転生したOLは女悪魔(超化け物級の)になりました (アイリエッタ・ゼロス)
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プロローグ

 この世界には悪魔、天使、堕天使という存在がいた。彼らは互いに対立しており、

 それぞれの勢力で戦争を行っていた。そんな中、悪魔の勢力にとんでもなく変わった

 女悪魔が一人いた。

 その女悪魔は領地や権力、金、悪魔としての立場に一切興味がなく、勢力同士の戦争にも

 興味がなかった。だが、そんなスタンスを取る女悪魔に対して悪魔の上層部や親は

 許さなかった。悪魔としての立場を理解できていない彼女を、挙句の果てには

 始末しようと全員で襲い掛かった。だが、襲い掛かった悪魔は全て全滅、親や上層部の

 悪魔の殆どは彼女によって殺され悪魔の領土の30%が更地に変わった。

 そんな事があり数百年、その狙われた女悪魔の彼女は超危険な魔獣が住み着く森、

 魔窟の森に家を建てて一人でのんびりと魔獣達と暮らしていた。

 

 ~~~~

 ? side

 

「ん....?」

 ベッドで寝ていた私は布団の上の重みに気づき目が覚めた。目を開き布団の上を

 見てみると、森に棲んでいる魔虎が私の顔を見ていた。

 

「あぁ、今日はあなたなのね。おはよう」

 私は魔虎の頭を撫でながらそう言って布団から出た。そして普段着に着替えて家の

 外に出た。すると、私の家の前には森に棲んでいる魔獣達がいた。

 

「みんなおはよう。今日は良い天気ね」

 そう言うと、魔獣達は雄たけびを上げた。

 

「さ、今日も何かあったら私を呼ぶこと。良いね?」

 そう言うと、魔獣達はそれぞれ別の方向に向かって歩き出していった。

 

「さーて、今日は何をやろうかな」

 そう呟きながら私は一度家の中に戻った。

 

 

 

 

 

 

 セラール・ウァサゴ

 72柱第3位、ウァサゴ家の長女だった悪魔。実際のところは転生者であり、前世では

 ブラック企業勤めのOLだった。死因は車に轢かれそうになった女子高校生を助けようと

 跳び出し女子高校生の代わりに轢かれたのが原因。それを見ていた神が彼女の勇気を

 気に入り、いくつかの転生特典を与えて転生させた。

 面倒な事や必要のない事は基本的にしたくない主義で押し付けてくる者には

 容赦なく制裁を与える。

 現在は魔窟の森に屋敷を立てて魔獣達と暮らしており、人間界にも時折足を運んでいる。

 悪魔の中で唯一、日本領土内を自由に動いても良い許可をアマテラスから貰っている。

 

 好きなもの:可愛い女の子 動物 ワイン

 嫌いなもの:面倒ごと 必要のない争い

 趣味:料理 釣り ガーデニング 読書 その他多数....

 魔法:零 (ゲート)

 

 零:転生特典でもらった魔法の一つ。あらゆる物、現象、確率を0にする能力

 (ゲート):異世界や人間界に向かうために使われる転移魔法。相手の攻撃を反射させることも

 できる

 

 

 

 

 



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革命機の少女 Ⅰ

「....」

 ある晴れた日の事、私は森の中にある湖に(ゲート)を発動させた(ゲート)釣りを行っていた。

 この(ゲート)釣りで、私は過去に様々なものを釣り上げてきた。ピアノやバイオリン、

 ザリガニの鋏を持った魚、真っ白な鮎、釣れるものは様々だった。そんな様々なものが

 釣れる(ゲート)釣りなのだが、今日は....

 

「何もかかんない....」

 五時間ほど釣り糸を垂らしているのだが、一つとして何もかからなかった。

 

「こんなにかかんないのは久々だねぇ....」

 そう呟きながら私は周りを見た。私の周りには森にすむ魔獣達がいたのだが、ほとんどの

 魔獣達は眠りに就いていた。

 

「(皆も暇になっちゃったか。次の(ゲート)で何も釣れなかったら今日は終わりにしよ)」

 そう思いながら(ゲート)を作り直して釣り糸を垂らした。すると、垂らして数秒立った瞬間、

 釣り竿に何かがかかった。

 

「っ! 来たっ!」

 私は釣り竿を引っ張ったのだが、かかったものはかなりの大物なのかまるで上がってくる

 気配がなかった。

 

「重っ!? こうなったら....!」

 私は釣り竿を伝ってかかった物に"零"の魔法を使った。すると、釣り竿にかかっていた重さは

 一気に無くなった。

 

「せーのっ!」

 私は釣り竿を引き上げると、(ゲート)の中から出てきたのは巨大な緑色のロボットだった。

 

「デッカ!?」

 私は零を切り、ロボットを魔獣達がいない所に落とした。落とした衝撃で、周りで寝ていた

 魔獣達は目覚めていた。

 

「これどうやって管理しよ....」

 私は落としたロボットに近づいて全体を見渡した。このロボットにはあちらこちらに戦闘が

 あったと思われるような傷があった。

 

「一先ず傷の修繕は零で....皆! これ家の近くに運ぶから手伝って!」

 そう言ってロボットを運ぶように言った時、突然ロボットの胸の部分が動いた。そして、

 その部分から緑色のパイロットスーツを着た女の子が落ちてきた。

 

「っ!?」

 私は咄嗟に飛びあがり、女の子を空中でキャッチした。女の子は気絶しており、頭からは

 血を流していた。

 

「皆! そのロボットは任せた!」

 私は魔獣達にそう言って、急いで屋敷まで飛んだ。

 

