ノルース星戦記 (YUKANE)
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地球連邦防衛軍 兵器解説(ネタバレ注意)

本編で区切りが良いので,ここで地球連邦軍が運用している兵器の一覧を製作しました。

ボカシが入っている箇所はまだ本編に登場していない兵器です。登場したらボカシを外そうと思ってます······忘れてないと良いですけど


艦艇

アンドロメダ級宇宙戦艦

ドレットノート級を拡大発展させた艦として建造された巨大戦艦。

艦首には2基の波動砲発射機構を備えており,広い拡散性で広範囲を制圧できる拡散波動砲と,長射程で高威力な収縮波動砲の切り替えが出来る。

ドレッドノート級の重武装を引き継いで主砲や重力子スプレッド発射機・ミサイル発射管・対艦グレネード等の装備を搭載している。

高い拡張性を維持した上で設計された為に,各艦ごとに細かな差違がある。

各艦隊に旗艦として1隻ずつ配備されているが,第13艦隊のみ担当範囲が広いために2隻が配備されている。

スペック

全長:444m

主機:PNC-350W型次元波動エンジン

補機:HU-47ケルビンインパルスエンジン 4基

武装:艦首連装拡散波動砲 1基

   O4-C 40.6cm3連装ショックカノン 4基

   艦首速射魚雷発射管 4門

   R2U型重力子スプレッド発射機 4基

   4連装対艦グレネード発射機 2基

   亜空間魚雷発射機 4基

   両舷短魚雷発射管 16門

   多連装ミサイル発射機 16基

   艦底ミサイル発射管 10門

   司令塔防護ショックフィールド砲 3基

   近接戦闘用6連装側面光線投射砲 2基

   4連装対空パルスレーザー砲塔 4基

   拡散型3連装対空パルスレーザー砲塔 1基

搭載機:コスモファルコン 36機

    コスモレイ 2機

    コスモシーガル 2機

    コスモアロー 2機

航空装備:CV-4f シリンダー式格納庫 1基(船体後方)

     MEP-07リニアカタパルト 1基(艦底)

同型艦

・BBB-001 アンドロメダⅡ

第13艦隊第2戦隊旗艦。フェイアン・アレヴァン中将の乗艦。

波動砲発射機構を3つに増設しており,艦底に波動砲専用の補助エンジンとしてBV-98FsT次元波動エンジンを増設している。

この為に常設の波動エンジンでワープしながら波動砲発射準備が出来る。

実際にワープ直後でミルメリア宙軍第35艦隊に拡散波動砲を直撃させている。だがこれは補助エンジンに多大な負荷をかけ壊れる可能性がある為に,使用後にはオーバーホールを受ける必要がある。

・AAA-001 マジェスティック

第1艦隊旗艦。ブレロ・クランドスリー大将の乗艦。

14隻の中で唯一改造などを行っていない純粋な艦。

・AAA-013 オーシャン

第13艦隊第1戦隊旗艦。フェルド・ヴェルズリー大将の乗艦。船体は艦名に因んで蒼色に塗られている。

実質4艦隊を指揮するために,各種通信機器を統合したサフィールS16通信システムを搭載して艦隊指揮能力を向上させている。

 

空母型アンドロメダ

アンドロメダ級が保有している拡張性を活用して「航空機動打撃艦計画」で試作艦 2隻が建造された。

本来ならば船体を改造して航空甲板を設ける筈だったが,それだと予算が数倍に膨れ上がる上に,改造期間も年単位のものになる為に艦橋後部に格納庫と電磁カタパルト24基を備えたものを装備する形になった。

その結果異様な外見とトップヘビーになったが,180機の航空機を搭載できる性能を手に入れている。その上で2基のショックカノンなどの装備の大半を維持したまま完成した為に戦艦としての火力と航空機運用能力を有した艦として優れた性能を手に入れた。

だがこれでも予算は上限を超えた上に,船体バランスが問題になったために正規採用とはならなかったが,巨大な艦橋構造物はコンピューターや観測機器を搭載するのに便利だった為に,「長期観測派遣任務」などに充てる艦として建造が計画されている。

試験艦2隻はどちらも第13艦隊に配備されている。

スペック

全長:444m

主機:PNC-350W型次元波動エンジン

補機:HU-47ケルビンインパルスエンジン 4基

武装:艦首連装拡散波動砲 1基

   O4-C 40.6cm3連装ショックカノン 2基

   艦首速射魚雷発射管 4門

   R2U型重力子スプレッド発射機 4基

   4連装対艦グレネード発射機 2基

   亜空間魚雷発射機 4基

   両舷短魚雷発射管 16門

   多連装ミサイル発射機 16基

   艦底ミサイル発射管 10門

   司令塔防護ショックフィールド砲 3基

   近接戦闘用6連装側面光線投射砲 2基

   4連装対空パルスレーザー砲塔 4基

   拡散型3連装対空パルスレーザー砲塔 1基

搭載機:コスモファルコン 160機

    コスモスパロー 5機

    コスモレイ 5機

    コスモシーガル 5機

    コスモアロー 5機

航空装備:QW-58Cv電磁カタパルト 24基

同型艦

・CCC-001 アマテラス

第13艦隊第3戦隊旗艦。エドラスト・スフィンシャー中将の乗艦。

・CCC-002 アクエリアス

第13艦隊第4戦隊旗艦。ヒエリス・グランベイン中将の乗艦。

舷側のミサイル発射管を重力子スプレッドに換装しているが,バランス維持の為に12基に減少している。

 

ドレッドノート級宇宙戦艦

第1次クレイト沖海戦で従来の軍艦が各個撃破された為に単艦でもマルチロールに戦える艦として建造された主力戦艦。

艦首の波動砲発射機構はアンドロメダ級より威力は劣るが中央の仕切り板によって疑似的ながらもアンドロメダ級と同じ効力を発揮できる。

武装として主砲・ミサイル発射管・魚雷発射管等の多く装備している重武装艦。拡張性こそ無いが,単艦でも高い戦闘力を有している。

多種多様な任務に対応できる重武装と小規模な艦隊なら指揮可能な能力から大量の艦が建造された。主力艦隊には10隻ずつ配備され,地方艦隊や駐留艦隊では旗艦として配備されている。

使い勝手の良い艦だった為に「航空機動打撃艦計画」とその後に計画された「艦隊随伴型支援艦計画」のベースに選ばれ,各種改造を行ったのちにアンタレス級・トウキョウ級として採用されている。

スペック

全長:250m

主機:PNC-257型次元波動エンジン

補機:HU-32ケルビンインパルスエンジン 2基

乗員:150名

武装:艦首拡散波動砲 1門

   AS-7V 30.5cm3連装ショックカノン 3基

   6連装大型エネルギー砲 1基

   4連装対艦グレネード投射機 2基(XaS-332AD 対艦グレネード弾)

   亜空間魚雷発射機 4基(Ga-4E 亜空間魚雷)

   艦首小型魚雷発射管 8門

   両舷短魚雷発射管 12門(CF-98S 対艦魚雷)

   多連装ミサイル発射機 16基

   艦底ミサイル発射管 8門(FE-223 対艦ミサイル・Va-24H 対空ミサイル)

   司令塔防護ショックフィールド砲 3基

   近接戦闘用6連装側面光線投射砲 2基

   4連装対空パルスレーザー砲塔 4基

搭載機:コスモファルコン 16機

    コスモレイ 1機

    コスモシーガル 1機

航空装備:Bv-9Rシリンダー式格納庫 1基(船体後方)

     MEP-07リニアカタパルト 1基(艦底)

 

エンケラドゥス級宇宙護衛艦

アンドロメダ級やドレットノート級を補佐する機動性に優れた小型艦として設計された駆逐艦。艦名は衛星と小惑星から。

全長はドレットノート級の半分以下の大きさになっているが,艦首には小柄な船体に収める為に拡散能力が削除された波動砲発射機構を備えている。

高い機動性と量産性を持っていた為に,ドレットノート級と共に多くの艦が建造された。1艦隊に30隻ずつ配備され,地方艦隊や駐留艦隊など地球防衛軍全ての艦隊に配備されている。

スペック

全長:113m

主機:Q2-Ae14C式中型次元波動エンジン

武装:艦首波動砲 1門

   TA-6G 12.7cm連装ショックカノン 3基

   Ja-85B 連装対空パルスレーザー砲 4基

   3連装魚雷発射管 4基

   艦首魚雷発射管 2門

   4連装ミサイル発射機 2基

   4連装対艦グレネード発射機 2基

搭載機:コスモレイ 1機

 

カナダ級パトロール艦

「長期派遣観測艦計画」でエンケラドゥス級をベースに製造されたパトロール艦。艦名は旧世代の国名。

船体は護衛艦を大型化しており,武装を最低限まで減らしてその分のスペースに長期的な哨戒・探索を行う為の交代要員の部屋・機器類等を備えている。

観測機器として長距離観測レーダーや赤外線観測機・三次元カメラ・長距離通信装置とそれらを纏めるLo-241a スーパーコンピューターを搭載しており,データを他艦へ情報共有する事も出来る。

未開地域への探査を兼ねている為に観測艦隊に所属しており,任務に応じて派遣される。また高いレーダー探知性能や長い航続能力を買われて,太陽系内のパトロールにもあたる。

スペック

全長:188m

主機:Q4-Ae25K式中型次元波動エンジン

武装:艦首波動砲 1門

   TA-35G 12.7cm連装ショックカノン 3基

   3連装魚雷発射管 4基

   ミサイル発射管 8門

搭載機:コスモレイ 1機

 

アンタレス級宇宙航空母艦

「航空機動打撃艦計画」でドレットノート級をベースに製造された航空母艦。名前の由来は星座の恒星から。

船体は延長され,船体後部が大幅に拡幅されて航空甲板とカタパルトが設置されている。大型のカタパルトや航空甲板が左側に設置されている為に,上部構造物が全て右側によせて配置されている。主機もドレットノート級のものを改良して出力を上げたもの搭載している。

上部構造物は右側によっているが,主砲 6門等の重武装をドレットノート級から引き継いでいる為に“戦艦空母”と呼ばれることもある。

艦隊の航空戦力を担っており,惑星上陸作戦などに航空支援を送ることが出来る。

スペック

全長:295m

主機:PNC-336型次元波動エンジン

補機:HU-51Aケルビンインパルスエンジン 7基

武装:艦首拡散波動砲 1門

   AS-7V 30.5cm3連装ショックカノン 2基

   FG-9D 30.5cm連装ショックカノン 2基

   6連装大型エネルギー砲 1基

   4連装対艦グレネード投射機 2基

   亜空間魚雷発射機 4基

   艦首小型魚雷発射管 4門

   艦首中型魚雷発射管 8門

   両舷短魚雷発射管 12門

   多連装ミサイル発射機 12基

   艦底ミサイル発射管 8門

   司令塔防護ショックフィールド砲 3基

   近接戦闘用6連装側面光線投射砲 2基

   4連装対空パルスレーザー砲塔 4基

   拡散型3連装対空パルスレーザー砲塔 5基

搭載機:コスモファルコン 64機

    コスモスパロー 3機

    コスモレイ 2機

    コスモシーガル 2機

航空装備:CV-4f シリンダー式格納庫 2基(船体後方)

     QW-71Na電磁カタパルト 2基(航空甲板)

     QW-58Cv電磁カタパルト 1基(左舷航空甲板)

     MEP-07リニアカタパルト 2基(艦底)

 

トウキョウ級補給母艦

「艦隊随伴型支援艦計画」でドレットノート級をベースに製造された補給艦。名前の由来は旧世代の都市。

船体は延長され,船体後部が拡幅されて航空甲板が設置されている。主機もアンタレス級ものより強化されたものが搭載されており,補機も増設されている。

艦橋前には手が加えられてない為に,アンタレス級と同じく重武装を引き継いでいるが波動砲発射機構は搭載されておらず,砲口には蓋が取り付けられている。

波動砲発射機構の代わりにXD-7波動防壁共鳴システムが搭載されており,各艦の波動防壁を強化したり,波動エネルギーを周囲の艦にエネルギーを共有する事も出来る。また第2主砲塔直下に多目的ランチャーが3門ずつ設置されている。

船体後方の航空甲板は多種多様な機体を収用・運用することが出来る。

各艦隊に5隻ずつ配備され,惑星降下時には波動防壁を展開して艦隊を守りつつ降下する。また多種多様な航空運用能力を利用して上陸作戦・救助・輸送などの様々な任務にも使うことが出来る。

スペック

全長:278m

主機:PNC-412型次元波動エンジン

補機:HU-51Aケルビンインパルスエンジン 11基

武装:AS-7V 30.5cm3連装ショックカノン 2基

   6連装大型エネルギー砲 1基

   4連装対艦グレネード投射機 2基

   亜空間魚雷発射機 4基

   艦首小型魚雷発射管 4門

   艦首中型魚雷発射管 8門

   両舷短魚雷発射管 12門

   多連装ミサイル発射機 16基

   艦底ミサイル発射管 8門

   司令塔防護ショックフィールド砲 3基

   近接戦闘用6連装側面光線投射砲 2基

   4連装対空パルスレーザー砲塔 4基

   拡散型3連装対空パルスレーザー砲塔 5基

   多目的ランチャー 6門

搭載機:コスモハウンド 12機

    コスモレイ 6機

    コスモシーガル 8機

 

航空機

コスモファルコン

コルスファイス・エアクラフト社製の地球防衛軍の主力戦闘機。地球防衛軍の「艦上ステルスマルチロール機計画」として製造された。

可変式のエンジンノズルでホバリングも可能。

機体の格納式ミサイル格納庫には空対空ミサイル 8発を搭載でき,ハードポイントには空対地ミサイルや空対艦ミサイル・誘導爆弾を搭載できる。

スペック

全長:15.9m

全幅:6.8m

エンジン:SR-22Aコスモエンジン 1基

搭乗員:1名

武装:NE-54X 3連装レーザー機関砲 2基

   SE-194空対空ミサイル 8発

   VE-200空対艦ミサイル/JUC-466A空対地ミサイル 12発

 

コスモスパロー

 

