ミイラ取りがミイラになると思ったらミイラがミイラ取りになった話 (yrtohoyr)
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第一話 ミイラとミイラ取りの出会い
このお話はその名の通りミイラ取りがミイラになるのではなく、ミイラがミイラ取りになるギャグコメディです。
また、私の小説では前書き、後書きはほとんど本編と関係ないものとなっておりますので読み飛ばすのが時間もかかりませんしお勧めです。
この小説はふとした時に思い付いた小説のため、設定が曖昧な部分が多いうえ、自分で読んでてもまったく意味が分からないのでもしお読みになる方は吐き気を催さないよう注意してお読みください。
これは、遥か彼方にある世界の、とある女冒険家の愉快で奇妙な話である。
「ウバァァァア!!!」
「きゃあああああ!!!来ないでええええ!!!」
包帯でぐるぐる巻きにされた何かが女冒険家を追いかけている。
なぜこんな状況になったのか、それは数十分前に遡る。
~数十分前~
ここは洞窟の中。
数十分後、ミイラに追いかけられる女冒険家はここで何やら探索をしていた。
ピッピッピピッピピピッピーピーピー...
「ん?この下に空洞がある...掘ってみよう。」
薄暗い洞窟の中、ヘッドライトの明かりを頼りに散策をしていると、左手に持っている装置が地中に空洞があることを告げる。
「よし、掘るぞ~!」
彼女はバッグの中から組立式のスコップを取り出し、手慣れた手つきであっという間にスコップを組み立てると、意気揚々と掘り始める。
ザクッザクッザクッザクッザクッ...ゴンッ
少し掘ったところでスコップがなにやら固いものに当たる。
「何かあるな...」
ザクッザクッザクッザクッ...
さらに周りを掘り進めると、そこには分厚い陶器で出来た棺桶のようなものが姿を表した。
「古代文字か...こ、これは!?古代ルイーズ国の女王、マリー・ルイーズの棺桶!!やった、やっと見つけたよぉ!!」
彼女が冒険家をやっている理由。
その一つが、かつてこの世界で強大な権威を振るった古代ルイーズ国の女王、マリー・ルイーズの棺を探し当てることだった。
マリー・ルイーズの棺はどこにあるのか、どんな場所に埋葬されたのかは文献で残されておらず、ルイーズ一族で唯一見つかっていないものでもあった。
この女冒険家だけではなく、他の冒険家達もこぞってマリー・ルイーズの棺を見つけようとしていたが、この女冒険家がついにそれを発見することが出来たのだ。
「フフフ~♪ついに見つけた♪ついに見つけた~♪」
珍妙な歌を歌いながらどんどんと掘っていき、棺の全体が遂に露になる。
そして...
「それでは、女王様と御対面~」
棺桶を開けてしまった。棺桶に書かれた文字を全く読まずして。
蓋を開けた瞬間、中から眩い光が溢れ出す。
「うわっ!?」
あまりの眩しさに目が眩んでしまう。
すぐに光は収まったが、彼女はまだよくモノが見えていない。
そんな時であった。
ズズズズ...
棺の蓋をずらす、石と石の擦れ合う音が洞窟内に響き渡る。
女冒険家は何が起きているのかがまだよく理解できていなかった。が、すぐに理解した。
棺から出てきたのは、包帯でぐるぐる巻きにされたミイラであった。
ミイラは周りを見渡すようにキョロキョロとして、すぐに女冒険家にも気づいた。
「ウゥ...」
「あわわわ...」
「ウバァァァア!!!」
「きゃあああああ!!来ないでえええ!!!」
そして冒頭へと繋がる。
「ととととと、止まれえええ!!!」
「ウゥ...」
ピタッ
「えええ...え?」
急に追いかけるのをやめ、その場で立ち尽くすミイラ。
「え、まさか私の言葉で止まった?」
「ウゥウゥ」
うなずくミイラ。
「え、話してる言葉がわかるの?」
「ウゥウゥ」
さらにうなずくミイラ。
「...何で追いかけてきたの?」
「ウゥウゥウゥゥ」
すると唸りながらなにやら棺桶の方を指差し手招きし出す。
「来てほしいの?」
「ウゥ」
うなずくミイラ。
「...わかった」
ミイラと共に棺桶の所まで戻ると、ミイラは棺桶の蓋の表面を指差す。
そこには古代文字で何やら書かれていた。
「ウゥウゥウゥ!!」
それを読んでとばかりに指差すミイラ。
それに答えるかのように彼女は古代文字を読み始める。
「これが何っていうのさ...〈此処に眠りし美しき者、今ここに甦らん〉でいいのかな?」
その瞬間、今度はミイラが黄金に輝き始める。
「わわっ、今度はなに!?」
「ウォォぉぉおお!!」
輝きが収まると、ミイラが居たはずの場所に綺麗なドレスを身に纏った、まだ10代と思わしき少女の姿があった。
「あ、あれ?え?何が起こって...」
「ふぅ...封印を解いてくれてどうもありがとうございます。私はルイーズ王国の女王、マリー・ルイーズと申します...見たことのない服飾品を身に付けていらっしゃいますが、もしや異国の方でしょうか?」
「あ、いえ、あの...ここはフレデリーク王国と言いまして、私はこの国で冒険家をやっている、カトレゴ・ゴッドハートと申します。」
「フレデリーク?聞いたことのない名ですね...それとここは一体?」
「あの、聞いて驚かないでください。あなたが居た時代は今から約2000年も前と言われています。」
「まあ!?それは王国も変わる筈です...。」
「ところでなぜマリーさn...マリー様はこちらに?」
「...今はもう王国もありませんしマリーとお呼びください。ここではゆっくりお話もできませんし、一度ここを出てお話しましょう。」
「わかりました、ではこちらが出口になるので着いてきてください!あ、私の名前って呼びにくいと思いますからゴゴって呼んでください!」
そうして二人は洞窟を後にし、地上へと出てきた。
「ふぅ、やっぱりここの眺めは最高だな~」
洞窟の入り口は小高い山の頂上にあり、そこから城壁に囲まれるフレデリーク王国の首都がよく見える。
「まあ、フレデリーク王国は大きいのですね。」
「今は世界の領地の6分の1はフレデリーク王国の領地で、社会的には資本主義、まあ外交面ではオープンな国になってます。治安も悪くないですしマリーさんもすぐ慣れると思いますよ!」
「...私の居たルイーズ王国は対照的に治安がすこし悪い国でした。武力をもって武力を制す、武力でのやり取りが殆どでして、私があの棺に入っていたのも実は拉致されて勝手に封印されてしまったのです。」
「拉致!?そんな歴史は聞いたことが...マリー・ルイーズ女王は王女に即位した後、エドモンド・ルイーズ王子を出産。亡くなった後はエドモンド・ルイーズ王子の妃であるポーラ・ルイーズ女王が王女に即位したという歴史が文献には残っています。」
「やはり父は私を救うのではなく、存在を有耶無耶にして影武者を使わせていたのね...過ぎてしまった事は仕方ありません、過去は変えられませんから。」
「真実は残酷ですね...さて、とりあえずマリーの棺が見つかった旨を上に報告しなければいけないので王国内に入ります。マリーさんも着いてきてください!」
「一緒に行っても大丈夫なのですか?」
「まあ多分、大丈夫!これから多分一緒に生活することにもなるだろうし、宜しくね、元女王様!」
「ええ、よろしくお願いします。貴方に会えてとても嬉しく思っておりますわ。」
そう交わすと、お互い固く握手をする。
こうしてミイラはミイラ取りと共に行動することになったのである。
第一話はいかがだったでしょうか。
執筆時間1時間30分程度の変な小説ですが、これからも気が向いたときにちょくちょく書いていきます。
今後もよろしくお願いします。
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第二話 ミイラは町へと入る
え、何この小説って?私も存在をすっかり忘れていた小説です。
ちなみに設定もほとんど覚えていませんので今後のお話展開がめちゃくちゃになることがあります。
予めご了承ください。
それでは作者も久々に書くハイファンタジーな小説をお楽しみください。
ザッザッザッザッ...