 ~~~~

 ? side

 

「....ここは」

 目を覚ますと、私の目に入って来たのは黒い天蓋だった。

 

「ベッドの上....?」

 私は身体を起こして周りを見渡した。私がいるのは天蓋付きベッドの上で、周りには

 黒で統一された家具が並べられていた。

 

「(一体ここはどこなの....? それに、頭の包帯にこの服....少なくともドルシアの基地に

 連れ込まれたって感じはないけど)」

 そう考えていると、突然部屋の扉が開いた。私が扉の方を見ると、そこにいたのは翼が

 生えている虎だった。

 

「えっ....?」

 私はその翼が生えた虎を見て思考が止まってしまった。すると、虎は私の顔を見るとすぐに

 部屋から出て行ってしまった。

 

「な、何だったの今の....」

 私は見たことのない生物に思考を奪われていると、この部屋に向かって歩いてくる

 足音が聞こえてきた。そして、その足音はこの部屋の前で止まった。

 

「(今度は何....?)」

 そう思いながら警戒していると、扉が開かれた。そして、中に入ってきたのは....

 

「あ、目が覚めたんだね! 良かった良かった!」

 頭に黒い角を二本生やした女の人だった。

 

 

 

 

 



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革命機の少女 Ⅱ

「紅茶とコーヒーとお茶、どれが良い?」

「....えっと、じゃあ紅茶で」

「OK~」

 巨大なロボットに乗っていた女の子にそう聞いて、私はキッチンで紅茶を淹れ女の子の

 前に置いた。

 

「どうぞ」

「あ、ありがとう....」

 女の子は一口紅茶を飲むと少し落ち着いたような表情になった。

 

「(あんなロボに乗ってる割にはすらっとした体系....モデルって感じかな)」

 私は女の子のスタイルを見ながら一人そう思っていた。

 

「あ、あの....」

「ん? どうしたの?」

「ここは一体....それにあなたは....」

「ここは魔窟の森。危険な魔獣が住む森だよ。そして、私はセラール・ウァサゴ。

 この森を管理している悪魔だよ。セラって呼んでくれたらいいよ」

 そう言って、私は背中から翼を生やした。

 

「っ! 本当に、悪魔なの....」

「そうだよ。まぁ、君がいた世界では悪魔は架空の存在だった感じだね。それなら驚くのは

 仕方ないよ」

 そう言いながら、私は紅茶を一口飲んだ。

 