コスモレイ

コルスファイス・エアクラフト社製の地球防衛軍のSTOLE多目的偵察機。コスモスパローが高価すぎた為に機体価格を抑えつつ,様々な任務に使用できる機体として製造された。

2枚の垂直尾翼の根元にはTc-6A熱源センサー等の各種センサー類が格納されている楕円形のバルジがあり,コックピットからの操作でカバーを開いて出現させる。機首にはSo-20V観測カメラを備え,機体下部にもPu-ⅦDZレーダーを内蔵しているレーダードームを搭載されている。

エンジンは安定性と燃費に優れており,ノズルを操作することで簡易的ながらVTOL機になることが出来る。

緊急時は荒地での離着陸も想定している為に着陸脚は頑丈に作られており,動力を伝達することで,低速ならばオフロード走行も出来る。着陸脚はスキッドに換装することもでき,雪原や砂漠などでも離着陸できる。

地球防衛軍の殆どの艦艇に搭載されており,偵察以外にも連絡・哨戒・観測任務を担っている。

スペック

全長:14.2m

全幅:7.1m

エンジン:Ku-8ANコスモエンジン

乗員:2名

 

コスモアロー

 

コスモシーガル

エアルファイス・エアプレーン社製の地球防衛軍の汎用輸送機。

エンジンが装備されている主翼自体を90度回転させることで垂直離着陸が出来る。

機体中央のコンテナを換装することで様々な任務に使用できる。コンテナには兵員輸送・救急・指揮通信・爆雷投射型などの種類が用意されている。

アンドロメダ級やアンタレス級に2機が,トウキョウ級に8機が搭載されており,コンテナを換装して様々な任務に使用されている。

スペック

全長:19.5m

全幅:8.7m

エンジン:EO-207Lコスモエンジン 2基

搭乗員:2+24名

 

コスモハウンド

 

陸上車両

 

銃火器

 

企業

パラード・ツェルナイン社

ツェルナイン・シティ(シドニー)に本社を置く会社。アンドロメダ級やドレッドノート級及び派生型の波動エンジンを製造している。

製品

・PNC-350W型次元波動エンジン

・PNC-257型次元波動エンジン

・PNC-336型次元波動エンジン

・PNC-412型次元波動エンジン

・BV-98FsT次元波動エンジン

 

レーベナイン発動機

ヴァレクアイト・シティ(ブエノスアイレス)に本社を置く会社。地球防衛軍艦艇の補助エンジン全般を製造している。

製品

・HU-47ケルビンインパルスエンジン

・HU-32ケルビンインパルスエンジン

・HU-51Aケルビンインパルスエンジン

 

ファーテカル・エンジン社

ファーテカル=ラヴィア・シティ(ブリスベン)に本社を置くパラード・ツェルナイン社の子会社。エンケラドゥス級とカナダ級の波動エンジンを製造している。

製品

・Q2-Ae14C式中型次元波動エンジン

・Q4-Ae25K式中型次元波動エンジン

 

バクファック・エンジニアリング社

バーベニアム・シティ(サンフランシスコ)に本社を置く会社。地球防衛軍艦艇の主砲は全て製造している。

製品

・O4-C 40.6cm3連装ショックカノン

・AS-7V 30.5cm3連装ショックカノン

・TA-6G 12.7cm連装ショックカノン

・TA-35G 12.7cm連装ショックカノン

・FG-9D 30.5cm連装ショックカノン

 

ガルフェイオン社

テレシアルトア・シティ(バルセロナ)に本社を置く会社。地球防衛軍艦艇の電磁カタパルト全般を製造している。

製品

・QW-58Cv電磁カタパルト

・QW-71Na電磁カタパルト

・MEP-07リニアカタパルト

 

クワイラント工廠

クワイラント・シティ(ニューヨーク)に置かれている工廠。重力子スプレッド発射機を開発した。

製品

・R2U型重力子スプレッド発射機

 

デラニアム工廠

デラニアム=ベレル・シティ(サンクトペテルブルク)に置かれている工廠。格納庫やレーダー・射撃管制システム等の多種多様な装備品を開発している。

製品

・CV-4f シリンダー式格納庫

 

ネイスヴェーヘン研究所

ネイスヴェーヘン・シティ(ウィーン)に置かれている研究所。スーパーコンピューターの開発に長けている。

製品

・Lo-241a スーパーコンピューター

 

ヴァンクライト研究所

ヴァンクライト・シティ(ダブリン)に置かれている研究所。波動エネルギーに関する研究を行っており,波動防壁共鳴システムを開発した。

製品

・XD-7波動防壁共鳴システム

 

コルスファイス・エアクラフト社

セントラル・シティ(デトロイト)に本社を置く会社。コスモファルコン等の航空機を製造している。

製品

・コスモファルコン

・コスモレイ

 

エアルファイス・エアプレーン社

製品

・コスモシーガル

 

セルティアルム社

アンステル・シティ(コペンハーゲン)に本社を置く会社。地球防衛軍が使用している全ての航空機エンジンを製造している。

製品

・SR-22Aコスモエンジン

・Ku-8ANコスモエンジン

・EO-207Lコスモエンジン

 

レヴァーバント社

エンスプリティア・シティ(ベルリン)に本社を置く会社。コスモファルコンの航空機銃を製造している。

製品

・NE-54X 3連装レーザー機関砲

 

ヴァルセート社

クワイラント・シティに本社を置く会社。航空ミサイル全般を製造している。

製品

・SE-194空対空ミサイル

・VE-200空対艦ミサイル

・JUC-466A空対地ミサイル

 

パーセシャル社

エンセリオア・シティ(上海)に本社を置く会社。地球防衛軍が装備しているカメラ全般を製作している。

製品

・So-20V観測カメラ

 

・レヴェリオン工廠

レヴェリオン・シティ(アレクサンドリア)に置かれている工廠。航空機に搭載するセンサー類やレーダーを開発している。

製品

・Tc-6A熱源センサー




こういう兵器紹介とかカッコよくて良いですよね~僕もZERO零さんの「とある飛空士の召喚」シリーズの兵器解説を見て,書こうと思いました。

艦艇と飛行機に関して細かい設定まで書いたと思っているんですけど,実は·······


陸上兵器は全く手つかずなんです。なので陸上兵器に関しては期待しないでください。

どうにかして納得できる近未来的陸上兵器を探そうと思っています。ただ僕ガンダムとかのゴーレム兵器は苦手という弱点がありますが·······


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新たなる地球

どうも霧悠です。今回新たに小説を連載します。

本来なら別の小説を書こうと思っていましたが,そちらの設定やらが未だに出来上がっていない為に,こちらの小説を投稿することにしました。

この小説は日本国召喚をベースにしつつ,宇宙戦艦ヤマトや銀河英雄伝説・スターウォーズ等の多くのクロスオーバー作品となっています。

どうかご理解をお願いします。


天の川銀河の太陽系の第3惑星である地球。太陽系唯一の蒼き星であるこの星に住む人類は幾度もの危機を乗り越えて何千年と文明を発展させ,暮らしてきた。

 

だが2回目の世界大戦が終結してから70年後の2015年 日本が姿を消した。

ユーラシア大陸の東端にあったはずの日本列島全域も,そこにいた筈の1億人を越える人間も全て文字通り消えてしまった。

 

この事態に世界は困惑した。国1つが跡形もなく消えるなど神話ですらあり得ない事態に対応するなど不可能だった。

加えて数日も経てば日本が消滅した影響か,地球を23.4°傾けていた地軸が動き出し,地球全土に影響を及ぼした。

 

サハラ砂漠で大雨が降り,オーストラリアが雪に覆われ,ニューヨークが海に呑まれる等,世界中に甚大な被害を発生させた。

 

そんな常識はずれな出来事が次々と不可測的に起きたために,各国は徐々に自国の維持ですらできなくなっていった。

 

小さな火種から各国で始まった内戦は徐々に国同士の戦いに変わり,いつの間にか世界の全てを巻き込んだ戦争に拡大していた。

 

地球上の全ての場所が戦場となり,そこにあった人類が何百年をかけて築き上げた都市が,何千年をかけて形成された自然が,そこにいた何の罪のない人々の暮らしが,誰も望まない戦争によって壊されていった。

 

何年も続く終わりの見えない戦争に強制的に終わらせるべく,辛うじて国家体制を維持していたアメリカやロシア・中国等の国家は最終手段でもある戦略核兵器のトリガーを引いた。

 

だが結果は寧ろ辛うじて保たれていた国家すらも崩壊する事になり,より戦争の終点は遠のいてしまった。

 

地球上の国家の殆んどが崩壊して歯止めが効かなくなった戦争は泥沼化し,何十年と続く事になっていった。その結果人類が築き上げた文明の崩壊と,犠牲者の桁数は進んでいく一方だった。

 

そんな中,戦火から逃れようとした人類は地球の最果ての土地でもなる南極を目指した。地球上の殆んどが戦火に呑まれていたが,国家の存在しない南極ならば生き残れるのではないのかという希望的観測によって,人類は南極へと向かった。

 

だが南極への道筋は困難だった。国際法が実質無効となった世界で,航行するのはあまりにも危険だった。

 

自らの潔白を訴えても敵として認識され,対艦ミサイル・航空機・砲撃あるいは各国がばら蒔いた機雷によって次々と南極行きの船は沈められた。

 

それ以外にも予測不可能な気象にも翻弄され,多くの人々が犠牲になった。

 

それでも人類は南極への航海をやめることはなかった。そして遂に1隻の船が南極への航海に成功した。

 

そんな彼らの目の前には地軸と戦争によって今まで氷で隠されていた古代文明の跡地が姿を現した。

 

彼らの調査によってこの遺跡があの“アトランティス”であったことが証明され,彼らが凄まじい技術力を有していたことを認識した。

 

そして彼らは決意した。この技術を使って地球を復活させると。

 

南極到達から10年ほどが経過し,世界中で続いていた戦争は次第に終わっていった。片方の国が兵士と物資が空っぽになり消滅していったかと思えば,もう片方も消滅仕掛けているという無限地獄が各地で起きていた。

 

無法地帯が増え続け,新約聖書の“アポカリプス(世界の終末)”の様になると誰もが感じていた。

 

だがそんな人類を見てアトランティス文明の遺産を解析していた人々が動き出した。

 

彼らのリーダーのアーサー・ライエネンは高らかにこう宣言した。

 

「我々は決して許される事のない大罪を犯した。だが我々はこうしてまだ生きられている。

これは何故か? 我々にやり直せという事だ! 神は我々にチャンスを与えてくれた! このチャンスを無駄にしてはならない!

さあ我々人類の手で新たなる世界を造り出すのです!!」

 

長い戦争の中でも決して壊されることのなかったアトランティス文明の落とし物 ブラックナイト衛星を利用した通信は世界中へと拡散された。

 

救いようの無い未来が変わるかもしれない。そう考えた人々はアーサーに従うことを決めた。

 

日本転移から66年後の2071年。地球上全ての国家は正式に解体され,新たに“地球連邦”が誕生した。

 

初代大統領に就任したアーサーは地球を再建する事と同時に,地球の外 宇宙へと飛び出す事も宣言した。

 

各地で都市の再建が進んでいく中,アトランティス文明の残していったデータを元に宇宙船の開発は急速的に進んでいく事になった。

 

地球連邦設立から58年が経過した2129年。人類は160年ぶりに月面へと降り立った。

それから3年後には火星へと降り立つ事に成功した。

 

そして遂に地球連邦設立から70年の節目である 2141年 遂に人類は異星人と遭遇する事に成功した。

異星人は“灯台もと暗し”のことわざの通り,太陽の反対側に存在していた。

 

惑星 ユグドを統一していた“ケイン神国”へと向かった地球は,この国が地球を脱出したアトランティス文明が築き上げたという衝撃の事実を知った。

 

勿論ケイン神国側も驚きではあったものの,何万年ぶりとも言える再会に地球人は大いに沸き上がった。

 

直ぐ様条約が結ばれ,両国ともに宇宙へと大きく羽ばたいていった。

 

天王星・海王星・冥王星と生息区域を広げていた人類は遂に太陽系の外へと飛び出した。

 

その先にはオルデラン・カミーノ等といった異星人が多く住む レヴィン星系が存在していた。

 

だがレヴィン星系を実質的に支配していたコルサント率いるインペリアル星系連合と対立し,地球として初めてとなる宇宙戦争 レヴィン戦争が始まった。

 

地球連邦成立後初となる宇宙戦争は最初こそ実戦経験が皆無に等しかった為に苦戦を強いられたが,海戦を重ねる毎に着実に技術を蓄積していき,互角の戦いを繰り広げた。

 

2195年の第3次クレイト沖海戦にて決定的な勝利をおさめた地球・ユグド・オルデラン連合軍とインペリアル星系連合は和平条約を結んだ。

 

約20年にも及ぶ戦争が終結し,宇宙に平和が訪れた事を人々は大層喜んだ。

それは地球連邦としも同じで,戦争から解放された為に今まで疎かになっていた周辺星系への進出・調査をより一層拡大させていった。

 

人類が宇宙へと羽ばたいている中,全ての始まりである日本消滅から200年が経過した2215年,とある観測衛星によって重大な発見がなされるのであった。




用語解説
・彼らの調査によってこの遺跡があの“アトランティス”であった·······
何故アトランティスだと分かったのかですが,南極に到達した人々の中に転移に巻き込まれなかった日本人がおり,残されていたヤムート語(日本語)を頼りに解析を実施した為です。
因みにヤムート語と日本語が一緒なのは独自設定です。

・地球を脱出したアトランティス文明······
こちらに関しては本編内で詳しく語ると思いますので,どうか宜しくお願いします。

・ブラックナイト衛星
この世界ではアトランティスが残していった通信衛星です。地球上の何処でも素早く通信を行うために開発されたもので,例え戦争や隕石によって破壊されない為に外装を頑丈に作った結果,現在まで機能し続けられた。
··········中身が生きてないだって? 気にしないで····

・レヴィン星系
太陽系に一番近い知的生命体が住む星系。オルデランとカミーノに全人口の8割弱の人類は住み,それ以外の人類じゃ周辺のウータパウ・ムスタファー・ジャクー等の資源が豊富な星に点在している。
インペリアル星系連合の影響力が強くなっている中で,地球連邦と接触した。

・インペリアル星系連合
インペリアル星系のコルサントを首都にした連合。インペリアル星系と隣のシス星系を勢力下にしている。
“全ての星の発展”を掲げており,多くの星を発展させてきたが,支配下のジオノーシス・キャシーク等の星から資源を根こそぎ取って成り立っており,資源不足を防ぐためにレヴィン星系へと進出した。
戦争終結後は資源の再利用・未知領域への進出を推し進めている。
加盟している主要な星
・コルサント
・エンドア
・カミーノ
・ホス
・タトゥイーン
・ナブー
・スカリフ

・第3次クレイト沖海戦
地球・ユグド・オルデラン連合軍とインペリアル星系連合との大規模な海戦で,地球側がアンドロメダ級とドレットノート級を主力とした新鋭艦隊で奇襲攻撃を行い,敵中突破をして勝利をおさめた。


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第1次ノルース攻防戦編
日本発見


この作品の原作カテゴリを“色々”にしたのですが,“日本国召喚”の方が良いですかね?