ゴゴ「ふぅ、着いた~」
元女王と出会い数時間、彼女たちはフレデリーク王国の中心部に到着した。
至る所に露店が出たり、催し物があったりと賑やかで活気のある町である。
マリー「これがフレデリーク王国...ルイーズとは違いとても賑やかで人々が幸せそうに暮らしておられますね。」
ゴゴ「そういえば、ルイーズ王国はどんな感じの国だったの?」
ゴゴが質問をすると、マリーは少し表情を暗くしながらルイーズ王国について話し始める。
マリー「私も長くは生きておりませんのでその後どうなったのかは分かりませんが、少なくとも私の見ていたルイーズ王国はこちらの国とは比べ物にならないほど暗く、町の至るところにスラム街ができ、犯罪が見逃されるような、そんな国でした。」
ゴゴ「...」
マリー「ですが軍は強かったので周辺の国々は私たちに逆らうことは出来ませんでした。逆らえば暴力、逆らわなくても暴力。とにかく武力をもって力をつけたのがルイーズ王国です。」
ゴゴ「やっぱり私が習った歴史とは齟齬があるね...」
マリー「歴史を揉み消し、変えるのも得意なようでしたから。」
そんな話をしながら街を歩いていると一人の男が声をかけてくる。
???「あれ、ゴゴじゃねえか、どうしたこんな所で?」
ゴゴ「あ、ジャックさん!いやー、今回は良い収穫があったものでギルドに向かっているところなんですよ~」
ジャックと呼ばれたその男は身長2メートルはあろうかと思われる大男で、よく子供に怖がられているがとても優しい性格の持ち主である。
ゴゴの所属している冒険家のギルドメンバーの一人でもある。
ジャック「ほぉ~、そいつは羨ましいなぁ...ところで隣にいるベッピンさんはどちらさんだい?」
ゴゴ「ああ、この方はマリーさんです。そのことについてギルドに報告するつもりなのでジャックさんも一緒に来ます?」
ジャック「あーいや、俺はこの後モンスター討伐隊のメンツと行動しなきゃいけないから付いていけないんだ、すまないな。ベッピンさんの詳しいことはまた後で聞くことにするぜ!」
ゴゴ「あら~、残念。じゃあまた帰ってきたらお話しますね!」
ジャック「おう、じゃあまた後でな~!!」
ゴゴ「お気をつけて~」
ジャックと別れるとゴゴとマリーはギルドへと向かう。
マリー「そういえばギルドとは?」
ゴゴ「ああ、そのことについてちょっと説明しておくね。私含め冒険家はギルドと呼ばれる専門の部隊に所属しているんだ。国が公的に職業として冒険家を雇ってるんだよ。他にも魔導士だったり剣士だったりを雇って国を攻めてくるモンスターなどを討伐するんだ。」
マリー「まあ、私たちの時代では到底考えられない仕組みですわね。」
ゴゴ「確かにギルド設立は約500年前に遡りますからマリーさんの生きた時代では到底考えられない仕組みですよね。」
マリー「でもとても理に叶っているとは思いますよ。そういえばジャックさん?でしたか、あの方は冒険家ではないのですか?ゴゴさんと似たような服装をしておられました毛けど...」
ゴゴ「ああ、ジャックさんは冒険家兼魔導士なんですよ。攻撃に特化した魔導士の末裔らしくて、魔術特性はとても高いんですよ。ただ攻撃魔法自体はあまり得意ではなくてもっぱらサポート魔法の使い手ですが。」
マリー「色々な方がギルドで働かれているのですね。」
ゴゴ「そうですね、個性豊かな方々ばかりです。っと、着きましたここがギルド本部です。」
ギルド本部と呼ばれるその建物はレンガ造りで4階建ての、とても大きな建物である。
聖堂のような形をしており、釣鐘も装備されている。
マリー「まあ、とても大きな建物ですこと。」
ゴゴ「結構な人数がギルド所属ですからね。さ、入りましょ!」
ガチャッギィィ...バタン
二人はギルドの建物へと入っていく。
建物の中には多くのギルドメンバーがおり、その種族は人間だけではなく多くの種族が多様な分野で活動していた。
マリー「獣人にドワーフ、ほかにも沢山の種族が...」
ゴゴ「ふふ、驚きました?」
マリー「ええ、私たちの時代では考えられない他種族尊重の心意気...素晴らしいですわ!」
ギルメンA「ようゴゴ、調子はどうだ?」
ギルメンB「おいおい、ゴゴがえらく可愛い奴を連れてきたぞ!」
ギルメンC「おぉ、これはまた美しいですなぁ...」
ワイワイガヤガヤ
ゴゴ「はいはい、皆さん離れて離れて!この方は今回の探索の重要な人物なんだからギルドマスターにお話ししないといけないの!」
ギルメンB「残念だなぁ、また紹介してくれよ?」
ゴゴ「それはどうかな~まずは私から口説くのが速いんじゃない?」
マリー「ふふっ、ゴゴさんは冗談もお上手なんですね。」
ゴゴ「じゃなきゃこんな男所帯やってけないですもん。さ、ギルドマスターの部屋はこちらなので着いてきてください~」
そうして二人は四階の奥にあるギルドマスターの部屋へ。
ギルドマスターの部屋の前には二人の護衛が通路を挟んで両側に立っていた。
ゴゴ「やっほー護衛さん、今日はギルドマスター居る?」
護衛(右)「またお前か...ああ、居るぞ。」
護衛(左)「また何か見つけたのか?」
ゴゴ「そうそう、今日はいつもと違ってとんでもないモノだからきっとギルドマスターも喜ぶと思うんだ~」
護衛(右)「ま、ギルドマスターもいつも楽しみにしているからな。ちょっと待ってろ、ギルドマスターに確認を取ってくる。」
そう言うと右側の護衛は扉の中へ入る。
ゴゴ「いい加減この制度やめない?襲撃もよほどの事が無い限り起きないわけだし。」
護衛(左)「襲撃はいつ起きるかわからないからな、一応だ。」
ゴゴ「それもそっか。」
そんな立ち話をしていると右側の護衛が戻ってくる。
護衛(右)「許可が下りたぞ、面会時間は自由らしい。」
ゴゴ「いつもありがとね!」
そう言うと二人はギルドマスターの部屋へと入っていくのであった。
続く...