「それで、あなたの名前は?」

「....私の名前は、流木野 サキ」

「サキちゃんか。ひとまず、ごめんね急にこんな世界に引き込んじゃって」

「....いえ、おかげで助かったわ。あのままだったらあいつらに捕まってたから」

「あいつら?」

「....私達が戦争している国の奴等」

「戦争ね....」

「(あのロボット使って戦争....随分大きな戦争か....)」

 私はそう呟きながらサキちゃんを見た。

 

「....驚かないのね、戦争って聞いて」

「ん? まぁ悪魔もしょっちゅう戦争やってるみたいだからね。私は興味ないし面倒で

 参加してないから風の噂程度で聞くぐらいだけど」

「....そう。どこの世界でも、戦争は起こるのね」

「そっちの戦争理由は知らないけど、こっちの戦争理由はしょうもないものだよ?」

 そう言いながら、私は机の上に三つの形をした人形を置いた。

 

「私の世界にはさ、人間もいるけど私達みたいな悪魔や神様っていう人外が存在しているの。

 まぁ人間のほとんど人外の事を知らないけどね。で、人外の中で特に多いのがこの三つ」

「....悪魔と天使と、それは?」

「おっ、勘が良いね。悪魔、天使、そしてこれは堕天使。簡単に言うと天使から堕ちた

 連中だね。で、その馬鹿三つを三大勢力って言ってね。自分が一番至高だとかいう理由で

 戦争やってんの。まぁそのせいで全勢力トップを失って今はてんやわんやしてるけど」

 そう言いながら、私は人形を握り潰した。

 

「まぁ私の世界はこんな感じかな」

「そう....それで、私はどうなるの? 私、元の世界に帰らなきゃいけないんだけど」

「あぁ、その心配は必要ないよ。時間をくれればサキちゃんがいた世界の(ゲート)を開くよ。

 その(ゲート)くぐったら元居た世界だよ」

 そう言って、私は椅子から立ち上がった。

 

「それまではこの館探検するか、森を散歩するか、身体を休めておきなよ。一応案内役は

 つけておくからさ。ルル!」

『はいはい、呼んだかいお嬢』

 すると、扉の向こうから羽の生えた白い蛇が入ってきた。

 

「サキちゃんの案内役頼んだよ」

『あいよ。そういうわけだお嬢ちゃん。私についてきな』

「一応ご飯の時間になったら呼ぶから。それまでは自由にしてて」

 そう言って、私は部屋から出てロボットを置いている場所に向かった。

 

 ~~~~

 サキside

 

『この部屋好きに使っていいってさ』

 ルルと呼ばれた蛇に私はある一室に案内された。

 

「こんなに広い部屋....良いの?」

『良いさ良いさ。この部屋は客人用の部屋だからね。それにお嬢も久しぶりの客人に

 喜んでるみたいだからね。....さて、今からどうするんだい? 館探検か散歩なら

 案内するよ?』

「....それも良いんだけど、一つ聞いても良い?」

『何だい?』

 私がそう聞くと首を傾げた。

 

「私と一緒にいたはずの緑色のロボット、どこにあるか知らない?」

『あぁ、あのロボットかい。それなら館の外だよ。見に行くかい?』

「お願いするわ」

『あいよ。あ、私のことはルルって呼んでおくれお嬢ちゃん』

「....なら、私もサキでいいわ」

『そうかい。なら行こうかサキちゃん』

 

 ~~~~

 

 ルルに案内されて私は館の外に出た。

 

「ここ、誰も住んでないのね。使用人の人もいなかったし」

『そうだよ。ここにはお嬢しか住んでない。まぁ私達が出入りしてるけどね』

「セラのご両親は....」

『それは私の口からは言えないね。気になるならお嬢に聞いてみることだね。多分、聞けば

 普通に話してくれるよ。....っと、着いたよ』

 そう話していると、私の機体であるカーミラがある場所に着いた。カーミラの外装は傷だらけで

 見ていて痛々しかった。そして、何故かカーミラの周りをセラが飛んでいた。すると、セラは

 こちらに気づいたのか私達の方に近づいてきた。

 