意見があればコメントにお書きください。


蒼き星 地球。地軸がずれた事で丸々に南半球に呑まれた北米(セントラル)大陸。

 

大陸の中ほどにある五大湖(ファイブ・レイク)の畔に地球連邦の首都 セントラル・シティが建てられている。

 

かつてデトロイトと呼ばれた自動車工場が立ち並んだ町は,超高層ビルが幾つも立ち並ぶ超巨大都市へと変貌していた。

 

街を埋め尽くす超高層ビルの中で一際目立つのが,円形のビルが六角形を形作る様に並び,その中心に空まで続くかと感じる程に高い五角形のタワーが建てられている建物だった。

 

セントラル・シティの中心地でもある地球連邦官邸の一室に政府関係者が集まっていた。そこにいたのは副大統領・外務大臣・内務大臣・防衛軍幹部・第1・13艦隊司令官等の地球連邦の重要幹部が極秘で一同に会していた。

 

重要幹部らは会議事態が極秘な上に内容を知らされていない為に皆,様々な意見を飛ばしていた。

 

そんな中で第13艦隊司令官のフェルド・ヴェルズリー大将は場違いと言わんばかりの欠伸(あくび)をしていた。

 

「こんな場所で欠伸なんて度胸があるもんだ。それとも寝不足なのかい?」

 

ヴェルズリーに声をかけた第1艦隊司令官のブレロ・クランドスリー大将にヴェルズリーは目を擦りながら返事を返した。

 

「すいません。昨日あまり寝ずに()()()について調べていたもんですから。」

「そうかそうか、君らしい事だな。だが休む事も大切だ。この後より一層君を寝かしてくれなくなるだろうから、それまでに充分休んでおくとよいだろう。」

「そうしたいところですが,この雑音の中ではあまり寝れませんよ。」

「ここで寝る気かい? それはそれで胆の座った奴だよ。」

 

内容を知っている数少ない人間でもある二人は雑談を交わしながら,周りを見渡した。

 

「それにしてもケイン神国の大使まで来るとはな。彼らも驚愕しただろうな。」

 

クランドスリーの目線の先には在地ケイン神国大使の姿が写っていた。

地球連邦(自国)のみならず,他国の人間の姿まで見える事が彼らを困惑させていたのは紛れもない事実だった。

 

騒がしかった一室に新たな人物が重厚なオーク材で出来たドアを開けて入ってきた。

 

「済まない済まない。専用車が故障してしまってな。急いで来たのだが,遅れてしまった。」

 

そう言って謝りながら,地球連邦第26代大統領 ヨヘン・ライエンゼードは自分の席へと向かった。

大統領が来たことでざわついていた室内は一瞬で静まり返った。

 

「では始めようか。」

 

ヨヘンが自分の定位置につくと,今までの申し訳なさそうな雰囲気を一変させた。

太陽光が差し込んでいた窓は自動で閉められ,室内を照らしていたLEDも消灯して,室内は暗闇に包まれた。

 

暗闇の部屋を照らし出す様に,部屋中央の装置が動作を開始した。

装置に天井に向けられて設置されたレンズから何もない空中に星系のホログラムが浮かび上がった。

 

中央には太陽系が写っており,その周りにレヴィン星系等の他にも地球連邦が進出した星系が幾つも写っていた。

 

「今回皆には極秘で集まって貰ったが,地球連邦の根幹に関わる重要な事態が発生した。

あまりにも事が重大であるために,公式発表されるまでこの会議で話された事は極秘にしていただきたい。

では後はフェルド大将。お願いいたします。」

 

ヨヘンの言葉で内容を早く知りたい人々の視線はヴェルズリーに集中する。

ヴェルズリーは立ち上がって,一礼をした。

 

「紹介に預かった地球連邦防衛軍第13艦隊司令官のフェルド・ヴェルズリー大将です。

今回の話をする前にとある星系について説明させて頂きます。」

 

ヴェルズリーがそう言うと,ホログラムが一点の星系にズームアップした。

 

「こちらは十年程前に観測衛星によって発見されたトータス星系です。発見当初から新たなる開拓地として目をつけており,我々第13艦隊は観測衛星を投入していました。」

 

彼は手元のタッチパネルを操作して星系の一点を拡大した。拡大された場所には青く染まった惑星が存在していた。

 

「その結果,この星系の第4惑星に地球に良く似た惑星を発見し,我々はこの星をノルースと名付けました。

この星は見てわかる通り,地球に環境が似ており非常に人類が住むのに適した環境であると我々は見ております。

より一層の調査を行うためについ数ヶ月前にノルース周囲の衛星 ノルース1に前線基地を設置し,カナダ級パトロール艦 2隻を配備して監視していました。」

 

ノルースと呼ばれた蒼い地球に似た星の周りには月の様な衛星が2個程浮かんでおり,片方の表面をズームアップすると基地らしき物が確認出来た。

 

「ここからが本題です。これから見せる画像は基地に設置された望遠鏡が撮影しました。ここに見覚えのある土地があるとは思えないでしょうか?」

 

ヴェルズリーがそう言って写し出した画像を見た瞬間,会場はざわついた。

 

4つの島で構成された細長い土地。その姿をこの星の人類の歴史を知っている者は忘れるはずのない形だった。

 

「まさか·····これは日本か?」

「信じられん······なんでこんな星に?」

「ありえない!? こんなのありえん!?」

 

地球連邦が誕生する原因にもなった 日本消滅。その日本が未知の惑星に存在している事に彼らは動揺せざるを得なかった。

 

「我々も最初は信じられませんでしたが,これは明らかに日本そのものです。

また検証の結果,この日本は消滅してから5年程しか経過していないと結論づけられました。」

 

加えるように話された情報に室内は再びざわつく。こちらは日本消滅から200年の節目であるのに,日本自体はたった数年しか経過していないという事実に驚愕するだけだった。

 

これでは会議どころではないのだが,それを予測していたヴェルズリーは大統領席に座るヨヘンに視線を向けた。

 

ヴェルズリーの視線を察したヨヘンは敢えて聴こえるように大きな咳払いをした。

 

ヨヘンの咳払いによって騒がしかった室内は静まりかえる。

 

「確かに私もこの事実には非常に困惑した。だがこうして日本はしっかりと存在している。

これは奇跡そのものだ。もう1度会うことが不可能だと言われ続けていた日本を見つけられた。これは我々に会いに行けと言っているような物だ!! そうだろう皆!」

 

ヨヘンの煽る様な言葉に室内にいた人々は頷きだす。目の前に地球が200年前に失った物が何も変わらず存在しているのだ。

 

これに食らいつかないという選択肢は彼らには存在していなかった。

 

室内の殆んどが冷静さを取り戻していく中,地球連邦の警察組織や都市計画を取りまとめる内務省のトップである マラヴィン・マーハリスクが声を上げた。

 

「私は幼い頃から日本への憧れがありました。美しき建築物に独自の発展を遂げた文化を持ったまま失われた国である日本。

それが今目の前にあるのであれば,私は今すぐにでも向かいたいと思っています。

ですがヴェルズリー大将。日本が位置するノルースがどのような星なのか詳しく教えて頂かない限りはGOサインはおろせません。」

 

マラヴィンが投げ掛けた質問は全員の意見を代表しているのと同じだった。

 

幾ら日本がしっかりと存在しているとしても,そこは地球とは違う惑星。

一体何が地球と似ていて,異なっているのか。彼らの興味はその1点に注がれた。

 

マラヴィンの質問を受け止めたヴェルズリーはタッチパネルに指を翳して,ノルースの画像の横に各種情報を写し出した。

 

「ではまずこちらの惑星 ノルースですが,地球と比べて2倍ほどの大きさがあるにも関わらず重力加速度は9.8065m/s^2,平均気圧は1015hPa,大気も酸素が少し濃い程度と異なる箇所を見つける方が難しい程似かよっています。

このために人類(我々)が住むのに何ら問題はありません。ただ····」

 

ヴェルズリーは敢えて詰まらせて,人々の意識を注目させた。

 

「少々この星の文明の関して不自然な点がありまして,この画像に写っているブランシェル大陸(大陸)地球連邦(我々)の都市に類似する皇都 マギカレギア(先進的な都市)を有し,それ相応の文明を発展させていり事が分かります。

一方でフィルディアス大陸(こちらの大陸)皇都 エストシラント(最大の都市)は石造りの建物で構成されており,湾内には帆船がおり,文明が何世紀も遅れているのです。」

 

この発言に室内はどよめいた。何世紀も違う文明が共存しているなんて彼らの常識では考えられなかったからだ。

 

「1つの惑星に10世紀も違う文明が共存しているのか? アニュンリール皇国(この国)の属領とかではないのか?」

パーパルディア皇国(こんな国)などアニュンリール皇国(この国)の手にかかれば直ぐに滅ぶんでしまうぞ。」

「よくよく見てくれ。周りにもアニュンリール皇国(この国)程ではないが,第一・ニ文明圏(発展した国々)があるぞ。」

 

幹部らが自らの意見を思い思いに話している中,外務大臣 ハンザ・プレーストクスがある事に気がついた。

 

「おいちょっと待て。ムー大陸(この大陸)の西側にある島って,グラ・バルカス帝国じゃないのか!?」

 

かつて外務官としてケイン神国駐在員の経験を有している彼はこの国の歴史を頭に入れていた。だからこそ,ケイン神国の最大の敵であった グラ・バルカス帝国の存在に気づいた。

 

この言葉でこの場にケイン神国の外務官がいる理由を会場の全員が悟り,自然と視線が向いた。

 

「ええ,これはグラ・バルカス帝国で間違いありません。

約200年前,日本と同じように忽然と消えたグラ・バルカス帝国そのものです!」

 

ケイン神国の在地ケイン神国大使のアワン・スペル・ゲルノーサは立ち上がって意気揚々と宣言した。

 

「我々はグラ・バルカス帝国に対して劣勢で,敗北は決定的だと言っても過言ではありません。

ですがあの日,グラ・バルカス帝国は消え去りました。その混乱を征してケイン神国(我々)がユグドを統一出来ました。

ですがこの星にグラ・バルカス帝国がやって来ていました。あの国は文字通りの侵略国家で,西方世界(周辺地域)を調査した結果,かの国が周辺国に侵攻している可能性が極めて高くなりました。

我が国としてはかの国の侵略行為を止めなければ行けません。かつて我々に行われた残虐なる行いをこの星に広めてはなりません!」

 

アワンの発言は自国が受けた犠牲を他国に広めてはならないというケイン神国の意志そのものを表しているかのようだった。

 

ヴェルズリーはアワンの発言が終わってから口を開く。

 

「こちらのグラ・バルカス帝国ですが検証の結果,こちらも消滅してから5年程しか経過していないと結論されました。

つまりあの大戦艦「グレートアトラクター」が存在している時代だと推測出来ます。」

 

室内に声があがる。かつてグラ・バルカス帝国が有していた世界最大の戦艦 グレートアトラクター。

日本の「大和」と違いを探す方が難しい程似通った彼女はグラ・バルカス帝国の消滅と共に消え失せたと考えられていたが,もしかしたらあの星で現存している可能性が充分にあり得てきたのだ。

 

「グレートアトラクターも存在しているのか。なんて星だ。」

「文明の発展具合がちぐはぐにも程があるぞ。」

「もしかして大きな問題というは日本とグラ・バルカス帝国が戦闘状態に陥っているという事か?」

 

1人から飛び出した発言にヴェルズリーは答える。

 

「確かにそれも懸念されていますが,こちらはまだ確認されておりません。

ですが明確で且つ最大の問題はこの星系にミルメリアが目を向けている可能性があるのです。」

「なんだと!?」

 

ヴェルズリーの爆弾発言に室内はどよめいた。

 

地球連邦にとって現時点での最大の敵とされている侵略国家 ミルメリア。

 

各地への侵略行為を重ねており,彼らの標的となった星は無差別的な攻撃によって焼き払われ,その跡地には残骸と遺体しか残らないと言われている。

 

それが故に地球連邦の勢力下の星系に侵入を行う度に防衛軍艦隊と交戦を繰り返していた。

 

そんなミルメリアがノルースを狙っているという事実に彼らは戦慄した。もしノルースが彼らの手で焼き払われる等したら,ミルメリア(彼ら)との全面戦争が避けられないのは目に見えていた。

 

ヴェルズリーはタッチパネルを操作して,ノルースが所属するトータス星系の最端の星へと画像を切り替えた。

 

「こちらはトータス星系で最も端にある惑星であるミオン。この星にミルメリアが前線基地を作っていた事が数日前に判明しました。」

 

天王星の如く薄い青に染まった惑星 ミオン。ヴェルズリーは再びタッチパネルを操作して,この星の表面の一角を写し出した。

 

写し出された地表には薄い青の絵の具で塗られたキャンパスに1滴だけ灰色の絵の具を垂らした様に一点だけ灰色に染まっていた。

 

「こちらが観測衛星によって撮影された基地です。100隻程度の艦艇が停泊可能だと推測されています。

また周辺で確認された艦隊の規模としては戦艦 1・空母 3・巡洋艦 20・駆逐艦 50弱ですが,こちらもあくまでも推測ですのでこれより多い可能性は充分にあり得ます。」

 

艦隊の規模は未だにミルメリアについて詳細が分かっていない為に基準が不明だが,地球基準で考えるなら1艦隊分に相当する艦艇数がノルースの近くに配置されている事実に室内は緊張感が漂う。

 

「ノルースへの派遣艦隊は第1戦隊と第3戦隊で行う手筈ですが,万が一ミルメリア(彼ら)が侵攻を開始した際には残る第2/4戦隊の投入も検討しています。」

 

ヴェルズリーの言葉に人々の表情は暗くなる。

第13艦隊の全部隊を投入するという事態に万が一でもなったら全面戦争を行うと宣言しているからだ。

 

室内が冷たく染まっていくなか,大統領のヨヘンは立ち上がり,マイクに向けて大声で話し出した。

 

「あなた方が受け入れ難いのは私も充分に承知している。だがここで我々が介入しなければ間違いなくノルース(この星)はミルメリアによって全てが破壊されるであろう!!

