

9:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、でも実際かっこよかったぜ?あんとき、だいもんじ食らった時点でもう瀕死状態だったろ?

 

10:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まぁ、ゲーム的に言えばHPは0だったんだがな……ワサビちゃんに呼ばれた瞬間、自分でも驚くくらいしっかりと立ち上がれたわ

トレーナーの存在って偉大

 

11:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

というか、そこからの流れが完全にラスボスよりえげつなくて草も生えんかったんだが

 

12:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ラスボス

手持ち六匹

→禁断の七匹目

→突然の変身(実質回復)

 

ワサビちゃん

手持ち六匹

→禁断の七匹目

→突然の回復(一回目)

→容赦ない回復(二回目)

→無慈悲な回復(三回目)

 

13:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ゲームで同じ展開されたら普通に勝てる気がしないんだが

 

14:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺もゲームじゃないのに戦闘中にアイテム盛られてめっちゃ驚いたんだが

おかげで長く継戦できたけどな!

……まぁ、塗り薬だったことを加味してもまさか直接投げつけられるとは思わなかったが

 

15:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんで勝てたんだ焔……

 

16:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そこはそれ、「禁断の七匹目」は前半は光輝が戦ってくれたし、あとはショウちゃんの采配によるものよ

いやぁ、ショウちゃんもバトルの天才だね!親は絶対にトレーナーと見た

 

17:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、身内にDPt主人公がいる時点で才能は保証されたようなものだが

 

18:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

DPt主人公か……どんな人物なんだろうな

 

19:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ショウちゃんのバトルの腕を見るに、間違いなくバトルは強いと思われ

特にモンハンモンスター同士のバトル……完全初見で弱点なんてわからんのに、相手が使う技や容姿などからくるイメージ、あとは実際に技を食らわせてからの反応を見るあたりとかマジもんのバトルマニアかと思ったわ

 

20:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、光輝のジンオウガを除くと、大抵は見た目でドラゴンタイプって想像つきやすいしな

あとはあれだ、肉質の相性に気づいたときは俺も震えたわ

 

21:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺らの中から選出するときも、タイプ相性と肉質相性両方とも完璧な選出だったよな

 

22:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さすがに剣介とのバトルの時は、機動力重視で俺が選ばれたけどな

 

23:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

吹雪の中でベリオロスと一騎打ちとかグラビやラギアじゃ無理だって、普通に動きについていけん

 

24:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

迅速の騎士とも呼ばれるベリオロスだからな、海戦特化のラギアはもとより、重量級のグラビも結果は目に見えている

 

25:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ところでさ、このあとの予定はどうなってる?

誰か確認ヨロシク

 

26:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

とりあえず、今はウォロの案内で古の隠れ里に移動中だな

その前にキッサキ神殿で一夜を明かしたあと、改めてワサビちゃんから剣介を託された後に氷山の戦場へ移動、そこでウォロと合流した

それから、古の隠れ里に移動開始して、今に至るって感じだ

 

27:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……あ、そういえば寝る前にショウちゃんとワサビちゃんが話をしてたな

その時に確か、ショウちゃんのお母さんについて触れていたと思う

 

28:空の王者 ID:MH2nddosHr8

どんな人かって言ってた?

 

29:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それ以前になんでそんなこと知ってんの?

 

30:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……「乙~」ってスレから落ちた後、ショウちゃんから呼び出し食らってな……暖房代わりにされてた

そんで、たまたま話を聞いちゃったわけよ

 

31:空の王者 ID:MH2nddosHr8

で、どんな人って?

 

32:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……えーっと……とりあえずバトル好きってことはわかった

あと、ショウちゃんが小さい頃はよく散歩に連れて行ってもらってたんだってさ

 

33:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おぉ~、普通にいい母親じゃん

 

34:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……なんか、すっげぇ不穏な気配がするんだが気のせいか?

 

35:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

きっ!気のせいでございますですとのことでありんすだどもぉ!?

 

36:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

全然気のせいじゃなくて草

 

37:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まあいいや、そのへんは後で全部ゲロってもらうから

……おっ?なんだなんだウォロてめぇ、俺に乗りてぇってか?ぶっ飛ばすぞぉ?

 

38:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、ここから古の隠れ里まで徒歩で移動は普通にしんどいぞ?ゲームだと一瞬だったが、現実だと数日もかかる距離だからな?

 

39:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ほら、ショウちゃんも光輝を出す気マンマンだぞ?もうすでにボール構えてるし

 

40:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ちっ、野郎を乗せる趣味はねぇが、ほかならぬショウちゃんの頼みだし……引き受けるかね

 

41:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

むっちゃ嫌がってるww

……あーあ、ほら怒られた

 

42:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あのねショウちゃん、テルくんは別なんよ、俺はテルショウ派だからむしろテルくんバッチこい!だったのよ

ウォロとかいう創造神狂信ケモナーは論外

 

43:空の王者 ID:MH2nddosHr8

はぁ?テルショウ?目ん玉腐ってんのかセキショウ一択だろうがJK

 

44:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ウォロショウの何が悪いってんだ、しばくぞ

 

45:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

は?

 

46:空の王者 ID:MH2nddosHr8

は?

 

47:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

は?

 

48:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……なるほど、殺ろうってんだな?

 

49:空の王者 ID:MH2nddosHr8

喧嘩売ってんのか?言い値で買うぞ?

 

50:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

リベンジマッチ大歓迎だが?

 

51:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やめろやめろ、不毛極まりない

 

52:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

前世から変わらんなこいつらwwショウちゃんのCPの話になると毎回これだわ

 

53:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

はいはい、光輝は移動に集中!焔と剣介は光輝の邪魔をするな!

どのみちコギト姐に会わなきゃ話が進まねぇんだから、とっとと移動しろ!

 

54:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

(´・ω・)ハーイ……

 

55:空の王者 ID:MH2nddosHr8

(´・ω・)ハーイ……

 

56:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

(´・ω・)ハーイ……

 

57:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

( ゚∀゚)ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \wwwwww

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

263:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

着いたー……と、同時に戻されたー

 

264:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

わかってるなショウちゃん、俺たちは一般人にはおいそれと見せてはいけないポケモンだと

 

265:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おぉ、コギトネキだ……相変わらず、シロナソックリだこと

 

266:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ふむ、まずは一通り説明は受けないとね……情報収集は大事

 

267:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

しっかし、コギトば……もといコギト姐さんもたいへんだ、先祖代々の言い伝えのせいでヒスイ地方に強制永住だもんな

 

268:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それな

 

269:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ふむふむ、三つの湖を巡って素材を貰って、霧の遺跡へGO!……よかった、原作と何ら変わりはないな

 

270:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……ところでショウちゃん、その乗り気じゃない顔をするのはやめないか?

 

271:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

時間と空間の均衡が崩れる事態を防ぐ使命を託された時空の迷い人って言われた時のショウちゃんの顔ときたら

 

272:空の王者 ID:MH2nddosHr8

筆舌に尽くしがたいほどに微妙な表情になってたな……「そんなこと言われても」と言わんばかりの

 

273:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

しょうがねぇ、ショウちゃんは最悪、時空の裂け目をほっぽって帰る気満々だからな

 

274:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふぅむ……だが、時空の裂け目に関する情報は欲しいのか庵の中には入っていったな

 

275:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……改めて説明を聞いたが、時空の裂け目が繋がった「いくつもの時空」の中に「モンハンの世界」があった可能性が高くなったな

 

276:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まぁ、そうじゃないと創造神が俺らのボディになったモンスターたちを連れてこれるはずもないだろうしな

 

277:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そうかもしれんが、逆に危険なモンスターが迷い込む可能性もあったわけだ

 

278:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ジョーさんとかティガとか、あと……ディアブロとかラージャンあたりか、あの辺は本当に見境ないからなぁ……

 

279:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ジョーさんやラージャンなんて来た日には、目に付くポケモンに手当たり次第に襲いかかって生態系が完全崩壊するぞ

 

280:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そこは創造神による熟考の末の選択にナイス、と伝えておこう

 

281:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おっ、使命を伝えられ始めたぞ

 

282:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

アグノム、ユクシー、エムリットの三匹から素材を貰って「あかいくさり」を作成するんだったな

 

283:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

報酬金は?

 

284:空の王者 ID:MH2nddosHr8

時間は?

 

285:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

サブターゲットは?

 

286:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

落ち着けハンターども

 

287:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

俺太刀しか使えんのだがガンナーか狩猟笛って誰かおる?

 

288:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

光輝、お前もか

 

289:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁ冗談はさておき……ショウちゃん、やるやらないはともかくそこはせめて即答してあげて

 

290:空の王者 ID:MH2nddosHr8

むっちゃ悩むやん、俺らが駄弁ってる間もずっと黙って考え込んでだな

 

291:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

今のショウちゃんならやむなしだろ、むしろ「いやです」って言われんだけマシなほうよ

 

292:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

原作の選択肢は「やります」と「無理です……」の二択だが、ショウちゃんには「いやです」という第三の選択肢もあるからな

 

293:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ふぅ、悩みに悩んで出た答えが「やれというならやりますが」

 

294:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

全っ然やる気なくて草

 

295:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そら(勝手に連れてこられて理不尽に追放されて一方的に使命を与えられたら)そう(言いたくもなる)よ

 

296:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……だが、今のショウちゃんなら大丈夫だ、むしろそれくらいの皮肉は言ってやってもいいと思う

 

297:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ちゃんと「冗談ですよ」って言えるあたり、これまでの出会いで心境に変化が表れたってことでいいよな?

 

298:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おkおk……っと、そとからケーシィの声が

 

299:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

シマボシ隊長のサポート来た!これで勝つる!!

 

300:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ここって一応、隠れ里なんだよな?原作ではアルフォンでのワープからでしかこれないってレベルの

なのにケーシィがこんなところに来られるって……それってやっぱり、隊長は最初っから最後まで全部相棒を通して見てたってことじゃないですかヤダー!

 

301:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

こんなめちゃくちゃいい人の子孫があんななんだよな

 

302:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ついでにいうと無能団長の子孫もあんなだぞ

 

303:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あの祖先にしてこの子孫あり……と、ならなくてよかったわ

 

304:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……あぁ、ショウちゃん泣いちゃったな

 

305:空の王者 ID:MH2nddosHr8

隊長ってほんとにいい人だよな……子孫はどうしてああなっちゃったんだ

 

306:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

親の教育

 

307:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

百点満点の答えやめろ

 

308:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

隣のウォロがいい笑顔なんだが既に胡散臭い

 

309:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

カイちゃんとセキニキも来た

 

400:空の王者 ID:MH2nddosHr8

「隠れ里」とは一体……一回「隠れる」って単語を調べて来い

 

401:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

たしかにこんなに人が来てたら隠れているとは言えんなぁ

 

402:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……あれ、セキニキのセリフ、なんか違くね?

 

403:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

たしかに……「オレにするよな」って言うところだが、意味深な沈黙……

 

404:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……セキニキ、その意味深な横目はなんすか?なんでカイちゃんを見てるんすか?

 

405:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ショウちゃんもなんかセキニキの目を見て頷いて……あ、カイちゃん選んだ

 

406:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おぉ、カイちゃんってばすっごい嬉しそうだな、満面の笑みでウンウン頷いて……

ただ……

 

407:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ショウちゃん、目ぇ逸らしてるw

 

408:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

この世界線のカイちゃん、思った以上にメンヘラが厄介になってるんだが

 

409:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そりゃあ、友達の一人がムラを追放された挙句一時消息不明になるわ、もう一人の友達が悩み苦しんでるのになんの力にもなれなくてただ見ているだけとか……

 

500:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あー……それは、重症化するか

 

501:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

セキニキもそれを察してて、カイちゃんを選ぶようにショウちゃんに目で訴えたんだな

 

502:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……さて、セキニキがデンボクの見張り、カイちゃんとウォロは一足先にエイチ湖に行くみたいだな

 

503:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

このメイン任務、ゲームでは順不同だったからどうなるかと思ったが……選ばれたのがカイちゃんだからか、シンジュ団の地元の純白の凍土が先になったみたいだな

 

504:空の王者 ID:MH2nddosHr8

すると、セキニキだった場合はリッシ湖だったわけか……違和感なく、しかしゲームのように進めるにはある程度の強制力は是非もなし

 

505:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それじゃあ、二人も先に行ったんで俺たちも……ん?

 

506:空の王者 ID:MH2nddosHr8

お?

 

507:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あ?

 

508:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なんだ、急に……コギト姐がでてきて……?

 

509:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

「そなた、変わったものを連れておるな?」……だと……!?

 

510:空の王者 ID:MH2nddosHr8

バレテーラ

 

511:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、コギトさん「はよう見せんか」じゃなくてですね、見世物とちゃうんですって

……あああああ、ショウちゃん頑張ってコギトさんの圧に負けないで!

 

512:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ダメみたいですね

 

513:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うえぇぇ……出てきた瞬間からベタベタと触ってくるぅ……

 

514:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あー……この流れは全員を見るまで終われんやつだな……

 

515:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

えぇ……それじゃあ次は俺じゃん、こわいなーとづまりすとこ

 

516:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なお、こちらから開けられても閉めることはできない模様

 

517:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はぁ~……やっと終わった

はい、じゃあ次は剛太の番ね

 

518:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんだこの健康診断みたいな流れ……おい、さするな!くすぐったい!

 

519:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それじゃあ、俺らは順番待ちしてますねー

 

520:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お待ちのお客様はこちらにお並びくださ~い

 

521:空の王者 ID:MH2nddosHr8

(*≧∇≦)ノ は~ぃ♪

 

522:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

(*≧∇≦)ノ は~ぃ♪

 

523:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

バカばっか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

783:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あ"ー……疲れた……

 

784:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お疲れーい

 

785:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

マジで疲れるよな……

 

786:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ホンマそれ……

 

787:空の王者 ID:MH2nddosHr8

じっとしているだけでこんなに疲れることは後にも先にもこれっきり……だと思いたい

 

788:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まさかコギトさんに初見でバレるとは思わなかったな……

 

789:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ラブなコピペに見られとったんだろうか……

 

790:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それはともかく……コギトさんが想像の云百倍もはしゃいでたのは意外だった

 

791:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

テンションが爆上がりしてたな……だから疲れたんだが

 

792:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

喜々として考察を述べられる間の恥ずかしさったら

 

793:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ショウちゃんが俺らのことをまとめた図鑑も、しっかり目を通していたな……ただ、ひとつだけ気になることがあった

 

794:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

流静も気づいたか?

 

795:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あぁ

 

796:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それって、もしかしてアレか?コギトネキが俺らのことを終始「ポケモン」じゃなくて「ケモノ」って呼んでたこと?

 

797:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

正確には「異形のケモノ」

 

798:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

暗にポケモンじゃねえって言われてらー

 

799:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

実際、先祖代々から話を聞いていたコギトさんでさえ、「見たことも聞いたこともない」と来たからな……ますます、俺らが「ポケモンじゃない説」が濃厚になってきたってわけだ

 

800:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……「異形のケモノについてもっと調べよ」……か、なにげにコギトネキも気になってんじゃん

 

801:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

美人に興味を持たれるのは、人間辞めてもいいもんだ

 

802:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……ショウちゃんはずっと難しい顔をしたままだったが

 

803:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ショウちゃんも薄々感づき始めてんじゃあねえの?

未来の時代を生きた自分でさえ知り得なければ、当時の時代を生きる人ですら知らねぇポケモン……そんなやつ、本当にポケモンなのか?……くらいにはさ

 

804:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁ、「生物としての格が違いすぎる」なんて言われたらな

 

805:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だが、俺ら一匹を確実に倒すのに伝ポケ一匹は不可欠……と判断されたのは自慢しても良いのでは?

 

806:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

流石に創造神相手には歯が立たんけどな

 

807:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

アレは規格外だからなぁ……あと、ディアパルも能力をフル活用されたら流石に厳しい

それと、創造神は一応だが幻ポケ枠だからな?

 

808:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おっとそうだった、失礼

 

809:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……おっ、焔、出番だぞ

 

810:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あいよー、ショウちゃん!俺の背中に乗っていきな!

……コギトネキ、隠してるつもりなんだろうが顔に思いっ切り「乗りたい!」って書いてんぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1002:空の王者 ID:MH2nddosHr8

とうちゃーく、そしてもどーる

 

1003:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

乙、こっからはアヤシシライドで移動か

 

1004:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ウォロにお前らを見られるわけにはいかんからな

 

1005:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

エイチ湖ってなにがおるんだっけ?

 

1006:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

たしかオヤブンゾロアーク

 

1007:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そうだった、ここで捕らねぇとランダム出現で探す羽目になるんだよな

 

1008:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さて、アルフォンの力で入口できたし、早速中へGO

 

1009:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……は?

 

1010:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

え……?

 

1011:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なん……だと……?

 

812:空の王者 ID:MH2nddosHr8

マジで……?

 

813:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ウソだろ……?

 

814:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんで……

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでここにゴシャハギがいるんだよ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1415:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

…………

 

1416:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

…………

 

1417:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

…………

 

1418:空の王者 ID:MH2nddosHr8

…………

 

1419:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……おい、なんだこのお通夜ムードは

 

1420:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、お通夜っつーか、うーん……

 

1421:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……一度に考えなきゃならんことが複数出てきて、情報整理が滞っているだけだ

 

1422:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まさか、オヤブンポケモンに成り代わってあいつらがいるとは……

 

1423:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

シンジ湖での戦いは見ていて生きた心地がしなかったぞ……よく勝てたな、本当に

 

1424:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

加えて、アレだぜ?洞窟内は狭すぎて俺らを出すことができないって制約下でのバトルだぜ?

 

1425:空の王者 ID:MH2nddosHr8

最大金冠が仇になるとはな……なんにせよ、「あかいくさり」が完成して良かった

 

1426:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……だが、問題も発生した

 

1427:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ、順を追って整理しよう

 

 

まず一つ、時空の裂け目から繋がる時空の中に「モンハンの世界」が存在するのは確定した

 

1428:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まぁ、そうじゃなきゃあいつらがこの世界にいるはずがないからな……

 

1429:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そしてもう一つ……赤衣の男がいた

 

1430:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ミッラバッルカン!ミッラバッルカン!

 

1431:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

笑えねぇわ、ホンマ……なんであいついるんだよ、ミラフラグ立つやろがい

 

1432:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

何が現れても地獄行き……赤衣の男と禁忌モンスは切っても切れない

奴がこの世界にいる以上、禁忌モンスの襲来は覚悟しなければならない

 

1433:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

オリジナル創造神が全力の対応に出るのも納得できる……そりゃあ、禁忌モンスなんて能力はともかく素の馬力は伝ポケ何体集めたらいいんだ

 

1434:空の王者 ID:MH2nddosHr8

きょだいポケモンよりも巨大且つ世界を滅ぼしうる力を持ったモンスターだぞ……ポケモン側は能力をフルで使わんと、素の殴り合いじゃあ勝ち目がないぞ……?

 

1435:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

向こうが必ずしもこっちと同じ土俵に立つとは限らんしな……

 

1436:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……最悪、二度目の死も覚悟しとかないとな

 

1437:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あぁ……この命を捨ててでも、ヒスイ地方とそこに住む人間たちは守らねば

 

1438:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おそらくはまだまだ先のことだろうが……常に念頭には置いておかないとな

 

1439:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺らも強くならないかん

 

1440:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

何が来るかわからんし、戦い方は常にシミュレートしないとな

 

1441:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

このあとはいよいよテンガン山……原作ストーリーのクライマックスだな

 

1442:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まだ前半だがな

 

1443:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

その後のプレート集め&対ウォロ戦についても、ショウちゃんと相棒たちにはもっともっと強くなってもらわんと!

 

1444:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺たちにできることは全部やる……それくらいはしないと、禁忌モンスとは戦えないだろう

 

1445:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……せめて、光輝と焔が二つ名個体になれたら……

 

1446:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ないものねだりはしない……今ある手札で出来ることを最大限に、だ

 

1447:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それじゃあ、その時が来るまで……各々、自分磨きとショウちゃん達の特訓に励むように

 

1448:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

了解

 

1449:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おう!

 

1450:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

わかった

 

1451:空の王者 ID:MH2nddosHr8

オッケィ

 

1452:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

よし……本日のスレは終わり!閉廷!

……たしかイベントの流れでムラに一時帰還するシーンがあった気がするが、ショウちゃんは大丈夫かね……

 

 

 

 




徐々に忍び寄る崩壊の足音……それは原作の物語か、あるいは世界そのものか
そして湖の洞窟に現れたモンスターとは……


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湖の三試練 迫る異形の影

ここからショウちゃんサイドが長丁場に……頑張るしかねぇなあ!


夜のキッサキ神殿はとにかく寒い。ただでさえ寒い純白の凍土に石造りの建物だ……その寒さたるや、一般の冬の比ではない。とてもではないが、寝られるような場所じゃあないだろう……けれど、今回ばかりは例外だ。

まず、布団がある。キッサキ神殿で寝るワサビちゃんに、という名目でカイさんが持ってきてくれたのだ。二人分の布団を一人分に偽装していたあたり、妙に徹底している。

そしてなにより……最強の暖房の存在が一番大きい。言うまでもなくグラビモスだ。

以前にも話したと思うけど、グラビモスは熱を体内に溜め込む習性がある。その関係でグラビモスの体温は常に高く、触れるだけに及ばずそばにいるだけでとても暖かいのだ。ふたり分の布団を並べて敷いたあと、グラビモスをボールから出す。ちょうど寝ようとしていたのか、出てきたグラビモスは大あくびをしていた。

 

「グラビモス、火炎ガスを超最低出力で噴出したりできる?」

 

「ヴァ!?」

 

「……やっぱり難しいかな」

 

「ヴラアァッ!!」

 

最初は面食らった様子のグラビモスだけど、「無理そうならそばにいるだけでいいよ」と言おうとしたところで「できらぁ!!」とばかりに自信満々に吠えた。そして……グラビモスの腹部から、そよ風程度の暖かい空気が流れてきた。

 

「ありがとう。……できれば、起きるまでそのままでお願い」

 

「ヴァー」

 

結構無理を言ってる自覚はあるけれど、グラビモスはのんびり返事をするとそのまま寝転がった。ガスを出したまま寝るなんて、随分と器用な……けど、おかげでこっちは大助かりだ。

 

「それじゃあ寝よっか、ワサビちゃん」

 

「うん」

 

二人で揃って布団に入る。……ワサビちゃんは、ベリオロスが入ったボールを手に持ったまま布団の中に。そういえば……。

 

「ところで、どうしてベリオロスだけをボールに?ドサイドンたちとはやっぱり多少は扱いが違うの?」

 

「……もしあたしがショウさんに勝ったら、ドサイドンたちもボールに入れるつもりだったよ。それから、各地を回って千里眼で見た内容を話して回るつもりだった。……その時が来たら、みんなで逃げるために」

 

「え、逃げる……?立ち向かうとか、対策をするとかじゃなくて……?」

 

「……ああ言ってくれたセキさんの手前、言い出せなかったんだけど……正直、アレを前にして勝てる気なんて全然しなかったよ。むしろ挑んだところで簡単に返り討ちにされて、あっさり殺されちゃうと思う。だから、ヒスイ地方を捨ててでもみんなで逃げたほうがいいって思ったの。……説得できるとも、思ってなかったんだけどね」

 

「……それじゃあ、逃げる時にポケモンたちを運び出すためにボールを?」

 

「うん。ボールに入れてしまえば、船とか乗り物に乗るのはあたしたち人間だけで済むし……というか、ボールに入れないと船が沈んじゃう子達もいるから……」

 

「あー……」

 

ワサビちゃんの相棒だと、ドサイドンとかエレキブルとかブーバーン、あとルカリオとかかな……特にドサイドン。確かにそういうことなら、モンスターボールは便利な道具、というわけだ。

……それにしても、「逃げる」か……。今の私には充分当てはまる言葉だな……。私の当面の目標は元の世界に帰ること……最悪の場合、この状況を放置してでも帰ろうとするかも知れない。同じ「逃げ」を選択したワサビちゃんとは、まるで意味合いが違う……私のソレは文字通りの意味での「逃げ」だからだ。ワサビちゃんのような、意味のある行動なんかじゃない……。

 

「……それにしても、ワサビちゃんの千里眼ってすごいね。ワサビちゃんのご両親にも視えていたのかな?」

 

「んー……わかんない、お父さんもお母さんもそんな話は一度もしなかったから……普通の人だったんじゃないかな?ショウさんは?」

 

「え?」

 

「ショウさんのお父さんとお母さんはどんな人?ショウさんって、ポケモン戦わせるの上手でしょ?親の人に教えてもらったのかなって」

 

……そういえば、久しく両親について考えてなかったな……お父さん、お母さん……。

 

「お父さんは……普通だよ。のんびりしているところもあるけど意外としっかり者でね、ポケモン勝負も強かったよ」

 

「そうなんだ」

 

「うん。最初のポケモンで能力を高めたり場を整えたりしてから交代して、次のポケモンに状況を繋ぐ戦い方……ハマるとめちゃめちゃ強かったなぁ……」

 

お父さんはなんていうか、好々爺もかくやとばかりにニコニコしてる優しい人なんだけど……バトルになると初手ポケモンで積み技連発してバトンタッチしたり、天気を変えたりステロやどくびし撒いた後、技で強制交代させてきたり……思わず叫びたくなるような戦術ばかりで本当に強かった……天冠の山麓では、そんなお父さんを思い出す機会が多かったな。

みがまもギロチンポイヒグライオン……うっ、頭が……!

 

「へぇ~……それじゃあ、お母さんはどんな人だったの?」

 

「BATTLE & DESTROY」

 

「なんて?」

 

「ポケモン勝負がとにかく好きな人だったなぁって」

 

「そうなんだ」

 

危なかった……危うく私自身が感じた本音が漏れるところだった。

お母さんのバトルセンスはずば抜けているを通り越してもはや別次元だ。「相手の技選択見てから技選択余裕でした」なんてザラだし、なんならこっちの思考を読んだかのようにポケモン交代で受け出ししたり技を打ってきたり、身代わりして守って積んで毒撒いて身代わりして守って積んで毒撒いて威張って電磁波して身代わりしてイカサマして威張って電磁波して身代わりしてイカサマして胞子撒いて身代わりしてポイヒ回復して胞子撒いて身代わりしてポイヒ回復して、おうじゃのしるしでてんめぐエアスラBANBANBAN……もはや「何と戦っているのかわからない」ような、奇妙な感覚を覚えたほどだ。……当時のチャンピオン、こんな挑戦者と戦っててどんな気分だったんだろうか……。

 

「ショウさんのご両親、やっぱり強いんだ……ショウさんがあんなにも強いんだから、当然だよね」

 

「流石に人に嫌われるほどの強さはいらないなぁ」

 

「え」

 

「なんでもないよ」

 

「でもさっき――」

 

「なんでもないよ……いいね?」

 

「アッハイ」

 

ダメだ、お母さんのことを思い出すと凄惨なバトルフィールドが一番に出てきてしまう。倒れ伏す挑戦者のポケモン……一匹も倒されていないお母さんのポケモン……しかもお母さんはバトルに関しては純粋だから、悪意なくダメ出しするし、そのせいで挑戦者泣かせるし……いや、うん、変わってるなぁとは思ってたんだけど、改めて考えてもお母さんって変人だ。ポケモン系サヴァン症候群、みたいな。

でも、そんなお母さんに初めて土をつけたのがお父さんで、だから二人はバトルを通じて交流を深めて交際して結婚して……お母さんの幼馴染のせっかちなおじさん、ごめんなさい。「バトルが二人の馴れ初め」って言葉を疑ってすみませんでした。今ならわかる、おじさんが二人の関係を「なんだってんだよー!」って愚痴ってた気持ちが。

 

「……会いたいなぁ、二人に」

 

「……時空の裂け目を通ったら、ショウさんが住んでた世界に帰れるのかな?」

 

「わからない……けど、それを確かめるためにも、私は時空の裂け目を目指さなきゃならないの。帰れるなら、それで良し。ダメだったら……」

 

「ダメだったら?」

 

「……わから、ない。どうすればいいんだろう……どこにも居場所がない私は、どこで生きたらいいんだろう……」

 

「ショウさん……」

 

「……なんてね。今は全然大丈夫……だって、ジンオウガたちやダイケンキたちがいるんだもの。彼らがそばにいてくれるなら、私はどこでだって生きられる。決して野垂れ死になんてしないよ」

 

「ヴァッヴァヴーラ」

 

「ありがとう、グラビモス」

 

グラビモスだって「そりゃそうだ」と言いたげにウンウンと頷いている。グラビモスやゴウカザルがいれば寒冷地だってへっちゃらだし、暑いところでもダイケンキやベリオロスがいてくれれば問題ない。……なんだ、私ってポケモンさえいればどんなところでも生きられそうだ。

どっかの番組で「ポケモンと無人島生活」なんてやってたけど、ポケモンがいるからむしろ余計に快適になって生放送中に企画倒れになったコーナーがあったなぁ……「冷気も炎も電撃も、拳一つでなんでもござれ!かくとうポケモン万能説」……あれは面白かった、無人島0円生活とは一体……。

 

「ポケモンってすごい(小並感)」

 

「すごいといえば……ベリオロスたちの勝負、かっこよかったね」

 

「うん、それはそう」

 

「ヴヴヴ……」

 

あ、グラビモスがちょっと不機嫌に……まぁ、グラビモスは見た目も相まってどうしても素早さが低いだろうから、まともに立ち回れる相手が限られちゃうんだよなぁ……。リオレウスの時のような、不意打ちとして繰り出して先手を打てたら話は別だけど。

 

「大丈夫だよ、グラビモス。いつかきっと、あなたの力が必要になるときが来るから。その時まで、我慢してて?」

 

「ヴァ!」

 

「ふふふ……素直でイイ子だね、グラビモス。ベリオロスもね、ちょっと意地悪なところもあるけど、根は素直でイイ子なんだよ」

 

「そうなの?」

 

「うん。結構前に、背中に乗りたくて忍び寄ったりしたんだけど全部逃げられちゃって……悔しかったから千里眼で未来を見たら、泣き落ししたら乗せてくれるって出たから、泣いてみたんだけど、本当に乗せてくれたの」

 

「えぇ……。でも、泣いてたらちゃんと乗せてくれるあたり、やっぱりいいポケモンだねベリオロス」

 

「でしょ!」

 

……こうして見ると、なんだかリオレウスだけが悪者みたいに感じてちょっと嫌だな……。キングを不意打ちしたり、私たちに襲いかかってきたり、野盗三姉妹を手に掛けようとしたり……でも、おかげで私は人を信じたい私自身を再認識できたし、改めてジンオウガたちのような存在がどれだけ恐ろしく危険な存在なのかを知ることができた。そういう意味では、リオレウスのあの襲撃はむしろありがたいことだ。

ならば、私は改めて己に課せられた責任を自覚するべきだ。あれほどに恐ろしく強力且つ巨大なポケモンを既に四匹集めていて、この上さらにもう一匹加わるのだ。彼らの力をしっかりと御すること、そしてその使い方を誤らないこと……責任は重大だが、私は不思議と間違える気はしなかった。いや、絶対に間違えないという自信がある。

あの雨の日に、ジンオウガに助けてもらった時から、ずっと。

 

「……ジンオウガもね、とびっきり優しいんだよ。ムラを追放されて、行く当てがなくて雨の日に泣いてた私を、助けてくれたんだ。巣に連れ帰って、雨宿りさせてくれた。ご飯だって獲ってきてくれて、ヒスイ地方に来たばかりの頃の私の思いや願いも思い出させてくれたし、私が寝てから起きるまでずっと寝ずの番までしてくれた……感謝してもしきれないよ、本当に」

 

あの出会いがなければ、今の私はいなかった……いや、最悪の場合、どこかで野垂れ死にしていたかもしれない。ウォロさんは私を探していたようだったけど……もしかしたら、たまたまウォロさんよりも先にジンオウガに出会えただけかもしれない。だけど、でも……不思議と、確信してるんだ……ウォロさんと(・・・・・・)先に出会っていたら(・・・・・・・・・)ジンオウガたちとは(・・・・・・・・・)絶対に(・・・)出会えなかった(・・・・・・・)だろう(・・・)、と。

 

「……ワサビちゃん?」

 

「スゥー……スゥー……」

 

「寝ちゃったか」

 

大事そうにボールを抱いたまま、ワサビちゃんは静かに眠っている。……ワサビちゃんのベリオロスへの思いは、並々ならぬものだった。きっと、私がジンオウガたちに抱いている思いと同じか、それ以上に。

 

「ヴァ」

 

「ん、私ももう寝るよ。グラビモスもお休み」

 

「ヴ」

 

私も目を閉じて、眠る態勢に入る。こうして目を閉じると、ジンオウガたちとの出会いが鮮明に思い出せる。決して色褪せることのない、確かな思い出の一つとして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確認!

 

名が負傷!壁が破壊されています!

 

撃龍槍は使えるか!?」

 

動作確認をます!今しばらく時を!!」

 

調査団の本隊、到着しました!」

 

「うむ……二人の力あってこそ、時を稼げた。

らが希望を繋いだのだ……死なせてはならん!

猶予はずかだ!急げ!!」

 

「「はい!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと意識が浮上してきて、目が覚めた。私は体を起こして、すぐ後ろにいるグラビモスの方へと振り返る。目を閉じていたグラビモスだけど、私の起床を感知したのかパチリ、と目を開けた。

 

「おはよう、グラビモス」

 

「ヴァヴァー」

 

うん、と伸びをする。……なにか、不思議な夢を見たような気がしたけど、よく思い出せないや……まぁ、夢の内容って思い出せないことが大半だし、変ではないか。

 

「ふわぁ……」

 

「おはよう、ワサビちゃん」

 

「ぉあよぅ……」

 

あらら、ワサビちゃんはまだまだおねむみたい。寝ぼけ眼で頭が右へ左へフラフラと……ついでにコックリコックリと船を漕いでいる。ワサビちゃんって、朝に弱いのかな?

手に持っていたボールがこぼれ落ちて、コロコロ転がってからポン!と音とともに中からベリオロスが出てきた。

 

「ガオ?」

 

「ふわ……あ!ベリオロス!」

 

「ガ」

 

と、さっきまで半分は寝ていたワサビちゃんの意識が一瞬で覚醒した。しかも勢いそのままにベリオロスの顔面にしがみつく。顔にくっつかれたせいか、ベリオロスも動けなくなってしまった。

 

「ヴァッハッハッ!」

 

「ガオウッ!?」

 

「ヴァウ、ヴァヴヴ」

 

「ガウー……」

 

そんなベリオロスを見たグラビモスが愉快気に笑うと、ベリオロスも「なんだテメェ!」とばかりに睨みつける。けれど、グラビモスが顔にひっついているワサビちゃんを示すように首を動かすと、ベリオロスは不承不承とばかりにおとなしくなった。

やっぱり彼らはお互いに生息地が異なれども、ある程度の面識はあるみたい。……けど、一体どこで出会ったんだろう?彼らが人目を忍んで一堂に会することができそうな場所なんてどこにもなさそうだけど……。

 

「おはよう、ベリオロス」

 

「ガオ」

 

「……今日から、あなたはショウさんと一緒に行っちゃうんだよね……なんだか、寂しくなるね」

 

「ガオガオ」コクコク

 

「ベリオロスも、寂しいの?」

 

「ガオ」コクリ

 

「……えへへ、そっか!」

 

ボールに入ってようが入ってなかろうが、ワサビちゃんとベリオロスの関係は変わらずのままだ。確かにこれなら、コンゴウ団やシンジュ団の人たちがボールを使わない乃至は使いたがらないのもよくわかる。ボールがなくても、ポケモンとの絆を深めることはできるんだ、と。

ワサビちゃんはベリオロスをボールに戻すと、そのまま私の下まで来てボールを差し出してきた。

 

「……ショウさん、ベリオロスをよろしくね」

 

「もちろん!またいつか、ここに連れてくるからね」

 

「うん……!あたし、待ってるから!!」

 

キッサキ神殿でワサビちゃんの思いとともにベリオロスを受け取った私は、ウォーグルにライドして氷山の戦場へと向かった。そこでは昨日の約束通りにウォロさんが待っていた。

 

「お待ちしていました、ショウさん」

 

「ウォロさん……わざわざすみません」

 

「いえいえ、お気になさらず!それでは、行きましょうか」

 

「はい」

 

それからウォロさんとしばらく歩いていたんだけど、極寒の荒地辺りで唐突にウォロさんが振り返った。

 

「そういえばショウさん、アレ出してくださいよ、アレ」

 

「アレ?」

 

「アレと言ったら、ジンオウガ!あの力強い前脚にあの巨体……あのポケモンに乗って行ったほうが、よっぽど早く着くと思いませんか!?それにジブン、未知のポケモンをもっと近くで見てみたいという思いもありまして、是非ジンオウガの背中に乗せてもらえたらなと!」

 

「……あー……」

 

確かに……ここから何処へ行くにしても、徒歩だと明らかに時間がかかってしまう。あまり人前には出したくないけど……ウォロさんはジンオウガしか見たことがないはずだし、四の五の言ってられないか。

 

「ジンオウガ!」

 

ボールからジンオウガを出し……って。

 

「ジンオウガ、ウォロさんを見るなり露骨に嫌そうな顔をしないの!」

 

「グルル……」

 

「あらら……ジブン、何か嫌われるようなことでもしましたかね……?」

 

「いえ、その……多分、この子の個人的な好みのあれこれかと……」

 

「それはそれで傷つくんですが!?」

 

「ジンオウガ、ここから遠くへ移動するんだけど、ジンオウガに乗って行ったほうが速く着くの。お願い……」

 

「……ワン」

 

私がなんとか頼み込むと、ジンオウガは緩慢とした動きではあるけれど、しっかりとしゃがんでくれた。ありがとう、後で目一杯褒めてあげないと。

 

「ありがとう、ジンオウガ!さぁウォロさん、尻尾の方から背中にかけて乗り込んでください。私が先に乗りますので」

 

「はいはい!いやぁ、未知のポケモンに乗れるなんてなかなかにない機会!楽しみです!」

 

私が先導する形で、二人揃ってジンオウガに乗り込んだ。ウォロさんは終始興奮しっぱなしで、なんだか小さな子供みたいだ。

 

「それじゃあ、行きます。ジンオウガ、お願い!ウォロさん、道案内の方、よろしくお願いします」

 

「お任せ下さい!」

 

ジンオウガの背中に揺られること、およそ三日。確かに徒歩で行くよりはだいぶ早いけど……向かっている方角からしてもしも黒曜の原野で出会っていたらさらに時間がかかったのでは?と思わざるを得ない。

着いたのは、なんとも不思議な狭い場所。窪地のようなその場所には、小さな家が一件建っているだけだ。ウォロさんはボロ家と言うけど……そもそもここってウォロさんの家?

ジンオウガをボールに戻して奥に進むと……なんかすごいミステリアスな女性が椅子に座っていた。テーブルの上には時代錯誤なティーセットなんて置いてあるし……。名前はコギトさんといい、コギトさん曰く、私は「時空の迷い人」……らしい。時空の裂け目によって時間と空間の均衡が崩れかねなくて、それを防ぐ使命を託されたのが時空の迷い人である私……らしい。

 

「(そんなこと言われても……)」

 

そんなこと言われても、迷惑千万極まりなし。そもそも私は好きでこのヒスイ地方にきたわけじゃないし、拾ってもらったムラへの恩返しの為に働いたら状況悪化した責任取らされて追放されたし、かと思えば今度は知らぬ間に託された使命を果たせ、ときたか。

……どいつもこいつも、身勝手すぎる!どうして誰ひとりとして私の話を聞いてくれないのか!!私の思いも、願いも、何もかも無視して、勝手なことばっかり言って!!……けど、この赤い空を放置できないと感じているのは確かだし、なんとかできるというのなら話は最後まで聞かないと……。

話は、庵の中で続けられた。どうやらヒスイ地方にあるシンジ湖、リッシ湖、エイチ湖には、それぞれ心を表すと言われているポケモンがおり、三匹の試練をこなすことで与えられる物を紅蓮の湿地の霧の遺跡に持っていけば、「あかいくさり」という道具が得られるらしい。

 

「ふう……そなた、使命がわかったなら、やるよな」

 

「…………」

 

「……ショウさん?」

 

私は、コギトさんの問に即答できなかった。使命なんて、どうでもいい。私はただ、元いた世界に帰りたいだけ……なのに、この上身に覚えのない使命まで押し付けられるの?冗談じゃない……!

 

「……私は、元いた時代に、世界に帰りたいだけです」

 

「ふむ……なるほど、道理じゃな。そなたはあの裂け目を通ってこちらに来た。来た道を戻れば、元いた場所に戻れる……そう考えるのも無理はないが、そもあの裂け目を放置してこの世界が消滅すれば、そなたが居た場所もただではすまぬと思うが?」

 

「……えぇ、でしょうね。ですから、やれというならやりますが」

 

「では、やれ」

 

「ちょっとちょっと、なぜに険悪になっているのです!ショウさんとしても、あの裂け目は放っておけないのでしょう?」

 

「……冗談ですよ、ウォロさん。過去が変われば未来が変わる……浅知恵ですが、それくらいはわかります。ですから、その使命……しっかりと果たすことにします」

 

ウォロさんの言うとおり、あの裂け目を放っておいて何かあっては、大変なことになってしまうかもしれない。ましてや、ここヒスイ地方は私が生きた時代から随分と昔のこと……この時代で起こった出来事が、後の世に悪影響をもたらさないとは限らない。この時代で起きた問題は、なるべくこの時代で解決しておくべきだ。

……と、ここで庵の外からポケモンの鳴き声が聞こえた。コギトさんに見て来いと言われ、ウォロさんと一緒に外に出るとそこにはケーシィがいた。……このケーシィ、まさか……。

 

「あら、手紙ですね。ショウさん宛ての」

 

「手紙……」

 

ケーシィから手紙を受け取り読んでみる……これ、シマボシ隊長からだ!ケーシィを通じて放牧場のポケモンをやりとりしろ、ベースキャンプが使えるように手配したなどなど、こちらの調査がよりスムーズに進められるように便宜を図る旨の内容が記されていた。そして……シマボシ隊長は私を、「優れた調査隊の一員」と評してくれ、さらにこの異常事態の調査をいち早く終えることを信じている……とまで言ってもらえた。

思わず、涙がこぼれた。ガラナさんが言ってくれた言葉……私を信じている人もいるという言葉が、今更になって実感できた。テル先輩やラベン博士も信じてくれている……大丈夫、私はもう何も怖くない。

 

「もしかして、いい報せですか?」

 

「ふふっ……内緒、です」

 

さて、三つの湖を巡る試練……ウォロさんはもう少しだけ助力が欲しいようだけど、流石にこれ以上は……

 

「ウォロさん……商人というのは抜け目ないね」

 

「え?」

 

突然聞こえてきた声に振り向けば、カイさんとセキさんが歩いてきていた。どうやら二人共、それぞれの団の団員たちを落ち着かせていたらしい。……当然だが、二人が表立って私を助けてしまうとギンガ団との間にいらない諍いを生みかねない。だからこっそり助けてくれるそうだけど……。

 

「…………」

 

「(セキさん……?)」

 

セキさんがこっちを見てから、チラ、チラとカイさんの方へと視線を向けている……これは……!

 

「(ショウ、カイを選べ。こいつちょっと厄介になってるから)」

 

「(わかりました、セキさん……!)」

 

アイコンタクトは完璧……の、はず。

 

「えっと、カイさん――」

 

「わたしだよね!バサギリを鎮めるとき材料となる好物を持ってきたし、ともにシズメダマをつくったよ!」

 

「わ」

 

うっわぁ……すんごい期待に満ちた目……こ、これは裏切れない……!

 

「……じ、じゃあ、カイさんで……」

 

「さすがショウさん!よい選択だよ、後悔させないよ!」

 

満面の笑みで選ばれたことを喜ぶカイさん……思わず目を逸らしてセキさんの方を見てしまう。……セキさんもセキさんで、カイさんにバレないようにホッと息を吐いていた。

その後、セキさんはデンボク団長の様子を見ることになり、私とカイさん、ウォロさんの三人で湖を巡ることになった。

さて、バレないためにカイさんとウォロさんは先に行ったし、私も出発――。

 

「待て、おぬし」

 

――……しようとしたところで、庵から出てきたコギトさんに呼び止められた。なんだろう、これから出発って時に……。

 

「どうしたんですか?手短にお願いします」

 

「……そなた、変わったものを連れておるな?」

 

「え」

 

「ほれ、はよう見せんか」

 

「いや、あのっ、ちょっと……!?」

 

な、なんかすごいグイグイくる!変わったものってもしかしてジンオウガたちのこと!?最初はなんとか抵抗していたけど……結局、コギトさんの圧に負けて、ジンオウガたちを見せることとなってしまった。

 

「ほほぅ、この出で立ち……まるで狼よな。小さな後ろ脚に比べて、この前脚……筋肉のつき方があからさまに違う。駆けるだけに及ばす、跳躍力も凄まじそうじゃな。高低差の激しい山岳地帯にさえ容易に住み着いてしまえるじゃろうな。……ふむ、何?でんきタイプじゃと?しかも、かくとうタイプも併せ持つか!ほうほう、するとあの背中の毛や甲殻が電気を操るのに必要な器官ということか。……なに、調査中じゃと?もっとこの異形のケモノを調べよ」

 

「ふむ……全身に纏う岩、まるで鎧のようじゃな。それに、心なしかほんのりと暖かい。……なんじゃと、熱を溜める?しかも排熱のために可燃性のガスを腹部から出すだけでなく、口から火炎を放つじゃと!ただの排熱行為すらも攻撃に転じるか……ハハッ、なかなか面白い発想じゃな。習性をそのまま攻撃に利用するなど、あたしも初めて聞いたわ。ふむ……主な食料は鉱物か、まさに見目の通りのいわタイプ、じゃな。……まだまだ調べられることがありそうじゃ、もっと調べよ」

 

「背電殻、とな。電気を貯蓄する器官であり、それと同時に電気を操る器官でもある、と。……なんと!体長30m!?これはまた、随分と大きな竜じゃな。ほほぅ、自ら発生させた電気だけでなく、外部から受けた電気すら背電殻に貯めることができるのか。最大まで電気を貯めると背電殻は美しい蒼光を放つ、と……ふむ、一度見てみたいものじゃな。まだまだ調べる余地はありそうじゃな」

 

「おぉ、これぞまさに飛竜!と言わんばかりの姿じゃ。雄大な翼、強靭な脚……空に生きるものとして、これほど理想的な姿もなかろう。……なに!三日三晩と飛び続けられる体力を有するじゃと!?三日三晩ともなれば、飛行する生物としては破格の性能になるのじゃ。……地上から宙返り!?加えてハガネールを溶かし尽くすほどの火炎を操るとは、芸達者なドラゴンじゃな!足の爪には毒をも有するか、これを狩りに用いる、ということじゃな。まだわからぬことが残っていそうじゃな、余さず調べあげよ」

 

「おぉ……なんと美しい琥珀色の牙じゃ。こやつは純白の凍土に棲んでおるのじゃろう?白い体毛は雪の中でも隠れるためか?腕の翼に刺が生えておるな……なに、滑り止め?ほほぅ、スパイクのような役割を持っておると……これほどの巨体でありながら、それほどに俊敏に動くことが出来るのか?なるほどなぁ、面白い。まだまだ調べられそうじゃな、もっともっと異形のケモノについて調べるのじゃ」

 

もうずっとこんな感じ……けど、こんなにはしゃぐなんてちょっと見た目とのギャップがすごいんですが。……「異形のケモノ」か……そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない……けど、もしかしたら……。

私はリオレウスの背中に乗って、最初の目的地である純白の凍土へと向かった。

 

 

 

 

純白の凍土に着き、すぐにアヤシシやウォーグルらにライドしてエイチ湖を目指す。エイチ湖に着くとアルセウスフォンが反応し始め、それまで存在していなかった洞窟の入口が出現した!?

私とカイさんは揃って中へ。湖のポケモンを守るポケモンがいるらしいけど、果たして……。

 

「……あれ、かな……」

 

「えぇ、多分……けど……」

 

洞窟の中にそのポケモンはいた。

 

全長6m半にも及ぶ大柄な体躯。

威圧的な強面や鋭い鉤爪。

胴体全体を覆う分厚い毛皮と、丸太のように太く強靭な四肢。

「鬼」を彷彿とさせるような、青白い顔。

 

この雰囲気は……むしろ、ジンオウガたちと同じ……!!

 

「ドゴッシャアアアアッ!!」

 

謎のポケモンは大きく咆哮すると、私たちへめがけて飛びかかってきた……。

 

 

 

 




一万文字超えたし、中途半端だが一旦ここまで!
まぁでも、今はGW中なんでね、書く時間なんていくらでもあるんでね!
丸一日使ってこれだけ書けたら上等ですよね?ね!?


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湖の三試練 雪鬼怒涛、夜鳥翻弄

ゴシャハギが 現れた!▼

ゴシャハギ
タイプ1:こおり

こおりタイプの技を使うとランダムで「氷刃の構え」あるいは「氷鎚の構え」の姿になり、片腕が刃か鎚に変わる。低確率で「双氷刃の構え」、「氷刃氷鎚の構え」の姿になり、両腕が両方とも刃か、片腕刃片腕鎚に変わる。変化中は物理攻撃の威力が上がる。
物理攻撃を一定回数使用するor受けると解除。ほのお技を受けると一発で解除。

続けて二匹目も登場!……まぁ、別名がネタバレに直結するところはモンハン界ではご愛嬌、ということで一つ……。


見たこともない巨大なポケモンが、洞窟の中にいた。そのポケモンは大きく咆哮すると、迷うことなくこちらに襲いかかってきた!

 

「ヌメイル、アイアンヘッド」

 

「ヌメラァ!」

 

……と、そこで私たちの背後から飛び出してきたヌメイルがアイアンヘッドを目の前のポケモンに食らわせていた。ポケモンはわずかに怯んだようだが、すぐに気を取り直してヌメイルへと襲いかかっている。

 

「ガバイト、お前も行け。時間を稼ぐのだ」

 

「ガババッ!」

 

さらに続けてガバイトが飛びかかっていく。二匹に翻弄される巨大ポケモンと、その二匹をけしかけたと思しき人物……その人物が、洞窟の入口から姿を現した。全身を赤い色の衣装で包み込んだ、よくわからない人物だ。

……なんだ、この人は……まるで、白い紙の上に別の白い紙を貼り付けたような(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、この違和感は……。

 

「あの――」

 

「ほぅ、この世界(・・・・)の竜種も、存外にやる」

 

「え」

 

この世界(・・・・)……?まさか、この人も……!?

 

「……おっと。やあ、お二人さん。突然スマナイね」

 

「……誰ですか、あなたは……!」

 

カイさんが、警戒心をむきだしている。確かに助けてもらった状況とはいえ、当人が怪しすぎては感謝の念も薄れてしまう。カイさんの反応も最もだろう。

 

「私か?私は……ふむ、名乗るような名は持ち合わせていないのだが、せっかくなのでこの衣装にちなんでアカイ、もしくはアカギヌとでも呼んでもらえれば」

 

「…………」

 

名乗るつもりはない、らしい。

 

「では、遠慮なくアカイさんって呼ばせてもらいますね。私はショウといいます」

 

「わたしはカイ、シンジュ団の長だ。アカイ殿、あなたはどうしてここに?」

 

「どうして、か……ふむ、強いて言うなら、アレだな」

 

アカイさんが言うアレ……とは、あの謎の巨大ポケモンのことだろうか。

 

「あの巨大なポケモンのことですか」

 

ポケモン……まぁ、いいだろう。そう、あのポケモンについて。驚いたな、よもやこのようなところに『ゴシャハギ』がいるとは」

 

「ゴシャ、ハギ……?それが、あのポケモンの名前ですか?」

 

ゴシャハギ……なんだか、恐ろしさが強調されたような名前だ……。どうしてアカイさんは知っているのだろうか。

 

「あぁ、その通り。私はアレと同じ出自のものでね、私が住んでいた大陸の寒冷地では、アレが当たり前にいたのだよ。それがこんな遠い地方にまでいる事に驚いていてね。ふむ……目測でだが、およそ6mから6.5mといったところか。私が知る限りでは、一番小さなサイズだな」

 

「6m超えで一番小さい!?」

 

カイさんが驚いている……うん、私も驚いている。6mもあるのに、それが一番小さいだなんて……。

 

「一番大きいサイズだと、どれくらいですか?」

 

「大して違いはない。せいぜい9m弱といったところだ」

 

いや、およそ1.5倍って十分大きいんですけど……。

 

「……さて、もしかしなくとも、君たちはあのゴシャハギと勝負をするつもりかね?もしもそうだと言うのなら、やめておくことをおすすめするよ」

 

「……っ!そんなこと、やってみないとわからないだろう!」

 

いきなり現れては戦うのは止せ、などという。カイさんがムキになって言い返しているけど、アカイさんは不敵な笑みを崩さない。

 

「……ふっ、ではよく見ていたまえ。ゴシャハギの能力を」

 

そう言ってアカイさんがゴシャハギの方へと顔を向けたのに合わせて、私たちもゴシャハギを見る。ヌメイルとガバイトの連携に翻弄されるゴシャハギだったが、突然自分の腕に冷気を浴びせ始めると……見る見るうちに腕が凍りついてしまった。

 

「なにを……」

 

「ククッ……」

 

腕が完全に凍りついた……と思った、その時だ!なんと、氷は一瞬で形状を変えて、巨大な包丁の刃のような形へと変形してしまったのだ!!

 

「え」

 

「うそ……」

 

「あれこそがゴシャハギの力。自身の腕に纏わせた氷を武器にして、獲物を狩る。げに恐ろしきは雪の鬼。雪鬼獣の狩猟本能だ」

 

雪鬼獣……ゴシャハギの分類かなにかだろうか。雪の鬼……確かに見た目とも相まって、正しく鬼と呼ぶべき恐ろしさだ。

ゴシャハギが右腕を氷の刃に変えてからは、二対一にも関わらず形勢が逆転していた。ヌメイルとガバイトは氷の刃から逃れるのに必死で、ほとんど攻撃できていない。

 

「……さて、あれを間近で見てもなお、挑もうというのかね?」

 

「……挑みます。そのために、ここまで来たんですから」

 

「ふふ、そうかそうか。この狭い洞窟内で、雪の鬼を相手にどう立ち回るのか……見ものだな」

 

そう言うと同時に、アカイさんはボールを使ってヌメイルとガバイトを二匹同時に戻した。標的を見失ったゴシャハギだったが、直ぐにこちらへと振り返った。

 

「ゴシャハギはご覧のとおり氷を操るモンスターだ、冷気には十二分に気をつけたまえ」

 

「ご忠告どうも!ゴウカザル!!」

 

「ウキャキャァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【荒ぶる乱入者】 ~モンスターハンターポータブル3rd~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腕に纏わせた氷の形状を変化させて攻撃をしてくる……とにかく、あの腕に気を付けないと!

 

「ゴウカザル!ゴシャハギの腕に気をつけて!!」

 

「ウキッ……!」

 

普段は陽気な性格でバトルさえ楽しむ傾向の強いゴウカザルの声が硬い……。ゴウカザルも感じているんだ……目の前のポケモンから発せられる、強烈な敵意と殺意を。私たちにとっては勝負でも、ゴシャハギにとってこれはただの狩りだ。目の前の命を喰らい、己の糧とするための、生きる上での成長過程にすぎない。

負けるわけにはいかない……ゴシャハギには、思い知ってもらわないといけないだろう。私たちがただ狩られるだけの弱肉などではなく、対等に戦いあう敵であることを!

 

「まずは腕の氷を破壊する!ゴウカザル、氷の刃に向かってインファイト!!」

 

「ウッキ!」

 

ゴウカザルが突撃を開始すると、ゴシャハギはさっそく右腕をゆっくりと振り上げて迎撃の構えを取る。そして……振り上げた時とは比にならない速度で一気に振り下ろしてきた!

 

「躱して!!」

 

「ウキャ!」

 

ゴウカザルは左にステップを踏んで回避!その間、ゴシャハギはゴウカザルから一切目を離しておらず、すぐに横薙ぎに振るってきた!

 

「今だ!フレアドライブ!!」

 

「ウキキキキャアァ!!

 

ゴウカザルのフレアドライブとゴシャハギの氷刃がぶつかり合い……刃が折れた!

 

「よしっ!かみなりパンチ!!」

 

「ウッキャア!」

 

ゴウカザルはすぐさま反転し、かみなりパンチを顔面に叩き込んだ!!間違いなく直撃だ!

 

「そのまま力強く、シャドークロー!!」

 

「ウキキ!」

 

「……!ゴラアァ!!」

 

……!?一瞬、怯んだかに見えたゴシャハギだけど、ゴウカザルがわずかに距離を置いた直後に掴みかかってきた!?

 

「ウギャ!?」

 

「ゴウカザル!!」

 

ゴウカザルはそのまま地面に叩きつけられると、真横へと放られてしまった!ゴロゴロと転がるゴウカザルへ、ゴシャハギから容赦のない追撃……れいとうビームだ!

 

「ゴウカザル!炎を纏って!!」

 

「……!ウキ!」

 

フレアドライブを使う要領で、ゴウカザルが炎を纏う。それにより、ゴシャハギの冷気は炎に阻まれてゴウカザルには届かない!

 

「上手い!」

 

「ほう……?」

 

なんとかゴシャハギのれいとうビームは凌いだ……次は――

 

「ゴルッシャアァ!」

 

なっ、ゴシャハギが跳んで……!?

 

「ゴラララア!」

 

両腕を地面に叩きつけると、そこから衝撃波が発生してゴウカザルに迫り行く!待って、そんな攻撃なんてアリなの!?

 

「か、躱して!」

 

「ウキャア!?」

 

ゴウカザルも、予想だにしない攻撃に戸惑いながらもなんとか躱した!

 

「ゴオラアァ!!」

 

今度はストーンエッジ……!!

 

「インファイトで迎撃!」

 

「ウキャキャア!!」

 

なんとか岩の刃をすべて打ち落とすことはできた……けど、どう戦う?体格差からしてすでに不利だし、なんならこっちの予想すらつかないような攻撃方法をとってくる……。強い……けど、落ち着いて対処すれば、まだなんとかなる範疇だ。

初手にゴウカザルをぶつけてみたけれど……単純なタイプ相性じゃあ絶対に勝てない。それほどのポテンシャルを、ゴシャハギは秘めている。ジンオウガたちをぶつければなんとかなるかもしれないけれど、彼らは軒並み体長が20m前後と、それ以上だ。この洞窟内では狭すぎる……動きが阻害されて、逆に倒されてしまうかもしれない。

この勝負……ゴウカザルの敗北が、事実上私の敗北だ!

 

「ゴウカザル、戻って!お願い、ミミロップ!」

 

「ミミィ!」

 

なんとかゴウカザルを温存しつつ、ゴシャハギに対抗するしかない!幸いにして私のポケモンたちはすばやさの高いポケモンが多い……スピードで攪乱して、ヒット&アウェイで戦う……これだ!

 

「ミミロップ、とにかく動き回って!捉えられたら、終わりだよ!!」

 

「ミッミッ!」

 

「よし……ほのおのパンチ!!」

 

「ミミロー!」

 

ミミロップは私の指示通り、素早い動きでゴシャハギの周囲を動き回る。ゴシャハギもミミロップの動きを追いながら、腕を振り下ろして攻撃してくるけど……そんなんじゃ掠りもしない!

ゴシャハギの攻撃のタイミングを見切って、ミミロップがほのおのパンチを当てた!油断はしない!

 

「反撃を警戒!」

 

「ミミッ」

 

「ゴルアァ!!」

 

やはり来た!ゴシャハギは攻撃を当てた直後のミミロップを捕まえようと腕を伸ばしてくるけれど……警戒が功を奏してミミロップは腕を躱した!逆に腕の上に乗って、すぐにでも反撃ができる状態に!

 

「ドレインパンチ!!」

 

「ミーミー!!」

 

「ゴシャッ!?」

 

ミミロップのドレインパンチがゴシャハギの鼻先に突き刺さった!!これは相当効いているはず!

 

「力強く、ギガインパクト!!」

 

「ミッミィ……ロオオォォォ!!」

 

「ゴアアァ!?」

 

ミミロップのギガインパクトが直撃した!ゴシャハギの大きな体は吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。このまま一気に……!

 

「ミミロップ!ドレイン――」

 

「ゴッシャアアアアアッ!!」

 

「ミッ!?」

 

うっ、ぐっ!?な、なんて大きな咆哮……!!

 

「と、とんでもない大声だ……!!」

 

「……気をつけたまえ、少女よ。ゴシャハギの怒りが今、頂点に達した」

 

「怒り……っ!ゴシャハギが!」

 

ゴシャハギの姿が変わった……!?青白い体表が、一気に真っ赤に染め上げられた。それと同時に、ゴシャハギは自身の左腕に氷を吐きつけ、丸い鉄球のような形状へと変化させた!

 

「ミミロップ気をつけて!」

 

「ミミッ……!」

 

「ゴシャアア!!」

 

……っ!?速い、ほぼ一瞬で間合いを――

 

「ドゴシャア!!」

 

「ミ"ッ"!!」

 

「ミミロップ!?」

 

ミミロップが一撃で吹っ飛ばされて、後ろの壁に叩きつけられてしまった!!くっ……まさか、一撃で倒されてしまうなんて……!

 

「そんな……ショウさんのポケモンが、一撃で……!」

 

「……奴らの怒りは我々にとってピンチでもあるが……同時に、チャンスでもある。怒り狂うというのは、追い詰められた獣の足掻きのようなもの……先ほどの連続攻撃が効いている証左だ。少女よ、ここが奴にとっての瀬戸際だぞ」

 

「……!!」

 

そうか……アカイさんの言うとおりかも知れない。己を追い詰める者に対する怒りと、迫り来る自身の死への焦り……それらが、ゴシャハギの怒りを引き出しているのかもしれない。ゴシャハギが怒っている……それこそが、ゴシャハギが追い詰められているということ!アカイさんはそう言いたいんだ!

 

「わかりました、アカイさん!その言葉が正しいのなら……ここで決着をつけるべき!行けっ、ゴウカザル!!」

 

「ウッキャア!!」

 

再びゴウカザルを繰り出す。決着をつけるためには、力業フレアドライブを確実にぶつけるしかない!

 

「ゴウカザル、ゴシャハギの動きを見極めて!必ずどこかに隙がある!」

 

「ウキキ!!」

 

「ゴルラア!」

 

ゴシャハギが左腕を地面に引きずりながら振り上げると……くっついていた氷の塊が腕から外れてこっちに飛んできた!?

 

「なっ――」

 

「ブースター!!」

 

「ブゥスー!!」

 

ゴシャハギの不意打ちに反応できずにいると、後ろから炎が飛んできて氷塊を破壊してくれた……。

 

「カイさん!」

 

「大丈夫だよ、ショウさん!あなたの背中は、わたしが守るから!」

 

「ゴルルル……!」

 

ゴシャハギが口から冷気を吐き出すと……りょ、両腕がどちらも巨大な氷刃に……!?

 

「に、二刀流……!?」

 

「ふむ……ゴシャハギも本気で仕留めに来た、というわけだな」

 

後ろでカイさんとアカイさんがそう言っているのが聞こえる。向こうが二刀で来るなら……こっちは二爪で行く!

 

「ゴウカザル!シャドークロー!!」

 

「ウッキキャア!!」

 

ゴウカザルも、両手にシャドークローを発動して迎撃準備!来る……!!

 

「ゴルルルララララ!!」

 

「ウキャキャキャキャ!!」

 

ゴシャハギとゴウカザルが同時に突撃し、氷刃と影爪がぶつかり合う……!ゴシャハギの連続攻撃を、ゴウカザルはシャドークローでいなしたり回避したりして、ゴシャハギの隙を探っている。私も、ゴシャハギから一切目を離さず攻撃の隙を探る……!!

何度か攻撃が掠めたりして、危険な場面もあったけど……まだ、まだ……ゴシャハギの、決定的な瞬間が来るまでは……!!

 

「……ッ!!ゴラアアアッ!!」

 

ゴシャハギが全力で両腕を叩きつけてきた!これだ!!

 

「ゴウカザルッ!!」

 

「ウッキャッ!!」

 

ゴウカザルは宙返りでバックステップを取ると、ゴシャハギの攻撃を躱した!……!やった、ゴシャハギの氷刃が地面に食い込んで動けない!!

 

「力強く、フレアドライブッ!!」

 

「ウゥキャキャキャ!ゴウカアァァッ!!」

 

「ゴッシャアアッ!?」

 

ゴウカザルは全力の炎をまとってゴシャハギの顔面めがけて突撃した!!そのまま壁に激突したものの、ゴウカザルはすぐに戻ってきた!ゴシャハギは……両手足を地面に着けているけど、かなり息が上がっている!

 

「今だ!モンスターボール!!」

 

「……ほう」

 

私が投げたモンスターボールは一直線にゴシャハギに向かっていき……格納できた!正直、自信はなかったんだけど……なんとか入って良かった!ボールはしばらくの間激しく動き回っていたけど……やがて動かなくなり、花火が打ち上がった!

 

「よしっ……ゴシャハギ、捕獲!!」

 

「うそ……凄い、凄いよショウさん!」

 

「ふむ……雷狼竜たちだけでなく、雪鬼獣もか。この世界の法則に縛られつつあると……」

 

「……?アカイさん?」

 

アカイさん、今何か言ったのかな……?

 

「いや、なに。驚いているだけさ。まさか、倒してしまうだろうと思っていたが、捕獲してしまうとはな。それも、罠等を一切用いることなく……」

 

「罠?アカイさんの故郷ではポケモンとともに戦わないのですか?」

 

「あぁ……環境ゆえか、君らが連れているような人間大のポケモンが少なくてね……いてもせいぜい、ゴシャハギのような人間をはるかに凌駕する体躯の生物が大半だ。だから、ここで初めてヌメイルとガバイトを見たときは驚いたものだよ。"こんなに小さな生き物が何種類も居るのか?"……とね」

 

……嘘を言ってる、というわけじゃなさそう。だとしたら、アカイさんの故郷では人間がポケモンと争っていたのだろうか……罠を使う、みたいな発言もあったし、きっとそうなんだろう……。

 

「アカイさんはゴシャハギに詳しそうだし、アカイさんがゴシャハギを連れて行きますか?ヌメイルとガバイトだけだと、戦力的に不安ですし……」

 

「フッ……気持ちはありがたいが、ゴシャハギを捕獲したのは他ならぬ君だ。ならば、君に世話をしてもらったほうがゴシャハギとしてもありがたいだろう。なに、ゴシャハギについてわからないことがあれば、私のもとを訪ねるといい。特に予定がなければ、私はフェアリーの泉にいる……知識程度ならば、いくらでも力になってあげよう」

 

「……ありがとうございます」

 

「では、私はこれで失礼する。いいものを見せてもらったよ……ひょっとしたら、君は英雄に足る器かもしれないな」

 

「はぁ……」

 

最後まで不思議なことを言いながら、アカイさんは去っていった……。本当に、不思議な人だった。

 

それからのことは、掻い摘んで説明する。アカイさんが去ったあと、黄色い頭をした不思議なポケモンが姿を現した。おそらくは、湖のポケモン……そのポケモンから「知識を試したい」と言われたので、質問に答えることとなった。湖のポケモンが列挙したポケモンたちの目の数を答えろ、というもので……どれも図鑑に載せたポケモンだから、すぐに答えることができた。そして、あかいくさりの材料となる、湖のポケモンの爪をもらった。……え、爪?爪で鎖ができるの?どういう原理なの……?

爪を得たあとで洞窟を出て……あ、そうだ。

 

「あの、ウォロさん。さっきここを出て行った人なんですけど……」

 

「え?……我々の他に誰かいたんですか?」

 

「え?いや、アカイって全身真っ赤な格好の人が出て行ったと思うんだけど……」

 

「いやいや……流石にそんな目立つ格好の人がいたら、ジブンだって気づきますよ……」

 

ど、どういうこと……!?たしかにアカイさんは洞窟の入口から現れて、そして、そこから出て行ったはず……なのに、ウォロさんはそんな人は見なかった、だって……!?それじゃあ、アカイさんは一体どこに……?

 

「ふむ、ここは湖のポケモンが住む洞窟……不思議なものが見えても、何らおかしなことはないのかもしれませんね」

 

「そういうものなの……?」

 

カイさん、多分そういうものじゃあないと思います。

それから私たちは一度コギトさんがいる隠れ里へと戻り、渡された素材をコギトさんに見せた。ユクシーの爪……ということは、あのポケモンの名前はユクシー?……先に教えてくれても良かったじゃないですか、コギトさん。次は……リッシ湖か。私たちはすぐにでも移動を――

 

「まて、そなた」

 

――って、またコギトさん!?一体何なんですか!

 

「……湖の守護者に、なにか変異が起きていないか?」

 

「守護者?」

 

「湖には当然、湖のポケモンを守る守護者たるポケモンがおる。そなたらの言う、オヤブンと呼ばれるポケモンじゃ。……だが、なにやら薄ら寒い、嫌な予感がするのでな……こうして聞いておるのじゃ」

 

「……そういえば」

 

ウォロさんとカイさんがこの場におらず、先に向かっていることを確認してから、私はゴシャハギをボールから出した。コギトさんはわずかに目を見開くと、目を閉じて力なく首を横に振った。

 

「……その鬼の如き形相のポケモンが、湖におったのか……」

 

「はい、ゴシャハギっていいます」

 

「……少なくとも、あたしが聞かされたポケモンの特徴とはまるで一致しない。たしか、のろいぎつねポケモンだったと聞いていたが」

 

のろいぎつね……ゾロアーク?でも、洞窟にはゾロアークなんて影も形もなく……まさか。

 

「時空の裂け目、ですか?」

 

「おそらくは。……気をつけよ、そなた。ほかの二つの湖も、おそらく守護者に変異が生じておるはずじゃ」

 

「……わかりました」

 

コギトさんの忠告をしっかりと肝に銘じて、私は次の目的地であるリッシ湖に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅蓮の湿地に到着し、すぐにリッシ湖へと向かう。……守護者のポケモンにも変異が生じているなら、もともと存在していた守護者のポケモンが心配だ。ゾロアークはどこにも姿が見当たらなかったから、おそらくはゴシャハギに……。リッシ湖へ到着し、アルセウスフォンを使って入口を開く。気持ち早足で中に入ると……。

 

「やあ、よく来たね」

 

「アカイさん!?」

 

なぜかアカイさんが既に中にいた!?……いや、キッサキ神殿でワサビちゃんと鬼ごっこした時も、仕掛けは解かれてなかったのにワサビちゃんが一番奥にいたというテレポートも真っ青な状況があったし……別に不思議ではないか(錯乱)。

 

「アカイさんがここにいる……ということは」

 

「ああ……ここの守護者にも、影響が表れているようだな」

 

見ろ、と言って洞窟の奥を顔で指すアカイさん。そこには……グゥグゥと寝息を立てているオヤブンハリーマンの姿があった。……いや、待って、柱の上に……!!

 

「あれは……」

 

「ホルルル……」

 

で、でっかいフクロウ!?青い色のヨルノズクみたいな大きなポケモンが、柱の上で忙しくなく首を動かしている……。

 

パッと見、5m弱はありそうな体長。

快晴の夜空のような鮮やかな藍色の羽毛。

赤く輝く両目に、頭頂部から後方へ長く伸びる耳。

翼の縁に見える刃物のように硬そうな翼爪、足にも鋭い爪がある。

 

何だあのポケモン、見たことない……。

 

「お、大きい……フクロウか?」

 

「その通りだ、シンジュの長よ。あれは『ホロロホルル』。我が故郷では"幻惑の魔術師"の異名で知られる夜鳥(やちょう)という別名を持つ……ポケモンだ」

 

夜鳥、ホロロホルル……オヤブンハリーマンが眠っているのは、ホロロホルルにやられたからなのかな……?

 

「ホロロホルルは、異名にあるとおり相手を惑わせる能力を持ったポケモンだ。そうだな……タイプ的に言えば、〈エスパー・ゴースト〉といったところか。まるで鳥のような姿だが……羽毛に見えるあれはその実、羽毛ではない。羽のように発達した鱗なのだ」

 

「鱗なの!?信じられない……遠目で見る分には、どう見ても羽毛にしか見えない」

 

「そう思うのも、無理はないだろう。だが、問題はそこではない。あの翼の内側には特殊な鱗粉が大量に付着していてね……金色に輝く美しい鱗粉なのだが、吸い込めば生物の方向感覚を狂わせ、一時的な前後不覚状態に陥ってしまうのだよ」

 

「それは……!ポケモンも我々も、さぞ混乱してしまうだろうな……」

 

「自然にばら撒くだけならまだしも、ホロロホルルは己が翼による風圧を利用してこれを積極的に、より広範囲に振りまこうとしているのだ。……わかるな?ホロロホルルは己の鱗粉が持つ力を十全に理解しており、その使い方、活かし方を把握しているのだ」

 

なんて賢いポケモン……!自分の特性をしっかりと把握・理解し、外敵との戦いにうまく活用する……戦い方を熟知したものだからこそ、なのだろう。

 

「……ふむ、これも伝えておくべきだろう。あのハリーマンというポケモンが眠っている理由だが、これもホロロホルルの仕業だ。奴は口から催眠波と呼ばれる特殊な音波を発することができるのだ」

 

「催眠波……?さいみんじゅつとは違うの?」

 

「さいみんじゅつ……あぁ、ポケモンに眠気を与えるアレか。奴の催眠波は眠気なんてちゃちなもんじゃない。見たまえ、ハリーマンを……完全に眠っているだろう?」

 

「確かに……どんなポケモンの技だって、眠たくすることはできても眠らせることはできない……」

 

「その通り。催眠波は指向性を持たせた超音波に、音波振動で霧状にされた麻酔作用のある青色の液体を付与して放出するものだ。浴びせられた生物は……まぁ、説明は不要だろう。ホロロホルルの翼は音波を集めることもできる……集めた音波を反響させ、前方に照射することも可能だ。十二分に、気をつけたまえ」

 

「わかりました……!」

 

ひとまず、眠っているハリーマンを捕獲しないと……!私がボールを投げてハリーマンを捕獲すると、ホロロホルルはこちらに気づいたようですごい勢いで首をグリン!と動かしてこっちを見た。

 

「ルルル」

 

ぴょん、と軽くジャンプして地面に降り立つと、姿勢を低くしてこちらを睨みつけるホロロホルル……この時代にはない「こんらん状態」に、眠気を超える「ねむり状態」の二つの状態異常を操る、か……これまでもポケモンたちとは違って、真正面からのぶつかり合いはかえって危険だな……!

ホロロホルルの弱点を、確実に付けるポケモンで……!

 

「ダイケンキ!!」

 

「ルッシャア!!」

 

「……!ギュオオーーーーンッ!!

 

私がポケモンを繰り出すと、警戒心が最大にまで高まったホロロホルルが咆哮を上げた。

 

「ダイケンキ!ホロロホルルはいろんな搦手を使ってくる!警戒して!!」

 

「ルシッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【荒ぶる乱入者】 ~モンスターハンターポータブル3rd~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホロロホルルは宙に浮いて羽ばたくと、足の爪で襲いかかってきた!

 

「躱してシザークロス!」

 

「ルシャ!」

 

爪による攻撃を回避して、ダイケンキはすぐさま反撃に転じた。けれど、ホロロホルルも攻撃を躱されるとすぐに羽ばたいて上空へと退避した。

 

「ホロルル!!」

 

……!口を大きく開いて……あれは、シャドーボールか!

 

「切り伏せろ!」

 

「ルシ!」

 

ホロロホルルから放たれたシャドーボールがダイケンキに迫って来る。ダイケンキはアシガタナを抜いてシャドーボールを迎撃……。

 

「ホロッ!」

 

……!ホロロホルルの耳が立ち上がって……シャドーボールの軌道が変わった!?いや、よく見るとシャドーボールを淡い青の輝きが包んでいる……まさか、サイコキネシス!シャドーボールを操っているんだ!

ダイケンキのアシガタナはサイコキネシスでコントロールされたシャドーボールには当たらずに空振りに終わった。シャドーボールは何度もダイケンキの周囲を回ったあと、一気に上昇して上から叩きつけられた。

 

「ルッ……!」

 

「ダイケンキ!大丈夫!?」

 

「ルッシャア!!」

 

よし、ゴースト技はあくタイプのダイケンキには効果は今ひとつ、大したダメージはない。……!ホロロホルルが再び羽ばたいて……。

 

「ホーウ!!」

 

勢いよく地面に着地した!その際、ホロロホルルの周りを金色に光る何かが広がった……まさか、あれが!

 

「……!金色の光……!」

 

「あれが、ホロロホルルの鱗粉だ」

 

「ダイケンキ!!」

 

「…………!!」

 

ダイケンキに注意を促し、私自身も最大限に警戒する。ホロロホルルは羽ばたき一つで金色の鱗粉をこちらに向かって飛ばしてきた!

 

「回避!」

 

「ルシャッ!」

 

「ホロロロ!!」

 

ダイケンキが右へ回避するとまるで読んでいたようにそちらへ向けて翼を広げたホロロホルルが――!

 

「ルルルルル!!」

 

「ルシャッ!?」

 

「ダイケンキ!!」

 

ホロロホルルから、青色の渦のような何かが照射された!直撃したダイケンキは右へ左へとフラフラ揺れたあと……突然倒れてしまった!?

 

「ダイケンキ!?」

 

「先ほどの攻撃が、ホロロホルルの催眠波だ。どんなポケモンであれ、喰らえば一撃で眠りにつく……あれでは逃げられんな」

 

アカイさんの言葉が耳に届く……あれが、催眠波!確かに抵抗すらままならず、ダイケンキは一瞬で眠ってしまった……なんて、恐ろしい技だ……。

 

「ホッホーゥッ!!」

 

「グッ……!!」

 

ダイケンキは目覚めぬまま、ホロロホルルのブレイブバードを受けて壁に叩きつけられ、そこでようやく目を覚ました。

 

「ダイケンキ、しっかり!」

 

「ホロルル!!」

 

目を覚ましたばかりでまだふらついているダイケンキへ、ホロロホルルがさらに追い打ちをかけてくる!ダイケンキの上にのしかかってくると、そのまま鱗粉をばら撒いてきた!ホロロホルルはそのままダイケンキを持ち上げると思い切り放り投げた。立ち上がったダイケンキだけど……足が完全にふらついている!

 

「喰らったか……今のダイケンキは自分がどちらを向いているのかわからない状態だろう。このままでは危険だぞ」

 

「ショウさん……ダイケンキ……!」

 

ホロロホルルは動きが鈍ったダイケンキに連続攻撃を仕掛けている。ダイケンキはなんとか反撃に転じようとするけど、こんらん状態が思った以上に効いていてまったく反応できていなかった。まずい……!このままじゃ、一方的に嬲られるだけだ……!

だけど、回復をする隙はない……いや、信じるんだ、私のダイケンキを!ほかならぬ、私自身が誰よりも!!ホロロホルルの攻勢が、わずかに緩んだ……ここだ!

 

「ダイケンキ!向かって右にシザークロス!!」

 

「……!ルッシャアアアッ!!」

 

「ホホーッ!?」

 

ダイケンキは私の指示に従い体を90°右へ回転させるとその場でシザークロスを放った。その結果……ダイケンキの右から攻撃しようとしたホロロホルルに、シザークロスが命中した!ホロロホルルは大きく羽ばたき、一度距離をとった……よし、うまくいった!

 

「ダイケンキ、私を信じろ!私がお前の目となるから!!」

 

「……!ルシッ!!」

 

「よし!敵は今、9時の方向にいる!わかるな?」

 

「ルッ!!」

 

さすがは私の相棒、私がずっと連れ歩いている最高のポケモン!

 

「ギュケエエーーーーンッ!!」

 

ホロロホルルにとっては、おそらくはこれが必勝法だったのだろう……それを破られたからか、はたまた追い詰められたからかホロロホルルが一際甲高い声で咆哮した。耳を立ち上げて鮮やかな赤に染まった内側をこちらに見せつけ、さらに翼に付いている爪が扇のように広げられ、より攻撃性の増した姿へと変貌した。そのままダイケンキへ飛びかかり、足の爪で攻撃してくる……けど!!

 

「来るぞダイケンキ!後ろへ!」

 

「ルシ!」

 

「左!」

 

「ルシャ!」

 

「右へアクアテール!!」

 

「ルッシャアア!!」

 

「ホロッ!?」

 

バックステップ、左へサイドステップからの右方向へアクアテール。完璧な動きで、追撃しようとしたホロロホルルを吹っ飛ばした!ホロロホルルは軽くかぶりを振ってから、再び襲ってきた。まだこんらんは解けていない……けど、私とダイケンキなら!

 

「正面だ!右へ!!」

 

「ルシ!」

 

「前へステップ!」

 

「ルシッ!」

 

「跳べ!」

 

「ルッシャ!」

 

「真下へどくづき!!」

 

「ルシア!!」

 

「ホロルーッ!?」

 

ダイケンキの正面から飛びかかってきたホロロホルルを右サイドステップ、前ステップからジャンプして突撃を回避すると、そのまま真下へ毒づきを放つ!!ホロロホルルから飛び降りたダイケンキはすぐに後ろへ振り返る。いいぞ、ダイケンキも敵の位置を把握し始めている!

ホロロホルルもだいぶダメージを負っているのか、先程よりも怒りの度合いが激しくなっている……あと少しだ!

 

「ホロロロロ!!」

 

「……!またシャドーボール!」

 

再びシャドーボールをサイコキネシスで操り、死角からの攻撃を仕掛けてくる。甘いよ、ホロロホルル。今の私とダイケンキは一心同体、負ける気がしない!!

シャドーボールはダイケンキの周囲を縦横無尽に駆け回る。まだだ、まだ仕掛けては来ない。まだ……まだ……今!

 

「後ろだ!!」

 

「ルッシャア!!」

 

一瞬の判断。ダイケンキは素早くアシガタナを抜刀し、シャドーボールを切り伏せた!そのまま元の向きに戻るダイケンキ。方向転換もままならぬまま切り捨てられた事実に、ホロロホルルがギリギリと歯ぎしりをしている!

 

「ホッホォォーーーウッ!!」

 

力業のブレイブバード!どうする、ここは回避か……。

 

「……!ルルッシャアァァッ!!」

 

突然、ダイケンキが頭を振ったあとに力強く前足を踏みしめた?……!そうか、こんらんが解けたのか!!ならば、やることはひとつだけ!!

 

「ダイケンキ!力強く、ひけん・ちえなみ!!」

 

「ルッシャアアアアッ!!」

 

猛烈な勢いで飛んでくるホロロホルルを、すれ違いざまに切り裂く!!わずかな硬直の後、ダイケンキがアシガタナを納刀すると同時に、ホロロホルルが撃墜された!!墜落したホロロホルルはなんとか起き上がろうとしているが、ダメージが蓄積しているせいかその動きも非常に緩慢としている……今だ!

 

「よしっ!モンスターボール!!」

 

「ホロッ!?」

 

モンスターボールを投げ、ホロロホルルを格納する!しばらくの間、激しく動き続けたあとにゆっくりと動きが止まっていき……捕獲示す花火が上がった!!

 

「やった!ホロロホルル、捕獲!!」

 

「やったね、ショウさん!」

 

「フッ……」

 

ホロロホルルの捕獲に成功し、カイさんは喜びに声を上げた。アカイさんも小さく笑みを浮かべている。ホロロホルルが入ったボールを拾い、二人のもとへ戻る。

 

「……相変わらずすごいね、ショウさんは。初めて見るポケモンを相手にしても、一歩も退かないどころか逆に捕らえてしまうなんて」

 

「アカイさんが、色々とヒントをくれたからです。アカイさん、ありがとうございます」

 

「なに、気にしないでくれたまえ。君はまだ、やるべきことが残っているだろう?見るものを見た見物人は、このあたりで退散するとしよう」

 

「あっ、そうですか……。また、お会いできますかね……?」

 

「できるだろうな。なぜなら、湖はあと一つある……エイチ湖とリッシ湖、二つの湖で変異が起きていて、残りの一つに何もないはずがないだろう?」

 

「……それもそうですね」

 

そりゃあ、これだけおかしなことが起きているんだ……シンジ湖にも、なにか変異が起こっていてもおかしくはない。

 

「それではな、英雄たりうる少女よ。次はシンジ湖で会おう」

 

「はい、わかりました」

 

「アカイ殿、どうかお気をつけて」

 

そう言い残して、アカイさんは去っていった。……ウォロさんに足止めとか頼んでおけば良かったかな……いや、なんか無駄な気がするからやめておこう。それにしても、私が英雄足りうるって……そんな大袈裟な。

それから、私はリッシ湖の湖のポケモンの試練に臨んだ。内容としては、湖のポケモンにシズメダマを当てろ、というものだった。ただ、何度やってもテレポートで逃げまくるので、当てろと言いながら当てさせる気がないとか……終いには「諦めろ」なんて言ってくるし……情緒不安定か?言動が矛盾しまくってるけど。都合三度、「諦めない」意思を示せばようやく納得してくれた。

……ただ、その頃には私も若干だがムキになってて三度目なんて言葉と同時にシズメダマをぶん投げたせいで顔面にぶち当ててしまったことは申し訳ないと思う。……顔面にはぶち当ててしまったけど、結果的に道具を分けてくれたポケモンには感謝している。そのポケモンからは牙をもらった。……爪ときて次は牙か……そのうち羽とか毛とかくれそうだ。

洞窟から出て、ウォロさんと合流する。……ウォロさんの反応を見る限り、またしてもアカイさんを見ることはなかったようだ。あの人、なかなかに神出鬼没だな。そのまま隠れ里へ一旦戻り、コギトさんに牙を預ける。そして、この牙の持ち主の名が「アグノム」であることもわかった。最後の目的地、シンジ湖に向けてカイさんとウォロさんが先に向かったのを確認してから、私はリッシ湖の変異とホロロホルルについてコギトさんに話した。

 

「コギトさん、リッシ湖でも守護者のポケモンに変異が起きてました。守護者のポケモンは無事でしたが、代わりにこちらのホロロホルルが居座っていました」

 

「ホロルル」

 

「ほう……なんとも立派なフクロウポケモンじゃな。しかし、リッシ湖もか……こうなると、シンジ湖にも確実に変異が起きている、と見てよかろう。

これも時空の裂け目の影響じゃろうか……よもや、我々の知らない、未知の生物が大量に跋扈する時空に繋がっとるのではあるまいな……?」

 

「…………」

 

否定は、できなかった。

 

「……さて、なんにせよ残り一つじゃ。そなた、十二分に気を引き締めよ。もはや何が待ち構えておるかなど、誰にも予想はつかん」

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リオレウスの背に乗り原野ベースへ向かうと、そのままウォーグル、アヤシシ、イダイトウとライドポケモンを乗り継ぎしてシンジ湖にたどり着く。アルセウスフォンの力で入口を開き、中に入ると……。

 

「……なに、あれ……?」

 

「……っ」

 

入った瞬間から、濃密な殺気を叩き込まれた。洞窟の奥に居座るそのポケモンは、こちらを見るなりゆっくりと立ち上がった。

 

全長およそ12mに見える漆黒の体躯。

無数の突起に覆われたような、蒼黒く染まった金属質に見える尻尾。

口外に露出する太い牙に、口元から迸る赤い稲妻のような光。

 

見た目からして凶暴さが隠しきれていない、恐ろしい姿のポケモンがいた。

 

「あ、あれも……ポケモン、なの……?」

 

カイさんはそう言うが……なんか、あれは、違う気がする。ジンオウガたちと同じ、まったく別次元の生物のような……!

 

「オドルルル……!」

 

そのポケモンが前足を踏みしめると同時に、爪の形状が変化した!四本爪だった足は、四本爪が上に反り上がって足首付近に畳まれていたのだろう六本の爪が下に出て解放されている……!

 

「ウオオォォォロロロロロロンッ!!」

 

「来るっ……!」

 

目の前のポケモンはそのおどろおどろしい見た目の爪を振りかざして襲いかかってきた……!

 

 

 

 




本日はここまで。ついに湖もあと一箇所、そこに待つモンスターとは……まぁ、みなさんならお分かりですよね?剛太くん曰く「生きた心地がしなかった」理由も含めて。

そういえば、光輝くんたちも含めて、モンハンモンスターのステータスとかあまり考えたことなかったなぁ(考え始めたらキリがない、とも言う)。
ゴシャハギは……HAは高めでCS低めになるんかな。努力値はAブッパで、あとは……どうしよう?
ジンオウガたちも含めて考えておこうかな……逆に読者の皆様から見たモンハンモンスターのステータスも気になるところですがw
というわけで、勢いで登場した二匹目はホロロホルルでした。

ホロロホルル
タイプ1:エスパー
タイプ2:ゴースト

幻夢鱗粉は相手を過去作で言う「こんらん状態」に、催眠波は「ねむり状態」にします。各状態異常の効果は「こんらん」は命中低下、「ねむり」は過去作と同じです。

……MHP3rdの乱入システムとBGM、復活しねぇかなぁ……あれ、出てきた瞬間に「かかってこいやぁ!!」ってテンション上がって楽しかったんだけどなぁ……。





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湖の三試練 兇爪、跳梁蹂躙

ついに、モンハンモンスターがポケットモンスターに牙を剥く時……。

注:ポケモン側が結構残酷な目に遭います!


目の前のポケモンが、警戒し立ち尽くす私たちに飛びかかってきた、その時だった。

 

「タテトプス、てっぺき」

 

「テプッ!」

 

私たちの背後から繰り出されたタテトプスが、顔の盾を使ってポケモンの攻撃を食い止めた!この声は、アカイさん!

 

「アカイさん!」

 

「ズガイドス、アイアンヘッドだ」

 

「ガッドス!!」

 

「オロッ!?」

 

さらにタテトプスを踏み台にしたズガイドスが、アイアンヘッドで巨大ポケモンを撃退した!

 

「何をしている。兇爪竜を目の前にして立ち尽くすなど、死ぬ気か?」

 

「きょーそーりゅー?」

 

あのポケモンの名前、なのかな……?

 

「……いや、失礼。兇爪竜というのはあのポケモンの別名だ。奴の名は、『オドガロン』」

 

「オドガロン……」

 

「しかし、原種ならいざしらず、亜種個体とはな……まったく、偶然というのは時に必然以上に恐ろしい結果を齎すな」

 

「亜種?」

 

「君らで言うところの、リージョンフォームというやつさ。こちらでは亜種という呼び方を使う」

 

なるほど……つまり、目の前にいるポケモンはオドガロンで、さらにリージョンフォームした亜種個体と……いや、初見さんに対して情報量が多すぎませんか!?

 

「リージョンフォーム……!それで、あのような恐ろしい姿に……?」

 

「いや、原種も大概だがね。そもそもオドガロン科の生物はとても凶暴且つ獰猛な性格の種が大半で、見目の通りに恐ろしいものしかいないのだよ。原種、亜種問わずに、ね」

 

オドガロンは突然現れたタテトプスとズガイドスに対しても容赦なく攻め立てている。対する二匹も、矛と盾の役割を果たすべく盾が前、矛が後ろの隊列を組んでタテトプスがてっぺきで守り、ズガイドスが頭突き技で攻めるというコンビネーションでほぼ互角に渡り合っている。

 

「あの赤い光……なにか、凄まじい力を感じる……」

 

「さすがは一組織の長だな、シンジュの長殿。あの赤い稲妻のような光は龍属性エネルギー……君たちに分かりやすく言うと、ドラゴンパワーだ」

 

「ドラゴン……!」

 

「その凄惨かつ無慈悲に獲物の命を狩り獲る姿……邪悪とも呼ばれる恐怖の象徴。そしてその身に宿す兇暴の証たる龍属性の力。定められた属性は……悪と龍。あくタイプとドラゴンタイプの複合タイプというわけだ」

 

「あく・ドラゴン……」

 

しまったな……もしもそうなら、フェアリータイプのポケモンがいればまだまともに戦えたかもしれない。私の手持ちポケモンでフェアリー技を覚えているのはロズレイドとライチュウくらいだ。けれど、あの身のこなし……確実に素早さは高いと見ていいだろう。するとロズレイドでは戦いにくいかも知れない。けど、オドガロン相手にライチュウに「じゃれつく」を指示するのも、なかなかに抵抗感が……主に絵面が。

4倍弱点を確実に突くためにも、ロズレイドは温存しなければならないだろう。そうなると、幸いにしてあくタイプとドラゴンタイプ単体なら、私のポケモンたちなら全員がそれぞれの弱点を突く技を覚えている。なにより、かくとうタイプのゴウカザルとドラゴンタイプのガブリアスがいる……この二匹と、ロズレイドのマジカルシャインを最高打点として戦うしかない……!

 

「……もしや、オドガロンと戦う気か?」

 

「もちろんです。……やはり、何かあるんですか」

 

「無論。あの爪に切り裂かれれば惨たらしい傷を刻み込むこととなり、生き延びたとしても断続的な出血と激痛で長時間に渡りポケモンを苦しめることになる……そんな覚悟が、君にあるのか?」

 

「……!?それほどまでに、オドガロンの爪は危険なのか!」

 

「あぁ。我が故郷では『裂傷状態』と呼んでいるが、こうなっては下手に動き回れば被害が広がるばかり……大人しくしゃがみ込みじっとしているか、食肉用の肉を食らうか、活力剤と呼ばれる特殊な薬を飲む他ない。我が故郷でも、オドガロンと相対した際にはこれらの対策を徹底していたからな。私が故郷から持ち込んだ薬品類の中に、活力剤がある。一応、こちらでの調合方法を参考に塗り薬として改良した。強力な薬故、患部に直接塗らずとも効果を発する代物だ。都合五つしかないが……ないよりはマシだ、使いたまえ」

 

ショウは かつりょくざいを 手に入れた!▼

 

 

『かつりょくざい』

塗って使う薬に改良された元飲み薬。

戦闘中のポケモンが行動するたびにHPを1/16回復する。

ポケモン1匹の裂傷状態を回復する。

 

 

「ありがとうございます!」

 

アカイさん……何から何まで本当に……!

 

「その活力剤は、あくまで保険だ。そもそも喰らわないなら、それに越したことはないが……オドガロンは原種・亜種ともに全身が強靭な筋肉に覆われている。私が知る限りあの亜種個体は12m弱の最小サイズだが、獣のように俊敏で滑らかな身のこなしを可能としている。戦闘中に使える余裕は、あまりないだろうな」

 

「じゅ、12m弱で最小……一応聞くが、最大サイズになると?」

 

「あれよりも5mは大きい」

 

「5mも変わるのか……」

 

カイさんはもはや驚きを通り越したなにかを感じているらしい。私は……あまりサイズ差に驚きはない。たしかイワークは最小と最大の差が3.5mほど、ハガネールだって最小と最大の差は3.3mほどはあったはず。それより約1.7倍程度大きいだけなら、まぁ……。ただ、17mの巨体は流石に無視できないけど、今回は最小サイズらしい。

 

「さあ、少女よ。兇爪竜の爪牙を乗り越え、見事試練に望む権利を手に出来るか?何度も言うが、オドガロンの爪だけは十分に気をつけたまえ」

 

「了解です……!ガブリアス!!」

 

「ガブアァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【荒ぶる乱入者】 ~モンスターハンターポータブル3rd~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オドロロッ!」

 

オドガロンは爪を展開すると、ターゲットをガブリアスに変更して襲いかかってきた。どうやら「狩り易い小柄な獲物」よりも「わかりやすく脅威となりうる外敵」を優先したみたい!

 

「ガブリアス!オドガロンの爪に気をつけて!じならし!!」

 

「ガブガブゥ!」

 

「……!」

 

ガブリアスがじならしの為に地面を踏み鳴らそうとした、その時だ!オドガロンは壁に向かって走るとそのまま壁を登り、壁蹴りをしてそのまま空中から飛びかかってきた!?

 

「嘘っ!?こっちの動きを読んだ!?ドラゴンクロー!!」

 

「ガ、ガブッ!!」

 

こっちの指示も間に合った!ガブリアスのドラゴンクローと、オドガロンの、アレは……ドラゴンクローか!ドラゴンクロー同士が交差し、再び互いににらみ合う……っ!

 

「ガブリアス……!」

 

「ガブッ……」

 

「オロルル」

 

ガブリアスの脇腹を、爪が掠めたのか血が流れている……!対してオドガロンは……。……!?確かに当たったはずなのに、大してダメージがない……!?

 

「ふむ……これは、オドガロン亜種の肉質もタイプ相性に影響しているのか……」

 

「肉質……?」

 

「まあ、わかりやすく言うと体質だな。オドガロン亜種は龍属性……君らで言うドラゴンタイプに対して耐性を持っているのだ。反面、炎、水、雷、氷の四属性には分が悪いが……むしだのかくとうだのフェアリーだのと、その他のタイプ相性は我が故郷では把握しきれていなくてな……相性に関しては、あまり力になれそうにない」

 

「いえ、それだけわかれば十分です……!」

 

カイさんとアカイさんの会話で、やっぱりオドガロンにも体質的タイプ相性が存在することを知ることができた!それは、ゴシャハギとホロロホルルにも言えることだ。

オドガロン亜種のタイプはあくとドラゴン。あくはむし、かくとう、フェアリーに弱く、ドラゴンはこおりとドラゴンとフェアリーに弱い。そして、オドガロンの体質はドラゴンに強く、ほのお、みず、でんき、こおりに弱い……。つまり、ドラゴンタイプは相性としては等倍だが、ドラゴンが得意なほのお、みず、でんきも等倍、さらにこおりタイプには滅法弱い。そしてあくとドラゴンという複合タイプはフェアリーにめちゃくちゃ弱い!

ドラゴンが耐性を持つほのお、みず、でんきが等倍というのは単純にありがたい。私の手持ちでこおり技を覚えているのはミミロップのれいとうパンチだけ……フェアリー技もロズレイドとライチュウの二匹だけ……ただ、高い戦闘能力をもつガブリアスがドラゴン同士の殴り合いで打ち負けてしまうのは非常に痛い。

今も、ガブリアスの体に大きな傷ができて、そこから血が流れている……多分、あれが裂傷状態!痛みを堪えるガブリアスはかなり戦いづらそうだ……!

 

「ガブリアス、戻って!」

 

ドラゴンが等倍なら、これ以上ガブリアスで戦うのは愚の骨頂!ここはミミロップで……!

 

「……!オガロロー!!」

 

「……ッ!?」

 

オ、オドガロンがこっちに来て――!?

 

「ナエトル、エナジーボールだ!」

 

「エットォ!!」

 

アカイさんのナエトルが、こっちに向かってくるオドガロンを牽制した!

 

「タテトプス、ズガイドス。れいとうビーム」

 

「テトォ!」

 

「ガドォ!」

 

「オロガァ!?」

 

さらにタテトプス、ズガイドスのれいとうビームが命中し、意識外からの奇襲にオドガロンが悲鳴を上げた!

 

「何をしている、早くポケモンを出したまえ。この程度、牽制にもなりはしないぞ」

 

「は、はいっ!行って、ミミロップ!!」

 

「ミッミー!!」

 

……ふぅ、一瞬だけど死んだかと思った。いや、アカイさんの横槍がなければ普通に死んでいた。オドガロン……判断が早い。目の前の獲物がいなくなれば、すぐに別の獲物を探して襲いかかる……それも、強い個体ではない弱い存在から……ポケモン交代も、やり方を考えないと戻した瞬間に殺されかねない……!

 

「行くよ、ミミロップ……!」

 

「ミミ……!!」

 

「グルルル……オガロロー!!」

 

「来るよ!れいとうパンチ!!」

 

「ミミロー!!」

 

オドガロンが右へ左へと体を振ってから、一気に飛びかかってきた!ミミロップは持ち前の軽快さでオドガロンの牙や爪を回避して、攻撃直後の胴体にれいとうパンチを叩きつけた!

 

「グルッ……」

 

「そのままれいとうパンチで畳み掛けて!」

 

「ミミー!!」

 

オドガロンは薙ぎ払うように前脚を振るうが、ミミロップはそれを跳躍して回避!背中にもう一発れいとうパンチを叩き込む!オドガロンが体を振り回すように回転してミミロップを振り落とそうとするも、それよりも早くミミロップがオドガロンから飛び降りた。

 

「素早く、ドレインパンチ!」

 

「ミッミ!」

 

「グゥ……!」

 

オドガロンの周囲を素早く移動しながら、ミミロップは早業ドレインパンチを繰り出す。攻撃は絶えず命中し続けており、オドガロンに対して確実にダメージを蓄積できている……行けるっ……このままスピードで攪乱すれば……!

 

「……ッ!!」

 

……っ!?オドガロンの目が、一瞬赤く――

 

「ゴアアアァ!!」

 

「ミッ!?」

 

ミミロップが目の前を横切った直後、オドガロンは首を素早く動かした!それと同時に動きを止めるミミロップ……!ミミロップの長い耳が、オドガロンに咥えられて……捕まった!?

 

「オドロガガ!!」

 

「ミミィ!!」

 

「ミミロップ!!」

 

オドガロンは頭を激しく振り回し、何度もミミロップを地面に叩きつけたあと、右足でミミロップの胴体を押さえつけた!さらにオドガロンが顎に力を……!や、やめてっ!?

 

ブチブチブチィ!

 

「ミ"イ"イ"イ"ィ"ィ"イ"ィ"イ"ィ"ッ!!」

 

「ミミロップゥッ!?」

 

ミミロップの耳に、オドガロンの牙が深く食い込んで、血が――!!

 

「グレイシア!力強く、ふぶきっ!!」

 

「レィ!シャアアア!!」

 

「ギャウッ!?」

 

その直後だ。カイさんの大声とともに、カイさんのグレイシアがふぶきを放っていた。力業で放たれたふぶきはオドガロンとミミロップを引き剥がし、大きく距離をあけた!

 

「氷壁だ」

 

「……!わかった、グレイシア!」

 

「ズガイドス、タテトプス」

 

「「れいとうビーム!」」

 

「レイシャア!」

 

「ズッガァ!」

 

「テトォ!」

 

グレイシアと、さらにアカイさんのズガイドスとタテトプスも加わって放たれたれいとうビームは一瞬で氷の壁を作り出し、一時的にオドガロンを隔離できた!氷壁の向こうからは、何度も打ち付けるような音がする……今のうちに、ミミロップを!!

 

「ミミロップ!!」

 

「ミィ……」

 

あぁ……ミミロップの、耳が……!激しい力で噛み付かれたせいか、歯が食い込んだような傷跡がたくさん付いて、その上出血までしている……。わ、私のせいだ、私が……!

 

「少女よ、感傷も反省も、全て後回しにしたまえ。ここでは治療もままならない……ひとまず、そのポケモンはボールに戻しておくべきだろう」

 

「は、はい……。ごめんね、ミミロップ……少しの間だけ、我慢して……」

 

「ミ……」

 

ミミロップをボールに戻して、ボールをポーチにしまう。私の手には、ミミロップの耳から流れた血がついている……こんな、こんな傷が出来てしまうなんて……。

 

「次のポケモンを出すなら、早くしたまえ。あの氷壁も所詮は即席、そう長くは持たない」

 

「……!!アカイ殿!ショウさんはたった今、目の前でポケモンが信じられない大怪我を負ったばかりだというのに……!」

 

「嘆き悲しみ悔やめば、そのポケモンは癒されるのか?むしろここで我々が尻尾を巻いて逃げるか全滅した後のことを考えたまえ。オドガロンはこの洞窟を抜け出し、ヒスイ地方に解き放たれることとなる……そうなれば、どれだけの命が犠牲になることやら」

 

「あなたは……!!」

 

「ここへ足を踏み入れたその時から、我々に退路などないのだよ。生きるか、死ぬか……弱肉強食、それもまた世の真理よ。少なくとも、我が故郷ではそれが当たり前故な」

 

弱肉強食……弱者は淘汰され、強者のみが生きる世界……。アカイさんの故郷では、それが当たり前……。ポケモンが人間を襲い、人間がポケモンを撃退する……。

私は、なんとか立ち上がることができた。正直、今も感じているこの恐怖は、リオレウスに襲われた時の比ではない。殺される可能性……それは私たち人間だけでなく、ポケモンたちにだって言えること……それを、まざまざと見せつけられたようで私の心は荒れていた。落ち着こうと深呼吸をしても、ちっとも落ち着いてくれない……。

 

「……少女よ」

 

「アカイ、さん……?」

 

「少女よ、恐怖することはいけないことではない。恐怖心を知らぬ心はいつしか慢心を生み、慢心は滅びを齎す。我が故郷でも、敵と相対した時、敵を恐れなかった者は一人もいなかった。それどころか、敵に対して恐れるとともに敬意を払う者もいた。まだ見ぬ姿に想いを馳せ、その影を追う者もいた。

オドガロンはこの場においては敵であることに変わりはないが……我々にとっては恐ろしくも尊いもの……自然そのものなのだよ。そして、人類は自然を時には恐れ、時には尊ぶ……ポケモンとて、この世に生きる自然の一部だ。ほら、何も変わりはないだろう?」

 

「……!!」

 

恐れ、尊ぶ……それが、自然……それが、弱肉強食……。

氷の壁に、ひび割れが出来始めた……もうしばらくすれば、オドガロンは氷壁を突破してくるだろう……。

 

「恐れるな、などとは言わない。だが、恐れに屈してはいけない。恐れに抗するは勇気にある。だが、蛮勇と履き違えてはならない。特別な理由がなければ、皆で力を合わせればいい。我が故郷の戦士たち……狩人(ハンター)も、そうして力を合わせて怪物(モンスター)たちに対抗してきた。

……こんな言葉がある。

真の狩人(ハンター)とは力ではない、強い装備でもない、ましてや狩ったモンスターの数でもない。すべてを自然の一員とみなし、それを調え、制する者を指す。すべての命を受け入れて、生も死をも見つめ続ける最高の狩人……人はそれを、伝説の狩人(モンスターハンター)と呼ぶ」

 

「モンスター……ハンター……」

 

「君たち携帯獣の繰り手(ポケモントレーナー)とはやや異なりはするが、完全に異とするものとは思っていないよ。君たちもまたポケモンという命と、自然と触れ合い、生を見守り死を見送ってきた……この戦いも、その一過程に過ぎない。

さあ、前を向け。君のポケットの中には、まだまだたくさんの仲間が居るだろう?」

 

「……!はい……!!」

 

ガブリアスとミミロップの負傷で、私はだいぶ精神的に追い込まれていたらしい……まして、それが普通のポケモンバトルでなら絶対に負わないような重症なら尚更のこと。でも、まだだ。ここで折れてはいけない、折れるわけには行かない……私にはまだ、仲間が居るのだから!

 

「ゴウカザル!!」

 

「ウッキィ!!」

 

私が繰り出したのは、あくタイプに有利が取れるゴウカザル。……けど、タイプ相性だけで勝てるほど甘くはない……さんざん痛感したことだ、油断はできない……!!

 

ガッシャーン!!

 

「ウオォォロロロンッ!!」

 

氷壁を粉砕し、オドガロンが飛び出してきた!

 

「ゴウカザル!かみなりパンチ!!」

 

「ウッキャア!!」

 

まずは状態異常を狙う!ゴウカザルは迫り来るオドガロンの攻撃をしっかりと躱しながら、着実にかみなりパンチを当てていく!……!オドガロンが距離をとった……!

 

「オガロロン!!」

 

あれは、りゅうのはどうか!

 

「フレアドライブ!!」

 

「ウッキャキャアッ!!」

 

ゴウカザルのフレアドライブで、強引にだがりゅうのはどうを突破する!!……よしっ、押し切れる!オドガロンは特殊はあまり高くないみたい!

 

「インファイト!!」

 

「ウウゥゥゥキャキャキャキャキャキャッ!!」

 

「ガッ!グウゥ……!!」

 

よしっ、効いてる!!このまま一気に――

 

「……!グオロロン!!」

 

「ウキッ……!

 

……!オドガロンが勢いよく体を旋回させてゴウカザルを吹っ飛ばした!よく見ると尻尾に鋼の力が……アイアンテールか!

 

「オドガロー!!」

 

あの毒々しい紫の爪……まさか、フェイタルクロー!?

 

「ガロロロロ!!」

 

「ウギッ!」

 

まずい、フェイタルクローを食らってしまった!フェイタルクローは確率で毒か麻痺、眠気に襲われる厄介な攻撃……状態異常は……!?

 

「キキッ……!」

 

ゴウカザルの動きが鈍い……まさか、麻痺!?……ッ!!オドガロンの爪が、再び十本に変化した!裂傷状態の攻撃が来る……!!

 

「ゴウカザル!!避けて!!」

 

「オロロロンッ!!」

 

「ウギャアッ!?」

 

「ゴウカザルッ!!」

 

ゴウカザルは体が痺れて動けない!そこへオドガロンの兇爪が襲い掛かり、ゴウカザルを深く切り裂いた!!ゴウカザルの体から、夥しい量の血が……!

 

「ゴウカザル!もど――!!」

 

「ゴォウカアアアアアッ!!」

 

私はゴウカザルをボールに戻そうとした……けど、ゴウカザルはしっかりと両足で立ち上がると私の方を見てきた。ゴウカザルは……引き下がるつもりはない、と言いたそうにしている……。

私は……私は、ゴウカザルを、信じる!!

 

「力強く、インファイトォッ!!」

 

「ウウウキャアアアアアアッ!!」

 

ゴウカザルの決死の乱打が、次々とオドガロンに浴びせられる!その激しい攻撃に、オドガロンは一歩、二歩と後退していく……!ゴウカザルの攻撃が、オドガロンの顔面に叩き込まれようとした……その時だ!突然、オドガロンの頭部が黒煙のようなエネルギーに包まれ、両眼も煌々と輝く赤色に染まった。さらに上半身には赤い紋様のような筋が表れ、一層不気味で恐ろしい形相と化した!?

オドガロンは驚異的な反射神経で顔面に迫るゴウカザルの拳をその口に咥え込んだ!!

 

「まずい……!あれじゃあ、ミミロップの二の舞に……!!」

 

後ろでカイさんがそう言った直後、オドガロンは再び頭を激しく振って何度も何度もゴウカザルを地面に叩きつけるとそのまま勢いよく放り投げた!上に放られたゴウカザル目掛けて、オドガロンが強烈な頭突きを繰り出してさらに吹っ飛ばした!あれは、もろはのずつき!!ダメだ、ゴウカザルじゃ耐えられない!!

 

「ゴウカザル!!」

 

なんとかボールを使って、ゴウカザルが壁に叩きつけられる前に戻すことができた……。ガブリアス、ミミロップ、そしてゴウカザル……みんな、私の自慢のポケモンなのに、オドガロン一匹に継戦が難しいほどに追い詰められた。まして、ミミロップとゴウカザルは戦闘不能……オドガロンはまだまだ健在だ、ロズレイドを出すには危険すぎる。なら、私は次に出すのは……!

 

「ダイケンキ!!」

 

「ルシャア!」

 

私の最高のパートナーで、さらにダメージを稼ぐ!!

 

「気をつけろ、少女よ。オドガロンのあの状態……所謂『強暴化状態』と呼ばれる特殊形態だ。君らはフォルムチェンジ、というのだったな。あれはオドガロン種が獲物を喰らい、多量のエネルギーを一気に摂りこむ事で変化する。……おそらく、ミミロップの耳を食い潰した際に、その血肉をわずかでも摂り込んだのだろう……ああなれば、歴戦の猛者といえど苦戦は必至、ポケモンだけでどこまで戦えるか……」

 

「大丈夫……ショウさんなら、きっと勝てる……!!」

 

カイさん……私のことを信じてくれる人が、私の後ろにいる。ならば、私はどんなことがあっても、引き下がるわけには行かないんだ!!

 

「行くぞ、ダイケンキ!!」

 

「ルシア!」

 

「どくづき!」

 

「ルッシャア!!」

 

ダイケンキが駆け出し、同時にオドガロンも向かってきた……!速い、明らかにさっきとは動きが違う!!一気に距離を詰めたオドガロンは容赦なく爪の攻撃を繰り出してくる。だが、ダイケンキはその攻撃を避けたりどくづきで迎撃したりと、上手いこと躱している……!ここだ!

 

「跳べ、ダイケンキ!!」

 

「ルルシャア!」

 

「……!」

 

「シザークロス!!」

 

「ルッシャアア!!」

 

爪の攻撃を跳躍で躱し、見上げたオドガロンにシザークロスを叩き込む!あくタイプのオドガロンに、むし技は効果は抜群!かなり効いたはずだ!

 

「ウオロロロ!」

 

「アクアテール!!」

 

「ルシ!!」

 

「ウロッ!?」

 

再びオドガロンが噛み付いてこようとしたけど、アクアテールを鼻先に当てたことで怯ませることができた!

 

「ひけん・ちえなみ!!」

 

「ルルッシャ!!」

 

「グッ……!

 

よっし!ひけん・ちえなみも命中!散らばった貝殻がオドガロンの体にいくつも突き刺さり、継続ダメージを与える!

 

「オドガアーッ!!」

 

「ルジャッ……!!」

 

オドガロンのアイアンテールで、ダイケンキが吹っ飛ばされた!さらに、オドガロンは私の方へと素早く振り返った……!

 

「オドロロロ!!」

 

「グレイシア!」

 

「レイシャ!」

 

カイさんの声に応じ、グレイシアがれいとうビームを放つが、回避されてしまった!オドガロンが大きく口を開けて、私を――

 

ガチンッ!

 

――とは、ならなかった。直前で、ダイケンキが間に角を差し込んでオドガロンの牙を抑えてくれたからだ!けど、そのせいでダイケンキまでもがオドガロンに捕まってしまった……!

 

「逃げて!ダイケンキ!!」

 

「オガロロ!」

 

「ルッ……!!」

 

オドガロンはダイケンキを咥えたまま走り出し、柱に向けてダイケンキをぶつけていった!さらに前脚でダイケンキを押さえつけ、そのまま圧をかけていく……!!

 

「ル、シャア……!」

 

「ダ、ダイケンキ……」

 

ダイケンキ、一体、何を……オドガロンの口元から、ミシミシと音が……まさか!?

 

「ダイケンキッ!!だめぇ!!」

 

「ルジャア"ア"ア"ア"ッ!!」

 

 

バキリッ。

 

 

「あ――」

 

ダイケンキが……角を、折った……それも、自分の意思で……!!

 

「ルシャ、ルシャア!!」

 

「……!ダイケンキ!力強く、シザークロス!!」

 

「ルルッシャアアアア!!」

 

角が折れたことで抑えがなくなり、前につんのめったオドガロンの足から一瞬で脱出したダイケンキに叱咤され、すぐさま力業シザークロスを指示した。ゼロ距離からの斬撃を避けられず、オドガロンはまともに食らって吹っ飛んだ!

 

「ここしかない!戻ってダイケンキ!お願い、ロズレイド!!」

 

「ローゼー!!」

 

「ロオオオガアアアッ!!」

 

ロズレイドを繰り出すと同時に、オドガロンがげきりんの技で突撃してくる。ここで確実に、ぶち当ててやる!!

 

「ロズレイド!力強く、マジカルシャイン!!」

 

「ローズレーッ!!」

 

「ガッ、ギッ……ロガアアッ!!」

 

技同士のタイプ相性もあって、力業マジカルシャインはオドガロンを吹っ飛ばして壁に叩きつけた!そのまま地面に倒れるオドガロン……今だ!!

 

「モンスターボール!!」

 

私はすぐにモンスターボールをオドガロンに向かって投げた!モンスターボールはオドガロンを確実に格納した……一度、二度、三度と揺れて……捕獲の花火が打ち上げられた!

 

「はぁ……はぁ……!や、やった……オドガロン、捕獲……!」

 

「やった、ショウさん……!」

 

「ふむ……辛くも勝利、といったところか。いや、なんにせよ勝てたのならばよかった」

 

私はオドガロンを捕獲したボールを手に取る。……苦戦、した。ポケモンたちもたくさん傷つきながら、私のためにみんなのために、一生懸命に戦ってくれた……みんなには、本当に感謝しないと……。

 

「……ふむ、試練の時のようだ」

 

「……!」

 

アカイさんの言葉に反応して顔を上げると、四つのピンク色の房のような頭のポケモンが姿を現した。そのポケモンは私の感情を求めているそうなので、素直に応じることにした。そのポケモンが私に尋ねたことは複数個あった。ヒスイ地方に初めて訪れた時の気持ち、ポケモンを仲間にしてともに行動することをどう感じたか、コンゴウ団やシンジュ団と関わってみて何を思ったか、ギンガ団を追放されて路頭に迷ったとき何を感じたか。そして……

 

《この世ならざる 異形の獣と触れ合い混じり合い

時に力を合わせ 時に刃を交えて 何を感じたか》

 

そして、ジンオウガたちとの出会いやバトルを通じて、何を感じたのか。

 

「……ジンオウガたちと出会った時は、いつも不思議な気分だった。ずっと、彼らのことを知りたいという気持ちが胸の奥から湧き出てきていた。バトルをしてみて、彼らが普通のポケモンよりも一線を画す力を持ち、恐ろしい存在だと感じた……けど、そんな彼らが力を貸してくれると思うと、すごく嬉しかったよ」

 

私の答えに満足したのか、最後の質問の後にそのポケモンはニッコリと微笑んだ。……結構可愛い。そして、そのポケモンの一部である羽を受け取った。……前の私の予想、半分が当たっちゃったな。

三つの道具が全て揃った……早速コギトさんのもとへ……行く前に。

 

「ひとまず、原野ベースに急ぎましょう。ポケモンたちの手当をしないと……!」

 

「そうだね……ウォロさんには、わたしから事情を話しておく。だから、ショウさんは一足先にベースキャンプに行って!」

 

「ありがとう、カイさん!アカイさん、活力剤はしっかりと有効活用させていただきます!」

 

「そのために渡したのだ、遠慮はいらんよ。君たちは先を急ぎたまえ」

 

「はい!」

 

アカイさんをその場に残して、私とカイさんは急いで洞窟の外へ出る。カイさんがウォロさんに話をしている間に、私はライドポケモンたちを乗り継いで原野ベースまで急行する。

 

この時、私は全く予想すらできなかった。まさか、あの子が――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まったく。狩人でもない少女一人に、いささか荷が勝ちすぎたのでは?」

 

「…………。まぁ、貴女の言わんとすることもわからんでもない。この地で彼の龍と相対するならば、むしろこれくらいは乗り越えてもらわねば」

 

「それにしても……雷狼竜、鎧竜、海竜、火竜、氷牙竜……これらのモンスターを従える異界人、その人となりを知るべくこの世界の混乱に乗じるその強かさ、大したものです」

 

「…………。フッフッ、私は……えぇ、それなりには気に入っていますよ。いつしかこの世界のルールで戦ってみたいと思えるくらいには。彼女は……ショウは、可能性を秘めている。それこそ、我々の世界における伝説の狩人と同じか、あるいは……」

 

「なんにせよ、私はもう少し彼女を見守ろうと思います。まずは、この世界の異常を解決しないことにはお話にもなりませんしね」

 

「えぇ、えぇ……フフッ、貴女もなんだかんだ、相見える日を楽しみにしている、と」

 

「それは重畳。では、本日はこの辺で。それでは、また」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我らがよ」

 

 

 

 




対オドガロン戦……決して無傷での攻略とはいきませんでした。
ショウちゃんのポケモンたちの安否やいかに……




そして





祖龍さんが見てる


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【ディアパル】我らモンハン部異世界支部【決戦じゃい!】

原作もだいぶ進んできましたね


1:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

待ちに待った時が来たのだ……

 

2:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

多くの出会いが無駄でなかったことの証のために

 

3:空の王者 ID:MH2nddosHr8

再びショウちゃんの信頼を勝ち取る為に

 

4:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

故郷への帰還成就のために!

 

5:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

コトブキムラよ!我々は帰ってきたー!!(未到着)

 

6:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

はい、本日の茶番ノルマは達成、と

 

7:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

乙でしたー

 

8:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それじゃあ、真面目な話するかー

 

9:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

原野ベースでゴウカザル、ミミロップの応急処置を終えて霧の遺跡へ移動

なんとかあかいくさりを完成させて、現在はコトブキムラへ移動中

 

10:空の王者 ID:MH2nddosHr8

戦果を発表します

 

ゴシャハギ:捕獲

ホロロホルル:捕獲

オドガロン(亜):捕獲

 

 

ショウちゃん手持ち状況

 

ガブリアス:軽傷

内容

裂傷状態(活力剤で回復済)

 

結論→戦線復帰

 

 

ダイケンキ:軽傷

内容

角が折れるも五体満足

 

結論→戦線復帰(メガホーン使用不可)

 

 

ゴウカザル:重症

内容

手根骨粉砕

尺骨橈骨ともに骨折

裂傷状態(活力剤で回復済)

 

結論→長期離脱は止むなし

 

 

ミミロップ:重症

内容

右耳失聴

 

結論→戦線離脱

 

 

こんなものか

 

11:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

被害甚大じゃないですかヤダー!!

 

12:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ゴウカザルとミミロップ……二匹とも戦えなくなったのは痛い

 

13:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

しかもミミロップは永久離脱やぞ、ショウちゃんボロクソに泣きまくっとったやん

 

14:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ショウちゃんが初めて捕った色違いポケモンやったんやな……そりゃあ思い出深い分、大声で泣くのも無理はない……

 

15:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

実力もあるし思い出補正もあるし……それが二度と戦えないってなったら……

 

16:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

耳が聞こえないんじゃあ、野生に帰してもかえって危険だ……ミミロップは一生、コトブキムラから出られなくなってしまったな……

 

17:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

クソッ!12mのオド亜種があんだけ動けるんなら、せめて俺が最小金冠だったなら!!13m半でまだ戦えたかもしれんのに!!

 

18:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……こりゃあ、リオレウスたちが最大金冠サイズで選ばれたのは、もっと大きな敵が現れるかもしれんからかもな……

 

19:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そうじゃなきゃ絶対に納得できん、あの洞窟内での戦闘を想定していないサイズだからな

 

20:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺が気になったのが、ショウちゃんがやたらフェアリータイプの不在を気にしていたことだな

 

21:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

より正確に言うなら、オド亜種に対して4倍弱点をタイプ一致で打てるポケモンが手持ちにいないこと、だったな

 

22:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

オド亜種にじゃれつくライチュウ見たい……見たくない?

 

23:空の王者 ID:MH2nddosHr8

絶対に見たくない

 

24:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

即答で草

 

25:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんにせよコトブキムラにはよ帰らんとな

あかいくさりのことを伝えるついでに、ゴウカザルとミミロップを預けてこんと

 

26:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

黒曜の原野付近からはムラが近いせいで光輝や焔を使えんからか、ショウちゃんめちゃくちゃ早足だ

 

27:空の王者 ID:MH2nddosHr8

回復道具だけじゃあ、外傷は治せても中まではどうにもならんかった……

ギンガ団の医療隊なら、最低限の応急処置しかできなかったベースキャンプよりかはより確実性のある治療が見込めるから、ワンチャンそっちに託すしかない

 

28:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

というか、ウォロの応急処置が的確すぎてビビったんだが

 

29:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あいつ……一応は商会の人間としての最低限のスキルは身につけていたんだな……

 

30:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あちこち練り歩く商会だからな、自衛や治療の手段を知ってても不思議ではなかったが……

 

31:空の王者 ID:MH2nddosHr8

文句だけは一丁前に多いサボリ魔の癖に、そこまでの能力があるとは思わなかった

 

32:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

一応は商会の一員としての自覚があったんやなアイツ……

 

33:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それすら演技かもしれんがな

 

34:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……っと、話してる間に着いたぞ

 

35:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おっすおっす、テルくんおっす

 

36:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……チッ、デンボクのあほんだらが、もうテンガン山に向かったのか

ショウちゃんに調査という名の追放の命令しといてあいつ……やっぱ殺したろか?

 

37:空の王者 ID:MH2nddosHr8

蹂躙なら任せろー メラメラ

 

38:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

やめて!

 

39:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんだ止めるんか?

 

40:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ポケモンは巻き込んだら可哀想だからデンボクだけにして

 

41:空の王者 ID:MH2nddosHr8

無慈悲で草生えちらかす

 

42:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

殺人なら任せろー ゴウゴウ

 

43:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

よし、やれ

 

44:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

"やれ"じゃねえんだわ、物騒なことはするな!ショウ裁判長が判決を下すまでこの話題は休廷だ!休廷!!

 

45:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

えー

 

46:空の王者 ID:MH2nddosHr8

判決待ちならしゃーねーわ

 

47:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……おっ、テルくん?

 

48:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

「何かあったのか?」……って、え?

 

49:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まさか、ショウちゃんが泣いてたことに気づいたのか……?

 

50:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おぉ……「先輩なんだから頼ってくれ」と

いいぞテルくん!もっと男を見せてくれ!!あと俺にもっとテルショウを見せてくれぇ!!

 

51:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

最後まで我欲たっぷり

 

52:空の王者 ID:MH2nddosHr8

最後がなければまだマシだったのにww

 

53:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……あぁ、ショウちゃんテルくんに話しちゃうのね……あぁ、また涙が……

 

54:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

んで、話を聞いたテルくんは……おぉ!

 

55:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そっとショウちゃんを抱きしめてよしよしと

 

56:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

わ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ!!

あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!

てえええぇてええええぇぇぇぇぇぇっ!!

やっぱりテルショウや!テルショウしか勝たん!!

 

57:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

光輝が限界化したぞ!

 

58:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

奴は根っからのテルショウ派だからな

 

59:空の王者 ID:MH2nddosHr8

クッソ

 

60:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ちっ、ウォロの野郎はなにやってんだ

 

61:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はぁ、はぁ……いい、いいぞ!今ならカビゴン三匹はいける!!

 

62:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

その「飯三杯いける」って言い方やめろw

 

63:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

完全に厄介オタクwwwww

 

64:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……うむ、ショウちゃんも落ち着いてきたな

 

65:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

フッフwショウちゃんってば顔真っ赤にして……女の顔になってる……!?

 

66:空の王者 ID:MH2nddosHr8

う"わ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?うそだああああああ!!

 

67:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

テルてめぇえええええっ!!なにしてんだよおおおお!?

 

68:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

完  全  勝  利

 

69:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あ~……うん……これは完全に落ちてますね

 

70:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

一方、テルくんはいつもどおりの笑顔……テルくんはラノベ系主人公だった……?

 

71:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やーいやーい!セキショウ、ウォロショウ、その他諸々共!!時代はテルショウだってよぉー!残念だったなぁ!!

 

72:空の王者 ID:MH2nddosHr8

クソワン公が!ぶっ殺すぞ!?

 

73:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

今度余計な事を言うとその口を縫い合わせるぞ……!!

 

74:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

だぁー!!お前らマジでやめろって!!

……でもこれ、ショウちゃんにとっては余計にしんどいだけだと思うぞ?ショウちゃんは元の時代に帰るつもりでいるのに、ここに来て恋慕の情とか沸いてきたら……

 

75:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まぁ、迷いが生じることは間違いないだろうな。俺らはショウちゃんの決断を尊重するぜ

 

76:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それはそう

 

77:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……おぉ、ラベン博士、お久しゅう

 

78:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

シマボシ隊長は忙しさで出迎えに来れず、デンボクは警備隊を率いてテンガン山へと

 

79:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

原作通りだな

 

80:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ほんまデンボクのあんちくしょうがムカッ腹立つクソ親父やで

 

81:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

落ち着け剛太

 

82:空の王者 ID:MH2nddosHr8

やっほー、シマボシ隊長!ボールの中から失礼、初めましてー

 

83:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

向こうにゃ聞こえんし、なんなら俺らのことなんにも知らんじゃろ

 

84:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

しばらくお話タイムだな……三匹の湖のポケモンのことと、あかいくさりのことと……

 

85:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……ん?隊長どの?まだなにか確認することがおありで……?

 

86:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……「異変発生後に各地にて出現した未確認巨大ポケモン」……?

 

87:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺らのことやんけ

 

88:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ああ、テルくんとラベン博士が団長に報告した件か……そりゃあ、隊長のシマボシさんが聞いてないはずがないわな

 

89:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふむ、隊長殿としては「強力極まりなく且つ巨大なポケモンを御することができるのか」という確認がしたかったのか

 

90:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ショウちゃん マイ フレンド

 

91:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

連れて行かれそうww

 

92:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ショウちゃんも自信を持って頷いてくれたし、俺たちも胸を張ろうぜ

 

93:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……おぉ、ショウちゃんがギンガ団に復団か

 

94:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ほかならぬシマボシ隊長からの言葉だからこそ頷いた部分もあるが……まぁ、原作通りに行ってよかった

 

95:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

留守を預ける方が悪いwww

 

96:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

最高だぜ隊長!あんた最高だよ!!

 

97:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

不覚にもここは笑ったなぁ……「デンボクざまぁww」って

 

98:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

DPtとLEGENDSとで、先祖と子孫の役割が真逆なのが細かいよな

 

99:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さて、山頂ベースに行く前にちょちょっと医療隊へお邪魔して……って、へ?

 

100:空の王者 ID:MH2nddosHr8

キネさん……?見間違いじゃなければ、傍らに居るのはラッキーでは……?

 

101:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おーい、原作変わってんじゃんよー

……って、テルくん君が捕ったんかい!

 

102:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……あぁ、純白の凍土のハピナスの依頼の話を聞いて、それでか

 

103:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ラッキーとハピナスは人助けに精を出すポケモンだからな、医療隊とは相性が良いと気付いたわけだ

 

104:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それじゃあ、早速ミミロップとゴウカザルを預けて……っと

 

105:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さすがは本場の女医さん、手際良すぎィ!

 

106:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……ウォロの暫定的診察内容と一緒だな、ゴウカザルは咥えられた手根骨は骨が粉砕、尺骨と橈骨を折られてて、ミミロップは耳を食い潰されて聞こえなくなっている、と……

 

107:空の王者 ID:MH2nddosHr8

とりま、放牧場へ行って……問題は、この二匹の穴を誰で埋めるか、だが……

 

108:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……おぉ、トゲキッスとルカリオか

 

109:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

当初から検討していたフェアリー枠と、ゴウカザルが抜けた後のかくとう枠だな

 

110:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

トゲキッスはかえんほうしゃを覚えるからほのおタイプ不在とはならず……チョイスが変わらずガチ気味だww

 

111:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おっ!やぁ、カイちゃん

そうだね、大人の分際で聞き分けのないクソガキムーブかますクソ親父をとっ捕まえてショウちゃんを追い出したことを叱りつけてさらに俺らで圧かけて追い詰めて肥溜めにぶち込まないとね!

 

112:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そこまで言ってねぇわww

 

113:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おっと、今度は名無しの一般ピーポーさん

 

114:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

一般人さんもテルくんも大変申し訳ねぇが、うちのショウちゃんは別にムラのために調査したりあかいくさりを手に入れたりしたわけじゃねえんだわ

 

115:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そうだな……この世界のショウちゃんは徹頭徹尾、自分のためにやってきたからな

 

116:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そしてげんきのかたまりをくれる幼女は将来有望

 

117:空の王者 ID:MH2nddosHr8

隊長からの三つの命令……きっちり守らないとな

 

118:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ショウちゃんは帰る気満々だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

325:空の王者 ID:MH2nddosHr8

山頂ベースに着いたぜー

 

326:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

(#^ω^)ビキビキ

 

327:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、もう諦めろってwww

 

328:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

陸路とは違うんだよ、陸路とは!

 

329:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ラベン博士もテルくんも、終始騒ぎまくってたな

 

330:空の王者 ID:MH2nddosHr8

気持ちはわかるが、個人的にはもうちょい静かにして欲しかったぜ……

 

331:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

――ふぅ、冷静になった。さて、到着して速攻で焔をボールに戻して……よかった、ウォロはまだ来ないな

 

332:空の王者 ID:MH2nddosHr8

このタイミングで来たとしたら間違いなく俺の存在はバレただろうが、まだ来てないなら問題なし

 

333:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……ん、ウォロが来たか

おら、とっととまんたんのくすりを置いてけや

 

334:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

もらって即かいふくのくすりにクラフトしとるwそれもウォロの目の前でww

 

335:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

さすがはショウちゃん、仕事が早い

俺でなきゃ見逃しちゃうね

 

336:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それじゃあ、とっとと神殿に向かうぞー!

 

337:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まずは岩の間……やっぱいたか、ムベ爺

 

338:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

とっととしばいて突破しようず

 

339:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ショウちゃん、目が完全に据わってるんだが大丈夫か、これ?

 

340:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、ショウちゃんの気持ちはわかる、多分俺も同じ気持ちだから

 

 

暗殺が主目的ならともかく、物のついでで殺されるとか冗談じゃない

そりゃショウちゃんだってブチギレるっての

 

341:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ムベ爺の初手は原作同様にムウマージ、対してショウちゃんはダイケンキ

 

342:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……気のせいかもしれないが、ダイケンキの目も据わってるんだが?

 

343:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

自ら角を折ってから常時覚悟ガンギマリ状態のダイケンキだぞ、やめとけムベさん勝てるわけねぇ

 

344:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ひけん・ちえなみでワンパン、二番手にオオニューラを繰り出す

攻撃技はインファイトを指示

 

345:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

インファイト!ダイケンキは……はっ!?完全回避!?

 

346:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

反撃につばめがえし……タイプ不一致でワンパン、だと……?

三番手にサーナイト

 

347:空の王者 ID:MH2nddosHr8

待て待て、ひけん・ちえなみはタイプ一致だからわかるが、つばめがえしのタイプ不一致ワンパンは意味わからんぞ!?

 

348:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

サーナイトの攻撃はムーンフォース

対してダイケンキはどくづき投擲で技を打ち破りサーナイトに命中、追撃にもう一本のアシガタナでどくづき……二撃だが、実質ワンパンだなこりゃ

 

349:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんか火力がおかしくないか?何が起きてる?

 

340:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……急所だ

 

341:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なに?

 

342:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

技が全部急所ヒットしとる

技を食らった反応からして、相手の急所にダイケンキが的確に攻撃をぶち当ててる

 

343:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そ れ な ん て チ ー ト ?

 

344:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

しかもタイプ相性補完重視でアクアテール捨ててつばめがえし採用してるわこれ

水技は……ルカリオのみずのはどうか、ガブリアスのアクアテールが主力になるのか

 

345:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ムベ、最後のポケモンのエルレイドを繰り出す、攻撃技はインファイトを指示

対するダイケンキは……なに!?アシガタナで攻撃全部捌きやがった!?

 

346:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そして反撃が力業つばめがえし……そしてワンパン!殺意高すぎぃ!

 

347:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おぉ、アニポケで見たダイケンキの二足歩行!かっこよすぎかぁ!!

……ゲームでも二本足で立てばよかったのに

 

348:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それは言っちゃいかんやつww

 

349:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

【朗報】角折れ覚悟ガンギマリダイケンキ、攻撃が全て確定急所になる【超強化】

 

いや、普通にヤベーな

 

350:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

さてムベさんや、うちのショウちゃんは聖人君子じゃないので「デンボクを助けてやれ」なんて言われたって「だから?」って済ませちゃいそうですが?

 

351:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

「親切の押し売りはしませんので」

意:助けてやってもいいけど向こうが拒否ったらこっちはもう知らんで

 

352:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、残当だな

 

353:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ムベさんも察してるみたいで、溜息をついちゃいるがそれ以上は何も言わんか

 

354:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

言う資格ないし言わせない

 

355:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さて、次はデンボク戦だ

 

356:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おぉおぉ、いらっしゃるいらっしゃる

……まだ疑ってんのかこのクソ野郎

 

357:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ショウちゃんだって言ってんだろうが「信じてもらわないことにはどうにもなりません」とさ

黙ってショウちゃんに任せんかい

 

358:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

この辺のカイちゃんとデンボクの会話は原作通りか

 

359:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……あ、テルくんとラベン博士の報告の話だ

 

360:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なにぃ?「強力無比なポケモンを揃えて復讐が望みか?」だとぉ?

……見当違いも甚だしいわ、死ぬか?いっぺん死んでみるか?

 

361:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふむ、さすがはショウちゃん、「復讐なんて無駄な労力」と来たか……言うねぇ

 

362:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

会話の流れ的に、なんかショウちゃんが段々とどうでもよくなり始めてるww

 

363:空の王者 ID:MH2nddosHr8

「より強い者が事に当たる」とかなんとか言ってるが、ショウちゃん的には帰り道が目の前にあって、デンボクはその道を塞ぐ邪魔者でしかないと

 

364:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そして、邪魔者は排除する

デンボクの初手はウォーグル、ショウちゃんの初手はまたまたダイケンキ

 

365:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

急所ゲー始まりました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

444:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はい、勝ちー

 

445:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ウォーグル&ピクシーをダイケンキで、カビゴン&ゴローニャをルカリオでそれぞれ沈めたわけだ

 

446:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

よっしゃあ!制裁タイムだコラァ……覚悟できてんだろうなクソ親父ィ!!土下座したところで許されると思っているのか!!

 

447:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

出ていこうとすなww

 

448:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……え、ショウちゃん?大丈夫って……そうか、復讐はしないと……わかった、君の感情に従うよ

 

449:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ただし、何もしないとは言っていない

追放の件のツケは払わせてもらうぜ……拳で

 

450:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おぉう、ショウちゃんのばくれつパンチ……いや、きあいパンチか?とにかく結構全力のグーパンだな

 

451:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

殴ってなお「一生許さない」と……まぁポケモン技をブッパなされないだけマシだな、デンボクもそれを受け入れているしこの話は終わりだな

 

452:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いよいよパルキア戦……出てきたな!

 

453:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ショウちゃんは……トゲキッス出した

いや、なんで初見でドラゴンって直感でわかるんすかね

 

454:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……もしかしたら、俺たちモンハンの竜種に深く関わってきたからかもしれんな、本能的に竜というものがなんなのか理解し始めているかもしれん……

 

455:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……よしよし、無事に捕獲完了!このあとはディアルガが来るんだっけか

 

456:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

そのとおり!時空の乱れによって荒ぶる兄弟を鎮めるために、我はここに来たのだ!

 

457:空の王者 ID:MH2nddosHr8

キェェェェェェアァァァァァァ!!シャァベッタァァァァァァァ!!

 

458:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お前の生みの親もそうだがいきなり話しかけてくんなよな!?

 

459:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

あっ、ごめんなさい……かかさまからお伺いしていた異界の竜たちとの対話が楽しみで、つい……

 

460:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

びっくりするくらい丁寧語、しかも創造神をかかさま呼び

 

461:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

言葉を交わすだけでわかります……あなたたちは、相当にお強い

生物としての格が、私たちの世界の生物と一線を画しています……それなのに、ポケモンの力だけで異界の竜を打倒・捕獲してしまえる皆様の主たる少女は凄まじいお人ですね

私のことも捕獲していただけましたし、あとは荒ぶる兄弟……ディアルガを鎮めるだけです

 

462:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

その辺については、あなたにも力を貸してもらうことになるでしょう

……ところで、なんとお呼びすれば?

 

463:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

皆様もよく知る名で呼んで頂ければ

 

464:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

では、パルキアと……パルキア、このあとの流れは……

 

465:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

既に、私を崇める少女に伝えています

 

466:空の王者 ID:MH2nddosHr8

さすがはパルキア!俺、DPtはパール派だったから会えて嬉しいわ

 

467:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺も!あくうせつだん、バリかっけえっす!!

 

468:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

あ、ありがとうございます……?

 

469:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それにしても……角折れ覚悟ガンギマリダイケンキ、だいぶヤバイな

 

470:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それな……まるで極み個体みたいだったな……名付けるなら

 

極み断ち斬るダイケンキ

 

ってとこか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

665:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

やっべ、すっかりパルキアと話し込んじまった……どこまで行った?

 

666:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

確認は済んでいる

オリジン鉱石を入手するために太古の洞窟に行き、そこで野盗三姉妹と遭遇……するも、焔の一件で借りがある野盗三姉妹は最低限の激励だけをして即時退散……ここは原作と違うな

んで、オリジンボールが完成したのでパルキアを手持ちに加えてシンオウ神殿に向かっている途中だ

 

667:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ディアルガが……!パルキア、頼む!!

 

668:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

無論です!

 

669:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ついに来たか……ときのシズメダマを手に、いざゆかん!!

 

670:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

頑張れ、ショウちゃん!!

 

671:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お、おぉう……想像以上にめっちゃいい動きするねショウちゃん

 

672:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、めちゃめちゃぶつけまくるやん

やり方が前世の俺らのプレイまんまなんだが

 

673:空の王者 ID:MH2nddosHr8

とにかく攻撃が来ないうちはひたすら投げる!やっぱこれだね

 

674:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……え、あれ?

 

675:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おwwwわっwwwたwww

 

676:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、ショウちゃんいくらなんでも早すぎんか?ポケモンでバトルするまでもなく終わったんだがww

 

677:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

これがRTAか

 

678:空の王者 ID:MH2nddosHr8

とどめのオリジンボール!!

 

679:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

……ふぅ、なんとか兄弟も捕獲できましたね

本当に本当に、ありがとうございます

 

680:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

めでたしめでたし

 

 

 

 

 

 

 

 

……で、終われたらよかったんだがな

時空の裂け目、閉じちゃったなぁ……ショウちゃん、大丈夫かな……もう既に顔から生気が抜け落ちてるんだけど……

 

 

 

 




原作通りの展開だと、どうしても駆け足になりがちですね……ほぼほぼダイジェスト風味になりがち……




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シンオウ神殿へ ~団長と懐刀~

実は本編よりサブタイ決めに一番時間がかかった……あるあるでしょ、これ。


シンジ湖での試練を終えた私は、ライドポケモンを乗り継いで大急ぎで原野ベースまで戻ってきた。オドガロンとの戦いで負傷したポケモンたちをボールから出して、すぐに応急処置を始めた。

ガブリアスとゴウカザルは裂傷状態になっているから、アカイさんからもらった活力剤を使ってあげる。患部に塗ってあげると、みるみるうちに傷が塞がっていった……これなら、ガブリアスは大丈夫そう……けど……。

 

「ゴウカザル、腕が……」

 

「キキ……」

 

ゴウカザルの腕……尺骨とかがある部位が変な方向に曲がっている……骨が完全に折れているようだった。かいふくのくすりをつかったけど、外傷が治っただけで折れた骨が元に戻ることはなかった。ミミロップの耳も同様で、傷は塞がったが、塞がっただけ……噛み潰されて変形してしまった耳が元に戻ることはなかった……。

 

「ショウさん!」

 

「ショウさん、ご無事で!」

 

「カイさん、ウォロさん……」

 

湖に置いてきたカイさんとウォロさんも合流した。

 

「事情は聞きました。簡単な応急処置でしたら、ジブンに心得があります」

 

「お願いします……」

 

ウォロさんは慣れた手つきで応急処置を始めた。ゴウカザルには木材で即席の添え木を作り、布で首から吊るように腕を固定してくれた。ミミロップの耳には簡単に包帯を巻いてもらい、一通り二匹の状態を確認してくれた。

 

「……終わりましたよ」

 

「ありがとうございます、ウォロさん」

 

「いえいえ、これくらいでしたらお任せ下さい。……ただ、ゴウカザルは間違いなく腕の骨が折れているでしょうし、ミミロップの耳の状態も気になります……。ギンガ団には医療隊がいるので、あとは専門家にお任せするほかありませんね」

 

「いえ……してもらえるだけで、とてもありがたいです……」

 

私はゴウカザルとミミロップの二匹と向かい合った。

 

「……二人共、ごめんなさい。私が未熟なばかりに、二人には大怪我をさせてしまった。本当に、ゴメ――」

 

「ウキッ」

 

「あいたっ」

 

二匹に謝罪をして頭を下げようとしたところ、ゴウカザルからデコピンをされてしまった。顔を上げれば、優しげに微笑む二匹の姿があった。

 

「ゴウカザル……ミミロップ……」

 

「ウキャキャ」

 

「……ミィ」

 

「……?」

 

あれ……今、ミミロップの反応が鈍かったような……まさか!?

 

「ミ、ミミロップ……あなた、まさか……耳が……?」

 

「ミィ……」

 

あぁ……そんな、そんな……!ミミロップ……耳が、聞こえなくなってしまったの……!?

 

「ミミ、ロップ……わ、私、わたし……!」

 

「ミイ」

 

ミミロップは優しく私を抱きしめると、そのまま背中を撫でてくれた……私は、私は……!

 

「ご、ごめ……!ごめん、なさい……!ミミロップ……ミミロップ……!!

うわああああぁああぁあぁああぁぁぁぁぁぁっ!!

 

「ミッミィ」

 

涙が、声が、抑えられない。大声を上げて、情けなく泣き叫ぶ私を、ミミロップは優しく抱きしめ続けてくれた。

 

 

 

 

私がミミロップと出会ったのは、彼女がまだミミロルだった頃のこと。他のミミロルと混じって、明らかに色が違うその子を見たとき、必ずゲットしようと思った程だ。そして、念願叶って捕獲に成功したときは、大げさにはしゃいでしまったのは今となってはなかなかに恥ずかしい話……。

私はこの色違いのミミロルを、必ずミミロップに進化させるべくいつも一緒に行動した。調査に行く時は必ず手持ちに加えて、資源回収などはミミロルに任せていた。そして……ついにミミロップへと進化した時の感動は、言葉では言い表せないものだった。進化後は様々な技を覚えさせて、いつも一緒に連れ歩く旅仲間の一匹となっていた。

私にとって、大切な思い出がたくさんあるポケモンなのだ。そんな彼女が……オドガロンとの戦いで、右耳を失聴してしまった。全てはトレーナーである私に責任がある。けど……ミミロップは、「気にしないで」と言わんばかりに微笑み、抱きしめ、背中を優しく撫でてくれる……ジンオウガとの間に感じたぬくもりが、ミミロップからも伝わって来る。それは、隣にいるゴウカザルからも伝わって来るものだ。

ゴウカザルも、私にとって思い出深いポケモンだ。というのも、私のお母さんが冒険に出るときに最初に選んだポケモンがヒコザルだったのだ。お母さんのゴウカザルはとにかくすばやさが高くて、なんならきょうせいギプスを持ってても大半のポケモンを余裕でぶっちぎるほどだ。そんなお母さんのゴウカザルを見て育った私は、当然だがお母さんと同じゴウカザルを捕まえたいと思っていた。そして、シシの高台でヒコザルをゲットした私はお母さんのゴウカザルにも負けないゴウカザルを育ててみせると誓ったものだ。

そんな二匹の、戦線離脱……大きな失態だ。ジンオウガたちのような、巨大ポケモンの脅威……わかっていたつもりになっていたみたいだ。今一度、肝に銘じなければならない。

 

 

 

 

「ありがとう、ミミロップ……もう、大丈夫だから」

 

「ミィ」

 

私はミミロップから離れると、二匹を一度ボールに戻す。ウォロさんの言うとおり、一度専門的な分野の人に診てもらったほうがいいだろう。

それから、私たちは一度コギトさんの下を訪ねて、手に入れた素材を渡した。……エムリットって言うんだ、あのポケモン。アグノム、ユクシー、エムリット……三匹の素材を手に入れたことで、私たちは紅蓮の湿地にある霧の遺跡へと移動した。もちろん、バラバラに移動して、だけど。ただ、驚いたのは肝心のコギトさんが伝えられていた伝承にあかいくさりの作り方がなかったことだ。

どうすれば……と困っていると、再びアグノム、ユクシー、エムリットの三匹が現れて、それぞれの素材で一瞬のうちにあかいくさりを作り上げていた……いや、ちょっとまって本当に原理不明なんだけど!?ツッコんだら負けかな、コレ……。

あかいくさりの完成を見届けると、ウォロさんから衝撃の情報が齎された……それは、デンボク団長が調査を待たずしてテンガン山へ登ったというものだった。あかいくさりの事情を知らないとはいえ、あの人らしくない……!

私は大急ぎでコトブキムラへ向かった。あかいくさりのことも含めて、きちんと報告に行かなければならないだろうから……けど、正直に言うとあまり気が進まない。ムラには未だに私を疑う人がいるだろうし、なにより団長と顔を合わせるのが気まずい……というより、嫌。だから、シマボシ隊長へ報告に行くのだ、と自身を鼓舞しながらムラへと向かったのだ。そうじゃないと、すぐにでも足が踵を返しそうになるから。それに、ゴウカザルとミミロップを医療隊に相談しに行かないとだし……。

 

気持ち駆け足で門をくぐると、なぜかテル先輩が門番をしていた……あれ、異動したの?心なしか、人気が少ないような気もするし……。

 

「……!ショウ……?」

 

「先輩」

 

「ショウ!」

 

先輩も私に気がついたようで、直ぐにこっちに来てくれた。

 

「ショウ、おかえり。お前が帰ってきたってことは、何かあったのか?」

 

「えぇ、まぁ。この事態を収束できる可能性を持ってきましたよ」

 

「本当か!?よしっ……ちょっと待ってな!隊長や博士に知らせ……」

 

「……?」

 

本部へ走り出そうとした先輩だけど……体の向きを変えたところで私の方へと振り返り、そのまま私に近づくと顔を近づけて私の顔をまじまじと見つめてきた。

 

「先輩?」

 

「……ショウ、なにがあった?」

 

「えっ……」

 

「目元が赤くなってる。泣いたんじゃないか?何かあったんだろ、おれは先輩なんだから、もっと頼ってくれよ」

 

「うっ……」

 

も、元に戻したつもりだったのに、戻りきってなかったか……うぅ、先輩の顔、有無を言わさぬ雰囲気を感じる……。しょうがない、これは正直に話すしかないかな……。

 

「実は……」

 

私はテル先輩に、湖の三試練の話をした。洞窟に住み着いていた未知の巨大ポケモン達と、彼らとの戦闘でゴウカザルとミミロップが戦線離脱するほどの重傷を負ったこと、そして……ミミロップが失聴し、戦えなくなってしまったことも。

 

「私……私のせいなんです……。私が判断を誤って、すぐにミミロップをボールに戻せなかったから、だから……」

 

「…………」

 

思い出すと、また涙が溢れてきた。洞窟内で響いた劈くようなミミロップの悲鳴は、今も私の耳にこびりついている……オドガロンに捕まった時、すぐにでもボールに戻せば、ミミロップは……。

 

「ショウ」

 

私が何度も涙を拭っていると、先輩がそっと私を抱きしめてくれた。それは、原野ベースで抱きしめてくれたミミロップと同じ、優しい温もりが伝わる抱擁だった。

 

「なあ、ショウ。お前、"私のせいで"って言うけどさ……ミミロップとゴウカザルは、少しでもお前のことを責めたのか?」

 

「……ううん、責めなかった」

 

「そっか……それじゃあ、二匹はもうショウのことを許してるんだよ。……いや、許す許さないってのもおかしな話だ。だって、二匹はショウのことを信じて、背中をあずけてくれたんだからさ。そんな二匹がショウのことを責めたり怒ったりしてないんだから、ショウ自身があまり自分を責めちゃダメだろ?

ゴウカザルとミミロップが心から信頼してくれたお前を、他でもないお前自身が卑下しちゃダメだ。それは、二匹からの信頼に背中を向けるようなモンだぞ」

 

「……!」

 

先輩……!そっか、私は……二匹の信頼に応えられなかったことを、ずっと気に病んでたんだ……。

ポケモンの力だけでも、トレーナーの判断だけでもダメだ。ポケモンとトレーナー、双方の信頼が合わさって、初めてポケモンバトルが成立する……お父さんの言葉だ。私が一方的に彼らに報いることができなかったと思っていたけど、それはポケモンたちも同じだった……。そして、その上でまだ私のことを信じてくれている……なのに、私だけが卑屈になって自分を下に見ていたら、それは確かにゴウカザルがデコピンをするわけだ。

先輩が、優しく頭を撫でてくれる……それだけで、心まで暖かくなっていく。ずっとこうしていたい……なんて、そんなふうに思ってしまうほどに。

 

「……あの、もう大丈夫です」

 

「そっか」

 

一応、大丈夫だと伝えると、先輩はあっさりと離れてしまった。なんか、ちょっと寂しいような……って、私ったら、何を考えて……!?

 

「ショウ、大丈夫だ。お前の仲間はポケモンだけじゃない。おれや博士たちだって、みんなお前の仲間だ!」

 

「先輩……」

 

優しく微笑む先輩の顔を見て、胸がトクン、と高鳴った。同時に、顔が熱を持って赤くなっていくのを自覚する。

……もうダメだ、誤魔化せない。私……先輩のこと、好きだ。素性の知れない私にこんなにも優しくしてくれて、追放される時も純粋に怒ってくれて、天冠の山麓で予期せぬ再会を果たしたときは「生きていてくれてありがとう」とさえ言ってくれた……そんな先輩の優しさに、自分でも気がつかないうちに惹かれていた。

……でも、きっと……この気持ちは、封印しなければならないものだろう。私は元の時代に帰るつもりだし、テル先輩は元々この時代を生きる人。連れて行くことも、残ることもできない……それなのに、一方的に「好き」なんて感情を抱いていたら、先輩にすごく迷惑をかけてしまう。だから、私はこの気持ちをずっと封じ込めておく。……大好きな人に、迷惑はかけられないから……。

 

「よし、それじゃあ今度こそ博士たちに知らせてくるよ!」

 

「あっ……」

 

走り去っていく先輩の後ろ姿に、やはり寂しさを覚えてしまう。……ダメだよ、私……この気持ちは、伝えるわけには行かないって、決めたんだから……。

 

 

テル先輩が戻ってきたとき、一緒にいたのは博士だけだった。曰く、デンボク団長が警備隊を率いて自ら時空の裂け目とその向こう側に見えたというポケモンの影を調査すると、テンガン山へ向かってしまったためにほとんどの仕事がシマボシ隊長に回されてしまい忙殺されているとのこと。……本当に老害だな、あの親父。

調査隊本部へ赴くと、シマボシ隊長から開口一番「賞賛する」と言われてしまった。それは、追放直前に下された隊長からの命令である「野垂れ死にするな」を守りきったからだそうで……それもこれも、すべて隊長が便宜を図ってくれたからこそだ。そのことを正直に伝えると……全てケーシィの独断で、隊長本人としては不便だったと顔を逸らしてしまった。……耳が赤くなってることは、言わないほうがいいんだろうな。

それから、話はこの事態を収束させるための有益な情報……即ち、あかいくさりの話となった。あかいくさりの話……隊長は信じてくれるようだった。現に、私にギンガ団調査隊として復団し、事態を収束するよう命令を下してくれた。……隊長、貴女という人は本当に……。

 

「……もう一つ、確認する」

 

「……え?あ、はい、なんですか」

 

「テルと博士の両名より、異変発生後に各地にてそれまで未確認であった巨大ポケモンが出現したとの報告を受けている。そして、ショウがそれらのポケモンをすべて捕獲していることも」

 

「あっ……」

 

「天冠の山麓に出現したというリオレウスなる巨大ポケモンとの勝負、そして捕獲まで……一連の報告は既に受けている。その上で確認する。ショウ、キミは強力極まりなく且つ巨大なポケモンを完全に御することができるのか?」

 

「できます」

 

「そ、即答だな……」

 

間髪入れずに即答すれば、テル先輩が驚いたように呟いていた。こればかりは本気で自信がある。なんなら彼らの力があれば、それこそ元の時代に戻ったあともジム巡りだろうがコンテストだろうがバトルフロンティア等の施設だろうが、全てにおいて勝ち続けること請け合いである。

ただ……オドガロンの一件のように、彼らの力の使い方を誤れば容易く命が散らされることも間違いない。彼らの力を御するということは、その力を過剰に振るうことなく制御して、普通のポケモンらと何ら変わらない力加減を発揮するということだ。

私の回答に満足したのか、隊長は「よろしい」の一言で済ませてくれた。それから改めて、私に調査命令を下してくれた。ただ、私の追放令を出した団長が不在の中で、そんなことをしていいのだろうか……。

 

「隊長、大丈夫ですか?ボスが留守なのに……」

 

テル先輩も気がかりみたい……しばし目を閉じた隊長は、目を開くと毅然とした態度で言い放った。

 

「留守を預ける方が悪い」

 

「……プッ、アッハハハハッ!!

 

「笑いすぎだ」

 

だ、だって……!あの堅物な印象が強いシマボシ隊長が真顔で「留守を預ける方が悪い」って……!そんなの、笑いを堪える方が無理だよ……!

 

「ボクも行くのです!ボクたちは調査隊ですからね!」

 

「いくな、とは言っていない」

 

こうして私のギンガ団復団が決まり、テンガン山へはテル先輩とラベン博士も同行することになった。

……出発する前に、医療隊のキネさんを訪ねる。大怪我を負ったゴウカザルとミミロップを診てもらうためだ。

 

「……あれ、ラッキー?」

 

「ラッキ?」

 

「あぁ、この子?この子はね、テルくんが捕ってきてくれたのよ。医療に関してなら、力になってくれるはずだって」

 

先輩、そこまで気が利いて……。私は早速、キネさんにゴウカザルとミミロップのことを話して、実際に二匹の状態を見せたりした。……めちゃめちゃ怒られた。それもそうか……でも、怒られてもしょうがない。それだけのミスを犯したんだ、受け止めるしかない。

 

「……ゴウカザルは骨折してるわね。骨が元通りにくっつくまでに、これはかなりの時間を有するわ。それと、ミミロップだけど……」

 

「はい……」

 

「……右耳は、一生聞こえないままになるわ。ごめんなさい、なんとか力を尽くしたんだけど……」

 

「いえ……診てくださってありがとうございました」

 

「……この状態のミミロップは勝負はもちろん、野生に帰すこともできないわ。覚えておいてね」

 

「はい」

 

二匹を医療隊に預けたあと、次に私が向かったのは放牧場だ。ミミロップとゴウカザルが抜けた穴を埋めるためのポケモンを、よく考えないといけない。

今回、ポケモン入れ替えで私が重要視する点は二点。一つはフェアリータイプのポケモンが不在であること。もう一つはゴウカザルの代わりとなるかくとうタイプのポケモンだ。よく吟味した上で、私が選んだのはトゲキッスとルカリオだ。トゲキッスはかえんほうしゃを覚えてくれるし、なにより選考基準であるフェアリータイプのポケモンだ。ルカリオは……うん、ワサビちゃんの影響をモロに受けました。かくとうタイプだし、ルカリオも元々強いポケモンなので採用しない手はない。

 

二匹を追加で手持ちに加えて改めて正門まで行くと、そこではカイさんが待っていてくれていた。

 

「ショウさん、デンボクさんは……?」

 

「テンガン山だ」

 

「デンボクさんも大人なのに、案外聞き分けがないんだなあ!」

 

それはそう。私が内心で激しく同意している間にも、カイさんはデンボクさんを止める!といって一足先に天冠の山麓へと向かっていった。私たちも後に続こうとした……その時だった。

 

「あんた……追い出されてもムラのために調査をしていたんだろ」

 

後ろから声をかけられた……ムラの住民である男性と、女の子。なぜ……いや、それよりも。どうして私がムラのために調査をしたことに……そうか、先輩か。そういうことになっているなら、そういうことにしておいたほうがいいだろう。私は一歩前に出ると、深く頷いた。

 

「そうだよな、ショウはムラのみんなのためにあかいくさりを手に入れたからな」

 

「そうですとも!調査隊はムラの皆さんのため、そしてポケモンと仲良くできるように彼らを調べているのです!」

 

テル先輩もラベン博士も、私に続けてそう言ってくれるけど……先輩、あなたは確信犯ですよね?私が戻って来やすいように、少しでも私の印象を良くしようとして……。すると、女の子が私に近づいてきて……げんきのかたまりをくれた!

……どうして君が持ってるの?どこで拾ったの?お姉ちゃんに正直に言ってごらん?いや、でも、大変便利な道具なのできちんとお礼は言いますけど。

 

「三つ、命令する」

 

そして、隊長からの命令。一つ、山頂ベースからシンオウ神殿に向かうこと。二つ、あかいくさりにて事態を収めること。三つ、無事に帰還すること……。

 

「はいっ……!」

 

私は、力強く返事をした。……ただ、ごめんなさい隊長。もしもの場合、私は三つ目の命令を守れないかもしれません。なぜなら、私の目的は時空の裂け目を通って元の世界に戻ること……最悪、これがこの時代との一生のお別れになるかもしれない。

ムラを出てしばらく歩いたあと、私は後に続く先輩と博士の方へ振り返った。時間もないし、これが一番手っ取り早い!

 

「先輩、博士。ここからは爆速で山頂ベースへ向かいます」

 

「爆速?」

 

「なにか手があるのですか?」

 

「もちろん。来いっ!リオレウス!!」

 

「グオオオオンッ!!」

 

私はすぐさまボールからリオレウスを繰り出した。リオレウスは私たちを見て状況を察したのか、すぐさま体を伏せてくれた。

 

「さあ、行きましょう」

 

「いやいやいやいや、ちょっと待て!まさか、コイツに乗っていくのか!?」

 

「多分これが一番早いと思います」

 

「いや、それは間違いなくそうなんだろうけど……」

 

「乗りましょうテルくん!こんな機会は滅多とないですよ!」

 

「ほら、博士も乗り気ですよ。大丈夫、ジンオウガにだって乗れたんですからリオレウスも楽勝ですって」

 

「陸路と空路は違うんだよぉ!?」

 

何がそんなに違うのかなぁ……ポケモンに乗るという点では、陸路も空路も一緒だと思うけど……。

 

「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ……!」

 

「せんぱーい、行きますよー?」

 

「……スーッ……よしっ、行くぞ」

 

「……なんでそんな覚悟極まった顔をしてるんですか」

 

ようやく先輩が動き出したことで、私たちはリオレウスに乗って山頂ベースへと向かった。

……先輩、高所恐怖症なら最初からそう言ってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山頂ベースに着いてすぐに、私はリオレウスをボールに戻した。ウォロさんが先回りしていたらどうしようかと思ったが、私たちの方が早く着いたみたい。……先輩、着いてすぐは足がプルプル震えててちょっと可愛かったな。今はベースのテント内で休んでもらっている。

それから少しして、ウォロさんも到着した。復団祝いにまんたんのくすりを貰ったので、すぐにかいふくのくすりへとクラフトした。……ちょっとウォロさん?なんで顔を引きつらせてるんですか。別に嫌味じゃないですよ、どうせならかいふくのくすりをくれたらよかったのにとか思ってませんよ?ムラの子供はげんきのかたまりをくれたのに、商人のウォロさんはまんたんのくすりしか用意できなかったのかなんて考えてませんよ?えぇ、全然、まったく。

ウォロさんによると、セキさんとカイさんも既に先に向かったとのこと。ウォロさんから武運を祈られたところで、ウォロさんも一足先に現場へと向かった。……そのあと、ツバキさんからも激励してもらったんだけど……正直、してもらえるとは思ってなかったので結構意外だった……なんかすみません。

二人分の激励を受けて、私はテンガン山の山頂にある神殿……シンオウ神殿へと向かった。

 

 

シンオウ神殿へと繋がる道、岩の間……そこを駆けていくと、意外な人物がいた。

 

「ムベさん……?」

 

「おお、あんたか。息災であったか」

 

なんと、イモヅル亭の主人であるムベさんがいた!確かに普段はイモヅル亭の前にいるはずなのに見当たらなかったなとは思っていたけど、まさかこんなところにいたなんて……。どうやらデンボク団長の命令で食料補給の指揮を任されていたんだとか……いや、団長を呼び捨てって、一体どんな関係……?

 

「さあて、使われついでだ。あんたを始末するとしようか」

 

「……は?本気ですか?」

 

始末……始末?私を殺そうっていうの?本気で……?

 

「わしはデンボクの懐刀でなあ……あやつのじゃまをするヤツが現れたら、始末する約束なのじゃ!それに、わしも安心して暮らせる新天地を欲しているのでな」

 

「…………」

 

ほぅ……それは、つまり、あれか。殺す側に立つ以上は、殺される覚悟もあると?

 

「あんたもご存知のめかくしだま……これを……こうじゃ!」

 

ムベさんがめかくしだまを使い、一瞬だけ姿が見えなくなる。煙が晴れると……忍び装束に似た格好をしたムベさんがそこにいた。

 

「貴様がキングを鎮めたと聞いて血が騒ぎ、心が震えたぞ。使いどころもなく衰えていくシノビの技、最後に振舞う相手が現れよったと!」

 

そう言って構えるムベさん……なるほど、なるほど、よくわかった。

 

ふざけるな

 

だったら最初から私を殺しに来れば良かっただろうが!それをなんだ、食糧確保のついでに殺すだって……?冗談じゃない!私の命をあんたらの食糧事情以下に扱われてたまるか!!怒りで目の前が真っ赤になる……だが、それ以上に怒り狂っているポケモンが、さっきからボールの中で暴れている。

グラビモスだ。彼は私の事情に一番同情してくれたポケモンで、団長やその周辺の人物に強い殺意を抱いている。もしもグラビモスを出してしまえば、彼は一切の容赦も慈悲も血も涙もなく、彼らを一方的に蹂躙して殺し尽くすだろう。私も、そんなグラビモスの思いに強く感謝している……けど、ダメだ。復讐をするしない以前に、殺すことだけは、絶対に。

彼の……ジンオウガの顔が脳裏をよぎる。私に復讐ではなく、帰還の道を示してくれた、ジンオウガ……彼の想いに報いたい。そのためには、ここで出すべきはグラビモスではなく……!

 

「ダイケンキ」

 

「…………」

 

私の一番のパートナー。私に勝利を捧ぐべく、自らの力の象徴たる角を折って以来……何か、強い覚悟を秘めた眼差しを持つようになったダイケンキ。わかる……いまのダイケンキなら、誰が相手だろうが負ける気がしない!

 

「ゆけ、ムウマージ!」

 

「マージ」

 

ムベさんはムウマージを繰り出してきた。……勝てる。

 

「ひけん・ちえなみ」

 

「……ッ」

 

「マ"ッ!?」

 

「なに!?」

 

ダイケンキの斬撃がムウマージを一刀の下に斬り伏せた。ムウマージは一撃で倒れ、ムベさんは驚愕に目を剥いている。

 

「なんと……!行け、オオニューラ!インファイトだ!」

 

「オオーラ!」

 

「躱せ」

 

「…………」

 

オオニューラの両手足による乱打が繰り出されるが、ダイケンキは無言で全ての攻撃を見切り、回避し続けた。

 

「つばめがえし」

 

「……!」

 

「ニュラッ!!」

 

「馬鹿な……」

 

またしても、一撃。

 

「今のダイケンキは抜き身の刃も同然……触れれば斬れるぞ」

 

「くっ……サーナイト!!」

 

「サァーナ……」

 

次はサーナイト……タイプ相性では不利だが、負ける気がしない。

 

「ムーンフォースだ!!」

 

「サーナ!」

 

「どくづき、投擲」

 

「……!」

 

私の指示を受けたダイケンキが秒で行動する。アシガタナを抜いて毒を纏わせると一切の迷いもなくぶん投げた。どくづきはムーンフォースを打ち破り、サーナイトに命中した。

 

「ナァッ!?」

 

「サーナイト!?」

 

「追撃のどくづき」

 

「…………!」

 

「サナァア!!」

 

追撃のどくづきも直撃し、サーナイトは倒れ伏した。……残りは何匹だ?早く出せ、片付けてやる。

 

「終わりですか?」

 

「くっ……!エルレイド!!」

 

「エルレッ!」

 

「力強く、インファイトだ!!」

 

「エルレレレレ!!」

 

「ダイケンキ」

 

「……!!」

 

私がダイケンキの名を呼べば、彼は両足のアシガタナを抜刀して二刀流になると、二本足で立ち上がる。そして、迫り来るエルレイドの乱撃を両手のアシガタナで捌き始めた。

 

「馬鹿な……なんだ、これは!まるで意味がわからんぞ!」

 

「そんなはずはないでしょう。目の前で起こっていることは現実で、全てです」

 

「クッ……!!」

 

「ダイケンキ、力強く、つばめがえし」

 

「……ッ!!」

 

「エレッ……!」

 

全ての攻撃を捌き終えた直後、ダイケンキは右のアシガタナでエルレイドを上から斬りつけ、その後返すように左のアシガタナで思い切り斬り上げた。吹っ飛んだエルレイドはムベさんの前に落下する……戦闘不能だ。

 

「……さすがよのう」

 

自身の負けを認めるムベさん……意外だな、もっとしつこく狙ってくると思ったのに……。

 

「勝てぬ相手を何度も狙うのは、愚かなシノビのすることよ……」

 

心を読まれたかな。

 

「そうですか……」

 

「……貴様のことはそれなりに気に入っておるのじゃ……ポケモンを上手く戦わせるからの」

 

「ありがとうございます」

 

……どうやらデンボクさんとムベさんは暴れるポケモンに故郷を焼かれたばかりか、多くの同胞を失ってしまったらしい。だからこそ、デンボクさんは安心して暮らせる新天地を作るべく、ヒスイ地方へとやってきたんだとか。そのためなら、強硬手段も辞さないだろうということも……。

 

「もしもだ!時空の裂け目よりポケモンが現れたなら、デンボクは我を忘れるやも知れぬ……貴様の強さで助けてやれ」

 

「お生憎様ですが、親切の押し売りはしませんので……そのつもりでいてくださいね」

 

「……ああ」

 

一応、今の私はギンガ団の一員として復帰しているし、ムベさんが助けてくれというならそれも構わないが……デンボク団長の方から「手出し無用」なんて言ってきたら、こっちはもう知りませんけど。どうやらムベさんにはちゃんと伝わったようで、溜息をつきながらも了承してくれた。

 

 

ムベさんを突破した私は、神殿に続く長い坂道を上っていく。その途中、セキさんとカイさんの二人と合流した。

 

「セキさん!カイさん!」

 

「ショウ!無事だったか!」

 

「ショウさん、待ってたよ」

 

二人は私を暖かく迎えてくれた。

 

「ショウ、カイからすべて聞いた。……ゴウカザルとミミロップは、残念だったな……」

 

「ありがとうございます、セキさん。ミミロップは戦えなくなったし野生にも帰れなくなりましたけど……ゴウカザルは、時間が経てば必ず戻ってきます。だから、私は大丈夫です」

 

「そうか……強いな、お前は」

 

そう言って、頭を撫でてくれるセキさん……って、ん?セキさんの目、また何か言いたげな……!

 

「正直、押し付けてすまんかった」

 

「今度からはセキさんがどうにかしてくださいね」

 

「お、おまっ!いつから……!?」

 

「内緒です♪」

 

「……?なあ、ふたりして何をコソコソ話しているの?」

 

「カイが本当に頼りになるなぁ、って話だ!なっ?……なっ!?」

 

「えぇ、そうです。……フッ、えぇその通りです」

 

「……?」

 

自分の気持ちを自覚したせいか、相手が同じような気持ちを抱いているとなんとなく察せるようになった。……セキさん、意外と押しが弱いんだなぁ。

 

「ゴホンッ!山頂にやってくるであろうポケモンの影とは、おそらくシンオウさまのことだろう……止められるのはあんただけだ!」

 

「シンオウさまがやってくるのに、デンボクさんに足止めされているの」

 

そう言って、二人が揃って振り返る。……あんの老害ボケ親父、あかいくさりで首絞めたろか……っと、いけないいけない。なにか変な思念を感じ取っちゃったかな……変な言葉遣いが出ちゃった。

私はすぐに坂を駆け上がり、デンボク団長の元へ向かった。団長は私の接近に気づいたのか、「お前か」と言いながら振り返った。

 

「あかいくさりとやらで世界をつなぐと聞いた。つなぐとはつなぎ止める……正しい世界を維持することだろうが、本当に信じて良いのか?」

 

「信じてください。信じてもらわないことには、こちらもどうにもなりません」

 

「…………」

 

まだ、疑うのか……!!

 

「デンボクさん、いい加減にしないと!」

 

セキさんとカイさんも追いついた。カイさんは同じ長同士、ムラを守りたいという考えには賛同するが、私を疑うのは間違っていると力説してくれた。……バカ!の一言を添えて。

 

「……そうだな。だが、おいそれと信じもしものことがあったとき、ギンガ団のみなに申し開きがたたぬ。それに、異変発生後に各地にて、それまで全く観測されなかった未知の巨大ポケモンが次々と出現したという報告もあった。そして、それらのポケモンを追放されたショウが次々と捕獲して回っているということも」

 

「それは……!」

 

「そのような強力無比なポケモンを揃えて、何を企む?よもや、復讐が望みか?」

 

「くだらない」

 

反射的に答えてしまったが……いいや、この際だから言ってやる。

 

「復讐なんて、そんなつまらないことに時間を費やすつもりはありません。復讐なんて無駄な労力です、そんなことに命をかけたりなんてしません」

 

「そうだよ!デンボクさんがコトブキムラのみんなを守るため必死なら、ショウさんだって命張ってるよ!……ショウさんなんて、その巨大ポケモンとの戦いで、ポケモンが二匹も大怪我を負ったんだよ……」

 

「……だな。それでも世界のために、みんなのために、ショウはあかいくさりを持ってきてくれたんだぜ。そんなショウが復讐なんて考えるわけねえよ……それは暴論が過ぎるぜ、デンボクの旦那」

 

カイさんだけでなく、セキさんも援護してくれた。……ありがたい。

 

「……あいわかった!これより先の事態にはおまえとわたし、より強い者が当たるとしよう。ショウとそのポケモン、立ち合え!今日は真剣勝負だ!」

 

……はぁ。時空の裂け目が目の前にあるというのに、この人は……勝負の最中にシンオウ様が現れたら大変だ、とっとと速攻でケリをつけてやらないと。

 

「行け!ウォーグル!!」

 

「ウォーガ!」

 

「ダイケンキ」

 

「…………」

 

邪魔をするというのなら、デンボク団長……たとえあんただろうが斬り捨てる。

 

 

 

 




無言でアシガタナを振るい敵を斬り伏せるダイケンキ……

これが、極み断ち斬るダイケンキだ!……かっこいい……かっこよくない?

……ポケモンの極み個体、もっと増やそうかな?二つ名個体は三年前から考えてたし……。


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シンオウ神殿にて ~終局、そして……~

ついにディアパル決着!ただし、その時ショウは――


デンボク団長の初手はウォーグルか……ダイケンキなら余裕で勝てる。

 

「……角の折れたダイケンキか。ただならぬ覇気……否、鬼気であるな」

 

「ダイケンキは、私に勝利を齎すために自らの象徴である角を折った。……その覚悟は、決して他者には量れない。知りたいというのなら、アシガタナの錆になってもらいますよ」

 

「……よかろう、それもこの勝負でわかることだ!ウォーグル、マジカルシャイン!」

 

「クルウォー!」

 

「どくづき」

 

「!」

 

ウォーグルが放つマジカルシャインを、ダイケンキのどくづきが容易く吹き飛ばす。今のダイケンキに断てぬものはない。このまま押し切ってやる。

 

「ひけん・ちえなみ」

 

「……!」

 

「ウォガ!?」

 

「ウォーグル!」

 

デンボク団長のウォーグルはダイケンキのアシガタナに斬り伏せられ、一撃で倒れた。

……ダイケンキは、本当に強くなった。けど、何がトリガーとなって今の強さを手にしたのかはまだはっきりとはしていない……が、間違いなくダイケンキの覚悟が強く影響しているのではないかと考えている。

覚悟……それは、ポケモンを本来の姿から一つ上の強さへと導き、通常種では決して得られない力を与えるほどのものなのか……。ポケモンとは、まだまだわからないことだらけだ。

 

「くっ……ピクシー!」

 

「ピピィーッ!」

 

「力強く、ムーンフォースだ!!」

 

「ピクシィー!!」

 

「突撃」

 

「!!」

 

一言。短く命じるだけで、ダイケンキは私の望む通りの動きをしてくれる。再びどくづきを構えたダイケンキは、迫り来る力業ムーンフォースを前にしても怯まずに突撃し、真正面からこれを打ち破った。さらにそのまま突っ込んでいき、ピクシーにどくづきを命中させた。さらに押し込んでピクシーを吹っ飛ばすと、壁に激突したピクシーはそのまま目を回して倒れた。

 

「い、一撃だと……!?」

 

「……これが、ダイケンキの覚悟です。私に勝利を捧ぐべく、立ち塞ぐものをすべて撫で斬りにする……今のダイケンキを止められるのは、貴方の言う未知の巨大ポケモンたちぐらいですよ」

 

「むぅ……!だが、わたしにはまだポケモンが残っている!カビゴン!!」

 

「カビッ」

 

カビゴンか……耐久力はピカイチの厄介なポケモンだ。……ここは、新戦力を試すべきだろうな。

 

「戻って、ダイケンキ。出番だよ、ルカリオ」

 

「クオォアッ!!」

 

私が出したのは、ルカリオ。ゴウカザルが抜けたあとのかくとうタイプを埋めるためでもあり、ワサビちゃんのルカリオとのバトルを経て改めてルカリオの強さを知ったから、というのが採用理由だ。

 

「ルカリオ。あなたの力を、私に示して見せて!」

 

「クンッ!!」

 

……なにより、このルカリオ。ゴウカザルへのライバル意識が非常に強いのだ。ゴウカザルが重傷を負って一時戦線離脱となった旨を伝えた際の、愕然とした表情は今も忘れられない。いつかは己が打ち破り、手持ちの座から引きずり下ろす……そう考えていたルカリオにとって、今回の採用は青天の霹靂も同然。ルカリオ自身もこの採用にはあまり納得がいっていないのか、ゴウカザルの早期復帰を願っているそうな。

 

「……件の巨大ポケモンは出さぬつもりか」

 

「デンボク団長は屍山血河がお望みで?彼らの力は普通のポケモンに対して威力過剰……その爪牙はポケモンの肉体を容易く引き裂き挽肉にできるんですよ。私だってそんな残酷なことはしたくありません」

 

「……そうか」

 

実際、ミミロップとゴウカザルの負傷を目の当たりにした私には、彼らの力が如何に恐ろしく強すぎるのかがよくわかる。……だから、それを加味してもグラビモスだけは絶対に出せない。出したら最後、ポケモンごとトレーナーを消し炭にしてしまいそうだから。

さて、デンボク団長はどう動くかな。まぁ、カビゴンが覚える技には10まんばりきがあるから、十中八九弱点を突いてくることだろう。

 

「10まんばりきだ!」

 

「カンビィッ!!」

 

ほらね。

 

「素早く、バレットパンチ!!」

 

「クオッ!!」

 

先制技を早業で繰り出すゴリ押し先手術!一瞬で接近してきたルカリオに、カビゴンは目を丸くして驚いている。その隙を突き、ルカリオはバレットパンチをカビゴンの鼻先に叩き込んだ!

 

「しねんのずつき!」

 

「クォアッ!」

 

「ンビッ!?」

 

さらに追撃としてしねんのずつき!ルカリオは接近した勢いをそのままにカビゴンの顔を両手で固定し、そのままずつきをかました。

 

「怯むなカビゴン!こちらもしねんのずつきだ!」

 

「カビカビ!」

 

「グッ……」

 

今度はこちらがしねんのずつきを食らわされた……が、はがねタイプを併せ持つルカリオには威力は等倍。大したダメージにはなっていないようで、ルカリオは僅かに後退した程度ですぐに体勢を立て直した。

 

「カビゴン!10まんばりき!」

 

「カンビ!!」

 

再び勢いよく突撃してくるカビゴン……だが、残念。もう既に見切っている!

 

「ルカリオ!力強く、はどうだん!!」

 

「クオォア!!」

 

突撃してくるカビゴンをギリギリまで引きつけ、インパクトの瞬間に回避したルカリオ。さらに、攻撃を避けてすれ違い際にはどうだんを置いていくことで、カビゴンが接触した瞬間に爆発を起こした!煙が晴れれば、目を回して倒れるカビゴンの姿があった。

さすがはルカリオ、攻撃技しか指示していないのに、こっちがしてほしい動きを完璧に再現してくれた。これが、波導の力なのかな?

 

「な、なんと……!」

 

「団長……私、負けるわけにはいかないんですよ。世界のためにも……なにより、私自身のためにも」

 

「……そうだろうな。だが、わたしとて譲れないものがある!わたしたちの……生活を脅かすなら、ポケモンは排除せねばならぬのだ!ゴローニャ!」

 

「ゴロー!!」

 

最後の一匹はゴローニャか……ルカリオなら、余裕で対処できる。

 

「ストーンエッジだ!」

 

「ゴローァ!!」

 

「はどうだん!」

 

「クルルオ!」

 

地面からせり上がりながら迫って来るストーンエッジを、アンダースローで放たれたはどうだんが地面を抉りながら吹き飛ばしていき、そのままゴローニャに直撃した。

 

「とどめ……力強く、みずのはどう!!」

 

「クルル、オア!」

 

「ロニャアッ!?」

 

「ゴローニャ……!」

 

いわ・じめんタイプのゴローニャにみず技はとびきり効く。たとえ使ったのがみずタイプでなくとも、かなりのダメージが見込めるだろう。事実、ルカリオのみずのはどうの一撃でゴローニャは戦闘不能になった。この勝負、私の勝ちだ。

 

「……真の強者よな……」

 

デンボク団長は小さく呟くと、その場で膝をつき頭を下げた……要するに、土下座をしたのだ。

 

「ショウよ……申し訳なかった、このとおりだ。衷心よりお詫びする……!」

 

「デンボクさん……」

 

「今更だがギンガ団のため……いや、カミナギの民のため、ヒスイのポケモンのため力を貸してくれ……」

 

「大丈夫だ、旦那。あかいくさりがある!」

 

カイさんが痛ましい表情でデンボク団長を見やり、セキさんは改めてあかいくさりの存在を伝える。

それにしても……まさか、土下座をするとは。デンボク団長もそれだけ本気だということか。そこまで誠意を見せるなら、こちらとしても謝罪を受け入れてもいいんだけど……デンボク団長が土下座をしたあたりから、グラビモスが入ったボールがさっきよりもずっと激しく動き続けているんだよね。今にも飛び出して、デンボク団長を踏みつけにしてしまいそうだ。

だから、ここはグラビモスに納得してもらえるような終わらせ方をするべきだ。それに……グラビモスの怒りは、私の怒りも同然。彼が怒ってくれるから、私自身も怒りの感情を流されずにしっかりと保ていられる。ボールにそっと手を添えて、グラビモスを落ち着かせる。私の想いが伝わったのか、ボールはゆっくりと動きを止めていった。ありがとう、グラビモス。大丈夫だよ……私なりにけじめをつけるから、そこから見ててね。

 

「……わかりました。ただし……一発だけ、全力でぶん殴らせてください」

 

「……それでお前の気が済むのなら、いくらでも受けよう」

 

「では……」

 

デンボク団長が顔を上げたところで、私は拳を握り締める。

 

「破ァッ!!」

 

そのまま私は……デンボク団長の眉間に拳を振り下ろした。下手したら鼻骨に当たって私もめちゃくちゃ痛い思いをする場所だが、かろうじて鼻骨との接触は避けられた。女子供の一発とはいえかなりの威力が出たようで、デンボク団長はそのまま仰け反り尻餅をついた。

 

「……今は、これで済ませます。ですが、私を使うだけ使って捨てたこと……私の信用を裏切ったこと、一生許しませんから」

 

「……あいわかった」

 

「ふぅ……ヒヤヒヤしたぜ、ショウ。なにはともあれ、次はシンオウさまだな!」

 

セキさんの言う通りだ、けじめはつけたがまだ事態は収束していない。私たちはシンオウ神殿の一番奥へ向かう。ここであかいくさりを使う必要があると思うんだけど……。

 

「応っ、さっそくあかいくさりを使おうや!」

 

「待って……え?なにこれ……!!」

 

「カイさん……?」

 

なんだろう、カイさんの様子がおかしい……?

 

「なにかがわたしの頭に……ううん、心に話しかけてきてる!?」

 

……!?カイさんに何かが干渉しているというの?

 

「"アカいクサリ……ヨクきたナ、ワれヲツカまエろ!"」

 

「おい、カイ、何を言い出してやがる!?捕まえろ、だと?」

 

「シンオウさま?シンオウさまが語りかけてくる……。"アカいクサリ……ヨクきたナ、ワれヲツカまエろ!キタるべキタタカいニソナえテ!"」

 

カイさんの口からは不思議な口調で言葉が紡がれる。特に気になったのが、「来るべき戦い」の部分……いったい、何が起こるというのか……。

やがて、シンオウ神殿の奥から異質な空間の裂け目が出現し、そこから一匹のポケモンが姿を現した。真珠のような核が納まった肩アーマーが特徴の、力強い気配を携えた一匹のポケモン……まさか、これがシンオウさま?

そのポケモンからは禍々しいオーラが放たれていたが、私が持っていたあかいくさりがひとりでに飛び出すと、そのポケモンを囲い込み力を押さえつけてしまった。あかいくさりは砕け散ってしまったけど……目の前のポケモンからはオーラが消え失せ、落ち着きを取り戻したように見えた。

 

「パルルルルアアアァッ!!」

 

なるほど、コイツと戦って捕まえろってことね……!

 

「トゲキッス、お願い!」

 

「キッスッス!」

 

私が繰り出したのはトゲキッス……ルカリオとともに採用した新しいメンバーだ。なぜかは分からないけど……私の直感が訴えているんだ。……あれは、竜だと。竜ということはドラゴンタイプ……ならば、フェアリーで対抗するのが定石!

 

「パルルゥッ!!」

 

いきなりハイドロポンプか……!

 

「躱して!」

 

「キッス!」

 

「反撃だ!ムーンフォース!!」

 

「キイィッス!」

 

ハイドロポンプを回避し、反撃にムーンフォースを放つ!攻撃は命中し、ドラゴンポケモンにかなりのダメージを与えたみたい……やはり、私の勘のとおりドラゴンタイプだ!

 

「パルアァ!」

 

ドラゴンポケモンは翼を広げて飛翔すると、そのまま接近してきた。……!尻尾が水を纏っている……アクアテールだ!

 

「エアスラッシュで弾幕を張って!」

 

「キッス!」

 

エアスラッシュによる弾幕で、ドラゴンポケモンの勢いを削ぐ。僅かに速度が緩んだ……その隙は逃さない!

 

「サイコキネシス!」

 

「キスキス!」

 

「パルッ!?」

 

「叩きつけて!追撃に力強く、ムーンフォース!!」

 

「チョッゲ!キイイィィッスッ!!」

 

「ルアアァァァッ!!」

 

……よしっ、たとえ相手がシンオウさまだろうが、ほとんど一方的に試合運びができている!……もしかしてシンオウさまって、トゲキッス……というより、フェアリー・ひこうの複合タイプに対して打てる技が少ない?だとすれば、トゲキッスを採用したのは正解だったかもしれない。

シンオウさまはだいぶ弱っている……今なら!!

 

「いっけぇ!モンスターボール!!」

 

ボールを投げて、シンオウさまがその中に格納される。しばらく抵抗するように暴れていたけど……捕獲の花火が上がった!!

 

「よしっ……!」

 

やった……シンオウさまを捕まえた!確かに見た目からして手強そうなポケモンだったけど……私の身近にはもっと危険なポケモンたちがいるからか、あまり恐ろしいとは思えなかったな……。

事の一部始終を見守ってくれていたカイさんたちも、我が事のように喜んでくれている……あ、博士と先輩、いつのまに。戦いに夢中になってて、全然気がつかなかった……。

 

「シンオウさま……いや、パルキアさまが心に話しかけてくるよ……!?」

 

あ、パルキアっていうんだあのポケモン。……んん?パルキア?あれ……なんかお母さんのポケモンにそんな名前のポケモンがいたような……それに、パルキアの姿もどこかで見たような記憶が……。

 

「ジクウ、ミダレ……クズれタ、チカラカんケイ……。アラぶるイッピキ……ヤッてクル!ワれ、ソノタめニオリタッたゾ!」

 

「もう一匹やと?だが、あかいくさりは砕けた……いかにショウといえど、もう1匹と相対するのは無理やろ!」

 

びっくりした!デンボク団長、コガネ弁を話せるんですか!?もしかしてジョウト地方出身?

もう一匹……いや、そうか。時間と空間……パルキアがどっちかはわからないけど、司るものが二つある以上、もう一匹存在するのは必然……!ジンオウガたちを使えば戦えないことはないけど……この問題に、ジンオウガたちを使うつもりはない。これは、ここまで私を支えてきてくれた彼らへ示す……私自身の覚悟だ!

そうこうしているうちに、先ほどパルキアが出現した穴が再び開き、そこからもう一匹……青い色の四足ポケモンが現れた。……あれ、は。あれも、竜だ。わかる、あれもドラゴンポケモン……パルキアに比べて、だいぶ鋭利的な姿をしている……。

 

「グギュグババァグアア!!」

 

もう一体のシンオウさまの咆哮とともに、得も知れぬ力が溢れ出した!

デンボク団長は撤退するよう叫んでいる……戦うだけならなんとかなるかもしれないけど、あかいくさりが無い以上はあのポケモンを鎮める手段はない……。ここは素直に退却するほうがいいだろう……そう判断して、私たちは山頂ベースまで撤退した。

 

 

 

 

さて、山頂ベースまで戻ってきたはいいものの……あのシンオウさまをどうすればいいのかは見当がつかない。シンオウさま出現時に裂け目から溢れていた凄まじいエネルギー……ラベン博士は、あのエネルギーが雷という形であふれてキングたちを荒ぶらせていたのではないか?と仮説を立てている。私もその通りだと思う。

デンボク団長からは改めて謝罪を受けた。私を信じてくれたセキさんとカイさんが正しかったことを認め、己の一存で団を追われながらも、これまでヒスイ地方の人々を助けたことへの感謝の言葉も……。ここは素直に受け取らないとダメだ。その気持ちは紛うことなく本心だろうから。セキさんとカイさんも、デンボク団長の暴走を一応は許すみたい。……私は一生許さないけど。

あかいくさりが砕けてしまったことも含めて、今後のことをきちんと話し合わないと……そう考えていると、カイさんがすでにパルキアから事態の解決法を聞いていたみたい。その内容は「宇宙始まりの石。あかいくさり。人が造りし器。それらを合わせ、乱れし時間を収めよ」とのこと。さらにはパルキアも同伴させる必要があるんだとか。……留守番はライチュウに頼もう。

パルキアの言葉を、色々と考えてみる。あかいくさりは砕けた破片をセキさんが回収していたみたい。人が造りし器……ラベン博士が思うに、モンスターボールのことだろうとのこと。そして、宇宙始まりの石……キクイさんなら何かわかるかも知れないとのことで、カイさんがキクイさんを呼ぶこととなった。そして……ラベン博士はアヤシシたちから貰ったプレートにヒントがあるとのことで、今は私が今まで貰ってきたプレートを見ている。なんでもプレートにはメッセージが刻まれているらしく、そこにヒントが書かれているのではないか、とのこと。ウォロさんから聞いたらしい……プレートにも詳しいのか、あの人。ますます何者なのか気になるな……。

 

「……これです!」

 

あっ、どうやらラベン博士が発見したみたい。大地のプレートに書かれた「宇宙生まれし時 その欠片、プレートとする」……これがヒントになるみたい。曰く、プレートに似た性質の石を探せばいいみたい。さらにキクイさんはウォロさんの依頼でそうした石に心当たりがあるそうな。……いや、ウォロさんあなた何をやってるんですか。そして、博士が名付けた「オリジン鉱石」を探すこととなった。

……商人として働く傍らで、プレートやオリジン鉱石について聞きまわっていた、と。まさか、今回の事態にウォロさんも一枚噛んでるんじゃ……?いや、たかだか一商人に過ぎないウォロさんに、一体何ができるというのか。詮無きことだと考えを捨てて、目の前のことに集中することにした。

 

 

 

 

キクイさんを待っている間、暇を持て余したのかツバキさんが絡んできた。セキさんに「役目をくれ」と強請れば、「応援してろ」と言われる始末。いや、それでいいのかキャプテン。しかもヨネさんをはじめとする他のキャプテンたちはキングの世話や集落の人々を落ち着かせるために東奔西走しているとか。それなのにツバキさんときたら、団長のセキさんをバカ呼ばわりした挙句「人には向き不向きがある」なんて抜かしおる。……この人、なんでキャプテンになれたんだろうか。セキさんの人選ミスが疑われる……。

そして私はツバキ賞としてスイートトリュフを貰った。……後でヨクアタラーヌとクリティカッターにクラフトしよう。

そして、カイさんに連れられてキクイさんが合流した……その矢先にツバキさんがキクイさんに難癖をつけ始めた。……少なくともツバキさんの云百倍は役に立ちますので気に入らなくても受け入れてもらいますからね。一方でキクイさんも負けじと反撃をする。終いにはお互いのキング同士でバトルするか?なんて完全に喧嘩腰になっている。

……対面有利はマルマインかな?タイプ相性ならバサギリが有利だけど、すばやさはマルマインが上だし。初手に力業のかみなりを命中させれば、特防値が高くないバサギリでは受けきるのは難しいだろう……けどそこで仕留め損なったら反撃のむし技が怖いところ。シザークロスは急所に当たりやすいし、力業で放てばさらに急所率が上がる。ワンチャン命中安定で力業クロロブラストなら威力等倍で落ちるかな……っと、いけないいけない。バトルのことになるとつい熟考してしまう……こういうところ、お母さんに似てるってよくお父さんに言われたな。

ふと気が付くと、私がヒスイマルマインVSバサギリをシミュレートしている間に話はとんとん拍子に進んでいたらしくこれから太古の洞穴へと向かうところだったらしい。ヤバイヤバイ、すぐに移動しないと……。

 

「何をぼーっとしてんだ、ショウ」

 

「すばやさで上を取れて尚且つ命中安定の力業クロロブラストならバサギリの特防をぶち抜いて初手確一で落とせるのではないかと」

 

「めっちゃ早口で何言ってんだおめえ」

 

しまった!まだシミュレートから抜けきれていなかった……。私の言葉が聞こえてしまったようで、ツバキさんが上機嫌に、キクイさんが不機嫌になってしまった……ほんと、スミマセン。以降、頑張って自重します。……多分。

 

 

 

 

太古の洞穴……以前訪れた時は、ポケモンの化石っぽいのと、よくわからない力を感じる石がある、位の印象しかなかったけど……。改めて訪れると、その力強さがよくわかる。キクイさんの採石の知識と技術、そしてヌメイルの技が合わさればきっと可能だ、任せてくれと意気込むキクイさんは本当に頼もしい。……ただ、やけに気合が入っているように見えるのは、私のバトルシミュレートのせいだとは思いたくない……。

 

「ちょいと待っていただこうか」

 

さあ採石開始……というタイミングで、どこからともなく野盗三姉妹が現れた!どうやら私たちの後をつけてきたようで、今までの話を聞いていたらしい。すわ、立ちはだかるかと身構えるセキさんとカイさん……けど、私は構えすら取らない。だって、野盗三姉妹からは明らかに敵意を感じられないから。

 

「本当ならここいらで宝を横取りしようかとするところだけれど……あたくしたちはショウに借りがあるからね、そっちに手出しはしないよ」

 

オマツ……どうやら、リオレウスの炎から助けたことをちゃんと覚えていてくれたみたい。確かに言っていた……「いずれ必ず返す」と。

 

「ショウ……あの巨大なドラゴンポケモンを従えるあなたなら、テンガン山にやってきたというバケモノだってなんとかできるでしょう」

 

「まぁ、あんなバカでっかいポケモンをどうにかできるんなら、なんとかなるんだろうけどね!」

 

「お宝は見逃してやるから真っ赤な空、なんとかしろよな!」

 

「今回は何もしないでおいてあげるけど、次にあったらタダじゃおかない……覚えておきな!」

 

野盗三姉妹はそれぞれに言いたいことだけ言って、まためかくしだまでどこかへ消えていった。……セキさん、「何しに来たんだよ」って……多分だけど、激励?

野盗三姉妹が去ったので、改めてキクイさんが採石を始めた……うん、無事にオリジン鉱石が採れたみたい。手に取ってみると、確かに力を感じる……これなら、きっとどうにかできるはず!一度オリジン鉱石をベースで待つラベン博士に見せてみると……うん、いい反応が返ってきた!これで良かったみたいだ!

その後、コトブキムラに戻った私たちはギンガ団本部で合流し、オリジン鉱石とあかいくさりをクラフト名人のテル先輩に預けて、部屋の外で待機。しばらくして、ラベン博士がオリジンボールと名付けられたボールを手に戻ってきた。……このボールで、もう一匹のシンオウさまを捕らえる……難しいかもしれないが、必ずやってみせる。

そして、それが終われば私は――。

 

「ショウくん。オリジンボールを携え、パルキアとともにシンオウ神殿に急ぐのです!」

 

「はいっ……」

 

いや、今はよそう。まずは目の前のことをすべて終える……それからだ。

門の前まで移動すると、そこにはコギトさんがいた。コギトさん曰く、時間と空間は切り離せないもの……。シンオウ神殿に現れたもう一匹のシンオウさまは時間を司るポケモン……名はディアルガ。荒ぶるディアルガを鎮めれば、私が捕らえたパルキアの力を合わせることで時間と空間がともに釣り合い、世界は正しく存在することができる……らしい。

あと、私たちが事態の収拾に取り掛かっている間、コギトさんはムラで買い物を楽しむんだとか。ちゃっかりしてるなぁ、この人。

 

 

 

 

場所を再び移してシンオウ神殿へ。カイさんから「為すべきことがある人には、輝ける舞台がある」という意味のことわざ「場が迎えに来た」という言葉をいただいた。……うん、いい言葉だ。

実は誰にも言っていないけど、私には小さな頃からお母さん、お婆ちゃん、そのまたお婆ちゃん……もう何代も前のお婆ちゃんから聞かされ続けた(ウタ)がある。

 

いざゆかん

そうこうまとう

らいろうの

ほうこうひびく

いにしえのくに

 

私の何代も前のお婆ちゃんたちが詠い継いできた(ウタ)。……残念ながら長い長い年月の果てに(ウタ)だけが残り、その意味はすっかり失われてしまったけれど……この(ウタ)を脳裏に浮かべるたびに、たくさんの勇気が貰えるような気がする。私はもう一度、この(ウタ)を胸に刻んでシンオウ神殿の奥へと向かった。

 

待ち構えるディアルガを前に、私はパルキアが入っているボールを構える。すると、ディアルガの胸の部分……ダイヤモンドのような形状の核から光が生まれ、ディアルガが包まれていった!私は反射的にパルキアを繰り出し――

 

瞬間、爆発が起こった。

 

……幸いにして間に合ったようで、パルキアが光の爆発から私達を守ってくれた。けれど、ディアルガは光の渦に包まれたままで、姿すら見えない。パルキアが口から光線を放つと、ディアルガを包む光が消えて行き……ついにその姿があらわになった。

先程よりもより鋭角的に、そして神々しく変化したディアルガ……ともすれば、いびつにも見えるその変化に、私は警戒を一層強める。

その時、パルキアがゆっくりとこちらを見た。パルキアが小さく頷くと、私の手の中にはシズメダマが用意されていた。……ありがとう、パルキア。あなたもディアルガが心配なんだよね。大丈夫……私に任せて!

 

キング・クイーンとの戦いの要領で、ディアルガに次々とシズメダマを当てていく。空から降らせてくるりゅうせいぐんや地面に沿ってくる衝撃波など、回避するのも一苦労な攻撃ばかり……けど、冷静に見極めて、攻撃のギリギリのタイミングまでシズメダマを当てて当てて当てまくる!!ディアルガが大技を仕掛けてくる前に、なんとしても終わらせてみせる!!

 

「こんのぉ!」

 

「……!!」

 

投げて投げて投げまくって……もう何十回と投げ続けて、ついにディアルガが体勢を崩した!今なら!!

 

「いけっ!オリジンボール!!」

 

私が投げたオリジンボールが激しい光とともにディアルガを捕らえた!一度……二度……三度と暴れるボールだけど……淡い光とともに、ついにボールが動きを止めた!ディアルガを、捕獲できた……!

その直後、ボールの直上から光が差すと、赤く変化した空が元の色へと戻り始めた。よかった、ひとまずは解決――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと……待って、よ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで、時空の裂け目が……消えているの……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは めのまえが まっくらに なった……

 

 

 

 




最後の方、完全に駆け足になってて書いてて草不可避。
さて、アンケートですが、実施日数は活動報告の方に書いときます。
とりあえずは皆様のためにぃ……一夜漬けで考えた極みポケモンの設定を……(「・ω・)「ホイ


極みポケモン
強い覚悟を秘めたり外部からの強力な干渉を受けたポケモンが、極稀に極地へと達することで変化した姿。個体によっては進化のように姿が変わることがある。
全てのポケモンに共通して、通常覚える4つの技に加えて「大技」と呼ばれる第5の技を使用できる。ただしこの「大技」は一度使用した場合、再使用にはポケモンをしっかりと休ませる(ベースキャンプで休む)必要がある。


極み個体の一覧

(きわ)()()るダイケンキ みず・あく
初めて観測されたダイケンキの極み個体。オドガロン亜種との戦いで、自ら角を折ってでも勝利に貢献するほどの強い覚悟を示した姿。全身にオドガロン亜種戦での傷痕が残っており(当人の希望でわざと残している)、前述したように角が折れているのが特徴。
角が折れたことで技「メガホーン」が使用できなくなった代わりに、より神経を研ぎ澄ませることで敵の急所を見極められるようになったことで全ての技を急所に当てられるようになっている。
大技は「絶剣(ぜっけん)波濤(はとう)」。自身の折れた角を加工したカタナに水の力を集めて巨剣を形成し、敵を一刀両断する確定急所のみず技。


(きわ)(ほとばし)るライチュウ でんき
ダイケンキに続けて観測されたライチュウの極み個体。
非常に高い電圧の電撃を操っている影響で頬袋が白く染まっており、耳や尻尾の先端が電撃で常に焦げている。放たれる電撃も白くなっているのが特徴。
単純にでんき技が強化されており、でんきタイプを半減するでんき、くさ、ドラゴンタイプに対して等倍以上のダメージを与えられるほどになっている。ただしじめんタイプに対しては変わらず無効のまま。
大技は「ボルテージスマッシャー」。電撃を纏った後、敵に連続体当たりを仕掛け、最後に打ち上げた後に真下に回り込み、止めに光の柱と見紛うほどの巨大な雷を相手に叩きつけるでんき技。


(きわ)()(みだ)れるロズレイド フェアリー・どく
ダイケンキに続けて観測されたロズレイドの極み個体。
両手の花束が色とりどりに変化した他、くさタイプを失った代わりにフェアリータイプを得た。しかし、くさ技の威力は通常時と遜色がないことから、くさ技を高い威力のまま繰り出せることが判明した。また、ノーマルタイプの技がくさタイプに変化するという現象も観測された。両手の花は、右手が赤・白・黄色、左手が青・黒・ピンクとなっている。
大技は「満開乱舞(まんかいらんぶ)花嵐(はなあらし)」。はなびらのまいの超強化版といっても過言ではない大技。大量の花弁を伴う嵐を起こして相手にぶつけるくさとフェアリーの二属性を持つ技。


(きわ)蹂躙(じゅうりん)するガブリアス
ダイケンキに続けて観測されたガブリアスの極み個体。
背びれが巨大化・二つに裂けたことで空を飛ぶ翼となり、より機動力に特化した姿となった。爪も一本から二本に増えたことでより攻撃性の増した形状となり、物理攻撃能力が極端に増大した。
大技は「アブソリュートドラゴンストーム」。龍属性エネルギーを纏った超速体当たりで敵を薙ぎ倒す。また、体当たりを回避しても遅れて発生する龍風圧による「ぼうふう」レベルの追撃があるため、事実上回避不可の必中ドラゴン技。


ライチュウ、ロズレイド、ガブリアスの三体が極み化するストーリーも、概ね考えが纏まりつつあるので乞うご期待!




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【これから】我らモンハン部異世界支部【どうしよう?】

ストーリーの前半も終わり、いよいよ後半のプレート探しへ……


1:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

はい、始まりました『我らモンハン部異世界支部』のお時間です!

えー、本日はね、スペシャルゲストをお呼びしております!

シンオウ神話にその名を語られる時間を司る神!ディアルガさんです!どうぞー!

 

2:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

うむ、我がヒトに語られし時間神、ディアルガである

 

3:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えー、ディアルガさんお越しいただきありがとうございます

えー、本日はなんと?もう一人スペシャルゲストがいらっしゃるということで!早速お呼びしましょう……パルキアさんです!どうぞー!

 

4:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

……あ、えっと、空間神のパルキアです

よろしくお願いします

 

5:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

さて、スペゲスさんが二人に対してMC一人は少々負担が過ぎるのでこちらもMCをもう一人お迎えしましょう!

火竜リオレウスこと、赤羽焔くん、どうぞー!

 

6:空の王者 ID:MH2nddosHr8

はいどうもー!リオレウスに入り込んじゃった元DK、赤羽焔でーす!よろしくおねがいしまーす

 

7:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えー、準備が出来たところで、早速質問コーナーへと参りましょう!

まずは……ペンネーム『テルショウ万歳!』さんからのご質問です、ありがとうございます

 

えー、"ディアルガさん、パルキアさん、こんにちは!ちょっと僕気になったんですけど、時空の裂け目から落ちてきた人って、やっぱり時空の裂け目を通らないと元いた場所には帰れないんですかね?イメージとしては来た道を帰る、という感じです"とのことですが……えー、いかがでしょうかお二方

 

8:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

その問いに答えよう……帰れぬことはないが、必ずしも帰れるとは限らぬ

知ってのとおり時空の裂け目そのものはありとあらゆる時空に繋がっておる故、出口から入ったからといってかつての入口に戻れる保証はない

 

9:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

えーと、わかりやすく説明しますね

今回の事例でいいますと……少女Sさんは元々住んでいた時代・世界から時空の裂け目を通ってヒスイ地方へとやってきました。

では、ヒスイ地方で開いている時空の裂け目を通れば元いた場所に戻れるか……その可能性は限りなく低いです

仮にヒスイ地方の時空の裂け目へ入れたとしても、少女Sさんが住んでいた時代・世界に繋がるとは限りませんので

 

10:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なるほどー……それじゃあ、少女Sさんはテンガン山上空の時空の裂け目には入らない方が良かったということですね?

自身にとって全く未知の世界に飛ばされて泣きを見ることに比べれば、入り損ねて時空の裂け目が消滅した今回の状況の方が遥かにマシだと

 

11:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

であるぞ

 

12:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

はい、ありがとうございました!えー……では、次の質問です

続いては……ペンネーム『戦えねえ鎧竜はただの岩だ』さんからのご質問です、ありがとうございます

 

えー、"自分は知ってるので聞く必要はないんですが、多分知らない人もいると思うので知らない人を思ってあえて聞きます、パルキアさんがボールで捕まったので権能消失して少女Sさんは実質帰れなくなったってガチですか?"

 

えー、パルキアさんへの質問……となりますかね、どうですか?

 

13:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

そうですね……ボールというものがポケモンに対する抑止力となっているのか、はたまた別の理由か……とにかく、私は以前よりも権能を行使することが難しくなっています

ですが……ボールとはいえ、あかいくさりを用いられたソレに捕らえられたディアルガならば、あるいは……

 

14:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

であるぞ

 

15:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ほほぅ、あかいくさりの力によって捕らえられたも同然のディアルガならば、時間操作の権能を使うことが可能だろうと?しかし、ボールによって捕らえられたパルキアは権能を失ってしまったと……

結論:少女Sは帰れないということですね!?

 

16:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

大変心苦しいですが……

 

17:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あー……わかり、ました!えー……これが最後の質問ですね

ペンネーム『水陸両用海竜』さんからのご質問です、ありがとうございます

 

えー、"ディアルガ、パルキア両名を生み出した創造神ならば、空間跳躍も時間操作もわりとなんでもできそうなんだけど、そこんところどうなの?"とのことです

 

18:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

我らが全なる母に不可能はない……ない、が……

 

19:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おや、何か問題が?

 

20:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

えぇ……今、かかさまが対処に当たっている、アレが……

 

21:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

それだけではない……我らが荒ぶり、全なる母がアレの対処に追われている隙を突き、何者かがこの世界へと干渉したのだ

その影響は、すでに貴様らも知っておろう

 

22:空の王者 ID:MH2nddosHr8

湖の守護者……ポケモンとは異なる異界のケモノへとすり替えられていた、あれか

 

23:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

であるぞ

……全なる母とて、貴様らが宿っている肉体を異界からこちらの世界に引き込むのにかなりの力を使ったというのに、その何者かはただ便乗しただけで全なる母と似たようなことをやってのけたのだ

少女を元いた場所へ返すとなれば……今回ばかりは、全なる母とて多大な労力を強いられることとなろう

何者かの妨害が無いとも限らぬゆえな

 

24:空の王者 ID:MH2nddosHr8

少女Sが元々住んでいた時代・世界の歴史には、俺たちの存在は記されていなかった……

もともと存在していなかったのか、あるいは存在していたが秘匿乃至は記録を抹消されたか……

 

25:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

自覚あるならば、理解しているはずだ……天上人であれば、尚更な

貴様らの力は、この世界には過ぎたる力……伝え残しては、後の世に禍根を残すやもしれんぞ?

 

26:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そうだなぁ……

 

27:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えー、はい!ありがとうございました!……おっと、どうやらお時間のがやってきたようですね……

リスナーの皆様、本日の『我らモンハン部異世界支部』はいかがでしたでしょうか?皆さんの知りたい、気になるをお届けするべく我ら一層励んでまいりますので!もしも知りたい、気になるがあればどしどし応募してくださいね!

えー、ディアルガさん!パルキアさん!本日はおこしいただきありがとうございました!

 

28:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

えっと、こちらこそどういたしまして

 

29:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

であるぞ

 

30:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それでは、そろそろ締めに向かいましょう

 

31:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

はい!それではいつものお別れの挨拶で、締めとさせていただきます!

それではみなさんご一緒に……ひと狩り、いこうぜ!!

 

32:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なげーんだよ茶番が

 

33:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

すんまそんすんまそん流静さんすんまそん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

129:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……ほい、反省しろ反省

 

130:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

すみませんでした

 

131:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

長かったなぁーww

 

132:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

茶番なんてやっとる場合かい

 

 

ショウちゃんのメンタルが死にかけてんだぞ、馬鹿ども

 

133:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

光輝の言うとおりだぞ

ショウちゃんの状態を改めて確認するが……

→ディアルガ捕獲直後に時空の裂け目が消えて、そのままぶっ倒れたショウちゃんはムラに着いてから目を覚ました

→シンワ祭りの間はなんとか笑顔を繕えていたけど、祭りが終わって自室に戻ってすぐに大号泣

→一週間もの間を茫然自失のまま部屋で過ごすが、テルくんやヒナツネキ、ノボリらの献身的なメンタルケアでなんとか調査に参加できるくらいには立ち直る

→それでもショウちゃんの体調を考慮してシマボシ隊長からは野外調査自粛命令を下され、現在はラベン博士と共に放牧場にてモンハンモンスターの調査活動中←今ここ

 

134:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

茶番なんてやってる場合か?いやマジで

 

135:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ふざけてる場合じゃなかった……

 

136:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

真面目に反省してます……

 

137:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それで俺ら全員がボールから出てるわけね

 

138:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……こうして見ると、なかなかに壮観だな

 

139:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ジンオウガ

グラビモス

ラギアクルス

リオレウス

ベリオロス

ゴシャハギ

ホロロホルル

オドガロン亜種

 

錚々たるメンバーだな

 

140:空の王者 ID:MH2nddosHr8

大型モンスターでまだいないのは

甲虫種

甲殻種

魚竜種

獣竜種

両生種

鋏角種

蛇竜種

古龍種

 

以上、八種類だな

 

141:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

古龍種は存在するだけで迷惑なのでノーカンとして、実質七種類か

 

142:空の王者 ID:MH2nddosHr8

これ以上は来てほしくないが、来るとしたら甲殻種か獣竜種あたりかね

 

143:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

こうして見ると、一応名前が六文字以内で収まるメンツだけが来てるんだな……

甲殻種って六文字が一匹もおらんのだがいいのかこれ?

 

144:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

じゃあ、甲虫種か?アルセルタスとアトラル・カくらいしかまともなのいないが……ゲネル・セルタスはゲネルタスでワンチャン

 

145:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ゲネルタス……うーん、名前にセルタス科の名残がないので二十点

 

146:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

魚竜種はわりとヒスイ地方でも生きていけそうだな

 

147:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんならいても違和感ないだろ、ガノトトスとかジュラトドスとか

 

148:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ブラントドスも純白の凍土にいても全然違和感ないな

 

149:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

獣竜種はどうだ?……いや、体格的にもいたらいたで場所に困る奴らばっかりだな……ジョーさんは論外として

 

150:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

両生種はいてもいいと思うけどなぁ、適応力高そうで

 

151:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

……驚いたな、異界のケモノとは、何も貴様らのみではなかったということか

 

152:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

意外と多いぞぉ、百竜夜行とかできるからな

 

153:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

なんと……凄まじい限りですね

 

154:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……おや、ショウちゃん?ラベン博士に赤衣の男のこと話すのか?

 

155:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……なんか、会いにいく流れになっとるが大丈夫か?自粛中だろ?

 

156:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふむ……一旦、シマボシ隊長に確認に行くのか

 

157:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あっちがコトブキムラにくりゃいいのに

 

158:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それはないだろうな

なんせ存在からして謎しかない男なんだ、原作でちょっとでも明言されてれば良かったが、まったくなかったし……依頼文から見てもそんな殊勝な性格してるとも思えん

 

159:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……人に会いにいくだけならよし、と

おーい、許可おりたってよー!天冠の山麓、フェアリーの泉へ行くぞー!

 

160:空の王者 ID:MH2nddosHr8

出番ですね?お任せあれー!

 

161:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ふぁっきゅー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

277:空の王者 ID:MH2nddosHr8

山頂ベースへ無事にとうちゃーく

 

278:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

では、我々はこのあたりで一旦失礼する

 

279:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

皆さんとのお話、大変有意義な時間でした

 

280:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それはこちらのセリフだ、お二方

 

281:空の王者 ID:MH2nddosHr8

滅多にない経験だからな、楽しかったぜ!

 

282:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

機会があれば、また話そうぜ

 

283:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺たちはみんなショウちゃんのポケモンなんだ、いつでも話し合おう!

 

284:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ショウちゃんのことは俺たちに任せてくれ

 

285:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

うむ

それではこのあたりで……御免

 

286:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

またお会いしましょう!

 

 

――「第一の時間神」が退室しました――

 

 

――「第二の空間神」が退室しました――

 

 

287:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……ふぅ、帰っちまったな

 

288:空の王者 ID:MH2nddosHr8

さてさて、列石峠とゴロゴロ坂と下っていって……橋の上でライドオン!

 

289:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

MONSTER RIDE……LaLaLa"Lagiacrus"!!

 

290:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

作品ちげーし変身もしねーわ!

……はいはい、ショウちゃんもラベン博士も乗ったってくだせぇ、安全運転で行きますよー

 

291:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おぉ、本当にいたわ赤衣の男……お"!?

 

292:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ぎゃあああああああああ!?

 

293:空の王者 ID:MH2nddosHr8

えええええええええええ!?

 

294:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うわあああああああああ!?

 

295:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

し、し、し……!!

 

296:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

白いドレスの少女おおおぉぉぉぉ!?

 

297:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

はい来ましたよコレ……ヒスイ地方、これにて終わります!

 

298:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おつかれやしたー

 

299:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あんなことやこんなこと楽しかったなー

 

300:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

諦めんなよ……諦めんなよお前ら!

どうしてそこで止めるんだそこで!あともうちょっとのところだろ!?ダメダメダメダメ諦めたら!

俺だってこの少女を目の前にして!ビビって逃げねぇように頑張ってんだよ!?

 

301:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……いや、でもよくよく見たらこれ……めっちゃ可愛いぞ?普通に美少女ぞ?お前ら、どうよ?

 

302:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

確かに可愛い

 

303:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ドレスどころか毛髪や肌色まで雪みたいに白くて可愛い

紅い瞳もウサギっぽくて可愛い

 

304:空の王者 ID:MH2nddosHr8

少女……というより、人によっちゃ幼女だなこれ、可愛い

 

305:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

身長的にギリ幼女か……剣介、どうだ?

 

306:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺に聞くのか?なんで俺に聞くんだ……

はぁ……まぁちゃんと答えるけど、一見すると

ロリには見えるし天真爛漫って感じだがそれだけの

理由でロリ扱いにはならんだろ、身長だってソ

コソコあるし名前通りに少女だな……というか、み

んなが言うほどロリではないぞこの子は

じゃなくてだな、なんで俺にその質問をするんだよ

や、答えた俺も大概だが当然みたいに話をするんじゃ

ないよ、お前らは揃いも揃って……いい加減にしろ!俺

以外の連中にも聞けよ!

 

307:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

長文、ご苦労さん

……ふむ、赤衣の男ことアカイとラベン博士は奥で話をしてくると……その間、ショウちゃんは白いドレスの少女ことシロちゃんと遊ぶと……

 

308:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おぉ……人を見るなり逃げいてくはずのピッピが自分から寄ってくるばかりかシロちゃんに初見でめっちゃ懐いてる……

 

309:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ショウちゃん驚きで固まっとる場合とちゃうで

……え、シロちゃんポケモンバトルできるんか?

 

310:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

せやな、ショウちゃんも気晴らしにバトルに興じるのもええやろ

 

311:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それじゃあ、もう一度俺に乗って対岸へ移動っと……

 

312:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いやぁ、穏やかにバトルが始まりそうですねぇ……

ゲームだとバトル開始の合図ときたら割と物騒なものばかりで……

 

313:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

現実

「ねえねえ、ポケモンバトルしよう?」

「いいよ!合言葉どうする?」

「こっちで決めるよ!」

「わかったー」

「ルールはどうしようか」

「シングル63で」

「おk」

 

アニメ

「ねえ!君、ポケモントレーナーだろ?」

「そうだけど」

「トレーナー同士がやることと言ったらひとつだろ?」

「ポケモンバトルだな?いいぜ!」

 

ゲーム

道路を歩く主人公

→トレーナーに見つかる

「あっ!お前今目が合ったな!?Let's Battle!!」

※なお、初代赤緑仕様とする

 

314:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ゲーム世界が殺伐としすぎてて草

 

315:空の王者 ID:MH2nddosHr8

しかも初代仕様ってww主人公振り返らんやつやんwwww

 

316:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

実際ゲームはプレイヤーの意思にかかわらず見つかったら即バトルだからなww

 

317:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まさかポケモンでスニーキングに挑む羽目になるとはね……

 

318:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ダンボールは持ったか?

 

319:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さて……それではショウちゃんVSシロちゃん……ファイッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

320:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……決着、決着ぅー!勝者はぁ……ショウちゃん!

 

321:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、うん、ショウちゃんが勝てたのはええんよ、それはそれでええんやけど

 

322:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

シロちゃんさぁ……

 

 

レジェアル未実装ドラゴンパは流石に初見殺しが過ぎんか?

 

323:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

しかもボールとか完全に異空間から取り出しとるやん……あのMH4Gの登場ムービーを思い出したわ……

 

324:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おまけに技だってレジェアル未実装技を容赦なくバンバン使ってくるし……

 

325:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

さすが祖龍は格が違った……極みダイケンキがおらんかったら、ワンチャン負けてたぞこれ

 

326:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さて、バトルは終わったものの、蓋を開けてみれば謎だらけだな

ショウちゃんは早速ボールのこととかポケモンのこととか聞こうとするが……

 

327:空の王者 ID:MH2nddosHr8

普通に笑ってはぐらかされてるんですが

 

328:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ショウちゃん、気持ちは分かるが落ち着いて……あーあ、大人どもが帰って来おった

 

329:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

結局何も聞き出せないまま合流……はい、移動しますよー

 

330:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ラベン博士……よっぽどいい話し合いができたのかホクホク顔ですな

 

331:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それじゃああとは帰るだけ……え、ん?

 

332:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おや、シロちゃん……「コトブキムラに行きたいな」だとぉ……!?

 

333:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ちょwwアカイww気の毒なくらい顔が真っ青なんだがwwww

 

334:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

誰も祖龍様には逆らえないのさ……

 

335:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

何も知らなければただの可愛い少女からのおねだりなのだが……中身知ってる勢からしたらこれは「おねだり」という名の「脅迫」だわ

 

336:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うん……アカイ、ドンマイwwこれは頷かざるを得ないやつww

 

337:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まぁ現在捕獲済みのモンハンモンスターのことを教えるだけなんだから、別に減るもんじゃないだろ

……既にアカイの精神は磨り減ってるがww

 

338:空の王者 ID:MH2nddosHr8

じゃけんとっとと移動しましょうねー

 

339:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……なあ、焔、なんか声が震えてねえか?

 

340:空の王者 ID:MH2nddosHr8

べべべ別にビビってなんかねえけど今はただの女の子なんだしビビる必要なんか全然ねえじゃねぇかなのに誰がビビってるって錯覚なんだよ眼科行け今すぐ行けちなみに俺は歯医者に行くから無事にムラについたらラッキーの卵料理を腹いっぱい食うんだやっべ毛づくろいしよ

 

341:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

落ち着け!支離滅裂になってんぞ!あと毛づくろいはいらんだろ

 

342:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、祖龍様が乗っかてんだぞ?そんなん誰だって緊張するやん

 

343:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お前は推しの子と握手をする前に手を洗い、握手をする時にズボンやシャツで改めて手汗を拭くだろう?誰だってそーする、俺もそーする

 

344:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……しっかし、祖龍様は考えてることがさっぱりわからんな……人間と(祖龍様にとって)異界の生物を使役して戦わせあったり人間のムラに行きたがったり……

 

345:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……さも当然のように少女を祖龍様扱いしてるけど、これ後で別人だったってことには

 

346:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ならんやろ

 

347:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

本人定期

 

348:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ボールの一件からして別人はない

 

349:空の王者 ID:MH2nddosHr8

お前にゃわからんよこの背中からビリビリと感じる龍属性エネルギーやべぇって祖龍様ほんとハンパないって

 

350:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

焔はそろそろ落ち着いてどうぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

455:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ただいまー

 

456:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おかえりーっと

 

457:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

さて、と

一応ショウちゃんたちはアカイのことを隊長に報告に行くのね

 

458:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

アカイも「調査隊の隊長殿にはご挨拶をしておこう」って言ってついてったな

 

459:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それじゃあ今後のことでも――

 

460:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

へぇ、ここが人間たちのコミュニケーション空間なのね

意外と居心地は悪くないのね

 

461:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ミ°

 

462:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ヒュッ……(心臓停止)

 

463:空の王者 ID:MH2nddosHr8

スッー……

 

464:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

(゚д゚)

 

465:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……あら?なんだか思ったような反応と違うわね……

 

466:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……いや、失礼しました祖なるものよ

アポイントメントもない突然の訪問に、皆一様に驚いているのです

決して御身に臆しているわけではございません、どうかご了承を……

 

467:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そんなに堅苦しくしないでよ、あんなに……あいし合った仲じゃない

 

468:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

小声でバッチリ「殺し」って言ったの聞こえてますよ、確かに「殺し合いし合った仲」ではございますが

 

469:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

むぅ……つまんないのー

 

470:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……( ゚д゚)ハッ!

なんか祖龍様から話しかけられた夢を見たような……

 

471:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

夢じゃないんだけど?

 

472:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

えぇ!?本物!?

 

473:空の王者 ID:MH2nddosHr8

夢だけどー!

 

474:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

夢じゃなかったー!

 

475:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

現実を見よ、飛竜ども

此処に在る者が本当に夢幻か、その身で確かめるか?

 

476:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

すいませんでした

 

477:空の王者 ID:MH2nddosHr8

すいませんでした

 

478:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

すいませんでした

 

479:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

うん、素直でよろしい♪

 

480:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……えーっと、ルーツって呼んでも?

 

481:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ルーツ……うん、いいわね!そう呼んで!

 

482:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

えー……それでは、ルーツさん

もしかして、柵の向こうにいる白い少女は貴女ですか?

 

483:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そうよ

懐かしいなぁ……最後に人間の姿をとったのは、とっても強いハンターと戦ってみたいなぁって思ってお誘いした時かしら?思えばあれって、人間でいうデートみたいなものよね……うふふ、あの時は楽しかったなぁ

 

484:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おかげでこっちは死にかけたんだが?

 

485:祖なるものらしいよ ID:MH2nddosHr999

けど、楽しかったでしょう?

 

486:空の王者 ID:MH2nddosHr8

く、悔しい……けど、否定できない……!

 

487:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

えーと……ルーツはなぜこの世界に?もしかして、ミラ一族に何かが?

 

488:祖なるものらしいよ ID:MH2nddosHr999

あーそうそう、そうだったわ

まぁ何かあったか、と言われれば「あった」と言うべきなんだけど……ここでは詳細は敢えて黙っておくわね、これも私からの試練だと思って

 

489:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、あった時点で既に大問題なんだが

 

490:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

祖龍からの試練か……乗り越えるしかないんだろうな……!

 

491:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

うんうん、といっても乗り越えてもらうのはあの女の子なんだけどね

うふふ……すっごく頑張ってるわよね、あの子!洞窟に送り込んだモンスターたちも全部捕獲しちゃうし、この世界の生物……ポケモンだったかしら?あの生き物たちもなかなかやるじゃない!

 

492:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ゴシャハギ、ホロロホルル、オドガロン亜種は貴女の仕業だったのか……

 

493:空の王者 ID:MH2nddosHr8

オマエノシワザダタノカ

 

494:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あれくらいは乗り越えてもらわないとね

それに、この世界での問題もまだ終わっていないんでしょう?まずはそっちを終わらせてもらわないとね!

 

495:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まだ何かする気なのか……?

 

496:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

もちろん♪

……これから起こりうる災禍を越えるためにも、かの少女には更なる試練を受けてもらう……越えられたならばそれで良し、できなければその命を貰うまで

かの龍の脅威はこの世界を端から端まで灼き尽くす、いずれにせよ逃げられるなどと思わぬことだ

 

497:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

元より逃げるつもりはない、俺たちはこの世界の神様によって集められたんだ

俺たちとショウちゃんなら、どんな敵とだって戦ってやるさ!

 

498:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

その通りだ、逃げるつもりなら最初っからそうしている!ショウちゃんの手持ちに加わった瞬間から、覚悟はとっくに出来ている!

 

499:空の王者 ID:MH2nddosHr8

その口ぶりだと、今後もあんたの手引きでモンハンモンスターが送られてくるんだろうが……あぁ、負ける気なんてぜんっぜんしないね

 

500:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

むしろ「かかってこいやー!」まであるわ

負けられる理由が微塵もないんでな、俺は理由や動機のない無駄な行動って嫌いなんだ……だから、理由や動機もない無駄な「敗北」って行動が心底嫌いだ!

 

501:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……まぁ、そういうことだルーツ

ここには禁忌のモンスターであろうが、何者をも恐れぬ者たちが一堂に介している……今更脅しつけたところで、全ては無駄だと一笑に付してやろう……!

 

502:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……ふふっ、よかった!これで慌てふためこうものなら、私の赤雷がムラを吹き飛ばしているところだったわ♪

……今一度、告げる

竜に宿りし人間たちよ、我が試練に挑め……来る厄災に備え、今一度力を付けよ

前世にて百戦錬磨のハンター達よ……貴様達の活躍に期待する

 

503:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おうよっ!!

 

504:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

もちろん!

 

505:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

無論だ

 

506:空の王者 ID:MH2nddosHr8

よっしゃあ!

 

507:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

やってやんよ!

 

508:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

うふふ……この世界の神様も、結構運がいいのね……こんなにも素敵な人間たちがこの世界に来てくれたのだから、この偶然に感謝しなくっちゃね♪

さて、そろそろあの子達が帰ってくるかしら……私はもう戻るね

それじゃあ、またね♪

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が退室しました――

 

 

509:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……はぁっ!緊張したぁ……

 

510:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ホンマ、それ……

 

511:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おぉ、ショウちゃんお帰り

……ふむ、野外調査復帰おめでとう!自分から復帰申請したんだね

 

512:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ってことは、このあとは調査隊室へ話し合い……つまり

 

513:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ウォロが来る……プレート探しの始まりだ

 

 

 

 




ついにあの方が参戦!!びっくりした?


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白いドレスの少女

白いドレスの少女こと、シロちゃんとポケモンバトル!
レジェアル未実装ドラゴンパという縛りプレイ……むしろめっちゃ数多くて自由度高そう。レジェアルのドラゴン枠はヌメルゴン族とガブリアス族の二種だけだし。


「はぁ……」

 

もう何度目になるのかわからない溜息をつく。分かってはいるが、どうしても溜息をつくのを抑えられない。

 

「ワウ……」

 

「……ありがとう、ジンオウガ。ごめんね、心配ばかりかけちゃって……」

 

「ワンワン」

 

今だって、毛づくろいの途中だったジンオウガに顔を覗きこまれたりと気を遣わせてしまった。一度、溜息とは別に大きく息をついて、放牧場全体を見渡す。

ポケモン達に混じって……いや、混ざると嫌でも目立つ巨体郡……ジンオウガたち巨大ポケモンは、放牧場にいてなおその異質さを隠しきれていない。与えられたエサを食べるオドガロンとリオレウス、体を横たえるグラビモスとホロロホルル、お互いに冷気をかけ合っているベリオロスとゴシャハギ、ラベン博士に背電殻を調べられているラギアクルス……そして、そんな彼らを遠巻きに見るポケモンたち。

……え?体長5m程度のホロロホルルが、どうして巨大ポケモン扱いかって?……さっき言ったとおりホロロホルルはジンオウガたちと同様、他のポケモンたちから敬遠されているので、体の大きさと関係なくこちらに区分されているの。

 

「……平和、なんだよね……」

 

「ガウ?」

 

「うん……平和だなって思ってたんだ。世界は救われた……それ自体は、いいことのはずだから……」

 

「…………」

 

言いながらも、そんな事を言う自分が嫌になる……心の底から、本気でそう思いきれていないくせに。

 

 

 

 

ディアルガを捕獲したことで、赤い空が元通りになった。……ただ、私にとって唯一の帰還の術である時空の裂け目まで、消えてなくなってしまった。……その直後から、私の記憶はぷっつりと消えていた。次に気がついたのは、自分の部屋の中だった。テル先輩曰く、空が元に戻った直後、私はその場で倒れてしまったらしい。「長く気を張ってたんだろう、お疲れ様」……そう言われてから、また頭の中が真っ白になった。それからのことは、ちょっとだけ曖昧。なにか、世界が平和になった証にギンガ・コンゴウ・シンジュの三組織合同のお祭り「シンワ祭り」を開催したそうだけど、その辺の記憶もあまりない。ただ、はっきりと覚えていることは……私は、帰る手段を失ってしまったという事実だけ。

 

祭りの間は、ちゃんと笑えていたような気がする。ただ、祭りが終わって自室に戻ると、一気に現実が押し寄せてきた。もう帰れない、戻れない……そんな事実に私の心は散々に打ちのめされてしまい、日が昇るまで延々と泣いた。泣いて、泣いて、泣き続けて……涙が枯れた頃には、もう何もかもがどうでもよくなっていた。朝になって目が覚めて、けれど何をするにも気力が沸かなくて、ボーッと布団の上で一日が過ぎるのを待つだけ……こんな私を、テル先輩は献身的に支えてくれた。それだけじゃない。普段からムラに滞在しているヒナツさんとノボリさんも、私のお世話を積極的に買って出てくれた。本当に、申し訳ない……。

 

そうやってお世話されるだけの日々が一週間続いてから、ようやく私は心の整理を少しずつつけられるようになった。完全に元通り、とはいかないけれど……自分の足でしっかり立って、行動することができるくらいには精神的にも安定してきた。一応、シマボシ隊長をはじめ、ラベン博士とテル先輩には、私の本当の気持ちを知ってもらいたくて全てを話した。すると、あのシマボシ隊長が私のことを抱きしめて「ここは既にキミの居場所だ」と……そう言ってくれたのだ。余りにも嬉しくて、驚いて……また泣いてしまった。

それから、私も調査隊の仕事に復帰する事を言おうとしたんだけど……先んじて隊長から「体調を考慮して、当分は野外調査は自粛せよ」との命令を受けてしまった。……その代わりと言ってはあれだけど「巨大ポケモンの綿密な調査」を命令という形で受けた。あえて命令という形にしたのは、私が行動する上での目的意識を与えるためかも知れない……そう思うと、改めて隊長に強い感謝の念を抱いた。

 

それからしばらくの間は放牧場でジンオウガたちのお世話をしていた。その間に、ディアルガとパルキアに私を元の世界に返すことができないかを聞いてみた。答えは、NO。けれど、それで憤ったりはしない。時間と空間を司るディアルガとパルキアの二匹でもってしても、私を元の時代・世界には返すことができないと分かってからは、私はもうひとつの可能性を頼ることにした。

それは、アルセウス。私をヒスイ地方へと呼び寄せた存在……おそらくは、真のシンオウさま。よくよく考えれば、私を連れてきたのはディアルガでもパルキアでもなくアルセウスなので、最初からアルセウスに頼れば良かった話だったんだ。アルセウスは「全てのポケモンに出会え」と言っていた……出会うって、厳密にどうすればいいのだろうか?見つける?捕らえる?……なんにせよ、ポケモンを片っ端から捕まえれば、変化の一つや二つはあるだろう。

 

今後の展望についてあれこれ考えていると、ラベン博士がこちらに戻ってきた。博士は私がシマボシ隊長から命令を受けた時から「ボクも一緒に調べるのです!」とやけに気合たっぷりに私に付き合ってくれている。

 

「お疲れ様です、博士。進捗はどうですか?」

 

「ショウくん、お疲れ様なのです!いやあ、どのポケモンたちも他のポケモンたちとは一線を画していますね。Never seen or heard……見たことも聞いたこともないのです」

 

「…………」

 

ラベン博士は、これまで捕まえた巨大ポケモンたちのことは一匹も知らない。ポケモン博士として様々な地方を尋ねて回ったことのある博士が……。私自身も彼らの普段の行動を見ていて、それをメモのように走り書きしているだけなので図鑑としては成り立っていない。

 

「もっと彼らについて詳しい人がいればいいのですが……」

 

「(詳しい人……)」

 

そういえば……エイチ湖でアカイさんが「ゴシャハギについてわからないことがあれば訪ねてこい」と言っていた。たしか、場所はフェアリーの泉だったっけ……。一応、提案するだけしてみるか……。

 

「あの、ラベン博士。私、詳しい人を知ってます」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「は、はい……ただ、その人は予定さえなければフェアリーの泉にいる、とのことで……天冠の山麓まで行かなくちゃならないんですが……」

 

「むむむ……ショウくんはその人と知り合いなんですね?それなら、ショウくんにも同伴してもらった方が話がスムーズに進むと思うんですが……」

 

「隊長に確認を取りましょう」

 

「そうですね!」

 

私たちはすぐに調査隊室へ向かい、シマボシ隊長に事情を説明する。しばらく悩むように目を閉じる隊長だけど、私の目をしっかりと見据えてこう言った。

 

「……人に会いにいくだけならば、特別に許可する。ただし、野外調査は原則禁止だ。いいな?」

 

「了解です」

 

「なら、よし」

 

と、こんな感じで許可が下りた。ラベン博士は、それはもう嬉しそうにしている。私は再び放牧場に戻り、ジンオウガ、グラビモス、ラギアクルス、リオレウス、ベリオロスのいつもの五匹をボールに戻して、手持ちポケモンのダイケンキたちも一緒に連れていく。その途中、放牧場のすぐそばで子供たちが集まって何かをしていた。何をしているんだろう……気になった私が近づくと……。

 

「ぼくはグラビモスだぞー!ずしーん!ずしーん!」

 

「わたしはラギアクルス!びりびりびりびり、どっかーん!!」

 

「シュッシュッ!シュッシュッ!ベリオロスのでんこうせっかだ!」

 

なんと、子供たちがジンオウガたちのまねっこをして遊んでいた。強い、大きい、優しい、カッコイイ……この四つが揃えば、子供たちの前では無敵のヒーローになれるようだ。

事の発端は、子供たちが数名ほど無断でムラを飛び出してしまったことに起因する。私はすぐさまリオレウスを空に飛ばして、子供たちを探してもらったのだ。そして、雄々しく翼を広げて飛翔するリオレウスの姿の、実に目立つこと……ムラの外に居た子供たちは空を飛ぶリオレウスを見つけるや否や、「かっこいいドラゴンポケモンが飛んでる!」と夢中になって追いかけ始めたのだ。そうしてムラに引き返していったリオレウスに誘導されて、子供たちも無事にムラへ帰ってきた……という話だ。

それからというもの、大人やポケモンたちが敬遠しがちな巨大ポケモンたちに、子供たちは積極的に関わっていった。その結果、子供たちの間で多大な人気を獲得するに至ったのである。

 

「じゃあおれ、ジンオウガ!うおおぉーん!!」

 

「あっ!ずるいぞ!おまえ、さっきもジンオウガだったじゃんか!こんどはぼくの番!」

 

「ぐおおおぉん!リオレウスだぞー!!」

 

「おれのほうが似てるもんねー!ぐあおおおぉんっ!」

 

「えー、リオレウスの声はそんなんじゃないよ。もっと激しかった気がする!」

 

「じゃあ、こうかな?ぎゃおおおお!!」

 

「それじゃあ今日は、リオレウスの声に一番似てた人がリオレウス役!ごぁおおおん!」

 

特に子供たちの中でも男の子に人気なのは、ジンオウガとリオレウスのようだ。狼というかっこいい生き物のフォルムを形取るジンオウガと、大きく翼を広げた姿が実にわかりやすい竜の姿を持つリオレウス……男の子達は、みんなカッコイイポケモンが好きなのかな。

 

「ふーん、男の子ってわかってないわね。カッコイイっていうのは、ベリオロスみたいなポケモンを言うのよ」

 

「それに、ホロロホルル!みんなおっきいのに一匹だけちっちゃくて、可愛いよね!」

 

「ねー!」

 

逆に女の子に人気なのはベリオロスとホロロホルル。ベリオロスの背中は硬い甲殻の上に、その甲殻の硬さがわからないくらいにふっさふさの雪のような白い毛が生えていて、琥珀色の牙とも相まって美しいフォルムをしている。そしてホロロホルルは……ほかの巨大ポケモンと比べても5m程度しかない大きさが、こじんまりとしていて愛らしいんだとか。今だって、女の子達がホロロホルルをスケッチしながら雑談に興じている。

 

なんだか、こうして見ると彼らを捕らえて良かったと思う。アカイさんの言うとおり、倒すという手段もないことはないけど……なんとなくだけど、捕らえたほうがいいという私自身の直感に従ってよかったと、今ならそう思える。

 

「お待たせしました、博士。それじゃあ、行きましょうか」

 

「もちろんです!」

 

私は門の外でリオレウスを繰り出し、その背中に乗り込む。リオレウスが翼を羽ばたかせて一気に上昇すると、下の方から子供たちの歓声が聞こえた。そんな無邪気な子供たちの声に心を癒されながら、私はリオレウスに指示を出して一路天冠の山麓へと向かった。

出発時は夕方だったこともあって、移動中に日が沈みきってしまった。私一人なら構わず飛び続けるけど……今回は同伴者である博士がいる。リオレウスが気にするようにこちらへ振り返るので、さすがに夜間の飛行は控えたほうがいいだろうと博士と相談した結果、今夜は紅蓮の湿地と天冠の山麓の境界地点で野宿をして、一夜を明かすこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、目を開けると真っ白な空間の中にいた。上下左右、天地の向きでさえおぼつかないその空間の中で、私はふわふわと雲のように揺蕩っている。

これは、もしかして夢?

 

「……?」

 

考えに没頭していると、視線を感じた。

ゆっくりと後ろを振り返ると、白いドレスを着た女の子が立っていた。歳のほどはパッと見、私と同じか少し下……といったところか。

 

「あの……?」

 

『…………』

 

声をかけるも、女の子は淡く微笑むだけで何も言わない。浮世離れ、と言っていいのか……ただ向き合っているだけなのに、頭の中がふわふわしてくる。

服も、髪も、肌の色さえ色白で、この真っ白な空間に溶けてしまいそうなのに……唯一色を持った真っ赤な瞳から目が離せない。

 

「あなたは……?」

 

『……きずな』

 

「え?」

 

『きずなを……つむいで……』

 

「"きずな"……?」

 

『…………』

 

女の子が、そっと右手を差し出した。その手のひらが淡く輝いたかと思うと、光の玉となって私の方へと飛んできた。やがて光が収まると、私の手の中には遺伝子のような模様の浮かんだ石があった。

 

『ひとと……りゅう……。きたる……うんめい……』

 

「ま、待って!いきなりなに?何を言ってるの!?」

 

『…………』

 

「待って!待ってってば!!」

 

意識が急速に引き上げられるような感覚。この夢が覚めてしまう証左であった。まだ……まだ聞きたいこととか、山ほどあるのに……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はっ!」

 

目が覚めた。……なんだか変な夢を見たような気がする……けど、イマイチ内容を思い出せない。

 

「……ん?」

 

ふと、右手に違和感を覚えて、握られていた右手を開いてみた。そこには遺伝子のような模様の浮かんだ石があって、石は模様が碧色、周りが黄色の見たことのない配色をしている。

 

「なんだろう、これ……?」

 

よくわからないけど、取っておいて損はないと思う。私はその石をポーチの中にしまいこんでから、博士が起きるのを待つ。……しばらく待ってから、博士が起きてきた。

 

「おはようございます、ショウくん」

 

「おはようございます、博士。それじゃあ、行きましょうか」

 

再びリオレウスを繰り出して騎乗し、天冠の山麓の山頂ベースへひとっ飛びする。やっぱりリオレウスの飛行速度は凄い……ここからそう離れていないとはいえ、夜明け前から飛んでほぼ夜明け直後に到着できるなんて。

ポケモンたちに護衛を頼んで列石峠、ゴロゴロ坂を下っていく。坂を下りきったところで橋の上でラギアクルスを川に放つ。ラギアクルスは大あくびをすると、ゆっくりと顔を橋に接岸させた。

 

「それじゃあ、乗りましょう」

 

「はいなのです!」

 

ラギアクルスの角を支えにして乗り込むと、私たちが落ちないようにゆっくりと移動を開始した。すぐそこに見えるフェアリーの泉に到着すると、向かって右側の川岸にアカイさんがいた。

……あれ?知らない女の子がいる……?あと、心なしかラギアクルスが怯えているような気もする……一体どうしたんだろう……?

私たちが陸に上がると、アカイさんと女の子が気がついたように同時に顔を上げた。女の子は白いドレスを着ていて、毛髪から肌色まで真っ白の色白なのに、瞳だけが真っ赤な色をしている……どこかで見たような、見たことないような……?

 

「おや……これはこれは、ショウではないか。ここに来たということは、何かわからないことでもあるのかな?」

 

「えっと、はい。あ、アカイさん。こちら、ポケモン博士のラベンさんです。今回、ゴシャハギたちのことでわからないことがあったので、こうしてお話を伺いに来ました」

 

「ほう、それはそれは……ご足労をおかけしたようで、申し訳ない」

 

「いえいえ、そんなことはないのです!あなたがショウくんが仰っていたアカイさん、ですね?ボクはラベンと言います!あなたはショウくんが捕獲してきた巨大なポケモンたちについてよくご存知と聞いたので、ぜひお話をお聞かせして欲しいのです!」

 

「ふむ……そういうことなら、協力しないわけにはいかないな。元より、分からなければ聞きに来いといったのはこちらのほうだ。情報が欲しいのならば、いくらでも聞かせよう」

 

「おぉ、ありがたいのです!」

 

よかった、アカイさんはとても協力的だ。これなら、ジンオウガたちの調査も捗るかも……。

 

「……あぁ、そうだ。ショウ、私はこちらの博士と話をしてくるので、彼女の相手をしてやってくれないか?」

 

そう言ってアカイさんが示したのは、さっきから私も気になっていた白いドレスの少女だ。川に顔を覗き込んで、そこから顔を出してるバスラオとにらめっこをしている。……といっても、お互いにじっと顔を見合って、全く動いていないだけなんだけど。

 

「えっと……アカイさんのお知り合いですか?」

 

「……まぁ、親類の子だよ。最近になって預かってくれと言われ、一方的に押し付けられたようなものだ。不快ではないのだが、こちらとしても年が離れているせいで扱いに困っていてね……それならば、程よく年の近い君に面倒を見てもらったほうが良さそうだと判断したのだよ」

 

「……わかりました」

 

「ありがとう。……さて、ラベン博士。こちらへどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

そうして、アカイさんとラベン博士が奥に歩いて行ってしまったので、私は白いドレスの少女の方へと歩みを寄せた。

 

「こんにちは」

 

「……!こんにちは!」

 

ファーストコミュニケーションは成功したみたい。私が挨拶をすると、女の子も笑顔で挨拶を返してくれた。……バスラオは逃げてしまったけど。

 

「あ……お魚さん、逃げちゃった……」

 

「あー……ごめんね、お姉ちゃんが話しかけちゃったからだね」

 

「ううん、気にしてないよ!ねえねえ、お姉ちゃんのお名前なんていうの?」

 

「私はショウだよ。あなたは?」

 

「シロ!」

 

……この子の親はどういうネーミングセンスをしているんだ。見たまんまの名前を付けるなんて、親の情がいまいち感じられないんだけど……。

 

「ねえねえ、お姉ちゃんってポケモン使うの上手なの?」

 

「えと……使う、というより協力する、かな?ポケモンは道具じゃなくて生き物だから、使うというよりも助け合う~みたいな言い方が好きだな」

 

「あ、そっか……えへへ、ごめんなさい」

 

「いいよ」

 

うーん、この。いっそあざとさを感じるほどの可愛らしさ……見た目もすごく綺麗だし、地元だとさぞかし人気者なんだろうな……。

 

「私もね、私もポケモン上手だよ!ねえねえ、バトルしようよ!」

 

「……!」

 

バトル、という言い回しに懐かしさを覚える……と同時に、シロちゃんの正体がなんとなく見えた気がする。アカイさんはヌメイルとガバイトを「この世界の竜種」と呼んだ。そして、勝負という言い回しが基本のヒスイ地方で、バトルという言い方を使うシロちゃん。ひょっとしたら、シロちゃんもアカイさんと同じ……私と同じ、異世界から来た人なのかもしれない。実際にバトルしてみれば、わかるだろうか。

 

「……うん、いいよ。ここはちょっと狭いから、反対側に行こうか」

 

「うん♪」

 

しばらく辺りを遊泳していたラギアクルスを呼び戻して、二人揃って乗せてもらってから反対岸へ移動する。まだ夜明け直後だからか、夜行性のピッピが近くをうろついている。

 

「ピ?」

 

すると、普段はこちらを見るなり一目散に逃げるはずのピッピが一匹こちらに……というよりシロちゃんに近づいてきた。私のことなど一切無視してシロちゃんに近づくと、そのまま彼女に頭を撫でられた。

 

「ピッピィ♪」

 

「えへへ、可愛いね」

 

なんで?ピッピは結構臆病なポケモンで、人間に対しては本当にすぐ逃げ出してしまうはずなのに……今はシロちゃんに撫で回されて、嬉しそうに声を上げている。しばらく撫でられて満足したのか、ピッピは私たちから離れていった。

 

「人懐っこい子なんだね」

 

「……いや、普段はそうじゃないんだけど……」

 

「そうなの?だとしたらなおさら嬉しいなぁ」

 

「ああ、うん……」

 

シロちゃんには臆病なポケモンさえ一目で懐くような魅力があるのだろうか……いや、確かにシロちゃんは控え目に言っても将来が楽しみなすんごい美少女だ。なんなら彼女が大人になった姿を見てみたいまである。

 

対岸の奥まった場所で、一定の距離をとって向き合う。さて、シロちゃんはいったいどんなポケモンを……。

 

「ねえねえ、お姉ちゃん。お姉ちゃんはポケモンを何匹出すの?」

 

「え?えっと……六匹、だけど」

 

「ふぅーん……じゃあ、私も六匹出すね!」

 

「え!?」

 

じゃあ、ってなんだ、じゃあ、って。私が一匹って言ったら、一匹だけにしたのかな……?

 

「それじゃあ……始めましょう」

 

瞬間、シロちゃんの雰囲気がガラリと変わった。幼い体から、見た目からは想像もつかないような強いプレッシャーを感じる……こ、この子は一体……?

シロちゃんが、徐に右手のひらを上に向けた……その時だ。シロちゃんの手の上で、よくわからない渦のようなものが発生した!中心が黒、周りが青の渦は、やがて中からモンスターボールをぽとりと落とした。……っ!?あ、あのモンスターボール……!!

 

「(金属製の……モンスターボール……!?)」

 

ど、どういうこと……何が起きてるの!?あの変な渦は何?あの金属製のモンスターボールはどこから?どうしてシロちゃんにそんなことができるの!?

 

「うふふふ……」

 

妖艶な雰囲気を纏う笑みを浮かべながら、シロちゃんがボールを投げた。

 

「いっくよー……ガチゴラス!」

 

「ガッゴラアアァ!!」

 

出てきたのは、見たことのないポケモン!ガチゴラスと呼ばれたポケモンは、鋭い雄叫びをあげて私を睨みつけてきた。

 

「貴女の力、見せてちょうだい?私と、私のドラゴン軍団に!」

 

「ど、ドラゴン……」

 

「そうだよ。……先に言っておくと、私のポケモンはみんなドラゴンポケモン。だから、遠慮なんてしないで、全力でかかってきてね?」

 

ドラゴン統一……そういえば、別地方のチャンピオンにそんな使い手がいるってお母さんが言ってたっけ……。相手がドラゴンポケモンなら、弱点はわかっている。ドラゴンに弱いのはこおりとドラゴン、そしてフェアリー!ガチゴラスは初めて見るポケモンだけど、ただのドラゴンタイプじゃない気がする……複合タイプの可能性だって考慮しなければならない。そういう意味でも、まずは牽制が必要だ!

 

「お願い、ロズレイド!」

 

「ロゼー!」

 

私が繰り出したのはロズレイド。フェアリー技を持っているし、様子を見る上では最適解だと考えている。

 

「……新星が瞬いているわ。あの子を制する者が現れた兆しかも知れない。貴女の力、存分に振るって見せて。決して退屈なんてさせないでね……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【戦闘!チャンピオン】~ポケットモンスター B2/W2~

【戦闘!チャンピオン】~ポケットモンスター X/Y~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ、ロズレイド!エナジーボール!!」

 

「ローズレー!!」

 

一瞬、シロちゃんから放たれる圧に気圧されたけど、すぐに気を取り直してロズレイドへ指示を出す。

 

「ガチゴラス、ほのおのキバ」

 

「ゴラァス!」

 

ロズレイドが放ったエナジーボールは、ほのおのキバに噛み潰されて爆発した。煙幕で、視界が……!

 

「もろはのずつき♪」

 

「ゴラララァスッ!」

 

「素早く、マジカルシャインで迎撃!」

 

「ロゼッ!」

 

「ガッ、ゴッ……!」

 

煙幕を突き破って突撃してくるガチゴラス……けど、こちらの指示も間に合った!マジカルシャインの輝きが、突進してくるガチゴラスの動きを完全に止めたからだ。この反応……効果は抜群みたいだ!

 

「……あら?」

 

「ロズレイド!シャドーボール!!」

 

「ドラゴンクロー」

 

「ロズレィ!」

 

「ガチゴラァ!」

 

追撃のシャドーボールを放つも、こちらはシロちゃんの指示が間に合ってドラゴンクローでかき消されてしまった……けど、こっちは目くらまし!

 

「力強く、マジカルシャイン!!」

 

「ロー……ゼーッ!!」

 

「ゴラアァッ!?」

 

「あっ、ガチゴラス……」

 

力業マジカルシャインの直撃を受けて、ガチゴラスは大きく吹っ飛んだ!……けど、しっかりと足で立っている……なんて頑丈な……。

 

「戻っていいよ、ガチゴラス」

 

ここでショウちゃんがガチゴラスをボールに戻す。そして、再びあの謎の渦からボールを取り出した。

 

「じゃあ、ジュラルドン!レッツゴー♪」

 

「ジュラア!」

 

ま、また見たことのないポケモン!?ドラゴンタイプは確定として、これも複合タイプな予感……。

 

「ロズレイド、ヘドロばくだん!!」

 

「ロゼー!」

 

ロズレイドが放ったヘドロばくだんが、ジュラルドンに命中……え、そんなっ!

 

「き、効いてない……!?」

 

「ロ、ロゼ……?」

 

「うふふふふ……ジュラルドン、ボディプレス!!」

 

「ジュッラア!!」

 

ジュラルドンはその見た目からは想像もつかないような跳躍力で飛び上がると、そのままロズレイドを押しつぶしてしまった!

 

「ロゼェッ!?」

 

「ロズレイド!」

 

「逃げられないね♪……力強く、ラスターカノン!!」

 

「ジュラララ……ラァ!!」

 

ジュラルドンが放ったラスターカノンは、押しつぶされて動けないロズレイドに直撃した!そのまま吹っ飛ばされて、私の前まで転がるロズレイド……くっ、戦闘不能だ……。

 

「あはっ♪まずは一匹だね!」

 

「くっ……」

 

ジュラルドン……一体何タイプの複合なんだ……?ジュラルドンの見た目……そして、はがね技であるラスターカノンの使用……なにより、どくタイプ技が効果がない……まさか、はがねタイプ?はがね・ドラゴンなんて、そんなポケモンがいるの!?

まずい、私の手持ちでジュラルドンの弱点を付けるポケモンは……。

 

「ルカリオ!」

 

「クオォン!」

 

かくとう技を持つライチュウと、ルカリオしかいない!しかもライチュウのいわくだきは牽制目的で威力は期待できないから、実質ルカリオに頼るしかない。

……こんな時、ゴウカザルがいてくれたら……なんて、野暮なことは考えない。今、私の手持ちにいるのはルカリオだ……だから私は、ルカリオを信じる!

 

「ルカリオ!はどうだん!!」

 

「クオオア!!」

 

「あはは!まもる!!」

 

「ジュラ!」

 

ま、まもる!?まもるが使えるの!?ジュラルドンのまもる技によって、ルカリオのはどうだんはジュラルドンには届かなかった……!防御技を覚えているなんて、想定外だ……!!

 

「ジュラルドン、りゅうのはどう!」

 

「ジュラア!」

 

「ルカリオ!みずのはどう!」

 

「クルル、オアッ!」

 

ジュラルドンのりゅうのはどうと、ルカリオのみずのはどうがぶつかり合って大きく爆発した……っ!まずい、この流れは!!

 

「ボディプレス!」

 

「ジュッララ!」

 

「グオオアッ!!」

 

「ル、ルカリオ!!」

 

ロズレイドに放ったものと同じ技を受けたルカリオ……だけど、ロズレイドよりも明らかに苦しそうだ!ロズレイドには効きにくくて、ルカリオにはよく効く……まさか、ボディプレスはかくとう技!?

 

「りゅうのはどう!」

 

「ジュッラー……!」

 

「負けないでルカリオ!しねんのずつき!!」

 

「……ッ!!クォアッ!」

 

「ラッ!?」

 

ゼロ距離で技を放つために顔を近づけていたのが、運の尽きだ!ルカリオが振るった頭はちょうどジュラルドンの顔面を強打し、大きくふらつきながら後ずさりした……しめた、怯んでいる!

 

「えっ?ジュラルドン!?」

 

「ルカリオ!はどうだん!!」

 

「クオォア!!」

 

「ジュラアッ!!」

 

「あっ、ジュラルドン!」

 

すぐさま立ち上がったルカリオが放ったはどうだんは、ジュラルドンに命中した!大きな爆発とともに倒れこむジュラルドン……よしっ、戦闘不能だ!

 

「えっとー……それじゃあ、この子!」

 

そう言って再び渦からボールを取り出したシロちゃんが繰り出したのは……え"っ!?

 

「……あの、シロちゃん?」

 

「んぅ?なぁに?」

 

「……えっと、大変失礼なことを言っちゃうんだけど……その子、ポケモン?」

 

「む!失礼しちゃうわ!この子にはパッチラゴンって立派な名前があるのよ?」

 

「パッチラー」

 

いやいやいやいや、その造形でポケモンは無理がありすぎる!繰り出されたのはパッチラゴンと呼ばれたポケモン……というか、鳥のような上半身に対して恐竜のような下半身が異様に大きすぎる!下半身に至っては明らかに断面が見えちゃってるし!?

 

「……ルカリオ、怯まずに行こう」

 

「クオン」

 

「えへえへ、それじゃあいっくよー!素早く、つばめがえし!!」

 

「パッチ!!」

 

「!?」

 

は、速――!

 

「グオア!」

 

「ルカリオ!」

 

「続けてほのおのキバ!!」

 

「パッチャア!」

 

「クオオアァ!!」

 

「ルカリオ!?」

 

な、何あのポケモン!?見た目以上に足が速い!立て続けの連続攻撃に耐え切れず、ルカリオは戦闘不能になってしまった。

 

「やったやったやった♪」

 

「パッチパッチパッチ♪」

 

「……っ」

 

あのポケモンは……だめだ、まるでタイプの予想がつかない……!見た目の色合いで言えばでんきの複合タイプに見えるけど、憶測で決めつけるのは危険すぎる……。

 

「戻っていいよ、パッチラゴン」

 

「パッチパチ~」

 

パッチラゴンをボールに戻すシロちゃん……よかった、正直あのままパッチラゴンとバトルとなったら、こっちは何を繰り出せばいいのかわからないままだったから。

さて、次に私が繰り出すべきは……。

 

「行って、ライチュウ!」

 

「チュッチュー!」

 

「それじゃあ、私はウオノラゴン!」

 

「ウノラ~」

 

……ってぇ!?さっきのパッチラゴンとよく似たポケモン!と、というか……パッチラゴンの下半身になってた恐竜の尻尾の先端に魚の頭が付いているだけのように見えるのは気のせい……じゃ、ないよね……。

 

「…………」

 

「この子もポケモンだよ?」

 

「まだ何も言ってないんだけど……」

 

「だって顔に『お前のようなポケモンがいてたまるか』って書いてあるもん」

 

「ウオノラ~!」

 

「…………」

 

否定できなかった。

 

「頑張るよー、ウオノラゴン!エラがみ!!」

 

「ウオォノラー!」

 

ウオノラゴンの下顎が輝き、一気に突進してくる!あの技……このまま先手で食らったらヤバイ予感……!

 

「ライチュウ!いわくだき!!」

 

「チュチュウ!」

 

「ノラァ……!」

 

ライチュウのいわくだきによる牽制で、ウオノラゴンの勢いが弱くなった!相手よりも素早く当てられたら、強い技なのかな……とにかく、このまま攻勢に出る!

 

「アイアンテール!」

 

「チュッチュー!」

 

「受け止めて!」

 

「ウノラ!」

 

一気に畳み掛けたかったけど、ウオノラゴンにアイアンテールを受け止められてしまった!ダメージもそれほどなさそう……はがねタイプに耐性があるのかもしれない。

 

「こおりのキバ!」

 

「ノラノラァ」

 

「チュウ……ッ!」

 

「っ!振り切って!!」

 

冷気を纏った牙の力で、ライチュウの尻尾が少しずつ凍りついていく……!ライチュウはなんとか抜け出そうとしているけど……ウオノラゴンの咬合力が強いのか、一向に逃げられない……!

 

「あはは!ウオノラゴンはね、硬い鰓骨のおかげで顎の力がすっごい強いんだよ!ちょっとやそっとじゃ逃げられないんだから!」

 

「くっ……戻って、ライチュウ!!」

 

私は咄嗟にライチュウをボールに戻した。あのままじゃあジリ貧……最悪、ライチュウが倒されていたかもしれない。なんとか一息つく……どうしよう、シロちゃん凄く強い。私が知らないポケモンを使っていることを抜きにしても、バトルの腕がすごく上手い。

 

「良い判断。うーん、強いなぁ……」

 

「いやいや、シロちゃんだって強いよ。こっちなんてほとんど一方的にやられちゃってるし」

 

「えへへ、ありがとうお姉ちゃん♪」

 

さて、考えよう。パッチラゴンとウオノラゴン……見た目はともかく、持ちうるステータスは非常に高い。この二匹を突破しなければ、勝機は見えないだろう。……ダイケンキを出すべきか、否か。凄まじく強い力を得たダイケンキなら、あの二匹を突破することもできるかも知れない……けど!

 

「(まだ、その時じゃない!)トゲキッス!」

 

「キィーッス!」

 

「あ、飛んでるポケモン……じゃあ、こっちも変えよっかな。ガチゴラス!」

 

「ゴラァス!」

 

私がトゲキッスを出すと同時に、シロちゃんもポケモンをガチゴラスに変更した。もろはのずつきを覚えているから、そこだけは注意しないと……!

 

「トゲキッス、エアスラッシュ!!」

 

「キスキィッス!」

 

「ガチゴラス、とっつげ~き!」

 

「ゴラアアァス!

 

トゲキッスのエアスラッシュの弾幕を、なんとガチゴラスは強引に突破してきた!?しかもエアスラッシュがあまり効いた様子がない……!ひこうタイプに強い複合タイプか!

 

「どくどくのキバ!」

 

「うそっ!?」

 

「ゴラアス!!」

 

「キィッ!?」

 

ど、どくどくのキバだって!?フェアリータイプのトゲキッスには効果は抜群だ……!翼に噛み付かれたまま地面に引きずり倒され、トゲキッスはそのまま押さえつけられてしまった……!!

 

「トゲキッス!ムーンフォース!!」

 

「キィ……キィーッス!!」

 

「ガゴッ!?」

 

「……!強引に抜け出した……?」

 

よかった、かろうじて技の発動には成功した!ムーンフォースの直撃を受けたガチゴラスは大きく後退した。……だいぶ息が上がっているけれど、まだまだ倒れる様子はない……。

 

「うーん……戻って、ガチゴラス」

 

ま、またポケモンチェンジ……結構頻繁だね、シロちゃん。でも、それだけ状況をよく見ているということ……ガチゴラスではトゲキッスに勝てないと判断したんだろう。

 

「フライゴン!」

 

「フラァ!!」

 

再び渦から取り出したボールから出てきたのは、フライゴン!流石にフライゴンは知っている……じめん・ドラゴンの複合タイプ!

 

「突撃しつつかえんほうしゃ!」

 

「フラァゴォ!」

 

「なら、こっちもかえんほうしゃ!」

 

「キッスー!」

 

フライゴンが接近しつつかえんほうしゃを撃ってくる。こちらも迎撃にかえんほうしゃを選択し、炎と炎が激突する……っ!フライゴンが突撃をやめない……!?

 

「……っ、トゲキッス!空へ!!」

 

「キスッ……!」

 

「逃がさないで」

 

「フララァ!!」

 

かえんほうしゃの鍔迫り合いから一旦離脱し、空へと逃げるトゲキッス……けど、そのあとをフライゴンが猛追してくる!

 

「かえんほうしゃだよ!」

 

「フラァゴォ!!」

 

「躱して!」

 

「キッス!」

 

よしっ、回避成功!ここで反撃に出る!

 

「ムーンフォース!!」

 

「キィーッス!!」

 

「ふふっ……はがねのつばさ!!」

 

「なんですって!?」

 

「フララゴォ!」

 

は、はがねのつばさ!?フェアリー対策は万全だったのか!!鋼鉄の翼を得たフライゴンは、迫り来るムーンフォースをバレルロールで駆使してはがねのつばさで打ち落とした!

 

「キッスーッ!!」

 

「トゲキッス!?」

 

そのままトゲキッス目掛けて突撃!トゲキッスは力なく地面へと墜落し、そのまま戦闘不能になってしまった……。

 

「も、戻ってトゲキッス……!」

 

「あはは!楽しいなぁ……♪もっともっと楽しみましょ?」

 

「……っ!」

 

ヤバイ……いろんな意味で本当にヤバイ。この緊張感は、ワサビちゃんとのバトル以来だ。こちらは既に手持ちポケモンを半分も減らされている……そして、シロちゃんの手持ちはジュラルドン一匹が倒されただけ……。こちらは半壊状態にも関わらず、シロちゃんは無傷のパッチラゴンとウオノラゴンとフライゴン、かなりダメージを負っているガチゴラスに未だ明かされていない六匹目……こんなにも苦戦を強いられるなんて。

……ワクワクするじゃん!!

 

「ふ……ふふふ……」

 

「……?お姉ちゃん?」

 

「……あ、ううん。なんでもないよ。さて……」

 

次に誰を出すべきか。といっても……既に決まっているようなものだけどね!

 

「お願い、ガブリアス!!」

 

「ガッブァア!!」

 

このガブリアスで、シロちゃんの残り五匹のうち何匹まで減らせるか……少なくとも、フライゴンが健在のうちはライチュウを繰り出す展開は非常に厳しいと言わざるを得ない。せめて、フライゴンだけでもここで落とす!

 

「フライゴン、じしん攻撃!」

 

「フッラアアァッ!!」

 

フライゴンが勢いよく地面に着地すると、その衝撃で地面が大きく揺れる!じしん攻撃だなんて……これはまた、とんでもない技を繰り出してきたな……!

けどね……甘いよ、シロちゃん!

 

「飛べ!ガブリアス!!」

 

「ガブアア!!」

 

見た目からしてあまり印象は薄いけど、ガブリアスは空を音速で飛べるんだ!一瞬で上空へと飛び上がったガブリアスはじしんを回避!そのままの勢いでフライゴンめがけて突撃する!!

 

「力強く!ドラゴンクロー!!」

 

「それならこっちは力強く、ドラゴンダイブだよ!!」

 

「ガッブゥァアアッ!!」

 

「フウゥラアアァァ!!」

 

ドラゴンクローとドラゴンダイブがぶつかり合い、激しく爆発した!煙の中からガブリアスが飛び出してきて着地を決め……フライゴンは地面へと墜落!かなりダメージを負ってるみたい!

 

「グッ……」

 

「フライゴン、大丈夫?」

 

「フラアアゴォン!!」

 

「ふふっ、よしよし……それじゃあ、はがねのつばさ!」

 

「フラァ!」

 

フライゴンは力強く吠えると、再びはがねのつばさを展開して向かって来た!

 

「ガブリアス!ストーンエッジ!!」

 

「ガブアアァ!!」

 

フライゴンの進行を妨げるように、ガブリアスのストーンエッジが迫る。フライゴンは勢いを止めることなく岩の刃を次々と避けていき、ガブリアスとの距離を詰めてくる!……フライゴンが、ストーンエッジをくぐり抜けた!

 

「突破した……!」

 

「ドラゴンダイブだよ!」

 

「迎え撃って!アクアテール!!」

 

「フラァゴ!!」

 

「ガブアァ!!」

 

フライゴンのドラゴンダイブが迫って来るが、ガブリアスは回避しつつ尻尾を振り回し、アクアテールをフライゴンの土手っ腹に叩きつけた!その勢いのまま尻尾を振り抜き、フライゴンはシロちゃんの目の前まで吹っ飛んで倒れ込んだ。よし、戦闘不能だ!

 

「あちゃあ……フライゴン、負けちゃった。戻って、フライゴン」

 

「……ふぅ」

 

正直、ここでフライゴンを仕留められて安心している。これでようやく二匹目……ここはガブリアスを戻そう。

 

「戻って、ガブリアス」

 

「うーん……よしっ」

 

「「行って、ライチュウ!/ゴー、ガチゴラス!」」

 

「「チュウー!/ゴラァス!」」

 

私はライチュウを繰り出し、シロちゃんはガチゴラスを繰り出した。ライチュウはウオノラゴンのこおりのキバで尻尾が凍りついていて、ガチゴラスはこれまでの継戦でかなりのダメージを負っている。ライチュウなら、確実に仕留めきれる!

 

「ガチゴラス!もろはのずつきだよ!!」

 

「ゴラアア!!」

 

「ライチュウ!その凍った尻尾をガチゴラスに叩きつけて!」

 

「チュウ!」

 

もろはのずつきを構えて突進してくるガチゴラスの頭に、ジャンプしたライチュウが尻尾を叩きつける!

 

「ガッ!?」

 

「嘘!?」

 

「よしっ!」

 

尻尾の氷が砕けた!よぉし、このまま……!

 

「アイアンテールだ!!」

 

「チュッチュウ、ラァイ!」

 

「ガァッ!!」

 

「ガチゴラス!」

 

空中でさらにもう一回転!ライチュウのアイアンテールがガチゴラスの頭を強く打ち付けて、ガチゴラスは地に伏した!

 

「うー……戦闘不能かぁ。戻って、ガチゴラス」

 

「そっちもようやく半分だね」

 

「……うん、そうだね!やっぱりポケモンバトルは楽しいな!」

 

シロちゃんは変わらずニコニコと笑顔だ。……そうだね、シロちゃんの言うとおりだ。ポケモンバトルは、凄く楽しい!!

 

「それじゃあ、私の六匹目のポケモンだよ!いっけぇ!オノノクス!!」

 

「オォーノォオォォ!!」

 

シロちゃんの六匹目……!斧のような形の牙を持ったドラゴンポケモン、オノノクス……!!

 

「ライチュウ!ボルテッカー!!」

 

「チュウ!ラーイライライライライライ……!!」

 

「迎え撃ってオノノクス!ドラゴンクロー!」

 

「オノーッス!!」

 

「チュウゥッ!!」

 

ライチュウのボルテッカーとオノノクスのドラゴンクローが激突!力は拮抗している……いや、わずかに不利か!

 

「チュウッ……!」

 

ライチュウが押し切られた……!けど、体勢はそれほど崩れていない!

 

「じゃれつく!!」

 

「チュチュウー!」

 

「ばかぢからだ!!」

 

「オノークスッ!!」

 

「ヂュッ……!」

 

「ライチュウ……!?」

 

ライチュウがじゃれつこうと突進したけど、紙一重で躱されて逆に攻撃を叩き込まれてしまった!宙に打ち上げられたライチュウ……地面に叩きつけられたライチュウは、そのまま戦闘不能になってしまった……。

 

「戻ってライチュウ!行けっ、ガブリアス!!」

 

「ガブァア!!」

 

シロちゃんが誇る最強のドラゴンがオノノクスなら……私も、私が誇る最強のドラゴンポケモンのガブリアスで挑む!!

 

「「ドラゴンクロー!!」」

 

「「ガッブァアッ!!/オオォノオオッ!!」」

 

ガブリアスとオノノクスのドラゴンクローが、激しくぶつかり合う!何度も何度も交差し合う竜の爪……何十とぶつかり合いの末に、ついに均衡が崩れた!

ガブリアスがオノノクスの爪とぶつかった際に滑らせるようにして攻撃を逸らしたのだ。一瞬だけ顔に迫ったドラゴンクローにオノノクスが反応した隙を狙い、反対の爪でオノノクスの顔にドラゴンクローをぶち当てた!!

 

「オノッ!!」

 

「(行ける……!!)そのまま、力業で!!」

 

「ガッブアアアァッ!!」

 

獲った……!

 

「ふふふ……ハサミギロチン!!」

 

「……ッ!!オノォォアアア!!」

 

「なっ……にっ……!?」

 

ハサミ、ギロチン……!一撃必殺技!?オノノクスの斧状の牙が光輝き、一瞬の間にガブリアスと交差した。しばし動かぬ両者……だが……。

 

「……ガ……ブ……」

 

ガブリアスが、倒れてしまった……。

 

「ガブリアス……!!」

 

「オノノクス、お疲れ様。ウオノラゴン、お願いね」

 

私はすぐにガブリアスを戻す。シロちゃんもオノノクスを戻して、ウオノラゴンを繰り出してきた。……状況は三体一でこちらが不利。シロちゃんはウオノラゴン、パッチラゴン、オノノクス……対してこちらに残されたのはダイケンキのみ……だけど。

 

「(ダイケンキなら、負ける気がしない!)ダイケンキ!!」

 

「……!」

 

ボールから飛び出したダイケンキは、無言でアシガタナを構える。強く研ぎ澄まされたダイケンキなら、きっと勝てる!

 

「……!すごい……そのダイケンキ、極地へと至ってるね」

 

「極地……?」

 

「そう。極希にそういった個体が誕生するの。それは、己と向き合い強い覚悟と決意を抱いた姿であったり、あるいは外部から何かしらの干渉を受けた結果だったり……そういった個体を、私たちは『極み個体』と呼び、固有の名前をつけてあげるの。

お姉ちゃんのダイケンキは……そうだね、そのカタナにちなんで"極み断ち斬るダイケンキ"、なんてどうかな?呼び方は普段通りでいいからね」

 

「極み、断ち斬る、ダイケンキ……」

 

なにそれカッコイイ。

……ん?ということは、アカイさんの地元のポケモンだというゴシャハギたちにも、極み個体というものが存在するのかな?だとしたら、それはそれで見てみたいかも……!

 

「あはっ!気に入ってくれたみたいだね!……それじゃあ、続きと行こうよ。極みの域に達したダイケンキの力、たくさん見せてね!ウオノラゴン、こおりのキバ!!」

 

「ウノラ~!」

 

「……ダイケンキ、つばめがえし!」

 

「!」

 

「ウオッ!?」

 

こおりのキバを展開して突っ込んでくるウオノラゴン……けど、私のダイケンキの方が速い!ダイケンキは素早く距離を詰めると、一瞬の間につばめがえしを放った!顎を打ち上げられたウオノラゴンは大きく仰け反り、体勢を崩している!

 

「あ、まずっ……!」

 

「シザークロス!」

 

「……!!」

 

「ウノラァ……!」

 

「ウオノラゴン!!」

 

極み個体となったダイケンキは、およそ全ての攻撃を相手の急所に叩き込むことができる!そのため、ウオノラゴンはわずか二撃で倒れた。

 

「……なるほど、急所への鋭い一撃……それが、極みダイケンキの特徴なんだね。パッチラゴン!!」

 

「パッチラァ!」

 

もう負けない……極み化したダイケンキ、極みダイケンキを繰り出すことはすなわち、不退転の決意!!

 

「でんげきくちばし!」

 

「パチラアア!!」

 

「ひけん・ちえなみ!」

 

「!!」

 

パッチラゴンの嘴が、電気を纏っている!見た目とも相まって、でんきタイプとの複合か!けど、今のダイケンキなら負けない!ダイケンキは目にも止まらない速さでパッチラゴンとすれ違い、納刀と同時に無数の斬撃がパッチラゴンを襲う!

 

「パチラ!?」

 

「速い……!」

 

「パッチラゴンをぶん投げろ!」

 

「……ッ!!」

 

すぐさま反転したダイケンキはパッチラゴンの尻尾を咥えると、そのまま引きずり回して空中へと放り投げた!

 

「よしっ、どくづき!!」

 

「!」

 

「パチィ!!」

 

「パッチラゴン!」

 

自身も空中へ飛び上がり、そのままどくづきで追撃をする!地面に叩きつけられたパッチラゴンは目を回しており、地面に降り立ったダイケンキは無言のままパッチラゴンを見下ろしている。

 

「パッチラゴンまでもが……!さすがは極み個体……!!」

 

「ようやく追いついたよ……」

 

「うんうん……けど、ここまで来たらもう負けられないよね!オノノクス!!」

 

「オノークス!!」

 

シロちゃん最後のポケモンのオノノクス……一撃必殺技があるから、迂闊に攻め入ろうものならカウンターをされてしまう……!

 

「オノノクス!ドラゴンクロー!!」

 

「オオォォノオォー!!」

 

「ダイケンキ!つばめがえし!!」

 

「……!」

 

ダイケンキのアシガタナと、オノノクスの竜爪が激しくぶつかり合う!時に躱し、時に受け流し、何度も何度もぶつけ合っては鍔迫り合う。……流石はシロちゃんの最後のポケモン……ダイケンキと互角以上に戦っている……!

……それにしても、極度の集中状態にあるからか、ダイケンキは終始無言のままだ。……いや、バトルしていないときは普通に鳴いてくれるし、カッコイイからいいんだけど。

 

「ダイケンキ!素早く、どくづき!!」

 

「…………」

 

「ノッ……!」

 

ダイケンキは早業でどくづきを繰り出し、オノノクスに命中させた!よし、次は……っ!?

 

「えへっ、捕まえた♪」

 

「なっ……」

 

オノノクスが、どくづきを繰り出したダイケンキの前脚を掴んでいる!?マズイ……あれじゃ離れられない!!

 

「力強く、ばかぢから!!」

 

「オオオオオオノッ!!」

 

「ル"ッ……!!」

 

「ダイケンキ!!」

 

力業ばかぢからを受けたダイケンキは大きく吹っ飛ばされた!なんとか空中で体勢を立て直しつつ、私の目の前で着地を決めるダイケンキ……けど、さっきのダメージはかなり痛い……!

 

「さぁ、終わらせちゃうよ!オノノクス、ハサミギロチン!!」

 

「オオオオオォノオオオオォッ!!」

 

再びオノノクスの牙が光り輝き、ダイケンキにめがけて突撃してくる!……大丈夫、ダイケンキは絶対に負けない。

ダイケンキ……いや、極みダイケンキには"奥の手"とも呼べる五つ目の技がある。ただ、一度この技を使うとベースキャンプとかでしっかりと休ませる必要があるのだ。そのため、おいそれと使うことはできないが……今使わずして、いつ使うというのか!

 

「ダイケンキ!」

 

「!」

 

「奥義!ぜっけん・はとう!!」

 

「……!!」

 

ダイケンキが、腹部に固定されている第三の鞘から三本目のカタナを抜いた。アシガタナ以上に歪な形だが、刃を持つ剣としての形状を決して損なわないダイケンキの新しい武器……。

このカタナは、ディアルガ捕獲後に私が気絶している間に、テル先輩がクラフトしてくれたものだ。なんでも、ダイケンキが自分の折れた角を咥えてテル先輩の下まで持ってきたんだとか。それで、ダイケンキの意を汲んだテル先輩が鉄の欠片を中心に、時空の歪み内で拾える三色の欠片を均等な配合で混ぜ合わせ、鍛冶の要領で打ち直してクラフトしてくれた。素人目に見ても至高の一振り、と言える立派なカタナだ。

解き放たれたカタナの刀身に、膨大な水の力が集まる。ダイケンキがカタナを高く翳すと、集まった水の力は巨大な刃を形成した。自身の身の丈を優に超える巨大な水の刃は万物万象、一切合切を両断する最強の一太刀!

これこそが、極みダイケンキの大技……『絶剣・波濤』だ!!

 

「いっけええええええ!!」

 

「ルッシャアアアアッ!!」

 

「……!?オノァッ!!」

 

「オノノクス……ッ!!」

 

私の雄叫びに答え、ダイケンキも刀を両手で構えて一気に振り下ろした!オノノクスのハサミギロチンとぶつかり……拮抗は、一瞬!オノノクスのハサミギロチンを真正面から打ち破り、一刀両断にした!!

刃が叩きつけられた衝撃で、大量の水飛沫が弾け飛んだ。その影響で周囲が小雨状態になり、薄く霧がかかる。……霧が晴れた先では、オノノクスが仰向けに倒れて目を回していた!

 

「あーあ……負けちゃった……」

 

「(よしっ!)」

 

オノノクスをボールに戻したシロちゃんが小さくぼやいている。……それから、ボールは再びあの謎の渦の中に吸い込まれて消えていった……。

 

「お姉ちゃん、やっぱり強いね!赤い空もお姉ちゃんが何とかしたんでしょ?もしそうなら、きっとすっごく強いんだろうなぁって思ってたんだけど……私の思ったとおりだった!」

 

「あ、ありがとう」

 

バトル中に感じていたプレッシャーは一瞬で霧散し、いつもの可愛らしい女の子のシロちゃんに戻っていた。……いやいや、そうじゃなくて。

 

「それじゃあ、戻ろう?アカイも博士さんも、お話が終わってるかも!」

 

「あっ、ちょっとまって!」

 

てててー、と駆け出したシロちゃんを慌てて追いかける。こっちは聞きたいことが山ほどできたっていうのに、このまま聞きそびれるわけには……!

 

「あ!あの、シロちゃん!さっきの変な渦は何!?それにさっきのモンスターボールも、私が使ってるのとは全然違うやつだったよね!一体どうやったの?シロちゃんはどうしてそんなことができるの!?」

 

「えー?ん~……ふふ、えへへ♪」

 

なんとか矢継ぎ早に質問をぶつけてみたけど……ダメだ、シロちゃんはニコニコと笑顔を浮かべたままで、答えてくれる様子がない。なんとしても聞き出さないと……!

 

「あっ、アカイー!」

 

岸までたどり着くと、対岸にはアカイさんとラベン博士が立っていた。どうやら話は終わっていたようで、シロちゃんが大声で呼びかけて手を振ると二人とも手を振り返してくれた。

 

「ほらほら、お姉ちゃん!早く行こっ?」

 

「……うん」

 

……ひとまずは諦めるしかなさそうだ……。ラギアクルスを出して、反対岸まで運んでもらう。……ラベン博士はかなり満足気な表情だ。よっぽど有意義な話が聞けたのだろう。

 

「ラベン博士、お話はどうでした?」

 

「いやぁ、とても面白い話ばかりなのです!本当はもっと話をしていたかったのですが、シロちゃんが退屈していないか心配だとアカイさんが仰るので、一旦お話を切り上げてきたのです」

 

「……まぁ、この様子だと退屈……は、していないようだな。楽しかったか、シロ?」

 

「うん!お姉ちゃんね、ポケモンを戦わせるのすっごく上手なの!私、負けちゃった」

 

「そうか……なら、次は勝てばいい。命ある限り何度でも挑めるのだ、狩りと同じでな」

 

「そうだね」

 

……それにしてもアカイさんとシロちゃんが並ぶとすごくめでたい色合いだな。紅白がいい塩梅で揃うなんてこと、滅多にないだろうに。

 

「おぉ、そうなのでした。ショウくん、アカイさんの地元では人間がポケモンを狩猟するのだそうです」

 

「人間が、ポケモンを……?」

 

「はい。ポケモンから得た鱗や骨といった物を素材として防具を加工し、それを身に纏って狩猟に赴くのだそうです。武器なども同じように、ポケモンから得た素材を用いて作るそうですよ。大変興味深い話でした!」

 

「……へぇ……」

 

防具や武器にするだけでなく、食べるにも結構イケますよ……と、口を突いて出そうになった言葉をなんとか飲み込む。……あ、やばっ。ベロリンガのタンを思い出したら、ヨダレが……。……よしっ、気づかれてない!

 

「アカイさん、ありがとうございました!また機会があれば、是非ともお話を伺いたいのです!」

 

「こちらとしても、ヒスイ地方のポケモンをよく知る良い機会になった。お互い、得る物を得られた良い対談になったことだろう」

 

「……ねえ、アカイ。私、コトブキムラに行ってみたいな」

 

え"っ

 

……アカイさん?今、なんか普段は絶対に出さないような変な声が出ましたよ?

 

「……スッー……。いや、シロ……?本気か……?」

 

「うん。行ってみたいなぁ……だめ?」

 

「いや、ダメというわけでは……」

 

だめ?

 

「……あぁ、うむ……わかった……」

 

アカイさん……わかりますよ、その気持ち。小さい子のおねだりって、妙に断りにくいところがありますよね……その気持ち、わかります。

 

「……すまない、シロがそちらのコトブキムラに行きたいとのことだが……可能だろうか?無論、保護者同伴として私もついていくが」

 

「歓迎するのですよ、アカイさん!あなたが居てくれれば、ジンオウガたちの調査も一層捗るのです!」

 

「……そうですね。現状、私とラベン博士はジンオウガたちの調査を命令されていますので……その一助となるなら、きっと受け入れてもらえると思いますよ」

 

「そうか。……そうかぁ

 

アカイさん、頭を抱えて……多分、シロちゃんのことを心配しているのかな。シロちゃんは普通の人から見たら……いや、この時代の人たちから見たらかなり異質な見た目をしている。赤い空の一件からまだまだ外部からの干渉に排他的な人も少なくないので、シロちゃんが迫害を受ける可能性は決して少なくはない。

 

「大丈夫ですよアカイさん。シロちゃんのことなら、私たちもちゃんとフォローするので」

 

「……そうか。すまないな」

 

「お気になさらず」

 

さあ、あとは帰るだけだ。私はリオレウスを繰り出して、全員を背中に乗せてもらう。……リオレウス?なんか、やたら緊張してない?いや、飛んでいく分には大丈夫そうだけど……一体どうしたんだろうか……。

リオレウスの背に乗って、私たちはコトブキムラに帰ってきた。アカイさんとシロちゃんは門で待ってもらい、ラベン博士が事の一部始終をシマボシ隊長、そしてデンボク団長へ報告に行くそうな。

 

「お待たせしました!無事に許可が下りたのです!ささ、どうぞ中へ!」

 

「……コホン。ようこそ、コトブキムラへ。歓迎しますよ、アカイさん、シロちゃん」

 

「おじゃましまーす!」

 

「失礼する」

 

詳しく話を聞くと、アカイさんには是非ともジンオウガたち巨大ポケモンの調査に協力して欲しいとのこと。その間の滞在費用等も、ギンガ団が請け負ってくれるのだとか。部屋も私の隣の家を貸してくれるそうで、至れり尽くせりだ。

……実は、私もちょっとワクワクしている。だって、ジンオウガたちのことをもっともっとよく知りたいと誰よりも思っているのは、ほかならぬ私なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカイさんとシロちゃんがムラに滞在して、一週間が経った。その間、ジンオウガたちの調査が頗る捗ったことをここに報告する。といっても、何がわかったのかを一から全部挙げていくとキリがないので、ここでは割愛させていただくが。

さて、巨大ポケモン郡の調査がひと段落したところで、私は改めて野外調査に復帰することとなった。調査隊室で復帰命令を受理したので、早速調査を始めたいところ……だけど、一部調査が難しいポケモンがいるとのこと。それは、ディアルガやパルキアのように、ヒスイ地方に伝わる伝説でのみ存在を確認できるポケモンのことだ。ヒスイ地方に来て日が浅いと言えるギンガ団では、確かに手に余る問題だ。

どうするか……と思案していたところへ、ウォロさんが現れて助け舟を出してくれるそうな。仕事の合間に遺跡を巡り、伝承や伝説を調べていたジブンなら力になれるだろう、と。今回はそのお言葉に甘えることにした。隊長から改めてウォロさんから話を聞き、必要ならば共に行動するように、と命令を受けた。

一先ずは黒曜の原野、高台ベースで待ち合わせ、とのこと。ウォロさんが先に向かったのを見送ってから、私もポケモンたちを準備して向かうことにした。ダイケンキたちに、ジンオウガたち……いつもの11匹を用意して、私はムラを発った。

 

 

 

 




というわけで、シロちゃんのパーティは以下の通りです!

ガチゴラス いわ/ドラゴン
もろはのずつき/どくどくのキバ/ほのおのキバ/ドラゴンクロー

フライゴン じめん/ドラゴン
かえんほうしゃ/ドラゴンダイブ/じしん/はがねのつばさ

パッチラゴン でんき/ドラゴン
でんげきくちばし/ほのおのキバ/つばめがえし/げきりん

ウオノラゴン みず/ドラゴン
エラがみ/かみくだく/こおりのキバ/ドラゴンダイブ

ジュラルドン はがね/ドラゴン
ラスターカノン/りゅうのはどう/ボディプレス/まもる

オノノクス ドラゴン
ドラゴンクロー/ばかぢから/どくづき/ハサミギロチン

レジェアル環境下でまもる系と一撃必殺系はもはやインチキですねww
さすが祖龍様は格が違った。(ハイ!復唱!!)


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【プレート求めて】我らモンハン部異世界支部【だいたい三千里(四捨五入)】

すっごい今更なんですが……お気に入り登録1800超え、ありがとうございます!


うええぇ!?言ってるそばから1900人を超えたぁ!?本当にありがとうございます!!


1:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

プレート探しの時間だコラァ!

 

2:空の王者 ID:MH2nddosHr8

イエーイ!物語の核心に迫る第二部の始まりだぜ!

 

3:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

最初はがんせきプレートだっけ?オヤブンビークインの

 

4:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そうそう、そんでそれ以降は

UMA組→りゅうのプレート

ごぼぼっ!→こうてつプレート

ぶっ壊レセリア→こわもてプレート

ワロスさま→まっさらプレート

団長と喧嘩→こぶしのプレート

プレートじゃねえか!!→せいれいプレート

打破せよ!→もののけプレート

って具合で18枚全部集めるんだよ

 

5:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そうだったわ、「打破せよ!」のインパクト強すぎてどこで何をもらえるかまでは覚えてなかったわ

 

6:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……で、今は何をしているところよ?

 

7:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

険し林についたのでちょちょっとビークインをしばくところよ

 

8:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……おぉ、ライチュウのボルテッカーで瞬殺か、流石の一言よ

 

9:空の王者 ID:MH2nddosHr8

勝利!圧倒的勝利!!

 

10:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

んじゃがんせきプレートも拾ったんでとっととコギトさんとこ行くかね

 

11:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ほらほら光輝、出番だぞ

 

12:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ショウちゃんは随分と徹底しているな……ウォロに対しては、本当に光輝しか見せるつもりはないらしい

 

13:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おかげさまで足としての需要が爆上がりよ!

やーいやーい、焔!どーだ、悔しーだろー!

 

14:空の王者 ID:MH2nddosHr8

え?なんだって?

 

15:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

クソがよおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!ヽ(`Д´#)ノ

 

16:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

これが勝者の余裕というやつか……

 

17:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

空路は移動経路にて最強……

 

18:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ほら、不貞腐れてないで早く移動しろよ?

 

19:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ぜってー後で泣かす……!

うおおぉぉぉぉ!爆速で移動してやらああぁぁぁ!!

 

 

――「無双の狩人」が退室しました――

 

 

20:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おーう、頑張れよー

……さて

 

21:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

待ち時間の間、何する?

 

22:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そうだなぁ……現状についていろいろと考察してみるか?

 

23:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……と、言うと?

 

24:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そもそもの話よ、なんで時空の裂け目でポケモン世界とモンハン世界が繋がるんだって話よ

いくら時空の裂け目であっても、世界観がまるで違う世界同士が繋がるなんてことがあり得るのか?

 

25:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

伝説のポケモンがやることだし、何でもアリでは?

火事場のクソ力とかでな

 

26:空の王者 ID:MH2nddosHr8

仮に繋がったとしても、やっぱポケモン世界の枠を越えるとは思えんのよな

いくらギラティナが本気出したとしても、明らかに自分よりもヤバそうな生物が大量に居る世界に……偶然だとしても、そうはならんやろ

 

27:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なっとる!やろがい!!

 

28:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

実際、なっちまってるところが問題だよな

だからアルセウスもラギアクルスたちを連れてきたわけだし

 

29:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

こんな時、誰かが教えてくれたらなー

助けて、ルーツえもーん!

 

30:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いやいや、いくら祖龍でも呼ばれて飛び出て来るわけ――

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が参加しました――

 

 

31:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

呼んだ?

 

32大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

アイエエエ!?ルーツ!?ルーツなんで!?

 

33:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

なんだか呼ばれたような気がしてね?

それで、一体何をしているの?

 

34:空の王者 ID:MH2nddosHr8

こっちの世界の神に相当するポケモンが時空の裂け目を開いたんだが、それだけでそっちの世界と繋がるんか?と思って

 

35:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……あー、それか……まぁ、一概にそっちの子のせいとは言い切れないわね

こっちにだって原因があるんだし……

 

36:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えっ、そうなん?そのへん、もうちょい詳しく

 

37:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

まぁ、話すのは吝かでもないんだけど……せっかくだから、あっちにも来てもらいましょうか

 

38:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

どっち?

 

39:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……んっ、よっこいしょ

 

 

――「始まりの創造神」が参加しました――

 

 

40:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……おや、ここは……

 

41:空の王者 ID:MH2nddosHr8

えぇー!?創造神を口寄せしよった!!

 

42:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

あなたは……!

 

43:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

初めまして……かしらね、アルセウス

我が名は……まぁ、人間からはルーツって呼ばれているから、そう呼んでちょうだい

 

44:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

ルーツ……どうして私をこの場に?それに、彼らは……

 

45:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

私とあなたで教えてあげましょう?なぜ、我々の世界が繋がってしまったのかを

ちょうどあの子を撃退して、一段落着いたところでしょう?気分転換にお話しましょう?

 

46:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……そうですね、わかりました

 

47:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

アルセウスとミラルーツが並ぶとかとんでもねえ絵面だぜ……!

 

48:空の王者 ID:MH2nddosHr8

こういう時は流静の出番だ、この手の会話で唯一ついて行けるからな!

 

49:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

うまいこと言って俺に全部丸投げすな!

……まぁ、引き受けるがな

 

50:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あとは頼むぜ、流静!

 

51:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……さて、まずはそちらから時空の裂け目について説明してもらいましょうか

 

52:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

わかりました

天上人の皆様はご存知のとおり……時空の裂け目は三匹いる我が子のうちの一つ、ギラティナが現地の人間と結託したことで開かれたものです

 

53:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ギラティナがウォロを唆し、そのウォロの援助を受けたことでギラティナが時空の裂け目を開いた……その影響でディアルガとパルキアは暴走状態に陥り、時空がさらに大きくゆがむ原因となったんだったな

 

54:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

好奇心って怖い

 

55:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

時空の裂け目はあらゆる時空につながります……ここでいう時空とは、おもに私たち(ポケモン)の世界における過去・未来・並行世界の三つを指します

しかし……微粒子レベルの可能性とはいえ、私たち(ポケモン)の世界から遠い異世界に繋がらないとも限らないのです

現に時空の裂け目はここから遠い異世界にも多大な影響を及ぼしています

 

56:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そうね、時空の裂け目単体なら、異世界である私たちの世界にはほとんど影響はないわ……ただ、次元境界線がちょっと緩くなるくらいでね

さっきも言ったとおり、次元境界線が緩くなるくらいじゃあなんの影響もないわ、誰かがそこへちょっかいでもかけない限りはね

 

57:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なるほど……ギラティナが開いた時空の裂け目は、モンハン世界を含む異世界の次元境界線を緩めるという影響を与えていたのか

ルーツが言うにはそれだけなら大した問題ではないようだが、なにか大問題に発展する干渉があったのか?

 

58:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

えぇ、あったもあったわ

私たちの世界に存在する様々な力の中でも、ぶっちぎりに扱いがヤバい力……古龍の生体エネルギーがある理由で炸裂してしまったのよ、おかげでただでさえ緩かった次元境界線がガバガバになっちゃって……

 

59:空の王者 ID:MH2nddosHr8

古龍の生体エネルギーとか、また懐かしいwワールドかな?

 

60:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あら、察しがいいわね

 

61:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……え?

 

62:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

冥灯龍ゼノ・ジーヴァ……あの子がおぎゃあと生まれた瞬間に発生した古龍の生体エネルギーが、こちらの世界の次元境界線に大ダメージを与えてしまったのよ

そのあともハンターとの激戦で何度も龍属性エネルギーを放出したせいで、さらにダメージがひどくなって……その結果、新大陸に異世界から迷子がやってきたでしょう?

 

63:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……!FFコラボとウィッチャーコラボ!ベヒーモスとレーシェンか!

 

64:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そう、あれもこちらの世界の次元境界線が緩くなってしまった弊害なのよ

そして、ヒスイ地方で開かれた時空の裂け目は、緩くなった次元境界線をくぐり抜けて私たちの世界と繋がってしまった……その結果起きた、最大の問題……私のもう一つの半身が、シュレイドでハンターと戦闘中に開いた時空の裂け目に逃げ込んでしまったわ

 

65:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

黒龍ミラボレアス……!ハンターというと、参加要請を受けた新大陸の……?

 

66:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そうね、そのハンターで合っているわ

 

67:空の王者 ID:MH2nddosHr8

(; ・`д・´) ナ、ナンダッテー!!

 

68:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ええぇぇぇぇ……?この世界線のMHW:Iのハンター、ミラボレアスを仕留め損なっとるやん……

 

69:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

質の悪い情報がもう一つ……あの子、撃龍槍をぶち当てられてあとわずかってところで倒されちゃうところだったのよ、そこを遠い異世界の問題に救われてしまったってところかしら

明らかに手負いなのに、アルセウスと未だ互角以上に戦っているのよ?まったく、あの子の生命力には驚かされちゃうわね

 

70:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

確かに恐ろしい生命力です……何度攻撃を仕掛けても、一向に怯むことなく向かってくるのですから

この上、私に傷をつけていきましたから……禁忌と謳われるモンスター、恐れ入りました

 

71:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

まぁ仮にも私の半身だからね、むしろ出来なきゃお仕置きだったわ

 

72:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やはり時空の裂け目内部で創造神と争っていたのはミラボレアスだったか……

 

73:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

今は創造神が時空の裂け目内部で押しとどめているけど……下手したら、ボレアスがヒスイ地方に降臨するってことだろ?本格的にヤベェイじゃあねえか

 

74:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ミラボレアスと対抗するためにリオレウスたちを呼び込んだんだったな

 

75:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

えぇ、その通りです

 

76:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

言い方は悪いが、お前はまだミラボレアスを知らない……あの黒龍のヤバさは、どれだけ月日が流れようとも忘れることなど出来やしないんだ

 

77:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……厳しい、と?

 

78:空の王者 ID:MH2nddosHr8

言わざるを得ない

 

79:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……まぁ、そちらの意を汲むことに否やはない

我々も持てる力を尽くし、かの黒龍を討伐あるいは撃退をして見せよう

 

80:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

ありがとうございます

 

81:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……あのぅ、ルーツさん?

 

82:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あら、なにか気になることでも?

 

83:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、大したことじゃあないんだが……この世界線のミラボレアス戦は、その後どうなったかなと

 

84:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ああ、気になる?それじゃあ、ついでに話してあげようかしら

……撃龍槍を命中させ、黒龍を追い詰めた新大陸のハンター……

しかし、突如として世界が暗い闇に包まれた……その後、シュレイド城上空に巨大な亀裂が走り、空が大きく裂けたのだ……そして、ミラボレアスはこれ幸いとばかりに巨大な裂け目へと飛んで行き、その中へと消えていった……

 

85:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おぉ……!

 

86:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

偶然とは、恐ろしいものだ……

 

87:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

突然の事態に、黒龍討伐軍は大きくどよめいた……シュレイドに出現した謎の裂け目、忽然と姿を消したミラボレアス……二転三転と目まぐるしく変化する状況に、誰もが呆気にとられるしかなかった……ハンターを除いて

 

88:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

え?

 

89:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まさか?

 

90:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ええ、なんとハンターはすぐに翼竜を呼びつけて時空の裂け目に向かおうとしたのよ

 

91:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや無茶スギィ!!

 

92:空の王者 ID:MH2nddosHr8

正気かよ……?

 

93:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

まぁ、すぐに周りに止められたけどね

流石に見たことも聞いたこともない怪奇現象を前にして、切り札とも言えるハンターを向かわせるわけにはいかないからね

 

94:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

では、現地民は今どのような行動を?

 

95:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

国から特別に許可を得て、シュレイドに留まり時空の裂け目の調査をしているわ

……どうせ何もわからないだろうけど

 

96:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そりゃあ、異世界における古龍相当のモンスターによる仕業なんて、誰も思いつきゃせんて

 

97:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

しかも意図したものではなく、「たまたま偶然且つ天文学的確率による奇跡という名の事故」だからな

多分これ、ギラティナやウォロに「異世界にまで時空の裂け目が繋がっとるんだが?」って言っても「なんで!?」ってなると思う

 

98:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

虎穴に入らずんば虎子を得ず、ただし入口は一方通行……ってやつか

 

99:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そりゃあ、迂闊に手が出せんはずやで

 

100:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

今もモンハン世界側って時空の裂け目が開きっぱなしなの?

 

101:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

え?えぇ、もちろん

だって私が維持してるんだもん

 

102:空の王者 ID:MH2nddosHr8

えっ、いや、ちょっ?それ、大丈夫なん?

 

103:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

問題ない問題ない、時空の裂け目の仕組みを私がちゃーんと解析してバッチリ理解して実行しているからね

 

104:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……!そうか、ディアルガが言っていた「異変中に干渉してきた何者か」ってのはルーツのことだったのか!

 

105:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あっ、ちゃんと気づいていたのね?別に隠れてコソコソしていたわけじゃないから、一向に構わないんだけど

 

106:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

ミラルーツ……己が世界のモンスターをこちらに呼び込み、何をするつもりなのです?

 

107:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

私は知りたいのよ……この世界の人間が、我が半身に抗いうる存在なのかどうかを

そのために、私は雪鬼獣、夜鳥、兇爪竜の三体を呼び込んだ

はた迷惑は百も承知よ……けど、だからって私があの子と喧嘩してもいいのか?って話になると……また別問題でしょ?

私もあの子もやるんなら「本気で」やるわよ?お互い、手加減なんてできないから

 

108:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ミラ同士の喧嘩とか、余波だけでこの世の終わりだわ

 

109:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

ミラボレアスと同格のモンスター同士による争い……ヒスイ以前に、この世界が保ちそうにありませんね……

 

110:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ほんまそれ

 

111:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

でしょう?だから私としてはあなたたちが目をつけている人間に何とかしてもらえたらなーって思ってるんだけど、難しいかしら?

 

112:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……まー、それはちょーっとね……

 

113:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ショウちゃんは自分の預かり知らぬところで一方的に何かを押し付けられることに対してヘイト高いからな……事前に話を通しておく必要があると思うが

 

114:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

んー……わかった、押しつけはやめることにする

 

115:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おっ、意外と理解してもらえたり

 

116:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

要するにこっちが本人の許可なく「頼んだ」っていうのがダメなら、本人による意思決定で決めてもらえればいいのよね?

 

117:空の王者 ID:MH2nddosHr8

嫌な予感……

 

118:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

今は帰還方法が失われているそうだし……世界の消滅と天秤に乗せたら、流石に頷いてくれるかしら……

 

119:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ショウちゃんを元の時代に返せるのか!?

 

120:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

可能なのですか?

 

121:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

私単体ではちょっと……だから、アルセウスにも協力してもらうことになるわ

 

122:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……その時が来れば、お力添えしましょう

 

123:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

よろしくね

 

124:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あっ、そうだルーツさん

もうちょい聞きたいことがあるんだけど……

 

125:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

いいよいいよ、なんでも聞きなよ

 

126:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そっすねぇ、それじゃあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1277:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……で、頭についた徹甲榴弾が爆破して落下してる間に大タルGを置いとくわけよ

 

1278:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

それでそれで?

 

1279:空の王者 ID:MH2nddosHr8

逃げるために飛んだのに撃墜されて、また地獄へ逆戻りよ!全方位から拡散弾の雨あられで爆発祭りよぉ!

 

1280:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

アハハハハ!なにそれ楽しそう!

 

1281:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

じゃあ、俺はあれだな……「居合抜刀気刃斬り縛りでヌシ重大事変全部クリアするまで終われません」の配信をした時の話でもするか

 

1282:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それってあれじゃん、放送終了までに6時間弱掛かったやつw

 

1283:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そーなんよ!突きが事故ってリタイアすること12回、純粋に三乙すること343回……納刀術スキルをあえて非採用したせいで頭おかしくなるかと思ったわ

 

1284:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

何それ気になる

 

1285:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……と、まぁ、モンスターに関する概要としてはこんなものか

 

1286:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

な?意外とヒスイ地方でもモンスターは生きていけそうだろ?

 

1287:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……彼らとの共生によって、ポケモンたちがどのような変化を見せるのかが、少しばかり怖いところではありますが……

 

1288:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、なんといってもモンスターはデカイ、強い、恐ろしいの三拍子揃いだ

ポケモンのように人間よりも小さい個体というのは本当に珍しい

 

1289:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

草食系の個体でしたら、まだ馴染めそうではありますが

 

1290:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それじゃあ、アプトノスとかポポあたりかな、あの辺は手懐ければ人間たちに協力的だから

 

1291:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

ふむふむなるほど……

 

 

――「無双の狩人」が参加しました――

 

 

1292:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ぬわああああん疲れたもおおおおん!!

ただいまー!!

 

1293:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おーおかえりー

 

1294:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

お風呂湧いてますよー

 

1295:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おつかれさーん

 

1296:空の王者 ID:MH2nddosHr8

五日間ごくろーさん

 

1297:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ちくわ大明神

 

1298:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

大変良く頑張りました

 

1299:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

誰だ今の

 

……待て、なんか人数多くない?

 

1230:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

私たちがいるよー

 

1231:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

お久しぶりですね

 

1232:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんだこの地獄絵図

 

1233:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

処す?処す?

 

1234:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

すいませんでした

 

1235:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……なんとなく、みなさんの間にある力関係がよくわかりました

 

1236:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

逆らえるわけねーんだって、いや本当に

 

1237:空の王者 ID:MH2nddosHr8

逆らえる……というか、対抗しようと思ったらミララースくらいだろ

 

1238:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

実際、強いし面倒だし怖いしで厄介だよなぁミララース

ルーツにだって勝てるんじゃねえの?

 

1239:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

誰が好き好んで歯向かうというのだ、勝手な事を言うな人間どもが

 

1240:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ファッ!?

 

1241:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ヒョ?

 

1242:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ヒェッ

 

1243:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あら、アカイ……いや、この場では人間たちのように「バルカン」って呼んであげたほうがいいかしら?

 

1244:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

勝手にしてくれ……

 

1245:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ミラバルカン!?

 

1246:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

紅龍まで現れたか……!

 

1247:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

特に何かするつもりはない、私はただシロを迎えに来ただけだ

いつまで油を売っているつもりです?モンスターどもの調査はこの数日で一段落がついた、お前が目をつけた人間はまだ戻ってきていないが、我々がこれ以上ムラに滞在する理由もないのでは?

 

1248:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

 

1249:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そうだった

 

1250:空の王者 ID:MH2nddosHr8

プレート集めどうなった?

 

1251:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

とっくのとうにほとんど終わったわボケがよおおおぉぉ!?

てめぇらが呑気に数日間ぶっ通しで喋り倒している間にショウちゃんは片っ端からプレートを集めまくったわぁ!!

残りはせいれいプレートともののけプレートだけだっつの、そんで今は木材三つ集めてコギトさん家!

 

1252:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

え、もうそこまで行ったのか?

 

1253:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お前らが話しすぎなんだよ

 

1254:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

やれやれ、騒がしいことだ……それではシロ、そろそろお戻りを

 

1255:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

やだ

 

1256:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

ちょ

 

1257:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

やぁだ

 

1258:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

いや、シロ?

 

1259:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

⊂⌒(`Д´) ヤダヤダ!

 \_つ⊂ノ

      ジタバタ

 

〃"∩ _,,_

⊂⌒(`Д´) ヤダヤダ!

 \_つ_つ

      ジタバタ

"_,,_

(`Д´∩ ヤダヤダ!

⊂   (

  \∩ つ ジタバタ

   〃〃

 

〃"∩ _,,_

⊂⌒(つД´) ヤダヤダ!

 \_ノ⊂ノ

      ジタバタ

 

1260:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

いい年して駄々をこねないでくれないか……

 

1261:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

バルカン……苦労しているんだな……

 

1262:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

わかるか、人間……

 

1263:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

大いに理解できる……そちらはまだ可愛いものだが、こちらはバカしかいないからな……

 

1264:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それは一体

 

1265:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

誰のことを言ってるんだ?

 

1266:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

自覚があるなら黙っててくれ

 

1267:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

人間……お前も、苦労しているのだな……

 

1268:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……あ、せいれいプレートだ

 

1269:空の王者 ID:MH2nddosHr8

プレートじゃねえか!!

 

1270:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

いや、プレートですよこれ

 

1271:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

これプレートだよ、これ!

 

1272:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

かなりプレートだね、これね

 

1273:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

これいや、プレートだな、これ

 

1274:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

プレートだコレ!

 

1275:空の王者 ID:MH2nddosHr8

プレートにしようぜ!

 

1276:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

……そろそろ終わっていいか?

 

1277:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ツッコミ役が足りないんだよな……

 

1278:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あー、楽しかった!

なんだかバルカンも待ちくたびれちゃったみたいだし、そろそろ戻ろうかしら

 

1279:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

まったく……最初から素直にそうしてください、こっちの苦労も知らないで……

 

1280:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ごめんごめんww

それじゃあ、私たちは戻るからね、また機会があったらお話しましょう?

 

1281:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

彼らの精神衛生的にも、今後とも控えめに頼みますよ

 

1282:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

え?なんだって?

 

1283:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

(##゚Д゚)

 

1284:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

わーい、バルカンが怒ったー♪

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が退室しました――

 

 

1285:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

……いっぺんポケモンバトルで泣かしちゃらあ!

あの年増ァッ!!(#`Д´)ノシ

 

 

――「赤いなぁ……」が退室しました――

 

 

1286:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……最後、ラースになってなかったか?

 

1287:空の王者 ID:MH2nddosHr8

でも泣かし方はポケモンバトルww

 

1288:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まだ世の中は平和だった……

 

1289:始まりの創造神 ID:PMDPtNO.493

……では、私も戻ることとします

かの黒龍を見張らなければ……

 

1290:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

どうかお気をつけて

 

 

――「始まりの創造神」が退室しました――

 

 

1291:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……急に静かになったな

 

1292:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それだけ、祖龍たちとの時間が有意義であったということだ

……さて、次はいよいよ最後のプレートだな

 

1293:空の王者 ID:MH2nddosHr8

黒幕相手に対して、ショウちゃんは殺意の波動に目覚めたりしないだろうか

 

1294:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

でも、普通にショウちゃんにとってはプッツン案件だがな

 

1295:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さて、それじゃあもう一度俺に乗って天冠の山麓に行くかね

ここからなら結構近いから、爆速で行けば3時間もいらねぇや

 

1296:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……いよいよ、黒幕戦だな

 

1297:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ウォロは強いだろうけど、体感的にウォロより強い相手とのバトルを結構してきているし……なにより極みダイケンキがいるからな、負けるわけねぇよ

 

1298:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ああ、油断しないで全力でかかれば、ショウちゃんなら勝てるさ

 

1299:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

今こそ、黒幕に全霊の怒りをぶつけるとき!

 

1300:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

待ってろよ、ウォロ……この先は、テメェの地獄だ

 

 

 

 




それじゃあ、自分も剣介くんに倣って
「危険度6以上のモンスター10体狩るまで採取ツアーから帰れま10」でもしようかな……


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プレートを求めて……

一旦、切ります。
前後編位に分けたほうがスッキリするかなと思い……と言いつつ本音はバトルシーンは文字数が勝手に増えるんでね!


アカイさんとシロちゃんをムラに迎え入れ、ヒスイ地方に伝わる伝説ポケモンの調査にウォロさんの協力を取り付けた私は、早速ウォロさんが待つ黒曜の原野の高台ベースへとやってきた。ベースの奥、崖下の壁の前にウォロさんが立っている。

 

「ウォロさん、お待たせしました」

 

「ショウさん!!こちらをご覧ください!それはもう、穴が開くほどに!!」

 

私を迎えてくれたウォロさんはいつもの三倍は高いテンションで壁を指した。……この壁画、ポケモンの姿を模したその絵の壁画は、ヒスイ地方の至るところで目にしたことがある。調査のためにあちらこちらを行ったり来たりしているうちに、目撃したものだ。……当然、ウォロさんが指している壁画に関してもちゃんと見ている。

ウォロさんは象形文字だと推測しているようだ。……文字という発想はなかったなぁ、これもいろんな遺跡を見てきたウォロさんだからこそ考えついたのかな?そしてウォロさんはこの象形文字は「全なる神のかけら、勇気あるものはポケモンと心通わせ、かけらの在処を探し出した」と記しているのではないか、と考えているらしい。ここでいう"全なる神"とは宇宙の創造神……アルセウスを指しており、"かけら"とはプレートのことを指しているのだとか。プレートの裏側に書かれている「うちゅううまれるまえ、そのものひとり、こきゅうする」の「そのもの」こそがアルセウスなんだとか。

……アルセウス。私をこのヒスイ地方へと導いた存在……そして、私に残された唯一の帰還の手掛かり。ウォロさんは私にプレートをすべて集めることを勧めてきた……そこから予測するに、アルセウスに出会うにはプレートの存在が必要不可欠なのかもしれない。だったら、絶対に集めてやる。まだ捕獲できていないポケモンもいるけど、それも数匹程度でプレート探しと並行して捕獲すればいい。ウォロさんはプレートの場所に心当たりがあるらしく、険し林へ向かうことになった。

 

早速険し林に着いてみると、普段はそこでは絶対に見ないであろうビークインのオヤブン個体がいた。

 

「ショウさん。ビークインの相手、お願いいたします!」

 

「わかりました、ライチュウ」

 

「チュウ!」

 

「力強く、ボルテッカー!!」

 

ごめんね、ビークイン。今の私、ちょっとだけ気が立ってるんだ。アルセウスに出会える可能性を前にして、立ちはだかるあなたが悪いんだからね。ビークインはライチュウの力業ボルテッカーの一撃で倒れ伏した。……ウォロさん、なんか顔が引きつってません?私は言われた通りに相手をしただけなので、その結果について貴方にどうこう思われる謂れはございません。

倒れたビークインが何かを落としたので拾い上げてみると、大地のプレートよりも薄い色の明るい茶色……いや、砂のような色のプレートだった。ウォロさん曰く、岩石プレート、とのこと。

そして……ウォロさんの情報は、ここで終わった。……本気で探す気はあるんですか?仕方がないので、プレートに詳しそうな人としてコギトさんをあたってみることにした。

 

隠れ里にあるコギトさんの庵にお邪魔すると、開口一番に褒められた。せっかくなのでアルセウスのことを聞いてみると……どうやらコギトさんの千年以上も昔になるご先祖様こと古代シンオウ人はアルセウスをヒスイ地方を生み出したポケモンとして崇めていたらしい。そしてバサギリやアヤシシの先祖たちにプレートを渡したとか。……この辺は、「シンオウさまから云々」で事前に聞いていた内容と同じだ。それ以上に目新しい情報はない……というより、より詳細な情報が伝え残っていれば、コンゴウ・シンジュ両団がディアルガとパルキアをアルセウスと勘違いするはずがないとのこと……ごもっともだ。

ただ、私が落ちてきた理由が分かるかも知れないとウォロさんに諭されると、快く協力してくれた。

コギトさんから聞いた話は、五つ。湖の3匹、火山、三日月、神殿の巨人、はじまり……要約すると、エムリットたち三匹のこと、火吹き島、迎月の戦場、キッサキ神殿、始まりの浜のことのようだ。どうやらそれぞれの場所にプレートがあるらしい……なら、行ってみるしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは、かなり長くなるのである程度割愛しながら話すとする。プレートを持つポケモンたちのこと……勝負になる可能性は大いにあるので、私は一先ずコトブキムラへ戻って諸々道具の準備をすることにした。ウォロさんはプレートの裏にある内容について心当たりがあるらしく、そちらを当たることにするらしい。……今後、ウォロさんとどこかでばったりと出会う可能性もあるだろう……移動手段はジンオウガに限定しよう。

ムラに戻った私は門の前でデンボク団長と出くわした。……なんでも、コギトさんから事情を聴いて私が戻ってくるのを待っていたらしい。それから、始まりの浜へ来るように伝えた団長は先にそちらへ向かってしまった。……正直、あの一件以来デンボク団長との間に蟠りは残り続けている。私がずっと根に持っているだけなので、私の気持ち次第なのだが。

始まりの浜に着いた私は、そこで待っていたデンボク団長とポケモン勝負をすることとなった。なんか、来て早々に立ち会えと言われたので、そうしただけなんだけど。デンボク団長の手持ちポケモンはテンガン山で戦った時よりも強くなっていて、尚且つ新たにヘラクロスが手持ちに加わっていた。初手にゴローニャを繰り出した団長に対して、同時に繰り出した私の初手はロズレイド。放たれたストーンエッジを軽やかに回避したロズレイドは、反撃のエナジーボールで一撃でゴローニャを下した。続いて繰り出されたウォーグルとはオーラウイングとシャドーボールの撃ち合いになり、ここは引き分けとなった。

続けて同時に繰り出されたのは団長がヘラクロス、私がルカリオ。早業バレットパンチに合わせられてインファイトで迎撃されたけど、お返しにしねんのずつきをしっかりと喰らわせられた。そのあとは力業はどうだんでヘラクロスを倒したものの、後出しで出てきたピクシーのサイコキネシスでルカリオは戦闘不能になってしまった。私は敢えてピクシーに対してガブリアスを繰り出した。ドレインキッスに対してアイアンヘッドを顔面にぶち当てて、ストーンエッジで宙に浮かせたあとにアクアテールで吹っ飛ばして戦闘不能にした。団長の最後のポケモンであるカビゴンとは、力と力の殴り合いに発展した。しねんのずつきとアイアンヘッド、10まんばりきとアクアテール、ギガインパクトとドラゴンクローと、純粋な力のぶつけ合いの末にカビゴンを下してガブリアスが勝利した。

 

無事に勝利を収めた私は、デンボク団長から橙色のプレート「こぶしのプレート」を受け取った。このプレートはデンボク団長やムベさんがヒスイ地方に来た際に、始まりの浜で見つけた物なんだそうだ。始まりの浜で発見されたプレートが、始まりの浜に落ちてきた私のもとへ……まるで、シンオウさまに導かれているようだ、と語る団長……そうなのかもしれない。あと、名をヒスイ地方からシンオウ地方と称するべきかもしれないという考えには賛同しておいた。

 

「わたしに言う資格はないが……おまえのように才ある者が調査隊員でよかったと思っておる。でなければテンガン山で敗れ、わたしたちの場はもちろん、未来もなかった」

 

「団長……」

 

「……さあ、もっと調査せよ。おまえが得た知識は、わたしたちの行く先を照らす光となる!」

 

「……無論です」

 

光か……私の光はロウソク式だから、そのうち勝手に消えてしまうけど、勘弁してくださいね。

 

「……それと、おまえにとって重要な話がある」

 

「話……?それはいったい……」

 

「いや……急ぎの話ではないゆえ、プレートをすべて集めてからでも良い。おまえの周りが落ち着いたら、連絡をくれ」

 

「はぁ……わかりました」

 

重要な話……一体何のことだろう?まぁ、プレートを集め終わってからでもいいと言ったので、その通りにさせてもらう。プレートをすべて集めれば、私は帰ることが出来るはずだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

こぶしのプレートを回収した私が次に向かったのは群青の海岸。火吹き島にプレートがあるというコギトさんの情報を頼りに向かえば、ベースでガラナさんとカイさんが私を待っていた。ガラナさん曰く、「火吹き島で気になることがあるから調べて欲しい」とのことだけど……カイさんも一緒に行くの?暑いの苦手なのに、ガラナさんにあっさりと言いくるめられて火吹き島に向かうことが決定したカイさん……ガラナさん、身内には割とS?

 

「あ、ショウさま。その……ラギアクルス様は息災ですか?」

 

「ラギアクルスですか?はい、大変元気にやってますよ」

 

「ふふ、ガラナちゃんって本当にラギアクルスが好きだよね。たまに会って話をするときだっていっつもススキさん、島キング、ラギアクルスだもん」

 

「か、カイ!その話は内緒にしてと……いえ、その前に!人前でそのように呼ぶのはやめなさいと言っているでしょう!」

 

「あ、ごめんなさい。ついつい……」

 

「あはは……。あ、カイさん。実はアカイさんがコトブキムラに滞在してくれることになったんですよ。おかげでラギアクルスたちの調査が凄く捗っています」

 

「そうなんだ!ますます図鑑の完成が楽しみだなぁ!」

 

そう言ったカイさんに同意するようにガラナさんも頷いている。……とりあえず、当たり障りない返事をするだけに留めておいた。図鑑の完成が先か、私の帰還が先か……どちらになるかなんて、予測がつかないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

火吹き島に着いた私は、火山の麓にある祠の前で待つススキさんとカイさんに合流した。早速中へ入ってみると、ポケモンが一匹……!?

 

「ごごぼっ、ごぼぼぼ!ドラァーン!!」

 

「なにかいるよ、ショウさん!」

 

「……ヒードラン」

 

「ひ、ヒードラン?ショウさんは、あのポケモンを知っているんですか……?」

 

「……時空の裂け目の向こうの世界で、聞いたことがあるだけです……!」

 

嘘だ、ヒードランはお母さんが愛用していたポケモンの一匹で、バトルタワーのシングルバトルルールで強かった印象がある。持ち物で浮いたヒードランがステロを撒いて守ったりマグマストームでとっ捕まえてだいちのちからで吹っ飛ばす様は、見ていて凄まじいものがあった……。

そのヒードランが、目の前にいる。一瞬、お母さんの姿を幻視するも、すぐに見えなくなった……いけない、思い出深いポケモンに出会ったせいで少しセンチになってるみたいだ。

ヒードランはほのお・はがねの複合タイプ……相手が得意なタイプを、両方受けられるポケモンを使うのが正解だ!

 

「ダイケンキ!」

 

「…………」

 

繰り出されたダイケンキはヒードランを見据えると、静かにアシガタナを抜いた。極みダイケンキの特徴を活かせば、技に対して耐性を持つポケモンだろうと押し切れる!

 

「ドラララ!」

 

早速来た、マグマストーム!ほのおのうずの超強化技……けど、ダイケンキなら!

 

「断ち斬れ、ダイケンキ!!」

 

「……!」

 

「ドランッ!?」

 

迫り来る豪火の渦を、ダイケンキはアシガタナの一振りでかき消した!ヒードランは十八番の技をあっさりと打ち破られたことに驚愕して、動きを止めている!

 

「つばめがえし!」

 

「!」

 

「ごばっ!?」

 

「続けてシザークロス!」

 

「!!」

 

「ごぼばっ!!」

 

立て続けに繰り出された連続攻撃に、ヒードランはなすすべなくやられていく……全ての技が急所にあたる極みダイケンキだからこそできる戦い方!タイプ相性なんて関係ない!

 

「ひけん・ちえなみ!」

 

「……!」

 

「ごっば……!」

 

よしっ……!

 

「これで!!」

 

だいぶ弱ったように見えるヒードラン……私は迷うことなくボールを投げた。モンスターボールはしっかりとヒードランを格納し……無事に捕獲することに成功した。……直前までヒードランが居た場所に、プレートが落ちている。鋼色のプレート……「こうてつプレート」だ。

 

「捕獲完了、と」

 

「ふう……暑さもちょっとはましになったよ……」

 

「ウインディとヒードラン、2匹のほのおを吐くポケモンが火山のある島にいれば……それはもう暑い……いえ、熱うございますよね」

 

無事にヒードランを捕獲したことで、カイさんとススキさんもこちらに来てくれた。……カイさん、今にも死にそうな顔になってるけど、大丈夫……?

カイさんは自分がここに来る意味があったのか疑問視してるけど……まぁ、あったといえばあったけど、なかったといえばなかったというか……。ススキさんが言うには愛のムチ、とのことだけど……。

カイさんとススキさんの二人が先に戻る前に、カイさんがこちらに振り返った。……なんとなく、ダイケンキを見ているような?

 

「……ショウさん。ダイケンキ、どうしちゃったの?オドガロンに角を折られてから、ちょっと心配だったんだけど……なんだか、妙に強くなってない?今は別の意味で心配なくらいなんだけど……」

 

「アカイさんが言うには、今のダイケンキは"極み"と呼ばれる強い個体に成長しているらしいです。力の象徴を失ってでも、私に勝利を齎したいという強い決意が、ダイケンキを"極み個体"へと成長させたようです」

 

「へぇ、"極み個体"かぁ……。わたしのグレイシアも、いつかそんな強いポケモンになれるかな?」

 

「条件が複雑すぎて、厳密にどうすればいいのかはわかりませんが……」

 

そうして"極み個体"について少しだけ話をしてから、二人は火吹き島から帰っていった。……グレイシアの"極み個体"かぁ……。アカイさん曰く、"極み個体"はポケモンによっては姿が大きく変わるものもいるみたいだし……全身が霜でびっしりになって、サンダースみたいになったらちょっと面白そうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

群青の海岸を離れて、次に私が向かった先は天冠の山麓だ。三日月……月といえば迎月、迎月といえば天冠の山麓……そんな連想ゲームでたどり着いた迎月の戦場に、ツバキさんの他にユウガオさんもいた。

どうやら迎月の戦場にクレセリアというポケモンが居座ったせいでマルマインが隠れてしまったそうで……ツバキさんはこれを何とかしてくれ、と頼んできた。なるほど、クレセリアか、クレセリア……。

……やめてお母さんサイコシフトなんてああああまたこっちがやけど状態にばかばかなんでめいそう積んでるのよムーンフォースの威力おかしくなってるんだけどっていつの間につきのひかりで回復してやめてこっちはやけどで物理攻撃下がってそっちはめいそうで特防上がってるんだけど私の手持ち誰もからげんき覚えていないんだってばホントに勘弁してくださいお父さん助けてグライオンギロチンお願いします!!

 

「……ショウさん?」

 

「そうだギロチンだ、ギロチン当てればこっちのもの……」

 

「ぎ、ギロチン!?ポケモン相手に何をしようとしているんだ!?」

 

……はっ!い、いけない……小さい頃にお母さんに植えつけられたトラウマが蘇ってしまった……。落ち着け、落ち着け……相手は野生のクレセリア、そんな初心者殺しの害悪戦法を使ってくるはずがない……ないよね?

 

「行きます」

 

「……いや、だいぶ顔色悪いけど大丈夫なのかい?」

 

「イキマス」

 

「アッハイ」

 

ツバキさんの心配など他所に、私は迎月の戦場へと足を踏み入れた。戦場の奥の方に、クレセリアがいる……。

 

「るなーん、レーセァ」

 

クレセリアが一声鳴くと、突然こちらの方向感覚がおかしくなった……!この感じ、まるでアカイさんから聞いたホロロホルルの鱗粉の効果に似てる……!?

 

「くっ……!」

 

前後不覚になりながらも、私はなんとかクレセリアの攻撃を回避しつつねばりだまを何回かぶつけることに成功した。クレセリアが怯んだ隙を突いて、私は背後に回り込むと身を翻しながらボールを投げた!背後からボールに格納されたクレセリアは、直前まで怯んでいたこともあってあっという間に捕獲することに成功した。

 

「よぉし、よぉーし……!」

 

内心、トラウマを刺激されまくってメンタルが死にかけていたので簡単に捕獲することに成功したのは本当に嬉しかった。拾い上げたのは黒い色の「こわもてプレート」だった。

……みかづきのはねじゃないのかぁ(´・ω・`)

 

 

 

 

 

 

 

 

次に向かったのは、三つの湖だ。キッサキ神殿の件もあるので、あかいくさりの材料集めの時とは逆の順番で湖を訪ねていき、それぞれエムリット、アグノム、ユクシーの三匹を捕まえることにした……のだけど。

 

「きゃううん♪」

 

「きゅううん♪」

 

「きょううん♪」

 

……と、なぜか三匹は出会った段階でめちゃくちゃ懐いていた。懐かれるようなこと、なにかしたっけな……?一応尋ねてみると、それぞれからテレパシーで「守護者を排し、我が物顔で居座る異形のケモノを駆逐してくれてありがとう」と、お礼を言われた。

どうやらゴシャハギ、ホロロホルル、オドガロン亜種を捕獲して洞穴から連れ出したことに強く感謝してくれていたようだ。それで、もしまた会う事があればその時は私についていくつもりでいたらしい。……まぁ、バトルしたりねばりだまをぶん投げる手間が省けたと思えば、得をしたと判断していいのだろう。私はそれぞれをモンスターボールに収めて、ユクシー捕獲時に発見した「りゅうのプレート」をその場から持ち出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

エイチ湖を出た私は、その足で直ぐにキッサキ神殿へと向かった。……ワサビちゃんと鬼ごっこをしたとき、入れなかった扉があったと思うけど……多分、あれかな。その扉の前まで来ると、ワサビちゃんとセキさんが現れた。どうやらワサビちゃんの千里眼に、キッサキ神殿を訪れる私の姿を見たらしい。

 

「久しぶり、ワサビちゃん」

 

「久しぶりだね、ショウさん。ベリオロスは元気?」

 

「うん、元気にしてるよ。最近、ベリオロスに詳しい人に会えてね、その人がムラに滞在してくれるおかげでベリオロスの調査がすごく進んでるの」

 

「そうなの?……わぁ、本当だ!全身真っ赤っか!」

 

「そうそう、アカイって言うんだよ」

 

千里眼でアカイさんを見たのだろうか、ワサビちゃんがちょっと面白そうにしている。……まぁ、アカイさんって傍から見たら全身真っ赤の不審者さんだしなぁ……本人には絶対に言わないけど。

開かずの扉を開くにはどうすれば……と、悩んでいると、私が持っているがんせきプレート、こうてつプレート、つららのプレートが突然反応を示した!すると、まったく開く気配のなかった扉が、あっさりと開かれてしまった……。

そのまま奥へ進んでいくと……一匹のポケモンが佇んでいる……あ、あのポケモンは!

 

「なんだなんだ、あのでっけえのは!?」

 

「滑り台……」

 

「なんて?」

 

「いえ何でもないです忘れてください」

 

あっぶなぁ……これも幼い頃の記憶が刺激されるポケモン……レジギガス。よく座り込んだ彼の腕を滑り台代わりにして遊んでいた記憶が蘇る……私も幼心に「滑り台さん」なんて呼んでたっけ……。

さて、ワサビちゃんの千里眼で動く姿が見えたそうなので、早速捕獲に乗り出した。……どうしよう、ジンオウガたちで見慣れちゃってるせいか、レジギガスが小さく見えるような……。

 

「ズッ……ズッ……」

 

「あ」

 

「……れ、れれ……レレレレジジギガガガガガ……」

 

うわぁ……なんだか壊れた機械みたいな鳴き声……お母さんのレジギガスは「レージガー」って鳴いてたから、すっごい違和感しかない……。

 

「ルカリオ!」

 

「クオアァ!」

 

レジギガスはたしかノーマルってお母さんが言ってたはず!確かめるためにも、ルカリオをぶつける!

 

「はどうだん!」

 

「クルオォアッ!」

 

「ギ、ギギガガ」

 

その巨体故か、はどうだんはあっさりと命中した……けど、耐えている!

 

「ギ、ガガガガー!」

 

レジギガスが腕を伸ばしてくる……!にぎりつぶす攻撃かもしれない!

 

「回避して!」

 

「クォン!」

 

逆にルカリオはレジギガスの腕に飛び乗った!そのまま腕を駆け上がり、ルカリオはレジギガスの真上を取った!

 

「力強く、はどうだん!」

 

「クオオオアァ!!」

 

頭上からの一撃!この直撃はかなり効いたはず……いや、待て!

 

「レレレジギガガガ!!」

 

「グォッ!?」

 

「ルカリオ!」

 

やはり、まだ動けるか!レジギガスが使った技はしねんのずつき……ルカリオには等倍とはいえあまりダメージがない……?そういえば、お母さんが「レジギガスは戦闘開始からしばらくは調子が上がらなくって」ってよくお父さんに相談していたような……なら、本気になる前に終わらせるしかない!

ここはルカリオの必殺コンボ……早業バレパンしねん力技はどうだんの三連コンボで!

 

「ルカリオ!素早く、バレットパンチ!!

 

「クオッ!」

 

「ガ……」

 

「続けてしねんのずつき!」

 

「クルォア!」

 

「レ、ギ……」

 

「トドメの、力強く、はどうだん!!」

 

「クオオオアァ!!」

 

「レレ、ギ、ギ……!」

 

よし、全部命中した!レジギガスはだいぶ弱っている……捕まえるなら、今!

 

「いけぇ!」

 

私は勢いよくモンスターボールを投げ、レジギガスを格納する。しばらくの抵抗の後、レジギガスは無事に捕獲された!

 

「よっし!」

 

レジギガスの捕獲と同時に、真っ白な「まっさらプレート」を入手した。……コギトさんから聞いたプレートはこれで全部だけど……あと何枚あるんだろう?

 

「大地の巨人って感じのごっついポケモンだったよなあ!まぁ、デカさだけで言えばグラビモスやベリオロスの方がずっとでけえけどな」

 

「調査隊の仕事だね!ショウさんが捕まえたポケモン、どんなポケモンなのかな?図鑑の完成が楽しみ!」

 

「ああ、オレも学者先生の文章を楽しみにしているからよ」

 

「うん、待っててね二人とも」

 

その後、二人とはその場で別れた。ついでとばかりに、今度純白の凍土に来た時にはベリオロスと一緒に遊ぶ約束まで取り付けて。……また、来れられたら、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

コギトさんからの情報で知り得たプレートはすべて集めた……一旦庵に戻ってコギトさんに話を聞いてみることにした。ウォロさんもちょうど戻ってきたようで、コギトさんに次なるプレートの居場所を聞き出そうとしている。……え、木材三つ?いや、ちょうど手元にありますけど……?コギトさんが木材を三つ欲しがっているので、ささっと渡す。……まな板の新調ですか、そうですか……そして私は木材を集めた駄賃としてプレートを貰った……はい?

 

「プレートじゃねえか!!」

 

……びっくりした。ウォロさん、あんな大声で叫ぶんですね……。

思わぬところでプレート……「せいれいプレート」を入手できた私は、ウォロさんの提案でカミナギ神殿跡へと向かうことにした。……これをまな板代わりにするってコギトさんも相当変わってますね……。

山頂ベースからカミナギ寺院跡へ向かう途中、壊れた石像の前にウォロさんはいた。なんでもこの壊れた石像はディアルガ、パルキアに並ぶ第三の神……ギラティナというポケモンの像なんだとか。暴れ者ゆえにアルセウスによって異界へ追放されているそうだが……ディアルガとパルキアが現れたシンオウ神殿に、ギラティナが現れるかも知れない、というのがウォロさんの予測だ。その予測は正しいかも知れない……私たちは直ぐにシンオウ神殿へと向かった。

そこで私は……全てを知ることとなるなど、まったく予想だにしなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

シンオウ神殿……いや、今は壊れてしまっているのでそう呼んでいいのかは定かではないが……。奥の祭壇までたどり着くと、先に到着していたウォロさんがいた。

 

「神殿も壊れ……まるで槍の柱ですね。ギラティナですが、どうやらいないようです……」

 

「……ウォロさん……?」

 

なんだ、この……なんだろう、いつもと様子がおかしい……?妙に昂ぶっているというか、ウォロさんの様子が変だ……。

 

「ンン?どうかしましたか?」

 

「あ、いえ……その……」

 

「いや、失礼!どうかしているのはワタクシですね」

 

「え?」

 

「ワタクシ、ウォロの本当の目的を話しすべきですか」

 

「え?」

 

ワタクシ?そんな一人称、今まで……それに、本当の目的って……?

 

「ワタクシはアルセウスの存在を確信した時から、どうすればアルセウスに会えるのか……それだけを考えておりました。アルセウスに挑もうとしたギラティナを探し出し、時空の裂け目を開けさせたのも、その一つ」

 

「は?」

 

「壁画に残されていたように全なる神の欠片をアナタに集めさせるのも、その一つ」

 

「は?」

 

時空の裂け目を開けさせた……?何を、言ってるんだ、あなたは……?

 

「神の欠片たるプレートは18枚……アナタが持っているのは17枚、ではあと1枚は……?」

 

ウォロさんが徐に何かを取り出した……あれは……!

 

「ここに在る!」

 

黒紫のプレート……!どうしてウォロさんがそれを……!!

ウォロさんがイチョウ商会の衣装を脱ぎ捨てると……まるで民族衣装のような、神聖さを思わせるような服装と……めっちゃ変な髪型になった。

 

「さあ、集めたプレートをよこしなさい。ワタクシがすべてのプレートを揃えます。ワタクシはアルセウスに会いたいという好奇心を抑えることなどできない!アルセウスと会うことができ、さらには従えることができたならば、よりよい世界を創造できるか試す!もっとも……世界を改めて創造するなら、ヒスイ地方は一瞬にして無となる……アナタも、アナタの知る人やポケモンも、存在しなかったことになるでしょう!」

 

……なるほど……。

 

「世界が消えるのを止めるなら、ワタクシと戦え!もっとも、アナタにその気がなくてもプレートを奪うため挑みますがね」

 

……よく、わかったよ……。

 

「……いい」

 

「ンン?何か言いましたか?」

 

「……こと……いい……」

 

「……なんですって?」

 

そ ん な こ と は ど う で も い い

 

「……なに?」

 

どうでもいい、どうでもいい。ああ、本当にどうでもいい。

 

「お前の言い分なんてどうでもいい。世界が消えるだとかアルセウスに会えるだとか、そんなことはどうでもいい。私にとって大切なことはたった一つ……お前がギラティナと時空の裂け目を開いたことだ!

あんなものがあったせいで、私はこんなところに来た!お前の好奇心に巻き込まれて故郷から時間も空間も引き離された私はどうなる!?生きるために、信頼を得るために働いて、勝手な言い分で追放されて裏切られて……!この上また!私を自分の都合のために利用する気か!!

……許さない。思えば、今日に至るまでに私はずっとケチが付いてばかりだ……誰に当たるでもなく、ずっとずっと我慢し続けてきたけど……もう、無理。お前だけは絶対に許さない。元よりお前が始めたことだ……因果応報で、ここでぶっ飛ばされても文句なんて言わせない……!!」

 

「……何を言い出すかと思えば、そんなことですか」

 

「……ッ!!」

 

「それこそ、八つ当たりされても迷惑千万。ワタクシとて、アナタが時空の裂け目から落ちてきた理由なんて知りませんよ。ただ、アナタという存在がワタクシにとって都合が良かった……それだけですが、なにか?」

 

許さん……許さない……ここでブチノメシテヤル。

 

「いけ、ミカルゲ!」

 

「トゲキッス!!」

 

叩き潰してやる……ウォロッ!!

 

 

 

 




次回、ショウ、キレる

殺意の波動に目覚めた少女はどうなるのか……


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第三の反物質神・反骨竜(ギラティナ) VS 無双の狩人・雷狼竜(ジンオウガ)

なんだか皆様、ショウちゃんの圧勝を想像していらっしゃるが……ご存知ですか?

怒りとは時に、正常な判断力を狂わせることがあることを……

そんなわけで、ウォロ戦です!どうぞ!


ウォロさん……いや、ウォロが先手で繰り出してきたのはミカルゲ!フェアリータイプが発見されるまでは弱点なしと言われたゴースト・あくの複合タイプ。対して私はトゲキッスを繰り出した。初手の対面はこちらの有利……このまま潰してやる!

 

「ムーンフォース!」

 

「戻れミカルゲ!ウインディ!!」

 

トゲキッスにムーンフォースを指示したけど、わずかに遅かったか!ウォロは素早くミカルゲを戻すとウインディを繰り出してきた。ウインディにムーンフォースが直撃するも、ダメージはない……効果は今ひとつだ。

 

「ちっ……」

 

「いわなだれだ!」

 

「サイコキネシスで止めろ!」

 

「わおおん!」

 

「キッスゥ!」

 

ウインディがいわなだれを放ってきたけど、トゲキッスのサイコキネシスがすべての岩を受け止めた。

 

「そのまま投げ返せ!」

 

「だいふんげきで突破しろ!」

 

「キスキッス!」

 

「わおん!」

 

トゲキッスが次々と受け止めた岩を投げ返すが、炎を纏ったウインディの突進はいわなだれを掻い潜ってきた……!

 

「キス……ッ!」

 

「エアスラッシュで距離を取れ!」

 

「キィーッス!」

 

「わう……!」

 

だいふんげきを受けたトゲキッスだが、僅かに体を引くことで衝撃を緩和、さらに飛ばされながらもエアスラッシュを引き撃ちしてウインディを押し返す!

 

「「戻れ!」」

 

ウォロと同時にポケモンを戻す。繰り出すのは……

 

「「ルカリオ!!」」

 

「「クオォン!/グアオン!」」

 

お互いにルカリオを繰り出す。相手のルカリオが物理なのか特殊なのかはわからないが、ミラーで負けるわけにはいかない……!

 

「ルカリオ、素早く、ビルドアップだ!」

 

「グオォ……!」

 

「(……っ!バフか、面倒な……!)はどうだん!!」

 

「クオオァ!!」

 

早業のバフか!変化技は大半が技の出が速く、早業で繰り出せば連続行動すら可能な技すらある……強化して、一気にケリをつけてくる気だな!?

 

「インファイトだ!」

 

「グアオオ!」

 

「クアァッ!!」

 

「……っ!ルカリオ!!」

 

ウォロのルカリオはインファイトでこちらのはどうだんを打ち消すと、そのままの勢いで私のルカリオに猛攻を繰り出してきた!……だが!!

 

ガシッ!

 

「ウァ!?」

 

「フッ……」

 

「な、なに!?」

 

一瞬の隙……それこそ、針の穴に糸を通すような小さな隙……その隙を持ち前の波導で見抜いたルカリオが、ウォロのルカリオの両肩を押さえつけた!

 

「捕まえた……!しねんのずつき!!」

 

「クオオオ!」

 

「グアッ……!」

 

「なっ、ルカリオ!」

 

しねんのずつきが直撃したウォロのルカリオが、大きく体勢を崩す……ここで畳み掛けてやる!

 

「逃がさない!素早く、バレットパンチ!」

 

「クォア!」

 

「グアアッ!」

 

「持ち堪えろルカリオ!かみくだくだ!」

 

「……!グォア!!」

 

「クゥッ……!」

 

バレットパンチで一気に押し込むルカリオだったが、ウォロのとっさの指示が功を奏したのか、ウォロのルカリオがかみくだくでルカリオのバレットパンチを受け止めた。噛み付かれた痛みで顔をしかめるルカリオ……だが、甘いな!

 

「今度はこっちが捕まえましたよ……インファイト!」

 

「舐めるなぁ!ルカリオ!力強く、はどうだん!!」

 

「クオオオオアアアッ!!」

 

「グッ……!?」

 

噛み付かれている腕とは逆の腕にはどうだんを形成し、それをウォロのルカリオの土手っ腹に直に叩き込む!!はどうだんはウォロのルカリオを一気に押し返し、そのまま爆発。ウォロのルカリオを戦闘不能にした!

 

「ちっ……戻れ、ルカリオ」

 

「戻って、ルカリオ」

 

まずは一匹……けど、ビルドアップからのインファイトがかなり効いていて、ルカリオもかなりしんどそうだ……なので、私は一度ルカリオをボールに戻した。

 

「ライチュウ!/ミカルゲ!」

 

「「チュチュー!/ミーラァ……」」

 

私が繰り出したのはライチュウ、ウォロが繰り出したのはミカルゲ……弱点を突く技はちゃんと覚えている、問題はない!

 

「ライチュウ、ボルテッカー!」

 

「チュウ!ラーイライライライライライ!」

 

ライチュウがボルテッカーで猛然とミカルゲに突っ込んでいく……が、ウォロからの指示がない?嫌な予感がする……!

 

「……今です、さいみんじゅつ!」

 

「ミーカァ!」

 

「チュ……!?」

 

ボルテッカー直撃まで秒読みという距離で、ミカルゲがさいみんじゅつを放ってきた!?当然、ライチュウは避けられるはずもなく命中……急激に訪れた眠気によってその場で転倒してしまった!

 

「ライチュウ!」

 

「素早く、あくのはどう!続けて力強く、シャドーボール!」

 

「ミルゲェー!」

 

「チュッ……!」

 

「あぁ……!!」

 

早業で放たれたあくのはどうに続いて、力業のシャドーボールがライチュウに直撃してしまった……!怯ませて行動を遅らせるあくのはどうを早業で放つことで、ミカルゲのような鈍足のポケモンさえも連続行動させたのか……!立て続けの連続攻撃に加えて、ねむけによりる被ダメージの増加によって、ライチュウは戦闘不能になってしまった……。

 

「くっ……戻って、ライチュウ……!」

 

「ふっ……随分と冷静さを欠いているようですね?」

 

「うるさいっ!!」

 

黙れ、黙れ!こんな奴に、こんな奴に私は……!

 

「ロズレイド!!」

 

「ローズレー!」

 

「シャドーボール!」

 

「ならばこちらもシャドーボール!」

 

「ローゼ!」

 

「ミカーァ!」

 

シャドーボール同士の撃ち合い……ぶつかりあったシャドーボールはしばらく拮抗するも、こちらのシャドーボールが打ち破られた……!シャドーボールはロズレイドに命中……僅かに後退させられた……!

 

「ロゼッ……」

 

「ちっ……!エナジーボールだ!!」

 

「ローゼー!!」

 

「あくのはどう!」

 

「カゲェー!」

 

エナジーボールとあくのはどうの撃ち合いは、互角という結果になった……ならば!

 

「もう一度エナジーボール!」

 

「ロゼロゼ!」

 

「ん……?」

 

今度はエナジーボールをミカルゲの周辺に撃ち込む!爆風で煙が舞い上がり、ミカルゲの周辺は見えなくなる……けど、これでいい!

 

「マジカルシャイン!」

 

「ロゼー!」

 

広い範囲を攻撃できるマジカルシャインなら、直接狙わずとも余波だけで攻撃することができる!空中へと躍り出たロズレイドが、ミカルゲがいる地点へ目掛けて突撃しつつ、技の準備に入った……!

 

「視界を塞ぎつつ広い範囲の攻撃か……悪くはない、が!ミカルゲ、じんつうりき!」

 

「ミィー……カァー……!」

 

「レッ!?」

 

「なっ……!」

 

ロズレイドが技を放とうとした直前、ミカルゲのじんつうりきがロズレイドに命中した!ロズレイドは撃ち落とされて地面へ落下……目潰しの煙も晴れてしまった……!

 

「力強く、シャドーボール」

 

「ミィーゲェー!」

 

「ロゼーッ!!」

 

「ロズレイドッ!!」

 

ダメ押しの力業シャドーボールに吹っ飛ばされ、ロズレイドは戦闘不能……くっ!

 

「アナタの力はこんなものですか!ワタクシが許せないのでしょう?」

 

「お前っ……!!行け!ルカリオッ!!」

 

「クォン!」

 

ふざけるな……さっきから調子に乗って、絶対に許すものか……!私がルカリオを繰り出すと、ルカリオは何故かそのまま踵を返して私の下まで走ってくると、手のひらを私の胸元に押し付けてきた。

 

「クア」

 

「ルカリオ……?」

 

ルカリオの手が青白い光を帯び、その光は私の体に少しずつ浸透していく……。これは、ルカリオの波導……「落ち着け」「大丈夫」「絶対に勝つ」……そんなルカリオの想いが、波動を通じて伝わって来る……。

 

「……ルカリオ、ごめん。私、怒りでどうかしてた……ライチュウとロズレイドにも、申し訳ないことしちゃった……」

 

「クゥア」

 

冷静に考えれば、ミカルゲを相手に弱点をつけるというだけでライチュウとロズレイドを繰り出すのは悪手極まりない。トゲキッスを繰り出せばそれでよかったのに、目の前のポケモンを倒すことに躍起になっていた……不甲斐なし!しっかりしろ、私!

パンッ!と自分の頬を両手で打つ。……つぅ、効いた。この痛み……ゴウカザルのデコピンや、ジンオウガに鼻先で小突かれた時を思い出す。大丈夫、あの痛みとともに、私は気持ちを切り替えてこれた……今度だって!

 

「……もう大丈夫。絶対に勝つよ、ルカリオ」

 

「クォア!!」

 

「お話は終わりましたか?」

 

「えぇ、もちろん。……どうやってあなたをぶっ飛ばしてやろうか、相談してたんですよ」

 

「おぉ、怖い怖い……では、ぶっ飛ばされないようにアナタを倒してしまうとしましょう!」

 

ふぅ……だいぶ冷静になれた、ルカリオのおかげだ。

さて、考えよう。相手はミカルゲ、こちらはルカリオ。あちらの手持ちは見えているウインディを含めて五匹、こちらは二匹倒されて残り四匹。私がもう少し冷静だったなら、まだ状況は分からなかったが……過ぎてしまったことは仕方がない、ここからどうするかが重要だ。ルカリオはみずのはどうとバレットパンチしか使えないが……いや、問題はない。冷静に、そして確実に攻める!

 

「素早く、バレットパンチ!」

 

「クオ!」

 

早業バレットパンチで、再びミカルゲへ接近していく。……まだだ、まだ……!

 

「同じことを……ミカルゲ、さいみんじゅつ!」

 

「ミー……」

 

「今だ、ルカリオ!」

 

「クォア!」

 

ミカルゲがさいみんじゅつの体勢に入った、その時を狙う!ルカリオは標的をミカルゲから足元へと切り替えて、地面を思い切り殴りつけた!その衝撃で土煙が舞い上がり、標的を見失ったミカルゲが、右へ左へとルカリオを探している……だが!

 

「みずのはどう!」

 

「クオオア!」

 

ルカリオは上だ!煙を起こすとほぼ同時に、ルカリオは高速で跳び上がっていたのだ!煙に気を取られていたミカルゲは、当然ルカリオが煙の中にいるものだと思い込んでいた……それこそが、致命的な隙となる!

 

「ゲェ!?」

 

「なに!?」

 

「続けてバレットパンチ!」

 

「クオン!」

 

「ルゲッ……!」

 

「くっ……あくのはどう!!」

 

「押しきれルカリオ!力強く、みずのはどう!!」

 

「ミカァー……!」

 

「クオアア!!」

 

バレットパンチの乱打に晒され、ミカルゲはかなりダメージを受けている!ウォロがあくのはどうを指示したが……もう遅い!ミカルゲが口元に集め始めた波導エネルギーごと、みずのはどうでその口内に押し込んでやった!みずとあくの両波導が、ミカルゲの体内で炸裂!ミカルゲはそのまま目を回して倒れこんだ!

 

「なんだと……!?」

 

「ナイス、ルカリオ!」

 

「クオッ!」

 

「ちぃっ……ウインディ!」

 

「わおん!」

 

次に繰り出してきたのはウインディ……相手はほのおタイプだが、今の私とルカリオなら、やれる!

 

「だいふんげき!」

 

「わおおおん!!」

 

「力強く、はどうだん!!」

 

「クオオオァア!!」

 

炎を纏ったウインディの突撃を、力業はどうだんで迎撃する!だいふんげきとはどうだんがぶつかり、激しい爆発を起こした!……煙が晴れた先では、ウインディが倒れている。戦闘不能だ!

 

「どうだ!」

 

「クア!」

 

「……なかなかやる。ならば、ロズレイド!」

 

「ロゼーア!」

 

向こうもロズレイドか……なら、やるべきことは一つだけ!確実に弱点を突く!

 

「はどうだん!」

 

「クオォア!」

 

「シャドーボールです!」

 

「ロゼー!」

 

はどうだんとシャドーボールの撃ち合い……この隙に、次の戦術を考える!

 

「しねんのずつき!」

 

「まきびしです!」

 

「……!みずのはどうで押し流せ!」

 

とにかく接近を試みる!すると、ウォロのロズレイドはまきびしを放ってこちらの進行を阻止してこようとした。当たると面倒なので、ルカリオは走りながらみずのはどうを放って周囲一帯に散蒔かれたまきびしをすべて流してみせた。さすがはルカリオ!

 

「はなびらのまいで迎撃です!」

 

「ローズレーア!」

 

「足元にはどうだん!」

 

「クオ!」

 

「ゼッ!?」

 

ルカリオが放ったはどうだんは、はなびらのまいを舞い始めたロズレイドの足元に着弾し、見事バランスを崩すことに成功した!よしっ……ここは即興で考えた連続攻撃だ!

 

「まずはバレットパンチ!打ち上げろ!!」

 

「クゥア!」

 

「ロゼァ!!」

 

「ロズレイド!?」

 

バレットパンチで宙に打ち上げられたロズレイド。まだまだ!

 

「追え、ルカリオ!はどうだん!!」

 

「クォオオアッ!!」

 

跳び上がり、ロズレイドの上を取ったルカリオが、今度ははどうだんでロズレイドを地面に叩き落とした!これで止め!

 

「そのまま全体重込めて……力強く、しねんのずつき!!」

 

「クアアアァァァァッ!!」

 

「ロ!ゼーっ!?」

 

頭突きの態勢に入ったルカリオが、たった今起き上がろうとしているロズレイド目掛けて突撃!!技は見事に命中!即興とはいえ、上手く行って良かった!ロズレイドは戦闘不能……ルカリオで、一気に三匹もポケモンを倒した!

 

「……まさか、たったの一匹に三匹も倒されるとは……」

 

「ルカリオの波導が、私を冷静にさせてくれた……もう、あんな情けない勝負はしませんよ」

 

「フッ……いずれにせよ、ワタクシはすべてのプレートを手に入れる!せいぜい足掻いてご覧なさい……行け、トゲキッス!」

 

「チョッキース!」

 

ウォロの五匹目はトゲキッス……は?ちょっとまって。

なんで私こいつと半数もポケモン被ってんの冗談でしょ鳥肌立った寒気もしたうわやだ気持ちわる」

 

「途中から声に出てますが?」

 

「事実なんで」

 

「……身も蓋もありませんね」

 

「戻って、ルカリオ。お願い、トゲキッス!!」

 

「キィーッス!」

 

私もトゲキッスを繰り出す。有効打ならルカリオでも行けるけど……物理技である以上、トゲキッスが使える強力な特殊攻撃で近寄れないままやられる、という可能性もある。三匹と連戦しているので体力も多少は消耗しているかもだし……同じ空中戦を得意とするトゲキッスで対抗するのがベタだろう。

 

「じんつうりきです!」

 

「サイコキネシス!!」

 

「キス、キィッス!」

 

「チョギッ!!」

 

ウォロのトゲキッスはじんつうりきだが、私のトゲキッスはサイコキネシス!同タイプ技同士でも、威力は圧倒的にこちらが上だ!!じんつうりきによる思念を跳ね返し、逆にこちらのサイコキネシスに捕まった!

 

「叩き潰せ!!」

 

「キッスーー!!

 

「キィ……ッ!」

 

「ちっ、トゲキッス!ムーンフォース!」

 

「チョキーッス!!」

 

「キスッ……!」

 

サイコキネシスで地面に叩きつけられたウォロのトゲキッスだが、ムーンフォースでこちらを迎撃してくるだけの力は残っているか!私のトゲキッスは迎撃のムーンフォースを喰らってしまい、僅かによろけるが問題はなさそうだ……!

 

「トゲキッス、素早く、めいそうです!」

 

「キィスゥー……」

 

「……!トゲキッス、エアスラッシュ!!」

 

「キッスー!」

 

「こちらもエアスラッシュ!」

 

「チョゲ!キーッス!!」

 

エアスラッシュとエアスラッシュの撃ち合いになるが、ウォロのトゲキッスは直前にめいそうを使っていたために威力が上がっている……!わずかに競り負けて、二、三発ほど私のトゲキッスが攻撃を受けてしまった……!

 

「ムーンフォース!!」

 

「チョゲキーッス!!」

 

「……!かえんほうしゃ!!」

 

「キスキスキース!」

 

なら、技タイプの相性で勝負!フェアリー技はほのおタイプには通じにくい……その性質を利用すれば、かえんほうしゃでまともに戦えるはず!……!!やった、強化されたムーンフォースを破って技を命中させた!!

 

「スゥ、キッスゥ……!」

 

ウォロのトゲキッスはわずかに息が上がっている……めいそうの効果が切れたか!早業で出したバフは、継続時間が短い!

 

「今だ……!力強く、ムーンフォース!!」

 

「キィー……ッスー!!」

 

「チョギイィッ!?」

 

「なに……!」

 

ウォロもめいそうの効果が切れていることに気づいたようだが、もう遅い!私のトゲキッスが放ったムーンフォースはウォロのトゲキッスに直撃!そのまま戦闘不能にしてみせた!

 

「戻れ、トゲキッス」

 

「お疲れ、トゲキッス。一旦戻ってて……行って、ルカリオ!」

 

「クォア!」

 

私もトゲキッスを戻して、ルカリオを繰り出す。次に何が来るかわからない以上、なるべく体力が残っているポケモンを温存しないと……ウォロが繰り出す最後の一匹は……。

 

「これが最後の一匹です……ガブリアス!!」

 

「ガバアァッ!!」

 

「…………」

 

……もうヤダこいつほんとなんなの……?

 

「スゥー……しばく」

 

「露骨に嫌そうな顔をするのはやめません?」

 

「やめません。……あなたが相手なら、なおさら」

 

「さいですか……ガブリアス、だいちのちから!」

 

「跳べ、ルカリオ!はどうだん!!」

 

「ガッババア!」

 

「ハッ!クオォン!!」

 

ウォロのガブリアスが放つだいちのちからを跳躍で回避しつつはどうだんを撃つ!はどうだんはガブリアスに命中したものの、しっかりと耐えられている……!

 

「バレットパンチ!」

 

「アイアンヘッドです!」

 

鋼の拳と鋼の頭突きがぶつかり合う!……いや、わずかにルカリオが不利か!ルカリオは宙に浮いている状態……踏ん張りが効かない以上、押し切られるのは自明の理!

 

「ドラゴンクロー!」

 

「ガバァ!!」

 

「グォア……!」

 

「ルカリオ!」

 

押し切られて体勢を崩したところを、ドラゴンクローで決められてしまった……。

 

「戻って、ルカリオ。……ガブリアス!!」

 

「ガッブアァッ!!」

 

ならばこちらもガブリアス!あちらは通常個体だけど、こちらはオヤブン個体……そのプライドもあって、なおのこと負けるわけにはいかない!

 

「ガブリアス、きりさく!」

 

「ガバアァ!」

 

「それなら、こっちはストーンエッジ!!」

 

「ガブガブアァ!!」

 

突撃してくるウォロのガブリアスを、ストーンエッジで迎え撃つ!あちらのガブリアスはうまいこと岩の刃を避けつつ、徐々に距離を詰めてくる……だが!

 

「ガバァ!」

 

「引きつけて……アクアテール!!」

 

「ガブァ!」

 

相手のガブリアスの攻撃をギリギリまで引きつけて……回避と同時にアクアテールをぶち当てる!吹っ飛んだ相手のガブリアスは吹っ飛んだけど、体勢を立て直してうまいこと着地を決めた……なかなかしぶとい。

 

「だいちのちからだ!」

 

「ガババブァ!」

 

「躱せ!!」

 

「ガブッ!!」

 

次々と放ってくるだいちのちからを、しっかりと回避していくガブリアス。ガブリアスが大きく跳んで回避した、その時だ!

 

「アイアンヘッドです!!」

 

「ガッバァ!!」

 

「こっちもアイアンヘッド!!」

 

「ガッブァ!!」

 

着地のタイミングを狙ってか、ウォロのガブリアスがアイアンヘッドで突撃してきた!ならばとこっちもアイアンヘッドで迎え撃つ!頭突き同士のぶつかり合い……体格差でこちらのほうが僅かに有利!

何度かぶつかり続けているうちに、私はわずかばかり違和感を覚えた。……なんだ、この感覚、前にも……。

 

「……今です!」

 

「ガバッ!」

 

再び頭突き同士がぶつかった直後……ウォロのガブリアスが、頭の位置をずらしてきた!それによってウォロのガブリアスは、私のガブリアスの懐に飛び込む形となってしまった……!

 

「力強く、ドラゴンクロー!!」

 

「ガッバァ!!」

 

「ガブッ……!」

 

「ガブリアス!!」

 

「そのまま追撃をしなさい!!」

 

ガブリアスが大きく後退し、体勢を崩す……そこへ追撃に来るウォロのガブリアス……いや、待て。この状況……使える!!

 

「ガブリアス!すぐ目の前にストーンエッジ!!」

 

「……!ガブガブ!!」

 

私の意図を察したガブリアスが小さく頷くと、自分の目の前にストーンエッジを岩壁のように展開した。

 

「無駄なことを!」

 

「ガッババァ!!」

 

ウォロのガブリアスが、岩壁を破壊する……だが!

 

「……!いない!?」

 

「ガバッ!?」

 

岩を破壊した時には、既にガブリアスはその場にはいない!岩が破壊された際に発生した土煙に紛れたガブリアスが、一体どこに行ったのかというと……!

 

「……!上か!?」

 

「いっけええ!!力強く、ドラゴンクロー!!」

 

「ガッブアアアァァッ!!」

 

「ガッバァ!?」

 

上空からの強襲!力業ドラゴンクローはウォロのガブリアスを吹っ飛ばし、そのまま戦闘不能!

私の、勝ちだ!!

 

「なぜ、なぜ……アナタごときが!アルセウスの加護を得ているのだ!?」

 

ポケモン勝負に勝利すると、ウォロは突然そんなことを叫び始めた。……んなこたぁどうでもいいんだ、こちとらやらなきゃならないことがある……!

 

「なぜだ!なぜなのだ!世界を創った存在として、大いなる好奇心の対象として……神話を調べ上げ、これほどまでにアルセウスに心酔しているというのに!……余所者め!時空の裂け目から落ちてきたのはこの時のためか!?」

 

「ウォロッ!!」

 

「グッ……!」

 

私は一目散にウォロに駆け寄ると、その横っ面に拳を叩き込んだ!ウォロはわずかによろめくが、二、三歩ほど後退すると私が殴った場所を拭い、不敵に微笑んだ。

 

「あなたにポケモンはもういない……これまでのこと、全部ムラで吐いてもらう……!」

 

「いいえ……まだ終わりではありません!」

 

「なにを……!」

 

「感じませんか?心胆を寒からしめる異様な気配を!」

 

「ほざくな……!!」

 

 

――ビシャーンッ!!――

 

 

世迷言を言い始めたのかと思ったその時、どこからかポケモンの鳴き声が聞こえた……!?マズイ、今はウォロを止めないと!

 

「くっ……!!」

 

突如空間が揺れ始め、ウォロのすぐ背後の空間に異変が生じ始めた……!私はウォロに向かって駆け出すが、空間から現れた一枚の羽に弾き飛ばされてしまった!

 

「キャアッ!!」

 

「ガブゥ!!」

 

「……っ。ありがとう、ガブリアス」

 

「ガブア」

 

咄嗟にガブリアスが受け止めてくれたおかげで事なきを得たけど……黒い空間からさらにもう一枚の羽が出現し、とうとうその姿が顕になった。

影の様なボロボロの羽にムカデじみた六本脚……どことなく、ディアルガとパルキアに雰囲気が似ている、ポケモン……まさか、これが……!

 

「ギラティナ、打破せよ!」

 

「(ギラティナ……!!)」

 

コイツがギラティナ……私がヒスイ地方に来る要因、時空の裂け目を開いた元凶……!ウォロと揃って、私にとって許しがたい存在……!!

 

「……戻って、ガブリアス。トゲキッス!!」

 

「キィーッス!!」

 

ならば、パルキアの時と同様に完封する!!あかいくさりによって暴走状態が解け、やや本領とは言い難い状態だったとはいえ、同格であるパルキアを一方的に倒すことができたんだ……相手がギラティナだろうが、どうということはない!!

 

「ビシャーンッ!!……ギラララ!!」

 

くっ……!ギラティナは凄まじい力に満ち溢れている……これは、一筋縄では行かないかもしれない……!!

 

「トゲキッス!ムーンフォース!!」

 

「キスキッス!」

 

「ギラァ……」

 

トゲキッスのムーンフォースが直撃しそうになった……その時だった。突如、ギラティナの姿が消えてしまった!?

 

「なにっ!?」

 

「キスっ!?」

 

完全に見失った!一体どこに……?

 

――ピシッ、ピシッ。

 

「……っ!?トゲキッス、上!!」

 

「キッス?」

 

「ギラアアァ!!」

 

「キッ――」

 

これまた突然、空間が裂けたかと思うと、トゲキッスの真上からギラティナが急襲してきた!完全な不意打ち反応すらできず、トゲキッスは叩き潰されてしまった……!トゲキッスは……戦闘不能、か……!

 

「トゲキッス……!戻って、トゲキッス!お願い、ガブリアス!!」

 

「ガブアァ!!」

 

私の残りポケモンはガブリアスとダイケンキ……ダイケンキは本当に奥の手中の奥の手……出すのはギリギリまで粘ってからだ!

 

「ガブリアス!ギラティナは姿を消す技を使う!気をつけて!!」

 

「ガブッ!」

 

「ギラララ!!」

 

ギラティナが、爪に力を込めて飛びかかってきた!あれはドラゴンクロー……!

 

「ガブリアス!ドラゴンクロー!!」

 

「ガブァ!」

 

ガブリアスとギラティナのドラゴンクローがぶつかり合う!……僅かに押されている……このまま競り合うのは危険だ!

 

「アクアテール!」

 

「……!ガブ!!」

 

「グララ……」

 

なんとかギラティナを吹っ飛ばせたけど……まるで手応えがない!やっぱりドラゴンタイプか!ディアルガやパルキアと同じ!

 

「ストーンエッジ!!」

 

「ガッブアアァッ!!」

 

「……!ギラアァ!!」

 

ストーンエッジをギラティナに向けて放つも、ギラティナは口から……あれははどうだん!はどうだんで次々と岩の刃を破壊していく!

 

「打ち消せ!」

 

「ガブッ!!」

 

「よしっ、アイアンヘッド!!」

 

「ガッブゥア!」

 

なんとかドラゴンクローではどうだんを打ち落とし、そのままアイアンヘッドで突撃!……だけど、ギラティナは再び姿を消した!

 

「なんて技……!」

 

「ギラティナが使える固有技、シャドーダイブ!そう簡単に対処できるなどと思わぬことです」

 

「ちっ……」

 

ウォロ……!それにしてもシャドーダイブ……なんて厄介な技だ!一度姿を見失うというのが特に痛い……一体どこから……!

すると、ガブリアスが目線を正面からずらした時だ!ガブリアスの正面の空間に、ひび割れが生じた!

 

「ガブリアス、前!!」

 

「ギラアアァ!!」

 

「ガブァ!?」

 

「ガブリアスッ!!」

 

咄嗟に気づいて声をかけたが……遅かったか!ガブリアスがギラティナのシャドーダイブを受けて大きく吹き飛ばされてしまった……!けど、ガブリアスはまだ立ち上がれるみたい……よし!

 

「素早く、ストーンエッジ!」

 

「ガブガブァ!」

 

「ギラッ」

 

早業で繰り出されたストーンエッジはギラティナに命中!動きが止まった……今だ!

 

「力強く、ドラゴンクロー!!」

 

「ガブァアアアァァ!!」

 

一気に突撃するガブリアス……シャドーダイブで逃げられる前に、ここで……!

 

「ギラアアアッ!!」

 

「……!ガブリアス!避けて!!」

 

「ガブ……!?ガッ!!」

 

まさか、だいちのちから……!!それも力業で撃ってきた!まんまと直撃してしまったガブリアスは宙を舞い、私の目の前に倒れた。……戦闘不能……くっ、逸ってしまったか!

 

「おやおや、もう後一匹ですか。後がないのはお互い様のようですね!」

 

「……うるさい。ここで仕留める!ダイケンキ!!」

 

「…………」

 

私の、正真正銘の切り札!極み断ち斬るダイケンキ!!ダイケンキを出した以上、これ以上の負けは認められない!

 

「ギラアアア!」

 

「来るっ……!ダイケンキ!つばめがえし!!」

 

「……!」

 

ギラティナは小手調べとばかりにはどうだんを放ってきた……けど、ダイケンキはつばめがえしではどうだんを一瞬で真っ二つにしてみせた!

 

「ギラ!?」

 

「ひけん・ちえなみ!!」

 

「……!!」

 

「ギララ」

 

……!また、シャドーダイブ!ギラティナが姿を消したことで、こちらの攻撃は空振りに終わった……今度はどこから来る……!

 

「……ダイケンキ、右!!」

 

「……!」

 

「ギラアァ!」

 

私の声掛けにも、ダイケンキは一瞬で反応してくれた!宣言通り、ギラティナはダイケンキの右側から急襲してきたが、ダイケンキはアシガタナで受け止めることができた!

……!!ギラティナがはどうだんを!

 

「ギラアアァ!!」

 

「ルッ……!」

 

「ダイケンキ……!」

 

はどうだんの直撃を受けたダイケンキ……まだまだ戦えそうだけど、あまり被弾しすぎるのも良くない……いや、あれは!

 

「ギラァ……!」

 

ダイケンキの意地とも言うべきか、ギラティナの足にアシガタナが一本刺さっている!しかもあれは、どくづきの技!こちらが指示をしなくとも、ダイケンキは自らの判断で動いてくれたということ……?なんてすごいの、ダイケンキ!

ギラティナが足を軽く振ってアシガタナを落とした。そのまま何かを仕掛けようと構えを取るギラティナ……まさか!

 

「ダイケンキ!走れ!!」

 

「……!」

 

ダイケンキがその場からダッシュした直後、だいちのちからが放たれた!危ない……あやうく直撃するところだった!

ダイケンキはダッシュしつつギラティナが落としたアシガタナを回収した……よしっ!

 

「シザークロス!」

 

「…………」

 

「ギラッ……!」

 

「よしっ!ひけん・ちえなみ!!」

 

「!!」

 

「ギラアァ!?」

 

シザークロス、ひけん・ちえなみもともにギラティナに直撃!たとえ伝説のポケモンだろうと、確定急所技が相当効いたはず……!

 

「ギララアアァ!!」

 

「ルシッ……!」

 

「……っ、ダイケンキ!」

 

だが、ギラティナも負けていない……反撃にドラゴンクローを喰らわされ、ダイケンキもまたこちらまで吹き飛ばされてきた!そして、ギラティナは再び姿を消す。……ここだ、ここで使うしかない!

 

「ダイケンキ!奥義!!」

 

「……!!」

 

ダイケンキが第三のカタナを抜刀し、水の力を収束する。この一撃なら、確実に仕留めることができる……!水の力を集めつつ、その時を待つ。やがて、ダイケンキの正面上空……斜め前の空間にヒビが入った!

 

「ダイケンキ!正面上空!!」

 

「……!」

 

「ぜっけん・はとう!!」

 

「ギラアアアアァァ!!」

 

「ルッシャアアアアアアアッ!!」

 

「……!?ビシャーンッ!?」

 

ダイケンキの巨剣の一振りが、ギラティナをシャドーダイブの技ごと叩き斬った!!

 

「勝った……!」

 

ギラティナは地面に落ちていき、そのまま墜落――

 

「ギラァ!!」

 

――しない!?なんと空中でギリギリ体勢を立て直すと、その姿が影のような闇に包まれて……

 

「ビシャアァァーーーンッ!!」

 

六本足が突起状になり、二枚の翼も六本の触手のような形状に変化した……!?

 

「う、そ……」

 

「ギララララ!!」

 

「ルシャア……!!」

 

「……あ!ダ、ダイケンキ!?」

 

想定外の変貌……フォルムチェンジに、私が呆然としている隙を突かれた!ギラティナのはどうだんがダイケンキに直撃し、ダイケンキはそのまま倒れ伏してしまった……!!

 

「ダ、ダイケンキ……」

 

ダイケンキは、戦闘不能、に……。そんな、私の……負け……。

 

「…………」

 

「……何を呆けているのですか?アナタにはまだポケモンが残っているでしょう?」

 

「えっ……?」

 

「アレを出しなさい……あのポケモンを!ジンオウガを!!今のギラティナならば、たとえ未知の巨大ポケモンだろうとものの数にならぬ!何するものぞ、ジンオウガ!!アナタの最後の希望であるジンオウガを倒してこそ、我々の真の勝利と言えるのです!」

 

「……!!」

 

……それは、私がずっと考えないようにしていたこと……。普通のポケモンとの勝負に、ジンオウガたち未知の巨大ポケモンを使うということ……。彼らの勝負を知っている身としては、たとえ相手が伝説と謳われるポケモンであろうと、戦わせることには気が引けていた。

私が迷っていると、一個のボールが大きく揺れた。……ジンオウガが入っているボール……「俺を使え!」と、そう言っているの……?

大きく深呼吸をする。この先の勝負は、私にとっても完全に未知の領域。ヒスイ地方に伝わる伝説のポケモンを相手に、ジンオウガがどこまで戦えるか……。

 

「……行け!勝利を狩り獲れっ!ジンオウガッ!!」

 

「ウオオオオォォォォォォンッ!!」

 

ボールから繰り出されると、ジンオウガは天高く雄叫びをあげ、同時にウォロたちを威嚇するように全身から放電を繰り返す。そのまま眼前の敵……ギラティナに向けて鋭い視線を向けた。

 

「……!出たな、ジンオウガ!おまえのこともとことんまで調べ上げたぞ!……その結果、何もわからなかった!このヒスイ地方のあらゆる遺跡や文献等を紐解き、神話を徹底的に調べ尽くしたというのに……なのに!おまえのことはアルセウス以上に何もわからなかった!!

答えろジンオウガ!貴様は一体何者だ!いや、そもそも貴様はポケモンなのか!?貴様は何処から来て、何処へ行くのだ!貴様という存在は、時にアルセウス以上にワタクシの好奇心を刺激してくる!!ショウ……アナタに勝利した暁には、是非ともそのジンオウガも貰い受けるとしよう!!ワタクシの好奇心を満たすために!!」

 

「……!!ふざけるなっ!!私から何もかもを奪っておいて、今度はジンオウガまで奪う気かっ!!そんなことはさせない……ジンオウガも、ヒスイの未来も!お前なんかに奪われてたまるかっ!!」

 

「ガウッ!!」

 

私が激昂すると、ジンオウガの鋭い鳴き声が耳を打った。見れば、ジンオウガがこちらへ顔だけ振り返っていて、まるでその目は「落ち着け」と語っているようだった……。それから、小さく頷くジンオウガ……そう、だったね。

怒りに飲まれてもいいことなんてない……ライチュウとロズレイドを思い出せ!私の判断ミスで倒された二匹のことを忘れちゃいけない……冷静に、冷静にだ。体はファイヤーのように熱く、頭はフリーザーのように冷たく……お父さんの受け売りだけど、しっかりそれを意識する!

 

「……大丈夫だよ、ジンオウガ。絶対に勝とう!」

 

「ワオンッ!!」

 

「ギラアアア!!」

 

ギラティナが使ってきたのははどうだん!そんなもの!!

 

「叩き潰せ!!」

 

「ウオオオォォォォォォンッ!!」

 

「ギラッ!?」

 

「ばかなっ!?」

 

迫り来るはどうだんを、ダイケンキの時のように一瞬でかき消した。それも、攻撃ではなく咆哮……すなわち、ただの気合で。これにはギラティナだけでなく、ウォロも目を剥いていた。

 

「そんな猪口才な技、ジンオウガに効くものか!!ジンオウガ!しねんのずつき!!」

 

「グルル……!ワオオン!!」

 

「……ッ!!」

 

ギラティナはまたしてもシャドーダイブで姿を消した!本当に厄介だなぁその技!!ジンオウガも、キョロキョロとギラティナを探している。……っ!!

 

「ジンオウガ!後ろ!!かみなりパンチ!」

 

「……ッ!!」

 

「ギララララ!!」

 

私の指示が間に合い、ジンオウガは後ろから姿を現したギラティナにかみなりパンチを振るった!……が、攻撃は回避されてしまい、逆にシャドーダイブの一撃を受けてしまった!

 

「……!ふ、ふはは!勝てる、勝てるぞ!ジンオウガ、恐るるに足らず!アルセウスに生み出されし神の子たるギラティナには到底及ばない!!」

 

「ギラアアアア!!」

 

「……!ギャウウゥゥッ!!」

 

「ジンオウガ!!」

 

力業のだいちのちから……!ジンオウガには効果は抜群だ!!だいちのちからの連続攻撃によって、ジンオウガに確実にダメージが重なる……!

 

「ジンオウガ!10まんボルト!!」

 

「……!ウオオォン!!」

 

「ギッ……!」

 

なんとか技の隙間に差込ができた!ギラティナの技は中断され、ジンオウガも大きく呼吸をしている……。

 

「フッ……如何に強力なポケモンであろうと、所詮は生き物……生物としての格が違うのですよ」

 

「……それは、どうかな?」

 

「なに?」

 

ジンオウガ……あなたが今まで、どんな気持ちでその力を使わずにいたのか、私には分からなかった……リオレウスでの移動中に聞いた、あなたのこと。あなたが持つ、もうひとつの姿……フォルムチェンジ。

アカイさんはあなたのフォルムチェンジを、「戦う(殺す)ための力だ」と言っていた。あなたが今までその姿を見せなかったのも、あなたが真の意味で「戦う=殺す」必要性を感じる敵に出会えなかったということ……ラギアクルスやリオレウスとの戦闘だって、元々顔見知りだったから本気を出す必要がなかったんだよね。

けど……だけど!アカイさんの地元で、「無双の狩人」と呼ばれるほどの力を持つあなたに、私は遠慮なんてして欲しくない!

 

「……ジンオウガ、本気を出そう」

 

「……!」

 

「遠慮なんていらない。遠慮して、それで負けるなんて、絶対に嫌。なにより……無双の狩人であるあなたに、敗北なんて味わわせたくない!だから、ジンオウガ……!!」

 

「…………」

 

ジンオウガはしばし沈黙……そして――

 

「……ッ」コクリッ

 

――小さく、頷いた。

 

「……ウオォン……!」

 

ジンオウガが小さく吠えると同時に、その体に電気が溜まり始めた。じっとしたまま動かないジンオウガを訝しげに見るウォロ……けど、ギラティナは違う!

 

「ギラララララ!!」

 

「グルッ……!」

 

嫌な予感でも察知したのか、ギラティナはだいちのちからをジンオウガにぶつけてくる!けど、ジンオウガは電力のチャージをやめない、やめるわけにはいかない……!!

 

そして……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウオオオオオンッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【推奨BGM】

閃烈なる蒼光

~モンスターハンターポータブル3rd~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その力が、解き放たれた!!

ジンオウガ……『超帯電状態』!!

 

天高く吠えると同時に激しく放電し、ジンオウガの姿が変化した!

 

毛に隠れている2本の鉤爪が展開された攻撃的な形態。

普段は畳まれている帯電毛が逆立ち、上向きに展開された角や蓄電殻。

全身から青白い電光を迸らせる姿。

 

……文句なしに超絶かっこいいこの姿こそ、ジンオウガのフォルムチェンジ……『超帯電状態』の姿だ!!

この状態のジンオウガの放電能力はラギアクルスと同等らしく、かみなりの技以上の電力を放出することができるんだとか!さらに!纏う電気による刺激で筋肉が変化し、攻撃力や俊敏性が飛躍的に上昇!疲れを見せる事無く矢継ぎ早に攻撃を仕掛けることができる!!

ここまでの説明、全部アカイさんの受け売り!!

 

「なっ……姿が変わっただと!?ますます興味深い……!」

 

「ウォロさん、あなたに素敵な言葉を教えてあげます」

 

「ほう?」

 

「"好奇心はニャースを殺す"、です。……ここから先は命獲り、興味本位で近づきすぎると、死にますよ」

 

「……!!」

 

「ジンオウガッ!!」

 

「ヴオオオオオンッ!!」

 

「……ッ!!ギララ……!!」

 

ギラティナも、超帯電状態になったジンオウガを前に臆している!

 

「ジンオウガ、らいこうだん!!」

 

「ウオォンッ!ウオォンッ!!」

 

「!!」

 

カーブを描いて迫り来る雷光弾(らいこうだん)を、ギラティナは再びシャドーダイブで退避する。……無駄だ、二度も同じ技を立て続けに喰らうほど、ジンオウガは甘くはない!

 

「ジンオウガ!」

 

「……!」

 

ジンオウガが私の声に反応して、わずかに振り向いたその時!ジンオウガの正面からギラティナが姿を現すが……こっちはとっくに気づいている!

 

「ライジングテール!!」

 

「ウワオォンッ!!」

 

「ギラァッ!?」

 

ジンオウガはその場で体を捻り、ライジングテールで周囲を薙ぎ払う!当然、ジンオウガに迫っていたギラティナには命中!ジンオウガは飛び上がった勢いのまま、既に攻撃態勢に入っている!!

 

「シャドークロー!!」

 

「ワオン!!」

 

「ギラアアァ!!」

 

シャドークローを受けたギラティナは大きく後退!そのままだいちのちからを使おうとしているが……遅い!!

 

「ジンオウガ!ごうらいちょうだん!!」

 

「ウオオォォォンッ!!」

 

ジンオウガは後方に少し走ってだいちのちからを躱すと、そのまま大きくジャンプ!!ギラティナを下敷きにするように背中から落下して押しつぶす!!これが豪雷跳弾(ごうらいちょうだん)!!仮に躱されたとしても、着地時に周囲に雷光弾(らいこうだん)を飛ばしたり落雷を発生させたりするので後隙はない!!

 

 

 

 

ドガアァァンッ!!!!!

 

 

 

 

その爆音には、聞き覚えがあった。ジンオウガと初めて出会った、あの日。あの日に聞いた落雷の音と、まったく同じ音……あの落雷は、オヤブンギャロップを仕留めるために豪雷跳弾(ごうらいちょうだん)を仕掛けた、ジンオウガの音だったんだ。

 

「(運命、なのかな……)」

 

あの日の出会いがあるから、今がある。この音を聞くたびに、きっと私は何度も思い出すだろう。ジンオウガと初めて出会った、あの雨の日を。

 

「ギ、ララ……!」

 

「グルル……!」

 

ギラティナはかなりのダメージを負っている……ここで一気に止めを刺す!!

 

「ジンオウガ!らいそうしでんだ!!」

 

「ウオオオオォォォォンッ!!」

 

雷葬死電(らいそうしでん)。ジンオウガが放つ最大の技。後方宙返りの要領で跳躍しつつ尻尾で相手を打った後、空中で体勢を立て直してそのまま雷を纏った前脚を叩きつける!!攻撃はギラティナに見事直撃!ギラティナの姿は元の六本足に戻った!!

 

「ビシャアンッ……!」

 

あ、逃げた。……え、逃げちゃった!?びっくりするくらい鮮やかな逃走!私じゃなきゃ見逃しちゃうね!……何を言っているんだ、私は。

 

「逃げるとはなんと不甲斐のない!オマエがアルセウスに挑むというから、力を貸してやったというのに!時間、空間の神をトチ狂わせ、創造神を引きずり出すために時空の裂け目を開けるきっかけをつくってやったというのに!

なぜだ……なぜなのだ。アルセウスよ、心あらば教えてくれ……古代シンオウ人の血を引くワタクシの何がダメだというのか!」

 

まずそのストーカー気質をなんとかしろ。

……いや、それよりもっ!!

 

「そもそもこの世界は創造しなおす必要などないのか?」

 

「ウォロオオオオォォォォッ!!」

 

「なに……ぐっ!」

 

私は勢いよくウォロに突進した!こちらに振り返った直後に体当りし、そのままウォロを押し倒すとその首に両手をかけた。

 

「お前の……お前のせいで、私は……!!」

 

「……フッ、いいでしょう。ならば殺してみなさい。私の物語は、あの敗北で全て終わったのですから」

 

「お前があああああっ!!」

 

徐々に力を込めていく……このまま首をへし折ってしまえば、私は……!!

許さない、許さない……死ね、死ねっ!ウォロッ!!

 

「死んで償え……!このクズやろおおおぉッ!!」

 

「……ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カプッ。

 

「……!!」

 

誰かが、私の頭を甘噛みしている……。ウォロの首から手を離して振り返ると……

 

「……ジンオウガ……」

 

「クゥン……」

 

超帯電状態を解除したジンオウガが、すぐそこにいた。初めて出会った時と同じ……悲しみと優しさに満ちた目で、私を見ている……。

 

「…………」

 

私は、一気に全身の力が抜けていくのを感じた。ジンオウガが私の服を咥えて立ち上がらせると、ついでにウォロも立ち上がらせた。

 

「……ジンオウガは、ウォロを許せというの?そんなの、私は……」

 

「クン……」

 

しかし、ジンオウガは首を横に振る。許せとは言わないが、殺すなと言いたいのか……ジンオウガは、本当に優しい子だ。私が手を汚してしまうのを、本気で嫌がっているのが伝わって来る……。

 

「……つくづく、面白いポケモンだ、ジンオウガ……。ますます好奇心をくすぐられる……」

 

「グルルル……!!」

 

「おっと。ショウさん……アナタには夢があるのか?」

 

「夢……」

 

夢、私の夢……私の夢、というより目標は……元の世界へ帰ること……復讐じゃ、ない。

 

「……ある」

 

「そうか、あるのか。アナタの夢はきっと、ワタクシとは相容れない……。ワタクシはポケモン使い、アナタはポケモンと共に戦う者。私は結局一人でしたが、アナタは違う……ポケモンとともに夢を叶えるのでしょう!」

 

「……!」

 

そうだ……お母さんも、お父さんも、二人揃って必ず同じ事を言っていた……それは、「ポケモンがいれば、なんだってできる」ということ……。

 

「ワタクシの物語の始まり……ギラティナから受け取ったプレートも、くれてやりますよ」

 

私はウォロから最後のプレートである「もののけプレート」をもらった。……これで、すべてのプレートが集まったわけだけど……って、なに!?カミナギのふえが!!

カミナギのふえが変化して……なんか、フジツボのような、お父さんが冒険してきたという旅先の写真で見たナマコブシやバチンウニみたいな変な見た目の笛になってしまった。……戻して。

 

「それは、それは……まさか、まさか、てんかいのふえ……。アルセウスはアナタなんかと会うというのか。そのためにアナタを招いたというのか?」

 

これが、てんかいのふえ……ウォロの言うことが真実なら、この笛を吹けばアルセウスに会えるのか!

 

「クッ!見たくないのですよ、アルセウスとアナタの邂逅など!ましてやアナタがアルセウスに勝利するなど、認めるわけには行かない……」

 

知らんがな。

 

「いつか、いつの日か、ヒスイ地方のポケモンすべての神話、その謎を解き明かし、アルセウスに会ってみせる!いや、従えてみせる!!何年、何十年、何百年かかったとしても!!」

 

人間もポケモンも、ストーカーはお断りだと思うけどな。

最後にそれだけを言い残して、ウォロは立ち去ろうとした……いや、待て。

 

「最後にひとつだけ」

 

「……?」

 

「もしも、アルセウスに出会ってなお、私が元の世界に戻れなかったら……地獄の果てでも追いかけて、事の顛末をすべてこのヒスイ中に流布して回る。あなたをジンオウガで引き回しながらね。ジンオウガはあなたの匂いを覚えた……逃げられると思うな」

 

「……フフッ、それはそれは……ならばアルセウスに期待するほかありませんね」

 

最後に小さく笑うと、今度こそウォロは立ち去っていった……。

 

「……帰ろう、ジンオウガ。多分だけど……まだ、全てのポケモンに出会えたとは思えないんだ」

 

「ワウ」コクコク

 

私はジンオウガの背に乗ると、岩の間を飛び越えてそのままテンガン山を下山した。……待っていろ、アルセウス。次は……お前の番だ。

 

 

 

 




はいっ!!お疲れ様でした!無事にウォロ戦、終了です!!
今回、ウォロは原作同様神殿でサヨナラとなりましたが……まぁ、今回は陸はジンオウガ、空はリオレウス、海はラギアクルスがいるのでショウちゃんの言葉通り「地獄の果てでも」追いかけられますw

次はトルネボルトランドラブトのロス勢を捕えてアルセウス戦……かぁーっ!なげぇわ!


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HUNTER アルセウス
新たな異変と新たな脅威


いよいよオリジナルストーリーが本格的に始まる……つまり!
自分が書きたかった話が書けるということ!やったー!!


シンオウ神殿にて、時空の裂け目を開いた元凶であるウォロとギラティナ……一人と一匹を打倒した私は、怒りのままに息の根を止めようとしたところをジンオウガに諭されて、ウォロを逃がした。ただし、アルセウスが私を元の世界に戻さなかった場合、相応の報復をすることも決めて。

さて……コトブキムラへ戻った私は、門番のデンスケさんとラベン博士が門前で立ち話をしている場に居合わせた。なんでも、群青の海岸に巨大な影が現れ、そして消えた……そうで。私は事の顛末をラベン博士に説明すると、博士はすぐにその影の正体がギラティナではないか、とアタリをつけた。さすがはポケモン博士、鋭い……私もちょうど、同じことを考えていたから。

 

ギンガ団本部に戻った私を、コギトさんが待っていた。どうやら、ウォロの行いをすべて聞いたらしい……その上で、私に「ウォロのことは忘れろ」と言い含めてきた。……ごめんなさい、コギトさん。その言葉は、状況次第では聞けないかもしれません。そして、コギトさんから新たなポケモンの情報をもらった。黒曜の原野にランドロス、雷雨が鳴り響く群青の海岸にボルトロス、吹雪が吹き荒ぶ純白の凍土にトルネロスがいる……とのこと。

 

私は早速探すため、黒曜の原野へ向かった。そこで見たランドロスは……どこかで見たことのあるポケモンだった。

どこで見たのか……それは、元いた世界でスマホで見ていたポケモンを使ったボケを投稿するサイトで、ランドロスとランドロスによく似たポケモンが合わせて三匹揃って並んでいる写真に「親戚がみんな同じ顔」というボケが呟かれててめちゃくちゃツボにハマったことがあった。

あのランドロスは、その写真で見たポケモンと全く同じ……それじゃあ、あの時見た写真に並んでいたのがトルネロスとボルトロス?なんて偶然なんだろう……ただのギャグサイトから、こんなつながりができるなんて……。

 

「捕ろう」

 

ひとまず捕獲するためにボールを投げたりねばりだまを投げてみたけど……周囲をバリアーのように覆っている嵐のような風のせいで、全然捕まえられなかった。全てのポケモンと出会う……アルセウスと対面する条件を満たすためには、トルネロス、ボルトロス、ランドロスの三匹を捕まえなければならないのに……こうなったら……奥の手だ!!

 

「グオ?」

 

「……リオレウス、ゴー」

 

「グオオン!?」

 

「黙らっしゃい!アルセウスに会うためなの!形振り構ってられないんだから!!」

 

「グオン……」

 

「ジト目で見ないで、リオレウス。私も必死なんだから」

 

こうして私は奥の手とは名ばかりのズルをすることにした。ランドロスたちは動きが非常に素早く、慎重に近寄ろうにもすぐに気づかれて逃げられてしまう……だから、一気に強襲することにした。

ランドロスはリオレウス、海上にいるボルトロスはラギアクルス、吹雪の中にいるトルネロスはベリオロスに頼んで取り押さえ、強制的にバトルに持ち込んで捕獲した。……ただ、みんなからの微妙そうなジト目が心にチクチクと刺さってくる……。

三匹を捕獲したあとは、三匹の図鑑作りに勤しむ。コギトさんが見たがっていたので、一生懸命に取り組んだ。特に三匹が得意としている固有技は三匹の特徴を捉えた技だけに、図鑑作りが一層捗ったことをここに明記しておく。図鑑作りを終えてコギトさんに見せると……まさかの四匹目がいることを教えてもらった。隠れ里に姿を現したのは、ラブトロスというピンク色のポケモン……このポケモンは、紅蓮の湿地に深紅沼を移動しているだろうということ……よし。

 

「ジンオウガ」

 

「…………」

 

「……お願いします」

 

「ワン……」

 

ラブトロスの捕獲はジンオウガに任せる。ジンオウガにもジト目で見られたけど、根気強くお願いすると「しょうがねぇなぁ」と言いたげにため息をつきながら……全速力で追いかけて数秒でとっ捕まえてきてくれた。……ジンオウガって、実はツンデレさん?

ラブトロスも無事に捕獲して、得意技らしい「はるのあらし」をしっかり観察して、図鑑タスクを埋めていく。……よしっ、図鑑レベルが10になった!なので、もう一度コギトさんの下を訪ね、ラブトロスの図鑑が完成したことを報告した。すると、「うつしかがみ」という道具をくれた。なんでも、ラブトロスたちを「けしんフォルム」から「れいじゅうフォルム」へとフォルムチェンジさせる道具らしい。……ありがたく使わせてもらおう。

あとは……。

 

「ギラティナ……」

 

「…………」

 

私は現在、群青の海岸にある隠れ泉への道……そこにある切り立った崖を登りきった先にある洞窟である戻りの洞窟にいる。ここに逃げてきたギラティナを捕獲するためだ。

 

「……ギラティナ、取引をしよう」

 

「……?」

 

「私は自分が元々いた世界に、時代に帰りたい。そのためにも、私はアルセウスに会わなければならないの。……そして……もしもアルセウスが私を元いた場所に帰してくれなかったら……私は、アルセウスをぶっ飛ばすつもりよ」

 

「……!!」

 

「だから、もしもその時が来たら……一緒にアルセウスをぶん殴ろう。元々、アルセウスに挑むつもりだったんでしょ?共犯者が変わるだけなんだし、問題はないでしょう?」

 

「……ギゴガゴーゴーッ!!」

 

「取引成立……よろしくね、ギラティナ」

 

こうして私はギラティナを仲間にした。いつか、アルセウスに一発お見舞いしなければならなくなった時に、一緒にぶん殴るために。

ベースキャンプに戻ると、ラベン博士がウォロに会っていたらしく、ウォロ曰く、敗北したギラティナは私に敵わないと悟り、アルセウスの反逆を諦めてヒスイ地方を守る道を選んだ、らしい。……そうとは知らず、私はギラティナに対して改めて「アルセウスに反逆しよう」と声を掛けたわけか。いや、ギラティナも割とノリノリで返事をしてくれたから、「ヒスイ地方は守るけど、それはそれとしてアルセウスぶん殴ってやる」って感じなのかな。

 

 

こうして、私は全てのポケモンを捕獲することに成功した。テンガン山、槍の柱を訪れた私は、早速てんかいのふえを吹いてみた。……すると、光の階段が出現した。……この先に、アルセウスが……。

 

「……行くか……」

 

正直、階段の先の先まで見えなくて、この時点で気が遠くなりそうなんだけど……頑張るか!

光の階段を上って上って上り続けて……ようやく終着点に到達した。そこは空が一面星空になっていて、足元は奇妙な模様が描かれた不思議な空間……アルセウスはどこだ。私があちこちをキョロキョロしていると、背後に気配が……!

 

「……!!」

 

振り返った先には、四足の白いポケモンがいた。……わかる、私にはわかる……あれが、アイツが、アルセウス!

すると今度は、アルセウスフォンに変化が表れた。アルセウスフォンが光り輝くと、私の手の中には光の玉が……これ、しずめだま?そして、そのままアルセウスとの戦闘に突入した!

 

アルセウス……本当に手強いポケモンだ。青いオーラに包まれたアルセウスは、衝撃波と隕石のコンボ、分身して力を溜めるとディアルガやパルキアの得意技に酷似した技を使ってきたりする。どうにかこうにかしずめだまをぶつけて体勢を崩させると、約束通りギラティナでボコボコにした。

すると今度は赤いオーラに包まれた。……自分の周囲以外をすべて攻撃する技や、ギラティナのシャドーダイブに似た技を使ってきたり、追尾するレーザーを放ってきたり……危うく目の前が真っ暗になりかけたけど、辛うじて勝利することができた!

 

これでようやく終わる……そう思っていると、アルセウスが突然話しかけてきた。

 

「全てのポケモンに出会う……貴女は見事、成し遂げました。諦めなければ、想いはいつか叶えることができる……貴女の活躍は、それを表しています。古代の英雄……彼らと同じように」

 

「……どーも」

 

どこの誰とも知らない人と同じにされてもなぁ……。

 

「時間、空間を超え、改めて示してくれたこと……喜びます。この世界に、貴女を呼んで良かった」

 

こっちはよくない、という言葉を既で飲み込む。

 

「これからの貴女……そして、貴女が生きていく宇宙を、私は祝福しましょう」

 

呪いの間違いでは?

 

「……私の分身を、貴女に託します。願わくば、より近くで共に世界を見せてあげてください」

 

そして私は一つのモンスターボールと、レジェンドプレートと呼ばれるプレートを貰った。……さて、茶番はここまでだ、本題に入ろう。

 

「アルセウス、私の願いを聞いて欲しい」

 

「……なんでしょう」

 

「私の願いは、元いた場所へ帰ること……あなたの力を以てすれば、私の帰還は可能なの?それとも、私はこのヒスイ地方に、骨を埋めねばならないの?」

 

「……結論から言うと、帰還することは可能です。貴女に捕獲された我が子のうち、あかいくさりを用いなかった子は権能を失っています……なので、私が直接力を振るうこととなるでしょう」

 

モンスターボールで捕まえたパルキアは、空間を操る力を失っていたのか……どうりで、ディアルガとパルキアの二匹が揃って「できない」と答えたわけだ……。

 

「なら、今すぐにでも……!」

 

「……しかし、今はまだそのときではありません」

 

「……!!なんで!?」

 

「落ち着いて。……現在、時空の裂け目の内部に"アレ"がいます。あらゆる時空につながる時空の裂け目に迷い込んだ"アレ"を排除するまでは……!」

 

……"アレ"?アルセウスが「排除する」とはっきり口にするような存在が、時空の裂け目に侵入しているの……?アルセウスが話しているさなか、突然、アルセウスがすごい勢いで自身の背後へと振り返った。……その直後だ!

 

ミシッ……ミシッ……!

 

なにかが割れるような音とともに、私たちの目の前で小さな時空の裂け目が開いた!その中から、ドラゴンのような黒い腕が二本出現すると、裂け目の淵に手を掛けて中から出てこようとし始めた!

 

「くっ……!!」

 

それを見たアルセウスは迷うことなく裂け目に突撃し、裂け目の内部から出てこようとするものを押し返そうとする。それでも徐々に押し返されたことで、その顔があらわになった。中から顔を覗かせたのは、ドラゴンだった。

 

先端に向かうにつれて白くなっている四本の角。

闇を思わせるような黒い甲殻。

黒い目に金の瞳。

 

そのドラゴンと、目が合った……その直後、まるで心臓が握りつぶされたかのように痛みだし、呼吸困難に陥り立っていられなくなった私は膝をついた。

 

「ガッ……ハッ……!!」

 

「……っ!はあああぁぁぁ!!」

 

私が膝をついたことを悟ったのか、アルセウスがさらに力を放ってドラゴンを押し返していった。最終的に、アルセウスが裂け目に向かってはかいこうせんを放ち、強引にドラゴンを裂け目の中へと押し込んだのであった……。

ドラゴンの気配が完全になくなると、私の呼吸も徐々に落ち着きを取り戻し、心臓の痛みも引いていった……。なんだったの……あの、ドラゴンは……?

 

「……大丈夫ですか?」

 

「……なん、とか……。あ、あのドラゴンがいるから、今は私を元の場所に返せないん、だよね……?」

 

「えぇ、その通りです。……私も全霊を持って対処にあたります。今しばらくお待ちを」

 

「……わかっ、た。……色々と言いたいこと、聞きたいことがあるけど、今は置いておく。……気を、付けて……」

 

「ありがとう」

 

その言葉を最後に、私は一度意識を失った。気づいたときには槍の柱にいて、あれは夢だったのかと思いもしたが……手元に有る覚えのないモンスターボールと、その中にいるアルセウスを見て、あれが夢ではないことを悟った。

……目があっただけで、自身の死を予感するほどの恐怖を感じた。……もしかして、ワサビちゃんが千里眼で見た「絶望」って、あのドラゴンのこと……?わからない……方々に確認を取らないといけないだろう……。

 

 

 

 

アルセウスの分身を託され、アルセウスが謎の黒いドラゴンを撃破するのを待つ……その間に、デンボク団長が「プレートを集めたら連絡をくれ」と言っていたのを思い出し、ひとまずプレート集めが一段落したことを伝えた。……その三日後、私はデンボク団長に呼び出され、団長室まで来ていた。

 

「団長、ショウです」

 

「うむ、参れ」

 

団長室に着くと、そこには団長だけでなくセキさんとカイさんもいた。……この勢揃いも久しぶりだな……。

 

「よう、ショウ。久しぶりだな」

 

「プレート集め以来だね」

 

「お久しぶりです、セキさん、カイさん」

 

「今回、ショウに来てもらったのはほかでもない。セキとカイからも、ショウに相談がある、とのことだ」

 

「……?お二人からも、ですか?」

 

なんだろう……何か問題になるようなことでもあったのだろうか……?

 

「ああ、実はな……うちの団員の一部に"ギンガ団は過剰に戦力を保有していないか"と不安がっている奴らがいてな……」

 

「セキもなの?実は、シンジュ団でも一部で同じことを考えている人がいて……」

 

「え?……あの、どういう意味ですか?」

 

本当にどういう意味だ?ギンガ団が、コンゴウ団とシンジュ団よりも過剰に力を持っているって……。その意味を説明してくれたのは、デンボク団長だった。

 

「ショウよ……セキとカイの言う一部の組織員が気にしている戦力というのは、おまえが個人で保有している例の巨大ポケモンたちのことだ。かのポケモンらが見目に限らず、我々が一般的に知るポケモンを遥かに凌駕する力を持っていることはコンゴウ・シンジュ両団も既に周知済みである。

ギンガ団、コンゴウ団、シンジュ団……三つの組織が助け合い、支えあっていくことは当然のこととして、件の巨大ポケモンの力を知る者としてはその力が一極集中している現状を憂いている……ということだ」

 

「……なるほど」

 

つまり、ジンオウガ達のような強力なポケモンが一つの組織に集中している現状を、不安に思っている人が少なからずいるということだろう。……冷静に考えれば、伝説のポケモンだけでなく、シンオウ様であるアルセウスの分身ですらギンガ団が保有していると考えると……うん、言いたいことはわからないでもない。

もちろん、ギンガ団がその力を悪用しないだろうということは互いの信頼関係から理解されている……が、それはあくまでディアルガやパルキア、ギラティナにアルセウスがこのヒスイ地方に伝わる伝説に登場するポケモンだからだ。

そして、ジンオウガたちの話になる。以前にも話したと思うけど、コンゴウ団とシンジュ団はギンガ団よりも早くこのヒスイ地方を訪れて、そこでの生活を築き上げてきたのだ。そんな彼らが、今の今まで全く知り得なかった巨大なポケモンたち……最近は、私が独自に調べ上げ、アカイさん監修による修正・追記によってだいぶマシになった図鑑のおかげで広く周知されているとはいえ、やはりまだまだ未知の部分が多い。

 

「……つまり。その一部の人たちは、ジンオウガのようなキングやクイーンとは別に強い力を持ったポケモンが居てくれればありがたい、ということですか……」

 

「うむ、そうなるな」

 

「すまんな、ショウ。……実は近々、コンゴウ団やシンジュ団にも、ギンガ団の調査隊みたいな部署を作るつもりでな。身近なポケモンならまだしも、まったく触れたことのないポケモンとなるとやはり抵抗感があるみたいなんだよ。……そこで、白羽の矢が立ったのが、ショウが連れているグラビモスたちだ」

 

「彼らはとても強く、大きいから恐いと感じる人もいるだろうけど……でも、彼らがヒトを襲った事例は全くないし、なんならヒトと積極的に触れ合う子もいるくらいだしね。ポケモン調査について学ぶなら、ちょうどいいかなと思ったんだ」

 

「あぁ、なるほど……」

 

つまり、調査のノウハウを学ぶためにジンオウガたちを貸し出して欲しい……ということか。あと、貸し出し中はその戦力で集落や各地域を守りたい、と。

 

「……私は彼らの"おや"としてお世話をしていますけど、彼らには彼らの意思があります。一応、そこはジンオウガたちに直接確認を取ってみないと、なんとも。少なくとも、私の一存で決めたくはないです。ジンオウガたちが嫌がるようなら、私としても行かせたくはありませんから」

 

「うむ、もとよりそのつもりである。ジンオウガたちはショウが捕獲したポケモン、ならばその処遇を決めるのもまた、ショウでなければならない。セキ、カイ。そなたらもそれで良いな?」

 

「あぁ、異論はないぜ」

 

「もちろん。そこはショウさんと、ラギアクルスやベリオロスたちの意思を尊重するよ」

 

ひとまず、この話し合いはここで解散となった。私はその足でそのまま放牧場に向かい、ジンオウガたちに意思確認を取っておいた。……みんな、特に嫌ということはないみたい。良かったような、しばらくはいなくなると思うとさみしいような……。

……そういえば、最近放牧場に預けてあるはずのミミロップの姿が見えない気がする。あと、ミミロップの姿が見えないときは決まって図鑑タスク用に大量捕獲したリオルやルカリオたちも姿が見えなくなっている。一体どこで何をしているのやら……。

あと、ガブリアスがオドガロン亜種に積極的に話しかけている様子も見られた。ガブリアスの焦ったような表情……なにか、思いつめてなければいいんだけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンゴウ・シンジュ両団への戦力分配の相談から一週間後……シマボシ隊長から緊急の呼び出しを受けた。私が慌てて宿舎から飛び出すと、同じように宿舎から飛び出してきたらしいテル先輩とぶつかってしまった!

 

「あいたっ!?」

 

「いって!?……って、ショウ?」

 

「あ、せん……ぱい……」

 

先輩の名前を呼ぼうとして、私はすぐに気がついた。私が先輩を押し倒すような形で二人でもつれ合って倒れてしまっていることに!!