いかがでしたでしょうか。
マジで久々の執筆だったので設定が大分あやふやです。
一応続くと書いてしまったので続きは書いていく予定であります。
という事でまた次回。
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第三話 ミイラは国の民となる
1年ですか...最近は実生活でYouTubeばかり見ていて小説が思うように進んでいません。(自分のせい)
皆さんもYouTubeに時間を奪われる生活してませんか?
気を付けて過ごしましょう。
それでは本編をお楽しみください。
ここはギルドマスターの部屋。
部屋の至る所にトロフィーや発掘品と思しき置物が飾られ、独特な雰囲気を醸し出している。
その奥にギルドマスターが革製の深く沈む椅子に座っていた。
ゴゴ「やっほ~、マスター今日はいいものが見つかったよ!」
ギルドマスター「ゴッドハート!」
マスターと呼ばれるこの老人は、ギルド創設者の子孫であり、またギルドを一つにまとめているギルドの長である。
ギルドマスター「なんじゃ、今日は何を持ってきたのじゃ?」
ゴゴ「この方なんだけど...」
そう言うとゴゴの後ろからマリーが現れる。
マリー「ご機嫌よう、わたくしマリー・ルイーズと申します。」
ギルドマスター「...どちら様じゃ?」
本当に分からんという顔をして首をかしげる。
ゴゴ「実はこの方、本物のルイーズ王国のお姫様なんです!」
ギルドマスター「は?ルイーズ王国?お姫様?ゴッドハート、お主は何を言って...」
ふとギルドマスターはマリーの方を見る。
マリー「?」
ギルドマスター「...ゴッドハートよ、ちょっとこっちに来なさい。」
ゴゴ「なんです?」
よく分からんという顔をしながらギルドマスターの横までくると、ギルドマスターが小声で話し始める。
ギルドマスター「ゴッドハート、もしそれが本当なら世紀の大発見じゃ。しかしルイーズ王国の物が現存するとは思えん。」
ゴゴ「いやでも...」
ギルドマスター「じゃがな、お前はこれまでにいくつもの世紀の大発見をしているいわば大冒険家じゃ。そこで彼女にこれを付けてみてほしい。」
そういうと一つの金で出来た、真ん中にダイヤが埋め込まれている指輪をゴゴに渡す。
ゴゴ「なにこれ?」
ギルドマスター「真実の指輪じゃ。それを彼女につけて反応を見る。もし真実ならそのダイヤモンドが赤く光り、嘘をついているのであれば黒くなる。」
ゴゴ「ふーん、分かった...」
マリー「もう宜しくって?」
マリーが話しかける。
ゴゴ「ごめんね、ここのマスターってば疑い深くって。それでね、ちょっとこれをはめてみてもらえる?」
そういうとマリーに真実の指輪を渡す。
マリー「この指輪...複雑な術式を用いた魔道具ですね。」
ギルドマスター「ふむ...とりあえず嵌めてみてくれるかの。」
マリー「ええ、分かりました。」
そう言うとマリーは左人差し指に指輪をはめる。
奥まではめ込んだ次の瞬間、指輪のダイヤからまばゆい赤色の光が放たれ、部屋全体を包み込む。
ギルドマスター「な、なんと...マリー様、数々のご無礼大変失礼を致しました。ようこそ我がギルドへお越しくださいました。」
いきなりマリーの前に膝まづくマスター。
ゴゴ「え、ど、どゆこと!?」
ギルドマスター「その指輪はの、ルイーズ家最後の王であるラント・ルイーズが作ったとされるものじゃ。ルイーズ家の血筋の物が嵌めると埋め込まれたダイヤが赤色に、それ以外は黒色に光るようになっている。腹違いで混血になっても反応はするのじゃが、まさかあそこまで純粋な赤色を放つとは、本物のルイーズ家なのであろう。」
マリー「マスターと呼ばれる方、あなたはとても聡明な方でございますね。そうでなければ私は一生ルイーズ家であることは信じてもらえなかったことでしょう。」
ギルドマスター「ありがたきお言葉にございます。」
マリー「もう王国はとうの昔に滅亡したとゴッドハートさんから聞いております。私はもう王家ではありませんから、どうか畏まらないで下さい。」
ゴゴ「確かにちょっとマスターもかしこまりすぎじゃない?」
ギルドマスター「ゴッドハートよ、以前に教えたわしの家系の過去を覚えておるかの?」
ゴゴ「あー、すごい大昔に王国に使えてたって話でしょ?でもそれと何が...」
ギルドマスター「その王国の名はルイーズ王国。マリー様の統治されていました王国じゃ。」
マリー「...マスターと呼ばれるお方、お名前は?」
ギルドマスター「ルドルフ・ガートナーと申します。当時の発音ではガルトナールだったかと。」
マリー「ガルトナール...ええ、父の代から仕えていた執事長ね。よく覚えているわ。」
ゴゴ「し、執事長!?」
意外な役職に驚きを隠せないゴゴ。
ガートナー「ガートナー家は代々ルイーズ王家に仕えておりました。それも最後の代までずっと使えていたと祖父から聞いております。」
マリー「一つお聞きしてもよろしいですか?」
ガートナー「何なりと。」
マリー「ルイーズ王国はいつ滅び、そして現在のフレデリーク?王国はいつ建国されたのでしょう?」
ガートナー「我々の知る歴史書には今から1000年ほど前、最後の王であるラント・ルイーズ王の代で隣国であるペリシェ帝国と大きな戦争が勃発したとされております。その戦争というのも20年は続き、近隣の国を巻き込んだ大戦争だったと。その後にルイーズ王国は敗戦、ペリシェ帝国が一時的にルイーズ王国を領地とし、約500年ほど前に初代フレデリーク王がこの地を新たに収め始めたと記録されております。」
マリー「ガルトナール、あなたのご先祖様はその後どう生き延びたの?王に近かったガルトナールはタダでは済まされないと思いましたが」
ガートナー「この名前の通りでございます。ガートナーはガルトナールの帝国訛り、つまり私の祖先は帝国にも仕えたということです。」
マリー「...まあ、その時の祖先の方ももうこの世にはいない。歴史書やあなたが聞いている伝承も色々な脚色があるでしょう。現に私は魔法による封印で眠っていたというのに、残された歴史書には生きていたという記録があるとゴゴから話していただきました。」
ガートナー「そうじゃな...」
マリー「ところでお二方、なぜ私の国の言葉を?正直私はこの国に入ってからというもの、母国語を一切目にしておりません。恐らくこのフレデリークでの公用語は帝国?の言葉かそれに近しい言葉だとは思うのですが...」
ガートナー「お察しの通りでございます。この国の言語は帝国領共通言語を軸にしております。正確にはさらにこれらが発展した言語が現代語とされており、本来の帝国領共通言語は近代語としてまだ小さな村などにわずかに話される程度となりました。」
ゴゴ「ちなみにルイーズ王国領での言語は古代語として扱われてるね。今読める人はほとんどいない。フレデリーク王国のこの本領地でも話せるのは私とマスター、あとはそういう研究してる人くらいかな?だからマリーさんの封印が解けたのはある意味奇跡ともいえるって訳よ~」
マリー「なるほど...」
ガートナー「それにしてもゴッドハートよ、この先どうするつもりじゃ?この事を知られればこの国が、この世界が黙っちゃおらんじゃろう。なにせ歴史的大発見となり、今までの歴史とされてきたものが根底から覆るのじゃからな。」
ゴゴ「うーん...マリーさんはどうしたい?」
マリー「え!?わ、私は...」
いきなり話を振られ少し困惑した表情を見せるが、続けてこうも言った。
マリー「私はこの今生きている世の中をもっと知りたいです!」
その表情は決意と希望に満ち溢れていた。
ガートナー「ふむ...では細かいことはこちらで何とかしておこう。新しい住民としての登録じゃが...ゴッドハート、お主はいくつになった?」
ゴゴ「え?22だけど...」
マリー「あら、わたくしよりも年齢は上ですわね。」
ガートナー「とすれば、お主の腹違いの妹として登録しよう。マリー様、あなたの通り名は今後マリー・ゴッドハートとなります。もし異論がありましたらほかの案も...」
マリー「いえ、とても素晴らしいお名前ですわ!ゴゴ、これからよろしくお願いしますね。」
ゴゴ「元々とはいえお姫様に言われるのって...悪くないかも」
こうしてマリーはフレデリーク王国の国民となった。
続く...