やっと掴んだ日本への切符をここで自ら破っていいのですか!? 我々には日本へと向かう使命があるのではないでしょうか!?」

 

ヨヘンの心魂籠った言葉に決断を渋っていた人々も意見を表明し出す。

 

結果的に全会一致で,日本への艦隊派遣は決定し極秘会議は閉幕した。

 

 

セントラル・シティは地球連邦の首都であるために,多くの高速道路がここを起点に放射状に幾重の方向に伸ばされている。

 

ヴェルズリー大将とクランドスリー大将は軍港へと繋がっている道を浮遊式の専用車で走行していた。向かい合わせの後部座席で2人は雑談を交わしていた。

 

「これからドメイン星系(あっち)に戻るのかい?」

「ええ。一度戻って準備を整えてから出発する予定です。クランドスリー大将は?」

「私は休暇に入らせて貰おうと思うよ。三男が結婚式を挙げるからね。」

「ご結婚ですか。それは喜ばしい。」

 

雑談を交わしていた2人だが,クランドスリーは顔をしかめた。

 

「ヴェルズリー大将。君はミルメリアがどう出ると思うかい?」

 

クランドスリーが仕事モードに入ったのを察知したヴェルズリーも仕事モードに入る。

 

「恐らく最も早くて3ヵ月以内には侵攻を行うと判断しています。

トータス星系で人類が住める環境なのはノルース(あの星)だけ,ミルメリア(奴ら)の標的から逃れる事は無理でしょう。」

「そうか·······仮に戦争になったとしてノルースに対抗できる国はあるのか?」

「ありません。例え日本であろうと損害は与えられるかも知れませんが,最終的には敗北するでしょう。」

 

ヴェルズリーの事実にクランドスリーは唸る。

 

「君には相当な大役が舞い込んだみたいだね。確か·····幾つだったか?」

「来月で34歳です。」

「34か·········私がまだ戦艦の艦長だった時に艦隊司令官か。しかも4艦隊分の。」

 

地球防衛軍史上最年少で艦隊司令官に就任したヴェルズリー大将を見ながら,クランドスリーは時代の移り変わりをより実感した。

 

ふと外を見ると目的の1つであるハイラスティ軍港が見えてきた。

様々な船が停泊している中,1隻の大きな船が彼の目にとまった。

 

「おやそうこうしていると君の船が見えてきたよ。」

 

クランドスリーの言葉にヴェルズリーは高速道路を丸々覆っている透明なチューブ越しに外を眺めた。

彼の目線の先には自らの船でもある 1隻の蒼き巨大な軍艦が湖に浮かんでいた。

 

地球連邦防衛軍が誇るアンドロメダ級宇宙戦艦の14番艦 「AAA-013 オーシャン」。

 

海洋(オーシャン)という言葉の通り蒼く染まった船体は五大湖(ファイブ・レイク)の青さに負ける事のない存在感を示していた。

 

隣に停泊しているドレットノート級戦艦と比べてもその大きさと迫力は格段に違っていた。

 

専用車は高速道路を降り,ハイラスティ軍港の入り口で止まる。

 

ヴェルズリーは1人車を降りる。クランドスリーを乗せた車が発進していくのを見送ってから彼は徒歩で自らの艦へと向かう。

 

遠くからも巨大に見えていた「オーシャン」(自らの艦)は,近づいていく度により大きさを増していく。

近代化改修が終わり,青い塗料が塗られたばかりの「オーシャン」の姿はより一層輝いて見えていた。

 

ヴェルズリーが「オーシャン」(自らの艦)が止まっている埠頭に到着すると,船体から開いている階段の下に自らの副官が立っているのを見かけた。

 

「まさか私が来るのを待っていたのかい? わざわざここで」

「ええ。先程官邸を出発したと連絡がありましたので。」

「全く。君の情報網は一体どこまで私の情報を知り尽くしているのかね?」

 

自らの副官である フレシデント・ヤラヴェー中尉の行動だったが,ヴェルズリーはもう慣れたのか滑らかに受け流した。

 

「では行きましょうか。」

「そうだな。艦長も待っているだろうし。」

 

そう言って2人は階段を登って船内に入った。2人はエレベーターに乗り込み,艦橋へと向かった。

 

エレベーターの扉が開き,ヴェルズリーが入ったことを確認すると,艦長のマラキス・ラキーノ大佐が振り返る。

 

「司令官に敬礼!」

 

マラキスの声で艦橋内の全員がヴェルズリーに振り返り,敬礼を行った。ヴェルズリーも敬礼を返した。

 

「艦長。艦は出せるかい?」

「はい。出港準備は出来ております。他の艦も同様です。」

 

ヴェルズリーの言葉にマラキスは威勢良く答える。他の艦の情報も入ったことには驚いたが,フレシデント(うちの副官)がやったのだとして納得した。

 

ヴェルズリーは被っていた制帽を被り直し,正面を向く。

 

「よし,第1310宙雷戦隊出港用意!! 波動エンジン出力増加!!」

『了解しました! 波動エンジン出力上げろ!!』

 

機関長の声によって艦内に搭載されている次元波動エンジンの出力が徐々に上がり出す。補機エンジンとして波動エンジンの脇に取り付けられている ケルビンインパルスエンジン 4基も動作を開始しだす。

 

『波動エンジン出力85%を越えました!』

「「オーシャン」発進!! 錨を上げろ!!」

 

船を止める為に湖底に打ち込まれていた錨が上がっていく。錨が上がり終わると舷側のカバーが開いて現れたスラスターが「オーシャン」の船体を沖へと動かし出した。

 

「オーシャン」は停泊している状態から180°旋回し,艦首を沖合にへと向け,444mの船体が五大湖(ファイブ・レイク)の蒼い湖面へと動き出した。

 

「オーシャン」に続いて,護衛としてドレットノート級の「DDD-144 ハイペリオン」・「DDD-326 センチュリオン」が先行して航行しだし,更に3隻の周囲をエンケラドゥス級宇宙護衛艦 5隻が囲む陣形で湖面を進んでいく。

 

第1艦隊旗艦の「AAA-001 マジェスティック」に見送られながら,8隻の第1310宙雷戦隊は港から離れていく。

 

港から一定の距離まで離れると,艦隊はエンジン出力を上げて,速度を上げ出す。

 

ドレットノート級が湖面から水を巻き上げながら,上昇を開始しだす。

 

続くようにエンケラドゥス級が空に舞い上がり,「オーシャン」も続いた。

 

蒼き船体に白いペイントで強調する様に書かれた「OCEAN」の文字が湖面に反射する。

 

第1310宙雷戦隊は上昇を続けていき,サファイアの様な空は徐々に黒によって侵食され出した。

 

完全に黒に侵食された頃には大気圏を超えて,宇宙という名の終わりの無い大洋へと繰り出していた。

 

完全に地球から離れた事を確認するとヴェルズリーはマラキスへと話しかけた。

 

「艦長。指揮を任せてもいいかね?」

「どうしました司令官?」

「ちょっと寝不足でね? 会議やらの準備であまり寝れていないんだ。」

 

ヴェルズリーの言葉にマラキスは大声で笑った。マラキスの笑い声につられて,艦橋内にも笑い声が起き出した。

 

「そういうですか。ここは我々に任せてお休みください。何ならベルーガにつくまで寝てもらっても結構ですよ。このあともっと疲れるでしょうから。」

「おいおい,これ以上の仕事はやめてくれ。だがそう言うのならゆっくりと休ませて貰おう。休んでいる間は艦隊を頼むぞ。」

 

ヴェルズリーはそう言って,艦橋を去り艦長室へと向かった。

艦長室で漸くゆっくりと休めるかと思っていた彼だが,歴史は彼に更なる苦労を与えるのだった。




設定とか補足等々
・この作品の地球
この作品の地球は日本が消えて地軸が傾いた為に北米・南米大陸が丸々南半球に移動して,逆にアフリカ・オーストラリア大陸が北半球になっています。

分かりやすく言うと日付変更線の場所が赤道になっていると思ってください。

・セントラル・シティ
地球連邦の首都。かつてのデトロイト跡地に建てられた。
高さ1000mを超すビル群が立ち並び,北米大陸(セントラル大陸)各地に向けて高速道路やリニアモーターカーによる高速鉄道が運行されている。
周辺の五大湖(ファイブ・レイク)は軍港として機能しており,第1艦隊が拠点を置いている他アンドロメダ級の大規模な改修は主にここで行われる。

・フェルド・ヴェルズリー大将
第13艦隊司令官。乗艦は「オーシャン」。
モデルはヤン・ウェンリー。因みに外見は藤崎版です。

他にも銀河英雄伝説のキャラをモデルとした登場人物が出てきます。

・ノルース
ノルースという名称はグラ・バルカス帝国がかつていた惑星のWeb版での名前です。
書籍版では ユグドに改名された為に,今回使わせて頂きました。

・ノルース1
日本が行った惑星には月が2つあるので,スターウォーズのヤヴィン4の様にノルース1・2と名付けました。

・第13艦隊
地球連邦防衛軍が保有する艦隊の1つ。惑星 ベルーガを本拠地にしている。
惑星 ベルーガ自体が地球連邦の領域でも端の方で担当範囲が広大な上に,未開拓地への調査・防衛を担うために通常の艦隊の4倍にあたる戦力が割り当てられている。

モデルは分かっていると思っていますが,ヤン艦隊です。ヤン艦隊の濃すぎるキャラを全員出すためにはこうせざるおえませんでした()

・各艦について
本来ならここで書きたかったのですが,ここに書いたところめっちゃ長くなったので,別に書こうと思っています。

・第1310宙雷戦隊
第13艦隊に所属している戦隊。役割としては旗艦の護衛を担当しており,旗艦が動く際には必ず一緒に行動を行う。
編成表
戦艦
「AAA-013 オーシャン」
「DDD-144 ハイペリオン」
「DDD-326 センチュリオン」
護衛艦
「EEE-130 アイトネ」
「EEE-136 レダ」
「EEE-139 エウリドメ」
「EEE-146 エウアンテ」
「EEE-148 リシテア」


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不穏な影

日本国召喚に新しい国が出ましたね。しかも空中艦隊を持っている国とは·······彼らがドレットノート級とかを見た反応とか面白そうなので出すか検討しときます。

あと漫画版のシウスさん,隻眼でカッコいい。


宇宙という名の大海。光輝く恒星やそれに照らされている惑星の周囲には何もかもを飲み込んでしまうかの如く文字通り黒く染まった暗黒物質(ダークマター)が存在している。

 

人類が観測出来ていない漆黒の物質が,突如白く光輝く。白い光は増していき,やがて光の中から巨大な船が姿を現す。

 

巨大な船の周囲を覆っていた白い氷の様な物体が剥がれ落ちると,サファイアの如く蒼き船体と“OCEAN”という文字が姿を現す。

 

第13艦隊旗艦「AAA-013 オーシャン」がワープアウトを終える頃には随伴の第1310宙雷戦隊も同じように白き氷を纏って現れる。

 

「オーシャン」の艦橋に佇む艦隊司令官ことフェルド・ヴェルズリー大将の目線の先には黒い大海に浮かぶ蒼き星が見えていた。

 

惑星 ベルーガ。第13艦隊の拠点でもあるこの星はクロス星系唯一の海が地上に存在する惑星だが,それが寧ろ地球の様に孤独さをより演出していた。

 

「2ヶ月ぶりだな。惑星ベルーガ。」

「本来ならば1週間程停泊の予定でしたが,降りられないのが残念です。」

「無理もない。()()()()がノルースに迫っているのにわざわざ休んでいるバカはいないさ。」

 

「オーシャン」艦長のマラキスと話をかわす。本来ならばこのベルーガで一週間程滞在する予定だったが,それは既に取り消されている。

 

久しぶりの本拠地だが,足をつくことが出来ないという事実にヴェルズリーは残念がりながらも思考する。

 

(まさかミルメリアがこんなに早く動くとは·······想定外にも程がある。)

 

この事態の発端となったのは,1つの観測衛星が捉えた画像だった。

ミルメリアが前線基地を置いた惑星 ミオンを監視していたうちの1基が基地を出撃するミルメリア艦隊を捉えたのだ。

 

この報告を受けたヴェルズリーはベルーガへの停泊を取りやめ,第13艦隊 全艦を集結させる様に命じた。

 

ヴェルズリー以下多くの乗組員は残念がっていたのだが,艦隊は無慈悲にも着々と進んでおり,降りるはずだったベルーガの輪郭が徐々に大きくなっていく。

それと同時にベルーガの周囲に見えていた小さな点一つ一つが,自らの艦隊の船であることが分かる。

 

防衛軍艦隊の実施的な主力である ドレットノート級戦艦。

 

小型ながら重武装で使い勝手の良い エンケラディス級護衛艦。

 

ドレットノート級に航空設備を搭載しながら,同じぐらいの重武装を有する アンタレス級航空母艦。

 

アンタレス級と同じく重武装ながら,揚陸設備を搭載したトウキョウ級補給母艦。

 

第13艦隊が持つ全ての戦力がここに集計していた。

 