一気に顔が熱を持ち、心臓が早鐘を打つ。嬉しいやら恥ずかしいやら複雑な気持ちが湧いてきてなんかもうやばいんだけど!?

 

「えっと……そろそろどいてくれるとありがたいんだけど……」

 

「はいっ!どきます!朝からすいませんでした!!」

 

「い、いやいや。おれも前をちゃんと見てなかったし、お互い様だよ」

 

「あ、はい。…………」

 

「…………」

 

よく見ると、先輩も少し顔が赤くなってる。……意識、してくれてるのかな?だとしたら、ちょっと嬉しい……。

 

「……緊急の呼び出し、だったな。急ぐか」

 

「はい」

 

それから私たちは顔の火照りを落ち着かせてから、調査隊室へと赴いた。

 

「シマボシ隊長。テル、ショウ両隊員、ただ今到着しました」

 

「入れ」

 

「失礼します」

 

「失礼します」

 

調査隊室に入ると……またまた各組織の団長組が揃っていた。……最近よく集まるな、この面子。他には……ラベン博士もいるのか。あと、ガラナさんをはじめとする、コンゴウ団とシンジュ団の人が数名いる。

 

「では、テルとショウも来たので、話をしよう。……シマボシ」

 

「はい、団長。……本日未明、黒曜の原野、紅蓮の湿地、群青の海岸、純白の凍土の四地域にて、ほぼ同時に大規模な時空の歪みが観測された」

 

「時空の歪み……」

 

時空の歪みといえば、たまに現れる時空の裂け目の小規模版みたいなやつで……時空の歪み内部には、普段その地域には生息しないポケモンが出現することでも知られている。

けど、そんな時空の歪みが大規模且つ同時に複数も出現したって……?しかも本日未明って、結構前だよね……?

 

「ただの時空の歪みではないんですか?」

 

「これまでとは打って変わって、規模が違う。加えて、時間経過で自然消滅するはずが、現時点までその存在が確認されている」

 

「えっ!?」

 

話を聞く限りでは出現してからかなりの時間が経過しているはずなのに……今も歪みが発生したままってこと!?

 

「そして……これは特にショウ……お前が聞いておくべき報告である。傾注し、心して聞くように」

 

「は、はい」

 

なんだろう、改めて言われると緊張するな……。

 

「……時空の歪み内部にて、見たことのない巨大なポケモンが確認された、とのことだ。その容姿、風格は、ジンオウガたちと同等の気配を纏っていると思われる」

 

「……!!」

 

ジンオウガたちと、同じ……!それって、つまり……アカイさんの地元に棲むポケモンが、時空の歪みを通じて出現したってこと!?

 

「そ、それは本当ですか……?」

 

「嘘は言わない。……目撃者も連れてきた。ショウはそれぞれ目撃情報を頼りに、ジンオウガたちを駆り事態の解決に当たれ」

 

「ジンオウガたちのような巨大ポケモンの一匹一匹の強さは理解している……が、それと同格のポケモンが一度に複数匹現れるなど、前代未聞。この問題は、ショウ。お前にしか解決できないと判断した」

 

シマボシ隊長から命令を受け、デンボク団長がこの任務に私を推したことを話してくれた。……ジンオウガたちと、同格のポケモン。めちゃくちゃ興味あるし、なんなら言われずとも行くつもりだったまである。

 

「わかりました、お任せ下さい」

 

私は二つ返事で了承すると、早速目撃者から話を聞くことにした……。

 

 

case1.

最初の目撃情報は、黒曜の原野のマサゴ平原。証人はラベン博士だった。

 

「ぼくはテルくんと共に、時空の歪み内部への侵入を試みたのです。

入ることはできたのですが、入ってからすぐに奇妙な音が聞こえたのです。まるで、刃を研ぐような、鉄と鉄が擦れるような音です。

その音を頼りに捜索を続けると、巨大なガチゴラスを発見したのです!ただ、ぼくがよく知るガチゴラスとはかなり形状が異なっていて……特に尻尾!尻尾が剣のような形状をしていたのですよ!さすがに近づくことは憚られたので、それ以上は何もわからなかったのですが……あれはひょっとしたら、ガチゴラスのリージョンフォームか、あるいは……ジンオウガたちと同じ部類のポケモンなのかもしれないのです……」

 

 

case2.

次の目撃情報は、紅蓮の湿地の試練の中洲。証人は女性コンゴウ団員で、セキさんは付き添いとのこと。

 

「時空の歪みの発生は、集落からでも確認できたの。だから、ちょっと興味本位で中に入ってみたんだけど……もう、ね。凄かったわ。

あたり一面、泡、泡、泡、泡……もう泡塗れよ!しかもその泡、触ったらくっついてなかなか離れないし、しかもやたらツルツル滑って動きにくいったらないんだから!

それで、普段はオヤブンヌメイルがいるところにね、ぜんっぜん違うポケモンがいたのよ。尻尾が刷毛みたいな形状の、キツネ顔のポケモンよ!きっとキュウコンやゾロアークと同系統のポケモンに違いないわ!だからもっと近づいて調べようと思ったんだけど……あっさりとバレた挙句、泡を吐きかけられて追い返されちゃったわ……すっごく綺麗なポケモンだったんだけどなぁ……」

 

 

case3.

次の目撃情報は、群青の海岸……の、ほぼ全域。証人はガラナさん。

 

「群青の海岸は、海上がほぼ時空の歪みに飲み込まれた状態になっています。そのため、火吹き島へ向かおうとしても、少々困ったことがおきまして……。

えぇ、そうです。巨大な翼を持ったポケモンが、群青の海岸の海上を飛び回っているせいで火吹き島に行けなくなってしまったんです。

……そのポケモンの特徴、ですか。そうですね……鶏冠、でしょうか。翼は虫タイプのような美しさですが、電撃を纏っているようで雷が走っておりましたわ。尻尾も鋏のように二股に割れていました。あとは……先程も言いましたが鶏冠……あの鶏冠に電力が集まると、巨大な刃のようになりましたわね……。群青の海岸を飛び回る鳥ポケモンが、その刃で次々と消し炭にされていく様は、悪夢のようでした……」

 

 

case4.

次の目撃情報は、純白の凍土の極寒の荒地。証人はカイさん。

 

「純白の凍土で発生した時空の歪みは、極寒の荒地からシンジュ集落にかけて縦長に発生しているの。集落全体が時空の歪みに巻き込まれて、みんな不安になっている。

ただでさえ不安になっているのに、そこへ輪をかけるように出現したのが、巨大なポケモンなんだ。以前、ラベン博士から彼の故郷にいるっていうダイオウドウってポケモンの絵を見せてもらったけど……その巨大ポケモンは、まるでダイオウドウとマンムーを足して割ったような姿のポケモンなんだ。

いつかの雪原キングのように、じっとしたまま動く様子がないんだけど……あの大きさ、多分だけど雪原キングと同じくらいかも。あんなのが動き出したら、きっとひとたまりもないよね……」

 

 

一通り話を聞いてみたけど……これは、実際に見てみたほうが早いかも知れない。ただ、四ヶ所同時に出現したとのことなので、順番に行く必要があるかも……。

 

「さて……」

 

私が最初に調査するのは……。

 

「伝令っ!!」

 

どこへ行こうかと考えていると、調査隊室に警備隊の人が飛び込んできた。かなり息を切らしているようで、ぜぇぜぇと肩で息をしている。

 

「何事だ」

 

「はぁ、はぁ……も、物見より報告!各地にて発生した時空の歪みが、徐々に規模を広げているとのこと!このままでは、ヒスイ全体が歪みに呑まれるのも時間の問題かと!」

 

「なにっ!?」

 

じ、時空の歪みが大きくなってるって!?だとしたら、それぞれの集落がある地域は危険なのでは……!

 

「考える時間すら惜しいな……ショウ!まずは黒曜の原野だ!」

 

「セキさん!でも……!!」

 

「言ってる場合じゃねえ!今回の異変を解決するためにも、ギンガ団とおめえの存在は欠かせねえ!だったら、まずは目の前の脅威を取り除くのが先決だ!」

 

「わたしもセキに賛成だよ!歪みの中の巨大ポケモンがムラにまで押し入ってきたら、それこそどれだけ被害が出るかわからないよ!」

 

確かにそうだけど……!でも、それはコンゴウ集落とシンジュ集落も同じなのでは……!

 

「幸いにして、紅蓮の湿地と純白の凍土に出現した巨大ポケモンに動きはねえ……だったら先に、コトブキムラを守るべきだ!旦那、構わねぇよな?」

 

「うむう、我々としても異論はないが……良いのか?」

 

「ああ、問題ないぜ。歪みの中のポケモンのことは、ウチの団員から逐次報告を受けている」

 

「シンジュ団も同じく。動きがあったら、すぐに報告が入るように体制は整っているよ。だから、ショウさんは何も気にしないで、黒曜の原野に行ってきて!」

 

セキさん、カイさん……二人が本気でそう言っていくれているのが分かる。デンボク団長も悩まし気に顎に手を当てていたが……やがて意を決したように大きく頷いた。

 

「……あいわかった。ショウ、二人の気遣いを無為にしてはならぬ……が、悠長にしている暇はない。各集落のためにも、可及的速やかに解決せよ」

 

「了解!」

 

「では、出で立て!」

 

その言葉とともに、すぐさま踵を返して調査隊室を飛び出した。目指すは黒曜の原野、マサゴ平原……一体、あそこで何が起こっているというの……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒曜の原野の高台ベースにたどり着くと、私はすぐにマサゴ平原が一望できる風抜け道方面の崖を登った。そこで目にしたのは、マサゴ平原一帯を包み込む巨大な時空の歪みだった。……あれが、少しずつ大きくなっていると……確かにそうなれば、いつかはコトブキムラをも覆ってしまうかもしれない。これは、急いで解決したほうがよさそうだ……!

目撃者であるラベン博士とテル先輩の二人とともに、私はマサゴ平原へと向かった。……すると、ちょうど時空の歪みの近くで、見覚えのある姿があった。

 

「アカイさん!それに、シロちゃんも」

 

「……おや、ショウか?久しぶりだな」

 

「お姉ちゃん!久しぶり~!」

 

アカイさんとシロちゃんは、私がすべてのプレートを集めてムラに戻った時に、ちょうど入れ違いでムラを発ったのだ。ヒスイ地方を見て回る、と言っていたそうだけど……どうやら二人もこの異変が気になるみたい……。

 

「アカイさん!ご無沙汰なのです!」

 

「こ、この人がショウが言ってたアカイさんか……」

 

「ラベン博士も、久しぶりだな。そして、少年とは初めましてか。私がアカイだ。こちらは親類の子のシロ」

 

「お兄ちゃん、初めまして!」

 

「ああ、うん……」

 

「アカイさん。アカイさんも、この時空の歪みが気になるんですか?」

 

「うん?……ああ、うむ。まぁ、歪みそのものについてはよくわからんが……その中に見知った姿があるとなれば、話は別だろう」

 

見知った姿……!それじゃあ、やはり……!!

 

「アカイさんは、歪み内部に出現した巨大ポケモンのことを知ってるんですね?」

 

「……まあ、そうなるな」

 

「それなら……」

 

「その前に、ひとつ……聞いておくことがある。……本気で"アレ"に挑むつもりか?」

 

"アレ"……挑むつもりか、って……まるで、歪み内部のポケモンを調査することに対して正気を疑っているような言い方だ……。

 

「もちろんです。でないと、いつかこの時空の歪みが大きくなって、コトブキムラに達してしまうので」

 

「……まあ、君たちの事情を鑑みればそれも止むなし、だが……。個人的に言わせてもらうならば、命の保証は出来かねる故、引き返すべきだと思うが」

 

「そんなに危険なポケモンなんですか?」

 

「危険であることを察した頃には、既に死んでいるだろう……と、言わせてもらう」

 

あのアカイさんが、険しい表情でこっちを見ている……それだけ、ヤバいポケモンが闊歩しているということなのだろう……。

 

「……アカイさんの言いたいことは、よくわかりました。けれど、その上で言わせてもらうなら……私は、絶対に行きます。行って、調査して、事態を解決して……私たちが住む場所を守らなければならないので」

 

「……どうしても、行くのかね」

 

「行かなければ、ならないんです」

 

「なにも君である必要性はないと思うがね」

 

「どうしてそこまでして引きとめようとするんですか」

 

「無論、命を守るためだ」

 

「今この場にいる私たちだけが助かってもダメなんです」

 

「君の言わんとすることも、よくわかるよ」

 

ダメだ……なんていうか、今日のアカイさんはすごく頑固だ。ああ言えばこう言うとばかりに、私たちをこの場に引きとめようとしてくる。なんとしても、私は時空の歪みの中に入らないといけないのに……!

 

「いいじゃない。行かせてあげようよ」

 

「いや、しかしだな……」

 

そうして押し問答をしていると、シロちゃんもアカイさんの説得に加わってきた。

 

「どうして?お姉ちゃんの実力は、アカイだって知ってるでしょ?」

 

「それはもちろんだ。……が、今回の相手はあまりにも違う。下手をすれば、命を落とす危険性だってある」

 

「お姉ちゃんだって、承知の上でしょ?だったら私たちがこれ以上引き止めるのは、お姉ちゃんの覚悟を馬鹿にしてるってことだと思うな」

 

「私とて、通してやりたいのはやまやまなんだが……」

 

「でも、通せないから邪魔するんでしょ?」

 

「それは、まあ」

 

じゃあだね

 

「……あっ……いやっ、あの……。……あっ……ちょっ……スーッ……

 

……なんか、シロちゃんから信じられないほどの圧を感じる。そして、その圧に圧倒されて段々と語気が弱くなっていくアカイさん。……幼女から圧を掛けられる成人男性とは一体……。

 

「……はぁ、わかったわかった。ではこうしよう。私とショウでポケモン勝負をする。君が私に勝てば、素直にここを通すとしよう。負けた場合は……まぁ、説明は不要だろう」

 

「……わかりました」

 

こうして、時空の歪みの調査をかけて、アカイさんとポケモン勝負をすることになった。……徐々にだけど、確実に大きくなっていく時空の歪みを背景に、私とアカイさんは距離を取って向き合う。

 

「……思えば、君と勝負をするのは初めてだな。今回はあくまで小手調べだ、それなりのポケモンで戦わせてもらうとしよう」

 

……アカイさん、本気を出すつもりはないのか。それじゃあ、湖の洞穴で見たドラゴンポケモンや化石ポケモン達は使わないってことかな?

 

「さあ……始めるとしよう」

 

アカイさんはボールを取り出すと、不敵な笑みを見せた。

 

 

 

 




(祖龍様に敵認定されたら)みんな死ぬしかないじゃない!

次回はアカイとの勝負、そして……ヤツらが来た


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メイン任務:黒曜斬り裂く灼熱の刃~邂逅~

メイン任務:黒曜斬り裂く灼熱の刃
内容:黒曜の原野の時空の歪み内部に出現した巨大ポケモンを調査する




お気に入り登録数2000人突破ァ!?やべぇ、続き書かなきゃ(使命感)


推奨BGM

【VSアカギ】~ポケットモンスター US/UM~

【古代の息吹】~モンスターハンターX~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ……始めるとしよう」

 

アカイさんは不敵な笑みを浮かべ、手に持ったボールを投げた。それと同時に、私もボールを取り出して投げる。

 

「お願い!エルレイド!!」

 

「クック……」

 

「エレッ!!」

 

「ノッズ」

 

私が初手に繰り出したのはエルレイド……アカイさんはダイノーズだ。よしっ、一先ず対面は有利を取れた。

実はラベン博士たちから目撃情報を聞いてから、私は連れて行くポケモンをよく選ぶようにした。今回、黒曜の原野ではラベン博士が聞いたという「刃を研ぐような音」から、対象がはがねタイプであると想定してダイケンキ、ライチュウ、ガブリアス以外の三匹を対はがねタイプ対策として選び直したのだ。

今回連れてきたのはグライオン、エルレイド、そしてキュウコンで、いずれもはがねタイプに強く出ることができるポケモンだ。

ダイノーズははがねといわの複合タイプ……かくとう技で、一気に倒す!

 

「ドレインパンチ!」

 

「エルレイッ!」

 

「パワージェム。弾幕を張れ」

 

「ダーイノー!」

 

すぐさまエルレイドにドレインパンチを指示したけど、アカイさんの判断も早い!ダイノーズはパワージェムをばらまくように放ち、エルレイドを近づけないようにしている。かくとうタイプであるエルレイドにいわ技は効果は今ひとつだけど、エルレイドはだいぶ進みにくそうにしている……!

 

「かくとうタイプなんぞ大半が近接型だ、近づけさせなければどうということはない」

 

「それなら……!エルレイド、サイコカッター!!」

 

「エルッ!エルレッ!!」

 

近づけないなら、遠くからでも攻める!エルレイドはサイコカッターを放つ……が、はがねタイプであるダイノーズにはあまり効果がない……。というよりか、もともと防御寄りの能力を持つダイノーズはほとんど無傷だ……!

 

「足を止めたな?だいちのちから」

 

「ダイッ、ノー!」

 

「エルッ……!!」

 

「エルレイド!」

 

それどころか、サイコカッターを放つために足を止めたことが仇となった!ダイノーズのだいちのちからが命中し、エルレイドが宙に打ち上げられた……!

 

「フッ……ラスターカノン」

 

「ダー……ノーズ!!」

 

「エ、ル……!」

 

「え、エルレイド!?」

 

止めとばかりにラスターカノンで撃ち落とされ、エルレイドはそのまま戦闘不能に……つ、強い……!

 

「おや、どうかしたかな?こちらはあくまで小手調べのつもりなのだが……君には小手調べですら厳しいかな?」

 

「……言ってくれますね。タイプ相性で有利が取れたので、少々油断しただけです。ここから勝ちに行きます」

 

「クックック……そうでなくてはな」

 

「グライオン!!」

 

「グライオーン!」

 

私が次に繰り出したのはグライオン。じめん技を扱えるグライオンなら、不利にはならないはずだ……!

 

「まきびし!」

 

「ライオ!」

 

「ノズッ……」

 

「ほぅ……ラスターカノン」

 

「ノーッズ!!」

 

「躱して!」

 

「グライッ!」

 

まずはまきびしで先制!まきびしがダイノーズの体に突き刺さり、その痛みでダイノーズは動きにくそうにしている。反撃にラスターカノンが飛んでくるが、なんなく回避できた!

 

「グライオン!力強く、だいちのちから!!」

 

「グラーイ!オーンッ!!」

 

「ノッ……!!」

 

「おっと……」

 

まきびしでかなりのダメージが見込めた……一気に仕掛けるため、力業だいちのちからで攻める!……だが、そこはさすがはダイノーズ。グライオンの特攻が元々高くないのも相まって、耐え切った!けど、もうほとんど虫の息の状態……ここで止めを!

 

「素早く、つばめがえし!!」

 

「グライ、オンッ!!」

 

「ノ、ズー……!」

 

「ふむ……戦闘不能か」

 

ダメ押しの早業つばめがえしで、なんとか止めを刺せた……まずは一匹だ!

 

「ふむふむ……では、これはどうかな?」

 

「ドン、カーッ!!」

 

アカイさんの二番手はドンカラス……!さっきのダイノーズとは明らかに違ったタイプのポケモン……グライオンで倒しきれるかな。

 

「グライオン、ストーンエッジ!!」

 

「グラーイオーン!!」

 

「躱せ」

 

「カァー!!」

 

迫り来る岩の刃を、ドンカラスは軽快な動きで回避する!かなりすばやさが鍛えられている……!!

 

「素早く、こごえるかぜ」

 

「カ、カァー!」

 

「グラァ!?」

 

「しまった、こおり技……!!」

 

そうだった、ドンカラスはこごえるかぜを覚えるんだった!どうして失念していた、私!じめんとひこうの複合タイプであるグライオンにはかなり痛いダメージだ……加えて、こごえるかぜにはこちらの行動を遅らせる効果がある……それを早業で打たれたとなっては、連続行動で攻めてきてもおかしくない!

 

「あくのはどうだ」

 

「ストーンエッジで壁を作れ!」

 

「カアアァァー!!」

 

「グラーイ!」

 

よしっ、指示が間に合った!ストーンエッジで岩の壁を作り、グライオンはそこへ避難した。あくのはどうはまっすぐグライオンに向かってきていたので、岩の壁を破壊するだけにとどまった。

 

「ふむ、悪くない。だが、勝負はまだ始まったばかりだ」

 

「わかっています」

 

「ドンカラス」

 

「グライオン!」

 

「「つばめがえし!」」

 

「グライッ!」

 

「ドンカァー!」

 

グライオンとドンカラスが縦横無尽に飛び交い、つばめがえしの応酬が始まる。能力的に見ればドンカラスの方が攻撃力は上だが、素早さならグライオンの方が上!スピード勝負ならまだ負けない……!

高速で何度も激しくぶつかり合うグライオンとドンカラス……よしっ、グライオンがドンカラスの上を取った!そのままグライオンが一撃を加え……!ドンカラスが急停止して攻撃を躱した!?空振ったグライオンはわずかに体勢を崩して……。

 

「ドン、カァ!!」

 

「グラッ……!?」

 

その隙を突いて、ドンカラスが攻撃を当てた!くっ……スピードだけじゃ、アカイさんのドンカラスには勝てないってこと……!?

 

「グライオン!!」

 

「……ッ!!」

 

そのまま墜落していくグライオンだったが、私の呼びかけに応えて体勢を立て直してなんとか地上に着地した。

 

「ドンカラス、サイコキネシス」

 

「カァーッ!!」

 

「飛べ!グライオン!!」

 

「グライ!オンッ!!」

 

だけど、安心はできない!空から迫って来るドンカラスが、サイコキネシスでグライオンを捕らえようとする……間一髪、空を飛ぶことでサイコキネシスの攻撃範囲から脱出できた!

 

「戻って、グライオン!」

 

技構成を考えて、これ以上グライオンで継戦するのは難しいと判断して、ボールに戻す。タイプ相性を考えて、ここは……!

 

「ライチュウ!」

 

「チュウー!」

 

ライチュウで行く!

 

「あくのはどうだ」

 

「10まんボルト!」

 

「カァー!カアァー!!」

 

「ラーイ……チュウゥー!」

 

今回、私はライチュウの使う技のうちボルテッカーを10まんボルトに変更した。これまでの戦闘経験から、近接一辺倒の技構成は危険と判断したからだ。幸いにして、ライチュウは物理攻撃も特殊攻撃も均等に高い能力を持っているので、どちらかに偏るということはなかった。だから、威力は下がるけど特殊タイプだからという理由で10まんボルトが火力不足になるということはない!

ドンカラスが放つあくのはどうを打ち破って、ライチュウの10まんボルトがドンカラスに命中した!

 

「カアアァーッ!?」

 

「む……」

 

よしっ……!グライオンとのつばめがえし対決でもダメージが蓄積していたようで、ドンカラスはそのままライチュウの10まんボルトで沈んだ。……しかし、アカイさんは冷静にポケモンをボールに戻している。まだまだ余裕があるのか、それとも勝ち負けにこだわりがないのか……アカイさんの性格上、後者かな……。

 

「では……こんなのはどうかな?」

 

「ジバルrrrr……」

 

「ジバコイル……!」

 

ジバコイルとは、またクセの強いポケモンを……。このヒスイ時代のジバコイルは覚えられる技範囲が3タイプしかなく、能力は高いけど戦いにくいポケモンだ。

 

「ライチュウ、10まんボルト!」

 

「ラーイ……チュウゥー!」

 

「はかいこうせん」

 

「ジバババ……バrrrrrrr!!」

 

ライチュウの10まんボルトとジバコイルのはかいこうせんがぶつかって……ほとんど拮抗することなくこっちが撃ち負けた!ただ、僅かに軌道を逸らすことには成功したようで、はかいこうせんはライチュウには直撃せず足元に着弾して爆発を起こした。

 

「チュウゥ……!!」

 

「くっ……戻って、ライチュウ!」

 

けど、爆破の余波だけでライチュウはかなりのダメージを負って吹っ飛ばされた……!あのジバコイル……相当特殊攻撃を強化されている……!私は吹っ飛ぶライチュウをボールに戻し、即座に次のポケモンを繰り出した。

 

「行けっ、キュウコン!」

 

「コーン!!」

 

ほのおタイプのキュウコン!この子なら、ジバコイルが相手でも撃ち合いに持ち込めるはず!

 

「なるほど、ほのおタイプならはがねタイプに勝てると」

 

「キュウコン!力強く、かえんほうしゃ!」

 

「コォーン!」

 

「……認識が甘いな、てっていこうせん」

 

「ジバルrrrrrr!!」

 

キュウコンの力業かえんほうしゃと、ジバコイルのてっていこうせんがぶつかり合う……!?こ、こっちが押されてる……!?

 

「コーンッ……!」

 

「キュウコン!」

 

「ジバコイル、はかいこうせん」

 

「バrrrrrrr!!」

 

力業かえんほうしゃとてっていこうせんの撃ち合いに負け、そのままの勢いで放たれたはかいこうせんも直撃して、キュウコンはあっさりと戦闘不能に……そ、そんな……!?

 

「タイプ相性だけで敗北するような、ヤワな鍛え方はしていない。時には火力でゴリ押す必要性もある……それこそ、タイプ相性さえもひっくり返してしまえるような火力で、な」

 

「くっ……!」

 

認識が甘かった……アカイさんはそれほどまでに本気でポケモンを鍛え上げているんだ!だったら、じめんタイプだからと安易にグライオンを繰り出すのは悪手……ここは同じじめんタイプでもより強いポケモンで挑む!

 

「ガブリアス!!」

 

「ガッブアァ!!」

 

今回、技を見直したのはライチュウだけじゃない。ガブリアスもストーンエッジを一時捨ててほのおのキバを覚えさせてみたりしたけど、まさかここで刺さるとは……。未知のポケモンのはがね対策を考慮してほのお技を覚えさせておいて良かった。

 

「ドラゴンクロー!」

 

「ラスターカノン」

 

「ガブアッ!」

 

「バrrrr!」

 

ガブリアスが突貫し、ジバコイルが迎撃のラスターカノンを放ってくるけど、ガブリアスはそれを回避したりドラゴンクローで叩き落としたりして猛然とした勢いでジバコイルに接近していく!

 

「そこだぁ!ほのおのキバ!!」

 

「ガブガッブ!!」

 

「バルrr……!?」

 

高い物理攻撃力から繰り出される弱点技は、ジバコイルにかなりのダメージを与えた!

 

「力強く、てっていこうせん」

 

「撃たせるな!素早く、アイアンヘッド!!」

 

「バrr――」

 

「ガッブゥァ!!」

 

「バッ!?」

 

自滅覚悟のてっていこうせん!撃たれたらかなりのダメージを受けることは必至……!かなり接近しているせいで回避も難しい……だから、阻止に動く!早業アイアンヘッドはジバコイルに命中、ジバコイルは体勢を崩している!間に合った!!

 

「力強く、アクアテール!!」

 

「ガブ、アァッ!!」

 

「バrrrr……」

 

「ふむ……ここで倒れるか」

 

最後にアクアテールでフィニッシュ!吹っ飛んだジバコイルはそのままアカイさんの目の前に転がり、目を回している。なんとか戦闘不能にできた!

これで私はエルレイド、キュウコンの二匹が倒れ、アカイさんはダイノーズ、ドンカラス、ジバコイルの三匹が倒れた。……アカイさん、かなり強いな……これで小手調べというのだから、本気だとどんなバトルをするのか……。

 

「では、次だ」

 

「ババット!」

 

アカイさんの四匹目はクロバット!これは……ワサビちゃんのクロバットよりも手強そうな雰囲気……!

 

「行けるよね、ガブリアス」

 

「ガブッ!」

 

「よし……アイアンヘッド!!」

 

「ガッブゥアァ!!」

 

「エアスラッシュで近づけさせるな」

 

「クロバッ!」

 

クロバットがエアスラッシュを放ってくるけど、その程度で私のガブリアスは止まらない!

 

「止まらないか……では、目くらましだ」

 

「バット」

 

アカイさんがそう指示を出すと、クロバットはガブリアスを十分に引きつけた上で足元にシャドーボールを撃った!この戦法は……!

 

「進化前のズバットは目が見えずとも超音波のみで周囲を探り、十全に移動することが可能であった。……よもや、目が発達した進化系には同じことができないなどと考えてはいないな?」

 

「くっ……」

 

やってくれた……!シャドーボールによる土煙の煙幕によってガブリアスはクロバットを見失った……けど、クロバットはズバットの頃の習性を利用すれば、ガブリアスの位置を正確に把握することができる!アカイさん、ポケモン図鑑をかなり読み込んでるな……!

 

「さあ、追い詰めてやれ。素早く、エアスラッシュだ」

 

「ババ、バット!」

 

「ガブッ……!」

 

「ガブリアス……!」

 

煙の中だというのに、クロバットは高速で動いて全方位からのエアスラッシュをガブリアスに浴びせてくる!幸いにして、特攻が低いクロバットによる早業なので、ダメージそのものは大したことはない……だが、見えない相手による全方位からの攻撃そのものが、やられる側にはかなりのプレッシャーとなる……!

 

「ガッ……ブアァァッ!!」

 

「クロバッ……!?」

 

どうやって抜け出すか……と、私が思考を巡らせていた、その時だった。突然、ガブリアスが大きく吠えたかと思うと、次の瞬間にはガブリアスを中心に強烈な突風が発生し、煙を晴らすばかりか周囲を飛び回っていたクロバットすら吹っ飛ばしてしまった!

 

「なにっ……」

 

「えっ……?なに、今の……ガブリアス……?」

 

「ガブガブッ!!」

 

「ばかな、龍風圧だと……?なぜこの世界の竜種が……」

 

「アカイさん?」

 

「……いや、なんでもない。凄まじい気迫だな、煙を晴らすどころか、攻撃を遮ってしまうとは」

 

「……どーも」

 

なんだったの、今の風は……?明らかに普通じゃなかった。ガブリアスにあんな能力があるなんて、知らなかった……。アカイさんも驚いているようだし、本当に何なんだろう……。

 

「……さて、気を取り直していこう。クロバット、まだやれるな?」

 

「バット!」

 

「行ける?ガブリアス」

 

「ガッブァ!」

 

「では、クロスポイズン!」

 

「こっちはドラゴンクロー!」

 

「クロバッ!トォッ!!」

 

「ガブガッブアァ!!」

 

クロバットが高速で飛び回り、ガブリアスに向けてクロスポイズンを放ってくる。しかし、ガブリアスも冷静にクロバットの動きを見切ってドラゴンクローでクロスポイズンと打ち合っている。

だけど……単純な能力差なら、ガブリアスの方が圧倒的に上だ!!

 

「ガブッ!!」

 

「バットォ……」

 

何度目かの打ち合いにて、ついに決着がついた。ガブリアスがクロスポイズンを押し切って、クロバットに強引にドラゴンクローをぶち当てたのだ。これにより、クロバットは戦闘不能……アカイさんのポケモンは残り二匹だ!

 

「ほぅ……では、このポケモンで行こう」

 

「マニュラ!」

 

アカイさんの五匹目はマニューラか……ここまで高速アタッカーと高火力アタッカーがいい具合に半々に分かれているパーティだ、こっちとしてはやりづらいったらない。

 

「戻って、ガブリアス」

 

「ガブッ」

 

「……ダイケンキ!」

 

「…………」

 

普通に戦う分なら、ダイケンキで十分だ。マニューラを倒して、最後の一匹もダイケンキで一息に仕留めていこう。

 

「こおりタイプのマニューラを相手に押し切るのではなく、みずタイプのダイケンキに入れ替える……いい判断だ、流石だな」

 

「……どーも、です」

 

「……やはり、君は英雄たる器の持ち主かもしれんな。ますます興味深い……」

 

……アカイさんが度々口にする"英雄"という言葉……単に私を評価している、というわけではなさそうだ。

だって、彼がその言葉を口にする度に、底知れぬプレッシャーを感じるから。アカイさんは、"英雄"と呼ばれうる存在に、なにか強い感情を抱いているようだ……それがどんな感情なのかは、まだわからないけれど……。

 

「さあ、私にもっと示してくれ。君が、英雄の器たりうる証を」

 

「……頑張ります」

 

「マニューラ、素早く、こおりのつぶて!」

 

「マッニュ!」

 

「切り払って!ひけん・ちえなみ!」

 

「……!」

 

マニューラが放ってきたのは早業こおりのつぶて。これは目くらましだ!私はダイケンキに指示をしてこおりのつぶてを切り払い、次の攻撃のためにすぐさま指示を出す!

 

「「どくづき!」」

 

「……!」

 

「ニュラァ!!」

 

ダイケンキのアシガタナとマニューラの爪がぶつかり合う……が、敵の急所へ確実に攻撃を当てられるダイケンキの方が、もっと早く攻撃できる!

 

「シザークロス!」

 

「躱せ!」

 

「!」

 

「ニュッ……!」

 

ダイケンキのシザークロス……掠めたか!

 

「今度はこちらがシザークロスだ」

 

「ニューラッ!」

 

「シッ……!」

 

「まだまだ!つばめがえし!!」

 

「つじぎりだ!」

 

「……!!」

 

「マニュ!!」

 

相手のシザークロスを当てられたけど、つばめがえしですぐさま反撃に出る!向こうもつじぎりで応戦するが、ダイケンキのほうが一歩早い!つじぎりのまえにつばめがえしを差し込んで攻撃を当てる!

 

「なにっ?」

 

「力強く、シザークロス!!」

 

「……!」

 

「マニュラッ!?」

 

「……ふむ……」

 

力業シザークロスが直撃!マニューラを戦闘不能にした!

 

「……見事だな」

 

「終わりですか?」

 

「いや、まだだ。私にはあと一匹、ポケモンが残っている。……来い!」

 

アカイさんが放り投げた、最後のボール……そこから出てきたのは、見たことのないポケモンだった。

 

パッと見の全長はおよそ11mほど。

桃色の外殻としゃくれた大きな嘴。

扇状に開かれた大きな耳のような器官。

大きく広げられた青色の翼膜を持つ翼。

 

「クエエェン」

 

……そして、ちょっとマヌケっぽくも見える顔。……なんか、可愛い。

 

「……それが、最後の一匹ですか」

 

「あぁ、そうだ。名は『イャンクック』。"怪鳥"の別名を持つ鳥竜種に属する者だ。そうだな……君の知るところでは、あのホロロホルルの同種といったところか」

 

「ホロロホルルと……?」

 

「鳥竜の名のとおり、見目が鳥に似通ったものからそうでないものまで、幅広く属するのでな。……が、初見では早々に信じられんだろう」

 

イャンクック……アカイさんの話を聞いている間ものんびりとあくびをしたり翼の毛づくろいをしたりと、まるで戦闘意欲を感じない……。けど、普通のポケモンにはない脅威的な強さはひしひしと感じる。

 

「さあ、始めるとしよう。イャンクックは比較的小柄で臆病であるがゆえに戦闘は好まないが……我が地元では、登竜門の一つとして位置づけられている竜だ。油断はしてくれるなよ?」

 

「えぇ、もちろん。戻って、ダイケンキ。……よし、ガブリアス!」

 

「ガッブァ!」

 

「クェ?」

 

私はダイケンキを戻してガブリアスを繰り出した。ガブリアスは気合充分!対してイャンクックは……ガブリアスを見るなり小首を傾げている。……あのポケモン、オヤブン個体のガブリアスを脅威に感じていない……!?

 

「……っ。ドラゴンクロー!!」

 

「ガッブウゥアアァ!!」

 

ガブリアスも首を傾げるイャンクックにイラッとしたのか、かなりの勢いで突撃して爪を振り下ろした!

 

「躱せ」

 

「クェ」

 

……が。アカイさんが一言告げると、イャンクックは軽くバックステップをしてドラゴンクローを回避してしまった……!?

 

「りゅうのはどう」

 

「クエエエ!!」

 

「ガブアァッ!」

 

「ガブリアス!」

 

「……ガブッ!」

 

反撃のりゅうのはどうで押し込まれ、ガブリアスは膝をついた……が、直ぐに立ち上がると再び構えを取った。

 

「よしっ……素早く、アイアンヘッド!」

 

「ガッブ!」

 

「では、こちらはエアスラッシュだ」

 

「クエッ、クエッ!」

 

突撃するガブリアスに対して、イャンクックはエアスラッシュを放った。クロバットよりも威力の高いエアスラッシュを前に、それでもガブリアスはどんどん突っ切っていく!

 

「アクアテール!」

 

「ガッブガブアッ!!」

 

「グエエエッ!?」

 

ついに距離を詰めたガブリアスのアクアテールが決まった!イャンクックはかなり苦しそう……みずタイプに弱いのか!

 

「ドラゴンクロー!」

 

「ガブガッブァ!」

 

畳み掛けるようにドラゴンクローを放つが……こちらは嘴で受け止められただけでなく、ほとんど、いや、全くダメージを受けていない!

 

「おっと失礼、実はイャンクックにドラゴン技は効果がないのだ」

 

「……!あの回避はブラフ……!!」

 

「そういうことだ」

 

「ガブッ……!」

 

……っ!?イャンクックの嘴と接触したガブリアスが顔を歪めている……!ガブリアスの体を炎が走っている……まさか、やけど状態!?

 

「準備は整ったな。ではイャンクック、くちばしキャノン!」

 

「クックエエエェェッ!!」

 

「ガブアアアァァッ!?」

 

「ガ、ガブリアス!」

 

イャンクックが嘴を開いた瞬間、そこから強烈な勢いで砲弾が放たれた!直撃したガブリアスは大きく吹っ飛ばされ……そのまま戦闘不能になってしまった。

 

「さて、君の竜は戦闘不能となったな」

 

「くっ……戻って、ガブリアス。行って!ライチュウ!!」

 

「チュチュウ!」

 

まさか、ガブリアスが負けるなんて……いや、油断していたのはガブリアスだけじゃない、私もだ。イャンクックの雰囲気に、すっかり騙されてしまった……。

でも、もう油断はしない。そのためにライチュウを繰り出したんだから!

 

「ライチュウ、アイアンテール!」

 

「チュウ!」

 

「イャンクック、かえんほうしゃだ」

 

「クエエェンッ!!」

 

ライチュウが一気に駆け出し、イャンクックへ接近する。対するイャンクックもかえんほうしゃでライチュウを近づけまいとするが、ライチュウは持ち前の素早さで攻撃を次々と躱していく!

 

「ふむ……では、かえんえきだ!」

 

「クエエエエッ!!」

 

次にイャンクックが吐き出したのは、なにかの液体の塊……?だが、それはライチュウの眼前に着弾すると激しく爆発を起こした!名前からして、可燃性の液体……それで、火炎液か!

ライチュウは既のところで回避したからいいものの、火炎液は放物線を描いて向かってくるので、発射から着弾までの間をしっかり見極めないと危険だ!

イャンクックが大きく体を引いた……今だ!

 

「突撃!」

 

「チュ!」

 

私の掛け声に合わせて、ライチュウが突っ込む!吐き出された火炎液の下を潜り、イャンクックの懐に飛び込んだ!

 

「クエッ!?」

 

「ほう」

 

「ライチュウ!力強く、10まんボルト!!」

 

「ラーイ……チュウウゥゥー!!」

 

「グエエエエエンッ!?」

 

力業10まんボルトが炸裂!!イャンクックは右へ左へと体を揺らしながら……その場に倒れこんだ!よしっ、戦闘不能!!

 

「ふむ……私の負けだな」

 

アカイさんがイャンクックをボールに戻し、小さく呟いた。

……か、勝てた。一時はどうなるかと思ったし、なによりアカイさんは本気じゃないし……今度勝負する時が、本番かも知れない。

 

「見事な手並みだ……ヒスイのポケモンとこれだけ心を通わせられるなら、我が地のポケモンたちとの連携も問題はないだろう。よろしい、先へと進み、この事態を解決して見せろ」

 

「わかりました」

 

「お姉ちゃん!はいこれ、お守り!」

 

「え?」

 

勝負が終わったあと、シロちゃんが駆けてきて私の手に何かを握りこませてきた。手のひらを開くと……それは以前、野宿をした際に気づいたら手の中にあった、あの小さく奇妙な石と同じ石だった。

 

「あの、これ……」

 

「んぅ?お守りだよ!」

 

「あぁ、うん。ありがとう」

 

……ただ、以前の石が遺伝子のような模様が碧色、周りが黄色なのに対し、今回シロちゃんから渡された石は模様が黒色、周りが赤色と配色が異なっていた。

勝負を終えたので近づいてきたラベン博士が、私が手に持っている石を見て大きく目を見開いた。

 

「……!?しょ、ショウくん!その石は!?」

 

「え……あの、さっきシロちゃんから……」

 

「シロさん、この石をどこで!」

 

「んー?知らない、ずぅっと前から持ってた」

 

「あの、博士。この石が何か知ってるんですか?」

 

「知ってるもなにも……この石は『メガストーン』ですよ!カロス地方に伝わるとされる現象、『メガシンカ』を引き起こすのに必要な道具なのです!」

 

「メガシンカ……」

 

カロス地方……あぁ、そうだった。博士はポケモン博士だから、他の地方に行ったことがあるんだった。その時にでも、知ったのかな。でも、シロちゃんがメガシンカに必要な道具を持っているなんて……なんで?

私がポーチから色違いのメガストーンを取り出すと、ラベン博士は大袈裟に驚いた様子を見せてくれた。

 

「メガシンカには、それぞれ対応したメガストーンと、キーストーンと呼ばれる道具が必要なのです」

 

「キーストーン……それって、これ?」

 

「お……?おぉ!まさにこれなのです!!シロさん、これも一体……」

 

「んー?……ふふっ♪」

 

……シロちゃん、相変わらず笑って誤魔化すの上手だね……。私が二つのメガストーンを見比べていると、アカイさんが興味深そうにメガストーンを覗き込んだ。

 

「ほぅ……この色合い、まるでジンオウガとリオレウスだな。ラベン博士、メガストーンの色は対応するポケモンに近い色合いをしているのかな?」

 

「メガシンカはぼくの専門ではないのでなんとも……ただ、アカイさんの言うとおりこの二つのメガストーンは、色合いがジンオウガとリオレウスに似ているのです。もしかすると、二匹に対応したメガストーンかもしれませんね」

 

言われてみれば……碧色と黄色のメガストーンはジンオウガ、黒色と赤色のメガストーンはリオレウスの色に似ている。調べてみたいけど……一先ず、黒曜の原野の時空の歪みを解決してからになるだろう。

 

「……さて、通すと決めたならば、歪み内部のポケモンの情報も伝えるべきだな。……我々も同行しよう、情報は道すがら伝える」

 

「ありがとうございます。……あの、シロちゃんは……」

 

「え?ついていくよ?」

 

「ですよねー……」

 

アカイさんも付いてきてくれるそうな。ありがたい……けど、流石にシロちゃんまでついてくるのはどうなんだろう。

アカイさんは……あぁ、もう遠くを見つめて諦めてる……苦労しているんだな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歪みの内部に突入した私たち。しばらく進みつつ、アカイさんからポケモンの情報をもらった。

 

「この歪みの内部に出現したのは、"斬竜"の別名をもつ獣竜種……名は『ディノバルド』。別名にあるとおり、斬ることに特化した巨大な尻尾を持っている。後脚が非常に発達しているため、重厚な見た目からは想像もつかないほどに俊敏に動く。時には我々の頭上を越えるほどの跳躍を見せることもある。そして、剣の如き尻尾……その一振りは防具や武具ごと人間を叩き斬った、などの報告が上がるほどに強力だ」

 

「に、人間を武具ごと……!?」

 

「……やはりあの時、近づかなくて正解だったのです……」

 

ディノバルドを見たというラベン博士と、その護衛として付き添ったというテル先輩が驚いている。……かくいう私も驚いている。そんなポケモンが黒曜の原野を闊歩していて、さらに時間が経てばムラにまで入り込む恐れがあるなんて……。

 

「それだけではない。尻尾には発火性の強い鉄分が含まれており、摩擦熱を蓄積することで尻尾全体が赤熱化し、一撃の威力がさらに増強されるのだ。使い続ければ煤などが付着していき、徐々に切れ味を落とすのだが……ディノバルド自身もその特性を理解している。その際は自らの牙を用いて尻尾を研ぎ、切れ味の回復を図るのだ。ラベン博士が聞いたという"鉄と鉄が擦れる音"とは、ディノバルドが自身の尻尾を研いでいる時の音だろう」

 

「なるほど……武器の手入れは常に欠かさない。ディノバルドというのは、恐ろしさとは裏腹に意外と几帳面なポケモンなのですね」

 

「クックッ……あぁ、そうだな」

 

尻尾を自ら研ぐ……なるほど、そうして常に最高の状態を維持し続けることで、いつ戦闘に身をおいてもいいようにしているのか。

 

「これらの特性を鑑みて、我々が推測するディノバルドのタイプは『ほのお・はがね』の複合タイプ。加えてディノバルドの体質はみず、こおりには弱いがでんき、ドラゴンに強く、ほのおは全く効かない。……覚えたな?」

 

「えぇ、ばっちりです」

 

ここまで情報を貰ったら、下手に負けるわけにはいかないな。……そうして歩き続けていると、ついにその姿が見えてきた。

 

体長は……およそ31m強。

濃赤色の鱗と外殻。

逆巻く炎を想わせる独特な形状の蒼い突起が立ち並ぶ背部。

そして何より……全長の半分近くを占めるほどに長く巨大に、そして攻撃的に発達した剣状の尻尾。

 

斬竜、ディノバルド……こいつが……!

 

「ギャオオオォォォンッ!!」

 

ディノバルドはこちらを見るなり、尻尾を地面に擦り上げながら大きく咆吼した……!なるほど、戦意は十分、やる気満々ってわけか……!

 

「ベリオロス!!」

 

「ガオオオオォォォンッ!!」

 

アカイさんの話を聞く限り、ディノバルドは素早さの高いポケモンだ!なら、タイプ相性は不利だけど機動力と瞬発力に優れたベリオロスでなら対処できるはず!

 

「ショウ、ヒスイの地の神も、我らが地の神々も、その全てが君の動向を、行く末を注視している。これから先の戦い、何か一つでも敗北すればすべてが終焉へとつながるだろう。

……いよいよ試練の幕開けだ。

最初の試練、この地を終焉へと導かんとする者の尖兵の名はディノバルド。

斬竜の剣が希望を断ち切るか、君という刃が絶望を切り裂くか。

さあ、存分に力を振るってくれたまえ!

 

アカイさんの言葉を合図に、ディノバルドは大きく尻尾を振り上げた!

 

 

 

 




次回、斬竜ディノバルド戦

……掲示板回はもうちょっとだけ待ってください。

アカイの手持ち(1回目)
ダイノーズ
パワージェム/ラスターカノン/だいちのちから/10まんボルト

クロバット
エアスラッシュ/クロスポイズン/きゅうけつ/シャドーボール

ジバコイル
10まんボルト/ラスターカノン/てっていこうせん/はかいこうせん

ドンカラス
こごえるかぜ/あくのはどう/つばめがえし/サイコキネシス

マニューラ
こおりのつぶて/つじぎり/どくづき/シザークロス

イャンクック ほのお・ひこう
弱点
四倍:いわ、みず、でんき
二倍:こおり
半減以下:くさ、かくとう、むし、はがね、フェアリー
無効:ほのお、じめん、ドラゴン
等倍:上記以外全て

まさか手持ちモンハンモンスターにクック先生が来るとは誰も思うまいて……。





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メイン任務:黒曜斬り裂く灼熱の刃~死合~

いよいよディノバルドとバトル!

そして、ヤツが……。


推奨BGM

【戦闘!伝説のポケモン】~ポケットモンスター LEGENDS アルセウス~

【4つ首の守り神:ランディア】~星のカービィWii~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尻尾を振り上げ、大きく吠えたディノバルドは高く跳躍するとそのまま縦に尻尾を振り下ろしてきた!

 

「躱して!」

 

「ガオッ!!」

 

私の指示で横へ素早く跳ねたベリオロスは斬撃を回避した!尻尾が叩きつけられた衝撃で土煙が舞い、一瞬だが視界が塞がれる。だが、場所は把握できている!

 

「つじぎり!」

 

「ガオガオッ!」

 

「グルッ……!」

 

ベリオロスはディノバルドの位置を正確に察知し、つじぎりを命中させた!僅かに後退するディノバルドだが、すぐに尻尾を振り回してきた!尻尾は銀色に光っている……マズイ、アイアンテールだ!ベリオロスの弱点タイプ!!

 

「バックステップしつつみずのはどう!」

 

「ガオウッ!」

 

振り抜かれたアイアンテールを回避しつつ、みずのはどうで攻撃する!……だが、ディノバルドは即座に尻尾を盾にして攻撃を防いでしまった……反応が早すぎる……!

 

「グルルル……ディイイィィバー!!」

 

「ギャオッ!!」

 

「……!ベリオロス!!」

 

ディノバルドが尻尾を動かすと同時に、かえんほうしゃを放ってきた!僅かに反応が遅れて攻撃が命中してしまった……!ほのおに押し込まれるも、なんとか踏ん張ってほのおを振り切るベリオロス……うん、まだ大丈夫そうだ。

あの尻尾、すごく厄介だ……武器としてだけでなく、ある程度の攻撃なら盾のように防いでしまえるなんて……。攻防一体の、ディノバルド最大の武器……あの尻尾を攻略しないことには、ディノバルドを倒すことなんてできない……!ディノバルドが苦手で、ベリオロスが使えるみず技を確実に当てていく!

ディノバルドが、尻尾を地面に擦っている……擦るたびに尻尾の表面が燃えるように赤くなっている!マズイ、尻尾が赤熱化する前に止めないと!

 

「こごえるかぜ!」

 

「ガオフゥー!」

 

「ディバースッ!!」

 

「……!ガッ、ウッ……!」

 

「なっ!」

 

動きを封じるためにこごえるかぜを指示したけど、ディノバルドはこごえるかぜをサイコカッターで突破してきた!氷の風を切り裂いて迫り来る念力の刃は、ベリオロスに小さくないダメージを重ねていく……!

 

「ディッバー!」

 

……!今度は尻尾が紫に光っている!あの光、まさかポイズンテール!?

 

「ディーバ!」

 

「躱して!!」

 

「ガオッ!!」

 

よしっ、回避成功!このヒスイ地方にポイズンテールを覚えるポケモンはいないから、すっかり油断していた……!尻尾の形状も相まって、かなり威力が高くなっていそうだ……!

けど、隙ができたぞ!

 

「力強く、インファイト!!」

 

「ガオガオガオーッ!!」

 

「ディガッ……!!」

 

ベリオロスのインファイトによる連続攻撃!はがねタイプのディノバルドには効果は抜群!!

 

「グググ……ディバー!!」

 

「……!今度はドラゴンテール……!回避!!」

 

「ガオウッ!」

 

次に使ってきたのは、以前オドガロン亜種の時に見た赤黒い雷……龍属性エネルギーを纏った尻尾攻撃だった。ドラゴンタイプの尻尾攻撃といえば、ドラゴンテール!ベリオロスとのタイプ相性は等倍だけど……ただでさえタイプ相性で不利なんだから、被弾は少しでも抑える!ベリオロスも軽快なステップで回避してくれた!!

 

「こおりのつぶて!」

 

「ガオガオッ!」

 

「グッ……?」

 

「よしっ……次は素早く、エアスラッシュ!」

 

「ガオーッ!」

 

「ディバ……!」

 

こおりのつぶてをぶつけて気を惹いたあと、エアスラッシュを早業で撃ち込む!こおりのつぶてはほとんどダメージがないが、大して通用しない技を受けたディノバルドは僅かに動きを止めた。その隙を突いて相手が怯みやすいエアスラッシュを素早く放つことで、相手を怯ませつつこちらは連続で行動する!

そして、ここで大本命!!

 

「今だ……!力強く、アクアテール!!」

 

「グオオオ……ガオオオオウッ!!」

 

「ギギャアアアアンッ!?」

 

よしっ、効いてる!大きく仰け反ったディノバルドはかなり苦しそうだ!

 

「畳み掛けて!シャドークロー!!」

 

「ガオッ!ガウガウッ!!」

 

「ギギャアアアアッ!!」

 

シャドークローを構えて突撃するベリオロスに対し、ディノバルドはだいふんげきで迫ってきた!

 

「見極めて!つじぎり!!」

 

「グッ……ガオオッ!!」

 

「ディッ、バッ!?」

 

咄嗟に足を止め、ディノバルドの動きを見切ったベリオロスはすれ違いざまにつじぎりを当てる!足を払った形になったことで、ディノバルドは大きく転倒した!!

 

「力強く、アクアテールッ!!」

 

「ガオオオッ!!」

 

「……!ディノッ!!」

 

「ガッ!?」

 

「……!ベリオロス!」

 

空中からアクアテールで強襲を……というところで素早く立ち上がったディノバルドが尻尾をなぎ払いベリオロスを切り裂いた!今のは……つじぎりの技か!空中で吹っ飛ばされたベリオロスだが、なんなく着地を決めた。

 

「ガブッ!」ギギギギギ

 

ディノバルドは……尻尾を牙で研いでいる。よし、それならこっちも!

 

「はねやすめ!」

 

「フゥー……」

 

「ディノーバアァッ!!」

 

「……!りゅうのはどう!!」

 

「ガオオオウ!!」

 

着地と同時にはねやすめを使うことで動作に無駄なく動くことができる!ディノバルドもりゅうのはどうでこちらの行動を阻害しようとするが、こちらも負けじとりゅうのはどうで迎え撃つ!タイプ一致である分、ベリオロスの方が威力が高い!りゅうのはどう同士のぶつかり合いは、ベリオロスが勝った!そのままディノバルドに命中するが……はがねタイプだから、威力は期待できないだろう。

けど、ディノバルドもだいぶ弱ってきている……そろそろ捕獲できるかな。

 

「サイコカッター!」

 

「ガオッ!ガオッ!」

 

「……!!」

 

ベリオロスのサイコカッターを、ディノバルドは尻尾を盾にして防いだ。ディノバルドが尻尾を元の位置に戻そうとする……ここだ!

 

「今だ!素早く、でんこうせっか!!」

 

「ガオッ!!」

 

「……!?ガッ!」

 

作戦は成功した!尻尾を動かして前を見た時には、既に敵は目の前にいる!突然のことで驚いたディノバルドは硬直してしまい、ベリオロスのでんこうせっかを鼻先にモロに受けたことで怯んだ!

 

「ひょうらんほう!!」

 

「ガオオッ!!」

 

さらに追い打ちで氷嵐砲を撃ち込む!氷の竜巻に囚われたディノバルドは、思わずと行った様子で竜巻から脱出した……今だ!!

 

「ベリオロス!しょうりゅうひょうが!!」

 

「ガァァァァ……オオオオオッ!!」

 

「……ッ!?ギャアアアンッ!!」

 

逃げたディノバルドを追うように、ベリオロスが昇竜氷牙で追撃する!!振り返ったディノバルドはこれを避けられず、技は直撃した!!

ディノバルドは膝を付き、息も絶え絶えといった様子……今なら……!!

 

「よしっ……モンスター――」

 

「……!待てっ、ショウ!時空の歪みが!!」

 

「――え?」

 

モンスターボールを投げようと取り出した直後、テル先輩に声をかけられた私は咄嗟に空を見上げた。そこでは、時空の歪みの中心にある小さな裂け目から、なにやら光が伸びてきていた……!?

 

「あ、あの光は……?」

 

「グルルル……」

 

ベリオロスも、光の線に警戒している。光の線は四本ほどで、その光はディノバルドの胸元まで伸びてくると一瞬にして色が変わった。そして――。

 

「……!!ガッ!?ギッ、ガアアアアアアッ!!」

 

ディノバルドが光に包まれると、急激に様子が変わり始めた……!?

 

「な、なにあれ……!?」

 

「……!ショウくん、気をつけてください!!あれは――」

 

ラベン博士が何か言っている間に、ディノバルドの変化は終わっていた。光が弾けとんだことで顕になったディノバルドは、その姿が大きく変化していた。

 

 

 

 

31m弱だった体長は、およそ3mほど伸びた34mに。

禍々しく朱く輝く双眸。

より鋭利に発達した全身の甲殻。

なにより目を引くのが、先程よりもより巨大化した剣の尾。

臨界間際を思わせるような、赤熱化した喉と尾。

 

 

 

 

「――メガシンカですっ!!」

 

「ギャオ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ン"ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【灼熱の刃】~モンスターハンターX~

【決意を胸に灯して】~モンスターハンターX~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、メガシンカ……!!な、なんて威圧感なの……先程までとは全然違う!

 

「ギャア"ア"ア"ア"ッ!!」

 

「……!避け――」

 

早っ――

 

「ガアアアアッ!?」

 

「ベリオロスッ!!」

 

ディノバルドは先程よりもケタ違いの速さで動き、燃え盛る炎の剣でベリオロスを一閃した!切り裂かれたベリオロスは大きく吹き飛び、崖に突っ込んでいった。それでもなおディノバルドは止まらず、だいふんげきで再びベリオロスに迫っていく!

追い打ちのだいふんげきも直撃……これ以上はマズイッ!!

 

「ガウウウウッ!!」

 

「ベリオロス!素早く、みずのはどう!!」

 

「……!ガオオッ!!」

 

「ギッ……!」

 

「力強く、はねやすめ!!」

 

「フゥー、フゥー……」

 

よしっ、咄嗟の判断が間に合った!流石にみず技は効くらしく、ディノバルドは苦しげな顔でベリオロスから距離を取った。はねやすめも指示したけど……明らかにダメージ量が回復量を上回っている……!

 

「ショウ!あまり近づきすぎるな!」

 

「けど、先輩!ベリオロスが!」

 

あのダメージは、力業はねやすめでも回復しきれない……!ここは直接かいふくのくすりを、ベリオロスに与えるしか……!

 

「ひとりで行くな!おれも行く!!ガチグマ!!」

 

「グーマ!」

 

「おれたちを乗せて、ベリオロスのところへ!!」

 

「……!!ショウくん、テルくん、危険すぎます!!戻ってきてください!」

 

先輩は私の意を汲んでくれ、自身のオヤブンガチグマを繰り出すとその背に乗り込み、同時に私も乗せてくれた。ラベン博士が制止を呼びかけてくれるけど……。

 

「ごめんなさい!」

 

一言だけ謝って、先輩に合図を送る。それと同時にガチグマが走り出し、ディノバルドを避けるように大きく迂回しながらベリオロスの下まで走る!

 

「ディバア"ア"ァ"ッ!!」

 

「ベリオロス!かみくだく!!」

 

「ガオオウッ!!」

 

ディノバルドはほのおのキバで向かってくるのに対し、こちらはかみくだくで対抗する!まだベリオロスの方が身軽なようで、ギリギリまで引きつけてから素早く横ステップを踏んで攻撃を回避!逆にかみくだくでディノバルドの背中に噛み付いた!

……だが、これはディノバルドが激しく暴れたせいですぐに振り落とされてしまった。やっぱり、さっきよりもずっと戦いづらい……!

 

「ガギッ、ギギギ……」ギギギギギ

 

……!また、ディノバルドが尻尾を研いでいる!……しかも、さっきとは違って黒い粉塵のようなものが付着している!なに、あれは……。

 

「ギガアアアァッ!!」

 

「回避!!」

 

「ガオッ!」

 

と、その時だ!ディノバルドはまるで居合い切りのように、研いでいる姿勢から尻尾を振り抜いてきたのだ!すぐに回避を指示したおかげでベリオロスは飛び上がった。よしっ、間に合っ――

 

「ガブッ!」ガチンッ!

 

「なっ――」

 

ディノバルドが、振り回した尻尾を咥え直して――

 

「ベリオ――」

 

「ディバアァァァァァッ!!」

 

「ガッ!?」

 

さっきとは逆回転で、もう一度振り抜いてきた!着地狩りをされる形となったことで、この大回転攻撃がベリオロスに直撃することとなってしまった……!さらに、そのまま尻尾を振り回し、ベリオロスを尻尾ごと崖に向けて叩きつけた!!

 

「ガ、ウ……!」

 

「ベリオロスッ!!」

 

「あっ!ショウッ!!」

 

あと一撃でも貰ったら、ベリオロスが瀕死になってしまう!!私は先輩に止められるのも無視してガチグマから飛び降りると、急いでベリオロスの下まで駆けていった。

 

「ディノ……」

 

「……あ」

 

あと少しでベリオロスに薬が届く……という距離まで近づいたところで、ディノバルドに察知されてしまった……!ディノバルドは一歩、また一歩と私にゆっくり近づいて来る……。

 

「……!!ガ、ガオウ……!」

 

ベリオロスが「逃げろ……!」と言うように吠えている。後ろからは、先輩のガチグマが必死にこっちに向かってくる足音が聞こえる。ディノバルドが大きく尾を振り上げ、私を……獲物をしっかりと捉えている。

 

「ショウーーーーッ!逃げろおおおおっ!!」

 

「ディノバアアアアアアッ!!」

 

一息に尾が振り下ろされ、刃が私に迫って――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカアアアアァァァンッ!!

 

「ショーーーーーウッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死を予感し、思わず目を閉じた私は……なぜか今、浮遊感を覚えている。なぜ……?そう思って、恐る恐る目を開けると……。

 

「……え?」

 

まず、視界に飛び込んできたのは見知った明るいクリーム色の体毛。そして苺大福を想起させるピンク色の毛並み。そして、見慣れない赤い色のリボンだった。

やがて地上に着地すると、すぐにラベン博士やアカイさん、シロちゃんが駆け寄ってきた。……どうやら、彼らの下まで戻ってきたらしい。

 

「ショウくんっ!!なんて無茶なことを!!」

 

「やれやれ……事前知識もなしに今のディノバルドに近づくなど、自殺行為だぞ」

 

「お姉ちゃん、大丈夫?」

 

「あ、うん。……えっと」

 

私が困惑していると、そっと地上に下ろされた。しっかり両足でたった私はゆっくりと振り返り、私をここまで運んだ正体を見据えた。

 

「……ミミ、ロップ……?」

 

「ミミィ」

 

私を運んだのは……オドガロン亜種によって耳を負傷し、片耳を失聴したことで戦線離脱したはずのミミロップだった。ど、どうしてここに……?それに……。

 

「ミミロップ、それ……」

 

「ミ?」

 

ミミロップは、なぜか両耳を畳んだ状態で赤いリボンで耳を結んでいる状態だった。……いや、健全な方の耳まで結んでしまって……これじゃあ、何も聞こえないんじゃ……?

 

「……おーい!!」

 

「え?」

 

と、今度は遠くから声がして振り返ると……なぜか、ヒナツさんがこっちに向かって走ってきていた。ヒナツさんが合流すると同時に、テル先輩も戻ってきた。

 

「ショウ!無事か!?」

 

「……なんとか。ミミロップが助けてくれました」

 

「そうか、ミミロップが……え、ミミロップ?なんでここに!?」

 

「はぁ、はぁ……それは、あたしが説明するよ」

 

「ヒナツさん?」

 

一瞬、ベリオロスの方を気にする。ディノバルドは私を見失ったのか、あちこちをキョロキョロと探しているようだ。ベリオロスは……動けないふりをして、隙を伺っている。早く戻ってあげたほうが良さそうだ……けど、その前にどうしてもミミロップのことを聞いておかないと……!

 

「ヒナツさん、どうしてミミロップが……」

 

「……ミミロップのこと、あたしも聞いてたんだよ。耳を怪我して聴こえなくなったせいで、戦えなくなったって。だから、あたし、心配で……時間が空いた時に、ミミロップの様子を見に行ってたんだ。

ミミロップ……ショウの力になれないって、影でずっと泣いてたんだ。それで……あたしはダメ元で、ショウのポケモンたちに相談したんだよ。そしたらさ、リオルやルカリオたちが協力してくれたんだ!」

 

「……!!」

 

そうか!放牧場でリオルやルカリオたちの姿が見えなかったのは……!

 

「……けど、彼らの教え方って、こう……感覚的なものだから、ミミロップが理解するには難しくて……。どうしようって悩んでたんだけど……実はあたし、思い出したことがあったんだ!ギンガ団の畑作隊に、ルカリオを相棒にしている人がいたなぁ、って!それでその人……ハクさんにも協力してもらったんだ!

そしたらさ、そしたらさ……!なんと!ミミロップが波導を使えるようになったんだ!!」

 

「……!?ほ、本当に……?」

 

「ミミ!」

 

私がミミロップに尋ねると、ミミロップは肯定するようにその手に青い光……波導の光を灯した。

 

「凄い……凄いよ、ミミロップ!!」

 

「波導の力が使えるようになったことで耳が聞こえなくても周りの様子を感知できるようになったし……なにより、直接声で指示しなくてもミミロップがショウの波導から言いたいこととか全部わかるようになったから、すごく便利になったよ!だから、耳が使えなくても大丈夫!ついでに両耳とも折りたたんじゃえって思って、あたしが髪結いの技術を駆使して耳を結わえたんだ」

 

「ミッミィ♪」

 

それで、耳の赤いリボン……ミミロップは「どう?」と言いたげに耳を持ち上げている。

……うん、可愛いよミミロップ。すごく可愛い。私の考えを、波導を読み取ったのかミミロップは嬉しそうに笑った。

 

「凄いですよ……ミミロップは本来、波導を使えないはずなのに……!」

 

「……相棒となる人間の想いに答えようとする気概……その気概が、ミミロップを新たな境地へと導いたのだろう。素晴らしい……あぁ、素晴らしいな!我が地方にいるライダーたちを思い出すよ」

 

アカイさんの言葉に、私はしっかりと頷いた。ミミロップが、私の力になるために得た、新しい力……その力を、存分に活かす時だ!

 

「ギギャアアアアン!!」

 

……!ディノバルドがこっちに気がついた……すごい勢いで走ってくる……!!

 

「……行ける?ミミロップ」

 

「ミッ!」

 

「気をつけろ、ショウ。今のディノバルドは普通ではない。

メガディノバルド……またの名を『燼滅刃ディノバルド』!黒い粉塵には爆破する特性がある!奴の間合いに気をつけるんだ!」

 

「わかりました、アカイさん!行こう、ミミロップ!!」

 

「ミッミィッ!!」

 

ミミロップへの指示は、心の中で念じるだけでいい。ミミロップが波導を通して、私の思考を読んでくれる……だったら、こういうことだってできるはずだ!!

 

「ベリオロス!みずのはどう!!(ミミロップ!素早く、マッハパンチ!!)」

 

「……!ガオオン!!」

 

「ミッ……ミィッ!!」

 

「!?!?!?!?」

 

口頭でベリオロスに、思考でミミロップに同時に指示を出す!!動けないふりをしていたベリオロスも素早く立ち上がり、みずのはどうを放つ……それと同時に、ミミロップが早業マッハパンチでディノバルドへ一気に肉薄した!

突然の二匹同時攻撃に、ディノバルドは混乱しているようだ!ミミロップのマッハパンチが鼻先に命中し怯むと同時に、背後からみずのはどうをぶつけられさらに怯んだ!

 

「ギギャア"ア"ア"ア"ン"ッ!!」

 

「ミッ!ミッ!ミッ!ミッ!」

 

ディノバルドは、眼前で跳ね回るミミロップに尻尾を振り回すが、波導の力を得たミミロップは単調になり始めたディノバルドの斬撃を軽快に、まるで踊るようにして回避している!!

 

「ほぅ……見事な動きだ。まるで舞い踊るかのように攻撃を避けるとは……極み個体ほどではないが、力を得て強くなったようだな。

今のミミロップは、【(まい)(うさぎ)】と呼ぶに相応しい」

 

「【舞兎】?」

 

「いわゆる二つ名さ。我が地方には、極み個体の他に強化個体への呼称として、【二つ名】というものが存在する。それに肖っただけのことだ」

 

「……いえ、素敵な名前だなと思ったんです。ありがとうございます」

 

「……そうか」

 

舞兎ミミロップ】……うん、今のミミロップに似合う素敵な名前だ。今のミミロップなら、波導技だって使いこなせる!!

 

「ベリオロス!ふぶき!!(ミミロップ!みずのはどう!!)」

 

「ガオオオオンッ!!」

 

「ミッミー……ロォッ!!」

 

「ディバッ……!ギャオウッ!?」

 

ベリオロスのふぶきで動きを止め、さらにふぶきが止んだ直後にミミロップのみずのはどうが直撃!……うん、やっぱりそうだ!ミミロップのみずのはどう、明らかに威力が上がっている!!

 

「ギギャア"ア"ア"ア"ッ!!」

 

「ガウッ……!

 

ディノバルドは再び灼熱に燃える尻尾を振りかざし、ベリオロスへと一気に振り下ろす。ベリオロスは斬撃は回避したけれど、斬撃の衝撃で発生した爆破は避けきれずに被弾した……!

さらにそのままの勢いで大回転し、ミミロップにも刃を向けてくる!だが……!

 

「ミイィッ!!」

 

「ディバッ!?」

 

なんと!ミミロップは攻撃を回避するばかりか、赤熱化している尻尾の上に乗ってしまった!手や足先から波導の力を出すことで、熱を遮断しているのか……!

ディノバルドは思いもよらない回避法に驚き、動きを止めた……今だ!!

 

「ベリオロス!力強く、ひょうらんほう!!(ミミロップ!力強く、はどうだん!!)」

 

「ガオオオオオオオンッ!!」

 

「ミッミィーーーーッ!!」

 

ミミロップがディノバルドの尻尾から跳躍すると同時に、ベリオロスが力業氷嵐砲を放って動きを止めた!ミミロップは両手に波導の力を集めてはどうだんを形成すると、それをオーバーヘッドキックの要領で蹴飛ばして打ち出した!

 

「ギギャアアアアアンッ!?」

 

激しい大爆発が起こり、ディノバルドの悲鳴が木霊する。やがて煙が晴れると……ディノバルドが倒れている!目を回して倒れるディノバルドが再び光に包まれると、元の姿に戻った……よしっ!!

 

「モンスターボール!!」

 

私は倒れたディノバルドに向かってボールを投げた!!ボールはディノバルドをしっかりと格納すると、僅かな抵抗の後に花火を打ち上げた。……やった!

 

「ディノバルド!捕獲完了!!」

 

捕獲できた!!ディノバルドのボールを拾いに近づくと、ボールのすぐそばに何かが落ちていた。

 

「……これ、メガストーン?」

 

模様が濃赤色、周りが蒼色のメガストーン……色合い的にどう考えてもディノバルドのメガストーンだ。私がボールとメガストーンを持ったまま突っ立っていると、みんなが一斉に集まってきた。

 

「やったな!ショウ!!」

 

「凄い凄い!凄いですよ!さすがはショウくんなのです!!」

 

「あぁ、見事だった。途中、危ない点もあったが……まぁ、今はそれも抜きにしていいだろう」

 

「お姉ちゃん、おめでとう!」

 

「やったね、ショウ!ミミロップ!」

 

「みんな……ありがとう!」

 

私がみんなにお礼を言うと同時に、時空の歪みが消滅した……。

 

「やはり、巨大ポケモンが時空の歪みに対する楔になっているのだろう。彼らを捕獲するなり始末するなりして時空の歪み内部から排除しなければ、今回の異変は解決しないようだな」

 

「……大丈夫です。全てのポケモンを捕まえてみせますよ。ですから、始末なんて物騒なことは言わないでくださいね」

 

「……フッ。あぁ、わかったよ」

 

アカイさんは肩をすくめながら小さく笑った。それから、アカイさんとシロちゃんは他の地域の歪みを見てくると言って、そのまま立ち去っていった。

 

「ミミロップ、ありがとう。あなたが来てくれたおかげで、無事に勝てたよ」

 

「ミミィ」

 

「……改めて宜しくね、ミミロップ!」

 

「ミッミィ~♪」

 

「ガオオンッ!」

 

ベリオロスも、嬉しそうに声を上げている。私たちは次の目的地を定めるべく、一路コトブキムラを目指して歩いて――

 

「……ガオ?」

 

「……?ベリオロス?」

 

ベリオロスをボールに戻そうとしたところ、何かに気づいたかのように踵を返して歩いて行った。ベリオロスが立ち止まったのを見てその場に近づくと……人が倒れている……!?

なんというか、変わった格好の人だ……全体的に茶と黒の色の鋼鉄製の鎧を纏っていて、アクセントなのか所々に赤い線が走っている。すぐそばには身の丈を優に超えるでっかい刀まで落ちている……。

 

「ショウくん、どうしたのですか?」

 

「あ、博士……いえ、人が倒れていて……」

 

「うわ、なんだこの人……団長みたいな鎧を着ているぞ」

 

「うーん……もしかすると、時空の歪みが原因かもしれませんね……。本人から話を聞いてみないことにはなんとも……」

 

「……とりあえず、連れて帰りますね。お願い、ベリオロス」

 

「ガオガオ」

 

ベリオロスは器用に人と刀の両方を咥えると、そのまま歩き始めた。……あの長い牙を避けながら、普通に咥えて行っちゃった。ベリオロスって器用なんだね。

私たちは改めて、コトブキムラヘ帰還していった。

 

 

 

 

▼ミミロップは 【舞兎】へと 成長した!

 

 

 

 




そう!ヤツ(ミミロップ)が帰ってくる!!

ディノバルドの詳細はこちら

ディノバルド
ほのお/はがね
弱点 火:× 水:◎ 雷:△ 氷:○ 龍:△
四倍:みず、じめん
二倍:かくとう
半減以下:ノーマル、でんき、くさ、こおり、ひこう、エスパー、むし、ドラゴン、はがね、フェアリー
効果なし:ほのお、どく
等倍:上記以外全て

モンハンパゥワーで耐性が一個増えてる……こおりも苦手だけどほのおとはがねの二タイプで強引に半減しているし。
その代わり二倍弱点のみずが四倍に。結構バランス取れてるのかな。

二つ名ミミロップの詳細はまた次回の前書きにでも書きます!


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【情報量が】我らモンハン部異世界支部【多すぎぃ!!】

では、お約束通りの一夜漬け設定を喰らえぇ!

二つ名個体
生物学上は通常の個体と同種のようだが戦闘能力が格段に向上しており、さらに通常の個体と比較すると性質・形態も大きく異なっている特殊な個体。
極み個体と比較すると通常個体からの逸脱具合は比較的大人しめで大技を持たないが、普通ではありえない能力・技を獲得していることが多い。
現状、確認されている個体は【舞兎】のみだが、今後さらなる個体が確認されないとも限られないので要注意されたし。

個体一覧
ミミロップ
二つ名は【舞兎(まいうさぎ)】。自慢の聴力を失った代わりに別の能力でこれを補おうとした結果、波導能力を獲得した。
通常のミミロップは波導技は「みずのはどう」しか覚えないが、この成長に伴って他の波導技も使えるようになった。また、波動を通じて相棒となる人間との意思疎通を可能としているため、声を発することなく指示を出すことが可能。他、聴力を除く他の五感を波動能力で高めていると思われる。






 

1:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

狩友のみんなー!元気ー?氷室剣介です!

 

2:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

のっけから喧嘩売りに行くスタイルはいい加減に直せ

 

3:空の王者 ID:MH2nddosHr8

とうとう現実だけでなくヴァーチャルの世界にまで……

 

4:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

骨は拾っておくぞ

 

5:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

肉は食っておくぞ

 

6:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

誰か一人でもいいから無事を祈れよ!

あと食うな!!

 

7:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さて、状況の整理と行こうか

今、我々はコトブキムラにいる

 

8:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ウォロをボコボコにしたあと、全てのポケモンを捕獲するべくコピペロス+αをすべて捕獲した

その後、創造神と対面したショウちゃんはアルセウスに元の世界に戻せるのかを聞いてみたけど……

 

9:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まさかのここで、ミラボレアス……黒龍乱入とは

 

10:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あの時は、創造神がなんとかゴリ押して退けてくれたが……正直、生きた心地がしなかったな

 

11:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ボレアスと目が合っただけでショウちゃん、めっちゃ苦しそうだったけど……大丈夫か、あれ?

 

12:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あのあとは、普通にコトブキムラまで帰ってきたからなぁ……大丈夫だとは思いたいが

 

13:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……いや、実は俺、ショウちゃんが全然大丈夫じゃない可能性に一つ、心当たりがある

 

14:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なにかあったっけ!?

 

15:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……ミラボレアスの素材の一つに、「黒龍の邪眼」と呼ばれる物があってな

 

16:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あ"、思い出した……たしか、黒龍の魂がこもっているとかなんとか

 

17:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それか!どっかで見たけど、武具となっても心臓を直に握りつぶすような殺気を放ってるとか言ってたような……

 

18:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺はネットで見たわ、それ

視線に耐えられずに狂死する者もいるとか書いてあった気がするぞ

 

19:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そうだったな……だがな、重要なのはそれらの説明はあくまで「剥ぎ取られた素材」に対する解説なんだよ

ショウちゃんがバッチリ目があったのは、素材になっていない生きた邪眼……ガチで呪われていてもおかしくない

 

20:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いやいやまさか……でも、ちょっとありえそうなところがミラボレアスたるところよな……

 

21:空の王者 ID:MH2nddosHr8

プレイヤーの分身たるハンターはメンタル・フィジカルともに化け物だから全然問題はないけど……

 

22:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ショウちゃんはただの十代半ばの女の子ぞ、プレイヤーハンターと比較するなんてとんでもない

 

23:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あー……呪いの件、ありえるわコレ

 

24:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……さて、次の議題に移ろうか

 

25:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ヒスイの各地に発生した時空の歪みか

 

26:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

これはまぁ……十中八九、ルーツの仕業だろう

大方、ショウちゃんを試してやろうって魂胆だな

 

27:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それにしたってX四天王とか殺意が高すぎない?しかもディノバルドに至ってはメガシンカって形で二つ名個体に変身するし

こりゃあ、ほかの四天王もメガシンカで二つ名個体になるぞ

 

28:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だが、メガシンカならこっちにだっているぞ

 

29:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺と光輝のことか?

 

30:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

とりま、黒炎王と金雷公が確定しているなら戦力として申し分はなかろうよ

 

31:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それは、まあ

 

32:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それに、ディノバルド捕獲後にディノバルドのメガストーンも入手できた

戦力も増強できたし、悪いことではない

 

33:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ところで、メガストーンの名前ってどうなんの?

「○○ナイト」って名前なら、どういう風に統一すんやろ

 

34:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

防具名を参考にしたらどうだ?

リオレウス→レウスナイト

ジンオウガ→ジンオウナイト

ディノバルド→ディノバルナイト

 

35:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

時空の歪みの事前情報から、残りの三箇所にいるのは

 

紅蓮の湿地:泡を吐く狐→タマミツネ

 

群青の海岸:鶏冠の電刃→ライゼクス

 

純白の凍土:ダイオウドウ+マンムー=ガムート

 

これは確定だろう

 

36:空の王者 ID:MH2nddosHr8

メガストーンの名前も

タマミツネ→ミツネナイト

ライゼクス→ゼクスナイト

ガムート→ガムートナイト

 

これで決まりだな

 

37:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ディノバルドだけ微妙に違うんだが

 

38:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、防具名が「ディノ」だけだからな、ポケモンっぽくするなら「ディノバル」がええやろ

 

39:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

光輝と焔も、いつかはメガシンカしないとな……特に、向こうがメガシンカするってわかっているなら、尚更な

 

40:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……さて、次の話題だが

 

41:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

クック先生きちゃあああああああああ!!

 

42:空の王者 ID:MH2nddosHr8

せんせええええええぇぇぇぇぇ!!

 

43:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

イヤッッホォォォオオォオウ!!

 

44:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さすがはクック大先生、かくいう俺も大興奮だったわ

 

45:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺も柄にもなくはしゃいでしまった

いやぁ、クック先生は想定外だってば、歓喜に震えたぜ

 

46:空の王者 ID:MH2nddosHr8

やっぱりね、クック先生を超えずして先には進めねぇよ

クック先生を知らずしてハンターは名乗れねぇよ

全人類が知るべきだ、イャンクックという一つの壁を

 

47:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そして安定のライチュウよ、しっかり弱点突いてんねえ

 

48:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

反応を見た感じドラゴンタイプじゃなかったな、ひこうタイプか

あとは、武器属性的にほのおかな

 

49:空の王者 ID:MH2nddosHr8

間違いないな

 

50:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そしてディノバルド戦!MVPは……

 

51:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ワクワク((o(。>ω<。)o))

 

52:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ミミロップ!!

 

53:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

だろーね!知ってたわチクショーがっ!!

 

54:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

かっこよすぎだろミミロップ!まさか波導を習得するとは思わなんだわ

 

55:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

加えて、バルカンから二つ名贈呈だぜ?舞兎、かっこよすぎたわ

 

56:空の王者 ID:MH2nddosHr8

チャームポイントは赤いリボン!天眼ミツネみたいな成長を見せてくれるとはな!

もしかしたら、ほかのポケモンも場合によっては可能性が十分あるな

 

57:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ねーねー、俺も頑張ったんだけどー?

ディノバルドのほのお技でめちゃくちゃボコられてすっげぇ痛かったんだけど、めっちゃ頑張ったんだよー?誰か褒めろよー

 

58:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

 

59:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

 

60:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

 

61:空の王者 ID:MH2nddosHr8

 

62:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

褒めろっつってんだルルォ!?扱いが雑すぎるんだよぉ!!

 

63:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いやぁ……さすがに舞兎ミミロップの後だと、ねぇ?

 

64:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

くっそぅ……いいもんいいもん、ショウちゃんに後でたっぷり褒めてもらうから

 

65:空の王者 ID:MH2nddosHr8

んじゃ、次の議題!

 

66:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

帰る前に剣介が拾ったフルクシャハンターのことだな

 

67:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

地雷?地雷?

 

68:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……まぁ、クシャナ一式に太刀装備だから、そう思わずにはいられないのも無理ないがww

 

69:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

しっかし、「龍刀【朧火】」とか随分と古いな、最後に見たのはいつだっけか……

 

70:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

MH2だな

それ以降の最新作だとラオ亜種がいない作品は【火焔】で打ち止めになるからな

 

71:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

レトロモンハン配信以来だよな

太刀厨の俺としては貴重な龍属性太刀ということもあって欠かせない必需品だった

 

72:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あー、やってたなぁ、モンハンRISE SUNBREAK配信記念にって言って、初代からMHW:Ibまでの村及び集会所クエ全部やるっていうアレ

……めっちゃ時間かかってさ、なかなかに苦行だったな

 

73:空の王者 ID:MH2nddosHr8

過去に遡れば遡るほど、不便の嵐よ

そう思うと、最近って本当に狩りが楽になったよな、開発陣の努力の賜物よ

 

74:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おかげさまで助かっとりますわ

 

75:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……んで、ハンターを回収したわけだが……オトモアイルー、おらんかったな

 

76:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あ、それな、俺も気になっとった

 

77:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

オトモアイルーがおるかおらんかで、そのハンターの年代……というより、このハンターがどのシリーズと縁が深いかわかるわ

 

78:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

オトモアイルーの導入がMHP2からで、ハンターの武器が「龍刀【朧火】」だったこと、この龍刀が太刀に分類されていることを加味して……ハンターはMH2のハンターと思われる

……というか、ラオ亜種の参戦作品がかなり限られているからオトモアイルーがいるかいないか、武器の龍刀の分類が大剣か太刀かで、だいぶわかりやすいな

 

79:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ラオ亜種が参戦=MHG、MHP、MH2、MHP2、MHP2G、MHFのいずれか

オトモがいない=MHP2より古い=MHG、MHP、MH2のいずれか

武器が太刀分類=MH2以降の作品=MH2

 

なるほど、そういう考え方か

 

80:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……あれ?それじゃあ、このハンターは……!?

 

81:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

剣介の想像通りだろうな……

 

 

 

 

このハンターはMH4Gのドンドルマで聞かされた"ミラボレアスを倒したドンドルマの英雄"であるMH2の主人公その人だろう

 

 

82:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ふおおぉぉおぉおおおおっ!!

 

83:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やっべ起きたらサイン貰わなきゃ

 

84:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

で、伝説だ……!本物の伝説がここにある!!

 

85:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、肝心のハンターが現役時代から来たのか、後年作品の時代から来たのかは定かではないが……

 

86:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そんなちいせえことはどうでもいいんだ流静!!

問題は、プレイヤーにして後出作品にその名が語られたハンターが来たって事実なんだから!!

 

87:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……それもそうだな!!

 

88:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ただ……ハンターを拾って既に数日が経過、現在は次なる目的地の選定中だが肝心のハンターがいまだ目覚めず……

 

89:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

防具を脱いだ姿をまだ見てないから、男か女かも判断つかんし……

 

90:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……目覚めていきなり斬られたりせんよな?

 

91:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お、大人しくしてればワンチャン……

 

92:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

次の目的地はどこになるんだろうな

 

93:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

状況の整理か?ちょっと待ってろ……よしっ、できた

 

紅蓮の湿地→試練の中洲から徐々に歪みが巨大化、集落侵食の恐れは今のところなし

群青の海岸→現在発生中の歪みの中で最大規模、こちらも徐々に巨大化中

純白の凍土→集落は既に侵食済み&歪み巨大化中、ガムートに動きはないが要警戒

 

こんなところだな

 

94:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

純白の凍土は出てきたのが比較的大人しいガムートでよかった

これが別のモンスターだったら集落崩壊待ったなしだったな

 

95:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ポケモンルールに則って名前を六文字以内に縛って考えると……

フルフル、セルレギオス、テツカブラ、ザボアザギル、バゼルギウスあたりか

その辺だったらやばかった

 

96:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

他にもおるけど……まぁ、純白の凍土の地形を考えればその辺が妥当か

 

97:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

紅蓮の湿地はまだいいが……群青の海岸も結構やばいな

 

98:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

規模だけなら一番でかいんだろ?近くには古の隠れ里もあるし紅蓮の湿地とも隣近所で、実は結構やばいのでは?

 

99:空の王者 ID:MH2nddosHr8

しかも、歪みの中にはライゼクス……あんにゃろうはリオレウスのプライドにかけて俺がぶっ倒す

 

100:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それを言うなら、俺だってミツネとジンオウの因縁、ここで終わらせてやんよ

 

101:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

どうせそいつらだってメガシンカするんだ、お前らも派手にメガシンカを見せつけてやれよ!

 

102:空の王者 ID:MH2nddosHr8

首をフルフルにして待ってな

 

103:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、そこまで長くなったらいっそ気色悪いわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

214:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……さて、そんなこんなで

 

215:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いやぁwwwタマミツネは強敵でしたねぇwww

 

216:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんかさらっと流すように話してるけど、実際しんどそうだったが?

 

217:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

しんどいに決まってんだろが!だってあいつ思ったよりスッゲーはえぇもん!

 

218:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……だが、それ以上に驚いたことがある

 

219:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まさかジャギィ系ドス鳥竜三種が巻き込まれていたとは

 

220:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おかげで無駄にバトルを強いられることとなったが……まぁ、勝てただけでも良かったじゃん

 

221:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ただ、明らかに慣れてるショウちゃんはともかく、援軍二人が結構手こずってたよな

 

222:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あのメンツだと一番相手しづらいであろうドスフロギィをショウちゃんが請け負ったのに……

 

223:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そして、その後のミツネ戦……の、後のルーツ戦

 

224:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

頼むからさも当たり前のようにキリンに乗ってこないでくれよ……そいつは乗り物じゃないんだってば……

 

225:空の王者 ID:MH2nddosHr8

キリンのやつ、気まずそうに目を逸らしたり頑張って祖龍に抗議してみたりで必死に抵抗してたけどwwww

 

226:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

祖龍の圧によって普通に黙らされてたなwwwwww

 

227:空の王者 ID:MH2nddosHr8

んで、ルーツとのポケモンバトルだが……レジェアル未実装600族ドラゴンパとか、前より鬼畜度増してないか?

 

228:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ガブリアスを置いてきたのが痛かったな……おかげで結構、苦戦した

 

229:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いやぁ、極みダイケンキと舞兎ミミロップ様様ですよ!こりゃあ、足向けて寝れねぇわ

 

230:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

極みダイケンキの強さも当然だが、ミミロップの波導技がすごい助かるわ

 

231:空の王者 ID:MH2nddosHr8

みず、あく、りゅう、そしてはどうだん……全部使いこなせるんだから、大したもんだよ

 

232:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

波導獲得によって特攻がかなり上昇したようだな……はどうだんに至っては、本家ルカリオのそれと遜色ない威力だったな

 

233:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そのおかげで勝てたようなもんだしな

 

234:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

はぁ、でも全部が無事に終わってあとは帰るだけ……おや?

 

235:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なんだ……ベースキャンプに着くなり、ギンガ団員が駆けてきて……

 

236:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……っ、なにっ!?

 

237:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

が、ガブリアスが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暴走!?

 

 

 

 

 




今回はかなり短め。ガブリアスの身に一体何が……?
この投稿後、水曜日を休んで土曜日投稿、という形で異変解決まで続けます!
ご理解賜りますようお願い申し上げます(定型文)


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メイン任務:紅蓮に咲く妖艶なる舞 第一演目~鳥竜・三竜・簒奪者~

大変遅れて申し訳ない……!
三匹分の戦闘描写を考えたり寝落ちしたりしてたらすっかりこんな時間……!!

ここから一週間まるまる使って、次のモンスターとの戦闘をしっかり書いていくぜ……!


黒曜の原野、紅蓮の湿地、群青の海岸、純白の凍土……四ヶ所同時に出現した時空の歪みは、徐々に広域化するという現象を起こし始めた。これらの事態を解決するため、一先ず黒曜の原野に出現した時空の歪みを調査・解決するために行動を起こした。私とテル先輩とラベン博士は、向かった先で出会ったアカイさんから歪み内部に出現したポケモン……ディノバルドの情報を貰い、実際に戦闘した。

……強かった。正直、ベリオロス一体で勝てる可能性はとても低かったかもしれない。タイプ相性で不利なことは言わずもがな、ディノバルドがメガシンカしてメガディノバルド……燼滅刃ディノバルドへ変化したことも大きかった。けど、そこは耳を負傷して戦線離脱していたミミロップが波導を獲得した【舞兎ミミロップ】へと成長して駆けつけてくれたおかげで無事に勝利!ディノバルドを捕獲することに成功した!

それと、もう一つ朗報がある。それは、黒曜の原野の時空の歪みが消滅すると同時に、他の地域の時空の歪みの広域化現象が収まったというものだ。……といっても、各組織の団長たちは、「おそらくは一時的なものだろう」という共通の認識であり、再び広域化が進むようなら早急に解決しなければならなくなるだろうと結論づけた。

ただ、セキさんの提案で広域化現象が停滞している間は私にも休みが与えられたのはありがたい話だ。時空の歪みと、その内部に出現した巨大ポケモンの調査……めちゃくちゃしんどいことは言うまでもない。普通のポケモン調査は一旦お預け……そして、これから連続して遭遇することになる巨大ポケモンたちの調査……事態が悪化しない限りは、私も休めるうちに休んでおけ、とのことらしい。

 

そして、今は放牧場にてディノバルドの調査中である。ラベン博士が尻尾に含まれているという鉄分を採取しようと奮闘していて、私がポケモンを使ってそのお手伝いをしている、というわけだ。ディノバルドが意外にも大人しくしてくれているおかげで、調査は進んでいるみたいだ。

 

「やあ、ショウ」

 

「アカイさん」

 

私がラベン博士の作業をぼんやりと眺めていると、背後からアカイさんが声をかけてくれた。私は座った姿勢のまま上体を逸らしてアカイさんの顔を下から覗き込むと、アカイさんも上から見下ろすように私の顔を覗き込んだ。

 

「ディノバルドの調査は順調かね?」

 

「えぇ、おかげさまで。アカイさんが情報提供をしてくれるからですね」

 

「ははっ、私程度の知識でよければいくらでも。……しかし、意外と見物人が多いな」

 

「やっぱり普通のポケモンよりずっと大きいですし、何より珍しいですから」

 

そう、アカイさんの言うとおり最近は巨大ポケモンを見に来る人が増えたのだ。特にディノバルドが加わってからは大人の人が見に来る頻度が増えてきていて、大人も子供もディノバルドの尻尾を見て驚きと興奮冷めやらぬといった反応を見せてくれる。

 

「まぁ、ディノバルドの尻尾は一種の芸術品とも言える代物だ。無理もないな」

 

「ですね」

 

ディノバルドが尻尾を研ぐために噛み付くと、周囲からはどよめきが上がった。うーん、この反応……やっぱり生態が他のポケモンと一線を画しているから、しょうがないんだけどね。

 

「次は何処へ行くのかね」

 

「それが、まだ決めあぐねていて……。どこの地域も、みんな等しく危機的状況であるので、逆にどこから行けば良いのやら……と」

 

「ああ、なるほどな。……ただ、最終的に決定を下すのは君自身だ。しっかりと考えてから、決断したまえ」

 

「はい」

 

……そういえば、アカイさんに歪みの中で拾った人のことを相談したほうが良いだろうか。

ディノバルドを捕獲したあと、時空の歪みの中に人が倒れているのを発見した。幸いにして大きな怪我はなく(むしろ無傷)、ベリオロスに頼んで運んでもらったあとはデンボク団長とシマボシ隊長に相談をした。その結果、一先ずは私が宿泊している寮の空き部屋に放り込んでおくこととなった。部屋に運んだあとはテル先輩、ヒナツさん、ノボリさんに協力してもらいながらその人の鎧を脱がせて、今は布団に寝かせて安静にしている。

鎧を脱がせたところ、男性だった。歳のほどは、見た目はセキさんと同じか、少し上くらいの印象。というか、身長が175cmもあったので体格だけで年齢の判断がすごい難しかったというのもある。そして、その人が持っていた武器……明らかに男性よりも全長が大きい刀。まるで自身よりも巨大な生物を相手取ることを前提にしたような作りとサイズ……私たちがよく知るポケモンが相手では、あの大きさは過剰威力だ。

むしろ……そう、それこそ……ジンオウガたちのような巨大ポケモンを相手にするような……。

 

「おーい、ショウ!」

 

「あ、先輩」

 

「む?」

 

遠くから声をかけられ振り返ると、先輩が走ってきていた。こっちに近づいてきた先輩は……なぜか一瞬、アカイさんに対して微妙そうな表情を向けたあと、私の方へ顔を向けた。

 

「ショウ、大変だ!また時空の歪みの広域化が始まったんだ!」

 

「……!では、すぐにでも?」

 

「あぁ、緊急会議が始まる!もうセキさんもカイさんも集まってるよ」

 

「わかりました、すぐに行きます」

 

「俺はラベン博士に声をかけてから行くから、ショウは先に行っててくれ!」

 

「はい!アカイさん、私はこれにて……」

 

「まて、ショウ。可能ならばその会議、私も出席して構わないだろうか」

 

「え?」

 

突然の提案に、私もテル先輩も足を止めてアカイさんの方へと見やる。

 

「知ってのとおり、私は歪みの内部に出現した巨大ポケモンの情報を持っている。多少なりとも、役に立つとは自負しているよ」

 

「……それは、ありがたいんですが……いいんですか?」

 

「あぁ。……ただ、そちらの上層部が認めてくれるか否かは、また話が変わってくるがね。少なくとも、私自身には協力の意思があるということを理解して欲しい」

 

……そういえば、黒曜の原野の歪みの後、アカイさんとシロちゃんはほかの地域の歪みを見に行ったんだっけか。もしかしたら、私が次に向かうと定めた場所を、あらかじめ見に行ってくれているかもしれない。

 

「……私が掛け合ってみます。まぁ、嫌とは言わせませんけど」

 

「クク……君は時々、恐ろしいくらいに頑固になるな」

 

絶対に嫌とは言わせない。だって、私たちにとって未知の存在とも言えるポケモンたちの情報を唯一持っているんだから。それも、本人の地元に生息するポケモンとくれば、尚更だ。私は一足先に本部に向かい、アカイさんのことを団長や隊長たちに話すことした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの」

 

「うん?」

 

「ショウに変なことしてないですよね?」

 

「(おやおや……)フッ……さて、君はどう思うかね?」

 

「なっ!」

 

「彼女は英雄となるだろう。その時、隣に立つのは凡夫か、はたまた勇者か……君はどちらだろうね?」

 

「……っ!!」

 

「では、失礼するよ。博士に一言、よろしく」

 

「……クソッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

本部に到着して、早速アカイさんのことを団長と隊長に話した。隊長は以前にも話したので問題なかったが、問題は団長。受け入れてもらえるか、はたまた難癖つけてくるか……色々と危惧していたけど、あっさりと受け入れてもらえたのは意外だった。まぁ、それだけデンボク団長も、ジンオウガたちと同格のポケモンが複数現れる事態を重く見ているということだろう。

しばらくしてテル先輩と、テル先輩に呼ばれたラベン博士、そしてアカイさんが調査隊室に姿を現した。

 

「貴殿がアカイ殿か」

 

「お初にお目にかかる。ギンガ団団長、デンボク殿とお見受けする。我が名はアカイ。本日はお招きに預かり恐悦至極」

 

「うむ。我がギンガ団団長、デンボクである。アカイ殿の話は、こちらの調査隊隊員のショウより伺っている。なんでも、時空の歪み内部に出現したポケモンについて一日之長があるのだとか」

 

「アレらは全て、我が故郷にて広く知られているポケモン故。当然だが、私もまたよく知るところにある。それが他の地方に現れるばかりか、そこに住む者たちを脅かしているとあっては、看過できぬ。団長殿、微力ながら我が知識、活用していただきたい」

 

「ありがたい、アカイ殿。是非に協力を申し込みたいところだ。アカイ殿にはこちらのショウにお力添えを願いたい。何卒宜しく頼む」

 

「承知した」

 

……なんとか丸く収まったようだ。

しかし、なんというか、こう……アカイさんってシロちゃんに振り回されたり圧を掛けられたり、今までちょっと情けないところしか見てなかったから、こうしてちゃんと大人な会話をしている所を見ると「やっぱり大人なんだなぁ」と思う。……ん?あれ?

 

「あれ……アカイさん、シロちゃんは?」

 

「彼女か?今は別行動を取っているが……彼女には優秀なボディガードいるのでね。私は今回、子守はお役御免というわけだ」

 

それはわかるんですが……なんでそんなにイキイキとしてるんですか。むしろそこは、シロちゃんの身を案じるところでは……?

 

「あんたが、カイが言ってたアカイの旦那か。俺はセキ!コンゴウ団の団長だ」

 

「あぁ、よろしく頼むよセキ殿」

 

「アカイ殿、今回もよろしく頼む」

 

「カイ殿も、な」

 

「私がシマボシだ。アカイ殿には、我が隊のショウが世話になった」

 

「いやいや、彼女には我が故郷のポケモンたちを捕獲・保護してもらっているのでね。世話になっているのはこちらのほうさ」

 

セキさんとカイさん、そしてシマボシ隊長との挨拶も終わり、議題は次の目的地となった。当然、選ぶのは私。私が選ぶ行き先は……。

 

「……私は、紅蓮の湿地の調査に向かいたいと思います」

 

「……!ショウ、いいのか?」

 

セキさんは驚いているようだ。……それもそうだろう。

だって、状況だけ見れば比較的安全なのはコンゴウ集落だからだ。紅蓮の湿地の時空の歪みは試練の中洲に発生している。試練の中洲はコンゴウ集落からはかなり離れていて、集落が飲み込まれるのはだいぶ先のことになる。反面、群青の海岸はほか二つよりも大規模で、純白の凍土に至っては集落が既に飲み込まれている。

それなのに、私は紅蓮の湿地を選んだ。もちろん、理由だってある。

 

「……セキさん。私が初めてグラビモスと会った時のこと、覚えてますか?」

 

「あ?あぁ、あの時か……」

 

「その時セキさん、言ってくれましたよね?"何かあったら必ず駆けつけてやる"って。私、あの時の言葉を今も覚えていますし、なにより……嬉しかったですから。だから、今度は私が言う番です」

 

「おまえ……」

 

セキさん個人としては、他の二箇所を優先して欲しいんだろうけど……私としては、人を信じていたいと思うきっかけを与えてくれたセキさんに恩返しがしたい。だから、紅蓮の湿地を選んだんだ。

 

「いいじゃん、セキ。頼っちゃおうよ」

 

「カイ……だがよ……」

 

「大丈夫。純白の凍土のポケモン、かなり大人しいみたいでさ。あれからじっとしたまま動かないんだ。群青の海岸の方も規模は大きいけど……あの地域全体が飲み込まれるにはまだ余裕がある。だから、一つずつ確実に解決していこう」

 

「……そう、か。おめえがそう言うなら、お言葉に甘えさせてもらうぜ、カイ」

 

「うん!」

 

初めは渋っていたセキさんだけど、カイさんの後押しで調査を決意してくれたようだ。私の方へ振り向くと、そのまま頭を下げてきた。

 

「頼む、ショウ。紅蓮の湿地の時空の歪みを解決してくれ。……うちの集落を、守ってくれ」

 

「お任せ下さい」

 

「決まったようだな。では、早速出で立て!」

 

団長の言葉とともに私とテル先輩、ラベン博士、セキさん、アカイさんの五人で紅蓮の湿地へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅蓮の湿地に到着した私たちは現在、大口の沼と試練の中洲の境目に立っていた。ちょうどオヤブンパチリスがいたので退治して、そこで作戦会議中である。

 

「さて。早速ポケモンの情報を開示しよう」

 

「アカイさん、お願いするのです」

 

「了解した、博士。

……さて、試練の中洲にいるポケモン……泡、刷毛の尻尾、キツネ顔。これらの特徴が当てはまるポケモンは、『タマミツネ』をおいて他にあるまい。"泡狐竜"の別名を持つ海竜種の一種だ。ショウ、海竜種とはすなわち、ラギアクルスの仲間なのだ」

 

「ラギアクルスの仲間……」

 

「ラギアクルスが流体中を遊泳・潜行することに特化しているのに対し、タマミツネは純粋に地上で動き回ることが得意だ。地上での運動能力は極めて高く、跳躍によって獲物の頭上から奇襲を仕掛けたり、大きく回り込むようにしながら外敵の攻撃を回避するなど、非常に俊敏且つ柔軟な身のこなしもできる」

 

「……それ、本当にラギアクルスの仲間なのかよ?完全に別のポケモンじゃん……」

 

「……話を続けよう。タマミツネは口内の上顎に高水圧の水を放つ器官を持ち、さらに全身から分泌する特殊な体液と体毛を擦り合せる事で大量の泡を作り出す能力を保有している。……そうだ、報告にあった泡の正体だ。

タマミツネの体液によって生み出された泡は非常によく滑り、大量に浴びるとほとんどの摩擦を奪われ、最早まともに動く事さえできなくなってしまうのだ。さらに厄介なことにな、タマミツネ自身もこの泡の特性を熟知しているのだ。相手に付着させて行動の自由を奪い、自身は地面との摩擦を大幅に減らす事でより素早くしなやかな動きを可能とする。その機動力は、雷狼竜(・・・)の連続攻撃をも寄せ付けないほどになるのだ。

その動きは我が故郷にて『妖艶なる舞』とも評されている」

 

「……らいろうりゅう……?」

 

アカイさんの口から、聞いたような言葉が出てきた。らいろうりゅう、らいろう(・・・・)……お婆ちゃんたちが詠い継いできた詩に出てきた言葉と同じ単語……まさか……?

 

「長々と話したが、タマミツネの戦法は"回避重視で敵の消耗を待ち、真正面からの衝突を避けつつ外敵を排除する"戦い方を取る。調査に乗り出したコンゴウ団員がタマミツネに気取られていたが、あれは泡を利用したセンサーなのだ。周囲に展開された泡が割れる際に発生する大気中の振動をヒレで感じ取る事で縄張りへの侵入者を察知し、威嚇や牽制で外敵を追い払う。この段階で逃げ出したのならそれ以上の追撃はないが、立ち退かないとあっては本格的に暴れ始める。そして面倒なことにな……タマミツネは分が悪いと判断すれば、逃走することも吝かではない質のポケモンなのだ」

 

「えっ!逃げるのですか!?」

 

「あぁ。……だから、ショウがここを選んだのはあながち間違いではない。歪みが広がるということはすなわち、タマミツネの逃走範囲を広げるということ。それが大きくなる前に対処を選んだというのは、タマミツネを知らなかったことを加味しても良い判断だったと言えるだろう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

タマミツネ、逃げるんだ……。今のところ、時空の歪みはクマの稽古場とヘドロ台地に差し掛かっていて、荒地ベースが飲み込まれるのも時間の問題……。これが広がるということは、タマミツネの行動範囲及び逃走範囲を広げることになる……。たまたまとはいえ、運が良かったのか、私は。

 

「そして、最後に。現在、タマミツネが居座っている場所には、ヌメラやヌメイルといったドラゴンポケモンが生息していたのは知っているな?実は、タマミツネの泡を受けたこれらの個体が極端に弱った様子で発見されたのだ。ドラゴンが苦手とするタイプ……まぁ、君たちなら直ぐにわかったろう。

これらの観点から、タマミツネは『みず・フェアリー』の複合タイプではないかと推測している。また、タマミツネはほのおとこおりに強く、でんきとドラゴンに弱く、みずが一切効かない体質をしている。

さて、タマミツネに関する話はこれくらいか。あとは……実際に対峙してみて、君の肌で感じてくれ」

 

「わかりました。行きましょう!」

 

私がポケモンの選定を終えるのに合わせて、大口の沼方面から時空の歪みに突入した。本来ならオヤブンドクロッグが縄張りとしている場所……そこには、見たことのないポケモンがいた。

 

「グオオォン!」

 

「ウオオォン!」

 

「ガオオォン!」

 

おんなじような体型……いや、骨格か?とにかくどこかよく似た姿の三体のポケモンがお互いに睨み合い、牽制しあっている場面に出くわした。

三体とも、見た感じ11m半以上はありそう。一匹は襟巻きが特徴のピンク色、一匹は嘴と喉の袋が特徴の橙色、最後の一匹は鶏冠が特徴の青色のポケモンだ。

 

「む……ドスジャギィ、ドスフロギィ、ドスバギィか」

 

「ドス?」

 

「各個体のボス……いや、最終進化形態につけられる名だ。それぞれジャギィ、フロギィ、バギィという個体だ」

 

「どんなポケモンなのです?」

 

「ドスジャギィは襟巻きにも見える耳が特徴のポケモンだ。体色はピンク。フロギィは橙色のポケモンで、紫の喉が特徴だな。最後がバギィ。青いポケモンで、トサカが特徴だ」

 

「どれもこれも、似たり寄ったりな見た目をしてんな。アカイの旦那に説明されなきゃ、どいつがどいつなのかさっぱりわからねぇ」

 

アカイさんの説明を受けて、セキさんがそうぼやいた。アカイさんは一目瞭然とばかりに説明してたけど、まったく知らない私たちからすればどれも同じに見えそうになってしまう。

そして、睨み合う三匹の向こう側には、泡が至る所に点在している。あれがタマミツネの泡……よく見ると、私たちの周囲にも数は少ないが泡が浮いて――。

 

パチンッ

 

「わぁ!?」

 

「え、博士?」

 

突然、背後から破裂音とともにラベン博士の驚きの声が聞こえた。私たちは思わず振り返った。

 

「す、すみません。死角から泡が近づいてきたことに気づかず、気づいたときには……」

 

「あー……確かに、いろんなところに浮いてるもんな……」

 

「……だが、面倒なことになったぞ」

 

「面倒?」

 

「あれを」

 

そう言ってアカイさんが指した方……それを見て、私は思い出した。ここには私たち以外の者もいて……当然、さっきの音に気づいたであろうということも。

 

「ウッ?」

 

「オウ?」

 

「バウ?」

 

ドスジャギィたちもこちらに振り返ってしまい、私たちの存在に気がついてしまった。三匹はお互いへの睨み合いを一時中断し、新たに現れた私たちに警戒心を向けてきた。

 

「さて、面倒だな。ドスジャギィにはこれといった特徴はないが、フロギィはどく、バギィはねむけの状態異常を得意としている。これら三匹を同時に相手取るのは骨が折れるぞ?」

 

「だったら、おれたちも戦うよ。ショウ一人に、三匹全部を相手なんてさせられない」

 

「……だな。オレも腹を括るぜ。アカイの旦那、あの三匹のことを教えてくれ!」

 

「テル先輩!セキさんも……!」

 

二人が一緒に戦ってくれるのは嬉しいけど……二人共、巨大ポケモンとの勝負は初めてだろうに。テル先輩は二対一とは言えリオレウス戦を経験しているからともかく、セキさんは完全に初勝負だ。

しばらくして、アカイさんが筆と紙を取り出すと、何かをサラサラと書き記し、それを私たちに渡してくれた。

 

「三匹がそれぞれ、苦手としているタイプを記しておいた。目を通してくれ」

 

私たちは集まって、アカイさんのメモに目を通した。

ふむふむ……ドスジャギィはノーマルタイプ、ドスフロギィはどくタイプ、ドスバギィはあくタイプ、と。

ドスジャギィはほのお、みず、でんき、こおりに弱いがドラゴンが一切効かない体質で、ドスフロギィはみずとこおりに弱いがでんきに強く、ほのおとドラゴンが一切効かない体質、ドスバギィはほのおとみずとでんきに弱いが、こおりとドラゴンが一切効かない体質と……三匹とも、ドラゴンタイプに対して強いけど、共通してみずタイプに弱いんだ。タマミツネはみずタイプと予測されているし……だからこんな離れた場所でにらみ合いをしていたのか。

 

「こいつは……」

 

「セキさん。巨大ポケモンは通常のタイプ相性の他に、ほのお・みず・でんき・こおり・ドラゴンの五タイプに対して特殊な相性を持っているんです。いつものタイプ相性で戦うと、かえって不利になることもあります」

 

「ドスジャギィには特徴といえる特徴はないものの、ノーマルタイプ故に技のタイプ範囲は広いだろう。まぁ、特殊攻撃技は得意ではないようだが。他の二匹、ドスフロギィとドスバギィ……とりわけ、ドスフロギィが厄介になるだろう。

ヤツが扱う毒は霧状にして広範囲に吐き出されるのだ。下手に密集すれば、巻き込まれることは必至……すなわち、ドスフロギィと相対する者はここからなるべく離れなければならないだろう。

ドスバギィは、あの三匹の中ではとりわけ高い頭脳と鋭い洞察力を持ち合わせている。隙を晒せば、猛攻に晒されるは必定。また、ドスバギィは元々寒冷地に生息するポケモン……もしかすると、こおり技が使えるかもしれない。こちらも警戒しながら戦うこととなるだろう」

 

……なるほど、それなら。

 

「それじゃあ、私がドスフロギィを請け負います。先輩はドスバギィを、セキさんはドスジャギィをお願いします」

 

「任せろ!」

 

「……だな、オレのリーフィアはドスフロギィは元より、ドスバギィにも不利かもしれねえ」

 

「決まったようだな。さて、向こうもそろそろ我慢が効かなくなるだろう……見境がなくなる前に、行動開始だ!」

 

「「「はい/わかった!/おう!」」」

 

私はねばりだまを取り出すと、一気に三匹に向けて走り出す。すれ違い様に振り返り、ドスフロギィにねばりだまをぶつけた!

 

「こっちだよ、ドスフロギィ!」

 

「……!!ヴオオォウ!」

 

ねばりだまをぶつけられて怒った様子のドスフロギィは、私の後を追ってきた。私はアヤシシにライドすると、みんなから離れるべく一気に駆け出した。ドスフロギィにつられるようにドスジャギィ、ドスバギィも私の後を追いかけてこようとしたけど……。

 

「ジュナイパー!」

 

「ジュッパー!」

 

ドスジャギィとドスバギィの足元に羽の矢が撃ち込まれたことで足を止めた。明らかな攻撃行動によって、二匹の敵意が下手人達の方へと向けられる。

 

「よしっ、こっちに気づいたな!」

 

「んじゃ……予定通りにやるぞ、テル!」

 

「はい!」

 

テル先輩とセキさんは、それぞれが相手にするポケモン側に回り込むように移動を始める。ドスジャギィとドスバギィは、それぞれが近い側にいる人間を目標に定めたようで、ドスジャギィはセキさんを、ドスバギィはテル先輩を追いかけ始めた。よし、私も移動しよう!

こうして、私たちはそれぞれの戦場に立った。セキさんとドスジャギィは、元はオヤブンドダイトスが居た場所で対峙し、テル先輩はオヤブンドクロッグが居た場所、私はオヤブンドダイトスの場所から少しだけオヤブンヌメイル側に寄った場所で。というのも、オヤブンヌメイルの生息場所に近づけば近づくほど周囲を漂う泡が増えてきていて、動きづらかったからだ。

 

「……さて、と」

 

アヤシシから降りると、私はすぐに振り返る。まるで獲物を追い詰めたとばかりにゆっくりとこちらに近寄ってくるドスフロギィ……甘いよ!

 

「追い詰められたのは、どっちかな!サーナイト!」

 

「サーナッ!」

 

私が繰り出したのはサーナイト。タイプ相性的には相互有利といったところだけど、技の範囲ならサーナイトの方が広く弱点をつけられる!ドスフロギィはどく単体タイプだから、エスパー技の通りも良い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【孤島の簒奪者たち】~モンスターハンター3~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サーナイト!技変更!!めいそう、シャドーボール、れいとうビーム!」

 

「サナッ!」

 

今のサーナイトはサイコキネシス、ムーンフォース、エナジーボール、10まんボルトを覚えている。だから、サイコキネシス以外の技三つをたった今指示した技へと変更させる。サーナイトも私の指示をしっかりと把握していて、自分が覚えている技の中から指示された技をしっかりと思い出してくれた!

 

「ヴオオッ!」

 

すると、ドスフロギィの喉袋が一瞬にして大きく膨らむと、一気に毒が吐き出された!アカイさんの言うとおり、それは霧状になって大きく広がり始めた。しかも、毒煙として留まっている……大量にばらまかれると、こっちが動けなくなる!

 

「サーナイト!シャドーボール!!」

 

「サナッ!」

 

サーナイトが放ったシャドーボールはこちらに迫る毒霧を突き破ってドスフロギィに……なにっ!

 

「いない……上か!」

 

「ヴアオオオォッ!」

 

シャドーボールが毒霧を吹き飛ばすも、そこにドスフロギィはいなかった。私はこれまでの経験から、ドスフロギィの居場所を特定するとそちらに顔を向けた。ドスフロギィは確かにそこにいて、跳躍した勢いで上空からシャドークローで強襲をかけようとしていた!

 

「サーナイト!回避!!」

 

「サァナッ!」

 

「よしっ、れいとうビーム!!」

 

「サアナアアアアッ!!」

 

「フギイイィッ!?」

 

サーナイトはバックステップしつつこれを回避し、反撃のれいとうビームを確実に当てる!こおりタイプに弱いドスフロギィには効果は抜群だ!!

 

「ヴオオォォォッ!!」

 

「サナァッ……!」

 

「サーナイト!」

 

ドスフロギィから反撃のどくばり攻撃……って、とんでもない量!まるで弾幕だ!!一撃一撃が弱くてもこうも断続的に浴びせられたら、どくタイプに弱いサーナイトはすぐに倒れてしまう!

 

「サーナイト!めいそう!!

 

「サァ……」

 

「続けてシャドーボール!」

 

「サナア!!」

 

「ヴオオオォ!」

 

めいそうで攻めと守りの力を高めたあと、シャドーボールで一気に押し返す!だが、ドスフロギィも負けじと尻尾を振るってシャドーボールをかき消した。……ポイズンテールも使えるのか、ディノバルドと同じく……。

 

「ヴウゥ……ヴアオゥ!」

 

「ヘドロばくだん……躱して!」

 

「サナッ!……っ!?サアァナアァッ!!」

 

「えっ、サーナイト!?」

 

ドスフロギィの喉袋が再び膨らみ、今度はヘドロばくだんが発射された。すぐに回避を指示して、サーナイトもそれに従った。

……そこまでは良かった。問題は、着弾したヘドロばくだんが霧状に炸裂したことだ。わずかなステップでしか回避していなかったサーナイトは球状のヘドロばくだんは回避できたものの、直後に炸裂したことで広がった毒煙からは逃れられず、思い切り巻き込まれてしまった……!

……いや、あれはヘドロばくだんとは違う技かも知れない。多分、ドスフロギィの毒霧攻撃の発展技だ……!

 

「ヴウウゥオオオオ!!」

 

「サナッ……!」

 

「サーナイト!大丈夫!?」

 

「サ、サーナッ!!」

 

続いて繰り出されたドスフロギィのすてみタックルを回避できず直撃!サーナイトは……よかった、まだ戦える。めいそう、積んでて良かった……けど、毒状態は結構きついな……!

 

「ヴアアオォ!」

 

……!かえんほうしゃ!!

 

「力強く、シャドーボール!!」

 

「サアアナッ!」

 

サーナイトの力業シャドーボールとドスフロギィのかえんほうしゃがぶつかり合い、激しく爆発した。今のうちに……!

 

「サーナイト!めいそう!!」

 

「サァ……」

 

「ここから勝つよ、サーナイト!!」

 

「サアァナッ!!」

 

勝負は一瞬……私が勝つには、力業サイコキネシスを確実に当てるしかない!!

 

「ヴオオア!」

 

今度はシャドーボールか!かえんほうしゃといい、タイプ補完もばっちりってわけだ……だけど!

 

「地面にれいとうビーム!!」

 

「サナアァ!!」

 

サーナイトは地面にれいとうビームを放ち、氷の壁を作り上げた。氷の壁はシャドーボールを受け止めてなお崩れず、ひび割れはしたもののしっかりと残っている!

 

「ヴオオオ!!」

 

続いて放ってきたのはアイアンテール!氷の壁を破壊する気だ!ドスフロギィのアイアンテールが命中し、一瞬で瓦解する氷壁……だが、そこにサーナイトはいない!

ドスフロギィがアイアンテールを放つべく体を回した瞬間……そのタイミングを狙って私はサーナイトにジャンプさせていたのだ!だから、体が一周した頃には氷の壁の向こうにいるはずのサーナイトが姿を消していて、ドスフロギィは驚くはず!!

 

「フギッ!?」

 

「サーナイト!力強く、サイコキネシス!!

 

「サアアアナアアア!!」

 

「フッ……!ロギィ!?」

 

「そのまま叩きつけて!!」

 

「サナァアアア!!」

 

「ヴアアアオッ!!」

 

よしっ!力業サイコキネシスが直撃!!ドスフロギィは目を回して倒れている!

 

「モンスターボール!」

 

私はすかさずモンスターボールを投げて、ドスフロギィを捕獲する!ボールが揺れるがそれもほんの僅かで、すぐに捕獲の花火が打ち上がった。

 

「ドスフロギィ、捕獲完了!」

 

こっちはなんとか決着がついた。あとは、テル先輩とセキさん……少し、様子を見に行こう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:セキ

 

現在このオレ、セキと相対しているのはドスジャギィと呼ばれるポケモン。アカイの旦那曰く「特徴らしい特徴はない」とのことだが……油断はできねぇな。

 

「頼むぜ、リーフィア!」

 

「フィー!」

 

オレの一番の相棒であるリーフィアを繰り出す。小さい頃からずっと一緒だった相棒だ、こいつと一緒なら、未知の巨大ポケモンだろうが恐るるに足らずだ!

 

「ギャオッ!ギャアオッ!」

 

ドスジャギィは甲高い咆哮を放つと、一気に接近してきた。かなり足が速いな……体のデカさも、それを助けてるってわけか!

 

「アイアンテールだ!」

 

「フィッフィー!」

 

「ギャオウ!オウッ!!」

 

アイアンテールはドスジャギィの頭に直撃したが……僅かに拮抗しただけで、あっさりと押し返してきやがった!あの感じ……アイアンヘッドか!

 

「素早く、めいそう!そしてリーフブレードだ!!」

 

「フィーア!フィイイイィィ!!」

 

「ガウルル……ギャオオウッ!!」

 

めいそうで能力を高めてから、得意技のリーフブレードを叩き込む!だが、ドスジャギィも同時に動き出した。やつの尻尾が鋼鉄の力を纏っている……アイアンテールか!さらに、ドスジャギィの尻尾についた刺が同じように鋼の力を纏って巨大化しやがった!!

リーフブレードとアイアンテールのぶつかり合いは一瞬。あの野郎……めいそうで能力を高めたってのに、鍔迫り合いすら許さずリーフィアを一方的に吹っ飛ばしやがった!

 

「フィッ!リーア……!!」

 

「大丈夫か、リーフィア!」

 

「リフィーア!」

 

一度地面に叩きつけられたが、リーフィアはなんとか受身を取って体勢を立て直した。……こいつ、ヤベェな。想像の云十倍は強えぇ……!体格差もあって、正面からでは不利か!

 

「アオォォォウッ!!」

 

ドスジャギィが牙を剥き出しにしてリーフィアに迫っていく。かみくだく攻撃か!

 

「躱せ!リーフィア!!」

 

「フィア!!」

 

ドスジャギィはリーフィアを噛み砕いてやろうと何度も牙で襲いかかる。一方、リーフィアは小柄な体躯と素早い動きでドスジャギィの攻撃から逃れ続ける。

奴らの咬合力はもはや想像すらつかねぇ……ショウのミミロップが、オドガロンとかいうポケモンに耳を食い潰されて失聴したという話は、カイから聞かされているから知っている。ミミロップでさえ耳が潰されたんだ……ドスジャギィの体長の十分の一程度しかないリーフィアではあの牙で捕まったが最後、そのままお陀仏、という可能性もある……。なおさら、あいつの牙に捕まるわけには行かねえ!!

攻撃を躱し続けているうちに、リーフィアのすぐ後ろに水たまりが……コレだ!

 

「リーフィア!後ろの水を巻き上げろ!!」

 

「……!フィア!!」

 

「ギャウッ!?」

 

リーフィアがバックステップで牙を回避した直後、尻尾を振るって水を巻き上げてドスジャギィの顔面にぶっかけた!目に水が入ったのか、ドスジャギィは目を閉じたまま頻りに首を振ってやがる……今だ!

 

「力強く、リーフブレードだ!!」

 

「フイイィアッ!!」

 

「ギャウウッ……!」

 

よしっ、手応えアリだ!間違いなく急所に命中したことだろう、かなりダメージを与えたぜ!

 

「アオオォウッ!オウッ!オウッ!オウッ!オウッ!!」

 

ドスジャギィが、さっきよりもデカい声で咆哮しやがった!さては、キレたか?怒りは冷静さを失わせるが、どうもそれだけじゃない気がするぜ……!

 

「グアアアオウッ!!」

 

……!奴の爪が……ドラゴンクローだと!?

 

「っ!シザークロス!!」

 

咄嗟に指示が間に合い、リーフィアはシザークロスでドスジャギィのドラゴンクローを逸らすことに成功した……いや、待て!

 

「避けろ!リーフィア!!」

 

「ガアアアッ!!」

 

「フィッ!?フィイイィッ!!」

 

「リーフィア!?」

 

あんにゃろう、ドラゴンクローを繰り出した勢いのまま、10まんばりきを放ってきやがった!前足を振り抜いた姿勢から即座に体の側面を晒すとそのままタックルを放ってリーフィアを吹っ飛ばした!くさタイプのリーフィアにじめん技は効果はいまひとつだが、ドスジャギィの能力が高いのかリーフィアはかなりのダメージを貰っちまった……!

 

「ギャオウッ!ギャオウッ!!アオオォォン!!」

 

次はげきりんか……!コイツも食らったらヤバい……!!

 

「躱せ!リーフィア!!」

 

「……ッ!フィーアッ!!」

 

リーフィアも即座に起き上がり、ドスジャギィのげきりんを回避した!あっぶねぇ……あやうく直撃するところだったぜ……!

 

「グルルル……!」

 

次はアクアテール……クソッ!どんだけ技が使えるんだよ!!だが、みず技ならまだ対処はできる!

 

「リーフブレードで迎え撃て!!」

 

「フィッ!フィイィアァッ!!」

 

「アオオウッ!!」

 

再び尻尾の刺にも力を纏わせて巨大化させたドスジャギィだが……みずとくさのタイプ相性なら、こっちが有利だ!リーフブレードとアクアテールがぶつかり合い、激しい鍔迫り合いに持ち込まれるが……それでも、リーフィアが押し切ったぜ!

リーフブレードはドスジャギィに命中!いいぞ、効いている!!

 

「……!ギャアオウッ!!」

 

「フィッ……!!」

 

「なっ、リーフィア!?」

 

ドスジャギィは鍔迫り合いに敗れて吹っ飛んだ……が、空中で体勢を立て直すとそのまま着地し、さらに着地と同時に踏み込んで一気に突撃。リーフィアを頭突きで吹っ飛ばした!あの攻撃は、もろはのずつきか……!今のはかなり効いたぜ……!!

リーフィアも立ち上がろうとしているが……クッ、かなりダメージを負っちまった……!今回はもしもに備えてリーフィアしか連れてきていない……ここで負けるわけにはいかねぇんだ!

 

「ギャオオオオオウッ!!」

 

ドスジャギィに凄まじい力が集まっている……まさか、ギガインパクトを使うつもりか!!あれが直撃したら、リーフィアは瀕死になっちまう!!

 

「リーフィア!!」

 

「……!!」

 

オレが呼びかけると同時にドスジャギィが物凄い速度で突撃して、リーフィアがいる場所で凄まじいエネルギーが炸裂した。リーフィア……!

ドスジャギィがゆっくりと上体を起こして足元を見やるが……そこにいるはずのリーフィアは、どこにもいなかった!

 

「アァッ!?」

 

いきなり敵がいなくなって驚いているようだな……残念だが、リーフィアは……上だぜ!!

種明かしをすると、ギガインパクトが直撃するギリギリまで引きつけてから……リーフィアは自身の尻尾をバネにして跳躍した、というわけだ!攻撃が空振ったギガインパクトは地面を穿ち煙を巻き上げ、同時にドスジャギィの視界も封じたってわけよ!

 

「リーフィア!素早く、アイアンテールだ!!」

 

「リフィーアッ!」

 

「ギャウッ!ガッ、ギャウウッ!!」

 

リーフィアはアイアンテールでまずはドスジャギィの頭を上から叩きつける!そのまま横に振り抜き、二撃目!リーフィアに噛み付こうと顔の位置を元に戻したドスジャギィに、顎を勝ち上げる三撃目を食らわせる!アイアンテール三連撃を受けたドスジャギィは大きく仰け反った!

 

「行けぇ、リーフィア!力強く、リーフブレードだ!!」

 

「フィイイイィィ!アアァァァァッ!!」

 

「ギャオオオウッ!?」

 

ドスジャギィは派手に転倒!すっかり目を回している……今がチャンスか!

 

「……よしっ、行け!」

 

オレは移動の際にすれ違ったショウから事前に手渡されていたモンスターボールをドスジャギィに投げた。ボールはドスジャギィを捕らえると、しばらく揺れてからポンッ、という音とともに花火が打ち上がった。

 

「ふぅー……」

 

……やっとこさ、やっとこさ捕獲できたか……。今まで戦ってきたポケモンとは、一つも二つも桁違いだ。こんなポケモンがうじゃうじゃいるっていうアカイの旦那の地元って、一体どうなってんだよ……。

リーフィアもすっかりクタクタだな……無事に捕獲できたとわかると、すぐさまその場に倒れこんだくらいだ。オレはリーフィアを抱き上げて労うとともに、ドスジャギィが格納されたボールを拾う。

 

「……ショウたちは、こうやってポケモンを捕獲してんだな」

 

暴れ狂うポケモンを鎮めるためにボールを使う……なかなかにない、貴重な体験だな。

さて、ショウはオレなんかよりも早く終わっていたみたいだな。こっちに向かって来ている。テルの方も、ちょうど終わった頃だろうかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:テル

 

おれは今、ドスバギィと呼ばれるポケモンと戦っている。アカイさんのメモから、ドスバギィがほのおに弱いあく単タイプと分かってからは、ジュナイパーをゴウカザルに変えて戦っている。

タイプ相性では圧倒的に有利……だけど……!

 

「(強い……!)」

 

強い、本当に強い!三匹の中で一番頭がいいとは言っていたけど……ゴウカザルが自身に強い近接タイプとわかってからは、特殊攻撃ばかりで攻撃してきている!

今もゴウカザルがマッハパンチで距離を詰めようとしたけど、足元に放たれたみずのはどうのせいで近寄れないでいる……。

 

「やりづらいなぁ!どくづき!!」

 

「ウッキャキャア!」

 

「ガウガオッ!」

 

再びゴウカザルが突撃するが、ドスバギィがバックステップをしつつこごえるかぜを放ってきたことで、距離を取られるばかりかこごえるかぜのせいでこちらの行動が遅らされる……!

 

「マッハパンチだ!」

 

「ウキキィ!」

 

遅らされた行動は、技で取り返す!マッハパンチで一気に接近したゴウカザルは、ドスバギィに技を命中させた!ドスバギィは大きく仰け反っ――

 

「フッ……ウ"アアオウッ!」

 

「ウギャッ!?」

 

「ゴウカザル!」

 

――た、かに見えたが。ドスバギィはマッハパンチを食らった勢いを利用して素早く体を回転させると、その勢いでアクアテールを放ってきた!拳を振り抜いた姿勢のゴウカザルは回避できず、技が直撃してしまった……!

 

「ゴウカザル!大丈夫か!?」

 

「キッキッ……!ゴウカァ!!」

 

ふぅ、持ちこたえたようだ。

 

「グオオオウッ!!」

 

続いて放ってきたのはれいとうビーム!ゴウカザルにこおり技は効かないぞ!

 

「フレアドライブ!!」

 

「ウキャキャキャキャ!ゴウカアアッ!!」

 

ドスバギィのれいとうビームを弾きながら、ゴウカザルは一直線に突っ切っていく!このまま一気に!

 

「……(ニヤッ)」

 

ドスバギィは突然、それまでゴウカザルに向けて放ってきていた冷凍ビームを足元へと照準を変更した?あっという間に氷の壁が形成されるが、ゴウカザルの前では無意味だ!

 

「突っ込め!ゴウカザル!!」

 

「ウッキャアアアアアッ!!」

 

ゴウカザルが氷の壁にぶちあたり、そのまま破壊した!……な、なにっ!?

 

「グルル」

 

「ウキッ!?」

 

氷壁の向こうでは、すでにドスバギィがみずのはどうを構えていた!?

 

「ゴオオウッ!!」

 

「ウギャアアァッ!!」

 

「ゴ、ゴウカザル!?」

 

ドスバギィのみずのはどうが直撃し、ゴウカザルが吹っ飛ばされてしまった!な、なんてやつだ……ここまで正確な判断で技を選ぶなんて……。おまけに、おれの思考まで誘導してきたのか!?

ゴウカザルはさっきの一撃がかなり響いたようだ……もう、かなり限界に近い……!

 

「負けるな!ゴウカザル!!素早く、マッハパンチ!」

 

「ウッキャア!」

 

「ガウッ……!」

 

よしっ!ドスバギィは早業マッハパンチに反応できていない!このまま攻めてやる!

 

「どくづきだ!」

 

「ウキキャ!」

 

「グゥッ……!」

 

「続けてかみなりパンチ!」

 

「ウキャキャ!」

 

「ゴアッ!」

 

どくづき、かみなりパンチと連続攻撃を決めれた!よしっ、止めだ……!

 

「力強く、フレアドライブ!!」

 

「ウッキャアアアアアッ!!」

 

フレアドライブで一気にケリをつける!!

 

「……!!」

 

……!?ドスバギィの様子が……!

 

「ガオオォン!」

 

正面から突っ込んでくるゴウカザルに向かって、頭を勢いよく突き出してきた!青い淡い光が鶏冠に……しまった、しねんのずつき……!!

フレアドライブとしねんのずつきのぶつかり合いは……かなりダメージを与えられたけど、ゴウカザルが戦闘不能になってしまった……!

 

「も、戻れゴウカザル!行けっ、ジュナイパー!」

 

「ジュナ!」

 

ゴウカザルを戻して、すかさずジュナイパーを繰り出す。まさか、タイプ相性では完全に有利だったはずなのに、倒されるなんて……!

 

 

 

 

――彼女は英雄となるだろう。――

 

 

――その時、隣に立つのは凡夫か、はたまた勇者か……――

 

 

――君はどちらだろうね?――

 

 

 

 

博士を呼びに行く直前にアカイさんに言われた言葉が脳裏をよぎる。まるで、おれを試すような物言いに思わず何かを言おうとして……結局、何も言えなかった。

確かに、ショウは凄い。それこそ、アカイさんが言うように英雄とも呼べるほどに。ディアルガやパルキアをはじめとするヒスイ地方の伝説ポケモンをすべて捕まえたり、ジンオウガたちのような強力な巨大ポケモンたちを次々と仲間にしたり……今だって、急に発生した時空の歪みを解決するために戦っている。……ディノバルドとの勝負だって、命を落としていてもおかしくなかった。けど、ショウは無事に黒曜の原野の時空の歪みを解決することができた。

おれは……ショウにとってのおれは、ちゃんと役に立てているのだろうか。ショウならきっと、おれと同じ状況でも負けはしなかっただろう。それなのに、おれは……!

 

「ジュッパー!!」

 

「……!ジュナイパー……」

 

ジュナイパー……ショウが選ばなかった二匹のうちの一匹、モクローをおれが博士から貰い受けて以来、ずっと育てていたポケモン。そのジュナイパーが、おれの方をじっと見つめている。……そうだな。

 

「おれは、おれらしくやってみせる!凡夫でも勇者でもない!おれはおれだ!!」

 

「ジュナッ!」

 

「ガオオン!」

 

ドスバギィが口から水色の液体が吐き出された!まさか、あれがねむけの元か!

 

「躱せジュナイパー!」

 

「ジュパァ!」

 

「よし……!3ぼんのや!」

 

「ジュナッ!パーッ!!」

 

「ガウウッ!?」

 

一気に接近するジュナイパーに対して、ドスバギィはゴウカザルの時のように引きつけてから攻撃を当てようとしてくる。だが、ジュナイパー冷静にドスバギィの攻撃を見極めると、直前で放たれたれいとうビームを回避してかかと落としを叩き込んだ!さらに距離を取るとともに羽矢を三本放ち、ドスバギィにダメージを与える!!

 

「シャドークロー!!」

 

「ジュッパァ!」

 

「ガウ……!」

 

シャドークローも命中した!3ぼんのやによって急所に当たりやすい今なら、一気に攻められる!!

 

「リーフブレード!」

 

「ジュナッパァー!!」

 

「……!ガオオ!!」

 

ジュナイパーがリーフブレードを振り下ろした、その時だ!まるでその時を待っていたとばかりの反応速度でドスバギィが動き出し、こおりのキバでリーフブレードを受け止めてしまった!

 

「ジュナ!?」

 

「なにっ!?」

 

その反応速度の速さにおれもジュナイパーも驚いていると、ドスバギィはリーフブレードを破壊し、その勢いでジュナイパーにまで噛み付き地面に叩きつけてしまった!

 

「ジュナァ……!」

 

「ジュナイパー!」

 

「グルルル」

 

ドスバギィはジュナイパーを押さえつけたまま睡眠液をゼロ距離で浴びせると宙に放り投げ、アイアンテールでジュナイパーを吹き飛ばした!ゴロゴロと転がり、立ち上がるジュナイパーだが……ねむけの状態異常のせいか、フラフラとしていて足元が覚束無い!

 

「ゴオオアアァ!!」

 

ドスバギィがげきりんの技で一気に突撃してくる!ジュナイパーは……ダメだ、動けそうにない!

 

「ジュゥナッ……!!」

 

「ジュナイパー!」

 

派手に吹っ飛ばされたジュナイパー……!かなりダメージを受けている……これ以上食らったらマズイ……!!

 

「グオオ!」

 

ドスバギィがあくのはどうを撃ってきた!

 

「切り払え!」

 

「ジュパ!」

 

「つばめがえしだ!」

 

「ジュナアァ!」

 

ジュナイパーが突撃をかけ、ドスバギィに接近していく。ドスバギィは近づけまいとれいとうビームを乱射するが、そのどれもが当たらない。順当に行けば攻撃が当たる……だが、嫌な予感がする!

 

「バギィャアア!」

 

「高く飛べ!ジュナイパー!!」

 

「ジュッパアァ!!」

 

「バッ!?」

 

おれが指示を出した直後、ドスバギィがシャドーボールを構えていた!高く飛んだことでシャドーボールが外れ、ドスバギィは驚きで硬直している!……一気に仕掛けてやる!

 

「チャンスだジュナイパー!3ぼんのや!!」

 

「ジュパァ!」

 

「ガゴッ!?」

 

「今だ!!力強く、リーフブレードォ!!」

 

「ジュウゥゥッパアアァァッ!!」

 

「バギャアアァ!?」

 

力業リーフブレードが急所に当たった!ドスバギィは大きく吹き飛ばされると、そのまま倒れ込んだ!目を回している……今なら!

 

「いっけぇ!モンスターボール!!」

 

おれが投げたボールはドスバギィを捕らえ、なんとか格納できた!一度、二度、三度と揺れた後、ボールから花火が打ち上がった!

 

「よしっ……ドスバギィ、捕獲完了!」

 

苦戦した……ドスバギィは知能が高く、搦手をかなり多用してきた……。誰を相手にしても苦戦しただろうけど、ドスバギィとの勝負は勉強になることが多かったな。

 

「……ショウとセキさんと合流しなきゃな。……おっ」

 

足音が聞こえたのでそちらに顔を向けると、ショウとセキさんがともに歩いてきていた。……次の相手はタマミツネか……なら、おれはおれにできることをする。そうしてショウを助けるんだ!

おれは一つ、決意を抱くとショウたちの方へと歩いて行った。

 

 

 

 




実際に戦闘BGMを流しながら書いてたら、キャラごとになんかBGMの強敵感が変わっていく……。
というわけで、ジャギィ系ドス鳥竜をドン!

ドスジャギィ
タイプ:ノーマル
弱点 火:◎ 水:○ 雷:○ 氷:○ 龍:×
四倍:なし
二倍:ほのお、みず、でんき、こおり、かくとう
半減以下:なし
効果なし:ゴースト、ドラゴン


ドスフロギィ
タイプ:どく
弱点 火:× 水:○ 雷:△ 氷:◎ 龍:×
四倍:なし
二倍:みず、こおり、じめん、エスパー
半減以下:でんき、くさ、かくとう、どく、むし、フェアリー
効果なし:ほのお、ドラゴン


ドスバギィ
タイプ:あく
弱点 火:◎ 水:○ 雷:○ 氷:× 龍:×
四倍:なし
二倍:ほのお、みず、でんき、かくとう、むし、フェアリー
半減以下:ゴースト、あく
効果なし:こおり、エスパー、ドラゴン

全員ドラゴンに強いやんけ……そしてみずに弱い。

次はタマミツネ戦です!皆さんが勝てるかどうかは、このタイプ相性を見てから決めてくだせェ

タマミツネ
みず/フェアリー
弱点 火:△ 水:× 雷:◎ 氷:△ 龍:○
四倍:でんき
二倍:くさ、どく
半減以下:ほのお、こおり、かくとう、あく
効果なし:みず、ドラゴン
等倍:上記以外全て

龍属性がフェアリーで無効化……この仕様が現実に適用されなくてよかったw


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メイン任務:紅蓮に咲く妖艶なる舞 第二演目~泡雷演舞 天眼 対 金雷公~

ついに、タマミツネ対ジンオウガ!
タイトルで察したであろうそこのあなた!


……バトル、ご期待下さい。(渡○也)


私たちは一度、突入地点に集合することにした。私とセキさん、テル先輩の三人でボールを持ち寄り、無事に三匹を捕獲することに成功したことを証明した。

 

「では、こちらのボールは一先ずボクが預かっておくのです」

 

「残るはタマミツネのみ……不意打ちで捕獲できればいいが、まあ無理だろう」

 

「ですよね……」

 

タマミツネの気配感知を避けるためには、泡を壊すことなく接近しなければならない……。しかも、タマミツネに近づけば近づくほど展開される泡の量は増えていって、より接近は困難になる。そして極めつけには……投げたボールで泡を壊すことも許されないということ。

泡を壊すことなく接近し、泡を壊さないようにボールを投げて捕獲しなければならない……めちゃくちゃ難しいな、これ……。

 

「素直にバトルを挑みます」

 

「それがいいだろう」

 

さて、弱点はでんき、くさ、どく……タマミツネはドラゴンタイプに弱い体質だけど、フェアリータイプがその弱点を克服しているから、この三タイプだ。

 

「でんきならジンオウガか、ラギアクルスか……」

 

「……もし、タマミツネがメガシンカする可能性を考慮するなら、ラギアクルスは控えるべきだろう」

 

「え……どうしてですか?」

 

「あくまで推測だが……タマミツネがメガシンカするなら、おそらくは【天眼】と呼ばれる二つ名個体へとメガシンカするはずだ。【天眼タマミツネ】が吐く泡には、ほのおタイプの力が含まれている……ほのおタイプの通りが悪いジンオウガなら、メガシンカ後も互角以上に戦えるだろう」

 

「なるほど……」

 

「物のついでだ。メガタマミツネこと、【天眼タマミツネ】についても少しばかり教えておこう。まず、前提として……【天眼タマミツネ】は全盲だ」

 

「……はい?」

 

全盲?全盲……って、え!?

 

「メガタマミツネって、目が見えないんですか!?」

 

「そうだ。宿敵との戦いによって両目を負傷し、失明したのだ。昨今では、件の宿敵というのはラギアクルスである可能性が高い、というのが有識者の見解だな」

 

「…………」

 

ラギアクルス……まさか、私が捕獲した個体のことじゃないよね……?そうじゃないと信じたい。

 

「けど、失明って……なんか、逆に弱体化してないか?」

 

「いいところに目を付けるな、テル少年。まぁ、普通のポケモンなら失明などすれば弱体化は免れぬだろうが……だがしかし、タマミツネは違う。やつには目が見えずとも、周囲を探る術があるだろう?」

 

「……!そうか、泡……そして、泡を使った感知能力だな!」

 

「さすがはコンゴウ団団長、察しがいい。そう、失明したタマミツネは元来備わっている泡を用いた感応力に特化することで全盲という致命的な障害を補い、逆に通常個体を遥かに凌駕する強大な力を手に入れて生き残ったのだ。

そして、己に手傷を負わせた宿敵を打倒するためか、他の物体に触れた瞬間に爆発・炎上させるほどの威力を秘める泡を操るようになったのだ」

 

生き残るため……ただそれだけのために、自分に出来ることを見つけてそれをひたすら鍛え上げて伸ばしてきた……。弱肉強食、自然淘汰が当たり前の世界で生きる彼らにとって、生き残るための努力を欠くことは許されなかったんだ。生きる努力を怠ることはすなわち、自身の滅びにほかならないのだから。

 

「……見えてきたな」

 

「わぁ……!」

 

タマミツネのテリトリーに入ったのか、アカイさんがそう呟いた。それまでアカイさんの方を見ていた私は目線を正面に戻し……思わず感動してしまった。

 

咲き乱れる花を彷彿とさせる白と菫が美しい鱗。

胴体や尻尾などを覆う濃紫色の体毛。

そして頭部や背中から生える花弁のような大振りなヒレ。

 

目を閉じて寝息を立てているキツネ顔のポケモン……あれが、タマミツネ。その姿は周囲を漂い、光を反射して色彩鮮やかな多量の泡の中心に、まるで大輪の花が咲いたかのように錯覚してしまいそうな幻想的な美しさを放っていた。こんな光景を見せられれば、思わずため息も溢れるというものだ。

 

「綺麗……」

 

「すっげぇ……!」

 

「あぁ……オレも報告では聞いていたが、直に見るのは初めてだ……!」

 

「な、なんという美しさなんでしょうか……!キュウコンに勝るとも劣らぬ……いや、ともすればそれ以上の美しさなのです!」

 

「ククク……お気に召したようでなによりだよ。我が地元でも、タマミツネはその美しさから女性人気が高くてね。他には、絵師や舞踏の名手なんかが、タマミツネの姿を絵に残そうとしたり、素材の一部を欲しがったりなんかするな」

 

「あれ見たら納得するよ。ムラに連れて帰ったら、すごく人気が出そうだな」

 

先輩がうんうんと頷きながらそう言った。かくいう私も、先輩に激しく同意する。タマミツネは間違いなく、人気が出ること間違いなしのポケモンだ。

 

「ジンオウガ!」

 

「ワオウッ!」

 

私はジンオウガを繰り出した。……宿敵と思しきラギアクルスを出して、下手にタマミツネを興奮させてはいけないと判断した上での選出だ。ジンオウガが、一歩一歩タマミツネに近づいていく。その際、泡に触れたことで割れてしまい、タマミツネが即座に覚醒した。

非常に嫋かな動作でゆっくりと上体を起こし、ジンオウガを睨みつける。そんな姿ですら美しさを感じるのだから、まさに生きる芸術である。

 

「……さあ、第二の試練の始まりだ。

相対するは妖艶なる舞……月下泡影・タマミツネ。

彼の者が魅せるは夢幻の舞、それは汝の死を映す超絶技巧。

泡沫に呑まれ舞い散るか……はたまた君の舞が上回るか。

踊り狂うがいい!どちらかが果てるまで!!

 

「コオオォォォォォォンッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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タマミツネが大きく咆哮すると、尻尾を頻りに地面に擦りつけているのが目に付いた。……!擦ったそばからもう泡が立ち始めている……!泡を増やされる前に攻撃しないと!

 

「ジンオウガ!きりさく!!」

 

「ワオンッ!!」

 

ジンオウガは一息でタマミツネに飛びかかり、右前足を振り下ろした。しかし、タマミツネは地面を滑るように高速移動してジンオウガの攻撃を躱してしまった!攻撃を外したジンオウガは足元の泡のせいで踏ん張りが効かず、着地時に盛大に滑っている。幸い、コケることはなかったものの、かなり動きにくそう……!

 

「今度は素早く、かみなりパンチ!」

 

「ウオンッ!!」

 

「……!クォオオンッ!!」

 

早業のかみなりパンチだけど、これも躱された……!今度はタマミツネから反撃の泡が放たれた。

 

「あれがタマミツネの得意技、妖泡(ようほう)だ」

 

「躱して!!」

 

「ワンッ!」

 

「よしっ、アイアンテール!!」

 

「ウオオオンッ!!」

 

「コォンッ!」

 

タマミツネの泡を回避し、アイアンテールで攻撃!タマミツネもアクアテールで応戦し、尻尾同士が激突する……なっ!?

 

「キャウンッ!?」

 

「ジンオウガ!」

 

「コオオォォォンッ!!」

 

「ギャウウウッ!!」

 

尻尾同士で鍔迫り合いになった直後だ。ジンオウガは泡で踏ん張りが効かないせいで、タマミツネの尻尾に押し出されるようにしてコマのように半回転してしまった!そうして背中を晒した隙を突かれて、タマミツネのれいとうビームが直撃してしまった……!

どうにかして泡を吹き飛ばさないと……!そうだ!!

 

「ジンオウガ!10まんボルトをばら撒いて!!」

 

「……!ワオオオオンッ!!」

 

ジンオウガの10まんボルトが、辺り一帯に放たれる。その電撃に触れた泡は次々と破裂して消滅していった。さらに、自ら電撃を放つことで体に纏わりつく泡も消えていった……この性質を利用すれば!

 

「ほう……泡そのものにも、タマミツネのタイプ相性が反映されているのか?弱点での攻撃なら、泡を消し飛ばすことが出来るようだ」

 

アカイさんが後ろでそう呟いているのが聞こえた。……つまり、タマミツネが弱いでんき、くさ、どくの三タイプの技なら、泡を強引に突破できるということ!そして、ジンオウガにはタマミツネの泡攻略に最適な技を持っている!!

 

「ジンオウガ!ワイルドボルト!!」

 

「ウオオオオォォォォォンッ!!」

 

「クォォォオオオオオオンッ!!」

 

電撃を纏いながら突進するワイルドボルトなら、泡を吹き飛ばしつつタマミツネに接近できる!タマミツネもウェーブタックルで対抗してきた!両者が激突し、激しく爆発を起こした。煙の中から飛び出した二匹は、まだまだ余裕綽々……勝負はこれからだ!

今度はタマミツネが動いた!大きく跳躍してステップをすると、一気にジンオウガに接近してきた!着地と同時に体をひねると、そのまま水を纏った尻尾を振り下ろしてきた!アクアテールか!

 

「メガホーン!」

 

「ウオンッ!」

 

ジンオウガのメガホーンで、タマミツネの尻尾を受け止めた!けど、タマミツネからは絶えず泡が発生している……ジンオウガの体にも、泡が纏わりついて来た……!タマミツネはアクアテールをそのままに再び跳躍して距離を取ると、そのまま泡を使って滑りながら接近、再びアクアテールを放ってきた!

 

「かみなりのキバで受け止めて!」

 

「ワオンッ!」

 

「キュオンッ!?」

 

迫り来る尻尾をかみなりのキバで受け止める!タマミツネも驚愕で動きを止めた!今がチャンス!!

 

「これなら外さない……!かみなり!!」

 

「ワオオオォォォンッ!!」

 

「キュアアアアァッ!?」

 

よしっ、直撃!効果は抜群だ!!

 

「コオオォォォオンッ!!」

 

「ワウウッ……!」

 

だが、タマミツネも負けていない……!ハイドロポンプで強引にジンオウガを吹き飛ばすと、そのまま一気に距離を取られてしまった。

 

「おしいっ……あのまま押し切れると思ったのに」

 

「そうは問屋が卸さんよ。タマミツネとて、弱肉強食を生き残ってきた生態系上位種だ。ジンオウガをはじめとする、多くの強敵と凌ぎを削ってきた……決して弱い個体ではない。

今は、ジンオウガの力にショウという頭脳が加わったことで、戦略的に有利に立てているに過ぎない。この中洲が泡で満たされれば満たされるほど、タマミツネの有利になるのだからな。それを効率的に潰しているショウたちが有利なのは、言うまでもない」

 

タマミツネの機動力の源である泡……確かに、意識して潰すようにしてはいるけど、それが功を奏していたみたい。

 

「……クォン!」

 

タマミツネが泡で滑りながら、その場で大回転を始めた。それに伴って、大量の泡が周囲に放たれる。泡が増えれば増えるほど、タマミツネの機動力がどんどん増してくる……なんとしても潰さないと!

 

「クォォオオオオンッ!!」

 

タマミツネの口にエネルギーが込められて……あれは、ムーンフォース!マズイッ!!

 

「チャージビーム!」

 

「ワンッ!」

 

チャージビームで撃ち落とそうと試みるも、ムーンフォースは止まらない……!

 

「ならば、はどうだん!」

 

「ワオンッ!」

 

チャージビームで攻めの力が上昇し、ムーンフォースも勢いが減衰した今ならはどうだんでも撃ち落とせる!ジンオウガが放ったはどうだんはムーンフォースと衝突し相殺した!爆発したことで煙に巻かれ、視界が……!

 

「ギャウウンッ!!」

 

「ジンオウガ!!」

 

その直後だ!煙の中を突っ切って、はかいこうせんがジンオウガに直撃した!ジンオウガは……よかった、まだまだ大丈夫だ……!

 

「一気に行くよ、ジンオウガ!らいこうだん!!」

 

「ワオン!ワオォン!!」

 

「……ッ!!」

 

電力を充電し、左右から一つずつの雷光弾を放つ!弧を描いて迫ってくる雷光弾を、タマミツネは弾と弾の間を縫うように這って躱してきた……けど、読み通り!

 

「ライジングテール!」

 

「ウオォンッ!!」

 

「ギャアンッ!?」

 

「続けて、どくづき!!」

 

「ワンッ!」

 

「キュアアッ!」

 

ライジングテールがタマミツネの顔に命中!飛び上がった勢いでどくづきを上から叩き込む!!いいぞ、かなり大ダメージだ!!

ジンオウガがバックステップで距離をとり、タマミツネが緩慢とした動きで体を起こす。かなり弱っているな……。

 

「……っ!ショウ!またあの光だ……!」

 

「!!」

 

時空の歪みから、またしても光の線が伸びてきた!光の線はタマミツネの胸元まで伸びてくると一瞬にして色が変わった。そして――。

 

「!?クッ、アァ……キュアアアアンッ!!」

 

タマミツネが一瞬で光に包まれ、姿が変わり始めた!

 

「メガシンカ……!」

 

「来るか、【天眼】……」

 

やがて……姿が顕になったタマミツネは、すっかり姿が変わっていた。

 

23m半から2mほど大きくなった体長。

赤く染まった体、より大きく発達したヒレや触角。

最大の特徴とも言える、それぞれに大小の傷を持つ両目。

 

「コオ"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ンッ!!」

 

大きな傷を持つ左眼から水蒸気が立ち昇り、青く輝きながら陽炎の如く妖しく揺らめいている……これが、メガタマミツネこと【天眼タマミツネ】……!!

 

「コオオオンッ!!」

 

いきなり仕掛けてきた……!凄い速さで接近してくると、左爪でジンオウガを切り裂いたあと、その勢いで体をひねりながら尻尾を叩きつけてきた!!

 

「ギャウウッ!!」

 

「ジンオウガ!10まんボルト!!」

 

「ウ、オオォォン!!」

 

反撃の10まんボルトを放つが、メガタマミツネは素早く離脱して攻撃を躱した!速い……さっきよりも断然、動きが違う!

 

「先ほどの動きはメガタマミツネの先制技、螺旋爪(らせんそう)だな。他にもほのおタイプの泡である狐火泡(きつねびあわ)ブレス、カウンター技である泡纏(ほうてん)、泡を纏いながら大回転しつつ尻尾を叩きつける水月(すいげつ)などがある」

 

「とんでもなく多芸だな……コイツは手強そうだぜ……」

 

ジンオウガたちのような固有の技が、そんなにも……。ディノバルドも燃える尻尾を叩きつける「バーニングテール」や急所に当たりやすくやけど状態にもできる「ブレイジングスラッシュ」、ベリオロスにも放った居合い切りのような大技「灰燼滅殺抜刀斬(かいじんめっさつばっとうざん)」などがある。

メガシンカしたタマミツネは、その素早い動きでジンオウガを翻弄しつつヒット&アウェイで絶え間なく攻撃を仕掛けてきている。ジンオウガも反撃の隙を探っているけど、泡を通じてこちらの動きが読まれているせいでほとんど何も出来ないでいる……!

 

「(このままじゃ!……え!?)」

 

「……!なんだ、ショウのポーチが光り始めたぞ!?」

 

「おぉ!あの光は、もしや……!!ショウくん、光っているものを取り出すのです!」

 

どうすれば……そう考えていると、突然ポーチが光り輝き始めた。……いや、正確にはポーチの中にあるものが光っている……?

ラベン博士に言われるまま、私は慌ててポーチの中を手探ると光を放っていたものを取り出した。

 

「(これって……)」

 

「あ!!あれは……」

 

「テルくんとテッカンさんが突貫工事で作り上げたメガリング!」

 

ラベン博士の言うとおり、私が取り出した光っているものというのは、腕輪型のメガシンカデバイス、メガリング。ラベン博士が「せっかくキーストーンとメガストーンが両方あるんだからデバイス作るっきゃねえっしょ!(意訳)」と言い出したのが始まりで、クラフト名人のテル先輩とクラフト屋店主のテッカンさんの二人が、ラベン博士からざっくりとしすぎたメガシンカデバイスの説明を聞き、ああでもないこうでもないと試行錯誤を繰り返しながらようやく完成した代物だ。私の手首の大きさを測ったり、ジンオウガの首周りやリオレウスの尻尾周り、ディノバルドの背中の突起周りの長さを測ったりと、すごく大変そうだったなぁ……。

そうして完成したメガリング……そこに埋め込まれたキーストーンが輝いている……これって、まさか?

 

「ショウくん!今ならきっとできるのです!ジンオウガのメガシンカが!!」

 

「……!はいっ!!」

 

私はメガリングを左手に装着し、構えを取る。訓練中、何度もメガシンカを試そうとしたけれど、実は一度も成功したことがない。それどころか、キーストーンが今のように反応したことすらなかったのだ。もしかして、ジンオウガが超帯電状態を普段使いしないことと同じ理由なのかな……?

 

「行くよ……ジンオウガ!」

 

「ウオンッ!」

 

私がメガリングのキーストーンに触れると、そこから光が溢れてくる。その光に合わせて、ジンオウガの首に首輪として取り付けられたメガストーンが光り輝き始めた!

 

「スゥー……我が心に応えよ、キーストーン!進化を超えろ……!

ジンオウガ!メガシンカ!!

 

「ウオオオォォンッ!!」

 

拳を高く突き上げ、ジンオウガと心を一つにする……!私のキーストーンと、ジンオウガのメガストーンから光が伸びて結びつき、ジンオウガが光に包まれた!!

体に変化が現れ始め、ジンオウガの姿が変わっていく……!ついに、姿が顕になった!

 

さらに一回り大きく変化した体長。

目も眩まんばかりの黄金色に輝く体毛。

異常に発達した豪壮な右角。

全身を走っている、圧倒的な存在感を放つ黄金の雷光。

 

「ウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ンッ!!」

 

メガシンカ……できた!!

 

「で、できたぁーっ!!」

 

「すごいのです!ショウくんのキーストーンとジンオウガのメガストーンが共鳴する姿……しっかりと記録したのです!」

 

「おいおい……本当にさっきのジンオウガなのか?まるで別のポケモンみてぇじゃねえか」

 

「これこそが、ジンオウガがメガシンカした姿……メガジンオウガ!

またの名を……【金雷公ジンオウガ】!!見事だ、ショウ!やはり君は、選ばれし存在なのだな!!」

 

【金雷公ジンオウガ】……!!アカイさんが以前から言っていた、ジンオウガのメガシンカした姿……かっっっっっこいいっ!!

金雷の名のとおり全身を駆け巡る黄金の雷光が、ジンオウガがこれまで以上により強力な力を得たことを示している……これなら、例え相手がメガシンカした巨大ポケモンだろうと、勝てるっ!!

 

「さあ……勝負はここからだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ジンオウガ!らいこうだん!!」

 

「ヴオォンッ!!」

 

メガジンオウガが放った雷光弾は、それまでとまるで異なる性能になっていた!放たれた雷光弾は地面に向かって飛んでいき、着弾するとその場に留まって放電を続けている!

周囲にばらまかれた雷光弾を感知しているのか、そちらへ顔を向けたメガタマミツネは、動きを阻害されることを嫌がったのか、高速で移動を始めた。かなり速い……けど、メガジンオウガはメガタマミツネの動きを完全に把握している!メガタマミツネの動きを、しっかりと目で追えている!

メガタマミツネが、ウェーブタックルを仕掛けてきた!けど!!

 

「らいそうしでん!!」

 

「ヴァオオオンッ!!」

 

「ギュアアアッ!?」

 

メガタマミツネの突進を後方宙返りで回避し、真下に潜り込む形になったメガタマミツネに雷電を纏った前足を叩き込む!!効果は抜群!!これはかなり効いてるぞ!!

 

「コオオオンッ!!」

 

「グウウゥッ……!」

 

だが、メガタマミツネも負けていない。迎撃に放ったマジカルシャインを確実にメガジンオウガにぶつけ、さらに自身は素早くメガジンオウガから距離をとった。やはり、簡単には勝たせてくれないか……!

 

「メガホーン!!」

 

「ワオオオォォンッ!!」

 

メガジンオウガがメガホーンを構えて、一気に突撃する。対するメガタマミツネは……!?体をとぐろを巻くように構えている……!さらに、周囲に無数の泡を展開している……その泡にジンオウガが触れた、その時だ!

 

「コォオオオオオンッ!!」

 

「ガウッ……!!」

 

「ジンオウガ!!」

 

タマミツネが素早く垂直に飛び上がると、背中と尻尾を使ってジンオウガを圧し潰してきた!まるでジンオウガの轟雷跳弾にそっくり……!

 

「アカイさん!今のは!?」

 

「メガタマミツネが持つカウンター技の一つ、泡翔(ほうしょう)だな。泡に触れた相手を感知し、反撃をする。泡翔はご覧の通り、垂直に飛び上がって背中と尻尾を使い、広い範囲でもって相手を圧し潰す。

他には身体をくねらせながら物凄い勢いで突っ込んでくる螺旋爪の派生技、泡旋(ほうせん)。そして、泡の感知に反応して螺旋爪を放つ泡纏……これら三つのカウンターを、メガタマミツネは得意としている。

泡による感知能力を高めた、メガタマミツネだからこそできる芸当だな」

 

テル先輩の質問に、アカイさんが丁寧に答えた。三つもカウンター技を持つのか……それも、すべてが泡を使った技!割れた衝撃を感知するとも言うし……近距離遠距離問わず、泡を纏ったメガタマミツネには注意しないと!

 

「クオオォォォン!!」

 

……!青い泡……狐火泡ブレスか!!

 

「撃ち落としてジンオウガ!チャージビーム!!」

 

「ワオウッ!」

 

メガジンオウガがチャージビームで泡を撃ち抜くと、次々と爆発を起こした!……いや、危険すぎる。あの泡をばらまかれたら、動きにくくなってしまう……!!

 

「はどうだん!」

 

「ウオォン!!」

 

「コォオオンッ!」

 

メガジンオウガのはどうだんに対し、メガタマミツネは物凄く細く鋭いみずでっぽうを放ってきた!高圧水鉄砲、かな。その一撃ははどうだんを打ち消してメガジンオウガに命中した!つ、強い!

 

「ギャウンッ!!」

 

「負けないでジンオウガ!しねんのずつき!!」

 

「……!ワオオンッ!!」

 

メガジンオウガが一気に突撃をする!泡が割れたことでメガタマミツネもメガジンオウガの位置を的確に把握し、先ほどの水鉄砲をチャージしたかのような単発の水鉄砲を放ってきた!でも、甘い!!

 

「今だ!ワイルドボルト!!」

 

「ウオオオォォォンッ!!」

 

「キュアアアッ!?」

 

私の指示を聞いたメガジンオウガは即座に使用技を切り替えてワイルドボルトを発動した!電撃を纏ったジンオウガは単発のチャージブレスを突破すると、そのままタマミツネに体当たり!!攻撃は命中した!!

 

「グウゥゥ……!!」

 

……!タマミツネが距離を取ると、一気に跳躍!体をひねりながら着地すると、その勢いのまま回転をし始めた!!さらに回転が増せば増すほど、体を覆う泡の量が爆発的に増えていく……!!

 

「気をつけろ、ショウ!メガタマミツネの大技の一つ、水月だ!!」

 

「……!ならば……!!」

 

アカイさんの警告が後ろから飛んでくる。メガタマミツネが大技を使ってくるなら、こっちだって……!メガシンカしたことによって会得した新技にして大技で迎え撃つ!!

 

「ジンオウガ!!せんしょうらいせん!!」

 

「ワオオオオオオンッ!!」

 

尖衝雷閃(せんしょうらいせん)!電撃を纏った右角で、相手を打ち上げるように突き込む技!回転しながら迫り来るメガタマミツネに向かって、電撃を纏いさらに巨大化した右角を振りかざしたメガジンオウガが突撃する!!

両者がぶつかり合い、力と力の比べ合いになる……!!

 

「おそらくだが、水月はフェアリータイプの技。対して尖衝雷閃もでんき技……どちらも弱点タイプの技同士のぶつかり合いだ。この勝負、先に根を上げたほうが負けだな」

 

アカイさんのそんな言葉が聞こえると同時に、メガジンオウガが徐々に押し込まれ始めた……!

 

「……っ!負けるなぁ!!ジンオウガァーー!!」

 

「……ッ!!ウ"オ"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ンッ!!」

 

「!?!?!?!?」

 

メガジンオウガが……押し切った!!そのまま角をメガタマミツネに突き込んだジンオウガは勢いそのままに崖に向かって突っ込んだ!!バックステップでこちらまで戻ってくると、煙の中からメガタマミツネがゆっくりと姿を現した……だが!

 

「…………」

 

「…………」

 

「……キュウ……」

 

しばしの睨み合いの後、メガタマミツネは倒れた!!姿が元のタマミツネに戻ったのを確認した私はすぐにモンスターボールを投げた!

 

「行け!!」

 

モンスターボールはタマミツネを格納し……無事、捕獲!!

 

「タマミツネ、捕獲完了!!」

 

私がボールを拾いに行くと、ディノバルドの時と同様、メガストーンが落ちていた。タマミツネのメガストーン……大事に保管しないと。

 

「やったぜ!ショウ!!」

 

「おめでとう、ショウくん!お見事なのですよ!!」

 

「あぁ、おめえなら大丈夫だって信じてたぜ!!」

 

先輩たちが次々と駆け寄って、私に賛辞の言葉を送ってくれた。初めてメガシンカができたこともあって、喜びも一入だ!

時空の歪みも、ちゃんと消滅した。紅蓮の湿地の任務、完全完了だ!

 

「ワン」

 

「ジンオウガもありがとう!」

 

「ワンワン!」

 

ジンオウガも、バトルが終わったからか元の姿に戻った。……も、もうちょっとだけメガジンオウガを見ていたかったのになぁ……。

 

「クックックッ……いやはや、君には脱帽だよ、ショウ。二匹目のポケモンを捕らえるどころか、まさかメガシンカすら果たしてしまうとは……。きっと、君は君自身が思っている以上に特別なのかもしれないな」

 

「そ、そんな……私なんて、全然です。ジンオウガたちの助けがあってこそ、ディノバルドもタマミツネも捕獲できたんですから」

 

「そうか。……あぁ、だがそれでいい。人間など、一人で出来ることなどたかが知れている。人間同士、あるいはポケモンと共に……力を合わせ共存共栄を成すことが出来ることこそ、人間の強みだ。

その強みを存分に活かせることは、間違いなく君の長所であり魅力だ。君と勝負を交え、そして敗れていった全ての者を代表して言おう。誇ってくれ、それが手向けだ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

な、なんかすごく照れちゃうな……。見れば、私と勝負したことのあるテル先輩とセキさんも、アカイさんの言葉に同意するように頷いている。うぅ……う、嬉しいんだけど恥ずかしいような……うん、とにかく照れるよコレ!

 

「さて……私は一足先に、群青の海岸と純白の凍土の様子を見てくるとしよう。皆はゆっくりとムラに戻るといい。私も、時空の歪みと内部のポケモンの様子を確認したら、すぐに戻ってくる」

 

「アカイさん、気をつけて」

 

「あぁ、ありがとう」

 

アカイさんは再び、一足先に立ち去っていった。……さて!私たちも帰ろう!!まずはベースキャンプに移動しないと!

 

「……そうだ。オレも一度、集落に戻っていいか。時空の歪みが消えたのは見えていただろうが、やっぱり直接オレから伝えてやりたいからよ」

 

「それくらいならば、大丈夫なのです。では、後でベースキャンプにて合流しましょう!」

 

「おう。それじゃあショウ!紅蓮の湿地を、オレたちの集落を守ってくれてありがとうな!また後でな!」

 

「はい!」

 

セキさんともここで一旦別れ、私たちはベースキャンプへと戻っていった。

……まさか、ここから予想外すぎる波瀾万丈が待ち受けているとも知らずに。

 

 

 

 




タマミツネ戦、無事終了!
次はシロちゃん率いるレジェアル未実装600族ドラゴンパ……って、メンバーは限られてるよなぁ。

シロちゃんの手持ちは次回の前書きにて紹介します!
とりま、明日は続き……ではなく、まる一日使ってサンブレイクやります。


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メイン任務:紅蓮に咲く妖艶なる舞 最終演目~演舞・竜ノ舞~

つづいてシロちゃん戦です!


無事にタマミツネを捕獲し終えた私たちは、一度ベースキャンプへ戻った。その際、セキさんは事態収束の件を直接伝えるべくコンゴウ集落へ立ち寄るとのことで、私たちはしばらくベースキャンプで待つことにした。

 

「……ふむふむ、ありがとうございます!」

 

今、コトブキムラから伝令が来ていて、ラベン博士が話を聞いていた。ちょうど話し終えたところで、ラベン博士が私たちの方へと戻ってきた。

 

「どうやら変わらず、他の地域の時空の歪みの拡大が一時停止したようなのです。いつまで停止するかはわかりませんが、しばらくは肩の力を抜いてもよさそうですね」

 

「ふぅ~……。なにはともあれ、しばらくは休憩だな!」

 

「そうですね」

 

やはり時空の歪みと巨大ポケモンは強い因果関係にあるのだろうか。時空の歪みから放たれた光が、巨大ポケモンをメガシンカさせているのも、きっと無関係ではない。……そう考えると、この時空の歪み……偶然や自然ではなく、時空の裂け目の時と同じで何者かによって引き起こされたような……作為的な何かを感じる。

……まあ、ここで考えていても仕方がない。ムラに帰ってから、色々と考える事にしよう……。

 

「……おーい!」

 

「……?この声、シロちゃん……?」

 

どこからか声が聞こえ、そちらへ振り向くとシロちゃんがこっちに向かってきていた。ただ……

 

白銀に輝く美しい体毛。

足や胴に描かれた黒い稲妻模様。

何よりも目を引くのは額から伸びる青水晶のような鋭い一本角。

 

そんな神々しささえ感じさせる幻想的な容姿を持ったポケモンに騎乗してやってきたのだ。シロちゃんの容姿とも相まって、まるでこの世のものとは思えない……そう、絵にも描けない美しさを放っていて、一国のお姫様のようにも思える。

シロちゃんはポケモンから飛び降りると一目散にこちらへ駆けてきて思い切り抱きついてきた。

 

「シロちゃん!」

 

「やっほー、お姉ちゃん!紅蓮の湿地の時空の歪みも、無事に解決できたんだね!」

 

「ポケモンたちが頑張ってくれたし……なにより、ジンオウガがメガシンカできたんだ!シロちゃんにも見せてあげたかったなぁ」

 

「えぇー!本当に!?それは見たかったなぁ!

 

「あはは。……えっと、シロちゃん。このポケモンは?」

 

「あ、この子?」

 

シロちゃんが振り返ったときには、すでにポケモンは目と鼻の先にいる。体長は……6mくらいかな。それほど大きいポケモンではないようだけど……。

 

「この子は『キリン』。古龍種なの」

 

「こりゅう……?」

 

「そう!この世界に生きるあらゆる生物の中でも無比の存在とされる圧倒的な生命力と寿命、そして特異な能力を有するポケモンたち!

"存在自体が例外"とでも言うべき絶対者。振るうは天災に匹敵するほどの力。正に意思を持った天災、生ける環境そのもの……それが、我らが古龍たる所以なれば。脅かすことなかれ、辱めることなかれ、見縊ることなかれ。畏れよ、震えよ。努努、忘れるな。祖は常と我らを見ている」

 

「えっ……と……?シロ、ちゃん……?」

 

「……って、言い伝えがあるんだぁ♪」

 

「あ、うん」

 

びっくりした……。なんか、急に雰囲気がガラっと変わって、まるで別人みたいに語り始めたときはものすごく驚いた……。けど、話し終えるといつものシロちゃんに戻った。……シロちゃんって、形から入るタイプなのかな?

 

「……じゃあ、このキリンって子は、実はめちゃめちゃ危険生物……?」

 

「だねぇ。雷とか自在に操れるし、一部の地域じゃあ落雷の現象そのものが実はキリンの仕業って考えているらしいし。まぁ、古龍種っていわゆる"自然現象の具現化"みたいなものだから、そう考えても無理はないかな」

 

「そうなんだ……」

 

でもこのキリンって子……さっきからシロちゃんにすんごい目線を送ってるけど。なんていうか……言葉にするなら「お前が言うな」とばかりのジト目で。

 

「そうだ!歪みを解決したってことは、しばらくは自由時間なんだよね?久しぶりにポケモン勝負したいな」

 

「ポケモン勝負か……」

 

私はチラリ、と博士たちの方へ振り返る。

 

「まだまだ時間に余裕があるので、大丈夫ですよ」

 

「おれと博士で報告書をまとめとくから、ショウは気分転換に勝負してこいよ」

 

「……はい、わかりました!それじゃあ、シロちゃん。勝負しよっか」

 

「そうこなくっちゃ!大口の沼の崖の上で待ってるよ!行くよ、キリン!」

 

「ブルル……」

 

シロちゃんが元気よく声をかけるが……なぜかキリンは「えぇ~……」と言いたげに引き気味だ。……あれ?キリンってシロちゃんのポケモンじゃないの?

 

「むぅ……なんで文句ばっかり言うの!」

 

「ヒヒィーン!!」

 

「いいでしょ、別に減るもんじゃないし。たまには人間を乗せて走ることを覚えておいたほうがいいよ、損はないし」

 

「ブルルル……」

 

散々渋ってから、キリンはゆっくりと腰を下ろした。シロちゃんがその背に乗ったことを確認すると、静かに立ち上がった。

 

「それじゃあ、お姉ちゃん。待ってるね。キリン、レッツゴー!」

 

「ヒヒィーン!」

 

シロちゃんの合図と同時にキリンが大きく前足を踏みしめた……直後、目の前に雷が落ちてきて、一瞬の間にシロちゃんとキリンの姿が消えていた。えぇ……?

 

「消えた……」

 

「いや、瞬間移動じゃん……」

 

私は思わずつぶやき、先輩も静かにツッコミを入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

私はすぐにポケモンの選別を始めた。

ダイケンキとミミロップは確定として……問題は、シロちゃんがどんなポケモンを使うのか、だ。前回の勝負と同じなら、またドラゴンタイプ統一パーティだろう。ドラゴンにはドラゴン……だけど、ドラゴン技が効かないフェアリーの方が、相性的には有利かな。手持ちにはちょうどサーナイトもいる……シロちゃんには申し訳ないけど、ドラゴンタイプに対してメタを張って……いや、待て。

そうは言うが、前回の勝負ではどうだった?対ドラゴンタイプ技を覚えたポケモンやフェアリータイプのトゲキッスがいたにも関わらず、最後は三対一から極みダイケンキの力でギリギリ勝利をもぎ取ったようなものだ。メタを貼るだけではダメだ、タイプ相性だけじゃなくポケモンの能力とかにも着目しないと……。

そんなわけで私が選出したメンバーは極みダイケンキ、舞兎ミミロップ、ガチグマ、サーナイト、トゲキッス、アローラキュウコンとなった。……うぅ、結局メタを張っちゃった……フェアリー三体とか、"絶対ドラゴン倒すパーティ"じゃん……。シロちゃんのことだから、フェアリーの苦手タイプの技を覚えたポケモンは絶対にいるはず……気を付けないと。

しっかりと準備を終えた私は早速現地へ向かった。大口の沼の崖の上といえば……オヤブンリングマがいる場所かな。そこへ向かってみると、予想通りシロちゃんが待っていた。

 

「おまたせー」

 

「待ってたよー!」

 

「ところで、このへんって確かオヤブンって呼ばれる大きくて強いポケモンがいたと思うけど……」

 

「……それって、あれ?」

 

そう言ってシロちゃんが指をさした先に、オヤブンリングマがいた。……近くに生息しているヒメグマたちと集まり固まって、こっちを見て震えている。……いや、何があった。

 

「こんにちはー、って挨拶しただけなのに、すごい勢いであんなところまで逃げて行っちゃった。失礼しちゃうなぁー……ねぇ、キリン?」

 

「ヒヒン……」

 

キリンはなぜか困ったような表情でシロちゃんを見ている。キリンは古龍種と呼ばれる超強力な個体らしいから、オヤブンとはいえ普通のポケモンに過ぎないリングマがビビって逃げてもむしろ何らおかしなことはないのでは……?

 

「えへへ!それじゃあ、早速勝負しよう!今度はあの時よりも強いドラゴンポケモン用意してきたから!」

 

あぁ、やっぱりドラゴン統一か……けど、あの時バトルしたドラゴンたちだって十分強力なポケモンだったのに、さらに上がいるのか……。

 

「こっちだって、そう来ると思って対ドラゴン対策、しっかりしてきたよ」

 

「ふふん。苦手なポケモンをたくさん連れてきて、それで対策なんて言わないでよね?こっちだって対策の対策くらい、ちゃんとしてるんだから!」

 

そう言って、シロちゃんはあの時と同じ不思議な空間から金属製のモンスターボールを取り出した。……本当に不思議なことしかしないなぁ、この子は……。

 

「さぁ、最初のポケモンを出そう!いっせーの、せっ!で!」

 

「あはは……うん、いいよ。それじゃあ、行くよ……」

 

「「いっせーの、せっ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【決戦!N】~ポケットモンスター B/W~

【塔に現る幻】~モンスターハンター2dos~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サーナイト!」

 

「カイリュー!」

 

「サァーナ!」

 

「バオオウッ!」

 

私の一体目はサーナイト、シロちゃんはカイリューを繰り出した。か、カイリューか……たしか、ワタルさん……だっけ。別地方のチャンピオン、以前にも想起したドラゴン使いのチャンピオンといえば、ワタルさんともう一人が有名だろう。私の地元は……エースポケモンはドラゴンだけど、ドラゴン使いじゃないしなぁ……。

 

「カイリュー!はかいこうせん!!」

 

「バオオ……リューッ!!」

 

のっけから大技!

 

「サイコキネシス!」

 

「サナッ!」

 

こっちもサイコキネシスで対抗する!念力と光線が激突し激しく爆発……いや、はかいこうせんが突き抜けてきた!

 

「サァ……!」

 

「サーナイト!大丈夫?」

 

「……サァナ!!」

 

よかった……ある程度はダメージを減衰できたみたい。けど、とんでもないパワーだ……真正面からの撃ち合いは押し切られるかもしれない……!

 

「サーナイト、れいとうビーム!!」

 

「サーナッ!」

 

「バウッ……!!」

 

よしっ、こっちのれいとうビームもしっかり命中した!……けど、カイリューは平然と持ちこたえている……なんて耐久力なんだ……!

 

「ドラゴン・ひこうタイプだからって、安易にこおり技を使えば勝てるなんて思わないでよね!かみなりパンチ!!」

 

「リュー!」

 

「近づけないで!シャドーボール!!」

 

「サナァ!」

 

サーナイトのシャドーボールによる弾幕を、カイリューは楽々とすり抜けてきた!いくつか放ったシャドーボールのうち、一発が直撃コースに入ったことでカイリューはかみなりパンチでシャドーボールを叩き落とした。その際にシャドーボールが爆発を起こしたことで目くらましに……今なら!

 

「力強く、ムーンフォース!!」

 

「サアァナアァッ!!」

 

煙幕の中心にいるであろうカイリューに向けて放たれた力業ムーンフォース!直撃すればただでは済まないはず……!

 

「カイリュー、正面だよ!力強く、アイアンテール!!」

 

「バオオオウッ!!」

 

「なにっ!?」

 

シロちゃんの指示に迷うことなく力業アイアンテールを繰り出したカイリュー!タイミングもばっちりだったようで、そのままムーンフォースを打ち返してきた!?ムーンフォースはサーナイトに命中し、サーナイトの動きが僅かに止まってしまった!

 

「サッ……!?」

 

「サーナイト!?」

 

「そのまま行っけえぇ!!」

 

「カイリューッ!!」

 

「……っ!素早く、れいとうビーム!!」

 

「サアァナッ!」

 

カイリューは勢いそのままにアイアンテールを振り下ろしてきた!私はすぐに早業れいとうビームを指示したけど……。振り下ろされたカイリューの尻尾とサーナイトの手元に冷気が接触し、爆発した……間に合ったか……!?

煙が晴れると……カイリューは肩で息をしていたが健在で、逆にサーナイトは目を回して倒れている……。

 

「やった!一匹目!」

 

「リュー!」

 

「くっ……戻って、サーナイト」

 

タイプ相性で有利を取ったものの……やはり苦手対策はしているかぁ……。いや、まだまだバトルは始まったばかり……ここから勢いを取り戻すしかない!

 

「ガチグマ!」

 

「グマァ」

 

私が次に繰り出したのはガチグマ。今回、対ドラゴンにドラゴンをぶつける策は愚策と判断し、ガブリアスは置いてきた。そこで代打として登用したのがこちらのガチグマ。パワー対決なら、シロちゃんの強力なドラゴン軍団が相手でも、決して引けを取ることはない!

ただ……一度手持ちから外す話をしている間も、ガブリアスがどこか上の空だったのは少し気になった。まるで考え事……ううん、悩みに耽っているようで、どこか心配だな……このバトルが終わったら、しっかりメンタルケアをしなくちゃ。

 

「ドラゴンダイブ!!」

 

「リュー!」

 

「受け止めて!!」

 

「グマッ!」

 

真正面から迫ってくるカイリューのドラゴンダイブを、ガチグマは後ろの二本足で立ち上がるとそのまま頭から押さえつけにかかった!はじめは押され気味だったけど、あっという間に動きを完全に封じ込めた……!

やっぱりパワーはジャスティスだよ!

 

「リュッ!?」

 

「えっ、ちょ」

 

「れいとうパンチ!!」

 

「グアァ!グマアァ!!」

 

「グオアッ!!」

 

「あっ、カイリュー!?」

 

ガチグマのれいとうパンチがカイリューの顎を思い切り勝ち上げた!打ち上げられたカイリューはシロちゃんの目の前に落下……目を回して倒れている!

 

「あぁ……やっぱり交代すればよかった。戻って、カイリュー」

 

「こっちも一匹、倒したよ」

 

「うんうん、いい勝負だよね!それじゃあ次は……ヌメルゴン!!」

 

「ぬめぇ」

 

シロちゃんが繰り出したのはヌメルゴン……って、え!?

 

「か、殻がない!?」

 

「えへへ……そう!別の地方のヌメルゴンだよ~」

 

「ぬめめぇ~」

 

シロちゃんのヌメルゴンには殻がなかった!そういえば、博士が作った図鑑にもヒスイの姿って書いてあった……まさか、これが原種なの?殻がない分、物理防御は下がってそうだけどその分身軽になってそうだな……。

 

「ガチグマ、気をつけてかかろう」

 

「グマグマ」

 

「よしっ……ぶちかまし!!」

 

「グマァ!!」

 

「ヘドロばくだん!!」

 

「ぬめぇ!」

 

ガチグマが突撃を始めると、ヌメルゴンはヘドロばくだんで弾幕を張ってきた!ガチグマはなんとか攻撃を回避しつつ、確実にヌメルゴンへ迫っていく!攻撃を繰り出すためにガチグマが力強く踏みしめた、その時だ!

 

「ここ!ヌメルゴン、きあいだまだよ!」

 

「ぬめらぁ~!」

 

「グマッ!!」

 

ほぼゼロ距離まで迫ったところで、ヌメルゴンがきあいだまを放ってきた!避けるには余りにも近づきすぎたため、ガチグマは直撃してしまった!吹っ飛ばされてこちらまで押し戻されたガチグマ……大丈夫、まだ戦える。

 

「戻って、ガチグマ!」

 

「グマ」

 

「行って!キュウコン!!」

 

「コンコン!」

 

私が繰り出したのは、アローラキュウコン!こおりとフェアリーという、対ドラゴンに特化したタイプを持つキュウコンなら、前に戦ったジュラルドンみたいなポケモンでなければ簡単には負けないはず。

 

「ふんふむ、アローラ地方のキュウコンかぁ……これは厄介だなぁ」

 

「とかなんとか言って、シロちゃんなら対策は欠かしていないでしょ?」

 

「もちろんだよ!戻って、ヌメルゴン」

 

「ぬめぇ」

 

ヌメルゴンを戻した……次は何を出してくる?

 

「よぉし……それじゃあ、行って!ボーマンダ!!」

 

「ボマー!」

 

うっ……ボーマンダ。また、強力なポケモンが出てきたな……けど、タイプ相性では負けていないんだ、強気で行こう!

 

「キュウコン!れいとうビーム!!」

 

「コォーン!!」

 

「ボーマンダ!力強く、かえんほうしゃ!!」

 

「マンダー!」

 

かえんほうしゃ!?対こおりも万全だったか……!

 

「コォンッ!!」

 

「キュウコン!」

 

れいとうビームを一瞬で押し返して力業かえんほうしゃが直撃……!キュウコンは……かろうじて持ちこたえた!!

 

「あら、一撃で落とすつもりだったのに……」

 

「ふぅ……よしっ、あくのはどう!!」

 

「コンッ!」

 

キュウコンが放ったあくのはどうを、ボーマンダは持ち前の機動力で振り切ろうとする。けど、あくのはどうは必中技!逃げ切れるはずがない!

 

「……ドラゴンクロー!」

 

「ボーマ!」

 

しびれを切らしたようで、シロちゃんはドラゴンクローを指示してボーマンダにあくのはどうを撃ち落とさせた……その対応を待っていた!

 

「マジカルシャインだ!」

 

「コオォーンッ!!」

 

「ボマッ……!」

 

「ボーマンダ、しっかり!」

 

「……ボーマ!」

 

フェアリー技のマジカルシャインが命中!あくのはどうに対応していたボーマンダは避けられずに攻撃を受けた!……けど、まだまだ余裕綽々って感じ。このまま継戦すべきか、それとも……。

 

「……いや、一旦戻ってキュウコン」

 

「コォン」

 

「お願い、トゲキッス!!」

 

「キィーッス!」

 

私が用意した対ドラゴンのフェアリーポケモンの最後の一体はトゲキッス。フェアリーポケモンを欠いたまま戦うわけにはいかないから、少しでも温存しないと……!

 

「いくよ、トゲキッス。素早く、エアスラッシュ!」

 

「キス、キッス!」

 

「躱して!!」

 

「ボーマッ!」

 

ボーマンダはその高い飛行能力を駆使して、こちらのエアスラッシュを難なく回避していく……!

 

「かえんほうしゃ!」

 

「マンダー!!」

 

「こっちもかえんほうしゃ!」

 

「キッスー!」

 

ボーマンダのかえんほうしゃとトゲキッスのかえんほうしゃが激突!激しく爆発した!ほぼ互角……なら、少しでもチャンスを作る!

 

「もう一度、かえんほうしゃ!」

 

「キッスー!」

 

「うふふ……ボーマンダ、ハイドロポンプ!!」

 

「えっ!?」

 

「ボーマァ!!」

 

ボーマンダのハイドロポンプ!?覚えるのその技!?ハイドロポンプはかえんほうしゃを打ち消してトゲキッスに命中!トゲキッスを墜落させた……技の判断を誤った……!

 

「キィッス……!」

 

「トゲキッス!平気!?」

 

「キスキッス!」

 

ボーマンダがハイドロポンプを使えるなら、ガチグマを繰り出すこともできない……!ここはなんとしても、トゲキッスでボーマンダを攻略するしかない……!!

 

「勝つよ、トゲキッス……!」

 

「キッス!」

 

「サイコキネシス!」

 

「キイィッス!」

 

「ドラゴンクローでぶっ飛ばせ!」

 

「ボマーン!」

 

トゲキッスのサイコキネシスが、ボーマンダのドラゴンクローで迎撃された……けど、これは本命じゃない!

 

「つづいてエアスラッシュ!」

 

「キッス!」

 

「回避!」

 

「ボマ!」

 

エアスラッシュによる風の弾幕も、ボーマンダは次々と避けていく……けど!

 

「力強く、ムーンフォース!!」

 

「キス!キイイィッス!!」

 

「……!?ボマーッ!!」

 

「ボーマンダ!?」

 

それも、全ては作戦の内!サイコキネシスで一旦足を止めたあと、エアスラッシュでボーマンダの動きを誘導し、大本命の力業ムーンフォースを叩き込む!作戦は見事に成功!ボーマンダは墜落し、戦闘不能になった!

 

「うわちゃあ……ボーマンダ、戻っていいよ」

 

「ふぅ……」

 

なんとか二体……ずっと一体のポケモンだけで勝てるほど、勝負は決して甘くはない。……だから、一体だけで全タテできるお母さんはきっとおかしい。うん、絶対。

 

「うーん……それじゃあ、ドラパルト!」

 

「ドララ」

 

……!!ドラパルト……まったく見たことのないポケモンだ!頭部が横に平たく発達していて、さらに三角状の空洞が空いた角らしき部位があって、そこにドラパルトを小さくしたような小型のポケモンが収まっている。

……あれ、あのポケモン……尻尾に向かうにつれて透けている?しかも先端に至ってはついていない……いや、消えているという表現が正しいのか、先端がどこにも見当たらない。翼もないのに見事な滞空能力……ゴーストポケモンっぽいけど、果たして……?

 

「油断しないで、トゲキッス。ムーンフォース!!」

 

「キイィーッス!」

 

「ゴーストダイブ!」

 

「ドラ」

 

トゲキッスが放ったムーンフォースは、しかしドラパルトのゴーストダイブによって回避されてしまった!な、なにあれ……まるで、ギラティナのシャドーダイブのような技だ!ドラパルトはどこに……!

 

「トゲキッス!上!!」

 

「キス……?キイィッス!?」

 

「ドラッパー!」

 

一瞬でトゲキッスの上に出現したドラパルトは、そのまま尻尾をトゲキッスに叩きつけてきた!

 

「くっ……素早く、エアスラッシュ!」

 

「キッ……キィッス!!」

 

「サイコファング!」

 

「ドララララ!!」

 

かろうじて空中で体勢を立て直したトゲキッスは、すぐに早業エアスラッシュを放った。けど、ドラパルトは素早さもかなり高いのか、トゲキッスのエアスラッシュを躱しながらグングンと迫ってきて、サイコファングで思い切りトゲキッスに噛み付いた!

 

「キィッ……!」

 

「トゲキッス!?」

 

「そのまま叩きつけて!」

 

「ドラパ!!」

 

さらに体を大きく振り回したドラパルトによって、地面に放り投げられ叩きつけられてしまった!トゲキッスは……戦闘不能……。

 

「戻って、トゲキッス……!」

 

「ここから巻き返すよー!」

 

「キュウコン!!」

 

「コンコン!」

 

私は再びキュウコンを繰り出した!ボーマンダ戦でのダメージもある……はやいところ、決着をつけないと!

 

「あくのはどう!」

 

「コォーン!」

 

「ゴーストダイブ!」

 

「ドラ」

 

……!また、ゴーストダイブ!今度はどこから……!

 

「……よし、とんぼがえり!!」

 

「ドララッパ!」

 

「……!?コォンッ……!」

 

「あぁ!キュウコン!!」

 

足元の地面から姿を現したドラパルトが、今度は違う技で攻撃してきた!

攻撃を繰り出したドラパルトはそのままの勢いでシロちゃんの手元に返っていき、やがてボールの中へと収まった。一方、こちらは先ほどの一撃でキュウコンは戦闘不能に……。強い……弱点タイプのポケモンを用意するだけじゃ、全然勝てない!

 

「キュウコンも倒しちゃった。さすがにもうフェアリータイプはいないかな?」

 

「…………」

 

……先ほどキュウコンが戦闘不能になったことで、私の手持ちのフェアリータイプは全滅した。残るはガチグマ、ミミロップ、そしてダイケンキ……いや、弱気になるな!私には舞兎と極み断ち斬る二体がいるんだ!それに、勝負だってまだ終わっていない!

 

「勝負はこれからだ……!ガチグマ!」

 

「グマァ!」

 

「ふふん、それじゃあ私は……ヌメルゴン!」

 

「ぬめぬめぬめら」

 

私はガチグマ、シロちゃんはヌメルゴン……また、この対面か。けど、命中率が不安定なきあいだまを確実に当てる方法はさっき知ったばかりだ。そこに注意さえすれば……!

 

「ガチグマ、突撃!ぶちかまし!!」

 

「グッマァ!」

 

「……!りゅうのはどう!!」

 

「ぬめめら!」

 

ヌメルゴンが放ったりゅうのはどうが迫ってくる……けど!

 

「れいとうパンチ!!」

 

「グマアァ!!」

 

技にだって、タイプ相性がある!ガチグマのれいとうパンチは、私の読み通りにりゅうのはどうを打ち消した!このまま……!!

 

「力強く、ギガインパクト!!」

 

「グッマアアア!!」

 

「ヌメルゴン、力強く、きあいだま!!」

 

「ぬめめ……らあぁ!!」

 

力業ギガインパクトで突撃するガチグマに対し、力業きあいだまが放たれた!両者は激突し大爆発……煙が晴れた先では、ガチグマが力なく倒れていた……。

 

「……ごめんね、ガチグマ。戻って休んでて」

 

「うふふ……あと二体だね」

 

「そうだね……けど、この二体には結構自信あるよ、私」

 

「おぉ!それは楽しみ!ほらほら、早く出してよ!」

 

「それじゃあ行くよ……ミミロップ!!」

 

「ミミロー!!」

 

私が繰り出したのは、ミミロップ!二つ名個体に成長した、舞兎ミミロップだ!

 

「あっ!そのミミロップ!強くなった子だよね?」

 

「そうだよ!黒曜の原野で見てたよね?そのミミロップだよ!!」

 

「うわぁー!ますます楽しみ!それじゃあ、行くよ?りゅうのはどう!!」

 

「ぬめー!」

 

「ミミロップ!波導を高めて!!」

 

「ミミィ……」

 

ミミロップは耳が聞こえなくとも、私の波導から私の考えを読み取ってくれる。今回は対戦してくれるシロちゃんに配慮して、あえて声を出す。思考と発言を完全に一致させれば、澱みなく指示が出せる!

ミミロップは精神を集中させる。そうだ、精神一到……心を研ぎ澄ませ、波導を高めれば……!

 

「受け止めろ!」

 

「ミッ!!」

 

「えっ……」

 

「ぬめっ!?」

 

ミミロップはヌメルゴンのりゅうのはどうを完璧に捉えて受け止めた!それどころか、ヌメルゴンの波導を完全に支配している!!

 

「そのりゅうのはどう、もらうよ」

 

「なっ……?」

 

「ミミロップ、りゅうのはどう!!」

 

「ミッミィ……ロォー!!」

 

「ぬめ――」

 

「ヌメルゴン……!」

 

ヌメルゴンから奪ったりゅうのはどうに、ミミロップ自身のりゅうのはどうを上乗せして……ぶっぱなす!!巨大化したりゅうのはどうは一瞬でヌメルゴンを飲み込み大爆発した!

ヌメルゴンは……よしっ、戦闘不能だ!!

 

「そんなっ……ヌメルゴン、戻って!」

 

「勝負はここからだよ、シロちゃん」

 

「……ドラパルト!!」

 

「ドララララ!」

 

シロちゃんは再びドラパルトを繰り出してきた。ゴーストダイブはミミロップには通用しないけど、回避技としては普通に優秀だ……気をつけてかかろう。

 

「やるよミミロップ!みずのはどう!」

 

「ミミミ!」

 

「ドラパルト、ドラゴンアロー!!」

 

「ドラァ!」

 

ドラパルトはみずのはどうを受けつつも、近くにある岩の上に乗るとそのまま体を低く構えている……何をするの?

 

「ドララララ!ドララララ!」

 

「どりゃー」

 

「どりゃぁ~」

 

ドラパルトが叫ぶと同時に、穴の中に収まっていたポケモンが発射された……って!?

 

「えええぇぇぇぇぇっ!?そんなんありなのぉ!?」

 

「え……だって、これがドラゴンアローだし」

 

「いやいやそうじゃなくてぇ!?」

 

ドラゴンアローってそういうこと!?りゅうのはどうのように、ドラゴンの形状をしたオーラを矢にして放つとかじゃなくて、ドラゴンを矢として放つってこと!!

いや、ちょっと待って発射されたドラゴンはどうなるのこれ!?ミミロップもどう対処していいのか分からず、とりあえず逃げに徹しているけれど……。

 

「あ、大丈夫だよ!その子達はむしろ発射されるのをずっと心待ちにしていたから、打ち落とすなり受け止めるなり遠慮しないでいいからね!」

 

「とんだポケモンがいたもんだなぁ!!」

 

世界は広い(小並感)。

 

「ミミロップ!そういうわけだから、遠慮しないで!あくのはどう!!」

 

「ミミ!ミッミイイィ!!」

 

「どりゃ~……」

 

「どりゃりゃ……」

 

振り向きざまのあくのはどうによって、小さいドラゴンは撃ち落とされそのまま攻撃はドラパルトに命中!

 

「ドラリャアッ!!」

 

「ドラパルト!」

 

あくのはどう、かなり効いてる……?まさか、ゴーストタイプって予想、当たってた?

 

「もう一度、あくのはどう!!」

 

「ゴーストダイブ!」

 

「ミミィ!」

 

「ドラパ!」

 

再びあくのはどうを放つも、ゴーストダイブで逃げられた!やっぱりそうだ……ドラパルトはゴーストとドラゴンの複合タイプ!ギラティナと同じ!

けど……姿を消した程度じゃ、今のミミロップからは逃げられないよ!

 

「ミミロップ、集中!」

 

「ミッ!」

 

ミミロップが意識を研ぎ澄ませ、波導を高めていく。まだ、まだだ……もっと、もっと集中して!

ドラパルトがミミロップの真上から姿を現した……だが!

 

「ドラッ!?」

 

ミミロップは、すでにあくのはどうを真上に向けて構えている!

 

「動きが読まれて……!?」

 

「ミミロップ、あくのはどう!!」

 

「ミミミィー!」

 

「ドリャアアァァッ!?」

 

やった!あくのはどうはドラパルトに直撃!ドラパルトはそのまま力なく墜落していった!

 

「ドラパルトまで倒されちゃった……」

 

「さぁ、シロちゃん!だいぶ追いついたよ!!」

 

「そうだね……でも、私だって簡単には終わらないから!いけぇ!ジャラランガ!!」

 

「ジャラァ!」

 

シロちゃんの五体目は、ウロコが特徴的なドラゴンポケモン……ジャラランガ。一体どんなポケモンなのか……。

 

「ジャラランガ、ソウルビート!」

 

「ジャラ、ジャラ、ジャラ!!」

 

ジャラランガはリズムよく踊りだした……心なしか、踊れば踊るほど力強くなっているような……。

 

「ソウルビートは体力を削って強くなる技……一気に終わらせちゃうからね!」

 

「……!ミミロップ、りゅうのはどう!」

 

「ミミミィー!」

 

「ジャラランガ、スケイルノイズ!!」

 

「ジャラッ!ジャララララ!!」

 

ミミロップのりゅうのはどうに対して、ジャラランガはウロコを擦り合わせることでものすごい音を出して攻撃してきた!その衝撃波はりゅうのはどうを打ち消し、そのままミミロップを吹っ飛ばしてしまうほどの威力だった!

 

「ミミィーッ!?」

 

「ミミロップ!?」

 

「二つ名個体といえど、ポケモンはポケモンだからね!ジャラランガ、ドレインパンチ!!」

 

「ジャララ……ジャアァッ!!」

 

強くなる技ってのは伊達じゃないみたい……ジャラランガは一瞬で距離を詰めるとドレインパンチをミミロップに直撃させた!!

 

「ミミッ……!!」

 

「……!ミミロップ、戻って!」

 

私はすぐにミミロップを戻した。このままの勢いだと、ミミロップを倒されてしまいかねなかったから。

 

「……ダイケンキ!」

 

「…………」

 

ダイケンキ!ここで切る、私の切り札!

 

「ダイケンキか……ジャラランガ、遠慮はいらない。殺す気で行こう」

 

「ジャラ!!」

 

「油断しないでダイケンキ。あのポケモン……きっと、かくとうタイプだ」

 

「……」コクッ

 

ミミロップにドレインパンチを当てた時……能力が上がってて、しかも効果は抜群技であることを加味しても、明らかに威力が高かった……。あの威力……あれは、技とポケモンのタイプが一致していないと出せない威力だ。

そのことから、ジャラランガはかくとうタイプを複合したドラゴンではないかと予測した。その前提でこちらも動く!

 

「どくづき!」

 

「……!」

 

「アイアンヘッド!」

 

「ジャララア!」

 

ダイケンキのどくづきとジャラランガのどくづきが激突する……少しばかりの拮抗の後、ダイケンキが押し負けた!けど、ダイケンキは体勢を崩さず綺麗に着地した。

 

「ドレインパンチ!!」

 

「ジャラッジャアァ!!」

 

着地狩りに放たれたドレインパンチ……けど!

 

「ダイケンキ!つばめがえし!!」

 

「……!!」

 

間に合った!ジャラランガのドレインパンチとダイケンキのつばめがえしがぶつかりあった!この技なら……ダイケンキが、勝つ!!

 

「ジャラァ……!」

 

「負けた……!いや、まだだ!ジャラランガ!スケイルノイズ!!」

 

「ジャララララ!!」

 

「音なんて叩き斬れ!」

 

「!!」

 

ジャラランガが放ったスケイルノイズの騒音を、ダイケンキはアシガタナのひと振りで断ち斬った!

 

「お、音を斬った!?」

 

「ジャラ……!?」

 

「隙だらけだよ!つばめがえし!!」

 

「……!」

 

「ジャラアァッ!!」

 

「ジャ、ジャラランガ……!」

 

急所への的確な効果抜群技……これはかなり効いた!ジャラランガは戦闘不能になった!

 

「うぅ~……やっぱり強いなぁ。戻ってジャラランガ」

 

「……やっと、最後の一体だね」

 

「あはは!やっぱり勝負は楽しいなぁ!それじゃあ、最後の一匹!サザンドラァ!!」

 

「ザアァンッ!」

 

シロちゃん最後の一体はサザンドラ!お父さんに見せてもらったことのあるポケモンだ……!

小さな頃、どの顔に餌を上げればいいのかわからなくて泣いちゃったのは黒歴史だ……

 

「りゅうのはどうだよ!」

 

「ザッザァン!」

 

「迎撃して!シザークロス!」

 

「…………」

 

サザンドラがりゅうのはどうを放ってきた!ダイケンキはシザークロスでりゅうのはどうを切り捨てると、そのまま側面に回り込んで攻撃を……いや!

 

「ダイケンキ!防御!!」

 

「……!」

 

「ザザァ!」

 

ダイケンキが攻撃しようとした直前、サザンドラの三つある頭のうちの一つがダイケンキにりゅうのはどうを撃ってきた!とっさの指示が間に合って防御には成功したけど……そういえば、最初のりゅうのはどうも、真ん中の頭しか攻撃してこなかった……!

 

「私のサザンドラはすっごい特訓したからね。三つの頭で別々に攻撃できるんだよ!」

 

「ザザァンラ!!」

 

それは厄介極まりない……!三つの頭で同時に攻撃するのが、普通のサザンドラの戦い方だ……けど、シロちゃんのサザンドラは三つの頭で別々の行動ができるという。一層気を引き締めていかないと……!

 

「ラスターカノン!」

 

「ザザ!」

 

右の頭からラスターカノンが……!

 

「回避!」

 

「あくのはどう!」

 

「なっ……!」

 

私の指示でダイケンキが回避する直前、シロちゃんの指示で左の頭があくのはどうを放ってきた!ラスターカノンは回避できたけど、あくのはどうは対処できず命中してしまった……!

 

「つづけて力強く、りゅうのはどう!」

 

「ザザアアァン!!」

 

「ルシッ……!」

 

「ダイケンキ!!」

 

こんどは力業りゅうのはどうが直撃……!これは、キツイな……!!

 

「ダイケンキ!大丈夫!?」

 

「……シャッ」

 

ダイケンキは大丈夫みたい……けど、どうにかして攻略しないと……!

 

「りゅうのはどう!」

 

「ザザアァ!」

 

「回避……いや、迎撃!ひけん・ちえなみ!」

 

「ラスターカノン!」

 

「ザッザ!」

 

「……!ルシャ……!!」

 

「ダイケンキ!」

 

「さらにあくのはどう!!」

 

「ザアァン!」

 

「(間に合え……!)素早く、どくづき!」

 

「……!!」

 

目まぐるしく状況が動いていく!最初に中央の頭から放たれたりゅうのはどうをひけん・ちえなみで迎撃した直後、間髪を容れずに右の頭から放たれたラスターカノンが命中。続けて左の頭から放たれたあくのはどうは、早業どくづきが間に合って迎撃できた!忙しすぎる……!

 

「だいちのちから!

 

「ザッザァン!」

 

「躱して!」

 

「!」

 

次はだいちのちから……こちらは回避できた。……?

 

「今……」

 

「ルシ」

 

ダイケンキも気づいた……?だいちのちからを使うときだけ、サザンドラはどの頭も使わずに全身で攻撃を放ってきた……これだ!!

 

「何を企んでも無駄だよ!りゅうのはどう!」

 

「ザザアァ!」

 

「迎撃!つばめがえし!!」

 

「さらに素早く、りゅうのはどう!」

 

「ザアァ!」

 

「……!」

 

「素早く、つばめがえし!」

 

「力強く、りゅうのはどう!!」

 

「!!」

 

「ザッザアアァン!!」

 

「力強く、どくづき!!」

 

「……!!」

 

こんどはまさかのりゅうのはどう三連発!けど、一発目は普通のつばめがえしで打ち落とし、二発目の早業りゅうのはどうは早業のつばめがえしで、迎撃!最後の力業りゅうのはどうは力業どくづきで迎撃が間に合った!

 

「むぅ……だいちのちから!!」

 

「ザザザ!」

 

「今だダイケンキ!突っ込めええぇ!!」

 

だいちのちからの指示を聞いてすぐ、もう反射のレベルでダイケンキに指示を出していた。一瞬の突撃でだいちのちからを回避しつつ、サザンドラの懐に飛び込んだ!

 

「しまった!?」

 

「シザークロス!!」

 

「!!」

 

「ザアァッ!?」

 

よしっ、命中!効果は抜群……ここで仕留めてやる!!

 

「ダイケンキ!ぜっけん・はとう!!」

 

「……!サザンドラ!力強く、りゅうのはどう!!」

 

「ザザアアアアァンッ!!」

 

「ルッシャアアアアア!!」

 

三つの頭による力業りゅうのはどうと、ダイケンキの大技、絶剣・波濤がぶつかり合う!さすがに三つの頭すべてが放つ力業はかなりの威力がある……でも!

 

「それでも!ダイケンキが!!かああぁぁぁぁつっ!!」

 

私の気合がダイケンキにも乗り移ったのか、ダイケンキはそのままサザンドラを押し切った!!サザンドラは……。

 

「……ザ、ド、ラァ……」

 

「サザンドラ……負けちゃった……」

 

「……はぁ……!」

 

大きく息を吐く。今日の勝負も、かなり厳しかった。フェアリーを三体も連れてきて、三体とも倒された挙句特殊個体であるダイケンキたちに頼りきり……。

反省点は多すぎるなぁ……もしもお母さんにこんな勝負を見られていたら、イイ笑顔で特訓に連れ回されそうだよ……。

 

「お姉ちゃん、やっぱり強いなぁ。ミミロップもダイケンキも、強さに胡座をかくことなく、さらに強くなり続けているんだね」

 

「シロちゃんも、相変わらず強いね。ダイケンキたちがいなかったら、間違いなく負けていたのは私の方だったよ」

 

「えぇ~、そうかなぁ?」

 

「そうだよ。……フェアリーポケモンを三体も連れてきたのに、全部倒されちゃったからね……これは、一度勝負の腕を磨き直したほうがいいかも……」

 

「あぁ~……」

 

納得したように頷くシロちゃん。でも、それはそれとしてシロちゃんとのバトルはいい経験になるから、私としても大歓迎だよ。

 

「それじゃあ、帰ろっか!キリン、私とお姉ちゃんを乗せてくれる?」

 

「ヒヒン!?ブルルル!!」

 

シロちゃんがキリンにそう提案すると……キリンは激しく拒絶した。特に、私を乗せることに抵抗があるようで、私の方をずっと睨んでいる。

 

「えっと……私はいいよ、シロちゃん。帰る方法なんていくらでもあるし」

 

「うぅ~……もうっ!」

 

私は遠慮したのだがシロちゃんは納得できないのか、ぴょん!と軽くジャンプするとそのままキリンの角をむんずと鷲掴みにして強引にキリンの首を下げさせた。

 

「従え」

 

「……ヒィン……」

 

そのまま何か小さい声でキリンに囁くと、キリンがすっかり怯え切った様子で腰を下ろした。……またシロちゃんから謎の圧が……。

 

「二人以上乗せるのは不安だったみたい。でも、私が励ましたから大丈夫だよ!」

 

「いや、むしろ励ますというより脅――」

 

「ん?」

 

「いえなんでもありません」

 

笑顔のまま首を傾げるシロちゃん……ひぃ、笑顔が怖いよぉ……。ひょっとしたら、勝負に負けたのが悔しくてちょっとストレスになっているのかも……ここは刺激しない方向で行こう……。

大人しくキリンの背中に乗ってみたけど……なんか、すごい。いや、思わず語彙力が死んじゃうくらいすごかった。触り心地とか、毛並みとか、あと走る速さとかその他もろもろ……もしも具体的に表現できる人がいたら教えて欲しい。私の語彙力では無理でした。

そのままベースキャンプまで戻ってきたけど……博士と先輩、それからギンガ団員の人が深刻な表情で集まっていた。……どうしたんだろう?

 

「ただ今戻りましたー」

 

「あっ!ショウ!大変なことになっちまった……!」

 

「大変なこと……?」

 

一体何が……?

 

「ショウ!自分はオハギさんからの使いで参った者だ!」

 

「は、はい……」

 

「火急の事態ゆえ、手短に伝える!君の相棒であるオヤブンガブリアスが、赤黒い稲妻を全身から滾らせながら暴れ始めた!」

 

「えっ……!?」

 

「現在、ガブリアスは黒曜の原野で破壊活動を行っている!どうやら、力を制御できずに暴走しているらしい!至急、黒曜の原野に向かってこの暴走を止めてくれ!!」

 

ギンガ団員からの知らせに、私は絶句した。ガブリアスが、暴走……?それに、赤黒い稲妻って、もしかして龍属性エネルギー……?どうしてガブリアスが……!?

 

「お姉ちゃん、とにかく行こうよ!私も、そのガブリアスが心配だよ……」

 

「シロちゃん……!あの、詳しい話は道中で聞きます。今は移動を!」

 

「忝ない!すぐに行こう!!」

 

待っててガブリアス……絶対に助けてあげるから……!!

 

 

 

 




シロちゃんの手持ちです

カイリュー ドラゴン・ひこう
ドラゴンダイブ/アイアンテール/かみなりパンチ/はかいこうせん

ボーマンダ ドラゴン・ひこう
ドラゴンクロー/かえんほうしゃ/ハイドロポンプ/はがねのつばさ

サザンドラ ドラゴン・あく
りゅうのはどう/あくのはどう/ラスターカノン/だいちのちから

ヌメルゴン(カロスの姿) ドラゴン
りゅうのはどう/ヘドロばくだん/きあいだま/10まんボルト

ジャラランガ ドラゴン・かくとう
スケイルノイズ/ソウルビート/ドレインパンチ/アイアンヘッド

ドラパルト ドラゴン・ゴースト
ドラゴンアロー/ゴーストダイブ/とんぼがえり/サイコファング

普通に強いんだよなぁ……唯一のデメリットがドラゴン統一ゆえに弱点が共通しているってところだけかな?



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幕間 求めるは力、其は龍を殺す龍の力

突然のゲリラ投稿、いわゆる幕間です。


ガブリアス。

この名を聞いて、およそ知らぬ者はいないだろう。ポケットモンスターシリーズ第4世代『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』に初登場を果たしたドラゴンポケモンにして、種族値の合計値が600の一般ポケモン、通称『600族』に名を連ねる強力なポケモンである。

シンオウチャンピオン・シロナの切り札として知られ、世代を重ねるごとに周囲の強化に伴って第一線からほぼ退く事態になったことは、ガブリアスを好み愛用する者たちにとっては苦渋ものであったろう。かくいう作者も、旧DPでは何度最初からにしても必ず旅パに加えていたほどには愛好家である。

 

 

さて、時を越えてここヒスイ地方にやってきた少女・ショウが相棒として連れ歩いている基本の六体(旅パ)の内の一体に、ガブリアスが加わっている。このガブリアスは、ショウが純白の凍土を訪れた際に捕獲されたオヤブン個体で、旅パでは最後の加入者であるがその実力は最初の相棒であるダイケンキと双璧を成すほどのものだ。

 

「…………」

 

しかしそんな彼は現在、コトブキムラの放牧場にて他のポケモンたちからかなり離れた場所で一匹、渋面を作って座り込んでいる。彼が考えていることは、ここ最近のバトルにおける自身の勝率に関してだ。

 

「(負けている)」

 

言ってしまえば、負け越している。今の主の手持ちポケモンとして多くの野生のポケモンと戦い、時にはポケモンを相棒とする人間たちとも多くの対人戦を経験し、野生の頃よりもはるかに成長を実感できていた。それまで、己の土をつけたのはあのダイケンキだけだった。ダイケンキとならば、良い勝負ができる。己が好敵手として、ダイケンキはある種の目標であった。だが……空が赤く変化し、それが原因で主が住んでいたムラを追放された翌日のこと。主の呼びかけに応えてボールから出てきたガブリアスは、初めてソイツと相対した。

雷を操る巨大な狼ポケモン、ジンオウガ。目があった瞬間、戦う前から明確な敗北のビジョンを叩きつけてきた理外の怪物。ダイケンキとともに威嚇したはいいものの……あの時、ガブリアスは本能ではっきりと「勝てない」と思った。……思ってしまった、思い知らされたのだ。

 

「(勝てない……)」

 

移動の合間に実施された訓練では、主が誇る自慢の六体が総出でかかっても、歯牙にもかけず足蹴にされた。自分たちよりも多くの技を同時に使いこなし、複数体が相手でも冷静に対処し、一体、また一体と脱落し最後は常に己とダイケンキが残っていた。そうして己が先に下され、ダイケンキも下され味方は全滅した。完敗だった。

 

「(なぜ勝てない……!こんなにも強くなったのに!)」

 

さらに追い打ちをかけるように、ジンオウガと同格のポケモンが何体も現れた。特に彼らのバトルは、ボール越しにさえその力が伝わって来るようであった。自分たちポケモンの理解さえ超えるような、例えるならそれは怪物たちのスタンピード。生物としての格の差からして、余りにも遠すぎるその背中は、追いかけることさえ不毛に思えて仕方が無かった。

 

「(最近は特にそうだ……ずっと勝てていない、負けている)」

 

ガブリアスが振り返ったバトルは、二つ。一つはオドガロン亜種戦、もう一つはイャンクック戦だ。普通のポケモン相手ならば、ほぼ負けなしとも言えるだろうガブリアスだが、未知のポケモンが相手となるとほとんど負け越していた。

イャンクックというポケモンからは、まったく相手にされなかった。ただ繰り手であるアカイの命令に従って攻撃しただけで、ガブリアスを脅威に感じるどころか敵と認識すらしなかった。それだけなら人間の指示を受けて戦うポケモン勝負だ、ガブリアスはまだ耐えられた。

特にガブリアスに堪えたのが、オドガロン亜種との戦い。裂傷という特殊な状態異常になる一撃を食らわされただけで、簡単に交代されてしまったのだ。心優しい主のこと、先の一撃で脅威を感じ、自身に無理をさせられないと気遣ってくれたのだろう。

だが、ヒスイに住まう最強種の一角たるドラゴンポケモンのガブリアスにとって、これが一番堪えた。その上、後に戦ったイャンクックからは敵認定されなかったのだから、ガブリアスのプライドはボロボロだった。さらにオドガロン亜種との戦いで負傷したゴウカザルが戦線離脱し、同じく戦線離脱したミミロップが驚異的なパワーアップを経て帰ってきた。しかも、自身が好敵手と定めたダイケンキに至っては「極み個体」と呼ばれる超強力ポケモンへと成長を果たし、自分だけが置いてけぼりを食うこととなってしまった。

 

「(強くなりたい……けど、どうすればいい……?)」

 

休みの合間を縫って、ひたすら己を研鑽した。主とともに戦うこととは別に、自分磨きのために自主練を始めたのだ。しかし、どれだけ時間を費やしても「成長した」と明確な実感がわかない。それどころか、こうしている間にもミミロップとダイケンキが己を突き放しているのではないかと焦燥に駆られる始末。

そして、今日。あの白いドラゴン使いの少女との勝負前に、手持ちから外されることを宣告された。だが、ガブリアスは内心では「妥当だろう」とも思っていたため、それほどショックは大きくなかった。むしろ、一度主から離れて自分を見つめ直す時間が欲しかったので、ちょうど良かった。ムラについてからも自主練を欠かしていないが、どうにもスランプ気味であったため、一度落ち着くためにこうして座り込んでいるのである。

 

「(……そういえば)」

 

以前、自分でも知らぬ間に強力な突風を吹かせたことがあった。その時、アカイが「龍風圧」と呟いていたのが聞こえていて、ずっと耳に残っていた。

龍風圧……なにかの技か、あるいは能力だろうか。知っている者はいるのだろうか。

 

「(……聞いてみるか)」

 

のそり、と立ち上がったガブリアスは移動を始めた。目指すは放牧場の更に奥まった場所……巨大なポケモン達が集う広場だ。広場に到着したガブリアスは、早速目的のポケモンを見つけて声をかけた。

 

「ガブァ、ガブ(すまん、少しいいか?)」

 

「……ドル?(アァ?)」

 

ちょうど昼寝をしていたのか、寝転がっていた目的のポケモン……オドガロン亜種は、胡乱気な様子でガブリアスを見上げた。しかも寝起きで若干だが機嫌が悪そうだ。

 

「ガブガブ、ガバァ?(龍風圧ってなんだ、知ってるか?)」

 

「……オドルル(……何故、貴様がそんなことを聞くんだ)」

 

ガブリアスが事情を説明すると、オドガロン亜種は緩慢とした動作で体を起こした。

 

「ウォロロ。オルル……オドロ(ナルホド。お前、我らに近づきつつあるなぁ……我らの竜種としての特性が影響しているかもな)」

 

「……ガブ。ガバガブ(ついでに聞きたい。お前が持つドラゴンパワーについて)」

 

「オドロァ(龍属性エネルギーか、いいだろう)」

 

オドガロン亜種は語った。龍属性エネルギー……通称、龍属性は太古から存在が確認されている古龍の弱点とされる属性であり、その詳細は使い手たる己らでさえ深くは知らない。竜の姿を取る生物ならば程度の差こそあれどこの属性を苦手としており、その関係はポケモンにおけるドラゴンタイプ同士のタイプ相性によく似ている。あのリオレウスも、目立たないが龍属性をその身に宿しているとか。

龍属性は「万象を支配し封じる力」。その力に侵された者は本来持ちうる属性を封じられ力を失う。龍が操る力でありながら、龍が忌み嫌う属性。それが、龍属性。

 

「オドルル、オドロァ(龍風圧が扱えるなら我々に近づいているのかもしれん、ちょっと試してみるか)」

 

「ガブガブ?(試すって何を?)」

 

「オドガロ(貴様の竜としての在り方を)」

 

そう言うやいなや、オドガロン亜種はガブリアスを押し倒した。うつ伏せに押さえ込まれ、ガブリアスは身動きがとれなくなってしまった。

 

「……!ガブァ!?(……!な、何をする!?)」

 

「ウォロロ。オドロァ?(傷口を介して貴様に龍属性エネルギーを送ってやる。強くなりたいんだろう?ならば竜としての在り方を我々に近づければ良い)」

 

「ガブ……!(強く……!)」

 

「ウォロルルル?オドロロ……ウォロア(だが忘れるなよ?龍属性は時に使い手をも蝕む諸刃の刃……超克せねば、死するは貴様ぞ)」

 

「ガブ……!ガッブアァ!!(もちろんだ……!主のためならば、どのような艱難辛苦も乗り越えてみせる!!)」

 

「ウオォロアアッ!!(良く言った!!)」

 

オドガロン亜種は勢いよくガブリアスの首に噛み付き、呼気を通じて龍属性エネルギーをガブリアスへと送り込み始めた。その瞬間だ。

 

「(ぐっ、あっ!?こ、これはぁ……!!)」

 

ガブリアスの体内に龍属性が送り込まれた直後、ガブリアスの全身を激痛が襲った。体内を暴れまわるように力が駆け巡り、まるで内部からガブリアスを破壊しようとしているかのようだった。それと同時に、自身の中にある何かが、急速に変質していく感覚を覚えた。おそらくは、ガブリアスという竜種としての力。己の存在意義とも言うべき形が、未知の力に侵食され変質していく。

やがてオドガロン亜種が離れると、ガブリアスは全身を龍属性エネルギーの証である赤黒い雷で包み込みながらも、ゆっくりと立ち上がった。

 

「ガッ……!ギ、ギギ……!!ガブアアアアアアアアアッ!!」

 

甲高い咆哮を上げるとともに、ガブリアスは一直線に黒曜の原野の方向へと飛んでいった。それを見送ったオドガロン亜種はなに食わぬ顔で寝そべった。

 

「(さて……飲まれるか、飲み干すか。異世界の竜種の気概、見せてもらうとするか)」

 

ただし今度はしっかりと起きたまま、顔だけは黒曜の原野に向けて。

 

 

一方、黒曜の原野まで飛んできたガブリアスは体内で暴れまわる力を制御しようと必死だった。だが、注入された龍属性エネルギーはガブリアスを支配しようと蹂躙してくる。

 

「(超克し操るどころか、支配されないように抵抗するだけで精一杯だ……!オドガロンはこの力を容易に扱えるというのか……!!)」

 

龍属性エネルギーは、ガブリアスに対して強烈な破壊衝動を植え付けてこようとする。徐々にだが、確実に遠のいていく意識の中……ガブリアスの脳裏をよぎったのは、主である少女の笑顔。

 

「(……ある、じ……)」

 

その光景を最後に……ガブリアスの意識はぷつり、と切れた。

 

 

 

 




ショウちゃんがシロちゃんと仲良く喧嘩している間の出来事でした。
ガブリアスは龍属性エネルギーを克服できるのか……。


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激突!断ち斬る刃(ダイケンキ) VS 蹂躙する竜爪(ガブリアス)!!

ガブリアスの暴走に、決着をつけるとき!


シロちゃんとのバトルを終えてベースキャンプへ戻ってきた私に届いた急報……それは、突然龍属性エネルギーを纏ったガブリアスが暴走を起こし、黒曜の原野で暴れているという話だった。

私たちは紅蓮の湿地から大急ぎで黒曜の原野の高台ベースへと戻ってきた。高台ベースから見下ろすと、蹄鉄ヶ原方面で赤黒い稲妻が嵐のように渦巻いている様子が確認できた。……あそこに、ガブリアスが……!!

 

「……凄い龍属性エネルギーだ。ここからでもひしひしと感じられるね……」

 

「シロちゃん、わかるの?」

 

「ふふん。アカイにできることなら、私にだってできるもん!」

 

えっへん、と胸を張る様は見目相応で可愛らしい。ただ、後ろにいるキリンはすっかり呆れたようにため息をついているけれど……。

 

「シロさん、龍属性エネルギーとはなんですか?龍、というからには、ドラゴンポケモンとなにか関わりが?」

 

「龍属性ってね、遥か太古の時代から存在が確認されている力なの。古龍種が苦手としている力でもあるよ。……まぁ、キリンみたいに龍属性に強い古龍種もいるけどね」

 

「ヒヒン!」

 

キリンが自慢気に鳴き声をあげた。古龍種か……実際に戦ってみたら、どれくらい強いんだろうか。

 

「太古って、そんな昔から……?」

 

「うん。龍属性は主に古龍種が操る力でもあってね、これってポケモンのタイプとしてのドラゴンタイプに結構近い性質をしているんだ。ドラゴンはドラゴンに弱い……ほら、どこか似てるでしょ?」

 

「た、確かに……」

 

「ここヒスイ地方と私たちの地元の地方……生息するポケモンも、ポケモンの生態もなにもかも違うけど、ドラゴンポケモンだけは共通点が多いね。やっぱり竜種って特別なのかな」

 

「竜種、ですか……。我々がドラゴンポケモンと呼ぶそれらを、アカイさんやシロさんはそう呼ぶのですね」

 

……言われてみればそうだ。アカイさんもシロちゃんも、竜種……ドラゴンポケモンに関してはドラゴン使い以上に強い思い入れがあるみたい。シロちゃんに至っては二戦連続でドラゴン統一パーティだったし。

 

「……私見だけど、ガブリアスは急速に龍属性エネルギーを取り込んだことで制御できずに暴走しているみたい……。龍属性エネルギーって強力な反面、扱いを誤ればかえって自分を傷つける危険な力なんだ。私の地元にね、そうやって自分が操る龍属性エネルギーに蝕まれて暴走してしまったポケモンが実際に二体存在したの」

 

「……参考程度に、聞かせていただいても?」

 

「いいよ、博士さん。

一体はイビルジョー。"恐暴竜"の別名を持つ獣竜種の一種だよ。イビルジョーって代謝が高いせいで非常に食欲旺盛な子でね、いっつもお腹を空かせているの。そのせいで、獲物以外にも同種同士で共食いをすることもあるんだ。そうして捕食や共食いを続けた結果、体内に蓄積された龍属性に耐えられずに蝕まれて暴走状態に陥った個体が誕生することがあるの。

もう一体は"天彗龍"の別名を持つ古龍種、バルファルク。バルファルクは龍気と呼ばれる龍属性エネルギーを操るんだけど……希にこの莫大な龍気のエネルギーを持て余した結果その力に支配され、限りなく暴走に近い状態と化してしまった異常個体が現れることがあるの。

前者は『怒り喰らうイビルジョー』、後者は『奇しき赫耀のバルファルク』って呼ばれてる。どっちも危険すぎて、出会ったら倒すか逃げるかの二択を即断即決しなければならないほどなの」

 

「え……古龍種って、龍属性エネルギーを操る種族なんだよね?それなのに、逆に支配されちゃうの!?」

 

「……龍属性って、そういう部分も含めて未だに謎の多い属性なんだ。私の地元でも専門の研究機関なんかが創設されたりしてるけど……わかっていることはほとんどないんだよね……。

けど、古代から存在する強力なエネルギーだからね。太古より悠久の時を生き続け、あらゆる生態系から逸脱した存在である古龍種とも密接な関係でもあるし、世界的にも重要な立場に位置する生物に、龍の存在は欠かせないのかもね」

 

……もしかして。このヒスイ地方も含めて、伝説のポケモンにドラゴンポケモンが多いのは、そういうことなの?アルセウスが生み出したディアルガ、パルキア、ギラティナもみんなドラゴンタイプだし、もしかしたらアルセウスにも龍の因子が含まれているのかもしれない。

遥か古代から存在する龍属性……アカイさんたちが異世界人である可能性を加味しても、龍という存在は全世界共通の生物なのかもしれない……。

 

「なまじ、ガブリアスはドラゴンポケモン……竜種だから、龍属性を受け入れられてしまったのかも。けど、当たり前だけどヒスイ地方には龍属性みたいな極端に強力なドラゴンパワーって存在しないから、いきなり与えられた強すぎる力を制御できていないんだよ。どうしてそんな事態になったかは……まぁ、お姉ちゃんのポケモンだから、きっと理由は一つだよね」

 

「それって……」

 

「ガブリアスは、強くなりたかったんだと思う。ほかならぬ、お姉ちゃんのために」

 

「……!!」

 

「うーん……多分だけど、オドガロン亜種かな?お姉ちゃんが捕獲したポケモンの中で龍属性エネルギーを明確に操っているのって、多分その子だけだよね?どっちが先かまではわからないけど、どっちかが協力を申し出たことでオドガロン亜種がガブリアスに自分の龍属性エネルギーを分けたんだと思う」

 

ガブリアス……そこまでして強くなりたかったの?ガブリアスの独断は褒められたものじゃないけど、未知のエネルギーに手を出してまで強くなりたいと思い悩んでいただろうことに気付けなかった、私の落ち度だな……。シロちゃんとのバトル前に入れ替えのことを相談した時に上の空だったのは、きっとこのことだったんだ……。

……それはそれとして、"おや"抜きで勝手に話を進めたことについてはしっかりお説教しないと。

 

「行こうよ、お姉ちゃん。このままじゃガブリアス、取り返しがつかなくなっちゃう……」

 

「……うん!行こう!!」

 

シロちゃんに促され、私たちは早速蹄鉄ヶ原へ向かった。途中、逃げていくポケモンたちと何体もすれ違った。そして現場に到着すると……そこは至る所が穴ボコだらけで、本来の蹄鉄ヶ原が見る影もないほどに破壊し尽くされていた……。

 

「これはひどい……これが、龍属性の恐るべき力ですか……」

 

「……!ショウ、あそこ!!」

 

先輩が指をさした先には、赤黒い稲妻による竜巻が起こっていた。その中心に見える、見覚えのある影……!

 

「ガブリアス!!」

 

「…………」

 

私が呼びかけると、ガブリアスはゆっくりとこちらに振り返った。龍属性エネルギーによる渦巻きで姿が見えにくいけど、間違いなくガブリアスだ……!

 

「生半可なポケモンじゃあ、きっと勝てない……お姉ちゃん、ここは特殊個体のポケモンで挑むべきだと思う」

 

「……そうだね、ちょうど同じことを考えていたよ……!ミミロップ!」

 

「……!ミミ……!?」

 

私がミミロップを繰り出せば、ミミロップは目の前のガブリアスに酷く驚いたようで短く声を上げていた。

 

「ミミロップ!ガブリアスは今、酷い暴走状態になっている……ガブリアスをボールに戻すために、動きを抑えて欲しいんだ!」

 

「……ミミィ!!」

 

「ありがとう……それじゃあ、行くよ……!」

 

「ガブアアアアァァァッ!!」

 

ガブリアスが大きく吠えると、龍属性の渦が消滅した。けど、ガブリアスの目は明らかに正気じゃない……!なんとかして、目を覚まさせないと!

 

「ガバアアアアッ!!」

 

あれは、ドラゴンクロー!心なしか、爪が纏う龍のオーラが大きい……威力が上がっているかもしれない……!!

 

「りゅうのはどう!」

 

「ミミー!」

 

ミミロップが放ったりゅうのはどうが、まっすぐこちらに向かってくるガブリアスに迫る!

 

「ガアアアア!」

 

……だが、ガブリアスはドラゴンクローを一閃し、りゅうのはどうをあっさりと切り捨てた!?

 

「くっ……はどうだん!(上に撃って!その後に素早くあくのはどうを!!)」

 

「ミッミ!」

 

ミミロップは真上に向かってはどうだんを放つと、すぐさまガブリアスに向けて早業あくのはどうを放った。ガブリアスはかなりこちらに接近していたけど、間一髪間に合った!ガブリアスはあくのはどうを防御し、わずかに後退させられた。そのまま再び突撃してこようとした……その時だ。真上に撃ったはどうだんが時間差でガブリアスに直撃!これは効いたはず……!

 

「ガアアァァッ……!!」

 

「なっ……!?」

 

「ミ……!」

 

ガブリアスは確かにダメージを負った……けど、まるで意に介さないかのようにガブリアスが再び突撃してきた!

 

「なんだ、効いていないのか!?」

 

「ううん……あれは痛みに鈍くなってるんだ。龍属性による暴走で、破壊衝動が極度に刺激されすぎて、ほかの感覚がほとんど効いてないんだと思う」

 

そんなっ……それじゃあ、こっちがしっかり様子を見て戦わないと勢い余ってガブリアスを殺してしまいかねない……!

 

「(ミミロップ、加減していこう。けど、下手な手加減はかえってこっちが危険だから、波導でガブリアスの様子を見てあげて)」

 

「ミミ!」

 

「(お願いね)みずのはどう!」

 

「ミミミ!」

 

向かってくるガブリアスに向けて放ったみずのはどうは、ガブリアスのアイアンヘッドでそのまま突破された……!

 

「ミ……!!」

 

「ミミロップ!平気!?」

 

「ミミ!」

 

技は命中したけど、ミミロップはまだまだ大丈夫だ。

 

「はどうだん!」

 

「ミッミィ!」

 

「ガバアァッ!!」

 

ミミロップがはどうだんを撃ち、ガブリアスがアクアテールで迎撃した。はどうだんが爆破しガブリアスが煙に包まれた……ここだ!

 

「力強く、りゅうのはどう!!」

 

「ミミミ……」

 

「ガブアアアアァァッ!!」

 

「ミッミイィ!!」

 

「ガバァッ!?」

 

力業りゅうのはどうが直撃!ガブリアスは吹っ飛んで盛大に倒れた……今だ!!

 

「戻って!ガブリア――」

 

「ガ、ガ……ガアアアアアアッ!!」

 

……!!ま、またガブリアスから膨大な龍属性エネルギーが……!どこにこんな力が……!?

 

「……変ね」

 

「……?えっと、シロちゃん?一体何が変なんだ?」

 

「ガブリアスが持つ龍属性エネルギーよ。オドガロン亜種から受け取ったにしては、余りにも量が多すぎる……。

最初からこれだけの量の龍属性エネルギーを与えられたなら、ガブリアスはとっくに死んでいる……。それじゃあ、一体どこからこれだけのエネルギーが……?」

 

「……む、遅かったか」

 

先輩に尋ねられたシロちゃんがブツブツと何かを呟いていると、さらに別の声が加わった。この声は、アカイさん!

 

「アカイ、わかるのね?」

 

「無論。……君は、人と竜から離れて随分と久しいからな、この現象がなんなのかがすぐに思い当たらないのも無理はない。……だから、そう気落ちすることはないぞ」

 

「む……べ、別に気落ちなんて……」

 

「それに、こういうことは私の役割だ。君は君の役割を果たすといい、シロ」

 

「……ありがとう」

 

「礼には及ばんよ」

 

シロちゃんがアカイさんに励まされてる……?"人と竜から離れて久しい"って、シロちゃんは隔離でもされていたの……?

 

「さて、久しぶりだなショウ。君のガブリアスが暴走していると聞いて、私も私で準備をしてきたんだが……少々、遅かったようだな……」

 

「アカイさん……?」

 

「では、状況を説明しよう。先ほど、シロはガブリアスが保有する龍属性エネルギーの量に対して違和感を覚えていた。あれだけの量……本来なら、力に飲まれて死亡していてもおかしくはない量だ。だが、ガブリアスは龍属性エネルギーを放出しながらも生き続けている。それはなぜか?

答えは簡単だ。……今、目に見えている龍属性エネルギーはすべて、ガブリアス自身が生成しているものだからだ」

 

「えぇっ!?」

 

私は思わず振り返ってしまった。だって、いくら力を与えられたからってそこまで成長するなんて誰も思わないじゃん!

 

「オドガロンから与えられたエネルギー量は、それほど大したものではないだろう。……だが、竜種であるガブリアスは暴走しつつも本能で龍属性を理解し、その力を生み出し操る術を得た。だが、今度は自身が生成し始めた龍属性に蝕まれ始めたのだ。それが、今の暴走につながった……と、私が考えうる限りではこんなところか」

 

ガブリアス……あなたって、本当にすごい子なんだね。あなたは私の誇りだよ、ガブリアス。だから、絶対に助けてあげるからね……!

 

「……気をつけろ、ショウ。どうやらガブリアスは龍属性のエネルギーと、その生成と操作の術を得たことによって、更なる限界を超えるようだぞ……!」

 

「え……?」

 

「ガアアアアアアアッ!!」

 

私が視線を戻すと、いつの間にか立ち上がっていたガブリアスがずっと放出していた龍属性エネルギーを、自身の体内へと還元していた。すべての龍属性エネルギーがガブリアスの体内に収まると、ガブリアスが光に包まれた……こ、この現象は!

 

「まさか、メガシンカ……!?」

 

「いや、違う。……もっとタチの悪いものだ……!」

 

アカイさんが険しい顔のまま否定した……そうして、ガブリアスに変化が起きた。

 

元々3m弱あった高さが、一回り大きくなって4m弱に。

腕が太くなり、その影響か爪が一本から二本へと増え。

尻尾も長さを増し、先端の方では側面から大きな刺が片側二本ずつ生えた。

背びれも大きく巨大化し真っ二つに裂けて、まるで飛行機の翼のように。

 

雄々しい……というより、禍々しい変化を遂げたガブリアスが、姿を現した。

 

「ガア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ!!!!!」

 

さらに激しく龍属性エネルギーを放出しつつ、黒い風を全身に纏い始めた。……な、なに?あの風……すごく嫌な予感がする……。

 

「グルルル……ガッ!ブアアアァァァッ!!」

 

突然、ガブリアスが大きく咆吼した!それから、物凄い速さで空高く飛び上がってしまった!

 

「え、どこに……?」

 

「……!全員、今すぐに伏せろぉっ!!

 

「……っ!!(ミミロップ、回避!!)」

 

私がガブリアスの行方を目で追っていると、アカイさんが信じられないほどの大声で警告を発した!私も反射的に後方に下がりつつ、波導を通じてミミロップに指示を出す。ミミロップはすでに波導でガブリアスの気配を追っている……きっと避けられるはずだ!

 

「ヌメルゴン、ドダイトス!」

 

「ヌメラ!」

 

「ドダァイ!」

 

「命令する、肉壁となれ。お前たちの重量と耐久力が必要だ」

 

「ヌメ!」

 

「ドダ!」

 

「全員、こっちだ!」

 

アカイさんの指示で、ヒスイのヌメルゴンとドダイトスが身を寄せ合って壁を作ってくれた。その後、全員でその壁の後ろへと集まる。

 

「アカイさん!なんで急に!?」

 

「あのガブリアスの攻撃……私の考えが正しければ、かなり広い範囲を巻き込みかねない大技だ。その攻撃範囲内に、おそらく我々も巻き添えを食う。そのための用心だ、しておくに越したことはない」

 

「い、一体どんな技が……」

 

「来るぞっ……!!」

 

空に一瞬、赤い光が見えた……と、次の瞬間!!

 

「ガブアアアアアァァァァッ!!」

 

物凄い勢いで、ガブリアスが突撃してきた!まるで空から降ってくる流星のような勢いでこちらに向かって突撃をしてきたガブリアスは、そのまま進行方向にあるものすべてを薙ぎ倒しながら飛んでいった!?

幸いにして、ガブリアスは私たちの頭上を越えていった……よかった、直撃はしなかったみたい。

 

「ミミロップ!」

 

「ミミィ!」

 

よしっ、ミミロップもガブリアスの突撃を回避――

 

「馬鹿者っ!まだ立つな、伏せろ!!」

 

「――え」

 

アカイさんの怒号が聞こえて、私が思わず振り返った……その時。

 

 

ビュゴオオオオオオォォォォォッ!!

 

 

「きゃああああっ!?」

 

「くっ……!」

 

ぼうふうの技が可愛く思えるような、とんでもなく強烈な突風が襲いかかってきた!私は危うく吹き飛ばされそうになったが、それより早くアカイさんが私を引きずり倒すように引っ張ってくれたおかげで事なきを得た。ただ……。

 

「あっ、モンスターボール……!」

 

ガブリアスを格納していたモンスターボールが、突風で吹き飛ばされてしまった。さらに強烈な風圧に巻き込まれてしまったせいか、一瞬で木っ端微塵に砕け散ってしまった……。

 

「そんなっ、モンスターボールが……!」

 

「命には替えられん!それよりも、君のミミロップの心配もするんだ!」

 

「そうだ、ミミロップ……!」

 

私は目を閉じて集中し、ミミロップに波導を送る。ミミロップは……私たちの真上!?あの風に吹き飛ばされたんだ!

長く続いた突風が止むと、空から物凄い勢いで何かが落下してきた……ミミロップだ!私はすぐに身を潜めていたポケモンたちの影から飛び出すと、そのままミミロップの下まで駆け寄った。

 

「ミミロップ!大丈夫!?」

 

「ミ……ミミィ~……」

 

ミミロップはすっかり戦闘不能になっている。……あんな強烈な突風、とてもじゃないけど回避できないよ……。私がミミロップをボールに戻すと同時に、再び何かが地面に降ってきた。それは、先ほどの突風を引き起こした張本人……ガブリアスだった。

 

「ガアアァァァ……」

 

「なんて技なの……辺り一帯を、悉く薙ぎ倒して……」

 

「凄まじい龍属性エネルギーだ……さらにそれを、体当たりのみにすべて注いだ結果が、これか。さらに、体当たりが直撃せずとも遅れて発生する龍風圧によって、全てを蹂躙する……形態が変化したこともあわせて、これは紛う事無き極み個体。

名付けるならば、『極み蹂躙するガブリアス』。

先ほどの大技は、『アブソリュートドラゴンストーム』と呼ぶべきだな」

 

極み蹂躙するガブリアス』……確かに、アブソリュートドラゴンストームの一撃は、文字通り蹂躙と言っても過言ではない。さらに、ガブリアスの全身を覆う黒い風……あれが、先ほどアカイさんが言っていた龍風圧なのかな……?

 

「ダイケンキ!」

 

「……!」

 

ミミロップの次に出したのは、ダイケンキ。ガブリアスが極み個体へと成長したなら、同じ極み個体でなければ対抗できないだろうと判断してのことだ。

 

「ショウ、極み個体と化したガブリアスの力がどれほどのものかは未知数だ。だが、間違いなく物理攻撃能力が飛躍的に向上していることは、あの形態を見ればわかるだろう。背中の背びれも……あれでは、鰭というより翼だな。空を飛ぶ能力もあると見ていたほうがいい。気をつけるのだぞ」

 

「はい!」

 

アカイさんはヌメルゴンとドダイトスをボールに戻しながら、私にヒントを出してくれた。ダイケンキもかつての戦友としてではなく、立ちはだかる強敵として、ガブリアスを見据えている。……油断しないようにしないと。

 

「行くよ、ダイケンキ!ガブリアス……必ずあなたを救ってみせる!」

 

「……!!」

 

「ガバアアアアアァァァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【ASGORE】~Undertale~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガアアアアアアッ!!」

 

ガブリアスは再びドラゴンクローを繰り出してきた!

 

「つばめがえし!」

 

「!」

 

ダイケンキに指示を出し、攻撃を迎撃する。ドラゴンクローの激しい猛攻を、ダイケンキは冷静にアシガタナで捌いている!

 

「ガブリアスッ!正気に戻って!!」

 

「……ッ」

 

私がガブリアスにそう呼びかけると、僅かに動きが鈍った……?そして、その隙を付いたダイケンキがつばめがえしを命中させた!ガブリアスはひるんでいる……!

 

「モンスターボール!」

 

以前のモンスターボールが壊れてしまったので、新たにモンスターボールを投げる……が。

 

「ガブアァッ!!」

 

ガブリアスから龍風圧が放たれると、モンスターボールが弾かれてしまった……!

 

「ショウ。龍風圧は古龍が操る強力な風だ。その風は近づく者を吹き飛ばし、弓や弾丸でさえ弾き返すほどの力がある……まずは、あの龍風圧を解除しなければならない」

 

「どうすれば!?」

 

「状態異常だ。件の古龍が操る龍風圧も、その古龍を毒状態にすることで龍風圧を解除することができた……理屈が同じならば、毒状態でやれるはずだ。さらに言えば、その極み個体のダイケンキならば、龍風圧を断ち斬ることができるはずだ。一瞬とはいえ、隙を作れるだろう」

 

「わかりました!!」

 

「……」コクリ

 

それならラッキーだ!ダイケンキはどくづきの技が使える……それに、ダイケンキの太刀筋ならば龍風圧も斬れるそうな……まずはどくづきで、毒状態にできれば……!

 

「行けるね、ダイケンキ?」

 

「……!」

 

「よしっ、行けっ!!」

 

「!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……保険をかけておくべきか)テル少年」

 

「え……あ、はい!」

 

「君はクラフトが得意と聞いた。私が持ち込んだこの鉱石を使って、モンスターボールを作れないかね?」

 

「この石は……?」

 

「この状況を打破するうえで、決して欠くことのできない代物だ。君に預ける……彼女の力になって欲しい」

 

「おれが、ショウの力に……」

 

「英雄とは、決して一人でなれるものではない。英雄とて、最初から英雄だったわけでもなければ、英雄然とした力があったわけではない。……君のように、支えてくれる者がいるから、英雄はどのような脅威であろうと立ち向かえるのだ」

 

「……!」

 

「だから、君に預けると言った。

龍の力を封じ、その効力を抑制する力を持った鉱石……滅龍石をな」

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイケンキとガブリアスの戦いは、一進一退の攻防を極めていた。ダイケンキは何度も何度も龍風圧を切り裂いて隙を探るけど、ガブリアスもまた抵抗が激しく、容易にどくづきを打たせてくれない……!

ダイケンキが頭上からシザークロスを放つが、ガブリアスはアイアンヘッドでこれを受け止めるとそのままダイケンキを押し返した!なんなく着地を決めたダイケンキに、ガブリアスは容赦なくアクアテールで襲いかかる!

 

「素早く、ひけん・ちえなみ!」

 

「!!」

 

「ガッ……!」

 

攻撃を回避し、さらに早業ひけん・ちえなみを命中させた!ガブリアスに破片が突き刺さり、痛みでダメージを与えるとともに動きを封じる!

……!!また、龍風圧が!

 

「切り裂け!」

 

「……」

 

ダイケンキの一太刀で、風圧が途切れた……今だ!

 

「力強く、どくづき!!」

 

「!!!!」

 

「ガアァ……!ガブアアアァ!!」

 

「ルシッ……!」

 

よっし!どくづきが命中!!……ただ、反撃のドラゴンクローで、こっちも結構なダメージをもらってしまった。ダイケンキはまだまだ戦えそうだけど……いや、待って。

 

「……ッ!!」

 

ガブリアスから、龍風圧が完全に消滅した……!それに、ガブリアスの体が僅かに紫に光っている……毒状態だ!

 

「一気に攻めて!つばめがえし!!」

 

「!!」

 

「ガバアアアァッ!」

 

……!ガブリアスもつばめがえし!?つばめがえし同士の激しい応酬が始まった!

ダイケンキが懐に飛び込み斬り上げるが、ガブリアスも上から爪を振り下ろしぶつかり合う。一瞬、ダイケンキの動きが止まったのを見て、ガブリアスが反対の腕の爪を使ってダイケンキを逆に斬り上げた!宙に打ち上げられたダイケンキ……それを、翼と化した背びれを広げて追撃するガブリアスだが、咄嗟にダイケンキがアシガタナの一本をガブリアスに投げつけた。それを回避したことで僅かに体勢が崩れたガブリアスに、今度はダイケンキが一撃を加える。

僅かに吹っ飛ぶも、すぐに空中で立て直したガブリアスはダイケンキに突貫した!体当りされたダイケンキに爪を振り下ろすガブリアスだが、ダイケンキも負けじともう一本のアシガタナを振るってこの一撃を相殺し、二体は揃って地上へと着地した。

 

「ガバアァ……!!」

 

「ル……!」

 

息もつかせぬって、こういう事を言うんだね……!二体がぶつかり合ってから地上に戻ってくるまで、無意識に呼吸が止まってた。……どうする、毒状態もいつ自然回復するかはわからない……早いところ弱らせるか正気に戻して、ボールに入れないと……!

 

「……間に合ったか」

 

「(……?)」

 

後ろでアカイさんが何か言ってる……間に合った?何が?

 

「できましたよ!これでいいんですか!?」

 

「……あぁ、上出来だ。さすがはクラフト名人だ……ショウ!」

 

アカイさんが呼んでる……?私はダイケンキとアイコンタクトをしてから、アカイさん達の下まで後退した。

 

「どうしました?」

 

「テル少年が、ガブリアス救出に最適な道具を作ってくれたぞ」

 

「え?」

 

「……これ、なんだけど」

 

そう言ってテル先輩が渡してきたのは……紫色のモンスターボール?この色合い、まるで……いや、でも、まさか……?

 

「あの、これは……?」

 

「……我が地元では、時として古龍が人類を脅かす障害となり立ち塞がる。そんな時、人類は龍属性の武具を携え、その武器に宿るとある力を用いて古龍に対抗してきた。その力とは龍封力。特定の古龍種の力を封じ込み、抑制する力のことだ」

 

「龍封力……」

 

「そして、その龍封力を持つ鉱石、滅龍石を材料にクラフトして作り上げたモンスターボール。……龍とはあらゆる生物の頂点に位置する者。それらの生物の力を押さえ込み格納する力をもつこのボールは、理論上は全てのポケモンを捕らえることができる(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

名付けるなら……マスターボール、がいいだろうな」

 

「マスターボール……!」

 

まさか、このヒスイ地方でマスターボールを見るなんて……!!

正直マスターボールなんてお父さんの部屋で山積みになっていたのを腐るほど見てきたから見飽きてたんだけど……ぼんぐり製のマスターボールなんて超レアだ!記憶に一生焼き付けておこう!

……お父さん、「運だけはいいんだよなぁ」ってよく言ってたけど……その運をバトルに持ち込むのは本当にズルだと思います。

 

「このマスターボールならば、ガブリアスの龍属性エネルギーを抑え、正気に戻せるはずだ。さっそく捕獲してみたまえ」

 

「ありがとうございます、アカイさん!テル先輩!」

 

「お、おう!絶対にガブリアスを助けるんだぞ、ショウ!」

 

「はい!」

 

テル先輩からも激励され、私はますます体に力が漲ってきた。

 

「ダイケンキ!」

 

「!!」

 

「ガブアアアアアァァァッ!!」

 

……!!ガブリアスの全身から、また膨大な龍属性エネルギーが……まさか、またアブソリュートドラゴンストームを使うつもり!?

 

「ふむ……。本来大技は一度使うとしっかり休む必要があるんだが……どうやら龍属性エネルギーのパワーを利用して、強引に二発目を放つつもりらしい」

 

……!ならば、ここで決着をつける!!

 

「ダイケンキ、奥義装填!!」

 

「!!!!」

 

「ガバアアアアッ!!」

 

ガブリアスが龍属性エネルギーを纏うとともに、再び大空へ飛び上がった!ダイケンキも、第三のカタナを抜刀し、水の力を収束している。チャンスは一度。技の威力からして、競り合いに負ければそのまま敗北に直結する!!

……空に一瞬、赤い光が見えた……今だ!

 

「ぜっけん・はとう!!」

 

「ガッブアアアアアアァァッ!!」

 

「ルッシャアアアアアァァッ!!」

 

水の巨剣と、龍の竜巻が激突する!力は……完全な互角だ!!どちらも押されず、しかし押しきれない……!完全な五分と五分……これが、極み個体の力……!!

 

「ガッ……バッ、アアアアア!!

 

「ルッ……シャ、アアアアア!!

 

力の拮抗はついに限界を迎え、激しい大爆発を起こした!!私はその強烈な爆風に耐えながら、決して目を逸らさず状況を見守る。ダイケンキ……ガブリアス……!!

煙が晴れてきた。……!

 

「ガブ……ガブ……!」

 

「ルシ……ルシ……!」

 

二体とも、立ってる!!肩で息をしているけれど、二体とも健在だ!!ガブリアスの龍風圧も、今は解除されている……これなら!

 

「よし……マスター――」

 

「ルシャアアッ!!」

 

「ガブァアアッ!!」

 

「ちょ」

 

私がマスターボールを投げようとした直前、ダイケンキとガブリアスがお互いに猛烈な勢いで走り出すと……そのまま頭をぶつけ合った!?お互いに頭突きを繰り出した状態になった二体……やがて飛びかかったダイケンキが地面に降りると……そのまま二体とも、倒れてしまった。……両者戦闘不能、かな……?

 

「……えいっ」

 

私は倒れているガブリアスに向かってマスターボールを投げた。マスターボールはガブリアスを格納すると、ほとんど抵抗なく捕獲できた。

 

「……最後のアレ、なんだったんだ?」

 

「さてね……ただ、お互いに勝つべき相手が健在な状態で立っているとわかれば、何もしないわけにはいかないだろう?まして、あの二体はお互いに好敵手だと聞く。考えるよりも先に、体が動いたのだろう。……ククッ。なかなかどうして、熱い心を持っているじゃないか」

 

「あぁ、なるほど……」

 

そんな話を背中越しに聞きながら、私はガブリアスを繰り出した。その後、二体とも回復をさせてからガブリアスに声をかけた。

 

「ガブリアス、大丈夫……?私のこと、わかる……?」

 

「……ガブ?」

 

なぜか首を傾げるガブリアス……えっ、そんな、まさか……!?

 

「ガブリアス……まさか、記憶が……?」

 

「????」

 

「そ、そんな……!!」

 

わ、私のせいでガブリアスまで……!ごめんなさい、ガブリアス、本当にゴメ――

 

「(……プククッ)」

 

「おい今笑ったな?おい?」

 

「(ギクッ!!)」

 

私は見逃さなかった……ガブリアスが一瞬、吹き出したその瞬間を!このっ、このっ……!

 

「"おや"をおちょくるんじゃありません!ガブリアス、正座!!」

 

「ガバッ!?ガブガブ……」

 

「うるさい!正座ァ!!」

 

「ガバアァッ!?」

 

「……フッ」

 

私はガブリアスに無理やり正座をさせてお説教を始めた。極み個体化してからめっきり笑わなくなったダイケンキがすぐ後ろで小さく笑っているけど、そんなことは些細である。

 

「ショウ、ひとまずはその辺にしておけ」

 

「なんでですか、アカイさん。私はガブリアスに……」

 

「ムラに共犯者がいるだろうから、どうせならまとめてお説教をしてはいかがか?」

 

「それもそうですねそうしましょう」

 

そうだった、まだムラにオドガロンがいた。どうせ叱るなら二体同時の方が手間が省ける。さすがはアカイさん。

 

「ほら、帰るよダイケンキ、ガブリアス。ボールに戻ってね」

 

「ガブゥ……」

 

「ルーシア」

 

「ガバァッ!!」

 

「正座する?」

 

「ガッ!?……ガブ……」

 

ガブリアスは「やめときゃよかった」と後悔するようにため息をついている……そのすぐ横でダイケンキが小さく鳴いた。……音的に「バーカ」と言ったようで、ガブリアスが直ぐに怒り出した。けど、正座を持ち出したら一瞬でおとなしくなった。

……あぁ、よかった。いつものガブリアスだ。ダイケンキとのやり取りを見ていると、それがものすごく実感できる。

 

「良かったな、ショウ!」

 

「ガブリアスまで極み個体に……また新しく図鑑を作り直さなければいけませんね!」

 

「いやはや、見事なものだ。ガブリアスも、新たな力を無事に得られて良かったよ」

 

「やったねお姉ちゃん!ガブリアス!」

 

みんなも、口々にガブリアスの無事を喜んでくれている。

 

「おかえり、ガブリアス」

 

「ガッブアァ!」

 

私がそう声をかければ、嬉しそうに鳴いてくれたガブリアス。……本当に、よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コトブキムラへと戻る彼らを見送った二人……否、二頭は、彼らの姿が見えなくなってからようやく口を開いた。

 

「それにしても、今回の件は想定外だったな。さすがに祖といえど、この展開は読めなかったか?」

 

「当たり前でしょう。……けど、ポケモンがモンスターの力を取り込めたということは、ある意味ポケモンとモンハンの世界が並行世界であるということの証明になったわね」

 

「こちらとしては、良くも悪くも誤算だったがな」

 

「最初に生まれたのがアルセウスかミラルーツかの違いに過ぎないわ。誤算ではあったけれど、誤差の範囲で済んだ。……それより、アノ子は?」

 

「……状況は芳しくない。引き続き監視はするが……こちらが終わる頃には、アルセウスも限界だろう」

 

「そう……一刻を争うことになりそうね。頑張ってちょうだいね、ショウ。英雄とは、当人の望む望まぬに限らず世界が求めるもの……そして、この世界はまさに英雄を求めている。もしも英雄が現れるならば、それは……」

 

白く小さな少女は……その幼さに似合わぬ妖艶な笑みを浮かべた。

 

 

 

 




なんとかなって良かったですね。
最後のガブリアスの雰囲気ぶち壊しギャグは、ガブリアスなりにショウちゃんを気遣った結果でございます。まあ、ちょっとタチが悪かったせいで叱られちゃいましたがw


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【もうちょっとだけ】我らモンハン部異世界支部【休むんじゃよ】

やっぱ掲示板回を書いてる時が一番楽しいわ……無遠慮にギャグをぶっ込めるから


1:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……紅蓮の湿地の時空の歪みを解決し、さらに祖龍とのポケモンバトルに加えてガブリアスの暴走も鎮静完了

時空の歪みの拡大停止から総じてすでに2週間……

 

2:空の王者 ID:MH2nddosHr8

何にも起きねーなー

 

3:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁ、今はお休みタイムってことでええやん

 

4:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

けどなー……肝心のハンターも全然目を覚ます気配ねぇし……

生きているとはいえ、昏睡状態の人間を生かし続けるにはこの時代だとちと限界があるぞ?

 

5:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁでも……ハンターだし

 

6:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それな、ハンターだし死にゃしねぇだろよ

 

7:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

んじゃあ、暇つぶしがてらにちょっと直近の出来事について振り返るか

 

8:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

さんせーい

 

9:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それじゃあまずは……タマミツネか

 

10:空の王者 ID:MH2nddosHr8

案の定、女性人気ハンパなかったな

なにげに大人の女性が俺らを見に来るのってタマミツネが来てからだったな

 

11:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

見学者が揃いも揃ってキャーキャー騒いでるのを見ると、さすがは看板モンスターって感じだったな

 

12:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

くそぅ……俺たちだって生前はあんなにモテなかったのに……!!

 

13:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いいじゃねえか、今は大人気だぞ?

見てみろ、剣介……お前の勇姿を一目見ようと、大勢の人が集まっているじゃないか……!

 

14:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そうだぞ、剣介。お前だって、決して不人気モンスターというわけじゃないんだ

自信を持て、胸を張れ……お前を思う人たちの声に耳を傾けるんだ

 

15:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

光輝……!流静……!

 

16:空の王者 ID:MH2nddosHr8

でも女の子しかいないが?

 

17:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

( ゚Д゚)

 

18:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

バッカお前、なんで言っちゃうんだ焔!せっかくいい雰囲気だったのに!!

 

19:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そうだぞ焔、時には黙っててやるのも優しさだろうが!!

 

20:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

テメェらが揃いも揃って血も涙もねぇってのはよーくわかったわ!!

そして何度も言うが俺は断じてロリコンじゃねーっ!!

 

21:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そういうことは背中の女の子たちを下ろしてから言いな

ほら、そろそろ交代の時間だぞ

 

22:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

分かっとるわそんなこたぁよおー!!

オラァ!交代の時間だ、ガキどもぉ!慌てず落ち着いてしっかり順番を守って背中に乗りやがれぇ!!

 

23:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……タマミツネに限らず、俺たちにも人気が出始めたな

 

24:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺と光輝は相変わらず男の子に人気で、剛太と流静は男性人気が高いよな

 

25:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

男性に人気といえばディノバルドだ、あいつの尻尾を見て鍛冶師を志す若者が増えてるってさ

それに流静……ラギアクルスの人気具合は男女比が割と五分と五分だぞ、さすがは看板モンスターの貫禄よ

 

26:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それはそう

……あぁ、あれだ思い出した、ムラにさぁ、ミノムッチがどうのこうのって言ってた三人組いたやん

 

27:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いたな、そんな三人……その人たちが何か?

 

28:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、今度はドスジャギィたちを見てどれがどれやらって言い争ってて草生えたって話

 

29:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ブフッ!……そ、それはまた……ww性懲りもないというかwww

 

30:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

またやってんねぇ、って話だなww

あと、ホロロホルルはやっぱし小さいなぁ、可愛い可愛いってチヤホヤされまくっとる

 

31:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それなー、5mだからな、モンハン組では最小モンスターだからな

 

32:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おぉ、おかえり、女の子たちは満足したかい?

 

33:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お陰様でな……ただ、人気が出ているのは俺らだけじゃないぞ

 

34:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おぉ……ってことは、極みガブリアス?

 

35:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おうよ、ラベン博士がすごい生き生きとしてたわ

龍属性エネルギーとヒスイのドラゴンポケモンの関係性を調べるんだーって言って、めっちゃ張り切ってたぞ

 

36:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……まぁ、帰ってきて早々に正座させられて説教されたがな

 

37:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……嫌な事件だったね

 

38:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ガブリアスが正座してその隣でオドガロンが伏せをして、四方をフェアリーポケモンで包囲した状態でしっかりとお説教をするショウちゃん……

 

39:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

「今後は"おや"への相談無しに勝手なことをしない」ってしっかり約束を取り付けれたからな、ひとまずは許してもらえてよかったな

 

40:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……極み蹂躙するガブリアス、すごかったな

 

41:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ、マジでやばかった

アブソリュートドラゴンストームなんて、あれ絶対に躱せんやろ

 

42:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

対策……対策なんてあるのか?

「風圧スキル」で「龍風圧無効」でも付けるか?

 

43:空の王者 ID:MH2nddosHr8

バグってんねぇ!

 

44:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

だが、それを真正面から迎え撃って相討ちにするダイケンキも大概だがな

……明確な力関係が見えてきた気がする

 

45:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……ところで、さ

 

46:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ん?

 

47:空の王者 ID:MH2nddosHr8

はい?

 

48:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

剛太はどうしたんだ?あいつ、さっきからずっとダンマリだぞ?

 

49:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……そういえば、昨日からちょっと体調悪そうにしていたな……見に行くか

 

50:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

りょ

 

51:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おk

 

52:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

さんせーい

 

53:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

たしか、結構離れた場所に……あ、いた

おーい剛太ー、大丈夫かー?

 

54:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……全然大丈夫じゃない、かなりしんどい

 

55:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おいおい、どうした?何があった?

 

56:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……ここ最近、訓練等を含めて滅多に勝負する機会が減ってさ……

言ってしまえば、排熱する機会がなかなかこない……

 

57:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あー……ガスを吹くにせよグラビームぶっぱするにせよ、周りの事とか気にしないとだからな……

 

58:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そうして我慢を続けた結果……うぅ、そろそろ限界……

 

59:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

だ、大丈夫か……?なんなら俺と勝負するか?

 

60:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、ここはほのおタイプが効かない俺のほうがいい

剛太、俺と勝負しろ

 

61:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……いや、実は一つだけ……今すぐに限界までたまったこの熱を一発で排熱する、たった一つの冴えたやり方がある……

 

62:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

え、そうなのか……?

 

63:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なーんだ、あるんじゃねーかそんな都合のいいやり方が!

ほら、どうやるんかは知らんが、とっととやっちまえ!

 

64:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それじゃあ、遠慮なく……

 

65:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……なぁ、ちなみにどうやって排熱するんだ?

 

66:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

自爆するしかねぇ

 

67:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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68:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

…………

 

69:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

…………

 

70:空の王者 ID:MH2nddosHr8

…………

 

71:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

…………

 

72:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……スマン……

 

73:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

「スマン」じゃねーんだわボケがよおおぉぉぉ!?

馬鹿野郎ーっ!!剛太ァ!なんで自爆する!?ふざけるなーっ!!

 

74:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なぁ、なんだこれ……?こんなに痛いのか……?

 

75:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

一瞬、前世のことが走馬灯になって見えたぞ……

 

76:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺なんて写真でしか見たことない曾曾祖母さんと駄弁ってたわ……

 

77:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いやぁ……でもおかげですっごいスッキリした!付き合ってくれてありがとな!

 

78:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

てっきりあの世まで付き合わされるかと……

 

79:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ほらぁ……いきなり自爆するからみんな集まってきたじゃねえか、何事かーってな

 

80:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それでもすぐに剛太が排熱目的で自爆したことを察したショウちゃんはさすがはトレーナーの鏡

 

81:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……そういや、さっきの自爆で剛太の外殻の一部が吹き飛んでるぞ

大丈夫なやつか、これ?

 

82:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

んー?まぁ、大丈夫っしょ

なんならほぼ石だからなにかしらの材料になるまである

 

83:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そんなことよりも……お説教の時間だオラァッ!!

 

84:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ほら、ショウちゃんも目が笑ってないけどイイ笑顔だぞ、叱られてこい

 

85:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

す、すいませんでしたショウさん、ほんの出来心なんです許してください……

 

86:空の王者 ID:MH2nddosHr8

出来心で半死半生にされた俺らの立場よ

 

87:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うばー……かいふくのくすりがキクぜぇー!!

 

88:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ヤクでもやってんのかこのバカドラゴン

 

89:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、クスリをキメてることに変わりはないからなww

 

90:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ふぅー……やっと解放されたぉ……

 

91:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……あー、説教し疲れた……水飲むか

 

92:空の王者 ID:MH2nddosHr8

え"!?

 

93:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お"前"も"水"を"飲"む"ん"か"ぁ"!?

 

94:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺"も"飲"も"う"!!

 

95:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

水"を"飲"み"ま"あ"す"!!

 

96:空の王者 ID:MH2nddosHr8

水"を"飲"み"ま"あ"す"!!

 

97:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

誰ぇ……こわい……

 

98:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

流静じゃんね

 

99:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

三人……三人いるっ……

 

100:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

テメェら二人共、今すぐ俺に謝れ

 

101:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺も飲もうっと、水を飲みまあす

 

102:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

な"に"ぃ"!?お"前"も"水"を"飲"む"ん"か"ぁ"!?

 

103:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺"も"飲"も"う"!!水"を"飲"み"ま"あ"す"!!

 

104:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

水"を"飲"み"ま"あ"す"!!

 

105:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……!!(## ゚曲゚)

 

106:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あばばばばばばば!!

 

107:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あばばばばばばば!!

 

108:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

力業りゅうのはどう、いきなりぶっぱなすやん

 

109:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

雑なものまねするからだよ……

 

110:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

反省しなさい、反省

 

111:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……はい

 

112:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……はい

 

113:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まったく……お、テル?

 

114:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……また時空の歪みが広がり始めたか

 

115:空の王者 ID:MH2nddosHr8

え"!?時"空"の"ゆ"――

 

116:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

処すぞ?

 

117:空の王者 ID:MH2nddosHr8

すみません……

 

118:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

よぉーし、悪ふざけはこの辺にして、そろそろ真面目にいくぞー

 

119:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

りょうかーい

 

120:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……?

 

121:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ん?どうした光輝?

 

122:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……いや、一瞬だが、ショウちゃんが胸元を押さえていたような……

 

123:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

セクハラですか?

 

124:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

喧嘩なら買うぞコラァーッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【群青の海岸!】我らモンハン部異世界支部【ライゼクス!!】

 

215:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……セーフッ!間に合った!!

 

216:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ギリギリだったぁ!!

 

217:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんとかなったのも全部、焔が空で牽制してくれているおかげだな!

 

218:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ガラナさんも無茶をする……いくら帳岬の最先端にある安息地に先代キングが取り残されたからって、ライゼクスの襲撃を避けながら命懸けで助けに行くか?

大人しく助けを待てよ助けを、ショウちゃんが間に合わなかったらゼクスカリバーで諸共に死んでたぞ

 

219:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それだと最悪、間に合わんかったかもしれんだろが

先代キングは小走りがやっと、ってくらいに弱ってんのに

 

220:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

だが焔のやつ……苦戦しているな

 

221:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

本格的な空中戦だし、ほとんど支援を受けられんからな……

 

222:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

お、ショウちゃん……おぉ、極みガブリアスに乗って飛んでった

 

223:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

考えたな……!極み化によって背びれが翼になったことで飛行能力が増したガブリアスなら、確かに接近しやすいだろうな

 

224:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんといっても、ガブリアスはじめんタイプ!電撃ならショウちゃんへの直撃さえ避けられれば、大抵はガブリアスが受け止めてくれる!

 

225:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

しかし……事態は予測がつかない、なにより群青の海岸の時空の歪みがこれ以上大きくなると、紅蓮の湿地と天冠の山麓にまで届いちまう

海岸ベースは飲み込まれ……砂浜ベースだって、もうギリギリまで歪みが近づいてきているからな……

 

226:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

焦るな、焦るなよショウちゃん……焦りはミスを引き起こすぞ……!

 

227:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……うわっ、あぶねぇ!ライゼクスのやつ、ショウちゃんのことも平気で狙ってきやがった!

 

228:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ライゼクスッ!!テメェの相手は俺だろうがっ!!逃がしゃしねえ!!

 

229:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

気をつけろよ焔!ライゼクスがいつメガシンカするかはわからん、慎重に行け!

 

230:空の王者 ID:MH2nddosHr8

わかっとらぁよ!!

 

231:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……結構ヤベェな、こりゃ

 

232:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ……ススキニキから話を聞いたときはまさかとは思ったが、ここまで状況がきついとはな……

 

233:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それにしても、なんでライゼクスはこうもキングに執着するんだ?

 

234:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……元々、キングやクイーンはヒスイ地方において、ひときわ強い力を持つポケモンたちだ

あの創造神から力を授かったポケモンたちの子孫でもある……もしかしたらその身に宿る力強さを本能で察知していて、その身を喰らうことで力を得ようとしたんじゃないか?

 

235:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

一理あるな

先代ウインディも元はキング……今は弱っているが、それでも通常ポケモンに劣るほどかと言われたらそうでもない

体が不自由なだけで、元々持っている力は衰えていないってことか?

 

236:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そうじゃなきゃ、現キングのウインディが現れた時点でそっちを狙うだろ

もしくは、より狩りやすい方を狙ったか

 

237:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

どのみち、これ以上ライゼクスに暴れられても困るんだよなぁ!

 

238:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……群青の海岸に生息するポケモンのうち、歪み内部にいたポケモンたちは今やほとんどがライゼクスの胃の中だ……!

 

239:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺らも含めてイレギュラーなんだよ……やりすぎたんだ、お前はな!

ポケモンたちの仇だ、覚悟しやがれよ?

悪さが過ぎたな……ライゼクスゥッ!!

 

 

 

 




やっぱり掲示板回たのしー!
そして次回はちょっとした日常的な幕間を挟んで群青の海岸です


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幕間 コトブキムラと巨大ポケモンのある日のこと

これまでの話を見返していて思ったんだ……

「あれ、ショウちゃんサイドの日常回はいずこ……?」と。

掲示板回でギャグやったりわちゃわちゃしたりと日常感はあるけど、ショウちゃんサイドでそういう日常回がないことに気がついた。大抵は導入回だったりバトル回ばかりだし……。

なのでショウちゃんサイドで日常回です!


ギンガ団調査隊隊員、ショウの朝は早い。

目を覚ました彼女がまず最初にすることは、隣の部屋で眠っている異邦人の様子見である。静かに扉を開けて、中の様子を伺う。布団に寝かせられている男性は、規則正しく呼吸をしながら眠り続けている。体の傷はほとんどが古傷で、致命傷などはなし。身につけていた武具などは、鎧は非常に硬くとてもではないが人の手で傷つけることはできないと見える。武器である刀剣に関しても、切れ味鋭く触れたそばからモノが斬れていくほどである。

ラベン博士が特に注目したのはこの刀剣で、この刀剣にはオドガロン亜種や極みガブリアスが持つ龍属性エネルギーと同じエネルギーが込められていることが判明したのだ。現在、刀剣は貴重な研究資料として大切に保管しているとのこと。

 

「(まぁ、持ち主が目覚めたら返すんだろうけど)」

 

先の発見を受けて、ショウが気にかけているのは「武器に属性が込められている」という点だ。

ポケモンたちにはタイプ、巨大ポケモンには更に体質という形で固有のタイプ……即ち属性を持っている。そこへ来て、フェアリーの泉を訪ねた際にアカイから聞いた「ポケモンを狩り、素材を武具に加工した」という話……彼が持つ刀剣に備わった龍属性も、元はポケモンのものだと思うと、少々複雑であった。

 

「(生きるためには必要だったんだろうけど……といっても、生きるためにポケモンを食べた私が言えたことではないか)」

 

実はショウは、今も出かけてはジンオウガたちとともに狩りに勤しみ、内緒でポケモンを食す生活を送っていた。ジンオウガたちも今の生活には不自由していないが、時折狩りをしたがるような素振りを見せることがあり、それに合わせてショウが外へ連れ出して狩りをさせていた。ショウはそのおこぼれを預かっているようなものである。

 

部屋を辞して、その足で放牧場へと向かう。放牧場に着けば、牧場主のオハギが声をかけてくれた。

 

「あら、ショウ!ポケモンを預けていくかい?」

 

「いえ、ジンオウガたちの様子を見たくて」

 

「あぁ、そうだったのかい!そういえば、今朝も朝早くからラベン博士が訪ねてきたねぇ。……ショウのガブリアス、すっかり姿が変わっちゃってるけど大丈夫なのかい?」

 

「えぇ、大丈夫です。ただ、ひときわ強い個体へと成長しただけですから」

 

「そうなんだね。ふふっ、こうしてみるとポケモンって本当に不思議な生き物だよねぇ。ガブリアスのようにさらに姿が変わるポケモンもいれば、ジンオウガたちみたいにバカでっかいポケモンだっているんだから」

 

「本当、そうですね」

 

改めてオハギに通してもらい、ショウは放牧場のさらに奥まった場所へ向かっていく。ちょうどそこでは、ショウがよく連れ歩くポケモンたちに加え、これまで捕まえた巨大ポケモンたちが集められていた。

少し歩くと、ラベン博士が極みガブリアスを調べていた。オドガロン亜種もともにいることから、龍属性エネルギーの調査をしているようだった。

 

「博士、おはようございます」

 

「おぉ、ショウくん!おはようなのです!」

 

「ガバァ!」

 

「オドルル」

 

「うん、ガブリアスとオドガロンもおはよう」

 

ガブリアスとオドガロン亜種については、暴走事件の後ムラに帰って早々に説教をした少しばかり脅かしすぎたか、と思い返すショウだが、ガブリアスの命に関わりかねないことはアカイたちから聞かされていたので改めて妥当だったか、と考える。

 

『さて……ガブリアス、オドガロン、覚悟はいい?』

 

『サーナ』

 

『クシー』

 

『キッス』

 

『フィアー』

 

『『!?!?!?!?』』((;゚Д゚)ガクガクブルブル

 

ガブリアスは強制的に正座させ、オドガロン亜種はすぐ隣で伏せをさせ、さらに逃げないように四方をフェアリーポケモンで包囲してから、あの時の暴走事件がいかに危険なことだったか、下手をすればガブリアスの命に関わる危険性もあったことも含めて、一、二時間は説教をした。そして最後に「今後は"おや"への相談無しに勝手なことをしない」という約束を取り付けて、ひとまずは決着がついた。

 

「(大丈夫。むしろあれは必要なことだ、問題ない)……?ジンオウガたちは?」

 

「ホロロ」

 

ショウがジンオウガたちを探していると、ホロロホルルが飛んできた。地面に降り立ってショウの方へ近づいて来ると、そのままズイッ、と頭を突き出す。

 

「あはは、はいはい」

 

ショウはホロロホルルが望むまま、そのまま頭を撫で始めた。手懐けてみると一番人懐っこくなったホロロホルルは老若男女問わず人気があり、最近では様子を見に放牧場まで足繁く通う住人が増えたほどだ。

人気、と考えたところで、ショウはぐるりとあたりを見渡した。

 

「……最近、オドガロンたちを見に来る村人が増えましたね」

 

「コトブキムラのみんなが、彼らを受け入れてくれているという確かな証なのです。喜ばしいですね」

 

「ふふっ……それもそうですね」

 

辺りを見渡した際、面白い光景がいくつか見えた。ゴシャハギが持ち前の氷の力で刃を形成すると、無造作に木を次々と切り倒してはドスジャギィたちに放牧場の外へと運ばせていた。どうやら整地をしているらしい。

あと、外に運び出された木はそのまま建築隊に回収されていた。ちゃんとWin-Winの関係を築けているようで何よりである。ショウはひと安心した。

 

「(あっちは男性陣か。やっぱりディノバルドの尻尾って、男の人からするとロマンなのかな)」

 

ディノバルドの様子を観察しているのは、若者を中心とした男性陣だ。全員が全員、ディノバルドの尻尾に注目をしている。鎧の男性が身につけていた武器もそうだが、男性陣には刀剣類がブームとなっている。ディノバルドの尻尾のような、力強くも美しく、斬れ味抜群の刃物作りが話題を呼んでいるのだ。その参考資料として、ディノバルドの尻尾はまさに適任なのである。

ディノバルドの牙をイメージした砥石も近々製作予定らしく、刀剣ブームがますます賑わいそうだ。

 

すると今度は、女性の黄色い悲鳴が聞こえた。そちらへ目を向けたショウは、そこにいるポケモン……タマミツネを見て悲鳴の意味にすぐ納得した。

 

「(タマミツネの女性人気、予想よりもすごい。放牧場に馴染むのも早かったし、元々穏やかで温和なイメージがある分、ムラの人たちからも早くに受け入れてもらえた)」

 

タマミツネを放牧場に放ち、ムラの人々に説明をしたのだが……誰もがタマミツネの優美さに見蕩れて、ほとんどの人がショウの話をスルーするという事態が起きたのだ。

呉服屋のシャロンに至ってはタマミツネのあまりの美しさにテンションが天元突破してしまい、奇声を上げながら新衣装に着手し始めたほどだ。結果、タマミツネをイメージした着物が一大ブームとなり、今やほとんどの女性が身につけている。

しかし、なんといっても衝撃的だったのは……。

 

「あぁ……タマミツネ、本当に綺麗なポケモンよね~……」

 

「ほんとほんと。私なんてでっかい花が咲いてるのかと思ったわ!」

 

「しかも、あれでいてタマミツネは……」

 

「うんうん、しかもタマミツネって……」

 

「「あんなに綺麗なのにオスポケモンなんだから、ニクイわよね~!」」

 

女性たちの会話が耳に届き、ショウもウンウンと頷く。ショウが捕まえたタマミツネは、なんと性別がオスだったのだ。

 

『タマミツネって、本当に綺麗なポケモンですね』

 

『そうだろうな。我が地元でも、かなり人気の高いポケモンだ』

 

『人間で言うエンジュ美人ってやつですね』

 

『だがオスだ』

 

『……え?』

 

初見では完全にメスポケモンだと思い込んでいたショウは、捕獲後にムラにやってきたアカイとこんな会話をしていた。そこで初めて、タマミツネがオス個体だということを知ったのだ。

アカイ曰く、タマミツネのメス個体は幼体と共に群れを形成して暮らしており、人里に姿を見せる事はほとんど無い。反面、オス個体は成熟すると基本的に単独行動を取るらしく、一般的に目撃されるのも大多数がオス個体であるらしい。

あんなに綺麗なのに……と愕然とするショウに、アカイはボソリと呟いた。

 

『……ミミロップやサーナイトのオス個体を思えば、対して違いはあるまい』

 

『なるほど!!』

 

納得した。

 

「……あ、いた」

 

ジンオウガたちはあっさりと見つかった。いつもの五体で並んで座っており、その後ろ姿がどこか愛嬌があってショウはつい微笑んでしまう。

 

「ジンオウガ」

 

「……ワウ?」

 

「何してるの?」

 

「ワン」

 

尋ねてみれば、「アレ」と言うように首で何かを指している。ジンオウガの横から覗き込むと、二体のポケモンが組手を行っていた。

 

「クオオァ!!」

 

「ウッキャキャ!」

 

ルカリオとゴウカザルだ。ゴウカザルの骨折は骨がくっつき始めているそうで、激しく動かさなければ回復に支障はないらしい。だからなのか、ゴウカザルはルカリオの攻撃を足だけで捌いていた。

流石にこれはかくとうポケモンのプライドが許せないのか、ルカリオがほぼゼロ距離ではどうだんを構えたが、放つ前に振られたゴウカザルの蹴りがはどうだんを蹴飛ばしてしまった。

蹴っ飛ばされたはどうだんはまっすぐ進み……ベリオロスの顔面に直撃した。

 

「…………」(^ω^#)

 

「「…………」」(゚ω゚;)

 

「ガオオオオオオオッ!!」(゚Д゚#)

 

「「ウキャアア!?/クオアア!?」」。゚(゚´Д`゚)゚。

 

怒ったベリオロスが二体にふぶきを放ち、そろって吹っ飛ばしてしまった。吹っ飛ばされたゴウカザルとルカリオだが、大したダメージはない様子からどうやら威力が下がる早業で放ったようだ。

それよりもショウが気になったのは、ルカリオのはどうだんを弾いたゴウカザルの蹴りだ。

 

「さっきのゴウカザルの蹴り、炎を纏ってたよね?」

 

「ワンワウ」

 

「グオン」

 

ジンオウガだけでなく、リオレウスも肯定した。そのことから、ショウは炎を纏う蹴り技を名前をすぐに思い出した。

 

「ブレイズキック……ゴウカザルったら、いつの間にそんな技を」

 

「ヴァヴァ」

 

今度はグラビモスが動いた。グラビモスはジンオウガの前足を顔でつついたあとに首を横に振り、今度は後ろ足をつつくと頷いた。

ショウは頭をフル回転させ、グラビモスが言わんとすることを必死に読み取った。

 

「腕が使えないから、足で戦おうとした……ってこと?」

 

「ヴァー!」

 

どうやら解釈はあっていたようだ。グラビモスの嬉しそうな声に笑みを浮かべると、ショウはすぐに思考に没入する。具体的には、ゴウカザルが他の蹴り技を習得している可能性があるので、その調査についてだ。

再び組手を始めたゴウカザルとルカリオの二体を見つめながら、ショウはラベン博士への報告内容を黙々と纏めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

紅蓮の湿地の時空の歪みを解決してから、二週間が経った。

この間、時空の歪みは不気味なほどに大人しく、広域化現象も停滞し続けていた。それ自体は良いことなので、ショウはしっかりと休みを取っている。放牧場に足繁く通いジンオウガたちの調査をしたり、極み化したダイケンキやガブリアスの実力を改めて知るために模擬戦を催したり、極み個体・二つ名個体のような特殊な成長をする可能性を秘めたポケモンがほかにいないか探したり、ゴウカザルの新技の確認と、忙しない日々を送っていた。

 

そんな中、ベリオロスが幼い女の子たちを背中に乗せて放牧場を練り歩いている様子が見えて、思わずほっこりとしたショウ。ただ、すぐそばまで近づいてきたリオレウスがからかっているのか、ベリオロスはリオレウスに対して不機嫌な様子を隠さない。少し離れた場所にいるジンオウガとラギアクルスも、リオレウスと同様にベリオロスをからかっていたらしい。ニヤニヤと意地悪な笑み浮かべていた。

 

……と、子供たちを下ろしたベリオロスが何かを探すようにキョロキョロすると、そのままジンオウガ、ラギアクルス、リオレウスらのいつものメンバーで移動を始めた。そしてショウもまた、いつもなら一緒にいるはずの後一体の姿が見えないことに気づき、周囲を見渡す。

 

「……グラビモス、どこに行ったんだろう?」

 

「そういえば、グラビモスですが……どことなく調子が悪そうでしたよ。様子を見たほうが良いのでは?」

 

「そうなんですか!?ありがとうございます!」

 

今日も今日とて龍属性エネルギーの調査をするラベン博士から聞かされた話に、ショウは驚いた。グラビモスの不調など、ショウはたった今初めて知ったからだ。グラビモスは元々よく我慢するポケモンで、何かあってもショウに隠してしまうことがあった。反面、ショウに関することについては一切隠すことなく感情をあらわにするのだが。

 

「(なにかあったのかな……とにかく、様子を見に行かないと)」

 

ショウがグラビモスを探しに行こうとした、まさにその時だ。

 

 

 

 

ドオオオオォォォォォンッ!!!!!

 

 

 

 

「きゃああっ!?」

 

「な、なんですかこの爆発音は!?」

 

突然、放牧場の奥の方から爆発音が聞こえたかと思ったら、立派なキノコ雲が出来上がっていた。嫌な予感がしたショウが、大急ぎで現場に駆けつけると……。

 

「……みんな、何をしているの?」

 

「クゥ~ン……」

 

グラビモスを中心に輪になっていたジンオウガたちが、全員揃って仰向けになってひっくり返っている奇妙な光景が広がっていた。グラビモスの足元が大きく凹んで抉れているのを見るに、どうやらグラビモスが爆心地のようだ。

 

「……排熱しようとして、うっかりじばくの技を使っちゃったってこと?」

 

「ヴ……」

 

ひっくりかえったまま頷いたグラビモスの反応から、ショウもすぐに納得した。

考えてみると、最近グラビモスの排熱をすっかり忘れていたような気がする。グラビモスの体調が悪かったのも、ガスだまりが原因だろう。そうしてグラビモスの不調に気がついたジンオウガたちがグラビモスの容体を心配して近寄った直後……限界を迎えたグラビモスが排熱のために自爆を決行、近くにいたジンオウガたちを巻き込んでしまった……ということだろう。

よく見ると、自爆の影響かグラビモスの甲殻の一部が吹き飛んで剥がれてしまっている。そこからは溢れんばかりの熱エネルギーが滾っており、かなり限界まで堪えていたことがよくわかる。

 

「……排熱処理を忘れてた私も悪かったけど、だからって自爆しなくても良かったよね?」

 

「ヴ~……」

 

ジンオウガたちにかいふくのくすりを使って治療しながら、安易に自爆を選んだグラビモスに軽く説教をするショウ。ラギアクルスも加わって二言三言言葉を交わしたあと、ラギアクルスが川の水を飲んだ、その直後だ。

リオレウスとベリオロスが、心なしか愉快げな様子で真似するように川に顔を突っ込んだのである。ノリなのか本気なのか、ジンオウガが怯えた様子で二体を見ている。すると、先ほどの自爆の件もあってか、ひどくイライラした様子のラギアクルスがリオレウスたちに睨みを効かせた。今度はグラビモスが川の水を飲むと、リオレウスたちはまたしても真似するように川に顔を突っ込んだ。……そしてついに怒りが頂点に達したのか、ラギアクルスが二体諸共飲み込むほどの巨大な力業りゅうのはどうをぶっぱなした。これは流石に効いたらしく、怒ったラギアクルスに頭を下げるリオレウスとベリオロス。そして、一連の光景を笑いながら見るジンオウガと呆れた様子のグラビモス。

そして、彼らのやり取りの一部始終をずっと見ていたショウは……。

 

「(相変わらず仲がいいなぁ、みんな)」

 

今日も平和だ、とひとりごちていた。

 

「……おーい、ショウー!」

 

「先輩?」

 

遠くからテルが呼ぶ声が聞こえ、ショウは心なしか嬉しくなりながら振り返った。……だが、テルの焦りに満ちた険しい表情に、嬉しい気持ちを吹き飛ばして即座に気持ちを切り替える。

 

「先輩、もしかして……」

 

「……あぁ。時空の歪みの広域化が、また始まったんだ!」

 

「……っ!!」

 

その言葉に、より一層表情が引き締まる。先程までふざけ倒していたジンオウガたちも、おふざけをやめてショウたちの方へと顔を向けていた。

 

「それじゃあ、すぐに会議が始まりますか?」

 

「あぁ、行こう!」

 

「はい、わかりま――」

 

ズキッ!!

 

「――っ」

 

「……?ショウ、大丈夫か?」

 

「……はい、大丈夫です」

 

「そうか……無理はするなよ」

 

「もちろんです」

 

テルには何でもないと誤魔化したが、ショウは思わず自身の胸……正確には心臓の位置に手を当てた。かつて、槍の柱にてアルセウスと対峙した黒い龍と目があった際に強烈な痛みを訴えた心臓部。今手を当ててみても、正常に脈を打っているし痛みも一瞬でほとんど正常と変わり無い。

 

「(……無理しすぎたかな?ムラにいても調査のことばっかりだったし……うん、たまには何もしない日を予定するのもありかも)」

 

ショウは頭を振ってからテルの後を追う。その後ろ姿を、険しい表情をしたジンオウガがジッと見つめていた。

 

 

 

 




……で、結局話の最後に次話の導入を持ってくるあたり成長しない作者ェ……


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メイン任務:翠玉の閃電、群青を断つ ~OP-1.先代キング救出作戦~

いよいよ第三ステージ……群青の海岸、ライゼクスに挑みます!


タマミツネを捕獲し、紅蓮の湿地に発生した時空の歪みを解決して二週間。放牧場に放たれたタマミツネは紅蓮の湿地にいた時と同じように、優雅にのんびりと寝て過ごしている。その一挙手一投足の、実に優美なこと……女性たちからは圧倒的な人気を誇り、女性はタマミツネ、少女はベリオロスと人気が二分されるほどだ。

あと、呉服屋のシャロンさんはタマミツネを見るなり「みwなwぎwっwてwきwたwww」と奇声を発しながら呉服屋へ爆走していき、これまた爆速で新衣装を仕立て上げてみせた。タマミツネをイメージしたという着物は売れ行き抜群で、特に振袖はタマミツネのヒレの特徴を余すことなく表現してみせた自信作だそうな。

……そういえば、どっかの地方に振袖で有名なフェアリー使いのジムがあったような気がする。そこのジムリーダーは美人さんだったってお父さんが言ってたから、フェアリーポケモンのタマミツネと相性良さそうだ。……美人さんって話をした時、お母さんの目からハイライトが消えていたことは私しか知らない話だ。

着物の本場であるジョウト地方の出身らしいデンボク団長とムベさんのお墨付きらしいので、私も着てみた。

……先輩に感想を聞いてみたんだけど、顔を真っ赤にして「綺麗だ……」って言われたもんだからこっちまで恥ずかしさやら嬉しさやらで真っ赤になってしまった……。

そんな心休まる二週間を過ごした私は現在、テル先輩に呼ばれて調査隊室へ来ていた。残り二箇所の時空の歪みが、広がり始めたからだ。

 

「よくぞ参った、ショウ」

 

「残りの時空の歪みは二箇所……だが同時に、可及的速やかな解決が要求される二箇所でもある」

 

シマボシ隊長から渡された資料を目にし、改めて頷く。

残りの時空の歪みの発生地点は二箇所……一箇所は、最大規模の歪みが発生している群青の海岸。もう一箇所は、すでに集落が歪みの内部に飲み込まれてしまっている純白の凍土だ。

 

「セキ、カイ。委細を」

 

「了解だ、旦那。オレが報告するのは群青の海岸のポケモンだ。現地に居るキャプテン、ススキから報告が上がっているんだが……あのドラゴン野郎、群青の海岸に住むポケモンに手当たり次第に攻撃しているらしい。

目についたやつから次々に襲い掛かりあっという間に叩きのめすと、そのまま見境なく喰らい尽くしているようだ。魚ポケモンだけじゃねえ、虫ポケモンすら喰ってるって報告も上がっている。オヤブンポケモンも、もう何体もこいつに喰われたそうだ。

時空の歪みの規模も考えれば、群青の海岸の生態系が崩壊するのも時間の問題だ……可能なら、早めにこいつを何とかしたほうがいい」

 

そこからさらに情報をまとめると、群青の海岸に出現した巨大ポケモンは翼を使って海岸中を飛び回り、広い範囲を行動しながら目に付くポケモンを手当たり次第に襲撃しているとのこと。……ジンオウガたちのような肉食系かと思ったら、昆虫食もイケるらしい。

流石の私も、虫を食べたいとは思わないなぁ……。

 

「純白の凍土の方の巨大ポケモンも、最近になってやっと活動を始めたんだ。……と言っても、周囲をウロウロと歩くだけで、何かをする様子は見られないんだけど。

ほかのポケモンたちが近づくと追い返してはいるみたいなんだけど……ウリムーやイノムーが近づいた時だけは何もしないで様子を見ているだけみたい。……同族意識でもあるのかな?

こっちはポケモンが動き出した以外には特に目新しい情報はないかな……」

 

反面、純白の凍土の巨大ポケモンは比較的大人しく、あまり動きを見せていない。それどころか、ウリムーやイノムーをまるで同族のように扱っているとかなんとか。……これなら、純白の凍土の方はまだ大丈夫そうだ。

 

「群青の海岸に行きます」

 

「そうだな。話を聞く限りやばそうな状況だし……」

 

「早急に巨大ポケモンをなんとかしないと、このままでは現地のポケモンたちも危険です……!」

 

「あぁ、そうしてく――」

 

「リーダーッ!!」

 

私が群青の海岸行きを決定し、先輩とラベン博士も同意してくれた直後、誰かが調査隊室に飛び込んできた。血相を変えた様子で姿を現したのは、ススキさんだった。

 

「どうした、ススキ!」

 

「はぁ……はぁ……!た、助けてください!ガラナさんがっ……!!」

 

「……っ!?ガラナちゃんがどうしたの!!」

 

ガラナさん……?彼女の身に何が……。

 

「そ、それが……時空の歪みが広域化したことで、帳岬が分断されてしまったのです。折り悪く、先代キングのウインディが安息地である帳岬端の崖に取り残されてしまって……」

 

「……!!まさか!?」

 

「は、はい……ガラナさんは、『先代キングを助けてくる』と言い残して……時空の歪みの内部へと突入してしまったんです……!」

 

「なんてムチャをしやがる!?」

 

そんな……!それじゃあ、最悪の場合……ガラナさんは今頃……!

 

「……あの巨大ポケモン、先代キングのことを狙っていたんじゃないか、と思うんです」

 

「……!ススキさん、どういうことです?」

 

ススキさんのつぶやきを拾ったラベン博士が、間髪を容れずススキさんへ質問をした。ススキさんも「よくはわかりませんが」と前置きをした上で話し始めた。

 

「どうやら巨大ポケモンは、時空の歪みの中から出られないみたいで……先代キングがいる安息地へ向かおうとして歪みの壁に激突する様子が、何度も確認されたんです」

 

「それはオレも聞いている、が……ただ狭くて飛ぶのに不便しているってわけじゃなく、求める獲物が歪みの外にいただけ……ってわけか」

 

「しかし、何故キングを狙うのかはわかりません……」

 

巨大ポケモンはキングを狙っているようだけど……その理由がわからない。けど、キングを助けるためとはいえ、ガラナさんの命が危険に晒されている以上、ここで議論している場合じゃない……!

 

「……失礼、遅れ申した。……む、何かあったか?」

 

「アカイの旦那か……」

 

アカイさんが来た。……何か、ヒントを貰えないかな。

 

「アカイさん。今、群青の海岸のことで……」

 

「あぁ、なるほど……そのポケモンならさきほど確認して、戻ってきたところだ。……よもや、"電竜"『ライゼクス』が現れるとは、とんとツイてないな」

 

「ライゼクス……それがあのドラゴン野郎の名前か」

 

セキさんの言葉に、アカイさんが首肯する。それから部屋の中を見渡すと、ひとつ頷いた。

 

「……なにやら、切羽詰った状況のようだ。この様子だと、群青の海岸に行くのだろう?ライゼクスについては、道中で説明しよう」

 

「お願いします」

 

私としても、そっちのほうがありがたい。アカイさんはすぐにでも出発できるとのことなので、私たちはすぐに群青の海岸へ向かうことにした。

 

「ショウさん……どうか、ガラナちゃんを助けて……!!」

 

「もちろんです!」

 

今にも泣きそうな表情のカイさんに乞われる中、私たちは群青の海岸に向けて出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

群青の海岸への道中の間、私たちはアカイさんの話に集中する。

 

「ライゼクスは温暖な気候の森や高地に生息する巨大ポケモンで、膨大な電気エネルギーを発生させ、それを様々な形で操る事から、"電竜"の別名を持つ。

見目は美しさも兼ね備えたポケモンなのだが、その美しさとは裏腹に基本的な性質は非常に兇暴で残忍だ。自らの縄張りに侵入するあらゆるものを攻撃対象とし、目に入れば自身よりも大柄なポケモンにも襲いかかるのだ。

例え敵が戦意を失ったとしても攻撃の手を緩めることはなく、逃走を図ろうとも執拗に追撃を繰り返し、時には同族でさえも攻撃対象とし、空腹であれば共食いも辞さない。不運にもテリトリーに足を踏み入れてしまえば最後、対象を容赦無く殴り殺して貪り食らい、同格や格上の存在とも激しく衝突する様子も確認されている。群青の海岸のポケモンたちにとって、ライゼクスは大きな脅威以外に何者でもない……セキ殿の言うとおり、可能な限り早いうちにライゼクスを捕獲するべきだろう」

 

「とんでもない暴れん坊だな、ライゼクス」

 

「まぁ、卵から孵化してすぐ育児放棄され、生後間もない状態から独力で生きていく事を強いられれば、さもありなん」

 

「……!!育児放棄ですか!?」

 

ラベン博士が大声で驚きを顕にしている。私もすごく驚いている。まさか、子育てをしないポケモンがいるなんて……。

 

「必死に自分の身を自分で守り、獲物を自力で確保する力を付けていく中で兇暴で残忍な性格が築かれる……人間もそうだが、子供というのは育て方一つで千差万別の成長性を見せてくれる。ライゼクスのソレも、ある意味ではその一つだ。放任主義、と言えば聞こえはいいが……生まれた直後から、というのはなかなかないだろうな」

 

「……人間に例えると、ライゼクスは親の愛を知らないまま、ただ生き残るために強くならざるを得なかったポケモン……なんですね」

 

「ふむ。人間に例えると、か……なるほど、ショウの言うとおりだな」

 

人間に例えると、なんてだいぶ同情的ではあるけれど、そりゃあそんなふうに育ってきたら兇暴にだってなる。逆に愛情たっぷりに育ててやれば、大人しいライゼクスへと育つのだろうか。……ちょっと想像できない。

 

「さて……こちらのススキ殿が言うには、ライゼクスはキングと呼ばれるポケモンを標的にしているとか。キングに関する内容は委細承知済みだ、そこから判断するに……やはり、強くなるためだろうな」

 

「強くなるため、ですか……」

 

ススキさんがアカイさんの言葉を繰り返す。アカイさんは小さく頷くと、空を見上げた。

 

「弱肉強食の世の中で、生き残るために強くなろうとするのは生物として当然のこと……だが、ライゼクスは特にその意識が強いのかもしれんな。その意識、感情が『生き残りたい』なのか『死にたくない』なのかは、本人のみぞ知るところだが」

 

「……そう考えたら、ライゼクスってなんか……可哀想な奴だな……」

 

「フッ……可哀想、ときたか。我が地元でライゼクスのことをそのように考える者はいなかった。ある意味、リオス科とは真逆の生態を築いているゼクス科は受けた被害が計り知れない故に人気もマチマチでな」

 

「リオス科?」

 

テル先輩が首を傾げているのを見て、そういえばあまり深くは知らないんだったことを思い出しておもわず笑みが浮かんだ。

 

「グラビモスとリオレウス、そしてベリオロスにライゼクス……これらのポケモンは全て"飛竜種"という分類に括られるんですよ。そこからさらに事細かく分類されるんですけど……今は省略しておきますね。

その中でもリオス科に分類されるリオレウスと『リオレイア』は、飛竜という種族を代表するポケモンとして広く名が知られているんです。……ですよね、アカイさん?」

 

「よく勉強できているな、ショウ。君に知識を授けた者として、大変誇らしいよ」

 

「えへへ」

 

「ぐぬぬ……」

 

アカイさんから教わった知識を披露したら、そのアカイさんから頭を撫でてもらえたので思わず照れてしまった。……隣にいるテル先輩が、悔しげに歯ぎしりをしている……。

そして、リオス科のメス個体にあたるポケモン、『リオレイア』……リオレウスの番だと知ってから、今私が出会いたいポケモンぶっちぎりの第一位に輝くポケモンでもある。……時空の歪みから出てこないかなぁ……。

 

「……む、天気が怪しくなってきたな」

 

「ぐ、群青の海岸はひどい雷雨に見舞われています……。ですので、ほのおタイプのキングにとっても、か、かなり負担になってしまっていて……」

 

「……急いだほうがよさそうですね。少しペースを上げましょう!」

 

ススキさんの話を聞いたラベン博士の合図で、移動速度が上がった。ガラナさん、どうか無事で……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【炎上】~戦国無双シリーズ~

 

Side:ガラナ

 

あたくしの名はガラナ。ここ、群青の海岸で島キングであるウインディのお世話を一任されているシンジュ団のキャプテン。……と、悠長に自己紹介なんてしている場合ではございませんでしたわね。

ある日のこと。突然、この群青の海岸の海辺を覆い尽くすほどの巨大な時空の歪みが出現しました。はじめは海上を覆うだけだったその歪みは日を追うごとに徐々に巨大化し、今では帳岬からオバケワラにかけて広く全てを飲み込むほどにまで大きくなってしまいました。

 

それだけでなく、時空の歪みの内部には見たことのない巨大な飛行する竜ポケモンが飛び回っており、歪みの内部に取り残されたポケモンたちはその竜ポケモンに次々と襲われてしまいました。中にはオヤブンポケモンもいたのですが……一方的に襲撃をかけられ完膚なきまでに叩き潰されると呆気なく捕食されてしまいました。時空の歪みが拡大すると、竜ポケモンの行動範囲もさらに広域化していき……つい最近ではイチョウの浜辺に生息するオヤブンドラピオンとオヤブントドゼルガまでもが、件の竜ポケモンの襲撃に遭い……もはや語るに及ばぬでしょう。唯一、ゴーストタイプのポケモンだけが難を逃れていますが、かの竜ポケモンに対抗しようという者はおらず、蜘蛛の子を散らすように逃げ隠れております。

 

そんな中……時空の歪みの広域化によって、帳岬が風さらしの森側と大魚の隠れ岩側とで分断されてしまう事態が発生してしまいました。この時、先代キングが帳岬の最先端、大魚の隠れ岩の真上に位置する崖の上に取り残されてしまったのです。あたくしはいてもたってもいられず、先代キングを助けるために飛び出しました。ススキ様は、「コトブキムラに応援を呼んできます!」と言って、あたくしよりも早くに行動に出ておられました。……あたくしを止めても、無駄だと悟ったのでしょうか。だから、あたくしを止めるのではなく、助けるためにコトブキムラへ……ススキ様には、またご迷惑をかけてしまいましたわね。

 

そして、今は……なんとか先代キングと合流を果たしたあたくしは現在、雷雨の中に紛れるようにして砂浜ベースへと移動をしております。隠れ潜みながらの移動なので、どうしても遅々として退避が進みませんが……焦ってはいけません、こういう時こそ冷静に行動しなければ……。ラギアクルス様、どうかあたくしたちをお守りください……!

 

「キシャアアアアァァンッ!!」

 

……っ!!この声……あのポケモンが来ましたか……!!

空から急降下してきた件の竜ポケモンは、地面に着陸すると辺りをキョロキョロと見渡す。……雷雨のおかげで、ある程度ではあるけれど視界が悪くて助かった。息を殺し、草むらの中でじっとしていれば、ウインディでも身を隠すことができるこの状況……使わない手はない。

すると、竜ポケモンが何かを見つけたように大声を出すと、鶏冠と翼、そして尻尾を激しくこするように動かしてから、猛然とした勢いで突撃を始めた。あたくしたちが隠れ潜む草むらを通り過ぎて、向かった先にいるのはオヤブンブニャット。ブニャットは悲鳴を上げる間もなく何度もポケモンの翼についた爪を激しく叩きつけられると、そのまま捕食されてしまった。

 

「……行きましょう、先代」

 

「ぐるる……」

 

先代も、かつては己が治め守っていた地を好きに荒らされ、そこに住むポケモンたちが次々と襲われているのに何もできない現状に歯噛みしている……お願いです、先代……もう少しだけ堪えてください……!

 

オヤブンブニャットを囮にする形で、なんとか竜ポケモンをやり過ごしたあたくしたち……ようやく、風さらしの森の入口近くにある、坂道が見えてきたところで……とうとう、見つかってしまった。

 

「ライザアァーッ!!」

 

坂道を塞ぐように飛んできた竜ポケモン……その目は先代を捉えたまま離れる様子がない。やはり、あのポケモンの狙いは先代キング!そうはさせない……!

 

「先代には、指一本触れさせません!ウインディ!!」

 

「わん!」

 

あたくしの相棒である、ウインディを嗾ける。例えこの身が喰い散らかされようとも、先代だけはなんとしても逃がしてみせます……!!

 

「いわなだれ!」

 

「わおん!」

 

視界を塞ぐように、大量の岩を投げつける!ウインディの攻撃に気を取られている間に、少しでも遠くへ先代を逃がさなければ!

 

「ライッ!!」

 

竜ポケモンは鶏冠から電撃の刃を生み出すと、それを二度振るった。それだけで、ウインディが放ったいわなだれを全て叩き落としてしまったのだから、恐ろしい威力です……!

 

「それなら、かえんほうしゃ!!」

 

「わおーん!」

 

例え雷雨で威力が下がっても、使わないわけにはいきません!ウインディの自慢のかえんほうしゃで視界が塞がれている間に、先代を回り込ませる。竜ポケモンははじめ、顔面にかえんほうしゃを受けて僅かに怯むも、すぐに振り切るとウインディに向かって突進していき、雷を纏った翼爪をウインディに叩きつけた!

 

「きゃううんっ!!」

 

「ウインディ!」

 

「……?」

 

ウインディを一撃で叩き伏せた竜ポケモンですが……なにか、違和感を覚えたのかウインディの顔を覗き込むと、すぐに辺りを見渡し始めた。……まさか、キングとそれ以外の個体を見分けている……!?

 

「……!キシャアアアァンッ!!」

 

そして、ぐるりと長い首を動かしてこちらを見……あたくしのそばにいる先代キングを見つけると、大きく咆哮を上げてこちらに向かって走り出した!あたくしのウインディもなんとか立ち上がり追いかけるが、明らかに速度が違いすぎる……!

 

「ライザァー!」

 

「くっ……!!」

 

竜ポケモンが再び翼爪を叩きつけてこようとした、その時!

 

「わおーんっ!!」

 

「ギシャンッ!?」

 

あたくしと先代の頭上を飛び越えて、炎を纏ったもう一体のウインディが竜ポケモンの顔面にフレアドライブを叩きつけた!あれは……今代のキング!

 

「ウインディ……助けに来てくれたの?」

 

「くぬん」

 

心配そうにこちらに駆け寄るキング……先代もゆっくり近づくと、キングは甘えるように先代に頬ずりを始めた。

 

「ギシャアアアアアンッ!!」

 

「うおーんっ!!」

 

突然の乱入者に、竜ポケモンは激しく憤っている様子……対してキングも、先程までの雰囲気を一瞬で霧散させ、竜ポケモンに激しく威嚇を始めた。キング……すっかり頼もしくなりましたね……!

 

「わおーん!」

 

キングはかえんほうしゃを放ちながら突撃を開始した。その間に相棒のウインディはなんとかあたくしたちと合流し、先代とともに慎重に移動を始めた。この間、キングの戦いの様子を見る。

 

かえんほうしゃを放ちながら突撃をしたキングだが、かえんほうしゃは竜ポケモンに空を飛ばれることで回避され、逆に尻尾の鋏を突き出してきた。キングはこれを頬を掠めながらも紙一重で回避し、逆にフレアドライブを腹部めがけて放ち直撃させた。

バランスを崩した竜ポケモンは一度地面に降り立つと、両方の翼爪を地面に着き緑色の電撃を複数本も放った。あれは、10まんボルト!キングも最初の二、三撃は回避できたが徐々に掠り始めて、最後は完全に捉えられて全方位から電撃を浴びせられた!

 

「キング!?」

 

キングは……!電撃が止まり、キングの姿が見えた!キングは全身から煙を上げ、肩で息をしているもののなんとか持ちこたえている……!かなりの大ダメージを負ったにも関わらず、決して足を折ることなく竜ポケモンを睨みつけている。そんなキングを、まるで嘲るように見下す竜ポケモン……。力の差は歴然……けど、キングは決して諦めていない!

 

「わおーん!」

 

「……っ!!うおおぉぉんっ!!」

 

「キシャアアアァァァァンッ!!」

 

先代が声をかけると、キングは力強く吠えるとともに力業のだいもんじを放った!……しかし、竜ポケモンも緑色の電撃を、まるでビームのようにして口から放った。チャージビーム……ではない、さらに強力な攻撃!竜ポケモンの一撃は、拮抗すら許さずキングのだいもんじをかき消すと、そのままキングへと直撃させてあたくしたちの下まで吹き飛ばしてしまった……!

 

「ぎゃうううんっ!!」

 

「キングッ!!」

 

あたくしはすぐにキングの下へ駆け寄った!……ああ、なんて酷い傷……!あたくしたちのために、こんなにも傷ついて……。

あたくしが敗れたキングの姿に悲痛さと己の無力感に苛まれていると、力強く足を踏みしめる音が聞こえた。見れば、先代キングが弱った体にムチを打ってあたくしたちを守るように立ちふさがっていた!

 

「いけません、先代!貴方には、勝負ができるほどの力が残っていないのです!」

 

「ぐるるる……!!」

 

なんとか逃げるように促すも、先代が動く様子はない……。そうこうしているうちに、悠然と歩いてくる竜ポケモン。竜ポケモンは足を止めると、上体を反らして翼を大きく広げるとともに鶏冠に電撃の刃を生み出した。敗れたキングはもとより、今の先代にさえあの一撃を受けきるだけの体力は残っていない……!

 

「ライッザアアアアァァァァァァッ!!」

 

勢いよく振り下ろされる電刃……もう、ダメ……!あたくしはキングを抱きしめ、来る痛みに少しでも耐えようと目を閉じた……!

先代……!キング……!カイ……!ススキさま……!

 

ラギアクルスさま……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……しかし、いつまでたっても痛みが来ない。あたくしが恐る恐る目を開けると……久しく見ていない、けれどすっかり見慣れた美しく蒼く光る外殻が目に入った。

 

「あ……」

 

「グルラ」

 

 

推奨BGM

【海と陸の共震】~モンスターハンターtri~

 

 

その外殻の持ち主……ラギアクルスさまは、蜷局を解くとあたくしの顔を覗き込んで、安堵したように微笑んだ。

「無事で良かった……」そんな思いが、彼の目を通して伝わって来るようだった。

 

「ギシャアアアアッ!!」

 

「グルオオオオオッ!!」

 

竜ポケモンがラギアクルスさまに威嚇をすると、対抗するようにしてラギアクルスさまも咆哮を上げた。彼の力強い声を聞いて、ようやくあたくしは「助かったのだ」と実感できた。

 

「素早く、ハイドロポンプ!!」

 

「グルアア!」

 

少し離れた場所から、ショウさまの声も聞こえてきた。ああ、ススキさま……この上ない助けでございます。本当に、本当に……!

ラギアクルスさまのハイドロポンプは、当たりはしなかったものの竜ポケモンを追い返すには十分な威力で、竜ポケモンは一時空中へと退避していった。

 

「ガラナさん!無事ですか!?」

 

「ショウさま……あたくしよりも、キングが……」

 

「すぐに回復します!!」

 

滑り込むようにして駆け寄ってきたショウさま……あたくしがキングの事を話すと、すぐさまポーチからげんきのかたまりを取り出してキングの口の中へと放り込んでくれた。それによって回復したキングはしっかりとした足取りで立ち上がると、元気よく吠えてくれた。

 

「わん!」

 

「キング!本当に良かった……あんなムチャをして……」

 

「くぬん……」

 

「……けれど、ありがとう」

 

「わんわん!」

 

「ライザァ!」

 

キングを労っていると、一度は退避した竜ポケモンが再び降りてきた。あたくしは咄嗟にショウさまの様子を伺うが……ショウさまの目には、一切の焦りも不安もない。眼前の竜ポケモンを、しっかりと見据えている。

……頼もしくなったのは、キングだけではなかったようですね。

 

「ラギアクルス、ウェーブタックル!!」

 

「グルラアア!」

 

「……ッ!!」

 

ラギアクルスさまがウェーブタックルで突撃すると、竜ポケモンは咄嗟に横方向へ飛び退いた。

 

「力強く、れいとうビーム!!」

 

「グルオオオオアッ!!」

 

「ギシャアアア!?」

 

判断が早い!躱されたと見るやいなや、ショウさまはすぐさま次の技を指示していた。そして、ラギアクルスさまもそれに応えるべく素早く行動に移す!ラギアクルスさまの口から放たれたれいとうビームは竜ポケモンを背後にある崖に叩きつけた!

ラギアクルスさまが首を動かしてれいとうビームをずらすと、壁に押し付けられた竜ポケモンもあわせて動かされ……そのまま崖の切れ目から向こう側へと押し出され竜ポケモンは落下していった!竜ポケモンの悲鳴の後、大きな何かが着水する音……どうやら、海へ落とされたようだ。

 

「……ひとまず、これで一安心かな」

 

「グルル……」

 

「お疲れ、ラギアクルス。……間に合ってよかったです、ガラナさん」

 

「えぇ……ありがとうございます、ショウさま。……ラギアクルスさまも、また助けられてしまいましたね」

 

「グラァ」

 

「……ガラナさーんっ!!」

 

なんとか撃退に成功したようで、安堵の息をつくショウさま。ラギアクルスさまもショウさまから労いの言葉をかけられたあと、すぐにあたくしの方へと顔を寄せてくれた。……本当に、ラギアクルスさまには感謝してもしきれませんね。

そうしてラギアクルスさまの顔を撫でていると、今度はススキさまの声が聞こえた。そちらへ顔を向けると、ススキさまの他にラベン博士、ショウさまの先輩のテルさま、それから……あの全身赤い衣の方は、以前にカイが言っていたアカイさま……かしら?

 

「あぁ……ガラナさん、無事で良かった……。うっ、うぅ……ほ、本当に……」

 

「ススキさま……応援を呼んでいただき、ありがとうございました。あなた様は、またあたくしのことを助けてくださいましたね」

 

「そ、そんな……助けなんて……。ぼ、ぼくがしたことなんて……ショウさんを呼びに行っただけ、ですし……」

 

「それこそ、万人力に匹敵する助けですわ。ススキさまが早くに行動を起こしてくれたからこそ、たった今間に合ったのですから」

 

「あ、あはは……」

 

「(先輩、砂を吐いていいですか?)」

 

「(奇遇だな、ショウ。おれも吐きそう)」

 

ススキさま、そしてラギアクルスさま……いつもいつも、あたくしとキング達を助けてくれる。一体彼らに、どれだけのことをすれば恩を返しきれるかしら。

 

「……さて、立ち話もなんだ。ベースキャンプへ移動しよう。ライゼクスが、戻ってこぬうちにな」

 

「ライ、ゼクス……?あの竜ポケモンの名前、でしょうか?」

 

「お初にお目にかかる、ガラナ女史。我が名はアカイ。以後、お見知りおきを。……さて、その問には是、と答えよう。アレの名はライゼクス。非常に兇暴かつ残忍なポケモンだ」

 

ライゼクス……兇暴で、残忍なポケモン……。なるほど、どうりで目に付くポケモン全てに襲いかかっていたわけですね。

 

「……よく、無事だった。ライゼクスとまともに相対して、よもや生きているとは」

 

「ポケモンたちが、頑張ってくれましたから」

 

「……フッ、そうか」

 

「急ぎましょう。ライゼクスが戻ってくるかもしれません」

 

ショウさまに急かされ、あたくしたちは砂浜のベースキャンプへと再び移動を始めた。空路を利用する手もあったそうだが……先代キングの体調を考慮して、陸路で進むことになった。

坂道の中腹までたどり着いた頃、背後の遠くから激しい水音が聞こえた。そして。

 

「ギシャアアアアアアッ!!」

 

崖の向こうに、ライゼクスが姿を現した!ライゼクスはしばらく空を飛んでからこちらを見つけると、再び勢いよく突進してきた!

 

「リオレウス!!」

 

「グオオオオオオッ!!」

 

ショウさまは慌てることなく、また別のポケモンを繰り出した!リオレウス……赤く雄大な翼を広げたドラゴンポケモンは、まっすぐライゼクスの元へ向かうとそのまま追い立て始めた。

 

「時間稼ぎ!お願い!!」

 

「グオンッ!!」

 

「ライザアアアッ!!」

 

リオレウスはライゼクスに体当りをすると、二体は激しく空中でもつれ合いながらも制空権の奪い合いを始めた。火炎が、電撃が空を舞い、時には体を激しくぶつけ合いながら、二体は鳥ポケモン同士の戦いが可愛く見えてしまうほどの激闘を繰り広げている。

 

「リオレウスが、ライゼクスの気を引いています。今のうちに」

 

「……あの二体は、なにか……宿縁でもあるのですか?」

 

「リオレウスは"空の王者"の異名を取り……逆にライゼクスは"電の反逆者"の異名を取る。王者と反逆者……あの二体は、決して相容れぬ存在同士でもあるのだ」

 

「なるほど……」

 

ただ、それにしてもあのライゼクスの猛攻は……まるで、一度敗れた宿敵に再び相対したかのような(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、強い執念を感じる……ような気がする。

 

「この坂を下れば、ベースキャンプまであと少しです!」

 

「みんな、頑張ろう!」

 

「先輩、助かります」

 

「気にすんなよ」

 

ショウさまが先導し、テルさまがあたくしたちに声をかけて下さる。テルさまへショウさまがお礼を言うと、テルさまは照れた様子で笑みを浮かべる。そんなテルさまの笑みに釣られてか、ショウさまも微笑んでいる。

あの二人の雰囲気……まるで、あたくしとススキさまのよう……あらあら♪

 

「(カイ……いつまでも鈍いままだと、先を越されますよ?)」

 

「……?あ、あの、ガラナさん?一体どうしたんですか……急に、微笑まれて……」

 

「いえ……未来ある若者たちの将来が、とても楽しみだな、と」

 

「え?……!あ、あぁなるほど、なるほど……確かに、楽しみですね」

 

ススキさまも気づかれたようで……。

ショウさまだけではない、テルさまも含めた二人なら……きっと、この事態も解決することができると、あたくしは信じています。

頼もしい子供たちの背中を見守りながら、あたくしたちは一路ベースキャンプへと向かいました。

 

 

 

――OP-1 complete――

 

 

 

 




なんとか先代キングとガラナさんの保護に成功しました。あとはBCまで護衛するだけ。

次回はVSライゼクス!そして、あのポケモンが……!!


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メイン任務:翠玉の閃電、群青を断つ ~OP-2.ライゼクス捕獲作戦~

こういうのを、難産っていうんですかね……はい、難産でした。


調査隊室に飛び込んできたススキさんからの報告で、群青の海岸行きが決定すると私たちはすぐさま出発した。道中でアカイさんから歪み内部に出現した巨大ポケモン、ライゼクスの話を聞きながら群青の海岸に到着した私たちは、眼前に広がる時空の歪みの規模に圧倒された。

最大規模、とは聞いていたけど……静かな内海の一番近い小島群のちょうど真ん中辺りを中心に発生した時空の歪みは、砂浜ベースの目と鼻の先に境界線がある、といえばどれくらいの規模化は容易に想像がつく。

私はアヤシシに、先輩たちにはジンオウガにライドしてもらい、急いで帳岬へと向かった。ちょうど坂を登りきったところで、ライゼクスが鶏冠に電刃を生み出して敵を両断する技、ライトニングブレードを振り下ろそうとしている場面に出くわした。

 

「(間に合えっ!!)」

 

私は迷うことなくラギアクルスが入ったボールを引っつかんで全力でぶん投げた。目論見通り、ラギアクルスはボールから出てくるなり、素早くとぐろを巻いてガラナさんたちをライトニングブレードから死守した。でんき技が効かないラギアクルスだからこそできる荒業だ。

私はアヤシシから飛び降りながらラギアクルスへ攻撃を指示しつつ、一目散にガラナさんの下へ駆けていく。ガラナさんと合流すると、今代のキングがガラナさんと先代キングを守るためにライゼクスと一戦交えたらしく、大怪我を負ってしまったらしい。そちらはげんきのかたまりを与えて回復したので問題はなし。ライゼクスはれいとうビームで海に叩き落としておいたので、しばらくは大丈夫だろう。

状況を確認しつつ移動をはじめると同時に、ライゼクスが戻ってきてしまった。私は手持ちポケモンの中でもぶっちぎりに空中戦が強いリオレウスに足止めを頼み、ラギアクルスを護衛として伴いながら砂浜ベースへと撤退を開始した。

 

「(リオレウスは……)」

 

撤退中も、ドッグファイトを繰り広げるリオレウスに目を向ける。

かえんほうしゃやりゅうのはどうを中心とした特殊技で、とにかくライゼクスを近づかせない戦い方をしている。対するライゼクスも、リオレウスの猛攻を回避したり迎撃したりして、リオレウスへ肉薄しようとしている。ふむ……こうして見ると、同じ飛竜種でもリオレウスは特殊技が強く、ライゼクスは物理技が強いのかもしれない。

 

リオレウスはかえんほうしゃを連発するが、ライゼクスはバレルロールなどを駆使して回避すると、急速に接近する。懐に飛び込まれたリオレウスは、搗ち上げるように振り上げられたライゼクスの翼爪に殴られ、わずかに体勢を崩した。

その隙を突くようにライゼクスが電撃を纏った尻尾を突き出すが、間一髪反応したリオレウスに回避され、逆に尻尾に噛み付かれて捕らえられた。そのままライゼクスを振り回したリオレウスは、ライゼクスを放り投げるとすぐさま豪火球を放った。ライゼクスも負けじと球状の電撃ブレスを放ってこれを相殺した。

 

……私の指示が無くても、これほどの戦闘をこなせるなんて……やっぱり、リオレウスたちは普通のポケモンよりもずっとポテンシャルの高いポケモンだ。

 

「すごい……」

 

「あ、相変わらずデタラメなポケモンだなぁ……」

 

「リオレウスも、自らの判断で戦っているのですね……すると、これがリオレウスの本来の戦い方かも……?」

 

ガラナさんが感嘆の声を漏らし、テル先輩は巨大ポケモン同士の激しいバトルにため息しか出ないみたい。まぁ、今のリオレウスは私の指示がない状態で戦っているから、ほとんど野生に近い戦い方をしているといったところだ。

ほぼ野生同士に近い、いわば縄張り争いにも似た戦いに、ラベン博士も興味津々だ。

 

「グオオオオオオンッ!!」

 

私たちが坂を下りきって、イチョウの浜辺にたどり着いたとき、リオレウスの大きな咆哮が聞こえた。反射的に全員がそちらに目をやると、なんとリオレウスを振り切ったのかライゼクスがこちらに向かって飛んできていた!

 

「ラギアクルス!!」

 

「グルオオオォォッ!!」

 

だが、そのための護衛役であるラギアクルスの出番だ!私の声に応じたラギアクルスはふぶきを放ち、ライゼクスの接近を妨害する。ライゼクスはふぶきを認識するやいなや、嫌がるようにその場から離れていく。

アカイさんから、事前に情報は得ている。アカイさんの予測では、ライゼクスはでんきとひこうの複合タイプのようで、ほのお、みず、こおりに弱いがドラゴンに強く、でんきが一切効かない体質をしているとのこと。

はじめ私は、ライゼクスのタイプをラギアクルスと同じでんきとドラゴンだと考えていたが……空戦能力の高いライゼクスはドラゴンタイプではなくひこうタイプである可能性が高いらしい。……その理屈だと、リオレウスもひこうタイプっぽいけど。

ただ、ラベン博士が言うにはメガシンカによってタイプに変化が生じるポケモンもいるらしい。アカイさんはそのことを前提として、ライゼクスをひこうタイプに当てはめたそうだ。……メガシンカした個体、【青電主】となることで、ドラゴンタイプになる可能性を考慮して。

 

他にも、得意な技についても聞いている。

口から強力な電撃の光線を放つ「プラズマブラスター」。直線軌道の光線ではなく、着弾すると不規則な軌道で地面を走る電柱へと変化する光弾を放つ「ワンダーパルス」。翼同士を打ち合わせることで強力な磁場を発生させ、はがねタイプは絶対に回避できない攻撃を放つ「ショックプラズマ」。尻尾の先から地面を這う電撃を放つ「サンダーストライク」。地面に突き刺した尻尾からドーム状に放電する「グラウンドボルト」。その尻尾に電気を纏わせて直接突いてくる「エアリアルスティング」。

そして、鶏冠から刃状に電撃を発生させて一気に振り下ろして敵に叩きつけるライゼクスの代名詞とも言える技「ライトニングブレード」……特に、【青電主】が放つライトニングブレードこと「ゼクスカリバー」は直撃すれば骨すら残らない威力だという。

 

……ところで、ジョウト地方にライゼクスの別名と全く同じ名前のポケモンがいたような気がしたんだけど。でんき単タイプのポケモンだったはずなんだけど……まさか、あのポケモンもメガシンカしたりドラゴンになったりなんてしないよね?

 

ライゼクスはその後、何度もリオレウスを振り切ってはこちらに襲撃をかけて来たが、その度にラギアクルスのこおり技とリオレウスの追撃で撤退を余儀なくされる。……本当にしつこい、いい加減に諦めてくれないかな……。

 

「なんとか、イチョウの浜辺まで戻ってこれたな……」

 

「ここまでくれば、ベースキャンプまであと少し!頑張りましょう!」

 

私たちはオヤブンドラピオンの縄張りを越えて、ようやくイチョウの浜辺までたどり着いた。ベースキャンプは目と鼻の先だ、急ごう!

 

「先代、もう一息です……頑張って……!」

 

「わおん」

 

ガラナさんも先代キングを励ましながら、再びベースキャンプへ移動する。

 

「キシャアアアアンッ!!」

 

……と、もう少しでキャンプに着くというところで、最後の坂道にライゼクスが立ち塞がってしまった。リオレウスも追いついたようで、私たちの前に降り立ってライゼクスを睨みつける。

 

「リオレウス!フレアドライブ!!」

 

「グオオオオッ!!」

 

「キシャアアッ!!」

 

リオレウスにフレアドライブを指示すると、ライゼクスも対抗するようにワイルドボルトで突撃してきた。赤炎と翠電がぶつかり合い、その余波で岩の一部が崩れ、木々は根っこから吹っ飛んだ。ラギアクルスが体を盾にしてくれたおかげで、その余波が私たちに及ぶことはなかった。

力は互角……二体は同時に弾かれ、その隙にライゼクスがワンダーパルスを光弾として放ってきた。

 

「アイアンテール!そして素早くドラゴンクロー!」

 

「グオン!」

 

リオレウスも着地しつつ体をひねり、アイアンテールで光弾を消し去ると、翼爪にドラゴンクローを展開してライゼクスへと突っ込んでいった。ライゼクスの背後にベースキャンプがあるせいで、特殊技が使えない……だから、まずはライゼクスをここから引き離す!

ライゼクスは鶏冠、翼、尻尾を激しく動かし、小さく跳躍するとエアリアルスティングでドラゴンクローを迎撃した。さらに羽ばたきリオレウスの頭上を取ると、その首を鋏状の尻尾で挟み込み、かみなりを叩きつけてきた!ただでさえ雨降りで必中状態なのに、ゼロ距離で食らわされたらいくらリオレウスでもマズイ!

 

「グオオオアッ!?」

 

「リオレウスッ……!」

 

「落ち着け、ショウ!ほのお技ならリオレウスには効かないから、巻き込んでも問題はないだろ!トゲキッス!!」

 

「チョキィ!」

 

「……!!そうだ、なら……トゲキッス!」

 

「キィーッス!!」

 

「それならあたくしも……ウインディ!」

 

「わうん!」

 

「「「力強く、かえんほうしゃ!!」」」

 

テル先輩の言葉で、すぐに私は冷静になれた。その後、先輩と私のトゲキッス、そしてガラナさんのウインディの三体による力業かえんほうしゃで、リオレウスを巻き込むほどの巨大な火炎をぶつけた。先輩の目論見通り、ほのおに耐性があるリオレウスは無傷だが、ライゼクスは体勢を大きく崩してしまいリオレウスへの拘束を解いた!その隙を突いてライゼクスを振り払ったリオレウスは、海岸方面へと飛んでいったライゼクスを追撃する!

 

「リオレウス、ギガインパクト!!」

 

「グオオオオオンッ!!」

 

「ギシャアアアッ!?」

 

リオレウスのギガインパクトはライゼクスに直撃!そのまま沖まで押し込み、海中へと弾き飛ばした。ライゼクスは再び落水し、姿が見えなくなる。その間に私たちは砂浜ベースに到着し、リオレウスもすぐ近くまで戻ってきた。

 

「よっしゃあ!脱出成功だ!」

 

「な、なんとかなって良かったのです……皆さん、お疲れ様でした!」

 

「本当に、なんとお礼を言って良いのやら……重ね重ね、お礼を言わせてください。ありがとうございました……!」

 

「ふぅー……。ガ、ガラナさんも、先代キングも無事で……あぁ、よかったぁ……。寿命が縮むかと思いましたよ……」

 

先輩をはじめとして、ガラナさんたちも窮地を脱したことで緊張の糸が切れたのだろう……みんなしてその場に座り込み、安堵の息を付いていた。ちょうど雷雨も止んだので、なおさらのことだろう。

一方で……私とアカイさんは立ちっぱなしで、歪みから一切視線を外さない。

 

「ショウ、わかっているな?」

 

「もちろんです。……ここからが、本番ですから」

 

「では、行くとしよう。ライゼクスを捕らえ、この歪みを消し去るために」

 

「はい」

 

「あっ、ショウ。もう行くのか?」

 

先んじて、私とアカイさんが歪み内部に再突入しようとしたところで、先輩から声がかかった。私が頷くと、先輩も「よっこいせ」と立ち上がった。

 

「じゃあ、行くか」

 

「はい!」

 

「……フッ。どうした、ショウ?心なしか声が弾んでいるが、嬉しいのかな?」

 

「ふぇ!?」

 

え、嘘?私、今そんなにわかりやすいくらい違ってた!?いつもどおりに返事をしたつもり……の、はずなんだけど……!

アカイさんはニヤニヤと悪い笑みを浮かべて私と先輩を見ている。先輩も先輩で、顔を赤くしたまま驚いた表情で固まっていた。

 

「若いな、君たち。さぁ、いつまでも固まってないで行くとしよう」

 

「だ、誰のせいだと……」

 

「うん?」

 

「何でもないです!」

 

うああああ……なんだこれ、すごく恥ずかしいんだけど……!アカイさんだけでなく、ガラナさんたちまで微笑ましそうにこっちを見てるし!

こうなったら……このやり場のない怒りは、全部ライゼクスにぶつけてやる!悪く思わないでね!

 

ラギアクルスは護衛役としてキャンプに残し、リオレウスとともに再び歪みの内部に突入すると、海水に叩き落とされたライゼクスが、ちょうど海から上がってきたところだった。こちらを見つけるや否や、再び鶏冠等を激しく動かして蓄電を開始した。

 

「リオレウス、油断しないでいこう。ライゼクスは獲物を逃がして、相当頭にきてるだろうから」

 

「グオン」

 

「ついに三度目と相成るか。

相手は電の反逆者、ライゼクス。相対するは空の王者、リオレウス。

反逆者が王者を討ち取り革命を成すか、王者が反逆者を抑え威光を示すか。

さあ、たっぷり楽しませてくれ!

 

「キシャアアアアアアンッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【戦闘!伝説のポケモン】~ポケットモンスター LEGENDS アルセウス~

【4つ首の守り神:ランディア】~星のカービィWii~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライゼクスはさっきまでの戦闘で、かなり体力を消耗しているはず……ここは一気にケリを付けに行く!

 

「リオレウス!かえんほうしゃ!」

 

「グオオン!」

 

「キシャン!」

 

リオレウスのかえんほうしゃはまっすぐライゼクスに向かっていくが、ライゼクスは素早く宙へ逃げるとそのまま海上の方へと飛んでいってしまった。

 

「リオレウス、追って!!……ガブリアス!」

 

「グオン!」

 

「ガブアァッ!」

 

私はすぐにリオレウスに追撃を命じると、ガブリアスを繰り出した。

 

「私を乗せて、空へ!」

 

「ガブッ!」

 

「えっ、ショウ!?」

 

「すいません先輩、ちょっと行ってきます!」

 

体長が4m近くになり、さらに背びれが翼となったガブリアスの飛行能力なら、一方的にリオレウスたちに置いていかれることはないはず!

私はガブリアスの背中に乗り込むと、ガブリアスは勢いよく飛翔した。……なるほど、龍風圧で気流を操って、推進力を得ているのか。これは勉強になるな。

……勢いで先輩を置いてきてしまったけど、大丈夫……だよね?

 

リオレウスとライゼクスは、空中で激しく衝突している。なるべく近づきたいところだけど……。

 

「ガブリアス、接近できる?」

 

「ガブァ」

 

「よしっ……お願い!」

 

「ガバァ!」

 

私の意を汲み、ガブリアスは戦う二体に近づいていく。ちょうど、お互いに火炎と電撃をぶつけ合った衝撃で爆発が起こり、リオレウスがこっちに向かって弾かれてきた。

 

「リオレウス!」

 

「グオッ!?」

 

リオレウスは「なんでここに!?」と言いたげに驚いていた。まぁ、地上で争うならまだしも、空中だとあまり離れすぎて私の指示が届かないとあっては大変だ。だからこそ、危険を承知でここまで来たんだ。

そこまで説明すれば、リオレウスは難しい表情を浮かべながらも頷いた。……リオレウス的には、私が近づきすぎて巻き込まれないか心配なのかな……でも、大丈夫だよ。

 

「リオレウスがいるし、なによりじめんタイプのガブリアスがいる。でんき技なら、上手く防いでみせるから……信じて、リオレウス」

 

「グオンッ!!」

 

「ライザアアァァァッ!」

 

私がリオレウスと話していると、ライゼクスが苛立ったように咆哮を上げた。……あまり悠長にはしていられないか……!

 

「動きを封じる!たつまき!!」

 

「グオオオ!」

 

「ギィッ……!」

 

よしっ、攻撃は命中!怯んでいる間に一気に攻める!

 

「きあいだめ!からの……力強く、クロスポイズン!!」

 

「グルル……グオオオォォ!!」

 

「ギシャアアッ!?」

 

しっかり気合を入れてから、力業クロスポイズンを放つ!急所への当たりやすさは折り紙つきだ!毒の力を纏った足の爪で切り裂かれたライゼクスは、先程よりもかなりフラフラとした様子で飛行している……体が紫に光った、毒状態だ!

 

「ライイィッ!」

 

ライゼクスは翼爪に影の力を集めると、そのまま一直線に向かってきた……シャドークローか!

 

「それなら、こっちはあやしいかぜだ!」

 

「グオオ!」

 

リオレウスはあやしいかぜを放ち、ライゼクスの迎撃に出る。だが、ライゼクスはシャドークローであやしいかぜをかき消すと、そのままリオレウスに一撃を食らわせた!まさか、力業か!

 

「負けるな、リオレウス!サマーソルト!!」

 

「グオオアッ!」

 

「ギシャッ!!……ライザァ!」

 

「グアッ!!」

 

リオレウスは怯むことなく、サマーソルトでライゼクスの顔面に尻尾を叩きつけた!ライゼクスも負けじと電撃を纏うと、リオレウスに向かって体当たりをした!威力は控えめ……スパークの技か。

 

「……!!ラアァァイズ!」

 

「……!こっちにきた……ガブリアス!!」

 

「ガブッ!!」

 

リオレウスに攻撃を食らわせた直後、ライゼクスは方向転換してこちらに向かってきた!リオレウスもすぐに気がついて、ライゼクスの後を猛追する!

 

「回避!!」

 

「ガブァ!!」

 

ライゼクスのきりさくやかみつくを回避し、ガブリアスは素早く飛び回る!ライゼクスもこちらに攻撃することに夢中で、リオレウスの接近に気づいていないようだ。

 

「リオレウス!だいもんじ!!」

 

「グオオオ……グオアァ!!」

 

「……!ギシャア!!」

 

だいもんじは直撃!ライゼクスは体勢を崩して墜落するも、地上に着く前に復帰した。……さすがにまだまだ余裕って感じか。毒も自然治癒したみたいだし、けっこう長丁場になりそうだな……。

 

「ライザアァッ!!」

 

「10まんボルト……躱して!!」

 

「グオン!」

 

次に繰り出された技は10まんボルト。リオレウスは持ち前の機動力で次々と回避する!

 

「りゅうのはどう!!」

 

「グオオオオ!」

 

「キシャアア!」

 

リオレウスのりゅうのはどうと、それに対抗するように放たれたライゼクスのりゅうのはどうがぶつかり合い、相殺される。

 

「ライッ!!」

 

続いてライゼクスが放ったのはスピードスター!回避はできない……迎撃する!

 

「ぼうふう!!」

 

「グオオオオオオンッ!!」

 

リオレウスが放ったぼうふうは、すべての星型弾を撃ち落とした……いや、まだだ!

 

「ライザアアアッ!!」

 

「グオアッ!?」

 

「リオレウス!」

 

なんと、ライゼクスはぼうふうの中を突っ切ってリオレウスにかみなりパンチを食らわせた!

 

「怯むなっ!かみくだく!!」

 

「グオオッ!!」

 

「ギャッ……!」

 

「よしっ……突き飛ばして、オーバーヒート!!」

 

「グオオオオオオオッ!!」

 

「ギシャアアァァァッ……!!」

 

私の指示を受けたリオレウスはすぐに持ち直し、ライゼクスの首に噛み付いた!さらに蹴りを浴びせて距離を取ると、そのままオーバーヒートを叩き込んだ!

ライゼクスは真っ逆さまに落下していき、あわや着水というところで再び体勢を立て直し、こちらと同じ高度まで戻ってくる。……かなり息が上がっている。このまま行けば、捕獲できそうだけど……。

 

「……そうは問屋が卸さないか……!!」

 

私がなにか気配を感じて上を見上げると、また例の光がライゼクスに向けて伸びてきていた。

 

「……っ!?ギッ!ガ……ギシャアアアアア!!」

 

光の帯がライゼクスの胸元まで伸びると、ライゼクスが光に包まれた!光の中でライゼクスの姿が変化していき……やがて、光が消滅するとその姿が露わになった。

 

二回り近くも大型化した体格。

肥大化した上により刺々しく発達した鶏冠。

なにより、二つ名に相応しい全身に纏う蒼穹を思わせる輝き。

 

「キシャア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ンッ!!」

 

メガシンカ……!これが、【青電主ライゼクス】……!!

 

「ラアアアアイィッ!!」

 

「グオオオアッ!?」

 

「……っ!リオレウス!?」

 

メガライゼクスは先程よりも速くなったスピードでリオレウスに体当りをすると、一度突き飛ばしてからエアリアルスティングでリオレウスの首を再び掴み、帳岬の崖に思い切り叩きつけた!

 

「キシャアアアンッ!!」

 

「グオオアアアッ!!」

 

「(マズイ……!)ガブリアス!!」

 

「ガブガブ!」

 

さらにその状態のままグラウンドボルトを放ってリオレウスに追撃をする!メガシンカ前に比べて格段に威力が上がっているその技に、リオレウスが悲鳴を上げた!

私は迷うことなくガブリアスに指示を出し、リオレウスを援護するために接近する。メガライゼクスは首から尻尾を離すと、かみなりパンチでリオレウスを地上に叩き落とした後、こっちに向かって飛んできた!

 

「くっ……ガブリアス!」

 

「ガブッ!!」

 

ガブリアスも龍風圧を駆使して飛び回るけど……さっきよりもやっぱりスピードが上がっている!実際に追われてみれば、よりそのことが実感できる!

……!!メガライゼクスの鶏冠が、一層輝きを増している……まさか!

 

「キシャアアッ!!」

 

甲高い咆哮とともに、メガライゼクスの頭部から光の柱が伸びた!あれが、ライトニングブレードを強化した技……ゼクスカリバー!!ガブリアスで受け止めきれるの……!?

 

「(いや、ガブリアスを通り越して私にまで攻撃が届く!ここは逃げるしか……!!)」

 

「ガブッ……!」

 

ガブリアスも私と同意見のようで、足を止めることなく飛び続けている。けれど、メガライゼクスを振り切ることができない……!

 

「(いや、全力で飛べば……それこそ、アブソリュートドラゴンストームくらいの速度で飛べば逃げ切れる。……けど、後ろに乗っている私が無事である保証はない……だから、ガブリアスもアブソリュートドラゴンストームを使って逃げることができないんだ……!)」

 

なんてことだ……私が背中に乗っているばかりに、最高速度で飛行できないなんて!これでは本末転倒じゃない!何やってんだ、私!!

 

「ライザアアアアアアァァァッ!!」

 

「マズッ――」

 

逃げられ――!

 

 

――ポンッ

 

「チュウ!!」

 

「……っ!ライチュウ!?」

 

ゼクスカリバーが振り下ろされた、その時だ。私のボールの一つが開き、中からライチュウが飛び出した!ライチュウはメガライゼクスに向かって飛びかかると、真正面からゼクスカリバーを受け止めた!?

 

「チュウウウウゥゥゥゥゥ……!!」

 

「だめっ!ライチュウ、やめてっ!!」

 

ラギアクルスの電撃だって受け止めきれなかったのに、メガライゼクスのゼクスカリバーなんて受け止められるはずがない!!

 

「ラアアアァァァイ……チュウウウゥゥゥゥゥッ!!

 

ライチュウの一際大きな声が聞こえたかと思った、その時……ゼクスカリバーが、音もなく消滅してしまった……!

 

「ギシャンッ!?」

 

「な、に……ライチュウ!!」

 

ライチュウは……!海に向かって真っ逆さまに落下している!!

 

「ライチュウ!!」

 

咄嗟にガブリアスがあとを追うが……間に合わず、ライチュウは海に落下してしまった……!!

 

「ライチュウウウウゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

「……!グオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

「っ!?ギシャアア!!」

 

私の悲鳴が聞こえたのか……リオレウスが怒りに満ちた咆哮を上げると、その口元に紅蓮を滾らせながら猛スピードでこちらに飛んできた。そして、そのままの勢いでメガライゼクスにフレアドライブを叩き込んだ!

 

「リオレウスッ……!ライチュウが……!!」

 

「グオンッ!」

 

私が動揺していると、リオレウスが「見ろっ!」と言うように顔を地上の方へ向けている。釣られて地上に目を向けると、キャンプにいたはずのガラナさんがラギアクルスを伴って歪みの内部に入ってきており、ラギアクルスに何かしらの指示を出して海に潜らせているところだった。

あぁ……あれなら、ライチュウはひとまず大丈夫かも知れない。

 

「リオレウス……私、勝ちたい。ライゼクスに、絶対に勝ちたい。身を挺して守ってくれた、ライチュウのためにも……!」

 

「グオオオンッ!!」

 

リオレウスも、ライゼクスに勝ちたいらしい。血気盛んに声を上げるさまは、まさに王者、空の支配者。私とリオレウスがお互いに頷きあった、その時だ。

タマミツネとの勝負以降、常に身につけていたメガリングが光り始めた……これなら、行ける!!

 

「やるよ、リオレウス!!」

 

「グオンッ!」

 

「我が心に応えよ、キーストーン!進化を超えろ……!

リオレウス!メガシンカ!!

 

「グオオオオオッ!!」

 

ポケモンと、心を一つに……今、私とリオレウスの心が、一つになっていく!私のキーストーンと、リオレウスのメガストーンから光が伸びて結びつき、リオレウスが光に包まれた!!

体に変化が現れ始め、光の中でリオレウスの姿が変わっていく……!やがて光が消え、その姿が顕になった!

 

黒ずんで見えるほど深みを増した赤色の外殻。

肥大化した背中の棘や左右の翼爪。

通常より二回り近くも大型化した体躯。

翼膜に黄金色の紋様を浮かび上がらせた雄大な黒き翼。

 

「グオ"オ"オ"オ"オ"オ"ッ!!」

 

リオレウスの、メガシンカ!メガリオレウス……またの名を、【黒炎王リオレウス】だ!!

やった……ジンオウガに続いて、リオレウスもメガシンカできた!!これなら、メガライゼクスとも互角に戦える!!

 

「…………」

 

……?あれ、メガライゼクスの様子が変……?なんていうか……メガリオレウスをボーッと見ているというか……。

 

「グオオオオアアアアッ!!」

 

「……ッ!キシャアアアアンッ!!」

 

あ、メガリオレウスの咆哮で我に返った。なんだったんだろう、さっきの反応は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【電の反逆者】~モンスターハンターX~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁいいや、気を取り直して……リオレウス!ごうかきゅう!!」

 

「グオオオオオッ!!」

 

「ラアアアイズッ!」

 

メガリオレウスは豪火球を、メガライゼクスはワンダーパルスを撃ち合い、激しくぶつかりあった。メガリオレウスの火力……さっきまでと比べても段違いだ!これが、【黒炎王】の力!

 

「フレアドライブ!!」

 

「グオオオオオンッ!」

 

「ライザアアアァッ!」

 

メガリオレウスのフレアドライブに対してメガライゼクスは……ボルテッカー!?いや、あれほどの電力だ……ピカチュウ族でなくとも、使いこなすことはできるんだろう。

真正面からのぶつかり合いは……メガリオレウスが勝った!激しく拮抗し合う二体だったが、怒りのパワーで強くなっているのかメガリオレウスが押し切ったのだ!

 

「よしっ、りゅうのはどう!!」

 

「グオオオン!」

 

「ギシャアッ!」

 

「エアスラッシュ!!」

 

「グオオッ!!」

 

「ギィッ……キシャアア!!」

 

追撃に放ったりゅうのはどうも直撃!動きを封じるためにエアスラッシュを指示したけど、メガライゼクスが放ったりゅうのはどうはエアスラッシュを突破してメガリオレウスに命中した!

 

「グオオオン!」

 

「リオレウス、大丈夫?」

 

「グオン」

 

「よしっ」

 

それにしても、さっきのりゅうのはどう……メガシンカ前に使った時よりも威力が上がっている気がする。

アカイさんの予測通り、メガシンカしたことで「でんき/ひこう」から「でんき/ドラゴン」になったのか!

 

「ならば……リオレウス、げきりん!!」

 

「グオオオン!」

 

「ギシャッ!」

 

「続けてはかいこうせん!!」

 

「グオオオオオオオ!!」

 

「ギシャアアアアアンッ!?」

 

まずはメガライゼクスにげきりんを叩き込む!そのままメガライゼクスをすり抜けると、その場で半回転して逆さ向きにはかいこうせんを撃つ!!咄嗟に振り返ったメガライゼクスだが、一歩遅くはかいこうせんに押し込まれて地上へと叩き落とされた!

 

「今だ!リオレウス、奥義装填!!」

 

「グオンッ!」

 

私はガブリアスに合図をすると、メガリオレウスとともに天高く飛び上がった。地上では、ゼクスカリバーを構えたメガライゼクスがこちらに向かって飛んできていた。

受けきれるか?メガリオレウスの最大奥義……!

 

「スカイハイフォールッ!!」

 

「グオオオオオオオオッ!!」

 

「ライザアアアアアアッ!!」

 

天高くまで飛び上がったメガリオレウスは、そのまま勢いよく降下を始めた。さらに速く、もっと速く……加速したメガリオレウスは、一発の豪火球を放つと自らの足で豪火球を掴み、そのままのさらに限界まで加速する!豪火球は青白い炎と化し、メガライゼクスめがけて突撃していく!!

 

「いっけええええええっ!!」

 

スカイハイフォールとゼクスカリバーが、激突した!!両者の力はほぼ拮抗している……こうなれば、どちらの地力が上回っているかだ!

 

「ギ、ギギ……!」

 

「……!グオオオオアアアアアアッ!!」

 

「ギシャアアアアアッ!?」

 

メガリオレウスのスカイハイフォールが、メガライゼクスのゼクスカリバーを、超えた!!両者はそのまま地上へ激突!!大爆発を起こした!!

私とガブリアスも、急いで地上へと降り立つ。巨大な火柱の中から飛び出してきたメガリオレウスは、滑るようにして方向転換し相手の出方を伺う。

火柱が消滅すると……その中にいたメガライゼクスは倒れている。よしっ、あとは――。

 

「行けっ、モンスター――」

 

「ギシャアアッ!!」

 

「――え」

 

なっ……まさか、まだ――。

 

「"えんさづき"だ」

 

「グルオアッ!」

 

メガライゼクスが、翼爪を私に叩きつけようとした、その時だ。アカイさんの声が聞こえたかと思うと、メガライゼクスの背後から何かが突き刺さっていた。何かが引き抜かれるとメガライゼクスは倒れこみ、そこでようやくメガシンカが解除された。

 

「――っ。はぁ……はぁ……」

 

「最後まで油断してはならない。特にメガシンカした個体は、メガシンカが解除されるまで、な」

 

「……す、すみません。あの、アカイさん……そのポケモンは……」

 

私が気になったのは、アカイさんの背後に立つポケモンのことだ。

 

全身を覆う甲冑のような甲殻。

兜飾りを想わせる独特な形状の大きな角。

先端部の甲殻が左右に展開されている三叉槍のような尻尾。

 

「あぁ、こいつか?こいつの名は、『マガイマガド』。"怨虎竜"の別名を持つ、ジンオウガと同じ牙竜種のポケモンだ」

 

「グルル」

 

「牙竜種……マガイマガド……」

 

「グオグオ」

 

ジンオウガと同じ種族だというマガイマガドに見蕩れていると、メガシンカが解除されたリオレウスが鼻先で私をつついてきた。……あっ、ごめんね。ライゼクスのことちょっとだけ忘れてた。

私はライゼクスをボールに収めると、すぐ傍に落ちてあったメガストーンを拾った。ライゼクスのメガストーンだ。

 

「よしっ、ライゼクスも捕獲完了っ」

 

「見事な手並みだ、ショウ」

 

「おーい、ショウー!」

 

テル先輩たちも、私たちのもとへ駆けつけてくれた。……ラギアクルスがリオレウスに自身の顔を寄せて小さく頷いている。リオレウスも合わせて頷いていることから、ラギアクルスがリオレウスを労っているんだろう。

 

「ショウさま、お見事でございました」

 

「……あ、あんなポケモンまで捕まえてしまうなんて。ショウさんは、いったいどれだけすごい人なんですか……」

 

「リオレウスのメガシンカ!そして、ライゼクスのメガシンカも、バッチリ記録したのです!ショウくんはやはりすごい人ですね!」

 

みんなが口々に賞賛してくれる中、テル先輩だけ難しい表情を浮かべている……。どうしたんだろう?

 

「……いきなり飛んでったときは驚いたし、ライゼクスに追い回されてる時なんてヒヤヒヤしたぞ。見てるだけしかできないなんて、おれ、ちょっと情けないな……」

 

「そんなこと……テル先輩たちは、海に落ちた私のライチュウを助けてくれたじゃないですか。……ところで、ライチュウは?」

 

「あ、そのライチュウなんだけど……ちょっと様子が変わってるんだ。キャンプに待機させてるから、見に来てくれないか?」

 

「もちろんです」

 

ライチュウ、大丈夫だといいけど……。

 

「……さて、だいぶ事態が解決に近づいてきたな。いつも頑張っている君に、私から些細な褒美がある」

 

「褒美?」

 

私が聞き返すと、アカイさんは腰につけた袋から何かを取り出した。白と青の丸い石……メガストーン!?

 

「え、メガストーンですか?」

 

「左用。この色合い……さしずめ、『ベリオナイト』といったところかな」

 

「……!!」

 

ベ、ベリオロスのメガストーン!欲しいっ!!

 

「おっと」

 

私が思わず手を伸ばすと、アカイさんは広げていた手のひらを握りこんでしまった。……ちょっと?

 

「何するんですか」

 

「まあ、タダほど安いものはないとはいうが、それでは施す側が損をするばかりでね。ライチュウの件もあるし、どうだろう?ライチュウの様子を見るついでに、勝負をするというのは」

 

「ポケモン勝負ですか」

 

「君は気になっているんじゃないか?……君の大のお気に入りである、ジンオウガと同種のポケモンの力が」

 

「……!!」

 

それは……!確かに、気になる……!!マガイマガド、ジンオウガと同じ牙竜種……気になる、うぅ~……けど、ライチュウのことも……うぅ~……!

 

「……ふむ、気乗りしないなら――」

 

「やります」

 

「……やけに食い気味に来るじゃないか」

 

いや、やろう。次の広域化まで時間もあるし、気になったら調査しないと。うん、これは立派な調査隊の仕事だ、何も間違っちゃいない。文句は受け付けるが異論は認めん。

 

「それでは、君はキャンプで準備をしてきたまえ。私はここで待っていよう」

 

「わかりました」

 

「このマガイマガドも含めて、今回は少しばかり力を入れさせてもらう。そのつもりでいるように」

 

私は一つ頷くと、ラギアクルスとリオレウスをボールに戻して急ぎ足でキャンプに戻った。

……同じ牙竜種同士、ジンオウガとマガイマガドはどちらが強いのかな……。

 

 

 

 




さぁ~て、来週のレジェアルHUNTERは?

ベリオロスのメガストーン、ベリオナイトを賭けてアカイとバトル!
そして、ゼクスカリバーを受け止めたライチュウはどうなったのか……ぜひ、お待ちください!


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メイン任務:翠玉の閃電、群青を断つ ~OP-3.前門の怨虎竜、後門の雷狼竜~

アカイとの勝負、第二戦です!


群青の海岸にて、ライゼクスとの戦闘中にメガシンカしたメガライゼクスに追い詰められるも、ライチュウの身を挺した守りとメガシンカしたリオレウス……【黒炎王リオレウス】によって、逆にライゼクスを追い詰めた。一瞬の油断からライゼクスに隙を突かれたけど、アカイさんが連れている牙竜種のポケモン、マガイマガドの一撃によって窮地を脱することができた。

マガイマガド……見るだけでわかる、強者の風格だった。数々の修羅場をくぐり抜けてきたといっても過言ではない……そんな雰囲気が、全身を通して伝わってきた。あのポケモンは間違いなく強い……気を引き締めていかないと。

今、私は砂浜ベースに戻っている。テル先輩からライチュウの様子が変わったと聞き、その確認のためだ。キャンプについた私は、早速ライチュウと対面したんだけど……。

 

「……ライチュウ?」

 

「チュウ」

 

様子どころの問題じゃなくなっているんだけど?

頬の電気袋が真っ白になっている上に、そこから時折迸る電撃も真っ白になっている。耳や尻尾の先端は焼け焦げた様に真っ黒になっているし……一体何があったの?

 

「ライチュウ、大丈夫?どこか調子の悪いところとか、ない?」

 

「ライライ!チュウーウッ!」

 

私が心配して尋ねれば、ライチュウはむしろ「絶好調である!!」とばかりに腕をブンブン振り回し、ダンダダンと足踏みをしている。

……うん、どうやら頭のネジが一本どこかへ飛んでいってしまったらしい。このはしゃぎっぷりは、普段のライチュウからは想像もできないほどにはっちゃけている。

例えるなら、陰キャがパリピに覚醒したレベルの豹変っぷりだ。

 

「……よしっ、行こうライチュウ。その力、このあとのバトルでたくさん見せてね?」

 

「チュウウウウゥッ!!」

 

……テンション、高っ。

私は改めてライチュウを手持ちに加え、手持ちをダイケンキ、ガブリアス、ライチュウ、ミミロップを固定して、残りをハッサム、エンペルトにした。

残り二体の選出理由はズバリ、アカイさんの手持ち対策だ。私の予想が正しければ、アカイさんの手持ちポケモンは湖巡りの時に見たポケモンたちだ。確か、あの時はまだガバイト、ヌメイル、ナエトル、ズガイドス、タテトプスだった……けど、ガブリアス暴走事件の時、ヌメイルとナエトルは最終進化形態のヌメルゴンとドダイトスに進化していた。すると、残りのガバイト、ズガイドス、タテトプスもそれぞれガブリアス、ラムパルド、トリデプスに進化している可能性が高い。

そして、最大の鬼門であるマガイマガド……あのポケモンの実力が見ただけでは計り知れないところがなんとも恐ろしい。ジンオウガたち側の方も、選別をしておく必要があるだろう。

 

メンバーを選び終えた私は、早速イチョウの浜辺へ向かい、そこで待つアカイさんと合流した。

 

「あぁ、待っていたよショウ。それでは、早速始めるか?」

 

「はい」

 

私とアカイさんは距離を取り、お互いに向き合った。

 

「さあ、始めよう。君の力を、私に示してくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【VSアカギ】~ポケットモンスター BD/SP~

【いにしえの死闘】~モンスターハンターフロンティア-G~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「行けっ、エンペルト!!/まずはこいつからだ」」

 

「エンペラー!」

 

「デプスッ」

 

私はエンペルト、アカイさんはトリデプスを繰り出した。よし、タイプ相性ではまず有利……トリデプスはでんき技を使えるから、そこだけは要注意だ。

 

「ハイドロポンプ!」

 

「ペルットオォ!」

 

「受けろ」

 

「デ」

 

ハイドロポンプがトリデプスに直撃!効果は抜群、だけど……トリデプスはまるで平気な顔をしている!?

 

「デプッ」

 

「なっ……受けきった……!?」

 

「ヤワな鍛え方はしていないのでね。弱点技の一つや二つ、体を張って受けて見せよう」

 

「……なら、限界まで撃ち込むのみ!力強く、ハイドロポンプ!」

 

「エェェン……ペルットオォ!!」

 

「ふっ……素早く、パワーシフト!そして、ストーンエッジ!!」

 

「トーデー!!」

 

……!パワーシフト!?攻撃と防御、特攻と特防を入れ替える技を、このタイミングで!トリデプスは防御能力が非常に高いポケモン……パワーシフトを使うことで、超攻撃的ポケモンへと変貌することができる。

パワーシフトを使ったトリデプスのストーンエッジは、エンペルトの力業ハイドロポンプを容易く受け止めただけでなく、そのまま突き進みエンペルトを宙に打ち上げた!

 

「ペルーッ!?」

 

「エンペルト!」

 

「10まんボルトだ」

 

「デープッ!」

 

「エンペルーッ!」

 

「あぁ……!」

 

さらに容赦のない10まんボルトの追い打ち……宙を舞うエンペルトに逃げ場があるはずもなく、なすすべなく直撃した……!

 

「エンペルト……!」

 

「エ……ペ、ル……!」

 

エンペルトはまだ戦うことはできる……けど、さっきの10まんボルトはかなり効いた。防御系の能力を限界まで鍛えることで、パワーシフトによる強化の恩恵を高めているんだ……考えたな、アカイさん……!

だけど、逆に言えば今のうちならトリデプスの防御能力が下がっているということ……ここで強気に攻めなくて、いつ攻める!

 

「エンペルト、アクアブレイク!」

 

「ペルトォ!」

 

「ストーンエッジで足止めだ」

 

「デップ!」

 

エンペルトはトリデプスに向かって突貫!トリデプスはストーンエッジでエンペルトの足を止めようとする……だが!

 

「無駄ァ!」

 

「トオォー!」

 

その程度で、エンペルトは止まらない!エンペルトはと眼前に突き立つ岩の刃を、次々と粉砕しながら前進する。その勢い、とどまるところを知らず!

 

「エンペルーッ!!」

 

「デーッ!!」

 

「ほぅ……」

 

ついにストーンエッジを突破したエンペルトが、アクアブレイクをトリデプスに叩き込む!多少吹き飛んだトリデプスだが……パワーシフトで防御能力が下がっているにも関わらず、ケロリとしている。

 

「……エンペルト、戻って」

 

「ペル」

 

「ふっ……戻れ、トリデプス」

 

「デプ」

 

私とアカイさんは、同時にポケモンを手元に戻す。……さて、ここで繰り出すべきは……。

 

「ミミロップ!!」

 

「ミミー!」

 

「行け」

 

「ランパァ!!」

 

私はミミロップ、アカイさんはラムパルド……大丈夫、ミミロップなら二つの波導技でラムパルドの弱点をしっかり突ける!

 

「みずのはどう!」

 

「ミミッ!」

 

「もろはのずつきだ」

 

「ラムッ、パアアアァァドッ!!」

 

ミミロップのみずのはどうに対し、ラムパルドはもろはのずつきで猛然と突っ込んでくる!その一撃は、みずのはどうを突破してミミロップに直撃した!な、なんて威力……!

 

「ミィッ……!」

 

「あくのはどう!」

 

「ミィ!」

 

「ほのおのパンチ」

 

「ラァム!」

 

少しでも動きを止めるため、あくのはどうを放つ!ラムパルドはほのおのパンチでこれを打ち落としたけど、その代わりに爆発による煙でラムパルドの視界は遮られた!

 

「はどうだん!」

 

「ミッミィ!!」

 

「正面だ、しねんのずつき!」

 

「ラムラァム!」

 

煙に視界を封じられようとも、アカイさんの指示は完璧だ。ラムパルドのしねんのずつきはエスパー技……かくとう技のはどうだんはあっさりと打ち消された……だけど!

 

「お代わり!」

 

「ミミィ!!」

 

「パドッ!?」

 

「……っ。一発目の死角に二発目を仕込むとは、やるな」

 

はどうだんは、なにも一発しか撃っていないわけじゃない!ラムパルドから見て、完全に重なるように二発目を放つことで、技を打ち消したラムパルドを油断させる作戦!作戦は見事に的中、ラムパルドにはどうだんを直撃させた!

 

「ククッ、そうでなくてはな……突っ込め、ラムパルド!」

 

「ラムパアァ!!」

 

「近づけないで!連続ではどうだん!!」

 

「ミミィー!ミィッ、ミィッ、ミィッ!!」

 

はどうだんの弾幕で、突撃してきたラムパルドに対抗する!だが、ラムパルドはギリギリまで引きつけて最小限の動きで回避するという、なかなかのテクニックを披露してみせた。さらに避けきれない時はほのおのパンチやしねんのずつきで次々と打ち落としている。あの速度で、あそこまで機敏に動けるなんて……素早さをかなり重点的に育てたのかもしれない。

 

「力強く、もろはのずつき!!」

 

「力強く、はどうだん!!」

 

「ラムパアァドオォォッ!!」

 

「ミミイイィィッ!!」

 

こうなったら確実に直撃できる距離で、強い一撃を叩き込む!力業で放たれたもろはのずつきを、力業はどうだんで迎撃する!技と技がぶつかり合い、激しい爆発を起こした!どうなった……!

 

「ミィ……ミミロ!」

 

「ラ……ムゥ~……」

 

ミミロップは膝をついているけれど、戦闘不能にはなっていない!逆にラムパルドは目を回して倒れている!

 

「まずは一体か……戻れ、ラムパルド」

 

「戻って、ミミロップ」

 

ミミロップにこれ以上の継戦は難しいな。私は一度ミミロップを戻し、次のポケモンを繰り出す。

 

「次は、ハッサム!」

 

「ハッサム!!」

 

「では、こちらはドダイトスで行こう」

 

「ドダァイ!!」

 

ドダイトス……タイプ相性としてはどっこいどっこいか。今度はこっちが先制する!

 

「ハッサム、つばめがえし!!」

 

「ハッサ!」

 

「受けろ」

 

「ドダ!」

 

ハッサムのつばめがえしは、寸分の狂いなくドダイトスに直撃!……いや、これは!

 

「トリデプスの時と、同じ……!」

 

「遅いな、ストーンエッジ!!」

 

「ドダアアァ!」

 

「サ、サムッ……!」

 

「ハッサム!?」

 

ドダイトスが放ったストーンエッジは、まるでハッサムを拘束するように全方位から突き立てられた!岩に挟まれたハッサムは、身動きがとれない……!

 

「だいちのちからだ」

 

「ドダアァイ!」

 

「サム……!」

 

だいちのちからで打ち上げられたハッサムだけど、羽を使ってすぐに体勢を立て直した。よしっ、攻めるぞ!

 

「シザークロス!!」

 

「ハッサアアム!」

 

「ドダァッ……!」

 

シザークロスはドダイトスに直撃!タイプ相性こそないもののハッサムの得意技だ、威力はお墨付きである。

 

「エナジーボールだ」

 

「ドダア!」

 

「……ッ」

 

エナジーボールで吹き飛ばされ、一時的とはいえ距離を置かれたか……でも、ハッサムならば関係ない。育て方次第では、はがねタイプの中でも随一の速度を得られるから!

 

「素早く、シザークロス!」

 

「ハッサムッ!!」

 

再びドダイトスに突撃するハッサム。だけど、アカイさんとドダイトスはかなり余裕が有る表情……何を企んでいる?

 

「知っているか、ショウ?……ストーンエッジには、こういう使い方もある!」

 

「え?」

 

「ドダイトス、ストーンエッジ……射出!!」

 

「ドッダアアァ!!」

 

ドダイトスが大きく叫ぶと、ドダイトスの周囲に尖った石が幾つも出現し、その石を発射してきた!

 

「!?ハッサ……!!」

 

「ハッサム!」

 

「力強く、はかいこうせん!!」

 

「ドダァ!ドオォォ……ダアアァァァッ!!」

 

「ハッサァ……!!」

 

「ハッサム……!」

 

まさかのストーンエッジによる遠距離攻撃に、ハッサムの足が完全に止まってしまった!そこへ追い打ちをかけるように放たれた力業はかいこうせんによって、ハッサムは戦闘不能になってしまった……!

 

「くっ……戻って、ハッサム」

 

「では、こちらも戻そう」

 

アカイさんも、再びポケモンをボールへ。……次に出すポケモンは……!

 

「ガブリアス!/トリデプス!」

 

「ガッブァアア!!」

 

「デプ!」

 

私はガブリアスを繰り出し、アカイさんは再びトリデプスを繰り出した。守りのトリデプス……だが、ガブリアスの攻撃能力は、鋼すら砂も同然!すぐに打ち砕いてみせる!

 

「ドラゴンクロー!!」

 

「ガバアアァ!」

 

「受けろ!」

 

「デプ!」

 

ガブリアスの渾身のドラゴンクローを、トリデプスは顔の盾で受け止める……だが!

 

「ぶっ飛ばせ!」

 

「ガブアアア!!」

 

「デープス……!?」

 

「なんだと……!」

 

ガブリアスは攻撃を受け止めたトリデプスを、力任せに腕を振り抜いて吹っ飛ばした!まだだ……ガブリアスの蹂躙は、始まったばかりだ!

 

「つばめがえし!!」

 

「ガブッ!!」

 

「ちっ……アイアンヘッド!」

 

「デープッ!」

 

ガブリアスのつばめがえしに対し、トリデプスはアイアンヘッドで受け止めるように対抗する。そんなんじゃ、ガブリアスは止まらない!止められない!!

 

「アクアテール!!」

 

「ガブゥッ!!」

 

「デッ……!」

 

流れるような動きでアクアテールを放ち、トリデプスをド派手に吹っ飛ばす!ガブリアスよりも重いトリデプスが、ゴロンゴロンと転がるほどといえばその威力は想像に難くないだろう。トリデプスは戦闘不能だ!

 

「なんというパワーだ……トリデプスの守りを、よもや上から力でねじ伏せるとはな。さすがは極み個体、大したものだ」

 

「ありがとうございます。これも、彼らの成長の成果ですから」

 

「そうでなくてはな。では、次はヌメルゴンだ!」

 

「ヌメェ」

 

ヒスイのヌメルゴン……そうだ、ここは……。

 

「戻って、ガブリアス。……よし、ここはライチュウで行こう」

 

「ほぉ、ライチュウか……そういえば、ライチュウの様子は――」

 

「行けぇ!」

 

私はライチュウが入ったボールを投げ、ライチュウを繰り出した!

 

「ラァァァララララライイィィィッ!!」

 

……そして、「最初からクライマックス」とばかりにテンション天元突破状態のライチュウが姿を現した。

……やっぱりおかしいって。私のライチュウは本来は自己顕示欲控えめの、いわば良妻賢母系ポケモンのはずなのに……。

 

「――……その、なんだ。随分と思い切ったイメチェンだな」

 

「……言わないでください」

 

これにはさしものアカイさんも引き気味だ、口元がひくついているもの。

なお、こうして話している間にもライチュウは全身から白い電撃を溢れ出させ、ヌメルゴンに対して「かかってこいやぁ!!щ(゚Д゚щ)」と挑発を繰り返している。ヌメルゴンは……無表情だ、逆にコワイ。

 

「……どうやらライゼクスの電撃を吸収したことで、さらなる成長を遂げたようだな。これは期待できそうだ」

 

「正直、この勝負が試運転になるので……どうなるかは私にもわかりませんよ」

 

「あぁ、ではその試運転に付き合うとしよう。遠慮はいらん、かかってくるといい」

 

「ヌメ」

 

「ではお言葉に甘えて……ライチュウ、10まんボルト!」

 

「ライライィ!ラアァァイ……チュウウウゥゥゥッ!!」

 

ライチュウが放った10まんボルト白い電撃となり、大地を破壊しながら突き進んでヌメルゴンに命中した!

 

「ヌメエェェ!?」

 

「む……これは……」

 

……あれ、おかしいぞ?ドラゴンタイプのヌメルゴンに、でんき技は効果はいまひとつのはず……なのに、まるで「タイプ相性なんてなかった」とばかりにダメージをたたき出している。

アカイさんもその違和感に気づいているのか、顎に手を当てて考えている。

 

「……単純に威力が上がった、というわけではなさそうだ。まるで、でんき技が効きにくいタイプに対して順応したかのような、この威力……違うな、電撃の性質が変化しているのか」

 

「性質ですか?」

 

「あぁ。本来、でんき技が効きにくいタイプに対して、これほどの威力が見込めるのだ。これは技の威力向上というより、電撃の性質変化と考えたほうが合点がいく。

その身に白い稲妻を纏い、血気盛んに敵対者へ挑む姿勢。まるで溢れ出る力を、誰彼構わず試したいと言わんばかりだな。限界を超えて力を得た姿、まさしく極み個体。新進気鋭の極み個体……

極み迸るライチュウ

……と、呼ぶべきだな」

 

まさかの極み個体……!その名も『極み迸るライチュウ』!!

……ただのテンションブチアゲ状態じゃなくてよかった。

 

「では、今度はこちらから行くとしよう。ヌメルゴン、りゅうのはどう!」

 

「ヌメェ……ラァ!」

 

「躱して!」

 

「ラアアアアイ!」

 

迫り来るヌメルゴンのりゅうのはどうに対し、バチィッ!と電気の音がしたかと思うと、ライチュウの姿がどこにもなかった。

 

「……いや、ちょっと待って、どこいった!?」

 

「りゅうのはどうを見ろ。必中技であるこの技が、ライチュウの居場所を教えてくれる」

 

私が慌てる中、アカイさんは冷静だった。見れば、りゅうのはどうがフラフラと内陸側に向かって飛んでいく。その行き先を見れば、ライチュウが岩の上に立っていた。速すぎじゃない!?

 

「よ、よし……ライチュウ、でんこうせっか!」

 

「ライイイィィィッ!!」

 

「ヌ"ッ」

 

またしても……まるでキリンの時みたいに、雷の音とともに姿が消えたかと思うと、ライチュウの頭がヌメルゴンの顔面にめり込んでいた。……なんだこれ、トレーナーの私がついていけないんですけど。

ついには追従しきれなくなったりゅうのはどうが力尽きて自然消滅した……。

 

「……速いな。この速度、ともすればキリンに勝るとも劣らぬやもしれんな」

 

「さすがに古龍種には勝てないと思います」

 

「フッ……それもそうだな」

 

ライチュウは私の目の前に戻ってきた。振り返ったその顔は、渾身のドヤ顔である。あぁ……あの奥ゆかしかったライチュウはいったいどこへ……。

 

「アイアンテール!」

 

「ララーイ!」

 

「たてこもる!」

 

「ヌメ」

 

ヌメルゴンは殻の中に入り込み、ライチュウのアイアンテールを受け止めた。たてこもる……殻の中に入ることで、技が直撃しない厄介な防御技だ。……だが、今のライチュウならその防御をぶち抜くことだってできる!

 

「ライチュウ!奥義装填!!」

 

「ライッ!!」

 

ライチュウは電撃を纏うと、ヌメルゴンに向かって体当たりをした!さらに素早く動き続け、全方位から電撃を纏った体当たりを連続でぶつける!

そして、尻尾で足元を掬い打ち上げると、ライチュウはその真下に潜り込む。ここだ!

 

「ボルテージスマッシャーッ!!」

 

「ラァァァララララライッ!!」

 

止めとばかりに、ライチュウは光の柱と見紛うほどの巨大な雷を叩きつけた!!激しく爆発を起こし、ヌメルゴンのカラがゴロゴロと転がる。

中からのそのそと姿を見せたヌメルゴンは、すっかり目を回して倒れている。戦闘不能だ!

 

「……見事。『極み迸るライチュウ』、さすがの力だ」

 

「ありがとうござ――」

 

「ラアアイ!ラァイライライライ、ライチュウウゥ!」

 

「……ちょっと黙っててライチュウ」

 

「チュウゥ!?」

 

私は問答無用でライチュウをボールに戻し、強引に黙らせる。まさか、こんなにも変わってしまうなんて……強くなってくれたのは嬉しいけど、性格までは変わって欲しくなかったなぁ……。

 

「はっはっは!なんだか、以前よりも随分と元気になったじゃないか」

 

「元気すぎて手に負えませんって……もう少し勝負の経験を積んで、慣れていこうと思います」

 

「それがいい。……さて、私の次のポケモンはドダイトスだ」

 

「それなら私は、エンペルト!」

 

「ドダァ!」

 

「ペルトォ!」

 

エンペルトとドダイトス。未来のシンオウ地方で、最初にもらうポケモンとしてナナカマド博士からもらった……んだっけ。まぁ、お母さんの場合は半ば成り行きでヒコザルをもらったそうだけど……。

 

「エンペルト、アクアブレイク!」

 

「エンッペル!」

 

「エナジーボールだ」

 

「ドダァイ!」

 

エンペルトのパワーなら、ドダイトスのパワーにだって引けを取らない!エンペルトはエナジーボールを避けたり打ち落としたりして、とにかくドダイトスに接近する。対するドダイトスも、エンペルトを近づけまいとエナジーボールの弾幕で応戦する!

迫り来るエナジーボールを、エンペルトは大きく跳躍して回避。ここで決める!

 

「エンペルト!れいとうビーム!!」

 

「ペール、トオォォ!!」

 

「ドダイトス、はかいこうせん!!」

 

「ドオォォ……ダアアァァァッ!!」

 

れいとうビームとはかいこうせんがぶつかりあい、大爆発を起こした!爆発は二体を巻き込み、一時的にその姿が見えなくなる。煙が晴れると……エンペルトとドダイトスは、そろって目を回していた。

 

「ふむ、両者ともに戦闘不能だな。戻れ、ドダイトス」

 

「戻って、エンペルト」

 

「さて……私の五体目は、ガブリアスだ!」

 

「ガッブガブ!」

 

「私はダイケンキで!」

 

「…………」

 

やっぱり、アカイさんはガブリアスで来たか。対するこちらもダイケンキ。負けるわけにはいかないね!

 

「つばめがえし!」

 

「げきりんだ!」

 

「……!」

 

「ガアァブッ!!」

 

ダイケンキはつばめがえしで、アカイさんのガブリアスはげきりんでお互いに激しくぶつかり合う。攻防戦は互角……いや、ガブリアスの方がわずかに上……!?

 

「私のガブリアスは、数多の死線を乗り越えてきた。君の極み個体ほどではないが、強くはなっているのだよ!」

 

「……!シェルブレード!」

 

「!!」

 

今回、私はダイケンキのシザークロスをシェルブレードに変更している。シザークロスを受け止められた場合、両手がふさがったダイケンキに反撃の手段がないことを考慮してのことだ。

得意技であるシェルブレードに切り替えてからは、互角に打ち合っている。ダイケンキがガブリアスからの攻撃を、アシガタナで受け流した……今だ!

 

「どくづき!」

 

「……!」

 

「フッ……ほのおのキバ!」

 

「ガバ!!」

 

ダイケンキがアシガタナを突き出すとガブリアスはそれを躱して、逆にほのおのキバでアシガタナに噛み付いた!マズイ、はやくアシガタナを捨てないと……!

 

「力強く、だいちのちから!」

 

「ガアァァブッ!!」

 

「ルッ……!」

 

「ダイケンキ!しっかり!!」

 

ダイケンキはだいちのちからで打ち上げられたが、私の呼びかけに応じてすぐに体勢を整えると着地を決めた。よし!

 

「極み個体を相手に、長期戦はこちらの不利だ……早々に、決着をつける!素早く、アイアンテール!」

 

「ガァブッ!」

 

「ひけん・ちえなみで応戦して!」

 

「……」

 

ガブリアスのアイアンテールに合わせるように、ひけん・ちえなみを放つ!無数の斬撃がアイアンテールの軌道を逸らし、攻撃はダイケンキの頭上を通り過ぎる!

 

「力強く、げきりん!!」

 

「力強く、シェルブレード!!」

 

「ガアァァブッ!!」

 

「!!」

 

今度は力業による、げきりんとシェルブレードのぶつかり合い!ただ、戦いを通してガブリアスの動きを見切り始めたダイケンキに、同じ手は通じない!ガブリアスの攻撃を読んだダイケンキが攻撃を避け始め、逆にガブリアスに攻撃を当て始めた。よしっ、ここはあの戦法で!

 

「ダイケンキ!どくづき、投擲!」

 

「!」

 

「ちっ、はじき飛ばせ!」

 

「ガブ!」

 

ガブリアスは、投げられたアシガタナを真上に弾き飛ばした。次!

 

「つばめがえし!」

 

「何をする気だ、ショウ?……ほのおのキバ!!」

 

「ガブァ!」

 

ダイケンキはつばめがえしを放つも、ガブリアスのほのおのキバによって受け止められた……完璧な、読み通り!!

 

「ガブリアスを支点に!跳べぇ!!」

 

「!!」

 

「ンガァ!?」

 

ガブリアスが噛み付いたアシガタナに思い切り力を入れて、ダイケンキは高く跳んだ!ガブリアスはダイケンキが跳んだために頭を押さえつけられ、思い切り前につんのめった。

そして、高く跳んだダイケンキは……最初にガブリアスが弾いたアシガタナを上手くキャッチ!ここだぁ!!

 

「力強く、シェルブレード!!」

 

「ルシャア!」

 

「ガバアァ!?」

 

「なんと……!」

 

力業シェルブレードが直撃!ガブリアスは大きく吹き飛び、仰向けに倒れ込んだ。戦闘不能だ!

 

「……フッ、ハハハハハッ!まさか、そのような曲芸じみた動きができるとはな……極み個体の力ばかりに注意が向いて、肝心の身体能力にまで目を向けられなかったか」

 

「……さぁ、アカイさん。残りは一体ですよ」

 

「そうだな。さて、貴様の出番だ……マガイマガド!!」

 

「グルオオアアアアアッ!!」

 

アカイさんは六個目のモンスターボールを天高く投げ、そこから繰り出されたマガイマガドは地面に着地すると同時に高らかに咆哮を上げた。くっ……凄まじい威圧感だ……。

 

「さあ、君は何を出してくる?」

 

「……よしっ、ディノバルド!!」

 

「ギャオオオォォォンッ!!」

 

私が繰り出したのはディノバルドだ。ジンオウガを例に見るなら、牙竜種は地上においては高速戦闘を得意としている可能性が高い。その高速戦闘に確実に反撃を繰り出し、なおかつ高いタフネスでしっかりと攻撃を受けられる獣竜種のディノバルドが適任と考えた。

……正直、ジンオウガと戦わせてみたかったと思わなかったことはない。むしろ戦わせたいまである。

 

「……修羅の妄執は鬼火となりて、哀れな竜に纏い付く。

鎧兜の禍威(まがい)を恐れず挑むというのならば……。

挑むがいい、この鬼気の餓竜に。

怨虎竜・マガイマガドに!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【悪逆無道】~モンスターハンターRise~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらから攻めていく!

 

「ディノバルド!きりさく攻撃!!」

 

「ディバー!」

 

「では、こちらもきりさく攻撃だ!」

 

「グルオアァ!」

 

ディノバルドが先制して縦に尻尾を振り下ろすと、マガイマガドはそれをサイドステップで回避。そのまま尻尾を大きく振り回してディノバルドに攻撃するが、ディノバルドも素早く尻尾を戻してこの一撃を受け止めた。

しばらく鍔迫り合いが続いたが、ディノバルドが均衡を崩した。マガイマガドの尻尾を振り払うように尻尾を振るい、そのまま横薙ぎに振り回す。マガイマガドは軽く跳躍してこれを回避すると、直後に体から何かが爆発する音が聞こえた。すると、マガイマガドの体勢がいつの間にか変わっていて、今にも尻尾を振り下ろそうとしていた。ディノバルドはバックステップでこれを回避し、一撃を浴びるということはなく済んだ。

 

「スゥーッ……!」

 

「フッ……!」

 

二体が一息つくとともに、私とアカイさんも小さく息をつく。やはりこの勝負、大迫力というだけあって見ているだけで呼吸を忘れてしまいそうになる。

 

「みだれづきだ!」

 

「グルオン!!」

 

「……!防いで!」

 

「ディバ!」

 

マガイマガドが尻尾を高速で突き出す……が、間一髪防御が間に合った!尻尾を盾にしたディノバルドの守りは、ちょっとやそっとでは抜けない!

 

「攻め立てろ、マガイマガド」

 

「グルオオオン!」

 

「……ッ!」

 

「耐えて、ディノバルド……!」

 

マガイマガドは尻尾による突きを連続で放ってくる。ディノバルドはなんとか攻撃を防いでいるが、いつまで保つか……いや、ここは待っているだけじゃダメだ!

 

「ディノバルド!尻尾を少しだけ寝かせて!」

 

「……!」

 

私の指示通り、ディノバルドがわずかに尻尾を寝かせた。すると、マガイマガドの攻撃はディノバルドの尻尾によって滑るように逸れた。これだ!

 

「尻尾にかみくだく!!」

 

「ディーバッ!!」

 

「グッ……」

 

マガイマガド最大の武器であろう尻尾に、かみくだくが命中!……ダメージはあまりなさそうだけど、これでマガイマガドの動きを封じた!

 

「そのままアイアンテール!」

 

「ディバァ!!」

 

「クック……甘いな」

 

「え?」

 

武器の一つを封じられたにも関わらず、アカイさんに余裕がある……?いったいどういう――

 

「マガイマガド!"きえんばっか"だ!!」

 

「グルオンッ!」

 

なんだ、マガイマガドの技か……?すると、マガイマガドの尻尾に、禍々しいと形容すべき紫の炎が灯った……?

 

ドカンッ!

 

「ディバァ!?」

 

「ディノバルド!?」

 

すると、突然尻尾の炎が爆発した!?その衝撃で尻尾を離してしまい、ディノバルドは倒れ込んだ!

 

「これはマガイマガドの得意技の一つ、『鬼炎爆華(きえんばっか)』だ。マガイマガドは、一般に知られる"おにび"の技とは異なるもう一つの鬼火を操ることが出来る。一見、炎に見えただろうこれはその実、特殊なガスでね。このガスは時間とともに爆発を起こすことができるのだ」

 

「くっ……」

 

そんな特技があったとは……しかも、その実態はガスときた。周囲に大量に巻かれたら、ディノバルドでは逃げ切れないかも知れない……。

 

「戻って、ディノバルド。……行けっ、リオレウス!」

 

「グオオオオオンッ!!」

 

空中で高機動を得意とするリオレウスなら、地上戦に特化したマガイマガドを相手に有利を取れる!

 

「かえんほうしゃ!」

 

「グオオオオ!」

 

「フッ」

 

リオレウスのかえんほうしゃが直撃……いや、これは!

 

「効いていない……!」

 

「悪いが、今回は決着までノーヒントで行かせてもらう。手探りでしっかりとマガイマガドの弱点を探り給え」

 

「それなら、りゅうのはどう!!」

 

「グオオオオン!」

 

……!?りゅうのはどうも、効かない!?ほのおとドラゴンに耐性があるタイプ……いや、これは体質か!

 

「だったらエアスラッシュだ!」

 

「グオオン!」

 

「グルオアアア!?」

 

……!ひこうタイプは効いている!見た目からしてかくとうタイプは確定!

 

「こちらもエアスラッシュ!」

 

「グルオオン!!」

 

マガイマガドが大きく尻尾を振るうと……でっかい空気の刃が放たれた!一般的なエアスラッシュが弾幕系なら、マガイマガドは大砲系か!

 

「空へ!!」

 

「グオン!」

 

リオレウスは素早く空を飛び空へ退避する。よしっ、これでしばらくは……。

 

「逃がすな」

 

「グルオン!」

 

「グオアァッ!!」

 

「なんっ……!?」

 

マガイマガドが、リオレウスに飛びかかった!?リオレウスはなんとか高度を稼ごうと必死に羽ばたきつつ、マガイマガドを振り落とそうと体を揺らしている!ある程度まで高度を稼いだところで、リオレウスはやっとマガイマガドを振り落とした。ふぅ……これで一安心――。

 

「逃がさないと言ったろう?"えんえんく"だ!!」

 

「グルオオオン!!」

 

「グオア!!」

 

「なっ、なんですって!?」

 

なんと!振り落とされたマガイマガドは鬼火を爆発させ、爆風を利用した空中跳躍で再びリオレウスに飛びかかったのだ!さらに組み付かれたことでリオレウスが体勢を崩してしまい、隙を晒してしまった。その隙を突こうとするマガイマガドだが、間一髪リオレウスは身を翻して回避した。

ほっとしたのも束の間、またもマガイマガドは跳躍しリオレウスに組み付いた。

 

「鬼火爆破による爆風を利用した高速移動……『怨炎駆(えんえんく)』だ。さあどうする?これでは空の王者も形無しだが?」

 

「くっ……」

 

ダメージはなくとも、押し返すくらいなら……!

 

「かえんほうしゃ!押し返して!!」

 

「グオオオ!」

 

「無駄だ」

 

「グルオオオオオンッ!!」

 

一度は押し返すことに成功するも、マガイマガドは鬼火爆破で一気に跳躍するとリオレウスめがけて突撃を仕掛けた!二体は取っ組み合ったまま地面に激突。衝突と同時に盛大な鬼火爆破でリオレウスが吹っ飛ばされた!!

 

「リオレウス……!!」

 

「グウゥ……!」

 

リオレウス……かなりのダメージを負ってる……!これ以上の継戦は危険だ……!

 

「戻って!リオレウス!!」

 

「グッ……」

 

「……お願い、ジンオウガ!!」

 

「ウオオオオォォンッ!!」

 

私にとっての、もう一つの切り札……ジンオウガに全てを託す!

 

「最初からフルパワーで行く……!」

 

「ウオン!」

 

「我が心に応えよ、キーストーン!進化を超えろ……!

ジンオウガ!メガシンカ!!」

 

「ウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ンッ!!」

 

私はすぐにジンオウガをメガシンカさせた。リオレウスとのあの戦い……下手に様子見なんてしていたら、狩られるのはこちら側だ……!だから、最初っから全力を出す!

 

「あぁ、そうだ。全力で来い。マガイマガドは、慈悲とは無縁のポケモンでね……全身全霊で抵抗してくれ。さもなくば、うっかり殺ってしまいかねないのでね」

 

「かみなり!!」

 

「ウオオオン!」

 

「躱せ」

 

「グルオオア!」

 

メガジンオウガのかみなりを、マガイマガドはステップと怨炎駆を駆使して自在に駆け回り回避する。動きが素早い……!なんとかして止めないと……!!

 

「はどうだん!」

 

「ウオオン!!」

 

「グアッ!!」

 

……っ!はどうだんがかなり効いている!怨虎竜の別名から察するに、マガイマガドのタイプは!

 

「あくとかくとうの複合タイプ!!」

 

「正解だ!」

 

あく・かくとう……!フェアリー技なら、一気に四倍の弱点を突ける……だけど、マガイマガドが素早いために、下手な近接攻撃はかえってこちらの隙を生んでしまう恐れがある……どうする!

 

「さぁ行くぞ!えんさづきだ!」

 

「グルオオア!」

 

「躱して、かみなりパンチ!!」

 

「ウオオン!」

 

メガジンオウガは突撃しつつ、突き出されたマガイマガドの尻尾を回避!そのままかみなりパンチを叩き込んだ!

 

「グルアァ!!」

 

「どうやらでんきタイプにも弱いようですね!」

 

「ハッ!弱点を知られた程度で敗れるほど、マガイマガドは弱くない!!」

 

アカイさんはニヤリと口角を釣り上げると、大仰に腕を広げつつマガイマガドに指示を出した。

 

「臨界を超えろ……マガイマガド!きえんばんじょう!!」

 

「グルオオオオオンッ!!」

 

アカイさんの指示とともに、マガイマガドが大きく吠えると、激しい鬼火爆破が発生した。すると、マガイマガドの腕や背中といった全身の甲殻が展開され、全く違う姿へと変貌していた!

 

「クックック……これこそが『鬼火臨界状態』のマガイマガドだ。『鬼炎万丈(きえんばんじょう)』を使うことで、マガイマガドはこの形態へと移行することができる。

さらに、『怨嗟突(えんさづ)き』の技が『尾槍(おやり)鬼火螺旋突(おにびらせんづ)き』へと強化される。簡単に倒れてくれるなよ?」

 

「こ、これが……!」

 

「では、早速受けてもらおうか。……おやり・おにびらせんづき!!」

 

「グルルルル……グルオオン!!」

 

マガイマガドが尻尾を高く持ち上げると、先端を素早くくるくると回している。そのまま一気に突き出すと、螺旋状の鬼火が放たれてメガジンオウガが吹っ飛ばされてしまった!

 

「ジ、ジンオウガッ!!」

 

「グッ……グルルル……!!」

 

「ほほぅ……さすがは二つ名個体。あの一撃を直撃してなお立ち上がれるとは」

 

な、なんて威力なの……!?メガジンオウガが、宙を舞うだなんて……!

 

「だけど、マガイマガドはでんきタイプが苦手……ここは、大技に賭ける!ジンオウガ、奥義装填!!」

 

「ウオオオオオンッ!」

 

「フッ……いいだろう。マガイマガド、奥義装填」

 

「グルオオオオンッ!」

 

メガジンオウガは右角に電力を集め、マガイマガドは大きく咆哮すると、全身の鬼火の色が鮮やかな桃色へと変化した。マガイマガドが突進すると、ジンオウガの周囲を鬼火を巻きながら旋回し、一気に跳躍。そのまま突撃してきた!

 

「せんしょうらいせん!!」

 

「だいおにびうらみがえし!!」

 

「ウオオオオオオオンッ!!」

 

「グルオオオオオオンッ!!」

 

メガジンオウガの尖衝雷閃と、マガイマガドの『大鬼火(だいおにび)(うら)(がえ)し』がぶつかり合う!!激しいぶつかり合いの行く末は、鬼火による大爆発によってわからなくなってしまった……!

 

「ジンオウガ……!」

 

「…………」

 

煙が晴れていく……そこには、ボロボロになりながらも立ち続けるジンオウガと、ダメージを負って傷つきながらも多少の余裕が有るマガイマガドの姿があった。

 

「流石だな」

 

「…………」

 

「よもや、マガイマガドとこれほどに渡り合うとは……いやはや、感服する他ない」

 

「……嫌味ですか?こちらは既に満身創痍で、そちらは負傷しながらも健在……勝敗は付いたも同然ですが、勝った気になるのも早すぎますよ」

 

「それもそうか。……では、そんな君らに敬意を評し、マガイマガドのもうひとつの姿をお見せしよう」

 

そう言いつつ、アカイさんは手袋を外した。右手の手袋が外され、露わになった右手……その、薬指には……!

 

「……まさか、キーストーン……!」

 

「メガシンカは、なにも君らの専売特許ではないよ。さあ、やるか。マガイマガドよ」

 

「グルオン」

 

よく見ると、マガイマガドには額あてが付けられている。……メガストーンが埋め込まれた、額あてが。

 

「儚くも食らいつくされしものたちの炎よ。

怨虎に集い 使いとなるにすぎし妄執の炎よ。

かすかにつなぎし念はか弱く……いずれほどなく、消えゆくさだめ

煉獄の道程を辿る前に、しかと見届けよ

汝の魂魄がより強く、苛烈なる禍威となるところを。

 

マガイマガド、メガシンカ!!」

 

「グルオアアアアッ!!」

 

アカイさんのキーストーンと、マガイマガドのメガストーンが激しく共鳴している!やがて光に包まれたマガイマガドの姿が、少しずつ変化していく……そして――

 

全身に赤く光る文様のような傷。

「鎧」と見紛うほどの堅牢な甲殻。

目を惹くほどに非常に大きく発達した腕刃と、より鋭さを増した背中の刀殻。

幾重にも甲殻が重なり合い、7つの刃を備えた豪槍の如き刃尾。

根元から折れた右角に対し、異常発達した左角。

 

「グルオ"オ"ア"ア"ア"ア"っ!!」

 

右目が潰れて隻眼となった、その名のとおり禍々しい姿へと変貌したマガイマガドの姿があった。

 

「そ、んな……!」

 

「恐れ慄け、震えて眠れ。これこそがメガマガイマガド……またの名を『怨嗟響めくマガイマガド』なり!マガイマガドは牙竜種最強だ!コイツがその気になれば、古龍種だってぶっ飛ばせる!!」

 

「くっ……ジンオウガ!」

 

「マガイマガド!!」

 

「「きりさく!!」」

 

二体が同時に駆け出す。交差は一瞬、そして……決着も。

 

「古龍級生物を舐めんじゃねえ!」

 

「あっ……」

 

ジンオウガの、体が――

 

「グ……ア……」

 

――倒れた。

 

「ジンオウガ……ッ!!」

 

「……ふぅ。ジンオウガ、戦闘不能だ。さあ、次はどうする?ディノバルドか?リオレウスか?」

 

「……いえ。私の……負けです……」

 

「……おや?」

 

私は急いでジンオウガの傍に駆け寄る。メガシンカが解除されたジンオウガは、薄く目を開いて私を見た。

 

「クゥン……」

 

「……いいんだよ、ジンオウガ。ありがとう、よく頑張ったね」

 

「ワン……」

 

「……いいのか?君はまだポケモンが残っているだろうに……」

 

アカイさんがそう尋ねてくるけれど……これは、私なりのこだわりなのでうまく説明できるだろうか……。

 

「いいんです。……ただでさえ強力なジンオウガたちを、複数体も連れ歩いているんです。どこかで自制をかけなければいけない。

それに……それこそ、ジンオウガたちによる数の暴力なんて、ただの卑怯者じゃないですか」

 

「ふむ……君がそういうのなら、受け入れよう。今回は私の勝ちだ」

 

「はい、私の負けです」

 

ジンオウガをボールに戻しつつ、立ち上がる。あぁ……でも、これでベリオナイトは貰えないんだよな……。いつかまた、再戦を……。

 

「それでは、これを君に譲るとしよう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

あ、ベリオナイトだ。よかった、ベリオナイトは貰え――

 

「……って、ちょっと待ってください!!」

 

「ん?どうかしたかね?」

 

「いやいやいや、なんで普通にベリオナイトを渡すんですか!?私、勝負に負けたんですけど!」

 

「……今の君にこんな事を言うのは、大変、大変に酷なのだが……」

 

「な、なんですか……」

 

「……私は勝負に勝ったらベリオナイトを譲るとは一言も言ってないがね」

 

「…………」

 

え?いや、待って、そんなはずは……

 

 

『どうだろう?ライチュウの様子を見るついでに、勝負をするというのは』

 

『君は気になっているんじゃないか?……君の大のお気に入りである、ジンオウガと同種のポケモンの力が』

 

 

「……言ってなかったです」

 

「だろう?」

 

じゃあ、なにか……私が勝手に勝敗で決まるものだと、勘違いしたということ!?

 

「……ッ!!」

 

「ははは、八つ当たりに殴るのはやめたまえ。地味に痛いぞ」

 

くそうっ、くそうっ、くそうっ!勝負には負けるし勘違いはするしで、なんか悔しいことばかりなんだけど!!

 

「……帰って特訓します。次は、次こそは勝ってみせますから!!」

 

「あぁ、期待しているよ」

 

絶対、絶対に勝ってみせる!今に見てろ……!

 

「……それにしても、ジンオウガの根性には度肝を抜かれたな。主であるショウの期待に応えたいが故か……はたまた、同じ牙竜種としての、雷狼竜(・・・)の意地故か」

 

「……!!」

 

またでた、らいろうりゅう……しかも、ジンオウガのことを指して言ってるってことは……。

 

「……あの、アカイさん」

 

「ん?」

 

「らいろうりゅうって、ジンオウガの別名ですか?」

 

「……おや、説明していなかったか。君が最初に捕まえたポケモンたちの別名だが、ベリオロスは氷の牙と書いて氷牙竜、リオレウスは文字通りの火の竜で火竜、ラギアクルスもまた文字通りの海の竜で海竜、グラビモスは鎧の一文字を当てられた鎧竜……そして、ジンオウガ。雷の狼と書いて、雷狼竜という。

……それがどうかしたかね?」

 

「……実は」

 

私は、おばあちゃんたちが代々詠い継いできた詩の話をした。すると、アカイさんは面白いことを聞いたとばかりに笑みを浮かべた。

 

「ほほぅ、それは面白い。詩の中に出てくる『蒼光纏う雷狼』とは、どう考えてもジンオウガをおいてほかにない。そして、『古の国』……君の一族が詠い継いできたということは、『古の国』とはここヒスイ地方を指すのだろう。……ん?すると妙だな。

この詩を最初に詠った君の祖先とは、いったい誰のことだろうな?」

 

ドクン、と胸が大きく音を鳴らした。

 

「少なくとも、ヒスイよりも後の時代にもジンオウガたちが活動をしていたとは到底思えない。もし活動していたのなら、その詩を知っている時点で君の一族はジンオウガの名を知っているはずだからだ。

……と、なると……ジンオウガたちの情報は、このヒスイ時代から失伝してしまっているということになるのか。あるいは……後の世のために、故意に情報を処分したか。

なんにせよ、君が知っているその詩が、この時代にしか存在しなかっただろうジンオウガを指していることは明白だ。そして、その者はジンオウガの背に乗り大地を駆けるほど、ジンオウガと親密な仲ということになる。

そして、ジンオウガに騎乗しなおかつ親密な者は……現状、君だけだ」

 

さらにドクン、と大きくなった。

 

「……私もシロも、君が何者なのかはあえて詮索しないでいたが……その詩が出てきた以上、いつまでも無視するわけにはいかないな。なんせ、君の出自に関わることかも知れないからね。

すべてはムラに戻ってからにするとしよう。……君の正体、そして君という存在の解明のためにも」

 

「……はい」

 

私がシンオウ時代にいた頃、この詩はあったけどジンオウガの存在は誰にも知られていなかった。だけど、ジンオウガはこのヒスイ地方に生きている。明らかに普通のポケモンとは異なるポケモン……いつからいたのかわからない、正体不明のポケモン。

帰路に着く間、ずっとそのことを考えていた。考えることを放棄するのは、すごく怖かったから……。

 

 

 

 




最後の最後で謎の爆弾をぶち込む悪の所業よ。

アカイの手持ち(2回目)

ヒスイヌメルゴン
たてこもる/かみなりパンチ/りゅうのはどう/アイアンヘッド

ドダイトス
エナジーボール/だいちのちから/はかいこうせん/ストーンエッジ

ラムパルド
もろはのずつき/しねんのずつき/かみなりパンチ/ほのおのパンチ

トリデプス
アイアンヘッド/ストーンエッジ/10まんボルト/パワーシフト

ガブリアス
げきりん/ほのおのキバ/アイアンテール/だいちのちから

マガイマガド あく・かくとう
弱点 火:× 水:○ 雷:○ 氷:△ 龍:×
四倍:フェアリー
二倍:みず、でんき、かくとう、ひこう
半減以下:こおり、いわ、ゴースト、あく
無効:ほのお、エスパー、ドラゴン

実質、アカイの旅パ。やはり古龍級生物は強いですねぇ……。


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【リオレウスよ】我らモンハン部異世界支部【イケメン死すべし】

こんな話が書きたいなぁ……という思いで綴った一話から既に四十話が経過した第四十一話……長いなぁ。

自分自身、まさかこんなに長く書くとは思いもよらなかったですね……それもこれも、読み手の皆様がいらっしゃるからこそですね!

ボケとツッコミが両方いないと成立しないコンビ芸人みたいに!(もっとマシな例えはなかったのか……)



1:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

スレタイを理解したな?では死ぬがよい

 

2:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやいやいや待て待て待て!

意味がわからん!なんで唐突に!!

 

3:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

焔……お前がっ!お前が悪いんだ……!!

 

4:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まったく……こんなことになるんだったら、もっと早くに始末しておけばよかったよ

 

5:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ふざけるな……俺は悪くねぇ、俺は悪くねぇ!

そもそもな、想像つくわけねぇだろが……!

 

 

 

まさかライゼクスが雌個体でなおかつリオレウスに初恋を拗らせためんどくせぇドラゴンだったとかさぁ!!

 

6:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ボールから出てきた瞬間から、もうずっとお前にべったりだもんな

 

7:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ほんまそれなぁ……俺だって、このボディの記憶をたどってから初めて知ったもんな

 

8:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いいじゃねぇか、一途な女だ、愛してやれよ

 

9:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あぁ……今思い出しても、なかなかにドラマティックな話だと思うぞ?

 

10:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ふぃー、やっと医療隊からの健康診断から解放されたぜ

んで、何この空気

 

11:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

恋バナ

 

12:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

盛り上がってきたなぁ!!CPは?

 

13:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ライレウスやで

 

14:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ、実は雌個体だったライゼクスか

それで、そのライゼクスが焔にべったりな理由はわかったんか?

 

15:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

焔の記憶発掘に二週間弱、さらにその後光輝は健康診断に集中してたから、繋がってても内容まで把握してないのか

それじゃあ、まずはリオレウスの方から

 

16:空の王者 ID:MH2nddosHr8

えぇ~……あぁうん、説明しますよ面倒くせぇ……

 

まず、俺のボディとなったリオレウスは特に変わった個体ではないぞ、どこにでもいるごく普通のリオレウスだ

ただまぁ、強いて言えば……人間風に言うなら、「寡黙で多くを語らない、言葉で語らず拳で語り合おう!」な脳筋飛竜ってとこか

 

17:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、脳筋かよww

それで、ライゼクスは?

 

18:空の王者 ID:MH2nddosHr8

このライゼクスがまた、随分と拗らせてるんだよな……

 

若かりし頃にマイボディレウスに挑んだそうなんだが、それはもう手酷くボコボコにされたらしい

その後に止めを刺されそうになるが……どうやらこの時、マイボディレウスの奥さんがセルレギオスに襲われてたらしく、それを察知したマイボディレウスがそっちを優先してライゼクスを見逃してしまったんだよな

……んで、ライゼクスからすれば「最後の最後で情けをかけられた!」と大憤慨、マイボディレウスをしつこく追い回すようになったんだ

 

19:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おぅふ

 

20:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……ま、まぁ、自然界では身内を優先するのは当然だし

 

21:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それで、何度もマイボディレウスを見つけては挑むんだが、その度にボコボコにされて……神の悪戯なのか、止めのタイミングでいつもレウス側に不慮の事態が発生して、その度に何度も見逃されるんだよ

んで、それがもう何度も続いているうちに、いつの間にかライゼクスの脳内は「リオレウスに勝つ」ことだけになっていってね……知ってか知らずか、マイボディレウスもライゼクスをボコボコにはするが、なんだかんだ理由が出来て見逃すんだよ

 

22:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ここまではね、ただの自然界だからね、至って健全なんだよね……

 

23:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、一体何があったんだよ……

 

24:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

人間とは斯も業の深き……とでも言うべきか

 

25:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それなー

 

……んで、そんなある日のこと、空のどこをとんでもマイボディレウスを見かけなくなったんだよ、でもライゼクスはどうしてもマイボディレウスと戦いたくて会いたくて一日中飛び続けたんだ

そんで見つけたのが……ハンターにボコボコにされて死んだマイボディレウスだったのよね

 

26:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うわっ

 

27:空の王者 ID:MH2nddosHr8

しかも間が悪いことにハンター達が素材の剥ぎ取り中だったのよ

ハンター側からしたら仕事なんでね、しょうがないんだがね……ライゼクス側からしたら「私が倒すはずだったのに!なんてことしてくれたのよ!!」と大激怒、クエスト終了直後で油断しきっていたハンター達を強襲して半殺しにしちゃったのよ

 

28:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

一応は無事だったのか

 

29:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ここでいう半殺しっていうのは「半(数は)殺し(た)」って意味だからな

 

30:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

無事じゃなかった……

 

31:空の王者 ID:MH2nddosHr8

んで、その後のライゼクスだが……自然界だと信じられないことなんだが、マイボディレウスの死体を自分の巣に持って帰ったんだよ

さらにその道中、マイボディレウスの奥さんだったリオレイアもハンターに狩られてしまった挙句、巣に残っていた卵も密猟者に盗まれているところを目撃してしまったらしい

己の目標も、その目標が大事にしていたものも、すべてが人間の手によってめちゃくちゃにされる様にやるせなさを感じながらも巣に持ち帰って……特に食べることもなく一夜を明けた……が

 

32:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

今度は何……?

 

33:空の王者 ID:MH2nddosHr8

寝て目が覚めたら、死体が忽然と消えていた

 

34:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いやアルセウスゥ!!TPO!TPOを考えろよぉ!?

 

35:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それからはもう言わずもがな……ライゼクスは発狂した

人間への憤怒と憎悪だけで暴れまわったライゼクスは当然だが、人間から脅威と見做されて討伐依頼が出された

しかしまぁ、このライゼクスが強いこと強いこと……格上のモンスターに揉まれ続けたライゼクスの実力は、マイボディレウスに連敗を重ねていたために本人は気づけなかったようだがめちゃくちゃ強くなっていた

次から次へとやってくるハンターを、これまた次々に狩り続けた……そうして暴れる中で、ライゼクスはマイボディレウスに抱いていた想いがなんだったのかを理解したらしい

 

36:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それが「恋心でした」は無理がありすぎんか……?