「あれ? 二人ともこんな所に来てどうしたの?」

『サキちゃんがあのロボットを見たいって言ってね』

「そういう事」

「セラは何をして....」

「いや~、このロボットに興味があってね。ちょっと調べるついでに傷の修繕でもして

 あげようかと思ってね」

 そう言いながら、カーミラの方を見ていた。

 

「ま、面白いことも知れたしそろそろ修繕しようと思ってたとこ」

「そう....というか、修繕とかできるの? そういう事する物一切ないけど」

「当然。私の魔法にかかればちょちょいのちょいだよ。良かったら見ていきなよ」

 そう言うと、セラはカミーラの頭部の前に飛んだ。

 

『サキちゃんよく見ておきな。一瞬の出来事だからね』

「一瞬って....カミーラの傷は一つや二つじゃ....」

「対象の傷を零に」

 セラがそう言って指を鳴らした瞬間、カミーラの外装の傷は光り出した。そして、一瞬にして

 カーミラの傷はきれいさっぱり消えていた。

 

「嘘....!」

「はい、修繕完了!」

 セラはそう言うと地面に降りて翼を消した。

 

「ねぇ! 今何をしたの!」

「何って、あのロボットの傷を零にしただけだよ」

「零って....」

「そのままの意味だよ」

『あれがお嬢の魔法なんだよ。物や現象、確率なんかのあらゆるものを零にする』

「そういう事。この私だけが使える魔法、それがこの零ってわけ」

「....そんなの、チートじゃない」

 その言葉を聞き、私は思わずそう呟いてしまった。

 

「あはは! よく言われるよ」

『お嬢、それよりも(ゲート)は?』

「座標と数値の再構成中。ちょっと時間かかる感じかな」

『そうかい。ならサキちゃん、少し私に付き合ってくれるかい?』

「えっ....?」

『ちょっと案内したい場所があるんだよ。良いかい?』

「え、えぇ....」

『じゃあ、少し着いてきておくれ』

 そう言うと、ルルは森の方に飛んで行った。それを見て、私はルルの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 



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革命機の少女 Ⅲ

『着いたよ』

 ルルに案内されて着いた場所は綺麗な湖がある花畑のような場所だった。

 

「綺麗....」

『そうだろう? 私のお気に入りの場所さ』

 そう言いながら、ルルは地面に降りた。

 

『サキちゃん。サキちゃんにとって、戦争はどんなものだい?』

「えっ?」

 ルルは突然そんなことを聞いてきた。

 

『サキちゃんの世界でも戦争は起こってるんだろう? それに、見たところサキちゃんは

 その戦争の最前線にいるって感じだね』

「っ、どうしてわかったの....」

『あのロボットに身体のけが、あとはそうだね....人ならざる者、だから』

「っ!?」

『これでも数千年生きてるからね。何となくわかるんだよ。安心しなよ、別にそれで差別

 しようってわけじゃないから。というか、私もサキちゃんと同類だからね』

「....どういう意味?」

 私がそう聞くと、ルルは私の膝の上に乗ってきた。

 

『私はね、これでも昔は人間だったのさ。だけど、人外に攫われてね。身体中いじくられて

 こんな姿になっちゃったのさ。それに人殺しもたくさんさせられた』

「....」

『そんなことが続いてたある日の事さ。もう色々と疲れちゃってね。死のうと思った時、

 お嬢に拾われたのさ。こんな人殺しをだよ? お嬢の甘さときたら、正直最初はお嬢の事を

 信じることができなかった。だけど、一緒にいるうちにわかったのさ。お嬢も、私と一緒で

 ずっとひとりぼっちなのさ。周りの大人はお嬢を利用したいだけ。だからお嬢は大人を

 信用しない。信用した大人は片手で数えられくらいさ』

「....そう、だったのね」

「(大人を信用しない、か....それってまるで....)」

「私と一緒....」

 自分でも気づかない間に私はそう呟いていた。

 

『おや、そうなのかい?』

「っ! ....ごめん、今のは忘れて」

『....わかったよ。すまないね、年寄りの昔話に付き合わせて。年を取るとどうにも話が

 長くなる....よくない癖だよ全く』

 そう言いながら、ルルは私の眼を見た。

 