その中で一際目立っていたのが,綺麗に横整列して待機していた3隻のアンドロメダ級戦艦だった。

 

3隻とも「オーシャン」とは同じ形をしておらず,1隻は2つの筈の波動砲口が3つに増えており,もう2隻は艦橋の後ろの巨大な航空機格納庫を有していた。

 

拡張性が非常に高いアンドロメダ級だからこそ実現出来る独創的な船達に並ぶ様に「オーシャン」も停止する。

 

「全戦隊旗艦より通信が入っています。」

「直ぐ様繋げてくれ。」

 

ヴェルズリーの指示で通信士がタッチパネルを操作すると,「BBB-001 アンドロメダⅡ」を旗艦とする第2戦隊司令官のファイエン・アレヴィン中将の姿が艦橋上部の巨大ディスプレイに写った。

 

続いて「CCC-001 アマテラス」を旗艦とする第3戦隊司令官 エドラスト・スフィンシャー中将と,「CCC-002 アクエリアス」を旗艦とする第4戦隊司令官 ヒエリス・グランベイン中将の姿もディスプレイに写った。

 

「久しぶりだな。皆」

『お久しぶりです。ヴェルズリー大将。本来なら盛大に出迎える予定でしたが,まさかこうなってしまうとは····』

 

ヴェルズリーが「DDD-144 ハイペリオン」で艦長をしていた時の部下でもあったアレヴィン中将は少々残念そうな顔でヴェルズリーを出迎えたが,ヴェルズリーは彼を宥めた。

 

「気にしなくて良い。それよりもミルメリア艦隊だ。3日前にミルメルアが前線基地を置いていた惑星 ミオンから100隻を越える大艦隊が出撃したとのことだが,現在地は分かるか?」

『現在地はトータス星系第7惑星 プレスパン沖です。我々の把握しているデータから推測すると約一週間後にはノルースへと到着する予定です。』

 

アレヴィンが言い終えた直後,スフィンシャーが口を開いた。

 

『だがそれはあくまでも可能性だ。奴らが何かとんでもない手段で明日にでも現れるかもしれない。』

「スフィンシャー中将の通りだ。奴らがいつノルースに辿り着くかは我々には分からん。もしかしたらノルースに向かわないかもしれない。

最もノルース以外に彼らが狙いそうな星はないがな。」

 

ヴェルズリーが言葉を切ったのを確認すると,次はグランベインが口を開いた。

 

『ヴェルズリー司令。もしミルメリアがノルースに侵攻したとして,あの惑星に対抗出来る戦力はあるんですか?』

「無いに等しいな。日本とかの一部の国は1隻位は沈められるだろうが,侵攻そのものを防げはしないだろう。

まず第一に500年以上前の戦列艦で空飛ぶ艦隊にどう立ち向かえという事になるが·······」

 

ヴェルズリーは一回話を区切る。

 

「例え何百回戦っても勝てない相手だとしても降伏という選択肢はないだろう。

ミルメリアがどんな奴らなのか全く知るはずもないだろうが,彼らが自国を滅ぼそうとしているという事実に気づかないはずがない。

そんな奴らにみすみす国を渡すなどあり得ないだろうな。」

『我々もですな。例え敵わない相手でも我々が戦う事で誰かが助かるなら,戦う価値はあります。』

 

第13艦隊の司令官の中で一番最年長のスフィンシャー中将がヴェルズリーの言葉に答える。

長年戦場に関わってきた彼の言葉はヴェルズリーらに強く響くものだった。

 

そんな言葉にヴェルズリーは微笑しながら指示を出した。

 

「我々ならノルースまで最短で5日でつくことが出来る。今すぐ出撃するぞ。準備をしてくれ。」

『既に全戦隊出撃準備は完了しています。ベルーガに関しても駐留艦隊に一任しております。』

「手際が早くて助かるよ。よし,第13艦隊出撃!!」

 

ヴェルズリーの指示で各艦の次元波動エンジンが次々と出力をあげていく。

 

4隻のアンドロメダ級が動き出したのを皮切りに第13艦隊は動き出す。

 

日本とノルースの人々を救うべく,第13艦隊は次々とワープ空間へと突入していった。

 

 

トータス星系唯一の蒼き星 ノルース。

 

そのノルースの周囲には2つの衛星が周回している。そのうちの片方の衛星の周囲にこの星が持っている筈のない船が航行していた。

 

ノルース1駐留艦隊として派遣されてきた2隻のカナダ級パトロール艦が衛星 ノルース1の周囲を航行していた。

 

旗艦の「FFF-062 アルメニア」は僚艦の「FFF-059 エリトリア」と共に基地周囲の哨戒を行っていた。

 

ミルメルア艦隊が前線基地を出撃したとの情報を受けて,出撃した部隊内では緊張が高まっていた。

緊張感によって支配されていた艦橋の空気を破ったのはレーダー士官の叫び声だった。

 

「艦隊前方にワープ反応確認!! 数16!!」

「何だと!?」

 

レーダー士官の言葉に駐留艦隊司令官 キエル・ネビート大佐は動揺した。

彼がレーダー士官に再度問いかける前にレーダー士官が再び叫んだ。

 

「艦隊識別完了! ミルメルア艦隊です!!」

「な!? 何故奴らがもうここに来たのだ!?」

 

手に入れた情報ではあと一週間はかかる場所にいた筈の敵が,一瞬で目の前に姿を現したという事実にキエルは困惑する。

 

そんなキエルの視線に広がる漆黒の海に白い泡の様な物が出現する。1つだけだった白い泡は数を増やしていき,たちまちレーダーで確認された数と同じになる。

 

巨大化した白い泡をかき消すかの如く,巨大な船が幾度も回転しながら出現する。

 

回転が終わった時に現れたのは緑色の葉巻の様な船体に複数のカノン砲塔・地球艦隊とはまるで違う形をした艦橋に後部の煙突らしき物を備えた16隻もの軍艦だった。

 

「ミルメルア·······」

 

地球連邦が対峙している最大の敵 ミルメリア。全ての艦が3連装カノン砲塔を複数備えており,地球連邦防衛軍の艦隊とは違う威圧感を醸し出していた。

 

「戦闘用意!! 敵はワープした直後だ!! 少しだけならこっちが主導権を握れるぞ!!」

「「エリトリア」砲撃開始!!」

 

キエルが指示を出す前に「エリトリア」の12.7cm連装ショックカノン 2基が左旋回し,計 4本の砲身から青い光が放出される。

 

4本のショックカノン(青い光)はミルメルア艦隊の最前列を進んでいた軽巡洋艦へと全部命中した。

 

ショックカノンが船底に命中した軽巡洋艦は爆発を起こすが,致命傷にはならず煙を上げながら航行を続ける。

 

被弾した軽巡洋艦の隣を航行していた重巡洋艦の側面のハッチが次々と開き,両舷から計8発のミサイルを発射した。

 

8本の艦対艦ミサイルは素早く直進し,「エリトリア」へと向かっていく。「エリトリア」も艦橋前のミサイルハッチから8本のミサイルを発射する。

 

8本のミサイルは交差し,黒い世界に大きな爆発を起こす。爆発を交わしてきた3発のミサイルは迎撃手段のない「エリトリア」へと直撃した。

 

188mの船体はミサイルの爆発に包まれ姿が隠れたが,爆発が収まると姿変わらぬ「エリトリア」が存在していた。

 

同じように重巡洋艦の後ろに展開していた駆逐艦から発射されたミサイルの攻撃を受けたが,蒼いベールを纏って傷1つおっていない「アルメニア」の姿があった。

 

「波動防壁損傷軽微!」

「小型ながらよく耐えたな!」

 

カナダ級のエンジンでもある小型次元波動エンジンのエネルギーを利用して防壁を展開する防御システム 波動防壁によって2隻に襲いかかったミサイル群は無力化されていた。

 

「反撃だ!! 主砲を損傷している軽巡に向けろ!! 魚雷発射管は魚雷をばらまけ!!」

 

キエルの指示で「アルメニア」と「エリトリア」は全主砲を煙を吐き続ける軽巡洋艦へと向け,発射した。

 

2隻から発射された計12本のショックカノン軽巡洋艦は艦内から爆発が発生し,船体を2つに引き裂いた。

 

両舷の3連装魚雷発射管 4基は魚雷 12本ずつをミルメリア艦隊へと発射した。

発射された魚雷を迎撃すべくミルメリア艦隊はなけなしのエネルギーを使用して対空レーザーを発射して迎撃を開始した。

 

「軽巡撃沈!!」

「各艦対空攻撃開始を確認!!」

「よくやった! 既にベルーガに通信は行ったか?」

「行いました!!」

「地上の人員も既に回収済み。後は撤退するだけだ。」

 

キエルがそう宣言した直後。艦橋内から悲鳴のような声が響く。

 

「敵艦隊主砲旋回!!」

「な!?」

 

その報告にキエルは動揺する。彼らがワープ後に主砲を撃てる様になるまで約5分ほどかかった筈なのだが,目の前にいる艦隊はそれよりも早く主砲を撃とうとしているのだ。

 

キエルが答えを導きだす前に相手は答え合わせを行った。

 

「主砲発射!! 」

 

ミルメリア艦隊から緑色の光が何本も発射される。地球艦隊とは違って緑色のショックカノンが2隻を襲う。

 

数発は波動防壁で耐えたが,188mの船体に積める波動エンジンは限られており,積めたとしてもアンドロメダ級やドレットノート級の様な高い出力は持っておらず,それに波動防壁の強度も比例する。

 

たちまちショックカノンは波動防壁を突き破り,「エリトリア」の船体へと直撃する。

 

200mもない船体にショックカノンは5発以上突き刺さり,たちまち船体を食い破る爆発が発生する。

 

「「エリトリア」轟沈!!」

「なんてこt······」

 

キエルが言い終える前に「アルメニア」の波動防壁も破壊され,船体にショックカノンの流星が降り注ぐ。

 

「アルメニア」はそのままキエル以下55名の船員と乗り合わせた観測基地の人員と共に盛大に爆発してデブリへと化した。

 

爆発が収まると,2隻のパトロール艦の姿は何処にもなく,ただ残骸が広がるだけだった。

 

そんな残骸にも目をくれずミルメリア艦隊は,つい先日廃墟になった観測基地へとショックカノンの雨を降り注がせた。

 

 

ノルース1の前線基地はミルメリア艦隊の激しい砲撃に晒されていた。

各艦の3連装カノン砲が地上に向けられ何発も斉射されたショックカノンが,着弾する度に爆発が発生する。

 

13隻の船が一方的な砲撃を行う中,駆逐艦 2隻のみを配置して見ているだけの船がいた。

 

ミルメリア宙軍第35艦隊に所属するクレビト戦隊唯一の戦艦であり旗艦の「アグウェイオン」の艦橋で1人の将校が火の手の上がる前線基地をモニター越しに眺めていた。

 

『こちらは重巡「パラドニア」。地球連邦の前線基地の完全破壊を確認しました。反撃はありません。』

「上出来だ。腕ならしにはなっただろう。」

 

戦隊の名称でもあるドファイアン・レド・クレビト准将は司令官用の椅子に座りながら,砲撃を続けている重巡洋艦「パラドニア」から送られてくる動画を見ながら褒め称えると同時に疑問が浮かんだ。

 

「にしても基地から迎撃がないとは······あの基地は放棄されたのか?」

 

彼の出した答えは正解なのだが,それを証明するものはたった今破壊されてしまったので,彼が答えを知ることは永久になくなってしまった。

 

そんな彼に艦橋から声がかかる。

 

「艦隊後方からワープ反応! 本隊です!!」

「漸く来たか。長距離ワープは便利だが,準備もワープにも時間がかかるからな。」

 

クレビトがそう言っていると,「アグウェイオン」の後ろにワープ時に出現する白い泡が幾つも出現する。クレビト戦隊やってきた時とは比べ物にならない数が発生し,その1つ1つから緑色の軍艦が出現する。

 

駆逐艦・軽巡洋艦・重巡洋艦・航空母艦・戦艦そして旗艦でもある大戦艦。100隻をゆうに越える艦隊が出現していた。

 

その全ての船が上下に3連装のカノン砲を有しており,高い攻撃力を有する事が誰の目でも分かった。

 

「旗艦「ドルヴィーオン」より通信が入っています。」

「今すぐ繋げろ。」

 

燃える前線基地を写し出していたモニターは1人の人間を写したものに切り替わる。クレビトは椅子から立ち上がり,跪く。

 

『クレビト准将。前線基地はどうなったかね?』

 

ミルメリア宙軍第35艦隊司令官のペイン・ドン・プレクティリア大将の言葉にクレビトは答える。

 

「前線基地は完全破壊を確認しました。周辺に展開していた艦隊も沈めました。ですが軽巡洋艦「ハードキリオン」を喪失いたしました。」

『1隻沈められたか·······作戦に支障はあるか?』

「ありません。たかが1隻失った程度であやつらに負ける等あり得ませんので。」

 

自信満々に答えるクレビトにプレクティリアは反応に困りながらも,返事を返す。

 

『そうか·······なら頼むぞ。これは皇帝が望んでいる事だ。失敗は許されないぞ。』

「承知しております。この星を()()()()()()()()()()()を滅ぼしてやります。」

『期待しておくぞ。』

 

その言葉で通信は切られる。

 

「この星をあんな奴らから早く取り返してやらなければ。

ここの()()()()()()()()()()()()()。我々ミルメリアだ。」

 

愛国心が異常に高いクレビトの眼前には蒼く輝くノルースが写っていた。




・拡張性が非常に高いアンドロメダ級········
3連装波動砲や空母甲板を備えたアンドロメダ級を登場させました。
これは銀英伝で同盟軍の旗艦が各艦ごとに独自の装備を搭載していた事に由来します。
つまりこれ以外にも色々魔改造されたアンドロメダ級が登場しますので,お楽しみにしてください。

・各艦の艦名
アンドロメダ・ドレットノート級の命名基準はあまり決めていません。
「センチュリオン」とか神の名前もあれば,「アクエリアス」等もあり,正直言って作者自身も分かっていません。

エンケラドゥス級は衛星や小惑星から取りました。正直言って衛星とか沢山あるので,艦名には困らないと思います。

カナダ級は旧世界の国名から取りました。今回の2隻は適当に選んで名付けました。

アンタレス級は星座の恒星から。トウキョウ級は旧世界の都市からそれぞれ取りました。

・戦闘シーン
実をいうとプロットでは
「エリトリア」発砲

軽巡被弾。重巡発砲

「エリトリア」に命中,轟沈

「アルメニア」主砲と魚雷を発射

軽巡撃沈

重巡発砲及び駆逐艦魚雷発射

「アルメニア」撃沈

という流れだったのですが,“なんかあっさりしすぎているし,ちょっと自分の設定とあっていない”なと感じたので色々変えていったところ原型がなくなっていました。

でもまだその設定の話をしていないんだよなぁ······

・全ての船が上下に3連装のカノン砲を有しており·····
この描写から分かった人もいるかと思いますが,ミルメリアは駆逐艦ですら3連装のカノン砲を備えています。
もはや駆逐艦と言って良いのか·····


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世界中への脅迫

漸く日本国召喚のキャラが出てきます。

4話目でやっと出る作品って他にあるかな?