 

37:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

現実にそうなっているんだから仕方がないだろ……

 

38:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、そこからはみんなも知ってる通りの展開だ

時空の裂け目に吸い込まれて、時空の歪みの中に放られたライゼクスは強くなるために現地にいた生物を片っ端から食べ始めた

とりわけ、体の大きい生物を食べた時は殊更強くなれた気がしたから、積極的に狙い始めたんだそうだ

そして、群青の海岸のバトルにつながる

……まぁ、ライゼクスはあの時どう考えても死んでいたはずのマイボディレウスが元気いっぱいに空を飛びまわっていたので、当たり前だがめちゃくちゃ歓喜したし混乱もしたらしいぞ

 

39:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

殺されたんじゃ?

 

40:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

トリックだよ

 

41:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

マジモンのトリックなんだよなぁ

 

42:空の王者 ID:MH2nddosHr8

んで、捕獲されて落ち着いてからは、それまでの感情が全部一気に大爆発……俺に付き纏うようになりましたとさ、勘弁してくださいマジで

 

43:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

拗らせてんねぇ!

 

44:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、同情はする

お早うからお休みまでをリアルにされたら、けっこう堪えるんだよな……ましてや、相手が拗らせていたならなおさらな……

 

45:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

流静の場合は妹ちゃんが……

 

46:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やめろおおおおおぉぉぉぉぉっ!!

静香の話はするなああああぁぁっ!!

 

47:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

わかってるって流静、わざわざこんなところでする話でもないし

 

48:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

剣介……!!

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が参加しました――

 

 

49:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あら、何の話?私もまーぜて♪

仲間はずれは〇ス

 

50:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

流静が実妹に童〇喰われた話です

 

51:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ミ°

 

52:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あっ、ふーん(察し)

 

53:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

一番聞かれたくない人に聞かれてしまったwwww

 

54:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……えっと、できれば忘れてやってください、本人のために

 

55:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

もーぅ、しょうがないわねぇ

 

56:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それよりもルーツ、ちょっと気になることがあるんだが

 

57:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

流静くんはいいの?

 

58:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

再起に時間かかるんで後で

バルカンがショウちゃんの詩についてどうのこうのって言ってたんだが、ルーツ的にはどう思った?

 

59:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……うーん……私もついさっき、ショウから当人の身の上話を聞いたばかりだから、ほとんど仮説になるけどいいかしら?

 

60:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

問題なし、仮説なら一緒に考えられるしな

 

61:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

しのびねぇなww

 

62:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

かまわんよww

 

63:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……なんで祖龍がそのネタを知ってるんだよ……

 

64:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あっ、復活した

 

65:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

剣介ェ……お前後でマジで殺す

 

66:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ぴえん ゚(゚´Д`゚)゚

 

67:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、祖龍には誰も逆らえんて、許してやれや

……あの、ライゼクスさん近いです、もうちょい離れてどうぞ

甘噛みもやめてくださいくすぐったいです離れろやァ!!

 

68:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……んで、ルーツの仮説とは?

 

69:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

まぁ、大方予想は付いているだろうけど……ズバリ、ショウが特異点になってループしてる説

 

70:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それってつまり……言ってしまえば、ショウが元の時代に帰ることなく、ヒスイ地方に骨を埋めたってことだよな

そして、俺とのやり取りを詩にしたショウが詩を後世まで残した結果、ループが始まったと

 

71:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

意外とシンプルだな、ループを終わらせたけりゃ元の時代に帰ればいいだけなんだから

……いや、それで終わるんだったらそもそもループしてないか

 

72:空の王者 ID:MH2nddosHr8

うーん……そうなると、モンハン側の世界からこっちに来て、それはもう密接に関わった連中はどうなる?

そも、それを言ったらルーツやバルカン、そしてアルセウスと喧嘩中のボレアスもループに巻き込まれていることになるぞ

 

73:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そこはそれ、独力で時空を渡れるミラボレアスだから問題はないんだけどね

それに、立体交差並行世界論とか多元宇宙論とか話題に挙がるくらいだから、ループ程度でいちいち驚いていられないのよ

 

74:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

た、確かに……

 

75:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……もしもヒスイ時代に詩を残したのがショウちゃん自身だとしたら、確かにこの世界はループしていることになるな

というのも、ショウちゃん……いや、主人公の祖先と思しき人物すら、本編中のどこにも現れないんだから

ここが特に曲者なんだよな……過去に遡ったのなら当然、主人公の祖先もいるものだと誰もが考えるし、まだヒスイ地方に移住していないだけと言われればそれまでだが……仮にそうだったとして、後々になって同じ顔の過去人と未来人が遭遇したら変な目で見られること請け合いだし

やってくれたな任〇堂、考察に終わりが見えないんだが?

 

76:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

さすがは流静くん、五人の中で一番の切れ者ね

 

77:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

お褒めに預かり光栄です

 

78:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うーん、一気に難しくなってきたな……

 

79:空の王者 ID:MH2nddosHr8

確かにこれは考え始めたらキリがないぞ、一見すると単純に片付けてしまえそうな問題に見えるが、実際に片付けようとしたら複雑すぎて永遠に終わらないやつだ

そしてライゼクスよ、しれっと尻尾を絡めるな動きにくいっつの!

 

80:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……で、結局のところ俺たちはループしていたとしてどうすればいいわけ?

仮にループを止めたとしても、平行世界化するだけで根本的な解決にはならなさそうだけど

 

81:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

なにも

 

82:空の王者 ID:MH2nddosHr8

え?

 

83:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ループそのものに関して、あなたたちが今すぐどうこうする必要はないわ

そもそも、ループしていたところで何か問題でもあったりする?

 

84:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あるある、大いにある

このままループしていたら、ショウちゃん家の家系図がショウちゃんを最後に止まっちまうじゃないか

 

85:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……え?

 

86:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あー、そりゃあよくねぇなぁ、よくねぇよ

ショウちゃんにはループ後の未来においても幸せになってもらわねぇとな

 

87:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なら、やることは一つ

 

88:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やり方はさっぱりわからんが、要するに時空の裂け目とゼノ・ジーヴァ生誕の時期をずらせば良いのでは?

 

89:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あるいは、ミラボレアス逃亡を阻止するか

 

90:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

逃亡阻止の方が楽勝だな

 

91:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やれるか、光輝?

 

92:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やってみせるさ……なあ、ルーツ

 

93:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……何かしら?

 

94:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

俺、極み個体になるわ

……どうすればいい?

 

95:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……メガシンカに鍵があるわ

知ってると思うけど、私たちの世界ではメガシンカによって至る二つ名個体は一個体として当たり前のように跋扈している……その「当たり前」をこっちの世界にも順応させるのよ

今、この世界における常識は「メガシンカはバトル中にのみ可能」ということ……つまり、「野生のメガシンカ個体は存在しない」というのがこの世界の常識、その常識を上書きする……即ち「野生のメガシンカ個体は存在する」と世界に認識させる

それが成功すれば今度は光輝くんがメガシンカ個体……【金雷公】へと「進化」という過程を辿って至るのよ

そして、メガシンカを経て『極み吼えるジンオウガ』にメガシンカする……そしてもう一度、【金雷公】から『極み吼えるジンオウガ』へと「進化」する

そして、これらを可能とするためには……ショウの観測と認識の力が必要だわ

 

96:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なるほど……?

ざっくり言うと、ショウちゃんに「そういうこともある」と思わせればいいってこと?

 

97:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ざっくり言うと、そういうことね

今は周りから知識を得たために、この世界本来の常識を認識している状態だけど……これを塗り替える程の強い認識力と観測力があれば、世界の常識を超えることができる

いわば、「主人公補正」というやつね

 

98:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それならば、問題はない

 

99:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ショウちゃんにとっても光輝……ジンオウガは特に強い思い入れのある存在になっている

さっきのバトルでマガイマガドに負けてしまったからな、強くなることにさらに貪欲になりつつあるぞ

 

100:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

俺もショウちゃんのためならえんやこら、ってな……お、早速お呼ばれだ

……流静と剣介も?早速行ってくるか

 

101:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ショウちゃんから、強い闘志を感じる……おそらくこれは模擬戦だな

 

102:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

よっしゃ、模擬戦だろうが手加減はしないぜ

 

103:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それはこちらのセリフだ

 

104:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

望むところだ!

 

 

――「無双の狩人」が退室しました――

 

――「大洋の支配者」が退室しました――

 

――「零下の白騎士」が退室しました――

 

 

105:空の王者 ID:MH2nddosHr8

行ってらー

 

106:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

早速特訓が始まったな

 

107:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ふーん……よっぽどアカイとマガイマガドに負けたのが効いたのね

 

108:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

古龍級生物には流石に勝てなかったな……

 

109:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺もボコボコにされちまったよ……くっそぉ、悔しすぎる!俺も特訓に参加してぇ!

だからライゼクス、いい加減に俺から離れてくれぇ……!!

 

110:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

大変ねぇ……あっ、なんなら私が直々に特訓を……

 

111:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やめてください

 

112:空の王者 ID:MH2nddosHr8

死んでしまいます

 

113:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あっ、そう……ちぇー

 

 

――「赤いなぁ……」が参加しました――

 

 

114:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

やれやれ……彼我の実力差を考えろ、どう考えてもオーバーキルだろうに……

 

115:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おっ、バルカンだ

なあなあバルカン、バルカン的にショウちゃんループ説についてどう思う?

 

116:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

十中八九、ループしているだろうな

 

117:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あぁ、やっぱり?じゃあ、止める方法とかは?

 

118:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

黒龍を止めるほかあるまい

 

119:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、結局そこに行き着くんかい

 

120:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

マヌケめ、そもそもアルセウスがお前たちの肉体となったモンスターを呼び寄せることとなった要因はなんだ?

ショウがこの時代に残るのか帰るのか以前の問題だ、そもそもモンスターをこちらの世界に引き込ませない方が賢明だろうに

 

Q.ループ阻止に必要なことは?

A.詩を止める→ショウがジンオウガと出会わなければあの詩は生まれない

 

Q.ジンオウガたちはなぜヒスイ地方に来た?

A.アルセウスが対黒龍対策として召喚した→つまり黒龍が悪い

 

Q.召喚されないためには?

A.黒龍を止める→黒龍が来ない=対策は不要

 

こうだろう

 

121:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

天災……ゴホン、天才か

 

122:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

おい、聞こえているぞ

 

123:空の王者 ID:MH2nddosHr8

やはり……シュレイドでミラボレアスの逃亡を阻止するしかないんだな

 

124:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

あぁ……だが、最初に言っておく

 

 

今の貴様らが束になったところで、あの黒龍を倒すことはできん

 

125:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……ッ!!

 

126:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……なんだぁ、テメェ……?

 

127:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

バルカン――

 

128:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

止めるな、祖よ

二つ名個体にメガシンカしたところで、蜥蜴が蛇になったようなものだ……龍には到底、届かない

 

唯一それが可能になる、いや、可能となる可能性を持つならば……稲妻光輝の極み化に賭けるしかない

 

129:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ちくしょー!なんでリオレウスは極み化してないんだよぉー!

看板モンスターぞ?我、看板モンスターぞ?

 

130:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺も今のままじゃダメだよなぁ……なんとかしたいがなんともならん……

 

131:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あら、極み個体と同等かはわからないけど、「史上最強の脅威」と謳われた特異な個体が二人にはあるじゃない

 

132:空の王者 ID:MH2nddosHr8

え?

 

133:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……まさか、辿異種!?いやいや、それだと特異個体は愚か特殊個体すら存在しない流静はどうなるよ

 

134:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そんな時のための、ショウの力よ

 

135:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……!そうか、俺たちがメガシンカを超えた存在に至ることで、原作において特殊個体が存在しないラギアクルスにも「存在する」と認識させるのか!

 

136:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

それこそが、ラギアクルスの未知の成長につながるかも知れないわね

 

137:空の王者 ID:MH2nddosHr8

よっしゃー!そうと決まれば特訓あるのみだ!!

そういうことだからライゼクスさんはさっさと離れてくれぇ!!

 

138:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

ずっとべったりではないか……なんだ、惚れられたか?

 

139:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

初恋を拗らせてるんだってよ

 

140:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あららら♪

 

 

――「無双の狩人」が参加しました――

 

――「大洋の支配者」が参加しました――

 

――「零下の白騎士」が参加しました――

 

 

141:空の王者 ID:MH2nddosHr8

戻ってきたか、お前ら!

早速で悪いが俺たちも特訓を始めたいんだ!俺たちはまだまだ強くならなくちゃならない!

もっともっと強くなって、ミラボレアスをぶっ飛ばすんだ!みんなで協力し合って、最強モンスターを目指すぞっ!!

 

142:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

大変だー!純白の凍土でガムートが暴れ始めたー!!

 

143:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やつを放置すればポケモンたちが蹂躙され、シンジュ集落が滅ぼされ、ついでにマンムー達が元気いっぱいに繁殖してウリムーが大量発生してしまうぞ!

 

144:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

話は聞かせてもらった……純白の凍土は消滅する!

 

145:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

な、なんだってー!?((((;゜Д゜)))

 

146:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

な、なんだってー!?((((;゜Д゜)))

 

147:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……えぇ~……

 

148:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……その、ドンマイ……

 

149:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

早速ガムートを征伐しに出かける!後に続け!光輝!!

 

150:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はい……

 

151:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

待ってくれ!もっと情報を集めてからでも!

 

152:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

臆病者はついてこなくてもよい!光輝、早くしろ

 

153:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

剣介ッ!!

 

154:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ぅおおぉーいっ!!こっちが真面目な話をしようって時に限ってボケて来るんじゃねー!!

 

155:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おっとそうだった

 

156:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ガムートの前に

 

157:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ぶっ飛ばしておくべき敵がいたんだった

 

158:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お……?あ、あぁ~……なるほどね……

 

159:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……あ、あれ?なんでみんなしてこっちを見てるんでせうか……?

 

160:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おやおやぁ、ほーむらくーん……?

 

 

 

 

よもやスレタイを忘れたわけじゃあないよねぇ……?

 

161:空の王者 ID:MH2nddosHr8

…………

 

162:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

リア獣、死すべし!

 

163:空の王者 ID:MH2nddosHr8

アーッ!!

 

 

 

 




焔くんは無事に粛清されましたw


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メイン任務:純白を往く峨々たる巨獣~怒りの母、大進撃!~

そういえば、なーんか忘れていることがあるような……そう思って前話を振り返って、気付いた。

……ライゼクスのタイプ相性、載せてないやん!?
というわけで、こちらをどうぞ!
ライゼクス
でんき/ひこう
弱点 火:○ 水:○ 雷:× 氷:◎ 龍:△
四倍:こおり
二倍:ほのお、みず、いわ
半減以下:くさ、かくとう、ひこう、むし、はがね、ドラゴン
効果なし:でんき、じめん
等倍:上記以外全て

メガライゼクス(青電主)
でんき/ドラゴン
弱点 火:○ 水:○ 雷:× 氷:◎ 龍:△
四倍:こおり
二倍:じめん、フェアリー
半減以下:くさ、ひこう、はがね
効果なし:でんき
等倍:上記以外

今回、ライゼクスにはメガシンカ前後でタイプが変わる役目を担ってもらいました。
弱点多いが耐性も多い通常個体か、弱点の数変わらんし耐性も減るが能力が高いメガシンカか……人によって育成論が分かれそうですね。



暗い。暗い。暗い。

 

「ここは……?」

 

暗い。暗い。暗い。

 

「グルルル……」

 

「……!!」

 

そこは闇。夜は明けない。終わらない終焉。

 

「あっ……いやっ……!」

 

「……ギィヤアアアアァァァンッ!!」

 

顎は開かれ。全て呑む劫火が。暗い。喰らい。暗い。喰らい。

 

「いやああああああああああっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はっ!!」

 

目覚めは最悪だった。悪夢に苛まれた目覚めがいいはずもないわけで、起き上がってみると全身が汗でびっしょりと濡れていた。濡れタオルで軽く全身を拭いてから、いつもの調査隊服に着替えようとタンスに手を伸ばし――

 

ズキッ!!

 

「うっ……!ぐ、あ……っ!!」

 

また、心臓が痛み始めた。しかも……。

 

ズキッ!! ズキッ!! ズキッ!!

 

「がっ……あ、うぅ……っ!!」

 

いつもよりも痛みが長い……!思わず胸を押さえてうずくまり、ついには倒れこんでしまう。うまく息ができない……苦しい……!

 

「ショウ!!」

 

私が悶え苦しんでいると、突然玄関の戸が開かれた。蹲っていた私は顔を上げることもできなかったけど……この声、シロちゃん……?

その後、背中にそっと手のひらを押し当てられる感触と、じんわりと暖かい熱が入り込んでくる感覚……。あ、れ……また、ねむ……く……。

 

「……アノ子ったら、面倒なモノを残して……!」

 

何かをつぶやいたシロちゃんの声を最後に、私の意識は沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が差し込んできて、その眩しさに顔を背けたくなる……が、二度寝をカマすつもりもないので起き上がる。うん、と伸びをしてから未だ覚醒しきっていない頭でこれからの予定をぼんやりと考える。

……なんだか、悪い夢を見たような気が……しなくもない、ような……うーん、やっぱり寝起きだからか上手く頭が回らない……。

 

「おねーちゃん、おはよー!今日はお寝坊さんだね」

 

「あ、シロちゃんおはよう……って、寝坊!?」

 

シロちゃん、いつの間に……というか、お寝坊さんってどういうこと!?

 

「……ごめん、シロちゃん。今の時間、大体でいいからわかる?」

 

「太陽が昇ってから体感3時間ぐらいはもう経ってるよ?」

 

それって確実に9時回ってる!?私ってば、どれだけ寝てたの!

 

「シロちゃん、呼び出しとかなかった?時空の歪みは……」

 

「んーん、何も起きてないよ?」

 

「……そっか。……準備するね」

 

「はーい」

 

シロちゃんが外に出ていったのを見送ってから、私は調査隊服に着替えた。それから外へ出ると、まっすぐに放牧場へ向かう。中へ入って、いつもどおりにジンオウガたちがいる場所へ向かう。

 

「おはよう、みんな」

 

「ワン」

 

「ヴァー」

 

「グルラ」

 

「ガオ」

 

「リオレウスは……」

 

「グオ……」

 

いつもの五体と挨拶をしたけど……リオレウスだけ元気がない。いや、これはむしろ疲れきっている様子だ。というのも……。

 

「……今日もライゼクスと一緒だね」

 

「ライズ♪」

 

「グオォ……」

 

リオレウスにべったりとくっついているライゼクスを見て、いつもどおりだと頷く。

捕獲したライゼクスを放牧場に放つのは、正直躊躇われた。あれほどに兇暴なポケモンをすぐに放っても大丈夫なのか、という不安があったからだ。それでも、捕獲した以上は面倒を見るつもりだったので、ひとまずボールから出して様子を見ることにした。そしたら……。

 

『ライザー♡』

 

『グオオォォォォッ!?』

 

それはもう、物凄い勢いでリオレウスに向かって行ったものだから驚いた。リオレウスも酷く動揺した様子で逃げ惑ったが、最終的には捕まってしまい……そして、今に至るのだ。

襲われるどころか、なぜか懐かれている様子にリオレウスも私も困惑。さらに私がリオレウスに近づくとめちゃくちゃ威嚇してくる。どういうことなのかさっぱり分からず、アカイさんに助けを求めた。

 

『あのライゼクス、メスか』

 

『……え?』

 

『あれは懐いているというよりも、異性に対して好意を示しているように見えるな』

 

『えええぇぇぇぇっ!?』

 

アカイさんからそんなことを言われてしまい、思わず声を上げてしまった。ただでさえタマミツネが実はオスだった件で動揺したばかりなのに、今度はライゼクスがメス個体だったなんて……。ただ、好意にしてはやたらと感情が重そうだった……。だって、リオレウスがすごく辟易とした様子でいるんだもん。

しかし、あれだけ嬉しそうにしている様子を見ると、引き離すのも気が引けるというもの……それに、もしかしたらポケモンのタマゴが発見される可能性もあるってラベン博士とアカイさんも言ってたし、それはそれとして楽しみだな。頑張れ、リオレウス。

……っと、そっちも気になるけど今は……。

 

「ジンオウガ、ラギアクルス、ベリオロス」

 

「ワウ?」

 

「グル?」

 

「ガオ?」

 

「ちょっと来て。……特訓をしよう。次こそアカイさんに勝つよ」

 

「ワン!」

 

「グルラ!」

 

「ガオン!」

 

三体をボールに戻し、訓練所へ向かう。建物の方を通り過ぎて、さらに広げられた巨大なバトルフィールドに出る。ここは、ジンオウガたちと訓練をする際に使用する専用のバトルフィールドだ。

ペリーラさんに相談した際に「そんなデカイ図体だとここは狭いだろう?」なんて言いながら、建築隊と警備隊が合同で訓練場の裏手を整地して、巨大ポケモン専用のバトルフィールドを作ってくれたのだ。

そして、ここには事前に呼び出しておいた人達がいる。

 

「おはようございます。朝早くからすいません、ガラナさん。ワサビちゃん」

 

「おはようございます、ショウさま」

 

「ショウさん、おはよう!」

 

ガラナさんとワサビちゃん。この二人に共通する点はズバリ、私以外に特定の巨大ポケモンと信頼関係にある人物であることだ。彼らを好きに戦わせるのもいいけど……やはり勝負はポケモンと人間の共同作業でもあるので、こうして彼らとともに戦ったことのある人を呼んだのだ。

 

「それでは、早速勝負を始めましょうか。ガラナさんはラギアクルスを、ワサビちゃんはベリオロスをお願いしますね」

 

「ふふっ、こうしてまたラギアクルスさまとともに戦えるだなんて、夢のようですね」

 

「やったー!はやくベリオロスと一緒に戦いたいな!」

 

「とりあえず、総当たり戦で行きますか」

 

「それでしたら、まずはあたくしとワサビさまで勝負をしましょう。なにげにこの組み合わせは初対決、ということになりますし。それに、ジンオウガは先程健康診断を終えたばかりでしょうから」

 

「よーし!ガラナさん、負けないよ!」

 

「えぇ、こちらこそ。よろしくお願いしますわ」

 

こうして、まずはガラナさんとワサビちゃんが勝負をすることになった。私は審判兼見学だ。ついでにボールからジンオウガを出しておこう、見るのも勉強だから。

今回、このような提案をしたのは……ズバリ、アカイさんとマガイマガドに敗北してしまったからだ。……こんな事を言うのもアレだが、私がヒスイ地方に来てから経験したポケモン勝負としては、あれが初敗北だった。それも、私にとって恩人にして信頼を預けるジンオウガと共に戦って。

……悔しかった。めちゃくちゃ悔しかった!負けるだなんて微塵も思ってなかったし、慢心なんて論外だ!だから、敗北を理解したとき思わず泣きそうになってしまった。正直、ジンオウガを労った時は泣いて謝りたくなったのを必死になって我慢していた。

 

勝負の後、マガイマガドについて教えてもらった。マガイマガドはあく・かくとうの複合タイプで、こおりに強く、みずとでんきに弱く、ほのおとドラゴンが効かない体質をしている。さらにメガシンカしたメガマガイマガドこと『怨嗟響めくマガイマガド』は、体質的に苦手だったでんきタイプを克服し、でんき技を半減で受けられるそうだ。

アカイさん曰く、マガイマガドは『古龍級生物』と称されるほどに危険度の高いポケモンらしい。あくまで生態系の『上位種』にすぎないジンオウガとでは、そもそも生物としての格が違うそうだ。古龍の話はシロちゃんから聞いていた……その古龍に匹敵するほどの力乃至は危険度を持つとされるポケモンを、古龍級生物と呼ぶようになったんだとか。

その一例として「アカムトルム」と「ウカムルバス」というポケモンの写真を見せてもらった。アカムトルムは"覇竜"の別名を持つ黒き神、ウカムルバスは"崩竜"の別名を持つ白き神として世に知られているポケモンで、「二体が双璧を成した時、世界は崩壊する」という伝説が残されているほどの存在だとか。

……写真越しとはいえ、凄まじい力強さを感じさせるポケモンたちだった。何も知らない人からしたら古龍種に見えかねないのに、実際はリオレウスやベリオロス、ライゼクスと同じ仲間である飛竜種らしい……。

翼は元々存在しておらず、これは「ワイバーンオリジン」と呼ばれる全飛竜種の祖先に当たる生物の遺伝子を汲んでいる姿なんだとか。……六文字を超える固有名詞はやっぱり発音しにくいなぁ……。

あと、以前にシロちゃんから聞いたイビルジョーも古龍級生物に分類されるらしい。

たしかにマガイマガドは強かった。古龍級生物と呼ばれるだけはある……だが、それがどうした?そんなものは、あくまで野生における話だ。ポケモン勝負は、ポケモンだけでなく人間だって関わってくる世界なのだ。ジンオウガだけでは、マガイマガドには勝てないかもしれない……けど、私も一緒に戦えば、まだ勝てる可能性があるはずだ。だから、たった一度の敗北で決めつけるつもりは毛頭ない。ジンオウガだってリベンジに燃えている……なら、私が臆する理由はない。

 

そうして色々と考えた結果行き着いたこと……それは、巨大ポケモンを用いた対人戦の経験不足ということだ。実際に数えてみたら、野生個体相手は相当数の場数を踏んでいるが、対人戦となると片手で数える程度しかない。群青の海岸でのガラナさん・ラギアクルス戦、純白の凍土でのワサビちゃん・ベリオロス戦、そして再び群青の海岸でのアカイさん・マガイマガド戦……うわっ、三回しか戦ってない!

巨大ポケモンたちの強大な力に、人間の頭脳が加わる事によって引き出される高いポテンシャル……それらに対峙した経験が圧倒的に少なすぎる。だから今回、ガラナさんとワサビちゃんに協力を要請したのだ。

 

一応、ルールは決めている。総当たり戦で、一試合あたり20分を考えている。時間が来れば10分のインターバルを挟んで次の試合へ……といったふうに。

試合は実に五分と五分、といったところか。高機動で翻弄するベリオロスに対し、ラギアクルスはガラナさんの指示をしっかりと聞いて死角から攻めてくるベリオロスに対応している。ワサビちゃんも特殊技で牽制をしてから、本命の物理技を叩き込もうと隙を探っている。お互いに一進一退の攻防を繰り広げているようだ。

チラ、と時計を確認する。

 

「……時間です!」

 

「……っ!!フーっ……お疲れ様でした、ラギアクルスさま」

 

「グルラ」

 

「頑張ったね、ベリオロス!」

 

「ガオガオ!」

 

勝負を終えたらディスカッション。技の選択や判断、動きへの指示などをああだこうだと討論する。少しでも相棒であるポケモンたちの能力を引き出すためにも、人間自身の成長だって必要だ。

 

「次はどうしましょう?」

 

「あっ!それなら、あたしがショウさんと勝負したい!純白の凍土のリベンジだよ!」

 

「ふふっ、うん、いいよ。今回はリオレウスじゃなくてジンオウガだけど、負けるつもりはないから!」

 

「それを言うならこっちだってー!」

 

「それでは、あたくしが審判をいたしますね」

 

ああ、楽しい。勝負を楽しいと思えるあたり、やっぱり私はお母さんの子だな。

あと、この総当たり戦の戦績だけど、ガラナさんとワサビちゃんはお互いに引き分けに終わったが、私は二人にしっかりと勝たせてもらった。……まぁ、ラギアクルスもベリオロスも、戦場の環境故に勝たせてもらった感が否めないのだけど。

そうして特訓を終えて訓練所に戻ってくると、テル先輩がペリーラさんと話をしていた。私たちに気がつくと、軽く手を挙げてくれた。

 

「ショウ」

 

「テル先輩。……ということは」

 

「あぁ、そっちの考えているとおりだ」

 

「分かりました、調査隊室ですね?」

 

「もちろん。おれは先に行って待ってるぜ」

 

「はい、私もすぐに行きます」

 

もうほとんど主語のない会話だけど、先輩とならどんな会話だって成立する自信がある。先輩がここに来たということは、時空の歪みの広域化が再開されたということだ。

せっかくなので、ガラナさんとワサビちゃんも調査隊室についてくるそうな。一度、ジンオウガたちを放牧場に預けてから、私たちが調査隊室に到着すると既にアカイさんも含めて全員が集合している状態だった。

 

「ショウ、入ります」

 

「うむ」

 

「……あ、ガラナちゃん。ショウさんと一緒だったんだ」

 

「えぇ、そうですが……人前でその呼び方はやめなさいと言っているでしょう!」

 

「うっ……ご、ごめんなさい。……やっぱり癖は早々には直らないよ」

 

「おう、ワサビ。コトブキムラに来てるってのは聞いていたが、何してたんだ?」

 

「えへへ、久しぶりにベリオロスと一緒に勝負したの!」

 

「そうか、楽しかったか?」

 

「もちろん!」

 

それぞれキャプテンと団長が話をする中、私たちの方も話を進めていた。

 

「いよいよ歪みも最後の一箇所となった。場所は純白の凍土……シンジュ集落が歪みに飲み込まれているが、巨大ポケモンが存外に大人しかったために最後に回してしまったな」

 

「先程、ラベン博士から巨大ポケモンの特徴を聞いたところだ。大人しいのも当然だろう、なにせそいつは『ガムート』だからな」

 

「ガムート?」

 

うむ、とアカイさんは首肯した。

 

「ガムートは雪山や氷海などの寒冷地を根城とする、"巨獣"の別名を持つ牙獣種のポケモンだ。これまでの三体とは異なり草食性ではあるが、寒冷地という過酷な環境下に棲息しているために縄張り意識が極めて強くてね……外敵には一切の容赦なく排除にかかる。

分厚い体毛や堅牢な甲殻、圧倒的な巨躯から殆どの捕食者を歯牙にも掛けないほどに非常に防御能力が高く、一部では『不動の山神』の異名でも知られているほどだ」

 

「アカイさんに確認してもらったところ、どうやらあの雪原キングに勝るとも劣らぬほどの大きさなんだとか……。キングに匹敵するなんて、とんでもない話ですよ」

 

アカイさんに続いてラベン博士もそう話す。うーむ……あの雪原キングに匹敵する大きさ、かぁ……立ち回りには気を付けないといけないかな……。

 

「ガムートはこれまでの巨大ポケモンと比較するとだいぶ温厚なポケモンだ。既に報告で聞いているだろうが、接近するポケモンを追い払うにとどめていること、既知の種族に似たウリムーやイノムーを守る行動を取るなど、な。

さらに我が子を別のポケモンの群れに預ける代わりに、自身はその群れを守るといった共生関係を築くこともできるのだ」

 

「おぉ……なんか、こうして見ると一番まともな奴に見えるな」

 

テル先輩はそう言うが……多分、それは直前のポケモンがライゼクスだった反動が大きいかも知れない。

ライゼクスは群青の海岸に住むポケモンを、目に付いた存在から片っ端から襲いかかっていた。反面、ガムートは基本は何もせず、それどころか最近では特定種族のポケモンを守る行動をとり始めていた。こうも真逆の行動を取る者同士が現れたら、どうしても比較してしまいがちだ。特にライゼクスの行動はインパクトが強かったのもあって、ガムートがまともなポケモンに見えるのも仕方がないのかもしれない。

 

「ただ、注意してほしいのはあくまで"ほかの三体に比べて大人しい"というだけで、決して安心安全なポケモンではないということだ。最初に話したが、外敵に対しては決して容赦はしない。今のところは、たまたま外敵と呼べるほどの脅威がいないだけで、それに匹敵するポケモンと遭遇すればその限りではない。

たしか、やつは今は豪雪谷と極寒の荒地の境界にいるんだったな……あのあたりに生息するポケモン程度なら、ガムートの脅威にはなりえない。それどころか、近縁種らしきウリムーやイノムーというポケモンがいるくらいだから、尚の事だな」

 

「では、下手にポケモンを嗾けるのは愚策、と?」

 

「その通りだ、デンボク殿。そも、こちらすら歯牙にも掛けないというのなら、近づいてボールを放り、争わぬまま捕獲するほうが無難だろう」

 

「うむ」

 

アカイさんの言うとおりだ……戦わないで済むなら、それに越したことはない。隠密して捕獲するのは結構得意だ。その手が通用するなら、使わない手はないだろう。

 

「カイさん、だいぶお待たせしてすみませんでした」

 

「いいんだよ、ショウさん。これもガムートが大人しかったからなんだし。むしろガムートが大人しかったのって、周りに居たウリムーやイノムーたちのおかげなんじゃないかなって、最近は思い始めたくらいだよ」

 

「まあ、身近に身内みたいなのがたくさんいたら、そりゃあ暴れるわけにもいかねえわな」

 

「それなら、ウリムーたちにも感謝しないとだな!」

 

「(……そういえば、ベリオロスってウリムーやイノムーを主食にしてたっけ。ガムートに知られたらたくさん怒られそうだなぁ)」

 

「どうしたの、ワサビちゃん?」

 

「んーん、なんでもない!」

 

「……?」

 

なんだろう、一瞬だけどワサビちゃんが気まずそうに目線をそらしたような……?

 

「では、早速純白の凍土へ――」

 

「長っ!長ーっ!!」

 

デンボク団長が号令をかけようとしたところ、シンジュ団の団員が血相を変えて飛び込んできた。完全に顔面蒼白だ……何があったのかな……?

 

「ど、どうしたの?そんなに慌てて……」

 

「はぁ、はぁ……そっ!それが!あの巨大ポケモンが唐突に暴れ始めたんです!!」

 

「……!!」

 

調査隊室に電流が走った。それは、先程まで大人しいと言われ続けていたガムートが、暴走を始めたという報告だったからだ。

 

「そ、そんなっ!?どうしていきなり!」

 

「わ、わかりません……。それから、例の巨大ポケモンはまっすぐシンジュ集落の方角に侵攻しています!」

 

「(集落の方角に、だと?ふむ……)ラベン博士、図鑑を見せていただいても?」

 

「え……?あ、はい。どうぞです」

 

「失礼」

 

報告を聞きながら、アカイさんはなぜかラベン博士に図鑑を見せてもらうように頼んでいる……今この状況で、一体何に気づいたんだろうか……。

 

「そ、それと……巨大ポケモン侵攻に伴い、雪原キングが極寒の荒地で迎撃に出たのですが……」

 

「……!!キングの身に、なにかあったのか!」

 

「……自分が見た限り、戦況はほぼ互角……いや、キングが不利でした……。いつ押し切られてもおかしくありません……!長、集落に戻ってきてください!ハマレンゲさんも、キングとともに巨大ポケモンを迎撃しています!」

 

「ハマ先生が……!わかった、すぐに戻る!」

 

報告を聞いたカイさんは、一度こちらに振り返ると申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「すまない、皆。私は一足先に集落に戻る事にするよ」

 

「それならば、シマボシのケーシィの力を頼るといい。シマボシ、良いな?」

 

「はい、団長」

 

デンボク団長がシマボシ隊長に声をかけ、隊長もこれを了承した。ゆっくりとケーシィが近づいて来ると、その身にサイコパワーを溜め始めた。

 

「気をつけてな、カイ。オレ達もなるべく準備をしてから、そっちに向かう」

 

「セキ……いいの?だってこれは、私たちシンジュ団の問題で……」

 

「関係ねえよ。シンジュもコンゴウもない……カイ、オレがお前を助けたいから助けるんだ」

 

「セキ……!」

 

「(先輩、なんか前にもこんな光景見ましたよね)」

 

「(だな。そして例のごとく砂を吐きそうなんだが)」

 

セキさんカイさん、あなたたちもか……群青の海岸で、ガラナさんとススキさんから嫌というほど砂を吐きそうな場面を見せられたのに、1、2週間とはいえ間を置かずに同じような光景を見せられるなんて……。

……いや、これは組織の垣根を越えた素晴らしい絆だ、うん。……そう思わないとやってらんねぇやこりゃ。

 

「では、早速――」

 

「長っ!長ーっ!!」

 

シマボシ隊長がケーシィに指示を出そうとした直前、シンジュ団の別の団員がさっきの団員と同じように飛び込んできた。……この二人、実は双子だったりしないだろうか。

 

「こ、今度は何!」

 

「そ、それがっ……」

 

「もったいぶってないで!」

 

「……っ!きょ、巨大ポケモンと争っていた雪原キングが……敗北、しました……!」

 

「なっ!?」

 

「し、しかも……うっ、うぅ……!せ、雪原キングと共に戦っていたキャプテン・ハマレンゲさんも……消息がわからず、生死不明で……!!」

 

「……っ!?」

 

「ハマレンゲさんが!見つからないんですよぉっ!!」

 

キングの敗北、そしてキャプテンの安否が分からず生死不明って……そんな、そんなことが……!!

 

「カイっ!!」

 

突然、セキさんの叫び声が聞こえたかと思うと、セキさんがカイさんの両肩を支えているところだった。どうやら、カイさんが膝から崩れ落ちそうになったところを、セキさんが咄嗟に抱きとめたようだ。カイさんは先程の団員と同じ……いや、それ以上に酷いレベルで顔面蒼白になっている。

 

「セ、セキ……先生が……ハマ先生が……!」

 

「落ち着け、カイ!ハマレンゲさんがそう簡単にやられるような人じゃねえってことくらい、おめえだってわかってるだろうがよ!おめえがハマレンゲさんを、キャプテンを信じねぇでどうすんだ!それでもシンジュ団の長かっ!!しっかりしろ、カイ!!」

 

「……!!」

 

セキさんの厳しくも励ましの意を含んだ言葉に、カイさんは大きく目を見開いた。それから、セキさんは飛び込んできたシンジュ団員に目を向けた。

 

「おい!その巨大ポケモン、今はどうしてる!?」

 

「えっ!?えっと、キングとの勝負でそれなりに消耗はしたのか、じっとしていましたが……」

 

「純白の凍土からコトブキムラまではかなり距離がある……キングとは長く勝負していたとして、するってぇと……」

 

「そろそろ動き出すかもしれないな。雪原キングとやらが如何程の実力者かは預かり知らぬが、ガムートのことならわかる。巨大ポケモンとて生き物だ、激しく動いて疲れたなら休む……それくらいはするだろう」

 

セキさんの思考をフォローするように、アカイさんが言葉を付け足した。……なんにせよ、大急ぎで純白の凍土に向かう必要がありそうだ……!!私は大急ぎで放牧場に飛んで行き、ジンオウガたちとダイケンキたちを回収して手持ちを整え、再び調査隊室に戻ってきた。

……リオレウスをボールに戻す時のライゼクス、めっちゃ怖かった……ディノバルドとタマミツネが宥めてくれて助かった。ただ、なんでリオレウスはボロボロだったのだろうか……ジンオウガたちがやたらホクホク顔だったことと、何か関係があるのかな?

 

「シマボシ隊長!ケーシィ!超特急で私たちを凍土に送ってください!!」

 

「あたくしもともに参ります!シンジュ団のキャプテンとして、集落の危機を見過ごせませんわ!」

 

「あたしも一緒に行くよ!」

 

「シマボシ」

 

「了解です、団長。やれ、ケーシィ!」

 

「ケー」

 

そうして私、テル先輩、ラベン博士、セキさん、カイさん、ガラナさん、ワサビちゃん、シンジュ団員二人にアカイさんの大所帯で純白の凍土へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シマボシ隊長のケーシィによるテレポートによって、私たちはシンジュ集落内、長の屋敷の前に到着した。すぐに状況を確認しようとした、その時だった。

 

「パオオオオォォォォォォンッ!!」

 

凄まじく大きな咆哮が轟き、純白の凍土の空気を揺らした。それと同時に、集落内にいるシンジュ団員たちが慌てふためいている。カイさんはすぐに集落の中心部まで走ると、ありったけの声量で叫んだ!

 

「皆、落ち着けえええぇぇっ!!」

 

「!!」

 

「シンジュ団の長、カイ!ただ今帰参した!!子供と老人は集落の奥へ避難を!若い者、特にポケモンを連れているものは私に続け!!」

 

「お、長だ……長が帰ってきた!!」

 

「長が戻ってきたぞー!」

 

「長が帰ってきた!これで勝つる!!」

 

そこには、ハマレンゲさん行方不明を聞いて膝から崩れ落ちた少女の姿はなかった……あるのは、一組織を率いる、凛とした佇まいの力強い長の姿だ!

 

「……へっ!やるじゃねえか、カイ……」

 

「惚れ直しました?」

 

「ああ、そりゃあもう……って、おいっ!ショウ!?」

 

「ふふっ……セキさま、どうかカイのこと、よろしくお願いしますね?」

 

「ガ、ガラナさんまで……!」

 

「……よしっ。セキさんをからかうのはこの辺にして、私たちも行きましょう!」

 

「(ショウ……!後でマジで泣かす……!!)」

 

なんだかセキさんの視線が怖いが、恋愛ヘタレに睨まれたって怖くないですよーだ。

私たちがカイさんの元へ向かうと、ちょうど集落に残っていた団員から話を聞き終えたらしく、こちらへと振り返ってくれた。

 

「カイさん!」

 

「ショウさん……それに、皆……」

 

「かっこよかったぜ、カイ。流石はシンジュ団の長だな」

 

「や、やめてよ恥ずかしい……!って、そうじゃない!

いきなりで悪いけれど、力を貸して!どうやらガムートは極寒の荒地の中程まで侵攻してきているみたい……このままだと集落に侵入されるよりも先に、クレベース氷塊にある氷塊が壊されちゃう……!」

 

「それはマズイですわね……クレベース氷塊に林立する氷塊には、雪原キングが好むえいえんのこおりがありますから。破壊されたとあっては、目も当てられませんわね」

 

「よっしゃ!それなら早速ガムートを倒すとするか!」

 

「待て」

 

セキさんが勢い勇んで行こうとするも、アカイさんから待ったをかけられた。……そういえば、アカイさんはラベン博士から図鑑を見せてもらってたっけ。なにかわかったのかな……?

 

「アカイの旦那、なぜ止める?」

 

「先程からずっと言っているが、ガムートは外敵が現れぬ限り、無為に暴れるようなタチではない。ほかのポケモンと共生している以上、食糧難ということもありえぬ」

 

「……!!なるほど、アカイさんはガムートの暴走の原因が、外部による何者かの干渉によるものだと考えているのですね!」

 

「流石はポケモン博士、その通りだ。そして、原因が分からぬまま事態を解決しては、今後の対策も難しくなるだろう。そこで私から提案だが、二手に別れようと思う」

 

「二手……」

 

「一方はガムートの足止めだ。そしてもう一方は、ガムート暴走の要因を突き止める。

……私自身、おおよその原因は見当が付いているが、確定事項でない以上はむやみに話すつもりもない。こういうのは、きちんとはっきりさせておかないとな」

 

なるほど、アカイさんの言うとおりだ……。各地のキング・クイーンを鎮めていた時も、"なぜ?"の部分がうやむやなまま解決してしまったわけで、その後にディアルガとパルキアが暴走した時も直接的な原因が「鎮めたこと」になってしまったわけで……。

 

「……私は、アカイさんの意見に賛成です。実際、原因がわからないまま解決した結果、痛い目を見た経験がありますので」

 

「……ショウさんが言うと、言葉の重みが段違いだね……」

 

「耳が痛いよ……」

 

すみません、先輩。

 

「ボクはアカイさんについていきます。一ポケモン博士として、ガムートの暴走に原因があるのなら、ちゃんと調査したいのです!」

 

「それじゃ、組み分けは決まったようなもんじゃねえか。ギンガ団がガムート暴走の原因調査、コンゴウ・シンジュ両団で原因解明までの足止め、だな!」

 

「さっき話を聞いたんだけど、ハマ先生が事前に他の地域にいるキャプテンに文を飛ばしたらしいんだ。今はキクイとノボリさんが前線で応戦してて、ユウガオさんが後方で薬を用意して支援してくれている。

シンジュ団はコンゴウ団と共に、総力を持ってガムートを止める!だから、ガムートの暴走の原因、しっかり調査してね、ショウさん!」

 

「はいっ!」

 

集落の存亡を賭けた一大事に、皆が手と手をとって協力している……これが、この世界にとって必要な、理想的な姿なんだろう……。

 

「ガムートと、一手交えるのか」

 

「……アカイ殿、あのガムートはアカイ殿の故郷に住まうポケモンと聞いた。すると、ガムートが苦手としているタイプについても存じているはず……是非、教えて欲しい!」

 

「……わかった。

ガムートはこおり単タイプのポケモンで、みずに強く、ほのおとでんきに弱く、こおりとドラゴンが効かない体質をしている。仮に戦闘するなら、ほのおポケモンで対抗するのが無難だろう」

 

「ほのおなら、あたくしのウインディがいますわ」

 

「あたしもブーバーンがいるよ!」

 

そう言いながら、ガラナさんとワサビちゃんはそれぞれモンスターボールを持ち出した。

 

……そう、今回の時空の歪み事件をきっかけに、コンゴウ団とシンジュ団の間にもモンスターボールが流行りだしたのだ。特に、巨大ポケモンをモンスターボールで捕らえることで鎮める、という一連の流れが関心を呼び、実際に捕らえられた巨大ポケモンたちが軒並み大人しくなっていることから高い評価を得られた。

元々モンスターボールを使っていたシンジュ団のノボリさん、そしてベリオロスを守るためにボールを使ったコンゴウ団のワサビちゃんと、奇しくも各組織にボール使用経験者がいたことも、この流行を後押ししていた。特にギンガ団以外の者がモンスターボールで巨大ポケモンを御していたという事実は衝撃的だったようで……ワサビちゃんの存在が、大きな呼び水になっていたようだ。……当のワサビちゃんは苦笑いだったけどね。

 

「ふむ……であれば、倒しきることはできずとも足止めはできるだろう。だが、くれぐれも無茶はしないように。あの巨体で暴走とくれば、同じ巨大ポケモンでなければ対等にはなれないだろう。ライゼクスに襲われたガラナ女史なら理解できるだろうが、気をつけるように」

 

「もちろんですわ」

 

「うん!」

 

「では、各自行動を開始しよう。各々、己が役割を果たすように!」

 

応っ!!という掛け声とともに、私たちは一斉に行動を開始した。

橋を渡ったあとは、私をはじめとする調査隊は心形岩山方面から迂回して、ガムートが元々いた極寒の荒地と豪雪谷の境界地を目指す。

カイさん率いる迎撃組は、そのままクレベース氷塊方面を南下して、極寒の荒地でガムートを迎え撃つ。

なんとしても、原因を解明しなければ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガムートとコンゴウ・シンジュ連合のバトルを横目に、私たちは目的地へ向かう。その際、ガムートの姿を盗み見たけど……なんだ、あのデカさは。体長……というより、体高がヤバい。脚の太さなんて大人何人分……?人間なんて簡単にペシャンコにされそうなんだけど……。さらにその向こうには、雪原キングが倒れていた。あのデカさなら、雪原キングと対等どころか倒してしまえるのも納得か……。

 

「で、でけぇなぁ……」

 

「ガムートは牙獣種最大の大きさを誇るポケモンだ。最小サイズでも体高は20mは下回らないぞ」

 

「そんなに大きいの!?」

 

うへぇ……こんなに大きいポケモンは初めてだ……。アカイさんの地元、ますます行ってみたくなったかも。

現場に到着した私たちだけど、そこはいつもどおりの風景が……いや、待って!

 

「あれ……」

 

「ん?」

 

私が指をさした先には、大量のイノムーやウリムー、そしてマンムーが集まっていた。多分、群れかな……まるで輪になるように集まっているようで……私はウォーグルにライドして空から様子を見ることにし、テル先輩たちにはそのまま群れに近づいてもらうことにした。

空からなら、いろんなことが見えてくる。実際に空を飛んで見下ろしてみると、群れの中心に一際小さなウリムーの姿が見えた。……ただ、遠目で見てもはっきりとわかるくらいに弱っている。そして、時折見える紫の発光……まさか、毒状態?そして、群れから離れた場所に、なにか別のものの存在も見えた。こちらは遠めではわからない……私はひとまず降りて合流し、実際に見たものを博士たちに伝えた。

 

「そこで、テル先輩とアカイさんにはそのナニカの確認をお願いします。私とラベン博士で、群れの方を見てきますので」

 

「わかったよ、ショウ!アカイさん、行きましょうか」

 

「ふっ……あまり張り切りすぎるなよ、テル少年。頼られて嬉しい気持ちはわかるがな」

 

「ばっ!?ちょ、なっ!?い、いいから行きますよ!!」

 

「はっはっは」

 

「"はっはっは"じゃなくてぇ!!」

 

……テル先輩とアカイさん、いつの間にかあんなに仲良くなって……。

 

「それじゃあ、私たちも行きましょうか」

 

「そうですね!」

 

私は事前に用意していたものを手に持ち、群れの方へと近づく。ある程度接近すると、マンムーたちは露骨に激しく威嚇してきた。……ウリムー・イノムー・マンムーのオヤブン個体も勢ぞろいか、対応をミスるとマズイな……。

 

「……あなたたちの群れの中に、病気になっている子がいると思う!病気に効く木の実を持ってきたから、私たちにあなたたちの子供を助けさせて欲しい!!」

 

「…………」

 

そう言って、私は手に持つモモンの実を見せながら、必死に訴えた。彼らも困惑……というより、迷っているのかお互いに顔を見合わせている。木の実だけでは心もとない……ということで、私はまんたんのくすりのクラフト材料であるオボンの実とキングリーフも取り出した。流石はポケモン、材料元は知っているようで幾分か警戒が和らいだように思える。

私がゆっくりと近づいていくと、近づくにつれて群れが道を開けるようにどけてくれた。ラベン博士とともに群れの中心部にたどり着くと、毒に侵されて弱りきっているウリムーがいた。私はすぐにオボンの実とキングリーフをまんたんのくすりにクラフトすると、モモンの実と一緒にウリムーに施した。しばらくすると、ウリムーはすっかり元気になったようでぴょんぴょんと飛び跳ねていた。

 

「ウリー!」

 

「よかったね、ウリムー」

 

「では、アカイさんとテルくんに合流しましょう!」

 

「ですね」

 

こっちの問題は解決した……あとは、テル先輩たちがナニカの正体をつかめたらいいけど……。

 

「ショウ、こっちだ!」

 

「テル先輩」

 

極寒の荒地の方へ向かうと、テル先輩が手を振ってくれている。急いでそちらへ向かうと、テル先輩とアカイさんは下を向いていた。

 

「これを見てくれ」

 

「これは……」

 

それは、なんというか……グシャグシャに潰された肉塊だった。ただ、潰した足の大きさからして、アカイさんはガムートの仕業だという。

 

「ミンチよりひでぇよ……どうしてガムートはこんなことを?」

 

「それに、この死体……紫の爪っぽい形状、これは……」

 

「間違いないですよ、ショウくん。これはニューラなのです!」

 

ラベン博士の言うとおり……ガムートに潰された死体の正体は、ニューラだった。そして、直前に見た毒を負ったウリムー……まさか……!!

 

「……ガムートは、ウリムーを傷つけられた報復として、ニューラを……?」

 

「この死体が下手人なら、報復は既に終えたはず……ですが、ガムートは現在も侵攻中です。どういうことでしょう……」

 

「簡単な話だろう、ラベン博士。……ガムートは、この純白の凍土からすべてのニューラを一体残らず殲滅するつもりなのだろう。ニューラの生息地はクレベース氷塊を中心に集落方面から氷河の段丘にかけて広がっている……もしもこれらが一ヶ所に集まっていて、なおかつ集落方面に避難していたとしたら?」

 

「……!!ガムートがニューラへの報復のために、集落方面に侵攻する理由も納得がいくのです!」

 

「でしたら、ウリムーを既に治療した事を伝えれば止まるんじゃ……」

 

ガムートが侵攻する理由はわかった。それなら、ウリムーが完治したことを伝えて、侵攻は不要だということを伝えればなんとかなるかも知れない。そう思ってアカイさんに進言したのだが、彼は力なく首を横に振るだけだった。

 

「ガムートはそう単純なポケモンではない。……君は、大事な家族が貶められたものの示談が成立したからといって、黙って見ているだけで済ませるか?やられた側には、大きく深く傷が残るもの……たとえウリムーの傷が治ったからといって、ウリムーが傷つけられたという事実は無くならない。

ガムートはな、堪忍袋の緒が切れたのだ。我が子も同然のポケモンが、自身の不注意によって襲撃を許し、あまつさえ怪我してしまった。怒り狂ったガムートは、最も安全かつ確実に我が子らを守るための方法として、ニューラ殲滅を選んだ……ということだろう」

 

「……!!」

 

そこまで強い思いがあったなんて……私は、ガムートのことを軽視していたのかもしれない。人間よりもずっと情の深いポケモンなんだ……。

 

「だが、これでウリムーを傷つけた犯人がニューラで、ガムートはマンムー族をポポの同族として扱いこれを守護していた……という、私の仮説が正しかったことが証明されたわけだ。ついでに、ガムートがニューラへの報復目的で行動を起こしたことも、な」

 

はっ……!!まさか、調査隊室でラベン博士から図鑑を見せてもらっていたのは、その仮説を裏付けるため!?そして、ある程度裏が取れたから今度は実際に現場を目にすることで、仮説が正しかったことを確実なものにしたということ!

すごい、アカイさん……!この人、天才だ……!!

 

「さあ、迎撃組と合流しよう。ウリムーの完治報告だけでは、ガムートは止まらない……本格的な迎撃が必要だ。そうなると、ショウが連れている巨大ポケモンたちの力が必要だ」

 

「はい!」

 

私たちは再びシンジュ集落へと向かう。その途中、クレベース氷塊の一番大きな氷塊の前にカイさん達が集まっているのを見つけたので、私とアカイさんはそちらへ向かった。テル先輩とラベン博士には、シンジュ集落内に避難した可能性があるニューラたちを探すように頼んでおいた。

 

「カイさん!」

 

「ショウさん!」

 

「おう、ショウ!ガムートが暴走した原因はわかったのか?」

 

「はい、実は……」

 

私はカイさんとセキさんに、調査した結果を報告した。話を聞き終えた二人は、かなり難しそうな表情をしていた。

 

「なるほどな……子供を傷つけられた報復に、ニューラを……」

 

「それだけじゃありません。ガムートは、この凍土に生息するすべてのニューラを皆殺しにするつもりです。そして、そのニューラたちがシンジュ集落の方向に避難している可能性があるんです」

 

「なっ……全部か!一体残らず!?」

 

「はい」

 

「おーい!!」

 

するとテル先輩たちが戻ってきた。あの様子、もしかして……。

 

「見つけたぞ、ショウ!集落の奥にある温泉!そこに集まってた!!しかも、オヤブン個体も含めて、みんな一様に何かに怯えているようだったぞ……」

 

「……ガムートの怒気と殺気に当てられたのだろう。人間の生活圏が、ポケモンが近づきにくい場所だと知っていたのかもしれんな……だから、そこに逃げた。誰も気がつかなかったのは、雪原キングとガムートの戦いに、シンジュ団が気を取られていたからだろう」

 

「な、なんという……」

 

「パオオオオオオオオオンッ!!」

 

カイさんが愕然としている中、ガムートの咆哮がけたたましく響いた。振り返ってみると、ガムートが前足を振り上げてふみつけたり長い鼻を振り回している。その周囲にはキクイさんとヌメルゴン、ガラナさんとウインディ、ノボリさんとダイノーズがおり、ガムートと戦っているようだった。ワサビちゃんは三人よりもやや後方でドサイドン、ブーバーン、ルカリオの三体を繰り出して、三人をそれぞれ援護しているみたいだ。ほかにも、シンジュ団員たちがガムートを包囲しつつ、相棒ポケモンの特殊攻撃による遠距離攻撃で牽制を仕掛けている。

……あれだけの総攻撃を受けているにも関わらず、ガムートはまるで意に介した様子もなく、目の前の邪魔者を排除しようとしている。なんて高い防御力なんだ……。

 

「あああ!まったく!!これだけ攻撃を浴びせているのに、まるでびくともしないね!ヌメルゴン、てっていこうせん!!」

 

「流石は巨大ポケモン……たいしたものですわ……!ですが、負けるわけには参りません!ウインディ、かえんほうしゃ!!」

 

「聞きしに勝る、不動の山神……ですが、お客様の進行ルートはこちらではございません!脱線事故は、早急に解決します!ダイノーズ、パワージェム!!」

 

キャプテン自慢の手持ちポケモンたちの一斉攻撃……しかし、ガムートはそんな総攻撃すら、鼻を一振り振り回すだけで全て打ち消してしまった!

 

「まだだ!ヌメルゴン、アイアンヘッド!!」

 

「ヌメーッ!!」

 

ヌメルゴンが正面からアイアンヘッドをガムートにぶつけた……が、僅かに動きを止めただけで、あっさりと押し返されてしまった。それどころか、素早く伸ばされたガムートの鼻に絡めとられ、ヌメルゴンが捕まってしまった!

 

「ヌ、ヌメーッ!?」

 

「ヌメルゴンッ!!」

 

「……!ウインディ、ヌメルゴンの救助を!フレアドライブ!!」

 

「わおおんっ!」

 

ウインディがヌメルゴンを助けるべく、ガムートの側面からフレアドライブで突撃する。だが、ガムートは冷静にそちらへ振り向くと鼻を振り回して、ヌメルゴンをぶつけるという方法でウインディを吹っ飛ばしてしまった!

 

「きゃうんっ!!」

 

「ウインディ!」

 

「ダイノーズ、ラスターカノンです!」

 

「ノーッズ!」

 

今度はダイノーズがラスターカノンを構えるが、いち早く反応したガムートはなんとヌメルゴンを直接投げつけてダイノーズを撃ち落としてしまった!

 

「ヌメ"ッ!!」

 

「ノ"ッ!?」

 

「ヌメルゴンッ!!」

 

「ダイノーズッ!!」

 

キクイさんとノボリさんが急いで相棒の下へ駆けていく。キャプテンの相棒たちはダメージを負って肩で息をしているのに対し、ガムートは余裕綽々といった様子で右へ左へと鼻を揺らしている。

キャプテンたちは一度集まり、態勢の立て直しを図った。

 

「くっ……つ、強すぎるね!ショウさんはこんなのと同格のポケモンを何体も相手にしたのかね!」

 

「えぇ……それだけでなく、その力を御することにも成功しています。本当に、すごい方ですわ……」

 

「だからこそ、我々はショウさまが戻ってこられるまでガムートを足止めせねばなりません。これ以上の侵攻は、重大な事故につながりますので」

 

「ガッムーッ!!」

 

ガムートが大きく口を開くと、その口から激しいふぶきを放った!普通のふぶきとは違う……明らかに過剰威力だ!直撃したらオーバーキルじゃすまない……!!

 

「ブーバーン!力強く、かえんほうしゃ!!」

 

「ブバー!」

 

「ルカリオははどうだん!ドサイドンはストーンエッジ!」

 

「クアァオッ!」

 

「ドッセェイ!」

 

と、ここで割って入ってきたのはワサビちゃん!ブーバーンの力業かえんほうしゃが拮抗している僅かな隙に、ルカリオとドサイドンの同時攻撃が決まった!ドサイドンのストーンエッジがガムートの顎を勝ち上げてふぶきを強制的にシャットアウトした直後、ルカリオのはどうだんが顔面にヒット!ガムートは一歩、二歩と後退……これは効いたか……?

 

「おぉ、ワサビさん、見事!」

 

「みんな、油断しちゃダメ。ガムートはまだまだ元気だよ」

 

キクイさんが歓声を上げるが、ワサビちゃんは至って冷静だ。……流石、ベリオロスと絆を紡いだだけはある。巨大ポケモンの脅威を、正しく理解しているからこその冷静さだ。

さて、私たちもそろそろ合流しよう!!

 

「みんな、お待たせ!ショウさんが戻ってきたよ!!」

 

「ショウさん!待ちくたびれたね」

 

「ショウさま、なにかお分かりになったことがありましたでしょうか」

 

「はい、ノボリさん。実は……」

 

私はガムート暴走の原因と、その後の対処法などを説明した。

 

「うむむ……まさか、ガムートと懇意にしていたウリムーをニューラが傷つけ、その報復として凍土中に生息するすべてのニューラを殲滅しようとするとは……とんでもなく大激怒しているね。その恨み辛みの根深さ、想像がつかないね」

 

「さらに、ニューラたちが安全圏として人間の住処であるシンジュ集落内へ避難したことで、結果的にシンジュ集落がガムートに狙われることとなるとは……」

 

「……ニューラたちも、この純白の凍土で生きる一個の命です。安易に差し出して絶滅させるわけには参りません。しかし、元気になったウリムーを見せつけてももはや止まらぬ程に怒り狂っているとなると……」

 

「……私が、ガムートと勝負をします」

 

「ショウさん……!」

 

……と、言ったものの……実は今、すこぶる状況が悪いのである。

現在、凍土は猛吹雪……そう、いつかワサビちゃんと戦った時と同じ荒れ模様である。これではリオレウスを繰り出すことはできない。加えて、リオレウスを連れて行く際にライゼクスが暴れそうになり、それを宥めてもらっていたためディノバルドも置いてきてしまった。

ジンオウガとラギアクルスはタイプ相性で不利……ベリオロスは同タイプ同士だけど、耐久力と体格に差があるために持久戦に持ち込まれると難しい……。

空を飛べず、しかしガムートとのタイプ相性で有利を取れて尚且つガムートと遜色ない耐久力と体格とくれば……!

 

「グラビモスに全てを掛けます。"鎧竜"と呼ばれる彼なら、きっとガムートを止められます!」

 

「よしっ、ならそれで行くか!」

 

「おれも、今回は見ているだけじゃないぞ。精一杯援護させてもらうからな、ショウ!」

 

「はい、先輩!」

 

「……ショウさん。実は、私に考えがあるの。聞いてもらえる?」

 

「カイさん?」

 

カイさんの作戦とはこうだ。

まず、カイさんをはじめとする全戦力でガムートを正面から迎え撃ち、気を引き付ける。その間に、ガムートに感づかれないように私がガムートの側面に回り込む。ガムートが完全に釘付けになったタイミングを見計らって、私がグラビモスを繰り出して不意打ちを仕掛ける。その巨体と重量によるギガインパクトの不意打ちでガムートを横倒しにして、動けない隙を突いて一斉攻撃を仕掛ける、というものだ。

 

「本当はここまでのことはしたくはなかったんだけど……集落の存亡の危機に、非道も王道も選んでられない。集落を守ってみせる……なんとしてでも、ここでガムートを倒すんだ!」

 

「おめえが覚悟を決めたって言うなら、オレたちだって文句は言わねぇよ。よしっ、それなら作戦通りに動くとするか!」

 

「ありがとう、セキ。ポケモンの回復が必要な人はすぐに後退してほしい。後方にてユウガオさんが薬を作って支援してくれているからね。……よしっ、みんな。やるよ!!」

 

カイさんの掛け声とともに、私たちは一斉に行動を開始した。まず、ガムートに不意打ちを仕掛ける私は、ガムートのことをよく知るアカイさんを伴って側面へと隠密で移動する。

その間に、テル先輩とカイさん、セキさんの三人も加わった迎撃組が、全力でガムートを攻撃する。ガムートも先程よりもより激しさを増した攻撃に苛立ちを隠せないのか、長い鼻を振り乱して迎撃組を追い返そうとしている。よし……幸いにして、ガムートはまだ気づいていない……このまま行けば……。

 

「……むっ」

 

「アカイさん?」

 

「マズイな……」

 

「え?」

 

マズイって、一体――

 

「パオオオオオオオンッ!!」

 

ガムートが大きく咆哮を上げると前足を大きく持ち上げてそのまま地面に叩きつけた。すると、あちらこちらからだいちのちからが広範囲かつ断続的に放たれた!

 

「うわあああ!?」

 

「な、なんだこの攻撃範囲!?」

 

「パオオオオオッ!!」

 

ガムートがさらに吠えると、上空に氷の柱が出現した。あれは、つららおとしの技!というか、氷柱がデカイ!大の大人ほどの巨大なサイズだ!!

足元ではいまだだいちのちからの攻撃が止んでいないにも関わらず、ガムートは立て続けにつららおとしを放つ!

 

「くっ!こいつぁ……!!」

 

「セキ!気をつけて!!」

 

「わかってらぁ!カイ!!ワサビも無理するんじゃねえぞ!」

 

「了解だよ!」

 

「一度距離を取るしかないね!後退するぞ、ヌメルゴン!」

 

「ウインディ!ヌメルゴンの援護を!!」

 

「テルさま!ダイノーズのビットに掴まってください!」

 

「ありがとうございます!ノボリさん!!」

 

流石、勝負に手馴れている人はお互いにフォローし合っている。ただ……。

 

「た、助けてくれぇ!!」

 

「ひいぃ!目の前に氷柱が!!」

 

「ど、どこに逃げたらいいんだぁ!?」

 

シンジュ団の一般団員たちはてんやわんやと右往左往。それも仕方がない……今や戦場は上から氷柱が、下からエネルギー放出が襲いかかって上から下から阿鼻叫喚。ガムートの底なしじみたパワーに、なすすべなく翻弄されている。

 

「きゃあっ!」

 

「カイッ!!」

 

その時、だいちのちからを避けたところへつららおとしが放たれたことで、カイさんはバランスを崩して倒れてしまった。そこへ接近してきたガムートが大きく鼻を振り上げている!

 

「ブアァー!」

 

「あっ……!!」

 

ガムートの鼻が振り下ろされようとした、その時だ!カイさんのブースターがカイさんに体当たりをして、その攻撃範囲から逃がしたのだ。当然、ブースターが避けられるはずもなく……雪が舞い上がるほどの強烈な勢いで、ブースターめがけて鼻が叩きつけれられた!

 

「ブースターッ!!」

 

「ガムーッ!!」

 

「ああっ!!」

 

さらにガムートは倒れ伏すブースターに対し、鼻からふぶきに似た雪の暴風を吹き付けて吹っ飛ばしてしまった!慌ててブースターに駆け寄るカイさん……だが、巨獣は決して待ってはくれない。

 

「パオオオオオオオオオンッ!!」

 

「……っ!は、はかいこうせんだ!!」

 

「退避っ!退避いぃっ!!」

 

だいちのちからとつららおとしのコンボ攻撃は止んだのも束の間、こんどははかいこうせんを放ったのだ!はかいこうせんを放ったまま右へ左へと照準を動かし、辺り一帯を攻撃するガムート。シンジュ団員たちは大急ぎでガムートから離れていき、安全圏へと避難する。

 

「カイ!逃げろっ!!」

 

「……っ!!」

 

セキさんたちも退避しようとしたけれど、ブースターを介抱していたカイさんが逃げ遅れてしまった!急いでセキさんがそちらへ走って行くも、ガムートは両者を分断するようにはかいこうせんを地面に叩きつけた!

しかもそのまま、はかいこうせんの照準はカイさんの方へ……っ!!

 

「あっ……」

 

「カイィィィィィィィィィィッ!!」

 

カイさん……!!

 

 

 

 




次回予告的ななにか

怒り狂う巨獣は、立ち塞がる全てに牙を剥く。
集落を守るべく奮闘する少女に対し、その脅威が迫る。
少女の運命は……そして、巨獣の怒りを鎮める方法は……!

……いやぁ、それにしてもガムートは強敵ですねぇ。
ガムートのタイプ相性は次回の後書きにて!


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メイン任務:純白を往く峨々たる巨獣~鎧、海、氷牙、そして銀嶺~

VSガムート!カイの運命は……!


ガムートのはかいこうせんが薙ぎ払われ、その先にはカイさんが……!

 

「あっ……」

 

「カイィィィィィィィィィィッ!!」

 

カイさんは完全に固まってしまっている……ダメだ、間に合わない……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ぉぉぉぉおおおおおおっ!!

 

と、その時だ!!突然何者かがカイさんの後方から走り込んできたかと思うと、すぐ近くに突き立っていた巨大氷柱を一度完全に持ち上げ、盾にするように思い切り地面に突き刺した。そしてなんと、そのままガムートのはかいこうせんを受け止めてしまったではないか!?

 

「ぬおおあああああああっ!!」

 

「チャンスだ、ショウ!今ならガムートは完全に隙だらけだ!!」

 

「グラビモスッ!力強くっ!ギガインパクトォッ!!」

 

「ヴルアアアアッ!!」

 

アカイさんの合図を受け、私はすかさずグラビモスを繰り出して攻撃を指示した!

 

「パオオオンッ!?」

 

グラビモスの巨体がガムートの側面に突き刺さり、そのあまりの衝撃にはかいこうせんは掻き消え、ガムートは大きな地響きを上げながら倒れこんだ。

グラビモスは一度こちらへ振り返ると、大きく頷いた。それを見た私はひとまずは問題ないことを確信し、急いでカイさんの元に向かう。盾となって消えた氷柱の向こう、カイさんとセキさんに介抱されている、あの人は……!

 

「えっ……ハ、ハマレンゲさん!?ハマレンゲさん、大丈夫ですか!」

 

なんとなんと、まさかの消息不明となっていたはずのハマレンゲさんだった!?よかった……生きてた……!

 

「ハマ先生っ!しっかり!!」

 

「はぁ……はぁ……。いやぁ、すまんすまん……奴さんが動き出したんでクレベースとともに迎撃に出たはいいものの……いやぁ!強いのなんの!まさかまさか、雪原キングたるクレベースを放り投げてしまうとは!

背中に乗っていたためにわたしも放り出されてしまい……ちょっと気を失っていたら、こんなことになってしまった……。流石は巨大ポケモン……キングに勝るとも劣らぬ胆力、見事……ぐぅっ……!」

 

「カイさん、ここは私が引き受けます!ハマレンゲさんを連れて、集落まで退避を!」

 

「……っ!ショウさん、ごめん……後をお願い……!」

 

「オレも手伝うぜ、カイ!」

 

「セキ……ありがとう!」

 

「ほかの皆さんも退避してください!巻き込まない保証はありませんっ!!」

 

セキさんとカイさんがハマレンゲさんを連れて下がっていくのを見送ってから、すぐにほかのキャプテンや団員たちへ撤退を促すべく声を張り上げた。

一人、また一人と後方へ下がっていく中、グラビモスが低く唸り声を上げた。そちらを見れば、ガムートが横たえていた体を起こし、こちらをきつく睨みつけてきていた。

 

「ショウ」

 

「アカイさん」

 

「……さて、参ったな。グラビモスを前にしても引く気がないとは……これは相当に怒り狂っている様子だ。この勢いだと、魂魄百万回生まれ変わっても恨みを晴らしてきそうだ」

 

「……ごめんね、ガムート。我が子も同然の子を傷つけられて、怒り心頭になっているあなたの気持ちもわかる……。けど、この先には報復相手の他にも無関係な人たちだっているの。ニューラを擁護するつもりはない、けど……少なくとも、人間に被害を出させるわけには行かないんだ」

 

「……!パオオオオオオオオオンッ!!」

 

「だから、ここであなたを止める!あなたが人間を、誤って殺めてしまう前に!!

行くよ、グラビモス!!ここでガムートを止めるんだ!!」

 

「ヴラアアアアアアッ!!」

 

「……怒れる巨獣は歩みを止めぬ、我が子の仇を討つまでは。

その怒りは最もだ……だからこそ、義憤に狂う巨獣を止めねばならぬ。

正しい憤怒であるからこそ誤った血を流させるわけには行かないのだ。

顕現せし山の猛威を前に、誰もが口を揃えてこう叫ぶ……母は強し、と!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【戦闘!伝説のポケモン】~ポケットモンスター LEGENDS アルセウス~

【4つ首の守り神:ランディア】~星のカービィWii~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グラビモス!アイアンヘッド!!」

 

「ヴラァ!」

 

「ガムーア!」

 

グラビモスがアイアンヘッドで突撃すると、対抗するようにガムートもアイアンヘッドで突撃を始めた。巨体と巨体が激突し、空気が震えた。お互いに踏ん張りを効かせようと足に力を込めると、それだけで大地がひび割れていく。パワーは……ほぼ互角か!グラビモスと真正面からぶつかり合えるなんて!!

と、ここでガムートに動きがあった。お互いに頭をぶつけ合った状態のまま、ガムートは鼻を伸ばすとグラビモスの首を絞め上げたのだ。

 

「ヴッ……ヴヴヴ……!」

 

「ガムーッ……!ガムアァーッ!!」

 

「ヴァッ!?」

 

そのままグラビモスの首を持ち上げるガムート……と、次の瞬間、なんとそのままグラビモスを放り投げてしまった!その場で転がされたグラビモスは当然だが転倒し、仰向けにひっくり返されてしまった。

そのままグラビモスに近づき前足を持ち上げるガムート……させるか!

 

「グラビモス!かえんガス!!

 

「ヴァアァーッ!!」

 

「ガッ……!?」

 

「今だ!かえんほうしゃ!!」

 

「ヴァーッ!!」

 

「ガアァァッ!?」

 

腹部から噴出した高熱のガスに、今まさにグラビモスを踏みつけようとしたガムートは思わずたたらを踏んだ。グラビモスは素早く体を転がして起き上がると、かえんほうしゃをぶつける。よしっ、直撃だ!さらにガムートを押し返すことに成功した!

 

「ショウ、気をつけろ。一通り動きを見たが、ガムートは己の得意技をほとんど見せていない」

 

「そうなんですか」

 

「あぁ……やつの得意技は、雪玉を投げてぶつける『アイスランチャー』、口から放たれるふぶきよりも速射性・照準性に優れる『ホワイトブラスター』、こおりタイプの"ふみつけ"とも呼ぶべき『スノースタンプ』、大地を踏みしめた強力な勢いで地面から雪を噴出させるスノースタンプの強化技とも言うべき『シルバースタンプ』に、雪や氷を巻き上げながら頭突きを見舞う『スノーデストロイヤー』、力強く大地を踏みしめることで雪崩の如き大雪をぶつける『サイレントアバランチ』などがある。

特に大技……大地を持ち上げて岩盤を叩きつけ、さらにその威力から生じた氷雪の衝撃波をぶつける『グレイシアクレーター』は、世界を白く染めるとも言われている。十二分に、気をつけたまえ」

 

「了解です……!」

 

グラビモスとガムートは円を描くように動きながらにらみ合いをしている。巨大ポケモンの得意技は、総じて普通のポケモンたちが使う技よりも威力が高い。直撃しないように、気を付けないと……!

 

「だいもんじ!」

 

「ヴラアアッ!!」

 

「パオオォッ!!」

 

ここはグラビモスらしく、力で押す!そのつもりでだいもんじを指示したけど……ガムートからの反撃は、まさかのハイドロポンプ!?だいもんじは一瞬で打ち消され、逆にこちらにハイドロポンプが直撃してしまった!

 

「ヴァアアァッ!?」

 

「グラビモス!!」

 

「……ッ!!」

 

ハイドロポンプに押し込まれるグラビモスだが、翼で地面を押さえつけることで強引に踏みとどまった!

 

「よしっ……どろばくだん!!」

 

「ヴラアァ!!」

 

「ガムッ……!?」

 

ハイドロポンプを浴びせされながらも、どろばくだんをガムートの足元に撃ち込んだ!それによってガムートは僅かに体勢を崩し、ハイドロポンプを中断せざるを得なくなった。

反撃するなら、今だ!

 

「ストーンエッジで動きを封じて!」

 

「ヴルアッ!」

 

「……ッ!!」

 

「よしっ……だいちのちから!!」

 

「ヴラアアア!!」

 

まずはストーンエッジを、ガムートを包囲するようにして展開する。その後、だいちのちからをストーンエッジごとガムートにぶつける!!ガムートはだいちのちからを受けて完全に動きが止まった……そこへ追い打ちをかけるように、宙に打ち上げられたストーンエッジが降り注ぐ!

 

「ガムーアアアァッ!?」

 

「今だ!ぶちかまし!!」

 

「ヴァアアアアァッ!!」

 

ガムートが降り注ぐストーンエッジに怯んでいる隙に、グラビモスが一気に接近していく。その勢いのまま体の側面から全力でガムートにぶち当たった!ガムートは大きく後退し、忌々し気にグラビモスを睨めつける。グラビモスも、「ここは通さない!」と言わんばかりに翼を大きく広げている。

 

「ガアアアムッ!!」

 

ガムートが吠えると、周囲に巨大な氷塊が出現した……ひょうざんおろしか!!

 

「グラビモス、ストーンエッジ射出!!」

 

「ヴラアアアッ!!」

 

それならこちらは、前回のアカイさんとの勝負で見たストーンエッジ遠距離版で対抗だ!岩と氷塊がぶつかり合い、激しく壊れ合う。技同士のタイプ相性でも有利を取れているはずなのに、互角とは……ストーンエッジの本来の使い方とは違うから、威力が減衰しているのかも……?

 

「パオオオン!」

 

すると、突然ガムートが鼻を雪の中に突っ込むと、自身の身の丈に匹敵するほどの巨大な雪玉をぶん投げてきた!?あれがアイスランチャーか!

 

「撃ち落とせ!ラスターカノン!!」

 

「ヴラッ!」

 

グラビモスのラスターカノンがアイスランチャーを撃ち落とし、周囲に大量の雪が舞う。……ん?何か、足音が聞こえ……っ!

 

「グラビモス!前っ!!」

 

「ヴァ?」

 

「パオオオオオンッ!!」

 

「ヴァアア!?」

 

アイスランチャーは目くらましだったか!本命のスノーデストロイヤーを、確実にぶつけるための!グラビモスは大きく仰け反ってしまい、隙を晒してしまった。当然、その隙を逃すガムートではなく、アイアンヘッドでグラビモスを派手に突き飛ばしてきた!

グラビモスは転倒し、さらにそこへ畳み掛けるようにガムートがスノースタンプでグラビモスをふみつけて来た!

 

「グアアアッ!?」

 

「頑張れグラビモス!パワージェム!!」

 

「ヴ……ヴラアアア!」

 

「ガムッ……!」

 

咄嗟の指示が功を奏し、岩の弾幕を受けたガムートは攻撃範囲から逃れようと後退した。グラビモスもなんとか立ち上がり体勢を立て直した。……強い。タフネスなら今まで出会った巨大ポケモンの中でもトップクラスだ。グラビモスでなければ、真っ向勝負は難しかっただろう。

ガムートも、ここまででかなり長い時間を戦い続けたためか若干だが息遣いが荒くなっている。このまま行けば、スタミナ切れを狙えるかも知れない。

さて、次の一手を……!?

 

「あれは……!!」

 

次の攻撃技を考えていると、時空の歪みから光が伸びてきている。まさか、ここでメガシンカ……!マズイ、こっちはグラビモスのメガストーンを持っていないというのに……!

 

「……!?ガッ、ム……アアアアアァァッ!!」

 

光の帯がガムートの胸元まで伸びると、ガムートが光に包まれた!光の中でガムートの姿が変化していき……やがて、光が消滅するとその姿が露わになった。

 

縦に大きな亀裂が入り、中心近くまで裂けている頭殻。

鮮やかな赤色の毛は色褪せ、大部分が白銀色に染まっている背中。

突起が増えた前脚の甲殻や牙、そして甲殻が黒色に変化した後脚。

その両脚と鼻に纏われた雪の鎧。

 

「パオ"オ"オ"オ"オ"オ"ン"ッ!!」

 

ガムートが、メガシンカした……!

 

「ガムートが【銀嶺ガムート】にメガシンカしたか……さて、ここからは苦戦は必至だぞ」

 

「何かあるんですか?」

 

「グラビモスだからこそ問題はないのだが……よく見ろ、ガムートは脚や鼻に雪を纏っているだろう?」

 

「……ですね」

 

「雪を纏ったガムートはみずタイプに完全耐性を得ている……威力半減だったみずタイプが、完全に通じない状態になっているのだ。加えて、メガシンカ前は弱点だったでんきタイプも克服している。もしもあの雪がガムートが自発的に纏ったものなら、ほのお技で剥がすこともできるだろうが……メガシンカによって纏ったということは、もはや体の一部といっても差し支えないだろう。雪を剥がすのは難しいかも知れない」

 

「なるほど……」

 

元のタイプは変化しないが、より耐性が強力になったということか……。弱点タイプであるほのお、かくとう、いわ、はがね技をしっかり当てていかないといけないな。弱点タイプ以外は当てにならないと考えてもいいかも知れない。

 

「パオオオオオオオンッ!!」

 

メガガムートが高く前脚を持ち上げながら、大きく咆吼した。そのまま勢いよく地面に振り下ろして力強く叩きつけた!すると、メガガムートを中心に地面がひび割れ、両サイドから激しい雪崩が迫ってきた!

 

「サイレントアバランチだ!逃げることはかなわないぞ!!」

 

「ならば迎え撃つまで!グラビモス!マグマライザーッ!!」

 

「ヴルアアアアアアアッ!!」

 

私の指示を受けたグラビモスが、その口から極太の熱線によるビームを放った。

初めて見た時に「ごうかえんほうしゃ」と名付けたこの技、正式名称は「マグマライザー」というらしく、この話をしたときアカイさんに失笑されてしまった。

アカイさんは「解釈は人それぞれ」って私をフォローしてくれた……なんか誤魔化された感あったけど、吹き出した瞬間はバッチリ見てますからね?

……それはそれとして、あとでジンオウガたちの技名についても色々と相談しておこう……。

 

さて、気を取り直して……グラビモスが放ったマグマライザーはサイレントアバランチを真っ二つに両断して消し飛ばした!そのまま攻撃がメガガムートに直撃――。

 

「ガムアアーッ!」

 

――なんてことはなく、メガガムートはまたもハイドロポンプで応戦してきた!サイレントアバランチとの激突で威力が減衰していたようで、マグマライザーは僅かな拮抗の後に打ち破られてしまった!

これは避けられない……!

 

「ショウさま!」

 

「ショウさん!」

 

後ろからの呼びかけに、反射的に二つのボールを左右に投げていた。それぞれのボールを手にとった二人……ガラナさんとワサビちゃんはすぐさまボールを投げた!

 

「ラギアクルス!」

 

「ベリオロス!」

 

「グルオオオオオッ!」

 

「ガオオオオオオッ!」

 

繰り出された二体は、すぐさま行動を起こした。まず、ラギアクルスはグラビモスの前に滑り込み、ハイドロポンプを真正面から受け止めた。効果は全くない……ラギアクルスはでんきタイプだけでなく、みずタイプにも耐性を持っているので、ダメージはゼロだ!

ベリオロスはグラビモスの背中を踏み台にしてさらに高く跳躍すると、エアスラッシュでメガガムートを攻撃した。直接攻撃だけでなく、周囲の雪を巻き上げてガムートの視界を封じる副次効果もある!

 

「ガラナさん、助かりました!ワサビちゃん、援護ありがとう!」

 

「どういたしまして。ここからはあたくしたちも参戦しますわ」

 

「ガムート、まだまだやる気みたいだよ。メガシンカって、本当に強いね……三人がかりで勝てるかな?」

 

「勝つしかないよ、ワサビちゃん。でないと、シンジュ集落が大変なことになっちゃうからね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【不動の山神】~モンスターハンターX~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パオオオオオオンッ!!」

 

怒りの咆哮を放つメガガムートは、そのまま力強くストーンエッジを放ってきた!

 

「回り込みなさい、ラギアクルス!」

 

「グラビモス、はかいこうせん!」

 

「ベリオロス、かみくだく!」

 

ラギアクルスが素早く移動し射線上から退避すると同時に、グラビモスがはかいこうせんを放った!はかいこうせんはストーンエッジと激突し爆発を起こした。その爆煙に紛れるようにベリオロスが突撃し、正面からメガガムートに牙を突き立てた!

……だが、メガガムートの防御が高いのか、攻撃を受けたメガガムートが苦しんでいる様子はない。それどころか冷静に鼻を伸ばして、自身に噛み付いてくるベリオロスを掴むとそのまま無造作に放り投げてしまった!ゴロゴロと雪の中を転がるベリオロスに追撃しようと口を開いた、その時だ!

 

「ラギアクルス、あくのはどう!」

 

「グルオアッ!」

 

「ガムアッ!?」

 

ガラナさんがいい具合に技を差し込んでくれたおかげで、メガガムートの攻撃を阻止できた!その間に立ち上がったベリオロスは、既に攻撃準備を終えている!

 

「ベリオロス!シャドークロー!!」

 

「ガオオオッ!!」

 

「ガムッ……」

 

「援護してグラビモス!ヘドロばくだん曲射撃ち!!」

 

「ヴルアア!」

 

ベリオロスがシャドークローで肉迫し、メガガムートへダメージを与える。そして素早く離脱するベリオロスを追撃しようとするメガガムートへ、空へ向かって放たれたヘドロばくだんが時間差で空から降り注ぎ行動を阻止する!

 

「グラビモス、かえんほうしゃ!!」

 

「ラギアクルス、シャドーボール!!」

 

「ベリオロス、サイコカッター!!」

 

三体同時の一斉攻撃!!ガムートはどうする……?

 

「パオオオオオオンッ!!」

 

技が迫る中、メガガムートは前脚を高く持ち上げると何度も連続で地面を踏み鳴らし始めた!それによって地面から大量の雪が吹き出し始め、それぞれの技をかき消してしまった!それどころか、地面からの急襲という形で三体に容赦なく攻撃が襲いかかってきた!この技……アカイさんが言っていた、シルバースタンプか!

グラビモスとラギアクルスはこおり技のシルバースタンプに怯んで動きが封じられている……だがベリオロスは、むしろシルバースタンプの中を猛然と突っ切っている!

 

「ベリオロスにこおり技は効かないよ!リーフブレード!!」

 

「ガオオオンッ!!」

 

「ガアァッ!?」

 

両翼の棘に草の力を纏わせ、刃状に変化したそれをメガガムートに叩きつける!メガガムートは反撃を貰うとは思わなかったのか、かなり怯んでいるようだ!

 

「そのままきりさく攻撃!」

 

「ガオン!」

 

「……っ!ワサビちゃん、ダメッ!!」

 

ワサビちゃんが追撃をかけようとしているけど……ガムートの体勢は既に整っている!思わず制止を掛けたが、間に合わなかった!

ガムートに飛びかかったベリオロスだが、ガムートが目の前で放っただいちのちからに打ち上げられて体勢が崩れてしまった!そのまま鼻を大きく振り回したぶちかまし攻撃で地面に叩きつけられた後、もろはのずつきで連続攻撃を仕掛けられてベリオロスは吹っ飛ばされてしまった!

 

「ガオオオッ!?」

 

「べ、ベリオロス!?」

 

「パオオオッ!!」

 

ガムートからの追撃は止まらない!そのままベリオロスを仕留めんと、ガムートははかいこうせんを放ってきた!

 

「グラビモス!力強く、ストーンエッジ!!」

 

「ラギアクルス!トライアタック!!」

 

「ヴラアア!」

 

「グルオア!」

 

グラビモスのストーンエッジが間に合って、かろうじてはかいこうせんの直撃は免れた!さらにその後隙をついたラギアクルスのトライアタックが命中!メガガムートに少しでもダメージを与えていく!

 

「まだ攻めます!グラビモス!」

 

「ラギアクルス!」

 

「ベリオロス!」

 

「「「はかいこうせん!!」」」

 

三体同時のはかいこうせん!直撃すれば、かなりのダメージが見込める……!

 

「パオオオオ!!」

 

だが、そこはメガガムート。私たちの戦いを見て学んだのか、同じようにストーンエッジを大量に放って壁を作り、はかいこうせんを防ぎきってしまった!

 

「ラギアクルス!すてみタックル!!」

 

「グルアア!!」

 

ラギアクルスが突撃し、すてみタックルを放つ!だが、メガガムートの体を僅かに揺らしただけで、まるで堪えていない!?

 

「ガムアッ!!」

 

「グルア!?」

 

「ラギアクルスッ!!」

 

それどころか、メガガムートの鼻にラギアクルスが捕まってしまった!そのままラギアクルスを持ち上げると一度地面に叩きつけ、さらに両方の牙にドラゴンパワーを宿してラギアクルスを滅多打ちにし始めた!マズイ……あれはげきりんの技だ!ラギアクルスには効果は抜群だ!!

 

「あぁ!ラギアクルス!?」

 

「ベリオロス!ラギアクルスを助けるよ!!でんこうせっか!!」

 

「ガオンッ!!」

 

「ガムァッ!?」

 

「そのままつばめがえし!」

 

「ラギアクルスも!スピードスターです!」

 

「ガオガオッ!」

 

「グルオア!」

 

「……ッ!!」

 

ベリオロスがでんこうせっかで突撃し、ガムートの横っ面にぶち当たる!僅かに怯んだガムートへ、追撃のつばめがえしが命中!さらにラギアクルスからもスピードスターを喰らわされ、ガムートはわずかに後退した。

戦局は今のところ、こちらが有利で状況を運べている……けど、このままじゃジリ貧だ。なにか、なにか手を打たないと……!

 

「ショウさん!」

 

またまた後方から声がかかり、咄嗟に振り返ると……何かが私に向かって飛んできた!?思わずそれを手で掴みとり、見てみると……。

 

「……メガストーン?」

 

灰と赤の二色で構成されたメガストーン……これは一体……いや、そもそも誰が?

 

「……!ハマレンゲさん!!」

 

「ショウさん、そいつを使え!それはさるお方から預かったもの……必ずや、お前さんの力になるものだと聞いた!わたしはそれがなんなのかは知らないが、お前さんには必要なのだろう!?ならば迷うな!必ずや勝利を……うぐっ……!」

 

「ハマ先生、無茶しないで!」

 

「戻るぞ、カイ!やることはやった……あとは、ショウたちに託すしかねえ!」

 

どうやらメガストーンを投げたのはハマレンゲさんだったようだ。カイさんとセキさんの二人と目が合い、私たちはお互いに頷き合う。

……このメガストーンが誰のものかなんて、一目瞭然だ。だから、私はあの子の名前を呼んだ!

 

「グラビモス!!」

 

「ヴ?」

 

「受け取ってぇ!!」

 

「ヴァア!?」

 

こちらに振り返ったグラビモスに向かって、メガストーンをぶん投げる。グラビモスも最初は面食らったようで「ヘァ!?」と驚きを顕にしたが、すぐに投げられたメガストーンを口でキャッチした!

 

「行くよ、グラビモス!!」

 

「ヴルア!」

 

「我が心に応えよ、キーストーン!進化を超えろ……!

グラビモス!メガシンカ!!

 

グラビモスの想いが伝わってくる……そして、私の想いもまた、グラビモスへ!私のキーストーンと、グラビモスのメガストーンから光が伸びて結びつき、グラビモスが光に包まれた!!

体に変化が現れ始め、光の中でグラビモスの姿が変わっていく……!やがて光が消え、その姿が顕になった!

 

さらに一回り巨大になった体躯。

赤黒く黒ずんだ背中の突起や甲殻、そして翼膜。

翼はより重厚さを増し、さらに尻尾の先端も肥大化。

大きく裂け、その内側から赤い光を発する背中と腹部。

頭部の突起と尻尾にも穴があいており、さながら噴出口の如く。

 

「ヴルア"ア"ア"ア"ア"ッ!!」

 

これが、メガグラビモス!!三体目のメガシンカだ!!

まるで砦のような、火山のような……そんな姿へと変化したグラビモス。アカイさんから聞いたが、グラビモスには二つ名個体が存在しないらしい……だからこそ、あえて私が名付けよう。

グラビモスのこの姿の名は、【鎧砦(よろいとりで)】!【鎧砦グラビモス】だ!!

 

「……ッ。パオオオオオンッ!!」

 

メガグラビモスの姿に、メガガムートが僅かに恐れたように半歩足を下げた……だが、そんな己を鼓舞するように大きく咆哮する。

……わかっている。メガガムートが暴れているのは、全てメガガムート自身の正義……即ち、義憤によるものだということ。その想いそのものは、決して間違いなんかじゃない。だからこそ、その行動を誤らせるわけには行かないんだ!

 

メガガムートが大きく鼻で息を吸うと、そのまま鼻からふぶきにも似た、だがふぶきよりも素早く強力な吹雪が放たれた!あれがホワイトブラスターか!!だが、こっちだってメガシンカ個体だ!

 

「だいもんじ!」

 

「ヴラアアアア!!」

 

メガグラビモスのだいもんじは、メガガムートのホワイトブラスターを完全相殺した!すると、メガガムートは地面に思い切り鼻を突き刺すと、なんとそのまま地面を抉り取り巨大な岩として持ち上げてしまった!?

 

「な、なにアレー!?」

 

「大地を持ち上げていますわ……!」

 

「パオオオオオオオオオンッ!!」

 

あれはまさか、グレイシアクレーターか!!ガムートが大岩を放り投げると、着弾した衝撃で大量の雪と氷が巻き上げられながら、衝撃波が迫ってくる!

あの威力、むしろ逃げ場なんてない!このまま迎え撃ってやる!!

 

「グラビモス!プロミネンスカノン!!」

 

「ヴルアアアアアアッ!!」

 

メガシンカしたことで強化されたマグマライザー……その名もプロミネンスカノン!!メガグラビモスから放たれた熱線は、元から既に極太だったのにさらに巨大化していて、グレイシアクレーターごとメガガムートをまるまる飲み込んでしまうほどの大きさになっていた。

その威力はメガガムートを突き抜けて遠く背後にある崖やら山やらをまるごと消し炭にしてしまった。

 

「……うわぁ……」

 

「……ショウさま、あの……」

 

「やりすぎだね」

 

「ぐはっ!」

 

「あ、ワサビさま!もうちょっとオブラートに包んで……」

 

ワサビちゃんの言葉がグサッ!と刺さった。直前でメガグラビモスが射線を上げてくれたおかげで上のあたりだけで被害は済んだが、あのまま真っ直ぐに撃ってたらどうなるか……。

 

「ガ……ム、ゥ……!!」

 

プロミネンスカノンの直撃を受けたガムート……だが、その目からは今だ闘志は消えていない。

 

「ガムート……まだ、戦う気なの……?」

 

「……これ以上の戦闘となると、命の奪い合いですわね。ショウさま、いかがいたしましょうか……?」

 

「…………」

 

ガラナさんに問われ、しばし熟考する。ここでボールを投げてもいいけど、多分だがメガガムートには弾かれるだろう。ライゼクスの時と同じだ、メガシンカが解除されるまで油断はできない。けど、どうすれば……?

 

「ウリー!」

 

と、その時だ。どこからか鳴き声が聞こえてくると、大勢のポケモンたちが迫ってきた。ウリムー・イノムー・マンムーの群れだ。マンムーとイノムーたちは私たちの方へ、そしてウリムーたちはメガガムートの方へと向き合うと、必死に何かを訴えるように鳴き始めた。

 

「マンムー!マム、ムー!」

 

「イム!ノム、ノムー!」

 

「え、これは……」

 

「マンムーとイノムー……何かを訴えてきてる?」

 

「……もしかすると、ガムートへの攻撃をやめてほしいのではないでしょうか」

 

「……!!」

 

そうか……マンムーたちは、ずっと私たちの勝負を見ていたんだ。そして、メガガムートの動きが鈍ったタイミングを見計らって、姿を見せた……ああ、なんだそういうことか。

彼ら群れは、最初からガムートを止めたかったんだ。自分たちのために怒ってくれて、けれどそのせいでほかのポケモンや人間に危害を加えそうになったガムートのことを……。

 

「ガム……」

 

「ウリー!」

 

「ウリウリー!!」

 

「ウリムーッ!」

 

「ウーリー!」

 

「WRYYYYYYッ!」

 

「ウーリムー!」

 

ウリムーたちも、必死にメガガムートを説得している……「もう戦わなくていい」「無理をしないで欲しい」というウリムーたちの願いが聴こえてくるようだ……。

 

「…………」ガクッ

 

と、ここで……メガガムートが完全に膝を折った。それと同時にメガシンカも解除された。……どうやら、気を失ってしまったらしい。ウリムーたちが必死に呼びかけても、なんの反応もしなくなった。……気絶する限界ギリギリまで戦う意志を貫くなんて……母の愛は偉大ってわけだ。

私たちはマンムーたちに断ってウリムーたちに近づくと、彼らに声をかけた。

 

「ウリムー。私たちはね、暴れるガムートを大人しくさせたかったんだ。だから、意図していなかったとはいえ、手伝ってくれてありがとう。

……でも、目を覚ましたら、ガムートはまた暴れ始めるかもしれない……だから一度、私たちにガムートを任せてもらえないかな」

 

「ウリ……」

 

「大丈夫。ガムートがある程度落ち着いたら、ちゃんとここへ……あなたたちに会いに来させるから。ね?」

 

「……ウリ!」

 

ウリムーたちが頷き合うの見て、私はガムートにボールを押し当てた。そのままボールに収納されたガムート……ボールは無事に捕獲の合図を出してくれた。

 

「ガムート、捕獲完了っと」

 

「ふぅ……なんとかなりましたわね」

 

「よかったぁ!これでシンジュ集落は大丈夫だね!」

 

ガラナさんとワサビちゃんの会話を背中越しに聞きながら、私は足元に落ちているメガストーンを拾い上げた。ガムートのメガストーン……っと、メガストーンで思い出した。

ハマレンゲさんはグラビモスのメガストーンを「さるお方」という人から預けられたと言っていた。……そして、その人はおそらく、私のことも知っている。いったい誰のことだろう……。

 

「(あとでアカイさんに色々と聞き――)」

 

ズキッ!!

 

「うっ……!!」

 

「……?ショウさん、どうしたの?」

 

「……っ。ううん、なんでもないよ、なんでもない。さ、集落に戻ろっか」

 

「……そうだね!」

 

「えぇ、行きましょうか」

 

みんなも待っていることだろうし、早いところ戻らないと。

……私は痛みを訴え続ける心臓を無視して、努めて笑顔を浮かべながら集落に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いやはや、見事」

 

ムシャムシャムシャムシャ。

 

「紅の友の言葉を受け、こうして異界の地に足を踏み入れたはいいが、なかなかどうして……。この世界の人間たちも、実に大したものだ。まるで騎手(ライダー)を彷彿とさせるな。お主はどう思う?」

 

モグモグモグモグ。

 

「……お主はずっと食べてばかりだな」

 

「ウホウホ」

 

「む?……あぁ、同じ雷を司る生物でも、やはり幻獣には劣るのか。……たしか、"えれぶー"といったか、この生物。山のように食べても足りぬとは、お主もつくづく強欲よな」

 

「グルル!」

 

「まぁ、そう急くな。今回は紅の友より、"ショウ"という者の力試し、あるいは鍛錬をと言われている。殺し合いではないのだから、その破壊の権化と謳われた力を無遠慮に振るわぬようにな」

 

「ウホゥ……」

 

「ハマレンゲとやらも、私が託したものを無事に届けてくれたようだ……巨獣は無事に役目を終えた。ならば次は我らの番だ」

 

「……!!」

 

「では、行くか……金獅子よ」

 

「ヴオ"ォ"ア"ア"ァ"ァ"ァ"ッ!!」

 

 

 

 




だって、ハマレンゲさんがあんまりにも筋肉筋肉してるから、有効活用しなきゃなって思ったらこれしか思い浮かばなかった……w

というわけで、ガムートのタイプ相性です。

ガムート
こおり
弱点 火:◎ 水:△ 雷:○ 氷:× 龍:×
四倍:ほのお
二倍:でんき、かくとう、いわ、はがね
半減以下:みず
効果なし:こおり、ドラゴン
等倍:上記以外全て

メガガムート(銀嶺・雪纏い)
こおり
弱点 火:◎ 水:× 雷:△ 氷:× 龍:×
四倍:ほのお
二倍:かくとう、いわ、はがね
半減以下:でんき
効果なし:みず、こおり、ドラゴン
等倍:上記以外全て

なお、今回銀嶺ガムートの雪纏いは解除不可です。なので、本当に弱点以外のタイプ技はあまり頼りになりません。

次回……破壊の権化、現る


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メイン任務:純白を往く峨々たる巨獣~VS金獅子!赤の王と金の狂王!!~

だいぶ遅くなって申し訳ありません!
それではお楽しみください!


シンジュ集落へと侵攻を開始したガムート。我が子のように可愛がっていたウリムーがヒスイニューラに傷つけられた報復にヒスイニューラ殲滅を目的とした侵攻は、なんとか食い止めることができた。

メガシンカしたメガガムートこと【銀嶺ガムート】との戦闘は、ガラナさんとラギアクルス、ワサビちゃんとベリオロスの二人と二体の協力でもってしても、殆ど互角のまま戦況は膠着し、苦戦を強いられた。……そこへ起死回生の一手を投じてくれたのが、ハマレンゲさんだった。

ハマレンゲさんが「誰か」から預かったというメガストーン……グラビナイトで【鎧砦】へとメガシンカしたメガグラビモスのおかげで形成は一気に逆転した。ガムートは最後まで抵抗しようとしたが、ウリムーたちの懇願に根負けしてついには膝を折り捕獲と相成った。

 

ガムートを捕獲した私たちは一度、クレベース氷塊まで戻ってきた。そこにはガムートとの戦闘に先立って退避した両団長とキャプテン達が集まっていた。

 

「ショウさん!ガムートは……」

 

「はいっ!無事に捕獲、完了しました!」

 

「ははっ……!さすがはショウだぜ!おめえならぜってぇに出来るって信じてたぜ!」

 

「あぁ、よかった……!ハマ先生も無事だったし、集落も守ってもらえて……もう、ショウさんには返しきれないほどの恩でいっぱいだよ……!」

 

「はぁ……我々がどれだけ攻撃してもびくともしなかったあのでっかいポケモンを捕まえてしまうとはね……。ポケモンもさる事ながら、ショウさんも大した人だね」

 

「わたくしを拾ってくださったシンジュ団の皆様……そして、そんな皆様を守ってくださったショウさま……。縁という名のレールは、様々なところで繋がり広がっていく……まさにそのことを実感しております。ショウさま、この度は誠にありがとうございました」

 

「いやはや、本当に見事だよおまえさん。雪原キングですら打倒できなかったあのポケモンを見事鎮めてみせるとは!ははは……わたしももっと、筋肉を鍛えて精進しなければ!」

 

「鍛錬の前に、ハマ先生は休んでください!」

 

「おっと、こりゃいかん」

 

どっ、と笑いが起こった。それから、一緒に戦ってくれたガラナさんとワサビちゃんからも言葉をもらった。

 

「ショウさまには、何度も何度も助けてもらってばかりですわね。……もしもショウさまの身に何かあったときは、必ず力になりますわ。約束いたします」

 

「集落も守れてガムートも捕まえられて、万々歳だね!野生の巨大ポケモンとの勝負、すっごく為になったよ。それに、メガシンカって進化のこととか……ポケモンって、本当に不思議な生き物だよね!」

 

それから、先輩たちからも。

 

「ショウ、本当にすごいよ!流石はおれの、自慢の後輩だぜ!

 

「ショウくん、本当にお疲れ様なのです!」

 

「……見事だったよ、ショウ。やはり、君こそが……む、空が……」

 

アカイさんの言葉につられて空を見上げると、時空の歪みが消滅していっていた。吹雪も止み、快晴が広がる空を見上げて思わず笑みが浮かんだ。

 

「……さあ、みんな!集落へ帰ろう!!」

 

カイさんの言葉を音頭に、私たちはシンジュ集落へと戻っていった。集落では、時空の歪みが解除されたことで様子を窺いに来たのか、シンジュ団員たちが集まっていた。

私とカイさんはお互いに顔を見合わせたあと、頷き合う。それから、私がガムートが格納されたモンスターボールを掲げると、カイさんが声を張り上げた。

 

「皆、聞けっ!我が集落を脅かさんとする憤怒の巨獣ガムートは、ギンガ団のショウ殿、コンゴウ団キャプテンのワサビ殿、そして我らがシンジュ団キャプテンのガラナにより鎮められた!時空の歪みは消え、集落に迫る脅威は取り除かれた!!

消息を絶ち安否が不明であったキャプテン・ハマレンゲも無事に帰還した!勝ち鬨を上げろ!今宵は宴だ!無礼講故に、好きに騒げ!!」

 

――わあああああぁぁぁぁぁ……!!

 

老人から子供まで、全員が声を張り上げて喜びを顕にしている。特に私なんかはガムートを鎮めた活躍もあって、シンジュ団全員からもみくちゃにされた。同じくらいもみくちゃになっているのはガラナさんとワサビちゃんだ。二人も巨大ポケモンを操り協力して事態に当たったとして、多大な賞賛の言葉を投げかけられていた。

なにより……ギンガ団とコンゴウ団とシンジュ団、三つの組織が力を合わせて一丸となったことが大きいだろう。中には「後世まで語り継ぐ!」と息巻いている団員さんもいるくらいだ。……それはちょっと勘弁してもらえませんかね?

その夜は、シンジュ集落での大宴会となった。純白の凍土の寒さなどまるで感じさせないほどの熱気に、宴会は夜が更けるまで続いた。……私も体感ではあるが実に久しぶりに、純粋に笑えたような気がする。

 

「ショウさん、楽しんでる?」

 

「カイさん……はい、もちろんです」

 

「……今日は、本当にありがとう。集落は襲われそうになるし、ハマ先生は行方不明になるし……あの時は、どうすればいいのかわからなくなってしまったけど、セキとショウさんがいてくれて本当に良かった。二人がいてくれたから、私は最後まで立ち上がれたんだ」

 

「カイさん……」

 

あなたという人は、本当に……。

 

「……それ、セキさんには直接言わないんですか?」

 

えっ!?いやっ、あのっ……!それは、そう、ちゃんと本人には言う、つもり……。で、でも私ってば結構情けない姿見せちゃったし、それでセキには叱責されるしで、『カイは相変わらず成長しねぇな』なんて思われてたら……。

いや、そもそも私とセキを比較するなんてそんな……最近は『ちょっとは追いつけたかな?』って思い始めてたんだけど実際はそんな全然……やっぱり団長としての経験値差はセキの方がずっと上で、やっぱりセキはすごいなぁと思う反面、私なんてちっともで……

 

「(いつまで聞いてりゃいいんだこれ)」

 

そろそろ本格的に砂を吐きそうなんだけど……。

 

「おーう、ショウ、カイ。女二人で顔を突き合わせて、内緒話か?」

 

……と、ここでセキさんがやってきた。カイさんもセキさんに気づいたようで、ハッとした様子でそちらへ振り返っていた。

 

「セッ!!セキ……!」

 

「あ、セキさん。楽しんでますか?」

 

「おうっ!そりゃあな!……さて、それはそれとしてショウよ」

 

「はい?」

 

……なんだろう、猛烈に嫌な予感がする……!!

 

「大人を揶揄おうなんざ百年早いんだよ!」

 

「いだだだだだだ!?」

 

セキさんがいきなりこめかみに拳を当てるとグリグリしてきた!?うっわ、これ思った以上に痛い!!

 

「ごめんなさいセキさん!もうしませんっ!!」

 

「……ふぅ。分かればいいんだよ、分かれば」

 

「……?セキ、ショウさんにいったい何を言われたの?」

 

「いっ!?あ、いや……お、おめえが気にすることじゃねえよ……」

 

「ふぅん……?」

 

「(なんでこいつら付き合ってないんだ……)」

 

私は一体何を見せられているんだろうか……。

 

「……それにしても、すっかり人気者になったな、アイツ」

 

「……そうだね。私としては嬉しい誤算、かな。"おや"としてはどう?ショウさん」

 

「……まぁ、嬉しいは嬉しいですよ。受け入れてもらえたこと自体は、"おや"としてもありがたいですし」

 

「だなぁ……しかし……」

 

「うん……でも……」

 

「はい……」

 

「「「まさかベリオロスがねぇ……」」」

 

そして、今回の1件を経て……なぜかベリオロスの株が爆上がりしていた。子供たちが頻りに強請るので仕方なくボールから出すと、子供たちは我先にとベリオロスへと駆け寄りその体に触れていた。突然のことに私もそうだが、ベリオロス自身が特に驚いたようで……子供達と私を交互に見る姿は「なんで?え?なんで?」という声が聞こえてきそうで思わず笑いそうになった。……ボールの中のグラビモスが不貞腐れていたので、後でしっかり慰めておこう。

こうなった理由についてはカイさんが教えてくれた。

 

「……前々から、ベリオロスのことは集落内で周知させていたんだけど……今回のガムート戦で、一気に火が付いたみたい。特に子供たちからすれば、自分たちと同年代のワサビちゃんがモンスターボールを使ってベリオロスと一緒に戦う姿は結構鮮烈に映ったらしくてね。まぁ、こっちとしてはベリオロスの調査が楽になると思えば、本当にラッキーって感じだけど」

 

「……ボールの中のグラビモスは、すっかり拗ねちゃってますけどね」

 

「メガシンカって派手な進化をしてガムートに勝利したってのに、目先の人気すら奪われちゃあな……」

 

セキさんもカイさんも、モンスターボールに同情的な視線を送っている。……よし、ムラに帰ったら、グラビモスの体をうんと磨いてやろう。テッカテカのピッカピカになるくらい磨こう。それくらいの労いは必要だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。宴会後ということもあって、みんな揃って朝が遅い。私もノロノロと朝を向かえ、うんと背伸びをする……と、なぜか集落の入口が騒がしい。

私もそこへ向かってみると……。

 

「御免」

 

「……何者だ。このシンジュ集落に、如何な用があって来た?」

 

「知り合いがちょうど、この集落にいると聞いたのでな。たしか、貴殿らにはアカイ、と名乗っていたと思うが」

 

「なるほど、アカイ殿の……では、そちらのポケモンは……」

 

「ウホッ?」

 

「あぁ、気にしないでくれたまえ。私の相棒だ、害はないよ」

 

「いや、まぁ……うん、そうなんだろうが……」

 

カイさんが対応しているけど……相手はアカイさんと同じように赤い色の衣服を身に纏った若い男性だった。

ただ、アカイさんと比べると赤の度合いが違う。アカイさんの赤は深い色をした"深紅"とも言うべき色で、目の前の男性はそれよりも明るい"鮮赤"とも言うべき色だ。

……ただ、それ以上に目を引くのは、彼の背後に佇むポケモンだ。

 

漆黒の体毛と側頭部から真横に伸びる一対の巨大な角。

怪力を優に想像させる剛腕と、反対に細い足。

 

まるで猿の上半身と獅子の下半身を合体させたかのような、威圧感たっぷりの強面のポケモンがいる。カイさんは、そのポケモンに圧倒されているようだ。

 

「カイさん、どうしたんですか?」

 

「あっ、ショウさん……」

 

「ショウ……?」

 

カイさんがこちらへ振り返り、同時に男性も私に気がついた。……なんだか、品定めされてる……?

 

「君が、ショウか。噂はかねがね」

 

「私のこと、知ってるんですか?」

 

「それはもう。我が友から、心ゆくまで聞かされたからな」

 

「来たか」

 

そうして話していると、アカイさんがやってきた。男性は「やあ」と手を挙げている。

 

「久しいな、バルカン。こちらにはもう馴染んだのか?」

 

「……()をその名で呼ぶな。ここではアカイと名乗っているから、呼ぶならそっちで呼べ」

 

「おっと、これは失礼。馴染み深い呼び名を呼ぶなと言われては、些か慣れに時間がかかる故な、今しばらくは大目に見てくれ」

 

「はぁ……だったらとっとと慣れてくれ。連中が取ってつけたような呼び名など、不愉快極まりない」

 

「はっはっは、怒らせたか?」

 

「そんなことで腹を立てるほど狭量ではない」

 

……アカイさんのタメ口、なに気に初めて聞いた……すごい貴重だ。というか、あのアカイさんがタメ口で話しているこの人は一体何者?あと、バルカンってアカイさんの本名?色々と聞きたいことができたけど、今は男性のことだ。

 

「あの、貴方は?」

 

「おぉ、すまぬな。自己紹介をしようか……私は『ムフェト』。そこのアカイとは知り合いだ。

そしてコイツは私の相棒ポケモンで、名は『ラージャン』という。よろしく頼むよ、青い星」

 

「あ、青い星?」

 

「おう、そうだ。私の地元では将来有望な若者を『青い星』と呼ぶのだよ。君は最近起こっている事件を次々と解決していると聞く。だから、習慣に準えて『青い星』と呼ばせてもらった」

 

「はぁ……」

 

……この人も、アカイさんと同じ違和感を覚えた。それに、若い見た目に反して随分と年を食ったような話し方……これがギャップというやつか?

 

「実はバル……アカイから相談を受けてね。是非君を鍛えて欲しいと言われたのだよ。私としても、若人が育つのを見届けるのは嫌いではないのでね、引き受けたのだ」

 

「いえ、そんな……流石に今日会ったばかりの人にそんな不躾な……」

 

「それに、ラージャンは世界で最初に発見された古龍級生物――」

 

「やります」

 

「おぉ!そうか!」

 

「(……やはり、マガイマガドに敗北したことが相当堪えたようだな)」

 

古龍級生物。そのワードは、今の私にとっては地雷に等しい。かつて敗北したマガイマガドを思い出させる言葉だ。そして、目の前のポケモン……ラージャンもまた、古龍級生物だという。ならばその提案、受けないわけには行かない。

 

「では、極寒の荒地で勝負と行こうか。あそこは広いからな、我が手持ちたちが暴れるにもちょうど良い」

 

「そんなに強力なポケモンがいるんですか?」

 

「ははは。私の手持ちポケモンは、全て地元に生息するポケモンで統一している……言ってしまえば、手持ち全てが君らの言う巨大ポケモンで構成されているのだよ」

 

「……!!」

 

なん……だと……?だったらこの勝負、尚の事受けなければならない!

 

「早速行きましょう時間が惜しいです早く早く!」

 

「はっはっは、青い星は血の気が多いな!」

 

「いや、巨大ポケモンとの勝負が楽しみなだけだぞ」

 

こうして、私たちは移動を始めた。……それはいいんだけど、離れたところで見守っているシンジュ団の皆さんはどういうつもりなのだろうか……。

 

「ごめんね、ショウさん……巨大ポケモン同士のポケモン勝負と聞いて、みんな黙っていられなかったみたいで……」

 

「まぁ、見られて減るものでもないよ。構わんかね?青い星よ」

 

「……えぇ。こちらとしても、巨大ポケモンたちのことをもっとよく知ってもらういい機会だと思います」

 

「私も、ショウさんの勝負を見守らせてもらうね」

 

こうして、現在シンジュ集落に滞在中のメンバー+シンジュ団全団員が見守る中で、ポケモン勝負が始まった。

 

「使用ポケモンは6体。言っておくが、ラージャンは最後の一体まで出すつもりはないよ」

 

「大丈夫ですよ。……何が何でも、絶対に引きずり出してやりますので」

 

「フッ……それはそれは、楽しみだ……」

 

私は改めて、現在手持ちにいる巨大ポケモンを確認する。

手持ちの巨大ポケモンはジンオウガ、グラビモス、ラギアクルス、リオレウス、ベリオロス……そして、昨日捕まえたばかりのガムートの6体。このうちメガシンカ出来るのはラギアクルスを除く5体だ。誰をメガシンカさせるか……それは、対ラージャンを想定しながらの選択となるだろう。

さあ、勝負開始だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

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「では、お互いに一体目のポケモンを出そうか」

 

「わかりました……行きます!」

 

「「グラビモス!/さぁ、参るぞ!」」

 

「ヴラアアアア!!」

 

「ギュアアアン!!」

 

私が初手に選んだのはグラビモス!高耐久で様子を見るのに最適だからね。対して、ムフェトさんが繰り出したのはグラビモスよりも小さなポケモンだ。

 

全身を覆う緑色の甲殻や鱗、そして首元や翼に見られる羽毛。

黄緑や紫などの様々な色が縞模様になっている細い尻尾。

カクレオンというポケモンを彷彿とさせる顔。

 

「"毒妖鳥"、『プケプケ』だ」

 

「プケプケ……」

 

「ムフェト」

 

私がその名前を反芻していると、後ろからアカイさんが近づいてきていた。

 

「どうした、アカイ?」

 

「今回、私はショウの傍に付き助言をする。今回、お前が連れてきたポケモンは全てショウにとっては初見ばかりだ。タイプ相性くらい教えても構わないだろう?」

 

「あぁ、一向に構わんぞ!それで釣り合いが取れるなら、むしろ都合が良い!」

 

「……だ、そうだ。さて、それではプケプケについてタイプ相性のみではあるが説明しよう。

プケプケは"毒妖鳥"の別名のとおり、どくタイプを有するひこうタイプのポケモンだ。さらにプケプケはほのおとドラゴンに強く、でんきとこおりに弱い。そしてみずタイプが一切効かない体質をしている。初手にグラビモスを選択したのは、ある意味正解だな」

 

「……ですね」

 

グラビモスはいわタイプを持つドラゴンポケモン。いわタイプなら、プケプケ相手にも有利に立ち回れる!

 

「ははは!タイプ相性だけでは勝てないのが、ポケモン勝負の醍醐味だろう!?さあ行くぞプケプケ!ヘドロばくだん!!」

 

「プケー!」

 

「それならこっちは、どろばくだん!」

 

「ヴアァ!!」

 

プケプケは口から無数のヘドロばくだんを放ってきた。こちらも対抗するようにタイプ相性でも有利なじめん技のどろばくだんを指示する!ただ、プケプケのヘドロばくだんによる弾幕が思ったよりも分厚い……!

完全にすべてを撃ち落とすことはできず、数発はもらってしまった。タイプ相性では効果は今ひとつだけど、毒状態になったら厄介だ……。

 

「……よしっ、いわなだれ!!」

 

「ヴルア!」

 

「プケッ……!」

 

「動きを封じる気か……プケプケ、足元にたつまきだ!」

 

「プケーッ!」

 

毒状態にはなっていない!相手の動きを制限するためにいわなだれで拘束する!……ただ、ムフェトさんもその意図に気づいたのか、プケプケにたつまきの技を指示していた。

なにを……?そう思っていると、たつまきは外から襲い来る岩を弾きつつ翼を広げたプケプケを持ち上げた!

 

「防御しつつ退避……!」

 

「はっは!グラビモスは翼が退化しているために空を飛ぶことが不得手……対してプケプケは鳥竜種!翼を有する彼なら、これくらいは造作もない!」

 

しまった……!なんとかして、プケプケを撃ち落とさないと……!!

 

「さあ行け、プケプケ!ヴェノムショットだ!!」

 

「プケッケー!!」

 

「ヴラッ……!?」

 

「グラビモス!」

 

空へ飛んだプケプケは、その口からヘドロばくだんよりもより毒々しく巨大な塊を口から吐き出した!その一発をもらったグラビモス……すると、グラビモスはあっという間に毒状態になった!?

 

「プケプケの得意技であるどく技は、相手を確定で毒状態にする。さあ、じわじわと追い詰めようぞ!プケプケ、みずのはどう!!」

 

「ケケケップー!」

 

「ヴァアアアァッ!!」

 

「マズイ……!」

 

ただでさえ毒状態でじわじわと体力が削られる中で、苦手なみずタイプでの追撃……!ムフェトさんはグラビモスの弱点や特性を完全に把握している!

 

「負けるなグラビモス!かえんほうしゃ!!」

 

「ヴルアアァ!」

 

「躱せ!」

 

「プケー!」

 

グラビモスはかえんほうしゃを連発するけど、空を飛び回るプケプケには掠りもしない……加えて、グラビモスは毒状態で体力が減っていっている……早いところ、決着をつけないと!けど、どうすれば……はっ、そうだ!

 

「グラビモス、ステルスロック!」

 

「ヴルア」

 

「……?何をする気だ?」

 

私はまず、グラビモスにステルスロックを指示する。不可視の岩石を周囲にばらまくグラビモス。プケプケは旋回しながら様子を見ているようだ……だが、ここで何もしないとは愚策極まりなし!

 

「よし、もう一度ステルスロック!」

 

「ヴラ!」

 

「かぜおこしで全部吹っ飛ばせ!!」

 

「ヴルアアア!!」

 

「……!?プケッ!プケー!?」

 

「なんと!?」

 

さらにステルスロックの数を増やし……それら全部を、かぜおこしで吹っ飛ばす!いきなり飛んできた不可視の岩石を躱せるはずがなく、プケプケはステルスロックに次々と被弾した……今だ!

 

「ストーンエッジを、プケプケの足元に!」

 

「ヴルア!」

 

「それを、だいちのちからで打ち上げろ!!」

 

「ヴラアアア!!」

 

「プゲーッ!!」

 

「まさか、こんな手があるとは……!」

 

そして、ガムート戦でも使った戦術……ストーンエッジをだいちのちからで打ち上げて上から攻撃する作戦をここでも使う!ストーンエッジに撃ち落とされたプケプケは墜落した!

 

「くっ!ヴェノムブラスターだ!!」

 

「プケケケーッ!!」

 

プケプケはこちらに背を向けると、その長い尻尾を急速に膨らませて大量の毒を吹き出してきた!!グラビモスは真正面からモロに受けてしまい、さらに毒状態が進行する……!

 

「グラビモス!はかいこうせん!!」

 

「ヴルアアアアアアッ!!」

 

「プゲッ……!!」

 

咄嗟のはかいこうせんの指示が功を奏した!はかいこうせんはプケプケに直撃し、吹っ飛ばされたプケプケは目を回している!

 

「プケプケ、戦闘不能。グラビモスの勝ちだな」

 

「よしっ……毒で辛い中、ありがとうグラビモス」

 

「ヴ……」

 

「戻って休んでて」

 

「ヴァ」

 

これ以上の継戦は厳しいので、グラビモスを一旦戻す。毒でかなり体力を削られたので、仮に出せても一撃がせいぜいだろう。一方、ムフェトさんもプケプケをボールに戻し、健闘を称えているようだった。

 

「うむ、飛竜種を相手によく戦った。存分に休むがよい」

 

「まずは一勝、もらいましたよ」

 

「あぁ、流石の手並みだ。アカイや彼の祖が、君を見込むだけはある。さあ、次を出すぞ!」

 

「はい!」

 

「「ラギアクルス!/ブラントドス!」」

 

「グルオォアアアアッ!!」

 

「ブロアアァァッ!!」

 

次に私が繰り出したのはラギアクルス!そして、ムフェトさんはブラントドス、というポケモンを繰り出した。

 

体の左右と腰部付近にある一対の金色のヒレ。

炭にも似た黒色の体色に金色の腹部。

全身に付着した雪と、特徴的な尖った頭部。

 

見るからに魚然としたポケモンがそこにいた。

 

「ブラントドス……渡りの凍て地からも連れてきたのか、お前」

 

「ちょうど君らが寒冷地にいると聞いたのでね、都合が良いと思って連れてきた」

 

「そうかよ……」

 

「アカイさん、あのポケモンは?」

 

「おっと、失礼。あのポケモンは『ブラントドス』、"凍魚竜"の別名を持つ、魚竜種に分類されるポケモンだ。

みずとこおりの複合タイプで、みずに強く、ほのおとでんきに弱く、氷とドラゴンが効かない体質をしている。まぁ、体質も通常のタイプ相性とそう変わらないから、気にすることはないだろう。ドラゴンタイプが効かないことだけは気をつけたまえ」

 

「わかりました」

 

みずとこおりの複合タイプ……けど、体質の相性が元のタイプ相性とほぼ変わらなくてよかった。それどころか、みずとの複合タイプなのに体質の問題でほのおタイプが弱点になっているとは……巨大ポケモンたちって、こういうところも不思議な要素なんだよね。

 

「行くよ、ラギアクルス!10まんボルト!!」

 

「グルオオア!」

 

「潜れ!!」

 

「トドォーッ!」

 

早速弱点のでんき技で攻撃しようとしたけど……ブラントドスは、なんと凍土の中に潜ることで攻撃を回避してしまった!?

 

「い、一体どこに……?」

 

「グルルル……」

 

「さぁ、突撃だ!スノウダイブ!!」

 

「ブラトォ!!

 

「グルア!?」

 

完全にブラントドスを見失った……そうして気配を探っていると、凍土の中から現れたブラントドスがその尖った頭でラギアクルスの顎を打ち上げた!大きく怯んだラギアクルスに、ブラントドスの追撃が迫る!

 

「れいとうビームだ!」

 

「ブラアァーッ!」

 

「グルアアアァッ!!」

 

「ラギアクルス!?」

 

凍土から飛び出した状態から体勢を立て直し、そのまま空中かられいとうビームを放ってきた!れいとうビームはラギアクルスに直撃し、さらにダメージが重なる……!

 

「もろはのずつきだ!」

 

「トドォース!!」

 

「……!躱してほのおのキバ!!」

 

「グルオア!」

 

そのまま空中から突撃してくるブラントドスだったが、ラギアクルスは間一髪反応して頭を避けるとそのまま首を動かしてブラントドスの首にほのおのキバを突き立てた!よしっ、捕まえたぞ!!

 

「ブラァ!?」

 

「なんだと!」

 

「そのままかみなり!!」

 

「グルオアアアアッ!!」

 

「トドォオアアァッ!!」

 

「ちっ……あくのはどうだ!」

 

「ブラットォ!」

 

「グルァ……!」

 

このまま押しきれるかと思ったけど……必中技であるあくのはどうを喰らったラギアクルスはブラントドスを解放してしまった。

再び凍土に潜り逃げるブラントドス……厄介だな、あなをほる技とはまた違う戦術とは……。どうにかして、凍土を潜行するブラントドスを地上に引っ張り出さないと……。

 

「(……そういえば)」

 

以前、アカイさんから聞いたことがある……ラギアクルスの最大出力の放電は、水すら蒸発する程の高い電力と熱量を誇るという話だ。雪も元をたどれば水……上手くすれば、雪を溶かして水分を蒸発させ、雪に覆われた地表を露にすることができるかも知れない。やってみる価値はある……!

 

「ラギアクルス!奥義装填!!」

 

「!!グルルルル……」

 

「(フッ……また何か妙案を思いついたな?)」

 

私がラギアクルスへ指示を出すと、彼は瞬時に対応し充電を始めた。ムフェトさんは薄く笑みを浮かべ、事の成り行きを見守っている。

……ラギアクルスの背電殻が、限界まで輝きを増した……今だ!!

 

「せんらんばんらい!」

 

「グルオオオォアアァァァァ!!」

 

ラギアクルス最大の技、旋嵐万雷が発動!その広大かつ高威力の放電は、周囲の雪を一瞬で溶かし、さらに蒸発させた。バトルフィールドは雪が完全に溶けきっていて、地面がはっきりと見えている。

 

「……!いた!!」

 

私が戦場を広く見渡していると、地面が僅かにボコボコと盛り上がっている場所があった。あそこをブラントドスが移動しているんだ!

 

「ラギアクルス!あそこに向けてはかいこうせん!!」

 

「グルオアアア!」

 

「ブラアァ!?」

 

「ブラントドス!」

 

私が指示を出した場所へ的確にはかいこうせんを放つラギアクルス!着弾時の爆音に驚いたのか、ブラントドスが凍土から飛び出してきた!

 

「ちょうでんじほう、発射!!」

 

「グルアアアア!!」

 

「トドォ……!」

 

そのまま得意技の超電磁砲が直撃!爆発し、爆煙の中から落下してきたブラントドスはすっかり目を回している!

 

「ブラントドス、戦闘不能。ラギアクルスの勝ちだ」

 

「やった!流石だよ、ラギアクルス!」

 

「グルララ」

 

「ふむぅ……戻れ、ブラントドス」

 

ムフェトさんがブラントドスをボールに戻すのに合わせて、私もラギアクルスを一度ボールに戻す。

ここまで二連勝……これは順調な滑り出しといってもいいだろう。未知の巨大ポケモンが相手でも、みんなと一緒なら勝てる!

 

「では、次のポケモンを出そう」

 

「いいですよ」

 

「「ジンオウガ!/アンジャナフ!」」

 

「「ウオオオオオン!/ギャオオオオオン!」」

 

私はジンオウガを繰り出し、ムフェトさんはアンジャナフと呼ばれるポケモンを繰り出した。

 

くすんだ桃色の鱗と、背中から尻尾にかけて生えている黒い体毛。

下顎を覆うように生え揃った大きな刺。

 

ディノバルドよりもガチゴラスによく似た体型のポケモンだ。

 

「ほほぉ、"蛮顎竜"『アンジャナフ』か。これはなかなかの強敵だぞ」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ。アンジャナフは『森の暴れん坊』とも通称されているほどに獰猛な性質で、その顎を使った攻撃は非常に強力だ。

リオレウスと同じほのお・ドラゴンの複合タイプで、でんき、こおり、ドラゴンに強く、みずに弱く、ほのおが一切効かない体質をしている」

 

「ふむ……」

 

リオレウスと同じく、体質のおかげでこおりタイプを半減で受けられるドラゴンタイプか……。そして、ドラゴンだけどドラゴンに強いと……これは、ドラゴンタイプの弱点は意味がないな、ほのおタイプの弱点を突くように戦わないと。ただ、ジンオウガはほのおの弱点タイプであるみず、いわ、じめんタイプの技を使うことができない……。

……ハッ!それがどうした。

 

「たとえ相手が誰であろうと、ジンオウガと一緒に乗り越えます!」

 

「……まったく、すっかり信頼されているなジンオウガ。これは期待を裏切るわけには行かないぞ?」

 

「…………」(^_^;)

 

ジンオウガと一緒に戦うことは、私にとってとても特別なことだ!だから、ラージャンと戦う前から、負けるつもりは毛頭ない!そう意気込んでいると、アカイさんもまたジンオウガに発破をかけていた。

……心なしか、ジンオウガが冷や汗をかいているような……?いや、私のジンオウガに限ってプレッシャーで緊張しているなんてありえない。気のせいだな、うん。

 

「さあ、盛り上がっていこうじゃあないか!アンジャナフ、かえんぐるまだ!」

 

「ジャンナァーッ!!」

 

「……っ!それならこっちはスパークだ!!」

 

「ワオォンッ!!」

 

アンジャナフのかえんぐるまと、ジンオウガのスパークが互いにぶつかり合い激しく火花を散らす!……というか、あの巨体でかえんぐるまって質量からして既に凶器レベルだ。二体はお互いに弾かれた!

 

「10まんボルト!」

 

「ワン!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

「ジャナァ!」

 

こんどは10まんボルトとかえんほうしゃがぶつかり合う。激しい爆発を起こしたことで、煙幕がお互いの姿を見えなくした……ここだ!

 

「でんこうせっか!」

 

「ワン!」

 

「ンジャア!?」

 

「怯むな、アンジャナフ!こおりのキバだ!!」

 

「ンジャナァ!!」

 

「ギャンッ!?」

 

「ジンオウガ!!」

 

嘘でしょ、ほのお・ドラゴンなのにこおり技が使えるの!?でんこうせっかを叩き込んだジンオウガだけど、背中にこおりのキバによる反撃を喰らってしまった!こおりのパワーが炸裂し、ジンオウガが僅かによろけてしまった。

 

「追撃だ!しねんのずつき!!」

 

「アンジャアァー!!」

 

「負けるな、ジンオウガ!かみくだく!!」

 

「……!ワオォン!!」

 

「ンギャッ!?」

 

「なんと!」

 

アンジャナフがしねんのずつきを構えてきたが、ジンオウガは咄嗟にアンジャナフの鼻先にかみくだくを食らわせることで技を中断させた!

 

「よしっ、つばめがえし!!」

 

「ウオオォンッ!」

 

「ジャアァ!」

 

「アンジャナフ!アイアンテール!!」

 

「……ッ!アンジャアアァ!!」

 

「ワウッ……!」

 

「そのままアッパーファングだ!」

 

「ンジャナアアァァッ!!」

 

つばめがえしの追撃は決まったが、そのあとすぐにアイアンテールによる反撃を食らわされた。くっ、立ち直りが早い……!さらに、アンジャナフは口元に炎を滾らせながら、下顎を地面にめり込ませながらジンオウガに向かって迫ってきた!

そのまま掬い上げるように噛み付かれたジンオウガは、勢いそのままに地面に叩きつけられてしまった!

 

「ギャウゥン!!」

 

「ジンオウガッ!!」

 

「さぁ、上げていくぞアンジャナフ!ヒートアップだ!!」

 

「ンジャアアナアァッ!!」

 

知らない技か……!そう思っていると、いきなりアンジャナフの背中から翼が姿を現し、鼻先も異様に隆起した。どこに隠していたんだとツッコミを入れたくなるような変化に、私は思わず口をあんぐりと開けてしまっていた。

 

「えぇ……嘘でしょ……」

 

「アンジャナフのフォルムチェンジ、『炎熱蓄積状態』だ。燃え上がる蛮顎、受けきれるかな?」

 

「……受けて立ちます!ジンオウガ、きりさく!」

 

「躱してかみくだく!」

 

「ワオオォンッ!」

 

「ジャナァフッ!」

 

ジンオウガがきりさくを放とうと前脚を上げたその時!脚を振り下ろされるよりも先にカウンターのようにかみくだくを食らわされてしまった!

 

「そのままぶんまわせ!」

 

「ジンオウガ……!」

 

一度叩きつけられた後、持ち上げられて再度叩きつけられたジンオウガ……このまま好きにやらせるか!

 

「シャドークローで脱出して!」

 

「ウォン!」

 

「グッ……」

 

「振り切ったか……!」

 

「ジンオウガ、アイアンテールだ!」

 

「ワオオォン!」

 

「ンジャッ!?」

 

シャドークローで顔を押しのけるようにして脱出したジンオウガは、素早く起き上がりアイアンテールでアンジャナフを吹っ飛ばした。

 

「次で終わらせてやろう……アンジャナフ、ジャナフディレイル!!」

 

「ジャナアアァフッ!!」

 

「ジンオウガ!クロスハイボルト!!」

 

「ウオオオォォンッ!!」

 

この数週間の間に、ジンオウガも新しい技を習得した……それを披露する時だ!

アンジャナフは先程よりもより苛烈になった火炎の力を顎に集中させると、再び地面を抉りながらジンオウガに迫って来る。対するジンオウガも、より強力に電撃を溜めると跳躍、自らが落雷と化すほど勢いで、足に集めた電撃の力を全力で叩きつけた!

ジンオウガとアンジャナフの技がぶつかり合い、再び大爆発を起こした。……煙が晴れると、しっかりと四肢で立つジンオウガと、倒れ伏すアンジャナフの姿があった。

 

「……アンジャナフ、戦闘不能。ジンオウガの勝ちだ」

 

「よしっ!お疲れ、ジンオウガ!」

 

「ワン!」

 

「はは!いやぁ、参った参った。これほどとはな……すまんなぁ、アンジャナフ。無理をさせたな、戻ってくれ」

 

「(寒冷地が苦手なのになんで蛮顎竜にしたんだよ……)」

 

「アカイさん?」

 

「いや、なんでもない。さぁ、次のポケモンを選ぶんだ」

 

「次は当然、決まっています」

 

「あぁ、私もだ」

 

「お願い、ガムート!!」

 

「舞い駆けよ、トビカガチ!!」

 

「パオオオォォンッ!!」

 

「キャオオォォンッ!!」

 

私が選んだのはガムート……そして、ムフェトさんはトビカガチというポケモンだ。

 

所々に黒が入り混じる青白い鱗や皮。

背面の首から尻尾にかけてを包み込む純白の体毛。

その身体の配色から一際目立って見える赤い眼。

 

その体つきは、どことなくオドガロンを彷彿とさせるけど……まさか、同じ種族なのかな?

 

「トビカガチか……機動力では完全敗北だから、それ以外でどうにかせねばな。トビカガチは"飛雷竜"の別名を持つ牙竜種のポケモンだ」

 

「牙竜種……それって、ジンオウガの仲間!?」

 

「そうだ。ついでに言えば、オドガロンも同じ牙竜種だ。……さて、話を戻そう。

トビカガチは別名にあるとおりでんきタイプのポケモンだ。さらに、ジンオウガと同じかくとうタイプとの複合タイプでもある。やつはこおりとドラゴンに強く、ほのおとみずに弱く、でんきが一切効かない体質だ。タイプ相性とも合わせて、ガムートではやや不利だが……」

 

「でも、パワーとタフネスならこちらが有利です。機動力で翻弄してこようとも、しっかりと対処すればいいだけ……!」

 

「フッ……そうだな、それでこそショウだ。頑張ってくれたまえ」

 

「もちろん!」

 

「話は終いか?では行くぞ!トビカガチ、でんこうせっか!!」

 

「トガーッ!!」

 

トビカガチは目にも止まらない速さでガムートに接近すると、でんこうせっかを食らわせてきた。……ガムートはビクともしていないけど、トビカガチは絶えず攻撃を繰り返してきている。塵も積もればなんとやら……このまま攻撃を続けさせるわけには行かない!

 

「ガムート!だいちのちから!!」

 

「ガムアアァー!!」

 

「躱せ!」

 

「カガッチ!」

 

ガムートが周囲一帯をだいちのちからで攻撃するが、トビカガチは軽やかな動きでだいちのちからを次々と回避している。想像以上に素早さが高い……ならば!

 

「ストーンエッジ!!」

 

「ガムゥー!!」

 

「フッ……」

 

動きを封じるべく、ストーンエッジでトビカガチを追い込む!だが……。

 

「なっ!?」

 

トビカガチはあろうことか、突き出てきたストーンエッジに飛びつくと、そのまま岩から岩へと飛び移ってこちらに急接近してきた!?しまった、これは悪手だったのか!!

 

「さあ受けよ、らいでんぐるま!!」

 

「トビガー!!」

 

「ガムアアァ!?」

 

「ガムート!!」

 

限界ギリギリまで接近すると、トビカガチは一気に跳躍。腕や足を広げると、なんと皮膜がついている!?その飛膜を使って滑空し、ガムートの頭上を取ると体を丸めて電撃を纏い、そのまま回転しながらガムートに叩きつけてきた!

まるでかえんぐるまのでんきタイプバージョンみたいだ……!

 

「ガムートはでんきに弱いからな、弱点はしっかり突かせてもらったぞ」

 

「くっ……だが!!」

 

「ガムアッ!!」

 

「トガッ!?」

 

一撃を加えて地上へ着地しようとするトビカガチ……だが、ガムートが素早く鼻を伸ばしたことでしっかりと捕まえた!!

 

「捕まえた!!」

 

「しまった……!」

 

「これで逃げられない……!力強く、だいちのちから!!」

 

「パオオオオッ!!」

 

ガムートは捕らえたトビカガチを地面に放り投げ叩きつけたあと、起き上がる前に力業だいちのちからをトビカガチに直撃させた!

 

「カギャアアァー!?」

 

「マズイな……トビカガチ、ハイボルテージだ!」

 

「トガアアアァァチッ!!」

 

攻撃から抜け出したトビカガチが、激しく体を震わせると体毛が電光を放ちながら一気に逆立った!?アンジャナフのような、形態変化が存在するのか!

 

「さぁ、攻め立てろ!素早く、スパーク!!」

 

「トガアアァッ!!」

 

「ガムア!?」

 

「速いっ!?」

 

最初のでんこうせっかなんて目じゃない速度でトビカガチが攻めてきた!?ダメだ……ガムートは全然反応できていない……!

スパークの連続攻撃……早業で威力が落ちるとはいえ、こうも立て続けに喰らい続けたら流石にマズイ……!!

 

「まだまだ!カガチぐるまだ!!」

 

「トビガアァ!」

 

トビカガチは再び跳躍すると、そのままガムートの足元に滑り込み、足払いのように電撃を纏う尻尾を薙ぎ払った!僅かに体勢が崩れるガムート……いや、ここだ、ここしかない!

 

「ガムート!シルバースタンプ!!」

 

「ガムアアアアァァッ!!」

 

「!!トカガアアァァァッ!!」

 

「……迂闊!近づきすぎたか……!」

 

こおり技は効果は今ひとつといえど、これだけの大振動に加えて連続攻撃を浴びせられたら、流石のトビカガチでも逃げられない!

 

「トビカガチ、距離を取れ!カガチのいかづちで仕留めろ!!」

 

「トビガッ!!」

 

トビカガチはなんとか技から抜け出すと、一気に距離を取る。そのままガムートの周辺を素早く駆け回りつつ、体を震わせて頻りに体毛を摺りあわせている……なるほど、ああやって電力を溜めているのか!そしてそのまま高く跳躍し、らいでんぐるまの時のように大回転しながらガムート目掛けて落下してきた!

 

「ガムート!しっかり引きつけて……」

 

「ガムッ!」

 

「……今だ!力強く、ハイドロポンプッ!!」

 

「ガムアアアァァッ!!」

 

「……!!みずタイプの技だと!?」

 

ムフェトさんが驚いている……もしかして、ガムートがみず技を使えることを知らなかったのかな?

 

「あいつの地元にはガムートが生息していないのでな……知らぬのも無理はない」

 

「アカイさんは教えなかったんですか?」

 

「青二才の分際で王だなんだと持て囃されてイキってたんでな、腹が立つから黙ってた」

 

「あっ、そう……」

 

アカイさん、結構子供っぽいところがあるんだ……やっぱり知り合いの前だと色々と肩の力が抜けるのかな?シロちゃんとは……うん、忘れよう。主に本人の名誉のために。

さて、バトルに意識を戻さないと……と、そちらへ意識を向けるとちょうど爆発が起きていた。ガムートが目の前まで吹っ飛ばされるも、四肢を踏ん張ってなんとか立ち止まった。

 

「ガムート!大丈夫?」

 

「ガムア!」

 

「トビカガチは……」

 

煙の中から落下してきたトビカガチは……目を回している!戦闘不能だ!!

 

「トビカガチ、戦闘不能。ガムートの勝ちだ」

 

「いやはや、見事だ!さすがは寒冷地においても群を抜く強さを持つ牙獣種最大種だ。……ところで、アカイ?」

 

「あ?」

 

「ガムートがみず技を使えるとか知らなかったんだが?」

 

「誰が教えるかバカタレが!調子に乗った罰だ、猛省しろ!」

 

「大人げないやつだなぁ」

 

「黙れガキが……!」

 

……なんだろう、うん。見ていてすんごいほっこりする。あのアカイさんが体裁を気にせず会話をしているってだけでも、思わず笑みが浮かんでしまう。

 

「さて……私の手持ちも残すところ二体。次の一体を倒せば、その次はラージャンだ」

 

「ウホウホ」

 

「えぇ、絶対に勝ちます。勝って、ラージャンに挑みます!」

 

「その意気だ!行け、レイギエナ!!」

 

「戻ってガムート!お願い、リオレウス!!」

 

「ケエエェェェェンッ!!」

 

「グオオォォォォオッ!!」

 

私が繰り出したのはリオレウス!対してムフェトさんはレイギエナを繰り出した。

 

蝶か花を思わせるような美しくなめらかな翼。

端々にヒレのようなものがついた鋭角的なフォルム。

青い上面と、象牙色の下面という変わった体色。

 

リオレウスとはまた違った、力強い風格を漂わせるポケモンだ……!

 

「レイギエナ……なるほど、コイツが本命か」

 

「やはり……強いですか」

 

「あぁ……とある地域では生態系の主とまで称されるほどの傑物だ。

"風漂竜"の別名を持つレイギエナのタイプはこおり・ひこう。みずとドラゴンに強く、ほのおとでんきに弱く、こおりが一切効かない体質をしている。

リオレウスならばタイプ相性上有利に立ち回れるだろうが……レイギエナの空戦能力はリオレウス以上に特化している。確実に優勢を維持するなら、積極的に墜落させることを推奨する」

 

「了解です……!」

 

リオレウス以上の空戦能力……どれほどのものか……。

 

「では行くぞ!飛べ、レイギエナ!」

 

「レェナアァ!!」

 

「追って、リオレウス!!」

 

「グオン!!」

 

レイギエナは早速空へと飛び上がり、リオレウスもすぐに後を追う。両者ともに空へ舞い、空中で対峙した。

 

「リオレウス、エアスラッシュ!!」

 

「グオオオ!グオオオ!!」

 

「躱せ!」

 

「レァ!」

 

リオレウスがエアスラッシュの弾幕でレイギエナを攻め立てる。……だが、レイギエナは上下左右、自由自在な空中機動を披露し弾幕をすべて躱しきった!?

 

「嘘っ……!?」

 

「さあ、反撃するぞ!コールドブラスト!!」

 

「ケエエエェンッ!!」

 

「グオォアッ!」

 

レイギエナの体や翼、果ては尻尾にまで一瞬で霜がびっしりと生えたかと思うと、レイギエナが大きく翼を羽ばたくように動かした。その直後、こおりのつぶてよりも大きく鋭い氷の破片が弾幕のように大量にリオレウスに降り注いだ!

リオレウスも最初は回避していたが……徐々に当たり始めて、ついには避けきれなくなってしまった……!

 

「くっ……リオレウス、かえんほうしゃ!!」

 

「グオオオォア!!」

 

「突っ込め!」

 

「レェエナッ!」

 

リオレウスがかえんほうしゃで反撃を仕掛けるが、レイギエナはバレルロールしながら、かえんほうしゃを紙一重で回避しながら一気に接近してきた!

 

「リベンジアイスドリル!!」

 

「ケエエェェェェンッ!!」

 

「グオアッ!?」

 

「頑張って、リオレウス!サマーソルト!!」

 

「……!グオオオッ!!」

 

「ギエッ!!」

 

氷を纏ったバレルロールによる体当たりに、リオレウスは大きく吹っ飛ばされた。しかし、そこは空の王者。すぐさま体勢を整えると、なおも接近してくるレイギエナにサマーソルトを叩きつけた!

追撃態勢に入っていたレイギエナは回避できず、この一撃が直撃した……だが、すぐさま体勢を立て直すあたり、リオレウス以上の空中特化は伊達ではないということか……。

 

「りゅうのはどう!」

 

「ケエエェンッ!!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

「グオオォオッ!!」

 

「……!リオレウス、突撃!!」

 

レイギエナのりゅうのはどうとリオレウスのかえんほうしゃが僅かに拮抗する。……このまま押し切ってもいいけど、それだと直撃前に逃げられる可能性がある。だから、こっちから先に突っ込んでやる!

リオレウスは指示通りに突撃を開始。拮抗地点まで徐々に近づき……。

 

「……今だ、ブレイブバード!!」

 

「……!グオオオオオンッ!!」

 

そこでかえんほうしゃを中断して急上昇!そのままブレイブバードで一気に突撃した!この急制動にレイギエナも面食らい、りゅうのはどうを中断してしまったほどだ。当然、ブレイブバードは直撃!そのままレイギエナを押し込んで、一気に地上へ叩き落としてみせた!

 

「よしっ……そのままフレアドライブ!!」

 

「グオオオオンッ!!」

 

「ギエエエェェア!?」

 

本当に空中戦に特化しているんだ……。地上に降りたったレイギエナはリオレウスの突撃を満足に回避できず、そのまま直撃をもらった。このまま一気に押し込む……!

 

「レイギエナ」

 

「……!!」

 

「見せてやれ……凍て刺す貴様の寒冷なる力を!」

 

ムフェトさんがそう言うと、懐から横笛を取り出した。……!あの笛、キーストーンが埋め込まれている!?

 

「レイギエナ、メガシンカ!!」

 

「レエェナアアァ!」

 

笛に埋め込まれたキーストーンと、レイギエナの尻尾についているメガストーンが共鳴している……!キーストーンと、メガストーンから光が伸びて結びつき、レイギエナが光に包まれた。

光は一瞬のうちにレイギエナの姿を変え、メガシンカ姿へと変化させた。

 

青み掛かった黒銀色に染まった体の一部。

体に纏われた氷柱のように鋭く尖った霜。

先程よりも一回り大きくなった体格。

 

「ケエ"エ"ェ"ェ"ェ"ェ"ン"ッ!!」

 

「メガシンカ、完了……」

 

レイギエナ……メガシンカするのか……!!

 

「……【凍て刺すレイギエナ】か。メガシンカまで用意するとは……鍛錬だとつくづく言い含めていたのにあの野郎……」

 

……どうやらアカイさんとの間に、情報の行き違いがあったみたい。

 

「さあ、参るぞレイギエナ!アイステール!!」

 

「レェエエエナ!!」

 

「……!躱して!!」

 

「グオンッ!……グアッ!?」

 

地上から接近してきたメガレイギエナが、横へ薙ぎ払うように尻尾を振るった!リオレウスは大きくバックステップをとることでこれを回避した……だが、尻尾が振るわれた場所から氷の刺が大量に生えてきて、その刺がリオレウスを襲った!

 

「リオレウス!?」

 

「畳み掛けろ、エアリアルテール!!」

 

「レエエェナ!!」

 

「グオアアアッ!!」

 

攻撃の流れでそのまま宙へ舞ったメガレイギエナは、空中からも尻尾を横に振り回しリオレウスへ猛攻を続ける!マズイ、こうなったら……!

 

「リオレウス――」

 

「グオアアアッ!グオオオオオンッ!!」

 

私がリオレウスへ声をかけると、リオレウスはこちらへ振り返り頻りに首を横に振っている……私が何をしようとしているのか、わかっているの……?その上で、「それはダメだ」って……そう言っているの……?

 

「……わかっ、た。でも、どうすれば……」

 

私がなにか作戦を考えていると……リオレウスは突然尻尾を動かし体の側面に持ってくると、次は首を伸ばしてその尻尾に噛み付いた。……って、あそこはたしかメガストーンが……。

 

ガリガリガリッ!!

 

「……って、ちょっと待って!?食べてる?もしかしなくてもメガストーン食べてる!?」

 

バキッ!!

 

何かが壊れる音……それと同時に、地面に落ちるメガストーンとそのデバイス。リオレウスはレウスナイトをヒョイ、と咥えるとそれをそのままゴクン、と飲み込んでしまった。

……って、えええええぇぇぇっ!?

 

「ダメよリオレウス!ペッしなさい!ペッ!!」

 

「グオ?」

 

「……ダメだこの火竜早く何とかしないと」

 

「……いや、待て。これは……!」

 

アカイさんが何か言っている……私が抱えていた頭を離して前を見ると、リオレウスを中心に強い力が激しく渦巻いている……!!待って、この現象、まさか……!!

 

「グオオオアアアアアアアアアッ!!」

 

「リオレウス……!」

 

「まさか……そんなことが……!?」

 

アカイさんもひどく驚いている……どうやら、アカイさんですらまるで予想ができなかったことが、目の前で起こっているみたいだ……!!

渦がより激しさを増し、その力の奔流が稲妻という形になって表れる。やがてその力が溢れ、大きく炸裂したとき……!!

 

「グオ"オ"オ"オ"オ"オ"ッ!!」

 

リオレウスが……進化、した!?……って、あれ?

 

「……進化、だよ、ね……?」

 

「……あぁ、進化だ。紛うことなき、な」

 

「じゃあなんで姿が"メガリオレウス"なんですか!?」

 

そう、リオレウスは進化した。……ただ、その姿はメガシンカしたメガリオレウス、即ち【黒炎王】のものだったからだ。どういうこと……進化とメガシンカは別物なんじゃ……?

 

「ショウ」

 

「ア、アカイさん……?」

 

「ヒスイ地方では珍しいことなのかもしれないが……我が地元ではメガシンカ個体が野生個体として跋扈していることはざらにある。だから、我々としては別段珍しいものではなかったのだが……そんなにおかしいことか?」

 

「お、おかしいですよ!ラベン博士も、進化とメガシンカは別物だって……」

 

「ふむ……ということは、地域ごとに成長過程に変化が生じているのかもしれんな。こちらの地方では起こらない現象なのかもしれん」

 

「…………」

 

そういうものか……?いや、アカイさんやシロちゃんの地元のことだ、彼らの方が知見は広いし……進化先がメガシンカ個体という可能性も、決してないとは限らない。

 

きっとそういうものだろう。

 

「……なるほど、わかりました。ひとまず納得します」

 

「あぁ、そうしてくれ。……そのほうが、後々楽なのでね」

 

「え?」

 

「気にするな。……それよりも、リオレウスに指示を出さなくていいのかね?」

 

あ、そうだった。まさかのメガシンカ個体への通常進化というありえない光景を目の当たりにして、ちょっと呆けてしまった。

 

「行ける?リオレウス」

 

「グオグオンッ!!」

 

「よぉし……リオレウス、かえんほうしゃだ!!」

 

「グオオオオオオッ!!」

 

メガリオレウス……いや、リオレウスの口から放たれたかえんほうしゃは、炎というよりも炎のビームというレベルになっていた!……流石にグラビモスのマグマライザーには劣るけど、それでもかなりの火力が見込める!

 

「躱せ!!」

 

「レエェイ!!」

 

「厄介な……アイシクルリージョンで仕留めるぞ!」

 

「レイナアアァァッ!!」

 

メガレイギエナは低空飛行で一気に接近すると、片翼を地面にこすりながら、リオレウスを中心に円を描くように飛んだ。そうして飛ぶと、地面から生えた霜がやがて氷の刃となりリオレウスを包囲してしまった。

さらにレイギエナは高く空へ舞い上がると、一瞬で大量の氷の刃を生成し、それを一斉にリオレウスめがけて叩きつけてきた!

 

「どうだ……!」

 

「リオレウス……!」

 

氷の刃を断続的に叩きつけられるリオレウス……だが!

 

「リオレウス!フレアドライブ!!」

 

「グオオオオオオオオッ!!」

 

その身に爆炎を纏ったリオレウスは一気に飛翔!氷の刃などものともせず、一直線にメガレイギエナの元へ飛んでいく!

 

「ギエエエナッ!?」

 

「なんだと!?」

 

「そのまま地面へ!」

 

リオレウスはメガレイギエナを伴って地面に向かって一直線!そのまま衝突し、激しい爆発を起こした!

煙の中からリオレウスが姿を現し……レイギエナは、メガシンカが解除されている!

 

「レイギエナ、戦闘不能。リオレウスの勝ちだ」

 

「やった!」

 

「……は、はは。参ったな……いや、本当に」

 

ムフェトさんは苦笑いを浮かべながら、レイギエナをボールに戻す。すると、のそのそと背後に控えていたラージャンが前に出てきた。

 

「すまんな、金獅子よ。結局、お前を当てにすることになってしまったな」

 

「ウホ」

 

「……あぁ、そうだな。……ここですべてを倒してしまえば、問題はない」

 

「グルルル……」

 

うっ……凄まじい威圧感だ。ここは一旦、リオレウスを戻そう。

 

「戻って、リオレウス」

 

「グオ」

 

「……グラビモス!!」

 

「ヴァーッ!!」

 

グラビモス……毒でかなり体力が減っているから、ラージャンの動きを見るためにもここは盾になってもらうしかない……ごめんね、グラビモス……。

 

「さぁ、いよいよ最後だな。

相手は金獅子、破壊の権化。

荒ぶる獣、猛き狂王、黄金の暴風雨……あらゆる異名で恐れられる最強の牙獣種。

森羅万象を滅殺する厄災を前に……君は、生き残れるか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【黄金の鬣/ラージャン】~モンスターハンターシリーズ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マッハパンチ」

 

「ヴオォア!!」

 

「!?」

 

ズドンッ、と鈍い音が響いた。……え、待って、何が起きたの?私が混乱していると、いつの間にかグラビモスに肉薄していたラージャンが、ゆっくりと拳を離した。その直後、グラビモスの体がゆっくりと横たえた。

 

「――え」

 

「グラビモス、戦闘不能。ラージャンの勝ちだ」

 

「……ッ!!」

 

そんな……!!いくら毒で弱っていたとはいえ、物理技の、それも比較的低威力のマッハパンチを一発食らっただけで……!?

 

「ラージャンはかくとう単タイプのポケモンで、みずに強くこおりに弱く、さらにほのお、でんき、ドラゴンが効かない体質だ。ご覧の通りのかくとうタイプだ、単純明快だろう?」

 

「かくとう単タイプで三タイプ無効は複雑怪奇です」

 

なんでかくとうタイプがほのおとでんきとドラゴンを無効化できるんだまるで意味がわからんぞ!

 

「戻ってグラビモス……。こおりタイプなら……ガムート!!」

 

「ガムアアアアァァッ!!」

 

ガムートも耐久力のあるポケモンだ!多少の攻撃ではびくともしない!!

 

「ホワイトブラスター!!」

 

「パオオオオンッ!!」

 

「躱してインファイト!!」

 

「ウオオオォアッ!!」

 

ガムートのホワイトブラスターを左右へステップするような動きで前進しつつ回避、高く跳躍し空中から猛撃の連打で急襲してきた!!

ラージャンの猛攻が終わり、距離を取ると……ガムートは膝から崩れ落ちてしまった……!?

 

「ガムート、戦闘不能。ラージャンの勝ちだ」

 

「くっ……戻って、ガムート……」

 

「このラージャン強いなぁ!さすがは元祖古龍級生物!!」

 

ムフェトさんも興奮気味だ。……ここまで、私が連続で勝利してきたのに、こんどはムフェトさんとラージャンが連勝を始めた。まずい、この流れを断ち切らないと……!

 

「ラギアクルス!」

 

「グルオオオアアアアッ!!」

 

こおりタイプの技なら、ラギアクルスだっている!まだ負けたわけじゃない……!!

 

「ラギアクルス!れいとうビーム!!」

 

「グルアアアアッ!!」

 

「かえんほうしゃだ」

 

「ヴオオオォォ!!」

 

かえんほうしゃ……!?れいとうビームだと相性が悪い!

 

「躱して!!」

 

「グルオア!」

 

かえんほうしゃは回避……っ!!

 

「ラギアクルス!上っ!!」

 

「……!!」

 

「ラージャン、ほのおのパンチ」

 

「ウオオオオオォッ!!」

 

くっ……ここは、少しでもダメージを稼ぐ!!

 

「こおりのキバで迎え撃って!!」

 

「グルオアアアッ!!」

 

振り抜かれたラージャンの右拳を避け、なんとか体に噛み付いたラギアクルス。だが、ラージャンは左腕でラギアクルスの角を掴むと、そのままほのおを纏う右拳をラギアクルスの顎に叩きつけてきた!

ほのおとこおりのぶつかり合いに爆発が起き……ラージャンはラギアクルスの顎から脱出。ラギアクルスは……。

 

「グ……ル……」

 

「ラギアクルス、戦闘不能。ラージャンの勝ちだ」

 

「くっ……!!」

 

強すぎる……!いくら私のポケモンたちが先程までのダメージを引きずっているとはいえ、こうも尽く一撃で沈められるなんて……!!

 

「フゥー……戻って、ラギアクルス」

 

落ち着け……こういう時こそ冷静に、だ。ムキになって視野が狭まれば、その分苦労するのはポケモンの方だ。トレーナーの私が冷静でなければ、まともな指示なんて出せやしない……!!

 

「ジンオウガ!!」

 

「ウオオオォォォンッ!!」

 

この三連戦で、最後まで温存すべきポケモンは決まった。だから、私はここでジンオウガを投入する!

 

「ジンオウガ、きりさく!!」

 

「ラージャン、ドレインパンチだ」

 

「ウオオォォンッ!!」

 

「ヴオオォォアッ!!」

 

ジンオウガが積極的に攻め立て、ラージャンもカウンター気味に反撃をする。ただ、こちらはきりさくだが、向こうはドレインパンチ……攻撃を当てられたら、回復されてしまう……!

ジンオウガが前脚を振り下ろすと、ラージャンは片腕で受け止めると、空いた片腕でジンオウガの顎を殴りつけた!ジンオウガが怯んだ隙を突いてラージャンが背中に飛び乗ると、そのまま角を掴んで背中側に思い切り引っ張って仰向けにジンオウガをひっくり返してしまった!ラージャンが腕を振り上げている……だが、ジンオウガは素早く体を起こすとその勢いそのままにライジングテールを繰り出し、ラージャンを吹っ飛ばした!

 

「(いける……!)しねんのずつき!!」

 

「ウオオオォォンッ!!」

 

起き上がろうとしているラージャンに、ジンオウガが追撃を――。

 

「力強く、れいとうパンチ!」

 

「ヴオアアアァァッ!!」

 

「ギャッ!!」

 

「ジンオウガ……!!」

 

ジンオウガの頭突きは躱され、カウンターにれいとうパンチが顔面に叩き込まれた!吹っ飛ばされ、ゴロゴロと転がるジンオウガ……なんとか起き上がろうとするが……力なく倒れてしまった。

 

「ジンオウガ、戦闘不能。ラージャンの勝ちだ」

 

「……戻って、ジンオウガ」

 

とうとうジンオウガまで……。六対一から、あっという間に二対一……さすがは古龍級生物、強すぎるよ……!

 

「リオレウス!!」

 

「グオオオオオンッ!!」

 

五体目はリオレウス……!なんとかして、少しでもダメージを稼がないと……!!

 

「リオレウス!エアカッター!!」

 

「グオオ!グオオ!グオオ!」

 

「回避だ!」

 

ラージャンは変わらない身のこなしでリオレウスの攻撃を次々と回避する……それなら」

 

「リオレウス、たつまき!!」

 

「グオオン!」

 

「何?ドラゴン技がラージャンには……なんだと?」

 

初めは訝しげにしていたムフェトさんだが……私の意図に気づいてからは、すぐに驚いた表情へと変わった。

リオレウスはたつまきの技を、かなり広範囲に放っていた。それにより、ラギアクルスの大放電の範囲から逃れた雪を巻き上げて、ラージャンの視界を遮ったのだ。

 

「目的は目潰しか!」

 

「リオレウス!力強く、エアスラッシュ!!」

 

「グオオオオアッ!!」

 

「グウウウゥゥゥッ!!」

 

よしっ!!力業エアスラッシュが直撃!!ラージャンには効果は抜群だ!

 

「そのままポイズンクロー!!」

 

「グオオオオオッ!」

 

さらに上空から強襲し、足の爪でラージャンを毒状態にできた!そのままラージャンの背後に回ろうとするリオレウスだったが……。

 

「逃がすな」

 

「ヴオアアアッ!!」

 

なんとラージャンは素早く飛びかかり、リオレウスの尻尾を掴むとそのまま引きずり倒して背負い投げしてしまった!さらにもう一度背負い投げを食らわせると、一気に攻勢をかけてきた!

 

「ラージャン、げきりんだ!!」

 

「ヴオオオアアアアァァッ!!」

 

「グオオアアアァァァッ……!!」

 

「リオレウス……!!」

 

ラージャンのげきりんによる猛攻に耐えきれず、リオレウスはそのまま倒れ込んでしまった……。

 

「リオレウス、戦闘不能。ラージャンの勝ちだ」

 

「……戻って、リオレウス……」

 

「……さて、すっかり逆転したな、ショウ」

 

「えぇ……さすがはラージャン、古龍級生物……でも、私は絶対に諦めませんよ」

 

「あぁ……あぁ!そうでなくてはな!!」

 

泣いても笑っても、これが最後だ……!

 

「ベリオロスッ!!」

 

「ガオオオオオンッ!!」

 

私がベリオロスを繰り出すと、遠くから歓声が聞こえてきた。……ふふっ、これはますます負けられなくなっちゃったな。

 

「絶対に勝とう、ベリオロス!」

 

「ガオガオ!」

 

「さぁて……そう上手くいくかな?」

 

「行きます……絶対に行かせる!!だから……!」

 

私はメガリングを構える。ベリオロスに額あてのようにしてつけてあげたメガストーンが光を放つ!

 

「我が心に応えよ、キーストーン!進化を超えろ……!

ベリオロス!メガシンカ!!

 

ベリオロスともに、強い決意を抱く。負けない……決して負けはしないと!私のキーストーンと、ベリオロスのメガストーンから光が伸びて結びつき、ベリオロスが光に包まれた!!

体に変化が現れ始め、光の中でベリオロスの姿が変わっていく……!やがて光が消え、その姿が顕になった!

 

頬や下顎などに、まるで口髭のように生え揃った体毛。

全身に付着した氷の結晶によって白から青白い色味に変化した体。

鋭い氷の結晶に覆われたことで寒々しい色と化した牙。

さらにその全身にはダイヤモンドダストのような氷のオーラが纏われている。

 

「ガオ"オ"オ"オ"オ"オ"ッ!!」

 

メガベリオロス……グラビモスと同じく、二つ名個体が存在しないポケモン。

名付けよう!貴方の名は……【凍氷刃(とうひょうじん)】!【凍氷刃(とうひょうじん)ベリオロス】!!

 

あまり時間をかけたくはない……一気に勝負をつけてやる!!

 

「はっはっは、面白い!ならばラージャン、我々も遠慮する必要はなさそうだ!」

 

「ウホゥ!」

 

「行くぞ、ラージャン!はしゃけんげん!!」

 

「ヴオオォォアアアァ!!」

 

ムフェトさんが指示を出すと、突然ラージャンが後ろ足で立ち上がると、そのまま全身の毛という毛が金色に変化した……って、変身した!?

 

「き、金色になった……」

 

「覇者顕現……"金獅子"の別名は、決して嘘ではないさ」

 

「……それでも、退くわけには行かない!!ベリオロス、素早く、こおりのつぶて!」

 

「ガオオンッ!!」

 

「ウグッ……!」

 

「畳み掛けて!こごえるかぜ!!」

 

「ガオオ!」

 

こおりのつぶてで先手を取り、こごえるかぜで相手の動きに遅れを生じさせる!!そこから本命の……!

 

「ひょうらんほう!!」

 

「ガオオオオオオッ!!」

 

「ウギャアァッ!?」

 

「強気だな!だが、それでもラージャンは倒せんぞ!ラージャン、ほのおのパンチ!!」

 

「ヴオオオッ!!」

 

氷嵐砲による氷の嵐に囚われながらも、ラージャンは怯まない……!氷の嵐を強引に抜けると、そのままほのおのパンチをベリオロスに叩き込んできた!

 

「ガアッ!!」

 

「怯むなベリオロス!こおりのキバ!!」

 

「ガオオオン!」

 

「グウゥッ!」

 

このままこおり技で攻めきる!!

 

「ふぶき!!」

 

「げっこうほう!!」

 

「ガオオオオオ!!」

 

「ヴオオオオオ!!」

 

ベリオロスのふぶきに対し、ラージャンも金色のビームを口から放ってきた!!両者は完全に拮抗し、爆発を起こして二体とも吹っ飛ばした!!

 

「ここで決める……ベリオロス、奥義装填!!」

 

「フッ……ラージャン、奥義装填」

 

「ガオオオン!」

 

「ウホホゥ!!」

 

「グラウンドサイクロン!!」

 

「ギガンティックメテオ!!」

 

宙へと舞ったベリオロスが、氷のビームを口から発射する!それにより次々と氷塊が生えてきて……それらが一瞬で砕けると、巨大な氷の竜巻となった!!

だが、氷の竜巻が発生する直前、ラージャンもまた地面に両拳を叩きつけ大地を割ると、大量の岩石を発生させた!

氷の竜巻により、姿が見えなくなったラージャン……いや!!

 

「あれは!」

 

竜巻の中を、何かが物凄い勢いで登っていく!やがて竜巻から飛び出したその影……ラージャンは一番高く打ち上げられていた超巨大岩石を掴むと、そこへ自身の力を送り込む。すると、巨大岩石は黄金色に輝き始め、ラージャンはそれをベリオロスめがけてぶん投げてきた!?

 

「ガアアアアアアッ!?」

 

「ベリオロスーッ!!」

 

岩石もろとも地面に叩きつけられたベリオロス……岩石が大爆発を起こし、煙が晴れると……。

 

「ガオォ……」

 

「……ベリオロス、戦闘不能。ラージャンの勝ちだ。よって勝者、ムフェト」

 

「……っ」

 

負け、た……また負けた……。

……ちくしょう。ちくしょう、ちくしょう、畜生畜生畜生!!

 

「あ"ぁ"ー!!悔しいぃーっ!!」

 

こういう時は、思い切り叫ぶ!!思いが負の感情になる前に、叫び散らして吐き出すんだ!

 

「いけると思った!勝てると思った!勝算だって十分にあったはずなのに!!」

 

「私の時にも言っただろう?"古龍級生物を舐めんじゃねえ"……とな」

 

「うぅ……舐めてたわけじゃないですけど、勝つ自信はあったんですよぅ……」

 

私はベリオロスをボールに戻しながらぼやく。……とんでもない大どんでん返しだった。まさかあそこから全タテして勝つなんて……。

 

「次元が違うんですねぇ……」

 

「だが、収穫はあった……だろう?ショウ」

 

「ムフェトさん……」

 

穏やかな笑みを浮かべたムフェトさんがこちらに近寄ってきた。ラージャンは……かなりボロボロだ。あとひと押しあれば、勝てたかもしれない……。

 

「いやはや、いい仕事をしたら、腹が減ったな。アカイ、なにか美味いものを知らないか?」

 

「木の実なら腐るほどあるぞ」

 

「肉をくれ、肉を」

 

「……あの、ムフェトさんもうちのムラに来ますか?アカイさんは私が拠点としているムラでもかなり信頼の厚い人で、その人の知人とあれば無下にはされないかと……」

 

「おぉ、いいのか?まぁ、一泊くらいはしていきたいと思っていたんだよ。せっかくの未知の地なのでね、観光がてら見て回りたかったんだ」

 

「寄り道してないでとっとと帰れ」

 

「辛辣だなぁ」

 

……この二人、いつも漫才みたいなやり取りをしているなぁ……。

今日のバトル……決して無駄ではなかったはずだ。結果的には負けてしまったけど、これも一つの経験だ。もっともっと勝負をして、もっともっと腕を磨かなくては!

 

「ムフェトさん、ありがとうございました」

 

「あぁ、こちらこそ……楽しかったよ、青い星」

 

私とムフェトさんは、がっちりと握手をする。この握手に私は誓おう……今まで以上の研鑽と、更なる精進を!

 

 

 

 




ド派手に遅刻しておいてこのクオリティ……時間が、時間がないぃ……!

赤龍、ゲスト参戦!そして手持ちはこちら
プケプケ(原種)
どく・ひこう
弱点 火:△ 水:× 雷:◎ 氷:〇 龍:△
四倍:でんき、こおり
二倍:エスパー、いわ
半減以下:ほのお、くさ、かくとう、どく、むし、ドラゴン、フェアリー
こうかなし:みず、じめん
等倍:上記以外全部


アンジャナフ(原種)
ほのお・ドラゴン
弱点 火:× 水:〇 雷:△ 氷:△ 龍:△
四倍:なし
二倍:みず、じめん、いわ
半減以下:でんき、くさ、こおり、むし、はがね
こうかなし:ほのお
等倍:上記以外全部


ブラントドス
みず・こおり
弱点 火:◎ 水:△ 雷:〇 氷:× 龍:×
四倍:でんき
二倍:ほのお、くさ、かくとう、いわ
半減以下:みず
こうかなし:こおり、ドラゴン
等倍:上記以外全部


トビカガチ(原種)
でんき・かくとう
弱点 火:〇 水:◎ 雷:× 氷:△ 龍:△
四倍:なし
二倍:ほのお、みず、じめん、エスパー、フェアリー
半減以下:こおり、むし、いわ、ドラゴン、あく、はがね
こうかなし:でんき
等倍:上記以外全部


レイギエナ
こおり・ひこう
弱点 火:〇 水:△ 雷:〇 氷:× 龍:△
四倍:ほのお、でんき、いわ
二倍:はがね
半減以下:みず、くさ、むし、ドラゴン
こうかなし:こおり、じめん
等倍:上記以外全部

メガレイギエナ(凍て刺す)
こおり・ひこう
弱点 火:〇 水:△ 雷:〇 氷:× 龍:△
四倍:ほのお、でんき、いわ
二倍:はがね
半減以下:みず、くさ、むし、ドラゴン
こうかなし:こおり、じめん
等倍:上記以外全部


ラージャン かくとう
弱点 火:× 水:△ 雷:× 氷:◎ 龍:×
四倍:なし
二倍:こおり、ひこう、エスパー、フェアリー
半減以下:みず、むし、いわ、あく
効果なし:ほのお、でんき、ドラゴン
等倍:上記以外全て

やっぱりラージャンが強すぎるんよ……なんだ、かくとう単タイプで無効タイプ三つって……。


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【勝った!!】我らモンハン部異世界支部【第三部、完ッ!!】

ガムート戦途中からの掲示板回です

地は揺れ
木々は焼け
携帯獣と竜は消え
日は消え
古の神々は消え



1:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

…………

 

2:空の王者 ID:MH2nddosHr8

…………

 

3:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……暇だなぁ

 

4:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……暇だねぇ

 

5:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ガラナさんとワサビちゃん参戦あたりから勝ち確確信して新しいスレ立てたけど……

 

6:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なっげえなぁ……やっぱメガシンカできんとキツいか

 

7:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

三人の連携も悪くはない、悪くはないが決め手がない

 

8:空の王者 ID:MH2nddosHr8

やっぱしガムートは硬いな……こう、一撃でブチ抜ける火力がないと……

 

9:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……お、ハマレンゲニキ

 

10:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ハマレンゲェ!生きとったんかワレェ!!

 

11:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それついさっきやったばっかやろがい

 

12:空の王者 ID:MH2nddosHr8

うがー!天気とタイプ相性で出番がないってだけで暇すぎる!

光輝ー!モンハンやろうぜー!お前ジンオウガな!

 

13:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さらっと俺を殺そうとすな!いや、確かに今はジンオウガだが!

 

14:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……おぉ、メガシンカだ

 

15:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

見た目的にはMHFの特殊個体+辿異種って感じか

 

16:空の王者 ID:MH2nddosHr8

名前は【鎧砦】!かっこよすぎかぁ!

 

17:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

勝ったな、ガハハ

 

18:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おいばか負けフラグやめーや

 

19:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、実際メガシンカ同士で同格になったらタイプ相性でグラビ有利は確定的に明らか

ほら、マグマライザーがガムートに命中して……

 

20:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……どころか、まるっと飲み込んで向こう側まで突き抜けたが

 

21:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ワサビちゃん、ツッコミに容赦無さすぎww

 

22:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……お、ウリムーたちだ

 

23:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おい一体だけ明らかに別の生物いるぞ

 

24:空の王者 ID:MH2nddosHr8

鳴き声合ってるけど違う、そうじゃないw

 

25:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

よっしゃ、ガムートを無事に捕獲できたな

いやぁ、よかったよかった!これにて万事解決!!

 

26:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だな、さて、あいつらも帰ってくるだろうし盛大に迎えてやるか

 

27:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

といっても、できることなんて言葉をかけることしかないがな

 

28:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なにもないよかマシでしょうよ

 

 

 

 

――「鎧の覇者」が参加しました――

 

 

――「大洋の支配者」が参加しました――

 

 

――「零下の白騎士」が参加しました――

 

 

 

 

29:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

戻ったぞー

 

30:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ただいまー

 

31:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いぇーい!本日のヒーローインタビューの準備は出来たかーい!?

 

32:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

 

33:空の王者 ID:MH2nddosHr8

 

34:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ちょっと冷たすぎやしませんかね!?

 

35:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

結構、体を張ってきたんだが?

 

36:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや……正直な話、もっと労いの言葉とか感謝の言葉とか、いろいろと言いたいことはあったよ?ただ……

 

37:空の王者 ID:MH2nddosHr8

見てるだけで歯がゆい思いをしていたところに剛太のテンションときてイラっとしたので

 

38:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

剛太……お前ってやつは……

 

39:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おいおい二人の心に傷ができたじゃねえか剛太!なんちゅうことしてくれてんねや!

 

40:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんで急に俺が全面的に悪くなってんだよ!!むしろ活躍したの俺だから!一番長く戦ってんの俺だから!!

 

41:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……さて、話を戻してこの後のこととか話し合おうか

 

42:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そのテンションの落差ほんとなんなの……?

 

43:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

んー……やることと言っても、他にできることなんて対黒龍戦に備えて俺たちの全面強化しかないだろ?

……あっ、流静のメガシンカはどうしようか?

 

44:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

むしろ俺はメガシンカしない方がいいまであるのでは?

希少種という手もあるが……あいつは陸上だと自重で動けんしな、かといって黒龍が戦場を水中に選ぶと……

 

45:空の王者 ID:MH2nddosHr8

流静以外は全滅だな、特に剛太

 

46:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それな

エスパーポケモンの念力系で支えてもらうという手もあるが、それだと戦闘中はずっとってことになるし、ポケモン側の負担が馬鹿にならんな

 

47:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そういわけで、俺はこのままでいいと思っている

 

48:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……なんかなかったかなぁ、ラギアクルスの特殊個体

 

49:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ナンバリングタイトル……それこそ、初代からSUNBREAKまで全部押さえているが、派生作品はフロンティアとストーリーズとその続編の2以外は殆ど触れていないし……

 

50:空の王者 ID:MH2nddosHr8

スマホアプリのエクスプロアとライダーズ、アーケード版のスピリッツ……有名どころではこんなところか

 

51:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

その他のシリーズはネットで「こんなんあるんか」程度にしか知らんし……

 

52:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

こんなことなら、もっといろんなモンハンに触れておくべきだったな……

 

53:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ん、ショウちゃん?

 

54:空の王者 ID:MH2nddosHr8

どうした、光輝?

 

55:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや……今また、ショウちゃんが胸を押さえていたような……

 

56:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

またセクハラかオメェ?

 

57:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ちゃうわい!……なんというか、すっげぇ苦しそうなんだよな……大丈夫か、これ?

 

58:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……黒龍の呪い、マジであるか?今まで全然そんな様子はなかったが……

 

59:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……最悪のケースは想定しておいたほうがいいだろう

もしもの時は祖龍たちを頼ろう

 

60:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

現実、それしか手がないところが何とも言えぬ……

 

61:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……よしっ、切り替えていこう!今は目の前の喜びをともに祝福するべきだろ!

 

62:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そうだな……夜には祭りをやるみたいだし、ちょっと楽しみだな

 

63:空の王者 ID:MH2nddosHr8

楽しみだなぁ、いやほんとに楽しみだ!

 

64:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いつまでも暗い雰囲気でいるわけにもいかないな

 

65:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺たちはショウちゃんを信じていよう

トレーナーを信じて心に寄り添うことが、ポケモンが果たすべき信頼の証だろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【事件解決!!】我らモンハン部異世界支部【……と思っていたのか?】

 

――「無双の狩人」が参加しました――

 

1:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おはぁ――って、なんだこのスレタイはぁ!?

 

 

 

 

――「鎧の覇者」が参加しました――

 

 

――「大洋の支配者」が参加しました――

 

 

――「空の王者」が参加しました――

 

 

――「零下の白騎士」が参加しました――

 

 

 

 

2:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おうおう、朝から物騒なスレタイだな……

 

3:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……いや、待て

なぜ既にスレタイが立っている?俺たち全員が同時起床だったぞ、スレタイを立てる間はほぼなかったはずだ

 

4:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……じゃあ誰がこのスレタイを立てたんだ?

イッチ係の光輝よりもスレを立ててなおかつ誰もいないとか……

 

5:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

新手のホラーかスタンドか?

 

 

 

 

――「世界絶対滅ぼすドラゴン」が参加しました――

 

 

 

 

6:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

ふははは……ついに繋がったぞ!

 

7:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……?

 

8:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

長かった……我を滅ぼさんとする狩人より逃げ馳せて早幾年

世界への復讐を果たすために力を蓄え続けたが、もはやこれまでだ!

 

9:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……?

 

10:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

我よりも遥かに劣る矮小な畜生、アルセウスといったか……愚かにも我に挑もうなどという蛮勇は認めてやるが、それで勝てれば苦労はない

ましてそのような雑魚畜生が創造した世界など、我が飢餓を満たすとは到底思えんがなぁ!

 

11:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……?

 

12:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

さて……キサマらがあの畜生が用意したという手駒か

……ふんっ、どいつもこいつも見知った顔よの、この程度の戦力で我を討とうなど片腹大激痛!足りぬは愚か者どもが、古龍の数十は用意してみせよ!

 

13:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……?

 

14:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

だがよかろう……我は特別気分がいい故な、キサマらの相手を律儀に努めてやらんでもない……だが、心せよ

我と相対する以上は決して逃がしはしない……悉くを滅ぼしつくし屍を晒すがいい、その屍の上にて勝鬨を上げるは、真に我、ただ一人!

 

15:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……?

 

16:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

あのにっくき狩人と同じ目をした小娘……あの小娘にも我が呪いを植え付けた、直に我が殺意がやつを飲み込み、その心の臓を握りつぶすだろう

……やっぱ狩人って人間じゃなくない?絶対アレって別の生き物だってマジで

 

17:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……あの

 

18:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

……ハッ!ダメダメ、冷静に……フゥ

さて、我に話しかける命知らずはどこの誰ぞ?名を名乗れ弱者よ

 

19:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さっきから文字化けしてるんだが大丈夫か?

 

20:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

……え?そんなはず……あれぇ!?なんでぇ!?

ちょっと待ってて、今調整するから……あぁ、クソッ!この空間って動きづらいなぁ!なんでこんな空間にいて祖龍と紅龍は平然と動けるんだ!

あれか?俺への当てつけか?ちょっと次元を渡っただけでこんな仕打ちとかあんまりじゃないか!同じボレアス種でなんでこんなに扱いが違うんだよチクショーめ!ヤバさで言ったらどっこいどっこいどころかあっちの方がよっぽどヤベー生き物なのにぃ!!

こんなの不公平だ、不公平!世界よ!もっと俺に優しくあれーっ!!

 

21:空の王者 ID:MH2nddosHr8

めっちゃ喋ってんのに全部文字化けしとるww

 

22:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……しばらくこの文字化け主は放っておくか、なんか時間かかりそうだし

 

23:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だなぁ、ショウちゃんも起きたし――待って、なんかヤベェのが見えたんだが

 

24:零下の白騎士

剛太も?……実は俺も

 

25:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あれを見ろ!人だ!

 

26:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ゴリラだ!

 

27:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ラージャンだ!!

 

28:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なんでラージャンがここにいるんですかねぇ!?

 

29:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

誰だ特級危険生物をこんなところに連れてきた奴は!場違いにも程があるだろ!!

 

30:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……隣にいるトレーナー、ムフェトって名前だって

 

31:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ファミリーネームは絶対に「ジーヴァ」

 

32:空の王者 ID:MH2nddosHr8

幼名、あるいは弟か息子の名前は「ゼノ」

 

33:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……バルカンとムフェトって知り合いだったんか

 

34:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……の、割にはバルカンの態度がツン多めw

 

35:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……え、嘘でしょ、ラージャンとバトルすんの?……まぁじでぇ?

 

36:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

馬鹿野郎お前、勝つぞお前!マガイマガドは……まぁ、アレだったが、ラージャンくらいには勝てなきゃダメだろ!

 

37:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ラージャンを指して「くらい」とか言うな

 

38:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……ジョーさん、いやバゼルならワンチャン……やっぱラージャンは無理だ、諦めよう

 

39:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁショウちゃんはやる気満々みたいなんでね……見てろよラージャン!格下モンスの意地を見せてやらァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

186:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

…………

 

187:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

…………

 

188:空の王者 ID:MH2nddosHr8

…………

 

189:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

…………

 

190:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……で?

 

191:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はい……

 

192:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

大見得切った割には全滅か

 

193:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやぁ、ラージャンは強敵でしたねぇ( ;∀;)

 

194:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いやいや、それにしたってほとんどのメンツがワンパンってどゆこと……?

 

195:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それまでの勝負で消耗していたことを加味しても、情けない敗北だった……

 

196:空の王者 ID:MH2nddosHr8

くっそぉ……もっとやれると思ったんだがなぁ!

 

197:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やはりラージャンは別格だった……だが、「しょうがない」で済ませられないのも事実だ

 

198:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あぁ……古龍級生物と、それよりも下位の生物……ここまで開きが大きかったとは……

 

199:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

メガシンカしてなお、届かないとは……しかも向こうに至っては、おそらく「激昂」も残してるだろうし……

 

200:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……壁が、壁が高すぎる……!なんとしてでも、「極み化」しねぇと……!

 

201:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ところで、あの文字化け主はどうなった?

 

202:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……そういえば、あれからまるで反応がないな……文字化け直ってるといいn――

 

203:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

 

204:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

!?!?!?!?

 

205:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

!?!?!?!?

 

206:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

!?!?!?!?

 

207:空の王者 ID:MH2nddosHr8

!?!?!?!?

 

208:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

!?!?!?!?

 

209:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

……あれ、これ直った?直ったかな?おーい、もっしもーし

 

210:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ミラ……ボレアス……ッ!?

 

211:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

あ、直ったっぽいね……それじゃあ、ゴホン……

 

フゥーハッハッハァッ!!竜に宿りし卑小にして生物的弱者たる人間ども!この黒龍が、愚かにも我に逆らおうとする畜生どもを一目見てやろうと来てやったぞ!

 

212:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや流石にさっきの勢いでそのノリは無理があるやろ

 

213:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

めっちゃ早口で言うやん

 

214:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……まさか、黒龍が直々に姿を見せるとはな……それで、一体何の用だ?

 

215:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

用だと?なぜ我がキサマら如きに用件を尋ねねばならんのだ?

むしろ、用があるとすればキサマらの方だろう?……そう、頭を垂れ、涙枯れ果てるまで我に許しを乞うという用がな!

 

216:空の王者 ID:MH2nddosHr8

テメェ……ッ!!

 

217:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

おっと、我に逆らうつもりか?やめておけ、彼我の実力差も測れぬような愚か者とて、命は惜しかろう?

栄華を極めし大国とて、一夜にして全て滅んだ……キサマら程度の木っ端竜が集まったところで高が知れるわ

 

218:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いやシュレイド滅ぼしたのはお前(MHW:I)じゃなくてバルカン(元・黒龍)の方じゃん

 

219:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんでそんな冷静にツッコミできるの?

 

220:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

とにかくっ!!

諦めて命乞いの準備でもしておけ愚か者ども、そうすれば特別に一人だけ残して全てを滅ぼしてやる

この世界を糧にしてさらなる力を付け、あの狩人に目に物を見せてやるのだ!!

 

221:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

つまりハンター相手に敗走してきた事は認めると

 

222:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

お前なんなんさっきからさぁ!?

 

223:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

スマンがこいつのことは放っておいてやってくれ……

 

224:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

くっ……おのれ、人間の分際で……!

この我に恥をかかせようとは愚の骨頂!よほどこの黒龍の怒りを味わいたいと見える……!

 

225:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

来るか……っ!!

 

226:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

見せてやろう……総てを滅ぼし尽くした厄災の劫火――あ、やべっ

 

 

 

 

――「世界絶対滅ぼすドラゴン」が退室しました――

 

 

 

 

227:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……?なんだ、急にスレから出て行ったぞ?

 

228:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

一体何が……?

 

 

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が参加しました――

 

 

――「赤いなぁ……」が参加しました――

 

 

 

 

229:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ねぇ!ここにアノ子、いる!?

 

230:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

ルーツが「気配を感じた!」というので慌てて来たが、これは……

 

231:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……あぁ、さっきまでここにいたよ……黒龍ミラボレアスが

 

232:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

一足遅かったか……

 

233:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

クッ……アノ子ったら、散々引っ掻き回して……!!

 

234:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なるほど、保護者が来たのね

 

235:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うわあああぁぁぁぁっ!!怖かったあああぁぁっ!!

さすがだぞ俺ぇー!イケメンドラゴンベリオロスのメンツは保たれたぁ!

 

236:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やっぱビビっとったんかいお前

 

237:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……それにしても、ここにアノ子が来たということは……バルカン

 

238:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

間違いないだろうな……まったく、我が種ながら、厄ネタには事欠かないな

 

239:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なにかあったのか?

 

240:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

落ち着いて、聞いて

 

……アルセウスが敗北したわ

 

241:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なっ!?

 

242:空の王者 ID:MH2nddosHr8

負けたのか……手負いの黒龍を相手に、創造神が!?

 

243:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さすがは黒龍……腐っても禁忌モンスター、ということか……

 

244:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

アノ子がこの脳内スレに干渉してきたことが、何よりの証拠よ

……さっきからアルセウスにつなごうとしているけど、反応がないの……気絶しているのか、あるいは……

 

245:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

奴の腹の中、だな

 

246:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

考えうるだけでも一番最悪じゃあねえか……!

 

247:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そして、悪いことがもう一つ

 

248:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まだ、なにか……?

 

249:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……ショウが、黒龍の呪いを受けているわ

このままじゃ、長くても半年以内にショウが死ぬ

 

250:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

――――ッ!!

 

251:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やはりか……!!

 

252:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……長くて、半年……じゃあ、短くても……

 

253:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……もって、一月

 

254:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……お、おい、おいおいおい!どうすんだ!時間が無さ過ぎる!!このままじゃショウちゃんが死んじまうぞ!!

 

255:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

黙れ!わかってるわこっちだって!!いいから黙れよっ!!

 

256:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

黙れってなんだてめぇ!!

 

257:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お、落ち着けって二人共……!

 

258:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

うるさい

 

259:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……!!

 

260:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……!!

 

261:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

ふん……生前は十代半ばの人間だと聞いていたが、今の肉体になってからどれだけ時間が過ぎたと思っている?まるで成長が見られんな

 

262:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……すまない、情けないところを見せた

だが、時間がないのは事実……どうすればいい、教えてくれ……

 

263:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……ん、こればっかりは仕方ない、か……

 

264:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

手があるのか!?

 

265:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……ないことはない、とだけ

確実ではないし、下手したら時間がかかるか、あるいは失敗するかも……

 

266:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

どんなに小さな可能性だろうが、ショウちゃんなら絶対に諦めない!だから教えてくれ!一体どうすればいいんだ!?

 

267:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あなたたちも知っている人に会いにいくのよ

……かつて、ハンター達の力になってくれた、あの子のもとへ

 

268:空の王者 ID:MH2nddosHr8

知ってる人?誰だ……?

 

269:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ケーキを96個も用意するのは大変だったんじゃない?

 

270:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まさか!?

 

271:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ハンターに力を与えてくれた、古龍とも縁の深いあの子の歌……あの子の力持つ歌に、滅龍石の力を合わせて……あとは、私の生体エネルギーでブーストするわ

 

272:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……っ!!ただの人間に古龍の生体エネルギー……それも、禁忌クラスのエネルギーなんて耐えられるのか!?

 

273:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

耐えられなければ死ぬだけよ

そうでなくても早くて一月後には死ぬかも知れないのに、今更手段を講じている暇なんてないでしょう!

 

274:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

うっ……

 

275:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

……決まりだな、それでは俺はそれとなくショウにこの話を振っておく

ルーツも、直にシンジュ集落にて合流するだろう……その時に、また

 

276:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

えぇ……お願いね、バルカン

 

277:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

了解した

 

 

 

 

――「赤いなぁ……」が退室しました――

 

 

 

 

278:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……他に方法はないんだな?

 

279:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

考えうる限りでは

……ごめんなさい、龍の祖と謳われながら、結局はショウに危ない橋を渡らせることを強要させることしかできない……我ながら情けないわ、本当にごめんなさい

 

280:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

謝らないでくれ……むしろ、感謝してるんだ

 

281:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

えっ……?

 

282:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……俺たちにとって禁忌モンスター……それもボレアス種ってのは公式からも明確な設定が公開されていない部分もあって、今だに未知の生物って側面が強いんだ

だが、ルーツ……あんたはずっとショウちゃんの、人間の側に居てくれたじゃないか、それが俺たちにとってどれだけ心強いことだったか

 

283:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

光輝くん……

 

284:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

たとえ危ない橋だろうが他にないなら渡るだけだ、万全に万全を期して危なくない方法でな!

 

285:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……ぷっ、あははは!危ない橋を危なくない方法で渡るって、それってどうなのよ……w

 

286:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

だが、間違いではない

 

287:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ルーツだって、こんだけ考えに考えて方法を探してくれたんだしな!

 

288:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だったら俺たちは信じるだけだ、ルーツが黒龍討伐を「できる」と信じてくれたようにな

 

289:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

大丈夫だって……ショウちゃんだって、胆力ならハンターといい勝負だ!古龍級生物にだって自分から勝負を挑むほどなんだぜ?

 

290:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……えぇ、そうね、信じましょう

あの子の、ショウの目は……かつて私と相対し、そして勝利した彼とそっくり……だから、私も信じるわ

彼と同じ目をした彼女を、ハンターと同じく強い意思を秘めた、ショウのことを!

だから行きましょう……みんなで!メゼポルタへ!!

 

 

 

 




タダで終わるはずがねぇんだよなぁ!!

これらが続いて数か月後、×××は――


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【出動!】我らモンハン部異世界支部【ショウちゃん絶対救い隊!!】

いよいよ……モンスターハンターの世界へ!(ただし掲示板越し)


1:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

ついにこの時が来た

 

2:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

…………

 

3:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

…………

 

4:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

黒龍の呪いは刻一刻とショウの身を蝕み、命を吸い続けている

 

5:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

…………

 

6:空の王者 ID:MH2nddosHr8

…………

 

7:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

前回のスレから解散した後……つまり、ムフェトとの勝負を終えたショウたちギンガ団がコトブキムラへ帰還しようとした、まさにその時だ

黒龍の呪いがショウの命を喰らい、その激痛によってショウが倒れた

 

8:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

…………

 

9:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

…………

 

10:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

そのほぼ直後に合流できたルーツによって、事なきを得たが……所詮はその場しのぎに過ぎん、もはや時間の問題だ

事は一刻を争う……故に、ショウを我らの世界……即ち、お前たちの言う「モンスターハンター」の世界に連れていくことが決定した

 

11:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

…………

 

12:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

…………

 

13:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

そして、我らの世界に存在する歌姫の一人、メゼポルタの歌姫に会う

彼女の歌の力、滅龍石、ルーツの生体エネルギー……この三つの力を集約し、黒龍の呪いを断つ……これが、今回の異世界渡航の目的だ

 

 

……ところで、何やら聞き手が多くないか?

 

14:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

あ、すみません

重要な話……特に、ショウさんが関わっているとあれば他人事ではいられないと思い、つい

 

15:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

であるぞ

 

16:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

なに、咎めるつもりはない

むしろそちらも、ある意味では気が気でないのではないか?

 

17:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

我らが母のことか?……確かに連絡もつかず所在も不明だが、我らの母だ

そう容易くやられるようなことはないと信じている

 

18:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

無論、私たちも何かあった時のために常に備えをするつもりです

……これ以上、あの忌まわしき黒龍に、私たちの世界を好き勝手させるわけにはいきませんから……!

 

19:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

であるぞ

 

20:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

ほら、ギラティナ

あなたからも何か言ったらどうですか?ここにいる方々に迷惑をかけたのですから、それくらいの責任はあるはずですよ

 

21:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

…………

 

22:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なに気に初めましてだな、ギラティナ

俺たちは……

 

23:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

心得ておる

 

24:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ん?

 

25:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

禁断の扉は開かれ忌まわしき呪いは目覚めた……

(時空の裂け目のせいであんな危険な存在が現れるなんて……)

 

今こそ至高の領域より我が眼にて彼の姿を真に見極め、この原罪は清められるだろう

(あの黒龍のことなら反転世界から僕が監視します、それで少しでも償いができるなら)

 

26:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

痛い痛い痛い痛い痛い

 

27:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ぐぅっ……!ふ、古傷が、疼く……!!

 

28:空の王者 ID:MH2nddosHr8

よりにもよってギラティナは中二病タイプかぁ……

 

29:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

同胞たちよ、袂を分かつとも今再び歩みを共にする者たちよ、今一度盟約を結ぼう

(一度は敵対しましたが、改めて仲間としてよろしくお願いします!)

 

……して、何故辛苦にその身をやつす?

(ところで、なんでそんなに苦しそうなんです?)

 

30:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

すまないが、そっとしておいてやってくれ

……誰だって、抉られたくない過去の一つや二つあるのさ……

 

31:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

昔年に馳せし想いか、今一度想起せし我が懐古の念は至高の領域こそが全て、ただ殺風景なままよ

(昔の思い出かー、僕は昔から反転世界にずっといたから、特に思い出はないんだよなー)

 

32:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……これ、脳内スレじゃなかったらぶっちゃけ何言ってるかわからんのだが

 

33:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

至高の領域に君臨するは我のみ……言の葉は重なれど、紡ぐ機会は終ぞ有らず、なれば紡ぐ術は忘却の彼方ぞ

(反転世界には僕しかいないですからね……誰かと話をすることってほとんどなくって、ちょっと話し方を忘れちゃったんですよね)

 

34:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ちょっとどころじゃなくなっとるが?

 

35:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

ゴホンッ!話を戻すぞ!!

 

当然だが、ショウを我らの世界に招くということは、だ……ヒスイきっての最強のポケモン使いが、一時的にヒスイ地方から姿を消すということになる

 

36:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

アノ子は時空の歪み内部とはいえ、「ポケモン」の世界に近い場所にいるわ……もしかしたら、ショウがいなくなったことを察知して行動を起こすかも知れない

だからこそ、ここは二手に分かれることを推奨するわ、都合のいいことに二手に分かれる表向きの理由もあるしね

 

37:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

表向きの理由については俺から

知らない者には改めて説明するが、実は近々コンゴウ団とシンジュ団にもギンガ団のような調査隊に相当する部署を設立する予定になっている

ポケモン調査のデモンストレーションを兼ねて、焔、俺、剛太、剣介の四人は各地に散ってコンゴウ・シンジュ両団のポケモン調査の練習台になることが決定した

それぞれが元々縄張りにしていた場所での放し飼いとなり、その様子を各団の調査隊が報告書にまとめてギンガ団のラベン博士に提出する……というのが、一連の流れだ

剛太は紅蓮の湿地にてコンゴウ団に、剣介は純白の凍土でシンジュ団にお世話をしてもらうことになっている

俺はガラナ、ススキ両キャプテンによる共同での調査となり、焔はギンガ団のテル隊員が監督役となる予定だ

 

38:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

今回、その予定を前倒しで実施することとなったわ

剛太くん、剣介くん、流静くんは予定通りに……焔くんは今回はショウに同行してもらうわ

未知の環境への進出ということもあって、ショウの手持ちポケモンは極みポケモン三体と二つ名ミミロップに加えて光輝くん、焔くんの計六体のみとなったわ

 

39:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

そして、ショウの護衛役として同行し我々の世界に向かう者は……

 

40:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

テル、セキニキ、カイちゃん、そして……ウォロ

 

41:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まさかあいつがいたとはな

 

42:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

てっきり、もうヒスイ地方を出たもんだとばかり……時空の歪みのせいで身動きがとれなくなるとは、ついてないやつめ

 

43:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

元々、モンハン世界に興味津々だったしな……ただ、アルセウスがミラボレアスに倒されたかもしれないと知って、創造神狂信者として黙っていられなくなったってところか?

 

44:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あるいは、アルセウスが創造したこの世界を不遜にも破壊しようという不届き者の思惑を潰してやろうという魂胆か

 

45:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんにせよ、ポケモン勝負の実力者としては申し分ない援軍だ

……気持ちの問題は別としてな

 

46:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

…………

 

47:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

割り切れ、ショウのためだ

 

48:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……わかってるさ……

 

49:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

これでちったぁ、ウォロショウがヨリを戻さないかな

 

50:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

戻らねぇしっ!!

戻させねぇがっ!?

 

51:空の王者 ID:MH2nddosHr8

やっぱりそこを気にしてたかwwww

 

52:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

コイツら……( °皿 °#)

 

53:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

まぁまぁ、いいじゃない♪変に気負って暗くなるよりはマシ、でしょ?

 

54:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

……はぁ、ヤレヤレ、単純な奴らだ

 

55:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……さて!そろそろ出発の時間よ!

光輝くん、焔くん、準備はいいかしら?

 

56:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

もちろんだ!

 

57:空の王者 ID:MH2nddosHr8

オッケイ(ズドン!)

 

58:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おい撃つな

 

59:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

気をつけてくださいね……

 

60:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

我らにとっては未知の世界……何があるかわからぬゆえな

 

61:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

再邂逅の時、悠久の果てに!

(必ず無事に帰ってきてくださいね!)

 

62:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

待ってるからな!

 

63:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ショウちゃんのこと、頼んだぜ!

 

64:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

行ってこい!

 

65:空の王者 ID:MH2nddosHr8

任せておけ!

 

66:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

行ってくるぜ!!

 

67:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

では……ルーツ

 

68:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

えぇ……行くわよっ!!

 

 

 

 

――「無双の狩人」が退室しました――

 

 

――「空の王者」が退室しました――

 

 

――「赤いなぁ……」が退室しました――

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が退室しました――

 

 

 

 

69:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

…………

 

70:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

…………

 

71:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

…………

 

72:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……行ってしまったな

 

73:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だなぁ……

 

74:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……さて、俺たちも俺たちにできることをやるか!

 

75:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そうだな!まずは……

 

76:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

調査の練習台だな

 

77:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……あ~

 

78:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……あ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ついに来たぞ!】我らモンハン部異世界支部【狩猟世界!!】

 

1:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

到着!モンハン世界!!

 

2:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おぉ……!全身が懐かしさに震えている……やはり体は覚えているもんだな

 

3:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……で、ここどこ?

 

4:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ちょっとまってて、今確認するから……うわっ、やっば、ココット村南部に出てきちゃった

場所的にはちょうど森丘と旧密林の間くらいかしら……

 

5:空の王者 ID:MH2nddosHr8

メタペ湿密林の中じゃなきゃセーフ、ガルルガに見つからんですむし

 

6:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁ、バレたら俺と焔でボコボコのボコにするが

 

7:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

……ショウをはじめとする人間たちは挙動不審ではないか、まるでお上りさんだ

 

8:空の王者 ID:MH2nddosHr8

空を飛んでるのはガブラス……じゃないな、ホルクかぁ

……サ終しちゃったなぁ、F……

 

9:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そっか、光輝くんたちの世界では、ドンドルマやメゼポルタが舞台になるゲームってもう終わっちゃったんだっけ?

 

10:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そうなんだよ

あーあ、またやりたいなぁフロンティア……

 

11:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

こちらでも一時期閉鎖されていたが、今回の時空の裂け目の事態を受けて再び解放されたと聞いている

今やメゼポルタは「謎の裂け目対策本部」となって、現在も活動中のようだぞ

 

12:空の王者 ID:MH2nddosHr8

時空の裂け目は、今もシュレイドの上空に?

 

13:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

あぁ

……翼竜を何体か裂け目に送り込んだそうだがいずれも帰還せず、安全が完全に確認しきれないため、ハンターの動員を渋っているようだな

 

14:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……なんでそんなにモンハン世界(こっち側)の事情に詳しいん?

 

15:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

ミラオスが伝令役を買って出てくれてな、こちら側で起こっていることは、大抵やつが教えてくれる

……あと、ボレアス種(我々)がいなくなったことで調子に乗ってイキり始めたクソリーゼント(アルバトリオン)のこともな

帰る前に一回シバいとくか、アイツ

 

16:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あぁ、あのダサい髪型……もとい、天角のスネ夫か

 

17:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ミラ一族との不仲説、あの考察真実だったのか……

 

18:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

うーん、ちょっと……いや、かなり遠いわねぇ、これ……

 

19:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そういや、メゼポルタってどこにあるん?

公式からは具体的な場所を明言されてなくて、よくわからんのよね

 

20:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、さっきのルーツの発言からして……二つある説のうちの一つである「ドンドルマの近所説」はなくなったな

ドンドルマ付近なら、今いる場所から「かなり遠い」という発言にはならんだろうし、それならもうひとつの説である「バテュバトム樹海の近く説」が濃厚だろう

 

21:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そうそう、ちょうどバテュバトム樹海とは海を隔てた反対側……つまり大陸側にメゼポルタがあるのよ

時空の裂け目の危険性がはっきりしないからってことで、裂け目に近いドンドルマじゃなくてメゼポルタを調査活動の拠点にしたみたいね

 

22:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

よしっ、とりあえず適当に辻馬車捕まえて近場の村に行こうぜ!とりあえずココット村だな

 

23:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おりよくアプトノスの荷車が通りかかったぜ、早速乗り込むぞー!

 

24:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

そうだな、まずはこの大陸のことを知ってもらう必要があるか……ココット村で地図を入手し、その他諸々準備が整い次第出発だ

 

25:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……あっ、テル!お前いつの間に写真機なんて……

 

26:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ショウちゃんも気がついたか……なになに?「ラベン博士に押し付けられた」と……ちゃっかりしてんなぁ、あの人

 

27:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

よく知るポケモン以上の危険生物が跋扈しているからと、ごねる博士を必死に説得してなんとか我慢してもらったというのにあの人は……

 

28:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

好奇心はなんとやら……だな、博士には申し訳ないが、戦闘経験のないものを連れて行くことはできない

 

29:空の王者 ID:MH2nddosHr8

その代わり、今回同行することとなったテル、セキニキ、カイちゃん、ウォロの四人にはX四天王が預けられることになったんだよな

 

30:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

テル:ライゼクス

セキ:タマミツネ

カイ:ガムート

ウォロ:ディノバルド

 

こんな感じ

ただディノバルドとタマミツネに関してはショウちゃんが預ける前までは、それぞれディノバルドがデンボクと、タマミツネがムベと意気投合してたっぽいんだよな

ショウちゃんの留守を見計らって、なんか二人で勝負してたっぽいし

 

31:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

それはほら、ギンガ団の建築隊が巨大バトルフィールドを作ったでしょ?それで、そこでガラナとワサビちゃんが巨大ポケモンを使ったポケモン勝負をしたって報告も行ってるだろうし……なんか、影響されたんじゃない?

実際、鎧姿のデンボクおじさまとディノバルドはお似合いだったわよ?ムベ爺さまもタマミツネの素早い動きに対応した指示出しが出来てたし……相性いいんじゃないかしら?

 

32:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、あの人の「勝負を通して互いを知る」って言葉は決して悪いもんじゃないしな、ショウちゃんも納得してたし

 

33:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……そうこう話し込んでいるうちに、ココット村についたぞー!

うおおおおおおおおっ!!懐かしいぞー!!

 

34:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あぁ……これこれ、これだよ、この思わず「ただいま」って言いたくなるこの雰囲気よ、最高かよ

 

35:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

村一つでこうも一喜一憂できるとはな、相当思い入れがあるようだが

 

36:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ゲームで言うところの元祖村拠点、だからな

初代モンスターハンターの舞台でもあるわけで、そりゃあ興奮しないわけがない!

 

37:空の王者 ID:MH2nddosHr8

モンスターハンタークロスから過去作の村拠点に立ち寄れるようになったとはいえ、それはそれだ

この感覚……クロスシリーズじゃなくて、本当に当時の初代モンハンのココット村って感じでいいなあ……

 

38:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

それじゃあ、バルカン……いや、アカイ

情報収集をよろしく、ミラオスだけの情報じゃちょっと偏りがあるからね、こういうのは自分の足で調べないと

 

39:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

"自分の足"とか言いながら人をこき使うな、まったく……ついでにあのクソリーゼントをシバきに寄り道しても良いのなら

 

40:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

いいわよ

 

41:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

言質は取った

 

……覚悟しとけよ全身逆鱗万年ボッチクソダサリーゼントドラゴンがよおおぉっ!!

 

 

 

 

――「赤いなぁ……」が退室しました――

 

 

 

 

42:空の王者 ID:MH2nddosHr8

すぐラース化す(キレ)るやんwwww

 

43:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

情報収集って……今はまだ着いたばかりだし、時間制限があるとはいえ、そんな急ぎで必要か?

 

44:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

えぇ……ちょっと気になる情報があってね……いや、せっかくだから口寄せするか

 

45:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

 

46:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ちょ、まっ

 

47:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

私は光輝くんと焔くんのSAN値を生け贄に捧げ!

現れよ……煉黒龍、『グラン・ミラオス』!!

 

 

 

 

――「絶海はプライベートビーチ」が参加しました――

 

 

 

 

48:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

zzzzzzzzzzzzzzzzzzzz……

 

49:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや寝とるやないかいっ!!

 

50:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あっれー?まだ就寝時間じゃないって聞いてたのに……

おーい、おっきろー!

 

51:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

……んがっ!?むにゃむにゃ……

 

52:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

起きた?

 

53:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

……心頭滅却し無心になれば物欲センサー何するものぞ……グゥ……

 

54:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ありゃ、ダメだ

 

55:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

むー……ちょっとキツめにやってみるかな

 

……煉黒よ、我が声に応えよ

 

56:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

ハッ!?祖様に呼ばれたような!!

 

57:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

呼んだよー!起きてー!

 

58:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

あ、祖様ー、ご無沙汰してまーす

 

59:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

はいはい、ご無沙汰ー

それで?なんで居眠りカマしてたわけ?

 

60:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

いやー……ついさっきまで煌黒のやつが

 

煉黒!煉黒ー!なんで紅龍帰ってきてんの聞いてないんだけど!?

あ、紅龍!?ちょっとタンマ!待って待って謝るから!

ちょ、ちょちょちょっと待ってください!待って!助けて!?待ってください!お願いします!!

アアアアアアアッ!?

 

って脳内でずっとうるさくって回線切ってたんですよ、だから調子に乗るなって釘刺してたのに……

 

61:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

それで寝てたのね

 

62:空の王者 ID:MH2nddosHr8

というか別れてから真っ先にボコしに行っとるがなww

 

63:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

相当腹に据え兼ねたらしいな……

 

64:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

……ん?雷狼竜に火竜……あれ、でも気配が人間っぽいな?

 

65:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

初めましてグラン・ミラオス、ガワだけモンスターの元人間です

 

66:空の王者 ID:MH2nddosHr8

諸事情で別次元にいたが、こうしてこちらの世界にやってきたわけだ

 

67:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

あー、それは祖様から聞いとるわ、逃げた祖様の半身だろ?

まったく、タチの悪いことをしてくれたもんだよあの黒龍は……それで、祖様?俺に一体何のようで?

 

68:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あなたが掴んだ情報のいくつかを選別して、この二人に教えてあげて欲しいの

バルカンの方にも直接ドンドルマとメゼポルタに行って情報を集めてくるように伝えているから、生に近い情報はそのうち手に入るからね

 

69:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

了解ですわ……さて、何から話したものか

といっても、そちらの事情はこっちでも聞き及んでるんで、とりあえず一番重要な情報でも言いましょうか

 

70:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

どうぞどうぞ

 

71:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

では遠慮なく……メゼポルタの歌姫、ただいま不在です

 

72:空の王者 ID:MH2nddosHr8

えぇぇっ!?

 

73:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんっ……!?どこいったの!?

 

74:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

あー……ほら、シュレイドに時空の裂け目が現れてそのうえ祖様が裂け目の力で竜たちを拉致ってるんで、世界中で不安が広がってんのよ

人間が被害にあったって報告は今のところないんだが、それがかえって「いつ被害に遭うか」って不安に繋がっちゃってね……そのことを憂慮したメゼポルタの歌姫がギルドマスターに相談して全国行脚を始めたわけよ、いわばツアーだな

 

75:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おぉ、流石は歌姫……って、呼び方って歌姫でいいわけ?なんか名前ないの?妹には名前あるのに

 

76:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

『ラウラ』よ、彼女の名前

公的には名前は公表されてないけど、彼女の名前は確かにラウラというわ

 

77:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

妹がレイラだから、それに掛けてるのか

名前の一文字目がラ行、二文字目がア行、最後の一文字は姉妹ってことで同じと

 

78:空の王者 ID:MH2nddosHr8

くっそカンケーない話だけど……「ラウ」と「レイ」って聞くと一番にガンダムが出てくる

 

79:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

モンハン世界でガンダムの話をするんじゃない

 

80:空の王者 ID:MH2nddosHr8

すんまそん

 

81:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

続けるよ?

そんで、メゼポルタを中心にぐるっと回るって話になったみたいよ

まずはシナト村、次はチコ村その次がジャンボ村

そこから船に乗ってナグリ村へ行き、そのままレクサーラ、ジオ・ワンドレオと経由していって、メタペット、メルチッタと経由してココット村で休息を兼ねた慰安

その後は無事に山道の崖崩れが撤去できたんでミナガルデへ、そしてミナガルデからヴェルド、リーヴェルと進んでいき……今はドンドルマに向かってるんじゃないかな

 

82:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なかなかな強行ツアーだな

 

83:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

んで、ここから重要……現在、バルバレが滞在している大砂漠方面とドンドルマの間に位置する遺跡平原にて、ティガレックスがダイマックスして大暴れ中です

 

84:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おぉ、ティガが……なんて?

 

85:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

ダイマックス

 

86:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……マジで?

 

87:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

だから無策で向かったら死ぬよ、マジで

 

88:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

オ\(^o^)/ワ\(^o^)/タ

 

89:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

まぁ、大暴れとは言ったが突然のダイマックス化にティガレックスも対応できなくてほとんど動けないみたいなんだけどね

ただ、遺跡平原を通り過ぎようとするともれなく襲って来るけどね

 

90:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

それは初耳ね

それにしても、ダイマックスとは……十中八九、アノ子の差し金でしょうね、私たちが次元を渡ったことをしっかり把握しているとは……

 

91:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

おかげでハンターズギルドは24時間てんてこ舞い状態ですよ、ハンターを向かわせようにも、ティガレックスの咆哮でハンターはまるごと吹っ飛ばされるし、見たことのない攻撃を繰り出してくるし

しかも攻撃によってはいきなり天気が変わったりフィールドの足場がおかしくなるって報告もあるみたい

 

92:空の王者 ID:MH2nddosHr8

生態系上位種としても強力なティガレックスが超大型モンスター化したらそりゃあ阿鼻叫喚だわな……遺跡平原から移動できないことが不幸中の幸いか

 

93:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

しかもダイマックス技をしっかりと使いこなしてやがる……なんて厄介な……

 

94:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ところでダイマックスしたってことはやっぱデカくなったというわけで……どんだけデカくなった?

 

95:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

20倍だけど

 

96:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ファ?

 

97:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ヒョ?

 

98:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

26m3cmの20倍で520m60cmだけど

 

99:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

\(^o^)/オ\(^o^)/ワ\(^o^)/タ\(^o^)/

 

100:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやいやお前ダラ・アマデュラ超えてどうすんだよ超えていくモンハンじゃねえんだってそこは超えなくていいんだよ

 

101:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

だから今、世界中からバルバレやドンドルマに兵器が大量に輸送されているぞ、火力を集中させてダイマックスティガレックスを討伐するってさ

 

102:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……想像以上に悲惨な状況ね、それでラウラもドンドルマへ?

 

103:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

ハンター達への鼓舞と、怪我人の慰安が目的らしいです

まぁ、遺跡平原にダイマックスティガレックスがいちゃあ、陸路はもとより空路でさえ片っ端から撃ち落とされるから、南から海路を経由するしか大陸の東側に行けなくなってますから、ギルドも焦ってるんでしょう

それで少しでもハンター達を勇気づけるために、たまたま世界行脚をしていた歌姫に白羽の矢がたった、ってわけでしょうね

 

104:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

まったく!こっちだって時間がないのに、アノ子は本当に余計なことを……!!

 

105:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ん、ショウちゃん側でも話が終わったみたいだな

しっかし、しばらく大人役のバルカンがいないのはきついな……ルーツはあくまで子供役だし……

 

106:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

あ、じゃあ俺がそっちに行こうか?

煌黒も紅龍に処されたっぽいし、話し相手がいなくて暇なんよね

 

107:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

オイオイオイオイオイ、これ以上は禁忌モンスターで渋滞が起きるわ

 

108:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そうね……表向きの案内役は必要だから、お願いできる?

 

109:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

りょ、なるはやでそっちに向かいますわ……そいじゃあ、早速準備しよーっと

 

朝一でココット村に着くようにしますんで、よろしくー

 

 

 

 

――「絶海はプライベートビーチ」が退室しました――

 

 

 

 

110:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……また禁忌モンスターが来るのか……意外と自由なのね、あんたら

 

111:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

長く生きるとね、だんだんとやることなくなって暇になるのよ

長生きしすぎて暇だからって理由で人間界を征服するような長寿者だっているくらいだし、私たちはまだマシな方でしょ?

 

112:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、暴れられるよりかはマシだけど

 

113:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それな( σ´-ω-)σ

 

114:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ところで……どうやらショウたちも、ダイマックスしたモンスターの話を聞いたみたいね

なんとかしようって意思がビンビンに伝わって来るけど、どう?

 

115:空の王者 ID:MH2nddosHr8

「なんとかしたい」と言ったなら

 

116:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

応えてあげるが良き相棒

 

117:空の王者 ID:MH2nddosHr8

竜飛鳳舞・強理勁直 天統べる飛竜の王者、リオレウス()

 

118:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

電光雷轟・疾風迅雷 無双なる絶対の狩人、ジンオウガ(光輝)

 

119:空の王者 ID:MH2nddosHr8

世界を駆ける、看板モンスの二体には!

 

120:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

モンスターズライフ、良き狩り生活が待ってるぜ!

 

121:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……(;^_^)

 

122:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……あれ?

 

123:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

反応薄くね?

 

124:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ゴメン、それなんだったっけ?www

 

125:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ムコニャェ……

 

 

 

 




Q.なんでティガレックスそんなにデカくしたん?
A.とりまダラさんよりおっきくしたかったから

というわけで、モンハン世界での初戦は……ダイマックスティガレックスに決定!……いや、勝てるんかコレ……?


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狩人たちの世界へ……

竜と浪曼と!モンスターハンターの世界へ!レッツゴー!


アカイさんの友人だというムフェトさんと、彼の手持ちポケモンとのポケモン勝負……結果は私の敗北だった。巨大ポケモンを用いた6VS6のフルバトル……巨大なポケモンたちが縦横無尽に駆け回り技を繰り出す様は熾烈を極めた派手な勝負となった。

そして、古龍級生物ラージャン……あのマガイマガドに勝るとも劣らぬその力に、私の自慢のポケモンたちは全タテされてしまった。……やはり、古龍級生物の壁は高い。超えるには並大抵の努力では全然足りない、やはりリオレウスのような進化が必要かもしれない。しかし、メガストーンを飲み込んで進化って……いや、アカイさんの地元にはメガシンカ個体が野生個体として生息しているくらいだから、普通に進化できてもおかしくはないだろうけど……。

 

一勝負を終えた私たちは一度シンジュ集落に戻ることにした。コトブキムラに帰還するための荷造りをしなければならないからだ。そうして荷物をまとめている最中に、ソレは来た。

 

ズキッ!!

 

「ぐぁっ……!」

 

「ショウ!?」

 

あの、例の胸の痛みだ。よりにもよってみんなの前で……もうちょっとだけ耐えてよ……!

 

「う……ぐっ、うぅ……!」

 

「ショウ!ショウッ!!しっかりしろショウ!」

 

「ショウくん!?急にどうしたのですか!」

 

「わかりません博士!突然ショウが胸を押さえて……なんだか苦しそうです!」

 

痛い!痛い!!痛いっ!!心臓が鼓動を打つたびに、締め付けられるような痛みに襲われる!みんなが心配して駆け寄ってくれるけど、今の私にそれを気にかけている余裕はない……!

 

「あっ、があっ!うあああ……!!」

 

「おいっ、一体どうなってやがる!?」

 

「ショウさんに、一体何が起こっているの!?」

 

「ショ、ショウくんがなにかしらの病気にかかっているなんて話は、今まで一度も聞いたことがないのです!ショウくん、しっかりしてください!!」

 

「(みんなの、声が……だんだん、とおく、なっ……て……)」

 

「どいてっ!!」

 

一際大きな声とともに、何かが空から降ってきた。地面に降り立ったのは、古龍種キリンと、その背に乗ったシロちゃんだった……。

 

「ショウッ!!」

 

キリンの背から飛び降りたシロちゃんの鋭い声を聞くと同時に、その小さな手が私の背中に添えられた。……すると、背中がじんわりと暖かくなり、やがてその熱は全身に広がっていく……胸の痛みも、段々と引いていった。

 

「……がはっ!!はぁ……!はぁ……!」

 

「ショウ!大丈夫!?私の声、わかる!?」

 

「……シロ、ちゃん……?」

 

「……!あぁ、よかった……間に合ってよかった……!」

 

シロちゃん……なんだか、今までと全然違う雰囲気と喋り方をしてる。どっちが素の状態なんだろう……。

 

「……恐れた事態になったな」

 

「えぇ……最早一刻の猶予もないわね」

 

「どうする」

 

「私たちの故郷へ連れて行きましょう……確実ではないけれど、間違いではないはずよ」

 

「了解した」

 

「あ、あの?アカイさん、シロさん、お二人は一体何を……?」

 

なにやら意味深な会話をするアカイさんとシロちゃん……そんな二人に、恐る恐るといったふうにラベン博士が声をかけた。二人は一度お互いに顔を見合わせると、小さく頷きあった。それから、アカイさんが懐から一枚の紙を取り出した。

 

「ショウ、病み上がりのところ済まないが、これを見てくれ」

 

渡された紙を受け取り、そこに描かれた絵を見る。

それは、一体のドラゴンの姿だった。黒い体に大きな翼、鋭い爪と牙に口元に湛えられた火炎、龍の足元はまるで炎上しているかのように炎と一緒にがれきのようなものが描かれており、長く黒い尾は鋭さを思わせる。

絵は横顔だったが、私はそのドラゴンに見覚えがあった……そう、アルセウスが押し返そうとしていた、時空の裂け目から顔をのぞかせた、あの黒い龍だ。

 

「単刀直入に聞く。君はこの龍を見たな?嘘偽りなくはっきりと答えてくれ」

 

「……っ!!……見ま、した……」

 

「そうか……。あぁ、そうか……クソッ」

 

「……あの、このドラゴンがどうかしたのですか?」

 

「どうかもなにもない……君はこの龍によって呪いを掛けられている。君が感じている痛みは、その呪いが原因だ」

 

「……ッ!?」

 

「の、呪い!?」

 

集落中がざわ……ざわ……と、騒がしくなる。……まさか、あの時……目が合ったその時に……?

 

「ど、どういうことなんだショウ!呪いって!?」

 

「……実は」

 

私は槍の柱での出来事を話した。……ウォロのことは、まだアルセウスが私を帰せないとはっきりわかったわけではないので黙っておく。だから、「全てのポケモンと出会い、そののちにアルセウスと出会った」ことだけに留めておいた。……そして、アルセウスから分身を託された直後に、例の黒龍が姿を見せたことを話した。

 

「教えてください、アカイさん。……あの龍は、ポケモンは、一体何なんですか?」

 

ミラボレアス

 

答えたのはアカイさんではなく、シロちゃんだった。

 

「古龍目、源龍亜目、ミラボレアス科に属する古龍種……"黒龍"の別名を持ち、遥かな昔からその名が語り継がれる【伝説の黒龍】。

太古に栄えた古代文明の時代よりその存在は伝承され、各地に残る壁画や一族伝来の口伝などから自然をも超越する存在と謳われた厄災の化身。人間が繁栄を極めた大国『シュレイド』を一夜にして滅ぼした地獄の権化。

その名は個を指す名にあらず。"運命の戦争"、"運命を解き放つ者"、"運命の始まり"……あらゆる伝承から伝わる彼の存在を統括し表す言葉が、長い時を経て『特定の個体を指す呼び名』に変じた名。

邪龍とも呼ばれし彼の龍は、自分以外全ての存在を認めず、己の思うがままにその猛威を振るい、生物を超越した破壊の力を以ってこの世界の全土をわずか数日で焦土へ変える。世に災いを齎し、生きとし生けるものすべてを脅かす生ける災厄であり、その存在の前では"山の如き巨龍"でさえも恐怖に駆られ、その領地を前にすれば"古の龍"たちすらも踵を返し逃げ去ってゆく。

その存在を、正しく現実のものと認識する者は少ない……御伽噺と断ずる者もいるほどに。だが、黒龍が現実に存在し、そしてあらゆる伝承の全てが真実とされた場合……それはもはや生物の枠組みを超越した存在『ミラボレアスという現象』と評するより他にない……」

 

長々と話したシロちゃんはふぅ、と息を吐いた。ただ、話している間の雰囲気というか、その重苦しい言葉一つ一つに真実味があって、私たちは誰ひとりとして言葉を発することができなかった。

ただ、わかっていることは一つ……アルセウスが敵対している存在は、文字通り世界を滅ぼしうる存在だということだ。

 

「ミラ、ボレアス……」

 

「……"地は揺れ、木々は焼け、小鳥と竜は消え、日は消え、古の災いは消え、これらが続いて数か月後、シュレイドは消えた"。

……シュレイドに関する記録の中でも、滅亡したと思われる時期に記された国交書や民間の手記に、必ずと言っていいほど記されていた記述だ。

ミラボレアスは実在する。そして、その災厄の龍がこのヒスイ地方とすべての世界に牙を向かんとしている。アルセウスというポケモンは、その災厄から世界を守るためにミラボレアスと戦っているのだろう」

 

「……けど、ショウの呪いが日に日に強くなっているのを見るに、ミラボレアスの影響がヒスイに表れ始めているかもしれない……」

 

「……!!それって……、まさか……!」

 

「……一番最悪の想定……アルセウスが、ミラボレアスに敗北したかもしれない」

 

アルセウスが……!?

 

「馬鹿なッ!?シンオウさまが……アルセウスさまが負けたっていうのか!?」

 

「ありえないっ!!それが真実なら、このヒスイは……!?」

 

セキさんもカイさんも、声を荒らげている……当然だ、二人が属する組織はそれぞれディアルガとパルキアを信仰する組織……当然、二体の親元であるアルセウスのことは、信仰以上のものを感じているに違いない。

 

「……だが、事実だろう。もしもアルセウスがミラボレアスを倒していたなら、ショウの呪いがここまで酷くなることはない。生きていたとしても、深手を負ったことは想像に難くない。シロ、どうだ?」

 

「……ショウの呪い、かなり危険よ。もって半年……短いと、あと一月以内の命ね……」

 

「……ッ!?うそ、だろ……?」

 

先輩が絶望に染まった顔で膝をついた……かくいう私も、きっと顔色は真っ青になっているはずだ。最短一月、最長半年……後、一年も生きられないなんて……。

集落全体が、お通夜のような沈痛な空気に包まれる。そんな中で、アカイさんは小さく息をついた。

 

「……先ほどシロが言ったと思うが、今の我々にはショウの呪いを解く方法として、確実ではないが間違いではない方法が一つだけある」

 

「そ、それはなんだよアカイさん!教えてくれっ!!」

 

「落ち着けテル少年、今からちゃんと説明する」

 

藁にも縋るという言葉通りに縋り付いてくる先輩を引き剥がしつつアカイさんは説明してくれた。

 

なんでも、アカイさんの地元には歌声を用いて古龍種と共存を目指した一族が存在するらしい。現在は逆に龍の怒りを買ってしまい滅ぼされ、ほとんど生き残りがいないらしい。そして、その一族の生き残りであり"歌姫"と呼ばれる『ラウラ』という女性の歌には特殊な力が秘められていることが分かり、彼女はその歌の力を狩人たちのために与えてきたらしい。……素晴らしい人だ。

しかもその歌姫……ラウラさんは、住んでいた場所を二度も古龍種に滅ぼされるばかりか想い人がとある飛竜種のポケモンの狩猟で死亡した上、その人に師事して狩人になっていた生き別れの妹に恨まれるという、波瀾万丈なんて言葉が軽く思えてしまうほどに重い人生を歩んでいた。そのせいで一時期は歌えなくなってしまったそうだが……現在は立ち直り、歌姫としての役割を十全に果たしているんだとか。

 

アカイさんとシロちゃんが提案するのは、歌姫であるラウラさんの歌声と、龍の力を封じ込める滅龍石と、龍の巫女として古龍種と近しい存在であるシロちゃんの祈りによって、ミラボレアスの呪いを解呪しよう、というものだ。

 

「シロちゃん、そんなこともできるんだね……」

 

「まぁね」

 

「それで、アカイさんの故郷にはどうやって行くのですか?」

 

ラベン博士が至極最もな疑問をぶつける。……私の寿命は最短で一月なので、あまり時間をかけられないんだけど……。

 

「お答えしよう、その問いに。……シロ」

 

「はぁい」

 

アカイさんがシロちゃんに呼びかけると、シロちゃんは両手を組んで祈るように目を閉じた。すると、そこへ私たちから少し離れた場所にいたムフェトさんが近づいてきた。

 

「おぉ、()の力の一端を間近に見られるとは。いやはや、やはりお前の誘い乗ってよかったよバルカン!こりゃあ生きているうちに見られるかどうかのものだ!」

 

「いや、だから俺のことはアカイと……はぁ、もういい。それと、彼女のことは……」

 

「わかっている、他言無用だろう?」

 

「なら、いい」

 

……『祖』の力?シロちゃんって、何か特定のポケモンと深い縁でつながっているのかな……?

そうして物思いに耽っていると、シロちゃんの体から赤い雷のような力の本流が溢れ出した。やがてその雷が一点に収束すると、そこを基点に時空の裂け目が開いた……えっ!?

 

「時空の裂け目が!?」

 

「ど、どうして!!」

 

「……シロはな、君を呪ったミラボレアスと同種でありながらその存在を知る者がほとんどいない幻の龍、『祖龍』と深い繋がりがあるのだ」

 

「そりゅう……?」

 

「名は黒龍と同じミラボレアス……いわば、黒龍のリージョンフォームだな。

我々は黒龍との差別化のため、この祖龍を

"この世すべての竜種の起源"

"原点にして頂点"

"運命の始まり"

という意を込めて……ミラルーツと呼んでいる」

 

「ミラルーツ……」

 

この世すべての竜種の起源……それって、まるで、アルセウスのような……。

 

「……うん、大丈夫。繋がった」

 

「そうか」

 

まだ見ぬ『祖龍』に思いを馳せていると、シロちゃんが組んでいた手を解いてこちらへ振り返った。それを見たアカイさんも大きく頷いている。

 

「おいおいおいおい……さっきから何が起こってるんだ?時空の裂け目はアルセウスさまへの反逆を目論んだギラティナってポケモンが起こした現象だって聞いていたのに、どこからともなく現れた白い嬢ちゃんが同じことができるとは……」

 

「……アカイ殿、そちらの少女は一体……」

 

「私の親類だ、諸事情で預かっている。彼女が時空の裂け目を開くことができたのは、彼女の魂を通じて祖龍に働きかけたからだ。祖龍……いや、ミラボレアス種には、自力で時空間を渡る力があるからな。時空の裂け目の制御くらいは造作もないということだ」

 

「……つくづくとんでもねぇポケモンだな、ミラボレアスっつーのは……。時空の裂け目は開くわ、世界を滅ぼしうる力を持つわ、挙句の果てにゃ自力で時空間移動が可能ときたか……」

 

「"自然を超越する"というのは、そういうことだ。我々の常識や森羅万象の理程度で測りきろうなど愚の骨頂、軽視しようものなら命をもって償うこととなるだろう」

 

「……なるほど、な……」

 

(だからこそハンターは生物ですらないナニカに決まってる)

 

「アカイさん……?」

 

「いや、なんでもない」

 

コホン、と小さく咳払いをすると、アカイさんは改めて私の方へと向き直った。

 

「ショウ、我々はいつでも準備万端だ。空路や海路ではどうやっても一月以内に到着できないのでね、こういった手段を使わせてもらった。……君にとってコレが、因縁深いものであることは百も承知、しかし手段を講じている時間はない。

君の目の前には二つの"いく"道がある。生き延びるために行く(・・)か、命を投げ捨てて逝く(・・)か」

 

「……選択肢なんて、あってないようなものですね」

 

私は頬をパシン!と叩くと、改めて気合いを入れ直した。

 

「私は生きる……そのために、アカイさんたちの故郷へ行きます!」

 

「よく言った!」

 

「……!!ま、待ってくれ!おれも一緒に行かせてくれ!!」

 

私が決意を表明すると、我に返った先輩がすぐさま飛びついてきた。アカイさんは僅かに逡巡するが、頷いてくれた。

 

「構わない」

 

「でしたらボクも……」

 

「いや、博士はここに残って欲しい。これから我々が向かう場所は、雄大な自然の中で過酷極まりない弱肉強食だけが全てを物語る。……言ってしまえば、戦闘経験のない者を擁護できる余裕はない。かなりの強行軍になるのでな」

 

「うっ……」

 

アカイさんに諭されて、ラベン博士は苦い顔になる。実際、ラベン博士はポケモン勝負が得意ではないし、むしろ博士だし。対して、ポケモンによる戦闘能力があるテル先輩は見込まれた、ということだろう。

 

「しかし、テルだけで大丈夫か?」

 

「……私たちもついていけたらいいんだけど、団を放っておくことはできないし……」

 

「あら、あまり舐めてもらっては困りますよ、カイ」

 

「えっ、ガラナちゃ……ん"ん"っ!ガラナ、どういうこと?」

 

セキさんとカイさんが難しい顔をしていると、後ろからガラナさんが声をかけてきた。一瞬、昔の呼び方が出そうになったのかカイさんが咳払いをしている。

 

「先程までの話を聞いて、一つ考えが浮かびました。……コンゴウ団、シンジュ団に設立する調査隊の件、前倒しで実施できないものか、と」

 

「……あぁ、例の件?でも、前倒しって……」

 

「そちらのアカイ殿の故郷……住まうポケモンたちはほとんどが巨大ポケモンばかりだと聞き及んでいます。ですので当然、ショウさまが巨大ポケモンを連れ歩くは必定……しかし、今後も今回のような時空の歪みが発生しないとも限らない。ですので、ショウさまのポケモンたちの中から全てとは言わず数体だけを借り受け、団長が不在の間にポケモン調査の慣熟訓練をこなしておきますわ」

 

「えっ、それじゃあ……」

 

「……いや、それならイケる、のか……?ワサビ、どうだ?」

 

「全然大丈夫だよ!他のキャプテンや団員のみんなにはあたしから伝えておくから、セキさんも行ってきなよ!ううん、絶対に行ったほうがいい!」

 

「お、おう……千里眼でなにか見えたのか?」

 

「ううん、全然!だからこれは、あたしの勘!!」

 

「いや、自信満々の割には勘かよ!……だが、ありがとうな、ワサビ」

 

「どういたしまして!」

 

……なんか、しれっと重大な情報が流れていかなかった?ワサビちゃん、千里眼が見えていないの?私がそっちを見ながら首を傾げたのが見えたのか、ワサビちゃんがそっと駆け寄ってこっそりと耳打ちしてくれた。

 

「……実は、さっきまでは見えてたんだけどね……そっちの赤い男の人と白い女の子が見えてからは、急に砂嵐みたいになって見えなくなったの……なんでだろう?」

 

「(ワサビちゃんの千里眼はテレビタイプだった……だと……?)」

 

千里眼が見えなくなったのって、祖龍さんがなにかしたのかな。時空間移動できるらしいし、出来たとしても不思議ではないか。

 

「ふむ……テル少年、セキ殿、カイ殿……あと一人、猛者が欲しいところだが……」

 

「ジブンが参りましょう」

 

その声に、全員が一斉に振り返った。……特に私は光の速さもかくやとばかりの速さで。

そこにいたのは……かつて、槍の柱で袂を分かち、世界の命運を賭けた勝負をした因縁の敵……。

 

「……ウォロ……」

 

「…………」

 

実に久しぶりに見た顔……ウォロは、神妙な顔つきで私をジッと見つめていた。服装は最後に見た変な衣装ではなく、見慣れたイチョウ商会のものだ。

 

「君は?」

 

「初めまして、ですね。ジブンはウォロと言います。イチョウ商会の者ですが、イチョウ商会のことはご存知ですかね?」

 

「イチョウ商会……あぁ、なるほど。それで、勝負の腕前のほどは?」

 

「私が保証します」

 

ここであえて、私はウォロをフォローする。実際、本気のウォロと勝負したのは私だけだ。そして、ヒスイでもポケモン勝負が特に強い私が肯定するということは、それだけで彼の実力が認められたようなもの。

……ぶっちゃけ、時間が惜しかったので有無を言わせたくなかっただけだったりする。

 

「ほぉ……ショウが認めるほどか。ならば、信用としては申し分ない。ウォロ殿、協力してもらうぞ」

 

「喜んで」

 

……さて、セキさんとカイさんから微妙に戸惑った雰囲気が感じられる。それもそうか……二人が知るウォロは、好奇心旺盛で飄々とした、それでいて掴みどころがない人物だ。

私だけが知る、本性を現した状態のウォロ……好奇心旺盛はそのままに冷静になった、素の状態とも言えるこのウォロを知る者はほとんどいない。

……アカイさんと話し終えたウォロが、私に近づいてきた。

 

「……少し会わない間に、大変なことになりましたね」

 

「おかげさまで……それより、もう二度と会うことはないと思っていたのですが?」

 

「先程そちらのアカイ殿から、委細聞き及びました。……まさかアルセウスを倒してしまうポケモンがいるとは、ワタクシとしても想定外でした」

 

「……それで、ジンオウガたちの故郷に行けるいい機会だと、首を突っ込んできたわけですか」

 

「それもまあ、あります。ないとは言い切れませんね。……ただ」

 

「ただ?」

 

「……アルセウスが創造したこの世界を滅ぼそうなどと、そのようなことを目論んでいると知って、ワタクシが黙っていられるとでも?」

 

「ああ……」

 

流石はアルセウス狂信者……やっぱりそんなことだと思ったよ。ある意味、期待を裏切らない男だね。

 

「……さて、諸々の準備が必要だろう。出発は明日、明朝とする。

……ショウ、焦る気持ちはわかるが、だからこそ冷静にならねばならん。今の君の顔色は、冗談にならないくらいに悪い。ポケモンたちの選別も必要だろう……今日のところは、ムラに戻りたまえ」

 

「……はい、わかりました……」

 

うっ……表に出さないようにと意識していたけど、やっぱりアカイさんにはバレバレか……。

結局、この日はそのまま解散となった。時空の裂け目はこのままシンジュ集落に開いておくそうなので、私たちはそれぞれの拠点へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コトブキムラに戻ってからは、明朝に向けて準備のためにせわしなく動いた。

まず、コンゴウ団とシンジュ団の調査隊発足のためのポケモン選び……私はグラビモス、ラギアクルス、ベリオロスの三体にした。理由としては、いざ戦闘になった際にグラビモスだと機動力に難があること、ラギアクルスとベリオロスはそれぞれ得意とする環境の戦場があることで、なるべく場所や状況を選ばずに戦えるとなれば、ジンオウガとリオレウスしかいなかった。

次に選別したのは、テル先輩たち同行者組に預けるポケモンだ。巨大ポケモンが跋扈する場所で、普通のポケモンだけではどう考えても戦力不足だ。ドスジャギィ達のような中型ポケモン程度なら、工夫次第で私たちもよく知るポケモンたちで対処可能だが、それ以上の大きさとなるジンオウガたち大型ポケモンが相手となると、力の差は歴然だ。

力関係で言えば『一般ポケモン=中型ポケモン≦極みポケモン<大型ポケモン<古龍級生物≦古龍種<禁忌ポケモン』となる。"禁忌ポケモン"というのは、シロちゃんから教えてもらったポケモン郡で、ミラボレアスをはじめとする世界で数体のみしか存在しない"世界規模の被害をもたらすほどの力を持つ"存在……らしい。

 

さて、話が逸れた。そうして選んだ結果、テル先輩にライゼクス、セキさんにタマミツネ、カイさんにガムート、ウォロにディノバルドを預けることとなった。……なんとなく"電の反逆者"の異名を取るライゼクスとウォロの組み合わせが浮かんだけど、あのウォロに空戦能力を持つポケモンを与えるのは不安だったので、ライゼクスはテル先輩に任せることにした。一方で私はというと、極み個体であるダイケンキ、ライチュウ、ガブリアスの三体と二つ名個体であるミミロップ、ジンオウガとリオレウスの計六体が手持ちになる。テル先輩たちも同じ考えのようで、先輩はジュナイパー、セキさんはリーフィア、カイさんはグレイシア、ウォロはトゲキッスのみを連れて行くことにしたようだ。

当初の予定通りグラビモスをコンゴウ団に、ベリオロスをシンジュ団に、ラギアクルスをガラナさんとススキさんの二人にそれぞれ預け、私たちは明朝にシンジュ集落へ集まった。

 

時空の裂け目を前に整列する私たち……そんな私たちの前に立つアカイさんは、一度こちらへ振り返った。

 

「……さて、今更問うようなことではないが、敢えて問おう。覚悟のほどは十分か?」

 

「無論です」

 

「もちろんだ!」

 

「いつでもいいぜ」

 

「大丈夫だよ!」

 

「問題ありません」

 

「よろしい。……今回の旅の目的は、ショウに掛けられた黒龍の呪いを解くことだ。期限は最短日数の一ヶ月を想定するので、そのつもりでいるように」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「では……ムフェト」

 

「心得た。お前たちが不在の間は、私がヒスイに留まるとしよう」

 

「頼んだぞ。……行こうか、シロ」

 

「わかったわ」

 

先導者として、シロちゃんが最初に入っていく。続いてアカイさんが入っていき、そのあとに私たちが続いた。

時空の裂け目の中は、いくつもの次元が物凄い速さで通り過ぎていく光景が広がっていた。あまりの速さに目では追いきれず、ただただ圧倒されるだけだった。

 

「不用意に動くなよ?別次元に飛ばされるかもしれないからな」

 

「わかってます」

 

「すげぇ……こいつが時空の裂け目の中か……!」

 

「……ショウさんは、ここを通ってきたんだよね?」

 

「えっと、はい。……ただ、あの時はこれほど賑やかな景色ではなかったかと……」

 

セキさんが興奮気味に呟き、カイさんが私がヒスイに来た時のことを尋ねてきた。……あの時は、アルセウスに導かれる形でやってきたから、目の前に広がる景色は初めて見る。テル先輩は……絶句しているのか、だんまりだ。ウォロも沈黙……いや、よく見たら目の奥が輝いている。好奇心旺盛は相変わらずか。

しばらくの間、流れていく景色に目を向けていて……途中で気がついた。

 

「(あれ?シロちゃんは?)」

 

一番最初に入ったはずのシロちゃんの姿がどこにも見えないのはなぜなのか。アカイさんも気にした様子はないし、一体……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ギュアアアァァァァンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その時だ。どこからともなく甲高い咆哮が聞こえ、裂け目内部の空間を大きく揺らした。

 

「な、なんだ今のは!?」

 

「ポケモンの……声……?」

 

「ほぅ……珍しいな、ここまで出血大サービスとは」

 

「アカイさん……?」

 

「皆、目を逸らすな。一瞬の瞬きすら惜しめ。……今、幻が降臨するぞ」

 

アカイさんがそう言った直後、私たちの足元に何かが飛んできた。大きく翼を広げたそれは、一息に私たちを追い越すとそのまま眼前に陣取った。

 

 

 

 

――輝く白い鱗と体毛――

 

 

――禍々しくも神々しい壮麗な純白の翼――

 

 

――煌々と輝く王冠の如き4本の角――

 

 

――全てを見透かすかのような澄んだ真紅の瞳――

 

 

 

 

姿形はまるで同じ……しかし黒龍ミラボレアスと対を為すかのような、真っ白なドラゴンが目の前に現れた。

 

「……うつくしい……」

 

果たして、それを呟いたのは誰だったか。誰もがその白いドラゴンから目を離せず、瞬きすら出来ずにいると、白いドラゴンはそのまま踵を返して私たちよりもはるかに速い速度で遠く前方へと飛んで行き、消えていった。その直後、目の前が強烈な光を放ち始め、目を開けてられなくなり思わず目を閉じた。

 

 

 

 

――ギュアアアァァァァンッ!!

 

 

 

 

私は意識を失った……遠くにポケモンの声を聞きながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――!」

 

「……ん、ぅ……」

 

「……ショウ!」

 

「うっ……あ、あれ……?」

 

誰かに呼ばれて、私はゆっくりと目を開いた。……たしか、時空の裂け目で白いミラボレアスを見て、それから……?

 

「あぁ、よかった!無事に到着できたみたいね」

 

「……シロちゃん?」

 

「うん、シロだよ?」

 

私を呼んでいたのはシロちゃんだった。……一瞬、シロちゃんの向こう側にあの白いミラボレアスが見えたような……。……気のせい、かな……?シロちゃんもあのミラボレアスも同じ色白で真紅の瞳だから、きっと見間違えただけだろう。

 

「それにしてもびっくりしたぁ。いの一番に着いたから出口を維持してたら、ギャグマンガばりにみんなボトボトと降ってくるんだもん。狙ってるのかと思っちゃった」

 

「……あ!そうだ!みんなは……」

 

私は慌てて辺りを見渡す。そういえば、みんなの姿が見えない!一体どこに……!

 

「先ほど駆け抜けていったのがドスファンゴといって、ファンゴの成体だ。空を飛んでいるあれはホルクと言って……まぁ、鷹だな。遠くに群れが見えるだろう?あれはアプトノスという草食竜の群れだ」

 

「すっげー!すっげーっ!!」

 

「おい、テル。さっきから語彙力が……まぁ、言いたい気持ちはわかるけどな」

 

「……でも、本当にすごいよ。ヒスイと同じ……いや、それ以上に力強い大自然と、そこに生きるポケモン……ううん、モンスターたち。生命の輝きが、こんなにも身近に感じられるなんて……」

 

「世界一つ、環境一つ変わるだけで、ここまで変化するとは……久々に好奇心が刺激されました!ちょっとそこまで見に行っても?」

 

「ダメだ」

 

「ダメぇ!?いやいやそんなケチなこと言わないでくださいよ!ちょっとだけ、本当にちょっとだけですから!」

 

「ダメなものはダメだ」

 

「そんなぁ……」

 

…………。

 

「……私が一番最後だったんだね」

 

「一番最初に起きたのはウォロさんだったよ」

 

「ぐぎぎぎぎぎぎ!」

 

ショウ、女の子がしちゃいけない顔になっちゃってるよ?

 

なんでよりにもよってウォロが一番に目覚めてるんだふざけやがってぇ!

 

「それより、アカイから聞いたよ!すっごいラッキーだったね♪」

 

「ラッキー……って?」

 

「時空の裂け目の中で、白いミラボレアスを見たってアカイが言ってたよ。

……ショウ。あなたたちが見た白いミラボレアス、あれこそが『祖龍ミラボレアス』。通称、ミラルーツだよ」

 

「……ッ!?あ、あれが……!!」

 

「ショウが槍の柱で見た黒龍ミラボレアスは、祖龍ミラボレアスの分体なんだよ。祖龍は時々、分体として黒龍を創造するみたい。……溢れる力を分散させて抑制するためなのか、人間に試練を与えて試すためなのか……真相は定かじゃないけどね」

 

「ぶ、分体……」

 

私に強烈な呪いを植え付けたあの黒龍が、祖龍の分体……黒龍であれほどなんだから、祖龍は最早想像の域を超えている。人間の手には負えないんじゃないかな……。

私が改めてミラボレアスという存在に呆然としていると、シロちゃんは立ち上がってみんながいる方へ声をかけた。

 

「みんなー!ショウが起きたよー!」

 

「……!ショウ!!」

 

シロちゃんの声に一番に反応したのは、先輩だった。……さっきまで「すっげー!」を連呼してはしゃいでいたのに、こういう時だけ……ふふっ♪

 

「ショウ!よかった……このまま目が覚めないんじゃないかって、おれ……!」

 

「やれやれ……直前までの自分の言動を省みたまえ。まぁ、その切り替えの速さには素直に感服するがな」

 

「うぐっ……」

 

痛いところを突かれたとばかりに、苦い顔になる先輩。あとから追いついてきたセキさんたちも、苦笑いを浮かべている。

 

「……アカイさん、ここは……」

 

「待て」

 

私が尋ねようとすると、アカイさんは即座に待ったをかけてから、地図を取り出した。地面に広げられた地図……ヒスイ地方とは全然違う大陸の形に、まったく知らない場所に来たんだという実感が沸いてくる。

アカイさんは地図の中の左側……広い大陸の、ほぼ左端よりもちょっと内陸部分を指で差した。

 

「我々の現在地はここ、アルコリス地方……『森丘』という名称で知られる狩り場付近に居る。ここから最寄りの村である『ココット村』に向けて北上する。なるべく日が暮れる前にたどり着きたいところだが、なにか質問は?」

 

「オレからいいか?アカイの旦那は歌姫の力を借りるっつってたが、その歌姫はどこにいるんだ?」

 

「歌姫がいるのは、ここだ」

 

そう言ってアカイさんが指差した場所は、地図的には真反対……右側の端に近い場所だ。

 

「……って、真逆かよ!?」

 

「……歌姫はここ、『メゼポルタ』にいる。我々の目的地でもある」

 

「だったら、どうして真反対のここに出てきちゃったの?」

 

「……ごめんなさい。時空の裂け目を開いたり閉じたりは出来るんだけど、場所までは選べなくって……。私がもっと祖龍様と強く結びつけていれば……」

 

「ああ!シロちゃんを責めているんじゃなくってね……!えぇと、ごめんね!」

 

カイさんの疑問は尤も……だけど、結果的にシロちゃんが落ち込んでしまったせいで、慌てて謝罪をしている。……うん、誰もシロちゃんを責められないもんね。

 

「では、ひとまずはこちらのココット村を目指す……ということで、よろしいんですね?」

 

「そういうことだ、ウォロ殿。なににつけても休める場所は必要だ、その点で言えば村の近くに出てこれたのは僥倖と言えるだろう」

 

「そうだな……この南の方って、絵的に砂漠っぽいよな?こんなところのど真ん中じゃないだけ良かったよ」

 

「だな。テルの言うとおりだ」

 

セキさんが同意するように、テル先輩の言うとおりだと私も思う。北にある雪の島だとか、南の砂漠だとか、高い山の中だとかじゃなくてよかった。確かに目的地からはとても遠いけど、幸先は決して悪くはないと思うし。

 

「それじゃあ、早速ココット村って場所に行きましょう。日暮れまでに着けばいいんですよね?」

 

「無論。……あぁ、そうだ。ショウは最後に目覚めたから、この大陸における注意事項をよく聞いてくれ」

 

「はい」

 

アカイさん曰く……この世界ではポケモンのことは『モンスター』と呼称するように、とのこと。呼び方からして、根本的に違うらしい。

ジンオウガやリオレウスのような巨大ポケモンは、無闇に人前に出さないこと。……特に、ダイケンキたちはなおのことで、人前に出せば新種のモンスターとして調査されかねないので気をつけるべきだとか。

そして……モンスターの殺生に関して、なるべく口を挟まないこと。この大陸ではモンスター……ポケモンを殺し、その体から素材を得ることで生計を立てている『ハンター』が主な稼ぎ口らしく、彼らは"生きていくうえで必要なこと"だからモンスターを狩る。だから、彼らに対して"狩るな殺すな"はNGで頼みたい、とのこと。

私はそれらの注意事項に同意し、早速ココット村を目指して出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩き続けること数時間……私たちはようやくココット村に到着した。

ココット村は、なんというか……不思議と懐かしさと高揚感を感じさせる場所だ。村全体としてはコンゴウ集落やシンジュ集落とそう規模は変わらないのに、広く大きく感じるのはなぜだろう……。

 

アカイさんは迷うことなく村の中心部へ歩いていく。右も左も勝手すらわからない私たちは、黙ってアカイさんについていくだけだ。

 

「ご無沙汰しております、村長殿」

 

「ン……?おぉ、貴殿か。随分と久しぶりじゃあないか。最後に会ったのは……」

 

「十年以上前に、黒龍がシュレイドに出現した時ですね」

 

「おぉ、そうじゃったわい。……あれから十数年、シュレイドが再び不穏に包まれておる。貴殿も知っておろう?」

 

「えぇ……アレ(・・)、ですね?」

 

……アカイさんと話をしている、この人……ポケモン、じゃ、ないよね……?老人にしては背が低すぎるし指は四本しかなく耳も尖っている。でも、普通に人間の言葉が通じているし……一体何者?

 

「それにしても、貴殿に連れがいるとは意外じゃな。貴殿はいつも一人じゃったろうに」

 

「少々事情がありまして、旅人の真似事をしているのですよ。こちら、左からウォロ、セキ、カイ、テル……そして、シロと、ショウです」

 

「ふむ、随分と大所帯じゃな。何もないところではあるが、ゆっくりしていくと良い」

 

村長さんは朗らかにそう言って、私たちを歓迎してくれた。……いやいや、こんな背格好もバラバラの集団なんて、怪しさしかないだろうに……。

……と、私がしょうもない疑問を抱いていると、村の奥から全身を鎧で固めた重武装の集団が歩いてきた。一人は巨大な剣、一人は巨大な槍と盾、一人は砲口のついた槍と盾、一人は弓である。彼らの足元には、同じように鎧を纏って武装した二足歩行の猫たちが追随していた。

彼らに気づいた村長さんも、そちらへと振り返った。四人のうち、巨大剣を背負った人が村長に声をかけてきた。

 

「村長殿」

 

「おや、ハンター殿。もう出発するのか?」

 

「えぇ、怪我を負った仲間の傷が癒えましたので。我々ハンターの急な受け入れ、感謝します」

 

「なに、気にするでない。ハンターの力になれたならば重畳、それこそがワシらの望みじゃて」

 

「……本当に感謝する。必ずや、あの巨大ティガレックスを狩猟してみせます」

 

「俺らが休んでいる間にも、各地からハンターが集まってるらしいからな……いいとこどりされる前に、とっとと戦線に復帰しねえとな!」

 

「しっかし、あのバカでっかいティガレックス、いったいどこから現れたんだ?観測所によれば、空が赤くなったかと思うといきなりデカくなったって話だが……」

 

「関係ないでしょ。僕らはハンター……人類を脅かすモンスターがいれば、これを狩猟する。それが役目なんだし、相手が誰であろうと変わらないよ」

 

「へいへい~、真面目くんは偉い子でちゅね~」

 

「馬鹿にしてんだろ!?」

 

「おい、そろそろ行くぞ。……村長殿、それではまた」

 

「うむ、気をつけるんじゃぞ」

 

会話が終わり、四人の男性たち(声で把握)は東の方角へと歩いて行った。……それより、気になる情報がいくつか出てきたな……。

 

「あの……」

 

「ん?君は……そうだ、ショウ殿、だったな」

 

「はい、村長さん。……あの、さっきの話は……」

 

「うむ……そういえば、お主らは旅をしている、という話だったな。残念だが、この大陸の東側に行くには南下して海を渡る以外に術はないのじゃ、申し訳ない」

 

「あぁ、いえ!お構いなく!……それより、先ほど巨大化したポケ……モンスターがいる、というのは……」

 

「ふむぅ……貴殿。貴殿も聞いておくか?」

 

「えぇ、現大陸に帰ってきたのも最近のことなので、少々世情に疎く……」

 

「相分かった、聞かせよう」

 

そう言って、村長さんは現在この世界で起こっていることを話してくれた。

 

 

 

 

 

~数ヶ月前~

~遺跡平原にて~

 

 

 

 

 

「ふわぁ……」

 

「おい、不謹慎だぞ」

 

「っと、すまん」

 

空を浮かぶ気球の中、望遠鏡を覗き込む男があくびをしたところ、相棒のもう一人の男が注意した。彼らは望遠鏡を通して各地に存在する古龍の動向を観測することが始まりとなった『古龍観測隊』であり、大元となるドンドルマに存在する『古龍観測所』からの指示で各地を飛び回っているのである。

現代では古龍以外のモンスターも積極的に調査しているとはいえ……元々は古龍種という強力無比な存在を観測するという役職であった以上、のんびり欠伸なんてしている場合ではなく、一切の余談と緊張が許されない仕事だ。しかし、男が欠伸をするのも、ある意味では無理らしからぬことであった。

 

「だってよぉ……古龍や他のモンスターならいざ知らず、ただ漠然と"世界各地を観測し、これを常とし怠らないこと"なんて言われても、ねぇ……」

 

古龍観測所からの命令である『世界各地を観測し、これを常とし怠らないこと』という内容に対して、男は懐疑的であった。反面、紙に筆を走らせている真面目な男は、これまた真面目な調子で返した。

 

「そうせざるを得ないだけの理由があることを、お前も知ってるだろう?」

 

「知ってるよ……アレだろ?シュレイドの上空に出てきた、変な裂け目。あれが出てきてから、こう……ケチが付いてばっかりじゃないか」

 

「ケチ、って……お前なぁ」

 

「世界中からいろんなモンスターが忽然と姿を消すし、なによりあの裂け目が出てきたせいでミラボレアスに逃げられたって話だぞ。

ミラボレアスだぞ、ミラボレアス!かつてシュレイド王国を一夜にして滅ぼした伝説の黒龍!御伽噺が実在したかと思いきや、謎の怪奇現象に自ら突撃して行ってどこへともなく行方を眩ませたって、もう世界中で知らない人間はいないぞ」

 

「……本来、ミラボレアスの一件は秘すべき情報だが……」

 

「そうも言ってらんねえだろ。あの変な裂け目がなんなのか、未だにわかってないんだから」

 

シュレイドの上空に出現した、謎の裂け目……ヒスイ地方で『時空の裂け目』と呼ばれている裂け目が出現してから、奇妙なことばかりが起きていた。

まず、シュレイド城で討伐作戦中だったミラボレアスが、裂け目の内部へと逃走し姿を消した。次に、世界各地で一部のモンスターが姿を消した。狩猟直後にモンスターの遺体が飲み込まれるところを見たと言う報告もあれば、狩猟中に突如現れてモンスターを吸い込んだ、という報告も上がっている。最近では、秘境の塔にまで謎の裂け目が出現したという報告が上がっている。

これらの現象が立て続けに起こっているため、予断を許さないと判断したハンターズギルドは古龍観測所に打診。その結果、24時間態勢で古龍観測隊が世界中を飛び回る事態となったのだ。この気球に乗っている男たちも連日飛び続けていて、つい最近ようやく休みが取れたかと思うと、翌日にはまた出発、とハードなシュケジュールをこなしている。

ブラックかな?

 

「一応、あの裂け目の調査は続けられている。……進捗については聞くな」

 

「デスヨネー。……はぁ、今までどれだけのモンスターがいなくなったんだか……」

 

「最初はミラボレアス。その後はジンオウガ、グラビモス、ラギアクルス、リオレウス、ベリオロス。そこからさらにゴシャハギ、ホロロホルル、オドガロン亜種……直近ではキリン、ディノバルド、イャンクック、タマミツネ、ドスジャギィ、ドスフロギィ、ドスバギィ、ライゼクス、マガイマガド、ガムート、ラージャン、ムフェト・ジーヴァ……」

 

「後半のラインナップのえげつなさよ。古龍まで巻き込むとか、いよいよ厄ネタの予感だぜ……」

 

「ただ、不思議なことにこれらのモンスターは最後の一体を除いて全員にある共通点がある」

 

「あぁ~……偶然で片付けられた、アレか」

 

「そう、アレ」

 

「「全員名前が六文字以下」」

 

二人声を揃えて言ってみたものの、当然なんの意味もなく無駄にため息だけが出た。

 

「……そのうち、名前が六文字以下のモンスターがみんないなくなったりして」

 

「おいばかやめろ、生態系ぶっ壊れるだろ」

 

「だよねー、草食種のモンスター郡なんて大半が名前六文字以下だし、食物連鎖に大きく影響が出そうだ」

 

「それだけではない。……アイルーが絶滅したらどうすんだ」

 

「あっ」

 

『アイルー』とは、猫の姿をした獣人族であり、人間の生活にも密接に関わっている存在だ。アイルーに仕事や狩猟の手伝いをしてもらったり、地域によってはオトモや食事に農場の管理すらアイルーに任せている場所もある。もしもそれが全部いなくなったら……想像しただけで、男たちはゾッとした。

 

「……それ、は、そこはかとなくヤバいな……」

 

「実際、世界中からアイルーがいなくなったらいろいろと死活問題が起きそうだな」

 

「それだけじゃないぞ……プーギーとかグークとかフルフルとか、俺たちの大事な癒やしまでいなくなっちゃうじゃないか!」

 

「最近、カムラの里からやってきて現大陸で流行り始めた、新たなオトモの存在もな」

 

「あぁ……『ガルク』、だっけ?確かにアレも便利だよな。……いや、いなくなったらマジで困るんだが!?」

 

「だからこそ、可及的速やかにこの事態を解決しなければならない。我々古龍観測隊は、その糸口を掴むために、日夜こうして飛び続けているんじゃないか」

 

「そうだ……そうだったな!よぉーし、頑張って観測続けるぞ!おーい!解決の糸口、出てこーい!」

 

「いや、呼んで出てくるもんかよ」

 

すっかり調子が戻って望遠鏡をのぞき始めた男に、相棒男は呆れながらも笑みを浮かべた。彼らは現在、遺跡平原付近を飛行している。ミラボレアスの後にいなくなった、リオレウスとライゼクスが住処としていた場所だ。

 

「……そういえば」

 

「どうした?」

 

「最近になってわかったことだが、遺跡平原に生息していたリオレウスのことを覚えているか?」

 

「あぁ、アイツか……」

 

「ハンターに狩猟された直後、襲撃してきたライゼクスが遺体を持ち帰った、あのリオレウスだ。そのリオレウスがライゼクスとともに竜の巣にいたところ、例の裂け目に飲み込まれたそうだ」

 

「死体を飲み込んだってのか?……あぁ、ライゼクスの暴走が始まったのも、ちょうどその頃か」

 

「実はリオレウス狩猟中の同時刻に、リオレウスの番のリオレイアも狩猟されたんだが……」

 

「……え、まさか?」

 

「あぁ……リオレイアの死体が見つかっていないらしい。おそらくは、ディノバルドらとほぼ同時に吸い込まれた可能性がある……と、龍歴院では予測を立てている」

 

「マジかぁ……骨すら残ってないわけ?」

 

「あぁ、ない。だから、他のモンスターに死肉を漁られた、というわけではないようだ」

 

「……あの裂け目、変な収集癖を持ってるんじゃないだろうな?」

 

「生きてたら、ありえるかもな」

 

「やめろよマジで」

 

望遠鏡を、右へ左へ。この時、男の視界に一体のモンスターが写りこんだ。

 

「おっ、ティガレックスだ」

 

「なに?どこだ?」

 

「ほら、あれ。遺跡平原に向かって突っ走ってる。住処を変えた個体かもな」

 

位置を変え、相棒男が望遠鏡を覗き込んだ。

 

「ほう……かなり大きい。金冠サイズじゃないか?」

 

「はぁ……人間は忙しなくあれこれ動き回っているっていうのに、モンスターは呑気でいいね。俺も都会に引っ越したい」

 

「ドンドルマに来るのか?それともロックラック?」

 

「いや、ジャンボ村」

 

「……お前の中の都会とは一体」

 

「うるさいっ。住めば都だし、好みの問題だろうが!」

 

男二人、軽口を叩きあっていた……その時だ。

 

「……ん?なんだ!?」

 

「お、おい!なんだこれは!?」

 

男たちは突然声を荒らげた。というのも、突然、遺跡平原上空の空模様がマゼンタ色の渦巻く暗雲へと変わったのだ。どうやら遺跡平原の上空のみが変化しているようで、遺跡平原から離れた場所の空は変わらず青空が広がっている。

 

「また奇っ怪な現象が……観測所へ報告を!」

 

「いや、待て!まだ何か起きるぞ!!」

 

相棒男が手紙を書こうとしたところを、男は待ったをかけた。あれを見ろ、とばかりに差した指先を目で追えば、渦巻く暗雲の中心から赤い柱とも言うべき光が一直線に放たれた。その先にいたのは……。

 

「あれは!」

 

「金冠サイズのティガレックス……!」

 

ティガレックスも、突然変化した空の様子が気になったのだろう、足を止めて空を見上げていたようだった。そこへ、赤い光の柱が伸びてきてティガレックスに直撃。ティガレックスを覆い尽くすように、赤い粒子があたり一面に飛び散った。それらの粒子が、ティガレックスに吸収されるように消えていった、その直後。

 

「な――」

 

「は――」

 

ティガレックスが、巨大化した。

 

「なああぁぁぁぁっ!?」

 

「はああぁぁぁぁっ!?」

 

男たちはそろって絶叫した。そして、絶叫したい気分に駆られたのは、どうやら人間だけではないようだ。

"轟竜"ティガレックスの咆哮。ティガレックスの体内には「大鳴き袋」と呼ばれる特殊な内臓器官があり、これを利用して暴力的なまでの膨大な音量を誇る咆哮を放つ事を可能としている。それは最早「音」の常識を超え、放たれた瞬間に衝撃波のように周辺の物体を破壊してしまうほどの威力に達する。

さて、ここで質問。ただでさえ強力な咆哮を放つティガレックスが、全長520m超えの超巨大個体となった状態で、これまでどおりに咆哮を放つと……?

 

「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!?!?!?!?」

 

「「うわあああああああ!?」」

 

正解は……世界が揺れる。

巨大化したティガレックスの、これまた巨大な咆哮は空間を揺らし、大地を震わせ、物という物を破壊しつくし、衝撃波は一瞬にして超広範囲に放たれた。その範囲内には当然、古龍観測隊の気球が存在していた。

気球はド派手に吹っ飛ばされたが、幸運なことに半壊しながらの墜落となった。墜落時に完全に木っ端微塵になった気球の下敷きから抜け出した男二人は、視線の先に遠く見える巨大ティガレックスを呆然と見上げることしかできなかった。

 

「…………」

 

「…………」

 

「……地獄だ、この世に地獄が顕現した……!」

 

「は、はやく伝えなければ……観測所に、ギルドに……世界に……!」

 

男たちは這う這うの体で一路、ドンドルマを目指した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と、こうして突然現れた超巨大ティガレックスによって、この大陸は東西に分断されてしまったんじゃよ……」

 

「「「「「…………」」」」」

 

「ふむ……我々の知らぬ間に、そのようなことになっていたとは……」

 

「大変だったね、おじーちゃん……」

 

村長さんから話を聞き終えた私たちは、絶句していた。

現在、私たちは村長さんの家におり、そこで話を聞いていた。話の途中、シュレイドに現れた時空の裂け目や遺跡平原という場所に出ているマゼンタ色の空など、しっかりと確認をしている。

 

「まさか、ここにも時空の裂け目が開いているとは……」

 

「ウォロ、あなた本当になんてことをしてくれたのよ」

 

「……少なくとも、ワタクシもギラティナもここまで事態を広げるつもりはありませんでしたよ。そもそも、時空の裂け目を通らなければならないほどに遠い場所にまで、なぜ裂け目が開いているのか……ワタクシが聞きたいほどです」

 

「ふぅん……嘘は言ってないみたいね」

 

「当然です。むしろこの状況に好奇心が刺激されまくって今すぐ体を動かしたい気分です!」

 

「あっそ……」

 

ウォロは平常運転か……。チッ、自分で広げた風呂敷なんだから、しっかり畳んどきなさいよ。それにしても、ポケモンが巨大化って、なんかどこかで聞いたことがあるような……。

 

「ティガレックス……あれ?」

 

「どうしたんだ、ショウ?」

 

「いえ、あの……名前が六文字を超えているのに、普通に発音できるなーって……」

 

「え?」

 

テル先輩は首をかしげているけど……多分これは、私にしかわからないことだ。

前に古龍級生物の話から飛竜種の祖先である「ワイバーンレックス」の話をしたと思うが、実はこの時「ワイバーンレックス」の名前が非常に発音し辛かったのを覚えている。その後、いろいろな名前をアカイさんから聞いてあれこれ検証した結果、「名前が六文字を超える生き物の名前」が発音しにくいことがわかったのだ。そして、ティガレックスの名前は七文字……六文字を超えているのに、滑らかに発音することができた……なんでだろう……?

 

「そのティガレックスってモンスターは、遺跡平原って場所に居座ってるのですか?」

 

「うむ……動けないのか、動かないのか、ほかに理由があるのか……。真相は明らかではないが、ティガレックスに動く気配がないのは事実じゃな」

 

「なるほど……先程、ハンターが向かったのも遺跡平原ですか」

 

「……なんでも、大規模な討伐作戦を検討しているそうじゃ。世界各地から兵器やハンターが招集されていると聞く……ドンドルマ方面へ行くというのなら、やめておくことじゃな」

 

「……ご忠告痛み入ります、村長殿」

 

「(セキが敬語で喋ってる……!)」

 

「(敬語で喋ってるセキさんにカイさんが目を輝かせている……)」

 

「(敬語で喋ってるセキさんに目を輝かせているカイさんに先輩が砂を吐きそうになってる……)」

 

セキさんが神妙な顔つきで敬語を喋ってる……なにげにセキさんの敬語、初めて聞いたな。そして、その隣で目を輝かせるカイさんに、さらにその隣で顔が虚無ってる先輩……なんだこのカオス。

 

「そうもいかんのだ、村長殿。我々は一月経つまでに、メゼポルタへ向かわねばならない」

 

「……なにやら、ワケアリのようじゃな」

 

「……こちらのショウが、黒龍の呪いを受けている。解呪するためにも、メゼポルタの歌姫の力が必要なのだ」

 

「なんじゃと!?」

 

村長さんが驚愕に相貌を歪めて私を見てきた。……ちょっと怖い。

 

「まさか……!ショウ殿、お主……黒龍に会ったというのか!?」

 

「あ、いえ……私たちの地元にもシュレイドのような裂け目が開いて、そこから顔をのぞかせたミラボレアスと目が合った、だけですけど……」

 

「……ふぅ。なんにせよ、無事で良かった。……いや、厳密には無事ではなかったのじゃったな。しかし、なぜミラボレアスがただの娘であるショウ殿に呪いを……?ショウ殿、なにか心当たりは?」

 

「いえ、まったく」

 

「……これは私の仮説になるが、聞きたいか?」

 

「アカイさん、お願いします」

 

アカイさんの仮説……仮説という割には結構的を得ていて、もはや仮説という名の事実ではないか、と思い始めたほどだ。アカイさんは一拍置いてから、話し始めた。

 

「……ショウの地元、ヒスイに現れたミラボレアスはおそらく、ついこの間まで討伐作戦が実施されていたミラボレアスと同個体ではないか、と考えている。すると、ミラボレアスを敗走にまで追い込んだハンター……人間がいるはずだ。

おそらくミラボレアスは、そのハンターとショウを同一視した可能性がある。肉体的にか、精神的にか……いずれにせよ似ている部分があったからこそ、ミラボレアスはショウに呪いをかけた……と、これが私が考え得る理由だな。これが事実かは定かではないが、一考の余地はあるだろう」

 

「ぬぅ……かの黒龍が、ただの個人に強い恨みを抱く、か……。いや、でなければヒトに敗れた黒龍が『紅龍』に転ずることはないだろう……貴殿の一説、妄想や虚言では片付けられまいよ」

 

「感謝する、村長殿」

 

「待った!」

 

私は思わず声を上げた。というのも、村長さんの言葉の中に、無視できない言葉があったからだ。

 

「黒龍って、姿が変わるんですか?さっき、"黒龍が紅龍に転ずる"って……」

 

「……むぅ、それは……」

 

「いや、私から話そう村長殿。彼女は一度だけだが黒龍と相対し、今尚生きている。かの存在を知っても、動じることはないだろう」

 

「……そうか」

 

アカイさんが、改めて私の方へと振り返った。

 

「……黒龍が紅龍に転ずる。その言葉に偽りはない。

……今から十数年前、黒龍ミラボレアスがシュレイドに出現した。この時、ジャンボ村という村の発展のために村を訪れ、後に専属ハンターとなった男が黒龍をシュレイドから退けたのだ。

……脆弱な生物と見下していた人間に一泡吹かされ、撤退を余儀なくされ苦汁を嘗めさせられた黒龍は前人未踏の火山の最奥地へと逃れ、想像を絶する激怒ともに力を蓄えた。

許さぬと、生かさぬと……必ずやあの人間を!脆弱なる下等生物を血祭りにあげるのだと!!紅き怒りは限界に達し、ついに復讐の時が来た!!

黒き鎧を真紅に染め上げた特殊個体紅龍ミラボレアスへと変じたのだ!!

紅龍は咆哮する!"ついにこの時が来た!血染めの鱗を纏いし紅き災いが、獄炎の大地に降り立つ時が!ハンターよ、止められるものなら止めてみるがいい!"と!!

 

……アカイさん、テンションたっか!爆上げのアゲアゲだ。

 

「落ち着きなさい、おバカ」

 

「うごっ!?」

 

と、興奮冷めやらぬアカイさんをシロちゃんが止めた。……ただ、音が"パシッ!"とか、"バシッ!"とかじゃなくて"ゴッ!!"だったんだけど……。あ、やっぱりグーでいったのね。

 

「はっはっは!貴殿は本当に紅龍を崇拝しているのだな」

 

「アイデンティティーなもので」

 

「この紅龍バカ……」

 

またアカイさんの知らない顔を見てしまったな。

……おいコラ、ウォロ。その「仲間を見つけた」みたいな顔でウンウン頷くな、あんたとアカイさんは違うんだからね!

 

「……失礼、取り乱した。我々はこの真紅のミラボレアスを黒龍と同一個体でありながらまったく別の存在と扱うため、ミラバルカンという固有名をつけた。私、アカイが最推しするミラボレアス種である」

 

「……はぁ……。黒龍、紅龍、そして祖龍……ミラボレアスって、意外とたくさんいるんだね。情報量だけでお腹いっぱいだよ……」

 

「しかもその内の一体が、ショウに呪いを掛けて行ったんだからな……とんでもない話だぜ」

 

「ふぉっふぉっふぉ!もしも今の話をハンター達に聞かせたら、誰もが腰を抜かしてひっくり返るじゃろう。ハンターでもない娘が黒龍と相対するばかりか、呪いを掛けられたとはいえ生きて帰ってきたのじゃからな。ワシも長く生きとるが、ショウ殿のような者は前例がない。それだけに、驚きも一入じゃったわい」

 

「あはは……機会があれば、お話はすると思います」

 

とはいえ、そんな機会は来ないで欲しいが。

 

「……さて、長旅とあって今日のところは疲れたじゃろう。ワシの家と、隣の家を開放してあるので、どちらでもくつろいでいくと良い。……隣の家は本来、ハンター用に開放してあるのだが、ハンターがいない今となっては意味もない。存分に利用すると良いぞ」

 

「では、ここはわかりやすく男女に分かれるとしよう。……部屋の広さ的に考えれば、女子三人は向こう側、男どもは村長宅でいいだろう」

 

「デスネ。男女七歳にして席を同じゅうせず、と言いますし」

 

「「((私は別に……))」」

 

「……っ!?な、なんだ……?急に悪寒が……」

 

「セ、セキさんも?実は、おれも……」

 

どうやら男女別に分かれることになったらしい。……しょうがないなぁ。

 

「……カイ、何かあったときはすぐに呼べよ?もしもの時は……」

 

「わかってる。でも、それは最終手段……でしょ?」

 

「あぁ」

 

「ショウも、なにかあったらすぐに呼ぶんだぞ」

 

「わかってます」

 

セキさんとカイさんが話していた最終手段……ヒスイから連れてきたポケモンたちで自衛をする、という意味だ。……人前で出すことがないように祈ろう。

 

この日は解散となり、そのまま村で一泊することになった。明日から、解呪のための旅が始まる……しっかり準備をして、旅の備えるとしよう。

 

 

 

 

――ショウ 余命29

 

 

 

 




本日のモンハン占い!狩人なあなたのラッキーカラーは……白!
白色のモンスターを狩猟すると、レアな素材が手に入るかも!?
それでは今日も元気よく~……ひと狩り、いこうぜ!

※占いの結果は保証しないものとする


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幕間:とある○○の話

突然のゲリラ投稿


なんで……

 

 

 

 

「男五人で顔突き合わせてゲーム三昧とか……だからモテないんでしょうが」

 

「あぁー!言ったな、テメー!!」

 

 

 

 

どうして……

 

 

 

 

「今に見てろ!俺だってやれば彼女くらい出来らぁ!!」

 

「ふんっ、どうだか!」

 

 

 

 

こんな……こんなことなら……

 

 

 

 

「それより約束、忘れるんじゃないわよ?あと一年だからね」

 

「うぐっ……わ、わかってらぁ!とにかく行ってくるからな!」

 

 

 

 

……私の、気持ち……

 

 

 

 

「……え?アイツが……」

 

 

 

 

伝えとけば……よかった……

 

 

 

 

「死んだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早朝の某高校にて、彼らは集まっていた。近い席に座り、神妙な顔でお互いを見つめ合っている。

 

「……ついに、この時が来たな」

 

「だな」

 

「待ちわびたぜぇ……」

 

「長かったな」

 

「まったく……お前ら、ちっとも辛抱できてないじゃねえかよ」

 

「しょうがねえだろ?なんてったって……」

 

その一言の後、五人は息ぴったりに声を合わせた。

 

「「「「「モンハンライズ!大型アップデートで新章きちゃあああ!!」」」」」

 

イエーイ!と五人は立ち上がってお互いにハイタッチをする。少し落ち着いたところで、五人は再び席に着いた。

 

「いやー、物足りないとは言わないが終わらねえだろうなとは思っていたが、まさか新タイトル引っ提げての登場とは!」

 

「新ステージ、新モンスター……そして新要素!くぅーっ!楽しみすぎて待ちきれねぇ!!」

 

「まったく……モンハンは一体どこまで行くつもりなのか……!」

 

「止まるんじゃねぇぞ!」

 

「止まらねえぞ!」

 

「あぁー!モンハンは止まらなーいっ!!」

 

どうやら五人はハマっているゲームが最新要素のアップデートを控えていることに興奮を抑えきれないようだった。

 

「それだけじゃないぞ。ポケモンの新作だってそうだ!」

 

「スカーレットとバイオレット……お前ら、どっちにする?」

 

「俺はバイオレットにする。シンプルに伝説ポケモンのデザインが好みだな」

 

「俺はスカーレット!なんてたって「東方のスカーレット姉妹と同じ!」……ってオイコラ!」

 

「お前やっぱりロリコンだろ」

 

「誰がロリコンだコラー!!」

 

「ちなみに俺はバイオレットだ」

 

「俺は……スカーレットだな。あの伝ポケのずっしりした感じがいい!」

 

「最後はお前だぞ」

 

そうして、各々が購入予定のバージョン名を挙げる中……唯一人黙っていた少年は渾身のドヤ顔で告げた。

 

「俺は断然、スカーレット!この俺のメインカラーと同じだからな!」

 

「お前ってやっぱり赤色が好きだよなー。モンハンも赤い色のモンスターだけ狩猟が三桁突破してるしww」

 

「ぶっちぎりで多かったのって確か……」

 

「そう!マイフェイバリットモンスター――」

 

「リオレウス、でしょ?」

 

五人が一斉にこちらへ振り返った。四人はまたか、という顔で。残りの一人は、なぜここにと言いたげな顔で。

 

「葵!?どうしてここに……」

 

「日直」

 

「アッハイ」

 

今日は私が日直の日。だから、いつもよりも早めに来たつもりなのに……コイツら、一体いつからいたのよ。始業時間の30分前には来たのに、もう既にいるなんて……。

あっ、初めましての人は初めまして。私の名前は『陸上(くがうえ) (あおい)』。この高校に通うJKで、目の前の五人組は朝早くから登校する真面目な優等生……ではなく、早朝なら教師の目に付かないからと、朝っぱらから集まってこっそりゲームをしている馬鹿共である。

そして、この五人の中のひとり……赤色がトレードマークで、とあるゲームに登場するモンスター、リオレウスを"マイフェイバリット"と称して止まない男は私の幼馴染である。

……ほんと、なんでこんな奴が幼馴染なんだか。

 

「あ~……葵が日直の日、今日だったか」

 

「まったく……朝早くから学校に来るあんたたちを輝く目で感心する先生方に対して、思うところとかないわけ?」

 

「全くないわけではないが、気にしたら負けだと思う」

 

「そこは気にしなさいよ!」

 

ハハハハハ、と後ろの四人が笑い出す。コイツとのやり取りを毎回夫婦漫才呼ばわりされてて、正直なところうんざりとしている。コイツもコイツで、ヘラヘラと笑うだけで何も言わないし……!

 

「陸上さん、日直お疲れさん。手伝おうか?」

 

「平気よ。気持ちは受け取っておくわ」

 

「了解」

 

さっき話しかけてきたコイツは見た目はインテリ眼鏡って感じで、実際五人の中では一番偏差値が高い。彼がほかの四人……特に私の幼馴染ともう一人の残念イケメンの勉強を見ていることが多い。戦隊モノに例えるなら、イメージカラーは青色。

 

「あーあー、仲悪くてもいいから俺も幼馴染が欲しかったなー」

 

「いや、ほぼ毎日顔を突き合わせるのに仲悪かったら居心地最悪だぞ?」

 

「うるせーわ!持つ者には持たざる者の気持ちなどわからん!!」

 

「めんどくせぇ……」

 

幼馴染を妬んだ彼は見た目でわかるとおり脳筋野郎である。下手な運動部よりも筋肉質な体つきをしているのに、やってることと言えばゲーム三昧。筋トレは趣味だとか。イメージカラーは灰色。

 

「でも、なんだかんだで付き合いは長いんだろ?いいじゃあねぇか、付き合いがあるだけマシさ。縁を切られる方がよっぽどだぜ?」

 

そう言って器用に椅子の上で胡座をかく彼は、インテリくんと揃って比較的まとも枠である。彼とインテリくんが常識人枠(たまにボケる)で、残りの三人が非常識人だ。イメージカラーは黄色。

 

「知ってるか……?人は、身近なものほど失って初めてその大切さに気づくんだ……」

 

「……つまり?」

 

「奪ったろかー!」

 

「誰がやるかー!!」

 

そして、幼馴染に絡んでいるロリコン呼ばわりされていた彼は、この五人の中でもぶっちぎりのイケメンである。そして残念である。ご覧のとおり生粋のゲーム好きで、偏差値も低い筆頭ボケと呼ぶにふさわしい残念っぷり。なにより本人にその気がなくとも状況が勝手に彼を「ロリコン」にしてしまうほどの不幸体質持ちである。イメージカラーは白。

 

「……どした、葵?日直の仕事はいいのか?」

 

「よくないわよ。……今からするわ」

 

「「「がんがれー」」」

 

「うるっさい!その鬱陶しい応援やめなさいっ!!」

 

「「「すみませんでした」」」

 

「秒で謝るやんwww」

 

「だから止めとけと言うに……」

 

彼ら五人は高校で出会って以来、まるで数十年来の友人かのように一瞬で意気投合した。そしてどこに行くにしても予定さえ合えば必ず五人で行動するようになった。幼馴染も、彼らとの付き合いが楽しいのだろう……私をほっぽり出すくらいには。

正直、こんなはずじゃなかった。高校に上がるまでは私にべったりだったくせに、あいつらと出会った途端、そっちに乗り換えた尻軽男め……元々素直になるのが苦手な私は、コイツらと出会ってからの幼馴染にはかなりつっけんどんな態度を取るようになっていた。……まぁ、それでもまるで堪えた様子がないのは、さすがは私の幼馴染、というべきなのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。私の隣を歩くのは、幼馴染。どうやらこのゴールデンウィークでやることが決まったらしく、呑気に鼻歌なんて歌っている。

 

「フン、フフフ~ン♪フ、フフフフ~ン、フフフン、フン~♪」

 

「……随分とご機嫌ね」

 

「おうよ!今年のゴールデンウィークの間に、初代モンハンからライズまでのクエスト全部やるって配信をすることになったからな!」

 

配信というのは、某有名動画サイトでの配信ことだろう。五人のうちの白い彼が配信者であり、そのルックスも相まってかなり人気らしい。……オツムは残念だが。

幼馴染が遊んでいるハンティングアクションゲーム「モンスターハンター」は、今年の三月に最新作が発売され、さらに六月には大型アップデートを控えている。私の幼馴染をはじめとする五人組は、中古から新作まで、ほぼすべてのモンハンシリーズを押さえるほどのモンハン好きである。あと、それと同じくらいに「ポケットモンスター」シリーズも愛好していて、いわゆるガチ勢だったりする。

 

「くあー!楽しみすぎる!この世代に生まれてよかったー!」

 

「はいはい、ゲーム一つで一喜一憂できるなんて、おめでたいこと……」

 

「なんだよー、楽しみなんて人それぞれなんだから、別にいいだろー?」

 

「……別に、ダメとは言ってないじゃない……」

 

「あ、そうだった。悪い、言いすぎたか?」

 

「……ううん」

 

ただ、そのゲームと男友達にあんたを奪われて複雑……なんて、口が裂けたって言えるはずがない。そりゃあ、私との付き合いが若干悪くなったのは気に入らないけど、好きなことで楽しそうにしているあんたを見るのも、嫌じゃないし……。

 

「あーあ、楽しみだなー!はやくゴールデンウィークが来ないもんかね?」

 

「待ってればそのうち来るわよ」

 

「んー……よしっ、葵!今からゲーセン行くぞ!」

 

「は?……はぁ!?今から!?」

 

「おうっ!"善は急げ"、"思い立ったが吉日"だぜ!」

 

そう言って、幼馴染は私の手を取った!こ、こいつぅ……またしれっとそういうことをする……!

 

「ほらっ!行こうぜ!」

 

「……まったく、もう……」

 

ほんっと、しょうがない幼馴染なんだから……♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある意味、その話をするのは必然だったのかもしれない。

 

「聞いたぜ、葵」

 

「うん……」

 

呼び出された校舎裏で、全く似合っていない神妙な顔を浮かべる幼馴染。どこか複雑そうで、けれど受け入れようとしているような、そんな顔。

 

「お前……告られたんだってな」

 

「うん」

 

「……そうか」

 

はぁ、と幼馴染はため息一つ。

 

「……そいつの目ん玉腐ってんじゃね?」

 

「なんだとコラァ!!」

 

「いだだだだだだだだだ!?」

 

秒でアイアンクローしてやった。

 

「うごごごご……おーい、俺の顔変形してないか?」

 

「これ以上変形の余地もないくらいブサイクだから安心なさい」

 

「ひっでぇなおい!……それで?」

 

「はい?」

 

「告白、受けたんだろ?」

 

「……ッ!!」

 

なんで……そんな……!受けることが当たり前みたいな言い方……!!

 

「受けるわけないじゃない!」

 

「……いや、そんな必死になるなよこえぇな」

 

「あっ……ごめん……」

 

「いや、なんの謝罪よ?しっかし、振るとは思わなんだなー……なんだ、好きな奴でもいるのか?」

 

「……!!……い、いる……」

 

「そっかー、いるのかー……って、え"っ!?いる!?」

 

「声がデカい!!」

 

「……っと、すまん……」

 

流石にこの手の話はデリケートな問題なので、幼馴染も声を潜めてくれた。

 

「マジで?いや、全然そんな様子なかったが……」

 

「(そりゃ、ずっと近くにいるんだもん……)ちょっとでもそんなフリを見せたら、あんたのことだから勘づくでしょうが。だから自重してんのよ」

 

「へぇ~……ま、俺は葵の幼馴染だからな、お前のことなら大抵は分かるし何かあればすぐに気づくぜ!」

 

「(……私の想いには気づかないくせに……)」

 

「……な、なんだよそのジト目は……」

 

「べっつに~……」

 

「……?」

 

まったく……どうして私はこんな奴のことを……。

 

「しかしきになるなー、お前が惚れたっていう男。大層な色男なんだろうなー……スッゲェイケメンで、スッゲェ頭良くて、ついでに人格者で……よし、殺す」

 

「なんであんたが殺意湧いてんのよ」

 

「いやいやいや……たとえどんな男だろうが、葵が不幸になるなら抹殺しなければと思い……」

 

「だから、なんでそこまでしようとするのよ……」

 

「そりゃあ、葵が幼馴染だからさ」

 

それがどうした?と言わんばかりに首をかしげる幼馴染……コイツ、今自分がとんでもないこと言ってるって自覚ある?

 

「しかし、幼馴染として鼻が高いぜ。俺の幼馴染は告られるくらいにはいい女だぞって、自慢ができるぜ」

 

「そんな自慢はせんでよろしい!」

 

「ハハハ!……はぁ、俺も告白されたい……」

 

「あんたに告白なんてする酔狂はいないわよ」

 

「酔狂ってなんだ!俺だってなぁ、本気になれば彼女くらい作れるわ!」

 

「あんたに彼女が出来るころには、ノストラダムスの大予言も的中しているでしょうね」

 

「お前それ、一生来ねぇってことだろ!?」

 

「さぁねぇ~?」

 

コイツに、彼女?……もしもそうなったら、殺らねばならない。ぽっと出の女なんかより、私の方がずっとコイツを……。

 

「くっそムカつく……!よぉし、いいだろう。そこまで言うなら賭けをしようじゃねえか!」

 

「賭け?」

 

「そう!この高校三年間で俺に彼女ができたら、お前は俺がモテ男であることを認め、俺の彼女にプレゼントを買う買い物に付き合ってもらう!

……フッフッフ、どうだ?悔しかろう?モテないと思い込んでいた男の惚気を聞かされながら、リア充っぷりに歯噛みして女の物を買わされるというのは!」

 

コイツ……妙に的確に人がイラッとする点を突いてくるわね……。もしもこれで私の想いに気づいていながらこんなことを宣うようなら、男の尊厳を消し飛ばす必要があるだろう。

……まぁ、気づいていないからこんなことが言えるんだろうけど。

 

「あっそう、いいわよそれで。……その代わり、こっちも条件を出させてもらうわ」

 

「ふん……たしかにこのままではフェアではないからな。いいだろう、条件を言え!」

 

「もし高校三年間の間に彼女ができなかったら、私に土下座して『葵様、この愚かな非モテ陰キャオタクを哀れに思うならどうか私と交際してください』って言うのよ。

……フッフッフ、どう?腹が立つでしょ?自分がモテないダサ男と認めた上で、好きでもない女と無理やり恋人同士にされるのは!」

 

「うげぇ……って、ん?いや待て、ひとつだけ訂正することがある」

 

「はぁ?」

 

訂正……?一体どこを訂正する必要が――

 

「俺、別にお前のことは嫌いじゃないぞ?むしろ好きだ」

 

「は……?……え、ちょ、なっ、はぁ!?」

 

「なんでそんなに驚くんだ……。何年幼馴染として付き合ってきたんだよ、お前のことが嫌いならこうして二人きりで話だってしねぇっての」

 

「…………」

 

……コ、コイツ……。コイツ……コイツ……!

 

「……!!」

 

「ちょ、わっ、おい!急に叩いてくるなよ!なんなんだよー!?」

 

"なんなんだ"はこっちのセリフだっつーのー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから時間がいくらか過ぎて……ある日突然、ソレは訪れた。

その日は休日で、私は少し早いが卒業と進学に向けた勉強をしていた。勉強中の気分転換で窓の外を見ると、幼馴染がちょうど家を出たところだった。

 

「(何処へ行くのかしら)」

 

私は迷わずベランダに出ると、ちょうど門をくぐった幼馴染に声をかけた。

 

「ねえー!」

 

「ん……?お、おぉー葵!どうしたー?」

 

「こっちのセリフよ、どこへ行こうとしてるの?」

 

「んー、ちょっと最寄りのファミレスへ!」

 

ファミレス……?でも、今日はあいつの両親も仕事で、家にはあいつ一人。そういう時は、大抵は私の家へ食事を集りに来るのだけれど……。

 

「ああ、もしかしていつもの集まり?」

 

「そう!今度、五人で『タイプ縛りバトル大会』をやるからな、その予行演習だ!それでファミレス集合になったんだよ!」

 

「ふーん……」

 

タイプ縛り……ってことは、ポケモンか。私も簡単なことならある程度ゲームのことがわかるようになっちゃったわね。

 

「男五人で顔突き合わせてゲーム三昧とか……だからモテないんでしょうが」

 

「あぁー!言ったな、テメー!!今に見てろ!俺だってやれば彼女くらい出来らぁ!!」

 

「ふんっ、どうだか!」

 

彼女、彼女って……そんなに恋人が欲しいわけ?……どうして私じゃないのよ、バカ……。

 

「それより約束、忘れるんじゃないわよ?あと一年だからね」

 

「うぐっ……わ、わかってらぁ!とにかく行ってくるからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあな」

 

「はいはーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

……これが、幼馴染との最期の会話になるなんて……思いもよらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。両親と一緒に夕食を食べている最中に、そのニュースが流れてきた。

 

『続いてのニュースです。……酒気帯び運転により暴走。五人の若い命が、亡くなりました』

 

「うわっ、飲酒運転~?意外となくならないんだね」

 

「そうだな……どうしても人間、油断というものが生まれるからな。油断大敵、ってやつだ」

 

「……あらやだ、ここってすぐそこのファミレスじゃない?」

 

「は?」

 

お母さんの言葉につられて、テレビ画面に目が向く。……そこに映っていたのは、普通のファミリーレストラン。……でも、待って、たしかあそこには……。

 

「……ウソ……」

 

「ちょっと、どうしたの葵?顔が真っ青よ……?」

 

「待って……待って……!」

 

私はすぐにスマホを取り出すと、アイツの番号をコールした。……出ない。

もう一度コールした。……出ない。

もう一度コールした。……出ない。

LINEに切り替えた。メッセージを打ってすぐに送信する。……アイツなら、返信がなくとも一分も経たずに既読がつくはずなのに、つかない。

 

「ウソ……やだ……違うよね……?ねえ、早く出て――」

 

『亡くなったのは――』

 

事故に巻き込まれて死亡した人の名が挙げられた。まずは運転手。54歳の中年男性だった。

続いて挙げられたのは、いずれも高校生の名前……それも、知っている名前だった。そして

 

『――――』

 

「……は……?」

 

アイツの、名前が――

 

「葵っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がついたときには、自室のベッドで寝ていた。なぜ……と、考えて、最後の記憶が蘇った。

ファミレスで起こった事故、羅列された死亡者の名前、その中にアイツの名前が――。

 

「……っ!!」

 

私はなんとか全身に力を入れてベッドから降りると、フラフラと覚束無い足取りで一階に降りた。リビングでは、両親が深刻な顔で黙り込んでいた。……と、ここで足音で気づいたのか、お母さんが私の方を見た。

 

「……!葵……っ!」

 

「……お母、さん……私……」

 

「葵、お前は疲れているんだ。今日はもう寝なさい」

 

「……ねえ、お父さん。さっきのニュース……」

 

「……ッ!!」

 

私がニュースのことを尋ねると、二人は今にも泣き出しそうな顔を浮かべた。……あぁ、やっぱり……。

 

「……交通事故だよ、飲酒運転で暴走してね。……その……ファ、ファミリーレストランに、突っ込んだ……みたいだ……」

 

「……それ、で……?」

 

「運転手は死亡した。……そして、事故に巻き込まれた、五人の、高校生も……」

 

「…………」

 

お父さんは、ゆっくりと彼らの名を挙げていった。……うん、やっぱり知ってる名前だ。そして……。

 

「そして、彼も……」

 

「……そう……」

 

私は、ゆっくりと踵を返した。

 

「……もう、寝るね……」

 

「葵……」

 

お母さんの呼び掛けを無視して、私は自室へ戻った。ベッドに飛び込み、布団をかぶって、それから――

 

「……うわああぁぁああぁぁあぁぁぁぁあぁっ!!!!!」

 

――泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あのファミレスの事故から、何年経っただろうか。それからの私の世界は、色を失った。

アイツがいない、アイツの声が聞こえない、アイツの姿が見えない……たったそれだけのことかもしれないが、私にとってはとても大事なことだった。アイツの死を振り切ろうと、私は過去に類を見ないほどの無茶をした。高校を卒業して、大学に入学して、その大学も卒業して就職して、とにかくがむしゃらに働き続けた。なにか、なにかしなきゃと、強迫観念に駆られ続けていた。……そうしないと、アイツの死を思い出してしまうから。

 

当然、そんな無茶が長く続くはずもなく……私は40を目前にして過労が祟って倒れてしまい、精神的にも弱っていたためにあっさりと病気に罹って死期を迎えていた。……でも、これでよかったのかもしれない。アイツがいない世界で、恋とか結婚とか幸せとか、そんなの何にも考えられない。

病院のベッドの上で、そっと目を閉じる。脳裏によぎったのは、昔の思い出……私が初めて、恋をした日――

 

 

 

 

 

 

 

 

幼い頃から、私はそこらの男子よりも喧嘩も強い男勝りな女の子だった。男子が相手でも決して引けを取らない私のことを、気に入らない男子が現れるのも時間の問題だった。

そうして保育園児だった頃、先生が外で遊ぶ子供たちに気を取られている隙に、教室に残っていた私に突っかかってきた男子がいた。

相手は三人で、流石の私も三対一は分が悪く、あっという間に袋叩きにされてしまった。先生は外にいるし、助けも呼べない。もうダメだ……そんな時だ。

 

『おもしろそーなことしてるな!おれもまぜろー!!』

 

そう言って現れたのは、真っ赤な服を着た男の子。男の子は私と、三人組をそれぞれ見てから、こんなことを言ったのだ。

 

『んー……そっちがさんにんで、こっちがひとりか。じゃあ、おれはこっち!!』

 

そう言って、彼は私を守るように三人の前に立ちはだかったのだ。三人はなにか文句を言っていたが、彼は笑顔のままでこう続けた。

 

『なんだよー!おれはまぜろっていったけど、べつにおまえらのなかまになるなんていってないだろ!よぉーし、それじゃあやるぞー!おらああああ!!』

 

それからは、彼の無双が始まった。三対一なのに、彼は三人を圧倒した。圧倒、といっても、"やられる前にやる"という言葉を忠実に再現した先制攻撃の連続攻撃なのだが。そうして、三人を一方的にボコボコにしたあと、彼は私に手を差し伸べた。

 

『やったな!おれたちのかちだ!!』

 

彼は私が自力では立てないと思ったのか、腕を掴んで立ち上がらせようとしたが、それがいけなかった。なんと、ちょうど彼が私の腕を掴んだタイミングで先生が戻ってきてしまい、彼だけが一方的に責められたのだ。

けど、彼は何一つ言い逃れも言い訳もせず、黙って先生の言葉に耳を傾けていた。……そんな彼を見ていられなくて、私は慌てて間に割って入った。

 

『ちがうんです、せんせい!かれはわたしをたすけてくれたんです!!』

 

『……!!おまえ……』

 

私が泣きながら必死で説得すると、先生も落ち着いたのか倒れている三人からも事情を聴いて、改めて彼一人のせいではないことを理解してくれた。……ただ、"やりすぎ"と注意を受けていた時の彼は、どこか憮然とした様子だったが。

帰る時間になってから、彼が声をかけてくれた。

 

『なあ、おまえ。さっきはありがとうな』

 

『ううん、わたしのほうこそありがとう。……ねぇ、どうしてさっきはせんせいにちゃんとおはなししなかったの?』

 

『え?うーん……だってせんせい、よくわかってなかったみたいだしさ。だったらおれひとりがわるものになったほうが、わかりやすいかなって』

 

『わるものなんかじゃない!あなたは、わたしの……ヒーローだもん!!』

 

『……!!ひ、ヒーロー?おれが?……へっ、へへ!』

 

彼は嬉しそうに、照れくさそうに微笑んだ。そんな彼の微笑みに、私の胸は大きく高鳴った。……この時、私は彼に恋をしたのだ。

 

『わたし、くがうえあおい!あなたは?』

 

『おれ?へっへー、よぉくきけよ!おれのさいこうにかっこいいなまえ!』

 

そうして、彼との付き合いが始まった。……歳を取って、思春期を迎えると恥ずかしくなって、思ったようなことをちゃんと言えない時もあったけど、彼は笑って受け止めてくれた。あの時から、私は、ずっと――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、い……たい……よ……」

 

それが、私の最期の言葉となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと、私は辺り一面真っ白な空間に立っていた。方向感覚すら麻痺しそうなその空間の中で、唯一異質な点があるとすれば……私の目の前に立つ、白いドレスを着た少女だろうか。

 

「会いたい?」

 

「……え?」

 

「会いたい?」

 

少女の問いに、一瞬だけ理解が遅れる。だが、二度目の問い掛けで、それがなんなのかを理解する。私の最期の言葉……彼に、会いたいという思い。

 

「彼は今、遠い場所で戦っている。かつて貴女を助けた時のように、誰かのヒーローとなって」

 

「……アイツ、が……」

 

「……でも、このままじゃ彼は、彼らは殺されちゃう。強大で、邪悪な力に」

 

「……ッ!?」

 

ころ、される……?また、アイツが……アイツが、殺される?……ふざけるな。

 

「……るな」

 

「おや?」

 

「ふざけるな……ふざけるな……!また、また私から奪うつもりなの!?冗談じゃない!!なんでアイツばっかり!アイツは!アイツは、私の……!!」

 

「それじゃあ、一緒に来る?」

 

「……え?」

 

少女が、そっと手を差し伸べてきた。……奇しくもその動きは、幼い頃の彼と全く同じ――。

 

「力を貸して欲しいの。……彼らに対して、特に強い感情と想念を持つ貴女が最適だった。……もう一度彼に会いたいなら、私に力を貸して欲しい」

 

「……アイツに、アイツに会えるなら……なんだってする……!」

 

「ありがとう!」

 

少女は満面の笑みを浮かべてから……すこしだけ、困った表情になった。

 

「……でも、彼はもう人間じゃない。人の器を捨ててしまって、まったく別の生き物になっちゃったの」

 

「構わないわ。アイツが人間じゃないなら、私が人間でいる意味もない。……できれば、アイツと同じがいい。同じ存在になりたい」

 

「(想像の云十倍は重いなぁ)うん、わかった」

 

少女がそう答えてから、私の意識が少しずつ溶け始める感覚を覚えた。そして……新しい、私の体の感覚も。

私は、その体のことを知っていた。アイツが、頻りにその名を口にしていたからだ。アイツの、フェイバリットモンスターの、番。……ふふっ、あはは♪

 

 

 

 

『こいつらはな、俺の理想なんだ』

 

『はぁ?なにそれ』

 

大丈夫よ。

 

『最近の作品じゃあな、どちらか一方がピンチになると、もう一方がそれを察知して駆けつけるんだ。……俺は、生涯のパートナーとそんな関係になりたい』

 

『……つまり?』

 

私が――

 

『お互いに助け合って、支え合って、どんなピンチだって二人で必ず乗り越える!そんな助け愛(・・・)の精神で一緒に歩んでいける関係に!』

 

『そもそも相手がいないでしょうが』

 

『なにをー!?』

 

――あなたを助け、愛するわ。だから、待っててね――

 

「行こう、リオレイア」

 

「グアアオ!(喜んで)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おれ?へっへー、よぉくきけよ!おれのさいこうにかっこいいなまえ!

おれのなまえはあかばね――』

 

――焔♡

 

 

 

 




こういうのが欲しかったんじゃろ?(ニチャア)
さあ、最高に素敵な修羅場(パーティー)にしましょうwwww


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緊急クエスト:歌姫、ドンドルマへの導べ~前編~

依頼主
メゼポルタの歌姫

依頼内容
遺跡平原に現れたという、超巨大轟竜……明らかに普通ではない何かが起こっています。これもまた、古龍が齎せし災いなのでしょうか……胸がひどくざわつきます。
諸国を慰安して回る私ですが、今回ギルドの要請を受けてドンドルマでハンターの皆様のために歌うこととなりましたが……道中には当然、危険なモンスターが跋扈しています。
少しでも護衛の皆さんの負担を減らせたら……どうか、よろしくお願いします。




ココット村での宿泊から一夜明け……私たちは村長宅の前で集合していた。

 

「おはよう、諸君。昨夜は良く眠れたかな?」

 

「はい!」

 

「では、食事としよう。腹が減っては戦ができぬ、と言うしな。ショウたち女性陣が宿泊した家があるだろう?あの家に、さらに奥に部屋があったことは気づいているな?」

 

「えぇ、最初に泊まった時に」

 

私たちが泊まった家は、私とカイさんとシロちゃんの三人で川の字になっても余裕が有るほどの大きなベッドが一つだけで、あとは簡単な手洗い場や簡易式トイレ、浴場などが付いていた。……が、今挙げたものはどうにも後付け感が否めなず、ひょっとしたら元々これらは付いていなかったのかもしれない、と考えるほどに。

それと、アカイさんが言うようにあの家には暖簾がかかった部屋があった。その部屋には入っていないので内容までは分からないが、話の流れからしてあそこが食堂なのだろうか。

 

「実はあの暖簾の奥に、キッチンがある。テーブルも大きい物を用意してくれたようで、我々が食事を取るのに十分な大きさだ。……早速向かうとしよう」

 

アカイさんの案内で、私たちは宿泊先の家に向かう。その家の中、暖簾が掛かった向こう側に入ると、たくさんの材料に大きなキッチンが備え付けられていた。テーブルも長く、私たち七人が食事をするのに十分すぎる大きさだ。

 

「はぇ~……すっごいや、こりゃ」

 

「……?料理長らしき人が見当たらないけど……?」

 

「料理長なら、すでにいる」

 

「へ?」

 

「料理長のキングサリ殿!おられるか!」

 

アカイさんが大声を出すと、キッチンの向こう側からゴソゴソと物音がした。私たちが音源に意識を向けていると……。

 

「ニャ」

 

……キッチンの向こうから、ネコがひょっこりと顔を出した。

 

「「可愛い!」」

 

「「(おまかわ)」」

 

「……え?あの~アカイさん?ひょっとしてネコが料理をすると……?」

 

「当然だが?」

 

「うえぇ!?人間じゃなくてネコが!?」

 

私とカイさんは反射的にそう声が出てしまうほどの愛くるしさが、目の前のネコから感じられた。……隣にいる先輩たちから視線を感じる、ような……。

一方で、ウォロは目の前のネコが料理をすると知って、驚きを顕にしている。……まぁ、驚く気持ちは私もわかるけど。

そうしていると、あとから次々とネコたちが姿を見せ始め、合計五匹のネコが集結した。最初に出てきたネコは、人肌で言う褐色色の毛をしたネコで水色の瞳が特徴的だ。

二番目のネコは白と黒の縞模様で、最初のネコと同じ水色の瞳をしている。……ただ、目元に若干だが隈が出来ているのが気になるし、そこはかとなく無気力さを感じるが。

三番目のネコは茶色の毛で、瞳の色も同じく茶色だ。……自信満々気な笑みを浮かべているが、果たして……。

四番目のネコは真顔だが、どちらかといえば無表情な真顔ではなく真面目というか真摯というか、とにかく真剣さが伝わって来るネコだ。毛の色は白が混じった灰色で、瞳の色も灰色だ。

五番目のネコは、出てくる際にポージングを決めるなど、かなりスタイリッシュなネコだ。瞳は最初の二匹よりもやや濃い目の水色、毛の色は……頭周りが金で他は黒という色合いだ。

 

「さて、紹介しよう。先程出てきた順に料理長のキングサリ、副料理長のトショウ、他弟子たちであるミドリ、ホウサイ、カモミールだ」

 

「……えっと、よろしくお願いします」

 

私が代表で、一歩前に出る。すると、同じように料理長のキングサリ……さん?が、一歩前に出て優雅にお辞儀した。すごい、仕草まで完全に人間と同じだ、可愛い――

 

「トップコックであるオレさまの料理、たらふく食わせてやるからな!このキングサリさま率いるココット料理番衆の料理を前に、ほっぺを両方とも落とすんじゃニャいぜ!」

 

……か、かわ……?

 

「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」

 

とりあえず全員でウォロを速攻黙らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのですね、ちょっと酷すぎません?皆さん揃ってグーで殴ることは……」

 

「その前に自身の失礼な言動を省みたらどう?」

 

「……返す言葉もありません」

 

シロちゃんを除く全員の拳でウォロを黙らせたあと、私たちは料理を待っていた。縦に連なるたんこぶを五つこさえたウォロの頭は、かなり残念なことになっている。

まぁ、私たちの気持ちをウォロが勝手に代弁してくれたので、わざわざ私たちが声に出す手間が省けたと思えば、これぐらいの制裁で済んだことに感謝して欲しいくらいだ。

アカイさんによれば、彼らは『アイルー』という名の獣人族という種族らしい。……獣に人、と書いて獣人……だから高度な知能を持っていて、人間と同じように生きていくことができるらしい。料理長たちみたいに、人間に力を貸す個体も多いようだ。

 

「おう、待たせたニャ!ココット料理番衆、スペシャルコースだニャ!!」

 

キングサリさん率いる料理番衆が、次々と料理を運んでくる。す、すごく美味しそう……!だけど……!

 

「……な、なんか、すごいボリューミー……」

 

「これ、ちゃんと食べきれるかな……?」

 

「……なあ、アカイの旦那。ひょっとしてハンターってのは……」

 

「あぁ、普段からこれくらいは食べる」

 

「いやいや、多すぎるだろ!?」

 

そう、明らかに食事量が私たちが知る料理の比ではないのだ。目の前に置かれたバカでっかいローストチキンのせいで、対面に座ってるテル先輩の顔が見えないんだけど……。

ただ、出てきた料理はどれもこれもが美味しそうだ。先ほどのローストチキンに始まり、私とカイさん、シロちゃんにアカイさんが座る側にはチーズフォンデュに鳥の足のようなから揚げ、野菜たっぷりのシーザーサラダ、刺身などなど……。

反対に先輩やカイさん、ウォロの側に置かれている料理も美味しそう!各種焼き鳥の串焼き、デカイロブスターが丸々一匹乗っかったチャーハンにトマトケチャップたっぷりのパスタ、カニのしゃぶしゃぶなどなど……

私の目の前にも、焼肉のセットが置かれている。ヤバい、ヨダレも腹の音も止まらない……!

 

「さあ、召し上がれニャ!」

 

「「「「「いただきまーす!」」」」」

 

「ふふっ……みんな嬉しそうだね、アカイ」

 

「あぁ、連れてきてよかったよ」

 

私たちは目の前の料理にかぶりついた!

 

「「「「「美味しい~~~~~!!」」」」」

 

「はっはっは!豪快な食べっぷりだニャ!こっちとしても、作った甲斐があったってもんだニャ!」

 

美味い!美味い!美味い!これは何もかもが美味しすぎる!!ハンターって、いつもこんなに美味しい食事を食べていたのかな!?

 

「このカニ、結構美味いな!」

 

「そいつは"盾蟹"『ダイミョウザザミ』のボウニクだ!おれが捌いたんだぜ!」

 

「えっと……ミドリ、だっけか?確かにコイツは最高だぜ!」

 

「まぁ、美味しくて当然だよな?おれたちは、世界中を旅しながら最高の食材を探した!いろんな人間の口に合うような完璧な食べ合わせを探した!……そして、今!お前たちはおれたちの料理に舌鼓を打っている!この意味が分かるかニャ?」

 

「意味?」

 

「……わかった!教えてやる!おれたちが、世界で一番!凄いってことなんだニャ!」

 

セキさんにめちゃくちゃ熱弁するミドリさんは、なるほど最初の顔合わせの時の自信満々な表情に見合った料理の腕前をお持ちのようだ。

 

「このトゲトゲ、美味しい……!なにか、手みたいな形だけど……」

 

「それは"青熊獣"『アオアシラ』から採れる熊の手だね。ぼくが調理したんだニャ」

 

「えっと……たしか、ホウサイさんでしたっけ?」

 

「初めましてお客様、ぼくがホウサイですニャ。この熊の手、珍味として知られているんですが、ゼラチンが大変豊富なんですニャ」

 

「ぜ、ぜらちん……?」

 

「まぁ、端的に言えばお肌に大変良い栄養を含んだ食材、ということですニャ」

 

「お肌……!」

 

カイさんはホウサイさんから熊の手てについて説明を受けている。……美肌効果、か。

 

「カイさん。その熊の手、こっちにも分けてもらえますか?」

 

「……………………どうぞ」

 

「めちゃめちゃ渋りましたね」

 

私もさっそく熊の手を頂く。……おぉ、これは、なかなか……!

 

「本当に美味しいです!皆さん、料理が上手なんですね!」

 

「あはは。ぼくらだってまだまだニャ。日々是精進ってね、ぼくらはもっともっと料理会への頂点へ上り詰めてみせるニャ。……そう、熱くたぎる炎のように。炎は上に燃えあがる!ぼくらも上をめざす!わかるね?」

 

「なんとなくわかる気がします!」

 

「それは良かったニャ」

 

ホウサイさんって、なんか向上心の塊みたいな人……じゃない、アイルーだなぁ。

 

「うおおぉぉぉ!この滝みたいに流れるやつ、すごい美味いぞ!」

 

「それはチーズフォンデュといって、ベルナ村で特に流行っている調理法なのニャァ。イケてるでしょ?」

 

「カモミールさんだっけ、確かにこれはイケてるぜ!」

 

「人も料理もモンスターも、進化し続けているニャァ。あたしたちもその波に乗り遅れないように、進化の道を前進か(・・)……ププッ」

 

「え……?」

 

カモミールさん……見た目はすっごいクールなのに、さっき聞こえたダジャレで全部台無しになった……。

 

「喋るネコに美味い料理、もうどこもかしこも興味の対象ばかりですね!ちょっとあなたたちのこともいろいろ調べちゃってもいいですか!?」

 

「……忙しいんで」

 

「そう言わずに!さあさあさあ!」

 

「はぁ……。……ふぅ。

……興味も好奇もあとにしな!オマエの興味も好奇も全て!オレの料理でかっさらってやるよ!!たんと食え!遠慮はいらねぇ!限界一杯、腹ァ膨れるまで食わせてやらぁ!!

 

「……oh」

 

ウォロはトショウさんに絡んでいる……が、どこからともなくマイクを取り出してシャウトし始めたトショウさんを前に形勢逆転し、今度はウォロが怯んでいた。……あれだけ迷惑をかけるなって言ったのに、あんちくしょう……。

 

「私の目の前にあるのは……焼肉?」

 

「あぁ!オレさま、料理長のキングサリさまが直接手がけた料理だニャ!捌き方から下処理まで、完璧に仕上げてみせたぜ!」

 

「おぉ!」

 

美味しそう!さっそくいただきます!私は銀皿の上にあるお肉の一つを箸で取った。

 

「これはどこの部位ですか!」

 

「それは……あぁ、火竜のタンだニャ」

 

え"っ

 

か、火竜……そ、それってリオレウスの……。

 

「そっちは火竜のキモ、んでそっちが火竜の上カルビだニャ。隣にあるのは雌火竜のバラと雌火竜のロース!リオス夫婦の豪華焼肉セットだニャ!オレさまは飛竜種……特にリオス科のモンスターの調理に関しちゃ、右に出るアイルーはいないと言われるほどの腕前で……どうしたニャ?」

 

キングサリさんが不思議そうな顔でこちらを覗き込んでくるが……それどころではなかった。

私……腰にリオレウスをぶら下げたまま、危うくリオレウスのお肉を食べちゃうところだった!心なしか、リオレウスの入ったボールが震えている気がする……どうしよう、すごく気まずい……。

 

「(ククッ……ww)ショウ、ちょうど違うものが食べたいと思っていたところだ。よければこちらのチャーハンとそちらの焼肉、取り替えてくれないか?」

 

「是非にっ!!」

 

アカイさん、マジ救世主!!私は秒でアカイさんの提案に乗っかり、チャーハンと焼肉を交換することにした。……複雑そうな表情のキングサリさん、ごめんなさい。まさかリオレウスを連れていますとは言えなくて……。

 

「むぅ……オレさまの料理、気に入らなかったか……?」

 

「いや、彼女はリオス科のモンスターに強いあこがれを抱いていてね。だから、その血肉を食らうなどとんでもない、と考えてしまったんだよ」

 

「あぁ、なるほどニャ。たしかに、一部の人間にはモンスターに強い思い入れがあって、そのせいでモンスターを食材にすることに反対する奴がいるって聞いたニャ」

 

「ごめんなさい、キングサリさん……でも、私にとってリオレウスは特別なモンスターで……」

 

「いいさいいさ、気持ちはわかるからな。リオレウスは飛竜種を代表するモンスター、すべてのハンターが必ず超えるべき壁の一つとして、象徴的なモンスターだからニャア」

 

うんうん、と頷くキングサリさんに、ひとまずは安堵する。アカイさん、フォローありがとうございます!

こうしてなんだかんだ色々とありながらも、私たちは食事を堪能した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すっかりご飯を楽しんだ私たちは、再び村長宅の前に集合していた。……それにしても、朝からすごいボリュームの食事をしたというのに、胸焼けもないしお腹いっぱいで動けないなんてこともなく……むしろ体の奥から力が沸いてきて、今すぐにでも体を動かしたい気分だ。

 

「……それにしても、オレたち……ポケモン、じゃなくて、モンスターを食べてたんだな」

 

「うん……ヒスイ地方ではなかなか考えられなかったよね。ポケモンを食べる、なんて……」

 

「いやぁ、ジブンはなかなかない体験に、興奮を禁じえないのですけどネ!」

 

「まぁ、こんな機会じゃなきゃなかなか食べられないですしね。ポケモンだって、どんなポケモンが食べられるかわからないし……なぁ、ショウ」

 

「ベロリンガのタンは超美味かったなぁ……」

 

「「「「えっ?」」」」

 

「……ヒュ、ヒュー……」

 

「ショウ、ちょっと詳しく話そうか?」

 

「はい……」

 

口笛じゃごまかしきれないかぁ……。

私が先輩に問い詰められる中、村長さんが笑顔で出迎えてくれた。

 

「おお、皆殿。食事は楽しまれましたかな?」

 

「えぇ、おかげさまで!ごちそうさまでした!」

 

「それはよかった」

 

……アカイさんに聞いたが、村長さんは『竜人族』と呼ばれる人間と獣人族以外の知的種族の一つで、最初に気づいた四本指と長い耳の他に、服で隠れて見えない脚部は鳥類のような関節配置になっていて、なにより人間よりも圧倒的に長命らしい。若者は背高で容姿端麗なものが多いが、老いてくると村長さんのように人間の老人よりも小さい体格になってしまうらしい。……ちなみに竜人族の若者といってもその実年齢は数百歳という単位である。……ジェネレーションギャップがえげつなさそう。

ただ、それらを除けば人間と全く変わらないので、この大陸に住む人たちも竜人族を当たり前の存在として受け入れているんだとか。……ヒスイの人たちも、この大陸の人たちのようにもっと寛大になるべきだと思います。

 

さて、私たちはこれからメゼポルタへ向かう事になるのだけれど……その前に、明らかに分かりやすい脅威が存在する。

 

「……さて、アカイの旦那。どうやってメゼポルタまで行く?遺跡平原にゃ巨大なティガレックスが居座ってやがるし、かといって南下するには時間がかかりすぎるだろ?」

 

「その通りだ、セキ殿。……遺跡平原を強行突破できればいいが、そうは問屋が卸さんか……」

 

「なんでだ?」

 

テル先輩が小首を傾げてアカイさんに疑問を投げかける。……ティガレックスの目を掻い潜っての行動なら、あれだけの巨体だ。どうにでも目をくらますことはできると思うけど……。

 

「ティガレックスは問題ではない。……問題は、人間のほうだ」

 

「人間……?……あっ!」

 

「気づいたか、カイ殿」

 

「……たしか、ティガレックスを討伐するために大規模な作戦を展開するって、昨日の話に出てた……。つまり、遺跡平原周辺は厳戒態勢に入っている……民間人が遺跡平原に入り込まないように、監視の目があるかもしれない……」

 

「そうだ。そのために、ティガレックスを誤魔化せても人間の目は誤魔化せず連れ戻される可能性がある」

 

そうか……!村長さんも「大規模な討伐作戦を検討している」って言ってたし、念入りに準備をしているのなら通行規制も取り締まっているはずだ。それは、困ったな……。

 

「そんなぐずぐずしていたら、ショウの時間が無くなっちまう!」

 

「……私がひとまず先行しよう。一人ならどうとでもなるはずだ。情報を収集しつつ往復を重ね、なるべく監視の目が緩い場所を見つけてくる」

 

「お願いね、アカイ」

 

「任せろ。……だから、ショウたちのことは頼んだぞ、シロ」

 

「オッケー」

 

アカイさんはシロちゃんの頭を一度撫でると、時間が惜しいとばかりに走りだして村から出て行ってしまった。……そして、アカイさんと入れ違いになるように別の青年が村に入ってきた。彼はアカイさんの姿が見えなくなるまで見送ったあと、改めて振り返り……シロちゃんと目が合うと、気さくな笑みを浮かべて手を振ってきた。

 

「……あっ!おーい、やっほー!」

 

「やっほー!」

 

少年は全身に黒衣を身に纏った竜人族の青年だ。彼は手を振った体勢のままシロちゃんに近づき、握手を交わした。……シロちゃんの知り合い?その割にはアカイさんのことはスルーしてたし……。

 

「へぇ、その姿を選んだのね」

 

「もう少し大人でも良かったんですが、ギルドへ依頼経験のある顔なら融通が利くかなって」

 

「賢い子ね」

 

「祖様ほどでは」

 

「……あの、その人はシロちゃんの知り合い……?」

 

二人でヒソヒソと内緒話……それもまた、身内であるが故の近さ、かな。

 

「あ、うん!紹介するね、彼はダイアー。私の従兄弟だよ」

 

「初めまして、皆さん。ボクは『ダイアー・ミラリス』と申します。以後、お見知りおきを」

 

シロちゃんの従兄弟……ということは、アカイさんの息子か、甥っ子かな?見た目は竜人族だからあまり当てにならないけど、容姿だけで言えばカイさん以上、セキさん未満の年齢に見える。

 

「えっと、初めましてダイアーさん。私はショウと言います。こちら、テル、カイ、セキ、そしてウォロです」

 

「あははあ、遠路はるばるどうもどうも。先ほど叔父上とすれ違ったんだけど、なんかあった?」

 

「あぁ、うん。アカイは情報収集のためにしばらく席を外すことになって……」

 

「おぉっと、そりゃあいかん。でしたらこの先、道案内はボクが務めるとしましょうか」

 

「本当に?ありがとう!」

 

「いえいえー、いかんせん暇なものでね」

 

叔父上……シロちゃんはアカイさんの親類の子、さらにダイアーさんはシロちゃんの従兄弟でアカイさんが叔父……。さらにシロちゃんとアカイさんの容姿は人間だがダイアーさんは竜人族……うーん、複雑な家族関係の予感。

 

「……ということで、叔父のアカイに代わりましてこのダイアーが、皆さんを導く水先案内人となりましょう。皆さん、何卒よろしく!」

 

「ああ、助かるぜ。流石にシロの嬢ちゃんにばかり負担をかけるわけにもいかねぇからな」

 

「うん、そうだね」

 

「それはありがたい!是非とも色々と、お話を聞きたいところです!」

 

「……よかったな、ショウ」

 

「えぇ、先輩」

 

流石にこの中で一番年下のシロちゃんを先頭で歩かせるわけにも行かない。なので、ダイアーさんの提案は渡りに船だ、遠慮せず乗っかるとしよう。

 

「それじゃあ、シロ。まずは何処へ行くんだい?」

 

「……ひとまず、ドンドルマを目指したいわ。出来るだけ、村や集落を渡り歩きたいところなんだけど……」

 

「ふーむ……それならまずは『メタペタット』かな。メタペットとも呼ばれる村で、まあ個人が各々呼びやすい方で呼んでいるみたいだよ。

この村はハンター達が自らの手で興した村で、すぐ近くに狩場である密林があることから各地へ狩りに出向くハンター達の中間地点になっているみたい。こっち側の大陸にいるハンターなら、ドンドルマに行く前に必ず寄ってるんじゃないかな」

 

「ハンターが集まる村、か……」

 

ハンターが、自らのために開拓した村……かなり気になる。私がヒスイに来たばかりの頃も、コトブキムラは発展途中だったし……なにか、参考技術なんかが見られるかもしれない。

 

「まずはここに向かうことをオススメするよ。時間がないなら、早速出発しようか?食料や回復薬や解毒薬などの薬類も、こちらで事前に用意しているからね」

 

「お願いします!」

 

ダイアーさん、なんて準備のいい……まるで、最初からこちらに来ることを前提んしていたみたいだけど、まさかね?

 

「村長さん、泊めていただきありがとうございました!またいつか、ココット村に来ます!」

 

「うむ……ショウ殿、そして皆々様、どうかお気をつけて……」

 

ダイアーさんの先導に従い、私たちはココット村を出発した。……ここから先は未知の領域、鬼が出るか蛇が出るか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ココット村を出発して、五時間が経過した。もうすぐお昼に差し掛かる頃、私たちは現在『森丘』の名前で親しまれているという狩場にいた。

灰色の体に特徴的な尻尾を持つアプトノスを始め、鹿のような姿の『ケルビ』、黄色い大型昆虫『ランゴスタ』など、本当に見たことも聞いたこともないポケモン、モンスターがたくさんいる。あと、背中にコケが生えている『モス』という豚は見ていてなんだか可愛らしかった。……あ、あとアイルーの他にも『メラルー』っていう黒い毛の獣人族もいた。……ただ、メラルーは手癖が悪く、よく物を盗んでいくらしい。

大型モンスターでいうと、以前アカイさんが手持ちに加えていたイャンクックと、イャンクックそっくりの紫の竜もいた。

ダイアーさん曰く、紫の竜の名前は『イャンガルルガ』というらしく、"黒狼鳥"の別名を持つ鳥竜種……そして、鳥竜種きっての戦闘狂らしい。その戦闘狂っぷりは凄まじく、捕食や縄張り争いなどといった理由もなく、力量差も一切顧みず、目に付いた生物に片っ端から襲いかかっていくらしい。自身よりも格上が相手であった場合でも戦闘本能は衰えるどころか火に油とばかりに燃え上がり、あの古龍級生物イビルジョーを相手に食い下がり一矢報いたという報告すら上がっているそうだ。古龍級生物と互角どころか、一矢報いるほど……私とジンオウガたちなんて、ほとんど手も足も出なかったのに……。

 

私たちが目指しているのはこの森丘にあるハンターの拠点、『ベースキャンプ』だ。そこは基本安全であり、休むにしても便利らしい。今回は強行軍ということなので、狩場にあるベースキャンプも有効活用しよう、とのことだ。

……本当はNG行為らしいが、「どうせ皆巨大ティガレックスに夢中なので問題なし」とはダイアーさんの言。いや、いいのかそれで。

 

そして私たちが森丘の森を抜けて丘の方面まで歩いてきた……その時だった。

 

「――!!」

 

「――――!」

 

「……ん、なんだ?」

 

「今、声が聞こえませんでした!?」

 

「ああ……聞こえてきた感じからして、ヤバげな雰囲気だ!」

 

丘の方面で、人の怒号が聞こえてきたのだ。明らかにただならぬ事態に、私たちの空気が緊張で張り詰める。一方、シロちゃんとダイアーさんは至って冷静だ。

 

「(……まさか?)」

 

「(あー……向かってるだろうなとは思ったが、まだこの辺だったか……)」

 

「(シュレイド方面まで来ていたの!?頑張りすぎでしょ、あの子……)」

 

「(まあ、いいじゃん。面倒な顔合わせを避けられるし、恩は売れるし、一石二鳥ですよ?)」

 

「(……仕方ない、妥協しましょう)ねえ!ひょっとしたら、モンスターに襲われてるんじゃ……!」

 

「……!!」

 

「あっ、ショウ!?」

 

私はいてもたってもいられず、すぐさま走り出した。あとから先輩が追いかけてくるのが気配でわかる……。

やや開けた場所に出てくると、目の前には対峙する二組の姿があった。

方や、鮮やかな青と黒のストライプ模様に黄色い嘴。鋭い嘴と牙を持ったモンスターの群れ。群れの中には一際大きい個体がおり、その個体は頭部に朱色の大きなトサカを持ち、鉤爪も赤みを帯び、巨大に発達している。

もう一方は、人間が三人とアイルーが一匹の組み合わせ。人間二人は重装甲に盾と槍という、ココット村のハンターと同じ装備をしている。……だが、盾も槍も、あの時見たハンターよりも見た目は普通の鉄の鎧って感じだし、やや貧相な印象だ。アイルーは、まるで神官の如き服装を身につけており、三人のうち武装していない一人を守るように立ちはだかっている。

そして、最後の一人。美しい金髪の女性で、冠のような装飾を頭に身につけている。裾に向かうにつれて色が濃い山葵色のドレスを身に纏っており、控え目に言っても超美人である。

 

「……こんなところにまでモンスターたちが……やはり、あの巨大な轟竜は凶兆の前触れ……?」

 

「歌姫様!ここはお下がりください!」

 

「御身は我々が、身命を賭してお守り致す!!」

 

「皆様……!」

 

「(歌姫!)」

 

歌姫!歌姫って言った!十中八九、あの金髪の女性のことだ!そうこうしているうちに、青いモンスター郡が人間側を襲い始めた。武装している人は小型種を蹴散らすように槍を振り回しているが、その隙を突いて大型種が二人を飛び越えてしまい、歌姫の背後を取ってしまった!

 

「し、しまった!?」

 

「させるか……うわっ!」

 

「ラウラ様!おさがりくださいニャ!!」

 

「ルル!」

 

大型種が、今にも歌姫に襲いかかろうとしている……させるか!

 

「ダイケンキ!シェルブレード!!」

 

「……!!」

 

「ギャアッ!?」

 

モンスターボールを投げ、ダイケンキを繰り出す!秘匿性とか知ったことか、人命には代えられない!!

ダイケンキはアシガタナを抜刀すると、爪を振りかざした大型種に斬りかかった。斬撃をまともに食らった大型種は派手に吹っ飛び倒れこむも、すぐさま起き上がってダイケンキに威嚇し始めた。

 

「ニャニャ!?み、見たことのないモンスターニャ……!?」

 

「こ、これは……?」

 

「大丈夫ですか!!」

 

「……え?」

 

私が急いで駆け寄っていくと、三者三様(+一匹)はひどく驚いたように目を見開いた。……マズイ、小型種が騎士の人たちに襲いかかろうとしている!

 

「ジュナイパー、サイコカッターだ!」

 

「ジュッパァ!ジュア!ジュアァ!」

 

「ギャンッ!?」

 

「ギギャア!!」

 

「……っ!な、なんだあ!?」

 

あれは……先輩のジュナイパー!ジュナイパーはサイコカッターで小型種を蹴散らすと、騎士の人たちを守るように立ちはだかった。3本の矢を発動状態で待機し、小型種を警戒している。

 

「ショウ!急に突っ走るなよ!」

 

「うっ……す、すみません先輩……」

 

「……いや、よくやったよ。人助けはいいことだからな!」

 

「先輩……!」

 

「あーあー、あれだけ内緒にするっつったのに、お前ら……」

 

あとから追いついたセキさんは呆れており、カイさんもモンスターボールを手に持っているが出すかどうか迷っているらしい。ウォロは静観しているが、その手は腰のモンスターボールに伸びている。

 

「おい、シロの嬢ちゃん!こうなっちまった以上は、人命優先だ!構わねぇな!?」

 

「……えぇ、彼女が目的の歌姫よ。みんなで守ってあげて!」

 

「お安い御用だ!リーフィア!」

 

「グレイシア!」

 

「トゲキッス!」

 

「フィーア!」

 

「レイッシャ!」

 

「チョギイィッス!」

 

シロちゃんから許可も降りたので、各々がポケモンを繰り出し戦闘態勢に入る。未知の生物を相手にモンスター郡も警戒しているのか、先程までの攻勢が嘘のように大人しい。

 

「テル!お前はショウと一緒に、そっちのデカいのをやれ!」

 

「小さい方は、私たちで何とかする!」

 

「頼みましたよ」

 

「了解です!」

 

テル先輩も、私に合流してくれた……これほど心強いことはない!

 

「グォワ、グォワ、グオオォォォッ!!」

 

「気をつけて皆!そいつは『ドスランポス』と、その小型種の『ランポス』の群れだよ!」

 

大型種……ドスランポスが一際大きな声で咆哮を上げると、さらに小型種が増えた。……けど、問題はない。そっちから来ないなら、こっちから行く!

 

「先輩!」

 

「ああ!」

 

「「ダイケンキ!ひけん・ちえなみ!!/ジュナイパー!さんほんのや!!」」

 

「……!!」

 

「ジュナッパァ!!」

 

ダイケンキが突撃し、ジュナイパーがそれを追い越して急襲をかける!足蹴りからの矢による攻撃……そこから畳み掛けるように、ダイケンキの無数の斬撃が襲いかかる!

 

「ギャッ!!」

 

「まだまだ!」

 

「先輩、一気に!!」

 

「「シェルブレード!!/リーフブレード!!」」

 

「「……!!/ジュッパアァッ!!」」

 

「ギャアアアアッ!?」

 

水の太刀と草の剣……二つの斬撃を同時に食らったドスランポスは派手に吹っ飛び、岩壁に叩きつけられて動かなくなった。目を回しているので、どうやら気絶したらしい。

ボスがやられたことに動揺したのか、ランポスたちの動きが露骨に悪くなった。その隙を突かないセキさんたちではない!

 

「今だ!リーフィア、はっぱカッター!!」

 

「グレイシア、ふぶき!!」

 

「トゲキッス、マジカルシャインです!!」

 

「フィー!」

 

「シャアァ!」

 

「キイィッス!」

 

三体のポケモンの同時攻撃により、ランポスの群れは完全崩壊だ!群れは散り散りに逃げ出し、あっという間にいなくなってしまった。

 

「ふぅ……なんとかなってよかった。ジュナイパー、ご苦労様」

 

「お疲れ、ダイケンキ」

 

「よくやったな、リーフィア」

 

「偉いよ、グレイシア」

 

「よく出来ました、トゲキッス」

 

各々が己の相棒たちを労っていると……視線を感じてそちらに振り返った。三人と一匹が、不思議そうな目で私たちを見ている。

 

「……えーっと……大丈夫、ですか?」

 

「……あ、いえ!……その、お力添え、誠に感謝します。おかげさまで私も、彼らも、命をつなぐことができました」

 

「いえいえ、お礼なんてそんな……困ったときはお互い様ですよ」

 

「あっ……ふふっ、そうですね」

 

なんとか声をかければ、歌姫さんから返事が返ってきた。……よかった、怪しまれて……は、いるみたいだが、少なくとも警戒するほどではないと判断されたかな。

 

「……見たことも聞いたこともないモンスターでいっぱい」

 

「しかも、なんだ……へんなボールから飛び出してきたぞ……?」

 

訂正、騎士二名は未だ放心状態だった。

 

「……あの、差し支えなければお名前を……」

 

「あ、これは失礼しました。私は――」

 

「ショウッ!!」

 

シロちゃんの鋭い呼びかけ。何事かと思い、次いで気配を感じて振り返れば……ドスランポスが起き上がっていて、今にもこちらに飛びかかろうとしているところだった。

ダイケンキは咄嗟に私の前に出てアシガタナを構えている……だが、これでは攻撃は防げても反撃はできない……!ドスランポスが飛びかかるために足に踏ん張りを聞かせ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガサガサガサッ!ドオオォォォォンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――跳躍しようとした、まさにその時。

森の方から木々が激しく揺れたかと思うと、何かが勢いよく飛び出してきた!よく見るとそれは人で、さらにその人が持っている武器はココット村でも見た砲口のついた槍と盾だった。槍の先端から火が吹いており、その勢いでカッ飛んできた……って、コトォ!?

ドスランポスも気づいたようで振り返ったが……その時には既に槍が振り上げられており、無情にも振り下ろされた槍によってドスランポスは叩き潰された。

かなりの勢いで叩きつけられたのか激しく土煙が巻い上がり、視界が一瞬にして奪われる。さらにその直後、激しい炸裂音が響き渡ると同時に、私たちの頭上を全身に風穴を空けたドスランポスが飛んでいった。

……土煙が晴れると、私と先輩の後方に穴だらけのドスランポスと、目の前に槍を持った人、という光景が目に入った。

槍の人は女性で、身にまとう防具は頭や肩、足の先端が赤いトゲのような色をしていて、全体的には水色と、内側が黄色になっている鎧を身にまとっている。槍と盾は深い青を思わせるような黒色だ。……なんだか、ラギアクルスっぽく見えるのは気のせい……?一緒にいるアイルーは、同じ配色だがその出で立ちは海賊っぽい。この人、ひょっとしてハンター……?

 

「……はぁ。依頼を出すだけ出しといて、ちょこまか動かれると困るんですが。私が事前にメタペタットに寄り道しなかったら、入れ違いでリーヴェルに向かうところでしたよ……」

 

「あ……その、ごめんなさい。……依頼を受けてくださったハンター様、で、よろしいですか?」

 

「えぇはい」

 

ハンターさんは項垂れたまま話していたが、流石に歌姫さんに声をかけられたからか顔を上げて――私と目があった瞬間、大きく目を見開いた。まるでその顔は、「信じられない」と言わんばかりの表情になっていた。

 

「……なんでレジェアルの主人公がここに……?」

 

「……えっ、と……」

 

「……スゥー。歌姫様、そちらの方々は?……何やら見慣れぬモンスターを引き連れていますが、お知り合いで?」

 

「……あっ、そうでした!ハンター様が合流されるよりも先に、私たちを助けてくださったんです」

 

「……ですか」

 

小声で何か言っていたが、よく聞こえなかった。穴が空きそうなほどに見つめられたので、少々気まずい……ただ、歌姫さんがとりなしてくれたので、ひとまずは安心かな……?

 

「……見たことないモンスターですね。なんていう個体ですか?」

 

「あ、その……」

 

「聞かないほうがいいなら聞きませんけど」

 

「すみません……」

 

「お構いなく。……ダイケンキにジュナイパー、後それぞれのパートナーか。なんでウォロが一緒にいるの?ストーリーはどこまで……

 

「あの……?」

 

「あぁ、失礼」

 

どうしたんだろう、このハンターさん……さっきからブツブツと、小声で何かをつぶやくことが多いな……。

 

「改めて自己紹介でもしましょうか。まずはそちらから」

 

「あ、はい!」

 

私たちは改めて名前を名乗った。その際、ポケモンたちをボールに戻したんだけど、また騎士の人たちがどよめいてしまった。……なんか、すみません。

 

「……ふむ。ショウさん、テルさん、セキさん、カイさん、ウォロさん。そして……シロさんに、ダイアー・ミラリスさん、ね。……何故に英名?禁忌が関わってるのか……?

 

「あの、ハンターさんの名前……」

 

「あ、度々失礼。まずはこちら、私の相棒のオトモアイルー。名前は『リュウセイ』」

 

「リュウセイニャ。静かに流れる(・・・・・・)と書いて、リュウセイって言うニャ、よろしくニャ!」

 

「そして、私。キャラバン隊、『我らの団』所属のハンター。名前は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――シズカ・ミズハシ」

 

 

 

 




ついにハンターと合、流……?


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幕間:とある狩人の話

彼女は如何にしてこの世界にやってきたのか……そこで培ったものとは……。


『いつまでも、あると思うな、親と金。……当然、兄とて例外ではない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい夢を見た。私の家族の一人が、生きていた頃のこと。博識で先天的な天才だった、私の兄。努力で後天的な天才となった私と違って、地力の時点で既に差がついていた。そんな兄に追いつこうと努力し続けていたあの頃が、今はとても懐かしい……。

 

「シズカさん!見えてきましたよ!!」

 

マイルームのベッドに転がっていた私に声をかけてきたのは、緑の衣装に身を包むメガネをかけた女性。名前は『ソフィア』。私は起き上がると、彼女の方へと振り向いて答えた。

 

「今行きます、ソフィアさん」

 

一通り防具を身につけてから、私はマイルームの外へ出た。現在、私は……空の上にいる。というのも、これは私が所属するキャラバン『我らの団』が所有する飛行船だからだ。名前はイサナ船という。

……私は「"イサリビ"がいい」と主張したのだけれど、一週間の論争に敗北し泣く泣く名前を譲ることとなったのは苦い思い出……次こそは舌戦に勝利してみせる。兄さんの名にかけて。

 

外へ出た私は、船首にキャラバンのみんなが集まっているのを確認してから、そちらに歩いて行った。

 

「すみません、団長。少し寝過ごしてしまいました」

 

「おぉ、お前さんか!……あれを見てみろ」

 

「"あれ"?」

 

ウエスタン調の衣装を身にまとう団長に促され、私も船首に立つ。そして、その視線の先にある光景に絶句した。

 

「……なんですか、あれ?」

 

「わからん。……俺も初めて見た、君は知らないか?」

 

「……えぇ、はい」

 

目の前に広がる景色……遺跡平原の上空に広がる、マゼンタ色の渦巻く空に私は言葉を失っていた。なぜなら……。

 

「(あれってたしか、ダイマックスした時にあぁなるんだよね……?……なんで?ここ、モンスターハンターの世界だよ?)」

 

咄嗟に知らないふりをしたが、私は目の前の景色を知っているからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然だが、私は今いる世界とは別の世界にいた記憶がある。……いや、『記憶がある』というのは語弊がある。正確には、この世界の現在から七年前まで、私はこことは違う世界で生きていた。そこは、今生きているこの世界がゲームとして形作られた世界であり、世界的に有名なハンティングアクションゲームの世界だ。

……え?前世?いやいや、期待しているところ申し訳ないが、私は死んでない。死んでいないので転生ではない……死後転生ではなく、どちらかといえば転移……トリッパーってやつだ。レジェアルのノボリみたいなものかな。

 

さて、しばらくは自分語りの時間としようか……まず、私の名前はシズカ・ミズハシ……以前いた世界では『水橋 静香』と書く。私は父と母、兄の三人と暮らしていた四人家族だった。兄は生粋の天才で、何をやらせても100%以上の成果をもたらした。反面、私は平凡だった。兄のようになろうと、血反吐を吐くような努力をしてもなお届かず、家族以外は皆、私の平凡ぶりに失望の目を向けてきた。私もその視線がプレッシャーだったけど……ほかならぬ、兄の言葉に救われた。

 

『静香はどんな人になりたんだ?周りの期待に応えられるだけの人か?自分が納得できる生き方ができる人か?』

 

『そうだな、どちらも大事なことだ。じゃあ質問を変えよう。……他人に敷かれたレールと、自分で敷いたレール……どちらを進みたい?』

 

『いいか、静香。たかだか中学生の若造の言葉だが、よく聞け。周りが納得できる人間になろうとするな。"憎まれっ子世に憚る"という言葉のように、あるがままの己で勝負して、周りに納得させるんだ。お前はお前だ、俺にはなれない。だからこそ、お前には俺にはできないことができるはずだから』

 

その言葉に、どれだけ救われたか……周りの人間なんて、二言三言目には「お前の兄貴は」。でも、ほかならぬ兄さんが、「そんなことはドブに投げ捨ててどうぞ」と言ってくれたのだ。だから、いつしか「兄さんのようになりたい」と続けてきた努力は、「兄さんの隣に立ちたい」という思いに変わっていった。

……多分、この時からだと思う。私が兄さんを、一人の男として意識し始めたのは。

 

そんな兄さんが高校に進学するにあたって、家を出て寮で生活すると言い出した。兄さんは頭の悪いクソガキどもには「ガリ勉野郎」に映るだろうが、よくよく見れば控え目に言っても超イケメンである。

兄さんの魅力に気づいた雌豚どもが寄ってこないとも限らない……危機感を覚えた私は、兄さんが家を出る前日の深夜に夜這いした。お互いに初めてだったからか、色々と加減が効かずに(主に私が)暴走してしまったが、これも初夜だと思えば悪くないものである。……兄は顔面蒼白だったが、きっと私の将来の彼氏に申し訳ないとか場違いなことを考えているんだろう。だから私は、こう言ったのだ。

 

『……大丈夫だよ、兄さん。私が好きになるのも、結婚するのも、子供を産むのも、全部兄さんが初めての人になる予定だから。だから、兄さんの初めてもぜぇーんぶ頂戴ね……?』

 

『し、静香……!?』

 

目を覚ますと、兄さんは既にいなかった。両親曰く「なんだか逃げるように出て行った」とのこと。……ふふっ、兄さんってば照れ隠しも下手っぴなんだから。

 

それから長期休暇の時期になると、私は決まって兄さんが入寮している寮へと遊びに行った。寮といっても学校が管理しているだけのただのアパートなので、一般の人も普通に入居している。そんなところへしょっちゅう遊びにいく私は、兄さんの友人である光輝さん、剛太さん、焔さん、剣介さんの四人とも必然的に仲良くなった。

でも、あくまで友達は友達……私の恋人は兄さんをおいてほかにいない。

あと、焔さんの幼馴染さんの葵さんとも何度か顔を合わせる機会があった。とっても世話焼きなツンデレさんで、どう見ても焔さんのことが好きなのに焔さんはラノベ主人公もかくやとばかりの鈍感っぷりで葵さんを振り回している。強く生きて、葵さん……。

 

友人に囲まれる兄さんは、とても楽しそうで幸せそうだった。五人で一緒にいるのが当たり前みたいな雰囲気は、中学時代の友人たちでさえ感じさせなかった。五人は高校で初めて出会ったそうだけど……本当かって疑いたくなるくらいに仲良しだ。

だから……そんな五人が、揃って事故に巻き込まれて死ぬなんて、想像だにしなかった。兄さんが事故に遭ったという話を聞いてから数日ほど私は記憶がなくなっていたが、両親曰く、手に負えないほどに狂っていたそうだ。

叫び散らして暴れまわり、物を壊しては突然泣き出し……自分でも「これはひどいな」と思ったのは、丸一日兄の名前を呼びながら自慰に耽っていたことだろうか。自分でもひどく驚いた……いきなり意識が戻ったかと思ったら、部屋はめちゃくちゃだわ布団はぐしょぐしょだわ声はガラガラ目はショボショボと、理解にかなりの時間を有した。

そして生きる屍も同然の生活を送っていた私は……ある日突然転移した。

 

 

 

 

先程も述べたが、この世界の現在から七年前、私が15歳の時に、この世界に転移してきた。原因は……当時はともかく、今ならある程度想像がつく。おそらくは時空の裂け目……だが、あくまで仮説なので確信は持てない。

兄を事故で亡くしてから生きる気力を失っていた私が、死ぬように布団に潜ると……なぜか『我らの団』のマイルームのベッドの上だった。お昼寝にやってきたソフィアさんと目が合ってがっつり悲鳴を上げられたのは昨日のことのように思い出せる。

 

それから団長さんと簡単な質疑応答……と、私がこれまでのことを白状したことで逆に信用を得てしまったようで、あれよあれよというまに『我らの団』のハンターになっていた。……原作主人公も、こんな気持ちだったのだろうか。

原作主人公といえば……私が転移した当時、『我らの団』には既にハンター……即ち、4シリーズの主人公がいたわけだが、"彼"は私が中型モンスターを制覇出来るまでスパルタ指導してくれたあと、忽然と姿を消した。

……ただ、私以外のみんなには一言言伝していったというのだから、腹が立った私は初となる対大型モンスターであるババコンガの肛門から直に竜撃砲をぶち込んでやった。……無論、狩猟後は入念な洗浄と消臭を忘れていない。

 

初めこそはアプトノス一頭狩猟することすら躊躇していた私だったが……七年という歳月と師匠のスパルタ教導は、私を"平和な世界で生きた平成人"から"あらゆる絶望を捩じ伏せるハンター"へと変貌させるのに十分すぎる時間だった。だからこそ、目の前の現象を前にして狩人としての勘が警鐘を鳴らしている……「避けろ!」と!

 

「……っ!!」

 

「あ、ハンターさん!?」

 

"加工屋の娘"の『テュッティー』が私を呼ぶが、それを無視して私はイサナ船の舵を担っていた加工担当の竜人族『ゲキ』さんから舵を奪い取った。

 

「すみません!事情は後で説明します!!……今から全力で取り舵ぶん回しますんで、振り落とされないでください!!」

 

「え!?」

 

「とおおぉりかあぁぁじっ!!」

 

私は全力で舵を回した。イサナ船が急速に方向転換し、バルバレへ進んでいた進路をドンドルマ方面へと切り替えた。

 

――その直後だ。イサナ船をまるまる飲み込まんとばかりの、巨大な火炎放射がぶっぱなされてきたのだ。

 

「ニャアアア!?」

 

「な、なんじゃこりゃあ!?」

 

「「キャアアアアアアッ!!」」

 

「……ッ!!」

 

「うおおおお!?」

 

あ、危なかった……!私が舵を切るのが遅かったら、間違いなく直撃していた……!さっきの炎ブレス……ただのブレスじゃない!あれは……!

 

「(あれは、ダイバーン!!ダイマックス技だ!まさか、ポケモンがモンハンの世界に出現したの!?)」

 

ポケットモンスター……縮めて、ポケモン。その体躯はモンスターハンターの世界に住まうモンスターよりも小柄なものが大半だが、モンハンモンスター以上にぶっ飛んだ能力の使い手が多いことで有名だ。

超能力ならまだ可愛いもので、全力で羽ばたけば嵐龍もかくやとばかりの嵐を40日も続けたり、そこにいるだけで年がら年中日照りや大雨、オゾン層が生息地だとか、時間や空間を司り操る、「生命」と「再生」、「破壊」と「死」を司りそれにふさわしい能力を持つ、異世界に棲む特殊なポケモン郡、果ては宇宙からやってきただの宇宙を創造しただのと、万国ビックリショーでも開けそうなラインナップだ。

特に伝説のポケモン……彼らは、実際の実力差はともかく持ちうるポテンシャルなら古龍種に匹敵する危険性を秘めている。元の世界にいたころならいざ知らず、ハンター生活がすっかり馴染んだ今の私が伝説のポケモンに遭遇したなら、即断即決で討伐に乗り出すくらいには危険だ。

 

そして、ダイマックス……実際にポケモン自身が巨大化しているわけではないが、デカイ体が暴れているという絵面は、人々の恐怖を煽るには十分すぎる効果がある。本当ならもっと接近したいところだけど……こちらが姿を認識するよりも先に攻撃を仕掛けられた以上、これ以上空路で接近するのは危険だ。

 

「団長、降りましょう。敵は長射程でこちらを攻撃できます、空中にいては格好の的です」

 

「……むぅ、やむを得ないか……。本当なら、バルバレに向かいたいところだったが、仕方ない!すまないが、航路を変更しよう」

 

「了解。このまま高度を少しずつ落としながら、ドンドルマ方面へ飛びます」

 

ナグリ村滞在中、一時は大砂漠を離れていたバルバレが再び大砂漠方面に訪れたと聞いて、その懐かしさからみんなで「そうだ、バルバレに行こう」と決めて飛び立った矢先に、これか……。まったく、一体何が起こっているんだか。

……それよりも、だ。ちょっと地底にいるあいだに、シュレイド地方の上空に変な裂け目が出来ていた。……あれって、時空の裂け目?剣盾要素の次はレジェアル要素か……なんだ、いつのまにモンハンとポケモンはコラボを始めたんだ?

ギリギリまで高度を落としながら、私たちは一路ドンドルマを目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンドルマに無事に到着した私たちは、ひとまず情報収集をすることにした。私とソフィアさんと団長さんは自らの足で、他の皆は各自訪れたお客さんにそれぞれ尋ねる、という形で。その結果……。

 

「……新大陸に渡ったハンターが、シュレイド城でミラボレアスを狩猟中に……」

 

「うむ、どうやらあの変な裂け目が開き、そこへミラボレアスが逃げてしまったそうだな」

 

「あの裂け目、一体何なんでしょうか……そして、逃げたミラボレアスは一体どこへ……?」

 

なんというか、面倒くさい事態になっていたらしい……。

まず、私たちがナグリ村でのんびりしたり地底洞窟で狩りに勤しんでいる間に、シュレイド城にミラボレアスが出現したそうだ。そして、このミラボレアスの狩猟を請け負ったのが新大陸に渡った新大陸古龍調査団、その五期団なんだとか。たしかワールドの主人公って、現大陸では凄腕ハンターって言われてたけど……もしかして、あの人?

たまたま狩りで一緒になって、私の境遇に同情してくれてやたらめたらと親切にしてくれた男性ハンターで、素材が足りないときや狩猟に苦戦していると、よく素材を都合してくれたり狩猟にも積極的に手を貸してくれた記憶はあるけど……正直、お節介が過ぎるので勘弁して欲しかった。

ただ、本人にそれを言ったら思った以上にショックを受けられたことと、さらにそのことを「筆頭ルーキー」ことエイデンさんに相談したら「マジか……」って顔をされたことだけは、七年経った今でも未だに謎だ……。

討伐作戦に、私に声がかからなかったことを少しだけがっかりしつつも、おかげでボレアス関係の時系列が大まかに分かったのはいいことだった。

 

ただ……黒龍討伐作戦には、原作にはない展開が起こっていた。突然、シュレイド城上空に謎の裂け目が開くと、そこへ向けてミラボレアスが逃走してしまったんだとか。……私たちがナグリ村に篭っている間に、そんなことが起きていたとは……。

さらに、ミラボレアス逃走後からしばらくの間、件の謎の裂け目が次々と出現しては消滅するようになったらしい。さらに前後して、一部モンスターが姿を消すようになったとか。原因は謎の裂け目らしく、どうやら目の前で裂け目に飲み込まれるモンスターを見たハンターもいるようだ。

 

そして、遺跡平原のマゼンタ色の空は、時期的にちょうど私たちがナグリ村を発つ頃に起きた現象のようだ。……内容を聞いて、耳がおかしくなったのかと思った。

 

「……金冠サイズのティガレックスが、およそ20倍に巨大化?蛇王龍超えの500m級?世界でも滅ぼすつもりなの?」

 

「幸いなことに、ティガレックスは遺跡平原から動いていないそうだ。……これが幸いか否かは、定かではないが……」

 

「でも、もしもそうなら大変ですよ!ただでさえ大きなティガレックスが、さらに大きな声で咆哮をあげたりしたら……!」

 

「あぁ、どこまでの範囲でどれだけの被害が出るか……まるで想像がつかんな」

 

「団長さんの方はどうでした?伝手があるんですよね?」

 

「もちろんだ、しっかり情報を集めてきたぞ」

 

団長いわく……どうやら近々、超巨大ティガレックスの討伐作戦が実施されることが決定したらしい。世界各地からハンターが召集されることとなり、当然だが私も例外ではない模様。連絡が付かないハンター……歴代主人公の大半が参戦するかどうかは怪しいな、これは。ただ、五期団として新大陸に渡ったあの人とエイデンさん、私の師匠も参戦するだろうか。

あとは……そうだ、龍識船の彼女も。バルファルクの調査では八面六臂の大活躍だったみたいだね。……同い年の私を「姉様」呼びしてくるただのガチレズではなかったか。

 

あ、そうだった。世界で初めてミラボレアスを狩猟したという『生ける伝説』ことジャンボ村の専属ハンターは例の裂け目出現以降、連絡が一切取れないらしい。……たしか、ジャンボ村の元村長とはそれなりに交流があって、今も連絡を取り合っていたんだっけか……それが突然途絶えた、ということは……亡くなったか、あるいは時空の裂け目に……?ダメだ、まるで憶測の域を出ない。確信が持てない情報はいたずらに人を振り回すだけなので、私の胸の内に秘めておいて吉、だろうな。

……私の転移が前兆だとしたら、その頃にはヒスイ地方で時空の裂け目が開かれていたのだろうか。たしか、私のハンター業二年目くらいには新大陸の方で「異世界人」の話が流れてきていたから、時期的にも合っていると思う。

 

……っと、話が逸れた。今は目の前の問題だ。

 

「作戦内容とかは?なにか聞いてます?」

 

「うむ……可能な限り兵器を用いて体力を奪い、ハンター軍で一気にとどめを刺す……といったところか。ハンターは歌姫の歌と狩猟笛による強化支援を事前に受けた上で、剣士とガンナーを剣士が3、ガンナーが1の組み合わせで編隊を組み、総攻撃に出るそうだ」

 

「可能な限り……ということは、ティガレックスの咆哮から兵器は守れない前提ですか」

 

「それと、ティガレックスの変わった攻撃が原因だな」

 

「それなら、私が聞きました!」

 

変わった攻撃……ダイマックス技か。ソフィアさんはドンドルマの集会所でほかの受付嬢らから話を聞いてきたらしい。……大半がハンターの愚痴だったそうだが。

 

「大きくなったティガレックスは、通常ではありえない攻撃ばかりしてくるそうですよ。

 

突然エネルギーのような光を地面から放ってきたり、火だけではなく水や風を口から放ってきたりしたそうです。他にも空から大きな雷や氷塊を落としたり、巨大な岩盤を地面から生やすとそれを叩きつけてきたり、地面に潜ったかと思えば地中から攻撃してきたり……。

あとは……大きな鉄の刺を生やしてきただとか、巨大な種を撒いて育った植物が爆発しただとか、毒の液体を地面から放ってきたとか、大量の虫をぶつけてきたとか、大きな翼とともに竜巻を発生させたとか、黒い光の線を伸ばして炸裂させたとか……。

個人的に驚いたのは、不思議な虹色の光の輪を撃ってきたとか、椅子やカップの幻影みたいなものをぶつけてきたとか、空から星を降らせたとか、大きな拳を空からぶつけてきたとか……。

とにかくもう、普通のティガレックスじゃないみたいです。しかも攻撃するたびにハンターが弱体化したり、ティガレックスが強化されたり、足元が変化したり、天気がコロコロと変わったみたいですよ」

 

「…………」

 

フッざけんなあのド畜生轟竜!ポケモン技全18タイプ網羅してるとかどんな技構成だ!!

 

「攻撃の度に?」

 

「……おそらく、ティガレックスの攻撃そのものに、なにか特殊な効果が付随しているのではないかと。能力云々はともかく、天候が変わるなど明らかに古龍の所業……それが、ただの轟竜であるティガレックスになせるはずがありません」

 

「なるほど……おまえさんの言うとおりかもしれないな。もしや、『元いた世界』にも、似たような現象があったのか?」

 

「……限りなくは近いもの、ですが」

 

それすらも創作物、とはとても言えない。この世界が作り物であることすら黙っているのに、言えるはずもないのだが。

 

「……あっ、そうでした!巨大ティガレックス討伐のためにハンターさんが軒並み出払ってしまったために、どうやらクエストも渋滞を起こしているみたいですよ?」

 

「……それは知りたくなかったなぁ。新人ハンターの皆さん、どんまい」

 

「そして、『我らの団』の前ハンターのお弟子さんであるシズカさんに、急遽依頼を要請したいそうです」

 

「なんですかそれ……"緊急クエスト"ってことですか?」

 

ソフィアさんが手元にある紙を一枚、こちらに手渡した。内容を速読し、すぐに把握する。

 

「……なんでよりにもよってこのタイミングで、歌姫が全国ツアーなんてやってるのよ……」

 

内容は至ってシンプル。全国ツアー中のメゼポルタの歌姫が急遽ツアーを切り上げてドンドルマへ向かうことになったのでその護衛をお願いしたい、という内容だ。一応、メゼポルタから護衛の騎士を同伴させてはいるものの、厳密に言えばハンターではない護衛騎士だけでは不安だし、なにより歌姫が護衛騎士の負担を減らしたいという親切心から対モンスターの専門家であるハンターを護衛に雇いたい……ということだろう。

ところが世界中では巨大ティガレックスの問題で持ちきりで、ハンターも大半がそちらにかかりきり……ギルドとしても歌姫護衛にうってつけの実力者が出払っているせいで、頭を悩ませていたそうだ。そこへ降って沸くように現れたのが、"蛇王龍"『ダラ・アマデュラ』を単身討伐した「希望の星」……その一番弟子ハンターである私、というわけだ。

 

「変な裂け目やらマゼンタの空やらで、世界中では不安が広がっていますからね……立派な心がけだと思いますけど」

 

「……んで、信頼と実績のある手隙のハンターがちょうど良くドンドルマを訪れたから、いい機会だからクエストをぶん投げとこうって?ハンターは使いっぱしりじゃないんだけど……」

 

「でも、実力のあるハンターさん方はすでに遺跡平原周辺にて作戦準備中ですし、今更呼び戻すわけにも……」

 

「"行かない"とは言ってませんよソフィアさん。ひとまずはリーヴェルに向かえばいいですかね」

 

「そうだな……。はっは!なに気に要人警護のクエストは初めてだろうが、なぁにお前さんならできるできる!」

 

「簡単に言ってくれますね……でもまぁ、本当に出来そうな気がしてくるから、不思議なものです」

 

私はアイテムボックスからアイテムを各種揃え、ポポの幌馬車を確保するとオトモアイルーの『リュウセイ』を伴って団長とソフィアさんの方へと振り返った。

 

「それじゃあ、行ってきます」

 

「行ってらっしゃい!」

 

「気をつけてな!」

 

二人に見送られながら、私はクエストへ出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、クエストへと出発した私だが、到着にはかなりの時間を有することになるだろう。……とりあえず、メタペタットで小休憩を挟む予定で行こう。移動中はどうしようか……そうだな、この世界に来たばかりの頃でも、少し思い出してみようかな。

 

 

 

 

この世界に謎の転移を果たし、団長さんたちに事情を説明してからおよそ二時間後……一人のハンターがクエストから帰還した。『我らの団』専属ハンター……その名も『シュラーク』がクエストから帰ってきた。団長さんに加えて、シュラーク……師匠も私にハンターの才があると見込んだのか、レザー装備一式と片手剣『ハンターナイフ』を手渡されるやいなや、遺跡平原に連れて行かれた。その第一エリアにいたアプトノスを発見すると、師匠は顎で示すとともにこう言った。

 

「殺れ」

 

結論から言うと、無理だった。親に気づかれずに子供に近づくことはできたが、私の手は終始震えっぱなしで、剣を振りあげても振り下ろすことができなかった。一度深呼吸をはさんでからもう一度振り上げたところで、師匠に呼び戻された。

 

「なぜ狩らない?」

 

「な、なぜって、そんな……」

 

「……質問を変えよう。殺すことがそんなに怖いか?」

 

「……ッ!!」

 

そう問われてからは、私は口を閉ざして黙って俯くことしかできなかった。平成の世で生きてきた私には、なんの実害もないアプトノスを一方的に殺すことに強い抵抗感を覚えていた。それを、師匠は私のわずかな行動のみで察したのだ。……伊達に古龍種や禁忌モンスターと戦っていないわけだ。洞察力が普通じゃない。

そのまま私たちは、三番エリアまで移動した。……ジャギィが一頭いるだけで、ほかは何もいない。

……そのジャギィがこちらに気づき、一目散に駆けてくる。私が思わず身構えると、師匠がゆっくりと前に出た。大きな口を開けて飛びかかってきたジャギィ……その懐へ掻い潜ると、師匠はジャギィの下顎を抑えて持ち上げると、そのまま勢いよく地面に叩きつけた。……最初に見たとき、「(なにやってんのこの人)」ってツッコミを入れたくなったのをよく我慢したな、私。

 

「殺れ」

 

暴れるジャギィを押さえつけたままそう言う師匠。この時ばかりは、私は多少の迷いの後にハンターナイフをジャギィの腹に突き立てた。肉を切り裂く感触……吐きそうになったけど、「ジャギィは人的被害をもたらす害獣だ」とひたすら己に念じ続けて無理やり我慢した。

そうしてジャギィが完全に絶命すると、師匠は一言。

 

「なるほどな」

 

「……何がですか」

 

「人間に害をなすジャギィは殺せて、基本的に無害なアプトノスは殺せないか」

 

「何が言いたいんですかッ!!」

 

「勝手に命の重みを決めるなってことだ」

 

「あ……」

 

それから師匠はこう言った。

 

「この大自然において、あらゆる命が全て等価値だ。安い高いなんて価値、俺たちのようなちっぽけな生き物が決めつけられるはずがないんだ。どれだけ弱っちい動物も、どれだけ強大な古龍種も、形あるものはいつかは終わりを迎えるんだ。

それを、手前勝手な都合で価値を決めてちゃダメだ。……なぁ、食事をする前と後、なんて言うかわかるか?」

 

「……"いただきます"と、"ごちそうさま"……」

 

「そうだ。俺たち人間が食事に対してそう言うのは、命を頂いているからだよな。……でも、命を頂くっていうのは、なにも食事ばかりじゃないだろ?」

 

「……!!モンスターの、素材……?」

 

「そう。モンスターから素材を剥ぎ取るにしても、狩猟……即ち、命を奪うしかない。一部例外はあるとは言え、殺生はどうしても避けられない道だ。……君が狩猟できなかったアプトノスだって、その身から剥ぎ取れる竜骨も生肉も、俺たちハンターにとっては欠かせない貴重なものだ。だから俺たちハンターは、モンスターから素材を"いただきます"するんだよ」

 

「!!」

 

当時の私は、そこまで頭が回っていなかった。多分、転移直後というのもあって、いっぱいいっぱいだったのかもしれない。

言ってしまえば、「豚は生かして猪は殺す」……そんな考えが凝り固まっていたのだ。だからこそ、師匠の言葉は目から鱗だった。

 

「そうして、この大自然のサイクルは回り続けるんだ。モンスターの死骸だっていつかは土に還り、大地を肥やす肥料になる。死肉だって、ガブラスのようなモンスターたちが決して無駄にしないようにちゃんと処理してくれる。ほら、無駄なんてこれっぽっちもないだろ?」

 

「はい……」

 

「だからこそ、俺たちハンターが生きて行くためにも……そう、"生きるために狩る"ことを否定してはダメだよ。まぁ、君がハンターになるかどうかは今後の君次第だろうけどね?」

 

結局、その日の訓練はそこで終了した。翌日も訓練のため狩場に来たが、相変わらず私はアプトノスを狩猟できずジャギィを狩猟する、という結果を繰り返した。クエスト次第では草食種の狩猟もしなければならないというのに、いつまでもこんな体たらくでは話にならない。

……そして、この問題は師匠にとっても頭痛の種となっていたようで、師匠が団長さんたちに相談していた場面に遭遇してしまったことがある。

 

「おぉ、お前さん!どうだ、彼女の調子は?」

 

「あ~……まぁ、見込みはありますよ。一応は」

 

「一応……というと?」

 

「どうにも彼女、人畜無害なモンスターを狩猟することに抵抗があるようで……訓練を始めて一週間経ちますが、未だにアプトノス一頭すら満足に狩猟できないんです。……反対にジャギィはバッタバッタと薙ぎ倒すんですがね」

 

「ふむ……彼女がもともと住んでいた場所は、モンスターに対する命の扱いがかなり慎重だったようなんだ。それこそ、法律で取り締まられるくらいにはな」

 

「げぇ……法律って、なんともまぁ……」

 

団長とソフィアさんには事前に私が住んでいた国と、その国の法律などを話していたので思いのほかスムーズに話が進んだ。……流石に、あの法律に関しては首を傾げられてしまったが、私が決めたわけではないので勘弁して欲しい。

 

「ジャギィやブルファンゴのような、人に害をなす"害獣"程度ならば、国から許可を得て狩猟することが許されるそうだが……そうではないモンスターを狩猟することは、たしか……」

 

「"動物愛護法違反"、ですよ。団長さん」

 

「おぉ、ソフィア!そうそう、その愛護法違反とやらで逮捕されてしまうそうだ。おそらくは密猟対策なのだろうが……」

 

「いやいや、それにしたってやりすぎでしょそれ。いったいどんな国で育ってきたのやら……」

 

師匠が呆れたような声を出しているが……実際、私の世界の法律に置き換えるとアプトノスやケルビのような草食種を、メインターゲットでもないのに狩猟することは動物愛護法に違反していそうでちょっと怖いのだ。

そうでなくても、人畜無害な生物を殺傷する機会など農業系の学校に進学でもしなければそうそうに訪れることもないので、抵抗感が生まれるのは仕方がないことだと思う。

……思えば、師匠のスパルタが始まったのはこの時からかもしれない。

 

師匠と団長、そしてソフィアさんのやりとりを盗み聞きした翌日、師匠が二枚の羊皮紙を持ってきた。

 

「それじゃ、そろそろクエストを受けていこうか」

 

「わかりました」

 

「とりあえず肉の納品ね」

 

「えっ」

 

師匠が用意したのはクエスト……それは、4シリーズの最序盤で受ける村クエスト。即ち、村クエスト星1のクエストだ。内容はゲームと同じ『生肉を美味しくせよ!』と『調合の妙を学習せよ!』の二つだ。

当然、必要なものは現地調達である。つまり……私は否応なしに、アプトノスをはじめとする草食種の狩猟をしなければならない。さらにタチの悪いことに、4シリーズにはブルファンゴがおらず、遺跡平原にはリノプロスもいない……ホーミング生肉共がいないので、草食種を狩猟するしかないのだ。

 

「やれるな?」

 

「……やり、ますっ……!」

 

「この二つが終わったら、君を本格的にハンターとして鍛え上げる。かなり厳しい道になるだろうが……その代わりと言っちゃなんだが、今後の訓練では君が使いたい武器で実施することにしよう」

 

師匠は私が本能的に忌避している部分を、スパルタ形式で修正しようとしているのだということは、最初からわかっていた。いつまでも平成人思考では、モンハン世界では生き残れない……いや、ハンターになる資格すらない。

そして、師匠はこのチュートリアルクエストを終えれば、私が使いたい武器での訓練を許可してくれるそうだ。私が使いたい武器は、最初から決まっている。

銃槍(ガンランス)……ゲーム内で、兄が使っていた武器種だ。私は加工屋でガンランスを見た際に、兄が使っていた武器種であることを思い出した。それ以来、一ハンターとして認められたら、使っていきたいと思っていた。そのガンランスでの訓練が認められる……私はますます気合を入れてクエストに臨んだ。

 

……まぁ、当然だがそんなすぐにうまくいくはずがない。師匠も同伴してくれるが、私がアプトノスを狩猟するまでにかかった期間はまさかの一ヶ月。一ヶ月もの間、草食種を一頭も狩れない(それも精神的な部分で)まま過ごしてしまったのは、今思い出しても相当な黒歴史だ。

やはり、怖いのだ。正当防衛が成り立つ肉食種とは異なり、草食種はこちらの都合で一方的に殺すのだから、抵抗感も訳が違う。そうして一ヶ月後……私はようやく、アプトノスを狩猟することができた。

先制攻撃で子供を狩猟すると、気づいた親が向かってきて頭突きを繰り出してきた。それを盾で受け止めて拮抗すると、そのまま下から喉へ目掛けて剣を突き立てた。吐き出された血の塊を頭から被りながらも、必死になって息の根を止めた。……そのあとで思い切り嘔吐してしまったが、師匠は私を抱きしめて頭を撫でながら「頑張ったな」と労ってくれた。

 

その後は自分でもすっかり吹っ切れたようで、草食種の狩猟も難なくできるようになった。村クエスト星2以降は、念願のガンランスを使っての狩猟&訓練となった。

ただ、師匠の手を煩わせ続けるのも申し訳ないので、私は団長さんに我儘を言って世界各地に点在する教官たちを訪ねて回った。一人ひとりから狩りの基本から応用まで丁寧に教えてもらい、狩りで実践してみたりした。……なかなかに熱苦しい人から残念な人まで、実に多種多様な人がいた。……ウツシ教官はゲームもリアルもとにかくうるさかったな。

 

こうして様々な人たちから教えを乞い、狩技に狩猟スタイルから鉄蟲糸技まで、幅広い知識を吸収することができた。ウツシ教官からは

 

「わざわざカムラの里まで来てくれてありがとう!これは俺からの餞別だよ、ぜひ可愛がってあげてくれ!これからも君の活躍を応援しているぞおぉーーーーっ!!」

 

……と、松岡○造もかくやとばかりの声援とともに翔蟲を贈られた。そんな濃密な五年間を過ごし、中型モンスターを完全制覇出来た頃に、師匠はキャラバンを去った。対大型モンスターは師匠同伴とはいえ狩猟自体は成功していたから問題はなかったが、私にだけ何も言わずに出て行ったのは本当にどうかしていると思う。

 

それから二年間、あちこちを転々としながら最終的にナグリ村で腰を落ち着かせた。そしてバルバレの話を聞いて今に至る……と。数ヶ月かけてメタペタットへと到着した私は、ポポを休ませつつ情報収集のため村で聞き込みなどをした。

どうやら歌姫の全国行脚の話は既に広がっているらしく、どこに歌姫がいるのかという話も聞くことができた。……出来たはいいが、そのせいで出発を急ぐことになってしまった。

 

「あの人たちは待つってことを知らないのかなぁ!?」

 

どうやら歌姫はギルドからの要請でドンドルマ行きが決まってすぐに行動を起こしたらしく、既にリーヴェルを発った後だった。距離的に考えてもリーヴェルからドンドルマ直行はありえないので、間違いなくメタペタットを目指すだろう。何も知らなければ入れ違いになるところだった……私はとりあえず森丘経由でリーヴェルへ向かうことにしたが……この判断が功を奏した。

森丘に到着してすぐ、私はドスランポスの群れを発見した。既に戦闘状態だったので、ブラストダッシュでドスランポスの後背を突き、叩き付けからのフルバーストで一瞬でお陀仏にしてやった。……やけに弱っていたのが気になったが、それはどうでもいいことだ。

今回の依頼は要人警護……護衛対象とその周辺が無事なら、終わり良ければすべて良し、だ。

 

「……はぁ。依頼を出すだけ出しといて、ちょこまか動かれると困るんですが。私が事前にメタペタットに寄り道しなかったら、入れ違いでリーヴェルに向かうところでしたよ……」

 

「あ……その、ごめんなさい。……依頼を受けてくださったハンター様、で、よろしいですか?」

 

「えぇはい」

 

これくらいの愚痴は許してもらえるだろう。改めて歌姫と向き合うために顔を上げたところで……ありえないものが視界に映りこんだ。

 

「……なんでレジェアルの主人公がここに……?」

 

「……えっ、と……」

 

そこにいたのは、『ポケモン LEGENDS アルセウス』の主人公のテルとショウ、同ゲーム内に登場する組織コンゴウ団とシンジュ団の団長のセキとカイ、イチョウ商会の一員にしてすべての黒幕のウォロの五人。そして、白いドレスの少女と黒衣の竜人族の青年の二人……計七人である。

……ありえない、なんだこの組み合わせは。そもそもなぜポケモン世界の住人がこのモンハン世界にいるんだ?ウォロのポケモンはトゲピーがトゲキッスに進化している所を見るに、ゲームはもう終盤も終盤まで進んでいるんじゃないのか?なのに未だに一緒に行動している所を見るにまだ黒幕だと明かしていないのか、それとも明かされてなお事情が有って行動を共にしているのか……だめだ、まるで意味がわからない。

しかも白いドレスの少女と黒衣の竜人族の青年は、どちらも禁忌モンスターのクエストの依頼主として名前が登場している。さらに黒衣の竜人族の青年の名前はダイアー・ミラリス……グラン・ミラオスの英名ときた。

一体全体、何が起こっているの……私の頭脳だけじゃ限界だ、たすけてにいさん。

 

改めてお互いに自己紹介をした。ポケモンたちのこともそれとなく聞いてみたが、はぐらかされた。……誰かの入れ知恵か?少なくともポケモン勢の考えではないことはわかる。そこまで知恵が回るとも思えないしね。

私たちはベースキャンプでポポの幌馬車に足を変えたあとで、色々と情報交換をしておいた。特にポケモンに関する情報はこちら側が違和感を覚えないような擦り合せがなされていて、上手く説明されていた。……やはり誰かが知恵を貸しているな、白いドレスの少女か、黒衣の竜人族か……はたまた別の第三者か。

詳しく尋ねると、ポケモン勢に対して敵意を持っておらず、またこちら側の世界での生活に困らないように知識を与えた人物がいて、その人物の名は「アカイ」というらしいことがわかった。それ以上のことは踏み込むには関係が浅すぎるので断念したが……アカイ、というともしかして『謎の赤衣の男』のこと?兄さん達が「ミラバルカンではないか」と疑いを持っていた依頼主の一人?……人間を憎んでいるはずの紅龍が、なぜ……?ともかく、今はメタペタットまでしっかりと護衛をしなければ……集中しろ、集中!

 

私はリーフィアを抱っこしてご満悦な様子の歌姫を横目にそう思った。……いや、歌姫のせいで全然集中できないんだけど。大丈夫かなぁ、これ……?

 

 

 

 




実は転生者ではなく転移者だったという真実


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【目指せドンドルマ!】我らモンハン部異世界支部【いざ出発!】

約束の再開の時きたれり


1:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あーたーらしーい、あーさがっ、きーた!

 

2:空の王者 ID:MH2nddosHr8

きーぼーう(予定)のあーさー、だっ!

 

3:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……やっべ、剛太らがおらんの忘れてついボケてしまった

 

4:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あと、肝心のツッコミ役である流静もいねぇ

 

5:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うわぁ、これから俺と焔の二人がデフォになるのかぁ……人が足りない

 

6:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それなぁ

 

7:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

私たちもいるよー?

 

8:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

おはー、とりま出発するかね?

 

9:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おぉ、ミラオス……って、その姿は依頼主の一人じゃん

 

10:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

顔が利く方が便利だろ?だからの選択よ

 

11:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ナイス判断!

……あと、ショウちゃんが焼肉食べたりしないでよかった……

 

12:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

めっちゃ美味そうだったけどな

 

13:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ヤメロォッ!!

 

14:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はっはっは……ん、声?

 

15:空の王者 ID:MH2nddosHr8

は?……いや、本当だ、声がする……って、ショウちゃん判断が早っ

 

16:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

おぉ、なんてラッキー!さすがは俺

 

17:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ラッキーって……半分位は狙っていたくせに

 

18:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

まぁ、ドンドルマへ移動中ってのは知ってたんで、うまくいけばバッタリ遭遇するかなーとは思ってたんですけどね

 

19:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、ショウちゃん本当に迷いがないね……ドスランポスをダイケンキで容赦なくぶっ飛ばしたし

 

20:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そして後から合流したテルたちもポケモンを繰り出しランポスの群れと大乱闘!

ドスランポスに関してはショウちゃんとテルの連携攻撃で瞬殺!

ランポスどもも、セキニキたちがうまいこと追い返したな

 

21:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

いやー、みんな強いわねー、これは先の成長も楽しみだわー

 

22:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

ほほぉ、これがポケモンの力か……いやはや見事見事!

 

23:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……?待って、ドスランポスが……まだ生きてる!!

 

24:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なにっ!?ショウちゃん、危ない!!

 

25:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……と、思ったら森からガンサーがブラストダッシュで突っ込んできた!?

すんげー叩きつけ……土煙が舞うって相当やでこれ

 

26:空の王者 ID:MH2nddosHr8

さらにフルバーストで追撃……えっぐいコンボ

 

27:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

装備は……ラギアXRに冥雷の銃槍か

威力からして強化した冥銃槍エングルムかな?

 

28:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

へぇ、あの黒いのをシバいたのか

 

29:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……え?

 

30:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……は?

 

31:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ま、待て待て、待て待て待て待て!

 

32:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

は、な?なんでここに?どうやって?

 

33:空の王者 ID:MH2nddosHr8

待て、どうなってる?おかしいだろどうしてここにいるんだ?

 

34:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まさか後追い死した……?いや、そんな、でも……

 

35:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ありえんとも言い切れんし、違うともなんとも……

 

36:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

えぇ~……どうすんだこれ、流静になんて言えば……

 

37:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

どうしたの?さっきから?

 

38:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ルーツ……えっと……

 

39:空の王者 ID:MH2nddosHr8

目の前のハンターが、流静の童○喰った妹にそっくりなんだよ

……なんか、最後の記憶よりだいぶ成長しているけど

 

40:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

え、そうなの?

 

41:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

"そうなの?"って……ルーツも知らんのか!?

 

42:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

し、知らない……あなたたちはアルセウスが関係してるし、私はモンスターたちを引き込んだくらいで、特に何も……

 

43:空の王者 ID:MH2nddosHr8

い、いや待て!まだ顔が似ているだけの赤の他人の可能性も――

 

44:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

だ、だな!それではハンターさん、お名前をどうぞ!!

 

45:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

……ハンターの名前は?

 

46:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

シズカ

 

47:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ミズハシ

 

48:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

つまり?

 

49:空の王者 ID:MH2nddosHr8

水橋

 

50:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

静香

 

51:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

本人確定だね、おめでとう!

 

52:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あとで流静のSAN値チェックしなきゃ

 

53:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……確認が必要ね、えいやっ!

 

 

――「King of Kings」が参加しました――

 

 

54:King of Kings ID:MHWIBMr999

……おや、祖龍様?如何な要件で?

 

55:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ごめん、ムフェト

ちょっと流静くんに確認を取りたくて……しばらく橋渡しをしてくれる?

 

56:King of Kings ID:MHWIBMr999

お安い御用だ!いやぁ、最近は驚くことばかりで退屈せんなぁ!

 

57:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

しれっとムフェトを召喚しよったこの祖龍

 

58:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……え、確認って流静に?あの、ちょっと待ってもらっても――

 

59:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そーれ

 

 

――「鎧の覇者」が参加しました――

 

 

――「大洋の支配者」が参加しました――

 

 

――「零下の白騎士」が参加しました――

 

 

60:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あ"ー……そこそこ、しっかり磨いてくだしゃぁ……

 

61:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

海は俺の独壇場だ……往生しやがれハリーセンども、悪さもそこまでだ

 

62:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺はロリコンじゃない

俺はロリコンじゃない

俺はロリコンじゃない

俺はロrrrrrrrrrr――

 

63:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

一人バグってるが大丈夫か?

 

64:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ダメですね(諦め)

 

65:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……?ファッ!?なんで繋がってんのエッチ!!

 

66:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

殺 す ぞ ?

 

67:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……ハッ!?ここはどこ!俺はベリオロス!

 

68:空の王者 ID:MH2nddosHr8

落ち着け!間違ってないけど間違ってるぞ!!

 

69:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ハァ……ハァ……すまん、ちょっと我を忘れてた

それで、なんで繋がってるのか……は、もう聞かんわ、一体何用だ?

 

70:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

私が繋げたのよ、ムフェト・ジーヴァを基点にしてね

……それで、流静くん

 

71:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺に用か……ルーツ、一体どうした?

 

72:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

私たちの目の前にいるハンターなんだけど……この子を見て、この子をどう思う?

 

73:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ハンター……?ラギアシリーズ……それもXRか、ラギアシリーズは俺の好きな防具じゃないか……それで、ハンターは――

 

 

――「大洋の支配者」が退室しました――

 

 

74:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

逃げたぁっ!!

 

75:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

爆速で逃走したぞあの野郎!!

 

76:空の王者 ID:MH2nddosHr8

逃がすなぁ!追えぇっ!!

 

77:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

よいしょ

 

 

――「大洋の支配者」が参加しました――

 

 

78:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

私から逃げようなど100世紀早い

 

79:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いやだあああああぁぁぁぁぁっ!!

勘弁してくれえええぇぇぇぇっ!!

近○相○はただの犯罪だからあああ!!

 

80:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

オウフッ、こんなに取り乱す流静くんは初めてね……

 

81:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

トラウマなんだよ……割とガチ目な奴

 

82:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

というか、なんで静香ちゃんがここにおるん?もしかして死んだ?

 

83:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なに?

 

84:空の王者 ID:MH2nddosHr8

急に冷静になったぞコイツ

 

85:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そりゃお前、下手したらこの子、後追い死した後に転生してここにおるかもしれんだろ?

そう考えりゃ、なんぼトラウマでも大事な家族の身に起きたことだ、冷静にだってなる

 

86:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……たしかに冷静に考えたら、どうして静香がここにいるんだ?……ま、まさか本当に後追い自○……

 

87:空の王者 ID:MH2nddosHr8

待て流静、一番大事なことが抜けている

 

88:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

な、なに……?

 

89:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

静香ちゃんに関してだがルーツは関与してないみたいだ、多分だがアルセウスも関係ない

だがよく見ろ、今の静香ちゃんを!それに、名前まで一緒だったんだぞ!

 

90:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……顔は最後に会った静香よりも成長しているように見えるが、名前まで同姓同名はちょっと偶然にしては出来すぎている

あと、モンハンのNPCに家名持ちはいない……つまり、『シズカ』と名乗るのが自然であって、『シズカ・ミズハシ』とフルネームで名乗るのはおかしい!

 

91:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おぉ、勢いを取り戻したぞ

 

92:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おかえり

 

93:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

静香が転生したなら、生まれた家のルールに倣う……即ち、我が家の家名である『水橋』は名乗らない!そこから考えうる可能性は……"静香は転移をした"ということ!

……いや、それはそれでなぜだああぁぁっ!?

 

94:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

たしかに謎だなぁ……っと、俺らが話し込んでいる間にいつの間にか移動が始まってるぞ

 

95:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

すっかり日も暮れたな……今夜は野宿かな

 

96:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

というか、歌姫のラウラさん……終始リーフィアを抱っこしたままだが

 

97:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お気に召されたようでww

 

98:空の王者 ID:MH2nddosHr8

途中からグレイシアが参戦してリーフィアに「構え」とばかりに絡んでいったが……

 

99:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

結局カイちゃんに勘違いされて、二体仲良くラウラさんに愛でられましたとさ

 

100:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんだその状況スッゲー気になる

 

101:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ラウラ「よしよし」

    ↓

リーフィア「えへへ」

    ↑

グレイシア「構えよオラァ」

 

ちなみにリーフィアはオスでグレイシアはメス

 

102:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

トレーナーと構図が真逆じゃないか……

 

103:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

トレーナーサイド:セキニキ→カイちゃん

 

ポケモンサイド:リーフィア(♂)←グレイシア(♀)

 

こうですか?わかりません!!

 

104:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁ、最近はカイちゃんも無意識とはいえ、セキニキ意識し始めてるから一概に一緒とは言えないか

 

105:空の王者 ID:MH2nddosHr8

砂吐きそう

 

106:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

知ってるか……?これでこいつら、付き合ってないんだぜ……?

 

107:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……って、話を逸らすな!見ろ、静香とショウちゃんが二人きりでどこかに行くぞ!

 

108:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

確かに話は逸れたが、お前も静香ちゃんのオトモアイルーの名前から目を逸らしてんな?

 

109:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

( ゚д゚)

 

 

( ゚д゚ )

 

110:空の王者 ID:MH2nddosHr8

こっち見んな

 

111:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

目を逸らすなって言うから……

 

112:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……おぉう、静香ちゃん結構ド直球に来たね、誘導尋問だって出来たろうにあえてそれをしないとは

 

113:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

必要ないと判断したんだろう、下手に探り合いを仕掛けて警戒されては元も子もない

まして今回、ショウちゃんのことも一応は護衛対象と見ているのだから、関係を悪化させるわけにもいかないだろう

 

114:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

さすがは兄貴、妹のことはお見通しか

 

115:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふんっ、伊達に15年も静香の兄貴はやっとらんよ

 

116:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……完全に置いてけぼりね、私たち

 

117:King of Kings ID:MHW:IBMr999

いやぁ、仲良しとは聞いていたがこれほどとはな!

 

118:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

我々が入る隙間すらないね

 

119:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……っ!!やはり転移……ただ原因は不明、か……

だがさすがは我が妹、少ない情報でほぼ核心に近いところまでたどり着いているな、さすがにワールド軸で起こった出来事だからか完璧に把握は出来ていないが……ミラボレアスに原因があることはわかっているようだ

 

120:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……相変わらず兄妹揃って頭脳オバケかよ、この天才どもが

 

121:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

お褒めに預かり光栄だ

 

122:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……あっ、ショウちゃん、静香ちゃんに流静の話は……

 

123:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……あーあ、地雷踏んだ……見ろよ、一瞬で無表情になったぞ

 

124:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

静香ェ……

 

125:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

追い払われてしまった……やっぱり引き摺ってんのか、俺らのこと

なぁ、焔?陸上は大丈夫だと思うか?静香ちゃんでこれなんだから、お前と仲が良かった陸上も心配なんだが……

 

126:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なんで葵が出てくるんだ……別に大丈夫なんじゃねーの?アイツは特別、俺のことなんてなんとも思ってねーだろうし、なんなら俺嫌われてたまであるぞ

アイツってば口を開けば人のことを散々煽り散らすようなことばかり言うし、高校三年間の間に俺に彼女が出来る出来ないで口論したし

 

127:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、おま、それ、あの……

 

128:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ツンデレじゃね?

 

129:空の王者 ID:MH2nddosHr8

はっはっは!

 

 

……リアルにツンデレは存在しない、いいね?

 

130:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

アッハイ

 

131:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ダメだこの鈍感野郎……早く何とかしないと……

 

132:空の王者 ID:MH2nddosHr8

誰が鈍感だ、誰が

 

133:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

オメェだよ

 

134:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺がぁ?馬鹿にしてんのか

 

135:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

もうだめだコイツは諦めよう

 

136:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

けっ!陸上に化けて出てもらえ!!

 

137:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、アイツはまだ死んでねぇだろ

 

138:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……あ

 

139:空の王者 ID:MH2nddosHr8

え?

 

140:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ん?

 

141:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ううん、なんでもないよ

若くして病死したけど

 

142:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやいや待ってってあんたに限って何でもないなんてことないじゃん!?

なに!?実は後追い自○したのは葵の方だった!?

 

143:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ううん、本当になんでもないよ

雌火竜として転生させたけど

 

144:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……本当に?

 

145:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

うん、きっと元気にしてるよ、信じてあげようよ

対巨龍爆弾級に感情ヤバイけど

 

146:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……じゃあ、信じる

 

147:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

それでよろしい

こりゃあ再会が楽しみだわグヘヘ

 

148:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……さて、そうこう話し込んでいるうちにショウちゃんもオトモのリュウセイと話が済んだみたいだぞ

 

149:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

静香……ハンターとしては色々とやらかしすぎて未熟極まりないが、それなりに大成していてよかった……

 

150:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

色々って?

 

151:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そりゃあ、『怒り喰らうイビルジョー』と出くわしたのに当時まだオトモじゃなかったリュウセイくんを逃がすために半日戦い抜いたことだろうよ

 

152:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

怒り喰らうイビルジョーと出会ったら逃げろって!なんで戦うんだバカタレが我が身を第一に考えろ!今はもうそんなことはしないといっても、明らかにソロで挑んでいいモンスターじゃねぇから!!アイルー一匹のために命を投げ出すな!!二度とすんな!二度とだ!!

 

153:空の王者 ID:MH2nddosHr8

でも、結果的に静香ちゃんも逃げきれてリュウセイという良き相棒にも出会えたんだからいいじゃんか

ギルド側も、三ヶ月の謹慎という名の長期休暇をくれたんだしさ

 

154:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……いくらなんでもギルド側が徹底している制約を破って三ヶ月謹慎は軽すぎる、日頃の活躍が認められていた証拠だよ……

これで無名だったら、ハンターの資格を剥奪されていたかもしれないんだぞ……

 

155:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まぁでも、妹がこんだけ頑張ってるんだから、兄貴としても喜ばしいことだろ?

 

156:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……まぁ、な

こんな体じゃなけりゃ、頭くらいは撫でてやっても良かったが……

 

157:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

人間体だったらワンチャン、セ――

 

158:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

今すぐぶっ殺してやろうかクソ野郎

 

159:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

真面目にごめんなさい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

363:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……これは

 

364:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

すげぇな……

 

365:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

発想の勝利、ってやつだ

 

366:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

名づけて!

 

367:空の王者 ID:MH2nddosHr8

快速リオレウスライナー!

……って、誰が快速列車じゃい!!

 

368:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、実際リオレウスに飛行船を牽引させるって発想は神では?

 

369:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

速さはダントツだぜ!

 

370:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、確かに陸路はおろか普通に飛行船を飛ばすよりかは圧倒的に速い

 

371:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さらに船首周辺にはグレイシア、リーフィアがはかいこうせんをスタンバイし砲台役に

飛行船周辺はトゲキッスと極みガブリアスが並走し遊撃役に

これだけ厳重に固めているんだ、襲って来る阿呆はそうおるまい!

 

372:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

それってフラグって言うんじゃなかったっけ?

 

373:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……!!早速来た、ダイバーンだ!このまま迎撃する!!

豪火球をくらえぇ!!

 

374:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

さらにリーフィア、グレイシア、トゲキッス、ガブリアスの四重はかいこうせんの援護射撃!

 

375:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

よしっ!打ち破った!迎撃成功……いや、待て!何か来る!?

 

376:空の王者 ID:MH2nddosHr8

んなっ……セルレギオス!?こんな時に……くそっ、俺が――

 

377:陸の女王 ID:MonHunPHr5

私が行くわ

 

378:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……え?

 

379:陸の女王 ID:MonHunPHr5

久しぶりね、焔……会いたかったわ♡

 

380:空の王者 ID:MH2nddosHr8

え、そんな、おま……葵ぃっ!?

 

 

 

 




其は修羅場を齎すもの


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緊急クエスト:歌姫、ドンドルマへの導べ~後編~

後編、始まります!


ドスランポスとの群れとの戦闘中、倒しきれていなかったドスランポスが攻撃を仕掛けてくる直前に乱入してきた人……ハンター。その名前は『シズカ・ミズハシ』といった。

どうやらシズカさんは歌姫のラウラさんの護衛依頼を請け負ったハンターらしく、ラウラさんの動向を先読みしてこの森丘に来ていたんだとか。すごい……ハンターってそんなことまで出来るんだ!

 

現在、私たちはシズカさんの案内で森丘にあるベースキャンプに来ている。ここからシズカさんが用意した幌馬車に乗ることになるそうだ。幌馬車に繋がれているのは、見た目はマンムーそのままにイノムー並みに毛深さを増したモンスターだった。……あっ、わかった!これが『ポポ』なんだ!前にアカイさんが「そっくり」って言ってたけど、本当にそっくりだ!

 

「では、自分が御者を勤めます。ハンター様は、どうか歌姫様を」

 

「了承」

 

どうやら騎士さん二人は一人が御者を勤め、もう一人が、馬車の外で警戒をするようだ。シズカさんは馬車に乗り込み、ラウラさんの側に付くようだ。

馬車が動き出して最初の夜。シズカさんはさすがにこの大人数は想定していなかったらしく、敷布団などもラウラさんの分しか用意していなかったようだ。

しかし、私たちとてなんの用意もなく旅をしているわけではない。

 

「それならご心配なくハンター殿。我々の分は我々の分で、ちゃんと用意しているので。こちらのことはどうかお気になさらず」

 

「さいですか……。では本日はこちらで野宿となりますので、準備をお願いしますね、ダイアー……さん」

 

野営の準備をする中、そう言うやいなやハンターさんは武器を片手にどこかへ歩き始めた。

 

「あの、どちらへ?」

 

「周囲に罠を張っておきます。小型モンスターには鳴子で、中型以上には落とし穴やシビレ罠が有効ですので。人間が掛かることはありませんが、気をつけてくださいね」

 

「いえ、その、見学したいなと思いまして」

 

「……見ててもつまらないと思いますが」

 

「ダメですか……?」

 

「うっ……。……はぁ、わかりました。お好きにどうぞ」

 

少し困らせてしまっただろうか……けど、罠を使って捕獲するという話はアカイさんから聞いてから少し気になっていたので、一度見てみたいと思っていたのだ。

私はシズカさんに続く形で歩いていく。私の横には、シズカさんのオトモアイルーのリュウセイくんも歩いている。彼がこの位置なのは、私の護衛を兼ねているのだそうだ。しばらく歩き続けたあと、シズカさんは肩に担いでいた袋の中から筒のような物を取り出した。それを地面に設置したあとに天井部をひねると、火花とともに筒の一部が高速回転し始めた。シズカさんが少し離れたあと、物凄い音とともに地面に網が展開されていた。シズカさんが腰につけている筒を開くと、そこから光の玉が飛び出す。しゃがみこんだシズカさんが手を伸ばすと光の玉もそちらへ飛んで行き、網が張られた地面がはっきりと見えた。

 

「……ん、よし」

 

「あの、それは?」

 

「ん?……あぁ、この光の玉?『灯蟲』って言ってね、まあ松明代わりみたいなものです。夜間の狩猟なんかじゃ、とっても便利で重宝するんです」

 

「む、虫なんですか」

 

「えぇ、私たちハンターは自然の中からたくさんの力を借りている……この灯蟲も、その一つってわけです」

 

「へぇ……」

 

「さっ、ここの落とし穴はオッケー……次、行きますよ」

 

「あ、はい!」

 

再び歩き出したシズカさんの後を、慌てて追いかける。次に仕掛けたのは、伏せたお椀の上に回転するファンがついたような形状のものだ。それを地面に置くと、上部を捻って固定している。その直後、罠から放電が奔り始めた。

 

「さっきのは落とし穴で、こっちはシビレ罠。中にいる雷光虫って蟲が起動源になってて、モンスターを痺れさせることができるんです」

 

「おぉ……」

 

「ただ、一部のモンスターには罠が効かないんですよ。罠を察知して回避したり、罠の中にいる生物を狙ったり、とね。

例えば……このシビレ罠に使われている雷光虫、ジンオウガというモンスターと共生関係にあって、ジンオウガは罠を破壊して中にいる雷光虫から電力を分けてもらおうとするんです」

 

「えぇ!?ジンオウガと!?」

 

「えぇ。……あの、そんなに驚きます?というか、知ってるんですかジンオウガ?」

 

「あっ……」

 

やっばい、やらかした……。ジンオウガと共生関係にある虫の話に、驚いて声を上げてしまった。なんとか言い訳しないと……!

 

「えぇっと、その……」

 

「まぁ、時空の裂け目の出現に伴っていなくなったモンスターたち……その中にジンオウガの名前があった時点で、なんとなくそんな気はしてたんだけどね」

 

「……え?」

 

「やっぱりヒスイ地方に飛んでたか。それじゃあ、ほかのモンスターもみんなヒスイ地方にいるのかな?それにしても、なんだって遠い異世界で開いた時空の裂け目がこっちの世界でも開いたのかしらね。

ウォロとギラティナの一人と一体だけではどう考えても無理だろうし……やはり、ミラボレアスか。奴が時空の裂け目を利用したと見ていいかな……もともとボレアス種には自力で時空を渡る力があるって、昔に兄さんが言ってたし」

 

「……?……ッ!……ッッッ!?」

 

な、なにを……?シズカさんは、一体、何を言って――

 

「ようこそ、異世界人。welcome to differnt world」

 

立ち上がり、振り返ったシズカさんはそう言いながら手を差し伸べてきた。……私は、今、どんな顔をしているだろうか……。

 

「……ん、ゴメンね。私が君を一方的に知ってるだけで、君と私は今日が初対面だよ」

 

「いや、それは、そう……ですが……」

 

「実は私も異世界人なんだ。……そうだな、ノボリと一緒だと思っていいよ」

 

「ノボリさんと!?」

 

ノボリさんまで知ってる……!?ノボリさんは原因不明の転移によってどこからかヒスイ地方へとやってきた人で、記憶喪失者でもある。会ったことのない人のことまで知ってるなんて……!

 

「あの人の記憶を取り戻したいなら、シャンデラでも見せてあげるといいよ。知ってる?シャンデラ」

 

「……ほのお・ゴーストの複合タイプで、ランプラーの進化系……」

 

「そうそう、ヒスイ地方にはいないのによく知ってるね。さすがはシンオウ地方出身者、ポケモンの情報も現代版、ってわけだ」

 

「私のことを知ってるんですか!?」

 

「(あぁ……主人公(あなた)だったのね)いいえ、正確にはあなたがアルセウスの導きによって、現代のシンオウ地方からヒスイ地方に転移したってことだけ。だから、あなた自身のパーソナル情報は何も持っていないわ」

 

「あっ……。そ、そう、ですか……」

 

……いや、待て。"そうですか"じゃないでしょ普通!?シズカさんも実は異世界人で、私やノボリさんのことを知っていて、さらにはノボリさんの記憶のことまで!!

 

「あ~……そう警戒しないで欲しいな。別にあなたのことを取って食おうとか考えてないから。むしろ遠路はるばる次元を渡って、この世界に何をしに来たのかな?って思っただけだから」

 

いつの間にか睨みつけていたのか、シズカさんが肩を竦めながら両手を挙げた。しまった、困らせてしまったかな……。

 

「い、いえ……えっと、シズカさんはどうしてここに?」

 

「さぁ?時空の裂け目か、はたまた別の要因か……けど、時期的に考えればそっちの時空の裂け目が先だと思うんだよね」

 

「hai」

 

「時空の裂け目が開いたあと、多分……こっち側でも何かあったのかな。それが原因で、次元境界線にダメージが及んだ可能性がある。次元って複雑な上に結構デリケートなイメージだし、誰かが手を加えたら簡単に崩壊しちゃいそうだよね。

そこへ来て、ミラボレアスだ。あいつ、自力で時空を渡れたりするし、あいつが原因じゃないかな」

 

「hai」

 

「けど、イマイチ確証がないんだよね……決定的な証拠でもあればいいけど、あったところでそれを証明する手段はこの世界にはないし。……新大陸のコラボイベント、いつからだっけ?あれも異世界関連だったから、無関係じゃないはず……その前後で何があったかさえわかれば……。

そっちは時空の裂け目が開いただけなんだよね?もしそうなら、ウォロもギラティナも今回の件に関しては白だね」

 

「hai」

 

「はぁ……こんな時、兄さんがいてくれたら……」

 

いきなり難しすぎる話を始めたシズカさんについていけず、空返事を繰り返していたところで、気になる単語が出てきた。

これ以上、この話題が続くと私の頭がパンクしてしまう……!私は思い切ってそのワードに飛びついた。

 

「兄さん?お兄さんがいるんですか?」

 

「…………」

 

あ、表情が死んだ。地雷だこれ。

 

「……スゥー。その話は、後でね」

 

「アッハイ」

 

これは……これ以上聞いてはいけないやーつ……。すっかり固まった私が返事を返すと、シズカさんはため息をついてから手をシッシッ、と振った。もう寝ろ、ということだろう。私は素直に応じることにした。

シズカさんは引き続き罠を張るらしく、再び歩き出した。私のそばには、シズカさんのオトモアイルーのリュウセイくんしかいない。私が野営地へ向けて歩き出すと、リュウセイくんもついてきた。

 

「……ご主人がごめんなさいニャ」

 

「えっ!?」

 

急に話しかけられてびっくりした!足元を見れば、リュウセイくんが申し訳なさげに眉尻を下げて俯いている。

 

「ご主人にとって、お兄さんの話は地雷なんだニャ。だから、ご主人から話すまでは、決してそちらから尋ねることは避けて欲しいニャ」

 

「う、うん。今のでだいぶ理解した」

 

「それは良かったニャ」

 

「でも」と、前置きしてから、リュウセイくんは私を見上げた。

 

「何も知らないと、それはそれで気を遣わせてしまうので、ボクの方から簡単に説明させていただきますニャ」

 

「……いいの?」

 

「いいのニャ。それに、ご主人のことを積極的に知ろうとしてくれたのは、ショウ様を含めて十七人目。ご主人のお友達が増えて、ボクはとっても嬉しいのニャ。だから話すニャ」

 

それから一拍おいてからリュウセイくんは話し始めた。

 

「まず、ご主人にはとても大切なお兄さんがいたニャ。お兄さんはご主人にとって、それはそれは大変自慢のお兄さんでしたニャ。ご主人は周りから『天才』なんて呼ばれているけれど、お兄さんは更にその上を行く天才だったそうニャ」

 

「て、天才……」

 

「勉強、運動、人望……全てにおいて神懸かり的天才ぶりを発揮するお兄さんと比べれば、ご主人はだいぶ平凡だったそうニャ。だから、周りからも失望されたりして、プレッシャーが酷かったそうニャ」

 

「それは……」

 

いつだって、人は比べたがる生き物だ。……だけど、その差を理由に誰かをひどく言うなんて、許せないことだ。

 

「けど、そんなお兄さんにたくさん助けられて、支えられてたおかげで、ご主人はお兄さんを悪く思うことはなかったそうニャ。そんな大好きなお兄さんが、ご友人を含めて五人で食事を兼ねて遊びに出かけたときのこと……酔っぱらいが運転する車が事故を起こして、お兄さんたちが巻き込まれて全員即死しちゃったニャ……」

 

「……ッ!!」

 

それは……!どおりで地雷になるわけだ……!!

 

「お兄さんが亡くなってから、ご主人は生きる気力を失ってしまったニャ……そんな時に出会ったのが、キャラバン隊の団長だったニャ」

 

……リュウセイくんは敢えて言葉にしなかったが、おそらくシズカさんはもともといた場所から転移したことで出会ったのだろう。良縁に恵まれたんだね……。

 

「ハンターになったことで、ようやくご主人はちょっとだけ元気を取り戻したニャ。出会ってからの七年間で、ご主人はすっかり立派なハンターになってみせたニャ」

 

「……ところで、お兄さんの名前は?」

 

「名前は『リュウセイ・ミズハシ』って言うニャ」

 

「リュウセイ・ミズハシ……って、あれ?君の名前って……」

 

「ボクの名前もリュウセイニャ。……そう、ご主人は亡くなったお兄さんの名前を、ボクに付けているんだニャ。

きっと今も未練はたらたらで、おそらく依存も入ってたニャ。そうでなきゃボクに実兄の名前を付けるばかりか、二人きりの時だけ『ニーサン』なんて呼んで甘えてこないニャ」

 

「…………」

 

そ、想像以上にメチャクチャ拗らせてる……こっちからこの話を掘り下げなくて本当に良かった……。

 

「リュウセイ、くんは……その、困ったりしてないの?」

 

「……ご主人の本当の事情は、今のところボクしか知らないニャ。ご主人が異世界からやってきたことも含めて……。だから、ご主人の立場に立って考えた時、自分勝手に『迷惑だ』なんて言えないニャ。

所詮はアイルーに過ぎないボクだけど……こんなボクでも、ご主人の心の傷を少しでも癒すことができるなら、喜んで力になるニャ。ご主人はボクを『怒り喰らうイビルジョー』から命懸けで助けてくれた恩人……だから、ボクだけは絶対にご主人の味方を張り続けるニャ」

 

な、なんという孝行ネコ……!これが本当の"猫の恩返し"……!!