いかがでしたでしょうか。
設定をあやふやにし過ぎており、当時の設定はほとんど記憶から抜けています。
前回既に設定を忘れて書いていましたので、まあ当然といえば当然でしょう。
いい加減設定をメモしないといけませんね。
それではまた次回。
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第四話 ミイラは街に出る
ファンタジー小説というのはいまいち描くのが難しいですね。
というのも登場するものをどこから引っ張ってくるのかであったりつじつまを合わせたりと、とにかく設定というものが重要です。
その設定をあやふやにすると一気に世界観は壊れてしまい、お話は二度と修復できないところまで来てしまいます。
有名所でいえばハ〇ー・ポ〇ター、ちょっと昔の小説にはなりますがタ〇・ダン〇ンなんかは設定もしっかりしていて読んでいて飽きないものです。
私も皆さんに楽しんで読んでもらえるよう頑張って書きますのでこれからもどうぞよろしく。
それでは本編をお楽しみください。
諸作業をギルドマスターに任せたゴゴとマリーはギルドの集会所へと降りていく。
集会所は食事場と依頼受付所、またアイテムショップなどがすべて一つの部屋に集約された場所だ。
ゴゴはマリーにそんな集会所を軽く案内していく。
ゴゴ「ここがギルドの集会所。ギルドの中心と言っても過言ではないね。依頼を受けたり、食事をしたり、軽いアイテムならここでもそろえることができるようになってるよ。」
マリー「人が多いのですね。」
ゴゴ「この国の1割強の国民はギルドでの依頼をこなして路銀を稼ぐ感じかな。ギルドメンバーの中でもそれぞれ得意分野が違うから、ここでは足りない人財を補うための交流場としても役に立ってる感じ。」
マリー「なるほど、では先ほどのジャックさんとも?」
ゴゴ「そそ、私は探索とかをほとんど機械に頼りっぱなしになっちゃうからね~。サポートで魔法を使ってくれるから敵が近くにいたらほかの前衛の人たちに任せたり、場合によっては退却なんかも魔法でサポートしてくれる。まあ、この人がいれば安心って人かな。」
マリー「ほかの方々からも引っ張りだこというのもこういった所が気に入られているのでしょう。」
ゴゴ「たまーにドジするところもまた人間味というか、ギャップがあってサポートだけど皆の癒しでもあるのかな。この間なんか詠唱を一か所間違えて私にカエルが降り注いできたし...」
マリー「まぁ...」
???「おや、ゴゴ?こんなところで会うとは珍しいじゃないか。今日はお休みか?」
ゴゴ「デニスさん!!あれ、デニスさんこそお休みですか?」
デニス「いや、ちょうど仕事が終わったから報酬をな。今回はミニドラゴン討伐依頼だ。ところでゴゴ、お前の後ろにいるのは?」
ゴゴ「ああ、実は...」
ここで例の設定を話す。
デニス「ふむ、親は早くに別れたとは聞いていたがまさか腹違いの妹がいたとは思わなんだな...」
ゴゴ「私も最初聞いたときはびっくりしました!」
マリー「ゴゴ、このお方は?」
ゴゴ「ああ、この人はデニスさんと言って戦士なんです。危険地帯に入るときは彼がいないとまともに探索できなくて、ついつい頼ってしまうんです。」
マリー「まあ、とてもたくましいお方ですね。」
ゴゴ「そうだね、鍛え方が根本から違う。」
デニス「俺の鍛え方、そんなにおかしいか?」
ゴゴ「そりゃ誰も持ち上げられないとされていた伝承の岩を軽々と持ち上げた挙句トレーニング器具だか何だか言って毎日スクワットしてればそうなりますよ。」
デニス「あんな岩、俺の地元じゃ子供でも持てる。」
ゴゴ「それが異常なんです...って、くぉらやん共!!妹に近づくんじゃぁねえ!!」
ふとマリーの方に振り替えるとギルメンの男たちがマリーを一目見ようと集まっている。
ギルメンA「ひ、ひぃっ!?」
ギルメンB「す、すまねえよぉ...」
ゴゴ「大体あんたら言葉通じねえだろうが!?」
ゴゴはまるで鬼のような形相で男達を威嚇する。
マリー「まあまあゴゴ、そこら辺にしておいて。言葉は分からないけど悪そうな人達でもありませんし...あと、よくわからないけれど、お口が悪くてよ?あの大柄な方々がまるで小動物のようで見ているだけでかわいそうになってきましたわ...」
ゴゴ「小動物...ぷっははは!!!小動物!!!ひゃっははははは!!!」
ギルメンA「こ、こええよぉ...」
ギルメンB「よくわからん言語で不気味に笑わないでくれ...」
ゴゴ「ま、今後は近づくなってことだ、いいな?」
ギルメンA「はい...」
ギルメンB「すみません...」
ゴゴ「じゃあデニスさん、私はこれで。」
デニス「ああ、また前衛が欲しくなったら呼んでくれ。」
ゴゴ「じゃあ改めて、町の方を見にいこっか!」
そうしてゴゴたちはギルドを後にし、町へと繰り出す。
マリー「ねぇ、ゴゴ?ちょっと相談があるのだけど、いいかしら?」
ゴゴ「どうしたの?」
マリー「その、共通言語?といったかしら、あれを私も習得したいと思いまして。」
ゴゴ「そういえば私もつい自然と古代語話してるけど、そうだよね。文字も読めなければ話すこともできないんじゃ折角住民権を貰っても意味ないか。よし、それじゃ本屋に行こう!教科書ならいくらでも売ってるはず!」