『随分と話が逸れてしまったね....それでサキちゃん、もう一度聞くがサキちゃんにとって

 戦争はどんなものだい?』

「....私にとって、戦争は大事なものを守るためのものよ」

『....そうかい。なら、その志を折っちゃダメだよ。折れると、私のようになっちゃう

 からね....』

「ルル....」

『付き合わせて悪かったね。一度館の方に戻ろう....』

 そう言ってルルが空中に飛んだ時、突然何かが割れる大きな音がした。

 

「っ! 何今の音....」

『結界が破られた音だね....今度はどこの連中だ....』

「結界って....」

『この森を包んでいる結界さ。他人を寄せ付けないようにしてるけどこうやって破壊して

 侵入してくる馬鹿がいるんだよ。ひとまず急いで館に戻るよ。ちょいと身体を失礼』

 そう言うと、ルルは自分の身体を私に巻き付けて来た。

 

「ちょ....!」

『舌嚙まないようにね』

 ルルはそう言って飛び上がり、館の方に向かっていった。

 

 ~~~~

 

『お嬢!』

 館の方に着くと、入り口にはセラがいた。そのセラの表情は先程までの優しい表情から

 一変して無の表情に変わっていた。

 

「....わかってる。私が処理するから手を出さないで」

『っ....! 了解』

 そう言ったルルの身体はどこか震えていた。

 

「(今のセラ、さっきとはまるで別人....)」

 私も私でセラから放たれるオーラに寒気を感じていた。そう感じていたその時、突然目の前の

 森が燃えた。そして、そこからセラとは違う翼を生やした悪魔が20人ほど現れた。

 

「随分と大所帯ね....何の用、堕天使の格下ども」

「(あれ堕天使なんだ....)」

「テメェがセラールとかいう悪魔か! はんっ、その辺にいる女悪魔と変わんねぇじゃねぇか」

「上はあんな格下にビビってんのか! 程度が知れるぜ!」

「おいおい! しかも良い人間の女連れてるじゃねぇか! ありゃ丁度いい....!」

 

「それ以上口を開くな....」

 

「っ!?」

 セラのドスが効いた声と同時に、空に飛んでいた堕天使は地面に落ちた。

 

「な、何が起こって....!?」

「人の庭に土足で入ってきたんだ....それ相応の報いを受ける覚悟はあるよね?」

 そう言いながら、セラは堕天使達に手を向けた。

 

「自分の愚かさもわからず、ここで死になさい....」

 そう呟いて手を握った瞬間、堕天使達は糸が切れたように動かなくなった。

 

「はぁ....何でこうバカは多いんだか....」

 セラはさっきまでとは別人のような声色であきれながらそう言った。

 

「サキちゃんごめんね。こっちの問題に巻き込んじゃって」

「だ、大丈夫だけど....あの堕天使は....」

「死んだよ。心臓消滅させて今のあれはただの肉塊だよ」

「っ....!?」

「さ、いつまでもここにいても仕方ないしそろそろ戻ろっか。晩ご飯出来たらまた呼ぶから

 それまではのんびりしてて」

 そう言ってセラは館の中に入っていた。

 

「....セラって二重人格なの?」

『そんなことはないさ。お嬢が怒るとあんな感じさ。あぁなると下手に止めたらこっちも

 被害を被るよ。....私らも館の方に戻ろうか』

「あれほっといて良いの?」

『良いよ良いよ。そのうちこの森に棲んでる魔獣が処理するからね』

 そう言うと、ルルは館の方に飛んで行った。私は少し気になったがこれ以上ここにいるのは

 嫌な予感がしたのでルルについて行った。

 

 

 



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革命機の少女 Ⅳ

「広い温泉ね....」

「実はこの温泉、私が掘りました!」

 セラの手料理を食べ、私とセラは館の中にある温泉に来ていた。

 

「さすがに冗談でしょ....?」

「ん~? どうだろうね~?」

 セラは笑いながらそう言って温泉の湯を身体にかけていた。

 

「シャンプーとリンスはこれ使って」

「ありがとう」

 セラからボトルを受け取り、私は髪を洗った。そして次に身体を洗おうとしたのだが....

 

「はいは~い、お背中お流ししますね~」

 いつの間にか私の背後にはセラがおり、セラは私の背中に石鹸が付いたボディタオルを

 当ててきた。

 

「ちょ、ちょっと! 自分でやるから!」

「いいからいいから。いや~、やっぱ若いから肌ピチピチで綺麗だね~」

 セラは私の言葉を無視し、そんなことを言いながら私の背中を洗い出した。

 

「(何言っても無駄ね....)」

 私はそう思いながら黙って背中を洗われていた。

 

「よしっ! じゃあ次は前を....」

「それはダメに決まってんでしょ!」

 私は自分の胸の前に出てきたセラの手からボディタオルを奪った。

 

「だよね~。冗談だよ冗談」

 セラはそう言って笑っていたが、どこか残念そうな表情をしていた。

 

「(何で残念そうな表情してんのよ....)」

 そう思いながら私は身体を洗い、泡を流すとセラの後ろに座った。

 

「どうしたのサキちゃん?」

「ほら動かない」

 そう言って、私はボディタオルでセラの背中を洗い始めた。

 

「ちょっとじっとしてて」

「....は~い」

 