『怒り喰らうイビルジョー』は、ハンターズギルドから「遭遇したら即撤退」が徹底されている……にも関わらず、シズカさんはリュウセイくんを守るために半日も戦い続け、精根尽き果て刀折れ矢尽きるとも怒り喰らうイビルジョーからリュウセイくんを逃がし、さらに自身も逃げ切るということを成し遂げたんだとか。

 

「すごいんだね、シズカさん」

 

「ギルドにはすっごく怒られたけど。でもご主人は日頃から働きすぎだから、ギルド側もご主人を合法的に休ませるいい機会ができたと安堵していたニャ」

 

「そんなに働いていたの?」

 

一週間にクエストを十個こなすくらいは普通だったニャ

 

「えっ」

 

どうやら当時シズカさんは"一週間十クエスト"がモットーだったらしく……普通に働き過ぎである。クエストを取っ替え引っ替えに受注しては達成する様は、まるでワーカーホリック状態だったそうな。そこでシズカさんが所属するキャラバン隊の団長さんがギルドに相談していたところ、シズカさんが怒り喰らうイビルジョーと一悶着やらかしたことで謹慎処分……つまり、合法的に休ませることができたとか。

 

「今ではだいぶ落ち着いたけど、それこそハンターになって二、三年ほどは弱っていたり傷ついた小型モンスターを見捨てられず助けてしまうことが多かったニャ。でも、ご主人はそれくらいにはとても優しい心をもっているんだニャ。……口数が少ないし感情の変化も乏しいから、冷たい人ってよく言われるけど」

 

たしかに……私と話をしている時も、あまり表情に変化が見られなかった。……これ、大好きなお兄さんの前だとコロコロ変わるやつだったりしたのかな?

 

「……ん、着いたニャ。ショウさん、この話は……」

 

「大丈夫。内緒、だよね?」

 

「ありがとうございますニャ」

 

ぺこり、と頭を下げてから、リュウセイくんはキャンプ地に戻っていった。私も後から続き、ちょうど夕食時だったようなのでたくさんのお肉に舌鼓を打った。後から戻ってきたシズカさんも一緒になって夕食を食べたのだが……シズカさん、ずっと騎士の二人から質問攻めにされていたな……有名人なのかな?

……ところで、このお肉……リオレウスのお肉、混ざってないよね……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝を迎え、罠をすべて処理したシズカさんが合流してから、私たちは再び出発した。道中、小型の肉食モンスターが度々姿を現したが、シズカさんとリュウセイくんの一人と一匹がすべて撃退した。

……いや、シズカさんが強いのはなんとなくわかっていたけど、リュウセイくんも強すぎ!シズカさんの砲撃で吹っ飛んだモンスターを利用して三角飛びをして別のモンスターを頭上から強襲とか、曲芸の域を超えてるから!

そうして、森丘のベースキャンプから出発して三日でメタペタットへと到着した。ここから更にドンドルマへ向かう事になるのだが……徒歩くらいの速さで移動すると数ヶ月は掛かってしまうそうだ。ポポは特別足が速いわけではないので、頑張ってもひと月以上はかかってしまうのだとか。

それはマズイ、ドンドルマに着く前に私が死ぬ。とりあえず、どうやってシズカさんにこの事を話すかだが……。

 

「さて、ここからさらに移動になりますよ。なるべく早くドンドルマに戻りたいので、予定としては一、二ヶ月を想定しています」

 

「えっ!?も、もっと速くならないのか!?」

 

「……?なにか事情がおありで?」

 

「えっと、ショウが呪われてて……」

 

「はい?」

 

テル先輩がしどろもどろになりつつも、私の事情を話してくれた。……すると、シズカさんが鬼のような形相で私の両頬を掴むと、ハイライトの消えた瞳で私の顔を覗き込んできた。

 

なぜもっと早く言わない?

 

「す、すいません!機会を逸していただけで、隠すつもりはありませんでした!!」

 

「……はぁ。仕方がない、ここで議論しても無駄ですし。それでは、どうやって速く移動するかを考えなければ……」

 

「ハンター殿、飛行船は使えないのでしょうか?」

 

「……遺跡平原周辺の空は、巨大ティガレックスの遠距離攻撃の射程範囲内だよ。飛行船を使うなら超低空飛行を強制されることになる。地形しだいでは上昇せず飛ぶことはできないし、そもそも低空飛行自体が危ない。なので却下です」

 

騎士の一人がシズカさんに質問するが、どうやら事情が有って使うことは推奨されないようだ。……でも、それなら問題はないはず!

 

「……シロちゃん、ダイアーさん」

 

「ショウ?……まさか?」

 

「多分、これが一番だと思います。これなら、飛行船で飛んでも問題はないかと」

 

「……わかってる?自分が言っていることが、この大陸にとってどれだけ異常なことか……」

 

シロちゃんが、険しい顔で私を見てくる。……わかっている。下手をすると、私は大陸中の人たちから迫害される可能性があることも。それでも、私は生き残る可能性がわずかでもあるのなら、そちらに賭けたい!

 

「もちろんだよ」

 

「……はぁ、もぅ。しょうがないなぁ……」

 

「ありがとう、シロちゃん!」

 

「……アカイがあなたを気に入る理由、分かる気がするな……」

 

「あはは、ウチのシロにここまで言わせるとは。大した人だね、ショウさん」

 

シロちゃんからお許しを頂き、ダイアーさんも笑って受け入れてくれた。私はシズカさんを呼び出すと、メタペタットから離れて人目のつかない場所まで移動した。そして……。

 

「出てきて!」

 

「グオオオオンッ!!」

 

「……!!リオレウス……!?」

 

私はボールの中にいるリオレウスを繰り出した。勢いよく飛び出したリオレウスは私を見て……それから隣にいるシズカさんを見るやいなや、ポカンと大口を開けて呆然となった。……どうしたんだろう?

 

「……この個体、まさか」

 

「……えっと、これで空を飛んでいこうかな、と。リオレウスの機動力なら、遠距離攻撃にも対応できますし……それに、飛行船への攻撃だって守ることが出来ると思います!!」

 

「あ、いや……その、ダメとは言ってない、けど……。ちょ、ちょっと待って整理させて」

 

スゥーハァーと深呼吸をしたあと、長考を始めたシズカさん。……マズイ、かな……。

 

「……一つだけ、方法がある。かなり綱渡りだし、なんなら向こうから勝手に勘違いしてもらったら御の字だけど……」

 

「あるならそれに賭けましょう!……こっちは命を懸けているので」

 

「……それ、シャレにならないよ。普通に笑えない」

 

言いながら、シズカさんはみんなの元に戻っていった。私も後から付いていく。

 

「みなさん、お話があります」

 

「なんでしょう」

 

一番にラウラさんが反応した。……相変わらず、リーフィアを抱っこしたままだ。なんでもリーフィアから香る草木の匂いが故郷を思い出させてたいへん落ち着くんだとか。

 

「どうやらショウさんには少々事情がありまして、一月以内にメゼポルタへ向かわなければならないそうです。なので、諸々の事情を考慮して飛行船での移動となりました」

 

「飛行船ですか……それで、事情というのは?」

 

「えぇ、その件ですが……」

 

シズカさんが事情を説明すると、ラウラさんたちは酷く驚いた様子で私を見てきた。私はまだ大丈夫だ、という意思表示のために力強く頷く。そして、場所をメタペタットの外へ移して……。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「まぁ!あのリオレウスがこんなにも大人しく……よしよし」

 

「グオン♪」

 

「うふふっ、こうして見るとなんだかとても可愛らしいですね!」

 

私のボールから飛び出したリオレウスを見て、騎士二人と御付きのアイルーのルルさんは呆然となり、ラウラさんだけが平常運転でリオレウスを撫でていた。

 

「……わっ、なんだ?」

 

「先輩?どうしました?」

 

「いや、その……ライゼクスが入ってるボールが急に激しく動き出して……」

 

「…………」

 

嫉妬って怖いね(小並感)。なんでわかったんだろうか……。

 

「……よし、行けっ!」

 

一方、シズカさんは手紙を書き、それを鳥の足に備われた黒い筒の中に入れると、そのままどこかへ飛ばした。聞く所によると伝書鳥らしい。

 

「ドンドルマには念のため、一報を入れました。……返事までは四日ほど有するけど、待てる?その代わり、飛行船なら全力で飛ばせば片道六日だよ」

 

「待ちます」

 

「……了承」

 

一瞬、シズカさんがなにか言いたげにしていたけど……何も言わずに了解の返事をくれた。……さて、四日か。その間にしっかりと準備をしよう。出来る限りのことを、だけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四日後。ドンドルマから返事か帰ってきた。

 

「ドンドルマからの返答が来ました。内容を掻い摘んで説明しますと……『とりあえず早く来て!』、です。リオレウス使いであるショウさんに関しては、巨大ティガレックス討伐後、対談の場を設けたいとのこと」

 

「やった!」

 

良かった!ひとまずは受け入れてもらえたみたい。

メタペタット全体にもこの返答が広められているらしく……ハンターは一人もいないが、商店などのお店の人たちも「まぁ、歌姫が早く現着するなら」とひとまず受け入れてもらえた。

 

「それと、これは龍歴院……まぁ、言ってしまえばモンスターの研究機関ですが、そこに所属する主席研究員さんから『リオレウスに飛行船を牽引させてはどうか』という提案を頂いています。……あと、その様子を観察させて欲しい、とも。

ともあれ、三日三晩飛び続けられるリオレウスの飛行能力があれば、最速二日でたどり着けそうですが……如何しますか?」

 

「まぁ……!あの"空の王者"に、飛行船を引っ張ってもらえる、ということですよね?」

 

「はい、そんなところです」

 

「なんだか楽しみですね!ねぇ、みなさん?」

 

「……肝が据わりすぎでしょこの歌姫……」

 

ラウラさんは終始ノリノリだったが、騎士の方々もルルさんも引きつった笑みを浮かべていた。シズカさんはどこか疲れたような表情で目をそらしている。

メタペタットの飛行場で、飛行船とリオレウスの体を縄で結びつける。リオレウスがかなり大きなサイズなので必然的に長い縄が必要になったが……どうやら準備してもらえたようだ。

 

「よろしくね、リオレウス」

 

「グオオン!!」

 

リオレウスも絶好調だ!また、リオレウスに飛行船を牽引させるという前代未聞の試みに、多くの人が店舗を放り出して見学に来ていた。

 

「準備できました!出発できます!!」

 

「よし……では、発進!」

 

飛行船がゆっくりと港から離れ、接触の心配がなくなるとリオレウスが力強く羽ばたき前進した。それに合わせて飛行船も前進を開始する。

 

「うわぁ……認めたくないけど、これは確かに速いわ」

 

「普段の飛行船とは、全然違いますか?」

 

「段違いよ。……いや、そもそもリオレウスに引っ張らせるって発想が既にアレだわ……」

 

人に懐いているとはいえなぁ、とぼやくシズカさん。普通、リオレウスをここまで人馴れさせるなら卵から育てるしか方法はなく、そもそもそんな習慣すらこの大陸では馴染み無いものなので、普通ではありえないことなんだとか。

 

「まぁ、今回はリーフィアもグレイシアも飛行船の防衛のために力を発揮しますので。近くを飛んでるトゲキッスとガブリアスも同様です」

 

「それは信じているよ。あなたたちが従えているモンスターだからね」

 

「ありがとうございます」

 

「(ただガブリアスはいつポケモンからバケモンになったんだ。あんな進化、見たことないんだけど)」

 

飛行船のすぐ近くを飛ぶトゲキッスとガブリアスを見ながらそう話せば、シズカさんもしっかりと頷いてくれた。

……ただ、ガブリアスを見た瞬間、かなりドン引きしていたのは気のせいだったのだろうか……。

 

「よしよ~し」

 

「フィーア♪」

 

そして、ラウラさんは相変わらずリーフィアを愛でている。……と、そこへもう一つ別の影が。

 

「レシャ」

 

「フィ?」

 

「レーシャ」グイグイ

 

ラウラさんに撫でられていたリーフィアに、グレイシアが近づいていく。そのままリーフィアの尻尾を引っ張り始めたグレイシアだが、リーフィアは「なに?」と首を傾げるばかりである。

 

「……なんか前も見たな、こんなやりとり」

 

「あぁ……馬車の中での」

 

セキさんが私に近づいてきて、目の前の光景に一言つぶやく。そう、あれは幌馬車での移動時のこと……なにか言いたげな様子でラウラさんがセキさんをチラチラ見ていたので、思わず声をかけたことが始まり……。

 

『どうしました?』

 

『あ、えっと……その、そちらの御人にちょっと……』

 

『セキさん、ラウラさんが用があるみたいですよ?』

 

『オレ?歌姫さん、オレに何か用か?』

 

『あ、あの……先ほどのモンスター……』

 

『あぁ、リーフィアか?』

 

『そう、そのリーフィア……その、抱っこさせていただけませんか!?』

 

『『……え?』』

 

こうしてラウラさんの頼みで、リーフィアを抱っこさせることになったのだ。故郷を思い出してすっかり落ち着いた様子のラウラさんと、そんなラウラさんに愛でられて気持ちよさげなリーフィア……と、そこへ……。

 

『ヴ~……』

 

『どうしたの、グレイシア?』

 

ボールから飛び出したグレイシアが、リーフィアの尻尾を咥えて引っ張り始めたのである。あれはどう見ても嫉妬していて、自分もリーフィアに構ってもらおうとしているのだが……。

 

『……あ!もしかしてグレイシア……』

 

『レイシャ!』☆':.*ヾ(^∀^)*.:'☆パアァ

 

『グレイシアもラウラさんに撫でて欲しかったんだね?』

 

『……レ~』(´・ω・`)ショボーン……

 

カイさんの盛大な勘違いで、二体揃ってラウラさんに頭を撫でられることとなった。……撫でられている間のグレイシアの憮然とした表情に気づかないリーフィアェ……。

 

「……ッ!前方、巨大火炎接近!!」

 

出発して数時間が経過した頃、一緒に乗船してくれた船員さんが大声を発した。その声に反応したリーフィアとグレイシアが素早く船首に移動した。……ラウラさんがちょっとだけ寂しそうな表情に……。

私たちも船首に駆け寄ると、確かに遠くに大きめ火炎が見える。遠目でこれだけ大きく見えるのだから、接近すれば相当なサイズだというのはよくわかる。

 

「リオレウス、豪火球!!」

 

「グオオオンッ!!」

 

「よしっ、ガブリアス!」

 

「リーフィア!」

 

「グレイシア!」

 

「トゲキッス!」

 

「「「「はかいこうせん!!」」」」

 

リオレウスの豪火球を、四本のはかいこうせんが押し込む形で巨大火炎とぶつかりあった!大爆発が起こり、その余波で飛行船は大きく揺れる……が、なんとか凌ぎ切った!

しばらく様子を見るが、第二波は来ないようだ。

 

「どうやらこちらを見失ったようだな……。船の高度を下げて!リオレウスには前方で異変があれば伝えるように」

 

「リオレウス、聞こえたね?頼んだよ!」

 

「グオン!」

 

力強く返事をしたリオレウス……その体に、突然影が差した。影……上か!?シズカさんも気づいたようで、上を見上げて望遠鏡を取り出していた。

 

「……ッ!上空より飛翔物接近!!」

 

「ギュアアアアンッ!!」

 

「ガブリアスッ!!」

 

「ガブアッ!!」

 

リオレウスに向かって飛びかかってきたソレは、ガブリアスがげきりんで軌道上に割って入ったことでルートを変えて私たちの前に立ちはだかった。

 

リオレウスに次ぐおよそ19mほどの体長。

刃物のように鋭い金色の鱗。

独特な形状の翼や後脚。

鼻先から後方に向けて伸びる角。

 

金の竜……そう呼ばれても違和感のない竜が現れたのだ。

 

「ちっ……『セルレギオス』か……!」

 

「セルレギオス……?」

 

「"千刃竜"の別名を持つ、厄介な竜よ。奴の鱗は"刃鱗"と呼ばれていて、それを飛ばして攻撃してくるのよ。その攻撃で傷ついたら裂傷状態になるわ」

 

「裂傷……!」

 

「ついでに言うと、空中戦においてはリオレウスとタメを張れるわ……こっちのリオレウスが自由に動けないタイミングでくるなんて……!」

 

裂傷状態……オドガロン亜種と同じ状態異常使いか!!しかも実力のほどはリオレウスと互角……今は分が悪すぎる……!

 

「ガブリアス!ドラゴンクロー!!」

 

「ガブアァッ!!」

 

「援護しなさい、トゲキッス!ムーンフォース!!」

 

「チョギィス!」

 

今はポケモンで対処するしかない!ガブリアスが突貫し、セルレギオスに肉薄する。自身よりも四倍以上の体躯の敵を前にしても一切怯むことなく、ガブリアスは果敢に向かっていった。

対するセルレギオスはサッと身を翻すと素早い動きでガブリアスの攻撃を回避していく。どころか、尻尾や足の爪でガブリアスのドラゴンクローと打ち合いすら演じるほどだ。トゲキッスの遠距離攻撃にも余裕で対応している……なんて機動力だ、これは確かにリオレウスをタメを張れるだろう。

と、ここでセルレギオスが突然方向転換をしてきた。向かった先には……ウォロのトゲキッスがいる!

 

「狙われたか……!トゲキッス!!」

 

「チョゲェ!?」

 

なんの前触れもなくいきなり自分に向かってきたセルレギオスに、トゲキッスは威圧されて動けなくなっていた!そのままセルレギオスの足に捕まったトゲキッスは、勢いよくガブリアスに向かってぶん投げられてしまい、二体はそのまま激突してしまった……!

 

「ガバッ!?」

 

「チョギ!!」

 

「レギオオォンッ!!」

 

さらに高度を上げたセルレギオスが、もみくちゃになって錐揉みする二体にめがけて飛び蹴りを放ってきた!?ガブリアスとトゲキッスは錐揉みから抜け出せないまま、そのままセルレギオスに蹴飛ばされて吹っ飛ばされしまった!

 

「ガブリアス!!」

 

「トゲキッス!!」

 

二体を吹っ飛ばしたセルレギオスは再び方向転換!今度は飛行船に……いや、リオレウスに向かってくる!!

 

「ちっ、こっちに来やがる……カイ!!」

 

「わかった!!」

 

「リーフィア、エナジーボール!!」

 

「グレイシア、れいとうビーム!!」

 

「フィア!」

 

「シャア!」

 

リオレウスの体を伝ってより前に出たリーフィアとグレイシアが、それぞれの攻撃で弾幕を張る……が、セルレギオスはそれすらも次々と回避してこっちに向かってくる……!!

 

「レギオスッ!!」

 

セルレギオスのあの蹴りが、リオレウスに向けられた!マズイ、今のリオレウスは動けない……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グアアアアオンッ!!」

 

「セルッ!?」

 

……が、突然横合いから何かが突っ込んできてセルレギオスに強烈な体当たりを食らわせた!?二体の飛竜はしばらくもつれ合っていたものの、セルレギオスが蹴り飛ばされたことで突っ込んできた何かがリオレウスの前まで飛んできてその全貌を顕にした。

 

リオレウスとほぼ同サイズの約21mの体長。

全身を覆う緑色の甲殻。

翼爪や背中、尻尾など随所に生えた鋭い刺。

何より目を引くのは、やはりリオレウスそっくりの、その姿。

 

「グアアン!」

 

「……グオン……!?」

 

「なっ……『リオレイア』……!!」

 

「……っ!リオ……レイア……!!」

 

シズカさんの呟きが耳に届き、思わずその名を復唱する。

リオレイア……以前、アカイさんからその存在を聞かされてから、私が一番会いたいと思っていたポケモン……!まさか、こうして本物に出会えるなんて!!

 

「クォン……」

 

「グルル……」

 

リオレイアとリオレウスは、お互いに頬をすり合わせるように顔を寄せ合っている……え、あれ?ちょっと待ってもしかして……!

 

「……あの二体、ひょっとして……番……?」

 

「よくわかったね、ショウ。あのリオレイア……このリオレウスの奥さんみたいだね」

 

「よかったね!!リオレウス!!」

 

「……(^_^;)」

 

シロちゃんが後ろから説明してくれたけど、まさか番だったなんて!夫婦がこうして再開できるなんて、奇跡だよ!!

……と、思ったけどリオレウスはどこか気まずそうというか微妙そうな雰囲気……なんというか、困ってる……?一体どうしたんだろう……?

 

「(直近のリオス夫婦の狩猟依頼……まさか、別々に貼られていた、アレか?場所は二頭とも遺跡平原だった……だったら、コイツらは既に……なぜ生きてる?)」

 

「……?シズカさん?」

 

「あっ……いえ、大丈夫。少々予定外のことで、驚いただけだから」

 

隣で呆然としているシズカさんに声をかけると、我に返ったようでちゃんと返事が来た。……歴戦のハンターであるシズカさんでも、驚いて呆けるなんてことがあるんだ……。

 

「ちょ、わわっ!なんだよ急に!?」

 

「せ、先輩……?」

 

「いや、ごめん!なんかライゼクスの入ったボールがさっきよりもずっと激しく……」

 

……こっちもそろそろ爆発するかも。

 

「ギュアアアアアッ!!」

 

さて、ここまで完全に蚊帳の外に追いやられていたセルレギオスが、怒っているのか全身のウロコを逆立てた状態で向かってきていた。その姿を、酷く冷めた目で見下したあとにリオレウスの頬を一舐めしてから、リオレイアはセルレギオスに向かっていった。

 

「リオレイアが……!」

 

「……マズイかも知れない」

 

「え?」

 

「リオレイアは"陸の女王"という異名を持つほど強靭な脚力を持つけど、空戦能力はリオレウスほど強くはないの。リオス科同士が空中戦をしたら、まずリオレウスに軍配が上がる。

リオレイアも並の飛竜種以上の飛行能力は持っているけどね……リオレウスとライバルとよく言われるセルレギオスやライゼクスなんかが相手だと、ほとんど勝ちの目がないのよ」

 

「そんなっ!?」

 

「……けど、あのリオレイアが私の知るリオレイアなら、例外だけど」

 

言いながら、シズカさんは飛行船の手すりに手をかけて戦いを見守っている。私も覗き込むが……そこには、先程までのシズカさんの解説を覆す光景が広がっていた。

セルレギオスは刃鱗飛ばしで攻撃しているが、尽く躱されている。蹴りを繰り出せば、サマーソルトによる尻尾攻撃でカウンターを喰らわされている。

リオレイアがセルレギオスに突撃していく。セルレギオスは刃鱗を飛ばすがやはり躱され、それどころか翼の付け根を掴まられてしばらく引っ張りまわされた挙句、大きく前回転した勢いで投げ飛ばされた!さらにリオレイアは追撃にきあいだまの技を何発も打ち込み、終始セルレギオスを圧倒している!

 

「……やはりそうか」

 

「やはり……って?」

 

「……以前、遺跡平原に強すぎるリオス夫婦が出現したことで話題になったの。よく縄張り争いをするライゼクスやセルレギオスなんかを、単体で一方的に圧倒できるほどの個体がね。さらに夫婦共同とは言え、あの"怒り喰らうイビルジョー"をほぼ完封して追い返したほどだからね……」

 

「い、イビルジョーを……!というか、リオレウスたちのこと、知ってたんですか……?」

 

「当然。……そのリオス夫婦に追いやられた結果、オトモになる前のリュウセイを襲ってたのが、そのイビルジョーだから。因果関係はきちんと調べあげるのよ、私」

 

「えっ」

 

「そのイビルジョーとは天空山でケリをつけたんだけど……まぁ、今はいいか。

当然、そんなに強力な個体が現れたらいつ人的被害が出てもおかしくはない……ということで、クエストが貼られたのよ」

 

クエスト……たしか、依頼だっけ?

 

「依頼……」

 

「ここまで言えばわかるんじゃない?……そう、あのリオス夫婦の狩猟依頼」

 

そう言ってシズカさんが指で示したのは……私のリオレウスと、セルレギオスと戦うリオレイア……。

 

「しゅ……っ!?」

 

「最初は二頭同時狩猟だったんだけど……二頭同時だとあまりに強すぎて、四人構成でも勝てなかったわ。余りにも異例の事態よ……夫婦の片割れに四人ずつ、つまり総勢八人掛りによるリオス夫婦の特別狩猟作戦ね。

作戦は無事に成功、二頭は狩猟できたわ。ただ、リオレウスの遺体だけはなぜか狩猟後に現れたライゼクスに奪われたそうだけど」

 

「…………」

 

待って、ちょっと待って。一体どういうこと……?

 

「シズカさん……何て?意味がわからない……。狩猟成功?あなたは何を……」

 

「あえて身も蓋もな言い方をすると……私が知る限り、あの二頭は一度死んでいるのよ」

 

「…………」

 

「けど、なぜか生きてる。

……ポケモンの技も含めて、死体が時空の裂け目に飲み込まれたことと何か関係がある……?死者に命を吹き込むなど、それこそ神の所業……人知の及ばぬ者の仕業。まさか、ミラルーツ……?

 

シズカさんが何を言っているのか、途中から理解を拒んでいた。……二体は一度、殺された?誰に?ハンターに?ハンターは、人間……つまり、彼らは……。

 

「(私たち人間に恨みがあったのでは?)」

 

もしもそうなら……リオレウスが最初に襲ってきた理由も、納得がいく。リオレウス自身は「勇気を示せ」とこちらを試すような気概だったけど……もしもその裏で、私たち人間への憎しみがあったとしたら?夫婦仲を裂かれるばかりか命すら奪われて、一切の憎悪の欠片もなく私たちに接することができるだろうか。

私でさえ、一度は私を追放したコトブキムラのみんなを強く憎んだことさえあった……それなのに、野生の生物である彼らが一度覚えた怒りや憎しみを忘れる、なんてことがあるのか?もしかしたら……リオレウスは人間への怒りや憎しみを押さえつけているのかもしれない。

「自分は一度死に、そして生き返った。ならば、妻もきっと……」

そんな思いで、再び夫婦再会の時まで、その憎悪を押さえ込もうと……。

 

「(私は、リオレウスに謝らなければならない、かもしれない……)」

 

私の都合で彼の力を借りて、結果的に奥さんと再会するまで振り回してしまった。だったら私は、リオレウスに謝らなければならないだろう。そのためにも、まずは……。

 

「ガブリアス、リオレウスの縄を切ってあげて」

 

「ガブ?」

 

「お願い……」

 

「……ガバ」

 

私の雰囲気で察してくれたのか、ガブリアスはそれ以上何も言わずに従ってくれた。飛行船と自身を結ぶ縄が切られたことで、リオレウスが動揺している。

 

「グオ……?」

 

「リオレウス……行って。行って、リオレイアを助けてあげて」

 

「……グオオオオン!!」

 

力強く頷いたリオレウス……そのまま雄々しく羽ばたき、一気にリオレイアの下まで飛んでいった。

リオレウスとリオレイア……並んで飛ぶ姿は、ある種の芸術と呼んでも差し支えない。そんな雰囲気が、あの二体から感じられた。

 

「グアン?」

 

「グオオ!グオオア!!」

 

「……!グアアオン!!」

 

お互いに顔を見合い、それから頷き合う。二体が並ぶ姿にセルレギオスが一瞬だけひるんだ……その時だ!

リオスは同時に飛翔する。それと同時にリオレウスがエアカッターで牽制を仕掛けた!見たことのない攻撃に動きが鈍ったセルレギオスは回避も叶わず攻撃を受ける。そこへ上へ回り込んでいたリオレイアがソーラービームを浴びせた!

 

「グアアオ!」

 

「グオア!!」

 

そのままセルレギオスの背後を取ったリオレイア……と、思いきや!正面から迫っていたリオレウスと背後を取ったリオレイアが瞬時に位置を入れ替え、リオレウスが口にエネルギーを含ませながらセルレギオスに噛み付き、そのままはかいこうせんごとセルレギオスを撃ちだした!はかいこうせんに押し込まれるセルレギオスに、並走したリオレイアが横合いからラスターカノンを三連発叩き込み、さらに回り込むとリオレウスと同じようにセルレギオスに噛み付いた!

 

「グアアアアオ!!」

 

「グオオオオア!!」

 

リオレイアはわずかに顔を上げると、やや上空にいるリオレウスに向けてはかいこうせんごとセルレギオスを撃ちだした!!リオレウスはそれを足で受け止めると、強力なキックでセルレギオスを全力で蹴り抜いた!!今の……まさか、メガトンキック!ここで新しい技が使えるようになったのね!

蹴られて吹っ飛ぶセルレギオス……当然その先には、リオレイアがいる!!再びはかいこうせん!再び受け止め、メガトンキック!三往復するとリオレイアはサマーソルトで打ち上げ、そこへリオレウスがエアスラッシュで追撃!!

動きが止まったところへ下へ回り込み、そこから再び噛み付くとリオレイアも一緒になって噛み付いた。そして……!!

 

「グオオオオオオン!!」

 

「グアアアアアアン!!」

 

「ギギャアアアアッ!?」

 

二体同時のはかいこうせんで、セルレギオスを空高く撃ちだした!!強烈な光線によって、どこまでも天へ登っていくセルレギオス……やがて大きな爆発が起こると、力なく墜落していくセルレギオスの姿が……。

私は反射的にポーチの中のモンスターボールに手が伸び……その手をシズカさんに掴まれた。

 

「ここでソレは使わないで……!」

 

「けど……!」

 

「気持ちはわかる……だけど、この世界でモンスターボールの存在を知られるには、まだ早すぎる……!!」

 

「っ……」

 

私はモンスターボールを掴んだ手をそっと離し、ポーチから手を抜いた。その手にボールが握られていないことを確認してから、シズカさんもやっと手を離してくれた。

やがてセルレギオスの姿が見えなくなると、リオレウスとリオレイアが揃って飛行船まで飛んできた。

私は船首に立つと、リオレウスに謝るべく口を開いた。

 

「……リオレウス、私……」

 

「グオン」

 

「あいたっ!?」

 

私が口を開いた直後……リオレウスに鼻先で小突かれた。人が一大決心をして謝罪をしようというのに、一体何を……!

 

「……リオレウス?」

 

「グオグオ」

 

リオレウスは……笑っていた。その笑みはまるで「どうだ?」と言わんばかりの……そう、いわゆるドヤ顔だった。私はそれまで謝ろうと思っていた気持ちがすっかりなくなっていた。……今のリオレウスに謝罪するなんて、失礼極まりないと思ったからだ。

 

「……うん、すごかった。すごかったよ、リオレウス。リオレイアも、ありがとう」

 

「グオオン♪」

 

「…………」ガジガジ

 

「グオアッ!?」

 

リオレウスが嬉し気に鳴いた……直後、リオレイアがリオレウスの首に噛み付いた。甘噛みのようだけど、噛まれたリオレウスはひどく驚いた様子だ。……え、まさか私、ポケモンに嫉妬されてる?

 

「グアグアン」

 

「グ……グオン……」

 

リオレイアが何かを促すように鳴くと、リオレウスも気落ちした様子で従った。……もしかして、尻に敷かれるタイプかな?

二体はすぐに動き出した……リオレウスとリオレイアが、切れて二つになった縄をそれぞれが咥えて、同時に引っ張り始めたのだ。

 

「おぉ……リオス夫婦の共同作業だ」

 

「……もう俺は何を見ても驚かんぞ、絶対に驚かんぞ」

 

「大型モンスターも人馴れすると便利なんだニャ……」

 

あ、いつもの二人と一匹は相変わらず放心状態だ。

 

リオス科二体による牽引は当然、スピードも安定性も抜群で二日どころか一日立たぬ間にドンドルマが見えてきた。

 

「あれがドンドルマだよ」

 

「あれが……」

 

「さぁ、入港準備をしよう。……リオレイアについては、なんて説明したものか……うーん……」

 

シズカさんは頭を抱えているけど……私は、とにかく街のことが気になっていた。そこに住む人たちはどんな人たちなのか、どんな生活を築いているのか……気になることが山積みだ。

私たちは相棒ポケモンをボールに戻すと、徐々に近づいて来る街の姿に胸を高鳴らせた。

 

 

 

 

――ショウ 余命21




セルレギオス「最強夫婦に勝てるわけないだろ!?」

アカイ不在のために説明不足だったセルレギオスのタイプ相性がこちら

セルレギオス
かくとう・ひこう
弱点 火:× 水:△ 雷:◎ 氷:○ 龍:△
四倍:でんき、こおり
二倍:ひこう、エスパー、フェアリー
半減以下:みず、くさ、かくとう、むし、ドラゴン、あく
こうかなし:ほのお、じめん
等倍:上記以外全部

正直、「ひこう」にするか「ドラゴン」にするかめっちゃ迷った。けど、あれだけちょこまかと動かれまくったら「ドラゴン」より「ひこう」のほうがめっちゃ動く印象が強いなと思いました。


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ハンターが集う大都市・ドンドルマ

これでまだ導入とは……話がくどい気がするべ……


セルレギオスの襲撃を受けた私たちは、途中から加勢してくれた"雌火竜"リオレイアとリオレウスのコンビネーションでこれを退けた。そのまま二体が飛行船を引っ張ってくれたおかげで、ほぼ一日でドンドルマに到着することができた。

飛行場で待機していた船員に二体が咥えていた縄を預けると、そのまま二体揃って山の一つの上に止まった。リオレウスは首を伸ばしてドンドルマの街を見渡していて、リオレイアはそんなリオレウスの翼の毛づくろいをしていた。……リオレウス、街を見るのに夢中で気づいてない。

 

飛行場からシズカさんの案内で広場まで来ると、私たちは一斉に視線を向けられた。……ちょっと気圧されたけど、あくまでも堂々とする。この街に来ることだって、目的の一つだったんだから。

 

「それでは、私はいちど大老殿まで歌姫様をお送りしなければならないので。みなさんはこちらでお待ちください」

 

「わかりました」

 

「では歌姫様、お手をどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

ラウラさんの手を引いて、長い階段を上がっていくシズカさん……スゴい手馴れているなぁ。

さて、残された私たちはというと……完全にお上りさん気分だ。周りにあるものすべてが気になって仕方がない。先輩やカイさん、ウォロはしきり周囲を見回していて、セキさんは一番落ち着き払っている……ようで、チラチラと周りに視線が向いている。ただ、見られているのは私たちも同じなので、私はリオレウスの方を見ておくことにした。

……リオレイアに迫られて困った様子で対応している。うーん、完全に尻に敷かれているなぁ、あれは。あと何か、リオレウスがリオレイアに対して申し訳なさそうにしているのも気になる。やはり妻子を残して死んでしまったことが尾を引いているのだろうか……せっかく生き返って再会できたんだし、夫婦円満でいられるといいな。

 

そんなことをぼんやりと考えていると……なにやら強烈な視線を感じとった。私がその気配の元を探すと、すぐに見つかった。

リオレウスを彷彿とさせる色合い……いや、あの色は間違いなくリオレウスの色だ。リオレウスの素材で作られた防具を身に纏った女性がこちらに向かって歩いてきていた。眉間には皺が寄っており、険しい表情であることに間違いはない。黒い羽のような装飾のついた銃を背負っている。黒く長い筒がついているのを見るに、あれはシズカさんから教えてもらった武器の一つ『ボウガン』なのだろう。

 

他の皆も彼女の存在気づいたのか、それぞれが気取られないように警戒心を強める。やがて彼女は私たちの前に立つと、一度全員をそれぞれ一瞥してから、やがて口を開いた。

 

「ねえ、あなたたちって火竜船に乗ってきた人たちよね?」

 

「火竜船……?」

 

「『"火竜"が牽引する飛行船』ってことよ。アレに乗ってきたんでしょ」

 

「……まぁ、そうですけど」

 

「だったら話は早い。……シズカ・ミズハシを出しなさい、今すぐに」

 

……!!この人、どうして私たちと一緒にシズカさんが乗っていたことを……!?

 

「いるんでしょう、彼女が。だったら黙って繋ぎなさいな」

 

「……失礼ですが、あなたは?」

 

「要らぬ時間を取らせないで」

 

取り付く島もないとはこのことか……こちらが名前を尋ねたにも関わらず、彼女は無視して「シズカ・ミズハシを出せ」を繰り返すばかりだ。これにはさすがに、大人組も黙ってはいられないようだ。

 

「おいおい、いきなり現れるやいなや『シズカ・ミズハシを出せ』だと?あんた、シズカと何の関係があるんだ?」

 

「部外者に話す義理はないわね。……というか、ハンターでもない男が彼女を呼び捨てとか……!!」

 

い、いきなり雰囲気が変わった……!?目の前の女性から強い圧が放たれている……!

 

「オレらは一週間ほど一緒に行動したんだぞ、多少は打ち解けたって文句はねぇだろ」

 

「……と、というか!あなたはさっきからなんなんですか!シズカさんになにか、因縁でもあるんですか!」

 

セキさんが反論し、カイさんも援護射撃の質問攻撃をする。女性は若干だが答えに窮したようで、わずかに口篭った。

 

「……く、くどいわね。アタシとあなたたちは無関係同士、こっちの事情を話す理由はないと言ったはずよ」

 

「そうはいかねぇな。オレたちだってシズカには随分と助けられたんだ。アイツには恩がある、不義理を働くわけにはいかない以上、オレらにとって身元がわからねぇアンタとシズカを会わせるわけには行かねぇ」

 

「……ほんっとうにしつこいわね……!」

 

「そっちが話してくれたら済む話なのに……!」

 

うーん……これじゃ押し問答になってしまう、どうすれば……。

 

「……なにやら雲行きが怪しいですね、シズカさんを呼びに行きますか?」

 

「……行きたいけど階段途中に騎士の人がいるし、無理じゃないかな」

 

「困りましたねぇ、シズカさんがいなくなった矢先にこれとは……」

 

ウォロが耳打ちをしてくるが、実際どうにもならないだろう。し、シズカさーん……速く戻ってきてー……!

果たして私の祈りが通じたのか……階段を下りてくるシズカさんの姿が見えた。シズカさんはすぐに私たちを見つけて……露骨に嫌そうな顔をした。それからため息をつく仕草が見えたかと思うと、ズカズカと音が聞こえそうな勢いで歩いてきた。

そして自身よりも背の高い女性に向かって手を伸ばし――

 

「なにやってんの、おバカ」

 

「いたたた!?」

 

思いっきり耳を引っ張った!女性は痛みに顔をしかめつつ振り返り、シズカさんの姿を見とめた。

 

「あっ!姉様!!」

 

「「「「「姉様?」」」」」

 

「違う」

 

シズカさんを姉呼び……もしかして、妹……と、思ったらシズカさんから間髪を容れず否定された。

 

「この子が勝手にそう呼んでるだけ。認めたつもりはないし、今後も認めない」

 

「でも呼ばせてもらっているということは脈アリ!ネネは諦めませんからね!!」

 

「ねぇよ」

 

「……えっと、シズカさんのお知り合いで?」

 

「あ~……まぁ、"知ってる人"という文字通りの意味での知人かどうかで言うと確かに知人ね。彼女は『ネネ』といって、見ての通りハンターよ。

同い年の私を勝手に"姉様"なんて呼ぶ変態だけど、実力は確かだからそこだけは信用してもらって結構よ」

 

「あぁ!姉様は今日も辛辣っ!でもそこがいい!!」

 

「抱きつくな」

 

自分よりも小さなシズカさんに抱きつくネネさん……シズカさん、表情は完全に嫌そうなのに意外と抵抗しないんですね。

 

「……ハンターってのは変わり者が多いんだな」

 

「なまじ命懸かってる仕事だからね、ちょっと頭のネジを緩めないとやってられない人もいるのよ」

 

シロちゃん……そうは言うけど、ネネさんはだいぶ緩み過ぎじゃないかと。

 

「それにしてもすごい注目ですねぇ。周りにいる皆さん、シズカさんが姿を現してからずっとあなたを注視していますよ?」

 

「自覚はある」

 

ウォロの言うとおり、最初は私たちのことを物珍しげに見ていた周囲の人々は、シズカさんが姿を見せてからはその一挙手一投足を見逃すまいとばかりに注目している。シズカさんも自覚があるようだけど、もしかしてネネさんに抱きつかれても無抵抗なのはそのためかな?

 

「……それと、ショウさん」

 

「はい?」

 

「実は大長老よりあなたにお願いがあるの」

 

「……聞きましょう」

 

「頼みというか、依頼に近いのかな?要約すると、"リオレウスを使ってハンターを支援して欲しい"ってこと。なんせ貴重な航空戦力だからね、使えるものは何でも使おうの精神じゃないと、あのティガレックスは倒せないと踏んだみたい」

 

大長老……移動中に聞いたけど、このドンドルマにいる竜人族で一番偉い人らしい。あと、とんでもなく大きい人らしく、座高だけで6mはあるんだとか……いや、大きすぎない?立ち上がったらゴシャハギと相撲できるんじゃないかな?

……っと、とにかくその大長老から私への依頼という形で、ティガレックス討伐作戦に参加して欲しいそうだ。どのみち私はラウラさんと一緒にメゼポルタまで行かなきゃならない……ならば、ここは遺跡平原を押し通るしかない。

 

「わかりました、喜んで力になります」

 

「ありがとう。では、その間はテルくんたちは……」

 

「おれたちも力になれるぜ!おれにはライゼクスがいるし」

 

「オレはタマミツネを持ってるぜ」

 

「わたしにはガムートがいるよ」

 

「ジブンはディノバルドですね」

 

「……いや、ちょっと待てだからそういうことは先に言えっつってんでしょうが

 

「ごめんなさい!」

 

うっかりしてた……ほかの巨大ポケモンたちのこと、ちゃんと報告してなかったな。すると、隣にいるネネさんが目を丸くして話を聞いていた。

 

「なになに?姉様、コイツら何者?」

 

「モンスターを操る者たちよ。モンスターの頭脳となって知略を練り、彼らに戦う術を与える者。亜大陸にいるライダー達とは違うから……そうね、"トレーナー"なんてどうかしら」

 

「『モンスタートレーナー』……へぇ、リオレウス使いはさっき聞いたばかりですけど、ほかにもいたんですね」

 

ネネさんはシズカさん一色だったその興味を、わずかだが私たちにも向けてきた。……まぁ、これは実際に見てもらったほうが早いかもしれないけどね。

 

「では、それらのモンスター使いの件は、私が追って大老殿に連絡しておきます。……ひとまずは、宿ですかね」

 

「あ」

 

……あー、そうだった。リオレウスの牽引に始まりティガレックスの妨害、さらにセルレギオスの襲撃にリオス夫妻による牽引……時間がかかったり時短になったりで、結果的に一日以内でドンドルマに着いたはいいが、実は現在時刻は夜だったりする。

シズカさん曰く、ここに集まっているハンターは明朝とともに出発し、現地である遺跡平原にて現在戦闘中の部隊と合流する予定なんだとか。

 

「とりあえず、皆の宿の分まで私が事前に予約してるから、付いてきてね」

 

「はーい!ネネは姉様と同室――」

 

「あんたの部屋、ねぇから」

 

「そんなぁっ!?」

 

いけずー!なんて言い寄ってくるネネさんを適当にあしらいながらシズカさんは歩き始めた。私たちもついて行き、大きな旅館らしき建物に到着した。そこのロビーでシズカさんが話している間、男性のハンターさんが声をかけてきた。

 

「なぁ、あんたらってシズカ・ミズハシと知り合いか?」

 

「え?あぁ、はい。成り行きで歌姫様のついでに護衛を……」

 

「なにっ!?それじゃあ、あんたらはシズカ・ミズハシのことをよく知りもしないで一緒にいるのか!それはよくない!もったいない!」

 

「も、もったいない……?」

 

私がオウム返しのように聞き返すと、その男性ハンターはまるで熱が入ったかのように語り始めた。

 

「あぁ、もったいない!今や世間が注目する期待の超新星、シズカ・ミズハシに対して"ミリしら"でいていいはずがない!ほら、俺の『狩りに生きる』をやるから、よく熟読しな!あ、それは布教用に配布してる奴だから、そのまま持って帰ってもらっていいから!そんじゃ!」

 

男性は勢いよく語りながら一冊の本を私に押し付けてきた。それから、まるで「いいことをした!」と言わんばかりに爽やかな笑顔で立ち去った……。

 

「……なんか、シズカってマジに有名人なんだな」

 

「だね。……これ、雑誌?うわ、すごい、表紙を飾ってる!」

 

私が渡された本……『月刊 狩りに生きる』とタイトルがつけられた本。その表紙にはガンランスを構えた精悍な顔つきのシズカさんが載っていて、とってもかっこいい。よく見ると、ページが折られた箇所がある……ここを読めということかな?

 

「お待たせ……って、うげっ。その本、どこで……」

 

「えっと……通りすがりのハンターさんから……」

 

「……はぁ。結構恥ずかしいことベラベラ喋っちゃったから、あまり読んで欲しくないんだよねぇ……。あの、声に出して読まないでね?」

 

「黙読させていただきます」

 

「…………」

 

シズカさんは疲れたようにうなだれると、そのままトボトボと歩き出した。あとに続くと、部屋が二つ分用意されていた。

 

「とりあえず、男と女に別れてね。私は別に部屋を取ってあるから、また明日合流しよう」

 

「姉様!部屋番!部屋番を教えてください!」

 

「教えてもいいけど、その前にその両耳引きちぎらせろ」

 

「教えてくれないんですねわかります!でも知りたい!」

 

「勘弁してよ……」

 

シズカさんとは部屋の前で別れた。……終始ネネさんにくっつかれて、それだけですっかり疲れきっていた様子だけど、大丈夫だろうか……。

 

部屋に入って荷物整理を終えたあと、私たちは一つの部屋に集まった。……まぁ、あのハンターさんに渡された雑誌が気になるので、みんなで読もうということになったのだ。

 

「へぇ~……」

 

「おぉ……!」

 

「こいつぁ……」

 

「うわぁ……!」

 

「ナルホド……」

 

「ふんふむ……」

 

「なるほどねぇ……」

 

シズカさんがハンターになったきっかけだとか、シズカさん自身に関する噂だとか、あとはシズカさんのことを知る人へのインタビューだとか、とにかく内容がシズカさん一色だった。

こうして特集を組まれるほど、シズカさんは注目を集めている有名人だったんだ。インタビューにしても、回答者の人たちもシズカさんのことを想っているのがよくわかる。

こうして夜は更けていき、それぞれ男女別に別れたあと、私たちは就寝についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝。目が覚めた私たちがロビーへ降りてくると、昨日とは打って変わって緊張感に包まれていた。ロビーでチェックアウトを済ませるハンター達は皆、その顔に緊張の色を浮かべている。

ロビーの壁にもたれて目を閉じるシズカさんを見つけた。……こうして見ると、シズカさんだけ頭ひとつ抜きん出て小さいだけでなく、他のハンターと比べてもだいぶ冷静でいることがよくわかる。

私たちがまっすぐシズカさんの元へ歩いていくと、察知したのか目を開けた。

 

「おはよう。昨日は良く眠れた?」

 

「はい、おかげさまで」

 

「そう、それはよかった。……知ってのとおり、もうすぐ明朝の時間となる。その時刻を迎えれば、ここにいるハンターは全員が遺跡平原へ向かい、巨大ティガレックス討伐作戦に参加する。さすがにハンターランクが上位に達していない者は連れてはいけないけどね」

 

「ハンターって格付けみたいなのがあるんだね」

 

「そうなんだよ、カイさん。それぞれ下位、上位、G級の三段階に分かれててね。けど、これはどのハンターにどれくらいの実力があるのかを明確にするシステムだから、決して欠くことはできないの。分不相応のクエストを受けてお陀仏……なんて、洒落にならないからね」

 

「たしかにな……」

 

カイさんの質問に丁寧に答えるシズカさん……本当、いつもどおりだなぁ……。一人、また一人とハンターが減っていく中……。

 

「姉さまぁ!おっはようございまぁーす!!」

 

「……………………おはよう

 

「あ、ついでにみなさんもおはござー」

 

「お、おはようございます……」

 

開口一番、大きな声でシズカさんに挨拶をするネネさん。……ついでとばかりに私たちに挨拶をしてくれたけど、思いっきり棒読みだ。いや、どこか拗ねているような気もするけど……。

 

「……アタシが一番に姉さまに挨拶をするはずだったのに」

 

訂正、普通に拗ねてた。

 

「しょうもないこと言ってないで、チェックアウトは済ませたの?」

 

「もっちろん!ふふっ、姉様と同じパーティに入れるといいなぁ」

 

「G級ハンターの一極集中は避けるべし、と明言されたでしょうが。このクエストで何人死ぬかわからない中で、一つのチームに複数のG級ハンターの配属は難しいんだから。

ネネだってG級ハンターだし、上位ハンターのお守りくらいはできなきゃね」

 

「ちぇー」

 

「フム……話の流れからして、シズカさんとネネさんはG級ハンターのようですね?」

 

「えぇ」

 

「G級ハンターとはいわばプロ中のプロ、エリート・オブ・エリート!そして姉様は歴代でも最年少でG級ハンターへと至った若きホープ!!誰もが認める天才ハンターなのです!」

 

「持ち上げすぎ」

 

ウォロの問いにも即答するシズカさん。ネネさんの補足も実にわかりやすい。あと、シズカさんがとんでもなく凄い人というのは、昨夜読んだ"狩りに生きる"で十二分に理解している。これは余談だが、昨今では「G級」ではなく「マスターランク」という名称が使われているそうだが、ここ"現大陸"では未だ馴染みが薄いらしく、個々人によって呼びやすい方が使われているそうな。

 

「……それじゃあ、シロちゃん、ダイアーさん。行ってきます」

 

「気をつけてね……」

 

「命あっての物種、と言うしな。死はもとより、怪我のないよう注意してくれよ」

 

「わかってます」

 

シロちゃんとダイアーさんは留守番だ。さすがにポケモンを持っていない二人まで連れて行くことはできない。

 

私たちが旅館を出て広場まで出てくると、大勢のハンターが所狭しと集まっていた。さらに広場の出口には何台もの幌馬車が集まっていた。

 

「すごい……」

 

「圧巻だな、こりゃ……」

 

「……みんな、身に纏う気迫が違う。死地に赴かんとする戦士みたい……」

 

「それほどの脅威なのでしょう、件のティガレックスとやらは」

 

そのすごい光景に、テル先輩たちは各々感想をこぼす。その間、私は別のことを考えていた。

それは、昨夜の旅館でのこと。飛来してきたリオレイアについて、シロちゃんに意見を求めたときのことだ。

 

 

『あのリオレイアは、人間の敵でも味方でもないよ』

 

『え?でも、あの時は……』

 

『リオレイアのスタンスはあくまでリオレウスの味方(・・・・・・・・)なんだ。だから、"味方の味方は味方"ってことで、ショウたちにも力を貸してくれるんだと思う』

 

『…………』

 

『だから――』

 

 

「("味方の味方は味方"……つまりそれは、"リオレウスが敵と認識した存在"は全て敵ということ)」

 

あのリオレイアが敵なのか味方なのかは、すべて私のリオレウスにかかっているということ。……まぁ、私のリオレウスはとても理性的だし、基本的には人間の味方だから心配はいらないだろうけど……。

 

「……注意が必要だね」

 

「ショウ?」

 

「いえ、なんでもないですよ先輩」

 

「ショウさん、ハンターが移動を始めましたよ」

 

ウォロに促されて見てみると、ハンター達が続々と幌馬車に乗り込み、次々と移動を開始した。騎士の人が見送る中、シズカさんと騎士の一人が私たちに近づいてきた。

 

「こちらの方々は私が同伴します」

 

「承知しました。……えぇっと、モンスタートレーナーの皆さん。こちらのハンターの指示に従って移動してください」

 

「わかりました」

 

「では、参りましょう」

 

シズカさんの指示に従い、私たちも幌馬車に乗り込んだ。ここで私たちは、アレについて話し合わなければならない。

 

「……さて、皆さん。ここで一つ重要な話があります」

 

さっそくシズカさんが切り出した。

 

「皆さんには、あるモノの扱いについて十分に注意していただかなければなりません。場合によっては、徹底的に秘匿する必要があります」

 

「そいつはなんのことだ?」

 

「無論、モンスターボールです」

 

シズカさんの話は続く。

どうやらシズカさんは大老殿に対してモンスターボールはあくまで「モンスターを格納し運搬する為の道具」としか説明しておらず、「捕獲し、使役することを可能とする」という一部の情報を伏せているらしい。

その理由を話す過程で……ヒスイよりも未来の時代に誕生する組織……いわゆる、「悪の組織」の話題となった。ポケモンの力を悪用し私利私欲を肥やすばかりか、世界征服や世界崩壊、宇宙創造や天変地異など、思想はともかく行動は過激で厄介極まりないものが多い。

かくいう、私が知る歴史においても別の地方でそういった組織は興っていた。……お母さんが壊滅させたという組織、ギンガ団(・・・・)のことも、もちろん知っている。

 

シズカさんが懸念しているのは、モンスターボールの機能である「捕獲」と「使役」を知られることの危険性についてだった。この世界のモンスターは、身体的ポテンシャルならポケットモンスターを優に上回る生き物が大半だ。それは、体の大きさからして既に明らかだろう。もしもそんな強力無比なモンスターたちを、人間たちが自由に使役することができたなら?

 

「待っているのは戦争よ……竜大戦なんて目じゃないほどの戦争。世界全土を戦場とした、地獄に行っても見られないような殺戮ショーが始まるわ……」

 

「……なんてこった……」

 

「……道具は所詮、道具。要するに使い方次第……わかってたつもりだったけど……」

 

これまでほとんどモンスターボールに触れることのなかったセキさんとカイさんが、力なく言葉を紡ぐ。

……あの時。私は弱って墜落するセルレギオスを、ほぼ反射的に捕らえようとしていた。けど、もしもあそこでモンスターボールの性能が知られていたら……この世界の技術力なら、モンスターボールの量産も簡単に出来てしまうかもしれない。

 

「だから、人前でモンスターボールを使った捕獲は控えてほしいの。大袈裟に聞こえるかもしれないけど、備えなんていくらしたって足りないくらいだからね。問題は確実に潰しておきたいの」

 

「わかりました」

 

私が代表して、シズカさんの言葉に同意する。ギンガ団ですら、長い年月の果てに悪の組織へと堕ちてしまったんだ……この世界でも、モンスターボールとモンスターを悪用する組織が誕生しないとも限らない。

シズカさんの言うとおり、用心に用心を重ねておくことに越したことはないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遺跡平原に到着する頃には、空は一面がマゼンタ色に染まっていた。遠く離れた場所には巨大な飛竜がいる。

 

黄色の外殻に青い縞模様の体躯。

歩行に適した形状に発達した前脚。

あらゆるものを噛み砕きそうな鋭い歯。

 

遠目に見てもデカいとわかるポケモン……あれが、ティガレックス……。

 

「着いた。みんな、降りて」

 

シズカさんに続いて馬車から降りると、広い平原地帯にこれまたハンターがたくさん集まっていた。その数はドンドルマの広場の比ではなく、あの時に見た人数の実に三倍以上はいる。

シズカさんが私たちの先頭を歩いていく。それに続いて歩いていくと、いかにもお偉いさんとわかる格好の男性が立っていた。

 

「将軍。シズカ・ミズハシ及びモンスタートレーナー五名、ただいま現着しました」

 

「おぉ、シズカくん。君も来てくれたか」

 

「はい、将軍。蛇王龍を超える巨体など、普通のティガレックスには俄かに信じられないことです。これを捨て置くことなどできません。微力ながら、私も討伐に協力します」

 

「微力だなどと……現大陸で活躍が目覚しい君の助力が得られるなら、これほど心強いことはないだろう」

 

「……ところで、黒龍討伐作戦に赴いた将軍がここにいるということは……」

 

「無論、調査団にも引き続き協力をしてもらっている」

 

「フッ……それは、頼りにさせていただきますね」

 

とても厳格な雰囲気を纏う将軍、と呼ばれた男性。シズカさんよりも2周り以上は歳を重ねていそうなのに、放たれるオーラはとても若々しい。きっと心の強い人なんだろうな……。

 

「……して、君の後ろに控えている者たちが?」

 

「えぇ。専用のボールを用いてモンスターを格納・運搬するすべを持つ者……モンスターの頭脳となり、彼らのポテンシャルを最大限にまで高めその力を引き出す者たち……トレーナーです」

 

「……子供もいるではないか」

 

「幼けれど侮るなかれ。人間の頭脳とモンスターの力……ライダーとは異なる人竜一体は、時に思いもよらぬ力を発揮します。このシズカ・ミズハシが保証します」

 

「ふむ……君がそこまで言うのなら、アテにさせてもらおう」

 

「お任せ下さい」

 

……あれ?なんだか知らぬ間にプレッシャー与えられてる?結構責任重大な気がしてきた……!

 

「もうすぐ最終作戦会議が開かれる。君も参加してくれるな?」

 

「了承」

 

「さて……初めましてだな、トレーナー諸君。私が此度の巨大轟竜討伐作戦の作戦指揮を任された将軍である。以後、見知りおきを」

 

「初めまして、将軍さん」

 

私たちも一人ひとり自己紹介をしていき、それぞれが操るモンスターの名前を挙げていく。その名を聞いた将軍さんは、驚いたように目を見開いた。

 

「ジンオウガ、リオレウス、ディノバルド、タマミツネ、ライゼクス、ガムート……錚々たる顔ぶれだな。いずれのモンスターも、あのシュレイドに出現したものと同じ裂け目に吸い込まれたと報告を受けたモンスターであることが気になるが……」

 

「シュレイドの裂け目もそうですが、今は目の前の目標に集中しましょう。諸々の検討は、後でもできますので」

 

「そうだな……しかし、ショウくん、かな?見たところ十代半ばに見えるが、モンスターを二頭も操るとは……その若さで大したものだ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「君たちの力、存分に頼らせてもらう。よろしく頼むぞ」

 

「わかりました」

 

将軍は一度大きく頷くと、即席で作られたであろうお立ち台に上がった。それだけで、各々好きに雑談をしていたハンター達は一斉に黙り込み、将軍の方へと体ごと視線を向けた。

 

「諸君!此度は巨大轟竜討伐作戦に参加してもらい、まことに感謝する。遺跡平原に突如として出現した巨大なティガレックスは、我々が見たこともないような攻撃を繰り出し、天変地異を引き起こしている!

このティガレックスを放置すること、罷り成らぬ!この作戦に集まった総勢500余名のハンター諸君、ティガレックスを見事討伐し、この大陸を守ろうではないか!!」

 

将軍の演説に熱気が高まったのか、ハンター達が一斉に歓声を上げた。すごい……みんな、やる気まんまんだ!

この場にはパッと見500人はいないが……どうやら『バルバレ』側にもハンターが集まっているらしく、そちらとの合計人数が500名ほどになるらしい。

 

「今回、轟竜討伐にあたり特殊な協力者を得ることができた。モンスターの頭脳となり、彼らの力を十全に引き出すトレーナーの諸君である」

 

ここで私たちの紹介である。それぞれの名前と、操るポケモンの名前が列挙されていき、ハンター達の間でどよめきが起こる。

私たちは一度、ポケモンたちをモンスターボールから繰り出し、事実を確かなものとする。特に私がジンオウガとリオレウスを同時に繰り出したときは、驚きの声がたくさん上がっていた。

 

「彼らの力も借り、必ず!ティガレックスを討伐する!!以上だ!」

 

モンスターをボールに戻すと同時に、将軍の演説も終わった。それから、シズカさんと同じ最前線に立つために移動を始めた。その間は、さぞ私たちが注目を集めただろう……と、言いたいが。

 

「おい、あれ……」「シズカ・ミズハシ?本物だ!」「ねぇ、ちょっと話しかけてきなさいよ」「えっ!?無理無理!あなたが行ってきてよ!」「あれが"蒼の銃槍"……シズカ・ミズハシ……」「ちっちゃいなぁ……いや、本当にちっちゃいなぁ……」「シズカさーん!結婚してくださーい!!」「ぐふふ……シズカちゃんとおそろっち……死に物狂いで頑張った甲斐があったぜ……」

 

こんな感じで、終始シズカさんが注目を集めっぱなしだった。……若干だが、アブナイ視線が混じっているのは気のせいか……?

 

「シズカ、あんた本当に有名人なんだな。雑誌に載るだけあるぜ」

 

「やめてよ、セキさん。そんなんじゃないってば」

 

「ううん、本当にすごいと思うよ。みんながみんな、それだけシズカさんのことを頼りにしてるってことだと思うから」

 

「カイさんまで……」

 

セキさんとカイさんからの手放しの評価に、シズカさんはどこか照れくさそうだ。……表情に変化はないけど。

 

「……おっ、いた!おーい、シズカー!」

 

と、移動中に声をかけてきたのは二十代後半ほどの男性だった。特徴的な前髪に、雰囲気と表情からして陽気そうな人だな……。

 

「エイデンさん、ご無沙汰しています」

 

「あぁ、久しぶりだな!最後に会ったのは……新大陸に渡る前か」

 

「はい。そちらも壮健そうでなによりです」

 

「お陰様でな。ほら、お前とも久々の再会だろ?」

 

「うぐっ……」

 

『エイデン』と呼ばれた陽気な男性は、もう一人別の人物を引っ張ってきていた。全身のいたるところに黒っぽい刺がついた、これまた黒い防具を身にまとっている。顔も隠れるタイプなようで、表情は窺えない。背中にはとてつもなく大きな剣を背負っている。文字通りの大剣、といったところか。

……と、ここで頭の防具を外した。エイデンさんとそう歳が変わらなさそうな男性だ。

 

「……えーっと……。ひ、久しぶりだね」

 

「はい」

 

「その、G級……マスターランクになったって聞いたよ。すごいな、俺が新大陸に渡ってから、数年のうちに……大したものだよ」

 

「まぁ、あなたにはたくさん助けられましたから……報告の義理はあるだろうと思っていたので」

 

「そ、そうか……!」

 

シズカさんは変わらず淡々とした様子だが、男性はどこか嬉しげな様子でシズカさんと話している。……おっ、これはほの字ですな?察しのいい私はお口チャックします。

 

「『ニール』さんも最前線ですか」

 

「まぁな。かくいう君もだろう?俺たちは調査団枠として、遊撃隊として動くことになっているんだ」

 

「遊撃……ようは自由ですか」

 

「ははっ、物は言いようだな。といっても、俺もエイデンも後ろに引っ込むタチじゃないんでね、バリバリ前線を張らせてもらうよ」

 

「ふふっ……頼りにしてますよ、5期団の青い星さん?」

 

「おっと、こりゃあ期待に応えなくっちゃな、蒼の銃槍さん?」

 

「うっ……や、やめてくださいよそれ……」

 

いや、よくよく聞くとシズカさんの声色も明るい。リュウセイくんの言うとおり、シズカさんは表面化しにくいだけで結構感情豊かなんだ。

 

「はぁ~い、ごめんなさ~い!姉様はぁ、前線で準備があるのでこれにて失礼しまーす!」

 

「「あ」」

 

場が和んできたタイミングで、ネネさんがシズカさんを掻っ攫っていった。振り返ったネネさんが小さく舌を出している……どうやら意図的にやったらしい。

いや、初めて会った時からシズカさんのこと大好きなんだなぁとは思っていたけど……まさか他人との会話を遮るほどとは思わなかった。

 

「(´・ω・`)」

 

「……ま、まぁまぁ、ドンマイだって。現大陸(こっち)にいるうちはいつでも会えるだろうし、また今度な?」

 

「うぅ……ま、また言えなかった……」

 

「……えっと、大丈夫ですか?」

 

「ん……?あぁ!もしかしてさっき言ってたモンスタートレーナーさん?いや、こいつのことは気にしないでくれッス。フラれた女に再アタックしようとしただけッスから」

 

「ふ、フラれ……」

 

陽気な男性……たしか、エイデンさん、だったか。彼が言うには、隣で落ち込んでいるニールさんはシズカさんとちょっとした縁があったらしく、何度か狩りを共にする中で徐々に惹かれていったらしい。

そこで彼なりにアピールしようと、シズカさんの狩りを手伝ったり、不足する素材を分けてあげたりと積極的に行動していたようだが……どうやらシズカさんにはそれらが全て「お節介」に見えたようで、「あまり甘えすぎるのも申し訳ないので」とフラれてしまったらしい。好意に気づかれないばかりか、お節介扱いまでされてしまいショックを受けたニールさんは、失恋を振り切ろうと遠い新大陸へと渡ったそうだが……ご覧の通り未練タラタラであり、今でも文通をしているらしい。

 

「んじゃ、俺たちも配置につくか……あんたらの力、頼りにしてるッスよ!」

 

「は、はい!」

 

「よし……ほら、いつまでも落ち込んでないで行こうぜ!」

 

「ちょ、また引っ張るのか……!」

 

エイデンさんはニールさんを引っ張って所定の位置に向かっていった。私たちもシズカさんを見失わないうちに追いつき、配置につく。

ポケモンたちを繰り出すと、空からリオレイアが降りてきた。そのことにハンター達が警戒するが、私のリオレウスと仲睦まじくし始めると途端に警戒が解けた。

……が、ここで問題が起きた。

 

「ライッ!!」

 

「グオ!?」

 

「…………」(#^ω^)ビキビキ

 

リオレウスとリオレイアの間を割くように、ライゼクスが割って入った。それから「見捨てないで……」とばかりにリオレウスにすがりつくライゼクス……と、その背後で青筋を立てているリオレイア。

リオレウスは赤い甲殻が青く見えるほどに顔面蒼白状態。対してリオレイアは無言でリオレウスをじっと見ている……コワイ。

……と、リオレウスがこっちを見た。その顔には「たすけてー!」という文字がありありと浮かんで見える。

うーん……。

 

『ねぇ、レウス?これどういうこと?』

 

『違うんだレイア!これは、あの……』

 

『レウス……?私じゃダメなの?私、私……』

 

『まってゼクス、お願い待って』

 

『レウス……?』

 

『レウス……!』

 

『主ー!たすけてー!』

 

会話にするとこんな感じか。…………。

 

「( ´∀`)bグッ!」

 

「グオオオンッ!?」

 

私は黙って親指を立てることにした。リオレウスが「裏切られた!?」とばかりにショックを受けている。

……ぶっちゃけ飛竜の修羅場に割って入る度胸は私にはありません、あしからず。

 

「おっ、なんだなんだ?」「修羅場だ!モンスター同士で修羅場ってるwww!」「……え、あのライゼクス雌個体じゃね?珍しっ」「おぉー、正妻戦争ってか?」「やったれリオレイアー!」「負けるなライゼクスー!」「……なぁ、なんかリオレウスが気の毒なくらいに顔色悪いんだが」「気のせいじゃね?」「リア獣死すべしっ!!」「爆ぜろ」

 

周りのハンターも面白がって囃し立てている。リオレイアとライゼクスが両サイドからリオレウスに詰め寄り、挟まれたリオレウスは今にも死にそうな顔をしている……うん、頑張ってリオレウス。私は応援することしかできない。

……と、前線で話し合いをしていたシズカさんがこっちに来た。

 

「作戦を通達する。まず、移動式の大砲と組立て式バリスタを可能な限りティガレックスに接近した上で設置し、これらを用いてティガレックスの体力を奪う。ただ、兵器に対する防備は必要最低限で構わない。

ハンターが安全且つ確実にティガレックスへ攻撃するために、ショウとテルの両名はリオレウス、ライゼクスによる航空攻撃を仕掛けて欲しい。ティガレックスの注意が上空に向けば必然、足元に居るハンター達への注意が逸れる。……特にショウ」

 

「はい」

 

「……あのリオレイアのことは聞いた。リオレウスの判断で敵味方を判別するようなら、リオレウスの手綱を握る貴女にこそ、あのリオレイアに対して十分に注意して欲しい。……まぁ、本音を言うとそのへんは心配してないんだけど、一応ね」

 

「わかってます」

 

「今回、ハンターにはギルドより支給品として"応急薬グレート"、"携帯食料"、"秘薬"、"いにしえの秘薬"、"鬼人・硬化各グレート品"が支給されることとなる。ハンター各自、これらの取り忘れのないように」

 

はいっ!!と、ハンター達から力強い返事が返ってきた。

 

「さて……そろそろ作戦開始時刻だ。諸君、派手に行こう」

 

 

――うおおぉぉぉぉっ!!

 

 

ハンター達の気勢は十分。私たちもやる気に満ちている!

ドンッ!と何かが打ち上げられた。信号弾のようだ……あれが作戦開始の合図かな。それなら……!

 

「先行します!行きましょう、先輩!」

 

「おうっ!頼むぞ、ライゼクス!!」

 

「行こう、リオレウス!!」

 

「ライッ!」

 

「グオンッ!」

 

私と先輩はそれぞれリオレウスとライゼクスに乗り込み、一足先に戦場へ飛び出した。リオレイアも、リオレウスの隣を併走している。私たちの役割はハンターへの注意をそらすこと……それなら、なるべく高く飛んだほうがいいだろう。

高度を上げると、さっそくティガレックスが動き出した。私たちを的確に捉えると、その口元に大量の水を集め始めた。

 

「回避っ!!」

 

すぐさま回避運動を取る!回避のために動くと同時に、ティガレックスから膨大な水のブレスが発射された!攻撃こそは当たらなかったが、突然天気が変わり雨が降り始めた!

 

「うわっ、急に雨が!」

 

「気をつけて先輩!まだまだ来ます……!!」

 

「わかった!かかってこい……ティガレックス!!」

 

「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!」

 

空間を激しく揺らすほどの巨大な咆哮を上げるティガレックスへ、私たちは全力で突撃した!!

 

 

 

 




これだけ書いてて文字数は1万4千ちょいか……少ないな(感覚麻痺)

ティガレックスの弱点と、ダイマックス技対応の技表です。

ティガレックス
ドラゴン/かくとう
弱点 火:× 水:△ 雷:○ 氷:× 龍:△
四倍:フェアリー
二倍:ひこう、エスパー
半減以下:みず、くさ、むし、いわ、あく
こうかなし:ほのお、こおり
等倍:上記以外全部

ダイアタック→ばくおんぱ
ダイバーン→ほのおのキバ
ダイストリーム→アクアブレイク
ダイサンダー→かみなりのキバ
ダイソウゲン→ソーラービーム
ダイアイス→こおりのキバ
ダイナックル→インファイト
ダイアシッド→どくどくのキバ
ダイアース→10まんばりき
ダイジェット→ダブルウイング
ダイサイコ→サイコファング
ダイワーム→であいがしら
ダイロック→ストーンエッジ
ダイホロウ→シャドークロー
ダイドラグーン→げきりん
ダイアーク→かみくだく
ダイスチル→アイアンテール
ダイフェアリー→チャームボイス
ダイウォール→ほえる

ちゃんと18タイプ、使える技があるんですよね。ティガレックスのチャームボイスとはww


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幕間:月刊 狩りに生きる

今月の『月刊 狩りに生きる』はシズカ・ミズハシ特集号!
ベールに包まれた超新星の秘密に迫る!!


「ハンターが注目するハンター」堂々の一位!

シズカ・ミズハシに迫る!!

 

シズカ・ミズハシ。

キャラバン隊『我らの団』に所属するガンランス使いのハンターだ。しかしその存在は神秘のベールに包まれており、未だ謎多きハンターである。

わかっていることだけでも

 

 

・歴代最年少となる15歳でハンターデビュー

 →それまでの最年少デビュー年齢は19歳

 

・一般的なハンターの平均身長を10cm以上下回る小柄な体躯

 →ハンターの平均身長はおよそ175cm

 

・巧みな戦術理論で作戦を構築する頭脳派ハンター

 

・デビューから5年でG級ハンターへと至った猛者

 

 

などなど、武勇伝には事欠かない。身長は162cmと小柄ながらも長大なガンランスを操る姿は強烈なギャップを感じさせる。強大なモンスターに対抗すべく、近接武器は一部を除くとハンターの身の丈を優に超えるものが多い。そんな中で「小さな体に大きな武器」という絵面はとにかく目立つこと請け合いである。

 

なんといっても凄まじいのは、一般的にハンターランクを一つ上げるのに最低5年は掛かるところ、彼女はなんとデビューからその5年間でG級ハンターへと至ったことだろう。ハンターランク(以下、HR)は一般的に3までが下位、4から8までが上位、それを超えるとG級と認められる。つまり、G級ハンターは最低でもHRが9でなければならない。HR1から始まりHR9へと至るための"緊急クエスト"を、約7ヶ月に一回は受けた上ですべて達成しているということになる。この早さは昇格時に20歳であることを考えると過去に例のないことであり、早さだけなら「歴代最速G級昇格ハンターランキング」の第4位に位置する早さであるが、『昇格時の年齢』は過去最若であり、彼女の異質さを際立たせている。

 

いま注目の超新星(ルーキー)、シズカ・ミズハシ。我々は幾度か彼女に取材を申し込むべく接触を図ったが、尽く入れ違い擦れ違いで滅多に対面が叶わなかった。それならばと『我らの団』のメンバーに取材を申し込んだが……シズカ・ミズハシはあれだけの偉業を成しながらも謙虚なようで、彼女に関する取材は「本人が望まぬなら」という理由で全員から断られてしまった。

しかし、しかし!ベテランハンターならば誰もが注目するあのシズカ・ミズハシ……取材は叶わぬとも、一目見ぬことには諦めきれない!我々「狩りに生きる・取材班」は綿密な情報収集の末、彼女が受注したというクエストへ追跡調査を敢行した。そして奇跡的に狩猟を終えて帰還中の彼女と接触することに成功した取材班は、早速彼女に取材を申し込むことにした!

「狩場から拠点に戻るまで」という条件でシズカ氏は取材に応じてくれた。以下は彼女の取材の中から、編集部が抜粋した質疑応答の一部である。

 

 

Q.ハンターを目指すきっかけとは?

A.「別段、ハンターになろうと思ったことはなかったです。ただ、『我らの団』に拾ってもらった当時は、その……諸事情で自暴自棄になっていたので、若干ですが命を投げ捨てるつもりでいました。今はそんなことはないですけどね。

あれよあれよと流されるがままにハンターになりましたけど、今となっては"良かった"と言うべきでしょうね。こうして、誰かの為に力を振るう存在になれたのですから」

 

今でこそ凄腕ハンターとして名を連ねる彼女にもまた、未熟と呼ぶべき時期があったようだ。詳しくは語られなかったものの、断片的に拾い上げた情報を精査したところ、デビュー直前ころに親族を亡くしたらしくそれによって傷心を負っていたところを『我らの団』に保護され、心の傷を癒してもらったようだ。あくまで推測に過ぎないが、彼らへの恩返しの意味も含まれているのではなかろうか。

 

 

Q.手紙を出すのですか?宛先は?

A.「依頼主です。クエスト完了の報告を誰よりも心待ちにしているのは、ギルドではなく依頼主ですから。狩猟当時の状況や、狩猟後によって起こる環境や生態図の変化などをとりあえず伝えておけば、依頼主当人も何かしらの対策が立てられるんじゃないかなって。……まぁ、普通のハンターはここまでしないですよね。これは単純に私が気にしているだけなので、あまり深く考えないでくださいね」

 

 

Q.手紙の返事等は返ってくるのですか?

A.「……はい?手紙の返事?あぁ……いえ、あはは。実は、その……結構な頻度で返事はきます。内容は大体がお礼関係ですね。"ありがとう"、"助かった"、"感謝する"……いろんな言葉ではありましたが、そのほとんどがお礼の言葉でした。……ハンター冥利に尽きる、ってやつですかね……その言葉だけで、また次も頑張れるって思えるんですから、人間ってホント単純な生き物ですよ」

 

驚いた。どうやら彼女はクールな見た目や言動に反して、依頼主の心に寄り添う美しい精神の持ち主だったのだ。たしかに、我々が知りうる限りでは彼女ほど依頼主を強く意識してより距離を縮めようとするハンターは心当たりがない。これほどに心根が清廉潔白な彼女に依頼を受理してもらった依頼主は相当な果報者だろう。

身に纏うラギアXRシリーズの色とも相まって、彼女は幸せを運ぶ青い鳥なのかもしれない。

 

 

Q.シズカ氏といえば、「狗竜の恩返し」の噂が有名ですが、真相のほどは?

A.「げっ……その話、どこで……?……はぁ、わかりました。……バルバレまでまだ時間がありそうなので、話すとしましょうか。

そうですね、あれは……ちょうど二、三年ほど前。天空山で狩りを終えてキャンプに戻る途中で、傷ついたジャギィが一体、群れからはぐれて彷徨ってたんですよね。その姿が、少し前までの自分に似ていて無視できず……ついつい助けてしまったんですよ。たしか左後ろ脚が怪我してて、額に傷がついていましたね。

……え?あぁ、そりゃあ怒られましたよ。自然界において、勝手に命を助けたり奪ったりは無責任極まりない行為ですからね、ギルドからこてんぱんに叱られました。一応、それ以降はむやみに助けたりはしてないですけど」

 

以前からシズカ氏について噂になっていた「狗竜の恩返し」。

要約すると、シズカ氏が負傷したジャギィを助けた後、成長した個体が狩猟中に手助けをしてくれたという前代未聞の出来事である。

この噂については「真偽はともかく噂なら知っている」というハンターが実に大多数を占めている。そのため、我々取材班もこうして踏み込むことを決断したのだ。

 

「転機が訪れたのは、天空山でイビルジョーを狩猟している時ですね。結構強力な個体でして、少々手こずってたんですが……ちょうどその時、ドスジャギィが群れを率いて姿を現して、イビルジョーに襲いかかったんですよ。私にはまったく襲ってこなくてね。

どういうことかと考えてたら、ドスジャギィが近づいてきて……そう、額に傷が付いたドスジャギィでした。間違いなく、私が助けたあのジャギィだったんです。驚きましたよ……肉食の個体であるジャギィが私への恩を覚えていて、それを返すために古龍級生物に向かっていくなんて……普通は信じられないですよね」

 

どうやら噂は真実のようだ!シズカ氏はハンターズギルドからお叱りを受けたというが、一部界隈ではこの話は大変好評なようで、(やや誇張が見られるが)書籍化されたほどである。

この大陸の真反対には、"ライダー"と呼ばれる人々がモンスターをオトモのように連れ歩き狩猟したり共生している大陸が存在する、との噂があるが……シズカ氏とドスジャギィの関係を鑑みるに、ありえなくはない話だ。最近になって調査が進んだ"新大陸"に続いて、この噂の大陸の調査も始まるかもしれない。

 

 

この取材はバルバレに到着してしまったことで終了となった。まだまだ聞き足りないことが多いが、約束なのでシズカ氏の取材はここで終わりとする。もしまた会える機会があれば、聞き足りないことや一般に知られていないことなど、彼女についての質問をもっと重ねていく所存である。

 

 

 

 

以下はシズカ・ミズハシについてハンターやその関係者についての質問と回答である。残念ながらシズカ・ミズハシと最も密接な関係にある『我らの団』のメンバーからは聞き取りはできなかったことをここに留意する。

 

 

問:あなたにとって、シズカ・ミズハシとはどんなハンターですか?

 

回答者:モガの村在住の婦人

シズカ・ミズハシ?あぁ、あのハンターさんね。とっても親切な人よ?

ウチの村ってモガの森と隣接してるから、子供たちがハメを外して遊びに行ったりなんかしてねぇ。

迷ったり肉食のモンスターが出たりで帰ってこれなくなることがあるんだけどね、それでウチの坊やも森に出たっきり戻ってこれなくなったことがあってね……ギルドに依頼を出したんだけど、そのクエストを受けてくれたのがシズカさんだったのよ。

あの子ったらスゴイのよぉ、クエストの内容はジャギィとジャギィノスの討伐なのに、討伐を終えるとウチの坊やを探して、なんと見つけ出して連れて帰ってくれたのよ!最初見た時あんまり笑わない子かと思ったけど、アタシと坊やが抱き合ってるのを見て小さく微笑む様は、まるで年相応……いや、見た目よりずっと幼い女の子って感じだったわ。

……それにしても、あんな若い子がハンターなんて世知辛い世の中になったわねぇ。

 

 

回答者:年若い将軍

……む、あぁ失礼。つい質問の内容に、彼女のことを思い出していた。

……懐かしいな。ギルドから派遣されてきたハンターが、十代半ばの娘と知った時の心中は、それはもう穏やかではいられなかったさ。私よりも一回りも若く、それでいて小柄だったシズカくんが、今では立派なG級ハンターになったと彼女からの文で知ったときは、我が事のように喜んださ。

上官に悩まされ、部下に振り回され、情けない姿を晒し続ける私だが……彼女はそんな私を「上司を支え部下を思いやれる、立派な人だ」と言ってくれたんだ。……思わず涙ぐんでしまったよ。彼女のような若者が頑張っているんだ、私が根を上げるなどお笑い種だと一層己を鼓舞したものだ。

……む、質問の答えになっていないな。そうだな……良くも悪くも真面目、といったところか。真面目であるが故に間違いは犯さないが、困窮する者がいれば我が身を顧みぬところがある。……そんな彼女に助けられている身としては、安易に「やめろ」と強く言えないところが痛いところだ。

……その彼女から、「割とマジで、真面目に転職しませんか?」と言われたときは、流石に笑えなかったがね。……転職かぁ……。

 

 

回答者:ポッケ村の村長

ふむ、シズカ・ミズハシ……あの子について聞きたいと。そうさな……このオババの私見で構わないなら、ちょいとだけお話してあげようかね。

そうさな……あの子を最初に見たのは、『フルフル』の狩猟依頼を出した時かね。わざわざ村を訪れて律儀にオババに挨拶してからクエストに行くもんだから、真面目な子だとは思ったね。

ただ……危なっかしい、と感じたね。まるで強迫観念に駆られるように生き急ぐものだから、正直見ていられなかったよ。まぁ、当時はまだ二十歳にも満たぬ十六の頃だから、若気の至り、というやつなのかね。……ん?あぁ、迷惑だったとかそんなんじゃないよ。このオババにとっては、ちょいとヤンチャの過ぎる孫娘みたいなもんさ。

根は素直で優しい子でね、オババの話にはちゃんと耳を傾けてくれるし、無茶を指摘すれば正直に謝ってくれたからね。……いつかあの子がちゃんと笑える日が来るといいんだがね。

 

 

回答者:十代半ばの新人ハンター二人組

ウッス!自分たちはかのシズカ・ミズハシさんに憧れてハンターになった者ッス!自分もシズカさんをリスペクトしてガンランスを使ってるッス!でも、シズカさんみたいな動きは全然出来ないッス!!

なんせシズカさん、身長162cmの小柄な体に加えて体重もすごく軽いそうで、ブラストダッシュで飛ぶと体がめちゃめちゃ浮くらしいッス!だから他のハンターとは違ってブラストダッシュで"上に向かって飛ぶ"ことができるらしいッス!くぅ~、そこに痺れる!憧れるゥ!!自分も今から体重ガッツリ落としてくるッス!

何を言ってるのよこのアンポンタン……あ、すみません。熱くなったコイツに代わって回答します。シズカさんの狩り……端的に言えば"普通"じゃないです。元々センスが抜群に優れていたのか、積んだ経験が為す業か……。

なんたってシズカさん、モンスターの行動に対する『先読み』がめちゃめちゃすごいです。いわゆる、なんでしょう……予備動作、ですかね?それを見てからしっかりと自分も行動に移せるんだから大したものですよ。まるで合いの手を打つようにモンスターの攻撃に防御で応じたり、攻撃直後のモンスターに攻撃を差し込んだり、モンスターがより大きなアクションを取ればすかさず隙を見て回復したり……彼女の狩りを見学させてもらったんですけど、まるで別次元です。

とにかくシズカさんの狩りはマジヤバでちゃけパねぇんスよ!!

とにかくシズカさんの狩りは真似できるとは思えないんですよ。

 

 

 

 

他、複数の方々に回答をいただいたが、本誌においては割愛とさせていただく。次号以降に再びシズカ・ミズハシを取り上げた際に紹介させていただくこととする。

 

 

シズカ・ミズハシの台頭は、ハンター業界に新たな風を吹かせることとなった。よりハンターを志す者が増えたといえば聞こえはいいが、一方で懸念を示す者もいる。

ハンターズギルドの職員は「シズカ・ミズハシの台頭後、新人ハンターの低年齢化が一気に進んだ。十代半ばの若者たちがこぞってハンターになろうと各地の訓練所に駆け込む様子は、若い命を狩猟へ駆り出すことへの不安と、新世代のハンター達がこの業界に革新を齎してくれるだろうという期待に満ちている」とコメント。

我々、狩りに生きる編集部もまた、シズカ・ミズハシをはじめとする新世代のハンター達の今後の活躍に、ますます注目していく次第である。

 

 

 

 



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緊急クエスト:超異常震域!超巨大轟竜!!

通常Ver.

依頼主
古龍観測所

依頼内容
遺跡平原にて、蛇王龍に匹敵するほどの超巨大なティガレックスが確認されました!
ハンターズギルドは非常事態宣言を宣告、全ギルド及びハンター諸氏による討伐作戦が展開される運びとなりました!!
我こそはというハンターは名乗りを上げ、この世界を守るためにお力添えをお願いします!!


イベクエVer.

依頼主
空前絶後の超絶怒涛のソロハンター

依頼内容
空前絶後のおぉぉ!超絶怒涛のモンスター!
ハンターを愛し、ハンターに愛された飛竜!
亜種、希少種、二つ名、全ての個体のその原種!!
なぜか超絶巨大個体となって爆誕し!世界全土をそのでっかい咆哮で震わせた!
そう、このモンスターこそはぁー!轟!竜!ティガ!レックス!!
イエエェェェイ!!
……あの、俺よりうるさいそうなので、なるべく早く狩猟お願いします。



推奨BGM

【戦闘!ダイマックスポケモン】~ポケットモンスター Sw・Sh~

【金色の追憶 ~ ケチャワチャ】~モンスターハンター4~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大ティガレックス討伐作戦、その開戦の狼煙を上げたのは私たちだった。

 

「リオレウス、りゅうのはどう!」

 

「ライゼクス、チャージビーム!」

 

「グオオン!」

 

「ライィズ!」

 

「グアアオ!」

 

リオレイアもラスターカノンでティガレックスを攻撃する。三体の同時攻撃はティガレックスの鼻先に命中したが、ティガレックスは軽く頭を振ってこれをかき消した!

 

「な!?」

 

「怯まないで先輩!畳み掛けて!!」

 

「……!よしっ、おれが突っ込む!援護してくれ!!」

 

「はいっ!」

 

「ライゼクス、かみなりパンチ!!」

 

「ライザアァ!!」

 

「リオレウス、リオレイアも一緒に!エアスラッシュ!!」

 

「グオオオンッ!」

 

「グアアアンッ!」

 

ライゼクスが突撃し、その援護としてリオス夫婦のエアスラッシュが飛ぶ。

 

「ギガアアッ!!」

 

エアスラッシュを受けたティガレックスは初めて私たちの攻撃に反応した。……ひこうタイプに弱い……?くさタイプやむしタイプはありえないだろうから、かくとうタイプか!

続いてライゼクスがティガレックスの頭に電撃を纏った翼爪を叩きつけた。こちらの反応はまずまず、といったところ。ドラゴンタイプにも似たような反応だったし、いまいちタイプが読めないな……。

 

「……!!」

 

……ッ!ティガレックスが小さく左前足を持ち上げると、そのまま地面を強く叩いた。その直後、私とリオレウスたちの目の前に突如地面から巨大な岩盤が出現した!!

 

「んなぁっ!?」

 

「グオン!」

 

「グアン!」

 

私が驚いている間にも、リオレウスとリオレイアは急いで射程圏内から脱出を図る。巨大岩盤はそのまま私たちに向かって倒れ込んできて、こちらを押し潰そうとしている!!

 

ドガアアアァァンッ!!

 

な、なんとか脱出できた……。巨大な岩盤は倒れこむと同時に激しく炸裂し、木っ端微塵になった。

 

「ショウーッ!大丈夫かー!!」

 

「はいっ、なんとか……!?」

 

先輩の声掛けに反応しようとした、その時だ!突如、先程まで降り注いでいた雨が止み、激しい砂嵐が発生して私たちは身動きがとれなくなってしまった!!

 

「うっ、くっ……な、なに!?この砂嵐は!!」

 

「グウゥ……!」

 

これは、天候が変化している!?"すなあらし状態"はいわ・じめん・はがね以外の全てのポケモンに継続ダメージを与える厄介な天気だ。唯一ダメージを受けないのはウォロに預けたディノバルドだけ……とはいえ、この砂嵐は尋常じゃない!ほとんど視界が効かないなんて……!!

リオレウスだけでなく、ライゼクスとリオレイアもすなあらしのダメージに苦しんでいる……このままじゃ!

 

「……!!」

 

よく見ると、ティガレックスの口元に青い光が集まっている。マズイ、狙い撃ちにされる……!

 

「……ッ!グオンッ!!」

 

「えっ、リオレウス……きゃっ!?」

 

と、ここでリオレウスが突然体を激しく揺すると私を一度振り落としてから口に咥え、そのままリオレイアの方へめがけてぶん投げた……って、ちょっとぉ!?

 

「きゃあああぁっ!?」

 

「グアアオン!!」

 

リ、リオレイアが間一髪で私を背中に乗せてくれた……。いきなりのことに驚いてリオレウスの方を見た、その時だ。ティガレックスから膨大な水流が放たれ、リオレウスがまるまる飲み込まれてしまった!!

 

「リオレウスーッ!!」

 

「グアアアアンッ!?」

 

水流から押し出されたリオレウスはそのまま力なく墜落していく。まさか、気絶してる!?このままじゃ地面にぶつかる……!!

 

「ガムーッ!!」

 

「よしっ、ガムートナイスキャッチ!!」

 

よ、よかったぁ……リオレウスが地面に激突する前に、ガムートが背中で受け止めてくれた。それから、意識が戻ったらしいリオレウスが何度か頭を振ると、ゆっくりとガムートの背中から降りた。

……そして、天気は"すなあらし"から"あめ"へ。あのティガレックスの攻撃、一体どうなっているの……?天気を変えるというより、技の追加効果で天気が変わっているような……。

 

「……考えても仕方がない。リオレウスも直に戻ってくるし、私たちは戦線に復帰しよう」

 

「グアン」

 

「あっ……えっと、よろしくねリオレイア」

 

「グアアアンッ!!」

 

リオレイアはリオレウスが撃墜されたときはひどく動揺していたけど、今は落ち着きを取り戻したようだ。

乗り換えをしている暇はないので、このままリオレイアに騎乗することにした。先輩とライゼクスは……。

 

「いっけー!プラズマブラスターだ!!」

 

「ライザアアアァァッ!!」

 

先輩たちはティガレックスへ猛攻を仕掛けている。よく見るとライゼクスは怒っているようで、鶏冠や翼、尻尾といった器官をしきりに擦りあげている。ああやって電気を生み出して帯電しているんだよね……よっぽどリオレウスへの攻撃に腹が立ったみたいだ。

 

「私たちも負けてられないね……!リオレイア、ブレイブバード!!」

 

「グアアアオン!!」

 

翼を大きく広げたリオレイアが一気に突撃する。それに気づいたティガレックスは一度こちらへ振り向くと、すぐさま天に向かって吠え上げた。

 

「ギャアアアアアン!!」

 

すると、空から大量の星型弾が降ってきた!リオレイアは星の弾丸を次々と回避し、ティガレックスの横っ面に思い切りブレイブバードを叩きつけた!

 

「サマーソルト!」

 

「グアアオ!!」

 

「ギィッ……!」

 

続けてサマーソルトで追撃!……毒状態にはならなかったか。

シロちゃんから聞いたのだが、リオレイアの尻尾にある刺は猛毒が仕込まれているらしく、リオレイアはこれを巧みに使って狩りを行うらしい。リオレウスも足の爪に毒を有しているが、毒の出力はリオレイアに劣るらしい。

……っと、長考している場合じゃなかった!ティガレックスは大きく口を開けて私とリオレイアを噛み砕かんと迫ってきた!

 

「グオオオオン!」

 

「リオレウス!」

 

……と、ここでリオレウスが戻ってきた!リオレウスはライゼクスと並び立つと、二体同時にはかいこうせんを放った。攻撃は命中し、それによってティガレックスの注意がわずかにそれた。

 

「リオレイア!」

 

「グアンッ!」

 

その隙を逃さず、リオレイアはすぐさま距離をとった。さて、次の攻撃を……。

 

パァン!

 

破裂音、そして赤い煙。どうやら兵器の準備が整ったみたい!

 

「リオレイア!先輩!!」

 

「わかった!離れるぞ、ライゼクス!」

 

「ライッ!」

 

「グアアン!」

 

「グオオン!」

 

三体が大急ぎでティガレックスから距離をとった、その直後だ。

 

「撃てぇーっ!!」

 

ティガレックスを包囲するように組み上げられたバリスタ(でっかいボウガン)と配置された大砲から大量の弾が一斉に発射された。バリスタの弾はティガレックスの体に深々と突き刺さり、大砲は続々と爆破を起こしてティガレックスにダメージを与えている。

 

「いいぞ!効いている!!」

 

「次弾装填次第、随時放て!隙を与えるな!!」

 

巻き込まれないように地上へ降り、次々と放たれる弾丸の嵐を見上げる。絶えず放たれ続ける攻撃に対し、ティガレックスは身動きがとれない……いや、待って!

 

「グルルルル……!!」

 

「……轟竜、咆哮体勢に入りました!!」

 

「……!狩猟笛部隊は聴覚保護の旋律を奏でよ!!ランス、ガンランス、チャージアックスは前へ!!」

 

狩猟笛――バカでっかい笛――を持ったハンター達が、一斉に旋律を奏でる。それから、シズカさんをはじめとする大きな盾を持った武器のハンター達が整列し、盾を構えた。盾を持たない、もしくは盾が小さいハンター達は、彼らを壁にするようにすぐ背後に潜んで備えていた。

 

「……ネネ、腰を掴むな腰を」

 

「はぅん……姉さまの腰、スリスリ……」

 

「(#゚_゚)」

 

……アレは見なかったことにしよう。

 

「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!」

 

上体を起こし、両腕をしっかりと地面についたティガレックスは瞬間、凄まじい咆哮を放った。……だというのに、私の耳の鼓膜が破れた様子はない。そういえば、さっき"聴覚保護"って言ってたけど、あれって文字通りの意味だったのかな。

音の方は問題ない……が、問題はその咆哮によって生み出された衝撃波だ。地面を抉りながら物凄い勢いで迫る衝撃波は、盾を持つハンター達によって受け止められた。それでも全てを受け止めきれるわけではなく、上へと突き抜けた衝撃波は雲や岩山を吹き飛ばし、周囲一帯に被害を齎した。

 

「ぐっ……!」

 

「ぐおお……!」

 

「くそったれぇ……!」

 

ハンター達は苦悶の表情を浮かべながらも、必死に衝撃波を受け止め続ける。やがてティガレックスが咆哮を止めると、盾持ちハンターの皆さんは一斉に膝をついた。相当な衝撃だったんだろう……皆が皆、肩で息をしている。

 

「くっ……被害報告!」

 

「組み立て式バリスタ、ならびに大砲は全滅です!」

 

「ハンターの被害人数はゼロ、全員無事です!」

 

後方で司令部が慌ただしくしている。ハンター達も自分が体勢を立て直すだけでかなり精一杯なようだ。

だが、その中でもいち早く動いたハンターがいる。シズカさんだ!

 

「……兵器は全損、まぁ予想通りか」

 

「姉様、如何されます?」

 

「イカもタコもオストガロアもない。兵器が失われた以上、残る戦力はハンターのみ。突撃する」

 

「お供しましょう、姉様。アタシはどこまでも姉様のお側に」

 

「勝手にして。……はやくなさい」

 

シズカさんとネネさんは同時に駆け出した。行動が早い……私たちも遅れるわけには行かないね!

 

「リオレウス、リオレイア。まだ行ける?」

 

「グオン!」

 

「グアン!」

 

「よしっ、行こう!リオレウス、今度は振り落とさないでね?」

 

「グオグオ」

 

私はもう一度リオレウスに騎乗すると、再び天を舞う。それと同時に、ハンター達も動き始めた。

 

「シズカ・ミズハシが先行したぞ!俺たちも続けー!!」

 

「ハンターの意地、見せてやらァ!!」

 

「フンッ!若いモンに遅れは取らんわ!」

 

「指示通りに隊列を組め!何が何でも、ここで狩るぞ!!」

 

各々が武器を構え、一斉に突撃を始めた。兵器が全損した場合は全ハンターで突撃する。その後は、剣士3ガンナー1のフォーマンセルに別れてそれぞれのグループが攻撃を開始する、という手筈になっている。シズカさんは誰よりも早く行動を起こすことで、他のハンター達を扇動しているんだ。

 

「シズカ!先走りすぎだ!!」

 

「まったく、煽るのだけは上手くなったよなぁお前!」

 

「ニールさん、エイデンさん、待ってましたよ」

 

「女を待たせる男はモテませんよ?」

 

「うぐっ……」

 

「こ、こんな時まで古傷を抉ってやんなって……」

 

先行したシズカさんの元には、シズカさんにフラレたというニールさんと、彼と一緒にいたエイデンさんが合流した。……っと、そうだ。その前に……。

私はリオレウスに指示を出して、セキさんの下へ向かった。セキさんはタマミツネの背に乗って移動中だ。

 

「セキさん!」

 

「おう、ショウ!どうした!」

 

「おそらくですが、ティガレックスはかくとうタイプの可能性が高いです!フェアリータイプに対する反応が見たいので、タマミツネで攻撃をお願いします!」

 

「わかった、任せろ!行くぜ、タマミツネ!!」

 

「クォン!」

 

タマミツネが泡で滑りながら猛烈な速度で突っ込んでいく。まわりを見れば、カイさんとガムート、ウォロとディノバルドもそれぞれ進軍を開始している。私も私で空からティガレックスを牽制して、ハンター達から意識を逸らさないと!

 

「リオレウス、大きく旋回して!後背を突きたいの!」

 

「グオォン!!」

 

リオレウスが高く飛び、ティガレックスの頭上を越えていく。その際、ティガレックスがかみなりのキバでこちらに噛み付いてこようとしたが、先輩が乗るライゼクスに鼻先をかみなりパンチで殴られて怯んでいた。

ティガレックスの前方は先輩が張ってくれている……なら、私が後ろから攻撃すればティガレックスは気が散ってしょうがないはず!

 

ティガレックスの後方からも、ハンター達が攻撃をしている。いろんな武器を持ったたくさんのハンター達がティガレックスの後ろ脚や尻尾に斬りかかったり弾丸を撃ち込んだり……壮観だ。

 

「……っと、見蕩れてる場合じゃなかった!リオレウス、ぼうふう!リオレイアもお願い!」

 

「グオオオオン!」

 

「グアアアアン!」

 

リオレウスとリオレイアの同時攻撃……と、同時にティガレックスが物凄い勢いでその場で回転した。ちょうど一回転半……即ち、前後反転したことでこちらに振り返ったティガレックスは、そのまま口から巨大な旋風を発射しこちらのぼうふうを打ち消した!

攻撃はなんとか回避したけど、ティガレックスはそのまま旋風で足元をなぎ払うように振り回した!

 

「うわあああ!?」

 

「きゃあああ!?」

 

ハンター達は盾で防いだり回避したり……回避!?こちらからはタイミングを合わせて転がっているようにしか見えないのに当たっていない、だと……?ただ、躱し損ねたハンターもいるようで、そういう人たちは旋風に煽られて宙高く放り上げられそのまま地面に叩きつけられていた。

それでも、ハンターの気勢を削ぐには及ばない。被害を免れたハンターは再び攻撃を再開し、逆に攻撃を食らったハンターはポーチから小瓶を取り出すとそれを一気に飲み干し立ち上がった。……あれが回復道具、なのかな。すごい回復量だ。

 

「ギギャアアア!!」

 

ティガレックスが咆哮すると、ティガレックスを中心に毒の海が広がっていく。さらにそこから毒の水柱が立ち上り、足元からハンター達を次々と狙い撃ちし始めた。

 

「……っ」

 

「……っと!姉様、大丈夫ですか!」

 

「人の身を案じるより、自分のことを優先して」

 

「もちろんです!アタシの中では『他人≦自分<姉様』、ですから!!」

 

「おっと……エイデン、無事か!」

 

「なんとかな!前から思ってたけど、本当に変な攻撃だな!」

 

すごい……シズカさんたちは攻撃を完璧に見切って回避している!反対側は大丈夫だろうか……。

 

「ふんっ!たしかに奇っ怪な攻撃だが、躱せんことはないわ!」

 

「おうよ!まったく、デカくなったってんだからどんなもんかと思えば、見たことのない攻撃をしてくるだけで所詮はただのティガレックス!たいしたことないな!!」

 

「俺たちを脅かしたけりゃ、おんなじのをもう数頭は連れてこいってんだ!これではデカイだけでラオシャンロン亜種には到底及ばんわ!」

 

「行くぞ、黒鬼!俺たちの力、ただデカくなるだけでは勝てんということを教えてやるぞ!」

 

「応よ、赤鬼!夢に出るほどには思い知らせてやるわ!」

 

「「ドハハハハハ!/バハハハハハ!」」

 

「……こ、これがヘルブラザーズ……!」

 

「つ、付いていくだけで精一杯だ……!」

 

こっち側もすごい!何人か突出した実力者がいるようで、その人たちが率先して前線を張るので自然と他のハンターも引っ張られる形で戦線を維持しているようだ。

 

「タマミツネ、ムーンフォース!」

 

「ガムート、ストーンエッジ!」

 

「ディノバルド、アイアンテール!」

 

地上にいるセキさんたちも、各々攻撃を開始している。ジンオウガも自身の判断で技選択をし、攻撃を繰り出しているようだ。

 

「ギギャン!?」

 

タマミツネのムーンフォースが直撃したティガレックスが、露骨に悲鳴を上げた。フェアリータイプは効果は抜群のようだ!かなりダメージがあるようだから、かくとうの他にドラゴンかあくを複合していそうだな……。

 

「リオレイア、きあいだまを撃って!」

 

「グアン!!」

 

確認のため、リオレイアにきあいだまを撃ってもらう。命中したが、ティガレックスの反応は普通……あくタイプじゃない、ドラゴンタイプだ!ドラゴンとかくとうの複合タイプ!

 

「ギャアアアンッ!!」

 

ティガレックスの体から電撃が走ったかと思うと、次の瞬間には辺りが曇り始め巨大な雷が降り注いできた!

 

「ふんっ!」

 

あれは、ニールさん!ニールさんは背中の大剣を抜刀し、その腹で電撃を受け流すと左腕から巨大な鉤爪を発射した。鉤爪はティガレックスの前脚を掴むと、ワイヤーを手繰り寄せてニールさんがティガレックスにしがみついた。そのまま鉤爪を外すと、ニールさんは勢いよくティガレックスの体を登り始めたではないか!

 

「やるなぁ、ニールのやつ!よぉし、俺も!」

 

エイデンさんも後に続き、二人揃ってティガレックスの背中に乗り込んだ。

 

「おぉらあぁ!」

 

「喰らいやがれ!」

 

ニールさんの大剣とエイデンさんの双剣が、ティガレックスの背中に攻撃を仕掛けていく。ティガレックスも、攻撃を受けて初めて自身の背中に敵がいることを認識したのか、一度目視してから、降り下ろそうと暴れ始めた!

 

「ぐっ、くそっ!」

 

「うおっとぉ!?」

 

ニールさんとエイデンさんが必死に背中に張り付いている。暴れるティガレックスは接近しづらいが、あの特殊な攻撃が飛んでこなくなったのはありがたい。この間に、ほかのハンター達は体勢を立て直――

 

「行くよ、ネネ」

 

「はいっ、姉様!」

 

――さない!?シズカさんとネネさんは暴れるティガレックスに突撃した!ネネさんは振り下ろされたティガレックスの前脚にタイミング良く飛び乗り、シズカさんはガンランスを使った移動技である"ブラストダッシュ"で飛んでいった。

最初の一発で前進しつつ、体が浮き上がったところで斜め下後方に向けて一発。さらに真下への一発で高さを稼ぐと滞空時間を利用して槍を振り回しリロード、その後、槍を仕舞いつつ手から何かを飛ばした。あれは……虫?何か糸を引いた虫を飛ばすとその虫に引っ張られている間に空中受身でさらに前進すると、再び槍を抜き真下に向けて一発、二発。

再び滞空時間の間に槍を仕舞いつつ虫を飛ばし、再び前進。この時点でティガレックスの頭上を取った。そして最後に槍を抜いて後方に一発……ここまでの手順で、ニールさんと同じティガレックスの背中に飛び乗ったのだ。そして槍をティガレックスの体に深々と突き刺すと、槍を支えに立っている。

 

「ふぅ」

 

「……あ、相変わらずぶっ飛んでるなぁ、お前……」

 

「流石にできないことはしませんよ。なので私はマトモです」

 

「…………」

 

「ニールさん、なにか?」

 

「イエ、ナンデモナイデス」

 

何を話しているんだろう……ここからだと遠すぎてよく聞こえない。……あ、ネネさんも合流した。けど、ティガレックスは未だに暴れている……そうだ!

名案が閃いた私は、すぐさま地上に降りていく。

 

「ジンオウガ!」

 

「ワオン!」

 

リオレウスからジンオウガへと乗り換えると、そのままセキさんの下へ走っていく。暴れるティガレックスを前に近づけないのか、離れたところで遠巻きに見ていた。

 

「セキさん!」

 

「ショウ?……!なにか閃いたんだな!」

 

「はい!泡です!タマミツネの泡で、ティガレックスを転ばせれば……!」

 

「そいつぁ、いい!!タマミツネ、妖泡だ!ティガレックスの足元にたっぷりばらまいてやれ!」

 

「コオォンッ!」

 

タマミツネが得意の泡攻撃をティガレックスに放っていく。それだけでなく、自身の分泌液から生まれた泡も、次々とティガレックスに向けて飛ばした。泡が密集しツルツルの足場が出来上がった。そこへティガレックスの前脚が滑り込み……。

 

「ギャアアンッ!?」

 

ツルン、と音が聞こえそうな勢いで前脚が滑り、巨大なティガレックスが派手に転倒した。

 

「ティガレックスがコケたぞ!」

 

「今だ!一斉攻撃!!」

 

「かかれぇ!」

 

「いくぞー!!」

 

ティガレックスの転倒によって、ハンター達は一気呵成に攻め立てた。私たちトレーナーチームも、それぞれ相棒のポケモンたちに指示を出して攻撃を仕掛ける!

 

「ディノバルド、サイコカッター!」

 

「タマミツネ、ムーンフォース!」

 

「ガムート、だいちのちから!」

 

「ライゼクス、プラズマブラスター!」

 

「ジンオウガ、らいこうだん!リオレウス!リオレイア!ぼうふう!!」

 

全方位からの一斉攻撃が、ティガレックスに襲いかかる!これは効いてるぞ……!

 

「……!ギィヤァァアアアアアアアアアアンッ!!」

 

と、その時だ!倒れた姿勢のまま、ティガレックスが口から凄まじい音波を放ったのだ。あれは、まさかばくおんぱ!?そのまま首を動かし、ばくおんぱで次々とハンター達を吹っ飛ばし始めた!

 

「くっ……コイツ、まだこんな力が……!!」

 

「ガムート!ハンター達の援護に行こう!」

 

「ガムア!」

 

ガムートがその巨体を活かしてハンター達を守る壁となり、ばくおんぱの衝撃を受け止める。はがねタイプのディノバルドも、ノーマル技のばくおんぱを受け止めてハンター達を守っている……!

 

「ちっ、マズイな……これ以上騒がれたら面倒だぜ……!」

 

「どうすれば……!」

 

なにか打つ手……せめて、あと一手あれば……!

 

 

ドン、ドン、ドン

 

 

「……?この音……」

 

後方から聞こえた炸裂音に、思わず振り返る。見れば、上空に赤、青、白の三色の信号弾が打ち上がっていた。

 

それとほぼ同じくして、車輪がついた巨大な大砲と形容すべしモノが、大勢の騎士たちによって運ばれてきた。なんだろう、あれ……。

 

「おぉ、やったぞ!『撃龍槍』だ!!」

 

「げきりゅうそう……?」

 

「あぁ、トレーナーの皆さんは知らないか……いわゆる"決戦兵器"ってやつさ!建造中とは聞いていたけど、完成したんだ!!」

 

そう言いながら、教えてくれたハンターさんは射線を開けるように退避していった。私たちもポケモンたちに合図を送り、同じく道を開ける。

 

「諸君、待たせたな」

 

そう言って姿を見せたのは将軍。一体何が起こるんだろうか……。

 

「……連装式撃龍槍、準備!」

 

「連装式撃龍槍準備!」

 

「連装式撃龍槍準備!」

 

将軍の声掛けに応じ、騎士たちが動き出した。まず、車輪の内側にある巨大な鉄杭をハンマーで叩き、勢いよく地面に突き立てることで固定。続いてハンドル操作で砲台の角度を調整し、まっすぐにティガレックスへと向けた。

だが、この時点でティガレックスもこちらの動向に気づいており、口元に巨大な豪火を蓄えている!

 

「……!」

 

「シズカ!?」

 

と、向こうでも動きが!ティガレックスの背中に乗っているシズカさんが、ティガレックスの頭部へと走り出したのだ。そのまま鼻先からブラストダッシュを一発、二発、三発と放ち、さらに虫を使って高く上へと移動すると、振り向きざまに何かを投げた!

 

一瞬の閃光とともに、光が弾けた。

 

「ギャアアア!?」

 

眩しっ!?

 

「閃光玉か!」

 

「ティガレックスの動きが封じられました!」

 

「将軍、今なら撃てます!」

 

「だが、シズカくんが……!」

 

「いや、撃て!!」

 

騎士たちが素早く状況を把握し将軍に促すも、将軍はティガレックスの目の前にいるシズカさんの身を案じて判断が下せない。……と、そこへ別の人間が割り込んできた。

全身が輝かんばかりの金とところどころにある紫のアクセント、なにより背中に翼を携えた胴防具を身に纏った男性声の人物だ。

 

「君は……!」

 

「アイツは当たらないとわかった上で(・・・・・・・・・・・・)やっている!無理も無茶もするし、無闇に無謀を犯すし、無益になるような無駄なことだって平然とする!

だが、シズカは俺が育てた弟子だ!!アイツは自分が絶対にできないことはしない!アイツが行動を取り、アクションを起こすってことは、それは絶対に出来ることだ!!」

 

「!!」

 

「だから、撃つんだ!将軍!!」

 

「……()えぇーッ!!」

 

男性の説得を受け、将軍が発射命令を出した。大きなレバーが倒され、大砲から回転する巨大な槍が発射された!!

巨大な槍は真っ直ぐにティガレックスへと向かって行き――自由落下するシズカさんの真横スレスレを通り過ぎ――その土手っ腹に突き刺さった!!

 

「ガァッ!?」

 

一瞬怯んだティガレックス……すると、撃龍槍の根元が光り始めると、連鎖爆発を起こしてティガレックスの懐で大爆発を起こした!

すぐ近くにいたシズカさんは咄嗟に盾を構えて爆風を受けると、その勢いを利用して一気に後退。あわや地面に激突、というタイミングで再び虫を取り出しその糸にぶら下がり、難を逃れた。

 

「ふぅ」

 

「姉様ー!!」

 

「シズカー!!」

 

「……ん」

 

ぐっ、と額を拭うシズカさんの元に、ティガレックスの背中から飛び降りていたネネさんとニールさん、エイデンさんが走ってきた。シズカさんは軽い調子で手を挙げる……。

 

「バカッ!なんて無茶をするんだ!!」

 

「そうですよ姉様!危うく姉様が撃龍槍で串刺しになるところでしたよ!?」

 

「……ならなかったし、よくない?」

 

「「よく!ないっ!!」」

 

「え~……」

 

「諦めろってシズカ。あればっかりはお前が悪いと思うぞ」

 

「エイデンさんまで……」

 

ネネさんとニールさんに責められ辟易とした様子のシズカさん……と、そこへ将軍へ進言した男性が近づき、シズカさんの後頭部に拳を振り下ろした。

 

「いだっ!?」

 

「ばかもん。自分だけわかってても周りが理解できなきゃ、どんな手段だって危険行為だ。二人の心配も最もだぞ」

 

「あっ、師匠」

 

「(えっ、あの人、シズカさんのお師匠さん!?……あ、そういえばさっき"俺の弟子"とか言ってたっけ!)」

 

シズカさんのお師匠さん……お師匠さんも、今回の作戦に参加してたんだ!

 

「久しぶりだね、エイデン」

 

「その声、その防具……シュラークか!懐かしいなぁ、"錆びたクシャルダオラ"の迎撃戦以来か?」

 

「あぁ、俺の弟子が世話になったね。君は……龍歴院のハンターだったね?たしか、名前はネネ……」

 

「はぁい、お師匠さま!アタシがネネです!貴方様のお弟子さんである姉様には大変お世話になってまぁす♪」

 

「ははっ!なんだ、義兄弟の契りでも交わしたのか?いい妹分ができたじゃないか」

 

「契りなんぞ交わしてなけりゃ妹と認めたこともありません」

 

「う~ん、姉さまは今日も辛辣ぅ!!」

 

「……癖がすごい子だな」

 

……ん?ちょっとまって。作戦開始前、ドンドルマ側にあんな目立つ防具を着た人は見当たらなかった……まさか、元々バルバレ側にいたのに戦闘中にわざわざこっちまで走ってきて合流したってこと!?……お弟子さん思いの、いいお師匠さんなんだなぁ。

 

ドオォォン!

 

……と、ここで突然、ティガレックスの方向から爆発音が聞こえてきた。見るとティガレックス自体が爆発しており、全身から赤い粒子をまき散らしながらどんどんそのサイズを小さくしていった。

やがて光が収束すると、元のサイズにまで縮小したティガレックスがそこにいた。

 

「おっ?戻ったぞ?」

 

「なんだ、形態変化的なやつだったのか……?」

 

ハンター達はティガレックスが元の大きさに戻ったことで肩の力を抜いている。……普通のティガレックスの前で肩の力が抜けるって、もしかして普通のティガレックスなら狩猟は簡単?一体彼らはどれほどの実力者なのだろうか……。

 

「……将軍、あれなら……」

 

「うむ……元のサイズにまで戻ったなら捕獲も可能だろう」

 

「……将軍。龍歴院所属のハンター、ネネです。龍歴院としましては、今回のティガレックスが捕獲可能であれば可能な限り捕獲し、生態の研究を行いたい旨をお伝えします」

 

「そうか……承知した、その旨に同意しよう。ティガレックスを捕獲せよ!」

 

将軍の指示に、シズカさん、ネネさん、ニールさん、エイデンさんの四人が動き出した。何かの弾を込めるネネさんと、罠を用意するエイデンさん。ティガレックスはゆっくりと体を起こそうとしているが、その動きは明らかに精彩を欠いている。弱っているのは一目瞭然だ。

 

「……?」

 

ん?ジンオウガ?急に空を見上げてどうし――

 

「ワオオオオオオオオオン!!」

 

「……!シズカさん、待ってください!!」

 

「え?」

 

ジンオウガの警告じみた咆哮に、私も思わずシズカさんに声をかけた。ちょうど声が届いたのか、シズカさんが振り返った……その直後だ!

 

バチバチバチィッ!!

 

激しく電撃が遥か上空で迸ると、そこへ時空の裂け目が開かれた!

 

「なにっ!?」

 

「あれは……シュレイドに現れたものと同じ……!!」

 

真っ先に反応したのはエイデンさんとニールさん。特にニールさんは悔しさとも憎しみとも取れる声色を発し、時空の裂け目を見上げている。そこから四本の光が伸びていき、やがてティガレックスと結びついた!

 

「ガッ、ガッ……!ギ、ギャアアアアアアッ!?」

 

「なっ……」

 

「なにが……」

 

光の帯がティガレックスの胸元まで伸びると、ティガレックスが光に包まれた!光の中でティガレックスの姿が変化していき……やがて、光が消滅するとその姿が露わになった。

 

全身の末端部に集まった血管。

青く染まっているように見える頭部や四肢。

特に翼膜を含めた全体が不気味な印象を与えるほど鮮やかに色付いた前脚。

並々ならぬ威圧感を放つ巨大な蒼爪。

 

「ギギャア"ア"ア"ア"ンッ!!」

 

「嘘……だろ……?」

 

「姿が、変わった……」

 

「【荒鉤爪】……!」

 

「……メガ……シンカ……?」

 

傷つき疲弊しながらも、姿を変えて再び立ち上がったティガレックスは、より強烈な殺意と敵意とともに咆哮を放った……。

 

 

 

 




まだまだ終わらない、轟竜討伐作戦……果たして、作戦の成否やいかに……!


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共同戦線! 荒鉤爪VS狩人&金雷公!!

先週は個人的な都合でお休みしてしまい申し訳ありませんでした。

轟竜討伐作戦、後半戦に突入です!


推奨BGM

【牙を剥く轟竜/ティガレックス】~モンスターハンターP2/4/W/R~

【決意を胸に灯して】~モンスターハンターX~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超巨大化したティガレックスを倒し、元の大きさへと戻すことができたのもつかぬ間……今度はメガシンカしたティガレックスが立ちはだかった。

突然、目の前で姿を変えたティガレックスを前に、ハンター達は動揺を隠しきれていない。以前、アカイさんから『野生のメガシンカ個体がいる』という話は聞いたことあるけど、ここまで動揺しているってことはティガレックスとメガティガレックスは彼らの中では完全に別個体という扱いなのだろう。

思考停止といってもいいほどにハンター達の動きが止まった……だが、その中でもやはりいち早くシズカさんが再起動し、メガティガレックスに向けて走り出した!

 

「あ、シズカ!!」

 

「……っ!!」

 

シズカさんは上空へ向けて虫を飛ばし、その糸を手繰って飛び上がると槍を抜き、ブラストダッシュでさらに高度を稼ぎつつ前進した。そのままメガティガレックスの頭上を取ると、大きく槍を振り上げた。

だが、メガティガレックスもただ黙っているだけではなかった。一瞬、俯いたと思った次の瞬間、顔を上げると同時にシズカさんに向けてはかいこうせんを発射した!

 

「な――」

 

ドオオオオオンッ!!

 

シズカさんは咄嗟に盾を構えたけど、間に合ったのかはこちらからではわからない……!はかいこうせんが命中し、爆煙によってシズカさんの姿が見えなくなってしまった!

 

「シズカーッ!!」

 

「姉様ぁーっ!?」

 

「ど、どうなってんだ?ティガレックスに、あんな攻撃ってあったか!?」

 

ハンター達の動揺がより激しくなった頃、シズカさんが爆煙の中から吹っ飛ばされてきた!

 

「ぐはっ!……うっ、ぐぁ……」

 

吹っ飛んだシズカさんは受身を取れずに地面に叩きつけられ、そのまま転がってうつ伏せに倒れた。シズカさんの槍も、シズカさんよりもずっと後方に飛んで行き地面に突き刺さった。

 

「姉様!!」

 

「行くぞ、エイデン!!」

 

「あぁ!」

 

すぐさまネネさんが飛んで行き、シズカさんを助け起こした。それから遅れてニールさんとエイデンさんが走っていく。

 

「姉様!しっかり!!」

 

「……ぐっ……。く、る……!」

 

「っ」

 

シズカさんがメガティガレックスを指さすと、メガティガレックスはドラゴンのオーラを纏って突撃を開始した!あれは、ドラゴンダイブ!?

 

「止まれええぇぇぇッ!!」

 

ネネさんはシズカさんの前に躍り出た。ボウガンの弾を入れ替えて腰だめに構えると、すかさず弾丸を連射する……だが、弾丸はドラゴンオーラに阻まれてメガティガレックスに届かない……!

 

「……!弾が、届かない……!?」

 

「ギャアアアアンッ!!」

 

メガティガレックスが大きく口を開けると、身に纏ったドラゴンオーラも大口を開けた。このままじゃ……!

 

「ふんぬぅっ!!」

 

と、後方から走り込んできたニールさんがネネさんよりもさらに前に出ると、メガティガレックスの口に自身の大剣を挟み込んだ!そのまま大剣を押し込み、メガティガレックスと力比べにもつれ込んだ!

 

「ぐっ……ぐぐぐ……!うおおおおおおおおおおっ!!

 

はじめは押し込まれていたニールさんだったが、やがて勢いがなくなると完全に動きが止まった……かと思えば、今度はニールさんがメガティガレックスを押し返し始めた!?

 

「彼女には!一切!!手出しは……させないっ!!」

 

……愛の力ってスゲー。

 

「ギガッ!」

 

「ぐっ!!」

 

どんどんと押し返していったが、メガティガレックスも両前脚で踏ん張ってニールさんの快進撃を止めた!そのまま両者拮抗する……押しも押されもしない、完全な互角状態だ……!

けど、このまま膠着し続けたら、先に体力が尽きるのはニールさんかも知れない……その前に、なにか手を打たないと!

 

「そのまま抑えていろ!!」

 

「……っ!!」

 

と、そこへ誰かが飛び込んだ!あの金色の防具……シズカのお師匠さん!エイデンさんは……シズカさんを介抱している。

お師匠さんはニールさんの背中を踏み台にしてさらに高く跳躍すると、背中に背負った武器を抜いた。

ジンオウガを彷彿とさせるその武器は抜いてすぐは斧のような形状をしていたが、斧の刃がスライドすると畳み込まれた剣状の刃が姿を現し、一本の片刃の大剣になった!?

 

「はああぁっ!!」

 

「ギギャアッ!?」

 

お師匠さんはその剣をメガティガレックスの背中に思い切り突き立てた!痛みに悶絶するメガティガレックスはニールさんの大剣を口から離すと思い切り暴れ始めた!

 

「……っ。ネネ、あなたも行って……!」

 

「で、でも!姉様を置いて行くなんて、アタシには……!」

 

「……今夜同衾していいから」

 

「やってやろうじゃねえかよおおおおおおおお!!」

 

エイデンさんと一緒にシズカさんの傍にいたネネさんも、シズカさんに促されて戦線に加わった!

 

「くっ!!」

 

「そぉりゃあ!!」

 

「くたばれぇ!!」

 

メガティガレックスの背中で堪えるお師匠さん、暴れるメガティガレックスのわずかな隙も逃さず前脚に大剣を振るうニールさんに、狙った場所へ的確に弾丸を撃ち込むネネさん……すごい、これがハンターの力!!

 

「シズカ、大丈夫か?」

 

「……ふぅ。はい、なんとか。エイデンさん、すみません」

 

「気にすんなって。ほら、お前のガンランスだ」

 

「ありがとうございます。……では、行ってきます」

 

「おう!」

 

シズカさんも立ち上がり、一気に駆け出した。ちょうど、お師匠さんがメガティガレックスの背中から振り落とされる前に自ら飛び降り、武器を斧形態に戻した直後だ。

 

「ギャギャアン!」

 

メガティガレックスが両前脚を力強く地面に叩きつけると、四人に向かって岩の刃が突き立てられていった!ストーンエッジだ!!

 

「どりゃあ!」

 

「はぁ!」

 

「ズェア!」

 

「ふっ……!」

 

四人ともすごい!初見の技のはずなのに、ニールさんは大剣のひと振りでストーンエッジを破壊し、ネネさんは後退しつつ足元に打ち込んだ弾丸を爆発させて大きく後退しながらストーンエッジを破壊、お師匠さんも斧形態のひと振りでストーンエッジを破壊し、シズカさんは地面に槍を突き差した後、タイミングよく砲撃を撃ち込んで同じくストーンエッジを破壊した!

……いや、誰も避けないどころか普通に迎撃しちゃってるんだけど!?

 

「おおぉっ!!」

 

お師匠さんが仕掛けた!メガティガレックスの背後から尻尾を狙って突撃した。メガティガレックスは尻尾に水の力を纏わせたアクアテールでお師匠さんへ攻撃したが、お師匠さんは難なくアクアテールを回避し、そのまま尻尾めがけて斧を振り下ろし斬りつけた!

メガティガレックスは振り返りながら地面を豪快に抉り、岩盤と見紛うほどの平らな巨岩をお師匠さんに向けて弾き飛ばした!お師匠さんは斧を剣へと変形させると、刀身になにかエネルギーを集め始めた。その力が限界になったタイミングで飛んできた巨岩に突き込み爆発させ、巨岩を木っ端微塵に破壊した!

 

「スッゲー!」

 

「"属性解放突き"に、こんな使い方があるのか……」

 

周りのハンター達が、えらく感動した様子で話しているのが聞こえた。多分だけど、本来の用途とはかなりかけ離れた使い方、なのかな?剣は強制的に斧へと変形し、お師匠さんも武器から何かを取り出すと入れ替えて装着するような動作をとっている。

 

「こっちを忘れるな!」

 

「よそ見ばかりしてぇ!」

 

「……っ!!」

 

ニールさん、ネネさん、シズカさんも積極的にメガティガレックスへ攻撃を仕掛ける。

メガティガレックスはニールさんにメタルクローを放つが、ニールさんは力を溜めて大剣を振るうことでこれを相殺した。続いて反対の爪でブレイククローを放つが、ニールさんはこれも力を溜めた斬撃で相殺した。さらにメガティガレックスはシャドークローで畳み掛けるが、ニールさんは再び力を溜めた斬撃で相殺するばかりか、一撃目を振り下ろした勢いで一回転すると攻撃直後で動けないメガティガレックスの顔面に、思い切り斬撃を叩きつけた!!

 

「ギギャアンッ!?」

 

「これは、シズカの分だ!!」

 

メガティガレックスの顔面に傷が入り、大きく怯んだ。そこへネネさんが弾丸を撃ち込むと、メガティガレックスは突然動かなくなった!

 

「ありったけの麻痺弾、喰らっときなさい!姉様!!」

 

「!!」

 

麻痺で痺れて動けなくなったメガティガレックスに、シズカさんが迫る!メガティガレックスの右側面に回り込んでいたシズカさんは、一度槍を根元から地面に突き立てると先端が中折れして勢いよく蒸気を吹き出した。その後、虫を前方に飛ばして引き寄せられると同時にブラストダッシュで一気にメガティガレックスの右前脚に接近すると、そこへ槍を突き立てて装填されている砲弾をすべて放出した!爆発と同時にメガティガレックスの右前脚は爪が折れ翼膜にも傷が入りかなりダメージを負っていることが分かる。

 

「フルバレットファイア!決まったぞ!」

 

「調査団の青き星、ドンドルマを救った英雄、"蒼の銃槍"と"紅の軽弩"の『蒼紅姉妹』……」

 

「勝ったな、ガハハ」

 

「おいばかやめろ」

 

戦いを遠目から見守るハンター達のそんな会話が聞こえてくる。……シズカさんとネネさんって、通称がつくくらいの名コンビなんだ……すごいなぁ。

 

「グギギ……ガアアア!!」

 

メガティガレックスが力強く両前脚を地面に叩きつけると、地面が激しく揺れ始めた!これは、じしんの技だ!

 

「なにっ!?ぐっ……!」

 

「うおっとぉ……!?」

 

「きゃっ!地震……!?」

 

「……っ!」

 

激しく揺れる地面に、シズカさんたちは踏ん張りを利かせて耐えることしかできない。そこへメガティガレックスからの容赦ない追撃が迫る!

まず、メガティガレックスはネネさんに向かって走り出した。

 

「なっ――」

 

「ガアアアッ!!」

 

「ぐふっ……!」

 

地震の余波が残っているうちに突撃したメガティガレックスは、かみなりのキバでネネさんに噛み付くと、そのまま宙に放り投げて水を纏った爪で地面に思い切り叩きつけた。アクアブレイクまで使えるのか……!

 

「ネネッ!!」

 

すかさずシズカさんが動く。ブラストダッシュでティガレックスの背後に回り込み、槍を構えた。

 

「こいつを!もってけぇ!!」

 

砲弾をリロードしつつ槍を突き上げ全弾放つ。その後、火を噴き始めた槍をそのまま突き上げ激しい爆発が起こった!あれはかなり効いただろう……!

 

「ガギャアアアンッ!!」

 

「……!まだっ……あぁっ!?」

 

だが、メガティガレックスは未だ健在で、ばくおんぱでシズカさんを攻撃した!シズカさんも縦でガードして耐えていたが、足元の地面が削られて踏ん張りが利かなくなり、やがて吹っ飛ばされた。

 

「シズカ!!」

 

吹っ飛んだシズカさんを、回り込んだニールさんが受け止めた。そのまま手早くシズカさんを下ろすと、突っ込んでくるメガティガレックスの前に立ちはだかった。

 

「いつまでもやらせるとでも……!!」

 

ニールさんが大剣を構え、力を溜め始めた。タイミングを合わせて、ニールさんが大剣を振り下ろす……!

 

ガチンッ!

 

「なにっ!?」

 

だが、大剣はメガティガレックスに届かなかった。メガティガレックスの前方には、バリアーのようなものが張られている……まさか、まもる……?

 

「なんだこのバリアーは!?うわあぁっ!!」

 

「ぐうぅ……!」

 

「ガアアッ!!」

 

まさか攻撃を防がれるとは思いもよらなかったニールさんは完全に隙だらけで、メガティガレックスのだいちのちからで打ち上げられた後、アイアンヘッドで吹っ飛ばされた。その後、ついでとばかりにしねんのずつきでシズカさんも吹っ飛ばし、二人に向かってりゅうのはどうを放った!

 

「ズェエアァッ!!」

 

だが、そこへ割って入ったお師匠さん、斧のひと振りでりゅうのはどうを一刀両断すると、懐から小袋を取り出した。

 

「エイデンッ!!」

 

「おうさ!!」

 

同じように、反対側……ネネさんの近くにいるエイデンさんも同じように小袋を取り出すと、二人同時に中身をばらまいた。緑色の、健康に良さそうな粉塵が辺り一帯を包み込む……。

 

「……うぐぅ」

 

「くっ……」

 

「……師匠、助かりました……」

 

「気にするな」

 

どうやらあれは回復アイテムのようだ。シズカさん達がゆっくりと起き上がる。……あっ、マズイ!?

 

「グルルル……」

 

「……?なぁっ!?ティガレックスが!!」

 

「傷が……治っていく……!?」

 

はねやすめだ!!メガティガレックスがはねやすめで体力を回復している!!これでは、いくらダメージを与えてもキリがない……!

 

「……厄介だな。こんなティガレックスは初めてだ」

 

「妙な攻撃を使う、眠らずに体力を回復できる、デカくなったり二つ名個体に変身する……もうわけわからないな……」

 

「おや、調査団の青き星が弱音かな?現大陸では各地を飛び回る凄腕ハンターと聞いていたが……」

 

「まさか、冗談でしょう。……現大陸でも新大陸でも、見たことも聞いたこともない個体を前に、武者震いが止まらないんですよ。

次はどんな手を打ってくる?次は何をしてくる?なぜ大きくなる?なぜ変身する?調査団としての性が身に付いたみたいで、ワクワクが止まらないんです」

 

「ハッハッハ!それは、聞くのは野暮というものだったね。謝罪しよう」

 

「……あぁ、武者震いの理由はもう一つ」

 

「おや?」

 

「シズカの師匠である貴方と、こうして肩を並べている今この瞬間にも震えています。貴方のことは、彼女からよく聞いているので」

 

「それはそれは」

 

「"スパルタで弟子を狩りに連れ回し大型モンスターとタイマンさせる、パンツ一丁で古龍に挑んだまつ毛バサバサのサディスティックハンター"って」

 

「……シ~ズ~カ~?」

 

「事実じゃないですか!何も間違ったことは言ってませんけど!?」

 

「うん、嘘をつかないことは美徳ではあるけれど、それと言って良いことと悪いことの判断は別だからね?あと、俺のまつ毛はバサバサじゃない」

 

「とんだ理不尽だ!訴えてやる!!」

 

「ハンターズギルドは裁判所じゃないからねー」

 

「うがー!」

 

おぉ……あ、あのシズカさんがコロコロと表情を変えている。てっきりお兄さんの前だけだと思ってたけど、お師匠さんの前でも顔の表情が変わるんだ。

 

「…………」(#^ω^)ビキビキ

 

「……あの、ネネさん?殺意滾らせてるところ悪いけど、戦線に戻りません?」

 

「……戻りましょう」

 

一方、ネネさんは憎しみで人を殺せたら死人が出ている、と言える程の殺意でお師匠さんを凝視している。これにはエイデンさんも、年下の女性とはいえ敬語になってしまっている。

 

「おうおう、ヒヨッコ共!苦戦しているな!!」

 

「まったく、小さくなっても変な攻撃は変わらんのか」

 

と、そこへシズカさんたちへ近づく人たちがいた。あの二人……バルバレ方面部隊で特に活躍していた二人組だ!

 

「赤鬼さん、黒鬼さん」

 

「おう、ヒヨッコシズカ!そろそろ青鬼を名乗る気にはなったか?」

 

「いやです」

 

「バハハハ!俺たちに教えを乞うたその瞬間から、お前は俺たちヘルブラザーズの弟子!お前の相方と揃って"ヘヴンシスターズ"と裏で呼ばれているのを知ってるか?」

 

「いや、知りませんしネネは相方ちゃいますけど……誰ですかそれを広めたのは。竜撃砲でぶっ飛ばします」

 

「ドハハハ!俺だ!!」

 

「……オマエノシワザダタノカー」

 

「ヘルブラザーズ……お二人も、手を貸して下さるので?」

 

「お前がヒヨッコシズカの師匠か。あぁ、あれはどう見たって普通のティガレックスじゃねぇ。寝る以外に能動的に回復手段を持っているだけではなく、見たことのない攻撃に形態変化……若い者の活躍を眺めるのもまた、先達の役割かと思って遠巻きに見ていたが、もはや見ているだけでは我慢ならんくてな!」

 

「赤鬼がすっかりこんな調子でな……かくいう俺も、あのティガレックスと一戦交えたくてウズウズしていたのだ!狩りの際には四人までが鉄則だが……この際だ!四の五の言ってる場合じゃあねえだろう!」

 

「ありがたい……かの有名なヘルブラザーズのお力、存分に頼らせていただきますよ」

 

あの二人も参戦するのか……よしっ!

 

「ギギャアアアッ!!」

 

「……っと!奴さんはもう我慢の限界みたいだぜ!!」

 

「赤鬼殿は片手剣、黒鬼殿はハンマーか……それぞれ役割を果たすとしましょう!」

 

「前線は私が張ります」

 

「ドハハハ!ヒヨッコシズカだけに任せられんわ!」

 

「赤鬼さん、よろしくお願いします」

 

「ガアアアア!!」

 

メガティガレックスが、ドラゴンダイブで再び突撃する……させるか!!

 

「ジンオウガ!」

 

「ワオン!」

 

私とジンオウガも、事前にメガティガレックスの前に回り込んでいたのだ!ジンオウガから飛び降りるとともに、私はメガリングに手を当てた!

 

「目には目を、歯に歯を……ポケモンにはポケモンを、メガシンカにはメガシンカを!!」

 

「ワン!」

 

「ジンオウガ、メガシンカ!!」

 

「ウ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ンッ!!」

 

私もジンオウガを【金雷公】へとメガシンカさせ、メガティガレックスに対抗する!

 

「へぇ……」

 

「ジ、ジンオウガまで姿が変わった!?」

 

「(やっべメガシンカできるとかなんも聞いとらんかった。……あとで説教ね)」

 

「ほぅ……あの腕輪に何かあるのだな?」

 

「間違いないな、黒鬼。あの腕輪から光が伸びて、ジンオウガの姿が変わったぞ!」

 

メガシンカを見られるのはマズイかと思ったけど、メガティガレックスが思ったよりもずっと強敵だったから、ここは私たちも力を貸さないと!!

 

「ワイルドボルト!!」

 

「ウオオォンッ!!」

 

メガティガレックスのドラゴンダイブとメガジンオウガのワイルドボルトがぶつかり合い、激しくせめぎ合う!やがて激しい爆発が起こり、爆煙から二体が同時に飛び出した。

 

「大丈夫?ジンオウガ」

 

「ワン!」

 

「よし……シズカさん、私も参戦します!!」

 

「……よろしいですね、師匠?」

 

「あぁ。……見せて貰おうか。モンスターの頭脳たるトレーナーの実力とやらを!」

 

良かった、私たちの参戦も認めてもらえたみたいだ!

 

「まぁ見せてもらうだけだと情けないので、このまま戦線に加わります」

 

「モンスターとの共闘か……上手くやれるか?」

 

「自信ないならやめますか?ニールさん?」

 

「まさか!君が行くと言うのに、俺が行かないわけにはいかないだろ?」

 

「心強いです」

 

「弟子にばかり見せ場と取られちゃ、師匠としてかっこ悪いな」

 

「姉様姉様!ネネ、ただ今合流しましたー!!」

 

「シュラーク!やっとこっちまで来れたぜ」

 

ネネさんとエイデンさんも加わった!これでハンター七人+ジンオウガという強力チームの完成だ!

 

「先手はいただく!」

 

「俺たちに任せとけ!」

 

「「ドハハハハハ!/バハハハハハ!」」

 

先に突撃を始めたのは、お互いに色違いの防具を着た二人組だ。……あの二人、私の両親よりも歳上に見えるけど、大丈夫かな……?

 

「心配しているなら、無用だとだけ伝えておく」

 

「シズカさん?」

 

「あの二人は黒鬼と赤鬼……通称、ヘルブラザーズ。たしかに四十路に入った古参ハンターだけど、あの年齢でそれぞれが古龍を単騎で討伐できるほどの実力者よ」

 

「すごい……!」

 

「それはそれとしてメガシンカの件だけど……後で覚えてろよ?

 

「アッハイ」

 

し、しまった……メガシンカが出来るって話、し忘れてたか……。なんか、すっかり話したつもりになってしまっていたようで、シズカさんから恨めしげな目を向けられた……コワイ。

 

「ガギャアアアアッ!!」

 

メガティガレックスが空に向かって大きく吠えた……その直後、空から大量の星が降ってきた!りゅうせいぐんか!そうはさせない……!!」

 

「ジンオウガ!10まんボルト!!」

 

「ウオオオンッ!!」

 

メガジンオウガが全身から電撃を放ち、突撃するヘルブラザーズの二人に直撃しそうな流星だけを撃ち落とす!

 

「やるなぁ!ありがたいぜ!!」

 

「いくぞおおおおっ!!」

 

まず赤鬼さんが仕掛けた!大きく回転しながら周囲を薙ぎ払うように、片手剣を振るいメガティガレックスを斬りつけた。さらにそこからすかさず片手剣で斬りつけると、盾でメガティガレックスの顔面目掛けて盾を突き上げた!

 

「ギギャッ!?」

 

「まだまだぁ!」

 

「こちらからも行くぞ!!」

 

突き上げた勢いで飛び上がった赤鬼さんはそのまま落下の勢いを利用してメガティガレックスを切り裂く!

続けてハンマーを構えた黒鬼さんが攻撃を仕掛ける。赤鬼さんが避けた後にその穴を埋めるように突撃した黒鬼さんはハンマーを横方向へすごい勢いで体ごと回転し、メガティガレックスの顔面を連続で殴ったあと、その勢いのままアッパーのように振り上げた一撃でメガティガレックスが大きく転倒した!

 

「せっかくだ、もう片方の爪もお揃いにしてやろう!!」

 

そう言うやいなや、黒鬼さんは未だ健在の方の爪へ回り込むとハンマーを縦回転させながら連続で叩き、遠心力で強力になった一撃を最後に振り下ろして反対側の爪も破壊した!

あ、あの人たち本当に四十路なの!?

 

「続くぞ!」

 

「了解!」

 

「よっしゃ!」

 

「!!」

 

「援護します!」

 

シズカさんたちも一気に突撃し、メガティガレックスへ肉薄する!なんとか起き上がったメガティガレックスは……ギガインパクトを使うつもりか!その前に、こちらからも仕掛ける!

 

「ジンオウガ、はどうだん!!」

 

「ワオン!」

 

「ギギャ!?」

 

今まさにギガインパクトを発動しようとしたメガティガレックスだったが、直前にはどうだんを受けたことで技が中断された。さらに攻める!

 

「畳み掛けろ!ごうらいちょうだん!!」

 

「ウオオオオンッ!!」

 

メガティガレックスが体勢を立て直す前に!走り出したメガジンオウガはハンター達を飛び越えるほどの大跳躍でメガティガレックスの上を取ると、そのまま体勢を入れ替えて背中からメガティガレックスを押しつぶす!!

 

「ギャアアアアンッ!?」

 

「同時に仕掛けるぞ、ニールくん!」

 

「いいですとも!」

 

メガジンオウガが飛び退くと同時に、左右からニールさんとお師匠さんが同時攻撃を仕掛けた!

 

「行くぞ……【獣宿し】!!」

 

「仕掛ける……!」

 

ニールさんはメガティガレックスを斬りつけると、自身はそのまま赤いオーラを纏った。お師匠さんは斧を激しく振り回すと、立て続けにメガティガレックスを斬りつけていく!

 

「合わせろ!」

 

「応っ!」

 

「剣鬼形態、起動!!」

 

お師匠さんが声掛けをすると、ニールさんは大剣を構えて力を溜め始める。一方でお師匠さんは斧を振り回しながら形態を剣へ変形すると、剣が激しく蒸気を吹き出し始めた!かと思えば、蒸気が収まると同時に剣が激しく閃光を纏い始め、先程よりもかなり強力化した印象へと変わった!

さらにお師匠さんが連続で斬りつけると、そのまま刃をメガティガレックスへと突き込んだ!

 

「ありったけの!属性解放突きだ!!」

 

「一撃両断!震怒竜怨斬ッ!!」

 

「ギギャアアア!?」

 

お師匠さんの一撃と、ニールさんの一撃が同時に決まった!!大きく怯んだメガティガレックス……そこへエイデンさんがさらに斬り込む!!

 

「そらっ!そらっ!そらぁっ!!」

 

まるで独楽のように回転しつつも方向転換し、メガティガレックスの全身をくまなく傷つけていく!

 

「エイデン!」

 

「おうさっ!」

 

ニールさんが声掛けすると同時に大剣を地面に斜めに突き刺し体で支えると、エイデンさんはその大剣を足場に飛び上がると回転しながらメガティガレックスを斬りつけた!

 

「おらあぁっ!天翔空破断っ!!」

 

エイデンさんの強力な追撃に、メガティガレックスはたまらずバックステップで退避した。そのまま体をゆっくりと、伏せるような姿勢に持っていく。はねやすめか!そうはさせない!!

 

「ジンオウガ!かみなり!!」

 

「ウオオオオッ!!」

 

「ガアアッ!?」

 

休む体勢になったメガティガレックスが避けられるはずもなく、かみなりは直撃!!はねやすめは中断された!!

 

「ラピッドヘブン!今のアタシはトリガーハッピーよ!!」

 

そこへすかさず、ネネさんが弾丸を高速連射する!すごい……射線がまったくブレない!!全く同じ箇所へ、何発も弾丸を撃ち込み続けている!

 

「叩き潰す……!!」

 

シズカさんがなにか準備をしている……!

勢いよく地面を掻くように槍を擦り付けると、砲身が熱されたのか赤く染まっている。さらにシズカさんはあの青い炎をやり先から灯すと、その炎を内部に封じ込めるように力強くリロードした。

 

「……!」

 

「……!」

 

一瞬、私とシズカさんの目が合った。それだけで、私自身何をすればいいのか、シズカさんが何をしたいのか、わかったような気がする。

ならば、その勘に従うのみ!!

 

「ジンオウガ!奥義装填!!」

 

「ワオン!」

 

「せんしょうらいせん!!」

 

「ウオオオオオオオオオンッ!!」

 

「……!!ギャアアアンッ!?」

 

ネネさんの高速連射に気を取られたメガティガレックスが、こちらに気付いて振り返るが……もう遅い!尖衝雷閃によって角を突き込まれたメガティガレックスは、そのままシズカさんの下まで一気に運ばれていく!!

 

「……覇山竜撃砲ッ!!」

 

目と鼻の先にまで迫ったタイミングで、シズカさんが球体と見紛うほどの獄炎を纏う砲撃を放った!!メガジンオウガの奥義とシズカさんの砲撃に挟まれる形になったメガティガレックスには大ダメージだ!!

 

「ギギャアアアアアッ!?」

 

ドカアアアァァァンッ!!

 

激しい大爆発が起こり、爆煙からメガジンオウガとシズカさんが同時に飛び出した。もくもくと上がる煙が晴れると、そこにはしっかりと両足で立つメガティガレックスの姿があった。

 

「……!!」

 

「まだ……!」

 

「グルルル……ギャアアアンッ!!」

 

メガティガレックスが口元にエネルギーを集め始めた。まだはかいこうせんを撃つだけの元気が……!

 

「……ガ、ガ……ァ……」

 

ズゥン……

 

……と、思ったら。エネルギーは消滅し、メガティガレックスは倒れ伏した。メガシンカも解除され、元のティガレックスへと姿が戻った。さらに上空に発生していた時空の裂け目も閉じられ、マゼンタ色の空も元の青空へと戻った。

 

「…………」

 

ジンオウガがゆっくりとティガレックスに近づき、鼻先でティガレックスの顔を小突いた。だが、ティガレックスに反応はない。ジンオウガがこちらに振り返り頷いたので、私も近づいていった。ちょうどシズカさんも近づいてきたので、一緒に確認をする。

 

「……気絶してるだけ、ですね。瀕死状態です」

 

「そっか……ネネ!」

 

「はいっ!!」

 

シズカさんもティガレックスの様子を確認すると、ネネさんを呼びつけた。呼ばれたネネさんは、土煙を巻き上げるほどの爆速でこちらに来た。……人間ってあんな速さで走れるのか。

 

「ティガレックスは瀕死状態で気絶してる。麻酔弾を」

 

「はいっ」

 

ネネさんが弾を込めると、私はシズカさんに促されて距離を取る。ネネさんがティガレックスの顔面に弾を二発ほど撃ち込むと赤っぽい粉塵が炸裂し、ティガレックスの呼吸が寝息のそれに変化した。

麻酔……それじゃあ、ティガレックスは……!

 

「姉様、完了です」

 

「ん。……ティガレックス、捕獲しました!!」

 

シズカさんが声を張り上げると、一瞬の静寂。そして――

 

 

――ウオオオオオオオッ!!

 

 

歓声の大爆発が巻き起こった!

 

 

「やったぜニール!」

 

「あぁ!」

 

「ドハハハハ!俺達にかかればこんなもんよ!!」

 

「バハハハハ!所詮はティガレックス、やはり大したことはなかったな!」

 

「……やれやれ、弟子の成長を見るだけのつもりだったんだがなぁ」

 

ハンター達は互いに互いの健闘を称え合い、作戦完了を改めて実感している。複数の騎士とともに大きな荷台を引き連れ、将軍もこちらまで来てくれた。

 

「シズカくん、ネネくん。ご苦労であった」

 

「将軍も、お疲れ様でした」

 

「約定通り、捕獲したティガレックスは龍歴院に引き渡そう。荷台はこちらで用意した、使ってほしい」

 

「龍歴院を代表して、将軍に感謝を」

 

「此度のティガレックスは、まこと奇っ怪な技を多用することから特殊個体として認定されるだろう。多種多様な属性や技を駆使する姿……さしずめ、"ティガレックス技巧種"といったところか」

 

「技巧……たしかに、"技"の扱いは"巧"かったですね」

 

「ふふっ……龍歴院の皆が、血眼になって究明する様が目に浮かびますわ」

 

将軍はしばらくシズカさんとネネさんと話したあと、私の方へと振り返った。

 

「ショウくん。今回の作戦、君たちトレーナー諸君の力添えもあってこそ成し得たことだ。作戦総責任者として、礼を言わせて欲しい」

 

「あ、頭を上げてください!むしろハンターの皆さんが頑張ったというか……」

 

「たしかにハンター諸君の頑張りも当然、評価されてしかるべきだ。だが、我々は誰もがこう考えている。"トレーナーが力を貸してくれてよかった"、と。

だからこそ、こうして礼を述べているのだ。謙遜する必要はない。君たちの助力は、間違いなく無駄ではなかった」

 

「あ……あ、ありがとうございます……!」

 

将軍は穏やかな笑みを浮かべて私たちトレーナーを賞賛してくれた。……うん、素直に嬉しい。私たちもちゃんと、力になれたんだな……!

 

「さぁ、諸君!帰還するとしようっ!!」

 

将軍の言葉に全員が一層大きな歓声を上げ、バルバレが近い人たちはバルバレ側へ、私たちはドンドルマ側へと帰還していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大化とメガシンカ……二つの形態を見せたティガレックスの討伐作戦が無事に終了し、その日はハンターズギルドが奮発して大宴会となった。ドンドルマ、バルバレでそれぞれ開催されているらしく、ドンドルマ側に帰還した私たちももれなく宴会の中心人物となった。

私たちは宴会が始まるやいなや、それはもうたくさんのハンター達にもみくちゃにされた。「すごかった」「助かった」「ありがとう」などなど、たくさんの言葉をもらいながら私やテル先輩は子供ということもあって頭を撫で繰り回され、セキさんたち大人組はがっちり握手をして対応していた。

なお、会場の外ではジンオウガたちも労われており、それぞれ好物となるお肉や魚、植物などを与えられてご満悦の様子だった。……唯一、メス二体に挟まれて口移しを強要されていたリオレウスは今にも死にそうな顔で食事が進んでなかったけど、大丈夫かな。

 

ハンター達からの称賛の嵐が一段落したところで、私たちは丸テーブルに集まって座っていた。もちろん、シズカさんも一緒だ。シズカさんも一緒ということは当然ネネさんも一緒で、シズカさんのお師匠さんのシュラークさん、ニールさんとエイデンさんも同席している。

 

「さて……トレーナーの皆には俺の弟子がお世話になったみたいだね」

 

「いえいえ!むしろこちらがお世話してもらってばかりで、シズカさんには頭が上がらないです」

 

「あははあ、随分と礼儀正しい子だなぁ。同じくらいの頃のシズカは……丁寧というか、慇懃無礼って感じかな?言葉も態度も丁寧だけど妙に壁を作っててね、今くらいに懐いてもらうまですっかり時間がかかったもんだ」

 

「しっ、師匠っ!昔の話はしないでください!あの頃の私は……そう、自棄になってただけなんです!」

 

「その自棄糞な死にたがりを、真っ当なハンターになるまで育てたのは俺だぞ?」

 

「その節は大変お世話になりました本当にありがとうございます!」

 

おぉ……シズカさんが顔を真っ赤にして照れてる。……ポケモンの進化と同じで、シズカさんも懐くと表情がコロコロ変わって進化するのだろうか。

 

「そうそう、昔のシズカって本当に無茶ばかりしてたんだ。怪我で動けなくなったケルビをナルガクルガから守るために、終日耐えきろうとしていたんだから。その頃のシズカはまだ下位ハンターで、防具もボロボロで全身傷だらけなのに一歩も退こうとしないでさ」

 

「あっ、その話、俺も聞いたぜ!ニールがたまたま通りがからなかったら、マジで危なかったって話だろ?」

 

「あぁ。そして、俺とシズカの初めての出会いが、その時のことだったんだ」

 

「うぅ、ニールさんまで私の昔語りを……!」

 

ニールさんとシズカさんの馴れ初め……どうやら小型の草食種を大型の飛竜種から守るために身を呈していたところ、通りすがりのニールさんが助けに入ったことで事なきを得たらしい。

 

「あの時は酷いこと言って、ごめんな」

 

「いえ、お気になさらず。傍から見れば事実でしょうし」

 

「姉様!この男になにか言われたんですか!?」

 

「え?いや、『君にはハンター向いてないよ』って言われただけだけど」

 

「はぁ!?」

 

「いや、誤解!誤解だから!!」

 

どうやらニールさんは言葉足らずなことがたまにあるらしく、正確には「"モンスターの命を見捨てられないくらい優しい"君にはハンター向いてないよ」と言おうとしたらしい。

ただ、シズカさんも結構ギリギリで切羽詰っていた状況だったために、言葉足らずで伝えてしまったらしい。そして、シズカさんも売り言葉に買い言葉というか、「知っとるわボケ(意訳)」と返してしまい、初対面はお互い険悪な印象しか残らなかったんだとか。

 

「けど、それから度々クエストを一緒することがあってね」

 

「お互いへの誤解も解けましたし、今だって文通するくらいには友人同士ですよ」

 

「ゆ、友人……うん、そうだな!」

 

……ニールさん、強く生きて……。

 

「えっと……ネネさんはシズカさんとどうやって知り――」

 

「よくぞ聞いてくださいました!」

 

まだ喋ってる途中なんだけど……。

 

「アタシが姉様と知り合う前に、アタシのことを軽く話しとかないとね」

 

そう言って、ネネさんは自分語りを始めた。

 

「自分で言うのもなんだけど……ハンターになりたてのアタシって、結構最低な部類に入るハンターだったのよね」

 

昔のネネさんは他人に便乗してクエストの報酬をもらう……所謂『寄生ハンター』というやつで、あざとい性格や可憐な容姿を利用してそれはもう楽なことしかしてこなかったらしい。

当然、何もしなかったらしなかったで批難殺到は必至……なので、当時『操虫棍』という武器を使っていたネネさんは猟虫を的確な位置に飛ばしてモンスターの気を逸らす囮役をやっていたらしい。

そうして楽に楽を重ねて上位ハンターになったネネさんは、男性二人組に便乗してババコンガというモンスターの亜種を狩猟するクエストに臨んだ。

 

「いやぁ、もしも今のアタシがその場にいたら、当時の自分をぶん殴ってたかもしれないわ。今となっては姉様と出会えるきっかけになったから、良かったけどね」

 

そのクエストの最中、突然"怒り喰らうイビルジョー"が乱入してきてババコンガ亜種を殺害してしまったらしい。さらにイビルジョーの標的がネネさんたちに向くやいなや、男二人組はネネさんを置いて我先に逃げ出したそうだ。置いて行かれたネネさんは恐怖で動けなくなり、イビルジョーはネネさんに襲いかかろうとした、その時だ。

 

「その時だったわ。……姉様がブラストダッシュで、イビルジョーの横っ面に体当りしたのよ」

 

当時のシズカさんの状況は、ニールさんとの出会いの時より凄惨だったらしい。全身の傷はもとより、盾は四分の一が欠けた状態で槍も罅割れ今にも折れそうな状態だったらしい。それでも、シズカさんはネネさんを守るために体を張ってイビルジョーに攻撃した。

それからは、シズカさんとイビルジョーの一騎打ちへ。……あれ?そういえば……。

 

「シズカさん、リュウセイくんを逃がすために戦ったイビルジョーって……」

 

「あー……うん、実は今話に出てるソイツ。いきなりエリア移動したから何事かと思って、嫌な予感に従って追撃したら、ネネがいたってわけ」

 

「姉様……アタシの危機を察知して……!これはもう、運命――」

 

「偶然」

 

「あぅ……姉様、手厳しい……」

 

ネネさんの語りはまだまだ続く。シズカさんはいつ倒れてもおかしくないくらい疲労困憊だったし、武器も防具もボロボロで勝ち目はない。それでも、シズカさんはネネさんに逃げるよう促しつつ、イビルジョーと戦い続けていた。

 

「でもね、アタシ思ったのよ。……『ここで逃げたら、ハンター辞めるなんて比じゃないくらい後悔する』って。だから、アタシは姉様を援護することにしたの」

 

猟虫を飛ばし、イビルジョーの気を逸らすネネさん。その隙を突いて、的確に攻撃を放つシズカさん……初めて出会うばかりか、会話すらしていないのに息ピッタリの連携を見せるふたりに、イビルジョーはかなり苛立ったらしく……龍属性のブレスを構えたのだ。

しかし、そこでシズカさんも賭けに出た。イビルジョーの懐に飛び込むと、今日の狩りの最中に見せた大技『覇山竜撃砲』でイビルジョーが放つ龍属性ブレスと相殺してみせたのだ。

激しい爆発とともに派手に吹っ飛ぶ両者。この時点でシズカさんは重症で、盾は木っ端微塵に吹き飛び槍は半ばから折れてしまったらしい。先に立ち上がったイビルジョーに、ネネさんがすかさず閃光玉を投げて目くらましをすると、すぐさまシズカさんを抱き上げてベースキャンプへ逃げ帰ったそうな。

 

「いやぁ、あの時は死ぬかと思ったわ。……主に姉様が」

 

「半日もぶっ続けで"怒り喰らうイビルジョー"と戦い続けるからだ、誰がそんな無茶をしろなんて教えた?」

 

「シズカ……命がいくつあっても足りないぞ?いや、真面目に」

 

「……ごめんなさい」

 

ベースキャンプへ戻ったネネさんだったが、同行者の男性二人に責められたらしい。というのも、クエストを受注したのはネネさんで、その時に受付嬢さんから説明を受けていたはずなのだが……どうやらネネさんは話を聞き流していたようで、"怒り喰らうイビルジョー"の情報が抜けていたらしい。

だが、そこでシズカさんが動いた。ババコンガ亜種が"怒り喰らうイビルジョー"によって殺害済み……即ち、「狩猟自体は完了したのだからとっとと帰れ」と男性二人を先に帰し、自身はそのままベースキャンプでネネさんにお説教を始めた。

 

「アタシね、本当にバカだった。そのお説教の時にね、アタシと姉様が同じハンターランクの上位ハンターだって知ったの。

……何もかも違ったわ。身奇麗なままのアタシと、武器も防具も何もかもボロボロで血と泥で汚れた姉様……同じランクのハンターなのに、こんなにも違った。しかも他力本願で上位に上がったアタシと違って、姉様はずっとソロだった。

自分が情けなかったわ。恥ずかしすぎて、"死んでしまいたい"って思った。でもね、ハンターを諦めそうになったアタシに、姉様は言ったの」

 

――……待ってるから――

 

「『あなたが一端のハンターとして、ちゃんと私と比肩出来るようになるまで待ってるから』……姉様はそう言ってくれたの。まぁ、その直後に限界が来てぶっ倒れちゃったんだけど。

けど、おかげで目が覚めたの!それからアタシは本気でハンターの道を目指したわ。下位クエストでモンスターの動きをおさらいして、上位クエストで再びリベンジしたわ。その前に姉様から『AIM力が凄いし、ボウガン持てば?』って言われてたから武器を変えたんだけど、もうアタシにぴったりだったのよ!!

ハンターズギルドからの頼みで龍歴院に派遣ってなったときは、正直驚いたけどね。まぁ、当時のアタシの実力なんて新人に毛が生えた程度だったし、実際のランクなんてどうでもよかったのかもね」

 

「シズカさん……」

 

「スゲェやシズカさん」

 

「やっぱアンタは最高だな、シズカ」

 

「シズカさんかっこいい!同じ女性として憧れるよ!」

 

「他者からこのように語られるというのは、本当にすごいことですよ」

 

「や、やめてよもう……!」

 

すっかり顔を赤くしたシズカさんは、目の前にあるスープをぐいっ、と煽る。

 

「あちっ」

 

直後、器を戻して舌を出すシズカさん。猫舌……あれ、なんか急にこの人が可愛く思えてきた。

 

「ほら、猫舌なんだから無理に飲もうとするなって。はい、氷」

 

「ひゃい……」

 

出された舌の上にそっ、と氷を乗せてあげるシュラークさん……師弟というより、まるで親子……?

 

「<●><●>」

 

「ネネさん、顔顔」

 

ネネさんが、女性がしてはいけないような顔でガン見してる……コワイ!

 

 

夜は更けていき、時間とともに宴会は賑やかさを増す。私たちも最後まで、この宴会を楽しむのでした。

 

 

 

 




ティガレックス狩猟完了、クエストクリアです!


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這い寄る悪意は狂える竜と共に

ちょっとポケモン成分が不足してきたので、ここらで充電タイムと行きましょう


巨大化とメガシンカ、二つの力を使いこなすティガレックスを撃破・捕獲し、夜通し宴会でどんちゃん騒ぎとなったドンドルマ。宴は深夜を周り、日付をまたいでも衰え知らずとばかりに盛り上がり、お開きとなったのは日付が替わって二時間ほどしてからだった。

ハンター達は宿でそれぞれ眠りにつき、私たちも同じく眠りについていた。現在、ヒスイ女子部屋には私たちの他にシズカさんとネネさんも部屋で寝ている。これには理由があり、どうやらメガティガレックスとの戦闘中、シズカさんの介抱をしていて参戦を渋っていたネネさんをやる気にさせるため、シズカさんがネネさんに同衾を申し出たそうだ。……それでネネさん、あんなにやる気満々だったのか。

ただ、そこはシズカさん。寝る直前になって私たちとの同室を申し出てきたのであった。これにはネネさんも不平不満を垂らすも、「別に"二人きりで"とは一言も言っていない」と自身の発言すら逆手に取るように発したシズカさんの言葉にはぐうの寝も出ず、ネネさんも渋々了承した。……汚いな、流石シズカさん汚い。さらにダメ押しとばかりにシズカさんはシロちゃんを抱き枕にするようにして眠ってしまったのだ。私が思わずそこまでするのか、と尋ねると……

 

『二人きりで寝た日には私が喰われる』

 

と、死んだコイキングのような目でボソリと呟かれた。……本当にご苦労様です。

結果、ただでさえ三人でも持て余していた広さのベッドに五人で並んで寝ることに。……シロちゃんを抱き枕にするシズカさんを抱き枕にして寝るネネさん……いや、あなたもそこまでするか。

そうして眠っていたのだが、私はいまいち寝付けなかった。ふと、目が覚めては心臓にそっと手を当てる。こちらの世界に来てからは、心臓が痛みを訴えることは減っている……だが逆に言えば、いつまたあの痛みが襲って来るのかわからない。そのことが潜在的な恐怖心となって、私を不眠状態にしているのかもしれない。

 

「……外の空気でも吸おう」

 

私は隣で寝るカイさんとシロちゃんを起こさないようにそっとベッドから降りた。そのまま静かに部屋を出て、宿の廊下を歩く。呪いを解くための鍵は、歌姫と滅龍石とシロちゃん。三つのうち二つの鍵は揃っている。あとはどこで滅龍石を確保するか……。

 

「ままならないな……」

 

ぼんやりと考えながら、一旦宿の外へ出る。見上げれば星空が広がっており、数多の星たちが輝きを放ち自らの存在を主張している。

 

「(綺麗……そういえば宇宙からやってきた、なんてポケモンもいるって言ってたっけ)」

 

他愛のないことを考えながら、少しばかり心が落ち着いてきたので宿へ引き返す。するとちょうど私と同じように宿から出てきた人がいた。

背丈は私と同じくらいで、その顔はどこかアカイさんに似ている。ただ、アカイさんと違って全身真っ黒な衣装に身を包んでいる。

宿泊客かな……シロちゃんやアカイさんの親族だろうか。そう思いながら会釈とともにすれ違った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終活は順調かい?ポケモントレーナー」

 

「!?!?!?!?」

 

すれ違いざまに呟かれたその言葉に、思わず振り返った。すると相手側も同じく振り返っており、その口元には滲み出る悪意を隠そうともしない邪悪な笑みが浮かんでいる。どういうことだ、とこちらが尋ねる前に、少年はその場から走り出した!

 

「待てっ!!」

 

私は迷わず追いかけた。少年はそのままドンドルマの門を抜けていき、森の中へと走っていく。ティガレックス討伐作戦成功直後ともあって、警備は最小限にされている。そのため、誰も少年を止める者がいないのだ。

私は少年を見失った。しかし、直後にポケモンの鳴き声が聞こえそちらへ顔を向けると、森丘で見たイャンクックそっくりの紫のポケモンに乗って飛んでいく姿が見えた。

 

「ガブリアス!!」

 

「ガブッ!」

 

私はすぐにガブリアスを繰り出し、その背に乗り込み追いかけた。少年の行く先には、先程まで狩場であった遺跡平原が見える。

しばらく逃避行を続ける少年だったが、遺跡平原に近づいたあたりでポケモンの背から飛び降りた。かなりの高所だったにも関わらずなんなく着地を決めると、悠々とした様子でこちらを見上げている。……降りてこいってことか。私はガブリアスに合図を出し、地上へと降りていった。

 

「よぉ」

 

「どうも」

 

私がガブリアスの背から降りるのを待ってから、少年は声をかけてきた。私は最後まで警戒心を解かず、少年の呼びかけに応えた。

 

「いやぁ、驚いたね。まさかこれほど素直についてくるとは思わなかったぜ。無謀にも程があんだろ、冷静に見えてその実、熱血系だったのか?」

 

「うるさい。さっきの言葉はどういう意味?どうして私がポケモントレーナーだと?」

 

「はっは、そう急くなよ。まぁ、そっちは悠長になんてしてらんねぇだろうし、寛大な俺様が貴様の問いに答えてやろう」

 

まるで役者のような気取った言い回しをする少年。一体何者……?

 

「さっきの言葉か……まあ、言葉通りだよ。余命幾ばくもない可哀想な貴様が、死の直前までどのように生きるのだろうかと気になってね。何をするかと思えば無駄なことばかりするものだから、ちょっとしたお手伝いをしてやろうかと思ったのだ」

 

「お手伝い……?」

 

「そうそう、お手伝い。……俺様が、今すぐ、貴様を楽にしてやろう

 

ぶわっ!と音が聞こえそうな勢いで、殺気を叩きつけられた。こいつは、一体……!

 

「俺様は……そうだなぁ、貴様の傍にシロって女がいるだろう?それと同類だと思え」

 

「シロちゃんの同類……?」

 

ブフッ!し、シロちゃん……ゴホンッ!まぁ、そうだ。シロという女と通じている龍がミラルーツなら……俺様が通じているのは、黒龍ミラボレアスだ」

 

「!!」

 

「そうだ!貴様に呪いをかけ、貴様の死を今か今かと首を長くして待ち望む、あの黒き龍だ!待ちくたびれたので直接殺しに来てやったぞ!!」

 

ミラボレアス……!私の呪いをかけた龍!!そのミラボレアスと繋がっている人間が、私を直接消しに来たってこと!?

 

「(たしかアイツらそう言ってたよな……?なんでこんな面倒くさい設定を……わざわざ人間に扮してまで……)」

 

「……つまり、あなたは黒龍ミラボレアスの代弁者、というわけね」

 

「……ん?あぁ、そうだ。そんなとこだ」

 

「だったらミラボレアスに伝えなさい。……私は絶対に死なない。生きて生きて、最後の最後まで生き足掻いてみせると!!」

 

「……後悔するぞ」

 

そう言うと、代弁者は懐から何かを取り出した。あれは、金属製のモンスターボール……!!

 

「さて、紹介がまだだったな。特に名乗る気もないので、俺様のことは適当に『クロノ』とでも呼べ。あのアカイと似たような理由だ、察しろ。

黒龍の意思の代弁者として、黒龍の望みを代行する。黒龍の望みは貴様の死。貴様が最も得意とするものでかかってこい。俺様も貴様と同じ土俵に立ち、その上で完膚なきまでに叩き潰して貴様の命を摘み取ってやる!」

 

「ならば、ポケモンバトルで!!」

 

「いいだろう!!今ならば古龍観測隊の気球も飛んでいない、一切の遠慮なくかかってくるがいい!!」

 

私もモンスターボールを取り出し構える。クロノも同じようにボールを構え、同時にポケモンを繰り出した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【戦闘!四天王】~ポケットモンスターB/W~

【戦闘!四天王】~ポケットモンスターOR/AS~

【戦闘!四天王】~ポケットモンスターS/M~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い!ミミロップ!!」

 

「撃ち抜け!ブロスター!!」

 

「ミッミィー!」

 

「ショットー!」

 

私はミミロップを繰り出し、クロノはブロスターを繰り出した!

 

「臨機応変、縦横無尽の狙撃手。千変万化の弾丸が活路を開く。時に地に座し、攻防の拠点と化す。不動の巨砲は天の竜をも撃ち落とす。俺様のブロスターを、そこらのブロスターと一緒にするなよ」

 

「ブロロ……!」

 

ブロスター……特性の力ではどう技が強いんだっけ。お父さんのメガカメックスと同じだ。けど、はどう技が強いのは、私のミミロップだって同じ!!

 

「あくのはどう!」

 

「ミミィ!!」

 

「アクアジェットで回避だ!」

 

「ショット!」

 

ミミロップが放ったあくのはどうは、ギリギリまで引きつけてからのアクアジェットで回避された!ブロスター、意外と速い……!

 

「りゅうのはどう!」

 

「こっちもりゅうのはどう!」

 

「ロスター!!」

 

「ミミミー!!」

 

ブロスターのりゅうのはどうと、ミミロップのりゅうのはどう……力は互角だ!爆煙で一瞬だが視界が失われる……。

 

「突っ込め!アクアジェット!!」

 

「ブロロロ!」

 

「ミミロップ、波導探知!」

 

「ミミ!」

 

爆煙に紛れて接近するつもりだろうけど……こっちは波導に長けたミミロップ!波導を探れば、そっちの動きはお見通しだ!

 

「はどうだん!!」

 

「……!ミミロー!!」

 

「ッ!?ブローッ!!」

 

「なんとぉ!?」

 

ブロスターの動きを完璧に見切ったミミロップ!タイミングを合わせてはどうだんを直接ブロスターの土手っ腹に叩き込んだ!吹っ飛びつつも体勢を立て直し、ブロスターは腕のハサミを構えている!

 

「みずのはどう!」

 

「シュート!」

 

「ミッ!」

 

これは当たってしまったが、ミミロップはまだまだ元気だ!さぁ、次は……。

 

「……ッ。ブ、ロロロ……」

 

と、次の技を考えている最中に、突然ブロスターが倒れ込んでしまった!まさか、戦闘不能?けど、一撃だなんておかしい……さっきのブロスターは、まだまだ余裕がありそうだったのに……。

 

「クックック……遂に来たか」

 

「来た……って、なにが?」

 

「まぁ、見てなって」

 

クロノがブロスターを示すと……ブロスターの様子がおかしくなっている!口元から紫色の瘴気のようなものが溢れ始めたかと思うと、次の瞬間には紫色の光を発して立ち上がった!

 

「b……b……brrrrooooooo!!

 

ブロスターは全身が紫がかった色合いに変化し、さらに目は赤く光り血走っていて口元から紫の霧が吐息として吐き出されている……な、なにあれ……!?

 

「なに、これ……!?」

 

「ミ、ミミ……?」

 

私もミミロップも戸惑いが隠せず固まってしまった。対してクロノは歓喜に満ちた笑みを浮かべていた。

 

「ハッハッハッハッハ!!見たか!これが『狂竜化』だ!!」

 

「きょ、きょうりゅうか……?」

 

「クックック……貴様に教えてやる義理などないが、無知のまま死んでは可哀想だ、冥土の土産に教えてやろう。

狂竜化とは、とある龍が放つ特殊な鱗粉、『狂竜ウイルス』を摂取した生物が発する特殊な病『狂竜症』……その狂竜症の症状がさらに進行したモンスターが見せる形態変化!己の命を削りながらも力を高め、さらに他の状態異常になることがない!

さらに接触した相手に狂竜症を発症させることができる!接触によって狂竜症を発症した生物は攻撃を当て続けなければその症状を克服することができず、攻撃しなければ力を失う!克服すれば絶大な力を瞬間的に得られるが、ボールに引っ込めても直すことができるぞ」

 

状態異常の狂竜症……さらに狂竜症が深刻化した狂竜化!クロノのブロスターは狂竜化状態になっている……ブロスター、あんなにも苦しそうなのにクロノのやつは嗤っている……なんてやつだ!

 

「ブロスター、苦しそうじゃない!早くボールに……!」

 

「無駄だ!俺様のポケモンたちは全員が狂竜化済みだ。そして!狂竜化は狂竜症とは違い瀕死になるまで治ることはない!残りはブロスターだけだったのだが……戦闘中に狂竜化すれば御の字だったが、間に合ったようだ。ティガレックスもいい時間稼ぎをしてくれたよ」

 

「……!!まさか、あの巨大なティガレックスは……!」

 

「そのとおり!俺様の狂竜化チーム構築のための時間稼ぎのため、黒龍がその力で変化させたのだ!ありがたい話だよなぁ!」

 

「ふざけるなっ!!命をなんだと思っているんだ!!」

 

「命なんてどうせいつかは死ぬのだ、遅いか早いかの違いになにをそこまで憤る?」

 

「狂ってる……!!」

 

こいつは……ウォロ以上にタチが悪い!!こいつを、クロノをこのままにしておくわけには行かない!!

 

「あなたは……お前は、私が止める!」

 

「ミッミー!!」

 

「やれるものならやってみろ!ブロスター、アクアジェットォ!!」

 

「ブロオオオォォッ!!」

 

ブロスターのアクアジェット……さっきまでよりもずっと速くなってる!?

 

「ミミロップ近づけないで!はどうだん!!」

 

「ミミロォ!」

 

ミミロップもはどうだんを放つが、物凄い速さで動くブロスターははどうだんを次々と避けていく……必中技のはどうだんが追いつけないなんて……!!

 

「りゅうのはどう!」

 

「ショットォッ!!」

 

「受け止めろ!」

 

「ミッ!」

 

いつかのシロちゃんとの勝負のように、ブロスターの波導を受け止める!……なにっ!

 

「ミ……ミミィッ……!」

 

ジリジリと、ミミロップが押し込まれている……な、なんて火力とパワーなの、これは!?

 

「ダメ、ミミロップ!受け流して!!」

 

「ミミッ!」

 

「隙ありぃ!アクアジェット!!」

 

「ブロロロ!!」

 

「ミッ……!!」

 

なんとかりゅうのはどうを受け流せたけど、その後隙を突かれてアクアジェットをぶつけられた!アクアジェットを受けたミミロップは、体が紫の霧に包まれている……あれが狂竜症!

たしか、攻撃を当て続けて克服すると、状態異常が回復するだけでなく強化にも繋がるって説明してたっけ……それなら!

 

「攻撃を続けてミミロップ!あくのはどう!!」

 

「ミミミィ!」

 

「そう簡単に当てさせるものかよ!はどうだん!!」

 

「ショット!!」

 

ミミロップが放ったあくのはどうは、しかしブロスターのはどうだんに打ち消された!しまった、あく技とかくとう技、タイプ相性の差が出たか!

 

「こっちもはどうだんだ!」

 

「ミィ!!」

 

「フハハ!アクアジェット!!」

 

「ブロロー!!」

 

なんとかはどうだんで相殺したけど、ブロスターがまたアクアジェットで突っ込んでくる!

でも大丈夫……ミミロップにはミミロップにしかできない戦いがある!

 

「ミミロップ、波導探知!!(引きつけて、あくのはどうで目くらましするよ)」

 

「……!ミィ!!」

 

「ハッ、馬鹿の一つ覚えか?もうその手は見切っている!ブロスター!!」

 

「ブロロロロ!!」

 

ブロスターが先程よりも速く複雑な動きをする。あれはフェイント……おそらく、攻撃のタイミングをずらしてくるはず。波導はブロスターの動きや居場所を探知できても、行動までは予測できない。だから最接近したタイミングで別の動きをするはずだ。

でもね……それくらい、私だって予測できてるよ!!ブロスターがミミロップに近づいてきた……今だ!!

 

「ブロスター!みずのはどうだ!!」

 

「ショット!」

 

ミミロップに接近してきたその時、ブロスターは足元にみずのはどうを撃ってその勢いで飛び上がり、ミミロップの頭上を取った。だが甘い!

 

「ミミロップ!!」

 

「ミミィ!!」

 

事前に波導を通じて指示したとおり、ミミロップは足元にあくのはどうを放った!地面に衝突して爆発したことで煙が広がり、ブロスターの視界を遮る!!

 

「なにっ!?」

 

「今だ!はどう技、フルコース!!全弾叩き込めぇ!!」

 

「ミミロオォー!!」

 

「ブ、ブロロー!?」

 

「ブロスター!!」

 

みずのはどう、あくのはどう、りゅうのはどう、はどうだん。すべてのはどう技を連続で放つ!その全てがブロスターに直撃し、ブロスターは戦闘不能になった!!

 

「チッ、やってくれたな……戻れ」

 

「ミミロップ、一旦戻って」

 

「ミ」

 

狂竜症は手持ちに戻しても治るそうだから、一度ミミロップをボールに戻す。さて、次は……。

 

「ライチュウ!」

 

「ラアアアアァイッ!チュウウウウゥッ!!」

 

私の二番手はライチュウ!極み個体となったライチュウなら、誰が相手だろうと対等に戦える!!

 

「フンッ、例の極み個体か。面白い、その力存分に見せてもらうとしよう。俺様の二番手はコイツだ!!」

 

そう言ってクロノが繰り出したのは……白いカモネギ?

 

「ネギガナイト!」

 

「ギャモゥッ!!」

 

「ねぎがないと」

 

ネギガナイト……?いや、待って、聞いたことないんだけど?カモネギに進化系なんていたっけ!?

 

「クックック……どうやら初見のようだな?残念だが俺様が自分の手持ちについて貴様に教えてやることは何一つとしてない!」

 

くそっ……私がわかるポケモンは、大体お父さんが捕まえたというポケモンだ。全国津々浦々を巡るお父さんは、当然だが別地方にしかいないポケモンを捕まえて連れて帰ってくることが多い。……私がアルセウスに呼ばれる前は、アローラ地方を旅してる途中だったっけ。

おっといけない、話が逸れた。よくよく見ればネギガナイトもどこか紫っぽい体色をしており、目は赤く輝き口からはブロスターと同じく紫の霧が漏れている。

 

「見たことないポケモンだけど、気を引き締めていこう、ライチュウ」

 

「ラアアアアアアアイ!!」

 

「ふん、意気込みは良し。だが相手が――」

 

「でんこうせっか!!」

 

「ラァイ!!」

 

「オイ!」

 

相手がなんか喋ってるけど、こちとらアンタのような人間相手に気遣えるほど出来た人間じゃないんで!容赦なくでんこうせっかを叩き込む!!

光の速さでカッ飛んでいったライチュウ……だが、ネギガナイトは左手に持つ盾で冷静にライチュウを受け止めた!?

 

「クックックック……堅固なる大盾に守られし、天を衝く巨槍。強撃を退け、反撃の牙を突き立てる!ネギガナイト、じごくづき!!」

 

「ギャアモッ!!」

 

「ラ"ッ!?」

 

ネギガナイトは盾でライチュウを弾くと、喉元に鋭く突きを放った!喉を思い切り槍のように長大なネギでどつかれたライチュウは、喉元を抑えてえずいている!

 

「ライッ……ライッ……!」

 

「ライチュウ……!」

 

「ぶっ飛ばせ!スターアサルト!!」

 

「ギャアアアモオゥ!!」

 

「ラァーイ……!!」

 

「ライチュウ!?」

 

ネギを真っ直ぐに構えたネギガナイトは、そのまま猛然とライチュウ目掛けてネギを突き立てた!ライチュウは派手に吹っ飛ばされたけど、なんとか受身を取って地面で跳ねるとそのまま着地を決めた!

 

「ライチュウ、大丈夫?」

 

「ライライライ!!」

 

ライチュウは平気そうだけど、ネギガナイトに接触されたことで狂竜症を発症している……なんとか克服して、体勢を立て直さないと!!

 

「ライチュウ、10まんボルト!!」

 

「ラアアァイ、チュウウゥ!!」

 

「ネギガナイト、ぶんまわせ!!」

 

「ギャモッ!」

 

……?スターアサルトを放った直後のネギガナイト、動きが鈍ってた……まさか、反動で動けなくなる技か?だとしたら、反撃の手が遅れたのは痛い。ライチュウの10まんボルトは、ネギをぶんまわした勢いで次々と撃ち落とされている……だが!

 

「アイアンテール!!」

 

「ラアァイチュウウ!!」

 

ライチュウは勢いよく突撃し、ネギガナイトを攪乱するように動き回る!ネギガナイトもライチュウの動きを追いかけようと必死になっている。

途中、すれ違い様にしっぽをぶつけていくライチュウだが、これはネギガナイトの反射神経がいいのか上手いこと盾で受け流されている。強い……これも、狂竜化による影響なの……?

 

「ぶんまわす!」

 

「ギャモォ!!」

 

「ライッ……!」

 

何度目かのタイミングでクロノから指示が飛んだ!タイミングよくネギをぶんまわしたことで、ライチュウがネギにぶつかってしまった。ただ、ライチュウもネギにしがみつくことで吹っ飛ばされないようにしている!

 

「ライチュウ!ネギの上に!」

 

「ライライ!」

 

「……っ!!」

 

ライチュウは体勢を立て直してネギの上に乗り移った!ネギガナイトも思わず動きを止めてしまう……今だ!

 

「10まんボルト!!」

 

「ラアアァイ、チュウウゥ!!」

 

「ギャモッ……!!」

 

ネギガナイトは咄嗟に盾を構えるが、電気は盾を通してネギガナイト本人に直撃!これは効いている!!

 

「えぇい、スターアサルトだ!!」

 

「ギャアモオォォウ!!」

 

再びあの突進が迫って来る……けど!

 

「ライチュウ、でんこうせっか!!」

 

「ラァイ!」

 

「バカめが、真っ向から挑むつもりか!!」

 

クロノがなにか叫んでいるけど……残念ながら、私たちは脳筋じゃないんでね!ライチュウとネギガナイトの距離が詰まってきた……今!!

 

「今だ!アイアンテール!!」

 

「ラァイチュウ!!」

 

ライチュウはその場で小さく跳ねつつ前転し、尻尾を縦に振り回す。その結果!

 

「なにぃっ!?」

 

「ギャモッ!?」

 

ライチュウのアイアンテールはネギガナイトのネギの穂先を叩き、ネギは地面に突き刺さった!かなり深く刺さったのか、ネギガナイトが抜こうと必死になっている!!

 

「これなら……!」

 

「ラララァイ!」

 

と、ここで突然、ライチュウの全身から青いオーラが立ち上り始めた。これは……。

 

「チッ!克服されたか!」

 

「……ッ!!ライチュウ、ボルテッカー!!」

 

「ラァイ!ラァイライライライライ……チュウウゥ!!」

 

「ギャモォッ……!!」

 

ネギガナイトが盾で攻撃を防ごうとするが、ライチュウは防御の上からネギガナイトを吹っ飛ばした!!

仰向けに倒れ込んだネギガナイトは動かない……戦闘不能だ!

 

「……ふん、どうやらそこそこやるようだ。準備運動にはちょうどいいってことか」

 

「降参するなら、今のうちだけど?」

 

「抜かせ、ボケが。降参という名の命乞いをするのはそちらのほうだ。さぁ、でてこい!」

 

クロノ、三体目のポケモン……え?

 

「ポ、ポケモン……?」

 

「ポケモンだ、どう見てもポケモンだろうが」

 

「カモネギやネギガナイトもそうだけど、本体とは別に武装するって最近じゃ流行りなの?」

 

「デカヌチャンのなにが気に入らんのだ!!」

 

「カヌ……」

 

「(そして名前よ)」

 

クロノの三体目のポケモンは、全体的にピンク色で、ふわっふわの髪にむっちりした肌質、極めつけは自身よりも巨大なでっかいハンマーである。名前はデカヌチャン……らしい。

 

「(あの見た目ではがねタイプじゃなかったら詐欺だよね……)」

 

「さぁて、覚悟はいいか?こちらは出来ている!」

 

「カヌァ!!」

 

「いくよ、ライチュウ!でんこうせっか!!」

 

「ラァイ!」

 

あれだけデカいハンマーを持ってるんだ、きっと動きは鈍いはず――

 

「デカハンマー」

 

「カンヌゥウアアアァァァッ!!」

 

「ラ"」

 

クロノが指示を出すと、デカヌチャンは咆哮と共にハンマーを振り上げ、突っ込んできたライチュウにタイミングを合わせて的確に振り下ろしてきた!!その衝撃で地面がひび割れ隆起し、ちいさなクレーターが出来上がった……!

 

「ら、ライチュウ……!!」

 

「……らぁ~い……」

 

ライチュウはうつ伏せで倒れており、動ける様子ではない……戦闘不能にされちゃった……。

 

「戻って、ライチュウ……!」

 

「ハァーッハッハッハ!どうだ!見たか!?これがデカヌチャンのみに許された最強のはがね技、デカハンマーだ!!」

 

「フゥー……フゥー……」

 

「……まぁ、かなりパワーを使うのでな、連発できないのが欠点だ」

 

たしかにデカハンマー使用直後のデカヌチャンはそれだけで肩で息をしている。相当全力で振ってるんだろうな……。

だが、語るに落ちたなクロノ。はがね技が専用技ということは、デカヌチャンのタイプがはがねタイプであることはほとんど確定のようなものだ!

 

「地を砕く一撃は魂すらも揺るがし震わす。デカハンマーは全てを巻き込み粉砕する。この一撃に耐えられるポケモンが、貴様の手持ちにはいるかな?」

 

「なんの、まだ一体やられただけだ!ガブリアス!!」

 

「ガブアァ!!」

 

向こうがはがねタイプなら、こっちはじめんタイプで戦う!最近のガブリアスは極み化した影響なのか、それまでは覚えられなかったいろんな技をたくさん覚えるようになった。今もベストな技の組み合わせを模索中……このバトルも、その糧にさせてもらう!

 

「ドラゴンクロー!!」

 

「ガブァ!」

 

「フッ……」

 

ガブリアスが一気に突撃し、ドラゴンクローを叩き込む!……だが、デカヌチャンはまるで動じない……これは……!!

 

「まさか、効いてない!?」

 

「アイスハンマー!!」

 

「カンヌィ!!」

 

「ガバアァ!?」

 

「ガブリアス!!」

 

反撃のアイスハンマーが直撃!ガブリアスには四倍で、効果は抜群だ!さらに直接攻撃を受けたことで狂竜症に……くそっ、厄介だなぁ……!!

あのドラゴンクローに対する反応……ダメージは全くなさそうだったし、まさかフェアリータイプ……?はがねとフェアリーの複合だなんて、なんて面倒な……!

 

「ガブリアス、じしんだ!」

 

「ガアアァブッ!!」

 

「カ、カヌゥ……!」

 

ガブリアスのじしん攻撃!はがねタイプのデカヌチャンには効果は抜群だ!

 

「デカヌチャン!ジャンプだ!!」

 

「カンナァ!」

 

「跳んだ!?」

 

なんと、デカヌチャンは力いっぱい地面をハンマーで叩くと、その衝撃を利用して飛び上がった!まさか、そんな回避方法があるとは!!

 

「デカハンマー!!」

 

「カンヌゥウアアアァァァッ!!」

 

「ドラゴンクローで迎え撃て!!」

 

「ガッブアアアアァッ!!」

 

高所からの重みが乗ったデカハンマーの一撃と、龍属性を纏わせたドラゴンクローがぶつかり合う!実力は……完全に拮抗している!

 

「カヌヌヌヌ……!!」

 

「ガブブブブ……!!」

 

「アイスハンマー!」

 

「メタルクロー!」

 

一度弾かれ、地面に着地したデカヌチャンは氷を纏わせたハンマーでガブリアスにもう攻撃を仕掛けてきた!対するガブリアスも、タイプ相性で有利なはがね技で、こおり技を迎撃する!

激しく打ち合う両者……それにしても、自分よりも明らかに大きく重そうなハンマーをあんなにも軽々と扱うなんて、デカヌチャンって結構パワータイプなのだろうか。

激しい打ち合いの末、一度距離を取る両者。さて、次の手は……!

 

「デカヌチャン、ストーンエッジだ!」

 

「カヌゥ!」

 

突然、デカヌチャンは自身の周りにストーンエッジを放ち始めた。何をする気……?

 

「よしっ、ぶんまわす攻撃!岩の刃を、片っ端から打ち飛ばせ!!」

 

「カヌア!!」

 

デカヌチャンがハンマーをぶん回すと、ハンマーは次々とストーンエッジを破壊し、その破片をガブリアスに向けて飛ばしてきた。咄嗟に顔を守るガブリアス……マズイ、あれは明確な隙になる!

 

「今だ!デカハンマーを叩き込め!!」

 

「カンヌゥウアアアァァァッ!!」

 

……だが、そちらがデカハンマーを決め技にしていることは、こっちもとっくに理解している!

 

「ガブリアス!解き放て、龍風圧!!」

 

「ガブアアアアア!!」

 

ガブリアスの全身から、激しい暴風が吹き荒れる!その暴風は接近してきたデカヌチャンを抑えるどころか、そのまま押し返し始めた!デカヌチャンはハンマーを使って体を支えているけれど……こんどはそちらが隙だらけだ!!

 

「いっけぇ!アクアブレイク!!」

 

「ガアァブッ!!」

 

「チィィィィッ!デカハンマーだ!かならずぶち込め!!」

 

「カヌアアアア!!」

 

デカハンマーとアクアブレイクがぶつかり合い、大爆発が起きた!!ガブリアスは……!

 

「ガブッ……!」

 

よかった……かなりダメージを受けたようだけど、なんとか無事だ。デカヌチャンは……。

 

「カ……カナァ……」

 

よっし!戦闘不能!!

 

「ほぉ……ここまでやるとはな。存外、楽しくなってきたぜ。そうだ、物はひとつ相談と行こう」

 

「相談……?」

 

「あぁ、そうだ。……俺様に勝てたら、黒龍に貴様の呪いについて話をつけてやろう。どうだ?」

 

「はぁ?」

 

何を、今更……そんな話、信じられるか!

 

「フッ、信じられないって顔だな?無論、俺様は黒龍の代弁者……黒龍の願いは我が願い、成就するのは当然よ。だが、このポケモンバトル……なかなかに楽しいではないか。

貴様以外が相手では、これほど盛り上がれるとも思えん。叶うならば、俺様は今後も貴様とバトルをしてみたいと思っている。……どうだ?」

 

「…………」

 

奴の言葉が真実であれ嘘であれ、黒龍と直接相対する機会がもらえるのはありがたい。ここはひとまず、乗っかっておくことにするか……。

 

「……わかったわ」

 

「よしっ、交渉成立だな。さぁ、俺様の四体目を出すぞ!オノノクスだ!!」

 

「オノオオォウッ!!」

 

オノノクス……!たしか、以前シロちゃんも使っていたポケモンだ。あの時は、一撃必殺技の不意打ちを食らってガブリアスが倒されちゃったんだっけ……。

 

「グルルル……」

 

ほら、ガブリアスもあの時の敗北を思い出して頭に血が上っている。……デカヌチャン戦でのダメージも大きいし、ここはひとまず下げておこう。狂竜症も回復するしね。

 

「ガブリアス、戻って」

 

「ガブ……」

 

「よしっ……ミミロップ!!」

 

「ミミィ!!」

 

ガブリアスを引っ込めて、ミミロップに交代!ミミロップのはどう技なら、オノノクスの弱点もしっかり突くことができる!

 

「時に進撃の重斧となり、時に必殺の鋭剣となる。鋭き剣圧を威力に換え、重斧をもってこれを放つ。柔剛併せ持つ我がオノノクスの斬撃の前にひれ伏すがいい!!」

 

「行くよ、ミミロップ。私たちは、絶対に勝つ!!」

 

「オノオォ!!」

 

「ミミミィ!!」

 

勝負はまだまだこれからだ!!

 

 

 

 




ひとまずはここまで。
次回後半で一気に決着まで行きます!

さて、ここで登場した狂竜症をポケモン風に解説!

状態異常:きょうりゅうしょう(狂竜症)
説明:味方と相手で効果が変わる
味方:いのちのたま+他の状態異常にならない
敵:接触すると狂竜症に罹る。
攻撃できなかった場合、次のターンの間だけ"効果は抜群"の威力が下がる(2倍、4倍にかかわらず全て等倍になる)。攻撃を当てると威力が戻る。
攻撃を当てると確率で回復+次のターン急所確定。当て続けることで確立上昇。

クロノの手持ちは次回の後書きにて。……ただ、使用ポケモンについてはクロノのセリフにあるとおりモンハンのアレがモチーフになっています。すると残り二体も絞り込めるかも?



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恐れよ、暴威を振るうは貪食の竜

タイトルで察したそこのあなた……そうです!クロノの手持ちには、あの古龍級生物がいます!


いきなり私の目の前に現れたアカイさんそっくりの少年、クロノ。黒龍ミラボレアスの代弁者だと名乗る彼を追ってドンドルマを飛び出した私は、遺跡平原手前の草原で彼とポケモン勝負をしていた。クロノ曰く、「勝負に勝てばミラボレアスへ便宜を図ってやる」とのことだが……罠の可能性は高いが、今の私には断るという選択を取れる余裕はないので話に乗ることにした。

クロノが使う一部のポケモンは私が聞いたことも見たこともない新種のポケモンで、タイプ相性を探るのに苦労した。さらにクロノは『狂竜化』、『狂竜症』という状態異常でこちらを猛然と攻め立ててくる。未知のポケモンに未知の状態異常……二つの不確定要素が恐ろしく噛み合い、私の極みポケモンの一体であるライチュウが倒されてしまった。

だが、クロノも既にブロスター、ネギガナイト、デカヌチャンの三体を失っている。クロノの四体目のオノノクスに対し、私はミミロップを繰り出した。

 

「ふんっ、いつまでのその勢いが続くと思うなよ!オノノクス、サイコカッター!」

 

「オノッ!オノォ!」

 

「あくのはどうで迎撃!」

 

「ミミミィ!!」

 

オノノクスが顎斧から飛ばしてきたサイコカッターを、あくのはどうで撃ち落とす!エスパータイプにあくタイプは効果は抜群だから、サイコカッターを打ち破れる!

予想通りあくのはどうはサイコカッターを破壊して真っ直ぐオノノクスに飛んでいき命中した!

 

「オノッ……!」

 

「ちぃっ、生意気な……ドラゴンクロー!!」

 

「オノオ!」

 

「りゅうのはどう!」

 

「ミミッ、ロォ!!」

 

ドラゴンクローを展開して突っ込んでくるオノノクス。苦手なドラゴン技で迎撃しようと思いりゅうのはどうを指示したけど、オノノクスはその竜爪でりゅうのはどうを切り裂くと、一息でミミロップの懐に飛び込んできた!

 

「ミィッ!!」

 

「ミミロップ!」

 

「畳み掛けろ!インファイトォ!!」

 

「オォッ!ノオォッ!!」

 

「波導を集めて迎撃して!!」

 

「ミッ……ミィ!!」

 

ドラゴンクローが直撃したミミロップに、追い打ちのインファイトが迫る。ミミロップは指示通り両手両足に波導を集めると、それらを駆使した体術でオノノクスのインファイトをいなし始める。

顎斧、両手両足、更には尻尾と使える部位をすべて使って連撃を仕掛けてくるオノノクスを、ミミロップは必死に捌き続ける。

 

「アイアンヘッドだ!!」

 

「オノゥ!!」

 

「ミッ……!?」

 

だが、ここで流れが変わってしまった。クロノの指示で繰り出されたアイアンヘッドはミミロップの顔面を強かに打ち付け、ミミロップが大きく怯んでしまった!

 

「今だ!ドラゴンクロー!!」

 

「オォノオオッ!!」

 

「ミィーッ!?」

 

「ミミロップッ!!」

 

再びドラゴンクローが直撃し、ミミロップは大きく吹き飛ばされ倒れこんだ。……ダメだ、完全に戦闘不能にされてしまった……。

 

「ミミロップは戦闘不能だな!」

 

「……そうね、戻ってミミロップ」

 

「ハッハッハッハァ!やはり俺様に勝とうなど、土台無理な話だったのだ!」

 

「勝負はまだついてないよ。行けっ、ガブリアス!!」

 

「ガブァア!!」

 

私の手持ちは巨大ポケモンであるジンオウガとリオレウスを除くと実質四体しかいない。ミミロップが倒れたことで、お互いに手持ちを半分失った状態になった……つまり、数字だけで見ると互角の勝負をしていると言える。

 

「さっきのバトルで弱っているその竜も、すぐに叩き潰してやる!ドラゴンクロー!!」

 

「オノォ!!」

 

「ガブリアス、ドラゴンクロー!!」

 

「ガッブアアァ!!」

 

オノノクスとガブリアス、双方のドラゴンクローの応酬が始まる。ただ、ガブリアスはデカヌチャン戦でのダメージがあるので、なるべく被弾は避けたいところ……さて、どう出るべきか……!

 

「オノノクス!斧だ!!」

 

「オノークス!」

 

クロノが指示を出すと、オノノクスは両手に集められたドラゴンエネルギーを顎斧に添えると、そのままエネルギーが斧に移った!

 

「どうだ!オノノクスの顎斧を十全に発揮する最高の技、名づけて『斧竜の剣斧』だ!!」

 

「やる……!」

 

「さぁ、もう一度ドラゴンクロー!顎斧と両爪による四連撃、受けるがいい!!」

 

「オノオォォ!!」

 

「ガブリアス!奥義装填!!」

 

「ガブアア!!」

 

流石に体力が減っているガブリアスだと、あのコンボの突破は難しいかもしれない……だからここは、出し惜しみなしで一気にケリをつける!!

龍風圧を纏ったガブリアスが、天高く飛んでいく。そのまま天空から星のようにオノノクスへめがけて突撃する!!

 

「アブソリュートドラゴンストーム!!」

 

「斧竜の剣斧!!」

 

「ガブアアアアアッ!!」

 

「オノオオオオオッ!!」

 

両者の技同士が激突し、大爆発が起こった。最初に煙の中から飛び出したのはガブリアス。肩で息をしているが、健在だ。対してオノノクスは……。

 

「オ……オォ……」

 

「オノノクス……!」

 

「オノノクス、戦闘不能ね」

 

「くそぉ……」

 

悔しさを滲ませながら、クロノはオノノクスをボールに戻す。

……さっきの激突、かなり無理をさせたかもしれない。ガブリアスは次が限界だろう……。

 

「……閃く双刃より放たれる、無数の斬撃。鬼人の力を纏いて、瞬速を得ん」

 

「……?」

 

「さぁ、貴様の出番だァ!!」

 

クロノが五体目のポケモンを繰り出した。

出てきたのは青紫色の甲冑に身を包んだ黒騎士のような凛々しい出で立ちのポケモン。腕は肘から先が剣のようになっていて、剣の根元や後頭部は炎のように揺らめいている。ほとんど人間と遜色ない姿に、私は思わず動揺してしまった。

……うん、かっこいいなぁ、って。

 

「怨念宿りし呪いの鎧、身に纏うは非情なる剣!ソウブレイズ!!」

 

「…………」

 

「ソウブレイズ……」

 

また私が知らないポケモン……クロノめ、いったいどこからこんなポケモンを……?

 

「ガブリアス……」

 

「ガブッ!」

 

「……!そう、わかったわ。最後まで頑張ろう!」

 

「ガッバァ!」

 

ガブリアスは継戦の意思を示した。自分が限界に近いことを察している……だから、なるべくソウブレイズの情報を引き出そうということなのだろう。私は彼の意を汲んで、あえて続投した。

 

「さぁ、行くぞ!シャドークロー!」

 

「レイッ!」

 

「ドラゴンクロー!」

 

「ガブッ!」

 

ソウブレイズの影の力と、ガブリアスの竜の力が互いに激しくぶつかり合い、剣劇を繰り広げた。ガブリアスは限界までソウブレイズから技を引き出そうとしている……頑張って、ガブリアス……!

 

「ちっ、まだ粘るのか……ニトロチャージ!!」

 

「ブレァ!」

 

ニトロチャージ!ほのお技が使えるのか!体の一部が炎のように揺らめいているのも、きっと偶然ではないはず……ほのおタイプの可能性が高くなった。

ニトロチャージはガブリアスに命中した。ダメージそのものは大したことはないけど、問題は追加効果。段階的に加速していくニトロチャージは、連発されると厄介だ……!

 

「アクアブレイク!!」

 

「ガアァブッ!!」

 

「躱せ!」

 

「レイ!」

 

……っ!ニトロチャージですばやさが上がったために、攻撃を回避された……!

 

「シャドークロー!!」

 

「レイァ!!」

 

「ガブァ……!」

 

「ガブリアスッ!!」

 

ソウブレイズのシャドークローが直撃し、ガブリアスが倒れてしまった……!

 

「戻って、ガブリアス……!」

 

「ふぅ……ようやく、その忌々しい竜を片付けられたか。生意気にも龍風圧を操るとは、鋼龍が知ったらどんな顔をするやら……」

 

「スゥー……ハァー……よしっ、ダイケンキ!!」

 

「…………」

 

私の最愛の相棒、ダイケンキ。残り二体のポケモンも、ダイケンキで勝つ!

 

「ハッ!そいつも諸共に叩き斬ってやる!!やれ、ソウブレイズ!」

 

「レイ……」

 

「ダイケンキ、絶対に勝つよ。私たちは、絶対に死んでなんかやらない!!」

 

「……!」

 

「ニトロチャージ!!」

 

「つばめがえし!!」

 

ソウブレイズがニトロチャージで突撃し、ダイケンキもアシガタナを抜刀して斬りかかる!一度ぶつかりあった両者はしばらく鍔迫り合いになった末に一度距離をとった。

 

「かわらわり!」

 

「レイッ」

 

「シェルブレード!」

 

「!!」

 

目にも止まらない高速の斬撃の応酬が繰り広げられている!ダイケンキは後ろ両脚で立ち上がり、ソウブレイズのかわらわりを迎撃し、シェルブレードで斬りつける!対するソウブレイズもシェルブレードを最小限の動きで回避しつつ、無駄のない動きでかわらわりを放ってくる。

極みダイケンキについてこれるなんて、なんてポケモンなの……!接近戦にかなりの自信があるのね!……だがっ!!

 

「ひけん・ちえなみ!!」

 

「ッ!!」

 

「レァ……!」

 

ダイケンキの太刀筋は、常に誰よりも一歩先を行く!!

ひけん・ちえなみが命中したソウブレイズはかなりダメージを負ったように見える。あくタイプに弱い……?エスパーには見えないから、ゴーストタイプ……?見た目のほのおっぽさが本当なら、シャンデラと同じほのお・ゴーストの複合タイプということになる。

確認のためにも、みず技を確実に当てないと!

 

「むねんのつるぎだ!!」

 

「レイズッ!」

 

「ルッ……」

 

「ダイケンキ!」

 

炎のようなエネルギーを纏った斬撃が、ダイケンキを襲った!幸いにしてダメージは少ないようだが……むねんのつるぎを使ったソウブレイズの傷が、わずかに癒えている……」

 

「まさか、吸収技……!」

 

「ほぅ。流石、察しがいいな。むねんのつるぎは、斬りつけた相手から生体エネルギーを吸収し、自身の体力を回復する技だ!」

 

「(けど、ダメージが少ないところを見るに、技のタイプはダイケンキのみず・あくに対して通りが悪いタイプと見た。ソウブレイズの見た目からして、ほのおかゴーストか……)」

 

「かわらわりだ!」

 

「レァ!」

 

「(……っと、考察は後だ!)ダイケンキ、つばめがえし!」

 

「……!」

 

かくとう技のかわらわりには、ひこう技のつばめがえしをぶつける!ソウブレイズはニトロチャージで得た素早さで攪乱しようとするが、素早さが速いだけじゃダイケンキからは逃れられないよ!

案の定、動きを見切ったダイケンキはソウブレイズのかわらわりを弾き返し、つばめがえしをヒットさせた。ここだ!

 

「シェルブレード!」

 

「……ッ!!」

 

「レアァッ!!」

 

シェルブレードが命中し、ソウブレイズは大ダメージを負って大きく吹っ飛ばされた。あの反応は間違いなく、効果抜群のそれ!これは予想通り、ほのおとゴーストの複合タイプの可能性が高い!効果抜群技が急所に当たる気分はどうかしら!?

だが、簡単には膝をつくつもりはないらしく、ソウブレイズはクールに見える相貌を歪ませてダイケンキを睨みつけている。

 

「えぇい、ニトロチャージだ!」

 

「ブレアアァ!!」

 

さらに加速を重ねながら、ソウブレイズはダイケンキの隙を伺おうと周囲を駆け抜けている。

 

「ダイケンキ、シェルブレード」

 

「…………」

 

ダイケンキは一度手に持ったアシガタナを鞘に収め、静かに目を閉じた。

 

「かわらわりだ!」

 

「ブレイィズ!!」

 

ソウブレイズがダイケンキの背後から迫ってきた……今だ!

 

「斬っ!!」

 

「シャアッ!!」

 

振り向きつつ抜刀、いあいぎりの要領ですれ違いざまにソウブレイズを斬る!ソウブレイズの腕は最後まで振り下ろされることなく、ダイケンキの横を通り抜けるとそのままうつぶせに倒れ込んだ。

 

「なぁっ……!?」

 

「……また、つまらぬものを斬ってしまった……」

 

「ルシャ……」

 

「オイコラッ!おちょくってんじゃねーぞテメェ!!戻れ、ソウブレイズ!」

 

さて、クロノもこれで残りの手持ちが一匹……さぁ、最後のポケモンは……?

 

「巻き起こす斬打の旋風。あらゆる状況を柔軟に捌き、勝機へ導く。

こいつで決着をつけてやる……ギルガルド!!」

 

「ギルッ」

 

出てきたのは剣と盾が一対となったポケモン、ギルガルド。たしか他所の地方のチャンピオンが使ってたポケモンって、お母さんが言ってたっけ。攻防一体のフォルムチェンジを使いこなすポケモンで、型に嵌ればめちゃくちゃ強いんだとか。

……せっかちなおじさんがお母さんに「お前が直接装備したほうが強くね?」って言ってから秒でアームロックされていたのを思い出した。たしかギルガルドは人を操ったり生気を吸い取ったりすることができるんだっけ。そりゃあ、そんなものを直接持てとか言われたらさすがに怒るよ……。

ただ変だな……お母さんが見てた録画映像に出ていたギルガルドは金色っぽい色合いだったのに、クロノが繰り出したギルガルドは黒をベースとして盾部分の線が黄色に、刃の部分に赤が入った姿をしている。あんな色いたっけ……?

 

「さて……戦るか」

 

「それが六匹目ね?なら、これが最後の戦いね」

 

「最後?あぁ、そうだな……貴様の、最期という意味でならな!」

 

そう言うやいなや、クロノは一歩前に出ると、叫んだ。

 

「ギルガルド!合体!!」

 

「ギルルル!!」

 

「え、合体?」

 

突然のことにこちらが困惑していると、ギルガルドは盾に収まった状態から抜刀状態に移行した後、自身の盾をクロノの右手に持たせて本体である剣は触手のような腕を左腕に巻きつけつつクロノが本体を左手で掴んだ。

 

「……は?」

 

「よっしゃあ!!」

 

「いや、"よっしゃあ"じゃないが!?」

 

何やってんのクロノのやつ!?ギルガルドは生気を吸収するってお母さんも言ってたのに!

 

「フッフッフ……まさか、この手を使うときが来るとはな。予想だにしなかったぜ」

 

「私はクロノの行動そのものが予想外すぎるんだけど」

 

「おいおい、ショウ?俺様のこの姿、どこかで見たことないか?」

 

「どこかでって……」

 

右手に盾を、左手に剣を。武器を振るい、構えを取るクロノの姿……いや、確かに既視感はある。それも、つい最近。

 

「……ハンター……」

 

「そう、片手剣装備のハンターだ!クックック……これより相対するはポケモン・ギルガルドのみにあらず!ハンターが培ってきた狩りの技術もまた、貴様を排除する脅威となるのだ!」

 

「……っ!!」

 

なるほど、そういうことか!だからギルガルドを自ら装備して……クロノ自身も、ハンターのように戦う術を身につけているということ!

厄介だな……思い起こされるのは四十路のハンター、赤鬼さん。あの人は相当な使い手だった。クロノの狩猟技術がそれに匹敵するかどうか……とにかく、戦ってみないことにはわからないな……。

 

「さぁ……始めようか!」

 

クロノが突っ込んできた!わずか一歩の踏み込みで素早く動き、あっという間にダイケンキとの間合いを詰めてきた!

 

「つばめがえし!」

 

「ダイケンキ、こっちもつばめがえし!!」

 

「!」

 

どうやらギルガルドの技を使う場合は、ちゃんと技を指示しないとダメなようだ。わざわざ声に出して斬りかかってきたんだから、きっとそういうことだろう。

鍔迫り合いに持ち込んだクロノとダイケンキ。ポケモンのパワーにも負けないなんて……これはクロノ自身の力なのか……?

 

「ダイケンキ、シェルブレード!」

 

「っと!キングシールド!!」

 

クロノを押し返し、クロノが持つギルガルドの本体に向けて斬撃を放つ!それをクロノは盾を構えてバリアーを張ると攻撃を防いだ!

マズイ、たしかキングシールドってあの守りの壁に接触すると攻撃力が下げられたはず。迂闊に攻撃を繰り返すと、こちらが徐々に弱体化されてしまう。そこへ来て、狂竜症だ。

攻撃を続けなければ攻撃能力を下げられる……だが攻め込みすぎればキングシールドで……くそっ、絶妙に噛み合ってるなぁ!

 

「さて、と!」

 

クロノは懐から何かを取り出すと、前方へ駆け出しながらそれを盾に擦りつけると、摩擦熱で着火したのか火が上がった。その直後、ギルガルドの剣身部分の体が激しく燃え上がり始めた!?

 

「さぁて、あまり長く持たないんでね……2分で片す」

 

「一体何を……ダイケンキ!」

 

「!!」

 

突撃してくるクロノに合わせて、ダイケンキも突っ込む。あの炎……物凄く嫌な予感がする……!

 

「ひけん・ちえなみ!!」

 

アシガタナを抜刀し、無数の斬撃を繰り出す!これでどうだ!

 

「ギルガルド、つじぎりだ!」

 

クロノはギルガルドに技の指示を出すと同時に、シズカさんも使っていた虫を取り出してその糸をギルガルドの本体に結びつけた。そして、つじぎりを発動したギルガルドを、糸を掴んで振り回し無数の斬撃をことごとく迎撃してみせた!?

 

「風車、ってな!」

 

「くっ……つばめがえし!」

 

今度はつばめがえしだ!

 

「ふっ……!」

 

クロノはつばめがえしが命中する直前に小さくバックステップをすると、つばめがえしの初撃を回避した。そのままダイケンキが斬り返そうとしたのに合わせて、クロノも飛び込みつつ横へ切り払うようにギルガルドを振るった。

その一撃でダイケンキのつばめがえしを切り払うと、さらに踏み込みX字にギルガルドを振るってダイケンキを斬りつけると、右に振りかぶった盾を振り上げダイケンキを顎から殴打し、さらに引き絞ったギルガルドで突きを放ちそのまま駆け上がりつつ斬り上げ宙へ躍り出ると、盾に全体重を乗せてダイケンキを思い切り殴りつけた!

な、なんて隙のない連続攻撃……!これがクロノの実力だというの!?

 

「ギルガルド、せいなるつるぎ!そうら、ブレイドダンスだ!!」

 

「……っ!!ダイケンキ、受けちゃダメ!素早く、シェルブレード!!」

 

「ッ!!」

 

かくとう技のせいなるつるぎ!あくタイプのダイケンキには効果は抜群だ!咄嗟の指示が間に合って、ダイケンキは早業シェルブレードで応戦した。

クロノが繰り出したのは合計9連撃の斬撃の嵐。ダイケンキはこれを両前脚に持ったアシガタナで見事に捌ききってみせた!

 

「防がれただと!?」

 

「今だ!ひけん・ちえなみ!!」

 

「……ッ!!」

 

「チィーッ!!」

 

ダイケンキの攻撃はギルガルド本体に命中!ダメージを与えることができた!!クロノは一度距離をとり、体勢を立て直している。

 

「当ててくれやがったな……高くつくぞ」

 

「そっちこそ、調子に乗って自ら出てくるなんてするものじゃないと思うけど?」

 

「言うねぇ……ぶっ殺す」

 

さて……向こうは接触すれば攻撃力を下げてくるキングシールドと、攻撃を当て続けなければ攻撃の威力が下がる狂竜症の二つの厄介な要素がある。だけど、私のダイケンキは典型的な物理特化型……接近戦を仕掛けなければ、攻撃すらままならない。

……と、なれば。あれ、やるっきゃないよね?

 

「行くよ、ダイケンキ」

 

「ルシア」

 

「突撃!!」

 

「!」

 

私の指示を受け、ダイケンキは一直線に突撃していった。

 

「ハッ、なんだぁ?策にしたってバカ真面目に真正面から突撃なんてあるか!」

 

「ダイケンキ、抜刀!」

 

クロノの言葉はひとまず無視して、ダイケンキに指示を出す。ダイケンキはアシガタナを抜刀すると、大きく跳躍した。

 

「シェルブレード!」

 

「無駄だ!キングシールド!!」

 

「ぶん投げろぉ!!」

 

「ルシャ!」

 

「……って、はぁ!?」

 

最早ダイケンキ最大の十八番、『アシガタナ投擲』!今回はギルガルドがはがねタイプでどくづきが使えないので、シェルブレードで代用した。

水の力を纏ったアシガタナが飛んできたことに驚きつつも、クロノはなんとかキングシールドで防いだ。……そう、防いだのだ。

 

「ダイケンキは直接接触していないから、キングシールドの能力低下は不発だ!!」

 

「なんだその屁理屈はぁ!?」

 

「もう一度シェルブレード!」

 

キングシールドの防がれて跳ね返ってきたアシガタナをキャッチし、もう一度シェルブレードを発動する。まもりの技というのは、往々にして連続使用すると失敗するもの!その常識を知っている以上、無闇に連発はしないはずだ!

 

「くっそぉ!せいなるつるぎを喰らえ!!」

 

シェルブレードとせいなるつるぎがぶつかり合い、一度弾かれ合う。ここまで接近すれば!

 

「ダイケンキ!奥義装填!!」

 

「ルシ!」

 

避けられない!!

 

「んなっ、くそっ……!キ、キングシールド!!」

 

「ぜっけん・はとう!!」

 

「ルッシャアアアアアアアッ!!」

 

第三のカタナに集められた水の力が形成する巨剣が、キングシールドとぶつかり合う。……なんの、なんのなんのなんのぉ!

 

「な……キングシールドが……!」

 

キングシールドに罅割れが……今だぁ!

 

「ぶった斬れええええぇぇっ!!」

 

「ルシャアアアアアア!!」

 

バリンッ!

 

キングシールドのバリアーが木っ端微塵に砕け散った!

 

「なんだと!?そんな、バカなぁ!!」

 

斬撃は命中し、激しい水飛沫が打ち上がる。飛沫で霧が掛かったものの、すぐにクロノの姿を発見した。

 

「くそぅ……」

 

クロノは無事だったが、ギルガルドは完全に伸びきっている。戦闘不能、私の勝ちだ!

 

「ギルガルドも戦闘不能……これで、クロノの手持ちは――」

 

「まだだ!」

 

「……!?」

 

立ち上がり、ギルガルドをボールに戻すと同時にもう一つ……七つ目のモンスターボールを取り出した。

 

「まだ負けてねぇ……こいつでぶっ殺してやる……!」

 

「あの紫の竜……たしか、イャンガルルガ、だっけ?アレを出すつもり?」

 

「ん?あー……それでもいいんだが、お前の手元にいるのはジンオウガとリオレウスだろう?イャンガルルガで遊んでもいいが、どうせならもっと面白いもので相手をしてやろうと思ってな」

 

「面白いもの……」

 

クロノの口角が少しずつ吊り上がっていく。一体何を出してくるというのか……。

 

「心するがいい……これより相対するは生命の脅威。恐れよ、暴威を振るうは貪食の竜!」

 

前口上を口にしながら、クロノはボールを天高く放り投げた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イビルジョー!!」

 

「グギャオオオオオオオオッ!!」

 

「……!?」

 

ボールから飛び出したのは、一体のポケモン。

 

濡れ光る暗緑色の鱗に覆われた体躯。

首元まで裂けた巨大な口と無数の棘に覆われた顎。

異様に太く強靭に発達した後脚と尻尾。

そしてそれらと比較すると極端なほどに小さく退化した前脚。

 

前々から、ずっと話に聞いていた古龍級生物イビルジョー……まさか、ここで本物と遭遇することになるとは……!

 

「どうだ?古龍に匹敵する脅威を持つ古龍級生物……その中でもイビルジョーは、ありとあらゆる生物を捕食する貪食竜!たった一頭で生態系を破壊し尽くす暴威そのもの!貴様のジンオウガとリオレウスで、果たして俺様のイビルジョーを倒せるかな?」

 

「倒す……倒してみせる!ジンオウガ!!」

 

「ウオオオオオオォンッ!!」

 

「さぁ、地獄が顕現する時が来た。

全てを呑む貪食の竜は、今か今かとその顎を開いている。

終末を齎す者、イビルジョーよ!万物万象、あらゆる生命が貴様の糧よ!

余さず残さず、根こそぎ全てを喰らい尽くせぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【戦闘!伝説のポケモン】~ポケットモンスター LEGENDS アルセウス~

【4つ首の守り神:ランディア】~星のカービィWii~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、殺るかぁ!イビルジョー、だいちのちからだ!」

 

「ギャオオオオンッ!!」

 

「躱して!」

 

「ウオンッ!」

 

初手から弱点技!ジンオウガのタイプを知り尽くしているのか……!とにかく回避を支持したが、どうやらこれが功を奏したらしい。ジンオウガは素早く身を翻し、攻撃範囲から素早く脱出した。今度はこちらの番だ!

 

「かみなりパンチ!」

 

「ウオオオンッ!」

 

ジンオウガはだいちのちからで狙い撃ちされないようにジグザグに動きつつ、イビルジョーに一気に接近しかみなりパンチを叩き込んだ!

 

「甘いわぁ!こおりのキバ!」

 

「グルアオオッ!」

 

「ギャンッ!?」

 

「なっ!?」

 

かみなりパンチが直撃したにも関わらず、イビルジョーは意に介さずジンオウガに噛み付いてきた!そのまま一度高く持ち上げてから勢いよくジンオウガを叩きつけると、めちゃくちゃに振り回し始めるイビルジョー。このままじゃ、ジンオウガの体力が削られる……!

 

「かみなり!!」

 

「グゥッ……ワオオオオンッ!!」

 

「グルル……!」

 

ゼロ距離でのかみなり攻撃、これは流石に堪えたようでイビルジョーはジンオウガを離した。まだまだ!

 

「畳み掛けて!インファイト!!」

 

「ワオオオンッ!」

 

「ギャオオオオッ!?」

 

……!かくとう技がかなり効いてる……イビルジョーの見た目でいわとかはがねは有り得ないだろう。ノーマルの可能性も薄い……あくタイプか?

 

「えぇい、アクアテールだ!」

 

「グオオオ!!」

 

「ギャウンッ!」

 

「ジンオウガ!」

 

まずい、インファイトで防御が下がっているところへ、ジンオウガの弱点であるみずタイプ技が直撃した!さっきからジンオウガが苦手なタイプの技をチョイスするあたり、こちらの弱点は筒抜けと見ていいだろう。

 

「おらおら行くぞぉ!イビルジョー、ディストーションバイト!!」

 

「グルオオオオオオ!!」

 

口元に龍属性エネルギーを収束させたイビルジョーは、そのまま勢いよく突撃しジンオウガに食らいつくと、高く跳躍。ジンオウガを下にすると回転しながら落下しジンオウガを地面に叩きつけた!

 

「ギャウウウッ!!」

 

「ジ、ジンオウガ!?」

 

「まだまだァ!デストラクションドラグーン!!」

 

「グルアアアアア!!」

 

「あぁ……!!」

 

ジンオウガを真上に持ち上げたイビルジョーは、そのままの態勢で龍属性のブレスを放ってきた!高く打ち上げられたジンオウガはそのまま自由落下し、再び地面に叩きつけられた……!

 

「ジンオウガッ!!」

 

「(よしよし、頑張って技名を覚えさせた甲斐があったぜ)さぁて、そろそろトドメを刺すとするか」

 

「……ッ!!」

 

「身の程を弁えろ、凡愚め。古龍級生物に勝てるわけねぇだろうがよおおお!?

イビルジョー!力業のギガインパクトだぁ!!」

 

「グルオオオオ!!」

 

イビルジョーが大きく咆哮すると同時に突撃してきた!ジンオウガは連続攻撃のダメージが響いているのか、思うように動けない……!

 

「ジンオウガーッ!!」

 

「……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロスハイボルト!!」

 

「ウオオオオオンッ!!」

 

「……ッ!?躱せ、イビルジョーッ!!」

 

「!?」

 

と、その時だ!突然どこからか声が響いたかと思うと、空から何かが降ってきた!?イビルジョーは間一髪足を止め、大きくバックジャンプをすることで回避した!激しく舞う土煙……その衝撃に耐え切れず、私もジンオウガも吹っ飛ばされてしまった!

 

「きゃああっ!」

 

「グウウゥ……!」

 

すぐさま私は起き上がると、ジンオウガの傍に駆け寄り様子を見る。……よかった、まだかろうじて瀕死じゃない。でも、問題は……。

私は前方を見据える。徐々に煙が晴れ、そこから現れたその姿は……。

 

「……黒い……ジンオウガ……?」

 

「グルルル……」

 

龍属性の赤黒い電撃をその身に纏った、黒いジンオウガだった。その身から漂う覇気は、私のジンオウガを大きく上回っている。まさしく、歴戦の個体……そう呼ぶに相応しいジンオウガだった。

 

「なぁ……!?じ、ジンオウガの亜種だとぉ!?なぜここに……」

 

「ようやく見つけたぞ」

 

その声に、私とクロノは同時に空を見上げた。一体の大型飛竜の背に乗って現れたのは、ココット村で別れたアカイさんだった。飛竜が地上に着地したことで、ようやくその全貌が明らかになった。

 

「あ、蒼い、リオレウス……」

 

「見つけたぞ、貴様……」

 

「うげぇ……」

 

リオレウスから飛び降りたアカイさんは、この上ないほどの憤怒に染まった表情を浮かべていて、それを見たクロノは苦い顔をしている。

 

「よくもまぁ、好き勝手してくれたものだ……。こちら側で暴れるならまだしも、時空の裂け目を通って無関係な世界にまで手を出そうとは……祖龍もお怒りになられている。言い訳なら聞いてやるぞ」

 

「ぐっ……だ、黙れ!あれはな、苦肉の策って言うんだ!ハンターをぶちのめすには、今の俺じゃあ力不足だった!だから、力を手に入れる必要があったんだ!」

 

「それで体よく利用価値のあるものを見出したから、使ってやろうって魂胆か。己が力のみで戦い切ることなく逃げ出し、挙句には弱者から搾取して我が物顔とは……やることが幼稚だな、ミラボレアスの恥さらしが……!」

 

「ぐぬぬ……!!」

 

な、なんだかよくわからない会話が始まった……。

 

「ショウ、奴から色々と聞いているだろうが、改めて私から説明させて欲しい。

やつはご覧のとおり、我々の関係者だ。身内、と言ってもいい。黒龍ミラボレアスと深い縁を持つ者であり、その関係はシロとミラルーツに似ている……ここまではいいか?」

 

「は、はい」

 

「では、一つだけ確認を。奴はなんと言って、君の前に姿を?」

 

「えぇっと……"ミラボレアスの意思の代行者として、直接殺してやる"と……」

 

それから、私はクロノが私に話したことをすべてアカイさんに伝えた。すると……。

 

「ハッ!なるほど、そう来たか」

 

アカイさんは、クロノを見るなり鼻で笑った。一方、クロノはますます苦々しさを顔に出している。……結構辛辣なんですね、アカイさん。

 

「ショウ。クロノのミラボレアスの意思の代行……それ自体は嘘ではないが、真実ではない部分もある」

 

「へ?」

 

「まず一つ……ミラボレアスにとってクロノを差し向けるのは、完全に予定外なことだ。……違うか?クロノ」

 

「え?」

 

「……ッ!~~~~っ……!!あぁ、そうだよ!予定外だよ!想定してなかったわこんなこと!!」

 

「えぇ!?」

 

ど、どういうこと……?

 

「ミラボレアスの狙いは、君の死だ。だが、君は既にミラボレアスから呪いを受けている身……最悪、直接殺さずとも時間稼ぎさえ出来てしまえばいい。遺跡平原の巨大ティガレックスは、そのために差し向けられた刺客だった、というわけだ。

だが、奴にとって誤算があった。一つは、歌姫が既にメゼポルタを発ち、全国行脚をしていたことだ。そのために、ショウと歌姫が合流してしまった」

 

……そうだ。私にとって必要なのは歌姫のラウラさんの歌。メゼポルタでなくとも合流できていた以上、準備が整えばいつでも解呪の儀式ができたんだ!

 

「次、君たちの事情に関して理解のある人物がいたこと。たしか、シズカ・ミズハシ……といったか。彼女は我々の状況や事情にやけに明るかったそうだな。だから、ハンターとの間で無駄に話が拗れることがなかった……スムーズな受け入れがなされたのも、彼女がいてくれたおかげだな」

 

シズカさん……シズカさんも異世界人だから、同じく別の遠い場所からやってきた私たちに対して一定の理解を示してくれていた。モンスターボールに関する警告なんかも、色々とお世話になりっぱなしだな……。

 

「そして、最後。ハンターと君たちが協力関係を結んだことだ。ハンターのみの戦力ならば、多大な犠牲が出ていた可能性があった……だが、モンスターを引き連れたショウたちの協力を得たことで、ハンター側も作戦を恙無く進行させることができた。ティガレックスの攻撃目標が、ハンターのみに絞られなかったからこそだ。これによって、ミラボレアスの想定を上回る速度で巨大ティガレックスが狩猟された……まぁ、こんなところか。

それで、如何かな?何か一つでも違う点があるか、クロノ?」

 

「ちくしょー……全部アカイの言うとおりだよ……!」

 

最後の一つが、私たちとハンターたちの協力。それによる巨大ティガレックスの早期狩猟……思ったよりも時間稼ぎができなかったことに焦ったミラボレアスが、クロノを差し向けてきた、ということなのか。

 

「そして、クロノ。ポケモンを狂竜化させた程度で、ショウに勝てると思ったか?お前がショウのポケモンを倒せた大半の理由が、使用ポケモンの半数がショウにとってタイプが不明の初見ポケモンだったからにすぎない。

付け焼刃の知識と経験程度では、ショウに勝つなど夢のまた夢……そんなゴリ押し戦法、子供にだってできる。イビルジョーを繰り出したのも、なんだかんだ言い訳していたが要するにショウが想像よりもはるかにポケモン勝負が上手かったので、イャンガルルガで勝つ自信がなくなったからだろ?」

 

「うるせぇよー!さらっと人の心を抉ってくるんじゃねーよテメー!!」

 

……なんだろう、急にクロノが見た目よりもずっと子供に見えてきた。顔がそっくりな親族のアカイさんという比較対象がいるからだろうか。

 

「さて、どうする?そちらにはイビルジョーがいるが、こちらはジンオウガ亜種とリオレウス亜種だ。イャンガルルガも頭数に入れてもいいが、バトル経験は貴様と俺では天と地の差……まして貴様はダブルバトルは未経験。実質、二対一だぞ?

まぁ……そもそも貴様を逃がすつもりなど、毛頭ないがな……!」

 

「……おのれ……おのれ……おのれ、おのれ、おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれぇ!!

 

クロノは悔しげに地団駄を踏むと、イビルジョーをボールに戻すと同時に自身の背後に時空の裂け目を開いた……!

 

「ショウ!決着は預けるぞ!!」

 

「逃がすか!ジンオウガ!!」

 

「ワオンッ!!」

 

アカイさんのジンオウガが、素早くクロノに飛び掛った!前脚が振り下ろされ、土煙が舞う。煙が晴れると、そこにはなにもなかった。

振り返ったジンオウガが、力なく首を横に振る。

 

「……ちっ、逃がしたか」

 

「アカイさん……」

 

「……すまない、ショウ。遅くなってしまったな」

 

「いえ……来て下さり、ありがとうございます。おかげで助かりました」

 

……また、勝てなかった。マガイマガド、ラージャンに続きイビルジョーにまで……古龍級生物の壁が、余りにも高すぎる……!アカイさんが来てくれなかったら、どうなっていたことか……。

 

「……宿に戻ろう、ショウ。大長老との対談もあるだろう?詳しい話は、明日にでも」

 

「……はい」

 

悔しい……こんなにも負け続けることなんて、元いた世界や時代でもそうなかったのに……。どうすればいい?どうすれば勝てる?何が足りない?何が必要?

泥沼のような思考に沈む中、私たちはアカイさんのガブリアスの背に乗ってドンドルマに戻っていった……。

 

 

 

 




はい、というわけで結果だけ見ると「ショウの戦略的敗北」ですね。アカイが来なかったらマジ負けてました。

古龍級生物は、ショウや光輝くんたちにとって成長に必要な重要なファクターとなっています。なのでね、簡単に超えられても困るって話なんですよ。

そしてアカイの手持ちに新メンバー、ジンオウガ亜種とリオレウス亜種が参戦!……まぁ、残りの手持ちもこいつら二体を見たら概ねわかりそうなものですが、どうしても出したかったので!

それでは、また次回~!


追記:
忘れてました!クロノの手持ちの紹介です!
ブロスター→ボウガン系統
みず
アクアジェット/はどうだん/みずのはどう/りゅうのはどう

ネギガナイト→ランス
かくとう
スターアサルト/ぶんまわす/どくづき/じごくづき

デカヌチャン→ハンマー
はがね/フェアリー
デカハンマー/アイスハンマー/ストーンエッジ/ぶんまわす

オノノクス→アックス系統
ドラゴン
ドラゴンクロー/アイアンヘッド/インファイト/サイコカッター

ソウブレイズ→双剣
ほのお/ゴースト
むねんのつるぎ/かわらわり/シャドークロー/ニトロチャージ

ギルガルド→片手剣
はがね/ゴースト
キングシールド/せいなるつるぎ/つばめがえし/つじぎり
入れ替え技:ジャストラッシュコンボ
狩技:混沌の刃薬/ブレイドダンス
鉄蟲糸技:風車(+つじぎり)


イビルジョー
あく/ドラゴン
弱点 火:○ 水:○ 雷:◎ 氷:△ 龍:◎
四倍:ドラゴン、フェアリー
二倍:かくとう、むし
半減以下:くさ、ゴースト、あく
こうかなし:エスパー
等倍:上記以外全部

では改めてまた次回!


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【旅は道連れ】我らモンハン部異世界支部【メゼポルタへ】

久々の掲示板回です!そして掲示板回ということは……?


1:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

うぇーい、なんとか丸一日使って巨大ティガレックスをぶっ飛ばすことができたぜー

なんかちょっかいかけられたりもしたけど、明日からいよいよメゼポルタへ出発だ!

 

2:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いえーい↓

 

3:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

テンション低すぎィ!?

後三人はどうした!

 

4:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

光輝→対古龍級生物戦に三連敗という現状について苦悩中

焔→ライゼクスとの関係について陸上に弁明中

剣介→たくさんのロリ・ショタに囲まれながら温泉の中で放心中

 

5:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おい、最後のメンタル死んでないか?

 

6:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

剣介の場合年頃の子も混じってるからな、羨ましいを通り越して可哀想

前世が人間だった矜持もあってセクハラ対策に意識飛ばしてるんだろ

 

7:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やはり剣介はロリコンになる運命……

 

8:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

誰がロリコンだコラァー!!

 

9:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おっ、戻ってきた

 

10:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

はぁ……はぁ……う、迂闊だったんだ……!

ワサビちゃんに連れられて来てみれば、でっかい温泉が出来上がっててな……「ベリオロスのために頑張ったんだよ!」なんて言われたら断れねぇじゃん……

それじゃあお言葉に甘えてと温泉に浸かったが最後……ワサビちゃんを含むシンジュ団の少年少女たちがこぞって温泉に入り始めて……目の前で裸の子供たちがウロウロウロウロし続けて、俺の心は限界です……

 

11:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

認めちまいなよ……楽になるぜ?

 

12:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いやだああああ!俺はロリコンでもなければショタコンでもないんだあああ!!

 

13:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ロリコンでショタコンは手に負えん……次に行こう

 

14:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

流静に見捨てられた……!?

 

15:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

終わったな……所詮、ロリコンはロリコンなのだぁ

 

16:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

(´・ω・`).;:…(´・ω...:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..

 

17:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さて、光輝は……大丈夫か?

 

18:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……薬で回復してもらったからな、傷やダメージは問題ない

ただなぁ……

 

19:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

勝てなかったな、イビルジョーに

 

20:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ、勝てなかった……腹立たしいぜ、自分の弱さってやつが……!

 

21:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ゲームはもとより、リアルだとこんなに壁が分厚いんだな……正直、ゲーム側でサクサク狩ってから、侮ってた感は否めない

 

22:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ここまで負けっぱなしだからな……

 

23:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

VS.マガイマガド

→三体入れ替えながらも敗北

 

VS.ラージャン

→怒涛の6タテで敗北

 

VS.イビルジョー

→フィジカル差でゴリ押しされて敗北

 

 

確かにこれはキツイな……

 

24:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いずれも真正面からぶち当たって、そのまま圧倒されてるからなぁ……

ヒスイ地方でも合間を縫って特訓していたとはいえ、まだまだ不足していたか……

 

25:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

向こうも原作にはない、オリジナルの技を色々と開発していたな……ショウちゃんも初見だったし、どうしても後手に回らざるを得ないか……

 

26:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺たち自身の強さもそうだが、もっとショウちゃんと意気投合できないとな

トレーナーとポケモンの双方の意思疎通もまた、ポケモン勝負で勝つために必要な要素だ

 

27:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おかえり、剣介

 

28:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ただいまー、いやー、なんとか混浴を乗り切ったぜ

みんな温泉の中とはいえね、無遠慮にくっつかれると、こう……色々と、ね?

 

29:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

かーっ!羨ましかーっ!!……よし、殺そう

 

30:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

情緒不安定か!こっちだってなぁ、色々と戦ったんだよ!!

目のやり場とか色んな感触とかその他諸々とか!!

 

31:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やめろー!BANされる!!

 

32:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

でも体は竜だから特に性的興奮とかはないんだよなぁ

 

33:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

性的興奮……話変わるんだけど、焔は?

 

34:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……あー、あえて拾わないようにしていたんだが、気になるならちょっと寄せてみるか?

祖龍に教えてもらったんだが、相手のことを意識に置くと脳内会話が聞こえるらしいぞ

 

35:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

どれどれ……

 

36:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だーかーらー!あのライゼクスとは本当に!本っ当に!なんでもないっての!!

 

37:陸の女王 ID:MonHunPHr5

なんでもないメスが、あんなにもあんたに執着するかしら?少なくとも、あんたとは縁浅からぬ関係だとは思うけど……?

 

38:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、それは肉体(オレ)なんだけど精神(オレ)じゃなくって……

 

39:陸の女王 ID:MonHunPHr5

ほら見なさい!結局はあんたと関係あるんじゃない!

……なんでよ、どうしてよ……私の方が精神(ココロ)肉体(カラダ)もずっと長く一緒だったじゃない……なのに、なのに……!

 

40:空の王者 ID:MH2nddosHr8

わぁー!!なんで急に泣き出すんだ!?まってまって、泣き止んでくれ葵!

 

41:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……ねぇ、一度は死んで飛竜に転生できたんだから、もう一回死んだらまた人間に戻れると思わない?

ふふふふふ……物は試しっていうし、いっぺん一緒に死んでみる……?

 

42:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……っと思ったら急にコワイッ!怒ってる?怒ってますか葵さん……?

 

43:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……っ!?ち、違う、私、怒ってなんて……ごめんなさい焔!ごめんなさい……ごめんなさい……!

 

44:空の王者 ID:MH2nddosHr8

お前は情緒をどこに置いてきたんだ!?

ダレカタスケテー!

 

45:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

チョットマッテテー

 

46:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

チョットマッテテー

 

47:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

チョットマッテテー

 

48:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

イケタライクワー

 

49:空の王者 ID:MH2nddosHr8

こんの薄情者どもがー!!

そして最後のは関西だと絶対来ないやつー!!

 

50:陸の女王 ID:MonHunPHr5

焔ぁ……一人にしないで、置いていかないで……死ぬなら一緒がいい……!

 

51:空の王者 ID:MH2nddosHr8

早まるな葵ーっ!?

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が参加しました――

 

 

――「赤いなぁ……」が参加しました――

 

 

52:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ただいまぁ……って、何この状況?

 

53:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

修羅場です、関係者以外は立ち入り禁止です

 

54:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

はぁい

 

55:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

なにやっとるんだコイツらは……

 

56:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやいや見てないで何とかしてー!

 

57:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

うーん……面白そうだし、いっか

 

58:空の王者 ID:MH2nddosHr8

バルカン!助けろぉぉ!

 

59:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

夫婦喧嘩は犬も食わぬ、ということわざを知ってるか?

 

60:空の王者 ID:MH2nddosHr8

(救いの)神は死んだ……!

 

61:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

しょうがないなぁ、焔くんは

 

62:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ルーツ……!

 

63:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そぉい!

 

 

――「電の反逆者」が参加しました――

 

 

64:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ん!?まちがったかな……

 

65:空の王者 ID:MH2nddosHr8

確信犯だろテメェーーっ!?

 

66:電の反逆者 ID:MHX3DSHr7

……んぅ、なぁに……?

 

67:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あっ、ゼクス……

 

68:電の反逆者 ID:MHX3DSHr7

あっ、レウスだ!すごい、なにここ?一度にたくさんのことが考えられる!

レウス、ボクに会いに来てくれたの?嬉しいっ!

 

69:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、ちが――

 

70:電の反逆者 ID:MHX3DSHr7

……え?

 

71:空の王者 ID:MH2nddosHr8

――わないかなぁ!会えて嬉しいよゼクス!

 

72:電の反逆者 ID:MHX3DSHr7

えへへ、昔みたいにだんまりなレウスもいいけど、今みたいなおしゃべりなレウスもボクは好きだよ?

 

73:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやぁ、あはは……!

 

74:陸の女王 ID:MonHunPHr5

 

75:空の王者 ID:MH2nddosHr8

はは……は……?

 

76:陸の女王 ID:MonHunPHr5

やっぱりそうじゃない……私を捨てて、そのメスを取るっていうのね……!

 

77:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あばばばばばばばば(^p^)

ち、違うんすよ葵さん、これには訳が……

 

78:電の反逆者 ID:MHX3DSHr7

……レウス、このおばさんってあの奥さん?

 

79:陸の女王 ID:MonHunPHr5

おばさん……?

 

80:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ヒエッ

 

81:陸の女王 ID:MonHunPHr5

フンッ……若さばかりのよそ者が、なにかほざいているわね

私たちは夫婦、その関係は絶対、他者が割って入る隙間はないわ

 

82:電の反逆者 ID:MHX3DSHr7

……でも、あなたもレウスも一度人間によって殺されているよね?

それから二人とも遺体はどこにもなくなっちゃったけど、レウスは生き返ってボクに会いに来てくれたんだ

わかる?奥さんのあなたよりも先に、ボクに会いに来てくれたんだよ?死の淵から蘇って、ボクのところに帰ってきてくれたんだ!!

 

83:陸の女王 ID:MonHunPHr5

黙れッ!!死がふたりを分かつとも、魂まで引き離すことはできない!!順番なんて関係ない……身も心も繋がった私と焔が再会するのは当然の帰結よ!

そんな私たちを、生きたまま分たれようとしているのはアンタよ!余所者の部外者が、同族同士でイチャコラ子作りに勤しんでなさいよ!!

 

84:電の反逆者 ID:MHX3DSHr7

同族でボクより強いオスなんて、どこにもいない!ボクより強い飛竜はレウスだけなんだ!レウスだけがボクの全てなんだ!ボクの全力を受け止めてくれる、ボクの愛に応えてくれるのはレウスだけ!ボクにはもうレウスしかいないんだ!!

 

85:陸の女王 ID:MonHunPHr5

私だって同じよ!どれだけ強くあたっても、どれだけ厳しい言葉で伝えても、それを嫌がらずに最後まで聞いてくれたのは焔だけだった!私はずっと焔に助けられていた……園児だったときから、ずっとずっと!なのに、私はそんな焔に何もしてあげられなかった……だから、今度こそ最後まで添い遂げると決めたのよ!私にはもう焔しかいない……焔が居ない世界なんていらない!焔がいないなら、生きている意味だってない!!

それにアンタ、さっきからレウスレウスって、焔を変な名前で呼ばないで!

 

86:電の反逆者 ID:MHX3DSHr7

そっちこそ!レウスはレウスだ!ほむらなんて変な名前じゃない!!

 

87:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

身も心も名前を全否定された焔くん、感想をどうぞ

 

88:空の王者 ID:MH2nddosHr8

シテ……コロシテ……

 

89:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

無理みたいですねww

 

90:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

許してやれよwwww

 

91:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さて、お嬢さん方

どうやら積もる話がある様子……あちらでゆっくり話し合われては?

 

92:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……そうね、そうしましょう

 

93:電の反逆者 ID:MHX3DSHr7

レウスは絶対にボクを選んでくれる……!

 

94:陸の女王 ID:MonHunPHr5

病めるときも健やかなるときも、生きるときも死ぬときも一緒よ、焔

 

95:電の反逆者 ID:MHX3DSHr7

レウス……!

 

96:陸の女王 ID:MonHunPHr5

焔……!

 

97:空の王者 ID:MH2nddosHr8

(;゚Д゚)<ダレカタスケテー!

 

98:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

イケタライクワー

 

99:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

イケタライクワー

 

100:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

イケタライクワー

 

101:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

イケタライクワー

 

102:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

イケタライクワー

 

103:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

イケタライクワー

 

104:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そして誰も来なくなったー!?

ァァァァァァァァ……(´Д`)ノ

 

105:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……行ったな

 

106:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

焔……いいやつだったよ

 

107:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

勝手に殺すな

……さて、ルーツとバルカンが戻ってきたということは……

 

108:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

あぁ……黒龍が、直接ショウを消しに来たぞ

 

109:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

バルカンが隙を突いたまでは良かったんだけど、逃げれられてしまったわ……

 

110:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

まさかアイツがあそこまで時空の裂け目を自由に操れるとは……見込みが甘かった、申し訳ない

 

111:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いやいや!バルカンが来なかったら光輝は本当にヤバかったから!な、光輝?

 

112:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……あぁ、助かったよバルカン、そして謝るべきは俺のほうだ

すっかり強くなった気でいたよ……あれだけ威勢良く啖呵を切った割にはこのザマだ、情けねぇ……!

 

113:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

……いや、こちらとしても黒龍が古龍級生物を確保しているとは思わなかった

どうやら裂け目を通して、ショウの戦績を把握しているらしい……古龍級生物によるゴリ押しは、悔しながら現状のショウと戦う上では最適策だ

 

114:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……もっと、モンスターと戦ったほうがいいか……?

 

115:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

そうだな

実際に奴と戦う際にはポケモンバトルというルールに則るが、本来この世界ではそのようなルールなど不要だ

なまじお前たちは人間としての理性が強く残っている……お前たちの肉体であるモンスターが持つ本能を上手く引き出せば、考えるよりも先に行動できるだろう

 

116:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それは俺たちも考えた

だが、本能に呑まれて理性を失わないか、少々不安なところもあってなかなか実行に移せなかったんだ……

 

117:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

やりすぎれば、そうなるだろうな、だからどこでその線引きをするかが重要なのだ

モンスターの本能を引き出して、体に「己の使い方」を徹底的に覚えさせる……そのためには、この世界の大自然に身を置くほかない

自然に揉まれ、野生に揉まれ、強くなれ

 

118:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

了解だぜ……!

 

119:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

……次にオレがバトルするとすれば、ヒスイに戻ってからだろうな

そのときは、お前たちの亜種個体で相対するとしよう

 

120:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺たちの、亜種……!

 

121:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

風牙竜、黒鎧竜、白海竜、蒼火竜、そして獄狼竜……

 

122:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

そして、マガイマガドだ

強くなっていることを期待しているぞ?

 

123:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

上等だぜ……!

 

124:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

これは、のんびり観察ばかりされるわけにはいかないな……!

 

125:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

こっちもちょっとずつ、体を動かしていかないとな!

 

126:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

胸を借りるつもりなんてねぇ……首を洗って待ってやがれ

 

127:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

……クッ、クッハッハッハッハッハッ!

それはいい、"首を洗って待っていろ"か……あぁ、待っているぞ、楽しみにしている

 

128:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

バルカン……

 

129:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

心配はいらないぞ、ルーツ

彼らは強くなることに意欲的だ、ましてそれが己のためではなく、あの小さな主のためなのだからな

彼らはきっと強くなる、オレが保証する

 

130:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

それもそうなんだけど、焔くんたちはどうしようかなぁって……

 

131:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

知らん、色恋沙汰(そんな事)はオレの管轄外だ

 

132:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ですよねー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

211:陸の女王 ID:MonHunPHr5

ただいま

 

212:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ、陸上さん、お疲れ様

 

213:陸の女王 ID:MonHunPHr5

私のことはもう葵でいいわよ

……なんだかんだ、あんたたちとも付き合いが長くなるわね、今後ともよろしくね

 

214:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

よろしく、呼び捨てでもええか?

 

215:陸の女王 ID:MonHunPHr5

もちろん

 

216:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それじゃあ改めて……葵、焔はどうした?

 

217:陸の女王 ID:MonHunPHr5

焔?焔なら……

 

218:空の王者 ID:MH2nddosHr8

( д )

 

219:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おい、白目剥いとるやんけ

 

220:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

生きてるか、これ……?

 

221:陸の女王 ID:MonHunPHr5

脈はあるし生きてるわよ

 

222:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それにしてもミラボレアスのやつ、見たことないポケモン使ってきやがって……

 

223:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……それって、デカヌチャンとソウブレイズのこと?

 

224:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

知ってるのか、葵?

 

225:陸の女王 ID:MonHunPHr5

うん

だって二体とも、ポケモン最新作のスカーレット・バイオレットで登場した新ポケモンよ?

 

226:空の王者 ID:MH2nddosHr8

(; ・`д・´) ナ、ナンダッテー!!

 

227:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おっ、生き返った

 

228:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……焔たちが死んでから、みんながポケモンの新作を楽しみにしてたのを思い出してね

供養も兼ねてダブルパックを買って、スカーレットとバイオレットを両方プレイしたわ

 

229:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

その話

 

230:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

詳しく

 

231:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

主にポケモンについて

 

232:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

極力ネタバレは無しで

 

233:空の王者 ID:MH2nddosHr8

神様仏様葵様!

 

234:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……フフッ、アハハハハ!

 

235:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……葵、どうした?

 

236:陸の女王 ID:MonHunPHr5

ううん、ちょっと懐かしくなっただけ

学校の外でも中でもあんたたち五人はいつも一緒で、いっつもゲームの話ばっかりしてたなって……私も、あと流静くんの妹の静香ちゃんも、会話に混ざれなくて聞いてばっかりだったなぁ……

 

237:空の王者 ID:MH2nddosHr8

葵……

 

238:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……焔のご両親ね、すっごく泣いてた

もっと息子との時間を大事にすればよかったって、ずっと……

 

239:空の王者 ID:MH2nddosHr8

親父……お袋……

 

240:陸の女王 ID:MonHunPHr5

でも、たとえ体が別物でも、焔の魂はこうしてここで生きている……私はもうそれだけで十分、十分だから

だから……もう二度と、私の知らないところで勝手に死なないでね、焔……

 

241:空の王者 ID:MH2nddosHr8

葵……!

 

242:陸の女王 ID:MonHunPHr5

死にたくなったら、いつでも殺してあげるからね♪

 

243:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……スゥー……あ、あれ?葵さん……?

 

244:陸の女王 ID:MonHunPHr5

もしも焔が死んでしまっても、絶対に一人で死なせたりしない……私も一緒に死んであげるから……

 

245:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ちょっと、タンマ……

 

246:陸の女王 ID:MonHunPHr5

ずーっと一緒よ……焔♥

 

247:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なんでこんなんなっちまったんだお前はよぉ!?

 

248:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

イイハナシダッタノニナー

 

 

 

 




修羅場だぞ、笑えよ


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特別編その1:男子高校生の年越し

明けましておめでとうございます!
まさか投稿ペースの都合上、新年早々に投稿することになるとは……!
今回は本編とはあまり関わらない話を特別編ということで、どうぞ!


某高校の学生寮。一般人の受け入れも認められている特殊な寮の一室に、二人の男子高校生がいた。大きなコタツに入ったまま寝転がり、なにをするでもなく天井を見上げている。

 

「……のぉ、流静さんや」

 

「……なんだい、剣介さんや」

 

「彼女が欲しいです……」

 

「生まれ変わって出直せ」

 

「辛辣ぅ!」

 

ガバッ!と体を起こしたのは氷室剣介。高校では「顔は100点、その他0点」で知られる残念系イケメンである。顔の良さを活かして配信者活動をしており、これがなかなかウケがいい。

そして、剣介に辛辣な言葉を浴びせたのは水橋流静。メガネをかけた「ザ・インテリ」な少年であり、剣介とは真逆で頭脳明晰。現在通っている高校においても、成績トップの実力を叩きだしているほどだ。

 

「もうちょっと言葉を選んでくれよ!俺、傷ついたぞ!」

 

「フォローされて惨めな思いをするのと、直球で傷つけられるの、どっちが良かったんだ?」

 

「……いやぁ、流静は友達思いのいいやつだ!」

 

「気遣った覚えはないが」

 

「お前には人の心がねぇのか!?」

 

「"馬鹿に付ける薬はない"ってのと同じくらいには」

 

「ふえぇ……流静がいぢめてくる……」

 

「光輝たち、遅いな……」

 

「無視しないで!」

 

剣介を散々に弄って満足したのか、流静は寝返りを打った。無視された剣介は「よよよ……」と泣き真似をするが、これも無視されたので素に戻った。

 

キンコーン

 

「おっ、来た」

 

「出るか」

 

チャイムの音が聞こえたので、二人揃って起き上がる。そのまま玄関に向かうと、ドアを開けて客人を迎え入れた。

 

「よっすー、遅かったな」

 

「おっせーよ!俺、腹減ったんだけど!?」

 

「わりぃわりぃ!限定のおせちセット、なんとか買い付けたぜ」

 

流静の部屋を訪ねてきたのは三人の少年。

おせちの入った箱を掲げて得意げに笑うのは赤羽焔。赤色をこよなく愛するヒーロー気質な少年だ。ただしオツムは少し残念なのでリーダーには向いていない。

ただし行動力は一番あるので、焔が一番に動き出すことで結果的にほかのメンバーを引っ張る形となっている。振り回している、とも言う。

 

「光輝もすまんな、無理を言ったみたいで」

 

「気にすんな。ミツ姉も『コウちゃんのためなら』って、喜んでおせちをキープしてくれたからな」

 

「後で光梨さんに礼を言っといてくれ」

 

「りょーかい」

 

流静が謝罪の言葉を投げかけた相手は稲妻光輝。焔が買い付けたおせちセットは、光輝の従姉である「稲妻(いなづま)光梨(みつり)」のバイト先で実施されているキャンペーン商品で、あれこれ伝手を使って商品であるおせちを手に入れたのだ。

メンバーの中でも流静に次ぐ常識人で、芸人風に言うならボケ兼ツッコミ。両方満遍なくマルチにこなすので、自然と常識人枠に収まった。

 

「腹減ったぁ……。あ、剣介~、鬼滅全部読んだぞー。そんで返しに来た」

 

「おーう、ありがとなー」

 

剣介に漫画が入った袋を渡したのは岩木剛太。五人の中で最も筋肉質な体型をしているが、運動部どころかスポーツマンですらないインドア派である。筋肉はただの飾りだ。

インドア派は伊達ではなく見た目に反して手先が器用で、その器用さはメンバーの中で家庭科関係の成績が一番高い評価4を貰っているほど。

 

五人は一つの部屋に集まると、各々おせち料理に舌鼓を打つ。和気藹々と食卓を囲むさまは、まるで兄弟のようである。

 

「焔ぁ!テメェ、俺のこぶを!!」

 

「早い者勝ちだよ光輝のば~か!」

 

「ちょ、流静ー!エビ!エビの頭、外してくれ~!」

 

「剣介お前、下手の極みか!どうやったらエビが縦に真っ二つになるんだよ!?」

 

「田作りがうめぇ……」

 

「剛太……いつまでイワシ咥えてんだ……?」

 

……和気藹々、のはずである。

食事を終えれば、次はゲームの時間である。剣介の部屋はいつもメンバーが集まるので、五人以上で遊べるゲームが当たり前のように常備されている。

 

「さぁ、ついにこの年がやってきた」

 

「いや、マジでやるのか……あれを……」

 

「俺はいつでも準備オーケーだぜ!」

 

「一応、準備してきたぞ」

 

「よし、企画開始の宣言をしろ!剣介!」

 

「了解ィ!!」

 

焔に促された剣介は勢いよく立ち上がると、右手を挙げながら声を上げた。

 

「故きを温ねて新しきを知る!ポケモンバトル大会ソード&シールドfeat.ポケモンスタジアム~!!」

 

「「「「イエーイっ!!」」」」

 

パチパチワーワー、と拍手喝采。宣言を終えると、剣介はその場に腰を下ろした。

これから行われるのはただのゲームではない。剣介の配信に協力するための、いわばリハーサルのようなものである。

内容はいたってシンプル。Nintendo64のソフト『ポケモンスタジアム2』及び『ポケモンスタジアム金銀』にて採用された特殊ルールを使って行われるバトル大会である。

 

「採用ルールはくじ引きで決めるぜ~」

 

「何が出るかな?何が出るかな?」

 

「ポポポポンポン、ポポポポン♪」

 

「……出たー!ルールはポケモンスタジアム2のイエローカップだー!」

 

「……流静、イエローカップってなんだっけ?」

 

「参加可能ポケモンはレベル15以上20以下で、尚且つ選出時のレベル合計が50以下になるようにしなければならないシングル63ルールだ」

 

「えぇ……進化ポケモンもレベル20以下で進化する奴しか使えないってわけかぁ。それならギャラドスが最強か?」

 

ルールをド忘れしていた剛太はうんうんと唸りながらNintendo switchの電源を入れる。使用ポケモンを決めるためである。

 

「ギャラドスより速い電気なんていくらでもいるぞ?逆に4倍弱点は避けたほうがいいかもな」

 

「昔はともかく、今なら石進化組や懐き進化組が充実しているし、低レベルでもバトルの幅は広がりそうだな」

 

「固定ダメージ技が当時、覇権だと聞いたことがある。あとバーチャルコンソールを使えば過去作から低レベルポケモンとか連れてこれるし」

 

「あぁー……そういえば赤緑だとレベル15のハクリューとか釣れたよな。その場合は使ってもいいのか?」

 

「バグじゃないならよし」

 

「念の為に3DSを持って来といて良かったわぁ」

 

「うわぁ……ぐぬぬ、ちょっと待て!」

 

光輝や剛太たちが3DSを取り出す中、焔は突然立ち上がると席を外した。剣介と光輝が廊下に出た焔の様子を窺った。

 

「……あ、葵?いやぁ、ちょっと忘れ物をしちまって……そうそう!俺の部屋にある3DS、ちょっと剣介ん家まで持ってきてくんね?

……いや、本当にごめんて!でも葵しか頼れなくて、頼むよ~!……え、マジで!?やっほう、さすがは葵!持つべきは幼馴染!愛してるぜ!……え、あっ!?……なんだよ、急に電話切りやがって……」

 

電話を終えた焔が部屋に戻ってくると、意気揚々とswitchの電源を入れた。

 

「ふっ、葵に俺の3DSを持ってきてもらうように頼んだ。これで俺も対等だぜ」

 

「「リア充死すべし」」

 

「なぜぇっ!?」

 

「光輝、剣介。今は手持ち選出の時間だぞ。私語は慎め」

 

「「うーす」」

 

メンバーが手持ちポケモンの選出を初めてしばらく。部屋のインターホンが鳴らされた。焔が直ぐに立ち上がって玄関まで駆けていき、来客の対応に当たった。

 

「待ってたぜー、葵!」

 

「はい、3DS。まったく、急に電話してくるから何かと思えば……ゲーム持って来いなんて、よくもまぁ幼馴染に言えたわね」

 

「いやぁ、葵ならこの時間はフリーだって知ってたからな。なんてったって幼馴染のことだ、お前のことならなんでもわかるぜ」

 

「~~っ!!」

 

焔の言葉に赤面した来客の名は陸上葵。焔の幼馴染の少女で、この鈍感野郎に振り回されているツンデレ少女である。それでもなんだかんだで世話を焼いているあたり、かなりゾッコンなのだろう。

 

「羨ましいです、葵さん……」

 

「……って、あれ?静香ちゃん?」

 

「こんばんは、赤羽さん」

 

葵の背後からヒョコッ、と顔を覗かせたのは水橋静香。流静の妹なのだが、一夜の過ちで流静にトラウマを植え付けてからというものの、流静から距離を置かれているブラコン娘である。

 

「こっちに来る途中でね、合流したのよ」

 

「静香ちゃんも来たかぁ。……流静、大丈夫かね……?」

 

「よろしければ、お邪魔しても?まさか、こんな寒空の下に美少女二人を放置するなんて言いませんよね?」

 

「いや、自分で言うんかい。……そうだな、美少女を夜の寒空に放置はよくない。とりあえず上がりなよ。家主じゃない俺が言うのもアレだけど」

 

「お邪魔します」

 

焔が言うやいなや、静香は勝手知ったるとばかりにササッと中へ入っていった。

 

「ほら、せっかくだから葵も……」

 

「……ふーん、静香ちゃんはあんたから見ても美少女なのね」

 

「え?いや、兄妹揃って美男美女ってのは羨ましいもんだが……」

 

「ふんっ、どうせ私なんてそこらの端女とそう変わらないって言いたいんでしょ?美少女なんて言わなかったわけだし」

 

「はぁ?」

 

どうやら葵は、先ほど焔が「美少女」と称した中に自分が含まれなかったことに不貞腐れているらしい。だが、鈍感クソ野郎の焔がそんなことを察する訳もなく、怪訝な表情を浮かべた。

だが、鈍感とは時にとんでもない凶器と化すのだ。

 

「葵は言うまでもなく美少女だろ。他の連中は知らんが俺はちゃんとわかってるし、わざわざ言うことか?」

 

「……っ!……っ!!」

 

「ちょ、いてぇ!?なんで叩く……って、あ、こら!俺を置いていくな!!」

 

「(バカバカバカバカ!焔のバカー!!)」

 

言外に「お前が可愛い?知ってる」と言われ、またまた赤面した葵。照れ隠しに焔に一発パンチをお見舞いしたあと、早足に部屋の奥へと消えていった。

 

「……なんだよ、あいつ」

 

コイツ本気で背中刺されろ。

 

「よぉーす、葵来たけど……って、流静ェ……」

 

「( Д )」

 

「兄さん兄さん兄さん兄さん……」スリスリ

 

「静香ちゃんが来た瞬間からこれよ」

 

「もう重症だな……」

 

焔が部屋に戻ると、静香が流静に頬ずりをしていた。流静はトラウマが蘇ったのか、意識を彼方へ飛ばしているようだった。

そんな水橋兄妹を放置してポケモンの準備を終えた一同は、早速バトル大会を開催した。

 

「まずは光輝VS焔!」

 

「よっしゃー!焔、対よろ!」

 

「うい、対よろ!んじゃあ、行くぜー」

 

「えーっと……はぁ!?ネギガナイトォ!?やったなぁ、お前ぇ!」

 

「お前もふざけんなよ光輝お前ぇ!レベル15のエレキブルとブーバーンが並ぶ絵面のエグさよ!」

 

「金銀だとエレブーとブーバーがレベル20以下でゲットできるからな!」

 

どうやら各々、手持ちに想定外のメンバーが居ることに驚いたようだ。

光輝の手持ちにはバーチャルコンソールから連れてきた低レベル進化ポケモンが複数おり、焔も条件さえ満たせば低レベルで進化できるポケモンを用意していたようだ。

 

「やっべ、忘れとった。安直に懐き進化で固めちまったぜ……」

 

「俺は更に石進化縛りだぜ?」

 

剛太も同様に低レベルで進化できる懐き進化ポケモンを用意しており、剣介はどうやら進化の石で進化するポケモンを用意したようだ。

 

「流静はー?」

 

「……あ、俺?あー……ネタバレは避けたいが、あえてヒントを言うなら道具進化、だな」

 

「「(絶対に輝石ポリ2だ)」」

 

流静も思わぬガチポケを用意しているだろうことを察し、剣介と剛太はヒヤリと冷や汗を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポケモンバトル大会も大いに盛り上がり、配信も大成功を収めた。配信を終えた現在時刻は0時30分。部屋に集まったメンバーは今は年越し蕎麦を食べているところだ。

 

「いやぁ、みんな協力ありがとうな!次回のルールも決まったし、こいつは楽しみだ!」

 

「次はどんなルールだっけ?」

 

「金銀のチャレンジカップルールだ。ゲーム内ではランダムに選ばれた6体のポケモンを使うシングル63」

 

「ただ、ゲームみたいにランダムでポケモンを選べないからな、少々ルールを変えることにしたんだったな」

 

「そう、参加メンバーの手持ちをくじ引きを引いて使うっていうルールだ。クジの内容からは自分自身と前回選んだ人の手持ちは抜きにするっていうルールでな」

 

「ガチパで組むか、ネタパで組むか……」

 

「そこはその人の人間性次第だなww」

 

年越し蕎麦を堪能しながら、彼らは次の配信について話し合っていた。

 

「いやぁ、悪いな葵!年越し蕎麦、作ってくれてよ!」

 

「べ、別に。どいつもこいつもインスタントのカップそばで済ませようとしていたのが、見ていられなかっただけよ」

 

「静香も悪かったな。押し付けたみたいで」

 

「ううん、平気。兄さんの胃袋を掴んでいいのは私だけ」

 

「アッハイ」

 

部屋のキッチンでは葵と静香が料理の腕を振るっている。というのも男五人組、年越しをインスタント麺で済ませようとしていたのだ。具体的には

 

光輝→マルちゃん緑のたぬき(大盛り)

剛太→日清U.F.O.(大盛り)

流静→ごつ盛り天ぷらそば

焔→どん兵衛天ぷらそば(でか盛り)

剣介→ペヤングやきそば超超超大盛GIGAMAX

 

と、「"そば"って名前が付いてりゃなんでもOK」な精神で適当に選んでいたのだ。しかも五人中二人は焼きそばである。……実はこれでも自重した方で、最初期の案は「ペヤングやきそば超超超超超超大盛ペタマックスを五人でつつき合う」というものだったりする。

とにかく事情を知った葵が呆れ果てて説教をした上、「私が作る!」と一念発起して五人のカップそばを没収し、手料理の蕎麦料理を振舞ったのだ。

ちなみに、流静の分だけは静香が「作る」と言って頑として譲らなかった。

 

「いやぁ、実家から送られてきた和蕎麦の使い道、困ってたんだよな。ありがとうな、陸上さん」

 

「ううん、こちらこそ。こんな上質な和蕎麦を送ってくれるなんて、氷室くんのご家族は素敵な方たちね」

 

「ハッハッハ!まぁ、金だけはあるからなぁ、ウチ」

 

剣介は苦笑いしつつ、葵お手製の『長ネギと豚ひき肉の焼き和蕎麦』をすする。その隣では、焔が『オム焼き蕎麦』に舌鼓を打っていた。

 

「かぁー!うめぇー!!」

 

「お口に合ったようで何よりよ」

 

「いや、本当に葵の料理はうめーわ」

 

「だなー。陸上さんの手料理をほぼ毎日、何の見返りもなく食えるとか……焔、殺すぞお前?」

 

「ちょ、剛太!嫉妬はやめーや!」

 

「そういうなら俺にもくれー!幼馴染気分を味わわせてくれー!」

 

「葵は俺の(幼馴染)だ!誰がお前に(幼馴染の手料理を)やるか!!」

 

「へっ!?はっ、えぇ!?」

 

オム焼き蕎麦を強請る剛太を一刀両断し、再び食事に戻る焔。……ただし、発言が色々と抜けてしまっているせいで、一人別方向にダメージを負っているが。

 

「おーい、陸上さーん?」

 

「わ、私が焔のもの……いや、そういうのってまだ早いっていうか……!あ、でもでも焔が求めるなら私……えへ、えへへへ……♪」

 

「……だめだこりゃ」

 

「焔ってさ、いつか絶対に刺されるよな」

 

「あぁ、間違いなく刺される。10万ドル、ポンと賭けてもいいぜ」

 

「兄さんは私と相思相愛だから、刺される心配はないよ?」

 

「家族愛って意味ならな」

 

「わかった!」

 

「それはわかってないやつの『わかった』だ!」

 

葵は焔の言葉にトリップし、静香は静香で己の一途(?)な想いに正直だ。我関せずとばかりに料理を楽しむ光輝と剣介だが、ここで光輝のスマホが震えた。

 

「……ん、電話」

 

「誰ぇ?」

 

「……ミツ姉だ。はい、もしもーし」

 

《コウちゃん?あけましておめでと~》

 

「あけおめ」

 

どうやら光輝の電話相手は従姉の光梨のようだ。光梨もまた、男共にとっては勝手知ったる仲なので、特別席を外すことなく光輝は電話を続けた。

 

「ことよろ、ミツ姉」

 

《今年もよろしく~。うーん、コウちゃんは今年はそっちで年を越すのね……》

 

「なんだよ、寂しいなんて柄でもねぇでしょ?俺だって家族以外と過ごしたい時間があるの」

 

《うぅ~、でも、私はやっぱり寂しいなぁ……。去年まではコウちゃんとコタツ越しに新年の挨拶をしてたから~》

 

「いい加減に弟離れをしなさい、ダメ姉貴」

 

《うえ~ん、コウちゃんの意地悪ー……!》

 

「意地悪くて結構、ミツ姉のためなら鬼にも悪魔にもなってやろう」

 

《ちっちゃかった頃は天使だったのに……》

 

「じゃあ今は堕天使だな」

 

《なんでそう上手い事を言うの~!》

 

電話越しとは言え、特に険悪な様子はなくむしろ良好な仲のようだ。光梨はどこかおっとりとしたような話し方が特徴で、そのために怒っても迫力がないことが本人の悩みなんだとか。

 

「……静香」

 

「いや」

 

「まだ何も言ってない……」

 

弟離れを促す光輝を見て、流静も静香に話を振るが全て話す前に断られてしまった。水橋兄妹の家族離れは永遠に訪れないことだろう。

 

「あー、わかったわかった。来年はそっちで年越しするから!」

 

《……ホントに~?》

 

「ホントホント、コーキ、ウソツカナイ」

 

《……わかった、信じる》

 

「んじゃあ、来年までね」

 

《は~い。バイバイ、コウちゃん》

 

「ハイ、バイバイ」

 

通話を終えると、光輝はうんと背伸びをした。ちょうど電話終を待っていた剛太が光輝に話しかけた。

 

「さっきの電話、光梨さんからか?」

 

「ん?あぁ、ミツ姉から」

 

「すげえよなぁ、光梨さん。若くして医師免許持ってんだろ?そういう身内が一人でもいたら、マジ羨ましいわ」

 

「仕事以外だとふにゃふにゃだけどな、あの人。締めるときは締めるのに、締めなきゃ一生ガバガバだし」

 

呆れる光輝だが、決して本心からではない。光梨のふわふわ具合は自宅内でもちょうど良い緩衝材となっており、機嫌を損ねていても毒気を抜かれてしまうのでむしろありがたみすら感じているほどだ。

 

「剛太はどうだ?来年……じゃない、今年は7番目の甥っ子さんが小学生になるんだろ?」

 

「その前に2番目の姪っ子の高校受験に3番目の姪っ子の中学卒業、さらには5番目の甥っ子の修学旅行の準備に後は……」

 

「……相変わらずだが、このメンツの中で一番苦労しているのって絶対に剛太だよな」

 

「本当に……あんのクソ兄貴が……!」

 

ギリリ、と歯軋りとともに握り拳を作る剛太は、並々ならぬ怒りをその身に滾らせている。

剛太の兄は剛太とは2周り以上も年が離れた生粋のプレイボーイであり、遊んだ女の数は本人曰く「何かしらのスポーツチームは作れる」ほど。当然、遊んだ女の中には子供が出来てしまった人もおり、そのうえ剛太の兄は仕事もできて稼ぎも甲斐性もあるという厄介者。子供が出来た交際相手はまとめて面倒を見ているのだ。

しかも日本では多重婚は法律上では認められていないものの、多重交際については法律でどうこう言われないのをいいことに誰も籍を入れていないのである。入れたとしても離婚後は旧姓を名乗れることを利用して結婚→即離婚で全員が同じ名字を名乗っていたりする。

剛太もその煽りをモロに食らっている。具体的には、たくさんいる甥っ子姪っ子の世話をさせられているのである。

 

「子供の面倒を見るための体力作り、加えて家事能力とか諸々……いつのまにか筋トレみたいになってたのは笑えなかったぜ……」

 

「今じゃ甥っ子姪っ子達からは"頼れる兄貴"だもんな、剛太」

 

「去年の夏に剛太の実家に遊びに行ったけど、前に聞いた時より増えてたよな?」

 

「……そうだよ、また増やしてきたんだよ!稼ぎもあって甲斐性もあって、兄貴自身は悪い人間じゃないんだが世間体が!世間体があぁ!!」

 

「まぁ、傍目から見たら女と遊び回るクズ男だよな」

 

「ちゃんと稼いで面倒見ているからクズではないし、なんなら普通に優良物件なんだけどな……」

 

「クソ兄貴めが……俺が一番負担になってるんだよ察しろよ……!!」

 

「剛太はマジおつかれさん……」

 

忌々しげに呟きながら、コップのお茶を一気に飲み干す剛太。剛太自身、子供の面倒を見るのは嫌いではないが、だからといって見境なく交際相手を増やす兄の蛮行は見逃せない。

いつか絶対にぎゃふんと言わせる、剛太は胸の内に誓った。

 

「剣介、去年は……」

 

「三人。全員断った」

 

「アニメやマンガと違って、御曹司ってのは楽じゃねえのな」

 

「それなー!なんなら今日の夕刊に紛れてお見合い写真入っててビビったー!」

 

剣介もまた、不満を吐露するように声を上げた。

「顔は100点、その他0点」な男、氷室剣介……その実態は、"家庭の生活を支える"をモットーに掲げる「氷室インダストリアル」の御曹司である。ただ、昔から我が強く"我が道を行く"気質だった剣介にとって「肩書きに縛られた生き方は囚人も同然」と反発し家を飛び出したのだ。

……なお、本人は気づいていないが、家族からはしっかりと一人暮らしを支えられている模様。加えて御曹司ということもあって度々実家から送られてくるお見合い写真に辟易としており、送られた写真を検めることなくマンションの焼却炉に突っ込み続けている。

この場に集まっているメンバーは剣介の実態を知りながらも、決して公にしたり人目のつく場所で触れたりはしない。剣介は大事な仲間であり、仲間が面倒事に巻き込まれるのをよしとしないからである。

 

「まぁ、そんなこんなで一年を越えられたわけだよ諸君」

 

「だな」

 

「今年もしっかりいい年にしないとな!」

 

「あ!あれやろうぜあれ!三国志のなんか有名な誓い!」

 

剣介が突然言い出した内容に一同は困惑するも、思い当たる節があったのか光輝が顎に手を当てて考え始めた。

 

「誓い?誓いって言ったら俺、桃園の誓いくらいしかしらんが……」

 

「多分それ!なんか"同じ日に死のうぜ"ってやつ!」

 

「道連れは勘弁してくれ」

 

「オイコラ言い方ぁ!!」

 

焔のボケに突っ込みつつも、なんだかんだで桃園の誓い擬きの準備をする男ども。なお、女性二人は「これは男同士の誓い!」ということで外れている。

 

 

 

 

「俺たち五人、生まれた日は違うけど!」

 

稲妻光輝。

 

「この誓いを立てるからには一心同体!」

 

岩木剛太。

 

「願わくは同年同月同日に死することを願う!」

 

水橋流静。

 

「一人は四人のために、四人は一人のために!」

 

赤羽焔。

 

「共に助け合い、支え合い、一年を乗り切っていこう!」

 

氷室剣介。

 

 

「「「「「俺たちは!生涯通してズッ友だ!!」」」」」

 

 

少年たちは誓い合う。新年に友情の証を立てて、その誓いを決して破らないと。傍で見守る少女二人もまた、少年たちの誓いに胸を熱くしていた。

高校一年生の少年たちの、二年生への進級に向けた友情の誓いであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友情の誓いから数ヵ月後。

 

――願わくは同年同月同日に――

 

彼らの願いは現実になる。

 

 

 

 




たくさんの連れと一緒に迎える新年、マジ羨まですね
……え、オチ?なんのことかな……。


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特別編その2:初夢は時渡りと共に

新年早々、特別編第二弾!
こちらは以前から感想内でちらほら見かけた"アレ"を題材に取り上げてみました。


「……ん」

 

顔に差し込まれた光から逃げるように、ショウは寝返りを打った。昨夜は色々とありすぎたので、もうちょっとだけ寝ていたかったのだ。大長老との会談までは時間もあるので、ここは潔く二度寝と洒落こもうとして……。

 

「ワオン」

 

「……んぇ?ジンオウガ……?」

 

宿の部屋には入れないはずのジンオウガの声が聞こえ、疑問から思わず目が覚めた。目を開ければそこはなぜか森の中で、どう考えても部屋の中ではなかった。

 

「……え、はい?」

 

「クゥン……?」

 

「あ、ジンオウガはとりあえずボールに戻って」

 

「ワン」

 

体を起こしたことで自身がなぜか屋外にいること、周囲に木々は立ち並んでいるがジンオウガを隠し切れるほどではないと判断し、手早くボールに戻すためボールを取り出した。

 

「……あれ?」

 

だが、ジンオウガはボールに戻らなかった。なぜかボールが反応せず、ジンオウガをボールに戻せなかったのだ。なんどもなんども試したり、別のボールを試すが尽くが失敗に終わった。

 

「なぁんでぇ……?」

 

「クゥ……」

 

「……ごめんね、ジンオウガ。どこか隠れられそうな場所、さがすから」

 

「ワン!」

 

聞き分けよく返事をするジンオウガ。頭を下げてきたのでそのまま頭を撫でてから、ショウは改めて周囲を見渡した。

 

「……うわぁ、どうしよう。ここ、どこ?」

 

感じられる自然の雰囲気からして、先程までいたドンドルマのような場所でもなければ、ヒスイ地方というわけでもない。だが、ショウは本能的に懐かしさを感じていた。ヒスイでもないが懐かしい……その感覚から、ショウはここがどこなのかを察した。

 

「まさか、ここ……いや、でも待って?私、最後の記憶は宿の部屋で寝たところまでなんだけど……?いや……」

 

首を傾げるショウだが、身近に似たような体験をした人物が居ることを思い出した。

シズカ・ミズハシ。彼女は自室のベッドで寝たはずなのに、目を覚ましたら異世界のベッドの上だった、という異世界人だ。ひょっとしたら、自身も同じ体験をしているのかもしれない。

もしもそうなら、喜ばしいことだ。念願の「元の世界への帰還」が叶ったのだから。だが、なぜかショウは心から喜ぶことができなかった。

 

「……まだ、やり残したことがあるからだ」

 

「グルル……」

 

「そうだね、ジンオウガ。……黒龍を、あいつをそのままになんて、できない」

 

その理由については、すぐにあたりをつけた。自身に呪いをかけた黒龍ミラボレアス。奴を放置したまま元の世界に戻っても、なんの意味もない。そのことに気がついたからだ。

 

「どうやったら帰れるかなぁ……?」

 

「……!(ピクッ)」

 

「ジンオウガ?」

 

うんうん悩んでいると、ジンオウガが唐突に顔を上げた。一点をジッと見つめ続けていることから、ジンオウガが何かを感じ取ったのだとショウは理解した。

 

「……向こうで、何かあったの?」

 

「ワン」

 

「……わかった。ジンオウガはここにいて、私が行ってくるから」

 

「クゥン……」

 

「大丈夫だよ。ヤバイって思ったら、ガブリアスに乗って飛んでくるから」

 

どれほど離れているかは定かではないが、極み化したガブリアスならすぐに戻って来れる。そう確信して、ショウはジンオウガをその場に留まらせた。なるべく身を隠すよう言いつけて、ショウはジンオウガが感じ取ったという気配の先へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンオウ地方、ミオシティのはずれにある森の中で、ポケモンバトルが繰り広げられていた。……ただし、内容としてはおおよそ正当なバトルといっていいかは定かではないが。

 

「いえ~い!今日のバトルは絶好調~!!」

 

「くぅ~……!俺たちの日頃の努力が、ついに実を結ぶ日が来るとは……!」

 

「この調子でジャリボーイ達をやっつけるのニャ!」

 

「「おう!」」

 

「ピカピーっ!」

 

「ウキキー!」

 

「ピカチュウ!!」

 

「サルノリ!」

 

戦っているのは二つの勢力。片方はロケット団と呼ばれる、カントー地方を中心に活動をしているポケモンマフィアの構成員であるムサシ、コジロウ、ニャースの二人と一匹。

もう片方は、リサーチフェローの活動のためにシンオウ地方を訪れていた少年たち、サトシとゴウだ。

皆さんもよく知る展開なら、ムコニャ組がいつものようにサトシ達に星にされる展開がお約束なのだが……どうやら今回は状況が異なるようだ。

 

「ごめん、サトシ……俺があいつらの攻撃を撃ち落としたから……」

 

「気にすんなよ、ゴウ。ピカチュウもサルノリも、絶対に取り返そうぜ!」

 

「……!ああ!!」

 

現在、ムコニャの手元には檻に囚われたピカチュウとサルノリがおり、彼らを助けるためにサトシたちは戦っていた。

リサーチフェローを終え、帰りの船を待っている間にシンオウ地方のポケモンを探そうということになり、ここミオシティ外れの森に来ていたサトシたち。だが、一瞬の油断からピカチュウとサルノリをロケット団に奪われてしまったのだ。ピカチュウの電撃があれば檻を破壊することも容易だろうが、それだと共に中にいるサルノリにダメージが及ぶ。そのため、ピカチュウも迂闊に電撃を使えずにいた。

対するロケット団が秘密兵器「ロケット・ガチャット」から繰り出したのはケッキングとゴクリンの二体。サトシはウオノラゴン、ゴウはインテレオンを繰り出して対抗した。戦況は、最初こそはサトシたちが優勢だった。特性「なまけ」によって思うように行動できないケッキングにムサシが悪戦苦闘したためだ。……だが、勝負の女神はムコニャ達に微笑んでしまった。

コジロウがやけくそ気味にゴクリンに出した指示「いえき」をゴウのインテレオンが「ねらいうち」で跳ね返した際に……いえきが、ケッキングに命中してしまったのである。いえきはポケモンの特性を消してしまう技。これにより、特性「なまけ」が消えてしまったケッキングが怠けられないストレスで怒りが爆発し、単騎でウオノラゴンとインテレオンを圧倒し始めたのである。

今もなお、怒り狂うケッキングに調子づいたムサシの指示が噛み合い、ケッキングのアームハンマーがウオノラゴンとインテレオンを吹っ飛ばした。

 

「ウノラァ!?」

 

「テルルゥ……!」

 

「いいわよいいわよケッキング!その怒りをジャリボーイ共にぶつけちゃいなさい!」

 

「ケッキーンッ!!」

 

「まずいぞ、サトシ……このままじゃ……!」

 

「くそっ……!どうする……どうする……!?」

 

万事休す……と、その時だった。

 

「……!え、バトル中……?」

 

一人の少女が、草の根かき分け飛び出してきたのだ。その姿を見留めたサトシは、思わず声を上げた。

 

「え、ヒカリ!?」

 

「ヒカリ!なんでここに……それに、その格好は……!?」

 

「……?」

 

飛び出した少女はサトシたちに名を呼ばれるが、なぜかキョトンとした表情のまま固まっていた。

それもそのはず。その少女は、かつてサトシとシンオウを旅した仲間のヒカリではなく、ヒスイの時代に飛んだショウだからだ。

 

「(なんであの人たち、お母さんの名前を知ってるの?お母さんからも、あんな知り合いが居るなんて聞いたことない……)」

 

一方、ショウはショウで母の名を知っている少年たちに困惑していた。母から目の前にいるような少年たちのような友人が居るなど聞いたことはないし、母はシンオウを一人旅で巡ったと語っていたからだ。

 

「(まぁ、それは置いといて……)」

 

「げげっ、シンオウのジャリガール……!?」

 

「どうしてここに!?なんか変な格好しているし……」

 

「いつものポッチャマがどこにもいないニャ……」

 

「……Rのマーク、ロケット団か」

 

ショウはボールを手探り、選出するポケモンを吟味する。ケッキングが血気盛んに暴れている様から、何かしらの理由で特性が機能していないのだろう。

 

「カントーのポケモンマフィアが、他地方くんだり何の用かしら?」

 

「はぁ?何言ってんのよアンタ。あたしたちはこのピカチュウを手に入れるために、なんどもあんたらと戦ったじゃない!」

 

「おーい!忘れるなんてひどいぞー!!」

 

「誰のことを言ってるの!私の名前は、ショウよ!ガブリアス!!」

 

「ガッブァアアアァッ!!」

 

自身の名を告げながら、ショウはボールを投げた。中から飛び出した極みガブリアスは、大気を震わせるように咆哮を上げた。

 

「ガ、ガブリアスゥ!?」

 

「お、おいおいおいおい!なんか、でかくないか!?」

 

「そ、それどころか姿もまるで違うのニャ!」

 

ムコニャは極みガブリアスの姿に恐れ戦くように身を寄せ合っている。一方、驚いているのはムコニャだけではない。

 

「えぇ!?あ、あれが、ガブリアスだって!?」

 

「背びれは翼みたいになってるし、爪も二本に増えてる……メガガブリアスとも全然違う!」

 

ゴウもサトシも、初めて見る姿のガブリアスに驚愕していた。特にサトシはカロス地方でメガガブリアスを目にしたことがあるだけあり、驚きも一入だった。

 

「それにあいつ、ショウって言ってた……」

 

「ヒカリじゃないんだな……でも、そっくりだ」

 

なにより、仲間のヒカリと姿かたちは似ていても全くの別人だったこと。その衝撃が非常に大きかった。

 

「えぇい、怯むんじゃないわよ!ケッキング、きあいパンチ!!」

 

「ケッキンッ!!」

 

「受け止めろ」

 

「ガブ」

 

大きな衝撃とともに、ケッキングの拳が極みガブリアスに直撃した……かに見えた。実際は、龍風圧に阻まれて拳は届いておらず、極みガブリアスはまるで微動だにしていない。

むしろケッキングを見下ろし「なんなんだぁ、今のはぁ?」とでも言いたげに口角を釣り上げた。

 

「ケッ、ケッキ!?」

 

「ドラゴンクロー!」

 

「ガッブアアアアッ!!」

 

「ケッキーッ!?」

 

「「「えええええええっ!?」」」

 

怒涛の勢いで暴れまくっていたケッキングが一撃で倒されてしまい、ムコニャ達の間に動揺が走る。

 

「己の限界を超え、極みに達した私のガブリアスに!そんな柔な拳が効くものか!!」

 

「ガブァ!!」

 

「「「あわわわわ……ヒィッ!?」」」

 

ショウが吠えると共に極みガブリアスも威嚇をする。すっかり怯え切ったムコニャに、追い打ちをかけるように激しい破壊音が響く。

木々をなぎ倒し、地響きを鳴らし、姿を現したのは……サトシもゴウも、ムコニャ達でさえ見たことも聞いたこともない、蒼光の雷を纏う巨大な狼ポケモンだった。

 

「「「わあああああああっ!?!?!?!?」」」

 

「な、なんだ、アイツは……!?」

 

「ポ、ポケモン……なのか……!?」

 

威圧感を放ち、ムコニャ達を見下す巨大なポケモン。その圧倒的な存在感に、敵意を向けられていないにも関わらず、サトシもゴウもまるでその場に縫い付けられたように動けなくなっていた。

 

「ウ、ウゥ……」

 

「ウオノラゴン!?」

 

「……ッ」

 

「インテレオン、どうしたんだ……?」

 

それは、ほかのポケモンたちも例外ではない。ウオノラゴンは目の前の巨大ポケモンに怯えきり、サトシの背後に隠れてしまった。インテレオンは指を構えて技を放てる状態にいるが、よくよく見ればその腕は震えている。

特にゴウは、伝説のポケモンを前にしても臆することのないインテレオンが、こうも震えるほどに緊張している姿を見たことがなかった。

 

「ウオオオオオオオオオオオンッ!!」

 

狼ポケモン……ジンオウガが一層大きく咆哮を上げると、背中の甲殻や前足の爪が展開された超帯電状態へと移行。さらにその勢いのまま、雷電を纏った前足でムコニャ達をド派手にぶっ飛ばした。

 

「なんかそっくりさんが現れるし……」

 

「見たことないポケモンが次々に出てくるし……」

 

「情報量が多すぎるのニャー!!」

 

「ソーナンスッ!」

 

「「「やなかんじ~!?」」」

 

ムコニャ達はあっという間に星になって見えなくなった。それから超帯電状態を解除したジンオウガはショウにそっと寄り添うと、ショウもまたジンオウガの頬を撫でて応えた。

 

「結局来ちゃったかぁ……でも、ありがとうジンオウガ」

 

「ワン」

 

「ガブリアス、檻を」

 

「ガブ」

 

極みガブリアスが爪で檻を破壊すると、ピカチュウとサルノリはそれぞれサトシとゴウの元へと駆けていった。

 

「ピカピ!」

 

「ピカチュウ!」

 

「キキ~!」

 

「サルノリ!よかった……!」

 

相棒が無事に戻ってきたことを喜ぶサトシ達だが、ぶっちゃけそれどころではないので喜びもほどほどにショウの方へと向き直った。

 

「えっと、ショウ、だっけ?サルノリ達を助けてくれてありがとな」

 

「……いえ、別に。大したことじゃないので」

 

「凄いなぁ、ショウのガブリアス!それってメガシンカなのか?それにこっちのでっかいポケモンもスゲェ!電気を纏ってたし、でんきタイプかな?」

 

「あの、ちょっと……!」

 

思いのほかグイグイ来るサトシのコミュ能力に、ショウは思わずタジタジになる。ガブリアスはともかくジンオウガは誤魔化しようがないのでどうするか迷っていると、ジンオウガが低く唸り声を上げた。

 

「グルル……!」

 

「……っと、悪い!なんか一方的に聞いちゃったな」

 

「いえ、あの……ジンオウガ、めっ」

 

「……クゥ」

 

「ジンオウガ……っていうのか?初めて見たなぁ……。それにそのボール、ミオシティの体験コーナーで使ったのと同じ……?」

 

ゴウはショウが使っているモンスターボールが、かつてミオシティにある図書館で開かれたシンオウフェスの体験コーナーで使った旧式のモンスターボールと全く同じであったことに気がついた。

現在は体験コーナー用に復元されたものが数個あるだけで、それ以上のものはないはずである。だが、ショウはその過去のモンスターボールと同じボールを使っている。それだけでなく、ショウの服装も当時のポケモン調査隊が着ていたという制服と同じだ。

 

「(ここまで共通点があるなんて……ただのコスプレイヤー、じゃないよな……)」

 

特にゴウが気になるのは、目の前にいる巨大なポケモン、ジンオウガだ。実は先ほど、こっそりスマホロトムを起動しポケモン図鑑を開いたのだが、ジンオウガに焦点を当てた途端に砂嵐になったのだ。さらにガブリアスも通常の姿しか表示されず、ショウのガブリアスの姿は図鑑に登録されなかった。

 

「(ポケモン図鑑が対応できないなんて、明らかにおかしい……ガブリアスも、このジンオウガってポケモンも、絶対に普通じゃない)」

 

伝説のポケモンすら、図鑑に登録することができるのだ。にも関わらず図鑑に登録できなかったガブリアスとジンオウガ……二体のポケモンに、決して小さくはない疑問が生じた瞬間であった。

 

「――二人ともっ!!」

 

「?」

 

「あれ、シロナさん?」

 

「っ!!」

 

突然、上空から声がかかったかと思うと、空から誰かがガブリアスに乗って飛んできた。その人物とは、シンオウチャンピオンのシロナ。考古学者としての側面も持つ、シンオウ地方で一番強いトレーナーである。

シロナは相棒のガブリアスから飛び降りると、ショウとジンオウガを見て固まった。

 

「――ぁ……」

 

「シロナさん、どうしてここに……?」

 

「……っ。実家でヒスイ地方に関する気になる資料が見つかったから、ミオシティの資料館で検分しようと思って来たのよ。そしたら、町のはずれで蒼い光の電撃が見えたから、まさかと思って来てみたら……」

 

「…………」

 

「グルル……」

 

「"嵐の鮫竜"……それに、"蒼光を纏う雷狼"……まさか、本物……?でも、どうしてここに……!?」

 

「……行こう」

 

「ワン」

 

「……っ!!ま、待って……どうか話を……!」

 

「待ちません。……私たちには、帰るべき場所がある」

 

シロナが引き留めるのも聞かず、ショウは極みガブリアスをボールに戻すとジンオウガの背に乗った。ジンオウガはサトシたちを一瞥したあと、ショウの方へと視線を戻した。

 

「いいよ、気にしないで。行くよ」

 

「ワオン」

 

「まっ――」

 

力強く大地を蹴り上げ、ジンオウガは駆け出した。ジンオウガの姿はあっという間に見えなくなり、シロナは脱力するように肩を落とした。

 

「……ふぅ」

 

「あの、シロナさん?ショウたちがどうかしたんですか?」

 

「ショウ……あの子の名前は、そういうのね?」

 

「はい」

 

「……二人とも、まだ時間はある?よければミオシティの資料館まで一緒に来て欲しいのだけれど」

 

「ゴウ、どうだ?」

 

「えっと……よかった、時間はまだ大丈夫だ」

 

「それじゃあ、シロナさん。一緒に行きます」

 

「ありがとう」

 

シロナに連れられ、サトシたちは一路ミオシティへ戻っていく。なぜシロナがあれほど焦燥に駆られていたのか、ショウ達は何者なのか、疑問を残したまま……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジンオウガの背に揺られながら、ショウは今後の事を考える。アカイやシロがうまいこと異変に気づけば、ミラルーツの力を借りて自分を迎えに来てもらえるはず。ひとまず、その可能性にかけることにした。

 

「……ふわ……」

 

「クゥ……?」

 

「ん、ごめんねジンオウガ……ちょっと、眠くて……。しばらく寝るね……」

 

「ワン」

 

「うん、お休み……」

 

ショウはジンオウガの背に全身を預け、眠る態勢に入る。それに合わせてジンオウガも速度を緩め、ゆっくりゆっくりと歩を進める。

微睡みに身を任せ、ショウは意識を沈めていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その出会いは現実か、夢幻か。そこに意味はあったのか。

その答えを知る者は、おそらくいない。いるとすれば、それは……神のみぞ知る、ということだろう。

 

 

 

 




はい、ショウちゃんinアニポケ時空、でした。
当たり前なんだがジンオウガがオーバースペック過ぎるんよ……睨まれてなお気絶しなかったムコニャは伊達に劇場版でいろんな目に遭ってないってわけですね。


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【面接の時間】我らモンハン部異世界支部【大長老マジでけぇ】

二週連続で掲示板回だぁー!





1:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

流石はドンドルマの大長老……圧倒的な存在感に威厳、堂々たる佇まいは伊達に長生きはしていない卵シンジケートの裏ボス……

前世でゲーム画面越しに「なんかスゲェでけぇ奴がいる」とは思っていたが、改めて本物と対峙すると何もかもが違った……

今回の対談、とてもタメになるものだ、この経験は一生モノになるだろう

 

 

 

 

……さて、と……

 

 

2:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ZZZZZZZZZ……

 

3:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ZZZZZZZZZ……

 

4:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ZZZZZZZZZ……

 

5:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ZZZZZZZZZ……

 

6:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

起きろやこのバカ者共があああぁぁぁっ!!

 

7:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

どわぁおっ!?びっくりしたー……

 

8:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ふわぁ……終わったー?

 

9:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

お前ら揃いも揃って、校長先生の話みたいなノリで居眠りしてんじゃねぇよ!!

 

10:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやぁ……なーんか偉い人の話って眠くなっちまうんだよなぁ

 

11:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ハッ!?

 

12:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うおっ、なんだなんだどうした?

 

13:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、なんか変な夢を見てたわ……

 

14:陸の女王 ID:MonHunPHr5

あー、そういえば前世の世界だと今頃は元旦かしらね、それじゃあ光輝の初夢ってことかしら?

 

15:空の王者 ID:MH2nddosHr8

え、葵って今の今まで日付を数えたのか?

 

16:陸の女王 ID:MonHunPHr5

もちろん、焔とあけおめの挨拶をしたかったからね

というわけで、明けましておめでとう焔!今年もよろしく!

 

17:空の王者 ID:MH2nddosHr8

アッハイ、あけおめことよろです

 

18:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……なんか、引いてる?

 

19:空の王者 ID:MH2nddosHr8

滅相もございません!マム!!

 

20:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……で、夢の内容は覚えてんの?

 

21:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、それが全然……なんか、高一の正月風景だったような……ショウちゃんとシンオウにいたような……

だめだ、なんかすっげぇ曖昧だわ……

 

22:空の王者 ID:MH2nddosHr8

えぇ……なんかすげぇ気になるやん、ちょっと頑張って思い出せよ

 

23:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

高一の正月……あー、ポケモンバトル大会やったやつか

 

24:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おーおー懐かしい!

いやー、あれは楽しかったなー

 

25:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だなー、俺が安直になつき進化するポケモンで挑んだらお前ら……

 

26:空の王者 ID:MH2nddosHr8

エグい手を使う奴らばっかだったな

 

27:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

イカレたメンバーを紹介するぜ!

「ラス一?心眼地割れでさようなら!氷室剣介!」

 

28:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

イエーイ!d(^O^)b

正確には「すいすいタスキ心眼地割れニョロボン」な

手持ちは夢キュウコン、シャンデラ、ルンパッパ、ジバコイル、エレザード、夢ニョロボンでーす

 

29:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

「夢の第四世代新進化!稲妻光輝!」

 

30:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁ、メンバー全員VC金銀で揃うんだけどな

手持ちはエレキブル、ブーバーン、トゲキッス、ポリゴンZ、グライオン、ドサイドンだ

全員VC産だから、夢特性実装済みポケモンは全員夢特性だ

 

31:陸の女王 ID:MonHunPHr5

ドサイドン?サイドンの進化レベルって40超えてなかったかしら?

 

32:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あぁ、葵はそこまで知らんか

第四世代……まぁ、ダイパ以前のシリーズならNPCと交換したポケモンのレベルはプレイヤーが出したポケモンと同じになるんだよ

 

33:陸の女王 ID:MonHunPHr5

へぇ~、それで?

 

34:空の王者 ID:MH2nddosHr8

VC金銀のフスベシティでメスのハクリューをサイドンと交換してくれるNPCがいてな、そいつとメスのハクリューを交換すればサイドンがもらえるのよ

しかもハクリューはVC金銀クリスタルのいずれも45番道路(フスベシティ南の道路)で、10%の確立ですごいつりざおで釣ることが出来る

そのレベル、なんと驚異のレベル10!

 

35:陸の女王 ID:MonHunPHr5

イエローカップの参加条件はレベル15~20……なるほど、少しレベルを上げれば参加条件を満たせるわね

 

36:空の王者 ID:MH2nddosHr8

後は交換と転送で剣盾まで連れてって、そこで進化させれば万事オーケーよ

 

37:陸の女王 ID:MonHunPHr5

その理屈でいくと、剣介のジバコイルも似た理由かしら

 

38:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺の場合はVCクリスタルでレベル16のダグトリオを捕って、さらにそのダグトリオを同じクリスタルのカントー発電所でNPCからレアコイルを交換してもらった

そのレアコイルを剣盾まで送ってから進化させた……って感じだな

 

39:陸の女王 ID:MonHunPHr5

進化ポケモンを低レベルで入手できるって、やっぱり壊れてるんじゃないかしら……

 

40:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だからこそ、イエローカップのような変則ルールでも使えるわけよ

 

41:陸の女王 ID:MonHunPHr5

わざわざそこまでするって、大変ねぇ……

 

42:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

続けて紹介していくぜ

「用意すんのめんどくせぇ!赤羽焔!」

 

43:空の王者 ID:MH2nddosHr8

めんどくせぇ分、やり甲斐はあったがな!

手持ちはネギガナイト、デスバーン、エルレイド、クレッフィ、プテラ、ギャロップだ

 

44:陸の女王 ID:MonHunPHr5

ギャロップもVC産ね?

 

45:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おうよ!

VC金銀クリスタルなら、夜に道路でレベル15以下のクサイハナが捕まえられるんだが、クサイハナを欲しがってるNPCが金銀にはいてな

そいつがギャロップとクサイハナを交換してくれるっていうから、これは使わないわけにはいかねぇと思ったわけよ

 

46:陸の女王 ID:MonHunPHr5

なんでギャロップ?

 

47:空の王者 ID:MH2nddosHr8

赤だから!!

 

48:陸の女王 ID:MonHunPHr5

(*´∀`*)カワイイ……

 

49:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

「ポケモンが怖い生き物?ポケモンは友達、怖くないよ!岩木剛太!」

 

50:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんの捻りもないなつきパだがな

手持ちはブラッキー、ルカリオ、ロズレイド、カビゴン、ラッキー、クロバット

悪あがきに輝石ラッキーを搭載したぐらいで、コンセプトもクソもねぇが

 

51:空の王者 ID:MH2nddosHr8

最後はガチ勢!「([∩∩])<殺してやるよ 水橋流静!」

 

52:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おい、俺だけ殺意が高いみたいに言うな

手持ちはポリゴン2、オトスパス、マリルリ、ツボツボ、ランドロス(霊獣)、ミロカロスだ

 

53:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

輝石ポリ2に害悪ツボツボ、腹太鼓力持ち兎に火炎玉鱗蛇……極めつけにコピペロス

 

54:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

これだけ揃えて殺意否定するのはただのサイコパスぞ?

 

55:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おかげさまで勝たせていただきましたよと

 

56:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

血も涙もねぇわこいつ……

 

57:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

やっぱトリルパルシェンで印持たせたほうがよかったかなぁ

 

58:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやぁ、懐かしいわぁ……思えば、あの時の桃園ごっこがフラグだったんかね

 

59:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

正直な話、言いだしっぺの身としては責任感と罪悪感が半端ねぇっス

 

60:陸の女王 ID:MonHunPHr5

それはもう済んだ話でしょ?いつまでも過ぎたことでクヨクヨしないの、なんだかんだで死後もこうして全員集まれたわけなんだし、気にすることないわ!

むしろ転生してもズッ友でいられるなんてそうそうないわよ、今この瞬間があることをありがたく思わなくちゃ

 

61:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

葵ぃ……お前、本当にいい女だなぁ……よし、焔は殺そう

 

62:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おぉい!?なんの脈絡もなく毎回殺されそうになる俺の立場よ!

葵がいい女なのは俺も思ってるが、それが俺に殺意向ける理由にはならんだろうが!

 

63:陸の女王 ID:MonHunPHr5

(´∀`*)エヘヘ

 

64:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そういうところなんだよなぁ

 

65:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

馬鹿は死ななきゃ治らない、とは言うが……焔は一回死んでもこれだから、何度転生しようが一生治らんだろうな

 

66:空の王者 ID:MH2nddosHr8

えぇい、俺の話はもういい!

俺としては、光輝が見た初夢の内容が気になるわ!ショウちゃんとシンオウ地方にいたってマ?

 

67:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いやいや、実際記憶も曖昧だから何とも言えんぞ?ただ、ヒスイ地方じゃないっていうのは確かだったな……こう、なんだ、感覚的というか本能的というか……

 

68:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

本当に曖昧にしか覚えていないんだな……

 

69:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ただ、なにかをぶっ飛ばしたりしたようなないような……

 

70:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

無理に思い出さなくていいぞ、所詮は夢だ

 

71:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そうかぁ……

 

72:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

流静ー、ところで大長老はなんてー?

 

73:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

この居眠り共が……ゴホン!

一応、大長老達にはショウちゃんの事情を説明したようだぞ、その上でギラティナをヒスイの古龍扱いにして諸々を説明した

 

74:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ギラティナが開いた時空の裂け目にミラボレアスが便乗したことも?

 

75:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

もちろん、それがギラティナの意図しないところであったこともな、むしろギラティナはミラボレアスに利用された被害者っていう体で説明できたところが大きい

 

76:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あの中二病ドラゴンがなぁ……

 

77:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

イタタタタ……

 

78:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おいばかやめろ、まだ傷は浅いんだ許してください

 

79:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

だが、「モンスターハンター」の世界の住人にも"ミラボレアスは自力で時空を渡れる"という共通認識を得られたことも幸いだ

あとは、そうだな……このまま歌姫と共にメゼポルタへ向かうショウちゃん達に、静香が同行することになったくらいか、それに伴ってネネ、ニール、エイデンの計四名のハンターも同行することとなった

 

80:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ニール……ワールド主人公とエイデンはともかく、ネネさんがついてくるのって……

 

81:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……静香、だろうな……

いや、妹を慕ってくれる分には兄としては特に言うことはないが、癖が強すぎるんだよな……

 

82:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁ、根はいい子みたいだしな

 

 

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が参加しました――

 

 

――「赤いなぁ……」が参加しました――

 

 

――「絶海はプライベートビーチ」が参加しました――

 

 

 

 

83:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ただいま

 

84:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おお、ルーツ!……ショウちゃんの容態は?

 

85:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……辛うじて呪いを押し止めたわ

けど、かなりまずいわね

 

86:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

いよいよ呪いが表面化してきた、ショウの背中には呪いによる紫紺のひび割れが生じている

 

87:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

ひび割れは心臓の位置、背中側から発生している

このひび割れは背中から胸に向かって伸びている……多分だが、同じく胸側の心臓の位置にたどり着くようになっているんだろう

まったく悪趣味この上ない……古龍級生物まで持ち出したりして、よっぽどポケモンバトルに負けたのが頭にきたのか?

 

88:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

まったく……我が半身ながら、なぜあそこまで性悪になってしまったのやら……

 

89:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あなたの時は、まだハンターと最後まで一騎打ちだったものね

 

90:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

当然だ、ハンターは手ずから始末をつけねば気がすまん、それをあの野郎は……!

 

91:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

しかし困ったな……ミラボレアスまでもが古龍級生物を連れてくるとは……

 

92:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それにあいつ、妙にショウちゃんの手持ちの弱点を把握してたよな?技の選択に誤りがないところがおかしい

 

93:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

確かに……ミラボレアスにポケモンの知識があるとは思えん

 

94:空の王者 ID:MH2nddosHr8

手持ちの選出もハンターに似た要素を持ったポケモンが中心だったみたいだし、一体どこで知識を得たんだ?

 

95:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

あぁ……ダイマックスティガレックスの討伐後に突貫で用意したにしては、随分と知識を備えていた

下調べをする余裕もなかったはずだ……なぜだ?

 

96:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そもそもアノ子にポケモンの世代とかわかるのかしら?何をきっかけにポケモン……いえ、「ポケットモンスター」のことを知ったのやら……

 

97:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

…………

 

98:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……流静?

 

99:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

一つ、心当たりがある

 

100:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

なに?

 

101:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

おぉ、流石は人間たちの頭脳担当!それで、心当たりとは?

 

102:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……これは誰も知らないことなんだが、実はポケットモンスターにはモンスターハンターのモンスターの要素を強く受け継いだポケモンがいる

それも他ならぬ、あのミラボレアスの、だ

 

103:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

なにっ……!?

 

104:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

へぇ、私たちの……

 

105:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

当然、モンハンはカプコン、ポケモンは任天堂……親が違う以上、似たような生き物を出せばパクリだ著作権だと騒ぎになることは請け合い……だから、極々一部だけを似せた、"言われなければわからない"程度の要素しか加えられなかった……

 

106:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

そんなポケモンがいたのかぁ!

 

107:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……そんなポケモン、いたか?

 

108:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、知らん……

 

109:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

知らんのも無理はない、そのことを綴ったツイッターも投稿から十分もしないうちに削除されたからな

 

110:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……光輝、わかる?

 

111:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さっぱりだが?

 

112:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ミラボレアスに似た要素……といっても、さきほど言ったとおり極々一部しか似せられなかった箇所……それは、ミラボレアスの首だ

 

113:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

首だと……?

 

114:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そう、具体的には首長な点だな

ポケモン世界でも特にわかりやすく首長の要素を持ったドラゴンポケモンが、確かに一体存在する

そのポケモンとは……

 

115:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

そのポケモンとは……!

 

116:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ジジーロンだ!!

 

117:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

な!

 

118:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

ん?

 

119:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

だ!?

 

120:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

とおおぉぉぉぉっ!?!?!?!?

 

121:空の王者 ID:MH2nddosHr8

何言ってんだこいつら!?

 

122:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うそだろ流静!

 

123:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ああ、うそだぜ!だが……マヌケは見つかったようだな

 

124:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

……あ

 

125:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ボレアスッ!!

 

126:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

貴様、見ていたなッ!!

 

127:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

なぁるほどな……ずっとスレに隠れ潜んでいたのか!そうして我々の会話を盗み聞き、情報を少しずつ抜き取っていたわけだ!

 

128:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

ぐぬぬ……うっかり反応してしまったぜ……

 

129:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

スゲェや、流静!よくミラボレアスがスレに隠れてるって気づいたな!

 

130:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、全然思わなかったぜ

だがどっかで聞き耳を立てているなら、俺たちの前世でしか知りえない情報……それもとびきりブッ飛んだ情報を流せば反応はするだろう

そう……ツッコミ気質なら、たとえ嘘でもツッコミをせざるを得ないような情報をな!

 

131:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

くっそー!まんまと騙された!!

 

132:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ボレアス……あなた……!!

 

133:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

覚悟は出来ているんだろうな……!!

 

134:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

くそぅ……思わぬところで袋小路に……!

……一通りボコしてきたから、ちょっと様子を盗み見てやろうと思った矢先にこれか……!

 

135:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

待て、ボレアス……お前、今どこにいるんだ?

 

136:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

……カロスってところだ

イビルジョーをメガシンカさせてやろうと思ってな、メガシンカの勉強も兼ねてバトルの腕を磨くついでにカロス中のメガシンカ使いを片っ端からシバキあげてやろうと思ったわけだ

 

137:空の王者 ID:MH2nddosHr8

こいつ……また余計な火種をばらまいてやがるぞ!?

 

138:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

チャンピオンだとかリーグ優勝者だとか、サーナイトもリザードンも強い強いと言う割には全然大したことなかったわ!!

所詮は下等生物、人間!俺様の極限メガシンカ軍団に勝てるわけ……

 

139:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

極限……?

 

140:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

メガシンカ……?

 

141:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

あ、やべ……

 

142:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ミラボレアス、おま、お前……!ついにやりやがったな!!

 

143:空の王者 ID:MH2nddosHr8

とうとう堕ちるところまで堕ちやがったか……!!

 

144:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……ポケモンを極限化させるに飽き足らず、さらにはメガシンカまで……!!どこまでも非道の限りを尽くすつもりか!!

 

145:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

……ハッ、それがなんだ?勝てばいいんだよ、勝てば!

卑怯卑劣など、所詮は弱者の戯言!!勝った者が強者!勝った者が正義!!

勝利のために策を弄し、手段を模索し、使えるものは全て使う!!貴様らはそうして努力する者を「方向性が気に入らない」というだけですぐに「卑怯者」呼ばわりする!!

俺様はこれでいい!俺様はこれでいいのだ!!勝利のために手段を選ばずなんでも試すならまだしも、わざわざ手段を選んで敗北した後に「ああすればよかった」などクソみたいな言い訳など誰がするか!!

 

146:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

キサマぁッ!!この上まだ恥の上塗りを……!!

 

147:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……いいぜ、かかってこいよ

 

148:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

……なに?

 

149:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

稲妻光輝……!?

 

150:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

策でもなんでも仕掛けてこいよ、俺たちはそれを知った上で全て叩き潰してやる

今更お前が何をしてこようが、もう俺たちは金輪際お前に負けない……絶対に、だ

この爪牙で、テメェの素っ首、掻っ切ってやる

 

151:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

光輝……!

 

152:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……へっ、そうこなくっちゃな!

 

153:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あぁ、そうだ……ショウちゃんは二度とお前には負けないぜ、ミラボレアス

ショウちゃんはな、ああ見えても結構な負けず嫌いなんだ、ここまで古龍級生物に負けっぱなしだからそろそろ勝ちを取りに行かせてもらうぜ

 

154:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それに策を弄すだの手段を模索だの……お前のようなやり方を、なんと言うか知ってるか?

人はそれを……小細工って言うんだよ!そんなやり方しか選べないお前に、俺たちは絶対に負けない!!努力だけでは超えられない壁というものを、見せてやる!!

 

155:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

グウウゥゥゥゥ……!!

 

156:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ボレアス……なぜそこまでして……!

 

157:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

黙れ、祖龍!俺様は……俺様は……!!

 

 

――「世界絶対滅ぼすドラゴン」が退室しました――

 

 

158:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ボレアス……!!

 

159:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

……やぁれやれ、すっかり拗らせてるねぇ、あの坊やは

 

160:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

追跡を試みる、あとは頼んだ

 

 

――「赤いなぁ……」が退室しました――

 

 

161:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……なんか、すまんな、勝手なことばかり言って

 

162:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

構わない、むしろ奴がどのような手段を講じてこようが、宣言通りに叩き潰してやればいいだけだ

 

163:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

古龍級生物へのリベンジだってあるんだ、もう負けは許されねぇぜ……!

 

164:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……葵、もういいぞ

 

165:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……焔、大丈夫?

 

166:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あぁ、ある意味、喝を入れられた気分だ

気合いを入れ直して行くぜ、肉体面でも精神面でも負けるわけにはいかねぇんだ……!

 

167:陸の女王 ID:MonHunPHr5

えぇ、そうね……!

 

168:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

こっちも、ちょくちょく模擬戦してるからな

 

169:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ガラナさんらにちょっと無理してもらって何度かバトルさせてもらってるからな

 

170:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

身内同士とはいえ、何も経験しないよりかはマシだからな!

 

171:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺も最近思い出したんだ……レウスの中でも最強形態、「破滅の翼」をな

目標は破滅レウス!頑張っていくぞ!!

 

172:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

俺も何とかして極み個体にならないと……これ以上、ショウちゃんにばかり負担を強いるわけにはいかないからな

 

173:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……逞しいわね、彼らは

 

174:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

ははっ!だからこそ、祖様は人間が大好きなんでしょ?

 

175:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

えぇ……どれだけ苦境に立たされようとも、決して最後まで諦めない

希望がある限り何度でも立ち上がり、その先にある未来をつかみとろうとする強い意志

これだから面白い……だからこそ、私は人間を愛しているわ

 

176:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

ならば、我々にできることは、彼らを信じることですな

 

177:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

もちろんよ、彼らは必ず勝てる……私が愛した人類が、最強でないはずがないわ

期待しているもの……頑張ってね、みんな

 

178:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

せんせー!進化するにはどうしたらいいんですかー!

 

179:空の王者 ID:MH2nddosHr8

メガストーンを抉り込むようにして食うべし!

 

180:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

せんせー!俺だけメガストーンがありませーん!

 

181:空の王者 ID:MH2nddosHr8

カバンの中も机の中も探しましたかー!?

 

182:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

せんせー!テルがなかなかショウちゃんを押し倒しませーん!

 

183:空の王者 ID:MH2nddosHr8

CERO:A世界にCERO:Dレベルの要求をしないよーに!

 

184:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

せんせー!お腹がすきましたー!

 

185:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そこら辺でイワークでも食べてなさい!

 

186:陸の女王 ID:MonHunPHr5

せんせー!先生の赤ちゃんが欲しいです

 

187:空の王者 ID:MH2nddosHr8

すみません勘弁してください

 

188:陸の女王 ID:MonHunPHr5

なんで素で返すのよ!!

 

189:絶海はプライベートビーチ ID:MH3riGDSHr999

……大丈夫、ですよね?

 

190:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ヤバイ、ちょっと不安になってきた……

 

 

 

 




「……ふぅ、流石に本編から脱出すればついてはこれまい……」

「見 つ け た」

「ぎゃあああぁっ!?」




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ドンドルマの大長老

今回はちょっと短めです。


白無垢を纏う花嫁とともに、三三九度の盃を交わす。神楽の奉納も無事に終わり、二人で揃って誓詞奏上を果たす。御神前に玉串を捧げ、ひとまず挙式の全体の流れは終わった。

まさか自分がこんな幸せを甘受できるとは思わなかった。思えば花嫁との出会いも唐突なことで、馴れ初めと言える馴れ初めもあまり自慢できるほどのものでもないだろう。右も左も分からぬ彼女に、ヒスイで生きていくためのあれこれを伝授しただけなのだから。

しかし、その後も縁があって様々な問題解決に勤しむ彼女を博士とともに労ったり、時には勝負の腕を競い合ったり……あのひと時は、本当に幸せと言えるだろう。

 

花嫁が、ゆっくりとこちらを見る。出会った当初は自分と同じだった身長も、今や自分の方が大きく伸びた。照れたように顔を赤くし、けれど幸せそうに微笑むこの世界で最も可愛くて美しい自分の花嫁。

 

その後、部屋に移動し二人揃って布団の上に座る。男女七歳にして席を同じゅうせず、と言うが、今や自分たちは夫婦なのだ。そして、夫婦となった男女が迎える最初の夜……初夜にすることなどしれている。

 

同じ布団にもぐった花嫁……否、妻がゴソゴソと動き、自分の上に乗った。照れと喜びに火照った体と赤い顔で、満面の笑みを見せてくれた。

 

「幸せにしてくださいね……先輩……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢だった。

 

「なんつー夢見てんだおれぇー!?」

 

絶叫とともに飛び起きた少年、テル。相当衝撃的だったのか全身には変な汗が吹き出ており、緊張からか高揚からか顔も赤い。

 

「(いやいやいや、本当になんて夢だよ!?おれがショウと……け、けけ、結婚、とか……!)」

 

改めて夢の内容を思い返すが、テル自身はありえない、と首を振る。ショウも人間で女性なので、歳を重ねればやがて結婚もするだろう。だが、その相手が果たして自分でいいのだろうか、と疑問がよぎる。

ショウはヒスイを救った英雄だ。赤い空の異変を解決するだけでなく、ジンオウガをはじめとするヒスイに生息していた巨大ポケモンを捕らえて操り、時空の歪みを通じて別地方から流れ着いた巨大ポケモンと戦いこれらを鎮めてきた。どのようなポケモンでも十全に力を発揮させる判断能力と洞察力、相手が未知のポケモンであろうと決して臆さない勇気と度胸、ポケモンたちとの強い絆……ポケモンと共に生きる者として、大変素晴らしい人だ。

反面、テル自身はショウと比べると自分は何倍も見劣りする、と考えている。ポケモン調査の手ほどきをしたのはテルだが、その後はショウ自身の成長によるものだ。ショウがコトブキ村から追放されたあとは死に物狂いで強くなったテルだったが、ショウはさらにその上を行っていた。

『極み』や『二つ名』と呼ばれるポケモンの強化個体、そして巨大ポケモン群……どこまでも上り詰めて、いつか手が届かない場所に行ってしまうのではないか。そんな漠然とした不安が、テルの内から湧いてきた。

 

「(……って、なわけあるか。ショウはいなくなったりなんてしない。もしいなくなるとすれば、それは……元いた場所に、帰る時だろ)」

 

そうなると少し寂しくはなるが、それも仕方のないことだとテルは考える。

かつて暴走したディアルガとパルキアを捕獲し、赤い空の異変を解決したあとのこと。シンワ祭りで平和と共存を祝ったあと、ショウが一時期心神喪失状態に陥ったことがあった。ショウは事態を解決したあと、時空の裂け目を通って元いた場所に帰るつもりだったのだ。しかし、事態を解決すると時空の裂け目が消失してしまったため、帰れなくなったショックで心神喪失状態になってしまったのだ。

そのことをテルは、ショウの世話をしていた際にショウ自身から聞かされていた。だから、ショウの最終目的が元いた場所に帰ることだと知ったのだ。

 

「(……まさか、おれがショウに帰って欲しくないって思ったばかりに、あんな変な夢を……?それにしたってなんだって結婚の夢なんだよ!もっとほかになんかあっただろ!?)

うおおぉあああぁぁ!?

 

ベッドの上でゴロゴロ、既に同部屋のセキとウォロとアカイが起床済みでいないことをいいことに、テルはひたすらベッドの上で悶え続けた。

 

「(いつまでたっても起きねぇから様子を見に来たら……テルのやつ、なにやってんだ……)」

 

もちろん、様子を見に来たセキにばっちり見られていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜襲をかけてきた黒龍ミラボレアスの代弁者を名乗る少年、クロノ。彼から挑まれたポケモン勝負は最終的に巨大ポケモン同士のバトルにもつれ込み、ダイケンキたちの活躍で普通のポケモン勝負では勝利したものの、その後の巨大ポケモン同士のバトルではクロノが繰り出した古龍級生物・イビルジョーの耐久や体格差に物を言わせた戦術にジンオウガが追い詰められてしまった。万事休す……そんな時、私たちを助けてくれたのはアカイさんだった。

巨大ティガレックスを鎮めたことで遺跡平原周辺が通れるようになったので、早速合流してくれたのだ。その際、アカイさんは新しい巨大ポケモンを引き連れてきた。現在、私が手持ちとして連れ歩いているポケモン……ジンオウガとリオレウス、その亜種個体だ。

ジンオウガの亜種個体、《獄狼竜》ジンオウガ亜種はドラゴン・かくとうの複合タイプで、でんきとみずタイプには弱いが、ほのおとこおりに強く、ドラゴンタイプが効かない体質をしている。……ドラゴンタイプがとうとうドラゴンタイプを無効にしてしまった。

リオレウスの亜種個体、《蒼火竜》リオレウス亜種はドラゴン・ひこうの複合タイプで、ドラゴンとこおりに弱いが、みずとでんきに強く、ほのおは一切効かない体質だ。ほのおタイプではなくひこうタイプなのは、原種以上の空戦能力故だろう、とはアカイさんの言だ。

二体とも、とても強く鍛え上げられていた……どうやら黒龍転移を受けて、アカイさんがタマゴから育て上げた歴戦個体らしく、その実力は古龍級生物にも劣らぬそうだ。……時間に余裕ができたら、勝負させてもらおう。

 

さて、全員が起床したところで酒場へ向かい、朝食を取る。昨夜宴会をしたのも、この酒場だ。そこで朝食をとりつつ、シズカさんたちとともに本日の予定を確認する。

 

「さて、今日の予定の話をするけれど、いい?」

 

「どうぞ」

 

「了承。……それじゃ、今日の予定を話すね。

今日は朝食を摂り終えたあと、大老殿にてドンドルマの大長老との会談があります。会談には大長老の他、側付きの大臣に龍歴院の職員、歌姫御一行、新大陸古龍調査団も同席します。会談の内容は主に、時空の裂け目のこと、時空の裂け目に吸い込まれて消えていったモンスターたちとショウたちが連れているモンスターたちの関係や、ショウたちの目的なんかになります。一応、ショウたちだけでなくアカイ……さんたちからも、お話を伺えたらと思いますが……いかがですか?」

 

「あぁ、喜んで会談に応じよう。それよりも、シズカくん。君がいてくれたおかげで、この大陸の住人たちにも、思いのほか早く受け入れてもらえたと聞く。そのことについて礼を述べたい。ありがとう」

 

「……い、いえ……私のことは呼び捨てで結構ですよ……

(アカイ……兄さんが言うには、コイツがミラバルカンだって話だけど……なんでコイツこんなにフレンドリーなの?人間に負けてブチギレたんじゃないの?人間嫌いじゃないの?)」

 

「ふむ、了解した

(この娘、こちらの存在に感づいているな?すると、シロやダイアーのことも気づいてそうだな。……シズカ・ミズハシ……水橋流静の妹、少し気にかけておくか)」

 

シズカさん……ダイアーさんの時もそうだけど、なんだか一部の人とは話しにくそうだな。人見知りって様子でもなさそうだし、どうしたんだろう……?

 

「……先輩」

 

「ゲフッ!?ゴホッ!ゴホッ!!」

 

「せ、先輩!?」

 

「おいおい、どうしたテル?いきなり咽せやがって」

 

私がなんとなく先輩に声を掛けると、先輩は飲んでいたスープを吹き出し、さらに咽せたようで激しく咳き込んでいた。え、これ私が悪いの?

 

「え、えぇっと……ど、どうした、ショウ?」

 

「いえ、"どうした"はむしろこちらのセリフ……いきなり大丈夫ですか?だいぶびっくりしたんですけど……」

 

「おっ、おおおお、おれは全然元気だぞ!?ショウはどうだ!元気か!?」

 

「え、元気です、けど……?」

 

「そ、そっかそっかぁ!そりゃあよかったぁ!!」

 

あはははは、なんて笑いながら先輩は食事を再開した。……いや、本当にどうしたの先輩?大丈夫?お水飲みます?

なんか先輩の様子が終始おかしかったものの、全員が食事を終えたところで大老殿へと向かった。大老殿の入口に近づくと、待機していた騎士たちが動き出した。

 

「シズカ・ミズハシ殿と、モンスタートレーナー御一行様、ようこそいらっしゃいました」

 

「中で大長老がお待ちです」

 

「ご苦労様、そしてありがとうございます。それでは失礼します」

 

シズカさんに続き、中へと入っていく。まず一番に目に付いたのは……。

 

「「「「「(デッッッッッッカ!?)」」」」」

 

奥にある大きな椅子に座る、これまた巨大な人だった。……いや、待って、聞いていたとは言え実際に見ると本当にデカイなぁ!?

 

「大長老様。シズカ・ミズハシ、トレーナー一行とともに参上致しました」

 

「うむ。シズカよ、ご苦労であった。控えておれ」

 

「はっ!」

 

シズカさんがこちらまで戻ってくると、大長老さまは咳払いを一つすると話し始めた。

 

「ムォッホン!モンスタートレーナー諸君、よくぞこの大老殿に参った!皆を代表して歓迎しよう!ワシはこのドンドルマの全てを取り仕切る者だ、この街が外からの災厄に崩されぬよう、また同時に日々豊かであるよう、全力を尽くしておる。

……さて、貴君らにはまずはじめに、礼を述べたい。先の作戦において、巨大化した轟竜をハンターらとともに狩猟してくれたと聞いた。作戦指揮を執った将軍も、実に高く評価していたぞ。

この大陸には、貴君らのようにモンスターとともに手を取り合い、助け合うという文化が根付いておらぬ。だが、此度の貴君らの活躍により、その認識に変化が表れ始めた。亜大陸にいるモンスターライダー達を受け入れようという意識が芽生え始めたのだ。

それもこれも、全ては貴君らの働きによるもの……この大陸に生きる者として、礼を言おう。本当に、ありがとう」

 

「い、いえ!私たちも、私たちの目的がありますので……ですが、私たちの働きが皆様のためになったのなら幸いです」

 

私が代表して、大長老さまの言葉に答えた。……いや、割と手放しに評価されたり褒められたりで、あまりそういうことを経験していないせいかめちゃくちゃ照れる。見れば、ウォロを除く三人も照れたように笑顔になったり頬を掻いてる。

 

「……さて、我々としては貴君らトレーナーの働きに報いたい。……が、同時に貴君らに聞かねばならぬこともある」

 

「承知しています。……私たちが連れているモンスターたちのこと、ですね?」

 

「うむ」

 

話は本題に入った。さて、ここからは……。

 

「……大長老殿、よろしいか」

 

「うむ、貴殿は……」

 

「我が名はアカイ。故あってショウ達と行動を共にする者、彼らの味方です。私は元々こちらの大陸で生きる者でしたが、シュレイド城に裂け目が発生したことを受けて、裂け目を通じてショウたちが住まうヒスイの地に降り立った者です」

 

「なんと!?あの謎の裂け目を通ったというのか!?」

 

大長老の傍にいる小柄な老人竜人族が声を上げた。シズカさん曰く、彼は大老殿の大臣らしく、その中でも大長老さまの意志を迅速かつ正確に実行する政務係、らしい。

 

「えぇ。……といっても、少々異例中の異例ではありますがね。一つ一つ説明させていただきたく存じますが、いかがか?」

 

「うむ。アカイ殿、よろしく頼む」

 

では、と前置きしてから、アカイさんの説明が始まった。

 

「まず、時空の裂け目について説明しましょう。あの裂け目はこちらの大陸と、ショウたちが住まうヒスイという二つの大陸を繋げる通路となっています。では、なぜ裂け目は開かれたのか?

それは、ヒスイに生息する古龍種、反骨龍ギラティナが開いたものだからです」

 

「古龍種!!まさか、あの裂け目がモンスターの力によるものとは!!」

 

そう言って反応したのは……たしか、龍歴院の人、だっけ?あ、となりにネネさん座ってる……そういえば、ネネさんの所属は龍歴院だったな。ひょっとしてハンターだけでなく、研究員も兼職してるんだろうか。

 

「そうです。反骨龍ギラティナは己を生み出しながらも追放した古龍種、創造龍アルセウスに反旗を翻すべく時空の裂け目を開いたのです。そうして同じく創造龍アルセウスによって生み出された兄姉の古龍種……時間龍ディアルガと空間龍パルキアを暴走させることによってアルセウスを引きずり出そうと試みた。……結果は失敗。それどころか、現地民であるこちら、ショウによってその目論見を潰された」

 

「一つ、ショウ殿に聞きたい。古龍種と相見えたと言うが、君はハンターではないようだが……モンスターの力を借りてこれを鎮めた、と解釈してよろしいか」

 

私にそう訪ねてきたあの肌が黒い人は……ニールさんが近くにいるってことは、あの人がニールさんが所属する新大陸古龍調査団の総司令さん、だろう。

 

「はい、そうです。この時も、モンスターたちの力を借りて古龍たちを鎮めてきました」

 

「なるほど……」

 

「説明を続けます。

目論見を潰されたギラティナではあるが、ではそのギラティナがこちら側にまで時空の裂け目を開いたのかと言われれば……答えは、否。むしろギラティナは、その力を利用されたと見ていいでしょう」

 

「利用された……?」

 

「さて、ギラティナが反旗を翻すべく時空の裂け目を開いた同時刻、こちら側の大陸でも、大きな力のうねりが発生した。……調査団の蒼き星」

 

「……なにかな?」

 

「ちょうどその頃、そちらでは新たな生命が誕生した頃だったな。……新しい、古龍種が」

 

「……!!冥灯龍ゼノ・ジーヴァのことを言っているのか!?」

 

ニールさんが驚きに声を上げた。冥灯龍……古龍種って、生まれたりするんだ。卵生かな?胎生かな?

 

「その通り。ゼノ・ジーヴァ……やつが生誕する際に発せられた、強大な古龍の生体エネルギー……それは、ギラティナが開いた時空の裂け目によってダメージを負っていた次元境界線に対して致命傷となった。

新大陸ではゼノ・ジーヴァ討伐以降に不思議なことが起こったんじゃないか?例えば……異世界から未知のモンスターや人間がやってくる、だとか」

 

「……!!」

 

「……その通りだ。ゼノ・ジーヴァ討伐以降、確かに新大陸では"異世界"に関連する不思議な事件が次々と起こっている」

 

「やはりな」

 

なんてことだ……ギラティナが起こした事件と、古龍の生誕がタイムリーで重なってしまったばかりに、異世界からいろんなものが流れ着いてしまったのか……!

 

「ただ、それだけではヒスイとこの大陸を繋げるには弱い。……誰かが意図的に繋げでもしなければな」

 

「誰かが意図的に……」

 

「とっくにご存知のはずだろう?我々がおとぎ話として長く伝え続けた、伝説上にしか存在しないと信じられてきた災厄の古龍……禁忌にその名を連ねた、伝説の黒龍……」

 

「まさか……!」

 

「そう……黒龍ミラボレアス。やつこそが、我々の大陸とショウたちの大陸、二つの大陸を時空の裂け目で繋げた元凶!普段はあまり知られていないが、ミラボレアスには自力で時空間を渡る力がある……今回、二つの大陸で起こった二つの事件が、結果的にミラボレアスを手助けする形になってしまったのだろう」

 

ミラボレアス……!やつの力が、二つの世界をつなげてしまったというの……!?

 

「ミラボレアス……!!」

 

「アイツが迷うことなく裂け目に逃げていったのは、そういうことだったのかよ……!!」

 

ニールさんもエイデンさんも、悔しさを滲ませている。自分たちの身の回りで起こったことが、巡り巡って敵に塩を送る形になったことが、相当悔しかったみたいだ。

 

「黒龍に時空間を渡る力が!?それは是非にでも調べなければ……!!」

 

「……言われてみれば、ミラボレアスはどこからともなく現れ、そしていつの間にかいなくなる……それが、時空間を渡る力によるものだとしたら……?」

 

龍歴院の二人も、その立場上モンスターの生態を解き明かすべく知能をフル回転させているようだ。……というか、第一印象のせいで知的な印象がないネネさんの学者然とした雰囲気が全然似合わない……。

 

「……では、アカイ殿よ。黒龍は今、どうしていると考えられる?」

 

「お答えしましょう、大長老殿。

黒龍は現在、力を集めているところでしょう。その最終目的は、己を追い詰めたハンターへの逆襲……すなわち、蒼き星への復讐でしょう」

 

「……ッ!!」

 

「ニール……」

 

「なんと……」

 

「私とこちら、シロはボレアス種に使える巫女と禰宜の役割を担っております。シロは祖龍に、私は紅龍にそれぞれ仕える身……シロは、祖龍より黒龍が次元を超えたことを伝え聞き、私に協力を打診しました。私もそれを受け、紅龍より許可を得て祖龍が開いた時空の裂け目を通じてヒスイの地へと降り立ったのです。

そこで活動中、恐ろしいことを耳にしました……黒龍ミラボレアスが、人間に呪いをかけたというものです。そしてその呪いを受けたのはほかならぬ……こちらの、ショウなのです」

 

アカイさんの言葉に、周囲がにわかにざわつく。アカイさんがこちらへと振り返ったので、私は頷くと一歩前に出た。

 

「私はちょうど、槍の柱という場所で創造龍アルセウスに会っていました。ヒスイに住む全てのモンスターと出会え……その約束を果たしたことを、報告するために。

そして、その最中のことです。突然、槍の柱に時空の裂け目が開くと、中から一体のドラゴンが出てこようとしていました。黒い体に黒い角、そして恐ろしい瞳……後にアカイさんから聞いた話から、あれがミラボレアスなのだと理解しました」

 

「ショウはミラボレアスに出会ったのか!?」

 

「……そうです、ニールさん。ただ、ミラボレアスと目が合った時から、度々心臓が痛むようになりました。まるで誰かに心臓を直接握り締められているかのような、鋭い痛みが。後にシロちゃんに、祖龍を介して看てもらったところ、それが黒龍の呪いだということがわかったんです」

 

「……シロ嬢、それは真か?」

 

「はい。元々黒龍も紅龍も、ミラボレアスが持つ力の一部が分たれた半身のようなもの……だから、ショウの中に黒龍の力の一部が流れ込んでいることに気付けた」

 

「は、半身んんんんんんっ!?しかも、祖龍といえばボレアス種のなかでも伝説中の伝説!いったい祖龍は何故黒龍や紅龍を生み出したのですか!?」

 

「私は祖龍様にお仕えする巫女だけど、そこまでは教えてもらえてません。あと、紅龍は黒龍が転じた姿であって、厳密には同じ黒龍ですよ」

 

「あっ……いえ、お話の最中に失礼しました」

 

一瞬、龍歴院の職員さんが勢いよく立ち上がったものの、シロちゃんに冷静に諭されて大人しくなった。

 

「……大長老様、よもやこれほどまでとは……」

 

「うむ……もはや、我々の常識に収まりきる話ではないか……」

 

「さて、我々の目的についてお話しましょう。我々の目的は――」

 

ズキッ!!

 

「がぁっ!?」

 

「ショウッ!!」

 

あがっ!?し、心臓が……!こんな、とき、に……!

 

ズキッ!!ズキッ!!ズキッ!!

 

 

ズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキ

 

痛い!痛い!!痛い痛い痛い痛いいいぃぃぃぃぃっ!!

 

「あっ……がっ……!が、あ"あ"あ"あ"っ!!」

 

「ショウ!しっかりしろっ!シロッ!!」

 

「わかってるっ!!」

 

し、シロ……ちゃん……。シロちゃんが、必死に祈りを捧げ、て……。

 

「これは……!?」

 

「まさか、黒龍の呪い……!!」

 

「ショウっ!」

 

「シ、ズ……カ……さ……」

 

ズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキ

 

「ぎゃ、がぁっ!?ぎぃあっ!あ"あ"あ"あ"あ"っ!!」

 

「シロ……!」

 

「黙って……!!」

 

……だ……め……。も……いし……が……。

 

「……~~♪」

 

「……?」

 

……え……あ……。

 

「~~~♪~♪~~~~♪」

 

「歌姫様……」

 

「~~♪~~~♪~~~~♪」

 

歌……歌が、聞こえる……。なんだか、体が……楽になってきた……?

 

「……ぅ、ぁ……」

 

「ショウ!」

 

「……シロの祈りだけでは、抵抗するのに精一杯だった……歌姫の歌が祈りの力をブーストさせたのか……?」

 

胸の痛みが収まり、ようやく目を開けることができるほどに落ち着いてきた。私は先輩に体を支えられた状態で、セキさんだけでなくシズカさんにニールさん、ネネさんも私の顔を覗き込んでいた。

 

「ショウ、よかった……!もう、私の身の回りの人には死んでほしくないの……!」

 

「シズカさん……」

 

「ショウ、すまない!俺たち調査団がミラボレアスをとり逃したばかりに、こんなことになっちまった!本来なら無関係の君に、余計なものを背負わせて……謝っても、謝りきれない……本当に、申し訳ない……」

 

「ニールさん……」

 

「まったく!姉様をこんなに心配させるだなんて!これ以上、姉様には悲しい思いをして欲しくないから、呪いを解けるならさっさと解くのよ!」

 

「ネネさん……」

 

一人だけ平常運転……。

 

「……話の途中ですまない、大長老殿」

 

「いや、先のことで委細承知した。ショウ殿の呪い、もはや一刻の猶予もあるまい。こちらで可能な限りの援助をさせてもらうぞ」

 

「ありがたい。……ショウの呪いを解くには条件がある。一つは祖龍の巫女であるシロの祈り、一つは歌姫の歌の力……」

 

「わ、私の歌が……」

 

「あぁ、貴女が歌ってくれなければ、シロの祈りだけでは時間がかかっていた」

 

「成り行きで同道することになったとはいえ、目の前で見知った方が苦しむ姿を見たくなくて……私の歌が力になるのでしたら、お手伝いいたします!」

 

「ありがたい。……さて、条件のさらに一つが滅龍石だ。これら三つを揃えて、メゼポルタにある祈樹の泉に向かわなければならない。祈樹の泉には龍脈が流れている……力を高める上では、最高の場所といってもいい」

 

「龍脈が……なるほど、それならば納得。大臣よ」

 

「心得ております、既にハンターに打診し、滅龍石収集へと向かわせております」

 

「さすがは大臣、話が早い」

 

ようやく体が動けるようになった……先輩に支えられながら立ち上がると、どうやら話が進んでいたみたい。私も会話に加わろうとしたその時だった。

 

「……?ちょっとまって」

 

「シロちゃん……?」

 

「……ごめん、ショウ。突然なんだけど……脱いでくれない?」

 

「……?……!?え、ちょ、へぇっ!?」

 

ぬ、脱げぇっ!?いきなり何言い出しちゃってんのこの子ぉ!?

 

「説明は後!とにかく服!上だけでいいから!!」

 

「いやいや!むしろ説明してくれないと納得いか――」

 

「問答無用っ!!」

 

「ぎゃああっ!?」

 

シロちゃんに飛びかかられて、あれよあれよと言う間に上半身が肌蹴られていく。いや、シロちゃんだいぶ鬼気迫る顔してるけど、一体全体何!?

うつ伏せに転がされるとそのまま一気に服を下ろされた!

 

「……っ。やっぱり……!」

 

「……あ、あの~?シロちゃん、いったい何がやっぱり――」

 

「ショ、ショウ……背中に、罅が……!!」

 

「……え?」

 

先輩の言葉に、一瞬だけなんのことかわからなかった。それからすぐさま大老殿にいる竜人族のお姉さんが持ってきた鏡で、シロちゃんが私の背中を写してくれた。

 

「……な、に……コレ……?」

 

私の背中には……紫色に発光している罅割れが生じていた。それも、罅割れは心臓部を中心に広がっており、今は上は肩に、下はちょうど脇腹の真ん中あたりで止まっている。

 

「……シロ」

 

「間違いない……黒龍の呪いよ、ここまで表面化するだなんて……」

 

「ちっ……あの野郎、いよいよ見境なくなってきたか。それほど余裕がないのか、あるいは我々を追い込む策か……」

 

「なんにせよ、厄介なことに変わりはない……。ごめんね、ショウ。服、直すね」

 

「……あ、うん……」

 

おもわず愕然となった……本格的に命の危機が迫っていることを察して、体の震えが止まらない。シロちゃんがなんとか服を戻してくれたけど……私は……。

 

「ショウ!」

 

「っ!?」

 

と、ここでいきなり先輩が抱きついてきた!?

 

「大丈夫だ」

 

「せ、先輩……」

 

「根拠も自信も何もないけど……でも、ショウは絶対に大丈夫だ!絶対絶対に、なんとかなる!いい加減でも適当でも、なんでもいい!前を向いて、歩こう!下を向いて震えるな!それじゃあ、ミラボレアスの思うツボだ!むしろあいつに言ってやれ!

"どうした?こんなものか?それがどうした!"って!!」

 

「……!!」

 

「おれが、みんながショウにはついてる……だから、最後まで諦めちゃダメだ!呪いが解けるように、おれも頑張る……おれが、おれがショウを、守ってやる……!!」

 

「先輩……!」

 

おもわず先輩の背中に手を回す。お互いにきつく抱き合い、そこから感じられる温度を惜しみなく感じ取る。

ああ……そうだ、私は独りじゃない。先輩やみんなが、私にはいる……だから、きっと大丈夫。

 

「(……ん?みんな?あれ、そういえば……)」

 

「……気持ちはわかるが、時と場所と場合を弁え給えよ、君たち」

 

「「わあああぁぁっ!?」」

 

思わず顔を真っ赤にして勢いよく離れた。そうだ、みんないるじゃん!みんなここにいるじゃん!!公衆の面前で思いっきり抱き合っちゃったじゃん!?

 

「ムォッホン!若さとは良いものよな」

 

「大長老さまが言うと説得力がハンパな……いえ、何でもありません」

 

「姉様!私の隣はいつでも空いてますよ!」

 

「大タル爆弾置いとくね」

 

「リア充爆発ですねわかります!」

 

「(……俺もいつか、シズカとあんなふうに……)」

 

「おーいニール、戻ってこーい」

 

や、やっちゃったあああぁぁぁぁ……恥ずかしすぎて死にそう……。

 

「……まぁ、それぐらいの元気があれば多少のことであれば大丈夫だろう。……それでは、大長老殿」

 

「うむ。貴殿らはメゼポルタを目指すのだな」

 

「えぇ。……若い命を守るため、全霊を尽くす。大長老殿のご協力にも、感謝します」

 

「若き命を守るは老骨の努めだ、人より長く生きる竜人族だからこそ、短き生を懸命に生きる人間の営みは美しい。それを守るためならば、協力は惜しまぬとも」

 

「……えぇ、そうですね」

 

うぅ……こっちがてんやわんやしている間に、話が終わっちゃったみたい……。なんか、大事なところでいつも恥ずかしい思いをしているのは気のせい……?

 

「皆様とは、もうしばらく一緒なんですね」

 

「そうなりますね……ラウラさん、これからもどうぞよろしくお願いします」

 

「こちらこそ!……あの、セキさん……」

 

「ん?……!あぁ、アレか?もちろん構わねぇぜ」

 

「ありがとうございます!」

 

「(ラウラさん、すっかりリーフィアが気に入ったなぁ)」

 

ラウラさんもすっかりポケモンに慣れたよね。……主にリーフィアのおかげで。

 

「ふぅ……」

 

「……シズカよ」

 

「はっ!大長老様、いかがされましたか?」

 

「大老殿より、ハンター『シズカ・ミズハシ』へ依頼を出す。歌姫ラウラ殿を、メゼポルタまで護衛せよ」

 

「……!!それは、つまり……」

 

「うむ……貴殿も、ショウ殿に同道を頼む。貴殿はハンターだからな、こういった形の方が楽であろう?」

 

「……フフッ、ですね。……了解しました。その依頼、お受けします!」

 

「うむ!」

 

大長老さまと話をしていたシズカさんが、こっちに向かってくる……どうしたのかな?

 

「……ついさっき、大老殿から歌姫護衛の依頼が出されちゃってね。私もメゼポルタまでついて行くよ」

 

「本当ですか!?心強いです!!」

 

「やったぁ!シズカさんが一緒なら、百人力だ!」

 

「も、持ち上げすぎ……っ!」

 

嬉しいっ!シズカさんもついてきてくれるなんて!とても心強い味方が増えた!

 

「うぅ……ね、姉様~……」

 

「……ネネくん、龍歴院からも依頼を出していいかな?」

 

「はい……?」

 

「今回のティガレックス技巧種の件を受けて、狩猟中にジンオウガをはじめとするモンスターたちが全く未知の攻撃を仕掛けていたと聞いたよ。そこで、だ。

龍歴院からの依頼というのは、これらトレーナーが扱うモンスターが通常種とどう違うのかを調査して欲しい、というものだ」

 

「……!!と、ということは……」

 

「大義名分があれば、付いて行っても問題ないだろう?」

 

「愛していますわ主席様!」

 

「はっはっは、こんなに嬉しくない愛の告白もあるんだなぁ」

 

……?今度はネネさんがこっちに向かってきて……。

 

「姉様!姉様!!たった今龍歴院からの依頼で、ショウさんたちのモンスターを調査して欲しいと頼まれてしまいました!」

 

「……ふ~ん……。……私もさっき、大老殿から依頼を――」

 

「あら!奇遇ですわね!!ということは、今後も姉様と一緒に行動できる、ということですわね!」

 

「寄るな」

 

ネネさんが嬉しそうにシズカさんへ抱きついた。……シズカさんは相変わらずだけど。

 

「総司令、我々は……」

 

「……ミラボレアスはどうやら、あちらのショウを狙っているようだ。なぜ黒龍がただの個人を標的にするかは不明だが……呪いを掛けるほどに執着しているとなると、みすみす見過ごすことはできんな」

 

「では、調査団は歌姫護衛に同行する、ということで?」

 

「うむ。ミラボレアスがショウを狙って、直接現れないとも限らない。蒼き星たちよ、少女を導く星となってくれ」

 

「「了解!」」

 

……!今度はニールさんとエイデンさんが来た!

 

「あら、調査団のお二人さん……どうなさいました?」

 

「調査団の決定を、知らせておこうと思ってな」

 

「……ニールさん、どうなりました?」

 

「調査団は、歌姫護衛についていくことにしたよ。……ショウを狙うミラボレアスが直接姿を見せる可能性がある以上、ミラボレアス討伐作戦に参加した者として捨て置くことはできない。

やつが姿を見せることがあれば、任せてくれ。……今度こそ、奴を仕留めてみせる」

 

「そのときは、私も手伝います。……これはもう、調査団だけの問題じゃありませんから」

 

「シズカ……!」

 

「困ったときはお互い様……貴方の言葉ですよ、ニールさん」

 

「あ……!……は、ははっ!そうだな……ありがとう、シズカ」

 

「どういたしまして」

 

ニールさんたちまで来てくれるなんて……私、本当に色々と恵まれているなぁ……。

 

「キィーッ!あんの優男めぇ……!」

 

「どうどう」

 

……恵まれてる、よね?

 

「では、若き者達よ!未来を勝ち取り、その手に掴むために!いざ、出で立て!!」

 

応っ!!

 

大長老さまの号令に、私たちは全員で返事をした。大老殿を出て階段を降りると、そこには見慣れた金色の鎧があった。

 

「行くんだな」

 

「師匠」

 

「メゼポルタまでの道中、君たちに幸あらんことを願う」

 

「ありがとうございます」

 

「怪我しないで帰ってこいよ~」

 

「きゃっ!乱暴に撫でないでくださいっ!」

 

どうやら、シズカさんのお師匠さんは見送りに来てくれたみたい。師弟揃ってじゃれあう姿は、本物の親子みたいだ。

用意された飛行船に乗り込み、私たちは再び空へと舞い上がる。もちろん、リオレウスが牽引する特急便だ。上昇を始め、高さが大老殿とおなじくらいになったところで、私は大老殿に向けて大きく手を振った。大長老や、皆さん方に見えたらいいな、と願って。

 

「ん!」

 

「先輩……!」

 

見ると、先輩も手を振っていた。すると、セキさんにカイさん、ウォロ……みんなも一斉に手を振っていた。下を見ると、ドンドルマに集まっていたハンターの皆さんも手を振ってくれていた。

 

「行ってきまーすっ!!」

 

私は大きな声で叫ぶ。大長老の言うとおり、未来を勝ち取るために……私たちは、空の旅を行く!

 

 

 

 

――ショウ 余命14

 

 




はい、いよいよメゼポルタに向けて出発です。
ただ、黒龍の呪いが進行したことのよってショウの余命が削られてしまいました。あと二週間……ショウは呪いを解くことができるのか……。


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メゼポルタ~開拓と繁栄の街~

今ここで明かされる衝撃の真実!

……実は主、F未プレイ勢である。なのでキャラクターの口調におかしなところがあったらすみません!


リオレウスが牽引する飛行船はドンドルマを発って半日も経たないうちにバルバレ、ユクモ村を越えていった。ユクモ村というのは温泉がとても有名な村らしく、シズカさんもイチ押しらしい。あと、ユクモ村の近くにある『渓流』は、ジンオウガにとって馴染み深い地域らしいので、機会があればジンオウガを連れて立ち寄りたいと思った。

ガブリアスとトゲキッスを護衛役に飛び続けること数時間、ちょうど大陸の端と海を挟んだ向こう側に大陸が見えてきた。向かってすぐ左手に『ポッケ村』という村があり、その反対に見える密林地帯は『テロス密林』という狩場だそうだ。その中間に位置する場所にメゼポルタがあるらしいのだが……。

 

「なっ!?」

 

最初に声を上げたのは、ラウラさんだった。

 

「メゼポルタがっ……!!」

 

ラウラさんの悲痛な声が耳を刺す。それもそのはず……メゼポルタは、火の海に沈んでいたからだ。

 

「どうしてこんなことになってるんだ!?」

 

「……っ、あれを!!」

 

シズカさんが飛行船の少し上を指さす。メゼポルタの上空では数頭の飛竜が争いあっていたのだ。

 

全体的に丸みを帯びた大柄な体格。

黒みがかった黄色の鱗が集まって大きな甲殻を形成された上面。

黒銀色の鱗が果実のように一つ一つ垂れ下がるようにして生えている下面。

 

特徴的な体をした大型の飛竜が四頭、凌ぎを削り合うようにして激しく争っていた。その飛竜が暴れれば暴れるほど、首から下に生えている果実のようなものがボロボロと地上に落下している……なんだ、あれ……?

 

「なんだって『バゼルギウス』が四頭もこんな所に集まっているんだ!?」

 

「まさか、これもミラボレアスの力だとでもいうのか……!?」

 

「あぁ……そんなっ……!」

 

「ショウ!テル少年!」

 

「「はいっ!」」

 

「「「リオレウス!/ライゼクス!/蒼火竜!!」」」

 

「グオオオオオオオオンッ!」

 

「キシャアアアアァァンッ!」

 

「グァオオオオオオンッ!!」

 

「リオレイアは私に従って!」

 

「グアアアンッ!!」

 

私の声に素早く反応したガブリアスがリオレウスの縄を切り、それと同時にテル先輩、アカイさんがライゼクスとリオレウス亜種を繰り出した。近くを飛んでいたリオレイアには、シロちゃんが声掛けをしている。

四頭は一斉に飛翔すると争い合うバゼルギウス達の間に割って入り、それぞれが一撃を加えてバゼルギウスを追い払う。バゼルギウス達は乱入者相手に気勢をそがれたためか、そのまま四頭とも四方八方へ飛んでいった。……ひとまずは、大丈夫……かな……?

 

「……本格的にミラボレアスが我々の妨害に動き出したようだな」

 

「ひとまず降りましょう。被害状況を確認しないと……」

 

「レイラ……みんな……」

 

私にかけられた呪い解呪の旅は、初っ端から波乱の幕開けとなった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛行船は無事に着陸したものの、メゼポルタはどこもかしこもがまるで爆撃にあったかのようにひどい状態だった。怪我人も大勢いるようで、ハンターの人たちも多くはないが総出で怪我人の治療に当たっている。私たちもできることをやろう!

私たちは治療に専念し、シズカさんたちが情報を収集することになった。早速行動に移ろうとした、その時だ。

 

「姉さん!」

 

「レイラ!」

 

声に反応して振り向くと……なんか、すんごい格好の人が来た!?

頭の帽子にはウサ耳のような飾りが付いている……が、被ってる当人は左目にアイパッチを付けている。防具……なのだろうか、ただでさえ胸元がすごいことになってるのに、首からぶら下がるネクタイがそれをさらに強調させている。スカートもすごく短いし……シズカさんたちのような防具を見てきたからか、ちゃんと防具として機能しているのか思わず疑いたくなってしまう。

 

「レイラ、一体何があったの?どうしてメゼポルタが、こんな……」

 

「……不意打ちだった。突然、空に変な裂け目が出てきたかと思うと、そこからさらに爆鱗竜が四頭も現れて縄張り争いさ。空高くで派手に暴れる上に爆鱗が次々と降ってきて……飛行船が全滅しちゃ、空を飛べないハンターはお手上げだ。幸いにして、死者が出なかったのは奇跡だったな……とにかく避難誘導するだけで精一杯だった……」

 

「いいえ、あなたはよくやってくれたわ。皆さんも……。戻ってくるのが遅くなってごめんなさい」

 

「ハッ、タイミング次第じゃむしろ"帰ってくんな!"って叱り飛ばしてるところさ。……ところで、バゼルギウス共を追い返した飛竜達はどこから来たんだ?リオレウスの二つ名個体に亜種……ライゼクスにリオレイア、随分とバラエティーに富んでるみたいだけど」

 

「それは……こちらの、モンスタートレーナーの皆さんのおかげよ」

 

あ、ラウラさんが私たちに話を振ってくれた。レイラさん、だっけ……ラウラさんを"姉さん"って呼んでたし、姉妹なのかな?

 

「モンスタートレーナー?……あぁ、最近ドンドルマで噂になってる……」

 

「えっと、初めまして」

 

ひとまず、簡単な自己紹介だけをしておくことにする。はやいところ、怪我人の手当をしないとだからね。全員の名前を聞き終えてから、改めて向こうから名乗ってくれた。

 

「ん、初めまして。アタシは『レイラ』。こっちの歌姫様の……妹、だよ」

 

「……歌姫様、祈樹の泉の様子を見に行きましょう。今回の目的地でもありますので」

 

「あっ、シズカ!アンタも来てたんだね!」

 

「レイラさ――むぎゅっ」

 

シズカさんがラウラさんに話しかけるやいなや、気づいたレイラさんがシズカさんを抱きしめた。豊満な胸に顔を埋めたシズカさんは、ジタバタと抵抗している。

 

「まったく、最後に会ったのはいつだったか……もう随分と長く会っていないじゃないか。その間の活躍は、メゼポルタまで届いていたよ。まさか、アタシ以上に酷い幽鬼みたいな顔で狩猟に没頭していたシズカが、五年そこらでマスターランクとはね……才能は感じていたけど、やっぱりアンタは本物だね」

 

「レ、レイラ、さ……ぎ、ギブ、ギブ……!」

 

「おっと」

 

シズカさんの必死の訴えの甲斐あって、レイラさんはシズカさんを解放した。

 

「はぁ、はぁ……し、死ぬかと思った」

 

「ごめんごめん、久々に会えたのが嬉しくってね。つい……」

 

「"つい"で死にかけた私の立場とは……」

 

シズカさん、本当にどこに行っても有名人だなぁ。

 

「……アタシも防具を薄くすれば姉様を……」ブツブツ

 

こっちはこっちで相変わらず怖い……。

 

「……いえ、それより!レイラさん、祈樹の泉はどうなってますか?」

 

「祈樹の泉か?あぁ、あそこも奇跡的に被害はないが……」

 

「それは僥倖」

 

「……そちらでも、何かあったのか?」

 

「実は……」

 

シズカさんがドンドルマでの出来事、そして私の事情について説明してくれた。特に私がミラボレアスと遭遇したという部分は、レイラさんは特に驚いたようだ。

 

「……ミラボレアスと相見えるばかりか、呪いを掛けられるとは……。ショウ、といったか。なんと言葉をかけたら良いものかわからないが……」

 

「大丈夫です、レイラさん。私は確かに呪われましたけど解呪する方法はありますし、私は一人じゃないです。仲間たちが私と一緒に、呪いを解くために頑張ってくれてますから」

 

「……強いね、アンタ。その強さがあれば、どんなことがあっても負けないだろう」

 

「ありがとうございます」

 

レイラさんは最初はブッ飛んだ格好の人だとか思ってたけど、話せばすごくまともな人だ。……格好はまともなのにいろんな意味で性格がぶっ飛んでいるネネさんと比較してはいけない。

 

「レイラ、他の皆さんは……」

 

「中央区にいた人は大衆酒場に避難して無事さ。東区や西区にいた人たちは、避難が間に合わず怪我人が出ちゃったけど……」

 

「要人が怪我しなかっただけでも、十二分だ。君達の働きは賞賛に値する」

 

「アンタは……?」

 

「我が名はアカイ。メゼポルタのギルドマスター殿と話をしたいのだが、よろしいか?」

 

「あ、レイラ。私も皆さんに帰ってきたことを知らせたいわ」

 

「了解。それじゃあ、お二人さん、ついておいで」

 

それから、ラウラさんとアカイさんはレイラさんの案内で『大衆酒場』に向かった。……あ、そうだ!

 

「ミミロップ!」

 

「ミッミィ!」

 

私はミミロップを繰り出した。波導の扱いに長けたミミロップなら、あの技が使えるはず!

 

「ミミロップ、もしかしてなんだけど……いやしのはどうとか、使える?」

 

「ミミィ!」コクリ!

 

「やった!それじゃあ、あくのはどうと技変更!さっそくいやしのはどうを使っていこう!」

 

「ミミ!」

 

正直、この大陸の人達にとって未知のモンスターとも言えるミミロップを見せるのはマズイかも知れない。でも、ミミロップの波導があれば、より多くの人を助けられるなら……私は、多少の危険など顧みない!

私はミミロップを連れてメゼポルタを練り歩く。途中、怪我で動けない人を見つけると、迷わずそちらに駆けていった。

 

「あの!大丈夫ですか?」

 

「うぅ……空から爆鱗の雨霰で、大勢の人が怪我をした……。ハンターさんもたくさん怪我したんだ。中央区にあるショップの方も、爆鱗で商品がダメになって、すごく落ち込んでたよ……」

 

「とにかく、傷の手当てをします。ミミロップ、お願い」

 

「ミミ!」

 

「え、モンスター……?ウルクススの別種か何か……?」

 

「いやしのはどう!」

 

「ミッミィ!」

 

「お……おぉ……!?き、傷が治っていくぅ!?」

 

私が早速ミミロップに指示を出して、いやしのはどうを目の前の男性に使っていく。すると男性の怪我はみるみるうちに治っていき、すっかり全快まで回復した。

 

「スゲェ!ウルクススの別種スゲェ!!」

 

「ウルク……?いえ、この子はミミロップです」

 

「ミミ」

 

「ミミロップ!ウルクススの別種の名前か!」

 

「いえ、だからウルなんとかは無関係かと……ダメだ、聞いてない……」

 

「ミィ……」

 

男の人はすごく興奮した様子で、ミミロップのことを「ウルクススの別種」と連呼する。

それから、怪我をしている人たちにミミロップのいやしのはどうを使う作業を繰り返した。中にはハンターさんもいたんだけど、その人たちもこぞってミミロップのことを「ウルクスス」と呼んでいた。

……もしかして、ウルクススってミミロップのようなウサギ系のポケモンなのかな?ちょっと見てみたいかも……。

 

「キャーッ!可愛いー!!」

 

と、その時だ。また一人、怪我人を治療すると同時に、背後からそんな声がかかったのは。

私とミミロップが振り返ると、そこには五人のハンターさんがいた。五人中、女性は三人で男性は二人という構成になっている。……いや、男性の方はちょっと怪しいかも知れない。

 

「えっ、えっ!なにこの可愛いモンスター!ウルクススそっくり!!」

 

その中でも、おそらく最初に声を上げたであろうツインテールの女性が無遠慮にミミロップに近づいていた。ミミロップも対応に困ったらしく、私に目配せしている。

いや、そちらにとって未知のモンスターを連れ歩いている私も良くないが、かと言ってハンターが無警戒に近づくのもいかがなものか……。

 

「ミミロップ、私の後ろに」

 

「ミ!」

 

「あっ……」

 

ミミロップが私の後ろに隠れたことで、ようやくこの人の視界に私が入った。……いや、本当にミミロップしか見ていなかったのか。

 

「キミは……?」

 

「初めまして、ハンターさん。私、ショウって言います。この子はミミロップです」

 

「ミミィ」

 

「ミミロップ!ウルクススの親戚さんかな?……あ、ボクは『フラウ』!レジェンドラスタなんだ~、よろしくね!」

 

「レ、レジェ……?」

 

「もう、フラウちゃん!急に走り出さないでよー!」

 

後の四人も近づいてきた。……こうしてハンターが集まってるのを見ると、なんかすごく威圧的に感じる……やっぱりハンターってすごい人の集まりなんだなぁ。

 

「あ、ごめんごめんフローラちゃん!だって、遠目に見ても可愛いのに近くで見たらさらに可愛くって……」

 

「だからっていきなりモンスターに近づくのは……。あ!ウチの連れがすみません!ご迷惑じゃなかったですか?」

 

「い、いえ……ウチの子も、突然でびっくりしただけなので」

 

「本当にすみません……。アタシは『フローラ』って言います。片手剣のレジェンドラスタです!よろしくね!」

 

「レジェンド……?」

 

「フローラちゃん。多分だけどその子、レジェンドラスタのことわかってないと思うよ?」

 

「え!?」

 

……そういえば、ここにいる五人、全員が違う武器を持っている。先ほどのフラウさんはエイデンさんと同じ双剣、フローラさんは片手剣を持っている。さっき話しかけてきた人は狩猟笛を担いでいるし、後の二人は……一人は長槍のような棒に腕にでっかい虫がくっついている。もう一人は、フローラさんの片手剣を一回り大きくしたような武器だ。盾は縁が鋭くなっている感じからして、刃になっているかもしれない。

 

「チルカちゃん」

 

「キミ、レジェンドラスタって知ってる?」

 

「……いえ、初耳です……」

 

「ほらね~?」

 

「そんな……アタシ、やっと『新米から一皮むけたな』ってお祖父ちゃんに褒めてもらったばかりなのにぃ……」

 

「まぁ、本当に最近のことだしね。キミとは初めまして、だよね?私の名前は『チルカ』だよ!狩猟笛のレジェンドラスタなんだ……って言っても、キミはレジェンドラスタを知らないんだっけ。それじゃあ、"ブーブー笛吹きチルカちゃん"で覚えてね!」

 

「アッハイ」

 

この流れは残りの二人も……と思ったけど、後の二人はミミロップの方を見ている。……マズイ、狩猟対象として見られたら一巻の終わりだ……!

 

「……ねぇ、さっき見てたんだけどさ。そこのモンスター、ヒトに向かって何かしてたよね?何してたの?」

 

「え……あ、いやしのはどうという技を使ってました。相手を癒す波導を送って、傷を治したり体力を回復したりできます」

 

「へぇ……回復笛や狩猟笛の旋律みたいなものかな?」

 

「……我が君、ひとまず名乗られてはいかがかと」

 

「あっ、そうだったぜ!オレは『マリオ』!最近召集されたばかりだけど、オレもレジェンドラスタなんだぜ!『操虫棍』って知ってる?」

 

「(操虫棍……ネネさんが昔使ってた武器か)はい、知ってます」

 

「本当!?嬉しいっ!……あ、ゴホンッ!そりゃあ、操虫棍使い冥利に尽きるってもんだぜ!ハハハ……!」

 

一人目はマリオさん。短い銀髪に快活な雰囲気の男の子……だと思う。だって、声変わりしてないのかトーンは高いし、さっき見せた嬉しそうな笑顔は男の子というより女の子ぽかったし……うーん、中性的な人って、どこにでもいるんだなぁ。

 

「お初にお目にかかります、お嬢様。私は『クライス』と申す者です。盾斧……即ち、チャージアックスのレジェンドラスタとして召集を受け、このメゼポルタに馳せ参じました。無論、私自身もレジェンドラスタであることを誇りに思い、自負しております」

 

こちらの黒髪に丁寧な態度のメガネの男性はクライスさん。チャージアックス、アックス……あぁ、斧になるのか。……え、剣と盾がどうやって斧になるの?ちょっと想像つかないんだけど。

そういえば、クライスさんはマリオさんを"我が君"って呼んでたな……ひょっとして、主従関係?だとしたらマリオさんってやんごとなき身分の人?……その割には、とてもフレンドリーなんだけど。

 

「ねぇねぇ!ミミロップってどこのモンスター?すごく仲良しなんだね!」

 

「えぇ、そりゃあ……私のパートナーですから。ね、ミミロップ」

 

「ミィ!」

 

「リボンいいなぁ、すごく似合ってる!どうやって仲良くなったの?」

 

「えぇっと……」

 

「フラウちゃん!……ごめんね、ショウちゃん」

 

「あぁ、その……大丈夫、です」

 

やばい。何がやばいって、こっちが全然会話のペースを掴めない。特にフラウさんとチルカさんはミミロップに夢中だ。なんだ、ハンターって個性の塊か?フローラさんなんかは常識人っぽいし、すごく苦労してそうだなぁ……。

 

「二人とも、せっかく彼女がモンスターの力で治療してくれてるのに、邪魔しちゃ悪いぜ?」

 

「うーん、それもそっかぁ……ごめんね、マーちゃん」

 

「マーちゃ……!?オ、オレは男なんだぜ!!」

 

「チルカも"マーちゃん"って似合ってると思うな」

 

「オレは男だー!フラウ!いい加減にするんだぜ!!」

 

「わー!マーちゃんが怒った!」

 

「逃げろー!」

 

「逃げるなー!」

 

からかいが過ぎたのか、怒ったマリオさんから逃げ出すフラウさんとチルカさん。対してマリオさんも二人を追いかけていってしまった。

……いや、切り替えよう。今、ここには常識人しかいないと……!

 

「……フラウちゃんとチルカちゃんがごめんなさい、クライスさん」

 

「お気になさらず、フローラ様。我が君がこれほどにありのままに振舞われるのも、ひとえにフラウ様とチルカ様のお二人がいてくれたからこそでございます。そのことで感謝こそすれ、咎めることなどいたしません」

 

「そうですか……えへへ、嬉しいです」

 

「……あの、すみません。お話いいですか?」

 

「あ、ショウちゃん!ごめんね、なんだかおいてけぼりにしちゃって……」

 

「全然大丈夫ですよ。それより、裂け目が開いてそこからモンスターが現れたとか……状況を聞いてもいいですか?」

 

「もちろんです!何から話しましょう?」

 

それから、私も私でフローラさんとクライスさんからお話を伺うことができた。

レイラさんの言うとおり、ほぼ不意打ち同然だったらしい。レジェンドラスタ、と呼ばれるフローラさん達は、普段はラスタ酒場という場所でラスタとしての役割を全うするべく契約を待ったり、個人的に活動をすることがほとんどらしい。だが、突然響いた爆音の数々に全員が酒場から出ると、遥か上空でバゼルギウスが縄張り争いをしていたのだから、本当に驚いたらしい。

それからすぐに、待機させている飛行船を使って迎撃に出ようとするも、飛行船はバゼルギウスの爆鱗による爆撃で全滅してしまったため、メゼポルタの非戦闘員……すなわち、ハンター以外の人たちを避難させるので精一杯だったそうだ。

 

「……悔しかった。レジェンドラスタになって、新米新米って呼ばれ続けて、自分でもそう名乗るくらい未熟だったけど、ようやくそこから脱却できたんだって思った矢先の出来事だったから……」

 

「私と我が君……マリオ様は、件の裂け目の件を受けて召集されました。それまで操虫棍とチャージアックスのレジェンドラスタ採用は見送られていたのですが、そうも言っていられなくなったのでしょう」

 

「……メゼポルタ、どうなっちゃうのかな。また、立ち上がれるよね……?」

 

「そのために、我々がおります。ナターシャ様やグラハム様らが復興資材の収集のために出払っている今、ここに残る我々が最後の砦です」

 

「そうですよ、フローラさん。ドンドルマだって、何度古龍の襲撃を受けても、現地の人達が結託して何度も復興を繰り返してきたって、聞きました。きっと、メゼポルタも大丈夫です。何度でも立ち上がればいい……我々人間は、決してひとりじゃないんです。助け合っていきましょう!」

 

「ミッミミィ!」

 

「ショウちゃん……ミミロップ……」

 

最初は暗い表情になったフローラさんだけど、自分の両頬をパン!と叩くとすっかり顔色が変わっていた。

 

「うん、そうだね!アタシったら、すっかり気弱になってたみたい!もう大丈夫!どんなモイスチャーがきてぃぇもでぃあ……キャーーーッ!!」

 

「「あ」」

 

噛んだ。それも、盛大に。恥ずかしさからか、顔を真っ赤にしたフローラさんはその場にしゃがみこんでしまった。

 

「……うぅ……は、恥ずかしい……。会ったばかりのショウちゃんに慰められるばかりか、噛んじゃうところも見られた……」

 

「なんだこの可愛い生き物(大丈夫ですよフローラさん、失敗は誰にだってありますから)」

 

「可愛いとか言わないでー!」

 

「ショウ様、逆になってるかと」

 

「あ」

 

なんだろうこの人、すごく大事にしたくなる衝動に駆られる。

 

「……ショウ、ここにいたか」

 

「アカイさん!」

 

私が話し込んでいると、アカイさんが戻ってきた。それから、手分けして手当にあたっていたテル先輩たちとも合流した。……私たちもなかなかに大所帯だな。

 

「ラウラさんは?」

 

「レイラ殿とともに祈樹の泉へ向かった。ショウの呪いを解くための準備をしている」

 

「呪い……?あの、ショウちゃん。一体何があったの?」

 

「ちょっと黒龍とアイコンタクトしたら呪われまして」

 

「黒龍……えっ、ミラボレアス!?しかも呪いって!?」

 

「そういえば、説明してませんでしたね」

 

私の事情を、フローラさんとクライスさんに話した。すると、フローラさんは私を思い切り抱きしめてきた。

 

「フローラさん?」

 

「……辛かったよね、怖かったよね。いきなり呪われて、いつ死ぬかもわからない中で呪いを解くために頑張って……。ショウちゃんの方が誰よりも辛い思いをしているのに……」

 

「フローラさん……」

 

「ショウちゃん、アタシに出来ることなら何でも言ってね。レジェンドラスタとして……なにより、一人の人間として!貴女の力になりたいの!」

 

「……ありがとうございます!」

 

「我々にとって、ミラボレアスは恐怖そのもの……ソレと相対し呪われてなお、生きる希望を失わないショウ様の心の強さ、見習わせていただきます。ショウ様、決して諦めないでください」

 

「クライスさんも、ありがとうございます」

 

こんなにも心強い人達がいる……私、ここまで頑張ってきて良かった。もちろん、呪いを解くまで頑張り続けるけどね!

 

「――おーい!」

 

……と、ここで誰かが走ってきた。また知らない人……あ、あの人が背負ってる武器、シズカさんのお師匠さんと同じ武器だ!確か、スラッシュアックス、だっけ……。

 

「あ、クロエちゃん!どうしたの?」

 

「フローラ!"どうしたの?"じゃない!物見からの伝令だ!またバゼルギウスが戻ってきているらしい!!」

 

「そんなっ……!」

 

「あの……」

 

「ん……?君は?」

 

「私、ショウと言います。バゼルギウスが戻ってきたって本当ですか?」

 

「あぁ、そうだ……っと、初めましてなら自己紹介が先だな。私は『クロエ』という者だ。スラッシュアックスFのレジェンドラスタを務めている」

 

「スラッシュアックス……」

 

「Fだ!Fをつけてくれ……っと、言ってる場合か!」

 

エ、F……?なにか違うのだろうか……。

 

「レジェンドラスタは大衆酒場に集合だ、すぐに会議が始まるぞ!」

 

「わかった!教えてくれてありがとう、クロエちゃん!」

 

「私はモンスタートレーナーとやらがメゼポルタに来ているそうだから、そいつらに声をかけてくる。フローラとクライスさんは先に行っててくれ」

 

「クロエ様、件のモンスタートレーナーは、おそらくこちらの……」

 

「クロエさん、私がモンスタートレーナーです!案内してください!」

 

「なにっ!?君が!ハハッ、たまには私もツイてるみたいだな!早速案内をしよう、ついてきてくれ!」

 

「クロエちゃん、道を間違えたりは……」

 

「するかっ!?ここはメゼポルタだぞ!!」

 

……クロエさん、クールな見た目や言動に反してうっかりな部分があるのかな?フローラさんからの指摘に加えて反論した際の反応からして、そう推測した。

戻ってきたバゼルギウス……これも、ミラボレアスの仕業なのか……?なんにしても、メゼポルタはやらせない。必ず守ってみせるんだ……!!

 

 

 

 




今回は導入なので短めにして、次回から戦闘開始です!

オリキャラ、オリジナルレスタのマリオとクライスが登場!マリオは操虫棍、クライスはチャージアックスのレスタとして出しました。


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メゼポルタを守れ!爆鱗警報発令中!!

いよいよバゼルギウス戦!
ショウは初の古龍級生物撃破なるか……!!


バゼルギウス。

"爆鱗竜"の別名を持つ大型の飛竜種であり、極めて獰猛な性格と非常に危険な特性を持ち合わせており、出現時には最大限の警戒を要する特級の危険生物として知られている。

「爆腺」と呼ばれる器官から分泌される体液が、空気に触れて表面が冷え固まる事で形成され、刺激を与えると強烈な爆発を引き起こす性質を持つ「爆鱗」は、別名にあるとおりバゼルギウスをバゼルギウス足らしめている象徴とも言えるものだ。戦闘だけでなく狩りにさえこの爆鱗を用いるため、辺り一帯を火の海に変えてしまうことはザラにある。

その余りにも危険極まりない習性や生態から、古龍級生物に認定されている。

 

そこまで説明を受けて、私は顰め面を抑えられなかった。

古龍級生物……私に立ちはだかる、現段階における最大の壁。マガイマガド、ラージャン、イビルジョー……古龍級生物との戦いに尽く負け続けている私の前に立ちはだかったのは、またしても古龍級生物だった。一瞬だけ、不安がよぎる……でも、それも一瞬だ。

今度こそ勝つ。むしろ今の私の心は、早く戦わせろとばかりに震えている。今度こそ勝つ、勝ってやる。相手は飛竜種だから、同じ飛竜種のリオレウスで戦う事になるだろう。そのリオレウスは、こちらの大陸では強力な個体として知られる二つ名個体……大丈夫、勝ちの要素は十分にある。

 

「……以上で、バゼルギウスに関する報告を終わります」

 

「うむ、ご苦労じゃ」

 

受付嬢の説明が終わり、隣に立つ赤と白の和装に太刀を二本背負った竜人族の女性が労った。どうやらこの女性がギルドマスターのようだ。要職に就く女性……私が元いた時代で言うと、ジムリーダーや四天王、チャンピオンみたいな人かな。

 

「シュレイドに出現した謎の裂け目……。黒龍ミラボレアスが自在に操ると、ドンドルマからの速達で聞き及んでいたが……いざ現実を目の当たりにしてもなお信じられん。あれが、古龍の力によって引き起こされたものとは……」

 

それからギルドマスターさんは私の方を見た。

 

「ただでさえその事実に混乱しているというのに、そこへ来てさらに黒龍に呪われた少女と来た。……まったく、情報量の暴力じゃな。ちと整理する時間くらいよこさぬか」

 

「その、すみません……なんだか、押しかけちゃったみたいで……」

 

「よい。むしろ押しかけて来てもらわねば、今頃メゼポルタは爆鱗竜の争いで地図から消えておったかもしれぬ。その事を思えば、むしろこちらからは感謝しかないのじゃ」

 

そう言って、ギルドマスターさんはやんわりと微笑んだ。……うわぁ、すっごい美人。元いた場所でも、あんな超絶美人はそう見ないなぁ。

……え、ウチの地元のチャンピオン?それよりカロスのチャンピオンさんの方が美人さんでしょ?ほら、ウチの地元の人って片付けられない人だーってお母さんが愚痴ってたから……。

 

「……さて、既に物見から報告を受けておるだろうが、改めてこの場にいる全員に通達する。

……さんざっぱらに暴れてくれた爆鱗竜共が、再びこのメゼポルタに集結しようとしておる。やれやれ……奴らめ、存外にこの地が気に入ったようじゃな……。モンスターすら居着きたくなるとあっては自慢にもなろうが、今となっては迷惑千万。これ以上、彼奴らにこのメゼポルタの地を荒らさせるわけにはいかぬ!爆鱗竜共は、メゼポルタを中心に東西南北の四方より迫ってきておる。奴らがメゼポルタに侵入する前に、メゼポルタの外で迎撃するのじゃ!

……じゃが、メゼポルタが有する飛行船は先の襲撃にて全滅……メゼポルタが有する航空戦力はゼロに等しい。しかし!諦めるにはまだ早い。我々にはまだ希望がある。その希望こそが、こちらに控えるモンスタートレーナーの諸君じゃ!」

 

ギルドマスターさんに紹介され、軽く会釈をする。その後、ギルドマスターさんの説明の続きが始まった。

 

「彼らはモンスターと絆を結び、共に生きる者達じゃ。亜大陸にいるライダーとは異なりともに戦ったりはせぬそうじゃが……その分、頭脳戦においてはライダーの上を行く。彼らは先ほど爆鱗竜共を追い払った飛竜種……黒炎王、蒼火竜、電竜、雌火竜を相棒としておる。空から飛来する爆鱗竜を彼らの力で墜とし、その後地上で待機するハンター達と共闘し、爆鱗竜を狩る!必ずや、メゼポルタを守るのじゃ!!」

 

おぉーーーーっ!!

 

その場にいる誰もが歓声を上げる中、ギルドマスターさんがゆっくりとこちらへ振り返った。

 

「……すまぬ、トレーナー達よ。他力本願とは情けない話じゃが、ほかに手がないこともまた事実……そなたらの力、頼りにしても良いじゃろうか……?」

 

「無論だ、ギルドマスター殿。この地の龍脈を、あのような無礼を地で行く爆弾魔共に荒らさせるわけには行かん。それに、こちらは仲間の命が掛かっている。一切の加減はしない。君たちもいいね?」

 

「もちろんだ!バゼルギウスを追い払って、祈樹の泉を守って、ショウの呪いを解くんだからな!」

 

「ショウ、リオレイアのことは私に任せてね。あの子のことは、私が一番よくわかってるから」

 

「先輩、ありがとうございます。シロちゃんも、リオレイアのこと、お願いね」

 

「うんっ!」

 

「ギルドマスターさん、私たちは必ず成し遂げてみせます。ハンター達と一緒に、この地を守ってみせます!」

 

「忝ない……!感謝するぞ、トレーナー達よ!さぁ、皆の者!祈樹の泉へ行こう!作戦に赴く戦士たちのために、歌姫が一曲披露してくれるそうだぞ!」

 

その後、私たちは祈樹の泉へと向かった。とても神秘的な場所で、こう……ごめん、上手く言葉にできない。なんだかどんな言葉も陳腐に感じてしまうくらい、そこは素晴らしい場所だった。

 

「ハンターの……トレーナーの皆様の勝利を祈り、歌います。……~~~♪」

 

その後、泉の中心地である舞台に姿を見せたラウラさんが歌い始めた。歌を歌っているラウラさんは、祈樹の泉の雰囲気とも相まってまるで別次元に住む人間のようだ。

 

「~~♪……皆さんに、勝利を!」

 

歌い終わると同時に、ラウラさんはその言葉で締めた。そのまま祈樹の泉を出た私たちだけど……。

 

「……シズカちゃん、ちょっといい?」

 

「フローラさん……」

 

なぜかフローラさんがシズカさんを呼び出し、そのまま一団から抜けてしまった。少し離れた場所で、二人で何かを話し合ってるみたいだけど……。

フローラさんがなにか話して……シズカさんが首を横に振っている。フローラさんは諦める様子はなく話し続けているけど、シズカさんの反応は芳しくない。何を話しているんだろう……。

 

「うーん、やっぱりシズカちゃんは乗り気じゃないっぽいね」

 

「チルカさん?乗り気じゃないって、何の話ですか?」

 

「あー……これ、言って大丈夫かな……まぁいっか!実はね、シズカちゃんには前々から"レジェンドラスタにならないか"ってメゼポルタからの打診があったんだ」

 

「レジェンドラスタに……」

 

レジェンドラスタ……元々、ラスタ、と呼ばれるハンター版オトモと呼ぶべきシステムがあり、その中でも各武器種に精通した実力者たちをレジェンドラスタ、と呼ぶらしい。また、レジェンドラスタ達は得意武器一辺倒というわけではなく、ある程度はほかの武器種も扱えるそうだ。

 

「今、ガンランスのレジェンドラスタにはタイゾウって男の人がその地位についてるんだけど……二、三年前に、ちょっと大怪我しちゃって。今は怪我から復帰してるんだけど、流石に怪我が響いてるのか前よりも動きに精彩を欠いてて、クエストを失敗することが増えちゃったの。

けど、タイゾウさんと対等以上のガンランス使いって全然見つからなくて……そんな時に、風の噂で聞いたのがシズカちゃんのことだったの!全国津々浦々、世界中の教官を訪ねては教えを受けて、いろんな狩猟技術を身につけたシズカちゃんはハンターならぬスーパーハンター!狩技と鉄蟲糸技の両方を駆使して狩猟に挑む姿は"誰にも真似できない"って話題になったほどなんだから!」

 

「……?使えるものは何でも使えばいいのでは……」

 

「使おうと思って使えるわけじゃないしね~。だって相手は生きたモンスター……こっちがあれこれ考えてる間、モンスターだって黙って待ってくれるわけじゃないです。モンスターの動向の観察と攻撃予測、さらにこっちは周囲の状況把握に行動の取捨選択……このマルチタスクを判断が寸分遅れることなく完璧にこなせるのはシズカちゃんくらいです。

特にシズカちゃんが魅せる『先読み』!あれね、ホントすごい!チルカも思わず目ん玉飛び出しそうになっちゃったくらいびっくりした!」

 

シズカさんの狩りって普通じゃなかったのか……。ティガレックス戦のこともあって、ハンターはみんなシズカさんみたくぶっ飛んだ実力者ばかりかと思ったけど、以外と普通の人もいたんだな……。

 

「それが今となっては、誰もが知る有名人!ギルドからも一目置かれてるって言うし、シズカちゃんがマスターランクになってからは新人ハンターがすごく増えたって話だし!」

 

「へぇ~……」

 

「そうだ、全てはシズカが現れてから始まったことだ」

 

私とチルカさんの会話に混ざったのはクロエさん。随分と誇らしげな表情だ。

 

「クロちゃん!」

 

「クロちゃん言うなっ!……ゴホンッ!ショウさん、私も会話に混ざって構わないか?」

 

「もちろんです。あと、私のことは呼び捨てで結構ですよ、クロエさん達の方が年上ですし」

 

「わかったよ。……さて、話を続きだったな。実際、シズカが現れるまでは皆が皆、己が持つ狩猟技術を維持、あるいは成長させることで精一杯でな……かくいう私も、己の剣斧術を、今ある手札でどうにか伸ばせないかと悩んでいたものだ。

そこへ一石を投じたのがシズカだ。彼女のやり方は……"手札が足りないなら増やせばいい"、だ」

 

「その心は?」

 

「ここ、メゼポルタで狩猟をするハンター達には、シズカが扱うような狩技も無ければ翔蟲を使った移動や鉄蟲糸技といった技術もない。無い物に対して『無い物ねだりはできない』と諦めるか、『無ければ用意すればいい』と諦めないかの二択を迫られた時、シズカは迷わず後者を選んだ。それが、彼女が全国の教官達を訪ねて回った理由だ」

 

「えーっ!?チルカ、その話知らなかったんですけど!?」

 

「ふふんっ、シズカが『クロエさんにだけですよ?』と教えてくれたんだ!」

 

ドヤァ!と胸を張るクロエさんに対し、チルカさんは本当に悔しいとばかりに地団駄を踏んでいる。うーん、シズカさんの性格上、ネネさんっぽい雰囲気のチルカさんは苦手で、逆にクロエさんのようなタイプだと付き合いやすいのかもしれないな。

 

「ちょうどメゼポルタの教官を訪ねていた頃だったからな、その時に私のことも訪ねてくれたんだ。スラッシュアックスとスラッシュアックスFの違いについて聞かれたな」

 

「何が違うんですか?」

 

「よくぞ聞いてくれたなショウ!スラッシュアックスとスラッシュアックスFの違いはズバリ、環境適応のために改変が加えられたことだ!

私の故郷や、ここメゼポルタでの狩猟環境に適応するべく、既存のスラッシュアックスを色々と改造しているうちに、"従来のスラッシュアックスを引き継ぎながらも、全く新しいスラッシュアックス"として、Fの名を冠したスラッシュアックスFが誕生したんだ!」

 

「成長とともに変化していった……というわけですね、人間と同じように」

 

「……!アッハハハハ!!その感想、シズカとまったく一緒だぞ?」

 

「え」

 

「そして、Fとは『フロンティア』という意味だそうだ。シズカの故郷でよく使われる言葉で、"開拓"という意味があるらしい。

……かつて、ここメゼポルタは何もない土地だった。そこへ人が集まり、モンスターの脅威を退けながらも開拓と発展を続け、今がある。そういう意味で、メゼポルタと縁深い私の剣斧にはFの名が送られたのではないか……と、シズカが話してくれたんだ。とても深い言葉だった……啓蒙を与えられた気分だったよ。

モンスターハンターフロンティア……ここ、メゼポルタで活動するハンター達を、シズカはそう呼んだんだ。まったく、あの時ほど"コイツはどこまで先を見ているんだ"と思ったことはない。シズカはきっと、私たちが想像もつかないようなところを見据えているのかもしれないな」

 

「おぉ……クロちゃん、頭良さそうに見える!」

 

「……おい、それは私が普段は"バカだ"とでも言いたいのか?」

 

「……え?」

 

「おぉいっ!?」

 

そう語るクロエさんに、茶々を入れるように拍手をするチルカさん。……確かにしゃべっている間のクロエさんは頭が良さそうに見えたけど、普段は違うのかな?

案の定、余計な一言でクロエさんを怒らせてしまったチルカさん……この二人のやり取り、まるでお約束みたいな……。

 

「と、とにかく!シズカが台頭し始めてから、我々ハンターの世界も変化し始めている。

シズカに続けとばかりに新人ハンターが増え、以前よりも教官の元を訪れるハンターが増え、さらにベルナやカムラといった、独自の狩猟技術を持つ地方との文化交流も盛んになった。この道何十年というベテランハンター達も同様だ。

皆、誰もがシズカを指標にしている……誰も成し得ない、あるいは成そうともしなかったことを率先して成し遂げるシズカに、ハンターとしての血が騒いだのだろうな。シズカは、ハンターの誇りだ」

 

「大袈裟な」

 

ますます自慢げに語るクロエさんの会話に水を差したのは、ほかならぬシズカさん自身だった。……フローラさんがちょっと元気なさげな様子からして、交渉は失敗に終わったのだろう。

 

「フローラちゃん、またダメだったんだね~」

 

「うぅ……だって、シズカちゃんが頑固すぎて……」

 

「私は頑固じゃないですし、みんなに誇れるような立派なハンターでもないです。流されるままにハンターになった死にたがりの自暴自棄女ですし」

 

「だが、今は違うのだろう?なら、それだけで十分だよ」

 

「うぐっ……そ、それは……そう、ですけど……」

 

シズカさんはバツが悪そうにそっぽを向いた。……確かに昔はそうだったとしても、今のシズカさんは誰に対しても自慢できる素晴らしいハンターだ。これには草葉の陰のお兄さんもニッコリ……の、はずだ。

 

「……そ、それより!作戦内容は頭に入ってますよね!?」

 

「(強引に話題を変えてきた……)はい、もちろんです」

 

「東西南北……それぞれの方向から迫って来るバゼルギウスを追い返すんですよね?モンスタートレーナーは各方角に一人ずつ配置するとして、チルカたちハンターの配置は……」

 

「歌姫様の護衛としてついてきてくれたシズカちゃん達……そして、レジェンドラスタが各一人ずつ、だね」

 

「そもそも、残ったレジェンドラスタが少ないのも問題だ……。今メゼポルタに残っててすぐに動けるのはフローラ、フラウ、チルカ、私、マリオ、クライスさんの六人のみ……他のレジェンドラスタはメゼポルタ復旧のための資材集めのため、遠征中だからな……」

 

そうなのか……と、いうことは、レジェンドラスタの人数分だけ、ハンターが扱う武器が存在するってことでもあるんだ。レジェンドラスタはあと何人いるんだろう?

 

「北はトレーナーのテル、ハンターはエイデンさんとチルカさん。東はトレーナーのシロ、ハンターはネネとクライスさん。南はトレーナーのアカイさん、ハンターはニールさんとフラウさん。そして、西はトレーナーのショウ、ハンターは私シズカとマリオさん。

フローラさんとクロエさんは、防衛網突破に備えてメゼポルタで待機……必要に応じて、各方面への支援に派遣する、という内容です。……ショウは、もう全部覚えてるよね?」

 

「もちろんです」

 

「むぅ……私も前線で戦いたかったのだが、お上からの指示ならば従うしかない……残念だ」

 

「(クロエさんの場合は十中八九、方向音痴が原因だろうけど……)」

 

「……何か言いたげだな、シズカ?」

 

「なんでもありません」

 

ハンターとの共闘戦線……そして、何よりも古龍級生物が相手だ、気を引き締めないと……!

その時、私の両肩にポン、と手が乗せられた。フローラさんだ。

 

「ショウちゃん、力んでるよ。リラックスリラックスです!」

 

「あ……ありがとうございます」

 

「ふむ、確かにショウの気合の入り様は一味違うな、なにかあるのか?」

 

「……これ以上、古龍級生物に負けるわけにはいきませんから」

 

「おぉ……これは闇が深そうな予感……」

 

「チルカさんが言うほど深くはないですよ」

 

私はアカイさんやムフェトさん、そしてクロノとのポケモン勝負について簡単に説明した。……といっても、繰り出された古龍級生物相手に負け続けているということだけなんだけど。

 

「いや、待て。一番ヤバイのはそんな連中を従えているアカイさんたちだろ。クロノとかいう少年に至ってはイビルジョーだぞ?どうやったらラージャンやイビルジョーといった古龍級生物共が人間に従うんだ……?」

 

「すごいよねー!チルカ、ラージャンの背中に乗ってみたいかも!」

 

ここで私はあえてノーコメント。沈黙は金 雄弁は銀とも言うしね。

 

「……さて、お喋りはここまでにして配置につきましょう。お互いに健闘を祈って」

 

「そうだね!アタシとクロエちゃんはお留守番だけど……ギルドマスターからの指示があれば、いつでもみんなを助けに行くからね!」

 

「まぁ、私たちの支援が必要ないならそれに越したことはない……が、無理だけはするなよ」

 

「わかってるよ!私の笛で、みんなを元気づけちゃうんだから!」

 

「私もトレーナーとして、出来ることをします!」

 

「では、解散しましょう。次に会うときは、祝宴ですね」

 

シズカさんのその言葉で、私たちは解散した。それぞれ配置につくために移動する。私とシズカさんの場合、マリオさんとも合流しないといけないからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メゼポルタの門を出て、西の方角へ向かう。途中でマリオさんとも合流し、馬車で移動中に私たちは作戦について話し合うこととなった。

 

「……まず大前提として、バゼルギウスは空襲をかけてくる。それを、ショウのリオレウスに叩き落としてもらう。バゼルギウスは肉質は柔らかいほうだから、私たちハンターの土俵である地上戦にもつれ込ませれば、十分に勝機はある」

 

「リオレウス……確か、【黒炎王】だったよな?スゲェぜ、ショウ!二つ名個体を従えるとか、やばすぎるんだぜ!」

 

「いやぁ、あはは……」

 

「……あの個体を従えるなんて普通じゃないぜ!ショウがこれだけ凄かったら、ご両親はもっと凄いんじゃないか?」

 

「え"っ!?」

 

「フフッ……子は親に似るとも言うし、そうかもね」

 

うわ、シズカさん今思いっきり悪乗りしてきた!……うぅ~ん、お母さんとお父さんか……。

 

「いやいや、まぁ……お父さんは凄いですけど、お母さんはもっとヤバイですね。いろんなハメコンボ使ってくるし……」

 

「どんなのがあったの?」

 

「えぇっと、通じるかは怪しいですけど……【まもみがムラっけ】とか、【ポイヒみがローほうし】とか、【まもみがポイヒギロチン】とか……」

 

「まもみが……?ポイヒ……?」

 

マリオさんはチンプンカンプンだ……当然だ、これらの言葉は全てお母さんが考えた造語だからね。そのポケモンができる戦法を、技名や特性名からとったものだし、私たちの地方のポケモンを知らないと絶対に出てこない言葉だ。

 

「あぁ、やっぱりわからな――」

 

「まもるとみがわりに特性ムラっけ……オニゴーリか。特性ポイズンヒールにみがわりとローキック、極めつけにキノコのほうしとくればキノガッサかな。あとはグライオンか……単純だけどクッソ強いんだよね、あの害悪どもめ……」

 

「えっ!?シズカさん、わかるんですか!!」

 

「いや、わかるけど……むしろこの害悪戦法を知ってるショウのお母さんって何者?」

 

「害悪戦法って言葉も知ってるんですか!?」

 

凄い凄い!お父さんもお母さんからこの言葉を教えてもらったって言ってたし、お母さん以外にこの戦法を考えた人なんていなかったのに!シズカさんも知ってるなんて……シズカさんって、元はどんな世界で生きてたんだろう?

 

「(ありえない……そもそも害悪戦法という概念すら、ゲームにもアニメにも存在していない!なのに、ショウの母親はそれを知っている……)ねぇ、ショウのお母さんってどんな人?」

 

「え?お母さんですか?お母さんは……まぁ、普通ですよ普通。至ってどこにでもいる、普通の人です。……バトルはちょっと鬼畜ですけど」

 

「そんな説明じゃ納得できない。人相とか性格とか、もっと内面的な部分を教えて」

 

「オレも知りたいぜ!」

 

「えぇ?」

 

本当に普通の人なんだけどなぁ……バトル以外は。

 

「えぇっと……さきほど言ったとおり、バトルに関しては本当に厳しい人です。あと鬼畜です。普段は見ていてこっちが心配になるくらいのんびりぽやぽや~ってしてる人なんですけど……一度、集中力のスイッチが入ったら別人レベルで変わります。そうなったら、普段のふにゃふにゃ具合は何処へやら……ビシッとしてて、すごくかっこよくなりますね」

 

「なるほど、仕事モードってやつか。デキる女って感じでかっこいいぜ!」

 

「…………。……普段は結構だらしないの?」

 

「いえ、だらしないというか……とにかく心配になるんです。世話を焼きたくなるというか……そんな感じです」

 

「…………。……そう」

 

シズカさんは私のお母さんの話を聞いて、なにやら考え込んでいる。……自分のお母さんと比較してるのかな。

 

「……そのお母さん、得意なこととかは?」

 

「え、特技?いえ、特には……あ、よく怪我をした時とか、人を手当するときは物凄く手際がいいですね。反面、ポケ……モンスターの手当は苦手みたいでしたけど。包帯とか消毒剤とか、人間用の道具の扱いは完璧なんですけど、傷薬とかモンスター用の回復道具の使い方には四苦八苦してました」

 

「…………。ところで、お父さんの名前は?」

 

「え、急にお父さん……えっと、『コウキ』、ですけど?」

 

「…………。………。……」

 

「シズカさん……?」

 

な、なんだろう……?シズカさんが、さらに考え込み始めちゃった……。

 

「……ねぇ、ショウ」

 

「はい?」

 

「お母さんはお父さんのこと、『コウちゃん』って呼んでたことは?」

 

「昔はあったみたいですね」

 

「……お父さんは、お母さんのことをなんて?」

 

「いえ、普通に名前で……あ」

 

そういえば……お父さんとお母さんのことで、一つだけ気になることがあるんだった。

 

「そういえば、一つだけ……お母さんの名前は『ヒカリ』っていうんですけど、昔、お父さんがお母さんのことを別の名前で呼んでたような……」

 

「……ッ!!な、なんて呼んでたの!!」

 

「えぇっと……」

 

しまった……お父さんがお母さんのことを『ヒカリ』じゃない別の名前で呼んでたのって、小さい頃にたまたま偶然、一度だけ聞いただけだから全然覚えてない!えっと確か……。

 

「……『ミ』……」

 

「ミ?」

 

「……すみません、覚えてないです」

 

うん、やっぱり思い出せない。正直に謝ったけれど、シズカさんはむしろ納得した、というか……すごく複雑そうな表情をしている。

 

「……そっ……かぁ……。あぁ……そっかぁ……」

 

「あの、シズカさん……」

 

「ごめん、なんでもない。…………」

 

突然、シズカさんが黙り込んでしまった。……ど、どうしたんだろう?私、何かやらかした……?

 

「(害悪戦法、コウちゃん、ヒカリの読み方……そんなことって……)ショウ」

 

「はい」

 

「貴女は私が、命に代えても守ってみせる」

 

「は、はい?」

 

し、シズカさんが物凄く覚悟が極まった表情でそう言ってきた。な、なんだろう急に……そういうことを言われるなんて思ってもみなかったんだけど……。

 

「おぉう……シズカお前、そんな顔できるのか……」

 

「ごめんなさい、マリオさん。私には何が何でも守らなければならないものができました」

 

「ハッ!別に悪いことじゃねぇぜ?むしろ、いい変化だとオレは思うぜ」

 

「マリオさんも、もっと変化できるといいですね。……友達増やすとか」

 

「と、友達くらいいるわぁ!」

 

「例えば?」

 

「た、例えば……エルガドの受付嬢(チッチェ)とか、火の国の姫(フレア)とか、わがままな第三王女(アーシェ)とか……」

 

「マリオさん、せめて友達の言葉の前に"一般人の"が付くような友人を作りましょうよ」

 

「し、仕方ないじゃんかぁ!お父様は交友関係に厳しいし、パーティーで会った子ぐらいしか知り合いはいないし!独り立ちしたくてハンター目指したのにこっそりクライスをつけてくるし!きっとお父様は子供の背伸びだと私のことを笑っているんですわ!」

 

「ほら、マリオさん。口調口調」

 

「……ハッ!?あばばばば……!!」

 

慌てて口を塞ぐマリオさん……うん、申し訳ないがこれはもうバレバレである。

 

「マリオさん、女の人だったんですね?」

 

「いや、ちが――」

 

「あれだけ喋っててまだ誤魔化せるとでも?」

 

「うぐぐ……そ、そうよ。その通りです……私は女で、本当はマリアと言いますの」

 

急にお淑やかになった……やっぱり、あの男性口調は演技だったんだ。やたら語尾に"ぜ"をつけてたし、ちょっと違和感があったんだよな。

 

「ショウ、彼女はかつて滅亡し、今は東西に分断されたシュレイド国のお姫様なの。西シュレイドだよね?」

 

「そうですわ」

 

「シュレイドの……それじゃあ、ミラボレアスは……」

 

「まぁ、祖先の敵ということになりますわね。私自身はあまり気にしていませんが……けど、機会があればその無念、晴らして差し上げたいと思っておりますわ」

 

マリオさん……いや、マリアさんは決意に満ちた表情でそう言った。……私もミラボレアスに落とし前をつけたいし、時が来れば一緒にミラボレアスを殴りましょう。

 

「ですが、今ここにいるのはただのレジェンドラスタ、マリオです。……そういうわけだから、ショウもこれまでどおりにマリオとして、オレに接して欲しいぜ!」

 

「分かりました、マリオさん。……あと、なんでも語尾に"ぜ"をつければ男っぽくなるとは限りませんからね?」

 

「そうなんだぜ!?」

 

「そういうところですよ」

 

……後で先輩に事情を話して、男口調講座でも開いてもらおうかな。

 

「……!!前方、爆鱗竜確認!!」

 

その時だ。御者さんから大声が聞こえた私たちは、すぐに前方を確認する。……かなり高い位置に、バゼルギウスの姿が見える。

 

「ここで降ります!」

 

「おう!トレーナーさんもハンターさんも、どうかお気をつけて!!」

 

私たちが同時に馬車から飛び降りると、御者さんはすぐさま反転しこの場を去った。それを見送ってから、私はボールを取り出してリオレウスを繰り出した!

 

「リオレウス!バゼルギウスを叩き落とすよ!!」

 

「グオオオオオオンッ!!」

 

リオレウスの背中に乗り込み、一気に飛翔する。あっという間にバゼルギウスと同じ高度まで飛び上がると、そのまま突撃!

バゼルギウスもこちらに気づいたようで、移動を中断してこちらに威嚇してきた。

 

「ヴオオオオオオォォンッ!!」

 

「行くよ、リオレウス!!」

 

「グオオオオオオオンッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【戦闘!伝説のポケモン】~ポケットモンスター LEGENDS アルセウス~

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バゼルギウスはほのお・ひこうの複合タイプで、でんきとこおりとドラゴンに弱いが、みずに強く、ほのおが全く効かない体質をしている。……ほのおタイプといえばみずタイプがすぐに連想できるのに、バゼルギウスはみず技が効きにくいのか……。加えて、リオレウスが覚える技にドラゴン以外の弱点タイプは少ない……厄介だな。

 

「エアスラッシュ!!」

 

「グオオン!グオオン!!」

 

「ゼルァアアアッ!!」

 

リオレウスのエアスラッシュに対して、バゼルギウスはハイパーボイスを放ってきた!両者の技がぶつかり合い、爆発とともに煙が発生する。だが、煙の向こうから何かが高く打ち上げられ、それが炸裂すると一斉に降り注いできた。りゅうせいぐんか!!

 

「避けて!」

 

「グオオオンッ!!」

 

「ヴオオオオオ!!」

 

「なにっ!?」

 

リオレウスは持ち前の機動力でりゅうせいぐんを回避したけど、煙の中を突っ切って姿を現したバゼルギウスのドラゴンダイブには直撃してしまった!!

 

「グオアッ!?」

 

「うぐっ……りゅうのはどう!!」

 

「グオオオオオッ!!」

 

「ゼルァッ」

 

体勢を崩しかけたけど、なんとか持ち直してりゅうのはどうを発射!攻撃は命中した……が、バゼルギウスはまだまだ元気だ。もっと攻撃を仕掛けて、墜落させないと!

 

「よしっ、メガトンキック!」

 

「グオン!」

 

とにかく、バゼルギウスの上を取らないことには話にならない!バゼルギウスもこちらの意図を読んだのか、さらに上を取るべく高度を上げ始めた。……いや、待てよ?これはどうだ?

 

「リオレウス、バゼルギウスの爆鱗にかえんほうしゃ!」

 

「グオオオオン!!」

 

バゼルギウスの爆鱗は、僅かな衝撃でも爆発すると聞いた。さらにバゼルギウスが怒るなどして赤熱化すると、ほとんど待たずに爆発するとか。……では、現在バゼルギウスにぶら下がっている爆鱗を、高熱で急速に熱したらどうなる?

私の読みは……当たった!リオレウスのかえんほうしゃを受けたバゼルギウスはびくともしていない……が、爆鱗は一瞬で真っ赤に染まり、そのままの勢いで次々と爆発が起こった!予想外の衝撃にバゼルギウスの体勢が崩れる……やはり、自発的に爆発させる分には衝撃をものともしないが、外部から無理やり爆発させられれば驚くか!今ならチャンス!!

 

「ゼラァ!?」

 

「今度はこっちがドラゴンダイブ!!」

 

「グオオオオオッ!!」

 

「ヴアアアアッ!?」

 

「このまま地上に引きずり下ろす!!」

 

「グオン!!」

 

ドラゴンダイブでバゼルギウスに体当たりしたリオレウスは、そのままの勢いで急降下!バゼルギウスごと地面に向かって真っ逆さまに降下する!!ある程度地上に近づいたところで……!

 

「ダメ押しのメガトンキック!!」

 

「グオオン!」

 

「バゼラアアアッ!!」

 

体勢を素早く変えて強烈な蹴りを放つ!!蹴られたバゼルギウスは思い切り地上に叩きつけられた!!

 

「よっし!降りよう、リオレウス!」

 

「グオン」

 

私たちも、急いで地上に降下する。リオレウスの着地と同時に私は飛び降り、後ろから走ってきたシズカさんたちに合流した。

 

「流石だね、ショウ」

 

「すっげぇぜショウ!まさか、バゼルギウスの爆鱗をこっちから爆発させるなんてな!」

 

「えぇ、賭けてみたんですけど、上手くいってよかったです」

 

「地上に墜ちればこっちのもんだぜ!後はオレたちに任せな!!」

 

「いえ、私とリオレウスもこのまま戦線に参加します。見てるだけってのは性に合わないので」

 

「……!へへっ、そうか!よぉし、モンスターとの初共闘だ!気合入れていくぜ!!」

 

「ショウ、地上からは私たちハンターが攻撃する。リオレウスには、空対地攻撃をお願い」

 

「任せてください!!」

 

私の返事とともに、リオレウスが飛び上がった。タイミングを見て、攻撃を仕掛けるべく下準備をする。ガンランスと操虫棍を構えたシズカさんとマリオさんが前に出て、起き上がったバゼルギウスと相対した。

 

「……フッ」

 

「どうした、シズカ?」

 

「いえ。……なんか世間では私の相棒だとかなんだとか言われているネネは、最初は操虫棍を使ってたんですよ。猟虫が可愛いって理由で」

 

「なんだそれ」

 

「けど、あの子のAIM力……猟虫を飛ばす技術は、私が知る限り世界一のハンターでした。……マリオさんにも、同じだけ期待してもいいですか?」

 

「ハハハッ!……抜かせよ、シズカ。オレは猟虫飛ばしだけじゃなく、棒術だって世界一だぜ?じゃねぇとレジェンドラスタになんてなれるもんかよ!」

 

「フフッ……それもそうです、ね!」

 

「いっくぜぇ!マグナムソニック!!」

 

「(その猟虫の名前(ミニ四駆)はなんとかならなかったのか)」

 

シズカさんとマリオさんが同時に走り出した!バゼルギウスがかえんほうしゃを構えるが、それと同時にシズカさんが翔蟲で飛び上がり、さらにブラストダッシュで高く飛ぶ!標的が二手に分かれたことで一瞬だけ動きが硬直したバゼルギウスだが、すぐにマリオさんに向けてかえんほうしゃを放った!

 

「おっと、これが見たことない攻撃……か!」

 

マリオさんは棍を地面に突き立てると、そのまま高くジャンプして回避した!さらに棍を振ると猟虫が飛んでいき、バゼルギウスの翼にぶつかって再びマリオさんの元に戻っていく!

 

「っしゃあ!!」

 

着地すると同時に走り出すと……さっきとは比にならない速さで走り出した!マリオさんの元に帰るとき、猟虫がなにかを運んでいた……あれが、マリオさんに力を与えているのかな?

 

「頭上がお留守だ!」

 

マリオさんを追いかけるバゼルギウスだが、その隙を逃すシズカさんじゃない!頭上から顔面に砲撃を二発浴びせると、そのままブラストダッシュでバゼルギウスの後方までひとっ飛びし、着地同時にリロードした!バゼルギウスは尻尾を振りあげて叩きつけようとしている……させるか!

 

「リオレウス、エアカッター!」

 

「グオグオン!!」

 

「ゼラッ!?」

 

「ナイスだよ、ショウ!AAフレア!!」

 

リオレウスの横槍に怯んだバゼルギウスに、シズカさんの攻撃が直撃!そこへさらにマリオさんが畳み掛ける!