というより更新に1ヶ月位かかった!! なんでや!!


ノルースには3つの文明圏が存在している。

神聖ミリシアル帝国を中心とした中央世界こと 第一文明圏。

 

約1万2000年前にこの星にやって来たムー大陸を中心とした 第二文明圏。

 

覇権国家 パーパルディア皇国を中心としてした 第三文明圏。

 

その周囲には西方/南方世界・文明圏外国・圏外文明国等の様々な国が存在している。

 

そんな各文明圏の中から主要国を選んで世界の流れを決める“先進11ヵ国会議”が,神聖ミリシアル帝国第二の心臓とも呼ばれている港湾都市 カルトアルパスで2年おきで開催されていた。

 

4年ぶりの開催となった今年は常時参加国だったレイフォル・パーパルディアに変わって日本とグラ・バルカス帝国という新たな顔ぶれを見せていた。

 

そんな先進11ヵ国会議だったが,開始早々列強国の1つ エモール王国の代表 モーリアウルによってかつて世界を恐怖で支配したラヴァーナル帝国(古の魔法帝国)が復活する可能性が大々的に発表された事で会議は荒れ始めた。

 

モーリアウルが結束を呼び掛けた中,グラ・バルカス帝国代表 シエリア・オウドウィンが彼らを見下し,侮辱する発言をしたことでより会議は荒れ出した。

 

「なんか······凄いとしか言いようがないな。」

「ええ······こんな言い争い国会でも見られませんからね。」

 

日本国代表の近藤 俊介は思わず部下の井上 一巳に話しかける。

 

彼らの目線の先ではモーリアウルとシエリアが人族だの亜人ごときがと日本で行ったら辞職レベルの人種差別な発言が飛んでいた。

 

そんな中列強2番手のムーと,世界最強の地位を持つ神聖ミリシアル帝国がグラ・バルカス帝国に介入することを宣言し,会場がどよめく中シエリアは静かに立ち上がった。

 

「言うのを忘れていたが,我が国は今回,意見を言うためにこの会議に参加したのではない。この世界の有力国が一同に会するこの機会に,通告しに来たのだ。

グラ・バルカス帝国 帝王グラルークスの名において貴様らに宣言すrっ!?」

 

シエリアを宣言の最中,会場中を不快なノイズ音が支配した。

 

聞こえてくる大音量のノイズに会場の全員は思わず耳を塞ぐ。シエリアも不快なノイズによって話を中断せざる終えなくなる。

 

「な······なんだこのノイズは!? よりによってこんな時に!」

 

1分間程続いたノイズが収まると同時に会議場の中央に1人の老人の姿が巨大なホログラムで写し出された。

老人は白を基調に,金色の刺繍が至るところに入った服を着ており,見るからに位の高い人物だと言うことが見てわかった。

 

老人は混乱から抜け出せていない会場に対して顔を下ろして語りだした。

 

『ノルースの全諸君。余はミルメルア皇帝 ミルメルア16世である。』

「み·······ミルメリア?」

「何を言っているんだ?·········こいつは·······」

 

シエリアとモーリアウルの混乱を隠しきれない声が漏れる。

2人の声はある意味会場の全員の声を代弁していた。

 

『ミルメリアと言っても諸君ら様な原始人には分かるわけもなかろうが故に余自ら教えてやろう。我々ミルメリアというはこの広い銀河系に存在する全ての星を統治するべく生まれた素晴らしき国家である。』

「は? え········は?」

「宇宙から来た?········」

「げ······原始人だと········」

 

ミルメリア16世の言った言葉で会場は更に困惑する。

 

『今日は余自ら諸君らに大変素晴らしき知らせを伝えにやってきた。今日をもってしてこの星は我がミルメルアの配下に入る事が決定した。』

 

全員が目の前の皇帝が言っていることを理解できずに膠着していた。

いきなり宇宙から来たと言い出したかと思ったら,直後にこの星を一方的に支配すると宣言するという飛んでもない情報が僅か数分で雪崩れ込んできたのだから,頭の処理も追い付かない。

 

『諸君らのような原始人も我が国の素晴らしき理念と技術で生まれ変われる事を理解したであろう。

余の大変素晴らしき提案を断る理由などあるわけなかろうが,余は非常に聖人だ。2日程考える時間を与えよう。だが·····』

 

そう言うと皇帝のホログラムに重なるように西方世界からフィルディアス大陸を写し出した地図が写る。

 

その中で現在会議が開かれているカルトアルパスが存在するミリシエント大陸・西方世界の島というには大きすぎて大陸としては小さすぎる土地・南方世界のブランシェル大陸・そしてフィルディアス大陸の東方に位置する小さな列島に1つずつ赤い点が打たれる。

 

『もしも余の素晴らしき提案を断るというのなら,この4つの都市は永久に消滅するだろう。』

 

日本国・神聖ミリシアル帝国・グラ・バルカス帝国・アニュンリール皇国の代表者は凍りつく。

もし目の前の皇帝の言葉の通りなら,答え次第なら自国の首都が灰塵に帰すと大々的に宣言しているからだ。

 

『諸君らは余に選ばれたのだ。こんな素晴らしき恩を仇で返すことのないように願っておるぞ。』

 

皇帝はそう一方的に宣言すると巨大なホログラムは消えた。

 

会議場は静寂が支配していた。全員があの皇帝が話した内容を現実として受け止めれなかった。

 

誰もが現状を把握出来ず混乱している中,議長席に座っていた先進11ヵ国会議議長でもあり,神聖ミリシアル帝国外務省統括官のリアージュ・クライトがマイクに向かって口を開いた。

 

「え,えっと·················と,取り敢えず会議は中断します。

再開の時には·········また連絡します。」

 

彼の言葉に皆は静かに従った。4年ぶりの先進11ヵ国会議は波乱の中一旦お開きとなった。

 

 

先進11ヵ国会議はカルトアルパス北部に建てられた帝国文化館の別棟 国際会議場で開催されている。

ミリシアルの繁栄を象徴するが如く豪華絢爛な国際会議場の1室に日本国を含む多くの国の代表が集まっていた。

 

室内にはグラ・バルカス帝国とアニュンリール皇国以外の国の代表が集結していたが,表情は非常に暗かった。

 

「そういえばグラバルカスとアニュンリールの姿が見えませんが,彼らはどこへ?」

「グラ・バルカス帝国とアニュンリール皇国は自分達の船に戻ったとのこと。恐らく本国と話し合っているのでしょう。」

 

アガルタ法国代表のリピンの疑問にミリシアル代表のベリアン・ジェナイトが答えた。

 

議長のリアージュは緊急で帝都 ルーンポリスに向かったらしく不在だったが,副官である彼が代わりに出席していた。

 

「なるほどなぁ。シエリア(あの女)も何か言いかけていたが,流石にこんな事態を想定出来るわけもないか。」

「何を言っておる。グラ・バルカスは我々を亜人と見下し,挙げ句の果てに“空間の占い”を馬鹿にしたのだぞ。あんな奴ら等気にしなくてもいいのではないのか? 。」

 

モーリアウルのグラ・バルカスを見下した発言に思わず近藤が切り込んだ。

 

「待ってください。今はそんな事を言って争っている場合ではありません。

幾らあんな事を言ったとしても,味方になってくれるのなら共に戦うことになるのですよ。それにそうのような事を言った段階で,あなた方もグラ・バルカスと同じですよ。」

「しかしだがな·········ムーはどうですか?」

 

モーリアウルは苦い顔をしながら近藤の隣に座るムーの代表に話を回す。ムー代表のオーディクス・ライエンは護衛として来た「ラ・カサミ」艦長のミニラル・フォリエンの率直な意見も混ぜて答えた。

 

「我々は日本と同じです。それに仮に彼らの「グレートアトラスター」が味方になるというのであれば我々の戦力は格段に増します。」

「なるほど。機械文明のムーがそれほど言うのであれば······」

 

列強の中でもプライドが高く,差別意識も強いエモール王国の代表があっさりと引いた事に他国の代表が驚いていると,室内にミリシアルの職員が入ってくる。

 

「グラ・バルカス帝国の大使が来ました。」

「そうか。直ぐ様通してやってくれ。」

 

ベリアンの指示で職員が去ると数分でグラ・バルカス帝国代表のシエリアが部屋にやってきた。

 

シエリアは空いている椅子に座ると,全員の方を向く。その視線は厳しいものだったが,シエリアは怖じ気づくことなく口を開いた。

 

「私には色々言いたいことがあると思うが,取り敢えず一言言わせてくれ。我々は帝王 グラルークスの命であなた方と共に戦わせていただきたい。」

 

シエリアの宣言にベリアンが厳しく問い詰めた。

 

「つまり我々と手を組みたいということでいいか?」

「その通りだ。我が国の首都も奴らの攻撃目標になっている。奴らはあなた方の都市も攻撃の目標になっている。我々は奴らに徹底的に抗う気だ。あなた方もそうであろう?

我々が言うのもなんだが,敵の敵は味方というではありませんか。」

 

シエリアの言葉に各国の代表が何か言いたげだったが,オーディクスと近藤によって宥められる。

 

「あなた方の意見は充分理解した。では聞かせてもらうが,貴女は会議の場で何か宣言しようとしていたが,何をする気だったのだ?」

 

ベリアンの言葉にシエリアの眼が一瞬曇るが,シエリアは答えを返した。

 

「我々はあの時全世界に宣戦布告を行う予定だった。行った後にはあなた方の艦隊を殲滅する予定だった。」

「なっ!?」

 

予想していない答えに室内がざわつく。そんな中モーリアウルは納得したような顔をしていた。

 

「やはりか········ならばあのように言ったのも納得がつく。聞くがそこの港に泊まっている「グレートアトラスター」だけでここの艦隊を潰す気だったのか?」

 

モーリアウルの質問にシエリアが答える。

 

「いえ「グレートアトラスター」に加えて,南に海軍特務軍の2艦隊が展開しています。

その艦隊に関しても宣戦布告中止の通信が行っている事を確認済みです。」

「既に艦隊が展開していたか······確かそっちでは第零魔導艦隊が演習をしていた筈だ。あれは世界最強艦隊だが,やっつける気だったのか?」

「でなければ宣戦布告は行わないだろう?」

 

ベリアンの言葉にシエリアは皮肉を込めて返す。ベリアンは“そうか·······”と声を上げた。

 

「にしても幸運だったな。もし宣戦布告していたら貴女はここにいられなかった。」

「我々に関してもです。宣戦布告していたら「グレートアトラスター」の主砲で撃たれるかもしれなかったのですから。」

 

マギカライヒ共同体代表の言葉にトルキア王国・ニグラート連合・パンドーラ大魔法公国の代表も頷く。

 

それに近藤も頷く。

 

「我々も安心しました。我々の「PLH-31 しきしま」ではあの46cm主砲の砲撃に耐えられませんから。」

 

近藤の何気ない言葉にシエリアは驚きの表情を浮かべて反応した。

同じように他の代表も反応した。

 

「よ,46cm!? 確かミスリル級の主砲が38cmだったから,ミスリル級よりも上ではないか!?」

「46cm··········レイフォリアも壊されるわけだ。」

「そんなに大きければ戦列艦なんか直撃すれば粉々ではないか!」

 

ベリアン以下各国の代表が主砲の大きさに戦く(おののく)が,シエリアだけは顔面蒼白で近藤の方を向いた。

 

「よ····46cm!? 私は41cmと聞いているぞ!! 一体どこ情報だ!!」

「ええっと········実を言うと約70年前に我が国には「大和」という「グレートアトラスター」そっくりの戦艦がいました。

日本国民全員が一番知っている戦艦です。」

 

近藤の言葉に全員が驚愕する。日本国がかつて「グレートアトラスター」と同じものを持っていたという事実を軽々しく言うのだから,最早困惑の域に達していた。

 

「70年前に「グレートアトラスター」が日本国にも········ではあの白い戦艦はなんなのだ?」

「あれは戦艦ではなく巡視船です。分かりやすく言えば沿岸警備隊の船です。」

「あれが沿岸警備隊の船だと!? あの船ならば文明圏の戦列艦でも沈められるぞ!