 ~~~~

 

「ふ~」

「良い湯ね....」

 温泉に肩まで浸かると、不意にそんな言葉が出た。

 

「それは何よりだよ」

 セラはそう言いながら天井を見上げて目をつぶっていた。私はこのタイミングがちょうどいいと

 思ってセラに声をかけた。

 

「ねぇセラ。少し聞いても良い?」

「何を~?」

「この館ってセラしか住んでないの?」

「そうだよ~。それがどうかした~?」

「家族の人は?」

 そう聞くと、セラは目を開き私の方を見た。

 

「ルルから何も聞かなかったの?」

「え、えぇ....」

「そっか....じゃあ教えてあげる。家族は私が殺したよ。もう数百年も前の事だけど」

「っ!」

 そう言いながら、セラは私の隣に座った。

 

「悪魔は戦争してるって言ったの覚えてる?」

「....えぇ」

「私はさ、一応悪魔の中じゃ貴族の家出身だったの。その中でも72柱っていう貴族家系の

 第三位。かなりの権力を持った家の長女だからね、当然悪魔のために人生を捧げろって親には

 言われてた。でもね、そんなのはまっぴらごめん。私の人生は私が決める。そう言ったら

 ブチギレられてね。他の貴族家を纏めて私を消そうとしてきたね。それに反撃したら私に

 向かってきた悪魔は全員消滅、悪魔の土地の三割は更地になったよ。その事件は今でも

 言い伝えられて"魔の蹂躙"って言われてるらしいよ。私も私で"反逆の女帝"って言われる

 ようになったし。それもあってこの森に移住したの。もう何百年経ったか忘れたけどね」

「そういう事だったのね....」

「大人なんて結局自分の利益優先だからね。どの世界でも一緒だっていうのがよくわかったよ」

 セラはため息をつきながらそう呟いた。

 

「....意外と似てるのかもね、私達」

「ん?」

「私の親も、毒親だったの。いえ、私の周りの大人は全員クズだった。私、これでも

 アイドルやってたの」

「アイドル!? すごいじゃん!」

「まぁね....でも、所詮事務所も私が使いにくいってわかったら契約解除。私の人生には、

 クズな大人しかいなかった。だから、私を否定した世界にカーミラで見返してやる....