 

「そらそらそらぁ!頭、いただき!」

 

側面から足に斬りかかったあと、一度後退して頭に向かって猟虫を飛ばした。ちょうどバゼルギウスが振り返ろうとしていたところで、猟虫はバゼルギウスの顔面にぶつかってから戻ってきた。

マリオさんは止まらない!再び棍でジャンプすると空中で何度も棍を振るい、流れるようにバゼルギウスの背面を攻撃しつつ反対側へと移動した!さらに振り向きざまに再び猟虫を飛ばして翼にぶつけると、また白い色の何かを回収した!

 

「流石はレジェンドラスタ!」

 

「伊達にレスタは張ってねえよ!!」

 

「ヴオオオオオ!!」

 

バゼルギウスが振り向きざまに力強く羽ばたくと、強烈な竜巻を発生させた!あれは、ぼうふうの技!直撃すると混乱状態になるから厄介な技だ!

 

「ぐあっ!とんでもねぇ風だぜ……!!」

 

「マリオさん、私の背後に!」

 

「リオレウス!バゼルギウスを止めて!!りゅうのいぶき!!」

 

「グオオオッ!!」

 

「ゼッ……ルッ……!?」

 

バゼルギウスにありったけのりゅうのいぶきを浴びせる!りゅうのいぶきを受けたバゼルギウスは完全に動きを止めた……やった!麻痺状態だ!!

 

「動きが止まった……今だ!!」

 

「行くぜ!シズカに教えてもらった技!!四連印斬!飛円斬り!!」

 

「ではこちらも、爆杭砲!からの……フルバースト!!」

 

マリオさんとシズカさんの技も決まった!これはかなりのダメージが見込めるぞ!バゼルギウスは体ごと尻尾を振り回してシズカさん達を攻撃するが、二人はこれを軽々と回避している。……ハンターの回避能力って一体どうなってるんだ?

二人は一度バゼルギウスから距離をとり、態勢を整える。このまま押し切れば……いや!

 

「そうは問屋が卸さないか……!!」

 

「……!マリオさん、離れて!!」

 

「へっ?……うわぁ!なんだあれ!?」

 

空を見上げた私の視線の先には、時空の裂け目……やはり来るか、ミラボレアス!!

時空の裂け目から光が伸びてきて、それがバゼルギウスの心臓部と結びつくと、あっという間にバゼルギウスが光に包まれた!

 

「ヴ……オ……オオォアアアアアッ!!」

 

光の中から姿を見せたバゼルギウスは、その姿を大きく変化させていた。

 

焼け焦げたかのような青みがかった黒銀色に染まっている上面。

溶岩のような赤い光が節々から漏れて見える甲殻。

赤熱状態と化したまま、戻る様子のない爆鱗。

 

メガシンカしたメガバゼルギウス……確かアカイさんは、【紅蓮滾るバゼルギウス】って言ってたっけ……!

 

「……遺跡平原で捕獲されたティガレックスが、戦闘中に姿を変えたって話は聞いたことあったが……クソッタレめ、こんなのインチキだろうが……!」

 

「ズルでもインチキでも、なんでもしてきますよ。向こうも必死でしょうからね……!」

 

「リオレウス!!」

 

「グオン!」

 

私の声に応じて、リオレウスが地上に降りてくる。こうなれば、シズカさんたちだけじゃない……リオレウスも援護だけでなく、積極的に攻撃に出なければならない!!

 

「ヴオオオオオオオアアアアァァァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【飛来せし気高き非道】~モンスターハンターWorld~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メガバゼルギウスは勢いよく飛び上がると、そのまま一気に高度を上げていく。さらにそのまま滑空を始めると体を揺らして爆鱗を次々と降り注いできた!

 

「……!!」

 

「リオレウス!?」

 

リオレウスは咄嗟に翼を広げると私の体を覆い尽くした。そして、自身はそのまま降り注ぐ爆鱗による爆撃を喰らい続ける!しまった、私の存在がリオレウスの足を引っ張っている……!!

 

「リオレウス!私のことより……!!」

 

「グオオンッ!グアオン!!」

 

爆撃を受けながらも、リオレウスは私の言葉を拒否する。くっ……せめて、私がどこかに隠れさえすれば……!!

 

「ヴオオオォォォォォォォッ!!」

 

マズイ……!メガバゼルギウスがこっちに向かって突っ込んでくる……!

 

「……今だ!」

 

「ヴオア!?」

 

シズカさんのその声が聞こえた直後、メガバゼルギウスの驚いたような声が聞こえた。そして、メガバゼルギウスはそのまま私たちの上空を通過していった。……なにが?

 

「忍ばせておいて正解だったね」

 

「よっしゃ!上手くいって良かったぜ!」

 

旋回するメガバゼルギウスをよく見ると……なんとそれぞれ右目にシズカさんのオトモのリュウセイくんが、左目にマリオさんの猟虫が捕まって目隠しをしている!

……マリオさんの猟虫の名前、覚えにくいんだよね……。

メガバゼルギウスは目隠しを鬱陶しそうにしていて、振り落とそうとめちゃくちゃな機動で飛びまくっている。……今なら行ける!

 

「リオレウス!ドラゴンクロー!!」

 

「グオオオオオオオンッ!!」

 

リオレウスはすぐさま飛翔すると、あっという間にメガバゼルギウスの上を取った!そのまま両足の爪にドラゴンクローを展開すると、思い切りメガバゼルギウスを蹴りつけた!墜落するメガバゼルギウス……リュウセイくんと猟虫はリオレウスの尻尾に捕まっているので一緒に墜落しないで済みそうだ。

リオレウスはそのまま降下しバゼルギウスを追う。このまま追い打ちをかける!

 

「はかいこうせん!」

 

「グオオオオオオ!!」

 

……よかった、思いっきり叫んでみたけど、ちゃんと声は届いたみたい。リオレウスははかいこうせんを撃ったけど、なんとか持ち直したメガバゼルギウスは羽ばたいたことで地上スレスレを飛び、はかいこうせんを回避した。地上まで近づいたタイミングでリュウセイくんと猟虫が離れたのを確認して、リオレウスはメガバゼルギウスを猛追し始める。

 

「りゅうのはどう!!」

 

「グオオン!グオオオオン!!」

 

リオレウスはりゅうのはどうを連発するが、メガバゼルギウスはこれを何度も回避してみせた。クッ、メガシンカしたことで機動力も上がっているのか……?

と、その時だ。突然メガバゼルギウスが急停止すると、そのまま跳ねるようにして羽ばたき僅かに浮いた。突然のことだったためリオレウスは止まることができず、メガバゼルギウスの下に潜り込んでしまった!あの位置はまずい!!

 

「ヴオオオオアアアアアアッ!!」

 

「グオアアアアアアアッ!?」

 

「リオレウスッ!!」

 

使った技はのしかかり……だが、メガバゼルギウスが使うとなると、その威力は通常よりも桁違いになる!!胴から尻尾まで、全ての爆鱗がリオレウスとの接触により爆発し、のしかかりによる押し潰し攻撃もあって、リオレウスはそのままメガバゼルギウスに地上まで運ばれ叩きつけられてしまった!!

 

「ありゃあ、マズイぜ!?」

 

「マリオさん、【黒炎王】を助けに行きますよ!」

 

「よしきたっ!こいっ、マグナムソニック!!」

 

「リュウセイ、回復笛を用意して!!」

 

「了解ですニャ!」

 

シズカさん達が、すぐさま動いてくれた!煙が晴れた先では、ほとんど動けないほどにダメージを負ったリオレウスと、そんなリオレウスに止めを刺さんとはかいこうせんを構えるメガバゼルギウスがいた!

 

「撃たせるかよ!行け!」

 

マリオさんが猟虫を飛ばし、猛烈な勢いでメガバゼルギウスの顎をかち上げた!一瞬だけ動きが止まったメガバゼルギウスだが、それでも構わず発射した!

 

「一瞬あれば、十分!!」

 

だが、シズカさんが既に間に合っている!シズカさんははかいこうせんの射線上に強引に割り込むと、盾を僅かに傾けてはかいこうせんを上空に逸らした!!

 

「ぐうぅぅぅぅっ……!!」

 

「保ってくれシズカ!!」

 

走り込みながら再び猟虫を飛ばし、何かを回収するマリオさん。今のところは赤、白、白といった具合だ。さらに素早くなったマリオさんは、メガバゼルギウスの後方に回り込み跳躍。背面を攻撃しそのまま背中に飛び乗った!

 

「ヴオァ!?」

 

「おらっ!大人しくしやがれっ!!」

 

暴れるメガバゼルギウスに対して、マリオさんは小さなナイフで何度も背中を切りつけていく……が、途中で振り落とされた。だがおかげでメガバゼルギウスのヘイトがマリオさんに集中している!

一方、シズカさんの方ではリュウセイくんは笛を吹いていて、その音色を聴いていたリオレウスの傷が見る見るうちに回復していった!

 

「……リオレウス、立てる?」

 

「……!グオオンッ!!」

 

「よかった。……私たちの援護、よろしくね」

 

「グオン!」

 

任せろ!と力強く頷くリオレウス。そんな姿に、なぜかシズカさんは小さく吹き出した。……どうしたんだろう?

 

「フフッ……まるで焔さんみたい」

 

「(;゚□゚)ギク!」

 

「行くよ、リュウセイ」

 

「ハイですニャ!」

 

「ε-(´∀`*)ホッ」

 

あっ、行ってしまった。……リオレウス?なんだか冷や汗をかいているような……気のせいかな……。

 

「うおっ、うおっ!!うわあぁ!?」

 

「マリオさん、下がって!!」

 

すぐ近くで爆発した爆鱗に吹っ飛ばされ、マリオさんが地面を転がった。そこへ畳み掛けるようにきあいだまを放つメガバゼルギウスだが、ブラストダッシュと翔蟲を駆使したシズカさんが間に合い、フルバーストできあいだまを相殺した!

 

「ヴオオオアアアアアッ!!」

 

すると今度は、メガバゼルギウスが翼を羽ばたき猛烈な勢いで風塵を起こし始めた。……あれ、あの技ってどこかで……。

 

「うわ、なんだこれ……ってぇ!?熱!あっつぅ!?」

 

「うっ……これは、ねっさのだいちか……!!」

 

そうだ!ねっさのだいち!!シズカさんなんで知って……いや、それはもう後だ!熱く焼けた砂をぶっかけられて、二人とも苦しそうだ!助けに行くしかない!!

 

「リオレウス!突撃!!」

 

「グオン!!」

 

リオレウスは高く舞い上がるとそのままメガバゼルギウスの頭上から急襲!メガバゼルギウスの翼を掴んで、強引に技を中断させた!

 

「ゼル!?」

 

「そのまま岩壁に叩きつけろ!!」

 

「グオオオオオン!!」

 

「バゼラァ!!」

 

「ダメ押しのりゅうのはどう!!」

 

「グオオオン!!」

 

リオレウスはパワー全開!そのままメガバゼルギウスを岩壁に叩きつけると、追撃のりゅうのはどうをぶつける!!だが、技を受けていたメガバゼルギウスは強引にりゅうのはどうを突っ切ってリオレウスに体当たりをぶちかました!

 

「リオレウス!!」

 

そして、体勢を崩したリオレウスに、またあの爆鱗を用いた突進攻撃を仕掛けて大爆発を起こした!!リオレウスはあえなく墜落し、再びダウンしてしまった……!

 

「リオレウス……!」

 

「リュウセイ!」

 

「ニャ!!」

 

「マリオさん!」

 

「あぁ、行くぜシズカ!!」

 

シズカさんとマリオさんが突撃し、リュウセイくんが笛を吹く。私も急いでリオレウスの元に駆けつけ様子を伺った。

 

「リオレウス、しっかり……!」

 

「……グ、ルル……ル……」

 

薄らと目を開けるリオレウス。おそらくその視線の先には、メガバゼルギウスの姿。

 

「……グ、ギギ、ギ……!」

 

「……!まだ動いちゃダメですニャ!」

 

「リオレウス、落ち着いて……!」

 

「グルルルル……グオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

リオレウスが一際大きな声で咆哮を上げると、その衝撃で私とリュウセイくんを吹っ飛ばしてしまった!

 

「きゃっ!?」

 

「ニャア!?」

 

起き上がった私はすぐにリオレウスの様子を確認する。リオレウスは立ち上がってはいるが、動けるほど回復は出来ていない……!

 

「リオレウス!無理をしちゃ――」

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

と、その時だ。一瞬、リオレウスの姿が狂竜化よりもさらに禍々しい黒いオーラに包まれると、物凄い速度と勢いでメガバゼルギウスに体当たりし、そのまま岩壁に突っ込んでしまった!!

 

「な、なんだ!?」

 

「……!今のオーラは……!!」

 

突然のことに、私だけでなくシズカさんとマリオさんも対応できていない。煙の中から姿を現したリオレウスとメガバゼルギウス……メガバゼルギウスはそのまま崩れ落ちると、メガシンカが解除された。そして……リオレウスもまた、そのまま倒れ込んでしまった。

 

「リオレウス!!」

 

倒れたリオレウスから、あのドス黒いオーラが消えた。私はすぐにリオレウスの状態を確認する。そして――

 

「……!つ、翼が……」

 

なぜかリオレウスの翼が青くなり、小さく折りたたまれてしまっていた。……どうしよう、こんなに小さくなったら、空だって飛べないよ……!!

 

「リオレウス、どうして……!?」

 

「ショウ!【黒炎王】は大丈夫なのか!?」

 

「マリオさん、シズカさん……リ、リオレウスの翼が小さく青く……!!」

 

「(まさか、この翼……いや、だとしたらいろんな意味でタチが悪い……!!)ショウ、リオレウスをボールに戻して、今すぐ!!」

 

「あ、はい!戻って、リオレウス……」

 

私はシズカさんの言うとおり、すぐにリオレウスをボールに戻した。……一体、リオレウスの身に何が起こっているの?それに、狂竜化以上に禍々しいあのオーラ……なにか、良くないことが起こっていないといいけれど……。

 

「……ともあれ、あの一撃が決め手になったみてぇだな」

 

「えぇ。……捕獲用麻酔玉を使いましょう。おそらくこのバゼルギウスも、ティガレックスと同じく技巧種でしょうから」

 

「だな」

 

シズカさんとマリオさんが麻酔玉を使い、バゼルギウスは気絶状態から眠りについた。……これで、なんとか任務完了――

 

バチバチバチィッ!!

 

「……!?な、なにっ……」

 

「お、おい!あの裂け目が……!!」

 

なんと、空では再び時空の裂け目が開いていた。そこから姿を現したのは……!

 

「……お、い……ウソ、だろ……」

 

「……っ!真打登場……ってわけ……!!」

 

「ミラボレアス!!」

 

黒龍、ミラボレアスだった!!

 

「グルルル……ギシャアアアアアアアンッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

崖上に立ち、眼下を見下ろす。黒龍を前に相対する人間は、伝説を前にしても気勢を削がれることなく、果敢に立ち向かっていった。

 

「ふんっ!……精々、抗え」

 

その言葉を残し、少年――クロノはその場を立ち去った。

 

 

 

 




バゼルギウス撃破!&リオレウスに異変!?
さらに黒龍登場!……って、クロノ?なぜそこに?

バゼルギウスののしかかりって、ポケモン風だと一撃必殺とかでもおかしくなさそう。


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激闘!VS.ミラボレアス!!

ついにミラボレアスと、決着をつけるとき……






推奨BGM

【チャンピオンロード(ポケットモンスターR/S)】~大乱闘スマッシュブラザーズX~

 

 

メゼポルタに襲来してきた古龍級生物バゼルギウス。リオレウスに異変が起きるものの、なんとかこれを撃破することに成功した。……だが、その束の間のことだった。時空の裂け目が再び開き、その中からミラボレアスが姿を現したのだ!

突然の奇襲に、私たちはその場に固まった。……だが、いち早くマリオさんが復活すると、操虫棍をミラボレアスに突きつけた。

 

「黒龍ミラボレアス!遥か昔、我が故郷であるシュレイドを一夜にして滅ぼしたこと、忘れはしない!!

我が名はマリア!!お前が滅ぼした国の王族、その末裔!散っていった英霊たちよ!そして!今を生きるシュレイドの民よ!!今こそ王国滅亡の無念を晴らすとき!!私に力をッ!!

おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

「……!マリオさん、無策で突っ込んでは……!!」

 

マリオさん……いや、マリアさんはかつて滅んだ故郷の敵を討つためにミラボレアスに突っ込んでいった!シズカさんは初めこそは止めようとしたものの、すぐに諦めてガンランスを構えた。

 

「ショウ、あなたはここに……」

 

「いえ、私も戦います!……私にはもう一匹、頼もしい仲間がいる!!ジンオウガ!!」

 

「ウオオオオオオオォォォンッ!!」

 

リオレウスは気絶してしまったので、回復の為にも繰り出すわけには行かない。……だが、私の手持ちにはジンオウガがいる!まだまだ!!

 

「ガブリアス!!」

 

「ガッブァア!!」

 

「敵はミラボレアス……出し惜しみはしない!!力を貸して、ガブリアス!」

 

「ガブッ!!」

 

ガブリアスもやる気満々だ!ガブリアスはすぐに上空へと舞い上がり、ジンオウガもミラボレアスに対して敵意を向けている。

 

「……はぁ、しょうがない。けど、無理はしないで」

 

「もちろんです」

 

「よし……それじゃあ、行くよ!」

 

「はいっ!!」

 

シズカさんはブラストダッシュ+翔蟲ですぐさまカッ飛んで行き、マリオさんを追いかけた。私も可能な限り接近するべく、ジンオウガの背に乗り込んだ。

 

「行くよ、ジンオウガ。決着をつけるんだ」

 

「…………」

 

「……?ジンオウガ?」

 

「……ッ!!ワ、ワウン……?」

 

珍しいな……ジンオウガがボーッとしてるなんて。完全に上の空だったし、私の話もちゃんと聞いてなかったみたい……。

 

「大丈夫?」

 

「ワンッ!!」

 

「よし……行くよっ!!」

 

私が合図を出すと同時に、ジンオウガは走り出した。前を見ると、ミラボレアスが尻尾にドラゴンパワーを纏わせている……ドラゴンテールか!!

 

「ギャオオオオンッ!!」

 

「そんなものがっ!!」

 

ミラボレアスのドラゴンテールを、マリオさんは棍を使った跳躍で回避した……だが!

 

「マリオさん!まだ来る!!」

 

「なっ……!?」

 

ドラゴンテールを回避されたミラボレアスだったが……そのまま一回転すると続けてドラゴンクローで追い打ちをかけてきたのだ!宙に身を投げたマリオさんは身動きがとれないまま、ドラゴンクローで岩壁に叩きつけられてしまった!!

 

「マリアッ!!」

 

「マリオさん!?」

 

私とシズカさんの悲鳴が同時に重なる。叩きつけられた衝撃で土煙が巻い、マリオさんの姿が見えない……!

少しずつ煙が晴れていって……マリオさんは壁にめり込んでいる!

 

「……ガッ、ハッ……!クソッ、タレめ……こいつも、技巧種かよ……!!」

 

血を吐くマリオさんに対し、ミラボレアスはかえんほうしゃを構えている。マリオさんはまだ動けない!!

 

「ジンオウガ!私を飛ばして!!」

 

「……ッ!ワオゥン!!」

 

シズカさんの声に反応したジンオウガが加速した!シズカさんは翔蟲でジャンプすると、その着地点に頭を滑り込ませたジンオウガが思い切り頭を振ってシズカさんを打ち上げた!

 

「おおおおおおっ!!」

 

シズカさんはミラボレアスの口元にガンランスを付き込むと、そのまま砲撃!蓄えた火炎エネルギーを強引に炸裂させ、爆発を起こしてかえんほうしゃを不発させた!な、なんて無茶な……!

だが、やられたまま黙っているミラボレアスではない。標的をすぐさまシズカさんに変更すると……一瞬のうちに数百の星型弾を生成し一斉に発射した!ス、スピードスター……数が多すぎる!!

 

「ぐっ!がっ!!あぁ!?」

 

全方位から襲い来るスピードスターに、シズカさんが滅多撃ちにされている!そうはさせるか!!

 

「ガブリアス、技変更!りゅうのはどう、だいちのちから、りゅうせいぐん、はかいこうせん!」

 

「ガブッ!!」

 

「よしっ、ガブリアスはりゅうのはどうでミラボレアスに牽制!ジンオウガはエレキネットでシズカさんの援護!!」

 

「ガブアアァッ!!」

 

「ワオオオォンッ!!」

 

ガブリアスがりゅうのはどうを放ち、ミラボレアスのヘイトを集める。狙い通り、ミラボレアスはガブリアスの方に目線を向けて、そちらを撃ち落とそうとハイドロポンプを連射し始めた。

ジンオウガの角から放たれたエレキネットも、シズカさんを包み込みスピードスターを一切寄せ付けない。そのまま落下するシズカさんを、なんとかこちらで受け止めた。

 

「くっ、スピードスターが追ってくる……ジンオウガ!撃ち落として!かえんほうしゃ!!」

 

「ワオォォン!!」

 

かえんほうしゃは迫るスピードスターをすべて撃ち落とした!こっち側の大陸に来てからというものの、ジンオウガやリオレウスが次々と新しい技を覚えている……ジンオウガのエレキネットやかえんほうしゃも、これがぶっつけ本番だからね、上手くいって良かった。

 

「……っ。ショウ、ありがとう……」

 

「気にしないでください、シズカさん。それより、大丈夫ですか?」

 

「なんとか。……さて、行くか」

 

シズカさんは回復薬をグイッと一息に飲み干すと、そのままジンオウガの背中から飛び降りた。……ハンターが使う回復道具って、一体どんな効果なんだろう?深手を負ってもそれ一本でなんとかなるあたり、とんでもない効力がありそうだ。

 

「オラオラァ!」

 

「……っ!!」

 

上空を飛翔するガブリアスに気を取られ、足元から懐に潜り込んだマリオさん達に気づくのが遅れたな、ミラボレアス!攻撃を受けてようやく気がついたのか、ミラボレアスは鬱陶しそうに空を飛ぶと、そのまま低空で滞空しつつ口からふぶきを放ってきた!!

 

「うっ……くそっ!火に水に氷とか、技巧種は何でもありかよ!?」

 

「技の扱いが巧いのが、技巧種の特徴ですからね……!」

 

マリオさんはとっさの判断でシズカさんの背後に回り込み、シズカさんが構えた盾でともにふぶきに耐えている。ふぶきを中断したミラボレアスは、続いてかみなりの技を使ってきた!

 

「ガブリアス!!」

 

「ガブッ!」

 

二人に降り注ぐかみなりを、ガブリアスがその身を呈して庇った。ガブリアスはじめんタイプだから、でんき技は一切効かない!タイプ相性を利用した防御術だ!

 

「ぅおわっ!?な、なんだこのモンスター!!」

 

「ショウが連れているモンスターだから、私たちの味方ですよ」

 

「いや、それはなんとなくわかるが……アイツ、本当に見たことも聞いたこともないモンスター連れてるな……」

 

「グルオオオオオオオオアッ!!」

 

思ったように攻撃が通らないことにイライラしたのか、ミラボレアスが咆哮を上げた。その直後、空から隕石が次々と降り注いできた!りゅうせいぐん……!!

 

「ガブリアス!こっちもりゅうせいぐん!!」

 

「ガアアァブアァッ!!」

 

ガブリアスが空にエネルギーを打ち上げ、それが炸裂するとともにりゅうせいぐんとなって降り注ぐ。ミラボレアスのりゅうせいぐんを相殺することを狙ったが、さすがに威力が違いすぎる……すべてを撃ち落とすことはできなかった!

 

「ガブァ!?」

 

「ガブリアスっ!!」

 

りゅうせいぐんが直撃し、ガブリアスが吹っ飛んだ!!私はジンオウガに指示を出して、すぐさまガブリアスの元に駆けていく。

 

「ガブリアス……」

 

「ガブゥ……」

 

極み化したガブリアスが、一撃で戦闘不能になってしまった……これが、ミラボレアスの力……!ひとまず、ガブリアスをボールに戻す。その間に、シズカさん達は攻勢に出ていて、少しずつではあるがミラボレアスにダメージを与えている。

 

「せいっ!このっ……ぐあっ!!」

 

「マリオさん……!ぐぅっ……!!」

 

果敢に攻めるマリオさんだが、だいちのちからで思い切りかち上げられてしまった。シズカさんがフォローに回ろうとするも、ストーンエッジで分断された挙句、あくのはどうを連続で放たれてその防御に手一杯だ。

 

「くっ……ジンオウガ!かみなり!!」

 

「ワオオォォォンッ!!」

 

飛び降りつつ指示を出し、ジンオウガのかみなりがミラボレアスに向かっていく。直撃はしたものの、手応えはない……やはり見た目通りのドラゴンタイプなのだろう。

 

「(手数が少なすぎる……!!)ジンオウガ、メタルクロー!!」

 

「ワオンッ!!」

 

ジンオウガの技も、なぜかミラボレアスには堪えた様子がない。着実にダメージは蓄積しているはずなのに、なんてタフなの……!!

私があれこれ考えている間にも、ミラボレアスはエアスラッシュの弾幕でジンオウガやシズカさん達を攻撃している。このままじゃ押し切られてしまう……!!

 

「うおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

その時だった。どこからか声が聞こえたかと思うと、誰かが空から降ってきてミラボレアスの背中に飛びついた!さっきの声……ニールさん!?

ミラボレアスも背中の違和感に気がついたのか、ニールさんを振り落とそうと攻撃を中断して暴れ始めた!

 

「シズカちゃん!マーちゃん!!」

 

「……フラウさん?」

 

続けて走ってきたのは、双剣を構えたフラウさんだった。……あれ?ニールさんとフラウさんってアカイさんと一緒に南のバゼルギウスに対応してたんじゃ……?

 

「どうしてここに……南はどうなったんですか……?」

 

「あのね、あのね!あのアカイって人、マジでヤバイ!!リオレウス亜種で、バゼルギウスを秒でボッコボコにしちゃったもん!!『ここはいいから、西へ援護に向かってくれ』って言われたから、大急ぎで来たんだ~」

 

「えぇ……?嘘でしょ……」

 

ア、アカイさんはもうバゼルギウスを片付けたのか……私とどっちが早かったのだろうか。フラウさん曰く「秒でボコボコ」だから、アカイさんの方が早かったのかもしれない。

 

「それにしても、ミラボレアスって本当にいたんだね。新大陸の調査団が討伐作戦を実施したって話は聞いてたけど、話だけだったし」

 

「……黒龍に関しては、直に見ないことには永遠に御伽噺の中の存在です。ですが、伝説は目の前に存在する……そして存在する以上、狩猟することはできる……!」

 

「いいこと言うね、シズカちゃん!よぉーし、ボクも全力で掛かるぞー!」

 

「受け売りですけどね」

 

シズカさんとフラウさんが武器を構えた直後、マリオさんがこちらまで戻ってきた。さらにミラボレアスから振り落とされたニールさんが落ちてきたが、ニールさんは受身を取って地面を転がると、すぐさま起き上がって大剣を抜いた。

 

「ミラボレアスッ!!お前をとり逃した雪辱!呪いをかけられたショウの苦しみの分まで!万倍にして返すっ!!」

 

「おーおー。熱いねぇ、新大陸の青い星ってやつは!」

 

「俺たち大人の失態で、無関係な子供がツケを払わされてるんだ……。これ以上、無辜の人々に余計なものを背負わせるものか……!!」

 

「ニールさん、私、言いましたよね?"調査団だけの問題じゃありません"って。だから、手伝います。今度こそ、黒龍と決着をつけましょう」

 

「あぁ……こんなに心強いことはないな!」

 

「ちょっとー?ボク達はー?」

 

「もちろん!レジェンドラスタの二人にも期待しているよ!」

 

「お任せあれー!」

 

「よっしゃ!やあぁってやるぜ!!」

 

……やっぱりハンターが四人揃った時の安心感は凄まじいな。

 

「グラァオオオオオオオッ!!」

 

ミラボレアスは上体を倒して腹這い状態になると、そのまま炎を吐いてきた。炎はまるで蛇のように地面を這うと、シズカさん達を渦のように囲い込んでしまった。あれは、ほのおのうず!

 

「チェストォッ!!」

 

だが、ほのおのうずはニールさんの大剣の一振りで両断され、消滅した。炎が完全に消えるよりも早く、かき分けるようにしてマリオさんとフラウさんが飛び出した!

 

「行けっ!マグナムソニック!!」

 

「ボクも行くよ!」

 

猟虫を飛ばすマリオさんに、その猟虫よりも速く動くフラウさん。フラウさんはミラボレアスを中心に円を描くように移動しながら何度も斬りつけ、マリオさんは連続で猟虫を飛ばし、赤赤白の順番で何かを回収している。……そろそろアレがなんなのか、聞いておいたほうがいいだろうか。

ミラボレアスは上体を起こしたあと、後ろ足で思い切り地面を踏みしめ始めた。一見するとただの足踏み……だが、私にはわかる。あれはポケモンの技、じならし!命中した相手の素早さを下げる技だ!

 

「うわっ!ととっ……!!」

 

「くっ……結構、揺れるじゃねぇか……!」

 

「ギャオオオオオオン!!」

 

ミラボレアスが口元に何かを集めている……あれは、波導!?まさか、はどうだんを撃つつもりか!

ミラボレアスから発射されたはどうだんは、真っすぐにマリオさんに向かっていく……マズイ!

 

「そんなもの……」

 

「マリオさん!その技は必中技です!!どこまでも追いかけてきます!」

 

「なんだとぉ!?」

 

マリオさんは一目散に走り出した。はどうだんも、的確にマリオさんを追尾している。このままじゃ、マリオさんのスタミナが切れるほうが先だ!援護する!!

 

「マリオさん、こっちに!!」

 

「……っ!おうっ!」

 

「ジンオウガ、はどうだん!!」

 

「ウオンッ!」

 

マリオさんがこちらに向かって走ってきて、はどうだんもこちらに向いた……そのタイミングで、ジンオウガにはどうだんを撃たせる!ジンオウガのはどうだんはマリオさんの頭上を越えたあと、ミラボレアスのはどうだんとぶつかりあって相殺した!!

 

「助かった、ショウ!」

 

「お気になさらず!」

 

「はあああああっ!」

 

再び腹這いの姿勢になったミラボレアスは、シズカさんに向けてほのお、かみなり、こおりの三種のキバを連続で放っていた。シズカさんはほのおのキバを回避し、かみなりのキバはガンランスを振るって相殺し、こおりのキバを盾で受け流すと翔蟲で一気に懐へ飛び込み無防備な腹部へ砲撃を放った!

ミラボレアスはフェイタルクローでシズカさんを切り裂こうとしたが、シズカさんは横薙ぎに払われた爪を、真上に飛ばした翔蟲に引っ張られることで回避した。さらに引っ張られる際にガンランスを振り上げて斬りつけながら一番高く跳んだ場所で即リロード、落下する勢いでガンランスを叩きつけると、そのままフルバーストを放つ!素早くクイックリロードを実行し、そしてブラストダッシュで即離脱した。うーん、この完璧な流れ……流石はシズカさん。

 

「グオオオオオオオオッ!!」

 

突然、ミラボレアスが大きく吠えたかと思うと、空へと飛び上がった。そのまま高く飛んでから旋回すると、ドラゴンオーラを纏ってこちらに突っ込んできた。ドラゴンダイブ!あの巨体で人間に向かって使っていい技じゃない!!

 

「あのオーラ……ティガレックスと同じものか……!!」

 

「ちょ、あのまま突っ込んでくるの!?」

 

「ジンオウガ!ワイルドボルト!!」

 

「ワオオオオォォォンッ!!」

 

ジンオウガがワイルドボルトで突撃を始めると迎え撃たんとばかりにミラボレアスは高度を一気に下げて、地面スレスレを滑空する。ジンオウガのワイルドボルトとミラボレアスのドラゴンダイブが激突し、閃光が辺りを包み込む!

 

「グ、ルル……!!」

 

「グオオオラアアアアアッ!!」

 

「ギャウゥンッ!!」

 

「ジンオウガッ!」

 

僅かに拮抗したものの、ジンオウガは吹っ飛ばされてしまった!ただ、そのおかげでミラボレアスの進行方向が僅かに上方に逸れたため、私たちにドラゴンダイブが直撃することはなかった。

 

「グオオオオオオオ!!」

 

ミラボレアスは口元に電撃を集めると、それを球状にして放ってきた。でんじほうか……でんき技はジンオウガの前では無意味!

 

「受け止めて、ジンオウガ!」

 

「ワンッ!」

 

でんじほうはジンオウガに直撃……だが、体質上でんきが効かないジンオウガは無傷だ!

 

「あんな高いところにいたら、攻撃できないよー!」

 

「……シズカ。あの位置、届くか?」

 

「……ギリギリ、ですかね。妨害を見越して考えると、ちょっと厳しいです」

 

「クソッ!降りて来いよ、この臆病者め!!」

 

空中に居るミラボレアスに歯噛みするハンター達……ジンオウガの特殊技なら届くかもしれないけど届く前に避けられるだろうし、シズカさんなら届くかもしれないがその前に妨害されるかもしれないと懸念を示している。飛んでいくシズカさんを援護しようにも、地上からの支援では限界がある。

 

「グルルル……!!」

 

「マズイ!はかいこうせんだ!!」

 

「ならばこちらも応戦します!ジンオウガ、はかいこうせん!!」

 

「ワォン!!」

 

ミラボレアスのはかいこうせんとジンオウガのはかいこうせんがぶつかり合う……クッ、こっちがわずかに押し負けている……!

 

「火力を上げる……!ジンオウガ、メガシンカ行くよ!」

 

「ワウ!」

 

「ジンオウガ……メガシンカ!!」

 

ジンオウガをメガジンオウガへとパワーアップ!押し負けていた均衡は互角にまで持ち越した!

 

「すげぇ!?ジンオウガが【金雷公】に変わった!あれって、バゼルギウスのやつと同じ現象じゃねえか?」

 

「あれが正しい形なんですよ。トレーナーの間では、メガシンカと呼ばれているそうです」

 

「かっこいー!メガシンカ!!」

 

「(亜大陸にいるライダーは絆技という技を使うそうだが……トレーナーは違うのか?)」

 

はかいこうせん同士のぶつかり合いは互角のまま終わり、大爆発を起こした。ミラボレアスが地上に降りてきたため、シズカさん達が攻撃を仕掛けた!

 

「地衝斬!」

 

「鬼人化乱舞!」

 

「蟲纏い!飛翔蟲斬破!!」

 

「フルバレットファイア!!」

 

ミラボレアスがアイアンテールを放ってきたが、それをニールさんの大剣で相殺!その隙を突いてフラウさんが双剣で次々とミラボレアスを斬りつけていく!

ミラボレアスははがねのつばさを展開するとその場で一回転し、フラウさんとニールさんを吹っ飛ばした。だがその後隙を逃がさずマリオさんが仕掛けた!技名通り、その身にたくさんの蟲を纏わせたマリオさんが力強く棍を振り回し飛び上がると、勢いよく叩きつけた!さらに屈んだ姿勢のマリオさんの頭上を飛び越えてシズカさんが突撃し、フルバレットファイアを叩きつけた!

ミラボレアスは再び中に飛び上がり低空で滞空しつつエアスラッシュを連射し、ハンター達を寄せ付けまいと攻撃する!

 

「空気の刃か……!そんなものまで使ってくるとはな……!!」

 

「あ~もうっ!鬱陶しいなぁ!!」

 

「フラウさん!」

 

エアスラッシュの間をくぐり抜けて、フラウさんが突っ込んでいった!……いや、待て。エアスラッシュの弾幕、妙に薄いような……!

 

「フラウさん止まって!誘導されてます!!」

 

「……え!?」

 

「グアオオオオオオアッ!!」

 

咄嗟に呼びかけたが……遅かった!ミラボレアスはラスターカノンをフラウさんの眼前に放って足を止めるとその隙を突いてだいちのちからで打ち上げ、さらに追い打ちとしてギガインパクトでフラウさんを吹っ飛ばしてしまった!!

 

「きゃああああぁぁっ!!」

 

「フラウさんっ!!」

 

「ジンオウガ、お願い!!」

 

「ワン!」

 

物凄い勢いで飛んでいくフラウさんを、飛び上がったメガジンオウガが口でキャッチした!そっと、降ろされたフラウさんの様子を見る。

 

「いった~い……」

 

「フラウさん、大丈夫ですか……?」

 

「うぅん……すごく痛い、けど……大丈夫だよ~」

 

ポーチから何か小さな薬を取り出したフラウさんはそれを一息で飲み込むと……あっという間に回復したのかすぐに立ち上がった!

 

「ふっかーつ!秘薬パワーぜんかーい!!」

 

「おぉ……」

 

「ショウちゃん、ジンオウガくん、ありがとうね!!それじゃあ、ボクは戻るから二人もすぐに来てね!」

 

……秘薬ってなんだ、秘薬って。一瞬で全回復するとか、かいふくのくすり並みの効果でもあるのか。

戦場へと視線を戻せば、ミラボレアスがストーンエッジでシズカさんたち三人を攻撃していた。それを回避した三人だったが、さらにミラボレアスはぼうふうの技を使ってきた。それもただのぼうふうじゃない……直前に放ったストーンエッジを破壊しつつ岩を持ち上げ巻き込み、尖った岩の嵐と化した凶悪なぼうふうだ!風だけでなく、一緒に飛んでくる尖った岩による追撃に、三人は少しずつダメージが積み重なっている!

 

「わわわ!あれって結構やばいよね!?ねぇねぇショウちゃん!なんとかならない!?」

 

「なんとかします!!ジンオウガ、じゅうでん!その後ふるいたてる!」

 

「ワン!」

 

まずはじゅうでんででんき技の威力を底上げし、さらにふるいたてるで攻撃・特攻ともに強化!準備は出来た……これで!!

 

「ジンオウガ!かみなり!!」

 

「ウオォォォォンッ!!」

 

メガジンオウガから放たれた膨大な電撃は竜巻に激突し、見事相殺してみせた!!岩の嵐から解放された三人が一斉に膝をついた……その隙を逃さず、ミラボレアスはれんごくの技を放ってきた!

 

「ジンオウガ、でんじほう!!」

 

「ワオオオンッ!!」

 

メガジンオウガは三人の前に躍り出ると、でんじほうでミラボレアスのれんごくに対抗する!……れんごくは命中すると確定でやけど状態にされるから、物理が強いメガジンオウガが受けると戦いづらくなる……!

 

「グオオオオオオオッ!」

 

「……!!ジンオウガ、10まんボルト!」

 

「ウオン!!」

 

ミラボレアスが火力を上げてきた……!私もメガジンオウガに10まんボルトを指示し、なんとか拮抗状態を維持する。押し切られたらこちらの負けだ……!

 

「ジンオウガくん、そのままキープ!」

 

技と技がぶつかり合っている隙に、フラウさんがミラボレアスの懐に飛び込んだ!!

 

「それそれそれー!しゅんしゅんしゅんしゅん!!」

 

「グオラ!?」

 

飛び上がったフラウさんがミラボレアスの腹部を何度も斬りつけていく。技のぶつけ合いに集中していたミラボレアスは集中力が切れてしまったのか技が途切れ、それによってでんじほう+10まんボルトが命中!ミラボレアスが麻痺した……なっ!?

 

「グルオオオオオオオ!」

 

麻痺したのは一瞬……あっという間に回復してしまった!なんて耐久力なの……!

 

「……みんな、まだ行けるな?」

 

「誰に物を言ってるんですか、ニールさん?」

 

「オレたちはまだまだ、全然へっちゃらだぜ!」

 

「ボクも頑張れるよ!」

 

「私とジンオウガも、まだやれます!」

 

「ワオン!!」

 

「……フッ、頼もしい限りだ。さぁ、行くぞ!!」

 

 

推奨BGM

【戦闘!超古代ポケモン】~ポケットモンスターOR/AS~

 

 

「【獣宿し】!うおおおおおおおっ!!」

 

「オレも行くぜ!」

 

ニールさんは獣宿し【獅子】を発動して突撃、マリオさんも後に続いた!フラウさんとシズカさんはそれぞれ赤と橙の袋を取り出すと、そこから粉塵を撒き散らした。……?なんだこれ!全身から力がみなぎってくる……!!

 

「鬼人の粉塵と硬化の粉塵だよ。三分間だけ、私たちの力を高めてくれる」

 

「これで一気に攻めちゃうよ~!」

 

「ウオオォォォンッ!!」

 

……!?えっ、なんかメガジンオウガも力が漲ってる!これって、粉塵の効果なの?

 

「……なんでモンスターにまで作用してるの?」

 

「まぁまぁ、いいじゃん!ジンオウガくんは味方なんだし、仲間に効果があるのはいいことだよ~」

 

「……それもそうか」

 

シズカさんが、考えるのをやめた……!?それからシズカさんとフラウさんも揃って突撃していった。

 

「くらえぇっ!!」

 

「おぉりゃあ!」

 

ニールさんが大剣で斬りつけ、マリオさんも猟虫をぶつけて回収しつつ、棍による連撃を喰らわせていく!続けて鬼人化を発動したフラウさんがミラボレアスの足を踏み台に更に飛び上がり、連続でミラボレアスを切りつけていく。

だが、ミラボレアスも対応してきた!素早く身を翻すと尻尾を伸ばし、マリオさんを捕まえてしまった!

 

「なっ!くそっ……離しやがれ……!!」

 

「コラァ!マーちゃんを離せー!!」

 

「ちぃっ……!!」

 

一度距離をとったフラウさんが再び突撃するも、ミラボレアスはスピードスターでフラウさんを牽制し、さらに接近してきていたニールさんの剣をドラゴンクローで受け止めた!

 

「わわっ、何このお星様!?ずっと付いてくる上にしつこい~!!」

 

「クッ……!力比べだろうが、負けはしないぞ……!!」

 

フラウさんは双剣でスピードスターを叩き落とすことを余儀なくされ、身動きがとれない。ニールさんも鍔迫り合いのまま動けなくなってしまった!

 

「ジンオウガ、はどうだん!!」

 

「ワオンッ!」

 

ひとまず、マリオさんを解放しないと!!メガジンオウガが放ったはどうだんは的確に尻尾を狙い撃ちし、マリオさんを救出した!

 

「サンキュー、ショウ!……んのやろう、ナメた真似しやがってぇ!!」

 

次はフラウさん!フラウさんには、シズカさんと同じやり方で!!

 

「ジンオウガ、エレキネット!!」

 

「ワン!」

 

エレキネットはフラウさんを包み込み、スピードスターを遮断した!スピードスターはエレキネットに触れたそばから次々と消滅していく……これで安心だ!

 

「ありがとう、ショウちゃん!」

 

次はニールさん……。

 

「ちょっと失礼」

 

「え、のわーっ!?」

 

鍔迫り合いをしているニールさんの背中を、シズカさんがブラストダッシュでどついていた。それによって強引に鍔迫り合いを押し込み均衡を崩したのだった。

 

「もうちょっと早めに言ってくれないか!?」

 

「言って力が緩んだらどうするんです?」

 

「緩まないが!?」

 

「私が言っても?」

 

「……緩まないが!?」

 

「そこは即答して欲しかったですね」

 

なにやってるんだろうあの二人……お似合いだけど。

 

「グオオオラアアアアッ!!」

 

ミラボレアスが咆哮を上げると、空へと飛び上がる。そのまま翼を大きく広げると、一心不乱に羽ばたいた。すると……ミラボレアスから、何かが次々と飛んできた!?

 

「うわっ!?なんだこれ!」

 

「まだこんな攻撃手段があるのか……!」

 

「きゃあっ!」

 

「この技……スケイルショットか……!!」

 

スケイルショット!?確か、ぼうぎょが下がる代わりにすばやさがあがる連続攻撃技だったはず……鱗を飛ばす技だから、これはミラボレアスの鱗が飛んできている!?

 

「きゃっ!ジンオウガ……!?」

 

「グウゥッ……!!」

 

私にも飛んできた……が、メガジンオウガが身を呈して庇ってくれた!一度に五人以上も同時攻撃ができるなんて、なんて奴だ、ミラボレアス……!!

 

「……!ショウ、そっちに!!」

 

シズカさんの声が聞こえ、メガジンオウガの影から顔を覗かせると、ミラボレアスがこっちに向かってきている!

 

「ジンオウガ!はどうだん!!」

 

「ワオオンッ!!」

 

メガジンオウガが放ったはどうだんは直撃……だが、煙を突っ切ってミラボレアスは突進してきた!

 

「ワウッ……!!」

 

「ジンオウガ!?

 

さらにミラボレアスが接近してきて……ジンオウガを捕まえるとそのまま空高く飛び上がってしまった!?

 

「なにっ!?」

 

「まさか……」

 

「「ちきゅうなげ!?」」

 

ミラボレアスはさらに高く……雲を越えるとそのまま反転して急降下!猛烈な勢いで落下し始めた!!

 

「ジンオウガーッ!!かみなりぃ!!」

 

「グッ……ウォオオオオオオオオン!!」

 

私は全力で声を張り上げ、メガジンオウガに指示を出した。指示は届き、メガジンオウガはかみなりでミラボレアスに攻撃する。……だが、ドラゴンタイプのミラボレアスには効果が薄いのか、ほとんど抵抗になっていない……!!

 

「グオオオオオオアアアアアアアッ!!」

 

ある程度地上に近づいたところで、ミラボレアスはメガジンオウガを地表に叩きつけるようにぶん投げた!翼を持たないメガジンオウガは抵抗できず、そのまま地上に叩きつけられてしまった……!!

 

「ジンオウガ……!!」

 

煙の中からなんとか立ち上がり姿を見せたメガジンオウガだが、かなりのダメージをもらってしまった……!次、何か一撃をもらったら終わりだ……!!

 

「グオオオオオオオオラッ!!」

 

ミラボレアスは大きく距離をとった後、再び高く飛び上がると口元にエネルギーを溜めている。あれは、りゅうせいぐん!最大パワーで放つつもりか!

 

「……ぜりゃああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ギャウゥン!?」

 

と、その時だった!

突然、上空から叫び声が聞こえたかと思うと、誰かが崖上から飛び出しミラボレアスの頭を手に持つ武器で全力で斬り付けた!?予想外の方向からの攻撃に完全に怯みきったミラボレアスはど派手に落下し墜落、思い切り地面に叩きつけられた。さらに人影はそのまま自由落下していき、落下の勢いそのままに唐竹割りでミラボレアスを斬りつけた!

 

「グググ……グオオオオオオオッ!!」

 

「させませんっ!!」

 

一度は怯んだミラボレアスだが、なおも攻撃の手は緩まない。技を変更して、シズカさん達にめがけてはかいこうせんを放つが、それは間に割って入った人が構えた盾によって防がれた!

 

「姉様!」

 

「任せて!」

 

今度はまた別の人が現れた!その人は手に持つ弓を力強く引き絞ると、限界まで溜めた力を解き放つように矢を放つ!!真っすぐに飛んだ矢はミラボレアスに突き刺さり、はかいこうせんを中断させた!

よくよく見ると、二人共女性で巫女装束のような服を着ている。……あんな格好でも戦えるのか……いや、それを言ったらレイラさんとかどうなるんだ。

 

「さあ」

 

「行きます!」

 

「「焔よ、力を!!」」

 

二人は同時に駆け出した!ミラボレアスはかみくだくの構えを取り、そのまま走ってくる二人に向けて繰り出した。対する二人は……先頭を走る弓使いは翔蟲で真上に飛び、後ろを走る槍使いが翔蟲の糸で盾を地面を繋いで張ると、ミラボレアスのかみくだくを受け流した!

さらにその勢いでカウンターのように槍を突き立てると同時に、事前に飛んでいた弓使いがそのまま空中から矢を連射し、ミラボレアスの顔面を集中的に攻撃していく!これにはさしものミラボレアスも怯んだのか、大きく後退した!

 

「こっちからも行くぞおおおおおおおっ!!」

 

……っ!?な、なんだ今のデカイ声!?

 

「鬼人化!からの……螺旋斬!」

 

今度はまた別の人が来た!しかも男性!さっきの女性二人が巫女なら、今度の男性は忍者って感じだ。その人は構えた双剣を高く掲げると雰囲気が一変した。

まるでオーラのようなものを纏うと、翔蟲に引っ張られながら跳躍するとそのまま回転しながら螺旋のように連続で切りつけた!そこから着地した後に逆手で斬りつけると、もう一度あの回転斬りを繰り出した!まさに一点集中と言わんばかりの怒涛の多段攻撃に、ミラボレアスは逃げるように後退を繰り返している。

 

「今だよ、愛弟子ぃ!」

 

「おおおおおおりゃああああああああっ!!」

 

「……っ!」

 

今度は最初の人!あの鎧武者のような姿……もしかして、マガイマガド?マガイマガドを模した鎧を纏った人が背中に太刀を背負って突撃している。……ちょうど私の真横にいたシズカさんが自分の翔蟲をその人の元へ飛ばした。鎧武者の人はそれをノールックで受け取ると、早速一匹目を使った!

 

「桜花鉄蟲気刃斬!!」

 

翔蟲を前方に飛ばし、引っ張られながら回転斬りを放つ!二回当たった回転斬りは、命中箇所に時間差で多段の追撃が発生している!

 

「まだまだぁ!!」

 

鎧武者さんは三匹いる翔蟲を、全て先程の技に使った!技と技の間に納刀と抜刀を繰り返しているけど、あの動作が一連の流れをよくしているのかな?

 

「さぁ行くぜ!」

 

三回同じ技を使ったあと、鎧武者さんは再び納刀し……何か、気迫のようなものを溜めている?そうして体から立ち上るオーラが真っ赤になり限界に達すると……。

 

「グルオアアッ!!」

 

「気刃解放!」

 

「ギャアンッ!?」

 

「続けて大回転も喰らえ!!」

 

「ギギャアッ!?」

 

ミラボレアスがかえんほうしゃで攻撃するが、鎧武者さんは三連続の強力な斬撃で強引に技を突っ切りつつミラボレアスを攻撃!怯んだミラボレアスに続けて大きく回転しながら斬りつけた!

 

「疾替え!……これで止めだ!」

 

鎧武者さんは翔蟲を飛ばして飛び上がるとミラボレアスの顔面を蹴りつけた!さらにそのまま踏み台にして大きく飛び上がると、背負った太刀を高く振り上げた!

 

「気刃っ!兜割ぃっ!!」

 

「ギャアアアアアアンッ!?」

 

真っ向から振り下ろした斬撃が、ミラボレアスを切り裂いた!大きく仰け反ったミラボレアスは二歩、三歩と後退すると……そのまま大きく倒れこんだ!大きく土煙が舞い上がり、ミラボレアスの姿が見えなくなる……鎧武者さんは翔蟲で素早く後退すると、先程の巫女さん二人と忍者さんに合流した。

 

「やったな、愛弟子!」

 

「お見事です!」

 

「流石ですね」

 

「まだまだ……やつを倒したかどうか、確認しないと」

 

「……その前に、現地の人達と合流しましょうか」

 

「はい、ヒノエ姉様。……ほら、何をボサっとしているんですか?移動しますよ」

 

「ちょ、引っ張らないで……!」

 

……あ、あの四人がこっちに来る。

 

「ん……?おぉ、よく見れば我が妹じゃないか!壮健そうでなによりだ!」

 

「誰が妹だ×××に竜撃砲ブチ込むぞこの×××野郎」

 

「おっと間違えた、妹弟子だ!」

 

「私の兄は我が生涯にただ一人、二人もいらないし二人目は殺す」

 

「……うわぁ、ここまで口が悪いシズカちゃんは初めてかも……」

 

「シ、シズカ……女の子がそんな言葉を使っちゃダメだぞ……?」

 

……シズカさん、ブラコンってのは話を聞いてわかってたけど、実兄以外の兄、あるいは兄的存在すら認めないほどとは……極まってるなぁ。

 

「うんうん、相変わらず元気そうでなによりだよシズカ!」

 

「おっ、そうだった。シズカ、翔蟲貸してくれてありがとうな」

 

「必要だと判断したので」

 

「いやぁ、咄嗟のことなのに完璧な状況判断!師匠として鼻が高いよ!!」

 

「ありがとうございます(近すぎてうるさい……)」

 

「シズカちゃん、久しぶりね。元気だった?」

 

「狩猟の腕前、以前よりも洗練されていましたね。見ていて分かりましたよ」

 

「お二方もお元気そうでなによりです」

 

おぉ……この四人、全員がシズカさんと知り合いなのか。……あ!

 

「煙が晴れていく……」

 

「……!」

 

私の呟きを全員が拾ったのか、一斉に武器を構えて臨戦態勢になった。……いや、絵面が凄いな。

徐々に煙が晴れていく……果たして、ミラボレアスは……。

 

「……?」

 

「どうした、シズカ?」

 

「いえ、ニールさん……その、ミラボレアスが倒れている割にはいつまでも影が見えてこないな、と」

 

「なに?……だが、煙に動きがないところを見るに、動いているわけじゃなさそうだが……?」

 

「だから変なんです。……一体何が……?」

 

確かにシズカさんの言うとおり……ミラボレアスはかなりの巨体だから、そろそろ姿が見えてきてもおかしくないはず……。

もうほとんど煙がなくなった頃……ソレは見えてきた。

 

「「え?/は?」」

 

声を上げたのは私とシズカさん。私もそうだが、シズカさんも知っているのだろう……あの姿の正体を!

 

「……モ……モンモ~ン……」

 

そこにいたのは……ピンク色の軟体生物!

 

「可愛い~~~~!!」

 

「「メタモンンンンッ!?」」

 

フラウさんが一目散にかけていき、その生物……へんしんポケモン『メタモン』を拾い上げてこっちに戻ってきた。すっかり目を回している様子なので、おそらく戦闘不能状態なのだろう。

……いや、ちょっと待って?ひょっとしてさっきまで戦ってたミラボレアスってメタモンが変身した姿だった……ってコト!?

 

「見てみて!この子すっごく可愛いよ~!」

 

「いやいや、なんだそのモンスターは?ミラボレアスは?どこいったんだよ?」

 

「……マリオさん、コイツがミラボレアスですよ」

 

「……は?」

 

「正確にはこのモンスター……言うなれば【擬態種】メタモンが変身した姿だったんだと思います」

 

「変身!?」

 

「他のモンスターに!?」

 

「こんな小さな体で!?」

 

ハンターの皆様方の反応が凄まじい。……まぁ、無理もないか。

メタモンは私の地元だと割とポピュラーなポケモンだ。だがその小さな体に秘められたポテンシャルは底知れず、メガシンカポケモンや伝説・幻ポケモンすら真似してしまうのだからとんでもない話だ。……まさか、巨大ポケモンにも変身できるなんて、ポケモン博士や龍歴院の人達が知ったら血眼になっても欲しがりそう……。

 

「まぁ……愛らしいモンスターかと思ったら、とてつもない能力を秘めているんですね」

 

「……えっと、あなたたちは……」

 

「あぁ、申し遅れてしまったね」

 

鎧武者さんが頭防具を外した。……爽やか系の二枚目男子ってイメージの顔だ。

 

「俺は『シキ』。カムラの里でハンターをやってる者だ。武器は太刀を使ってる、よろしく頼む」

 

「私は『ヒノエ』と申します。武器は弓を使います。こちらは双子の妹で、ミノトと言います」

 

「『ミノト』です。武器はランスを使います。ヒノエ姉様共々、よろしくお願い申し上げます」

 

「俺は『ウツシ』だ!武器はなんでも使うけど、基本は双剣かな!ここにいるシキとシズカは俺の大事な愛弟子なんだ!」

 

「でっかい声で愛弟子とか言わないでください恥ずかしい」

 

「照れることはないぞシズカ!君の狩猟、ますます洗練されているね!!……以前は死相が出ていた君が、立派なハンターになって……生き甲斐を見つけられたかと思うと、俺はすごく嬉しいよ……!!」

 

「ちょっ!?なんで急に泣き出すんです!!感受性豊かか!あぁ、もう!師匠が弟子の前で泣き出さないでください!!」

 

「それだけ嬉しいんだよ~~~!!」

 

鎧武者の太刀使いのシキさん、弓使いの巫女さんのヒノエさん、ランス使いの巫女さんのミノトさん、感受性豊かなお師匠さんのウツシさん……うーん、メンツが濃い。

 

「ふぅ……すっかり取り乱してしまったね。……あ、そういえば愛弟子!さっきの兜割り、実に見事だったよ!!モンスターだけでなく、空間すらも切り裂きそうな勢いだったよ!」

 

「本当ですか!?それもこれも、先生の教えがあってこそです!俺一人の独学では、あそこまで完璧な兜割りは出せませんでした!!先生のおかげです!」

 

「いーや、愛弟子の実力が成せる業だよ!」

 

「全ては先生のおかげです!」

 

「愛弟子!」

 

「先生!」

 

「愛弟子!!」

 

「先生!!」

 

「愛弟子ぃ!!」

 

「先生ぃ!!」

 

「愛弟子いいぃ!!」

 

「先生いいぃ!!」

 

「むぅあぬぁでしいいぃぃぃっ!!」

 

「すぅえぇんせええぇぇぇいっ!!」

 

……なんだこれ。

 

「あぁ……また始まってしまいましたか……」

 

「うふふ……二人共、男の子ねぇ」

 

「言ってる場合ですか。……まったく、あの人は本当に……はぁ……」

 

「あの~……?」

 

「あぁ、あの二人はしばらく放っておいてください。……まったく、シキさんは人の変なところまで似てしまって……」

 

……なるほど、受け継いだのは狩猟技術だけではないということか……良くも悪くも、ね。

 

「ねーねー、このメタモンちゃん……だっけ?ボクが貰ってもいいー?」

 

「え!?ちょ、ま、ダメですよ!?」

 

「なんでー!?」

 

フラウさん!こっそりメタモンを連れて行こうとしないでください!!

 

「……メタモン、やばい、どうしよう……なんとか連れて帰って……でもどうやって隠す……」ブツブツ

 

「おーい、シズカー……?」

 

シズカさんはメタモンの扱いに困っているのか、ずっと考え込んだまま戻ってこなくなっていた。……後ろから話しかけているニールさんが少し寂しそう……。

 

「うふふ!賑やかな人たちね、ねぇミノト?」

 

「……えぇっと、はい……そうですね」

 

「まなでしいいいいいい!!」

 

「せんせええええええい!!」

 

「……ちょっとあの二人を黙らせてきます」

 

「ほどほどにね~」

 

そして熱血漫才を続けているシキさんとウツシさんを、ミノトさんが一瞬で締め落として黙らせた。速い……私じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

 

――ォォォ……

 

 

「……?」

 

「……どうしたの、ショウ?」

 

「いえ、今何か……ちょっと見てきます!」

 

「あ、コラ!」

 

シズカさんが静止するのも無視して、私は走り出した。ジンオウガも慌てて付いてきてくれる中、私が走っていった先にはジンオウガも入れそうな大きな穴が空いていた。すぐ近くに巨岩が砕けて倒れているのを見るに、岩が塞いでいたのだろう。

 

「なんだろう、ここ……?」

 

「グルルル……」

 

「大丈夫だよ。行こう」

 

意を決し、洞窟の中へ入る。しばらく奥に進んでいくと行き止まりにぶち当たった。行き止まりはかなり大きな空間になっていて……一番奥に、そのポケモンはいた。

 

まるで鋼鉄のような黒銀色の外殻。

背中から生えた極端なほどに大きく発達した翼。

細くも強靭に見える四肢と、対照的に見目通りの細い尻尾。

 

そんな巨大なドラゴンの姿をしたポケモンが居座っていたのだ。……ただ、そのポケモンは様子が変だった。

 

「……!翼が、折れてる……?」

 

翼の片方が折れてしまっていて、とてもではないが飛べる様子ではない。巨大ポケモンはこちらに気づいたが、襲って来る様子もなければ警戒する様子もない。私たちを敵と認識していないのだろうか……。さらにその顔には斜めに走った傷がある。古傷……かな。

 

「ワン」

 

「ジンオウガ?」

 

ジンオウガが小さく吠えた。……そうだね、私のやりたいように、だよね。

私はそのポケモンに近づくと、ポーチからきのみを取り出して顔が届く場所にそっと置いた。

 

「よかったら、食べてね。きっと、元気になるから」

 

「…………」

 

「……それじゃあ、ね」

 

私はそのままジンオウガの背中に乗り込み、洞窟を後にした。

 

「ショウ!急に走り出して……どこに行ってたの?」

 

「ちょっとそこまで。……もう大丈夫ですよ」

 

「そう……そろそろ馬車も着きそうだって。ジンオウガをボールに戻して……帰ろう、メゼポルタに」

 

「はいっ!!」

 

今回のミラボレアスはメタモンが変身した偽物だったけど……偽物でも、かなり苦戦させられた。これが本物だったら……そう思うとぞっとする。

けど、これは試金石だ。ある意味、対ミラボレアス戦のシミュレーションが出来たと思うと決して無駄ではない。小さいけれど、確かな自信がついた。今回の経験を、決して無駄にしない。

遠くに見えてくる馬車を見つめながら、私はそう誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「……大した奴だよ、ショウ。俺様も、うかうかしてられないな」

 

「…………」

 

「……"なぜ、強くなろうとするのか"……か。決まってるさ、カロスチャンピオン」

 

「負けないためだ……俺様は、ミラボレアス」

 

「ボレアス種に……敗北などあってはならないのだ」

 

「……あってはならない、はずだろ……?なぁ、ルーツ……?バルカン……?」

 

 

 

 




ミラボレアスだと思った?

残念!廃人御用達ポケモン(メタモン)でした!!まぁ、偽物でも強敵でしたね。


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【今明かされる】我らモンハン部異世界支部【衝撃の真実ぅ!】

タイトル通り……即ち情報の暴力があなたを襲う!!


1:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いやぁ、ミラボレアス()は強敵でしたねぇ

 

2:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、実際シャレにならないくらい強かったやん

この強さでじつはメタモンだったとかマ?

 

3:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

実に笑えん話だ……だが、それ以上にもっと笑えん話が二つある

 

葵、焔は起きたか……?

 

4:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……ダメ、全然反応がない……

さっきからずっと呼びかけているのに、返事が来ない……あ、あの時と、同じ……!あ……あああぁぁぁ……!!

 

5:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

落ち着け葵!焔は死んでない!!気絶しているだけだ!だから落ち着け!!

 

6:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……そ、そう……そうよ、ね……焔は死んでない……死んでない……

 

7:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そうだ、死んでないんだ……だから、いつかきっと目を覚ます

それまでは呼びかけ続けてくれ、焔の幼馴染である葵にしか頼めないことだ

 

8:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……わかった

 

9:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

しかし焔のやつ……「破滅の翼」とか急ぎ過ぎにも程があるだろ

もうちょっと段階を踏んでからでもよかったろうに……

 

10:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

だなぁ、他にもリオレウスの強化個体なんていくらでもいるのに……よりにもよってそれを選ぶかぁ……いくらリオレウスが真紅眼の黒龍よろしく可能性の塊だとしても、チョイスが極端すぎるんだよ

 

11:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そりゃあ、設定上では一番強いかもしれんが……扱いのややこしさも一番なんだよなぁ

 

12:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ショウちゃんとの絆がどれほどのものか……それによっては、焔は戻ってこれなくなるかもしれんな……

 

13:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

原作ではちゃんと覚醒したらしいけど……俺、MHST2は未プレイなんだよな

 

14:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺もー

 

15:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

同じく

……だからこそ、俺たちにとっては完全に未知の世界だ……

 

16:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なー、なー?葵はMHST2ってやってたー?

 

17:陸の女王 ID:MonHunPHr5

やってたわよ、だから焔のことが心配でたまらないんじゃない

 

18:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そうかー、やってたのか……って、やってたんかーい!?

 

19:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

葵、主人公とパートナーのリオレウスは最終的にどうなった?

 

20:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……最終的には、レウスは主人公のピンチに力を完全に覚醒させたわ

でも、それはレウスがリオレウスというモンスターだったからであって、焔も同じようにできるとは限らない……焔は体はリオレウスでも中身は人間なんだから……

 

21:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なるほど……レウスは主人公への想いと本能的な何かによって力を目覚めさせたということか

確かにそれなら、人間的な理性が残っている焔には厳しいかも知れない……

 

22:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……厳しかろうが、やるしかねぇ……だろ……

 

23:陸の女王 ID:MonHunPHr5

焔!!

 

24:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

オイっ!お前、大丈夫なのか!?

 

25:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……わっかんねぇ……頭はグラグラしやがるのに、体を動かしたくてたまらねぇ……まるで躁鬱病みてぇだ……

 

26:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お前……「破滅の翼」になる前のこと、覚えてるか……?

 

27:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……うーん……今まで散々古龍級生物に負けまくってたからな……"もう絶対に負けねぇ、絶対に負けられねぇ、勝つ!勝つ!!勝ってやる!!"って思い続けてたら……プッツンした

……でも、プッツンしてからのことは覚えてねぇ……

 

28:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

もういい、わかった、無理はせず休め……葵、焔のことを頼んだぞ

 

29:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、待て……もう一つ、大事な話が残ってるだろ……なぁ、光輝……?

 

30:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

…………

 

31:空の王者 ID:MH2nddosHr8

光輝……ショウちゃんの母親……ダイパ主人公ヒカリは……

 

32:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ミツ姉だ、絶対にそうだ……絶対にミツ姉だ……!!

 

33:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……ひとまず、順序を追って考察するぞ

 

まず、ダイパ主人公のヒカリはおそらくはゲーム側のヒカリと思われ、俺たちもアルセウスとの会話を通してそう推察した

だが、ゲーム主人公のヒカリは我々現実世界の人間しか知りえない単語を知っていた……その最たる例が、「害悪戦法」だ

 

34:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

害悪ポケモンの名称……特に略称とか凄い特徴的なところまで知ってるのは確かにおかしいよな……

 

35:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

誰かから聞いたとかじゃなくて、自分で思いついたってあたりも……その世界でほかに知ってる人がいなかったら、確かに本人が考案したって言っても間違いはない

 

36:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

極めつけに、ショウちゃんの父親であり、博士の助手であろうコウキ……ヒカリが彼をかつては「コウちゃん」と呼んでいたこと、そしてコウキもまたヒカリのことを「ミ」から始まる別の名前で呼んでいたこと……

 

37:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ミツ姉の名前は「ミツリ」、漢字で書くと「光梨」……「光」という字は、"みつ"ではなく本来は"ひかり"と読む……

つまり、「光梨」は「ミツリ」とも「ヒカリ」とも読むことができる……

 

38:空の王者 ID:MH2nddosHr8

普段は抜けてても……締めるときは締めるところとか……な……

 

39:陸の女王 ID:MonHunPHr5

焔、無理しないで……

……確かに、性格的な部分も光梨さんと似ているところが多すぎる……光梨さん本人で間違いないかも……

 

40:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……それじゃあ、ミツ姉も葵みたいに死んじまって、ゲームのダイパ世界に主人公として転生したっていうのか……!?

 

41:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

可能性としてはそれが大きい

……くっ、こんな時にアルセウスさえ居てくれれば……

 

42:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ミラボレアスに負けたって聞いてから、かれこれ音沙汰なし……マジに死んじまったか……?

 

43:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……そもそもゲーム本編でも正規方法でアルセウスをゲットすることはできない……映画やらなんやら、ゲームの外でその権利を得なければならないはず……

けど、ゲーム主人公は普通にアルセウスにであってゲットまでしている……そして、その方法はおそらく、レジェアル本編と同じ……

 

44:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

プレートを全部集めたってのか……いや、待て!てんかいのふえはカミナギのふえが変化したものだろ、現代のシンオウ地方にカミナギのふえが残っているとは思えないが……

 

45:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……その辺に関しては何とも言えんな、アルセウス本人に聞いてみないことには……

 

46:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

しっかし奇妙な縁だよなぁ、博士の助手にして光梨さんの旦那さんの名前が「コウキ」で、光梨の従兄弟の名前も「光輝(こうき)」で、更にはショウちゃんが光梨さんの娘で……

 

47:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

一回、家系図を整理したほうがよくないか?

 

48:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……なんにせよ、俺には尚の事負けられない理由が出来ちまった

ショウちゃん……いや、ショウの為にも、俺は必ず【極み吠えるジンオウガ】になってみせる……!

 

49:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……きっと、光梨さんが引き合わせてくれたのよ……光輝と、ショウを

焔から聞いたけど、ショウが初めて出会ったモンスターはジンオウガ……光輝だったんでしょ?それは絶対に偶然なんかじゃない、二人が出会えたのは運命だったのよ……光梨さんの従兄弟と娘である二人じゃなきゃ、絶対にあり得なかった

 

50:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……そうだな、俺もそう思う

光輝だって、ショウちゃんを探そうと思って蹄鉄ヶ原を歩いていたわけじゃなかったし、親分ギャロップを狩った帰りにたまたま見つけただけだったな……偶然といえば偶然だろうが、葵の言うとおり二人の間に「稲妻光梨」という共通点がある以上、偶然で片付けたくはないな

 

51:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

えっと……?従兄弟の子供ってなんて言うんだっけ?

 

52:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

今回は娘だから……従姪だな、読み方は「じゅうてつ」あるいは「いとこめい」だ

 

53:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それだ!可愛い可愛い従姪のためにも、しっかり強くならないとな!

 

54:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

静香もダイパ主人公の正体に気づいたっぽいし、あいつもこれからショウちゃんのことをしっかりと守ってくれるはずだ

 

55:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ……絶対に強くなってみせるぜ!!

 

56:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

んー……静香ちゃんは勘違いしとらんだろうか?ゲームの「コウキ」と我らの「光輝」を

 

57:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

む……いや、ありえるな……ショウを守ると宣言した時の覚悟完了顔からして、おそらくは光輝と光梨さんの子だと思い込んでいるかもしれん

まぁ、守るという意思は本物だし、問題はないだろう

 

58:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それにしても光梨さんも転生者かー……なぁ葵、光梨さんってどんだけ生きてたの?葵より長生きした?

 

59:陸の女王 ID:MonHunPHr5

…………

 

60:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

葵?

 

61:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……ごめんなさい、光梨さんよね?

……私より早死したわ、享年28歳

 

62:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

は?

 

63:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

光輝、冷静に

葵、俺と剛太で光輝を抑えるから、続けてくれ

 

64:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……えっと、焔達が死んでから大学を卒業した光梨さんは、大手の病院に勤めていたそうよ、執刀医としてすごく優秀な人で患部に迷わずメスを入れて治療する姿は苗字も相まって「稲妻の如し」として雑誌にも載ってた

 

65:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やっぱすげーんだわ、光梨さんは

 

66:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……でも、26歳の時に、突然行方不明になってしまったの……私もそのことをニュースで初めて知ったわ

警察がずっと探し続けても見つけられないまま二年が経って、どこかのアパートで身投げしたことがニュースに出てた……しかも、飛び降りた際にアパートの住人である男性に激突したらしく、その男性も死んでいたの

 

67:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、待て待て待て!脈絡なさすぎんか!?そこに至るまでの経緯は!?

 

68:陸の女王 ID:MonHunPHr5

光梨さんは若くて有名人だったからね……ドキュメンタリー番組とかで、よく事件のことは扱われてたわ

私も当時、個人的に光梨さん失踪の件を追っててね、いろんな情報が集まったわ……光輝にとっては、心底胸糞悪くなる話ばかりだけど

 

69:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……話してくれ

 

70:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……わかった

まず、光梨さんの自殺に巻き込まれて死んだアパートの住人の男性……実は、その男こそが光梨さん失踪の黒幕だったのよ

 

71:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なんだと……!?

 

72:陸の女王 ID:MonHunPHr5

その男は元々、光梨さんが勤める病院の入院患者で……光梨さんが執刀した患者さんなの

男は光梨さんに助けられ、さらに光梨さんの見目や性格の良さに惹かれた……けど、当時の光梨さんの頭の中は死んだ光輝のことでいっぱいだったから、男は全く相手にされなかった

男は光梨さんのことを密かに調べ始めて、やがて光輝のことにたどり着いた……男は光輝の件で弱っていた光梨さんの心に付け入って、彼女を手篭めにしたのよ……!

 

73:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

殺す……!

 

74:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

落ち着け光輝!

 

75:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

やつはもう死んでいる!

 

76:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……しかも、男は最初から光梨さんの体が目的だった……部屋に連れ込んだらすぐに本性を表したようね……

強○する様を録画して、脅しつけて監禁した……尊厳を踏みにじり心をへし折るためにほかの男も大勢呼んで全員で輪○した……光梨さんはそんな生活を二年間も強いられた……アパートから飛び降りるまでの二年間を……

 

77:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ブッ殺すッ!!

 

78:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

こ、光輝!ステイステイ!!

 

79:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

脳内スレで暴走とか洒落にならんから!!

 

80:陸の女王 ID:MonHunPHr5

それからは、報道等で流れたとおり……光梨さんは拘束を解いたのか自由の身になったあと、男が帰ってくるタイミングを見計らって飛び降りて……男を道連れにして、死んだ……

……今思い出しても、あんまりだわ……!こんなの……人の死に方じゃないわよ……!

 

81:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!!

殺してやるっ!!殺してやるっ!!

よくもミツ姉を!俺の家族を!!

よくもよくもよくもっ!!!

 

82:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

どわああああぁぁっ!?

光輝落ち着けぇ!!やめろー!!

 

83:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

だめだ!光輝が完全に錯乱した!!ヘルプミー、ルーツ!!

 

84:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だから呼んだってすぐ来れるわけが――

 

 

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が参加しました――

 

 

 

 

85:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

呼んだ!?

 

86:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

キタ━(゚∀゚)━!!

 

87:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

光輝が暴れてる!助けてくれ!!

 

88:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

落ち着きなさい!スレ外で頭でも冷やしてきなさい!!

 

89:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

んがっ!?

 

 

 

 

――「無双の狩人」が退室しました――

 

 

 

 

90:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ふぅ……落ち着くまでそっとしておきましょう

 

91:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

流石は祖龍!俺たちにできないことを平然とやってのける!

 

92:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そこに痺れる憧れるぅ!!

 

93:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

はい、どーも

……それはそれとして、光輝くんが暴走した理由について、聞かせてもらえるのでしょうね?

 

94:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それが……光輝の従姉がポケモンの世界に転生したらしく……死後転生らしかったので事情を聞いたのだが、内容が内容だけに光輝が怒りを抑えられず……

 

95:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ちょっと待ってて……あぁ、ちょっとスレを見直してきたけど、確かにこれはブチギレ案件ね

むしろこんな話聞かされて冷静でいられたら、身内の情がないのかと疑いをかけなければいけないわ

 

96:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

実はショウがその従姉の子である可能性が浮上しているんだが、イマイチ確信が持てなくて……アルセウスに話を聞きたいが肝心のアルセウスは……

 

97:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……そうだったわね

それにしてもいろんなところで複雑に縁が絡みついているわね……これも時空の裂け目、ひいてはウチの子の仕業かしら

ところで焔くんは?「破滅の翼」に至ったと聞いたから、心配なんだけど……

 

98:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……実は、焔も「破滅の翼」に至ってから体調不良で……人間の理性的な部分が、「破滅の翼」状態に悪い影響があるんじゃないかと推察してるんだが……

 

99:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……もしかしたら、なんだけど

「破滅の翼」の力は、今の焔くんには強すぎるのかもしれないわね……ほら、よく「人間の脳はリミッターがかけられていて、100%の力を発揮できない」と言われるでしょ?人間の筋肉が常に100%の力を使い続けるとダメージを受けてボロボロになるから、それを阻止するために脳が制限をかけているという話よ

 

「破滅の翼」は、今の焔が宿る「リオレウス」には過ぎた力なのよ……剛太くんも言ってたけど焔くんは急ぎ過ぎよ、リオレウスにはさまざまな種類や姿、近縁種だっているのよ?それも【黒炎王】よりも強い個体がね

特異個体、辿異種、豪火種、輝界竜……それらの過程や可能性だってあったのに、全部すっ飛ばして「破滅の翼」はさすがに早すぎるわ、きちんと段階を踏んでいけば即覚醒だって不可能じゃなかったのに……

 

焔くんの調子が悪いのも、きっと同じ理由ね……強すぎる力を使いすぎないように脳が無理やり押さえ込もうとしているから頭がぐらぐらしているわけで、体を動かしたい衝動も頭痛を和らげようと力を解放しようとしているのよ

矛盾した思考を、脳がこれまた同時に信号として送り出しているせいで、焔くんは絶不調ってわけ

 

100:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なるほど……力を抑えようとしているがために頭痛がおき、その頭痛を抑えるために力の解放が衝動として表れ、そしてその衝動を抑えようと脳が負荷をかけ……まるでひどい無限ループだ、確かにこれは調子も悪くなる

 

101:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

現に焔のやつ、完っ全に喋らなくなったぞ……

 

102:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……祖龍様、焔は大丈夫ですよね……?

 

103:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そこはいわゆる、「後は患者の気力次第」ってやつね……残酷だけど、外部からはどうにもできないわ、焔くんの頑張りに賭けるしかないわね

仮に外部から出来ることがあるとしたら……ライダーとオトモンよろしく、ショウと焔くんの絆が鍵となるわね

二人の絆が確かなものなら……きっと、焔くんは「破滅の翼」の力をモノに出来るわ

 

 

 

 

――「無双の狩人」が参加しました――

 

 

 

 

104:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おっ、帰ってきた

どーよ?頭冷えた?

 

105:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……すっかり反省させていただきました

葵もスマン、冷静でいられなくなっちまった……

 

106:陸の女王 ID:MonHunPHr5

いいのよ、それだけ光輝が光梨さんを大事に想ってたってことでしょ?家族なんだから当然よ

 

107:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……剛太、剣介、二人も俺を抑えようとしてくれてありがとう

……それと、さ……

 

108:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おう

 

109:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うむ

 

110:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なるほどこれは確かに焔が羨ま許せん

 

111:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だろー!?

 

112:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

葵はいい女、そしてそんな女が幼馴染の焔は重罪、はっきりわかんだね

 

113:空の王者 ID:MH2nddosHr8

毎度のごとく、俺が罪人扱いされるのはなぜなのか……

 

114:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

焔、平気か?

 

115:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あぁ……大分長いこと大人しくしてたからな、少しは回復できたと思うぜ

 

116:陸の女王 ID:MonHunPHr5

本当に無理だけはしないでね……?死ぬときは一緒よ

 

117:空の王者 ID:MH2nddosHr8

アッハイ

 

118:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……はい!暗い話はここまで!終わり!閉廷!!

こっからは気分を変えて楽しい話をしようぜ!

 

119:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、なんかあるのかよ?

 

120:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あるだろうがよ……メゼポルタへの移動中、ルーツ謹製の特別脳内シミュレート!「ポケットモンスター スカーレット/バイオレット 脳内シミュレーター」が!お前らさんざん遊びまくってたろうがよ!!

 

121:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いやー、ええ話やであれマジでホンマ……シミュレーターどころかVRだったが

おかげでスマホロトムは凄いを通り越してヤバいブツだってことがわかったし

 

122:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だなー……アカデミーのこと、個人のこと、全てが終わったところから主人公がやってきて、そこから止まった時間が動き出したという流静の考察は見事という他なし

 

123:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

逆に普通に学校通って一学生としての青春を謳歌していたお前らって……

 

124:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ネモがバトルジャンキー過ぎて焔と意気投合してたのクッソ笑った

 

125:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ネモって?

 

126:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ああ!それってヒソカ?

 

127:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやぁ、俺もバトル自体は好きだし……なーんか放っておけなくてさぁ

 

128:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おい、焔……

 

129:空の王者 ID:MH2nddosHr8

え?……あ"

 

130:陸の女王 ID:MonHunPHr5

へぇー……VRでも他の女と遊んでたんだー……

へぇーー……攻略関係は私にあれこれ聞いてきたのに、自分は他の女に現を抜かして……

へぇーーー……へぇーーー……

 

131:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、あのちゃうんすよ葵さん、これは……そう、普通の!人間としての普通のコミュニケーション……

 

132:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

 

資料1.

『遠慮はいらないぜ、ネモ!俺がお前(の全力)を受け止めてやるからよ!』

 

『ほむらくん……!』

 

 

資料2.

『俺がいつだってお前の全身全霊を受け止めてやるからな!だからさ、そんな寂しそうな顔をすんな、お前は笑ってたほうが可愛いぞ』

 

『えっ!?あっ……』(*´・_・`*)ポッ

 

 

資料3.

『お前のライバルとして、俺はお前の一歩先を行く!だからよ……ネモ!お前も、止まるんじゃあねえぞ……!』

 

『うん、うん!……あ、あのねほむら!もしほむらに追いつけたら、私と……ゴニョゴニョ』

『え?なんだって?』

 

『な、なんでもない……!』(/ω\*)

 

 

133:空の王者 ID:MH2nddosHr8

( ^ p ^ )

 

134:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……言い残すことはあるかしら?

 

135:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……幼馴染は良い文明……

 

136:陸の女王 ID:MonHunPHr5

ゆ"る"さ"ん"っ!!

 

137:空の王者 ID:MH2nddosHr8

アーッ!!

 

138:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ルーツ、あんた……なんてことを……

 

139:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

いや、ちょっと気になるデータがあったから、会話ログを引っ張ってきただけなんだけど?

 

140:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ナイスゥ

 

141:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

流石は祖龍、やることがえげつないぜ

 

142:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そうかそうか、焔はネモかー

ふっふーん、俺もお気に入りのキャラクターが一人見つかってるもんね

 

143:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ポピーか

 

144:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ポピーだろ

 

145:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

もしかして:ポピー

 

146:空の王者 ID:MH2nddosHr8

どうせポピー

 

147:陸の女王 ID:MonHunPHr5

ポピーでしょ?

 

148:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

よく剣介くんに懐いてたわね、ポピーちゃん

 

149:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なんでテメェら揃いも揃ってー!!俺は断じてロリコンではなーいっ!!

俺の推しはハッサクの叔父貴だっつーの!!セグレイブかっけーじゃんよー!!

 

150:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そういえば剣介ってハッサクに弟子入りしてたわww

 

151:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ポケモンHOMEからパルデアに生息していないドラゴンポケモンを引き連れて頭を垂れること、苦節二週間!認めてもらえたときは嬉しかったなぁ……

 

152:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

良くも悪くも美的センスがぶっ飛んでるからな、剣介……それが認めてもらえた理由だろ

けどなんだかんだで四天王組と最初に面通ししたのも剣介だったな、ポピーちゃんともそこでか

 

153:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

え?あぁ……そうだな、そこで交流を得たけど……

 

154:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……剣介、お前……もしかしなくてもポピーとポケモン交換したか?

 

155:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

え、したけど?

 

156:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だろーねー!!じゃねーとポピーがサーフゴーや輝石キリキザンなんか使ってくるわけねーんだよー!!

オマエノシワザダタノカーッ!!

 

157:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あ、使ってくれてたのかー!いやぁ、こういう戦い方あるよーって教えてあげたんだけど……仮にもポピーは四天王だからな、採用されないだろうなと思って色々と紹介したんだよ

【いばみがでんじはクレッフィ】とかも教えちゃったけど、嫌われるからやめなーって言っといたから安心してくれ!

 

158:空の王者 ID:MH2nddosHr8

サーフゴーと輝石キリキザンだけでも十分脅威なんだよ!SNSでも『リーグ二次試験難易度爆上がりしててクソワロタ』でめちゃくちゃバズってたぞ!!

 

159:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

剣介、お前……やりすぎだぜ……

 

160:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

お前も人のこと言える立場か?なぁ……『スター団の死兆星』さん?

 

161:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

( ゚∀゚)・∵.グハッ!!

 

162:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

何の話よ?

 

163:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ずっと黙ってたことなんだが……実は剛太だけ脳内スカバイプレイ時にバグが生じて、一人だけ本編開始二年前に飛んでたんだよ

俺たちよりも二年早くアカデミーに入学して、先んじて学園ライフを楽しんでいたってわけだ

 

164:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……ん?二年前というと……

 

165:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そう……スター団が結成される前だ

そこで剛太は「原作改変できるのでは?」と思い、密かに行動を開始……スター団メンバーを救済すべくアカデミーを東奔西走していたわけだ

……まぁ、元々剛太は大量の甥っ子姪っ子を世話し続けてきた世話好きだからな、いじめられているとわかってて無視できなかったんだろう

 

166:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、マジでやめてくれ……本気で恥ずかしいんだが……!

 

167:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

だが断る

結論から言うと、原作改変は失敗した……原作通りスター団は結成され、いじめっ子は軒並み退学し、スター団は問題児軍団扱いされるようになった

……だが、一つだけ本編と違う所がある、それがある噂だ

 

168:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

噂?

 

169:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……"死兆星は輝き放つ……スター団の死兆星、その輝きは友を導き敵を滅ぼす"

俺が聞いた噂はそんな感じだな……んで、ゲーム本編とは違いスター団に挑む勇者は結構いたそうだが……死兆星のせいで尽く玉砕したらしい

 

170:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんで流静がそんなこと知ってんだ?

 

171:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺が剛太の尻拭いのために「スターダストストリート」を攻略する羽目になったんだよ!!

 

172:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そっかぁ……俺はペパーとスパイス集めやってたから知らんかったわ

焔が「チャンピオンロード」で、俺が「レジェンドルート」、流静が「スターダストストリート」……

んで、剣介はハッサクの弟子で、剛太はスター団の裏ボスか

 

173:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

皆が俺のことを「アニキ」って呼び慕ってくれてな……前世の甥っ子姪っ子達を思い出して、手を差し伸べずにはいられんかったんだよ

そうしたらボタンが「ゴウ兄は最終兵器だから」って言い出して、「マジボスが倒された時のための切り札」って立場になってたんだよ……

 

174:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

だからアカデミーの運動場でボタンを倒したあとに、剛太が現れた時は心底驚いたぞ……ガチモードで襲いかかってきたもんだから、こっちもガチモードで対応させてもらったぞ

 

175:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あの時はイイ線行ってたと思ったんだけどなぁ

 

176:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

無理無理、頭脳戦で俺等が流静に勝てるわけねぇから

 

177:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ホントそれなー!普通に読み合いで負けたんだが!!

 

178:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、読み合いを抜きにしてもあの時の剛太は結構手ごわかったぞ?

スター団の全ボスの専門タイプパとか、エモい構成もなかなかに良かった

 

179:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ということは裏ボスの手持ちはあく、ほのお、どく、フェアリー、かくとうが必ず入ってたのか、あと一匹は?

 

180:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ボタンと同じブイズ

ゾロアーク、ソウブレイズ、キラフロル、ミミッキュ、ウェーニバル、エーフィの六匹……結構頑張ったんだぜ、これ?

 

181:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おぉ!確かにこれはエモい、まるでスター団の集大成って感じだな

 

182:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

でしょー?ボスたちも俺が一通り手解きしてやったし、結構やれると思ったんだよ

 

183:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

スター団のボスたちと和気藹々とする剛太……あれ?違和感なくない?

 

184:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そうか?まぁ俺自身、結構スター団に馴染んでた自覚はあったし

ピーニャとメロコが「アニキ」って呼んでて、オルティガは「兄さん」呼びでシュウメイは「兄上」呼び、ビワは「お兄ちゃん」でボタンが「ゴウ兄」だったか

いやぁ、みんな前世の甥っ子姪っ子みたく、全力で可愛がってやったぜ

 

185:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そりゃあ、そんだけ慕われてりゃあんだけガチになるわけだよ……

 

186:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

光輝はレジェンドルートか?

 

187:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ん……?まぁな、焔がネモの手を取ってさっさと「チャンピオンロード」に行っちまったから、おいてけぼりになったペパーを俺が連れてったんだよ

確か階段のところでボタンを助けたのは流静だったな、だから流静が「スターダストストリート」ルートだったのか

 

188:陸の女王 ID:MonHunPHr5

へぇ、手と手を取り合って……楽しそうねぇ、焔……?

 

189:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ヒェッ

 

190:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ペパーもいい奴でなぁ、親である博士とちょっと仲悪そうだったんだが、ミツ姉の話をしたら結構同情してくれてよ、「もうちょっと向き合ってみようと思う」って言ってくれたんだぜ

 

191:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

光梨さん?

 

192:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ……実はミツ姉の両親ってミツ姉が小さい頃に事故で亡くなったんだよ、しかも叔母さんはミツ姉を庇ってさ……それを引き取ったのがウチの両親だ、その時の俺、生後4ヶ月

だからペパーに言ったんだ、「死んじまったら会いたくても会えない、会える機会があるなら会えるうちに会っておけ」ってさ

……まぁ、蓋を開けてみたらペパーの親である博士もこの世にいなかったんだけどな

 

193:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あぁ、あれかぁ……原作本編より難易度云十倍の「ザ・ホームウェイ」

 

194:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

未来と過去のパラドックスポケモンが入り乱れる大戦争……嫌な事件だった

 

195:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ポケスペのSV編が出る前に死んじまったから知らんけど、多分ポケスペよりだいぶ悲惨だと思う

ペパーなんて両親ともにAIで、さらに本来の両親のせいでエリアゼロはパラドックスポケモンによる紛争地帯と化し、AI両親はそれらを止めるために奮闘しまくり……しまいにはAI両親が楽園防衛プログラムに操られてタイムマシンの所有権を巡る代理戦争をさせられるというクッソめんどくさい事態に発展して……

 

196:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

光輝がAIフトゥーと、焔がAIオーリムとそれぞれバトルして勝利を収めたが、これまた楽園防衛プログラムに操られたAIがコライドン/ミライドンをそれぞれ繰り出してきて……こちらもそれぞれコライドン/ミライドンで対抗し、なるべく三つ巴にならないように注意して立ち回り、なんとか勝利できたんだよな

 

197:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まぁ、結局原作通りにAI博士は両方とも、それぞれが望む古代と未来の世界に旅立ったけどな

 

198:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……なんというか、両方の作品の要素を無理やり詰め込んだ第三作品って感じね

エメラルドもプラチナも、ここまでひどくはなかったはずだけど……

 

199:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

いやぁ、ごめんね?なんか作ってるうちに楽しくなっちゃって♪

 

200:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うーん、許せる

 

201:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

けど、実際問題誰もこんな無理ゲーやりたくないだろ

 

202:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

かもなー、博士が両方いるせいでエリアゼロがカオス化しとるし、原作通り原作主人公+三人だけだと絶対に全滅してた

 

203:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だな、そこへ更に俺たち五人が追加されてようやく有利ってところだったし

 

204:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……自惚れるつもりはないが、確かに四人だけだと厳しかったかもな

 

205:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ところでルーツ、バルカンとミラオスは?

 

206:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

バルカンはボレアスの動向を追ってるわ、ミラオスは亜大陸に行ってライダー達から「破滅の翼」について聞いてくるそうよ

 

207:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

無難な判断だ

……それで、だが

 

208:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

うん?まだ何かあったっけ?

 

209:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ある、あの時洞窟の中でショウちゃんが見たクシャルダオラのことだ

 

210:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

顔に傷がついたクシャルダオラ……もしかして、4Gの錆びクシャと同個体?

 

211:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あぁ、あの子……そうね、剣介くんの言うとおり、脱皮前にハンターに顔を傷つけられた子よ

なんでもボレアスからエイデンってハンターを理由にメゼポルタ襲撃を持ちかけられたそうだけど、断ったんですって

そしたら、逆上されて翼を折られちゃったそうよ

 

212:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あんのバカタレ本当に学習しねぇな

 

213:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

けど、ショウちゃんからもらったきのみを食べたら、回復が早まったそうよ?もう数日すれば、飛べるようになるんじゃないかしら

 

214:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おぉ、それは良かった

 

215:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

とりあえず、ミラボレアスをぶん殴る理由が一つ追加されたな

 

216:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ……ショウのため、クシャのため、モンハン世界とポケモン世界すべてのため、必ずミラボレアスを討つ

絶対に勝つ……覚悟しやがれ、ミラボレアス!その無駄に長い首を洗って待ってろよ……!!

 

217:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

無駄に長い首……ふぇぇ……

 

218:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あっ!?ち、ちが、別にルーツを侮辱したわけじゃ……!あー、あー!そうだねミラボレアスかっこいいもんね!ザ・ドラゴンって感じがチョーイカスー!!

 

219:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

(´・_ゝ・`)フッ……

 

220:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おちょくってんなテメェー!?

 

221:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

やっぱりルーツって子供だよなぁ

 

222:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そこに気づくか……流石はロr――

 

223:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

言わせねぇーよ!?

 

 

 

 




うーん、これは情緒ぶっ壊れますね、光梨さんの第二の人生中の心境やいかに


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クロノ再び!迫るリミット……

今回もいろいろと導入部分が多いこと多いこと……





メゼポルタの四方から襲来してきたバゼルギウス、そして時空の裂け目から出現したミラボレアス……もとい、メタモンを倒した私たちは現在、メゼポルタに集まって最終報告会を開いていた。

それぞれ、トレーナーに同行していたハンター達から報告を聴き終えたギルドマスターさんは「ご苦労」という言葉とともに鷹揚に頷いた。

 

「……皆、聞けっ!爆鱗竜の脅威はトレーナーとハンターの協力のもと、無事に取り除かれた!これ以上、メゼポルタが荒らされることはないじゃろう。我々の勝利じゃ!」

 

その言葉に、メゼポルタのギルド職員たちが歓声を上げた。そんな中、ギルドマスターが私の方へと振り返った。

 

「……実は、物見から"黒龍を見た"という報告が上がっておる。一部始終を見ていた者からは、黒龍はそなたらの手によって討ち取られたとも聞いておるが……」

 

「あー……」

 

その話題が出た途端、隣で話を聞いていたシズカさんが頭を抱えた。……結局、メタモンをどうすればいいのかわからないままここまで戻ってきてしまったのだ。後でアカイさんに意見を聞こう……。

 

「えー……実は、その……ミラボレアスはミラボレアスじゃなかった、といいますか……」

 

「はい?」

 

「見て見てギルドマスター!メタちゃんだよー!可愛いでしょ?」

 

「うわぁ!?なんじゃこのモンスターは!?」

 

「フラウさーん!?」

 

こっちが話題の切り出し方に困っていると、フラウさんがメタモンを抱いたままギルドマスターの元へ駆け出していた。こうなっては仕方ないので、私とシズカさんはお互いに頷きあって事情を説明することにした。

 

「……他の生物や物体に変身するモンスター、メタモン……じゃと……?……いやはや、竜人族としてそれなりに歳月を重ねてきたつもりでおったが、まさか他者に化けるモンスターが存在するとは思わなんだな……」

 

「……まぁ、そんな反応になりますよね……」

 

「実は、メタモンの扱いについて非常に困ったことになりまして……」

 

「失礼、ショウ。そちら側のモンスターが見つかったと聞いたのだが」

 

「アカイさん!」

 

やった、我らが知恵袋のアカイさんの登場だ!

 

「アカイさん、実はメタモンがミラボレアスに変身して……」

 

「なに?ふむ……それは少し、いやかなり厄介な事態になったな」

 

「そんなにマズイですか?」

 

まぁ、ミラボレアスに変身できるって時点で普通のメタモンじゃないよね……。

 

「あぁ、実にマズイ。このメタモンをそちら側に連れて帰ってもいいが、その場合は決して野生に帰すことはおすすめしない。ミラボレアスの姿とその強さを覚えてしまったメタモンが、外敵に遭遇した際にミラボレアスに変身しないという保証はない。過酷なヒスイという環境で生きていくには、本来ならメタモンは少々力不足だ。このメタモンは例外だろうが、ミラボレアスに変身できるメタモンなどショウほどの使い手で無ければ逆に持て余してしまうだろう。

ではこちら側に残していくか?……となると、また話が変わってくる。他のモンスターの姿に変身するモンスターなど、古今東西探してもこの大陸には存在しない。文字通り、世界で一匹しかいない存在だ。龍歴院をはじめとする研究機関としては喉から手が出るほど欲しいだろうし、その扱いも慎重になるだろう。

……どちらにせよ、そのメタモンの今後はひたすら肩身が狭くなること請け合いだ。こちらとあちら……どちらの世界にいることがメタモンにとって幸せ……とまでは言えないが、生きやすいかだろうな」

 

……そうか、メタモンは非常に観察力・洞察力に優れたポケモンだ。一目見ただけで相手の特徴を正確に把握する眼力は、一般的には知られていないがどのポケモンよりも優れているのだ。

そんなメタモンが、ミラボレアスの特徴を完全に把握しているのだ……こちら側に連れて帰っても自衛のために変身しないとは限らないし、保護してもいいけど私だって不老じゃないので他の人だといつかは面倒を見きれなくなってしまうかもしれない。

かといって、こちら側に残していくのもな……ミラボレアスはこちら側の人達にとっては御伽噺の中の存在で、伝説上の生物と言われているそうだし……ミラボレアスやほかのポケモンの研究のために、このメタモンは間違いなく利用されるだろう……それもなんだか可哀想だ。

アカイさんの説明を受けたギルドマスターも、おそらく私と似たことを考えているのか、非常に難しい顔をしていた。

 

「……確かに、難しい話じゃな。そちらの……ヒスイの事情はよう知らぬが、こちら側ならある程度想像はつく。まず間違いなく、龍歴院はそのメタモンを欲しがるじゃろう。なんせ、ミラボレアスじゃ。これまでその存在のほとんどがベールに包まれたモンスター……近年、研究が進んでおるとは言え、まだまだ謎の部分が多いのじゃ。

だが、そのメタモンがおれば話は変わる。ミラボレアスに変身させれば様々な方面から研究ができるじゃろうし、ミラボレアス以外のモンスターにも変身できるのじゃろう?そんな便利なモンスター、求めるなという方が無理があろう」

 

「だな……メタモンについては、私もギルドや龍歴院と交渉を続けていこうと思う。ギルドマスター殿も、よろしく頼む」

 

「無論じゃ。……それにしても、こんなちっこいモンスターがミラボレアスに……ほれほれ」ツンツン

 

「モンモン♪」キャッキャ(≧∇≦*)キャッキャ

 

「……か、かわいい……!」

 

どうやらメタモンの扱いについては、ギルドや龍歴院にしっかりと交渉をするらしい。この辺のことは、アカイさんに任せれば万事オーケーなので、安心だ。

……ギルドマスターさんがメタモンをつっついて和んでる。まぁ、可愛いよね、メタモン。

今夜はメゼポルタ防衛成功ということで、小さいながらに宴を開くこととなった。今は英気を養って、その後メゼポルタを復旧させていこう、ということらしい。どうやら復旧資源の回収のために出払っていた他のレジェンドラスタ達が、現在メゼポルタへの帰路に着いたことが報告に上がってきたそうなのだ。ついでに、ドンドルマが用意することとなった滅龍石についても、メゼポルタへ輸送中とのこと……すごく順調に事が進んでいる!このまま何事もなければいいけれど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メゼポルタ到着から、三日が経過した。シロちゃんから聞かされたのだが、ドンドルマで呪いが酷くなった時点で私の寿命は二週間だった。そこから半日かけてメゼポルタに着き、流れでバゼルギウスとメタモンの相手をして、プチ宴会も開いて三日……あと十一日か。

……落ち着け、大丈夫。まだ時間はある。滅龍石の輸送も道中滞りなく向かっているとのことなので、最速で明日には到着するだろう、とのこと。ただ、この三日間は実に忙しい日々だった。

まず、メゼポルタの復興である。私たちだけでなく、ポケモンたちの力も借りて全力で復興に勤しんだ。……ブイズはどこに行っても人気者、はっきりわかるんだね。めちゃくちゃ可愛がられてたなぁ。

 

それと、この三日でメタモンの件はひとまず決着がついた。まず……ミラボレアスの姿を覚えている以上、私たちの地元に連れて帰ることは困難となった。実際、へんしんとはいえあんな巨大サイズのドラゴンが頻繁に出現するようなことになれば、近隣に迷惑がかかることは必至。捕まえて保護してもいいけど……事情が事情だけに迂闊に話すことも憚られる上に、この手の話は時間の経過とともに忘れられたり曲解されたりして、ロクなことにならないのはお母さんから口を酸っぱくする勢いで言われ続けていたので、よーく理解している。

 

では、この大陸に残していく場合どうなるのか。まぁ……可愛がられはするだろう。メタモンの高さは0.3m……アイルーやプーギーといったこの大陸のマスコット的生物よりも小さい体に、骨格を持たない軟体性の体はぷにぷにと柔らかく、実際にメタモンをだっこしたフラウさんはその柔らかさと気持ちよさに瞬殺された。今ではよほどのことがない限りメタモンを離そうとしないほどだ。……余談だが、フローラさん、チルカさん、クロエさんも、みんなメタモンの柔らかさにイチコロだった。レイラさんだけは珍しそうにしていただけで平気そうだった。

 

話が逸れた。この大陸に残していった場合、間違いなくモンスターの生態研究に協力させられることだろう。へんしんは一目見るだけで相手の特徴を把握できるので、モンスターとメタモンを対面させるだけで十分だし、素材の方はわからないけど……けど、なんの収穫もないことはないだろう。龍歴院所属のネネさんは、「目撃例が少ないモンスターの研究」にメタモンの力が必要になるだろう、とのこと。

例えば、ラージャン。ラージャンの目撃例がすくない理由は、「目撃者の生存率が芳しくない」から。だが、メタモンにラージャンの姿を覚えさせて変身させれば、わざわざ危険なラージャンを見に行ったり無理に狩猟に趣いたりせず、能力把握や生態研究が可能だからだ。他の生物で言えば、古龍がそうだろう。以前シロちゃんが乗り物にしていたキリンも、"幻獣"の別名を持つ通り本当はとても珍しいポケモンなんだとか。そういった生物の研究なんかにも、メタモンの力が生かされるだろうとのこと。……もちろん、メタモン自身も研究対象だ。

 

そのことをシズカさんとアカイさん……さらに大きなハンターズギルドを持ついくつかの地域のギルドマスターが議会を開いて話し合ったそうだ。ミナガルデ、ドンドルマ、ロックラック、タンジアの港、バルバレ、龍歴院……二つしかわからなかったけど、それだけ大きなギルドが複数あるってだけでも、ハンター業がこの大陸にとってどれだけ重宝されているかがよくわかる。

……議会がめちゃくちゃ紛糾しまくって疲れた、とシズカさんが死んだ魚のような目をしていたのが印象深かった。シズカさんはメタモンに関してかなり知見が深かったので呼ばれたそうだけど……多分、普段の信頼関係もあるんだろうな。

 

さて、結論を述べるとしよう。……メタモンは、この大陸に残していくこととなった。ただし、メタモンはギルドが直接管理するのではなく、メタモンに詳しいシズカさんと、シズカさんが所属する"我らの団"というキャラバン隊が管理することとなった。この決定の決め手となったのは、メタモンが私たちの地元に生息していることと、そんな私たちと最も縁が深い人物がシズカさんだろう、ということだ。月に一度、生態研究のために龍歴院に行かなければならないこと以外は、普通にペットとして飼う形になるそうだ。

 

そんなこんなな三日を過ごした今日。メゼポルタ到着から三泊した四日目、ダイアーさんが亜大陸からライダーを連れてきた、とのこと。なんでも、リオレウスの今の状態に詳しいらしい。シズカさんも言ってたっけ……たしか、「破滅の翼」……。

ただ、なんか亜大陸で「破滅」と呼ばれていたのは実は濡れ衣で、実際に破滅をもたらそうとしたのは古龍の方らしい。その古龍を撃退したリオレウスの方が、長い年月の果てに「破滅の翼」と呼ばれるようになったんだとか。……理不尽すぎない?ただ、実際に破滅を齎しかねないほどの力を秘めていて、リオレウス自身も制御を誤れば暴走する危険性もあるらしい。こういう知識はちゃんと本場の人に聞いておいたほうがいいということで、私はシズカさんと共にライダーさんの話を聞くことになった。

……ぶっちゃけ、シズカさんから話を聞けたのでこれ以上は別にいいかな、とも思ってたりする。

 

「やあやあショウ!三日ぶりだねー」

 

「ダイアーさん!お疲れ様です」

 

「うんうむ、君のリオレウスの状態をよく知るために、ライダーさんを連れてきたよ。彼らから話を聞いてくれー」

 

ダイアーさんが連れてきてくれた人間の数は四人。防具を纏う人間が二人、背が小さいのと高いの。あれがライダーか……。それと少女、中年の男性だ。少女の方は竜人族っぽいので、外見年齢は当てにならないだろう。それと、アイルーよりも全体的に丸みを帯びたフォルムの獣人族もいる。……ネコっぽいし、アイルーの親戚かな。

そして、彼らの後方に控えるポケモン……リオレウスと、もう一体は知らない個体だ。

 

後頭部に張り出した大きな襟飾り。

雄々しく天を突く真紅の角。

 

見た目からして荒々しさを感じさせる力強いポケモンだ。

 

「こんにちは!」

 

「あっはい、こんにちは」

 

リオレウス……っぽい見た目の防具の、背が低いほうが話しかけてきた。"ぽい"、と表現したのは、背中に生えている翼の装飾が今の私のリオレウスのような青色だったり、全体的に黒っぽい色合いが目立つからだ。……見た目と違って、中の人はすごく明るい人っぽいけど。

 

「ボク、『ツバサ』って言います!こっちはオトモンのレウスと、相棒のエナとナビルーです!もしかして、トレーナーの人、ですか?」

 

「……えっと、はい。モンスタートレーナーのショウです。本日からよろしくお願いします」

 

「初めまして、トレーナーさん。私は『エナ』。ツバサの相棒……うん、相棒です。よろしくお願いします」

 

「オレはナビルー!よろしくな、トレーナーさん!」

 

「エナさんと、ナビルーさん……よろしくお願いします」

 

「"さん"はいらないぜ。オレのことはナビルーって呼んでくれよ!」

 

エナさんはどこか神秘的というか……冷静だけと冷徹じゃなくて、穏やかな気質も感じさせる女性って感じだ。やっぱり竜人族の年齢を外見で判断するのは無理があったか。ナビルーさん……ナビルーは、気前のいいお調子者って雰囲気が外見からは感じられたが、話をしてみるとそれだけじゃないことが容易に分かる。いい相棒なんだろうな……。

 

「こんにちは、お嬢さん。僕は『ソウヤ・ニシノ』。行商人の真似事なんかをしながら、ライダーさんを支援しているんだ。よろしくね」

 

「……!!」

 

話しかけてきたのは中年の男性。名前はソウヤ・ニシノさん……あれ、シズカさんと名前の雰囲気が似ている?思わず隣にいるシズカさんを見――

 

「…………」

 

「シ、シズカさ――」

 

「話しかけないで」

 

シ、シズカさんが猛烈に殺気立ってる……!?さらによく見ると、剥ぎ取りナイフに伸びて柄まで掴んでいる手を、反対側の手で掴んで強引に抑えている。……ぼ、防具がミシミシ音を立てているんですけど……!?

 

「へぇー、本物は直に見るとやっぱ違うなー……すっげぇ可愛いじゃーん」

 

「…………?」

 

続いて話しかけてきたのは背の高い方。全体的に茶色の配色で、所々に赤い角やトゲのような装飾が目立つ防具だ。

 

「あなたは?」

 

「ウィッス!俺、『ユージ』っつーの。よろしくね、可愛いお嬢さん方。俺のオトモンはコイツ、『モノブロス』ってんだ」

 

「ブオォン」

 

もうひとりのライダーはユージさん。オトモンはモノブロス……うーん、うーん……。

 

「(気のせいかな……?)」

 

「さて、挨拶が済んだところで……おい、ツバサ。とっとと本題に入ろうぜ」

 

「おぉ、ユージさんが珍しく真面目ですね」

 

「騙されるなよツバサ。どーせこいつのことだ、さっさと目的を済ませて女漁りに行きたいだけに決まってるぞ!」

 

「おいこらナビルー!この駄猫!人をナンパ野郎みたいな言い方すんじゃねー!」

 

「そんなこと言って、エナにセクハラしたこと、忘れたとは言わせねーぞ!」

 

「ちがーう!あれは事故だ!クアン村の雪に足を取られて――」

 

「それ、アユリアの時にも同じ言い訳してなかったかしら?」

 

「故意じゃない!事故、断じて事故!ぐあー!誰も信じてくれねー!!」

 

「日頃の行いかと」

 

……なにか、漫才が始まってしまった。ユージさん……信用がないのか、ある意味信用されているというべきか、どうやら性格に難があるようだ。ソウヤさんはそんな三人と一匹のやり取りを、少し離れた場所で見守っている。……そして、シズカさんが殺気立ったまま、ソウヤさんを睨みつけているのも変わらない。変だな……初対面の相手に対して、シズカさんがここまで殺気立つなんてこと、あるのかな……。

 

「……よっこいせ」

 

そうこうしているうちに、ツバサさんが頭防具を外した。顔に傷跡が付いている、好青年って印象の顔だ。ユージさんも続けて防具を外した。こちらは……いかにもなイケメンっぷり。ただ、あの顔ならナンパ野郎なんて言われても納得してしまう。

……うーん、うーん……。

 

「……おっ、どうしたんだいショウちゃん。俺の顔に、なにかついてるか?」

 

「……いえ、別に……」

 

なんだろう……ユージさんを見ていると……こう……

 

 

――腸が煮えくり返る思いが溢れてくる。

 

 

「それで、ショウさん。破滅の翼を持つレウスはどこに……?」

 

「あっ、すみませんエナさん。ここに……」

 

「……あの、それ、ボールでは?」

 

「えぇ、はい。この中にいます」

 

「中に!?」

 

エナさんが驚きを顕にした。まぁそうだよね、普通ボールの中に入るなんてありえないよね。

 

「出てきて、リオレウス!!」

 

「……グ、ウゥ……」

 

私はボールを放り投げ、中からリオレウスを繰り出した。……相変わらず、青くなった翼をたたんで、体を丸めて蹲っている。

 

「これは……」

 

「デ、デケェ……!これ、21mはあるんじゃないか!?」

 

「うーわ、マジで"はめつば"じゃん。しかも金冠サイズとか……」

 

「……この、レウスは……」

 

ライダー二人とエナさん、ナビルーは思い思いの反応を見せている。……確かにツバサさんのオトモンのリオレウスと比較すると、私のリオレウスの方がふた回り以上は大きい。オトモンはなぜ小さいのか……。

 

「……ッ」

 

「……!リオレウス、大丈夫……?」

 

リオレウスがパチリ、と目を開き、すぐに私の方へと顔を向けてくれた。私もすぐにリオレウスに駆け寄り、その頬をそっと撫でた。すると、エナさんも近づいてきて、同じようにリオレウスに触れた。

 

「……この子、すごく弱ってる……。どうしてこんなになるまでほうっておいたの……!」

 

「そ、それは……」

 

「グオオンッ!!」

 

「きゃっ!」

 

エナさんの鋭い指摘に私が言葉を詰まらせると、リオレウスがエナさんを鼻先で小突いてしまった!それから私の方に顔を寄せつつ、エナさんの方を睨みつけている。

 

「エナ!大丈夫か!?」

 

「え、ええ……」

 

「……このリオレウス、怒ってる。多分、エナがショウさんに掛けた言葉に反応したんだ」

 

「あー……エナ殿、あまりショウを責めないでやってくれ。ショウのリオレウスが破滅の翼の姿になったのは、本当につい最近なんだ。具体的には三日前。それで、こちらの大陸には破滅の翼についての情報がまだ届いてないから、どうすればいいのかわからなくて途方に暮れてたんだよ」

 

「それは……」

 

ダイアーさんが、咄嗟に間に入って仲裁してくれた。エナさんは申し訳なさそうに顔を伏せると、すぐに謝罪してくれた。

 

「ごめんなさい、ショウさん、リオレウス。責めるつもりはなかったの……」

 

「いえ、こちらこそもっと事前に早く伝えられていれば……」

 

「クルルル」

 

お互いに謝り合っていると、ツバサさんのリオレウスが喉を鳴らしながら私のリオレウスに近づいてきた。リオレウスは気だるげな様子で頭を上げると、目を細めてツバサのリオレウスを注視している。

ツバサさんのリオレウスは、リオレイアがしていたように頬を寄せてすり合わせると、そっと目を閉じた。私のリオレウスも同じように目を閉じている。……これは……?

 

「レウス……」

 

「……やっぱり同じリオレウス同士、レウスも心配なんだろうな……」

 

「ツバサさんのリオレウスも、翼が青かった時期があったんですよね?」

 

「うん。最初は上手く行かなくて、暴走したりすることもあったけど……けど、ボクはレウスを信じているから。レウスもボクを信じてくれている……ボクは最後まで諦めなかったよ。だから、ボクのピンチにレウスも力に目覚めてくれた。

絆の力は、どんな不可能だって可能にしてくれるのさ。だから、ショウさんもリオレウスを信じてあげて」

 

「ツバサさん……はいっ!」

 

ツバサさんの言葉は、私の胸に強く響いた。絆の力……私とリオレウスの間にも、確かな絆があるはず……今は、絆の力とリオレウス自身を信じるしかない!

 

「グオン、グオン」

 

「……ん、どうしたレウス?」

 

「グウゥ」

 

「ふむ……」

 

「ツバサさん、リオレウスの言葉が分かるんですか?」

 

「ん?あぁ……漠然と、だけどね。でも、ボクのレウスが言いたいことは、なんとなくわかるよ」

 

「なんて言ってるんですか?」

 

「うーん……どうやら自分とショウさんのリオレウスを比べてみて、ショウさんの方のリオレウスがはるかに弱いって言いたいのかも」

 

「えぇ!?」

 

い、いきなり失礼なことを言われたー!?

 

「あぁ、違う違う!?別に馬鹿にしてるとかじゃないよ!ただ……破滅の力を使いこなすには、君のレウスは弱すぎる、と言いたいんだと思う」

 

「そういうことなら、相棒のレウスの言葉は間違いないだろうな!なんせ、破滅の力に関しては一日之長があるからな!」

 

「……確かに、この子の弱り方はレウスとは違う。まるで、大きすぎるものを無理やり押さえ込もうとしているかのような、無理をしている感はあるかも……」

 

「そんなっ……!」

 

リオレウス……まさか、そんな無理をしてまで強くなろうとしたの……!?嬉しいけど、なんだか複雑だよ……。

 

「……で?要するにコイツがザコいせいでつれーんだろ?だったら強くなればよくね?」

 

「それはそうだけど……ユージ、言い方があるだろ!」

 

「へいへい……」

 

ナビルーに叱られて、そっぽを向くユージさん。確かにいい方が悪すぎるし……さっきからこの人を見てるとむかっ腹が立ってくる……本当に何なんだろうか……。

 

「……確かに言い方は悪いけど、ユージの言い分に間違いはない。ショウさんのレウスに必要なことは、破滅の力に耐えうるほどに力をつけること。そのために、もっと戦闘経験を積んで、力の使い方を学ぶ必要があると思うわ」

 

エナさんはユージさんの言い分を認めてはいる。確かに、弱いなら強くなればいい。実にシンプルだけど、ヒスイとは違って野生の個体に片っ端から勝負を仕掛けるわけにもいかないし……。

そうやって悩んでいると、ユージさんがポン、と手を叩いた。

 

「……あ!だったらいいもんあるじゃんよ」

 

「なんだよユージ……適当なこと言ったら、怒るぞ?」

 

「うるせーよ、駄猫!……あのな、ショウちゃん。ギルドは闘技場って建物を管理してるんだが、これを使わせて貰えりゃよくね?って思うわけよ」

 

「闘技場?」

 

「まぁ、文字通りの意味で、だな。ハンターの狩猟を見たがるもの好きや、放置してたらモンスターの巣窟になってたとか、いろんな理由でハンターがモンスターを狩ることがある場所だ。特定の武器種での狩猟時間を競うこともあるな。

リオレウスくらいの大型モンスターが暴れても大丈夫なくらい広い闘技場もあるし、そこを使わせて貰えればショウちゃんはリオレウスを鍛えられる、ギルド側も無闇矢鱈に野生のモンスターを襲われないで済む、一石二鳥じゃん」

 

「なるほど……」

 

そんな場所があるなら、是非とも借り受けたいところだ。

 

「……一理ある。龍歴院も、破滅の力や技巧種について研究したいだろうし、交渉材料にはちょうどいいか」

 

「……ふん、どうだ駄猫。俺だってまともな事を言うだろうが」

 

「普段からそうしろよな、オマエ……」

 

「うぐっ……」

 

嫌味たっぷりにドヤ顔をするユージさんだが、ナビルーには堪えていない様子。それどころか、逆に釘を刺されていた。

シズカさんも肯定してくれたし、本格的に闘技場を借りるよう交渉しておこう。

 

「……グ、グググ……!」

 

「リオレウス……!」

 

リオレウスが立ち上がろうとするも……すぐに力なく倒れ込んでしまった。

 

「無理はしないでね、リオレウス……一緒に強くなろう。だから、焦らなくてもいいよ」

 

「……グオン……」

 

ひとまず、リオレウス強化計画に関しては闘技場を借りる、ということで決まった。後のことは、シズカさんがアカイさんと共にギルドに交渉するらしい。……この二人が揃うと無敵だな、もう二人だけでいいんじゃないかな?

ツバサさんたちライダーはメゼポルタに滞在するらしい。私のリオレウスに合わせてくれているのだ、大変ありがたい。……ユージさんは早速レジェンドラスタの女性陣にちょっかいをかけに行ってレイラさんに瞬殺されていた。ザマァ……はっ!私は何を……?

 

あとは滅龍石の到着を待つだけ……そんな時だった。

 

「ニャ」

 

「え?」

 

私が一人でいるタイミングで、黒い毛並みのアイルーが近づいてきた。……いや、コイツ、メラルーか。メラルーは私に近づくと一枚の手紙を差し出してきた。それから丁寧に一礼すると、どこかへ走り去っていった。

 

「……?」

 

私は手紙を開いて、中身を見る。手紙の内容は……。

 

「……『メゼポルタ南部にて待つ。 クロノ』……果たし状、ってやつか」

 

クロノ……前回は、ポケモンを狂竜化させるだけでなく、私の知らないポケモンを多用してきたり自ら参戦してきたりと、ルール無用もいいところな戦い方をしてきたけど、はたして……。

手紙には特に何も書かれていなかったけど、ここは一人で向かったほうがいいだろうな……隠してもしょうがないだろうから、アカイさんとシロちゃんにだけは伝えておこう。

私は誰にも気づかれないようにこっそりと準備をすると、さっそくメゼポルタの南部へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メゼポルタの南側から出発して、ジンオウガの背に揺られることしばらく……待ち人はそこにいた。

 

「クロノ!」

 

「……来たか」

 

クロノはそこにいた。……ただ、なんだか以前会った時よりも雰囲気が変わった?なんだか気落ちしているというか、少しナイーブになっているというか……簡潔に言うと、「落ち込んでいる」ようだった。

 

「約束通り、来たよ」

 

「…………」

 

「……クロノ?」

 

本当にどうしたんだろうか……クロノはなにやら考え込むように黙り込んでいる。先程まで唸り声を上げていたジンオウガも、流石に違和感を覚えたのか首をかしげていた。

 

「……ショウ、お前はなぜ強くなろうとする」

 

「え……?」

 

ど、どうした急に……?

 

「お前が強くなろうとするのはなぜだ?生きるためか、勝つためか、負けないためか、そもそも強くなることが目的か?」

 

「……全部、だよ。ミラボレアスの呪いに抗い生きるために、そのためにもこれからの戦いに勝つために。だから、私は強くなる。……まあ、最近はもう一つ強くなる理由もできたけどね(リオレウスの破滅の力のためにも……)」

 

「……そうか。俺様が強くなる理由は一つ……負けないためだ」

 

「"負けないため"……」

 

「俺様はミラボレアス……の、代弁者。ミラボレアスの名代たる俺様の敗北は、ミラボレアスという存在に泥を塗る行為そのもの……そのような結果は認められない。だから、俺様はありとあらゆる方法を……外法・外道とも言えるような手段だって選びながら強くなろうとした。

……だが、誰も彼もが口を揃えてこう言う……"それは間違っている"と。……なぜだっ!!」

 

ダンッ!!とクロノが力強く地面を踏みしめた。その体は怒りからかワナワナと震えている。

 

「真っ当な手段で誰よりも強くなれるというのなら、とっくのとうにそうしている!!それではどうやっても、どうあがいても届かないから!だから俺様は俺様なりに考えてあらゆる手段を模索した!強くなるために、勝つために、負けないために!

……それが誤りだ嘯く輩は、きっと恥も敗北も知らぬのだ。成功ばかりを収めてきた果報者の言葉など、失敗と敗北を重ねてきた者には凶器にしかならん!!そうやって無意識に他者を見下して楽しいか!?満足か!?きさまら勝者の善意という奴が、敗者を傷つけているのだとなぜ気付かん!?

……ふぅ。チッ、頭に血が上ったか……。ショウ、お前は所謂、勝ち組というやつなのだろう。では、お前に敗れていった者たちの気持ちがお前に分かるか?」

 

「それは……」

 

……クロノの言葉は、完全に理解できないというわけじゃない。だけど……!

 

「……言いたいことはわかるけど、だからといってそれは道を踏み外していい理由にはならない!確かに、人によっては勝ち続けることができる人もいれば、負け続ける人もいる……でも、どんな人だって勝利するための努力を続けているんだ!

同じやり方で強くなるからこそ戦う者同士は対等になり、勝負を通してお互いをよく理解していく!その結果として勝者と敗者が存在するのは事実だけど、勝ち負けに囚われるほど心が弱い人はクロノが言うほど多くはない!」

 

「……ふんっ!そのセリフ、母親の前でも同じ事が言えるのか?」

 

「……え?」

 

ど、どうしてお母さんが……?

 

「俺様から見ても、お前の母親は随分と勝利に執着していたようだが?ポケモンの能力や性格、あらゆる数値を厳選し強いポケモンを求めていた。赤子のお前を抱いての散歩のついでに、孵化厳選作業もやっていたようだしな!」

 

「……!!」

 

確かにお母さんは私を抱っこして歩くついでに、ポケモンのタマゴをいくつも持ち歩いていたけど……あれって、そういうことだったの……!?

 

「俺様はむしろ感心したぜ。お前の母親は、勝敗を意識する真っ当な人間だとな。……そうだろう?現にお前の母親はお前の父親に一度敗北したきり、ただの一度も負けていないのだから。

あの強さ……死んだ従弟(・・・・・)でも目指していたのか?存外に未練がましい女だ……」

 

「従弟……?」

 

「グルルルルルルッ!!」

 

従弟って……お母さんに親戚兄弟はいなかったはずだけど……?と、ここでジンオウガが激しく怒りを顕にしている。こっちもこっちでどうした急に……!?

 

「あの強さ……俺様も、あれくらいの強さが欲しかった、だから目指した。そのための狂竜化だ。……なのに……」

 

「クロノ……」

 

「……もういい、さっさと勝負をしよう。今度こそ、お前に勝利してその息の根を止めてやる……!」

 

「来るか……!!」

 

私とクロノは、ほぼ同時にボールを構えた。そして、同時に繰り出す……!

 

「ライチュウ!」

 

「ラアアァァァァイッ!!」

 

「デンリュウ」

 

「リュー!」

 

私はライチュウを繰り出し、クロノはデンリュウを繰り出した。……あれ?

 

「そのデンリュウは……」

 

「あ?……あぁ、別に狂竜化させてねーよ。普通の個体だ」

 

「前はあんな手を使ってきておいて、一体どういつもり?」

 

「別に。……ただ、狂竜化個体なんて使ってちゃ、こんな俺様を"弱くない"って言ってくれたチャンピオン(女優さん)に顔向けできねーからな」

 

「女優……?」

 

さっきからいったい誰のことを言ってるんだ……けど、これはいい傾向では?

あのクロノが、真っ向勝負を挑んできているのだ。小細工抜きの真剣勝負……ある意味、手強い敵になってしまったかもしれないな。

 

「さて……やるか、デンリュウ」

 

「リュ」

 

クロノは手を組むとそれを顔の前まで持ってきた。まるで祈るような状態になると、クロノの心臓部から黒と紫の光の線が伸びてきて、デンリュウと結びついた!

 

夜中(やちゅう)()らす、残光(ざんこう)(ひと)

 

(みち)(しめ)(みちび)きの()

 

(やみ)()()一筋(ひとすじ)光明(こうみょう)

 

目覚(めざ)めよ、竜魂(りゅうこん)(ねむ)りし(りゅう)()

 

光竜(こうりゅう) (われ)此処(ここ)()

 

デンリュウ……メガシンカ!!」

 

「リューッ!!」

 

デンリュウが光に包まれて……メガデンリュウにメガシンカした!!

 

 

――導きの灯 光竜 メガデンリュウ――

 

 

「さぁ……ポケモンバトルを、始めよう」

 

「……望むところだ!」

 

勝負だ、クロノ……!!

 

 

 

 

――ショウ 余命11

 

 

 

 




黒龍、カロス巡りより帰還直前のこと――

「…………」

――大丈夫。貴方は、貴方自身が思うほど弱くはないわ――

――だって、こんなにも強くなりたがっているでしょう?――

――その想いは決して、間違いなんかじゃないわ――

「……あー、クソッ。俺様としたことが……」

「……やってやろうじゃねーか……見てろよ、チャンピオン!」





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真剣勝負!特殊個体 VS メガシンカ!!

クロノとの第二戦!勝敗の行方は……


クロノから手紙で呼び出された私は、なにやら以前よりも成長したように思えるクロノとポケモンバトルをすることとなった。極み個体とメガシンカ……どちらもポケモンが持つ特殊な姿と力……果たしてどちらが上か、ここで決まる!

 

 

 

 

推奨BGM

【Expurgation】~Friday Night Funkin' Vs. Tricky 2.0~

【Last Reel New】~Friday Night Funkin' IndieCross~

 

 

 

 

「真っ向から捻り潰す!!」

 

「そう簡単にやられるもんか!!ライチュウ!でんこうせっか!!」

 

「ラアアィ!!」

 

「りゅうのはどうだ!」

 

「デンリュー!!」

 

メガデンリュウは大きく口を開くとりゅうのはどうを放ってきた!対するライチュウはでんこうせっかで光速で移動し、りゅうのはどうを回避してメガデンリュウに真っ向からぶち当たった!

 

「よしっ!」

 

「逃がすなデンリュウ!捕まえろ!!」

 

「リュッ!」

 

「ライ!?」

 

だが、メガデンリュウはすぐに持ち直すとその両腕でライチュウを捕まえてしまった!一体何を……!

 

「よしっ!シグナルビーム!!」

 

「しまった!?」

 

「リュー!」

 

「ラララララっ!?」

 

マズイ、シグナルビームはこんらん状態にする効果を持つむしタイプ技!これを狙っていたのか!!メガデンリュウに捕まって逃げられないライチュウは、ゼロ距離でシグナルビームを浴びせられてしまった!

 

「きあいだまだ!!」

 

「リュリュー!」

 

「ライィッ……!」

 

「ライチュウ!」

 

メガデンリュウはライチュウを放り投げると、そのままきあいだまを直撃させてきた!吹っ飛んできたライチュウ……かろうじて立ち上がるが、足取りはおぼつかずフラフラしている……まさか!?

 

「ハッ!こんらんしたみたいだなぁ!!」

 

「くっ……戻って、ライチュウ!」

 

「こちらも交代だ、デンリュウ!」

 

こんらん状態で自傷ダメージが入るのは避けたい!私とクロノは同時にポケモン入れ替えをする!

 

「「ガブリアス!/チルタリス!」」

 

「ガッブアァ!」

 

「チルル~」

 

私はガブリアスを繰り出し……クロノは、チルタリス……?珍しい、もっとゴツイポケモンを使うかと思ったのに……。

 

「フッ……メガシンカできるポケモンが一体だけだと、誰が言った?」

 

「まさか!?」

 

「チルタリス、行くぞ!」

 

「チルルー!」

 

クロノは再び両手を顔の前で組み、光の線をチルタリスと結びつけた!!

 

(うた)えや(うた)え。(かな)でるは聖歌(せいか)

 

(かぜ)(なが)るる(くも)羽翼(うよく)

 

()()くままに揺蕩(たゆた)うであろう

 

蒼天(そうてん)()み、白雲(はくうん)(およ)

 

(てん)()け、()(みみ)(かたむ)けよ

 

(とどろ)(ひび)くは自由(じゆう)への賛美歌(さんびか)

 

チルタリス、メガシンカ!!」

 

「チッルル~!!」

 

チルタリスも光に包まれて……メガシンカした!すっごいふわふわ!触ってみたい!!

 

「チ~ルル~♪」

 

 

――妖歌絶唱 唱竜 メガチルタリス――

 

 

「どんなポケモンだろうと、私のガブリアスが蹂躙する!ドラゴンクロー!!」

 

「ガブアアアァッ!!」

 

ガブリアスのドラゴンクローが、メガチルタリスに直撃……いや、待って、これは!?

 

「効いてない!?」

 

「ガバァ!?」

 

「ハイパーボイスだ!!」

 

「チー……ルーーーーーーッ!!」

 

「ガブアアアァッ!?」

 

「ガ、ガブリアス!?」

 

何が起きている……!?ドラゴンタイプのチルタリスにドラゴン技が効かず、さらにノーマル技のハイパーボイスで大ダメージを受けた……!?

 

「クックック……聞いて驚け!メガシンカしたメガチルタリスのタイプは……なんと、ドラゴン・フェアリーの複合タイプ!さらに特性が『フェアリースキン』に変化したことで、ノーマル技をフェアリー技として繰り出せるのだ!!」

 

「な、なんだってー!?」

 

「ドラゴンスレイヤー・ドラゴン……それこそが、メガチルタリスの本領だ!!」

 

マズイ……!それが本当なら、ガブリアスを繰り出したのは迂闊だった!だが、こちらだってただでは転ばない!

 

「ガブリアス、龍風圧展開!!」

 

「ガッバアアアアッ!!」

 

ガブリアスの周囲を、黒い風が包み込む……これで遠距離からの攻撃の威力は減衰し、近距離攻撃を仕掛けてくる相手を確率は低いが怯ませられる!

 

「ちっ、龍風圧で遠距離対策か……考えたな」

 

「悪いけど、一方的にやられるつもりはないからね」

 

「ぬかせ……チルタリス、れいとうビーム!」

 

「チルー!」

 

「龍風圧を纏いつつアイアンヘッド!!」

 

「ガッブウゥ!!」

 

チルタリスから放たれたれいとうビームは、本来ならドラゴン・じめんのガブリアスには4倍のダメージが入る……だが、私のガブリアスは例外だ!

龍風圧がれいとうビームを散らし、散らしきれず抜けた分はタイプ相性で有利なアイアンヘッドで受け止め逸らす!そうして猛烈な勢いでガブリアスは一気にメガチルタリスと距離を詰めていく!!

 

「ちっ!それならねっぷうだ!」

 

「チールルルー!」

 

「ガブ……!」

 

「くっ……!」

 

あと少しで届く……というところで、ねっぷうによる風圧攻撃が襲ってきた。少しばかり足を止められたが、ガブリアスもすぐに龍風圧をぶつけてこれを相殺し、再び突撃!

 

「ガッブアァ!!」

 

「チルゥッ……!」

 

よしっ!フェアリータイプを持つ今のメガチルタリスになら、はがね技は効果抜群!かなり効いたぞ!!

 

「ちぃっ!それなら……接近戦だ!戻れチルタリス!出てこいっ、ジュカイン!!」

 

「ジュカイイィンッ!!」

 

クロノ、早くも三体目に交代……出てきたのは、くさタイプのジュカイン!

 

「お前の力、見せてやれ!ジュカイン!!」

 

「カィン!」

 

密林(みつりん)(かげ)()まず

 

疾風(しっぷう)すら()()彼奴(きゃつ)()

 

縄張(なわば)()らす不埒者(ふらちもの)

 

手向(てむ)かい(いた)さば、慈悲(じひ)はない

 

一度(ひとたび)()かれた新緑(しんりょく)太刀(たち)

 

咎人(とがびと)()()れ、紅葉(こうよう)()まるだろう

 

ジュカイン、メガシンカ!!」

 

三体目のメガシンカ……!

 

「ジュカイイイィンッ!!」

 

 

――密林に忍ぶ絶影 翠竜 メガジュカイン――

 

 

「リーフブレード!」

 

「ジュカイィ!」

 

「どくづき!」

 

「ガブアァ!!」

 

メガジュカインとガブリアスの技が激しくぶつかり合う!ガブリアスは力強い一撃でメガジュカインを追い詰めるが、メガジュカインは軽快な足取りと巧みな身のこなしでガブリアスの一撃を避け、反撃のリーフブレードを叩きつけてくる!ガブリアスもどくづきで受け止めたり龍風圧でリーフブレードを阻み、徹底的に直撃を防いでいる!

 

「ジュカィ!」

 

「ガブッ!」

 

両者はお互いに弾かれ合い、大きく距離をとった。

 

「埒が明かん……!えぇい、ジュカイン!!ハードプラントォ!!」

 

「グオオォォ……カイィン!!」

 

「なっ!躱して!!」

 

「ガブアッ!!」

 

ハードプラント!?くさタイプ最強と謳われる技で、トレーナーと強い絆を結んだ御三家ポケモンだけが使えるって、お母さんが話してた技!?

メガジュカインは拳を打ち合わせると、そのまま勢いよく地面に叩きつけた!それによって、大量且つ巨大な樹木が次々と現れ、その太い幹をガブリアスにぶつけんと襲いかかってきた!

私の指示を受け、ガブリアスは両翼に龍風圧の推進を得て空を舞う。迫り来る樹木の群れを次々と回避していくが、メガジュカインになかなか近づけない!どうする……奥義を使うか?……いや、まだ時期尚早だ……なんせ、クロノの手持ちにはフェアリータイプのメガチルタリスがいる……奥義を読まれて交代されたら最悪だ。

 

「……ガバ!?」

 

その時だ!ハードプラントの一撃が、わずかにガブリアスの足を掠めた!

 

「今だ!攻め立てろ!!」

 

「ジュカイ!」

 

「ガブッ……!!」

 

「ガブリアス!」

 

ガブリアスが掠めた一撃に気を取られた隙を突き、樹木の攻撃が一斉にガブリアスに襲いかかった!ガブリアスは攻撃自体は龍風圧で防いだが、あまりに苛烈な攻めに徐々に高度を下げ、ついには地上に着地した。……!あれは!!

 

「ガブァ!?」

 

「へっ、捕まえたぜぇ!!」

 

「ジュカイィン!!」

 

ガブリアスが着地すると同時に、ハードプラントの樹木がガブリアスの足に絡みつき、動きを封じてしまった!眼前に迫る大量の樹木……くそっ!

 

「……っ!ガブリアス!龍風圧、最大出力!!」

 

「……!ガッブアアアァアァッ!!」

 

ガブリアスが咆哮を上げると、黒い暴風があたりに吹き荒れ、迫る樹木をすべて吹き飛ばした。だが、そのために一瞬だがガブリアスの周囲から龍風圧が消滅する……敵が狙うとしたら、ここだ!

 

「今だ、ドラゴンクロー!!」

 

「ジュカイィ!!」

 

「こちらもドラゴンクロー!」

 

「ガブアァ!!」

 

突っ込んできたメガジュカインにガブリアスがドラゴンクローを放つ……が、この一撃は体勢を低くしたメガジュカインに躱され、逆にドラゴンクローの一撃をもらってしまった!だが、ただでやられるガブリアスじゃない!すぐに態勢を整えると反撃の一撃を見舞い、メガジュカインを押し戻した!

 

「……痛みわけだ」

 

「「戻れ!」」

 

またも同時にポケモンを交代する。次に出すべきは……。

 

「「ミミロップ!/デンリュウ!」」

 

「ミィー!」

 

「リュー!」

 

私はミミロップを繰り出し、クロノはメガデンリュウを再び繰り出してきた。

 

「はどうだん!」

 

「ミィ!ミィー!」

 

「でんじほうだ!」

 

「デン!リュー!」

 

お互いの一手目ははどうだんとでんじほう。力は互角……なら、あの戦術を狙ってみるか!そのためにも、まずは誘い出す!

 

「みずのはどう!」

 

「ミミミ!」

 

「シグナルビームで撃ち落せ!」

 

「リュリュー!」

 

ミミロップは高く飛び上がると、両手にみずのはどうを構え、次々と連続で打ち出した。メガデンリュウも負けじとシグナルビームで、迫り来るみずのはどうの弾幕を撃ち落としていく。

 

「まだまだ!あくのはどう!!」

 

「ミミロォ!」

 

「ちっ……きあいだまだ!!」

 

「リューゥ!!」

 

今度は地を這うようにあくのはどうを放つ!対するメガデンリュウはきあいだまを地面に叩きつけるように放った。きあいだまは地面を抉りながらあくのはどうを吹き飛ばし、ミミロップに迫り来る!

 

「躱して!」

 

「ミミ!」

 

ミミロップは跳躍し、きあいだまを躱す……そろそろくるか?

 

「隙だらけだぞ!りゅうのはどう!!」

 

「デンリュー!!」

 

デンリュウは大口を開けてりゅうのはどうを放ってきた……。

 

「この瞬間を!待っていたんだ!!」

 

「なにっ!?」

 

「ミミロップ……波導最大!受け止めろぉ!!」

 

「ミミミミミミ……ミミロォー!!」

 

ミミロップは波導を最大まで高めると、メガデンリュウのりゅうのはどうを受け止めた!

 

「コホンッ。……そのりゅうのはどう、もらうよ」

 

「なっ……!?」

 

「ミミロップ、りゅうのはどう!!」

 

「ミッミィ……ロォー!!」

 

紅蓮の湿地で、シロちゃんとのバトルでも見せた『波導返し』!!ミミロップとメガデンリュウの二つのりゅうのはどうが合わさり、強力で巨大なりゅうのはどうとなってお返しだ!!

 

「デ、デンリュウ!でんじほう!!」

 

「デンリュウゥー!!」

 

デンリュウはでんじほうを放ち対抗するが……拮抗は一瞬!りゅうのはどうがそのまま押し切り、メガデンリュウを飲み込み爆発を起こした!

 

「……リュ……リュ~……」

 

「デンリュウ……クソッ!」

 

「デンリュウ、戦闘不能ね」

 

煙が晴れると……目を回して倒れるメガデンリュウの姿が!さらにメガシンカも解除された……これは戦闘不能確定だ!

 

「ちっ、先手は奪われたか……だが、勝負はまだ始まったばかりだ!」

 

「えぇ、望むところよ!」

 

「いけっ、リザードン!!」

 

「グオオオオッ!!」

 

リザードン……!確かにあの姿、リオレウスに腕が生えたと言ってもいいポケモンだ。ということは、あのリザードンも……!

 

「さあ……竜の力、見せる時だ!」

 

「グオン!」

 

(もゆ)灼熱(しゃくねつ)天上(てんじょう)()

 

(つよ)(もの)よ。(われ)(おそ)れよ

 

数多(あまた)姿(すがた)に、(おそ)(ふる)えよ

 

黒翼(こくよく)(たずさ)えし蒼炎(そうえん)

 

(われ)炎竜(えんりゅう)激昂(げきこう)()るがいい

 

リザードン、メガシンカ!!」

 

「グオオオオオンッ!!」

 

体と翼が黒く、炎が青くなったメガリザードン……!今までの傾向からして、おそらくはこのメガシンカもドラゴンタイプ……!!

 

 

――ブレイジングダークネス 炎竜 メガリザードンX――

 

 

「弱点を突く!りゅうのはどう!」

 

「ミミローッ!!」

 

「フレアドライブ!!」

 

「グオオオオオアッ!!」

 

炎を纏ったメガリザードンが突っ込んでくる!メガリザードンはミミロップのりゅうのはどうを押し切り、そのまま攻撃をぶち当ててきた!!

 

「ミィーッ!!」

 

「ミミロップ!!」

 

吹き飛ばされたミミロップはそのまま仰向けに倒れ……戦闘不能になってしまった……。

 

「取られたら、取り返す。当たり前だよなぁ?」

 

「グオオン!」

 

「……戻って、ミミロップ」

 

ミミロップをボールに戻し、考える。やはり、巨大ポケモンを用いないポケモンバトルにおいて、手持ちの数が不足しているのは痛すぎる……ジンオウガたちを除くと、私の手持ちは実質四体しかいない。

 

「さぁ、悩め悩め。時間をかければかけるほど、お前の時間が迫って来るぞ?」

 

「くっ……!」

 

どうする……!ライチュウは覚える技がタイプ相性で不利……メガリザードンはドラゴンタイプだろうけど、十中八九複合タイプだろう。もう一つのタイプがなんなのか……それによっては、ガブリアスとダイケンキのどちらかを選ばなければならない。

あまり時間はかけられな――ん?

 

「はっはっは!どうした?思考停止に陥っt――なんだと!?」

 

ふと、空に違和感を覚えて見上げれば……小規模だけれど、時空の裂け目が開いている!?いったいどうして!

 

「馬鹿な、この感じ……祖龍じゃない!?誰だ!誰が時空の裂け目を開いているのだ!!」

 

祖龍……ミラルーツじゃ、ない?誰か別の人物が、時空の裂け目を開いている……?クロノが動揺し、私が思考に没頭していると、突然時空の裂け目から巨大な火柱が放たれた!!

 

「きゃあっ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

あまりの熱量に、直視することすらできない!かろうじて目を凝らしてみると、火柱の中を何者かがゆっくりと降りてきていた。腕を組み、肩幅に足を広げ、仁王立ちの姿勢のまま降りてきた、その影は……どこか、見覚えがあるような……!

 

「あ、あなたは……!!」

 

「(ニヤッ)」

 

影は組んでいた腕を解き、顔の前で両腕を交差させる。そして、周囲の炎を振り払うように思い切り腕を引いた!

 

 

 

 

「ゴウカアアアァァァァァァッ!!」

 

 

 

 

「ゴウカザル!!」

 

「なああにぃぃっ!?」

 

姿を現したのは……オドガロン亜種との戦いから長らく手持ちから離れていた、ゴウカザル!?ただ、その姿は余りにも変化していた。

 

まず、全体的に白かった体毛が顔周りを除いて鮮やかな橙色に変化しており、頭の炎が白と青の二色になっている。また、頭には炎で作られたであろう赤く揺らめく鉢巻が巻かれており、手の甲や肩、膝の装飾からは赤い炎が漏れ出ている。

顔の周辺はもみあげが長くなっているほか、ほんの少しだが顎鬚が生えている。まるで青年から壮年へと成長したかのような雰囲気だ。

 

「ゴウカッ」

 

「……え、うわっ」

 

と、ここでゴウカザルが後ろ手に何かを放り投げてきた。手にとったそれはモンスターボールで、よく見ると手紙が付属されている。すぐに手紙を広げて中を見ると、走り書きではあったがこう書かれていた。

 

『ショウくんへ

あなたのポケモンが、新たな力をつけて成長しましたよ!これにはボクも驚きです!今回開いた時空の裂け目にゴウカザルが入ろうとした時は焦りましたが、なんとかゴウカザルのボールとこの手紙を持たせられました!いや、けっこうギリギリでした。

今、あなたの目の前にいるゴウカザルは、過去に記録のない新しい姿……これは、所謂【二つ名】個体というものではないでしょうか……そこで!僭越ながらこのボクが名付けをさせていただきました!

新たな姿を得たゴウカザル……その二つ名は【炎神(えんじん)】!【炎神(えんじん)ゴウカザル】なのです!

ps.実は"猿人"とかけてみたのですが、いかがでしょうか? ラベンより』

 

「ラベン博士……!」

 

これだけの内容を走り書きってすごい……って、そうじゃなかった!

 

「ルカリオとの特訓が実ったんだ……おかえり!ゴウカザル!!」

 

「ウッキャア♪」

 

ニカッ!と歯を見せて満面の笑みを浮かべるゴウカザル……あぁ、これだ。ようきな性格の彼の笑い方、もうずっと長いこと見てなかったなぁ……。

 

「……そのゴウカザル、お前のか」

 

「え?……えぇ、私のポケモンよ」

 

「そうか。……よし、かかってこいよ」

 

「え……いいの?」

 

意外だ……クロノのことだから、「途中参戦とか卑怯だ!」とか難癖つけてくると思ったのに……。

 

「いいもなにもあるか。……全部ぶっ潰せば、何体増えようが関係ないからな」

 

そう言って、クロノはニヤリと口角を釣り上げた……こ、こいつぅ……!

 

「……言ってくれるじゃん!やるよ、ゴウカザル!あなたの力、私に見せて!!」

 

「ゴウカアァッ!!」

 

「全部倒してやらぁ!リザードン!!」

 

「グオオオ!!」

 

 

 

 

推奨BGM

【VIOLENT BATTLE】~スーパーロボット大戦シリーズ~

 

 

 

 

まずはこの技から!

 

「先手必勝!マッハパンチ!」

 

「ウッキャア!」

 

「かみなりパンチだ!」

 

「グオオンッ!!」

 

ゴウカザルの拳とリザードンの拳がぶつかり合う……僅かにだが、ゴウカザルの方が押している!

 

「ほのおのパンチ!」

 

「ゴウカッ!」

 

「バカが!ほのお・ドラゴンのメガリザードンにそんな技が効くものか!」

 

へぇ、ほのお複合か……リオレウスと同じなんだね。たしかに、普通のほのお技なら相性は最悪……でも、私のゴウカザルなら!

 

「効果がないなら!急所をぶち抜く!!」

 

「ゴウカアアァッ!!」

 

「グオオッ!?」

 

「ばかなっ!?」

 

私の成長したゴウカザルは与えた技が半減以下で受けられた時、確定で急所に入る!タイプ相性だってひっくり返してやる!!

ほのおのパンチを受けたメガリザードンは地面を削りながらもなんとか踏みとどまった。……ここだ!

 

「ゴウカザル!あなたの新しい力を見せて!かかとおとし!!」

 

「ゴウッ!カアアァ!!」

 

「グオッ!?」

 

「リザードン!」

 

ゴウカザルはメガリザードンと距離を詰めると、サマーソルトキックで牽制を仕掛けた。案の定引っかかったメガリザードンは大きく仰け反り回避した……だが、その隙が命取り!一回転したゴウカザルは着地後すぐさま前方宙返りでかかとおとしを繰り出した!仰け反ったメガリザードンはそれ以上逃げられず、かかとおとしが直撃した。

 

「グオ……グオ……」

 

「なっ……どうした、リザードン!?」

 

メガリザードンがフラフラとしている……こんらん状態だ!今ならチャンス!

 

「もう一度、ほのおのパンチ!!」

 

「ウッキャアアアァッ!!」

 

「グオオァッ!!」

 

「なぁっ……リザードン……!!」

 

ゴウカザルのほのおのパンチを受けたメガリザードンは倒れ、メガシンカが解除された!戦闘不能だ!

 

「ウキャッ!キャッ!ヒュ~♪」

 

拳を振るい、締めに口笛まで披露するゴウカザル……本当に、本当に強くなったね……!

 

「そうは問屋が卸さんか……戻れ、リザードン。出てこいっ、ボーマンダ!」

 

「ボマァッ!」

 

「ボーマンダか……!」

 

やはりメガチルタリスは出してこない……私のガブリアスに対する牽制のつもりだな。

 

(ゆめ)(まぼろし)

 

蒼天(そうてん)(まう)真紅(しんく)(つばさ)

 

(ゆが)(ひず)(くる)える烈竜(れつりゅう)

 

(そら)()き、(てん)()る、その姿(すがた)

 

夜天(やてん)()らすは()(つばさ)

 

血濡(ちぬ)三日月(みかづき)月光(げっこう)のみ

 

ボーマンダ、メガシンカ!!」

 

「ボオォオマアアアッ!!」

 

ボーマンダもメガボーマンダにメガシンカした……!

 

 

――血濡れ三日月 烈竜 メガボーマンダ――

 

 

「すてみタックル!」

 

「ボオォマアアァッ!!」

 

……?ひこう技じゃなくてノーマル技?なぜ……いや、待って、この流れは!

 

「ゴウカザル、躱して!」

 

「ウキャッ!」

 

ゴウカザルは私の咄嗟の指示にも反応し、素早く身を翻した。その様子に、クロノは舌打ちを打っていた。

 

「ちっ、流石に同じ手は食わないか」

 

「やはり、特性……!」

 

「そうだ。メガボーマンダはメガチルタリス同様、特性によってノーマル技を特定タイプの技として繰り出せるタイプスキンの特性!メガボーマンダの特性は、スカイスキン!」

 

「スカイ……つまり、ひこうタイプか!」

 

ノーマル技を別タイプに変換して放つ特性か……厄介だな。

 

「それに……見たところ、お前の手持ちで飛行能力を持っているのはガブリアスのみ!地を這うだけのエテ公に、俺の飛竜が倒せるかな?」

 

「さぁて……誰が飛べないなんて言ったかしら?」

 

「は……?」

 

「ゴウカザル!ほのおのパンチ!!」

 

「ゴウカッ!!」

 

ゴウカザルはほのおのパンチを発動すると、その炎をさらに大きく、拳へと集中していく!さらに炎が大きくなった……今だ!

 

「よぉし、溜めた炎を撃ち出せ!」

 

「ゴウッ!ゴウカァッ!!」

 

ゴウカザルが拳を突き出すと、そこから炎が螺旋を描きながらかえんほうしゃのように発射された!

 

「ちょ、ちょっとタンマァ!!そんなのありかよぉ!?」

 

「できちゃうんだからしょうがない!」

 

「えぇい、躱せボーマンダ!」

 

「ボッ!」

 

メガボーマンダは巧みな飛行能力でゴウカザルの炎を躱していく。よしっ、それなら!

 

「飛べぇ!」

 

「ゴウカアアアァッ!!」

 

炎の射出の応用!地面に拳を向けたゴウカザルは炎を射出し、そのまま空中へと躍り出た!!

 

「なんでもありかよ!?」

 

「かかとおとしっ!!」

 

「ゴウカアァッ!!」

 

「ボマッ!?」

 

かかとおとしは見事にメガボーマンダに命中!メガボーマンダは墜落したが、立ち上がれるところを見るに余裕綽々、といったところか。

 

「えぇい、やられっぱなしで終われるか!ドラゴンダイブ!!」

 

「ボオォォ……!ボマアァッ!!」

 

「フレアドライブ!」

 

「ウキャッ!ゴウ……カアアァァァッ!!」

 

炎を纏ったゴウカザルは、まるで太陽のような輝きを放ちながらメガボーマンダのドラゴンダイブとぶつかりあった!その直後に爆発が起こり、ゴウカザルは煙の中から飛び出してきた。

 

「逃がすなっ、アクアテール!」

 

「ボオゥッ!ボマァッ!!」

 

「ウギッ……!」

 

「ゴウカザル!」

 

だが、メガボーマンダは煙の中を突っ切ってきた!そのままの勢いでアクアテールをぶつけるが、ゴウカザルは両腕をクロスさせて防御態勢に入り、直撃は免れた。

 

「大丈夫?ゴウカザル!」

 

「ウッキャアァ!」

 

こちらまで押し戻されたけれど、ゴウカザルもまだまだ余裕だ。手足をプラプラさせたり、首の関節をゴキゴキと鳴らしている。……いや、凄い余裕だね?

 

「へっ……そうこなくっちゃあ、面白くない!」

 

「ようやくポケモンバトルの醍醐味がわかってきたって感じかな?」

 

「……!ふ、ふんっ……誠に遺憾だが、そんなところだ」

 

「(頬が緩んでる……素直じゃないなぁ)」

 

やっぱりクロノってどこか年相応というか、見た目相応の反応を見せてくる。シロちゃんみたいに大人びているとか、アカイさんみたいにミステリアスとか、そんな雰囲気は全然ない。だからだろうか……意外と接しやすいんだよね。

 

「えぇいっ、そんな余裕も今のうちだ!ボーマンダ、かえんほうしゃ!」

 

「ボオォォ、マアアァッ!!」

 

「グッ……」

 

迫り来る炎にゴウカザルが一瞬だけ顔を守った……その直後だ!

 

「今だ!すてみタックル!!」

 

「ボオォマアアァッ!!」

 

メガボーマンダが、一気に距離を詰めてくる!でも、大丈夫。私のゴウカザルなら!

 

「躱せ!!」

 

「この状況で躱せるものか!!」

 

「ウキャ!」

 

メガボーマンダはまっすぐにゴウカザルへ迫って来る。それをゴウカザルは……立ちブリッジで回避した!10点!

 

「ええええええええっ!?」

 

「ボマッ!?」

 

「ゴウカザル!フレアドライブ!!」

 

「ウキャッ!!」

 

さらにそこから足を蹴り上げて後ろ回転で立ち上がると一気に跳躍!上昇し反転しようとしてたメガボーマンダの背中をフレアドライブで強襲する!!

 

「ゴウカアアアアァァッ!!」

 

「ボマーッ!?」

 

「ボーマンダ!?」

 

ゴウカザルのフレアドライブが直撃し、メガボーマンダは墜落!メガシンカも解除された!!

 

「うぐっ……戦闘不能か……!よくやったな、ボーマンダ……」

 

「ありがとう、ゴウカザル。一旦休んでて」

 

「ウキャ」

 

やった!ゴウカザル、復活祝いに景気よく二連勝!

これでクロノの手持ちはメガチルタリス、メガジュカインとあと一匹を残すのみ!

 

「行けっ、ジュカイン!」

 

「ジュカアイィン!!」

 

メガジュカインか……よしっ、ここは……。

 

「ライチュウ!」

 

「ラララライッ!!」

 

メガジュカインはガブリアスとの戦闘でダメージも受けている……一気に決める!

 

「でんこうせっか!!」

 

「ラアアアアイッ!!」

 

「迎撃だ!つばめがえし!!」

 

「ジュカイィ!」

 

ライチュウはでんこうせっかでメガジュカインに迫り、そのまま飛びかかった。メガジュカインは拳を突き出しライチュウを迎撃しようと動くが、ライチュウはそれを察知して体をひねり、メガジュカインの拳を避けた。

だが、メガジュカインは体を強引にねじって回転させると、しっぽを無理やりぶつけてライチュウの体勢を崩してきた!バランスを崩したライチュウは上手く着地できず、地面に倒れ込んだ!

 

「ドラゴンクロー!」

 

「躱してライチュウ!」

 

「ジュカイ!」

 

「ラアァイ!!」

 

ライチュウは伏せた姿勢のまま、四肢を使って飛び上がりドラゴンクローを回避した!

 

「アイアンテール!」

 

「チュウウゥゥゥッ!!」

 

「リーフブレード!!」

 

「ジュカアァイ!」

 

空中で体勢を整え、一気にしっぽを振り下ろす!ただ、メガジュカインもリーフブレードで応戦し、ライチュウを押し返した!

 

「10まんボルト!」

 

「ラアアアァァァァイッ!!」

 

相手がくさタイプだろうと、極み化したライチュウの力ならタイプ相性を無視してダメージを与えられる!10まんボルトはメガジュカインに直撃……なっ!?

 

「効いてない……!?そんな!」

 

「……ハッ!どうやら極み化の力はタイプ相性は無視できても特性までは無視できないようだな?」

 

「なんですって……?」

 

「メガジュカインの特性は"ひらいしん"!でんき技を自らの特殊攻撃力に還元するのだ!」

 

ひらいしん……!特性そのものは知っているけど、メガシンカしたジュカインの特性がソレに変化していたなんて……!知らなかったとはいえ、敵に塩を送ってしまったか……!

 

「せっかくパワーアップさせてもらったんだ、恩返しと行こうか……ハードプラント!!」

 

「ジュカアアイイィィィ!!」

 

「躱して!」

 

「ライッ……チュ、ヂュウウゥ!?」

 

「ライチュウ!」

 

特性"ひらいしん"で特殊攻撃力が上昇したメガジュカインのハードプラントが来る!私はライチュウに回避を指示したけど……パワーアップは伊達ではなく、樹木に飛び乗ったまでは良かったがそのまま木に押しつぶされ、さらに地面に叩きつけられてしまった!

煙が晴れた先では……ライチュウが目を回して倒れていた……。

 

「くっ……!戻って、ライチュウ……」

 

「これで、数だけなら五分に戻したぜ」

 

少し余裕が戻ったのか、ニヤリと笑いながらメガジュカインを戻すクロノ。……強い、少なくとも以前よりは確実に。全てのポケモンをメガシンカさせてくることは、こちらも通常個体より強力なポケモンを使っているので特に言うことはなし。むしろ前回のバトルのようなやり方を使われる方が"厄介"という意味で手強かった。

だが、今回は違う。普通のメガシンカポケモンで、私の【二つ名】や【極み】ポケモンたちと互角以上に戦っている。これは、クロノのトレーナーとしての実力が伸びているということか……?だとしたら、一体何が彼をここまで変えた?バトル前に彼が言っていた"女優さん"にヒントがあるのだろうか。

 

「そうだね……でも、まだまだこれからだよ!」

 

「あぁ、ここからは後半戦だ!」

 

「「ガブリアス!!」」

 

「ガッブアアァッ!!」

 

「ガッバアア!」

 

私とクロノが同時に繰り出したのは、ガブリアス!クロノの最後の手持ちか!

 

苛烈(かれつ)暴走(ぼうそう)憤怒(ふんど)鮫竜(こうりゅう)

 

音速(おんそく)(はね)裂刃(れつじん)()

 

(あさ)ましき()れの()てとなる

 

ああ無情(むじょう)(いや)しき(ちから)

 

その激情(げきじょう)何人(なんぴと)()れるべからず

 

ガブリアス!メガシンカ!!」

 

「グオォォ……ガブアアアァッ!!」

 

 

――乱暴狼藉の暴走竜 鮫竜 メガガブリアス――

 

 

ガブリアスのメガシンカ……これで、クロノの手持ちは全てのポケモンがメガシンカしたわけか!

 

「一気にケリを……」

 

「つけてやる!」

 

「ガブリアス!奥義装填!!」

 

「ガッブァ!」

 

「ガブリアス!全身全霊の全力全開で!ぶちかませ!!」

 

「ガブッ!!」

 

私のガブリアスが天空へと舞い上がり、ありったけの龍属性エネルギーをチャージして、解き放つ!!」

 

「アブソリュートドラゴンストーム!!」

 

「ドラゴンダイブ!!」

 

「ガッブアアアアァァァッ!!」

 

「ガブウァアアアッ!!」

 

圧倒的な龍属性エネルギーの暴風の中に、クロノのメガガブリアスはドラゴンダイブで自ら突撃した!?両者が激突した直後、膨大なエネルギーが一瞬で爆発を起こし一瞬だけ視覚も聴覚も機能しなくなる。

 

「うっ……ぐっ……!」

 

「くっ……どう、なった……!?」

 

爆発によって生じた煙は空中でもくもくと残っている。やがて、煙の中から二つの影が同時に墜落した!ガブリアスだ!

 

「ガブリアス!」

 

「おい、ガブリアス!大丈夫か!!」

 

お互いにお互いのガブリアスに声を掛け合う。二体のガブリアスは同時に立ち上がるが、両者ともに肩で息をしている。お互い、かなりギリギリのところで体力が残ったか……?

 

「……ガ、グ……」

 

「あっ……!」

 

私のガブリアスが一歩踏み出すが、そのままバランスを崩して倒れ……起き上がることはなかった……!

 

「……ふぅー……。どうやら、音を上げたのはそっちのほうだったみたいだな」

 

「……みたいね。お疲れ様、ガブリアス……」

 

やはりメガチルタリス、メガジュカインとのバトルのダメージが残っていたのだろう……あのぶつかり合いで、一気に体力を奪われてしまったみたい……頑張ったね、ガブリアス。

 

「……しかし、俺のガブリアスも限界だ。ここは一度戻すぜ」

 

クロノも交代を選択か。……さて、参ったな……おそらく、次にクロノが繰り出すのは……。

 

「……チルタリス!」

 

「チルル~」

 

ガブリアスの奥義に対する抑止力としての役割がなくなったメガチルタリス!概ね予想通りだけど、だからこそ厄介だ……メガチルタリスとメガガブリアスは飛行能力を有していて、私の手持ちにはもう飛行能力持ちがいない……空中に逃げられ続けると、非常に戦いにくくなる。

 

「……あの裂け目、まだ消えねぇな……。まだなにかあるのか……?」

 

「…………」

 

そういえば……ゴウカザルが通ってきたあの小さい時空の裂け目、消える気配がないんだけど……?まぁ、あの規模なら大した問題にはならないだろうけど……。

 

「……まぁ、気にしててもしゃーない。さっさと次のポケモンを出しな」

 

「えぇ、もちろん――」

 

次に繰り出すのはダイケンキ。そう思ってボールに手を伸ばした、その時だ!

 

ブワアァッ!!

 

強烈な勢いで時空の裂け目から大量の花びらが渦を巻いて吹き出してきたのだ!

 

「だぁーっ!炎の次は花か!?……って、なんだこれ……バラ……?」

 

「バラ……」

 

私の手持ちから外れて久しいポケモンで、バラといえば……!

 

 

 

 

「ローズレーッ!!」

 

 

 

 

そんな鳴き声と共に、一匹のポケモンが勢いよく降りてきた!華麗に着地を決めた、あのポケモンは……!

 

「ロズレイド!」

 

やっぱり!ヒスイにいた時に手持ちとして常に連れ歩いていたオヤブンロズレイド!……ただ、ロズレイドもゴウカザルと同じように姿が変わっていた!

 

まず、一番に目に付いたのは両手。本来ならブーケのようになっていた両手は、竜人族のような緑色の四本指に変化していた。なんの用途があるのかは不明だが、元両手のブーケは両肩に移動している。また、肩のあたりにあったマントの様な葉っぱも大きくなり、さらに右側に移動しているため、右肩に羽織るような形になっている。

左側の腰部分に、柄にバラが添えられたレイピアを差している。頭部の白薔薇はそのままに、目元のマスクが大きくなり、やはりバラが添えられて豪奢に見える。……なんだか、怪盗っぽい見た目から騎士になったみたいだ。

 

「ロゼッ」

 

「うわっ、また!」

 

ポイ、とロズレイドもまた後ろ手に手紙が添えられたボールを放り投げてきた。それを受け取り素早く手紙を開封した。

 

『ショウくんへ

またまたポケモンが新しい力に目覚めました!慌てて書きなぐったものですからひょっとしたら誤字脱字があるかもしれませんが、読みにくければ読み飛ばして結構ですよ。

そのロズレイドもまた、過去に前例のない姿へと変化しています!これはやはり、いややはり【二つ名】個体なのでしょう!なので再び、不肖ラベンが名付けさせてもらいます。

新たな姿を得たロズレイド……その二つ名は【華彩剣(かさいけん)】!【華彩剣(かさいけん)ロズレイド】なのです!

ps.ディノバルドの【燼滅刃】を意識してみました。刃と剣で、それっぽい感じにしてみたのです』

 

「ラベン博士……!!」

 

慌てて書いた割には誤字も脱字もない完璧な内容……じゃなくて!

 

「ロズレイド!あなたも帰ってきてくれたんだね!!」

 

「ロゼ~♪」

 

「……ふんっ、またぞろ一匹増えてきたか。何匹出ようが関係ない!弱点を突けば、すべて一緒だ!」

 

「チルー!」

 

「私だって仲間たちが次々と帰ってきてくれたんだ……彼らの気持ちに応えるためにも、クロノ!あなたに勝つ!!」

 

「ローズ!!」

 

むしろここまでお膳立てされて負けたらどんな顔すりゃいいのよって話よ!

 

「弱点突いて、速攻で終わらせてやる!チルタリス、れいとうビーム!!」

 

「チールー!!」

 

「躱して!!」

 

「ロゼッ!!」

 

ロズレイドが構えを取ると、両肩のブーケが背中側に移動すると、そこから自然エネルギーが溢れ出した。溢れたエネルギーは花びらを形取り、色鮮やかに舞っている。更に一層エネルギーが力を増すと、ロズレイドはそのまま滑るように移動してれいとうビームを躱した!……いや、よく見るとわずかに地面から浮いている……まさか、飛んでる!?

 

「よしっ、リーフブレード!!」

 

「ロッゼー!」

 

ロズレイドは腰のレイピアを抜剣すると、そこに自然エネルギーを集め始めた。それがそのままリーフブレードを形成し、メガチルタリスに斬りかかった!

 

「チルゥッ……!」

 

「ちっ……ハイパーボイスだ!!」

 

「チー……ルーーーーーーッ!!」

 

斬りつけられた勢いで地面に着地したメガチルタリスは、そのままハイパーボイスを放ってきた!なんのぉ!!

 

「ロズレイド、リーフストーム!!」

 

「ローーズレエエェェェイッ!!」

 

ロズレイドは背面に回していたブーケを前面に移動させると、そこからリーフストームを放つ!両者の技がぶつかり合い、激しい爆発を起こした!

 

「りゅうのはどうだ!」

 

「チルーゥッ!!」

 

「回避!」

 

「ロゼ!」

 

再び空へ舞い上がったメガチルタリスが、空中からりゅうのはどうで攻め立ててくる!だが、ロズレイドもブーケを側面に戻した後、右肩の葉っぱのマントでりゅうのはどうを受け止め散らしつつ再び地面を滑るように移動してりゅうのはどうを避けていく!

メガチルタリスはりゅうのはどうを放ちながらロズレイドを追いかけるが、ロズレイドはさながらフィギュア選手のような華麗な動きでりゅうのはどうを掠りもせず避け続ける!

 

「チー……ルー!」

 

「今だ、跳べ!」

 

「ロゼー!」

 

一度技が途切れてから、メガチルタリスが再びりゅうのはどうを放とうと構えた……ここだ!私の指示を受けたロズレイドが背面に回したブーケから溢れるエネルギーで大きく跳躍した!バレルロールでりゅうのはどうに沿うように回避しつつ、一気にメガチルタリスとの距離を詰めていく!

 

「どくづき!!」

 

「ロー……ゼゼゼゼゼゼ!!」

 

「チルゥーッ!!」

 

「チルタリス!」

 

ロズレイドのどくづきによる連続突きが炸裂し、メガチルタリスに大ダメージを与えていく!連続突きの後は横一閃で斬り払い、メガチルタリスを再び地面に吹き飛ばす。しかし、墜落直前で体勢を立て直し、メガチルタリスは地面に着地した。

 

「着地を狙え!ねっぷう!!」

 

「チルウウゥゥゥッ!!」

 

「ロズレイド、リーフブレード!!」

 

「……!ローゼッ!」

 

メガチルタリスのねっぷうが迫る中、私はロズレイドにリーフブレードを指示した。それで意図を察したのか、ロズレイドはリーフブレードを展開して地面を四角に斬りつけ、端を踏みつけた。斬った地面を畳返しのように起き上がらせるとバク宙で素早く壁の背後に回り込み、ねっぷうを凌いだ!よしっ、狙い通り!!流石は私のポケモン!!

 

「ば、ばかなっ……!?」

 

「チルッ……!?」

 

「どくづき!」

 

「ロゼ!ローズレー!」

 

「チルーーーーッ!!」

 

「チ、チルタリス!!」

 

着地狩りのねっぷうを防がれたという事実に動揺している隙を突き、ロズレイドのどくづきが命中!メガチルタリスは倒れ、メガシンカも解除された!!

 

「チルタリス、戦闘不能ね」

 

「ちぃっ……どうやら、ただ強くなったわけではないみたいだな」

 

「えぇ。ポケモンが私を信じ、私もまたポケモンを信じている。お互いを信じあう心が、ポケモンとトレーナーに無限の力を与えてくれるのよ!」

 

「…………。…………。……そうか」

 

なにか、物思いに耽るクロノ。以前までのクロノなら全否定してこようものが、やはりなにか心情に変化があったのだろうか。

 

「……では、その心とやらをへし折ってやるとするか!ジュカイン!!」

 

「ジュカイイィン!!」

 

クロノが出してきたのはメガジュカイン……でも、私のロズレイドなら負けない!

 

「「リーフブレード!!」」

 

「「ジュカイイィ!/ロゼエエェ!」」

 

指示は同時、飛び出すのもまた同時だった。メガジュカインの両腕の二刀とロズレイドのレイピアが激しい剣戟を繰り広げる!二刀である分、メガジュカインが有利に見える立ち回りだが、私のロズレイドも高速で剣を振るい手数では決して負けていない。この拮抗状態が成立しているのは、ひとえに私のロズレイドがオヤブン個体であることが大きい。

オヤブンロズレイドの高さは2.06m、メガジュカインは目測ではあるが約2mほどで、私のオヤブンロズレイドの方がわずかに高さで勝っている。これでロズレイドが通常個体なら約1m、最大サイズでも約0.9mも高さに差が出るので、これはかなり大きい差だ。ロズレイドの体が大きい分、腕も長いし剣のリーチも長くなる……これが、メガジュカインと互角に打ち合っているカラクリだ。

長い剣戟の末、互いに弾かれ合い距離ができた。

 

「ちぃっ……ハードプラント!」

 

「ジュカイイィンッ!!」

 

ハードプラントが来るっ……だけど、今のロズレイドならダイケンキのように!

 

「斬り払い、突き進め!!」

 

「ロゼェーッ!!」

 

ブーケからエネルギーを放出し、ロズレイドが一気に突撃する。眼前に迫る樹木の群れを避けたり斬ったりしながら、徐々にメガジュカインとの距離を縮めていく!

 

「引きつけて、つばめがえしだ!」

 

「カィンッ!」

 

ハードプラントを突破したロズレイドがメガジュカインに迫る!メガジュカインは拳を構え、カウンターを狙っている……それなら、カウンター返しだ!ロズレイドの新しい技で!!

 

「ロズレイド!はながくれ!!」

 

ロズレイドの攻撃を避けたメガジュカインがカウンターに放ったつばめがえしが直撃する直前……ロズレイドは一瞬で大量の花びらに姿を変え、姿を消した!それによって、メガジュカインのつばめがえしは空振りに終わった!

 

「ジュカッ!?」

 

「なにっ!?きえ――」

 

辺りに散った大量の花びら……それがメガジュカインの背後に再び集まり、ロズレイドの姿を取り花が散ると……そこにはロズレイドの姿があった!

 

「いけーっ!!」

 

「ロゼーッ!!」

 

「ガッ!?」

 

気配に気づいたメガジュカインが振り返ろうとするが……もう遅い!ロズレイドはすれ違い様にメガジュカインを斬りつけ、レイピアをゆっくりと納剣する。剣が腰に納まると同時に、メガジュカインが倒れメガシンカが解除された!

 

「なん……だと……?」

 

「ロズレイドの新しい技、"はながくれ"……相手の技を完全回避するだけでなく、それが『効果抜群』の技だった場合、相手に反撃ダメージを与える技よ」

 

「……してやられた、ってわけか……!」

 

ジュカインをボールに戻しながら、クロノは悔しげに歯噛みしている。私も連戦したロズレイドを休ませるために、一度ボールに戻した。

そして、手に取るは互いに最後のポケモン……!

 

「ガブリアス!」

 

「ガッバアァ!」

 

「ダイケンキ!」

 

「……!!」

 

クロノの最後のポケモンであるメガガブリアスと、私の最高のパートナーのダイケンキ。クロノのメガガブリアスは私のガブリアスの奥義で体力を大きく削られている……だから、短期決戦を狙ってくるはずだ!

 

「まだだ……まだ負けてねぇ!こっから全部ぶっちぎる!!」

 

「私だってこの勝負、絶対に負けない!!」

 

「ドラゴンクローだ!」

 

「ガブアアアァッ!!」

 

「シェルブレード!」

 

「!!」

 

メガガブリアスが両手のドラゴンクローで果敢に攻め立ててくるのに対し、ダイケンキは後ろ足で立ち上がるとアシガタナを抜刀し二刀流で迎撃に出た!

激しく打ち合う両者……特にメガガブリアスからは決死の覚悟が感じられるほどの猛ラッシュが叩き込まれている。ダイケンキも冷静にメガガブリアスのラッシュを見極め、攻勢を挫かんと攻撃の合間にシェルブレードを打ち込んでいる。凄まじいバトルだ……まさに死闘、お互いの全力を惜しみなく発揮している!

メガガブリアスの一撃を、ダイケンキが大きく弾いた!体が揺らぎ、傾くメガガブリアス……すかさずダイケンキがメガガブリアスにシェルブレードを振るった!

 

「獲った!」

 

「まだだぁっ!!」

 

私が勝利を確信した瞬間、クロノが咆哮を上げた。その気持ちに応えようとしたのか、なんとメガガブリアスはかみなりのキバでダイケンキのアシガタナを受け止めたではないか!なんてこと……一瞬でも遅れたら、間違いなく直撃していたはずなのに!

 

「!?」

 

「そんなっ!?」

 

「叩き込めぇ!ガブリアスゥ!!」

 

「グゥアアアアッ!!」

 

これは流石に予想外だったか、ダイケンキの動きも止まってしまった!その隙を逃さずメガガブリアスがドラゴンクローをダイケンキに叩きつけた!

 

「ルッ……!」

 

「ドラゴンダイブッ!!」

 

「ガブアアアアアアッ!!」

 

「ルジャッ……!!」

 

「ダイケンキ!」

 

右斜め45°からやや内角を狙い抉り込むように打ち込まれたドラゴンクローに、ダイケンキは完全に足を止めてしまった!そこへ追撃のドラゴンダイブを喰らい、ダイケンキは一気に押し込まれてしまった!

地面を転がりながらも跳ね上がり着地し、四肢を使って踏ん張りを効かせてなんとか踏みとどまった!

 

「ダイケンキ!大丈夫!?」

 

「……ルシャ」

 

「よしっ!つばめがえし!!」

 

「……!」

 

「アイアンヘッド!!」

 

二刀を構えたダイケンキが突撃し、メガガブリアスもアイアンヘッドで突撃してきた。一刀目の振り下ろしをアイアンヘッドで受け止め、二刀目の斬り上げを爪で防いできた!

だけど、ダイケンキは止まらない!そのまま体勢を変えたダイケンキはメガガブリアスを蹴りつけて跳躍し後退、距離が空いたところで両者再び突撃した!

 

「シェルブレード!!」

 

「ドラゴンクロー!!」

 

「……!!」

 

「ガブアアアァッ!!」

 

すれ違い様にお互いの攻撃が放たれる。交差した二匹はしばらく動かなかったが……先にダイケンキが膝をつき、その後メガガブリアスが倒れメガシンカが解除された。

 

「よしっ……!」

 

「くっ……!!……俺の負けは……認める……」

 

悔しげに顔を歪めながらも、以前のように騒ぐことなく冷静にガブリアスをボールに戻すクロノ。……成長したね、あなたも、あなたのポケモンも。

決着がついたからか、時空の裂け目も閉じていた。……あれを開いていたのって、もしかして……。いや、でも、そんなはずは……。

 

「……あー、クソッ!分かってはいたが、やはり貴様は強い。一朝一夕の鍛錬ではどうにもならんか……」

 

「それでも、随分と成長したと思うよ。身も心もね」

 

「言うな言うな、小っ恥ずかしいったらない……それで負けてちゃ世話ねぇんだ」

 

「だったら、次に勝てばいいだけでしょ?それが勝負ってものなんだから」

 

「……そういうもの、か……(よくわかったぜ、カルネ……)」

 

どこか納得したような、吹っ切れた表情になったクロノ……うん、いい顔だ。

 

「それじゃあ、貴様にも機会を授けなければなるまい。……リベンジの機会をな」

 

「……まさか……」

 

「出てこいっ、イビルジョー!!」

 

「グギャオオオオオオオオッ!!」

 

そうして出てきたのは、以前のバトルにも出てきた古龍級生物イビルジョー……私のジンオウガが手も足も出なかった相手だ……!

 

「さぁ、ジンオウガを出せ。もう一度、捻り潰してやろう」

 

「……いいわ。でも、そっちが捻り潰すんじゃない……こっちが張っ倒すためだ!ジンオウガ!!」

 

「ウオオオオオオオオンッ!!」

 

私はあの時と同じく、ジンオウガを繰り出した。……実は、リオレウスは「破滅の翼」になったことを受けて体調を考慮し、手持ちから外してツバサさん達ライダーに預けている。そのため、私の手持ちにいる巨大ポケモンはジンオウガのみとなっている。

 

「さぁ……決着と行こうじゃないか」

 

「望むところよ!!」

 

私たちは絶対に勝つ!!

 

 

 

 




はいっ!ポケモンバトルは援軍二匹を得たショウちゃんの勝ちっ!!

次はいよいよ、因縁のイビルジョー戦……!


極み&二つ名個体の特徴を特性風に紹介!(一部わざ有り)

極み断ち斬るダイケンキ
名前:絶禍(ぜっか)太刀(たち)
効果:全ての技が急所に当たる

極み蹂躙するガブリアス
名前:龍風圧(りゅうふうあつ)
効果:特殊技で受けるダメージが半減する
接触時、一割の確率で次ターンの間、敵は行動不可になる(転倒)
「対象:相手」の変化技を無効化する
「どく・もうどく」時の間、特性が消える

極み迸るライチュウ
名前:(ほとばしる)閃電(せんでん)
効果:「効果は今ひとつ」の相手に対してでんき技のタイプ相性が全て等倍になる。ただし「効果がない」相手に対しては変わらず無効化される。また、「ちくでん」や「ひらいしん」などのでんき技を無効化する特性にも無効化される。

(まい)(うさぎ)】ミミロップ
名前:波導流転(はどうるてん)
効果:「波導技」の威力が1.5倍になる。「波導技」を受けた場合、ダメージを無効化して次に使用する「波導技」の威力を更に1.5倍にする
この時、受けた「波導技」と同じ技を使用した場合、倍率は2倍になる

炎神(えんじん)】ゴウカザル
名前:征天対世(せいてんたいせい)
効果:攻撃時に「効果は今ひとつ」だった場合、急所に入る。
ダメージ倍率は1/2で3倍、1/4で6倍(実質、等倍時の1.5倍ダメージ)となる

華彩剣(かさいけん)】ロズレイド
名前:フラワードライブ
効果:自身と同じタイプ技による能力低下を全て無効にする(自身が使う技も含む)
特攻ランクの上昇値に応じて素早さが上昇する(最大1.2倍、場が「グラスフィールド」時は特攻ランクに関係なく常に1.2倍)
天気が「あめ」、「あられ」、「ゆき」、「すなあらし」の時、素早さ上昇効果は消える

技名:花隠(はながく)
効果:1ターンの間、全ての技を受けない
相手の使用技が「効果は抜群」の攻撃技だった場合、本来受けるダメージの1/10のダメージを相手に与える
(自身の残りHPで計算する。一撃で倒される場合、自身の最大HPの1/10を与える)


ちょっとやりすぎましたかね……特に最後の二匹。もうちょっと調整したほうがいいかな……?
ちょっと長くなったので、クロノのメガシンカパの詳細は次回の前書きに書きます!


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キズナ

昨日はすいませんでした!なんとか仕上げることができました!お詫びと言ってはなんですが、一時間早めに投稿します。

そして前話の後書きのとおり、クロノのメガシンカパーティの紹介です。

夜中を照らす、残光が一つ
道を示す導きの灯は
闇を斬り裂く一筋の光明
目覚めよ、竜魂。眠りし竜の血よ
光竜 我、此処に在り

導きの灯 光竜 メガデンリュウ 特性:かたやぶり
りゅうのはどう/でんじほう/シグナルビーム/きあいだま


唱えや唱え。奏でるは聖歌
風に流るる雲の羽翼は
気の向くままに揺蕩うであろう
蒼天は澄み、白雲は泳ぐ
天よ聞け、地よ耳を傾けよ
轟き響くは自由への賛美歌

妖歌絶唱 唱竜 メガチルタリス 特性:フェアリースキン
りゅうのはどう/れいとうビーム/ハイパーボイス/ねっぷう


密林、影を踏まず
疾風すら置き去り彼奴は往く
縄張り荒らす不埒者よ
手向かい致さば、慈悲はない
一度抜かれた新緑の太刀は
咎人の血に濡れ、紅葉に染まるだろう

密林に忍ぶ絶影 翠竜 メガジュカイン 特性:ひらいしん
ハードプラント/リーフブレード/ドラゴンクロー/つばめがえし


燃る灼熱、天上を焼く
強き者よ。我を恐れよ
数多の姿に、恐れ震えよ
黒翼を携えし蒼炎は
我、炎竜の激昂と知るがいい

ブレイジングダークネス 炎竜 メガリザードンX 特性:てつのつめ
フレアドライブ/ドラゴンクロー/はがねのつばさ/かみなりパンチ


夢、幻か
蒼天を舞う真紅の翼は
歪み歪み狂える烈竜
空を裂き、天を割る、その姿
夜天を照らすは我が翼
血濡れ三日月の月光のみ

血濡れ三日月 烈竜 メガボーマンダ 特性:スカイスキン
ドラゴンダイブ/すてみタックル/かえんほうしゃ/アクアテール


苛烈暴走、憤怒の鮫竜
音速の羽は裂刃と化し
浅ましき成れの果てとなる
ああ無情、卑しき力よ
その激情、何人も触れるべからず

乱暴狼藉の暴走竜 鮫竜 メガガブリアス 特性:すなのちから
ドラゴンクロー/アイアンヘッド/ドラゴンダイブ/かみなりのキバ




クロノが率いるメガシンカ軍団との戦いに勝利した私の前に姿を現したイビルジョー……私とジンオウガの因縁の相手。前回戦った時は、その圧倒的なフィジカルの前に力押しで敗北を喫した……同じ轡は二度も踏まない!

 

「ジンオウガ!今度はパワーじゃなくてスピードで勝負よ!」

 

「ワオンッ!」

 

「よしっ、行けっ!」

 

「ウオオオォォンッ!」

 

「正面から行くぞイビルジョー!素のままのモンスター如き、小細工など不要!何も出来ぬまま終わらせてやろう……逃げ回りながら負けるがいい!!」

 

「グギャアアオッ!」

 

 

 

 

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【戦闘!ライバル】~ポケットモンスターHGSS~

 

 

 

 

まずはこちらから仕掛ける!

 

「でんじほう!!」

 

「ワオォンッ!」

 

「跳ね返せ!」

 

「ギャアアオッ!!」

 

走りながらジンオウガが放ったでんじほうは、イビルジョーの尻尾の一打で打ち返された!

 

「アイアンテール!」

 

「ワンッ!」

 

だけどこっちだって負けない!ジンオウガのアイアンテールで再びでんじほうを跳ね返す!

 

「噛み潰す!!」

 

「ガアアッ!!」

 

イビルジョーはその強靭な顎ででんじほうに噛み付くとそのまま潰してしまった!でも、僅かにだけど隙ができた!

 

「はどうだん!!」

 

「ワオオオンッ!!」

 

「ギャッ!?」

 

側面に回り込んだジンオウガのはどうだんは直撃!効果は抜群だ!……だが、イビルジョーの反応は苦手な技を受けた、というよりも意識外からの攻撃に驚いただけのようだ。やはり、攻撃面・耐久面ともに圧倒的だ……捕まらないように気を付けないと!

 

「ちっ、だいちのちからだ!」

 

「ギャオオオッ!」

 

イビルジョーが力強く大地を踏みしめ、その波動がだいちのちからとなって襲ってくる!

 

「躱して!」

 

「ワンッ!」

 

ジンオウガは縦横無尽に駆け回り、だいちのちからを次々と避けていく。よし、いい感じだ……!

 

「ぶち込めイビルジョー!ハイドロポンプ!!」

 

「グギャオオオッ!」

 

「ギャウッ!」

 

「……っ!ジンオウガ!」

 

「……ワオンッ!」

 

「よし……!」

 

ジンオウガが大きく跳ねた、その着地を狙ったハイドロポンプが直撃した!わずかに押し込まれるジンオウガだけど、頭を振ってすぐに持ち直すと、大きく吠えた!よく耐えたね、ジンオウガ!

 

「……どうなってやがる。前よりずっと強くなっているのか……?」

 

「私だって、物見遊山や解呪目的だけのためにこの世界にいるわけじゃないからね」

 

伊達に何日もこの世界にいるわけじゃない。特にバゼルギウスとメタモンを撃退してからの三日間はメゼポルタの復興とメタモン問題の解決の他に、ジンオウガの鍛錬に精を出していた。

その血の滲むような鍛錬の成果、存分に発揮する!

 

「ジンオウガ、かげぶんしん!!」

 

「ワオォン!」

 

「はぁ?」

 

クロノが呆れたような声を出すが、これも作戦の内。アカイさんとの話し合いの末に考えついた策なのだ。

 

「くだらねぇ……イビルジョー、ジェノサイドブラスターだ!」

 

「グギャアアアオッ!!」

 

イビルジョーは頭を高く上げると一気に振り下ろし、横へなぎ払うように龍属性ブレスを放った!分身たちは次々と姿を消していき、とうとうすべての分身が消滅した。

 

「いない?……いや、上か!」

 

クロノが気がついた!宙に躍り出たジンオウガを見つけると、ニヤリと口角を釣り上げた。

 

「バカが!そんなまる分かりな作戦、通じるわけねぇだろうが!イビルジョー、はかいこうせん!!」

 

「グォォォ……ギャオオオンッ!」

 

イビルジョーのはかいこうせんは、空中で身動きがとれないジンオウガに命中し……消滅!

 

「なにっ!あれも分身だと!?」

 

「いっけぇ、ジンオウガ!」

 

私の声に応じて、ジンオウガが姿を現した……地面からね!

 

「"あなをほる"だとぉ!?」

 

地上に分身を出せば、クロノの性格上一つ一つを潰すのではなく、大技で一気に潰そうとするはず。すると規模によっては自らの視界すら封じるほどの技を使うだろうから、その隙をついた!さらに保険を掛けるべく空中にもかげぶんしんを設置するように指示を出したけど、どうやら正解だったみたいだ。

あなをほる攻撃が命中し、イビルジョーは勝ち上げられて上体が大きくのけぞったような姿勢になった。一気に叩く!

 

「畳み掛けろぉ!」

 

「ワオン!」

 

隙だらけのイビルジョーの土手っ腹にかみなりパンチを叩き込む。その後、体勢を戻したイビルジョーが勢いで噛み付かんと口を開いたが、素早く反応したジンオウガがサッと身を翻しイビルジョーの顎を躱す。さらにそのままアクアテールをサマーソルトで繰り出し、イビルジョーを大きく後退させた!

 

「ええいっ、アクアテールだ!」

 

「躱して!」

 

イビルジョーはアクアテールでジンオウガに仕掛けてくる。ジンオウガはこれをジャンプして躱すが、イビルジョーはすかさず一回転してジンオウガに噛み付こうとしてきた。だが、それはこちらも読んでいた!

 

「エレキネット!」

 

「ワゥンッ!」

 

「ガグッ!?」

 

「なに!?」

 

「追撃のかわらわり!」

 

「ワオォンッ!」

 

ジンオウガはエレキネットでイビルジョーの口を塞ぐという芸当を披露し、動揺するイビルジョーに追い打ちのかわらわりを叩き込んだ。

 

「怯むな!アイアンヘッド!!」

 

「メガホーンで応戦!」

 

「グォアアアアッ!!」

 

「ワオォウン!」

 

頭から地面に沈むことになったイビルジョーだが、それでも負けじとアイアンヘッドを繰り出してくる。ジンオウガもメガホーンで対抗し、わずかに押し込まれたけど踏ん張りを効かせて持ちこたえた!

 

「「りゅうのはどう!/10まんボルト!」」

 

「「グギャアオオォッ!/ウオオオォンッ!」」

 

一度弾かれた両者はエレキネットが解けたイビルジョーがりゅうのはどう、ジンオウガが10まんボルトをぶつけ合い激しく爆発を起こしながらさらに大きく距離が開いた。

 

「……っ。ありえん!なぜこれほどまでに動きが良くなっている……!?」

 

「日々の鍛錬の賜物だよ。私とジンオウガだって、のんべんだらりと過ごしていたわけじゃないんだから!」

 

クロノはイビルジョーに対し、絶対的な自信と信頼を寄せている……それこそが、むしろクロノの弱点とも言える。バトル前の口上にも、その自信が如実に表れている。小細工……即ち、変化技を使ってこないだろうということも、容易に想像がつく。逆にこちらが変化技を用いれば、それを力技で強引に押し潰そうとしてくることも!

実際、イビルジョーの高い能力を活かせばそれも可能だろう。だからこそ、クロノは絶対にその手を打ってくるという、ある意味信用に似たものがあった。そして、案の定クロノは強力な一撃でジンオウガの分身を一掃してきた。だから、本体が地面に潜りさらに一体分身を空中に残したことに気づかなかった!

 

「……悔しいが、その努力は無駄ではなかったようだな。以前までなら、今頃は決着がついていたはずだ」

 

「膂力ではこちらが不利だからね、少しでも上手く工夫して戦う必要があった。……私たちはこれ以上、負けるわけにはいかないんだ。だから、ここで絶対に勝つ!」

 

「ワオォンッ!!」

 

この三日間、本当に血の滲むような鍛錬を繰り返してきた。

まず、肉体面。こちらはカイさんとガムートに協力してもらった。具体的にはガムートと押し相撲をしたり、荷車に積まれたガムートを引っ張ったりする、とにかく体を苛め抜く鍛錬だ。体を鍛えることで耐久力の向上も期待できる。

次に、機動力。最初にも言ったがフィジカル面では真正面からぶつかり合えば勝ち目はない。だから、攻撃は可能な限り避けることに集中する。こちらはセキさんとタマミツネ、ウォロとディノバルドに協力してもらった。素早い攻撃はタマミツネに、強力な一撃をディノバルドに頼むことで、とにかく徹底して回避し機動力の向上を図った。

最後に技の練度。これは先ほどのかげぶんしんで既に成長を実証済みだ。さらに得意なタイプであるでんき技に関しても、テル先輩とライゼクスに協力してもらい、お互いの電気エネルギーを用いて能力を高め合う訓練をした。

それと、アカイさんが知るトレーナーに技の使い方や戦術がぶっ飛んでいて、ガラル地方で開かれた巨大なポケモン大会で優勝した人がいるらしく、その人の話を色々と参考にさせてもらった。

……ピカチュウを相棒にしているなんて変わってるなぁ……ライチュウにするでもなく、しかしでんきだまを持たせるでもなく……けど、それで大会に優勝するんだから、きっと強い人なんだろうな。……どこかで聞いたことがあるような気がするのは、気のせいだろうか?

 

「ぬかせよ、さっきは意表を突かれただけだ。イビルジョーは、まだまだ戦える!」

 

「ギャアアォスッ!!」

 

「やれ!りゅうせいぐん!!」

 

「グギュアアアアッ!!」

 

イビルジョーが放ったりゅうせいぐんが、ジンオウガに迫って来る!だけど、私たちだってまだまだ上げていくぞ!

 

「ジンオウガ!」

 

「ワン!」

 

「我が心に応えよ、キーストーン!進化を超えろ……メガシンカ!!」

 

「ウオオオォォォンッ!」

 

ここでジンオウガをメガシンカ!さらにアカイさんから聞いた某トレーナーの戦術を試すとき!

 

「カウンターシールド!」

 

「ワンッ!」

 

「は?カウンター……なんて?」

 

メガジンオウガは勢いよく体を回転させつつ寝転がり、いわゆるバックスピンの態勢に入った。さらにそのまま回転しながら電撃を放つ!すると四方八方に入り乱れ飛び交う電撃が、迫り来るりゅうせいぐんを一つ残らず撃ち落とした!!

 

「おいこらまてぇ!そんな戦い方があるのかよぉ!?」

 

「可能性は無限大!!」

 

「ワオンッ!」

 

「だろうな!奥が深すぎて底が見えねぇよ!!」

 

起き上がったメガジンオウガも得意げな様子で吠えている。うんうん、上手くいって嬉しいんだよね。もうすっごく練習しまくってたからね、正直メガジンオウガの三半規管が心配になったよ。

 

「くそぅ、調子に乗るなよ……イビルジョーの力は、まだまだこんなものじゃないぞ!」

 

「……っ!やっぱり、そっちもメガシンカを……」

 

「え、いやいや、メガシンカはしないが?」

 

「……え?」

 

メガシンカ、しない……?どういうこと……?

 

「意外、って顔をしてるな?イビルジョーのメガシンカ……まあ、『怒り喰らうイビルジョー』は、ぶっちゃけ制御不能だ。あの個体は本来なら長生き出来たが故にたどり着く個体なんだよ。食欲のリミッターが外れてて、さらに共食いによる龍属性エネルギーの過度な蓄積と、それに伴う生命の危機によって齎される捕食本能の暴走……本来なら自然な流れでこの状態に至るのを、メガシンカで強制的に移行させたら……どうなるかなどもはや語るまい?」

 

「うっ……た、たしかに……」

 

シロちゃんから聞かされたことと、ほとんど同じだ……たしかにそんな危険な状態に無理やり変化させたら、それこそクロノの制御を外れて暴走する恐れがある。だからクロノはメガシンカさせないのか……。

 

「まぁ、メガシンカなんかせずとも、俺のイビルジョーは強い!それこそ、そっちがメガシンカしなければ歯が立たないくらいにはなっ!」

 

「くっ……言い返したいのに何も言えない……!」

 

実際、前回のバトルではメガシンカする暇もない猛攻で叩き伏せられたし……けど、今回は徹底的に鍛錬を重ねたから、簡単にやられたりはしない!むしろぶっ飛ばす!

 

「ジンオウガ!でんこうせっか!」

 

「ワオォンッ!」

 

「がんせきほうだ!」

 

「ギャオオウッ!」

 

メガジンオウガが突撃を開始すると同時に、イビルジョーが顎で地面を抉ると巨大な岩石を飛ばしてきた!

 

「躱して!」

 

「ワンッ!」

 

「ドラゴンダイブ!」

 

「ギャアオオオッ!」

 

「……!やや右前方にワイルドボルト!」

 

「ワオオオォンッ!!」

 

がんせきほうを右に跳ねて回避したけど、回避した先に迫って来るイビルジョーが!私の指示通り、真正面からではなくやや側面を狙ったワイルドボルトを繰り出したメガジンオウガ。それにより、ドラゴンオーラと電撃が擦れて滑り、真正面からのぶつかり合いを避けることができた!

 

「はどうだん!」

 

「ウオォンッ!」

 

「ドラゴンテール!」

 

「ギャオス!」

 

後方からのはどうだんは、ドラゴンテールで打ち消された……一筋縄ではいかないか……!

 

「あくのはどう!」

 

「ギャアアアンッ!」

 

「チャージビーム!」

 

「ワオンッ!」

 

あくのはどうとチャージビームがぶつかり合って爆発を起こした……ここで仕掛ける!

 

「突っ込め、ジンオウガ!」

 

「ワン!」

 

メガジンオウガは煙の中を突っ切り、一気にイビルジョーの前に躍り出た……ここだ!

 

「バカ正直に突っ込むか!もろはのずつき!」

 

「グギャアアスッ!」

 

「突撃ばかりが能じゃない!ジンオウガ、フラッシュ!」

 

「ワゥン!」

 

「ギャッ!?」

 

「なんだとっ!?」

 

目の前で閃光が瞬き、イビルジョーは眩しそうに目をつぶった!今だ!

 

「ジンオウガ!インファイト!!」

 

「ワオン!ワウッ、ワウッ!ウオォォンッ!!」

 

「ギャアアンッ!?」

 

「なっ……クソッ!」

 

視界が封じられたイビルジョーに、メガジンオウガの猛ラッシュが叩き込まれる!かくとうタイプのメガジンオウガのインファイトは、あくタイプのイビルジョーには効果抜群!さらにメガシンカしていることで火力も大幅にアップだ!

 

「負けるなイビルジョー!根性を出せ!!」

 

「……ッ!!」

 

メガジンオウガが爪でイビルジョーに一撃を叩き込もうとした、その時だ!ガチンッ!という音とともに、メガジンオウガの動きが止まった!イビルジョーが、メガジンオウガの爪を牙で受け止めている……もう目が見えるようになったのか……!

 

「今度はこっちの番だ……!イビルジョー!ぶんまわせ!!」

 

「グギャアアアアオオオッ!!」

 

「ギャウッ!?」

 

「ジンオウガ!」

 

イビルジョーは強引に体を捻るとメガジンオウガを引っ張り始め、さらにそのままぶんぶん振り回し始めた!なんてパワーなの……!

 

「叩きつけろ!!」

 

「ギャアアォスッ!!」

 

「ワギャウ……!」

 

「ジンオウガ!」

 

「そのままディストーションバイト!!」

 

「グルオオオオオオ!!」

 

メガジンオウガを地面に叩きつけたイビルジョーはそのまま引きずるように一回転し、一周したところでメガジンオウガを高く放り投げた!自身も龍属性エネルギーを収束させつつ跳躍してメガジンオウガに食らいつき、回転とともに落下してメガジンオウガを叩きつける!

 

「ギャアウゥッ!」

 

「負けないでジンオウガ!かみなり!!」

 

「……ッ!ワオオォォォンッ!!」

 

「ギャアアスッ!?」

 

以前ならそのままやられていたけど……今はメガシンカだってしてるんだ!メガジンオウガのかみなりの威力に怯んだイビルジョーは、思わずその口を離してしまった……チャンスだ!

 

「ライジングテール!」

 

「ワオォンッ!」

 

「グギャッ!」

 

起き上りと同時にライジングテールを繰り出しイビルジョーを突き放す!まだまだ!

 

「らいこうだん!!」

 

「ウォンッ!」

 

「ギャアァンッ!?」

 

ライジングテールの勢いで跳躍し、そこで体勢を変えると着地と同時に雷光弾を発射!イビルジョーに直接当ててみせた!かなり効いてる……これで終わりだ!!

 

「最大出力……全力の!はどうだんだ!!」

 

「ワオオオォォンッ!!」

 

「グギャアアァアァァンッ!!」

 

「イビルジョー……!」

 

全力のはどうだんを受けたイビルジョーは、とうとう崩れ落ちた。やった……!

 

「よしっ!」

 

「くっ……くっそおぉぉぉッ!どうしたイビルジョー!お前の力はこんなものか!?まだだ……まだやれるだろう、お前なら!?立て!立つんだ、イビルジョー!!

 

「……グ、ギギ……!」

 

なっ……イビルジョーが、立ち上がった……!?流石は古龍級生物……簡単には勝たせてくれないか……。

 

「ギ……グギギ……グギャアアァァァッ!!」

 

と、その時だ!突然、イビルジョーが眩い光に包まれたかと思うと、徐々にその姿を変えていった!

 

「な、なんだっ!?」

 

「まさか、進化……?」

 

「え、進化!?メガシンカじゃなくてか!一体何になるって言うんだ……!」

 

イビルジョーの姿が完全に変化を終えると、包み込んでいた光が消えてその姿が顕になった。

 

 

深緑だった皮膚が金に近い明るい色に。

顎の刺は長く赤黒い色に変わり、さらに背中にも刺が生えている。

何より目立つのは、全身を覆うように纏われた金色のオーラ。

 

 

「グギャアアァオオオォッ!!」

 

 

 

 

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【健啖の悪魔】~モンスターハンターシリーズ~

 

 

 

 

進化を果たしたイビルジョーは、全く別次元の生物へと変化した……!

 

「……は、はは……ははははははっ!!」

 

「クロノ……!」

 

「……あーあ、出会っちまったか

 

「っ!!」

 

「ショウ、あまり回りくどく説明すんのもアレだから、さくっと説明してやろう。こいつの名前は……【極み喰らうイビルジョー】だ」

 

「き、極み……!?」

 

「そう!古龍級生物イビルジョー、その極み個体!!お前にとって、これ以上にない絶望の権化だ!!」

 

「ギャオォォン!!」

 

そ、そんな……こっちがメガシンカしてやっとイビルジョーと対等以上に渡り合えていたのに、このうえイビルジョーが進化して強くなるなんて……。

 

「ワオンッ!!」

 

「……ッ!ジンオウガ……」

 

私が呆然としていると、メガジンオウガの声に意識を呼び戻された。メガジンオウガはこちらに振り向いて頷いている……そうだ、ポケモンが、相棒が諦めていないのに、トレーナーの私が諦めてどうする!!私は大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、目の前のバトルに全神経を集中させる!

 

「……勝つよ、ジンオウガ!」

 

「ワォン!」

 

「ふんっ。口で説明するよりよっぽど早いか……教えてやるよ、極み個体の圧倒的な力を!」

 

「でんこうせっか!」

 

「ワオオォンッ!!」

 

メガジンオウガがでんこうせっかで縦横無尽に駆け回る。まずスピードで攪乱して、捕まらないように――。

 

「……捕えろ!」

 

「ギャオンッ!!」

 

メガジンオウガが極みイビルジョーの真横を駆け抜けようとした、その時だ!極みイビルジョーが半歩足を引いたかと思うと、次の瞬間には体の向きを変えて頭を振り下ろし、メガジンオウガの尻尾に噛み付いていた!

 

「ワウッ!?」

 

「まさか!?」

 

「言ったよな?極み個体の恐ろしさを教えると……イビルジョー!たたきつける攻撃!」

 

「ギャアアアオンッ!!」

 

「ギャウウウゥンッ!?」

 

極みイビルジョーはメガジンオウガを再び引っ張りまわし、何度も何度も地面に叩きつけてきた!叩きつけたまま地面を引きずったり、また叩きつけたり……一際高く持ち上げられたあと、さらに勢いよく叩きつけられた!

 

「ドラゴンクロー!踏み潰してやれ!!」

 

「ギャアアアアオッ!!」

 

「ギャウンッ!!」

 

「ジンオウガッ!」

 

ドラゴンクローを展開した足を持ち上げ、勢いよくメガジンオウガを踏みつけてきた!何度も何度も踏みつけられ、メガジンオウガにダメージが蓄積していく……!

 

「でも、この距離なら……!力強く、きあいだま!!」

 

「……ワウッ!ウオオォォンッ!!」

 

久々に使った力業、それも極みイビルジョーの弱点にしてメガジンオウガの得意タイプのかくとう技!力業きあいだまは顔面に直撃!効果は抜群だ……!

 

「……う……そ……」

 

「ワ、ウッ……!」

 

だが……煙が晴れた先には、びくともしていない極みイビルジョーの姿があった……!

 

「無駄無駄無駄ァ!!イビルジョー!はかいこうせんだぁ!!」

 

「グギャアアアオオォォォンッ!!」

 

イビルジョーのはかいこうせんが近距離から放たれ、メガジンオウガは岩壁にまで押し込まれ大爆発を起こした!!

 

「ジ、ジンオウガ……ッ!!」

 

「……フゥッ……フゥッ……フゥッ……!」

 

崩れた瓦礫の山……そこから出てきたメガジンオウガは、酷くボロボロに傷つき肩で息をしていた。くっ……メガジンオウガも、もう限界に近い……!!

 

「ジンオウガ」

 

「ワン」

 

「次の一撃に、全てを賭けるよ」

 

「ワウン」

 

「……奥義、装填……!!」

 

「グルルルルル……!!」

 

メガジンオウガは電力を限界までチャージし始めた。その間クロノは……なにもしてこない。

 

「いいぜ。真っ向から……受けて立ってやる」

 

「…………」

 

「仮に作戦があるんだとしても、そのジンオウガのダメージでは策を恙無く実行できるとも思えん。だから、愚策であろうが正面からの勝負に賭けた……その気概、まったく見事」

 

「……行くよ……ジンオウガ!」

 

「ワオンッ!」

 

「……だがな……」

 

この一撃に全てを賭けて!!

 

「せんしょうらいせん!!」

 

右角に電力が集中し、巨大な角を形成……一気に突撃する!!

 

「いけーっ!!」

 

「ウオオオオオォォォォンッ!!」

 

「止めろ」

 

「グギュアアアアアッ!!」

 

両者がぶつかり合い、激しい閃光が炸裂する!辺り一帯が煙に包まれ、視界が遮られる……!

 

「うっ、ぐっ……ジ、ジンオウガ……!」

 

「…………」

 

煙が徐々に晴れてきて……。

 

「……あ、あぁ……!」

 

「……グ、ウゥ……」

 

尖衝雷閃が……止められた……それも、技でも何でもない、ただの噛み付きで……。メガジンオウガの右角が、極みイビルジョーの牙にしっかりと止められている……!

 

「なぁ、ショウよ。ただのモンスターがなぁ……」

 

……ミシッ、ミシッ……

 

「古龍級生物の極み個体に……」

 

ミシッ、バキッ!

 

「勝てる訳ねぇだろうが……!!」

 

 

 

 

――ボキッ!!

 

 

 

 

「――――」

 

ジン、オウガの……角、が……折ら……れた……!

 

「りゅうせいぐん。直にぶち込め」

 

「ギャオオオンッ!!」

 

噛み切りへし折ったメガジンオウガの角を吐き捨て、極みイビルジョーはりゅうせいぐんを打ち上げるのではなく、直接メガジンオウガに叩き込んできた。爆発とともにメガジンオウガが宙を舞い、私の眼前に落下してきた。メガシンカは解除され、ジンオウガは動く気配がない……。

 

「ジ、ジンオウガ……!」

 

 

ズキッ!!

 

 

「うぐぁ……!」

 

し、しまった……こんな、時に……!バトルの前にシロちゃんのお祈りで呪いの発作を抑えていたけど、ここに来て限界が……!!

 

「ジン……オウ、ガ……」

 

ダメ、だ……痛みで、意識……が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショウ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショウ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショウ

 

「……あ、れ……?」

 

ここは……見渡す限り、真っ白な空間……私、死んじゃったのかな……。

 

「ショウ」

 

「……っ!この声……」

 

わたしを呼ぶ声に反応して振り返れば……そこにいたのは……!

 

「お母さん!」

 

「ショウ」

 

長い黒髪を真っ直ぐに下ろした、私のお母さん……ヒカリ。相変わらずどこかおっとりとして抜けていそうな雰囲気に、その裏に隠された揺るぎない意思……うん、ちゃんとお母さんだ。

けど、今の私はお母さんを直視できず、俯いてしまう……。

 

「お母さん、私……ごめんなさい……」

 

「どうして謝るの?」

 

「だって、だって、私!……負けちゃった、バトルに……それに、ミラボレアス……黒龍の呪いで、余命だってあとわずかで……」

 

「……それじゃあ、諦めちゃうの?」

 

「……え……?」

 

諦める……そんな、そんなの……。

 

「……だよ……嫌だよ!諦めたくないよ!でも、でも……もう、どうしようもないよ……ジンオウガは私のせいで負けてしまった……私も呪いの痛みに耐えきれずに気絶……ううん、死んじゃったかもしれない……。

どうにもできない……私に出来ることなんて、もう……」

 

「ショウ……」

 

お母さんが、そっと私を抱きしめてくれた。……暖かい。お母さんの温もりだ……。

 

「このおばかちん」

 

「へっ?……あ痛っ!?

 

いきなり罵倒されて驚きに顔を上げると、すかさずデコピンを食らった!?うぅ……す、すごく……痛いです……。

 

「私はあなたをそんな子に育てた覚えはありません。立ちなさい、ショウ。諦めることは許しません」

 

「で、でもっ……!」

 

「諦めていいのは、精一杯生き抜いてからよ。……ショウ。あなたは今、精一杯生き抜いているかしら?」

 

「わ、私は……」

 

私は、私は……!

 

「……まだ、生き抜いてない……まだ、生き足りない!まだ、まだ!諦めたくないっ!!」

 

「……うんうん、それでこそ私の子。偉いわね、ショウ~」

 

「わぷっ」

 

先程までの厳しい口調が嘘みたいになくなり、ふわふわした喋り方に戻った……頭を優しく撫でてくれるその手が、それを物語っている。

 

「……見て、ショウ」

 

「え……?」

 

お母さんが体の位置をずらすと、私の視線の先にジンオウガの姿が見えた。右の角が折られ、ボロボロに倒れ伏すジンオウガ……けど、その体は少しずつ、本当に少しずつ動き出そうとしていた!

 

「あの子はまだ、諦めていないわ。私、言ったよね?"ポケモンとトレーナー、双方の信頼が合わさって、初めてポケモンバトルが成立する"って。ショウも、あの子も、同じ"負けたくない"って想いをもっともっと重ねてみて?

"負けたくない"、"勝ちたい"って、ただ自分だけが考えるんじゃないの。その想いを、お互いに強くぶつけ合って、混ざり合って……そうすればあなたもあの子も、もっともっと強くなれる……上を目指せるわ」

 

「想いを重ねて……もっと強く……」

 

ジンオウガの想いと……私の想いを……。

 

「……もう、大丈夫みたいね?」

 

「……うん、大丈夫。ありがとう、お母さん」

 

「それは良かったわ~」

 

そう言って、やんわりと微笑むお母さん。……少しだけ、寂しいけど……行かなきゃ。

 

「お母さん、ごめんなさい。ちょっと弱気になっちゃってた。……もう大丈夫。私、行くね?」

 

「……うん、気をつけてね。……ショウ!」

 

「え?」

 

私の心がようやく立ち直ったところで、お母さんから声が掛かった。ちょうど歩き出したタイミングだったので振り返った私は、もう一度お母さんに抱きしめられた。

 

「……どんなときでも、なにがあっても……あなたは私の大切な子供……。どうか、無事で。生きて帰ってきてね……私は、それだけで十分だから……」

 

「お母さん……!」

 

「……いってらっしゃい」

 

「……行ってきます!!」

 

意識が浮上する感覚……大丈夫、私はもう迷わない。目の前に立ち塞がる者がいれば、これを打倒し前へ進む……ジンオウガとともに!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コウちゃん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちくしょう……全身が悲鳴を上げてやがる……。角を折られたからか頭痛も半端じゃない。動け、動け、動けよ……!なんで動かねぇんだちくしょうが……!今起きなきゃダメだろうが……!なんのためにこの三日間、修行し続けたんだ……!焔だって頑張ってんじゃねぇか、俺が気張らねぇでどうするんだ!!

動け、動け、動け、動け!動け!!動けっ!動けっ!!うごけ――

 

「だ~め」

 

……え。

 

「そんなに無理しちゃダメだよ~?無理に動かそうとせず、まずは感じてみて?」

 

感じる……って……?

 

「全身に血を通わせるように、意識を集中させて……頭、体、前足、後足、尻尾……どう?」

 

……少しずつ、体が感覚を取り戻し始めた。体を起こせるようになったので、体を起こしてみる。

 

「ふふっ、偉い偉い~」

 

「……ワン」

 

俺の目の前にいたのは……ショウを大人にしたような女性。この見た目……まさか、ダイパ主人公のヒカリ?

……いや、違う。俺は知っている、彼女は……。

 

「こんにちは~、ショウの母です。娘が大変お世話になっております」

 

「ワワウ、ワウ(これはご丁寧にどうも……)」

 

「……ショウを、あの子を守ってくれてありがとう。あなたたち皆がいたから、あの子もここまで頑張ってこれた。……でも、ショウの歩みは止まらない。あの子は再び立ち上がったわ。……あなたは、どう?」

 

"どう?"だって?……言われるまでもない!!

 

「ワオワオワオーンッ!!(俺だって諦めるつもりはねぇ!ショウと一緒に強くなるって決めたんだ!!)」

 

「……うん、それなら大丈夫。今のあなたとショウの気持ちは一緒……その想いを、もっとお互いに感じ取ってみて?そうすれば、きっと道は拓かれるわ」

 

お互いに……って、そうか!アニポケのあの現象を参考にすれば……!!

 

「うんうん、さすが~!すぐに気付けるところは満点だよ~」

 

そう言って、朗らかに笑うヒカリ。……まったく、ガワが変わっても、笑い方は全く変わらねぇんだな。そういうところだぞ。

 

「……行くのね?」

 

「ワン(おう)」

 

「あなたたちに惜しみない幸福と武運の長久を……頑張ってね」

 

「ワオォンッ!(任せろー!)」バリバリ!

 

俺の中の電気が全身を駆け巡り、体が活性化していくのを感じる……今度は遅れを取らねぇ。ショウと一緒に、どこまでも上を目指してやる!

俺の意識が覚醒に近づいているのだろう……目の前の景色がぼやけてきた。完全に見えなくなるまで、俺はずっとヒカリの顔を見つめ続けた。彼女は……どこか寂しそうで、けれど嬉しそうな笑顔を見せている。そうしてやがて、ヒカリの顔が見えなくなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ショウをお願いね、コウちゃん(・・・・・)

 

「任せとけ、ミツ姉(・・・・)

 

「……ありがとう……!」

 

その会話を最後に、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジンオウガが倒れ、ショウが倒れ、既に五分以上が経過している。止めを刺すでもなく状況を見守っていたクロノは、小さくため息をついた。

 

「(……結局、こんな結末か)」

 

クロノは内心で、ひとりごちた。

 

「(ハンターでないにもかかわらず、この俺様を追い詰めた人間。……なぜだ、俺様はこの展開を望んでいたはずだ、なのに……この胸の内に去来する空虚はなんだ?なぜ、俺様はこんなにも虚しさを感じている?なぜ、俺様はショウの死を惜しんでいる?)」

 

それは、クロノにとって初めての感情だった。

 

初めは、ただ殺すことだけを考えていた。シュレイド城から逃亡した先で、あのハンターと同じ目をした人間の少女と出会った。己を追い詰める巨剣と、それを振るうハンターの目……あの感覚を思い出した時には、既に少女に呪いをかけていた。

ただの人間の子供……そう思っていたが、呪いをかけてからなかなかにしぶとく長生きした。祖龍が送り込んだモンスターをすべて捕獲する頃になって、ようやく呪いの力が表れ始めた。呪いは進行していたにも関わらず、その効果が表沙汰になるまで随分と時間がかかったものだ。

そして、件の人間が仲間を引き連れてこちらと同じ次元にやって来ると聞いた。その瞬間から、遺跡平原に移動していたティガレックスを巨大化させたり、個人で手持ちポケモンを用意したりと、とにかく時間を稼ぐための準備を進めた。だが、少女はポケモンやモンスターを戦わせるのが上手く、あまり時間稼ぎにならなかった。

そこでカロス地方というメガシンカ発祥の地へ趣き、メガシンカ使いにバトルを挑んで己を鍛え上げた。その過程でチャンピオンともバトルをしたが……。

 

「(……俺様自身、意識が変わったのはその頃か)」

 

カロス地方のチャンピオン・カルネ。彼女は強くなるために選んだクロノの手段を非難しながらもその想いまでは否定せず、むしろ肯定した。決してクロノは弱くはないと、クロノを認めてくれたのだ。

 

「(正々堂々、真っ向勝負……そのために、俺様の生体エネルギーを使って、あいつらの極限状態を治してやったんだったな。……結局負けてしまったが、悔しいと思えど憎らしいとは思わなかった……)」

 

負けを認めることはすごく悔しいことだったが、それで勝者に対して憎悪が湧いたかといえばそうではなかった。ショウの言うとおり、次に勝つにはどうすればを、無意識に考えていたのだ。

 

「(……あぁ、そうか。俺様はアイツを……ショウを、好敵手だと思っていたのか)」

 

好敵手、ライバル。勝ちたいと、負けたくないと思える相手。クロノは己の知らぬうちにショウをそのような相手だと認識していたのだ。しかし、そのショウは倒れたまま動かない。失って初めて気づく、ということを、クロノは実感していた。

 

「……イビルジョー、丁重に葬ってやろう。死肉を漁られぬよう、骨も残すなよ」

 

「…………」

 

「……?イビルジョー?」

 

クロノはショウとジンオウガを始末するよう指示するが、イビルジョーは動かない。それどころか、倒れて動かないはずのショウたちを警戒しているようだった。

 

「どうした、イビルジョー……なにっ?」

 

クロノもイビルジョーの異変に気づいてショウたちをじっくりと観察し……そこで気がついた。

僅かにではあるが、一人と一頭の体が動き始めたのだ。

 

「なっ……ば、馬鹿な……!?」

 

「……うっ……ぐっ……!」

 

「グ……グウゥ……!」

 

ショウも、ジンオウガも、少しずつ体を起こし始め、長く長く時間をかけてようやく起き上がった。その間、クロノは何もせぬまま事態を見守っていた。

 

「なぜだ……心臓の痛みで気絶しただろ!なぜ立ち上がれる!?」

 

「……今、だって……痛い、よ……でもねぇ!!

 

立ち上がり、顔を上げたショウ。呪いが進行したのか、顔の左半分にまでひび割れが及んでおり、呪いの影響か左目の瞳が紫に変色していた。それでも……その顔は、"諦め"という感情が皆無だった。

 

「ジンオウガが"勝ちたい"って……"負けたくない"って叫んでるんだ!そして、それは私も同じ……私だって"勝ちたい"!"負けたくない"!」

 

「ワオゥン!」

 

「……っ。愚かな……お前もジンオウガも、共に満身創痍!この状況で極み喰らうイビルジョーに勝とうなど、笑止!!」

 

ショウも呪いに冒され、ジンオウガも瀕死一歩手前。この状況で逆転するなど、普通に考えれば無理だろう。……だが、この一人と一頭は例外だった。

 

「それでも!私たちは勝つっ!!絶対に諦めない!!」

 

「なにを……」

 

 

 

 

「私たちは強くなる……!」

 

「(俺たちは強くなる……!)」

 

 

「私たちは負けない!」

 

「(俺たちは負けない!)」

 

 

「私たちは絶対に諦めない!」

 

「(俺たちは絶対に諦めない!)」

 

 

「私たちは……!」

 

「(俺たちは……!)」

 

 

「(「絶対に勝つ!!」)」

 

 

 

 

「「うおおおおっ!!/ウオオオオッ!!」」

 

 

 

 

推奨BGM

【XY&Z】~ポケットモンスター(アニメ)~

 

 

 

 

その時だった。ショウとジンオウガの姿が重なり合うと、ジンオウガが激しい閃光に包まれた。閃光は電撃となり、様々な色を経て最終的に蒼穹と呼べる鮮やかな色合いの電撃に変化した。

電撃に包まれているために姿は見えにくいが、明らかに本来のジンオウガとは逸脱した姿へと変化していた。この変化に、クロノは目を見開き驚愕に体を震わせた。

 

「な、なんだ……なんなんだ、その姿は……!?」

 

「私たちはどこまでも強くなる……どこまでも限界を超えてみせる!!」

 

「く、クソッ……イビルジョー!りゅうのはどうだ!!」

 

「ギャオオオンッ!!」

 

イビルジョーが放ったりゅうのはどうが、ジンオウガに迫って来る。この時、ショウは不思議なものを見ていた。

 

「(これって……)」

 

まるで自身にりゅうのはどうが迫ってくるような光景が、ショウの視界に映っていた。それを見て、ショウは今見えているものがなんなのかをすぐさま察した。

 

「(そうか、これはジンオウガの目線……ジンオウガが見ているものが、私にも見えている……!)躱せっ!!」

 

「ワオンッ!」

 

りゅうのはどうが届くよりも早く、ジンオウガの姿が掻き消えた。あまりの速さに、クロノも極みイビルジョーも思わず目を剥いた。

 

「なっ、はや――」

 

「きりさく!!」

 

「ワオオォンッ」

 

ショウはジンオウガに指示を出すと同時に、自身も左腕を引きながら構えを取る。それに合わせるように、ジンオウガも左前足を引きつつ極みイビルジョーに接近し、共に腕を突き出し極みイビルジョーを切り裂いた。

 

「グギャアッ!?」

 

「ばかな……なんだこれは!?何が起こっている!?」

 

「かみなり!!」

 

「ワオオオォンッ!!」

 

「ちぃ……!はかいこうせん!!」

 

「グギャアオオオンッ!!」

 

動揺するクロノをよそに、ジンオウガはかみなりを放った。クロノもイビルジョーにはかいこうせんを指示し対抗するが、かみなりとはかいこうせんはぶつかりあった瞬間に爆発を起こし消滅した。実力が完全に互角になっている証左だった。

 

「「げきりん!!」」

 

「「ウオオオオオッ!/ギャオオオオオッ!」」

 

ジンオウガと極みイビルジョーは、お互いにげきりんを発動し激しくぶつかり合う。ジンオウガが前足でイビルジョーを攻撃すれば、イビルジョーも反撃に顎の刺や尻尾を振り回す。

 

「グウッ……!」

 

「うぐっ……!」

 

ジンオウガがイビルジョーの攻撃を受けた時、ショウの体に痛みが走った。それは、ジンオウガがイビルジョーの攻撃を受けた箇所と、同じ場所からだった。

 

「(これは、ジンオウガの痛み!)」

 

「ジェノサイドブラスター!!」

 

「グギャアアアオオォッ!!」

 

「クロスハイボルト!!」

 

「ウオオオオオオンッ!!」

 

両者が距離を取ると、すかさず極みイビルジョーが龍属性ブレスをまっすぐ放てば、ジンオウガもクロスハイボルトで真っ向から対抗し、両者の間で激しい爆発が起こった。

 

「くっ……まさか、極み個体か……!?だが、その姿は見たことない!」

 

「もっとだ……もっと、もっと強く!らいそうしでん!!」

 

「ワオオオォンッ!!」

 

「だいちのちからだ!」

 

「ギャオオオォンッ!!」

 

極みイビルジョーのだいちのちからに対し、ジンオウガは素早い動きであっという間に距離を詰めると雷葬死電を叩き込んだ。空中で態勢を立て直したジンオウガにすかさずショウの指示が飛ぶ。

 

「そこから、ごうらいちょうだん!!」

 

「ワオオォンッ!!」

 

「グギャウッ!?」

 

「くっそおぉっ!ドラゴンダイブだ!!」

 

「……ッ!ギャオオオウッ!!」

 

雷葬死電のモーションから素早く別の技である轟雷跳弾に切り替え、背中から極みイビルジョーにダイブした。直撃をもらった極みイビルジョーだが、すぐさまドラゴンダイブを発動する。技の発動を察知したジンオウガは素早く極みイビルジョーから離れ、技に備えて構えを取った。

 

「こっちも迎え撃つ!ボルテッカーッ!!」

 

「ワウッ!ワオオオオオォォンッ」

 

ショウの、地面に手を付くような動作に合わせてジンオウガも動き、ボルテッカーで突撃し極みイビルジョーを迎え撃った。ドラゴンダイブとボルテッカーがぶつかり合い、激しく火花を散らした。

 

「ジンオウガッ!もっと、もっとよ!!私たちはどこまでも強くなるッ!!」

 

「ウオオオオオンッ!!」

 

「……ッ!?グギャアアッ!!」

 

「なんだと……!?」

 

技と技のぶつかり合いは、大爆発という現象を起こした。余裕を持って煙から飛び出したジンオウガに対し、極みイビルジョーは受身を取れずに地面を転がった。

 

「行くよっ、ジンオウガァッ!!」

 

「ワオォンッ!!」

 

「奥義っ!装填っ!!」

 

「ウオオオオォォォンッ!!」

 

ショウの言葉を合図に、ジンオウガが最大限まで充電を始めた。電力を限界まで溜めると、ショウの動きに合わせて両前足を引き、駆け出す構えを取った。

 

「いっけええええええっ!!」

 

「ウォンッ!!」

 

「……ッ!!イビルジョー!ギガインパクトだぁ!!」

 

「ギャオオオオオオッ!!」

 

ジンオウガが一気に駆け出し、数秒と立たずに最高速に達した。極みイビルジョーも、ギガインパクトでジンオウガを迎え撃つ。

 

 

雷迅(らいじん)ッ!!」

 

「ウワオオオォォンッ!!」

 

 

ショウが両腕を前に突き出すと、ジンオウガも両前足を前に突き出し跳躍した。そのまままっすぐ、両前足の爪に集められた電気が巨大な刃を生成した。さらに刃はジンオウガの揃えられた前足を中心に合体して巨大な矢尻の形状を取り、ジンオウガはそのままの勢いで突撃した。

交差は一瞬……。

 

「……グギャオオオオオンッ!?」

 

「イビルジョーっ!?」

 

そして、決着も一瞬だった。数秒の硬直後、極みイビルジョーを激しい雷電が襲い、大爆発を起こした。その間、ジンオウガはショウの下まで戻り、イビルジョーの様子を警戒する。

 

「……グ、ギャオ~……」

 

煙が晴れた先では、目を回して気絶する極みイビルジョーの姿があった。

 

「……なん……だと……?」

 

「……ぁ、はぁ……はぁ……!か……勝った……!!」

 

「……だな。イビルジョーは戦闘不能……お前の勝ちだ、ショウ」

 

「は……はは……!やっ、と……勝て……」

 

「ワウンッ!?……ワ、ウ……!」

 

極みイビルジョーとのバトルに勝ったショウだったが、消耗は激しかったのかそのまま気絶してしまった。ジンオウガも異変に気づいて近寄るが、姿が戻ると同時にジンオウガもまた気を失ったのか倒れてしまった。

 

「……グルルルル……!」

 

「よせ、イビルジョー。……このバトル、俺たちの負けだ。それでいい」

 

「……ギャウ」

 

勝利しながらも倒れたショウたちにプライドが傷ついたと感じたのか、イビルジョーが攻勢の構えを取るがクロノに制された。そのことから、渋々といった様子で引き下がっていた。

 

「……まったく。大した人間だよ、お前は。……次は負けねぇぞ」

 

それから、クロノは空を見上げると虚空に向けて語りかけた。

 

「おい、そこで見てるんだろう……アカイ、否……バルカン」

 

「……やれやれ、気づいていたか」

 

近くの岩場から姿を見せたのはアカイ……もとい、ミラバルカン。彼はすぐにショウとジンオウガの状態を確認すると、クロノ……ミラボレアスの方へと振り返った。

 

「意外だったな」

 

「なにが」

 

「お前なら、ここぞとばかりにショウの息の根を止めようとすると思ったのだが?」

 

「……そんなことしねぇ。これ以上見損なうんじゃねぇよ」

 

「(随分と成長したものだ……この短期間で何があったやら)」

 

ミラバルカンは事実、ミラボレアスの急速な精神面での成長に驚いていた。どこの誰によるものかは定かではないが、頭を垂れて礼を述べたい気分になったのは久々だった。

 

「では、ショウとジンオウガは連れて帰らせてもらうぞ」

 

「……待てよ、俺様も行くぞ」

 

「……どういう心算だ?」

 

「別にどうということはない。……ただな」

 

クロノはニッ、と口角を上げる。そこには以前のような底意地の悪さは欠片もなく、まるで「しょうがねぇな」と言いたげな雰囲気だった。

 

「ショウとソイツに、ケジメ(・・・)をつける機会をくれてやろうと思ってな」

 

「……勘弁してくれ……」

 

またミラボレアスがいらんことをするのでは、と嫌な予感が脳裏をよぎったミラバルカンは頭痛がする思いだった。

様々な思いが絡む中、一行はメゼポルタへの帰路に着いた。

 

 

 

 




VSイビルジョー、無事に勝利!!最後に出てきたジンオウガは……皆さんご存知、アニポケオリジナルの、アレです。詳細の説明は、本編中に明らかになったタイミングで!

最後にアンケートを投下します。ついでにシングル63ルールで誰を選出するか、皆さんの意見も聞いてみたいですね。


――ショウとクロノのバトル中、同時刻――

「ソウヤ・ニシノ」

「おや、君は……」

「シズカ・ミズハシ……いえ、水橋静香」

「え?」

「西野颯也、トラック運転手、飲酒運転でファミリーレストランに突っ込み死亡、享年56歳……」

「……まさか、君は……!?」

「ようやく出会えた……兄さんの仇……!!」



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それぞれの決着(ケジメ)

過去の罪を、清算する時だ……!





「……っ」

 

なんだか、長く眠っていたような気がする……少しずつ覚醒に近づく意識を自覚しながら、私はゆっくりと目を開けた。そこはメゼポルタの宿のようで、私が寝泊まりしている部屋でもあった。

 

「……!そうだ!バトル……」

 

「お前の勝ちだよ、ショウ」

 

「……!?クロノ……!」

 

起き上がった私が一番に気になったのは、もちろんバトルの勝敗だ。少し曖昧ではあるが、クロノのイビルジョーを倒した……かもしれないところまでは覚えている。そんな私の記憶を補強してくれたのは、クロノだった。窓縁に腰掛け、暇だったのかあくびをしながらこちらを見ている。

 

「なぜ――」

 

「待った、俺は聖徳太子じゃないからな。一問一答といこうぜ」

 

「……わかったわ、じゃあ一つ目。……なぜここに?」

 

「そりゃあ、俺様もついてきたからな」

 

「ついてきた!?」

 

クロノ曰く……ポケモンバトルは私の勝ちに終わったが、どうやらバトル後に私はジンオウガ共々気絶してしまったらしい。そこで私の様子を見に来ていたアカイさんが、私とジンオウガをメゼポルタまで運んでくれたそうだ。その際にクロノもついてきたらしく、みんなには「アカイの弟」として紹介したそうだ。

……兄弟、か。なんか、そう言われるとそう見えるし、そうでもないように感じる……。アカイさんとクロノ、不思議な関係だなぁ。

 

「私、気絶しちゃったんだ……」

 

「おう、三日な」

 

「三日も気絶……え"っ、三日もぉ!?」

 

「そりゃあ、黒龍の呪いを限界まで弱体化させつつショウの状態を把握したり、治療が必要なら施したりと忙しかったからな」

 

私、三日も気絶していたの……!?慌てて外を見ると、最後の記憶と同じ夜の景色が広がっている。うぅ……ただでさえ時間がないのに……!

 

「あ、あと四時間くらいで0時回るから、実質四日だな」

 

「完っ全に寝過ごしてる!!」

 

「まぁ、落ち着け。ココアでも飲んでリラックスしな」

 

「これが落ち着いていられ――」

 

「大事な話があるんだ」

 

……真剣な表情のクロノに、私も思わず黙り込む。あのバトルの間の様子といい、一体クロノの身に何があったのか……いや、それよりも大事な話があるんだった。

 

「大事な話って?」

 

「あぁ……だが、その前にお前が聞きたいことを全部聞いとかないとな。他にはないか?」

 

「他……じゃあ、ジンオウガは……?」

 

「ぐっすりだぜ。……お前よりはだいぶ寝ているがな。まぁ、無理もない。角を折られたから、その再生に時間を使っているんだ。まだ二時間は起こしてやるなよ」

 

ジンオウガ……かなり無理をさせちゃったからね……今はしっかりと休んでね……。

 

「わかった。それじゃあ……クロノはどうしてお母さんのことを知ってたの?」

 

「お前のお袋さんにも喧嘩売ったからな」

 

「えぇ~……」

 

「つーか、お前のお袋さん何者なんだよ……りゅうのまい一回積んだギャラドスに、俺様のメガシンカポケモン軍団を全タテされたんだが?」

 

「……それは、ご愁傷様。あと、お母さんは普通の人間だよ」

 

……内心、娘の私自身も疑わしくなってきた。私でさえ特殊個体の手持ちを半分に減らされたのに、お母さんは普通のギャラドスで全タテって……。

 

「……まぁ、それもあの稲妻光輝の従姉とくればさもありなん、といったところか」

 

「イナヅマコウキ?」

 

誰……?お母さんに従兄弟はいないはずだけど?

 

「お母さんに親戚従兄弟はいないけど」

 

「あー……うん、実はそのことで話があるんだ。さっき言ってた、大事な話ってやつだ」

 

「……どうして?」

 

「せっかくだから、お前とジンオウガに一つ、ケジメをつけさせてやろうと思ったんだ。俺様なりの気持ち、ってやつさ」

 

「ケジメ……?」

 

私がつけなくちゃいけないケジメ……?それと、どうしてジンオウガに関係が……?

 

「……っと、その前に。とある前提条件があるんだが、ひとまずはそれを受け入れてくれ。これから話すことはすべて真実であり、嘘など欠片もない。信じる信じないは勝手だが、信じなければ話にならないし話も進まない。

つまり……一切の疑問疑惑を捨てて、これから俺様が話す内容を掛け値なしに信じること。これが条件だ」

 

「……話して」

 

すこしだけ迷ったけど……三日前のバトルでのクロノの様子や今の真剣な表情から、信じてみようと思った。私が信じる姿勢を見せたからか、クロノはニィッ、と笑った。

 

「それじゃあ……話そう。……あっ、そうそう。ショウ、一つ聞くぜ」

 

「なに?」

 

「お前……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前世って信じるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メゼポルタのショウが寝泊まりしている部屋の前に佇み、何度もノックしようとした手を上げては下ろす。三日前の夜、突然ショウが姿を消した……かと思えば、気絶した状態でアカイさんに運ばれてきた。ジンオウガも酷い怪我を負っていて、とても回復道具だけで回復しきれるような傷ではなかった。こういう時、モンスターは睡眠をとることで体力を回復し、再生力を促進させるらしい。なのであえてボールから出し、回復道具で回復させた上でジンオウガを眠らせている。

……また、おれ達の知らないところでショウが頑張っていた。どうやらショウは果たし状を受け取り、ポケモン勝負をしていたそうだ。対戦相手はアカイさんの弟だというクロノ。アイツとの勝負の途中で呪いが進行したらしい。勝負には勝ったものの、気絶してしまったのはそのためだ。

アカイさんが気絶したショウを連れて帰ってきたとき、その姿を見て身の毛がよだった。ひび割れが顔の左半分にまで達していたからだ。さらに呪いを抑えたシロちゃん曰く、呪いによるひび割れは下半身はふくらはぎまで、上半身も顔面左半分・左前腕・右二の腕にまでひび割れが達している。前面にまで及んではいるが、かろうじて心臓部に達していないところからまだ大丈夫らしいけど……状態から察するに、次の零時で残り一週間になるらしい。

 

ショウが気絶している間、おれは足繁くショウの元へ通いつめていた。出来ることなんて知れているけど、何もしないよりはいいはずだから。……でも、このままショウが目覚めなかったら……そんな不安がこの三日間ずっと続いていて、その不安を少しでも和らげたいから、こうして看病目的でここにいるのかもしれない。

 

「……ダメだな、情けないぞおれ……」

 

ショウはもっと不安だろうに、おれの方が参ってどうするんだ……!意を決して扉を開けるためにノブに手を掛けようとした、その時だった。先に扉の方が開き、中からクロノが姿を見せた。

 

「……お?お前、確か……テル、だったか」

 

「あ、あぁ……えっと、クロノはどうしてここに?」

 

「概ねお前と同じ目的だぜ。……あと、ショウは起きたぞ」

 

「本当か!?」

 

「うわっとぉ」

 

思わずクロノを押しのけて部屋の中へ入ってしまったが……そこには体を起こしてベッドの上に座るショウの姿があった!

 

「ショウ!」

 

「……先輩」

 

「……ショウ、どうした?」

 

ショウは……なんだか元気がなさそうだった。……無理もないか、多分クロノから残り時間を聞かされたのかもしれない。それに、あんなこともあったから……。

 

「……ショウ、気分はどうだ?」

 

「……まぁ、ぼちぼち、ですかね……。それより先輩、私が眠っている間のこととか、なにかありましたか?」

 

「……えっと……」

 

どうする……本当のことを伝えるべきか……?いや、でも、それでショウが傷つくなんておれには……。

 

「起きたか、ショウ」

 

「アカイさん」

 

「うっ……」

 

おれが言い淀んでいると、アカイさんが姿を見せた。後ろにはクロノもいる……アイツが連れてきたのか。

 

「起きて早々に悪いが、降りてきてもらえるか?状況を説明したい」

 

「……何かあったんですね?」

 

「あぁ……想像しうる限り、最悪の事態だ」

 

「分かりました、行きます」

 

「ショウ!無理に起きなくても……」

 

「大丈夫です、先輩。……片目が使えないのは、ちょっと不便ですけどね」

 

そう言ってショウは小さく微笑んだ。……今のショウは、呪いの影響で左目の瞳が変色してしまっている。悪い影響がないとは言い切れないので、包帯で眼帯のように顔の左半分を包んでいる状態だ。それでも、ショウはしっかりとした足取りで床に足を付き、立ち上がった。

 

「行きましょう」

 

「了解した」

 

「……いや、なんで立てるんだよこいつ……母娘揃って化物か……?」

 

おい、クロノ。失礼な事を言うな、ショウは至って普通の女の子だぞ。

おれたちは揃って一階にある食堂へ向かう。……これからする話、ショウにとってはかなりキツイだろうな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂に着くや否や、セキさんとカイさん、そしてニールさん達ハンターの皆が駆け寄ってきてくれた。……あれ?

 

「ショウ!大丈夫か!?」

 

「呪いが酷くなったって聞いて、いてもたってもいられなくなって……」

 

「ここまで酷くなるとは……ショウ、本当に済まない……!」

 

「……えっと、シズカさんは……?」

 

「……あ、えっと……」

 

そう、食堂に入ってからシズカさんの姿が見当たらないことに気づいたのだ。そこでシズカさんはどうしたのかと尋ねれば、ニールさんが気まず気に目を逸らす。……なにかあったな、これ。

 

「ニールさん、その腕は……」

 

「えっ!?いや、全然たいしたことないさ!ははは……!」

 

ニールさんも、なぜか左腕に包帯を巻いている。……若干だけど血が滲んでいる所を見るに、まだ傷は塞がっていない……最近出来た傷かな?

 

「……姉様はただいま寝込んでいます。誰かさんのせいで……ね!」

 

そう言うネネさんは憎々し気にニールさんを睨みつけた。ニールさんはまたも目を逸らし居心地が悪そうだ。

 

「えっ、シズカさんがっ!?何があったんですか……!!」

 

「……えーっと、話すとめちゃくちゃ複雑でわかりにくいんだが……いいかな?」

 

「構いません、聞かせてください」

 

「……わかった」

 

それから、ニールさんは話し始めた。時は遡ること三日前……時間的に、私がクロノとポケモンバトルをしている最中のこと……

 

 

 

 

――三日前――

 

 

 

 

「ソウヤ・ニシノ」

 

「おや、君は……」

 

その日の夜、シズカは荷物を整理しているソウヤに話しかけた。ソウヤは荷物整理を一度止めて、シズカと向き合う。

 

「ハンターさんだね。初めまして」

 

「初めまして。私は、シズカ・ミズハシ……いえ、水橋静香」

 

「え?」

 

その名乗り方に、ソウヤは違和感とかすかな希望を抱いた。違和感は、『この世界』では珍しい家名を名乗ったこと。希望は、ひょっとしたら自分と同類かも知れないということ。

 

「(僕や彼以外にも転生者がいたのか……お互いの前世のこととか、色々と話せないかな……)」

 

ソウヤの胸中は、少しずつではあるが期待が膨らんでいた。……ただし、シズカはソウヤの期待に応えるというより、むしろ……。

 

「西野颯也、トラック運転手、飲酒運転でファミリーレストランに突っ込み死亡、享年56歳……」

 

「……まさか、君は……!?」

 

自身の経歴……それも、前世の死因までつらつらと述べるシズカに、ソウヤはある可能性に思い至った。そして、それは的中してしまうことになる……。

 

「ようやく出会えた……兄さんの仇……!!」

 

それまで顔を伏せていたシズカが顔を上げると……その表情は憤怒と憎悪に染まりきり、左手には剥ぎ取りナイフを持っていた。今にも刺しかねない勢いだ。

 

「兄さん……それじゃあ、君は……!」

 

「そうだ……私は、お前が前世に道連れにした五人の高校生たち……その内の一人、水橋流静の妹、水橋静香だ!

……ずっとずっと、心のどこかで願っていた。兄さんの仇を討ちたいと……けど、それは叶わない願いだと、どこかで諦めようとしていた……。私は転移者で、相手は転生者……転生なんて、黙っていればわからないし生まれた時代によっては会えないこともざらにある……前世の記憶がない可能性だってある……だから、諦めかけていた。

……フ、フフ……アハハハハハ!だが、天は私を見捨てなかった!私の味方だった!だって、こうして!お前と私を引き合わせてくれたのだから!!」

 

ナイフを突きつけ、一歩ずつ近づいていくシズカに対してソウヤは一歩も動かない。恐怖で動けないのではなく、動く気配すらなかったのだ。

 

「……そうか、君が……。いつかは、こんな日が来るんじゃないかと思っていたけど……やっぱり、そういう運命なんだな……」

 

「は……?」

 

「……僕はね、最初に転生したことに気づいたとき、思ったんだ。……"どうして僕なんだ"……って」

 

「どういう意味だ……」

 

「……ままならない人生に仕事疲れ……どんなことがあってもお酒に逃げないって決めてたのに、あの日だけはそれを破ってしまった。……バチが当たったんだな、僕だけで完結しなければならない問題だったのに、五人もの少年を巻き込んでしまった。そんな僕は、地獄に落ちて当然だ。……なのに、こうして転生してしまった。どうして僕を地獄に落としてくれなかったのか?それともこれは、生き地獄という意味なのか?

……色々と悩み、考えながらも僕は今日まで生きてきた。いつか、僕が殺してしまった彼らが僕と同じように転生した時のために、前世と同じ名前を使い続けた。……彼らが望むなら、復讐も受け入れるつもりで」

 

「お前……ッ!!」

 

ギリッ、とシズカが歯軋りする。その表情はますます怒りと憎しみを募らせていて、いつ爆発してもおかしくはない。

 

「ふざけるな……今更殊勝なフリでもする気か!」

 

「まさか、そんなんじゃないよ。あの時の僕は、紛れもない悪だった。普通、そんな奴が死んだら転生なんて許されず地獄に落ちるのが正解だ。……でも、僕は転生した。転生してしまった。それならきっと、この転生に意味があるはずなんだ。最初に言ったとおり、彼らの復讐を待ちながら、けれど前世の罪滅ぼしのために生きなければならないと……。

そのために、僕は商人を始めた。まさかモンスターハンターストーリーズ2に転生するとは思わなかったけど、少しでも主人公たちの手助けができたらと思ってね」

 

自嘲するように笑みを浮かべるソウヤに対し、シズカは苦い顔をしている。少なくとも、ソウヤ自身に罪悪感と罪の意識からくる償いの意思が感じられたからだ。それでも、一度出した手を引っ込めるつもりはなさそうだが。

 

「……それで、そのナイフで僕を殺すのかな。僕は構わないけど……後の処理とか、大丈夫かい?ちゃんと考えてきてる?もしそうじゃないなら、衝動に身を任せずにきちんと計画を練ってからにした方がいい。特に君はハンターだ……ハンターが一般人を手にかけるのは御法度だ。殺るにしても、ちゃんとバレないように――」

 

「黙れっ!!」

 

ソウヤの言葉を遮るように、シズカは吠えた。ソウヤが驚きに目を見開く中、シズカはまくし立てるように言葉を紡いだ。

 

「さっきから黙って聞いていれば……いい加減にしろっ!勝手に生きるのを諦めたかのようにほざきやがって!お前みたいなやつに殺された兄さん達が哀れすぎる!!復讐を受け入れる……その心意気は買ってやる。

だがな!死者に対して申し訳ないという気持ちがあるのなら、生きることを諦めるようなことをするな!!無様に生にしがみついて見せろ!逆恨みして逆上して見せろ!!そうでなければ、私は……!!」

 

「……っ。君こそ何を言うんだ!復讐に正当性を求めるなんて、それこそ綺麗事じゃないか!!君は僕を殺したいんだろう!?殺したいくらいに憎くて、許せないんじゃないのか!君の怒りは……憎しみは、僕の懺悔一つで揺らぐ程度のものなのか!?

その手にナイフを持っているのは何のためだ!家族を殺した仇に復讐して、死んだお兄さんの無念を晴らすためじゃないのか!!本当に許せないと怒り心頭に達した人は、相手がどれだけ反省し、懺悔し、許しを乞うても決して許さないものだ!!君のように物理的に仕返しをしようと考える人だっている!君だってその一人だろう!?

これから殺されようとする僕が言うことじゃないけど……躊躇うな!一度決意と覚悟を抱いたなら、失敗しても間違ってもいいから行動しろ!もしも失敗しても、間違えたとしても……きっと、君を想う誰かが君を止めてくれるはずだ。だから、遠慮するな。君が正しければ僕は殺され、君が間違っているなら誰かが君を止めてくれる……だから!!」

 

「うわああああああああっ!!」

 

シズカはナイフを構え、ソウヤに向けて突き出した。ソウヤは覚悟を決めたように静かに目を閉じる。そのまま、シズカのナイフがソウヤの心臓に突き立てられ――

 

グサッ――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シズカッ!!」

 

――ることはなかった。横合いからニールが左腕を伸ばし、その腕にナイフを刺したからだ。

 

「ぐっ……!!」

 

「……ッ!?ニール、さん……!!」

 

「なにを、やっているんだ……君はっ!!」

 

「うっ……!」

 

シズカは反射的に腕を引いてしまい、その結果ナイフはニールの腕から抜かれた。ニールは防具を着ておらず、私服と思しき軽装を身に纏っているだけだ。ナイフが抜かれた腕から血が流れ、ポタリポタリと大地を濡らす。

 

「あなたは……」

 

「……商人さん、下がっててくれ。彼女のことは、俺が」

 

「だが、僕は彼女を……」

 

「下がれっつってんだっ!!」

 

「……っ」

 

ニールの剣幕に押され、ソウヤは何度かシズカに目配せしながらも荷物の背後に隠れた。それを察したニールは、改めてシズカと視線を合わせた。

 

「……さて、説明してくれるよな?」

 

「……あいつは、あの男は!……兄さんの仇、殺さなければならない……!」

 

「どんな理由であれ、殺しが正当化される訳無いだろ!第一、君はハンターじゃないか……無辜の民をモンスターの脅威から守るハンターが、その民に手を掛けちゃダメだろう……!」

 

「あいつは違うっ!あいつは例外だ!自分の胸中にあるストレスを酒にぶつけた結果、無関係の少年たちを五人も巻き込み死なせたクソッタレだ!!あんな奴が、無辜である筈がない……!」

 

「ちょ、ちょっと待て、彼は亜大陸の人間だろう?シズカは亜大陸人じゃないし、なのにどうやって彼が君のお兄さんを……」

 

「……あいつは、転生した」

 

「え?」

 

そこからは、ニールの理解を超える話の連続だった。

亜大陸の商人ソウヤ・ニシノは転生者で、前世でシズカの兄を含む五人の少年を飲酒運転による事故に巻き込み死亡させ、自身も死んだ男であること。そして、シズカはソウヤに殺された五人の少年の一人、水橋流静の妹である水橋静香であること。ただしシズカは転生ではなく転移という形で、ソウヤの前世の世界から『この世界』に15歳の時にやってきたこと。ハンターとして生きていくうちに『この世界』に順応したものの、心の片隅では復讐を捨てきれなかったこと……。

 

「そして、私とそいつは出会った……これは、私の復讐を成せる千載一遇のチャンス……例えニールさんでも、その邪魔はさせない……!」

 

「……だったら、俺が来るまで問答なんてしないで、さっさと殺せばよかっただろ」

 

「それは……ッ」

 

ニールの指摘に、シズカは言葉を詰まらせた。それを見て、ニールもすかさず畳み掛ける。

 

「君が、さっきまで叫び散らすほどに本気で怒り狂っているなら、彼が一人でいる隙を突いてさっさと始末すればよかったんだ。けど、君はそうしなかった。……それは、彼が後悔から改心しているのかを確かめたかったからだ。

彼が後悔から反省して改心し、今を必死に生きようとしているなら……優しいシズカのことだ、きっと責めはしても殺しはしないだろう。逆に開き直って反省の色がなければ、殺しても自分が抱く罪悪感は軽くなるだろうし、少なくとも殺した後に後悔することはない。君はそこまで考えられるくらいには、賢い女の子だ。

だから、今君が怒っている理由は……ソウヤさんが反省し改心して、罪滅ぼしのためにできることをしているのに、それらをあっさりと捨てて君に殺されようと……生きることを諦めようとしていたからだ」

 

「!!」

 

ニールの言葉に、荷物の裏に隠れるソウヤも大きく目を見開いた。ニールの言葉はまだまだ続く。

 

「少なくとも、シズカは罪滅ぼしのために生きようとしている彼を殺すほど、無慈悲な人間じゃないだろう?前世の事を忘れることなく、償うために必死に生きる彼を心のどこかで認めているんじゃないか?

だから、無責任も同然に死にたがった彼が許せなかった。なぜなら、シズカにとって死は償い(・・)ではなく、逃げ(・・)だからだ。死んで償うのは簡単だ、だからこそ生きて贖わせる……シズカの本心としては、そういうことじゃないか?」

 

「……あなたに……あなたに何がわかるんですかっ!!」

 

「わかるよ。少なくとも、シズカが本当に優しい人間だってことくらいは」

 

「……え……?」

 

思わず吠えるシズカだが、続くニールの言葉に呆然となる。ニールは穏やかに微笑みながら、ゆっくりとシズカに近づいていく。

 

「だって、君は傷ついた小型モンスターを見捨てられないくらい……ハンターに向いていないくらい優しいからさ。ケルビを守るためにナルガクルガに立ち向かったり、怪我をしていればジャギィだって助けるくらいだし、依頼主には逐一手紙を出す君だ……そんな君が、本気で人間を殺せるとは思えないんだよ……」

 

「…………」

 

「……なぁ、シズカ……もう、いいだろ?」

 

「……わ、私……は……!」

 

悲痛に顔を歪めながらも、シズカはナイフを持つ手を離さない。しかしその手は震えており、先程までの憤怒も憎悪も、すっかり霧散しているようだった。

 

「それでも、私は……私が、やらなきゃ……!だって、兄さん、転生してない……あいつと違って、兄さんは死んだまま……!そんな、そんなの……兄さんが、報われない……!」

 

「シズカ……」

 

「なんで……なんでなの……!?どうしてあいつが転生して、兄さんは……!一体兄さんは、何のために死んだのよ……どうして兄さんが殺されなきゃいけないの……!!」

 

「シズカ」

 

ニールがそっと優しくシズカを抱きしめると、ようやくシズカはナイフを手放した。そこで様々な感情が限界に達したのか、シズカは涙を流し始めた。

 

「かえして……かえしてよ……!わたしのにいさん……まだ17歳だったのに……!!」

 

「ああ」

 

「うっ……うぅ……!

うあああああああああああっ!!

 

ニールにしがみつき、大声で泣き声を上げるシズカを、ニールは黙って抱きしめ続けた。少しでも彼女に痛みが、苦しみが、悲しみが和らぐように。泣いて、泣いて、泣いて、泣き疲れて果てるまで、ニールはシズカを抱きしめ続けた。

 

 

 

 

――回想終了――

 

 

 

 

「……てわけで、シズカは精神的に参ってて休んでいるんだ」

 

「……そんなことが……」

 

シズカさん……お兄さんを死なせた相手が転生してて、自分の兄は転生していない……そんな理不尽を前にしても、堪えることができたんだ……本当に、凄い人だ。

 

「姉様の心の傷を癒すのは、アタシの役目なのに……!」

 

「すまないな、ネネくん。男の性だ、好いた女の前でくらいカッコつけさせてくれ」

 

「うぐぐ……!」

 

ネネさんは相変わらず悔しげにニールさんを睨みつけるが……ニールさんはどこか吹っ切れたのか、余裕たっぷりだ。

 

「それじゃあ、ニールさんが左腕を負傷しているのは、シズカさんの復讐を阻んだからなんですね」

 

「まぁね。実はそれほど傷は深くなくてね……きっとシズカも、本気で刺すつもりはなかったんじゃないかな」

 

そう言って、どこか安心したような顔で傷を眺めるニールさん。……本当に、彼は本当にシズカさんのことが好きなんだな……。

 

「ふむ……シズカ・ミズハシの不在は痛いが、止むを得ん。事は急を要する……特に、ショウにとってはな」

 

「それほどのことが起こったんですか……アカイさん、一体何が……?」

 

「あぁ……まったく、本当に質の悪いことだ」

 

アカイさんが深くため息をついている……一体何があったんだろう……。

 

「ショウ……実は、滅龍石輸送隊が襲撃を受け壊滅した。下手人は積荷の滅龍石を奪い、逃走した」

 

「――――」

 

私は一瞬、言われたことが理解できなかった。輸送隊が?壊滅?滅龍石が?奪われた?

 

「な、な、どっ……え、どうして……!?」

 

「目的は不明……しかも、犯人も一切分からないときた。正体がわからない以上、犯人の目的や動機が一切予想つかない」

 

「誰が……一体、誰がっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「煌黒龍、アルバトリオン」

 

 

 

 

 

 

 

 

私がアカイさんに問い詰めると、意外なところから答えが返ってきた。

 

「クロノ……?」

 

「ボレアス種と同じく禁忌のモンスターに名を連ねる古龍種だ。輸送隊を襲ったのは奴だ」

 

「……なぜ、貴様がそれを知っている?」

 

アカイさんが険しい表情でクロノを睨む。クロノは……遺憾だと言わんばかりの憮然とした表情を浮かべている。

 

「俺様が黒龍の禰宜の役割を担っているのは知っているな?当然、黒龍も俺様を介してお前たちを見ているわけだ。己が呪いを掛け、俺様を差し向けてでも殺そうとしたショウの実力……それを見誤っていた。

そのことに焦りを覚えた黒龍に、煌黒龍が接触した。黒龍が事の仔細を煌黒龍に告げた結果……ショウ、奴がお前に興味を持った」

 

「なぜわざわざ告げたのだ……!煌黒龍の性格を知らぬはずがないだろう!!」

 

「だな。あいつは大の下克上好きだ。……そして、それを捩じ伏せ叩き潰し、踏み躙ることはもっと大好きだ」

 

「ハンターでもない人間が禁忌の古龍の心情を動かす……そんなことを奴が知れば、こうなることはわかっていただろうに……!!」

 

「……黒龍も、焦っていたんだ。状況が見えていなかった。だから失敗した」

 

「それで済まされる問題か!!」

 

アカイさんが、クロノの胸ぐらを掴み上げた!対するクロノはされるがままで、一切抵抗しない……!

 

「貴様が犯した失態だ……貴様が責任を取れ!」

 

「……言わずもがな……」

 

「アカイさん、待って!」

 

私は二人の間に割って入り、アカイさんの手に自身の手を乗せる。それが意味するところ理解できないアカイさんではなく、私の方を見て驚愕に目を見開いた。

 

「ショウ!なぜ止める!?」

 

「クロノは黒龍の禰宜……つまり、黒龍の味方なんです!その彼が、危険を冒してまで私達に告げ口をしてくれたんですよ?放っておけば……黙っておけば、私はそのうち勝手に死ぬ……つまり、黒龍にとってこの状況は有利なはずなんです。

なのに、クロノはわざわざ私たちに教えてくれたんです。クロノは黒龍の代弁者……いわば、名代!その彼が教えてくれたということは、今回の輸送隊襲撃は黒龍としても不本意なものなんじゃないんですか!?」

 

そう、私が違和感を覚えたのはそこだった。さっき言ったとおり、どこの誰かも知らない輩によって滅龍石が奪われたことで、私の生存率は著しく下がってしまった。ミラボレアスにとって断然有利……むしろラッキーなこの状況を利用しないはずがない。

なのに、ミラボレアスはクロノを通して今回の事件の黒幕……煌黒龍アルバトリオンの話をしてくれた。……ひょっとしたら、クロノに変化が表れたように、クロノを介してミラボレアスにも変化が表れたんじゃないかな……?

 

「……!ばかな、黒龍が……?ショウの死を誰よりも望んでいるはずの、奴が……?」

 

「アカイさんも気づいているでしょう?クロノは変わりました……少なくとも、以前の彼ではありません。きっと彼を通して、ミラボレアスにも変化があったんじゃないでしょうか。

きっと、ミラボレアスはこう考えています。……"直接息の根を止めてやる"と」

 

「ショウ……」

 

「私は彼を……クロノを信じます!」

 

「ショウ、お前……」

 

言い切った私を前にアカイさんは逡巡するように目を閉じると……クロノを掴んでいた手を離した。

 

「……わか、った。では、クロノを信じるといった君を信じよう。……クロノ、犯人がアルバトリオンということは、行き先は……」

 

「当然、『神域』だ。奴はあそこで、ショウを待っている」

 

「私を……?」

 

「言っただろ、アルバトリオンがショウに興味を持った、って。奴はお前を挑発するために、お前が必要としている滅龍石を盗んだんだ。……お前が、確実に神域に来るように仕向けるために」

 

「本当か……?だとしたら、すごく厄介だな……」

 

ニールさんが、何か考え込んでいる……ひょっとしたら。

 

「ニールさんは、アルバトリオンとの交戦経験が?」

 

「あぁ、ある。ミラボレアスの前にな……あいつは、強かった。それだけは言える」

 

「ニールさんが言うほどですか……」

 

戦ったことのあるニールさんが、冷や汗を浮かべながらそう言った。……それほどの、敵なのか……アルバトリオン……。

 

「……とりあえず、ショウが行かないで済むならそれに越したことはない。ギルドに打診して、ハンターを派遣してもらえ」

 

「……そうだな、そちらは私がやっておこう」

 

「ま、待ってくれ!アルバトリオン討伐なら、俺が……」

 

「君は名目上、歌姫の護衛のためにここにいる。名目から外れた行動をするにしても、許可取りは必要だろう?」

 

「うぐっ……こ、こんな時まで正論で返さなくてもいいじゃないか……!」

 

「君のような類の人間は、感情を優先するあまり道理を蹴飛ばしかねないのでね。誰かが制する必要があるだろう?」

 

「グウの音も出ません……」

 

あぁ……ニールさん、あっさりと言いくるめられて……シズカさんだったら、アカイさんに言われるよりも先に許可取りに行くんだろうな。

 

「……とにかく、今日のところは出発できない。神域の場所なら、俺様やアカイが知っている。……焦るなよ、ショウ。俺様……いや、黒龍の呪いは、負の感情によって増幅される」

 

「負の感情?」

 

「あぁ……それも、不安・悲哀・恐怖といったマイナスに働く感情だ。逆に憤怒・憎悪といった、状況によってはプラスに働く負の感情に関しては無反応だ。……まぁ、とりあえず前向きにポジティブに、ってことだ。気持ちで負けるなよ」

 

「……まさかクロノに励まされるなんて」

 

「おいっ、ちょっと失礼すぎやしないか!?」

 

いや、だって、日頃の行いを考えればむしろ残当では……。

この話し合いは、今日のところは解散として終わった。……でも、私にはまだ、やるべきことがある。

 

「おい、行くのか?」

 

「クロノ……うん、まあね」

 

「そうか……まぁ、どんな結果であれ、俺様はお前を後押しするぜ」

 

「ありがとう……お母さんのこととか、いろいろ」

 

「ハッ!そういうことは、全部終えてからにするんだな」

 

「うん……行ってきます」

 

「きぃつけろよぉ」

 

私はしっかりとした足取りで外へ出る。向かう場所は、決まっている。

 

さあ……ケジメをつける時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あいつ、大丈夫かね?うーん……おっ!おーい、テル」

 

「うぇ!?えっと、クロノ……?おれに何か用か……?」

 

「おぅ、実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明るい月夜、今宵は満月、時間は……零時を過ぎている。……私は、あの人と一緒に夜道を歩く。私から誘ったのもあるんだけど……ホイホイ付いてくるこの人もどうかと思う。

 

「いやー、嬉しいねー!まさかショウちゃんの方から誘ってくれるなんて!」

 

「いえ……私も一度、あなたとお話したかったんですよ……ユージさん」

 

モンスターライダー、ユージ。この人を見た時から感じていたあの感情は、間違いなんかじゃなかった。クロノからすべてを聞いた今、そのことをはっきりと実感できる。

 

「それにしても……みんな寝静まったタイミングで呼び出しなんて……これ、期待しちゃってもいいのかな?」

 

「期待……ですか?」

 

「とぼけちゃって」

 

ユージさんが私の肩を抱いて自身の方へと寄せてきた。身の毛がよだつ。

 

「深夜に男女が二人きり……もうこれ、狙ってるとしか思えないんだよね」

 

「それって経験則ですか?」

 

「あっはは、そう思う?」

 

「だってユージさん、手馴れてるから……」

 

笑え、笑え、笑え。しっかり働け表情筋。まだだ、まだその時じゃない。

 

「ははっ、まぁ向こうの大陸じゃあ俺、結構モテ男だったしね?」

 

「自分で言っちゃうんですか?」

 

「それだけ女の子に優しいって自負があるってわけよ」

 

「……ふふっ、面白いですね」

 

ホントウに。オモシロイことをほざく。

 

「ショウちゃん……これも経験さ。人生、様々なことを経験して人間は大きくなるのさ。俺の女の子の扱いの上手さだって、方向性を変えれば人間関係の円滑な構築に役立ったりするし、無駄じゃないのさ」

 

「へぇ……いいこと言いますね……」

 

「あっ、褒めてくれた?やっりー」

 

…………。

 

「じゃあ、せっかくだし……大人の階段とか、登っちゃおっか」

 

「え……?」

 

気づけば私のすぐ隣には岩壁があった。気づかないうちに誘導されていたらしい……なるほど、こういった手を使うのか。

 

この男は、こんなやり方で……。

 

「階段って……」

 

「まぁ?男と女が夜中にヤることなんて、一つしかないじゃん?」

 

ユージさんの手が、私の体に伸びてくる。……あぁ、そうか。そうやって……。

 

「そうやって、お母さんのこともめちゃくちゃにしたんですね」

 

「……へ?」

 

「たしかに母は愚かだったかもしれません、間抜けだったかもしれません。……けど、傷つき疲弊し苦しんでいた母に付け入るお前なんかに、母を嗤う資格はない」

 

「……えーっと、ショウちゃん?一体何を言って……」

 

「イナヅマ・ミツリ、知ってるでしょ?」

 

「!?!?!?!?」

 

ユージさん……ユージが物凄い勢いで後ずさりした。その顔には驚愕と恐怖が浮かんでいる。

 

「な、なんで知って――」

 

「私の母は……お前を巻き込んで死んだあと、転生した。転生した先で素敵な出会いに恵まれて、たくさんの人に恵まれて……そして、私が生まれた」

 

「なっ!?ま、まさか……!!」

 

「私の名は、ショウ!母の名はヒカリ!そして……母の前世は、イナヅマ・ミツリ!」

 

「嘘だろ……!?」

 

言った。言ってやった。奴はもう、驚きすぎて脳の処理が追いついていないのか硬直している。

 

「ユージ……オグラ・ユージ。こっちではユージ・オグラって発音するんでしたっけ?……よくも母を騙して辱めた挙句、脅して縛り付けて二年もの間傷つけてくれたな。

母は……お母さんは、今も前世の記憶に苦しんでいる……!お父さんや見知った人じゃないと、男性相手だと無条件で震えが止まらなくなって発作が起きているんだ!そのせいで挑戦者とまともにバトルできず、チャンピオンだって辞退したんだ!

私は知らなかった……お母さんがずっと苦しみ、傷ついていたことを!今……やっと、お母さんの無念を晴らすことができる。それだけじゃない……お母さんに近づくために利用された、従兄弟のコウキさんの無念も!!」

 

クロノから聞かされた『大事な話』……それはお母さんの前世についてだった。

前世で医者だったお母さんは、大好きだった従兄弟のコウキさんを事故で亡くしたことが原因で、心に深い傷を負っていた。そんなお母さんに近づいてきたのが、オグラ・ユージ……そう、目の前の男だ。

この男は従兄弟のコウキさんを亡くして傷ついていたお母さんに付け入って、お母さんを辱めて二年間も苦しめ続けてきた!その話を聞いた時から、私はユージに対して初対面にも関わらず憎しみにも似た感情を抱いた理由が、ようやく理解できた。

私の中に流れる、お母さんの血……お母さんの遺伝子が、無意識に目の前の男を拒絶していたんだ。前世で己を苦しめた男……その存在を察知していた。だから、私は彼に原因不明の嫌悪感を抱いていたんだ!

……それに、前世で死んだお母さんが今世で大好きな家族と同じ名前の人と結ばれたことは、きっと運命を超えた因果のようなものだと思う。だから、私が目の前の彼に、母や従叔父に変わって仇討ちをするのも、奴の因果応報なのだ!

 

「く、くそっ……ふざけんな!大体、そんなのどこに証拠があるんだよ!!」

 

「ソウヤさんに全部話してるんでしょ?あの人が同じ転生者だからって、べらべら喋りすぎ。今世で罪に問われないからって、前世のこと全部話しちゃうなんて馬鹿なんじゃない?」

 

「はぁっ!?あ、あのオッサン……!!」

 

そう、私はクロノの助言を得て、ソウヤ・ニシノさんにも話を伺っていた。私が、ソウヤさんが前世で殺してしまった少年の従姉の転生体の娘と知って、彼はひどく胸を痛めていた。

因果とは、どこで結ばれるかはわからない……ソウヤさんの言葉だ。そして、私はソウヤさんからオグラ・ユージの話を全て聞いた。

どうやら母とオグラ・ユージはソウヤさんや少年たちよりも遅くに死んだらしく、ソウヤさんの名前を聞いて交通事故の加害者であることに気づいたらしい。そのことをネチネチと突っつかれながら、ユージはまるで武勇伝のように己の過去を語ったらしい。

……本当に憎たらしいったらない……!!

 

「お前は……お前だけは絶対に許せない……!!」

 

「ハッ!だったらなんだってんだ!前世は前世、今世は今世だろうが!いつまでも終わったことを引きずりやがって……」

 

「終わったこと……?終わっていない……いや、始まってすらいない!!勝手に終わらせるな!!お前を一発殴らなきゃ、お母さんは前に進めない!!私がお母さんに代わって……あんたをぶん殴る!!」

 

「うるせぇうるせぇうるせぇええ!!来いっ、モノブロス!!」

 

「ギシャアアアアアアァンッ!!」

 

ユージの呼びかけに応じて、地面からモノブロスが姿を現した。私は迷うことなくボールを手に取ると、ポケモンを繰り出した。

 

「ダイケンキ……!!」

 

「…………」

 

ダイケンキは……わかりにくいだろうけど、全身からあらん限りの怒りと敵意を滲み出している。私の感情が、ダイレクトに伝わっているのかもしれない。

 

「は、ははははは!!そんなちいせぇポケモンで、モンハンのモンスターを倒せるわけねぇだろうが!!」

 

「倒す……絶対に!!」

 

「ジンオウガもリオレウスもいねぇメスガキに負ける俺じゃねえよ!わざわざ俺が戦うまでもねぇ……モノブロスだけでしばいてやる!!」

 

「叩き斬れ、ダイケンキ!!」

 

 

 

 

【The Deathmatch】~Friday Night Funkin' DEATHMATCH~

【Burning In Hell】~Friday Night Funkin' IndieCross~

【No More Deals】~Undertale AU No More Deals~

 

 

 

 

「やれ、モノブロス!ホーンスピアーだ!」

 

「ブロォォス!」

 

「シェルブレード!!」

 

「ルシャ!!」

 

モノブロスは角を振り回してダイケンキに攻撃を仕掛けてきた。しかし、ダイケンキは冷静に攻撃を見極めるとシェルブレードで角攻撃をいなしている!

 

「オトモンは普通のモンスターに比べると小さい……だが、小さいからって舐めるなよ」

 

「モンスターを舐めたりはしない。ライダーは知れてるだろうけど」

 

「テメェ……ポケモンしばいたら、徹底的にブチ犯してやる……!!」

 

「その前に私のダイケンキの太刀が、お前を叩っ斬る……!」

 

「黙れ!グラウンドダイブ!!」

 

「ブロス!」

 

モノブロスは物凄い速さで地面を掘り進めると、あっという間に地面の中に姿を隠してしまった。

 

「どうだ、俺のモノブロスの速さ!とことんまで磨き上げたスピードだ、追いつけるわけがねぇ!」

 

「……ダイケンキ、見極めて」

 

「ルシ」

 

ダイケンキは静かに目を閉じ、精神を集中させる。そのまま数十秒が経過する……。

 

「……ヘル・トゥ・ヘル!」

 

「回避!」

 

「モノォス!!」

 

「……!」

 

足元の地面から勢いよく飛び出したモノブロス……だが、ダイケンキは攻撃を察知して素早く身を翻した!

 

「なっ、躱した!?……えぇい、続けてヘル・トゥ・ヘル!!」

 

「連続で回避!」

 

モノブロスが何度も何度も地面から強襲を仕掛けてくるが……動きが単調だからか、尽くダイケンキに避けられている。……やっぱりだ。

 

「なぜだぁ!?なぜ躱し続けられる!モンスターよりも弱いポケモンのくせに!!」

 

「敢えてこういう言い方をしよう。……私が強いんじゃない、お前が弱いんだ!!」

 

「なんだと……!?」

 

「ポケモンとトレーナーが共に切磋琢磨し成長するのと同じ……ライダーとオトモンも、共に成長していくんだ!つまり……ロクデナシなライダーであるお前のオトモンが、強くなれる道理はない!!」

 

「偉そうに……ポケモントレーナーのくせに!!ホーン・フロム・ヘル!」

 

「ひけん・ちえなみ!!」

 

「ブロオォス!!」

 

「……!!」

 

地面から飛び出しつつ、その勢いを利用して角を振り回すモノブロス……対するダイケンキは攻撃をしっかりと見極め、モノブロスをの一撃を回避して逆に攻撃を加えた!

 

「モノォ!?」

 

「おいっ、モノブロス!何やってんだ!しっかりしやがれ!!」

 

「哀れね……モノブロスが可哀想よ。彼はあなたの指示に従って戦っている……つまり、彼が傷ついているのは、あなたの判断ミスが原因よ」

 

「テメェ……」

 

「ポケモンを!小さい生き物だからって馬鹿にしないで!!」

 

なんならコイツにあのメタボレアスを見せてやろうか。……あ、メタボレアスっていうのは「メタモンが変身したミラボレアス」ということで、フラウさんが名付けた名前だ。

……私は誰に説明しているんだろう?

 

「ちぃっ……それなら、パワーチャージ!」

 

「グルル……」

 

モノブロスが、なにか構えている……ソーラービームのような、チャージ系の技か?

 

「よし……ブレイクホーンだ!!」

 

「ブロオォッス!!」

 

「……!シェルブレード!!」

 

モノブロスが、先程よりも力を増した勢いで角を突き出してきた!ダイケンキもシェルブレードで対抗するが、押し返されてしまった……!

 

「……ッ」

 

「ダイケンキ!大丈夫?」

 

「ルシ」

 

「よし」

 

「ちっ、耐えられたか……」

 

そう言いつつ、ユージが懐から袋を取り出した……あれは!

 

「まさか、回復するつもり!?手は出さないと言ったはず!!」

 

「あー、言ったな!それじゃあ、前言撤回!これでいいだろ!!」

 

「ふざけ――」

 

ふざけるな!そう言おうとした、その時だった!

 

「うわっ!?」

 

「え?」

 

突然、死角から何かが飛んでくると、ユージが手に持っていた袋……生命の粉塵を貫き手放させた!

 

「あー!?生命の粉塵が!!だ、誰だ!!」

 

「おれだ!!」

 

え……そ、その声は……!!

 

「テル、先輩……!?」

 

「あぁ!おれが来たぞ、ショウ!!」

 

テル先輩……それに、隣にいるのはジュナイパー……あれ?

 

「ジュナイ……パー……?」

 

「ん……?どうした、ショウ?」

 

「いえ、あの……」

 

なんだか……ジュナイパーの姿、変わってない?

 

編み笠状のフードや外套の赤色はそのままだが……翼が一回り大きくなっている。それだけでなく、左目にはまるでスコープのような形状の飾りが付いている。いや、よく見たら外套も背中の方が大きく長くなっている。爪も先端が赤い色に変化しているし……なんだこれ?

 

「あぁ、ジュナイパーが気になるか?」

 

「ジュパ」

 

「えっと、はい」

 

「……とりあえず、その話は後だ。今は……」

 

そう言いつつ、テル先輩もユージを睨みつけた。

 

「お前のケジメを、ちゃんとつけないとな」

 

「……はいっ!!」

 

新たな変化を得たジュナイパー……気になるけど、今はやつが先だ!

 

「ふ、ふざけんなっ!こうなったら……モノブロス、絆技、行くぞ!!」

 

「ブロオオォス!!」

 

モノブロスにユージが乗り込み、左手につけている石が光り始めた。……あれが、絆石。ライダーとモンスターの絆の証……トレーナーとポケモンにとっての、キーストーンとメガストーンと同じか。

たしか、絆技はライダーとモンスターが人竜一体となることで繰り出せる大技のはず……それなら!!

 

「ダイケンキ!」

 

「ジュナイパー!」

 

「「奥義装填!!」」

 

「ルシャ!」

 

「ジュパ!」

 

……!ジュナイパーの奥義!?……ということは、このジュナイパー……まさか、【極み個体】!?

ダイケンキが第三の刀を抜く一方、ジュナイパーは自身の矢羽を大量にばら撒き、さらにそれを収束し始めた。やがて矢羽が巨大な弓を形成した。また、それとは別に矢羽が集まり巨大な矢羽を形成していた。ジュナイパーは両方を手に持つと高く飛び上がり、足で弓を抑え両手で矢と弦を支えている!

 

「くたばれ雑魚どもがっ!デモリションスパート!!」

 

絶剣(ぜっけん)波濤(はとう)!!」

 

(かみ)()ちの()!!」

 

「ルッシャアアアッ!!」

 

「ジュナッパアアッ!!」

 

ダイケンキの水の巨剣と、ジュナイパーの深緑の巨大矢が、怒涛の勢いで迫り来るモノブロスとぶつかりあい……激しく大爆発を起こした!!

辺り一帯が煙に包まれ、徐々に晴れてくる……。

 

「うっ……うぅ……クソッタレ……!」

 

ユージはフラフラと立ち上がった。……だが、モノブロスは完全に目を回して倒れている。……終わりだ。

 

「クソがっ!なんでだ!モンスターの方が、ポケモンよりもずっと強いはずだろうが!?なんで……」

 

「知識だけで、なんの経験もないあなたにはわからない」

 

「なにがっ……!?」

 

「確かにモンスターは強い……私が知る限り、ポケモンよりもずっと。……でも、少なくとも私は、あなたよりも上手にモンスターを戦わせられる人たちを知っている。その人たちと比べたら、あなたとなんて雲泥の差よ!」

 

「クソがっ……!!」

 

さて……お母さん、コウキさん、しっかり見ててね……!

 

「……私、前々から思ってたの」

 

ボールを投げつつ歩み寄る。

 

「モンスターの素材で作られた防具……どれくらい頑丈なのかなって」

 

「ウキャ」

 

「え、ゴウカザル……なんで……」

 

「だから……その頑丈さを参考程度に思いっきり試してみたいって思ってたの」

 

「あ、ちょ、おま、まっ……!」

 

一歩ずつ後退するユージ……だが、決して、逃がしはしない……!

 

「このケジメは――」

 

「ちょ!?」

 

「拳一発では済まない!!」

 

「た、助けて!許して!!」

 

「"助けは来ない!誰も許さない!"お前が!!お母さんに言った言葉だ!!」

 

「ああああぁぁ……!?」

 

ユージの表情が、完全に絶望に染まった……これからだ、これから始まるんだ!!

 

 

「ゴウカザル!!」

 

「ウッキャア!!」

 

「喰らえ!お母さんへの愛と!お前への怒りと!すべての因果への悲しみのぉ!」

 

 

「インファイトだぁッ!!」

 

「ウゥキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャアァッ!!」

 

 

ゴウカザルの拳の猛ラッシュが、ユージの全身に余すことなく叩き込まれる!!

 

「ウオォ!ゴウカアアアァァッ!!」

 

締めの拳は、顔面にクリーンヒット!!

 

「ぶげらぁ!?」

 

派手に吹っ飛んだユージは岩壁にめり込み、その衝撃なのかゴウカザルのパワーなのか、防具は木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

「……ケジメ、つけさせてもらったわ」

 

「ウキャ」

 

「ルシ」

 

ゴウカザルはまだ殴り足りないとばかりに拳を打ち鳴らし、ダイケンキもアシガタナ同士を擦りあげて今にも斬りかかろうとしている。私はあえて二体を制し、ボールに戻した。

 

「……良かったのか、ショウ?」

 

「なにがです?」

 

「いや……正直、あんな奴を生かしておくのもどうかと……」

 

テル先輩はそう言うが……私には、ひとつの懸念があった。だから、ゴウカザルに指示をして敢えて最後の一発以外は全て防具が纏われている部分を意図的に狙わせた。その理由は……。

 

「下手に殺して、また転生されたら困りますから。来世の人たちに迷惑がかかります。それに……簡単には死なせない。死は楽になる方法で、逃げの手段ですから」

 

「……なるほど、ね」

 

先輩も納得した様子で、ポーチから縄を取り出すとユージを拘束し始めた……って、準備良すぎじゃありません!?

 

「というか、そもそも先輩はどうしてここに……」

 

「クロノに言われたんだ。……"ショウがケジメを付けに行くから、見届けてやってくれ"って。……まぁ、結局見ているだけってわけにはいかなくて、思わず手を出しちゃったけど」

 

「先輩……」

 

ユージを拘束し終えて立ち上がった先輩に、私は思わず抱きついた。先輩は一瞬、体が固まったようだが、すぐに平常心を取り戻していた。

 

「ありがとうございます、先輩……」

 

「……次は、アルバトリオンだ。……絶対に勝とうな、ショウ」

 

「……はい!!」

 

シンオウ地方のお母さん……そして、天国のコウキさん、見ていますか?私、しっかりケジメをつけてやりました。だから……安心して、私の帰りを待っていてくださいね。

先輩の温もりを感じながら、私は心の中でそうつぶやいた。きっと、お母さんやコウキさんに届いていると信じて……

 

 

 

 

 

――ショウ 余命7

 





――一方、近くの岩場の影にて

「クウゥン……(やっべ、ずっとスタンバってたのにゴウカザルのオラオラに見蕩れててすっかり出遅れた……)」

影でこっそり様子を見ていた雷狼竜が、密かに肩を落としていた。


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目覚め

目覚め。
それは、覚醒を意味する言葉。
その目覚めは、誰のものか……。





前世でお母さんを辱めた大罪人ことユージを、ゴウカザルによる渾身のラッシュでノックアウトさせてから迎えた朝。ボコボコにされた上に拘束されているユージの姿を見て、ツバサさんは大層驚いた様子だった。……逆にエナさんとナビルーは「とうとうやらかしたか」とばかりに呆れた様子でため息をついている。

一応、名目は私へのセクハラ行為に対する制裁、ということにしている。……ただソウヤさん曰く、ユージは亜大陸の方でもセクハラをはじめとする迷惑行為が目立っていたらしい。……ただ、問題を起こす以上に成果を出すので、ユージを逮捕することによる戦力低下の損失が相当なものだったらしい……それで、ユージを超える逸材がある程度発掘されるまでは事実上黙認されていたようだ。

……残念だがここは亜大陸ではないので、亜大陸のルールは通じないらしい。そうでなくとも元々目をつけられていたのだから、こちらで起こした問題はこちらで処理して構わない、とは亜大陸のハンターズギルドである『ギルデカラン』からの言伝である。

 

「……それにしても、ソウヤさんってギルドの事情に明るいんですね」

 

「あれ、言ってなかったか……。自己紹介の時、"行商人の真似事をしてる"って言ったのは覚えてるかい?」

 

「はい」

 

「実は、あれは言葉通りの意味でね。行商人ソウヤ・ニシノは仮の姿で、本当の僕は『ギルドナイト』と呼ばれる特殊部隊の一員なのさ」

 

「へえ~。……え、へぇ!?」

 

私は思わず声を上げてしまった。ギルドナイト……その名前は、シズカさんからある程度は耳にしているからだ。

ギルドナイトとは表向きはギルド専属のハンター……しかしその実態は対ハンター用ハンターという、いわゆる暗部のような役割を担っている組織だからだ。ハンターとしての実力は言わずもがな、対人戦に特化した彼らは密猟者やモンスターを殺しすぎるハンターを秘密裏に抹殺することが仕事らしい。私たちの世界で例えると、ポケモンハンターを殺すポケモントレーナー……といった感じか。

 

「…………」

 

「……あれ?信じてない?」

 

「いや、だって、ソウヤさんってもう大分中年……」

 

「まぁ、若かりし頃はブイブイ言わせてたんだけどね……歳を取ってお腹が出てきたから、ハンターは引退したよ。ただ、僕は前世で営業マンを勤めててね、その関係で人を見る洞察力や観察力はずば抜けてたんだ。……まぁ、だからハンターは引退したのにギルドナイトは辞めさせてくれなくてね……こうして、ユージくんのような犯罪者予備軍を捜索・監視の役割を仰せつかっているのさ」

 

いやあ、参った参った。なんて言って笑うソウヤさん……いや、『人は見かけによらぬもの』という言葉の意味がめちゃくちゃわかる。ぽっちゃりな中年がギルドナイトとか誰もわからんて。

余談だが、シズカさんもギルドナイトの勧誘を受けたことがあるらしい。しかし「対人戦はNG」と断ったんだとか。

 

「諸君、おはよう」

 

あ、アカイさんが来た。私はソウヤさんに断りを入れてから、先輩たちが集まっているテーブルに戻っていった。

これからこの宿の食堂で行われるのは、今後の予定についての話し合いだ。

 

「さて、早朝から集まってもらい申し訳ない。だが、ことは急を要する故、皆に集まってもらった次第だ。

昨夜話を聞いていた者は理解しているだろうが……ショウの呪いを解くための滅龍石が、煌黒龍アルバトリオンによって強奪された。やつの狙いは、どうやらショウの力を試すことらしい。ショウをおびき寄せるための布石として、滅龍石を強奪したのだ。

よって、我々はすぐにでもアルバトリオンの根城である『神域』へと向かわなければならない。……諸々、問題が生じているようなので一先ずはそちらを片付けよう」

 

アカイさんがそう言うと、ツバサさんが立ち上がって私の方へ振り向き、物凄い勢いで頭を下げた。

 

「ショウさん!状況はすべてテルさんとソウヤさんから聞きました……こちら側の人間があなた方に迷惑をかけてしまい、申し訳ありませんでした!!」

 

「頭を上げてください、ツバサさん。むしろいい機会だったんです。自分の愚かしさを理解して、しっかりと反省してもらえれば十分です」

 

「ショウさん……!ありがとうございます!!」

 

まぁ、私のポケモンたちは不完全燃焼みたいだったけど。特にジンオウガ。

 

「ライダー諸君は馬車で来たのだったな……ならば、その犯罪者をドンドルマへ預けるついでに、飛行船で神域へ向かおう。シロ、リオレイアに牽引を任せても大丈夫か?」

 

「もちろん、リオレイアには私から相談しておくね」

 

「頼む。……それで、クロノ。お前はどうする?」

 

「どうもない、俺様は帰る」

 

「さよけ」

 

言うが早いか、クロノは踵を返して食堂の出口へ歩いて行った。

 

「クロノ!」

 

「……頑張れよ、ショウ。次に会う時は、俺様のとっておきのモンスターたちで相手してやるぜ」

 

「……こっちだって、今よりももっと強くなってやるんだから」

 

「ハハッ、その前にさっさと呪いを解いちまえよ」

 

「言われずとも!」

 

振り返ったクロノはニッ、と笑みを見せると、そのまま食堂から出て行った。……最初に会った時よりも、随分と丸くなったなぁ。

 

「……ショウ。クロノから聞いたが、ミラボレアスはどうやら君を直接潰すことにしたらしい。クロノとバトルするとすれば、おそらく次で最後になるだろう」

 

「はい」

 

「呪いの発作もあるだろうが、すくなくともミラボレアスが呪いに干渉してくることはなくなった……つまり、我々の敵はアルバトリオンと、君の残り時間のみとなったわけだ。慌てず、焦らず……しかし、迅速にすべてを終わらせよう」

 

「はいっ!」

 

その後は、色々と確認作業だったり計画立案だったりとやることがある。特に、私が気絶していた三日間の間、リオレウスの面倒を見てくれていたツバサさん達に色々と話を聞かないと!

 

「ツバサさん!」

 

「ショウさん!……ひょっとして、リオレウスのことですか?」

 

「はい。私が眠ってた三日間、リオレウスのお世話をしてくださったそうで……」

 

「君のリオレウス、本当にすごいね!技巧種っていう新種なんだっけ?ボク、初めて戦ったんだけど本当に強いね!リオレウスが炎だけじゃなくていろんな属性を使って攻撃してくるなんて驚いたよ!」

 

「貴女たちの故郷、ヒスイの影響を受けたモンスターたち……モンスターが持つ本来の属性だけじゃなく、苦手な属性まで"技"として扱えるなんて、確かに驚いたわ」

 

「リオレウスは雷属性が苦手なのに"かみなりのキバ"って雷属性の技が使えるって聞いたときは信じられなかったぞ!」

 

本来なら私がやるべきことなのに、ツバサさんたちは私の事情を汲んでリオレウスの特訓を代わりに実施してくれたのだ。

 

「リオレウスは……どうでした……?」

 

「うーん……戦ってない時は力を抑えるのに必死なんだけど、いざ戦闘が始まると、時折こっちの制御を離れて暴走しそうになったんだ。普段から力を抑えていた分を、爆発させるみたいに。

けど、力を使いたくて使う……って感じには思えないんだよな。なんというか、"使わなきゃいけない"、みたいな……うーん、説明が難しいな……」

 

「……恐らくだけど、リオレウスは自身の暴走の可能性を自覚しているんじゃないかしら?」

 

「え?そんなこと、わかるのか?」

 

エナさんの意見に、ナビルーが首を傾げる。私も揃って首を傾げた。

 

「あの子は、『今のままでは自分は暴走してしまう』ということを自覚しているのよ。だから、普段は暴走しないように無理してでも理性で力で抑えているの。……けど、戦闘になると力を抑える必要がないから、理性で抑えていた力が本能によって解き放たれる……だから、暴走しそうになると思う」

 

「「……?」」

 

「……要するに、トイレを我慢するのと同じ」

 

「「なるほどー!!」」

 

ツバサさんとナビルーが揃って手を叩いた。……いや、今の例えで理解できたのか。ちょっと可愛いところもあるんですね。

 

「戦闘の方は難しいですか?」

 

「いや、戦うことはできるんだけど……まぁ、時間制限付きになっちまうな」

 

「やっぱり暴走……ですか」

 

「あ、でも!この三日で随分と長く戦えるようになったんだぜ!最初の一日なんて、3分戦えたら長いほうだったんだぞ。それが今なら2時間も戦えるようになったんだ!リオレウス、すっげぇ頑張ってたんだぜ!」

 

「そうなんですか!リオレウス……!」

 

ナビルーが胸を張って自慢げに教えてくれた。そうか……リオレウス、頑張ったんだね。すると今度は、顎に手を当てていたツバサさんが話し始めた。

 

「……実力の方に関してはだいぶ強くなれたと思う。理性を失わずに戦える時間が伸びたこともそうだけど、元々の強さもかなりのものだったんじゃないかな。……そうなると、残る問題は一つ」

 

「ええ……ショウさんと、リオレウスの絆ね」

 

「私と、リオレウスの……」

 

リオレウスとの絆……自信はあるかと聞かれれば、胸を張って「ある」と言えるくらいには強い絆で結ばれている自負がある。そうでなければ、メガシンカだって出来なかったはずだから。リオレウスが【黒炎王】に進化してくれたのも、私とリオレウスの絆が成せた業……そう信じたい。

 

「大丈夫だよ、ショウさん。リオレウスはショウさんの事を必要としているし、すごく信頼しているのがよくわかる。見ず知らずのボクらのことだって信じてくれたのも、全部ショウさんを通していたからなんだ。信頼するパートナーが信じた人だから、信じる……君のリオレウスからは、そんな想いが伝わってきたよ」

 

リオレウスは、それはもうたくさんのモンスターと戦ったらしい。甲虫種、甲殻種、牙獣種、鳥竜種、飛竜種、海竜種、獣竜種、牙竜種、両生種、鋏角種、蛇竜種……古龍種を除く大型モンスターが確認されているほとんどの種族と戦ったそうだ。

……ただ、およそ予想通りというか。闘技場の使用許可をもらうためにギルドと交渉した際に、龍歴院がネネさんを介して「リオレウス技巧種の戦闘記録を取りたい」と言い出したそうだ。私のリオレウスは技巧種というだけでなく、「破滅の翼」を持つリオレウス……即ち、この世界のこちら側の大陸の人達にとってはレア中のレアで、龍歴院としても最重要調査対象……とのこと。それだけは龍歴院が頑として譲らなかったので、仕方なくネネさんを含めた龍歴院の調査員立会いのもと、リオレウスの訓練は実施されたそうだ。

 

「まぁ、あのネネっていうハンターさんが目を光らせてくれたおかげで、見世物にはならずに済んでよかったよ。なんか、一部のハンターさんがリオレウスの訓練を見たがってたからな」

 

ネネさんが……それはお礼を言わないといけないね。私は一度ツバサさん達と別れて、ネネさんを探すことにした。ツバサさんから、龍歴院は大衆酒場で情報精査をしていると聞いたので、早速そちらへ向かってみた。

丸テーブルに白衣を着た三人と、レウスXRシリーズ(シズカさんから聞いた。リオレウスの防具らしい)を身に纏う女性ハンター……あれだ。

 

「ネネさん」

 

「あら、ショウさん?」

 

振り返ったネネさんは、私を見て一瞬だけ悲痛な表情になるが、すぐに平静を装った。……目線的に、私の包帯を見てたかな?まぁ、私もここまで呪いが目立つとは思わなかったので、それも仕方ないか。

 

「昨夜は災難でしたわね。よもや、ナンパ男に捕まるとは」

 

「まったくです……でも、手を出す相手を間違えたんですよ。自業自得です」

 

「フフッ……あなたも言うではありませんか」

 

私の返しに楽しげな風に笑みを浮かべるネネさん。……シズカさんが関わらなかったら、普通にマトモでいい人なんだけどなぁ……。

 

「なにか悩み事ですか?なにやら顔を突き合わせて、頭を悩ませているように見えましたが……」

 

「あぁ……せっかくですし、ショウさんからも意見を聞きましょうか」

 

「なんなりと」

 

「ズバリ、タイプ相性とは何か、ですよ!」

 

ネネさんの対面に座っている男性が、ガバッ、と顔を上げると同時にそう言った。……へ?タイプ相性?なんでそんなこと……あっ、そうか。

元々こちら側には属性……私たちで言うタイプは火、水、雷、氷、龍の五つしかないんだったっけ。こっち側ではさっきの五つの他に後13種類のタイプがあるから、こっち側の人にとっては複雑すぎるのか……。

 

「ショウさんはご存知でしょうけど、こちら側には火、水、雷、氷、龍の五つしか属性が存在しません。……ですが、ヒスイ地方で影響を受けたり時空の裂け目が開いてからは、これら五つの属性による相性に囚われない特殊な個体が出現するようになりましたわ。……要するに、技巧種のことですわ」

 

「ティガレックスを例に挙げますと、本来ティガレックスは雷属性に弱いのですが、ティガレックス技巧種に対してだとあまり効果がなかったんです。効くには効くが、原種と比べると効きが悪い……といったところでしょうか。逆に効くにくいはずの龍属性が、原種に比べて効果がありました」

 

「ショウさん以外のトレーナーの皆様にお話をうかがったところ、『タイプ相性』なるものが存在すると……さらにそのタイプ相性には、先の五属性の他に後13種類もの属性が存在するとか……そこで、改めて技巧種モンスターの弱点について早見表を作ろうとしているのですが……何分、複雑で……」

 

「タイプ相性には苦手な属性と得意な属性があり、双方の関係次第では攻撃時にダメージ量が変動する、とここまでは良かったんですけど……この『タイプ』と呼ばれる属性を二つも持つモンスターがいると聞いて余計に混乱しているところなんです……」

 

「「「はあ……」」」

 

「もう!皆さん、なんなんですかその体たらくは!龍歴院が誇る研究員が、たかだか18属性171通りの属性を前に根を上げるなど、らしくありませんわ!しっかりなさいまし!!」

 

「……え、計算したんですか!?タイプを全部!?」

 

「無論です。中には属性を一つしか持たないモンスターもいると聞いたので、すぐにその数を計算しましたわ。単属性は18種類、複合属性は153通り、合計で171通りです」

 

ネネさん……貴女、頭良かったんですね!……絶対に言わないでおこう。

それにしても、単タイプ含めて171通りかぁ。複合タイプだけでも153通り……ポケモンって何種類いたっけ?もしかしたら、私の知らないところで153通りすべての複合タイプが見つかっているかもしれない。

 

「無理ですよぉ!大体なんですか、"ノーマル"とか"フェアリー"とかって!"ゴースト"って普通に幽霊じゃないですか!"あく"ってどんな定義のもとでの"あく"なんですか!"エスパー"に至っては理解不能です!超能力とかぶっ飛びすぎですよ技巧種モンスター!!」

 

「"くさ"とか"どく"とか"むし"とか"ひこう"とか"はがね"とか、名前通りの属性はすぐにわかるんだけどねぇ……」

 

「あと、"いわ"とか"じめん"もわかりやすいんだが……"かくとう"って……」

 

発破を掛けるネネさんだが、研究員のひとりである女性研究員が思わず弱音を吐いた。それに続くように、男性研究員たちも思わずポロリと愚痴が溢れる。モンスターの研究に情熱を注ぐ彼らでも、技巧種に関してはお手上げに近いようだ。

ちなみにティガレックス技巧種はドラゴン・かくとうの複合タイプで、みずとドラゴンに強く、でんきに弱く、ほのおとこおりが効かない体質をしている。なので、ティガレックス技巧種はフェアリーに滅法弱く、次点でひこうとエスパーに弱い。みず、くさ、むし、いわ、あくに強く、先ほど言ったほのおとこおりは効果がない。

私がそのことを彼らに説明すると、ネネさんを除く研究員さんが揃って目を輝かせた。

 

「ショウさん……龍歴院に来ませんか?主に技巧種専門の研究員として!」

 

「いえ、あの……私、トレーナーなので……」

 

「そこをなんとか助けてください!!」

 

「ああ!すがりつかないで!?」

 

やばい、このままだと龍歴院に引きずり込まれる!どうやって説明すれば……あ、そうだ!

お母さんからの受け売りだけど、タイプ相性を分かりやすく説明する方法がある!!

 

「あ、あの!し、自然現象!自然の法則に例えたらわかりやすいかと!!」

 

「自然の、法則……!?……その話、kwsk」

 

「えぇっと……私の地元では、冒険に出る子供たちにそれぞれほのお、みず、くさの属性を持つ三匹のモンスターのうち一匹を選んで譲ってもらう風習があるんです。これら三匹は互いに強弱の関係を持つ……いわば、三竦みの関係にあります」

 

「ほう」

 

私はお母さんから聞いた話をそっくりそのまま説明した。ほのおタイプは草を燃やしてしまうからくさタイプに強く、くさタイプは水を吸い取ってしまうから水タイプに強く、みずタイプは炎を消してしまうからほのおタイプに強い……つまり、誰もが知っている当たり前の自然法則に則って考えれば簡単にタイプ相性を覚えられる、というわけだ。

そうだな……ヒスイで捕まえた巨大ポケモン……こちらでは"四天王"と呼ばれているディノバルドで説明してみよう。……うおおぉ、思い出せ私の記憶!甦れ母との会話!!

 

「例えば、ディノバルドはほのおとはがねの複合属性です。ほのおがみずといわとじめんに弱いのは、水や土、砂利をかければ消化できてしまうからです。逆にくさやむしは炎で燃えてしまい、氷は溶けます。はがねも高温により変形するので、ほのおはくさとむしとこおりとはがねに強いです。ほのお同士は言わずもがな、ですね。

 

次にはがね。はがねは硬度の高さから同じく硬いものでもいわやこおりに強いです。フェアリー……については、伝承や創作物等では妖精は鉄製品が苦手という描写が見られます。フェアリー属性のタイプ相性は、おそらくそこから来ているのでしょう。あとはノーマル、くさ、ひこう、むし、ドラゴン、はがね……鉱物に対して有効打を持たない属性の攻撃も、はがねは耐性があります。そして、はがねはどく属性を無効化します。これはどく属性が鉄を溶かす酸性ではなく、動植物が持つ毒物と同じだからだと思われます。弱点ですが、ほのおの時に説明したとおり、金属は熱で変形するのでほのおに弱いです。あと、強い衝撃を加えると変形するのでそういった技を扱うかくとう属性にも弱いです。なんだったっけ……あ、それと地中の圧力で変成するのでじめんにも弱い、です。

 

……ええっと、それでは先ほどの説明を踏まえて、ディノバルドのタイプ相性を見ていきます。ほのおとはがね、二つのタイプ相性を比較してみますとほのおはいわに弱いですが、はがねがいわに強いので苦手を補えていますね。あと、二属性共こおりに強いのも共通していますね。反面、ほのおもはがねもじめんに弱いので、じめん属性には滅法弱いですね。加えてディノバルドはみずとこおりに弱く、でんきとドラゴンに強くほのおは一切効きません。……えっと、紙に書いたほうが早いですかね?」

 

「お願いしますわ」

 

頑張った!私、結構説明頑張ったよ!!お母さん!アカイさん!褒めて!!

ネネさんから紙とペンを受け取り、ディノバルドのタイプ相性を書き出す。……こうして見ると、ディノバルド……というより、ほのお・はがねの複合って耐性範囲が広いんだな……だからお母さんのヒードランはあんなに強かったのか。

 

「えーっと……?ひい、ふう、みい……うわっ、耐性属性が10個に無効2個!?なのに弱点は3個しかない上に原種が苦手な氷属性を半減にするって……」

 

「加えて、技巧種は繰り出す技にも多くの属性を持っている……これは、技巧種を発見した場合は慎重に狩猟に望まなければなりませんね」

 

「それに、技巧種は絶対数が少ないのでなるべく捕獲してもらわないと……まぁ、今後とも技巧種が増えるとも限らないのですが……」

 

「増えますわ。……すくなくとも、シュレイド城のアレが開いているうちは」

 

「ネネさん……」

 

ネネさんの言うとおりかも知れない……。時空の裂け目によってこちら側とあちら側が繋がってからというもの、技巧種モンスターは増えるばかり……間違いなく、影響を受けているとしか思えない。

 

「ご協力、ありがとうございましたわ。後はアタシ達にお任せを」

 

「「「え"っ!?」」」

 

「……えっと、大丈夫ですか?」

 

「元よりこれは我々龍歴院の勤め。アタシも、名目上の業務はしっかりとこなさせていただきます」

 

「えーっと……」

 

いや、そうは言っても他の研究員さんは真っ青なんですが……。

 

「「「……!!」」」←行かないで!!という訴えの目

 

「……頑張ってください」

 

「「「神は死んだ……!」」」

 

ごめんなさい、研究員の皆さん……けど、私にはまだやるべきことがあるので……。というより、シンプルにこの場から逃げたい。

 

「ほら、弱音を吐かない!!アカイさんから頂いたモンスターの属性の情報と、先ほどショウさんから伺ったタイプ相性の理屈も併せて、もう一度整理しますわよ!!」

 

「「「鬼!悪魔!!ネネ!!」」」

 

「鬼でも悪魔でも邪龍でも結構っ!仕事は仕事、キリキリ働きますわよ!!」

 

「「「うわ~~~~!!」」」

 

私は黙って背を向けて歩き出した。背後に研究員さんたちの断末魔を聞きながら……気持ち早足で大衆酒場から出て行った。

 

 

大衆酒場から出た私は、その足でメゼポルタの外へ出た。それからボールを取り出し、中にいるリオレウスを繰り出した。

 

「グオン……?」

 

「リオレウス、ありがとう」

 

「????」

 

リオレウスの頭に"?"が浮かんで見える。まぁ、なんの脈絡もなく感謝されたら誰だって首をかしげるよね。

 

「私が気を失ってる間、ツバサさんたちと一緒に強くなるために鍛えてたんだよね?私を信じて待ち続けて、その間もかかさず強くなってくれて……ありがとう」

 

「……グオグオ♪」

 

体を横たえていたリオレウスは立ち上がると、そのまま私に頬ずりをしてきた。私もリオレウスの頬を撫でてあげる。

 

「たとえ空を飛べなくったって、リオレウスはリオレウスだよ……」

 

「グオ……」

 

「……なんて、そんな甘ったれた言葉は欲しくないよね?」

 

「グオン!」

 

「だから、あえて言うね。……私は、絶対にリオレウスは飛べるようになると信じている。どうか、私の期待に応えて欲しい、信頼に応えて欲しい。……いいね?」

 

「グオォン!!」

 

「任せろ!」と力強く頷くリオレウス……そうだよね。今のリオレウスに必要な……というより、欲しがっている言葉は慰めでなく激励だ。だから、厳しいと言われようと私はリオレウスに発破を掛けた。プレッシャーは百も承知……けど、リオレウスはその言葉にむしろ嬉しそうだ。

きちんと伝えたいことは伝えられたので、リオレウスをボールに戻してメゼポルタに戻る。すると、ちょうど門のところで待っていたのかアカイさんが立っていた。

 

「おかえり、ショウ」

 

「ただいまです、アカイさん」

 

「少しいいかな?今後の予定について方針が定まったので、報告させてもらいたい」

 

「わかりました」

 

私とアカイさんは歩きながら話を続けた。

アルバトリオンの生息地である神域には、本日正午から出発して目指すそうだ。現在時刻は9時前後……随分と急だ。……まぁ、その理由はユージにあるのだが。奴をこちら側の大陸の法で裁くため、一度ドンドルマを経由する予定らしい。メゼポルタからドンドルマへ半日、ユージを移送した後は神域まで三日かかるらしい。到着予想時刻が時刻なので、ハンターはともかくトレーナーの体調を考慮して神域にあるベースキャンプで一夜を明かす。翌日にアルバトリオンを討伐し滅龍石を確保したら、すかさずドンドルマ・メゼポルタへとんぼ返り……時間的にギリギリだが、かろうじて間に合うそうだ。

 

「モンスターに頼んでもいいのだが……あの距離を休まず飛び続けることが出来るのは……」

 

「……リオレウス、ですね」

 

「ああ。普通に飛ぶなら私の蒼火竜も可能だが、君を気遣いつつ滅龍石の輸送を行うというのはかなりの神経を使う。そのような多芸ができるとすれば、君のリオレウスくらいだろう」

 

「大丈夫ですよ、アカイさん。……リオレウスは飛びます。絶対の、絶対に」

 

「……フッ、そうか。信じているのだな……君のリオレウスを」

 

「もちろん」

 

「それは頼もしい。私も、期待するとしよう」

 

アカイさんも小さく微笑み、私も自信たっぷりな笑みで返した。大丈夫、私のリオレウスだもの。絶対に飛べる……私はリオレウスを信じている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約束の時間である正午になり、飛行船が飛び立った。……前々からこの飛行船、やたらでかいなとは思っていたけど……まさかオトモンも一緒に乗れるとは思わなかったな。それまでは、リオレウスやリオレイアが引っ張っても耐えられるほどの耐久性を持った船、としか思ってなかったから、これは意外だった。

 

「……ところで、ツバサさん。ユージのオトモンのモノブロスはどうするんですか?」

 

「あぁ、それなら大丈夫。ソウヤさんが責任を持って預かるってさ。ソウヤさんは乗り物……というより、操縦恐怖症だからライダーにはなれないけど、モンスターを育てる技量は一級品さ!だから安心していいよ」

 

「そっか……だ、そうですよ?」

 

「うぐぐ……」

 

私は後ろ手に振り返り、ちょっと意識して嫌味っぽく言ってみる。すぐ背後にはロープで縛られたユージが膝をついている。高所を行くので体調を考慮して、インナーの上に私服を着せているがそれだけだ。

 

「ユージさん……本当に、なんてことを……」

 

「いつかはやらかすと思ってたけど、まさか本当にやらかしちまうなんてな!」

 

「……最低」

 

「クッソ……!」

 

ツバサさんは悲しそうに、ナビルーは怒ったようにそれぞれ言葉をかけ、エナさんに至ってはまるで養豚場のブタでもみるかのように冷たい目でユージを見下している。あれはもはや軽蔑を通り越して無関心まである……。

 

「日頃の行いが祟ったんだ、しっかりと悔いるといい」

 

「オッサン、テメェ……よくも全部バラしやがったな!!」

 

「おや、僕は特に口止めされていなかったからね。それに、君は随分と自慢げに話していたじゃないか。せめて関係者であるショウさんには知っておいてもらおうと思ってね」

 

「このクソ野郎が!!」

 

「君に言われたくはないな……!」

 

ユージはギャンギャンと吠えるばかりで、まるで反省の様子がない。……拳だけじゃなくて、剣による制裁も必要だったかな。

 

「とにかく」

 

未だにうるさいユージを黙らせるべく、私はユージの真正面に立ち足を踏み鳴らす。足を振り上げれば蹴りとなり、持ち上げ下ろせば膝を踏み砕ける位置だ。それに気づいているのか、ユージは身じろぎ一つしなくなった。

 

「あなたは悪いことをした。元々悪いことを積み重ねていたところへ来て、もはや看過できなくなった。あちらの大陸ではあなたは重宝されていたのでしょうけど、こちらの大陸ではそうはいかない。

亜大陸にあるギルドも、あなたの処分はこちらの大陸の法律に則って構わないときた。それが意味するところを、わからないあなたじゃないと思うけど」

 

「クッ……」

 

「大人しくしていなさい。これ以上無駄に騒いで、余計に罪を重くする気?そんな馬鹿な真似をするほど、人間として落ちぶれちゃいないでしょ」

 

「このクソアマァ……!!」

 

……はぁ、本当に反省の色なし、ね。自分の行いに正義や善良さがあるとでも思ってるのかな。まぁ、そんなことはどうでもいいか。

 

「とにかく時間はあるんだから、悔い改めて生きることね。この先のあなたの生涯がどうなろうが、知ったことではないけれど」

 

いい加減、コイツと話をするのも嫌になってきたな……私はテル先輩と合流するために踵を返して歩き――

 

「……調子のんなよテメェッ!!」

 

「!?」

 

……!?いきなり羽交い締めに!!く、首が絞まる……!

 

「ユージさん!?」

 

「おいっ!何してんだお前!!」

 

「あなたは……!!」

 

「全員、動くなぁ!!」

 

ユージが私の首にナイフを突きつけてきた!形状的にバタフライナイフ……まさか、私服に着替えた時に仕込んだのか!?

 

「ショウ!?」

 

「おいあんた!何を考えてやがる!!」

 

「ショウさんを離して!!」

 

「それ以上罪を犯せば、本気で身を滅ぼしますよ」

 

「うるせぇ!動くなっつってんだろ!!」

 

くっ……!まさか、こんなことになるなんて……!!油断していたわけじゃないけど、想定できていなかった……!!ユージは私を拘束したまま一歩ずつ下がり、船の縁まで近づいていく。

 

「おかしな真似をしたら、こいつごと飛び降りてやる……!」

 

「ユージさん!どうして!?」

 

「どうしてだぁ?俺はこんなところで終わる男じゃねぇからだよ!!あのクソ女のせいでロクな目に遭わなかったっつーのに、運良く降って沸いた人生二週目まで台無しにされてたまるか!!」

 

「自業自得だろう……!うっ……!!」

 

「黙れテメェ!あのクソ女に似て、正論だけは一丁前に小煩ぇガキが!!」

 

「……!お母さんを侮辱するな!!」

 

こいつ……!まだお母さんを貶める気か!!ふざけんな……自分で蒔いた種だろうに!!

 

「このやろう!ショウを離せぇー!!」

 

「あ、おい!テル!!」

 

……!テル先輩が突っ込んできた!?

 

「……っ!テメェ、ふざけんじゃねぇ!!」

 

「ぐあっ!?」

 

ユージがナイフを振って、先輩を斬った!先輩はかろうじて両腕をクロスして直撃は免れたけど、右腕に大きな切り傷が……!

 

「お、まえええぇっ!ふざけるなぁっ!!」

 

「ぐあっ!?」

 

怒り心頭に達した私は、限界まで頭を下げたあと思い切り振り上げて奴の顎に頭突きをしてやった!フラフラと後退するユージだが、私を離す気配は一向にない……!

 

フラッ……。

 

「あ――」

 

「……!」

 

欄干に体が引っかかる……が、ユージはそのまま船から落下した。……私ごと抱えて。

 

「ショ、ショウーーーーっ!!」

 

テル先輩が船から身を乗り出している姿が見える……私は物凄い勢いで地上へと真っ逆さまだ。

 

「チクショーがああぁぁっ!!なんでてめぇら親子揃って俺の人生めちゃくちゃにしやがるんだあああぁっ!?」

 

「自業自得よ……!お前はこのまま、私とともに死ね……!!」

 

「このクソガキィーッ!!」

 

……ごめんなさい、お母さん、お父さん……。

 

――ポン。

 

「グオオオオオンッ!!」

 

「……っ!リオレウス!?」

 

私が思わず生きることを諦めかけた、その時だ。ボールが開き、中からリオレウスが飛び出してきた!?

 

「ダメ!戻ってリオレウス!!あなたの翼はまだ……!!」

 

「グオオオオン!グオオオオオアアアアアッ!!」

 

リオレウスは「絶対に諦めない!」とばかりに首を振り、必死に私を追いかける。けど、翼は閉じられたままで、開く気配がない……!

 

「リオレウス……」

 

私は、私は……!

 

「リオレウス……!」

 

私は、あなたを……!!

 

 

 

 

「助けて!リオレウス!!」

 

 

 

あなたを信じるっ!!

 

 

 

「グオオオオオッ!!」

 

 

 

 

推奨BGM

【風の絆】~モンスターハンターストーリーズ/MHST2~

 

 

 

 

リオレウスが大きく目を見開いてさらに大きく咆吼した、その時だ!リオレウスの体がの中心部が、虹色の輝きを放っている……まさか、あれって、メガストーン!?消化されることなく残っているんだ!それと同時に、私のキーストーンも輝きを増し始めた……!

 

「こ、これって……!」

 

「グオオオオオオンッ!!」

 

リオレウスの体から、黒い瘴気が溢れ出る……けれど、それは次第に色合いが変わり始め、青くなった翼が光を放ち始めた……!!

私は大きく息を吸い、あらん限りの大声で、叫んだ!!

 

「飛べーっ!リオレウスーーっ!!」

 

「グオオオオオオッ!!」

 

次の瞬間、リオレウスの翼から光が弾け、閉じられていた翼が大きく広げられた!!

 

「リオレウス!!」

 

「グオンッ!」

 

リオレウスはたった一度の羽ばたきで私たちを追い越すと、そのまま背中で受け止めてくれた!リオレウスが一度大きく宙返りをすると、ユージが私の拘束を解いてそのまま背中から落下してしまった。

 

「あ、あ、うわああああっ!?」

 

「リオレウス!」

 

「グオッ」

 

リオレウスの背中にしがみつき難を逃れた私は、すぐにリオレウスへ指示を出す。リオレウスはすぐさま反転して急降下、ユージをその足で捕まえて確保した。私たちはそのまま急速上昇し、船を同じ高度にまで戻ってきた!

 

「あれは……覚醒したんだ!」

 

「すげーよショウ!すげーよリオレウス!」

 

「よかった……!!」

 

ツバサさん、ナビルー、エナさんが安心したように言葉を漏らしている。

 

「ショーウ!」

 

「は、はは……まったく、大したやつだぜ!」

 

「さすがはショウさんだよ!」

 

「いやはや、改めてお見逸れいたしました」

 

先輩たちも……!アカイさんとシロちゃんも、信じていたとばかりに頷いてくれている……!

 

リオレウスはそのまま船に頭をつけて私を降ろしたあと、思い切りユージをぶん投げて船に降ろした。「ぶべっ」と情けない声を出しつつ船に戻ってきたユージ……顔を上げたやつを出迎えたのは、私たちのポケモンたちだ。

 

「さぁて、あんた……覚悟は出来てんだろうな?」

 

「よくもショウさんを危険な目に合わせてくれたね……?」

 

「ジブン、言ったはずですよ?……本気で身を滅ぼすことになると」

 

「お前だけは絶対に許さないぞ……!!」

 

「お前は二度も母を貶めた……その報い、受けてもらう」

 

「あばばばばば……!」

 

「「「「「ぶっ潰れろぉ!!」」」」」

 

「ぎゃああああああああっ!?」

 

セキさんのリーフィア、カイさんのグレイシア、ウォロのトゲキッス、テル先輩の極みジュナイパー、そして私の極みダイケンキ……計五体のポケモンの一斉攻撃に、ユージは情けない悲鳴を上げて気絶した。大丈夫大丈夫、どこかのトレーナーはポケモンの技を受けたり高所から飛び降りたりしても平気へっちゃらだったし生きてる生きてる。

……さて、これだけは腹の底から言っておかなくちゃあならないね。

 

 

……スッキリしたぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、ショウ達が神域へ出発するよりも前……遺跡平原にて巨大ティガレックスと相対していた頃のこと。

 

――コトブキムラにて――

 

コトブキムラの中を、一匹のポケモンが歩いていく。そのポケモンの名は、ヒノアラシ。ポケモン博士であるラベンが、ヒスイの環境調査を目的として外部から持ち込んだポケモンの一匹。他に二匹いたが、彼らは既に調査団員に引き取られてここにはいない。

ヒノアラシはラベンの研究室を抜け出して、毎日ある場所を訪れていた。調査団員が宿舎として使っている部屋の一室、その扉を小さい体でせっせこせっせこと開けると、そのまま中に入っていた。

部屋の中には、一人の男性が寝かされている。ショウとベリオロスが、黒曜の原野で発見したフルプレートを身に纏った人間だ。彼が身につけていた防具は部屋の隅に置かれ、持っていた武器は属性研究のためギンガ団が預かっている。ヒノアラシは布団で寝ている男の上に乗ると、そのまま小さな手で男の顔をペチペチと叩き始めた。

これが毎日の習慣である。たまたま扉が開いていて、中にいる人間の姿を見てからというもの、なぜかヒノアラシはこの習慣を絶やさなかった。毎日毎日、ペチペチペチペチと頬を叩き、起きるか起きないかと様子を見る。かれこれ数ヶ月は続いたこの習慣、もはや終は見えないのではないか。

 

「……ヒノ」

 

今日も今日とて起きやせぬ。ヒノアラシは諦めたようにため息つき、その場から降りようとした。

 

「……ぐ、ぅ……」

 

男から、うめき声が聞こえた。

 

「ヒノ!?」

 

すわ、起きたか。ヒノアラシは再びペチペチと頬を叩き始めた。

 

「……ぬ、うぐ……。……な、んだ、ぁ……?」

 

男はやおら目を開き、ヒノアラシと目があった。はじめこそはぱちくりとめを丸くしていた男だったが、まるで小動物を見るような微笑ましい笑みを浮かべると、ヒノアラシを抱き上げつつ体を起こした。

 

「なんだぁ、お前さん?お前さんはなんていうモンスターなんだ?」

 

「ヒノ」

 

「"ひの"?……うーん、知らんなぁ。しっかしお前さん、なかなか可愛い顔をしている。メスかこりゃ」

 

「ヒノヒノ」コクコク

 

「おぉ?人間の言葉がわかるのか。お前さんは賢いなぁ、撫でてやろう」

 

「ヒノノ~♪」

 

出会って数秒でこれである。元々ヒノアラシの方に気があったのか、それとも男のヒノアラシへの扱いが上手だったのか、ヒノアラシはすっかり男に懐いているようだった。

 

「……お!俺の防具、無事だったか。……太刀がねぇな、どこいった?」

 

「ヒノノ」

 

「おぉ、お前さん案内してくれるのか?そりゃあいい、是非に連れて行ってくれ」

 

「ヒノ!」

 

男は傍に安置されていた防具――クシャナシリーズ――を頭以外を身に付け、外に出た。外の空気を目一杯吸い込み大きく伸びをする。

 

「んあー、シャバの空気がうめぇぜ。……おう、お前さん、案内頼むわ」

 

「ヒノ~」

 

ヒノアラシの後を追い、男はムラを練り歩く。……ムラ中から注目を浴びているにも関わらず、男の歩みは堂々たるもので一切迷いがない。初見であるヒノアラシに対して、既に一定の信頼を寄せていた。

赤レンガ造りの庁舎――ギンガ団本部――の前で、特徴的な帽子をかぶった白衣の男性……ラベンが、ちょうど誰かと話を終えて振り返ったところで、男と目があった。

 

「おぉ、ヒノアラシ!ここにいたんですね」

 

「ヒノノ」

 

「おや、お前さんはヒノアラシってーのか。うーむ、聞いたことのないモンスターの名前だ……」

 

「おや……?おぉ、あなたは!目が覚めたのですね!!」

 

「うん?」

 

ラベンは男に、彼の周辺で起こった出来事についてある程度の説明を試みた。男はとても理解力のある人間で、すぐに事情を飲み込めたようだ。

 

「ふーん、俺が、ねぇ……しっかし"ポケモン"とは聞いたことねぇモンスターだ。このヒノアラシも、初めて見る」

 

「ヒノ」

 

「ふむ……ということは、やはりあなたは時空の裂け目の向こう側の……」

 

「お、何か知ってそうだな?できれば教えてもらえるとありがてぇが……」

 

「もちろんです!ぼくに答えられることでよければ、なんでも答えましょう!」

 

「はっはっは、気前がいいねぇあんたは。……っと、そういえばまだ名乗ってなかったな」

 

「そうでした!ぼくはラベンといいます。ポケモンの研究をする、いわば博士をしております」

 

「へへぇ、龍歴院みたいなやつかね。……おしっ、名乗られたからには、名乗り返さねぇとな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の名前は、ヒューイ」

 

「ただのしがないハンターさ」

 

 

 

 




というわけで、一頭の飛竜と一人のハンターの目覚めでした。
次回は……そうですね、せっかくなのでこのハンターのヒスイ生活でも覗いてみましょうか。


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幕間:ハンター・ヒューイのヒスイ紀行

さて、目を覚ましたハンター・ヒューイ。彼はヒスイでどのように生きているのか……。


朝六時、決められた時間にしっかりと男は起床する。男の名は、ヒューイ。黒曜の原野で拾われたモンスターハンターである。

ヒューイは洗面台で洗顔し、意識を覚醒させると足元に置かれた防具……ではなく、その隣のクローゼットを開けて中から衣服を取り出した。

 

「……にしても、きっちりサイズを合わせてくれるたぁ、気前のいい。俺にぴったりだ」

 

ヒューイが着込んだ服は、ギンガ団の調査隊服である。自分を拾ってくれた命の恩人であるギンガ団に少しでも恩を返すべくギンガ団で働かせてほしいと頼み込んだところ、団長のデンボクより許可をいただいたのだ。

ヒューイがギンガ団で恩返しを始めて、早一週間。すっかりこの生活が板についていた。外へ出たヒューイが大きく伸びをすると、そのまま表門へと歩き出す。見張りをしているデンスケに軽く挨拶をしつつ、天冠の山麓へ向かう旨を伝えた。

 

 

天冠の山麓へと着いたヒューイは、早速ボールを二つ手に取ると放り投げた。

 

「出てこい」

 

「バクフー」

 

「エルレィ!」

 

出てきたのはバクフーンとエルレイドの二匹。バクフーンは野生ポケモンとのほぼ毎日の戦闘漬けでヒノアラシからわずか二、三日足らずで進化したのだ。エルレイドも同様で、紅蓮の湿地で捕まえたオスのラルトスを丹念丁寧に育てた結果、エルレイドへと成長したのだ。

 

「(……しっかし、こんなボール一つで捕獲・格納・運搬まで可能たぁ、大した技術力だ。ポケモンってモンスターがそういう性質を持っていることを加味しても、俺らの世界じゃありえねぇ代物だ)」

 

ヒューイは先ほどポケモンを出したモンスターボールを見つめながら、ふと考えに耽った。

自分にとって未知のモンスター、未知の技術力、あらゆる全てが未知に満ちたこの世界にやってきて一週間が経ったわけだが、それでもヒューイにとって未だ謎に感じる道具がモンスターボールだ。

 

「(あったら便利なんだろうが……どうもそれだけで終わる気がしねぇぜ)んじゃ、行くか」

 

「フーン」

 

「エルッ」

 

二匹を連れて、天冠の山麓を練り歩く。途中、ポケモンがいれば観察なり捕獲なりして、図鑑完成を目指すこととなる。しかし、それとは別に調査するべきことがあるのだ。

それは、ちょうど祈りの広場に近づいてきたときのことだ。

 

「……ふむ」

 

「フン?」

 

「あぁ、バクフーン。……いや、なに。見られてるな、と思ってよ」

 

「バクッ!?」

 

ヒューイの言葉を受け、バクフーンとエルレイドがすぐさま周囲を警戒する。どうやらポケモンたちは気づけなかったようだ。実は、ここ最近になって天冠の山麓の中腹まで進むと何者かに見られているような感覚がする、という報告が相次いでいるのだ。調査団が何度も調査に趣いたものの、未だに成果ひとつ上げられないでいた。

そこで、時空の裂け目の向こう側で巨大ポケモンを相手取っていたハンターであるヒューイに声がかかったのだ。ハンターとしての経験が、何かに活かされると期待されてのことだろう。

 

「……殺気はない、が……強い警戒心だ。だが怯えや恐怖からくる感じじゃねぇな……さしずめ、敵を見定めているといったところか……」

 

「バクフー?」

 

「いや、わざわざ探しに行く必要はないさ。出てこないならそれまで、出てきたなら……その時は、相手してやろう」

 

「バク」

 

結局、その日は日中の間天冠の山麓を歩き回ったが、視線の主は出てこなかった。ヒューイはそのまま山頂ベースで一息つくことにして、手持ちのポケモンをすべてボールから出してやることにした。

 

「よっし、オメェら出てきなっ!」

 

「メガヤーン!」

 

「エンペル!」

 

「マニュマッニュ!」

 

「トラー!」

 

既にボールから出ているバクフーンとエルレイドを除く四匹……メガヤンマ、エンペルト、マニューラ、レントラーが続々と姿を見せる。ヒューイはバクフーンとエルレイドの協力のもと、手速くキャンプの準備を終えるとアイテムポーチの中からアイテムを取り出した。

 

「ほーれ、生肉だ。食べたい奴はいるかー?」

 

「ヤンヤン!」

 

「マニュー!」

 

一番に反応したのはメガヤンマとマニューラだ。それから黙したままだがレントラーが近寄ってくる。ヒューイは『生肉』三つとその辺で拾った『もくざい』と『てつのかけら』を取り出した。そのままクラフトキットでクラフトを始めると、あっという間に『肉焼きセット』をクラフトした。

 

「いやぁ、便利な技術をもらったもんだ。なければテメエで作ればいい……調合とはちと趣が違うが、こういう簡単な手作業なら身につけて損はねえな」

 

生肉を三つ焼きながら、たった今クラフトして作り上げた肉焼きセットを眺めるヒューイ。元いた世界ではすでに完成された物を買うなり折りたたみ式の持ち運び可能なタイプを持ち歩くかするのが普通だ。ハンターが手ずから材料を持ち込んで組み上げるなど、本来なら経験できないことだ。

だが、コトブキムラのクラフト屋は口伝えで形状や用途を説明しただけだというのに、もの数分で設計図を書き上げてクラフトまでしてしまったのだから驚きだ。そこでヒューイはクラフト技術の持ち帰りも兼ねてその技術を伝授してもらい、たった今実際に自分で組み上げたのだ。

 

「おっし、できた!こんがり肉三つ、お待ちどうさん!」

 

「「「ヤヤーン!/マニュー!/レントラー!」」」

 

メガヤンマ、マニューラ、レントラーは喜びに声を上げながら、こんがり肉に齧り付いた。よほど美味しいのか食べている間、常に笑顔が絶えない三匹であった。

 

「エンペルトは『こんがり魚』でよかったな?」

 

「ペル」

 

アイテムポーチから『サシミウオ』を取り出し、再び肉焼きセットで焼き上げる。しっかりといい色に変わってから、肉焼きセットから取り出した。

 

「上手に焼けましたー!……っと、エンペルト。お待ちどうさん」

 

「エンペルル!」

 

腕の爪で器用に棒を掴み、こんがり魚に食いつくエンペルト。プライドが高いと知られるエンペルトも美味い食い物には敵わない、ということだろう。

 

「……で、お前らは『携帯食料』か。ほい」

 

「フンフーン」

 

「エルル」

 

「しっかし物好きだなぁ、こんなものがいいのか?」

 

残ったバクフーンとエルレイドはヒューイから携帯食料を受け取り、満足気に頬張った。ヒューイとしては携帯食料なんぞ支給品で用意すらされる雑品だが、このバクフーンとエルレイドは違った。

実はこの二匹、ヒューイから最初に分けてもらった食べ物がこの携帯食料だったのだ。小腹を満たそうと何気なくヒューイが口にしようとしたところを目撃したバクフーン(当時ヒノアラシ)がそれを要求し、実際に食したところ初めて味わうその味がクセになり虜となったのだ。

エルレイド(当時ラルトス)は、一匹だけ逃げ遅れてゴースやゴーストに苛められていた所をヒューイに助けられ、その友好の証としてヒューイが差し出したものが携帯食料だったのだ。初めて食べた食べ物、初めての味にすっかり魅了され、エルレイドへと進化を果たした今も、こうして定期的に携帯食料を要求するようになったのだ。

 

「おや、あまり見ない顔だね」

 

「あ?……お?お前さんは確か……コンゴウ団の……」

 

「いかにも!コンゴウ団のキャプテン、ツバキさ」

 

食事を楽しんでいたヒューイ達に声をかけたのは山頂ベースのすぐ近くにある迎月の戦場とそこを縄張りとする洞窟キングの世話係を務めるキャプテン・ツバキだった。すぐ後ろを、彼の相棒ポケモンのスカタンクがついてきている。

ヒューイは近づいてくるツバキに自身の隣に座るよう促し、ツバキはそれに応じてヒューイの隣に座った。

 

「クンクン……なんだか美味しそうな匂いだね」

 

「おう、食ってみるか?丸焼きも同然だが、味は保証するぜ」

 

「いただこう。ボクのスカタンクにも、何かないかい?」

 

「うしっ、お前さんの相棒には魚でもいってみるか」

 

ヒューイは慣れた手つきで生肉とサシミウオを焼き、あっという間にこんがり肉とこんがり魚を用意した。人の顔と同程度はありそうな大きなお肉の丸焼きに、ツバキは思わず唾を飲み込んだ。

 

「ほれ、がっつりイケ、がっつりと!」

 

「いただきます!」

 

「スカーン!」

 

ツバキとスカタンクはそれぞれ出されたものを一口。その瞬間……

 

「「うまーいっ!!/スカターンッ!!」」

 

一人と一匹はそろって声を上げた。ヒューイは満足げに頷いている。

 

「はははっ!そうかそうか、美味いか!」

 

「ただ焼いているだけのはずなのに、なんなんだこの美味さは!?これだけの量なのに、ペロリと平らげそうだよ!」

 

「スカスカ!ターン!」

 

「お気に召したようで、何よりだぜ」

 

ツバキとスカタンクが食事を終えるのを待ってから、ヒューイは話を振った。内容はもちろん、ここ最近の謎の視線についてだ。

 

「なあ、お前さんはこのあたりを管理するキャプテンだろう?ここ最近、ここいらを通る連中が"誰かに見られている"ように感じるんだとよ。お前さんはそういうのはないのかい?」

 

「うーん……確かに、たまにだけれど視線を感じることはあるね。けど、このツバキとキングの威光を恐れているのだろう、姿を見せたことはないね」

 

「(早死しそうなくらいに大した自信だな)へぇ、そうかい」

 

「そのことについて聞くところだと……君は、例の視線の正体を探っているのかな?」

 

「そうなるが、何分手がかりがなくてな……この辺を中心に活動している他の団員らにでも話を聞こうかと思ってな」

 

「それはよい心がけだね。自分ひとりで無理をせずに誰かを頼ることは恥ではないよ。ただまぁ、このツバキには無用の長物だがね!」

 

「大した自信だな(一番に死にそうだな、コイツ)」

 

「そうだろう!なんせボクはコンゴウ団のキャプテン、ツバキだからね!」

 

「…………」

 

自信満々に胸を張るツバキだが、ヒューイは元いた世界でツバキのような性格のハンターが大勢早死していった現実を知っているだけに苦い顔をしている。大自然を前にして人間の自信如きが何するものぞ。そうやって自信を折られたり命を落としたハンターはいる。

 

「……まあ、あんま気負うなよ。あんたは若ぇ、今に背伸びして頑張りすぎるこたぁねぇよ」

 

「若いって……君も相当若く見えるが?すくなくとも、ボクと同じくらいには見えるけど」

 

「(本当はお前さんより一周りは歳食ってる……なんて言っても通じねぇか)まぁ、お互いまだまだこれからってことさ」

 

「なるほど」

 

内心で苦笑いしながら、ヒューイはツバキに言葉を返した。

ヒスイに来る前は三十路半ばだったはずの己が、目が覚めたら二十代前半にまで若返っていたのだから驚きだった。なぜ若返ったのかは定かではないが、決して損ではないことだけは確かだ。

 

「これも祖様の思し召し……ってか?」

 

「うん?誰だい?」

 

「あんたらの言うシンオウ様、みたいなもんさ。うちの地元にもいるんだよ、そういうの」

 

ヒューイが思い返すは、ハンターとしてジャンボ村発展に寄与していた頃。伝説・終焉・古龍の三つの書を組み合わせ紐解いた末にたどり着いた白き龍。書物に導かれるまま古塔を訪れ、そこで白い少女と出会い――その後のことは鮮烈極まり、とても人に語り尽くせることではない。

 

『また、会いましょう?私の――』

 

少女の言葉は、今も脳裏に焼き付いている。

 

「さて……そろそろボクは持ち場に戻るとしよう。君も、寝泊りするなり立ち去るなり早くするといいよ」

 

「おや?そいつはなぜだい」

 

「今夜は霧が出るからね……夜に霧なんて不気味じゃないか。こういう時は安全な場所でじっとするに限るよ」

 

「……ふむ……」

 

「それじゃあ、また会おう。ギンガ団の調査団員くん」

 

「おう、そっちもな。コンゴウ団のキャプテン殿」

 

そう言って、ツバキはキャンプ地を離れていった。ツバキの姿が見えなくなってしばらく後、ヒューイはポケモンたちを呼び集めて一言言った。

 

「オメェら、今夜だ」

 

その言葉に、ポケモンたちは深く頷いた。

 

 

 

 

夜。天冠の山麓は深い霧に覆われている。山頂ベースで休んでいたヒューイは徐に起き上がると、必要な道具などを用意して早速出発した。

 

「エルレイド、メガヤンマ」

 

「エルル!」

 

「ヤンヤン!」

 

ヒューイはエルレイドとメガヤンマを繰り出し、濃霧が立ち込める天冠の山麓の夜道を行く。そして、すぐに気づいた。

 

「……ふむ、昼間よりも視線が強い。やっぱりいるな、こりゃ。エルレイド、メガヤンマ。警戒を厳となせ。奴さん、狙ってるぞ」

 

「「!!」」

 

エルレイドはヒューイの三歩前に歩み出て、メガヤンマはヒューイの背中に張り付いた。ヒューイも黙々と歩き続けているが、常に警戒を怠っていない。

山頂ベースを出発して東へ進み、カミナギ寺院跡方面を歩くこと数分……。

 

「……あ~、こいつはクロだな」

 

ヒューイの目の前には、無惨に腹部を切り裂かれ捕食されたであろうオヤブンレントラーの死体があった。ヒューイは迷うことなく死体のそばにしゃがみこむと、その体に触れた。

 

「……ふむ、まだあったけぇな。それに、血も乾ききっていない。……俺らが起きてこっちに来るまで食ってたな」

 

その言葉を受け、エルレイドとメガヤンマは周囲を見渡し警戒する。ヒューイは立ち上がり、さらに東へと歩を進めようとした。

 

「飛べっ!」

 

「エル!」

 

「ヤン!」

 

しかし、一歩踏み出そうと足を動かした直後、ヒューイはポケモンたちに指示を出していた。メガヤンマは飛び上がると同時にヒューイの腕を掴んで持ち上げる。エルレイドも跳躍したが、敵の姿は変わらず見えない。着地後、二匹はすぐに警戒心を高め周囲を探る。

 

「……ちっ。メガヤンマ!ちとキャンプに行って、アレを持って来い!」

 

「メガヤン!」

 

「エルレイドは時間を稼ぐぞ。……どうもこの感覚、俺は知っている気がするぜ」

 

「エルル」

 

チラリ、とヒューイは視線をすぐ背後に向ける。……そこには回避時には視認できなかった、鋭い棘が複数も突き刺さっていた。

 

「(この刺……こいつぁ、もしや……)エンペルト!」

 

「エンペル!」

 

ヒューイはエンペルトも繰り出すと、誰から言い出すこともなく背中合わせの陣形を取った。

 

「いいか、俺たちは既に奴さんの術中だ。今、メガヤンマにアレを持ってこさせている。ひとまずはそれまで耐え切るぞ」

 

「「エル!/ペル!」」

 

「よし。……っ!エンペルト、正面だ!アクアブレイク!!」

 

「エン!トォーッ!!」

 

ヒューイとエルレイドはその場から飛び退き、エンペルトは正面に向けてアクアブレイクを放った。その瞬間、エンペルトの目の前に突如巨大な影が現れ、銀色に鈍く輝く腕をエンペルトに向けて突き出した。エンペルトのアクアブレイクと銀色がぶつかり合い、ガチン!という金属同士がぶつかったような音がした。

そのまま両者はすれ違い、巨大な影は再び霧に紛れて姿を消した。

 

「ちぃっ!エルレイド、前方30°の角度にサイコカッターだ!」

 

「エル!エルレィ!!」

 

続けて指示に従ったエルレイドが角度をつけてサイコカッターを飛ばす。すると、サイコカッターが弾けとび何かがバラバラと地面に落ちた。最初に飛んできたものと同じ鋭い刺だった。

 

「……!!全員、回避だ!」

 

ヒューイの直感が警鐘を打ち鳴らし、その直感に従うまま回避を指示し、自身もその場を転がり避けた。その直後、黒く長い何かが鋭くしなり、先端に夥しい量の刺を生やして振り下ろされた。

さらに叩きつけられた衝撃で刺が周囲に飛び、ヒューイたちに迫る。エルレイドはサイコカッター、エンペルトはラスターカノンで飛んできた刺を撃ち落とし、ヒューイは……。

 

「……ビンゴだぜぇ、メガヤンマ!!」

 

「ヤーン!!」

 

メガヤンマに持ってこさせたアレ……龍属性の太刀「龍刀【朧火】」を手に取り、すぐさま背負うと同時に抜刀、一刀のもと刺を切り払った。

 

「メガヤンマ!エアスラッシュ、撃ちまくれ!」

 

「ヤヤヤヤヤヤンッ!!」

 

メガヤンマが空中からエアスラッシュによる弾幕を展開する。辺り一帯を攻撃する空気の刃は地面にぶつかり土を巻き上げていたが、ヒューイは見逃さなかった……土を巻き上げることなく、見えないナニカにぶつかる瞬間を。

 

「あそこだ!エンペルト、れいとうビーム!!」

 

「エェン……トオォーッ!!」

 

エンペルトのれいとうビームはまっすぐ突き進み、見えないナニカにぶち当たる。ナニカは徐々に一部が凍り始めたことで素早く身を翻し、その姿を晒した。

 

「……ハッ!やっぱテメェは……!!」

 

「ニ"ャア"ア"ア"ォ"ッ!!」

 

正体を現し、月光を纏う黒い疾風は、咆哮を上げるとともにヒューイに襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつつ……」

 

口で噛みつつ固定し、少々雑ではあるが包帯を巻いていく。結局、視線の主との戦いは夜明けと共に突然終わりを告げた。というのも、夜明けを察知した主は脱兎の如く逃走し、あっという間に姿を消してしまったのだ。

正しく死闘であった。裸一貫で狩猟に望む猛者もいるそうだが、すくなくともヒューイはそのような酔狂の類ではない。クエストの参加条件であれば例外だが、好き好んで防具を脱ぎ捨てて狩猟に臨もうとは思っていない。今回は太刀こそ用意できたものの、防具までは置いてきてしまった上に、主の正体が正体なだけに防具を置いてきたのは失策だった。

 

「あんちきしょうめ……棘に毒とか聞いてねぇぞ、まさか新種か?原種と亜種、【遷悠種】しか知らねぇが……まさか、あれが【二つ名】ってやつか?それとも、噂に聞く"希少種"か……。なんにせよ、情報が足りねぇ。月夜に紛れて消えるとか、どんな芸当だ」

 

愚痴りながらも傷の手当てを手早く済ませ、荷物をまとめて立ち上がった。

 

「エルレイド、エンペルト、マニューラ。無理させたな、申し訳ねぇ。メガヤンマも援護助かった。お前がいなけりゃ、十数は死んでたわ」

 

「ヤヤン!ヤヤヤン!」

 

「エルル!エルレェ!」

 

「……ハハッ!きにすんな、てか?そうだな、生きて情報を持ち帰れるだけ儲けもんだ、命あっての物種ってな」

 

「エンペトォ!!」

 

「マニュ、マニューラァ!」

 

「なんだ、エンペルト?お前、リベンジする気マンマンか?いいぜ、俺もそのつもりだ。マニューラも、機会があれば奴さんに目にもの見せてやるぞ」

 

ヒューイのポケモンたちも、意気軒昂といった様子で声を上げている。エルレイド、エンペルト、マニューラの三体に加えて空中からのメガヤンマの支援攻撃をもってしても仕留めることができなかった。

 

「バクフーン、レントラー。お前さんらを出さなかった判断は、間違っていないと今でも思っている。

俺の知ってる奴さんは氷に強いはずだが、アレは氷に弱かった。するってぇと、原種が苦手なタイプが得意な可能性がある……そう考えると、ほのおタイプのバクフーンとでんきタイプのレントラーを出しては、かえってお前さんらを危険にさらす可能性があった。

確証はねぇが、わずかでも可能性がありゃあ無視できねぇ……わかってくれ」

 

「フーン」

 

「レーラ」

 

バクフーンとレントラーは「わかっている」というように頷き、ヒューイに頬ずりをする。ヒューイも応えるように頭を撫でたあと、しっかりと両足で立ち上がった。

 

「うしっ!帰るか!!」

 

「フン、フフーン」

 

「……おいバカ、バクフーン。"またキネに怒られるぞ"ってか?うっせぇわ、出先で怪我なんざハンターなら普通じゃい」

 

ギンガ団に所属してまだ一週間しか経っていないのに、調査から帰還するたびに生傷を増やして帰ってくるヒューイにいつもおかんむりな医療隊を思い出し、ヒューイは辟易とした様子で山を下り始めた。

 

 

 

 

山を下りてコトブキムラへの帰還の途につくその道中、ヒューイは紅蓮の湿地に立ち寄っていた。そこには、ヒューイにとってとても馴染み深い存在がいるからだ。

 

「えーっと……?お、いたいた。おーい、ヨネ」

 

「……ん?その声は……あぁ、ヒューイか」

 

ヒューイが声をかけたのは、黒曜の原野でアヤシシのお世話をしているはずのヨネだった。コンゴウ団がとあるポケモンの生態調査を訓練も兼ねて実施することになった際、紅蓮の湿地が所属地のヒナツが髪結いの仕事で離れている上に、コンゴウ団の団長セキもある事情で不在である。

そのため、生態調査の訓練を実施するうえで監督役となるコンゴウ団員がいないということもあって、急遽ヨネが呼び戻されたのである。

 

「どうだい、アイツは」

 

「いつもどおりに大人しいよ。周りのポケモンたちのこともよく見ているし、見た目はすごくゴツいけど、結構面倒見のいい性格よね」

 

「うーむ、あいつぁ特別群れるようなやつじゃあねぇんだがな……このヒスイ地方で生きてくうちに、生態でも変わったか?」

 

 

「そうなのかい?たしか、あんたの地元じゃ火山地帯に生息しているんだったっけ……ヒスイで火山といえば群青の海岸にある火吹き島くらいだけど、あそこは地続きじゃないからね。あの子の体で海を渡れるとも思えないし」

 

「当然よ、伊達に"鎧竜"なんて呼ばれちゃねえさ」

 

二人が見つめる先には、背中にグレッグルやスカンプー、ヒポポタスを乗せたまま沼地帯をのし歩くグラビモスの姿があった。そこから離れた場所から何名かのゴンゴウ団員が紙に筆を走らせながらその様子を観察している。

ヒューイにとって目の前のポケモン……否、モンスターであるグラビモスはとても馴染み深いモンスターだ。そのため、ヒスイに来てから見てきたモンスターたちの中でも特に親しみが沸いていた。

 

「今はいないが、あのリオレウスもギンガ団の調査隊員である娘っ子が捕獲して世話をしているそうだな。機会があれば、一目見てみたいもんだぜ」

 

「リオレウスっていったら……あぁ、あのバカでっかい赤いドラゴンか」

 

「そうさ。俺らの地元じゃ、誰もが尊敬と畏怖の念を持つ飛竜の代表格。アレを倒さずしてハンターなんざ名乗れんさ」

 

「それじゃあ、ヒューイもリオレウスを倒した口かい。大したもんだよね、あんなでっかいのをやっつけちゃうなんて」

 

「ハッ!リオレウスを倒せなきゃハンターとしては永遠に半人前よ。リオレウスを倒して一人前、一人でモノブロスを倒して一流ってのがウチじゃ普通だ」

 

「……リオレウスよりも上がいるのかい?」

 

「そりゃあ、ごろごろうじゃうじゃ、ごまんといる」

 

「うへぇ……」

 

ヨネと話しながら、ヒューイもリオレウスやモノブロスを狩猟した在りし日を思い出していた。懐かしい日々に思いを馳せながら、ヒューイもグラビモスの様子を眺めている。

グラビモスは深紅沼一帯をうろついたあとに方向転換し、そのままヘドロ台地方面へと移動を始めた。本来なら深紅沼とヘドロ台地は崖に阻まれて地続きにはなっていないのだが、グラビモスがマグマライザーを一発ブっぱなして崖をぶち抜き、強引に地続きにしてしまったため活動範囲が広がっているのだ。

そうして移動を始めたグラビモスが、ふと何かに気づいたように首を動かし、ヒューイの姿を視界に収めた。

 

「ヴラアアァッ!」

 

すると、嬉しそうに一声鳴くとそのままの勢いでヒューイの下まで駆けてきた。滑るように急停止すると、首を伸ばしてヒューイに顔を近づけた。

 

「おう、グラビモス。すっかり沼地の御大将だな、オメェにひっついてるポケモン、みんなお前を信頼しているようだぜ」

 

「……確かに、ここまで人間が近くにいるのに背中のポケモンたちは無反応だね。人間を警戒していないのか……まぁ、あんたがいるなら心配はいらないね」

 

「ヴァー」

 

ポンポン、と叩くヨネに応えるようにグラビモスは小さく鳴いた。グラビモスは方向転換してヘドロ台地へと歩を進め、ヒューイたちはその姿が見えなくなるまで見送った。

 

「……ふぅ」

 

「おう、どうしたヨネ。いい女がため息ついてちゃ、幸せが逃げてくぜ?」

 

「はは、ありがとう。おべっかでも嬉しいよ」

 

「あん?おべっかじゃねぇよ、事実だろうに。オメェさんはもっと自分の見目の良さを自覚しな。同じ女はもとより、男の俺から見てもオメェさんはべっぴんだよ」

 

「あ、ありがとう……(こういうことを素面で言えるんだから、地元じゃさぞモテたんだろうね……)」

 

「んで?何をそんなに悩んでいるんだい。誰にでもいいからゲロっちまいな、抱え込むよかよっぽどいい」

 

掛け値なしの褒め言葉に顔を赤らめながらも、ヨネは最近感じ始めた不安を溢し始めた。

 

 

「ん……そうだね……。あんたも知ってると思うけど、ギンガ団のショウって子が、さるポケモンに呪いを掛けられちまったそうなんだよね。なんでもそいつは自力で時空を渡る力を持っていて、それで元いた場所からヒスイに逃げてきた時に、たまたま目があった子を呪っちまったんだと。

それで、その呪いを解くためにショウともう1人ギンガ団の調査隊員、コンゴウ団とシンジュ団の両団長、イチョウ商会の会員1人が時空の裂け目の向こう側に行っちゃってね……大丈夫だろうとは思うけど、やっぱり心配でさ……」

 

「なぁるほどね……」

 

「向こうにはグラビモスのような巨大ポケモンが、それこそあんたが言うようにうじゃうじゃごろごろいるんだろ?……あんな強いポケモンがごまんといる世界なんて、想像つかないよ。セキや皆、大丈夫かな……」

 

目を伏せるヨネに対して、ヒューイは「大丈夫だ」などと安易に口にすることは憚られた。というのも、ショウに呪いを掛けたモンスターのことは、誰よりも深く知っているからだ。さらに、"あちら側"で生を受けたものとして、ヒスイ地方で生きてきた者達が絶対に無事に帰ってくるとは断言できない。

 

「まあ、俺らが大丈夫だ、と思ってなきゃダメだろ。ダメだったとしても生きてりゃいい、最後は生き残ったもんの勝ちだ」

 

「……そこは大丈夫、って言うところじゃない?」

 

「根拠のない無責任な言葉で慰められたいかい?少なくとも、あんたはそうじゃあねえと思うが」

 

「……ふふっ、そりゃそうだ。ありがとう」

 

「気にすんな、美人の涙が最優先さ」

 

「まだ言うか、この減らず口」

 

「ははは!」

 

ツッコミを入れれば、ヒューイは声を上げて笑い飛ばした。裏表なく、自身が「伝えたい」と思ったことを率直に述べるこの男を、ヨネは悪くないと感じていた。こっちが直視できないくらいに真っ直ぐすぎて多少のやりづらさはあるが、それもアクセントと思えばかなりいい男なのだろう。

 

「(まぁ、ちょっとだけ節操がないところは改善して欲しいよね)」

 

ヨネの脳裏には、ヒューイとのやり取りを終始照れた様子で報告してくれたヒナツの姿が浮かんでいた。あれは控え目に言っても落ちていた。もしかしたら"あちら側"の男というものは、皆ヒューイの様な輩かもしれない……そう考えると、"あちら側"に渡った二人の少女が変な毒牙にかかっていないか心配になるヨネであった。

 

「んじゃ、俺も行くかね」

 

「ん?それは……つるはし?」

 

「おう、ピッケルだぜ」

 

そう言うと同時に、ヒューイはアイテムポーチから『グレートピッケル』を取り出すとグラビモスの後を追って歩き始めた。調査訓練の監督役であるヨネも、当然だがついていく。

 

「なにか石でも採掘するのかい?」

 

「あぁ、グラビモスの背中をちょいと」

 

「……はい?」

 

「グラビモスの背中をちょいと」

 

「いや、ちゃんと聞こえているよ?……えぇっと、グラビモスの背中?あそこって採掘できるの?」

 

「いや、やったことはない。だが、グラビモスの幼体である『バサルモス』からは採掘できたし、いけるいける」

 

「そのチャレンジ精神は買ってあげるけど、流石に無謀では……それに、グラビモスが大人しくつるはしで叩かれるとも思えないし……」

 

「そこはそれ、上手いこと転がして背中や尻尾をトントンさせてもらうさ」

 

どこか上機嫌な様子でグレートピッケルを担いだままそう語るヒューイに、ヨネは若干だが引いていた。グラビモスは紅蓮の湿地の沼地だと自重で僅かに沈んでしまうほどの超重密度、それが人間の手によって転がるなど、とても想像つかなかったからだ。それに、グラビモスの周りには彼を慕うポケモン達が集まっている。彼らの妨害の可能性もあるだろうに、まるで意に介していないようだ。

二人がヘドロ台地にたどり着くと、なにやら奇妙な光景が広がっていた。

 

「あぁ?ありゃあ……」

 

「……!野盗三姉妹!!」

 

「おぉ、確かにどっかで見た顔だと思ったら、あの三人か」

 

二人の視線の先では、調査役のコンゴウ団員が野盗三姉妹に襲撃を受けていた。彼らは手に持つ大袋を守ろうと必死になっており、野盗三姉妹も袋が狙いなのかポケモンを嗾けている。

 

「あの袋は?今まであんなの持ってたか?」

 

「あぁ、うん。調査を続けているうちに、グラビモスの体から鉱石がポロポロと落ちていることに気づいたんだよね。生態調査も兼ねて、鉱石を回収していたのさ。これがヒスイでは見たこともない硬度と純度を持つ鉱石でね、シンジュ団のキクイが『引き取らせてくれ』と土下座してくるもんだからこちらとしても吝かではない、ということで取引しているんだよね」

 

「ははぁ、なるほど。こっちにも炭鉱夫がいたのか

 

「はい?」

 

「いや、なにも。……すると、あの三人組はコンゴウとシンジュの取引情報を耳にしたと見てよさそうだな」

 

「だね。ヒューイ、三姉妹を頼めるかい?私は仲間を」

 

「おう、任された」

 

「それじゃ、行くよ!」

 

ヒューイがグレートピッケルをポーチにしまうと同時に、二人は走り出した。

 

「ちょっと待ちな!」

 

「おう、お三方。毎度の如く飽きることない悪行三昧、ご苦労さん」

 

ヨネが声をかけつつ両者の間に割って入り、ヒューイもモンスターボールを片手にすぐにでもポケモンを繰り出す状態にいる。野盗三姉妹は乱入者の姿を確認すると、苦い顔になった。

 

「げっ、コンゴウ団のキャプテン!それに、あんたは……」

 

「……ヨネ、早く連れて行きな」

 

「わかったよ。……ほら、皆!今のうちだよ!!」

 

「あ、こら!」

 

「おっと、オメェさんらの相手は、俺だぜ?」

 

ヨネが先導する形でコンゴウ団員を引き連れて退却する。後を追おうとするオタケだったが、ヒューイに道を阻まれてそれも叶わなかった。

 

「さぁてさて……美人が三人揃って悪の道たぁ、世も末だぜ。人に迷惑をかけずとも、生きていく術などいくらでもあろうに、惜しい惜しい」

 

「これがあたくしたちの生き方……他人にとやかく言われる筋合いはないね」

 

「そりゃそうだ。むしろ俺はどんな道だろうと真っ直ぐに貫こうとするオメェさんらの姿勢、感心したぜ。悪の道ってのは、簡単なことじゃあねぇからな」

 

「ふふんっ、惚れたか?」

 

「なんだ、惚れていいのか?」

 

「あぅっ……///」

 

ヒューイの惜しむ、という言葉に反論するオマツだが、ヒューイはむしろ三姉妹の生き様を肯定した。調子づいたオタケがヒューイをからかおうとするが、真っ直ぐすぎるヒューイの言葉に面食らい、たまらず赤面して黙り込んだ。

 

「はぁ……まったく、口の減らない男だこと」

 

「悪かったなぁ、オマツさん。からかうつもりはなかったんだが」

 

「それはオタケの自業自得よ」

 

「ねえさん!?」

 

「ところで、オメェさんらの狙いは……もしや、グラビモスの鉱石かい?」

 

「いかにも。……あのドラゴンから採取できる鉱石は、このヒスイには存在しない代物ばかりだというじゃないか。ヒスイでも珍しい代物だ、外部に持ち込めばかなり値の張るお宝だろうさ」

 

「(違いねぇ。このヒスイ……いや、この世界に"あっち側"の鉱石が存在するとは限らねぇ。マスターランクの鉱石ともなれば、この世界だとどれだけの値打ちになるやら……)

まぁ、採取する分には誰も文句を言わねぇだろうさ。横取りさえしなけりゃな」

 

「そうはいかないね!コンゴウ団がシンジュ団に引き渡す分をぶんどることで、連中の鼻を明かせるし珍しいものが手に入る……一石二鳥なんだから!」

 

「(んなことせんでも、あのグラビモスなら体に付着した鉱石の一つや二つ、なんちゃ気にせず譲ってくれそうなもんだがなぁ)」

 

どうやらヒューイの予想通り、コンゴウ団とシンジュ団の両団の間にある取引の話を野盗三姉妹も耳にしていたようだ。そこで、グラビモスから採取するのではなくコンゴウ団から奪うことで約束を反故にさせて、両団に一泡吹かせてやろうと画策したそうだ。あと、ついでに珍しい石が手に入るのでそれも欲しい、といったところか。

 

「わりぃな、他人の努力を横からかすめ取るのは気に入らねぇ。そして、気に入らねぇ奴はぶん殴る!それが悪の道を行く輩なら、尚の事!!」

 

「フン、生憎とこっちは三人だ。あんたの道理に合わせてやるつもりはないよ!やるよ、オタケ、オウメ!」

 

「はい!」

 

「…………」(//・_・//)ポー……

 

「……オウメ!」

 

「ッ!?は、はい、姉上!!」

 

なぜか呆けた様子のオウメに喝を入れつつ、野盗三姉妹はそれぞれサイドン、ユキノオー、ドクロッグを繰り出した。対してヒューイが繰り出したのは、たった一体。

 

「エルレイド」

 

「エル!」

 

エルレイドのタイプはエスパー・かくとう。野盗三姉妹が持つポケモン全てに弱点を突くことができるのだ。相手はエルレイド一体にも関わらず、全身から放たれる覇気にオタケとオウメは一歩足を引き、オマツも表情を厳しくする。

 

「……あんた、噂じゃ調査隊として活動を始めたのは一週間そこら前じゃなかったかい?なのに、このエルレイドから感じられる力強さは……」

 

「あぁ、俺のために目一杯強くなってくれたからな。コイツは強いぜ、びびんなよ?

さぁ、恐れずしてかかってきな。テメェの正義を示してみろ!!」

 

「ぬかせ!サイドン、ストーンエッジ!!」

 

「ドォーン!」

 

先手を打ったのは三姉妹の長女オマツ。エルレイドの視界を封じるようにストーンエッジを放ち、その圧倒的な物量で押しつぶそうと試みた。

 

「躱せ!」

 

「エル!」

 

エルレイドは跳躍してストーンエッジを回避したが、その隙を逃す三姉妹ではない、同じように飛び上がっていたオウメのドクロッグが、技の体勢に入っていた。

 

「ドクロッグ、どくづき!」

 

「ケケ、クローッグ!」

 

「……!」

 

エルレイドは横から迫るドクロッグのどくづきを腕を交差して受け止めた。そのまま勢いに逆らうことなく地上に落ちていき、勢いよく地面にぶつかった。押し倒す形となったままドクロッグはどくづきを突き刺そうと押し込み、エルレイドも抵抗する。

しかし、エルレイドは交差していた腕を解くと同時に顔を左に傾けた。それによってドクロッグのどくづきはエルレイドの顔の真横に突き刺さり、攻撃が外れた。

 

「なに!?」

 

「投げ飛ばせ!」

 

エルレイドはそのままドクロッグの腕を掴みつつ片足を腹に引っ掛けて巴投げのように放り投げた。そのまま起き上がろうとしたエルレイドだったが……。

 

「させるか!ユキノオー、れいとうビーム!!」

 

「キッ、ノオォー!!」

 

「転がれ!」

 

「エルレ!」

 

オタケのユキノオーが倒れているエルレイドに追い打ちのれいとうビームを放つ。しかしエルレイドは横へ転がることで攻撃を避け、そのまま転がり続けて追撃を回避していく。

何度目かの転がり時、うつ伏せになった一瞬のうちに腕を使って飛び上がった。

 

「空中なら逃げ場はないよ!」

 

「そうかな?エルレイド、サイコカッター!」

 

「エルレィ!!」

 

ユキノオーが己に照準を合わせるよりも早く、エルレイドは腕を振ってサイコカッターを放ち、れいとうビームとぶつけあって相殺した。

 

「逃がすなサイドン!10まんばりきだよ!!」

 

「サアァーイッ!!」

 

「迎撃だ、れいとうパンチ!」

 

「レレェイ!」

 

着地刈りを狙ったサイドンの10まんばりきを、エルレイドのれいとうパンチが迎え撃つ。だが、空中にいて踏ん張りが効かないエルレイドは直撃を避けることしかできず衝撃で吹っ飛んだ。そのまま空中で体勢を立て直して着地すると同時に、三体が同時に迫ってきた。

 

「ドレインパンチ!」

 

「ウッドハンマー!」

 

「ギガインパクト!」

 

「マジカルシャインだ!!」

 

「エル……レエエエェイッ!!」

 

「「「グッ!!」」」

 

三体同時攻撃を、エルレイドはマジカルシャインのみですべて迎撃した。押し返された三体だが、まだまだ余裕綽々といった様子だ。エルレイドもあれだけ動いたにも関わらず、肩で息すらしていない。余裕があるのはエルレイドもだ。

 

「あぁ!今のはイケると思ったのに!」

 

「……本当に、強いな……」

 

「はぁ……ギンガ団からあの小娘が出張でいなくなったと聞いて、チャンスだと思ったんだがねぇ……。まさか、あんたのような手合いが現れるとはね」

 

「はっはっは!なに、そちら側もなかなかやる。三対一であることを加味しても、オメェさんらも強いぜ」

 

「嫌味にしか聞こえないんだけど?」

 

「ちげぇよオタケ、本心だよ。本当にオメェさんらは強い、胸を張りな。その努力は認められてしかるべし、だ」

 

「あぅあぅ……///」

 

「……あたくしの可愛い妹たちにちょっかいかけないでおくれよ」

 

「ん……?」

 

「(自覚ないのかコイツ)」

 

口を開けば口説くことしかできないのか、とオマツが内心で頭痛を覚え始めた、ちょうどその時だった。

 

「ヴァー……」

 

バトルの気配を察知したのだろう、グラビモスが近づいてきていた。思わぬ登場に三姉妹は硬直し、ヒューイは自然とグラビモスに手が伸びていた。

 

「おぉ、グラビモス。どうした、向こうでツレと一緒じゃなかったか?」

 

「ヴァー。ヴヴヴ」

 

「へぇ、俺がなにやってんのか気になった、と。見ての通りポケモン勝負だ。オメェさんもやるか?」

 

「ヴァー!!」

 

「へへっ、冗談だよ。オメェさんが本気で暴れたら、この辺一帯が焦土になっちまうわ。やるにしても、また今度な」

 

「……ヴ」

 

「……あ、そうだ」

 

ヒューイはポーチからグレートピッケルを取り出した。そしてそのままグラビモスに声をかけた。

 

「おぅい、グラビモス。あっちのお三方、オメェさんの鉱石が欲しいんだとよ」

 

「ヴァ……?」

 

「……!あんた、なにを……」

 

「まぁ、黙ってな。……それで、どうだ。オメェさんの背中、ピッケルでどついて構わんか?」

 

「……ヴァヴ」

 

グラビモスはゆっくりと体を横たえると、背中をヒューイに向けて差し出した。ヒューイは一言断りを入れてから、グラビモスの背中にピッケルを振り下ろした。

カンカン、カンカン……何度か振り下ろしていると、背中の岩にひび割れが生じて、ポロリと鉱石が落ちた。それを拾ったヒューイは三姉妹のもとへ歩いて行き、鉱石を差し出した。

 

「ほい、どうぞ」

 

「……いいのかい?」

 

「石ってのは、磨くと綺麗になるもんだ。女と同じでな。だから、この石が磨かれて綺麗になった時、きっとオメェさんらに見劣りしないくらいのモノになるはずだぜ」

 

「……この、減らず口……」

 

「ははっ!なんかさっきも言われてた気がするなぁ」

 

わはは、と笑いながら頭を掻くヒューイ。そんなヒューイから鉱石を受け取ったオマツの顔が赤くなっているのは、きっと気のせいではないだろう。

 

「……ん、ところでコイツはピュアクリスタルか。確かに環境が似ているから、出来ても不思議じゃねぇか」

 

「ねぇねぇ、ピュアクリスタルって?」

 

「あぁ、最高クラスの硬度と透明度を誇るクリスタルでな。うちの地元だと水没林……まあ、謂わば湿地帯でしか採れないものだ。たしか……一個3600で売れたかな……」

 

「さ、三千!?」

 

「これ一個で!?」

 

「形や純度にもよるが、まぁこいつならそれくらいで売れるだろうよ」

 

「「か、金の成る山だ……」」

 

オタケとオウメが瞳に「¥」を浮かべながらグラビモスを見つめた。その視線に薄ら寒さを覚えたのか、グラビモスは後退りを始めた。

 

「……まぁ、これはこれで受け取っておくよ」

 

「そうしてくれ。グラビモスからの気持ちも含めてな」

 

「あぁ、はいはい。……ったく、あんたとのやり取りはどうにも調子が狂うね。行くよ、二人共」

 

「「金山、銀山、金山、銀山……」」

 

「二人共!!」

 

「「は、はいっ!」」

 

危うく金の亡者になりかけた妹たちを呼び戻し、ポケモンをボールに戻すと野盗三姉妹は去っていった。めかくしだまを使って一瞬で消える芸当は、ヒューイにとっては何度見ても不思議でかなわない光景だ。

 

「あははあ。どうにもあの三人は悪いことをしちゃいるが、悪者って感じがしねぇんだよな。なぁ、オメェさんはどう思う、グラビモス?」

 

「ヴァー?」

 

「そっかぁ、わからんかぁ。はっはっは!」

 

自身の中に抱いた予感を隣の飛竜にも問うが、当のグラビモスは「なんのことだ?」とばかりに首を傾げる。共感が得られなかったのは残念に思うが、落ち込むほどじゃねぇやと笑い飛ばすヒューイであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒューイが目覚めて二週間、天冠の山麓の影の調査や巨大ポケモンの調査と、ヒューイは忙しなく飛び回っていた。相変わらず生傷を増やしてキネに怒られたり、ノボリとガチンコ勝負で腕を上げたり、ヒナツから積極的にアプローチをかけられたりと、だいぶ生活が馴染んできていた。

一方で、【山麓の影】についてはあまり進捗が見られなかった。一戦交えてその姿を確認したので正体は判明したが、肝心の種類をヒューイが知らなかったからだ。そのことも含めて、何度かの調査の後、ヒューイはラベンに報告書をまとめて提出していた。

 

「ほい、博士殿」

 

「おぉ、ありがとうなのです!……ふむふむ、影の正体はやはり巨大ポケモンですか……」

 

「あぁ……俺もアレの原種や亜種は知ってるが、それ以外の姿はまだ見たことがねぇ。そして、原種や亜種にはそのレポートに書かれている能力はない。アレはまだ複数の姿を持っているからな……厳密にどれ、とは断言できん」

 

「なるほど……ハンターであるヒューイ殿の視点から見るポケモンの姿、特徴、とても参考になるのです!そして、例の巨大ポケモンですが……」

 

「あぁ、間違いねぇ。……ありゃあ、『ナルガクルガ』だ」

 

「ナルガクルガ……」

 

ヒューイの口から紡がれた名を、ラベンは反復して声に出した。その後、ヒューイの説明は続く。

 

ナルガクルガ。"迅竜"の別名を持つ飛竜種の一種で、鬱蒼と木々が生い茂る樹海や密林などに生息している。暗がりを好み、単独行動が主であるこのモンスターは原種の黒い体毛や亜種の深緑の体毛から分かるとおり密林地帯や暗所での活動を得意としている。

ナルガクルガの特徴的な特徴は二つあり、一つが特に目立つ「刃翼」と呼ばれる折り畳み式の翼で、その呼び名の通り、縁が刃物のように固く鋭いため、その切れ味を活かして邪魔な木々を切り倒しながら移動したり、外敵に対する武器として使う。

もう一つは最大にして最強の武器である尻尾。これは常に柔軟に動く上に伸縮自在という代物であり、回転を加えて外敵を薙ぎ払ったり、鞭のように敵を打ち据えるなど多彩な技を持ち、特に渾身の一振りは時に大型モンスターの骨を一撃で砕くほどの威力を発揮するのだ。細くしなやかな尻尾には鋭い棘状に発達した鱗が隠されており、これを獲物に飛ばして仕留めることもできる。

非常に危険度が高いモンスターであり、『漆黒の影』の異名を取る。さらにヒューイが元いた世界では"夜道に気をつけろ"という意を込めて"迅竜が見ているぞ"と脅しつけることもあるそうだ。

 

しかし、今回出現が確認されたナルガクルガはヒューイも見たことのない個体だった。そこで挙げられる可能性は三つあるという。

 

「【二つ名】、【希少種】……そして、【極み】ですか……」

 

「あぁよ。俺が考えうる限り、それしかねえ。……まぁ、俺はどれも見たことないけどな」

 

「【二つ名】と【極み】に関しては、こちらのポケモンでも確認されているのです。なので、その脅威度は把握できるのですが、【希少種】とは……?」

 

「限られた地域で極めて稀に確認されるという特殊な亜種のことだ。そちらさんでいう、リージョンフォームってやつだな。こっちじゃそのリージョンフォームを三つ以上持ってる奴が居る。こっち側で捕獲されたやつだと……リオレウスがそうだな。あれは赤い原種の他に蒼い亜種と銀の希少種がいる。希少種は亜種以上に目撃例が少ない個体で、いずれも原種どころか亜種をも凌駕する戦闘力を持っている」

 

「なんと……!では、今回のナルガクルガもその可能性が?」

 

「いや、俺はどれも見たことないから断言はできねえって。【遷悠種】って線も考えたが、俺が見た奴は途中で色が蒼くなることはなかった。すると、残りの可能性は俺がまだ見たことのない種類のどれか、ってなる。……俺以外にハンターがいりゃあ、なあ……」

 

「うーむ、ぼくたちもアカイ殿から情報を頂いていたので、彼が不在である以上我々が持ちうる情報も限られてくるのです……」

 

「……アカイ……?」

 

ラベンの口から聞こえた名前に、ヒューイはなぜか身の毛がよだった。ただ、恐怖はない。あるのはむしろ……喜びだった。

 

「そいつ、全身が赤い格好の男じゃないか?」

 

「おぉ!さすが、同郷だからわかるのですね!その通りなのです」

 

「……へぇ、それじゃあ、白いドレスの少女も一緒にいたのでは?」

 

「えぇえぇ、シロちゃんですね?アカイ殿の親類の子だと聞いているのです」

 

ブフッ!おいネーミングセンス……んんっ!そうか、そうか。いるのか、あいつ」

 

「……ヒューイ殿?どうしたのです?」

 

「ん、何が?」

 

「なんだか、とっても嬉しそうなのですよ」

 

ヒューイは知らず、口角が上がっていたらしい。ただ、笑顔というには余りにも獰猛だったのか、ラベンは若干震えている。これはいかん、とヒューイは自分の手で顔をグニグニと揉むと、普段の表情に戻っていた。

 

「あぁ、すまんな。どうにも嬉しくて笑っちまったらしい」

 

「まぁ、お知り合いが居るとわかれば、誰だって嬉しいものですよ」

 

「だな」

 

「ひとまず、報告をありがとうございました。これは、巨大ポケモンを専門に扱う調査隊員が戻ってきたらそちらに引き継ぐのです」

 

「その時は、是非に目通り願いたいものだぜ」

 

「えぇ!きっとヒューイ殿とショウくんは気が合うと思うのです!」

 

それからラベンと別れたヒューイは、自身に当てられた部屋で寝転がる。思い返すのはラベンから聞いた赤の男と白の少女の二人組。そして……。

 

「(あぁ……また、君に逢えるんだな……祖龍……)」

 

かつて己が相対し、引き分けも同然に討ち取った伝説の龍。気を失う直前、龍から人へと転じた少女は、頬に口付けを落として静かに去っていった。

 

『また、会いましょう?』

 

『私の愛しい、ハンターさん』

 

「(早く逢いたいぜ……)」

 

静かに目を閉じて眠りにつく。もしも分かる者がこの場にいれば、その時のヒューイの目は……まるで、恋をする少年のようだったと言うだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくちゅ!」

 

「……?どうした、祖龍。風邪か?」

 

「古龍が風邪をこじらせるわけないでしょ、馬鹿にしてる?」

 

「まさか。……だが、くしゃみなんて滅多にないだろう。なにかあったか?」

 

「うぅん。……ただ……」

 

「ただ?」

 

「なんだかいいことありそうだなぁって♪」

 

「……そうか、俺はなぜか薄ら寒さを感じるぞ……」

 

「急にどうしたの紅龍。風邪?」

 

「馬鹿にしてんのかお前!」

 

怒った(ラース)怒った(ラース)?」

 

「いっぺん泣かす!!」

 

「わーい、あはは♪」

 

 

 

 




再会の時は近い……


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幕間:その強さは何が為に

以前、感想にてクロノの成長のきっかけの話が見たい、的な内容があったのを思い出し、本編と並行して書いてたら……なぜかこっちが先に完成していた。
何を言ってるのかわからねぇと思うが、自分にはよくわかった。

要は書いてて楽しかった、ってことなんだよなぁ!




カロス地方。五芒星のような形をした土地が特徴で、地方の中央部には最大都市のミアレシティが位置する地方。直近でカロスリーグ・ミアレ大会やカロスチャンピオン・カルネも出場したポケモンワールドチャンピオンシップスなど、様々な大会が開かれており、その熱意は今なお、余韻となってカロストレーナーへの強い刺激となっている。自然豊か、人々の暮らし、それらは決して他の地方に劣ることはない。

特にメガシンカ発祥の地として広く知られるカロス地方……だが、今。そのカロス地方は、各地で阿鼻叫喚の様相を呈していた。

 

 

――紫紺の瘴気を纏うメガシンカ使い――

 

 

昨今、カロス地方を騒がせているお尋ね者も同然のトレーナーの存在が原因だ。そのトレーナーは、メガシンカ使いのトレーナーを探し出しては有無を言わさずバトルを仕掛け、問答無用のまま一方的に蹂躙していくという非常に危険な思想を持ったトレーナーだ。

特にそのトレーナーが使うポケモンたちもまた、まるで狂気に駆られたような禍々しい姿をしており、それらと戦ったトレーナー達は皆、口を揃えて「明らかに正気ではなかった」と語っている。

目的も動機も一切語ることなく、ただ一方的にバトルを仕掛けて蹂躙しては去っていく。特に周囲を顧みない荒々しいバトルスタイルは、美しいカロス地方の自然をいたずらに傷つけていた。事態を重く見たカロスポケモンリーグは、件のトレーナーに注意喚起をすべく四天王のガンピとドラセナを派遣した。……しかし、返って来たのはガンピとドラセナの敗北と、件のトレーナーによる複数体同時メガシンカという悪夢のような報告だった。

さらにトレーナーはパキラ、ズミ両名に対しても襲撃紛いのバトルを仕掛けこれを圧勝した。この時、四天王パキラから「トレーナーはキーストーン及びメガストーンを用いていなかった」という報告まで上がった。

これまで、カロス地方に点在するメガシンカ使いは大半が襲撃を受けていた。そんな中、襲撃を受けていないトレーナーはごく僅かのみ。

 

カロスリーグ・ミアレ大会ベスト4、ショータ

カロスリーグ・ミアレ大会優勝者、アラン

カロスリーグポケモンチャンピオン、カルネ

 

しかし、残された彼らにもまた、狂竜の爪牙が突き立てられようとしていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【GAIA×CHAOS×ABYSS】~機動戦士ガンダムseed destiny~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カロス地方、某所。陽気な暖かさに包まれる日中……木々をなぎ倒すように次々と爆発が起きていた。そこでは、ポケモンバトルが行われていたのだ。

 

「カイィッ……!」

 

「ジュカイン!大丈夫ですか!?」

 

「ジュカイィ!」

 

「ホッ……」

 

木々を掻き分け飛び出したのは、一人のトレーナーと一匹のポケモン。カロスリーグ・ミアレ大会ベスト4の成績を持つ少年、ショータと相棒であるジュカインだ。しかし、トレーナーとポケモン、双方揃って肩で息をしており、満身創痍であることが見て取れる。

 

「なんだぁ?リーグじゃああれだけ派手なバトルしていたくせに、今回は随分と控えめじゃあないか、えぇ?」

 

後から森の中から姿を現したのは、黒衣を纏う少年とポケモンだ。少年の名はクロノ。黒龍ミラボレアスが仮初の姿として得た人間の姿である。そして、彼が連れているポケモンもまたジュカインだ。だが、クロノのジュカインは明らかに普通ではなかった。

全身から紫の瘴気を立ち上らせており、目は赤く血走り光すら放っている。吐息にすら瘴気が溢れているほどで、どう見ても普通の状態ではなかった。

狂竜化。とあるモンスターを病源とする状態変化で、感染した生物は例外なくおぞましい姿へと変貌する。クロノのジュカインの姿はその狂竜化をさらに超えた『極限状態』と呼ばれる姿で、その強さは狂竜化の比ではない。

 

「……っ!やはりそのジュカインは普通じゃない……一体何をしたんですか!!」

 

「なんでテメェなんかにこっちの身の上語って聞かせなきゃなんねえのよ?テメェ、腐ってもトレーナーだろうが。トレーナーなら黙ってポケモン出して戦わせろや、トレーナーズスクールにはちゃんと通ってたのか?教えはどうなってんだ教えは!」

 

ショータの質問等無視して、クロノは一方的に言いたいことだけを言い放った。まともに答えが返ってこないことに、ショータは歯噛みする。

 

「……答える気はないんですね?」

 

「言葉なんぞ重ねるだけ無駄ぞ。偉い人はこう言った、"拳で語り合おう"とな。剣士同士が剣を交えて、格闘家同士が拳を交えてお互いを理解し合うように、トレーナーならポケモンを交えて理解し合おうや。……ま、テメェに理解出来るだけの頭があるならな!」

 

「くっ……!」

 

頭を指さし挑発するクロノには、悪びれるといった様子は一切ない。まして、「理解し合おう」などと言いながら、その言動からは理解し合う気など毛頭ないことがショータには分かってしまった。

ならば、トレーナーである己がやるべきことはひとつのみ。

 

「……それなら、このバトルで僕が勝ったら、これ以上の蛮行はやめていただきます!」

 

「言うねぇ!そうでなくっちゃあ面白くない!」

 

クロノは歯を見せつけ獰猛な笑みを浮かべた。まるで獲物を噛み砕かんと、今か今かと待ち構えている狂犬の如くだ。

 

「ジュカイン!行きますよ……僕たちの全てを!!」

 

「カィン!!」

 

「メガシンカッ!!」

 

「ジュカイイイイィンッ!!」

 

ここでショータは迷うことなくメガシンカを選んだ。目の前の、狂竜ジュカインを倒すには、メガシンカするしかないと判断したのだろう。メガシンカを経てメガジュカインとなったショータのジュカイン……しかし、クロノはその笑みをますます深めるばかりだった。

 

「ハッハハハハッ!いいぞ、全てだ!お前の全てを出し切れ!こっちはテメェから絞れるもの全部絞り出してやる!……だから、全力で抗ってその果てに倒れるがいい」

 

「っ!ジュカイン、リーフブレード!!」

 

「ジュカイ!!」

 

「こっちもリーフブレードだ」

 

「GAAAAAA!!」

 

メガジュカインと狂竜ジュカインが激しくぶつかり合う。その実力差は完全に互角であり、両者一歩も退かない一進一退の攻防と相成った。

 

「(こっちはメガシンカもしているのに……!むしろこれで互角だなんて……!!)」

 

「なにをそんなに驚くことがある?メガシンカの有無が勝利の絶対条件でもなかろうに、笑わせる。地力がちげぇんだよ、こっちとそっちではな」

 

「なに……!」

 

「今までしばいてきた連中、四天王以外は歯ごたえがなかった。こっちがメガシンカするまでもなく、どいつもこいつも簡単にくたばっていきやがった……はーつっかえ。おい、小僧。テメェは少しは保ってくれよな?」

 

目の前のバトルすら退屈だと言わんばかりに、ジュカインたちを無視してショータに目を向けるクロノ。その目はまるで蛇……否、龍に睨まれたように思えて、ショータは思わず息を飲んだ。

 

「……!ジュカイン、ハードプラント!!」

 

「ジュカアアアイッ!!」

 

身の内から湧き出る恐怖を誤魔化すように、ショータはメガジュカインに指示を出す。メガジュカインは即座に距離をとりハードプラントを繰り出すと、その全てを狂竜ジュカインに差し向けた。

 

「斬れ」

 

「GUOOOOO!!」

 

一言。たった一言の命令だが、狂竜ジュカインは果たして唯々諾々と従った。迫る大量の樹木を、片っ端から斬り捨て始めたのだ。どれだけ攻撃を仕掛けようと、疲れ知らずとばかりに暴れまわる狂竜ジュカイン……次第にメガジュカインのパワーの消耗具合が、狂竜ジュカインのスタミナを上回り始めた。

 

「……ッ」

 

「ハッ!隙を晒したな!!」

 

「GUOOOOAAAA!!」

 

メガジュカインが僅かに呼吸を挟んだ、その一瞬。それすら逃さずクロノが指示を出せば、狂竜ジュカインはハードプラントをあっという間に突破しメガジュカインにリーフブレードを叩きつけていた。

 

「なっ!?ジュカイン!!」

 

「ジュッ……!」

 

メガジュカインにまとわりつく瘴気に、ショータは緊張と焦りが止まらない。謎の瘴気については、一度まとわりつかれるとボールに戻すまで回復できず、攻撃以外の技を選ぶとより症状が悪化する、位にしか聞いたことがない。何分、使い手であるクロノが何も説明しないのでわからないことのほうが多いのだ。

 

「ふんっ……そろそろ終いにでもするか」

 

「……!ジュカイン、リーフストームッ!!」

 

「グオオオォッ!カイイィンッ!!」

 

メガシンカしたメガジュカインによるリーフストームは、再生する尻尾の先端をミサイルのように発射して放たれる。螺旋回転しながら迫る尻尾を前に、クロノは退屈気にため息をついた。

 

「邪魔」

 

「AAAAAAAAッ!!」

 

鬱陶しそうな呟きとともに、狂竜ジュカインが放ったリーフブレードがリーフストームを両断した。真っ二つになった尻尾はそのままクロノも通り過ぎて、後方で爆発した。

 

「なっ――」

 

「くだらん、バカみてぇにブッパするだけか?そういうの、なんて言うか知ってるか?"馬鹿の一つ覚え"って言うんだよ」

 

呆れたとばかりに首を振るクロノ……その直後、祈るように両手を組んだ。

 

「メガシンカだけに教えてやるよ……進化の現実ってやつを」

 

「……!まさか!?」

 

「メガシンカ!!」

 

「GUOOOAAAAAAAッ!!」

 

クロノの心臓部から伸びた光は、狂竜ジュカインの心臓部と結びつく。その後、光に包まれたジュカインはメガシンカし、狂竜メガジュカインとなった。

 

「そんなっ!キーストーンもメガストーンもないのに、どうやって!?」

 

「お前にはできない、俺様にはできる……you see?」

 

クロノはやはり、一切説明するつもりはないようだ。むしろショータの困惑と混乱を見て、愉悦に満ちた笑みを見せていた。

 

「俺様が本当のリーフストームの使い方……教えてやるよ。やれ、ジュカイン」

 

「GAGAGAGAGAAAAAA!!」

 

「くっ……ハードプラント!」

 

「ジュカアアァインッ!!」

 

狂竜メガジュカインは奇声じみた咆哮を上げると、一気に突撃した。メガジュカインも、近づけまいとハードプラントを繰り出す。樹木の群れを突き進む狂竜メガジュカインだが、やがて勢いを失っていき、最終的には捕まって地面に思い切り叩きつけられた。

 

「よしっ!!」

 

「(バーカ)」

 

直撃を確信するショータに対し、クロノは内心で舌を出す。ハードプラントが解除されると……そこにいるはずの狂竜メガジュカインはどこにもいなかった。

 

「えっ!?どこに――」

 

「もらったぁ!!」

 

「AAAAAAAAッ!!」

 

クロノが叫ぶと同時に、狂竜メガジュカインが姿を現した……地面の中から。メガジュカインの真下から現れた狂竜メガジュカインは、メガジュカインの首を掴むと飛び出した勢いのまま宙へ躍り出た。

 

「まさか……!」

 

「あなをほるって技、便利だよなぁ!!ジュカイン、叩きつけろ!!」

 

「GUOOOOOッ!!」

 

「ガァッ!!」

 

「ジュカインッ!!」

 

狂竜メガジュカインは、メガジュカインを地面に投げつけ叩きつけるとそのまま落下、着地時に後足でメガジュカインの首を押さえつけた。

 

「ガッ、グッ……」

 

「ジュ、ジュカイン……!」

 

「ほぉら、これで逃げられない……ジュカイン、息の根止めてやれ。リーフストーム」

 

狂竜メガジュカインは尻尾を持ち上げるとリーフストームを発動し、その先端をメガジュカインに向けた。

 

「に、逃げてくださいジュカイン!」

 

「逃げられるわけねーだろーが、バーカッ!!惨めたらしくおっちんじまえ!!」

 

リーフストームが臨界に達し、今まさに発射寸前となった……その時だった。

 

「リザードン、フレアドライブ!!」

 

「グオオオオオッ!!」

 

「GYAッ!?」

 

突然、横合いから攻撃を受けた狂竜メガジュカインが吹っ飛んだ。だが、血走った目で下手人を見つけると、強引に体勢を変えつつリーフストームを放った。

 

「かえんほうしゃ!!」

 

「グオオオアッ!」

 

下手人のリザードンはかえんほうしゃを放ち、リーフストームを撃ち落とした。その後、狂竜メガジュカインは着地を決めて態勢を整えると、クロノの下まで戻っていった。

 

「wellwellwell(おやおやおや)?無粋な横槍だなぁ、もう少しで決着ってところだったのによ。ポケモンバトルに水を差してはいけないって、ご両親から教わらなかったのか?」

 

「これが普通のバトルなら、な」

 

「グオン」

 

「ア、アランさん……」

 

横槍を入れたのは、カロスリーグ・ミアレ大会優勝者にしてポケモンワールドチャンピオンシップスにおいてマスターズエイトの一人として決勝トーナメントにコマを進めた青年、アランであった。

アランとその相棒であるリザードンはカロスリーグ・ミアレ大会で優勝経験もあり、さらに同大会にてポケモンワールドチャンピオンシップスの新チャンピオンに対し、当時は決勝戦で優勝を競い合い白星を挙げたという実績を持っている。

ポケモンワールドチャンピオンシップス終了後はカロスに帰省し、リザードンとともに己を磨き続ける旅を続けていた。だが、今回の騒動を受けて事件の元凶であるクロノを探し続けていたのだ。

 

「アラン~?アラン、アラン……あー、それじゃあお前か。ミアレ大会の優勝者にして、マスターズエイトの三番目に弱い奴。ドラゴン擬きの使い手だっけか」

 

「随分と棘のある言い方をする……人を煽らないと落ち着かないのか?」

 

「なんだよ、事実じゃねぇか。お前はマスターズエイトの中じゃ下から数えたほうが早いし、リザードンなんて見た目は竜のなんちゃってドラゴンだろ。蜥蜴に翼が生えた程度で偉そうに」

 

「グルルルルッ!!」

 

「落ち着け、リザードン」

 

クロノの心ない言葉の暴力にアランは動じていないが、相棒のリザードンはそうでもないようだ。口元に火炎を滾らせ、ともすれば勢いでクロノを攻撃しかねないほどだ。

 

「俺様も見てたぜ~、ポケモンワールドチャンピオンシップス。大したジャイアントキリングだったぜ、あの……サ、サ……まぁいいや。

わざわざ横槍を入れるなんて真似をしてくれたんだ、今度はテメェが相手か?あぁ、さっきの小僧もポケモンを回復して参戦してくれても構わねぇぜ?テメェら如きの一人二人も、千人も二千人も大差ないから」

 

「……ジュカイン、大丈夫ですか?」

 

「ジュァ」

 

「どうする、ショータ」

 

「……!もちろん、参戦します。これ以上、彼の行いをのさばらせるわけには行きません!」

 

「……あぁ、わかった。二人がかりで行くぞ!」

 

「はいっ!」

 

アランとショータ。ともに同じ人物をライバルに持つ者同士による、共同戦線がここに誕生した。

 

「クッハッハッハッハッ!あぁ、そうだ。それでいい。もがいてあがいて努力して、何も為せぬまま終わっていけ。……では、俺も対等になるようにポケモンを増やすとするか……リザードン!」

 

「…………」

 

クロノが追加で繰り出したポケモンはリザードン。……しかし、このリザードンもまた紫紺の瘴気に覆われており、狂気に満ちていた。

 

「ミラーマッチ、ってやつだな。はたしてキサマらの実力で、この俺様のポケモンを何匹減らせるかな?」

 

「お前のような奴のやり方を、断じて認めるわけには行かない!行くぞ、リザードン!」

 

アランは左手につけたメガリングに指を当て、キーストーンを起動させた。

 

「我が心に応えよ、キーストーン!進化を超えろ……メガシンカ!!」

 

「グオオオオオッ!!」

 

アランのリザードンはメガリザードンXにメガシンカした。漲る敵意を、眼前の狂気のリザードンに向ける。

 

「おぉおぉ、勇ましいねぇ。それじゃあ、俺も……メガシンカ!!」

 

「GOOOOAAAAAAッ!!」

 

クロノも両手を組み、光を結んで狂竜リザードンをメガシンカさせた。その姿は、アランと同じメガリザードンX……しかし、本来は青い色の炎が紫色に変化していた。

 

「……やはり、キーストーンもメガストーンも使わないか」

 

「便利だろう?楽だぞ。ただしテメェらにゃあ教えねぇ」

 

「必要ない。このキーストーンとメガストーンが、俺とリザードンの絆の証だ!」

 

「……くだらねぇ、叩き潰せ!!」

 

その一言で、狂竜メガジュカインはリーフブレードを、狂竜メガリザードンXはドラゴンクローを発動し、それぞれ狂竜メガリザードンXはメガリザードンXに、狂竜メガジュカインはメガジュカインに向かっていった。

 

「「ドラゴンクロー!/リーフブレード!」」

 

「「グオンッ!/ジュカィ!」」

 

アランとショータも同時に指示を出し、それぞれメガジュカイン同士、メガリザードン同士激しくぶつかりあった。しかし、互角に見えるぶつかり合いはその実、クロノの狂竜ポケモンの圧倒という形に終わった。

 

「かえんほうしゃ!」

 

「グオオオンッ!」

 

「メガリザードンXの特性をご存知でない!?フレアドライブ!!」

 

「GUOOOOO!!」

 

メガリザードンXがかえんほうしゃを放つが、狂竜メガリザードンXはフレアドライブでかえんほうしゃを突っ切り、そのままメガリザードンXにぶちあたり思い切り地面に叩きつけた。

 

「リザードン!?」

 

「ジュカイン!ドラゴンクロー!!」

 

「ジュカイィ!」

 

「リーフブレードだ」

 

「GAAAAA!!」

 

メガリザードンを援護しようと動いたメガジュカインだが、狂竜メガジュカインに行く手を阻まれ上手く立ち回ることができない。

 

「かみなりパンチ!」

 

「グオン!」

 

「はがねのつばさ!」

 

「GYAAAAO!!」

 

一方、メガリザードンXがかみなりパンチを繰り出すと、狂竜メガリザードンXもはがねのつばさで迎え撃った。狂竜メガリザードンXはバレルロールで激しく回転をはじめると、そのままの勢いでメガリザードンXのかみなりパンチとぶつかりあった。何度もぶつかり合うが、ひたすら回転を続けているため隙がない狂竜メガリザードンXにメガリザードンXも攻撃を打ち込むタイミングがなかなか掴めないでいた。そのため、向かってくる狂竜メガリザードンXの攻撃を逸らすだけで精一杯だった。

 

「くっ……なんなんだ、この強さは……!!」

 

「はははははは!!テメェらなんかじゃ一生たどり着けねぇ境地だ!大人しく負けを認めたらどうだ?」

 

「黙れ!明らかに異常なポケモンを使っておきながら!」

 

「受け入れたのはコイツらだ、ポケモン自身が望んだ力だ!トレーナーとして、その意欲は買ってやらねぇとなぁ!!」

 

「ですが、こんな力は間違っています!ポケモンたちを元の正気に戻してください!」

 

「間違っているだぁ?『勝てば官軍負ければ賊軍』って言葉を知ってるか?歴史ってのはいつだって勝者が正しくあり続けた!テメェらが正しいって言うんなら俺に勝ってみせろよ、簡単なことだろ?」

 

アランとショータの訴えも、クロノは涼しい顔で聞き流す。歯噛みする二人を前に、クロノは愉悦に歪んだ笑みを浮かべた。

 

「ははははは!!さあ、リザードン、ジュカイン!終わらせてやれ、ドラゴンクロー!!」

 

「「GYAAAAAO!!」」

 

二体の狂竜ポケモンが同時にドラゴンクローを発動し、襲いかかる。既に激しいぶつかり合いで満身創痍に近いメガリザードンX達は動きが鈍く、万事休す……。

 

「ムーンフォースッ!!」

 

「サァーナァー!!」

 

……と、思われた、その時だ!頭上から突然放たれたムーンフォースに攻撃を阻まれ、狂竜ポケモンは大きく吹き飛ばされた。

 

「はぁ?またか……今度は何処の馬の骨だ」

 

「……貴方ね?ここ最近、カロスを騒がせているというメガシンカ使いは……」

 

「へっ、俺様も有名になったもんだ。……んで、あんたは?」

 

「私はカロス地方ポケモンリーグチャンピオン、カルネです。異常な状態にあるポケモンたち、必要とする道具を用いないメガシンカ……貴方には、聞きたいことが山ほどあります。大人しく、ついてきてくれないかしら?」

 

姿を現したのは、カロス地方のチャンピオン・カルネと、相棒のサーナイト。彼女は厳しい目でクロノを見つめるが、クロノは愉快げに口角を吊り上げるだけでまるでものともしていない。チャンピオンすら脅威だと感じていない様子だった。

 

「ハハッ!ついにチャンピオン直々にお出ましか。待ってたぜぇ、あんたをよぉ」

 

「……それはつまり、最初から狙いは私だったと?」

 

「いぃや?あんたに簡単に会えるとは思っていなかったからな。会えなかったら会えなかったで、そのままサヨナラするつもりだったぜ。でもまぁ、探す手間が省けたと考えりゃ、そっちから出向いてもらってありがとさん、くらいは言ってやってもいいぜ」

 

「……っ」

 

カルネは狂竜ポケモンたちを見て、悲痛な表情を浮かべる。明らかに狂っているとしか言いようのない姿が、痛ましくてかなわないのだろう。

 

「……ここで手を引いて欲しい……と、お願いしても聞いてくれないわよね」

 

「だなぁ。そっちのザコ共も降参しねぇし、加えてあんたが出てきた。生憎と、こっちが手を引く理由はなくなっちまったわけだ」

 

「……なら、やむを得ないわね。サーナイト」

 

「サァナ」

 

サーナイトは構えを取り、応戦の意思を示す。それを受けたクロノは、本当に楽しそうに笑い声を上げた。

 

「あっははははは!そうこなっくちゃなぁ!!」

 

「GAVAAAAA!!」

 

クロノはカルネの参戦を悟って三つ目のボールを投げた。そこから出てきたのは、ガブリアス。やはり極限状態となった個体であった。

 

「さあさあさあ!楽しい楽しいポケモンバトルの時間だぁ!!」

 

「GUGAVAAAAA!!」

 

そうして、クロノは狂竜ガブリアスを狂竜メガガブリアスへとメガシンカさせた。初めて見る現象を前に、カルネも思わず顔を顰めた。

 

「……意味がわからない。なぜメガシンカができるの……必要なものが何一つないというのに……」

 

「つまり、そういう理屈が一切通じない相手だということ……彼について今分かることは、それだけです……!」

 

「戦うしかない……それを知るためにも……!」

 

「むしろそんな道具頼みでしか為せないお前らが解せない。メガシンカとは現象ではなく可能性だ。ポケモンとトレーナー双方の想念、バトルの中でしか見いだせない極限状態、殺意と闘争……絆だ心だと、そんなくだらねぇ綺麗事で飾り立ててんじゃあねえよ!

要らないよなぁ、心なんか!それで勝てるっていうならさ!!さぁ、テメェら!あいつらをとことんまで叩き潰せ!!」

 

「来るわ!二人共、構えて!!」

 

「「……!!」」

 

迫り来る狂竜ポケモンを前に、カルネはアランとショータに檄を飛ばす。ポケモン共々、気を引き締めた彼らは一斉にポケモンたちへ指示を出した。

 

「シャドーボール!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

「リーフストーム!」

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

 

一斉に攻撃を放つカルネたちのポケモンだが、狂竜ポケモンはそれらをすべて一撃で消し去ると、そのまま距離を詰めて攻撃を放った。

サーナイトは攻撃を回避したが、メガリザードンXとメガジュカインは攻撃を避けられず直撃をくらい、そのまま戦闘不能になってしまった。

 

「リザードン!!」

 

「ジュ、ジュカイン……!?」

 

「クソが……雑兵だらけか、カロスは。どうなんだ、テメエは?えぇ?チャンピオンさんよ!」

 

「くっ……」

 

リザードンとジュカインが倒れて戦線離脱。戦況はサーナイトと狂竜ポケモンによる1VS3となった。

 

「さぁどうする?もはや敗北確定に近いが、まだ続けるか?やめといたほうがいいと思うけど」

 

「……いいえ、止めないわ。だって、私のサーナイトはまだまだ元気だもの」

 

「サーナ!」

 

「……意味わからん。3VS1だぞ、勝てると思ってんのか」

 

「えぇ……負ける気はしないわ」

 

「……ッ!テメェ……!!」

 

クロノの表情が憤怒に歪む。舐められていると感じているのだろう、身の内から溢れる怒りを隠そうともしていない。

 

「だったらここで、無様に敗北を刻み込め!!ジュカイン、リーフブレード!」

 

「GUOOOOA!!」

 

「サーナイト、リフレクター!!」

 

「サナ!」

 

サーナイトが展開したリフレクターは、極限状態によって著しく強化されているはずの狂竜ポケモンの攻撃を受け止めた。さらにクロノに苛立ちが募り、続けて指示を出した。

 

「テメェも行け、リザードン!!かみなりパンチ!」

 

「GAAAAA!!」

 

「……ッ、サナ……!」

 

続けて繰り出された狂竜メガリザードンXのかみなりパンチも受け止めた。……が、ここでリフレクターにひび割れが生じた。それを見逃すクロノではない。

 

「まだ耐えるかっ!!ガブリアス、アイアンヘッドだ!!」

 

「GAVAAAAA!!」

 

「……ッ!サナァ……!!」

 

「サーナイト……!」

 

「……!チャンピオンのポケモンでも、奴らを抑えきれないのか……!」

 

最後に繰り出された狂竜メガガブリアスのアイアンヘッドが止めとなり、ついにリフレクターが破壊された狂竜メガガブリアスはそのままの勢いでサーナイトにアイアンヘッドをぶち当て、大きく後退させた。チャンピオンの強さをよく知るアランは、その事実に苦々しい顔になった。

さらに接触したことで狂竜症を発症し、サーナイトは苦しげに顔を歪めた。

 

「……!これが、未知の状態異常……!」

 

「さあさあさあ!楽しくなってきたなぁ!!嬲り殺しにしてやれ……!」

 

「「「GAAAAA!!」」」

 

「サーナイト!」

 

「サナ!」

 

迫り来る狂竜ポケモン……しかし、カルネとサーナイトに焦りはない。カルネは首に掛けているペンダント……メガチャームを掴むとキーストーンを起動、サーナイトのメガストーンと共鳴を起こした。

 

「サーナイト、メガシンカ!」

 

「サアァナアァー!!」

 

光に包まれ、サーナイトはメガサーナイトにメガシンカした。その後、狂竜ポケモンたちの連続攻撃を、次々と回避してみせた。

 

「なっ……ちぃっ!ジュカイン、リーフブレード!リザードンはかみなりパンチだ!」

 

「GUOOOOO!!」

 

「サイコキネシス!」

 

「サナ!!」

 

サーナイトは両手にサイコパワーを集めると、それを用いて狂竜メガジュカインと狂竜メガリザードンXの攻撃を次々と捌き始めた。サイコパワーで攻撃を受け流し、反撃の一撃を見舞っている。狂竜メガジュカインと狂竜メガリザードンXも怒涛のラッシュを仕掛けているが、その大半が回避されたり受け流されているのだ。

 

「……ハハッ、この感じだ!闘争だ!俺様達にはそれが必要だ!」

 

「なんですって……?」

 

「俺様達のような力を持つ者は、戦いの中でしかその価値を見いだせない!!この力を戦い以外に使うなんて、俺様は真っ平御免だね!ポケモンは戦わせるものだ!」

 

「……!力だけが、ポケモンの全てではないわ!!」

 

「ならばどうする!ポケモンに力があるからこそ、悪の組織はゴキブリみたいに湧いてくる!己の欲望のためにポケモンを使う輩がいる!ポケモンが無力で無価値でなければ、決して起こりえないことだ!!何を知ったとて、何を手にしたとて変わらない!最高だな、人は!!」

 

「そんな理屈が!」

 

「ポケモンという力が降って沸けば、使わぬ輩はおらんだろうさ!ポケモンを戦わせ競い合う……それはなぜか!強くあること、高みへ至ること、誰よりも先へ至ること!その全ては人から生まれる欲望なのさ!人の夢、人の望み、人の業!他者より強く、他者より先へ、他者より上へ!!

人間同士でさえ戦争を、争いを起こすのだ!スポーツマンシップってのは、そういった闘争心を美しく着飾るための綺麗事に過ぎない!!お前も俺様も、誰よりも高みへ至る者は穢れていて当然なのだ!だからこそ、俺様はあえて言おう!その穢れこそが、何よりの美しさだとな!!」

 

「穢れが、美しさ……!?」

 

「そうだろう、チャンピオン?お前は、今までチャンピオンの座を奪おうと、乗り越えようと挑んできた人数を覚えているか?そいつらの夢、欲、野望を踏み潰してへし折った数を覚えているか!?一度でもお前に敗れた奴が、再びお前の前に姿を見せたことは!?

あるのか?一度でも!!ないだろうな、当然だ!そうやって踏み潰してきた夢の数だけ、お前は長くチャンピオンの座に座っている!夢破れた者たちの屍を積み上げでできた玉座に座する気分はどうだ!?」

 

「……っ」

 

カルネは思わず顔を伏せてしまった。それは、ほんの一瞬でも、ほんの一度でも考えたことのある話だから。チャンピオンの座を得んと挑んできた者たちを破り、この椅子を守り続けてきた。敗れていった者たちの中には、悔しがる者もいた、諦める者もいた、泣き崩れる者もいた。そうして去っていった者たちが、二度目の挑戦に臨むことはなかった。

カルネの心が僅かに揺らぐ。

 

「だがな、俺様はそんなお前を肯定しよう!なぜなら!強くあることが悪なのではない、弱いことが悪だからだ!!そうして弱い己に妥協して、諦めて……弱者という奴は、そうやって勝手に失望していくのだ。

だが、俺様は違う!!弱者の謗りを受けたなら、それを覆すだけの力を手に入れてみせるまで!!そして、俺様は手に入れた!この力を!!極限状態となった俺様の最強のメガシンカポケモンたち……これが力だ!誰にも負けず、何にも逆らわせぬ、究極絶対の力ァ!!