まさか貴国の軍艦はあれよりも大きいのか!?」

 

ベリアンの言葉に近藤は自分の記憶から護衛艦に関する知識を引っ張り出す。

 

「一応「しきしま」(あれ)よりも大きな船は10隻位ですがいますね。

まあ大砲は1つだけですが,その分········日本国製の誘導魔光弾のミサイルという物を積んでいます。」

 

近藤の言葉に室内から歓声が上がる。

 

「やはり誘導魔光弾を実用化していたのか!」

「そこまでの技術があったとは!!」

「これなら魔帝も倒せるかもしれんぞ!!」

 

各国の代表が揃いも揃って日本に対して希望の光を抱き始めた中,シエリアだけはその意図を理解しかねていた。

 

「す,すまないが,その誘導魔光弾とは文字通り砲弾が誘導されて相手の船に当たると思えばいいのか?」

「まあある意味そうですね?」

「百発百中の砲弾とは·········日本国というのはそんなに技術が発展しているのか?」

「ええ。あまり実感がないのであればより分かりやすい物を見せましょう。」

 

そう言うと近藤は側に置いていた鞄から1枚の地図を取り出す。

折り畳まれていた地図を丁寧に広げると,日本国からグラ・バルカス帝国までが載っている精密な地図が姿を現す。

もしもの際にと持ってきていた事に近藤は安堵し,周囲は一瞬でどよめく。

 

特にシエリアがあからさまに動揺し,隅から隅まで地図を眺めていた。

 

「なんだこれは·······なんて精密な地図だ! 我が国の本土もこんな綺麗に写っている!」

「やはりここが貴国の本土でしたか。ではここが首都ですか?」

 

ベリアンが指した場所をにシエリアは頷く。

 

「ああ,あんな事をされては隠蔽する意味なんて存在しないからな。ここが我が国の首都 ラグナだ。」

「ラグナですか·········中々良い響きですな。」

「ええ,しかしこんな精密な写真を一体どこから!?」

 

シエリアも疑問に近藤が答える。

 

「これは空の更に上の宇宙空間に人工衛星という大きなカメラを打ち上げて,撮影しています。」

「空の上にだと!? そんなの僕の星(しもべのほし)ではないか!!」

 

アガルタ法国代表の言葉に室内はどよめく。だがシエリアは何故そんなに動揺している理由を知りかねていた。

 

「その僕の星(しもべのほし)とは一体何ですか?」

「簡単に言ってしまえば魔帝········ラヴァーナル帝国版の人工衛星だ。現在も何機かは存在しているらしい。」

「なっ!?」

 

ベリアンの返答にシエリアも驚愕する。さっき自分がバカにしていた占いで出ていた国が自分の国を全部見透かす技術を持っているという事実に彼女は冷や汗をかいた。

 

「そんな技術があったとは········その魔帝が復活すると言うのか!?」

「先程は空間の占いをバカにしておったのに今はこれか········」

 

モーリアウルはお手本として出せる程の手のひら返しに呆れる。

そんな様子のモーリアウルに近藤は話しかけた。

 

「ですがモーリアウル殿。実を言うと我々もあなた方の占いを理解しかねていました。」

「というと?····」

 

近藤の言葉にモーリアウルは彼の方を向く。

 

「ご失礼ながら,あなた方が先程言っていた“空間の占い”というものを我々はどういうものなのかあまり分かっておりませんでした。」

「それに関しては我々も同意だ。占いとは言っているが一体どのようなものだ?」

 

近藤とシエリアの言葉にモーリアウルは“ふむ····”と唸った。

 

「なるほど····お二方は知らないのか。“空間の占い”とは年に一回行われる未来予知の儀式の事だ。竜人族の中でも特に魔力が高い選りすぐりの30人を集めて行われる。

的中率は98%だ。」

「98%·········」

「もはや予言の域だ·······」

 

モーリアウルの説明に2人は驚愕する。特にシエリアは98%で当たる占いをバカにしたとあってより一層申し訳ない気持ちになる。

 

「ではそれで魔帝が復活すると出たわけですね。」

「その通りだ。」

 

近藤も“空間の占い”の精度から魔帝復活という事が事実であると理解した。

 

と,パンドーラ大魔法公国の代表が独り言の様に口を開いた。

 

「もしかしたらあのミルメリアという奴らが魔帝かも······」

「流石にそんな話は,」

「あり得る話だな。」

 

トルキア王国の代表が何か口を挟もうとしたが,モーリアウルがそれを肯定する。

 

「仮にあいつらが魔帝なら占いの内容にも一応は繋がる。だがあまりにも来るのが速すぎるがな。」

 

モーリアウルの言葉にトルキアとパンドーラの代表は納得した様な顔をする。

話が途切れたタイミングを狙ってベリアンが話しかける。

 

「ですがモーリアウル殿。幾ら魔帝があいつらだとしたら我々に勝ち目はあるのですか?」

「それに関してだが,魔帝復活と同時に魔帝に対する鍵も示された。それは「()()」だ。」

「なっ!?」

「なんだと!?」

 

モーリアウルから出た言葉に近藤とオーディクスは驚愕する。いきなり自分達の国が存在していた星が何も知らないであろう人から出たことに彼は動揺した。

 

「やはりそうか。我々も転移してきた貴国には興味があってな。ガハラ神国経由で色々調べさせてもらったぞ。

それによるとこの地球というのはかつて日本国とムーがいた星だと言うが,本当か?」

 

モーリアウルの視線は2人に向く。自然と残りの視線も2人へと集中する。

 

「本当です。ただ幾ら地球が鍵と言われましても我々には地球と連絡する手段がありません。せめて地球(あちら側)から来て貰う位して貰わないと納得できません。」

「ムーも同意です。日本国から得た情報ですが,彼らがいた頃は地球を周回する衛星に人が降り立つ位にしか宇宙技術が発展していませんでした。

地球から日本国が消えて何年経っているか分かりませんが,余程の事が無いとここにはこれないかと······」

 

近藤とオーディクスの返答にモーリアウルは難しい顔をする。

“もしかして2%の外れか····”と彼が思っていると,井上が室内に入ってきて近藤に話しかける。

 

「どうした?·······は? 本当に言っているのか? 写真?···········嘘だろ····」

 

2人は暫く話し合うと,持っていた写真を渡して井上は去った。

何か信じられない物を見たかのような近藤の反応に視線は自然と集中する。

 

「えっと·········我が国の天体望遠鏡がとらえた写真とのことです。」

 

彼が見せた写真には緑色の葉巻の上下に,砲塔や艦橋らしきものをつけた軍艦らしきものが()()()()()()()

 

「これは··········」

「空に浮いてるだと·········」

「バカな·········」

「合成·········ではなさそうだ。」

 

見せられた写真に全員が目を見張る。この写真が合成によるフェイクという可能性は,日本国がわざわざこのような事をするメリットがないとして自然に消滅する。

 

となると残されたのはこの写真に写っているのがミルメリアだとする答えだった。

 

「まさかこれがミルメリアなのか·······」

「空を飛ぶ軍艦にどう勝てと·······」

 

シエリアやベリアンが弱音を吐くなか,オーディクスは隣の近藤に話をふった。

 

「日本国はあのパーパルディアを被害なしで打ち破ったと聞く。そんな貴国にこれを撃退する力はあるのか?」

 

オーディクスの質問に室内の視線は集中する。近藤は来る最中に蓄えた自衛隊知識から最善の答えを導きだそうとするが,あいつらを撃退するという彼らが望んでいるであろう答えはどうやっても浮かんでこなかった。

 

「1~2隻程度ならやれると思いますが,何せこんな代物は我が国でも空想上の産物です。

どこまでやれるかは········未知数です。」

 

辛うじて出した答えに,良い答えを期待していた皆が顔を落とす。

 

「日本国ですらこうか·······果たしてどうなるやな。」

 

ベリアンが再び弱音を吐いたと同時に部屋に職員が駆け込んできた。ベリアンが思わず振り返ると同時に職員が息を乱しながら口を開いた。

 

「あ,アニュンリールの船が逃げました!!」

「何だと!? 確か地方隊の魔導巡洋艦がいたはずだ!! 彼らはどうしたんだ!!」

「それが····アニュンリールの船の速度が速く,追い付けなかったとの事です!!」

「はあ!?········確かアニュンリール(あいつら)の船は帆船だったよな!! そんなに速かったのか!?」

 

予想だにしていなかった展開にベリアンは驚愕を隠せない。室内の大半が同じような反応をする中,近藤は冷静に分析を開始していた。

 

「まさかここまで派手に動くとは·····もしかしてあの皇帝の話の際に今まで隠していた事が全部バレてしまったから,問い詰められて面倒な事になるより逃げることを選んだのでは?」

 

近藤の考察にモーリアウルが納得した様な顔をする。

 

「ある意味開き直ったということか。逃げなられるのなら私もこの場から今すぐ逃げたいものだ。」

 

彼の言葉に思わず笑いが漏れる。ある意味緊張がほぐれた中,ベリアンが全員に聞こえる様に話し出す。

 

「これで先進10ヵ国会議となったわけだが,皆奴らと戦う事に異議はないか?」

「勿論だ。このまま降伏などあり得るか。」

「私達は戦う為にここに残っているからな。」

 

モーリアウルとシエリアの言葉に各国が続く。ベリアンの視線は近藤へと向けられた。

 

「我が国に関しても先程防衛出動(戦闘体制)に入ったと連絡がありました。

我が国は戦争を好みませんが,首都を消すと堂々と言われてしまえば戦う以外に道はありません。」

 

先程受け取った日本政府の答えを伝えた近藤にベリアンは頷いた。

 

この日 中央暦1642年4月22日。アニュンリール皇国を抜いた10国でミルメリアに対して戦うという事が決定したとニュースで世界中に伝えられた。

 

当事者の近藤らは当日中に雷力式ロータリー機関車が牽引する列車でカン・ブリットへと避難した。

 

そして各国で戦争への準備が急ピッチで始まるのだった。




・ノルースの諸君。余はミリシアル16世··········
え? 皇帝の言っている事が矛盾しまくって分からないって?
大丈夫です。作者が書いていて一番困惑しています。

・ベリアン・ジェナイト
彼はオリジナルキャラクターです。集まる場にミリシアルがいないのはおかしいなと思ったので,急遽追加しました。
それ以外にもリアージュさんとミニラルさん・オーディクスさんのフルネームもオリジナルです。

・近藤は自分の記憶から護衛艦に関する知識を······
これは先進11ヵ国会議で自衛隊に関して説明を行う可能性があったために,来る際に資料を呼んでいたとしています。
防衛省の職員に任せればいい? ならわざわざ巡視船では来ません。

・ガハラ神国経由で·······
この下りはオリジナルですね。ガハラが最近目立ち始めましたが,彼らは“神通力”で風竜を乗りこなしているのでエモールが興味を抱き,交流をするのではという考察から生まれたオリジナル設定です。

因みにパーパルディアがガハラを侵略しなかった理由に“ここに手を出すとエモールが絡んでくる”という裏設定もあります。


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対応

この作品って日本国召喚の二次創作だと,どの場所に入るんでしょうかね?

あとこの作品と何にも関係ないけどVTuberって実在人物のカテゴリーに入るのかな?って思いました。


黒き宇宙に蒼い海で覆われた星 ノルースは自分自身を強く主張していた。

 

美しき蒼き星を周回する2つの衛星の間にミルメリア宙軍第35艦隊は展開していた。

100隻以上の艦艇は真下に見えるノルースに艦底部に搭載されている3連装カノン砲を向け,“攻撃開始”の言葉を今か今かと待っていた。

 

そんな艦隊の中心には100隻以上の艦艇の中で唯一艦側面にも3連装カノン砲を装備した旗艦「ドルヴィーオン」が展開している。

 

500mを越える船体の1室で司令官のペイン・ドン・プレクティリア大将と副官のクフェン・カフ・レデナベリサ中佐は真っ白な皿に鮮やかに装飾されたロッペン鳥のソテーにナイフとフォークをおろす。

 

軍専用の牧場で最高級の餌で育てられたロッペン鳥はあっさりと切れ,赤色のソースを絡めて口へと運ぶ。

 

ロッペン鳥は口の中で旨味を放出しつつ,食道へと消えていく。

皿の隣に置かれている金色の装飾が入った紙ナフキンで口を吹くと,クフェンがペインへと話しかけた。

 

「そういえばペイン大将。ノルース1上にあった基地の残骸には遺体はありませんでした。恐らくクレビト戦隊が沈めたパトロール艦(駆逐艦)に乗っていたものと考えられます。」

「了解した。一応確認するがノルースから降伏の通信は入っていないか?」

「一件も入っていません。徹底抗戦する模様です。」

「当たり前だ。あんな演説で降伏するなど私は絶対にしない。」

 

ペインの言い方は自国の皇帝の発言をバカにするようなものだったが,クフェンや同席するコックはいつもの事なので驚かない。

 

ペインはそのまま軍人だからこそ許される愚痴を続ける。

 

「君は皇帝の演説を聞いたかい?」

「ええ。何を言っているか分かりませんでした。」

 

クフェンも愚痴に乗る。ペインは彼に対して更に語りだす。

 

「これは聞いた話だが,あの演説は()()()()()()()()()()()(),()()()()()()()()()にしているそうだ。」

「何ですかそれ········ふざけた理由ですね。」

 

ペインとクフェンの話の内容は,自国の皇帝に対するものでは無いものだが,ミルメリア宙軍の一部にはこのような雰囲気が蔓延していた。

 

彼らは皇帝に対する愚痴を語りつつ,ロッペン鳥のソテーを食す。

ソテーが皿の上から消え,金色の装飾が入った紙ナフキンで口を吹きながら,ペインはコックの方に向く。

 

「今日も美味しかったぞ。それにしてもロッペン鳥のソテーは景気付けか?」

「ええ,翌日には戦闘が始まりますので。」

 

ロッペン鳥は育てるのが非常に難しく,成鳥になる個体が少ないために,いくら軍専用の牧場で育てているとしても,彼らのお目にかかる回数は少なかった。

 

上がる場面と言えば王族を迎える時や,戦闘前等の限られた機会だった。

 

「なるほどな。他の乗組員にも何か与えたか?」

「ミバンサンのステーキを与える予定です。今頃出されている頃でしょう。」

「ミバンサンか。あれは旨いから乗組員の士気も上がるだろうな。

これで明日は取り敢えず無事だろう。」

 

ペインの発言にクフェンが口を挟んだ。

 

「ですが地球艦隊が来る可能性が高いです。警戒体制を敷いといた方が良いでしょう。」

「勿論だ。待機する艦隊は戦闘体制をとらせる予定だ。我々がやられてしまえば元も子もない。」

 

ペインとクフェンの話は食事が終わっても続くのだった。

 

東京は既に陽が落ち,黒い闇が覆っていた。本来なら静かな夜を迎えるはずだったが,夜の東京から静寂は消えていた。

 

昼間のミルメリア皇帝の演説はテレビ・ネット網まで干渉し,瞬く間に日本国民に触れることになった。

その演説で“東京を消滅させる”と言ったのだから,日本中が混乱の坩堝に突入した。

 

東京にいた人々は今すぐにでも東京から離れるべく交通機関に集中し,瞬く間に交通機関の容量はパンクした。

 

一部の人々は東京から出れないと悟り,東京メトロや都営地下鉄等の地下へと避難した。

 

そしてデパート・スーパーマーケット・コンビニ等の店では生活用品の買い占めが多発し,強奪や万引き等の犯罪が多発し,警察は対処に追われた。最も警察官の中には逃げ出すものや犯罪を起こすものもいたが。

 

あの演説だけで東京は無法地帯へと化した。

 

そんな中でも日本の政治の中心でもある首相官邸だけは正常を保っていた。

地下の危機管理センターに首相の武田実成以下閣僚が深夜ながらも集結していた。

 

「東京駅や羽田空港には今でも多くの人が押し掛けています。各地の道路も酷い渋滞が起きているそうです。」

「東京中の店では買い占めや強奪が多発し,正直言って無法地帯です。」

 

国土交通大臣と経済産業大臣の声はあり得ないほどの混乱の報告を聞いた為か弱々しかった。2人の発言に閣僚内からため息が漏れる。

 

「日本が転移した時でも,ここまで混乱はしてなかったぞ······」

 

環境大臣の赤住浩二郎は思わず口に出す。彼の言葉は事実だった。

約3年前の日本が地球からノルースに転移した際にも国内に混乱は生じたが,ここまでではなかった。

 

2000年の歴史を持つ日本だが,そんな日本でも経験したことがない事態に政府ですらもパンク寸前だった。

 

混乱の空気が蔓延する中,防衛大臣の厳田虎は机を叩いて立ち上がる。

 

「皆!! そんな感じで良いのか!? 我々が動かなくなってしまえば,その時こそこの国の終わりだ!!