そうしてゴゴたちが街に出て最初に向かったのは本屋。
木造建築ではあるが重厚感を感じ、また少し独特な雰囲気を醸し出している建物である。
ギィッバタン
中に入ると、そこには図書館レベルの本棚に大量の本がジャンルごとに規則正しく並べられていた。
だが本屋ということもあってカビ臭かったりジメジメしている訳ではなく、なるべく紙が長生きするよう適切な温度と湿度が保たれているのである。
ゴゴ「テンチョー、いる~?」
店長「はいはい...おやゴゴ、今日は何か専門書でも買いに来たのかね?それとも魔導書かな?」
ゴゴがテンチョーと呼ぶのは、いうまでもなくこの本屋の店長。
妙齢の男性で髪は銀髪ロングヘアで眼鏡をかけており、いかにもイケオジといった風貌である。
ゴゴ「あー、いや、ちょっと国語の教科書を。出来れば初心者向けのやつが欲しいんだけど、あるかな?」
店長「国語検定でも受けるのかい?」
ゴゴ「実はこの子用にね...」
店長「...失礼なことを聞くけれど、奴隷でも買ったのかい?」
だいぶ失礼である。
ゴゴ「そうじゃないって!この子は私の...」
そして店長にも例の設定を話し始めた。
店長「なぁんだ、そういう事だったか。なら国語検定向けよりもまずはこっちの方が良いと思うよ。」
そういって差し出したのはこの国の幼児向け語学教本であった。
ゴゴ「まあそうなるよねぇ。じゃあそれをお願い」
チャリン
店長「毎度ありがとうね。」
ギィバタン
マリー「それが共通語を学ぶための書物かしら?表紙の絵が可愛らしいですわね。」
ゴゴ「そそ、まあ幼児向けなんだけど...」
マリー「恐らく私はそのレベルから始めないと、昔から飲み込みは悪い性分ですからご心配なさらずに。」
ゴゴ「じゃあ勉強はまた後にしておいて、とりあえずティータイムにでもしよっか!まだ起きてから何も食べてないし、お腹空いてるでしょ?」
マリー「私はそのような...」
グゥゥゥゥ
大きなお腹の音が返事をしてしまう。
マリー「っ!...///」
ゴゴ「体は正直だねぇ~、よしそれじゃあとっておきのお店にご案内しますよ!」
マリー「で、でもお金は...」
ゴゴ「そんなこと気にしないで!それに、お金を稼ごうにも言葉が通じないんじゃだめでしょ~」
マリー「うっ...ではご馳走に上がりますわね。」
そうして向かったのは本屋から歩いて5分のレストラン。
大きな丸太が何本も使われたログハウス調の店は中々に繁盛している。
ガチャッパタン
店内は中央には厨房とカウンター席があり、それを囲うようにテーブル席が並ぶ落ち着いた雰囲気のレイアウトである。
ローテンポの癒しの音楽と様々な料理の豊潤で食欲をそそる香りがゴゴたちを包み込んでいく。
すると、ゴゴたちに気づいた給仕係がゴゴたちを丁寧に出迎える。
給仕係「いらっしゃいませゴゴ様。お席はいつものところで?」
ゴゴ「あー、今日は一人じゃないからカウンター席でお願いします。」
給仕係「かしこまりました、ではこちらへ。」
給仕係は中央カウンター席に案内する。
給仕係「本日はこちらのメニューからお願いします。お決まりのようでしたらテーブルの...おっと、ゴゴ様にはもう不要の説明でしたね。」
ゴゴ「いや、今日は連れがいるから説明の続きをお願い」
給仕係「失礼しました。メニューがお決まりになりましたらこちらの魔石に手を触れてください。そうしましたら我々がメニューをお伺いいたします。またお困りの時もそちらの魔石にお手を触れていただきましたら我々が手伝いに参ります。長々の説明となりました、ではごゆっくり。」
ゴゴ「ありがと~」
マリー「こちらの給仕の方は礼儀正しいのですね。昔を思い出します...」
ゴゴ「って思うじゃん?あれ実は私の幼馴染で元々はガキ大将だったんだよ。」
マリー「まぁ!?道理で彼に対する口調がなれなれしいと思いましたわ」
ゴゴ「もうここに通うのも5年くらいだからね。私がギルドメンバーに入ったのと同時に彼も家継ぎになったんだよ」
マリー「ということはこのお店は...」
ゴゴ「そ、家族経営ってこと。まあ悪い人ではないから安心して!そうだ、もう頼むものは決まってるんだけど何か食べたいものとかある?」
マリー「いえ、特には。あなたのおすすめをお願い。」
ゴゴ「はーい、よっと」
呼び出し用魔石に手を触れると魔石全体が緑色に光り、しばらくすると先ほどの給仕係がやってくる。
給仕係「お決まりですか?」
ゴゴ「これとこれとこれ、あとこれにこれトッピングで」
メニューを指さしながら注文をしていく。
給仕係「以上でよろしいでしょうか?」
ゴゴ「あー、あとエネグジーネビで」
給仕係「っ!?...かしこまりました。ではしばらくお待ちください。」
注文を聞き終えた給仕係は厨房へと戻っていく。
マリー「えっ!?こ、これは?」
ゴゴ「彼と私は幼馴染って言ったでしょ?つまり彼は私と長い間一緒に居た訳だから古代語も話せるってわけ。」
マリー「驚きましたわ...ところでお料理は何を頼まれたの?」
ゴゴ「ふふふ、それは来てからのお楽しみ~」
マリーはこの後、ゴゴに注文を任せたことを非常に後悔することになるのであった。
続く...