勝ち続ける強者よ!勝者よ!!今こそ地に伏せ泥を被る時だ!!地獄を見せてやろう……敗北という名の無間地獄をな!!」

 

「……!!」

 

「GUAAAAA!!」

 

「サナァッ!!」

 

狂竜メガガブリアスのアクアブレイクを受けたメガサーナイトが吹き飛ばされ、カルネの下まで後退した。倒れはしなかったものの膝をついており、肩で息をしている状態だ。

 

「サーナイト!」

 

「……サァナ!!」

 

それでも、カルネの呼び声に応えて立ち上がる姿は、さすがはチャンピオンの相棒といったところか。カルネは毅然とした面持ちでクロノをしっかりと見据えると、しっかりと彼と目を合わせた。その真っ直ぐすぎる視線に、クロノは思わずたじろぐ。

 

「な、なんだテメェ……」

 

「……なるほど。ポケモンの様子が普通ではないことに加えて、複数体も同時にメガシンカできる……確かに貴方は強いわ。……でも、強いだけよ」

 

「なに……?」

 

「ただ強いだけの力は、暴力と同じよ。貴方はその強さで何をしたいの?何を求めてそこまで強くなろうとするの?その強さの先には……いったい、何があるというの?」

 

「だ……黙れ……黙れ、黙れ!」

 

「ただ強くなるだけなら誰にだって出来るわ。けど、トレーナーには強さの中に確かな思いと願いがある!その思いと願いはポケモンを通して、さらに強く大きくなる!バトルを通して、トレーナー同士ポケモン同士、お互いに思いを交えれば、さらに強くなれる!」

 

「黙れっ!!競技の枠に収まった闘争に何の意味がある!一度の敗北がすべてを決める世界において、競い合い高め合うことの実に無駄なこと!!負ければそれまでだ!……それまでなんだよ……!」

 

「!」

 

カルネはそこで、初めてクロノが追い詰められたような表情をしていることに気づいた。ポケモンチャンピオンとして、何より一人の人間として生きてきたカルネは、その僅かな表情の変化から、クロノの心情を瞬時に読み取った。

 

「貴方は……」

 

「俺様は勝つ!勝てばその全てが証明される!!俺様が正しいのだという、確かな証が!!」

 

「……ならば、私が証明しましょう。その力、その強さは、誤りであるということを!!」

 

 

 

 

推奨BGM

【one way】~機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ~

 

 

 

 

「黙れ!!リザードン、フレアドライブだ!!」

 

「GOAAA!!」

 

紫の獄炎を纏った狂竜メガリザードンXが、サーナイト目掛けて突撃する。

 

「サーナイト、シャドーボール!!」

 

「サナー!」

 

メガサーナイトはシャドーボールを形成すると、それを自身の足元に放った。土煙が舞い上がり、メガサーナイトの姿を覆い隠す。狂竜メガリザードンXは煙の中を突っ切るが、当然のように空振りに終わった。

 

「ちっ……ガブリアス、はかいこうせんだ!!ジュカインはあなをほる!」

 

「VAAA!!」

 

「GYUGAAA!」

 

「来るわ、サーナイト!サイコキネシス!!」

 

「サーナー!!」

 

煙の中で視界が効かないのはメガサーナイトも同じ……だというのに、まるで見えているとばかりに放たれた狂竜メガガブリアスのはかいこうせんをサイコキネシスで受け止め、上空へと受け流す。間髪入れず、狂竜メガジュカインのあなをほるが迫るが、それも跳躍して回避してみせた。

 

「バカが!隙だらけだ!!」

 

「そうかしら?サーナイト!!」

 

「サー!」

 

メガサーナイトが手を上に掲げると、上空へ逸らされたはかいこうせんがサイコキネシスによって方向転換し、反対に真下へと向けられた。

 

「はかいこうせんにムーンフォース!」

 

「サァナー!!」

 

放たれたムーンフォースははかいこうせんとぶつかり合い……はかいこうせんがちりぢりに飛び散った。それはまるで、りゅうせいぐんの技のよう……散弾のように飛び散ったはかいこうせんは、狂竜ポケモンたちに次々と降り注ぎダメージを与えていく。

 

「なんだと!?」

 

「ムーンフォース!!」

 

「サナ!サァーナァーッ!!」

 

「GYAAAA!?」

 

驚くクロノを余所に、カルネは空中で自由が利かず自由落下する狂竜メガジュカインに目を付け、即座にムーンフォースを指示した。指示通りに放たれたムーンフォースは狂竜メガジュカインに直撃し、戦闘不能にしてみせた。

 

「馬鹿な!?」

 

「やった!さすがはチャンピオンです!!」

 

「三対一の状況から、あの狂ったポケモンを倒すとは……!」

 

ショータもガッツポースで喜びを顕にし、アランは改めてチャンピオンの強さを認識していた。一方、クロノは極限状態となった狂竜メガシンカポケモンが倒されたという事実に驚愕を抑えられないようだ。

 

「あ、ありえん……信じられない、こんなことが……!」

 

「これが、ポケモンと信頼を築いたトレーナーと、その想いに応えんとするポケモンの力よ!」

 

「くっ……調子に乗るなぁ!!リザードンははがねのつばさ、ガブリアスはアクアブレイクだ!!」

 

「GUOOOO!!」

 

「GAVAAA!!」

 

狂竜メガリザードンXと、狂竜メガガブリアスによる、空中と地上からの猛攻が始まった。メガサーナイトは両者の攻撃を捌いてはいるが、相次ぐ猛攻と受けたダメージで疲労が蓄積しており、僅かだが躱しきれなくなってきていた。

 

「くっ……」

 

「ハッハハァ!!もう限界みてぇだなぁ!いい加減におっちんじまえ!!」

 

「まだよ!サーナイト、リフレクター!!」

 

「サナァ!……サナ……!」

 

「サーナイト!?」

 

メガサーナイトのリフレクターが、狂竜ポケモンの攻撃を受け止めた。……だが、攻撃以外の技を選択したことで狂竜症が効果を発揮し、サーナイトから攻撃能力を奪っていく。

 

「フン!この状況で、攻撃以外の技を選ぶとはな!」

 

「……ムーンフォース!!」

 

「サナ!」

 

メガサーナイトは両手にムーンフォースを構えると、それぞれ狂竜ポケモンに放った。……だが、直撃下にも関わらず、狂竜ポケモンはケロリとしている。それどころか、効果は抜群のはずのメガガブリアスが、まるで堪えた様子がなかった。

 

「そんな!フェアリー技は、ドラゴンタイプには効果は抜群のはず……!」

 

「あぁ~、説明してなかったなぁ。狂竜症は攻撃以外の技を使うと、次の攻撃で弱点を突いても威力が落ちるんだ。残念だったなぁ?」

 

「なるほど……!」

 

ショータの驚いた反応を見て気を良くしたのか、クロノが余裕のある笑みとともに狂竜症について説明した。今まで多くを語ることがなかった謎の状態以上について、カルネも一定の理解を得た。現在、メガサーナイトから瘴気が消えている所を見るに、狂竜症は回復したと判断していいだろう。

 

「サァナ……サァナ……」

 

「(サーナイトの息が上がっている……体力も限界に近いわね……。対して彼のポケモンたちは……リザードンは消耗しているようだけど、ガブリアスはまだまだ、といったところかしら)」

 

冷静に状況を見定め、次に取るべき行動を吟味する。こういうところが、チャンピオンとうたわれる強さの所以なのだろう

 

「(苦しい展開ね……けど、狂竜症という状態異常は回復しているようだし、次の攻撃であと一体くらい落としたいところね)」

 

「何を考えているのかは知らねぇが、"下手な考え休むに似たり"って言うだろ!思考に没入する暇があったら、とっととポケモン嗾けて来いやぁ!!」

 

「……フッ、そうね。まだ、勝負は付いていないものね」

 

「テ、テメェ……この状況で、まだ強がるか!!」

 

「強がりではないわ……私もサーナイトも、負けるつもりは一切ないから!」

 

「サーナ!」

 

「いい加減に……!諦めろ!!リザードン、かみなりパンチ!」

 

「GUOAAAA!!」

 

「サーナイト、突撃!」

 

「サナ!」

 

狂竜メガリザードンXがかみなりパンチを構えると、メガサーナイトは狂竜メガガブリアスに向かって突っ込んだ。

 

「な、何を考えて……ええい、ガブリアス!はかいこうせんだ!!」

 

「GAVAAA!!」

 

「サイコキネシス!」

 

「サァナー!!」

 

正面から迫り来るはかいこうせんに対し、メガサーナイトはサイコキネシスを発動すると上体を逸らしつつはかいこうせんを後方に受け流した。逸らされたはかいこうせんの進行先には、メガサーナイトを猛追していた狂竜メガリザードンXがいた。

 

「まずい!?リザードン、避けろ!!」

 

「GUOOOOO!?」

 

狂竜メガリザードンXは突然自身に向かってくるはかいこうせんに驚き、動きが止まってしまった。それによってはかいこうせんが直撃し、地面に墜落してしまった。

 

「チィーッ!!ガブリアス、アクアブレイク!」

 

「GAAAAA!!」

 

「ムーンフォース!」

 

「サナッ……!サァナー!!」

 

「GUAAA!?」

 

狂竜メガガブリアスのアクアブレイクを受けて吹き飛びながらも、素早く体勢を変えてムーンフォースを放ち、命中させた。効果は抜群だが、体力に余裕があるのか戦闘不能になることはなかった。

その一方で、墜落から起き上がった狂竜メガリザードンXが怒りに炎を滾らせながら、メガサーナイトへ突撃した。

 

「リザードン、はがねのつばさ!!」

 

「サーナイト、シャドーボール!!」

 

背後から迫る狂竜メガリザードンXのはがねのつばさを、メガサーナイトは掠めるようにして回避した。そのままシャドーボールを放ち狂竜メガリザードンXへと直撃させた。狂竜メガリザードンXは再び墜落し、メガシンカが解除され戦闘不能になった。

 

「なぁ……!?リ、リザードンまでもが……!!」

 

「すごい……すごいですよ、カルネさん!」

 

「これなら、勝てるか……!?」

 

二体目の極限メガシンカポケモンが倒れたことで、クロノの動揺はさらに大きくなった。しかしそれも一瞬のことで、次の瞬間にはカルネに強い憎悪と敵意が篭った目を向けた。

 

「テメェ……!もうただじゃおかねぇ……ぶっ殺してやる……!!」

 

「(……どうして……どうして貴方は、こんなにも……)」

 

カルネに対して激情を向けるクロノ……そんなクロノの姿もまた、カルネにはあまりにも痛々しく映っていた。

痛みも苦しみも、何もかもを顧みず……強くなるために必死になるその姿。努力を重ねる姿は微笑ましいはずなのに、どうしてかクロノのそれはまるで違った。まるで何かに怯え、逃げるように。必死に抗い、逆らうように。むき出しの感情から感じ取れるクロノの悲鳴のようなものが、カルネの心を苦しめていた。

 

「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ!!ガブリアス!はかいこうせん!!」

 

「GUOAAVAAA!!」

 

「サイコキネシス!」

 

「サナ!」

 

はかいこうせんをサイコキネシスで逸らし、直撃を避ける。

 

「アイアンヘッド!」

 

「GAAAAA!!」

 

「ムーンフォース!」

 

「サナァー!!」

 

突撃してくる狂竜メガガブリアスに対し、ムーンフォースで迎撃する。ムーンフォースは鋼鉄の頭突きで逸らされ、直撃には至らない。

 

「シャドーボール!」

 

「ドラゴンクロー!」

 

少しでも勢いを止めるべくシャドーボールを指示。こちらはクロノの機転で技を変更したことで、ドラゴンクローにより打ち消された。

 

「アクアブレイク!」

 

「サイコキネシス!」

 

「GUOVAAA!!」

 

「サーナアアァッ!!」

 

アクアブレイクによる猛攻を、サイコキネシスによるサイコパワーで受け流す。体力的にも限界が近づいており、完全には躱しきれない。少しずつダメージが蓄積する中、カルネはクロノから目が離せない。

 

「……なんだよ」

 

「…………」

 

「なんだ、その目は……なんで俺様を、そんな目で見る……!」

 

「…………」

 

「俺様をっ!憐れむなぁ!!」

 

その言葉がキーとなったのか狂竜メガガブリアスはほぼゼロ距離にも関わらずはかいこうせんを構えた。

 

「サーナイト」

 

「サナ」

 

「……ムーンフォースッ!!」

 

「サアアァナアァッ!!」

 

だが、カルネがとった選択は回避でなく、迎撃。それも、ゼロ距離によるムーンフォースだ。狂竜メガガブリアスのはかいこうせんと、メガサーナイトのムーンフォースがゼロ距離で搗ち合い、大爆発を起こした。周囲一帯を飲み込む巨大な爆発だ。

クロノは咄嗟に翼を顕現し、爆風から自身を守った。爆風が収まり煙が晴れた先では、戦闘不能となったメガサーナイトが倒れており、さらにそこから離れた場所ではトレーナー達も倒れていた。狂竜メガガブリアスは膝をついているが、かろうじて保ったようだ。

 

「……ハ」

 

クロノは勝負に勝ったのだ。

 

「ハ、ハハ!ハハハハハハハ!!」

 

思わず溢れる高笑い。勝負に勝ったのだから、笑いが溢れるのは自然なことだろう。

 

「どうだ!見たか!?俺様の強さ!俺様の正しさ!!これが力!これが!これこそが!!ハハハハハハ!!」

 

しばらく一人で笑い続けていたクロノ……だが、次第にその笑い声も小さくなっていった。

 

「…………」

 

やがて、完全に笑わなくなった頃……クロノはカルネたちの方へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の激突から、気を失っていたらしい。カルネは少しずつ覚醒に近づく意識の中で、そう認識した。ゆっくりと目を開けて、少し首を動かすと同じように寝かされたアランとショータの姿があった。続けて反対側に目を向けると、クロノが座っていた。

 

「……おう、起きたかチャンピオン」

 

「……貴方が、介抱してくれたの……?」

 

「……ん、まぁな……」

 

目を合わせることなく答えるクロノだが、そこにはバトル中に感じられていた傲慢さや不遜さがなくなっていた。むしろ、燃え尽きてしまったかのような虚脱感が漂っていた。

 

「勝負は俺様の勝ちだ。俺様は勝ったのだ、貴様らにな」

 

「……そう……」

 

「……なのに、なぜだ?」

 

そう言って顔を向けたクロノは、苦しそうな表情を浮かべている。

 

「なぜ、嬉しくない?楽しくない?勝利とは美酒に酔いしれるようなもので、心地よいもののはずだ。

なのに、まったく感じられない。むしろ……なぜ、こんなにも虚しいんだ?俺様は勝ったのに……勝ったはずなのに……」

 

「……苦しかったのね、貴方も」

 

「え……?」

 

「負けられない理由があるのかしら……だから、どうしても強くなりたかったのね」

 

「……そうだ。だから、俺様は……」

 

「けど、あんなやり方は間違っているわ……それは、絶対」

 

「……!では、どうしろと――!!」

 

「けど、その想いは間違いではないわ」

 

カルネは優しく微笑みながら、ゆっくりと諭すように言葉を紡ぐ。

 

「貴方が抱えている想いは、誰もがみんな持っているもの……人ぞれぞれに想いがあって、その人の想うがままに強くなろうとしている……。みんなね、必死なの。少しでも強くなろうと、みんなが必死になってもがいて、足掻いている……それは決して、貴方一人だけじゃないわ……」

 

「……人それぞれに、か」

 

「それにね……貴方は"自分は弱いから強くなろうとしているんだ"と言うけれど……そんなことはないわ」

 

「それは、どういう……?」

 

思わずクロノは聞き返した。その様子はまるで藁にも縋るような、迷子の子供のような不安を浮かべていて、その様子を見てカルネは静かに安堵した。

 

「大丈夫。貴方は、貴方自身が思うほど弱くはないわ。……だって、こんなにも強くなりたがっているでしょう?」

 

「……あぁ」

 

「それなら、大丈夫。その想いは決して、間違いなんかじゃないわ。それにね、勝ったのに嬉しくないって、つまらないって思えるのはね……それだけ、貴方がバトルに真剣に……夢中になっていたからなのよ……?」

 

「……!!」

 

クロノが驚きに目を見開いた。自分のことのはずなのに、まったく考えに及ばなかったからだ。

 

「俺様が、バトルに……?」

 

「えぇ……。貴方も最初は、ただ勝つことだけを考えていたのかもしれない……けれど、バトルをしていくうちに、いつしか対等に戦いたいと思うようになったはずよ……。

対等に、真剣に、お互いを認め合って、高め合って……ポケモンバトルはね、それを可能とする最上のコミュニケーションツールなの。きっと貴方も、強く影響を受けているはずよ。

それにね、これは勝負なの。けっして一度きりの戦いなんかじゃない、機会があれば何度でも何度でも臨むことができる……だから、負けたっていいの。その敗北を糧に、もう一度立ち上がって、また挑めばいい……そして、次に勝利すればいい。それが、勝負というものなの」

 

「……そう、か……」

 

完全には理解しきれていないのだろうが、納得の意思を示したクロノ。クロノは立ち上がると、そのまま歩き始めた。

 

「どこへ……?」

 

「……どうしても、勝ちたい相手がいるんだ。そいつに勝つためにも、まずは……ポケモンたちと向き合ってみようと思う。それから、色々と特訓してみるよ」

 

「そう……。大丈夫よ、貴方なら、きっと勝てるわ」

 

「"負けてもまた挑めばいい"……だろ?」

 

「えぇ」

 

「……ありがとう。チャンピオン・カルネ……お前のこと、ずっと忘れない」

 

関係者には連絡してるから、と言い残して、クロノはその場を去っていた。クロノが去ってから少しして聞こえてきたヘリコプターの音を耳にしながら、カルネは再びゆっくりと意識を沈めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時空の裂け目を通り、元の世界へ戻ってきたクロノ。最初にすべての手持ちポケモンをボールから出すと、自身が持つ生体エネルギーを用いて極限状態を回復させた。正気に戻ったポケモンたちに対し、クロノは言い放った。

 

「……俺様はショウを倒すために、手持ちを用意する。お前らはもう好きにしろ。どこへなりとも行け」

 

それから背を向けて歩き出そうとした、その時だった。

 

「チルル~♪」

 

「のわぁ!?チ、チルタリス……?」

 

なぜかチルタリスが飛びつき、クロノに抱きついたのだ。すると、後に続けとばかりにポケモンたちがクロノに飛びつき、一斉に抱きついてきたのだ。

 

「わああぁぁっ!なんなんだお前ら!?俺様と一緒に行きたいのか!?」

 

「チル~!」

 

「リュー!」

 

「グオン!」

 

「カィン!」

 

「ボマー!」

 

「ガブア!」

 

「……!!お、お前ら……」

 

クロノは自覚していなかったが、ポケモンたちはクロノにかなり懐いていた。だから、極限状態に関しても"それがクロノの力になれるなら"と受け入れたのだ。知らず知らずのうちにポケモンたちと信頼関係を構築できていたことに、遅まきながらに気づいたクロノ。

彼はニィッ!と口角を釣り上げるとポケモン一匹一匹の頭を撫でていく。

 

「……そうか!よぉし、そうとくれば……早速特訓だ、お前ら!!俺様について来い!!」

 

ポケモンたちが一斉に声を上げ、クロノは鍛錬に最適な場所を目指して歩き始めた。

 

「(待ってろよ、ショウ!最後に勝つのは……俺様だ!!)」

 

その表情は、吹っ切れたように晴れやかだったという。

 

 

 

 




クロノの成長の一端が垣間見えたでしょうか?おかげでこっちは19000文字も書く羽目になりました(自業自得とも言う)。

そしてこの後、特訓したクロノがショウとバトル……という展開になります。



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【光梨さんの仇!】我らモンハン部異世界支部【まさかのキズナ現象!?】

掲示板回の時間だァ!時系列的には焔の覚醒直後です


1:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やったぜ

 

2:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、あのクズ野郎に関してはお前なんもしとらんやんけ

 

3:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うるさーい!ゴウカザルによるオラオララッシュに加えて、今回の止めの一斉攻撃で俺のストレスも無事に吹っ飛んだわけだぜ!

あの断末魔が聞けただけでも満足じゃい!

 

4:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おぉ、そうだ、あとキズナ現象おめでとう

 

5:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ありがとう!ありがとう!そして……ありがとう!!

 

6:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まさかサトシゲッコウガならぬショウジンオウガを見ることになるとはな

 

7:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

もういっそこれが極み個体でよくね?

 

8:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いいじゃん!【極み吠える】とはちょっと違うけど、極み個体であることに変わりはないし!

 

9:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そうだな……こっちでなにか、いい名前のアイディアでも考えてみるか

 

10:陸の女王 ID:MonHunPHr5

ショウがケジメを付けてくれたし、きっと光梨さんも笑ってくれているはずよ

 

11:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ……俺も、ミツ姉とちゃんと話ができてよかったぜ……

 

12:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

光輝とショウと光梨さんが繋いだ絆……そこから生まれたキズナ現象……なんてエモいんだ……

 

13:陸の女王 ID:MonHunPHr5

感動したわ!

 

14:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

よぉーし、この勢いでアルバトリオンもぶっ飛ばしてやるぞー!

 

15:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おうっ!

 

16:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

よし、それじゃあ今日はこのへんで……

 

17:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ちょっと待てぇい!!

 

18:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ん?

 

19:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

え?

 

20:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はい?

 

21:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お?

 

22:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いやいや、待てや己ら!俺は?俺のことは!?

 

23:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ヨカッタネ

 

24:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

キャー、リオレウスカッコイー

 

25:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おめでとさん

 

26:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

 

27:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なあんでこんなにも扱いに差があるのよぉ!?俺が覚醒しなかったら今頃俺もショウちゃんも地上に赤いシミ作ってたんだが!!

 

28:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まぁ、「破滅の翼」もたしかに素晴らしかったが、キズナ現象と比較するのはちょっと……

 

29:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

モンハン由来の「破滅の翼」を非オトモンリオレウスが覚醒させるのは、まぁ可能性としてはある

だがポケモン由来のキズナ現象をモンハンのモンスターで発生させたという展開は胸熱すぎる

 

30:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

最初から勝ち目はなかったんやなって

 

31:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あァァァんまりだァァアァ!!

 

32:陸の女王 ID:MonHunPHr5

よしよし……

 

33:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おおぉ、葵ぃ!お前だけだよ慰めてくれるのはぁ!!

 

34:陸の女王 ID:MonHunPHr5

よしよし、よしよし……フフフ――

 

35:空の王者 ID:MH2nddosHr8

フー、スッとしたぜ(スッキリ)

もういいぞ葵、ありがとな

 

36:陸の女王 ID:MonHunPHr5

あ……チッ

 

37:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ちょっと待て、今舌打ちしなかったか?

 

38:陸の女王 ID:MonHunPHr5

してないわよ?

 

39:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、でも、"チッ"て――

 

40:陸の女王 ID:MonHunPHr5

してないわよ?

 

41:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あ――

 

42:陸の女王 ID:MonHunPHr5

し て な い わ よ ?

 

43:空の王者 ID:MH2nddosHr8

アッハイ

 

44:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

しっかし、キズナ現象すらモノに出来てしまうかぁ……見た目的には不完全形態っぽいけど

 

45:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

サトシゲッコウガの時は水に覆われた状態……光輝の場合は電撃を纏った状態だったな

この電撃が消えてなくなった時こそ、真の覚醒状態と言えるだろうな

 

46:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

つまり、もっともっとショウと気持ちを通わせろってことか

 

47:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そうなるんだろうなぁ

 

48:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……それにしても、面倒くさいやつが妨害してきやがったな

 

49:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

アルバトリオン……まさか、禁忌のモンスターが邪魔してくるとは思わなかったな……

 

 

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が参加しました――

 

――「赤いなぁ……」が参加しました――

 

――「世界絶対滅ぼすドラゴン」が参加しました――

 

 

 

 

50:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

そのことに関しては俺様に非がある、奴に今回の件について話すべきではなかった

 

51:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

本当に余計なことをしてくれやがって……どうしてくれる、この始末

 

52:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

言って聞くようなタマでもないし、かといって俺様達が煌黒と争うわけにもいかん

争った日にゃ、世界地図からどこかしらの土地が消えるし滅龍石も消し飛ぶ

 

53:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

そこまで見越して滅龍石を奪うに至ったのか、あのクソリーゼント

 

54:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

はぁ……絶妙に私たちが嫌がることをしてくるのね……

 

 

 

 

――「我の頭のことなんつった?」が参加しました――

 

 

 

 

55:我の頭のことなんつった? ID:MH3WiiONLINEHr8

今回は単純に間が悪かっただけだ、そう思っておけ

 

56:空の王者 ID:MH2nddosHr8

煌黒龍アルバトリオン!

 

57:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

おい煌黒!貴様は本当になんてことをしてくれたんだ、ショウには時間がないというのに……!

 

58:我の頭のことなんつった? ID:MH3WiiONLINEHr8

だからだろう、こうして石を奪えば小娘は自力で取り戻しに来るだろうと踏んでいた

話を聞く限り、小娘は我と戦う気満々なんだろう?ならばよいではないか

 

59:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

よくないわクソッタレが!あぁ……ボレアスが多少は改心したかと思ったら、今度は貴様とはなクソリーゼント……!!

 

60:我の頭のことなんつった? ID:MH3WiiONLINEHr8

お前、今……我の頭のことなんつった……?

 

61:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

ダッセェクソリーゼントっつったんだよ!あー、聞こえなかったならもう一回言ってやろうか?このクソダサ万年ボッチクソリーゼント!!

 

62:我の頭のことなんつった? ID:MH3WiiONLINEHr8

誰がボッチだクソがあああぁぁっ!?

 

63:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いやキレるとこそこかよ

 

64:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

煌黒、本当にショウを試したいから滅龍石を盗んだの?

 

65:我の頭のことなんつった? ID:MH3WiiONLINEHr8

あぁ!?……あー、うん、そうだよ

 

66:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

本当にそれだけ?

 

67:我の頭のことなんつった? ID:MH3WiiONLINEHr8

本当にそれだけ

 

68:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

尚の事、迷惑極まりねぇんだよ!!

 

69:我の頭のことなんつった? ID:MH3WiiONLINEHr8

迷惑だぁ?まぁ、たしかに好奇心からあの小娘を試したいと思ったのは事実だが、何もそれだけではないぞ

 

70:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

なに……?

 

71:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

……まぁ、俺様のパチもん相手にあれだけちんたら長期戦やってりゃ、いざ俺様本人と戦うとなればどうなるやら……だろ?煌黒

 

72:我の頭のことなんつった? ID:MH3WiiONLINEHr8

左様、我はあのメタモンなる者が黒龍に変身したパチもんと小娘の戦いをのぞき見させてもらっていた

黒龍とはいえ、所詮は偽物……だが、随分と苦戦していたように見えたのは我の気のせいか?うん?

 

73:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うっ……まぁ、メタモンとはいえミラボレアスはたしかに強かった……

 

74:我の頭のことなんつった? ID:MH3WiiONLINEHr8

生憎だが、本物の黒龍は我よりも強い……この黒龍もまだ個体としては若いとはいえ、地力では既に我を凌駕している

だというのに貴様らとくれば、ハンターは八人掛りでモンスターも【二つ名】がせいぜいときた……こんな調子で、果たして本物の黒龍に勝てると思うか?否、断じて否!

だからこそ、我が試してやろうと……言い換えれば、我が自ら踏み台になってやろうと言っているのだ、あわよくば紅龍祖龍もフルボッコに出来るくらいには強くなってもらわねばな!先達からの好意は素直に受け取っておくものだぞ?

 

75:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

本当に間が悪かっただけじゃねぇかよ

 

76:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、ショウちゃんの性格上「呪い解けました、それじゃあ帰りましょう」くらいの切り替えの速さもある

ミラボレアスがヒスイに侵略に来る可能性を考えれば、ヒスイに早く帰ろうと考えるのも必至……アルバトリオンのこのタイミングの介入は、奴なりに考えた結果なのだろう

 

77:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

要するに、対禁忌モンスターの予行演習をしておこう、ってこと?

 

78:我の頭のことなんつった? ID:MH3WiiONLINEHr8

なんだ、人間にも賢い奴がいるようだな

 

79:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

だろー!

 

80:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そいつロリコンだぞ

 

81:我の頭のことなんつった? ID:MH3WiiONLINEHr8

えっ、怖……とづまりすとこ

 

82:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

剛太お前なんてことをしてくれたんだ!?一瞬で台無しになったじゃねぇか!!

 

83:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

禁忌のモンスターすら思わず逃げ出すロリコンとは一体……

 

84:陸の女王 ID:MonHunPHr5

焔の性癖が歪まないように調教しないと……

 

85:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あの、葵さん?視線が怖いです……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

193:空の王者 ID:MH2nddosHr8

さてさて、カイちゃんがクズ野郎に追撃のはかいこうせんをぶち込んでからギルドに引き渡して、今や神域へ向けて移動中なわけですが……

 

194:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

どうした?なにか気になるでも?

 

195:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ちょうどボレアス三人衆は離席中だし、ヒスイの方の状況も知りたいなと思って

 

196:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あぁ、そんなことか……こっちは至って平穏だぞ、海は荒れまくっているが

ヒスイハリーセンやらドククラゲやら、海のどくタイプはワルが多くて困るぜ

 

197:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

こっちもヒスイニューラがちょっかいをかけてきたりオヤブンガブリアスが喧嘩売ってくるけど、実に平和だぞー

あと、四六時中子供たちと遊んでいるくらいか

 

198:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺も岩ポケモンをボリボリ食べたり、あと体から採れる鉱石をコンゴウ団に回収してもらったりしてるかなー……あと、その石を野盗三姉妹が狙ってるところも見たな

あ、それとdosハンター起きたよ

 

199:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんだ、みんなはみんなで割と日常を謳歌できてんだな

 

200:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あぁ、よかったよかっ――

 

いや待て剛太ハンター起きたって!?

 

201:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

え、マジで!?

 

202:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おう、結構ピンピンしてたし、目が覚めたのが今日からだいたい……一週間とちょいくらい前か?大分ヒスイに順応してたし、なんなら今は調査隊としてポケモン調査に精を出してるぞ

 

203:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なんで教えてくれなかったんだ!

 

204:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、聞かれなかったし……

 

205:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そういや、俺のところにも来てたな

ちょうどそのタイミングでオヤブンガブリアスが襲ってきたから子供たちを守るために撃退したんだが、「オメェ、本物の騎士みてぇだな」って笑ってくれたわ

 

206:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

こっちにも来てたぞ

海のポケモンを捕獲したいって言うんで背中に乗せたんだ、かなり興奮していたな……終始子供みたいにはしゃいでたぞ

 

207:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

えぇー、教えてくれてもよかったやん!手持ちポケモンとか決まってんの?

 

208:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

全部は見てないぞ、俺はバクフーンとエルレイドは見た

 

209:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺はエンペルトとメガヤンマを出しているところを見たぞ

 

210:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そうなの?こっちではマニューラとレントラーを出してたが

 

211:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ふむ……まとめるとバクフーン、エルレイド、エンペルト、メガヤンマ、マニューラ、レントラーになるのか

いや、ほかに手持ちを入れ替えている可能性はあるが

 

212:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ふむ、素早さは申し分ない、攻撃面でも物理・特殊が均等だし、育て方次第では両刀になれるポケモンもいる

 

213:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

技のタイプ範囲も文句なしだな、ポケモンのことなんぞ何も知らなかったろうに、二週間か最速一週間以内でこれだけのメンツを揃えた、ということだよな……

やはりハンターは化物だった……

 

214:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なぁなぁ、ハンターの名前は?

 

215:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ヒューイ、っていうらしいぞ、ヨネネキがそう呼んでた

 

216:空の王者 ID:MH2nddosHr8

剛太のところによく来るのか?

 

217:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だな、なんせ俺ことグラビモスはMH2dosのモンスターだからな!狩猟経験という縁が俺とハンターを繋げてんのよ

 

218:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふむ……なぁ剛太、ほかに何か話はしていなかったか?

 

219:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

他?……あぁー、そういえば!天冠の山麓で巨大ポケモン……モンスターが出たって話してた

 

220:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なにっ!?

 

221:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

どういうことだ、時空の歪みはもう発生していないはず……

 

222:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、ミラボレアスの干渉で散発的に発生する時空の裂け目かも知れない

剛太、出てきたモンスターについてなにか情報は?

 

223:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ルナルガ

 

224:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……WHAT?

 

225:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ルナルガだって、聞いた話だと絶対にそう

 

226:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ナルガクルガ希少種ぅ!?……あ!そういえばココット村の村長が……

 

227:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そういえば、話の中で秘境の塔にまで時空の裂け目が出現したという報告が上がっていると言っていた……!

 

228:空の王者 ID:MH2nddosHr8

その時に、ルナルガが巻き込まれたっていうのか!?

 

229:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

どうしてルナルガだと?

 

230:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まず、ナルガクルガの名前は出てたんだよ、だけどヒューイは出現したナルガクルガを「見たことない種類」って言っててな、しかも出現時間と時期が『霧が出る夜』とくれば、知っている人間はすぐに察すると思うぜ

 

231:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

確かに、ナルガクルガ希少種は「霧が出ている月夜」にのみ活動が確認されている……逆に言うと、それ以外の時間帯に姿を見せなければ確定ということか

 

232:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ヒューイも一戦交えたようだぜ

どうも防具無しで挑んだみたいで、討伐はできずに時間切れになったんだと

 

233:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……それって、夜明けまでずっと戦ってたってことだろ?それも防具無しで、初見であるルナルガ相手に……やっぱりハンターって人間じゃねぇ!

 

234:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やはり、ドンドルマの英雄は頭ひとつ抜きん出ているというわけだな……

 

235:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

さすがのヒューイも「ポケモンの力がなかったらヤバかった」ってヨネネキに話してたから、かなり苦戦してたんじゃないかな

 

236:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それでも防具を着て回数重ねればそのうち狩猟できそうなところがハンターたる所以よな

 

237:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それもポケモンという名の万能オトモ(六匹)付きでな

 

238:空の王者 ID:MH2nddosHr8

勝ったな

 

……ところで、さっきから聞き手に徹しているが、葵からはなにかないか?ずっと会話に参加していないが

 

239:陸の女王 ID:MonHunPHr5

私?生憎とモンハンは未プレイだから……それに、みんなの話を聞いているだけで十分楽しいわ

今が十分幸せなのに、これ以上なんてバチが当たるわ

 

 

240:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

どうして焔の幼馴染に生まれてしまったんですか葵さん(´;ω;`)ブワッ

 

241:空の王者 ID:MH2nddosHr8

オウコラ、喧嘩なら買うぞ

 

 

 

 

――「第一の時間神」が参加しました――

 

――「第二の空間神」が参加しました――

 

――「第三の反物質神」が参加しました――

 

 

 

 

242:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

皆さん!お久しぶりです!

 

243:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おぉ、ディアルガ、パルキア、ギラティナ!

 

244:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

シンオウ三竜がそろい踏みか、確かに久しぶりだな

 

245:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

悠久の隔たりを経て、定められし邂逅の時来たれり

(お久しぶりですね!)

 

不変なる見目姿、されど我が魂は安寧に震えている

(みなさん変わらず元気そうで何よりです!)

 

246:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ウ"オ"オ"ォ"ア"ァ"ッ!!

 

247:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ぐおぉぉぅ……

 

248:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いい加減に慣れろ、元患者共

 

249:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

であるぞ

 

250:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

本当に久しぶりだな、そっちはどうだ?

 

251:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

時空の裂け目の状態を調節してきたところです、既にミラボレアスの管轄にあるので閉じることはできませんが、奴が簡単に出入りできないようにしてきました

 

252:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

惜しむらくは、ミラボレアスの力が我らが想像するよりも遥かに強大であったことだ……なるほど、我らが母が手こずるのも頷ける

 

253:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

邪龍の力は理外の力、我ら三竜の真の力を持ってしても拮抗するか否か……

(ミラボレアスの力は本当に底が知れません、僕たちのオリジンフォルムでも互角に戦えるか怪しいです……)

 

254:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

ですが、私たちは曲がりなりにも神と呼ばれてきました!なので神様の意地を見せるため、時空の裂け目に細工をしてきたのです!

 

255:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

間諜の気、侮りがたし……仔細は黙する故、時を待て

(どこで情報が漏れるかわかりませんからね……そこは当日までのお楽しみ、ということで)

 

256:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ありがたい、流石に無策で挑むわけには行かないが、俺たちに何ができるというわけでもなかったので助かった

 

257:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

こりゃ、せっかくの協力を無駄にするわけには行かないな!

 

258:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

であるぞ

 

259:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それにしても……真面目清楚パルキア、であるぞbotディアルガ、中二病ギラティナって、相変わらずメンツが濃いわぁ

それともこれがアルセウスの趣味か……?

 

260:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

否定はできん、我らは生み出された際に特に母の強い部分から各々影響を受けている

 

261:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

そうですねぇ……私たちの性格はいわば、母の内面の写しみたいなものですから

 

262:陸の女王 ID:MonHunPHr5

写し……それじゃあ、普段は表面化しにくいだけで、アルセウスにはあなたたちの性格のような一面もある、ということ?

 

263:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

是、我らは母の魂を継ぐ者、故にその輝きは同等なり

(はい、僕らは母から生まれ能力や精神的な部分から様々なものを受け継ぎましたので)

 

264:陸の女王 ID:MonHunPHr5

へぇ、あのアルセウスが……ちょっと信じられないわね、意外性が強いというか

 

265:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

……っと、そうでした!みなさんに伝えなければならないことがあるんです!

 

266:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

我らが生誕の地にて、閉じられし禁断の扉が再び解き放たれた

(ヒスイ地方に時空の裂け目がまた出現したんです!)

 

忌まわしき呪いが彼の地を侵す時は近し……

(黒龍がヒスイに乗り込む準備を始めているのでしょう……!)

 

267:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なにっ!

 

268:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ついに来たか……!

 

269:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

今は、私たちが裂け目に干渉することでミラボレアスの侵入を阻んでいますが、時間の問題でしょう……なるべく早い帰還を待っています……!

 

270:空の王者 ID:MH2nddosHr8

わかった!こっちもやること済ませて、戻れるように頑張る!

 

271:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そちらでも可能な限り持ちこたえてくれ、だが無理はするなよ

 

272:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

無論、であるぞ

 

273:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

うむ

 

274:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

はい!

 

 

 

 

――「第一の時間神」が退室しました――

 

――「第二の空間神」が退室しました――

 

――「第三の反物質神」が退室しました――

 

 

 

 

275:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……ヒスイ地方も、また大変なことになってきたわね

こんな出来事、歴史書に綴っても誰も信じないでしょうね

 

276:空の王者 ID:MH2nddosHr8

どうだろうな、シロナあたりは信じて俺たちの痕跡を探そうとするんじゃね?

光輝……ジンオウガなんて、未来で短歌になって伝え残されてるんだぜ?ありえなくはないだろ

 

277:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふむ……実際、未来のシンオウ人が俺たちのことをどれだけ知っているのか、というのはちょっと興味があるな

 

278:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えー?でもショウちゃん家でもジンオウガのことしか伝わってなかったのに、俺たち全員分とかあるのかー?

 

279:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ワンチャン、シロナあたりが頑張ってると信じて

 

280:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、伝わってたら伝わってたでまずいだろ!シンオウ地方が魔境かなにかみたいに言われそうだわ!

 

281:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、過去に巨大生物がうようよいたとか、どんな場所だよみたいにはなりそうだがな

そこは安心してもいいだろ、実際のところ光梨さんのダイパ時代の時点で、光輝以外のモンスターのことは何も情報が残されてなかったっぽいし

 

282:陸の女王 ID:MonHunPHr5

けど、光梨さんのことだから、きっとジンオウガのことだってすぐにわかったんじゃないかしら?それでも黙っていたってことは、光梨さんなりの考えもあるんだろうし

 

283:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ミツ姉……また会いたいな……

 

284:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……む、スレ外から感じられる空気が変わった……光輝、焔、葵

 

285:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あぁ、わかるぜ……全身がビリビリしやがる

 

286:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……とんでもないプレッシャーを感じるわ、これが禁忌のモンスター……!

 

287:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ついに来たぞ、神域……待ってろよ、アルバトリオン!

 

 

 

 




次回はついに神域突入!アルバトリオン戦です!!


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神域に坐す者~アルバトリオン~

今回は導入……さーて、アルバトリオン出てこいやぁ!


犯罪者ユージを連行する道中、拘束を解いて暴走するという事件が起きたものの、おかげ("おかげ"とはあまり言いたくないが)で私のリオレウスが『破滅の翼』の力に覚醒するというラッキーが起こった。予期せぬ形で新たな力を手に入れることができたので、お礼とお礼参りという二重の返礼をするためにポケモンたちの一斉攻撃で大目に見てやることにした。

起こった問題はそれだけで、その後は恙無くドンドルマに到着した。飛行船から降りると、私たちを出迎えてくれる影が見えた。

 

「ショウ、無事に着いたか!」

 

「ニールさん!」

 

そう、ニールさんだ。歌姫護衛のために同道したハンター組は大長老からの許可取りのため、先んじてドンドルマに向かっていたのだ。

 

「許可の方は?」

 

「もちろん!無事にもらってきたよ。これで俺たちハンターも、君たちのアルバトリオン討伐に同行できるようになった……必ず勝とう、ショウ」

 

「はい!……ところで」

 

「ん?」

 

「良かったんですか?……シズカさんを置いてきてしまって」

 

「……あー……」

 

ニールさんが気まずそうに目をそらす。……そう、実は今回のアルバトリオン討伐にシズカさんはいない。というのも、彼女のメンタルを考慮したニールさんが独断でメゼポルタに置いていくことを決めたらしい。なので、今ここにいるハンターはニールさん、エイデンさん、ネネさんの三人のみだ。……どうやってネネさんを丸め込んだんだ?絶対に「姉様の傍にいます!」って駄々をこねただろうに……。

 

「絶対に怒ってますよ、シズカさん」

 

「……うん、わかってる。大丈夫だ、誠心誠意……全力で土下座するよ」

 

「情けないなぁ……」

 

「うぅ……け、けど、あの状態のシズカを連れて行くわけには……」

 

「そうじゃなくて、『黙って』置いていったことに問題があるんですよ。ちゃんと相談すれば、シズカさんだってわかってもらえたはずですが?」

 

「うぐっ!」

 

ニールさんなりに気遣った結果なんだろうけど……なんというか、不器用な人だなぁ。狩猟では手際よく立ち回れるのに、それ以外では……うん。

 

「とりあえず、帰ったら謝りましょう。私も一緒に謝罪しますから」

 

「いや!俺が一人で謝るよ。それくらいの責任はあるさ」

 

「そうですか……わかりました」

 

そうして話していると、飛行船からユージが降りてきた。ソウヤさんが縄をしっかりと握っているので、簡単には逃げられないだろう。

ボコボコのボロボロになっているユージを見て、ニールさんは何とも言えない表情を浮かべている。

 

「……前世、か。前世来世とかって言葉自体はよく聞くが……まさか、記憶をそのまま受け継いで転生する、なんてことがあるなんてな」

 

「はい……ソウヤさんはシズカさんのお兄さんを殺してしまった前世が、ユージは私の母を陵辱した前世が……」

 

「その口ぶりだと……ショウのお母さんも?」

 

「はい」

 

「……本来、転生する際に魂は浄化される……つまり、前世の記憶は洗い流されるはずだよな、何かの本で読んだことがあるよ。けど、魂はそのままに転生だけが起こる……そんなことってありえるのか?」

 

「ありえることが、目の前で証明されてますよ」

 

「……それもそうか」

 

と、ここでユージがまたしてもなにか喚き散らしながら逃げ出そうとしている。……だが、ソウヤさんは流石は元ハンターの現ギルドナイトだけあって、ユージを逃がすことはない。と、ここでなぜかカイさんが動き出した。

 

うーーー

るーーー

せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!

 

カイさんが叫ぶと同時に、グレイシアがはかいこうせんをブッ放した。加減はしたのか小規模の爆発後、真っ黒になったユージの姿が。その一撃が決め手となったのか、完全に抵抗力を失ったユージはそのままソウヤさんに連行されていった。

 

「……あんな小さな体の、一体どこからあんなビームが出てくるんだ……」

 

「それがポケモンですから」

 

「ポケモン……ポケットモンスターという、ショウの地元であるヒスイに生息するモンスターか。多彩な技と多様性という意味では、ウチのモンスターと脅威度は五分ってところかな。技巧種モンスターも、時空の裂け目を通してヒスイの環境の影響を受けたって聞いたけど……」

 

「実際、時空の裂け目で繋がりが出来てから技巧種モンスターも増えてます。無関係ではないでしょう」

 

私たちの会話に入ってきたのは、ネネさんだった。

 

「ネネさん……やはり、増えてますか」

 

「えぇ。各狩猟地から、『技巧種と思しきモンスターを確認した』という報告が上がっています。なるべく捕獲を推奨していますけれど、やはり技巧種……捕獲にせよ討伐にせよ、一筋縄では行かないようですわ。

特に、鳥竜種。一部の個体は群れを形成するのですけれど、群れが丸ごと技巧種化したと聞いたときは、我が耳を疑いましたわ……あぁ、頭が痛い……」

 

「……このまま技巧種モンスターが増えれば、生態系に著しく影響が出るな」

 

「既存のモンスターが、技巧種モンスターによって縄張りを脅かされているという状況が各地で観測されています。彼らは最大で18種の属性を操れますからね……既存モンスターでは太刀打ちできないようですわ。技巧種化したとはいえ、ドスランポスの群れが古龍級生物を撃退するなんて誰が想像できますか……」

 

……どうやら、こちらの大陸でも影響が表れ始めたらしい。多種多様な技を豊富に得た技巧種モンスターが、現存する通常個体のモンスターたちを追いやり始めたそうだ。そのために一部のモンスターは縄張りが変化し始め、龍歴院も多忙を極めているらしい。

現在はハンターズギルドから全ハンターへ下知し、技巧種モンスターを捕獲もしくは討伐するようにすることで対応しているそうだ。

 

「古龍種はどうなんだ?」

 

「中型以下の技巧種モンスターには遅れをとりませんが、大型モンスターが相手だとそれも難しいですわね。一部の古龍が縄張り争いで惨敗した様子が確認されています。おそらく相手は、技巧種でしょう」

 

「古龍すら脅かされるか……改めてとんでもないな、技巧種は」

 

「実際に戦ってみなければ、その脅威は理解し難いですわ。そのせいで、ハンター側にも決して少なくない被害が……」

 

「龍歴院は属性相性の早見表を作っているんだったか」

 

「各種族の代表モンスターを優先して、急ピッチで仕上げていますわ。……"タイプ相性"について、我々龍歴院の理解が遅れていることは否めません。姉様をはじめとする、もっと造詣の深い御方がサポートしてくださると助かるのですけど……」

 

そう言いつつ、チラッ、と私を見るネネさん。……あぁ、結局あの三人の学者さんはお手上げだったのかな……。

 

「ミラボレアスに動きがなければ、呪いが解けた後にでもお手伝いはできますが……」

 

「可能であれば、よろしくて?もちろん、そちらの……ヒスイの事情を優先してくださって構いませんわ」

 

「了解です」

 

呪いが解けてすぐにミラボレアスが動き出すならわからないけど、もしも呪いが解けても目立った動きがないようなら龍歴院のお手伝いをしてもいいかも知れない。ネネさんと簡単に約束を取り付けたところで、テル先輩がこっちに来た。

 

「ショウ、こっちにいたんだ」

 

「先輩……あ、そうだ先輩」

 

「ん?どうした?」

 

「先輩のジュナイパー、随分と姿が変わってましたけど……進化したんですか?それともメガシンカ?」

 

「いや、あれは進化じゃないよ。ショウが気絶してた三日間、ショウのお見舞いと並行してアカイさんと特訓してたんだ。その成果もあって、ジュナイパーが極み化できたんだ」

 

「ジュナイパーの極み化ですか!?」

 

「あぁ、アカイさんが【(きわ)射狩(いか)るジュナイパー】って名づけてくれたんだ。他にも弓使いのハンターさんにも話を聞いて、ジュナイパーの動きに取り入れてみたんだ。強くなったんだぜ、今ならショウの【極み断ち斬るダイケンキ】ともいい勝負ができるぞ!」

 

「ふふっ……それは、すごく楽しみです!」

 

ジュナイパーの極み個体……【極み射狩るジュナイパー】、か……勝負がすっごく楽しみだ!

……そういえば、一匹だけヒスイに残してきたヒノアラシはどうしているだろうか。もうほかの調査隊員に譲られたのかな、それともまだラベン博士が面倒を見ているのだろうか。もしかしたら誰かが育てていて、極み化していたりして!……それはないか。

 

「おーい、ニール!」

 

「エイデン!」

 

今度はエイデンさんが……っと?なんだか表情があまりよろしい色をしていないな、なにかあったのだろうか……?ニールさんも察しているのか、表情を険しくしている。

 

「エイデン、何かあったか?」

 

「あー……あまり、良くないことが。ひとまず、大老殿に来てくれ。大長老様が話があると」

 

「……了解した」

 

エイデンさんからの話で、私たちは大老殿へと向かう。全員が集まったところで、話し合いが始まった。

 

「ムォッホン!数日ぶりじゃな、モンスタートレーナー諸君。メゼポルタでの一件は既に聞き及んでおる……また貴君らに助けられてしまったな。そのことについて謝礼を……と言いたいが、貴君らは謝礼よりも先に欲しいモノがあるようだな」

 

「えぇ、大長老殿。ギルドから派遣されたハンターは……」

 

「うむ……」

 

ニールさんが話を振ると、大長老様は渋面を浮かべて唸った。……一体どうしたの?すると、隣にいる大臣さんが話し始めた。

 

「滅龍石輸送部隊の壊滅を受け、ギルドは早急にハンターへ要請を出し、アルバトリオン討伐及び滅龍石奪還を依頼した。ハンターを派遣すること、都合七度……いずれも壊滅状態とのことじゃ。

さらに質の悪いことに、挑んだハンター達から速達で届いた文書にはこのように書かれていた。

"煌黒龍アルバトリオン、技巧種と化す"……と」

 

「なっ……!?」

 

ニールさんが小さく声を上げ、ネネさんが息を飲んでいる。……禁忌のモンスターが技巧種化ってハンター達からしたらシャレにならないんじゃ……。

 

「アルバトリオン技巧種の強さは未知数……もはや直接対峙してなお測りきれぬとのことじゃ。アルバトリオンは世界で唯一、すべての属性を操ることが出来る禁忌のモンスター……それが技巧種となったとあっては、もはや人の手に余る存在じゃろう……。

……おぉ、そうじゃ。積荷の滅龍石についても確認が取れたそうじゃ。アルバトリオンに守られておるせいで奪還とはいかなかったが……ひとまず、積荷は無事だそうじゃ」

 

「……ありがとうございます」

 

アルバトリオンが技巧種に……けど、滅龍石が無事で良かった。クロノの言うとおり、アルバトリオンは私を待っている……私と戦おうとしているんだ。

 

「……エイデンが言いたかったことって、これのことだったのか……」

 

「あぁ……信じられねぇよ、アルバトリオンまでもが技巧種になっちまうなんて……。ティガレックスにバゼルギウス……技巧種になったあいつら、とんでもねぇ強さだった。それが今度は禁忌の古龍か……」

 

「関係ないな、俺は神域に行く。行って、アルバトリオンを討伐して滅龍石を取り戻す!これ以上、ショウにツケを払わせるわけには行かない……!」

 

エイデンさんは若干だが辟易とした様子……だけど、ニールさんは逆に闘志を燃やしている。

 

「……フフフ……ここでアルバトリオンをさくっと討伐すれば、サプライズということも併せて姉様からの好感度はうなぎのぼり……!いずれは一線越えてキャッキャウフフ……アハッ♪」

 

……ノーコメントで。

 

「……ところで、シズカ・ミズハシは大丈夫かね?なにやら精神的な不調が見られたというが……」

 

「ご心配痛み入ります……ですが、大丈夫です。彼女がいなくとも、アルバトリオンを討伐してみせましょう」

 

「うむ……いてくれればこの上なく心強いが、彼女は少々頑張り過ぎるきらいがある。休ませることができるなら、こちらとしても吝かではない。気をつけてくれたまえ」

 

「わかりました」

 

そうして話し合いを終えて、私たちはドンドルマを発ち神域へと飛行船を飛ばしていた。その間、アカイさんからアルバトリオンについての話を聞くことにした。

 

「さて、アルバトリオンについて知りたいのだったな?」

 

「はい、お願いします」

 

「知ってのとおりアルバトリオンは禁忌のモンスターに名を連ねる存在であり、"暗黒の王"、"闇夜に輝く幽冥の星"、"黒き光を放つ神"など多種多様な異名を持ち、『神をも恐れさせる最強の古龍』と謳われている。あらゆる天災を操り、あらゆる生命を奪う『破壊の象徴』とされている存在だ。

やつの全身は逆さ鱗……即ち、逆鱗で構成されおり、これらで構成された甲殻である逆殻に覆われている。故に、奴の体は直接触れるものを無慈悲に引き裂く凶器であり、逆殻は受けた衝撃を跳ね返し、攻撃そのものを破壊する不壊の鎧……なぜこのようになっているのかは、未だ解明されていない。奴の特徴は他にも……そうだな、角にある。

数多の角が折り重なり、二股に分かれて形成された異形の大角……天を貫くかのように伸び、天を統べるほどの力を持つことから『統天角』と呼ばれるこの角は、その身に宿す桁外れの自然の力を操るための制御器官ともされ、不気味な紫光を放ち、巨大な龍属性エネルギーを滾らせるという。

そして……奴は不安定かつ規格外の規模で生成される、あらゆる属性エネルギーを内包している。こちらの大陸で確認されている火、水、雷、氷、龍の五属性すべてを操ることが出来るのだ。本来、モンスター一体が扱える属性エネルギーは基本的に一種類のみ……だが、やつはこの常識を覆すことができる。……もっとも、それはポケモンも同じことだがな」

 

ポケモンも同じ……?……あ!

 

「……!そうか、こちら側では操れる属性は原則一つまで……けど、ポケモンたちは……」

 

「あぁ、複数の属性を操ることが出来る」

 

「まるで安値でたたき売りされているアルバトリオンのバーゲンセールですね……」

 

「さらには時空の裂け目によってヒスイの影響を受けた技巧種モンスターも、同様に複数の属性を操ることが出来る」

 

「すると、時空の裂け目はさしずめ量産型アルバトリオン製造機ってところですか……どうりで龍歴院の皆さんが頭を抱えるわけです。余計なことをしてくれましたね、ミラボレアスは」

 

「あぁ、本当に……本っ当にいらんことしかせんな、あいつは……!」

 

アカイさん……心底腹立つとばかりに苛立ってる。禁忌のモンスター絡みとなると、アカイさんも繕ってる余裕がなくなるのかな……?

 

「……続けよう。アルバトリオンはそれぞれ属性を活性化させる特殊な形態……『活性変化』と呼ばれる能力を持っている。『炎活性状態』、『氷活性状態』、『龍活性状態』の三つの活性状態で構成されている。ハンター達が持ち帰った情報をまとめると、炎活性時にはほのおタイプとみずタイプ、氷活性時にはでんきタイプとこおりタイプと同じ耐性を得ることがわかった。……ただし、弱点は克服されているようだな」

 

「炎活性時にはほのおタイプとみずタイプ、氷活性時にはでんきタイプとこおりタイプの耐性を得る……けど、弱点は克服している。つまり、氷活性時にじめん技やはがね技で攻撃しても効果は抜群にならず、またどちらの活性時でもいわ技で弱点は突けない、ということですね」

 

「さすがだな、ショウ。もうそこまで理解したか」

 

……想像の何十倍も厄介だ。そんな能力があるだなんて……!

 

「アルバトリオンのタイプとしては……おそらく、ドラゴン単タイプ。そこへ各活性状態の耐性を合わせると……ふむ、こんなところか」

 

そう言ってアカイさんは紙に筆を走らせると、私に見せてくれた。そこには、アルバトリオンのタイプ相性が簡潔にまとめられていた。

 

「その紙をよく見て、タイプ相性を把握して臨んでくれ。他のトレーナー諸君にも、既に同じものを配布している」

 

「はい、完璧に頭に叩き込んでおきます」

 

「うむ」

 

紙に目を走らせ、そこに記されたタイプ相性の把握に全力で望む。……しかし、タイプには弱点と耐性があるにも関わらず、弱点は無視して耐性のみを得るなんて……これが、禁忌のモンスターの力というやつなのだろうか……。特に龍活性時にはほのお・みず・でんき・こおりすべてのタイプの耐性のみを得ることになるため、よく使われるメジャーなタイプの攻撃は通じにくいと考えていいだろう。

その代わり、それら全てとは無関係なタイプ……アルバトリオンで言えば、ノーマル・どく・エスパー・ゴースト・あくの五タイプはどの活性状態でも無関係にダメージを与えることができる……積極的に活用していいだろう。あとは……弱点を突くことはできなくても耐性がないタイプ……かくとうタイプといわタイプも積極的に攻撃に使えそうだ。特にジンオウガはかくとうタイプ持ち……タイプ一致で高い威力が見込める。しっかりと念頭に置いておこう。

すべての属性を操る古龍……そうなると、18タイプ全ての技が使えると想定しておいて損はないだろう。自分のポケモン……モンスターたちが何に弱いのか、しっかり記憶して対応していかないと。体質的に効果がない技は、仲間を庇ったりするうえで役に立つし、アルバトリオンが使う技を、その一挙手一投足から予測して行動しないと。

 

「……フッ」

 

「……?アカイさん、どうしました?」

 

今、アカイさんが小さく笑ったような……そう思って尋ねてみると、アカイさんは微笑ましそうに笑みを浮かべながら話してくれた。

 

「いや、なに。……君は、実に戦士に向いているなと思ってな」

 

「戦士?」

 

「あぁ。タイプ相性を把握していたのだろうが……その時の君は、戦場に赴かんとする戦士の顔をしていた。自らの寿命が迫る中でそのような顔を出来る人間はそういないものだ。多少なりとも、不安が顔に出るのは仕方がないだろうが……君の場合、その様子が一切なかったものでね」

 

「クロノも言ってましたからね……黒龍の呪いは、マイナス要素にしかならない感情によって増幅すると。だから、彼の忠告に従ってプラス思考で行こうと思ったんです。その中でも、今この状況に最適なプラス思考……即ち、闘争心を掻き立てているところです。

どうやって戦おうか?どうやって攻略しようか?弱点は?使用技は?……戦いに関して考えている間は、マイナス要素なんて考えてる余裕はないです。この胸の内の闘争心が消えない限り、私の心は決して折れません。これが、私なりに考えた黒龍の呪い対策です」

 

「……フッ、ハハハハハッ!!素晴らしい……あぁ、素晴らしいなショウ!やはり君でなければならない……黒龍と相対し、そしてこれを打倒する者は!君以外に誰が居る……もはや私自身、君以外には考えられないよ。君ならば必ず、黒龍ミラボレアスを倒すことが出来る!この私が保証しよう!!」

 

「あはは、そんな大袈裟な……けど、我らが知恵袋のアカイさんのお墨付きなら、本当に勝てそうな気がしますよ」

 

「そう言っていただけて光栄だよ」

 

私の決意を聞いたアカイさんはとても楽しそうに……そして、とても嬉しそうに笑い声を上げると、必ずミラボレアスに勝てると、そう言ってくれた。アカイさんに言われると、こんなにも心強いことはない。アカイさんのお墨付きとあって、自然と私も笑みが浮かんだ。

 

「……そのためにも、まずは……」

 

「あぁ……必ずやアルバトリオンを倒し、君の呪いを解こう。私もシロも、協力は惜しまぬよ」

 

「お願いします」

 

ちょうどアカイさんとの話が一区切りついたタイミングで、ニールさんが姿を現した。……ひょっとしたら、待っていたのかもしれない。

 

「二人共、ちょうど良かった。神域に着いてからのことを話そうと思ってたんだが……」

 

「構わない、ちょうどこちらも話に区切りがついたところだ」

 

「はい。ニールさん、作戦会議ですか?」

 

「そんなところだ。早速行こう」

 

ニールさんの案内で船内に入っていく。ちょうど全員が集まっていたようで、私たちが最後だったようだ。

 

「……さて、神域に到着してからの行動について、話し合おう。俺としては全員でアルバトリオンに挑んでもいいんだが……ショウに残された時間を考えると、アルバトリオンとの戦闘を避けて滅龍石を確保しに行く必要も考えられる」

 

「そこで、アタシとニールさんで話し合った結果、ひとまず二手に別れて行動することにしましたわ」

 

二手……ということは、アルバトリオンとの戦闘組と、滅龍石確保組、かな。

 

「内訳としては、まず滅龍石を確保する者……これは、シロちゃんとエイデンに任せたい。そして、二人の護衛のためにショウたちトレーナーからポケモンを借りたいんだ」

 

「ポケモンはアタシ達が知る既存のモンスターよりもずっと小柄……なれど、その力は下手な中型モンスターよりも強力と聞きましたわ。そこで、滅龍石を奪還し、飛行船へと運ぶ作業を、ポケモンにお願いしたいのですわ」

 

「ポケモンへの指示はシロちゃんに任せる。エイデンは彼女を守ってくれ」

 

なるほど、理に適っている。シロちゃんは祖龍の巫女を勤め、リオレイアを従えているとはいえ見た目は幼い少女そのものだ。そんな彼女を出来るだけ戦場から遠ざけたいと考えるのは、さすがは大人といったところだ。そして、その護衛に貴重な戦力であるハンターを使うところも、用心に用心を重ねてのことだろう。

……すごいなぁ、私だったらアルバトリオンを最速で倒すことしか考えられなかった。これが、ハンターなんだ……。

 

「シロ」

 

「……ん、わかったわ。よろしくね、エイデンお兄さん」

 

「あぁ、君のことは俺が全力で守るっスよ。アカイ殿も、安心して任せてください」

 

「うむ、シロを頼むよ」

 

シロちゃんは最初、渋っていたのか即答しなかった。けど、アカイさんに促されたことでようやく首を縦に振った。

 

「それじゃ、忘れないうちにモンスターボールを預けておくね」

 

「……ショウ、そのボールはダイケンキの……」

 

「そりゃあ、シロちゃんを守るなら最高戦力を渡さないとね!」

 

「……アハハ!ありがとう、ショウ!」

 

みんなが相棒ポケモンを預ける中、私がシロちゃんの護衛にと託したのはダイケンキ……それと、積荷の運搬用にガブリアスとゴウカザルも預けておく。これだけいれば、運搬も護衛も十分だろう。

 

「では、残りのメンバーでアルバトリオンと戦うんですね?」

 

「あぁ。積荷の奪還が成功すれば、エイデンとシロちゃんのリオレイアも参戦できるはずだ。そうすれば、あとは総力を持ってアルバトリオンを討伐するのみ!

討伐が確認され次第、ショウは積荷とともにメゼポルタへ直帰だ。……そのためにも、ショウはリオレウスをなるべく温存するように。いくら体力を回復できる道具があるとはいえ、使う時間も惜しむくらいのつもりで行かないとな」

 

「うっ……は、はい」

 

さ、先に釘を刺されてしまった……今回のアルバトリオン戦で、私はジンオウガもリオレウスもどちらも投入するつもりでいた。それだけに、ニールさんからの指摘に私は思わず言葉を詰まらせてしまったのだ。道具を使う時間も惜しむ、か……そうかもしれない。それくらいのつもりでいないと、最悪の場合間に合わないかもしれないと……。

 

「幸いにして、俺もネネくんもアルバトリオン討伐の経験がある。技巧種化したことでどのような技を使ってくるかはわからないが、俺たちが知っている限りのアルバトリオンの攻撃手段や行動パターンを教えておこうと思う」

 

それから、ネネさんが作ったのだろう資料がいくつか手渡された。そこには、アルバトリオンの攻撃手段と行動パターンが詳細に書き込まれていた。これはありがたい……!

 

「……さて、俺たちが懸念すべきことは、技巧種化したアルバトリオンが使ってくる技の数と種類だ。そのために、今度はトレーナーのみんなの力を借りたい」

 

「……私たちだって、ポケモンたちが使える技の全てを把握しているわけじゃありませんよ?」

 

ハンター組が何を要求しているのかを察した私は、あらかじめ伝えておかなければならいことを伝えておいた。ポケモンは伊達に"不思議な生き物"とは言われていない……全ての技の把握など、それこそポケモン博士の分野だ。

 

「構いませんわ。むしろ、アルバトリオンならどんな技を使ってくるのか、それがどんな技なのかを教えてくださいな。予想でも一向に構いません、今は些細な情報でも必要ですから」

 

「……分かりました。この会議の後、トレーナーで集まって予想される使用技を可能な限り書き出します」

 

「お願いしますわ」

 

こうして会議終了後の予定も立てつつ、対アルバトリオン戦に向けた様々なシミュレーションをディスカッションしていく。移動中は可能な限り、戦闘シミュレーションは欠かさないようにしよう。

 

「今回アルバトリオンが出現した神域には、拘束用バリスタが残されている。可能なら、積極的に使っていこう。……それと、『エスカトンジャッジメント』についても説明しないとな」

 

「エスカトンジャッジメントですの?」

 

ネネさんは初めて聞いたのか、首をかしげている。なんだろう、アルバトリオンの大技か?

 

「そうか、ネネくんは知らないか……。エスカトンジャッジメントとは、アルバトリオンが持つ最大にして最強の大技……無策で挑めば全滅は必至の最終奥義だ。

エスカトンジャッジメントはアルバトリオンが龍活性状態から別の活性状態へと移行する際に使用される技……いや、行動だな。龍活性状態から移行するときのみにしか使われないのだが、凄まじい勢いの属性エネルギーの衝撃波を放ちフィールド全域に途轍もないダメージを叩き込んでくるんだ。

エスカトンジャッジメントの対策としては、アルバトリオンに属性攻撃を当てることだ。炎活性時には氷属性を、氷活性時には火属性をぶつけるといい。タイプ相性ってやつを考えれば威力を半減されてしまうかもしれないが……ダメージを与えられずとも、アルバトリオンの属性を抑制するという意味では、十分に効果がある。だから、ダメージを与えられずともエスカトンジャッジメント対策のために火と氷による攻撃は積極的に行って欲しい」

 

ふむふむ……ダメージとは無関係に、エスカトンジャッジメントによるダメージを抑えるためには攻撃が必要、と。

 

「特に、ネネくん。剣士はともかくガンナーは属性弾によって効率的にアルバトリオンの力を抑制できる……この点では、君が一番重要となる。期待するぞ」

 

「えぇ、お任せあれ。ガンナーの真髄を、とくと御覧じくださいな」

 

「エイデンにも、そのためにヘビィを持ってきてもらった。なるべく早い合流を期待しているよ」

 

「あぁ、任せとけ!」

 

「……では、本日の対煌黒龍対策会議は終了する。各々、神域到着まで英気を養ってくれ。また、もし話し合いが必要ならいつでも掛け合ってくれ。こちらもいつでも応じる所存だ。以上、解散!」

 

こうして、第一回対煌黒龍対策会議は終了した。……なにげにアカイさんが議長役を務めなかったのは珍しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

移動中、何度か対策会議を開いたり、アルバトリオンが使用すると思われる技の予想表をトレーナー総出で作成したり技の効果や内容を説明したりすること三日……周囲の空気が、突然豹変したのを感じ取った。

 

「……この、感じは……」

 

「あぁ、わかるか。……神域が近づいてきている」

 

「神域……」

 

「神域というのは特定地域を指す言葉ではない。具体的には、アルバトリオンが出現して居座った場所と、その周辺地域を指す言葉だ。……アルバトリオンが持つ属性エネルギーが周囲の環境や天候にも影響を与えるせいで、人が踏み入ることが難しくなることから、そう名付けられたのだ」

 

アカイさんが説明してくれたとおり、神域は炎が舞っていたり落雷が起きたり、かと思えば吹雪いていたりととにかくもうめちゃくちゃだった。今も限界ギリギリまで高度を下げて飛行しているけど、それでもまだ危ないくらいだ。

 

「そろそろ着陸したほうがよさそうだ……。準備はいいか?」

 

「もちろん!!」

 

「これから挑むは最大にして最強の脅威……古龍種。その中でも特に危険な禁忌のモンスターだ。古龍級生物など比ではない、身の毛のよだつような恐怖と戦慄が君を待ち受けているだろう」

 

「それでも勝ちますよ。……生きて迎える明日を、掴み取るために!!」

 

待っていろ、アルバトリオン……私はお前を乗り越えて、明日を手に入れてみせる!!

 

 

 

――ショウ 余命4

 

 

 

 




……あれ、アルバトリオンが出てこなかった、だと……?
えっと、すみませんでした!アルバトリオン戦、次回から開幕です!

その前にアルバトリオンのタイプ相性を……えいっ

アルバトリオン
タイプ:※ドラゴン
※特性「活性変化」によってタイプ相性が変わる

特性:活性変化
戦闘時の状況に応じてタイプ相性が変化する。
通常タイプのドラゴンに加えて炎活性時にはほのおとみず、氷活性時にはでんきとこおりのタイプの相性が参照される。龍活性時にはすべて適応される。この時、「効果は抜群」は参照されない。

炎活性 ドラゴン(・ほのお・みず)
弱点 火:× 水:○ 雷:△ 氷:◎ 龍:△
四倍:なし
二倍:なし
半減以下:みず、でんき、くさ、こおり、むし、はがね
こうかなし:ほのお
等倍:上記以外全て

↓ ↑

龍活性 ドラゴン(・ほのお・みず・でんき・こおり)
弱点 火:△ 水:△ 雷:△ 氷:△ 龍:○
四倍:ドラゴン
二倍:なし
半減以下:ほのお、みず、でんき、くさ、こおり、ひこう、むし、はがね
こうかなし:なし
等倍:上記以外全て

↓ ↑

氷活性 ドラゴン(・でんき・こおり)
弱点 火:◎ 水:△ 雷:○ 氷:× 龍:△
四倍:なし
二倍:フェアリー
半減以下:みず、でんき、くさ、ひこう、はがね
こうかなし:こおり
等倍:上記以外全て


……誰がこんな化け物と戦いたいってんだ、正気を疑う(←オイ作者)


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殷々たる煌鐘の音

ついにアルバトリオン戦です……!

先週は個人的な都合でお休みしてすみませんでした……!今ならわかる……お金稼いでいても余暇活動の時間がない人が人生に満足していない理由が!

というわけで、アルバトリオン戦、どうぞ!




ドンドルマで野暮用を済ませ、私たちは三日かけて神域へとたどり着いた。上空は雷雨と吹雪という両立すら不可能なはずの天気によって大荒れだったため、限界まで低空飛行を心がけて神域に設立された即席のベースキャンプへ降下した。

船から降りたニールさん達ハンター組は手早く荷物を広げたり焚き火を起こしたりして、小休止を挟む用意を整えてくれた。そんな中、ネネさんが青い箱を開けて中身を検めている。あれは確か、支給品ボックスだったっけ……狩猟に赴くハンターのために、回復道具とかが用意されてるんだよね。

 

「あら、これは……」

 

「どうした、ネネくん?」

 

「これを見てください」

 

そう言ってネネさんがボックスから取り出したのは……色紙?いや、よく見ると文字がたくさん書き込まれている……寄せ書きってやつか。ネネさんが寄せ書きに書かれた内容を読み上げた。

 

「頑張れ!」「呪いに負けるな!」「ファイトー!いっぱーつ!!」「最後まであきらめないで!」「俺のこの手が真っ赤に燃える」「これで勝つる」「黒龍(ヤロウ)ぶっ殺してやる!」「ユニバース!!」「必ず勝てるよ!」「明日が欲しいんだ」「必ず……必ず生きて帰って!」「ハンター!ちゃんと援護しろよぉ!」「止まるんじゃねぇぞ……」「その意志が、全てを変える。そのときキミは、美しい」「バリスタ撃って、役目でしょ」「命は金より重い……!」「あなたがこれからも周りを輝かせる人でありますように」「人はいつ死ぬと思う?人に忘れられた時さ!」「人は心が原動力」「運命なんて誰かが決めるもんじゃない」「素数を数えて落ち着くんだ」「胸を張って生きろ」「諦めるくらいなら夢は見ない」「狩っていいのは狩られる覚悟があるヤツだけだ」「ちくわ大明神」「アナタを信じます」「皆に勝利を!」「誰だ今の」

 

などなど……おそらく、ギルドから派遣されたハンター達が、私たちへと残してくれたのだろう。……後半、イロモノ系が増えているのは気のせいか?

 

「これって……」

 

「どうやらトレーナーのみなさん……特に、ショウさんへと宛てて書かれたもののようですわね」

 

「なんか途中、まったく関係なさそうな書き込みあったの気のせいか?」

 

「こういうのは気持ちが大事なのですわ。内容は問題じゃありません」

 

「そ、そう……か……?」

 

いや、ニールさん。そんなあっさり丸め込まれないでくださいよ、明らかにおかしかったでしょ!

 

「ハハッ!案外、面白おかしい事を書いてオレたちを和ませようとしたのかもな!」

 

「……確かに。ちょっとだけ、肩の力が抜けたかも」

 

「なるほど、緊張が高まった場においてこそ、ユーモアは欠かせないということですか」

 

なんかこっちもこっちで、妙な納得の仕方をしている。……あれ?これって私がおかしいの?私のツッコミが間違ってるの!?こうなったら、頼れるのは先輩だけ……!

 

「先輩……」

 

「……ちくわ大明神って、一体何の神様なんだ……?」

 

だめだこいつら早く何とかしないと……。

 

「みんな、来てくれ」

 

そんな時、アカイさんから呼び掛けがかかった。私はいの一番に反応し、すぐにアカイさんの下へ向かった。

 

「アカイさん!呼びましたか!」

 

「あぁ、呼んだが……急にどうした?」

 

「あの空気に耐えられなくなりました」

 

「……あ~……。……ゴホン!ショウ、あれを見ろ」

 

アカイさんから手渡された双眼鏡を構えて、示された方向へと見やる。そこには、人が通るには十分な小谷が見えた。

 

「あれは……?」

 

「ちょうど神域……その戦場となる場所に、あの小谷が見えた。ハンター達の報告書と照らし合わせた結果、アルバトリオンはあの小谷の先に滅龍石を安置していることがわかった」

 

「……アルバトリオンは、見えませんね」

 

「我々が戦場に立ち入るのを、どこかで待っているのだろう。あの場に向かえば、自ずと姿を見せるはずだ」

 

「なるほど……」

 

と、そこへちょうど同じように双眼鏡を構えたエイデンさんが近づいてきた。おそらく私と同じものを見ているのだろう、相槌を打ちながら話に加わってきた。

 

「なるほど、あそこに滅龍石があるんだな」

 

「あぁ。君とシロには、我々がアルバトリオンの気を引いている隙を突き、あの小谷に進入してもらう。滅龍石を確保できたら、ポケモンたちに運ばせてやってくれ」

 

「了解だ。問題はタイミングなんだが……」

 

「なに、すぐにでもわかるさ」

 

あ、ニールさん。ようやく寄せ書きから戻ってきてくれたか。

 

「すぐに、って……信号弾でも打つのか?アルバトリオンが察してきそうな気もするが……」

 

「俺が持っている隠れ身の装衣をシロちゃんに預ける。エイデンも同じ物を持ってるだろ?二人でそれを身につけて、それから小谷に向かってくれ」

 

「タイミングは?」

 

「神域がドンパチ賑やかになったらな」

 

「なるほど……あえて戦闘中に潜みつつ進行する、か。確かに、さしものアルバトリオンといえど、我々全員を相手にしつつ息を潜める者の探知は難しいか」

 

「でしたら、それで行きましょう!私も覚悟は出来ています……!」

 

よし、差し当たり小谷への進入方法はこれでいいだろう。あとは、戦場に足を踏み入れるのみ……!

 

「……フッ、気合十分のところ申し訳ないが、本来の予定を忘れたかね?ハンターならまだしも、ハンターほど強靭ではない君達トレーナーのことを考慮して、ひとまずここで一夜を明かすと言ったろう?」

 

「うぐっ……」

 

「逸るなよ、ショウ。アルバトリオンは逃げも隠れもしない。それに、覚醒した君のリオレウス単体なら、本来の予定よりも早く戻ることもできるのだ。焦りは禁物……時間が惜しい今だからこそ、尚の事だ。いいね?」

 

「……はい」

 

すぅー……はぁー……よしっ、落ち着いた。今は到着したばかりで気が昂ぶっているし、カイさんあたりは緊張もしていたようだし……。それに、現在時刻は夜……確かに一夜を明かしたほうが、途中で体調を崩すこともないだろう。

一夜明かせば、残りは三日……その三日でアルバトリオンを倒して滅龍石を取り戻し、さらにメゼポルタへ直帰する……言うは易く行うは難し、とはこのことか……。

 

「……あ、そうだ!俺、ショウ達がポケモンって呼んでるモンスターのこと、気になってたんスよ!ちょっと色々と教えてくれないか?」

 

「おぉ!気が利くなぁ、エイデン。俺もちょうど気になっていたところだ。ネネくんにも声をかけてみよう、きっと技巧種調査のヒントになるかもしれないしな」

 

「え、あの、ちょっと?」

 

エイデンさんがポケモンに対して興味を示すと、まるで示し合わせたかのようにニールさんも動き出した。なんか、計画性を感じるんですけど?

 

「フフッ、分かっていないな、ショウ。……君が無意識に力んでいたのを、二人はお見通しだよ。だから、君の得意分野であるポケモンの話をさせて、アイスブレイクをしようと考えたのだ」

 

「あっ……!」

 

「後で二人に礼を言っておくようにな」

 

「……えぇ、そうですね!」

 

アカイさんに指摘されてようやく気づいた……普段の私なら、他人の機敏の変化は割と気付けそうなもの……それに気づけなかったなんて、私も大概、いっぱいいっぱいだったようだ。

このあと、ポケットモンスターの話で大いに盛り上がった。特にポケモンにも【極み】や【二つ名】といった、こちら側と似た個体が確認されたことは、言うまでもなくハンターの皆から注目を集めた。特にネネさん……技巧種の技やタイプがポケモン由来と聞いて、ますますポケモンに強く興味を示したようだった。……ただ、技の物理・特殊・変化あたりでまた頭がパンクしそうになっていた。毎度、すみません……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夜明け、朝が来た。……しかし、神域の朝は空模様が空模様だけに朝を正しく朝と認識するのも難しい。来た当初よりもちょっと明るいかなー?程度の変化しかない。それでも規則正しく起床することができたのは、日頃の生活習慣の賜物だろう。朝起きた私は一番にネネさんが用意した即席の水置き場で洗顔し、目覚ましをする。それから、小谷を確認した崖上に立ち、遠くに見える戦場を俯瞰する。

……今日、全てが決まる。私の運命、ヒスイの運命……そして――。

 

「ショウ、ここにいたのか」

 

「先輩」

 

私の後ろから先輩が声をかけてきて、そのまま隣に並び立った。しばらくの間、お互いに何を話すでもなく佇む。そうして少しして、先輩から話しかけてきた。

 

「……いよいよ、だな」

 

「はい」

 

「絶対に勝とう、ショウ。おれもライゼクスも、全力を出して戦う……だから、ショウも一人で力んでないで、思いっきり頼っていいからな」

 

「もちろんです。それに……先輩にはずっと、頼りっぱなしですよ。それこそ、ヒスイにいた時からずっと……」

 

「ショウ……」

 

「私も、最後まで諦めるつもりはありません。だから、私からも言わせてください……絶対に勝ちましょう、先輩」

 

「……!ああ!!」

 

ニッ、と笑顔を見せて答えてくれる先輩……これから挑む相手がどれほどの脅威なのかわからないのに、変わらず私の身を案じてくれている……。

あぁ、まただ。胸の内から溢れてくる、先輩への「好き」の気持ち。いつかヒスイを離れ、シンオウへと帰ろうという私が抱いてはいけない気持ち。蓋をしなければならない、封印しなければならない……そう思っているのに、私の願いなどお構いなしに気持ちは溢れてきて、私の決意を簡単に飲み込もうとする。

ダメ……!ダメだとわかっているはずなのに……!

 

「……ショウ?」

 

「先輩、私……!」

 

「ショーウ、準備が出来たってー。……どうしたの?」

 

「シロちゃん……?」

 

シロちゃん……そっか、私と先輩がゆっくり話している間に、みんなの準備が……。良くも悪くも、助かった。もしこの想いを口にしてしまえば、もう……。ダメだね、私……死期が近づいているとわかっているから、不安になっていたんだ。この感情は、黒龍の呪いを悪化させる……だからこそ、表面化しないように別のことを考えないと。

 

「ありがとう、シロちゃん。そっちに行くね」

 

「うん、待ってるよー」

 

「ショウ、さっき――」

 

「先輩、先に行ってますね」

 

「あ、ちょ」

 

先輩の声に聞こえないふりをして、私はベースキャンプへと歩いていく。……もし振り返ってしまったら、今度こそ想いを抑えきれなくなりそうだから。

 

「来たか、ショウ。テル少年も、いつでも出られるか?」

 

「私は大丈夫です。先輩は……」

 

「おれも問題ないぞ」

 

「よろしい。では、ニール殿」

 

「あぁ。……これより滅龍石奪還及び、アルバトリオン討伐作戦を開始する!シロちゃんとエイデンは戦闘開始までベースで待機。機を見て神域奥に見える小谷へ向かい、滅龍石を確保、ベースへ移送してくれ」

 

「了解!」

 

「任せてね」

 

「その間、俺たちはアルバトリオンと戦闘する。二人の存在が気取られないように、全力で奴に攻撃を仕掛ける。この時、アルバトリオンの活性状態に応じてやつの属性を抑制できる攻撃をなるべく多く使用して欲しい」

 

「はい!」

 

「ネネくん、こちらで用意した『魂焔の龍弩・炎妃』の調子はどうかな?」

 

「素晴らしいですわ、ニールさん。このライトボウガンなら、みなさんのご期待に応えられます」

 

ネネさんはそれまで持っていた黒いボウガンではなく、新しいボウガンを背負っていた。

ニールさんが所属する団体である新大陸古龍調査団が、対アルバトリオン戦に有効な武器を持ち合わせていなかったネネさんのために用意してくれたらしい。アルバトリオンの属性を抑えるために必要な火属性と氷属性の弾丸をどちらも装填可能なすぐれものなんだとか。

エイデンさんが背負っているネネさんのボウガンよりも一回り以上大きいボウガン……ヘビィボウガンも、火属性と氷属性の弾丸を両方撃てる『レイ=ロゼッテス』という武器らしい。

 

「ところでニールさんの剣は……」

 

「あぁ、龍属性だ」

 

ちなみに、ニールさんの大剣は龍属性……属性を抑制できる火あるいは氷じゃない理由としては、基本的に一つの属性しか持てない剣士は属性を抑える役割はあまり向いていないとか。だから、自分以外に属性を抑制できる人がいるなら、無理に属性武器を担いでいく必要はないそうだ。

特にネネさんやエイデンさんのようにアルバトリオンが炎と氷どちらの活性状態になっても円滑に抑制することができるなら、剣士が抑制可能な属性武器を背負っていくのはかえって迷惑になりかねない。

 

「今回の相手は技巧種だ。アカイ殿が言うには、ドラゴンタイプは同じドラゴンタイプに弱いって話だ……本来、炎と氷どちらの活性状態でも龍属性は通りが悪いんだが、タイプ相性によって少しはマシなダメージを与えられるそうだ。

特に、龍活性状態……ドラゴンの力が一際強くなる龍活性状態なら、龍属性によって最高率でダメージを与えられる。だから今回、俺は龍属性武器を持っていくんだ」

 

「なるほど……でしたら、こちらからもドラゴンタイプの技を積極的に使ったほうがよさそうですね」

 

「あぁ、よろしく頼むよ」

 

私たちの方も、準備は整っている!

 

「では……行くとしよう!」

 

「はいっ!!」

 

私たちはハンター達が残してくれたであろう道を進み、ついに開けた空間へとたどり着いた。あちらこちらで結晶が突き出し、さらに燃えている……なるほど、人が踏み入るのは難しい、神域と呼ばれるにふさわしい場所だ。

周囲を見渡せば、バリスタが所々に点在している……モンスターの動きを抑制する拘束用バリスタだったか。あれを撃ち込んで、アルバトリオンの動きを封じることができるらしい。

私たちが狩場へと足を踏み入れて少しして……ソレは現れた。

 

「ギィギュオオオオォンッ!!」

 

咆哮と共に、上空から何かが飛翔してきて、私たちの前に着陸した。

 

31mには達するであろう巨体。

天を向いて生え揃った鋭利な刃の如き漆黒の逆鱗。

巨大な刺が生えた尻尾に、禍々しさを湛える翼。

事前の説明にもあった、天を貫くかのように伸びた二又の大角。

 

煌黒龍アルバトリオン……奴が姿を現したのだ。

 

「ギィギュオオオオォンッ!!」

 

アルバトリオンは再び咆哮を上げた。たったそれだけのことなのだが、私はまったくの無意識に足を半歩引いていた。むしろ足を引いて地に踏みしめた時点で、自分が後ずさりをしていたのだと気づいたくらいだ。

 

「こっ、こいつが……!アルバトリオン……!!」

 

「……っ、なんつー威圧感だ……!」

 

「こんな生き物が……本当に存在するなんて……!」

 

「これは……果たしてアルセウスとどちらが上か……!!」

 

私だけでなく、テル先輩たちもその威容に圧倒されていた……!これが禁忌のモンスター……まだ戦いは始まっていないのに、アルバトリオンは既に己の勝利を確信しているかのようだ……!

 

「やれやれ、そう二度も三度も戦いたいとは思ってないんだがな」

 

「煌黒龍!生憎ですけれど、あなたの道楽に付き合うつもりはありませんわ。とっとと滅龍石を返しなさい」

 

「……フンッ」

 

ニールさんもネネさんも、アルバトリオンの狩猟経験があるからかかなり余裕だ。ネネさんに至っては挑発までしてる……だが、アルバトリオンが堪えた様子はなく、むしろ鼻で笑っていた。

 

「行くよ、皆!」

 

「「「「ああ!/おう!/えぇ!/はい!」」」」

 

私の言葉を合図に、私たちは一斉にポケモンを繰り出した。ディノバルド、ガムート、タマミツネ、ライゼクス……そして、ジンオウガ。リオレウスはニールさんからの助言通り、温存する方向で決めた。アカイさんもリオレウス亜種を繰り出し、戦闘準備万端だ。

そして、ジンオウガ。以前、クロノとの戦いで不思議な姿になったジンオウガだが、今は【金雷公】の姿で落ち着いている。あの時は無我夢中だったからあまりはっきりとはしていないけど……私とジンオウガの気持ちが重要だというのは分かった。

お互いの気持ちを重ね合わせて……そうだよね、お母さん。

 

「勝負だ!アルバトリオン!!」

 

「グルルル……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【殷々たる煌鐘の音/アルバトリオン】~MHW:IB~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!アルバトリオンは炎活性状態だ!氷属性の攻撃を頼む!!」

 

「了承!」

 

ニールさんからの指示を受け、ネネさんが氷属性の弾丸である氷結弾を装填した。さらにこちらからも、こおりタイプの技が使えるタマミツネとガムートが前に出た。

炎活性……だから、心なしかアルバトリオンの体が赤みを帯びているのか。

 

「やるぜ、カイ。こおり技をありったけ喰らわせるんだ!」

 

「うん!私たちならできるよ、セキ!」

 

「先輩、ウォロ!私たちでセキさんたちのカバーを!」

 

「おれは上から攻めるぞ!」

 

「ならばジブンが前線で注意を逸らしましょう!ディノバルド、きりさく攻撃!」

 

「ディイイィバッ!!」

 

「ライゼクスはエアスラッシュだ!」

 

「ライザーッ!」

 

ディノバルドが突撃し、ライゼクスが飛翔する。ディノバルドが尻尾の剣をアルバトリオンに向けて振り下ろすが、アルバトリオンは翼を平行に広げると鋼の力を纏わせてその場で一回転、はがねのつばさでディノバルドのきりさくを弾き返した!さらに上空から迫るライゼクスのエアスラッシュは、口から複数の火球を生成するとそれを一斉に発射し、全て撃ち落としてしまった。やきつくすの技まで使えるのか……いや、まだ想定の範囲内だ!

 

「ガムート!だいちのちから!!」

 

「ガムァ!」

 

「タマミツネ!アルバトリオンに接近しろ!」

 

「コォンッ!」

 

ガムートがだいちのちからを放つと、タマミツネはその攻撃の隙間を縫うようにしてアルバトリオンに接近していく。アルバトリオンはだいちのちからを滞空することで回避したが、タマミツネの接近を許してしまったな!

 

「今だ!タマミツネ、れいとうビーム!」

 

「クオォォンッ!」

 

タマミツネは高く飛び上がりアルバトリオンの上を取ると、そのままれいとうビームを放つ!

 

「ギュオオオッ!」

 

「クォアッ!?」

 

だが、アルバトリオンは一瞬で全身を炎で包み込むと、そのままタマミツネに体当りしていった!フレアドライブだ!やはり使えるか……!れいとうビームを押し切ってフレアドライブを命中させて、タマミツネを吹っ飛ばしてしまった!

 

「ディノバルド!援護するのです!」

 

「続くんだ!ライゼクス!」

 

「ジンオウガ!タマミツネをカバー!」

 

「ディノ!」

 

「ライッ!」

 

「ワオン!」

 

ディノバルドがすかさずサイコカッターを放ち、追撃をかけようとするアルバトリオンの動きを封じる。そこへライゼクスがチャージビームを放ち、アルバトリオンの注意を逸らした。吹っ飛ばされたタマミツネはジンオウガが体で受け止めて、地面への激突を回避した。

 

「すまねぇ、ショウ。助かった」

 

「いえ、お構いなく!」

 

「タマミツネ、まだ行けるな?」

 

「コォン!」

 

よかった、タマミツネはまだまだ戦えそうだ。

 

「カイさん、射撃ポイントに移動したいのでなにかド派手な攻撃をお願いしますわ」

 

「ド派手な攻撃……わかった!ガムート、つららおとし!!」

 

「ガムーゥアァァ!!」

 

ネネさんがボウガンを構えて移動を始めたタイミングで、ガムートがつららおとしをアルバトリオンに見舞った。ただ、流石は禁忌のモンスター……あの巨体で、ガムートのつららおとしを回避したり、炎を吐いて迎撃している!

 

「ジンオウガ、はどうだん!」

 

「ワオォン!」

 

「ゴォアッ!?」

 

ガムートからの攻撃の対処に追われていたアルバトリオンは横合いから放たれたジンオウガの攻撃には対処できず直撃した!それによって体勢を崩し、そのままガムートのつららおとしも命中した!

 

「これでも喰らいなさいな!」

 

「ガムート、シルバースタンプ!」

 

そこへすかさずネネさんの氷結弾とガムートのシルバースタンプの追撃が襲い来る!対するアルバトリオンは、最初こそは被弾していたが咄嗟に体を高速回転させつつ炎を纏い、周囲を蹴散らすようにして動き回って攻撃を凌ぎ切った。かえんぐるまが使えるのか!それは想定外だった……!

 

「うおおおお!」

 

かえんぐるまが終わったタイミングを見計らって、ニールさんが斬り込んだ。斬撃と同時に赤黒い電撃が力強い剣圧と共に迸る。あれが、龍属性武器か!

 

「まだ抑制は十分じゃない!もっと撃ち込んでくれ!!……ぐあっ!」

 

「タマミツネ、ふぶきだ!」

 

「ガムート、こおりのつぶてで動きを!」

 

「ガムアァ!」

 

「クオオオォン!!」

 

ニールさんを前足で吹っ飛ばし、そのままこちらにも攻撃を仕掛けようとするアルバトリオンだったが、ガムートのこおりのつぶてに機先を制され動きが止まり、その隙を突く形でタマミツネのふぶきが直撃した!

 

「いいぞ!抑制が進んでいる!」

 

「リオレウス、ドラゴンダイブだ」

 

「おれからも行くぞアカイさん!ワイルドボルト!」

 

アカイさんのリオレウス亜種と、テル先輩のライゼクスがそれぞれ突撃していく。アルバトリオンは姿勢を限界まで低くしてリオレウス亜種のドラゴンダイブを回避すると、立ち上がりつつ角を突き上げて、ライゼクスの首を二又部分に差し込むとそのまま投げ倒してしまった!

 

「なんて動きを!?」

 

「これも技巧種に進化した影響か!」

 

「ディノバルド!ライゼクスの救助を!」

 

「ガムートも行って!」

 

およそアルバトリオンからは想像し得なかっただろう芸当に、ハンター達は舌を巻く。アルバトリオンは仰向けに倒されたライゼクスを前足で押さえつけて動きを封じつつ、振り下ろされたディノバルドのアイアンテールを角で弾き返し、さらにぶちかまし攻撃を仕掛けたガムートを角で受け止め、拮抗している間にかえんほうしゃを放ってガムートを押し返した!

どうすれば……!そうだ!

 

「ジンオウガ!ライゼクスにかみなり!!」

 

「ワオオオォンッ!!」

 

ジンオウガから放たれたかみなりがライゼクスに命中!ライゼクスの蓄電器官である鶏冠、翼、尻尾に電気が溜め込まれていき、擦り上げる速さも段違いに加速していく!

 

「先輩!」

 

「これならいける……!ライゼクス!全力でエアリアルスティングだ!!」

 

「……!ライィズッ!!」

 

「グウッ……!?」

 

ライゼクスが伸ばした尻尾はアルバトリオンの脇腹に突き刺さり、そこから高電圧の電撃が放たれた。たまらず怯んだアルバトリオンは飛び退り大きく後退したが、その隙は逃さない!

 

「タマミツネ!ようほうだ!」

 

「ジンオウガ!らいこうだん!!」

 

タマミツネの妖泡がアルバトリオンの周辺にばらまかれ、身動きを取れなくしたところへジンオウガの雷光弾が飛来する!

 

「トリオオォォンッ!!」

 

だが、アルバトリオンの対応も早い!マッドショットで雷光弾を全て撃ち落とすと、すぐさまほうでんを放って周囲に撒かれた妖泡を消し飛ばした!

 

「ライゼクス、ラスターカノン!」

 

「リオレウス、きあいだまだ!」

 

「うおおりゃあ!」

 

ライゼクスが接近しながらラスターカノンを放つ。これは同じはがね技であるスマートホーンによって受け止められ、直撃とはならなかったが……その後隙を突いたリオレウス亜種のきあいだまは直撃!直後のニールさんの斬撃もまともに入った!

 

「くらいなさい!」

 

「ギュギャアアァンッ!」

 

「タマミツネ!」

 

「ガムート!」

 

「「れいとうビーム!!」」

 

ニールさんにドラゴンクローを振り下ろすが回避され、その直後にネネさんの氷結弾が角に命中した。それを嫌がるように頭を動かし、ネネさんに向けてハイドロポンプが発射された。そこへタマミツネとガムートによるダブルれいとうビームが放たれ、ハイドロポンプは凍りつきそのままアルバトリオンに直撃した。

 

「ギュオオアアアッ!」

 

アルバトリオンが小さく咆哮を上げると、全身から赤黒い稲妻が駆け巡り始めた。さらにその光が炸裂すると、アルバトリオンの姿が紫がかった色合いへと変化した……!

 

「あれは……!」

 

「あれが龍活性状態だ。龍活性状態のアルバトリオンはドラゴンタイプに弱い……ドラゴン技が使える者は、積極的に攻勢をかけるぞ」

 

「俺の出番だな、今以上に斬り込で行く!」

 

「テル少年、我々もドラゴン技で援護しよう」

 

「了解だアカイさん!ライゼクス、りゅうのはどう!」

 

「リオレウスはたつまきだ、牽制しろ」

 

「グォアォン!!」

 

リオレウス亜種がたつまき攻撃でアルバトリオンを牽制する。アルバトリオンはたつまきをモロに喰らい、動けなくなったところをライゼクスのりゅうのはどうによる追撃を受けた。アルバトリオンはかなり苦しそうだ……よし、もっとドラゴン技で攻撃しよう!

 

「ディノバルド、ドラゴンテールです!」

 

「ジンオウガ!げきりん!!」

 

「ガムートもげきりんだよ!」

 

ディノバルドがドラゴンテールで果敢に斬りかかり、アルバトリオンはウェーブタックルで対抗した。尻尾の一撃を角で受け止め、そのまま体を回転させて尻尾を受け流しつつ自身の尻尾をぶつけるという芸当を見せつけ、アルバトリオンはディノバルドを押し返した。

 

「ワオオォンッ!」

 

「……!」

 

押し倒されたディノバルドを避けつつ、先にジンオウガがアルバトリオンに肉薄する!アルバトリオンに前脚による殴打、角による刺突を繰り出しダメージを与えるとアルバトリオンからも龍属性を纏った前脚による反撃を受けた。さらに青いオーラを角に纏わせると、そのままジンオウガを突き飛ばした!しねんのずつき……厄介な!

続けて仕掛けるのは遅れて接近したガムート。こちらはパワー同士の戦いとなり、ガムート力強い一撃とアルバトリオンの攻撃が激しくぶつかり合う!

 

「パオオオオオォンッ!!」

 

「グウゥッ……!」

 

激しく吠えたてるガムートがアルバトリオンにぶつかっていき、そのまま押し込んでいく!アルバトリオンも四肢を踏ん張って耐えると、そのまま拮抗状態に持ち込んだ。だが、ここでアルバトリオンが動いた!

アルバトリオンは翼を広げると、そのまま垂直に飛翔してガムートを躱したのだ!力の行き場を失ったガムートは前につんのめり、その隙を突くようにアルバトリオンがアイアンテールをサマーソルトで放ち大きく吹き飛ばした!

 

「リオレウス、ドラゴンダイブ!」

 

「ライゼクスもドラゴンダイブだ!」

 

「タマミツネ、ムーンフォース!!」

 

ここでリオレウス亜種とライゼクスによる二体同時のドラゴンダイブが迫る。対するアルバトリオンもドラゴンダイブで対抗した。……ただ、アルバトリオンのドラゴンダイブには龍属性エネルギーが用いられているためか非常に強力になっていた。その証拠に、アカイさんのリオレウス亜種も同時にぶつかっているにも関わらず僅かな拮抗の後、二体とも吹き飛ばしてしまったからだ。

その後、技が解除された直後を狙ったタマミツネのムーンフォースが直撃した……が、アルバトリオンは墜落することなく飛び続けている。かなりダメージを与えたはずだけど……!

 

「グルルル……」

 

突然、地上に着地したアルバトリオン……一体何をする気……?

 

「ギャオオォン!」

 

アルバトリオンが声を上げると……その姿が七つに増えた。あれって、かげぶんしん?けど、なぜこの状況で……。

 

「ギャオ」

 

「「「「「「ギャオ」」」」」」

 

中央のアルバトリオンが小さく鳴くと同時に、右足で左足を踏みつけた。……いや、違う、あれは踏むというより押す……?すると、他の六体の分身達も同じようにしている。

……?…………。……!……ヤバイッ!?

 

「ジンオウガ!今すぐアルバトリオンを止めて!!」

 

「ワオオオンッ!!」

 

私の声に呼応して、ジンオウガが突撃をしていく。その間、テル先輩とニールさんが私に近づいてきた。

 

「ショウ!一体どうしたんだ!?」

 

「アルバトリオンの考えがわかるのか?」

 

「アルバトリオンの行動……あれも技なんです!その技の名は……『つぼをつく』!」

 

「つぼを?」

 

「つく?」

 

「名前だけで侮らないでください……!つぼをつくは、自身の能力のうち攻撃、防御、素早さ、特攻、特防、命中、回避……七つの能力のうち一つをランダムに強化するんです!

それだけならまだしも、そこへきてかげぶんしん……!いつだか、かげぶんしんを吸収することで攻撃能力を高めるという戦い方をするトレーナーの話を聞いたことがあります……私の勘が正しければ、アルバトリオンの狙いは……!」

 

「「「「「「「ギィギュオオオオォンッ!!」」」」」」」

 

本物と思しき中央のアルバトリオンにワイルドボルトで突撃したジンオウガだが、七体のアルバトリオンによるかえんほうしゃ、ハイドロポンプ、ソーラービーム、れいとうビーム、ラスターカノン、りゅうのはどう、はかいこうせんの一斉攻撃を受け、壁に叩きつけられてしまった!

 

「ジンオウガッ!!」

 

「ショウ!アルバトリオンの狙いは……!」

 

「……つぼをつくを使った分身を吸収することで、能力上昇を引き継ぐことです!」

 

「ギュオオアアアアッ!」

 

アルバトリオンが咆哮を上げると、分身たちが次々と本体に近寄り体を重ね、吸収されるように消えていった!すべて吸収し終えたアルバトリオンは、その身から放たれる覇気が段違いに変化した。……これは、全ての能力がぐーんと上がったな……!

 

「厄介だな……!タマミツネ、バブルこうせんだ!」

 

「ガムート、つららおとし!」

 

「ディノバルド、サイコカッターです!」

 

「ライゼクス、かみなりだ!」

 

タマミツネのバブルこうせん、ガムートのつららおとし、ディノバルドのサイコカッター、ライゼクスのかみなり……四体同時の一斉攻撃だが、アルバトリオンはその全ての攻撃を回避してしまった!!

 

「なんだと!?」

 

「な、なんて動き……!?」

 

「信じられない……」

 

「クソッ、もう一度だ……!」

 

「ギュオギャアアンッ!!」

 

テル先輩たちがもう一度攻撃を仕掛けようとするが、それよりも速くアルバトリオンがはかいこうせんを一閃、四体それぞれに攻撃した!威力がかなり上がっているのか、攻撃を受けた四体は派手に転倒し倒れ込んだ!

 

「な、なんて威力だ……!」

 

「虚仮威しを!」

 

ネネさんが弾丸を撃ち込むが、それすらもアルバトリオンは軽快な動きで回避してしまった!

 

「そんな、バカなッ!?」

 

「クッ……うおおおぉぉっ!!」

 

ニールさんも突撃し、大剣を振り下ろす。だが、アルバトリオンはドラゴンクローで大剣を受け止めるとそのまま押し返してしまった!

 

「ぐあっ!」

 

「ニールさん!」

 

「……!マズイぞ!!」

 

アカイさんの声に反応し、アルバトリオンの方へと目を向ける。アルバトリオンの体から、一瞬だけ龍属性エネルギーが放たれると、アルバトリオンが神域の中央部へ移動した……その直後だ。

アルバトリオンを中心に膨大な熱が放たれると、周囲が龍属性エネルギーで満たされていく。アルバトリオンの全身から龍属性エネルギーが迸っているような……!?

 

「バカな、属性は抑制できていたはずだ!?」

 

「……おそらく、能力が上昇したことで抑制分を上回ったのだろう。自らを強化することで弱体化を解除した、といえばいいか……!」

 

「ニールさん、あれは……!」

 

「エスカトンジャッジメントが来るぞおおぉぉぉっ!!」

 

ニールさんとアカイさんの会話から察するに……攻撃か特攻が上昇したことで、抑制できていた属性が力を増してしまった、ということか……!

 

「ショウ!全てのモンスターを一箇所に集めるぞ!焼け石に水かもしれんが、全員でまもるを使う!!」

 

「わかりました!!」

 

「「「「「「まもる!!」」」」」」

 

ジンオウガをはじめとしたモンスターたちが一斉に集まり、全員でまもるの技を使う。私たちトレーナーやハンター達も、まもるの防御範囲内に避難した。

 

「来るぞっ……!!」

 

ニールさんの強ばった声が聞こえる。アルバトリオンが宙に飛び上がり、翼を大きく広げると同時に灼熱と龍光が炸裂して――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ……」

 

……あ、れ……?私、なんで……っ!!

 

「いづっ……!!」

 

気がついたら……いや、気絶したという自覚すらないまま、私は意識を取り戻した。いつの間にか倒れていたらしく、起き上がろうとすると全身が激痛で悲鳴を上げた。なんとか痛みを堪えて、体を起こす。周囲を見渡せば、モンスター達も、トレーナー達も、ハンター達も全員が倒れこんでいた。……嘘でしょ、七体分のまもるすら貫通したの……!?

 

「グルルル……」

 

「あ――」

 

唸り声が聞こえ、そちらに顔を向けると……アルバトリオンがこっちを見ていた。ただ、襲って来る様子はない。むしろ……こちらの様子を窺っている、というところか。

 

「……グ、ウウゥ……!」

 

「ジ、ンオウ……ガ……」

 

ジンオウガも、私と同じように痛みを耐えながら体を起こした。私もジンオウガに負けじと、なんとか立ち上がってみせた。……けど、これ以上体が動きそうにない。それくらい、全身どこもかしこも痛くてたまらないからだ。せっかく巻いてくれていた包帯も吹き飛び、呪いの紋様が顕になっている……エスカトンジャッジメント……まさか、これほどとは……!

 

「……ショウ、無事か……?」

 

「アカイさん……」

 

私の次に起き上がったのはアカイさん……アカイさんも息も絶えだえといった様子で、ヨロヨロと立ち上がった。……なぜかアルバトリオンがそんなアカイさんを見て愉悦に満ちたような笑みを浮かべている。

 

「このクソリーゼント必ずぶち殺す……」

 

「アカイさん……?」

 

「んんっ、なんでもない。……さて、他の皆も直に起き上がるはずだ……だが……」

 

「……!?」

 

アカイさんの表情が苦悶に変わる。まさか、と思いアルバトリオンの法を見ると……。

 

「あ……あぁ……!」

 

「……『じこさいせい』、か」

 

なんと、アルバトリオンはじこさいせいの技で体力を回復していた。私たちが頑張って与えたダメージが、すべて消えてなくなっていく……そんな、ここまで苦労したのに……。

 

 

ズキッ!!

 

 

「うぐっ……!」

 

「ショウ!」

 

だめだ、不安を抱いてはいけない……!諦めるな、まだ手はあるはずだ……!この様子だと……少なくとも、アルバトリオンは全員が再起するまで待つはず……それなら、ハンターの二人が起き上がると同時に生命の粉塵を使ってもらえば、私たち全員のダメージも回復しきれるはず……。そうすれば、実質差し引きゼロに持ち込める。

アルバトリオンの姿は、青みがかった姿に変わっている。あれが、氷活性状態……?だとしたら、今度はほのお技を使わないと……。

 

「……うっ……ショ、ショウ……」

 

「先輩……!」

 

先輩が起き上がった……!それを皮切りに人間もモンスターも、ゆっくりとではあるが起き上がった。

 

「……まさか、あの不思議バリアーを突破するとはな……。ハンターの武器すら容易に受け止めたんだぞ……」

 

「これが、エスカトンジャッジメント……初めて受けましたけれど、とんでもない威力ですわ……」

 

「普通なら、ベースキャンプ送りになってもおかしくないんだが……あの不思議バリアーのおかげ、だな……」

 

「まさか技巧種に助けられるとは……」

 

「ギィギュオオオオォンッ!!」

 

アルバトリオンが再び咆哮を上げると、またしても龍活性状態へと移行し、そしてすぐにエスカトンジャッジメントの構えを取った!?

 

「おいおいおいおい、なんの冗談だ!間髪を容れずに二発目だと!?」

 

「回復……ダメ、間に合わない……!!」

 

エスカトンジャッジメントのチャージが最大になり、アルバトリオンが再び宙を舞った。

 

 

……その時だ!

 

 

「……!ギュアアァンッ!?」

 

突如、アルバトリオンの周辺に火柱が発生すると、一瞬でアルバトリオンを飲み込んだ!あれは、ブラストバーン!?まったくの意識外からの攻撃にエスカトンジャッジメントは中断され、さらに青い炎を纏った何かが高速で接近してきた!青い炎はVの字を作るとそのままアルバトリオンの顔面にぶち当たり、大角のうちの片方をへし折ってしまった!?

 

「な、なんだ!?」

 

「今の攻撃は……?」

 

私たちが困惑している間に、四つの大きな影が飛来してきた。

 

まず、四つの影のうちの二つ。それは、リオレウスとリオレイアのような、体に似通った部分が多く見られる赤と青の翼を持った四足獣……いや、龍。炎を纏っていることから、先ほどの炎攻撃はあの二体と思われる。二体はセキさんとカイさんの前に着地した。

もう一つは、テル先輩に近くに降りてきた。まるで胴長のカクレオンのようなそのモンスターは、紫の体表を持つ特徴的なモンスターだった。

そして、私の前に降りてきた四つ目の影は……メゼポルタ西にある洞窟で見た、あのモンスターだった。

そして、それぞれのモンスターから人影が降りてきた。

 

「……ふぅ。モンスターの、それも古龍の遊覧飛行はもう懲り懲りだぜ」

 

「今日はモガの森でガノトトス一本釣りをする予定だったのに……」

 

「そう言うな、若い命がかかってるんだからよ。……それに、古龍に乗るっていう貴重な体験も出来たんだ、むしろお釣りが来るぜ?」

 

「そんなお釣りよりガノトトスが食べたいわ」

 

「やれやれ……それじゃ」

 

「えぇ」

 

「ユクモ村専属ハンター、グレンだ。これより参戦する」

 

「モガ村専属ハンター、アシュリーよ。私も参戦するわ」

 

新しいハンターさんが二人……!?そして、紫のモンスターからは……あの金色の鎧は!

 

「シズカさんのお師匠さん!?」

 

「おや、ショウさんか。久しぶりだね」

 

「やっぱりシュラークさん!シュラークさんも参戦ですか!」

 

「無論だ。……それに、来たのは師匠だけじゃないぞ?」

 

「え……まさか!」

 

私の目の前……モンスターから降りてきたのは……!

 

「シズカさん!!」

 

「……ごめんね、ショウ。すっかり遅刻だね」

 

シズカさんだああぁぁぁ!!振り返ったシズカさんはやんわりと微笑んでいて、その微笑みを見ているだけで安心感がすごい!

 

「……ニールさん」

 

「シ、シズカ……もういいのか……?」

 

「えぇ、おかげさまで。しっかりと休ませてもらいました。……それと」

 

「え」

 

「なんで私に黙って出て行ったんでしょうね?」

 

「ヒェッ」

 

あぁ、ほらやっぱり……。黙って出て行ったこと、根に持ってるじゃないですか……だから私は言ったのに……。

 

「いや、あのなシズカ……」

 

「詳しく……」

 

「えーっと、だから……」

 

「説明してください」

 

「その……」

 

「今、私は冷静さを欠こうとしています」

 

「はい!すみませんでした!!」

 

シ、シズカさんの無表情の圧……ヒューイさんはシズカさんに気を遣って言葉を選ぼうとしたけれど、結局圧に負けて即謝罪していた。……あの時は一緒に謝るって言ったけど、流石にこの流れで一緒に謝るのはちょっと……。

 

「ね、姉様……これは、一体……?」

 

「ん?んー……"古龍の恩返し"?」

 

「誰が何をしたらこんなに集まるのですか!?

『テオ・テスカトル』!

『ナナ・テスカトリ』!

『オオナズチ』!

『クシャルダオラ』!

四体もの古龍が一堂に会するなど、天変地異が起きたってありえないことですよ!?」

 

ネネさんが一体一体を指して名前を語ってくれたおかげで、詳細がわかった。あれら全部が古龍なのか……!

新たにふたりのハンターを連れてきたそっくりさんのモンスター……赤い方がテオ・テスカトル、青い方がナナ・テスカトリというらしい。……ナナ・テスカトリの方が女性っぽく見えるのは気のせいじゃない、よね?

そして、紫色の胴長カクレオンはオオナズチ。さっきから落ち着きがない様子であたりをキョロキョロと見回している。……好奇心旺盛っぽく見えるな。

そして、シズカさんを乗せてきたのはクシャルダオラ……私が助けたモンスターだ。クシャルダオラも振り返ると、私にそっと頭を寄せてきた。

 

「クルクル」

 

「あっ……あなたは、あの時の……」

 

「シャン」

 

「……ありがとう、助けに来てくれたのね?」

 

「クシャァオッ!」

 

「私と師匠、そしてあちらの二人は、神域に向かう道中で古龍に拾われたらしい。私と師匠はともかく、あちらの二人はともにアルバトリオンの狩猟経験がある……期待していいよ」

 

「はい!」

 

なんかもう、体の痛みなんて全く気にならないくらい元気出てきた!これだけの助っ人が揃って、負けるわけにはいかないもんね!!

 

「師匠」

 

「おう」

 

シズカさんがシュラークさんに声をかけると、二人で同時に生命の粉塵を撒いた。……モンスターや私達の傷が、どんどん回復していく……!

 

「さて……アルバトリオン。あなたの道楽に付き合うつもりはないの。ショウのためにも、さっさと滅龍石を返してもらう」

 

「姉様……!」(((o(*゚▽゚*)o)))パァ…!

 

「え、ちょ、なに?キモいんだけど」

 

「いえ、シズカさんの道楽云々のセリフ、ネネさんとほとんど同じだったので……」

 

「オェッ」

 

「吐き気を催すほど嫌なの!?」

 

なんもそこまで露骨な反応をしなくても……。

 

「ギィギュオオオオォンッ!!」

 

一際大きな咆哮が聞こえ、アルバトリオンに注目が集まる。見ると、アルバトリオンは怒っているようだった。シズカさん達や四体の古龍達の参戦が不服なのか、激しい怒りを顕にしている。

 

「うるさいなぁ、こちとら時間がないんだっての。巻きで行くから、そのつもりで覚悟しなさい」

 

ガンランスをリロードしながら、シズカさんはアルバトリオンを煽る。うーん、この煽りがとてつもなく心強い!なぜならシズカさんの煽りは、自身への絶対的な自信の表れでもあるから!

 

「君がいてくれるなら、俺は無限に強くなれる……背中は預けるぞ、シズカ!」

 

「ニールさんこそ……私の背中、貴方に預けます。……守ってくださいね?」

 

「シズカ……!」

 

「おいこらそこてぇてぇすんじゃないわよ優男ォ!!」

 

「……話は、また後で」

 

「あ、あぁ!」

 

ネネさん……ほんと、こういうところは妙に目ざといというか……。

 

「ショウ!」

 

「アカイさん……」

 

「……思わぬ援軍が来てくれたな。これも、君が築いた絆のおかげだ」

 

「私が……」

 

「絶対に勝つぞ、ショウ。ここまできて、我々に敗北等ありえない」

 

「……はい!」

 

「私たちも……」

 

「忘れないでくれよ!」

 

この声……やっと来た!

 

「シロちゃん!エイデンさん!」

 

「エイデン!滅龍石は……」

 

「既にベースキャンプに運び込んだ!後は……」

 

「アルバトリオンを、討伐するのみ!!」

 

そうだ……私たちは勝つ!絶対に勝つ!なぜなら、私たちには七人のハンターに四体の古龍が力を貸してくれているんだ!

 

「負けない……負けられない!ジンオウガ!」

 

「ワオン!」

 

「勝つよ……ジンオウガ!私たちは勝つ!絶対に……負けない!!」

 

「ワオオオオォォンッ!!」

 

「「うおおおおっ!!/ウオオオオッ!!」」

 

この感覚……あの時と同じ!クロノとイビルジョーと戦った時と、同じ感覚!!ジンオウガは蒼穹のような澄んだ色の電撃に包まれた姿に変わり、私と同じようにアルバトリオンを見据える。

 

「なに!?ジンオウガが……」

 

「……あぁ、また技巧種のレポートに追加事項が……」

 

「(なにこれ、キズナ現象?サトシゲッコウガならぬショウジンオウガ?……語呂悪いな)」

 

ハンターたちの反応もそこそこに……アルバトリオンの怒りも、我慢の限界といったところだ!

 

「行くぞぉっ!!」

 

戦いは!これからだっ!!

 

 

 

 




書いててアレなんですけど、なんかアルバトリオンの前半戦、ちょっと物足りないような……みなさんはどうでしょうか?満足頂けましたか?

後半戦もお楽しみに!


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決戦!!アルバトリオン!

いよいよ決着の時!!


ついに始まった私たちと煌黒龍アルバトリオンとの戦い。はじめこそは互角、あるいは優勢といった様子だったが……アルバトリオンの力は、まだまだこんなものじゃなかった。アルバトリオン最強の技、エスカトンジャッジメント……その一撃で、私たちはほぼ壊滅状態にまで追い詰められてしまった。さらに、アルバトリオンに与えたダメージもじこさいせいの技で回復されてしまった。

アルバトリオンはこちらに休む暇を与えず二発目のエスカトンジャッジメントを放とうとした……その時だ!私たちに心強い援軍が来てくれたのは!やってきた援軍はシズカさんとお師匠さんのシュラークさん、さらにアルバトリオンの討伐経験のある太刀使いのグレンさんとランス使いのアシュリーさん!

それだけじゃない!古龍種であるクシャルダオラ、オオナズチ、テオ・テスカトル、ナナ・テスカトリも私たちを助けに来てくれた!……クシャルダオラはまだわかるけど、他の三体はなんで……?

そして、滅龍石をベースキャンプに運び終えたシロちゃんとエイデンさんも合流してくれた!ここまでお膳立てされたんだ、今更負ける気なんてしない!そんな私の思いが通じたのか、ジンオウガが再びあの不思議な姿へと変化した!

シロちゃんの合流によって、リオレイアも戦場へと舞い降りてきた……これで準備万端!でも、その前に……。

 

「能力が上がっているアルバトリオンをどうにかしないと……!」

 

「あぁ、それならこちらに考えがある」

 

「シュラークさん?」

 

なんだろう、なにか作戦があるのかな……?

 

「ふふっ。なに、大したことじゃない。合流前に技巧種について、少々勉強させてもらったというだけさ。行くぞ、オオナズチ……くろいきり!」

 

「シャァァァァァ……」

 

シュラークさんの指示を受けたオオナズチが口から真っ黒な霧を吐き、神域を一瞬で包み込んだ。……そうか、くろいきり!戦闘中のポケモンのステータスを元に戻す技!

くろいきりに包まれたアルバトリオンは、突然脱力したかのように膝を折った。何が起きているのかわかっていないのか、しきりに自分の体を見ている。

 

「これで、奴さんの強化はなかったことになったはずだ」

 

「流石だぜシュラーク!もう技巧種について理解してるのか!」

 

「これまでエイデン達が頑張ってくれてたからね。これくらいはしないと、だろ?」

 

「本当に助かります!シュラークさん!」

 

やった!これで状況を五分に引き戻せたぞ!いや、こちらには援軍がいるから、むしろ優勢だ!

 

「ギュアオオォンッ!」

 

把握できてはいないが、なにかされたことははっきりと理解したアルバトリオンは激高と共に咆哮。空中に向かって冷気を吐きつけると私たちの頭上に次々と氷柱が発生した!

つららおとし!?なんて数なの!

 

「面倒な攻撃を……テオ!」

 

「ナナ」

 

「「ふんえん!」」

 

「グルオオッ!」

 

「グラオオッ!」

 

グレンさんとアシュリーさんの指示を受けたテオ・テスカトルとナナ・テスカトリが氷柱の発生源まで飛び上がると、一瞬で全身から炎を吹き出した!炎はすべての氷柱を溶かし尽くし、アルバトリオンのつららおとしを消滅させた!

 

「ギュア!?」

 

「リオレイア!ごうかきゅう!!」

 

「ジンオウガ!かみなりのキバ!」

 

「ライゼクス!きあいだま!」

 

アルバトリオンが気を取られている隙に、シロちゃんが豪火球をぶつけた!そうして怯んだ所へ、ジンオウガとライゼクスが畳み掛ける!攻撃を受けたアルバトリオンはジンオウガを振り払い、宙へ飛び上がろうとした……だが!

 

グサッ!!

 

「ギュオァッ!!」

 

「飛ばせる訳無いだろ!」

 

「じっとしてなさいな!」

 

エイデンさんとネネさんが拘束用バリスタを発射して動きを封じた!鉄杭が深々と突き刺さり、アルバトリオンはうまくバランスが取れずに地面に降りざるを得なかった。

 

「皆!今のアルバトリオンは氷活性状態だ!炎攻撃を頼む!!」

 

「リオレイア!だいもんじ!!」

 

「リオレウス!ごうかきゅう!!」

 

「ディノバルド!バーニングテイル!!」

 

先に仕掛けたのはほのお技が使える面々だ。次々と襲い来るほのお技に対し、拘束用バリスタで動きがままならないアルバトリオンは集中砲火にさらされている!

 

「ガムート!ストーンエッジ!!」

 

「タマミツネ!ムーンフォース!!」

 

「ライゼクス!りゅうのはどう!!」

 

「ジンオウガ!ほのおのキバ!!」

 

続いてほのお技を持たない面々による追加攻撃!締めに私のジンオウガによるほのお技!全身が逆鱗だらけにも関わらず、私のジンオウガは勇猛果敢に噛み付いていく。アルバトリオンが噛み付いてきたジンオウガを振り払おうと必死になっているところへ、さらに追撃が迫る!

 

「テオ!」

 

「ナナ!」

 

「「れんごく!!」」

 

続けて、テオ(長いので略そう)とナナ(長いの以下略)の二体同時のれんごく!!攻撃はヒットしたことで、アルバトリオンはやけど状態になった!!

と、ここでジンオウガが振りほどかれ、アルバトリオンがじこさいせいを使い始めた!マズイ、このままだとまたいたちごっこに……!

 

「オオナズチ、かいふくふうじ」

 

「シュルシュル……」

 

オオナズチが大きい目をさらに大きく見開いたかと思うと……アルバトリオンの再生が止まった!すごい、あんな変化技まで使えるなんて……!

 

「さて、回復手段は封じた。……一気に仕掛ける!」

 

「師匠!続きます!!クシャル、ぼうふう!」

 

「クシャアオォッ!」

 

回復手段まで封じられて動揺するアルバトリオンに、クシャルダオラのぼうふうが襲いかかり、さらにすかさずシュラークさんとシズカさんが斬り込む!すぐさま対応しようとするアルバトリオンだが、両サイドから撃ち込まれた火炎弾に気を散らされて対応が遅れていた。

 

「ゼリャ!」

 

「フッ!」

 

二人が同時に武器を振り下ろし、それによってアルバトリオンの前足が「部位破壊」された!アルバトリオンがドラゴンクローを二人にめがけて振り下ろすが、攻撃が直撃する直前、シズカさんはシュラークさんを伴いつつ物凄い勢いで逆方向に移動していった。あれは確か、鉄蟲糸技のリバースダッシュ、だっけ?緊急回避に使えるって教えてくれたんだ。

攻撃が空振ったところへ、グレイさんとアシュリーさんも同時に切り込んだ!グレイさんの太刀とアシュリーさんのランスがそれぞれアルバトリオンに傷を負わせていく。特になにもエフェクトがないってことは……あぁ、あれが無属性武器なのか。

 

「よしっ!かなりいい調子で属性の抑制が進んでいる!!このまま限界まで押さえ込むぞ!」

 

「オオナズチ、ヘドロばくだんだ」

 

「ライゼクス、ドラゴンクロー!!」

 

「クシャル、エアスラッシュ!」

 

「リオレウスもエアスラッシュだ」

 

グレイさんをアイアンテールで吹っ飛ばし、アシュリーさんをハイパーボイスで押し返すとアルバトリオンは私に標的を定めた。……が、これは横合いから飛んできたヘドロばくだんを顔面に食らって注意が逸れた。そこへ立て続けに攻め立てるモンスターたち……だが、アルバトリオンも負けていない。

まず、ライゼクスのドラゴンクローをダブルウイングで迎撃し受け流すと、クシャルダオラとリオレウス亜種によるエアスラッシュの弾幕を、同じくエアスラッシュで迎え撃った。

 

「ガムート!ギガインパクト!!」

 

「タマミツネ!ねっとうだ!!」

 

「ディノバルド、サイコカッター!」

 

アルバトリオンへ突撃してくガムートを援護するように、タマミツネとディノバルドの攻撃が放たれた。アルバトリオンは両者の攻撃をあくのはどうのみで打ち払い、ガムートを相手に同じギガインパクトでぶつかりあった!

 

「リオレイア!ポイズンテール!!」

 

「ジンオウガ!アイアンテール!!」

 

ぶつかり合うガムートの足元をだいちのちからで崩し、体勢を崩したところをたたきつける攻撃で尻尾をぶつけて押し返したアルバトリオン……でも、休ませる暇は与えない!

空からリオレイア、陸からジンオウガが尻尾を振りかざして攻撃を仕掛ける!だが、アルバトリオンはスマートホーンの技でリオレイアの攻撃を受け止めつつ地面に投げ飛ばし、さらにジンオウガのアイアンテールをアクアテールで打ち合い押し返した!

拘束用バリスタで動きにくいはずなのに、ここまでやれるのか……!

 

「そろそろバリスタが外れるぞ!」

 

「テオ、ドラゴンクロー!」

 

「ナナ、てだすけ!」

 

ナナのてだすけによって威力が増したテオのドラゴンクローと、アルバトリオンのドラゴンクローがぶつかり合う!実力は……互角か!てだすけによるフォローがあってようやく互角というの……!?

と、ここで……。

 

「拘束が……!」

 

「解けたか!」

 

アルバトリオンを拘束していた鉄杭が抜けてしまった……!それと同時にアルバトリオンは空高く飛び上がった!

 

「逃がすか!リオレウス!」

 

「リオレイア!」

 

「ライゼクス!お前も行け!」

 

「テオ!」

 

「ナナ!」

 

アルバトリオンの後を追い、オオナズチを除く翼を持つモンスターたちが追随する。今すぐに地上へ叩き落とさないと!!

 

「リオレウス!ドラゴンダイブ!」

 

「ライゼクス!ブレイブバード!」

 

「リオレイア!ラスターカノン!」

 

リオレウス亜種とライゼクスが突貫し、リオレイアが援護のためにラスターカノンを撃つ!アルバトリオンはリオレウス亜種をしねんのずつきで叩き落とした後、ライゼクスのブレイブバードを避けつつはかいこうせんでリオレイアのラスターカノンを押し返した!一度は墜落しかけたリオレウス亜種とリオレイアだが、空中で体勢を立て直してすぐさま飛び上がった。

 

「ナナ!りゅうのはどう!!」

 

「テオ!かえんほうしゃ!!」

 

ナナのりゅうのはどうと、テオのかえんほうしゃが放たれた。この時、意図してかテオは僅かに攻撃のタイミングを誤差レベルでずらしていた。けど、そのズレが功を奏した!ナナの攻撃を回避したアルバトリオンは、先ほどのリオレイアの攻撃とは違ってほぼ間髪を容れず迫ってきたテオのかえんほうしゃに対応できず直撃した!す、すごい……具体的な指示もないのに、自己判断でここまで出来るとは……これが古龍か。

 

かえんほうしゃの直撃で体勢を崩したアルバトリオン……ここだ!

 

「……!クシャル、たつまき!!」

 

「ジンオウガ!ワイルドボルト!!」

 

「ウオオオォォンッ!!」

 

一瞬起きた落雷と同時にジンオウガの姿が掻き消え、一筋の稲妻が空中のアルバトリオンに迫っていく。それに勘付いたアルバトリオンが回避に動こうとした直前、竜巻が発生してアルバトリオンを包み込み動きを封じた!今の声はシズカさん!流石です!!

動けなくなったアルバトリオンに稲妻が直撃すると同時に、姿を現したのは私のジンオウガ!そのままワイルドボルトをぶち当て、さらに踏み台にして飛び跳ねると一回転しつつ尻尾を叩きつけて地面に叩き落とした!

……っ。逆鱗に接触したことで、痛みが伝わって来る……ごめんね、ジンオウガ。無理させちゃってるね……。

墜落し、土煙を巻き上げたアルバトリオン。煙が晴れた先にいたのは、龍活性状態の姿となったアルバトリオンだ。

 

「龍活性状態だ!ドラゴン技をぶち込めぇ!!」

 

「リオレウス!」

 

「リオレイア!」

 

「ライゼクス!」

 

「オオナズチ」

 

「テオ!」

 

「ナナ!」

 

「クシャル!」

 

「「「「「「「りゅうのはどう!!」」」」」」」

 

七体のモンスターによる同時攻撃!迫り来る七つのりゅうのはどうを、アルバトリオンはりゅうせいぐんで迎え撃った!降り注ぐ隕石が次々とりゅうのはどうを打ち落とす……だが、それだけじゃない!

 

「ジンオウガ!」

 

「ガムート!」

 

「ディノバルド!」

 

「「「げきりん!!」」」

 

地上にも、ドラゴン技が使えるモンスターはいる!げきりん発動による戦闘モードに入った三体は同時に突撃していった。速さに違いがあるので、波状攻撃のような形になった。

一番に切り込んだのはジンオウガ。私も一緒になって腕を突き出し、アルバトリオンに攻撃を加えていく。アルバトリオンからの攻撃は謎の視界共有もあってなんとか避けられている。

私が体を横に揺らすと、ジンオウガは横ステップでアルバトリオンの眼前から移動した。そこへ振り下ろされるひと振りの大剣……もとい尻尾。ディノバルドだ。ジンオウガからバトンタッチする形で戦線を引き継いだディノバルドは、尻尾を巧みに操りアルバトリオンへ攻撃を加えていく。アルバトリオンは相手がディノバルドと分かるやいなや、腕に氷を纏わせたれいとうパンチやこおりのキバ、みず技のアクアブレイク等で対抗し始めた。

そこへ遅れて到着したガムートが参戦。ガムートはほのおに弱いのだが、アルバトリオンは三つ以上の属性を難なく同時に使いこなしている。さらにジンオウガも果敢に攻め込んでいくが、三体を同時に相手取ってなお怯む様子がないとは……!!

 

「ギィギュオオオオンッ!!」

 

「グウッ!」

 

「ディバッ!」

 

「ガムゥ……」

 

ついにはアルバトリオンがなみのり攻撃を仕掛けてきた!一瞬で大波ほどの水量を生み出すとそれを思い切り叩きつけてきた!ガムートには効果は薄いが、ジンオウガとディノバルドには痛いダメージとなった。……ぐっ!ジンオウガの痛みが、伝わって来る……!

 

「行けっ、テオ!」

 

「ナナも行きなさい!」

 

と、ここでテオとナナが同時に動いた。アルバトリオンの頭上を陣取ると、二体は激しく交わるように飛び回っている……あれは?私は迷うことなくアカイさんの下へ向かった。

 

「アカイさん、あれは?」

 

「……ほう、ショウはあれが、ただ飛び回っているだけには見えなかったのだな?」

 

「はい。なので、アカイさんのところに来ました」

 

「いい判断だ、ついでに炎王龍と炎妃龍についても簡単に説明しよう。

炎王龍テオ・テスカトルと炎妃龍ナナ・テスカトリは番となる古龍種だ。ご覧のとおり、炎を操る力に長けている。単体でも危険なのだが、両者が揃った時こそ真の恐ろしさを発揮する。雄と雌、番が揃う恐ろしさは、リオス夫妻で既に学んでいるな?」

 

「はい」

 

あのセルレギオスがリオレウスとリオレイアの二体に一方的に倒された光景は今も思い出せる。凄まじい連携だった……!

 

「テスカ夫婦は、あのリオス夫婦の古龍版だ。そして、炎王龍と炎妃龍が揃った時のみ繰り出せる最大奥義がある。炎王龍と炎妃龍……両者の絆が為すその奥義の名は……」

 

「「エクスプロージョン・メサイア!!」」

 

グレンさんとアシュリーさんが技名を叫ぶと、二体は一気にアルバトリオンの背面に接近して大爆発を起こした!!その爆風の威力たるや凄まじく、アルバトリオンは地面に伏せたような姿勢で叩きつけられていた。ついでと言わんばかりに、翼の部位破壊もされている。凄い威力だ……アルバトリオンの周辺は青と赤の炎が燃え盛っており、いかにその余波が凄まじいかを物語っている。

私はアカイさんに目を向けると……心なしか、憮然とした顔を浮かべている。もしかして……。

 

「……とまぁ、あんな感じだ」

 

「悔しいですか?」

 

「悔しくない別にセリフを取られた程度で腹を立てるほど狭量ではない」

 

「(めっちゃ早口だ)」

 

変なところで素直じゃない……ふふっ、クロノとそっくりだ。

 

「ショウ?なにか良からぬことを考えていないか?」

 

「別に~?」

 

「……そういうことにしておいてやろう」

 

これ以上は藪蛇だ、触れないでおこう。

 

「クシャル!トラップサイクロン!」

 

「シャオラァ!!」

 

クシャルダオラが放った竜巻が、アルバトリオンを巻き込み吹き荒ぶ。そうだ!あの戦術を使おう!

私はすぐさま移動して、目的の人物に接触した。

 

「カイさん!」

 

「ショウさん!どうしたの?」

 

「あの竜巻にストーンエッジを!岩を巻き上げて、追撃を狙います!!」

 

「なるほど!ガムート!!」

 

「パオオォンッ!!」

 

「でしたら、ディノバルドも」

 

「ディーバ!」

 

「「ストーンエッジ!」」

 

ガムートとディノバルドが放ったストーンエッジが、竜巻周辺に突き立った。それを見たシズカさんがクシャルダオラに目で合図を送り、それを受けたクシャルダオラも小さく頷くとさらに竜巻を大きくした。それによってストーンエッジが竜巻に巻き上げられ、アルバトリオンにどんどんダメージを与えていく!

 

「ギュオオアアアッ!」

 

だが、アルバトリオンもただではやられない。ぼうふうの技でクシャルダオラの竜巻を打ち消してしまったからだ。続けてねっぷうを放ち、先程まで竜巻で巻き上げられていたストーンエッジを、こっちに向かって飛ばしてきた!

 

「そうは問屋が……」

 

「卸さないっての!」

 

グレンさんとアシュリーさんの言葉とともに、テオとナナが二体でねっぷうを放ち膠着状態を生み出した。その隙を突き、ハンター達が一気呵成に突撃する!

 

「ズェアアァッ!!」

 

「シッ……!」

 

「おおぉっ!!」

 

「ぬおりゃあ!」

 

「てえぇいっ!」

 

ハンター達の一斉攻撃……シュラークさんのトランスラッシュ、シズカさんのフルバレットファイア、ニールさんの震怒竜怨斬、グレンさんの練気解放円月斬り、アシュリーさんのスクリュースラストが全て決まった!

……え?なんで狩技を知ってるのかって?ふっふーん、こんなこともあろうかと飛行船で予習しておいたのです!

ここでアルバトリオンが大きく体勢を崩して倒れこんだ!今がチャンス!!シズカさん達が倒れているアルバトリオンに攻撃しているから、なるべく邪魔にならない技で……!

 

「くらいやがれ!」

 

「もっていきなさい!」

 

「ジンオウガ、はどうだん!」

 

「ガムート、つららおとし!」

 

「タマミツネ、ムーンフォース!」

 

シズカさん達を巻き込まない位置取りをして、攻撃!エイデンさんとネネさんの弾丸、そしてジンオウガ、ガムート、タマミツネの攻撃が命中し、続けて空から攻撃が迫る!

 

「リオレイア!」

 

「リオレウス!」

 

「「ごうかきゅう!」」

 

「ライゼクス、ワンダーパルス!」

 

空から豪火球とワンダーパルスの火球と雷球の同時攻撃!さらにアルバトリオンを追い詰めていく!

と、ここでアルバトリオンが体を起こしてその場で一回転!ハンター達を吹き飛ばすと、神域の中心地を陣取り構えを取った!

 

「エスカトンジャッジメントだ!」

 

「みんな、まもるの準備を!!」

 

シズカさんが駆け寄りながら指示を出す。モンスターたちが一堂に結集し、全員でまもるを発動する!今回はリオレイアに古龍四体も一緒だ!

アルバトリオンが宙を舞い、再び属性が炸裂する!!

 

「ぐっ、うっ……!!」

 

全員のまもるが一体となり、巨大なバリアーを形成してエスカトンジャッジメントを受け止めた!!属性の抑制が進んでいたおかげか、まもるはビクともしていない!!やがて光が消滅すると、肩で息をしているアルバトリオンの姿が……!

 

「あと少しだ……!」

 

「あぁ、一気に畳み掛けるぞ!!」

 

「アルバトリオンが氷活性状態に戻った……?」

 

「属性を制御する角を折ることで、属性移行を妨害できるの。角は龍活性状態の時しか折れないしね……テスカ夫婦がいるこの状況で氷活性状態に戻せたのはラッキーだった」

 

「なるほど……」

 

シズカさんの説明に頷きつつ、アルバトリオンを見据える。確かに見るからにほのおタイプであるテオとナナの二体がいるのに、炎活性状態になってしまったら厄介だ。シズカさんが言いたかったのはそういうことだろう。

 

「さぁ……アルバトリオンにトドメを刺すよ!」

 

「はいっ!ジンオウガ、かみなり!!」

 

「ワオオオォォンッ!!」

 

これが最終ラウンドだ!その口火を切ったのはジンオウガのかみなり!息を整えていたアルバトリオンだが、攻撃を察知して顔を上げるとすぐに回避行動に出た。そこへシズカさんが飛び出した!

ブラストダッシュと翔蟲を駆使してアルバトリオンの背中に乗り込み、そのまま剥ぎ取りナイフで背中を傷つけ始めた!

 

「ちっ……みんな!今のうちに、攻撃を……!!」

 

「けど……!」

 

「安心しろショウ!シズカは出来ないことは絶対にしない……シズカを信じるんだ!」

 

「姉様ごと攻撃するとかトチ狂ってるんですか!?何を考えているのです!!」

 

「ん?それじゃあ君はシズカを信じられないとでも?」

 

「んなわきゃあねぇでしょうがああぁっ!!」

 

「(扱いやすい子だなぁ)」

 

「(シュラークさん、悪い顔をしてるなぁ……)」

 

シズカさんが私たちに攻撃を促すも、思わず躊躇してしまう。けど、その躊躇もお師匠さんであるシュラークさんの一言で吹っ切れることができた。……ネネさんは相変わらず抗議してきたけど、シュラークさんの口八丁に乗せられて攻撃に参加していた。汚いなさすが大人汚い。

リオレウス亜種とリオレイアの火炎が行く手を阻み、ディノバルドがバーニングテイルで斬りかかる。直撃したアルバトリオンだが、すかさずふぶきでディノバルドを吹き飛ばした。追い打ちをかけようとディノバルドに詰め寄るが、眼前に滑り込んできたタマミツネがマジカルシャインを放ったことで距離を置かざるを得なかった。

と、ここでアルバトリオンが動いた。シズカさんを振り落とすと足元に影を広げ、その中へと入り込んでしまったのだ!

 

「まさか、シャドーダイブ……!?」

 

「いえ、あれはゴーストダイブ。シャドーダイブはギラティナのみに許された専用技……だから、ギラティナ以外が使う技は全てゴーストダイブよ」

 

「そ、そうですか……」

 

「(ドーブルの話はする必要はないわね)けど、なるほど……ゴーストダイブが使えたからこそ、誰にも視認されることなく滅龍石を強奪できたのね」

 

「あっ!そうか!!」

 

ゴーストダイブで滅龍石を……そういう使い方があるのか、アルバトリオンめ!

姿を見失ったことでモンスターたちは各々がアルバトリオンの気配を探っている……と、クシャルダオラのすぐ背後で空間に変化が……!見れば、アルバトリオンが飛び出そうとしている!

 

「危ないっ!クシャルダオラ!!」

 

「おぉ、読み通りだ」

 

「え?」

 

シュ、シュラークさん?読み通りってどういう……?

 

「オオナズチ、のしかかり!!」

 

「シュルルシャアァッ!」

 

私が困惑する中、アルバトリオンが影から飛び出し襲いかかろうとした、その直後だ!アルバトリオンの頭上から突然姿を現したオオナズチが、全体重をかけてアルバトリオンにのしかかった!

押しつぶされたアルバトリオンはオオナズチを排そうと体を動かしている……マズイ、アルバトリオンは全身が逆鱗だ!接触している状態だと、体を動かされるだけでダメージになる!

 

「ヘドロウェーブ」

 

「シャララァ」

 

だが、シュラークさんは慌てない。その冷静さが通じているのか、オオナズチも特に表情を変えることなく飛び上がると同時にヘドロウェーブをアルバトリオンに叩き込みつつ離脱した。

 

「……いや、ちょっと待って。オオナズチはどうして?いつの間に?」

 

「お?ショウさんは気付かなかったのかな?周りを見てご覧」

 

「周り……?」

 

……あれ?なんか、心なしか霧が掛かってる……?いつのまにこんな……。

 

「これがオオナズチの戦い方だよ。アイツは周囲の景色に擬態して姿を消す力を持っているんだ。その詳細はいまだ未知の部分が多く、研究は今も続いているんだ」

 

「じゃあ、この霧は?」

 

「オオナズチは湿度が高い環境を好むからね、自分が戦いやすい状況を作ってるんじゃないかな?……ただまぁ、この濃霧に加えて擬態能力のせいで、一度見失うと再発見が難しいんだよなぁ」

 

確かに……いま、私はオオナズチの姿を完全に見失っているばかりか、オオナズチの存在を完全に失念していた……反省。

 

「クシャルダオラ!ソニックストライクT!」

 

「シャアオォッ!!」

 

氷を纏ったクシャルダオラが体当たりを仕掛けた!アルバトリオンもかなりのダメージを負ったはず……仕留めるなら、今だッ!!

 

「ジンオウガ!」

 

「ワンッ!!」

 

「奥義装填!!」

 

「ウオオオォォンッ!!」

 

ジンオウガが大きく距離をとり、私も同じように構えを取った。と、そこへアルバトリオンがハイドロポンプを放ってきた!!マズイ、今のジンオウガはみずタイプに弱い……っ!技のチャージも終わっていないし、このままじゃ直撃に……と、その時だ!

 

「ギュオア!?」

 

「え?」

 

突然、ハイドロポンプがありえない曲がり方をして方向が逸れていった。その軌跡をたどると、崖上になにかがいる……?視線の先にいたのは全身が苔むしたような鱗や甲殻に覆われたサル顔のモンスターだ。そのモンスターが、指を立ててハイドロポンプを誘導しているようだ。あれって、このゆびとまれの技……?それでハイドロポンプを誘導したんだ!そして、そのモンスターの足元には……!!

 

「クロノ!?」

 

「あいつ、いつの間に……!!」

 

ハイドロポンプを受けたモンスターはびくとしていない。ハイドロポンプを受けきると、すぐにモンスターをボールに戻すクロノ。それから、クロノはアルバトリオンを見据えた。

 

「……俺様は言ったはずだぞ、余計なことはするなと」

 

「ギィギュオオアアアアアッ!?」

 

「ショウ……やっちまえーっ!!

 

「……!うんっ!!いっけえええええ!ジンオウガーッ!!」

 

「ウワオォンッ!!」

 

クロノの声援を受けて、ジンオウガは跳ぶ!!

 

「雷迅ッ!!」

 

「ウオオオオオオオンッ!!」

 

「ギャアアアアアアアッ!?」

 

雷の矢尻と化したジンオウガが、一直線にアルバトリオンへ向かっていく!一迅の雷の矢がアルバトリオンを貫き、雷の嵐がアルバトリオンを包み込み大爆発を起こした。ジンオウガは一瞬で私のもとに戻ってきた……アルバトリオンは……!

 

「……グ……ググ、グ……!」

 

かろうじて立っている状態、か……!やはり、まだ……!!

 

「お前の負けだ、煌黒。素直に認めとけ」

 

「…………」

 

崖上からクロノにそう声をかけられたアルバトリオンは……一瞬、逡巡するように俯くと、そのまま体を横たえた……これって……!!

 

「それでいい。……煌黒龍は降参した。お前らの勝ちだよ、ショウ」

 

「や……た……やったーーっ!!」

 

「おいおい……禁忌のモンスターが降参って、そんなのありか……?」

 

「最後まで殺りあわないで済むなら、それに越したことはないですよ」

 

とにかく、これで私たちの勝ちだ!早くメゼポルタに戻って、呪いを――

 

 

ズキッ!!

 

 

「あぐぁっ!!」

 

「ショウッ!!」

 

ま、また……痛みが……!

 

「ショウ!……シロ、来いっ」

 

「うん!」

 

アカイさんが私を担ぎ上げ、そこへ飛び込んできたシロちゃんを抱える。

 

「テル少年、君も来るんだ!」

 

「わ、わかった!!」

 

「走れ!間に合わなくなるぞっ!!」

 

担がれて揺られている間にも、心臓の痛みは続く。……う……もう、意識が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

せん……ぱい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカイ達がベースキャンプについた頃、ショウは気を失っていた。そのことに気づいたテルが顔面蒼白になるが、アカイの言葉ですぐに冷静になった。

 

「いいか。これからショウのリオレウスでメゼポルタへ直行する。かなりの速度で飛ぶからな、振り落とされないように気をつけろ」

 

「わ、わかった」

 

「シロ、リオレウスを」

 

「うん。……出てきて!」

 

シロがショウのポーチからリオレウスが入ったボールを取り出し、すぐに繰り出した。出てきたリオレウスは状況を把握しているのか、出てきてすぐに体を横たえた。全員がリオレウスに乗り込んだのを察すると軽く浮上し、滅龍石が入った箱を掴むと一気に高度を稼いだ。

 

「リオレウス、遠慮はいらん。お前の全力で飛べ」

 

「グオオオオオンッ!!」

 

リオレウスが羽ばたき、一気に加速する。そのあまりの速度に、テルはしがみついているだけで精一杯だった。

 

「(な、なんて速さだ……!油断したら、一瞬で振り落とされちまう!!)」

 

一方で、ショウを抱えるアカイとシロは余裕綽々。平然とした様子で前を見据えるふたりに、テルは驚愕していた。

 

「どれくらいでつきそう?」

 

「これくらいの速度なら、半日は猶予がある。その間に滅龍石を加工し、解呪の準備を進めるぞ」

 

「そのためにテルを連れてきたのね」

 

「無論だ。クラフトの天才であるテルがいれば、ただ加工屋に任せるよりよっぽど早い。ダイケンキの第三のカタナ、マスターボール……これらを作ったのも、あの少年だからな」

 

「なるほど……でも、それだけじゃないでしょ?」

 

「は?」

 

「愛の力よ」

 

「……ハハッ、なるほど」

 

二人は普通に会話をしているが、風を切る轟音のせいでテルの耳には一切聞こえていない。

神域を飛び出して数日と少し……三人と一頭の視線の先に、メゼポルタが見えてきた。

 

「……ん?」

 

監視塔に立つ男は、望遠鏡の先に見えたリオレウスと数人の姿を目にしてすぐに動いた。

 

「帰ってきたぞォーっ!!」

 

叫びと同時に鳴らされる銅鑼。それだけでメゼポルタ中がすべてを察し、全員が行動を起こした。

まず、数名が中央広場付近で松明を焚き、それを空に向かってなんどもなんども振り続ける。それを見たリオレウスが、そこを目印にメゼポルタに着陸した。背中から飛び降りたアカイ達は、自分たちの下へ駆けてくる二人の人影に気がついた。

 

「ショウさん!」

 

「ショウ!帰ってきたか!!」

 

「事は一刻を争う!レイラ、ショウを泉へ!!シロ、ショウについてやれ!」

 

「お、おぅ!」

 

「わかった!」

 

「では、私は歌の準備を!」

 

「テル少年は私と来い!加工屋へ向かう!!」

 

「あぁ!!」

 

それぞれが役割を分担して行動を起こす。加工屋に到着したアカイとテル、そして運び込まれた滅龍石を前にアカイはテルに告げた。

 

「ここからは君の力が必要だ」

 

「おれの力が?」

 

「あぁ、君のクラフトの才を信じて託す。……ここにある滅龍石を全て溶かし、一つに圧縮させる。そして、加工を加えて龍封力を限界まで凝縮させる」

 

「えぇっ!?」

 

「本来、ミラボレアスに龍封力は意味を成さない……だが、複数の滅龍石が持つ龍封力を一つにすれば、可能性はある。シロの祈り、歌姫の歌、そして滅龍石……三つのチカラをひとつにする。そのために、テル少年……君の力を貸して欲しい」

 

「……ショウを救うためなら、おれはなんだってするさ」

 

テルの表情は、決意に固まっている。それを見たアカイは、安心したように微笑んだ。

 

「フッ、そうか……愛されてるな、ショウは」

 

「愛……あぁ、そっか」

 

「ん?」

 

「おれ、ショウのこと……好きなんだ。一人の男として、ショウっていう女の子が」

 

「(ほぅ……)」

 

自身の胸に手を当て、言い聞かせるように呟くテル。その姿にアカイは感心しきっていた。

傍から見てもわかりやすく、テルは自分の想いに自覚がなかったのだ。気づいていないふりも考えたが、流石にそれはないとシロから否定されていたのでアカイも考えないようにしていた。事、此処に至って、ようやくテルはショウに抱いている想いがなんなのかを理解したのであった。

 

「(やはり恋愛事(この手)に関しては祖龍が上か)」

 

「アカイさん……おれ、やります。何が何でもやってみせます!!」

 

「よく言った!!」

 

二人は勇み良く加工場へ向かう。少年の横顔には、好いた女を救ってみせると、力強い覇気が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれくらい待っただろうか。まるで永遠と時間が引き伸ばされているように感じられる中、シロ達は祈樹の泉でその時を待つ。

 

「……うっ……あぁ……うぁぁ……!」

 

「ショウ……!(まだなの!?バルカン……!!)」

 

呪いに蝕まれ、苦しげに喘ぐショウの手を握り、シロは待つ。そして――

 

「おまたせーっ!!」

 

祈樹の泉に飛び込んできたテルの声に誰もが顔を上げた。テルの手には、紫の輝きを放つ丸い宝石が握られていた。

 

「これが、龍封力をありったけ凝縮させた……龍封玉だ」

 

「……ありがとう、テル」

 

「でも、これをどうするんだ?」

 

「えぇ、これをね……」

 

言いながらテルから龍封玉を受け取ったシロは泉の水を一掬いし、口に含んだ。そのまま溢れないように上を向きつつ口を開けると、中に龍封玉を放り込む。口を閉じ、ショウに近づいていくと……そのまま口移しをした。

 

「えええぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

まさか宝石を飲ませるとは思いも寄らなかったテルは大絶叫。シロもショウが吐き出さないように確実に飲み込むまで口を押さえるようにキスを続ける。やがて、ゴクン、という音と共にショウが宝石を飲み込んだ。

 

「よしっ」

 

「いやいやいやいや!宝石を飲ませるとか聞いてないんだけど!?」

 

「説明している余裕もなかったからね。……さぁ、始めましょう」

 

「はい」

 

「いや、あの……えぇ……?」

 

せめて説明して欲しかった、と抗議しようとしたテルだったが、レイラに肩を掴まれ、首を横に振られたので諦めた。

シロがショウの前で膝をつき祈りを捧げ、そのすぐ後ろでラウラが準備を終えた。

 

「……では、行きます。……~~~♪」

 

「……っ」

 

神聖な歌声が泉を包み込み、シロの体から祖龍のものと思しき白いオーラが立ち込める。しばらくの間そうしていた、その時だった。

 

「……ぐあぁっ!」

 

「!!ショウ!」

 

突然、ショウが悲鳴を上げた……かと思った次の瞬間、ショウの体から毒々しい紫のオーラが立ち込め始めていた。顔のひび割れが、まるで嫌がるように発光を繰り返している。

 

「ショウ!!」

 

テルはたまらず駆け寄り、ショウの手を握った。

 

「頑張れ!頑張れショウ!!呪いに負けるな!ミラボレアスなんかに負けるな!!ショウーッ!!」

 

「う……あぁ!ああああっ!!」

 

歌い続けるラウラ、祈り続けるシロ……両者にも脂汗が浮かんでいる。

歌い始めてから、二時間以上が経過しようとしていた……。

 

「あああああああああああああああっ!!」

 

一際甲高く、ショウの絶叫が響き渡った……それと同時に、ショウの体から立ち込める紫のオーラが物凄い勢いで体から抜けていく。何度か体を痙攣させると、ショウの体は力なく地面に横たえた。

 

「ショ、ショウ……!?」

 

「…………」

 

「……まさか、そんな……」

 

「…………」

 

「ショウ……ショウーッ!!」

 

間に合わなかったのか……そんな絶望の未来が脳裏をよぎり、テルが声を上げた……その時だ。

 

「……せ、ん……ぱ……」

 

「……!?ショウっ!!」

 

うっすらと目を開け、ショウはテルの方を見た。……体のひび割れは、完全に消えてなくなっていた。

 

「……声、が……」

 

「声……?」

 

「……先輩の……声……嬉しかった……」

 

「ショ、ショウ――」

 

「……好き、です……」

 

「え」

 

その言葉を最後に、ショウはまた意識を落としてしまった。規則正しい寝息が聞こえてきて、テルは一気に脱力した。

 

「……終わったわ。ありがとう、ラウラ。貴女のおかげよ」

 

「いいえ……シロちゃんも、お疲れ様でした」

 

「うん」

 

お互いを労い合う二人をよそに、テルはそっとショウの頬を優しく撫でた。

 

「……おれも、好きだよ……ショウ……」

 

 

 

 

――ショウ、解呪完了

 

 

 

 




最後、むちゃくちゃ駆け足感が半端ない……これは反省ですね、己の才のなさを恨まずにはいられない。

さぁ、次回は掲示板回をはさんで……いよいよヒスイへ帰るとき!!


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【祝!快気祝い!!】我らモンハン部異世界支部【やったねショウちゃん】

内容薄めですけど、まぁ、楽しんでください




1:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ショウちゃんの復活だーっ!!

 

2:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

イエエエェェェエエェエェエエイッ!!

 

3:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

フッフーゥッ!!

 

4:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

パフパフパフー!!

 

5:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あぁ、なんにせよ良かった……本当に良かったよ……

 

6:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いやぁ、心強いを通り越して敵が可哀想な援軍が来てくれてよかったな!

 

7:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

tri主人公に3rd主人公、4主人公に静香ちゃん……そして極めつけにドス古龍たち

これで負ける方が嘘だろ

 

8:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いずれもアルバトリオンの狩猟経験のあるハンターで良かった、だがドス古龍たちはなぜだ?来るとしても、ショウちゃんに助けられたクシャルダオラくらいだろうに……

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が参加しました――

 

――「赤いなぁ……」が参加しました――

 

 

9:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

それについて説明させてもらうわ

 

10:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ルーツ!

 

11:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

一体どんな理由が?

 

12:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

最初は鋼龍も自分だけで行くつもりだったらしいけど、相手は禁忌のモンスター煌黒龍……流石に単騎で援軍に向かうのは少々不安だったみたい

 

13:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、相手が相手だしなぁ……

 

14:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そこで鋼龍は「ドス古龍ネットワーク」を通じて炎王龍に炎妃龍、霞龍に支援要請したみたい

 

15:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

待って待って、なんて?実は仲良しかアイツ等?

 

16:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

会話ログを拾ってきたから、読み上げるわね

 

鋼:突然だが、手伝って

 

炎王:なんぞ?

 

炎妃:なーに?

 

霞:あ、ちょうちょだぁ

 

 

鋼:人間に助けられたので恩返しがしたい、でも相手は煌黒龍、我のみでは手に負えん

 

炎妃:貴方、そんな殊勝な性格してたかしら

 

炎王:言うな言うな

 

霞:おなかすいたぁ

 

 

鋼:雷狼竜とともにいた、我を恐れる様子もなかった、それに助けられた……だから我も助けたい

 

炎王:その男気に応えよう!

 

炎妃:しょーがないわねー

 

霞:あしたってはれるかなぁ?

 

 

17:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ナズチが何も考えてなさすぎるんだがwwww

 

18:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……えーっと、まとめるとだな……

 

クシャ→ショウちゃんに恩返しがしたい!

テオ→クシャの男気に応えよう!

ナナ→テオが行くならしゃーない

ナズチ→なんとなく

 

19:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

オオナズチ、マジオオナズチww

 

20:空の王者 ID:MH2nddosHr8

さらにあの顔だもんなぁww

 

21:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……とまぁ、そんな感じで鋼龍、炎王龍、炎妃龍、霞龍は神域に集まったそうよ

途中、煌黒龍を討伐したことがある有名ハンターが神域に向かおうとしていたのを見つけては拾ってきたみたい

 

22:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そういうことか!

 

23:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

拉致同然じゃねぇか!

 

24:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

いずれにせよこれでショウの呪いは解け、ヒスイに帰るだけとなった

とっととヒスイに帰って、黒龍への備えをだな……

 

25:空の王者 ID:MH2nddosHr8

わかってねぇーなー、バルカンは

 

26:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

は?

 

27:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

考えてもみろって……ここまでハンターのみんなに助けられて、ドンドルマやメゼポルタで便宜を図ってもらって……至れり尽くせり手伝ってもらっておいて「用は済んだ、帰りましょう」とはならんでしょ?

 

28:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ショウちゃんが目覚めるまでは何とも言えないが、少なくともショウちゃんがこのまま帰るとは思えんだろ?

それに……少しくらい目的を忘れてのんびりする時間も必要だ、特にここまで戦い通しのショウちゃん達はな

 

29:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

……フン、一理あるな

では、俺が黒龍の様子を見てくる、光輝と焔はショウと共にしばらくそちらでゆっくりと休むがいい

 

30:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あっ!それなら俺、ユクモに行きたい!

 

31:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おいっ、ずるいぞ!俺は遺跡平原に行きたい!……ところで、葵は?

 

32:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

葵にはちょっと準備をしてもらうために席を外してもらっているわ

 

33:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ん?準備……一体何の?

 

34:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ふふっ、秘密よ!

 

35:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

秘密ならしょうがない

 

36:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

んじゃあ、次の話題はどうする?

 

37:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

個人的に気になることを一つ

ボレアスがガランゴルムを連れていたことだな

 

38:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

次のバトルが人間体での最後のバトルと言っていたからな……おそらく、手持ちの一体と考えていいだろう

 

39:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ボレアスの手持ちかぁ……何を出してくるんやろね

 

40:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

最初のバトルの時に連れていたが出してこなかったイャンガルルガ

アルバトリオンの"ハイドロポンプ"を"このゆびとまれ"で引きつけたガランゴルム

極み個体にまさかの正統進化したイビルジョー

 

わかっているのはこれだけか……一旦、新スレ立てるぞ

 

 

 

 

【ミラボレアス】我らモンハン部異世界支部【手持ち予想】

 

 

 

 

1:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺はそろそろアイツが来ると思うな

二つ名モンスター最悪最強のアレ

 

2:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

鏖魔?……いや、ありそうかも

意外性としてウラガンキンとかあるかな?

 

3:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、ガンキンはないだろ……ボレアスのことだから、もっと機動力を重視しそうだな

ザザミかガザミ……ガザミかな?

 

4:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ボレアスがカニを頼りにするわけねぇだろ!当然、飛竜種を採用するに決まってる!

リベンジ・ティガレックス!

 

5:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

流静の言うとおり機動力なら、牙竜種もありありのアリだろ

原種オドガロンか、ルナガロンだな

 

6:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うっ……そう言われると、それもありそうだな……

 

7:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

別にいいだろ、カニ

両生種とか蛇竜種とかもいるだろうか……?

 

8:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さすがにその辺は戦いにくくないか?流静と剛太辺りなら機動力はどっこいだろうが

 

9:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺や光輝についていけるとは思えんね、ガララアジャラは結構素早いが技は少なそうだし、両生種はどれも脳筋だし

 

10:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

モンハン界の虫タイプである甲虫種や鋏角種はどうだ?一体くらいは使ってきそうじゃね?

 

11:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それ、まともに戦えそうなのがヤツカダキしかおらんくね?

んー……フロンティア勢から誰かしら来るかもな

 

12:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おっ!それなら俺、エスピナスと喧嘩してぇぞ!

 

13:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、エスピナスは強そうだけどなぁ!ポケモンで言うなら毒と麻痺と火傷だろ?フェイタルクローみたいに何にやられるかわからんのだが

 

14:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それがブレス一つで出来ちまうんだから、敵として出てきたら厄介だな……

 

15:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ベルキュロス、ドラギュロス、アノルパティスあたりも嫌だなぁ……

まぁもっと嫌なのはUNKNOWNとゼルレウスとディオレックスだが

 

16:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それな、UNKNOWNは頭ひとつ抜きん出て厄介だ

 

17:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それじゃあ、ダブルバトルでアルゴル?

 

18:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

相互に能動的に蘇生ができるのはナシで

 

19:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お互いに対してのみ有効な"さいきのいのり"とか、ダブルバトルでそれは面倒くさすぎる

 

20:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

んー、海竜種、海竜種……アグナ系やオロミド系か?ロアルは力不足が過ぎる

 

21:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺はドボルベルクも厄介だと思う、あの体躯で力勝負を挑まれたら剛太以外誰も太刀打ち出来んぞ

獣竜種だと後はブラキか……

 

22:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いやー、ブラキ来たらマジきっつい

あの爆破攻撃、どう突破すればいいのやら……

 

23:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……可能性は低いけど、ここまで来たら古龍種も警戒しとこうか

 

24:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いやいや、現状古龍種とタメ張れるとしたら光輝か焔しかおらんやろ!

 

25:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

片や覚醒レウス、片や謎の極み(暫定)ジンオウガ……そうだな、俺たちだと勝てるビジョンが見えない

 

26:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

一応、現実的に考えたら今回助けてもらったドス古龍達やキリン、シャガル、バルファル、ネギ、イヴェル……俺らがまともに戦えるとしたらこの辺か

 

27:空の王者 ID:MH2nddosHr8

残りは概ねサイズ差がなぁ……それと、能力的にまともなバトルになるか怪しい

 

28:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、あの反省したボレアスが古龍種を使ってくる可能性は限りなく低いだろうな、気にしなくても大丈夫だろう

 

29:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……お、ショウ起きた!

 

30:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そういや最後に気絶する直前、しれっとテルに告ってたけど……どうなったん?

 

31:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、わからん……テルも告って両想いってのはわかったけどそれだけだし……

 

32:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

みんなに見守られる中、ショウちゃんついに目覚める

……ふむ、ひとまずドンドルマに行くのか

 

33:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ちゃんと「治った」って大長老に報告せんとな

 

34:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

報連相は大事……いや、真面目な話、マジ大事

 

35:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さすが、報連相もなしに見合い写真を送られ続けた男は違った

 

36:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

冗談抜きで大事なんだって……いや、ホントに

 

37:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

剛太も何の連絡もなしに気づいたら親戚増えてるもんな……

 

38:空の王者 ID:MH2nddosHr8

イエーイ、久々のリオレウス便だぜ!!なんかもう見慣れたもの扱いされているのはちょっと心外だぜ!

よっしゃあ!とーばーすーぜーっ!!

 

39:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや待てバカお前自重しろーっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

288:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……などと騒いだ割には安全運転でしたとさ

 

289:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、俺だって空気ぐらい読むわい、特に急ぎの用があるわけでもねぇのに

 

290:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、焔が口に出したことはだいたい実行してたじゃねぇかよ……

 

291:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いやー、あんなのんびり飛んだ乗って割となかったんじゃないか?ショウちゃんの呪いのこともあって、時間に追われる日々だったしさ

 

292:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そうだよなー……いやー、本当にお疲れさんだよ二人共

 

293:空の王者 ID:MH2nddosHr8

はぁー……なーんにも考えずに飛ぶって、こんなに気持ちのいいもんなんだなー……これは飛べるやつにしかわからん感覚だわ

 

294:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……さてさて、大老殿に到着したわけだが……おぉ、まずは大長老からの労いの言葉、そしてショウちゃんからの感謝の言葉と……

 

295:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

はー……感動的だわ、これ

お……ショウちゃんも「ハンターのみんなに恩返しがしたい」とさ

 

296:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ほうほう、やはりそうきたか!んで?俺らは何をすれば?

 

297:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふむ……ヒスイ帰還までの十日間、技巧種モンスターの捕獲及び研究への協力か

 

298:空の王者 ID:MH2nddosHr8

それくらいならお安い御用だぜ!

 

299:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ああ、どこへだって行ってやるさ!

 

300:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ヒスイ地方では特に目立った変化はないとはいえ、油断はできない……こっちでも、しっかりと注意しておくぞ

 

301:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

りょうかーい

……なぁ剛太、ヒューイはどうしてる?

 

302:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

んー……どうもルナルガに苦戦してるらしい、あれも技巧種になってるみたいだし……

 

303:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やはり希少種……一筋縄ではいかないか……

 

304:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

でもコツは掴み始めてるみたいだぞ、さすがはドンドルマの英雄だ

こりゃあ、ショウちゃんが帰ってくるよりも先にルナルガを倒しちまうかもな!

 

305:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……だといいがな……

 

306:空の王者 ID:MH2nddosHr8

よっしゃー、仕事だー!リオレウス便、発進!!

 

307:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

安全運転で頼むぞ

 

308:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おう、任せろ!

事故らないよう安全にドリフトかますぜ!!

 

309:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

安 全 運 転 つってんだろうが!!

 

 

 

 




というわけで、今回は確認回&予想回でした。
皆さんはクロノがどんなモンスターを使ってくると思いますか?


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復活のショウ!ヒスイ帰還までの十日間

昨日は大変すみませんでした!最新話をどうぞ!


視界に眩しさを感じて、ゆっくりと目を覚ます。どうやら、私は気絶していたようだ。ゆっくりと体を起こすと、視界の左側がよく見えていることに気づいた。

 

「みんな!ショウが起きたよ!!」

 

「「「「ショウ!!」」」」

 

と、目を覚ますと同時に複数の顔が視界を埋め尽くした。まず最初に顔を覗かせてきてくれたのは、セキさん、カイさん、シズカさん、ニールさんの四人だ。

シズカさんが私の体を起こしつつ、鏡を持ってきてくれた。そこに映っている私の顔からは、罅割れが完全に消えていた。

 

「おぉ!ばっちり呪いは解けたみてぇだな!」

 

「よかった……!本当に良かったよ……!!」

 

「ショウ……無事で良かった……!」

 

「アカイ殿からの手紙で解呪は聞いていたが、やはり起きているところを直接見るまでは不安でな……けど、ちゃんと無事みたいで良かった!」

 

「ありがとうございます!!」

 

みんな揃って"良かった"と口にする。私も嬉しくなって、満面の笑みでみんなの言葉に応えた。……っと、それだけじゃなかった!ほかにも気になることがいくつかあるし、聞いておかないと……。

 

「えっと……他のハンターさんは……」

 

「グレンさんもアシュリーさんも、自分の管轄に戻っていったよ。二人からショウに『お大事に』って伝言も預かってる」

 

「そうですか……ちゃんと、面と向かってお礼を言いたかったんですけど……」

 

「ふふっ……そういうところショウらしいね」

 

どうやら援軍としてやってきたハンター二人はもう帰ってしまったらしい……うーん、仕事が早い。

 

「それじゃあ、モンスターたちも……?」

 

「うん。……あぁ、いや、全部ではないかな。テオ・テスカトルとナナ・テスカトリはショウが運ばれていったらすぐにどこかへ飛んで行ったけど、オオナズチとクシャルダオラは私たちと一緒にこっちに帰ってきたんだ。二頭の方はショウのジンオウガと一緒に説得して、なんとか技巧種研究のために留まってもらったの」

 

「そうなんですか!」

 

「えぇ。(オオナズチは絶対に話の内容を分かってない気がするけど……大丈夫かしら?)」

 

オオナズチとクシャルダオラは、まだ人間に協力してくれるみたい……古龍種の技巧種なら、きっと研究も大幅に進むよね?

それからシズカさんに続いてニールさんも話しかけてくれた。

 

「それと、ショウが起きたら大長老が是非話をしたいと言っていたぞ。まぁ、無理のないようにとも言われているから、ショウの好きにしたらいい」

 

「いえ、行きます。ここまで色々としてくださったのに、何もしないで帰るわけにはいきませんから」

 

「そうか……わかった。それじゃあ、俺は飛行船の準備をしてこよう。シズカ、ここは任せてもいいね?」

 

「はい。準備ならネネも引っ張ってってください。そのときは……」

 

「わかってる、遠慮なくシズカを引き合いに出させてもらうよ」

 

「お願いします」

 

軽くやり取りをしてから、ニールさんは部屋を出ていった。

……なんだか、シズカさんとニールさん、以前よりも距離感が近くなってるような……具体的には、ニールさんはともかくシズカさんの方からも歩み寄ろうとしているかのような……。

 

「それじゃ、俺たちもニールの手伝いでもするか」

 

「そうだね」

 

「そういえばウォロは?あいつはどこに……?」

 

「ウォロさんか?たしか、"ヒスイでも役立ちそうなアイテムを仕入れてきますね!"って言って、機嫌良く出て行ったけど……」

 

「今すぐ止めて可及的速やかに速く速く!!」

 

「わ、わかった!」

 

あんちくしょうめ、ここぞとばかりに好奇心を満たそうとしやがって!アイテム収集もどうせ口実……いや、半分は本気かもしれないけどそれでも異世界同士の物物交換はいらんことを招きかねない!

私の剣幕に押されたからか、先輩は慌てた様子で出て行った。あとに続くように、セキさんとカイさんも出て行く。……なんか先輩、終始私のことを顔を赤くして見つめていたけど、どうしたんだろう?

 

「慕われてるね、ショウ」

 

「えへへ……」

 

「それで?私に何か聞きたいことがあるんでしょ?」

 

「……っ!どうして、それを……」

 

「だって、起きてからほとんど私の方を見てたでしょ?大丈夫、今は誰もいないし……答えられる範囲でなら、なんでも答えるよ」

 

なんでも……それなら、ひとつしかない!

 

「……シズカさんは、私のお母さんのことを……ミツリ・イナヅマのことを知ってたんですか?」

 

「ふんふむ……聞き返すようだけど、どうしてそう思ったの?」

 

「ソウヤさんからお母さんの仇の話を聞いたとき、教えてもらったんです。ソウヤさんが事故で死なせた人達の中に、お母さんの従弟……私にとっての叔従父であるコウキさんも居た、って。そして、コウキさんの友人にはシズカさんのお兄さん……リュウセイさんも居る。もしかしたら、シズカとお母さんがどこかで会っていてもおかしくないなって思って……

 

「……ああ、そうだね……。うん、知ってるよ」

 

「やっぱり……」

 

やっぱり、会ったことがあるんだ……ということは、コウキさんとリュウセイさんは他の友達と一緒に友達同士、家で遊びまわったりしてたのかな……?

 

「あの、お母さんの前世ではどんな人だったのか聞いても……?」

 

「いいよ。光梨さんはね、私が知る限りではいつもおっとりふわふわしていて、些細な失敗とかをよくするポンコツお姉さん、って感じだったな。あ、些細といっても大したものじゃなくてね?タンスの角に小指をぶつけるとか、扉を開けようとして扉よりも早く動いて頭をぶつけたりとか、テレビとビデオのリモコンを間違えたりとか、そんな程度のものでね……」

 

「ふふっ……なんですか、それ。お母さんって前世の頃からそんな調子なんですね」

 

「それじゃあ、今世でも?」

 

「はい!リモコン間違いはありますし、タンスの角に小指はぶつけるし、扉に頭だってぶつけますよ。あと、ポケモンのオスとメスの姿を間違えたり、技の名前を省略してポケモンを困らせたり……あ、手持ちにいる特性"さめはだ"のガブリアスに顔面からダイブしたときは大惨事で面白かったです」

 

「えぇ~……光梨さん、それはポンでは済まされないのでは……」

 

あの時は……うん、色々とヤバかった。"さめはだ"に顔から突っ込んで傷だらけになったお母さんを見て、いつもは物静かなお父さんが烈火の如く怒った姿は今でも思い出せる……うぅ、あれは怖かった……。

 

「それじゃあ、コウキさんのことも?」

 

「当然、知ってるよ。後ほかの友人である剛太さん、焔さん、剣介さん……焔さんの幼馴染の葵さんも。みんな、いい人たちばかりだった……。でも、私が知ってるのは兄を含めた四人が死んだことだけ……まさか、光梨さんも死んでいたなんて……。葵さんは大丈夫かな……まさか、葵さんもなんてこと……ないよね……?」

 

「シズカさん……」

 

シズカさんは、元いた世界にたくさんのものを置いてきてしまったんだ……きっと今も、誰かが後悔を背負って生きているかもしれない。同じ痛みを分かち合える仲間が次々と消えていって、残された人たちの心境は……。

 

「信じましょう」

 

「ショウ……」

 

「大丈夫……と言っていいかは定かではないですけど……お母さんだって転生して、第二の人生を幸せに生きています。他の皆さんも、前世の記憶があるかはわかりませんが、きっと転生して第二の人生を謳歌していると……生きている私たちが信じましょう」

 

「そんなこと……いえ、そうね。きっと、あるよね。私も、信じたい」

 

「案外、身近なところに転生しているかもしれませんよ?」

 

「ふふっ……なにそれ」

 

あぁ、ようやくシズカさんが笑ってくれた。前に読んだ『月刊 狩りに生きる』に載ってた関係者インタビューにあった通り、笑ったシズカさんは実年齢よりもだいぶ幼く見える。

……シズカさんの心の時間は、お兄さんが亡くなった時から止まったまま……まるでそう言いたそうに思えて、切ない気持ちになってくる。

 

「そういえばシズカさん、この服は……」

 

「あ……ごめんね、窮屈だった?」

 

「いえ!そうじゃないんです!ただ、この服って……」

 

紺のブレザー、白のカッターシャツ、薄グレーのミドルスカート……もしかして!!

 

「……シズカさんの、学校の制服……」

 

「あはは……実はこっちの世界に来たとき、ちょうど着ていたやつで……着ていた当時はショウと同年代だったから、サイズが合うかなと思って……」

 

やっぱり!シズカさんが元いた世界で着ていた学校の制服!!私の世界のトレーナーズスクールは私服が普通だったから、こういう規定された服ってちょっと興味があったんだよね。

 

「しばらくこれ、着てていいですか?」

 

「え"っ!?いや、その……」

 

「ダメですか……?」

 

「うぐぅっ!?……わ、わかった」

 

「やったぁ!!」

 

起きてしばらくたったので、体も動かせるくらいにはなってきた。私はそのままの格好でシズカさんと共に宿の外へ出た。中央広場を経由して飛行場に向かうと、飛行準備を終えて飛行船と繋がれたリオレウスと共に会話に興じているであろうジンオウガの姿があった。

 

「ジンオウガ!リオレウス!」

 

「「!?!?!?!?」」

 

二頭の姿が見えたことが嬉しくて声をかけると、振り返った二頭は驚愕に顔を染めて硬直してしまった。それからゆっくりと目だけでアイコンタクトすると、リオレウスが叫びそうになったところでジンオウガが前足を使って口を押さえた。

それから顔を寄せ合うと、器用にリオレウスの口元へ指を当てつつ首を横に振った。それを見たリオレウスもコクコクと頷いている。……どうしたんだろう?

 

「二人共、どうしたの?」

 

「「グオグオ!/ワンワン!」」ブンブンブンブン

 

尋ねてみると、二頭共揃って物凄い勢いで首を横に振り始めた。……何でもないなら、別にいいんだけど……なんで二頭してニヤニヤしてるのか、謎すぎるんだけど……。

 

「ショ……ッ!?」

 

「あ、先輩」

 

船から降りてきた先輩が私を見て……ジンオウガたちと同じ様に固まってしまった。それからみるみるうちに顔を赤くしていって、ついに私から顔を逸らしてしまった。

 

「先輩、どうしました?」

 

「な、なんでそんな破廉恥な服を着ているんだ!?」

 

「破廉恥……?」

 

確かに下はスカートだけど、ミドルスカートだしそうそうめくれることは……いや、こればかりは時代の違いか。……よしっ、ここはひとつ……。

 

「ダメですよ、先輩。これは未来の学び舎で常用される制服なんですから」

 

「ええぇぇええええぇっ!?嘘だろおい!!」

 

「嘘じゃないでーす。これが未来の常識なんです!」

 

「うっ……ショウがそう言うなら、そうなのかも……」

 

……ヤバイ、ちょっと楽しくなってきちゃった。

 

「とりあえずドンドルマまで行きましょう!大長老に会わないと!」

 

「それはいいけど、会うときはせめて元の団員服に戻せよな!?」

 

「はーい」

 

「ショウ、お前……なんか楽しんでないか?」

 

「そんなことないですけど」

 

「……じゃあ、いい」

 

……ふぅ、バレるところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リオレウスに牽引してもらいつつ、飛行船で移動する。時間に追われることなくのんびりと移動……呪いのせいであまりゆっくりすることができなかったから、とても気持ちがいい。……今までそんな余裕もなかったから、同じように飛んでいたとしてもきっとこの風の気持ちよさなんて気付かなかったんだろうな。

 

「おっ?なんだか可愛らしい服を着ているじゃねぇか」

 

「ショウさん、どうしたのその服?」

 

あ、セキさんとカイさんも来た。

 

「これは未来の学び舎で常用される制服なんですよ」

 

「そうなのか!?」

 

「うわ、うわ……この服、すごいヒラヒラしてるけど大丈夫なの……?」

 

「リオレウスがゆっくり飛んでくれているので、全然平気ですよ」

 

うーん、やっぱりヒスイくらい昔の人にとって、現代の制服は斬新すぎるのかな?特にスカートに対する反応が顕著だから、そうかもしれない。

 

「どっかで見た格好だな」

 

「そうなのか、シュラーク?」

 

シュラークさんとニールんも来た。そのすぐ後ろをエイデンさん、少し離れてシズカさんとネネさんも一緒に来ている。みんな、頭防具を外しているから特に男性ハンター組は表情がよくわかる。

 

「あぁ。確か、シズカと最初に会った時に彼女が着ていたものだ。『ガッコウ』という学び舎の制服と言っていたな」

 

「姉様が着ていた!?」

 

うわっ、ネネさん反応、速……というか、近っ!?

 

「……ぐぬぬ、このサイズだとアタシは着れそうにありませんわね……」

 

「当然でしょ、七年前に着ていた服よ?今の私だって入るかはわからない」

 

「(こんな可愛い服を着て学び舎に?だとしたらシズカに良からぬ輩が近づいてきていたんじゃないのか!?今だってシズカは可愛くて綺麗なんだ、俺が男としてシズカを守ってやらないと!!それに七年前の服が今のショウとピッタリってことは、当時のシズカもこれくらいだったってことで……大きくなったなぁ……」

 

「おーい、シュラーク。途中から声に出てるぞー?」

 

「え"!?どこから!?」

 

「"当時のシズカも"~の辺りからですよ。まぁ、七年もあれば人は成長するものですから。……それはそれとして私がチビだって言いたいんですか?」

 

「ちがっ、違うっ!?誤解!誤解だから!!」

 

「姉様がどチビなクソガキですってぇ~~!?テメェの目は節穴かあぁぁぁっ!!」

 

「ネネくん!お前もか!?後、俺はそこまで言ってないしそんなこと欠片も思ってない!!」

 

……ニールさんの女難は当分はどうにもならなさそうだね。一方、シュラークさんとエイデンさんは私の格好を見て懐かしそうに目を細めていた。

 

「懐かしいなぁ、その服。シュラークが最初に『俺の弟子だ』ーって連れてきた時も、その格好だったんだよな」

 

「あぁ、よく覚えているね?七年も前だ、もう忘れたかもと思ってたんだけど」

 

「忘れられないって、こんな斬新な服装なんて。防具の機能性なんて全く皆無の、ただの衣服だって言うから本当に驚いたんだ。そこへ来てお前の弟子だぜ?そんなの、印象に残らないわけがないって」

 

「はははっ、そうかそうか。いや、そうだったな。あれから七年……本当に大きくなったよ、シズカは」

 

そう言って、シュラークさんはネネさんと共にニールさんに詰め寄るシズカさんに目を向けた。なんというか、今のシュラークさんからは父性のようなものを感じる。だって、今のシュラークさんの目は、ポケモンと遊ぶ私を見ていたお父さんと同じ目をしているし。……いや、それだけじゃないな。ジンオウガも、時々あんな目で私を見てくることがある。娘を見守る親のような……そんな、優しい目を。

……まさか、ジンオウガって……いや、そんなわけないよね。お母さんの件もあるので、一瞬「ジンオウガが従兄弟のコウキさんだったらな」なんて考えてしまった。流石に前世が人間なんだから、転生先が非人間は嫌だよね。コウキさん、ごめんなさい。

 

「なんか、その言い方だと師匠というより父親、だよな」

 

「俺にあんなでかい娘はいらないよ。……けど、子育ての大変さというのは身に染みたよ。多感な思春期に人生の全てを狩りに捧げようとする少女の成長を見守るのは、成長を喜ぶとともに心苦しいものがあった。

きっとシズカは……本来なら狩りとは無縁の、ごくごく平和な環境で育つべきだったんだ。それがなんの因果やら因縁やら、こんな殺伐とした世界に放り出されて……けど、俺にできることはこの世界で生きるために狩りの術を教えてやることだけだった。それがなんとも、歯痒かったよ」

 

「シュラーク……」

 

「シュラークさん……」

 

そうか……シュラークさんなりに、シズカさんを育てることに思うところがあったのか。まして、私もシュラークさんも、シズカさんが元々どんな場所で生きていたのかを知っている。だから、狩りに関わらないで済むならそれに越したことはないと考えてしまう。

まして、シュラークさんはシズカさんを狩りの世界に引き込んだと言っても過言ではない……だから、余計にその思いが強いのかな。

 

「シズカさんなら、大丈夫ですよ」

 

「「え?/ん?」」

 

「だってシズカさんの周りには、もう沢山の人がいますから。狩りの仲間であるニールさんに相棒のネネさん、お師匠さんのシュラークさんにエイデンさん……『我らの団』の皆さんや、今までシズカさんにクエストを達成してもらった人たちだって。

沢山の人がシズカさんの事を知っていて、そしてシズカさんのことを覚えています。だから、シズカさんはもう独りじゃない。こんなに素敵な人達に囲まれているんですから」

 

「……そう……か……。ありがとう、ショウくん。そう言って貰えて、嬉しいよ」

 

シュラークさんの微笑みから影がなくなった。そうだ、ほかならぬシズカさんが現状に後悔していないというのに、シズカさんをこの現状に引き込んだ当人が後悔に近い念を抱いているなど、きっとシズカさんは許さないだろうから。

……さて、私もそろそろ行かないと。

 

「それじゃあ、私も失礼しますね」

 

「ん?どこに行くんだ?」

 

どこ?そんなの決まってる。

 

「見境なしに見聞を広めようとした猫をとっちめてやろうかと」

 

「……はい……?」

 

好奇心は猫ニャースをも殺す、って言葉を骨身に染みるほど教えてあげないとね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久々に長い時間をかけて移動し、私たちはドンドルマに到着した。私も正装という意味でギンガ団の制服に着替え直し、船を降りた。

 

「それじゃあ、早速行きましょうか」

 

「だな」

 

「うん」

 

「……あの、ショウさん?なぜにジブンは殴られたのでしょうかね……」

 

「手当たり次第に声をかけては物を売りつけようとする悪徳商人を黙らせるにはこれが手っ取り早いからよ」

 

「ひどい……!ジブンは商人としてまっとうな働きを……!!」

 

「進化の石なんて使い道のわからない石を売っただけでしょうが!」

 

頭にたんこぶを一個作ったウォロが頭を摩りながら私に抗議してきたけど……問答無用です。先輩が止めに行った頃には、ウォロは既にポケモンを進化させる道具をいくつか売りさばいたあとだった。特に進化の石は秘められたエネルギーに注目が集まり、龍歴院にはかなり売れ行きがよかったとか。

そして、今回のウォロの愚行に目くじらを立てているのは私だけじゃない。

 

「本当になんてことをしてくれたのよ、この好奇心爆弾魔」

 

「ば、爆弾魔だなんて心外ですけど!?」

 

「お前の好奇心は爆弾も同然よ。爆発したら本当に余計なことしかしない」

 

「姉様を怒らせるなんて、とんだ命知らずだこと……」

 

実はシズカさんもウォロの一連の行動を知り、腹を立てるまではいかないがイラッとしていた。幸い、進化の石以外は研究目的にも使えないものが多く、主に蒐集家が買い求めていたようだ。

そして、先ほど述べたとおり進化の石は龍歴院が大量に買い占めていった。なんでも「属性エネルギーが鉱石に込められているなんて、一体どういう原理なんだ!?これは技巧種研究の役に立つかも!!」と言って、ほのお、みず、かみなり、こおりの石を買っていったとか。それだけならわかるが、リーフやたいよう、つきにめざめ、ひかりにやみと、この世界の五大属性以外の石も買っていったそうだ。……研究に活かせるといいけど。

 

「今後は売るにしても、ちゃんと私やシズカさんに相談すること。そうじゃないと、ギルドから"怪しい物を売ってる露店主がいる"って通報されるよ」

 

「えぇ!?うぅ……わかりました」

 

「(本当にわかってんのかこの黒幕……)」

 

一応、ウォロに釘を刺しておいたけど……イマイチ信用ならないのか、シズカさんはジト目でウォロを睨んでいる。……わかります、その気持ち。

そうしておばかさんに制裁を加えつつ、私達は大老殿にたどり着いた。中には入り、顔から包帯が取れた私を見て、大長老は顔を綻ばせた。

 

「おぉ、ショウ殿。……うむうむ、呪いは無事に解けたようじゃな」

 

「ありがとうございます!これも大長老をはじめ、ドンドルマやメゼポルタの皆さん、そしてハンターの皆さんのお力添えあってこそです!皆さんに救われたこの命、大切にします!!」

 

「ムォッホン!それは良かった!ハッハッハッハッ!!」

 

大長老の豪快な笑い声が響き、その声につられるように皆が顔に笑みを浮かべていた。……よしっ。

 

「……あの、大長老様」

 

「ん?如何したかな、ショウ殿」

 

「私、みなさんにこの御恩をお返ししたいです。なにか、できることはないですか?」

 

「……ふむ、良いのか?」

 

「はいっ!ここまで私たちが力を貸してもらってばかりでした……なので、今度はこちらから協力させてください!」

 

実はこの恩返し、前々からずっと考えていたことだ。ここまでたくさん助けられてきたのに、恩の一つも返さないでヒスイに帰るなんてできるわけがない。

 

「え?ここはヒスイに戻って対黒龍をするのでは?」

 

「もう、野暮なことは言うものじゃないわよ、ダイアー。アカイから聞いてたでしょ?」

 

「いやいや、てっきり叔父上なりのジョークかと……けど、そうだな。むしろそのほうが彼ららしい」

 

ダイアーさんとシロちゃんの会話が後ろから聞こえる。

アカイさんは黒龍を監視するため、クロノの追跡を始めた。それと入れ替わる形で、ドンドルマで留守番をしてくれていたダイアーさんと合流したのだ。ダイアーさんにクロノのことを話すと「あいつはやんちゃ盛りだからなぁ」と笑っていた。ふむふむ、クロノはやはり見た目通りの年齢と……それでいてアカイさんの実弟であるクロノの方が甥のダイアーさんより年下……アカイさん、一度家系図を見せてもらっていいですか?それと、そろそろシロちゃんが誰の子なのか、もしくは誰の妹なのかも教えてもらっても?

 

「そういうことでしたら、我々龍歴院からトレーナーの皆様に協力を要請させてください」

 

「ふむ、主席殿。申してみよ」

 

「はい。実は巨大ティガレックス討伐後から、世界各地で技巧種の存在が確認されるようになりました。今はまだ数は少ない方ですが、なにぶんハンターの皆様は技巧種の狩猟経験に乏しく……現状、捕獲できた技巧種も四頭しかおりません。

そこで、トレーナーの皆さんにも技巧種捕獲を支援していただくとありがたいのですが……。それと、よろしければ技巧種について知恵もお貸しいただけると幸いです」

 

「それくらいでしたら、喜んで!」

 

「本当ですか!ありがとうございます!!……いやぁ、今のところ技巧種に関してはウチのネネくらいしか理解に明るい者がおらず、困っていたのです。ほかの学者は皆、少々頭が固いところがありますから……」

 

「フンッ!だからアタシは普段から言っているんです……"姉様を見習え"と!!」

 

「オイ、私を引き合いに出すなバカ」

 

ドヤ顔でそんなことを宣うネネさんにシズカさんがツッコミを入れるも、気分が良いのか聞こえていないようだった。……あ、シズカさんの口元がひくついてる。

 

「では、ショウ殿。そのようにしてもらって良いか?」

 

「はい、大長老様。お任せ下さい」

 

「とりあえず、ショウは残って協力してくれ」

 

「……え、ちょ、はいっ!?」

 

せ、先輩!?なんてことを言うんですか!私だけ留守番だなんて!!

 

「なんでですか!?」

 

「なんでもなにも……今までさんざん無理してて、ようやく呪いが解けたんだろ?そんな病み上がりを、いきなり連れて行ける訳無いだろ」

 

「そうだぜ、ショウ。おめぇがハンターのみんなに助けられたって言うなら、オレたちだってショウに助けられっぱなしだ」

 

「そうそう!ショウさんもたまにはゆっくり休んで、私たちに任せてよ!」

 

「少しくらい休んでも、バチは当たりませんよ」

 

「……どうしても?」

 

「「「「当然」」」」

 

「そんなぁ……」(;´д`)トホホ…

 

うぅ……そう言われてしまってはどうにもならない。私は大人しく留守番をすることになった。

見送りのために大老殿を出て、飛行船に乗り込むみんなを見守る。そんな時、ちょうどセキさんが何かを思い出したように手を打った。

 

「おっ、そうだ!すっかり忘れてたぜ」

 

「……?セキさん、どうかしましたか?」

 

「あぁ!二人の新しい門出に、何か祝いをしないとと思ってな!」

 

「はい?」

 

「わああぁあああぁぁあぁぁぁあっ!?」

 

私が首をかしげ尋ね返すとそれとほぼ同時に先輩が私たちの間に割って入ってきた。……なんか顔赤いけど、大丈夫?

 

「どういう意味です?」

 

「ショ、ショウ!これは、あの……!」

 

「どういう、って……お前ら、付き合い始めたんじゃないのか?」

 

「えぇ?」

 

「どわあぁああぁああっ!?」

 

先輩、ちょっと黙ってください。

 

「どうしてそんなことを……」

 

「え?ショウさんから告白して、テルさんも告白を返したって聞いたけど……」

 

「……あぁ!」

 

なるほど、そういうことか!!

 

「先輩!」

 

「あ、う……な、なんだ、ショウ……?」

 

「先輩も私と同じ夢を見たんですね?」

 

「「「「え」」」」

 

なぁんだ、びっくりしたぁ。そうならそうと、ちゃんと説明してくれればいいのに。

 

「実は私、アルバトリオンに勝ってから気絶してて……気が付いたらベッドの上で、みんなが私の顔を覗き込んできて驚いたんですよ?でも、その間に夢を見てて……その、恥ずかしながら先輩に"好き"って言ってた夢だったんです。

あんまりにも恥ずかしすぎて、夢の中とはいえ先輩に申し訳ないなって思ってたんですけど……まさか、先輩も私と同じ夢を見ていたなんて……うぅ、なんか、恥ずかしいですね……!」

 

「…………」( Д )チーン

 

「……あれ、先輩?」

 

せ、先輩が白目をむいて気絶してる……だと……!?

 

「……あー……お、同じ夢を見るなんて、やっぱり二人の相性はいいんじゃないか!?」

 

「あ、うんっ!そうだよね!同じ夢を見るなんてそうそうないことだと思うよ!うん!」

 

「いや、流石にそれはムリが――」

 

「「お前は黙ってろ!!」」

 

「モガモガ!?」

 

セキさん、カイさん……うーん、確かに同じ夢を見るなんて偶然、あるんだろうか?そして、ウォロはなぜ口を塞がれているのか。

 

「……頑張れ少年。諦めなければいつかは伝わるさ……」

 

「ニールさん……!!」

 

「さあ、行こう。出先で土産話でも作って、彼女に聞かせてあげようじゃないか」

 

「はいっ!!」

 

あ、ニールさんが先輩に声をかけて……熱く握手を交わしている。あの二人、いつの間に友情が芽生えていたのか……。二人はそのまま飛行船へと乗り込んでいった。

 

「あぁ、やだやだ。これだから男というものは……姉様に相応しいのはアタシのような、器量の良いパーフェクト・ウーマンでなければ!」

 

「私はノンケだ」

 

ネネさんは相変わらずシズカさんに絡んでいるけど、これまた相変わらずシズカさんに受け流されている。ネネさんは今回、技巧種のレポートをまとめるために留守番のはずなんだけど……ギリギリまでシズカさんと一緒にいたいのか。

あと、シズカさん。貴女の場合ノンケというよりブラコンでは?……あ、睨んできた。ちょっと怖い。

こうして、ハンター達とトレーナー達は、技巧種モンスター捕獲のために旅立っていった。……あ、そうだ。後でシロちゃんやダイアーさんと相談して、何日くらい協力をするかを相談しないと。こういうのってアカイさんがいたらこっちから聞かなくても自然と決めてくれるから、ついつい頼りきりになっちゃってたな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一応相談したところ、シロちゃんは私が目覚めてすぐに祖龍とコンタクトを取り、ヒスイへつながる時空の裂け目を開くように頼んでくれたらしい。それによれば、祖龍から「十日待って」と返事が来たそうだ。

私が目覚めてから十日後……ドンドルマへの移動は、リオレウスが全力飛行していないので三日かかっている。七日間……その間に、こちら側でできることを頑張らないと!

皆がハンターのお手伝いを初めて、今日で三日目。残りは四日だけど、龍歴院に送られてくる技巧種モンスターの数は圧倒的に増えている。ハンターとトレーナーの共同作業によって、捕獲作戦がスムーズに進んでいるからだ。

……え?私は何をしているのかって?私は……。

 

「……という理屈から、殻を脱ぎ捨てたり完全破壊には至らないダイミョウザザミがみず・いわの複合タイプであるのに対し、容易に殻を脱ぎ捨てるショウグンギザミにはいわタイプが含まれていないみず単タイプであると考えられます」

 

「「「なるほどぉ……」」」

 

はい、という訳で現在は技巧種モンスターのタイプ説明中です。アカイさんに代わって、私のフォローをしつつ一緒に説明してくれるのはダイアーさんだ。

今、説明しているのは盾蟹ダイミョウザザミと鎌蟹ショウグンギザミのタイプ違いについてだ。……というか、この二頭ってカニというより……いや、やめておこう。

 

「続いて、原種と亜種のタイプ違いについてです。題材に上げますのはこちら、惨爪竜オドガロンとその亜種、兇爪竜オドガロン亜種です。この二頭の違いについては、みなさんの方が良くご存知かと」

 

「亜種には、龍属性エネルギーが備わっていますからね」

 

「その通りです。そして、牙竜種に属するモンスターはその多くがかくとうタイプを持ち合わせています。

でんき・かくとうのジンオウガとトビカガチ、ドラゴン・かくとうのジンオウガ亜種、あく・かくとうのオドガロンとマガイマガド、ノーマル・かくとうのドスジャグラス、どく・かくとうのドスギルオスとトビカガチ亜種、ほのお・かくとうのドドガマル、こおり・かくとうのルナガロンといったふうに。例外はオドガロン亜種のあく・ドラゴンのみです」

 

「かくとう……格闘か。なるほど、確かに牙竜種のモンスターは骨格的にも肉弾戦を得意とする種が多い。それが、かくとうタイプに定義される所以かな」

 

「ジンオウガ、トビカガチ、オドガロン、マガイマガド、ルナガロン……この辺りが特に顕著ですね」

 

「原種オドガロンはあく・かくとうだが、オドガロン亜種はあく・ドラゴンか……」

 

「ジンオウガ種やトビカガチ種がどちらもかくとうタイプなのに対して、オドガロン種だけどちらもあくタイプなのよね」

 

「これも納得のいくタイプだと思うがな。オドガロン種があくタイプと定義されるのは、彼らの狩りのやり方からして納得がいく。そして、牙竜種特有のかくとうタイプを持つ原種と、龍属性エネルギーを持つ故にドラゴンタイプに定義された亜種……」

 

と、こんな感じで龍歴院の学者さんたちとタイプ相性とモンスターごとのタイプ定義について議論を交わしているのである。これがなかなか楽しい。気分はポケモン博士だ。

 

「海竜種は種によるがみずタイプが多いなぁ」

 

「ロアルドロス、チャナガブル、タマミツネ、イソネミクニ、オロミドロ……これらの原種はすべてみずタイプを持っている。その上でロアルドロスは亜種がどくタイプ、タマミツネとイソネミクニが共に原種のみフェアリータイプ、オロミドロも原種がじめんタイプを複合タイプとしている」

 

「海竜ではあるが、みずタイプを持たないのはでんき・ドラゴンのラギアクルス種、ほのお・フェアリーのタマミツネ希少種、こおり・フェアリーのイソネミクニ亜種、ほのお・じめんのオロミドロ亜種、ほのお・ドラゴンのアグナコトル、こおり・ドラゴンのアグナコトル亜種、じめん単タイプのハプルボッカ……」

 

「"海竜"種という名前だから、パッと見てわかる個体でないとみずタイプ持ちだと勘違いしそうですね」

 

海竜種……その名前からしてみずタイプが多いんだろうなと思っていたんだけど、意外とそうでもなかった。私が持つラギアクルスもでんきとドラゴンだし。

 

「獣竜種も面白いタイプ配置をしているぞ。例えばボルボロス種、ウラガンキン種、ドボルベルク種、ディノバルド種。こいつらは原種と亜種がそれぞれ片方が単タイプ、もう片方が複合タイプという関係性を持っている」

 

「ボルボロスは原種がいわ単タイプ、亜種がこおりとの複合タイプ。ウラガンキンも原種がいわ単タイプ、亜種がはがねとの複合タイプ。ドボルベルクは原種がくさ単タイプ、亜種がいわとの複合タイプ。ディノバルドだけはこれらと逆で原種がほのおと複合のはがねタイプ、亜種がはがね単タイプとなっている」

 

「タイプが一つしかない個体が多いな……それだけ獣竜種はシンプルな個体が多いということか?」

 

「確かにラドバルキンもじめん、バフバロもこおりの単タイプだ。……イビルジョーはあく・ドラゴンだし、アンジャナフ種はドラゴン共通で原種がほのお、亜種がでんきだけど」

 

「ブラキディオスもほのおとかくとうだろ?……まぁ、あの見た目でかくとうタイプじゃなかったら詐欺だろって思うけど」

 

「ふむふむ、獣竜種は原種と亜種で単タイプと複合タイプに分かれているものが多い、と」

 

私が知っている獣竜種はイビルジョーとアンジャナフ原種だけ。未だ出会ったことのない個体は単タイプが多いのか。

 

「やはり、モンスターのタイプはそれぞれの生活環境や持ちうる能力によって決定されているようだ」

 

「そうですね。私も概ね、その意見に同意します」

 

「トレーナーさんのお墨付きなら、早速メモしないと!」

 

……みんな、今頃どうしてるのかな。ここ数日、捕獲されたモンスターが移送されてくるだけで、みんなとは直接会っていない。久々に顔が見てみたいな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~テルの場合~

 

「そこだ!ギガインパクト!!」

 

「ライッ!ザアアアァァッ!!」

 

ライゼクスのギガインパクトが直撃し、ターゲットとなるモンスターが倒れた。その隙にニールが罠を仕掛け、モンスターを拘束。捕獲用麻酔玉を投げて捕獲を完了させた。

 

「よしっ、ベルキュロス捕獲完了!」

 

「お疲れ様です、ニールさん!」

 

「テルもお疲れ様。ライゼクスもありがとな」

 

「ラライ」

 

お互いに労い合い、戦ってくれたライゼクスにも生肉を渡して礼を述べる。輸送隊が来るまでの間、少しだけ話をすることにした。

 

「それにしても、トレーナーとモンスターは本当にすごいな」

 

「そうですか?」

 

「そうとも。ここまでドラギュロス、バルガラル、アクラ・ヴァシム、ガスラバズラ……そして今度はベルキュロスときた。かなりハイペースで狩猟しているが、テルは大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ですよ。……それに、ショウはもっと苦しく、険しい戦いを乗り越えてる。おれも、いつまでも負けてられないから」

 

「……そうか」

 

そう語るテルの表情は、決して焦りの表情はない。焦ってはいないが悠長にもしておらず、確実に己のペースで力をつけている。隣で戦い続けたニールには、テルの成長が手によるように分かっていた。

 

「さて、ニールさん!次は誰が相手ですか!?」

 

「落ち着け、テル。ここらで一息つこう。連日連夜狩りに出てたら、俺たちハンターはともかく君らトレーナーは体力が持たないぞ?」

 

「うっ……わかりました」

 

ただ、若さ故か無意識に急ぎ足になる傾向があるものの、いずれ大成すれば落ち着きを得て熟練の戦士になるだろう。ニールは一つの確信とともに、テルに飲み物を勧めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~セキの場合~

 

あたり一面に広がるのは泡、泡、そして泡。右を見ても泡、左を見ても泡、地面も泡まみれとなり、もはや足の踏み場もない。そんなあわあわな空間にセキとエイデンは立っていた。

 

「……終わったか?」

 

「……なんとか」

 

「「ふ~~~~……」」

 

二人は同時に息をつき、その場に座り込んだ。そんな二人を労おうとしているのか、タマミツネが顔を寄せてくる。

 

「サンキュー、タマミツネ」

 

「……にしても、つっかれたなぁ……」

 

「あぁ……ハンターからは嫌われているとはよく聞くが、これだけ暴れまわられるとな……」

 

「そうだろ?こいつらは本当に……面倒なんだよ……」

 

そうして愚痴っていると、無事だったのだろう個体がのそりと姿を見せ、二人に向かって突撃し……そのまま泡に足を取られてカーリングよろしく滑っていってしまった。

 

「ブヒイィィィッ!?」

 

「……ファンゴってやつは、学習能力がないのか……?」

 

「突撃だけが武器だからな」

 

そう、二人の周囲には泡に足を滑らせ転がり続けるファンゴの群れがいた。泡が減って歩けるようになっても、察知したタマミツネによって何度も泡を吐きかけられるために延々とまともに歩けず、「走る→滑る→見事に転ぶ」の無限ループでまともな勝負にならなかった。

余談だが、群れのボスのドスファンゴは開幕泡をぶつけられ、滑った勢いで岩にぶつかりそのまま気絶している。

 

「お前が相棒で良かったぜ、セキ」

 

「こいつらは使える技的にもタマミツネと致命的に相性が悪かったみたいだな」

 

ファンゴとドスファンゴは、特性「すてみ」を獲得しており、そこから繰り出される反動技の威力はG級ハンターすら一撃でKOしてしまう破壊力を生み出していた。……ただ、その凄まじい破壊力を持った勢いで滑っていった個体は、もれなくドスファンゴの仲間入りをしている。

そんなわけで、まともに動けるファンゴが一頭もいなくなったところで息をついた二人はギルドに要請した睡眠弾持ちのガンナーと輸送隊の到着待ち状態で、滑りに滑ってお互いにぶつかりまくるファンゴたちを眺めているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~カイの場合~

 

雪山深くの洞窟の中を歩くのは、カイとシズカの二人だ。ガムートをボールから出していないのは、対象となる技巧種モンスターを警戒させないためである。

 

「……それにしても、流石はシンジュ団の長。寒さなんて平気へっちゃらなんだね」

 

「わたしからすれば、ハンターさんも気候には勝てないってことに驚いたよ」

 

「ハンターも人間だからね……ただ、一部地域に属するハンターはドリンクがいらないくらい体が頑強な人もいるよ。まぁ、暑がりなカイにはホットドリンクはいらなかったね」

 

「うん、もう絶対に飲まない」

 

クエストに出発する前、シズカが飲んでいたホットドリンクをカイも試しに飲んでみた。その結果、もともと暑がりだったカイの体がすごい勢いで火照っていき、全身から汗が噴き出したのである。「火吹き山の中にいるみたいだった」と、氷海の中に飛び込んだカイは語った。

 

「……ところで、今回の狩猟対象はどこにいるんだろう?」

 

「根気強く探すしかない。アイツはなかなか姿を見せないからね……けど、一度姿を見れば忘れられないはずだから。カイもしっかり探してね」

 

「任せてよ!」

 

そうは言ったものの、今回の狩猟対象についてカイは半信半疑であった。

 

曰く、最悪の化物

曰く、色白で可愛い

曰く、見た目通りの恐ろしさ

曰く、人形になるほど人気者

 

善し悪し一体の評価に、カイの頭は混乱した。そのため、前評判はひとまず忘れて、直接己の目で見定めることにした。

周囲を警戒し、常に気を張って歩き続ける。そんなカイの肩が、突然叩かれた。話しかけるような調子で、トントンと肩を叩かれ思わず振り返る。だが、そこには誰もいなかった。

 

「……?」

 

「どうしましたニャ、カイさま?」

 

「あ、ううん……?」

 

カイの後方を警戒していたリュウセイが振り返り、カイの様子がおかしなことに気づいて声をかけた。

 

「リュウセイくん。今、わたしの肩を叩いた?」

 

「……?いえ、叩いてませんニャ」

 

「えぇ……?」

 

答えてから、再びカイに背を向けるリュウセイ。……と、ここでまたカイの肩が叩かれた。今度は素早く振り返るが、少し離れた場所を歩いているシズカしか見えない。

 

「シズカさん」

 

「……?なに?」

 

「今、わたしの肩を叩いた?」

 

「この距離でどう叩けと」

 

「……その、ガンランスで?」

 

「いや、無理でしょ。……近くにいるのか?一体どこに……」

 

即答で否定すると、シズカもカイに背を向け……やや上を見上げ始めた。いよいよ謎が深まる……そして、三度カイの肩が叩かれた。それと同時にシズカが振り返る。

 

「あ」

 

「いるのね!?わたしの後ろに!」

 

「いや、そうだけど今振り返るのはマズ――」

 

「なにやつ!!」

 

シズカの忠告も無視して、カイは勢いよく振り返った。

そして――

 

「…………」( _ )

 

「…………」

 

真っ白なのっぺらぼうが視界いっぱいに広がっていた。

 

「…………」( ∀ )ニチャァ……

 

「――――」

 

かと思えばニッコリと笑みを浮かべて、その口内にある殺意高めの牙を見せつけてきた。

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?!?!?!?」

 

「(やっぱりフルフルって怖いよね)」

 

洞窟内にカイの絶叫が響く。対照的に冷静にガンランスを構えたシズカ。体感温度も反応に対する温度差もまったく真逆な二人が挑む、奇怪竜フルフルの捕獲クエストが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ウォロの場合~

 

走る。走る。ひた走る。暑苦しい火山の熱にも負けないど根性を発揮して、ウォロはひたすら走りまくる。

 

「なんでジブンだけこんな役回りなんですか~~!?」

 

絶叫を上げながら走り回り、なんとか岩陰に隠れる。一息つくためにクーラードリンクを一気飲みし、ついでに渡された強走薬も飲む。

 

「はぁ……はぁ……恨みますよ、シュラークさん……!」

 

作戦を提案したシュラークは、とある地点にモンスターを誘導して欲しいを願い出た。ただ、そのためにはウォロ自身の力が必要だと。ついでにモンスターの生態も見られるので一石二鳥だと。ウォロは好奇心の赴くままに頷き、そして激しく後悔していた。

今だからこそ、ウォロは確信する。シュラークはとんだ狸野郎だと。そして、理解する。ショウから口を酸っぱくして言われた"好奇心は猫をも殺す"という言葉の意味を。

 

「……流石に、撒けましたかね?」

 

静かになったので、様子を見るために岩陰からそっと顔を覗かせた……その直後だ。

 

ドドドドドドドドッ!!

 

「ヒイィッ!?」

 

激しい地響きとともに何かが高速回転して転がってきていた。慌てて顔を引っ込めたウォロの鼻先を掠めてそれは転がり、やがて丸めていた体を戻して止まった。

 

爆鎚竜ウラガンキン。体を元に戻したウラガンキンはゆっくりと振り返り、ウォロの存在を認識した。

 

「ゴオオオォォォッ!!」

 

「ぎゃあああああっ!?」

 

そうして再び転がり始め、ウォロは全力で逃げ出した。やがて開けたエリアにたどり着いた、その時だ。

 

「ディイイィバッ!!」

 

エリアの入口で待機していたディノバルドが尻尾を一閃、ウラガンキンの足元を掬い上げて空高く打ち上げた。転がる姿勢のまま宙を舞うウラガンキン、その落下地点には……。

 

「ホールインワン!」

 

「ゴアアアァッ!?」

 

落とし穴と落とし穴を取り囲むように八つの大タル爆弾Gが配置されていた。

 

「うんうん。ウォロ、いい働きだったよ。ウラガンキンの生態を間近で見られた気分はどうかな?」

 

「死ぬかと思った(小並感)」

 

「そうかそうか、満足頂けたようでなによりだ」

 

実はこの大タル爆弾G、この作戦のためにシュラークが知り合いのハンターに声をかけ、ウォロの分も含めて用意させたものだ。シュラークが手を挙げると、彼の背後からライトボウガン使いが二人、姿を見せた。

 

「それじゃ、作戦通りに」

 

「流石はドンドルマの英雄、見事な手並みだ」

 

「今後共、是非お近づきになりたいわ」

 

「ははは、俺は大した者じゃないよ。……それでは、止めだ」

 

「「徹甲榴弾、装填!」」

 

そうして二人のガンナーが徹甲榴弾を装填し、速射で一斉砲撃を始めた。初弾で八つすべての大タル爆弾Gが炸裂し、さらに徹甲榴弾を顔面に浴びせられてウラガンキンは気絶状態に。そのまま苛烈な勢いで攻撃を叩き込み続け、結局ウラガンキンは嵌った落とし穴から抜け出せぬままあっさりと捕獲されてしまった。

 

「よし、クエスト完了だ」

 

「「お疲れ様でした!」」

 

「お……お疲れ、さま……でした……。ゼェ、ゼェ……」

 

せめて労働に見合った対価が欲しいと、切に願うウォロであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が目覚めて、きっちり十日が経過した。最終日となる十日目にはみんな戻ってきたし、久々に顔を合わせた。

テル先輩はなんだか顔つきが精悍になってる……一皮むけたって感じ。セキさんはあまり変わり無いかな、なんだかここ数日は楽しかったみたいだ。

カイさんも変わらず……だけど、白いものを見るとなぜか震え上がって頭を抱えるようになっていた。一体何が……?ウォロは……行く前はニコニコワクワクしていたのに、帰ってきたらヘロヘロボロボロになっていた。えぇ……?こっちもこっちでなにがあったんだ……?

 

「みんなー、準備が出来たよー」

 

シロちゃんの呼びかけに応じて、大老殿に集合する。この数日間で技巧種モンスターは大分捕獲できたらしく、残り捕獲できていない個体は生態系上位種以上の強力な個体ばかりだ。特に、私たちに力を貸してくれたテスカ夫婦……古龍種の技巧種がどれだけ強力なのかは、ハンター達は既に身に染みているはず……私たちが帰ったあとの彼らが、どうやって戦うのかが気になるところだ。

 

「大長老様、そして皆さん。今日まで大変お世話になりました!」

 

「よいよい。こちらこそ技巧種の捕獲に研究、力になってくれたこと、感謝する」

 

「はいっ!!」

 

名残惜しくないといえば嘘になる。この世界での出来事は、私達にとって掛け替えのないものになった。この経験は、一生忘れられないものとなるだろう。

 

「おぉ、そうだ。ショウ殿達の故郷であるヒスイは、黒龍の脅威に晒されておるのだったな?」

 

「え?えぇ、はい……なので、ヒスイに戻ったら黒龍対策をしなければ……」

 

「ふむ……シロ嬢よ」

 

「はい、なんですか?」

 

「シロ嬢と、シロ嬢と通じる祖龍の力があれば、時空の裂け目の中を安全に行き来できるのだな?」

 

「はい、可能ですけど……まさか?」

 

「クックッ、そのまさかよ。大長老の名において、ヒスイへのハンター派遣作戦を、ここに宣言する!」

 

ハンター派遣!?それって、ヒスイ地方にハンターを送り込むってこと!?

 

「派遣するハンターは既に決まっておる。まず……我らの団、シズカ・ミズハシ!」

 

「はっ!」

 

「続いて龍歴院、ネネ!」

 

「はいっ!!」

 

まず、呼ばれたのはシズカさん。続いてネネさんが呼ばれた。後二人は……。

 

「そして新大陸古龍調査団より、ニール!」

 

「了解!」

 

……あれ、エイデンさんは?

 

「最後の一人だが……」

 

「自分が同行しましょう」

 

入口から声が……この声は!

 

「師匠?」

 

「あぁ、君の師匠のシュラークだよ、シズカ」

 

「まさか、最後の一人は師匠ですか?」

 

「そのとおり」

 

おぉ、シュラークさんがついてきてくれるなんて!とても心強いです!

 

「俺はこっちに残って、技巧種モンスターの対策に当たることになったんだ」

 

「実は、新大陸の方からも技巧種モンスターが確認されてな……我々は一足先に戻る。君はトレーナー達とともにミラボレアスを討ち、きっちりケジメをつけてくるといい」

 

「無論です、総司令。必ずや吉報を持ち帰ります」

 

新大陸……確か、ニールさんとエイデンさんが所属する組織が活動している大陸、だっけ。そこでも技巧種モンスターが出てきたんだ……。

 

「……それで、ネネさんはいったいどんな理由で付いてくるんですか」

 

「時空の裂け目によってヒスイに飛ばされたモンスターの調査ですわ。どういった種がいるのか、今頃どうしているのか、しっかりと調べませんと」

 

「本音は?」

 

「姉様の行くところ、ネネあり!ですわ!!」

 

素直でよろしい。

 

「……来た」

 

「シロちゃん」

 

「祖様の声が聞こえた……もうすぐ扉は開かれる」

 

その言葉と同時に、時空の裂け目が私たちの背後に開かれた。いよいよ帰還の時だ。

 

「それでは……」

 

「うんむ。……若者達よ、未来を照らし生きる者達よ!必ずや黒龍を討ち果たし、諸君らの未来を掴み取るのだ!!」

 

はいっ!!

 

私たちは一斉に返事をする。一人、また一人と振り返り、時空の裂け目へと入っていく。最後に私が入る前に一度振り返り、一言告げた。

 

「行って来ます!!」

 

それは決意の言葉。必ずや成し遂げるという意思の表明。その言葉を告げて、私は時空の裂け目へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時空の裂け目を抜けて、大地に降り立つ。見慣れた景色、嗅ぎなれた空気……私は、この地を知っている!黒曜の原野の、原野ベース前!!

 

「帰ってきた……ヒスイ地方に!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?こいつぁ……」

 

「懐かしい気配だ……ひょっとして、お前さんか?」

 

「……祖龍……」

 

 

 

 




ついに帰ってきたヒスイ地方!!

そして、あの男とミラ一族の再会も……


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伝説の狩人

ようやくヒスイに帰ってきたショウたち!

そして、あの男との再会も……。


時空の裂け目を通って、ついに私たちはヒスイ地方に帰ってきた!!さらにシズカさんをはじめとするハンターの援軍まで派遣してもらって……これなら、ミラボレアスと戦闘になっても負ける気がしない!!

……と、その前にコトブキムラに帰らないと!私達は原野ベースを通過してそのままコトブキムラを目指して歩き始めた。

 

「ふむ……すこしばかり肌寒いか?北部に位置する場所なのかな」

 

「ここがショウ達の故郷のヒスイか……」

 

「姉様姉様、もしも寒かったらアタシが人肌で……」

 

「いらん(ここがヒスイ地方……世界観がガラっと変わったって感じだ。やっぱりモンハンとポケモンとじゃ次元が違うな……)」

 

「くぅ、姉様は今日も鋭い……!」

 

……いや、順応早いな。さすがはハンター。

そのまま歩き続けて、夕方頃になってようやくコトブキムラが見えてきた。表門には、相変わらずデンスケさんが門番を勤めていた。

 

「デンスケさーん」

 

「ん?……お、おぉ……?おぉーっ!!」

 

デンスケさんも最初こそは「誰だ?」言わんばかりの反応だったが、徐々に近づくにつれて私たちだとわかったらしい。腕がちぎれんばかりにブンブンと手を振ってくれた。

 

「帰ってきたのか!おかえり!」

 

「ただいまデンスケさん!テル先輩も一緒ですよ!」

 

「お久しぶりです、デンスケさん!」

 

「オレたちもいるぜ」

 

「うーん、久しぶりのコトブキムラだぁ」

 

「いやはや……帰ってきた、とやっと実感できますね」

 

そうして話していると、ギンガ団本部の方から誰かが走ってきた。あれは……ラベン博士!!

 

「ショウくん!テルくん!!」

 

「「ラベン博士!」」

 

「お帰りなのですよ、ショウくん!テルくん!」

 

「ただいま戻りました!ラベン博士!!」

 

「何か、変わったことはないですか?」

 

「いえいえ、変わったことなんて!……ありました!」

 

「たった今、思い出しませんでした?」

 

「そ、そんなことないですよ……?」

 

ス~ッ、と目を横に逸らす博士ェ……もう、別に怒ったりなんてしないのに。

 

「何があったんですか?」

 

「……えっと、その前に後ろの物々しい方たちは?なんだかヒューイさんと似た雰囲気を感じるのです」

 

「……!?ヒューイ……?今、ヒューイって言いましたか!?」

 

「え、え?」

 

「し、師匠……?」

 

ラベン博士の口から出てきた知らない名前……その名前に、シュラークさんが過剰に反応していた。

それだけじゃない。なぜかその名前を聞いたニールさんとネネさんも大きく目を見開いているし、シロちゃんに至っては頬を紅潮させて胸に手を当てていた。……あれ、シロちゃんのこの反応って……まさか?

 

「シ、シズカ!まさか、知らないのか……?」

 

「……えっと、はい」

 

「まさか!?姉様ほどのお人が、"ドンドルマの英雄"を知らないなんて!」

 

「え、"ドンドルマの英雄"!?待って、"ドンドルマの英雄"のことは知ってるけど個人名までは知らなかった!!」

 

「なんだ、そういうことか……」

 

シズカさん達も知ってるんだ……けど、"ドンドルマの英雄"か。あの大きな都市の英雄となると、相当な経験を積んだベテランハンターってことかな。

 

「突然すみません。私はシュラークと言います。貴方が仰ったヒューイという男は、我々が知ってる人物かと思われます」

 

「そうなのですか!ヒューイさんが元々着ていた鎧も、皆さんのソレとどことなく似通っていますし、もしやと思ったら!」

 

「今、その男はどこに……」

 

「えぇっと、彼は今天冠の山麓に……と、とにかくこちらについてきてください。ショウくん、テルくん、団長のもとへ行きましょう!」

 

「そうですね、団長にはちゃんと報告しとかないと……」

 

私も頷き、同意を示したことで全員で団長の元へ向かうことに。……結構な大人数で押しかけちゃうけど、大丈夫かな?

久々に見たギンガ団本部の赤レンガ。こうして見ていると、本当に帰ってきたんだなという実感がますます湧いてくる。流石に大人数だったので、調査隊室で話し合いをすることに。ハンター達は武器を玄関ホールに置いてきている。

 

「うむ。ショウ、テル。よくぞ無事に戻った。セキ、カイ、そしてウォロ殿。ショウとテルの面倒を見ていただき、誠に感謝する」

 

「いやいや旦那、むしろ面倒かけちまったのはこっちのほうだって」

 

「うん、ショウさんを助けるつもりが、逆に助けられちゃうこともあったし」

 

「呪いをものともしない力強い姿に、ジブンたちも奮い立ちました」

 

「……そうか」

 

セキさん達の言葉を受けて、デンボク団長はすこしばかり目を閉じ考えに耽ると、目を開けてからそう呟いた。

 

「そして、貴君らが時空の裂け目の向こう側から来た者たち……ハンターか」

 

「お初にお目にかかります、デンボク団長殿。我らはショウに呪いをかけた邪悪な黒龍を討伐せんがために遣わされた者。かの龍はいずれ、ヒスイをはじめとするこの世の生ける者を根刮ぎ食い尽くす……それに抗するため、我らはこうして馳せ参じた」

 

「黒龍……ミラボレアスか。かつて、貴殿らと同じハンターが討伐したというが……やつは不死身なのか?」

 

「我々とて、ミラボレアスの全てを知り得ているわけではありません。だが、分かっていることは一つ……奴は、生きる者達の敵であるということだけ」

 

「ふむ……あいわかった。ショウ。帰還早々に悪いが、博士から仔細は聞いているか?」

 

「……いえ、話はそこそこにこちらに来たので、まだなにも」

 

「そうか……では、シマボシ」

 

「はい」

 

団長の隣で直立不動だったシマボシ隊長が会話に加わった。

 

「ショウ。お前が時空の裂け目の向こうへと向かってからしばらく後、天冠の山麓で異変が起こり始めた。霧の出た月夜に限り、野生ポケモンが何者かに次々と襲撃を受けているという報告が上がったのだ」

 

「……まさか、巨大ポケモンですか」

 

「察しがいいな、その通りだ」

 

そんな……時空の歪みは全部消えて、巨大ポケモン……もとい、モンスターはこちらの世界に来れないのでは……いや、もう一つだけあるな。

時空の裂け目……コトブキムラに来る途中、天冠の山麓の方へ目を向けると見えた、あの裂け目。あの裂け目が開いているということは、あそこからモンスターが紛れ込んだってことか……?

 

「既に何人もの調査隊員を派遣したが、結果は芳しくない。それどころか、毒を含んだ棘を遠方より放たれ、負傷者が多発した。現在は貴様が黒曜の原野で拾ったあの男が調査に乗り出している。既に交戦経験もあり、少し前にも『今宵、仕留める』と言って鎧を着込み、出て行ったばかりだ」

 

「そうですか……」

 

「(霧の出た月夜限定……ルナルガか。くっそ面倒くさいやつじゃん……)」

 

私が拾ったあの人……シズカさん達が"ドンドルマの英雄"と呼ぶ人がどれくらいかはわからないけど、技巧種化したモンスターの狩猟は容易ではないはず……。だったら……!

 

「場所は天冠の山麓ですね?」

 

「そうだが……行くのか?」

 

「もちろん!」

 

私が現場に向かう意志を示すと、ハンター組から「えっ?」と言わんばかりの顔で振り向かれた。……なんで?

 

「あの……どうしました?」

 

「いや、行くのか?わざわざ?」

 

「"わざわざ"?どうして?」

 

「だって、あの"ドンドルマの英雄"ですのよ?相手が何者であれ、苦戦を強いられることはないかと」

 

「あぁ、あの人の強さは尋常じゃない。文字通り、俺たちとは次元が違う」

 

「……かえって足を引っ張るかも知れない」

 

「シ、シズカさんまで……」

 

そ、そんな……そんなに強い人なら、行かないほうがいいのかな……?

 

「だが、奴は既に十回以上交戦して未だ仕留めきれないでいる。今回はかなり自信があるようだったが、果たして……」

 

「む……かの"ドンドルマの英雄"が十回以上の交戦で仕留めきれないのか……」

 

「(と、いうことは……MH2の主人公はルナルガの狩猟経験はゼロということ……。いや、それでもルナルガと十回以上戦って生き残ってる時点で結構ヤバいね)」

 

「ほら、やっぱり苦戦してるじゃないですか!手数は大いに越したことはないかと!」

 

「だがなぁ……」

 

「とにかく、私は行きます!団長、隊長!いいですか!?」

 

そんなに厳しい相手なら、むしろ私たちの力が必要かも知れない!そんな思いで団長達に声を掛ければ、彼らは一様に頷いていた。

 

「うむ……では、ショウ。ひとまず(・・・・)頼む」

 

「はい!(ひとまず……?)」

 

団長の言葉に引っかかりを覚えるも、私は力強く頷いて調査隊室から飛び出した。

 

「(よろしいのですか、団長。あの巨大ポケモン、初見でどうにかなるものでは……)」

 

「(だからこそだ。ショウには言葉ではなく、直接その目で奴の脅威を知ってもらいたい。……後に必ず、彼と共に勝利するために)」

 

「(……了解しました)」

 

待っててくださいよ、"ドンドルマの英雄"さん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リオレウスの背に乗って全力で飛べば、ヒスイ内であれば一日もいらない。私が出発したときはもう日が沈んでいたが、リオレウスに頼んで思いっきり飛んでもらったのでほとんど時間を空けずに山頂ベースに到着した。

 

「着いた、と……」

 

それにしてもすごい霧だ。オオナズチが吐き出す霧と、どっちが濃いかな。

 

「あれ?ショウ?」

 

「……あ、ヒバキ……じゃない、ツバキさん」

 

「おい今誰かと名前を間違えなかったか?」

 

「気のせいです」

 

声をかけてきたのは、天冠の山麓でキャプテンを務めるツバキさんだ。危ない危ない、うっかり間違えてしまった……まさか蜘蛛と間違えたなんて言えないので、黙っておくことにしよう。

 

「久しぶりじゃないか。どうしてここに?」

 

「どうしてもなにも、ここに巨大ポケモンが出現したと聞いたので。調査と、可能なら捕獲をと」

 

「え……君、ここにいる巨大ポケモンがどんなやつか、聞いてきたのか?」

 

「霧の出る月夜にしか出てこないことと、毒を含んだ刺を飛ばしてくることくらいですが……」

 

「えぇ?たったそれだけ!?君、今向かって行ったら間違いなく死ぬよ!?」

 

む……ツバキさんにここまで言われるとは。けど、情報が足りていないのは事実だ……ツバキさんからなにか聞き出せないかな?

 

「そう言うツバキさんは、何か知っているんですか?」

 

「……まぁ、アイツを捕獲しようとしているギンガ団員がいるからね、彼から色々と話は聞いているよ。そいつはね、姿を消す能力を持っているんだ」

 

「姿を、消す……!?」

 

「そう!いわゆる透明化、ってやつさ。その彼も、何度も何度も奴に挑んでいるんだが、いつも時間切れになってね……朝が近づくと、奴は逃げていくんだ。そのせいで、未だに仕留めきれていないのさ」

 

姿を消す能力があるのに、朝になると逃げていく……?月夜であることとなにか関係があるのかな……。

 

「とにかく!今夜も彼は奴に挑むつもりだ。だから、ひとまず君はここに残って……」

 

「ありがとうございました、ツバキさん!」

 

「……って、おーいっ!?」

 

姿を消すことと刺を飛ばしてくるということは、透明になったところで遠距離攻撃を仕掛けてくるということ!それに、透明化しても移動の痕跡は残るだろうから、足元にもしっかり気を配っておかないと!

私はジンオウガを繰り出し、霧の濃い夜道を進んでいく。果たして、そこに待ち構えているのは何者なのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あわわわ……た、大変なことになった……!」

 

「おーう、ツバキー。どうした、顔色悪かねぇか?」

 

「ああ!ヒューイ!大変だ、実は……!!」

 

「……なんだと?チッ、予定変更だ!俺も行く!!」

 

「た、頼んだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大ポケモン捜索からしばらく……正直、見込みが甘かったことを痛感していた。

 

「……ないね」

 

「ワン」

 

「先へ進もう」

 

「ワウン」

 

そこら中に散らばる棘は確認できたが、足跡が全くと言っていいほど見つからない!おまけに霧も濃いから、しゃがみこんでしっかり見ないと見えにくいったらない。……この状況下でも相手はこちらを認識していて、透明化できて遠距離攻撃もできるんだよね……なるほど、これは確かに手ごわいかも知れない……。

 

「ジンオウガはどう?」

 

「クゥン……」フルフル

 

ジンオウガの方も芳しくないみたい。相手は気配遮断が相当巧いのか、ジンオウガでもその気配を探るのは容易ではなかった。

 

「(マズイね……舐めていたわけではなかったんだけど、相手がこれほど姿を見せてこないとは……!それに、割と早いうちに手を出してくると考えていたんだけど、その予想も外れた……向こうはこちらを襲撃するのに適切なタイミングを理解している……!一切油断ができないな)」

 

特に、こちらの予想と相手の実際の行動の乖離が大きすぎたのもある。当初、私は縄張りに侵入してからすぐに襲って来るものだと考えていた。だが、いつまで待っても相手は姿を見せなかった。それに痕跡となる足跡もほとんど見つからない。

いつ襲いかかってくるのかわからない、予測がつかない……その緊張感から、分かっていても焦ってしまう……!

 

「……行こう……」

 

「ワン」

 

私とジンオウガは再び歩き始める。……あ、そうだ。

 

「そういえばジ――」

 

「ワオゥンッ!!」

 

――ドスッ!!

 

「……え」

 

私がジンオウガの方へ振り返った、その直後。突然、ジンオウガが素早く身を翻して私の前に立つと同時に、その体に無数の棘が突き刺さった。それと同時に、ジンオウガが毒に侵され、苦しげに顔を歪めた……うそ、そんな……!タイミングが絶妙すぎる!?全く気がつかなかった!!

 

「ジ、ジンオウガ……!?」

 

「グッ、ウゥ……!」

 

「くっ……ジンオウガ、はどうだん!!」

 

「ワオォンッ!」

 

回復をする余裕はない……ならば、必中技で動きを見る!ジンオウガが刺が飛んできた方向へはどうだんを放つと、はどうだんは向かって右に向かって方向転換した。それから不規則に軌道を変えながら飛んでいく……なら、もう一つ!

 

「ジンオウガ!はどうだんの向かう先にもう一度、はどうだん!」

 

「ワゥン!」

 

ジンオウガがもう一度はどうだんを放ち、挟み撃ちのような形にする。すると、突然何かが姿を現すと同時に一回転し、はどうだんを打ち消した!

 

黒と、月白色に輝く背面の体毛。

透き通るような美しさの刃のような翼。

鞭のようにしなり揺れる細長い尻尾。

 

「ニ"ャア"ア"ア"ォ"ッ!!」

 

見たことのない巨大ポケモンが、こちらに向かって牙を剥いてきた。こいつが、姿を消す巨大ポケモンの正体……!けど、正体を明かしたなら好都合!!

 

「ジンオウガ!かみなりパンチ!!」

 

「ワオオォンッ!!」

 

一気に駆け出したジンオウガはかみなりパンチで相手に殴りかかる。だが、相手も素早い動きでジンオウガの攻撃を回避しつつ、またしても姿を消してしまった!

 

「くっ……ジンオウガ、でんげきは!!」

 

「ウオオォンッ!!」

 

ジンオウガのでんげきはは消えた相手に向かってまっすぐ進み、私の背後で命中した!……いや、これは……!?

 

「無傷……まさか、体質!?」

 

「ニ"ャア"オ"オ"ッ!!」

 

モンスターは腕を一振りすると、そこからエアスラッシュを放った。ただ、普通のエアスラッシュが空気の刃による弾幕なら、そのモンスターが放ったのは巨大な一陣のエアスラッシュだった。

 

「くっ……アイアンテール!」

 

「ゥワォン!」

 

私を飛び越え、着地したジンオウガがアイアンテールでエアスラッシュを消した……その直後!モンスターが尻尾を振るい、何かを飛ばした!あれは、棘!?刺はジンオウガの顔を掠めて――

 

「ぐぁっ!!」

 

「ワゥン!?」

 

バキッ!!と何かが壊れるような音と共に私に直撃した!その勢いで私の体は吹き飛び、岩壁に激突した。うっ……い、痛い……。

 

「ぐっ……ジ、ジンオウガ……!メガ、ホーン……!!」

 

「グッ……!ワオオォンッ!!」

 

私の元へ駆けつけようとしていたところ制止させ、技の指示を出す。ジンオウガも、グッと堪えるように足を止め、素早く反転して角を突き出した。その直後、振り下ろされたモンスターのアイアンテールとぶつかり合い、お互いに弾かれあった。……うっ……痛みが、きつい……意識を保つので精一杯だ……。

と、ここでモンスターが動いた。でんこうせっかを発動すると、ジンオウガの脇をすり抜けた。まずい、狙いは私だ……殺られる……!

 

「ぬうううぅぅんっ!!」

 

と、その時だ。私に向かってくるモンスターの横合いから、誰かが走りこんできてその背に背負った太刀を振り下ろした。モンスターは太刀を振り下ろされた左足を咄嗟に引いて太刀を躱し、逆に尻尾を振るって反撃した。謎の人物(というか、私が保護したハンターだ)は尻尾を一度飛び越え回避すると、直後にバック宙をした。その真下を、振られた尻尾が戻っていく。

さらにモンスターは右足の刃でハンターに切りかかる。ハンターはその刃を躱すと、起き上りに太刀を振り上げ逆に刃に切り込んだ。モンスターは大きく後退すると、尻尾を高く振り上げてつつ振り回している。そして、尻尾を鋭く振るって刺を飛ばしてきた!

 

「舐めんな、青二才がぁ!!」

 

ハンターはそう叫ぶと同時に駆け出した!太刀を振るい、刺と叩き落としながらも足を止めず、モンスターに接近していく!そのまま太刀を振り下ろすが、モンスターは跳躍しつつまたしても姿を消してしまった!

 

「甘ぇ!!」

 

ハンターはどこからともなく大きな針と取り出すと、それを見もせずにどこかへ投げつけた。すると、針は空中で突然停止してしまった。……いや、グサッ、という音も聞こえてきたから、刺さったんだ!嘘!どうしてわかったの!?

 

「コイツはお釣りだ!」

 

さらにハンターが何かを投げた直後……炸裂し、閃光が広がった!閃光玉だ!

 

「ニャヒイィンッ!?」

 

モンスターは眩しそうに目を閉じ、たまらず姿を現した!

 

「レントラー、こおりのキバ!エルレイド、れいとうパンチ!」

 

「トラー!」

 

「エレー!」

 

さらにハンターさんが投げたモンスターボールからレントラーとエルレイドが飛び出し、モンスターの前足にそれぞれこおりのキバとれいとうパンチを繰り出し、氷漬けにした!そして、ダメ押しとばかりにもう一つボールを投げた!

 

「エンペルト!力強く、れいとうビーム!!」

 

「エン!トォーッ!!」

 

出てきたエンペルトが力業れいとうビームを放ち、たちまちモンスターを氷漬けにしてしまった!けど、凍ったそばから罅割れ始めた……なんて抵抗力……!

 

「よしっ……退散!」

 

ハンターは私に近づくとそのまま俵担ぎで持ち上げるとそのまま撤退を始めた……って、ちょっと!

 

「と、止めは……!」

 

「バカ野郎がっ!オメェさんの安全無事が最優先だ!!」

 

「でも……!」

 

「生きている限り、奴には何度でも挑める!けどな、死んじまったらどうにもならねぇ!!だったら今は退いて、次の機会に仕留めりゃいい!生きて帰りゃあ、また来れる!」

 

「くっ!……ジンオウガ……!」

 

「ワン!」

 

彼の言い分は理解できる。動けない隙を突き、トドメを刺せるならそれに越したことはない……けど、それは私の負傷を押してまで成すことではないと言う。……今回は、完全に私に落ち度がある。それがわかったから、私はジンオウガを呼び戻した。

悔しい……畜生、これは私の負け、私の失敗だ。普段はアカイさんがいたから、挑む前に話を聞けたんだけど、そのアカイさんは不在……それすら失念して、初見相手に無謀にも挑むなんて……慢心したか、この馬鹿ショウ!

自分の不甲斐なさに歯噛みしながら、私は大人しくハンターに運ばれていった。

 

 

山頂ベースで、私は怪我の手当てをすることになったのだが……。

 

「そういやお前さん、ナルガクルガの棘を食らったっぽいのに無傷とはな?懐になんか仕込んでたのか?」

 

「え?」

 

そういえば……棘が当たったにも関わらず、刺さるような感覚がなかったような……。私が懐をまさぐると、中から一枚の鱗が出てきた。これは、たしか……。

 

「ほう!火竜の天鱗とはな!そいつがお前さんを守ったのか」

 

「……みたいですね」

 

「……あー、でも天鱗ってたしか……」

 

「え?」

 

ハンターがそう呟くと同時に、私が持っている天鱗が罅割れ、砕け散ってしまった。

 

「あーっ!?」

 

「……天鱗って、過度に力が加わると砕けちまうんだよな。どうやらさっき刺を食らった時の衝撃で限界だったみたいだな」

 

「あぁ……リオレウスからもらった天鱗が……」

 

うぅ……お守り代わりにと思って、こっちに来る時に一旦部屋に寄ってからわざわざ持ってきたのに……。でも、本当に身を守ってくれたんだね……ありがとう、リオレウス。

 

「……さて、天鱗のおかげで直撃は避けられたが、念には念を入れよだ。さぁ、コトブキムラに帰るぞ」

 

「え!?で、でも無事だったし別に私は……」

 

「ばっかやろ、吹っ飛んだ時に岩壁に全身ぶつけてんだろが。こういう時は大人しく、医者に診てもらうのが正解だ。キネさんもなぁ、毎度毎度怪我して帰ってきたら口を酸っぱくして『身の安全を優先して』って言うんだぜ?素直に従いな、女は怒ると怖い……いや、マジで」

 

「あ、あはは……」

 

これは……うん、完全に帰る流れだ。相手は歴戦のハンター……その判断力は私よりもずっと優れている。ここは大人しく従おう……。

結局、シズカさん達の言うとおり私が足を引っ張る形になってしまった。リオレウスの背中に乗りながら反省しつつ、次に挑む時の対策を考えなくては!

 

「おぉー!すげぇー!たけぇー!」

 

考えなくては……。

 

「おぉおぉー、飛行船とはまた違った感覚だなぁー!風を切ってるって感じで気持ちいーぜー!」

 

考え……。

 

「おっ、ありゃコンゴウ集落か。おぉ、グラビモス!うーん、このままもうちょっと飛んでいたいなぁー!!」

 

……まぁ、帰ってからでいっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムラに着くまではしゃぎまくってたハンターさん(ヒューイさん。シュラークさんも言ってたね)に思考を中断させられ、私はまるで子供のようにはしゃぐ彼の姿を終始見つめていた。

表門の前に着地し、リオレウスをボールに戻した。そのまま表門をくぐっていくと、ちょうど皆が出迎えに来てくれていた。

 

「あれ、みなさんどうして……」

 

「いや、十中八九、してやられて帰ってくるだろうなと思ってさ」

 

「案の定、でしたわね。姉様が言うには、天冠の山麓にいるのは『ナルガクルガ希少種』とのことですけど……」

 

「ショウ、例の巨大ポケモンだけど……体毛に白い部分があったり、腕の翼が刃っぽかったり、尻尾に刺があったり、姿が消えたりした?」

 

「……はい、全部合ってます」

 

「やっぱりね」

 

「ダメだろ、ショウ。ナルガクルガ希少種を相手に、初見なのに無対策で挑むなんて……」

 

シュラークさんをはじめとして、ハンターの皆さんから口々に言葉をいただいた。うぅ、グウの音も出ない……反省……。

 

「はぁ……いや、帰還が遅れた私が言うのもアレだが、よく挑もうと思えたな、君は……」

 

「アカイさん……」

 

「……で、だ」

 

「?」

 

突然、アカイさんの雰囲気がガラリと変わった。その視線の先には、ヒューイさんが。

 

「おや、お前さんは……」

 

「テメェ……!」

 

「……あぁ、やっぱり。俺、お前さんを……貴様を知っているぞ」

 

「なんでテメェがここに――!!」

 

物凄い剣幕で憤怒の表情を顕にしたアカイさんが、ヒューイさんを睨みつけている。まるで、憎くて憎くて仕方ない、殺したくて殺したくて堪らないと言わんばかりの強すぎる殺意と敵意……!そのままアカイさんがヒューイさんに詰め寄ろうとした、その時だ!

アカイさんのすぐ隣を、シロちゃんが駆け抜けた。そのままヒューイさんに飛びつくように抱きついたシロちゃんは……。

 

「んっ!」

 

「んんっ!?」

 

なんと、抱きついた勢いのまま、すかさずヒューイさんにキスをした!うわぁ、すごい、公衆の面前でなんてことを……!しかも、大人のヒューイさんと子供のシロちゃんが思い切り口と口でキスをしてる……!

 

「んっ、んっ……ちゅ、んぅ……」

 

「んむ、んん……」

 

「はぁ……あむっ、ちゅぅ……れる、ん……」

 

「あむ、あむ……れろ、ちゅ……」

 

……ちょっとまって、キス長い上になんか変な音が――

 

「やめんかぁーーっ!!!!」

 

――と、ここで二人の間にアカイさんが割って入った。そのまま二人を引き剥がすと、ヒューイさんの胸ぐらを掴み上げたではないか。

 

「おいテメェ……なにしてくれてんだコラ……!」

 

「いや、先に仕掛けてきたのはそっちなんだが?」

 

「テメェの運動神経で躱せないわけねぇだろうがよ!?」

 

「んもぅ……アカイったら、無粋ね。どうして邪魔するのよ……」

 

「まずは鏡で自分の姿をよく見たらどうだ……!」

 

「なんだ、嫉妬か?」

 

「テメェはマジで黙ってろ!!」

 

はぁ、はぁ、と肩で息をしながら言葉を荒げるアカイさん……うわぁ、ここまで荒ぶってるのは初めて見た。ムフェトさんとの会話ですら、これほどではなかったのに。

 

「えぇい、クソッ!!この際だ、テメェがなぜここにいるのかは聞かないでおいてやる!!」

 

「そりゃありがたい。俺も、まだこっちに来て一月くらいしか経ってないからな」

 

「知るかよボケが。……えぇい、シロさっさと行くぞ!こんな奴に構ってられるか!」

 

「いけず~」

 

なんか、終始荒ぶったままアカイさんはシロちゃんを引きずるように連れて行ってしまった。

 

「……まさか、"ドンドルマの英雄"に幼女趣味があったとは……」

 

「おいおい、心外だな」

 

「そうよネネ。あれは子供の不意打ちで……」

 

「男にとって女は平等に価値がある。年齢や見目など些事よ、些事」

 

「……ネネ。多分ネネが正しいわ」

 

「姉様……!」

 

ヒューイさんがドヤ顔で持論を述べると、初めはネネさんの意見を否定していたシズカさんも秒で手のひらを返した。いや、ヒューイさん……違うなら違うと、はっきり否定しないと……それじゃ絶対に伝わってないですよ……。

 

「"ドンドルマの英雄"ヒューイ、お目にかかれて光栄の至り」

 

「あー、やめなやめな。そんな堅っ苦しくされるほど、俺は偉いもんじゃねえさ」

 

「だが、貴方が成し遂げた偉業は本物だ。特に、祖龍の討伐……これは、未だ貴方しか成し遂げられていないこと。貴方への敬意は正しいものだ」

 

「……はぁー。じゃあ、しょうがない。それでお前さんが納得するってんなら、素直に受け取ろう」

 

シュラークさんがヒューイさんに敬語で話しかけると、ヒューイさんは露骨に鬱陶しそうに反応した。ふむ、ヒューイさんは堅苦しいのが苦手、つまりフランクな関係を好むと……。

 

「ヒューイさん、初めまして。私はシズカ・ミズハシと言います」

 

「シズカ……?……あぁー!最近何かと話題になる期待の超新星か!俺もお前さんの事は人伝に聞いてたぜ」

 

「そ、そうですか……。それで、ナルガクルガ希少種についてですが……」

 

「あぁ、アイツは希少種か……うん、概ね奴さんの特徴は把握しているが、知っているというのなら改めて聞かせてはくれないか?」

 

「もちろんです。ギンガ団とも、この情報を共有しましょう。本部に行かれますか?お供いたします」

 

「おぅ、頼むわ」

 

「姉様が行くのなら、アタシも!」

 

「お、俺も行こう!」

 

ヒューイさんがシズカさん、ネネさん、ニールさんを伴ってギンガ団本部に歩いて行ってしまった。……私も、報告のために行かないと……。

 

「なんか、その雰囲気だとコテンパンにされたみてぇだな」

 

「セキさん……はい、見事にしてやられました……」

 

「でも、ショウさんが無事で良かったよ。集落に帰る前に、ショウさんの顔を見てからにしようって思ってね」

 

「わざわざお待たせしてしまいましたか……すみません、カイさん」

 

「んじゃ、無事に帰ってきたみたいだし……オレたちも帰るか、カイ」

 

「だね。……それじゃあね、ショウさん」

 

「またな」

 

セキさんとカイさんはそのまま表門を潜り、それぞれの集落へ戻っていった。ところで、ウォロは……。

 

「ウォロ殿なら、あそこ。……なにやら、自分が所属する組織の長に黙ってあれこれしていたことがバレたみたいでね、少しお説教されているよ」

 

「シュラークさん」

 

「俺は後で、シズカあたりにでも話を聞くよ。まずは、ヒスイに流れ着いたモンスターたちの様子を見ておくかな」

 

「それなら、牧場はそちらを真っ直ぐ行った先です。管理人がいるので、声をかけておいてください」

 

「あいわかった」

 

シュラークさんは牧場へ、と……それじゃあ、私もギンガ団本部に行かなくちゃ。

ギンガ団本部の中に入ると、既に調査隊室で報告が行われているところだった。やばいやばい、急がなきゃ。

 

「すみません。ショウ、ただ今到着しました」

 

「うむ」

 

「まったく……帰還早々にさっそく危険を冒すとは。怖いもの知らずも大概にしろ」

 

「うっ……すみません、シマボシ隊長」

 

さ、早速怒られてしまった……これじゃ、向こうで成長してきたっていうのに逆戻りみたい……。

 

「……まぁ、そんなわけであれはナルガクルガの希少種個体ってわけだ。今回は少々不慮の事態で撤退もやむなしとなったが……次で仕留める」

 

「うむ、次の霧夜は三日後と予測された。それまで、十二分に英気を養え」

 

「了解。……でもまぁ、俺よりも英気を養うべき人間が、ここにはいますがね」

 

「む?それは一体……」

 

「まぁまぁ」

 

そう言うと、ヒューイさんはデンボク団長の隣に立っているシマボシ隊長に近づいた。そして……あろうことか、シマボシ隊長に顎クイをしてみせたではないか!

 

「なっ、なにをする!」

 

「ふーむ……隊長殿、寝てないな?化粧で誤魔化しているんだろうが、目元にクマがある」

 

「なっ!?いや、ばかな……どうして気づいて……」

 

「おや、本当だったのか。カマかけただけなんだが、案外かかるもんだねぇ」

 

「き、貴様ッ!?」

 

「シマボシ、真か?」

 

「うっ……はい……」

 

え!シマボシ隊長、寝不足だったの!?嘘……全然わからなかった!だってシマボシ隊長ってほとんどポーカーフェイスみたいなものだし……。

 

「団長殿、あまり責めんでやってくれ。隊長殿は一番の戦力である団員がいなくなったところへ現れた巨大ポケモンに対処するために、寝る間も惜しんで頑張ってくれてたんだからよ。そこはむしろ褒めてやってくれよ」

 

「……うむ、そうだな。シマボシ、ショウの帰還までよく頑張った。後のことは我々に任せ、お前はひとまず休むといい」

 

「だ、団長まで……わかりました……」

 

「おぅい、ケーシィ。お前さんのご主人様が休養をご所望だ。さいみんじゅつをかけてやってくれぃ」

 

「ケー」

 

「おい、何を勝手に言って……って、コラ、ケーシィ!なんでお前も従っ……て……スヤァ……」

 

あ、余りにも綺麗な流れだった。団長が隊長を褒め、隊長が団長の「休め」という命令を了承するやいなや、ヒューイさんが隊長のケーシィに指示を出してさいみんじゅつを使わせていた……。

なんだこの予定調和がない方が違和感しかないやり取り。

 

「……よしっ。団長殿、俺は隊長を寝かせてこよう。この話は明日にでも」

 

「うむ。……ショウ、お前も今日は休むといい。ナルガクルガ希少種の対策は、また明日にでも話すとしよう」

 

「えっと……りょ、了解しました……」

 

なんか、私だけが完全に置いてけぼりなんですけど……?いや、いまさらどうこう文句言ったってしょうがない。私は素直に命令をに従うことにした。

ヒューイさんに言われたとおり、医療隊のキネさんの下に寄って軽く検査を受けてからギンガ団本部を後にした。そのまま真っ直ぐ部屋に戻る途中、シロちゃんと遭遇した。

 

「あ、シロちゃん」

 

「ショウ。……えっと、彼は……」

 

「あ、ヒューイさん?もうすぐ出てくると思うけど……」

 

「おや、お前さんは……」

 

「ヒューイ!」

 

言うが早いか、ヒューイさんが出てきた。そしてまたしても飛びつくシロちゃん。……うん、これはシロちゃんの方が好きすぎるパターンかな?

 

「えへへ……逢いたかったわ、ヒューイ!」

 

「そうか。俺も君に逢いたかったよ」

 

「そう?私達、やっぱり想いは通じ合ってるのね!」

 

「ははあ、そいつぁ嬉しい事を言ってくれる」

 

「……二人ってどんな関係なの?」

 

「「()し合った仲だよ」」

 

……気のせいか、言葉のニュアンスが180°真逆のような気が……。

 

「ねぇ、あの時の続き、する?流石に続きそのままだとアレだから、違う形で」

 

「おっ?そりゃあいい。だったら、お誂え向きの手段があるぜ。俺と君、ちょうど人同士でしかできないことだ」

 

「あっ……ふふっ

 

……ちょっとこの辺、空気がピンク過ぎませんかね……?なんだか胸焼けで吐き気が……。

 

「んじゃあ、俺の部屋に来るかい?そのためにわざわざアイツを巻いてきたんだろ?」

 

「うん!死ぬほど疲れてたのね……まさかの腹パンでワンパン」

 

「おっ、韻を踏んでるな」

 

「あらやだ、うふふ!」

 

「……あの、先に寝ます。おやすみなさい」

 

だめだ、これ以上ここにいたら頭がどうかなりそうだ。こういう時は、さっさと寝るに限る!

 

「おやすみ、ショウ」

 

「おぉ、そうか。お休みな。……あぁ、そうだ」

 

「はい?」

 

騒がしかったらごめんよ(・・・・・・・・・・・)

 

「……?いえ……」

 

騒がしいって……こんな夜中に一体何をする気なのか……。私はさっさと布団にもぐり、ゆっくりと意識を沈めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人とも激しすぎじゃない?

 

 

 

 




このあと、ショウが無事に寝付けたかどうかは定かではない……。


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腕試し!モンスターハンターの挑戦

久々に三人称視点で書いてみる。
実際、書かないと感覚忘れるし、なに気に一人称視点よりも表現が難しいから「客観的に書く」いい練習になるんですよね。




ショウ達がコトブキムラに帰ってきた最初の夜が終わりを迎えた。朝となり、ギンガ団の調査隊服へと着替えたテルは、ギンガ団本部を目指しながら道行く人々に挨拶をしていった。

 

「おはよう!」

 

「おはよう、テル!」

 

久々の感覚に、テルの表情も自然と綻ぶ。ようやく、自分たちが知る日常に帰ってきたのだと実感が沸いてきたのだろう、テルの足取りは軽快そのものだ。

ギンガ団本部の前で足を止め、大きく深呼吸をする。天冠の山麓に出現した巨大ポケモンのことも気になるが、今はこの瞬間を満喫したかったのだ。

 

「オハヨウゴザイマス……」

 

「あぁ!おはよ……う、わああぁぁぁあっ!?」

 

掛けられた声に反応して振り返ると、そこにはショウがいた。……ただ、なぜかショウの目は充血してるし目元にはクマがあるし、なのに目は冴えているのかギンギンに見開かれていた。端的に言って、ショウは寝不足であった。

 

「ショ、ショウ……?昨夜は眠れなかったのか……?」

 

「……エエ、オカゲサマデ……」

 

「(い、一体何があったんだ……)」

 

視線はフラフラ体もフラフラと、明らかに眠らないまま一夜を過ごしたようなショウの様子に、テルは動揺を隠せない。と、ここでまた別の人物が姿を現した。

 

「おはようさん、二人とも」

 

「ショウ!テル!おはよー!」

 

「あ、ヒューイさんとシロ。おはようございます」

 

ショウの部屋の隣部屋を使っているヒューイと、そのヒューイにべったりなシロであった。二人は今のショウとは正反対に活気満ちた様子で、心なしかシロは肌がツヤツヤになっているように見える。

 

「お、ショウ。おはようさん」

 

「オハヨウゴザイマス……」

 

「うーむ、その様子だとやっぱり昨日は騒がしくしすぎたか?すまんかったなぁ」

 

「ほらぁ、ヒューイががっつきすぎなのよ。あんなに激しくされたら、私……我慢できないもん……」

 

「そうは言うが、後半はむしろそっちの方がノリノリだったやろがい。ヤってる途中で寝落ちする経験なんてそうないぞ?まぁ、寝て覚めてもお前さんが俺の上でまだ腰振ってた時は流石に呆れてものも言えなかったぜ」

 

「だって、貴方ったらちっとも衰え知らずなんだもん。私もつい夢中になっちゃった」

 

「ははっ、女にそこまで悦んでもらえたとあっちゃあ、男冥利に尽きるってもんだ」

 

イチャイチャイチャイチャ……目の前で繰り広げられるピンクな光景にショウはもはや白目を剥いており、テルは会話の内容が理解できなかったのか目を点にして首を傾げていた。

 

「二人は一体何を……ショウ……?」

 

「何も聞かないで、テル先輩はそのままでいてください」

 

「えぇ……?」

 

それからショウは咳払い一つとともに、イチャコラする二人に向けて言い放った。

 

「ゆうべはおたのしみでしたね」

 

「あぁ、そりゃもうな!」

 

「うん!……えへへ

 

またしても隣で首を傾げるテルに対して、ショウはもはや気絶寸前である。割とここまでオープンな人物が周囲にいなかったこともあって、その弊害がモロに表れていた。

 

「キサマら……」

 

そして、ここに憤怒に染まった形相を浮かべたアカイも合流した。アカイはズカズカとヒューイ達に歩み寄るとシロの手を取って二人を引き剥がし、ヒューイの胸ぐらを掴んだ。

 

「テメェは"自重"という言葉をどこにやった……!」

 

「据え膳食わぬはなんとやら、だよ」

 

「絵面を考えろっつってんだよ!大の大人が幼女と乳繰り合ったら完全にアウトだろうが!?」

 

「そこはほら、あれだよ。"登場人物は18歳以上です"ってやつだ」

 

「お前その言葉どこで知ったんだ!?」

 

「うん?随分と前にツレが貸してくれた薄い漫画本にそんな内容が……」

 

「そいつとは絶縁しろ!!絶対にだ!!」

 

「そうよ!……私がいるんだから、そんな本はいらないでしょ?」

 

「頼むシロ……!今この場ではとにかく黙っててくれぇ……!!」

 

ヒューイに詰め寄りシロを宥めてと、感情もツッコミも忙しすぎるアカイをショウとテルは哀れみの目で見ていた。多分、アカイは一生この二人に振り回される運命だろう。そんなことが容易に想像できたのだ。

 

「おはよ……うわっ、ショウ?大丈夫?」

 

「シズカさん……はい、全然だいじょばないです」

 

「だよね……」

 

ハンター組も起きてきたらしく、シズカ達が本部前で屯しているショウ達と合流した。と、ここでショウはとある変化に気がついた。

 

「シズカさん、なんかテンション上がってます?」

 

「え!?ど、どうして……」

 

「あぁ、実はギンガ団の団長殿のご好意でね。この世界のモンスター……ポケモンを捕獲してみないかと誘われたんだ。それからシズカはずっとこの調子でね。隠せているようで、全然隠せてないだろ?」

 

「子供みたいにワクワクしている姉様は可愛くて素敵ですわ!」

 

「や、やめてよもう!!」

 

ショウの指摘は正しかったらしく、シズカのテンションは高くなっていた。その理由もニールから聞かされて、実に納得のいく話であった。ただ、後ろにいるシュラークは表情を険しくしていたが。

 

「……まぁ、それはそれとしてだ。トレーナーが使う例のボール……捕獲機能もあるなんて聞いてないぞ」

 

「言えば戦争待ったなし、ですよ。便利な反面、そういった面での利用も容易なんです。だから、モンスターボールの一部の機能についてはあえて黙っていました」

 

「人の口に戸は立てられぬ、か……まぁ、ちゃんと考えた上での判断なら、こちらはこれ以上何も言わないよ」

 

「ありがとうございます、師匠」

 

その表情も、少しの会話の後にはすっかりなくなっていた。モンスターを運搬・格納するだけでなく捕獲と使役まで出来るボール流行ることの危険性を、シュラークもただしく理解したからだ。

それから、目線がヒューイたちに向けられると、シズカはそっとショウの耳打ちした。

 

「……ところで、シロって18歳以上だよね?」

 

「じゃなかったら、色々とアウトだと思います」

 

「まぁ、あの人たちもそれくらいわかってるよね……絵面はヒドイけど」

 

これ以上、この話題には触れないほうがいいかも知れない。そう悟ったショウとシズカはそこで会話を打ち切った。

全員が揃ったところで、早速調査隊室へ場所を移した。中で待っていたデンボク、シマボシ、ラベンらとともに、天冠の山麓に出現したナルガクルガ希少種対策を講じる。その音頭をとったのはヒューイであった。

 

「さて……ここにいる皆々様。この度、天冠の山麓に出現した巨大ポケモンについて、その対策を講じるといたしましょう。さて、俺以外のハンターがどうやらあのナルガクルガについて知っているようなんで、まずはそちらから」

 

「初めまして。時空の裂け目の向こう側より派遣されてきました。ハンターのシズカ・ミズハシといいます。今回、天冠の山麓に出現した巨大ポケモンはナルガクルガの希少種個体となります。

ナルガクルガ希少種は体に生えている月白色の体毛で月の光を屈折させつつ、夜霧に紛れることで姿を消す能力を持っています。さらに尻尾には毒素を含んだ刺が隠されており、これを飛ばしたり叩きつける瞬間に逆立てるといった戦い方を得意としています。そして厄介なことに……ナルガクルガ希少種はこの能力を最大限に活かすために、霧の出ている月夜にしか姿を現しません。単純に被害を避けるのであれば、先ほど言った天気と時間帯を避ければいいだけですが……」

 

「うむ、そういうわけにはいかぬ。ナルガクルガが我々にとって脅威となるならば、民のためにもこれを取り除かなければならん」

 

「えぇ、そうおっしゃると思っていましたよ」

 

デンボクがはっきりと言葉にすれば、シズカも頷きその意思に同調した。

 

「……ただ、次の霧の夜は三日後だ。今は待機するほかあるまい」

 

「ですね。では、その間に我々ハンターは対ナルガクルガの作戦を練っておきます」

 

「よろしく頼む」

 

作戦立案等はハンターが務めることになり、ひとまず解散。ヒューイを除くハンター組はポケモン捕獲の体験をするとしてショウ達とは別れることになった。

正門でシズカたちを見送ってから、ヒューイは小さく笑みを浮かべた。

 

「一生分の思い出になるぞ、ボールを使っての捕獲ってやつは」

 

「……ヒューイさんも、モンスターボールは戦争の火種になると考えてますか?」

 

「なるだろうな、そりゃ。亜大陸にいるライダーってのにも、古龍の力を悪用しようとした悪党が出たくらいだぜ?こんなボールが出回ったら、ヤブ蚊のように湧いて出るだろうよ」

 

「……ですか……」

 

ショウの問いに対しても、さもそうだろうといった風に答えるヒューイ。ショウは改めて、モンスターボールの価値が"向こう側"においてどれほど重いかを思い知らされ表情を暗くする。バトルを通してモンスターの脅威を理解しているからこそ、容易に捕獲ができるモンスターボールの存在が必要であると同時に、存在そのものが危険であることがよくわかったのだ。

 

「……おっ、そうだ。ショウ、お前さんはギンガ団の中でもぶっちぎりにバトルが強いって聞いたぞ?」

 

「いや、ぶっちぎりってほどでは……それで、一体何です?」

 

「おう。……俺のポケモンとお前さんのポケモン、ちょいと喧嘩させてみねぇかい?」

 

「はい?」

 

喧嘩、と言われて一瞬首をかしげるショウだが、それがポケモンバトルを指していることにすぐに気がついた。バトル、と聞いてショウの中の闘争心に火がつく。

 

「いいでしょう、受けて立ちますよ」

 

「よっしゃ!それなら野外訓練場に行くか!」

 

「え……そこの訓練場でよくないですか?」

 

「いいや、よくねぇや」

 

ペリーラが管理している訓練場でもいいだろう、というショウだが、ヒューイはそれを拒否した。それから、獰猛な笑みを浮かべつつボールを取り出した。

 

「俺のポケモンは、凶暴だぜ?」

 

「……!」

 

「これまでは調査の名目で連れ歩けなかったからなぁ……。動きが鈍ってちゃいけねぇから、お前さんとのバトルに使ってやりてぇんだ。んで、俺のポケモンは強さも段違いだから、手狭な訓練場だと周囲に被害が出かねん」

 

「それで、野外訓練場ですか……わかりました」

 

ショウとヒューイは揃って野外訓練場へ向かう。その際、審判役としてアカイに声を掛け、シロと共に野外訓練場へと来てもらった。

 

「……それではこれより、ショウとヒューイによる6vs6によるフルバトルを行う。どちらかの手持ちが全滅した時点で勝敗を決する。入れ替えは自由だ、両者ともに異存はないな?」

 

「ないっ!」

 

「私も大丈夫です」

 

「では、公平を期すために最初の一匹目は、カウントと同時に繰り出すとする。では、三秒前!」

 

アカイが宣言をすると同時に、ショウとヒューイはボールを構えた。それを見てから、アカイもカウントを開始した。

 

「3!2!1……ゴー!!」

 

「ライチュウ!!」

 

「舞え、【幻舞蝶】!!」

 

「ラアァァイ!ライライラアァァイッ!!」

 

「ハァ~ン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【Power Through】~Friday Night Funkin' BB Ver2.0~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショウの先手は極みライチュウ。だが、ヒューイの先手はショウが見たことない姿をしたアゲハントだった。

アゲハントの羽の模様に、ドクケイルの羽の色と模様が混じっている個体だ。それだけでなく、ただ羽撃いているだけで色とりどりに光る鱗粉が羽から舞っている。

 

「アゲハント……!」

 

「ただのアゲハントじゃあない。ドクケイルとの共生によって鱗粉の性質が変質した、アゲハントの二つ名個体……【幻舞蝶(げんぶちょう)】アゲハントだ!」

 

「【幻舞蝶】……!?」

 

「さぁ、お前さんの力を見せてやりな!アゲハント、むしのさざめき!!」

 

「躱して!」

 

「ラアアィッ!!」

 

【幻舞蝶】が放ったむしのさざめきを、極みライチュウは光速で移動し回避した。その速さにヒューイも感嘆したように息を漏らした。

 

「ほぉ、速いな」

 

「10まんボルト!!」

 

「ラララアイ!」

 

「だが、甘い。アゲハント、ミラースケイル!」

 

「ハァント!」

 

【幻舞蝶】が激しく羽を羽撃かせると、虹色に光る鱗粉がアゲハントの周囲を舞った。極みライチュウの10まんボルトが鱗粉の中に突っ込むと……激しく乱反射を起こして極みライチュウに跳ね返っていった。

 

「ラァイッ!?」

 

「ライチュウ!?」

 

当然、見たことのない現象に動揺した極みライチュウは跳ね返ってきた10まんボルトを避けられず直撃し、ショウも同じように驚いていた。

 

「ミラースケイル。これは相手が放ってきた特殊技を反射する技だ。どんな強力な技だろうが、それが特殊技ならコイツで跳ね返せる!ただし、威力は据え置きだがな」

 

「ハァ~ッハッハッハ~ント♪」

 

ドヤァ、と胸を張る【幻舞蝶】に、極みライチュウは悔しげに歯噛みしながら立ち上がった。特殊技の強制反射という、半ば反則じみた技に対する有効策をすぐさま模索する。

 

「(特殊が効かないなら、物理で攻める!)戻ってライチュウ!……よし、ゴウカザル!」

 

「ゴウカアアァッ!!」

 

ここでショウは交代を選んだ。繰り出されたのは【炎神】ゴウカザル。むしタイプである【幻舞蝶】に対して有利が取れるほか、覚えている技も物理一辺倒なのでミラースケイルを恐れる必要がないのだ。

 

「なるほど、ゴウカザルか。確かにそいつなら、物理技の方が強いだろうしむしタイプにも強い……ちょうどイイってところか」

 

「行きます!ゴウカザル、ほのおのパンチ!!」

 

「ウッキャアァ!!」

 

「アゲハント!地表スレスレで羽撃け!!」

 

「ハンッ!」

 

ほのおのパンチを使って【幻舞蝶】に突撃する【炎神】。ヒューイもすぐさま指示を出し、【幻舞蝶】もそれに従った。

【幻舞蝶】が地表近くまで高度を下げると、そこで激しく羽撃きを始めた。羽撃きによって発生した風圧が地面の土を巻き上げ、一瞬で【幻舞蝶】の姿を隠してしまった。

 

「……っ!打ち出せ!」

 

「ゴウカッ!」

 

素早く足を止めると拳を突き出し、【炎神】は拳の炎を火炎放射のように打ち出した。土煙を吹き飛ばした火炎だが、【幻舞蝶】には直撃することなくヒューイの背後にある岩を打ち抜いた。

 

「行けっ!」

 

「ハンッ!」

 

【幻舞蝶】は地面スレスレを飛行して一気に接近し、【炎神】の頭上を取った。状況判断からの行動の速さに、ショウは思わず瞠目した。

 

「速い!?」

 

「ムーンフォース!」

 

「ハァァァ……ハアァンッ!!」

 

「ウギャ!」

 

「ゴウカザル!!」

 

【幻舞蝶】から放たれたムーンフォースは寸分たがわず【炎神】に直撃し、大きく吹き飛ばした。それでも空中で体勢を立て直すと、【炎神】は地面に着地してすぐに構えを取った。

 

「ムーンフォース……!?アゲハントはムーンフォースを覚えないはず……まさか!」

 

「そのとおり!【幻舞蝶】に至ったことで、この技を使えるようになったのさ!それに伴って、コイツのタイプもフェアリータイプになっている!!」

 

「……つまり、むし・フェアリーってこと……!」

 

二つ名個体への成長とともに、タイプや覚える技にも変化が生じていた。ショウの手持ちにいるポケモンたちはタイプの変化が特になかったので、その事実を初めて知ったのだ。

 

「さぁ、どんどん行こうぜ!もういっちょ、ムーンフォース!!」

 

「ハアァンッ!!」

 

「ゴウカザル、マッハパンチ!」

 

「ウッキャア!!」

 

「フッ……」

 

マッハパンチによる高速移動でムーンフォースを避けつつ、【炎神】は【幻舞蝶】へと拳を突き出した。しかし、【幻舞蝶】はわずかな羽撃きでマッハパンチをチョン避けしてしまった。

 

「あれを躱す!?」

 

「エレキネット!!」

 

「ハンッ!」

 

「ウキャ!?」

 

「さぁ、遊覧飛行の時間だぜぇ!」

 

チョン避けした【幻舞蝶】は突き出された【炎神】の腕にのみエレキネットを当てると、ネットを引っ張って【炎神】を空中へと連れ去ってしまった。そのままジャイアントスイングの要領でぐるぐると大回転を始めた。

 

「投げ飛ばせ!」

 

「ハアアァンッ!!」

 

「ウギャアァッ!!」

 

「ゴウカザル!?」

 

力強くぶん投げられ、【炎神】は土煙が舞うほどの勢いで地面に激突。そのパワーは地面がわずかに陥没し大地が隆起するほどであった。

 

「負けるなゴウカザル!フレアドライブ!!」

 

「ウッキャアアアアッ!!」

 

「ハッ……!?ハアアァンッ!!」

 

「なっ……アゲハント!!」

 

だが、それでもショウと【炎神】の闘志は尽きはしない。煙の中から勢いよく炎を纏った【炎神】が飛び出し、そのまま【幻舞蝶】にぶち当たった。地面に墜落した【幻舞蝶】は、フレアドライブの一撃でノックアウトされてしまった。

 

「ハハァ……」

 

「アゲハント、戦闘不能。ゴウカザルの勝ちだ」

 

「よしっ!ありがとう、ゴウカザル」

 

「ウキャキャ!」

 

「おぉおぉ、流石は歴戦の猛者ってところか。戻れ、アゲハント」

 

ショウの実力の高さをおおよそ想定していたのか、ヒューイの表情は変わらず楽しげに笑みを浮かべている。そうして、ヒューイが二体目のポケモンを繰り出した。

 

「そんじゃあ、次は……コイツだ!」

 

「グマアアァァッ!!」

 

続いてヒューイが繰り出したのはリングマだった。ただ、このリングマも普通の個体ではなかった。

体の色は茶色から橙色に変化しており、爪に至っては青色に変化してしまっている。また、体中には戦いで付いたであろう傷跡が目立っている。

 

「リングマの二つ名個体、【青嵐鬼(せいらんき)】だ。縄張り争いに勝ち続けたリングマの爪は、鋼すら容易に断ち切るほどの硬度を持つぜ」

 

「……!リングマの二つ名個体……戻って、ゴウカザル。……ミミロップ!」

 

「ミッミィ!」

 

ショウは先の【幻舞蝶】との戦いで消耗した【炎神】を戻した。その後、【舞兎】ミミロップを入れ替えで繰り出した。

 

「バトル、開始!」

 

「ミミロップ!はどうだん!!」

 

「ミィー……ミミロォー!」

 

「リングマ!きあいだまだ!」

 

「グウゥ……マアァ!!」

 

【舞兎】のはどうだんと【青嵐鬼】のきあいだまがぶつかりあい、激しい爆発を起こした。爆風から顔を守りながら、ショウはまたしても本来の個体から変化が生じしていることに気がついた。

 

「くっ……ヒスイでは覚えなかった技を……!」

 

「突っ込めリングマ!ざんてっそう!!」

 

「グマァーッ!!」

 

「……!新技!?」

 

【青嵐鬼】が咆哮を上げると、青い爪がさらに深みを増した光を放ち始め、その長さも伸びて凶悪度が増した。その勢いで【舞兎】に突っ込み、爪を振るってきた。

 

斬鉄爪(ざんてっそう)はメタルクローの上位版とも言うべきはがね技!相手の能力上昇を無視してダメージを与えられる!さらに、斬鉄という名の通り、はがねに対して抜群が取れるんだぜ!」

 

「ミミロップ、集中!」

 

「ミミッ!」

 

両手足に波導の光を灯らせた【舞兎】は、繰り出される【青嵐鬼】の攻撃を捌き始めた。避け、払い、【青嵐鬼】の攻撃に対処する【舞兎】だが、その足は徐々に後退し始めた。やがて、岩を背に追い詰められると、【青嵐鬼】が大きく腕を振りかぶった。

 

「今だ!」

 

「ミィッ!」

 

「なんと!?」

 

大振りの攻撃を待っていた、とばかりに【舞兎】は高く跳び上がり、伸身三回宙返り一回捻りを披露しつつ【青嵐鬼】の背後を取った。当然、【青嵐鬼】の攻撃は岩を砕くだけに終わり、攻撃は盛大に空振っていた。

 

「あくのはどう!」

 

「ミッミィー!」

 

「グマッ……」

 

完全に隙を付いた一撃だったが、あくのはどうは【青嵐鬼】に対してあまりダメージを与えられなかった。その様子に、ショウはある可能性に行き着いた。

 

「まさか、かくとうタイプが入ってる……?」

 

「おう、そうだぜ。ノーマル・かくとうの複合タイプだ!」

 

またしてもタイプの変化に足元を掬われてしまった形になったショウ。今後はこのような変化が起こっていることを考慮して技を選ぶ必要があるだろう。

 

「ならば……ミミロップ、りゅうのはどう!」

 

「ミミィ!ミミロー!!」

 

「ぶっ飛ばせリングマ!ギガインパクト!!」

 

「グマアアァァッ!!」

 

【舞兎】が放ったりゅうのはどうを強引に突っ切り、【青嵐鬼】のギガインパクトが【舞兎】に迫る。【舞兎】も初めは波導で受け止めてみせたが、圧倒的な力で押し込まれたことで不利を悟ったのか、自ら脇へと飛ぶことで攻撃を受け流した。

 

「おぉ、巧い」

 

「くっ……はどうだん!」

 

「きあいだまだ!」

 

「ミミ!」

 

「グマ!」

 

しばらく転がってから立ち上がり、【舞兎】ははどうだんを放った。【青嵐鬼】もギガインパクト直後だというのに反動が堪えた様子もなく、すぐさま迎撃に応じた。

 

「地を這え!みずのはどう!!」

 

「ミッミィ!!」

 

ここでショウが動く。【舞兎】が地面を這うようにみずのはどうを放ち、自身もその後に続いて突撃し【青嵐鬼】に迫る。

 

「(攻撃には攻撃で対処する……その後隙を突けば!)」

 

「受けろ、リングマ!」

 

「なっ!?」

 

「グマ!」

 

ショウが予測したヒューイの指示は迎撃……しかし、実際のヒューイが出した指示は、技を受けろというものだった。予測が外れたことで、ショウの判断がわずかに遅れてしまった……その隙を、ヒューイは逃さなかった。

 

「ざんてっそう!!」

 

「……っ!はどうだん!!」

 

「グマアァァッ!!」

 

「ミィッ……!!」

 

鉄をも切り裂く鋼鉄の爪が【舞兎】を大きく勝ち上げた。それでも空中で体勢を整え、【舞兎】ははどうだんを放ってみせた。攻撃の直後ということもあって【青嵐鬼】は対応できず、はどうだんが直撃した。

 

「リングマ、無事か?」

 

「……グマァ!」

 

「よしよし」

 

「ミミロップ、大丈夫?」

 

「ミ……ミィ!」

 

バトルは続行可能だが、【舞兎】も【青嵐鬼】もどちらも消耗が激しい。このまま続ければどちらか、あるいは両方が戦闘不能となるだろう。

 

「……戻って、ミミロップ」

 

「交代だ、リングマ」

 

ここで両者ともにポケモン入れ替えの判断を下した。そして、同時にモンスターボールを投げてポケモンを繰り出した。

 

「ロズレイド!」

 

「ローズレー!」

 

「ドラピオン!」

 

「ドララララァ!!」

 

ショウが繰り出したのは【華彩剣】ロズレイド。ヒューイが繰り出したのはドラピオンだが、これまた見たことのない変化を遂げていた。

まず、両腕。両腕の鋏の内、人間の手首に該当するであろう場所からさらに二本ずつハサミが生えていた。尻尾の鋏も先端が三叉に割れて三本に増えていた。

 

「ど、ドラピオン……?」

 

「おう、ドラピオンだ。正確には……【極み待ち伏せるドラピオン】だ」

 

「極み個体……!!」

 

「あぁよ!コイツの鋏に捕まれば最後……待つのは終わりのみ、だ」

 

「ドラァ……!」

 

鋏を舌舐りする極みドラピオンに、ショウは気圧されたように半歩足を引いた。対して、【華彩剣】は冷静に、そしてゆっくりと抜剣するとその切っ先を極みドラピオンに向けた。

 

「ロゼ」

 

「ドラァア!」

 

己に臆した様子を見せない【華彩剣】に苛立ちを募らせる極みドラピオン。どうやら気が短い質のようだ。

 

「(なるほど、短気な性格か……短気は損気、そこを突けば勝機はある……)」

 

「(能力面はともかく、内面的に不利は否めないか。まさかタイプ相性じゃなくて性格相性で苦手なタイプとはなぁ)」

 

勝負はまだまだ始まったばかり。最強のトレーナーと伝説のハンターの一騎打ちは、苛烈を極めようとしていた。

 

 

 

 




今回はここまでで、次回後半戦!そして、あの兄妹の再会も……!

今回登場した特殊個体について軽く解説。


アゲハント
二つ名:【幻舞蝶】
タイプ:むし・フェアリー

ドクケイルとの共生によって、鱗粉の性質に変化が表れたアゲハント。それを裏付けるように、羽の模様にドクケイルの要素が強く表れている。そして、それはタイプも同様である。
専用技の「ミラースケイル」は、性質変化した鱗粉を多量に撒き散らすことで、相手の非接触系特殊技を乱反射させて跳ね返す効果を持っているむしタイプの変化技。他のカウンター系の技とは異なり先手で繰り出せるものの、威力が増えたりすることはない。


リングマ
二つ名:【青嵐鬼】
タイプ:ノーマル・かくとう

生存競争に勝ち続けてきたリングマが至ったとされている姿。青くなった爪は鋼も容易に断ち切る鋭さを硬度を誇り、その爪に断てぬものはない、とも。体の色が橙色に変化した他、歴戦の猛者を思わせる傷跡が全身にある。
専用技の「ざんてっそう」は、メタルクローの効果に加えて「能力上昇効果無視」と「はがねタイプに効果抜群」という効果を持っているはがねタイプの物理技。特に後者の能力は「威力を二倍にする」のではなく、「タイプ相性で有利が取れる」という意味なので状況をひっくり返す切り札になりうる。


極み待ち伏せるドラピオン
タイプ:どく・あく

ドラピオンの極み個体。鋏の数が増えたために手数が増え、鋏で捉えた相手を他の鋏で滅多打ちにするという戦法を得意とする。"待ち伏せる"と名にあるが意外にも短気な性格。
今後のバトルで詳細が明らかになるだろう。



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激闘!ショウVSヒューイ!~相見える兆し~

PCがまさかのフリーズ……投稿時間に遅れてしまったので、やむを得ず決着まで持っていった話を途中で切るという苦渋の決断……!




野外訓練場で行われたショウとヒューイによるポケモンバトル。現在の状況はヒューイが一体倒されて6対5。しかしお互いに繰り出したポケモンの数は既に半数に達している。

ヒューイが繰り出した四体目は極み個体と化したドラピオンこと【極み待ち伏せるドラピオン】、対するショウは【華彩剣】ロズレイドで対抗した。短気な質の極みドラピオンは冷静な【華彩剣】に対して苛立ちを募らせているが、果たして勝負の行方は……。

 

「おーい、ドラピオン。落ち着けなー、苛立ったってしょうがねぇぞー」

 

「……!ド、ドラ!」

 

イライラしていた極みドラピオンだが、ヒューイの呼び掛けでなんとか冷静さを取り戻したようだ。トレーナーとの絆は確かなものなようで、ショウは内心で舌を打つ。

 

「(なるほど、トレーナーの声が届く程度には余裕もあるのか……)ロズレイド、相手は極み個体だ……気をつけていこう」

 

「ロズ」

 

「……バトル、開始!」

 

 

 

 

推奨BGM

【bombllitz】~Funkin Aside~

 

 

 

 

「リーフブレード!!」

 

「ロゼッ!」

 

「迎え撃て!どくづき!!」

 

「ドォラアアッ!!」

 

アカイが再開の宣言をすると同時に両肩のブーケを背面に回し、エネルギーを放出しながら【華彩剣】は一気に極みドラピオンとの距離を詰めた。対する極みドラピオンもどくづきを使い、【華彩剣】の攻撃に対抗して剣劇を演じた。

極みドラピオンは硬い甲羅とタイプ相性で【華彩剣】の攻撃を受け流しつつ反撃のどくづきを繰り出す。【華彩剣】は素早い身のこなしで極みドラピオンの攻撃を避けつつ、堅実に攻撃を当てていった。片やダメージは微量だが攻撃を当てており、片や攻撃が掠りもしない。その違いは歴然で、次第に極みドラピオンは攻撃が大振りになり始めた。

 

「(あ、ヤッベ……)ドラピオン!相手をよく見ろ!!がむしゃらに振ったって当たらねぇぞ!!」

 

「ドラアアァァァッ!!」

 

「……あーあー、すっかりプッツンしやがって……。しゃあねぇ、仕切り直しだ!!地面を穿て!!」

 

「ドラァッ!!」

 

イライラしながらもヒューイの指示には忠実に従い、極みドラピオンはどくづきで思い切り地面を殴りつけた。土煙が舞い上がり、視界が封じられる。

 

「なっ、ここで……?」

 

「ふっ……"砂の悪魔"の真髄を見せてやるよ」

 

「え?」

 

やがて土煙が晴れると……極みドラピオンが姿を消していた。

 

「なにっ!?」

 

「ロゼ……!?」

 

これにはショウも冷静な【華彩剣】も面食らい、辺りをしきりに見わたす。完全に姿も気配も見失い、ショウは冷や汗を流した。

 

「これは……!」

 

「ドラピオンはどうも、乾燥地帯でも平気で生きられるポケモンらしい。今でこそ海岸沿いで見かけられるが、元々はもっと内陸部で生きられるポケモンなんじゃないかね。これは、そんなコイツの生態を全力で生かした戦法だ。……やれ!」

 

「ドラアア!!」

 

ヒューイが指示を出すと、極みドラピオンが【華彩剣】の背後の地面から姿を現した。咄嗟に反転しつつ後方に飛び退る【華彩剣】……だが、ヒューイの狙いが読めたショウは、咄嗟に呼びかけた。

 

「ダメ、ロズレイド!後ろはマズイ!!」

 

「ロ……?ロゼェッ!?」

 

ショウの言葉に動揺する【華彩剣】だが、その言葉は当たっていた。後ろに跳んだ【華彩剣】を同じく地面に隠していた極みドラピオンの尻尾がしっかりと掴んで捉えたのだ。三叉に割れた尻尾の鋏は胴と両腕を掴み、完全に【華彩剣】の動きを封じ込めた。

 

「ロ、ロズ……!」

 

「しまった!!」

 

「ドォラァ……!」

 

「ドラピオンは頭部を180度回転させることができる!だからこんな戦い方もできるのさ。どくづき!!」

 

「ドラアアァッ!!」

 

「ローゼッ!?」

 

「ロズレイド!」

 

「まだまだぁ!ミサイルばりだ!!」

 

「ドラァ!」

 

極みドラピオンのどくづきが直撃し、そのまま空中へ打ち上げられた【華彩剣】にさらに追撃が迫る。両腕六本、尻尾三本の計九つの鋏から一斉に放たれたミサイルばりによる凄まじい弾幕が向かってくる中、ショウは焦らず指示を出す。

 

「ロズレイド!打ち落とせ!!」

 

「……!ロッゼエェッ!!」

 

ブーケから高出力のエネルギーを放出し姿勢制御をこなし、体勢を立て直すとともに手に持つ剣で次々とミサイルばりを叩き落とす【華彩剣】。少しずつ地面に降り立ちながらも手を休めることなく、ひたすら攻撃を捌き続けた。

やがて【華彩剣】が地面に降り立ったのを確認したショウは、状況を変えるために次の手を打った。

 

「ロズレイド!リーフストーム!!」

 

「ロー……ズレエエェイッ!!」

 

ブーケを前面に動かし、そこから放たれたリーフストームはミサイルばりを次々と撃墜しながら極みドラピオンへと迫る。だが、ヒューイと極みドラピオンに焦りはない。

 

「ドラピオン、ぶんまわす!」

 

「ドオオラアア!!」

 

ミサイルばりを中断し、頭部を物凄い勢いで大回転し始めた極みドラピオン。ぶんまわすの攻撃は【華彩剣】のリーフストームを散らしてしまうほどの威力で、攻撃を完全に凌ぎきってしまった。

 

「突っ込めロズレイド!」

 

「ロゼ!」

 

「フッ、何をする気だ……?どくづき!」

 

「ドラアァ!!」

 

突撃してくる【華彩剣】に、容赦なく攻撃を繰り出す極みドラピオン。だが、それこそがショウの狙いだった。

 

「ロズレイド!はながくれ!!」

 

「ロゼ!」

 

「なに!?」

 

「ドラ!?」

 

どくづきが直撃する直前、【華彩剣】の姿が花びらとなって舞い散り消えた。突然の現象にヒューイも極みドラピオンも驚き動きが止まってしまった。

【華彩剣】は極みドラピオンの左側に姿を現し、その時には既に攻撃を構えていた。

 

「どくづき!」

 

「ロゼ!」

 

「ドラッ!?」

 

「ちっ……ぶんまわす!」

 

「ドラアア!!」

 

「もう一度、はながくれ!」

 

「ロゼロゼ!」

 

再び攻撃が当たる直前、姿を消す【華彩剣】。極みドラピオンの技が【華彩剣】に対して「効果は抜群」ではないため反撃されることはないとはいえ、立て続けに回避と反撃を繰り返されては、たとえポケモンでなかったとしてもストレスは相当なものとなるだろう。

 

「ド……ドラアアアアアアッ!!」

 

「あっ、こら!落ち着けドラピオン!!」

 

ついに我慢の限界を迎えたのか、極みドラピオンは辺り一帯にミサイルばりを乱射し始めた。当然だが狙いがついていない攻撃が当たるわけはなく、【華彩剣】には一つも当たらなかった。

 

「よしっ……隙を突いて、リーフブレード!!」

 

「ロゼ!」

 

「くそっ……いや、待て?」

 

目論見通りに暴走を起こした極みドラピオンの隙を突かんと接近してくる【華彩剣】に対して舌打ちをするヒューイ。……しかし、その直後に閃めきが降りてきたようで、ニヤッと笑みを浮かべた。

 

「どうしたどうしたドラピオン!お前の実力はこんなものか!?お前ならもっともっとミサイルばりを撃てるだろう!本気を出せ本気をよぉ!!」

 

「ドラアアアアアアアアッ!!」

 

「え、なにを……!?」

 

「ロゼ……?」

 

なんと、突然ヒューイが極みドラピオンを煽り始めたのだ。それによってますます怒りのボルテージを上げた極みドラピオンが、さらにミサイルばりの弾幕を分厚くしていく。突然の奇行に目が点になるショウだが、すぐに気がついた。

弾幕が厚くなったことで接近が難しくなったばかりか、地面に着弾したミサイルばりが土煙を巻き上げ、さきほどどくづきでやったように徐々に極みドラピオンの姿を隠し始めていたのだ。

 

「マズイ……ロズレイド!姿が見えなくなる前に攻撃を!!」

 

「ロゼ!」

 

また隠れられたら厄介だと、ショウはすぐさまロズレイドに攻撃を指示した。ロズレイドもショウの考えを理解し、剣を構えて極みドラピオンに肉薄した。

 

「事を急いたな、ショウ!!」

 

「え!?」

 

「ドラピオン!てっぺきだァ!!」

 

「……!ドラァッ!!」

 

だが、それこそがヒューイの狙いだった。ヒューイの指示で我に返った極みドラピオンは、眼前に迫る【華彩剣】を視界に捉えてすばやくてっぺきを発動した。防御力を大きく高めたことで、極みドラピオンは【華彩剣】のリーフブレードをその身一つで受け止めてしまった。

 

「そんな!?」

 

「ロズ……!?」

 

「捕まえろ!」

 

「ドラッ!」

 

極みドラピオンは両腕の鋏で【華彩剣】を捕まえると、一度やや後ろに向けて放り投げると尻尾の鋏で捕まえ直し、頭部を180度回転させた。

 

「決めるぜ、ドラピオン!ここが、拳を叩き込みやすい角度!!」

 

「ドラアァッ!!」

 

「奥義!!ヴェノム・デモリッション!!」

 

「ドラララララララララララララララララララッ!!ドォラアアァッ!!」

 

「ロゼーッ!!」

 

「ロズレイドッ!!」

 

両腕の六本の鋏から毒を滴らせつつ、そのまま猛ラッシュを叩き込み相手を滅多打ちにする奥義『ヴェノム・デモリッション』が【華彩剣】に炸裂した。締めの一撃まで打ち込まれた【華彩剣】はそのまま吹っ飛んで倒れこみ、起き上がることはなかった。

 

「ロ……ゼ……」

 

「ロズレイド、戦闘不能。ドラピオンの勝ちだ」

 

「くっ……戻って、ロズレイド……!」

 

ポケモン同士のみなら冷静さで分がある【華彩剣】だが、トレーナーという存在がある以上それも絶対ではない。ここは、極みドラピオンの性格をうまく利用したヒューイに軍配が挙がった。

 

「これが、【極み待ち伏せるドラピオン】!その所以!!待ち伏せるとは即ち息を潜めることにあらず……決定的な瞬間を待ち、雌伏の時を凌ぐ頑強さ!これが【極み待ち伏せるドラピオン】だ!!

 

「なるほど、強い……!次は……あなたに託す!!」

 

「ガッブアァッ!!」

 

ショウが繰り出した四番手は極みガブリアスだ。極みドラピオンと極みガブリアス、極みポケモン同士の対決となった。

 

「ガアアアァァブッ!!」

 

「……ッ!ドラアアアアアッ!!」

 

極みガブリアスが咆哮を轟かせれば、負けじと極みドラピオンも声を上げた。

 

「おぉー!そいつが龍風圧を操るガブリアスか!!話には聞いていたが、本当にクシャルダオラみたいなことをする!」

 

「クシャルダオラ……」

 

「あぁ、龍風圧はあいつの専売特許みたいなもんだからな。うーん、これが生命の神秘ってやつか……モンスターもポケモンも、まだまだ奥が深いぜ」

 

クシャルダオラの名を聞いて、ショウは自然と笑みが浮かんでいた。アルバトリオンとの決戦において、傷を手当した恩を返しに現れたクシャルダオラ。真っ先にそのことを思い出したからだ。

 

「では、バトル開始だ!」

 

「ドラピオン!ミサイルばり!!」

 

「ドラアァァ!!」

 

「ガブリアス!龍風圧、展開!!」

 

「ガブッ!」

 

先手必勝とばかりに放たれたミサイルばりだが、龍風圧に阻まれたことで極みガブリアスにはほとんど届いていない。その様子に、ヒューイはたまらず舌打ちをした。

 

「チッ!クシャルダオラにも弾丸や矢が届かなかったが、それはこっちも同じか……!」

 

「ガブリアス!ドラゴンクロー!!」

 

「ガッブアァ!」

 

「ドラピオン、てっぺきだ!!」

 

「ドラッ!」

 

龍属性エネルギーの赤黒い電撃をオーラにしたドラゴンクローで、一気に突撃し距離を詰める。対する極みドラピオンは防御の構えを取りつつてっぺきでさらに防御力を高めた。

 

「ぶち抜け、ガブリアス!」

 

「ガブアアアァッ!!」

 

「ドッ!?ドラアアァッ!!」

 

「なに!?」

 

防御力が上がっているにも関わらず、極みガブリアスの一撃は極みドラピオンを吹き飛ばした。そのパワーたるや、爪でブレーキをかけても尚、地面を大きく抉り引きずってようやく停止したほどだ。

 

「な、なんつーパワーだ……防御を固めてなかったら、普通に倒されてたぞ……」

 

「アクアブレイク!」

 

「どくづきだ!」

 

「ガアアァブッ!」

 

「ドラアアァッ!」

 

ショウと極みガブリアスもすかさず畳み掛ける。相手の物理防御を下げることもあるアクアブレイクで一気に攻勢に出た。極みドラピオンも高めた防御を活かして攻撃を受け流して反撃するという手段で極みガブリアスに対抗した。

だが、やはり龍風圧という壁は厚く、極みドラピオンは龍風圧の風に流されて何度かバランスを崩しそうになっていた。

 

「くそっ、龍風圧が厄介だな……!」

 

「アイアンヘッド!」

 

「ガブァ!」

 

「ドラッ……!」

 

極みドラピオンの攻撃を受け止めて両腕を抑えると、そのまま引き込み接近したところでアイアンヘッドを叩き込んだ。攻撃が直撃した極みドラピオンはフラフラと体を揺らした後、力なく倒れこんだ。

 

「ドラピオン!」

 

「……ドラピオン、戦闘不能。ガブリアスの勝ちだ」

 

「よしっ」

 

「なんと……いや、本当に強いな……!!」

 

「まだまだ、勝負は始まったばかりですよ」

 

「そうだな……よしっ、俺の次のポケモンは、コイツだ!」

 

「グマアアァァッ!!」

 

ヒューイは再び【青嵐鬼】を繰り出した。気合充分、意気軒昂。極みガブリアスを前にしても怯むどころかむしろやる気満々になっている。

 

「よし……バトル開始だ!」

 

「リングマ!ざんてっそう!!」

 

「ガブリアス!ドラゴンクロー!!」

 

お互いに爪を用いた攻撃を繰り出した。【青嵐鬼】が最初に仕掛け、それを受け止めた極みガブリアスも返しの一撃を見舞う。それを【青嵐鬼】が受け止めると、両者は大きく弾かれた。

 

「「いけぇっ!!」」

 

「グマァッ!!」

 

「ガブァッ!!」

 

力と力による、真正面からのぶつかり合い。【青嵐鬼】が極みガブリアスに攻撃を当てれば、すかさず極みガブリアスもやり返す。両者、一歩も退くことなく攻撃を繰り出し続け、時には頭突きで頭をぶつけ合うとそのままガンを飛ばして睨み合ったりしていた。

 

「(不良の喧嘩だ、コレ)」

 

「おぉおぉ、楽しそうに殴り合うなぁ」

 

「楽しそう!?」

 

「ん?あぁ、ウチのリングマは楽しそうだなぁってさ。闘争心も相当高まっているようでな、強敵を相手にしてる時なんか特にそうだ。見ろ、あの楽しそうな笑顔を!」

 

「グマアアァァッ!!」

 

「(さっぱりわからん!)」

 

再び激しくぶつかり合い、弾かれ合った両者はそのまま大きく距離をとった。

 

「リングマ!きあいだまだ!!」

 

「グウゥ、マアァッ!!」

 

「弾き返せ!」

 

「ガブアァ!!」

 

【青嵐鬼】が放ったきあいだまを、極みガブリアスは爪のひと振りで跳ね返しそのまま【青嵐鬼】へぶつけた。その様子を見て、ヒューイが動きを見せた。

 

「戻れ、リングマ!さぁ、お前の出番だ……行け、エルレイド!」

 

「エルッ!!」

 

ヒューイが繰り出した四匹目はエルレイド。だが、このエルレイドもまた姿が変化していた。

まず、体の緑色の色素が薄まり鮮緑と呼ばれる鮮やかな色合いに変化している。さらに踵から脹脛にかけてわずかに色合いが変化している部分が見られた。瞳の色が青く変化しており、肘の先端が欠けていた。

 

「これは……」

 

「二つ名個体、【守護騎士(しゅごきし)】エルレイド。俺が最初のポケモンの次に捕まえたラルトスから育ててきた個体だ」

 

「…………」モグモグ

 

「ちょっとまって、エルレイド何か食べてません?」

 

「あっ!お前、今度の狩猟用にって取っておいた携帯食料を勝手に食べたな!?」

 

「!?」Σ(゚Д゚;)ギクッ

 

「……ったくよー、アイツとそろってつまみ食い癖ばっかりつきやがって。好きなのはわかるが勝手に食うなっての。ちゃんとお前らの分も用意してやるから」

 

「エルゥ……」(´._.`)

 

反省してます、というように肩を落とす【守護騎士】にヒューイは元よりショウも思わず笑顔になった。強力な個体である【二つ名】に成長しても、根底に宿る性格は変わらない。それを教えてくれる一幕であった。

 

「さぁ、気を取り直していこうか!アカイ、合図頼む!」

 

「やれやれ……では、バトル開始!」

 

「エルレイド!サイコカッター!!」

 

「エレィ!!」

 

「ガブリアス!ドラゴンクロー!!」

 

「ガブァ!!」

 

【守護騎士】はサイコカッターを発動すると、欠けている肘の先端をサイコパワーで補いさらにリーチを伸ばした。そのまま刃を飛ばさずに極みガブリアスのドラゴンクローとぶつかりあった。【守護騎士】の斬撃は極みガブリアスの体に着実にダメージを重ねていく一方、極みガブリアスは度重なる連戦で疲労がたまってきたのか、動きに精彩を欠き始めていた。

 

「(マズイか……)ガブリアス、戻って!」

 

両者が弾かれた瞬間を逃さず、ショウはすかさずガブリアスをボールに戻す。すぐさま繰り出すポケモンを吟味し、選出する。

 

「ミミロップ!」

 

「ミミィー!」

 

再び飛び出した【舞兎】は【守護騎士】を見据えると手足の先に波導を集め、臨戦態勢に入った。

 

「行きます……!はどうだん!!」

 

「ミミィ……ロォー!!」

 

「サイコカッター!」

 

「エルッ!レイッ!」

 

【舞兎】のはどうだんと【守護騎士】のサイコカッターがぶつかり合い、爆発を起こした。次に繰り出す技を判断し、指示を飛ばす。

 

「りゅうのはどう!!」

 

「ミミロオォォー!!」

 

「切り裂け、エルレイド!ヒールリッパー!!」

 

「エルレエェイッ!!」

 

向かってくるりゅうのはどうに対して、【守護騎士】は走り出した。その直後、【守護騎士】の脹脛が展開して刃なると、そのまま回し蹴りを繰り出してりゅうのはどうを一刀両断してしまった。

 

「なぁっ!?」

 

「そのまま叩っ斬れぇ!!」

 

「エレエェイッ!!」

 

「ミィーッ!!」

 

【守護騎士】は勢いそのまま突撃し、今度はもう片方の足も展開すると両足を揃えたサマーソルトキックで【舞兎】を斬り上げた。舞兎は宙を舞い、ショウの後方にまで飛んで行った。

 

「ミミロップ……!」

 

「……ミィ~……」

 

「ミミロップ、戦闘不能。エルレイドの勝ちだ」

 

「ヒールリッパー……二つ名エルレイドの新技……!」

 

「そうさ。【守護騎士】エルレイドは、脹脛を展開することで踵に刃を持つことができる。その刃で敵を蹴り斬るかくとう技……それが、ヒールリッパーだ」

 

「……戻って、ミミロップ……」

 

必殺技を携えた【守護騎士】を相手に、次に誰を出すべきかを考えるショウ。ショウの残りの手持ちは【炎神】ゴウカザル、極みライチュウ、極みガブリアス、極みダイケンキの計四体。対するヒューイは【青嵐鬼】リングマと【守護騎士】エルレイド、そして今だ姿を見せていない二体の計四体。数の上では五分五分だが、ヒューイは極みポケモンを一体失っている。そういう意味ではアドバンテージがあると言えなくもないが、ヒューイの残り二体が極みor二つ名によっては状況がさらに変わる可能性がある。

 

「戻れ、エルレイド」

 

「エル」

 

と、ここでヒューイも入れ替えを選択した。それを受けて、ショウは次に繰り出すポケモンを決めた。

 

「よし……ライチュウ!」

 

「ララララアアアイッ!!」

 

「それじゃ、俺は……コイツだ!!」

 

「ギャラアアアァスッ!!」

 

ヒューイが繰り出したのはギャラドスだ。だが、その姿はショウが知るソレとは大きくかけ離れていた。

体の色は水色から紺碧と呼ぶべき深い色へと変化しており、体中には赤く発光する謎の傷跡が余すことなく刻み込まれていた。

背びれの色の方が水色になっており、さらにメガギャラドスのように二つに分かれているものが背中から尾にかけて翼のように片側四つずつ生えていた。

 

「ギャ、ギャラドス……」

 

「そう……【(きわ)破壊(はかい)するギャラドス】だ」

 

「【極み】……!?」

 

「あぁ、コイツは強くて凄くて……ヤバイぜ?」

 

「グルルル……」

 

見た目からして既にヤバさがにじみ出ている極みギャラドス。ショウは小さく息を飲むと、先制攻撃を仕掛けた。

 

「ライチュウ、でんこうせっか!!」

 

「ラララァイ!」

 

光速で疾走する極みライチュウのでんこうせっかは、真っ直ぐに極みギャラドスへと直撃した。だが、極みギャラドスはまったく堪えた様子がなく、そのまま体をくねらせて極みライチュウを弾き返してしまった。

 

「ラ、ライッ……!」

 

「なんて頑丈な……それなら、10まんボルト!!」

 

「ラアアィチュウウゥッ!!」

 

「かえんほうしゃだ!」

 

「ギャラアァアアッ!!」

 

極みギャラドスのかえんほうしゃは広く広がりつつ極みライチュウの10まんボルトを阻んだ。ショウは一気に決着をつけるべく、奥義の使用を決めた。

 

「(敵が本領を発揮する前に、叩き潰す!!)ライチュウ、奥義装填!!」

 

「ラァイッ!!」

 

電撃を纏ったライチュウが光速で動き、極みギャラドスに何度も体当たりを仕掛けていく。最後に尻尾で足元を払うと真下に潜り込み、両手を極みギャラドスに向けて掲げた。

 

「ボルテージスマッシャー!!」

 

「ラアアアアアアアアアアイッ!!」

 

光の柱と見紛うほどの巨大な雷を相手に叩き込む極みライチュウ最大の奥義「ボルテージスマッシャー」が直撃した。極みギャラドスは大きく吹き飛び、頭から地面に墜落した。間違いなく直撃……ショウは勝利を確信した。

 

「よし!ナイスだよ、ライチュウ!!」

 

「ラララァイ♪」

 

「……あー……喜び勇んでいるところ申し訳ないが、お二人さん?」

 

「「え?/ラ?」」

 

ヒューイに声をかけられ、視線をそちらに向けるショウと極みライチュウ。すると、倒れていた極みギャラドスがゆっくりと体を起こし、ついには完全に起き上がったのだ。

 

「ギャラ」

 

「なっ……まだ、戦える……!?どうして!ギャラドスのタイプは……」

 

「あ、言い忘れてたか……コイツ、ドラゴン単タイプだ」

 

「ドラゴン!?」

 

「ライ!?」

 

まさかの新情報に、二人は驚きを禁じ得なかった。極みライチュウはその特性上、でんき技が通じにくい相手にも等倍以上のダメージを与えられる。ギャラドスが本来のタイプのみず・ひこうなら四倍ダメージで間違いなく確殺であった。だが、それら元のタイプが完全に消滅しドラゴン単タイプとなったことで弱点がなくなり、結果ダメージを抑えることができた、ということだろう。

これがみず・ドラゴンorドラゴン・ひこうだった場合、ダメージは二倍になるので継戦を難しくする程度にはダメージを与えられたかもしれない。

 

「勝ったつもりになったところを、すまんかったな」

 

「……いえ、慢心していたのは事実です。もう油断はしません」

 

「おう、そうしてくれ。……んじゃあ、続けるか!ギャラドス、アクアテール!」

 

「ギャラアアアスッ!!」

 

「ライチュウ!10まんボルト!!」

 

「ラアアィチュウウゥ!!」

 

接近してくる極みギャラドスを近づけまいと、極みライチュウが10まんボルトを放つ。だが、極みギャラドスは体をくねらせ絶妙に回避すると、そのまま一気に極みライチュウとの距離を詰めた。

 

「速いっ……!躱して!!」

 

「ライッ!」

 

「そのままアイアンテール!!」

 

「チュウウゥッ!!」

 

極みライチュウは跳躍してアクアテールを躱すと、アイアンテールを繰り出した。極みギャラドスも勢いそのままにアクアテールを振るい、極みライチュウのアイアンテールと鍔迫り合いに持ち込んだ。

 

「押しきれギャラドス!パワーなら負けねぇ!!」

 

「ギャラアアッ!!」

 

「ラァイッ……!」

 

「しまった……!」

 

「よしっ、そのまま仕留めろ!!」

 

「ギャラアァス!!」

 

「ヂュッ!!」

 

「ライチュウ!」

 

極みギャラドスは尻尾を振り切り、強引に鍔迫り合いを突破した。飛行能力を持たない極みライチュウは体勢を崩し、空中に放り出される形になってしまった。極みギャラドスは飛び上がり、空中で一回転するとそのまま極みライチュウにアクアテールを叩きつけた。

 

「チュ、チュウ~……」

 

「ライチュウ、戦闘不能。ギャラドスの勝ちだ」

 

「戻って、ライチュウ!」

 

勢いよく地面に叩きつけられた極みライチュウはそのまま戦闘不能。ショウは戻すと同時にボールを手に取り、次のポケモンを繰り出した。

 

「ガブリアス!!」

 

「ガッブアアァッ!!」

 

極みガブリアスと極みギャラドスの、極みドラゴン対決。竜として最高の力を手にしたガブリアスと、竜に例えられながら真に竜と化したギャラドス。お互いに相手の実力を把握したのか、睨み合うだけで言葉ひとつ発することがない。

 

「(ガブリアスは連戦が続いている……長期戦に持ち込まれるとこっちが不利だ)」

 

「(なんとか耐えたが、あの奥義の一撃はかなりデカイ。誤魔化しちゃいるが、短期決戦で攻められると厄介だな)」

 

「(なるべく、一撃で仕留める!)」

 

「(近づかれるまでは、上手く攻撃を躱していくか)」

 

「……バトル開始!」

 

「ギャラドス!かえんほうしゃだ!!」

 

「ギャラアアス!!」

 

「……!アクアブレイク!!」

 

「ガアアァブッ!!」

 

極みギャラドスがかえんほうしゃを放ってきたことから、ショウは相手方も実は余裕がないのでは、と予想した。そして、ほのお技を見てからすぐにみず技を選択する。

水の力を纏った極みガブリアスはかえんほうしゃを突破していき、ついに極みギャラドスの下までたどり着いた。

 

「ドラゴンクロー!!」

 

「げきりんだ!!」

 

「ガブアアァッ!!」

 

「ギャラアァッ!!」

 

極みガブリアスのドラゴンクローが極みギャラドスを切り裂けば、すかさず極みギャラドスが反撃に尻尾や体当たりで攻撃を仕掛ける。お互いに弱点であるドラゴン技同士のぶつかり合いによって、凄まじい勢いで体力が削られていく。

 

「ここは一か八か……ガブリアス!」

 

「奥義にかけるか!ギャラドス!」

 

「「奥義装填!!」」

 

トレーナーの指示を受けガブリアスは龍属性エネルギーを纏いつつ天高く飛翔した。ギャラドスもドラゴンパワーを全身から滾らせ、それら全てを口元に収束していった。

 

「アブソリュートドラゴンストーム!!」

 

終末のはかいこうせん(ジ・エンド・オブ・デストラクター)!!」

 

「ガアアァブアアアアァァッ!!」

 

「ギャラアアアァァァァァッ!!」

 

空から猛烈な勢いで突撃を仕掛ける極みガブリアスに対し、極みギャラドスはドス黒いはかいこうせんのようなビームを放った。さらに自ら自発的に跳躍し、極みガブリアスに突撃していきながら、だ。

両者の距離がゼロになった直後、巨大な爆発が起こった。おそらく、この爆音と爆風はコトブキムラにまで届いていることだろう。ショウとヒューイも顔を守りながら、地震のポケモンの安否を見守る。やがて煙の中から二つの影が姿を見せると、そのまま二体揃って地上に落下した。

 

「ガ、ブ……」

 

「ギャラァ……」

 

「……ふむ。ガブリアス、ギャラドス、共に戦闘不能」

 

「あ、相打ち……戻って、ガブリアス」

 

「サンキュー、ギャラドス。おつかれさん」

 

二人はそろってポケモンを戻し、そしてそろってポケモンを繰り出した。

 

「ゴウカザル!」

 

「ウキャア!!」

 

「リングマ!」

 

「グマァ!」

 

ショウは【炎神】、ヒューイは【青嵐鬼】を繰り出した。ショウの残りは【炎神】と極みダイケンキのみ。ヒューイも【青嵐鬼】と【守護騎士】、そしてもう一匹を残すのみとなった。

 

「速攻で、カタをつける!!」

 

「そうはさせねぇよ!リングマ!きあいだまだ!!」

 

「グマァ!!」

 

「ゴウカザル、マッハパンチ!!」

 

「ウッキャア!!」

 

後に控えている相手のことを考え、ショウは速攻を選んだ。ヒューイもさせじと特殊技を指示して遠距離攻撃を仕掛けるが、【炎神】のマッハパンチで懐に飛び込まれた【青嵐鬼】はそのままマッハパンチを喰らった。

 

「グマァ……!」

 

「なに!」

 

「かかとおとし!!」

 

「ウッキャ!」

 

「グマアアアッ!!」

 

「止め……!マッハパンチ!!」

 

「ゴウッカアァッ!!」

 

マッハパンチを喰らってからは、連撃が続いた。反撃の隙を与えることなく繰り出されたかかとおとし、止めのマッハパンチによるアッパーカットの、弱点連続攻撃をまともに食らった【青嵐鬼】は一歩、二歩と後退し……そのまま仰向けに倒れ込んだ。

 

「リングマ、戦闘不能。ゴウカザルの勝ちだ」

 

「さすが、やるな……!それじゃ……エルレイド!!」

 

「エルレィ!」

 

ヒューイは【青嵐鬼】をボールに戻しつつ、【守護騎士】を繰り出した。この【守護騎士】を倒せば、ヒューイの残りは未だ姿を見せていない一匹のみとなる。

 

「いくよ……ゴウカザル!」

 

「ゴウカッ!」

 

「やるぞ、エルレイド!」

 

「エルッ!」

 

「ほのおのパンチ!」

 

「サイコカッター!」

 

【炎神】のほのおのパンチと、【守護騎士】のサイコカッターが激しく打ち合う。実力のほどはほぼ互角。均衡が崩れれば、一気に攻め込まれることだろう。

 

「……っ!かかとおとし!!」

 

「ゴウカァ!!」

 

「ヒールリッパー!」

 

「エレェイ!!」

 

振り下ろされる足と、振り上げられる足。二つの技が同時に繰り出され、火花を散らしてぶつかりあった。

このぶつかり合いは【守護騎士】に軍配が挙がった。【守護騎士】が足を振り切り、【炎神】は回転しながら後方へ跳び、そのまま着地を決めた。

 

「ほのおのパンチ!打ち出せ!!」

 

「ウキッ!ゴウカアァ!!」

 

「サイコカッターだ!!」

 

「エルレェエイ!!」

 

【炎神】が拳から炎を打ち出せば、【守護騎士】も念力の刃を発射した。サイコカッターは炎を切り裂いて突き進み、【炎神】に直撃した。

 

「ウギャアァッ!!」

 

「ゴ、ゴウカザル!!」

 

「……ゴウカザル、戦闘不能。エルレイドの勝ちだ」

 

「くっ……!戻って、ゴウカザル……!」

 

「よぉし。最後の一体だな、ショウ!」

 

「えぇ……ですが、この子は私のパーティの中でも、最強の子!出てきて!ダイケンキ!!」

 

「…………」

 

ショウに残された最後の一体、極みダイケンキが戦場に降り立った。その眼差しに睨まれた【守護騎士】は小さく息を飲んだ。

 

「ほぉ、これは……あぁ、確かに強いな。こいつは」

 

「さぁ……この子で残り二体、狩らせてもらいます」

 

「やってみな!エルレイド、リーフブレードだ!」

 

「エルレェエイ!!」

 

「ダイケンキ!アクアカッター!!」

 

「……!!」

 

肘の刀を伸ばす【守護騎士】と、アシガタナを抜刀して水を纏わせた極みダイケンキの剣技がぶつかり合った。極みダイケンキが新たに獲得した新技「アクアカッター」はみずタイプの技。くさ技であるリーフブレードとはタイプ相性的には不利だ。だが、極みダイケンキが扱う剣技は、普通ではない。一見すると互角に見えるが、徐々に【守護騎士】が押され始めた。

 

「……っ!剣術は向こうが一枚上手か!!」

 

「切り裂けダイケンキ!ひけん・ちえなみ!!」

 

「!!」

 

「エルウゥッ!!」

 

「エルレイド!!」

 

一拍。まさにその一瞬とも言うべき間で、極みダイケンキは技を繰り出して【守護騎士】に直撃させた。無数の斬撃に晒された【守護騎士】はその一撃を耐え切れず、あえなくダウンした。

 

「エルレイド、戦闘不能。ダイケンキの勝ちだ」

 

「かぁー……やはり、何度もバトルに出してたらダメージ的にこうなるか……戻れ」

 

「ようやく、最後の一体ですね」

 

「だなぁ。……ふっ、まさかあの博士が連れてきたポケモン同士でトリを飾るとはな」

 

「……!まさか!!」

 

「そう!俺の最後のポケモンは……こいつだぁ!!」

 

天高くボールを投げ、その中からポケモンが飛び出した。

首周りの紫の炎が全身を包み込むローブを形成、それを手に取り羽織ると周囲をいくつもの霊魂が漂い始めた。

 

「【(きわ)(いざな)うバクフーン】!!」

 

「フゥー……」

 

「バクフーン……!!」

 

かつて、ショウは誰かがバクフーンを極み個体に育てているのではないかと想像したことがあったが、ここでソレが的中してしまった。

極みダイケンキは、目の前の極みバクフーンがかつて共にヒスイ地方へ連れてこられた個体だと気づいたようで、珍しくキョトンとした表情を浮かべていた。それに対して、極みバクフーンも嬉しそうに笑みを深めていく。

 

「さあ……ラストバトルと行こうぜ!!」

 

「えぇ……望むところです!!」

 

「では……バトル開始!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショウとヒューイのバトルが決着に向かおうとしていた頃、コトブキムラではテルと共にハンター達が黒曜の原野から戻ってきていた。

 

「いやぁ、モンスターボール!すごい技術だ、これがあったら捕獲クエストが随分と楽になるぞ」

 

「ですわね。わざわざ罠に掛けて、捕獲用麻酔玉を用意しなくていい分、とても楽ですわ」

 

「…………」

 

「よかったな、シズカ。捕まえたいポケモンが捕まえられて。そんなに嬉しいかったか?」

 

「なっ、なっ!?べ、別に私、なんでもないです……!」

 

「(動揺してる。図星なんだなぁ)」

 

「(姉様が今日もか"わ"い"い"ッ!!)」

 

相変わらずテンションの高いシズカだったが、ふと放牧場が目にとまり足を止めた。それにあわせてニールたちも足を止めた。

 

「……テルくん、ちょっと放牧場に寄って行っても?ここにモンスターたちが放し飼いされていると、シュラークさんから聞いてね」

 

「え……?あぁ、いいですよ。おれも付き合います」

 

「助かるよ」

 

テルの案内で、放牧場内を練り歩くことが決定した。しばらく歩いていると、早速モンスターたちの姿が見えてきた。

 

「おぉ、ドスジャギィにドスフロギィ、それにドスバギィだ」

 

「ホロロホルルに……あれは、カムラの里近辺の狩場で発見されたゴシャハギ……」

 

「オドガロン亜種!?いつの間に新大陸にも時空の裂け目が開いていたんだ……」

 

トレーナー達が手持ちとして連れ歩いていた個体以外で、ヒスイ地方に飛ばされていたモンスターたちを見て、各々が反応を示した。ただ、一人だけ黙ったままのシズカは他にモンスターがいないかどうかを確認するように辺りを見渡していた。

 

「モンスターはこれだけ?」

 

「いや、多分あっちの方に……あ、いた!」

 

テルが放牧場内に人影を見つけて、そちらへ走っていった。シズカも後に続き、少し遅れてニールたちも続いた。

 

「ヨネさん、ガラナさん、ワサビさん!」

 

「あぁ、テル。久しぶりだね」

 

「お久しぶりです、テルさま」

 

「久しぶりー!」

 

そこにはコンゴウ団キャプテンのヨネとワサビ、シンジュ団キャプテンのガラナがいた。三人が見つめる先には、五頭のモンスターが揃っている。

 

「どうですか、彼らの様子は」

 

「いつもどおりの仲良しさん、だよ。いや、むしろ仲が良すぎるくらいさ」

 

「まるで、十年来の友と出会ったようでしたね」

 

「あの五頭は友達だもん、当然だよ!」

 

「五頭?」

 

「ほら、あそこの……ジンオウガ、リオレウス、グラビモス、ベリオロス、ラギアクルス達ですよ」

 

「……ラギア……クルス……」

 

シズカたちが見つめる先には、テルがさきほど説明した五頭のモンスター達が集まっていた。

何か、うんうんと頭を悩ませるように首をひねるラギアクルス。そんなラギアクルスに陽気な雰囲気で話しかけるのはベリオロスとリオレウスだ。だが、そんな二体に対して拒否するように首を振るラギアクルス。すると、今度はグラビモスが歩み寄り、器用に翼でラギアクルスの頭をポンポンと叩き始めた。

慰めるようなその動きにラギアクルスも小さく息をつく……と、ここでベリオロスがなにか閃いたように頭を上げると、そのままラギアクルスに何か話しながら近寄った。……その直後、ラギアクルスに角でどつかれた。何故か急に怒り出したラギアクルスに、ベリオロスが平謝りしている。それを笑うリオレウスとグラビモスに、呆れたように大あくびをして終始状況を見守っていたジンオウガ。

 

「……確かに、驚くほど仲がいいな」

 

「いずれのモンスターも、生態系が異なるというのに……」

 

「一体どういうつながりなのやら……」

 

「…………」

 

「……シズカ?」

 

ニールたちが五頭の関係について考えを巡らせていると、徐にシズカが動き始めた。五頭がいる方へ一歩、また一歩と近づいていく。

と、ここでジンオウガがシズカに気がついた。急に頭を上げたジンオウガに気づいたグラビモスもまた、シズカの存在に気がついた。何事か、とベリオロスとリオレウスもそちらを見やる。なぜか四頭は揃いも揃って「あ……」と言いたげな顔で硬直していた。と、ここでラギアクルスも振り返ろうとして……グラビモスに頭を押さえつけられた。ジタバタともがくラギアクルスを、懸命に押さえつけるグラビモス。まるで「見てはいけない」とばかりに制しているが、構わずシズカは近づいていく。

そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さん?」

 

「Σ( □ ) ° °」ビックゥッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ラギアクルス、ではなく、兄さん。そう呼びかけられたにも関わらず、ラギアクルスは盛大に体をはね上げて反応した。そっと、抑えていたラギアクルスの頭を離すグラビモス。恐る恐るといった様子で振り返ったラギアクルスがシズカを捉えると……。

 

「ε=ε=┏(; ・Д・)┛」ダダダダダダ!!

 

「……ッ!!待って!!」

 

爆速でその場から逃走した。水中ではないとはいえ、巨体のラギアクルスが全力で走ればかなりの速度になる。人間が追いつくのは到底不可能だ。それでもシズカは追いかけようとして……ジンオウガに行く手を阻まれた。

 

「……!なにを……!!」

 

「ワウワン……」フルフル

 

「グオン」コクッ

 

まるで、「やめとけ」とばかりにシズカを止めるジンオウガとリオレウス。なんとなく二頭が言いたいことがわかったのか、シズカは逸る気持ちを抑えて深呼吸をした。だが、それと同時に何かを確信したような表情になった。

 

「……そう、そういうこと。……みんな、ここにいたんだ。ずるいよ、どうして教えてくれなかったの……?」

 

「ワン……」(;¬_¬)

 

「グオ……」(;¬_¬)

 

「ヴー……」(;¬_¬)

 

「ガオ……」(;¬_¬)

 

「……ふーん、みんなグルだったわけだ……ふーん……」

 

「「「「((((;゚Д゚))))」」」」ガクブルガクブル

 

シズカが尋ねると、全員が一斉に目を逸らした。それを受けて一瞬で目のハイライトが消えたシズカを見て、ジンオウガたちは一斉に震え上がった。

 

「おーい、シズカー」

 

「……また、後で来ます。……絶対に、逃がさないでね……?」

 

「「「「(・・;)」」」」コクコク

 

ニールが駆け寄ってきたので、シズカは一旦話を切り上げることにした。……最後に、脅しつけるように約束を取り付けることを忘れずに。それから踵を返してニールと合流した。

 

「急にどうしたんだ?テルくんが驚いてたぞ、ラギアクルスがあんな風に逃げ出すなんてって」

 

「多分、私が着ている防具が原因かもしれませんね。ほら、彼にとっては同族を狩ったハンターですし」

 

「……まぁ、あいつらは普通のモンスターよりずっと賢いらしいし、その辺を理解できてたのか……」

 

「かもしれませんね」

 

息をするように嘘をつくシズカだが、好いた女を疑うつもりがないのかニールは素直に信じきっていた。

そのまま、テルたちの下へ戻っていく。ただ、シズカはしばらくラギアクルスが逃げていった先を見つめてから、戻っていった。

 

 

 

 




はい、途中で話を切って次回こそは決着&再会になるはずです!!
ホント、時間ギリギリまで粘るからこんなトラブルに遭うのか……もっと余裕を持って投稿できるようにスケジュールを管理しなければ……。


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極みダイケンキVS極みバクフーン!!~兄妹の再会とともに~

いよいよ決着、そして……。




野外訓練場で行われているショウとヒューイのポケモンバトルも、いよいよ最終戦にもつれ込んだ。繰り出されたポケモンは双方にとっての最強のパートナー。ショウの極み断ち斬るダイケンキと、ヒューイの極み誘うバクフーン……ラベン博士がヒスイ地方に持ち込んだ別地方のポケモン達が成長し、進化し、極みへ至った。テルが持つ極み射狩るジュナイパーと合わせて、三体全てが極み個体へと成長したのだ。その事実を実感したショウは、胸の奥から熱い感情が溢れていた。

 

「……不思議ですね。ミジュマルも、モクローも……ヒノアラシも、全てラベン博士が連れてきたポケモンたち。そんな彼らが、ここヒスイ地方で強力な個体へと成長した。なんだか、偶然じゃないような気がします」

 

「お?モクローっつったら、俺がまだ会ってないポケモンだな。へぇー、そいつも極み個体になってんのか……是非、会ってみてぇな。なぁ、バクフーン」

 

「フフンッ」

 

極みバクフーンも、共に連れてこられた同志が自身と同じ高みにいると知って、楽しそうに微笑んだ。普段は黙して語らず無表情を貫く極みダイケンキも、肩の力を抜いて破顔していた。

 

「よっしゃ!せっかくの旧友の再会、言葉で語らいたいところだが……ここは戦場、バトルの場!ここからは戦いで語ろうぜ!」

 

「いいですよ。ダイケンキも、バクフーンの力を知りたくてウズウズしているみたいですから!」

 

「…………」コクッ

 

「では、始めよう。……バトル、開始!!」

 

 

 

 

推奨BGM

【OK!】~ポケットモンスター(アニメ)~

 

 

 

 

「タイプ相性で不利だろうが、それを覆すのが勝負の醍醐味!バクフーン、きあいだまだ!!」

 

「バクッ、フー!」

 

「ダイケンキ、つばめがえし!!」

 

「!!」

 

極みバクフーンが先制で仕掛けたきあいだまを、極みダイケンキのつばめがえしが両断した。背後で爆発したきあいだまの爆風を背に受け加速すると、そのまま一気に極みバクフーンとの距離を詰めた。そのまま二撃目を繰り出すが、斬り上げで放った斬撃はギリギリまで引きつけてから上体を反らされて回避された。

 

「くっ……」

 

「初撃と追撃の二撃、二つ揃ってのつばめがえしだ。どちらかが欠けた状態で、わざわざ当たってやるものかよ。ひゃっきやこう!」

 

「フー……」

 

「……!」

 

極みバクフーンが数個の火の玉を放つと、極みダイケンキは素早く飛び退りつつアシガタナを抜刀。両手に持った二刀流で火の玉を迎撃しつつ後退していった。

 

「やるねぇ、そうでなくっちゃな!」

 

「今度はこちらから……!どくづき!!」

 

「!」

 

極みダイケンキは走り出し、そのまま抜刀しつつアシガタナに毒を纏わせ始めた。

 

「かえんほうしゃ!」

 

「フーンッ!」

 

「投げろっ!」

 

「シッ……!!」

 

接近する極みダイケンキを近づけまいと、かえんほうしゃを放つ極みバクフーン。だが、ショウの指示を受けた極みダイケンキはアシガタナを投擲するとかえんほうしゃとぶつけ合い、相殺してしまったのだ。爆発が起こる中、これにはヒューイも感心深く声を上げた。

 

「へぇ……!」

 

「アクアカッター!!」

 

「ルシッ……!」

 

極みダイケンキはかえんほうしゃとの相殺で撃ち落とされたアシガタナを拾い上げつつ、煙の中を突っ切った。煙幕から飛び出した時には既に攻撃態勢に入っており、そのままアクアカッターが極みバクフーンに命中した。

 

「クウゥッ……!」

 

「好き勝手させるかよ!!」

 

「バクッ!」

 

「ッ!」

 

効果は抜群のみず技を急所に受けた極みバクフーンだが、即座にアシガタナを掴むと極みダイケンキの動きを封じ込めた。

 

「俺のバクフーンが何もしないまま、ただじっとしていたと思うか?」

 

「なにっ……?」

 

煙が晴れたことで、ショウもポケモンたちの状況を確認することができた。アシガタナを掴んで極みダイケンキの動きを抑える極みバクフーンだが、炎噴出器官が仄かに光を帯びている様子を見て、何か技を放とうとしていることを察知した。

 

「ダイケンキ!離れて!!」

 

「ぶち込めやぁ!ソーラービーム!!」

 

「バーク……フウゥゥン!!」

 

「ルジャアァァァ……ッ!!」

 

「ソーラービーム……!?」

 

極みバクフーンはただじっとしていたわけでも、甘んじて攻撃を受けたわけでもなかった。技の発動にチャージを有するソーラービームの発射態勢に入っていたのだ。そこへ極みダイケンキが接近してきたので、捕まえて動きを封じていたのだ。

ショウの指示で咄嗟にアシガタナを手放し距離を離そうとするも、時すでに遅し。ソーラービームは放たれ、至近距離で直撃した極みダイケンキはそのまま押し込まれてしまった。訓練場に突き立っている岩に激突し、そこで爆発が起こった。

 

「ダイケンキッ!!」

 

「……ル、シ」

 

「ホッ……」

 

極みダイケンキは膝をついていたが、すぐに四肢で立ち上がった。ダメージは大きかったが、戦闘に支障はないようだ。そのことにショウは安堵の息をこぼす。

 

「おーおー、あの距離で直撃したのにまだ立てるのか。大したもんだぜ、ショウのダイケンキ」

 

「……そちらこそ。まさかソーラービームを確実に当てるためとはいえ、弱点技を受けるとは」

 

「はははっ。……とはいえ、楽に済むダメージではなかったがな。お互い、苦手技の直撃をもらったところで仕切り直しと行こうか」

 

「いいですとも」

 

極みダイケンキが歩いてショウの前に出てくるまで、しばし小休憩。その間、極みバクフーンは極みダイケンキが手放したアシガタナを足元に落としていた。

 

「シーッ……」

 

「ダイケンキ、大丈夫?」

 

「ルシ」

 

「……フゥーン」

 

威風堂々。まるで「ソーラービームの直撃なんぞなかった」と言わんばかりの立ち居振る舞いに、極みバクフーンも「そう来なくっちゃ面白くない」と言う風にますます笑みを深めていった。

 

「んじゃ、今度はこっちから行くぜ」

 

「お願いします」

 

「よっしゃ!バクフーン、かえんほうしゃだ!!」

 

「バークッ!」

 

「躱して!」

 

「…………」

 

迫り来るかえんほうしゃをステップ移動で次々と回避していき、徐々にだが極みバクフーンとの距離を詰めていく。極みバクフーンもそれを分かっているからか、ただ直線上に放つのではなく時折だが首を振って薙ぎ払うように火炎を撒いていた。

 

「ひゃっきやこう!」

 

「ひけん・ちえなみ!」

 

極みバクフーンが炎のローブを翻すと、最初に放ったときよりも大量に増えた無数の火の玉が一瞬で出現し、一斉に極みダイケンキへと迫った。極みダイケンキも即座にアシガタナを抜刀して一閃、その一振りによって発生した無数の斬撃が続々と迫り来る火の玉を次々に斬り伏せていった。

 

「おー、やってるなー」

 

「……ん?なんだ、お前たちか」

 

「あぁ、ここでヒューイ殿とショウが勝負をしていると聞いてな」

 

「せっかくですから、ポケモン勝負とやらを見学させていただこうと思ったのですわ」

 

と、ここで野外訓練場にテルに連れられたニールたちがやってきた。どうやらバトルの話を聞き付けてきたらしい。と、ここでシズカがアカイに近づいていく。

 

「アカイ……いえ、バルカン」

 

「……ふむ、俺をその名で呼ぶか。なんだ?」

 

「話がある。……兄さん達について」

 

「いいだろう、このバトルが終わったらな」

 

「ん」

 

ところどころを小声で話していたので全員には全ては聞こえなかったようだが、シズカはアカイに話があるらしい。約束を取り付けると、シズカはニールの傍まで下がった。

 

「どうしたんだ?」

 

「ちょっと、内緒話を」

 

「ん、聞かないでおくよ。……それにしても、すごいな。これがポケモン勝負か」

 

「あんな小さな生き物がこれだけ派手に勝負するんですから、アタシ達がよく知るモンスターたちのソレはどれだけの規模になるのやら……」

 

「む、ショウとそのパートナーが動いたな」

 

シュラークの言うとおり、ここでショウ達が仕掛けた。

極みダイケンキがアクアカッターにより水を纏わせたアシガタナを投擲し、極みバクフーンが放ったかえんほうしゃにぶつけたのだ。一瞬で水蒸気があたりを包む中、紛れるように移動した極みダイケンキが懐に飛び込むとつばめがえしでダメージを与えた。斬り上げつつ飛び上がり、そのまま落下の勢いとともに放つ斬り下ろしの二段攻撃で連撃を叩き込むと、反撃とばかりに極みバクフーンがきあいだまを放った。アシガタナ二本で受け止めるも押し込まれ、距離が空いてしまった。咄嗟にきあいだまを後方へ受け流すと跳躍、ひけん・ちえなみで上空から急襲を仕掛けた。

ところが、ここでヒューイと極みバクフーンが思いもよらぬ行動に出た。なんと、極みバクフーンが纏っている炎のローブを脱ぐと細い布状へと変化させそれを伸ばしてアシガタナを絡め取ってしまったのだ。そのまま引っ張られたことで体勢を崩した極みダイケンキは地面に激突し、更に勢いよく振り回されジャイアントスイングの要領で投げ飛ばされてしまった。そこへ追撃のきあいだまが放たれるも、ここはなんとか体勢を整えた極みダイケンキが逆さ状態で放った二刀によるつばめがえしできあいだまを両断し迎撃した。

どうやら極みバクフーンが纏う炎のローブは霊力に応じて伸縮・硬軟が自在に変化するものであるらしく、「切る技」に同等の切断能力を有するほか、捻って棒状にしたり、先ほどのように相手を絡めとることもできる優れモノ。また、霊力によって燃える炎で出来ているためみず技には弱いがほのおタイプが半減で受けられるタイプ技に対する防御性能はピカイチで、さらにローブからもほのお技・ゴースト技を放つこともできる。ローブを翻して放ったひゃっきやこうが一瞬で無数の火の玉を放ったのには、こういったカラクリがあったのだ。

 

「(チートかよ、おい。台パン不可避じゃん)」

 

ヒューイからの説明を受けて、本来の(ゲーム的な)性能を知るシズカは内心で呆れを通り越して何かを悟ったような表情で戦局を見守っていた。

 

「強い、ですね」

 

「おう、ショウもな!さすがは歴戦の戦士だ。腕が違うね、腕が」

 

「でも、ヒューイさんだってすごいですよ。本当に入団して数ヶ月の実力ですか?実際の年月の三倍以上の努力は必要な気がしますよ」

 

「ハッハッハ!案外、俺ってセンスがあったのかもな!」

 

「(センス一つでどうにかなるものか、この化物野郎が)」

 

「……ん?どうした、アカイ?」

 

「なんでもねえよ」

 

伊達に祖龍を相打ち同然に狩猟したわけではない、ということだろう。何をやらせてもだいたい何とかなってしまうヒューイの才能にアカイ……ミラバルカンは内心で激しく毒づいた。……直後、直感したのか、ヒューイに話しかけられると即座に誤魔化していた。

 

「さあ、そろそろお互いのポケモンもバテてきたところだ……決着を付けよう」

 

「バクフーッ!」

 

「望むところです!」

 

「ルシァッ」

 

 

 

 

推奨BGM

【タイプ:ワイルド】~ポケットモンスター(アニメ)~

 

 

 

 

「バクフーン!ひゃっきやこう!!」

 

「バークッ!」

 

「ダイケンキ!つばめがえし!!」

 

「!!」

 

極みバクフーンがローブから大量の火の玉を一斉に放ち、極みダイケンキを取り囲んで全方位から攻撃を仕掛けた。それに対して極みダイケンキも二刀流つばめがえしで次々と火の玉を迎撃する。その間、ショウは極みバクフーンの様子を見ていた。

炎噴出器官が、再び光を帯びている。極みバクフーンがソーラービームの準備に入っていることに気づき、極みダイケンキに声をかけた。

 

「ダイケンキ!ソーラービームが来るっ!!」

 

「……!!」

 

「ソーラービーム、発射ァ!!」

 

「バーク……フウゥゥン!!」

 

再び放たれたソーラービーム、直撃しようものなら戦闘不能は必至だ。だが、ショウと極みダイケンキにとっては、当たる当たらないはどうでもいい。

向かってくるなら、斬り捨てるのみだからだ。

 

「叩っ斬れぇ!!」

 

「ルッシャア!!」

 

両手による渾身の唐竹割り。その一太刀によって、ソーラービームは真っ二つに裂けてしまった。

 

「なんだと!?」

 

「バクッ……!」

 

「ダイケンキ!奥義装填!!」

 

「ルシャ!」

 

「……へへっ、ははははは!!バクフーン!奥義装填!!」

 

「バクァ!」

 

「ヒスイの地に眠りし霊魂よ!果てし無き歳月とともに積み上げられし数多の魂魄よ!!今ここに集いて我が力となれ!!」

 

「剣は抜かずに済めば無事太平……抜いたからには、一刀両断!友が打ち鍛えし我が相棒の太刀に断てぬものなし!!」

 

極みダイケンキは第三のカタナを抜刀し大量の水を纏わせ、ゆっくりと構えを取った。一方、極みバクフーンはローブを脱ぐとこれまでよりもより一層炎を燃え上がらせた。それによってローブに大量の霊魂が集まり始め、やがて巨大な球体を形成したのだ。巨大霊球を頭上に掲げ、攻撃態勢に入った。

 

百鬼(ひゃっき)三界(さんかい)万霊(ばんれい)()(こう)!!」

 

「絶剣・波濤!!」

 

「バクッ!フウゥアアアァッ!!」

 

「ルッシャアアアァァァァッ!!」

 

一気に接近し頭上を取った極みダイケンキが、一息でカタナを振り下ろした。それに合わせる形で、極みバクフーンも巨大霊球を極みダイケンキ目掛けてぶん投げた。巨大太刀と巨大霊球がぶつかり合い、力の奔流が溢れ出して周囲のものを吹き飛ばし始めた。

 

「うおぉっ!?」

 

「あ、あんな小さな体のどこに、こんな力が……!?」

 

「こいつは……すごいな……!」

 

「(ポケモンの極み個体……!モンハンほどじゃないって考えは浅はかだったか!!)」

 

ニールたちも思わず顔を守りながらその場に踏ん張る。平然としているのはアカイと戦っているポケモンのトレーナーのみだ。

押し、押され。両者の力が拮抗する中、ついにぶつかり合いは限界を迎えて大爆発を起こした。

 

「ど、どうなった……!?」

 

ニールの呟きはその場でバトルを見ていた全員の総意であった。やがて煙が晴れると、極みダイケンキも極みバクフーンもボロボロの状態になって立っていた。

 

「…………」(・_・ )

 

「…………」( ・_・)

 

「……フーン」(・д・ )

 

「ルシャ」(  ̄ー ̄)

 

「……バクゥ」(^_^ )

 

二言、三言ほど言葉を交わした二匹のポケモン。話が終わると、極みバクフーンがゆっくりと仰向けに倒れ込んだ。その顔に、満足気な笑みを浮かべたまま。

 

「……バクフーン、戦闘不能!ダイケンキの勝ち!よって勝者……ショウ!!」

 

「……っ!ふぅ……!!」

 

「……ハッ。本当に……大した娘だぜ」

 

アカイの審判によって勝利が確定すると、極みダイケンキもやっと膝をついた。どうやらたっているだけでもギリギリだったらしい。そんな極みダイケンキに近づき、ショウは体を撫でてあげると勝利を労った。

 

「ありがとう、ダイケンキ。貴方のおかげで、私はまた勝てた」

 

「ルシ」

 

「……うん、そうだね。私達みんなの、だね」

 

「お疲れさん、バクフーン。最高だよ、お前さんは。俺の最高のパートナーだ」

 

「フーン」

 

お互いにパートナーを労うと、今度はトレーナー同士が握手を交わした。

 

「さすが、ギンガ団の中でもトップクラスの実力者だ。正直、イイ線いってたと思ったんだけどなぁ」

 

「それはこっちのセリフですよ。タイプ相性ではこっちが有利なのに、ほとんど互角以上のバトルに持ち込まれちゃったんですから」

 

「へへっ、伊達に鍛えちゃないんでね。……こいつらの力があれば、今度こそナルガクルガ希少種にも勝てるはずだ。次の霧の夜、絶対に勝とうぜ」

 

「もちろん!」

 

二人が話し終えるタイミングを見計らって、テルたちもショウとヒューイの下へ歩いてきた。それに気づいたショウが手を挙げると、テルが応えるように手を挙げた。

 

「先輩、来てたんですか」

 

「あぁ。……すごいな、ショウは。おれも、うかうかしてらんないや。みんなと特訓をして、ジュナイパーみたいに強くしないと!」

 

「先輩の極みジュナイパーとのバトルも、楽しみにしていますね!」

 

「おう!期待して待っててくれ!」

 

一方、ヒューイの下にはニール達が集まっていた。

 

「流石はヒューイ殿。狩猟技術だけでなく、ポケモンの手腕も人並み外れて凄いですね」

 

「正直な話……自分で戦わないってのはどうも釈然としなかったんだが、慣れたらほれこの通りよ。お前らも自分のポケモンを捕まえたんだろ?いい機会だから、ポケモンと触れ合ってみな。向こうの世界のことも含めて、改めて命との向き合い方ってやつを教えてくれるからよ」

 

「……ですね。そうします」

 

「あ、皆さんポケモンを捕まえたんですね」

 

話が聞こえていたようで、ショウとテルも会話に加わった。代表してシズカが頷き返答した。

 

「うん、まぁね。まさか、大大大発生って現象に巻き込まれるとは思わなかったけど」

 

「大大大発生!?大丈夫でしたか……?」

 

「えぇ、平気よ。その大大大発生で出てきたゾロアってポケモンをニールさんが捕まえたの(こういう時、知らないふりをするってしんどいなぁ)」

 

「ゾロアを……凄いですね、ニールさん」

 

「そんな、たまたまさ。将来性で言えば、ネネくんのポケモンの方が凄そうだけどな」

 

「ネネさんは一体何を?」

 

「コイキングですわ。たまたま黒曜の滝で休憩していたら近寄ってきたので……けど、あんな間抜け面の魚のどこに将来性が……」

 

「ありますよ。……えぇ、ありますよ」

 

この時、ショウはクロノのメガシンカパーティを全タテした母のギャラドスの姿が脳裏をよぎっていた。実際、強い。

 

「まぁ、ポケモンに関してはベテランなショウさんが言うなら、信じますけど……」

 

「シュラークさんとシズカさんはどうでした?」

 

「俺は一際でっかいストライクってポケモンだ」

 

「一際でっかい……それって、まさかオヤブン!?」

 

「あぁ、テルくんがそう言ってたね。……いきなり襲いかかってきたんで咄嗟にスラアクで迎撃したんだが、なぜか気に入られちゃってね。そのまま捕獲されてもらったんだ」

 

「えぇ~……」

 

どうやらオヤブンストライクに襲われた際に反射的に武器を抜いたところ、その武器――スラッシュアックス――を見たオヤブンストライクがスラッシュアックスを気に入ってしまい、演舞を披露したところその担い手であるシュラークにも無条件で懐いてしまったそうだ。

とんでもない方法でオヤブン個体を捕獲したシュラークに対し、息を潜めて不意を突き隠密同然に捕獲したショウは軽く引いていた。

 

「それで、シズカさんは?」

 

「私は、イーブイを」

 

「イーブイ!いいですね」

 

「あぁ、実に良かったよ。ショウにも見てもらいたかったよ、ポケモンを目の当たりにしたシズカの姿」

 

「ちょ!!」

 

「その話、詳しく」

 

ニールがそんなことを言いだしたかと思うと、シズカが露骨に慌て始めた。そのことから面白い話が聞けると確信したショウはニールに話の続きを促した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ショウとヒューイのバトル開始少し前――

 

黒曜の原野に到着したテル率いるハンター一行。ポケモン捕獲を体験するということで、モンスターボールを手に持って早速フィールドワークに出ていたのだ。

初めて見る生き物、ポケモン。移動中に黒曜の原野に生息するポケモンの話や特徴をある程度聞いていたので、ハンター達はすぐにどれがどのポケモンなのかを把握していた。ただ、その中でも特に反応が顕著だった人物が居る。

それが、シズカだった。

 

「あっ、ビッパ!あっちはムックルにコリンク!あぁ、ケムッソもいる!」

 

「すごい、ピチューだ!可愛い……!」

 

「ニールさんニールさん!見てくださいアレ!イーブイですよイーブイ!本物のイーブイ!!」

 

「わかったわかった(待って急にそんなキラキラした笑顔見せないで感情追いつかない情緒壊れる)」

 

誰も見たことのないような、幼い少女のような笑顔であっちへ行ったりこっちへ行ったり。時には興奮した様子でニールをバシバシ叩いたり、そのままグイグイと引っ張っていったりと、これまでのシズカを知っている人物からしたら別人レベルの変化に反応が追いつけなくなっていた。

特にニールは好きな女性が素敵な笑顔ではしゃぎまくっているせいで、胸の奥からこみ上げる想いの熱に焼かれて焼死寸前であった。

 

「(姉さまがっ!!可愛いいイ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ッ!!)」

 

……訂正、もう一人いた。

シズカはイーブイの捕獲を狙い、草むらに身を潜めて機会を伺っていた。

 

「いいですか、静かにお願いしますね」

 

「大丈夫だ」

 

「騒がしくしないでくださいよ」

 

「わかってるって」

 

「絶対に騒がな「ぶえぇっくしょおぉいっ!!」――」

 

「ブイィッ!?」-----・(/;゚◇゚)/

 

念には念を入れていたところ、ネネが盛大にくしゃみをした。その音に驚いたイーブイは脱兎の如く逃げ出し、あっという間に見失ってしまった。

シズカは素早く反転しネネに近づくと胸ぐらを掴み上げた。その瞳からハイライトを消して。

 

「おいフリじゃねえんだよ騒ぐなっつってんだろぶち殺すぞ」(‹●›_‹●›)

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

 

「「(やっぱりいつものシズカだ)」」

 

激怒すればするほど騒ぐことなく相手に詰め寄るシズカの様子を見て、じつはちょっとだけ安心したシュラークとニールであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……てなことがあってな」

 

「ぶっはははははっ!!それで狙ってやってないって、どんなギャグだよ!!あー、おかしい!!」

 

「ヒュ、ヒューイ殿!笑いすぎです!!」

 

「うぅ……あ、あの時の姉様はさしものアタシでも震えてしまいましたわ……」

 

話を聞き終えたヒューイは捧腹絶倒。ネネもその時のシズカの怒りは流石に堪えたようで震えていた。

 

「でも、無事にイーブイを捕獲できてよかったじゃないですか。……それに、童心に返っちゃうくらい、ポケモンの捕獲を楽しんでもらえたようで何よりです」

 

「そ、それ以上はもうやめて……!!」

 

ショウもショウで、シズカの事情を知っている今となってはシズカにとってポケモンがどんな存在なのかを理解しており、ほっこりと笑顔になっていた。シズカは羞恥ですっかり顔を真っ赤にしており、普段の冷静さなどどこにもなかった。

 

「……あの時のシズカはな、本当に可愛くってさ……」

 

「わかります、ニールさん。おれも、時々ショウの笑顔に不意打ち食らって……」

 

一方、片想いをする男同士で肩を組み、誰にも聞こえないようにこそこそと話をしていた。

 

「……さて、そろそろムラに戻るとしようかね。だいぶいい時間だろう」

 

「そうですね」

 

「それじゃあ、アカイ。……しっかりと、話し合いをしましょうか」

 

「そう脅しつけなくとも、君が知りたがっていることは教えよう」

 

「……?何の話ですか?」

 

コトブキムラに戻る一方、シズカが険しい表情でアカイに迫り、アカイもアカイでそれを受け流していた。そのことが気になったショウはつい、と尋ねてしまった。

 

「……ショウ、いつだか兄さん達のことで言ってくれたよね?……"案外、身近なところに転生しているかもしれない"って」

 

「えぇっと、はい」

 

「それ、あながち間違いじゃなかったよ」

 

「えぇ!?」

 

シズカから告げられたその言葉に驚いているうちに、シズカはアカイを伴ってさっさとムラに戻っていってしまった。どういうことなのか、思わぬところで混乱してしまったショウ。だが、それも仕方のないことかもしれない。ショウだって考えたことがあるのだ。

 

 

――ジンオウガが従兄弟のコウキさんだったらな――

 

 

「……まさか……ね……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【揺れぬ想い】~ポケットモンスターB/W~

 

夜。放牧場にて月を見上げる一頭の竜……ラギアクルスがいた。まるで何かを待っているかのようにじっとしているラギアクルスの下へ、近づいて来る気配が一つ。

 

「…………」

 

気配の主は、シズカだった。防具は脱いでおり、私服姿だった。

ラギアクルスはわずかに首を動かして後ろにいるシズカを認識すると、そのまま首を戻して月を見上げ始めた。シズカも隣に並び立ち、黙って月を見上げた。

そうしてお互いに何をするでもなく月を見上げ続け……唐突にシズカが口を開いた。

 

「兄さん」

 

「グルラ」

 

ラギアクルスへ振り返りながら呼びかければ、ラギアクルスもまたシズカの方へ振り返りながら返事をした。

その瞬間、シズカの表情は一気に崩れた。眉尻は下がり、両目は涙が溢れ、大人の女性から幼い少女へと変わっていった。

 

「兄さん……」

 

「グルラ」

 

「兄さん、兄さん、兄さん……!」

 

「グラァ」

 

「にい……さ……う、うああああぁぁっ!!」

 

何度も呼びかければ、ちゃんと返事が返ってくる。シズカは、目の前にいる海竜ラギアクルスが、正真正銘の兄『水橋流静』の生まれ変わりなのだと実感した。

寄せられた顔にしがみつき、声を上げて号泣する。何の前触れもなく死別した兄妹は、時空を超えてようやく再開することができたのだ。

 

「会いたかった……ずっと、ずっと……会いたかった……!」

 

「…………」コクン

 

「いきなりニュースで、兄さん達が死んだって知って……わけわかんなくなって!そしたら今度は、光梨さんまで死んでたなんて……!!どうして……!?どうして私の身の回りの人たちばっかりこんな目に……!おかしいよ……こんなの絶対おかしいよ!!」

 

「…………」

 

「すっごく悲しくて、つらくて……なのに悲しみが癒えないまま、今度は私が異世界に転移しちゃって……!お父さんも、お母さんも、みんな置いてきちゃった……きっと、今も二人は私を探してる……せめて、ちゃんと……いきてるって、つたえたい……」

 

「…………」

 

「あいたい……おとうさんと……おかあさんに……!にいさんと、いっしょに……!!もういちど、かぞくみんなで……!あいたいよぉ……」

 

「…………」(- - )

 

涙を流してグズるシズカに何も言えず、そっと目を伏せるラギアクルス……否、流静。シズカ――静香は何も言わぬものの、ずっと寄り添い続けてくれる兄にしがみついたまま離れない。

 

「……ごめんね、兄さん。泣いてばかりだね、私。小さい時は、いっつもそうだった」

 

「グラ、グルァ」((-_- )( -_-))フルフル

 

「……ふふっ、そんなことないって?そうね……兄さんには、心配かけさせたくなかったから……。あ、そうだ!兄さん私ね、モンハン4の主人公の弟子になったの。やっぱり主人公キャラって凄いわ、ほかの人と比べても貫禄が違うの」

 

「グラァ」(^_^ )ウンウン

 

「あ、でもXシリーズの主人公はちょっと違ったの。ネネっていうんだけど、これがまたすごい同性愛者で……なんか私、あの子にすごい慕われてるみたいなの。私は兄さん一筋なのに」

 

「…………」(^_^;)

 

「あとは、あとは……そうだ、worldの主人公にも出会えたの!ニールっていう人で、私もハンターになりたての頃にすごく助けてもらったの。さすがにおんぶに抱っこってわけにはいかないから程々にしてもらったんだけど……それを言ったら、凄くショックを受けてたのは印象深かったな……」

 

「グルァ」( ̄ー ̄ )

 

静香の話が止まることはなかった。ラギアクルスとなった流静が言葉を話すことはなかったが、静香の声を聞き、相槌を打ち、しっかりと反応を返している。家族水入らずの時間を一分一秒でも惜しまないよう、兄妹は互いに寄り添いあった。

と、ここで別のモンスターが姿を現した。ジンオウガ、グラビモス、リオレウス、ベリオロスの四頭だ。彼らの接近に気がついた静香は立ち上がると、流静と共にそちらへ歩み寄った。そして……。

 

「光輝さん」

 

「ワン」

 

ジンオウガを呼び。

 

「剛太さん」

 

「ヴァー」

 

グラビモスを呼び。

 

「焔さん」

 

「グオン」

 

リオレウスを呼び。

 

「剣介さん」

 

「ガオ」

 

ベリオロスを呼んだ。

全員がそれぞれ呼ばれた名前に返事をしたことで、静香は嬉しそうに微笑んだ。

 

「……ふふっ!転生しても五人一緒だなんて、まるで運命共同体ですね。やっぱり、同じ月、同じ日に死んじゃったからなんですかね?」

 

「ガオン……」・゚・(´Д` )・゚・エーン

 

「あぁ!剣介さんを責めてるんじゃないんです!ただ、高校で初めて出会ったはずなのに、ここまで深い絆を結んでいる皆さんがすごいなってだけで……!」

 

「ガオー」(´・∀・` ) ナンチャッテ

 

静香の言葉に思うところがあったのか、ベリオロス――剣介は顔を覆って蹲ってしまった。それに慌てた静香だったが、直後に嘘泣きだったことを明かされて流石にイラっとしたらしい。

 

「……ちょっとガンランス持ってきますね」

 

「ガァッ!?」Σ( ̄□ ̄;)

 

「冗談ですww」

 

「ヴァー!」(´゚∀゚` )プギャー

 

「グオー!」(´゚∀゚` )プギャー

 

「ガオーンッ!」(#`皿´) ムキーッ!

 

「ワンワン」ヾ(・∀・ )オイオイ

 

静香が踵を返すと、本気だと受け取った剣介が慌て始めた。すぐさま反転して冗談だと仕返しの意思を表示すると、グラビモス――剛太とリオレウス――焔が剣介を盛大に笑った。そのことにイラっとした剣介が牙を剥くも、「自業自得だろ」とばかりにジンオウガ――光輝に制されていた。流静も呆れたようにため息をついている。

 

「……兄さん達って、人間辞めても全然変わらないのね」

 

「グルア」┐(-д-)┌

 

「……焔さん、その……葵さんは……」

 

「グオン……」

 

静香が控えめに焔の幼なじみである陸上葵について尋ねると、焔は顔を伏せてしまった。そのことから、葵もまた死んでしまったことを理解してしまった。

 

「葵さんまで……」

 

「ガオン!」

 

「ワオン!」

 

静香の表情が悲痛に変わる前に、剣介と光輝が動いた。焔の全身をバシバシ叩きながら、何かを主張している。なお、叩かれている焔は割と本気で痛がっていた。

 

「え……?…………。……っ、わかった!葵さんはリオレイアに転生したのね!?」

 

「グオオン!」

 

「そのとおり!」と言いたげに声を上げた焔の反応に、静香もまた一つの確信を得た。陸上葵もまた、転生を果たしているのだと。

 

「そっか……焔さんがリオレウスに転生しているんだから、焔さんのことが好きな葵さんがその番に転生していないわけないよね……」

 

「グ、グオ……」(^ω^;)

 

「……?なんでちょっと気まずそうなの?」

 

「グオォォン……」(;¬ ¬)

 

葵のことが話題に上がり、なぜか顔を引きつらせつつ逸らしてしまった焔。まさか葵が転生ついでにヤンデレ化してしまったなど、言いたくはなかったのだろう。

 

「……アカイ、ううん、ミラバルカンから聞いたの。兄さん達は、死んですぐにアルセウスがヒスイに送り込んだモンスターたちに憑依転生したって。そういう意味では、私もアルセウスに感謝しなくちゃ。……こうしてまた、みんなに出会えたんだから」

 

「グルァ」

 

「ヴァヴ」

 

「今度は、葵さんに会いたいな……会えるよね?」

 

「グオグオン!」

 

「ガォン」

 

「うん。……あ、そうだ。光輝さん」

 

「ワゥン?」

 

静香は一つ思い出したことがあった。それを伝えるためにも、光輝に声をかけた。

 

「……光梨さんのこと、ショウから聞きました」

 

「…………」

 

「私が知らないところで光梨さんまで酷い目に遭わされて、その上死んじゃってたなんて……私、自分が恥ずかしいです。兄さんのことで頭がいっぱいで、他の皆ことをすっかり忘れてたなんて……光梨さんにはたくさんお世話になったのに、本当にごめんなさい」

 

「ワオゥン」(´ヮ` )

 

「……ふふっ、くすぐったいです」

 

光輝の従姉であり静香自身も世話になったことがある女性、稲妻光梨に関することだった。自分のことで一杯いっぱいだったと静香が謝罪すると、光輝は「気にするな」とばかりに鼻先で静香の頭をそっと撫でた。

 

「でも、良かったですね。光梨さんも第二の人生、とても充実しているようで。……それに、追放イベントで光輝さんとショウが出会えたのも、きっと偶然じゃないですよ。光梨さんが二人を引き合わせてくれたんだと思います。たとえ時空が異なっても、家族の絆はそうそう断ち切れるものじゃないはずですから」

 

「ワン!」

 

「私と兄さんのようにね♪」

 

「グ、グルァ……」(^▽^;)アハハ……

 

光輝のことを慰めつつしれっと兄妹仲をアピールする静香。これには流静も苦笑い。

 

「……ねぇ。みんなはミラボレアスを倒したら、どうするの?」

 

「グル?」

 

「確かに今のみんなはモンハンのモンスターだけど、元は人間だったわけだし……。ここに残るのか、それともモンハン世界に行くのか、それとも……」

 

「……?」

 

「ううん、なんでもない(さすがに前世の世界は無理、だよね……)」

 

静香が気になったのは、打倒ミラボレアスを果たしたあとの動向についてだった。モンスターハンターシリーズのモンスターらしく向こうの世界へ行くのか、それともこの世界に残るのか。前世の世界は非人間の時点で望み薄だろう。

 

「ワン」

 

最初に答えたのは光輝だった。その場に伏せの姿勢をとると、目を閉じる。それだけで、静香は光輝が何を言いたいのかを理解した。

 

「……そっか。光輝さんはここに残るのね?」

 

「ワゥン」

 

「それじゃあ、他の皆は……」

 

「ヴァ」

 

「グオン」

 

「ガオ」

 

剛太、焔、剣介も光輝に続くように体を伏せた。未だ返答をしていないのは、流静のみ。

 

「兄さん……」

 

「…………」

 

四人続けてヒスイ残留の意思を示したことを受けて、不安気な様子で振り返り兄を見やる静香。……だが、流静もまたゆっくりと体を伏せて目を閉じた。残留、であった。

 

「……そっ、か……」

 

「グルゥ……?」

 

兄のことが好きすぎる静香のこと、きっと文句の一つもあるだろう……そう思っていただけに、静香が納得したように頷いたことに流静は首を傾げた。

 

「だって、五人揃っての皆でしょ?なのに、一人でも欠けちゃったら、ダメだよ。……兄さん達は、揃っての兄さん達だもん」

 

「グルァ……」

 

「……あぁ、でも……せめて兄さんだけは、私と一緒に来て欲しかったな……」

 

「グルルア」

 

辛いのをこらえて、けど抑えきれなくて溢れる涙を、流静は鼻先でそっと拭った。ありがとう、と感謝を述べつつ静香は流静の頬を撫でる。

 

「兄さん……あのね……」

 

「グル?」

 

「前にちょっと、聞きそびれたことがあって……やっと、兄さんに聞けるね」

 

「グ、グル……?」

 

一瞬、流静は嫌な予感を覚えたが、せっかく再会できたことを喜んでいる妹に水を差したくないのか、ひとまず話を聞いてみることにした。

 

「兄さん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供は何人欲しい?」

 

「グルアアァッ!?」

 

「大丈夫、薄い本でも子作りで来てたし平気平気。……うーん、でもあっち界隈だとババコンガとかギギネブラとかばっかりだったな……ラギアクルスでもイケるかな……?」

 

「グ、グルァ……!」(>o<)

 

ブツブツと独り言を呟く静香を余所に、流静は仲間たちに助けを求めた。光輝達はお互いに頷き合う……今こそ、皆の絆を示す時が来たのだ。

 

「「「「ε=ε=┏( ^▽^)┛」」」」スタコラサッサー♪

 

「グルアッ!?」Σ( °Д °):∵

 

四人は一斉に背中を見せて走り去った。まさかの裏切りに流静は絶叫、遠くなっていく背中を見つめることしかできなかった。

 

「兄さん……夜は、長いからね……?」

 

「グルオオアァァァァァッ!!」

 

夜の放牧場には流静の悲鳴がいつまでも木霊していたとか……。

 

 

 

 




果たして流静の運命や如何に……。


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【帰ってきたぞ】我らモンハン部異世界支部【コトブキムラ!】

今回はダイジェスト風味……いわゆる、本編中の掲示板の動きみたいなのを追っていく形です。一部、本編後の流れもあります。



1:空の王者 ID:MH2nddosHr8

コトブキムラよ!ヒスイ地方よ!!

 

2:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

我々は帰ってきたー!!(take2)

 

3:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おかえりー

 

4:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おう、とりあえずまぁ、座んな

 

5:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ぬわああああん疲れたもおおおおん

 

6:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

コイツいつも疲れてんな

 

7:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いや、飛行船引っ張ったり人を乗せて飛んだり、割と俺って大忙しぞ?

 

8:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……おぉ、やっぱりハンター組はヒューイことdos主人公を知ってるか

 

9:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

彼が……彼が、いる……!?

 

10:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ちょ、おいルーツ?急に息が荒くなったぞ、大丈夫か?

 

11:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

大丈夫よ!……えへへへへへ

 

12:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ダメっぽいな

 

13:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

おい冗談だろ、あんにゃろういんのかよ……?

 

14:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そういや、バルカンをボコボコにしたのもそのヒューイだったな

 

15:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

あぁ、そうだ……まったくもって、憎たらしい!!

 

16:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ビールでも飲んでリラックスしな

 

17:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

グアアアア!飲まずしてやってられるかぁ!!

 

18:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あ、結構ガチ目の乱心だ……

 

19:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……え、ショウちゃん?ショウちゃんも現場に行くの?やめといたほうがいい気が……

 

20:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あーあー、走ってっちゃった……って、ヨネネキ?どうしたん?

 

21:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おー、みんな帰ってきたもんな!よしっ、コトブキムラに行こうぜワサビちゃん!

 

22:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……あの、俺はちょっと勘弁してもらあ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"――

 

23:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

有無を言わさずボールに入れられたな

 

24:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

善意なんでな、大目に見てやれよ

 

25:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

うううううぅぅぅぅぅぅぅぅ……

 

26:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

嫌がりすぎだろww流石にそこまでとなると静香が気の毒だわw

 

27:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

是非もないね!光輝ー、焔ー、そっちはどうだー?

 

28:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あー……やっぱ全っ然見当たらんわ……こりゃ日を改めるか、ヒューイと合流するか――あぶねぇ!!

 

29:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いきなり飛んできやがった!いや、マジでビビったぞ!?

 

30:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おぅふ、流石に初見で前情報なしだと苦戦は必至か……

 

31:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……って、ルナルガのやつ!いきなりショウちゃんを狙ってきたぞ!?

 

32:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

吹っ飛んだ……が、目立った外傷は無しか……!

 

33:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

こりゃいかん……撤退を――って、え!?

 

34:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おっ、ヒューイだ

 

35:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ジャンボ村の!

 

36:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

先生!

 

37:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

↑※別人である

 

38:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

えぇ……飛んできた棘、太刀で叩き落としよった……

 

39:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なんだこれは……たまげたなあ

 

40:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ポケモンとの連携も完璧だ……あっという間にルナルガを氷漬けにしたぞ!

 

41:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

なんだよ、コイツ人間か?……人間だったわ

 

42:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

撤退ですね!?はい、喜んでー!!

 

43:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だな、これは逃げの一手だわ

 

44:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……おっ、俺の天鱗!もう渡したのが随分と昔のようだぜ……って、壊れた!?

 

45:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

しょうがない……天鱗は砕けやすいからな

 

46:空の王者 ID:MH2nddosHr8

まぁ、機会があったらまたあげるよ、今日のところは帰りましょー!!

 

47:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

今日の負けは明日の勝利ってな、また挑みに来ようぜ

 

48:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おぉおぉ、えらくはしゃいじゃってまぁ……

 

49:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

早く帰ってこないかなぁ……

 

50:空の王者 ID:MH2nddosHr8

なるはやで飛びます!

 

51:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

今回はショウちゃんが足を引っ張る形になってしまったな

 

52:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

こういうのって結構珍しいよな、いろんな人の手を借りながらとはいえ、大体ショウちゃんがどうにかしてきたんだし

 

53:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

生きてるだけで丸儲け、ってな

 

54:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……つーわけで、なるはやで帰ってきたぞー!!

 

55:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、速いな

 

56:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺らも明日くらいにはムラに着くよー

 

57:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

うわああぁぁぁぁぁ……

 

58:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

もう腹をくくれって流静、今更どうにもならんぞ?

 

59:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

せめて心の準備だけでもさせてくれよぉ……

 

60:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

今のうちによろしく

 

61:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おぉ、みんなでお出迎えだー

……普通に返り討ちに遭うって予想されとったやん

 

62:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

コイツ……マジで、コイツ……!!

 

63:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

バルカンが、過去一荒ぶっとる……あ、ルーツ?

 

64:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ヒューイー!好き好き好き好きー!!

 

65:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

(゚д゚)ウワァ……

 

66:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

(゚д゚)ウワァ……

 

67:空の王者 ID:MH2nddosHr8

(゚д゚)ウワァ……

 

68:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おいおい……公衆の面前でディープキスはやりすぎでは……?しかも見た目は大人と幼女が

 

69:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

野郎ぶっ殺してやらあぁ!!

 

70:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

落ち着け!……いや、とりあえずルーツも落ち着け!

 

71:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

カオスだ……とりあえず、今はヒューイだな

さすがは元祖ドンドルマの英雄、こうしてほかのメンツと並ぶと格の違いが伝わって来るぞ

 

72:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

だなぁ……さすがは主人公、大したもんだ

 

73:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ヒューイ♪

 

74:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

このクソ野郎……!

 

75:空の王者 ID:MH2nddosHr8

反応が露骨に違いすぎて草

 

76:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……次の霧が出る夜は三日後か、それまでは休憩タイムだな

 

77:空の王者 ID:MH2nddosHr8

よーし、とっとと休もうぜ

俺はもうクタクタなんだぜ……

 

78:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

俺も、バトルの疲れを抜いておかないとな

 

79:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

んじゃあ、本日は解散!閉廷!!

 

80:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……あれ、バルカンが何も反応しなくなった?何かあったか?

 

81:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あぁ、そっとしておいてあげて、死ぬほど疲れてるの

 

82:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……それ、もう死んでない?

 

83:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

まだ生きてるわ、まだ

それよりもヒューイよ!今夜は寝かせないんだから!!

 

84:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……え、ちょっと?まさか?

 

85:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やめろルーツ!この小説は全年齢用だ、BANされるぞ!!

 

86:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

規約が怖くてS○Xができるかーっ!!

 

87:空の王者 ID:MH2nddosHr8

わあああぁぁあああぁっ!?ヤベェぞコイツ!止まらねぇぞ!?

 

88:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

止まるんじゃねぇぞ……

 

89:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、止めろ!そして止まれ!!うおおおぉぉぉ!間に合えぇー!

掲示板、閉じるボタン!スイッチオォォォォンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【霧発生まで】我らモンハン部異世界支部【何をしよう?】

 

1:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

( ゚Д゚)ア"ー……

 

2:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

( ゚Д゚)ア"ー……

 

3:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

( ゚Д゚)ア"ー……

 

4:空の王者 ID:MH2nddosHr8

( ゚Д゚)ア"ー……

 

5:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

( ゚Д゚)ア"ー……

 

6:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……なぁ

 

7:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……なんだぁ?

 

8:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺たち……夜通し何を見せつけられてんだろうな……

 

9:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なにって、そりゃあ……ナニだろうよ……

 

10:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

信じられん……本当に夜通しぶっ続けでヤりまくりやがった……

 

11:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

頭おかしなるでこれ……

 

12:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

けど、イイもの見れたでしょ?

 

13:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや……俺たちこの体になってからだいぶ経ってるが、その影響なのか性的対象が人間から変わっちまったんだよね……

 

14:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

前世が人間だった影響で無視することもできない、だが性的対象は人間から変わったので興奮できない……うん、地獄です

 

15:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

頭おかしなるでこれ……マジで……

 

16:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……あー……それは、その……ごめんなさい?

 

17:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おかげさまでショウも一睡も出来ていないし……未成年の女の子の隣部屋でなにしてくれてんだ、情操教育に悪いだろうが

 

18:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

うー……そうまともに叱られると、本当に申し訳なくなってきたわ……

 

19:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

こういう時、親族は強い

 

20:空の王者 ID:MH2nddosHr8

じゃああれかー、俺が葵とライゼクスに言い寄られた時、実はめちゃくちゃドキドキしたのもそのせいかー

 

21:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、お前の場合はもっと根本的な……いや、言わんとこ

 

22:空の王者 ID:MH2nddosHr8

やめろー!その含みを持たせた言い方ァ!!

 

23:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……お、静香たちも起きてきたか

なるほど、デンボクにポケモン捕獲を勧められたか

 

24:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

静香ちゃんは何を捕まえるんだろうなー?

 

25:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

イーブイだろ

 

26:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、迷いないなお前

 

27:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

八つも進化先があって、いずれの進化も運用方法に違いがあるんだ、あらゆる状況に対応するならイーブイが一番無難だろ

 

28:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やはり兄妹、思考が似るのか

 

29:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺がそうだと考えるんだ、静香が同じ考えにたどり着かない道理はない

 

30:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……お、ショウちゃんはヒューイとポケモンバトルか

 

31:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

手持ちはヒスイバクフーン、エルレイド、メガヤンマ、エンペルト、レントラー、マニューラだったな

 

32:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

普通のポケモンたちでショウちゃんのポケモンたちとどれだけ戦えるか……お手並み拝見と行こうか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

329:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

勝負アリ!勝者はショウ!!

 

330:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おい剛太、ヒューイの手持ち変わってるじゃねえかよ、どういうことだ?

 

331:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、しらんがな!?大方、調査用とバトル用で手持ちを変えてたんじゃないのか?

 

332:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

極み誘うバクフーン

【守護騎士】エルレイド

極み破壊するギャラドス

【青嵐鬼】リングマ

極み待ち伏せるドラピオン

【幻舞蝶】アゲハント

 

まさか、ショウちゃんと同じく二つ名&極みのガチパとはな……

 

333:空の王者 ID:MH2nddosHr8

極みバクフーンの炎のローブがまんまマスタークロスでワロタ、便利だよな、あの武器

 

334:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

短い期間で二つ名と極みでパーティーを組むとは大したものだ……だが、ポケモンバトルではショウの方が一歩先を行く!

けど、この実力の伸びはえげつないな……これが主人公補正ってやつか

 

335:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

元々のセンスもあるんだろうが、それを抜きに考えたとしてもこの成長率はヤバい

やはりハンターは人外集団の集まりか……まともな人間はウチの静香だけだな……

 

336:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、ブラストダッシュで空を飛ぶって絶対にまともじゃないと思うが……

 

337:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まともなの!

 

338:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それにしても、これも時空の裂け目の影響なんかね……なんか遠い未来にも、二つ名個体とか極み個体とか出てきそうだな……

 

339:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おいばかやめろ、本当に出てきそうだろうが

 

340:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……さて、流静よ

そろそろ現実逃避はやめようか?

 

341:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……な、なんのことかななななな……?

 

342:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺ら全員、静香ちゃんに身バレしちゃったねぇ

 

343:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

今夜にでも突撃してくるからな

……逃げるなよ?

 

344:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

くっ……恐れていた事態が起こってしまったか……

ばかな、早すぎる……

 

345:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

や~れやれ……静香ちゃんは待つってことを知らないねぇ……

 

346:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

しゃあーねえな、いっちょケリつけにいくか

 

347:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

これは俺の仕事だ、部外者はすっこんでろ

 

348:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

…………

 

349:空の王者 ID:MH2nddosHr8

早すぎるということはない、静香ちゃんは七年待ったのだ

 

350:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ったく、損な役回りだぜ……

 

351:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

うーむ……やはり俺らだけでは少々(事情説明に)荷が重すぎるのでは?

 

352:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺らが直接説明する必要のある程の内容なのか……?

 

353:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

おい、なんだこれは

 

354:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あなた達、よく聞いて、静香の未来はあなた達にかかっているわ

 

355:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

え、ルーツ?なんだこれ、俺もノらなきゃならんのか……?

 

356:空の王者 ID:MH2nddosHr8

へぇ、俺たち以外にも(事情説明できそうな人が)いたんだ……

 

357:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

また……夜這いが始まるの……?

 

358:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

決められていた事なんだよ……ずっと以前から、流静は受け入れられるかな……?

 

359:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

一応、俺が水橋静香に事情を話すつもりなんだが……

 

360:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

もうお前に説明役を託すことしかできない自分に……腹が立つ

 

361:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

おい、もうやめろ、この壮大に何も始まらなさそうな茶番をするな!

そして俺を巻き込むな!俺は元々そういうノリは苦手で……

……ルーツ?まて、なぜこちらににじり寄る?やめ、ちょ、やめ――

やめろおおおおおおおおおおっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

769:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……さて、水橋兄妹は無事に再会&和解をしたし、俺らも俺らでそろそろ寝るかな

 

770:空の王者 ID:MH2nddosHr8

過去一感動したぜ……

 

771:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いい話だったな……この気持ちのまま、今日一日を終わろう

 

772:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おつかれやしたー

 

773:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

っざっけんなよテメェら(#ノ`皿´)ノコラー!!!

 

774:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あ、帰ってきた

 

775:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんだよ、人が気を遣って兄妹水入らずの状況を作ってやったのに……

 

776:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

誰も頼んでねぇわボケどもが!!むしろ助けを求めたろうが!それをあっさりと無視して裏切りやがって!!

 

777:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

マジで喰われた?ウ=ス異本案件キタコレ?

 

778:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

来ねぇし!来させねぇが!?

 

779:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

んー、でも見た感じ無事そうだし、問題なかったのでは?

 

780:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

目の前で妹のストリップショーを見せつけられて問題がなかったとかどういう神経してんだお前のど頭かち割ってやろうか

 

781:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

今までよりずっと怖い!!

 

782:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はぁ……よかったな、性的対象が人間から変わってて

 

783:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

この体の童貞は守られたが、兄としてのメンツやらプライドやらはズタボロだよ……

 

784:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ようするにヤってないわけか、それはそれで結果オーライか

 

785:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

静香が潔く諦めてくれたのも助かった……いや、もう人間相手に性的興奮とか無理だから、な?

 

786:空の王者 ID:MH2nddosHr8

今更だが、すっかり変わっちまったよなー、俺たち

 

787:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

だねー

 

788:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まったく、本当にヒヤヒヤした……さぁ、次の夜霧の日まで休んだり鍛えたり、色々とやることが多いぞ!今は少しでも寝て休んで、英気を養うんだぞ

 

789:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

りょうかーい

 

790:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

んじゃ、一足先にお休みー

 

791:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うーい、乙乙

 

792:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

はぁ……もうニールでもネネでもいいから、静香のこと娶ってくれないかな……

 

793:空の王者 ID:MH2nddosHr8

…………

 

794:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

どうした、焔?

 

795:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……いや、何でもない

 

796:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あっそう、じゃあおやすみー

 

797:空の王者 ID:MH2nddosHr8

おう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

798:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……灼熱種

 

…………紫毒姫

 

…………………UNKNOWN

 

 

 

 

葵……お前、まさか……

 

 

 

 




焔が何かを察する中、葵は静かにアップ中……


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天冠の朧月と伝承の詩

ナルガクルガ希少種との対決と、あの謎について迫ります!


諸事情で投稿期間が延びたり投稿時間に遅れが生じたりと、問題だらけの箱厨でございますが、今後とも応援のほどよろしくお願いします!


久々に過ごしたコトブキムラでの生活……帰還早々からイロイロとありすぎてかえって落ち着かないのはなぜぇ……?

やはりヒューイさんか、ヒューイさんなのか……四六時中シロちゃんがべったりだし、そのせいでアカイさんはキレ散らかすし、シズカさんたちも何か諦めたような顔をしていたし……。

ポケモンバトルの腕前も見事なものだった。まさか私と同じ二つ名個体と極み個体でメンバーが構成されていたとは。……なに気に私が予想していた極みバクフーン、的中してたし。

しかし、本当に強かったな……本当にポケモン始めて数ヶ月の実力か?ポケモンだけじゃなく、ヒューイさん自身も戦いなれた勝負師だ……技の的確な指示や奇抜な戦い方は、きっとその経験から着想を得たのだろう。ああいう"戦い方を知る人"は本当に強い。

 

さて、今日はいよいよ夜霧の予報がされた日……ナルガクルガ希少種を捕獲して、天冠の山麓の夜の安全を確保しなくちゃ!

 

「いよいよ今夜だな」

 

「ヒューイさん」

 

私が気合を入れていると、ヒューイさんが話しかけてきた。頭以外を防具で包み込んでいる。

 

「そちらも準備万端ですね」

 

「まぁな。今回は秘策も用意してある……確実に奴さんを仕留めるぞ」

 

「はい!」

 

秘策……ひょっとして、私がドジを踏んだあの時、本来なら使うはずの作戦だったのかな?楽しみにしておこう。

 

「……それにしても、良かったんですか?」

 

「ん?なにがだい」

 

「今回の作戦、シズカさん達も同伴させなくて。自信がないわけじゃないですが、やはりハンターの数は多いに越したことはないじゃないですか」

 

「あぁ、それか」

 

今回のナルガクルガ希少種捕獲作戦……実働班は私とヒューイさんの二人だけだ。というのも、ヒューイさんが私と自分だけで良い、と打診したんだそうだ。

 

「理由はいくつかあるが……まあ、一つは意地だな。俺が何十と挑み続けた相手だ、今更他人に協力を申し出るつもりも、まして他人任せなどせんよ。浅はかな考えだがな、既に攻略の糸口は見えている……故に、これ以上はむしろ過剰戦力だ。

もう一つは、ショウの腕を見てみたいっていうのがある。お前さんは俺たちの世界で言うライダーのようにモンスターに指示を出して操り、このヒスイに現れたモンスターを次々と捕獲していったそうじゃあないか。ナルガクルガ希少種相性でも、情報さえあれば苦戦はすれどお前さんなら回数を重ねていずれは勝利するだろうよ。そう考えて、今一度お前さんの実力を発揮してもらおうと考えたわけだ」

 

「なるほど……期待に応えられるよう、全力を尽くしましょう」

 

「その意気だ!……あと、シズカっていったっけか。アイツはしばらくは狩りに身が入らんだろう。それくらい、なにかいいことがあったみたいだしな」

 

「ですね」

 

実はシズカさん、昨晩こっそりとどこかへ出かけたのをニールさんが目撃していたのだが、あえて後を追わないでいたそうだ。そうして朝になる前にシズカさんが帰ってきたわけだが、まるで別人になったかのように表情が穏やかになり、より溌剌とした感情表現をするようになったのだ。今まで無表情に近い顔ばかりだったシズカさんが、初めてポケモンを捕まえた時のような明るさを常に見せ続けてくれるようになった。

……そんなシズカさんにネネさんは常時限界化状態だし、ニールさんもシズカさんが微笑むだけで顔を真っ赤にして何も喋れなくなるし、シュラークさんはアルカイックスマイルと共に後方腕組み待機するだけでフォローなし。なんだか、以前よりもカオス具合が増している気がするのは気のせいか?

 

それと関係があるのかは知らないけど、なぜかラギアクルスの表情が死んでいた。それと、わかりやすく黒焦げになって頭にたんこぶを作ったベリオロスも死んだように突っ伏していた。

 

「(一体何があったやら……)」

 

「まぁ、あっちは若いのに任せようか。俺たちは俺たちに出来ることをしよう」

 

「若いって……ヒューイさんもそう歳は変わらないですよね?」

 

「ん、言わなかったか?俺、実はこう見えて三十路だぜ?もうすぐ四十になる」

 

「……え、はぁ!?」

 

いやいやいや、何を言ってるのこの人!?どう見たってニールさんやシュラークと同世代の二十代後半に見えるのに!

 

「俺、ヒスイに来たときになぜか若返ったんだよ。原因は不明だがな……まぁでも、悪いことばかりじゃねぇわな。おかげで昨夜も……」

 

「はぁ……」

 

最後のほうがいまいち聞き取れなかったけど、確かに若返って損をするようなことなんて、本人確認がちょっと面倒くさくなるぐらいしかないかな?

 

「んじゃあ、行くか」

 

「え、もうですか?夜までまだ長いですよ?」

 

「だぁほ。準備や作戦会議などの段取りってのは、現地でやったほうが無駄がない。忘れ物があっても時間前なら取りに戻れるし、なんなら夜の時間は限られてんだ。……逃がさない算段もある以上、時間までのんびりするつもりはないよ。

……まぁ?お前さんはまだ子供だしな?時間までのんべんだらりとしてくれて構わんよ?なんなら俺が一人でケリをつけておこう、なのでゆっくりおやすみよ」

 

「は?」

 

なんっ……なんなの、ヒューイさん!急にこっちを煽り出して……どういう意図かは知りませんけど、そんな安い挑発にこの私が……。

 

「全然余裕ですしなんなら同じことまで考えてましたが?(早口)」(-゛-メ) ヒクヒク

 

「おぉ、そりゃあよかった。なら、何も問題はないな。現地へ行くぞ」

 

「えぇ、行きましょう」

 

負けず嫌いな私が乗らないわけ無いでしょうが!くぅ、しかし口の達者なことで……すっかり乗せられてしまったけど、ここで乗らなきゃ逆に出発を渋っていたかもしれないことを考えると、悪いことではないかもしれない……いや、やっぱり大人気ないわこの人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、早速天冠の山麓に到着した私とヒューイさんだが、すぐにナルガクルガ希少種捕獲作戦の段取りを始めた。まず、ナルガクルガ希少種(以下、ナルガクルガ)を見つける必要があるんだけど、これは無防備に歩いているだけではダメらしい。隙を晒すだけだと、尻尾の刺を飛ばしてくるだからだそうで、むしろ気疲れするレベルで全方位警戒を厳となす必要があるそうだ。ナルガクルガが「直接仕留める必要がある」と思わせる程度の脅威だと認識させる必要があるとか。

そして、ナルガクルガが姿を見せた上で、致命的な隙を晒してからが本番。ヒューイさんが用意した秘策を用いて、ナルガクルガを逃げられない状態にするらしいけど……何をするつもりなんだろう?

あ、そうだった。ナルガクルガ希少種なんだけど、アカイさんから聞いた話によればナルガクルガ希少種はあく・ひこうの複合タイプで、氷とドラゴンに弱いがみずに強く、ほのおとでんきが効かない体質らしい。……むぅ、じめんタイプでもないひこうタイプが、でんきを無効にするとは……。しかもほのおとでんきが効かないということは、私の最高戦力であるジンオウガとリオレウスが使えないも同然だ。あとは、ラギアクルスもか。すると確実に弱点が突けて機動性でも負けていないのはベリオロスしかいない。……今朝のことが脳裏をよぎるが、大丈夫だろうか……?

 

「さぁて、仕事だ!ひと狩りいこうぜ」

 

「えぇ、行きましょう」

 

ヒューイさんは既にボールから【守護騎士】エルレイドを繰り出している。かくいう私もダイケンキとガブリアスをボールから出している。この二体を選んだのは、ナルガクルガの遠距離攻撃を確実に捌ける技量と能力があるからだ。

厳戒態勢の中、以前にナルガクルガと遭遇した場所を練り歩く。すると、ヒューイさんとダイケンキ、エルレイドの一人と二体が同時に特定方向に振り返った。それと同時にヒューイさんが投げナイフを投擲、ナイフは鈍い音とともに空中で動きを止めた。

 

「いたぞぉ!いたぞおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

さらにヒューイさんは叫び声を上げた。すると、私の目の前で土煙が何度も宙を舞う様子が霧の中でもはっきりと見て取れた。どうやらヒューイさんの大声にナルガクルガが反応し、動きを激しくしているようだ。

 

「見えたか?」

 

「ばっちり!」

 

「よしっ、行くぞ!」

 

私とヒューイさんはポケモンたちと共に一気に駆け出す。土煙が何度か舞い、私達の背後でふわりと舞い……今だ!

 

「ガブリアス、りゅうのはどう!」

 

「エルレイド、れいとうパンチ!」

 

「ガブアア!」

 

「エレェイ!」

 

180°一気に反転し、後ろに向かって攻撃!りゅうのはどうは見えない何かにぶち当たり、さらにエルレイドのれいとうパンチも命中した!それによって、ついにナルガクルガが姿を現した!

 

「さぁ、とっておきだ!」

 

「カァーッ!!」

 

「ドンカラス?」

 

ヒューイさんが繰り出したのはドンカラス……一体何をするの?

 

「まずはコイツだ。ドンカラス、くろいまなざし!!」

 

「カアアァァァ……」

 

「ニ"ャッ!?」

 

ドンカラスが怪しげな眼差しでナルガクルガを見つめると、ナルガクルガは体を硬直させてしまった。そうか、相手を逃げられなくする技!ということは、次に繰り出す技は!

 

「仕上げだ!きりばらい!!」

 

「ドンカァ!」

 

ドンカラスが激しく翼を羽ばたかせると、その衝撃で周囲の霧が吹き飛んでいった。完全に月夜のもとに姿を晒すこととなったナルガクルガは、困惑と焦りからか周囲を見渡していた。

すごい……!ナルガクルガをこうもあっさりと弱体化させられるなんて!

 

「よし、これで朝まで粘ってもやつは逃げられないし、霧も晴れたから透明化の隠密能力も半減だ。さぁ、狩るとしようか!!」

 

「はいっ!ベリオロス、ゴー!」

 

「ガオオオオオンッ!!」

 

「ニ"ャア"ア"ア"ォ"ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【闇に走る赤い残光】~モンスターハンターシリーズ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ以上、好き勝手させられんのでね。悪いが対策を講じた以上、さっさとカタをつけさせてもらうぜ」

 

「ベリオロス、今回はヒューイさんを全面的に援護するよ。ナルガクルガが苦手なこおり技とドラゴン技を使っていくよ!」

 

「ガオン!」

 

これは私自身が決めたことだ。ポケモン勝負では勝ちを拾った私だけど、狩猟という面で見れば私よりもヒューイさんの方が歴戦者だ。もちろん、ヒューイさんのご希望通りに実力を披露することも忘れない。

まずは先手を打つ!

 

「こおりのつぶて!」

 

「ガオッ!」

 

「グッ……!」

 

「いいね、その攻撃!そりゃあ!!」

 

先制技でナルガクルガを牽制している間に、ヒューイさんが切り込む。ヒューイさんの太刀は龍属性、ナルガクルガ相手に有利だ!

三度斬り込み、一度距離を置くヒューイを追撃するようにナルガクルガが腕を振るった。あの巨大エアスラッシュだ。

 

「ベリオロス、ふぶき!」

 

「ガオオオォォォンッ!!」

 

空気には空気!ベリオロスが放ったふぶきはエアスラッシュを瞬く間に失速させ、ついには消滅した。

その直後、毒の刺がベリオロスに飛ばされたがベリオロスは回避。その後隙を狙ったナルガクルガが翼刃を振るってくるが、ベリオロスも器用に腕の刺で挟み込むように受け止めた。振り払ったベリオロスが回転して尻尾を叩きつけるも、叩かれた勢いを逆に利用して素早く回転したナルガクルガが同じく尻尾を叩きつけてきた。

体勢を整えたナルガクルガが飛びかかると、同じようにベリオロスも飛びかかった。空中でもつれ合うとナルガクルガがベリオロスを踏み台にしてさらに飛び上がり、縦に一回転して尻尾を叩き込みベリオロスを墜落させた。追撃とばかりに翼刃を振り下ろすが、後方へ飛び退ったベリオロスに回避され、逆に氷嵐砲を撃ち込まれて直撃した。

 

「おぉおぉ、派手にやってんねぇ!俺も混ぜろっての!!」

 

と、なんとここでヒューイさんがベリオロスとナルガクルガがぶつかり合っているところへ走り込んでいき、そのままベリオロスと殴り合いをしているナルガクルガに攻撃を始めてしまった!?ベリオロスは……一瞬、ヒューイさんの方を一瞥したけど、すぐに気にすることなくナルガクルガへの攻撃を再開した。ベリオロスがそのつもりなら、私もその気概に応えよう!

 

「ベリオロス、ドラゴンクロー!」

 

「ガオオォ!」

 

「ニ"ャア"ォ"!!」

 

「フンッ!せやぁ!!」

 

ナルガクルガがベリオロスに集中すれば、すかさずヒューイさんが猛攻を加える。このままいけば、押し切れるかもしれない……だが、ナルガクルガもただ攻撃を受けるだけじゃなかった。

尻尾を振り上げて何度か回すようにゆらゆら揺らすと、飛び跳ねながら上に向かって尻尾を素早く振るった。

 

「……!ガオッ!!」

 

「んぉ!?」

 

何かを察したベリオロスがヒューイさんを押し倒し、そのまま覆い被さった。その直後、ナルガクルガの毒の刺が雨のように降り注いできたのだ!ベリオロスはこの攻撃を知っていたの!?

 

「ちっ……そういうことか。サンキュー、ベリオロス。もう庇う必要はねぇぜ、次からは躱せる」

 

「ガオン……ッ!」

 

ベリオロスは毒状態になってしまったが、まだまだ戦えるとばかりに臨戦態勢になった。ヒューイさんもベリオロスの下から這い出ると共に、ポーチからかいふくのくすりを取り出して中身をベリオロスに使ってくれた。

 

「ありがとうございます、ヒューイさん!」

 

「なに、助けてもらった対価だよ。さぁ、ナルガクルガも本腰を入れてきたぞ!」

 

ヒューイさんの言うとおり、ナルガクルガの雰囲気が先程よりもさらに鋭く研ぎ澄まされているように感じる。気を引き締めていかないと……。

 

「ニ"ャア"ア"オ"ォ"!!」

 

ナルガクルガが上体を持ち上げつつ咆哮を上げると、そのまま姿を消してしまった。と、思った直後には再び姿を現した!

 

「ベリオロス、エアスラッシュ!」

 

「ガオオオ!」

 

ベリオロスのエアスラッシュでナルガクルガの押さえ込みを図るが、ナルガクルガは高速で大回転することでエアスラッシュをことごとく弾き返し、その回転の勢いで刃翼を思い切りベリオロスに叩きつけてきた!

あれは……たしか、アカイさんが言っていたナルガクルガ希少種の大技の一つ、『木枯らし大回転』!

直撃をもらったベリオロスは大きく吹っ飛ぶも、体勢を立て直しつつ地面に着地した。その間も、ヒューイさんは果敢にナルガクルガへ切り込んでいる。

 

「こっちの相手もしてくれよ、っと!」

 

「ニ"ャオ"ォ"!!」

 

「おっと、あぶね」

 

ヒューイさん……やっぱり、すごい。今だって、ナルガクルガの刃翼を太刀で打ち合い弾き返すと、反対側の刃翼を転がって回避。そのまま体を回転させて尻尾を振られるがこれもいつだかのように尻尾を飛び越えて回避、直後に尻尾から刺が放たれるが、しゃがみこんだことで刺は頭上を通り過ぎていった。

尻尾がビターン、と振り下ろされるがこれも躱して叩きつけた勢いで飛んできた刺も太刀で打ち落としてそのまま尻尾を斬りつけた。ナルガクルガは尻尾を地面から引き抜くと後ろ手に腕を振るったが、ヒューイさんは回避していた。そこからもう一度、反対側の刃翼で斬りつけるが、起き上りと同時に振り上げられた太刀に阻まれて攻撃は届かなかった。

……うーん、この。

 

「(もう全部ヒューイさん一人でいいんじゃないかな)」

 

初めてナルガクルガと戦った時、シズカさん達が「行かないほうがいい」と言っていた理由がわかった気がする……。

 

「……って、呆けてる場合じゃない!ベリオロス、援護行くよ!!」

 

「ガオン!」

 

同じように呆然と戦いを眺めていたベリオロスに声をかけ、私たちも攻撃を始めた。……正直、このままヒューイさん一人で勝てそう感は否めないけど。

 

「まずは動きを!ひょうらんほう!!」

 

「ガオオオオッ!!」

 

ベリオロスが複数発の氷嵐砲でナルガクルガの行動制限を狙う。弱点であるこおりタイプの竜巻が辺りに出現し、ナルガクルガはわずかに動きが鈍った。

……それにしても、ナルガクルガはあまり私たちがよく知るポケモンの技を使ってこないな……今のところ、それらしい技はエアスラッシュくらいしか見ていない。フィジカルに自信があるのか、それとも扱いづらい技よりも慣れ親しんだ戦い方を選んでいるのだろうか。面白い、これもちょっとした研究テーマになりそうだ。

さて、動きが鈍ったナルガクルガに再びヒューイさんが斬りかかる。ナルガクルガも刃翼で応戦するが、先にナルガクルガの刃翼がひび割れ欠けてしまった。部位破壊、成功だ

 

「ニ"ャア"ア"ア"ア"ア"ッ!!」

 

ナルガクルガが一層大きく咆哮を上げた。その直後、その姿が一瞬で掻き消えた。……いや、よく見たら赤い光が周囲を飛び回り、土煙が待っている。あれもナルガクルガ希少種の大技の一つだ!確か名前は『朧月』……!

 

「ヒューイさんは……」

 

ヒューイさんは……え!?太刀を納刀したまま構えを取って、じっとしている!あのままじゃ攻撃の的になるだけだ!

 

「ヒューイさん!」

 

「エルル」

 

「え、エルレイド?」

 

私がヒューイさんに声掛けをしたが、すぐにエルレイドに止められた。まるで、「見ていろ」と言わんばかりに。

 

「ニ"ャア"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ォ"ッ!!」

 

ナルガクルガが動きを見せた!姿を見せると月面宙返りよろしく身を大きく翻して、ヒューイさんに向けて尻尾を振り下ろした!

 

「ヒュー――」

 

私がたまらず声を上げようとした、その時だった。

 

 

「チェストオオオオォォォォォォォッ!!」

 

 

裂帛の気合、その鋭い猿叫が響くと同時にヒューイさんが抜刀、一閃。振り下ろされていたナルガクルガの尻尾が、地面を叩く前に半ばで両断されていた。その凄まじい斬撃と衝撃でナルガクルガは吹っ飛び岩壁に顔面を強打した。

 

「ベリオロス!氷嵐砲連射!撃ちまくれぇ!!」

 

そこへすかさず追い討ちをかける!!何発も連射された氷嵐砲による特大の竜巻は吹雪となってナルガクルガを包み込んだ。やがて、竜巻が止んで晴れていくと、ナルガクルガは完全に動きを止めていた。

 

「ショウ、仕上げだ」

 

「はい!行け、モンスターボール!」

 

納刀しつつ自然体に戻ったヒューイさんに促され、私はモンスターボールをナルガクルガに投げた。ボールはナルガクルガを完璧に捉え、見事捕獲することに成功した!

 

「ナルガクルガ希少種、捕獲完了!」

 

「……ふぃー、疲れたなぁ」

 

「ヒューイさん、お疲れ様でした。……本当に、すごかったです。ドンドルマの英雄……これが、ミラボレアスを単身撃破した実力なんですね」

 

「いやいや、ショウがいてくれたから比較的スムーズに行ったんだよ。ショウがいなけりゃ、ドンカラスを守りながら戦わなきゃならんかった。だが、ショウとベリオロスがいてくれたおかげで、ナルガクルガがドンカラスを気にする余裕もないまま捕獲できた。間違いなく、お前さんがいてくれたおかげだよ」

 

私がヒューイさんを評価すれば、ヒューイさんも私を評価してくれた。……うん、嬉しい。初見時こそは私が足を引っ張ってしまったので、その分嬉しさも一入だ。

 

「んじゃ、帰るかぁ」

 

「はい!」

 

これは胸を張って帰ることが出来る……所謂、凱旋だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショウがヒューイと共にナルガクルガ希少種を捕獲して数日。今はいつ現れるともしれないミラボレアスに備えて、各々が己を磨く日々を過ごしていた。

そんな中、ヒューイは放牧場で子供たちと遊んでいるショウとジンオウガを眺めていた。子供たちを背中に乗せたり、超帯電状態を披露したり、ショウと共に大地を駆けたり……そんな一人と一頭を眺めていたところ、なにか閃いた様子でヒューイが立ち上がった。

 

「お?……おお?おおお!キタ、キタぞ!これは行ける!!」

 

それから、どこからともなく紙と筆を取り出すと何かを走り書きし始めた。書き終えると、大変満足した様子で何度も頷いている。

 

「よしよし……早速ショウにも見てもらおう」

 

「何を見てもらおうって?」

 

紙を手にショウの方へ歩き出したヒューイだが、やや刺を含んだ声色で呼び止められた。ヒューイが振り返った先には、忌々し気にヒューイを睨むアカイがいた。

 

「お、アカイ。いやぁ、ちょいと閃いたもんだから、インスピレーションを与えてくれたショウにも見てもらおうと思ってな」

 

「何の話だ」

 

「ははは……以前、ユクモ村に寄った時の話なんだが、村長さんが面白い歌を歌ってたんだ。一行につき決まった文字数で歌うんだが、俺も一つ歌わせてもらったのよ」

 

「……で、感想は?」

 

クッソダセエ(個性的ですわ)、ってさ」

 

「あっそ」

 

興味なさ気に振舞うアカイだが、ヒューイの言う歌の内容に聞き覚えがあるような気がする。そんなアカイの思考など知らず、ヒューイは話を続けた。

 

「そうだ!今回のはかなり自信があるんだ!お前の聞いてってくれよ!」

 

「なぜ俺が……はいはい、是非とも聞かせてもらおうじゃないか、英雄さんのセンスってやつをな」

 

「なんか棘がある気がするが……まぁいいか!それじゃあ、読むぞ!」

 

コホン、と咳払いをすると共に、ヒューイは自身が紙に書いた内容を読み上げた。

 

「いざ往かん 蒼光纏う 雷狼の 咆哮響く 古の国」

 

「!?!?!?!?」

 

「どうだ?結構自信があるんだぜ?」

 

「クッソダセエ」

 

「おいいぃ!?」

 

とりあえず一刀両断にしたアカイだが、内心は激焦り状態だった。ヒスイ時代で歌われ、シンオウ時代にまで歌い継がれていた謎の和歌……その元凶が突然目の前に現れたのだから、驚く他ない。

 

「(俺がコイツに話しかけなければ、ショウはこの詩を聴いていた。それが、シンオウの時代にまで伝わっただと……!?つまり、この世界があの世界線ならどのみちミラボレアスは倒されていた……だが、詩が残ったことで特異点となったのか?……ちっ、ここでは判断できん)」

 

「クッソー……自信あったんだけどなぁ。あ、それならショウたちにも聞いてみようか」

 

「今すぐやめろ、お前のセンスはヒスイ人には受け入れられない。どうせなら向こうに戻ったあとで、ユクモ村長に聴いてもらったらどうだ。元々、貴様のセンスに酷評を下したのは彼女だろ。意趣返しにもなるし、それでいいだろ」

 

「そ、そこまで言う?うーん……だが、ユクモ村長に俺のセンスを見直してもらういい機会でもあるか。よし、ここはお前の言うとおりにするか!サンキューな、アカイ!」

 

「あぁ(あっぶねぇ~……)」

 

ヒューイは気分良く踵を返し、放牧場を後にした。その後ろ姿が見えなくなってから、アカイは天を仰いだ。

 

「オマエノシワザダタノカ」

 

急速にドッと疲れたアカイは、そのまま止まっている部屋に向かって歩き始めた。その前に一度振り返り、子供たちと遊んでいるショウに目をやった。

 

「(……英雄といえど、子供は子供。ならば、この重みを背負わせる必要はないだろう)帰るか」

 

今一度踵を返し、アカイは歩きさっていく。こうして、当人のあずかり知らぬところで、一つの謎が収束に向かっていった。

 

 

 

 




英雄の強さを見せつけた結果、ナルガクルガ希少種、あっという間に捕獲完了……いや、相手が相手だから、これくらいは普通か?

そして、詩の原因はヒューイにありました。ヒューイがヒスイにやってきた時空の歪みは祖龍が起こしたもの。その祖龍もコトブキムラで会うまでヒューイを認識していなかった。
詩を考えたのはヒューイ、そしてそれを止めたのは紅龍……うーん、この。


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邪龍を討つ、そのために

今回はめっちゃ短めです。



天冠の山麓に出現したナルガクルガ希少種は、私とヒューイさん(というか、ほぼヒューイさん)によって無事に捕獲された。ラベン博士が早速調査をしたいと申し出てくれたんだけど……ナルガクルガ希少種は、全くと言っていいほどボールから出てこようとしなかった。ボールを投げても出てこない、あるいは出てきそうになった瞬間に秒でボールに戻るなんてことが起こるばかりで、全く調査が進まなかった。

仕方がないので、ナルガクルガ希少種はヒューイさんに預けることにした。すべてを終えた後、ハンター達は元の世界に戻るそうなのでその時にホロロホルルをはじめとして、ヒスイ地方に現れて技巧種化したモンスター達を引き取ってもらえることになった。

ただ、ここでも問題がもう一つ。ジンオウガ達が本来の世界への帰還を頑なに拒絶した上に、シズカさんがその考えに同調したのだ。シズカさん曰く、ジンオウガ達五頭はこのヒスイ地方に完全に帰化しているため、自分たちの世界に戻っても環境に適応できず死んでしまう可能性が高いそうな。なので、ジンオウガ達には繁殖しないことを条件にヒスイ地方に骨を埋めてもらうこととなった。……内心、ちょっと嬉しい。私が元の時代に戻るまでとはいえ、少しでも長く彼らと一緒にいたかったから……。

 

「…………」

 

「…………」

 

さて、私とジンオウガは現在、訓練場の裏手にある大訓練場に来ている。理由はズバリ……。

 

「……どう?ジンオウガ?」

 

「ワゥ……」(´-ω-`)

 

「ダメかぁ……やっぱり、バトル中じゃないとダメなのかな?」

 

「ワォン」

 

あの"電撃に包まれてビカビカ光る謎のジンオウガ"を解明すること!そのために瞑想中なんだけど……全く変化なし!バトル風景を思い返しながらやってるんだけど、ダメなのかな?

 

「バトル中に変身するって言っても、私もジンオウガもバトルするのに必死だし……」

 

「クゥ」

 

「せっかくシズカさんが"キズナ現象"のことを教えてくれたんだから、モノにしないとね。頑張ろう、ジンオウガ!」

 

「ワン!」

 

と、意気込んでいるところへ私とジンオウガの間をあくのはどうが通り過ぎていった。着弾地点を見て、飛んできた先を見て、それからお互いの顔を見合った。

 

「……場所、変える?」

 

「ワゥン」

 

「ん、平気ならいいんだ」

 

今、"キズナ現象"をモノにするべく瞑想中の私達の横で、ポケモンバトルが繰り広げられている。対戦カードは……。

 

「イーブイ、くさわけ!」

 

「ゾロア、近づけるな!こごえるかぜ!」

 

「ブイー!」

 

「ゾロァ!」

 

「……!それなら、アイアンテール!」

 

高速で接近するイーブイを阻むように、ゾロアがこごえるかぜを放つ。イーブイは素早く技を切り替え、地面に思い切り鋼鉄の尻尾を叩きつけることで、巻き上がった土煙がこごえるかぜを阻んだ。

 

「なに!?」

 

「今だ!かみつく!!」

 

「ブーイッ!」

 

「ゾラ!?」

 

煙から飛び出したイーブイが、ゾロアの頭に噛み付いた。ダメージからか、それとも頭を噛まれているからか、ゾロアは必死にイーブイを振りほどこうと暴れていたが、最終的には涙目になってフィールド中を走り回り始めた。

 

「あー……これは……」

 

「ショウ、見てた?どう思う?」

 

「完全にゾロアの戦意喪失ですね」

 

「ニールさん、決着です」

 

「ゾロアー、戻ってこーい」

 

「イーブイも、おいで」

 

バトルをしていた二人、シズカさんとニールさんがそれぞれの相棒ポケモンを呼び戻してバトルは終了した。ゾロアはピィピィ泣きながらニールさんの胸に飛び込み、イーブイは生意気な雰囲気を醸し出すドヤ顔で尻尾を振っている。

シズカさんとニールさんは、以前ヒューイさんに言われたとおり自分のポケモンと向き合うことを始めた。ボールから出して一緒に一日を過ごしてみたり、今のようにポケモンバトルをしてみたり、ヒスイの自然を歩いてみたりと、思い思いの時間を過ごしていた。

ネネさんはコイキングが貧弱なので、まずは野生ポケモンの弱い個体とバトルをして進化を目指すそう。シュラークさんもオヤブンストライクと話をしている様子を度々見かけていた。

 

「ショウの方はどう?キズナ現象、なんとかなりそう?」

 

「いや~……それが、さっぱりでして。やっぱりバトル中じゃないとどうにもならないみたいです」

 

「大変そうだな、ショウとジンオウガも」

 

こっちに歩いてきたニールさんとシズカさんに、自分たちの現状を伝える。……それにしてもシズカさん、随分と表情豊かになったなぁ。

 

「そっか……実際、キズナ現象を使っていた彼もバトル中にその力を顕現させてたし、やっぱりバトルが鍵なのかな?」

 

「彼……シズカさんが言ってた?」

 

「そう、ゲッコウガの彼」

 

彼……シズカさんがそう呼ぶ人はゲッコウガとキズナ現象を起こしたらしい。その時、旅仲間の一人から自身の名を冠した呼び名を貰ったそうだけど……私もそうなるのかな?

ショウジンオウガ……うん、悪くないかも。

 

「そういえば、ショウたちのほうで計画している強化プランはどうなっているの?」

 

「あぁ、なんだっけ?スーパー……」

 

「メガシンカですよ、ニールさん」

 

「おぉ、それだ!それで、どうなんだい?」

 

「それが……まだワサビちゃんとベリオロスのみですね」

 

「そうか……」

 

私たちが計画している強化プラン……それは実にシンプルなもので、『ジンオウガとリオレウスに続け!メガシンカ形態に進化作戦』である。

ジンオウガとリオレウスは、それぞれメガストーンを体内に取り込むことでそのエネルギーを吸収し、メガシンカ個体へと通常進化した。それに倣い、グラビモスやベリオロス達も進化をしようという計画だ。ただ……ラギアクルスだけは、未だにメガストーンが見つかっていない。その分、ラギアクルスはガラナさんやシズカさんと交流を深めているようだ。

キーストーンは私が持っていたものと、シロちゃんが追加で持って来てくれた二個の計三個を使い回しているところだ。誰が誰を担当するかは、話し合いながら検証しているみたい。

 

「大丈夫、焦る必要はないからね。こういうのって、意外と土壇場で何とかなったりするから」

 

「いやいや、土壇場って……そんなギリギリで大丈夫なのか?」

 

「ニールさんは心配性ですね。でも、きっと大丈夫だって私は信じてます。それに、これまでの経験則からして重大な勝負で覚悟が定まった場合は必ずと言っていいほど顕現しています。ショウとジンオウガの絆も確かなもの……だから、大丈夫です」

 

「……まぁ、俺も信じていないわけじゃないからな。ショウも、無理も焦りも必要ないからな。ミラボレアスが出てくるまでは、のんびり頑張っていこう。ゆとりも大事だぞ」

 

「はい。ありがとうございます」

 

そうだ、焦る必要なんてない。私とジンオウガの間には、確かな絆がある。なら、今はそれを信じて精進するだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ニールさんに言われたとおり修行漬けの日々では息が詰まるのでのんびりと羽を伸ばすことにした。今日は放牧場で子供たちがジンオウガと遊んでいる。こうして見ると、雷狼竜の名前通りただでっかい狼みたいだ。子供たちの目線に合わせるように体を伏せたり、ぴょんぴょん跳ねまわったり……狼、というより、犬?

 

「……ん?」

 

と、少し辺りを見渡していたら遠くにヒューイさんの姿が見えた。ヒューイさんが何やら自信有り気な様子でこっちに歩いてこようとしたところ、アカイさんに呼び止められていた。なにか少し話をしたあと、ヒューイさんはこっちに向けていた足を反転させて向こうへ歩いて行き、代わりにアカイさんがこっちに来た。

 

「アカイさん」

 

「やぁ、ショウ。今は休憩中かな?」

 

「はい、いつも修行ばっかりじゃ疲れるので……だから、たまの息抜きです」

 

「それはいいことだ。常に鍛錬を重ねることが良いことではない。陳腐な意見だが、休むことも修行だ」

 

「ですね」

 

「……ところで、君は……」

 

「ん?」

 

「……いや、なんでもない(この様子だと、詩のことは頭から抜けているな)」

 

アカイさん、何を言いたかったんだろうか……しつこく聞き出すのも失礼だし、聞かないことにしよう。

 

「そういえばアカイさん、リオレイアを見てませんか?もしくは、シロちゃんを」

 

「ん?……いや、見ていないな。だが、姿を見せないのは隠れているというわけではないだろう。待てばいいさ、それくらいの器量はあるだろう?」

 

「もちろん、待ちますよ」

 

……ただ、リオレイアが心配なのかリオレウスが上の空であることが増えている。ライゼクスがこれ見よがしにリオレウスに言い寄っているが、リオレウスは言い寄られている間はちゃんと相手にするが、ライゼクスがいなくなると途端に上の空に戻る。やっぱりリオレウスもリオレイアが心配なんだ……。

 

「でも、リオレウスが……」

 

「あぁ、アイツか……アイツには私の方から話しておこう。だから君はジンオウガとのことに意識を割いておきたまえ」

 

「……お願いします」

 

しょうがない、ここはシロちゃんを信じて待つしかない。それに、リオレウスにはアカイさんから説明をしてくれるだろうし、任せておこう。

 

「その必要はないよ」

 

だが、そこへ聞こえてくる声。この声……シロちゃん?

 

「シロ、戻ってきたか」

 

「ただいま、アカイ」

 

「……風呂行け」

 

「そこまで言うほどじゃなくない?」

 

「誤魔化せると思ってんのかオメェ!?」

 

「……あの、さっきから何の話を?」

 

「なんでもないなんでもない。ね、アカイ?」

 

「……いや、なんでだよ」

 

アカイさんが頭を抱えて……お風呂って、シロちゃんは意外とお風呂嫌い?

 

「シロちゃん、お風呂は入らなきゃだよ。衛生的にもね」

 

「はーい」

 

「……それで、何か用があったんじゃないのか?」

 

「あ、そうだった。……今夜、黒曜の原野で一番高い場所に来て欲しいの。リオレウスを連れてね」

 

「リオレウスを……?」

 

「待ってるからね」

 

それだけ言うと、シロちゃんはさっさと歩いて行ってしまった。……もしかして?

 

「気づいたか?」

 

「アカイさん……多分、リオレイアのことですよね」

 

「あ、そっち……ん、まぁそうだな。便宜上、リオレイアのトレーナーはシロが務めていた。そのシロがリオレウスを連れて今夜会いに来い、ときた。十中八九、リオレイア関係だろう。もちろん、行くのだろう?」

 

「無論です」

 

リオレウスの憂いを絶つという意味でも、今夜の話し合いは重大案件だ。夜までが待ち遠しい。

……ところで……。

 

「さっきから視界の端に映ってるベリオロスはなんで死んだように倒れてるの?」

 

少し離れた場所で、ベリオロスが倒れたまま身じろぎ一つしない。子供たちに囲まれる中、唯一大人のシズカさんの元へ行き、話を聞くことにした。

 

「シズカさん、これは……」

 

「あ、ショウ。別に、ワサビさんにちょっと一言ベリオロスに言ってもらっただけだよ」

 

「なんて?」

 

「……"このロリコンめ"って」

 

「…………」

 

なんだ、ただの致命傷か。あーあ、早く夜にならないかなー。

 

 

 

 




他の人のを読んでたらわかるんですが……自分、文字数多いなぁ。
周りと平均文字数比較したら一人だけ五桁でワロタ。


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刻竜と輝界竜

ちょいと遅れてすいません!今回も前後半に分けさせてもらいます!
どうせ戦闘シーンを書くなら、なるべく長く書きたいし


私はシロちゃんに言われたとおり、夜になった後で黒曜の原野で一番高い場所である高台ベースまで来ていた。正確には高台ベースのすぐ背後にある崖上のことで、アヤシシが初めて姿を見せた時に立っていた場所だ。

 

「来たよ、シロちゃん」

 

「うん。待ってたよ、ショウ」

 

シロちゃん……ヒューイさんと出会ってからはお互いに惚れ込んでいるのかしょっちゅう二人で人目を忍んで会ってるみたい。その時に何をしているのかは知らないけど……アカイさんが頭を抱えたり胃を押さえたりしているあたり、多分世間体にはよろしくないことなんだろう。……いや、本当に何してるのか知らないけど。

 

「どうしたの?」

 

「ううん。最近のシロちゃん、随分とイキイキしてるなぁって」

 

「えへへ、そう?」

 

屈託なく笑う姿は見目相応の幼い少女。しかしその身に纏う不思議なオーラは高尚・廉潔・荘厳であり、古老のような偉大さを感じさせる。本来ならありえないだろう、矛盾にも似た要素を併せ持っている。

 

彼女は本当に何者なんだろうか。

 

「それで、リオレイアについて話があるって……」

 

「うん。……それじゃあ、呼ぶね?リオレイア!!」

 

シロちゃんが腕を高く突き上げて叫ぶと……空からリオレイアが物凄い勢いで飛んできた。……いや、飛んできたは飛んできたんだけど……。

 

「リオレイア?」

 

「リオレイアだよ?」

 

「いや、なんか凄い見た目……」

 

「ところでこの子を見て。この子をどう思う?」

 

「……すごく……真っ黒です……」

 

リオレイアの新緑のような緑色は何処へやら……その全身は漆黒の鱗や甲殻に包まれ、身体の棘や長大な翼爪、牙は紅色に染まっている。翼の骨格の先端部は巨大な鉤爪型に変化していて、尻尾の棘は一本の大剣のように強靭に発達している。脚も非常に太く発達している。翼の力も相当強いのか、さっき飛んできた動きだけでも飛行能力の高さが伺える。

まるでリオレイアの闇落ちだ……なにがどうしてこうなったの?