 そのために、私はカーミラと契約したの。ルルには大切なものを守るために戦ってるって

 言ったけど半分は建前みたいなものね....」

「そっか....確かに私達似てるかもね。でも、サキちゃんはまだまだ変われるよ」

 そう言うと、セラは私の背後に回って抱きしめてきた。

 

「それに、きっと戦争始まったころとは変わってると思うよ。最初はその理由で戦ってた

 かもしれないけど、大切なものを守るためっていうのが最初に出たんでしょ? だったら、

 きっとそれは建前じゃなくて本音の一部なんじゃないかな?」

「セラ....」

「私と違ってサキちゃんはまだまだ若いから。人生はこれからだよ。あ、そうだ。

 手っ取り早く変わってみるなら私の恋人になる? サキちゃんが良ければいつでもウェルカム

 だけど?」

「パス。私好きな人いるから」

「そ、即答された....」

 セラはショックを受けたのか私の肩に顎を乗せてきた。

 

「セラ重い。あといつまで抱き着いてる気?」

「私の心の傷が塞がるまで....」

「....意外とめんどくさいわね」

「ねぇ泣くよ? 本気で泣くよ?」

「(めんどくさ....)」

 私は言葉に出さなかったが、温泉から出るまで心の底でずっとそう考えていた。

 

「(でもまぁ....面倒くさいけど悪い奴じゃないのよね)」

 

 

 

 



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革命機の少女 Ⅴ

 サキちゃんが来てから二日が経った。サキちゃんが乗っていたロボットは完璧に

 修繕が完了しており、サキちゃんが住んでいた世界の(ゲート)の座標も再構成が

 終わっていた。

 

「サキちゃん、修繕も終わって再構成も完了したよ。明日にでも住んでいた世界に

 帰ることができるよ」

「っ、本当!」

「うん。だから帰る準備はしておいてね」

「わかったわ」

 そう言うと、サキちゃんは部屋の方に戻っていった。

 

「さて、私も準備するか」

 

 ~次の日~

 

 サキside

 

「これが(ゲート)....」

 次の日、パイロットスーツを着た私は湖のある場所に来ていた。

 

「そ。ここを通れば元の世界に帰れるよ」

 そう言いながら、セラは私の目の前に降りてきた。

 

「サキちゃん、これあげる」

 セラはそう言って黒い金属の羽が付いたネックレスを渡してきた。

 

「これは?」

「私からのお守り。サキちゃんの無事を祈って作ったんだよ。良かったら受け取って」

「....ありがとう。本当に、何から何までお世話になったわ」

「こちらこそ。久しぶりに人と一緒に生活して私も楽しかったよ。....さ! (ゲート)が閉まる前に

 早く行きなよ」

「....えぇ。本当にありがとうセラ」

 そう言って私はヘルメットをかぶり、カーミラに乗り込んだ。そして、カーミラを動かし

 (ゲート)に入ろうとしたその時、突然扉が変な動きを始めた。そして、動きが収まると(ゲート)から

 ドルシアの兵器が現れた。

 

「っ! 何でここに....!」

 ドルシアの兵器は私とセラを見るとガトリングガンの銃口を向けてきた。

 

「セラ避け....!」

 私はセラにそう叫ぼうとしたのだが、それよりも早くドルシアの兵器は金色の鎖で

 動きを封じられていた。

 

「サキちゃん! 早く(ゲート)に入って! 今ので(ゲート)が不安定になってる。多分これ以上は(ゲート)

 もたない!」

「っ! でもそいつは!」

「これなら私がどうにかするから! サキちゃんは自分のやるべきことをやって! ここで

 足止め食ってる場合じゃないでしょ!」

「っ....! じゃあ、ここはお願い!」

 そう言って、私はカーミラを動かして(ゲート)の中に入った。

 

「ありがとう....セラ」

 

 ~~~~

 

 セラールside

 

「さてさて....」

 サキちゃんが(ゲート)をくぐるのを確認して私は扉を閉めた。

 

「余計な時に来て....こっちは迷惑してるんだけど?」

 そう言いながら、私は鎖で縛られているロボットを見た。

 

「まぁ、飛んで火に入る夏の虫ってやつかな。私の前に現れたんだから、生きて帰れるなんて

 思わない事だね」

 そう言って私が指を鳴らすと、背後に無数の(ゲート)が現れた。その(ゲート)からは剣や銃、槍が

 ロボットの方に向いて出てきた。

 

「簡単に潰れないでよ? せっかくの実験台なんだから」

 そう言って、私はロボットに向かって手を振り下ろした。

 

 



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