いかがでしたでしょうか。
最近ダンジョン飯なるアニメを見初めまして、こういった回を書こうと思っていました。
次回はいつになるかわかりませんが、まあ気長に待っててください。
それでははまた次回。
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第五話 ミイラと街巡り
最近どうもぼーっとしてしまう事がありまして、この回を書いているときも途中まで前書きに本文を書いていたことに気づきませんでした。
そのため前書きと言いながら半分くらい書いたところで記入しております。
最近は春のような陽気になったり、かと思ったら雪が降りだしたりと週の気候が不安定です。
以前別の小説の前書きにも書きましたが、私は暑いのが嫌いです。
冬は厚着して毛布かぶってれば寒さなんてへっちゃらなのですが、夏は全部脱いでも回りが暑いので全く涼めません。
酷いものですね。
さて、前書きはこの辺としておきまして本編をおたのしみください。
ゴゴとマリーが談笑をしていると、先ほど頼んだ料理たちが運ばれてくる。
が、その料理を見たマリーは唖然とし始める。
給仕係「...お待たせしました。まずこちらがイナゴを使った野菜炒めとなります。苦いハラワタ部分を丁寧に除き、しっかりと揚げた後に新鮮な野菜と共に炒めた一品です。」
マリー「ひ、ひえぇぇぇ!?」
そこには、ほぼそのままの姿で野菜と共に炒められ真っ白な大皿に盛りつけられたイナゴの姿が。
給仕係「続いて...えーっと古代語だとなんと言いましたっけ...」
ゴゴ「'ヤママユガ'だよ。」
給仕係「失礼しました、ヤママユガのスープ~冷静仕立て~となります。」
マリー「え、え?ヤママユガってあの...」
給仕係「はい、成虫はモフモフの毛に包まれた...」
マリー「みなまで言わなくて結構です!!!というよりも、なぜスープが青緑色を...」
ほぼ絶叫のような声で給仕係に尋ねる。
給仕係「ヤママユガにも種類があります。今回は栗などの葉を主食とする青緑色の幼体を使用しました。実際の写真もございますが...やめておきますね。」
マリー「...はっ!?わたくしは一体...」
マリーは若干気絶していた。
給仕係「続けますね。次にこちらが小鉢の一品となる...うーんこれも」
ゴゴ「これは私もなんとも...水生昆虫の佃煮でいいんじゃない?」
給仕係「水生昆虫の佃煮です。」
マリー「もうもうもう!!いったいこのお店の料理はどうなっているの!?」
すると給仕係がゴゴに耳打ちする。
給仕係「おいゴゴ...もしやこのお嬢様を何の説明もなしに連れてきたのか?」
ゴゴ「うん、そうだよ?」
給仕係「馬鹿、異国の方になぜ黙ってうちの料理を食わそうとするんだ!?」
ゴゴ「口が悪くってよ?」
マリー「もしやこのお店はそういう...」
半分絶望の顔をして給仕係に尋ねる。
給仕係「この大馬鹿者が大変失礼なことを致しました。すぐ通常の料理に取り換えさせていただきますが...」
マリー「...いえ、私の故郷では出されたものは残さず頂くというのが習わしです。これらの食材もこちらの国では普通に食されているとお見受けしました。覚悟を決めていただきたいと思います。」
ゴゴ「あ、あまり無理しなくても...」
マリー「いえ、残り二品の説明もお願いいたしますわ!」
給仕係「かしこまりました、では残りのドリンクとデザートを。まずドリンクはカメムシの臭いエキスを元にしたサイダーでございます。カメムシの臭いエキスと言いましても、そのまま使うには少々エキセントリックな香りになってしまいますから、他の柑橘類とハーブを組み合わせ爽やかに仕上げました。」
そっと匂いを嗅ぎ始めるマリー。その表情は少しの驚きと複雑な感情を織り交ぜた何とも言えない顔になっていた。
マリー「確かに爽やかで飲みやすそうな香りではありますが、その、カメムシですものね...」
給仕係「最後にこちら、カスタードプリンサナギのはちみつ漬けトッピングでございます。」
マリー「これは...カイコかしら?」
給仕係「左様でございますが...ご存じでしたか?」
カイコのサナギという事に気づいたマリーに驚く給仕係。
マリー「えぇ、以前絹糸工場視察で見せていただいたことがあります。あの時もこの茶色のサナギは食用に釣り餌、一部はペットとしても販売しておりました。」
給仕係「ご注文の品は異常となります、ではごゆっくりお楽しみください。」
そういうと給仕係はそそくさと厨房に戻ってしまった。
マリー「では、頂きましょう。」
ゴゴ「そうだね。いただきます!」
そうして二人は注文した料理を食べ進めていった。
30分ほどで完食した二人の顔は満足といった表情であった。
マリー「見た目はあれでしたが、味や触感はよく考えられておりました。」
ゴゴ「その感想、シェフに言ってあげたら?」
マリー「そうですわね、そうしましょう。」
マリーがテーブルの魔石に手をそっと乗せたその瞬間、魔石が赤く眩い光を放ち始める。
ゴゴ「うぇっ!?ちょ、ちょっと!?」
ズドォォン
厨房の奥から爆発音のようなものと若干の悲鳴が聞こえてきた。
周りで食事をしていた他の客も騒ぎを聞いて厨房へと視線を向けていた。
しばらくして、それまで真っ白であったはずのシャツの一部が黒く焦げたようになった給仕係がやってきた。
給仕係「お待たせしてしまい、申し訳ございません。どうやら呼び出し魔石が故障してしまったようで...」
マリー「い、いえ、それよりお怪我はございませんか?」
給仕係「ええ、私共は無事でございます。」
するとまたもゴゴに耳打ちをし始める給仕係。
給仕係「おいゴゴ、お前何かしたか?呼び込み魔石が許容値を超える魔力でオーバーフローしてこっちゃ大変なんだぞ!?」
ゴゴ「いや、私は何も...あ、マリーが魔石に触れた瞬間魔石がめちゃくちゃ赤く光ってた」
給仕係「おいおい、この方の魔力量はどうなってんだ...並みの大魔導士でも耐えられる設計だったんだぞ!?」
ゴゴ「いや、本当に知らないんだって。私の腹違いの妹で私も今まで存在を知らなったんだから。」
給仕係「...まあいい、弁償はお前宛てにしておく。」
ゴゴ「えぇぇぇぇ」
給仕係「稼ぎは断然お前の方がいいだろうがっ!!」
ゴゴ「わかったよ、あとで私のお店宛てに請求書出しといて。あ、あとシェフって今大丈夫そう?」