 

「シロちゃん、このリオレイアは……」

 

「厳密に言えば、今の彼女はリオレイアじゃない。向こうの世界でも生態、祖先、出現経緯、その他一切の情報は未だ明らかになっていない、古龍以上に謎が多い飛竜種。そのためにギルドもリオレイアに似た姿をしたこのモンスターの名前を決めあぐねていて、今のところは『UNKNOWN』という仮名をつけているわ」

 

「アンノ()ン?」

 

「惜しい。アンノ()ン、よ」

 

なんだ、名前違いか……いや、彼らと彼女を同列に扱うのは余りにも烏滸がましすぎるな。

 

「実はね……前々からリオレイアのことは、ショウに預けようって思っていたの。ショウやジンオウガたちも成長が著しいし、リオレイアもきっと強くなれるだろうって。……でも、ちょっと事情が変わっちゃったんだよね」

 

「事情?」

 

「リオレウスが『破滅の翼』に覚醒したときのことなんだけど、あの時って結構危ない賭けだったんだよ?本来ならリオレウス自身にもうちょっと力があれば不完全なまま破滅レウスにならなかったのに、リオレウスが急ぎすぎてあんなことになっちゃった。

それでね、リオレイアも"このままじゃいけない"って思ったのよ。だから、リオレイアは自身に強化を施して欲しいと、あろうことか私を介して祖龍に直接頼んできたのよ?図々しいけど、その図太さを祖龍は気に入った。だから、リオレイアを特別な空間に閉じ込めて徹底的に鍛えた」

 

「ミラルーツが協力してくれたんだ……ところで、特別な空間って?」

 

空間内の時間が外界の360倍程度の速さで経過する場所で、鍛錬で弱音を吐いたり心が折れそうになると"リオレウスの死"という幻覚が見える場所

 

「は?」

 

「おかげでヤンデレ悪化したけど許(凄く強くなったから期待)してね!」

 

「それ絶対やばいやつだよね!?あとなんか言葉の裏に変な意図が感じられたんだけど!?」

 

もはやこれは成長というより闇落ちでは?……他人事に聞こえないのはどうしてだろうか。

 

「さあ、ショウもリオレウスを出して!ショウのリオレウスと私のリオレイアで勝負だよ!」

 

「勝ったら、リオレイアを?」

 

「貴女に預ける。……うーん、厳密にはリオレイアじゃないしかといって『UNKNOWN』だと紛らわしいし……ここは太古の時代に失われた名前からあやかって『刻竜 ラ・ロ』とでも呼ぼうかな」

 

ラ・ロ……不思議な名前。それに"こくりゅう"……多分文字は違うんだろうけど、あのミラボレアスと同じ名前の別名……見た目も相まって、黒い竜と呼ばれてもおかしくない。

 

「リオレウス!」

 

「…………」

 

リオレウスをボールから繰り出す……が、いつもなら大きく鳴き声を上げるのに、なぜか今日はだんまりだ。……いや、違う。

リオレウスから放たれているプレッシャー……これは、怒気?リオレウスは怒ってるの?何に対して……。

 

「あらら……リオレウスったら、すっかりお怒りモードね。けど、それは誰に対しての怒りなの?最愛の妻を断りもなくこんな姿に変えてしまった私に?何の相談もなく()()ろうとした彼女に?それとも……

 

彼女にその決断をさせてしまった、自分自身の弱さにかしら?

 

「グオオオオオオオッ!!」

 

「リオレウス、ダメッ!!」

 

シロちゃんの言葉が逆鱗に触れたのか、リオレウスは私の制止も振り切ってシロちゃんに豪火球を放った!!けど、シロちゃんは全く動かない。それどころか、豪火球はシロちゃんの真横スレスレを通り過ぎていった……当たらないと気づいていたの……?

 

「ごめんごめん。でもね、あなたが自分を責めるのはお門違いだよ?自意識過剰も大概になさいな、その自責の念は彼女に対する侮辱だわ。彼女は自分の意志でこの姿に至るほどの成長を求めた。これは彼女が自ら選んだ道よ、女の決意を甘くみないで」

 

「……グルルル……」

 

リオレウスは悔しげに歯噛みすると、唸り声を上げた。……リオレウスは、リオレイアの成長を望んでいないのだろうか。いや、この感じはそういうわけではなさそうだけど……。

 

「ふぅ……ごめんね、ショウ。リオレウスを怒らせちゃったね」

 

「う、うん。大丈夫……(なんで怒ったのかは謎だけど)」

 

「それじゃあ、勝負だよ。私のラ・ロとショウの破滅レウス、どっちが強いかな?」

 

「勝負する以上、負けるつもりはないけど」

 

「ふふふ……さぁ、どうだろうね?」

 

 

 

 

推奨BGM

【UNKNOWN】~モンスターハンターフロンティアG~

 

 

 

 

「それじゃあ、いくよ?……潰す気で行くから、覚悟なさい」

 

「……!!リオレウス、りゅうのはどう!」

 

「グオオオン!」

 

「躱しなさい」

 

「グアアアアオッ!」

 

リオレウスのりゅうのはどうはシロちゃんの頭上を越えて背後に居るリオレイア……いや、ラ・ロに向かって飛んでいく。ラ・ロは高度を上げることで攻撃を躱した。

 

「追って!」

 

「グオン!」

 

「ふふっ……ブレイブバード!」

 

「グアアオ!」

 

「ドラゴンダイブ!」

 

「グオオン!」

 

ブレイブバードで突撃してくるラ・ロに対し、私はリオレウスにドラゴンダイブを指示した。タイプ的にはリオレイアと同じドラゴンタイプだろうから、この技が有効なはずだ!ブレイブバードとドラゴンダイブがぶつかり合い……リオレウスが弾き飛ばされた!?

 

「グオオオ!?」

 

「リ、リオレウス!」

 

「ラスターカノン」

 

「か、躱して!」

 

リオレウスはくるくる回りながら吹っ飛ぶが、なんとか姿勢制御を正した。が、息つく暇なくラ・ロのラスターカノンが迫ってくる。慌てて指示を飛ばしたけど、なんとか回避が間に合った!

 

「今の破滅レウスじゃあ、私のラ・ロは倒せない。絶対に、どう足掻いても」

 

「そんなこと……!」

 

「"やってみなくちゃわからない"なんて少年漫画みたいなことは通じないよ。残念だけどね」

 

「……!!」

 

「大丈夫、リオレウスにはラ・ロを倒すことが出来る可能性が十分ある。だから、早くたどり着いてよ。

 

輝界竜 ゼルレウス』へとね」

 

「輝界竜……ゼル、レウス……?」

 

リオレウスには、まだ進化の可能性が残されていたのか……。

 

「闇あらば、光あり。光なくして、闇はなし。ラ・ロとゼルレウスは光と影のごとく、相反する関係……されど相反するものは互いに引き合う。リオレイアがラ・ロに至ったということは、その番であるリオレウスにもゼルレウスへと至る可能性があるはず。

だから、私に示しなさい。世界を照らす輝きの竜、闇に堕ちた刻竜を救い上げるならばそれ以外はない」

 

「!!」

 

つまり……この戦いで、進化しろってことね……!

 

「……わかった、なんとかする!」

 

「ふふっ……期待してるね」

 

「リオレウス、きあいだま!」

 

「グオオオン!」

 

「はがねのつばさ」

 

「グアアア!」

 

リオレウスがきあいだまを放つも、ラ・ロははがねのつばさによるバレルロールで弾き飛ばし、そのままリオレウスに接近する。

 

「ドラゴンクロー!」

 

「ドラゴンクロー」

 

「「グオオオ!/グアアア!」」

 

それぞれが、翼爪でドラゴンクローを発動させるとそのままぶつけ合う。……だが、膂力に差があるようで、リオレウスはそのままラ・ロに押し込まれて高台の壁の叩きつけられてしまった!

 

「はかいこうせん」

 

「……!メガトンキック!!」

 

「グオオオオン!!」

 

「……ッ」

 

ラ・ロが破壊光線を発射しようとした直前に、リオレウスがメガトンキックでラ・ロを引き剥がした。僅かに怯むラ・ロだが、それでも構わずはかいこうせんを発射したが、リオレウスはすぐさま身を翻しはかいこうせんを回避した。……崖の一部が消し飛んだけど許してくれるかな……。

 

「今度はこっちがはかいこうせんだ!」

 

「グオオオオン!!」

 

「……ッ」

 

リオレウスのはかいこうせんは直撃……だが、ラ・ロは堪えた様子がない。

 

「さぁ……可能性の飛竜の力を、もっと見せて」

 

「行くよ、リオレウス……!!」

 

「グオオオン!!」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【正気に戻れ!】我らモンハン部異世界支部【陸上葵!!】

 

305:空の王者 ID:MH2nddosHr8

葵!葵ぃ!!

 

306:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

しっかりしろ焔!次、来るぞ!!ショウちゃんの指示に従え!

 

307:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ローリングで弾くんだ!

 

308:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ボムを上手く使え!

 

309:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ブーストで切り抜けろ!

 

310:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

黙れ指示厨ども!別ゲーやってんじゃねえよ!!

 

311:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

決して諦めるな!自分の感覚を信じろ!!

 

312:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

すごいまともなことを言ってるつもりなんだろうが、それも別ゲーなんだよ!

 

313:空の王者 ID:MH2nddosHr8

葵……葵……!

 

314:陸の女王 ID:MonHunPHr5

焔……

 

315:空の王者 ID:MH2nddosHr8

葵!正気に戻って――

 

316:陸の女王 ID:MonHunPHr5

……アハッ

 

317:の女王 ID:MonHunPHr5

アハハハ

 

318:陸の ID:MonHunPHr5

アハハハハ八八ノヽノヽノヽノ\/\

 

319:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

もう絶対に離さない逃がさない死なせない殺させない私が守るわあなたは死なないもう誰にも二度と何度も死なせない私がいるもの絶対絶対絶対絶対アハハハハハハハハハハハッッッ!!!!!

 

320:空の王者 ID:MH2nddosHr8

――ないですね!!余計に悪化してるじゃねえか!?おいミラルーツ!お前ホント良くもやってくれやがったなぁ!?

 

321:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あっれ~……おかしいなぁ?ヤンデレってメンタル強いって聞いたんだけど、嘘情報だったのかな……

 

322:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、別にメンタルは強くねぇから!?ズレてはいるがそれは強靭になったってことにはならないからな!?

 

323:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

そうなの!?

 

324:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ヤンデレの定義を見誤ってんぞコイツ!

 

325:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

だって、大仰に好き好きって公言してる相手だって平然と殺せるんでしょ?好きな人だって平気で手にかけるんだから、メンタルつよつよなのかな~って

 

326:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、全然違うからな?

 

327:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

ほむらほむらほむらホムラホムラ焔!愛して!愛がっ!!私の焔!好き好き、好き!!私のものになって!なってなってなってよ!?

 

328:空の王者 ID:MH2nddosHr8

うるせー!?俺の所有権は俺にしかねーんだよ!俺から人権を奪うな!

 

329:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まぁ今は竜なんですけどね

 

330:空の王者 ID:MH2nddosHr8

そうだった、市役所はハンターズギルドでいいのかな……っておい!今忙しいの!ボケるな!俺にツッコミをさせるな!!

 

331:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

忙しいのはわかるが、実際どうなんだ?なにか感覚は掴めそうか?

 

332:空の王者 ID:MH2nddosHr8

ぐぬぬ……いや、なんとも……

ただ、葵と物理技でぶつかり合うと、こう……頭の中がビリっとくる感覚がする……気がする

 

333:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なら、その感覚を信じて戦うしかねぇな

俺もキズナへんげしたとき、ショウと一体化する感覚があったから、きっと間違いじゃないはずだ

 

334:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

え?

 

335:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

は?

 

336:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ん?どうした?

 

337:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……十代半ばの女の子と一体化……

 

338:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

冷静に考えれば戦犯ロリコンはここにもいたわけか

 

339:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ノーカン!身内はノーカンだ!!

 

340:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、だとしても前世も今世も雄だったやつが異種で前世的に親類に当たるとはいえ異性と一体化という発言はさすがに……

 

341:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

逮捕案件だーっ!!

 

342:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんでお前がノリノリなんだよ!!

 

343:空の王者 ID:MH2nddosHr8

外野がうるせー!!こっちは戦闘してるんだよ静かにしろー!!

 

344:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

上も下も大騒ぎねぇ

 

345:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

焔!ああああああ!!どうしてどうして私はいつも!うあああああ!!

 

346:空の王者 ID:MH2nddosHr8

いい加減にしやがれ葵!喉が潰れるぞ!!

 

347:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なお、この場は脳内にて発声器官への影響はない模様

 

348:空の王者 ID:MH2nddosHr8

あぁ、そうか……じゃあ、ハゲるぞ!!

 

349:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

女にハゲとは最低野郎め

 

350:空の王者 ID:MH2nddosHr8

にっちもさっちもいかんのだが!?

 

351:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

焔……焔ッ!私は強くなった!誰よりも何よりも!!この力であなたを守る!あなたはもう何もしなくていいの!!だから!ここで私に倒されて!!

 

352:空の王者 ID:MH2nddosHr8

……おい、葵

 

353:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

焔……?

 

354:空の王者 ID:MH2nddosHr8

つまりあれか……?お前は俺を、女のケツに隠れてガタガタ震えるだけのダセェ男にするのが目的だったってのか?

 

笑 わ せ る な

 

355:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

!?!?!?!?

 

356:空の王者 ID:MH2nddosHr8

俺はそんなダサ男になるつもりはねぇし、少なくともお前が憧れてくれた俺っていうのは、そんなしょうもない人間じゃなかったはずだ……まさかそれを、お前の口から「なってくれ」なんて言われるとはな……

 

357:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

……ぁ

ち、ちがぅ……わ、わたし!そんなつもりじゃ……

 

358:空の王者 ID:MH2nddosHr8

確かに、今の俺は身体スペックは葵に劣る、お前に守られたほうが安全だろう

 

要するに、葵より強くなればいいんだな?(・・・・・・・・・・・・・・)

 

359:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

!!!!!

 

360:空の王者 ID:MH2nddosHr8

だからよぉ……なってやろうじゃあねぇか!

 

ゼルレウスになぁ!!

 

 

 

 




次回は予告しておこうかな……戦闘シーンをしっかり書く事と、文字数も一万文字超えを目指します!


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久遠の果てに耀き放つ

お待たせしました!宣言通り、一万文字超の戦闘シーン多め、どうぞ



夜の黒曜の原野に呼び出された私を待っていたのはシロちゃんと、シロちゃんの白さと対照的に真っ黒になったリオレイア……刻竜ラ・ロだった。ラ・ロの力は凄まじく、リオレウスの攻撃がほとんど通用しない……それどころか、膂力でも完全に押し負けてしまうほどに差がついてしまっている……!

 

「リオレウス!メタルクロー!!」

 

「つばさでうつ」

 

「グオオオオ!」

 

「グアオオッ!」

 

場所は変わって現在、蹄鉄ヶ原上空。リオレウスが足の爪でメタルクローを放つが、ラ・ロは翼爪で受け止めるとそのまま体を反転させてその勢いでリオレウスを投げてしまった。

 

「りゅうのはどう」

 

「グアアアアアオッ!」

 

「グオオッ!?」

 

「リオレウス!」

 

りゅうのはどうが直撃したリオレウスはそのまま落下。そこをラ・ロが追撃してきた。

 

「「ドラゴンクロー!」」

 

「グアアアオ!」

 

「グオオオン!」

 

リオレウスは素早く体を反転させて翼爪を振るい、ラ・ロは足の爪でそのままリオレウスに蹴りかかった。二頭はもつれ合ったまま地上へ落下し、激しく土煙を巻き上げた。

 

「リオレウス……!」

 

「…………」

 

状況を見守る中、少しずつ煙が晴れていく。晴れた先ではダメージを負って肩で息をするリオレウスと、余裕綽々といった様子のラ・ロがいた。

 

「……はぁ。こんなものなの?」

 

「くっ……!」

 

「破滅レウスへ覚醒した根性は認めてあげてもいいけれど、精神論だけじゃ強くなれないわ。理性を捨てて、本能を解き放ちなさい。そうやって押さえつけたりするから、肝心なところで力を発揮できないのよ。

破滅レウスが最強ですって?その思い込みが既に間違いよ。破滅レウスは確かに強いけど、それは現状の貴方が最強であることの証明にはならないわ。足りないのよ、自らの中に描く最強の己が。貴方の最強とは、理想とは、こんなに浅いものだったの?」

 

「グルルル……!!」

 

「私に苛立つのは結構だけれど、今の貴方に彼女の覚悟をどうこう言う権利はないことを忘れないでちょうだいね」

 

「…………」

 

……ちょっと何言ってるかわからないけど……シロちゃんの言い分を解釈すると、現状でも十分強いけどそれで満足するな、ってことかな?最終進化まで進化したからといって、そこで満足することなくさらに進化するつもりで強くなれ……ってことで合ってるかな?

そして、リオレウスは無茶の末にたどり着いた現状に満足してしまっているから、さらに強くなる可能性……ゼルレウスに進化できないということ。

そして、リオレイアはリオレウスの無茶を目の当たりにして、今のままではダメだと一念発起。もしかしたら、リオレウス以上の無茶をして今の姿であるラ・ロに行き着いたのかもしれない。

ただ無茶や無理をすればいいというものでもないと思う。リオレイアは、一体どんな覚悟で、何を想ってラ・ロへ進化したのか……それさえわかれば、なにかヒントが見えてくるかもしれない。

 

「リオレウス、まだやれるね?」

 

「……!グオン!!」

 

「よし、ぼうふう!!」

 

「グオオオオッ!!」

 

リオレウスが放ったぼうふうは、あっという間にラ・ロを包み込んだ。ラ・ロは翼爪を地面に突き立てて耐えているようだが、このままじっとするつもりはない!

 

「ドラゴンダイブ!」

 

「グオン!」

 

「避けて」

 

「グアン!」

 

ぼうふうの中心にいるラ・ロに向かって、リオレウスが上空からドラゴンダイブで突っ込んでいく。シロちゃんは冷静に回避を指示して、ラ・ロも空中へ飛び上がった。リオレウスはそのまま地面に突っ込んだけど、これも狙いの一つ!

 

「……!リオレウスの姿が……」

 

そう、ドラゴンダイブで地面に突っ込んだ勢いで巻き上げられた土煙が、リオレウスの姿を包み隠す!まだまだ!

 

「りゅうせいぐん!!」

 

「グオオオオオンッ!!」

 

ラ・ロに向かって放たれたエネルギーは顔の真横スレスレを通り過ぎて行き、はるか上空で炸裂した。

 

「ラ・ロ、回避を――」

 

「逃がすなっ!インファイト!!」

 

シロちゃんの指示でりゅうせいぐんを避けるべく振り返ろうとした、その一瞬!そのひと呼吸があれば充分だ!あっという間にラ・ロに肉薄したリオレウスが、ラ・ロにインファイトを叩き込む!体当たり、翼爪による斬撃、そのまま上をとって蹴り!りゅうせいぐんが避けきれない距離に近づくまでひたすらに攻撃を叩き込み、タイミングを見て一気に離脱!りゅうせいぐんが次々とラ・ロに直撃し、たまらずラ・ロは墜落した!

 

「へぇ……」

 

「どう?シロちゃん」

 

「悪くないね。ショウの戦わせる才能に彼らの力が加われば、さもありなんってところか。まぁ……それでも及第点だね」

 

「なにを……!」

 

ほとんど完璧に決まったといってもいい連続攻撃だったのに、シロちゃんからは及第点……!?どういうことかと疑問を抱くも、その答えはすぐにわかった。

 

「そんな……!?」

 

「ラ・ロにはまだ届かないかな。ゲーム風に言えば体力は減ったけど自動回復量以下ってところだね」

 

煙の中から姿を見せたラ・ロはほとんど無傷だった。ダメージは負ってるのだろうけど、外傷に表れるほどではないということか……!

 

「さあ、どんどん行くよ。エアスラッシュ」

 

「躱して!」

 

「グアアアァァオッ!」

 

「グオン!」

 

ラ・ロが放つエアスラッシュを、リオレウスは空中へ躍り出て次々と回避していく。けど、完全には躱しきれていない……所々を攻撃が掠めている……!

 

「ばくおんぱ」

 

「グアオオオオオォォォンッ!!」

 

「グオオッ!!」

 

回避を続けていたリオレウスだったが、ラ・ロに先回りされてばくおんぱを直撃させられてしまった!

 

「立て直して!ドラゴンダイブ!!」

 

「ドラゴンクロー」

 

「グオンッ!グオオオオオォッ!!」

 

「グアオオッ!!」

 

持ち前の空中制御で体勢を立て直し、すぐさまドラゴンダイブで突っ込む!ラ・ロは翼爪によるドラゴンクローでリオレウスを抑えにかかるが、それでもリオレウスが強引に突き破ろうとしたところで爆発。両者は大きく距離をとった。

 

「ラ・ロ」

 

「グアン」

 

「ふふっ、そうこなくっちゃ」

 

「リオレウス、まだ大丈夫?」

 

「グオン!」

 

リオレウスは「まだまだやれる!」と意気込んでいる……は、いいものの、戦局的に見ればこちらが不利だ。

シンプルに、力の差が大きすぎる。ラ・ロは私がこれまでに遭遇したモンスターの中でも一線を画してヤバい。アルバトリオンやミラボレアスは「古龍だから」とその強さに説明がつくものの、ラ・ロはそれが一切当てはまらない。一見するとリオレイア、だがその中身は全く別の生物……なるほど、『UNKNOWN』と呼ばれるわけである。

さっきからリオレウスの攻撃を何度も受けているはずなのに、ケロリとしている。いや、ダメージは確実に積み重なっているんだろうけど、それも微々たるもの……塵も積もればなんとやらとは言うが、一度に積もる塵の量によっては途方もなく時間がかかる。

……やはり、たどり着くしかないのか。ゼルレウスに。

 

「ほらほら、ぼーっとしてないでいくよ。ラ・ロにはこんな戦い方もできる……ミサイルばり!」

 

「グアォン!」

 

ラ・ロの背中……リオレイアの時からの特徴である背中の刺が赤く輝き逆立つと、猛烈な勢いでミサイルばりが発射された!?

 

「避けて!」

 

「グオン!」

 

リオレウスは大きく羽撃き、すぐに高速で移動を始めた。だが、ミサイルばりもリオレウスに負けない速度で追従している。リオレウスは時折振り返ってかえんほうしゃを放ちミサイルばりを撃ち落としたり、バレルロールで振り切ったりしている。

 

「サイコカッター」

 

「グアアン!」

 

と、ここでサイコカッター!?ラ・ロの尻尾にサイコパワーが集まると、それをサマーソルトで一閃、サイコカッターを発射した!いや、まだだ!

 

「フレアドライブ!」

 

咄嗟の指示が間に合い、リオレウスはその身に炎を纏った。フレアドライブの炎はこの瞬間だけはリオレウスの身を守る鎧となり、サイコカッターとミサイルばりを阻んだ。

 

「へぇ、やるぅ!それじゃあ、こんなのはどうかな?りゅうせいぐん!」

 

シロちゃんは次の指示を飛ばした!ラ・ロはまず、りゅうせいぐんを打ち上げた。大きな隕石の塊が天高く登り砕けた、その直後!

 

「りゅうせいぐんを、ぼうふうで全て飲み込んで!」

 

「なにを……?」

 

続いて出された指示はぼうふう。ぼうふうの技で発生した巨大竜巻はりゅうせいぐんを次々と飲み込み、荒れ狂う嵐の中に隕石が飛び交う危険な竜巻と化した。

 

「まさか、その竜巻を……!?」

 

「ふふ、気づいた?でももう遅い!ラ・ロ、その竜巻をリオレウスにぶつけなさい!」

 

「グアアアオオォン!」

 

ラ・ロが翼を力強く羽ばたかせると、竜巻がリオレウスに迫って来る。

 

「リオレウス、躱し――」

 

「グオオオオオオオオオンッ!!」

 

「あっ、リオレウス!?」

 

私が回避を指示しようとしたところ、リオレウスは私の声を無視してギガインパクトで竜巻に突っ込んでしまった!?竜巻の中で、何かが激しくぶつかる音がする……リオレウス……!

竜巻を突き破って、リオレウスが姿を現した。だが、翼爪は折れ、背中の甲殻が剥がれ、全身に余すことなく傷をつけた姿がそこにあった。

 

「リオレウス……!!」

 

「うーん……埒が明かないわね、ちょっとギアを上げてみようか(意地張っちゃって……なまじ前世が人間だったから、理性が強すぎるわね)」

 

「……!ま、まだ何かあるの……!?」

 

「うん。覚悟なさいな、リオレウス。……貴様の理性、完膚なきまでに破壊する」

 

シロちゃんは両腕を大きく広げると、高らかに叫んだ!

 

「さぁ、刻竜よ。その龍魂を目覚めさせなさい」

 

「グアアアアオオオオオッ!!」

 

ラ・ロが大きく咆哮を上げると、全身から燃えるようなオーラが溢れ出した!?咆哮を終えるとオーラは消えてしまったが、今のは……?

 

「ふふ、まずは一つ」

 

「……っ!リオレウス、アイアンヘッド!!」

 

「グオオン!!」

 

「デス・ディストーション」

 

ラ・ロが状態を持ち上げ、口元にブレスをチャージし始めた。リオレウスが頭を突き出し頭突きしようとした直後……飛び上がったラ・ロが足元にブレスを発射し、リオレウスをまるまる飲み込むほどの大爆発を起こした!?

 

「グオオオオッ!!」

 

「リオレウスッ!!」

 

リオレウスがゴロゴロと転がり、シシの高台を挟んだ川に落下してしまった!

 

(ヒュージ)(ドラッグ)(ドーン)

 

続いてラ・ロは翼爪を勢いよく地面に突き刺し体を固定すると、まるでマグマライザーのような光線を放った。その光線はタイミングよく川から上がったリオレウスに直撃、そのまま押し込み崖に叩きつけると、射線をずらしてリオレウスを持ち上げて崖の向こうまで吹っ飛ばしてしまった!!

 

「行こっか」

 

「ッ!!」

 

「大丈夫、殺しはしないよ。それこそ、そんなことしたら私がラ・ロに殺されちゃう――」

 

「それは……」

 

「――か・も・ね?」

 

「…………」

 

今ばかりはシロちゃんが何を考えているのかわからない……けど、リオレウスを追いかけなくちゃいけないのは確かだ。

久しぶりにカミナギの笛でアヤシシを呼び出した。ムラを追放されて、ジンオウガと出会ってからはなるべく彼らに頼らないようにしていたけど、せっかくだから頼んでみることにした。……正直、ずっと呼んでなかったから拗ねてるかなと危惧していたけど、そんなことはなかったよ。

ただ、アヤシシがシロちゃんを見るなり彼女の目の前で傅くものだから、物凄く驚いた。彼らは所謂『土地神』みたいなものだから、そんな彼らがシロちゃんに頭を下げる光景は異常だった。ヨネさんが見たら、ひっくり返りそうだなこれ。

一方でシロちゃんはというと……動揺することなく「構うな、楽にせよ」とか、「今は一度、この身を預けよう」とか、これまたすごく荘厳な言葉遣いでアヤシシに話しかけていた。それに対してアヤシシも、最大限の礼儀を尽くさんとばかりにシロちゃんを騎乗させていた。

 

「ほら、行こう?」

 

「……シロちゃん」

 

「なに?」

 

「キリンにもそれくらいの態度で接してあげても良いのでは?古龍種、なんだよね?」

 

「あの子はいーの、だってマゾだし」

 

「…………」

 

……どこかから『心外だー!!』とばかりに嘶きが聞こえた……気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リオレウスを追ってアヤシシが駆ける。向かった先はオヤブンオドシシがいる高台の一部だ。ここはリオレウスくらいのサイズだとかなり狭いけど……。

 

「リオレウス!」

 

「グルルルル……!」

 

高台はラ・ロが陣取っていて、リオレウスは坂道に立っている。こういう時、高所を陣取ったほうが有利って聞くけど、確かにそうかもしれない。リオレウスやラ・ロは首が長い……あの長い首を持ち上げてまで上を見上げようと思ったら、かなりの負担になるんじゃなかろうか。

 

「解き放て」

 

「グアアアアオオオオオッ!!」

 

シロちゃんの指示。再びオーラを放つ咆哮を上げるラ・ロ。……これは直感だけど、あの咆哮を打たせるのはまずいかも知れない……!

 

「リオレウス!ハイパーボイス!!」

 

「グオオオオオオオオオオオッ!!」

 

「エアカッター」

 

「グアアアオ!」

 

リオレウスがハイパーボイスを放つも、エアカッターでかき消された……!?

 

「目覚めよ」

 

「グアアアアオオオオオッ!!」

 

さっきよりもラ・ロの能力が上がっている……やっぱり、さっきのオーラの咆哮がラ・ロを強くしているんだ!

 

「あの咆哮を止めなきゃ……!飛んで、リオレウス!!」

 

「グオン!」

 

坂道ではやりづらい!リオレウスの得意分野である空中へひとまず移動し、動きやすい状態にしないと。……心なしか、ラ・ロの目が赤くなっているような……いや、口元も火炎が激っていて明らかに様子が変わっている!

 

「ラスターカノン!」

 

「グオオオン!」

 

「飛べ」

 

「グアン!」

 

リオレウスのラスターカノンを躱し、ラ・ロはあっという間にリオレウスよりも高く飛んだ。

 

「ソーラービーム」

 

「躱して!」

 

ソーラービームをノーチャージで!?けど、これは躱すことができた!

 

「ギガインパクト!!」

 

(ギガ)(ゴア)(グラトン)

 

渾身の力で突撃をするリオレウスに対し、ラ・ロは大きく羽ばたくとリオレウスの接近に合わせていきなり爆発を起こした!その衝撃でそのまま押し返され、リオレウスは凹んだ谷間へ墜落した。あそこは確か、オヤブンパラセクトが居た場所……リオレウスはなんとか起き上がったけど、かなりダメージが積み重なっている……!

 

「叫べ」

 

「グアアアアオオオオオッ!!」

 

……っ!また、あのオーラの咆哮……今度はナルガクルガみたいに目から赤い線が引いている……!

 

「どうした、もう終わりか?」

 

「まだ、まだ……!リオレウス!!」

 

「グオオン!」

 

リオレウスは再び飛び立った。その様子に、シロちゃんは目を見開いていた……ん?

 

「……なぜ生きている

 

「え?」

 

「かなりダメージを負ってるはずなのに、まだ飛べることに驚いて……すごい根性だね」

 

「そこがリオレウスの強みだからね」

 

まぁ……確かに今や翼も甲殻も余さずボロボロだし、飛べる方が不思議と言われても不思議じゃない……待って、翼ボロボロどころか翼膜が穴ボコだらけだよ!なんで飛べるの!?

 

「まぁ、戦えるならなんでもいいよ。さ、かかっておいで」

 

「よし……りゅうのはどう!」

 

「グオオン!!」

 

リオレウスが放ったりゅうのはどうはラ・ロにまっすぐ直撃した。おかしい、なぜ避けるような動きを見せなかった……?

 

「な……!?」

 

「ふふふ」

 

煙が晴れていくと……まったく微動だにしていないラ・ロの姿が!ど、どういうこと……!?

 

「オーラの咆哮」

 

「……!!」

 

「あれは、ラ・ロの力の解放。その力を解放することで強化するだけでなく、五属性に対する抵抗力を高める。既に四段階開放した……今のラ・ロには火・水・雷・氷・龍の属性は通用しない」

 

「そんな……」

 

まずいことになった。リオレウスの強力な技はほのおタイプとドラゴンタイプに寄っている……自分が得意とするタイプの技を封じられたも同然だ!どうすれば……!?

 

「グオン!」

 

「……!リオレウス……」

 

「( ̄▽ ̄)」

 

呼びかけられ、振り向けばリオレウスが口角を釣り上げている……まるで「大丈夫!」「楽しめ!」と、そう言っているかのように……。

 

「……いくよ、リオレウス!きあいだま!!」

 

「グオオオ!」

 

「サイコカッター」

 

「グアアオ!」

 

「まだだ!バークアウト!!」

 

「グオン!!」

 

リオレウスが放ったきあいだまはエスパー技のサイコカッターでかき消された……けど、こっちだってバークアウトでサイコカッターを吹き飛ばしてやった!バークアウトはそのままラ・ロに命中!ラ・ロの特攻を下げることができた!

 

「あら……弱体化?」

 

「突っ込め!はがねのつばさ!!」

 

「グオオオオオッ!!」

 

「ばくおんぱ」

 

「グアオオオオオォォォンッ!!」

 

「上昇!!」

 

「グオッ!」

 

ラ・ロがばくおんぱを放ってきたけど……読み通り!私の指示を受けたリオレウスがその場で力強く羽ばたき跳ねるように上昇!ばくおんぱを紙一重で回避した!!

 

「む……」

 

「アイアンヘッド!」

 

「グオオオン!」

 

「グアッ……!」

 

「続けてポイズンテール!!」

 

「グオオオ!」

 

アイアンヘッドがラ・ロの顔面に命中!これにはさすがのラ・ロも怯んだようで隙を晒した!すかさずポイズンテールでラ・ロを叩き落とし、今度はこっちが撃墜できた!!

 

「やった!」

 

「(成長しているのか!だとしてもありえない、早すぎる……!)猛ろ」

 

「グアアアアオオオオオッ!!」

 

撃墜したラ・ロだが、オーラの咆哮でさらに力を高めたようだ。翼膜が赤く光り模様が浮かんでいる他、目元も亀裂のような模様が浮かんで赤い目の光がその模様にまで及んでいる。……どんどん禍々しくなっているような……!

 

「スケイルショット」

 

「グアアアン!」

 

「避けて!!」

 

「グオン!」

 

ラ・ロのスケイルショットが次々と飛んでくる中、リオレウスも攻撃を的確に回避している!前よりも動きが良くなってる!

 

「エアスラッシュ!」

 

「こっちもエアスラッシュ!」

 

「「グオオオン!/グアオオン!」」

 

……?今一瞬、リオレウスから青い色のオーラが出てきたような……いや、それよりもラ・ロのエアスラッシュと互角の撃ち合いができてる!どんどん強くなってるよ!

 

「(これは……マズイ、葵と焔の精神が繋がろうとしている!?葵を介して、焔自身も成長しているのか!!)破壊せよ!」

 

「グアアアアオオオオオッ!!」

 

ラ・ロが何度か足踏みをしてから咆哮を上げると、全身から青いオーラが溢れ始めた!これは……これ以上なにかされるとまずいかも!

 

「ドラゴンダイブ!」

 

「アクロバット!」

 

ここまでくると、もう五属性のタイプ技は使わない方がいい、まである。ハンター風に言うなら、無属性攻撃ってやつだ!

リオレウスとラ・ロがぶつかり合う。その時、ラ・ロの青いオーラがなぜかリオレウスにまで伝播していった!?

 

「グオオオオオオオオオオオオンッ!!」

 

「グアアアアアアアアアアアオンッ!!」

 

「な、なにこれ……」

 

「(共鳴、している……。信じられない……こんなことが……!?)」

 

私たちが目の前の光景に圧倒される中、両者は大きく弾かれ合った。……すごい、いつの間にか互角にまでなってる……。

 

「万物万象、森羅万象、一切合切を灰燼に沈めろ!目覚めろ刻竜!!」

 

シロちゃんがそう告げると、ラ・ロの様子がいきなり変わった!大きく飛翔すると、風抜け道の方へと飛んでいくラ・ロ。リオレウスも後を追い、私たちもアヤシシに乗ってそのあとに続く。

大きく旋回し続けるラ・ロ……次第に黒い旋風が岩や瓦礫、果てはポケモンたちまで巻き込んで大きく巻き上げていく!そして、その中心にラ・ロは降りてきた。

龍と思しき属性によって体が紅く染まり上がり、その炯眼は爛々と燃え盛るように輝いている。元より黒かった体色はより暗さを増し、まるで闇に溶け込むかのよう……全身から龍属性のような電撃が溢れていて、これまでとは明らかに違う変化をもたらしていた。

 

「これは……!?」

 

「【至天】」

 

「し、至天……」

 

「うまく説明できないんだけど……もしかしたら、ボレアスに届くかも知れない脅威を持つもの、といったところかしら」

 

「ミラボレアスに!?」

 

「さぁ、ショウ。これにどう立ち向かう?」

 

 

 

 

推奨BGM

【至天UNKNOWN】~モンスターハンターフロンティア-G~

※正確には曲名不明です

 

 

 

 

「最初から!全力で!!すてみタックル!!」

 

「グオオオン!!」

 

「ハング・サマーソルト」

 

「グアアアアアアアオオォッ!!」

 

リオレウスが突貫を仕掛けるとラ・ロは足を引いて踏みしめつつ、思い切りサマーソルトを繰り出した!その強烈な勢いに直撃したリオレウスだけでなく、周囲の地面も抉りとりそのまま打ち上げた!

……地形が変わりそう。これは地図を書き換える必要が来るかもしれない。

 

「ぐっ……きあいだま!」

 

「ダーク・チャージ」

 

リオレウスがきあいだまを放つが、ラ・ロの周囲を暗い闇のようなものが包み込んだ……かと思えば、また大爆発を起こした!その威力は高台の山肌の一部が削れるばかりか、リオレウスのきあいだまを消し飛ばしリオレウスも吹っ飛ばした!

体勢が崩れたリオレウスに、ラ・ロが迫る!

 

「ダイブ・ディープエンド」

 

「グアアオン!」

 

「グオオォ……!」

 

ラ・ロはリオレウスに飛びかかるとそのまま地面に叩きつけ、しばらく引きずった後でサマーソルトの要領で放り投げた!リオレウスも何とか踏ん張り、空中で持ちこたえた!

 

「終わりにしよう……ラ・ロ!」

 

「くっ……リオレウス、奥義装填!」

 

リオレウスが、スカイハイフォールの構えに入る中、ラ・ロは物凄い勢いで闇を生み出し始めていた。ラ・ロが完全に見えなくなった頃、リオレウスが攻撃態勢に入った!

 

「スカイハイフォール!」

 

「さようなら……『ジ・エンド』」

 

闇を纏ったラ・ロと、スカイハイフォールで急速落下してくるリオレウスがぶつかり合い……夜を照らすほどの閃光とともに空中で大爆発が起こった!さらに、爆炎からの中から物凄い勢いで吹っ飛んだリオレウスがハマナスの島方面の水面に叩きつけられた!!

 

「リオレウスーッ!!」

 

「…………」

 

ラ・ロが降りてくる中、リオレウスは一向に上がってこない……まさか、気絶してそのまま!?

 

「どこ行くの?」

 

「決まってる!リオレウスを助けに行く!!」

 

「……流石にあの直撃を喰らって、意識を保ってられたら大したものだよ。素直に褒めてあげる。……でも、そっか。至れなかったか……」

 

シロちゃんがすごく残念そうに顔を俯かせた。ラ・ロは……リオレイアは、黙って水面を見つめているだけだ。って、そうじゃない!リオレウスを助けに行かないと!!

私がイダイトウを呼び出すべくカミナギの笛を吹こうとした……その時だった!

 

ザブン……ザブン……。

 

水面が少しずつ揺れ始め、ゆっくりと影が見え始めた。リオレウスだ!

 

「リオレウス――」

 

「…………」

 

姿を見せたリオレウスを見て、私は言葉を失った。甲殻や鱗が吹き飛び夥しい量の血が流れ、翼なんてもはや機能しないのではないかというほどに翼膜が消えてなくなっていた。

そして、なによりも……リオレウスは、白目を剥いたまま一歩、また一歩とラ・ロに向けて歩みを進めていたのだ。

 

「……信じられない、気絶したまま戻ってくるなんて。それほどまでに彼女が大事なのね……」

 

「き、気絶!?」

 

「今のリオレウスに意識はないわ……あるのは、リオレイアへの一途な想いだけ。その想いが、気絶してなおリオレウスを動かしている」

 

「リオレウス……!!」

 

翼を引きずり、しかし歩みは止まらず。真っ直ぐにラ・ロを目指す。私は、止めるべきなのか……それとも、最後まで見守ってあげるべきなのか……。

 

「……憐れだわ。今度こそ、終わりにしましょう」

 

「シロちゃん!待っ――」

 

「ラ・ロ、ドラゴンエナジー!!」

 

ラ・ロが、龍属性エネルギーを混ぜたドラゴンエネルギーを激しく放射した!ダメ!今のリオレウスは受けることも避けることもできないのに!!

 

「ダメエエェェェッ!!」

 

どうにもならないと思いつつも、手を伸ばすのを抑えられなかった。リオレウス――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「焔……」

 

「……葵」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……!今の、声は……?

 

「なん……だと……!?」

 

一瞬、声が聞こえたような気がして呆けてしまったけど、シロちゃんの声で現実に引き戻された。見れば、ラ・ロが放ったドラゴンエナジーを、気絶しているはずのリオレウスが口で受け止めていた……って、えぇ!?

 

「な、なにこれ!?」

 

「……!?吸収、している……ラ・ロのドラゴンエネルギー、そして龍属性を!」

 

「え!?」

 

ラ・ロが放射を止めると同時に、リオレウスがエネルギーを嚥下した。リオレウスの全身から立ち込める煙……がっくりと項垂れたリオレウスは微動だにしなくなった。

 

……いや、待って、これは!?

 

「リオレウスが――」

 

「――進化、する」

 

リオレウスに変化が起き始めた!それは、私にとって見慣れたもので、ポケモンが進化する際に見せる現象!力強い旋風は次第にリオレウスの全身を包み込み……光が弾けた!!

 

「うっ……」

 

「くっ……。……あ、うわぁ……!!」

 

光が収まり、私が顔を上げると……そこには、美しいモンスターがいた。

 

 

容姿自体はリオレウスと酷似しているが、その体色は穢れなき「白」。

甲殻の隙間からは蒼い光を放ち、青白く輝く結晶のようなものに変化した翼爪。

純白色の翼には蜂の巣のようなハニカム構造状の模様が刻まれ、翼爪から放たれる蒼光に照らされて非常に美しい。

 

 

「……これ、が……」

 

「そう。これこそが刻竜と対を為すと言われる、天光に包まれた塔の頂上にて確認された伝説の"白き蒼空の王"……

 

 

『輝界竜 ゼルレウス』だよ」

 

「ゼルレウス!」

 

リオレウス……破滅レウスが進化して、ゼルレウスになったんだ!ゼルレウスはゆっくりと私に顔を向けた。

……そういえば、コイキングとギャラドスという例があるように、進化することで極端に性質や性格が変化するポケモンもいる。もしかしたら、モンスターも……そんな一抹の不安に駆られつつ、私は彼の名前を呼んだ。

 

「……ゼルレウス?」

 

「グオン!」(。ゝω・。)

 

呼んでみれば、なんてことはなかった。彼は、私がよく知るリオレウスだ。その証拠に、こっちに向かってお茶目にウインクを飛ばしてきた。

 

「……ふふっ、進化しても変わらないのね」

 

「うん。だって、私のリオレウスだもん」

 

「あっははは!そうだったね!……それじゃあ続き、やろうか?」

 

「もちろん!……え?」

 

トレーナー同士が盛り上がる中、ゼルレウスはゆっくりとラ・ロに近づいていく。……なんだか、進化したことでゼルレウスは一回り大きくなったみたい。ラ・ロよりもそのサイズは大きい。

近づいていったゼルレウスは、翼を大きく広げると抱きしめるようにラ・ロを包み込み、翼で優しくラ・ロを撫でていた。

 

「クォン」

 

「……クァオン……!」

 

あやすように優しく鳴くゼルレウスに、ラ・ロはまるで泣いているかのような声で鳴き声をあげた。やがてお互いに顔を見合わせると……。

 

 

――チュッ。

 

 

「ひゃっ」

 

「あら~♪」

 

マウス・トゥ・マウス……いや、あの、なんか、うん……はい、そうですねキスですね堂々とキスしてますこの二頭。パカッ、と口を開けるとそのまま舌と舌がががggg

 

「はわわわわ!?」

 

「あらら~♪」( ̄∀ ̄)

 

いや、ちょ、まっ、別にそういうのは知らないわけじゃないけど直に目にしたことはないしなんならこれが初めてだしというかなんで初めてがドラゴン同士のキスなのかちょっと何言ってるかわからないけど私もそろそろ脳がバグりそうだよ!?

 

「……クゥ」

 

「グゥゥ……」

 

二頭はそのまま寄り添いあうように体を横たえて……なんか眠ってしまった。

 

「……シロちゃん、これ……どうすれば……」

 

「……ショウの勝ちでいいよ。愛は強し、ってやつだね」

 

「いいのかな、これで……」

 

むしろこれからってところだったと思ったんだけど……でも、これ以上戦える気がしないというか、完全に戦闘の空気が霧散しちゃったんだけど。

 

「いいんじゃない?おしどり夫婦のいい参考例になると思うよ」

 

「……待って、シロちゃん。どうしてそれを私に言うの?」

 

「え?テルとはヤってないの?」

 

「なにを!?」

 

というか、どうしてここでテル先輩が!?……いや、まぁ別にそういうことをするならテル先輩がいいというか、テル先輩としたいというか……ハッ!?私ったら何考えてるの!?

 

「もう完全に戦える雰囲気じゃないね。……ゼルレウスへの到達という目的は果たしたし、帰ろっか」

 

「……うん」

 

シロちゃんと共に、モンスター達をボールに戻して帰路に着く。途中、シロちゃんが何か話しかけてくれたような気がしたけど、私の耳には何も入らなかった。

 

 

……頭の中を、先輩とのキスシーンが無限ループしてたから。

 

 

 

 




ゼルレウス進化!からの……戦わないんかーい!!


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【この中に】我らモンハン部異世界支部【仲間はずれがいる】

掲示板!掲示板ですよ!


1:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ついにこの瞬間が訪れたな

 

2:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

苦節云ヶ月……長かったな

 

3:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ようやくたどり着いたな!ゼルレウスに!!

 

4:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

いえええぇぇぇいっ!!赤羽焔、ついに俺TUEEEEの次元に突入したぜー!!

 

5:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それじゃあ剣介、今の俺たちの気持ちを代表で伝えてくれ

 

6:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

 

7:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

だから扱いぃ!!それと無駄に達筆でかつ真ん中に書くんじゃねえ!!

 

8:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁまぁ、葵も戻ってこれたんだし、大団円だろ

今更扱いの悪さなんて気にするな!

 

9:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

いや、ここまで成長したのに扱い悪いままとか、種死主人公並に悲惨すぎるんだが……

 

10:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

みんな、ごめんなさい……ちょっと冷静じゃなかったわ

 

11:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、ちょっとどころか大分……それに冷静というか正気じゃなk――

 

12:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

ん?

 

13:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

すんませんなんでもないです

 

14:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なんにせよ、飛躍的な戦力増強に間違いはない

二人共、おめでとう

 

15:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

いや、何もめでたくはねーんだよ

 

16:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……ん?

 

17:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

よくよく考えたらさ……流静だけ成長遅れてね?

 

18:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ぐはっ!?

 

19:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それなー、一人だけメガストーンが見つかってないし

ルナルガや葵とのバトルで見つかるんかな?と思ったけど、そんなことなかったし

 

20:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ぐえっ!

 

21:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

えっ?流静、まだメガシンカしてないの?えっ?

 

22:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ぐおぁ!

 

23:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

流静だけ正統進化か……でも、希少種まで行ったら陸上で活動できないよな?

あれ、オワタ?

 

24:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

うわあああぁぁぁぁ!!

希望はっ!希望はないんですか!?

 

25:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

いや、ほかに何があるんだ?正統進化でもない、メガシンカでもない……これ以上、何かあるとも思えんが?

 

26:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ワンチャン、きずなへんげに賭けるしかないが……そもそも相手がなぁ……

 

27:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

今の流静が静香ときずなへんげは無理がありすぎるだろ、そもそも想いが一方通行すぎるし

 

28:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

クソ重い

 

29:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

クソでかい

 

30:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

そうね……光輝とショウの関係を鑑みるに、仮にできるとしても今の二人じゃ無理でしょうね

剣介と光輝の言うように、静香ちゃんから流静に対する想いが一方通行且つ大きすぎる

 

31:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

少なくとも、俺とショウのようにお互いの想いが相互関係にあるだけじゃなく、横並びに同じ方向を見られるようにしないとな

最近はマシになってるけど、静香はまだ流静以外がよく見えていない状態だし

 

32:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

メガシンカ出来たとして、パートナーは誰になる?ガラナさん?静香?はたまた新手の第三者!?

 

33:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

確かにバトルのパートナーはガラナさんだが……

 

34:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それもムズいかもね

 

35:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あん?剛太、そりゃどういう意味だ?

 

36:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

理論……というか、身も蓋もない言い方をするなら、設定上はポケモンとトレーナーの双方の絆があって、初めてメガシンカはできるんだろ?

それならワサビちゃんと剣介がメガシンカ出来るのは納得できる、剣介にとっちゃワサビちゃんはツレ……親友みたいな立ち位置だしな

 

37:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そうだな……出会った当初はそれこそ年の離れた妹くらいには思ってたが、今じゃバトルのパートナーとくればショウちゃんかワサビの二択だな

特に、ワサビは俺のことを真剣に考えてボールに入れてくれたり、ショウちゃん相手に反逆レベルの抵抗を見せてくれたしな、背中を預けるに足ると判断するのも容易なもんだ

 

38:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

さらっと呼び方変わっとる

 

39:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

もう子供扱いはやめたんだっつの、俺はあの子を対等に見ている

ワサビがキーストーンを持って俺の前に立った時も自然と納得したもんだ、本能で理解できたんだよ……ワサビとなら、メガシンカができるってな

 

40:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ワサ剣でメガシンカ出来るのはわかった

 

41:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おいそのCPみたいな括りはやめろ、俺はロリコンじゃ――

 

42:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それとガラナさんだとムズいことの関係は?

 

43:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺の死活問題をスルーするなっ!?

 

44:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そりゃあ、あれだよ

 

――「憧れは理解から最も遠い感情だよ」

 

45:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

っ!!

 

46:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

どうもガラナさんは、流静が元島キングを救助した一件から俺たち五人を美化しているように思える

最初のバトル、コトブキムラでの模擬戦、ガムート戦……一応、ガラナさんも何度かモンスターとバトルしているが、だからこそ分かっちゃったんよね

特に流静……ラギアクルスに対してはさっき言ったとおり、島キングの救助とパートナーとして共闘した件を通して憧憬の念を抱いていると見た

それこそ、初期の頃のシンオウさま万歳みたいな感じで

 

47:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、そこまで万歳はしてないだろ……

 

48:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

突撃ー!!

 

49:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

旗を取りにいけー!!

 

50:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

キツツキで薙ぎ倒せー!!

 

51:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

湧いてくるな大日本帝国兵共!!

 

52:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……まぁ、まとめるとだな、ガラナさんは流静を上に見ているからおよそ対等な関係とは言えないし、静香ちゃんは流静に対する感情がデカすぎてこれも対等とは言えない

つまり、二人ではどうあがいても流静とメガシンカはできないってことだ

 

53:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

剛太がこういう解説側に回るのは珍しいな……経験則からか?

 

54:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おう、8番目の姪っ子に告られたんだが普通にフッた

前々からあの子は俺に憧れてた節があったからな、実際俺のやる事なす事なんでも真似しようとしたし

憧れから来る好意で恋をするのはどちらのためにもならんし盲目的であれば以ての外だ、モモンガさんをよく見ろ、あの人ほど盲信的な憧憬で苦心している人はそういないぞ

 

55:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

あのアンデッドは自業自得とも言えるが

 

56:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だが、今回挙げた例だと、正直光輝らもだいぶ危ないぞ

 

57:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ん?なんで?

 

58:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

光輝とショウちゃんのきずなへんげは、ぶっちゃけ奇跡だと俺は考えている……なぜなら二人がきずなへんげを可能としていることの大前提に、「光輝がショウちゃんに身バレしていない」ことが挙げられる

 

59:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……おっと?

 

60:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

考えてもみな、あのサトシとゲッコウガでさえ焦りから想いがすれ違って敗北を喫してるんだぞ

光輝とショウちゃんの場合、それこそ0か1かぐらい状況になりかねない

 

61:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

あまり気にするほどでもないのでは?なんだかんだで、ショウちゃんは受け入れそうだけどな

 

62:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺はそうは思わん……いや、正確にはそう簡単に行くとは思わない、だな

光輝はともかく、ショウちゃんにとってジンオウガはその後の自分のあり方を決定づけることになったと行っても過言ではない存在だ……俺たちが変えたとも言えるがな

ジンオウガというモンスターはショウちゃんが全幅の信頼を預ける存在……誰よりもショウちゃんのために戦い抜き、時には瀕死の重体にも陥ったこともある

その中身の精神が母親の前世の従兄弟だったと知って、果たしてショウちゃんは冷静でいられると思うか?

 

63:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……難しい、のか?光輝、身内からしてどう思う?

 

64:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……難しいかもな、俺でさえあれだけ動揺したし困惑したし焦燥したんだ、ショウが同じようにならないとは限らない

運良く受け入れられても、嬉しさ半分その他半分ってところだろうな

 

65:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

光輝の言う通り、少なくともこれまでどおりとは行かなくなるのは明白、光輝は既に時間が経ってるから受け入れているが、ショウちゃんはそうもいかないだろう

光輝の身バレが原因で心象が揺らぐようなら、きずなへんげは難しいかも知れない……最悪、身バレは墓まで持っていく必要がある

バレなきゃそれに越したことはないがな

 

66:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……そう考えると、これまで長く隠し続けたことがここに来て仇となったというわけか

こちらも別に隠す意思はなかったが、公開するメリットもなかったんで放置していたが……

 

67:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

困ったわね……今のところ、ショウに身バレしたメンバーはいないんでしょ?……静香にはバレたそうだけど

 

68:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

転生後も引きずるレベルのトラウマなのでそれはしゃーない

 

69:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

マジで辛かったんだぜ、アレは……俺が将来を奪ったようなものだ……

 

70:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……まぁそんな感じでな、今後ショウのメンタルを考えるなら、なるべく身バレは避けるべきだと俺は考えている

 

71:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

だな……ショウは思い詰めやすいところがある、なるべく注意をするべきだ

 

72:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

……確かに、静香にバレただけならまだマシなほうか

 

73:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺も賛成だ、なるべく現状維持で行こう

 

74:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺にも否やはない

 

75:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

私もよ、焔が賛成ならこれ以上言うことはないわ

 

76:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

よしっ、なんかあってもみんな誤魔化しよろしくな!

 

77:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さて、当面は誤魔化す方向で行くとして……例の計画はどうなってる?

 

78:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

メガシンカ計画か……進捗は芳しくない、かな

 

79:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ショウちゃん以外にもメガシンカできるトレーナーを増やす計画ね……一応取り組んではいるが、変化はあまり見られんぞ

 

80:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

組み合わせはどうなってたっけ?

 

81:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

グラビモス→セキ

ベリオロス→ワサビ

ディノバルド→デンボク

タマミツネ→ムベ

ライゼクス→テル

ガムート→カイ

 

82:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

これが意味わからねえんだよな、なぜにデンボクとムベが参戦してんのか

 

83:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ショウが言うには、トレーナーとしての実力は高いし、元々この組み合わせは気が合うような素振りを見せていたそうだぞ

あらゆる可能性を考慮して、二人にも参加を要請したそうだ

 

84:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

確かにこのふたりは普通に強いが、複雑な心境だぜ……

 

85:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

手段を選んで勝てるならそれに越したことはない、か

ミラボレアスに言えたことではないが、あの黒龍相手に人選ミスって敗北は笑えん

 

86:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……それがショウの選択なら、従うよ

 

87:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

そうね、ミラボレアスがいつ攻め込んでくるのかわからない状況ですもの……打てる手は打っておくに限るわね

 

88:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

さて、成果は出てないが方向性は見えてるだけマシだな、なに気に俺がこの計画から外れたのは負担軽減になってプラスに働いたか?

 

89:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

ついでに、私もね

 

90:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

よし、今日のところはこの辺にしとこう……それじゃあ、閉廷!解散!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

91:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……ところで、スレタイにある「仲間はずれ」とは?

 

92:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

お前

 

93:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ちくしょーめぇ!

 

 

 

 




久々に考察回みたいなのを書きました、流静は一体どのような成長をするのか……


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幕間:ポケモンSVのDLCを遊んだモンスターたち~前編~

DLC前編クリア記念の掲示板回!

久々のポケモンSV脳内シミュレーションです!


【ポケモンSVDLC】我らモンハン部異世界支部【脳内シミュで遊ぶ!】

 

1:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

はい、ちゅうもーく!突然だが、祖龍から報告があるぞ

 

2:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

えー?

 

3:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

んー?

 

4:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あぁ、よかった!流静が声をかけなかったらこいつらいつまでもイチャコラしてたから……!

 

5:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

やはり焔は息の根を止めておくべきだったか……!

 

6:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ホンマ、こいつら……人目も憚らずいつまでも……

それで、報告って?

 

7:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

はーい、報告というのはね……

 

 

ポケモンSVにDLCがきたので、脳内シミュレート側も併せてアップデートしたいと思いまーす

 

8:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はっ!?

 

9:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

まじで!?

 

10:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

や っ た ぜ

 

11:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

うおおおおお!流石はゲーフリ!!

 

12:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まじか……脳内シミュでもだいぶアレな内容だったのに、この上DLCもブチ込むのか

 

13:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

DLCには出現ポケモン以外、特にバージョン違いは見当たらなかったよ

というわけで……DLC、アップデート!

 

14:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

コイツ、直接脳内に……!

 

15:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

脳内掲示板だからな、ここ

 

16:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

頭の中にポケモンが!

 

17:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

フトゥー博士、お許し下さい!

 

18:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

フトゥー「うわああああ!」

 

19:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

可哀想なフトゥー博士……

 

20:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

お前らが殺ったんやろがい!

 

21:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

とかなんとか漫才しているうちにアプデが終わったぜ

早速プレイする準備だ!

 

22:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

はい……

 

23:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

モタモタするんじゃないぞ!

 

24:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ところでみんなポケモンはイツメン?それとも――

 

25:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ロリコンはついてこなくてもよい!

 

26:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ハア☆

 

27:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

あれ?葵はやらねーのか?

 

28:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

私は脳内モニターで見てるからね

 

 

見 て る か ら ね

 

29:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

すんません、それ俺に言ってます?

 

30:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うおぉ、久々のパルデアだ……お、スマホロトムに着信が……もすもすひねもす~?ジニア先生?

はい、はい……へぇ、毎年恒例の他校合同の林間学校!俺がそのメンバーに!はい、喜んでぇ!行かせていただきますとも!!場所はキタカミの里!東方の地!projectな気配がするぜ!あ、その里って隣近所にオオイって名前の村とかないんですか?……ないんですか、そうですか

はい、失礼しまーす

 

31:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

光輝も電話来たー?俺も来たー

 

32:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

祖龍からもらった事前情報によれば、こちらからは生徒は四人らしいな

 

33:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

つまり、誰かがハブられるのは確定的に明らか

 

34:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

誰だろうな

 

35:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えー、ハブられるのやだなー(棒)

 

36:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

おまえまさか……!

 

37:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

こんちゃ!光輝です!綺麗なお姉さん、お名前は?……あ、ジニア先生……ふんふむ、ブルーベリー学園のブライア先生っすね!よろしくオナシャス!センセーショナル!

へぇ、ブライア先生はイッシュの教務主任なんですか!すごいですね!

 

38:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

でたわ、光輝の得意技!褒め伸ばし好感度稼ぎ!

 

39:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

身に纏う弟属性もあってか、無駄に効力が高いんだよな……

 

40:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ふんふん……え?ブルーベリーとウチの合同引率?祖龍?祖龍ー!早速原作ぶっ壊れてます!

 

41:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

原作だとブライア先生一人の引率だったはずだが……

 

42:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

で、もう一人は誰だよ?

 

43:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

わ た し だ

 

44:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お前だったのか

 

45:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

全く気がつかなかった

 

46:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

また騙されてしまった

 

47:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

暇を持て余した

 

48:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

男たちの

 

49:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

遊び

 

んじゃあ、改めて美術科副担任の剣介だぞー、よろしくしろコラ

 

50:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

拒否

 

51:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

却下

 

52:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

断る

 

53:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ヤダこの生徒たち……怖い……((;´Д`)ガクガクブルブル

 

54:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ハッサク先生への弟子入りって、ポケモン関係だけじゃなかったのか

 

55:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そうよー?ポケモン世界は十歳で成人だからな、猛勉強して教員免許取ってそのまま美術科の副担任という名の後継の座についたわけよ

 

56:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やりますねぇ!

 

57:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ふむふむ……へぇー、キタカミの里でもテラスタル現象と同じエネルギーが?そりゃあ、きっと大穴と同じ結晶がどっかに生えてるのかもね

……え、大穴の中?入りましたよ

どうって……美しくも残酷な世界って言葉が形を成した場所としか……うわっ、どうしようすごいグイグイくる!ジニア先生止めて!すごいいい匂いするしポケモン世界にあるまじきたわわがががが!?

 

58:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そのへんにしときましょうやブライアせんせー、生徒を困らせちゃあいかんぜよ

 

59:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やだ……剣介が頼もしい……!寒気がした

 

60:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おい、どういう意味だそれ!

 

61:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あ、ポケモン図鑑のアップデートすか?うぃっす、オナシャス

ところでみんな、もうアカデミーに着いた?

 

62:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

こちら焔、アカデミー上空をコライドンで飛行中

 

63:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

こちら剛太、アカデミーの壁をクライミング中

 

64:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

こちら流静、アカデミー前の階段をうさぎ跳び中

 

65:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

普通に帰ってこいよ!

 

66:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

誰ひとり空飛ぶタクシーを使わねぇのかよ

 

67:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふー、到着!やっぱ脳内で会話しながら体動かすのはしんどいな

 

68:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お前来てからずっとそれやってたの!?

 

69:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

到着!サンキューなコライドン、今度美味いメシを奢ってやるよ!ペパロニのピザだ、激ウマだぜぇ?……あ、サンドウィッチのほうがいい?あっそう……(・ω・`)

 

70:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

パルデアでサンドウィッチに勝てるわけないだろいい加減にしろ!

 

71:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あ、ここ裏側だった……しょうがない、今度は校舎を登るとするか……

 

72:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

タクシーを呼べぇー!!

 

73:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

わかったわかった

 

74:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はぁ……まったく、どいつもこいつも!

というか、ここまで自由でええんか!?おい引率!なにやってんだ仕事しろ!

 

75:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いない者は引率できないんでね

 

76:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お前らはよこいー!……え、はい、俺は準備万端です

 

77:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

待たせたな

 

78:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

俺!参上!!

 

79:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

はい、着いた着いた

 

80:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おっせーわ、お前ら

……え?メンバーはくじ引きで決めて皆初対面?もしかして知り合いだったかって?

いえ、(他人な気がしないだけで知り合いでは)ないです

 

81:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

(この世界ではさほど顔合わせしてないので知り合いでは)ないです

 

82:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

(知り合いに顔が似てるだけで知り合いでは)ないです

 

83:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

(一人入学年がズレてるので知り合いでは)ないです

 

84:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まぁ、前世での高校入学の時も俺らってこんな感じだしな

 

85:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……ん?スカーレットブック?あぁ、バイオレットブックも知ってますよ

……え、オリジナル本!見たい見たい!!

 

86:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

……へぇー、テラパゴス?そんなポケモンがおるんやな

 

87:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まぁ、諦めなければ夢は叶いますよ!先生、頑張ってくださいね

 

88:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

準備も出来たし、さぁいくぞー!!

 

89:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

お前が仕切るな

 

 

 

 

――メンバー移動中……――

 

 

 

 

90:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

着いたー!全員揃ってるかー!?

点呼するぞー、番号!

 

91:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ワン

 

92:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

リャン

 

93:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ドライ

 

94:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

クアットロ

 

95:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おい、日本人どこいった

 

96:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おい、お前らがふざけるからブライア先生がポカンてなっとるやんけ

 

やっぱり万国共通語である英語で行くべきだろ

 

97:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

アホが、短い単語で数えやすい中国語がいいに決まってるだろ

 

98:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

実用性に加えてカッコよさもあるドイツ語こそが至高

 

99:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

どいつもこいつもバカばっかだな、イタリア語はカッコよさだけでなく発音の美しさも負けてねぇぞ

 

100:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

オメェら全員馬鹿なんだよ!!特に流静!今回俺が引率係だからツッコミ役だと察した途端にここぞとばかりにボケまくりやがって!!

 

101:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なに、俺もたまにはハメを外したくなるんだ

 

102:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

加減をしろ、コノヤローが……それじゃあ、移動するぞー!ちゃんと付いてこいよー

 

103:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

アブリー!

 

104:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

イトマルー!

 

105:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

クルミルー!

 

106:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おぉ、まさに「ザ・田舎」って感じの虫ポケモンたち……あ、ヤンヤンマ

 

107:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……流石の俺もキレちまうぜ……?(#^ω^)ビキビキ

 

108:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ブライア先生、あれを見て「元気いっぱいだね」はちょっと無理がありすぎる

 

手当たり次第にポケモン捕まえまくってる乱獲パーティだからな?

 

109:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いい加減に行くぞ!話が進まねーから!!

 

110:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はーい……

 

111:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ふん、今回はこの辺にしておいてやる……

 

112:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

対ありでしたー

 

113:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おい、誰かポケモンバトルやってんな?

 

114:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

はぁ……んじゃあ、俺は先んじて行かせてもらおうかな

 

115:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あのなお前ら、これは団体行動なわけよ、勝手なことされちゃ困るわけよ、わかる?

 

116:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

わかった!

 

117:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

もうすでに怪しすぎるんだよ……

 

118:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふぅ、ここがスイリョクタウン……ブライア先生の話にあった村か

……あん?あぁ、確かに俺はアカデミーの生徒だが……ふむ、君はゼイユというのか

……なに?余所者は村には入れない?……それを決めるのはお前じゃないんだよ、村長乃至は公民館の管理人を呼べよ、お前じゃ話にならなさそうだ

どうしても入りたかったらお前と勝負しないとダメ、だと?ふむ……そういうことならこちらも引率の教員に事実確認をして、スイリョクタウンにそのような決まりがあるかどうかを確かめなければな?この村がこんなにも排他的だったとは思いもよらなかったよ、今回我々はブルーベリー学園と合同での林間学校だったんだが……あぁ、そうだ!ブルーベリー学園にも確認しなければな!

何をそんなに焦っている……?俺は至極当然且つ合理的にこの事態を解決する方法を導き出しただけだ、必要性のないバトルなど時間の無駄だ、そして俺にはお前とバトルをする必要性がない……そんなことしなくても、どうにでもできる手段があるからな

良かったな、これが俺じゃなかったらワンチャンリアルファイトもありえたぞ?

 

119:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おい、ヤバイぞ!俺らが剣介に叱られてる間に流静がなんかブチギレてる!?

 

120:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あ、ホントだ!しかもこの長文から察するにかなりキテる!

 

121:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

やべぇやべぇ!おい、剣介!何ぼさっとしてんだ早く行くぞ!

 

122:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ぼさっとなんてしてねぇわ!?誰のせいで足止め食ってると思ってんだ!!

 

123:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……いいだろう、そこまで言うならば是非もなし……白黒はっきりさせよう、そちらの望み通りにバトルしてやる

遊んでやる、とは大きく出たな、そちらこそ……弄ばれる覚悟は出来たか?

 

やったれ、ディアンシー!!

ムーンフォース!

ダイヤストーム!!

ダイヤキュートォ!!!

 

124:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

オイオイオイ

 

125:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

死ぬわ、相手

 

126:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

なんか別ゲー混ざってる?

 

127:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なんなのとは大袈裟な……俺はただの学生だ

それと……ありえない、なんてありえないからな?

 

128:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

どこの世界に幻連れてる学生がいるんだ!!

 

129:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……俺を舎弟に?

 

……は?(殺意の波動)

 

130:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ヤバイヤバイ!そろそろ真面目に止めないと!!

 

131:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おや……ようやくまともそうな大人が出てきたな

……あぁ、あなたが管理人さんでしたか!どうも、自分はアカデミーの流静というものです

えぇ、少々ごたつきがありまして……はい、他のメンバーも時期に到着すると思います!

 

132:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

この切り替えの速さが頼もしくもあり恐ろしいんよ……

 

133:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あの姉弟からなにか……?いえいえ、特には!喧嘩を売られたくらいで何も問題はありませんでしたよ!えぇ、言い値で買ってやりましたとも!!なので大丈夫です!( ̄ー ̄)bグッ!

 

134:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、根に持つやんww

 

135:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あ、他のメンバーも来たようです!おーい!

 

136:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まったく……引率を無視して先に行くなっての

あ、管理人さんどーもどーも!引率の剣介です!この度は宿泊の件、誠にありがとうございます!

 

137:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

話長くなるなら先に休んでていいか?

 

138:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ほうほう、この公民館を俺らだけの貸切に!そりゃあ、いい!

 

139:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

話の流れから察するに、流静とバトルした姉とその弟はこの村に実家でもあるんかな?

 

140:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あっそう

 

141:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

冷たいなあ、流静

 

142:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

一大イベントを台無しにしようとしたトンチキどもなんぞ知らんよ

 

143:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

まぁまぁ、ここは俺らが大人の対応を見せないとな

 

144:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

姉の方はともかく弟の方は完全にとばっちりだが

 

145:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……確かに大人気なかったのは認める、機会があれば謝罪しよう

 

146:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

さて、どうやらこれからディナーのようだぞ!

 

147:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

オラ、腹減ってんだ!

 

148:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ごっはん~♪ごっはん~♪

 

149:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

飯食ったら、今日のところはもう休めよー?明日も早いからな

 

150:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はーい!

 

151:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

……沢山あるから遠慮はするなとは確かに言われたが、だからって用意された分を残さず全て平らげるやつがあるか!

育ち盛りだからってこんなに食う子供がいるか!!

 

152:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

食事シーンが完全にドラゴンボールかワンピースだったな

 

 

 

 

――メンバー就寝中……――

 

 

 

 

153:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

よぉーし、起きたな!?寝坊がいなくて何よりだ!

 

154:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

せんせー、これから何するんすか?

 

155:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それはブライア先生と管理人さんから話するから後でな

とりあえず自己紹介をどうぞ

 

156:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ゼイユ?うわっ、猫かぶってる、キモ

 

157:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

シンプルな罵倒!俺らは脳内掲示板で素を見てるからなー

 

158:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

弟の名前はスグリか

 

159:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ゼイユもスグリもよろしくな!!

 

160:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

声デッカ!

 

161:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

おい、どうした急に

 

162:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、コイツら姉弟が俺の甥姪にそっくりでな、つい構いたくなった

ただ性別は逆転してるが

 

163:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そりゃあんだけいたら一人くらいは似てる奴がいるか

 

164:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

土地勘のある者に助けを求めるのは自明の理だが、当人に既にやる気が……

 

165:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

大丈夫大丈夫、何かあったらわからせ(バト)るんで

 

166:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

こんな教師は嫌だなぁ……

 

167:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふんふむ、林間学校の課題はオリエンテーリング、二人一組で里中に設置してある三つの看板を見つけると

看板に書かれた昔話を読んで歴史を知り、その後ペアで看板をバックに写真をパシャリね

 

168:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

三つの看板でツーショットを撮ればミッションクリア!歴史探訪系ツアーってところか

 

169:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、ロトりぼうてwww

 

170:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

自撮り棒やんけww

 

171:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

林間学校は学校間の交流も目的の一つだからな、なるべく同じ学校同士でペアになるなよ

なので、こちら側は問答無用で二人、ブルーベリー組とペアを組んでもらうからな

 

172:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

えー

 

173:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

えー、じゃねえんだわ、黙りな

 

おらっ、お前らさっさと仲良くせんかい!

 

174:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ども、光輝です

 

175:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

剛太だ、よろしく

 

176:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

俺は焔だ!よろしくな!

 

177:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺は流静だ、昨日はい・ろ・い・ろ・と!世話になったな

あと、昨日は少々やりすぎたので謝罪する

 

178:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁまぁ、その辺にしてもろて

……え、スグリが流静に興味津々?早速友達になろうぜ!

 

179:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

うわ、なんていうか典型的な姉弟って感じだな

 

180:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

今時暴力系ヒロインは流行らないぞ?

 

181:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

何を言ってるんだお前は……?

 

182:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

口を突いて出た言葉とはいえ、暴力沙汰は看過できんな

……なに?勝負?それは一向に構わんが……

 

183:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あれよあれよという間に勝負が始まりそうよ

 

184:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

しょうがないな……これも交流のためだ、頑張るとしよう

さぁ、先手は譲ろう、掛かってきたまえ!

 

やったれ、フーパ!

きあいだま!

サイコキネシス!!

 

185:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おいこら待てお前!審議審議!!

 

186:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

決 着 完 了 !!

 

……うん?どうした剣介

 

187:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

どうしたもこうしたもあるか!?なんで幻二体も連れてきてんだ!

 

188:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ダメか?

 

189:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ダメではないが体裁が良くない!!これ、交流試合なんだが!?

 

190:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ナイスファイトー!

 

191:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

周りはバカウケしとりますが

 

192:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

これって俺がおかしいのか!?

 

193:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふむ……どうやらゼイユ的には俺とスグリを組ませたいようだな、まぁ他校との交流も必要だし、俺は一向に構わんッ!!

 

194:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

んじゃあ、ゼイユは俺と組もうぜ、これで残りのペア決定だな

 

195:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

やってやろうぜ

 

196:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やってやんよ!

 

197:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それじゃあ、管理人さんから看板の位置情報を貰ったら、オリエンテーリング開始だ!各々、頑張るように!

 

198:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ほうほう、りんご園の先にあるともっこプラザから行くのが良いと?なるほど、近くて且つ順番通りってことか

……え?迷惑かけるから離れてついて行く?うるせー!いこー!!

 

199:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

おぉ……流静がスグリを俵担ぎして走っていってしまった……

 

200:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんやねん、あの行動力

 

201:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

それじゃ、俺らも行くか

なに?「適当にするから行き先は任せた」?ほほぅ、いいのかな?そんな雑なやり方で……もしスグリよりも看板巡りが遅れたら、普段からあの態度なら一体どんなマウント取りをしてくるか……

おっと、そう怒るなよ!どうでもいいが泣きぼくろ可愛いな、そう慌てずとも行くさ

どうせならスグリとは別ルートで、か……わかった、それならキタカミセンターだな?早速出発しよう

 

202:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

扱いが上手すぎでは?

 

203:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

性格を把握するの早すぎるだろ

 

204:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お前らもついてくるか?

 

205:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

いっきまーす

 

206:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

どうせなら、のんべんだらりと行きたいねぇ

 

207:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

はい、到着!

……ん?重くなかったかって?あぁ、全然!ゴースより軽かったぜ

さてさて看板は……っと……ふむふむ、ほうほう……

ん?どうしたスグリ?「おに様がかっこいいか」、だって?そうだな……一対多でも多数側が命懸けになるほどだから相当強かったんだろうな、素直に賞賛する

……え、おぉう……そうか、スグリはおに様が好きなんだな

それじゃあ、写真を……パシャリ!

 

208:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

すっげー階段じゃんか……あの長い坂道の先にこれとは……

 

209:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

めんどくせぇ……アレ、やるか

 

210:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

アレ、って?

 

211:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

そりゃあ、アレだよ

 

 

 

 

ヤッフゥー!

ヤッフゥー!

ヤッフゥー!

ヤッフゥー!

ヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ(ry

 

212:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

飛んだァー!?

 

213:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おい、聞こえてるぞ!誰だケツワープしたの!!

 

214:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あーあ、焔のやつ……俺を置いていくなよな……

 

 

 

ヤッフゥー!

ヤッフゥー!

ヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ(ry

 

215:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

光輝ィー!!

……え、何、ゼイユ?「あれって人間?」……生物学上は人間だよ

 

216:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やっべ、飛びすぎて楽土の荒地まで飛んできちまった

 

217:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

やっべ、飛びすぎて……あれ、ここどこ?

 

うわっ、なんだ!?ビックリした!こんにちは元気ですか!俺は焔!!

 

218:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おい、どうした焔!?

 

219:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

いや、ケツワープで飛んだらなんか知らん洞窟の中でどこここ思ってぐるっと見渡したらなんか緑の鬼面がいてビビってとりま挨拶して自己紹介して今おやつタイム

おっ、なんやコイツ可愛い顔してんな

 

220:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なにもわからねぇんだけど!?

 

221:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

おう、お前「ぽに!」って鳴くんやな、可愛いやつやでぇ

そうかそうか、お菓子美味しかったか?また持ってきてやるよ!いい子しててなぁ、ぽに子

 

 

 

 

ヤッフゥヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ(ry

 

222:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

だからケツワープやめろ!!

 

223:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おっせーぞ、焔!どこで油売ってたんだよ!

 

224:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

油はないが、菓子は売ってきたぞ

……お?ここ看板あるじゃーん!ラッキー!

 

225:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それ伝えようと思ってケツワープ前にメールしたのに、読まないで来るもんな

 

226:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、もうアレのことは気にするな、ゼイユ……いちいちツッコミ入れてたらキリがないぞ

……え?うん……まぁ、苦労するさ……さぁ、写真を撮ろう

 

227:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

同情されとるwww

 

228:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おい、スグリ!聞こえてるぞ?別に俺は特別でもなんでもねぇよ、お前らと同じようにボールをぶん投げてポケモンを捕まえただけだ

それに、ポケモンがトレーナーの価値を決めるんじゃないし逆もまた然りだ、コイキングを連れてるトレーナーはダサいって後ろ指をさせるのか?

……そうだ、今の言葉はお前の手持ちに対して失礼になるからな、よく覚えておけ

よし、次はキタカミセンターだな?……うん?また離れようってか?そうはい神崎!

 

229:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

今度はおんぶか……次は肩車か?

 

230:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さっさと移動するぞー!

 

231:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺らはどうする?……楽土の荒地ね、了解!行こうか

 

232:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

俺と焔は帰還ついでにともっこプラザに寄るか

 

233:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

さんせーい

 

234:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ケツワープ禁止!!

 

235:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

えぇ!?そんなぁ……

 

236:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

わかったよ、しょうがないな……

 

237:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

分かればよろしい

 

238:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエ(ry

 

239:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ(ry

 

240:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

手段を変えろって意味じゃねーんだよォ!!

 

 

 

 

――後編に続く




やっぱり掲示板回は楽しいなぁ!遠慮なくギャグをぶち込めるので!



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幕間:ポケモンSVのDLCを遊んだモンスターたち~後編~

前回のあらすじ!

前半→林間学校だイェーイ!
後半→ケツワープ

だいたい合ってる


241:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

はぁ……もういいだろう剣介、変態は放っておこう

 

242:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

くそ、あいつら……帰ってきたら説教だ!

 

243:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

やれやれ……ん、スグリ?

……はぁ、「おに様のようになりたい」と……うーむ、お前、ちょっと認識がズレてるな?

いいか?お前の言う「一人で頑張れる」っていうのは、まさか「誰にも頼ることなくなんでもできる」って意味じゃあるまいな?もしもそうなら、一つ訂正させてもらおうか

この世界で真になんでもできる完璧生物なんて存在しないんだよ、誰かが誰かしらに支えられ助けられている……それはお前も、このおに様も例外じゃない

迷惑千万、大いに結構!いたずらに困らせるような迷惑は褒められたものじゃないが、誰かを頼る上での迷惑はいくら掛けてもいいんだよ、お前ももっと周りに頼りまくって迷惑をかけまくれ

……それにしてもわからないな……え、何がわからないって?いや、このおに様が山を下りてきたっていう「怒り狂った理由」だよ、どんな生き物であれ理由もなく怒り狂うわけがないだろう?多分だが、当時の村人かポケモンがおに様を怒らせるようなことをしたんじゃないか?だから報いを与えるためにおに様が山を下りてきた……正当な報復の理由があったはずだ

さらにわからんのがともっこ達だ……「偶然居合わせた」ってことは、元々ともっこはキタカミのポケモンではない外来種だったんじゃないか?住処を脅かされたならまだしも、三匹同時に居合わせるなんて違和感がある……この三匹、そもそもスリーマンセルで動いてたんじゃないか?

あくまで予測に過ぎないが……過去に村人がおに様を怒らせて、その正当な報復のために山を下りたおに様を事情を知らないともっこ達が追い返した……といった感じか?

……え、凄い?いやいや、こんなのは誰にでも考えられる範疇だ、全然すごくないさ……へ?あぁ、確かに明確な動機が定かでない以上、おに様だけが一概に悪いとは言えないよな

……あの、スグリ?そんな眩しい視線を向けられても困るっていうか……と、とにかく写真を撮るぞ!

 

244:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ほぅほぅ、流静の考察は相変わらず参考になるな~

 

245:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

そういやぽに子って鬼みたいなお面を被ってたし、黒い部分とか角みたいだったな

まぁでも、あんな可愛いぽに子が鬼なわけないか

 

246:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なぁ焔、ぽに子って?

 

247:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ん?あぁ、写メ撮ってきたぞ、ほら

 

e9aa5b3c.jpg

 

248:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おぉ、これは……いや、鬼やんけ!角とかまんま鬼やんけ!

 

249:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

バッカ、ぽに子は鬼じゃねぇよ!見ろ、こんなにも可愛いんだぞ?

 

250:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、そうはいってもこれは……

 

251:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お、なになに?

 

252:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あん?画像の添付ファイル?……おい、これ……

 

253:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ぽに子だ!可愛いだろ?

 

254:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ポケモンじゃん、しかも鬼だろこれ

 

255:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

鬼モチーフのポケモンか!オニゴーリ以来か?

 

256:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

どう見ても鬼なんだが、もしかしてケツワープした時に見たやつか?

 

257:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ぽに子はぽに子だろうが!第一、「鬼といえば?」ですぐに出てくる奴を思い浮かべてみろ!

 

258:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

メルメル(ホロライブ・吸血鬼)

 

259:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

尊ママ(にじさんじ・鬼の女王)

 

260:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あやめ嬢(ホロライブ・鬼のお嬢)

 

261:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

奈羅花(にじさんじ・獄卒見習い)

 

262:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

現実逃避するなお前らー!!揃いも揃ってバーチャルに逃げやがって……!

 

263:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

まぁ、とりあえずぽに子(?)は鬼じゃないとして……え、そうなのか?ふーむ……興味あるな、登ろう

 

264:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

鬼が山を登るのか?怪我すんなよ

 

265:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

しないよ……スグリが先に行った、追いかけないと

ふーむ、地図を見る限り恐れ穴の上部は開けてるみたいだな……とりあえず近場まで行ってみよう

 

266:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

こりゃあ、向こうに着く頃には日が暮れるなぁ……帰りはタクシー呼ぶか?……うしっ、わかったよ

ん?あぁ、スグリなら心配いらんだろう、なんせ俺らの頭脳担当が一緒なんだから……そうそう、あいつ俺らのメンバーの中じゃ一番の天才だ、頭脳戦で勝てる気がしねぇ

……ははっ!まぁ、あいつに理詰めされた時点で負け確だ、諦めたほうがいい

 

267:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……ここから登ったら良さそうだな

 

268:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ともっこプラザ到着!

 

269:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

とりあえず先に写真をパシャリ!……じゃあ、帰るか

 

270:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

だなー、今から戻ればいい時間だろ

 

271:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おっ、光輝と焔はもう帰ってくるのか?今夜はオモテ祭りだから、ほかのメンバーも早めの帰還を心がけるように

 

272:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ムッムッホァイ!

 

273:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

流静ー!!登山でSCすんな!!

 

274:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふいっち!到着!!……ん?どうしたスグリ?え?「なんで上から……!?」って?そりゃあ、あれだ……上に落ちて下に登ったからだよ

あぁ、無理に理解する必要はないぞ?スグリには色々と「はやすぎる」からな

さて、あれが恐れ穴ね……うん?勝負?なるほど、強い者は強い者に惹かれる理論か……どれが正しいというのもわからんし、いろいろ試してみるか……それじゃ、始めよう

 

やったれ、メロエッタ!

いにしえのうた!インファイト!

かみなりパンチ!

止めはやっぱり、かみなりパンチ!!

 

275:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ちょっとまてぇ!全員、手持ちポケモンを公開しなさい!!

 

276:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

はい

 

テツノカイナ

テツノコウベ

テツノドクガ

テツノブジン

テツノイサハ

テツノオロチ

 

277:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

はい

 

ハバタクカミ

スナノケガワ

チヲハウハネ

トドロクツキ

ウネルミナモ

ツバサノオウ

 

278:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

はい

 

ヒスイダイケンキ

ヒスイバクフーン

ヒスイジュナイパー

ヒスイウォーグル

ガチグマ

バサギリ

 

279:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

はい

 

ディアンシー

フーパ(いましめ)

メロエッタ

マナフィ

ジラーチ

シェイミ

 

280:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

マトモなトレーナーが一人もいないだと……!?

というか光輝と焔はコライドンとミライドンの名前変えて誤魔化すな!一瞬見落としそうになったわ!

 

281:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ちっ、騙されなかったか

 

282:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

しれっと混ぜたら気づかれないかなぁ、と思ってたんだがダメかぁ

 

283:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

騙されるかバカタレが!帰ったらお前ら全員覚えとけよ!説教不可避だからな!!

 

284:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

あーい

 

285:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ちぇー

 

286:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

えぇー

 

287:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そんなー

 

 

……ん?スグリよ、どうすれば勝てるかだって?

まずは自分のポケモンの性格や個体値から見直してだな次にそのポケモンの運用方法を見出してそれに見合った努力値をしっかり振り分けて役割を持たせたらタイプ相性の補完性を見て弱点被りをなるべく減らしつつ場合によってや天気や場を使った戦術や相手の行動予測も大事だしそうそうポケモンに持たせる道具もちゃんと役割にあったものにするんだぞそれから技も大事だなフルアタッカーも悪くはないがなるべく変化技とか交代技を覚えさせたり……

え?なに?もういい?あーほぅ、強くなるならそれくらいは考えないとだぞ?俺?俺はそりゃもう日頃から考えっぱなしだよ、ポケモンバトルはポケモンが強けりゃいいなんてもんじゃないからな、トレーナーの頭脳だって勝利に必要なファクターだ

……へ?いや、別にこれくらい全然すごくないが……?

 

288:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それを一般トレーナーに求めるのは酷なんよ

 

289:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

どれ……あーあー、スグリのやつお目目グルグル状態じゃないか、心なしか頭から煙吹いてるぞ

 

290:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それもそうか……ん!?

 

291:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

今度はなんだ?

 

292:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、なにか視線を感じたような……気のせいか?……あ、あぁ、そうだな穴に入ってみるか

ふーむ……案外、居心地よくてというか、好き好んでここに住んでるかも知れないぞ?まぁスグリの優しさは美徳だから、その気持ちは大事にしろよ

……おっ、日が暮れてるな……そうだな、残りは明日にするか

 

293:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

さっきも言ったが、今夜はオモテ祭りがあるぞー

準備もあるだろうから、戻るならなるべく早くしろよー

 

294:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

よぅし、それじゃあ帰るか……おっ、今度は後ろから~って言わないんだな

「今度は肩車されそう」?よくわかったな、じゃあ帰ろう

 

295:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

こっちはもう着いたぞー……え、甚平貸してくれるのか?やったぜ、サンキューゼイユ!

 

296:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ただいまー

 

297:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

同じくー

 

298:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

オモテ祭りの時期は事前に調べてたから全員分の甚平を用意してるぞ、公民館まで着替えに来いよー

 

299:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ん?そうなん?あー……悪いゼイユ、ウチの教師が用意してくれたみたいだ

……なんか残念そうだな?うわっ、バカ、急にキレるな!ビビるだろうが!あー、でも甚平の着方ってよくわからねーんだよな……え、教えてくれるのか?ありがてえ!

わかった、お前の着替えを待ってるから

 

300:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おや?

 

301:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

おやおや?

 

302:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

よーし、戻ってきたなお前ら、早速甚平の着方を……

 

303:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

剣介ー、それなんだがゼイユが直接教えてくれるってよ

 

304:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

え、マジで?それはありがたいんだが、どういう風の吹き回しだ?

 

305:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、知らんが……いいじゃん、ありがたく乗っかろうぜ

 

306:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

こんちわお爺さん、おじゃましまーす

 

307:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

流静?帰ってきたのか

 

308:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ドーモ、初めましてお爺=さん、流静です

いぇーすいぇーす、スグリ・マイ・フレンド

あ、ドーモ、初めましてお婆=さん、流静です

ん?甚平ですか?けど、俺の体に合うサイズってありますかね?

 

309:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

前世の人間ボディをそのまま投影してるから、スグリやゼイユの分を借りたとしてもサイズ不足だと思うんだが

 

310:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いやぁ、流石に1.7mの体格に合うものはないでしょう

……え、ある?あぁ、スグリのお父さんが昔着てたお下がり?いや、いいのかそれ……あ、ありがたく着させていただきます

 

311:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なんだ、流静の方は問題なさそうだな

 

312:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おぉ、流静!甚平あったんか?

 

313:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あぁ!スグリのお父さんのお下がりだ

……あ、ゼイユ

 

314:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お、ゼイユ!……ん、どうした?え?流静の甚平?お前らの親父さんのお下がりらしいが……

 

315:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

「なんでアンタが着てんのよ!」って……そりゃあ、こちらのお婆さまのご好意に甘えてだな……いや、待て待て!なんで勝負する流れになるんだ!?

は?「あたしが勝ったら甚平を脱げ!」だぁ?また意味わからんことを……いいだろう、お前は一度、性根からわからせる必要があるらしいな……いくぞ、ゼイユ!

 

わからせたれ、ジラーチ!

はどうだん!

はどうだん!

シャドーボール!

サイコキネシスゥ!

 

316:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お前ら全員、明日になったら手持ち全部シフトしろ!

 

317:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

わかったよ……んで?なんで急にバトルすることになるんだよ

……え、「ゴウタに父さんの甚平を使って欲しかった」……?

……あっ、ふーん(察し)

 

318:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いやいや、俺身長は190超えてるし筋肉もりもりマッチョマンだから、流石にそのサイズは入らないかと……けど、気持ちは嬉しかったよゼイユ

……あ、忘れてた!甚平すげえ似合ってる!綺麗じゃん、イイね!あっ、痛い!なんで殴る!?ちょ、やめ、ヤメルルォ!!

流静ー!助けろー!!

 

319:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ふーん(察し)(・∀・)ニヤニヤ

 

320:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ふーん(察し)(・∀・)ニヤニヤ

 

321:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ふーん(察し)(・∀・)ニヤニヤ

 

322:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

へぇ、物置にお面があるのか、早速取りに行こう

……あ、ゼイユ気付いた!急げスグリ!!

 

323:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ふぅ……なんなんだよ急に、暴力系ヒロインは需要ないぞ?

 

324:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

(°_°)

 

325:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

(°_°)

 

326:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、剛太ェ……

 

327:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

二つしかないなら俺は潔く諦めよう、お祭りなら屋台でお面を売ってるだろ?それを買うよ

それよりゼイユ、甚平の着付け頼んだぞ

 

328:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そうだった!よろしくな、ゼイユ!!

 

329:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

じゃあ、俺とスグリは先にセンターに行ってるぞ、行こうスグリ

 

330:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

やぁ、ゼイユさん、彼らへの着付けをよろしくな

……ん?どした?え、焔に近寄ると寒気が……?自分でやってくれ?なんでまた……

 

331:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

(^ω^)

 

332:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ああ!窓に!窓に!

 

333:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そういえば今まで黙ってただけでずっと見てたんだったね

 

334:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あー……じゃあ、焔は俺が手伝うか、ゼイユは他二人を頼んだ

……よし、完了だな!それじゃあ、センターに行ってらっしゃい!

 

335:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……お、あいつら追いついて……って、おい!コライドンミライドンに相乗りはずるくね!?

 

336:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あるものはなんでも使わねぇとなぁ!

 

337:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

サンキューコライドン、一旦戻れ

さて……これがオモテ祭りかぁ!確かにこの規模の祭りはパルデアじゃやってねぇな

 

338:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

バトスクはお祭りというよりお祭り騒ぎ、だしな

 

339:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

肩組めお前ら!記念撮影だ!ほらゼイユ!肩組むぞ!

 

340:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

よし、スグリも来い!

 

341:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

撮影なら任せろー パシャパシャ

 

342:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

もっと詰めろそっち!……よし、いいぞ!やれ焔!!

 

343:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ショコランラッペリッチャァァァwww

 

344:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ブッフォ!?

 

345:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ちょwwwwおまwwww

 

346:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あーあー、完全に変顔になってるわこれww

 

347:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

まぁまぁ、これも記念ということで一つ

 

348:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

どれどれ、先生が写真を見てやろう

……うわ、全員吹き出した瞬間に撮られてるからなんとも絶妙な変顔にwww

 

349:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ともっこを称えるお祭りかぁ……でも流静の考察を見たあとだとなんにも響かねぇな、それにぽに子がガチの鬼だったとしてもあの子が悪さをするとは思えんし

 

350:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おーおー、スグリくん煽りおる煽りおる

自信満々のドヤ顔で流静の考察を語りおる

 

351:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、所詮考察だから結論なんて出てないんだがね

 

352:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、それで論破されるのはゼイユさんちょっと弱すぎでは……?

 

353:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おっと!グーはいかんよグーは、冷静になろうぜゼイユ

けど、わからないままになっていることが伝説の中にあったとなれば、いささか不安は拭えないな……当時のことを知る人がいればいいが口伝でもなければ流石に誰も知らないよなぁ……

 

354:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

とりあえず難しい話は後だ!屋台オール制覇してやるぜーっ!!

 

355:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

うおっ、負けてたまるか!俺がぶっちぎってやるぜー!!

 

356:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ん、りんごあめくれるのか?ありがとうな、スグリ

……そうだな、昼間にも言ったがおに様が怒った理由がはっきりしていないうちは、一概におに様だけが悪とは言えない……だが、それを知る人間が現代にいるとは限りらないし、村のみんなは「ともっこ様ジャスティス!」な面が強いみたいだ……一種の信仰のようなものだな

……え、「明日じいちゃんに聞いてみる」って?なるほど……スグリのおじいちゃんは歴史に詳しいのか……

亀の甲より年の功、剛太も言ってたが、どこかの家には口伝として当時のことを伝え残している家があるかもしれない、試す価値はあるだろう

次は向こうか?よし、行ってみるか!

 

357:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お、なんだこれ、鬼退治フェス?へぇ、ゼイユはもうやったのか……6390点!すごいなぁ、今は焔と光輝が順番にやってるのか

 

358:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ただいまー

 

359:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

戻ったぜー

 

360:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おつかれー、どうだった?

 

361:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

20秒くらいで終わったー

9770点

 

362:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

楽勝っすよ

9530点

 

363:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

何をしたテメェらキリキリ白状しやがれ

 

364:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

無限ドリフトダッシュ

 

365:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ユーキャンヒッミー

 

366:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

よぉーしかくなる上は暴力も辞さぬ所存だ帰ったら覚えとけ

 

367:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

暴力反対!

 

368:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

体罰で訴えてやる!

 

369:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺よりも先にお前らがいろんな方面から訴えられるぞ!!

 

370:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

細かいようだがゼイユは女だからキングではなくクイーンでは?まっ!悪かった!いやでも修正しないとだろ女の子なんだから!

 

371:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ははは……それじゃあ、スグリに甘えて俺らはほかを回るか

 

372:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺もここに残るよ、俺も火に油注いでるようなもんだし

 

373:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

剛太一人に任せるのもアレなので俺も待機!

 

374:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

じゃあ焔……あれ、焔?

 

375:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ぽに子おおおおおおぉぉぉぉぉ!!

 

376:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あ、おい!どこに行くんだ焔!!

 

377:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ぽに子!今朝方ぶりだな!お前もお祭り楽しんでるか?そうかそうか!あ、りんごあめ買ったんだ、食べるか?……おぉ、見事な食べっぷり!美味しかったか?そりゃよかった!

 

378:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

こいつがぽに子……焔が言ってた鬼か

 

379:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

だーかーらー!ぽに子はぽに子であって、鬼じゃねえっつの!ぽに子の可愛い顔見たら、お前土下座しろよ!

 

380:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そんなレベルかよ!?

 

381:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

あん?ゼイユ?なにやってんだこんなところ来て……え、スグリ鬼退治ダメだったのか?それで今は剛太が挑戦中と……って、あ!どこ行くんだぽに子!!

 

382:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

待て焔!ああ、くそっ!!ゼイユ!お前はここで待て!

 

383:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あらあら……何事?オリゴ糖

 

384:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

待て、動くな光輝、しばらく焔達で様子を見る

 

385:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ぽに子ごめん!多分だが鬼退治に反応したんだよな?あれはミニゲームみたいなもんでお前をいじめることじゃないんだ!……って説明しても難しいか……?とにかく悪気も悪意もないから!

 

386:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

急に走り出すとは何事か……って、ゼイユ!待てというに、ったく……

 

387:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

あ、ぽに……おおおおぉぉぉ!?

キャッチ!マーックス!!うああああ!!

 

388:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

焔ーっ!

階段でダイビングキャッチとか正気かお前ー!?

 

389:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

しかもそのまま階段から転げ落ちるまでがセット

 

390:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

このお面はよぉ、ぽに子の大事なモンだぞ……!だからよ……壊すんじゃねぇぞ……! キボウノハナー

 

391:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

別にそこはダイブしなくてもよかったのでは?

 

392:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そこ!メタ発言禁止!!ノリと雰囲気が大事なんだよ!

 

393:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いやでも、焔が無駄に重傷を負ったせいでぽに子泣きそうになっとるやんけ

 

394:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

大丈夫だ……これは、死んだふりだ

受身は完璧だったんだが夜で暗いのと汚れたせいで俺が大怪我をしたみたいに見えたんやな

 

395:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なるへそ……なるへそ?

 

396:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ほら、ぽに子!お前のお面、拾ったぞ!取りに来いよ!……あ、ぽに子!?どこ行くんだぽに子!……ぽに子……

ゼイユ?「どこの子」って、ぽに子だよ!可愛い顔してただろ?オラッ、流静!土下座しろ!!

 

397:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おい!屋外で土下座はマジでやめろ!膝!膝痛いから!!

 

398:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ん?まぁ、控え目に言っても人間には見えないよなぁ……じゃあやっぱり、伝承にある鬼ってぽに子のことか?でもなぁ……

 

399:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おーい、そっち何かあったー?

 

400:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

スグリがお前ら探してたぞー

 

401:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

スグリ?……あぁ、夜の山に入ったらおに様に会えるんじゃないかと思ったんだが、ご覧のとおりゼイユに止められてな

 

402:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

流静……ひとまず合わせるか

そうそう!そうなんよ、すまんな、なんか心配かけさせちまったか

 

403:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

だってさ、スグリ

昼間はともかく夜はヤバそうだよな……なんか出そう、鬼以上の超常的化物が

 

404:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……あの、ゼイユさん?ビビったのはわかるがちょっと離れてもろて……え?ビビってない?いや、でも普通に悲鳴……あー!わかりました!すいません気のせいでした!

 

405:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ともかく今夜は解散だ、明日に備えて公民館に戻りとっとと休むぞ

 

406:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

帰りは気をつけて帰れよー

 

407:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

りょうかーい

 

 

 

 

――メンバー帰還&就寝中……――

 

 

 

 

408:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

んぐぐ……あ、ゼイユ

なに?焔を呼べって?もしかして昨日の話か?わかった、すぐに起こすよ

起きろ焔!開けろ!デトロイト警察だ!!

 

409:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

どぅわ!?なんだ急に……

 

410:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ん?なにやってんだお前ら?

 

411:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ふわぁ~、まったく忌々しい朝だな、特に月曜日のそれは凶悪だ

 

412:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ゼイユが俺と焔を呼び出したんだ、だからちょっと行ってくる

 

413:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

奇遇だな、俺らもスグリに呼ばれてんだ

 

414:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

昨日の帰り際にな、おじいちゃんから話を聞くそうだから立ち会って欲しいんだと

 

415:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

なぜにお前ら?

 

416:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

流静に知恵を借りてばかりだから、自分から動きたいんだとよ

それで、今のところ流静とほとんど絡みが少ない俺らに声をかけたんだろ

 

417:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

焔も最後の最後でゼイユと一緒にいたからな

 

418:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

なるほど……通りで最近、葵の目が怖いわけだ……

 

419:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なんてことだ、もう助からないゾ☆

 

420:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

いやだぁ!見捨てないでぇ!?

 

421:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

はいはい、さっさと家に向かうぞ

おう、ゼイユ!なんか光輝らもスグリに呼ばれてるんだと、スグリはスグリで爺様から話を聞く予定だそうだから、この際だし同席させよう

は?何言ってんだ、昨日の夜誤魔化したのはあのまま正直に話して山に入られたら困るからだろうが、一夜明けた今なら話しても問題はないだろう?むしろこのまま隠し通しにしようとしてどこかでバレた時の方がよっぽど精神的に堪えるぞ、だったら話せるタイミングで話してしまったほうがいい

 

422:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それはそう

 

423:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

まぁ、スグリを想うお前の考えはわからんでもないが……言っちゃあアレなんだが、多分スグリには何一つ伝わってないぞ?

 

424:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、何をそんな驚く……?お前のソレを弟への家族愛と捉えるやつはきっとお前以上に家族愛に飢えてる孤児とかそのへんだと思うぞ?ここにいる剛太は2回り上の兄の子が何十人もいて、その子らの面倒をかなり見てたからな?

 

425:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あー……そうだな、俺からすればゼイユの態度というか接し方にも問題があったと思うぞ?スグリは生きた人間なんだからその意思を押さえつけるような真似はやめとけ

あと流静から又聞きしたがスグリの身辺で起こった問題をゼイユが何とかしてたんだって?この世は自分のポケモンを持てる10歳から成人が認められてるんだぞ?そういう意味ではスグリだって成人だし、成人ならいっちょまえの大人の仲間入りに片足踏み込ませたっていいだろう?可愛い子には旅をさせよ、だぞ

そう不安そうにするな、ここにはお前だけじゃなく俺らもいる!なんかあればこっちでフォローしてやるよ、それに身内同士だからこそ尚更腹を割って真正面から思いの丈をぶちまけてぶつからないとな!

あぁ!礼には及ばねぇよ!……それより大丈夫か?なんか顔が……あっ、痛い!暴力反対!暴力禁止!

 

426:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

あららららwwww

 

427:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ごwwうwwたww

 

428:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

もういいから行くぞ

 

429:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

どうも初めましてお爺さん!焔です!

 

430:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

こんにちは光輝です、あっ、スグリ!おはようさん!

 

431:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

はいはい、どうどう、ゼイユは一旦待てだ、待て

 

432:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おはようございます、お爺さん……それとスグリ、実はお前にひとつ謝らなければならないことがある

実は昨日の夜、俺と焔それとゼイユはお前の言うおに様に会ったかもしれないんだ

 

433:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いやいや、「言ってくれてもよかったじゃん」って……言ったらお前、あのまま夜の山に行ってただろ絶対、そうしてお前が行方不明になろうもんなら寝覚めが悪いっての

 

434:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

それに、仮に運良く恐れ穴までたどり着けたとしてもおに様に会えるとは限らないだろう?お前の安全を考慮して、ゼイユたっての頼みで黙ってたんだ、そうだろゼイユ?

 

435:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お爺さん、少々お待ち下さいね……ちょっとこいつらをド派手に喧嘩させますんで

 

436:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

お、早速スグリが切り込んだな……流静頼んだ!

 

437:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

了解っと……えぇっと、双方の言い分をまとめると

 

スグリ

→昨夜おに様に会ったのに嘘をついて隠そうとした、自分達をおに様と同じように除け者にしようとした、ゆ"る"さ"ん"っ"!!

 

ゼイユ

→嘘を付いて隠したのはスグリが山に入るかもしれない可能性を無視できなかったからで他意はない、嘘をついたのも隠したのも悪かったとは思っている

 

438:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あれ、俺と剛太ってスグリに仲間認定されてる?

 

439:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

脳内掲示板で情報共有してるなんて言えないな

 

440:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

今だスグリ!怒りを爆発させろ!!

 

441:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おい馬鹿!煽るな!!……いや、これは?

おぉっと、ここでスグリ!焔の言葉を受けて日頃の鬱憤を余すことなくぶつけ始めた!

 

スグリ

→姉ちゃんはいつもそうだ!俺を弱い子供扱いして頭ごなしに押さえつけに来て、うんざりなんだよ!俺だっていつまでも守られるだけの子供じゃない!おに様のように強くなるんだ!

 

ゼイユ

→そんなこと言って、今まで自分でどうこうできた試しなんてないくせに!スグリの癖に生意気!あたしが守ってあげてるんだから感謝はされても文句を言われる筋合いはない!

 

スグリ

→そういうところが子供扱いしてるっていうんだよ!もういい!表出ろ!勝負でケリをつけてやる!!

 

ゼイユ

→受けて立つ!その喧嘩、買ったァ!!

 

442:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いいぞいいぞー!

 

443:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

やれやれー!

 

444:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いいんですよお爺さん、これでいいんです

スグリもゼイユも多感な時期ですから、一度感情を爆発させるくらいのぶつかり合いを経験させるべきなんです……俺も、兄とはそんな風に過ごしてきました

ゼイユだけじゃない、スグリの周りの人間ももっとスグリが発する信号をきちんと拾いに行ってあげないと!ただ待ってるだけじゃダメですよ、こちらからもアクションを起こさなければ、リアクションは帰ってこないんですから

 

445:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おぉ、すげぇ!見た感じポケモンのレベル差はほとんどないといっていいが、スグリの方が一匹多い分数的有利にも関わらずゼイユも負けてねえ!

 

446:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

どっちも本気モードだな……いいねぇ、端から喰らい尽くしたいぜ

 

447:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

落ち着けバーサーカー……あ、祖龍から速報だ

え?二人の手持ちは決戦仕様?まだこの構成は早すぎる?ウッソだろ……

 

448:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

そりゃあ、誰かさんが幻ポケモンで蹂躙しまくってたからな

 

449:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

悪かったな!

 

450:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

決着!……意外だったな、引き分けとは

 

451:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁでも、ド派手にぶつかり合ってすっきりしたんじゃないか?

 

452:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

お疲れ二人共、気分はどうだ?

……そうだな、ゼイユはもうちょっとスグリの強さを信用してやれ、バトルを通してわかっただろ?コイツはもうおんぶに抱っこの必要のない、自分の足で立って歩ける男だってさ

スグリもだ、言葉や態度じゃ少し……いやまったく伝わってないだろうけど、ゼイユはゼイユなりにお前のことを考えて行動してくれてる、言動には文句の一つでも垂れりゃあいいが、その思いまでは否定しないでやってくれ

……それじゃあ、落ち着いたところでお爺さんから話を聴こうか

 

453:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ほらね?二人共、さっきよりもずっと吹っ切れた顔をしてるでしょう?

我々も含めて、全ての生き物には感情があり、心があり、想いがある……ならば、それを主張するだけでなく、ただ受け止めるだけでなく、時にはぶつけ合ってたまに反発し合って、そうやって育っていくんですよ

……え!?や、やだなぁ、俺は普通の十七歳ですって!サバ読んでませんから!アハハ……!

 

454:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

教師枠の俺が口を挟むとKYっぽいから黙ってたけど……ちくしょう!俺もそっち側に混ざりたい!!

 

455:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

教員が参加するのはちょっと……

 

456:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

(;^ν^)ぐぬぬ……

 

 

 

 

――メンバー講談中……――

 

 

 

 

457:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ぽに子おおぉぉぉぉ……!。゚(゚´Д`゚)゚。

 

458:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ともっこ許すまじ、マジ死すべし

 

459:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

蘇ったら秒で冥界に送り返してやる

 

460:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

こんなの……初めてだ……わかるか?なぁ……俺の敵意……!

 

461:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

殺意高いなぁ

 

462:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

実際、筆舌に尽くしがたい悪行よ、絶対に許さん

 

463:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

傷ついたお面はお爺さんが治すそうだし、ひとまずオリエンテーリングを終わらせてこいよ?話はそれからだ

 

464:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

了解、行くぞスグリ

 

465:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ゼイユも行こうか

 

466:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

後一つ!

 

467:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

さっさとやろうかぁ

 

468:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ん、どうした?……あぁ、スグリが想像以上に強くて驚いたのか?あれでスグリにも信念があるんだろう、のんびりしてると追い越されるかもよ?

 

469:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

光輝パーンチ!

 

470:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ダメージブーストォォォォォッ!!!!!

 

471:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おいいぃぃぃ!?誰だまた飛んで行きやがった奴は!!

 

472:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ちょっと遠かったが、なんとか着いたな

……ん?あぁ、ゼイユがあんなにもお前のことを考えてたことが意外か?まぁ、そうだよなぁ……イメージ的には虫かごに閉じ込めて一生幽閉されるアブリーみたいな感じだからな、ゼイユのやり方は

けど、それじゃあ結局守れるのは肉体だけで、心までは守れない……だから、俺たちはゼイユのやり方に否、と答えたんだ

……オーガポンが、村でもっと自由でいられる方法か……村の様子だと、お前の家以外に歴史のことを伝え残している家はなさそうだったな……それを利用すればいい

当時を知る人間が他にいないなら、お前の家の口伝にもある程度は信憑性を持たせられるかもしれない……後はお前次第だ、お前が一生懸命に、必死になって訴えかければ彼らの心象を変えられるかもしれない、感情に訴えかけるんだ

お前の気持ちが本物なら、みんな心を動かされるはずさ

 

473:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

暇だなー……あ、そうだ

 

474:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

よし、終わりー!このあとどうする?

 

475:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

んー……ぽに子に会いにいくか

 

476:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

上から行くほうが楽なんだっけ?それじゃあ……

 

 

連続空中死んだふりホッピングジャンプ!!

 

477:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

やるな、光輝!俺も負けてられねえ!!

 

 

空中攻撃死んだふりジャンプキャンセルループッ!!

 

478:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

な、なんだと!?

 

479:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

死んだふ力学は常に進歩を続ける……貴様は既に置いて行かれたのだっ

 

480:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

む、無念……!

 

481:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

くだらねーことで張り合うんじゃねえよ

 

482:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あれ?剣介が見えた!なんでここに?

 

483:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

おう、暇だからお爺さんの手伝いができんかなと思ってな、そしたら『てらす池』の結晶が必要って話だから、取りに来たわけよ

 

484:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

面白そう!俺も行くー!

 

485:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

じゃあ、俺一人でぽに子の所に行くぜ……ぽに子ー!俺だよー!遊びに来たよー!

おー!勢いよく来たら危ないぞ?あ、そうだ!お前のお面さ、ちょっと傷が付いたから信頼できる人に直してもらってるんだ!明日くらいには出来ると思うぞ

よしっ、今日は俺の友達を紹介しよう!イカれたメンバーを紹介するぜ!左から俺、剛太、ゼイユ、流静、スグリ、光輝だ!それと、ここにはいないが剣介って奴もいるんだ!みんな愉快な仲間なんだぜ、今度会わせてやりたいな……

へへっ、俺もお前のお面を直すの手伝うさ!そういうわけで、山頂の池に行ってくるぜ!あ、これおにぎり!プレゼントフォーユー!バイちゃ!!

 

486:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……ポケモン勝負?俺と?……なるほど、スグリに勝ちきれなかったから、自分の実力の程を知っておきたいのか

いいぜ、相手をしてやるぜ!

 

487:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

看板を読む前にバトル?いいぞ、やろうか

 

488:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

待った!手持ちチェックタイムだ!!

 

489:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

はい

 

サダイジャ

キラフロル

バンギラス

ルガルガン

キョジオーン

ハカドッグ

 

490:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

はい

 

ペリッパー

イダイトウ

イルカマン

カイリュー

コノヨザル

ハッサム

 

491:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

露骨な天気パやめろ

 

492:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

前よりかはマシだろ?

 

493:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うぐ……これはこれでいいのか……?

 

494:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

吹き荒べ!土砂を巻き上げる狂乱の嵐!!歌え、汝の悲鳴は有終を彩るソプラノの音、我が奏でるは終焉の調べ!さあ、紡ぎ上げるのだ……砂上にて築かれる楼閣は、貴様という贄の上に立つ!!

 

495:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

怒涛の雨、未だ止まず……其れは天の恵みか神の悲哀か、知る者は未だおらず……これが神々の涙というならば、天よ!御覧じろ!!地に伏す我が敵の姿を晒し、枯れ果てぬ雨空を晴らしてみせよう!!

 

496:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なに雰囲気出してんだオイ、いや、圧倒的強者感は溢れてるけど!

 

497:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うおおお!?ミロカロス、ミロカロスでた!剣介ー!

 

498:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

はいはい、ルガルガン

 

499:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やったれ、ユータン!スキルスワップ!

 

500:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ルガルガン、こらえる

からの~……交代、オノノクス

 

501:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

すかさずスキルスワップ!

そして!おさきにどうぞ!

 

502:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

バイバイ……ぶち込め、ギロチン!

 

503:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

勝った!第三部、完!!

 

504:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いやぁ、ミロカロスは強敵でしたねぇ()

 

505:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

2v1でノーガードギロチンとか新手の死刑宣告か?

 

506:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お、結晶はっけーん!……ん?ありゃ、ブライア先生じゃないすか

 

507:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

おう、さっきそこの道中でばったり

 

508:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

へぇ、先生は池の水質調査に来られたのですか……池の水がテラスタルエネルギーと同じ波長を持っていると、その謎を解明すればパルデア以外でもテラスタルが可能になると、ついでにテラパゴスのことも……

いや、どう見ても池の底にあるあの結晶、エリアゼロの結晶と同一のもんじゃね?

 

509:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

だねぇ、結晶の成分が水に溶け出している結果、水からもテラスタルエネルギーが検知されるようになったというわけかな?

 

510:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そもそもあの結晶は天然物か?それとも誰かが外部から持ち込んだ?まぁそんなことはどっちでもいいし、俺らの管轄じゃねえし……帰るか

 

511:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

だな、さっさと爺様に結晶を渡さないと

 

512:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

んじゃ、俺らはこのへんで……え、なに?「エリアゼロに入ったのはコウキくんだけでは?」……?いや、俺らも入りましたけど?いかんせん、急を要することだったのでやむなく立ち入っただけですよ、話すような理由はありません

それじゃ、俺らは戻りますので……サラダバー!!

 

513:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

逃げるんだよ~!

 

514:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あぁ、あのままあの場にいたらとっつかまって色々と聞き出されそうだったからな!

 

515:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

よし、お前ら!コラミラだせ!タクシー呼ぶのもダリィから、このまま飛ぶぜ!!

 

516:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

よっしゃ、コライドン!

 

517:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いくぜミライドン!

 

518:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それじゃあ、俺は光輝に相乗りさせてもらってと……

 

519:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

飛ばすぞぉ、コライドン!パワフルダッシュキノコ~(ダミ声)!

 

520:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

 

521:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なにをぅ、負けるなミライドン!トロニウムエンジン・フルドライブ!!

 

522:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ちょ

 

523:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

飛~ば~す~ぜ~!!

 

524:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

駆けろトロンベ!!

 

525:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

せめてシートベルトとG耐性を付けさせ――

 

てえええぇぇぇぇぇぇくぁwせdrftgyふじこlp;

 

526:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おい、コラミラに変なもん搭載すんな!つーか、どっから持ってきた!?

 

527:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

そこら辺に生えてた

 

528:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

気合で

 

529:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんでもありか、この空間……

 

530:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そっちはバトル終わったのか?

 

531:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おう、完封勝利

 

532:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

全タテ、対ありでした

 

533:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

いや、容赦しないなぁ

というか、二人共姉弟喧嘩の時点で最終決戦仕様だったはずだけど?

 

534:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ステロ吠えるバンギで食い散らかしただけやで?

 

535:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ペリカンとんぼしてカイリューからの暴風余裕でした

 

536:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

もうお前らが鬼でいいよ……

 

537:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

どうだ、スグリ?これがトレーナーも考えるポケモンバトルだ、少しは参考になったか?

……え、あっという間すぎて何もわからなかった?それは……うん、スマン

 

538:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんだよー、俺に文句言うなよー?こういうのはな、対策しない方に非がある!あらゆる可能性、あらゆる戦術を考慮しつつ自分のバトルを相手に押し付けられる選出をする!俺は自分がしたい動き、やりたいバトルができた、そしてゼイユは何もできなかった……それだけよ……

「都会って怖い」……って、いや、これは俺らだけで都会人みんながこうじゃないぞ?

 

539:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ほどほどにしてやれよ……

 

540:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さあ帰ろう、いい感じに日が暮れてきたしな

 

541:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

はいはい、次回はもちっと頭を使ったバトルをしような

 

542:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

こっちもちょうど村に戻ってきたところだ、とりあえず今日はもう遅いから、これは明日にでもおじいさんに渡そうかな

 

543:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そういえば剣介はどうした?いや、なんとなく予想はつくが……

 

544:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

さっきからそこで伸びてるぞ

 

545:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

だろうな

とりあえず今日のところはそれぞれ拠点に戻って明日に備えるか

 

546:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

さんせーい

 

 

 

 

――メンバー就寝中……――

 

 

 

 

547:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

キサマらァ……昨日はよくも……!!

 

548:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

まぁ、でも楽しかったろ?

 

549:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なにがっ!!

 

550:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

わかるだろ剣介……あれがアクセルシンクロだ

 

551:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ただ超スピードでカッ飛んだだけのことをアクセルシンクロとか言うな!

 

552:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

よすよす、なんかスグリがともっこプラザに来てくれって言ってたぞ

 

553:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

俺もゼイユも呼ばれたが、なんでもともっこのことで話がしたいんだと

 

554:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

了解、じゃあ移動しよう、コライドン頼んだ

 

555:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

くっそぉ……ぜってぇ倍返ししてやる……!

 

556:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

とうちゃーく!おーい、スグリー!

 

557:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

よぅスグリ、一体どうした?

……なに?本来の歴史をみんなにバラす?ふむ……だが、いきなりバラしても大丈夫か?確かにお前の一族以外に本当の歴史を知る者がいないとはいえ、長く信じられてきたことを否定されればそれ相応の反感は買うと思うぞ

 

558:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だな……確かにこのままって訳にもいかないが、口伝でしか残されていないっていうのが厄介だ、書物でも壁画でも目に見える形で残っていればまだ納得させるだけの材料になるんだがな……それこそあの看板みたいにな

 

559:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

下準備なしに吹聴しても、オオカミ少年になりかねないぜ?一応、参考資料みたいな感じでまとめることを推奨する

 

560:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

だが、鬼が山を降りた怒りの原因を今の村人たちは知らないんだろ?彼らも悪人ってわけじゃないしな……こっちの誠意を見せれば受け入れてくれるかも知れない

 

561:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

はっ、そんなの簡単だぜ!ぽに子――

 

562:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あー!

 

563:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ちょー!

 

564:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

バッカ、お前!

 

565:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

チェストォ!!

 

566:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ぐふぉあっ!?( °ω°):∵

 

567:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ふー……ん?なんだスグリ?え、焔?あぁ、コイツあろうことかおに様に直接弁明させようとか言い出しそうだったから、無理やり黙らせただけだ……本来の歴史を鑑みれば、おに様も心を傷つけているだろうに、この無神経野郎が……

 

568:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

(実際は違うけど絶妙な誤魔化し方だ……)そうだな、流石におに様にそこまで負担を強いることはできないな

 

569:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

「やっぱり今すぐ言いに行く」だって?焦るなよスグリ、今はまだ不確定要素が多すぎる……どうしてもというのなら、俺が相手になってやろう

 

570:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

剣介のバトルか、お手並み拝見!

 

571:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

お互いに初手は俺がアップリュー、スグリがダーテングか……

 

572:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

タイプ相性はスグリが有利……だがアッ――

 

573:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

とんぼがえり!!

 

574:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや最後まで言わせろ!

 

575:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

……うーん……あれ、俺は……?

 

576:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おっ、起きたかこのバカタレ

 

577:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

なんだこれ、剣介とスグリがバトルしてんのか、どういう状況?

 

578:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

スグリの手持ち状況

先鋒:ダーテング→アップリューのとんぼがえりで四倍ワンパン

二番手:ダイノーズ→入れ替わりで出てきたかたやぶりオノノクスでギロチンワンパン

三番手:ニョロボン→剣介ポケモン交代でアローラキュウコン、フリーズドライ確2

四番手:メガヤンマ→フリーズドライワンパン

五番手:ドラピオン→フリーズドライ(略

六番手:カミッチュ→フリーズ(略

 

579:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

いや、後半雑やな!

 

580:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

はい、お疲れさん、そういうわけだからまだ黙っててくれよ?……っておい、なにもともっこ像に当たることはないだろ

 

581:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

気持ちはわかるよ、好きなものを侮辱されたら腹立つよな……じゃあ、ここらで一旦お開きに……

 

582:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……ん?

 

583:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

なんだ?

 

584:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

地震……近いぞ!

 

585:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

これは、ともっこ像から!?

 

586:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あっ

 

587:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

うわっ

 

588:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

は?なんだこいつら……ともっこ?マジもんの?

 

589:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あっ、おい待てぃ(江戸っ子)

 

590:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

キタカミセンターの方……?まさか、お面か!?マズイ、急いでキタカミセンターに行くぞ!!

 

591:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ミライドン!テスラドライブ出力最大!ブーストッ!!

 

592:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

コライドンも行くぞ!パワフルキノコ!キラー!スター!

 

593:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

だから加速はほどほどにいいぃぃぃぃ!!……うえっ

 

594:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

軟弱だなぁ剣介は、ゼイユとスグリを見ろ!あの超高速の後でも平然と立ってるぞ!!

 

595:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

 

ゼイユ「( Д )」

 

スグリ「( Д )。o:∵」

 

596:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや白目剥いとるやんけ!しかもスグリは口から泡吹いてんぞ!?

 

597:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

しっかりしろよなぁ、お前ら

 

598:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そうだぜ、この程度で根を上げちゃあクーガー兄貴には一生追いつけねぇぞ!!

 

599:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

俺らが追っかけてんのはともっこなんだよ!!

 

600:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

こんにちは村長さん、ここにともっこ来ませんでした?

……え、来た?しかもお面を譲った挙句、スパイスたっぷりの餅でもてなした、だとぉ!?

 

601:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

だめだこいつら……早く何とかしないと……

 

602:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

しかも今は恐れ穴に……マズイな、完全に後手に回っている!

 

603:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

なにっ!ぽに子おおお!!

 

604:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

焔!……ちっ、俺とゼイユ、スグリの三人でお面を回収する!今頃修理も終わっているはずだ!

 

605:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

了解した、では俺と光輝、剣介で焔を追う!

 

606:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

焔ー!待てー!……あ、階段!

 

ヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ(ry

 

607:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、だからケツワープは……ええい、言ってる場合か!

 

ヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ(ry

 

608:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

え、いやマジで出来るのかこれ!?……自信はないが、やってみるか!

 

ヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤ(ry

 

609:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

マジで出来るんかい!あ、焔見っけ!

 

610:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

焔!なんとか追いつい……た……?

 

611:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

本当にできるとは……あれ、焔?

 

612:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

オイ、キサマら……

 

613:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ひえっ

 

614:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あ、あれー……?なんか焔の背後にゼルレウスの幻影が……

 

615:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

俺の 大事な(友達の) ぽに子に なにしくさってんだ?

 

616:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

一匹前に出てきたか……どうやら相手をするようだな……!

 

617:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

黙れ……骨肉噛み砕き四肢磨り潰してブチ殺すぞ畜生(ゴミ)共ォッ!!

\グオオオオオオッ!!/

 

618:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

うわああぁぁ!?幻影だけどゼルレウスが降臨したァー!?焔の殺意がゼルレウスの姿を象ったのか!?

 

619:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

うわぁ……ともっこ共、顔面蒼白でもう涙目なんだが、つーか泣いてる

 

620:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

あっ!爆速で逃げ出したぞ!!

 

621:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

待たせたな!……って、あれ?何この状況

 

622:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

焔の殺意の波動(ゼルレウス)にビビったともっこ共が秒で逃げた

 

623:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……え?聞いたことのないポケモンのとんでもなくデカい鳴き声が聞こえたって?……キノセイデスヨ

 

624:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

とにかく!ともっこ共は焔が撃退したぞ!

 

625:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

フン、ったく……三対一のあの状況、保育園の頃を思い出す……っと、ぽに子!だから飛びついたら危ないぞ?でも、目立った怪我も少なそうで良かった!

 

626:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……え、「ホムラとオーガポンってもう会ってたの!?」って?あー……そうみたいだな、多分アレだ、初日に空へぶっ飛んだ時に偶然会ったんじゃないか?

 

627:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや、スグリよ……「ずるい」もなにも、焔は『オーガポン=おに様』なんて知らなかったし、ほとんどお前と行動してないんだからお前がどれだけオーガポンを慕ってるかなんて知る由もないっての

焔は話す必要性のない話は聞かれるまでだんまりするやつだし……それに、悪いことばかりじゃないぞ……焔の行動をよく見てろ

 

628:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ぽに子!覚えてるか?昨日話した、俺の友達!こいつが剛太で、こっちが光輝、そんでこいつが流静で、あいつがスグリ、その後ろがゼイユ!んで、今日初めて見るあの顔が剣介だ!覚えてるか?

……ははっ、そうかそうか!覚えてたか!そう、みんな俺の友達だ!だから怖くないぞ!

 

629:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ほらな?焔のことだから、オーガポンに俺たちのことを話していると思ったんだよ

 

630:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ほれ、スグリ!お前からお面を返したいんだろ?男は度胸だ!

 

631:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……おぉ……まだ恐る恐るって感じだけどスグリの手から受け取ったぞ、焔の事前紹介が効いてるな

 

632:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

よかったな、ぽに子!よかったな、スグリ!よし、写真撮影だ!!

 

633:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

 

634:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

スグリ!ぽに子!三人で撮るぞ!!……はい、チョモランマ!!

 

635:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、自由か!

 

636:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ふむふむ、俺ら七人で「お面とり戻し隊」か……

 

637:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ネーミングセンスゼロか、どうせなら「αナンバーズ」にしよう!

 

638:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、「マーチウィンド」にしよう

 

639:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

「エクスクロス」がいい!

 

640:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

「ディバイン・ドゥアーズ」が妥当だろ

 

641:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

その候補から選ぶくらいなら「お面とり戻し隊」でいいよ……

 

642:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

じゃあ「お面とり戻し隊」で決定だな、リーダーはゼイユ、副リーダーは……焔?え?「オーガポンが一番懐いているから」?アッハイ

んで、流静が参謀で俺が交渉役?まぁ教師なんでな俺、それ以外は平隊員か……

 

643:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それじゃ、早速スイリョクタウンでともっこを見た人がいないか調べてみるか!

 

644:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ん?ぽに子は俺についてくるのか?いいぞ、ぽに子!俺に続け!

エンドレススーパースライドだぁ!!

 

645:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いや、それをポケモンに強要するな

 

――って、なんでオーガポンもできるんだよぉ!?

 

646:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……待て、早まるなスグリ!スグリいいぃぃぃ!!

 

647:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

スグリまでエンドレススーパースライドで行ってしまった……

 

648:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

いや、「おに様ができるならおれだって……!」って気概は買ってやるがまさか本当にできてしまうとは……

 

649:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

光輝、ミライドンを頼む、俺らは普通に行こう

 

650:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

よしきたっ!今度はなにをブン回そうか!?

 

651:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

普通って言っただろうが!!

 

652:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おぅふ、剛太もゼイユも食い気味にNOを突きつけんな、仲良しか

 

653:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さぁ、出発だ!

 

654:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

よし、一足先にスイリョクタウンに着いたな

スグリ、見事なスーパースライドだった!ぽに子もやるな!俺もまだまだ負けないぜ、次はハイパーエンドレススーパースライドで勝負だ!

そうだ、スグリ……前から言おうと思ってたんだが、村の人たちの誤解はいつ解くんだ?どうせなら俺らでお面を取り戻してからでもいいだろ?

……え、「お面集めは任せる」だと?バーカ、それじゃあ何の意味もねーだろうが!お前、こういう時は縁の下の力持ちよりも傍で助け合うほうが印象に残りやすいんだぞ?お前が影でコソコソやってたって、ぽに子にそれが伝わるものか

は?いや、「おに様が村で暮らせたら」って、お前……スグリ、よく考えろ?「村人に受け入れてもらうこと」と「奪われた大切なお面を取り戻すこと」と今のぽに子にとって重要なのはどっちだと思ってやがる、お前だって爺さんの話を聞いてただろうが、あのお面はぽに子のかつてのパートナーとの思い出の詰まった大切なものなんだぞ

将来のことも大事だが今は目の前のことに集中しろ、少なくともお前の気持ちはぽに子には全く届いてない!キツイ現実を突きつけるようで申し訳ないが、ぽに子にとってお前の事情は預かり知らぬことだ

……あ、それともう一つ!いい加減、「おに様」なんて他人行儀な呼び方をやめな、コイツはぽに子……じゃなくて、オーガポンだ!敬うのはお前の勝手だが、慕っているように見えても慕われている側は壁を感じているかもしれんだろうし、そもそもぽに子はそんなガチガチな関係なんて望んでないと思うぞ

 

655:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おっ、珍しく焔が説教側だ

 

656:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

本当だ、滅多に見られないガチ焔だ

 

657:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

憧れは理解から最も遠い感情っつってな、お前はあの看板にある伝承の中のぽに子しか見えてねぇ、ぽに子の本質を何もわかっちゃいねえんだ!前に俺らの写真をぽに子に見せたんだが、その時のぽに子……ちょっと、寂しそうだった

本当のぽに子は昔話にあるような強いだけの子じゃねえんだよ、ちょっと寂しがりで優しい子なんだ、だから相棒の人間が襲われたと知って、お面を奪われたと知ってブチギレたんだよ

ちゃんとぽに子のことを見てくれよスグリ、今のお前は「3v1で勝利をもぎ取った」という事実しか見えてない!その先入観をかなぐり捨てろ!お前の理想をぽに子に押し付けるな!勝手にわかった気になってんじゃあねぇよ!!

「そんなことない!」だと?いーや、そんなことあるね!その証拠にお前……一度でもぽに子のことを「オーガポン」って呼んだことあるか?ゼイユだってもうオーガポンって呼んでるぞ!お前はどうだ!?

……分かるよ、お前がぽに子の姿を自分に投影していることくらいとっくにバレバレだってーの、気づかれねぇとでも思ったか?俺もある女の子から「ヒーロー」って言われてからはその子のために「ヒーロー」であろうとしたこともあったよ、誰彼構わず困ってる奴に片っ端から手を伸ばして助けまくったこともあったさ、そうすればその子が望んだ「ヒーロー」になれると思ったからな

……まぁ、結局は俺の思い込みで、その子を不安にさせちまったんだが

 

658:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

あ……

 

659:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

……っと、俺の話はいいんだ、問題はお前の気持ちだ!お前はぽに子と友達になりたいんだろ?そんなの簡単だ!目を合わせて、手を伸ばして、「友達になってください」って言えばいい!お前はすぐ小難しく考えようとするからな、こういう時は脳死状態で突っ走るのが一番だ!ほら、手を出せ!深呼吸をして、思い切って行け!

 

660:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

踏み出せるか、スグリ……?

 

661:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……おぉ!

 

662:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

言ったぁ!さぁ、オーガポンの返答は!?

 

663:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……握手だぁ!YU-JYOキタ━(゚∀゚)━!

 

664:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

おいおい、泣くほどのことかぁ?まぁいいや!どうやらみんなもちょうど来たみたいだし!

 

665:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おまたー、それじゃあ早速調査と行こうか!

 

666:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

待て、ぽに子はまだ村に抵抗感があるようだ……俺は残ろう

 

667:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

じゃあ、俺が光輝と一緒に行動するから二人一組で動くぞ!各員、散開!

 

668:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

はいはいそうだね、ゼイユがリーダーだったねww……痛っ、痛い!だから暴力反対!モテないぞお前!!アッー!余計悪化したぁ!?

 

669:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おいそこ、イチャイチャせずに仕事しろ、行くぞスグリ

 

670:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

吉報を持ってきてやるからな!

 

 

 

 

――メンバー情報収集中……――

 

 

 

 

671:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

戻ったぞー

 

672:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

情報収集、完了だ

 

673:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

早速摺り合わせと行こうか

 

674:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

えーっと?

クソ犬ことイイネイヌは「楽土の荒地」に

ボケ猿ことマシマシラは「フジが原」に

カマ雉ことキチキギスは「鬼が山」に

 

よし、コロニーレーザーで焼き払うか、あいつら

 

675:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

待て待て待て!所詮は野生のポケモンの所業、コロニーレーザーはやりすぎだ

擁護する気はないが、少しは冷静になれ

 

676:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ぐぬぬ……

 

677:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

とりあえず近いところから回るぞ、まずはフジが原のマシマシラだ!

 

678:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それじゃあ移動するか、もちろん全員でな!

 

679:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ほーら、スグリも行くぞー!

 

680:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

あいつら……どうやって料理してやろうか……

 

681:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

お前の方が悪党まである

 

682:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

なんだとー!

 

683:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ひとまず、近場のマシマシラからしばきに行くぞ

 

684:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

行くぞ、全速前進だ!

 

685:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

天誅!!

 

686:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

てんてんてんてんてんてんてん天誅ゥゥゥ!!

 

687:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

見つけた……まずは俺とゼイユでやる!覚悟しろよ、この猿野郎!!

 

 

688:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

デカい……!これがスパイスたっぷりの餅を食った影響か!

 

689:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

祖龍のメモによればマシマシラは毒・エスパーで、今は特防が二段階上昇している!

 

690:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

了解だ!

ゼイユ!モルペコはでんじはを使えるか!?……よし、ならそれを頼む!俺はガチグマで行く!

 

691:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

この流れは……!

 

692:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

動きが鈍ったな?喰らえ……!

こだわりハチマキガチグマによる!じめんテラスぶちかましだぁ!!

 

693:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

相手は死ぬ!!

 

694:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

見事なワンパンだ……マシマシラが対岸の壁にめり込んで動かなくなったが

 

695:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だが、お面はその場に落としたようだな、もう奴に用はない

ほら、オーガポン!お面、取り返したぞ!ゼイユもナイスアシスト!おかげで助かったよ

 

696:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

よし、俺が記念に写真を撮ってやろう!二人共、オーガポンと並べ!……はい、ピッピ!

 

697:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

次は楽土の荒地のイイネイヌだ!出発進行!

 

698:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

首を洗って待ってやがれ……追い詰めて、肥溜めにぶち込んでやる!!

 

699:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

あのサルが巨大化していた以上、他二体も巨大化していると見ていいだろう

 

700:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

おーおー、ただでさえでかい図体が巨大化してよく見える

 

701:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

よし、今度は俺と焔がやる!

 

702:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

祖龍のメモによると、イイネイヌはどく・かくとうタイプで今は防御が二段階上昇しているらしい

 

703:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

よぉ、また会ったなクソ犬?我々人類は非常に寛大な生き物だ、仲直りの印に一つ子供遊びをしようじゃあないか

 

704:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そーいうことなんで……

 

キャッチボールしようぜ!イイネイヌ、お前ボールな!!

 

705:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

やれエーフィ達!

 

706:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ダブルッ!!

 

707:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

サイコキネシス!!

 

708:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そーれ、ワンバウンドキャッチボールだ!

 

709:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ショートバウンド行くぞ!全力全開で目一杯ドーンッ!!

 

710:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

よく見ろ、地獄に行ってもこんな殺戮ショーは見られんぞ

 

711:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ふぅーッ!スッキリ!!ぽに子ー!お前のお面、取り戻したぞ!!

 

712:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

欲深かに物を盗ろうとするからこうなる

 

713:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

よしよし、並べ並べ!それ、パシャリ!

 

714:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いよいよ最後のお面だ、やれるな?スグリ

……そうだ、俺たちの手で取り戻すんだ、オーガポンのためにも

 

715:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そら!全員乗り込め!!大急ぎで出発するぞ!

 

716:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

いくぜ、コライドン!超スピードだ!!

 

717:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

こんなこともあろうかと、ミライドンにロケットを保存してきたぞ!飛べ!ミライドン!!

 

718:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

やっべつい流れでミライドンに乗っちまあぁぁぁぁ!!

 

719:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おぉ、高い高い!スグリ!振り落とされんなよ!

 

720:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

はっやーい!

 

721:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

……よし、見つけ……あ!あんにゃろう洞窟の中に!

 

722:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

安心しろ、上空からはやつを捉えている!このまま突っ込むぜ!!おりゃあああああ!!

 

723:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

もう逃げられねぇぞ、キチキギス!行くぞ、スグリ!!

 

724:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

流静!祖龍からのメモによれば、やつのタイプはどく・フェアリーで素早さが二段階上昇、さらに技構成は変化技三つにふくろだたきのみだ!

 

725:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

俺がフォローする!スグリが野郎をぶっ飛ばせ!!

オーロンゲ!ちょうはつ!いちゃもん!!

 

726:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おー、スグリもグライオンで畳み掛けるぅ!

 

727:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

やっと追いついた……洞窟は狭いわ距離はないわで、超スピードを活かしきれないとは……

 

728:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

頑張れスグリ!オーガポンも応援してるぞ!!

 

729:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

スグリが繰り出すとどめの一撃!炸裂ぅ!!

 

730:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やったぜスグリ!ナイスファイト!!

 

731:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

ほらほら二人共!恒例の写真撮影だ!!それじゃあ撮るぞー、円周率は?

 

732:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

3.14159265!

 

733:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

3.14!

 

734:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

π!!

 

735:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

よしよし、なんかほかに返事が聞こえた気がしたが気のせいということにしよう

 

736:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

なんでさ!

……っと、ツッコミしてる場合じゃなかった!おい、流静!急いで村に戻るぞ!!

 

737:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

おぉ、そうだったな

オーガポン、俺たちはこのままお前が悪者として扱われるのは正直我慢ならん、だから今からお前のこと、本当のことを村人たちに話してお前を悪者扱いするのをやめさせようと思う

だから、今はこのスグリを信じて待っててくれないか?大丈夫、すぐに終わらせるさ……光輝!

 

738:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

よっしゃ!いっくぜぇ、流星号!!

 

739:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ミライドンに変な名前を付けるな!!

 

740:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

それじゃあ、俺らはゆっくり帰るか、流静達も時間がかかるだろうし

 

741:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

だな

 

742:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

はぁ~……やっと、やっとゆっくり帰れる……

 

 

 

 

――各メンバー行動中……――

 

 

 

 

743:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

スタンバイOK、いつでもいけるぜ

 

744:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

説得完了

 

745:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

おぉ、スグリ!迎えに来てくれたのか

大丈夫だよぽに子、スグリを……俺の友達を信じてくれ

ほら、スグリもこう言ってるしさ、な?

 

746:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それじゃ、行くか

 

747:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……思うんだが、村連中の掌クルックルはいったいなんなん?確たる証拠のない口伝だけで、長年信じてきたものを簡単に捨てられるのか?ご都合主義だってもうちょっとマシな演出するぞ

 

748:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

まぁまぁ、結果オーライでいいんじゃねえの?

 

749:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

それじゃ、ぽに子を恐れ穴まで送るか

 

750:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

頼むからゆっくり行ってくれ、もう急ぐ理由はないんだから!

 

751:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

落ち着けって

 

752:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

オリエンテーリング自体も終わったし、オーガポンの件が終わったら帰るだけだな

 

753:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そうだな

 

754:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……そんなこんなで到着したぜ

 

755:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

じゃあな、ぽに子!達者で暮らせよ!

……って、ととっ!?おいおい、どうした?

 

756:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

もしかしたら、オーガポンは焔の手持ちに加わりたいのかも

 

757:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

葵……?そうなのか、ぽに子?……ん、そうみたいだな

スグリ?……そうか、お前もぽに子と一緒に旅をしたいのか……

 

758:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

気持ちはわからんでもない

 

759:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

スグリのオーガポンへの気持ちはずっと見てきたからな

 

760:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

なんなら譲ってやるか?

 

761:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

だが断る

 

762:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

焔?

 

763:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

俺としてもスグリの気持ちを汲んで譲ってやるのも吝かではない……だが、ほかならぬぽに子に望まれた身としては、おいそれと譲ってやるつもりはない

勝っても負けても恨みっこなし、結果はどうなるにせよお前が自分の気持ちに一区切りつけたいと言うのなら付き合おう

最初に言っておく……俺はかーなーり!強い!!意地を見せてみろ、男ならここぞという時は逃げずに立ち向かえ!

 

764:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そういえば焔は手持ちを変えたんだろうな?

 

765:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

もちろん変えたさ……スグリは変わらずダーテングか

 

俺の手持ちはコイツだ!

 

766:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……ん?コータス?

 

767:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

これで十分だ、さぁ勝負といこうじゃねぇの

言っておくが、これは舐めプではない……俺からの最大限の礼儀だ

 

768:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

スグリはダーテングを引っ込めて……ダイノーズか

 

769:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

読んでいた!だいちのちから!!

 

770:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

なんと!だが、特性がんじょうで耐えた!

 

771:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

無駄だ、もう一撃!!

 

772:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ダイノーズは倒れたか……次はグライオンだ

 

773:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

それならこっちはテラスタル!炎天下に美しき氷華を咲かせろ!コータス、こおりテラスだ!!返しのテラバースト!

 

774:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

テラスタルでこおりタイプになったことで、弱点のじしんを等倍にしたか……反撃のテラバーストはこおりタイプ、グライオンは一撃だな

 

775:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

スグリはニョロボンを出してきたな……繰り出す技は、インファイト!

 

776:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

見えてんだよ!その展開はよぉ!!

 

777:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ヨプのみ……だと……!?

 

778:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

タイプ一致高火力技……典型的な脳筋思考だなぁ!!ソーラービーム、ぶっぱなせぇ!!

 

779:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

とんでもねぇな……事前に特性ひでりでにほんばれ状態にしていたのが功を奏したか

スグリはメガヤンマを出してきたな

 

780:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

確かにコータスの特防は70と貧弱貧弱……だが、タイプ不一致げんしのちからなど、何するものぞぉ!!反撃のかえんほうしゃだ!!

 

781:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

もう後がないな……再びのダーテング

ねこだましからのあくのはどうによるコンボ攻撃!

 

782:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!

 

783:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

スグリ、最後の一体、カミッチュだ

 

784:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

テラバーストォ!!

 

785:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

りゅうのはどうとのぶつかり合いだ!……だが、タイプ相性は……

 

786:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

撃ち合いを制したのはコータスだ!決着!決着ぅ!!

 

787:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

おぉ……コータス一匹でスグリのポケモン全タテしやがった

 

788:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

……スグリ……

 

 

 

 

この馬鹿野郎がぁっ!!

 

789:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

えええぇぇぇぇっ!?

 

790:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ちょおおぉぉぉっ!?

 

 

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が参加しました――

 

 

 

 

791:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

いっけなーい、そろそろ脳内シミュも重大イベント突入なのに寝過ごしちゃった……って、何この状況?

 

792:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

簡単に言うとだな……

 

焔とスグリが勝負、焔がコータス一匹で全タテする

スグリが膝を付き蹲り「負けるってわかってた、でも諦めきれなかった」と言う

焔が穏やかな表情でそっと近づく

突然スグリの髪の毛引っつかんで無理やり立ち上がらせると、反対の手で胸ぐら掴みあげて顔面に全力のグーパン←今ここ

 

793:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

えぇ……(困惑)

 

794:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

なにが「負けるってわかってた」だ!!ふざけてるのかテメェはよぉ!?お前は最初から俺のほうが強いとわかっていたような口を利くが、それでも諦めきれなかったんだろうが!!なのに口を開けば「負けるってわかってた」とか、おちょくるのも大概にしやがれ!!俺は俺が出せる全力でお前とぶつかった!お前がそれを望んでいたからだ!

俺も、光輝も、剛太も、流静も、剣介も!いつでもどんな時でも!それこそ日常の何気ないバトルや強大な悪とのバトルだって!勝てるつもりで戦ったことなんて一度もねぇ!勝たなきゃいけないから戦うんだ!!例えそれが、負けるとわかっているバトルでもなぁ!!

 

795:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

焔……

 

796:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……そうだな、今はこうして息抜きに脳内シミュレートで遊んでいるが、現実では世界の存亡をかけた戦いが待っている……勝たなきゃいけない、負けるわけにはいかない戦いがな

 

797:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

バトル前にもふざけたことを抜かしてたよなぁ?「ホムラのほうがふさわしいってわかってる」だって?お前のぽに子への想いはそんな程度なのかよ!!安いッ!安さが爆発し過ぎてるッ!妥協してんじゃねえよこのクソガキがよぉ!!

お前が本気でぽに子と冒険したかったってんなら、死に物狂いで勝利を奪い取れ!!誰に対しても指先ひとつ掠めることを許すな!!最後まで意地を貫き通せ!!妥協する己をブッ殺せ!!立ちはだかる敵を薙ぎ倒せ!!一歩でも過去より多く歩め!!

最初から気持ちで負けているような奴なんかに!!勝利と栄光という未来を掴めるわけがねぇだろうがよおおぉぉぉッ!!

 

798:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

…………

 

799:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

……俺からは以上だ

安心しろ、変わりたいと願うなら明日にでも行動を起こせ、自分のことはいつだって自分が動き出さなきゃ何も変えられん

諦めるならそれもよし……もとよりテメェの人生だ、好きに生き、好きに死ね……だが、その生殺与奪の権を握っているのもまた、ほかならぬ己自身だと自覚しろ

 

……待たせたなぽに子、すまんがこっからは映さないでくれ、気が散る

 

800:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

了解した、映像はカットしておこう

 

801:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ゼイユ、スグリの傍にいてやってくれ、こういう時は他人より身内のほうがいいだろ

……え、そんなに意外か?焔は元々あんな感じだぞ?後ろ向きな姿勢が気に入らない奴でな、今回の場合はスグリに「俺が一番オーガポンと仲良くなれるんだ!」くらいの気持ちで来て欲しかったみたいだ

ほら、こっちは大丈夫だから!弟に寄り添ってやんな

 

802:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

さて……一応状況を説明すると、焔は変わらずコータスで挑むようだ

 

803:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

思い出が、蘇る……

 

804:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

「皆と歩んだ思い出」、「皆でお面を取り戻した思い出」、「共に生きた男との思い出」……それぞれの思い出が、オーガポンの力になっているのか

 

805:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それだけじゃねぇみたいだぜ?

「竈の仮面」には流静とスグリ、「井戸の仮面」には剛太とゼイユ、「礎の仮面」には焔と光輝……そして最後の「碧の仮面」にはスグリと焔……みんなで写真を撮った思い出も、オーガポンの力になってるようだ……

 

……俺には聞くなっ

 

806:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いやいや、焔から紹介を受けてるから、お前のことも多少なりとも思い出になっているぞ

 

807:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

オーガポン!!。゚(゚´∀`゚)゚。

 

808:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

いや、泣くほど?

 

809:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

よし、フレンドボール!!……ぽに子、いや、オーガポン……ゲットだぜ

 

810:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おつかれさん

 

811:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

見事だったぜ

 

812:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

流石だな

 

813:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いいもん見れたぜ

 

814:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

おう、ありがとうな……スグリもありがとう、大事にするよ

「ホムラ達のようになりたかった」だと?待て待て待て、はい捕まえた!違うなスグリ、間違っているぞ!お前はどこまで行ってもどう生きようとスグリという人間でしかない、「誰かのように」みたいな猿真似も身代わりも意味ねーんだ!自分というものを殺すことなく、お前はお前だけの強さを見つけてモノにしろ!

 

815:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そうだな、効率だけを求めれば誰も彼もが似たり寄ったりな成長をする……そうじゃなくて、個性というものを伸ばして鍛えてやれば、それは誰にも真似できない無二の強さとなる……それを肝に銘じるんだな

 

816:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

さぁ、今日はもう帰ろう!色々とありまくったからな、あとは各々自由時間でいいだろ?それに、なんだかんだ予定より早くオリエンテーリングが終わってヒマだからな……ブライア先生は「アカデミーの子は優秀だね!」って笑って済ませてくれたけど

 

817:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ん?どうした、ゼイユ?

 

818:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

なに?今すぐともっこプラザに?……わかった、それじゃあ行くか

 

819:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

焔と剛太はゼイユとともっこプラザか?なら、それ以外のメンバーは解散だな

 

820:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

とりあえず帰って寝るぜ

 

821:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

それじゃあ、翌日まで……カットオオォォォッ!!

 

822:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それ言いたかっただけだろブロリスト

 

 

 

 

――メンバー各々行動中……――

 

 

 

 

823:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そんなこんなで翌日だ!焔、昨日のゼイユとのバトルはどうだった?

 

824:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

苦戦はしたが、どうにかぽに子一匹で全タテしてやったぜ

 

825:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やりますねぇ

……あれ、そういえばなんでこんな朝早くに集められたわけ?

 

826:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

それはだな、ブルーベリー学園勢は大穴関係で進展があったそうで、急遽早帰りすることになったんだ

 

827:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

あらら、残念

 

828:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

そうなのかー

 

829:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

そういうわけで、林間学校が一区切りついたところで、管理人さんにお礼を言うぞ

 

830:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

カームオン!

 

831:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

テリマ カシー!

 

832:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

バイラルラー!

 

833:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ムルツメスク!

 

834:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

だから日本人んんんっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

835:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

みんなおつかれー、楽しかった?

 

836:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

おつかれー

 

837:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

楽しかったぜ!

 

838:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

カオスだらけだったがな

 

839:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

TASさんの面目躍如だぜ

 

840:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

いやー、素晴らしい息抜きだったぜ!

 

841:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

みんな、お疲れ様

 

842:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

それにしても良かったわねー、焔?可愛い子に懐かれちゃって!ゼイユちゃんとのバトルの後なんて、キスしてもらっちゃって!

 

843:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

はっはっは!まぁ、ぽに子は可愛い顔してるからな!可愛いのは当然だぜ!

 

844:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

何言ってるの?

 

845:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ひょ?

 

846:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

オーガポンの性別は「♀」、つまり女の子なのよ?

 

847:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

……スーッ……(゚ω゚;)

 

848:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

ほむらぁ?どういうことかしら……?ゴゴゴ( ^_^ )ゴゴゴ……

 

849:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

お、おおお、おおおち、おちちおちおちけつ!ほ、ほら!ぽに子はポケモン!俺は人間!何も問題は……

 

850:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

はい→『オーラで具現化した焔ゼルレウスをハート目で見つめるオーガポンの画像』

 

851:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ヒュッ

 

852:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

……で?問題が?なんですって……?

 

853:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ああああのあののの違うんすよ葵さん聞いてくださいよ俺は義憤に駆られて友達を助けようとしただけで他意はないというか何も考えてなかったというか決して下心も打算もなくてですね心の衝動に従うままにガイアが俺に「助けろー!」と囁いたというかですねこれは俺がやらねば誰がやると龍拳爆発したような気がしなくもない気がして

 

854:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

ふーん……で?それが何か問題?

 

855:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

アッ、アッ、アッ!た、たすけてー!!

 

856:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ショウー!たまには特訓忘れて日向ぼっこしようぜー!

 

857:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

セキニキー!あんたの子孫(?)に会ってきたよー!いやー、感慨深いわー

 

858:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

たまには家族サービスするか……静香ー、どこだー?

 

859:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

よっしゃー!ガキどもー!今日はとことん遊び倒すぞー!!

 

860:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

おいこら!卑怯者ー!逃げるなー!!

 

861:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

心配しないで焔、全部私に委ねていいからね?オーガポンはキスまでだったけど、私はそれ以上のことをしてあげられるから

 

862:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

お、落ち着くんだ葵!なにも、そう……今すぐじゃなくてもいいだろ!?俺たちは四六時中一緒にいられるんだから、慌てることはないって!

 

863:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

……ふむ、それもそうね……

 

864:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

だ、だろー?

 

865:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

だが断る、今すぐ喰う

 

866:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

あっ、やっぱダメっぽい……?

 

アッーーーーーー!!

 

 

 

 




オーガポンに性癖歪められるかと思った(小並感)。
何ボール使うかめっちゃ迷ったけど、自分は安直にフレンドボールにしました。

あ、それとアンケート置いてます、よろしければ清き一票のほど、よろしくお願いします!


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"きずなへんげ"への道……

ここからショウが本格的に『きずなへんげ』を目指していきます。


ミラボレアスの侵略に備えて準備を進める私たち……いつ奴が攻めて来るのかはわからないので、なるべく早い段階で備えを整えておく必要があったんだけど……。

 

「どうしてこうなった……」

 

「それではこれより、第一回コトブキムラ対抗巨大ポケモン勝負大会を開催する!!」

 

頭を抱える私をよそに、ペリーラさんの元気な宣言が響き渡った。歓声を上げるムラの住民たち……まるで一人だけテンションがズレている私がおかしいみたいだ。

 

「まぁまぁ……始まったものはしょうがないよ、ショウ。諦めて楽しんだほうが楽だとおもうぞ」

 

「そうは言いますけどね、先輩……いや、私も勝負するのは一向に構わないんですけどね?まさかこんなに見物人が集まるなんて思わなくて……」

 

辺りを見渡せば、自分に課せられた作業をほっぽり出してポケモン勝負を見て盛り上がる村人たちがたくさんいる。普通の勝負だけならこれほど盛り上がることもなければ、ここ『大闘技場』に人が集まることもないだろう。

……あ、大闘技場っていうのはこの巨大バトルフィールドのことね。向こうの世界にある闘技場の話をしたら、それを気に入ったペリーラさんがこの場所をそう名付けちゃって、すっかり定着しちゃったんだよね。……って、そうじゃなかった。なぜ人が集まるのかというと……。

 

「いっけぇ!ベリオロス、アイスサイクロン!!」

 

「躱せタマミツネ!ムーンフォースだ!!」

 

今、バトルフィールドではワサビちゃん&ベリオロスペアとムベさん&タマミツネペアが激しいバトルを繰り広げている。

ベリオロスがアイスサイクロン(元:氷嵐砲)を放ち、タマミツネが軽快な動きでそれを避けつつムーンフォースで反撃に転じる。足元は凍りついていたり泡まみれになったりと目まぐるしく変化している。

 

「うーん、お互いに千日手ってところかな?」

 

「だな。いくら足場を泡まみれにしても飛んでいるベリオロスには意味がないし、その泡も氷で上書きされる。その代わりベリオロスは迂闊には地上に降りられないし、凍らせてもタマミツネのねっとうで氷が解かされるから場の奪い合いに発展している」

 

「泡まみれの足場に降りられないベリオロスと、泡を凍らされて機動力を確保できないタマミツネ……先に場を制したほうが状況を優位に持っていけるけど、ワサビちゃんもムベさんもその辺は一切抜かりないね」

 

ワサビちゃんとムベさんのバトルはほとんど互角の様相を呈している。特にムベさんとタマミツネのペアはこれが初実戦にも関わらずいい関係を築けている……いや、トレーナーとして要請したのは私なんだけどね?

この大会が始まる一週間前から空いた時間に話しかけに行っていたそうだけど、その短い期間で信頼関係が出来上がるなんて両者の間にシンパシーでもあったのだろうか。それも、向こうの世界ではバトルのパートナーだったセキさん以上の何かが。

 

「やるね、ムベさん!」

 

「なんの。まだまだ若者には負けておられんからな」

 

「それなら……ここからは本気で行くよ!ベリオロス!メガシンカ!!」

 

「ガオ"オ"オ"オ"オ"オ"ッ!!」

 

「むぅっ!!」

 

ワサビちゃんが帽子に付けられたキーストーンに触れて、ベリオロスが持つメガストーンと共鳴を起こす。メガベリオロスこと、【凍氷刃】ベリオロスへとメガシンカを果たした。ムベさんの表情が苦しげに変わったところを見るに、二人はまだメガシンカに至るほどの絆は紡げていないようだ。

メガベリオロスが地上に降り立つと、体から漏れ出る冷気で周囲の泡がそれだけで凍りつき始めた。おっと、これは間違いなく状況が動くね。

 

「いかん……!」

 

「いっくよー!奥義装填!グラウンドサイクロン!!」

 

「ガオオオン!」

 

「ギャウウゥン!!」

 

「タマミツネ!」

 

「……タマミツネ、戦闘不能!ベリオロスの勝ち!勝者、コンゴウ団ワサビ!!」

 

氷の嵐に打ち上げられ、タマミツネは戦闘不能。ペリーラさんが勝者の名を高らかに宣言すると、会場は一気に湧き上がった。うん、本当にいい勝負だった。

 

「ベリオロスー!かっこいー!」

 

「ガオ!」

 

「えへへ!子供たちに大人気だね、ベリオロス!」

 

「ガオガオ」

 

「うむ……よく頑張った、タマミツネ。もっと精進しよう、ワシと一緒にな」

 

「コォン」

 

「タマミツネ……負けても映えるわねぇ、写真撮りましょ」

 

勝っても負けてもお祭り騒ぎ、とはこのことか。ポケモン勝負を通してライバルともパートナーとも心を通わせ合うことで、より関係にも深みが増してくる。そうして絆を深めていくことで、メガシンカを可能とする領域へ達する……そこからさらに成長を遂げることでメガシンカエネルギーを体内に完全に取り込みメガシンカ形態へと通常進化する。これによって恒久的な戦力の確保を狙っているのだけど、未だ成果はあがっていない。

ジンオウガとゼルレウスが特別なのかな……いや、そんなことはないはずだ。みんなにはみんなの可能性がある、その可能性を信じてあげなくちゃ!そうなると、今一番兆候が見られるのはワサビちゃんとベリオロスかな。以前は子供の面倒を見るような態度が多かったベリオロスが、今はワサビちゃんを対等な関係として見るようになっていたから、きっと可能性があるのはあの二人だな、乞うご期待といったところか。

 

「お、次はセキさんとカイさんだ」

 

「グラビモスとガムートの超重量級勝負……これも結構見栄えがあるよね」

 

「純白の凍土じゃあ落ち着いて見られなかったけど、今となっては確かに見栄えのいい勝負だよな」

 

バトルフィールドに立つのはセキさんとカイさん。二人が同時に投げたボールから出てきたのはグラビモスとガムートだ。

 

「こういう振り分けにはなったが、やるからには手は抜かねぇぜ。カイ!」

 

「望むところだよ、セキ!グラビモスも、一回勝ってるからって二度も勝てるとは思わないでね!」

 

「……おぉ、これはいい勝負になりそうだな」

 

「だね」

 

テル先輩の言う通り、これはいい勝負になりそうだ。確かにグラビモスVSガムートは純白の凍土で一度グラビモスの勝利に終わっているが……今回はあの時とは大きく違う。

フィールドは言わずもがな、やはり一番はガムートにトレーナーがついていることだ。あの時のガムートは野生個体な上に、メガシンカ後は一時3v1で戦っていたというのもある。けど、今回は最初から最後まで1v1だ。

 

「「アイアンヘッド!」」

 

「「ヴアアア!/ガムーア!」」

 

お、初手はどっかで見たぶつかり合い。アイアンヘッド同士による押し相撲が始まった。こうなると……やはりガムートが動いた。いつだかのように鼻でグラビモスを締め上げようとする。

 

「おっと、その手には乗らねぇぜ!」

 

「ヴァ!」

 

だが、私からの話でそのやり口を知っているセキさんがそう言うと同時に、グラビモスが横ステップで体をずらし、ガムートの動きを避けた。力場を失ったことで前につんのめったガムートにグラビモスの追い打ちがかけられる。

 

「グラビモス、ラスターカノンだ!」

 

「させない!ガムート、ハイドロポンプ!!」

 

「ガムッ!」

 

すぐ後ろでラスターカノンを構えたグラビモスに対し、ガムートは鼻だけを伸ばして後ろに向けると、そのまま鼻からハイドロポンプを放った!ハイドロポンプとラスターカノンはぶつかり合い、大きな爆破を起こした。

 

「すっげぇ、あれを防ぐのか!」

 

「ガムートならでは、ってところだな」

 

「……いや、鼻から水ってソレ――」

 

「ネネ、お座り」

 

「ワンッ!」

 

ハンターのみんなも、この大会を観戦している。上からニールさん、シュラークさん、ネネさん、シズカさんだ。あと、ネネさんが思ったことはあえて誰も触れていないことなのでお口チャックしてくれたシズカさん、グッジョブです。

 

「ほぅほぅ、あそこからあんな動きが……それならあえて踏み込むか。いや、側面に回り込むのが正解か?」

 

そしてヒューイさん、あなたはどうして自分が戦うこと前提なんですか?これもハンターの性か……。

それからも、一進一退の攻防が続く。ガムートがふぶきを利用して雪をかき集めてアイスランチャーを放てば、グラビモスはかえんガスを羽ばたきで前方へ吹き飛ばす擬似ねっぷうで雪玉を溶かしきった。お返しとばかりにすいみんガスを羽ばたきで放つと、ホワイトブラスターで打ち消した。グラビモスがいわなだれをお見舞いすると、反撃のねっとうをガムートから浴びせられていた。

だいちのちからとシルバースタンプによる場の制圧合戦に、もろはのずつきとスノーデストロイヤーの押し相撲など、見応え抜群な大迫力の勝負が繰り広げられた。

 

「これはなかなか見ものだな」

 

「あれ、アカイさん?お帰りなさい」

 

「あぁ、ただいま」

 

と、ここでアカイさんが声をかけてくれた。いつの間に?……って、違う違う。せっかくアカイさんが帰ってきたなら、頼んでおいたあのことを聞いておかないと。

 

「アカイさん、どうでした?」

 

「うむ。時空の裂け目に可能な限り接近してわかったが、どうやらミラボレアスは時空の裂け目を抜けられないでいるようだ。今や君の手持ちとなったヒスイの三龍が、時空の裂け目になにかしら細工を施したのかもしれんな」

 

「パルキアたちが?」

 

「たしか、パルキアは権能を封じられているのだったな。それでも権能が生きているディアルガと、時空の裂け目を創造できるギラティナの二頭の協力のおかげで、ミラボレアスが安易に通れないようにしたのだろう。おかげでまだまだ猶予がある。慌てることなく、各々の成長に努めるといい」

 

「あとでお礼を言わないとですね」

 

ディアルガ、パルキア、ギラティナの三匹が、ミラボレアスの足止めを……本当なら、とんでもない大金星だ。いつミラボレアスが侵略に来るかわからない状況で内心で気を張り続けていただけに、すごく安心することができた。

 

「ほぉ、黒いのが来るのはもう少し先になるのか」

 

「キサマ……」

 

「あ、ヒューイさん」

 

と、ここでヒューイさんも会話に加わった。先輩は……あ、セキさんもカイさんもメガシンカでぶつかり合ってる。先輩は試合に夢中なようだ。

 

「いやぁ、あれってズルじゃね?原種がいきなり二つ名個体に化けるとか」

 

「それがメガシンカだ。トレーナーとの絆によって、さらなる成長を遂げることができる。セキ殿とカイ殿も、ようやくその領域に達したか。あとは、いかに早くショウと同じ領域に立てるか、だな」

 

きっかけはどうあれ、メガシンカ可能なトレーナーが増えるのはいいことだ。あとは、彼らがメガシンカ形態に通常進化できれば文句なしだが……。

 

「しっかしたまげたなぁ……少し前まで黒炎王だったと思ったのに、ある朝いきなり輝界竜だぜ?どんなトリックだっつーの」

 

「それが進化、というやつだ。この世界のモンスターを育てていたお前なら、わかるだろう?」

 

「あぁ、わかるぜ。いきなりでかくなるもんな、あれ。初見の時はさすがにビビったぜ」

 

「その節はすみませんでした、リオレウスを見るのを楽しみにしていたと聞いたので……」

 

実はリオレウスがゼルレウスに、リオレイアがラ・ロに進化したことを誰よりも驚いていたのはハンター組……とりわけ、ヒューイさんとシズカさんの反応が顕著だった。

ヒューイさんは「なんだこれは……たまげたなあ」口ををあんぐりと開けていて、シズカさんは「なんちゅーバケモンを生み出したんだ……」と頭を抱えていた。やっぱり二体の進化したあの姿はハンター界ではかなり恐れられているモンスターだったのかな。

 

「いやいや、その代わりに面白いものが見られたんでな。これはこれでよし、だ」

 

「ライゼクスか」

 

「あはは……」

 

……え、ライゼクス?出会い頭にゼルレウスに発情してラ・ロと戦争しましたけどなにか?というか、進化して姿が変わったのによくわかったね……愛かな?戦争はラ・ロが勝利したけど、ゼルレウスがその場を執り成してくれたので命の奪い合いにはならずに済んだ。偉いね、ゼルレウス。膝が震えていたのは見なかったことにしてあげる。

 

「……おっ、決着だ」

 

「どれ……ふむ、カイ殿が勝利したか。かなりの接戦だったようだな」

 

「ガムート、リベンジおめでとう」

 

一際大きな歓声が上がったのでそちらに目を向ければ、どうやらカイさんとガムートが勝利したようだ。歓声に応えて手を振るカイさんと鼻を持ち上げるガムート。グラビモスは悔しげにしていて、それをセキさんが宥めていた。

 

「そういや、この勝負大会にショウは出ないんだったか」

 

「はい。私がメガシンカできる相棒がいないんで」

 

ラギアクルスはまだメガストーンが見つかってないし、ジンオウガは進化済みだからね。

 

「例のジンオウガの件はどうした?アレを試すにはこの大会はもってこいだと思うが」

 

「いやぁ……」

 

アカイさんの追求をそれとなく誤魔化す。これは私というより、ジンオウガの方が問題を抱えていた。ジンオウガに限らず、ゼルレウス、ラギアクルス、グラビモス、ベリオロスは身内が相手だとどこか身が締まらないようなのだ。なんというか、「味方だから」というフィルターが掛かって、本気を出しきれないのだ。確かにポケモンよりもずっと強い力を持つ彼らが全力でぶつかり合えば、その気がなくとも命の奪い合いレベルの戦闘に発展する。ジンオウガ達は、無意識にそのレベルの戦闘を避けようとする傾向にある。ただ、私自身は問題ないかと言われれば……先ほど"ジンオウガの方が~"なんて言った手前恥ずかしいのだが、少しだけそんなことはなかったりする。

同じきずなへんげ使いである先輩トレーナー――シズカさん曰く、サトシというらしい。……どこかで聞いたような?――は、どんなバトルにおいても相棒であるゲッコウガとのきずなへんげを可能としていたらしいけど……私の場合は仮称『きずなへんげジンオウガ(又はショウジンオウガ)』が発現した戦闘は、いずれも"敗北の許されない不退転の戦い"だったことが共通している。だから、負けが許される勝負だと私自身も無意識に緊張が緩んできずなへんげを発現できないかもしれないと感じていた。それはジンオウガも同じようで、お互いそのことに気づいて苦笑いを浮かべたのが一昨日のことだ。

 

「……普通の勝負では発現しにくい、ということか」

 

「あはは……バレちゃいました?」

 

「君の向上心を思えば、大会に参加しないほうがおかしな話だ。戦いの中で追い詰められなければ、底力が出にくいということか」

 

「シズカさんから聞いたサトシってトレーナーは、どんなバトルでも発現できたそうなんですけど……私の場合、そうもいかなくって……こう、"絶対に負けない!勝ちたい!"って想いが普通の勝負だと感じにくくて……」

 

「(……マズイな)」

 

「(アカイもそう思うか?よくねぇな、こりゃ)」

 

「(あぁ……ショウの中で命の危険が身近になりすぎている)」

 

「(命が脅かされないと本気になれない(・・・・・・・・・・・・・・・・)とは、難儀なこって)」

 

……なんだろう、アカイさんとヒューイさんが深刻そうな顔でヒソヒソと話し始めてしまった。やっぱり心構えから鍛え直したほうがいいのかな……。

……あ、そうだ。今は先輩と団長が勝負してるんだっけ。えーっと戦局は……ディノバルドのバーニングテイルとライゼクスのライトニングブレードが激しい剣劇を繰り広げているようだ。片や尻尾、片や頭と部位は異なるが剣を形成する技同士のぶつかり合いは見応え抜群だ。

 

「(ショウは"絶対に負けない!勝ちたい!"と言っていたが……)」

 

「(正確には"負けるわけにはいかない、勝たなければならない"だろうな)」

 

「(極限まで追い詰められないとダメか、ジンオウガの方も同じか?)」

 

「(あぁ、敗北が終わりに直結する勝負ばかりだったから、感覚がマヒしているのかもしれん。そのマヒが、無意識下にまで影響を及ぼしているのだろう。矯正する必要がある)」

 

「(誰がやる?)」

 

「(俺がやろう。……そろそろ頃合だと思っていたところだ)」

 

「(じゃあ、ヨロ)」

 

「(……ヒューイ。おまえ、本当に腹の立つヤツだな)」

 

「(なにが!?)」

 

おっ、ライゼクスのエアリアルスティング!ディノバルドは尻尾で受け止めたか。ライゼクスの尻尾がディノバルドの尻尾を挟んだけど……おおっと、ディノバルドが尻尾を振り回してライゼクスを引きずり倒す!そのまま斬熱刃が迫るもライゼクス辛うじて回避!ディノバルドはすかさずかえんほうしゃで追い打ちをかけるがライゼクスはワンダーパルスで牽制しながら距離をとった!

 

「やるな、テルよ」

 

「まだまだ!団長にだって負けませんよ!」

 

「ならば……やらいでか!一意専心、メガシンカ!!」

 

「なっ!?」

 

な、なんだってー!?まさかの団長がメガシンカ!ディノバルドがメガディノバルドにメガシンカしたことで、試合の流れが大きく変わった!!

 

「さあ、ゆくぞ!!」

 

「くっ……」

 

そこからはすっかり形勢逆転、能力が大幅に上がったメガディノバルドに必死に食らいつくも、後一歩のところでテル先輩とライゼクスは負けてしまった。やはり、メガシンカのアドバンテージはデカイな……みんなの成長、もう少し急げそうかな。

 

「ショウ、いいか?」

 

「アカイさん?なんですか?」

 

「よければ私と勝負をしないか?あえて言わせてもらうが、今の君のその考え方は危険だ。力を発揮できる頃には手遅れなんぞ笑い話にもならん」

 

「うっ……で、ですよね」

 

「そこでだ……以前にも見た亜種個体、アレで君と勝負しよう」

 

「!!」

 

亜種……というと、黒いジンオウガと蒼いリオレウス!!是非とも勝負したい!!

 

「やります!!」

 

「そうかそうか、了解した(まぁ亜種にもいろいろとあるがな)」

 

楽しみになってきた!ひとまず、この勝負大会が終わるまで待とうかな……えーっと、次はワサビちゃんがシードで団長とカイさんか。これもいい勝負になりそうだ。……あ、先輩だ。

 

「あ、ショウ……ごめん、負けちまった」

 

「でも、すごいですよ先輩。受け止め方次第と言ってしまえばそれまでですけど、私からすれば団長ほどのトレーナーがメガシンカ無しでは先輩に勝ちきれなかったと思えました」

 

「……そう、かな?ははは、そうだといいな」

 

「私も先輩に負けていられないです。この大会が終わったら、アカイさんと勝負します!気持ちを切り替えるという意味で!」

 

「気持ち?」

 

先輩にも、私が考えていることを話してみた。すると先輩は神妙な顔つきで唸っている。

 

「……なるほど、追い詰められないと力を出せないのはヤバイから、いつでも力を出せるようにしたい、と。その相手をおれが務められないのは残念だな……」

 

「あ、えっと……!け、決して先輩が弱いとかそういうはないじゃなくて……!」

 

「いや、いいんだ。おれが単にアカイさんに嫉妬してるだけだから……いつか、ショウの訓練相手に堂々と名乗り上げられるくらい強くなるからさ!」

 

「あっ……は、はい」ドキッ……

 

うっ……ちょっと、その笑顔は卑怯じゃないですか……?思わず顔が熱くなってしまう……あの先輩の告白の夢を見てから、ちょっとどころじゃないレベルで先輩を意識してしまっている。私は、私は帰らなきゃいけないのに……このままじゃ、帰れなくなっちゃう……。

 

「……あれ?」

 

「グルル……」(`・ω・´)ジー

 

「オゥフ」

 

急に先輩が静かになったかと思ったら、いつの間にかボールから出てきたジンオウガが先輩に睨みを効かせていた。……最近、ジンオウガのこういうムーブが激しい気がする。まるでその様子は『娘に近寄る悪い虫を威嚇する父親』みたいだ……。

 

「……わかってるよ、ジンオウガ。おれにもっと強くなれって言いたいんだろ?大丈夫、俺は絶対にショウに並ぶだけの強さを手に入れてみせるさ」

 

「ワン!」(^ω^) フンスッ!

 

「じゃあおれ、団長の応援してくるから。……あっ!ショウとアカイさんのバトルも応援に行くからな!」

 

「はい!」

 

先輩が走っていく。……ちょっと寂しいと思うのは気のせいだ、気のせいだと思いたい。

さて、大会が終わったらワサビちゃんとセキさんにポケモンを返してもらわなきゃ。アカイさんが連れてくる亜種といえば、きっとジンオウガたち五体のことだ。ジンオウガの亜種、グラビモスの亜種、ラギアクルスの亜種、リオレウスの亜種、ベリオロスの亜種……その最後の砦たる六体目は、マガイマガド。

一度は交代しながらの三体がかりで敗北を喫したマガイマガドだけど、今度こそ勝つ!今から楽しみだ……よし、牧場にいるラギアクルスも手持ちに戻して作戦会議だ!!私はすぐさまそちらへ駆け出していった。

……あ、大会はワサビちゃんが優勝したそうです。さすがはワサビちゃんだ!シズカさんも「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」ってちょっと何言ってるかよくわからなかったけど、褒めてたんだよね?

 

 

 

 




まずは導入から、これ大事。
次回、決戦アカイ!!


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決戦!アカイ~もう一つの亜種~

さぁ、ショウVSアカイ率いる亜種軍団!はじまりはじまり。


コトブキムラで開かれた巨大ポケモンによるバトル大会はワサビちゃんの勝利に終わり、無事に閉幕した。そして現在、大闘技場には私とアカイさん、シズカさん達ハンターにテル先輩とラベン博士がいる。

 

「では、ルールの確認だ。使用数は五体、三本先取。どちらかが戦闘不能になるたびに、必ず両方が次に入れ替える。いいな?」

 

「お願いします」

 

「……随分と変則的なルールで戦うんだね」

 

「たしか、ショウが持ってるモンスターの亜種……だっけ?それをアカイさんが使うんだよな。でも、ショウならきっと大丈夫だとは思うけど……」

 

「テル。私たちの世界における原種と亜種の差は、こちら側のリージョンフォームの比じゃないよ。耐久力・攻撃能力・凶暴性なんかは亜種の方が脅威であることが多い。目撃例も少ないから、はっきりとした生態が判明していない……だから、狩猟依頼も上位のハンターにしか出されないよ」

 

「そ、そんな奴と戦うのか、ショウは……」

 

アカイさんが言っていた亜種……私が見たことあるのはジンオウガとリオレウスの亜種だけだ。他はラギアクルスとベリオロス、あとはグラビモスか。亜種は原種と生態が異なると言うし、どんな子なのかな……。

 

「では、始めよう」

 

「はい、お願いします!まずは……グラビモス!!」

 

「ヴラアア!!」

 

私が最初に繰り出したのはグラビモス!さて、アカイさんが繰り出してくるグラビモスの亜種は……。

 

「では」

 

「グラヴァアア!!」

 

あ、あれがグラビモスの亜種?ただでさえデカいグラビモスよりもさらにデカい。体高は1.5倍はありそうだ。膝関節や翼爪、尻尾などがまるで鋼に覆われたような銀色になっていて、顔も鋼に覆われている。腹部や背部も鋼に覆われてるけど、あれじゃあガス攻撃は出来そうにないな……。特に尻尾は鋼も刺々しいし、あれで殴られたら相当痛そうだ……。鋼に覆われていない部分は、灰色と黒が混ざったような色合いをしている。

 

「は?」

 

「え?なにあれ……」

 

「グラビモス……いや、あの顔はグラビモスだ!」

 

「アカイ!そのグラビモスは!?」

 

なぜか、シズカさん達がにわかに騒がしくなっている。一体どうしたんだろう……?

 

「あぁ、ハンター諸君が知らぬのも無理はない。このグラビモスは地底火山のマグマ溜りで100年以上も休眠状態になっていた個体が、今回の黒龍及び技巧種騒動を受けて活動を再開したのだ。それを事前に察知した私が、出現と同時に捕獲した。だから、発見報告がないのも無理はないさ……この【鋼鎧竜(はがねよろいりゅう)】『グラビモス希少種』はな」

 

「グラビモス……希少種!?」

 

き、希少種って、それ……ナルガクルガと同じ!?報告例が少なくて、さらにめちゃくちゃ強いやつ!!

 

「さて、勝負を始めようか」

 

「……!!望むところです!」

 

「別名に鋼とあるように、こいつははがねタイプだ。はがね・ドラゴンの複合タイプだが、炎への耐性はそちらと遜色はないぞ。水に弱いのは変わらんが、それ以外の耐性では龍属性が効きにくくなり、氷属性に完全耐性を持つ。なにか質問は?」

 

「ありません!」

 

はがね・ドラゴンでグラビモスと同じくでんきに強いことに加えてドラゴンにも強い……そしてこおりが一切効かないときた。……本当にドラゴンタイプか?

参ったな、まともに通るのがじめんタイプとかくとうタイプのみとは……でもグラビモスだって全く戦えないわけじゃない。やり方さえ工夫すれば、チャンスはある!

 

 

 

 

推奨BGM

【Confronting Yourself】~FNF VS Fake Boyfriend Mod~

【VSミステリオ】~ポケモンバトルレボリューション~

 

 

 

 

「行くよ、グラビモス!だいちのちから!!」

 

「ヴラアァ!!」

 

まずは弱点を突く!勝負の基本だからね!

 

「甘いな……鋼鎧竜、じしんだ」

 

「グラァヴ!」

 

グラビモス希少種の技はじしん!大きく体ごと片足を持ち上げ、そのまま一気に振り下ろす!その衝撃波がまっすぐにグラビモスの方向にのみ向かってくる!だいちのちからはグラビモス希少種のじしんの衝撃であっという間に消え失せた!?

 

「ヴアァ……!」

 

「くっ……いわなだれ!!」

 

「ヴアァ!」

 

じしんのダメージが襲うけど、グラビモスの防御力はヤワじゃない!耐え切ってからのいわなだれを放つ!当然だけど効果はいまひとつ……攻撃をまるで意に介していない。

 

「フッ……さぁ、次はどうする?」

 

「グラビモス、ぶちかまし!」

 

「ヴラアアァァァ!!」

 

目元に飛んできた岩石に反応したグラビモス希少種が目を閉じた瞬間を狙って、攻勢に出る!グラビモスは自身以上の体高を持つ希少種相手にも果敢に突撃していき、そのまま全身で体当りを仕掛けた!

 

「ヴァ!?」

 

「くっ……」

 

技は直撃、効果は抜群……ダメージは入ったんだろうけど、希少種は微動だにしない……!!

 

「メタルクロー!」

 

「グラヴァ!」

 

「ヴアァッ!!」

 

「グラビモス!」

 

それどころか、反撃のメタルクローを受けてグラビモスが吹っ飛ばされた!目の前まで転がってきたグラビモスだけど、すぐさま起き上がってくれた。

 

「……へぇ……」

 

「ヒューイ殿、ひとまずその脳内シミュレートを止めませんか?」

 

「おや、バレちまった」

 

「(そりゃあんな愉しそうな凶悪笑顔(スマイル)見せてたら誰だってわかるよ……)」

 

バトルを見ていたヒューイさんが凄絶な笑顔(?)を見せていたところ、シズカさんがすぐに話しかけに行っていた。……いや、途中からちょっと気になってたんだよね……。

 

「グラビモス、平気?」

 

「ヴァヴァー!」

 

「そうこなくっちゃ」

 

「…………」

 

「……?アカイさん、どうしました?」

 

「いや、特には(最後に勝負した時よりも、かなり闘志が落ちている……さて、どうしてやろうかね)」

 

アカイさんがなにやら考え込んでいる……アカイさんは、今の私の精神状態が大変よろしくないと言っていたけれど……私自身もどうすればいいのかいまいちわからない。なんとかしたいのは私自身もやまやまなんだけど、どうしたものか……。

 

「……ラスターカノン!」

 

「グラヴァー!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

「ヴラァー!!」

 

グラビモス希少種の攻撃はラスターカノン!ここは迎撃目的でかえんほうしゃを指示する!狙い通り、はがね技のラスターカノンをほのお技のかえんほうしゃが相殺した!爆発により煙幕が広がる……よし、これなら!

 

「グラビモス、ストーンエッジ!」

 

「ヴァー!」

 

グラビモスが指示通りにストーンエッジを放つ。グラビモス希少種の動きを封じるように、次々と岩の剣山が突き立てられる。岩の向こうにいるアカイさんが、僅かに苦い顔をするのが見えた……よしっ。

 

「むっ」

 

「……?アカイのやつ、顔を顰めてどうしたんだ?それにショウも、いわ技ははがねタイプに効果が薄いだろうに……」

 

「ふふっ、ニールさんはまだまだですね。あれは攻撃目的ではないですよ」

 

「うん?その心は?」

 

「グラビモス希少種に当てるとなれば、ストーンエッジはかなりのサイズになる。あれだけの巨大な岩山がたくさん、それも目の前にあったら?」

 

「……!そうか、アカイの視界を遮る目的か!」

 

シズカさんによるヒントありきとはいえ、ニールさんも答えにたどり着いたようだ。さて、ここからはグラビモスの必殺コンボだ!

 

「てっぺき!からの……ボディプレス!!」

 

「ヴラアァァァ!!」

 

「グヴッ……!」

 

「見事」

 

てっぺきで防御力を高めたあと、防御力の高さが威力に直結するかくとう技、ボディプレスだ!グラビモスが見た目からは想像できないほどの大跳躍を見せたあと、全身を使ってグラビモス希少種にのしかかる!元々防御力が高いグラビモスがさらに防御を高めた上で放った技だ、かなりの威力が見込めるはず!

 

「なるほど、大したものだ。……だが、詰めが甘いな」

 

「えっ?」

 

「受けに特化した者には、二種類の備えが与えられている。一つは再生(リジェネ)、もう一つは……反撃(カウンター)

 

「……!しまっ――」

 

「鋼鎧竜!メタルバーストだ!!」

 

「グルルル……グラアァヴァアアア!!」

 

「ヴァッ!?」

 

グラビモス希少種の鋼部分が力強い光を一気に解き放ち、その閃光はグラビモスを一瞬で飲み込んだ。光の中からグラビモスが吹っ飛ばされ、私の目の前に転がってくる……。

 

「グ、グラビモス……!」

 

「ヴァアァ~……」

 

「グラビモス、戦闘不能。鋼鎧竜の勝ち」

 

本日、審判役を買って出てくれたシロちゃんがヒューイさんの膝の上でジャッジをしてくれた。……ホントに仲いいね、君たち。

 

「な、なんだ?なにが起こったんだ?」

 

「メタルバーストというカウンター技ですよ。受けたダメージを1.5倍にして反撃する技です。あのボディプレス、かなりの威力が出ていたみたいですね……反撃ダメージでそのままグラビモスが戦闘不能になるほどとは」

 

「……シズカ、すっごい詳しいな。どこで習ったんだ?」

 

「故郷で兄さんに教わりました」

 

「……お、おう(シズカの兄さんって何者なんだ……?)」

 

どうやらメタルバーストの仕様を知らないニールさんに、シズカさんが説明しているようだった。そういえばシズカさんの故郷についてあまり深くは知らないけど、どんなところなんだろう。機会があれば、是非一度は聞いておきたいな。

 

「さて、まずは一本だ。次はどうする?」

 

「……次は、ベリオロス!」

 

「ガオオオオオン!!」

 

「では、私もベリオロスだ」

 

「ガオオオォガッ!!」

 

私の二番手はベリオロス。アカイさんもベリオロスの亜種……と、思いたい。

 

「あの姿は……」

 

「ベリオロス亜種……風牙竜、じゃ、ない!?」

 

「さすがはハンター、やはりわかるか」

 

ま、また亜種じゃない……ということは!

 

「希少種!?」

 

「正解だ。その名は【閃牙竜(せんがりゅう)】、『ベリオロス希少種』だ」

 

せ、閃牙竜ベリオロス希少種!特徴的な牙は緑黄色となっていて、全身の甲殻は目に優しい若葉色に変化している。また、私のベリオロスによく似て全身に体毛が豊富に生えていて、その色は白だ。両腕や尻尾などにある棘や突起が焦げたように黒いけれどなんだろうか……。

 

「こいつも先のグラビモス希少種と同様、今回の騒動を受けて活動が活発化したところを、ギルドが確認する前に私が捕獲した個体だ。メタペ湿密林の中でも人が入り込めないような最奥地にいたものだ。さぁ、閃牙竜よ……お前の力を見せてみろ」

 

「ガオオオンッ!」

 

ベリオロス希少種が吠えると、全身に生える白い毛が徐々に甲殻と同じ若葉色に変化した……いや、違う……ベリオロス希少種の体が発光しているんだ!やがてベリオロス希少種の牙や棘、突起部が電撃に覆われてあっという間に形態変化した!

 

「でんきタイプの、ベリオロス……!?」

 

「そのとおり。閃牙竜はでんき・ドラゴンの複合タイプで、でんきが効かず、ほのおとみずには弱いがこおりとドラゴンには強い体質をしている。

……おっと、タイプ相性で有利を取れたからといって安心するなよ?そもそものスペックではこちらが上だ、タイプ相性などあってないようなものだと、その身に教えてやろう」

 

「……えぇ、油断はしませんよ」

 

私のベリオロスのタイプはこおり・ドラゴンでみず・でんき・ドラゴンの三タイプが効きにくい体質をしている。だから、ベリオロス希少種のタイプ一致技を等倍以下で受けられる。それでも、油断はできない相手だな。

 

「負けないよ、ベリオロス!」

 

「ガオオオオン!」

 

「よし、アイスサイクロン!!」

 

「では、こちらはボルトストームだ」

 

「ガオォガッ!!」

 

こちらは氷の竜巻を、あちらは雷の竜巻を相手に撃ち出し、互いにぶつかり合い氷と雷が混ざった嵐のような状態になった。

 

「ならば、フリーズクロー!」

 

「プラズマクローだ」

 

「ガオオオオ!」

 

「ガオオォガ!」

 

氷の爪と雷の爪がぶつかりあい、激しく火花を散らす。打ち合い避け合い、一進一退の攻防が繰り広げられている。このままじゃ千日手……状況を動かしていかないと!

 

「こおりのキバ!」

 

「ガオオン!」

 

「閃牙竜!頭を押さえろ!」

 

「ガオッ!」

 

ベリオロスがこおりのキバを構えて飛びかかるも、ベリオロス希少種はこちらのベリオロスの頭を押さえることで攻撃を回避するばかりか、そのまま上をとってきた!?

 

「ドラゴンダイブ!」

 

「ガオガアアァッ!」

 

「ガアァ!?」

 

「ベリオロス!」

 

そのまま上からドラゴンタイプを仕掛けられ、ベリオロスは吹っ飛ばされた。なんとか空中で体勢を立て直して着地できたのはラッキーだった……。

 

「ふぅー……」

 

「(ふむ……)閃牙竜、エレキフィールドだ」

 

「ガオン!」

 

「……!ベリオロス、りゅうのはどう!」

 

「ガオオオオッ!!」

 

指示された技に嫌な予感を覚えた私は、相手が次の行動に移る前に機先を制するために遠距離からの攻撃を指示した。りゅうのはどうはまっすぐにベリオロス希少種に向かっていくが……!

 

「閃牙竜、ライジングボルトだ!」

 

「ガオガァー!!」

 

やっぱり!エレキフィールド状態だと威力が上がるでんき技のライジングボルト!りゅうのはどうは迫り来る電気の柱に何度もぶつかるうちに威力が衰退していき、ついに打ち消されてしまった。それでもなおライジングボルトの威力は衰え知らずで、ベリオロスに向かってきている!

 

「ベリオロス、ふぶき!」

 

「ガオオォォォォォッ!!」

 

少しでも威力減衰を狙って、広範囲に技が及ぶふぶきで迎撃する!こおり技の中でも屈指の高威力技なだけあって、最初のりゅうのはどうとの連続攻撃でなんとか相打ちに持ち込めた。

 

「よし。ベリオロス、あられ!」

 

「ガオッ!」

 

「アイスサイクロン!!」

 

「ガオオオンッ!」

 

天気を変えて流れを作り、天気との相乗効果が見込めるアイスサイクロンを撃ち込んで動きを封じる!いくつもの氷の竜巻がフィールドに発生し、ベリオロス希少種はわずかに足を引いている。

 

「このまま一気に!アクアブレイク!!」

 

「ガオオオオオオンッ!!」

 

水の力を纏って一気に突撃する!アイスサイクロンで動きを封じた以上、逃げ場はない!

 

「……はぁ」

 

「(……!?なんで、ため息……!)」

 

「閃牙竜、プラズマセイバー!」

 

「ガオオォガアァッ!!」

 

ベリオロス希少種が一際大きく吠えた直後、両翼の棘が電極のように電気を発し始めると、翼に対して並行に電気の刃が生成され、それを思い切り振り回してサイコカッターのように刃を飛ばしてきた!まずい!?技の発動で水を纏っているベリオロスにその技は効く!!

 

「ガアッ!?」

 

「ベリオロス!」

 

「終いだな……ニトロチャージ!」

 

「……ッ!ほのお、技……!?」

 

一瞬で炎を纏ったベリオロス希少種は高速で突撃を始め、技が解除され無防備になったベリオロスに思い切り体当りした!ベリオロスはそのまま力なく墜落していった……。

 

「ベリオロス、戦闘不能。閃牙竜の勝ち」

 

「おいおい……あのショウが一方的じゃないか、これはどういうことだ……?」

 

「(なんだろう……ショウ、なんだかバトルに身が入っていないような……)」

 

「姉様、なにか気がかりがおありで?」

 

「ん……ショウが勝負に集中できてない、気がする。注意散漫……?いや、違うか……?」

 

「んー……?確かに、心なしか気もそぞろといった風にも見えますわね。姉様の言うとおり勝負に身が入っていないようですわ。なにか気がかりなことでもあるのかしらね。……いえ、あれは勝負に集中していない、というか……真剣ではあるが必死ではない、という感じですわね。いつだかのアタシを思い出させるようで嫌な気分ですわ、あーヤダヤダ」

 

「それ!!」

 

「どれ!?」

 

まさか、二体連続で負けちゃうなんて……どうしよう、次の三番手で負けたら残り二匹を戦わせることのないまま終わっちゃう!

 

「……スゥー……ラギアクルス!!」

 

「グルオアアアアッ!!」

 

「(兄さん……)」

 

三番手はラギアクルス!ここで少しでも勝ちを拾わなきゃ……。

 

「では、私はコイツを」

 

「グルル……」

 

アカイさんが繰り出したラギアクルスは……なんというか、全身真っ黒なラギアクルスだ。その上、全長もかなりのサイズ……というか、あのラギアクルス、ちゃんと四肢で立てていないような……?

 

「あれは……ラギアクルス希少種!」

 

「馬鹿な!冥海竜は自重を支えきれないために地上では活動できないはずだ!一体どう戦うというんだ!?」

 

やっぱりラギアクルスの希少種!完全に腹ばいの姿勢になっているのは、体が重すぎて足をだけで支えられないからなんだ……。

 

「……いや、待って……」

 

「姉様?」

 

「待て待て待て!?アカイ!いくらなんでもそれはレギュレーション違反では!?ズルにも程がある!!」

 

「へぇ……?なあ、アカイよぉー!どうやって冥海竜を地上で戦わせるんだ?そいつは自分の体が重すぎて地上じゃあ動けないんだろう?」

 

何かに気がついたシズカさんが慌て始め、アカイさんに抗議し始めてしまった。一方、ヒューイさんは面白がって煽るようにアカイに疑問を投げかけていた。

 

「……そうだな。確かに冥海竜はその体重により自力での歩行が困難となっている。……だが、ポケモンたちが使う技の中には、そんな冥海竜を地上で活動可能にする素晴らしい技があるじゃないか」

 

「そ、その技とは……?」

 

「その技は……!」

 

そして、その技の名がアカイさんとシズカさんの二人から同時に紡がれた。

 

「「でんじふゆう!」」

 

「ラ」

 

ラギアクルス希少種の全身を黒い光が包み込む……すると、それまで完全に腹ばいの姿勢だったラギアクルス希少種が四本の足でしっかりと立ち上がったではないか!

 

「えぇ~……」

 

「悪夢だ……」

 

「嘘でしょ……」

 

「こりゃあ、龍歴院やギルド連中が泣き出すな……」

 

「はっはっは!たった一つの技だけで地上での活動を可能にしたラギアクルス希少種か!ますます生態系がぶっ壊れるな!!」

 

ヒューイさんだけが笑い飛ばす中、シズカさん一同は完全にドン引きしている。まぁ、これってつまりカイオーガに足が生えて地上を闊歩し始めたようなもの、だよね?……うん、そう考えたらドン引きものだ。でも……!

 

「でんじふゆうの技は時間制限付き……確実に隙が生まれる瞬間がある!」

 

「ふっ……」

 

希少種モンスター、本当に強い……この勝負を少しでも試金石にしなければ、せっかく勝負をしてくれたアカイさんに申し訳ない!

……私の意識、少しでも変わってるのかな……?

 

「ラギアクルス希少種は原種と同様、みずとでんきに完全耐性を持つ。ほのおとドラゴンに弱いのは変わらないが、こおりには強くなっているぞ。シロ、頼む」

 

「それじゃー、バトル開始ー!」

 

「ラギアクルス!りゅうのはどう!!」

 

「グルラアアァ!」

 

「ドラゴンダイブだ」

 

「グルォラアアァ!!」

 

シロちゃんの合図とともに、弱点のドラゴン技で先制攻撃!対するアカイさんもドラゴン技……物理と特殊のぶつかり合いだが、果たして……。

両者の技が激突し、激しく爆発。……だが、ラギアクルス希少種は健在!煙を突っ切ってラギアクルスに迫ってくる!

 

「くっ……ならば、れいとうビーム!!」

 

「グルアアァ!」

 

さらにドラゴンが弱いタイプで対抗する!さすがにこれは耐えられなかったようで、ラギアクルス希少種のドラゴンダイブを破って一気に押し返した。れいとうビームはしっかりと役割を果たしてくれたようだ。

 

「ふむ……冥海竜、やきつくす」

 

「グルオラァ!」

 

ラギアクルス希少種もほのお技を!?

 

「……!ラギアクルス、ほうでん!」

 

「グルアァ!」

 

迫り来る火球の弾幕をほうでんで全て打ち落とす。よし、これで……。

 

「では次、りゅうせいぐんだ」

 

「グラァオオオォォッ!!」

 

りゅ、りゅうせいぐん!?まずい、撃ち落とさないと……!!

 

「ラギアクルス!りゅうのはどう!!」

 

「グルルル……グルアアアァァ!!」

 

ラギアクルスが放ったりゅうのはどうが無数に枝分かれしてりゅうせいぐんを撃ち落としにかかる!……それでもすべてを撃ち落とすことはできず、撃ち漏らしがラギアクルスに向けて降り注ぐ。煙が晴れれば、そこにはボロボロになったラギアクルスの姿があった……。

 

「……なんだそれは」

 

「え……」

 

「こんなものか、君の力は」

 

ア、アカイさん……?

 

「随分と腑抜けたものだな……いつだかのように、勝利をもぎ取ろうとするあの力強い意思はどうした?今の君は惰性で戦っているようにしか思えん。それともなにか?君は……私を舐めているのか?」

 

「な、舐めているなんて、そんな……!」

 

「あぁ、案ずるな。先程はああ言ったものの、私自身は君がそんなふうに思っているなどとは微塵も考えていないよ。しかし、しかしだ……この勝負からは、まるで君らしさを感じられない」

 

「私、らしさ……?」

 

「あぁ」

 

私らしさ……私らしさって?私らしさってなんだ?なにをもっての私らしさなんだ?私は、私は……今まで、どんな風に戦ってきたんだっけ?

 

「これまでの君は、どのような状況下に置かれても常に勝利への道筋を探り、引き当て、掴みとろうとする強固な意思があった。初見となる相手であっても臆すことなく挑み、勝つための策を閃き続けていた。敗北することはあっても、それで決して折れることはなかった。

負けを良しとすれども、妥協するような人ではなかったはずだ」

 

「……!!」

 

「君はそれでいいのか。……あぁ、私としては一向に構わんよ?この勝負が勝ち確定になるだけだし、楽なものだと思えば悪くない」

 

「――――」

 

その時、私の脳裏にとある記憶が蘇った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~七年前・シンオウ地方~

 

「ギャラドス、こおりのキバ」

 

「あっ!キノガッサ!!」

 

今日はお母さんとのポケモンバトル。お父さんから借りたポケモンたちを使って戦ったけど、またお母さんのギャラドス一匹に全部たおされちゃった。……おかしい、お母さんのギャラドスの技ははりゅうのまい、こおりのキバ、げきりん、じしん……ちゃんととくせいとかタイプ相性とか考えて、技を受けないポケモンを半分も用意したのに全部たおされた……なんで?

虎の子のがいあくキノガッサもギャラドスに一げきでたおされて……むー、どうすればお母さんに勝てるんだろう……。

 

「ショウ」

 

あ、お母さん。

 

「ショウ。なんなの、今のバトルは」

 

え?私、なにか変だった?

 

「変どころか、それ以前。勝負の心構えがなっていないわ。ショウ……貴女、途中から諦めていたでしょう?」

 

うっ。だ、だって……お母さん、強いし……チャンピオンが相手じゃ、勝てなくてもしょうがないし……。

 

「ええ、そうね。私は貴女よりずっと強い。積み上げてきたキャリアは言わずもがな、ポケモンの戦わせ方から経験値まで何もかもが桁違いよ、それは事実。

でもね、ショウ?勝てないということは、(・・・・・・・・・・・)負けていい理由にはならないわ(・・・・・・・・・・・・・・)

 

え……。

 

「貴女は負けても平気かも知れないわね。彼我の実力差を明確に理解していて、その上で勝てないことを理解している。……それじゃあ、ポケモンたちはどうかしら?」

 

……くやしい?

 

「そうね、きっと悔しいはずよ。だって、誰も負けるつもりで戦ってるわけじゃないんだから。戦う以上は、勝ちたいはずよ。それなのに、トレーナーとして指示を出す貴女が諦める……『負けてもいいや』なんて気持ちで勝負に臨んでいたら、ポケモンはどんな気持ちになるかしら」

 

……いやな気持ち。

 

「そうでしょ?だからね、ショウ。トレーナーはポケモン以上に負けず嫌いにならなくちゃダメよ。負けず嫌いといっても、勝つことだけを大事にするって意味じゃないわ。敗北を受け入れても妥協するな、ってこと。

これは、私の親戚の受け売りなんだけど……『勝負だから負けるときは負ける。けど、負けた以上は次こそ勝つ。負けること自体は経験になるから悪くないけど、負けっぱなしは精神的に良くない』ってね」

 

負けはわるくない……負けっぱなしは良くない……。

 

「これからショウがポケモントレーナーとして歩むというのなら、これだけは覚えていてほしいの。敗北を糧にするのはいいけれど、それに甘んじてはダメ。最初に言ったけど、勝てないことは負けていい理由にはならないわ。たとえ一度は敗れた相手だろうと、勝手に自分の負けを決めつけて戦わないこと。正直に教えて?お母さんに負けて、悔しかった?」

 

……悔しかった……!すっごいすっごい、悔しかった……っ!!

 

「なら、その気持ちを忘れないでね?その悔しさが、あなたを強くするバネになるわ。そして、相手が実力差を理解して舐めきった態度を取るようなら……ヒソヒソ」

 

……!うん、わかった!!

 

「よろしい!それでこそ、私の娘だわ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~回想終わり~

 

「……て……」

 

「ん?」

 

思い……出した……。

 

「ふ……って……」

 

「……あれ、ショウの様子が……」

 

そうだ……私は……!!

 

「ふざけやがってええええええええっ!!」

 

「ちょ」

 

最強のトレーナー(お母さん)譲りの!最強の負けず嫌いだっ!!

 

「なにをもう既に勝った気になってんのよ!!見ろ!私のラギアクルスはまだピンピンしてるわ!!審判の判定前に勝ち判定を勝手に出してんじゃないわよ!!それと!私はまだ負けてないし負けを認めたつもりもない!!見てなさい!勝負はまだまだこれからよ!」

 

「……ショ、ショウが荒ぶり始めた……」

 

「……だが、いい傾向だ」

 

「あらあら、乙女があんなに声を荒らげて……けれど、ショウさんならば不思議とらしさを感じますわね」

 

「…………」

 

 

――おやおやぁ?ミツ姉はもうギブアップですかな?――

 

――んなっ!?ま、まだ負けてないんだから!見ててよ、コウちゃん!――

 

 

「(ホント、そっくりだ……やっぱりショウは貴女の娘ですね、光梨さん……)」

 

「……?姉様、泣いてますの!?一体どこの誰が……!!」

 

「ううん、なんでもないよネネ。これは、嬉し涙だから」

 

「は、はぁ……?」

 

あーっ、イライラする!なによりも『アカイさんは強いから勝てなくてもしょうがない』とか、内心妥協していた自分に心底腹が立つ!!どうして忘れていたんだ、お母さんからの大事な言葉!!『勝てないことは負けていい理由にはならない』ことを!

 

「ラギアクルス!まだ戦えるよね!?」

 

「グルオォアアアッ!!」

 

よしっ!!ラギアクルスもまだまだ戦える!!もう"負けてもいいや"なんて考えるもんか!!

 

「(ふっ、ようやく闘志に火が点いたか。彼女の中から消えかけていたもの……即ち闘争心。呪いの存在を自覚するまでは、戦いの度に表面化されていた当たり前の感情……いつしかそれは、精神的に追い詰められ続けた戦いの中で次第に埋没していった。だが、たった今その闘争心が息を吹き返した!それでこそ、ショウだ!……まさかキレるとは思わなかったなぁ)」

 

「行きますよ、アカイさん!ラギアクルス、突撃だ!!」

 

「グルオァ!」

 

「ククッ……何をする気だ?りゅうせいぐん!」

 

「グルオラァ!!」

 

ラギアクルス希少種のりゅうせいぐんが降り注ぐ。今のラギアクルスの体力じゃ、一発の被弾でもアウトだ!でも、今のラギアクルスならできる!

 

「アクアジェットで躱せ!!」

 

「グルラァ!」

 

水を纏ったラギアクルスが高速移動でりゅうせいぐんを回避しまくる!そのまますごい勢いでラギアクルス希少種に迫っていく!

 

「れいとうビーム!!」

 

「グラァ!」

 

「ちっ、まもるだ!」

 

「グルオラ!」

 

ラギアクルス希少種がまもるを展開する……けど!!

 

「読み違えたね、アカイさん!」

 

「なに!?」

 

ラギアクルスが放ったれいとうビームは、ラギアクルス希少種の手前に着弾!そのまま氷のジャンプ台を作り上げた!ラギアクルスがジャンプ台を駆け上がり飛び出した頃には、まもるは効果を失っている!!

 

「ドラゴンダイブだぁ!!」

 

「グルアァァァアアアアッ!!」

 

「はかいこうせん!」

 

「グルオラアァアア!」

 

ラギアクルス希少種が、はかいこうせんを構えている!けど、このタイミングなら!!

 

「あれは!」

 

「マズイ……!」

 

「(兄さん……!!)」

 

「負けるなあぁ!」

 

「……!グルオアァ!!」

 

「グガッ!?」

 

私の気迫が届いたのか、ラギアクルスは落下体勢に入った直後、思い切り体を反らしてから全力で前方に全身を振り抜いて一回転!!その結果、尻尾がラギアクルス希少種の頭部を叩いて、はかいこうせんの発射そのものを阻止した!

 

「そんな馬鹿な!?」

 

「ラギアクルスにあんな動きが!!」

 

「いっけえええぇ!!」

 

「グルアアアアア!!」

 

再び体を元の体勢に戻し、ドラゴンダイブでそのまま激突!ド派手に大爆発を起こした!煙の中からラギアクルスが飛び出し、前方を強く睨みつけている。……煙の向こうでは、ラギアクルス希少種がかなりのダメージを負っている……これでトドメだ!

 

「ラギアクルス!全力で行くよ!りゅうせいぐん!!」

 

「グルオアアアァァァ!!」

 

「ちっ……避けろ、冥海竜!!」

 

「グルル……ガッ!?」

 

ラギアクルスのりゅうせいぐんが放たれ、ラギアクルス希少種が回避行動を取ろうとした、その時だ。ラギアクルス希少種を覆っていた黒いオーラが消え去り、完全に腹ばいの姿勢になった!

 

「でんじふゆうがっ!!」

 

「解けた!」

 

「冥海竜!冥刻雷衝撃(めいこくらいしょうげき)だ!!」

 

「グルオラアアアァァァァ!!」

 

背中の蒼い背電殻が漆黒の光を放つと、真っ黒な電撃が竜巻のように放たれた!電撃はりゅうせいぐんを次々と撃ち落としている……でも、でんじふゆうの効果が切れた今が攻め時!!

 

「ラギアクルス!れいとうビーム!!」

 

「無駄だ!かえんほうしゃ!!」

 

まさかかえんほうしゃまで使えるとは!ラギアクルスのれいとうビームは下から上へ薙ぎ払うように放たれ、ラギアクルス希少種のかえんほうしゃはまっすぐこちらに向かってくる。

二つの技がぶつかり合って爆発が起こる……大丈夫、事前に確認は取れた!!

 

「ラギアクルス!そのまま突撃!」

 

「グルラ!」

 

ラギアクルスはれいとうビームを薙ぎ払った際に凍った地面を滑って一気に加速していく!!

 

「やるな!だが、その体勢では躱せまい!はかいこうせん!!」

 

「グルル……オラアァ!!」

 

ラギアクルス希少種のはかいこうせん!だが、だが!!

 

「ワイドブレイカー!!」

 

私のラギアクルスならばぁ!!

 

「グルオオオオオ!!」

 

尻尾に竜気を纏わせたラギアクルスは体を大きく捻るとそのまま尻尾に噛み付いた!ワイドブレイカーの竜気が全身に回り、ラギアクルスはそのまま大回転して突っ込む!ラギアクルス希少種のはかいこうせんは、大回転攻撃をするラギアクルスに全て弾かれた!!

 

「なんだと!?」

 

「これでえええぇ!!」

 

ラギアクルスの大回転ワイドブレイカーはラギアクルス希少種を高く高く打ち上げた!!ラギアクルスが急停止すると少し遅れてラギアクルス希少種が落下した。これでどうだ……!

 

「……グ、オォォ……」

 

「冥海竜、戦闘不能!ラギアクルスの勝ち!!」

 

「やったぁ!!」

 

仰向けにひっくり返ったラギアクルス希少種は戦闘不能!!三戦目は私の勝ちだ!!

 

「……クッククク……アッハッハッハッハ!!」

 

お互いにボールに戻したところで、アカイさんが笑い始めた。……えーっと、これでよかったのかな?

 

「そうだ、それでいい!最高だ、君は!!そうでなければ面白くないっ!!久々だぞ、俺の血が!魂が!"コイツにだけは負けてたまるか"と震えている!!この感覚……あの灼熱の世界で相対した、ヤツ以来だ……!!」

 

「(アカイ……そいつは俺も同じさ。向こうに戻ったら、また喧嘩しようぜ)」

 

どうやらアカイさんの戦意も爆上がりしているらしい……私もですよ、アカイさん!

 

「では、次だ!」

 

「「ゼルレウス!!/リオレウス!!」」

 

「「グオオオオオオオン!!」」

 

私のボールから出てきたゼルレウスと、アカイさんのボールから飛び出したリオレウス。でも、リオレウスは以前見た蒼い姿ではなく、全身銀色の姿だ!

 

「それが、リオレウス希少種ですね?」

 

「そう、【銀火竜】だ。白銀の太陽の異名、その所以をお見せしよう。リオレウス希少種はゼルレウスと同じほのお・ドラゴンだが、その弱点は大きく異なる。みずとでんきに弱く、こおりに強く、そしてほのおとドラゴンが効かない。対する君のゼルレウスはドラゴン、みず、こおりに弱い。身体的スペックならそちらが僅かに上回るだろうが、それも全て……」

 

「トレーナー次第、ですね?分かってます。ゼルレウスに、無様な戦いはさせません。ラ・ロにどやされちゃいますから」

 

「フッ……軽口をたたけるだけ余裕なら、もう大丈夫そうだな」

 

……多分、だけど。ミラボレアスの呪いが解けたことで、私は安心しきっていたんだ。だから、これからの勝負は相手がミラボレアスやクロノでない限り、『負けても死にはしないし大丈夫』という思いもあって、敗北を容易く受け入れるようになっていた。

私はそれでも良かったけれど、ジンオウガ達はそうはいかなかったんだろう。彼らは強くなるために戦い、勝利を得ようとしていた。そこへ、悪い意味で敗北に前向きになっていた私だ……そりゃあ、勝てる勝負も勝てなくなる。

ちょっと違うかもしれないけど、状態変化としては燃え尽き症候群に近いかも知れない。自分の命のために呪いを解くという一点に向けて突き進み続けていたけど、お母さんの前世関係や命の危機に迫られているというストレスから一気に解放されたことで戦闘意欲も萎えてしまった……うーん、やっぱりちょっと違うか?うまく説明できない……。

 

「さぁ、残り二本……最後まで戦えるかな?」

 

「やってやりますよ……ここからは、私の独壇場です!!」

 

 

 

 




希少種
限られた地域で極めて稀に確認されるという特殊な『亜種』モンスター。

特殊な『亜種』モンスター。

『亜種』モンスター。

『亜種』


ハコチュウ、ウソ、イッテナイ。


ということで、前半戦終了です!以下、希少種モンスターの詳細です。


グラビモス希少種
種族:技巧飛竜種(竜盤目 竜脚亜目 重殻竜下目 鎧竜上科 グラビモス科 技巧種)
別名:鋼鎧竜(はがねよろいりゅう)
英語表記:Metal Gravios
危険度:不明。可及的速ヤカナ検証ヲ求ム
狩猟地:地底火山
肉質・耐性タイプ相性
はがね/ドラゴン
弱点 火:× 水:◎ 雷:△ 氷:× 龍:△
四倍:なし
二倍:かくとう、じめん
半減以下:ノーマル、でんき、くさ、ひこう、エスパー、むし、いわ、はがね、ドラゴン
こうかなし:ほのお、どく、こおり
等倍:上記以外全て

地底火山で新発見されたグラビモスの希少種個体。岩竜バサルモスが長い年月をかけて成長した鎧竜グラビモス。そのグラビモスが火山の核とも言うべきマグマ溜りで、100年以上も休眠状態に入った結果誕生した個体。
ミラボレアスの逃走に単を発した技巧種騒動を受けて、休眠状態から目覚めた。
体を構成する甲殻が、岩石を通り越して鋼と化している。膝関節や翼爪、尻尾、顔、腹部や背部など、明るい銀色に変化していることが何よりの証。
実際、高熱と高圧によって体に付着した鉱物が錬成され、あらゆる熱を遮断する鋼鉄へと成長しているため、物理的な防御力は亜種を含む従来のグラビモスを遥かに凌駕している。特に弱点とも言うべき喉元や足回りも鋼鉄化しているため、安易な攻撃はかえって自身を傷つける自傷行為になりかねない。
ただ、鋼鉄化の代償とも言うべきか、腹部が鉄に覆われたことでそこからのガス攻撃が不可能になっている。鋼鉄化した部位は排熱効果が非常に高く、空気に反応してすぐに冷えるためガス抜きによる排熱行為が不要になったためと思われる。
現在、情報提供のため捕獲者である赤衣の男と交渉中である。


ベリオロス希少種
種族:技巧飛竜種(竜盤目 竜脚亜目 (不明) 前翼脚竜上科 ベリオ科 技巧種)
別名:閃牙竜(せんがりゅう)
英語表記:flash Barioth
危険度:不明。可及的速ヤカナ検証ヲ求ム
狩猟地:旧密林
肉質・耐性タイプ相性
でんき/ドラゴン
弱点 火:◎ 水:○ 雷:× 氷:△ 龍:△
四倍:なし
二倍:じめん、フェアリー
半減以下:くさ、ひこう、はがね
こうかなし:でんき
等倍:上記以外全て

樹海で新発見されたベリオロスの希少種個体。極寒のベリオロス、砂漠のベリオロス亜種に続く密林のベリオロス希少種。緑黄色の牙、若葉色の甲殻に焼け焦げた刺、全身に生えた豊富な白い体毛など、ほかのベリオロスと比較しても異質な存在。
メタペ湿密林の中でも人が入り込めないような最奥地にいたが、ミラボレアスの逃走に単を発した技巧種騒動を受けて縄張りから離れて活動を始めた。
特に特徴的なのは、電撃を操る能力である。全身の筋肉が発電機関の役割を持っており、ほんの僅かな動きでも電撃を作り出す。普段は地面との接地面から不要な電気を逃がしているが、戦闘時には全身の体毛や刺に電力を回して戦闘態勢に入る。この時、白い体毛は電気の色で若葉色に発光しており、全身があたかも若葉色一色に見える。腕の刺を電極替わりにすることで腕の側面に電気の刃を生成し、その刃を飛ばしたり直接切りつけたりできる。また、尻尾の刺からは電磁砲に似た高速電撃弾を発射可能と、電気の用途は多岐にわたる。
現在、情報提供のため捕獲者である赤衣の男と交渉中である。


ラギアクルス希少種
種族:技巧海竜種(海竜目 海竜亜目 電殻竜下目 ラギアクルス科 技巧種)
別名:冥海竜(めいかいりゅう)
英語表記:Abyssal Lagiacrus
危険度:★6→★9※

ギルドが保管する古文書にのみその存在が語られる、伝説的なモンスター。「冥府の王」「海神の化身」などの異名を持つ幻の竜であり、深淵から出で、激流の渦を以って万物を喰らうとされ、《冥海竜》とも称される。
数十年に一度、海底遺跡の奥深くにその姿を現すとされているが、目撃例および調査情報は皆無に等しい。
そんなラギアクルス希少種が技巧種化した際に、「でんじふゆう」という技を獲得。これにより、陸での生活に支障を来すようになった要因である自重を支えることが可能となり、再び陸上で姿が見られるようになった。この件を受けたハンターズギルドはラギアクルス希少種の危険度引き上げを正式決定し、現在、情報提供のため捕獲者である赤衣の男と交渉中である。

※技巧種化に伴う危険度引き上げ


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決戦!アカイ~極めろ!きずなへんげ!!~

タイトル回収できるかな?アカイとの勝負も後半戦です!


大闘技場にて始まった私とアカイさんのバトル……最初こそは私が一方的に負け越していたけど、アカイさんの煽りのおかげで昔にお母さんに言われた言葉を思い出した私は、ラギアクルス対決で勝利することができた!

今度はゼルレウスとリオレウス希少種の戦い……絶対に勝つ!!もう情けないバトルはしないぞ!

 

「いくよ、ゼルレウス!飛べ!!

 

「グオン!」

 

「逃がすな、リオレウス!」

 

「グオオオ!」

 

ゼルレウスが飛翔し、リオレウス希少種の頭を押さえるべく動き出す。対するリオレウス希少種も速い……!ワンテンポ指示が遅れているのに、もうゼルレウスに追いついてる!

 

「つばさでうつ攻撃!」

 

「グオオン!」

 

「なるほど、タイプ相性……特に肉質に左右されないタイプ技か。考えたな……ドラゴンダイブ!」

 

「グオオオオ!」

 

ゼルレウスが翼を広げて突撃し、リオレウス希少種もそれに合わせるように突っ込んでくる。大丈夫、私のゼルレウスならやれる!

 

「今っ!」

 

「グオンッ!」

 

私からの合図を聞き、ゼルレウスは途中で停止して素早くその場で羽ばたいた。リオレウス希少種は技の勢いで止まることができず、ゼルレウスの下に潜り込む形になった。

これは向こうの世界の時……バゼルギウスにやられた動き、その完全再現だ!

 

「ライトレイキック!」

 

「グオオオオッ!!」

 

「グウゥゥ!!」

 

「ふむ」

 

ゼルレウスの足に刃状の棘が生え、尻尾の甲殻が展開するという形態変化のあと、足の刺を擦りつけるような鋭いキックでリオレウス希少種を蹴り飛ばす!リオレウス希少種は吹っ飛ばされながらも体勢を立て直した……これじゃあ決定打にならないか……!

 

「(先程よりも指示出しが鋭く、決断力が増している。何よりモンスター達なら出来る、という強い確信……ふっ、これは手強くなったな)」

 

「どうしました?来ないならこちらから行きますよ!フラッシュジャベリン!!」

 

「グオオオォッ!」

 

「フッ……豪火滅球!!」

 

「グオオンッ!!」

 

ゼルレウスが放つ光のブレスと、リオレウス希少種の火球がぶつかり大爆発。爆煙が起こる……多分、これを使ってくるはず!

 

「エアスラッシュ!」

 

「ぼうふう!」

 

アカイさんの指示が聞こえてから、すぐに私も指示を出す!ゼルレウスが後退しながらぼうふうを放つと、煙を切り裂いてリオレウス希少種のエアスラッシュが飛んできた!エアスラッシュはぼうふうに阻まれて届かないけど、まだ油断はできないな……。

 

「リオレウス、りゅうのいぶきだ!」

 

「グオオォォッ!」

 

「……!アサルトバース!」

 

「グオンッ!!」

 

ぼうふうが止んだ直後、りゅうのいぶきが放たれた!咄嗟に指示したアサルトバースで、ゼルレウスは光を収束させると体から閃光を放ってりゅうのいぶきを打ち落とす!これで攻撃は届かない……!

 

「今だ、りゅうせいぐん!!」

 

「グオオオオオオオンッ!!」

 

「ゼルレウス!」

 

「( `・_・´) ))コクッ」

 

降り注ぐりゅうせいぐん……その強力な攻撃がゼルレウスに命中する。ゼルレウスはなんとか受けきってくれた……。

 

「ほぅ、流石に今のは避けきれないか」

 

「……いいえ、避けきれなかったんじゃありません。避けなかったんですよ」

 

「なに?」

 

「……!そうか、あの技は確かにゼルレウスのイメージにぴったりだ。輝界竜、光り輝くゼルレウスなら!」

 

「(姉さまの横顔が最高にイケてりゅ……しゅき……)」

 

さすがはシズカさんだ……私が次に出す指示を、もう予測しているなんて!

 

「いっけー!ゼルレウス、ミラーコート!!」

 

「グルルルル……グオオオォォォォォンッ!!」

 

「グオオオォォォォォッ!?」

 

「なんだと!?馬鹿なッ」

 

ゼルレウスの側頭部の突起が進化して巨大な2本の角となり、さらにラ・ロを超える勢いで翼爪が肥大化する。勿論、足と尻尾の変化はそのままだ。そうして全身が変化すると、変化した部位が青白く輝き始め、無数の光線となってリオレウス希少種へと降り注ぐ!!

リオレウス希少種は自身が与えたゼルレウスへのダメージを倍返しされて地面に墜落!完全に目を回してしまっている!

 

「リオレウス、戦闘不能!ゼルレウスの勝ち!」

 

「どうですか、アカイさん!」

 

「ははは……まさか、ゼルレウスからカウンターを貰うとはな。グラビモスの時のお返し、というわけか」

 

グラビモスとベリオロスには、情けない勝負をさせちゃったから後で謝らないと。これで少しでも溜飲が下がるといいな。

 

「では」

 

「ええ」

 

「いよいよ最後だ……」

 

「はい、これで最後です」

 

「「ジンオウガ!!」」

 

私が繰り出す【金雷公】……そして、アカイさんが繰り出したのはあの黒いジンオウガじゃない。

元のジンオウガの体の内、碧色は灰色、黄色は白に、体毛も白から青に変化している。既に戦闘態勢なのか、背電殻が展開されてそこから緑色の粒子のような光が放出されている……なんだあれ、すごい嫌な予感がする。それと尻尾や角、爪などの先端部からも粒子のように光が溢れてて……というか、なんか消えかけてない?気のせい?いや気のせいじゃないよね?

 

「【天狼竜】ジンオウガ希少種。塔の秘境に隠れ住んでいたモンスターだ。その警戒心はナルガクルガ希少種の比ではない。今回の騒動で塔近辺からモンスターが軒並み姿を消してしまったので出てきたところを捕獲した」

 

「天とは……亜種に対する当てつけか?」

 

「【獄狼竜】の亜種と【天狼竜】の希少種……」

 

「原種の【雷狼竜】が途端に地味に感じますわね」

 

「(´;ω;`)」ジミジャナイヨ……

 

「止めてネネ、そのコメントはショウのジンオウガに効く」

 

ああ……今は【金雷公】だけど元が【雷狼竜】だっただけにジンオウガが傷ついちゃった……。心なしか、【天狼竜】も可哀想なものを見る目をしている気がする。

 

「……ジンオウガ、思いっきりぶっ飛ばして地味じゃないって証明しよう」

 

「ワン!」

 

「来るか……では、【天狼竜】の力を見せてやろう。【天狼竜】はほのおとドラゴンに弱く、でんきとこおりに強く、みずが効かない体質をしている。だがそのタイプは……フェアリー・かくとう」

 

「フェアリー……!?」

 

まさか、フェアリー複合のかくとうタイプとは。こちらはでんき複合のかくとうタイプ……タイプ一致技を両方とも封じられたようなものだ……!さらには龍属性に弱い体質を、フェアリータイプで克服している。

 

「いや、あんな厳つい顔でフェアリータイプって……」

 

「イメージと違うな……」

 

「(グランブルとかオーロンゲとか思えば割と普通だったり……)」

 

ニールさんもシュラークさんも、ジンオウガ希少種がフェアリータイプであることがイメージと結びつかず、違和感を覚えているようだ。……ただ一人動じないあたり、シズカさんは厳つい顔のフェアリータイプに心当たりがあるようだ。

 

「フェアリーだからって臆するものか!ジンオウガ、メタルクロー!!」

 

「ワオン!」

 

相手がフェアリーなら、それを踏まえて技選択をすればいい!ジンオウガはメタルクローもアイアンテールもアイアンヘッドも使えるんだ!一気に駆け出し距離を詰めたジンオウガが前足を振り上げジンオウガ希少種へ飛びかかった。

……気のせいか?なんだか、ジンオウガ希少種の周辺の光の粒子が濃度を増しているような――

 

「え」

 

「!?」

 

メタルクローが直撃した……そう思ったのも束の間、ジンオウガ希少種が光の粒子となって消えてしまった……!?

 

「ええ!?」

 

「な、なんだ!何が起こった!?」

 

「ジンオウガ希少種が、消えた……」

 

「あ、ありえませんわ!あ、あのような、消え方、そんな……」

 

「(量子化だと!?)」

 

先輩も、ニールさん達も何が起こったのかさっぱりといった様子だ……唯一反応が違うシズカさんなら、何か分かるのだろうか……。

 

「……!ジンオウガ、後ろ!」

 

「遅い、きりさくだ!」

 

「ウガオオォ!!」

 

「ギャウッ」

 

ジンオウガの背後で実体化し、きりさくを食らわされてしまった……!完全に出鼻をくじかれた……流れを奪われないように、冷静にならないと!

 

「ジンオウガ希少種が操るは、光」

 

「光……」

 

「ジンオウガ希少種は光を吸収し蓄え、それを粒子として放出することで身体能力を向上させている。自ら光を発するものをその身に従え、その光を恒久的に吸収し続けている。ニール、君なら心当たりがあるはずだ……反応を発光という形で表現する生物を」

 

「まさか……導蟲……!?」

 

「さすが、よくわかったな」

 

導蟲?たしか、ニールさんやエイデンさんが狩猟の際に使う虫の名前で、追跡機能を持った生き物だったっけ。その虫が発する光を吸収して、武器にしているのがジンオウガ希少種……。

 

「待った!導蟲は新大陸で初めて発見されて、機能を研究・運用されているんだぞ。なのにジンオウガがそれを従えているということは……」

 

「そうだ。このジンオウガは元々、新大陸生まれの個体が導蟲を引き連れ現大陸へ移動し、塔の秘境に住み着いたものなのだ」

 

「……ギルドはちゃんと仕事をしていたのかしら……」

 

……ジンオウガの犬かき、ちょっと見てみたいかも……。

 

「安心するといい。濫りに使える技でもないし、ジンオウガ希少種への負荷も大きい。今回は初見ということもあり、力の一端を見せたに過ぎない」

 

「……それでも脅威ですよ、それ。それに、バトルフィールドが粒子で満たされている……」

 

「この光が閃光の刃となって、君たちを切り裂く。さぁ、覚悟は出来たかな?」

 

「上等ッ!!」

 

「ワンッ!!」

 

「では行くぞ!【天狼竜】、フラッシュエッジ!」

 

「ウオン!」

 

「雷光弾!」

 

「ワオォン!」

 

ジンオウガ希少種は背中の蓄電殻に相当する部位から光の粒子を放つと、ジンオウガの雷光弾と同じ動きで回転する光の刃を放ってきた。光の刃はジンオウガの雷光弾をあっさりと切り裂くと、勢い衰えぬままジンオウガに迫って来る!

 

「ジンオウガ、かみなりパンチ!」

 

「ワン!」

 

「生半可な攻撃では打ち消すことなどできないぞ?」

 

「打ち消す必要なんてありません!」

 

正面からぶつかり合えば、こちらも被害は免れない……こういう時は、一つだけ!

 

「受け流す!側面を叩いて!!」

 

「ワゥン!!」

 

迫り来る光の刃を避けつつ、下から掬い上げるように刃の側面を叩いて後方へ受け流す!迫ってきた二つの刃を、上手く避けることができた!

 

「上手いっ!」

 

「こういう所作がしれっとできるあたり、やはりショウさんに従うモンスターは普通とは違いますわね……」

 

「闘りてぇなぁ」

 

「落ち着けバーサーカー」

 

「バーサーカー?違う、俺はハンターだ」

 

「(今そのパロディは聞きたくないんだわ……)」

 

攻撃は避けたけど、かなりの威力だったみたい……ジンオウガが前足をプラプラと振っていることから、その脅威は容易に想像がつく。

 

「こんどはこちらから……ジンオウガ、しんくうは!」

 

「ワォン!」

 

前足の爪を展開すると同時に一閃、しんくうはを放ち先手を打つ!だがこれで終わらない!

 

「躱せ、【天狼竜】」

 

「ガウ!」

 

「今だ、はどうだん!」

 

「ワオオン!!」

 

ジンオウガ希少種がしんくうはの回避に動いた瞬間を狙ってはどうだん!けど、まだだ!!

 

「(はどうだんの動きが鈍い?何を考えて……)」

 

「突撃だ!しねんのずつき!!」

 

「(なるほどな!)」

 

先に放たれたはどうだんを飛び越えて、ジンオウガがしねんのずつきを発動して希少種に迫る!はどうだんは必中技だからジンオウガを避けて必ず希少種に命中する……ここでしねんのずつきを避けても追撃のはどうだんは避けきれず、しねんのずつきを受け止めてもやはりはどうだんは避けられない!必ず、確実に一撃は入るコンボだ!

 

「面白い……だが、詰めが甘いな」

 

「え!?」

 

「【天狼竜】、ミラージュホーン!!」

 

「ウガオォン!!」

 

ジンオウガ希少種から一瞬で多量の粒子がばらまかれると、それがあっという間に角に収束されていった!角が虹色の光を纏うと、ジンオウガ希少種はそのまま突っ込んできてジンオウガと激突した!

 

「確かにしねんのずつきはエスパー技、【天狼竜】の弱点である。だが、ミラージュホーンはフェアリー技だ。同じ弱点技でも……」

 

「タイプ不一致である分、こちらのほうが威力が低い……!」

 

「そういうことだ!!」

 

ジンオウガが押し返され吹き飛ばされてしまう。さらに追撃になるように放ったはどうだんも、ミラージュホーンでそのまま打ち消されてしまった……!

 

「くそっ、惜しい!」

 

「そういえば、自身のタイプと同じタイプの技は威力が増す、というお話でしたわね……」

 

「ジンオウガ希少種はタイプと肉質でショウのジンオウガのタイプ一致技……つまり、でんきとかくとうを半減で受けられる。得意技を封じられた分、ショウの方が不利だけど……」

 

「ショウさんにはあまり関係のない話……ですわね、姉様」

 

「そうだね」

 

得意タイプ技を封じられ、弱点で攻めれば相性次第で押し返される……厄介だな……!

 

「次は、こちらの番だな……しんそく!!」

 

「ウガゥ!!」

 

「ギャッ!」

 

「ジンオウガ!」

 

は、速い!元々先制技であることを差し引いても、かなり速い!一瞬、ジンオウガ希少種が光ったかと思ったら、いつの間にかジンオウガの懐に飛び込んでいて、そのまま滅多打ちにされた!ジンオウガも反撃に前足を振るうけど、それも回避されてまた別方向から乱打を食らわされる……かなりのダメージを負った後、ジンオウガ希少種はジンオウガから離れていった。

 

「強い……!」

 

「伊達に希少種は名乗っていないのでな」

 

どうするか……向こうのタイプ一致技であるフェアリー技で打ち合いに持ち込まれたら、エスパーやフェアリーだと威力不足でこちらが不利になるのは否めない……。フェアリー技に対してはがね技やどく技で殴りあえたらいいけど、アカイさんのことだからそんなことはお見通しだろうな……。

 

「(どうしよっか、ジンオウガ?)」

 

なんとなく、心内でジンオウガに問いかけてみる。意味のない行為だけれど、頭に昇りかけていた熱を抑えるためにも少しだけ余白が欲しかったところだ。けど……。

 

「ミ( ・ω・)」ヨンダ?

 

まるで聞こえていたかのようなタイミングでジンオウガが振り返った。思わずドキリ、となったが、面白かったので続けてみることにした。

 

「(はがね技で殴り合いたいんだけど、アカイさんは応じてくれないよね)」

 

『そうだな~、多分だけど向こうはほのお技持ってるだろうし、どく技だとエスパー技の返しが怖いしはがね技を打ちたいけど……読み合いで負けた時が怖いよなぁ』(´ε`;)ウーン……

 

「(うん、安易にはがね技は打てないね……)」

 

『じゃあ、牽制目的で変化球入れるか。穴掘ってから分身とかどうよ?』( ´゚∀゚`)ドォ?

 

「(いいね、それでいこう。隙を生じぬ二段構え……いや、三段構えで!)」

 

『d('∀'*)グッ!』

 

不思議だなぁ、なんだかジンオウガの声が聞こえてるみたいだ……。脳内ジンオウガとの作戦会議も終わったので、早速行動に出よう!

 

「ジンオウガ、あなをほる!」

 

「ワウン!」

 

「なに……?」

 

一瞬で穴を掘り地面に潜るジンオウガ……これにはアカイさんも、わずかに指示が止まってしまった。

 

「……気をつけろ、【天狼竜】」

 

「ガウ」

 

「……行け、ジンオウガ!」

 

「ワオオオオン!」

 

地中から飛び出したジンオウガは、そのままの勢いでジンオウガ希少種に飛びかかった。

 

「面白い手だが、通じんぞ!マジカルシャイン!」

 

「ワオオオオンッ!!」

 

ジンオウガ希少種のマジカルシャインがジンオウガに直撃……そのままジンオウガのかげぶんしんは消え去った。

 

「なにっ、分身だと!?」

 

「いっけぇ!アイアンテール!!」

 

「ゥワオオォォォン!!」

 

再び別の地点からジンオウガが飛び出し、尻尾を振り回してジンオウガ希少種を強襲する!!

 

「チィィィッ!量子ジャンプだ!!」

 

「ワウ!」

 

きたっ、粒子になって避ける技!ジンオウガの攻撃を回避したジンオウガ希少種は、隙だらけのジンオウガにミラージュホーンを構えている!

 

「止めだ!」

 

「ウガオオオォォン!!」

 

「ま、まずいぞ!ジンオウガは完全に隙だらけ……!」

 

「弱点であるフェアリー技を食らったら終わりだぞ!?」

 

「(さっきのショウ達、まるで話してるかのように相槌を打ったり……まさか!?)」

 

ジンオウガ希少種のミラージュホーンが、ジンオウガに……!

 

「ジンオウガッ!!」

 

「フッ……」

 

……当たることなくジンオウガが消えた。

 

「……なんちゃって♪」

 

「なにぃぃぃっ!?」

 

「いけぇっ、ジンオウガァ!!」

 

「ワオオオォォォォォンッ!!」

 

本物のジンオウガが希少種の真下から大地を割って飛び出し、そのまま希少種を打ち上げた!希少種は完全に体勢を崩している!!

 

「まずはアイアンテール!!」

 

「ワンッ!」

 

空中で一回転!テールで地面に叩き落とす!!

 

「続いてメタルクロー!」

 

「ワゥン!」

 

立ち上がろうとするジンオウガ希少種の頭をメタルクローでぶっ叩く!!

 

「最後はっ!アイアンヘッドだぁ!!」

 

「ウオオオォォォォォン!!」

 

怯んだ隙に一気に叩き込む!!はがね技による三連撃をモロに受けたジンオウガ希少種は吹っ飛んだ!!

 

「ウゥ……ガ、ゥゥ……」

 

「……【天狼竜】、戦闘不能!ジンオウガの勝ち!!」

 

「そんな、バカな……」

 

「やったぁ!ナイスだよ、ジンオウガ!!」

 

「ワンワン!」

 

作戦大成功だ!あの脳内作戦会議で立てた作戦通り、ジンオウガ希少種を倒すことができた!

 

「まったく……とんでもないやつだな、君は。まさかこちらの裏を徹底して掻いてくるとは……君に勝負のイロハを教えた人物は、とんだ戦略家だな」

 

「いえ、あれは……(言えない……まさか脳内ジンオウガと作戦会議してたなんて言えない。傍から見たらただの独り言じゃん……)まぁ、母は強しということで」

 

「ははは!……だが、三本先取で私の負け。ショウも本来の闘志を取り戻したようだし、目的は果たせたな」

 

「まだです」

 

「なに?」

 

まだだ、まだ終わりじゃない……どうせなら、アイツにリベンジしとかないと!

 

「まだマガイマガドに勝てていません。このまま勝ち逃げされたくないし……せっかくなので、このままマガイマガドとも勝負させてください」

 

「ほぅ……」

 

「っ!!」

 

アカイさんが、ニヤリと笑った。それもただの笑い方じゃない……獲物を前に見せる好戦的な笑い方だ……!

 

「……そうだな、なにやら私の知らないところで急成長をしているようだし……いいだろう、受けて立つ!マガイマガド!!」

 

「グルオオアアアアアッ!!」

 

でたな、マガイマガド……前回はこちらの圧倒的な敗北だったけれど、今度はそうはいかない!!

思い出せ……マガイマガドはあく・かくとうの複合タイプで、こおりに強く、みずとでんきに弱く、ほのおとドラゴンが効かない体質。さらにメガシンカすれば体質的に苦手だったでんきタイプを克服し、でんき技を半減で受けられる……大丈夫、ちゃんと覚えてる。

メガシンカされる前に、決着に持ち込んでやる!!

 

「さぁ、決着を付けようか!怨嗟突き!!」

 

「躱して!」

 

初手から仕掛けられた怨嗟突きにもちゃんと反応できた!大丈夫、私たちは強くなってる!

 

「ワイルドボルト!!」

 

「ワオオン!」

 

「では、フレアドライブで迎え撃て!!」

 

「グルオオオ!!」

 

電気と炎の体当たりがぶつかりあい、爆発とともに距離を置く……まだだ!向こうは動く!

 

「怨炎駆!」

 

「しんそく!」

 

やはり高速技で攻めてきた!読み通りしんそくを指示して正解だった!ジンオウガとマガイマガドはすれ違いざまに前足の爪と腕刃がぶつかり合う音が聞こえる。ガキンッ!という重い音が、それぞれの技の威力の高さを物語っている。

 

「面白い!やはり君は面白いなぁ!これこそが人間の可能性!我々にすら手を届かせる、業にも等しき無限の未来!!」

 

「……!」

 

「もっとだ!君の可能性を、もっと見せてくれ!メガシンカ!!」

 

「グルオ"オ"ア"ア"ア"ア"ッ!!」

 

「……ジンオウガアアァァァッ!!」

 

「ワウンッ!!」

 

マガイマガドのメガシンカ……【怨嗟響めくマガイマガド】!その猛りによる煽りを受けて、私たちも一層気が高まり、溢れてくる!!今なら……行ける!!

 

「「うおおおおっ!!/ウオオオオッ!!」」

 

できた、シズカさんが言ってた『きずなへんげ』!!ジンオウガは相変わらず電撃に包まれたまま……サトシさんという前例で言うと、これでまだ不完全状態……もっともっと、ジンオウガと心を通わせないと!!

 

「来たぜ!あのジンオウガだ!」

 

「姉様が仰ってたきずなへんげ……これで、少しは勝ち筋が見えますわね!」

 

「けど、あの姿はまだ不完全……真に完全体となったとき、ジンオウガの全貌が明らかになるはず」

 

「なら、ショウのことを応援しないとな」

 

「頑張れ……ショウ……!」

 

行くよ、ジンオウガ……!!

 

「鬼火弾!」

 

「雷光閃弾!!」

 

マガイマガドが尻尾を振るって鬼火を放ってくるけど、こっちだって負けない!ジンオウガが放った電撃弾は、鬼火を突き破ってマガイマガドに迫っていく!

 

「無駄だ!」

 

「グルオラアァ!!」

 

マガイマガドの尻尾のひと振りで、攻撃が打ち消された!?……もっと、もっとだ!

 

「上げていくよ、ジンオウガ!」

 

「ワゥン!(応っ!)」

 

あれ、今ジンオウガの声が……気のせいか?

 

「電光爪!!」

 

「ワオン!」

 

「ならば、鬼刃斬り!」

 

「グルオァ!」

 

電撃によって前足の爪から延長された刃と、マガイマガドの鬼火で燃え盛る刃がぶつかり合う!私はジンオウガと視界を共有しているから、マガイマガドがどのような軌道で、どのような動きで斬撃を繰り出してくるのかがよく見える。さらに動きもリンクしていることで、より正確にマガイマガドの攻撃を捌くことができる!

 

「グルッ……!」

 

「うぐっ!」

 

痛覚も共有しているから、ジンオウガのダメージは私にも伝わる……けど、それがなんだ!私はジンオウガと一緒に戦っているんだ!!ならばこの程度の痛みくらい、受け止められないでなんとする!!

 

「私たちに……!!」

 

『不可能なんてねぇ!!』

 

「もっともっと強く!!」

 

『もっともっと高く!!』

 

「『限界の!!その先へぇぇぇぇぇ!!』」

 

突然、雲一つない晴天の空から雷が落ちてきてジンオウガに直撃した。けど、私には何も感じられない……いや、違うな……。

さっきよりもずっと近くに!ジンオウガを感じられる!!

 

「なんだ!?どこから雷が……」

 

「……!!みなさん、あれを!!」

 

煙が晴れた、その先で。ジンオウガはしっかりと佇んでいる。だが、その姿は大きく変化していた。

まず、爪や角は大きく、そして鋭くなりより強力な形へと成長した。次に前足や後ろ足、しっぽなどの黄色い甲殻は空色に変化していて、黒い稲妻模様が所々に走っている。碧色の鱗は銀色に変化しているし……特に毛の変化がすごい。前足と後ろ足の毛は私がお母さんのお下がりで使っていた髪留めと同じ黄色、後頭部から背中にかけては私の髪とお揃いの濃紺に変わっている。さらに尻尾の付け根からは今まさに巻いているマフラーと同じ赤と、まるで私の姿を投影したような姿になっていた!

 

「これは……!!」

 

「ついに!ついにきずなへんげを極めたね、ショウ!!」

 

「姉様!それは本当ですか!?」

 

「うん!私が知ってるきずなへんげ使いも、相棒のポケモンにそのトレーナーの姿を映したような容姿をしていたと聞く……今のジンオウガの姿が、ショウの姿を映したものだとすれば!」

 

「これが……ショウのジンオウガの完成形、ってわけだな!」

 

すごい……目の前にいるのに、まるでジンオウガがすぐ隣に立ってくれているみたいだ!これが、きずなへんげの力!!

 

「やってみせるよ、ジンオウガ!」

 

『なんとでもなるはずだ!!』

 

「極みだと!?」

 

あのヒューイさんも度肝を抜かれたように驚いている。というか、さっきから聞こえているあの不思議な声……やっぱりジンオウガのものなのかな。そのジンオウガが、ゆっくりとこっちへ振り返る……目があったその時、見たことのない景色が見えた気がした。

同じ髪色の、仲のいい姉弟かな……ウチにも置いてある同じ色のswitchで、仲良く遊んでいる様子が見えた。……なぜだろう、あの二人、特に女性の方を見ていると懐かしさがこみ上げてくるような――。

 

「見事だ」

 

「……!」

 

アカイさんの言葉で、現実に引き戻された。……もうちょっと見ていたかったな。

 

「実に素晴らしい……随分と姿が異なるが、銀の鱗と黒の模様は【極み吼えるジンオウガ】に似ている。それが、新しい【極み吼えるジンオウガ】なのだな」

 

「……いいえ、違いますよアカイさん。この子はもう、完全に新しいジンオウガです」

 

「ほぅ……確かに、既存の概念を突き破る新たなジンオウガと言えるだろうな。では、問おう……君はそのジンオウガを、なんと呼ぶ?」

 

なんと呼ぶ、だって?そんなの最初から決まってる!

 

「……この子は私との絆によって、新しい扉を開いた。アカイさんの言う無限の可能性、それを自ら掴み取りに行く力を!そしてその力は、私達を未来を導く力!!故に――」

 

名付けよう!その名はっ!!

 

「【極み照らすジンオウガ】!!」

 

「ウオオオオォォォォォォォン!!」

 

ここからが本当の勝負だ!!

 

 

 

 




ヤバい、スランプかもわからん……何も降りてこない……!
それもこれもスーパーマリオRPGが楽しすぎるのがいけないんだ!せっかく練った構想も吹っ飛ぶくらいに夢中にさせやがって!クリアするまで寝かせねぇからな!!

ジンオウガ希少種の詳細は次回の前書きに持ち越します。


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その血の運命~前世より"ごきげんよう"

タイトルで壮大なネタバレ(?)をぶち込んでみる。いや、ネタバレかどうかも怪しいね、これ。





決戦の覚悟で臨んだアカイさんとのバトル……三本先取ルールでは私の勝利に終わったけど、私はそのままかつて辛酸を舐めさせられたマガイマガドへのリベンジに挑むことにした。

その過程で、私はついにきずなへんげを完成させることに成功した!新しく生まれ変わった姿、【極み照らすジンオウガ】となったことで、私はより心に近い距離でジンオウガを感じられる……これなら、メガマガイマガドにだって勝てる!

 

『よっしゃぁああっ!やってやろうぜ、ショウ!!』

 

「もちろんだよ、ジンオウガ!見せてやろうじゃん……私とあなたの力を!!」

 

『応っ!!』

 

よしっ、ジンオウガもやる気十分だ!負けないぞ!

 

「……ショウのやつ、さっきから誰と話してるんだ?」

 

「誰って……そりゃあジンオウガですよ、ニールさん。他に誰がいるんです?」

 

「ちょ、ちょっと待てシズカ……ジンオウガはモンスターだぞ?ジンオウガがショウの言葉を理解しているならまだしも、その逆はさすがにありえないだろ」

 

「さぁ、どうでしょう?今の二人は絆の力で心身共に一つとなっています。案外、テレパシーに近いものを感じているのでは?」

 

「そういうものか。……ん?二人?ジンオウガは人間では……」

 

「(頑張ってショウ、光輝さん……今の二人なら、きっと勝てます)」

 

心から理解できる……これが、ジンオウガの心、ジンオウガの気持ち、ジンオウガの思考……すべてが伝わって来る!これがジンオウガなんだね……。

 

『イェーイ!お前ら見てるかー!どうだ?この姿、美しいだろ?当然だ、ショウリスペクトのこの意匠!すごいぜ……チビッ子が熱中するわけだ。肉親は、身内の能力を過小評価する癖があるというが、ありゃ嘘だな。見事ショウをここまで育ててくれた!才能の塊の人間を育てて、なんとするか!やろうぜショウ!君が俺になるなら、俺は……俺も、君になる……!マガイマガド、覚悟しろよ……この猫野郎!お前を殺す……今の俺たちはかーなーり、強い!この一撃、死ぬほど痛いぞ。お前は俺達に勝ってるんだ……悪く思うな。一回は一回だ。うーん、セリフが噛み合うと気分がいい!さ、戦闘をしに行くぞォ デッデッデデデデ(カーン)』

 

……ちょっと、バトルに集中してもろて。

 

「フッ……フハハハハ……ハーっハッハッハ!!」

 

「アカイさん?」

 

「流石、流石だ……見事、という他ない。かくなる上は、俺も本気で殺らせてもらおう。これよりは一切容赦しない。君への負荷など鑑みることなく、全力でジンオウガを叩き潰す。殺意と敵意をもって君と相対し、撃滅する」

 

「……なるほど、本気で……」

 

「あぁ……本気で、殺してやる……」

 

その瞬間、アカイさんの殺気というか、圧が私に襲いかかる。ジンオウガも感じ取っているようで、冷や汗を流しているのが感じられた。

……というか、アカイさんの背後に紅いミラボレアス、ミラバルカンが見えたような……?

 

「ヤバイですわ、姉様!」

 

「くっ……アカイもいよいよ、本気を出すみたいね……!」

 

「大変だねショウも」

 

「殺してやるぞヒューイ」

 

「Σ(゚д゚lll)」

 

「なんで!?なんで俺なの!?」と騒いでいるヒューイさんを他所に、アカイさんの闘気がメガマガイマガドにまで乗り移ったかのように戦意が高揚している……気を引き締めないと、本当に持って行かれそうだ。

 

「さあ……始めようか!マガイマガド!」

 

「ジンオウガ!」

 

「ヴルガアアァァァ!!」

 

「ワオオオォォォン!!」

 

「「きりさく!」」

 

 

推奨BGM

【蒼鬼序章~蒼鬼テーマ】~新 鬼武者 DAWN OF DREAMS~

 

 

まずは小手調べ。完全体になったのはこれが初めてだから、これまでの未完全状態とどう違うのか、確かめないと!

ジンオウガが右足で切り込めば、メガマガイマガドも右足で応戦してきた。雷爪と腕刃がぶつかり合い、火花を散らす。一度弾かれ合うが、メガマガイマガドはすぐに左の腕刃を振り上げてきた。私が咄嗟に上体を反らせば、ジンオウガも体を反らして掠めるように回避する。そのまま、ジンオウガと一緒に頭を突き出せば、メガマガイマガドに頭突きを食らわせられた!だが、反撃に振るわれた右の腕刃は躱しきれずに食らってしまった……痛い!

 

「ガウゥッ!ワオゥン!(……ってぇな!ショウ、平気か!)」

 

「私は大丈夫!もっと攻めていこう!雷光閃弾!!」

 

「ワオォン!(よっしゃあ!)」

 

「ちっ、鬼火弾!」

 

「グルオァ!」

 

ジンオウガから放たれる雷撃弾がメガマガイマガドに命中!反撃の鬼火弾が迫って来るけど……!

 

「なんのぉ!」

 

「ワン!(無駄ァ!)」

 

私の腕とともに突き出されたジンオウガの前足が、鬼火弾を受け止める!!

 

「なに!?」

 

「返すわ!」

 

「ワオォン!(SFFだ!)」

 

「グルァ!?」

 

「跳ね返した……いや、投げ返したのか!」

 

鬼火弾はメガマガイマガドの足に当たって爆発!その衝撃でメガマガイマガドは転倒した!

 

「畳み掛ける!轟雷跳弾!!」

 

「ワオゥン!(押し潰す!)」

 

「避けろ!」

 

「グルァ!」

 

全速で駆け出し、一気に跳躍して押し潰そうとするが、間一髪でメガマガイマガドが起き上がり避けられてしまった!

 

「怨嗟突き!」

 

「グルオラ!」

 

「(腕で防ぐ!)」

 

「ワン!(間に合わせらぁ!)」

 

ジンオウガも素早く立ち上がりつつ、腕に電気を集めて盾を形成すると怨嗟突きを受け止めた!……が、急ごしらえだったからなのか大勢が悪かったのか、それでも吹っ飛ばされてしまったけれど。

 

「ジンオウガ、大丈夫?」

 

「ワンワン!ワオォン!(モーマンタイ!屁のツッパリはいらんですよっと!)」

 

おお、言葉の意味はよくわからないけど、とにかくすごい自信だ!……で、実際のところどういう意味?

 

「(いや、知らん)」

 

知らんのかいっ!

 

「まだまだ余裕そうだな、ショウ!かえんほうしゃだ!!」

 

「グオラアァァァ!」

 

「かみなり!」

 

「ウオォォォン!(ふんぬらばー!)」

 

かえんほうしゃとかみなりの激突!爆発が起こって視界が遮られる!

 

「(どうする、ショウ?動くか?)」

 

「(そうだね、機先を制するよ!)でんじほう!」

 

「ワオン!(よしきたっ!)」

 

ジンオウガから放たれたでんじほうは、まっすぐメガマガイマガドへと飛んでいく!煙を突っ切った段階で、アカイさん達もようやく気が付いたようだ!

 

「当たれば麻痺か……!マガイマガド、れんごくだ!」

 

「グルアアァァァァ!!」

 

相手を炎で包み込むれんごく……それを防御に使うなんて!でんじほうは炎に巻かれて消滅……だが!

 

「尖衝雷閃!」

 

鬼炎(きえん)走駆(そうく)!」

 

ジンオウガが電撃の衝角を作り出せば、メガマガイマガドは鬼火で巨大な鬼面を作り上げる。双方、同時に突撃し、ジンオウガの衝角をメガマガイマガドの鬼面が口を開けてその顎で受け止めた!炎と雷が周囲へ飛び散り、状況は押し合いへと変化した!

 

「うぐぐ……ま、負けるかぁ!」

 

「ワウン!ウオオォン!!(力勝負で!負けるわけにはいかないぜ!!)」

 

「やるなぁ、ショウ。そしてジンオウガ!」

 

「グルルル……!」

 

この拮抗状態はいつまで続くか……そう思い始めた頃になって、ようやく技が臨界を超えたようで爆発を起こした。弾け合い、再び距離ができた。さて、どう攻めようか……。

 

「こちらから仕掛ける!龍怨螺旋突き!」

 

「グルオラァ!」

 

こちらが攻め手を考えている間に、アカイさんは既に指示を出し終えている!

 

「(直撃コース……)」

 

「避けてみせて!」

 

突撃を開始するジンオウガ。迫る尾の槍を、次々と回避する!

 

「軸線を合わせて……」

 

「(足と!!)」

 

「同時攻撃を!」

 

「(なんだ、動きが急に……!)鬼怨斬!」

 

二撃、三撃、四撃、五撃、六撃……七撃目を前方斜めへ跳躍回避しつつ、雷光閃弾を対象の向こう側へ。

着地、放電しつつ突撃。対象がこちらへ振り返り……直後、放電に引き寄せられて雷光閃弾が反転。

 

「(今迄の様には行かねぇ!)」

 

「そうでしょ?ジンオウガ!雷鳴拳!」

 

攻撃は雷鳴拳。かみなりパンチを超える、霹靂の拳。腕刃と激突、迫る雷光閃弾が尻尾で打ち払われた……ここ!

 

「腕を引いて」

 

「(肩、借りるぜ)」

 

「「跳ぶ!/(跳ぶ!)」」

 

受け止められた右足を下げて迫り合いをキャンセル左足を対象の肩に乗せて、そのまま跳び上がる!!

 

「(もっとだ……かみなりパンチよりも、プラズマフィストよりも、雷鳴拳よりも強く!強い、強い稲妻の拳を!)」

 

「(ぶち込んでやるぜ、ショウ!)」

 

高く跳んだジンオウガが、辺り一面に雷光閃弾を放ち……それを、再び自身の右前足に収束する!昼光色よりも、さらに明るい……もはや純白とも呼べる純粋な色に染まった電撃が、ジンオウガの右前足を包み込む!

体を捻って構えに入れば、電撃によって形成された足は一気に巨大化する!!

 

「いっけえぇぇぇ!かみなりパンチィ!!」

 

「ウオオオォォォォォォン!」

 

大回転で勢いをつけて、メガマガイマガドの背中に思い切り拳を叩き込む!!瞬間、激しい閃光がフィールドを包み込み視界が真っ白になった!!

 

「うわあああ!?」

 

「こ、これは凄いな……!」

 

「師匠、大丈夫ですか!?」

 

「俺は平気だ。シズカも大丈夫そうだな」

 

「(姉様を心配するのはアタシの役目なのに!!)」

 

先輩やシズカさんらが必死に耐えている中、ヒューイさんとシロちゃんは平然としている……やっぱりあの二人だけ、まるで別次元だ。普通じゃない。

ジンオウガが閃光から飛び出してきた。電撃が収まった先では、メガマガイマガドが肩で息をしている。だいぶ追い詰めることができたようだ。

 

「やるな……それでこそだ、ショウ。こちらのマガイマガドももはや限界に近い……ここいらで一つ、決着としよう」

 

「……わかりました」

 

「では」

 

「はい」

 

「「奥義装填!!」」

 

アカイさんはマガイマガドが限界だと言っていたけど……表に出していないだけで、実は私たちもいっぱいいっぱいになりそうなのだ。これまでのバトルからは想像できないほどに疲労感がある……それに加えて、ジンオウガが受けたダメージのフィードバックもあるから、余計に疲労感を感じやすいのだ。

なるべくポーカーフェイスを維持しているけど……アカイさん、意地悪そうな笑顔をしてるなぁ。あれ、こっちの限界に気づいてるよね?本当、ズルい人だ。

 

「大鬼火怨み返し!!」

 

「雷迅っ!!」

 

お互いにさらに距離をとり、鬼火を纏ったメガマガイマガドが宙へ躍り出て、ジンオウガも駆け出し加速する。鬼火の隕石と化したメガマガイマガドと、両前足を揃えて雷の矢と化したジンオウガが、激突する!!

 

「ぐうぅぅぅ……!」

 

「ウウゥゥゥ……!」

 

「「いっけえぇぇぇ!/(いっけえぇぇぇ!)」」

 

最後の最後まで!全力で力を振り絞る!!最後、わずかにメガマガイマガドを押し返したかと思うと、その直後に爆発を起こした。

 

爆発の光に目を焼かれそうになったその時、私の眼前には別の景色が広がっていた…….

 

 

 

 

 

「んじゃあ、来年までね」

 

《は~い。バイバイ、コウちゃん》

 

 

 

 

「今年はそっちに帰れそうだよ」

 

《楽しみだねぇ、お正月!》

 

 

 

 

「ん……?」

 

「おい……!ヤバい、逃げ――」

 

 

 

 

「いやああぁぁぁ!!コウちゃん、コウちゃん!なんで!どうしてぇ!?」

 

 

 

 

「ウオオオオォォォォォォォンッ!!」

 

 

 

 

「コウちゃん……私も、そっちに……逝くねぇ……」

 

 

 

 

「じん……おうが……。『ジンオウガ』……?」

 

「ガオウッ!」

 

 

 

 

「(……あぁ、そっか。私は、ジンオウガは……お母さんは……)」

 

少し惚けていると、爆煙の中から影が二つ落下した。一つはジンオウガ、一つはメガマガイマガドだ。ただ、メガマガイマガドはメガシンカが解除されているから、戦闘不能は必至。すると、私のジンオウガが立てるかどうかにかかっている。

 

「ジンオウガ……!」

 

「立つか……倒れるか……!」

 

「(光輝さん……)」

 

「……て……立て……立って、立ち上がれ!ジンオウガ!ジンオウガァ!!」

 

私の心はまだジンオウガと繋がっている……!ここで私が呼びかけなくちゃ、誰がジンオウガを起こすというんだ!!

お願い……頼む……私はあなたを信じてる!だから立って!ジンオウガ……!

 

 

光輝叔父さん!!

 

「……ワン(……呼んだ?)」

 

ムクリ、とジンオウガが起き上がった。上体を起こし周囲を確認して、倒れるマガイマガドを見て、それからゆっくりと時間をかけて四肢で立ち上がった!!

 

「やった……やった!やったよジンオウガ!!」

 

「ワンワン!」

 

「シロ」

 

「ん。……マガイマガド、戦闘不能!ジンオウガの勝ち!よって勝者、ショウ!!」

 

シロちゃんから勝利宣言が出された直後、ジンオウガの姿が【金雷公】に戻った。さらにその直後、ジンオウガがぶっ倒れてしまい、私も一緒にぶっ倒れた。なんていうか、うん……すっごい疲れた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

「ショウ!だ、大丈夫か!?」

 

「せ、先輩……はい、ただめちゃくちゃ疲れました……」

 

「つ、疲れ……よかった、もしかしたらまたショウの身に何かあったんじゃ……」

 

「えへへ……もう今更何が起こっても、私は驚きませんけどね」

 

「俺が!心配するの!!」

 

先輩がいの一番に駆け寄ってくれた……嬉しい。ちょっと意地悪しても許してくれるかな?

 

「お疲れ様です。かっこよかったですよ」

 

「ワン!」(*゚∀゚*)ニパー

 

「……兄さんの次くらいには」

 

「…………」( ゚_゚ )スン……

 

「ふふっ、ここは譲れませんから」

 

シズカさんはジンオウガに話しかけてた。……敬語で話してるけど、やっぱりそういうことなのかな。あの景色の中で、一瞬だけど見えたシズカさんに似た男の子……。

 

「いやはや……負けてしまったか。すまんな、マガイマガド。俺もどうやら、まだまだ青かったようだ」

 

「グルル……」( ´゚д゚`)

 

「……は?"紅龍が青いとは片腹痛い"?……処すぞ」

 

「グオラァ!?」Σ(゚Д゚;!

 

「アカイさん」

 

「む」

 

私は先輩に肩を貸してもらいながら、アカイさんの方へ歩いていく。アカイさんはすぐにこっちに気づいてくれて、マガイマガドをボールに戻していた。

 

「アカイさん、ありがとうございます。おかげで私は、忘れてはならないことを思い出せました。それに、ジンオウガとのきずなへんげも……」

 

「あぁ、こちらこそな。侮っていたわけではなかったのだが、勝機も勝算もあったのはたしかだ。だが、その上で負けた……完敗だ、これ以上にない完敗だった」

 

「アカイさん……」

 

「……あとは、黒龍襲撃に備えて各々で鍛えるだけだ。だが、黒龍に挑むとなれば、必ず奴が立ち塞がる」

 

「クロノ、ですね」

 

「ああ」

 

クロノ……次に戦う時が、彼との決戦になる。クロノを乗り越えれば、その先はミラボレアスだ。

 

「私、絶対にクロノに勝ちます。そのためにも、ジンオウガ達も私自身も、全力で鍛えます!」

 

「あぁ、その意気だ。君には期待しているんだ……頑張ってくれ」

 

「はい!」

 

ひとまずこの場は解散になった。その夜、私は一人で放牧場を訪れた。

 

「ジンオウガ」

 

「ワン?(どしたん?)」

 

あれから、ジンオウガとは簡単ではあるがテレパシーのようなやり取りができるようになった。だからこそ、ジンオウガに聞きたかったんだ。

 

「ジンオウガって、お母さんの前世でお母さんの従兄弟だったコウキさん?」

 

「…………」

 

ジンオウガは即答してくれなかった。けど、しばらくしてから答えが返ってきた。

 

「(……敵わんなぁ、ショウには。そうだぜ、俺の前世は稲妻光輝。ショウのお母さんであるヒカリの前世、稲妻光梨は俺の従姉妹さ)」

 

「そうだったんだ……」

 

「(驚いたか?)」

 

「うん、すっごく」

 

ジンオウガはまるで悪戯っ子のようにニヤッ、と笑った。私は……。

 

「ジンオウガ……ううん、コウキ叔父さん」

 

「(おう、ショウよ。俺の名前は『光り輝く』と書いて光輝ってんだ。ちゃんと発音しておくんなまし)」

 

「お、おくんなまし……?えっと、わかった。光輝叔父さん、今までごめんなさい」

 

「(え、なんで?)」

 

「だって、私……叔父さんのこと何も気づかないで、無茶なことも指示したり、出会った時なんて一番迷惑かけちゃったし……」

 

私がやりたかったことは、叔父さんに謝ることだ。それはもうとにかく迷惑をかけまくってるし、クロノのイビルジョーとの戦いの時なんて、角を折られる重傷を負わせてしまった。とにかく、まずは謝ることから始めたいと思っていたので、これ幸いと早速行動に移すことにしたのだ。

 

「(ショウ……)」

 

「うん……」

 

「(このおばかちん)」

 

「へっ?……あ痛っ!?

 

いきなり罵倒されて驚きに顔を上げると、すかさず鼻先で小突かれた!うぅ……なんか、すごく覚えがある光景……。

 

「(寝言は寝てから言うもんだぜ?迷惑なんていくらでもかけな。前世での関係とはいえ、俺たちは身内……つまりは家族だ。家族からかけられる迷惑なんて、タチの悪いもんじゃなけりゃ大歓迎さ。

そりゃあ、死んだらモンスターで前世の従姉妹の娘がやってきてと、波瀾万丈が可愛く見える大展開ではあったが、それも人生のスパイスってやつさ。……ん?今は人間じゃないから人生じゃなくて竜生か?)」

 

なんだか、こういうところはお母さんにそっくりだ……これが、血の繋がりなんだね。

 

「ふふっ……それ、今大事なこと?」

 

「(大事だぞ!己が何者かという定義が乱れた日にゃ、明日には自我崩壊を起こすかも知れないだろ!?だから、どんな生き方になろうが俺は、"俺"が"俺"であることを誇りに思っている!……まぁ、前世から置いていったものに関しちゃ、申し訳なさもあるが)」

 

「前世……」

 

そうだ、前世……是非とも叔父さんから聞いてみたかったんだ。

 

「光輝叔父さんの前世の話、聞きたいな」

 

「(ええんか?たかだか十七年の短い人生だが……)」

 

「それでも、だよ。光輝叔父さんから見た、前世のお母さんの話も聞きたい」

 

「(それなら、お相子だな。俺も、シンオウ地方で転生したミツ姉のことを聞いてみたかったんだ。……そうだ、あいつらも呼ぶか)」

 

叔父さんはそう言うと、牧場の奥へ歩いて行った。しばらくすると、叔父さんはゼルレウス達を連れてきた。

 

「(語り部がいるなら、聞き手もいるべきだろ?)」

 

「そうだけど、どうして……?」

 

「(こいつらみんな、俺のダチだからな――いでぇ!?)」

 

叔父さんがそう言って振り返った直後、ゼルレウスに頭突きされていた。それからグラビモス、ベリオロス、ラギアクルスと揃ってボコボコにしばき始めてしまった……。

 

「(いて、いてぇ!やめろオメェら!何すん――いだぁ!?やめ、ヤメルルォ!!)」

 

「あぁ!待って待って!みんなストップ!ラ・ロ、手伝って!」

 

「グアォン」

 

ラ・ロと協力してなんとかゼルレウス達を引き剥がすことができた。……叔父さん、ピクピクしてるけど……大丈夫、かな?

 

「えっと、叔父さん?大丈夫……?」

 

「(ふ、ふふ……大丈夫か、だと……?この俺をぎゃふんと言わせたければ、その三倍は持って来い。……ぎゃふん)」

 

「ダメみたいだね」

 

……あ、ゼルレウス達が驚いた顔をしてる。そういえば、言ってなかったっけ。

 

「あのね、私。ジンオウガとテレパシーみたいに話ができるようになったの。多分、きずなへんげの影響……かも。それで、ジンオウガが私のお母さんと前世で従兄弟だった光輝さんだってわかったの」

 

「(まぁ、みんな知ってるけどな)」

 

「……へ?」

 

どういうことなのか叔父さんに聞いてみると……衝撃の真実が明かされた!!なんと、ゼルレウス達は……いや、ゼルレウス達も前世では人間であり、さらに光輝叔父さんの友人だったというのだ!!

ゼルレウスの前世は、赤羽焔さん。赤い色が大好きなヒーロー気質な人で、幼馴染もいる人生勝ち組(?)らしい。ゼルレウスって青いけど、それはいいのかな?

ラ・ロの前世は、陸上葵さん。さっき言った焔さんの幼馴染さんで、焔さんとは亡くなった時期はズレてたそうだけど、転生後に再会できたらしい。……うん、愛が重い理由がよくわかったよ。

グラビモスの前世は、岩木剛太さん。なんと2回り年上のお兄さんの子供たち十人越えの人数の面倒を見ていたらしい!どうりで面倒見がいいわけだ……。

ベリオロスの前世は、氷室剣介さん。大企業の御曹司だったそうだけど、そんな実家に嫌気がさして飛び出すゴーイングマイウェイなところもあったみたい。それと、前世では謂れ無きロリコン疑惑を度々向けられていたらしい。……今生も十分ロリコンな気が……いや、言わないでおこう。

そしてそして!ラギアクルス!前世の名前は、水橋流静!そう、シズカさんのお兄さんの流静さんだったのだ!!妹さんにはお世話になってますと頭を下げたら、「こちらこそ」とばかりに頭を下げてくれた。流静さんはこの場の中では一番のインテリらしく、学校の偏差値も一番だったみたい。

そして、この場にはいない……稲妻光梨。前世では光輝叔父さんの従姉妹で、今生では私のお母さん。とても身近なところで、身近な人を亡くした人達……こうして転生後に出会えるなんて、なんて因果なんだろう。

 

「(ちなみに、結果論とはいえ俺達が転生できたのはアルセウスのおかげだぜ)」

 

「嘘!?」

 

「(マジデジマってな。アルセウスがこの体をヒスイに持ってきたとき、ちょうど死んでた俺らの魂が入り込んだらしい。それで結果的に転生できたってわけよ。あ、葵は違うみたいだ。葵の転生にはミラルーツが絡んでるらしい)」

 

「アルセウス……ミラルーツ……」

 

アルセウス……一瞬でも邪神とか考えてごめん。家族と再会させてくれてありがとう!そしてミラルーツはシロちゃんを介して色々と助けてくれてありがとう!!

あ、シズカさんは私よりも先に皆の正体に気がついたらしい。……愛の力ってすげー。

 

「(ショウ、俺達のことだが……未来を思えば、俺達の存在は抹消したほうがいいと思う)」

 

「……物理的にじゃなくて、歴史的に消すってこと?」

 

「(そうだ。自分で言うのもアレだが、俺達は普通のポケモンよりも強すぎる。そんな存在がいつまでものさばってちゃあ、既存の生態系を壊しかねない。ヒスイに骨を埋めるにせよ、どこか遠い地方へ行くにせよ、俺達の存在が未来のシンオウ地方にまで伝え残るのはまずい。どっかで聞きかじった輩が、俺達を探そうとするかもしれん)」

 

「……そうだね」

 

「(骨も残さないほうがいいだろうな。化石になって復元されちゃあ、たまったもんじゃない。ラベン博士に交渉して、全てが解決したあとで俺達モンスターのデータを破棄してもらえるように頼んでくれ)」

 

「……わかった」

 

「(そんな不満げな顔をするんじゃない。これも未来のため……ショウとミツ姉が生きる、シンオウのためだ)」

 

「わかってるよぉ」

 

そうは言っても、やっぱりもったいないと思う。確かによからぬ人はジンオウガ達の痕跡を探すだろうけど、きっとよからぬ人ばかりじゃないと思う。例えば、シンオウチャンピオンのシロナさん。考古学者でチャンピオンのあの人なら、きっとジンオウガ達の情報を悪用したりはしないはずだ。

 

「……それを言ったら、ダイケンキ達もどうしよう。あの子達も普通のポケモンから随分とかけ離れちゃったし……」

 

「(あー……それなら、どこか別の地方に連れ出すか?データの破棄は必須だが、生涯くらいは保証されてもいいだろ。ヒスイ以外の何処か遠く……人が容易に近寄れない場所がいいな)」

 

「わかった。全部終わったら、そんな場所を探してみるね」

 

「(頼んだぜ)」

 

ダイケンキ達の引越しも必要かぁ……過ぎたるは猶及ばざるが如し、とも言うし、彼らの存在が未来で新たな火種になっちゃ笑い話にもならない。引越しは要検討、だね。

 

「今度はシズカさんも一緒に話したいな」

 

「(俺達はいつでもいいぜ。……おい、流静。いいじゃねえかよ、せっかく縁が繋がったんだ。静香もいい加減に、元の世界のことを隠しながらはしんどいだろうしな)」

 

「そうですよ、流静さん。私はお二人兄妹に助けられてきました。その時のお礼もまだですし、まだまだ話し足りないことばかりです!シズカさんにも、もっと遠慮なく話をして欲しいですし……」

 

ちょっとあざとげに小首を傾げて「ダメですか?」と言ってみれば、流静さんは「ぐぬぬ」と言いたげに唸っている。……あとひと押しか?

 

「何してるの、ショウ」

 

「あ、シズカさん」

 

「」(。Д。」)」

 

あ、流静さんがひっくり返った。

 

「随分と遅くまで起きてるね。何してるの?」

 

「光輝叔父さん達と話をしてました」

 

「……なんて?」

 

シズカさんにもテレパシーで光輝叔父さんと繋がり、そこから芋づる式にみんなの前世を知ったことを話した。すると、それまで無表情に近かったシズカさんが表情を崩した。

 

「そっか……じゃあ、私も遠慮はいらないね。ショウ、改めてよろしくね」

 

「それが素なんですか?なんだか、可愛らしいですね」

 

「(。_。(゚_゚(。_。(゚_゚ )」

 

「ちょ、やめてよ……って、兄さんも頷いてないで!」

 

シズカさん……ううん、静香さんの表情もすっかり豊かになって話してくれるようになった。この繋がり……なんだか、暖かいな。

 

「不思議ね……またこうして知ってる人同士、あるいはその関係者と出会えるなんて」

 

「それ、私も思いました。静香さんと流静さんには兄妹揃って助けていただいて……感謝してもしきれないです」

 

「それはお互い様だよ、ショウ。私もショウと出会って、そしてショウについていかなかったら、兄さんと再会することなんてできなかった……。だから私もショウに、ショウとの出会いに感謝してるの。ね、兄さん?」

 

「グルラァ」

 

「(もちろん、俺も感謝してるぜ。前世で悲惨な最期を迎えたミツ姉も、第二の人生で家庭を築いて幸せに生きてるって知って、心底安心してるんだ。俺がミツ姉を泣かせたようなもんだからな……だから、今が幸せそうで良かった。ありがとうな、ショウ)」

 

「うん!!」

 

……あぁ、こんなにも胸が暖かくなったのはいつ以来だろうか。この幸せを、絶対に守らなきゃいけない。そして、願わくば……お母さんと光輝叔父さんを再会させてあげたい。一度だけ、一日だけでもいいから、未来のシンオウへ連れていけないかな……。

 

「(ショウ)」

 

「あ、うん。なに?」

 

「(俺達は絶対に負けない。必ずミラボレアスを倒す。だから、ショウも俺達を信じてくれ。俺達とショウ達……力を合わせれば、必ずあんちくしょうだってぶっ飛ばせる!だから……勝とうな)」

 

「うん!」

 

私は、この月下に誓う。必ずクロノにも勝ち、ミラボレアスにも勝ち、このヒスイに……いや、世界に平和を取り戻してみせる!!

待ってろ、クロノ……次に戦う相手は、お前だ!

 

「(それはそれとして、ショウ)」

 

「なぁに?」

 

「(今度、テル少年も連れてきてくれ。ショウの家族として、一度話し合わないとな……!)」

 

「いや、何の話!?」

 

この後滅茶苦茶夜更けまで話し込んだ。

 

 

 

 




ついにショウにまで身バレしました……が、あまり支障がないようで安心ですね。叱り方が同じなのはさすが血族。

というわけで、ジンオウガ族の紹介です。

ジンオウガ希少種
種族:技巧牙竜種(竜盤目 四脚亜目 雷狼竜上科 ジンオウガ科 技巧種)
別名:天狼竜(てんろうりゅう)
英語表記:bright Zinogre
危険度:不明。可及的速ヤカナ検証ヲ求ム
狩猟地:塔の秘境
肉質・耐性タイプ相性
フェアリー/かくとう
弱点 火:◎ 水:× 雷:△ 氷:△ 龍:○
四倍:なし
二倍:ほのお、どく、ひこう、エスパー、はがね、フェアリー
半減以下:でんき、こおり、かくとう、いわ、むし、あく
こうかなし:みず、ドラゴン
等倍:上記以外全て

塔の秘境で新発見されたジンオウガの希少種個体。それまでまったく存在を認知されなかった希少中の希少。
ジンオウガの体の内、碧色は灰色、黄色は白に、体毛の白は青に変化している。さらに蓄電殻にあたる部位は電気の代わりに「光」を蓄えることができる「集光殻」になり、その神々しい輝きから【天狼竜】という別名が名付けられた。
全身から吸収した光を前述の集光殻に蓄え、一気に放出することで光の粒子を発生させることができる。この光を集める原理としては、新大陸で発見された導蟲の光を利用している。導蟲の特徴である特定の物質や匂いに反応して群がる性質を利用して導蟲をかき集め、そこから発せられる光を吸収しているらしい。そのことから、一説では「新大陸生まれのジンオウガが現大陸へ移動した個体」とも言われている。
また、周囲が粒子で満たされている状態で攻撃を受けた際、自らを光の粒子へと変化させて回避しつつ、瞬間移動もできる。その原理は『未だに不明』で、ギルドが総力を挙げて解明中である。
現在、情報提供のため捕獲者である赤衣の男と交渉中である。


【極み照らすジンオウガ】
メゼポルタギルド管轄域で発見された、雷狼竜ジンオウガの極めて特殊な個体である【極み吼えるジンオウガ】に限りなく似た姿の別個体。
【極み吼えるジンオウガ】と似た特徴を持つが、爪や角といった武器となる部位よりも特徴的な変化は、なんといってもその容姿である。
前足や後ろ足、しっぽなどの黄色い甲殻は空色に変化していて、黒い稲妻模様が所々に走っており、碧色の鱗は銀色になっているだけでなく、体毛の変化が特に著しい。前足と後ろ足の毛は黄色、後頭部から背中にかけては濃紺、さらに尻尾の付け根からは赤という、なんともバラエティー感あふれるカラーリングへと変化している。どうやらこれは操り手となる少女の特徴が色濃く表れているようで、少女が身につけているものや髪色が表れているそうだ。
このモンスターも要調査対象だが、肝心の操り手の少女とは連絡が付かず、またジンオウガも行方不明となっているため、目撃したハンターからの証言のみでこの記事を執筆するものとする。


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宣戦布告!!

物語もいよいよ大詰めです……!


ついにモノにしてみせた、きずなへんげ!ジンオウガとのシンクロ率もより高まり、なんとジンオウガとテレパシーができるようになった!

あれから二週間。ジンオウガ……ううん、光輝叔父さんとの会話のおかげで、お母さんにまつわるいろんな前世のお話を聞かせてもらうことができた。ゼルレウスの焔さん、グラビモスの剛太さん、ラギアクルスの流静さん、ベリオロスの剣介さん、ラ・ロの葵さん、ハンターの静香さん、私のお母さんの光梨さん……こうしていろんなところでいろんな縁が繋がって、一度は解れたけれどまた繋がることが出来た。……あぁ、お母さんに無性に会いたい。今この場に召喚して、みんなと再会させてあげたい。泣いて喜ぶお母さんが容易に想像できる……。

それにしても、お父さんと叔父さんの名前が一緒って、とんでもない縁もあったもんだ。

 

それはさておき、今私は放牧場に来ている。光輝叔父さんと話ができるようになってからは、もっぱら放牧場にいる私だ。叔父さんとの話が面白くて、特に用がなくても足繁く通ってしまう。

あ、テル先輩はまだ呼んでないよ。どう考えても叔父さんの親バカが暴走しそうだったからね。それどころか、先輩も私に隠れて(隠せてるとは言ってない)アカイさんと修行してるみたい。今じゃ、ヒューイさんも混じってポケモンを鍛えているようだ。……そのうち、先輩の手持ちポケモンもヒューイさんみたいになりそう。

 

『それは楽しみだなぁ。ま、ミツ姉仕込みのてぇんさいポケモントレーナーのショウには勝てんよ。せめて乱数調整を体得してからかかってこい』

 

「あんまり持ち上げないでよ、叔父さん。そういうの、慢心って言うんだよ」

 

『慢心せずして何が(チャンピオン)か!!』

 

「私、チャンピオンじゃないんだけど?」

 

あ~ヤバい、この中身のないスッカスカな会話が楽しすぎる。叔父さん達、前世じゃ呆れるくらいこんな会話をしてきたんだろうなぁ。……羨ましい……アルセウスに頼んだら、お母さんの前世の世界につなげてくれないかな?

 

「何考えてるのか容易に想像つくけど、やめたほうがいいよ。あの世界に行っても顔が割れてるの私だけだし、なんなら光輝さん達はプログラミング上の架空生物だから」

 

『おまけに説明すんのも面倒だしな』

 

「グオグオ」

 

「グアオン」

 

私の考えを読んだ静香さんに釘を刺され、叔父さんも静香さんに同意していた。その隣で焔さんと葵さんも頷いている。

 

「そんなことより、私はシンオウ地方に行きたいかな。今世の光梨さんに挨拶しときたいし」

 

「グラァ」

 

「あー……けど、私のパルキアは権能を失っているし、アルセウスも生きてるのかどうか定かじゃないし……」

 

「いや、死なないでしょあの邪神」

 

『いや、死なんだろあの邪神』

 

「ガオ」(´ー`)ウンウン

 

「……辛辣ですね、皆さん」

 

前々から気になってたけどあえて尋ねなかったんだけど……なんでみんなそんなにもアルセウスに当たりがきついの?そりゃ許可なく勝手に人を呼びつけておいて放任するし、具体的に何がどうとか説明もなく問題解決に当たらされたし、こっちが命懸けで手探りこいてジタバタあがいているのを見てただけとはいえ……。

 

『戦犯だろ残当』

 

「邪神でしょ常考」

 

「ヴルアアアアアアアアッ!!」

 

「あー!剛太さん落ち着いて!またじばくが暴発しちゃうから!あー!」

 

定期的にガス抜きしているとはいえ、メンバーで唯一のじばく使いだから!興奮しすぎると"じばく"ならぬ"ごばく"が起きちゃうから!世話好きで親身になってくれる剛太さんだけど、キレる度に体力減ってたらシャレにならないから!!

 

話は変わる。今度は静香さんが転生ではなく転移した件についてだ。

 

「ここしばらく、兄さんとひたすら討論を重ね続けたの。時空の裂け目か、ミラボレアスか、はたまたその両方か……私はミラボレアスが原因かなと思ってたけど、100%そうだというわけではないっぽい」

 

「やっぱり、ギラティナとウォロも絡んでます?」

 

「そうね。今代のミラボレアスは随分と用心深い……言えば、慎重な性格。時空の裂け目が利用できるかどうか、実験しようとしたのかもしれない。その実験に、私は巻き込まれたと考えている」

 

『……ってことは、シュレイド城に時空の裂け目が現れたのは偶然じゃねぇってことか?ミラボレアス自身が持つ時空渡りの力で、時空の裂け目を引き寄せたと?』

 

「グルオァ」

 

流静さんも頷いてる……アカイさんはミラボレアスが時空の裂け目の存在に気づいて、利用しようと計画したそうだけれど……。

 

『んー……するってぇと、どれもこれも計画的犯行ってわけか。やってくれたじゃねえか、あの黒龍』

 

「でも、ミラボレアスが時空の裂け目の存在に気付けたのは偶然だろうって、兄さんが。これ幸い、渡りに船とばかりに利用された……」

 

『アカイのでっち上げも、的を得ていたってわけか』

 

「いや、あの男のこと……多分だけど、気づいててあえてあの場で説明するまで黙っていた可能性がある」

 

『いやいやまさかそんな……いや、ありえるな』

 

たまたま見つけたものが掘り出し物で、利用価値があるから検証結果を踏まえて利用させてもらった、と……してやられたって感じだなぁ。

 

「でも、それじゃあなんで静香さんが?」

 

「グラァ、グルル……グルオラ」

 

『ふむ……なるほど』

 

「叔父さん、流静さんはなんて?」

 

『ミラボレアスが俺達の転生に気づいていたと仮定した場合、流静との縁を辿って静香に行き着いた可能性が高いってよ。んで、ミツ姉の転生もその流れを組む形だろうと』

 

「……つまり、ヒスイ地方に転生した光輝叔父さんの魂に引っ張られて……?」

 

『魂にも強度というか、レベルというか……とにかく、強さのような概念があってな。ミツ姉の魂じゃヒスイ地方にはたどり着けなかった……シンオウ地方に転生するのがせいぜいだったんだろう……』

 

「お母さん……」

 

『けど、おかげでショウが生まれて、時空を超えて家族と出会えたんだ。悪いことばかりじゃないとは思ってるさ』

 

「……光輝さんが考えてることを予想した上で言うと、私も悪くはないと思ってる。頭に"皮肉"の二字がつくのがクソムカつくけど、現状に満足できてしまった私にはとやかく言える資格はないし……」

 

静香さんの言いたいこと、すごくわかる。要するに、「いいことづくめな今が全部黒幕の手のひらの上という事実に心底腹が立つ」ってことだよね。そして、腹が立つけど今が充実していることも認めているから、ミラボレアスに対してどうこうは言えない、と。

 

「……そうだ!ショウに伝えておきたいことがあるんだった」

 

「伝えておきたいこと?」

 

「うん。これも兄さん達と議論してたんだ……クロノって奴の手持ちについて」

 

「クロノ……」

 

次が決戦となるであろう、クロノ……クロノが使うモンスターがどんなやつなのか、静香さん達は考えてくれてたのか。みんなが揃って顔を寄せてきたからちょっと手狭になったけど、構わず話を続けた。

 

「まず、第一候補は『イャンガルルガ』。ショウも話には聞いたことあるよね?イャンクックそっくりの、紫の竜よ」

 

「はい、クロノが移動手段として使っているところを見ました」

 

「よろしい。イャンガルルガのタイプ予想としては、ドラゴン・ひこう。肉質はみずとドラゴンに弱く、こおりに強く、ほのおとでんきが効かないわ。……ポケモントレーナーの視点としては何とも言えないけど、ハンター目線でならヒントはあげられる。イャンガルルガは『小型リオレイア』と思えばいいよ。リオレイアと同様に尻尾に毒を持ち、火を吐き空を飛ぶ。凶暴性ではあちらに軍配が挙がるけど、それだけ。タイプと肉食から弱点をちゃんと把握すれば、さっき言ったとおり『小型リオレイア』だと思って対処すればいいよ」

 

「なるほど……!」

 

すごくわかりやすいなぁ。ハンター目線での注意喚起もありがたい。

 

「次は、神域で見せたゴリラ顔……名前は『ガランゴルム』」

 

「ガランゴルム……」

 

「【剛纏獣】の別名を持つ牙獣種のモンスター。タイプ予想はくさ・かくとう。そして肉質だけど……すっごい面倒くさい」

 

「面倒?」

 

「ガランゴルムは怒り状態になる際に、より攻撃性を高めるために両腕に付着物を纏わせるんだけど、その前後で肉質の耐性に違いがあるの。両腕に何も纏っていない状態だと……ほのお・でんき・こおりに強くてみずとドラゴンが効かない」

 

「は?」

 

くさタイプがほのおとこおりに等倍でみず無効とか許されると思ってんの?審議だよ審議!

 

「そして、怒り状態になると両腕に付着物を纏わせる。右腕に可燃性の草や溶岩を、左腕に水分を含んだ苔を纏わせるようになるわ。怒りが高まれば、今言った溶岩と苔が混ざったような付着物を頭にも纏わせてくるようになるの。そして面倒なことに……付着物を纏った部位だけ(・・・・)、肉質による弱点が変化するわ」

 

「えぇ~……」

 

「溶岩を纏った右腕はみずとこおりに弱くなるけど、ほのおとでんきが効かなくなる。反対に苔を纏った左腕はほのおとでんきに弱くなるけど、みずとこおりが効かなくなる。頭に纏えばほのお・みず・でんき・こおり全部に弱くなるわ。あ、何を纏ってもドラゴンは効かないから忘れないでね」

 

「……強化?弱体化?」

 

「うん、言いたいことはわかる」

 

弱点が増えたり消えたり、でも纏わなければ五大属性のほとんどが効かない……そして、部位ごとに弱点が異なるということは、五大属性に限って言えば両腕がそれぞれ効かないタイプに対する盾の役割を持つことになる。でも……。

 

「ひこうタイプで殴れば関係ないですね」

 

「それを言っちゃいけない」

 

思わず二人して笑ってしまう。けど、クロノのことだからきっとひこう対策はバッチリのはずだ、警戒は怠らないようにしないと。

 

「それから、【鏖魔】か【臨界】も可能性があるんだっけ?」

 

「グルラ」

 

「……その名前、もしかして」

 

「そう、特殊個体……こっちで言うなら、メガシンカだね」

 

メガシンカ……やはり、来るか。

 

「【鏖魔】というのは、『ディアブロス』の二つ名個体で、【臨界】というのは『猛り爆ぜるブラキディオス』というブラキディオスの特殊個体の通称ね。

ディアブロスは【角竜】という別名を持つ飛竜種で、ブラキディオスは【砕竜】の別名を持つ獣竜種よ。ディアブロスは大きく発達した二本角が特徴で、砂漠地帯に生息することからタイプ予想はじめん・ドラゴンもしくはじめん・ひこう。ブラキディオスは火山地帯や寒冷地帯に出没するわ。タイプとしてはかくとうタイプは確定なんだけど……」

 

「あ、ブラキディオスは龍歴院でほのおとかくとうの複合だと判明してますよ」

 

「そうなんだ。ブラキディオスの肉質はみずとこおりに弱く、でんきとドラゴンに強く、そしてほのおが効かない。ディアブロスはみずとこおりとドラゴンに弱く、でんきに強く、ほのおが効かないよ」

 

さらに話を聞いたんだけど、ディアブロスとブラキディオス……この二頭はかなりヤバさが際立つモンスターだ。ディアブロスは凶暴極まりなしという他なく、特に二つ名の【鏖魔】は極みに極まった狂暴生物で、何人ものハンターを帰らぬ人にしてしまったそうだ

そして、ブラキディオス。こっちは原種の時点でヤバいと感じた。爆発性の粘液を分泌するどころか、それを腕や頭に塗ったくった上でこちらを殴りつけるなどの行動で粘液を擦り付け、爆殺してくるらしい。獣竜種としてはフットワークもかなり軽いらしく、さながらボクサーのようだと静香さんは言っていた。あと、リーゼント。……リーゼント?

 

「どちらかは確実にメガシンカして、特殊個体にしてくるはずだよ」

 

『どっちだろうが、危険であることに変わりはねぇ。頭に叩き込むんだぞ、ショウ』

 

「うん、叔父さん。静香さん、他には?」

 

「そうね……素早さの高いモンスターは用意してそうだよね。例を挙げるなら、やっぱりルナガロンか」

 

「ガロン?オドガロンと同じ牙竜種ですか?」

 

「さっすがショウ!察しがいいね」

 

『我が従姉姪のトレーナー力は世界一ィィィィーーーーッ!勝てん相手はいないイイィーーーーーーッ!!』

 

「叔父さん、おすわり!」

 

『わん!』

 

光輝叔父さんは時々だけど、『意☆味☆不☆明』なこと言い出す……静香さんはミームがどうのこうのって言ってたけど……どういう意味なんだろう?

あと、私は未だに両親に勝てないんですがそれは。

 

「ルナガロンは【氷狼竜】の別名を持つ狼のモンスターよ。別名通り冷気を操る力があり、体温調節のほかに戦闘能力としても活かされてるわ。その体温調節を止めることで体温を上昇させて筋肉を膨張しつつ、全身に氷を纏うことで重心位置を変えて二足歩行での行動を可能とするわ」

 

「歩くんですか!?」

 

「歩くのよ」

 

なんだろう、いきなり興味を深いこと言うのやめてもらっていいですか?さっきからずっと見てみたくてたまらないんですけど!あと、光輝叔父さんと同じ狼だし。

 

「タイプ予想は牙竜種らしくかくとう複合のこおりタイプ。そしてこおりタイプらしくほのおが苦手。ただし、でんきとドラゴンは効きにくいし、みずとこおりは効かない。しっかりほのお技で攻め立てれば、どうにでもなるけど……」

 

「ゼルレウスやグラビモスで戦うには、機動力が不安ですね……」

 

話を聞く限り、ルナガロンは相当素早さに長けるモンスターだ。地上で素早く動き回るなら、私の手持ちだとジンオウガかベリオロスくらいになる。ゼルレウスのように空中戦主体だったり、グラビモスのようにそもそも鈍重だったりだと、ほのお技を撃つ前に懐に飛び込まれそうだ。

 

「今、大体予想がつくのはこのへんかな……」

 

「ありがとうございます、静香さん。おかげで対策が練られそうです」

 

「それはよかった」

 

流石に手持ち全部の予想は贅沢というものだ。情報をもらえただけでもありがたい……本当に、感謝してもしきれないよ。

 

「ニャー」

 

「ん?」

 

「……メラルー?」

 

と、その時だ。どこからか迷い込んだのか、一匹のメラルーが私たちの前にちょこちょこと歩いてきた。……いや、待て。この流れはもしや……。

 

「どうしてメラルーがここに……」

 

「……こんにちは、クロノからのお手紙?」

 

「ニャ!」

 

「ッ!!クロノ!?」

 

やっぱりだ。クロノは以前もこうしてメラルーを介して果たし状を渡しに来たことがあった。今回もその流れというわけか……。

 

「ありがとう、クロノによろしくね」

 

「ニャー!」

 

「いや、馴染み過ぎか……それで、手紙にはなんて?」

 

「今開けます。……えーっと、"やりのはしらで待つ。万全を期し、身命を賭して来い"……ですね」

 

「決闘のつもりか……いや、実際に決闘なんでしょうね。受けるのね、ショウ?」

 

「もちろんです」

 

向こうから売ってきた喧嘩だ、買うのが礼儀というもの!そしてクロノから買った喧嘩を、ミラボレアスに倍返しにしてやる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後私は事の仔細を皆に話したあと、アカイさんと静香さん同伴のもとクロノが待つやりのはしらに向かった。到着した先では、クロノが待ち構えていた。

 

「よぉ、ショウ。……なんか余計なものまでついてきたな」

 

「"一人で来い"って一文を添えなかったあなたが悪い」

 

「そりゃそうだ」

 

カラカラと笑った後、クロノはしばらく目を閉じてから、こちらに鋭い目を向けてきた。

 

「……これまでは油断も慢心もあったが、全力ではあった。今回とて、全力であることに変わりはない。今度は殺す、間違いなく殺す。本気でその息の根を止めてやる」

 

「いいよ。私も全力で相手をする。私はこんなところで殺されるわけにはいかないんだから」

 

ようやく、他のメンバーもメガシンカが安定するようになってきたのに、私だけが一足先にリタイアとか冗談ではない。クロノに勝って、ミラボレアス襲来に備えなくちゃだ。

 

「……といっても、ここじゃあ狭かろう。来いよ、案内してやる」

 

「え、案内って……」

 

そう言っていると、クロノの背後に階段が現れた、長く長く、先の見えない階段……まるで、アルセウスと私が最後に戦った場所みたいな……。

あれこれ考えているうちに、クロノは階段を上り始めた。私はアカイさんと静香さんに目配せをする……二人が頷いてくれたので、クロノの後を追って階段を上り始めた。

 

「……クロノ」

 

「なんだ、ショウ」

 

「聞きたいことがあるんだけど、いい?」

 

「あん?なんだ、言ってみろ。彼の黒龍も今となっては気前のいいこと。聞かれたことには答えよう」

 

せっかくだ、クロノはミラボレアスの名代だというし、クロノから聞けることは聞いておこう。

 

「結局、ミラボレアスが時空の裂け目を利用したのは偶然?それとも狙って?」

 

「……フン、まずはそこからか。結論だけ言えば偶然だ。ギラティナが引き起こした異変と冥灯龍の生誕、二つの現象が重なったことで起こった次元境界線への意図せぬ攻撃。時空間を渡る力を持つ黒龍は、次元境界線へのダメージを感知しその原因を探った。そこでギラティナと時空の裂け目の存在を知り、自らの力を使いその原理を解明したのだ」

 

「……つまり、今開いている時空の裂け目は全てミラボレアスが起こしている現象ってこと」

 

「そういうことだ」

 

階段はまだ続く。

 

「じゃあ、どうしてミラボレアスはヒスイ地方に来たの?」

 

「そこはそれ、お前の腰にぶら下がってるモンスターどもの存在だ」

 

「ジンオウガ達が……?」

 

「当然だろう?平行世界ですらない、次元の異なる世界に自分達が住む世界の者の匂いがすれば、何事かと気になるだろう?」

 

「つまり、ミラボレアスはジンオウガ達の気配に釣られて、やりのはしらに顔を出したってこと!?」

 

「そうだが、何をそんなに驚く?」

 

「ふざけるな!だったらミラボレアスがショウに呪いをかけたことは、どう説明する気だ!?」

 

静香さんが激昂し、怒号が空間上に広がっていく。その木霊が完全に聞こえなくなってから、クロノは口を開いた。

 

「そりゃあ、黒龍とて一個の命。モンスターを従える人間はいるが、それでもせいぜい一人一頭だ。ライダーってのがそうだな。だが、ショウはどうだ?ほとんどが生態系において上位に食い込むほどの猛者が腰元に五頭。そんな連中が見たことのないボールの中に押し込められた挙句、座して大人しくしてんだぜ?さらに遠く離れた場所には多種多様な者らが領域を共有しつつ寛いでやがるときた。狂ってんのか、って思うだろ?

そして、それらの匂いの中心はたった一人の人間だ。ハンターよりもうら若い、女のガキだ。そして、その目はハンターに似た強い覚悟と決意、闘志を秘めていた。黒龍の防衛本能を刺激するには十分すぎるだろう」

 

「複数のモンスターを同時に従え、さらに使役するショウが異常者に見えたとでも?」

 

「これで婆なら、老練した様も相まって見逃されたかもな」

 

……私、モンスター目線だとそんなにヤバい奴に見えるの?心外なんですけど!?

 

「……つまり、ミラボレアスは初対面でショウにビビったわけだ」

 

「……なんだと……?」

 

静香さんがミラボレアスを鼻で笑うと、殺意を剥き出しにしたクロノが振り返った。まるで我が事のように怒ってる……まぁ名代、つまり名前を背負ってるわけだから当然か。

 

「だってそうでしょ?ジンオウガ達を味方につけるショウを恐れ、危機感を覚えたからこそ呪いをかけて殺そうとした。正攻法では勝てないかもしれないから、ズルをしてでも命を奪おうとした……何がおかしい?」

 

テメェ……ッ!!……フーッ……。認めよう、確かに黒龍はショウの存在を危険視した。自らの身が脅かされる予感とともにな」

 

「(ほぅ……成長したな)」

 

一度は激情に駆られたクロノだけど、すぐに冷静になって静香さんの指摘を認めた。……え、私ってそんな初期からミラボレアスに警戒されてたの?偶然とかじゃなくて!?

 

「認めるんだ」

 

「認めざるを得んよ。現に、ショウはここまで来た。世界を渡り、煌黒龍を打ち破り、呪いを解き、そして再び戻ってきたのだ。これで認めないのであれば、それはくだらん意地の張り合いだ。

……ショウ、改めて言うことではないかもしれんが、黒龍は貴様を敵として認めた。倒すべき……いや、殺すべき敵としてな。まさか、ハンターですらない小娘を敵認定することとなるとは、彼の黒龍も想定外だったろうよ」

 

「そこは、胸を張ってもいい感じ?」

 

「存分に誇れ」

 

「(`・ω・´)」

 

「……ドヤ顔って実際に見たら結構腹立つな」

 

「そっちが誇れって言ったんじゃん」

 

「それはそう」

 

階段はまだまだ続く。

 

「ミラボレアスの最終的な目的は、ニールさんへの逆襲?」

 

「そうなるな。己に手傷を負わせたにっくきハンター……やつを見返すために、黒龍は力を得るべくこの地に舞い降りると決めた。この世界、特にポケモンを余さず喰らい尽くし、そのすべてを力への糧とするためにな」

 

「たかが一人の人間に対して、なんて大仰な……!」

 

「それ、古龍を十把一絡げに狩猟するハンターが言えたことか?」

 

ゲーム(空想)リアル(現実)は違うんだよ!実際、古龍一頭倒すのにどれだけの時間と労力が必要なことか……」

 

「ハハッ、そこは身を持って痛感してもらえたようでなによりだ」

 

ミラボレアスにとって、ニールさんは世界一つを生贄にしてでも倒すべき存在だと認識しているのか……。そんなニールさんとおよそ同格に扱われてた私って一体……?

 

「モンスターの技巧種化について、当のミラボレアスはどう考えてるの?」

 

「あれこそ偶然の産物だ。それぞれの世界の成り立ち……いわば規則や法則みたいなものが融合し始めてんだ。モンスター達はポケモンの技とタイプを、ポケモンはモンスターの特殊個体などの特徴を……取り込み、混ざり合い、馴染み合う。

それぞれの世界を住居に例えると、はじめこそは交流なんて全くない遠く離れた地区同士が徐々に近づき始めていき、やがて気づかぬ間に隣り合う地区のルールが紛れ込んでいた、みたいな感じだな」

 

「……一応聞くけど、元に戻る保証は?」

 

「手遅れだ、とだけ」

 

「……そう」

 

階段は、少しずつ終わりが見え始めた。

 

「まぁ、モンスターにせよポケモンにせよ、全ての生き物にそれぞれの法則が適用されたわけじゃねえんだ。だが、一度そっち側の法則を充てられた連中は元には戻らん。そして、それは世界にも言えること」

 

「どういう意味?」

 

「この世界と向こうの世界……時空の裂け目を基点にして、お互いの世界が近づき合ってるって言ったよな?黒龍はそれを利用して、この世界に自らの聖域……即ち、シュレイド城を召喚しようとしている」

 

「なんですって!?」

 

静香さんが驚きに声を上げ、アカイさんは厳しい目でクロノを睨んでいる。私は……ちょっと何言ってるのかわからなかったので、口を開けていることしかできなかった。

 

「具体的に言うと、時空の裂け目を基点にしてここ『天冠の山麓』一帯を『シュレイド城』というテクスチャに上書きする。黒龍が住まう城ごとこの地に置き換え、後は根こそぎポケモンを食べる。テキスト上は『シュレイド城』となっているから、向こうの世界からもシュレイド城に干渉できる……そうしてハンターを待ち構え、逆襲するっていうのが黒龍の狙いだ」

 

「……言ってること、難しすぎるんだけど」

 

「簡単に言うと、"天冠の山麓をシュレイド城に変えるよ"ってこと。それも入れ替えとかじゃなく上書きだから、成功すれば天冠の山麓はそこにいる全ての命まるごと消滅するけどな」

 

「……ッ!?そんな、ふざけてる!!」

 

それって、ウォロがアルセウスでやろうとしていた新世界創造並にタチが悪いやつじゃ!?

 

「そんなバカなこと、絶対にさせない!!」

 

「だったら俺に勝ってみろ。そもそも俺に勝たないと黒龍との謁見すらできないぜ?」

 

いつの間にか、私達は階段を上りきっていた。そこはやはり、私がアルセウスと戦った場所に良く似た、とても広い空間だ。ジンオウガ達が縦横無尽に駆け回っても、全然余裕でスペースがあるくらい、って言えばわかるかな?

 

「勝つよ、クロノ。ミラボレアスの野望を阻止するためにも!」

 

「あぁ、そうこなくっちゃあ面白くない!」

 

お互いにボールを構える。この戦い、そしてミラボレアスとの戦い……その全てに、この世界の運命がかかっている!!

 

「勝負だ、クロノッ!!」

 

「来いよ、ショウッ!!」

 

これが私たちの宣戦布告!絶対に負けるものか!

 

 

 

 




今回は導入、次回からバトルが始まります!!





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年末年始特別編!シロナの手記~巨大なポケモンたち~

まさか二年連続で年末年始に投稿することになるとは……偶然ってすごい(語彙力)



ポケットモンスター、縮めてポケモン。この世界の、不思議な不思議な生き物。彼らは海・陸・森・山・川・町……いたるところで暮らしている。その種類は、近年では1000種類を超えたと話しされるほどだ。私自身もいろんな地方へ顔を出したものだけれど、まだまだ知らないことは多いみたいね。1000種突破のきっかけとなったパルデア地方のポケモン達……是非見てみたいわね。全国あらゆるポケモンの情報が記録されるポケモン図鑑……伝説のポケモンや幻のポケモンさえ記録できてしまう万能ツールだが、果たして本当に完璧と言えるのだろうか。

 

我が家に代々伝えられる、特別な手記。ボロボロになるたびに別の用紙に模写をして情報を保管し続けてきた貴重なもの。私のお母さんもお祖母ちゃんも、曾お祖父ちゃんも曾曾お祖母ちゃんも、代々この手記を模写し、綴り続けてきた。かくいう私も、その一人。私は母からこの手記を「絶対に絶やすな」と言われたが、同時に「絶対に外部に漏らすな」とも言われている。幼い頃はその意味がよくわからなかったが……大人となり、シンオウ地方のリーグチャンピオンとなった今ならば、その意味がよくわかる。

そこに記されているのは、果たして本当にポケモンなのだろうか。ひょっとしたらまだ見ぬポケモンがこの世界にいて私が見つけていないだけか、もしかしたらそれは私たちの知らない世界からやってきたのかもしれない。挿絵に描かれたその五匹の生き物たちは、デフォルメされてなお力強さを感じさせる姿をしている。我が家にしか伝えられていない、特別なポケモン達だ。

彼らはそれぞれ『鎧竜』、『海竜』、『火竜』、『氷牙竜』、そして『雷狼竜』という呼び方をされている。『海竜』と聞けば同じ名前のポケモン「カイリュー」が思い浮かぶだろうが、この『海竜』は青いウロコに二本の角を持つので全く別のポケモンだということが分かる。久しぶりに開いたのだ、せっかくなので一匹一匹を観察したと思しき内容を読み返すことにした。

 

 

 

 

ヒスイ中を駆け巡り、彼の竜達について聞いて回った。全ての事を終えた後、彼の竜達の情報を破棄するという噂を耳にして以来、ワタクシはどうにかこうにか情報を残すべく奔走した。

彼らの存在を抹消する?冗談ではない!!我が野望を打ち砕いた■■■■■の存在を秘すなど言語道断!それだけではない、彼女とこのヒスイで絆を深めた他の者たちに関しても同じ事が言える。……だが、ワタクシは彼女に警戒されている身、村での情報収集は難しいだろう。だから、彼らの観察・報告を任されているそれぞれの団に声かけをして、こっそり調査情報を流してもらった。ワタクシが見聞きしたものを書いてもいいのですが……それだと主観が暴走しそうなので、あえてここは第三者から情報を募りました。

いや、これがなかなか難しい……彼らが気前のいい人で本当に良かった。あと、彼女……ショウさんがなんだかんだワタクシの所業を口外せずに胸に留めていたことも功を奏した。ありがたやありがたや。さて、前置きはこれくらいにして早速彼の竜らのことをまとめあげねば!

ほとんどが他人から聞いた話なので情報の差異が生じる旨を此処に記す。

 

~岩山背負いし鎧の竜~

初めて見たときは、山が動いているのかと錯覚した。たいりくポケモンのドダイトスよりも大きく見上げる体高は凄まじく、一歩歩けば地鳴りが起きる。ましてこの沼地では至る所にあの竜の足跡が刻まれており、その大きさとくれば大の大人ですらペシャンコ待ったなしだ。

まさに歩く自然災害だ……にも関わらず当の竜は大の世話好きらしく、力の弱いポケモンに頼られれば一も二もなくその身を守り、その堅牢な鎧の如き岩の体で攻撃を跳ね返し、可燃性のガスや口から熱線を吐き、ことごとく焼き払った。

かくいう我等人間も、彼の竜より恩恵を賜る立場にあるのだが。彼の竜の体の一部は本当に岩で出来ている。移動や戦闘などで剥がれ落ちた鉱石は我々の理解を越える未知の材質で出来ていて、未知の性質を秘めた物質であることがシンジュ団のキャプテンによって判明したそうだ。

敵に回せば恐ろしく、味方であればこの上なく頼もしい……とても人間が御しきれるようなポケモンとは思えぬそんな竜が一人の少女に懐き、ましてボールに収まるなど……ポケモンがポケモンなら、人間も人間なのかもしれない。

彼の竜……■ラ■■■。いつからそこにいたのか、シンオウ様ならお分かりになられるだろうか。

 

~夜海を照らす蒼光~

久々にこの海岸に来てみたが、実に代わり映えのないことだ。といっても、それは昼間の話……この海岸の見所は、まさに今の時間、夜にある。

しばらくじっとしてみる。海ではハリーセンやドククラゲ達が我が物顔で海を占有しており、付近を遊泳するマンタインやタマンタらが追い立てられていた。おまけにギャラドスとも争っているようで、夜の海に似つかわしくない戦闘音が響いている。そのような不届き者共に、罰を下すものが現れた。

海の一部が、ぼんやりと光り始めた。蒼い光はゆっくりと下手人共に近づいていく。そこでハリーセンもギャラドスもようやく光の存在に気がついたようだ、ひどく慌てた様子を見せ始めた……当然だ、この海岸のヌシの逆鱗に触れたことを、遅まきながらに理解したからだ。

姿を見せる海の王者。背中に背負う柱を帯電させる胴長の竜。"海の竜"と呼ぶべき『海竜』の異名を取る海の竜王だ。竜王は高らかに咆哮を上げると、周囲一帯へ放電し、下手人共を一掃した。這う這うの体で逃げていく愚者を悠然と見送ると、タマンタ達から賞賛の声を浴びせられる。それを受けてなお竜王は泰然自若、静かで暗い夜の海を照らしながら、再び海中へと身を沈めた。

シンジュとコンゴウの両キャプテンから信頼される海の竜王、その名はラ■■■ル■。改めて思うが、あれは本当にポケモンなのだろうか……俺にはまるで別の生き物に見えてならない……。

 

~天空を舞う豪火の竜~

よく"上を向いてご覧"と言われることがある。幼い頃は夜空を見上げたり、天高く昇る太陽を見て時間を確認したりと、よく見上げることが多かった。

最近は、もはや見上げることそれ自体が目的のようになっている。『火竜』と呼ばれていたソレは、まるで「空こそ我が世界」とばかりにこの山麓一帯を飛び回っている。とりポケモンだってあんな長時間飛んでられないというのに……これがドラゴンポケモンの能力なのか。

なによりもすごいのは、あの『火竜』はあれだけの巨体と能力を持ちながら、進化の可能性を残していることだった。以前はあんなに赤かったのに、気がついたら全身が結晶のような青い姿に変わってたんだから驚きだ。あんなにわかりやすく姿が変わってたのに、名前はほぼ変化してない点はすこし笑ってしまった。

……ここだからあえて言うが、正直なところ雄大に翼を広げて空を飛ぶ竜の姿はまるで芸術のようだった。そうだ、美しかったのだ。勇ましく、雄々しく、美しい……私は気が付けば、あの竜の姿に見蕩れていたのだ。憧れた、と言ってもいい。

■■レ■■……いや、今は『輝界竜■■■■ス』だったか……とにかく本当に美しい。私はあの竜から、ドラゴンという生き物の本当の姿を見知ったような気さえしたのだ。

 

~つよくてかっこいいぼくらのしろきしさん~

○月×日。今日の"しろきし"さん。

"しろきし"さんの朝は早い。ぼくらがかんさつのために会いに行った時には、もう目を覚ましてる。

ちょうどご飯を食べ終えたところみたいで、こはく色のキバに血がたくさんついてた。あと、口まわりに茶色い毛もついてたから、またイノムーを食べたのかな。

■■■■に怒られるよって言うと、シュン、って落ち込むところがかわいかった。

 

△月▽日。今日の"しろきし"さん。

今日は待ちに待った"しろきし"さんかんさつ当番の日!わたし、ずっと楽しみだったからすごくうれしい!

"しろきし"さんはすっごくやさしいの!かんさつ中にオヤブンポケモンがやってくると、"しろきし"さんが守ってくれる!氷のたつまきを起こす攻撃で、あっという間にオヤブンポケモンをやっつけっちゃった!

■■■■が村をおそってきた時も、他のポケモンさんと一緒にいっしょうけんめい戦って村を守ってくれた!わたしたちのかっこいいえいゆうさん!大好きだよ!

 

☆月□日。今日の"しろきし"さん。

今日は"しろきし"さんの体をみんなできれいにしてあげたよ。じゅん白のとう土は強いポケモンがいっぱいいるから、"しろきし"さんに戦いを挑むポケモンがいる。それだけじゃなくて、"しろきし"さんとポケモン勝負がしたいっていう人もいがいといる。

"しろきし"さんはすっごく強い。うでのトゲや大きなキバ、トゲいっぱいの長いしっぽを使っていどみに来る人に次々とかっちゃうんだから。

でも、たくさん動けばそのぶんよごれちゃうから、"しろきし"さん専用の大きなおんせんで体をあらってあげるんだ。あらってる間の"しろきし"さんはまるでせきぞうのようにうごかなくなるから、あらいやすいんだ。

 

凸月凹日。今日の"しろきし"さん。

シンジュ団のみんなで"しろきし"さんのおせわをしてるんだけど、"しろきし"さんといちばんなかよしなのはコンゴウ団のワサビちゃん。なんでも、ギンガ団からとくべつにゆるされて一日中いっしょにいられるんだって。いいなぁ……。

でも、じつはシンジュ団のみんなにないしょにしてることがわたしにはある。それは、"しろきし"さんのお名前!わたしたちシンジュ団は長とキャプテンを除いた人はずっと『"しろきし"さん』って呼んでるし、ワサビちゃんもわたしたちの前では"しろきし"さんを『"しろきし"さん』って呼んでる。

でも、わたし知ってるよ。本当は『"しろきし"さん』ってなまえじゃないこと。あの子の本当の名前は……

 

ひょうがりゅう■リオ■■

 

えへへ、書いちゃった。見られたらおこられちゃうかなぁ?

 

~コトブキムラの護り狼~

コトブキムラで最強のポケモン使い、と聞けばいの一番に彼女の名前が出てくるだろう。では、そんな彼女の最強の相棒は誰か。この答えは二分される。

一つはダイケンキ。ヒスイ地方に適応した個体だが、彼女のダイケンキは角が折れた変わった個体だ。なんでも、あるポケモンとの死闘で折れたとかなんとか……いや、この話はまた後で。

まるで"極まった"かのようなダイケンキの戦闘能力は凄まじく、アシガタナをひと振りすると鎧袖一触。相対する者を撫で斬りにし、一刀のもとねじ伏せる。自分も先月辺りに時空の歪みでミジュマルを捕らえ、同じように育てているはずなのだが……彼女のダイケンキのようにはなれないようだ。相当な覚悟と決意が必要なのだろう……。

もう一つ……これこそ、今日までコトブキムラを守り抜いてきた最強の守護者……否、守護狼だ。いや、気にするな。私が少々大げさにそう評しているだけだ。

この守護狼は彼女が初めて出会った巨大ポケモンであり、それゆえに彼女自身も大変思い入れのあるポケモンだ。全身を駆け巡る稲妻、力の象徴たる角、最大の武器と言える鋭利な爪……どれをとっても一線級、まさに最強の存在だ。

テンガン山に降臨し、ヒスイを劫火に沈めんとした暗黒の邪龍をも退けたと言われている……おっと、この件は箝口令が敷かれているんだ、告げ口は無しで頼む。

蒼光を纏う雷狼……そう、そうだ。■■■■■……あれこそまさに象徴たる者。きっと他の竜達共々、シンオウ様に遣わされたに違いない!そうでなければ、あのような異形の姿である筈がないのだ。

 

 

これだけ情報が集まれば十分でしょう……あとは、いかに彼女たちギンガ団にこのことを悟られず残し続けるかを考えましょう。【極み】や【二つ名】といった特殊なポケモン達の情報破棄も気になりますが、ワタクシとしてはこちらのほうが重要案件、やむを得ませんが捨て置きましょう。

さて、一旦ヒスイから離れるとしますか。流石にヒスイの外へ追っかけてまで情報破棄を目論むほど暇ではないでしょうし……おや、誰か来たようですね。いったい誰が――

 

 

 

 

文章はここで終わっている。息を吐き、手記を閉じた。流石に人の手で補修・保全を繰り返せば、どこかで綻びが生じるもの……この手記も、その煽りを受けている。それにしても、どうして名前の部分がピンポイントで抜けているのかしら!

ヒスイ最強のポケモン使い。その手持ちポケモンの情報もある程度は残されている。それが"華彩剣"、"炎神"、"舞兎"、"白雷の鼠"、"嵐の鮫竜"、そして"斬断の剣鬼"だ。けれど、肝心の部分……私が知りたがっている巨大なポケモン達の情報は驚く程に名前だけが虫食い状態だ。この手記の最初の記入者が言ったとおり、意図的に情報を隠そうとしたのだろうか。すべては隠しきれないから、せめて名前だけでも……と。

一番考えられるのは、脅威。もしまだこのポケモン達が生きているorポケモン達の血を引くポケモンがいるとすれば、それを求める者が後を絶たなくなるだろう……それこそ、ギンガ団のような悪の組織のような輩が。それを懸念したトレーナーが情報抹消を図ったのだろう……私の祖先と思しき者は、そのことに反発したようだが。

 

けれど、最近になって進展があった。私の知り合いで、最近ポケモンWCSで優勝した少年がこのポケモンと接触しているところに、運良く立ち会うことができたのだ!!少年……サトシくんの話と文献の内容から、あの少女がヒスイ最強のポケモントレーナー『ショウ』と、巨大ポケモンの一匹である『ジンオウガ』だということが判明した!どうして彼女達が未来であるシンオウ地方にいたのかは定かではないし、あのあとシンオウ中を駆け回って行方を追ったが終ぞその姿を再び拝むことはできなかった。わからないことだらけだが、その中でも分かることはあった。

ジンオウガ……あのポケモンと目があったとき、思わず膝をつきそうになった。その時の心境は、自ら敗北を認めようとした時のようだと表現しよう。直感と本能で悟ったのだ……私では、どうあっても勝てないと。だから、なけなしの理性とサトシくんの声掛けのおかげで私もガブリアスも膝をつかずに済んだ……本当に助かった。

圧倒的だった……生物としての格が違いすぎる。あんなポケモンを従えることができたなんて、ショウという子は相当な傑物だったということか……あの時、会話ができなかったことが悔やまれる。……それにしても、本当にヒカリさんにそっくりだったわね。彼女のご先祖様なのかしら?

 

 

それからもう一つ。ヨスガシティにある『異文化の建物』という施設に飾られている絵……実はこの絵が、別の絵を上から塗り替えたものだということが判明した!そしてその別の絵というのが……

 

黒く巨大な龍と、それに立ち向かう見たことのないポケモン達だった。

 

しっかりと許可取りをして、入念に入念を重ねた調査の末に判明したものだ。バトル並に本気出したかもしれない。

この新発見にポケモン学会は震憾し、絵から読み取れる情報からヒスイ時代に存在したと思われるポケモンの想像図すら出回るほどの衝撃だった。そして……未知のポケモン達の絵の中に、そのポケモンはいた。

そう、ジンオウガだ。

我が家に伝わる手記に描かれたデフォルメ絵と同じ姿……間違いない!ジンオウガは確かにヒスイ地方に存在した!!一番近い姿をしているのはライボルトだろうか……その辺りから調査をすれば、なにか掴めるかも知れない。それに、『輝界竜』が進化前の『火竜』の名前で存在を残されている理由も気になる……あ~、さっきから知りたいことばかりしかない!!

もう一度ミオシティで情報検分してこようかしら。館長さんにはご好意で口止めしてもらっているとはいえ、迂闊にこの手記を表沙汰にはできないけれど……過去を紐解くことが業ならば、私はその業も背負ってみせる。それが、隠そうとした者の意志に背き、知ってしまった者の責任だと思うから。

 

 

 

 




「特別編その2:初夢は時渡りと共に」
https://syosetu.org/novel/282037/62.html

の後日談的な話。ショウと邂逅した、シロナさんのその後。


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年末年始特別編!ポケットモンスターと"モンスター"

特別故に同時投稿。こちらはモンハン側の目線。



突然ですがこんにちは。アタシの名前はネネ。愛しき姉様、シズカ・ミズハシの恋人妹分にして、龍歴院所属の専属ハンターです。今回、貴重な体験をしていることを自覚したため、拙いながらもこうして手記にまとめることにしました。

さて、我々は次代の超新星にしてアタシの姉様のシズカ・ミズハシ、間男新大陸古龍調査団第五期団のニール、姉様のお師匠にしてキャラバン隊『我らの団』所属のシュラーク、そして龍歴院所属のハンター兼書士隊のアタシ、ネネの四名で時空の裂け目なるゲートをくぐり、ここ『ヒスイ地方』へと降り立ちました。……まさかそのヒスイ地方に伝説の狩人と呼び声高いドンドルマの英雄・ヒューイさんがいるとは思いもよりませんでしたが。

我々の目的は、このヒスイ地方へ降臨し蛮行を働こうとする黒龍ミラボレアスの討伐。そのために、こうしてハンターが派遣されたわけですが……なんなんですか、この世界は。

 

 

そこらにいる生き物……『ポケットモンスター(通称:ポケモン)』は体こそは小型モンスターと大差ないくせに、秘められたポテンシャルは中型・大型モンスターに匹敵するほどだったのです。ポケモンは『技』と総称される攻撃手段があり、その種類は千差万別、正直全てを完璧に把握することなど不可能ではないかと思わされたほどだ。ポケモンにも覚えられる技とそうでない技とがあり、しかもそれは個体ごとに大きく異なる。

 

例を挙げよう。ピカチュウ、と呼ばれるポケモンがいる。このポケモンは体高はアイルーよりも小さい小型モンスターだが、頬にある電気袋に電気を溜めることができ、それによりフルフルに匹敵するほどの電撃を操ることが出来るのだ。特に『かみなり』など、直撃すればただでは済まないような威力の電撃すらを放つ。

我々の世界では小型モンスターは『数が揃うと脅威だが、単体では程度が知れる』という感じに、弱い生き物という認識が強い。だが、このヒスイ地方ではアイルーより小さいピカチュウですら大型モンスター張りに電撃を操り、人間を殺めてしまうのだ。そしてそんなピカチュウも群れて行動するというのだからとんでもない話だ。

ポケモンは本当に小さい。現地民から聞いたが、最大サイズのポケモンがムゲンダイナというポケモンで、それでもリオレウスやジンオウガの金冠サイズ程度しかないそうだ。こちらの世界には20mを超えるモンスターがたくさんいるというのに、巨体のポケモンはほんのひと握り程度の種類しか存在しないらしい。

 

それでも我々が知るモンスターとほぼ同スペックに感じられるのは、『技』の存在の他に『タイプ相性』というものがある。これはいわゆる『属性』のことであり、ポケモンはこの属性が18種類も存在する。さらに二つの属性を身に宿す個体もいるらしく、複合属性は153通り存在し、単属性18種と合わせて合計で171通りも存在する。そのうえ、いまだ未発見の複合属性も存在する……これにはアタシの同僚が皆悲鳴を上げていましたわ。

ポケモンの属性はノーマル・ほのお(火属性)・みず(水属性)・でんき(雷/麻痺属性)・くさ・こおり(氷属性)・かくとう・どく(毒属性)・じめん・ひこう・エスパー・むし・いわ・ゴースト・ドラゴン(龍属性)・あく・はがね・フェアリーと、簡単に説明できそうな名前から理屈では理解しがたい名前の属性が存在する。

 

このヒスイ地方で確認できた各属性の代表ポケモンは以下の通り

ポリゴンZ(ノーマル)

ゴウカザル(ほのお)

エンペルト(みず)

エレキブル(でんき)

ドダイトス(くさ)

ユキメノコ(こおり)

ルカリオ(かくとう)

ドラピオン(どく)

カバルドン(じめん)

ムクホーク(ひこう)

クレセリア(エスパー)

メガヤンマ(むし)

ラムパルド(いわ)

ヨノワール(ゴースト)

ガブリアス(ドラゴン)

ドンカラス(あく)

ジバコイル(はがね)

トゲキッス(フェアリー)

 

いずれも強力なポケモンであり、これらの個体を完璧に使役できるトレーナーは相応の実力を持っていることが分かる。実際にアタシも戦っているところを見せてもらったが、凄まじいものだった。あんな小さな体の一体どこに大型モンスター級の力を秘めているのやら、まるで意味がわからない。

 

 

そればかりか、これらポケモンと全く同じ属性を宿したモンスターが我々の世界の各地で発見されるようになったのだ。

ポケモンと同様、巧みに技を操ることからそれらのモンスターを『技巧種』と新たにカテゴライズし、今もなお調査が続けられている。技巧種モンスターは数々の技を駆使してハンターや他の縄張りのモンスターや一般市民を脅かしている。最近では中型モンスターの群れが古龍級生物を撃退したという報告すら上がっている。

技巧種モンスターの最も厄介な点は、本来得意とする属性以外の属性攻撃を可能としている点だろう。例えばジンオウガ。ジンオウガは本来雷属性のモンスターで、攻撃手段も当然雷属性だ。だが、技巧種化したジンオウガは"ほのおのキバ"や"こおりのキバ"、"ドラゴンクロー"といった雷属性以外の属性攻撃を使える。いくら雷耐性値の高い防具で身を固めても、属性値の低い属性攻撃を仕掛けられてはひとたまりもない。

 

 

さらにポケモンが持つ特別な力『特性』も無視できない。ポケモンごとに効果が異なる特殊能力である特性を、我々がよく知るモンスターたちも獲得してしまったのだ。特性にも様々あり、攻撃力を高める攻撃系や状態異常を無効化する防御系、条件こそあるが発動すれば強力な特殊系の三種がある。

 

攻撃系の典型例はやはりファンゴだろう。ブルファンゴ・ドスファンゴ共に『すてみ』という特性を得てからは突進攻撃の威力が馬鹿みたいに強くなったという。"とっしん"、"すてみタックル"、"もろはのずつき"などの技でマスターランクのハンターが次々と一撃でキャンプ送りにされたらしい。

他にも『かたいツメ』、『がんじょうあご』、『てつのこぶし』など部位に応じて攻撃力を上げる特性。

自身の属性と技の属性が一致すると攻撃力が上がる『てきおうりょく』や元の属性から別属性へ変化させさらに強化する各『スキン』系。

『もうか』、『げきりゅう』、『しんりょく』などピンチになると特定の属性攻撃の威力が上がる特性など、強化手段にも事欠かないようだ。

 

防御系ではフルフルなどは『じゅうなん』という特性で麻痺状態が効かなくなったという報告もあった。眠らないウラガンキンも、『やるき』という特性の影響で睡眠状態が効かないということがわかっている。テツカブラも『めんえき』で毒属性を無効化し、ネルスキュラに至っては毒状態にすると治癒効果が働く『ポイズンヒール』を獲得していた。

……そういえば、ガララアジャラが『だっぴ』で属性やられを無効化したとか、ラングロトラが『ぼうだん』の特性でガンナーを役立たずにしたとかも聞きましたわね。

 

特殊系の特性についても記す。ウルクススの『ゆきかき』、ガノトトスの『すいすい』、テオ・テスカトルの『サンパワー』、ハプルボッカの『すながくれ』など、天候によって効果を発揮する特性の存在も確認が取れた……今後は狩猟環境に天候を記す必要があるだろう。

ラージャンやブラキディオスをはじめとした一部の強力モンスターは、会心が決まった直後に攻撃力がおかしいレベルにまで跳ね上がったと聞いた。その特性は、たしか……そう、『いかりのつぼ』だ。

……アオアシラが全身ハチミツまみれなっているのも『みつあつめ』という特性の影響だそうだし、クルルヤックの巣に大量のアイテムが発見されたのも特性が『ものひろい』だからだろうと彼女は言いますけど、一体何の意味があるのかしら……。少なくとも、飼い慣らせば我々人間の役に立つこと請け合いですし、実際に飼い慣らそうという試みも為されているとか……正気か?

 

 

このように、特性の存在によって本来そこまで危険度が高くないモンスターの危険度が軒並み上方修正されるという事態にまで発展している……。技巧種モンスターも増加の一途をたどっていると言うし、こうも異世界で見られた特徴が自分たちにとって身近なところで出てくるともはや他人事では済まされないだろう。

個人的には……ナルガクルガ亜種の特性に『ぼうおん』があるのは許せない。『ぼうおん』は音による攻撃を防ぐ特性なのだが、どういうことなのか音爆弾の音すら防いでいるそうだ。モンスターの典型的な弱点が特性で克服された最悪な事例の一つだ。こちらの会心率を実質0にする『シェルアーマー』という特性も厄介だ……あの蟹どもめ。

これは元の世界に戻った後の技巧種狩猟が億劫になりそうだ……。

 

話が逸れた……とにかく、本来ならポケモン達だけが持つ能力が我々の世界のモンスターにまで浸透し始め、それにより自然界のパワーバランスが崩れかけているとの報せを受けた。具体的には、技巧種モンスターの縄張り拡大に伴う生態系の崩壊だ。それら全ての元凶は、ミラボレアスにあると推測されている。黒龍討伐を可及的速やかに遂行しなければならないが、肝心の黒龍は未だ姿を見せず……。

つい先ほど、黒龍の遣いを名乗る輩から挑戦状を送られたモンスタートレーナーが、挑戦を受けるべく『やりのはしら』へと向かった。姉様も一緒なので、よほどのことはないと思うが……懸念事項もある。何事もなければいいのだが。

 

……おかしいですわね、いつからアタシは報告書を書いていたのかしら。これが職業病というやつなのね……。

ちなみにポケモンの種類は1000を優に超えるとか。……なにかの間違いでは?

 

これも後でシロさんに頼んで、時空の裂け目経由でギルドに送付しなければ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月刊 狩りに生きる 特別号

 

 

 技巧種モンスターの続出止まず!古龍種、ついに動く

 

これまで様々なモンスターが発見されてきたが、今回ばかりは大変厄介な事態になっているようだ。

事の始まりは、シュレイド城上空に開かれた謎の裂け目にミラボレアスが逃亡してからのこと。属性耐性が変化したり、見たことのないような攻撃手段を用いるモンスターが急増している。ギルドはこれらのモンスターを『技巧種』と分類付けし、捕獲・研究による対策が急ピッチで行われているらしい。

ギルドの有識者によると、いつだかに出現した超巨大ティガレックスも技巧種化に伴う影響により巨大化をしていたらしい。技巧種モンスターに関してはどこもかしこも手探り状態であり、かくいう我ら『狩りに生きる』取材班も独自の路線で技巧種モンスターの情報を集めているが、かなり難航している。

実際に技巧種モンスターと戦ったハンター達も

 

「『技』があるから何をしてくるのか全く予測がつかない」

「『タイプ相性』のせいで弱点を克服してる奴もいる」

「『特性』ってなんだよインチキ効果も大概にしろ」

「群れで遭遇すると地獄」

「ケツがいてぇ」

 

など、そのほとんどが「技巧種モンスターに苦戦を強いられた」というものばかりであった。

 

このような不測の事態に、最も動きを見せたのが古龍種だった。各地で姿が見られた古龍種は技巧種化したモンスターを積極的に攻撃し、縄張りの拡大や生態系の崩壊を阻止するべく行動を起こしていることが古龍観測所より報告が上がっているとの情報を得た。特に異界人達と共に煌黒龍アルバトリオンと戦った古龍種である鋼龍クシャルダオラと霞龍オオナズチは、ハンターと共同で対処に当たっているという話も聞けた。

あの古龍種が、人間とともに手を取り合い、事態の収束に動いている……その事実だけで、こんなにも胸が熱くなるのだろうか。同じく煌黒龍と戦ってくれたテスカ夫婦は姿を消したそうだが、彼らもいつか我々人間に手を差し伸べてくれるだろうか。

 

 

 

 

 嵐の前の静けさか?未確認の希少種個体の発見、相次ぐ

 

今回の一件との関連性は現在調査中ではあるが、もう一つの怪現象として『希少種モンスターの相次ぐ発見報告』があげられている。

全身に鋼鉄を纏ったグラビモスやら体に電撃を迸らせるベリオロスやら、光に包まれ姿を消すジンオウガ……先に挙げた三種は、出現と同時に赤衣の男が未知のボールを用いて捕獲したとの報告が上がっている。なので、ここではそれ以外に発見された個体を列挙する。

取材によれば……

体色を変化させ擬態するギギネブラ

睡眠性の液体を保有するロアルドロス

放射性物質を含む鉱石を食すウラガンキン

高山地帯で初めて姿が見られたバフバロ

異常発達した後ろ足で跳ね回るアビオルグ

砂嵐と陽炎を駆使して姿を消すデュラガウア

捕食者に反逆した金色のキリン

虹色のイャンクック

 

……今のところはこれくらいだが、この短期間でこれだけの希少種個体の発見は異常である。ハンターズギルドも警戒態勢を厳とし、技巧種モンスターの増加と希少種個体の相次ぐ発見の双方に対応するとの見解を示している。

 

 

今や世界各地で問題となっている技巧種モンスター……この問題を引き起こしたとされる黒龍ミラボレアスは、異界の地へ逃げた。その黒龍を追って異界へ渡ったハンターの中には、黒龍と戦った調査団のニールや、あのシズカ・ミズハシもいる。彼女達ならば、必ずや黒龍を討伐してくれるに違いない。

我々は彼らの力を信じて、自分たちに出来ることをするしかないのだ。

 

 

 

 




世界も混沌としつつありますね……。

さて、せっかくなので明日から三日、即ち三が日投稿頑張りますか!


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年末年始特別編!ポケモンSV脳内シミュレーター 藍の円盤 第一話


宣言通り、今日から三日間連日投稿します!うおー、やるぞー!


パルデア地方にあるアカデミー。その校舎の上、特徴的なモンスターボールのオブジェの前に、一人の少年が座っている。ゴールドのかきあげロブヘアーの少年は、プラプラと足を揺らしながら淵に座り込んでいる。どう見ても危険行為です良い子はマネしないでね。

暇をつぶすようにチュッパチャップスを頬張っていると、唐突にスマホロトムが鳴り出した。

 

《もしもし、コウキさん。私、クラベルです。今お時間よろしいですか?》

 

「良いか悪いかで言うと悪い寄りの良い」

 

《はい、よろしいようでなによりです》

 

「スルーせんといて……」

 

電話先の相手はアカデミーの校長を務めるクラベルだ。電話を受けた少年の名はコウキ。アカデミーのオレンジクラスに所属する生徒だ。

 

《あなた方のボケに付き合うと終わりが見えないので……》

 

「否定できんな。それで、なんの用すか?」

 

《ええ、早速ですが、本題に入りましょう。この度、お電話を差し上げたのはコウキさんに名誉あるチャンスが訪れたからです》

 

「チャンス?」

 

クラベルはああ言うが、言われた本人はチャンスが訪れるような事をした覚えがないからだ。割とやってんぞ、お前。

 

《イッシュ地方の『ブルーベリー学園』をご存じですよね》

 

「知ってるけど、それが?」

 

《ええ、林間学校でご一緒したとうかがってます。私の古い友人がそのブルーベリー学園で校長先生をなさっておりまして、コウキさんを交換留学生としてぜひ迎えたいとおっしゃっています》

 

「えぇ……?」

 

《広い世界を知ることができる絶好の機会だと思います。何ごとも挑戦ですからね》

 

「そりゃあありがたい話ですけど……なぜに俺なんです?他にも候補はいたのでは?」

 

コウキが気になったのはそこだ。自分以外にもアカデミーの生徒なんてごまんといるし、なんなら自分以上に優秀な生徒もぶっ飛んだ生徒もいる。それなのに、なぜ自分なのか……そのことを知りたかったコウキだが、以外にもクラベルからの返答はすぐに返ってこなかった。

 

《えぇ、それなんですが……いったい何故コウキさんをご指名なのか……それに、あなた以外にもゴウタさん、ホムラさん、リュウセイさんもご指名なんですよ》

 

「いつメンじゃないすか」

 

クラベルが挙げた名前は、コウキにとってなくてはならない親友たちの名前だ。相手方の校長は、コウキを含めた複数人での交換留学を希望しているらしい。

 

《一度彼にお会いして、真意を聞いてみましょう。かなりファンキーな方ですが、私もついていますのでご安心を》

 

「先生がいなきゃ心配で夜しか眠れねぇよ」

 

《それは大変で……って、いつもどおりじゃないですか!》

 

「あっはっは!」

 

真面目なクラベルの性格上、ボケに対してツッコミを入れてしまうのだが、それこそがコウキの狙いでもある。ひとしきり笑ったあと、コウキ自身から話を戻した。

 

「とりま、俺もそちらに向かったほうがいいですか?」

 

《はぁ……まったく、あなたという人は……。えぇ、そうしてください。もろもろのお返事は直接、校長室でおうかがいしますので》

 

「それじゃあ、顔出ししときますね」

 

《お願いします。お忙しいところ失礼しました……それでは、お気をつけて》

 

電話が切れると、コウキは一つのモンスターボールからポケモンを繰り出した。

 

「アギャ?」

 

「降りようぜ、ミライドン!」

 

「アギャッス!」

 

ミライドンの背中に乗り込むと、一気に飛び降りて正面玄関前に着地する。ミライドンをボールに戻し、エントランスホールへ入るといきなり目に付く人物を見つけた。どう見ても部外者にしか見えないその人物の元へコウキは怪訝な顔のまま歩いて行った。

 

「こんちわ。お客さん、どちらから?」

 

「あれー?その顔……どっかで見たなー。えーと、誰だっけ?」

 

「いや、こっちのセリフな?お客さんこそどちら様?まずは自己紹介から始めましょうや。俺はコウキっていいます」

 

「あー、そうそう、コウキさん!知ってる知ってる。んじゃ、そういうわけで行こっかー」

 

「いや、名乗れや」

 

なぜか会話が噛み合わず、コウキはこの時点で「めんどくせーなこのオヤジ」程度の所感しか感じられなかった。いっそ通報するか、とスマホロトムを取り出そうとした、その時だった。

 

「ちょっとちょっと!シアノ先生!」

 

クラベルの声が聞こえた。どうやらちょうどこの場についたようで、ひどく慌てた様子だ。

 

「あれ、ベルちゃんいたの!元気そうだねー?」

 

「いやいや、当然私はいますよ!あと生徒の前でその呼び方は……というか校長室に来てくださるとお約束したではありませんか!」

 

「あれー?そうだっけ?まあ、いいじゃない。だってこの子でしょ?」

 

「それはそうなのですが……あと、まだこの場に集まっていない子もいるので……」

 

「あ、そうだったね」

 

「(うっわこのオヤジ、俺の嫌いなタイプだ。あとリュウセイとゴウタも嫌いそう)」

 

どこか抜けているというかズボラというか、マイペースなブルーベリー学園校長のシアノ。仮にも責任ある立場の人間なのにマイペースなシアノの様子に、コウキの中の好感度は急転直下だ。

 

「おっとコウキさん、説明不足ですみません。こちら……」

 

「ウィース、校長~。呼ばれて飛び出てホムラさんだぜ~」

 

「お待たせして申し訳ありません、クラベル校長」

 

「スター団みんなの補習、やっとこさ区切りがついたぜ」

 

「引率担当のケンスケ、現着しました」

 

クラベルがシアノを紹介しようとしたところ、他のメンバーが集まってきた。上からホムラ、リュウセイ、ゴウタ、ケンスケだ。それぞれホムラがレッドのポニーテール、リュウセイがブルーのスパイラルパーマ、ゴウタがホワイトアッシュのオールバック、ケンスケがホワイトのピクシーカットが特徴だ。

 

「おっせーよオメェら」

 

「わりぃわりぃww。……で、こちらのオジサマはどなた?」

 

「ちょうどみなさん集まったようなので、改めて説明させていただきますね。こちら、交換留学先、ブルーベリー学園のシアノ校長先生です」

 

「うん。僕、校長ー。あれ?言ってなかったっけ?」

 

「言ってねーんすよ」

 

「さっき聞いた」

 

「今知った」

 

「……情報の伝達速度はどうなってんだブルーベリー学園……」

 

「俺は知ってたぜ、なんせ教職なんで!」

 

コウキ、ホムラ、ゴウタはそれぞれシアノにツッコミをいれ、リュウセイはキタカミでの経験から留学先の報連相に問題があるのかと危惧し、ケンスケは教師なので流石に知っていたらしい。

ちなみに、交換留学生としてコウキらが選ばれた理由には、キタカミの里で出会ったブルーベリー学園生のゼイユにあった。どうやら彼女が推薦したらしい。シアノも実際に会ってみて、いいなと感じてくれたようだ。

 

「(こんな校長で大丈夫か?)」

 

「(大丈夫じゃない、問題だ)」

 

「(こいつが校長やってる学校に行くんだろ?不安しかないが……)」

 

ただ、コウキとリュウセイとゴウタは不安があるらしく、内心でシアノを扱き下ろしていた。

 

「(スグリのやつ、元気にしてっかなー?)」

 

「(今度こそ教師として生徒をわからせる……!)」

 

反対に興味の欠片もなさそうなホムラと、教師としての使命(?)に燃えているケンスケであった。

 

「さすがに四人もとなると大所帯ですので、ケンスケ先生には彼らの付き添いをお願いします」

 

「お任せ下さい、クラベル校長。自分の役割、しっかりと全うしてまいります」

 

「よろしくお願いしますね」

 

「えぇ(わからせをな!!)」

 

……大丈夫かこれ?

 

 

 

 

~移動中……~

 

 

 

 

長い移動時間を経て、一行はブルーベリー学園に到着した。シアノ自慢のブルーベリー色が特徴的な学園で、そのほとんどが海の中に沈んでいるという画期的な校舎なのだ。

あれこれ説明してくれるシアノだったが、唐突にコウキ達に質問を投げかけた。

 

「……なんか、逆に聞きたいことはないの?」

 

「なんで海に沈めてるんすか?」

 

「ブルーベリーってどっからきたんすか?」

 

「クラベル校長と親しいようでしたが?」

 

「あははー、なんかいっぺんに聞かれちゃったね。えーとそれはねー……」

 

「海の中にあるのは、海底で運用している資源開発プラントに併設しているから……だと聞いてますよ!それと、名前の由来はブルーベリーの花言葉、『実りある人生』……から、とったみたいですよ!そしてシアノ先生とクラベル先生は大学院時代の先輩後輩……だとうかがってますよ!」

 

シアノが答えようとしたところ、横から答えが飛んできた。振り返った先から、ピンク色の髪に緑色の宝石をあしらった髪留めをつけた少女が歩いてきていた。少女はほかの質問にもスラスラと答えを示し、コウキ達を納得させてくれた。

 

「さっすがタロちゃん」

 

「いえいえー」

 

「(ほぉ、コイツがタロ)」

 

「(推定、イッシュジムリーダー・ヤーコンの娘の)」

 

ゴウタとリュウセイは、事前にある人物から受け取っていた情報からタロの情報を抜き出した。

 

「そちらの方々はお客さまですか?」

 

「そうそう、交換留学のコウキさんにリュウセイさんにホムラさんにゴウタさん!そして付き添いのケンスケ先生だよ」

 

「よろしく」

 

「よろしゅうな」

 

「よしなに」

 

「よろー」

 

「よろしくね、タロさん」

 

「わっ!パルデア地方から来るって噂の……あの!?」

 

それぞれが挨拶をすると、タロは両手を合わせて驚きと感激を表現する。特にタロの視線はホムラとゴウタに注がれていた。

 

「自己紹介が遅れました。わたしはタロ!2年生です!よろしくお願いしますね。特にホムラさんとゴウタさん!」

 

「ん?俺ら?」

 

「なして?」

 

「ふふっ、お二人のことは同じリーグ部の子から聞いてますので!」

 

「おい俺らのプライバシーが欠片もないんだが?」

 

「いや、別に口止めもしてねぇだろ」

 

「それもそうだが、それはそれだろ」

 

「もはやどれだよ」

 

「みなさん、とっても仲良しなんですね」

 

「いや、面目ない。うちの生徒が」

 

和気藹々としつつも、エントランスロビーへと歩いて向かう一行。そこで説明されたことは、ブルーベリー学園におけるテラスタル現象についてだ。どうやらブルーベリー学園はテラスタルのメカニズムを制御できる技術を開発したそうなのだ。

コウキらがそのことで感心していると、シアノからコウキ達へ、タロとのポケモンバトルを提案された。

 

「へぇ、いいじゃん。誰がやる?」

 

「じゃあ、俺が」

 

「俺もやりてぇぞ!」

 

「ホムラとゴウタか……予定が押してるから、どっちかだけだぞ」

 

「じゃあしょうがない……アレで決めるか」

 

「そうだな、アレでな」

 

ホムラとゴウタは少しだけ距離を取ってお互いに向き合う。その真剣な眼差しから、ただならぬ雰囲気が纏わり始めた。

 

「あ、あの。今からお二人でバトルするんですか?」

 

「いや、ポケモンバトルだと時間がかかりすぎる……だから、手っ取り早くアレで決める」

 

「アレ……えーっと、じゃんけんとか?」

 

「そんなちゃちなもんじゃないさ……まぁ、見てな」

 

しばらく互いに睨み合い、動きすら見せないそんな中、ホムラがゆっくりと手を挙げ、ゴウタも膝を折って腰を下ろし、手を前に突き出した。

 

「「セッツ!」」

 

「合いの手いくぞー。ワン、ツー、さん、はい」

 

ツッチーツッチーツッチーツッチーツッチーツッチーツッチーツッチー

ツッチーツッチーツッチーツッチーツッチーツッチーツッチーツッチー

 

「ずくだんずんぶんぐん~♪えすぽんしゅんぽんしゅん~♪えすぱんすん♪くすぽんすん♪えすぱんすんかんせんぷん♪」

 

「ずくだんずんぶんぐん~♪ずくだんぶんさんぷん~♪ずぐだんとん♪ずぐぱんぽん♪くすぱんずんほんぷんぷん♪」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……ちくしょ、負けた……!」

 

「よしっ!」

 

「はい、ホムラの勝ち~」

 

決着は一瞬だった……どちらが勝利してもおかしくない一進一退の駆け引き、超次元級の激闘を制したのはホムラであった。

 

「いやいやいや、待って待って待って。え、なにこれ?なんのゲーム?」

 

「タロは知らないのか?ずくだんずんぶんぐんゲーム」

 

「なんて?」

 

「ずくだんずんぶんぐんゲーム」

 

「……パルデアってすごい(思考停止)」

 

少なくともずくだんずんぶんぐんゲームはこの世のどこにも流行ってないし流行らせない。なんならパルデア地方に対して盛大な誤解を招いたぞ。

 

「というわけで、ずくだんずんぶんぐんゲームで見事勝利したホムラとタロによる、交流試合です」

 

「ヒューヒュー!楽しみにしてるぜお二人さん!」

 

「……シアノ校長が言うには、タロは学園の四天王で父親がジムリーダー……まぁそれはどうでもいいが、学ぶものがあるのは事実だな」

 

リュウセイ達も完全に見学スタイルだ。バトルの審判はケンスケが務めることになった。

 

「バトル開始の宣言をしろ!ケンスケ!!」

 

「バトル開始ィー!」

 

「いっけー!プラスル!マイナン!」

 

「プララ!」

 

「マイー!」

 

タロが繰り出したのはプラスルとマイナン。お互いの特性が能力向上に役立つことで知られており、ダブルバトルで真価を発揮するといってもいいポケモンだ。対するホムラは……。

 

「グレンアルマ×2!!」

 

「「グレァ!!」」

 

まさかのグレンアルマ二体である。そのことで何かを察したらしいリュウセイ達は顔を手で覆ったり天を仰いだりしている。

 

「むむっ。パルデア地方のポケモン、それも同じポケモン二体……でも、私もブルーベリー学園代表として、恥ずかしいとこ見せられませんね」

 

「それじゃあ、いくぜ。二体同時にふんえん!!」

 

「「グレァア!!」」

 

「……え」

 

ホムラがとった行動は至ってシンプル……全体攻撃による面制圧だった。それも、グレンアルマはお互いに手を繋いで二人三脚で走りながらプラマイコンビに迫りつつふんえんを放ち、逃げ場を無くしながらの猛攻撃である。

ちなみにこのグレンアルマ、二体とも特性は『もらいび』である。

 

「プラ~!?」

 

「マイ~!?」

 

哀れ、可愛らしい電気鼠兄弟は一瞬で消し炭と化した。黒焦げになりながら目の前まで転がってきた自分のポケモンの姿に、タロはポカンと口を開ける他なかった。

 

「よーし、まずは二つ。残りはいくつだ?一つか?二つか!いくらでもだしてこい!残りのポケモン、出てこいやぁ!!」

 

「……なる、ほど。苛烈にして容赦なく、それでいて理に適った戦術ですべてを焼き尽くす。彼の言ったとおりの人ですね。でも、このまま終わるつもりはありませんよ!ドリュウズ!」

 

「ドリュー!」

 

タロが繰り出した最後のポケモンはドリュウズだ。コウキ達の脳裏に、イッシュのドリュウズ使いのジムリーダーの顔がよぎった。

 

「それが最後か?」

 

「はい。でも、負けるつもりはありませんから!」

 

「そうこなくっちゃあ、面白くない!!1号、突撃!2号はふんえん!!」

 

「避けて、ドリュウズ!」

 

グレンアルマ達は前衛と後衛に別れ、行動を開始した。一体が後方からふんえんを放ちフィールド全体を攻撃する。当然、もらいびなので味方の被害はゼロだ。対するドリュウズははがねタイプなので、もらいびで火力が上がったほのお技は直撃すれば一撃必殺待ったなしだ。

 

「10まんばりき!」

 

「受け止めろ!」

 

「ドリュ!」

 

「グレン!」

 

迫り来るグレンアルマに対処すべく弱点技を繰り出すドリュウズだが、ホムラのグレンアルマはやすやすと受け止めてしまった。

 

「そ、そんな!?」

 

「ここでテラスタルだ!!」

 

しかもそのままテラスタルオーブを起動させ、攻撃を受け止めているグレンアルマをほのおテラスへとテラスタルさせたのだ。

 

「アーマーキャノン!!」

 

「グレェェェン!!」

 

「ドリャッ!?」

 

受け止めた姿勢のまま鎧をスライドさせ砲を形成し、そのまま得意技の一撃を叩き込む。効果抜群な上に火力が上がった一撃を受け、ドリュウズはあっさりと下されてしまった。

 

「勝負アリ!」

 

「……物凄い、圧倒されちゃいました」

 

「また一つ、強くなれたな」

 

結果だけ見れば、ホムラの圧勝である。戦術というかもはや暴力なコンボ、それぞれのポケモンの特性を利用した面制圧、ダブルバトルを熟知した選出、シングルバトルが主だというパルデア出身とは思えない対応力と適応力、その全てにタロは驚いていた。

 

「(本気ではなくとも全力ではあろうとした……なのに、その全力すら出させてもらえないなんて)」

 

最近、同じリーグ部でアカデミーと林間学校で交流した友人は、アカデミー生から「自分のバトルを相手に押し付け、相手の戦術を封じる」という事を教わったらしい。

ホムラは『もらいび×2+ふんえん×2』という相互強化面制圧戦法で、タロのプラマイコンビ戦法を圧殺した。自分のバトルをタロに押し付け、タロの戦術を封じたのだ。

 

「(彼らから教わったんですね)」

 

まぁ、肝心のホムラは身内から「やりすぎ」だの「脳死やめろ」だの「ゴリ押しおもんな」など、言葉でボコボコにされていたが。どこか子供っぽいやりとりに微笑ましさを感じながら、タロはホムラ達の元へ歩み寄った。

 

「すごい!お上手ですね、本場のテラスタルの使い方!さすがって感じでした!」

 

「ははっ、それほどでも」

 

「ブルーベリー学園では最近テラスタルオーブが支給されたばかりで、使い方のコツ教えてもらいたいです」

 

「いいぜ。その代わり寝かせねぇから、そのつもりでいろよ?」

 

「わわっ……!な、なんだか物凄い覇気を感じる!?」

 

「なぁに言っとるんだ、このバカタレ」

 

アホな事を言うホムラをリュウセイがしばきつつ、彼らはシアノが用意してくれたブルーベリー学園の制服を受け取り、更衣室で着替えを済ませる。その後、タロの案内でブルーベリー学園が世界に誇るテラリウムドームへと向かった。

 

「はえ~、すっごい。これが海中に……どんだけ金かかってんだ」

 

「これだけの規模……某名探偵世界なら沈没オチ待ったなしだな」

 

「おいばかやめろ、死神フラグ立てんな」

 

「つまりここが、アクーシャ2023って、コト!?」

 

「なっつ、蒼海の王子」

 

コウキ達が思い思いに感想をこぼしていると、後ろからタロ達が追いついた。

 

ブルーベリー学園が誇る海中庭園『テラリウムドーム』。壁や天井をプロジェクターで映しているので、海中にいながら屋外にいるように感じられる仕組みだ。シアノが大金をかけて設計したというテラリウムドーム内は、四つの環境エリアが内包されている。それぞれ亜熱帯のサバンナエリア、南国のコーストエリア、渓谷のキャニオンエリア、雪国のポーラエリアとなっている。気温や湿度などがエリア毎に細かく調節されているため生息するポケモンが異なる他、ポケモンが過ごしやすい環境を人工的に作り上げているのだ。

 

「皆さんはどのエリアが気になっちゃいます?」

 

「俺はサバンナエリアだな」

 

「ゴウタさんはサバンナエリアですか。一番オーソドックスですしね。見晴らしがいいのでポケモンの生態も観察しやすいです!」

 

「俺はキャニオンエリアが気になる」

 

「コウキさんはキャニオンエリアですか。ゴツゴツ、お好きなんですね。電気石っていう不思議な鉱石もあるんですよ!」

 

「俺はポーラエリアに行きたいな」

 

「リュウセイさんはポーラエリアですか。寒いのお好きなんですね!わたしは苦手なんですが、こおりポケモンはかわいいですよね」

 

「俺はコーストエリアがいい!」

 

「ホムラさんはコーストエリアですか!うふっ、気が合いますね!わたしも一番好きです!ゆる~い雰囲気が落ち着きます!」

 

「おっ、そうか?」

 

すると、ここでタロがそっと顔を近づけてきた。全員が目を離している、完璧なタイミングだった。ホムラもそれに合わせて顔を寄せる。

 

「……気が合うついでにもう一つ。さっきのバトル、わたしもホムラさんと同じことを考えてたんですよ?」

 

「……と、いうことは、あのプラマイコンビは隠れ特性か」

 

「すごい!ご存知だったんですね!」

 

「そりゃもう、戦ってれば自ずと出来ることは見えてくるからな」

 

「ますます仲良くなれそうですね、わたし達!」

 

「だな!」

 

どうやら、ホムラとタロは意気投合したようだ。バトルで考えが通じ合ったのもあって、二人だけで会話に花を咲かせている。……こいつ性懲りもねぇな。

 

と、ここで校内放送が鳴り響いた。どうやらコーストエリアで授業があるらしい。コウキ達はタロからマップアプリを、シアノから図鑑アプリを受け取ると、早速コーストエリアへ移動し始め……。

 

「っと、サザレさん!」

 

……る、前に。休憩所エリアにいた人物に気がついたゴウタがそちらへ駆けていってしまった。

 

「ありゃ、本当だ。サザレさんじゃん」

 

「仕事かもな……邪魔せんとこ」

 

「だな、ここはゴウタに対応を任せて俺たちは先行しよう」

 

「行こうぜ、タロ!」

 

「はいっ」

 

「(ホムラェ……あとでどうなっても知らんぞ……)」

 

もう手遅れだぞ、リュウセイ。

 

 

 

 

コーストエリアで出された課題……それは、アローラの姿のリージョンフォームポケモンを連れてくること。コーストエリア以外にもアローラの姿のポケモンはいるが、ここから一番近いのはコーストエリア生息のアローラナッシーとのことだ。

 

「あー……」

 

「もういるんだよなー」

 

「え?もうすでに持ってるんですか?」

 

「うん」

 

そう言って彼らはボックスからポケモンを引き取ると、それをその場に繰り出した。

 

「ニャ~」

 

「ペルニャー」

 

「チュチュウ!」

 

「アローラのニャース、ペルシアン、そしてライチュウだぜ」

 

過去のポケモンを連れてこられる『ポケモンHOME』システムによって、彼らは初期段階で連れてこられるポケモンはすべて連れてきている。DLC実装前から連れてこられた別地方のポケモンは完全に網羅しているのだ。

 

「わぁ!これならあっという間に課題クリアですよ!」

 

「ラッキー!」

 

「おけおけ、次行こ、次」

 

「……それにしても、こんなに準備がいいところを見るに、ひょっとして授業内容を知ってました?」

 

「仮にもパルデアの看板を背負ってんだ、行き先の下見や情報収集は欠かしてないんだぜ」

 

「熱心な方なんですね、ホムラさんって!」

 

「恥をかきたくないだけさ、ただの見栄だよ」

 

「謙虚ですねぇ」

 

「(ホムラってさぁ……なんでこう、ねぇ?)」

 

「(知らん。どうせ葵も見てるだろうに、理解力ゼロかよ)」

 

着々と自身の手で地獄への道を舗装しているホムラを、白い目で見つめるコウキとリュウセイ。一方、授業が終わったタイミングで着信が来たのか、ゴウタがスマホロトムで通話をしていた。

 

《ゴウタよね!?あたし、ゼイユだけど!》

 

「ははっ、ひっさしぶりだなーゼイユ!元気してたか?」

 

どうやら電話先はキタカミの里で縁を育んだゼイユのようだ。ゴウタの声色にも、喜色の色が混ざる。

 

《そ、それはもちろん……じゃなくて!聞いたわよ!あんた今、ブルーベリー学園に留学してるんだって!?》

 

「おっ、耳が早いなぁ。誰から聞いたんだ?」

 

《ふふん!先生から聞いたの!まさかあんたがブルベリにいるとはね。……ね、ねえ。久しぶりにちょっと顔見せなさいよ》

 

「お、いいぜ!俺もゼイユに会いたかったんだ!」

 

《ホントに!?……あっ、ゴホン!えーと、そうね……テラリウムドームには行った?》

 

「今まさにテラリウムドームの中だぜ」

 

《あら、それならちょうどいいわね。ドームの中心にセンタースクエアって広場があるから、そこで待ち合わせしましょ!待たせたら……わかってるわよね?》

 

「あぁ、わかってるよ。すぐに向かう」

 

ゴウタが通話を切って顔を上げると、いつの間にかタロがいなくなっていた。少し離れた場所で話をしているコウキ達に合流する。

 

「おまた~」

 

「おう、誰から?」

 

「ゼイユ。センタースクエアって場所で、久しぶりに会わないか、だとよ」

 

「ほぅ、ゼイユか……久しい名前だな。センタースクエアは……中心地か」

 

「しからば、移動開始だ」

 

五人は全員で移動し、センタースクエアに向かう。どうやら各エリアの境界線を内側に向かって進んでいけば近道になるようだ。コウキはミライドンを、ホムラはコライドンを繰り出しライドし、リュウセイ達もそれぞれに相乗りする。

 

「……ところで、今度は変なものを積んでないだろうな?」

 

「残念ながら予算の都合で今回はいい感じのものを取り付けられなかったよ……」

 

「載せたかったわー、太陽炉」

 

「GN粒子でもれなく通信障害発生でNG出るからやめろ」

 

「しょうがないのでゲッター線(1970年代初期設定仕様)で妥協します」

 

「その微妙にアウトかセーフかあやふやなグレーを攻めるのやめろ!?」

 

「OVA版じゃないだけマシだと思え!!」

 

とーびだせゲッター!の掛け声と同時に緑色の光を纏ったコラミラは"ドワォ!"という爆発音とともに飛翔、不規則な機動で飛び回りながらセンタースクエアへと飛んでいった。ケンスケの絶叫だけを残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

無駄に超高速で飛び回りながらたどり着いたセンタースクエア。そこではコウキ達五人が全員グロッキー状態でぶっ倒れていた。

 

「さ、流石の俺らでもゲッター高速移動に挑むには三半規管が弱すぎた……」

 

「こ、これがイシカワイズム……ポケモン世界(CERO:A)には早すぎる……」

 

「見事に巻き添え食った俺らに言うことはねぇのか、お前ら……」

 

「……それで、ケンスケは?」

 

「0(:3 )~ _('、3」 ∠ )_」

 

「あぁ、あいつはいいやつだったよ……」

 

まるで死屍累々の様相を呈していたが、しばらく休むと回復できたので彼らはセンタースクエアへと足を踏み入れた。ケンスケ?ふっかつそうをぶち込んだら生き返ったよ。

 

センタースクエアのバトルフィールドへ向かうと、ゼイユがいた。どうやら知人と話し込んでいるようだ。とりあえずコウキらはそちらへ歩み寄った。

 

「そうなのよ、ちょっと大変でさ……」

 

「心中、察する。ゼイユ……来客」

 

「……!!スゥー、ハァー……ゴウタ!ひさし、ぶ……り……」

 

「よう!ゼイユ!!会えて嬉しいぜ、元気そうでなによりだ!!」

 

なぜか一泊おいてから、ゼイユは満面の笑みで振り返り……ゴウタ、というよりも、その後ろの四人を見て固まった。ゴウタ達は誰も気づいていないようで、ニコニコガヤガヤ騒いでいる。

 

「うおっ、マジにゼイユだ」

 

「久しぶりだな、ゼイユ!スグリは元気か!?」

 

「お前友達いたんだな」

 

「林間学校以来だな、ゼイユ」

 

「コウキあんた後で覚えてなさいよ」

 

「やっべ」

 

わちゃわちゃしながらも再会を喜ぶ彼ら。ゼイユは一旦彼らに背を向けると頭を抱えていた。

 

「(おかしい、あたしはゴウタのことしか校長先生に話してないはずなのに、なんでコイツら全員いるわけ!?……二人でドームの中とか、見て回るつもりだったのに……!)」

 

どうやら、ゼイユにはとある打算が含まれていたようだが、世の中なんてそんなものである。こんなはずじゃないことばっかりだよ!

 

「どした、ゼイユ?大丈夫か?話聞こか?」

 

「うぇ!?だ、大丈夫よ!それより!ひさしぶりねゴウタ!すっごく会いたかったでしょ!?」

 

「あぁ、すっげー会いたかった!会えて嬉しいぜ!抱きしめていいか!?」

 

だっ!?わっ、ちゃ、まっ……!ううぅ……こんなはずじゃないのに……

 

「(しまった、今のは四番目の甥っ子といっつもやってるやつだった。ついいつもの感じで言っちまったぜ。あいつ、俺の筋肉質体型に憧れてたからなぁ)」

 

どうやら身内へのスキンシップを勢いだけで他人であるゼイユにもうっかり要求してしまったらしい。やっちまったと頭を掻くゴウタと赤面して俯くゼイユと、対照的な反応をする二人だった。

一方、ゼイユの後ろで完全に蚊帳の外になっていた少女は、なぜかホムラに対してきつい視線を送りながらも、懐中時計を取り出して時間を確認しつつ、ゼイユに声をかけた。

 

「時間……ゼイユ、会えてよかった。さようなら」

 

「あ、うん。またね!」

 

歩き去る少女を見送り、改めてゴウタ達の方へ振り返る。どうやらあの少女はゼイユと同級生で、いわく「おもしれー女」。おまいう。

 

「……それにしても、ブルベリにゴウタがいんの、なんか不思議な感じするわ。というか、よく見たらあんた……全然変わってないわね!」

 

「言うねぇ、『男子三日会わざれば刮目せよ吾輩の名前はラプラス・ダークネスだ』って言うだろ」

 

「いや、誰よラプラス・ダークネスって。ラプラスの新種か何か?」

 

「無関係だ、気にするな」

 

「じゃあなんで名前出したのよ!」

 

ゴウタのボケにツッコミを入れるゼイユだが、その雰囲気はどこか楽しげだ。コウキ達は頑張って背景になろうと遠巻きに二人を見つめるべく移動している。いらん気遣いである。

 

「あたしは最近、ブライア先生といろんな地方調査してまわってるから?前戦った時より、ポケモン強くなってるのよねー」

 

「へぇ……」

 

「うふふ。当然、見たいでしょ?ちょうどバトルコートもあるし、位置につきなさいよ」

 

「いいぜ……バトルとなれば話は別だぜ」

 

どうやらゴウタとゼイユはバトルをする流れのようだ。それぞれが位置につき、モンスターボールを構える。

 

「ダブルバトルでやるわよ!覚悟はいい?一泡吹かせてあげる」

 

「あぁ……楽しませてほしいな」

 

「(……っ。このプレッシャー……相変わらずバトルの時だけ怖いんだから……!)」

 

巨漢が凄むという絵面に身が竦みそうになるゼイユだが、己を奮い立たせて先手のポケモンを繰り出した。

 

「グラエナ!ドデカバシ!」

 

「グラァ!」

 

「デカバー!」

 

「ルガルガン、ピクシー」

 

ゼイユの先発はグラエナとドデカバシ、ゴウタはルガルガンとピクシーだ。

 

「ピクシー、ルガルガンにスキルスワップ」

 

「クシッ」

 

「何企んでるのか知らないけど、そう簡単にはやらせないわよ!せっかくだから味わいなさい、テラリウムドームの土の味!ドデカバシ、ルガルガンにじごくづき!グラエナはピクシーにあくびよ!」

 

ゴウタが先を弄するよりも先に機先を制する、とばかりに攻勢に出るゼイユ。ピクシーのスキルスワップが決まった直後、ルガルガンにじごくづきが襲い来る。

 

「ゴウタには人の心がないんか……?」

 

「まぁ、ゴウタだからな」

 

「中途半端に手を抜くなら、全力でぶっ潰すほうを選ぶだろ、あいつ」

 

ルガルガンはドデカバシのじごくづきを耐え切った……直後、ドデカバシはメロメロ状態になり、さらにルガルガンはゴウタの控えに戻ってしまったではないか。

 

「えっ、は?」

 

「ピクシーの特性はメロメロボディだ。スキルスワップでメロメロボディへと特性が変わったオスのルガルガンへの物理攻撃……そっちのドデカバシはメスだったみたいだな。そして、俺はルガルガンに"だっしゅつボタン"を持たせていた。これにより、俺は攻撃を受けたルガルガンを別のポケモンへと入れ替える。……キョジオーン!」

 

「ジオ」

 

だっしゅつボタン。持たせたポケモンが攻撃によりダメージを受けたとき、控えのポケモンと入れ替わる効果を持つ持ち物だ。これによりルガルガンとキョジオーンが入れ替わり、呆気に取られるゼイユを置き去りにしてゴウタはすかさず指示を出す。

 

「ピクシー!もう一度スキルスワップ!」

 

「クシー!」

 

「……っ!させるか!グラエナ、キョジオーンにいかりのまえば!ドデカバシもじごくづき!」

 

「グラァ!」

 

「どへへ~……」

 

「ちょ、ドデカバシ!?」

 

グラエナは猛然とキョジオーンに突っ込むが、ドデカバシはメロメロ状態で上手く行動できなかった。グラエナの動きを見てから、ゴウタはにやりと笑った。

 

「気持ちいいくらい予想通りに動いてくれるよな、ゼイユって」

 

「は?」

 

「キョジオーン、テラスタルだ!」

 

「はぁ!?」

 

ここでゴウタ、動く。テラスタルオーブを放り投げ、キョジオーンをテラスタルさせた。テラスタイプは……。

 

「ゴーストテラス、キョジオーンだ」

 

「はぁぁぁぁぁ!?」

 

まさか、ゴーストテラスという予想外の展開に、ゼイユは絶叫を禁じ得なかった。いかりのまえばはノーマル技なので、当然だがキョジオーンには効かない。

初手でグラエナからあくびを受けたピクシーだが、キョジオーンの特性「きよめのしお」とスキルスワップしたため、眠り状態にはならなかった。

 

「では、地獄を始めよう。キョジオーン……じわれ」

 

「ジオー」

 

「グラアァァ!?」

 

「グ、グラエナ!?」

 

特性ノーガードと化したキョジオーンからの情け遠慮容赦慈悲一切無しの一撃必殺技。当然、避けられるはずもないのでグラエナは一撃だ。

 

「さぁ、次はどうする?」

 

「……あんた、久々に会った友達とのバトルですることじゃないでしょ、これ」

 

「全力じゃないと悪いかなって思って」

 

「女に花を持たせるくらいしなさいよ!ズルズキン!」

 

「ズッキー!」

 

ゼイユの三体目はズルズキン。ゴーストテラスでゴーストタイプとなったキョジオーンからすればこの上なく厄介な話だ。ただ、ゴウタも無策で戦っているわけではない。

 

「キョジオーン、ドデカバシにのろいだ」

 

「ズルズキン、キョジオーンにかみくだく!」

 

「通らんよ。ピクシー、このゆびとまれ」

 

「ピッピピ」

 

「なぁ……!?」

 

ドデカバシはメロメロ状態で動けないところへきて、さらにキョジオーンからのろいを掛けられた。体力が減ったキョジオーンへ畳み掛けようとするゼイユだが、それもピクシーのこのゆびとまれで、躱されてしまう。

 

「キョジオーン、じこさいせい」

 

「それなら、先にピクシーを!ズルズキン、れいとうパンチ!」

 

「ピクシー、まもる」

 

「ピ」

 

「うがああああっ!!」

 

ならばピクシーから潰そうとするも、ピクシー自身にも自衛手段があったようであっさりと攻撃を防がれた。

 

「(ドデカバシを下げて、ヤバソチャでなんとかするしか……)戻って、ドデカバシ!」

 

「キョジオーン」

 

「行って、ヤバソチャ!」

 

「ソチャー!!」

 

「じわれ」

 

「あ」

 

「ヤバー!?」

 

「ピクシー、ねがいごと」

 

切り札のヤバソチャによるくさテラスタルで状況の打開を考えるが、その交代は完全に読まれていた。ボールから元気よく飛び出したヤバソチャは、直後にじわれを食らってワンパンされた。見事な出オチである。

 

「……ぐすんっ」

 

「あー……その、なんかすまん」

 

「同情なんていらない……!」

 

出オチしたヤバソチャをボールに戻し、ドデカバシを再度繰り出す。一度ボールに戻したことでメロメロものろいも解けているし、ドデカバシはひこうタイプなので幸いにもじわれが当たることはない。あくタイプわざのじごくづきもあるので、戦えないことはない。……戦えるかどうかは別としてだが。

 

「ドデカバシ、じごくづき!ズルズキン、かみくだく!」

 

「ピクシー、このゆびとまれ。キョジオーン、ドデカバシにのろいだ」

 

「ムキーッ!!」

 

そろそろコウキ達は「ゼイユ可哀想可愛い」とか思い始めた頃だろう。実際、弄っててもおもしれーしな、この女。

 

「キョジオーン、じこさいせい。……ねがいごとが決まったか」

 

「いや、ここまで来たら攻めて攻めて攻めまくりよ!!ドデカバシはダブルウイング!ズルズキンはれいとうパンチ!」

 

「ピクシー、このゆびとまれだ。キョジオーンはズルズキンにじわれを」

 

ピクシーが攻撃を引き受け、キョジオーンが一体ずつ相手を葬り去る。今も、ドデカバシのダブルウイングを受けた後、ズルズキンのれいとうパンチを受け止めると放り投げ、落下地点にキョジオーンのじわれが炸裂しズルズキンが戦闘不能になった。

 

「残りはドデカバシのみ。……といっても体力的に次の行動がラストかな」

 

「あ、諦めるもんですか……!ドデカバシ、キョジオーンにじごくづき!」

 

「キョジオーン、まもる」

 

「(゚ロ゚)」

 

最後まで諦めない心で果敢に攻めるゼイユだが、ラストアタックもキョジオーンのまもるで防がれ、ここでのろいの効果によりドデカバシの体力が尽きた。完全決着である。

 

「思ってたのとだいぶ……いやかなり違うんだけど」

 

「対戦ありがとうございました。またやろうぜ」

 

「二度とやるか!?」

 

ありえないレベルでの圧倒的な差を見せつけ、圧勝したゴウタ。敗北し、再戦すら拒否したゼイユだが、どこか嬉しそうではあった。

 

「あーあ、せっかくテラスタルも使いこなして強くなったと思ったのに、テラスタルさせてもらえなかったどころか、もっと強くなってるんだもん!その容赦のなさ!全然変わってないわね」

 

「褒め言葉として受け取るぜ。ゼイユも変わりなくて良かった。以前よりも洗練されているなとは思ってたけど、どうやら勘は当たってたみたいだ」

 

「よく言うわね……こっちのやりたいこと、なにもさせてくれなかったくせに」

 

「そこはそれ、詰めが甘いってな」

 

「(遠いな……ゴウタの背中……)」

 

以前と変わらず、いや、それ以上に強くなっているように感じるゴウタの姿に、ゼイユは突き放されたような寂しさを感じていた。だが、それも、ゴウタに頭をワシャワシャと撫でられたことで吹っ飛んだが。

 

「ななななな!?」

 

「そう落ち込むなって!ポケモンの役割とかちゃんと理解すれば、お前も強くなれるって」

 

「……あんたたちのバトルって、なんか別のものと戦っているみたい」

 

はぁ、とため息をつくゼイユ。そのため息の意味がよくわからず首を傾げるゴウタの元に、コウキ達が集まった。

 

「おつ~」

 

「あのさぁ……もうちょっとさぁ……ねぇ?」

 

「ノーガード戦法とかここですることじゃないと思うんだが?」

 

「いや、これは俺なりの敬意なんだが」

 

「そんな無慈悲な敬意なんぞドブに捨てちまえ!」

 

「(あれ、そういえばスグリの姿が見えんな……ゼイユと一緒かと思ったが)」

 

コウキ、リュウセイ、ケンスケがゴウタの所業にツッコミを入れる中、ホムラだけはスグリの姿が見えないことを気にしていた。前回ではだいぶ原作乖離が起こっていたので、スグリもそこまで重症化していないだろうと考えていただけに、アテが外れていた。

 

「ねえ、ところでさみんな。スグとは……会った?」

 

「スグリ?そういえば見てないな」

 

「俺たち、てっきりゼイユと一緒にいるもんだとばかり」

 

「スグリになにかあったのか?」

 

「あ、いや……会ってないならいいんだけど」

 

妙にお茶を濁すような言い方をするゼイユに全員揃って首を傾げた、その時だった。

 

「どうして言われたこともできないんだよ!!」

 

センタースクエア全体に響くような怒号。どこかで聞いたようなその声に、全員がそちらの方へ顔を出した。

そこにいたのは……

 




三話構成にしようとすると一話あたりの話数が馬鹿にならなくなったので、話数を増やしつつ複数話同時投稿という形で行こうと思います。

修正前の一話が30,000文字超えは流石にビビった。もうちょっと文字数絞らないと!しかし、逆に一話150,000文字(最大文字数)まで書こうとすると、一体どんな長編大作になるんだろうか……。


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年末年始特別編!ポケモンSV脳内シミュレーター 藍の円盤 第二話

続けて二話、いっきまーす!


「どうして言われたこともできないんだよ!!」

 

センタースクエア全体に響くような怒号。どこかで聞いたようなその声に、全員がそちらの方へ顔を出した。ちょうど階下で、一人の男子生徒に詰め寄る者がいた。見目は多少変わっているが、全員が知っている人物だった。

 

「やっぱりスグリだ、すっごいニアミス……」

 

「スグリ!?」

 

「なんか雰囲気変わったな」

 

「(いや、知ってたけど)」

 

「シーッ!静かに!」

 

騒ぎ始める男どもを黙らせ、ブロックに身を潜めるように促す。全員がそれに従い、しばらく様子を見ることにした。

 

「試合用のポケモン、5匹は育ててって俺言ったよな?」

 

「ご、ごめん。今月は家の用事で忙しくて……」

 

「だったら、それならそうと事前にそう言ってくれよ。報連相もロクにできないわけ?おかげさまで俺、すっごい困ってるんだけど」

 

「ほ、本当にごめん!次は気をつけるから!」

 

「……次なんてない、お前は人の信用を裏切ったんだ。試合は別の人に頼む。お前には失望した。もう期待はしない」

 

「ス、スグリくん……」

 

「俺の友達が言ってたよ。『最初から気持ちで負けているような奴なんかに、勝利と栄光という未来を掴めるわけがねぇ』って。やるんなら本気でやってもらわなきゃ困るんだよ。できないならできないでそれは構わないけど、ちゃんとそうした意思表示もしてもらわなきゃ、こっちには伝わらないんだよ。

そういう意味では、お前なんて最初からやる気なんてなかったって言われたってしょうがないんだよ。誠意の欠片も感じられない……お前みたいな中途半端な奴の迷惑なんて、心底困るんだ。正直、庇いきれない」

 

そう言い残して立ち去ろうとするスグリ。男子生徒は必死にスグリに謝罪しているが、聞く耳はないとばかりに歩いていこうとする。

 

「スグリーッ!!」

 

だが、この場にはこの男がいた。身を隠していたブロックの上に立ち、大声を張り上げる男……そう、ホムラである。

 

「ホムラ……!?」

 

「とうっ!!」

 

ブロックからジャンプし、華麗に宙返りを披露しながらのスーパーヒーロー着地。思わず見とれてしまう程の完璧な所作である。

 

「……痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

 

「わわっ!ホ、ホムラ大丈夫!?」

 

ただし膝に悪い。普通に膝を痛めて蹲るホムラに、先程までの雰囲気なんぞ彼方に消し飛んだスグリが慌てて駆け寄った。なんとも締まらない男である。

 

「よ、よぉスグリ……げ、元気にしてたか……!」

 

「いや、そんなことよりホムラの方が心配なんだけど……」

 

「だ、大丈夫だ……たかが膝を強打しただけだ……」

 

「いや、十分アウトでしょ」

 

結局、痛みが引くまで安静にしてから、ようやくホムラは立ち上がりスグリと向き合った。

 

「いや、マジで久しぶりだな。元気してたか?」

 

「うん……!ホムラは……さっきまでは死にそうだったな」

 

「アレ、マジで痛いからな。なんというか……すげぇイメチェンしたな」

 

「か、形から入ろうかなって思って……変わるにしても、まずは見た目から変えていかないと、と」

 

「思い切り良すぎワロタ」

 

「や、やっぱし変……?」

 

「変じゃないさ。どんな時でもスグリはスグリ、だろ?」

 

「うん!」

 

と、ここで思わずホムラに抱きつくスグリ。ホムラも熱い抱擁を交わしつつ再会を喜んだ。……と、ここでスグリが先程の男子生徒のことを思い出したのか、一瞬で無表情に変わるとそちらを睨めつけた。

 

「なに?まだいたの?もうお前に用はないよ、さっさと帰って家の用事済ませれば?」

 

「うぅ……」

 

「……おい、君。ちょっとこま、彼のこと借りるよ。悪いね」

 

「あ、いや、その……し、失礼しますっ!」

 

ホムラの言葉でようやく決心がついたのか、男子生徒は早足にその場を去っていった。ホムラが視線に気付いてそちらを見ると、スグリが不満げに頬を膨らませていた。

 

「……ホムラ、やっぱ優しいな」

 

「そうか?そうだとして、反面お前は他人に厳しくなったな」

 

「自分にも厳しいよ。そうしてるつもり。……ところで、どうしてホムラがブルベリに?」

 

「交換留学ってやつだ。……続きは向こうで話すか。ここだと人目につく」

 

「うん、そうする」

 

ホムラはスグリを連れ立ってセンタースクエアを出て行った。……出る直前、ホムラは後方へ視線を送り、それからハンドサインをしていった。そうして二人がセンタースクエアを出て行ったのを見送ってから、残ったコウキ達はフィールドの中央に移動した。

 

「……ふぅー。行ったみたいだな、あいつら」

 

「スグリのやつ、随分と変わってたな。想像以上だ」

 

「……驚いたでしょ。スグ、見た目も性格もちょっと……変わっちゃって。林間学校終わってからかな、あれからなんか……」

 

「良くも悪くもってやつか?」

 

「うん……」

 

ゴウタの言葉を肯定し、俯くゼイユ。ゴウタも掛ける言葉を探していた、その時だ。

 

「なーんか、胸クソ悪いもん見ちまったなぁ」

 

「ゲッ」

 

「あん?」

 

横合いから声がかかり、その声を聞いたゼイユが露骨に嫌そうな顔をした。全員が振り返った先には、白髪に薄紫色のメッシュが入った特徴的な髪型をした少年が歩いて来ていた。

 

「おやおや?ゼイユに……見たことねえ顔ぶれ。……もしかすっと、そちらさん方が?例のワケありさん」

 

「チッ!めんどいのに見つかっちゃった」

 

「おいおい、紹介ぐらいしてくれよ」

 

「そんなダリィやつか?」

 

「処す?処す?」

 

「やめぃ、お前ら」

 

「それで?ゼイユ、彼はどちらさん?」

 

ボールを構えて物騒なことを言い出すボケ組をリュウセイが制し、その間にケンスケがゼイユに尋ねる。

 

「……これ、カキツバタ。いけすかない男。いちおう、ブルーベリー学園で一番強い……強かったやつ」

 

「ご紹介どうもー」

 

「こっちは一番大きいのがゴウタ、眼鏡がリュウセイ、チャラそうなのがコウキ、制服じゃないのがケンスケ。あと一人いるんだけど、いないから紹介は省くわね。交換留学で来てて、あたしの友達の……」

 

「スグリとも!友達なんだろぃ?アンタら」

 

「そうだぜ。……まぁ、一番の仲良しさんはスグリとすぐにどっか行ったけど」

 

「ほーん、やっぱそうかい!そいつはいいなあ!」

 

「(わざとらしい物言いだ、警戒しておこう)」

 

ケンスケの説明に納得の様子を見せるカキツバタ。ちなみにコウキは「チャラそう」と紹介されたことにショックを受けて打ちひしがれていた。それと、リュウセイはリュウセイでカキツバタに対して距離を置こうとしている。

 

「そいじゃ皆!オイラたちの部室に案内するぜぃ」

 

「は?なんでよ!」

 

いきなり部室への案内を買って出られたが、即座にゼイユが反応した。実際、脈絡がなさすぎてゴウタ達も疑問に感じていたほどだ。

 

「アンタら、まだ部活入ってないだろ?どっか部活入っときゃ学園も過ごしやすくなるし、おもしろそうなのは大歓迎!……ツバつけとかないとねぃ、ついてきな」

 

「ねえ、ちょっと!」

 

言うだけ言って、カキツバタはさっさと歩き出した。ゼイユがなにか言い出そうとしても、カキツバタは特に反応するつもりはないらしい。

 

「人振り回すやつ、ムカつく~!」

 

「もうこうなったらついていくしかないだろ」

 

「だな」

 

プリプリ怒りを露にするゼイユをなだめながら、一行はカキツバタの後を追ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく到着したリーグ部の部室。ゼイユはホムラと行動を共にするスグリが部室に来るのではないかと心配するが、カキツバタ曰く「しばらく部室にゃ来ねえ」とのことだ。

 

「改めまして、ここがリーグ部の部室だ!リーグ部を代表して歓迎するぜぃ」

 

「……リーグと聞くと、ポケモンリーグが思い浮かぶが、何か関係があるのか?」

 

「へへん、よくぞ聞いてくれましたリュウセイ!」

 

リュウセイの問いに対し、カキツバタは嬉しそうに反応を示した。やはり自分たちの部活道に興味を持ってもらえるのは、部員として喜ばしいことなのだろう。

そこから語られたのは、ブルベリーグという制度だ。ブルーベリー学園にはブルベリーグという、生徒間でのポケモンの強さを決めるランク制度がある。ランク上位を狙うために部員同士でポケモンを鍛え、勝ち負けを通して切磋琢磨する部活動……それがリーグ部だ。

カキツバタは「今はちょいと風向きが変わっている」という。その言葉で一同の脳裏をよぎったのは、さきほど見たスグリの姿だ。スグリがきっかけで、何かが変化したということだろう。

ブルベリーグも「リーグ」の名を冠する通り、ランク一位のチャンピオンと、二位~五位までの四天王がおり、カキツバタ、そしてドームでゼイユと話していた「おもしれー女」も四天王の一人らしい。

ゼイユもリーグ部所属だが、あまり顔を出すことはないようだ。しかもランク外らしい。

 

「あたしは学外活動で忙しくてリーグ戦やってないだけですー。強さ的には四天王なんて余裕で飛びこえてんだから」

 

「「「「え?」」」」

 

「……文句あるわけ?」

 

「「「「いえ、なにも」」」」

 

直前にノーガードじわれ戦法で全タテされた者のセリフとは思えず、つい聞き返してしまった。案の定、ゼイユに睨まれてしまい、即座に目を逸らす。

楽しそうな部活だ。ゴウタらへの好感触を感じ取ったのか、カキツバタは仮入部終了宣言をする。カキツバタ的には、ゴウタ達とはすでに仮仲間らしく、部室の自由な出入りと置いてあるものの使用許可までもらったのだ。

 

「あ、ちょっと待った。こっちにゃもう一人ツレがいるんだ、今からそいつを……」

 

「おじゃましまーす」

 

「お、噂をすれば影がさすってか」

 

コウキがホムラのことをカキツバタに教えようとしたところ、ちょうどホムラがリーグ部にやってきた。都合がいい、とコウキはホムラを手招きし、カキツバタの前に出した。

 

「ほい、こいつが最後の一人だ」

 

「おっ、そうか。オイラはカキツバタ、よろしくな」

 

「あんたがカキツバタか。俺はホムラだ、よろしく」

 

「ホムラ……?へぇ、それじゃあアンタがスグリの言ってた……」

 

「ん?俺のことを知ってるのか?」

 

「そりゃあもう。……耳にタコができるくらいにはな」

 

その時、カキツバタの表情に僅かに影が差したのを、リュウセイは見逃さなかった。

 

「おうおう、遠くイッシュ地方にまで俺の話が広まってんのか。……ん?誰が広めてんだ?」

 

「スグリだよ。一番の親友で、すっげぇ強いって自慢してまわってたぜ」

 

「ははは!そりゃあ、友達冥利に尽きるってもんだな」

 

「……だねぃ」

 

「……(カキツバタ……ホムラを見る目に仄暗いものを感じる。用心しとくか)」

 

そのスグリとさっきまで会っていたホムラからすれば照れくさいものだが、カキツバタはどこか不穏な気配をまとっている。それを感じ取ったリュウセイもまた、警戒心を一段階引き上げた。

その後も部室に置いてあるパソコンのこと、ブルーベリーレクリエーション(通称:ブルレク)で稼いだBPを投じて他の部活動を支援したり、お菓子食べ放題(カキツバタの食べ残し)と、様々な説明をしてもらった。

 

「いっぱい説明したら、腹減っちまった。オイラちょっくら食堂行ってくっから、正式に入部してえって腹ァくくったら、食堂デートしながら話そうぜぃ」

 

「デッ!?」

 

「んじゃなー」

 

終始マイペースに話を進めるカキツバタは、そのまま食堂へと向かってしまった。相変わらず掴みどころのない物言いに、ゼイユは最後までイライラしていた。

 

「もうー!あいつ!本当!何なのよ!!しかもデートとか……は?デートって何!?」

 

「ん?ゼイユってデートしたことない?あるいは知らない?」

 

「いや、意味は知ってるから!デ、デートの10や100、余裕でしてきたわ!!」

 

「(見栄張ったな)」

 

「(はいダウト~)」

 

「(嘘乙)」

 

もはや完全に勢いだけで喋ってることがバレバレであり、デートの回数なんてあからさまに嘘臭い。コウキとホムラとケンスケは内心でツッコミ、リュウセイは沈黙している。声に出さないのはせめてものの紳士心からだ。

 

「そ、そういうゴウタは知ってんの!?」

 

「知ってるよ。なんならデートもしたことあるし」

 

「えっ……」

 

どうせお前もやってないんだろうのつもりで聞いてみたら、まさかのデート経験者だったゴウタ。思わぬ返答に顔面蒼白になるゼイユだが、ゴウタはまるで気づかない。

 

「俺はそんなつもりじゃなかったんだけど……彼女が頻りに強調するんで、そういうことにしてたんだよ。まぁ、デートかデートじゃないかで言えば、傍から見たらデートだったんだろうな」

 

「……う、うそ……うそよ、そんな……」

 

「え、嘘じゃないが……ど、どうした?顔色悪いぞ……?」

 

「うぅ……うぅぅぅぅ……」

 

「え、え!?ゼイユ!?な、なんで泣いて……」

 

「うるさいうるさいうるさい……!」

 

急に目に涙を浮かべて震えるゼイユに、ゴウタはどうしたものかとてんやわんや。すると、ここで手に顎を当てて何か考えていたホムラが手をポン、と叩いた。

 

「ゴウタ、さっきの話って姪っ子ちゃんのことだよな?」

 

「え?あぁ、そうだが?」

 

「……え?は?姪……?」

 

「そうそう、ゴウタは二十歳以上年の離れた兄貴がいてな。その人、稼ぎもいいし甲斐性もあるから馬鹿みたいに嫁さんをたくさん娶って子供作ってんだよ。それで、さっき言ったのはゴウタと同い年で誕生日が少し後の姪っ子ちゃん。身内同士の買い出しだからデートじゃねえって、ゴウタがさんざん愚痴ってたのを思い出したぜ」

 

「あれ、この話ってホムラにしてたっけか?」

 

「俺も聞いたぞ」

 

「おっ、ケンスケもか。あっれー?話したのを俺が覚えていないんだが?」

 

おっかしーなー?なんて言いながらうんうん唸るゴウタ。記憶を探ることに夢中になっていたゴウタは、目の前で羞恥と憤怒で顔を真っ赤にするゼイユの存在に気がつかなかった。

 

「姪っ子なら姪っ子と……先にそう言いなさいよーッ!!」

 

「ぶべらっ!?」

 

ゼイユの張り手が顔面に直撃し、見事なトリプルアクセルを披露しながらゴウタはぶっ倒れた。

 

「……ごめん。やっぱここ、落ち着かない。ちょっとどっか場所変えるわよ」

 

「そうか、じゃあ俺らの中の誰かの部屋にしないか?どこにする?」

 

「………………ゴウタの部屋」

 

「(だいぶ悩んだな)オッケー、移動しよう。……オラッ、ゴウタ!いつまでも寝てんじゃねえ!」ヽ(#゚Д゚)ノ┌┛☆ゲシゲシ

 

「うげっ、ぐえっ。な、なんだ?」

 

その後、一行はゴウタの部屋へと移動する。部屋についてからは、ゼイユとゴウタはベッドに腰掛け、コウキはテーブル前の椅子に、ケンスケはベッドの脇にある椅子に座り、リュウセイは壁にもたれている。

ブルーベリー学園生はほとんどが寮生活を送っているらしく、その関係で寮の部屋はかなり充実しているようだ。アカデミーではオレンジクラスとグレープクラスに分かれており、寮の部屋の内容もクラスごとに異なる仕様だ。

 

「青いなぁ」

 

「まぁ、赤くはないよな」

 

「ブルーベリーだもん、そりゃ青いわよ。ゴウタ、今度あたしの部屋にも来ていいわよ」

 

「まじで?それじゃ、その時はよろしくな」

 

「おーい、ゼイユ。俺らは?」

 

「ゴウタ同伴なら特別に許してあげる」

 

「扱いの差よ……」

 

「それよりもゼイユ。わざわざ人目のつかないこの部屋に呼んだってことは、話したいこととかあったんじゃないのか?」

 

「そうだった!」

 

呼び出した以上は用があるんだろう?とリュウセイに促され、ゼイユは本来の目的を思い出した。

 

「アンタたちに話しとかなきゃいけないの!カキツバタとか……スグのこととか」

 

「じゃあ早速スグリについて教えてもらおうか。俺たちが知る限り、他人に対してああもきつく当たるのは少し想像がつかない。何があった?」

 

彼らは今一番気になっているスグリについて尋ねた。

彼らは一応この脳内シミュレーションを創造した祖龍から原作の大まかなストーリーや各キャラクターのパーソナルデータを聞いてはいるが、その中でもスグリに関しては「原作ほど荒れることはないだろう」と楽観視していた節があった。それだけに、スグリが原作と遜色ない荒れっぷりを披露したことに、少なからず戸惑っていたのだ。

 

「スグはね……さっき見たとおり。最近……怖いの。キタカミから戻ってきてから人が変わっちゃったみたい。毎日寝る間も惜しんでポケモン鍛えて勝負して……あの子、すっごく強くなったの。学園で一番強かったカキツバタを倒しちゃったし、今はリーグ部部長とブルベリーグのチャンピオンやってる。いそがしいんだろうねー、あたしとはあんまり話してくれなくなっちゃった!……ま!ただの反抗期だと思うけど!」

 

どうやら学園に戻ってからのスグリはバトルに対して超ストイックになっているようだ。片時も努力を怠らない姿勢は褒めてしかるべきだが、それはそれとして他者にあたりがきついのはどうにかしたほうがいいだろう。

最後は笑って「反抗期だ」なんて言ったゼイユだが、ゴウタがそっと頭を撫でるとその笑顔もすぐに崩れた。

 

「……心配だよな。変化すること、それ自体は悪いことじゃないが、それも方向性による問題だ。何かあったのだとしたら、ちゃんと話して欲しいよな、わかるよ。俺も甥っ子の些細な変化に気付けたが、本人が何も言わないからどうしたものかと悩んだもんだ。

こういう時はむしろ一歩引いちゃダメだぜ、ゼイユ。全力でぶつかっていけ!見捨てず、目を逸らさず、過去のスグリを追うんじゃなく今のスグリとしっかり向き合わなくちゃな。大丈夫、俺たちも一緒だ。な、ゼイユ?」

 

「……うん。ありがとう、ゴウタ……」

 

「どういたしまして」

 

「(甥っ子……それってたしか、十七番目だっけ?)」

 

「(小学校上がりたての子だったな)」

 

「(父親イジリによるイジメだっけか。あれって結局ゴウタが本人に黙ってボイレコ仕込んで証拠を掴んで、絶対音感持ちの十二番目の奥さん協力のもと犯人を特定し、そのまま一緒に学校へカチコミかけた話だよな?)」

 

「(ゴウタの兄貴は経済界のヤベー奴だからなぁ、影響力がハンパじゃないんよ)」

 

ゴウタがゼイユを慰める中、リュウセイとケンスケは過去に起こった事件についてヒソヒソと話している。ゴウタの前世は兄弟も同然の甥っ子姪っ子が沢山いた。その中の誰か一人に異常が起きればすぐに察することができるほど、ゴウタは彼らを可愛がっていた。その家族愛の対象は現在はスター団メンバーに向けられている。

 

「さっきまで一緒にいたホムラなら、すぐにわかったんじゃないかしら」

 

「あぁ、実にわかりやすかったぜ」

 

センタースクエアでスグリと一緒に行動をしたホムラは、その後スグリの部屋へと案内されたそうだ。スグリの部屋は質素倹約とした見た目だった。……壁中に貼り付けられた、バトル関係のメモ用紙を除けば。

メモの内容は対人関係に関する心理学、ポケモンの個体ごとに想定される戦術パターン、天気パを使用するうえでの立ち回りや選出順など、まさしく「戦闘狂」と呼べるほどのありさまであった。

そして、これら全てがホムラ達をリスペクトした上での行動だというのだ。

 

「いやー、すごかったぜスグリのやつ!まさにポケモンバトルに一生を捧げたって言っても過言じゃない本気度だったぜ。それに、俺に対してはいつもどおりというか、いつもより人懐こくなってたように見えたが……俺とそれ以外とで、だいぶ落差がすごかったな」

 

「センタースクエアでのやりとりを見るに、ホムラに対してはそれこそガーディもかくやとばかりだったが、それ以外の人物には一転して冷淡だったな……」

 

「ゼイユ、そこら辺のことは姉のお前から見てどう思う?」

 

「……確かに、スグリはホムラ達のバトルを研究してたと思う。あたしにも、キタカミで戦ったゴウタの手持ちとか戦術とか、しつこく聞いてきたくらいだし……」

 

しかも、スグリはそれだけで止まることはなく、勝負の後は常にディスカッションやデブリーフィングといった振り返りを要求しているらしい。どういう意図で技を選んだのか、発動タイミングは適切だったか、どんなバトル展開を想定していたかなど……とにかく振り返り、反省し、学び直し、検討し、再び実践する。ひたすらそれを繰り返す日々。

ここまで暴走しているとなると人心が離れていきそうなものだが、そこは事前に出来るか否かを本人確認した上で行っており、無理矢理や強要といった強引な手段は控えているらしいし、できないことを非難することもしない。そのため、今のスグリは「キツイけど相応の配慮をしてくれる」として一定の支持者がいるそうだ。

 

「なるほど……そりゃあ、変わったと言われてもしょうがないな」

 

「スグリね、少し変わっちゃったけど、あんたたちは……」

 

「驚くほど変わってないだろ?」

 

「むしろより鬼畜になってるわ」

 

「おいさっきのバトルのこと根に持ってんのか?」

 

「さてね~?……とにかく、あんたたちだけは前みたいに友達でいてあげて!」

 

「お前……あぁ、わかってる。もちろんさ」

 

「……ありがと!」

 

ゴウタが代表で返事をすると、ゼイユは再び笑顔に戻った。それから話はカキツバタについてになる。

 

「カキツバタ!あいつは信用しちゃダメよ!やる気なさそうに見えて裏で何考えてるかわかんない!本当にムカつくすっとこどっこいなの!授業もろくに出ないから3回も留年してるし!とにかくあいつには気ぃ許したらダメ!絶対よ!」

 

「ゼイユにそこまで言わせるとは、大したやつだなカキツバタ」

 

「いや、ゼイユの言葉も一理ある。……あいつ、どうもホムラに思う所があるようだ」

 

「でしょ!?」

 

「それだけじゃない。センタースクエアでゼイユと話していたあの女子生徒もだ」

 

「え、ネリネが?……全然そんな風には見えなかったけど」

 

「無表情だろうがのらりくらりしていようが、滲み出る心象までは誤魔化しきれん。特に俺はその手の敵意を常日頃から浴びせられてたからな、手に取るようにわかるんだ」

 

前世で天才兄妹と持て囃され、同世代から嫉妬と逆恨みの目を向けられていたリュウセイは、カキツバタとネリネからホムラに対する敵意に似た気配を感じ取ったのだという。カキツバタはともかくネリネまでそのように考えていたことが信じられないのか、ゼイユが目を丸くしていた。

 

「まぁ、完全な敵意というか……有り体に言えば『気に入らない』って感じか。敵愾心というほど強いものではないから、安心するといい」

 

「……ねぇ、ホムラ。あんた一体なにをしたわけ?」

 

「いや、何もしとらんが!?」

 

「とにかく、現時点では憶測の域を出ない。ホムラは念頭に置いておけ」

 

「お、おう……」

 

身に覚えのないことで敵意を向けられたホムラは困惑しきりだ。とにかく今はリュウセイのアドバイスに従い、不用意に距離を詰めないことに決めた。

 

「このあとカキツバタと食堂でー……会うんでしょ?」

 

「デートな、デート」

 

「わざわざ言うな!」

 

「あでっ!?いきなり殴るなよ!?」

 

「まったく……リュウセイの言う通りカキツバタが敵意を持ってるならついてってあげたいけど、今日中にレポートまとめないとヤバいのよね……」

 

「何やってんだお前、宿題残ってるならそっち優先しろよ」

 

「そ、それは!……だって、せっかくゴウタと会えたのに……ゴニョゴニョ……

 

「どした?急に声が小さく……ははーん?さてはサボりか?悪い奴め」

 

「誰がサボりよ!!」

 

「いででで!?すんませんサボりは言い過ぎましたぁ!!」

 

いちいち一言が多いゴウタは度々ゼイユから制裁を食らっていた。そんな様子を遠い目で見守りながら、無性にブラックコーヒーが飲みたいコウキ達であった。

 

「リーグ部、あんたたちが入ってくれたら嬉しいけど……ふざけたこと言われたら噛み付いてやりなさい!」

 

「おう、頚動脈をぶっこ抜いてやるぜ」

 

「殺意高すぎィ!!」

 

物騒なことを言いながらも五人は部屋の前でゼイユと別れ、その足で食堂へと向かった。食堂に入ると向かって左側にカキツバタが座っており、目が合うと手を振ってくれた。

 

「よう、みんな。立ち話もなんだし座りなよ」

 

「おk」

 

カキツバタの両隣をリュウセイとホムラ、向かい側にコウキ、ゴウタ、ケンスケの順に座った。忠告した矢先にホムラがカキツバタの隣に座っているが、これはカキツバタが一番に席を誘導した相手がホムラだからだ。是非に隣へ、と言われれば断る理由がない以上座らざるを得ない。そこでリュウセイが間を挟んで座ることでもしもの時に備えているのだ。

余談だが、カキツバタのオススメは学園食堂で、柔らかいが故にさほど噛まずに食べられるのが利点らしい。

 

「ホムラ……いや、ホムラだけじゃない。アンタら全員、ポケモン強いだろ?」

 

「ふむ……さて、どうだろうな?世間は広いからな、俺らより強い奴はごまんといるだろ」

 

「またまた、とぼけちゃって!オイラにはわかる。その強さならブルベリーグのテッペン目指せるぜ」

 

「へぇ~」

 

「ふぅ~ん」

 

コウキもゴウタも生返事を返すだけで、ケンスケもなんと返そうか言葉を探っている。リュウセイは謙遜しているようでその実、拒絶の意思だ。ホムラは沈黙している。

 

「「「「「(こんな狭い世界で頂点獲ってもな)」」」」」

 

なんなら前世では世界レベルの人数相手にポケモンバトルを繰り広げていた五人だ。たかだか一学園の頂点に立つ程度のことではなんの感慨も浮かばない。この世界で言えば、全地方のポケモントレーナーと戦う……いわゆるポケモンWCSくらいの大規模大会でなければ『頂点』と言いたくはないのである。

決してブルベリーグを否定しているわけではない。ホムラ達が見据える『頂点』が、余りにも高すぎるだけなのだ。

 

「交換留学で来てるやつが学園で一番になったら、すげーおもしれえだろ?だから、皆にはブルベリーグに参加して欲しいのよ」

 

「だが、俺たちは外部の人間だぞ?そんな都合よく話が通るとは思えんが」

 

「大丈夫大丈夫、ツバっさんはブルベリーグのNo.2だぜ?うまいことまとめといてやるよ」

 

「(裏があるな、どう考えても)」

 

「(こんなやっすい煽てで話に乗っかると思われてんのは心外)」

 

ケンスケが教師として確認をすると、カキツバタは問題ないの一点張りだ。リュウセイとコウキはゼイユの言葉通りにカキツバタから胡散臭さを感じており、ホムラとゴウタもわかりにくものの胡乱げな様子だ。

 

「おっ、おいでなすった」

 

と、その時だ。カキツバタが食堂の入口に目線を向けたので、ホムラ達もそちらを見やる。そこにはちょうど四人の生徒が入ってきたところで、全員がカキツバタに目を向けている。

 

「(スグリ……)」

 

「(タロもいるな)」

 

「(ブルベリーグチャンピオンから四天王まで、雁首揃えて来やがったな)」

 

集まったメンバーを事前情報から改めて整理する。

ブルベリーグ四天王にしてランク五位、アカマツ。

ブルベリーグ四天王にしてランク四位、ネリネ。

ブルベリーグ四天王にしてランク三位、タロ。

ブルベリーグ四天王にしてランク二位、カキツバタ。

そしてブルベリーグチャンピオン、ランク一位……スグリ。

 

ここに、ブルベリーグトップ5が集結したのであった。

 

「カキツバタ……話って何?」

 

スグリが問う。その雰囲気はセンタースクエアで見せた冷淡無情のソレ。

 

「何もなにもさ、ここ食堂よ?一緒にメシでもどうよ、って誘っただけなんだがねぃ」

 

「……くだらない。そんなヒマあるなら、少しでもポケモン強くしたら?だから俺なんかに負けるんだよ。カキツバタ、お前は強いんだぞ?もっと真剣に取り組めば、あの時俺が勝てる可能性はもっと低かったかもしれないのに」

 

「やっべ、墓穴掘っちまった。こうなったチャンピオン様はなかなか小言が止まらないんだよねぃ」

 

「聞いてんの?」

 

「聞いてる聞いてる。まるで小姑みたいだよな、ホムラ」

 

「いや、控え目に言ってもお前の方に全面的に問題があるようにしか思えんが」

 

「うっそだろおい」

 

「え、ホムラ!?」

 

ここでようやく存在に気づいたのか、スグリがホムラに反応した。それから、ドタバタ駆け足で移動すると、後ろからホムラをあすなろ抱きした。

 

「いるならいるって言って」

 

「なはは、なんならここには俺以外のみんなもいるぞ」

 

「え?……あっ、リュウセイ!」

 

「今頃か……ちょっと淋しいぞ、スグリ」

 

「ご、ごめんって……コウキも、ゴウタも、ケンスケ先生も久しぶりだなぁ」

 

「おう、スグリ!強くなったんだってなぁ、お前とのバトルも楽しみだぜ!」

 

「機会があれば、一戦交えようぜ」

 

「本当に変わったよなぁ」

 

「へへ……みんなはちっとも変わってないべ」

 

久々に旧交を温め合う、いわゆるキタガミ組。ただ、突然のスグリの豹変にブルベリーグ四天王組は置いてけぼりをくっていた。

 

「わぁ……あのスグリくんがこんなに笑うなんて……」

 

「スグリの笑顔……久々に認識(なのに、なぜこのような複雑な心境に……)」

 

「いいねいいね!まるでフランベのような気分だ!」

 

「…………(やっぱりホムラか……コイツが……)」

 

それぞれ思うところがあるようだが、それはさておきカキツバタが話を戻す。

 

「オイラ達すっかり仲良しこよしでさぁ、ホムラ達にブルベリーグ参加してくれ~って誘ってたのよ!」

 

「おお!いいね、それ!燃えるじゃん!!」

 

「なっ……!?」

 

「他校の生徒のブルベリーグ参加……前例にありません」

 

「そ、そうだよ!たしかにホムラくんはすごかったけど、さすがに……」

 

「なんだよ、さみしいこと言いやがって!うちの授業受けて、うちの寮に部屋もあんだ!こりゃもう同じ学園の仲間だろ!?それに、うちは生徒の自主性が重んじられてる。……決を取ろうぜ」

 

どうやら四天王の間では賛否両論のようだ。校則や伝統という面で反対の意を示すのはタロとネリネ、反対に賛成したのは言いだしっぺのカキツバタとアカマツだ。こうなると、最終判断はスグリに委ねられることになる。

 

「はは、なんか悪いなみんな。俺らは別に参加できなくても……いてててて。ちょ、スグリ?締まってる締まってる」

 

ホムラはやんわりと場を和ませつつ断ろうかと考えていたところ、急にスグリが腕の力を強くしてきた。何事か、とホムラが振り返ると……なぜか目のハイライトが消えたスグリが真顔でホムラを見つめていた。

 

「ホムラ……勝負したべ、俺以外のヤツと……この学園で最初にホムラとバトルするの、俺だと思ってた……」

 

「(怖っ)」

 

「タロ……なんでホムラとバトルした?俺が、俺があれだけ勝ちたいって、そう言ってたのに、ホムラに、俺が、なのにお前……!!」

 

「えっ……あ、その……」

 

「だぁーっ!やめろスグリ!落ち着けぇ!バトルは俺が勝ったから!そもそもタロも俺も全然本気じゃなかったし!ただの交流試合だから!!」

 

徐々に凄みが増していき、その様相がタロを怯えさせるようになると咄嗟にホムラが間に入った。ただ、「ホムラが勝った」と聞いた直後、一瞬で目のハイライトも復活し凄みも消え、嬉しそうに笑うのであった。

 

「……へへへ、やっぱりそっかぁ。そりゃそうだ、ホムラは俺よりも強いべ。だから、俺より弱い奴なんかにホムラが負けるわけねぇんだ。ごめん、ホムラ、タロ。俺、うっかりしてた」

 

「あ、あはは……」

 

「(えっ、なに?なんで俺こんなプレッシャーかけられてんの?嘘だろスグリ……)」

 

スグリの中のホムラ像がどうなってるのか、聞くのがかえって怖すぎる。内心で震えながらも決して表には出さないようにホムラは必死に努めた。

 

「それじゃあ……って、聞くまでもねぇかもしれねえけど、ブルベリーグチャンピオンスグリさまはどうお考えで?」

 

「賛成。ホムラならきっと勝ち上がれるよ。俺、ホムラやリュウセイ達のバトルでいっぱい勉強したんだ。早くホムラとバトルしたい……だから……勝ち上がってな?」

 

「アッハイ」

 

スグリは賛成……これにより賛成3反対2となり、ホムラ達のブルベリーグ参戦が決定となった。なお、ケンスケは教員なので当然だが不参加だ。なのでブルベリーグに挑むのはホムラ、ゴウタ、コウキ、リュウセイの四人となる。

 

「よーし、ホムラが参加するなら、ポケモンを見直さないとだ……!」

 

やる気満々、喜色満面といった様子で食堂を去るスグリ。

 

「カキツバタ!そういうのよくないと思います!」

 

暗に「ホムラ達を出しにして賛成を取るな」と言い含め、早足に出ていくタロ。

 

「ホムラ……」

 

小さく、しかしはっきりとホムラの名を口にしつつ立ち去るネリネ。

 

「……?」

 

そして何も知らないアカマツ。

 

「悪いな、みんな。なんか流れでブルベリーグに参加してもらうってなっちまった」

 

「よく言うぜ!お前、参加させてやるぜ~って目が訴えてたぜ?」

 

「目は口ほどに物を言う、ってやつだな」

 

「ははは!こりゃ一本取られちまったねぃ。まぁでも、物は考えようさ!スグリとバトルするチャンス!?本人も熱望してたみたいだしな……なぁ、ホムラ?」

 

「まぁ、あそこまで期待されてちゃ、答えないほうが悪いよな。仕方ねぇ、ブルベリーグに参加するかぁ」

 

「そうと決まれば、正式にエントリーしなくちゃな。エントランスの受付に行こうぜぃ」

 

「あ、俺は念の為にシアノ校長へ確認を取ってくるわ。こういうときの教職だぜ?」

 

「おっ、そりゃありがてぇ。頼んだぜ、ケンスケせんせ」

 

ここでケンスケは別行動となり、シアノを探すべく校長室へ向かう。ホムラ達はエントランスへ向かい、受付に来ていた。

 

「へっへっへ、来たな!ここでエントリーすんだ」

 

「あのー、ブルベリーグに参加できるって聞いたんすけどー?」

 

促されるままにエントリーを進めようとするが、受付からは「留学中で正式なブルーベリー学園の生徒ではない」ことに疑念を抱かれてしまう。カキツバタもフォローするが、信憑性にかけるとして微妙な雰囲気だ。「やはり日頃の行いが……」とホムラ達の中での評価が僅かに下がった。

ケンスケを待てばその問題も解決するだろうが、それよりも先に声が掛かった。

 

「カキツバタの言うとおりだよ。ホムラ達のブルベリーグエントリーは、俺が認めた」

 

「おーい、シアノ校長から許可をもぎ取ってきたぜー」

 

スグリがカキツバタの発言をフォローするのと同時に、ケンスケが戻ってきた。どうやらシアノ校長もホムラ達のブルベリーグ参加を認めたらしい。

 

「チャンピオン!それに、シアノ校長がおっしゃるなら!少々お待ち下さいね」

 

「助け船たぁ、意外だな。……いや、そうでもないかな?」

 

「……コソコソと裏で糸引いてるみたいだけど、皆と……ホムラと戦えるのは俺にとっても望むところなんだよ」

 

「へっへっへ、そいつはよかった」

 

ニッコニコ笑顔のカキツバタだが、スグリはカキツバタなど眼中にないと言わんばかりに目を合わせようともしない。

 

「ホムラ、皆……必ず勝ち上がってきて。俺、みんなと戦うの本当に楽しみなんだ。全員でも、一人でも……早く戦いたい。でも、大丈夫だよね。皆、俺よりもずっと強いから、負けること無いだろうけど……でも、心配だな。あっ、俺もちゃんと強くなったべな。おかげで今やブルベリーグのチャンピオンだ」

 

えへん、と胸を張るスグリ。それからすぐに、真剣な表情に変わる。

 

「ブルベリーグの四天王は、俺ほどじゃないけどそれなりには強いよ。……まぁ、俺やねーちゃんを全タテするくらい強いみんななら、むしろ余裕かも……?大したことなかったらごめんな。カキツバタだってこんなんだけど、一応ブルーベリーじゃ二番目に強いから、期待はずれにはさせないはずだから。……カキツバタ」

 

「なんだい、チャンピオン」

 

ようやくカキツバタの方を見るスグリ……だが、その表情は一転して厳しいものに変わっていた。

 

「ホムラ達はみんな強いよ。……みんなの期待を裏切るようなバトルしたら、許さない」

 

「…………」

 

「俺の時みたいに、がっかりさせないようにしろ。全身全霊で、命懸けで戦え。死に物狂いで勝利を奪い取れ。可能性を指先ひとつ掠めることを許すな。最後までトレーナーとしての意地を貫き通せ。敗北を妥協する自分は捩じ伏せろ。立ちはだかる敵は全て薙ぎ倒せ。

四天王だとかそんなん関係ない……一人のトレーナーとして、心から満足できるバトルをしろ」

 

「……それは、チャンピオンとしての命令かい?」

 

「いや……ホムラ達の友達としての、お願いだ」

 

「スグ……」

 

ゼイユやカキツバタが、スグリの口から出た「友達」と「お願い」というワードに感心する中、先程から期待という名のプレッシャーをかけられまくりのホムラ達は冷や汗ダラダラ、心臓バックバクだったりする。この温度差どうにかならんのか、風邪引くぞ。

 

「それじゃ、みんな……けっぱれ!」

 

最後に満面の笑みでエールを送ると、そのまま歩いて行ってしまった。そんなスグリを見送ってから、ようやくゼイユは口を開いた。

 

「ごめん、みんな!スグ、ずっとあんな感じなの。最近、またよく笑うようになったかと思ったら……」

 

「チャンピオンさまはとっても友達思いでやんすからねぃ」

 

「カキツバタ!アンタ、みんなをブルベリーグにまきこんだでしょ!」

 

「いやいや、これ本人の意思よ?なぁ、ホムラ!?」

 

「そうだぜ、ゼイユ。(成り行きな上に断りにくい圧をかけられたけど最終決定は自分で下したので)本人の意思だぜ」

 

「……なんだろう、言葉の裏にめちゃくちゃ複雑な心境を感じるわ」

 

「気のせいっすよ」

 

そういうことにしておく。

 

「……なーんか怪しいけど……やるからにはがんばんなさい。あたしも応援してる。スグのこと……お願いね」

 

それだけ言い残して、ゼイユも立ち去る。ちょうどエントリーが完了したようで、受付から声をかけられた。どうやらホムラ達はブルベリーグに挑戦できるようだ。

さらに、本来なら一般生徒との勝負を勝ち上がる必要があるのだが、四天王のアカマツとカキツバタに加えてシアノからの推薦もあり、ランク上位……即ち、四天王にいきなり挑める状態からのスタートとのことだ。スマホロトムにも、四天王が拠点としている各スクエアの場所を登録してもらった。四天王の使用タイプも、祖龍からの事前情報に誤りはない。

ただ、一つだけ課題がある。それは四天王に挑戦するためにはブルレクで手に入るBPが必要とのことだ。……まぁ、四人もいればBP稼ぎは造作もなかろう。

四天王を全員倒せば、晴れてチャンピオン戦である。順番は任意とのことなので、せっかくだから下から勝ち上がっていくことにした。

 

「四天王と戦う前にゃあ、ちょっとしたお遊びもあっから、乞うご期待だぜぃ?さて、チャンピオンたってのお願いっつーことで……つまらねぇ勝負にならねーように、オイラも頑張らせてもらおうかねぃ。そいじゃドームで待ってるぜ、キョーダイ!」

 

カキツバタもドームの方へ移動し、残るは五人だけ。そこでようやく、ホムラ達が肩をグッと落とした。

 

「はぁ~……っべーよ、おいどーすんの?」

 

「俺らは化物かなんかかと思われてんのか……?」

 

「言われてみれば……心なしか、他の生徒からの視線に畏怖の念が込められているような」

 

「え、俺らってスグリのせいで『パルデアのヤベー奴ら』って思われてんの?」

 

「ま!ヤベーのはお前ら生徒であって、教師の俺は無関係だがな」

 

「いや、ヤベー奴らの引率を任されてるって十分ヤベーやつ認定されると思うんだが」

 

「うそやん……」

 

がっくりうなだれるケンスケだが、気にしすぎるのもよくはない。五人は改めてドームの方へ移動することを決めた。

 

「のんびりBP稼ぎつつ……」

 

「ポーラスクエアのチャレンジ用にポケモン確保!」

 

「図鑑は概ね、HOMEから送ってきて完成してるからな」

 

「じゃあ……他にやることといったら……」

 

「「「「とりあえず現地トレーナーを残らず狩るか」」」」

 

「ほどほどにしろよ~お前ら」

 

なお、その場で会話を聞いていたブルベリ生徒全員が顔面蒼白で身震いしながらこう思った。

 

 

ドーム内のみんな逃げて超逃げて、パルデアアカデミーのヤベー奴らやっぱ怖ぇ

 

 

 

 




第二話でした。

二日目は三・四話になると思います。一応下書きの文字数を見て、余りにも多いようなら区切りますので、その都度一話ずつ話が増えます。


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年末年始特別編!ポケモンSV脳内シミュレーター 藍の円盤 第三話


(゚ω゚;)←あれ、思った以上に話が長いぞ?と焦り始めた筆者の顔。


コウキたちはブルベリーグに参加し、四天王打倒のために再びドームを訪れた。……その前に、ドーム内にいるすべてのトレーナーを全滅させるために行動を起こした。ライドポケモンの有無の関係上、ホムラはキャニオンエリア、コウキはポーラエリア、リュウセイはコーストエリア、ゴウタはサバンナエリアを受け持ち、それぞれ散ってトレーナーを探し、片っ端から勝負を仕掛けまくった。

 

~コウキ~

 

「でんきテラスエレキスキンこだわりゴローニャでだいばくはつじゃい♪」

 

「お、俺のポケモンたちがあああぁぁぁ!?」

 

~ホムラ~

 

「ようは面制圧が最強ってわけ!ニンフィア、ハイパーボイス!!」

 

「わたしのポケモンが一撃で……」

 

~リュウセイ~

 

「ほろびのうた。恨むなら、手持ちが少ない己を恨みな」

 

「ちくしょおおぉぉ!!」

 

~ゴウタ~

 

「個々が強けりゃダブルも強い!ゴルーグばくれつパンチ!ムクホークはすてみタックル!」

 

「特性をフルに活かした戦法……ぼ、暴力的すぎる……」

 

こんな感じで行く先々で無双を繰り返し、ブルーベリー学園生の実力を測って回った。無駄なく理にかなった戦術で学園を荒らし回る四人は、本格的に『パルデアアカデミーのヤベー奴ら』と認識されるようになるのだが……四人はそんなことなど知る由もなかった。

そうして一同は、再びサバンナエリアに集合した。

 

「おかえり。ホムラ、そっちはどうだった?」

 

「ん~……普通。リュウセイは?」

 

「まぁ……普通か。ゴウタはどうだ?」

 

「いや……普通、かな。コウキは?」

 

「中の中……はい、普通です」

 

総評、普通。それがホムラ達が感じたブルーベリー一般生の実力だった。

 

「ポケモンの選出は悪くない。ポケモンは決して弱くはない」

 

「ただ、トレーナー自身はマチマチだったな。ブルレクといい、この学園の設営位置といい……これは、学園というより研究施設って感じだな」

 

「教師にブライア先生にシアノ校長とかいるくらいだからな……パルデアとは校風が違うと言っちまえばそうなんだが……」

 

「……あー、あれだ。レジェアルみたいな感じなんだな、ここ」

 

「どういうことだ、コウキ?」

 

全員が感じたことは、生徒ごとにバトルタクティクスがちぐはぐしていることだった。「バトルの力を入れている」という謳い文句に偽りなく、生徒達がダブルバトルで選出するポケモンはとてもよく考えられている。だが、いざそのポケモンで戦うとどうもボロが出るというか、戦い方に手探り感があった。リュウセイに至っては相手の選出に対して戦法を説いてしまったほどだ。

まるで「ランクマトップのパーティーを初心者に使わせてみた」感が拭えない。その違和感の元がなんなのか、思い立ったのがコウキだった。

 

「ほら、ブルレクの内容にある『〇〇タイプのポケモンを捕まえろ』とか『〇〇のポケモンを撮影しろ』とかって、レジェアルの図鑑タスクに似てるよな~って思ってたわけよ。そんで、前世で言う大学感もある。ポケモンの生態調査ということならブルレクってのは体の良い名目で、バトル重視という校風も納得がいく」

 

「……なるほど。強いトレーナーを育てているのはバトルが優秀な生徒を世に送り出すためではなく、"教授もしくは助教授の研究を(・・・・・・・・・・・・・)手伝う助手を育成する(・・・・・・・・・・)ためと……そう言いたいのか、コウキ?」

 

「さっすがリュウセイ!俺の言いたいこと、すぐにわかってくれたか」

 

「あん……?言われてみりゃ、この学園はバトルのことばっかだな。バトル重視というより、バトル以外が雑って感じで。……もしかして、バトルルールがダブルバトルなのもなにか意味があるのか?戦略性が~とか、学園らしさ~とか、そんなん抜きで」

 

「むむむ……ポケモンの調査という名目なら、確かに見方が変わるな。レジェアル時代は大変だった……こっちは一匹なのに、向こうは複数で来るからな。それの対策として対多数戦を想定した結果がダブルバトルなら、なるほど考えたもんだ。トリプルじゃなくてダブルなのは、学びはじめの子供たちにいきなりトリプルバトルはハードルが高いからか?」

 

それぞれが思ったことを口に出す中、リュウセイが何かに気づいたように振り返り、手を挙げた。

 

「来たか、ケンスケ」

 

「よっすよっす、お待たせ」

 

「ケンスケ?どうしたお前」

 

「いやいや、ここの学園の授業風景とか見学してたのよ。俺、教職だからな」

 

「どうだった?教師としての目線でこの学園を見て回った感想は」

 

「あー……確かにバトル学への力の入れようは本物だったぜ。キハダ先生もニッコリだろうよ。ただなぁ……それ以外の授業はなんというか、はっきり言って小学校レベルだぜ。俺らのアカデミーと比較したら、ここの連中が可哀想なくらいだ」

 

「そこまでか!?」

 

「あぁよ。教師として言わせてもらうなら……バトル学以外の科目だけは『全員今すぐパルデアアカデミーに来い!』ってレベルだ」

 

「そこまでのレベルか……」

 

「生徒大好きタイム先生もブチギレ待ったなしだな」

 

教師という立場だからこそ見えてくるものがある。ケンスケはその立場を利用して、ブルーベリー学園の日頃の授業風景を見学させてもらっていたのだ。そこで感じたことは、バトル学を除く他の授業の粗雑さ・杜撰さ・簡素さであった。

 

「言い過ぎかもしれんが、尖りすぎなんだよな。一般的に専門校っていっても平均すりゃ専門科目7割それ以外3割って感じなんだが、ここは専門9その他1って感じだ。教員も先生というより教授って感じ」

 

「ふむ……そこへ来てコウキやリュウセイの推理か。なるほど学園の皮をかぶった研究所と言われても納得だな」

 

「何の話?」

 

「おう、俺が説明するわ」

 

「頼む、ホムラ」

 

話の内容を知らないケンスケにホムラが説明しつつ、一行は四天王・アカマツが待つサバンナスクエアへと移動する。話を聞いたケンスケも納得のいく部分があるのか何度も相槌をうっていた。

 

「はは~ん……なるほどガッテン。それならカキツバタの三留が大目に見られてるのも納得もんだ。下手に退学やら卒業やらで学園からいなくなったら、強い学生の伝手の一つがなくなるからな」

 

「……あの時は深く考えなかったんだが、ブルベリーグってリーグ部があるところからして部活動の一環ってことだろ?学園が主体の……それこそ、前世で言うところの体育祭や文化祭、それらをひっくるめた学園祭ってわけではなく」

 

「いや、そもそも学校行事どころか勉強科目ですらないぞ」

 

「一般生徒の対人戦ガバガバ感も、説得力が持てるな……」

 

「おいおい……知らない間に学園の歯車になってるとか、俺イヤだぜ?」

 

学園の看板を背負ってる別の何か……ブルーベリー学園からそんな何かを感じ取り、五人は身震いした。

 

「あの校長……抜けているようで、結構なやり手だったか」

 

「教育者としては目も当てられんが、それ以外の側面から見たら確かに優秀な部類だ。これでどこぞの悪の組織と繋がってたら終わるぞ、マジで」

 

「うわぁ……ローズ並に面倒な奴だ。んー……ブライア先生も『先生』よか『博士』って呼ぶ方がしっくりくるわ。特にエリアゼロの話をした時の食いつきようと来たら……」

 

「ウチのレホール先生も、一歩間違えたらそっち側に足突っ込みかねないんだよなぁ。どういうわけか、この脳内シミュレーションじゃ杭が一本もないし封印もとっくに解かれてるからか大人しいけど」

 

「…………」

 

「……?どうした、ゴウタ」

 

「いっ!?いや、なんでも……(四災は本編開始前に俺が捕ったんだよなぁ……黙っとこ)」

 

そうして移動を続けていると、サバンナスクエアに到着した。早速受付を済ませて、アカマツから説明を聞く。

 

「待ってたよ、ほのおの挑戦者!こんなにはやく四天王に挑戦とか、スゲーよね!そりゃスグリやカキツバタ先輩が気に入るワケだ。オレもキミらのこと気になってるよ、ショージキね」

 

「ほほぉ、そりゃどうも」

 

「でも、ここのチャレンジは全然アマくないよ!オレの四天王チャレンジは……激辛サンドウィッチ作り!このオレ、アカマツをヒーヒー言わせるようなから~いサンドウィッチを作ってよね!」

 

「……え、それだけ?」

 

「なわけあるか。……当然、何かしら条件があるんだろう?」

 

「鋭いね、リュウセイ!そのとおり、自前の食材は使わせないよ。食材はまわりのリーグ部員とかけ引きして調達するんだ。食材が集まったなと思ったら、戻ってきて声かけてよ。オレが見てる前でサンドウィッチ作ってもらうからさ」

 

「なーるほど。それじゃあ、辛い味の食材を集めりゃいいわけか」

 

「かけ引きか……ま、なんとかなるだろ」

 

説明は以上となる。さっそく四天王チャレンジに挑むわけだが……。

 

「さあ、誰から四天王チャレンジに挑戦する?」

 

「よし、それなら同じ赤色同士でホムラ行け!」

 

「いや、俺はいいよ。アカマツの赤と俺の赤で赤の過剰摂取だわ。辛い味も赤っぽいイメージだし、赤々しすぎるのもどうかと思うから俺はいい」

 

ゴウタがホムラにGOサインを出すが、意外なことにホムラは一歩引き下がった。するとここで流れが変わった。

 

「あっそう、じゃあ俺がやるよ」

 

「何言ってんだゴウタ、一番手だぞ?俺がやるよ」

 

「コウキじゃ様子見にもならん、ここは俺がやる」

 

「いや、俺が」

 

「いやいや、俺が」

 

「いやいやいや、俺が」

 

「じゃあ俺がやるよ」

 

「「「どうぞどうぞ」」」

 

「"どうぞ"じゃねえんだよ!」

 

「アッハッハッハッハ!みんなって本当に仲良しなんだな!」

 

お約束芸を披露しつつ、結局ホムラが挑むことが決定した。コウキ達はネタバレ防止のため、スクエアで待つことにしている。

ホムラは早速リーグ部員達に声をかけて回った。時には物々交換で、時にはポケモンバトルで材料をかき集め、テキパキとサンドウィッチ作りを始めた。……上に乗せるパンを食べながら。

 

「はい、できたー」

 

「……あれ、パンは?」

 

「ん?下にちゃんとあるだろう?」

 

「いや、そうじゃなくて……上に乗せる方……」

 

「ムシャムシャしてやった」

 

「食べちゃったの!?」

 

挟んでしていないものの、ちゃんと激辛サンドウィッチを完成させた。もちろん、アカマツも大好評だ。その後、コウキ達も激辛サンドウィッチを作り上げたのだが……。

 

「はい完成」

 

「できたぜ」

 

「まぁ、こんなもんだろ」

 

誰一人としてパンを挟まなかった。流石に捨てるのはもったいなかったのか、自分のポケモンに食べさせたり材料集めの時点で既に食べていたり、なんとまぁ自由な連中である。

 

「……パンを乗せなかったのはパルデア流なのかな……?」

 

大丈夫だアカマツ、お前は間違っちゃいない。コイツらがおかしいだけだから。

その後、一同はスクエアに戻り、チャレンジクリア順にアカマツに挑むことになった。そのため、一番手はホムラだ。

 

「チャレンジも終わったし、お次は四天王勝負だね!」

 

「インターバルがあるとはいえ、流石に四連戦はきつくないか?」

 

「ぜんっぜん!むしろスグリが自慢しまくってたみんなとのバトルが楽しみで仕方ないよ!」

 

「そうかそうか、そりゃ何よりだ」

 

「……キミらってスグリと因縁あるみたいだね。特にホムラ。カキツバタ先輩もなんかたくらんでるみたいだし……そーゆーの!マジでめんどくさいよ!!言いたいことあるなら直接言えっての!やれっての!」

 

「なるほど、真理だな。……でもな、アカマツ。真っ直ぐすぎる言動ってのは、時には凶器に勝るものだ。言葉そのものが誰かを傷つけることがある。だから人間はオブラートに包んで、相手を無闇に傷つけないように言葉や行動を選ぶんだ」

 

「……それはそうかもしれないけど!」

 

直情的で考えることが苦手なアカマツは、心情に反して回りくどいことをするカキツバタらの行動が理解できないという。

それに対して待った、と返すのはホムラだ。「言葉は刃物」という言葉を知るホムラは、直接的すぎる言動が人を傷つけかねないことを理解している。だから、アカマツの言い分には一理あると同意しつつも安易に肯定はしない。

 

「アカマツ。刃物を握る手で人を幸せにできる職業ってなんだと思う?」

 

「え?な、なんだよ急に……」

 

「刃物を扱う職業はいくつかあるが……その一つは料理人、即ちお前だ」

 

「!!」

 

「言葉は刃物、つってな。包丁を扱う料理人、ハサミを扱う庭師や理髪師、そして言葉を使う俺等人間。包丁やハサミは仕舞えるけど、言葉はそうもいかねえんだ。出したら引っ込みつかないし、訂正も修正もきかねえ。言葉一つで人間関係なんて一瞬でばらばらになるんだ、みじん切りみたいにな。そうなっちまったら、もう二度と友達には戻れないかもしれねぇ。だから、言葉をかける前に、行動を起こす前に、相手の気持ちを汲んでやってくれないか?」

 

「……オレには……オレには、難しいよ……」

 

「まぁ、今すぐとは言わないさ。お前のペースで、ゆっくりやればいい。アカマツ風に言うなら……弱火でじっくりコトコト煮込むように、って感じかな。俺も手伝うからさ、一緒に頑張ろうぜ」

 

「……スグリがホムラのこと大好きな理由、わかった気がする」

 

「そりゃあ俺らは親友だからな!」

 

わっはっはー、と笑うホムラにつられるように、アカマツも笑顔になる。ホムラという男がどういう人間なのか、アカマツははっきりと理解できたのだ。

 

「スグリに言われたんだ、『みんなをがっかりさせたら許さない』って。それって、つまらない勝負をするなってことだよな?それなら大丈夫!オレは強いから!退屈で冷めるようなことにならないよう、超強火で戦うよ!

サバンナエリア、ほのおの四天王アカマツ!勝ちたいから、勝たせてもらうよ!」

 

「パルデアアカデミー所属、チャンピオンランクホムラ。負けたくないんで、勝たせてもらうよ」

 

「行け!ファイアロー!ロトム!」

 

「バンギラス。ドリュウズ」

 

アカマツの先手はファイアローとヒートロトム、ホムラの先手はバンギラスとドリュウズだ。バンギラスは特性『すなおこし』により、すなあらし状態を生み出す。いわ・じめん・はがねタイプ以外にダメージを与えつつ、いわタイプの特防を1.5倍にする効果を持つ。

 

「(むむ、いきなり天気を変えられた。いや、ファイアローでにほんばれを使えばいい。すなあらしを主軸にした手持ちかな?ならまずは……)」

 

「天候を変えてイニシアチブを握りたい気持ちはわかるが、そう簡単にはいかんよ」

 

「っ!?くっ、ファイアロー!」

 

「おそい。ドリュウズ、いわなだれ!」

 

「うっ……か、躱すんだ!ロトムはドリュウズにオーバーヒート!」

 

「織り込み済みだ」

 

ドリュウズに技を指示しつつ取り出したのは、テラスタルオーブ。ホムラはそれをドリュウズに投げ、ドリュウズをいわテラスでいわタイプへと変化させたのだ。

いわタイプにほのお技は半減。よってヒートロトムのオーバーヒートではドリュウズを止められず、いわなだれは放たれた。いわなだれはフィールド中に降り注ぎ、アカマツのポケモンを同時攻撃する。

 

「ロト~!?」

 

「ロトム……くっ!ファイアローは!?」

 

「ファ……」

 

ロトムは戦闘不能、ファイアローは持ち物きあいのタスキのおかげでかろうじて持ちこたえた。だが、ファイアローは技を繰り出すことができないでいる。

 

「怯んだな。バンギラス、お前もやれ」

 

「ギラ!」

 

畳み掛けるようにバンギラスからもいわなだれが放たれ、その直撃でファイアローも戦闘不能になった。

 

「(なんてこった、なんてこった!?盤面作り(下拵え)に失敗した!ドリュウズのいわなだれ、威力がおかしすぎる……特性はすなのちからだな!そして持ち物にこだわりハチマキ……そこへいわテラスでさらにいわ技の威力を上げているんだ……あれじゃ、並みのポケモンは一撃で倒されるぞ!?)」

 

戦慄した。とことんまで考えられた火力ブースト、無駄なく処理する全体攻撃、天気を起こすバンギラスと超火力で全抜きを狙ういわテラスすなのちからハチマキドリュウズ。スグリがチャンピオンになってからも「俺より強いやつなんてたくさんいる」と豪語していたのも頷ける。

 

「バクーダ!ナッシー!!」

 

次に繰り出したのはじめん複合ですなあらしが効かないバクーダと、じめんに耐性を持ちみずに強いナッシーだ。アカマツもほのお使いとして対策は立てていたが、それは雨によるほのお技の威力低下を狙ったみずタイプ対策が主だ。じめん対策も初手のファイアローとロトム、そしてナッシーで万全。

高速超火力いわアタッカーによる絨毯爆撃など完全に想定外だった。

 

「バンギラス」

 

「ギラ」

 

ナッシーが出てきた直後、ホムラはバンギラスに指示を出してドリュウズのそばに寄せた。何の意味があるのかは定かではないが、考えるのは苦手なアカマツはとにかく攻勢に出ることにした。おあつらえ向きにじめん技を持つバクーダもいる。逆転するなら今しかないだろう。

 

「バクーダ、ドリュウズにだいちのちからだ!」

 

「ドリュウズ、バンギラスに向かって飛べ」

 

早速攻撃を仕掛けるが、これは躱された。バンギラスは胸の前で腕を組むとそこでドリュウズを受け止め、そのまま腕を振り上げてドリュウズを打ち上げた。

 

「空中ならよけられない!ナッシー、やどりぎのたね!バクーダ、げんしのちから!」

 

「バンギラス、いわなだれで守れ」

 

宙に躍り出て身動きがとれないドリュウズに迫るやどりぎのたねとげんしのちからだが、それはバンギラスのいわなだれによって阻まれ、攻撃が届かない。

 

「なんだって!?」

 

「バンギラス、てだすけ。ドリュウズ、いわなだれ!」

 

「なぁ……っ!?」

 

アカマツがダブルアタッカーと読んでいたバンギラス……その実態は、ドリュウズへの徹底したサポーターだった。能力値だけ見れば優秀なバンギラスをサポート役に回すという判断……余りにも衝撃がでかすぎた。

バンギラスのてだすけを受けたドリュウズは更に火力が増し、いわなだれの一撃でバクーダ・ナッシー共々一撃で葬り去った。

 

「(つ、強すぎる……オレの対策をしているにしたって、こうも一方的だなんて!オレも対策の対策をしてきたつもりなのに、何もさせてもらえないまま……これが、パルデアの強さなのか……!)」

 

「(ウインディとかガオガエンはいなさそうだな。ほのおケンタロスはパルデア産だからいないだろうなーとは思っていたが……あー、よかったよかった)」

 

アカマツはただタイプ相性を考えただけでなく、戦術などもとことん考え尽くされたホムラのバトルにただただ圧倒されていた。

ホムラは「いかく持ちいないやラッキー♪」としか考えていない。それ以外で懸念していたのは弱点タイプの先制技やこちらが技を外さないか、天候特性持ちがいるかどうかくらいだ。

 

「ブーバーン!……ふぅ、バシャーモ!!」

 

「(げっ、バシャーモだ。しんくうは使えるんだよなー、ダリィ。覚えてませんよーに)」

 

とか考えていたらアカマツがバシャーモを繰り出してきたので内心で嫌な顔をする。

 

「強火で燃えてテラスタル!赤く染まれ、バシャーモー!!」

 

ここでアカマツ、バシャーモをほのおテラスへとテラスタルさせる。そのことに対して特に驚きもせず、ホムラは笑顔になった。

 

「いいねいいね、タイプ相性が不利になろうとも己のこだわりを貫くスタイル!そういうの大好きだ!」

 

「ああ!テラスタルしない方が多少は有利に立ち回れるってわかってる。でも、バシャーモはオレの手持ちの中でも一番強いポケモンだ!!タイプ相性なんて、炎でまるごと飲み込む!」

 

「よっしゃ!そうこなくっちゃあなぁ!!」

 

「ブーバーン、10まんボルト!バシャーモ、きあいだま!!ドリュウズを攻撃だ!」

 

「ドリュウズ、いわなだれ!バンギラス、まもる!」

 

ブーバーンの10まんボルトとバシャーモのきあいだまが、ドリュウズへ迫る。バンギラスがドリュウズの前に躍り出て、まもるで全ての技を防いだ。10まんボルトは麻痺状態、きあいだまは特防低下を警戒しての判断だ。

反撃で繰り出されたいわなだれを、バシャーモは持ち前の運動能力で巧みに避けるが、ブーバーンは対処しきれず命中。一発当たれば雨あられのように打たれ続け、ブーバーンは戦闘不能になった。

 

「ブーバーン……!ごめん……でも、オレは負けないよ!バシャーモ、ストーンエッジ!!」

 

「受け止めろ、バンギラス。B極振りのお前なら耐えられる」

 

「ギラッ!」

 

「ドリュウズはバンギラスを踏み台に飛べ!いわなだれ!!」

 

「ドリュウゥゥゥ!」

 

バンギラスが体を張ってストーンエッジを受けた直後、ドリュウズが尻尾を踏み台に頭に足を付け、そのまま一気に高く飛ぶ。そこからいわなだれを降り注がせ、バシャーモへと攻撃をする。

 

「うっ……躱せ、バシャーモ!」

 

「バ、バシャァア!!」

 

「バシャーモッ!!」

 

咄嗟に回避を指示するも、最後は躱しきれずに直撃。バシャーモが倒れ、ここで決着がついた。

 

「勝ちたかったけど負けたー!」

 

「ふぅ、対戦ありがとうございました」

 

お互いにポケモンをボールに戻し、フィールドの中央に集まる。

 

「スゲー!強火で燃えたー!ホムラ、スゲーよ!スゴすぎるよ!!」

 

「んな大げさな」

 

「大げさなもんか!スグリが言ってたこと、本当だった。ホムラ達に対策組まれたら、オレのやりたいこと何にもできないじゃん!」

 

「アカマツのほのおタイプをカバーする作戦、悪くなかったぜ。まぁ、見た瞬間に何をするかなんて分かったけど」

 

「そんなわかりやすい?」

 

「おぉ、わかるわかる。これでひでり持ちとかいかく持ちとか出てきてたら、物理特化の今の手持ちじゃ悲鳴を上げてたぜ」

 

「ひでりといかく……なるほど」

 

正直、最初の攻撃でファイアローが怯んでいなかったら戦術変更も辞さない所存であった。by作者

 

「オレさ、勝負も料理もわかりやすいから好きだ!勝負は勝つか負けるか!料理は辛いか辛くないか!……シンプルだろ?でも今のリーグ部はなんでかイゴコチ悪くて、スゲー……難しい!どうすれば前みたいな楽しい部活に戻れるんだろ……」

 

「(スグリのストイックさに、周りが置いてけぼりになってる感じか?……どうもそれだけじゃない気がするぜ)」

 

ひとまず、パルデア流の『勝負後の一枚』をしっかり撮影し終え、ここでインターバルに入る。アカマツも自身のポケモンを休ませるため、移動を始めた。

 

「料理以外の火加減はオレにはわかんねー……けど、ホムラの言う通りじっくり弱火で、時間をかけて考えてみるよ」

 

「あぁ、その意気だぜ。行き詰まったら相談してくれ」

 

「ああ!だからホムラ!ブルベリーグ、燃え上がってな!」

 

「おう!」

 

ポケモンを休ませるアカマツと別れたあと、そのまま階下に下りようとしたところちょうどカキツバタが歩いてきていた。よっ、と軽い調子で手を挙げつつカキツバタは声をかけてきた。

 

「おーす、未来のチャンピオン。まずは四天王、一人目勝利だな。幸先がいいねぃ」

 

「あぁ、勝たせてもらったぜ」

 

「……アカマツも弱い方じゃねえんだ、考え方が単純なだけで。でもそこがいいとこでもあるんだよ」

 

「お前ももうちょい単細胞になってもいいと思うが」

 

「ははっ、オイラはこのままでいいぜぃ」

 

話しながら、カキツバタの誘導に従ってフィールドに戻る。誰にも聞かれたくはない、ということだろうか。

 

「部活後、アカマツ飯みんなでつまむの好きだったなあ。あいつもあいつなりに……悩んでたんだな」

 

「だな。お前とスグリと腸ぶちまkゲフンゲフン、腹を割って話せーって言ってたぜ」

 

「今、物騒なことを口走りかけなかったか?」

 

「気にするな!」

 

「お、おう」

 

失言は圧と勢いで誤魔化すホムラ、無事にカキツバタに対して誤魔化すことに成功する。なお、彼の幼馴染には同じ手は通じない模様。

 

「ま、アンタらならリーグ部をたらふく引っ掻き回してくれそうだ。……そいじゃ、残り三天王、がんばってくれーいホムラ」

 

「いや俺、他のメンバー終わるまでここで待つが」

 

「……え、待つのか?だいぶ時間掛かるくね?」

 

「いーのいーの。なんだ、制限時間でもあるのかよ?」

 

「いや、ないけど……」

 

「じゃ、いいじゃねーか。のんべんだらりとやらせてもらうさ」

 

ぬわああああん疲れたもおおおおん、なんて言いながら、ホムラは下で待つ仲間の下へ向かった。コイツいつも疲れてんな。

その後ろ姿を見送るカキツバタ……その目には、若干の厳しさが混ざっていた。そっと目を閉じるカキツバタ。その脳裏には、直前にすれ違ったアカマツの言葉が蘇る。

 

『カキツバタ先輩。オレ、先輩が何考えてるのかさっぱりわからねー!スグリとのことだって、なんかしようとしてるし』

 

『オレ、難しいことは分かんないし考えるの苦手だけどさ……ちょっとだけ、考えてみたい。前みたいなリーグ部にするには、どうすればいいのか』

 

『弱火でじっくり、コトコト煮込むように……ホムラの言う通り、オレなりに考えてみるから。だから、先輩もなんかあったら言ってくれ!』

 

「……アカマツまで変わった、変えやがった。ホムラ……オイラも飛び火しねーように、気を付けないとねぃ。あの焔は……危険だ」

 

帰るかー、と呟いてから、カキツバタは歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ホムラのアカマツ攻略後、インターバルを挟みつつコウキ、ゴウタ、リュウセイの三人もアカマツを攻略した。コウキは雨パ(初手はみずテラス夢ライチュウによるねこだまし)で押し流し、ゴウタは古代パラドックスを主軸にした晴れ逆利用パ、リュウセイはまさかの同じほのお統一パで、それぞれアカマツを突破した。

四人全員に負けたとあっては、流石のアカマツも落ち込み果てた。特にスグリから厳命されていた「ホムラ達をがっかりさせない」をちゃんと守れていたか、不安になったほどだ。

当然だが、ホムラ達はがっかりなどしていない。子供の身空でしっかりと考えられた手持ち編成、持たせる道具にポケモンに与えられた役割、すべてにおいて理にかなったものだ。特に「しゅうかくナッシー」には目を見張ったものだ。みずタイプ対策のくさ枠で、晴れ下で性能を十全に発揮する特性と、噛み合いは決して悪いものではない。欲を言うなら、「ひでり持ち」か「ようりょくそ持ち高速アタッカー」、あるいは「デバッファー」いたらどうなってたかわからなかった。

そして、ここで余計なことをしてしまうのが原作知識持ちの性というものか。

 

「パルデアにはな、こういうポケモンがいて……」

 

「ほ、ほのおとくさの複合タイプ!?」

 

「そうそう。攻撃と特攻が両方高いから両刀行けるし、特性がようりょくそで晴れパとも相性いいんだよ。これ、アカマツにあげるよ」

 

「え!?で、でも……流石に悪いよ……」

 

「いやいや、友達が強くなってくれるのは大歓迎だ。特性ひでり持ちならキタカミにキュウコンがいるし、今度連れてくるよ。これでもっと強くなってくれ」

 

「だけど……」

 

「ちなみにスコヴィランだが……こいつの体内には激辛の辛味成分が……」

 

「貰います!!」

 

「よっしゃ売ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

こうしてアカマツにテコ入れがされたことで、後年のブルベリーグの難易度が激ヤバ化したとかなんとか……。

 

サバンナスクエアを後にした頃には、すっかり日が沈んでいた。時間的にもちょうど良いということで、本日のブルベリーグ挑戦は終わりだ。一行はホムラの部屋に集合することにして、一度食堂へ向かうことにした。一応、リーグ部にも顔を出しておこうと思い、全員でリーグ部の扉を開けた。

 

「ただいまー」

 

「お、美味そうな匂いがするな」

 

「おーす、お前ら。ちょうどアカマツ飯が出来たところだ。食ってくか?」

 

「マジで!?ラッキー!」

 

「そういやゼイユは?」

 

「ねーちゃんはまだレポート終わってないから、部屋で食べてる。……みんな来るなら、ねーちゃんも呼んだ方がよかったか……」

 

「いや、そこは宿題優先させてやれよ。……なんだ、スグリ。その残念なものを見る目は」

 

「ゴウタ……いや、なんでもない」(-ω-)

 

どうやら食堂で調理を終えたアカマツが、食事を部室に持ってきてくれたそうだ。せっかくなので、ホムラ達もご相伴にあずかることにした。

 

「それじゃ俺は――」

 

「ホムラは俺の隣な。……な?

 

「アッハイ」

 

特に席が決まっていないそうなので適当に席に座ろうとしたホムラだが、スグリに捕まって問答無用で隣に座らされていた。なんの偶然か、スグリの反対隣にはタロが座っている。

その後、各々好きな席に座りつつアカマツの料理に舌鼓を打つ。その間、スグリがホムラに問いかけた。

 

「ホムラ、それにみんなも。アカマツに勝ったんだってな」

 

「お、耳が早いな」

 

「ん……だって、みんなのことだべな。絶対に負けるわけないって信じてるけど、勝負は時の運って言うし……やっぱり、ちょっと心配で」

 

「まぁ、過去のバトル映像とか記録とかで対策を練ったからな。いわばメタを張ったわけだ。それで勝てりゃそれは当然で、負けたら相手が上手だったってだけさ」

 

「一つのタイプを極めることの難しさってのは、ジムリーダーを見てりゃ嫌でもわかる。弱点が複数存在するタイプならなおのことな。そういう意味で言えば、アカマツの実力はほのおジムリーダーと遜色ないものだった。楽しませてもらったぜ」

 

もしかしたら些細なきっかけで負けるかもしれない、と不安がるスグリ。ホムラ達が全員勝利しただけでなくバトルそのものも楽しめたと聞き、スグリは納得するように頷いた。

 

「……ふぅ~ん……。まぁ、ホムラ達が楽しんでバトルしてくれたなら良かった。アカマツ、よくやったな」

 

「あ、うん……」

 

「にへへ……ホムラ、俺とのバトルじゃもっともっと楽しませてやるからな。楽しみにしてて」

 

「おう……」

 

アカマツを見ている間だけ無表情だったのに、ホムラの方へ振り返ったときには既に満面の笑みだ。温度差バグってませんかね?

と、ここで「そういえば」とカキツバタが口を開いた。

 

「ところで皆さんがた、お次は誰に挑むんですかねぃ」

 

「サバンナエリアからの距離で言えば、わたしのコーストエリアかネリネ先輩のキャニオンエリアですけど……」

 

「実力的に言えばネリネよかタロの方が上だが、ネリネの拠点であるキャニオンスクエアは高いところにあるからねぃ。ホムラはライドポケモン、ちゃんと用意してんのか?」

 

「してるよ、俺とコウキが。リュウセイ達はそれぞれ相乗りって感じだな」

 

「んじゃ問題ねえか。行きやすさではタロのコーストエリアが、実力ではランク四位のネリネの方が攻略しやすいが、どうすんだい?」

 

カキツバタはそう言うが、ホムラ達の中では既に腹は決まっている。

 

「あっ、ホムラさんが良かったらコーストに――」

 

「次はキャニオンに行こうと思ってる。とりあえず、実力から順にのし上がって行こうかと……悪い、タロ。なんか言ったか?」

 

「い、いえ……」(・ω・`)

 

気持ちしょんぼりとするタロ。それを複雑な目で見るアカマツ。逆にハイライトの無い目で睨むスグリ。アカマツと同じ目でスグリを見るネリネ。それぞれの情緒を機敏に察知し、にま~と悪い笑みを浮かべるカキツバタ。何も知らないパルデア組。

オメェの出番だぞ!ゼイユ!はやくきてくれーっ!!

 

「そんじゃあ、次はネリネかぁ。どうだい、ネリネ。宣戦布告されちまったぜぃ?今のお気持ちをどうぞ」

 

「……別に、いつもと変わりません。ネリネはいつもどおり、対応するだけです」

 

食事を終えたようで言うや否や立ち上がるネリネ。そのままリーグ部の扉前まで移動すると、そこで首だけで振り返り目を向ける。

 

「……強いて言えば、ホムラ」

 

「俺?」

 

「ええ。……あなたにだけは、負けません。負けたくありません」

 

「おっ、いいねえ。やる気があるのは結構だ!こりゃ明日が楽しみ――」

 

ガンッ!!

 

ネリネからも勝利宣言を受け、ますます楽しみになるホムラだが、直後に部室内に大きな音が響く。スグリがテーブルに拳を叩きつけ、立ち上がっていたのだ。そして、澱んだ瞳でネリネをきつく睨みつけた。

 

「お前がホムラに勝てるわけないだろ……弁えろ、ネリネ。ホムラを倒すのは俺だ……でも、そんなホムラは俺よりも強いんだ。俺も強くなったつもりだけど、ホムラに勝てるかどうかなんてまだわからない……未だに迷走している俺に負けてるくせに、ホムラになら勝てるとでも思ってるのか?無礼(ナメ)るなよ、みんなを」

 

「スグリ……いえ、失言が過ぎました。……失礼します」

 

最後は言葉尻に悲しみを含ませながらも、ネリネは部室を後にした。スグリは小さく息をつくと、また普段と変わらない笑顔に戻った。

 

「ごめんな、ホムラ。気分悪くねえか?みんなのことは俺よりも強いんだぞーって事前に教えてたんだけど……まだ、よくわかってないみたいだ。後でわからせておくべ

 

「い、いや!わからせる必要とか全然ないんだが!なんなら明日にはバトルするんだから、俺の実力を知ってもらういい機会だし!?今のスグリの強さがどんなもんかは分からないが……いい勝負するんじゃないか?」

 

「またまたぁ……ホムラは謙虚だべ。遠慮しいになったなぁ、一体何があったの?」

 

「(いや、お前ん中の俺らに対する過大評価の方が何があったんだよ)」

 

すんでのところでその言葉は飲み込み、声に出すことだけは避けられた。コウキ達がさりげなくほかのリーグ部員に目を向けると、タロもアカマツもカキツバタもかなり微妙な表情に変わっている。だが、スグリは周囲の三人に気づいていない……否、スグリは三人を見てすらいなかった。

 

「キタカミでコータス一匹に俺の六匹全部倒された衝撃、今でも思い出せる……あの時みたいなすごい勝負、俺もやってみたいって思ったんだ。それで、キタカミでの勝負のこととか思い出しながら――時々ねーちゃんにも聞いてみたりして――みんなのバトルの研究してんだ」

 

「リスペクト精神やべぇ。でもま、憧れてるだけじゃまだまだだぜ?憧れって事は背中を見て追っかけてるだけだからな、そのままじゃ追いつけはしても追い越せはしないぜ」

 

「……!そ、そうか……俺、そんな簡単なことにも気付けねぇで……やっぱホムラはすごいべ!」

 

「俺らより強くなったって、証明してくれるんだろ?なら、存分に追い越してくれ。その代わり……追い越したら、俺らもすぐに追い越してやるからな」

 

「うん……うん!!」

 

ホムラの言葉を受けて嬉しそうに笑うスグリ。それからすぐに「こうしちゃいられん」とばかりに席を立った。

 

「俺、やっぱもう一度手持ちポケモン見直してくる!アカマツ、飯、ごちそうさま。それじゃね、みんな!」

 

ドタバタと走り去り、扉の開閉も勢いそのままに出ていくスグリ。足音が完全に遠ざかったところで……全員が一気に肩の力を抜いた。

 

「……なんか想像の云十倍はやばいぞ、今のスグリ」

 

「憧れ……で、済ませていいと思うか?」

 

「なあ、アカマツ。お前もひょっとしてネリネと同じことを言われてた口か?」

 

リュウセイがアカマツに話を振ると、微妙な表情素のままにアカマツは頷いた。

 

「うん。……みんなのことは、スグリがブルベリーグで勝ち上がってきた時に聞いてた。スグリにも熱く語れる友達がいて、俺も強火に燃えてきた!……って、思ってたんだけど」

 

「ありゃあ、そんなもんにゃ全然見えねぇがねぃ。尊敬や憧憬とも違う……むしろ、神聖視してるようにオイラには見えたね」

 

「わたしがみなさんのことを聞いたのも、スグリくんとゼイユさんのお二方からなんです。特にスグリくんの話はなんだか誇張されているようにも思えて……だから、どんな人たちなのかなって、ちょっと不安だったんです。でも、実際に会って話してみたら全然普通の人達で……スグリくんが言うほどの人物なのか、よくわからなくなったんです」

 

どうやらスグリは学園中にホムラ達のことを吹聴して回っているらしい。どうりでドーム内で勝負したブルベリ生が自分たちを「恐ろしいものを見る目」で見てきたわけである。異常に強くなり自他ともに厳しくなったスグリ……そして、そのスグリ自身が自慢気に言いふらした自分よりも強い人たち……そりゃビビられるだろ。

 

「周りが何をどう言おうが関係ねぇ、俺たちは俺たちのバトルをするだけだ」

 

「……まぁ、そりゃそうだよな。周りやスグリが俺らをどう見てるかなんてのはどうでもいいことだ」

 

「おや、図太いねぃ。やっぱスグリより強いから、自信があるんかい?」

 

からかうようにそう言うカキツバタだが、直後に返ってきたのはコウキの冷めた目線だった。

 

「強いからなんだ、カキツバタ。それはただの結果だ。たかだか同じ結果が数回続いた程度で確信を得るなんて、早合点が過ぎるんだよ。同じポケモンでも技・持ち物・性格・三値どれか一つ違うだけで勝負の結果なんて180度変わるんだよ」

 

「そしてなにより、ポケモンバトルってのはトレーナーとポケモンという生き物同士の戦いだ。生きてるもん同士の戦いなんて毎回同じとは限らんだろ?その日の調子や咄嗟の判断力、そして戦闘中の情動次第じゃ何が起こるかわからん。強い奴が勝ち続けるのは妄想だ、そんなのはゲーム(空想)の中だけにしてくれって話だ」

 

「…………」

 

ホムラもコウキの言葉に同意するように続けてそう言った。若干、カキツバタがバツの悪い顔に変わるも、それはすぐに一変した。

 

「だからこそおもしれぇんだ、ポケモンバトルってやつは」

 

「へ?」

 

非難めいたことを言われたと思えば、一転して笑みを浮かべるホムラ。コウキ、そしてリュウセイとゴウタとケンスケも笑顔だ。

 

「はっきり言うがな、俺たちは誰ひとりとして勝てるつもりで戦ったことなんて一度もねぇし、負けるつもりはないが負ける可能性を考えなかったことはないぞ。むしろ負ける可能性を考えて、その負け筋を潰すために手持ちを臨機応変に入れ替えて、最後の最後で勝利をもぎ取る……それくらいはする。別に命をベットしてるわけじゃねえんだ、負けたらまた挑めばいい。それくらいには軽い気持ちでいるぜ、俺たち」

 

「それに、何事も楽しまなきゃ損だ!そう思うだろ?あんたも」

 

ケンスケがカキツバタに尋ね、そのまま視線でアカマツにも問うた。少しばかり考えてから、カキツバタは答えた。

 

「……まぁ、楽しいならそっちのほうがツバっさん的にはいいねぃ」

 

「俺も!熱く燃えるバトルなら大歓迎だ!!」

 

「タロはどうだ?まぁ、タロの場合は楽しいもそうだがもっと重要なものもあるよな」

 

「はい!わたしは可愛いものが大好きなので、『可愛い』もすっごく大事です!」

 

カキツバタとタロ、アカマツの返事を聞き、ホムラは満足げに頷く。それから少し瞑すると、困ったように笑った。

 

「……スグリのやつは、今はブレーキが壊れた列車みたいなもんだ。けど、どっかでブレーキ直して足を止めて振り返ってくれりゃ、きっといつものスグリに戻るはずなんだがな」

 

「……線路の先に目指す場所があるなら、止まることってないんじゃね?」

 

「そうかもな、カキツバタ。けど、俺たちはスグリを信じてるよ。だから大丈夫……俺たちは、バトルフィールドであいつとぶつかるだけだ」

 

それからホムラが動き出したのを皮切りに、全員が動き始める。それぞれ自室に戻り、明日の四天王戦に備えるためだ。

 

「なんにせよ、明日は明日の風が吹くってな。今日のところはこのへんで!アカマツ、ご飯美味しかったぜ!それじゃあみんな……おつヴァルー」

 

「おつコーン」

 

「おつみぉーん」

 

「完食おかゆ~」

 

「おつころ-ん」

 

上からコウキ、ホムラ、リュウセイ、ケンスケ、ゴウタの順に挨拶していってからリーグ部の部室を後にした。後に残されたのはブルベリ組のみである。

明日はキャニオンエリアでネリネと戦う。それが終われば次は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「独特な挨拶……サンドウィッチといい、パルデアって不思議な地方なんだなぁ」

 

「なぁ、タロ。『さんち』ってなんだ?」

 

「わたしが知るわけないでしょ、カキツバタが自分で聞きなさい」

 

 

 

 




16,000字も書いて四天王一人目って……もうちょいハイテンポで書いてみようかな。


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年末年始特別編!ポケモンSV脳内シミュレーター 藍の円盤 第四話







翌朝。朝食を済ませた一行は早速キャニオンエリアにあるキャニオンスクエアに向かう。コライドンとミライドンにそれぞれ相乗りをするとさっそく移動開始だ。

 

「(なにもありませんようになにもありませんようになにもありませんように)」

 

「じゃあ、行こうか」

 

「ウェーイ」

 

そして、そのまま移動を始めた。

 

「……おっ、今回は何もなしか!いやー流石に毎回アレだとついにネタ切れか?」

 

「そうだなー……なにか載せれたら良かったんだけどな」

 

そのままダッシュを始める。次第にキャニオンエリアとの境界が見え始めた。するとその途中でサイホーンが走ってくるのが目に付いた。しかも方向的にちょうど接触しそうだ。

 

「おい、あれいつかぶつからんか?」

 

「ん……?おっと危ない」

 

ドヒャア!!

 

「のゎお!?」

 

「おっと急カーブ。気をつけろよ、コウキ」

 

「悪い悪い」

 

「いや待てや今のQBやろがいどうなっとんねん!?」

 

「いや、どうなってって……こうなったとしか。おっとドードリオ」

 

ドヒャア!!ドヒャア!!

 

「ぎゃあ!?」

 

「おいおい、なるべく安全運転で頼むぜ?」

 

「なんでリュウセイは平気なんだよ!?」

 

「安全運転了解!!」

 

ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!

 

「あ~ん~ぜ~ん~っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「⊂⌒~⊃。Д。)⊃ コジマ……コジマコワイ……」

 

「で、ケンスケはあの様と」

 

「だらしねぇな」

 

「とりあえず、キャニオンスクエアには着いたぞ」

 

野を越え山を越え、一行は無事(?)にキャニオンスクエアに到着した。そのまま受付を済ませると、さっそくネリネの四天王チャレンジに挑むこととなった。場所を変え、高台へと移動する。

 

「アナタ方がリーグに挑むのは特例中の特例。ネリネは反対しましたが、学園が承認したならそれが規則。ネリネは四天王として、つつがなく進行するだけ」

 

「特例か……まぁ、たまにの特例(イレギュラー)もいい経験になるだろ。24時間365日、全く代わり映えがないのもつまらないもんだぜ」

 

「それに特例(イレギュラー)が発生した時に普段通りの対応ができてこそだろ?」

 

「……ですね」

 

それからネリネから四天王チャレンジの説明がされた。内容は『空飛ぶタイムアタック』だ。ライドポケモンの飛行能力でドーム上空に設置されたリングのコースを飛び、タイムを競うというものだ。時間内にゴールまで到着できれば合格だ。

 

「お手持ちのライドポケモンをお出しください」

 

「「おk」」

 

「アギャッス」

 

「ギャオッス」

 

コウキとホムラがそれぞれミライドン/コライドンを出す。ネリネは鳴き声からミライドンを「アギャッスさん」、コライドンを「ギャオッスさん」と呼び、丸薬を食べさせてくれた。これにより、ミライドンとコライドンは一時的に飛行能力を獲得したのであった。

 

さっそく始まった四天王チャレンジ。しかしコイツら、「時間内にゴール」を「〇〇秒以内じゃないのかヨシ!(現場ネコ)」と考え、ガバルール万歳とばかりにショートカットしまくったのだ。そのため、過去最速の四天王チャレンジクリアとなり、さしものネリネも言葉を失っていた。

 

「よし、全員無事に終わったな。コライドン、ありがとな」

 

「ミライドンもご苦労さん。……どうした、ネリネ」

 

「……いえ」

 

「はっきり言ってくれていいぜ?俺たち、なるべく無駄は省きたい人間だからああいう場合はショートカットしがちなんだ。わかってくれ」

 

「ええ、それは……はい」

 

とりあえず当たり障りのない対応にとどめておいたネリネ。スクエアに戻ったところで、唐突にこんなことを言いだした。

 

「……提案」

 

「ん?どうした?」

 

「ネリネはまず、ホムラ……アナタと戦いたい」

 

「お?俺か」

 

「そういえば、部室でもホムラに宣戦布告してたな。なにか理由が?」

 

「…………」

 

「言いたくないなら、それでもいいさ」

 

ネリネはリーグ部の部室でも、ホムラに対しては「負けたくない」と言っていた。そこには並々ならぬ感情が込められていたように見えたが、真意のほどは定かではない。ケンスケがその辺の事情を尋ねてみるが、ネリネは沈黙を貫いた。

 

「オーケーオーケー、やろうか」

 

「では、フィールドへ」

 

フィールドへ移動し、対面。コウキ達は変わらずスクエアの受付で待機だ。

 

「……ネリネはアナタに聞いてみたかったことが、ひとつ。ホムラはスグリをどのように認識しているのですか?」

 

「認識ってのは、どういうやつかってことか?それなら簡単だ。スグリは俺の友達で、ライバルだ」

 

「友達で、ライバル……ですか」

 

「おう。俺は欲張りだから、バトル関係でのライバルも欲しいし、バトルとは無関係な友達も欲しいわけ。せっかくだからスグリには兼任してもらおうかなと」

 

「……なるほど」

 

「せっかくだ、こっちからも質問を返していいか?」

 

「いいでしょう。ネリネにとってスグリは、友ゼイユの令弟。今の彼は以前とは違う……ネリネも案じています。そして願わくば、ネリネが彼を救いたい。したがって、負けることは許されません」

 

「……救い、ねぇ」

 

この時、ホムラはこれまで見せなかった表情へと初めて変えた。その感情の名は、呆れ……そして、憐憫。

 

「さて、俺はネリネに対してなんと返すのが正解かな?『友達思いのいい人だ』というありきたりな賞賛か、『烏滸がましいな弁えろ』というありふれた非難か。うーん、悩める」

 

「悩める……?アナタはスグリの友人兼ライバル。なぜ彼を救うことが烏滸がましいと」

 

「あん?そりゃスグリの方から『助けてくれー』と言われれば助けるし、『どうすりゃええの?』って相談されたら話を聞くさ。スグリが悩み、迷ってるなら『大丈夫か?』、『手ぇ貸そうか?』って声くらいはかける。

けど、スグリの方からなにも聞いてないのに勝手な思い込みで『苦しんでるなー、困ってるなー、大変そうだなー』って決めつけて『ほな助けるか』ってなるのは傲慢だろ。ネリネ……言っちゃあ悪いが、お前はどうしてスグリがああなったのかをざっくりにしか理解してないだろ」

 

「それは……!」

 

ホムラの指摘に対して、しかしネリネは何も返せない。ゼイユからもいくらか話を聞いているが、オーガポン(肝心の部分)はぼかされているからだ。だからネリネが聞いたのは「交流先のアカデミー生とのバトルで負け続けた」ことくらいだ。

 

「あぁ、そうか。ゼイユも言うほど語っちゃいないか。そりゃ事情が分からなきゃ林間学校から戻ったスグリに何かがあった、としか考えられないわな」

 

「原因なら既に、理解しています。ホムラ……アナタが、スグリを変えた。今のスグリは、アナタが中心にいる」

 

「だから、俺に勝てばスグリも多少は変わるだろうと……浅はかだねぇ」

 

「アナタがそれを言うのですか……!」

 

「さて、俺はスグリとポケモンバトルをしただけだぜ?俺自身にスグリをどうこうという意図がない以上、それでスグリが変わったなら変わろうと決めたのはスグリ自身。……少なくとも、俺からどうのこうのと言う資格はないな」

 

「それでも……アナタがやらないのなら、なおのことネリネが……」

 

「いい加減にしろよ、テメェ」

 

ここでついに、ホムラの言葉に怒気が宿る。心なしか髪が揺れ、オーラのようなものまで溢れ出す。

 

「なぁ、なんで気づかねぇんだよ?救うだなんだとかアホ抜かすテメェが一番スグリを見下してんだよ。庇護すべき存在だと?スグリは要介護者じゃねえ、一人で立って歩ける男なんだよ。その男が試行錯誤して間違えながらも必死こいて成長しようとしてるのを、言うことに欠いて『異常だ』とでもほざくのか」

 

「なっ……」

 

「俺らだって今のスグリは普通じゃないと感じてるし、普段のスグリとは打って変わった成長に驚いてるよ。でもな、あいつ自身は本気なんだよ。だから俺たちはひとまず今のスグリの成長っぷりを見てやりたいって思ってるし、バトルを介して受け止めてやりたいと考えてる。俺らより強くなったなら素直に賞賛するし、俺らだって次こそ勝つために再度強くなる。ダメならダメでしゃーない、頑張ったことに意味があるんだし無駄なことなんて何もない。敗北を糧にスグリはまた一つ成長するだろうよ。

なのにお前ら揃いも揃ってスグリの努力そのものを全否定する気かよ。いいご身分だな、何様だよテメェら。方向性や手段は道を正すなり導いてやればいいだろうが。だがな、努力をしようとする、努力をしているスグリの姿勢まで否定するようなら……二度とバトル(こっち)の世界に戻ってこれねぇようぶっ潰すぞ」

 

それは、あまりにも強すぎる決意の力。その背後に、青の結晶に身を包んだ飛竜のような姿のポケモンを顕現させるほどのオーラを放つホムラに、寡黙かつ機械的なネリネも目を見開いて震え慄いた。しかし、それも一瞬のこと。ホムラの背後の竜が姿を消し、ホムラがボールを構えていたからだ。

 

「なんかスグリだけどげんかせんといかんとか思ってたが……他にも荒療治が必要な奴がいたとはな」

 

「ホ、ホムラ……アナタは、いったい……」

 

「俺か?話長くなるけどいいか?俺はパルデアアカデミーオレンジクラスのホムラ、幼馴染で同級生の……」

 

「いえ、結構です」

 

「ちぇ……それじゃ、戦闘開始と行こうか」

 

「ええ。行きなさい、ダグトリオ、エアームド」

 

「ライチュウ、ズルズキン」

 

ネリネの先発はアローラダグトリオとエアームド、ホムラの先発はアローラライチュウとズルズキンだ。

 

「(アローラのライチュウ……エスパーとの複合のでんきタイプ。エアームド及びエンペルト対策と推測。ズルズキンはネリネの得意とするはがねに加え、対ランクルスを想定と断定。ならば、まずはライチュウから……)エアームド、ステルスロック」

 

「ズルズキン、ねこだましだ!ライチュウ!」

 

「……っ、ダグトリオ!」

 

「「ふいうち!/はやてがえし!」」

 

初手の行動、ネリネの行動は実にわかりやすい。エアームドはステルスロックを巻きつつ、ふきとばしで相手を強制交代させてダメージを与え、ダグトリオはエアームド対策のほのおやでんきのポケモンを刺すためのじめん技をぶっぱなす。これにより、幾人もの挑戦者を屠ってきた。だが、ホムラはその上を行った。

エアームドの機先を制したのはズルズキンで、エアームドへの追撃を警戒したネリネはダグトリオのふいうちであくに弱いアローラライチュウを落としにかかった。だが、ライチュウが繰り出した技はふいうちやねこだましといった先制技を上から潰す先制技のはやてがえし。さらにはやてがえしには怯み効果もあるため、ダグトリオもまた動きを封じられたのだ。

 

「なっ……(手が、読まれた?そんな、ばかな……)くっ、ダグトリオじしんです!」

 

「ライチュウ、エアームドにボルトチェンジ!」

 

手の内を読まれて先手を取られるという、少なくともネリネ自身は未だ未経験の展開に、らしくもなく焦りが出た。じしんでまとめて倒そうと試みるも、ライチュウはそれよりも速く動いてボルトチェンジによる交代技でエアームドを倒しつつ入れ替わった。

 

「ロトム!」

 

ライチュウと入れ替わりで出てきたのは特性ふゆうを持つヒートロトムだ。ここでダグトリオがじしんを放つべく構えを取り――

 

「ロトム、ダグトリオにトリック!ズルズキンはロトムに乗れ!」

 

――ここでさらに奇想天外な指示がきた。ズルズキンは指示通りヒートロトムの腕のプラズマに掴まり、ロトムはトリックでダグトリオと道具を入れ替えた。

 

「入れ替えたのはこだわりメガネだ。つまり?」

 

「……ダグトリオは今後、じしんしか使えない……」

 

「そしてロトムは浮いてるし、ロトムに乗っかるズルズキンにもじしんは当たらない。ほかにそっちに浮いてるポケモンがいないなら、そちらばかりが被害甚大……さぁ、どうする?」

 

どうする、とホムラは問うが、ネリネ自身に選択肢などあってないようなものだ。ネリネの手持ちポケモンでじしんを半減ないしは無効化できるポケモンはエアームドしかおらず、他は等倍以上と一貫している。ランクルスにはまもるを覚えさせているが、言い換えれば二回に一度は必ずまもるを使わざるを得ないという行動制限が課せられる。だから、選択肢などあってないようなものなのだ。

 

「……行きなさい、ランクルス。ダグトリオは交代……エンペルト!」

 

ネリネは倒れたエアームドに代わりランクルスを出し、こだわりメガネで思うように動けないダグトリオを下げてエンペルトに入れ替えた。

 

「おk、潰すか。ズルズキン、ランクルスにかみくだくだ」

 

「ランクルス、まもる!エンペルトはロトムにハイドロポンプ!」

 

「ロトムはかみなり!タスキあるから攻撃は受けてもいいぞ!」

 

「ロトト!」

 

ロトムから跳躍したズルズキンはランクルスに技を見舞うもこちらは防がれる。逆にズルズキンが飛び出す直前に動きを止めたロトム目掛けてエンペルトのハイドロポンプが迫るが、ロトムは事前にトリックでダグトリオのきあいのタスキを所持していたため耐えられる。逆にハイドロポンプを利用して水流に電撃を流し、確実に避けられない状況で効果抜群技をぶち当てた。

 

「エンペルト……!ならばランクルス、トリックルーム!」

 

「させねぇんだわこれが!ズルズキン、ちょうはつ!」

 

「くっ……」

 

エンペルトは戦闘不能、ランクルスも後続につなげるためのトリックルームを仕掛けようとするも、ズルズキンのちょうはつで変化技を封じられてしまった。

 

「ハッサム!」

 

ネリネ、三番手にハッサムを繰り出す。

 

「一匹、仕留めます……ハッサム、ロトムにバレットパンチ!ランクルスはズルズキンにエナジーボール!」

 

「おっと、そうはい神崎!ロトムもどれ!行け、スコヴィラン!」

 

残り体力が少ないロトムを先制技で落とそうとするも、ホムラは判断素早くロトムをボールに戻し、入れ替わりでスコヴィランを繰り出した。スコヴィランはくさ・ほのおの複合タイプなので、ハッサムのバレットパンチは効果はいまひとつだ。

 

「わかってりゃ、即時交代も容易いのさ。ズルズキンも、よく耐えた」

 

「手応えがない……ほのおタイプですか」

 

「そのとおり!」

 

ここでホムラはテラスタルオーブを構えた。テラスタルエネルギーが収束し、オーブを投げた先にいるスコヴィランがほのおテラスへとテラスタルした。

 

「あげていくぜぇ!!スコヴィラン、ハッサムにかえんほうしゃだ!」

 

「させない……ランクルス、スコヴィランにサイコキネシス!」

 

「盾になれ、ズルズキン!」

 

「ハッサム、躱しなさい!」

 

まず、スコヴィランがハッサムにかえんほうしゃを構え、その時点でランクルスがサイコキネシスを放った。だが、サイコキネシスはスコヴィランへの射線上に立ちはだかったズルズキンのあくタイプによって消失する。スコヴィランがのレッドヘッドからかえんほうしゃが放たれ、ハッサムはこれを跳躍して回避するが……。

 

「判断が甘いなぁ!グリーンヘッド、テラバーストだ!!」

 

「!?」

 

ホムラの指示を受けて動き出したのは、炎を吐けないグリーンヘッドだ。グリーンヘッドはレッドヘッドと異なり火炎を放てないが、それはほのお技の話。テラスタルの力を借りれば、火炎を吐けないグリーンヘッドもテラバーストという形で炎を吐き出すことができるのだ。跳んだばかりで身動きが取りにくいハッサムへ、グリーンヘッドからのテラバーストが炸裂した。直前にオッカのみを食べていたが……焼け石に水だったようだ。

 

「ハッサム……!ランクルス、サイコキネシス!」

 

「ズルズキン、ふいうちだ」

 

ランクルスの攻撃の矛先が再びスコヴィランに向けられるも、それよりもさきに動いたズルズキンのふいうちにより、ランクルスもまた倒れた。

 

「残りはメガネダグトリオと……なんだ?」

 

「(ポケモンの戦闘能力もさる事ながら、トレーナーの判断力も凄まじい。特に学園に生息していないポケモン……手の内を探りながらでは、先にこちらが敗れてしまう。現に、ネリネは追い詰められている。それでも……それでも、負けるわけにはいかない……!)」

 

ネリネの脳裏をよぎるのは、死に物狂いで強くなろうと必死になるスグリの姿。強くなり、ブルベリーグチャンピオンとなってもなお追い続ける遠い背中、呟かれたその名は……ホムラ。

 

「メタグロス」

 

「(お、600族)」

 

「……時間がおしています。そろそろ決着とまいりましょう」

 

「面白い、来いよ」

 

ネリネの最後の一匹はメタグロスだ。さらにネリネはメタグロスをはがねテラスへとテラスタルさせ、決戦へと臨んだ。

 

「まずはスコヴィランを落とします。ダグトリオ、ストーンエッジ。メタグロスはしねんのずつき」

 

「(スコヴィランは落とされちゃ困るな)ズルズキン、スコヴィランを庇え!」

 

ホムラの指示にも決死の覚悟で従い、ズルズキンはストーンエッジを受け止め、さらにしねんのずつきも阻む。だが、ここでメタグロスがズルズキンを腕の爪で捕まえた。

 

「捕捉しました」

 

「あぁ、ズルズキンはここまでだ」

 

「では、遠慮なく……ハードプレス!」

 

メタグロスのハードプレスが炸裂し、ズルズキンは戦闘不能となった。だが、ホムラにとってはこの戦闘不能も織り込み済み。冷静にズルズキンをボールに戻し、次のポケモンを繰り出した。

 

「よっしゃ!サーフGO!!」

 

ホムラが次に繰り出したのはサーフゴーだ。全国図鑑番号No.1000に選ばれたポケモンで、SV実装済みポケモンの中で唯一のはがね・ゴーストのポケモンだ。ギルガルドの入国はよ。

 

「また、未知のポケモン……」

 

「はがね・ゴーストのサーフゴーだ。さあ、バトルを終いにしようか」

 

「いえ、まだです……ダグトリオ、ストーンエッジ。メタグロスはハードプレス!」

 

「サーフゴー、きあいだまで蹴散らせ!スコヴィランはレッドヘッドがかえんほうしゃ、グリーンヘッドがテラバーストだ!」

 

サーフゴーが「オラに気合を分けてくれー!」とばかりに構えを取ると、スコヴィランのダブルヘッドが火炎で援護する。弱点であるほのお技に阻まれ動きが封じられたメタグロス達に、特大にまで巨大化させたサーフゴーのきあいだまが放たれ炸裂した。

二匹まるごと飲み込み大爆発。煙が晴れた先では、目を回して倒れるメタグロスとダグトリオの姿があった。

 

「ネリネでは……ダメですか」

 

「対戦ありがとうございました」

 

バトル終了。全てホムラの想定通りに展開することができた。二人は再びフィールドの中央に集まる。

 

「ポケモンの強さ、それは思いの強さ。スグリを思う気持ちは、ネリネよりホムラのほうが強いのですね」

 

「ん?そんなことはないと思うが。さっきはあんなこと言ったけどよ、伊達や酔狂、ましてや同情や偽善でスグリを助けようとしてるわけじゃないってことはわかってるぜ。ただ……あのままスグリを救おうなんてしようもんなら、きっとネリネまで傷ついちまう。そう思っての忠告のつもりだったんだが……言葉が悪かったよな、すまん」

 

「……ホムラ……優しいです」

 

「なはは、そんなでもないさ」

 

ホムラは否定しているが、ネリネもまたそんなことはないと言った。勝利後の写真撮影を終えると、ホムラの方から話しかける。

 

「ネリネ、今のスグリは俺らしか見えてない。だが、俺らがスグリを倒したところで劇的に変化するとも思えん。アイツは一人で強さを追い求めている。けど、他に追い求める者が、仲間がいれば、あいつも少しは足並みを緩めるかもな」

 

「仲間……ですか」

 

「ネリネよ、お前はどうして強くなる?強さにだって千差万別の理由が、目的が、意味がある。俺らだって怠惰で強くなってるわけじゃねえ。強いってのは、それだけでできることがある。

例えば、そうだな……悪の組織なんかが台頭した時の対抗馬になれる、とか」

 

「!!」

 

ホムラが一例を上げると、ネリネの顔が僅かに強ばった。ホムラはその変化に気づかないフリをしながら、話を続ける。

 

「仮の話だがな。今のところそんな話は聞いてないが、もし仮に現れた場合、力あるトレーナーが立ち上がらなければならないだろう。例えそれが子供であろうとな……」

 

「……そのようなことが、ありえるのですか」

 

「ありえないなんてありえない、だぜネリネ。もし悪い奴らがパルデアに侵略に来たんなら、ジムリーダーよりも前線に出て戦ってやるよ」

 

「ホムラだけで勝てるのですか」

 

「そのための仲間、だろ?」

 

「あ……そう、ですね」

 

パルデアにはホムラだけではない。コウキ達もいるし、ホームウェイ組もいる。力ある子供は、決して一人ではないし、徒党を組むのは恥ではないのだ。

 

「俺から言えるのは、最後までスグリを見捨てないで、見守ってやってくれってことだ。それは、ネリネやリーグ部のみんなにしかできないことだ。だから、俺から言わせてもらう。スグリのこと、頼んだぜ」

 

「……ネリネが言いたかったこと、先に言われてしまいました」

 

どうやらネリネも納得したようだ。最後まで、スグリを見守る……その役割をしっかりと噛み締め、時間を確認したネリネは休憩のためスクエアを去っていった。

そして、入れ替わりで再びカキツバタが姿を見せた。

 

「おーす、未来のチャンピオン。もう四天王2人目撃破ときたかい……持ってるねえ」

 

「別に持ってねえよ。ただ十全に調え、当然に勝つ……それで勝てねぇのはこっちに不足があるからだ」

 

「十全に調え、当然に勝つ……か。アカマツ相手にもそうやってしっかり準備して勝ったんだよな。対策の対策なんて、オイラ達だってしてるはずなんだけどなぁ……」

 

「それで勝てないなら準備が甘いんだよ。……んで?今日は何の話だ?」

 

前回、アカマツに勝利したあとに声掛けされていたのを覚えていたので、今回もその流れだろうと考え、話を促す。

 

「お、そうだ。ネリネのやつ、おもしれえだろ?あいつがゼイユと話してっと、不思議と噛み合ってんのがまた笑えんだよな」

 

「うーむ、確かにあの二人って性格的には真逆っぽいよな」

 

「はっは!ホムラから見てもそう見えるかい。ネリネはよ、マジメで堅物で……でも人一倍繊細なんだ。誤解されやすいけっど、ホムラはわかっといてくれよ」

 

「ああ、今のスグリをかつての優しいスグリに戻してやりたいって、悩んでたぜ。……仮にも同じリーグ部なんだから、お前も手を貸せよ」

 

「いやぁ、すまん。そっち方面じゃオイラは力になれそうにねぇや」

 

「おまえさあ、そういうところ――」

 

「ホムラ!!」

 

二人の会話に割って入るように声が上がり、さらにそっちの方向からスグリが走ってきてホムラに飛びついた。ホムラは衝撃を逃がすよう回りながら受け止めた。

 

「おっとと、スグリか」

 

「ブルベリーグ、順調みたいだな」

 

「おっとチャンピオンさま、敵情視察ですかい?」

 

「まあね。ホムラは強いから」

 

意外とカキツバタの問いを否定しなかったスグリ。だが、声色が硬いところを見るに、ただ聞かれたから答えただけといった様子だ。

 

「俺、心配だったんだ……ブルベリーグ、退屈になってホムラ達が途中で辞めちゃったらどうしようって。でも……今のところは楽しんでもらえてるみたいで、良かった」

 

「あぁ!最っ高に楽しいぜ!四天王チャレンジもミニゲーム味があっていいし、四天王もまだ二人目だけど手持ち構成がしっかり考えられていてディ・モールトベネ!次の相手も楽しみだよ」

 

「えへへ、そっかぁ。タロもカキツバタも、みんなを楽しませるようにちゃんと言っとくからな」

 

「お~い、チャンピオンさま。オイラここにいるんだけど?」

 

「……聞いてたなら、やれるんだろうな?」

 

「まぁ、チャンピオンさまたっての"お願い"だからねぃ」

 

頭を掻きながらもそういうカキツバタ……スグリの目は胡乱げだが、ひとまず頷いている。

 

「ホムラ、途中で負けないでな。俺の力……見せられないから」

 

「あぁ、俺も楽しみにしてるぜ。必ず勝つからよ、首を洗いながら長くして待っててくれよ」

 

「ふふっ……」

 

するりとホムラから離れると、スグリはそのまま背を向けて歩き出す。途中、カキツバタの横をすれ違う際に声を掛けた。

 

「抜かりのないように。ハンパは許さない」

 

「へぃ」

 

そして改めて、スグリはキャニオンスクエアから去っていった。それを見送ると、カキツバタもまたニヤリと笑みを浮かべる。

 

「へっへっへ、いい感じにうずいてらあ。……おっと!時間をとっちまったな……そいじゃ、残り半天王がんばってくれーい」

 

カキツバタも帰っていったところで、ホムラもメンバーと合流する。

 

「よぉ、スグリ来ただろホムラ」

 

「おう。……やっぱ、ただ叩き潰すだけじゃ治らねえよ、あれ」

 

「だよなあ」

 

五人で話し合うのは、現在のスグリに対してどうするかだ。ただ倒すだけでは変わらないだろうが、それでも勝負をする以上は勝者と敗者が存在する。どちらに転んでも、あまり状況は好転しない気がしてならないのだ。

 

「まぁ、その時はその時だ。俺らもブルベリーグを勝ち上がるぞ」

 

「よっしゃ、次は誰が挑む?」

 

「俺がやる」

 

「おう、ゴウタ頑張れよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ホムラ、ゴウタ、コウキ、リュウセイの順に挑み、四人全員が勝ち抜いたことで次のエリアに移動することが決まった。次に向かうのは、タロの待つコーストエリアだ。

 

「というわけで!凄いやつがやってきた!パルデア四天王最弱(先鋒敵陣全タテ担当)のホムラさまだ!」

 

「いや待て括弧内がおかしいやろがい」

 

「最弱の先鋒がなんで敵勢を皆殺しにしてるんですかねぇ……」

 

「おい、大将の出番を残せや」

 

「尺の都合上そんなものはない」

 

「おい!もっとちゃんとしたプロットを組めよ作者!行き当たりばったりで書いてるからこんなことになってんだろうが!」

 

面目次第も無い by作者

 

「あのー……?」

 

「あ、タロ!すまんすまん、ちょっとのっぴきならないことがあってな……たった今、解決したところだ」

 

「あ、そうだったんですね。では、コホン……みなさん、チャレンジ場に移動しましょう!」

 

タロの案内でスクエアから少し離れた場所に移動する一行。どうやらそこで四天王チャレンジを行うようだ。

 

「改めまして、ようこそコーストスクエアにいらっしゃいました!」

 

「邪魔すんでー」

 

「邪魔すんねやったら帰ってー」

 

「「「「あいよー」」」」

 

タロから歓迎の言葉を受けた直後、すかさずコウキがボケに走った。耳慣れたフレーズだっただけにケンスケも素で関西ネタを返してしまった。そのまま踵を返して数歩歩き、再び踵を返すホムラ達。

 

「「「「って、なんでやねん!!」」」」

 

「いや、お前らが言い出したんやろがい」

 

「あはは……みなさん、本当に息ぴったりですね」

 

「ほんとスマン、こいつら隙あらばすぐボケてくるから……」

 

「うふふ、わたしも楽しいので全然いいですよ。見てて飽きませんし」

 

「そう言ってもらえると助かる……」

 

頭痛をこらえるように頭を押さえるケンスケ。教職の立場なのに、なまじ付き合いが長いだけにどいつもこいつも普段通りである。

 

「みなさんのブルベリーグ参加、反対しちゃってごめんなさい。校則的にイレギュラーなのも理由としてあるんですけど……みなさんをリーグ部のゴタゴタにまきこみたくなかったんです」

 

「……スグリ……リーグ部の内輪揉め……ピンポイントの名指し……ふむ、見えてきたな」

 

「おっ。リュウセイ、閃いたか?」

 

「まぁな」

 

「……えっと、なにがわかったんですかリュウセイさん?」

 

タロの懸念を耳にして、リュウセイはこの留学に潜む小さな意図に気がついたようだ。タロも気になるのか、続きを促している。

 

「シアノ校長はゼイユから林間学校の話を聞いて、俺たちを留学生として名指ししてきたんだ。俺たちは自分達で言うのもなんだが、学園じゃ割と問題児扱いでな……あぁ、問題児といっても素行不良ってわけじゃなくてな。先生曰く『優秀だが自由すぎる』ってんで、そう言われてるだけだ。

……話を戻そう。シアノ校長は林間学校後から豹変したスグリ周りの問題をどうにかしようとしてたんだろう。だが、生徒の自主性を重んじるという校風が邪魔をする……そこでスグリと関係があり、なにかしらの事情を知る俺たちを留学生として迎え入れた。スグリの素行不良によるマイナスイメージが外部に流出する前に、秘密裏に事態を解決させるために……」

 

「そ、そんな……」

 

「……長々と語ったくせして申し訳ないが、全て俺の憶測だ。だが、外部から見たからこそ感じたブルーベリー学園の"ズレ"から、こんな邪推をしてしまったんだ。悪い」

 

「いえ……でも、そっか。シアノ校長も、スグリくんのことを気にかけてくれてたんですね」

 

どうやら、タロはスグリの現状を学園が意図的に放置しているのではないかと、不安になっていたようだ。しかし、リュウセイの推理を聞いて、ほんの少しだが希望が持てたらしい。

 

「よしっ、タロも元気になったところで、早速チャレンジを始めようぜ!」

 

「はいっ!始まったからにはとことんまで楽しんでもらいますよ!」

 

タロが考案した四天王チャレンジは、ポケモンクイズ。その名の通り、ポケモンに関するクイズを五問出題し、その全てに正解することでチャレンジクリアとのことだ。当然、ポケモンに関する知識なら並々ならぬものをもつホムラ達にとってはお茶の子さいさい。

特に描写することもないのでカットしよっと。

 

「みなさん、すごいです!全員が全員、見事チャレンジクリアです!!」

 

「いえーい」

 

「やったぜ」

 

「ふっふー」

 

「ばんざーい」

 

「みんなお疲れさん。……タロ、君の方からリクエストとかないか?」

 

「リクエストですか?」

 

ケンスケの言葉に首をかしげるタロ。ケンスケは言葉を続ける。

 

「アカマツの時はチャレンジをクリアした順に挑んだんだが、ネリネは最初に戦う相手にホムラを指名したんだ。だから、タロの方からも指名したいなら聞くが……」

 

「あ……そ、それでしたら、ホムラさんと是非。スグリくんが言ってたホムラさんの実力、ちゃんと見せてもらおうかなって……」

 

「オーケー、了解。ホムラー!ご指名入ったぜー!」

 

「わかったー」

 

ホムラとタロだけがフィールドへ移動し、残りは受付付近で待機。フィールドに到着した二人は、手持ちを確認しながら話し始めた。

 

「まさか他校のホムラさん達がブルベリーグに挑戦されるなんて、正直驚きですけど……わたし、私情ははさみませんので!」

 

「え!?俺、バリバリ私情でバトルしてるんだけど!」

 

「えぇ!?い、一体どんな私情なんですか?」

 

「スグリや四天王のみんなとバトルがしたい!つまり、現在進行形で私情挟みまくりなんだな、これがな」

 

「あ……」

 

ポカン、と口みたいな栗……じゃなかった、栗みたいな口で呆然となるタロ。それも少しのことで、直後に吹き出し笑い出していた。

 

「プッ、アハハハハ!な、なんですかそれ……もぅ。そういう意味なら、わたしも私情を挟んじゃいますよ?」

 

「おっ、どんな私情だ?」

 

「ふふふ……わたし、フェアリータイプのポケモンを多く連れ歩いているんですよ。フェアリーってピンクだしキュートでかわいいですよね。今回はわたし、本気でお相手しますので……いっぱい知ってもらえると思うんですよ……かわいいが最強ってこと!」

 

「それがタロの私情か!よっしゃ、行くぜ!」

 

四天王三戦目、その幕が切って落とされる……!

 

 

 

 




第三話終了……次で四天王戦終わらせたいなぁ。


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年末年始特別編!ポケモンSV脳内シミュレーター 藍の円盤 第五話


タロ戦、始まります。


「グランブル!エルフーン!」

 

「エンニュート!ブロロローム!」

 

タロが繰り出したグランブルとエルフーン、ホムラが繰り出したエンニュートとブロロロームが対面する。

 

「(むむ、ほのお・どくのエンニュートにはがね・どくのブロロロームですか。ホムラさん達は用意周到とのことなので、フェアリーが苦手なポケモンを全部予習しておいて良かった。……でも、ホムラさんのことだから、ただ弱点を突きに来たわけじゃなさそう)」

 

タイプ相性だけで言えば、タロが圧倒的に不利な盤面だ。だが、そこはフェアリー大好きっ子のタロ。はがねやどく、フェアリーを受けられるほのおなどの対策は万全だ。

場に出たグランブルが唸り声を上げている。特性いかくによって、相手のポケモンの攻撃力を一段階下げることで物理耐性を実質上げるという寸法だ。

 

「ふふん、グランブルのいかくで攻撃力ダウンです!」

 

「うん、戻ってこいブロロローム」

 

「ふぇ?」

 

「いけ、ハッサム!」

 

いかくを受けた直後、ブロロロームがホムラのボールに戻っていき、そのままハッサムに入れ替わる。

 

「さあ、戦闘開始だ」

 

「え、なんで……」

 

「ブロロロームにだっしゅつパックを持たせていたのさ。フェアリータイプのポケモンは全世界津々浦々網羅してるんでね。特にグランブルはチャレンジのクイズに出てきたくらいだ、使わないはずがないと信じてたからな」

 

「で、でも勝負はこれから始まりますから!グランブル、ハッサムにほのおのパンチ!エルフーンはひかりのかべ!」

 

「エンニュート、ヘドロウェーブ!」

 

エルフーンが最速で行動し、ひかりのかべを張った。その後グランブルがハッサムにほのおのパンチで殴りかかるも、ハッサムの前に出たエンニュートが放ったヘドロウェーブに飲み込まれた。エルフーンも同様に飲み込まれるも、きあいのタスキを持たせていたためにかろうじて生き残った。

 

「な、なんて威力……でも、エルフーンはなんとか――」

 

「あ、やっぱタスキ持ってたのかラッキー!ハッサム、エルフーンにかわらわり!」

 

「えっ!?」

 

ヘドロウェーブを突っ切ってきたハッサムがかわらわりを繰り出し、ひかりのかべごと体力僅かなエルフーンにトドメを刺す。タロは慌ててグランブルとエルフーンをボールに戻し、次に繰り出すポケモンを選び始める。

 

「エルフーンといえばいたずらごころ、いたずらごころといえば変化技。エルフーンの役割はサポートメインだし、壁張るか種撒くか風吹かすか身代わり置くかぐらいだろ?やどみがまもの害悪型じゃなくてよかった」

 

「(よ、読まれてる~!?)」

 

ホムラの言う通り、タロはエルフーンにひかりのかべとおいかぜを使わせるつもりでいたし、そのための特性いたずらごころだった。だが、エルフーンの運用法はホムラも把握済みだし、なにより『やどみがまも』とかいう『害悪型』まで知っている。エルフーンが出てきた時点で考えうる全ての型を想起し、隣に立つグランブルを見てある程度の技の絞込みを終え、即行動に移したのだ。

 

「(わ、わたしのエルフーンの役割バレちゃってる!?グランブルのいかくもだっしゅつパックで入れ替わっちゃったから意味なくなっちゃったし、エルフーンのひかりのかべもいたずらごころが仇になっちゃった……。なるほど、スグリくんの言うとおりだ……ホムラさん、すごく強い!!)」

 

相手のポケモンを見るだけで戦術を見破り、自分が繰り出したポケモンを見返し戦術を破る算段を立てる。バトル重視を謳うブルーベリー学園以上にバトルに精通した知識、先見の明、勝利のための入念な準備。絶対に勝利を逃さないとばかりに、ホムラはタロを攻め立てる。

 

「でも、私だって負けませんから!アシレーヌ!ヤドラン!」

 

タロが繰り出したのはエンニュート対策のアシレーヌ、同じくエンニュートに強くかえんほうしゃではがね対策もばっちりのガラルヤドランだ。

 

「お~クイックドロウのガラルヤドランか。あれ、面倒くさいんだよなぁ」

 

「ふっふっふ、ではその面倒くささで、存分に苦しめてあげますよ!アシレーヌ、ハイパーボイス!ヤドランはハッサムにかえんほうしゃ!!」

 

特性クイックドロウは、いわゆる特性版せんせいのツメ。たまにだが先手を取ることができ、運が悪いと常に先手を取られ続けることなんてザラにある。

 

「アシレーヌはうるおいボイスか!だが、判断が甘い!」

 

しかしそこはホムラ。エンニュートには持ち物きゅうこんを持たせているため、アシレーヌのみずタイプとなったハイパーボイスを受けたことで特攻が一段階強化された。さらにホムラはテラスタルオーブを構えると、迷わずそれをハッサムに投げた。結晶に包まれたハッサムは、あくテラスへとテラスタルしたのであった。

 

「あくタイプへのテラスタル!?」

 

「フェアリー使いのタロ相手にゃ悪手に見えるか?だがな、この場ではこれが最適解だ」

 

しっかり鍛え上げられたポケモン達は弱点を突かれながらも攻撃を耐え抜いた。特にハッサムはテラスタルによってタイプが変わり、それによってかえんほうしゃをものともしていない。

 

「よっしゃ、反撃だぜ!!ハッサム、ヤドランにはたきおとす!エンニュートはアシレーヌにヘドロばくだんだ!」

 

「アシレーヌ、ムーンフォース!ヤドランはシェルアームズで迎撃を!」

 

フィールドを縦横無尽に駆け回り、ヘドロばくだんとムーンフォースの撃ち合いを演じるエンニュートとアシレーヌ。ヤドランは再びクイックドロウが発動し、ハッサムが接近するよりも早くシェルアームズで攻撃した。まともに攻撃を受けたハッサムだが、そのままの勢いでシェルアームズを突破して一気にヤドランへ肉薄し、あくテラスで強化されたはたきおとすが炸裂した。

 

「ヤドラン!」

 

持ち物にオボンのみを持っていたヤドランに対してはたきおとすは威力が倍になる。あくテラスによるブーストも相まって、ヤドランは一撃で倒されてしまった。

 

「戻って、ヤドラン。マホイップ、お願い!」

 

タロの五番手はマホイップ。特殊アタッカー、物理耐久、ダブルサポートなど役割の範囲が広いポケモンだ。作者の剣盾旅パポケでもある。

 

「(ハッサムの残り体力も残り少ないはず……ここは確実に一匹倒しておきたいかも。とんぼがえりで逃げられそうな気もするけど、プレッシャーは与えられるかな)」

 

「(ダブルでマホイップとくれば、確実にデコレーションの技があるな。耐久寄りならとける……は、ないとしてもじこさいせいくらいは積んでそうだ。んー……じゃああいつに任せるか)」

 

「マホイップ、デコレーション!アシレーヌ、ハイパーボイス!」

 

「ハッサム、とんぼがえり!エンニュートはヘドロウェーブで身を守れ!」

 

「(攻撃技を防御に転用する!?しかもハッサムは予想通りに逃げてった!)」

 

「替われ、デカヌチャン!」

 

とんぼがえりで控えに戻ったハッサムに代わり、飛び出したのはデカヌチャン。はがねタイプであるため、エンニュートのヘドロウェーブによる巻き添えは効かない。さらに飛び出したデカヌチャンは異様に力がみなぎっているようだ。その勢いでエンニュートの前に出ると、迫り来るハイパーボイスをハンマーのひと振りで消し飛ばしてしまった。

 

「ものまねハーブ搭載型デカヌチャンだ、そっちのアシレーヌのバフをパクらせてもらったぜ」

 

「なんてこと……!」

 

「デカヌチャン!ハンマーでエンニュートを空高く打ち上げろ!」

 

デカヌチャンがハンマーを構え、その上にエンニュートが飛び乗ると同時に全力で振り上げ、空高く打ち上げた。

 

「……っ!アシレーヌ、エンニュートにハイパーボイス!マホイップはデカヌチャンにみわくのボイス!」

 

「それは困るなぁ!デカヌチャン、アシレーヌにさきおくりだ!」

 

「そ、そんな技まで!?」

 

「さぁエンニュート!アシレーヌにヘドロばくだんだ!」

 

さきおくりは、技を受けたポケモンの行動順を強制的に一番最後にする技だ。これにより、アシレーヌはほかの三匹全員が行動を終えるまで動けなくなる。まずデカヌチャンがアシレーヌにさきおくりを決め、次にマホイップのみわくのボイスがデカヌチャンに命中する。そしてエンニュートのヘドロばくだんがアシレーヌに降り注ぎ、戦闘不能へと追いやった。

 

「アシレーヌ……!」

 

「最後の一匹……多分だがドリュウズか?最初のバトルでも使ってたよな」

 

「ご名答です、ホムラさん!ドリュウズ!!」

 

アシレーヌが倒れ、残るはマホイップと切り札であるドリュウズのみ。それでも、タロの目に諦念の色はない。むしろこれからだとばかりに、滾りに燃えていた。

 

「(熱い……体が、心が燃えているみたい!ホムラさんはずっとこんな風に戦ってきたのかな……。勝ちたいって、負けたくないって想い……そしてなにより、バトルを楽しみたいって想いがポケモン達を通して伝わって来る!わたしもなんだかドキドキしてきちゃった……今、彼とのバトルがすごく楽しい!)」

 

追い詰められても焦りはない……それどころか、ピンチすら楽しいと感じている。四天王として勝たなければならない立場に居るにも関わらず、そんなことすら忘れてしまうくらいにバトルが楽しい。あらゆる柵から解き放たれ、タロの心は自由になっていた。

 

「行くよ、ドリュウズ!テラスタルハートに注目!もーっとかわいくなーれー!」

 

そして、タロは楽しい心そのままにドリュウズをフェアリーテラスへとテラスタルさせる。タロの想いと通じ合っているのか、ドリュウズも好戦的な笑みを浮かべている。

 

「勝負はまだこれからですよ、ホムラくん!」

 

「おう!行くぜ、タロ!!エンニュート、ヘドロウェーブ!デカヌチャンはつるぎのまいだ!」

 

「ドリュウズ、エンニュートに10まんばりき!マホイップはデコレーション!」

 

マホイップのデコレーションによってドリュウズの攻撃・特攻が上昇し、その勢いでエンニュートのヘドロウェーブを力技で突破し叩き伏せた。タロはすかさず指示を飛ばす。

 

「戦闘不能か!戻れ、エンニュート!行け、ブロロローム!」

 

「マホイップ、デカヌチャンにみわくのボイス!」

 

エンニュートを戻し、次に繰り出したのはブロロロームだ。その間につるぎのまいを終えたデカヌチャンに、マホイップのみわくのボイスが命中する。みわくのボイスは能力が上がった直後の相手を混乱させる効果を持っているが……。

 

「……!混乱しない!!」

 

「悪いな、俺のデカヌチャンはマイペースなんだ!デカハンマー!!」

 

ホムラのデカヌチャンはいかく対策で特性をマイペースにしていた。本来の目的とは少々ずれたが、思わぬところで功を奏した瞬間であった。攻撃力が四段階上昇したデカハンマーの威力は凄まじく、一撃でマホイップを倒した。

 

「マホイップが!」

 

「これで強化はできねえな!」

 

「でも、わたしのドリュウズは強くて可愛くて最強なんだから!ドリュウズ、10まんばりき!」

 

「ブロロローム、でんじふゆうだ!デカヌチャン、乗れ!!」

 

デカヌチャンはハンマーを空高く放り投げると、ドリュウズの10まんばりきを避けてでんじふゆうで空を移動するブロロロームに乗り込んだ。そのまま大きく旋回しつつ、再びドリュウズに突撃する。

 

「ホイールスピン!!」

 

「ひきつけて……10まんばりき!」

 

ホイールスピンと10まんばりきが激突し、爆発が起こる。煙が晴れた先ではブロロロームが戦闘不能になり、ドリュウズはかろうじて立っていた。ドリュウズが無事であることに安堵するタロ……だが、直後にあることに気づいて目を見開いた。

 

「デカヌチャンがいない!?」

 

「上から来るぞ、気をつけろ!」

 

「え!?」

 

「デカヌチャン、デカハンマー!!」

 

デカハンマーは一度使用すると再使用にインターバルを要求する技。ブロロロームに乗り込み避難し、技がぶつかる直前に跳躍して落ちてくるハンマーをキャッチしている間に、インターバルは既に終了している。

高高度からの、全力の振り下ろし。気がついたときには既に眼前に迫っており、ドリュウズは避けることもできず直撃した。これによりドリュウズは戦闘不能、決着がついた。

 

「くやしい……けど、かわいい」

 

「対戦ありがとうございました!」

 

バトルが終了し、お互いにポケモンをボールに戻す。すると、タロがすぐにホムラの下へ駆け寄ってきた。

 

「ホムラくんホムラくん!わたしたちのポケモン、戦ってたの見ましたー!?もう本っ当、かわいかったですよね!!」

 

「あぁ、かわいかった。ばっちり決まってたよな!」

 

「うふふっ!ですよねえ!後ろから見てるとあの子たち、お尻がとってもキュートで……」

 

「だよなぁ。背筋伸ばして体張って、一生懸命に闘ってくれる姿、サイコーだ!」

 

「ホムラくんのポケモンたちも、とってもとーってもかわいかったです。……なんだかわたし達、とことんまで気が合いそうですね」

 

「みたいだな。タロと友達になれて、俺すっごく嬉しいよ!」

 

「わたしもです!」

 

そう言ってからタロは少しばかり俯き沈黙した。その様子が気がかりになったのか、ホムラはタロの顔を覗き込む。

 

「どうしたんだ、タロ?」

 

「あっ……いえ、その……」

 

「言い淀むなんて珍しいな。なにがそんなに気になるんだ?」

 

「……スグリくんのことで、少し」

 

言いながら、タロはチラリとホムラを見やる。

 

「ホムラくん……後で少し、話せませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後。コウキ達の四天王戦を終えたあと、ホムラはタロに呼び出されてスクエア裏にある浜辺に来ていた。先に待っているタロと合流したあと、砂浜に腰を下ろした。

 

「急にごめんなさい、ホムラくん」

 

「いいよいいよ。それで、スグリのことだっけ?」

 

「うん」

 

スグリが頻りに口に出していた人物、ホムラ。エントランスで初めて出会った時もそうだが、普段の様子からしてあのスグリが豹変するほどの影響を与えるような人物だとは思えなかった。だが、二度のバトルを経て、タロが胸に抱くその認識も変わりつつある。

スグリから話を聞いたときは、どこか怖い人物だと感じた。あの大人しく優しいスグリが自他ともに厳しくなり、バトルにはシビアでそれ以外ではいつも特定人物の話ばかりする。まるでそれ以外に興味など欠片もないようなスグリの様子に、カキツバタとネリネが『スグリを変えた元凶』としてホムラを煙たがっていた。だから、エントランスでホムラを見たとき、本当にびっくりしたのをタロはよく覚えている。自身の想像とは真逆の人物像だったのもそうだが、特に驚いたのはバトル中の所作だ。

だって、あまりにも楽しそうだったのだ。相手のポケモンを容赦なく蹴散らし、遠慮なく叩きのめし、勝利に近づくのではなく自ら手繰り寄せるようなバトルタクティクス。それなのに、本人には悪意も何もない。ただ、心の底からポケモンバトルを楽しみたがっているのだ。ポケモンバトルが、大好きなのだ。

可愛いもの好きが高じて四天王になった、タロと同じように。ただ大好きなものに情熱を注いでいるのだ。そして……スグリは、その熱意に焼かれてしまったのだ。飛び火した、と言ってもいい。

 

「スグリかぁー……あいつはなんていうか、ちょっと方向性は変だけど成長したよな。キタカミでアイツと戦ったことあるし、なんならバトル以外でも交流してたし。違いは如実に、って感じだ」

 

「……スグリくんは、きっとホムラくんのおかげで変われたんですよ。それがいいことなのか悪いことなのか、ちょっとわからないけれど……」

 

「ふむ……スグリのことはわかった。それじゃ、次はタロの番だな」

 

「え?」

 

「言いたいことがある、って顔してる」

 

頬にのの字を描きながらホムラはニッ、と笑う。呆気にとられながらも、次の瞬間には吹き出し、タロは口を開いた。

 

「あはは……!ホムラくんって、なんでもお見通しだったりするんですか?……実はわたしも、ちょっとした悩みがありまして。といっても、もう昔のことなので今となっては些細なことなんですが……ぜひ、ホムラくんには聞いて欲しくて」

 

「聞くよ」

 

「ありがとうございます。……わたし、可愛いものが大好きなんです。でも、ブルーベリーに入学したての頃はあまりそのことを理解してもらえなくて、苦しい時期があったんです。わたしが可愛いって思ったものが、他の人にはそうと受け取ってもらえなかったり……」

 

「グランブルか」

 

「わかっちゃいます?」

 

「タロの手持ちはもう記憶してるからな」

 

グランブルは強面に反して臆病かつ繊細で、その外見と内面のギャップが女性に人気である。そうと知らなければ顔の厳つい犬ポケモンということもあって、グランブルが生息しない地方出身の一部の者からは敬遠されることもあったそうだ。人の第一印象は見た目からとは言うが、それはポケモンの例外ではないらしい。

他には、ドリュウズ。ドリュウズは大半の者が「かっこいい」と言うだろうし、ホムラ達も可愛いかかっこいいかで言えば断然「かっこいい」と言う。そういった価値観の相違に悩んでいた時期もあったのだと、タロは言う。

 

「いいじゃんか、タロが好きで極めてるんだろ?好きこそ物の上手なれって言葉があるように、タロは今のままでも十分オッケーだぜ?ブルベリーグ四天王になれるくらいだから、その道は間違っちゃないよ」

 

「……うん。ありがとうございます、ホムラくん」

 

「あー、でも俺にもそういう時期あったなー。ガキの時分にゃ、『お前とバトルするの息苦しいよ』って言われたことあったし」

 

「えっ!?」

 

それは、余りにも意外すぎる話だった。楽しそうにバトルをするホムラにつられるように、タロ自身もポケモンバトルを楽しむようになっていた。消極的だったスグリがバトルに本腰を入れるようになるほどの影響力を与えるほどのホムラが、避けられていたなど。

 

「齢一桁の頃の俺なんてプライドの塊みたいなもんでさ、負けるのは死ぬほど嫌だし何が何でも勝ちたいしやるんなら本気でやりたいしで、クソみてぇなガキだったんだ。そうやって何事も全身全霊全力全開って感じで頑張りまくってたら……なんか、ダチがいないなった。

今にして思えば、あいつらはただバトルを楽しみたいだけだったんだよな。勝つだの負けるだの、そこまでガチ勢になるほどの熱意はなかったんだ。だから、俺という焔に焼かれる前に離れた。賢明な判断だ、人は元来より火を恐れるものだからな」

 

「そんな……」

 

「だからだよ。コウキ達と出会えて、本気で話し合えて、本気でバトル出来る奴に出会えた時、俺は運命だと思ったね。『一生分の運を使い果たしたぞ』ってあの時本気で思った。あいつらと本気でバトルして、本気で話し合って……充実してるって自覚できた。念願叶ってリア充だ」

 

共感できる同士がおらず孤立した幼少期、それが今ではマブダチ四人に幼馴染一人と周囲に恵まれている。ホムラはこれ以上ない幸福だと、本気で感じていた。

 

「だから、タロが思う可愛いも、その守備範囲の広さもわかってくれる人はいるよ。タロを認めてくれる人だっているんだ、胸張っていいと思うぜ。……あ、できればそのわかってくれる人に俺も入れてくれると嬉しいな!」

 

「……ふふっ。ホムラくんはもう、十分すぎるくらい入ってますよ」

 

「マジで?ラッキー!」

 

「(むしろお礼を言いたいくらいだもん……)」

 

タロは静かに目を閉じて、ホムラの言葉を噛み締める。一方、ふと何かを思い出したホムラはタロの耳元にそっと顔を寄せた。

 

「……悪い。今の話、誰にも言ってないんだ。だから、ふたりだけ秘密ってことでひとつ頼めないか?」

 

「ひゃっ」

 

少し意識を外していたところへ来ての不意打ち。全くの無意識下での囁き攻撃に、タロは小さく声を上げた。慌てて振り返れば、いたずらっぽく笑うホムラが。

 

「ふ、二人だけ……?」

 

「そう、俺とタロだけの。小せぇ頃の悩みなんて、そうそう言えるもんじゃないしな。でも、不思議とタロには言ってもいいかなって思えたんだ」

 

「ふぇ……」

 

「俺……タロと友達になれて、良かった。ありがとう」

 

「////」

 

学園内でアイドル的な扱いを受けたり、日頃から周囲より「可愛い」と評価されたりと、タロ自身は下心で言い寄る無粋な男子を追い払ったりあしらったりする術は自然と身についた。だが、ホムラのように下心0%純心100%でグイグイくる男子との接し方などとんと知らぬ。まるで寒い冬空の下で自ら温めに走って寄ってくる焚き火のようだ。

 

「方向性は違うかもしれないけどさ、同じ好きなものに全力になれる者同士だ。末永いお付き合いの程、よろしく頼むぜ」

 

「すっ!?(す、末永いお付き合い……って、それって!?)」

 

「よーし、俺とタロは今日からマブダチだー!!」

 

「……へっ?」

 

「え?」

 

思わずホムラの言葉の意図を勘ぐった直後の、このホムラの発言である。お前まじでいいかげんにしろよ。

 

「……あれ?もしかしてマブダチだと思ってたの俺だけ……?」

 

「えっ!?あ、ううん!!全然そんなことないよ!わ、わたしも!わたしも思ってたから!!」

 

「おっ?なんだよー、聞き返されたからてっきり俺の勘違いかと思ったじゃねーかよ。いやー、安心した!!」

 

「そ、そっかぁ……(こっちはさっきからドキドキしっぱなしなのに……)」

 

「あ、メルアド交換しようぜ。友達の印だ」

 

「うん」

 

お近づきの印のアドレス交換も終えて、ホムラはよしっ、と立ち上がった。

 

「さて、そろそろ次のスクエアにでも行くかね」

 

「次はカキツバタだっけ……頑張ってね、ホムラくん」

 

「任せろ!……と、言いたいところだが、もう結構な時間だな」

 

「あ……」

 

全員がタロとの勝負を終えた頃には日が沈みかけており、こうしてタロの話を聞いたあとの今ではすっかり夜である。時間帯的にも夕食時で、ちょうどいい時間である。

 

「さすがに四人ぞろぞろ連れ立って、一人ずつ挑んだらこうなるか」

 

「すっかり日が沈んじゃったね」

 

「まぁ、何も今日中である必要はなかろうさ。カキツバタにはまた明日挑むことにするよ」

 

「うん。ホムラくん、頑張ってね。できればカキツバタにも一言言ってもらえたらありがたいかな」

 

「いやー、何をするにしてもまずはバトルしなくちゃな!」

 

ホムラとタロは揃ってスクエアの入口に向かう。コウキ達を待たせるのも悪いので、なるべく早足で。入口に到着すると、カキツバタがちょうどいた。

 

「おーす、未来のチャンピオン。揃いも揃って、もう四天王倒したのが三人目たあ、すげえ飛び越えて怖えよ!」

 

「これで少しはパルデアの面目も守れたかね」

 

「パルデア、スゲエな。お前らみたいなのがウジャウジャいるのか?」

 

「いや、あそこまでぶっ壊れてんのはあいつらくらいだぞ」

 

「おめぇもだろうが、ケンスケ」

 

「教師に"おめぇ"言うな」

 

「……にしても、ふーん?」

 

「なんだよ、カキツバタ」

 

突然、カキツバタがホムラとタロを交互に見やると、意味ありげに口角を吊り上げた。なんのことかさっぱり分からず、ホムラもタロも首を傾げた。

 

「いーや?随分と仲良くなったみたいだな、タロ。……手、繋がってんぞ」

 

「「え?」」

 

言われてみれば、ホムラもタロもお互いに片手が何かに塞がれているような、と思いつつ視線を下ろすと……がっつり手を繋いでいた。

 

「わあぁぁ!?」

 

「うわっ、と。悪い、タロ」

 

「あ、ううん!全然、全然!!」

 

「おーおー、お熱いねお二人さん!もしかして付き合い始めたのか?」

 

「カ、カキツバタッ!!そ、そういうの!よくないとっ!思いっ!ますっ!!」

 

カキツバタの指摘にゼンリョクポーズのような勢いで×を作るタロ。顔は真っ赤だし態度もしどろもどろだしで、カキツバタはもうただただ笑うだけだ。

 

「そんな露骨にしてると、かえって分かりやすぜぃ?」

 

「うううううう!!」

 

「それで?肝心のホムラはどうなんだい?」

 

「あぁ、たしかにタロとは付き合い始めたぜ」

 

「おぉ!!」

 

「ホ、ホムラくんんんん!?」

 

「何をそんな慌ててんだよタロ?別に友達付き合いの一つ二つ、初めてじゃないだろ?」

 

「「…………」」

 

その時、コーストスクエア中の空気がぜったいれいどのように凍りついた。カキツバタは「こいつマジかよ」と言わんばかりの顔で、タロはホムラの言葉をゆっくりと理解して早とちりしたことへの羞恥の顔で、コウキ達は「またコイツ何かやっちゃいましたな」と呆れ顔で。

 

「……ん?なんだこの空気」

 

「……えーっと……?オイラの聞き間違いか……?友達?」

 

「そう、友達。見ろ、タロとアドレス交換したぞ。これでタロとも縁ができた」

 

「……付き合っては?」

 

「ねぇよ。俺なんてバトル以外なんの取り柄もないぞ。タロのようなしっかりもので周りのこともよく見てくれて、ちゃらんぽらんなお前にも声掛けてくれるしあんぽんたんな俺とだって友達になってくれるこんないい女に俺を押し付けるとか頭ラリってんのか?」

 

「(いや、頭おかしいのお前じゃね?)」

 

だいたいなー、と謎の高説を垂れるホムラ。それが嘘偽りない本心からの言葉であることを理解してしまったがゆえに理解を拒みたい気持ちに駆られるカキツバタ……そんな彼の肩に、そっと手が置かれた。

振り返った先には、悟り顔のコウキ達の姿があった。そして、彼らは一斉に首を振った。

 

――すまない、ホムラがクソ鈍感野郎ですまない。

 

――おk、把握した。

 

一瞬で交わされたアイコンタクト、それですべてを察したカキツバタであった。

 

「あー、すまん。オイラの勘違いだった」

 

「そう言ってんだろうが。まったく、お前も案外そそっかしいやつだな、カキツバタ」

 

「(やっべ、今のホムラぶん殴りてぇって思った)」

 

「(抑えるんだ、カキツバタ。殴りたいのは俺たちもだから)」

 

「そうだ、カキツバタ。もうこんな時間だし、お前への挑戦は明日に回すわ。構わんか?」

 

「あ……?あぁ、そうだな。オイラもちょうど腹が減ってきたところだ。さすがに四人全員で一人ずつは時間がかかるねぃ」

 

「すまんな。けど、その代わりに明日で全てを決めてやるさ」

 

「おっ、言うねぇ」

 

なんとか話題をリーグ戦の話に戻せたところで、ホムラは改めてカキツバタに宣戦布告をする。カキツバタも乗り気だ。

 

「……まぁ、その前に」

 

「腹ごしらえ、そんで今日の対戦内容について会議だな」

 

「よし、それじゃ……おーい、タロ?戻ってこーい」

 

話がまとまったところで、早速移動を開始する。途中、トリップしていたタロを呼び戻してから一同は校内へ足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

リーグ部の部室でアカマツ飯を堪能する一行。今度はゼイユも同席している。前回ハブられたのを気にしているのか、ネチネチとゴウタの脇腹を突っついていた。

そんな時、コウキがおもむろに口を開いた。

 

「それにしても……こうして見ると、みんなちゃんとバトルが上手いんだなぁって思うよ」

 

「どういう意味?」

 

コウキの言葉にアカマツが首を傾げる。コウキは人差し指を立てるとまずはアカマツを指し、そのままネリネの方へ。さらにネリネからタロ、タロからカキツバタへと順に指をさした。

 

「考えてみな?アカマツのほのおはネリネのはがねに強く、ネリネのはがねはタロのフェアリーに強い。そしてタロのフェアリーはカキツバタのドラゴンに強い。なのに実際の順位は上からカキツバタ、タロ、ネリネ、アカマツだ。表面上のタイプ相性なら順位が逆転しそうなものだが、自分が苦手なタイプの相手に上の順位を取れるってのは本当にすごいと思うぜ」

 

「あー……考えたことなかったなぁ。オレ、ネリネ先輩には勝てないし」

 

「ネリネもタロに対する勝率は芳しくないです」

 

「わたしもカキツバタにはまったく勝てないんですよねぇ」

 

「これでも実力のほどは自信があってねぃ。苦手なタイプってだけで負けてちゃ、ブルベリーグでトップなんて張れないさ」

 

「みんな、自分が扱うポケモンの得手不得手をわかってるからな」

 

タイプ相性だけで容易に変動する順位なら、今頃四天王のランクは逆転しているかもしれない。しかし、苦手なタイプの使い手を相手に上位に立てるということは、トレーナーの戦い方が上手いということだ。

 

「いや、オレ、ホムラ達みんなを相手にほとんど何もできなかったんだけど」

 

「ネリネの策も、悉くを潰されました。完敗です」

 

「わたしもやりたいこと全部見破られたし、もうお手上げ状態でした」

 

「……改めてヤベェな、パルデア。とんでもなく強いじゃんかよ」

 

「アタシ達だってほとんど手も足も出なかったのよ?」

 

「オレなんてキタカミでコータス一匹に全タテされたことあるし」

 

「……ん?対策すれば勝てるのは普通では?」

 

「「「「「「絶対に違う」」」」」」

 

少なくともこの世界で対策の対策の対策まで念入りに仕込むのはお前らくらいだ。

 

「……みんな、ちゃんとブルベリーグは楽しめてる?」

 

「お?おぉおぉ、もちろんだ。楽しくバトルさせてもらってるぜ」

 

「次のカキツバタも、その次のスグリとのバトルも楽しみだ」

 

「みんな強いよ、いやほんと」

 

勝負の結果はともかく、手持ちの構成だけ見れば強かったのは確かだ。けっして嘘でも誇張でもなければフォローでもない。本心でそう思っている。

 

「……そうか。みんなが順調に勝ち進んでるのは嬉しいけど……なんだか順調すぎる気がして、もしかしたらホムラ達にとってアカマツ達が弱すぎたのかなってきになっちゃって……」

 

「スグリ……結果だけ見れば、俺たち全員が危なげなくリーグを勝ち進んでいる。でもそれは、誰かが弱いとかそういうことじゃないぜ。上には上があるって言うように、アカマツもネリネもタロも強かったが、俺達は更に強かったってだけだ。そうじゃなきゃ、ブルベリーグのランク上位をキープし続けるなんてできないぜ?」

 

「……ホムラがそう言うなら、そういうことにする」

 

「いや、そういうことにするとかじゃねえんだわ」

 

スグリの矯正は前途多難である。その後も和気藹々(?)と食事を囲み、夕食を済ませた一行。その後もお喋りに興じたりバトルの対策に精を出すなど、思い思いに過ごしている。

 

「サーナイト!マリルリ!ニンフィア!ドームにはいないかわいいポケモンさんにも会いたいなぁ」

 

「はは、卒業後にでもパルデアに来てくれよ。よければ案内するからさ」

 

「卒業……あ、あの、ホムラくん。ホムラくんは卒業後の進路とか考えてる……?」

 

「ん?……そうだなー、パルデアで定職に就くのもいいけど、できればいろんなところを旅したいよな」

 

「そっ、それなら!イッシュ地方とかはどうかな!?」

 

「おっ、イッシュ地方かぁ!イッシュといえばタロが持ってるドリュウズだよな。じめん使いのヤーコンさんの相棒、俺好きなんだよな」

 

「!!じ、じゃあそのときはイッシュに来てね!わたし、案内するから!」

 

「マジで?サンキュー」

 

「(ホムラくんならパパに会わせても大丈夫だよね)」(((〃`ω´)

 

「(あれ、なんか忘れてるような気が……なんだっけ?)」

 

何やら流れでイッシュ地方を冒険することになったが、ホムラは大事なことを忘れているようだ。タロの父親説だとか、背後霊のように事態を見守っている幼馴染のこととか。

その日はそのまま解散となった。明日はいよいよカキツバタ、そしてスグリ……どのような戦いになるかは予想がつかないため、ホムラ達はカキツバタの試合映像や聞いて回った情報を元に作戦を練り始める。

戦いに、終わりが見えてきた。

 

 

 

 




結局四天王相手にほぼ一人に一話使うという……藍の円盤のボリューム、ちょっと舐めてました。
会話はボタン連打、バトルも全体攻撃でサクッとクリアしたせいで体感でめちゃくちゃ短く感じたせいですね……。


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年末年始特別編!ポケモンSV脳内シミュレーター 藍の円盤 第六話


終わらなかったんじゃが!?じゃが!?


現在時刻、朝。場所はポーラスクエア。そう、カキツバタの四天王チャレンジである。早朝から集まったのも、なるべく早く終わらせてスグリとの決戦に臨むためである。

 

「朝からみんなご苦労さん。おりゃ!とくと見やがれ!ポーラスクエアのバトルコートー!……まあ、とりわけ寒いだけでほかのスクエアと変わんねえか!」

 

「だなー。カキツバタは平気なのか?」

 

「おう、オイラドラゴンつかいだけど、寒いのわりと好きだぜ」

 

パルデアには寒冷地に生息するこおりタイプのドラゴンがいるので、割と驚きはない。そもそもカキツバタは人間だし。

 

「おっと、そういやキョーダイは四天王チャレンジに来たんだったな。うちのチャンレジはドーム限定勝負だ!ルールは単純!リーグ部の後輩3人に勝ちゃあ、それでチャレンジはオシメェよ!」

 

より具体的に言えば、テラリウムドーム内で自分が捕獲したポケモン限定でのポケモンバトルだ。

 

「そんなことも」

 

「あろうかと」

 

「事前に」

 

「捕まえてきたぜ」

 

「いや、準備よすぎだろ!」

 

「ルール縛りには慣れてるからな、こいつら」

 

ポケモンスタジアムシリーズの特殊ルールで戦ってきたこいつらに死角はない。直近でも『無差別級レベル1大会』で戦ってたりもする。禁止級も平気で飛び交う地獄のような大会であった。

そういうわけで、さっそく四天王チャレンジスタート……と、その前にカキツバタから声が掛かった。

 

「ふーむ、そっちは四人、こっちはオイラを含めて四人。んじゃ、チーム戦といこうか」

 

「いいのか?急なルール変更だなんて……」

 

「いーのいーの、それにそっちのほうが楽しいだろ!」

 

「んー……まぁ、そっちがそれでいいなら」

 

こうして急遽、四対四のチーム戦となった。チームメンバーの全滅で勝敗が決まる、というものらしい。当然、ホムラ達が勝てば全員チャンレンジクリア、でいいとのこと。

相手チームはクールな女ミゾレ、茶色が大好きイワト、ナンジャモ教信者ボルタ、大将のカキツバタの四人。先鋒はミゾレ。

パルデアチームは鬼畜眼鏡リュウセイ、皆の兄貴ゴウタ、真面目系狂戦士ツッコミ兼ボケコウキ、鈍感ラノベ系主人公ホムラ。先鋒はリュウセイ。

 

「わたしはクールな女……震える準備は……いいわね?」

 

「よろしく」

 

ミゾレの手持ちはジュゴンとアローラサンドパンの二体、対してリュウセイが繰り出したのはラプラスとカメックスだ。

 

「さあ、凍えさせてあげる」

 

「ラプラス、ほろびのうた」

 

「……あ……」

 

「まぁ、なんだ、そういうことだ。お疲れ様」

 

相手の手持ちが二匹しかいないことをしっかり確認したリュウセイは初手にほろびのうたを選択。相方のカメックスはラプラスにほえるを使って退場させたあと、自身もクイックターンで引っ込むという隙のない布陣だった。ミゾレはなんとかリュウセイのポケモンを倒そうとあがいたが、耐久型みずテラスドサイドンとオスニャオニクスのいたずらごころを最大利用した徹底サポートを抜けられず、あえなく降参となった。

次はイワトとゴウタの戦いだ。

 

「茶色ってことは、いわタイプか」

 

「ご名答!」

 

「じゃあもうこれしかないな」

 

イワトの手持ちはラムパルドとトリデプスのシンオウ化石コンビ。対するゴウタはランターンとオニシズクモのみずコンビ。

 

「ちょっと雑だけどしゃーないよな。ランターン、なみのりだ」

 

「うっ……まだだ!トリデプスがまだ――」

 

「オニシズクモ、ひやみず」

 

「あ」

 

二人目も突破。ほぼワンサイドゲームだが、勝負前の些細な発言も聞き逃さずに相手のしようポケモンを予想し対策を立てるくらい、序の口である。

三回戦、ボルタとコウキのバトルだ。

 

「ナンジャモと同じでんき使いだな?」

 

「そう!ビリッとバリッとヨロシクね!」

 

「おう、対戦ヨロシク」

 

ボルタが繰り出したのはでんきタイプのジバコイルとゼブライカ。コウキはピカチュウとフライゴンの組み合わせだ。

 

「よっしゃ、ピカチュウ!ジバコイルにでんこうせっか!」

 

「うっ、ジバコイルの特性が……」

 

「ピカチュウ、そのままフライゴンの背中にジャンプ!フライゴンはじしんだ!」

 

「あーっ!!」

 

ジバコイルにでんこうせっかで突撃したピカチュウ。そのままジバコイルの体に蹴りを入れてカベキックしてフライゴンの背中に乗り込むと、それを確認したフライゴンがそのままじしんを放ってジバコイルとゼブライカを一撃で叩きのめした。

 

「おーおー、見事に三人とも倒しちまったな。無駄なく効率良く戦う……対したもんだぜ、パルデアよぅ。よしっ、それじゃあいよいよ大将戦だな、ホムラ!」

 

「だな」

 

ホムラとカキツバタはそれぞれ場所につき、対面した。

 

「ホムラ達が戦う姿……そういやコートの外からしか見たことなかったっけか。こうやって正面切んのは初めてだねぃ」

 

「おう」

 

「ブルベリーグ……キョーダイにゃ勝ってもらわねえとこまる。こまる……非常~にこまる!……とはいってもよ、ここで手抜いたらオイラが楽しくねえからな。ちぃとやる気出させてもらうぜ」

 

「おう」

 

「……ま!堅苦しいことなんざねえか。ホムラはいつもどおり戦ってくれりゃあいいのよ、ツバっさん的にはぞくぞくしてるぜ」

 

「おう」

 

「……意外と何も言わねえんだねぃ。タロやみんなとは随分と話し込んだって聞いたぜ」

 

「……別に、思い上がりをぶちのめすのに言葉は不要だろ」

 

「…………」

 

「かかってこいよ、何もかもが『さんりゅう』野郎。"ちぃと"なんてくだらねぇ見栄張ってないで、お前の全部を絞り出してぶつけて来い。さもなくば土を付けるどころか、埃一つ被らぬまま終わることになるぞ」

 

「……いうじゃねぇか……」

 

その瞬間、カキツバタの雰囲気が変わった。飄々とした雰囲気が鳴りを潜め、その表情は憤怒に染まっている。

 

「やっぱりアンタがスグリを変えやがったのか。以前のスグリはしゃべんねえわオドオドしてるわ自信ねえわで、すぐゼイユの後ろに隠れてた……でもよ!ポケモン戦わせんのだけは、誰よりも楽しそうだったんだ。それが……いつの間にか変わっちまって、自分もまわりも責め立てて追い込んでらあ。

極めつけにゃ、二言目には『ホムラならできた』、『ホムラだったら上手くやる』、『ホムラはもっと強い』……おかげで誰彼構わずアンタを引き合いに出してくる……その名の通り、スグリの脳みそを随分と激しく焼いてくれたみたいだな」

 

「だからお前は、スグリを変えてやらなきゃならんと……かつてのように、優しくのびのびとバトルを楽しんでいたあの頃のスグリに戻してやらないと、そう思ってんのか」

 

「……キョーダイのことを利用したみてえになってる現状については申し訳ねえと思ってる。楽すんのが板についちまったオイラにゃできねぇ……だから……」

 

「なぁ、そろそろマジでいい加減にしてくれねぇか?」

 

顔をしかめ、今度はホムラが怒りを顕にした。

 

「スグリが変わっちまっただの、元に戻してやらなきゃならねぇだの、まるでスグリを悪し様に言う様はほんとに反吐が出る。民度低すぎるだろお前ら、なんなんだイッシュ人。ポケモンで遊びたいだけなら、わざわざガチ勢(こっち)側にまで首突っ込んでくるんじゃねえよ。姿勢や言動に問題があるのは俺も認める。だが、スグリがあいつなりに悩んで考えて選んできた道だぞ。頑張って強くなって成長したってのに、なんでどいつもこいつも真っ先に出てくるのが現状の否定なんだよ。

くそくらえだ。そろそろ俺の心の小火も、山火事レベルにまで爆発するぞ。その言葉の軽い口を閉じやがれエンジョイ勢ども。本気なんだよ、スグリは。言動や素行はどうあれ、あいつは本気で強くなろうとしてるんだよ。テメェらが目指していない世界を目指して突き進んでんだよ。なんでまず最初にそれを認めてやれねぇんだよ……?」

 

「ホムラ……」

 

「お前とスグリのチャンピオンマッチ、見せてもらったぞ。スグリはちゃんとお前のことを研究して、勝つ方法を模索して、勝負に挑んで勝ってるんだ。それでお山の大将を追われておいてどうのこうの言ってたら、よっぽど女々しいぞカキツバタ。

俺たちなら、スグリに負けてもその成長を喜べるし、スグリに勝てたらさらに強くなるであろうその後の再戦に期待できる。スグリが折れたらそれまでだ。あいつの人生の生殺与奪の権はあいつ自身が握っている……折れるか跳ね返るか、それを決めるのはスグリ自身。

だから俺たちは笑ってこう言えるんだ。『スグリとの勝負が楽しみだ』ってな」

 

「…………」

 

「スグリだって、みんなとの勝負を楽しみにしていただろうし、実際楽しんでたはずだ。……まぁ、比較対象が俺らってのがちょっとアレだが、それでもスグリがお前ら全員に期待してたのは事実だ。俺らを引き合いに出すのも、反骨心を煽って少しでも強くなろうと志してくれるのを期待してのこと……裏返しみたいなもんだ。

まったくもって残念なことに、このブルーベリー学園には反骨心から強くなろうと本気になるトレーナーはいなかったみたいだが……まぁ、これもイッシュという国風なのかね。今のイッシュチャンピオンって誰だ?アデクさん……いや、アイr――」

 

「もういいだろ」

 

長々と話し続けていたホムラの言葉を、いきなりばっさり切るカキツバタ。物凄く複雑な表情を浮かべている。

 

「ホムラの言いたいことは、ひとまずわかった。視野狭窄に陥っていたのはスグリだけでなくオイラたちも……ってことだろ?確かにスグリは強くなった、それは認める。だが、それでもオイラは今のスグリを受け入れるわけにはいかねぇ。アンタらのような勝つバトルでしか楽しみを見いだせなくなったスグリを、あの頃のように戻してやりてぇんだ」

 

「だからスグリは今も昔もバトルを楽しんでいると……あぁ、もういい。今回は特別だ……本当に極まった奴がどんなバトルをするのか、教えてやるよ。効率を極め、あらゆる手を封じ、何もなせぬまま終わらせてやる。逃げ回りながら去ね」

 

不穏な空気のまま始まったポケモンバトル……両者が最初に出すポケモンは。

 

「フライゴン!カイリュー!」

 

「地獄を始めよう。キラフロル、サーナイト」

 

カキツバタの先発はフライゴンとカイリュー、ホムラの先発はキラフロルにサーナイトだ。

 

「おっと、いきなりフェアリーか!対策はバッチリってわけだねぃ。フライゴン、じしん!カイリューはサーナイトにしんそくだ!」

 

「キラフロル、ステルスロック。サーナイトはフライゴンにおきみやげ」

 

「っ!?」

 

カイリューのしんそくを耐えたサーナイトがおきみやげを発動する。これによりフライゴンの攻撃能力が二段階下がり、四倍弱点のタイプ一致じしんをHB特化キラフロルは耐え切った。その後、ステルスロックを放ちつつ特性のどくげしょうによってフィールドに二重の罠を仕掛けた。

 

「こいつは!?」

 

「次、チラチーノ」

 

倒れたサーナイトに代わって出てきたのはチラチーノ。

 

「(やべぇ、キラフロルは物理で攻撃するとどくびしを巻かれちまう……チラチーノもなにをしてくるかわからねぇ。フライゴンもカイリューも物理攻撃しか覚えてない……多少のリスクは背負うしかないか!)カイリュー、おいかぜ!フライゴンはじしんだ!」

 

「チラチーノ、ワイドガード。キラフロルはキラースピン」

 

カイリューがおいかぜで味方の支援をし、チラチーノもワイドガードでフライゴンのじしんを防ぐ。さらにキラフロルがキラースピンでカイリューとフライゴンを同時攻撃し、両者をどく状態にした。

 

「二匹同時に毒を……!」

 

「どうした、この程度か?」

 

「ちぃっ、カイリューはチラチーノにしんそく!フライゴンはもう一度じしんだ!」

 

「馬鹿の一つ覚えだな。最適解ではあるが、正解ではない」

 

「どういう……!?」

 

カイリューのしんそくがチラチーノに当たった直後、カイリューがカキツバタの手持ちに引っ込んだ。そして入れ替わるようにキングドラが引きずり出された。

 

「なんだと!?」

 

「レッドカードだ。チラチーノ、ワイドガード。やるぞ、キラフロル」

 

引きずり出されたキングドラがどくびしにより毒状態となり、さらにステルスロックとじしんによる巻き添えダメージを受けたのをしっかり確認してから、チラチーノにワイドガードを指示。さらにテラスタルオーブを取り出し、キラフロルをテラスタルさせた。

 

「ここでテラスタルかい!」

 

「そうだ。ノーマルテラス……キラフロル、じばくだ!!」

 

「なっ」

 

ノーマルタイプへテラスタルしたキラフロルが繰り出したじばく。チラチーノはしっかりワイドガードでじばくを防ぎ、その爆風はカキツバタのポケモンのみを巻き込んだ。爆炎に包まれたフライゴンとキングドラ。キングドラは戦闘不能になったが、フライゴンはかろうじて生き延びた。……だが。

 

「フライゴン!」

 

「フライゴンはもたんよ。計算上、毒のダメージでそのまま戦闘不能になる」

 

「あっ……」

 

ホムラの宣言通り、フライゴンもまた毒のダメージによって体力が尽き、戦闘不能になった。カキツバタはすぐに二匹をボールに戻す。

 

「……どういうつもりだ」

 

「なにが?」

 

「ふざけんな!以前までのホムラなら、おきみやげだのじばくだのと、ポケモンを犠牲にするような技は使わなかったはず!」

 

「言っただろ、本当に極まった奴がどんなバトルをするのか、教えてやるって。勝つことしか考えてないやつの戦い方を見せてやるって。勝利だけを目指すやつってのは、自分のポケモンの犠牲すら勝利の方程式に組み込み計算する。ポケモンバトルを、ただの数式としか見ない。

俺たちはいつでもどこでもこんなバトルができる。でもそれじゃつまらねぇから、好き勝手に戦ってんだ」

 

「……カイリュー!オノノクス!」

 

「ニンフィア」

 

カキツバタはカイリューを再び繰り出し、さらにオノノクスも出した。カイリューは浮いているのでどくびしは当たらないものの、弱点であるステルスロックによる大ダメージは避けられない。オノノクスもきあいのタスキを持たせているが、ステルスロックによるダメージでタスキは潰され、さらにどくびしの効果で毒状態になった。

 

「(くそっ……)こっちにはおいかぜがある!カイリューはチラチーノにしんそく!オノノクスはニンフィアにアイアンヘッドだ!」

 

「悪いな、カキツバタ。こっから作業の時間だ」

 

「作業!?」

 

「チラチーノ、ニンフィア、ハイパーボイス」

 

カイリューのしんそくを三度受けるチラチーノだが、まだ落ちない。ニンフィアもリリバのみの効果でアイアンヘッドを半減させた。反撃のダブルハイパーボイス(ニンフィアは夢特性)でカイリューとオノノクスをダブルノックアウトさせた。

 

「ジュカイン!ブリジュラス!」

 

「戻れ、チラチーノ。オーロンゲ」

 

ホムラはチラチーノを引っ込め、オーロンゲに入れ替える。カキツバタは残ったジュカインと、切り札のブリジュラスを繰り出す。ブリジュラスははがねタイプなので、どくびしの効果を受けずステルスロックのダメージも抑えられる。

 

「たぎれ……竜の血!すべてを支配しろぃ!!」

 

「そうだ、そうだ!体裁なんてかなぐり捨てろ!お前の全てをさらけ出せ!!戦場(ここ)では誰もが自由なんだ!」

 

ブリジュラスをドラゴンタイプにテラスタルさせ、いよいよ本格的に感情をむき出しにするカキツバタ。ホムラもその気色に充てられ、獰猛な笑みを浮かべた。

 

「ジュカイン、リーフストーム!ブリジュラス、ラスターカノン!ニンフィアを狙え!」

 

「そうはさせねぇ!オーロンゲ、トリック!対象はブリジュラスだ!」

 

ジュカインとブリジュラスの矛先がニンフィアに向けられる……が、それよりも早くオーロンゲが動き、トリックで持ち物を入れ替えた。持ち物を入れ替えられたブリジュラスは露骨に動きが鈍くなった。

 

「こうこうのしっぽか!?」

 

「これでブリジュラスの攻撃は間に合わねえ!ニンフィア、ハイパーボイス!!」

 

「ブリジュラス……!」

 

こうこうのしっぽを持たされたブリジュラスはすばやさが遅くなり、リーフストームを耐えたニンフィアが放ったハイパーボイスの前に倒れた。ジュカインも耐えているが、毒のダメージでほぼ虫の息だ。

 

「終わりにしよう。ニンフィア、でんこうせっかだ」

 

「っ……」

 

ニンフィアの先制技が決まり、ジュカインは倒れた。これにて決着。

 

「これが、スグリを焼いた焔か……あっついねぃ」

 

「対戦ありがとうございました」

 

ポケモンをボールに戻し、コウキ達も含めた全員が集まった。

 

「へっへっへ……いやぁ、べらぼうに強いねぃ。戦いすら数字で見る、計算する……おっそろしいもんだ。なにより恐ろしいのは、そんな無慈悲なバトルと普通のバトルを素面で切り替えられるおまえさんらだね」

 

「お前の言う無慈悲なバトルも普通のバトルも、どちらも『楽しんで』いるのが俺らだ。どっちのほうが、ではなく、どっちも楽しい。だから、どっちのバトルもできる。……今のスグリは、俺たちが見せた『無慈悲なバトル』を猿真似して、そっちに傾倒しているだけ。おまけに勝ちしか見えてねぇときた。やれやれだぜ」

 

「悪い、カキツバタ。こう言っちゃなんだが、ただスグリを倒すだけじゃ元には戻れないと思うぜ」

 

「……そうか」

 

そう言ってカキツバタは遠い目をする。少し考えるように目を閉じると、やや乱暴に頭を掻く。

 

「みんなへの入れ込み具合からして、負けたとしてもあんま効果なさそうだなとは思ってたからねぃ。んー……もう少し考えてから動きゃよかったか?」

 

「ここまで来た以上、もう勝つしかないだろ。任せろ。俺たちは勝つさ」

 

「……頼む」

 

「ホムラーッ!」

 

カキツバタが頭を下げようとした直後、スグリの声が響いた。フィールドに上がってきたスグリが走ってきて、ホムラに飛びつく。慣れたように受け止めると、とりあえず落ち着くまで振り回してから動きを止めた。

 

「ホムラ、カキツバタにも勝ったんだってな!それじゃあいよいよ……俺と、だよね」

 

「あぁ、そうだな。いよいよだ、楽しみだぜ!」

 

「……むー」

 

「ん?なんだよ、スグリ」

 

なぜか頬を膨らませて「不満です!」と言いたげなスグリ。首を傾げているとあんまりな理由が挙げられた。

 

「……知らなかった。自爆戦法」

 

「うげっ、見てたのか」

 

「あんな戦い方があったなんてな……なんで教えてくれなかった?しかもカキツバタにだけ……ずるいずるいずるいずるいずるいずるい

 

「リスキーだからだよ!上手くはめなきゃ自分のポケモンだけが一方的に減るんだぞ!付け焼刃の自爆戦法なんかで勝てるもんか!」

 

「……いや、うん。確かにそうだ、慣れるまでしんどそう……やっぱホムラはすごいべ」

 

「あははは……」

 

「(これでスグリが『実は女の子でした』とかだったらクッソ笑うんだけど)」

 

「(やめてやれ、流石にそれだとホムラの命がいくつあっても足りんぞ)」

 

相変わらず暴走気味なスグリに、さしものホムラも苦笑い。そんなスグリにカキツバタは声をかける。

 

「スグリよう、よっぽどホムラたちが気になるんでやんすねぃ?」

 

「今の俺を倒せるのは、滾らせてくれるのは、楽しませてくれるのは、ホムラたちだけだから。……ポケモンバトルの教育に力を入れていると言いながら、カキツバタのような微温湯に浸かることを良しとするような学校に、俺とまともに戦ってくれるやつなんて……」

 

「そこまでだ、スグリ。……今は俺がいるだろう。俺を見ろ、スグリ。お前を倒す敵を、ちゃんと見据えろ」

 

「ホ、ホムラ……」

 

スグリの顔を両手で掴み、無理やり自身の方へ向けさせるホムラ。お前、それをする相手を間違えてるだろ。しばらくじっと見つめ合うと落ち着いたようで、スグリは自分からホムラの手を離した。

 

「……カキツバタこそ、やけに俺の(・・)ホムラに肩入れしてるんだな」

 

「あのちょっとスグリさんもうちょい発言内容に気をつけてもろて」

 

「新入生には優しくしないと!人類みなキョーダイよ?」

 

「……よく言う。何考えてるか知らないけど、それももう終わりだ」

 

スグリは踵を返して歩き出す。一度、足を止めて振り返るも、結局は何も言わぬまま歩いて行った。

 

「いよいよだな……オイラも楽しみだ」

 

「俺たちもだ」

 

スグリとの頂上決戦……即ちチャンピオンマッチはエントランスの受付で申請すればよいとのこと。一同はエントランスへ赴き、さっそく受付を済ませた。

 

「ホムラ……それに、みんなも。スグリとは仲良かったんだろぃ?」

 

「まあな」

 

「……そうかい。スクエアでのバトルフィールドで言った通りだ。スグリにはもっと楽しみを……いや、違うな。そんな建前じゃあない。

スグリには、ちゃんとオイラ達を見て欲しいんだ。スグリはオイラ達と違う誰かを比べ続けて、いつもそいつらばっかり見ていやがる。オイラ達と勝負しながら、別の誰かと勝負をしている……それに耐えらんねえってやつもいる。他人を尊重しても妥協まではしてくれないからな、誰かさん達と同じレベルを要求してくるんだ」

 

「……その誰かさんってのが、俺らか」

 

「そして個人枠はホムラと……」

 

改めて、スグリの中心にいるのはホムラ達だということを再確認した。そして、それ以外の人間が目に入らないということも。

 

ディンドンダンドーン♪

 

校内放送により、チャンピオン戦のお知らせが響く。その間、ケンスケは受付の女性に声をかけた。

 

「すまない、パルデアアカデミー美術副担任のケンスケだが、このバトルに教師等の同伴は?」

 

「え?」

 

死に腐れ(いえ何も)

 

聞き返されただけですべてを察し、悪態を飲み込んでその場を辞する。スグリもすぐに姿を見せると、まっすぐ指を立てて、それをホムラに指した。ホムラもバトルフィールドに立ち、戦いの準備に入る。

 

「待ってたよ。ホムラに認めてもらいたくて、俺、努力したんだ。吐くほど勉強してポケモン強くして……四天王蹴散らしてチャンピオンになって……それも、全部全部全部!!今ここで、ホムラに勝つため!!」

 

「……それだけか」

 

「え?」

 

「言いたいことは、それだけか」

 

顔を上げるホムラ。そこにあったのは……無。ただの無表情であった。

 

「能書きほど薬は効かぬ。くだらねえ大言壮語を吐き散らかしてねぇでとっととポケモンを出せ。俺たちはポケモントレーナーだ。ならば言いたいことはポケモンで語れ」

 

「……は、はは……はははははははははははは!!」

 

突然天を仰ぎ、狂ったように笑い始めるスグリに、観客席にいるゼイユも不安になる。笑うのをやめたスグリが顔を戻すと……その顔は抑えきれないほどの喜色満面であった。

 

「そう、そうそうそうそう!そうだ、そうだ!!これがホムラだ!!どこまでもバトルで本気になれる!!言葉なんてくだらない……!そうだ、俺たちはポケモントレーナーだ!!だからここからは……ポケモンで語る!!」

 

「……来い……」

 

お互いにポケモンを繰り出し、いよいよチャンピオン戦が幕を開けた。

 

「オーロンゲ!テッカニン!」

 

「……!!プクリン、ドラパルト!」

 

「(なにっ、テッカニンは原作未入国のはず!なぜスグリの手持ちに!?)」

 

ホムラの先発はプクリンとドラパルト、対するスグリはオーロンゲとテッカニンという組み合わせだ。原作未入国ポケモンの登場に、ホムラ達の間で小さくない動揺が生まれる。

とにもかくにもバトル開始。

 

「オーロンゲ、ひかりのかべ!テッカニンはまもる!」

 

「ドラパルト、こっちはリフレクターだ!プクリンはわるだくみ!」

 

初手、双方ともに変化技の使用だ。オーロンゲとドラパルトが壁を貼り、プクリンはわるだくみ。テッカニンはまもるを使ったが、誰も攻撃していないのでスカされている。

 

「(やっぱり様子見できた。ホムラ……後続は特殊系だな?いいぞ、俺もやりたいようにやる。自分のやりたいバトルを、相手に押し付ける!)」

 

「(テッカバトンか。物理アタッカーは当然として、壁貼りのオーロンゲがどうするかだな。仕事後は自主退場か、攻勢に出るか)」

 

「テッカニン、つるぎのまい。オーロンゲはリフレクターを」

 

「プクリンはわるだくみ。ドラパルトはひかりのかべだ」

 

再び変化技。双方ともに攻勢に出ず、周囲には困惑が広がっている。それは当然、ブルベリーグ四天王達も同じだ。

 

「テッカニン、つるぎのまい」

 

「プクリン、バトンタッチ!」

 

「(しまった、ホムラのほうがわずかに早い!)」

 

先に動いたのはホムラ。プクリンのバトンタッチによって控えに戻り、後続のポケモンが姿を現す。

 

「サザンドラ!」

 

現れたのはサザンドラ。そこへさらにホムラが動く。

 

「ドラパルト、ドラゴンエールだ!」

 

「オーロンゲ、サザンドラにすてゼリフ!テッカニンはバトンタッチ!」

 

ここでスグリも動く。既にテッカニンの特性かそくで素早さ三段階、つるぎのまい二回で攻撃四段階上昇したのちに繰り出すポケモンは一つだけだ。

 

「カイリュー!」

 

物理技が強いドラゴンポケモンのカイリュー。素早さ三段階上昇は伊達ではない。最速、最短でサザンドラを潰しに行く。オーロンゲもすてゼリフで手持ちに戻ったので、別のポケモンに入れ替える。

 

「……ニョロトノ」

 

繰り出したのはニョロトノ。特性あめふらしにより、天気が雨に変わった。

 

「速攻で沈める!カイリュー、ドラゴンクロー!!」

 

「サザンドラ、まもる!」

 

「しまっ――」

 

「ドラパルトはニョロトノにとんぼがえり!」

 

カイリューで果敢に攻め込むも、まもるで防がれてしまう。その隙を突く形でドラパルトのとんぼがえりがニョロトノに決まり、ドラパルトが入れ替わる。

 

「ピクシー!」

 

現れるピクシー。嫌な予感を覚えたスグリだが、ここでカイリューを引っ込めるのは愚策、と考え攻撃に移る。

 

「カイリュー、ドラゴンクロー!ニョロトノ、れいとうビーム!」

 

「ピクシー、このゆびとまれ!」

 

「くっ……」

 

予感的中。ピクシーに全ての攻撃が吸われていく。ドラゴンクローは無効化され、れいとうビームも大したダメージは出ていない。

 

「サザンドラ、りゅうのはどう!」

 

「ぐうっ」

 

カイリューに放たれたりゅうのはどうは寸分違わず命中。急所に当たった一撃必殺であった。

 

「やっぱりホムラは強いなぁ!!だから、楽しい!!嬉しい!!ツンベアー!!」

 

「すいすい熊か!」

 

雨下で繰り出されたツンベアーを見て、即座に特性に思い当たるホムラ。

 

「ピクシー、このゆびとまれ!」

 

「読めている!ツンベアー、ヘビーボンバー!!」

 

「ピクシー!」

 

「これで邪魔は消えた!ニョロトノ、れいとうビーム!!」

 

「ただでは落ちん……!サザンドラ、ハイパーボイス!!」

 

サザンドラのハイパーボイスがニョロトノとツンベアーに直撃。ニョロトノは急所命中も相まって倒れたが、ツンベアーはかろうじて生き残った。最後っ屁とばかりに放たれたれいとうビームもサザンドラに届き、体力は残りはしたもののかなりのダメージを負った。

 

「やるなぁ、スグリィ!!」

 

「俺だってやれる!ホムラに届かせてみせる!!」

 

「簡単にはやらせられんな!プクリン!」

 

「オーロンゲ!」

 

壁は残っているとはいえ、その壁をぶち抜くほどの威力の技が飛び交う。スグリが繰り出したのはオーロンゲ。残り一匹は切り札なのだろう。

 

「オーロンゲか」

 

「勝たせてもらうよ、ホムラ!」

 

「ぬかせよ!プクリン、たくわえる!」

 

「ツンベアー、ヘビーボンバー!」

 

「プクリンを守れサザンドラ!ハイパーボイス!!」

 

「オーロンゲ!ソウルクラッシュ!」

 

再びサザンドラのハイパーボイスが炸裂する。サザンドラはそのままツンベアーの進路上に立ち塞がり、進行を阻むように攻撃をする。その横合いから飛び込んできたオーロンゲのソウルクラッシュが命中し、ここでサザンドラはノックアウト。阻む者が消えたツンベアーが突き進むも、既にプクリンは技を出し終えたあとだった。

 

「戻れサザンドラ!プクリン、バトンタッチ!お前も戻れ!」

 

サザンドラを戻し、技の効果でプクリンも戻し、素早くホムラはポケモンを繰り出した。

 

「カメックス!頼むぜ……ぽにこ!」

 

バトンタッチで飛び出したカメックスが、ツンベアーのヘビーボンバーを受け止めた。雨が思った以上に長く降ることから、スグリのニョロトノはしめったいわを持っていたのだろう。後から出てきたぽにこ……竈オーガポンに対してわずかに反応を見せるスグリだが、「今はダメだ」とばかりに首を振った。

 

「カメックス、アクアリング!ぽにこはツタこんぼう!」

 

「ツンベアー!ちっ……オーロンゲ、ソウルクラッシュ!狙いはカメックスだ!!」

 

オーガポンのツタこんぼうが命中し、ツンベアーが倒れた。オーロンゲの攻撃が命中するも、カメックスはアクアリングの他、特性あめうけざらで二重回復により傷を癒している。

 

「テッカニン!」

 

スグリは再びテッカニンを繰り出す。

 

「テッカニン、つるぎのまいだ!」

 

「カメックス、オーロンゲにラスターカノン!ぽにこはテッカニンにがんせきふうじだ!」

 

「くっ……オーロンゲ、ひかりのかべだ!」

 

カメックスのはどうだん、オーガポンのがんせきふうじがそれぞれに命中する。テッカニンは落ちたが、オーロンゲはひかりのかべのおかげで生き残った。

と、ここで壁の効果が消えた。ここから先は守りはあまり期待できないだろう。

 

「カミツオロチ!」

 

「……カメックス、からをやぶる!」

 

「(ぼうぎょを下げたか!なら!)オーロンゲ、ソウルクラッシュ!カミツオロチはきまぐレーザー!カメックスに集中砲火!」

 

「ぽにこ!オーロンゲにツタこんぼうだ!!ぶん投げてやれぇ!!」

 

「!!」

 

オーロンゲが攻撃のために動きを止めた直後、オーガポンが動き出す。燃え盛るツタこんぼうをぶん投げるという奇策。こんぼうがまっすぐオーロンゲにぶちあたり、そのまま戦闘不能にした。カミツオロチのきまぐレーザーを受けるも、カメックスは余裕綽々だ。

 

「戻れ、オーロンゲ。……やっぱり、ホムラは強い。追いついたと思ったけど、俺もまだまだだった」

 

「なんの、強くなったなとは思ってるよ。いや、マジで」

 

「あはは。……もう、俺の手持ちはカミツオロチだけだ。ホムラ、最後にちょっとわがままいいかな?」

 

「お、なんだ?」

 

「あのさ……最後に、おに様と一騎打ちがしたい。……ダメか?」

 

「……いいぜ。ぽにこもいいか?」

 

ホムラがオーガポンに確認を取ると、オーガポンはわざわざ仮面を外してから笑顔を見せて、それから頷いた。ホムラはカメックスを手招きしてトレーナポジションまで下がらせる。

 

「……それじゃ」

 

「うん」

 

「全力で」

 

「うん」

 

「「潰す」」

 

ホムラとスグリは同時にテラスタルオーブを構え、ポケモンをテラスタルさせる。竈のお面のオーガポンと、かくとうテラスのカミツオロチ。両者準備が整ったところで、勝負が再開された。

 

「カミツオロチ、だいちのちから!」

 

「とべ、ぽにこ!ツタこんぼう!!」

 

カミツオロチが放つだいちのちからを、ツタこんぼうで地面を叩いた反動で飛び上がるオーガポン。攻撃が外れるやいなや、スグリはすぐさま指示を飛ばす。

 

「きまぐレーザー!」

 

「こんぼうで全部受け流せ!」

 

龍の首から放たれるレーザーを、こんぼうを振り回して弾きながら自由落下するオーガポンを前に……それでもスグリは笑みを絶やさなかった。

 

「なあ、チャンピオンって……」

 

「あんなふうに笑うんだ……」

 

「なんだか……楽しそう、だよね」

 

「うん、すごく楽しそう」

 

いつの間にやら、ホムラやスグリが感じている『楽しい』という感情が周囲に伝播している。カミツオロチはオーガポンを近づけまいとレーザーを乱射し、オーガポンはレーザーを避けたり弾いたりして隙を伺っている。

 

「……!がんばれー!どっちもがんばれー!!」

 

「ア、アカマツくん!?」

 

「ほら、タロ先輩もネリネ先輩も!がんばれーっ!!」

 

「……っ!ホ、ホムラくん、がんばれー!」

 

「スグリ……頑張って……!」

 

「……あら、これツバっさんも言わなきゃダメな流れ?それじゃ……どっちも頑張れよーぃ!」

 

頑張れ。負けるな。そこだ。危ない。勝てるよ。いけいけ。あと少し。もうちょっと。

 

様々な声援が飛び交い、エントランス中が賑わいを見せる。誰もがこの勝負に熱を上げ、我が事のように歓声を上げる。

カミツオロチもスタミナ切れが見え始めた。その隙を逃さず、オーガポンが一気に懐へ飛び込む。

 

「ぶちこめぽにこ!ツタこんぼう!!」

 

「まだだカミツオロチ!テラバーストォ!!」

 

全力で振り下ろされた棍棒と、放たれたテラバーストが激突。激しく大爆発を起こし、オーガポンとカミツオロチを包み込む。

 

「「どっちだ!?」」

 

ホムラとスグリが同時に叫ぶ。煙が晴れた先で倒れていたのは……カミツオロチ。

 

「……負け、ちゃ……った……」

 

「ふぅー……対戦、ありがとうございました」

 

「あっ、対戦ありがとうございました」

 

ブルベリーグチャンピオン戦……決着。

 

 

 

 




三が日で終わらんかった……でも終わるまで投稿は続けるけど是非もないよネ!



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年末年始特別編!ポケモンSV脳内シミュレーター 藍の円盤 第七話

決 着 完 了。

 

ついに戦いは終わりを迎えた。スグリの最後の一匹が倒れ、ホムラが勝利したのだ。疲れきったのか座り込んだスグリに近づき、ホムラは手を差し出した。

 

「強くなったなぁー、スグリ!!テッカバトンとかどこで習ったんだ、説明書でも読んだのか?」

 

「ホムラだって、相変わらず強いよ……。おれ、すっごく頑張ったんだけどなぁ……何がダメだったんだろ……」

 

「そりゃあ、お前……シンプルな話だろ。たった一つのシンプルな答えだ」

 

スグリの手を引いて立ち上がらせつつ、周囲に目を向ける。釣られて周りを見るスグリに、ホムラは答えを送った。

 

「人は一人じゃ生きてけねぇように、一人でたどり着ける強さにも限度がある。俺には切磋琢磨できる仲間が居る。お前はどうだ?」

 

「……おれ……おれは……おれは、一人だ……」

 

「今は、な。……どうだい!スグリは全力で戦ったぞ!全身全霊、己の全てをかけて戦った!意地にかけて、誇りにかけて!なにより!!ブルベリーグのチャンピオンとして!!全てに殉ずる覚悟でこの勝負に臨んだんだ!!

素晴らしい、感動した、俺は素直に賞賛する。何度でも贈ろう、この言葉を。……スグリ、本当に……強くなったな。友達として、俺はお前を誇りに思う!!文句ある奴は今すぐ前にでろ!!俺の友達を嗤う奴も、侮辱する奴も、全員残らずぶっ飛ばしてやる!!」

 

「ホムラ……!」

 

周りで観戦していたすべてのブルーベリー生に伝えるように声を張り上げるホムラ。その言葉に、スグリを内心で邪険に思っていた生徒たちも言葉を詰まらせる。

 

「……スグリよう」

 

ここでカキツバタが動く。後ろの方ではタロが引き留めようとしたのか、手を伸ばしているのが見えた。

 

「オマエに勝てなかったオイラが言うのもなんだけどよ……前みたいに楽しくやろうや。勝ちにこだわれんのはすげえいいことだ、誰だって勝ちてえは勝ちてえ。でもよ……こだわりすぎて自分の首しめんのは、違うだろ。まして、他人の幻影追っかけて、それを別の誰かにおっかぶせるのはよぅ。……見てるこっちが苦しいぜ」

 

「カキツバタ……わかってた、わかってたんだ、そんなこと。みんな、楽しんでポケモンバトルをしてるってことくらいは。

おれは……みんなが、ホムラ達が羨ましい。ポケモン強くて、どこへでも行けて、誰とでもなかよくできて……俺がずっと好きだったオーガポンにも認められて……ねーちゃんだって最初イジワルしてたくせに、すぐみんなのこと好きだし……俺には……何もないよ。

だから、ホムラ達のバトルを見たとき……衝撃だった。強いのに、自分だけじゃなくて戦ってる相手まで楽しませてくれるバトル……あんなふうに戦えたなら、どれだけ良かっただろうって……。楽しんでいるのは自分たちのはずなのにおれも楽しいって思えて、でもホムラ達の笑顔は『楽しませてもらってる』笑顔なんだ。それが、なんだか、おかしくって……すごく綺麗だったから、憧れた」

 

「…………」

 

「でも、みんなのようにはいかなかった……勝てる喜びや楽しさをもっとたくさんの人と分かち合いたかったけど、ダメだった。ホムラ達のバトルを広めてみようと頑張ったけど……ははっ、結果はご覧のとおりだべ。……おれ、間違ってたのかな……」

 

「……ったく、答えを急ぎすぎなんだよ。一つ一つ、ゆっくり解決していきゃいいじゃねえか。安心しろ、お前はまだ俺たちほど急ぎすぎもしてなければ、仲間達に絶望もしちゃいない。見てみろ、周りをよ」

 

「え?」

 

スグリがもう一度周囲を見渡してみる。その時だ、スグリの耳に、観戦者の言葉が届いた。

 

「すごかったよ!」「お、俺にも勝つ方法を教えてくれ!」「チャンピオンの笑うところ、初めて見た!」「楽しくバトルをやろうよ!みんなで!」

 

「こ、これって……」

 

それは、ホムラとスグリのバトルを賞賛する声。声。声。二人のバトルの熱に当てられ、見ているだけの彼らもバトルを楽しんでいたのだ。

 

「……こういうバトル、やりたかったんだろ?もう出来てるじゃねえか」

 

「あ……う、うぅ……ごめん、ホムラ……ごめん、みんな……!うえぇぇぇん……!!」

 

「わっ、泣くな泣くな!大丈夫、大丈夫だからな!」

 

「あのー……ちょっとー、よろし……くはなさそうかな?」

 

「おっ、タロ。それにみんなも」

 

話が一区切りついたと思ったのか、タロが話しかけてきた。その後にはアカマツとネリネも続いてくる。

 

「ええと……まずはホムラくん、チャンピオンおめでとう!普通ならお祝いしたいんだけど……今の……この状況はわたしたちには複雑で、ちょっと整理しないとなの……」

 

「整理ぃ?」

 

「だってそうでしょう!」

 

カキツバタが「なんのこっちゃ」と聞き返せば、タロはぷんすこ感情を顕にしてカキツバタに噛み付いた。

 

「ホムラくんがチャンピオンになったらリーグ部の部長ってことで、留学生なのに異例だけど今後の方針はどうするの、とか!?あれとかこれとか、とかとかいろいろ!!」

 

「お、おう……」

 

「まぁ、そうなるな」

 

「それに、スグリくんがチャンピオンから四天王に降りてくるなら、ランク的にはアカマツくんが都落ちだし」

 

「えっ、オレ、そうなの!?ヤバいじゃん!」

 

異例に異例が重なったことで、なにやら複雑な事情が雁字搦めになっているようだ。なおもタロは続けて言う。

 

「スグリくんがどうしたいか、ちゃんと気持ちを聞いておかないと……」

 

「……ごめん、そのことはちょっとだけ待って欲しい。おれなりにちゃんと考えて、答えを出すから」

 

「スグリ……」

 

「し・か・も!他にチャンピオンへの挑戦権を残しているコウキさん達はどうするんですか。下手するとアカマツくんだけでなく、私たち全員都落ちですよ!ブルベリーグのチャンピオンから四天王まで、全員留学生とか前代未聞です!」

 

「あちゃ~、そこまでは考えが及ばなかったわ」

 

「えぇ!?タロ先輩達まで!?めっちゃヤバいじゃん!」

 

ある意味、ブルベリーグの死活問題だ。ブルベリーグが留学生にまるまる乗っ取られるという悪夢のような事態を前に、さしものカキツバタも焦りと申し訳無さを感じているようだ。

 

「放送室より、生徒のお呼び出しです。リーグ部チャンピオン、スグリさん。四天王トップ、カキツバタさん。3年2組、ゼイユさん。交換留学中のホムラさん、コウキさん、リュウセイさん、ゴウタさん。引率のケンスケ先生。

ブライア先生とお客さまがお待ちです。1-4の教室まで、至急いらしてください」

 

その時、校内放送が流され、ホムラ達が呼び出された。あまりの間の悪さに、全員がしかめっ面だ。

 

「もう、なんだってこんなときに……」

 

「ちっ、空気の読めねぇ大人どもが」

 

「……今は真面目に勘弁して欲しいんだけどねぃ。ブライア先生案件なら、すっぽかすと後が面倒だ」

 

「すっぽかすと面倒なら、すっぽかさなきゃいいんだろ?」

 

「そりゃそうだが……何する気なんだ、ケンスケせんせ?」

 

「いや、なに。生徒の自主性を重んじてもらうため、ちょっとおw手w伝wいwをwねw」

 

ひとまず四天王を含めた全員で、1-4のクラスへ移動する。

 

「どもっすー」

 

「皆、よく来てく――」

 

「チワーッス、ブライア先生!突然だがこれからするであろうそっちの話はしばらく待ってもらえんかね!!」

 

「……え、ケンスケ先生?」

 

カキツバタが声をかけ、ブライアが振り返ると同時にケンスケが最前列に出て声を張り上げた。突然の奇行にブライアもそうだが、全員が驚いていた。

 

「ほんの数分前にチャンピオン戦が終わったばかりでね!我が校のホムラがスグリに勝利したわけだが、そもそも留学生が一学園の部活動の部長で、さらにリーグ部のランク変動等に伴う諸々の問題を先に検討したいんだが!

身も蓋もない言い方をすると、そっちも急ぎかもしれんがこっちものっぴきならない事態でゴタゴタしてるのでさくっと身内の問題を解決しておきたいってわけ!!」

 

「……あ、あぁ、なるほど……。確かに留学生が部長を務めるとなると、だいぶややこしくなりそうだね。わかった、本日君たちに素敵なゲストが来てくださっているんだが、入れ違いで校内見学に向かわれてしまってね……戻ってくるまでの間でいいのなら、そちらの問題を先に解決しておいたほうがいいだろう」

 

「ありあとあす!それじゃ、サクッと決めるぜ!まずはチャンピオン戦を控えているコウキ達!もうめんどくせえから全員辞退でいいな!?」

 

「おk」

 

「ええで」

 

「まぁ、事情が事情だしな」

 

「はい決まり!次、スグリ!だいぶ巻きで頼む事になるが、今決められそうか?」

 

「……うん、大丈夫。おれ、ランキングを降りる。それから、日を見て学園も休学しようと思ってる」

 

「……!スグリ、オメエ……」

 

スグリから飛び出した『休学』の言葉に、カキツバタは驚きを顕にした。彼の後ろにいる四天王たちにも、そしてゼイユにも動揺が見て取れた。

 

「一度ここを離れて、実家で自省しようかなって思う。もう一度自分を見つめ直して……それで、またいつかここに戻ってきたい」

 

「スグ……」

 

「……そういうことなら、仕方ないですね。ブルベリーグのランク変動を、一時的にストップしましょう」

 

「おっ、そいじゃあついでに留学生がチャンピオンになれるルールも追加しようぜぃ」

 

「……それなら、おれが変えちゃった規則も戻していいよ」

 

「いや、スグリが変えた規則だって、あながち間違いじゃねえモンもある。ちょいと厳しいモンは見直しで、通していいと思えるモンは通しでいいだろ」

 

「……カキツバタ……最初からそれくらいすればいいのに……ねえ、ゼイユさん」

 

「ほんとそれ……」

 

トントン拍子で話が進み、スグリやリーグ部内の問題も丸く収まりそうである。なお、話についていけてないアカマツには「ランク変動を一旦止めたからまだ四天王でいられる」点だけを強調して伝えておいた。

 

「……とりあえず、これで一旦はオッケーかな。ブライア先生、もう大丈夫ですよ」

 

「おや、そうなのかい?それでは、さっそく私の方から話をしよう」

 

「はーい、呼び出されてないメンツは解散解散!」

 

呼び出し組以外はここで解散となり、残ったメンバーは席に着く。全員が着席(ケンスケはブライアの隣に立っている)したところで、ブライアは語り始めた。

 

「それでは、単刀直入に話そう。君たちには私と……エリアゼロと呼ばれる秘境をともに探索してほしいんだ!」

 

「ブライア先生、エリアゼロは自殺スポットちゃいますよ」

 

「知らぬが仏って言うけどぶっちゃけ神も仏もあったもんじゃねえ」

 

「なんだろう、研究のために命をおざなりにするのやめてもらっていいですか?」

 

「死にてぇの?」

 

「仮にも生徒を預かる身として言わせてもらうが、行きたがる奴もそうだが行かせる側も大概にせぇよ、マジで」

 

「……パ、パルデア組は辛辣だね……」

 

ブライアからの話とは、以前からブライアが行きたがっていたエリアゼロの探索へ同行して欲しいというものだ。だが、ご覧の通りパルデア組からの反応は芳しくない。

 

それもその筈。タイムマシンこそ止めはしたものの、すでに解き放たれたパラドックスポケモン同士による未来VS古来の縄張り争いは未だに続いているのだ。教職に就いたことに加え、エリアゼロへの訪問経験のあるケンスケがポケモンリーグから『エリアゼロ監視員』を任命され、その任が未だ解かれていないことからもその真実のほどが伺える。

ただ、当然のごとく外部への漏洩は厳禁の機密情報だ。ケンスケも一般の野生ポケモンと同種のポケモンを放し飼い同然にエリアゼロに放ち潜入させ、彼らに仕込んだカメラ映像から監視を怠らぬ徹底ぶり。そんな本気モードのケンスケからの報告を受けてなおブライアのエリアゼロ行きを許可したのだとしたら、ケンスケからすれば「見込みが甘すぎる」としか言いようがなかった。

 

「(冗談じゃねえ……オモダカは何考えてんだ!嫌だぜ、ピクニック感覚で出かけた帰りがお通夜とか)」

 

内心でそう愚痴りながらも、ケンスケは一応ブライアの話に耳を傾ける。

テラス現象の調査、及び結晶の採取を主目的としつつも、欲を言えばエリアゼロで眠っているとされる伝説のポケモン、『テラパゴス』を発見したいとブライアは語る。

 

「(あ、最新のアニポケ見たか?)」

 

「(見た見た、リコ可愛かったな。あとメスガキピカチュウは腹抱えて笑ったわ)」

 

テラパゴスで思い出したのか、脳内掲示板でコソコソ話をしながら続きに耳を傾ける。パルデア組の反応の悪さから面倒事の気配を感じ取ったのか、スグリもゼイユも顔を顰めているしカキツバタはそもそも真面目に聞いているのか怪しい。やる気ねぇなコイツら。

その時、教室の扉が開かれ誰かが入ってきた。

 

「ずいぶん楽しそうなお話ですね」

 

「オモダカさん!先に始めていましたよ」

 

「お待たせしてすみません」

 

入ってきたのはパルデアポケモンリーグのトップチャンピオンのオモダカと、リーグ職員にして四天王の一人であるチリだ。

 

「オモダカさん、チリネキ!おっすおっす」

 

「おや?チャンピオンホムラ?それに……チャンピオンコウキに、チャンピオンリュウセイ。ゴウタ模範生にケンスケ先生まで、このような場所でお会いできるとは……」

 

「あれ?オモダカさん、俺らの事情なんも聞いてないんですか?」

 

「いえ、たった今把握しました……なるほど、ご留学中なのですね」

 

一瞬で状況を察し、正解を導き出すオモダカ。相変わらずな様子にコウキ達は苦笑いだ。

 

「ホムラは今やブルベリーグチャンピオンなんですぜ。コウキ達も、四天王全員ぶっ飛ばしちまいやしたし」

 

「やはり類い稀な才能……素晴らしいことです」

 

「過分な評価ですよ。俺たち全員、自分がやりたいバトルをしただけなんで」

 

「ふふっ、謙虚ですねチャンピオンリュウセイ。貴方方がいてくださるのならなおさら……ブライアさん、説明させていただいても?」

 

「ぜひ、お願いします」

 

ブライアからの許可を得て、自己紹介をしたオモダカは話し始める。

 

十数年前、ポケモンリーグはエリアゼロの研究を支援していた。研究が終わった今では大穴の管理をしており、不思議と危険に満ちた当エリアへの基本的な立ち入りや調査を制限していた。

だが、状況が変化する事件が起きた。そう、ロースト砂漠で起こったパラドックスポケモン同士の戦いだ。古代のパラドックスポケモン、イダイナキバ。未来のパラドックスポケモン、テツノワダチ。両者による激しい戦闘によって、ロースト砂漠の生態系が滅茶苦茶になりかける事態に陥った。この時はコウキとペパーが尽力し、『漁夫の利狙って喧嘩両成敗作戦』でイダイナキバとテツノワダチ双方が疲弊した瞬間を狙って奇襲を仕掛け、かろうじて戦闘不能にすることができたのだ。

この時の反省を踏まえて、ポケモンリーグはエリアゼロの迅速な再調査の必要性を感じていた。だが、リーグから捻出できた人材はエリアゼロへの探訪経験があり、リーグ四天王にしてパルデアアカデミーの職員であるハッサクの直弟子にして美術副担任のケンスケのみ。そのケンスケも当初は自ら足繁く通っていたが、現在では自身のポケモンにカメラを携えて野生ポケモンに紛れ込ませるという手段しか取れていない。……これには年齢や世代の近しさから、若者をはじめとして幼い学生らから一定以上の人気が出てしまい、彼らからケンスケの授業出席を求める声が上がったからだ。シミュレーターでもロリ/ショタコンは健在である。

そこで白羽の矢が立ったのが、この度エリアゼロへの調査申請をしていたブライアだ。

 

「ブルーベリー学園はポケモン育成に長けた実力者が多い。そこに、チャンピオンコウキをはじめとするチャンピオンランクの生徒らが加わるのであれば、安心して再調査をお願いできます」

 

「……オモダカさん。それは、俺からの報告書をよく読んで、会議を通して吟味した上での判断……と考えてもよろしいので?」

 

「無論です。ケンスケ先生も同行するのでしょう?この中で誰よりもエリアゼロの現状を把握する貴方がいるならば、よほどのこと(・・・・・・)がない限りは安心でしょう?」

 

「(……なるほど、『やらかすとすればブルベリ側だろうから、そっちに目を向けてろ』ってわけか……マジで食えねぇ女)えぇ、そうですね。了解しました。上申、失礼しました」

 

「いいえ、貴方の意見も生徒を慮ってのことでしょう。教職に就く者の使命、心得ていますよ」

 

「(うわっ……今の言葉、ブライア先生に流し目しつつ言うことか?暗に『オメェも教師なんだからそれくらい分かってんだろうなあ?おおん?』って言ってんのヤベェ)」

 

なにやらオモダカもオモダカなりに思うことがあるのだろう。白羽の矢も、「立った」と言うより「立てざるを得なかった」感がひしひしと伝わって来る。

 

「もちろんこれは任意だが、来てくれると本当に心強いよ!皆で一緒にエリアゼロへと調査に行こうじゃないか!」

 

「「「「(死人が出たらまずいんで)行きます」」」」

 

「さすがはチャンピオン。ゴウタ模範生も、よろしくお願いしますね」

 

当然、コウキ達は怪我人、最悪の場合死人が出ることを懸念して同行を決める。マジでシャレにならんからね。

 

「ええっと、あたしは……行くこと決定だと思うんで」

 

「いつも通り、私をフォローしてくれると助かるよ」

 

「悪いけどオイラはパスで。決まったこととかまとめなきゃなんねぇし、残ってやんねえとな」

 

「……とか言って、めんどいだけでしょあんた」

 

「へっへっへ、バレたか」

 

ゼイユは元々ブライアの付き添いで学外活動に勤しんでいるので、必然的についていく流れだろう。カキツバタは……まぁ、ご覧のとおりである。すると残るはスグリのみ。

 

「スグリ、お前はどうする?」

 

「……えっと、みんなが行くなら、おれも行ってみたい。今は少しでも、たくさんのことを経験しておきたいから」

 

「それでは決まりだね!カキツバタくんは残念だが、私、コウキくん、ホムラくん、ゴウタくん、ゼイユくん、スグリくん、以上6名で調査します」

 

「ありがたい申し出、感謝いたします。我々パルデアリーグから、エリアゼロ調査専門担当のケンスケ先生をお付けします。ぜひとも素晴らしい成果を持ち帰ってくださいね」

 

「おまかせください、オモダカさん。ケンスケ先生も先導の方、よろしくお願いしますね」

 

ケンスケは無表情(不満色)のまま恭しく礼をする。思うところはあるものの、上司からの指示とくれば是非もなし、といったところだろう。

 

「待ちに待ったエリアゼロ調査が実現しようとしている……!各自、準備が出来次第エントランスロビーブリッジ前に集合だ!」

 

その言葉を皮切りに解散となり、ブルベリ組は各々移動をした。ゼイユがどこかゴウタと移動したがっていたが、ゴウタもトップチャンピオンを無視することはできないのでゼイユには先に行ってもらった。

 

「お久しぶりです、チャンピオンコウキ」

 

「まいど!チリちゃんもおるで」

 

「お久しぶりです、オモダカさん。チリ姐さん」

 

「まさか自分らと会えるとは思ってもみんかったわ!」

 

「それはこちらのセリフですよ」

 

一応コウキ達もテラパゴス関連に関する予習はしているが、それはあくまでテラパゴス戦に備えてのもの。おおまかなストーリーまでは未修状態なのだ。

 

「パルデアを離れてもパルデアチャンピオンとして、その才を発揮されているようですね」

 

「まぁ、チャンピオンとしてのメンツもありますので。泥を塗るような真似はしてませんよ」

 

「ふふ……さすがはチャンピオンリュウセイ。それでこそ、私が一番に見込んだ逸材です」

 

「(わかったから、そのねっとりとした視線やめてくれよ……)」

 

まるで獲物を見るような粘っこい視線を向けてくるオモダカに、リュウセイは内心で酷くげんなりとしている。聡明な知識に文句なしの実力者とくれば、早々にオモダカから目をつけられてしまったのだ。

 

「せやなあ、逸材逸材……いや逸材言うて!自分ら大穴ん中、許可もとらんと入ったやろ!それに関してはちゃんと怒らしてもらうで!」

 

「いや、ちゃうんすよ姐さん。これには深い事情が……それに俺ら、チャンピオンなんで!」

 

「うんうん、せやな……って!チャンピオンなのでやあらへんわ、コウキ!あかんもんはあかーん!」

 

「なんでやちゃんと説明しましたやん!」

 

「細々とした事情は全部ケンスケから聞いとる!けどそれはそれ、これはこれや!」

 

「ぴえん……」

 

まぁ確かに事情が事情ならやむを得ないが、チリの言う通りそれはそれ、である。しかも当時のケンスケはハッサクの直弟子ではあったが教職にはまだ就いてなかったし、リーグ関係者ですらなかった。事後承諾もいいところである。

結局、オモダカに宥められたので表面上は渋々といった様子でチリも大目に見てくれると言ってくれた。本当は心底心配だったらしい。

 

「さて、チャンピオンコウキ、チャンピオンホムラ、チャンピオンリュウセイ。この度はポケモンリーグ公認でエリアゼロに向かっていただきます。以前、最深部で起きたとされるタイムマシンの件については一部の者しか知りませんが、エリアゼロの危険性を踏まえて、ブライアさんには多少ぼやかしてお伝えしていますよ」

 

「へぇ」

 

「まぁ、妥当な判断だ」

 

「あの好奇心の塊人間、知ったら知ったで突撃しそうだからなぁ……」

 

「ゴウタ模範生は、チャンピオンである彼ら三名が認める実力者と聞き及んでおります。そこで、特別に同行を許しました。……もし時間に余裕があれば、ぜひポケモンリーグにも挑んでみてくださいね」

 

「アッハイ(美人の笑顔でマジ怖えぇ)」

 

「そして……ケンスケ先生。先程のことも踏まえて、貴方にはブライアさんに目を光らせていただきたい。貴方が懸念していたように、エリアゼロの最新部にある研究所は研究施設であると同時にオーリム博士、そしてフトゥー博士の墓所でもあります。好奇心の赴くまま、不当に荒らすようであれば……トップチャンピオンの名において、リーグ職員ケンスケに制裁の執行を許可します」

 

「自由裁量ってわけですか……わかりました。ケンスケ、命令を受諾します」

 

概ね伝えておきたいことを伝え終わったところで、チリがブライアに渡す物があったことを思い出した。オモダカも思わぬ再会でうっかり失念していたらしい。

そうして、一番信頼を置けるとしてリュウセイに預けられたのは、青いディスクだった。このディスクは昔、エリアゼロ研究者から出資者に送られたディスクで、調査部に調べてもらったところ、当然だがわざマシンではない。ないが、単なる記録媒体でもないそうだ。今日に至るまで、未だ使用方法は見当もつかないそうだが、エリアゼロ関連であるのは間違いない。ほんのついでで良いので、ディスクについても調べて欲しいそうだ。

 

「……エリアゼロはいまだ解明されていないことも多い。一度最深部まで行かれたとはいえ、パラドックスポケモン同士による抗争は絶えず続いています。優秀なトレーナーとして、貴方方がブルーベリー学園の皆さんを導いてくださいね」

 

「……ホンマはチリちゃんもついてったりたいけど、仕事やねん。コウキ、皆、無理せんときばりやぁ」

 

「それでは、失礼致します。……おっと、そうでした」

 

帰る直前、踵を返したオモダカはぐいっ、とリュウセイに顔を近づける。突然のことに慄いていると、そっと囁かれた。

 

「今度、貴方の勧めに従って髪を切ってみようかなと思っています。オススメの理髪店があれば、ぜひ教えてくださいね?」

 

「ヒュッ……ハイ、ワカリマシタ」

 

「フフッ」

 

「……あ、せやケンスケせんせー。今度ポピーに連絡とったり、あの子寂しがっとったで」

 

「え"っ……あ、いえ!了解しました、出発前に一報入れときます」

 

「よろしゅうなー」

 

「では、改めて……失礼しますね」

 

そうして、オモダカとチリは教室を後にした。それから彼らも移動を始めるのだが……その間、他三人から突き刺さるような視線を浴びて居心地悪そうにするリュウセイとケンスケであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

エントランスロビーブリッジ前で集合し、早速一行は移動を始めた。まず、ゼロゲートにあるワープ装置で第1観測ユニットへ移動する。初めてエリアゼロを訪れるブルベリ組に、エリアゼロを見てもらうためだ。

観測ユニットから外へ出ると、ブライアは早速柵から身を乗り出さんばかりにエリアゼロを見渡している。ゼイユもスグリも言葉が出ないようだ。

 

「え、えっと……ホムラは、前に来たことあるんよな?」

 

「あぁ、コウキらとは別の友達とな。……そうだ、後でネモにも会いに行くか。林間学校が始まってからこっち、なかなか会う機会なかったしなぁ」

 

「……冷静に考えたら、今回の一件でペパーをハブにするのは判断ミスか?」

 

「ボタンがいるとはいえ、みんな俺手製の勉強ドリル、ちゃんと終わらせてるかね」

 

「どうせならハルトにも同行して欲しかったな……戦力は大いに越したことはない」

 

「……みんな、友達多いんだな」

 

「そうかな?」

 

「ゴウタ、ボタンって誰」

 

「あぁ、ボタンは俺が可愛がってる後輩の女の子で……いたたた!いてっ、いてぇって!!何すんだお前!?」

 

「フンッ!」

 

友達の話をしただけなのに拗ねてしまったゼイユに、訳が分からず頭に「?」を浮かべるゴウタ。その直後、ボールからコライドンとミライドンが姿を現し、久々の第二の故郷の空気に喜びを顕にした。ブライアもコライドンとミライドンに興味津々だが、今回の調査で確かめたいのはエリアゼロの最深部の更に奥なのだという。

ただ、冒険家ヘザーは最深部からさらに下へ落ちたことがあるらしいのだが、そこへの道筋も行き方もまったくおぼえていないそうだ。はーつっかえ。

 

「ヘザーを信じるなら、きっとエリアゼロのさらに下に知られざる空間があるはず……。取り急ぎは最深部……ゼロラボとやらに向かおう。ケンスケ先生、先導を頼んだよ」

 

「了解しました。ひとまず、最短経路でいきましょうか」

 

第1観測ユニットのワープ装置に再び乗り込み、一気に第4観測ユニットまでワープする。荒らされた様子のユニット内部に驚くスグリ達だが、そんな彼らの様子などまるで気にも留めず、ホムラ達は先へ先へと移動する。

 

「えー、ここからはガチの危険地帯です。パラドックスと呼ばれるポケモンたちが常に縄張り争いを繰り広げていますのでどうぞ――」

 

話している途中だが、ケンスケの頭上をムーンフォースが素通りしていった。さらに反対方向からはエアスラッシュが飛んできた。ギガドレインをれいとうビームが打ち消し、ギガインパクトとヘビーボンバーがぶつかり合う爆音すら聞こえてきた。

 

「――命が惜しけりゃ、引き返しな。悪いことは言わんから。いや、マジで」

 

振り返った先では、古代のパラドックスポケモンと未来のパラドックスポケモンによる壮絶な争いが繰り広げられていた。互いが互いを「本気でぶっ殺してやる」とばかりに、殺意の高い攻撃が飛び交っている。

 

「いいや、ここまで来て引き返すわけには行かないな。ケンスケ先生、そしてホムラくん。君たちパルデア組に、露払いをお願いしたい!」

 

「まぁ、そのためにここにいるわけですしね」

 

「やったるかー」

 

コウキはミライドンを、ホムラはコライドンを繰り出し、リュウセイ、ゴウタ、ケンスケもそれぞれヒスイダイケンキ、ヒスイバクフーン、ヒスイジュナイパーを繰り出した。それからは凄まじい快進撃である。ノンストップで駆け回り、ほとんど無傷でゼロラボ前までたどり着いた。

 

「なにここ、すっごい!てらす池みたい!」

 

「おそらくゼロラボかな?オモダカさんが教えてくれた外観の様子と一致している」

 

「ここが最深部?」

 

「ある意味そうで、ある意味違う。かつてエリアゼロ観測隊が到達した最深部はここ。そしてゼロラボ内の下の階には用途不明の謎の部屋があるとのこと」

 

「(謎の部屋……タイムマシンのことだな)」

 

「だが、私が行きたいのはそれよりももっと下なんだ……」

 

吐き出された言葉に込められた万感の思い……その思いに隠された危うさに、ホムラ達は幸先を不安に感じるのであった。

 

「……ケンスケ」

 

「ちょい待て。……よしよし、よく来たルドルフ」

 

「キラフロル?お前のポケモンか、ケンスケ」

 

「おう」

 

よく見るとゼロラボの扉は閉じられている。ケンスケは近くを漂っていたキラフロルを手招きすると、その体に取り付けられた小型カメラを外して映像の内容を確認した。映像では扉は開いていたものの、ある日閉じられる様子が映されていた。長期間認証されなかったため、入口が再度ロックされてしまったようだ。

 

「どういうこと?動かないの?」

 

「そうみたいだ」

 

「以前は開いたのだよね。なにか条件が違うのだろうか?」

 

「初めてここに来たときは……協力者の手もあって、入るのは容易だったんだが」

 

「ついでに言えば、以前までは俺が通いつめていたからな。その時はまだロックも解除されていたんだが……俺が授業に引っ張りだこになってからはそれも難しくなってしまった。どうやら俺が訪れていない期間が長すぎたせいで、再度ロックされてしまったようだ」

 

「なるほど」

 

と、その時だ。ゲートのコントロールパネルが、「青のディスクの反応を検知した」と反応を示した。青のディスクを挿入すると、アクセス権が拡大されるらしい。これによって、もう一度ゲートのロックが解除されそうだ。

 

「青のディスクって、リュウセイがオモダカさんから預かったものだよな」

 

「あれか……よし、とりあえずいれてみるか」

 

リュウセイが青のディスクをセットすると、エレベーターの行き先が『ゼロの大空洞』に変更され、ゼロラボの入口が開かれた。

 

「開いた」

 

「入るわよ!」

 

「待て」

 

勢い勇んで入ろうとするが、それよりも早くケンスケが動く。入口を塞ぐように立ちはだかると、そのまま仁王立ちになる。

 

「ちょっと、ケンスケ……先生。なんで邪魔すんのよ」

 

「……最初に言っておく。これは警告である。繰り返す、これは警告である。これより先はパルデア地方ポケモン研究の第一人者にして、エリアゼロ調査研究の権威であるオーリム博士及びフトゥー博士の研究所である。……彼らは研究のさなか、不慮の事故により志半ばで果ててしまった。つまり、この先の研究所は彼らの墓所でもある。あの場にある物、その全てが遺品も同然。遺族からも『あの場にある物はそのままにしてほしい』と言伝をもらっている。

あそこに何があって、どんなことをしていて、どんな人がいたのか……それらをメモなりなんなりで記憶するのは一向に構わない。だが、万が一にも不用意に物色したり、墓荒らし紛いのことをしようものなら……俺はリーグから与えられた自由裁量の権限の下、問答無用でぶちのめす。具体的に言うと、その生身に一撃必殺技をぶち込んでやるから覚えとけよ」

 

本気で凄み、殺意でもって脅しつけるケンスケの姿は、普段からホムラ達に振り回されっぱなしの少し情けない同年齢教師という印象を吹っ飛ばした。同時にゼイユとスグリの二人は、エリアゼロに来てから妙にホムラ達の機嫌が悪そうな、苛立たし気な雰囲気を纏っている理由に察しがついた。

 

「(そっか……ここで研究してた博士って、みんなにとっても大事な人なんだ)」

 

「(友達に博士さんの遺族がおったんかな……それなら、みんなの気が立ってるのも納得だべ)」

 

いわば、友人の親の墓所に事情を知らない他人が土足で踏み込んでいるようなものだ。友達思いのホムラ達なら、遺族である友人を思ってストレスを抱えるのも無理はないだろうと二人は考えた。

 

「……ああ、もちろん。気をつけるとも。何かあれば、ケンスケ先生に確認を取ればいいかな?」

 

「ええ。俺に確認を取った上で、俺が吟味しそちらへ手渡しましょう」

 

こうしてケンスケからの注意喚起をしっかり聞いてから、一行はゼロラボ内へと入った。ケンスケの先導に従い、早速ゼロラボ内を見て回るブルベリ組。

余談だが、ケンスケの警告(脅迫)が相当効いたのか、原作では走り出していたゼイユはめちゃくちゃ慎重に歩いていたし、ブライアもすぐに手を出さずケンスケにしっかり確認を取っていた。

 

「あの奥にあるのがエレベーターだ。……コンソールの機械音声が言うには、あのエレベーターの先が用途不明の部屋からゼロの大空洞って場所に変わってるそうだが……」

 

「行ってみるしかないだろう」

 

エレベーターに乗り込み、下へと移動する一行。エレベーターの扉が開いた先は、ホムラ達も知らない空間だった。

 

そこは、ゼロの大空洞。伝説のポケモン、ゼロの秘宝テラパゴスが眠る場所。ここでホムラ達を待ち受けるテラパゴスとは、一体どんなポケモンなのか……それは真実、神のみぞ知る。

 

 

 

 



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年末年始特別編!ポケモンSV脳内シミュレーター 藍の円盤 最終話

青のディスクにより行き先が変わり、たどり着いた場所は『ゼロの大空洞』と呼ばれる未知の空間だった。コウキ達も初めて訪れる場所だけあり、周囲をせわしなく見渡している。

ブライアがスマホロトムで確認すると、ゼロラボ内よりもさらに下層へと降りていることが判明した。

 

「……これは、オーリム博士とフトゥー博士のレポートか」

 

「なんだって!?」

 

いの一番に机を発見し、そこに置いてあるレポートを確認していたケンスケの呟きが耳に届いたのか、ブライアがそちらに駆け寄ろうとして――ケンスケのボールから飛び出したドリュウズに阻まれた。

 

「あんた、さっき言われたことをもう忘れたのか?」

 

「す、すまない……つい、興奮してしまって……」

 

「やれやれ……」

 

ケンスケが読み上げたレポートには、ゼロの秘宝テラパゴスや、未知のテラスタルタイプ『ステラタイプ』について書かれていた。さらにレポートの内容からして、この時はまだオーリムとフトゥーは古来と未来のパラドックスポケモンの件で仲違いをする前のようだった。

 

「とにかく、先へ進みましょう。我々の目的はテラパゴスであって、遺品整理ではありませんから」

 

「まだ読み足りないが……ううむ……そうだね!」

 

ドリルをちらつかせてくるドリュウズに慄きながらも、ブライアは先へ進むことを決めた。これで怪我人が出たら本気で訴えてやる、とケンスケが考えているなど露とも知らず、一行は先へ進む。

その道中は決して楽ではなかった。初めて見るステラタイプのテラスタル、道を塞ぐ結晶と繋がっているポケモン達を倒しながら、どんどん下へと降りていく。キラフロル、オンバーン、やっぱり争いあっていたスナノケガワとテツノイバラ、キョジオーン……少しずつ道を切り開きつつ、彼らは先に進む。

 

「それにしても、アンタたちの強さって全然別次元よねー。アタシも強くなったとは思ってたけど、ここじゃ思いっきり足引っ張りまくりだし……」

 

「うん……改めて思うけど、ホムラ達はすごい」

 

「ははっ、どーも」

 

「鍛え方が違うからな」

 

さらに奥へ進んでいくと、テラスタルオーブが反応を示すほどの濃度の高いテラスタルエネルギーが放出されていることがわかった。その根源がさらに奥にあるとわかるやいなや、ブライアは走り出してしまった。そのブライアの後をケンスケとスグリ、ホムラが追い、後からゴウタ達が続く形で最奥部へ進入した。

 

「ゼロの秘宝、どこだろう?」

 

「スグリくん、あれだ!奥の柱に何かある!」

 

「あ、ちょいブライア先生!アンタさっきから暴走しすぎだ!」

 

「ホ、ホムラ……」

 

「仕方ない、行くぞ!……ったく、ヤクでもやってんだろこのヴァカ女が!!」

 

いよいよ隠しきれないほどの悪態を吐きつつ、三人がブライアに続く。後続はゴウタとコウキが周囲を警戒しながら、慎重に進んでいる。

 

「この石が、ゼロの秘宝?」

 

「確認するので待ちたまえ」

 

「……とりあえず、ぶっこ抜いたら良いのでは?」

 

「わかった!」

 

「おいホムラ!スグリも、乗せられるな!」

 

「大丈夫だケンスケ。何かあったらここにいる全員でタコ殴りにして、ケンスケのポケモンで一撃必殺を叩き込めばいい」

 

「いや、究極的にはそうなんだが……」

 

一方、後方から様子を見守っていたリュウセイ達は、安易にゼロの秘宝に触れようとするホムラ達……とりわけ、ここに来てから情緒が暴走しがちなブライアを心配していた。

 

「ねえ、あれ……だいじょうぶなの?」

 

「わからん……だが、ケンスケが一撃必殺技のポケモンを持ってるし、いざとなれば俺たちがお膳立てして一発ぶち込んでもらえばいいだろ」

 

「……嫌な予感がする。リュウセイ」

 

「奇遇だな、コウキ……俺もそう思ってた」

 

絶対にロクなことにならない。そう予感がしてならないコウキとリュウセイはいつでもポケモンを繰り出せるようにスタンバイする。

 

「やはりその結晶しか考えられない!さあスグリくん……ゼロの秘宝を引っこ抜くんだ!!」

 

ブライアの後押しもあって、スグリは全力でゼロの秘宝を引っこ抜いた。かなりの勢いで飛んでいったので、傷がないか心配になったスグリはすぐに秘宝を持ち上げた。

 

「びっくりしたぁ……」

 

「間違いない!その結晶こそ、テラパゴスだ!」

 

スグリが拾い上げてすぐ、いきなり結晶は光を放ち始め……光が弾けると、四足歩行のカメのようなポケモンへと姿を変えた。

 

「おお」

 

「カメだ」

 

「カメだな」

 

率直な感想が漏れた。その言葉が届いたからなのかは定かではないが、顔を上げたテラパゴスが周囲を見渡し――ケンスケを見止めると、そちらへ足を踏み出した。

 

「うおっ、こっちに来る!」

 

「……!スグリ、ボールだ!」

 

「え、なんで……?」

 

「テラパゴスが何してくるかわからんからだ!ひとまず捕獲して、安全確保!」

 

「わ、わかった!!」

 

ホムラに捕獲を促され、その理由も納得のいくものだったのでスグリはマスターボールをテラパゴスに投げた。あらゆるポケモンを捕まえる究極のモンスターボールは、その性能に偽りなくテラパゴスを捕獲してみせた。

 

「……ふぅ、なんか起こる前になんとか出来て良かった」

 

「素晴らしいよスグリくん!マスターボールを所持しているとは用意がいいね!!これでいつでもテラパゴスを研究できるが……今ここでテラパゴスの力、見せてもらうことは可能だろうか?」

 

「寝言は寝て言えよ、ブライア先生。当初の目的であるテラパゴスの発見はもとより、捕獲まで出来たんだぞ?これ以上は欲張りってもんだ、ささっと引き上げようぜ」

 

「頼む!少しだけ、本当に少しだけで構わないから!!」

 

「あのなぁ……」

 

すっかり呆れかえるケンスケだが、この場ではケンスケの判断が正しい。目的を果たしたというのに余計なことをして時間を取られるなどもってのほかで、安全が完璧に確保できたわけでもないのにわずかでも危険な可能性のある行為に手を出すなどありえない。

 

「……ちょっとだけなら、いいんじゃない?」

 

「スグリ……」

 

「さすがにちょっと……可哀想だべ」

 

「スグリくん!!」

 

オーガポンに出会えた頃の自分の姿が重なってしまったのか、スグリが了解の意を示してしまった。これ幸いとばかりにブライアも乗っかってしまったので、仕方なくホムラが相手をすることにした。

 

「いいすか?これっきりですからね。終わったら速攻で帰宅ですからね」

 

「ああ、わかってるとも!!」

 

「……クラベル校長には、一度人間関係を見直してもらいたいものだな」

 

「あはは」

 

ケンスケは事ここに至り、呆れから失望へと目の色を変えている。リュウセイはクラベルにシアノとの縁を割と本気で切って欲しいと願い始めた。

 

「えーっと……じゃあ、行くよ?」

 

「おう」

 

こうして始まったテラパゴスの試運転……スグリは図鑑アプリでテラパゴスの技を確認し、戦闘態勢に入った。

 

「俺はこいつだ」

 

ホムラが繰り出したのはハルクジラ。こおりタイプのポケモンだ。バトルが始まる直前、テラパゴスの姿が変化した。フォルムチェンジができるようだ。

 

「じゃあ、行くよ。しねんのずつき!」

 

「すてみタックル!」

 

テラパゴスのしねんのずつきとハルクジラのすてみタックルが激突。体格差もあってか、テラパゴスが押し返された。

 

「ん?あまりダメージがない……?」

 

「あ、多分特性かも。姿が変わったのも同じかも」

 

「なるほど……よし、続きやるぞ」

 

「うん。だいちのちから!」

 

「じしん!」

 

続けてだいちのちからで攻めてくるテラパゴスだが、ハルクジラのパワーから放たれたじしんが技をかき消してしまう。

 

「うーん、やっぱり捕まえてすぐだから戦いにくい……それに、テラパゴスも本調子じゃなさそうだべ」

 

「そう見えるな……」

 

「よし……みずのはどう!」

 

「れいとうビームだ!」

 

テラパゴスのみずのはどうだが、哀れこおり技の前では無力にも凍りつき粉々になった。伝説とうたわれるには余りにも地味すぎる能力に、ブライアが幾度も首をかしげていた。

 

「終わらせるか、ばかぢから!」

 

「え、最初よりも効いてる!?」

 

ハルクジラから打って出る。使われた技はばかぢからで、これが予想以上のダメージをたたき出した。どうやらダメージ軽減の特性の効果は最初に攻撃を受けるときのみのようだ。

まぁ、蓋を開けてみればあんまりにもあんまりな決着であった。スグリもテラパゴスに近づき勝負終わりの労をねぎらい、ホムラ達もすぐに集まった。

 

「もう終わり?なーんだ、呆気なかったなぁ」

 

「いくらテラパゴスが伝説のポケモンだとしても、勝手が分からねぇうちから使いこなせるものか」

 

「ま、そのへんは追々研究して解明すればいいじゃんか。よーし、それではかいさ……」

 

「やはり、おかしい」

 

なんとか解散の空気に持っていこうとしたものの、そうは問屋が卸さない。疑問を口に出したブライアが、しきりに本を見返していた。

 

「テラスタルエネルギーの出力が低すぎる……両博士の書籍に描かれた姿と違うのも気にかかる……」

 

「まだ言ってんのか、あんた」

 

「テラパゴスはゼロの秘宝じゃないってこと?」

 

「いや……足りないのか?秘宝たりえる条件が……そうか!テラパゴスはテラスタルエネルギーそのもの!スグリくん!今すぐテラパゴスをテラスタルしたまえ!!テラスタルオーブのエネルギーに呼応して……秘宝は秘宝たるかがやきを発するだろう!!」

 

「え!?わ、わかった!?」

 

「いや"わかった"じゃねえんだわスグリ待てえええぇぇぇ!!」

 

ブライアの勢いに押されてしまったのか、スグリはホムラが制止するのも間に合わずテラパゴスをテラスタルしてしまった。結晶に包まれ、光の奔流とともにテラパゴスがその真の姿を現した。

 

「やはり!博士の書籍は正しかった!!テラパゴスが、完全に目覚めた姿!これこそが!ゼロの秘宝!!」

 

「(クッソが!最悪の予感ってのは、なんでいつも大体当たるんだよ!!)」

 

ケンスケは一番起こって欲しくなかった状況が目の前で起きたことに悪態をつきつつ、退避か迎撃かの二択を考える。と、その時だ。テラパゴスからテラスタルエネルギーが溢れ出し、爆発が起こった。誰がどう見ても暴走している。さらに、一筋の光がスグリ目掛けて放たれたではないか。

 

「スグリッ!!ぐあっ……」

 

「え」

 

その光がスグリに当たる直前、ホムラがスグリを突き飛ばした。その結果、光はホムラを遠く吹き飛ばしてしまった。

 

「ホムラァッ!!」

 

「総員戦闘態勢!!」

 

「ヤバイよ、スグ!ボールに戻したほうがいいって!」

 

「う、うん……!戻れ!テラパゴス!」

 

ホムラが吹き飛ばされたことに唖然とするも、ゼイユの声掛けで我に帰ったスグリはすかさずマスターボールを構える。ところがボールから放たれたビームはテラパゴスには届かず、むしろバリアを張ったテラパゴスにボールを弾かれ、さらに真っ二つに砕けてしまった。

 

「……えっ?戻らない……どうし……」

 

「スグリ、下がれ!コウキ、リュウセイ、ゴウタ、頼む!俺はホムラを見る!」

 

「頼む!」

 

「結局こうなるのか……!」

 

「やるしかねえな!」

 

「ゴウタ!アタシも戦うわ!」

 

「わかった、ゼイユ!」

 

ケンスケの素早い指示を受けて、全員が動き始める。コウキはエクスレッグを、リュウセイはノクタスを、ゴウタはサザンドラを、ゼイユはヤバソチャを繰り出した。

 

「エネルギーが暴走している!?このままでは危険だ!」

 

「あんたが蒔いた種だろうが!!邪魔にならねぇようにどっかいってろ!!」

 

「うっ……すまない、みんな!テラパゴスを……止めてくれ!!」

 

「ねえ!スグもはやく!テラパゴス、なんとかしないと……!!」

 

「こ、こんなはずじゃ……違う、俺のせいで、ホムラが……!?」

 

なんとかブライアを下がらせ、ケンスケの下へ合流させた。ゼイユはスグリにも応援を呼びかけるも、ホムラが負傷したことに気が動転してしまい、その声は完全に届いていない。

 

「ゼイユ、向こうはあとだ!今は……」

 

「う、うん……行くよ!ヤバソチャ、シャカシャカほう!」

 

「ノクタス、くさわけ!」

 

「エクスレッグ、かかとおとし!」

 

「サザンドラ、りゅうのはどう!」

 

全員が一斉に攻撃を仕掛けるも、テラパゴスはバリアを張ることでダメージを軽減してきた。さらに反撃のテラクラスターで全体攻撃を仕掛け、コウキ達のポケモンにダメージを与えていく。

 

「クッソ!いきなりバリアたぁマジでめんどくせえ!!」

 

「とにかく殴って、テラスタルオーブをチャージするしかない!」

 

「物理技くるぞ!ノクタス、ニードルガード!!」

 

「後隙は無くす!エクスレッグ、とびかかる!」

 

再びテラパゴスがしねんのずつきで襲い来るも、リュウセイの機転により逆にテラパゴスの攻撃を防ぎつつダメージを与えることに成功した。その隙を逃さずコウキのエクスレッグがとびかかり、さらに攻撃力を下げていく。

 

「ホムラ!おい、しっかりしろ!」

 

「ホ、ホムラ……どうしよう、ケンスケ先生……おれのせいで、ホムラが……!」

 

「泣き言は後!お前もホムラに呼びかけてくれ!」

 

一方、ホムラは当たり所が悪かったのか意識を失っており、ケンスケが何度も呼びかけたり揺すってみるが反応がない。スグリはますます顔色を悪くするが、ケンスケも特に余裕があるわけではないのであまり相手にしていられないのが事実だ。とにかくホムラを起こすための一助になってもらうことに期待するしかない。

 

「おっしゃ、テラスタル来たぜ!」

 

「一気に行くぞ!!」

 

まず、リュウセイとコウキがテラスタルを使用し、それぞれ最大打点となる攻撃を叩き込んだ。

 

「タネばくだん!」

 

「かかとおとし!」

 

二匹の攻撃が同時に炸裂し、テラパゴスのバリアを破ることができた。だが、その直後だ。テラパゴスにテラスタルエネルギーを吸収されたことでテラスタルが解除されてしまい、反撃のテラクラスターが放たれたことでコウキのエクスレッグとリュウセイのノクタスが同時に倒れてしまった。

 

「(な、なんだこの威力!?おい、リュウセイ!)」

 

「(イベントの強制力かもしれん!次のポケモンを出すのは待て!)」

 

「(チッ……!)」

 

テラパゴスは吸収したテラスタルエネルギーを利用して再びバリアを張り、体勢を整えた。

 

「うそ……あんなに強かったコウキ達のポケモンがあっという間に……」

 

「ボサっとするなゼイユ!次来るぞ!」

 

「う、うん!ヤバソチャ、いのちのしずく!」

 

「サザンドラ、あくのはどう!」

 

コウキとリュウセイが一時戦線離脱となり、動揺するゼイユを宥めつつゴウタはテラパゴスへ果敢に攻め立てる。ゼイユはゴウタをサポートしつつ、後ろにいるスグリに呼びかけた。

 

「スグ!あんたも戦いなさい!ゴウタだけ頑張ってるじゃん!」

 

「む、無理だ……!おれなんてて……で、できっこない……!」

 

だが、スグリは「自身の不用意な行動がホムラを傷つけた」という自責の念に苛まれ、完全に自信を喪失していた。

 

「サザンドラ前へ!ゼイユ、サポート頼む!」

 

「任せなさい!ヤバソチャ、もう一回いのちのしずく!」

 

「サザンドラ、りゅうのはどう!!」

 

「今度はこっちからも!シャドーボールよ!」

 

「あくのはどうだ!」

 

テラパゴスもしねんのずつきやだいちのちから、みずのはどうで対抗するが、しねんのずつきはあくタイプのサザンドラが受け止め、だいちのちからもサザンドラがヤバソチャを背中に乗せることで回避、みずのはどうもサザンドラが受け流し、折を見てゼイユがいのちのしずくを指示することでうまく立ち回っていた。

 

「テラスタルだ、サザンドラ!ありったけのりゅうのはどうをくらえ!」

 

テラスタルオーブの再チャージが完了し、ゴウタがテラスタルで一気に追い込みをかける。ドラゴンテラスタルのサザンドラが放つりゅうのはどうはテラパゴスのバリアを破り、再び体勢を崩した。

だが、再びテラパゴスにテラスタルエネルギーを吸収されてしまい、サザンドラのテラスタルは解除されてしまった。さらに追撃のテラクラスターが放たれ、ゴウタのサザンドラもゼイユのヤバソチャも倒れてしまった。

 

「クソ!サザンドラが……!」

 

「ヤバソチャ、やられちゃった……。何これ……強すぎなのよ!スグ!みんなが大変!ねえ!あんたも!がんばんなきゃ!!」

 

「で、でも……ダメだ……お、おれは……おれなんか……」

 

「……スグリ、ホムラを頼む。かくなる上は俺が……!」

 

未だ自信が戻らないスグリを置いておき、ケンスケが戦おうと立ち上がった、その時だ。ちょうどケンスケ達の頭上にある結晶が砕け、破片が落下してきたのだ。

 

「スグッ!!危ない!!」

 

「あ……」

 

結晶が落下し、生き埋めになる――その直前。突然中空に黒い靄が現れると、そこから赤い翼爪を生やした黒い翼が飛び出して結晶を防いだ。

 

「え、あ……え?」

 

「な、なにあれ!?」

 

「翼……!?」

 

さらに黒い靄から竜が顔をのぞかせた。漆黒の甲殻に怒りを湛えた真紅に輝く目……コウキ達がよく知る、超弩級生物だった。

 

「(おいおいおいおいおいおい、過干渉が過ぎませんかね!?)」

 

「(いやいくらホムラがやばいからってそこまでする!?)」

 

「(やべぇよやべぇよ、憤怒バーニングファッキンストリーム化してるぞ!)」

 

「(死なない程度によろしく)」

 

「グアオン(わかってるわ)」

 

「「「(リュウセイィィィィ!?)」」」

 

謎の黒い竜()は口元に豪火を滾らせ、強烈な灼熱の火炎をテラパゴスに放った。その一撃はバリアを一撃で破り、テラパゴスに大ダメージを与えるほどのものだった。

 

「テ、テラパゴスが!」

 

「な、なんてパワーなんだ!?」

 

「なに、これ?ポケモン……?」

 

「……い、てて……」

 

と、ここでようやくホムラが目を覚ました。それと同時に黒い竜は靄の中に引っ込み、靄と共に消えていった。体を起こすホムラ……左腕と顔の左半分がテラスタル結晶に包まれている以外は目立った外傷はないようだ。

 

「よっこいしょ……っと。ったく、なにしょぼくれた顔をしてんだ、スグリ。ウジウジしてないで、さっさとこの問題を片付けるぞ」

 

「ホ、ホムラ!そ、その顔……!!」

 

「言いたいことは、後にしてくれ。今は……テラパゴスをなんとかしないとな!」

 

酷い目に遭い、現在進行形でヤバそうにも関わらず、ホムラは普段と変わらぬ笑顔でスグリをみやる。その目にまっすぐ射抜かれたスグリは、ようやく顔を上げて、テラパゴスと向き合った。

 

「ホムラ!お……おれも、戦う!!」

 

「よっしゃあ!!」

 

「もう……本当!遅いのよ!ふたりで全部なんとかしなさい!」

 

ついにスグリが立ち上がり、二人で揃ってテラパゴスと対峙する。ゼイユも相変わらずな言葉だが、その顔は笑顔になっている。

 

「ケンスケ、ボールスタンバっとけ!トドメと同時にぶん投げるんだ!」

 

「いや、お前……ああ、くそっ。わかったよ!」

 

「行くぜ、スグリ!」

 

「うん!」

 

「「ぽにこ!/カミツオロチ!」」

 

ホムラはオーガポンを、スグリはカミツオロチを繰り出した。

 

「はっはははは!なんか全身から力が激ってくるようだぜ!!ぽにこぉ!テラスタルいったれぇ!!」

 

ホムラが左手でオーブを握り締めると、一瞬でエネルギーがチャージされていった。そのままオーガポンをテラスタルさせ、一気にトドメを刺しに行こうとする。危機感を覚えたのか、テラパゴスがエネルギーの吸収・バリア再展開を目論むが……先程の黒い竜の攻撃がかなり効いたのか、そのどちらもうまくいかなかった。

 

「エネルギーの吸収やバリア再展開は不可能なようだね!好機だよ!」

 

「いけ!二人共!!」

 

「あたしが許可するわ!やっちゃえあんたたちー!」

 

「ぽにこ!ツタこんぼうだ!!」

 

「カミツオロチ!きまぐレーザー!!」

 

カミツオロチのきまぐレーザーがテラパゴスの注意をそらしているうちにオーガポンが接近、その脳天にツタこんぼうが振り下ろされた。その強烈な一撃に残った体力も削りきり、テラパゴスは元のフォルムへと戻った。

 

「今ならボールに入るかも……!!」

 

「ケンスケ……ッ!ぐっ……」

 

「ホムラ!ケンスケ先生、頼む!けっぱれ!!」

 

「任せろ!行けや、マスターボール!!」

 

膝をつくホムラを支えつつ、スグリがケンスケに呼びかける。すかさずケンスケがマスターボールを投げ、テラパゴスを捕獲することに成功した。

 

「終わっ……たの?」

 

「……みたいだな」

 

「まったく……心臓に悪すぎる」

 

「もうこういうのは勘弁してほしいぜ……」

 

ゼイユ達もホムラ達のもとに集まり、お互いに労をねぎらう。ホムラはスグリに肩を貸してもらう形で、なんとか立てていた。

 

「皆、無事かい!?」

 

「命はあるかどうかって意味なら、まあ無事です」

 

「ブライア先生!ホムラが……」

 

「あー……なんか体がだるいけど、平気っすよ。大丈夫大丈夫」

 

「「「寝言は寝て言え」」」

 

「辛辣ぅ……」

 

実際、AI博士のように体の一部が結晶化しているのに大丈夫とか寝言以外の何ごとだというのか。

 

「……私のせいで、皆を危険な目にあわせてしまった……本当に……申し訳なく思うよ」

 

「それは本当にそう!!先生テラスタルバカなんだから、もっと大人として自覚しなさい!」

 

「返す言葉もないよ……」

 

「ブライア先生。申し訳ないが今回の一件について、ブルーベリー学園側に対して正式に抗議を入れることになるだろう。そちらの都合で我校の生徒が危険にさらされ、挙句ホムラがこの様だ。……本人がまったく気にしていないので何とも言えないが、相応の処分は覚悟していただきたい」

 

「ああ……承知の上だよ」

 

「……まぁ、あまり重いものにならないよう、我ら一同も掛け合ってみますので。とりま、しっかり反省してくださいね」

 

「本当にすまなかった……」

 

ブライアも深く反省しているようだ。スグリがそっと手を伸ばし、ホムラの左手に触れた。

 

「ホムラ……これ、大丈夫なの?」

 

「ん?あぁ、痛みも何もないぜ。不思議なことにな、なんかガワだけ変わったみたいな感じだ。ほれこのとおり」

 

本当に大丈夫だ、とばかりにその場で手話を始めるホムラ。その様子にホッとすると同時に、安心しきったからかスグリはまた泣き出してしまった。

 

「本当に、もう……」

 

「ゼイユもよく頑張ったな。えらいぞ。怖かったな」

 

「……う、ううぅぅぅ……ゴウタぁ……!」

 

なんだかんだやせ我慢だったらしいゼイユも、ゴウタに頭を撫でられ労られると安心感から泣き出した。

 

「さあ、エリアゼロ調査は終了だ!ブルーベリー学園に戻ろう!終わり!閉廷!!」

 

「やったぜ、帰ったらパルデアの宝食堂で打ち上げだ!!」

 

「あ、ホムラは諸々の後始末終わったら病院にぶち込むんでそのつもりで」

 

「\(^o^)/オワタ」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後のこと。ブルーベリー学園に戻ってきた一行。諸々の連絡は移動の合間にケンスケが既に済ませており、ブライアには好奇心で無闇に生徒を危険に晒したとして謹慎処分が下された。懲戒免職じゃないのは、ケンスケ達(特に最も被害を被ったホムラによる五体投地)の擁護もあってのことで、「この失敗をきっかけに成長して欲しい」という意を込めてのことだ。

ホムラ達は改めてスグリと「ゼロから友達」になった。以前から言っていたように、スグリは学園を休学し、実家で養生するという形で自省する……はずだった。

 

「せっかくだし、スグリも冒険してみりゃいいじゃんか」

 

「冒険?」

 

「そそ。そうだな……ブルーベリー学園にちなんで、イッシュ地方とかどうだ?」

 

「イッシュを冒険……うん、いいかも。やってみたい、冒険!」

 

「よっしゃ!思い出の写真とか、なんかいろいろ送ってくれよ?」

 

「うん!」

 

こうしてホムラに勧められるがままに、「実家で自省」から「イッシュで冒険」に目的が変わっていた。それでも、当人が割と楽しみにしていたので、これはこれでありだろう。

そして……。

 

「ホ、ホムラくん!?その腕は……」

 

「あー……えっと……ク、クリスタルパ~ンチ!……なんちて」

 

「バカァァァァ!うわぁぁぁぁん!」

 

「わあああ!?タロ泣かないでくれー!!」

 

「いやジョーク下手かよ」

 

ホムラの有様からかなり危険な目に遭ったことを悟ったタロが泣き出してしまったり、新しく発見されたテラスタルタイプ・ステラについて四天王達と話し合ったりした。

ホムラがパルデアの病院で検査入院になると知ってからは「お見舞いに行く」とタロが息巻き、そんな彼女の後ろ姿を見て何かを理解したらしいアカマツが男泣きしていたりと、リーグ部もかなり騒がしくなっていた。また、スグリが休学中にイッシュを冒険すると知った四天王達から出身地のオススメスポットなんかをまとめた手製のパンフレットをもらったりして、スグリはだいぶ照れくさそうだった。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎ去り……。

 

「は~るばる~来たぜ、パ~ルデアへ~♪」

 

「まぁ、正確には帰ってきた、が正しいがな」

 

コウキ達はパルデアに帰ってきた。理由は単純、留学期間が終了したからだ。ただ、シアノ校長からは好意と謝意の二つの理由から、コウキ達はいつでも好きな時にブルーベリー学園を訪ねても良いと許しが得られた。

 

「いやーしんどかった!でも帰ってこられてよかったー!!」

 

「だなー」

 

「ホムラはこの後、休学手続きをして即入院だがな」

 

「おい、やめてくれよ……」

 

「あ、そうだ。良かれと思って、ホームウェイ組に事の顛末を伝えておいたよ」

 

「お前かコウキーッ!!おかげでネモからのLINEがとまらんのだが!?」

 

「知らん、そんなことは俺の管轄外だ」

 

「お前のせいやろがい!!」

 

「……ん?おい、あれ……」

 

ゴウタが何かに気がつき、足を止めた。全員で足を止めると、アカデミーの正門の前で、一人の生徒が立っていた。振り返った生徒は外が白、内が青のつばの広い帽子を被っており、ホムラやゴウタと同じオレンジクラスの制服に身を包んでいる。いつもの三つ編みと呼ばれる髪型で、大変可愛らしい少女だ。

 

「おお、アオイだ」

 

「アオイ……?」

 

「ほら、原作主人公。女主人公のデフォルト名だよ」

 

「あっ、あぁ……そ、そうだよな(流石にあいつじゃないよな……)」

 

そのまま歩き出す一行。原作女主人公は五人を見るとそのまま軽く会釈してくれた。コウキ達もそれに応じて会釈し、通り過ぎようとしたところで――

 

 

ガシィッ!!

 

 

そのまますれ違おうとしたホムラの腕を、凄まじい力で掴んだ。

 

「……あれ?えーっと、君?いったいどうし――」

 

ホムラ

 

「ヒエッ」

 

ゆっくりと上げられた顔、その瞳にはハイライトが存在していなかった。というか、名乗ってないはずなのにホムラの名前を知っていた。

 

「……あの、もしかして……(アオイ)さん?」

 

正解

 

原作主人公(アオイ)だと思った?残念!陸上葵(アオイ)でした♪

 

「……スーッ……。あ、あのー……手を離してもらえると嬉しいなーって……その、さっきから骨がミシミシいっててすっごく痛いなーって……」

 

「そう?……私はホムラがほかの女の子とも楽しそうで心がギリギリいっててすごく痛かったなー……

 

「アババババババ……!」

 

「それに大空洞じゃ下手したら死んでたかもしれないのに……ホムラにはもう少し、自愛って言葉の意味を教えてあげなくっちゃね?」

 

「アガガガガガガ……!

 

「そういうわけで、少しホムラを借りてくね?」

 

「どうぞどうぞ御遠慮なく」

 

「手加減いらんので好きにしてください」

 

「周辺の人払いはお任せ下さい」

 

「今夜はお楽しみですね」

 

「うわああああああああ!待ってくれえええええぇぇぇ!ワンチャンレウスボディならまだ許容できるけど人間ボディは流石に倫理観がやばいいいいぃぃぃぃぃぃ!!」

 

「大丈夫よ、ホムラ……倫理なんてね、愛の前じゃ無力なの

 

「たーすけてえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「「「「南無」」」」

 

十字を切って念仏を唱え、コウキ達はアカデミーに背を向けて歩き出した。一方、アカデミー内の自室に引きずられ姿を消したホムラ……。

このあと?そりゃもうめちゃくちゃ(略)

 

 

 




やっと特別編が終わりました。果たしてホムラは明日の朝日を拝めるのか!


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決戦!ショウVSクロノ!!

いよいよクロノとの決戦、始まる!


クロノから挑戦状を受け取り訪れた天冠の山麓、やりのはしら。そこからさらに高く登った先に超広大なフィールドで、私はクロノと対峙している。

ミラボレアスの目的……ニールさんへの復讐。そのための下準備としてシズカさんたちの世界にある『シュレイド城』という城とその周辺地域を天冠の山麓に上書きして、ポケモンを食べ尽くして自らの力にする計画……絶対に阻止しなければならない!そのためにもクロノを倒して、ミラボレアスを引きずり出さなきゃならない!!

 

「行くぞ、ショウ。俺の一番手は、コイツだ!」

 

「グァオオオオオオッ!」

 

クロノが先発で繰り出してきたのは、やはりイャンガルルガ!敵意をこちらに向けて唸り声を上げるさまは、【黒狼鳥】の名のとおりまるでオオカミのようだ。「早く戦わせろ」と、睨みをきかせている。

 

「私は、この子で!」

 

「ガオオオオン!」

 

みずとドラゴンに弱く、尚且つ鳥竜種でイャンクックに似ていることからひこうタイプと想定、弱点を突きつつ機動力でも負けない飛行可能なベリオロスで挑む!

 

「イャンガルルガ!かえんほうしゃだ!」

 

「避けて!」

 

やはり!弱点を突く速攻戦を仕掛けてきた!けど、それはこっちもかんがえていること。回避は容易だ。

羽ばたきながら火炎を放つイャンガルルガよりも高くジャンプすることで攻撃をかわしつつ、高度のイニシアチブを取る!

 

「ちっ」

 

「れいとうパンチ!」

 

「ポイズンテール!」

 

上空から迫るベリオロスのれいとうパンチを、イャンガルルガはその場でサマーソルトしつつ放ったポイズンテールで迎え撃った!攻撃が逸れたことでお互いに交差し、再びにらみ合いになる。

 

「リオレイアみたいなことを……小型リオレイアって考え、ばっちり合ってる」

 

「ぼやっとしてんな!イャンガルルガ、いわなだれだ!」

 

「ガルルガ!」

 

「ならこっちはつららおとしだ!」

 

「ガオオッ!」

 

大量の岩と氷柱がぶつかり合い、弾幕戦になる。技のタイプ相性はこっちが不利だけど、向こうはタイプ一致じゃないからあまり威力が出ないようだ。次第にではあるが、氷柱の弾幕が押し返し始めた!

 

「ギャンッ」

 

「ちぃ!押し切られたか!」

 

「アイスサイクロン!」

 

「なめんな!イャンガルルガ、ねっぷうだ!」

 

怯んだイャンガルルガにアイスサイクロンを放つも、これはバックステップで躱された。さらにそのまま宙へ舞い上がり、翼の羽ばたきでねっぷうを起こして氷の竜巻を消されてしまった……!

 

「ドラゴンダイブ!」

 

「くっ、サイコカッター!」

 

ドラゴンオーラを纏ったイャンガルルガが突撃してくる!迎撃のためにサイコカッターを選んだけど、念力の刃はイャンガルルガに触れると同時に消滅してしまった!?

 

「なんで……っ!まさか!?」

 

「今更気づいたようだがもう遅い!イャンガルルガはひこう複合のあくタイプだ!!」

 

「ガアアアアッ!!

 

「ベリオロス!」

 

しまった、こちらの予想が外れてしまった!イャンガルルガのタイプはあく・ひこう……エスパー技は効かない!対応を誤ったためにドラゴンダイブがベリオロスに直撃……これはきつい……!

 

「もう一発かましてやれ!」

 

「弱点が付けるのがそっちだけだと思ったら、大間違いよ!」

 

「なに!?」

 

「いけっ、ベリオロス!アクアブレイク!!」

 

「みず技!?」

 

再びドラゴンオーラを纏ったイャンガルルガが反転し、こちらに迫る。だが、今度はベリオロスも水の力を全身に纏ってイャンガルルガに突撃する!

水の力とドラゴンオーラがぶつかり合い、やがて大爆発へと転じた。煙から落下してきた彼らは……!

 

「ガ、オオ……」

 

「ガ……アァ~……」

 

「ベリオロス、イャンガルルガ、ともに戦闘不能!」

 

「引き分けか……戻れ、ガルルガ」

 

「(お疲れ様、剣介さん)ベリオロス、ゆっくり休んでね」

 

早くも引き分けとは……なんてこと。クロノのモンスター、本気の本気で強い!

 

「行け!グラビモス!」

 

「ガランゴルム!」

 

「ヴルアアアアアア!」

 

「グォラアアアア!!」

 

クロノが続いて繰り出してきたのは、神域で見せた緑の甲殻のゴリラ!上体を持ち上げて、胸の前で両腕を打ち合っている。

ガランゴルムの特徴は静香さんから聞いたとおり……強化前の纏ってない状態だとタイプ相性的に強いだけど、一度纏うと攻撃能力が上がる代わりにタイプ相性が変動して防御面が脆くなる。つまり、向こうが攻勢に出た時こそ、逆にチャンスだ!

 

「かえんほうしゃ!」

 

「ヴラァ!」

 

「ストーンエッジで守れ!」

 

「ゴルム!」

 

まずは先制攻撃!かえんほうしゃを放つけど、ストーンエッジによる岩の壁で防がれた!判断にも迷いがなく、守勢に転じることも厭わないとは……成長している、確実に!

 

「どくガス攻撃!」

 

「ぶんまわして振り払え!」

 

続けてどくガス攻撃で視界を奪う&状態異常狙いの二段構え攻撃!これはぶんまわすの動作や威力を利用した腕のひとふりでガスを消し飛ばされてしまった……けど!

 

「今なら!すてみタックル!!」

 

「ヴラアアァァァ!」

 

「グウウゥゥゥゥ!」

 

「踏ん張れガランゴルム!押し返せ!!」

 

「ガ、ランゴオォォォム!」

 

クロノの指示で気勢を取り戻したガランゴルムは両腕でグラビモスの体を抑え、足と尻尾で地面に踏ん張り勢いを抑えにかかった!徐々にグラビモスの勢いが弱くなり始めると、片腕で技の構えに入った……まずい!

 

「この距離なら外れねぇ!ばくれつパンチだ!!」

 

「ゴルーム!!」

 

「ヴァッ……!?」

 

「グラビモス!!」

 

あ、あのグラビモスの巨体が宙を舞った!?しかもばくれつパンチは直撃すればこんらん状態になるかくとう技……今のはかなり効いた!

 

「くっ……グラビモス、戻って!」

 

「ふむ……賢明な判断だ」

 

「あのまま戦ってたら、ショウの方が圧倒的に不利だった……ナイス判断だよ、ショウ」

 

効果抜群技を喰らい、なおこんらん状態とあってはまともに戦うことなんてできない!……纏った後のことを考えれば、ここはこの子で!

 

「お願い、ラ・ロ!」

 

「グアオオオオオオン!」

 

「刻竜……UNKNOWNまで従えていたとはな。……いや、待て。そのUNKNOWN、まさかあのリオレイアか!?」

 

「そう、進化したんだ。もう今までのリオレイアだと思わないでね」

 

「ちぃ……祖龍のババアめ、余計な真似を……!!」

 

クロノがなにやら小声でブツブツ呟いている……それから、何か悪寒を感じたのか体を一瞬だけ震わせると、すぐにバトルに戻った。

 

「はっ!それがどうした、関係ねぇ……!ぶっつぶせガランゴルム!ぶちかましだ!」

 

「ゴルルル!」

 

「飛べ、ラ・ロ!」

 

「グアオン!」

 

ガランゴルムが突撃を仕掛けるも、ラ・ロは素早く空を飛び攻撃を避ける!

 

「エアスラッシュ!」

 

「グアオオォン!」

 

「ゴラアァァァ!?」

 

「ちっ……ガランゴルムのタイプがくさとかくとうの複合だって気づいてやがったか」

 

ひこう技であるエアスラッシュを受けたガランゴルムはかなり苦しそうだ!クロノもしっかり自白してくれたことで、くさ・かくとうだとはっきりわかった。静香さんの予想的中だ。

 

「これで決める……!ブレイブバード!!」

 

「グアァオオオォォン!」

 

「なめんじゃねえ!ガランゴルム、お前の力を見せてみろ!」

 

「ゴルルルム!」

 

ラ・ロが高度を稼いでいる間、ガランゴルムは両腕を地面に突っ込んでいた。引き抜かれた腕は、右腕に溶岩石、左腕に多量の苔岩を付着させている……あれが、静香さんが言っていた纏い状態か!ひこうタイプで戦えばいいとはいえ右腕がほのおとでんき、左腕がみずとこおりに対する盾の役割を持つのは厄介だ。

それに加えて、顔面にも付着物を纏っている……これが、ガランゴルムの本気モード!

 

「ゴルーム!!」

 

「……ッ!!」

 

ガランゴルムは両腕を伸ばすと、ラ・ロの翼を掴んでブレイブバードを正面から受け止めた!しばらくは押し込み続けていたけど、それよりも早くガランゴルムがラ・ロを持ち上げ、地面に叩きつけた!

さらに持ち上げ、もう一度叩きつけつつラ・ロを放り投げた。ガランゴルムは右腕を地面に叩きつけた爆発で跳躍し、地面を滑りながら飛んでいくラ・ロを追撃。その背中に左腕の苔岩を叩きつけた!

 

「どうだ!効果抜群の属性を受けると発動できる『しぜんのよろい』という技だ!……まぁ、要するに付着物纏いなんだけどな。防御能力を高めつつ、相手の攻撃を防ぐぜ!」

 

「一度きりのまもるみたいな技か……!」

 

「ガランゴルム!ラ・ロを振り回せ!!」

 

「ゴルルルムゥー!」

 

ガランゴルムはラ・ロの尻尾を掴むとそのままジャイアントスイングを始めた!何度も振り回した後に放り投げ、再び跳躍して追撃!体を押さえつけに来た!

 

「ぶちかませ!スチームブレイク!!」

 

ガランゴルムがラ・ロの真下の地面に腕を突っ込むと、土の地面が盛り上がった!?打ち上げられたラ・ロを抑えつつ溶岩石の腕で殴りつけると、隆起した地面までもが溶岩質に変化していく……!その地面をラ・ロごと、左腕の苔岩で殴りつけてとんでもない大爆発を引き起こした!?

 

「ラ・ロ!!」

 

「……グアオォ!」

 

爆煙の中から飛び出してきたラ・ロ……かなりダメージを負ったけど、何とか無事だったようだ。

 

「……今ので仕留められりゃ、御の字だったのにな」

 

「……戻って、ラ・ロ。……よしっ、ラギアクルス!」

 

「グルオアァ!」

 

私はラ・ロを戻してラギアクルスを繰り出した。

 

「ガランゴルム!ぶちかましだ!!」

 

「ひきつけて!」

 

ガランゴルムが巨体を揺らして走ってくる……まだ、まだだ……。

 

「ゴルルーア!!」

 

「……今っ!ドラゴンテール!!」

 

「グルオラァ!!」

 

ラギアクルスのドラゴンテールが、巨体を突き出して突っ込んできた直後!振るわれたラギアクルスの尻尾がガランゴルムの顔面を打ち付け、ガランゴルムはボールに戻っていく!

 

「やべっ、交代技か!?」

 

「グギャアアァァァンッ!!」

 

ガランゴルムと入れ替わりで出てきたのは、私の知らないモンスターだ。

黒曜石に似た輝きを放つ群青色の外殻と大きく発達した前脚、そして角のように突き出た頭……頭や腕には緑色のよくわからない物体がくっついている……あれは?

 

「……!気をつけて、ショウ!ソイツがブラキディオスだ!!」

 

静香さんからの警告が聞こえる……あれが、ブラキディオス!向こうの世界で龍歴院の皆さんと話し合った時に、ブラキディオスの名前が挙がっていた!タイプはほのお・かくとうタイプ!!それじゃあ、あの緑色の物体が爆発性の粘液?……接近させるわけには行かないね。

 

「ちっ、出てきちまったならしょうがない。せめて一匹は捻り潰さないとな!」

 

「ディアァスッ!!」

 

ブラキディオスはみずに弱い!肉質の関係でこおりタイプも通りが良いけど……初手でベリオロスを落とされたのは痛かったな。

 

「ラギアクルス、ウェーブタックル!」

 

「ブラキディオス、バレットパンチだ!」

 

「先制技!?」

 

ウェーブタックルを構えるラギアクルスだが、一瞬で懐に入ったブラキディオスに顎をかち上げられた!ラギアクルスの顎に、あの粘液が付着した……やばい!

 

「おらおらぁ!逃すわけにはいかねぇぜ!ブラキディオス、れんぞくパンチだ!」

 

「うっ……ラギアクルス、まもる!」

 

ラギアクルスが咄嗟にまもるを発動すると、ブラキディオスはそのまま殴りかかってきた。殴るたびに粘液が飛び散り、辺り一面にばらまかれていく……受けるのは失敗だったか!

もうすぐまもるが終わる中、ブラキディオスが拳を押し付けてくる……終わる前に!

 

「ラギアクルス、下がって!」

 

「グラァ!」

 

ラギアクルスが交代すると同時に、まもるの効果が切れる。すると、まもるの壁に拳を押し付けていたブラキディオスは力の行き場を失って前につんのめっている……今だ!!

 

「ハイドロポンプ!!」

 

「グルオォラアァァァァァ!!」

 

「ギギャアアアァァァッ!?」

 

「ブラキディオス!」

 

ハイドロポンプがどんどんブラキディオスを押し返す!このまま押し切れば――

 

「グオラッ!?」

 

「しまった……っ!」

 

だが、ハイドロポンプ照射中に、ラギアクルスの顎に付着した粘液が爆発を起こした!しまった、時間差で爆発するのは聞いていたけど、位置が悪くて粘液の状態が見えなかった!!ラギアクルスも突然顎に感じた衝撃でハイドロポンプを中断してしまった……!

 

「よっしゃ、気合入れていけよブラキディオス!きあいパンチ!!」

 

「ディオオォン!」

 

「くっ……阻止して!なみのり!!」

 

「グルラァ!」

 

ラギアクルスが波を起こし、ブラキディオスに襲いかかる……だが、そのなみのりを遮るように次々と爆発が起こった!

 

「これは……れんぞくパンチの時の!?」

 

「ステンバーイ……ステンバーイ……ゴー!!」

 

れんぞくパンチ中にばらまかれていた粘液が一斉に爆発、それによりラギアクルスが乗る波の動きが大きくブレた。バランスを崩したラギアクルスに、高く飛び上がったブラキディオスが頭上から襲いかかる!!

 

「ラギアクルス!!」

 

「グラ~……」

 

「ラギアクルス、戦闘不能。ブラキディオスの勝ち」

 

beautiful(バッチリだ)、よくやったなブラキディオス」

 

「くぅ……流静さん、戻って……」

 

きあいパンチの一撃はラギアクルスを叩き伏せ、波を割った。ラギアクルスは戦闘不能……な、なんて強さなの!?

 

「どうだい?砕竜の一撃の重さは。こいつは粘液の能力を特性として獲得した。接触攻撃を仕掛けた対象に爆破粘液を塗りつけて、時間差でドカーン!……だ」

 

「(接触するとみらいよち状態ってわけか……厄介な!)」

 

接近戦だと粘液を塗られ、離れても先制技のバレットパンチで接近&接触……なんだこいつ面倒くさすぎる!

 

「戻れ、ブラキディオス」

 

「お願い、グラビモス!」

 

「ディアブロス!!」

 

「ヴルァアアアア!!」

 

「ギシャアアアアアアアアアン!!」

 

クロノが繰り出したのはディアブロス!砂色の甲殻やハンマーあるいは両刃の斧のような見た目の尻尾……なにより目を引くのは頭に生えた二本の大きな角だ。まるで悪魔のような見た目の捻じれ角……モノブロスと鳴き声がそっくりだけど、まったく別物だとわかる!

 

「砂漠の魔王、ディアブロス……コイツも強いぜ、ビビんなよ?」

 

「くっ……グラビモス、ストーンエッジ!」

 

「ディアブロス、つのドリルだ!!」

 

「んなっ!?」

 

グラビモスがストーンエッジによる岩の刃を突き立てるが、ディアブロスは一撃必殺技の勢いで強引に突破し、その両角をグラビモスに突き立てた!!

 

「っしゃあっ!どうだぁ!!」

 

「いや、特性がんじょうだから効かないけど」

 

「ヴァー」

 

「なにいぃぃぃぃ!?」

 

「ディアァ!?」

 

残念でした!私のグラビモスの特性は『がんじょう』!一撃必殺技は効かないよ!……ただ、元々の耐久力が高すぎてきあいのタスキと同じ役割は期待できないんだけど。

 

「だったらドリルライナーだ!」

 

「ディイィアッ!」

 

「ヴァ!ヴヴァー!!」

 

「……!わかったよ、グラビモス!」

 

ディアブロスが全速力で突撃してくる……多分、グラビモスはここで倒されてしまうだろう。それを察しているからこそ、グラビモスは決意の篭った目でこっちを見た。ならば、私もその心意気に答えよう!!

 

「ぶち込め!ディアブロス!!」

 

「グラビモス!ギリギリ限界までひきつけて……力強く、だいばくはつぅ!!」

 

「じ、自爆技だとぉ!?」

 

久々の力業、全力全開でのだいばくはつだ!突撃してきたディアブロスをも包み込む爆発が起こり、グラビモスが爆破したせいか体から飛び散ったと思しき鉱石があちらこちらに降り注ぐ。いくつかは静香さん達の足元に転がっている。

 

「ギギャアアアァァァァンッ!!」

 

ディアブロスの咆哮が響き渡る……そのさなか、私の眼前に何かが降ってきて思い切り地面に突き立った。

 

「わあぁ!?……え、なにこれ」

 

「あーあー、角が折れたじゃねぇか。どうしてくれんだ」

 

「え、あ!?」

 

煙が晴れると、片方の角が根元から折れてしまったディアブロスの姿が……あ、これ、ディアブロスの角だ!?どうしよう、折れちゃった!!

 

「あわわわ……!ど、どうしよう……!!」

 

「大丈夫だ、こっちの世界でなら充分休めばしっかり再生できる。まぁ、その代わり年単位は時間が必要だけどな」

 

「うぅ……なんか、ものすごい罪悪感が……。戻って、剛太さん」

 

とりあえず角は邪魔なのでガブリアスとゴウカザルに運んでもらって……一旦、静香さん達の近くに置いておいた。あとで持ち帰るためらしい。

 

「さぁて、ショウ。お前は既にベリオロス、ラギアクルス、グラビモスの三体を失った。対するこちらはイャンガルルガが倒れ、ガランゴルムとブラキディオスにディアブロスがダメージを負ったものの、五体が健在だ。命乞いくらいは聞いてやるぞ?生かすかどうかはさておきな」

 

「……ハッ。何をもう勝った気になってるわけ?そういうセリフは、私の手持ちを全滅してから言うべきよ。手持ちが残ってる状態で煽ったって、こっちの闘争心を掻き立てるだけ……よ!」

 

「グオオオオオオン!!」

 

私の四番手はゼルレウス!まだまだ勝負はここから!そうやすやすと、勝利を譲ってなんてやらないから!

 

「ゼルレウス!りゅうのはどう!!」

 

「やべぇ!地中に逃げろ!」

 

ゼルレウスのりゅうのはどうが放たれると、ディアブロスは身を翻して地面に潜った。

 

「……この地面、攻撃や行動に対応できるんだね」

 

「ん?おう、だからダイビングもあなをほるも自由自在だぞ。……さて、突撃だァ!」

 

「甘いわぁ!!」

 

その行動は読めていた!ゼルレウスの足元から奇襲をかけてきたディアブロスだが、それよりも早くゼルレウスは飛び上がっていた!地面から飛び出した直後のディアブロスに掴みかかり、後頭部の傘のような形状部を両足でしっかりと掴み上げる!!

 

「くらえ!必殺、ちきゅうなげ!!」

 

「いや、ゼルレウスがディアブロスを持ち上げられるわけ――」

 

「グオオオォォォォォンッ!!」

 

「ディアアアァァァッ!?」

 

「――わけ、あるんかい……」

 

ゼルレウスはそのまま空へ舞い上がり、ディアブロスを引き上げていく。そのまま二回、三回と宙返りの後、ディアブロスを頭から地面に叩きつけた。

煙が舞い上がり、徐々に晴れていく。ディアブロスは……目を回して倒れこんでいる!

 

「ディアブロス、戦闘不能。ゼルレウスの勝ち」

 

「やった!ゼルレウス!」

 

「グオグオ!」

 

「ちぃっ……やってくれたな。もどれ、ディアブロス」

 

ディアブロスがボールに戻っていく。……特に何のアクションもなかったってことは、本命はブラキディオスの方か。メガシンカ……しっかり警戒しておかないと。

 

「それじゃあ、俺の五体目は……んー、よし。コイツで行くぜ!!」

 

「ウオォォォォン!!」

 

クロノが繰り出したのは、狼だった。瑠璃色の外殻に覆われた体躯に先端が三つ又に分かれた鋭利な尻尾、そして四肢に備わる朱色の鋭い爪……なによりその顔つきは紛うことなき狼!

 

「ルナガロン!」

 

「こおり・かくとうの狼モンスター!」

 

「やっぱその辺はバレてるか……いや、牙竜種の特徴から推測も容易か」

 

「ならば、ここはやはり……戻って、ゼルレウス!行け!ジンオウガ!!」

 

「ワオォォォォン!!」

 

ここはやはり狼対決!ジンオウガも繰り出されてすぐに相手をみやり、即座に間合いを計りながらにらみ合いを始めた。ルナガロンも同様に睨みつけ、同じように動き始める。円を描くように移動を続ける両者……今なら!

 

「ジンオウガ、かわらわり!」

 

「ワオン!」

 

「ッ!」

 

だが、これはルナガロンに反応されて回避された。その直後、ルナガロンの全身が氷に覆われ、尻尾が肥大化し二本足で立ち上がった!あれが、龍歴院の人から聞いた氷衣状態!ジンオウガもすかさず超帯電状態へ移行し、一気に突撃をした。

ルナガロンは懐に飛び込んで前足二本でジンオウガを抱えると、そのまま投げ飛ばしてしまった!投げ飛ばされて超帯電状態が解除されたジンオウガに追撃を仕掛けるルナガロン……そうはさせない!

 

「ライジングテール!」

 

私の指示が届き、再び超帯電状態になったジンオウガのライジングテールが炸裂!ルナガロンを吹っ飛ばし、氷衣状態を解除した!

 

「行け!ジンオウガ!」

 

「負けんな!ルナガロン!」

 

起き上がったジンオウガは轟雷跳弾で押しつぶそうとするも、ルナガロンは素早くその場を転がって回避しつつ、仰向けになったジンオウガに思い切り組み付いた!ジンオウガが前足で蹴飛ばして距離を取ると、ルナガロンはひょうざんおろしをフィールド全体の空中に展開し、ジンオウガもワイルドボルトの構えを取る。

 

「ワイルドボルト!」

 

「ビーストスライス!」

 

両者一斉に駆け出し、ルナガロンは氷衣状態になりつつ空中の氷塊を足場に、ジンオウガは持ち前の瞬発力で連続攻撃を仕掛け、お互いに何度もぶつかり合う。その度に氷塊が砕け雷電が飛び散り、戦闘の激しさを物語る。最後はお互いに距離をあけ、ジンオウガがかみなり、ルナガロンはふぶきを放ちながら両者ともに距離を詰めていき……やがて爆発が起きて再び距離が空いた。

 

「ふんっ、ウォーミングアップは終わったようだな」

 

「だね。さぁて、本格的に仕合おうか!」

 

勝負はこれから後半戦。まだまだ、これからだよ!

 

 

 

 




ブラキディオス技巧種……戦いたくないなぁ……。


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猛り爆ぜる拳VS極み照らす雷

クロノから送られた果たし状から始まったこのバトル。クロノはこれまでイャンガルルガ、ガランゴルム、ディアブロス、ブラキディオス、ルナガロンを繰り出してきた。対する私は全てのモンスターを繰り出していて、このうちクロノはイャンガルルガとディアブロスを、私はベリオロス、ラギアクルス、グラビモスの三体を失い状況は三対四で私の数的不利。

けど、勝負はまだまだこれからだ。ここからが後半戦、気を抜かずに最後まで全力でぶつかるのみ!

 

「やっば……ジンオウガとルナガロンの縄張り争い、生で見ると迫力がダンチだ。おまけにポケモンの技まで加わって、一層激しさが増してる」

 

「かくとうに弱いこおりタイプのルナガロン、肉質の関係でこおりタイプが弱点であるジンオウガ……相性という点では互角か」

 

「けど、プレッシャーがかかってるのはショウの方じゃないかな。ジンオウガはショウの切り札……ここで体力を削られると、後々に影響が出そうだし」

 

さて……相手はジンオウガが苦手なこおりタイプのルナガロン。さっきのウォーミングアップを見ても、油断すればやられるのはこっちのほうだ。

 

「(叔父さん、どう攻める?)」

 

「(氷衣状態になられると、ちと面倒だな。向こうは二足だが、こっちは四足……人間の構造を見ればわかるが、腕の有無は結構でかい。ほのお技であるほのおのキバやニトロチャージをうまく当てていくしかないが、それは向こうだって百も承知だろう)」

 

「(接近戦で弱点を突くのは露骨すぎて、かえって危険かな……。よし、明確な隙が見つかるまで牽制に徹して、ここぞというところで)」

 

「( ̄ー ̄)bグッ!」

 

作戦は決まった。なるべく被弾を減らして、残りのモンスターへの対策に当てないといけない。そういう意味では、でんきが効かないディアブロスを倒せたのはよかった。

 

「作戦会議は終わりか?一気に行くぜ!ルナガロン、スタッドスノウ!」

 

「ウオォン!」

 

「……!ジンオウガ、ハイパーボイス!」

 

「ワオオォォォォォン!!」

 

ルナガロンが足元から直線上に雪のようなブレスを吐いてきた!ハイパーボイスの指示出しは正解だった……ジンオウガの音波がブレスを吹き飛ばし、そのままルナガロンに襲いかかる!

 

「よし、きりさく攻撃!!」

 

「舐めんな!サイコカッター!!」

 

「……っ!シャドークローで迎撃!」

 

ジンオウガが飛び出すように駆け出すと、それまで通常状態だったルナガロンがあっという間に氷衣状態へと移行した。腕となった前足をクロスさせると、そのままサイコカッターを放ってきた。でも、こっちだって迎撃のシャドークローが間に合ったので、そのまま一気に距離を詰める!

 

「メタルクロー!」

 

「れいとうビームだ!」

 

向こうからの反撃のれいとうビームを右のメタルクローで受け流しつつ接近し、懐に潜り込むと左のメタルクローで土手っ腹をぶん殴る!ただ、ルナガロンも負けじとれいとうビームを撃ち返してきて、弱点のこおり技をモロに受けた……!

 

「(叔父さん、大丈夫!?)」

 

「ワオン!(平気だ!思ったよりダメージはない……ルナガロンは特攻が低いみたいだな、種族値の低さに救われた)」

 

「(種族値……?と、とにかく無事でよかったです)」

 

種族値、というのはよくわからないけど、ポケモンやモンスターの能力のことかな?ルナガロンは特殊攻撃力が高くなかったようで、弱点のれいとうビームが直撃しても問題はなさそうだった。

 

「ジンオウガ、しんそく!」

 

「ルナガロン、れいとうパンチだ!」

 

ジンオウガが縦横無尽に駆け回り、ルナガロンへ攻撃を加えていく。対するルナガロンもすれ違いざまにれいとうパンチを繰り出してきて、何度か危ない場面があった。ここで直線コース、まっすぐ正面から突撃を仕掛けるジンオウガ。

 

「正面から!?何か企んでんだろうが、受けて立つ!!ビーストスライス!」

 

「ウオオオオォォォオン!!」

 

両前足を交差させ、ルナガロンが突撃してくる。まだ、まだだ……まだまだ……。

 

「ウオォォン!!」

 

「ワオォォン!!」

 

……今っ!

 

「ニトロチャージ!!」

 

「ワオン!!」

 

「なにっ、ほのおタイプだと!?」

 

攻撃同士がぶつかり合う二拍前、技変更の指示。ジンオウガ……叔父さんなら絶対に反応できると信じていた。全身に炎を纏ったジンオウガはルナガロンの氷衣を突き破り、ビーストスライスを打ち破ってダメージを与えた!まだだ!

 

「ほのおのキバ!」

 

「ワン!」

 

「ギャヒンッ!」

 

「ルナガロン!!」

 

体勢を崩したルナガロンの首元にほのおのキバが炸裂!コレは効いてるぞ!そのままジンオウガは大きく体を動かしてルナガロンを宙に放り投げた。止めだ!

 

「アイアンテール!」

 

「ワオゥン!!」

 

ジンオウガも飛び上がり、一回転しながらアイアンテールを放ってルナガロンを地面に叩きつけた!

 

「しまった……ショウとジンオウガの阿吽の呼吸、すっかり忘れていたぜ……」

 

「これでルナガロンは戦闘不能……数は互角だよ」

 

「追いつかれたか……だが、これからだ」

 

ルナガロンを戻しつつも、冷静に振舞うクロノ。次に出してくるのは……。

 

「行くぜ、ガランゴルム!」

 

「戻って、ジンオウガ!行って、ラ・ロ!」

 

「ゴルルルムーア!」

 

「グアオオォン!」

 

再び対面するラ・ロとガランゴルム。お互い、体力がかなり削られている……ここで確実に仕留めなきゃ!

 

「ストーンエッジだ!」

 

「ラ・ロ、ぼうふう!」

 

ガランゴルムが大地を叩きつけてストーンエッジを放ち、ラ・ロがぼうふうを起こす。迫り来る岩の刃は暴風に巻き上げられるとそのままガランゴルムを巻き込み飲み込んだ。

 

「決まった!」

 

「クソッ!ガランゴルム……!」

 

暴風が晴れると、ガランゴルムが目を回して倒れている……よしっ、戦闘不能だ!

 

「よしっ、逆転した!」

 

「……だが、クロノのやつはまだ余裕を残しているようだ。未だ残している一体に自信があるのか、あるいは……」

 

これで三対二……ひとまずは逆転した!

 

「……ちっ、コイツを出さないでおくに越したことはなかったんだが……しょうがない。行けよっ、俺の六体目!!」

 

クロノがボールを投げ、六体目のモンスターが姿を現した。

 

緑色の外殻と全身に生えた硬く鋭く毒々しい赤い棘

鼻先に角のようにそびえる特に大きな棘

見るからに頑強さと剛強さを感じさせる尻尾

 

そんな力強さと堅牢さを感じさせる飛竜が――

 

「……寝てる」

 

「寝てるね」

 

「寝てるな」

 

「ど゛う゛し゛て゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!!」○| ̄|_

 

見ているこっちが感心するくらい、がっつりと眠りこけていた。

 

「……えーっと……これ、どうしたらいいんですか?」

 

「……!ショウ、起こすなら気を付けて!そいつの名前はエスピナス……全身の刺による攻撃性と頑強な外殻による防御性に加えて、『禁忌の邪毒』と称されるほどの猛毒を持ってる!そいつ自体は争いを好まない温厚な性格だけど……一度キレたら手に負えないほど危険だよ。あのクシャルダオラさえ退けたと言われているんだから」

 

「こ、古龍を退けたんですか!?」

 

なるほど……つまりコイツ、カビゴンだな!?寝てばかりだけどキレたらヤバいといえば、まずカビゴンが思い浮かんだ……そうなると。

 

「最初の一撃はなるべく高い威力の技を打ち込むべきだね……ラ・ロ、めいそう。いっぱい」

 

「グアン」

 

「おいっ、コラァ!これ見よがしに積んでるんじゃねえよお前ェー!!」

 

限界までめいそうで能力を上昇させて、最高火力で一撃をぶち込む。これだね。ラ・ロが限界まで能力を高めたのか、こちらへ振り向き頷いた。よしっ!

 

「H・D・D!」

 

「グァオオオオオ!!」

 

シロちゃんとのバトルで見せた、あの極太ビームをぶっぱなす!オーラの咆哮を使ってないから威力はちょっと低いけど、それでもめいそうでさんざん能力を上げまくっているんだ、これなら……。

 

「…………」

 

煙が晴れていく……。

 

「(`・皿・´#)」

 

「さすがエスピナスだ、なんともないぜ!」

 

「嘘でしょ……?」

 

あ、あの高火力をまともに食らってピンピンしてる!?しかも心なしかかなりお怒りの様子……。

 

「さて、気付けの一撃は十分だな!今度はこっちの番だ!エスピナス、ドラゴンダイブ!!」

 

「スピナァァァァァァァ!!」

 

「りゅ、りゅうのはどう!!」

 

「グァオン!!」

 

猛烈な勢いで突撃してくるエスピナスにりゅうのはどうをぶつける……が、全然勢いが止まらない!?

 

「グアアアアンッ!!」

 

「ラ・ロ!!」

 

ドラゴンダイブが直撃し、ラ・ロはそのまま倒されてしまった!な、なんてフィジカル……古龍に勝ったのも頷ける、凄まじいタフネスだ!

 

「戻って、ラ・ロ。お願い、ゼルレウス!」

 

「グオオォォォン!!」

 

私はゼルレウスを繰り出す。……あまり余裕を持って戦えそうにないな、それじゃあ初っ端から全力で!

 

「ゼルレウス!輝装天鎧(きそうてんがい)!!」

 

「グオオオオオオオオオオオ!!」

 

ゼルレウスの全身が光り輝き、部位にそれぞれ変化が起こる。ミラーコートを使った時に見せた、あの姿になる。

ゼルレウスは戦闘中に切断属性・打撃属性・弾属性という向こうの世界におけるハンターの攻撃が持つ属性に対して耐性を得る形態へとフォルムチェンジが出来る。本来なら一つの姿にしかフォルムチェンジできないが、ゼルレウス……焔さんはこの技を編み出して、一度にすべての形態を併せ持った『輝装形態』へとフォルムチェンジすることができるようになったのだ!

これにより、足回りと尻尾は「切る技」に、頭部は「切る技以外の接触技」に、翼は「非接触技」にそれぞれ防御性能が大きく向上する。ゼルレウスの決戦形態といってもいい。

 

「ほぉ~、エスピナスに対して危機感を覚えたか」

 

「まぁね」

 

「ショウ!エスピナスはどく・ドラゴンの複合タイプ!さらにみずとでんきに強く、こおりとドラゴンに弱く、ほのおが一切効かない体質をしている!」

 

「ありがとうございます、アカイさん!」

 

静香さんも邪毒って言ってたし、やっぱりどくタイプか。タイプと肉質が両方ともドラゴンタイプに弱いこおりとドラゴンに弱いのはありがたい。……H・D・Dってドラゴン技な上にめいそうガン積みしてたのに、ほとんどびくともしなかったんだけど。

 

「ショウ、エスピナスを怒らせるんだ。怒りに飲まれたエスピナスは全身に血液を回すため攻撃力は高まるが、その反面防御力が極端に下がる。そこが奴の隙になる、上手く戦うんだ」

 

「このっ、好き勝手にベラベラと喋りやがって!」

 

なるほど、怒り……それなら、この手が使える。

 

「ゼルレウス……いばる」

 

「グオン!……( ´・∀・` )ドヤ

 

「(#^ω^)ピキピキ」

 

「よし、次はちょうはつ」

 

「m9(^Д^)プギャー」

 

「ピナァァァァァァスッ!!」(#゚Д゚)!!

 

技の解説に「相手を怒らせる」と明記されていた技を二つとも使えば、いくら温厚といえど我慢の限界はある。案の定、ブチギレたエスピナスは全身が真っ赤になるほどの怒りを顕にし、こんらん状態も相まってしきりに頭を地面に打ち付けている。

 

「うわっ、やべぇ!?おい、エスピナス!落ち着け!!」

 

「よし、ドラゴンクロー!!」

 

「グオオン!」

 

「クソッタレが!どくづきだ!!」

 

ゼルレウスが空高く舞い上がり、高所から足の爪に展開したドラゴンクローでエスピナスに飛びかかる。エスピナスは未だこんらん状態が解けず、何度も自傷行為に走っている……が、ゼルレウスが眼前に迫ったタイミングでどくづきを繰り出してきた!こんらんが解けちゃったか……。

 

「よぉし、そのままぶんまわせ!」

 

「スピァ!!」

 

「グオッ!?」

 

「なっ、ゼルレウス!?」

 

ゼルレウスのドラゴンクローがエスピナスのどくづきを受け止め、ガッチリと掴んでいる状態で思い切り頭を振り回してきた!下手に離すと吹き飛ばされかねないほどの勢いに、ゼルレウスは必死になって耐えている。

 

「ゼルレウス……!」

 

「さぁ、どうする?」

 

「くっ……ゼルレウス、ぼうふうだ!」

 

ゼルレウスが翼を羽ばたき始め、暴風を起こす。その強烈な風にエスピナスの動きが鈍った!その瞬間を逃さず、ゼルレウスは足を離して離脱する。

 

「「ドラゴンダイブ!」」

 

ゼルレウスは空から、エスピナスは地上からドラゴンダイブで相手めがけて突撃する!今、ゼルレウスの頭部は輝装天鎧の効果で接触技に耐性がある……とはいえ、エスピナスのフィジカルはラ・ロで証明済みだ。ダメージは抑えられても、それがフィジカル差を埋めることにはならない……現に、ゼルレウスのドラゴンダイブがわずかに弾かれ、逸れたことでお互いに交差していった。

 

「やるな……!」

 

「そっちこそ……!」

 

「ならば、ギガインパクトだ!!」

 

「アサルトバース!!」

 

ありったけの力を込めて突撃してくるエスピナスに、ゼルレウスのアサルトバースが浴びせられる。だが、エスピナスはそれすらものともしない勢いで突撃を繰り返し、ついには眼前にまで迫った。だが、そこで大爆発が起こり、ゼルレウスとエスピナスを飲み込んだ!

……煙が晴れた先では、ゼルレウスとエスピナスがそろってひっくり返っている……。

 

「引き分け……」

 

「ちっ……本当に強いな、お前」

 

お互いにボールに戻し、最後の一体を繰り出す!

 

「ジンオウガ!」

 

「ワオオオオン!」

 

「ブラキディオス!」

 

「グギャアアァァァンッ!!」

 

いよいよ最後の一体……ここが、勝負の決め所だ!

 

「終わらせてやる……ブラキディオス、メガシンカ行くぞ!」

 

「グギャ"ア"ア"ァ"ァ"ァ"ン"ッ!!」

 

「ジンオウガ!こっちも行くよ!」

 

「ワン!」

 

「「うおおおおっ!!/ウオオオオッ!!」」

 

ブラキディオスのメガシンカ……メガブラキディオスこと【猛り爆ぜるブラキディオス】。こっちもきずなへんげで対抗する!!

 

「気をつけろよ、ショウ。メガシンカしたコイツの粘液は即起爆する危険物だ。テメェもろとも、ジンオウガを爆炎に沈めてやるよ」

 

「そっちこそ、完成した私たちの絆の力に、度肝を抜かれないでよ?」

 

「抜かせ!ブラキディオス、ばくれつパンチだ!」

 

「ジンオウガ、きりさく!」

 

ブラキディオスが殴りかかってきて、私はジンオウガの目線でその攻撃をしっかりと回避していく。ブラキディオスの拳が穿った地面が、凄まじい爆発を繰り返す。これが、粘液が活性化した状態……喰らったらタダじゃ済まない……!

こっちもブラキディオスの攻撃の隙を突いて、きりさくを繰り出す。ただ、ブラキディオスはイビルジョーと同じ獣竜種とは思えないフットワークでこちらの攻撃を躱してくる!

くそ、本当に強いな……!

 

「くっ……一旦、距離を――」

 

「逃がさねぇ!マッハパンチだ!!」

 

「ディア!」

 

「ガウッ……!」

 

「ぐあっ……!」

 

ジンオウガがバックステップで後退した……瞬間に、先制技で一気に距離を詰められた!そのまま胸に拳が叩き込まれ、爆発の衝撃や痛みがこちらにまで伝わってくる……!

 

「捕まえたぜ。ほのおのパンチ!」

 

「「ぐうっ!/グウッ!」」

 

「グロウパンチコメットパンチシャドーパンチドレインパンチピヨピヨパンチメガトンパンチばくれつパンチれんぞくパンチアームハンマーアイスハンマー!」

 

こ、こっちが怯んでいるのをいいことに連続で拳が飛んでくる。殴られるたびに爆発が起こって、悶絶するレベルの激痛が体中を駆け巡る……!

 

「止めだ……バレットパンチ!」

 

「なめ……るなぁ!!」

 

「ワオオオオン!!」

 

ブラキディオスが拳を振り上げた直後、一瞬で懐に飛び込んだジンオウガがブラキディオスに一撃を見舞った!その一撃で怯んだのか、ブラキディオスは攻撃に出られず動きを止めていた。

 

「い、今のは……」

 

「はやてがえしだよ、ショウ!相手の先制攻撃技に反応して、こっちから先制攻撃を繰り出すんだ。この攻撃を受けた相手は怯んで行動ができなくなる!」

 

「新技だと!?」

 

すごい、この土壇場で新技を覚えるなんて!流石だよ、光輝叔父さん!

 

「(`・ω・´)」

 

「さぁ、さっきはよくもやってくれたな……今度はこっちの番だ!シャドークロー!」

 

「ワオン!」

 

「グギャ!?」

 

「まだまだ!しねんのずつき!続けてライジングテール!!」

 

シャドークローで頭をぶっ叩き、しねんのずつきで顎を勝ち上げ、ライジングテールで頬を張り倒す!よろよろと後退するメガブラキディオス……真骨頂を発揮される前に、このまま仕留める!!

 

「(叔父さん、『アレ』を使うわ)」

 

「(ええ、よくってよ)」

 

「「うわあああああ!!/ウオオオオオン!!」」

 

私の合図と同時に、ジンオウガが思い切り地面を殴りつけた。その衝撃で大岩が浮かび上がり、さらにその岩を伝ってジンオウガが高く高く上昇する。

 

「な、なんだ!?何をする気だ!?」

 

「あ、あれは、まさか!!」

 

「……ん?シズカ、知ってるのか?」

 

「間違いない……あれこそは究極最強、超ド級の必殺技にして完全無欠の最終奥義!」

 

「え」

 

空高く舞い上がったジンオウガが、右前脚に電力を集中させる。その結果、纏われた電撃が大きく、さらに大きくなっていく!

 

「スーパー!!」

 

「「イナズマ!!/(イナズマ!!)」」

 

「「キッッッーーク!!!/(キッッッーーク!!!)」」

 

「ええい、ブラキディオス!ブラキブラストブロー!!」

 

「ディオオオオオオオオオッ!!」

 

超巨大化した電撃の前足を、超高度から全速力でメガブラキディオスに叩き込む!!メガブラキディオスも大技で対抗してくる!!爆炎と雷撃とがぶつかり合い、激しく火花を散らす!!

 

「いっけェェェェ!!」

 

「ワオォォォォン!!」

 

次の瞬間、炎と雷を伴った爆発が起こり、周囲一帯があっという間に包み込まれた。これじゃあ、状況がよくわからない……!

 

「……キック?」

 

「キックですよ、足ですから」

 

「いや、前足……うん、足ならたしかにキックだな、うん……(それでいいのか……?)」

 

少しずつ、煙が晴れていく……立っているのは……!

 

「……キュ~……」

 

「ワオオオォォォォォォン!!」

 

勝った!ジンオウガが、私達が勝った!!

 

「……悔いはない」

 

ブラキディオスをボールに戻し、歩み寄ってきたクロノが呟く。どこかスッキリとした表情で、本当に悔いがない様子だ。

 

「流石だよ、言うことねぇ……大したものだ、お前ってやつは」

 

「クロノ」

 

「絆の力、見せてもらったぜ。……約束通り、黒龍へのお目通りを許してやろう。

 

さあ、こいっ!!」

 

クロノが片腕を上に突き上げると、時空の裂け目に変化が起きた!なんと、時空の裂け目の向こう側にうっすらと廃墟と化している城の風景が逆さに写って見えたのだ!

 

「あ、あれは……」

 

「シュレイド城!」

 

「え!?あれが、シュレイド城……」

 

いつの間にかそばに来てくれた静香さんが、同じく見上げながらそう言った。あれがシュレイド……向こうの世界で栄華を誇りながら、ミラボレアスに滅ぼされた国……。

 

「ククク……」

 

いつの間にか、クロノの周囲を黒い靄が包み込んでいた。完全に見えなくなったクロノの姿……それと同時に靄が物凄い速度で空高く登っていく。

 

 

――ハーっハッハッハ!見さらせ、ショウ!!これこそが最強の生物!――

 

――ありとあらゆる森羅万象を超越せし、究極龍の姿だぁ!!――

 

 

どこかから木霊するクロノの声……それと同時に靄が次第に巨大化していき、そこから尻尾、翼、手足の順に靄から姿を見せていく。そして、最後に見せたその顔は――

 

 

 

 

推奨BGM

【舞い降りる伝説】~モンスターハンターシリーズ~

 

 

 

 

あの時、アルセウスとともに見た、黒き龍……!!

 

「ミラ……ボレアス……」

 

「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!」

 

か、体が震える……心胆寒からしめるとはこのことか……。後退りをする足が止まらない……「今すぐ逃げろ」と全神経が訴えてきている……死のイメージが、こうも濃密に叩きつけられる……!

 

「ショウ、しっかり!!」

 

「し、静香さ……わ、わた……私……!!」

 

明確な殺意を持って呪いをかけてきた存在……わかっていても、恐怖を抑えきれない……!今だって、静香さんが声をかけてくれなければ、足がもつれて腰が抜けるところだった……!

 

「……くっ!ショウ、ここは逃げるよ!!光輝さん達も満身創痍だし、なにより戦力が足りない!!」

 

「それには激しく同意する!ショウ、ひとまずは体勢を立て直すぞ!!」

 

「は、はいっ……!」

 

「光輝さん!バトル後で悪いんだけど、足になって!!」

 

「ワン!!」

 

光輝さんの背に乗せられ、私たちは一目散に撤退する。……これが、ミラボレアス……私達、本当にアレに勝てるの……?

一抹の不安を抱きながら、私たちはコトブキムラまで退却した。

 

 

 




もはや語るまい……


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【ついに来た!】我らモンハン部異世界支部【最終決戦!!】

1:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

俺様が~

ヒスイ地方に~

キタ━(゚∀゚)━!

 

2:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

来るな

 

3:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

帰れ

 

4:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

お出口は頭上です

 

5:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

ヒューッ!辛辣ぅ!!だが今の俺様は寛大だからな、特別に聞かなかったことにしてやる

 

6:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

無敵かよコイツ、無敵だったわ

 

7:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

シンオウ三龍の結界を突破してきやがったのか……!

 

8:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

多少手こずりはしたが、原理さえわかってしまえばこっちのものよ

こちとら森羅万象を超える龍ぞ?ポケモン風情が何するものぞ!

 

9:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

しかし、世界の一部を上書きするとは大胆な真似をする……いや、それが可能になるほど世界同士が近づき合っている、と言っていたな

 

10:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

クッハハハハ!そう、その通り!もはや誰にも止められんよ、俺様がこの世から隔絶されぬ限りはなぁ!!

 

11:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

そうはいかねぇ!俺たちは何が何でもお前をぶっ倒して、世界の融合を止めてみせる!!

 

12:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

言うだけなら容易いんだよ!テメェ、俺様のイミテーションを相手に随分と手こずっていたようだが?あれからちったぁ成長したようだが、どうなんだ!?えぇ!?

 

13:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ちっ……言ってくれるぜ

 

14:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

そのちょっとの成長が、お前をあっという間に乗り越えさせてくれるかもよ?

 

15:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

人間と元人間を甘く見ないほうがいいわよ、ミラボレアス

 

16:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

ふんっ、今更侮ったりなどせんわ!トレーナーとモンスターに加えて、ハンターまで出揃ってるんだろう……むしろ油断する方が阿呆だ

 

17:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いっそ慢心してくれてたほうがよかったが……やはりそう簡単にはいかんか

 

18:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

ここんとこずっと負けっぱなしだからな、そろそろ勝ち星をもらいに行くぜ

 

19:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

その一回の勝ちでこっちの全部が総取りされるとかクソゲーすぎる

 

20:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

ようは勝ちゃあいいんだよ、勝ちゃあよ

 

21:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

最後に勝つのは俺たちだ……ぜってぇに勝たなきゃなんねぇ!!

 

 

 

 

――「第一の時間神」が参加しました――

 

――「第二の空間神」が参加しました――

 

――「第三の反物質神」が参加しました――

 

 

 

 

22:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

ごめんなさい!突破されました!!

 

23:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

不覚、森羅万象を超越せし龍、侮りがたし

 

24:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いや相手はミラボレアスだ、責めるつもりはない

 

25:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

無垢なる世界、その万象一切を無に帰す黒き龍……その超力たるや、全なる母より分たれし我らを以てしても瑣末な枷にも劣るらしい

(この世全てを滅ぼすミラボレアス……僕たちの力程度じゃ、時間稼ぎにもならないのか!)

 

26:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

うっ

 

27:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

くっ

 

28:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

そろそろ耐性がついてきたか?

 

29:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

ぐっはぁ!?

 

30:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

ねぇ、なんか飛び火してるわよ?

 

31:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

ミラボレアスェ……

 

32:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

お前にもそんな過去があったのか……

 

33:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

お、俺様とて若気の至りと呼べる時代があったんだよ……

 

34:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

わかるぜ、その気持ち……

 

35:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

認めたくないものだな……自分自身、若さ故の過ちというものを……

 

36:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

やめろ、名言が汚れるだろロリコンが……あ、発言元もロリコンか

 

37:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

シャアはロリコンちゃうやろがい!アイツぁマザコンだ!!

 

38:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

シャア・アズナブル女性遍歴

 

ララァ・スン 17歳 シャア 20歳(3歳差)

ナタリー・ビアンキ 19歳 シャア 21歳(2歳差)

レコア・ロンド 23歳 シャア 27歳(4歳差)

ナナイ・ミゲル 24歳 シャア 34歳(10歳差)

 

結論:年下としか交際していないシャアはロリコン

 

 

なにか異論は?

 

39:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

   / ̄ ̄ヽ ̄ ̄\

   ∠  レ |  ⌒ヽ

    \__ノ丶  )|

     (_と__ノ⊂ニノ

 

40:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

弱すぎィ!!

 

41:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

……おかしいな、騒動の元凶が目の前にいるのに和気藹々としてる気がする……

 

42:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

であるぞ

 

43:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

次元を隔てり異なる地の交わり、知恵の果実は今だ解を示さず……

(天冠の山麓をシュレイド城に上書きするとはどういうことなんですか?)

 

44:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

なんて?

 

45:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

あ、ミラボレアスには解読できないのか

 

46:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

祖龍からの好意で俺たち目線だとギラティナの厨二語が自動翻訳されてるからな

 

47:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

ディアルガとパルキアは?

 

48:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

同じ親のもとに生まれた兄弟ですよ?当然、わかります

 

49:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

であるぞ

 

50:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

いい機会だから、こっちからも聞かせてもらおう……天冠の山麓をシュレイド城に上書きするとはどういうことだ?シュレイド城がこちらの世界に来るということか?

 

51:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

なんだ、それが聞きたかったのか……いいだろう、説明してやるとするか

キサマら、時空の歪みという現象については既に知っているな?

 

52:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

散発的に発生するDBDみたいなものでしょ?

 

53:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

でぃーびーでぃー?

 

54:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

【dimension border distortion】……いわゆる、次元境界線歪曲現象のことだな、とあるシミュレーションゲームに出てくる用語だ

たしかに、本来生息が確認されていないもしくは存在自体がありえないポケモンなどが紛れて出現するあたり、葵の認識は間違いじゃない

 

55:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

そう、キサマらにわかりやすく言うなら、アレを永続的に発生させて天冠の山麓をシュレイド城で丸々存在を書き換えるということだ

 

56:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

わかりやすく言っているが実際にやることはもっとえぐいぞ、天冠の山麓をシュレイド城に変えてしまうわけだから、元々天冠の山麓にある物、いる者はすべて消滅することになる

 

57:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

我らが母が作り上げし世界を汚すつもりかッ!!

 

58:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

そうだ!汚して、平らげる!根こそぎ、すべてを!跡形もなくなぁ!!

 

59:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

貴様……!!

 

60:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

あなたは……あなたという人は……!!

 

61:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

仮に計画が成ったとして、お前の言い分を信用するならこちらの世界と向こうの世界が『シュレイド城』が楔となって擬似的に繋がるということか?

 

62:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

流石は水橋流静、理解が早いな

そう、シュレイド城が中継点となって二つの世界を一つにする!だが、二つの世界をつなぐ中継点にするには同一テキストの物体が必要となる……そのために天冠の山麓をシュレイド城へと上書きし、二つのシュレイド城を存在統合することで、シュレイド城は晴れて中継点となるのだ

 

63:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

そのために、天冠の山麓に住むポケモンを犠牲にしようってのか!

 

64:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

すべては憎き青い星に復讐するため……そして、今度こそショウの息の根を止めるため!

 

65:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

おのれぇっ!!

 

66:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

おっと、キサマら如き半端龍共が勝てると思うなよ?伝説と謳われるキサマらが一匹につき一つしか力を持っていないのに対して、俺様はひとりで全てを持っている……この意味が分かるな?

 

67:第一の時間神 ID:PMDPtNO.483

くぅっ……

 

68:第二の空間神 ID:PMDPtNO.484

……悔しいですが、私達が束になっても勝てるか……

 

69:第三の反物質神 ID:PMDPtNO.487

…………

 

70:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

まぁ、そいつをぶっ飛ばすのは俺らの役目だからな、任せてくれ

 

71:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

……そうだ!いっそヒスイ地方をシュレイド地方に変えてしまうか!これは面白くなりそうだ!

 

72:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

そうなりゃシュレイド城だけじゃなく、周辺地域も間違いなく巻き込まれるぞ!

 

73:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

なっ……一地方が丸々ってなると、被害だって馬鹿にならないわよ!?

 

74:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

フィジカルで劣るポケモンたちじゃ、モンスター相手じゃ生き残れないぞ!ただでさえモンスターが技や特性を獲得したことでポケモン側の優位性がなくなってるってのに……

 

75:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

歴史が……いや、世界そのものが変わってしまうぞ!

 

76:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

モンスターがポケモン世界を蹂躙し、モンスターボールがモンハン世界の様相を変える……まるで地獄絵図だ、絶対に阻止してやる

 

77:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

クハハハハハハハ……やれるものならやってみろ、今度の俺様は本気も本気!原初の黒龍の力、存分に見せつけてやろう!!

 

 

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が参加しました――

 

――「赤いなぁ……」が参加しました――

 

 

 

 

78:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

ボレアス……!

 

79:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

おぉ、バルカン!それにルーツか……一足遅かったな、俺様は既に動き出した!それとも直接手をくださずとも、どうとでもなると考えているのか?

 

80:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

……そうね、私が直接どうこうするまでもないでしょう

 

81:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

ハッ、現地民とモンスター、それにハンターだけでどうにでもなると?今や俺様もまた、技巧種としての進化を果たした……ポケモンが持つ技と特性、それを我々の世界の生物が持てばどうなるか、知ってるはずだろう?

ショウにも、青き星にも……そして、バルカンを倒したアンタのお気に入りのあの男も!

死んでもらう、今度こそ

 

82:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

ムリよ……

 

83:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

あ?

 

84:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

あなたなんかに、彼らは倒せない……私にはわかる、負けるのはあなたよ

 

85:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

……あぁ!?やってみろよ!!

 

86:祖なるものらしいよ? ID:MH2nddosHr999

世界の融合、シュレイド城の召喚……あなたがその気なら、私にも考えがある!!

 

 

 

 

――「祖なるものらしいよ?」が退室しました――

 

 

 

 

87:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

……ふん、「考えがある」と言いながら、この場を去るとはな……

 

88:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

いや、正直ああなった祖龍がなにをやるのか、俺にもさっぱりわからんぞ

相応の覚悟はしておけ、ボレアス……お前は、祖龍に喧嘩を売ったんだからな

 

89:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

今更古龍の一頭二頭増えたところで、この俺を超えることなどできぬぅ!煌黒とは違うんだよ、煌黒とは!!

 

90:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

……そうか

では、俺も祖龍の手伝いをするか、何度も言うがボレアス……

 

91:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

覚悟しろ、というのだろう?どんな手を使うのやらまるきり想像つかないが……まぁ、その時が来たら腹をくくろう

 

92:赤いなぁ…… ID:MH2nddosHr998

やれやれ……

 

 

 

 

――「赤いなぁ……」が退室しました――

 

 

 

 

93:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

……ルーツ、何をする気なんだ?

 

94:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

あの女の考えることなんぞ埒外ぞ、同種にして半身たる俺様やバルカンにだってわからん時がある

 

95:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

お前やバルカンにわからねぇんじゃあ、俺らにもわかるわけねぇか

 

96:世界絶対滅ぼすドラゴン ID:MonHunHr30

……ふん、向こうが備えをするというのなら、こちらも万全を期すまでよ

キサマらも準備を怠ることなく挑みに来るがいい、俺様はいつまでも待っているぞ……まぁ、俺様が待っていられるだけの時間が残されているならなぁ!!

 

 

 

 

――「世界絶対滅ぼすドラゴン」が退室しました――

 

 

 

 

97:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

……まったく、次から次へと厄介事が舞い込むな

 

98:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

難しく考えるこたぁねえ、ようは勝てばいいんだからな

 

99:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

……だな、次がいよいよ最後の戦いってわけだ

 

100:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

一部、問題が残ったままになっているが

 

101:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

流静……

 

102:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ないものねだりをするつもりはない、俺は最悪このままで行かせてもらう

 

103:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

メガシンカ無しだと、この先かなりキツいぞ?

 

104:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

二度も言わすな、ないものねだりはせん

 

105:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

……わかった

どうやらショウ達も決戦に向けて準備を始めるそうだ、今回のスレはここまでとしよう

 

106:鎧の覇者 ID:MH2ndpspHr8

次のスレは……

 

107:零下の白騎士 ID:MH3riWiiHr8

決戦のあとで!

 

108:大洋の支配者 ID:MH3riG3DSHr9

ミラボレアスに勝って……

 

109:天空の閃槍者 ID:MHF-G3

世界に平和を取り戻す!

 

110:久遠に刻まれし悠久の凶禍 ID:MHF-G5.1

何が何でも勝利して、生き延びてやるわ!

 

111:無双の狩人 ID:MH3rdpspHr7

よしっ……やろうぜ、みんな!!

 

 

 

 




書く事がない……けどほかの作者様だと割とこれくらいの人が多いよねぇ。もし次を書く機会があれば、今よりも一話あたりの文字数をひかえめにしようかな?


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舞い降りる伝説

クロノとの決戦を制し、勝利することができた私。けれど、その直後にミラボレアスがヒスイ地方に降臨し、天上に逆さに映りこんだシュレイド城が見えるという異常現象が起こった!

クロノとのバトルで傷ついている上に、圧倒的戦力不足で一時撤退を余儀なくされた私たち……。光輝叔父さんも疲れた体に鞭打って、私達を山頂ベースまで運んでくれた。流石に無理をさせすぎたので、今はボールの中で休んでもらっている。

改めて、テンガン山へ目を向ける。逆さのシュレイド城を中心にまるで空間が歪んでいるかのように空がぐにゃぐにゃになっている……ディアルガが暴走した時の比じゃない、不気味な異常さが見て取れる。

 

「あれ……状況が悪くなるとどうなるんですか……?」

 

「勘だけど、シュレイド城の全貌が見えてくるほどやばくなると考えていいよ。ミラボレアスはシュレイド城に留まらず、シュレイド地方全体でヒスイ地方を押し潰そうとしてくる……いや、ミラボレアスがシュレイド地方ごとこの世界に完全降臨すれば、この世界の全ての生き物の死は確定すると思っていい。それぐらい、あいつはやばい。

黒い龍……何もかもを黒く焼き尽くす、死を告げる龍。人類種の天敵……それが、ミラボレアスよ」

 

「…………」

 

静香さんの声が、震えている。握られた拳にも、その震えが伝わっているかのようだ。あの静香さんにここまで言わせるとは……。

 

「ショウ、ゼルレウスを回復させ次第、すぐにコトブキムラへ向かおう。可及的速やかに、対策を練らなければならない。時はないと考えるべきだろう」

 

「……ですね」

 

アカイさんに言われるまま、私達はゼルレウスに乗りコトブキムラに帰還する。ムラに着いて早々、私たちはギンガ団本部前で空を……いや、テンガン山を見ていた団長達に合流した。

 

「ショウ!」

 

「先輩!」

 

「ショウ!これは……一体、何が起こっているのだ!?」

 

「団長、説明します……」

 

私は事の仔細をみんなに話した。クロノとのバトル、ミラボレアスの降臨とその目的。遥か天上に見える廃墟……シュレイド城のこと。

 

「マジかよ……他所の世界の地域をまるまる引っ張って来るとか、とんでもねえ化物じゃねぇかよ……!」

 

「シュレイド城と、その周辺一帯に相当するシュレイド地方を使ってヒスイ地方を上書きする……ヒスイ地方が跡形もなく無くなってしまう……!」

 

「ぐぬぬぬ……ディアルガとパルキアの問題でさえ厄介であったというのに、この上さらにそれを超えるほどの事態が起きるとは……!!」

 

セキさん、カイさん、デンボク団長がそれぞれミラボレアスの所業を信じられない・ありえないといった風に聞いていた。シマボシ隊長やラベン博士は完全に絶句しており、言葉が出てこない様子だ。

 

「ミラボレアス……!」

 

「くそっ……やはりあの時、俺が逃がしさえしなければ……!!」

 

「泣き言は後だ、ニールくん。今は如何にミラボレアスを討伐するかを考えるんだ」

 

「…………」

 

ネネさんは表情を険しくし、ニールさんは悔いている様子。シュラークさんは冷静に事態を見据え、対抗策を練るよう促している。……ヒューイさんが無言なのは逆に怖い。

 

「……いや、今は黒龍の力に畏怖している場合ではない。全員、ひとまずギンガ団本部に集まり、作戦会議を開く。セキ、カイ両名は各団にいるモンスター使役特許保持者に集合を掛けよ!」

 

「「あぁ!/わかった!」」

 

「ムベ!聞いていたな?お前も来るのだ!」

 

「相分かった」

 

いち早く行動を起こしたのはデンボク団長だった。まずセキさんとカイさんにそれぞれモンスター使役特許保持者……つまり、ワサビちゃんとガラナさんを呼んでくるように頼み、自身もムベさんを呼びつけて本部へ踵を返していく。おぉ、驚きでちょっと反応が遅れちゃったじゃないか。

ギンガ団本部に、ワサビちゃんとガラナさんも集まり、ハンターも含めた『対黒龍対策会議』が緊急で開かれた。

 

「さて、まずはミラボレアスと交戦経験のあるハンター殿から意見を聞きたい」

 

「……それは――」

 

「勝てんぜ」

 

ニールさんが口を開いた直後、それを遮るようにヒューイさんが声を張った。

 

「ヒュ、ヒューイ殿!なにを!?」

 

「だから、勝てんと言ったのだよ、俺は。まぁ、正確には『上手く立ち回らないと勝てんぜ』と言いたいのだが、立ち回りや仕合運びを抜きに考えても、厳しいと言わざるを得ん」

 

「……その心は」

 

「おう、全部言わんとわからんか?ミラボレアスとケリをつける、あの戦場が全てを物語ってるだろうが」

 

……どういう意味だろう?私も先輩も首を傾げるが、静香さんが苦々し気な顔で、重く口を開いた。

 

「……兵器が足りない。ヒューイさんだって、己の腕一本でミラボレアスを倒したわけじゃない。狩場となるシュレイド城に残された兵器も上手く使いこなして、自分に有利になるように立ち回りを心がけていた」

 

「それだけじゃない。あそこはただ空間が広いだけの平野も同然で、隠れられる場所も何もない見晴らし100%の空間。……シュレイド城を覆い尽くすほどの"劫火"を放たれれば、逃げ場がない。ポケモンの技には"まもる"って技があるけど、あの時は五頭以上のモンスターが重ねがけをしてもアルバトリオンのエスカトンジャッジメントを防ぎきれなかった。そして、ミラボレアスの"劫火"はエスカトンジャッジメントの威力を優に超える……つまり……」

 

静香さんに続いて、ニールさんもそう言った。圧倒的な兵器不足と、障害物の無さ……それが、ミラボレアスと戦う上で致命的だというのだ。ヒューイさんが小さく頷いていることから、正解らしい。

 

「……そういうわけなんだわ、団長殿。そして、モンスターボールが流通しているこのヒスイ地方じゃ、ポケモンを直接傷つけるような兵器類は存在しない……まして、源龍亜目の攻撃を凌げるような防衛手段もない。

こう言っちゃアレだが、この世界には自分たちよりも巨大な存在に対する対抗手段が乏しすぎる。今からあれこれこさえても、それこそ付け焼刃もいいところだ。モンスターを使役しているとはいえ源龍亜目とそれ以外の種族など、空から大砲をぶっぱなす飛行船に弓矢でちょっかいかけるようなもんだ。生物としての格が違いすぎる」

 

「……やはり、伝説の狩人といえど黒龍討伐は一筋縄ではいきませんか」

 

「俺ぁ、無敵の人じゃないんだぜネネちゃんよぉ?あれこれ準備して、様々な可能性を考慮して策を弄し、現地の兵器とか必死こいてやりくりして、やぁっとぶちのめせたんだぜ?

だから、文字通り何もない祖龍との戦いは、本当に死を予感したよ。まぁ、結果的に引き分けたが」

 

あ、あのヒューイさんでさえ事前準備を念に念を押して、石橋を叩きに叩きまくって備えをして、即席のアドリブも多分に交えながらミラボレアスを倒したのか。……ん?それじゃあ、現地に兵器類がなかったミラルーツとの戦いはどう乗り切ったんだ!?

 

「トレーナーの安全も考慮すりゃ、ミラボレアスとの戦いは決して楽なもんにゃならねぇ。なんかの拍子でミラボレアスがトレーナーを直接狙ってこねぇとも限らねえんだ。ハンターをトレーナーの護衛にするのも手だが、かといってハンターという戦力を出し惜しんで勝てるわけもねぇ。

詰み一歩手前、ってとこだ。さて、どうやって勝つかな……」

 

「……ヒューイ殿でも、流石にすぐさま実行できる策が思いつかないか……」

 

「おぉ、せめて予兆でもありゃ、まだ事前準備に取り組むくらいは出来たんだが……なんかせ、急な出来事だったもんでな」

 

考えること、やるべきこと、そのために必要なもの……何もかもが足りなさすぎる。完全に後手に回ってしまった……これは、ミラボレアスが一枚上手だったという他ない。かつて一度、ミラボレアスに勝利したヒューイさんですら、現状で出来ることが少なすぎると嘆くほどだ。

 

「せめて、俺らが使ってたようなバリスタや大砲がありゃマシなんだが……」

 

「ミラボレアスがいるあの空間は、ポケモンの技に対応できるように地形が変化することはあれど、龍宮砦跡のように兵器が埋没しているというわけではなさそうです。望みは薄いかと……」

 

「なおさらキッツイな。特に何が一番キツイかって、あれだ……撃龍槍がない(・・・・・・)

 

その言葉に、ハンターのみんなは大きく目を見開いた。静香さんとニールさんは歯を食いしばり、シュラークさんも腕を組んで黙り込んでしまった。

ネネさんも俯いてて……いや待て、あれは静香さんの歯軋りに耳をすませてないか?体が若干だが静香さん側に寄ってってる。

 

「撃龍槍……って言ったら、あれか。でっけぇティガレックスをぶちのめすのに使った……」

 

「そうだぜ、セキ。古龍やそれに匹敵する古龍級生物を狩猟する場合、モンスターに対する迎撃用兵器の中でもトップクラスの威力を誇る代物。まさに最終兵器と呼べるに相応しいものだ。例外はあれど、人類存亡の危機に陥れるような危険なモンスター相手には、この手の兵器がよく使われるもんだ。

だが、今回ミラボレアスと戦うあの戦場には、撃龍槍も含めたあらゆる兵器が存在しない。ドンドルマやシュレイド地方にある超ド級大砲『巨龍砲』もだ。ないないづくしの中で、技巧種となり文字通り千を超える手練手管を弄してくるミラボレアスと対峙する……ここにいる連中じゃなけりゃ、どいつもこいつもが尻尾巻いて逃げ出す状況だぜ?」

 

勝つのは難しい、勝率は低い、勝算はほぼない……そう言いながらも、ヒューイさんから戦意が薄れる様子はない。むしろ、話せば話すほどますます意気軒昂といった様子で、感情が高ぶっているのが傍目でもわかる。

 

「俺ぁ、いろんな状況、あらゆる条件下で多くのモンスターを狩猟してきた。理不尽な条件をつけられたこともあった。埒外な報酬金をちらつかされたこともあった。無論、俺だって受けたいクエスト、受けたくないクエストってのはある。だけどな……ミラボレアス、奴を殺れっていう話なら、タダでも喜んでやるぜ」

 

ヒューイさんが振り返り、静香さん達ハンターに拳を突き出す。

 

「どうだ、お前ら。我ら人類は滅亡の危機に立たされた。ミラボレアスは須らく世界を隈なく、例外なく滅ぼす。撤退は不可能。状況は最高。乗るか、反るか」

 

「わざわざ言わせたいんですか?乗りますよ、当然」

 

まず最初に、静香さんがヒューイさんの拳に己の拳を当てた。

 

「自分で蒔いた種だ、自分で狩らせてもらう」

 

続けて、ニールさんが。

 

「そのために、俺達はここにいる」

 

「姉さまが行くならばどこまでも。たとえ地獄でも世界の果てでも」

 

シュラークが、ネネさんが、拳を突き出し合わせていく。……すごい、ハンターのみんなはこんな状況でも全く絶望していない。それどころか、より一層闘志を激しく燃やしている。

 

「よし……デンボク団長殿、我らハンターは既に覚悟完了済みだ。そちらはいかがかな?」

 

ヒューイさんは、今度は私たちに覚悟を聞いてきた。そんなの、聞かれるまでもない!

 

「……元より、覚悟は決まっている」

 

「うむ。我らの新天地を守るために」

 

「たりめぇだ!」

 

「相手が誰であろうと、戦い抜くのみ!」

 

上からデンボク団長、ムベさん、セキさん、カイさんだ。

 

「ヒスイはみんなの場所だもん!」

 

「守り抜きましょう、何が何でも」

 

ワサビちゃん、ガラナさん……!

 

「アルセウスが創造せしこの世界を滅ぼそうなど、ワタクシが許しませんよ」

 

ウォロ……相変わらずだな!

 

「ショウ」

 

「先輩……」

 

「大丈夫だ、ショウ。今度は、みんながいる。おれだっている……必ず勝とう!!」

 

「……はい!!」

 

テル先輩……そうだ、あの時、初めてミラボレアスと出会った時はアルセウスが一緒だったとはいえ、実質私一人だった……けど、今は違う。こんなにも沢山の頼れる仲間がいるんだ……みんなと一緒なら、必ずやれるはずだ!

 

「……ヒューイさん、私達も全員、同じ気持ちです。私達も戦います。必ずミラボレアスに勝ちましょう!」

 

「……へへっ、そうこなくっちゃな!さぁ、団長殿!やることは多いぞ、早速行動に移そうじゃないか!」

 

「うむ」

 

そうして、対ミラボレアス戦を想定した様々なパターンでのシミュレーション、ヒスイ地方から住民を逃がすか否かの相談、ヒスイ地方の資材で可能な限りの兵器製造、モンスターとトレーナーの組み合わせ等等……やることがすっごく多い!

 

「皆、ここにいたか」

 

「アカイさん!?」

 

「おぅ、アカイ。シロんとこに行ってたんだろ。あいつ、なんつってた?」

 

と、ここで途中から姿が見えなくなっていたアカイさんが部屋に入ってきた。しかもヒューイさんが言うには、シロちゃんに会いに行ってたとか……いや、いつの間に。それに、シロちゃんもどこに行っちゃったんだろう……?

 

「シロが言うには、一ヶ月の猶予があるらしい。その間に、出来ることをやっておくぞ」

 

「一ヶ月、一ヶ月か……まぁ、無いよかマシか。よっし!んじゃあ、その期間でバリスタを製造するぞ。この際、大砲とか贅沢は言わねぇ」

 

「組み立て式バリスタか……まぁ、それくらいならこちら側でもなんとかなるか。ようは、二連装の巨大な弩だからな」

 

「そいじゃ団長殿、建築隊には俺から話を通しておこう。なに、案ずるな。設計図は俺の頭の中にあるし、書き出したものは全てを終え次第、逐次破棄するからよ」

 

「(まだ何も言っておらんのだが……)相分かった、そのようにしてくれ」

 

言うだけ言って、ヒューイさんはさっさと部屋から出て行ってしまった。うーん、行動が早い……いや、それだけもう時間がないってことだろうな。一ヶ月って、長いようで短いし。

 

「あの、アカイさん。シロちゃんは……」

 

「シロは祖龍とコンタクトを取っている。さしもの祖龍も、異世界を巻き込んだ半身の蛮行を見過ごすわけがないだろう、と」

 

「なるほど……」

 

「あ、それならアカイさんが仕えてる紅龍……ミラバルカンは?」

 

先輩の質問は目からウロコだった。そうだ、アカイさんだって仕えてるミラボレアス……紅龍ミラバルカンがいるじゃないか!そう思っていたけど、アカイさんは困ったように笑みを浮かべ、肩をすくめていた。

 

「紅龍はアテにできん。すまないな」

 

「えっ!?な、なんで……」

 

「本当にすまない。……『我が身を傷つけ追い詰めたあんちくしょうに誰が手など貸すものか!死ねっ!!あんのクソ野郎今すぐ死ねぇ!!』とにべもなく突っぱねられてしまってな」

 

「……ちなみにあんちくしょうって……」

 

「ヒューイだ」

 

「ヒューイさんェ……」

 

えぇ……そんな過去の遺恨なんて気にしてる場合じゃないだろうに……。

 

「まぁそれもあるんだが、一番は半身にして上位種たる祖龍があの男を囲ってるからなんだが。その影響は巫女であるシロにまで及んでいる。おかげで彼女まで……ハァ……」

 

「(あぁ、アカイさんがヒューイさんのことを嫌いなのって、そういうことだったのか)」

 

そりゃあ、親戚から預かった大事な娘が年の離れた(?)成人男性に恋焦がれてるなんてことになれば、預かった責任がある以上、無視できないもんね。

……そのわりには、夜になるとしょっちゅう会ってるみたいだし、うるさかったりするんだよねあの二人……なにやってるんですか、アカイさん。

 

「そういうわけで、紅龍の支援は期待できない」

 

「まぁ、ないものねだりは出来ませんね」

 

「それじゃあ、アルバトリオンの時とは違って、シロちゃんは一緒には戦えないってことか……」

 

「あぁ。そういうわけなんで、ショウ。黒龍と戦う時は、私にゼルレウスとラ・ロを預けてくれ」

 

「わかりました。先輩にはライゼクスを預けます。お願いしますね」

 

「あぁ、わかった!」

 

あとは、時間との勝負か……。この短い期間で、どれだけのことができるか……いや、とにかくやるしかない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

行動開始から二週間が経過した……。

 

「……ふーむ。組み立て式バリスタは三基がロールアウト、狩猟に必要なアイテムも数は少ないが量産は出来た。トレーナーとモンスターの連携も申し分ない……しかし」

 

ギンガ団の本部でそう言葉にしながらゆっくりと歩いて回るヒューイさん……。

 

「やはり撃龍槍及び巨龍砲がないのは痛い、痛すぎる。かといってこちらの世界の資材だけでは、あれだけの兵器を生産するには一ヶ月では足りない。加えて……」

 

ちらり、と目を向ける。その先にいるのは、私とガラナさん。

 

「……ラギアクルスに、進化の兆しが見られなかったのはマズイ。メガシンカするにはメガストーンが必要なんだが今日まで見つけられなかった上に、ショウが見せてくれたきずなへんげという現象も起こらなかった……」

 

「……っ、申し訳ありません。わたくしの不徳の致すところです!」

 

「いえ、ガラナさんは悪くありませんよ!メガシンカもそうですけど、これまでがむしろ都合良く事が起こりすぎたんです。今更理不尽なことが起こったって、驚きませんよ。それに、たとえメガシンカもきずなへんげもなくったって、ラギアクルスは戦う気マンマンですし」

 

この二週間、ガラナさんとラギアクルス……否、流静さんは鍛錬に励んでいたけど、メガストーンは見つからないしきずなへんげの兆しも無いしで、流静さんはともかくガラナさんは島キングの時以上に精神的に追い詰められているようだ。今だって、酷く焦燥した様子で頭を下げてしまっている……これはマズイな。

流静さん曰く、ガラナさんときずなへんげが出来ない要因には『ガラナさんの心情』が深く関わっているらしい。ガラナさんは自身が担当していた島キングを助けてもらった上に、今はこうして共に戦うことをゆるしてもらっていると考えている……つまり、流静さんとガラナさんのメンタルが対等ではないのだ。

きずなへんげは、『思いを一つにしなければならない』という絶対条件がある。そういう意味で言えば無意識下で流静さんを上に、自身を下に見ているガラナさんでは現状「不可能」なのだそうだ。そのことを内緒でアカイさんに相談したとき、すごく不思議そうな顔をされてしまった。

 

『可能性がある者なら、もう一人いるだろう。あのラギアクルスは、水橋流静だぞ?』

 

アカイさんが言う、もう一人のきずなへんげの素養の持ち主……それは、私と光輝叔父さんと同じ、『血縁の家族』という条件を満たしている――。

 

「……?ショウ、どうしたの?」

 

「静香さん……いえ、なんでもないです。大丈夫です」

 

「そう?なにか相談があるなら、いつでも言ってね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

静香さんも一時は盲信というか、執着じみた恋愛感情を実の兄である流静さんに抱いていたそう(ベリオロス……剣介さんから聞いた)。けど、光輝叔父さんや焔さんが言うには、「最近は憑き物が落ちたような顔をしている」らしい。そう、それこそまるで、流静さんが生前の頃は抱いていた執着心が薄れているかのような……。

あと、剣介さんは「ヤンデレって言うんだぜ」と教えてくれた。……ヤンデレ?

 

「仕方ない。出来ないからといって戦力から外すつもりはないぜ。ショウと共に戦ってきた以上、能力で劣る原種だろうがアテにさせてもらう」

 

「……承知しています」

 

むむむ……でも、静香さんがハンターとして前線で戦う以上、流静さんへの技の指示と並行しての戦闘はいくらなんでも酷が過ぎるというもの。やはりここは、ガラナさんに任せるしかないだろう……こればっかりはガラナさん自身が気付いて、改善しないといけない問題だから。

 

「よし。……狩猟時間も考慮して、こっからはなるべく巻きで行くぞ!」

 

バリスタ製造工程も急ピッチに入るようだ。私達も本部を出て、それぞれ為すべきことをするために行動する。……それもあるけど。

 

「うーん……」

 

「ショウ、どうしたんだ?」

 

「あ、先輩」

 

私が考え事をしていると、テル先輩が来てくれた。せっかくだから、相談しよう。

 

「いえね、ミラボレアスを撃退して平和を取り戻したら、ダイケンキ達を連れ出さなきゃいけないなって」

 

「え?どういうこと?」

 

「ほら、ヒューイさん達の世界……モンスターの影響を受けたポケモンって、強すぎるじゃないですか。だから、人の目の届かない遠い遠い場所に連れて行って、ひっそりと暮らしていけるようにしないと……。彼らの血を引いたポケモン達が、同じように成長しないとは限らないし」

 

「なるほど……未来で悪い奴らに利用されないように、情報を残さないってわけだな。確かにそれには賛成だ。興味本位で探られるのも、なんか嫌だしな。……すると、一旦はヒスイ地方を出て、どこか別の大陸を探すってことか」

 

「はい。……一応、私は未来から来ているので、私が知りうる地方は遠慮したいところですね。それ以外の地方で、けれど人の往来が容易ではない場所……」

 

「まぁ、その時が来たらのんびり探そう。ミラボレアスさえ倒せば、時間はたっぷりあるんだからさ!」

 

「そうですね!」

 

うん、やることはいっぱいだ。ミラボレアスに勝って、世界を平和にして、ダイケンキ達のための新天地を探して……未来を想像すると、ワクワクしてくる!明日を求める希望の心、人類の可能性……それを、ミラボレアスに見せてやるんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミラボレアスの計画達成まで、残り三日。組み立て式バリスタは計六基が完成し、メガシンカもラギアクルス以外は滞りなく可能とすることができた。バリスタは天冠の山麓の山頂ベースまでをゼルレウス達飛行可能な飛竜種に運搬してもらい、そこからは人力で運ぶ事になる。ギンガ・コンゴウ・シンジュの各団から「我こそは」と名乗り出た者達が、決戦場までの運搬・組立を買って出てくれた。

天上に映るシュレイド城の景色はあの日よりもだいぶ大きく、そして近くに感じられる。ここまで近づいているなんてとんでもないことだ……そして、計画が成ればシュレイド地方に上書きされてヒスイ地方が消滅する……そんなこと、絶対にさせるもんか!

 

「……さぁて」

 

先頭を歩いていたヒューイさんが振り返る。今回、彼の格好はギンガ団調査隊の隊服ではなく、私が拾った当時の鎧……クシャルダオラの素材で作った『クシャナシリーズ』……を、最新加工技術を駆使して作成した『クシャナXシリーズ』に身を包んでいる。どうやら発見当時のクシャナシリーズは最新鋭の真逆である最古豪と呼んでも間違いないほどに旧い加工技術で作られたものらしく、防具をアップデートしないままこちらの世界に来るまで狩りを続けていたらしい。シロちゃんを介して行っていたネネさんの定時報告を受けたあちらの世界の人達が「伝説の狩人にそんな襤褸は着せられない!」と無理矢理シロちゃんに押し付けて送りつけてきたらしい。

……それを知った静香さんやネネさんが、まるで宇宙を見るような顔で呆然となっていたのはちょっと新鮮だった。

 

「組み立て式バリスタ六基、バリスタの弾もそれなりの数は用意できたし、バリスタ用拘束弾もギリ三つまで出来た。……いやー、難儀したぜ。まさかこの世界の人間、物理的に生物を傷つける兵器類にここまで嫌悪感があったとは……世界の平和を守るためとはいえ、酷なことをさせちまったよ」

 

「必要経費です。プライドやポリシーのために世界を犠牲にはできませんから」

 

「厳しいねぇ、シズカは。けどまぁ、お前さんが建築隊のケツを蹴っ飛ばしてくれたおかげで、こうして間に合ったんだがね」

 

「憎まれ役は慣れたもので」

 

「姉さまぁ……」

 

そう、世界を滅ぼすものが相手とはいえ、生き物を直接的に傷つける兵器を作ることに、建築隊の反応はかなり悪かった。ただ、ここで静香さんが……

 

『命が惜しくない人は、そこら辺でイモモチでも貪ってりゃいい。自殺志願者にまで無理強いをさせるつもりはないから』

 

と、盛大に煽り散らした結果「やってやろうじゃねぇかよぉぉぉ!?」と建築隊一同、総激怒。ブチギレた勢いで組み立て式バリスタ及びバリスタの弾製作に励んだのだった。

 

「シズカの煽り能力、また一段とキレが増してたな……」

 

「ヒスイがダメになるかどうかなんだ、やってみる価値があると気づいてくれたんだろう。……と、思いたい」

 

「シュラーク殿……」

 

シュラークさん……でも、静香さんも割と本気で軽蔑してたような目をしてましたよ?まるで、そう、養豚場のポカブを見るような目を……。

っと、そうこうしている内に決戦場に着いたみたい。ミラボレアスは……いない、か。

 

「……よし、ミラボレアスは離席中だな。ゴシャの居ぬ間に洗濯、だ。バリスタを組み立てよう!」

 

「扇形に展開しろ!なるべく広く間隔をあけつつ、各所にバリスタを組み立て次第、バリスタ弾及び徹甲榴弾を装填!ただし、二基にはバリスタ用拘束弾を装填できるよう、可能な限り弾倉を空けておくように!」

 

シュラークさんの指示で、ギンガ・コンゴウ・シンジュの連合団が行動を起こす。ハンターのみんなもアイテムや武具に不備がないかを確認し、私達トレーナーも相棒となるモンスターが格納されたボールを手に取る。

 

「ショウ。作戦の要は、お前さんとジンオウガのきずなへんげにある。だが、あれはジンオウガと様々な感覚を共有すると聞いた。ミラボレアスは強い……だから、使いどころを見誤るなよ」

 

「初手ぶっぱなんて子供みたいなことはしませんよ。……大丈夫です。チャンスはしっかり見極めます」

 

「……来ます!!」

 

静香さんが見上げながら、そう叫んだ。シュレイド城の向こう……小さな黒点が見える。それが徐々に、徐々に近づいてきて……。

 

「グルルルル!!」

 

「……ミラ、ボレアス……!」

 

かつて私に呪いをかけ、そして今や世界を一つ滅ぼそうとしている破滅の黒龍、ミラボレアス……それが、私達の前に姿を現した!!

ミラボレアスは余裕を見せつけるように羽ばたきを繰り返しつつゆっくりと降下し、そして今、戦場に降り立った……!

 

「ミラボレアス……ここで、決着をつける!」

 

「ミラボレアスッ!!シュレイド城から始まり、異世界にまで続いたお前との因縁、ここで終わらせる!!」

 

「まったく……アタシ達の問題を余所様にまで持ち込んで……ホント、心底迷惑極まりない邪龍ですこと!」

 

「こういうのはガラじゃないんだが……世界の平和のためだ、この世界からご退場願おうか!」

 

静香さんのガンランスが、ニールさんの大剣が、ネネさんのライトボウガンが、シュラークさんのスラッシュアックスが、ミラボレアスに向けられる。その中でも、一際オーラが強い者……ヒューイさんが前に出て、背中に背負った太刀を抜いた。

 

「おう、ミラボレアス。若造がイキり散らすなよ。俺にはわかるぜ……お前さん、随分と若い個体だな?」

 

「……ッ!!」

 

「俺ぁかれこれ、ミラボレアスと呼ばれる古龍と三度戦っている。一度目はシュレイド城で黒いのと。二度目は火山地帯で紅いのと。そして、三度目……塔の秘境で、白いのと。

どいつもこいつも強かった、何度も己の死を予感した。そして、それら全部を乗り越えて、俺はミラボレアスにただの一度も敗北しなかった。そんな俺から、お前さんに一言言わせてもらう。

若いの、お前……弱いだろ?それもフィジカルが、じゃねぇ……メンタルが、だ!!」

 

「ギシャアアアアアアアアアンッ!!」

 

「逆ギレか?だが、事実だ!一度目の黒いのも!二度目の紅いのも!!三度目の白いのもっ!!俺は、俺が使えるあらゆる手段を使って戦った!そして、あいつらもそんな俺を相手に真っ向から立ちはだかってきた!!

三度、ミラボレアスを乗り越えた俺にはわかる!お前さんには、俺がかつてあいつらから感じたミラボレアス(最強の古龍種)たる誇り』ってもんが感じられねぇ!!そんなお前さんを相手に、膝を折るわけにはいかねぇわなぁ!?」

 

「(あの野郎……俺との死闘でそんなことを考えてたのか。フッ、なるほど道理で……祖龍が心底惚れ込むわけだ)」

 

ヒューイさんの宣言を受けたミラボレアスは、まるで怯んだかのように半歩後ろ足を引いている。こ、これが最強のハンター、伝説の狩人(モンスターハンター)……!すごい……こっちまで勇気づけられちゃった!

 

「ミラボレアス!ヒスイ地方は、あなたの好き勝手にはさせない!ここは私達の世界だ!!」

 

私がジンオウガを繰り出したのを合図に、みんながモンスターを繰り出していく。ジンオウガ、ゼルレウス、ラ・ロ、ラギアクルス以外のモンスター達が、一斉にメガシンカしていく!

 

「これで終わりにする……勝負だ!ミラボレアスッ!!

 

「ギシャアアアアアアッ!!!」

 

 

 

 




ミラボレアスが 現れた!! ▼


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最終決戦 ~禁忌の力~

BGMはお約束のアレを垂れ流しながらご覧下さい。


ついに始まった、ミラボレアスとの最終決戦!私達はすぐに散開し、ミラボレアスへの攻撃に移る!

 

「グラビモス、リフレクター!」

 

「ガムート、ひかりのかべ!」

 

まず、セキさんとカイさんが防御技であるリフレクターとひかりのかべで、耐久力を高める!この技は味方陣営全体に影響する技……今回の場合、グラビモスとガムートが「味方だ」と判断している全員に守りの壁が貼られたわけだ。

 

「ジンオウガ、とおぼえ!」

 

「ゼルレウス、おいかぜだ!」

 

ジンオウガのとおぼえで味方全体の攻撃力を高めつつ、さらにゼルレウスのおいかぜで素早さアップ!

 

「さらに!ジンオウガ、コーチング!」

 

『頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるってやれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ!そこで諦めるな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る北京だって頑張ってるんだから!』

 

「(うるっさ!?)」

 

コーチングは自分以外の味方の攻撃力と防御力を一段階上げる技だけど……こんなうるさいもんだっけ?あと、ペキンってなに?

 

「おぉ!?なんか俺たちにも力が漲ってくるぜ!」

 

「リフレクターにひかりのかべ……たしか、それぞれ物理技と特殊技の威力を減衰してくれるんだったか」

 

「ありがたい話ですわ。アタシのようなガンナーは総じて防御が低いものですから」

 

「これで、多少の被弾は気にならない……切り込む!!」

 

「援護しますわ、姉様っ!」

 

静香さんが一気に駆け出す。その速度はおいかぜの効果もあって、ブラストダッシュ並みの爆速だ。ネネさんも攻撃のためにミラボレアスに接近し、ある程度の位置からボウガンを構える。静香さんを追いかけるようにヒューイさん、ニールさん、シュラークさんも走り出す。

 

「うおっとぉ!?こりゃあ、大した速さだぜ!」

 

驚きながらも抜刀し、腕を振り下ろしてきたミラボレアスの爪と爪の間に体をねじ込んで回避し、そのまま腕に太刀を突き立てた。ちなみに、静香さんも爪攻撃を回避して、今はミラボレアスの後方に回り込んでいる。

 

「おっと!一番槍はハンターに奪われちまったか」

 

「何言ってんの、セキ。私達トレーナーの役目はバリスタの防衛兼ハンターの支援でしょ!」

 

「だが、見てるだけは性に合わん!後に続けセキ!往くぞ、ディノバルド!!」

 

「よっしゃあ!わかってるじゃねぇか、デンボクの旦那!行くぜ、グラビモス!カイ、後は頼んだ!!」

 

「ちょっとぉ!?」

 

あ、デンボク団長がディノバルドと一緒に走り出し、さらにセキさんがその後に続いた。上空では空飛ぶ飛竜組がミラボレアスの頭上からエアスラッシュで攻撃を仕掛けている。先輩とライゼクス、アカイさんとゼルレウスにラ・ロだ。

 

「(ミラボレアスはドラゴン単タイプ。加えてほのおとドラゴンに弱く、みず・かみなり・こおりに強い体質だ)」

 

『だが、見た感じほのお技もドラゴン技も、ミラボレアスに大打撃って感じに見えないな……もしかして、特性か?それも威力を半減するパターンの』

 

「(フィルターやハードロックと同じってこと?)」

 

『いや、あれらの特性でも減衰できるのは元々のダメージの3/4までだ。ミラボレアスの場合は、きっちり半分って感じだな。あれで向こうも壁を張ってきたら、半減の半減になっちまう』

 

1/2をさらに1/2だから……うわっ、ドラゴン単タイプなのもあって、実質弱点なしじゃん!

 

「(壁込みで最大1/4減衰か……随分と頑丈なことで)」

 

『気をつけていくぞ、ショウ。メタモンで予行演習したとはいえ、あれは体力まではコピーできないんだ。つまり、メタモンの時以上に時間がかかる……そして、ミラボレアスの計画上、俺たちに残された時間は少ない。焦って判断ミスしないよう、しかして迅速に奴を倒さなければならん』

 

「(わかってるよ、光輝叔父さん)」

 

遠目に見ても、ミラボレアスはモンスターからの攻撃にはあまり動じていないように見える。反面、ハンターからの攻撃には露骨に警戒しているのか、そちらへの対処を優先しているようだ。

ミラボレアスは一度腹ばいの姿勢になると、その場で一回転して周囲を薙ぎ払う。あれは、ティガレックスと同じ動きだ!けれど、そこは静香さん達ハンターだ。タイミングよく回避して、即座に反撃に転じている。

 

「ギギャオオォォ!!」

 

「うるさい、よっ!」

 

上体を起こし、たつまき攻撃で全体攻撃を仕掛けるミラボレアスに対し、静香さんはブラストダッシュでほぼ真上めがけて上昇する。そのままミラボレアスの上を取ると、思い切りガンランスを顔面めがけて叩きつけた!

 

「グルルッ!!」

 

「……っ」

 

だが、ミラボレアスも怯むことなく頭を振って静香さんを押し返すと、そのままかえんほうしゃをぶっぱなす。空中に投げ出されたところを狙い撃ちにされる静香さんだが、ラ・ロが器用に盾だけを掴んで救出、事なきを得た。

 

「仕掛けるぞ、テル少年!」

 

「わかりました!行くぞっ、ライゼクス!メガシンカッ!!」

 

先輩とアカイさんの指示を受けたゼルレウスとライゼクスが、ミラボレアスに突っ込んでいく。ゼルレウスがメガシンカを終えたライゼクスに向けて目配せすると、お互いに頷き合う。

 

「この日のために訓練した、コンビネーションアタックだ!」

 

「存分に味わえ、黒龍!」

 

「「エアカッター!」」

 

ミラボレアスの正面から突っ込むゼルレウスとメガライゼクス。ある程度まで弾幕を張ると、ゼルレウスが前に出た。

 

「よし。ライゼクス、でんげきは!」

 

「ゼルレウス、スタンバイ」

 

突撃しながら繰り出されたエアカッターがミラボレアスに襲い掛かり、動きを封じ込める。その直後にメガライゼクスが放ったでんげきはが降り注ぎ、さらなる押さえ込みにかかった。鬱陶しい、とばかりにきりさく攻撃ででんげきはを振り払うミラボレアスだが、その直後には既にゼルレウスが懐に飛び込んでいた。

 

「ハンター各員は離れていろ。ゼルレウス、ドラゴンクロー!」

 

ゼルレウスの翼爪にて展開されたドラゴンクローがミラボレアスの土手っ腹にぶち込まれる。ゼルレウスは足腰を踏ん張り一回転しつつ、そのままミラボレアスを空に勝ち上げた!

吹っ飛んでいくミラボレアスが体勢を整えようとした直前、横からすっ飛んできたメガライゼクスがゼクスカリバーを突き込み、そのまま掻っ攫っていく。

 

「行くぜ、新技!カリバー・バンカー!」

 

新技!?メガライゼクスはミラボレアスに突き込んだゼクスカリバーの電刃を射出!さらに吹き飛ぶミラボレアスに、すかさずエアカッターを浴びせていく!

 

「アカイさん、送ります!」

 

「貫け!ドラゴンダイブ!」

 

まるでミラボレアスを誘導するようにエアカッターを繰り出すメガライゼクス!そこへまっすぐにゼルレウスがドラゴンダイブで突撃していく!上空へとミラボレアスを押し上げるゼルレウスに対し、先回りしたメガライゼクスが攻撃態勢に入る!

 

「合わせろ、テル少年!」

 

「了解!ライゼクス、らいめいげり!!」

 

ゼルレウスが運んできたミラボレアスを、メガライゼクスのらいめいげりが地上へと叩き落とす!

 

「仕上げだ!りゅうせいぐん!」

 

「こっちもりゅうせいぐんだ!!」

 

ゼルレウスとメガライゼクスによるダブルりゅうせいぐん!ドラゴンタイプの最強技、それの二頭同時攻撃!降り注ぐ隕石に押し込まれ、地上に叩きつけられたミラボレアスにさらなる隕石の追撃が加わってド派手な大爆発を引き起こした!

 

「ラ・ロのようにはいかないけど……」

 

「いや、いい連携だった」

 

うん、実際見ててもすっごくいい連携だった。……空から見てたラ・ロが、遠目に見てもわかりやすく嫉妬しているくらいには。爆炎に包まれるミラボレアス……だけど……!

 

「ギギャオオオオオォォン!!」

 

「くっそぉ……てんで堪えないか……!!」

 

「だが、全くのノーダメージではない。絶えず攻めるぞ!」

 

「了解……!」

 

ミラボレアスは立ち上がった。見た目ではまるでダメージがないように見えるくらいには、かなり耐久力があるようだ。ミラボレアスは空を舞う飛竜達を睨みつけると、その大口を開けてりゅうのはどうを放った!しかもりゅうのはどうは途中で枝分かれしてそれぞれゼルレウス、メガライゼクス、ラ・ロに襲いかかった!

 

「マズイ!避けろライゼクス!」

 

「ちっ、味な真似を……」

 

「むぅ……いかんな。タマミツネ、メガシンカじゃ!」

 

「コオオオォォンッ!!」

 

ムベさんが動いたか!よし、私達も合わせて行こう!

 

「タマミツネ、マジカルシャイン!」

 

「ジンオウガ、はどうだん!」

 

メガタマミツネのマジカルシャインが追尾するりゅうのはどうをフェアリータイプで無力化しつつ、走り出したジンオウガのはどうだんを発射口であるミラボレアスの口部に撃ち込む!流石にこれには怯んだようでふらつき倒れこむミラボレアスへさらなる追撃を加える!

 

「ラギアクルス、りゅうのはどう!」

 

「ベリオロス、れいとうビーム!」

 

「迂闊ですわね、ミラボレアス!」

 

ラギアクルスのりゅうのはどう、ベリオロスのれいとうビームに加え、ネネさんの弾丸による連続攻撃!すかさずミラボレアスははかいこうせんで反撃に転じる……が!

 

「シズカ!」

 

「了解!」

 

射線上に立ったニールさんと静香さんが、それぞれ大剣と盾を使ってはかいこうせんを上空へと逸らした!

 

「隙は逃さない!」

 

「往生しろやぁ!」

 

「ディノバルド、つじぎりだ!」

 

「グラビモス、ストーンエッジ!」

 

攻撃のために動きを止めたミラボレアスへ、シュラークさんとヒューイさんからの追撃が加えられる!二人に対する反撃も、ディノバルドとグラビモスが技を挟むことで妨害できた。

 

「今だよっ、支援砲撃!」

 

「合図するっ!用意……撃ぇッ!!」

 

ワサビちゃんの声を受け、カイさんがバリスタ隊に合図を送る。ガムートの鼻の動きに合わせて、一斉にバリスタ弾が発射された。四方八方から降り注ぐバリスタ弾によって槍衾になるミラボレアス……それでもドラゴンダイブで周囲一帯を薙ぎ払いつつ体に刺さったバリスタ弾を振り落とす動きを見せた。くっ、まだまだ元気が有り余ってるか……。

 

「ちっ、余裕綽々ってか……バリスタ隊は一時待機!合図を待て!」

 

ヒューイさんの素早い指示で、バリスタ隊は息を潜めるようにして合図を待つ。過度に攻撃を加えすぎて、バリスタ隊がヘイトを集めるようなことだけは避けなければいけない。リフレクターとひかりのかべの効果ももうじき切れる……その瞬間をミラボレアスに悟られないよう、攻勢に出る!

 

「ジンオウガ、前へ!ミラボレアスのヘイトを稼ぐよ!」

 

「ワオン!」

 

「よし、しんそくだ!」

 

「タマミツネもしんそくじゃ!」

 

ジンオウガとメガタマミツネが縦横無尽に駆け回り、ミラボレアスを翻弄する。いいぞ、ミラボレアスはあの高速移動に対応できていない!

 

「こいつを喰らいやがれ!」

 

「フルパワーで行く……!」

 

「うおおぉぉぉぉ!!」

 

ヒューイさんの桜花気刃斬、静香さんのAAフレア、ニールさんの震怒竜怨斬がそれぞれミラボレアスに直撃する。特にヒューイさんの技……カムラの里のシキさんは翔蟲を使っていたけど、ヒューイさんは「いらんだろ」とのこと。静香さんは「なくてもできないことはない」って言ってたけど、本当にできるんだ……。

立て続けに繰り出される連続攻撃に、ミラボレアスは鬱陶しそうに顔を顰めると翼を大きく広げた……ぼうふうを使うつもりだな!?

 

「……拘束弾!」

 

「……装填完了!」

 

「撃ぇッ!!」

 

一発目の拘束弾が使われた!指示をしたのはヒューイさん、合図はもちろんカイさんだ。ミラボレアスから向かって右側から放たれた拘束弾は右の翼膜を貫通し、矢尻が左の翼膜を貫いたところで止まった。これでミラボレアスはしばらくの間、翼を使った攻撃及び飛行ができなくなった!

 

「……!?ギギャオオオオオオオオン!!」

 

翼を縫い付けられたと理解したミラボレアスが怒りの咆哮を上げた。拘束弾を放ったバリスタ台を見つけるなり、きあいだまで攻撃を仕掛けた!

 

「……!ムベさん、お願いします!」

 

「相分かった!タマミツネ、ミラーコート!!」

 

カイさんの言葉を受けたムベさんが間髪を容れずメガタマミツネに指示を出す。ミラーコートは特殊技であるミラーコートを反射して、逆にミラボレアスにダメージを与えた!

 

「ディノバルド、サイコカッター!」

 

「ライゼクス、チャージビーム!」

 

「ゼルレウス、もう一度おいかぜだ。そろそろ効果が切れるぞ」

 

「……よし、今なら大丈夫そうだ。グラビモス、リフレクター」

 

「ガムート、ひかりのかべ。もう一度お願い」

 

ちょうど効果が切れたリフレクターとひかりのかべ、さらにおいかぜも再展開され、戦線が崩れることなく順当に攻防戦が繰り広げられている。……それにしても、本当にタフなやつだな……!これだけ猛攻を浴びせているのに、いまだにケロリとしている……いや、長丁場になるのは確定しているんだ。下手に焦りを出すわけには行かない!

 

「グガオオオォォォ!!」

 

ミラボレアスが大きく吠える……口に蓄えたエネルギーを天高く放つ技……あれは、りゅうせいぐん!?

 

「りゅうせいぐんか!」

 

「な、なんて数だ!?」

 

セキさんとデンボク団長が空を見上げて驚愕している……それもその筈、今私達に見えている限りの広範囲に、りゅうせいぐんが展開されているからだ。あれでは、この戦闘領域の外……最悪の場合、天冠の山麓周辺にまで降り注ぐかも知れない!!

 

「くっ、ジンオウガ――」

 

「ダメだ、ショウさん!今はバリスタを守るんだ!」

 

「シュラークさん!でも……!!」

 

「気持ちは分かる……だが、ここで攻め手を欠くわけにはいかない!空でゼルレウス達も迎撃してくれている。彼らを信じて、バリスタを守るんだ」

 

「了解……っ!」

 

シュラークさんの言うとおり、上空ではメガライゼクスのほうでん、ゼルレウスのねっぷう、ラ・ロのドラゴンエナジーなど、広範囲に攻撃をする技で隕石を次々と撃ち落としている。さらに地上からはバリスタとその周辺に迫るものを破壊している。それでも撃ち漏らしというのは出るもので、戦場に落下するものならまだしも戦場の外へ落ちていくものも少なくなかった。

 

「(みんな……どうか無事で……!)」

 

「くそっ、好き勝手しやがって……!」

 

「調子に乗って……!!」

 

ディノバルドのアクアカッター(!?)をドラゴンクローで押し返し、さらにグラビモスのもろはのずつきをアイアンテールで弾き飛ばしながら、ラ・ロとゼルレウスのダブルりゅうのはどうをばくおんぱでかき消しているミラボレアス……くっ!わかってはいたけど、本当に強い!

 

「アイツ……ちっともバテる様子をみせないな……」

 

「技巧種化に伴って、色々とタガが外れたのかもな。まったく、腐っても源龍亜目ってわけか」

 

「今のところバリスタへのヘイトも逸らせているし、大技を見せる予兆もない……どのタイミングで最大火力を仕掛けるか、見極めないと」

 

「だったらミラボレアス最大攻撃である『劫火』をどうするか、だな。『劫火』を放たれる前に仕留めるか、なんとか『劫火』を凌いだあとに仕掛けるか……」

 

ネネさんを除くハンター達が集まって、臨時の作戦会議を始めた。ネネさん?ガムートと一緒に遠距離攻撃に徹してるよ。

今はちょうどラギアクルスがウェーブタックルを仕掛け、それを目くらましにメガタマミツネが妖泡をミラボレアスに放って泡まみれに。するとミラボレアスがほうでんで周囲を攻撃し始め、それをラギアクルスとジンオウガ、空はライゼクスが受け止めて無力化する。

 

「よしっ!」

 

「互いに無効化できるタイプの攻撃をフォローし合えば、最強の古龍の攻撃とて恐るるに足りません!」

 

「いっけー!ベリオロス!アイスサイクロン!!」

 

ベリオロスのアイスサイクロンが炸裂し、氷の竜巻がミラボレアスの視界を封じる!嫌がるように顔を背けると、竜巻に向かってほのおのうずを放ってこれを無効化した。けど、それこそを待っていた!

 

「ゼルレウス、フレアドライブ!ラ・ロ、ドラゴンダイブ!」

 

ほのおのうずを突き破って、ゼルレウスとラ・ロがミラボレアスに全力の体当たりをぶち込む!一歩、二歩と後退するミラボレアスだが、今度は自身がフレアドライブを発動した。全身を包み込む炎……って、マズイ!

 

「拘束弾の縄に、火が!!」

 

「あれじゃあ、拘束が解かれてしまう!」

 

ミラボレアスの翼を縫い付けていた拘束弾……その縄に引火してしまい、縄が焼ききれてしまった!結果、ミラボレアスの拘束が解除されてしまい、自由になった翼を使って早速攻撃を仕掛けてきた!

 

「うおおっ!?こりゃねっぷうか!デンボクの旦那!」

 

「うむ!ディノバルドとグラビモスを、皆の盾にするのだ!」

 

命令を受けたディノバルドとグラビモスが、早速行動を起こす。ディノバルドは獣竜種特有の長い全長を広く使い、グラビモスは翼も使ってねっぷうを受け止めてこちらの被害を最小限に食い止めてくれた。

 

「ならば……タマミツネ、あまごいじゃ!」

 

「コオオォン!」

 

「おぉ……ねっぷうの威力が減衰していく!」

 

メガタマミツネのあまごいによって雨が降り始め、ねっぷうの威力がさらに減っていく。けど、雨の天気は一部の技を必中状態にする効果も持つ……様々な技を駆使するミラボレアスが相手だと、諸刃の刃にも等しい戦術だ。でも、こちらとてそれくらいはわかっている!

 

「ぼうふうが来ます!先輩、アカイさん!」

 

「おう!」

 

「うむ」

 

「「ぼうふうだ!!」」

 

ミラボレアスの行動は私たちの予想通りにぼうふうだった。雨状態で必中になる技の一つで、翼が自由になって間がない今なら、かならずミラボレアスは使ってくるだろうと読んでいたのだ。

ミラボレアスと、ゼルレウス、ラ・ロ、メガライゼクス三頭によるぼうふうがぶつかり合う。生態系上位種三頭のぼうふうだというのに、ミラボレアス一頭のぼうふうのほうがわずかに威力が上か……!!

ぼうふうはなんとか互角のまま打ち消し合われたけど、こんどはかみなりか!

 

「ガラナさん!」

 

「えぇ、ショウさま!ラギアクルス、皆を守るのです!!」

 

ジンオウガ、ラギアクルス、メガライゼクスが縦横無尽に動き回り、かみなりを次々と受け止めていく。それによって急速に電力が充電されていき、全員がフルパワー状態になった。

 

「行くぜっ!ゼクスカリバー!!」

 

「参ります……旋嵐万雷!!」

 

メガライゼクスが頭上からゼクスカリバーを叩きつける!こっちはシャドークローで受け止められたけど、ミラボレアスがメガライゼクスに気を取られている隙に懐に飛び込んだラギアクルスには気が付かなかった!

真下から食らわされた雷の嵐に体勢を崩すミラボレアス。それを見逃さず、一度受け止められたゼクスカリバーを再度振り下ろすメガライゼクス!今度は頭部に直撃し、わずかだけどミラボレアスの動きが止まった!

 

「ジンオウガ、はかいこうせん!」

 

「ワオオォォン!」

 

「……!波状攻撃だ、ショウに続け!」

 

ヒューイさんからの指示によって各方面に回り込んだモンスター達による全方位からのはかいこうせんによる波状攻撃が仕掛けられる!複数のはかいこうせんを撃ち込まれ、大爆発を起こすミラボレアス……どうなった?

 

「グルルルル……」

 

「……やはり、未だ健在か」

 

「まだまだ勝負はこれからだ……気を抜くなよ、ショウ」

 

「わかってますよ、ヒューイさん」

 

勝負はまだまだこれから……ミラボレアスだって全然本気を出してないだろうし、油断はできない。特に『劫火』というシンプルな名前ながら最強と言われるミラボレアスの大技がまだ繰り出されていない。この『劫火』を放たれる前に仕留めるか、『劫火』を凌いでから倒すのか……どちらにせよ、私達が勝たなければ明日はないんだ!絶対に勝利してみせる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~シンオウ地方~

 

マサゴタウン。海に繋がる砂の街と明記された看板のすぐそばに建つ家から、ひとりの女性が出てきた。濃紺のロングヘアーに青い瞳を持つ女性は、赤黒く染まった空を見上げている。その目が訴える感情は、果たしてどのようなものだったか……。

 

「また、空を見上げていたのかい?」

 

「うん」

 

女性のあとに続くように、短い黒髪の男性が出てきた。隣り合って立ち、ともに空を見上げる。そうしているうちに男性の方がなにか気配を感じ取ったのか、違う方へ視線を向けてから家の中へと戻っていった。やがて男性が見ていた方角から、一匹のポケモンが飛んできて着地した。マッハポケモンのガブリアスである。

そのガブリアスの背中から、ひとりの女性が飛び降りた。長い金髪を靡かせる、美しい妙齢の女性だ。

 

「シロナさん」

 

シンオウ地方チャンピオン・シロナ。一度はチャンピオンの座を降りたが、新チャンピオンである女性の複雑な事情からチャンピオンを交代し、再びその座に返り咲いた最高クラスの実力者である。

 

「お久しぶりね、こんにちは……って、この空の色では時間間隔もあやふやね……」

 

「ご無沙汰しています。……それで、何かわかったことでも?」

 

「えぇ。かつて、シンオウが『ヒスイ』と呼ばれていた時代に一度、起こったことがある現象のようね。ヨスガシティにある異文化の建物……あそこに飾られた一枚の絵を何十回と検分を重ねた結果、判明したわ。

我が家で見つかった謎の手記(・・・・)のことも含めて、昔のシンオウ……ヒスイにはとんでもないポケモンが跋扈していたようね」

 

「そうですか……」

 

シロナからの報告を聞き、憂うようにため息をつく女性。彼女の何かを堪えるような表情に、シロナもまた複雑な心境を抱く。

 

「この現象も、誰が引き起こしているのかを突き止めなくちゃ……ギンガ団も解散したというのに、いったい誰が……」

 

「……もし、この現象を起こしているものが、過去にいるとしたら……」

 

「……!まさか、歴史改変!?だとすれば、シンオウ時代にいる私たちにできることは……」

 

「なにもない、でしょうね」

 

女性がだした仮設が正しかった場合を想定して、シロナは苦虫を噛んだ顔になる。犯人が過去にいるのなら、未来にいる自分たちに出来ることはほとんどないからだ。それから、シロナはわずかに気まずそうにしながら女性に尋ねる。

 

「……ところで、ショウちゃんは……?」

 

「…………」

 

「……そう、まだ見つからないのね」

 

「シロナさん、粗茶ですが」

 

家の中に引っ込んだ男性が、お茶の入った湯呑を持って出てきた。どうやらシロナの来訪を予感して、お茶を淹れてくれたらしい。

 

「あら、気が利くわ……ありがとう、いただきます」

 

「……シロナさん、娘のことなら心配はいりません。娘も立派なポケモントレーナーです。冒険に夢中になって、ちょっと報連相が疎かになっているだけですよ」

 

「……だと、いいのだけれど」

 

「大丈夫」

 

なおも心配げにするシロナに対し、女性が口を開いた。憂いを帯びた儚げな表情だが、その目には確かな力の宿った火が灯っている。

 

「あの子は、私の子だから。たとえシンオウ地方の裏側だろうと、過去や未来に飛んでようと、自分の役割をきちんと果たして帰ってくる」

 

「…………」

 

「だから……」

 

「あぁ、みつけた」

 

全員が、一斉に振り返った。真っ白なドレスに真っ赤な瞳の、幼い少女。男性が肩の力を抜き、シロナが警戒し、女性は驚愕で目を見開いた。

 

「ようやくみつけた。会いたかったわ……」

 

少女は、女性を真っ直ぐに見据えている。幼い見目に似合わぬプレッシャーにシロナとガブリアスが冷や汗を流す中、女性が一歩前に出た。

 

「はじめまして。私にご用?」

 

「ええ、そう。あなたを探していたわ。シンオウ地方前チャンピオン。『ヒカリ』」

 

「…………」

 

「……いえ、あなたを呼ぶなら、それにふさわしい呼び名があったわね。そうでしょう?」

 

 

――イナヅマ ミツリ

 

 

紡がれたその名に、女性が表情を消した。

 

彼女の名前はヒカリ。シンオウに生まれ、シンオウで育った彼女には、前世の記憶があった。

前世の名は、稲妻光梨。二十代半ばで命を絶った、悲劇の天才外科医。

 

ジンオウガに転生した、稲妻光輝の従姉である。

 

 

 

 




次回、祖龍VSヒカリ(光梨)……!?


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最終決戦 ~劫火絢爛~

ミラボレアス
ドラゴン
弱点 火:○ 水:△ 雷:△ 氷:△ 龍:◎
四倍:ドラゴン
二倍:フェアリー
半減以下:みず、でんき、くさ
こうかなし:なし
等倍:上記以外全て

特性
黒龍伝説
自身のHPの減る量が半分になる

半分になるのは以下のとおり
1.相手からの攻撃ダメージ
2.攻撃した際に受ける反動ダメージ
3.HPに対する割合ダメージ
4.ダメージ固定技
5.技の効果でHPを消費する技(みがわり・はらだいこ等)
6.天気によるダメージ(すなあらし・あられ)
7.状態異常(どく・もうどく・やけど等)
8.状態変化(こんらん・のろい・バインド・やどりぎ等)

特性発動・ダメージ計算までの流れ
1.HP変動が起こる。
2.計算の後、減少するHP量【x】が決定される。
3.特性「黒龍伝説」により【x】の数値が半分になる。
4.【x】の数値分だけミラボレアスの体力が減る。


劫火
タイプ:ドラゴン
分類:特殊
威力:-
命中率:-
PP:1
範囲:敵全体
優先度:0
直接攻撃:×
効果:一撃必殺

説明文
すべてを焼き尽くす炎を放つ。必ず命中し、一撃でひんしにする。
この技は相手の特性とタイプ相性の影響を受けない。
まもる状態の相手はHPを1にする。フィールドの変化(壁・地面・天気)をすべて消す。




~シンオウ地方~

 

爆発。怒号。白い少女――シロ――の導きによりたどり着いた不思議な空間で繰り広げられるポケモンバトル。倒れ伏すポケモンがボールに戻り、ヒカリは小さく息を吐く。シロはそんな彼女の様子に、困ったように笑みを浮かべた。

 

「参ったなぁ」

 

「なにが」

 

「ううん。話には聞いていたんだけど……なんか想像の云十倍は強いね、イナヅマ・ミツリ」

 

「あっそう」

 

「あはは」

 

素っ気ない態度を取るヒカリ……否、稲妻光梨だが、シロはまるで気にも留めないように笑っていた。

 

そうして、しばらく笑った後……シロは両手を挙げた。

 

「降参します」

 

「対ありでした」

 

決着完了。勝者は光梨、敗者はシロ。最後まで場に残っていた光梨のポケモン――ゴウカザルが光梨の下まで駆けていった。

 

「ありがとう、ゴウカザル。お疲れ様」

 

「ウキキ」

 

「いやいや、本当に強すぎじゃない?火炎玉ミロカロス、メガガルーラ、Z技ジャラランガ、ダイマックスサンダー、でんきテラスドータクン、そして虎の子のザシアン……みーんな倒されちゃった。なのに、光梨ったらメガシンカもZ技もダイマックスもテラスタルも、なーんにも使わないで勝つんだからいっそ恐ろしいわ」

 

「失礼ね……」

 

呆れたようにごちる光梨に、しかしシロはからからと笑うだけだ。

シロがシンオウ地方に現れたのは、光梨を招致するためだった。対ミラボレアス戦において、この上なく最良の戦力になりうると判断したからだ。だが、光梨はこの申し出を断った。曰く「現場の人材でも十分に対応可能」と。

だから、シロは光梨に勝負を挑んだ。別に勝ったら負けたらとか、そんな面倒なことはしない。だが、あのミラボレアスが手持ちポケモンすべてをメガシンカさせてなお全タテされたという話を聞き、これを試さずにはいられなかった。そして、シロは敗れた。メガシンカ、Z技、ダイマックス、テラスタル……レギュレーションをドブに捨てたなんでもありな空間で。さらに、光梨はその全てを使わないと宣言した上で、すべてを使ったシロは完全敗北を喫したのだ。

 

「いやいやいや、これで負ける私の方がおかしいよ。……ん?勝てる光梨の方がおかしいのかな?どうなんだろ?」

 

「やめてよ、もぅ……とにかく早期的に戻って、ミラボレアスの件を早く片付けてくださいよ」

 

「ふふふっ!わかってるってば。……ねぇ、光梨」

 

「なんですか?」

 

呼びかけられ、振り返る。慈母のような笑みを浮かべるシロの顔を見て、僅かにたじろいだ。

 

「な、何その顔……?」

 

「ううん……ただ、ね。貴女の娘も、貴女の従弟も、あそこで命を懸けて戦っている。だからせめて、祈ってあげて。あの子達の無事を」

 

「……ありがとう、ございます」

 

空間が歪み、気が付けばそこはシンジ湖だった。周囲を見渡し、光梨は自分が元のシンオウ地方に戻ってきたことを理解して安堵した。

 

「ミラルーツ」

 

「あ、私のことはシロって呼んで?貴女の娘にも呼ばれてて、結構気に入ってるの」

 

「……シロ。教えて欲しいことがあるの。……貴女が言うには、ヒスイ地方にミラボレアスが現れる可能性を憂慮したアノ子(・・・)がその対策としてモンスターをヒスイ地方に引き込んだ。その影響は既に表れている……まさか、モンスターが現代に蘇るなんてことはないよね?」

 

「さぁ?仮にそれが起こるとして、その最終判断はあなたたち現代人が下すのでしょう?好奇心に殺されたがる気狂いでもいなければ、モンスターが現代に蘇ることはないでしょう」

 

「……そう、そうね。過ちを犯すのは、いつだってその時を生きる人間たち……この時代にモンスターを呼び出したいと思う輩でも現れなければ……」

 

「まぁ、知りたがる人はいるでしょうけれどね」

 

シロの指摘に苦い顔をする光梨。心当たりがありすぎる人物が地元でチャンピオンをやってるもんだから、頭痛をこらえるのも一苦労だ。

 

「でも、ゲーム(こっち)の世界はまだマシな方よ?あの子がレムレムした時はうっかりアニメ(あっち)の世界に飛んじゃってさ、元に戻すのも一苦労だったんだから。そのせいでアニメ(あっち)の世界はゲーム(こっち)の世界よりヒスイ研究がだいぶ進んじゃってさ。いやぁ、悪いことしちゃったわ」

 

「……時空の裂け目による影響が、ゲーム(こっち)の世界だけじゃなくアニメ(あっち)の世界にまで及ぶとは。ヒスイ時代にモンスターが存在したという歴史が、二つの世界に混同するようになったと」

 

「元々はゲーム(こっち)の世界だけだったんだけどね。でも、なんでアニメ(あっち)の世界に誤接続したのかはわからないんだよね……。もしかして、一緒に飛んだあの子の影響……?

 

首を傾げるシロに対し、光梨は意味深長な顔で黙り込む。

 

「(ゲーム(こっち)の世界で生まれた私の娘が、アニメ(あっち)の世界に迷い込む?そんなことがうっかり起こる?そんなわけがない)」

 

シロからは既に、ショウがアニメ(あっち)の世界に迷い込んだ際の状況を伝え聞いている。普段通りに就寝したというのに、何をどうしたら罷り間違ってレム睡眠で異世界転移なんてことになるのだ。

 

「(困ったな……誰かが意図的にショウをアニメ(あっち)の世界に引きずり込んだとしか思えない。けど、誰が?なんのために?……あるいは、本当にただ自然発生しただけの事故?あぁ、こんな時に水橋くんと静香ちゃんがいてくれたらなぁ……)」

 

前世で従弟の親友だった天才兄妹を思い出す。三人寄れば文殊の知恵とは言うが、こと水橋兄妹に関しては一人で十分、二人揃うと過剰戦力であった。従弟と灰色の彼はちょっと足りない。赤いのと白いのはボケ担当なので期待できない。

 

「……シロ。今更なんだけど源龍亜目同士の力じゃ抑止力にならないのかな?相手がミラボレアスなら、可能性は無きにしも非ずじゃ……」

 

「もう、光梨ったら!……世界を消したいの?」

 

「ごめんなさい、忘れて」

 

やはり源龍亜目同士のぶつかり合いは、軽く世界が滅ぶらしい。核に核をぶつけるようなもんである。被害規模など想像できないレベルの悲惨さだろう。

 

「ん……人の気配。旦那さん達がこっちに向かってるみたい」

 

「そうみたいね……」

 

「それじゃあ、私はもどるわね。おいたをするやんちゃ坊主にげんこついれなきゃいけないから」

 

「子育てについて、一つ指導してあげましょうか?」

 

「あははっ!遠慮するね!」

 

小さな時空の裂け目を開き、シロは帰還準備に入る。その際、光梨はたった今思い出したように声を上げた。

 

「シロ!彼女に会ったらこう伝えて」

 

「なぁに?」

 

「『原初の球に収められし時空神の片割れは、全ての獣が集う家にある』……とだけ。それで、彼女には伝わるわ……私の言いたいこと、考えていることが。けれど、『最後の判断はあの子に委ねてあげて』、とも」

 

「……わかった」

 

神妙な面持ちで頷いたあと、シロは時空の裂け目の向こうへと消えていった。

 

「……ショウ……コウちゃん……」

 

空を見上げる。赤黒く染まった空は、まるで焼け焦げた大地を表しているかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ヒスイ地方 決戦場~

 

戦闘開始からどれくらいの時間が経ったのか……初めこそは猛攻ともいえる波状攻撃を仕掛けていた私たちだったけど、次第に疲労の色が濃くなり形勢が傾き始めた。ミラボレアスの耐久力が、私達の想像の十倍以上は優に高かったからだ。攻撃を浴びせても浴びせても、一向に怯む様子も苦しむ様子も見せないミラボレアス……本当に攻撃が効いているのか、それとも効いていないのかはっきりと判断することができない。それほどまでに、ミラボレアスが涼しい顔でこちらの攻撃を受けきってしまうのだ。

唯一ミラボレアスが警戒して捌いているのがハンターからの攻撃だ。モンスターからの攻撃は平気で受けたり受け流したりする中で、ハンターの攻撃だけは攻撃技で迎撃という行動を取っている。少しでも隙を作るために私達も攻勢に出るけど、やはりミラボレアスに対して攻撃の影響が薄い……もしかして、これはミラボレアスの能力、否、特性か?やポケモンの技を、問答無用で半減する特性……強いなんてもんじゃない、強すぎる……!

 

「ちっ、伊達にミラボレアスじゃねぇってわけか」

 

「くっ……まだ、耐える……!?」

 

「シュレイドで戦った時より、明らかに強くなっている……技巧種化の影響が、こうも厄介な方向に表れるとは!」

 

静香さん達ハンターも、流石に舌を巻くほどの強さだ……舐めていたわけじゃないけれど、想定をはるかに上回っている!

 

「ミラボレアス……これほどとは……!!」

 

「こんな生き物が、存在してたまるかよ……!」

 

「ディアルガ様やパルキア様の比じゃない……強すぎる……」

 

ヒスイ側でも、ミラボレアスの圧倒的な戦闘力を前に表情に陰りが出始めた。体感では既に一時間以上は戦い続けているというのに、まるで手応えを感じられないのだから無理もない。けど、そろそろリアクションの一つは欲しいところだな、ミラボレアス……!

 

「グルオアァァァァァ!」

 

「ちくしょう、悠長に吠えやがって……!」

 

「だが、まったくの無駄というわけでもない。やつの重殻や厚鱗にも、大なり小なり傷が付き始めている。塵も積もれば何とやらだ!」

 

「けど、アルバトリオンが使えたんだ……ミラボレアスだって、回復技を持っているかもしれない……」

 

「なに、その時は奴さんがくたばるまで殴り続けるだけよ。たとえそれが途方のない話だろうと、俺たちハンターは必ず成し遂げる。成し遂げなくっちゃあならない」

 

うん、ヒューイさんの言う通りだ。憎々しげにミラボレアスを睨んでいたセキさんとカイさんも、ヒューイさんの言葉で気を取り戻したようで、目に力強い光が灯っている!

 

「……だな。わりぃ、ちぃとばかし気後れしちまった」

 

「わたしも。なんだか弱気になってたみたい」

 

「……っし!そんじゃあ、こっから追い込みかけていくかぁ!!ただしショウ、テメーはだめだ」

 

「わかりました!……?え、はい!?」

 

ちょ、今まさにやる気まんまんってところへなんで水を差すようなことを!?

 

「はい、じゃないが。……お前のきずなへんげはまだとっとけ。少なくとも、今出す必要はない」

 

「でも……!」

 

「落ち着け。……必ず奴を弱らせる。時が来たら、一気に叩き込め。……いいな?」

 

「は、はい……」

 

そうだ、私とジンオウガのきずなへんげは、現状出せる最大火力……ここぞというところで使わないと、先にこっちが息切れしてしまう……。

 

「よーし、いくぜ!!」

 

「うおおおおおおおお!!」

 

ヒューイさんとニールさんが突撃し、それに合わせて側面から静香さんとタマミツネ、シュラークさんとグラビモスが突っ込んでいく!

 

「グラビモス、いわなだれだ!」

 

「タマミツネ、バブルこうせんじゃ!」

 

ハンターに攻撃を仕掛けようと構えたミラボレアスに、すかさずいわなだれとバブルこうせんが襲いかかる。しかもバブルこうせんはメガタマミツネの泡でコーティングした特別仕様だ。露骨に動きが鈍り、ミラボレアスは鬱陶しそうに泡を吹き飛ばそうとしている。

 

「ガムート!ミラボレアスの翼にれいとうビーム!」

 

「ラギアクルスもれいとうビームです!」

 

翼を大きく広げたところで、横合いから放たれたれいとうビームが翼に直撃してあっという間に凍りついた!自分の翼が凍っているのを確認してから、ミラボレアスは再びフレアドライブを使おうとしている。

 

「今だ!やってくれ!」

 

「よぉーし!ライゼクス、ゴー!!」

 

ヒューイさんの掛け声と共に、メガライゼクス達空飛ぶ飛竜組がミラボレアスの頭上を取る。その足には大タル爆弾Gが片足に一つずつ掴まれており、まるで絨毯爆撃のようにそれを落下させた。

そうとも知らずにフレアドライブを発動させたミラボレアス……結果、フレアドライブの火で着火した大タル爆弾Gが次々と起爆して、ミラボレアスは大きく体勢を崩して倒れ込んだ!!

 

「畳み掛けるぜーっ!!」

 

「よし……メガシンカ、頼む!」

 

「行くぞぉっ!!」

 

デンボク団長の声を合図に、一部のモンスターたちが一斉にメガシンカをした。私は……まだだな。

 

「ショウ、大丈夫か?」

 

「先輩!はい、私もジンオウガも、まだまだ行けます。そっちはどうですか?」

 

「おう!おれとライゼクスも、まだまだ行けるぞ!……それにしても、ウォロさんもいてくれたらな……あの人も腕の立つポケモン使いだし」

 

「……彼は別件があるそうですし、いない人は頼れませんよ」

 

「そうだな……」

 

さて、気づいた人は気づいているだろうが、今回の作戦にウォロはいない。彼曰く「シロさんに別件を頼まれたので参加できません」とのことだ。正直、アイツは手ずからミラボレアスを殴りに来るだろうと思っていただけに、ちょっと意外だった。けど、そんなウォロに頼み事をしたのはあのシロちゃんだ、きっと無駄なことではないはず。

 

「ベリオロス、ふぶき!!」

 

「ガムート、ひょうざんおろし!!」

 

「ディノバルド、せいなるつるぎ!!」

 

「ラギアクルス、かみなり!!」

 

四体のモンスターの同時攻撃……だが、ここでミラボレアスは思わぬ行動に出た!

 

「ミラボレアスが!」

 

「守った!」

 

そう、この一斉攻撃のうち防げるものを翼を使って受けていたんだ!ミラボレアスはメガベリオロスのふぶきとメガガムートのひょうざんおろしを翼で受けて、メガディノバルドのせいなるつるぎをメガトンパンチで跳ね返してラギアクルスのかみなりを直接受けていた。

 

「ヒューイさん!この動きは……」

 

「へっ……ようやく、バカ耐久力に底が見え始めたみてぇだな!!」

 

「みんな!ミラボレアスは確実に弱っている!一気に押し込むぞ!!」

 

ミラボレアスが弱っている。その事実は間違いなく私達の士気を大きく高めてくれた。みんな、いっそう「勝とう」という意思が強くなった!

 

「よし、俺もちょいと準備準備……」

 

準備?ヒューイさんがこっそりとボールから繰り出したのは……ドータクン?

 

「よし、合図したら、頼むぜ」

 

「ドォー」

 

……何をするのかはわからないけど、きっとなにか考えがあるんだろう。ヒューイさんを信じよう。

 

「バリスタ拘束弾、撃てぇー!」

 

「よし……次弾装填後、待機!」

 

「グラビモス、も一回リフレクターだ!」

 

「ガムートもひかりのかべをお願い!」

 

「ラ・ロ、ドラゴンダイブ。ゼルレウスはラ・ロ離脱後にりゅうのいぶきだ」

 

「ジンオウガ、しんくうはで牽制!」

 

全員が一丸となって、ミラボレアスに立ち向かう。私も援護しなくっちゃ!拘束弾でミラボレアスの動きを封じて、双璧を貼り直し、さらにミラボレアスへの攻撃も忘れない!ドラゴンダイブでミラボレアスにダメージを与えたラ・ロの離脱を援護するためにしんくうはで先制攻撃!そこへさらにゼルレウスのりゅうのいぶきが放たれたことでミラボレアスはラ・ロに追撃できなかった。

 

「……よし、バリスタ隊は徹甲榴弾を装填!拘束弾が外れると同時にミラボレアスの顔面にぶちこんでやれ!!」

 

「今の間に叩く……!」

 

「シズカ、俺も行くぞ!」

 

状況を分析したヒューイさんの指示が飛び、それを聞いた静香さんとシュラークさんがミラボレアスに突貫する。ミラボレアスもすぐにそちらに気がつくが、直後に顔面めがけて飛んできたボウガンの弾とサイコカッターが直撃した。

 

「姉様の邪魔はさせません!」

 

「ディノバルド、このまま斬り込むぞ!」

 

「シズカ、先に行く!」

 

「どうぞ、師匠!」

 

シュラークさんが軽く跳ねると、その後ろから静香さんがブラストダッシュで飛ぶ。シュラークさんは静香さんの盾に上手く足を乗せると、そのまま一緒に飛んでいった!?静香さんが減速し始めたタイミングで、静香さんから翔蟲を受け取ったシュラークさんが盾を蹴ってジャンプ!さらに翔蟲で高さを稼ぐとミラボレアスの首めがけてスラッシュアックスを突き刺した!

 

「属性解放突きだ!」

 

「竜撃砲……喰らえ!」

 

シュラークさんと静香さんの師弟攻撃が決まった!けど、宙に投げ出されたシュラークさんはミラボレアスのつばさでうつ攻撃で吹っ飛ばされ、静香さんもアイアンテールを防いだけど距離を離されてしまう。

と、ここで拘束弾が外れてミラボレアスが自由になった。

 

「今だ、バリスタ徹甲榴弾、一斉射ァーッ!!」

 

「アタシの徹甲榴弾も喰らいなさい!」

 

ネネさんのボウガンと、バリスタから発射された徹甲榴弾がミラボレアスの顔面に直撃!その衝撃でミラボレアスは気絶状態になったようで、再び体を横たえた!

 

「モンスター組、ドラゴン技で一斉攻撃!!」

 

「みんな、りゅうのはどうで!!」

 

全てのモンスターが倒れるミラボレアスにりゅうのはどうによる波状攻撃が仕掛けられる!!全身に浴びせられるドラゴン技に、さしものミラボレアスも顔を歪めている!

 

「いいぞ、効いている!」

 

「よっしゃ!俺たちハンターも一斉攻撃だ!」

 

ハンターのみんなも一気呵成に攻め続ける。気絶から立ち直るまでに、どれだけダメージを与えられるか……!

 

「ギギャオオオオオォッ!!」

 

くっ、もう立ち上がったのか!ここでミラボレアスは翼を畳んで楽な姿勢を取ろうとする……まさか、はねやすめ!?

 

「マズイ、あの動きははねやすめだ!」

 

「ここで回復されたら……!!」

 

「させるかぁー!」

 

回復させまいと、みんなも果敢に攻撃をする……けれど、ミラボレアスの動きを止めることはできない……!

 

「この瞬間を待ってたぜぇー!」

 

「グァオッ!?」

 

ヒューイさん、ファインプレー!!ミラボレアスがはねやすめの姿勢に移るやいなや、閃光玉を投げつけた!目眩状態になったミラボレアスは混乱したように大きく仰け反り、さらにヒューイさんはボールから出していたドータクンに指示を出す!

 

「ドータクン、かいふくふうじ!!」

 

「ドォー!」

 

「よし、役割完了!戻れ、ドータクン」

 

かいふくふうじ!まさか、このためだけにドータクンを!?ミラボレアスが回復行動に出ようとした矢先に、その作戦を潰す……上手い!さすがは熟練のハンターだ!

 

「……ッ!!ギャオオオオオオオォォォッッッ!!!!!」

 

回復手段を封じられたと察したミラボレアスは激しく激昂。翼を大きく広げると、空高くへ舞い上がった!

 

「なんだ!ミラボレアスが……」

 

「速い……あれじゃ、ライゼクス達でも追いつけない!」

 

「ヒューイさん!あれは、まさか……!!」

 

「あぁ……全員集まれ!ミラボレアスの必殺技、『劫火』が来るぞ!!」

 

「バリスタ隊はバリスタを放棄!こちら側へ退避!モンスターは全員集まれ!より広範囲の味方を守る技……ワイドガードで防御を試みる!!」

 

バリスタを使っていた団員達が大急ぎでこっちに向かってくる。途中、合流するモンスター達が避難する団員たちを回収しつつ全員で集まる。個人を守るためのまもるより、複数の味方を守るワイドガードなら、より広い範囲でみんなを守る事ができる……全員の力を合わせて、必ずこの一撃を乗り切らなければ!!

 

「……よし、欠員はいないな」

 

「モンスターを前面に押し出せ。トレーナーはハンターの後ろへ。バリスタ隊は最後列だ」

 

「入り口から逃がせたらよかったんだけど……」

 

「間に合わん。……さて、こっから一蓮托生だ!!ショウ、合図を頼む!」

 

「ワイドガード、展開!!」

 

全モンスターのワイドガードが展開されると同時に、ミラボレアスの胸元が赤熱化して真っ赤に染まる。天空からありったけの熱量が降り注ぎ、決戦場を炎で包み込んだ!

 

「な、なんて威力だ……!」

 

「けど、これならまだ耐えられる……」

 

「いや……まだだ!!」

 

ニールさんがそう言うと同時に、ミラボレアスが……弾けた。その直後、それまでの熱量はそよ風だったと言わんばかりに威力が倍増した!!

 

「うわああぁぁぁ!?」

 

「こ、これがミラボレアスの大技……!」

 

「……!ワイドガードが!!」

 

ワイドガードにひび割れが!!まさか、この攻撃も守りの技を突破する技……!?ワイドガードのひび割れがさらに大きくなり、破壊寸前で閃光――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎の嵐は永遠と錯覚するほどの時を、吹き荒ぶ。ミラボレアスが攻撃を終え、地上に降りてきたとき、立っている者は皆無であった。

 

己を苦しめてきたハンターも。

 

数に頼るモンスターも。

 

それを使役する人間たちも。

 

全員が倒れている。静まり返る戦場の中で、ミラボレアスはただある一点を見つめていた。

 

「……うぐっ」

 

呻き声をあげ、人間は立ち上がった。立ち上がった人間――ショウは、周囲を見渡すと自嘲気味に呟いた。

 

「……なんか、アルバトリオンの時にも見たな……この景色……」

 

「……ワゥ」

 

続いて立ち上がったジンオウガもまた、ショウの言葉に同意するように声を上げた。悠然と翼を広げ、その存在を見下すミラボレアスに対して一人と一頭は真っ向から睨み返した。

 

「……バリスタは全滅。リフレクターもひかりのかべも消し飛んだ。……でも、誰も死んでない。まだ、みんな戦える」

 

「そういう……こった……」

 

続いて立ち上がったのはヒューイをはじめとしたハンター組。そこからまばらではあるが一人、または一頭が少しずつ立ち上がった。

 

「つぁー……効いたぜ……。きつけにしちゃあだいぶキツイが、おかげで体が温まったぜ」

 

「無茶、言うな……ヒューイ殿は……。こりゃ、秘薬でも飲まなきゃやってられん……」

 

「大丈夫……なんだかんだ、どさくさに紛れてみんな飲んでるから……」

 

ハンター達は攻撃を受けながらもタイミングを見て秘薬を飲み込み、体力を回復していた。それでもダメージが抜けきらないのだから、ミラボレアスの力の恐ろしさというものがよくわかる。

 

「さて……人間は全員無事か。モンスターは?」

 

「……ほとんどが瀕死に近い状態ですね。回復するにせよ、こっちが動けばミラボレアスも動くでしょう」

 

「だな……だから、次の行動をミスったらダメだ。ミラボレアスが動き出すまでは……」

 

「ギギャオオオオン!!」

 

「……っと!やつのほうが早いか!!」

 

ミラボレアスはショウ達がまだまだ戦えることを理解し、りゅうせいぐんでまとめて焼き払おうと攻撃を仕掛けた。だが、降り注ぐりゅうせいぐんを、猛烈なふぶきがまとめて打ち払った。

 

「カイさん!」

 

「大丈夫だよ、ショウさん……みんなの道は、私達が切り開く!!」

 

「おう!あの強烈な一撃のせいで、持ち込んだ道具は全部パァや……なら最後くらいはええカッコ見せなアカンやろなぁ!!」

 

「わしも続こう、デンボク。なぁに、お前さんの敵を始末するのは、わしの役目だからな!」

 

「かいふくふうじの効果が続いている、今のうちに畳み掛ける!!」

 

「「「「行くぞぉ!!」」」」

 

カイ、デンボク、ムベ、テルの四人が、相棒となるモンスターたちと一斉に動き出す。ミラボレアスはエアカッターでまとめて攻撃するも、それぞれが避けたり迎撃したりで、歩みを止めることなく突き進む。

 

「ディノバルド!XXブレイザー!!」

 

「タマミツネ!天眼抱影!!」

 

「ライゼクス!ゼクスカリバー!!」

 

「ガムート!グレイシアクレーター!!」

 

「グアアアオッ!!」

 

四天王と謳われし四大モンスターによる、大技の一斉攻撃。ほのお、みず、でんき、こおりの大技が次々と命中し、ミラボレアスは苦しげに声を上げた。だが、それでもミラボレアスは止まらない。ばくおんぱで周囲一帯をなぎ払うことで、ディノバルド達を吹き飛ばしたのだ。

 

「ディノバルド……!」

 

「むぅ……無念……!」

 

「くそっ……!ライゼクスが……!」

 

「そんなっ、ガムート……!!」

 

ここでメガディノバルド、メガタマミツネ、メガライゼクス、メガガムートが戦闘不能。メガシンカが解除されてしまい、戦線離脱を余儀なくされた。トレーナー側に脱落者が出る中、ハンターがミラボレアスに隙を与えないために猛攻撃を仕掛ける。

 

「みんなの頑張りを、無駄にはしない!」

 

「ミラボレアスはだいぶ弱っている!俺たちも行くぞ!」

 

「回復技も補助技も、使わせる暇など与えませんわ!」

 

「一気に仕留める!」

 

「その首もらうぜ、ミラボレアス!!」

 

静香が、ニールが、ネネが、シュラークが、ヒューイが、一斉に攻撃を加えていく。ミラボレアスは応戦しようと攻撃の構えを取るが、横から攻撃を仕掛けられたことで動きを止められてしまう。

 

「おれらを忘れんな!グラビモス、ストーンエッジ!」

 

「ラギアクルス、でんじほう!」

 

「ベリオロス、フリーズドライ!」

 

「ゼルレウス、ラ・ロ、りゅうのはどう!」

 

四方八方からの攻撃に加えて、ハンターからの絶え間ない攻撃……ミラボレアスを窮地に追い詰めるも、ただ黙ってやられるだけではなかった。ミラボレアスがカッ、と目を見開くと、突然その体が爆発したのだ。じばく攻撃である。

 

「ぐあぁ!!」

 

「キャアッ!」

 

「がぁっ!」

 

突然のことにニール、ネネ、シュラークは反応が遅れて直撃し、大きく吹き飛ばされる。ヒューイは咄嗟に後方に飛び退ったことで衝撃を和らげることで威力を減衰していた。

 

「グルァッ……!!」

 

「兄さんっ!?」

 

一方、静香はラギアクルスが間に体を挟み込んだことで直撃を免れた。その代わりにラギアクルスはじばくのダメージをモロに受けてしまい、その体を地に沈めることとなってしまった。

 

「兄さん!兄さんっ!!やだ!いやだ!!また死んじゃうなんていやぁっ!!」

 

「シズカさま!ラギアクルスさまっ!」

 

静香は錯乱しつつ倒れるラギアクルスの体を必死になってゆすり、その傍にガラナがすかさず駆け寄った。ショウもそちらに向かいたい衝動に駆られるが、うんとこらえてミラボレアスへ睨みを効かせる。

 

「じばく……まさかの自滅技?ここに来て、ミラボレアスも焦りで判断を誤った?」

 

「そいつは違うな、ショウ」

 

「ヒューイさん……?では、なぜ……?」

 

「じばくを使えば自分もひんしになる……そんなこと、アイツだってわかってるだろうよ。だが、わかっている上で使ったのだとしたら……なにか、使っても問題がない理由があるんだろうさ」

 

「まさか……」

 

煙が晴れていき、ミラボレアスが姿を現す。ダメージは受けているものの、ミラボレアスは健在であった。

 

「どうして!?」

 

『……わかったかもしれん』

 

「(叔父さん……?わかったって、一体何が?)」

 

『ミラボレアスは、受けるダメージを半減しているんだと考えていた……だが、違う。実際は、自分の体力が減る量を半分にしているんだ。それが被ダメにせよ自傷にせよ、な。アイツ、何度かフレアドライブを使っていただろ?反動技を使っている割には、あまりダメージがないように見えた。そして極めつけのじばく攻撃だ。残りの体力を全部ゼロにする攻撃を使って無事なのは、元々減る量を半分にしていると考えれば……こんだけ殴り続けてんのに未だにピンピンしているのも納得だぜ……!』

 

「(体力の減り量を、半分にする!?そんな……なんてインチキ!!)」

 

技巧種化によって宿ったと思われるミラボレアスの能力……その推定能力に、ショウは舌打ちを抑えられなかった。

ここで、静香は少しずつ冷静さを取り戻していた。何度も何度も深呼吸を繰り返すことで、心を必死に落ち着かせていたのだ。

 

「ラギアクルスさま!どうかしっかり……!」

 

「……すぅー……はぁー……よしっ、落ち着いた。ガラナさん、これを」

 

「これは……げんきのかけら!どうして……?」

 

「こっちに来てからポケモンを捕まえたんですよ……その時に、使える道具を持っておいたほうがいいだろうと思って。これ一つですけど、ないよりマシです」

 

「その通りですわね……ラギアクルスさま、どうぞ……」

 

「……グルァ」

 

静香が、ヒスイで捕獲したイーブイ用に用意していたげんきのかけら……それを、ラギアクルスに与えることでなんとか蘇生に成功した。

しかし、状況は互角どころか不利。なにか一手を打たなければ、押し込まれてしまうだろう。

 

「――みんな、お待たせ」

 

その時だった。幼くも凛とした力強い声。全員が振り返った先にいたのは――

 

「シロ!」

 

「シロちゃん!それに、ウォロ……?」

 

「うん。シロだよ」

 

「あの、ショウさん?なぜにジブンは疑問形なのですか……?」

 

頼まれた別件で席を外していたウォロと、そのウォロに頼みごとをしていたシロ本人だ。シロは顔を上げ、ミラボレアスを見据える。ミラボレアスはというと、まるで悪事がバレた子供のように後ずさりをしている。

 

「ミラボレアス。貴様の蛮行も、最早これまで。異界を股にかけた此度の所業、これ以上は捨て置けぬ。祖龍の名において、貴様に罰を下す」

 

「……ッ!!」

 

威厳が多分に含まれたシロの言葉に、ミラボレアスは焦燥と危機感を思わせる表情で歯ぎしりをしていた。ショウは、ミラボレアスがおよそ見せるとは思わなかったその顔を見て、祖龍の名がいかに重く、そして力あるものなのかを悟った。

 

「……シロ」

 

「アカイ……ごめん、ちょっと時間がかかっちゃって」

 

「構わんさ、君が来てくれれば百人力だ。手ぶらで来たわけじゃないのだろう?何を持ってきた」

 

「いろいろ、ね」

 

「いろいろ……まぁ、楽しみにしておこう」

 

「ギギャアアアアアオッ!!」

 

シロの登場から気圧されていたミラボレアスが、焦れたようにかえんほうしゃをシロめがけてぶっぱなした。不意打ちも同然の攻撃に、誰もが反応できなかった。

 

「シロちゃん!」

 

「大丈夫。……だんがいのつるぎ」

 

決戦場の地面を食い破り、燃えたぎる大地の刃が壁となる。壁はかえんほうしゃを防ぎきり、一瞬で崩れ去った。

 

「ッ!?」

 

「だんがいのつるぎ!?その技は……」

 

「エアロブラスト」

 

「クァオオオオン!」

 

さらに上空から空気の塊が放たれ、ミラボレアスの頭を大きく揺さぶる。地面から、空から、それぞれ二匹のポケモンが姿を現した。

 

「こ、このポケモンは!」

 

「グラードン!ルギア!」

 

「それだけじゃないよ!」

 

そう言いつつシロから投げられたモンスターボール。そこから次々と飛び出したポケモン達の姿に、静香とショウは大いに驚いた。

 

「ゼクロム……イベルタル……!」

 

「ルナアーラにザマゼンタまで!」

 

「古龍には劣るけれど、古龍級生物になら勝るとも劣らない伝説のポケモン達……彼らの力を借りるわ!」

 

「へっへへ!さすがはシロだ、俺が惚れた女だぜ!」

 

「ヒューイったら、嬉しいけれどそれは後でね!」

 

シロが引き連れてきた、伝説のポケモン達。誰もがミラボレアスを厳しい目つきで睨んでおり、はっきりと強敵であると認識しているようだった。

 

「……シロ。これだけではないんだろう?」

 

「もちろん。けど、それは後で。まだ持ってきてもらってる途中だから」

 

「……はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦場に続く、長い長い階段……その長い階段を、慎重に登っていく者たちがいた。

 

「姉者、そっち下がってる」

 

「わ、わかってるよ!ほら、ドーミラー!しっかりしろ!」

 

「……それにしても、姉上。あの白い少女は何者だったのでしょう?」

 

「さてね」

 

それは野盗三姉妹、オマツ・オタケ・オウメの三人だった。彼女たちは大量のドーミラーを使役して、ある物を運んでいた。

 

「……あの白い少女、あたくしたちを拉致するばかりか、こんなものを使えるようにするためにこき使うなんてね」

 

「けど、不思議と嫌な感じはしなかったなぁ。なんというか、こう……従いたくなっちゃう感?みたいなのが凄くて」

 

「けど、あの廃墟じみたお城からこんな馬鹿でかい兵器が出てくるなんて……これを生き物にぶち込むんだろう?一体何と戦うつもりなんだか……」

 

オウメがそっと手に触れたそれは、あまりにも巨大であった。実際に使われている兵器のそれよりも、はるかに巨大な物。現地でそれを見た者は「そっちが使えたらいいのに」と愚痴ったことだろう。

 

「なんでもいいさね。……あの子への借り、これでようやく返せそうだね。さぁ、オタケ、オウメ!キリキリ運ぶよ!」

 

「「おう!」」

 

ドーミラー達も、念力により力を込めて運ぶ。それは、かつてシュラークがシュレイド城の兵器倉庫に設けられたベースキャンプで見た、予備の超巨大な撃龍槍であった。

 

 

 

 




「ヒカリ(光梨)VSシロ」はヒカリ(光梨)が勝ちました。

それぞれの手持ち構成は以下のとおり。

ヒカリ(光梨)

ガブリアス ♂ ようき さめはだ でんきだま
じしん/がんせきふうじ/なげつける/すなかけ

カットロトム   おくびょう ふゆう たべのこし
リーフストーム/ボルトチェンジ/おにび/みがわり

ギャラドス ♂ いじっぱり じしんかじょう ラムのみ
りゅうのまい/こおりのキバ/げきりん/じしん

サワムラー ♂ ようき かるわざ するどいキバ
ねこだまし/なげつける/インファイト/いわなだれ

トゲキッス ♀ おくびょう てんのめぐみ アッキのみ
エアスラッシュ/トライアタック/まもる/かえんほうしゃ

ゴウカザル ♂ いじっぱり てつのこぶし ひかりのこな
グロウパンチ/ほのおのパンチ/かみなりパンチ/かげぶんしん


シロ

ミロカロス ♀ ずぶとい ふしぎなうろこ かえんだま
くろいきり/じこさいせい/ねっとう/ミラーコート

ジャラランガ(Z) ♂ むじゃき ぼうおん ジャラランガZ
スケイルノイズ/ラスターカノン/インファイト/ちょうはつ

ドータクン(テラ:電)   ひかえめ ふゆう たべのこし
アシストパワー/ボディプレス/てっぺき/めいそう

ガルーラ(メガ) ♀ ようき せいしんりょく(おやこあい) ガルーラナイト
おんがえし/グロウパンチ/じしん/ふいうち

サンダー(ダイマ)   ひかえめ プレッシャー いのちのたま
10まんボルト/ぼうふう/ねっぷう/はねやすめ

ザシアン(王)   ようき ふとうのけん くちたけん
きょじゅうざん/せいなるつるぎ/かみくだく/つるぎのまい



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最終決戦 ~英雄の証~

ミラボレアスとの決戦、開戦から体感で二時間以上は経っているような気がする……それでもミラボレアスはなお倒れず、そして私たちも戦い続けていた。少しずつではあるが、遥か天上に見えるシュレイド城の姿がはっきりしてきている……これは、もうかなり時間がないのではないだろうか。

ミラボレアス最大の必殺技『劫火』をなんとか乗り切った私達だけど、技の余波で私たちヒスイ組が持つ道具のほとんどがダメになってしまった。……静香さん達が持っているアイテムポーチが健在なあたり、一体どうなってるんだ向こうの世界は……。

現在のところ、ディノバルド、タマミツネ、ライゼクス、ガムートが戦闘不能となった代わりに、シロちゃんがルギア、グラードン、ゼクロム、イベルタル、ルナアーラ、ザマゼンタと、非常に豪華な伝説のポケモンを引き連れて戻ってきた。これだけ強力なポケモンたちが勢ぞろいしているのに互角以上と断言するのが躊躇されるあたり、さすがはミラボレアスといったところだ。伝説に謳われるポケモン達も、緊張で顔がこわばっているのが見て取れる……ミラボレアスの脅威を、正しく理解しているんだ。

 

「ウォロ。しばらく彼らのうち何匹かを預けるわ。上手くショウ達を援護して」

 

「援護、ですか……伝説のポケモンといえど、やはりミラボレアスほどの脅威が相手では分が悪いと?」

 

「アルセウスでさえ打倒の叶わない相手よ?別におかしな話ではないでしょう」

 

「……業腹ですが、認めましょう。では、空を飛べるポケモンはシロさんにお任せします。きっとあなたの方がうまく動かせるでしょう」

 

「では、グラードンとザマゼンタの指揮権を譲るわ。お願いね」

 

「了解しました」

 

そんな会話が聞こえてきた。やはり、アルセウスはミラボレアスに……許さないぞ、ミラボレアス!

 

「グラビモス!リフレクターだ!」

 

「なるほど、先んじて壁を張り守りを固めると……では、ザマゼンタ、ひかりのかべです!」

 

ガムートが抜けてできた穴だけど、ザマゼンタのおかげで補強されたみたいだ。……それにしても、お母さんから名前だけは聞いたことのある伝説のポケモンが一堂に会するなんて、とんでもない話だ。

再び両壁が展開されたと悟ったミラボレアスは、片腕を高く上げてそれをハンターめがけて振り下ろそうとしてきた。あの技は、かわらわり!まずい、あの攻撃が成立するとせっかく張った壁が破壊される!

 

「ルギア、イベルタル、サイコキネシス!!」

 

と、ここでルギアとイベルタルによるサイコキネシス!ミラボレアスの動きが阻害されている!!念力で動きを止められた経験がないのか、ミラボレアスが困惑しているのが分かる。

 

「ふふっ、超能力を実際に受けるのは初めてかしら!?」

 

「今のうちに攻撃させてもらうぜ!卑怯とは言うまいな、黒龍!」

 

サイコキネシスで動きを止められたミラボレアスに、ヒューイさんからの猛攻が仕掛けられる。ニールさん達はじばく攻撃が直撃した影響か、回復作業は終えたけどまだ動けそうではない。ならば、ここは私達が!

 

「ジンオウガ!」

 

『おう!行くぜ、ショウ!!』

 

「「うおおおおっ!!/ウオオオオッ!!」」

 

ここからが正念場と見た私たちは、すかさず"きずなへんげ"を発動させる!!

 

「ジンオウガ、かみなり!」

 

「テル少年!ゼルレウスを預けるぞ!」

 

「わかりました、アカイさん!」

 

「「はかいこうせん!!」」

 

ジンオウガがミラボレアスへ迫りながらかみなりで攻撃を仕掛ける。ちょうどライゼクスを失った先輩が、アカイさんからゼルレウスを預けられたことで戦線に復帰したところだった。ジンオウガからの攻撃を鬱陶しそうに払いながら反撃に転じようとしたところで、横入りのはかいこうせんが命中した。

ゼルレウス達にりゅうのはどうを撃とうと構えるがそこへメガグラビモスのいわなだれが降り注ぎ、直後にメガベリオロスのサイコカッターが直撃する。

 

「そうはさせるかよ!ミラボレアスッ!!」

 

「ヒスイ地方をめちゃくちゃになんて、絶対にさせないんだから!!」

 

そういえば、ラギアクルス……流静さんはどうなっただろうか。げんきのかけらを与えられたとはいえ、現状ほかの仲間達から後れを取っているけれど……。

 

「……シズカさま」

 

「ガラナさん……?」

 

「……ラギアクルスさまを、お願いします。あたくしは後方に下がり、皆様の支援に専念します」

 

「ガラナさん、なにを……!」

 

あれ?静香さんとガラナさんが揉めてる……?そばにいる流静さんも、酷く困惑した様子だ。何があったんだろう……?

 

「遠目ではありましたが、見ていました。ミラボレアスがじばくを使った際、ラギアクルスさまは迷うことなくシズカさまを庇いに向かわれていました。シズカさまよりも近い場所にいたニールさまやネネさまよりも、より離れた場所にいたシズカさまを……アクアジェットによる高速移動を使ってまで、守っていました。

きっと、あたくしにはわからない何かがラギアクルスさまとシズカさまの間にあって、それはあたくしが介在することのかなわないものなのでしょう」

 

「それは……」

 

「少し、妬けてしまいますわ。出会いも……過ごした時も……あたくしの方が早く、長いのだと自負できるのに……。いえ、憧れを捨てきれなかったあたくしでは、真にラギアクルスさまの隣に立つことはできないのでしょう……けれど、シズカさま。あなたは、きっと違う」

 

「…………」

 

「あなたがラギアクルスさまを見る目も、ラギアクルスさまがあなたを見る目も、共に愛する人を見る目をしておりました。相互理解、相思相愛……お互いを尊重し、お互いを想い合う。お二方のような絆であれば、きっとショウさまとジンオウガさまと同じ領域にたどり着けるのではないかと愚考いたしますわ。

あたくしは……ダメですね。あの日、島キングを助けられたあの日から、ラギアクルスさまに返しきれぬ大恩と憧憬を抱いてしまった。正直なところ、ラギアクルスさまと対等であろうという心構えに、どこか萎縮しておりました。恐れ多くてかなわない……と」

 

「ガラナ、さん……」

 

「大丈夫、きっと成し遂げられますわ……魂という名の血で繋がった御家族であるお二人なら、必ず」

 

「うっ!……さ、さっきの話、聞こえて……」

 

「心配無用、決して他言致しませんわ」

 

「はい……」

 

……?よくわからないけど、どうやら丸く収まったみたいだ。ガラナさんが後方に下がって……え?静香さんと流静さんが隣り合ってる!?

 

「……兄さん」

 

「?」

 

「せっかくだし、背中に乗せてよ」

 

「グルァ」

 

「ん、ありがとう。……んしょっと。おぉ、結構高いね」

 

「グルラ」

 

「……さて、託されちゃったね。けど、どこかでこの瞬間を望んでいた自分がいたかもと思うと、なんか苦笑いしか出てこない」

 

「グルォラ」

 

「……私には、ショウみたいに兄さんの声が聞こえるわけじゃない。ショウと光輝さんに負けないような絆があるのか、まだわからない。私の一方通行かもしれないし、もしかしたら兄さんからは見向きもされていないかも」

 

「…………」

 

「……でもね。元いた世界じゃ兄さんだけだったのが、モンハンの世界に転移してたくさん増えたんだ。私を、私として認めて評価してくれる人が。元いた世界じゃ、私はどこまでも兄さんの下位互換としか見られなかった。ほかならぬ兄さん自身が私を私としてみてくれていたから、平気だった。いなくなってからは、一層生きづらくなったけど……それも、異世界転移でまるっと解決した。

『我らの団』の団長が私を受け入れてくれた。ハンターの師匠が私を鍛えてくれた。受付嬢のソフィアさんが私の友達になってくれた。加工担当のゲキさんが私のガンランスを作ってくれた。料理長のニャンハオさんがご飯を作ってくれた。竜人商人のポォさんが道具を融通してくれた。テュッティーが私に装飾品を加工してくれた。エイデンさんが師匠と一緒に面倒を見てくれた。ネネがこんな私に憧れてくれた。ニールさんが狩猟の手助けをしてくれた。ギルドからたくさん褒められた。依頼主からたくさんお礼を言われた」

 

も、もう少し近づかないとよく見えない。……んん!?し、静香さん、泣いてる!?何があったんだ?話し声も小さいからよく聞こえない……。

 

「私……私!こんなにたくさんの人に助けられてる!それと同じくらい、私もたくさんの人を助けてた!私はまだ、私を信じて支えてくれているすべての人に報いきれてない!……まだ、元いた世界に置いてきてしまった父さんと母さんに胸を張れるような、立派な大人になれてない!」

 

「……!」

 

「あのね、私……ずっと、誰よりも私と兄さんを比較してた父さんと母さんのこと、実はそんなに嫌いじゃなかったよ。私、本当は気づいてたんだ……父さんと母さんが私と兄さんを比較してたのは、"出来ることと出来ないことを見つけるためだったんだ"ってこと。私の高校の進学先は、兄さんに出来なくて私に出来ることを重点的に学べる学校にしようって話し合ってたの、全部知ってた。……知ってて、知ってて私は!なお兄さんにすがろうとした!目を逸らしてたのは私の方……私は、とんだ親不孝者だ……」

 

「…………」

 

「もう、父さんと母さんに私の成長を見せてあげることも、報せることもできない。……だから、せめて。今ここにいる兄さんに、今の私の全てを見せる。兄さんと死別して……そして、私がこの世界に来てからの七年間の成果を、兄さんに捧げる!

今ここに、決別の証を立てる……水橋静香、22歳。世界を滅ぼさんとする黒龍ミラボレアスをこの手で討ち果たす!そして……この討伐を成すと共に、私は兄さんへの執着も振り切ってみせる!!

だから、兄さん……私に力を貸して!!」

 

「グルオオオオオォォォォォォォォォッ!!」

 

静香さんが大きな声で宣誓をすると同時に、流静さんも大きく咆哮を上げて……あっ!?

 

「うおっ、なんだ急に!?」

 

「ラギアクルスが、光に包まれて……」

 

「進化、する……ラギアクルスさまが……!」

 

静香さんを背中に乗せたまま、ラギアクルスの体が光に包まれる。体が一回り以上大きくなり、それに伴って四肢も大きく太さを増し、尻尾の先端がまるで船の錨のような形状へと変化した。角と蓄電殻もより大きくなり、更に首周りからすごい量の毛が……あれは、鬣!

光が弾けると、青い鱗は比喩抜きで空と同じ色……空色へと変化。金の鬣はよく見ると背中から尻尾にかけて生え揃っていて、角や蓄電殻は先端から根元にかけて徐々に黒ずんでいる琥珀色に。四肢は関節部分から翡翠色へとグラデーションがかかっている。まるで快晴の青空と緑生い茂る大地、みたいだ。

 

「行こうっ!兄さんっ!!」

 

「グルオラアアアアァァァァァァァッ!!」

 

すごいすごいすごいすごい!なんかもうすごい!すごすぎてすごい!(語彙力消失)

 

「……驚いた。亜種でも希少種でもない、ましてきずなへんげとは異なる変化……なるほど、進化か」

 

「アカイさん!あのラギアクルスは……!」

 

「落ち着け、テル少年。……といっても、正直なところ私も興奮を禁じえない。あのような姿のラギアクルスは過去に発見例のない新しい姿だ。新種のラギアクルス……いや、もはやラギアクルスと呼称することも憚れる……それほどの進化だ。

名付けるなら……燦光竜(さんこうりゅう)】・『ラギアステラ』!」

 

遠くからアカイさんの言葉が聞こえた。ラギアステラ……星を冠する海竜種、なんていい響きなんだ!あ、アステラってニールさんが言ってた新大陸の拠点の名前?いろいろと噛み合っててなおのこといい名前だ。

 

「ふふっ、聞こえた?兄さん。新種の姿だって。兄さんも殻を破れたことだし、私も一皮剥けないとね。さあ、行こう!」

 

「グルオラァ!」

 

静香さんを乗せたラギアクルス……否、ラギアステラが突撃する!

アクアジェットで高速突貫したラギアステラは飛びかかるように体当たりを仕掛けた。ミラボレアスはそれに気づいていて、体を左に傾けることで右の脇元を抜かせる形で攻撃を避けた。しかし、ラギアステラが通り過ぎるタイミングでその背中から飛び出した静香さんがすかさず顔面にフルバーストを叩き込む!反動で後ろに吹っ飛ぶ静香さん。ミラボレアスはその隙を逃すまいと、ドラゴンクローを静香さんめがけて振り下ろそうとする。マズイ、静香さんが!

 

「(悪いね、ミラボレアス。私は……)」

 

と、その時だ!静香さんは右手に持っていた盾を軽く宙へ放り、その間に左手のガンランスを右手に、盾を左手に持ち替えた!

 

「(両利きなんだ!)」

 

すかさず盾を正面……ではなく、側面に構える静香さん。その直後、ハイドロポンプが静香さんが持つ盾に命中し、静香さんは押し出されてドラゴンクローを回避した!まさか攻撃が空振りに終わるとは思わなかったミラボレアスは思い切り前につんのめっている。そこへラギアステラがドラゴンダイブで体当りするとともに、静香さんの竜撃砲も命中する。すごい……静香さんがブラストダッシュと翔蟲で空を舞い、ラギアステラが地を滑りながら二面攻撃を仕掛けてる!完璧な連携だ!

 

「キングストローム!!」

 

ミラボレアスの顔を足蹴にしながら再び飛び上がった静香さんの鋭い指示が飛ぶ。ラギアステラが超巨大ななみのりを起こし、その波に乗って大きく旋回しうずしおを作る。そのうずしおの頂点に、ラギアステラとその頭に乗っている静香さんの姿が見えた。

 

「行くよ、兄さん!私の覇山竜撃砲と一緒に!」

 

「グルァ!!」

 

「いっけええぇぇ!!」

 

静香さんのガンランスの穂先に放たれた巨大な火球を、ラギアステラの雷球が押し出して発射される!火球と雷球が混ざり合い、炎と雷の弾丸となってミラボレアスの頭上から襲いかかる!!

 

「ギギャアアアンッ!?」

 

「よっしゃ!あとに続くぜ!!グラビモス、ラーヴァ・ロヴィーナ!!」

 

「ベリオロスも行くよ!ネージュツイスト!!」

 

続いてセキさんとワサビちゃんが動いた!まず、メガグラビモスが背中から大量の火山岩を発射しミラボレアスへ降り注がせる。さらに翼を地面に叩きつけるようにして翼爪で体を固定すると、ミラボレアスへマグマライザーをぶっぱなす!マグマライザーに加えて、その余波で周囲の火山岩が次々と大爆発を興してミラボレアスにダメージを与える!!

今度はメガベリオロスの番だ!アイスサイクロンを連続で放ち、ミラボレアスの動きを封じたところでグラウンドサイクロンを直接ミラボレアスに撃ち込む!グラウンドサイクロンは周囲に展開されていたアイスサイクロンを取り込みさらに巨大な猛吹雪の竜巻となりミラボレアスを苦しめる!

 

「イベルタル、デスウイング!ルギア、エアロブラスト!ゼクロム、らいげき!ルナアーラ、シャドーレイ!」

 

「グラードン、だんがいのつるぎ!ザマゼンタ、きょじゅうだん!」

 

伝説のポケモン達による援護攻撃も、いい感じに決まっている!!

 

「いいぞ、効いている!」

 

「このまま押し込むぞ!」

 

「少々出遅れましたわね……姉様に後れは取りませんわ!!」

 

シュラークさん達も、ミラボレアスからのダメージから起き上がってこれた!いいぞ、形勢は逆転だ!!

 

「……また会えたわね、あなた」

 

「っ!?その声は!」

 

「やと「野盗三姉妹ショウチクバイ!」――ってセリフを被せんな!!」

 

「あ、ごめんなさい。でも今はのっぴきならない状況で……」

 

背後から声をかけられたと思ったら、その正体は野盗三姉妹!ど、どうしてこんなところに……。

 

「シンオウさま……いや、ディアルガさまとパルキアさま、だったか。あの時は声をかけるくらいでまともに借りを返せなかったからね。これでようやく貸し借りなしだよ」

 

「あの、何の話?」

 

「あのシロってお嬢さんに頼まれてね……とある巨大ポケモンを退治するために必要なものを持ってきたのさ。……オウメ!」

 

「はい!ドーミラー達、最後にもうひと踏ん張りだ!」

 

「ミラ~!!」

 

オウメが階段の下の方に向かって声をかけている。すると、一匹、また一匹とドーミラーが姿を現して――ってぇ!?

 

「な、なにこれぇぇぇぇぇぇ!?」

 

「でっかい槍だろう?なんでも撃龍槍っていう、化け物退治専用の決戦兵器らしいじゃないか」

 

いや、撃龍槍なら知ってる。ダイマックスしたティガレックス戦で使われたものを知ってるけど、目の前にあるそれはあの時の物よりもずっと大きい!!

 

「……!!」

 

と、ここでビリビリと突き刺さる強烈な殺気――どうやらミラボレアスが、撃龍槍の存在を認識したらしい。酷く驚いた様子で、同時にありったけの憎悪と憤怒が込められた目つきをしていた。

 

「……っと。奴さん、こっちに気づいたようだね。この撃龍槍とやらを、ありったけの回転力を込めてあの黒龍にブチ込む!それが、あのお嬢さんの狙いなのさ」

 

「これだけの質量が回転しながらぶち当たったら、流石にあのでっかい黒龍だってイチコロさ!」

 

「そのためにも、エスパーポケモンの念力が必要不可欠だ。手は多いに越したことはない!」

 

その言葉と同時に、オマツはゲンガー、オタケはユキメノコ、オウメはユンゲラーを繰り出してサイコキネシスを指示。ミラボレアスへと穂先が向けられた撃龍槍が、徐々に回転を始めた。

 

「むっ……ルギア、イベルタル、ルナアーラ。あなたたちも撃龍槍へ!」

 

「「「(`・ω・)ゞ」」」

 

「さあ、ゼクロム。踏ん張るわよ」

 

「( `・ω・´ )」

 

シロちゃんの指示で、伝説のポケモンが三匹も加わってさらにサイコキネシスが掛けられる。回転力が増し始めた撃龍槍……ゴウンゴウンと、稼動音が聞こえてきそうな勢いだ。

 

「私だって!エーフィ!」

 

「ムウマージ、サーナイト、エルレイドよ、お主らも行くのじゃ!」

 

「ウォーグル!共に行けぃ!」

 

カイさん、ムベさん、デンボク団長達も念力系のエスパー技が使えるポケモンを繰り出し、共に撃龍槍へサイコキネシスを掛けていく。より回転速度が増して行き、風切り音すら聞こえてきた……!

 

「……!!」

 

「あ、ミラボレアスが!!」

 

ミラボレアスが、空へ逃げた!……いや、違う、この流れは!

 

「まさか、また劫火を撃つのか!」

 

「撃龍槍ごと、俺たちを焼き尽くそうって魂胆だな!?」

 

「いや!多大なるサイコパワーで回転力の増幅と耐久力の増加がなされた撃龍槍ならば、必ずや突破できる!!」

 

撃龍槍もまた、ミラボレアスへと穂先を向けて方向転換を終える。今やその回転力は、つのドリルもかくやとばかりだ。

 

「ギャオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

「撃龍槍、発射ァーッ!!」

 

ヒューイさんの掛け声に合わせて、撃龍槍が勢いよくミラボレアスへ向かっていった。ミラボレアスも劫火で対抗するが、撃龍槍は劫火の中を勢いよく突っ切っていく!

 

「す、すごい……これなら!」

 

「あぁ……ミラボレアスに届かせられる!!」

 

どんどん突き進んでいく撃龍槍……だが、ミラボレアスとの距離が半ばまで迫ったところで、その勢いを失ってしまった……!

 

「くそっ、ここにきて……!」

 

「拮抗しちまったか……!」

 

「……いや、まだだ!」

 

「先輩!?」

 

先輩、いきなりなにを……!

 

「ゼルレウス!おれを乗せて飛べ!!」

 

「グオン?」

 

「こ、この土壇場で高いところが怖いとか言ってられるか!!早くしてくれ!」

 

「グオオオオ!!」

 

ゼルレウスが先輩を乗せて、空へ舞い上がる……一体何を!?

 

「こうなったら、直接ミラボレアスを妨害する!奴の気を少しでも逸らしてくる!!」

 

「おい!無茶だテル!!」

 

「先輩っ!!」

 

「大丈夫だ!おれを信じろ!!ショウ!!」

 

ゼルレウスと先輩が飛んでいく……そのあとに続いてラ・ロが飛び、ゼクロムも後を追う。その背にはそれぞれアカイさんとシロちゃんが騎乗していた。三者三様、ミラボレアスの背後を取ると、そこから一斉攻撃を仕掛けた!

 

「「「りゅうのはどう!!」」」

 

三つのりゅうのはどうがミラボレアスに浴びせられるが、ミラボレアスの攻撃が止む気配はない!それどころか、ミラボレアスは劫火を放ちながら翼からマジカルシャインを背後に向かって放った!

 

「うわぁ!」

 

「くぅっ!」

 

「うおっ!」

 

ゼルレウス、ラ・ロ、ゼクロムにそれぞれマジカルシャインが命中。大きく体勢を崩した三匹だけど、すぐに立て直した。よかった……。

 

「くっそー……まだまだだぁ!」

 

「負けられないね、ゼクロム!」

 

「ラ・ロ。まだやれるな?では、行くぞ!」

 

三匹は再びりゅうのはどうを放ち、ミラボレアスへ攻撃を続ける。流石のミラボレアスも苛立ち始めたのか、時折視線が後ろに向けられていた。まだだ、まだ……まだ手が足りない……!

 

「グギュグババァグアア!!!」

 

「ぱるらぱるぅるらああ!!!」

 

「ギゴガゴーゴーッ!!」

 

と、ここでどこからともなくときのほうこう、あくうせつだん、シャドーボールの連続攻撃がミラボレアスへ直撃した!今の攻撃は!!

 

「ディアルガさま!」

 

「パルキアさまだ!」

 

「ギラティナ……(どうやら、守護竜としての責務は全うできているようですね)」

 

セキさん、カイさん、ウォロが反応したように、攻撃に加わってくれたのはオリジンフォルムとなったディアルガ、パルキア、ギラティナの三匹だ!心強い味方が来てくれた!

……え?ダークライ?ちょっと何言ってるかわかんない。

 

「……!!」

 

流石にこの三匹の参戦は無視できないのか、ミラボレアスは再びマジカルシャインで後背へ攻撃を仕掛ける。

 

――次から次へと小賢しいッ!!

 

「(……!これは、ミラボレアスの……でも、この声は……)」

 

今聞こえた声は……知ってる、けれどもう聞こえないはずの声だ……。

 

「……クロノ……?」

 

おもわず、口を突いて出た名前……まさか、そこにいるの?

 

「ヤバい、撃龍槍が……!」

 

「エスパーポケモンも限界だよ!」

 

「まだだ……まだ堪えるんだよ!!」

 

ポケモン達が技をかけ続けるのも、もはや限界が近い……このままじゃ押し切られる!!

 

――さらばだぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さばきのつぶてッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天から降り注ぐ無数の光。その光が次々とミラボレアスの背中を撃ち抜いた!!

 

「今の技は……!」

 

――アルセウスッ!?

 

「アルセウス!!」

 

クロノの声と、私の声が同時に響く。ミラボレアスよりもはるかに高い位置から、アルセウスが姿を現した!

 

「シンオウさま……いや、アルセウスさま!」

 

「生きてた……生きてらっしゃった!!」

 

「そうでしょうそうでしょう!アルセウスがあの程度の輩に敗れるはずがない!!ワタクシは信じておりましたとも!!」

 

アルセウスの、あの巨体……間違いない、私をヒスイ地方に送り込み、最後に試練として一戦交えた、オリジナルのアルセウスだ!!そして、アルセウスの強烈な一撃に、ミラボレアスの意識が完全に逸れた!!

 

「今だァ!ポケモンども!フルパワーだァァァ!!」

 

ダメ押しとばかりにヒューイさんも自身のドータクンと【幻舞蝶】アゲハントを繰り出し、追加のサイコキネシスを加える。伝説のポケモンも含めた全てのポケモンたちによる全力のサイコキネシスで撃ち出された撃龍槍は、凄まじい回転を伴ってミラボレアスの劫火を突破!その土手っ腹に撃龍槍が思い切り突き刺さった!!

 

「ギャアアアアアアアアアッ!?」

 

ミラボレアスは絶叫とともに墜落。腹部に撃龍槍が刺さりっぱなしだというのにヨロヨロとだが立ち上がってみせた。その目には、まだ闘志が宿っている。

 

「っしゃあ!ハンター全員、こっからが勝負どころだァ!!一気に決めるぜ!!」

 

「あぁ、必ずやり遂げてみせる!」

 

「往生なさいな、ミラボレアス!」

 

「お前との因縁も、ここまでだ!」

 

ハンター達も気勢を上げ、各々がミラボレアスへ突撃していく。

 

「アルセウスさまが見てる前で、無様な戦いはできねぇな!行くぜ、ワサビ!」

 

「うん、セキさん!」

 

「ガラナさんの想いも一緒に……最後まで止まらないよ、兄さん!」

 

「飛べっ、ゼルレウス!空の王者は、お前以外にありえない!!」

 

セキさんにワサビちゃん、静香さんに先輩……モンスターと共に戦う人達も、ここぞとばかりに猛攻を仕掛けていく!

 

「叔父さん」

 

「ワン!」

 

「……行くぞぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【最終決戦】~モンスターハンターシリーズ~

 

 

 

 

 

 

 

 

「押せ押せぇ!押しきれぇ!!出し惜しみもいらねぇ!後先なんて考えんな!今この瞬間にすべてを吐き出す勢いで!全力を出しきれぇ!!」

 

「うおおおおおおお!!」

 

「くたばれええぇぇ!!」

 

「そりゃあああああ!!」

 

ヒューイさんの気刃兜割り、ニールさんの震怒竜怨斬、ネネさんのラピッドヘブン、シュラークさんのトランスラッシュが、次々とミラボレアスへ襲いかかる。ミラボレアスもワイドブレイカーやねっぷうといった対多数技で反撃するが、攻撃を躱されたりいなされたりしている。完全に勢いが乗っているハンター達だ、止められるわけがない!

 

「いわなだれだ!」

 

「れいとうビーム!」

 

「りゅうのはどう!」

 

「はかいこうせん!」

 

モンスター達も果敢に攻め立てる!ミラボレアスは足元に群がるハンター達への対処に追われているため、モンスターの攻撃には反応しきれていない!

 

「ポケモンのみんな!もはや小細工なんていらない!全力で……はかいこうせんだ!」

 

シロちゃんが連れてきてくれたポケモン達も、野盗三姉妹のポケモン達も、みんながみんな一斉に攻撃を仕掛けてくれている。ミラボレアスもだいぶ苦しい!

 

「兄さん!」

 

「グルォア!」

 

ラギアステラがでんじほうを撃つと、前を走っていた静香さんを頭に乗せてさらに加速。勢いよく頭を振って静香さんを投げ飛ばす!静香さんはガンランスの穂先を構えると、その先にはでんじほうが飛んでいる。銃口から装填するというとんでもない荒業ででんじほうをガンランス内に収めると、そのまま竜の息吹で竜撃砲の熱量をガンランス内部に閉じ込める!

 

「フルバレットファイアァ!!」

 

ありったけを全てぶっ放す、と説明してくれたフルバレットファイアが炸裂した。さらに静香さんの後隙をなくすラギアステラのドラゴンダイブも命中!そのまま静香さんを回収しつつ距離をとった!

 

「「ショウ!」」

 

静香さん。ヒューイさん。

 

「「全ての元凶を!」」

 

ニールさん。ネネさん。

 

「「ミラボレアスを!」」

 

セキさん。カイさん。

 

「ぶっ倒せ!!」

 

先輩……!

 

『お前らがナンバーワンだ!』

 

この声は!……剣介さん!

 

『勝利は目の前だぜ!』

 

剛太さん……!

 

『後は、頼む』

 

流静さん……!

 

『いつも胸には、友情・努力・勝利だ!』『頑張って……負けないで!』

 

焔さん……!葵さん……!

 

『ショウ』

 

叔父さん。

 

『さぁ、仕上げと行こうか』

 

……うん!

 

「ワオオオオオオオオンッ!!(やぁってやるぜ!!)」

 

ジンオウガが駆け出し、その全身に雷電を纏う。グラビモス(剛太さん)から、ラギアステラ(流静さん)から、ベリオロス(剣介さん)から、ゼルレウス(焔さん)から、ラ・ロ(葵さん)から、竜気が流れ込んで、その雷電は色鮮やかな虹色へと変わっていく!

 

――ショウ……やっちゃえぇ!!

 

……!お母さん……!!

 

「ミラボレアス!私たちは!一人じゃないっ!!私たちは……一つだぁああああああっ!!」

 

「キシャアァオオオオオオッ!!」

 

ミラボレアスも苦し紛れの劫火!だが!それでもっ!!

 

「私たちは、止まらないっ!!ジンオウガ……!」

 

「ワオン!」

 

「らい……じいぃぃぃぃぃんっ!!」

 

「ウオオオオオオオッ!!」

 

雷迅と劫火。炎と雷。二つの大技が激突する。……熱い。とてつもなく熱い。まだこれほどの熱量を持つなんて……やっぱりすごいよ、ミラボレアス。……だけどぉ!!

 

「「うおおおおおおお!/ウオオオオオオオ!」」

 

勝つのは……私たちだぁーっ!!

 

 

――……見事。

 

 

最後に、そんな声が聞こえて――

 

「ギギャアアアアアアアッ!!」

 

劫火を突き抜けたジンオウガの雷迅が、ミラボレアスに直撃した。あまりの衝撃にジンオウガは吹っ飛び、私のすぐ目の前まで転がってきた。ミラボレアスはその巨体を横たえ、大地に沈んだ。

 

「……やっ……た……?」

 

「ショウ」

 

事実を確認する前に、アカイさんが声をかけてきた。彼はじっとミラボレアスの方を見たまま、私が振り返ったのを察して話を続けた。

 

「ショウ。最後は、どうする?」

 

「最後?」

 

「ミラボレアスを討伐するか……それとも」

 

アカイさんが、懐から何かを取り出して……って、え?

 

「捕獲するか、だ」

 

「マスターボール……けど、なんで……?」

 

「いつだかに、放牧場でグラビモスがじばくしただろう?その時に飛び散った鉱石の中に、滅龍石が混ざっていた。そのことに気づいたのは、我々ではなくヒスイのギンガ団員だったがね。このマスターボールは、その時に回収された滅龍石で作られたものだ」

 

「そんなことが……」

 

「そして……ここでミラボレアスを完全に仕留めるか、捕獲するかは君の自由だ。仮にも君の命を奪おうとした輩だ……情状酌量の余地はないと息の根を止められても、文句は言えまいよ。君がミラボレアスを捕獲するというのなら、私とシロから祖龍と紅龍に掛け合い、ミラボレアスが入ったボールを厳重に封印することを約束する。

奴の生殺与奪の権は、今、君が握っている。どうするかは……君に任せよう」

 

アカイさんからマスターボールを受け取り、考える。ミラボレアスを生かすか、殺すか……。

 

私は……。

 

「…………」

 

「あっ、ショウ……」

 

私はミラボレアスの下まで歩いていく。横倒しにされたミラボレアスの顔まで歩いていけば、気配を察したのか薄く目が開かれる。

 

「ミラボレアス」

 

「…………」

 

「正直、死ぬかと思ったよ。命がいくつあったって、全然足りない。おまけに私は呪いまでかけられるし……とんだ厄年だよ、ほんと」

 

「…………」

 

いや、これはマジでほんと。ぶっちゃけ、呪いまで掛けなくてもよかったくない?……と、思わないこともなかったり。いくらあの時の私とニールさんの目つきが似てたからって呪いとか、勘違いも甚だしいんですが。

 

「……でも、あなたが現れたことで、私は結果的に知らぬままで終わるはずだったいろんなことを知ることができた。お母さん達の前世、ハンターの世界……他にも、いっぱい。だから全部が全部、恨み節じゃない。100%怒りじゃない。……1%くらいは、感謝もある」

 

「…………」

 

これもほんと。ミラボレアスが現れたことでアルセウスがジンオウガ達を呼び寄せて、その肉体に叔父さんやみんなの魂が入り込んで……呪いをかけられたことでハンター達の世界へ訪れることができたから、静香さん達に出会えたしあのクソ野郎をぶっ飛ばしてお母さんの無念を晴らすことができた。

綺麗事みたいになるけど……悪いことばかりじゃないんだ。

 

「……だから、それらを加味した上で、私は……」

 

手に持ったマスターボールを、ミラボレアスにつき出す。

 

「あなたをこのボールに収めて、封印する。二度と日の目を拝めないかもしれないけど、まぁ……そこは、自業自得ってことで」

 

「…………」

 

「じゃあ、そういうことで。……お疲れ様。さようなら、クロノ(・・・)

 

「……!フッ……」

 

最後にそう言うと、ミラボレアスは一瞬だけ大きく目を見開いて……それから小さく鼻で笑うと、ゆっくりと目を閉じた。私はミラボレアスの鼻先にボールを押し当て、中へと収める。ミラボレアスが捕獲されたことで、突き刺さっていた撃龍槍だけがその場に残された。

 

「……それが、君の選択か」

 

「はい。……甘いですか?」

 

「いいや?如何な選択であろうと、私は君を尊重しよう」

 

「ありがとうございます」

 

「それはこちらのセリフさ。今回の騒動を引き起こした出涸らしであろうが、祖龍や紅龍にとって……いや、彼らだけでなく我々にとっても血を分けた半身のようなものだ。このような結果に終わったことを……そうだな、ホッとしているよ、今は」

 

アカイさんは私からマスターボールを受け取ると、過去一穏やかな表情でボールを見つめていた。その顔は、やんちゃな我が子を見守る、親の顔だ。

と、どこからともなく光が差し込んできた。

 

「みんな!見て!」

 

「空が!」

 

空を見上げれば、時空の裂け目とそこに映りこんでいたシュレイド城が消え失せ、満天の星空が広がっていた。ここは随分と高い場所にあるから、陽の傾きによる時間経過が把握できないんだよね……はやく地上に降りて、今がまだ昼なのか夜なのか、確認したい。

 

「……さぁて、いよいよ本当に最後の仕上げだ」

 

「え?ヒューイ殿、まだなにかすることが……?」

 

「はぁ?そんなの決まってんだろ!」

 

太刀を納刀しつつ振り返ったヒューイさんは、いきなりそんなことを言いだした。本当にいきなりだったからその場にいた全員が困惑顔。代表でニールさんが尋ねると、ヒューイさんはそれはそれはいい笑顔でこう言った。

 

 

 

 

「帰るんだよ!コトブキムラになっ!!」

 

全員が異口同音で返事をしたのは、言うまでもない。

帰ろう!みんなが待ってる、あの場所へ!!

 

 

 

 




クエストクリア!!




推奨BGMを見て「おや?」となったあなた、間違ってません。なんなら自分も同じことを考えてました。
【英雄の証】の一部をループさせてたあの曲、曲名は【英雄の証】じゃないんですね。サントラとか買わないから普通に驚きました。
だからタイトルに【英雄の証】を入れたのかと言われたらそれはそう。



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