給仕係「残念だが今ので厨房がめちゃくちゃになってな。残念だがこっちには来れそうにない。」
ゴゴ「わかった。こっちは食事が済んでるから他のお客さんにもその事を伝えてあげて。」
給仕係「分かっている。」
そう言うと給仕係は急いで他のお客さんに謝罪をしに向かっていった。
ゴゴ「なんか大変なことになっちゃったね。」
マリー「申し訳ございません、私が何か変なことを...」
ゴゴ「ううん、たまたま魔石にボロが来てただけだよ。よし、シェフも今は出れそうにないって言ってたし
いったんお店出ようか。」
マリー「え、えぇ...」
ゴゴたちは入り口の自動会計装置で会計を済ませ、また街へと繰り出していく。
マリー「そういえば先ほどのあの装置、とても便利なものですね。まさか現金がなくてもお会計ができるなんて。」
するとゴゴは一枚のカードを取り出す。
ゴゴ「これはマジックレジットって言って、会計時に現金がなくても魔法銀行に預けてるお金で買い物ができるカードなんだ。魔力を持たない人でも作える安心設計だからギルドメンバーだけでなくこの国の人たちが一人一枚持ってるレベルまで普及してるよ」
マリー「でも盗まれたりしたときに勝手に使われたりしないの?」
ゴゴ「その点は魔法銀行だからね。その人の種族や魔力、さらにはその人の指紋や記憶の一部なんかも利用してて、今のセキュリティになってから打ち破られたことは今までないね。」
マリー「今のセキュリティということは昔はもっと甘かったという事かしら?」
ゴゴ「甘いも何も、暗証番号だけだったよ。魔力量も種族も記憶も、何も関係ない。たった4桁の暗証番号だけだったんだから不正利用が横行しててねぇ」
マリー「それに比べたら安心なのですね。ところでゴゴ、私たちは今どこに向かってるの?」
ゴゴ「これからマリーの拠点となるところ、私のお店だよ。」
マリー「あら、お店を経営されていたの?」
ゴゴ「うん、まあそんなに大きなお店じゃないけどね。」
マリー「いえ、自分のお店を持つという事はとても素晴らしい事だと思いますよ。私の居た国は店を立てれば強盗が入り、それを武力で押さえつけた兵士が強欲に店から褒美をねだる。そんな状況を何度も目の当たりにしました。」
ゴゴ「その...本当に治安が悪かったんだね、この国では強盗は重罪、最悪極刑。強盗なんかを鎮圧した警備隊員や兵士は国から大きな報酬がもらえて、被害にあったお店に対しては手厚く保証をしてくれるんだ。」
マリー「ここは天国ですの?」
ゴゴ「マリーからしたらそうかもね、ナンツッテ」
そんな談笑をしながら歩いて20分が過ぎ、ついにゴゴの経営する店に到着する二人。
ゴゴ「はい、ここが私の店兼マイホームだよ」
そこはコンクリートを中心とした少し無骨な3階建ての建物。入口のショーウィンドウには様々な銃火器が並んでいる。
マリー「お邪魔いたします。」
二人は店から中に入っていく。
店の中にはレジカウンターがあり、その背には多種多様な武器が並んでいた。
マリー「も、物凄いですわね...武器商ですの?」
ゴゴ「まあそんな感じかな。一応ギルドにも武器を卸してるんだ~」
するとマリーはあるものに目をつける。
マリー「あら...魔導書かしら?」
ゴゴ「そこは魔導書コーナー。世界のありとあらゆる珍しい魔導書をかき集めてて...」
すると店の奥から声がする。
???「なんだ、ゴゴ帰ってたのか?じゃ、あとレジよろしくな~」
ゴゴ「あ、待ってくださいユリーさん!ちょっとお話があるのでライアーさんもつれてきてください!」
ユリーと呼ばれたその男は190センチはあろうかと思われる長身であり、黒いローブをいつも身に着けていて少し不気味な雰囲気を醸し出している。
ユリー「はぁ...ライアー!!ちょっと降りてきてくれ!!」
ライアー「どうしたの?」
ユリー&ゴゴ&マリー「うわっ!?」
先ほどまで居なかったはずのライアーと呼ばれる男がいつの間にか店の魔導書コーナーに居た。
身長は170センチ程度だが青髪でイケメンと呼ばれる顔立ちをしており、好青年といった印象だ。
ユリー「それで、話って?」
ゴゴ「実はこの人なんだけど...」
ライアー「...ふーむ、封印魔法の痕跡がかすかにあるね。それも随分古い封印方法だ。」
マリー「み、皆様初めまして、マリー・ルイーズと申します。」
ユリー「ルイーズって...まさかルイーズ王国の?」
ゴゴ「実は数時間前に棺桶見つけちゃって...開けたら封印が解かれたらしくてマリーさんが復活したんだ~」
ライアー「それ、世紀の大発見って言わない?」
ユリー「だが、本当に本物なのか?実はそっくりさんだったりとか。」
ユリーはまだ疑っているようだ。
ライアー「うーん、ちょっと失礼しますね。」
そういうと、ライアーはマリーのおでこに右手を差し出す。
その瞬間、優しい白い光があたり一面に広がり、武器屋だったゴゴの店が一瞬にして晴れた草原へと変化していった。
マリー「こ、これは?」
ライアー「これは他人の記憶を見る魔法、メモーリネス。今ここに見えているのはマリーさんの記憶なんだ。ちょっと深堀させていただきますね。」
そういうと晴れた草原だった一面が一瞬にしてスラム街のような暗く薄気味悪いものに変化する。
マリー「こ、これはルイーズ王国で一番荒れていたスラム街ですわね...父には必ず十人以上の護衛をつけて向かえと言われておりました。」
ライアー「トゥルースネス...うん、どうやら本当にルイーズ王国の出身らしい。しかも結構古い時代の人だよ。」
トゥルースネス、真実を見る魔法です。
ユリー「そんなに封印されていて、よく今まで見つからなかったな。」
ライアー「多分だけど魔法では探知できないタイプの封印だね。今回ゴゴは機械で物理的な空間を測って探索したでしょ?」
ゴゴ「ご名答~」
ライアー「だから今まで全く見つからなかったんだ。機械と魔法、この国じゃ魔法を取る人が圧倒的に多いからね。メカニックで食べていくには魔法の弱点を克服したものじゃないと売れないんだ。」
マリー「な、なるほど...」
そもそもマリーの時代に測量ができるような機械はなかったためそれ自体が魔法の類なのではないかと思っているマリーなのであった。
続く...
いかがでしたでしょうか。
とりあえず10話くらいは書いていくので次のお話もお楽しみに!
それではまた次回。
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第六話 ミイラが仲間に加わった
もう春ですね。
風はちょっと冷たいですが、全体的な気温というのは徐々に上がってきてまいりました。
もう少しすれば桜も見ごろになるのでしょうね。
それでは本編をお楽しみください。
マリーの記憶を見終わったゴゴたち。
マリーの記憶は凄惨なものも多く、彼女の人生をリアルに伝えていた。
ライアー「っと、勝手に記憶の魔法を使ってしまい申し訳ございません、マリーさん。」
ゴゴ「なんだか、この国が平和すぎるくらいに思えてきました...」
ユリー「全くだ。」
マリー「ま、まあ時代というのは変わっていくものですから、むしろ我々の居た時代がおかしかったのかもしれません。」
暗い記憶を見た後、少し重苦しい空気に包まれるゴゴの店。
ルイーズ王国は歴史書にかかれている以上に治安が悪い国であるという裏付けであった。
ゴゴ「なんか暗い記憶を見てたら店の中まで空気悪い感じがしてきます...ちょっと換気扇付けますよ~」
???「そんなに私の空気が重苦しいかい?」
ゴゴ「っ!?」
換気扇をつけようとしたゴゴは咄嗟に右腰に納めていたオートマチック拳銃を引き抜き、声の主に銃口を向ける。
???「引き抜きが遅い、そんなことではこの先ギルドには勤まらんぞ...」
声の主はいつの間にかゴゴのオートマチック拳銃が発射できないようスライドを少し後退させ、銃口をふさいでいた。
ゴゴ「せ、先生...」
ライアー「シュバートさん!いらっしゃいませ!」
シュバートと呼ばれる妙齢の男は、黒いローブに身を包み、重苦しいオーラを発していた。
この男、ゴゴが先生という通り、ゴゴにギルドの事を1から叩き込んだ恩師というべき存在なのである。
ギルド所属であり、周りからも伝説のギルドメンバーとして称えられ、国からも何度も感謝状を受けるほのど。
まさに、実力主義者なのである。
ライアー「今日はどのようなご用件で?」
ユリー「武器ならいつものところに置いてありますぜ」
シュバート「いや、今日は武器じゃないんだ。君達に渡すものがあってな。」
ゴゴ「私達に?」
シュバート「これだ。」
そう言うとゴゴに袋を一つ渡す。
ゴゴ「これは...重っ!?」
中を見ると銀の延べ棒約10キロが入っていた。
ユリー「銀か...しかも相当純度が高い。これだけの品だ、なにか大きな事の依頼か?」
シュバート「ああ、その通り。実は極秘任務として最重要指名手配中のヴァンパイア族率いる盗賊団の逮捕・拘束の協力行っているんだ。だがそいつらは相当厄介でな、近距離魔法はおろか遠距離魔法も通用しない。挙げ句の果てに君たちの作った銃や近距離武器も全く通用しない。そこでだ、ギルドの特別対策として、君達にその協力を依頼しに来た。」
ユリー「つまり、この銀はあくまで前金ではなく武器として使え、そういうことか。」
シュバート「そうだ、ヴァンパイア共には銀が一番有効だからな。ギルド精鋭でも歯が立たない君達ならやってくれる、そう信じているよ。」
ライアー「分かりました。依頼料はギルドの方でよろしいですか?」
シュバート「そこら辺の事務手続きは私がやっておく。1週間後にもう一度逮捕作戦が決行されるからそれまでにいろいろ準備は済ませておくように。ではまた。」
そう言った瞬間にシュバートの周りを黒い炎が包み込み、一瞬にして姿が消える。
ユリー「ふっ、ヴァンパイアか...あんまり乗り気にならねえな...」
少し物悲しい表情を浮かべるユリー。
ライアー「そっか、ユリーもヴァンパイア族だっけ。」
ユリー「正確にはハーフだがな。おかげで銀も触れるしニンニクも食い放題だ」
マリー「あ、あのー...」
ここまで静かだったマリーが話し始める。
マリー「すみません、私はまだ言葉をよく理解していないのですが、何かお困りごとなのですか?」
ゴゴ「マリーさん古代語しかまだ話せなかったね...さっきのオジサンは私の恩師なんだ。ギルドに加入する前に色々稽古をつけてくれたのもあの人。私たちと一緒で数少ない物理火力を重視する人なんだ。」
ユリー「それで今回はそのギルドでも厄介になっているヴァンパイア盗賊団制圧作戦の重鎮に選ばれたって訳だな」
マリー「そ、そんな危ないことを依頼されていたのですね...単刀直入にお聞きしますが、例えば乱闘になった際の勝機はありますか?」
ユリー「ふっ、ルイーズ王家の血が騒いだか?当たり前だ、負けは考えない。勝つことを前提に作戦は進める。勝たなきゃメンツも持たないしな。」
ライアー「ユリー...まるで生まれたての小鹿のようだよ。」
ユリーの足はガックガクに震えており、今言ったセリフが本当にこの体から出てきたのか疑問を抱くほどであった。
ユリー「こ、これはだな、闘争心に燃えているんだ。同じヴァンパイアでも人の血が混ざればより強くなれる。そう純血のカス共に教え込みたいからな!」
ゴゴ「はいはいそれじゃ、武器の製作進めていきましょっか!今回は魔法が難しいっていうけど、その辺はどう?ライアー」
ライアー「まあヴァンパイアだからね、現に僕がユリーに敵わないのはそこなんだよ。魔法が通用しにくいんだ。ハーフでも魔法耐性はそこら辺のヴァンパイアと変わりないし、何より...」
その瞬間ライアーはユリーの左後ろへと瞬間移動する。
その手にはダガーを持っており、ユリーの首に突き立てようとしていた。
しかしユリーは既に腰に吊ってあるリボルバーを抜き、ライアーの眉間へと銃口を向けていた。
ユリー「遅いな、最初よりかはだいぶマシになったがやはりまだまだ目で追える。」
ライアー「という感じで僕の使う超高速移動は見切られてしまうから至近距離の攻撃も多分出来ない。」
ゴゴ「となると最早作るものは限られてきますね...」
ユリー「ああ、もう分ってるとは思うが、」
ユリー「対戦車ライフル用の弾丸を作るぞ」
ゴゴ「小型高性能爆弾を作るんですね!」
二人の意見は分かれてしまった。
ユリー「あのなぁ、いくらヴァンパイアでも近距離に火薬があればその匂いでバレバレだぞ。ニンニクが苦手なのはそもそもその匂いがだめなんだ。」
ゴゴ「そっちこそ、貸出してる遠距離武器で無理なら火力上げる算段は通用しませんって!」
マリー「ま、まあまあお二人とも落ち着きなさってください。今回の相手はヴァンパイアの集団なのでしょう?ならもっと効果的な弱点があります。」
ライアー「うん、多分二人とも気づいてない弱点だけどマリーさんと僕は同じ意見だろうね。」
ユリー「なんだその弱点は」
ライアー「それはね、細かい粒とかを数えてしまう習性だよ。」
マリー「私たちの時代ではそれを利用した罠などがありました。」
二人の意見は一致していたようだ。
ユリー「だがその"弱点"をどう利用するかだ。ただむやみに罠を仕掛けるわけにはいかない。というか、罠は恐らく仕掛けられないだろう。」
ライアー「そこで...」
こうして4人は作戦会議を進め、数十分後にはおおよその方針が固まった。
ゴゴ「さ、おおよそ決まりましたし、早速作っていきましょっか!」
ユリー「つってもお前は武器作れねえんだから、そこのお嬢様と国語でもやっててくれ。言葉が通じないのは痛すぎるからな。」
マリー「かしこまりました。」
ゴゴ「ユリー、一応元王女様なんだからもう少し優しくしなよ~」
ユリー「はぁ...よろしくお願いします。」
ゴゴ「えらいえらい」
そう言うとユリーの頭を撫で始める。
ユリー「良いから、持ち場に戻った戻った!」
ゴゴ「そんな照れなくて良いのに」
ユリー「照れとらんわ!」
こうして1週間はあっという間に過ぎていき、ついに逮捕作戦の当日を迎えた。
ギルドの大ホールでは特別式典として決行式を行っていた。
シュバート「ではこれより国家警察・国家軍魔法隊及びギルド精鋭部隊の合同作戦を決行する。作戦は前日話したように正面突破だ。くれぐれも無理はしないように、だが全力を尽くすように。皆の協力があってこそ今回の作戦は成功するだろう。では、幸運を祈る!」
今回の作戦は完全な物量作戦。
数打ちゃ当たるの大胆だが成功確率は高いこの作戦は果たして成功するのだろうか。
続く...
いかがでしたでしょうか。
ちょっと仕事の方が忙しくなってきたのでこの先のお話は時間をいただくかもしれません。
あらかじめご了承ください。
それではまた次回。
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