首相!! 既に自衛隊には戦闘待機を命じています。首相の指示さえあればいつでも出撃出来ます。」

 

厳田から向けられた発言に首相の武田実成は驚きながらも答える。

 

「そ,そうか。因みに奴らに対してはどうする予定になっている?」

 

首相の疑問に厳田は後ろに待機させていた人物の方を向いた。その人物は細目でいかにも眠そうな目だったが,その目には日本を守るという意志が宿っている様に見えた。

 

「それに関しては彼が解説してくれます。」

「紹介に預かった三津木久則です。

防衛省の建てたプランとしてはまず降下してきたミルメリア艦隊に航空自衛隊の第8航空隊と海上自衛隊の第3航空隊で対艦誘導弾を連続して発射します。

艦隊に一定の被害を与えたところで第1/2/4護衛隊群が艦対空誘導弾で追い討ちをかけます。」

 

三津木の解説は丁寧な物だったが,同時に疑問も沸いて出た。

 

「なるほど·····よく理解できた。だがこれで本当に対処できるのか?」

 

赤住の疑問は全員が抱いている物だった。三津木は赤住の疑問に答えた。

 

「言い忘れてましたが,これはあくまで()()()()()です。奴らに自衛隊の武装がどこまで通用するかは一切分かりません上に,ミルメリアが降下すること自体が推測です。

東京へと一直線に向かう可能性だってあります。」

「そ,その場合は大丈夫なのか!?」

 

三津木は返答に赤住は狼狽えた。だが三津木はそれでも冷静だった。

 

「既に航空自衛隊の第3/301/302/201/304/306航空隊に東京周辺の防空を指示しています。これに浜松の早期空中管制機と小牧の空中給油機も支援に回ります。

海上自衛隊も横須賀の第11護衛隊と第2潜水隊群が展開する予定で,陸上自衛隊も千葉/埼玉/神奈川/東京都に配備されている部隊を全部動員する予定です。

また外務省の許可さえ降りれば,在日米軍にも協力を要請します。」

 

在日米軍という単語に歓声が上がる。だが赤住はある疑問を抱く。

 

「確か横須賀には原子力空母がいたよな?」

「えぇ。横須賀に「CVN-73 ジョージ・ワシントン」が停泊しています。」

「大丈夫なのか!? もしあいつらの攻撃で空母から放射線が漏れだしたら,それこそこの国の終わりだぞ!!」

 

赤住の言葉は最もだった。例え勝てたとしても原子力空母から漏れ出た放射線で東京が汚染されたな元も子もなかった。

だが赤住の疑問に三津木は答えを既に見つけていた。

 

「ご安心を。空母自体は最低限の護衛をつけて呉に退避させて,艦載機と第7艦隊の残る艦艇を使う計画です。」

「そんなことアメリカが認めるのか?」

「大丈夫でしょう。外務省が軽く圧力でもかければ頷いてくれるでしょう。」

 

三津木の返答に外務大臣の佐藤渉は顔をしかめたが,方法を選んでいる暇は無いと判断し,室内に待機していた外務省幹部に指示を出す。

 

「在日米軍に関しては問題ないでしょう。今の米軍は思いやり予算が削られて,あまり行動できなくなっています。

もし“戦闘に加わるのなら予算を増やす”とか言えば簡単に頷くでしょう。」

 

三津木の言葉を黙って聞いていた武田が口を開く。

 

「取り敢えずやれることは全部したという認識でいいか?」

「いえ,まだあなた方を避難させるという役目が残っています。」

 

三津木の言葉に武田は難しい顔をした。自衛隊員や国民を置いて自分達だけが逃げるということに後ろめたさを感じるが,もし全滅した時に日本全体の指揮系統が混乱する事が確実な為に受け入れるしかなかった。

 

「避難か·······仕方がないのは分かっているのだが,なんだかな·········防衛大臣。どこが候補なのかね?」

「候補としては名古屋・金沢・仙台・札幌等が上がっています。要請さえあれば木更津から直ぐ様ヘリを向かわせられる様に指示しています。」

 

「皆,何処がいいと思うか?」

 

武田は全員に質問を投げ掛けた。一番最初に返事をしたのは赤住だった。

 

「都市の規模と距離を考えると名古屋ですかね?」

「だが名古屋から東京に近すぎる。万が一奴らが東京を攻撃し終えたあと,やってくる可能性は高いです。」

「ということはどこの都市も同じじゃないか!?」

 

赤住の答えに佐藤が反論する。それに金融担当大臣の声が重なる。

ざわつく声が広がる中,武田は再び頭を抱えた。

 

「東京から離れた都市······となると札幌か?」

「その方が良いと思います。札幌ならば津軽海峡を挟んでいるので,名古屋や金沢・仙台に比べれば時間は稼げるかと。

それに近くの千歳基地には203航空隊がいるので,多少ですが航空支援も可能です。」

 

武田の疑問に三津木が追記も加えて答える。頭を抱えていた武田は顔を上げる。

 

「臨時政府は札幌に置くということで全員いいか?」

 

武田の提案に異を唱える者はいなかった。

 

約1時間後,政府要員を乗せたEC-225LP 2機は首相官邸屋上のヘリポートから札幌方面に飛び立っていった。

 

 

神聖ミリシアル帝国の首都 ルーンポリスは“眠らない魔都”と呼ばれている。

 

ラヴァーナル帝国(古の魔法帝国)の技術を解析する事で世界一の座を手に入れた国の首都は,栄華を極めていた。

 

高層建築が建ち並ぶ街並みを魔導技術で作られた車で走り,夜は全自動光球照明魔法によって照らし出されるという正に先端技術によって作り出された都市であった。

 

この都市に住む人々は世界の中心だと褒め称え,他国の人々は自国との圧倒的な差を思いしらされ,“神話に出てくる様な世界”だと皆言った。

 

そんな世界の中心である帝都ルーンポリスの中心部に皇帝の住まい アルビオン城は存在している。

 

城内の執務室で一際目立つきらびやかな装飾がされた王座に唯一座ることの出来る人物 皇帝ミリシアル8世ことルキウス・エルダート・ホロウレイン・ド・ミリシアルは提出された報告書を隅から隅まで読んでいた。

 

彼の前には国防省長官 アグラ・ブリンストン,軍務大臣 シュミールパオ・ラック,情報局長 アルネウス・フリーマン,外務省大臣 ペクラス・ライアン,そして対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部部長 ヒルカネ・パルペが緊張した面持ちで皇帝の返答を待っていた。

 

ミリシアル8世は読み終えた報告書を机の上に置く。ミリシアル8世はアグラへと顔を向けた。

 

「アグラ。この報告書の通りだと,第零魔導艦隊はグラ・バルカス帝国の艦隊と合同で戦うとしているのだが,本当に大丈夫なのか?」

「グラ・バルカス帝国に関しては言質(げんち)を取っている為に問題はありませんが········正直に言わせていただくと,我々にも分かりかねます。このような事態は我が国としても初めてですので。

万が一を想定して第1/2/3魔導艦隊を支援に向かわせていますが,どうなるかはやってみなければ分かりません。」

 

アグラの返答にミリシアル8世は“ふむ······”と難しい顔をする。

ミリシアル8世は隣のシュミールパオの方を向く。

 

「シュミールパオ。ルーンポリスの防衛体制はこの通りか?」

「はい。第4/5/6/7魔導艦隊をルーンポリス沖に展開し,エルペシオ3とジグラント2 約130機出撃させる予定です。現在陸軍は市民の避難を急ピッチで行っています。」

「やれることは全部したという事か。国民の様子はどうだ。」

 

ミリシアル8世の言葉にシュミールパオは返答に困る。

 

「それが·········異様な程に落ち着いています。聞いた話によると“我が国が世界最強であるから,ミルメリア(あんな奴ら)等撃退できる”と口を揃えて言っていたそうです。」

「それは不味いな。私の命令で避難を行うように通達してもよいぞ。」

「ありがたいです。今すぐ伝えてきます。」

 

シュミールパオがミリシアル8世に対して会釈すると,そのまま急ぎ足で執務室を出ていった。

 

「急ぎ足か········もう礼儀など構ってられんか。まあ仕方ない。

ヒルカネ。出撃させるのは,「空中戦艦 パル・キマイラ」だけか?」

 

ミリシアル8世は急ぎ足で出たシュミールパオに苦い顔をしたが,割りきってヒルカネの方を向いた。

 

「えぇ。「海上要塞 パルカオン」はまだ半分程しか解析できておらず,空飛ぶミルメリア艦隊に対してあまり有効的な対処が出来ずに,足手まといになる可能性が極めて高い為に出撃は見送られました。」

「なるほど·······それにあれは1隻のみの存在で,貴重はのは分かるがこれは国家の一大事だ。

例え足手まといになっても,士気向上には使えるであろう。」

「しかし·····」

 

ヒルカネは古代兵器に一番触れている為に,その性能と欠点を理解できる人物だった。

それが故にミルメリアの空飛ぶ艦隊の驚異を理解でき,パルカオンでは対処出来ない事が分かっていた為に出撃は取り止めていた。

 

「国家の一大事に,出し惜しみ等してられん。「パルカオン」にも出撃準備をさせるように。」

「かしこまりました。」

「うむ。「パル・キマイラ」は4機のみの出撃か。」

 

話を変えたミリシアル8世にヒルカネは答える。

 

「「パル・キマイラ」は2号機が定期メンテナンス中ですので,それ以外の4機を出撃させます。既に独断ですが出撃準備を行っています。

出撃体制としては3/5号機はルーンポリス防衛,1号機は第零魔導艦隊支援,4号機は状況次第でどちらかの援護に回る想定です。」

「よくやった。あれならば少しぐらいは対抗できるだろう。」

 

ヒルカネの返事に満足したミリシアル8世は,微笑しながらアルネウスへと向いた。

 

「アルネウス。奴らについて何かわかったか?」

「は。奴らについて分かった事は他の星から来たこと,空飛ぶ艦隊を有している事だけです。申し訳ありません。」

「少しでも分かっただけでも充分だ。ペクラス。各国の様子はどうなっている。」

 

次に話をふられたペクラスが答える。

 

「現在第一/二/三文明圏の国の多くが,戦いに備えて準備しています。駐留している大使は自国民の避難を急がせているそうです。

先進11ヵ国会議の代表はカン・ブリットに避難済みです。」

「そうか········果たしてここまで各国が1つになった事があったのだろうか·······」

 

ミリシアル8世は全世界が団結していることに感動したと共に,その理由が未知の敵が現れた事だという事実に複雑な心情を抱いた。

 

そんな様子のミリシアル8世にアグラが話しかけた。

 

「陛下。このルーンポリスはミルメリアの攻撃標的になっています。万が一奴らが侵攻した場合,このアルビオン城が標的になるのは間違いありません。

一時的でも良いですから,どうかここからの避難をお願いします。」

 

アグラの言葉にミリシアル8世は考える。数分目を閉じて考えた後にミリシアル8世は口を開く。

 

「············やむ終えんか。」

「もし陛下が死ねば,それこそこの国の終わりです。ここはどうか受け入れてください。」

「避難するのならばゴースウィーヴスかカン・ブリットか?」

「我々もその様に考えています。」

 

アグラのその言葉にミリシアル8世は再び思考するが,今回は1分程度で答えを導きだした。

 

「少なからず指揮系統は残さなければいけないな。よし,避難先はゴースウィーヴスにしよう。」

「かしこまりました。直ぐに連絡します。準備ができ次第,ゼノスグラム空港に機体を用意していますので,それに乗って頂きます。」

「もう用意していたか·········用意周到な奴よ。」

 

既に皇帝の避難を想定して根回しをしていたアグラに,ミリシアル8世はそう言い残した。

 

いつも通り朝焼けがルーンポリスの街並みを照らし出す中,ゼノスグラム空港に待機していたゲルニカ35型は,エルペシオ3 4機の護衛を連れてゴースウィーヴスへと飛び立った。

 

 

西方世界に突如として現れたグラ・バルカス帝国の首都 ラグナの空は今日も黒煙に染まっている。

 

工場地帯や蒸気機関車にから排出された排気ガスで空は淀み,この都市から数ヶ月青空は消えていた。

 

無機質な建造物が立ち並び,自動車が溢れ変える大都市の外れに軍港 ライメナトリア基地は位置していた。

 

グレートアトラクター級を収容できるドックを備え,所属している艦隊と艦艇数はグラ・バルカス帝国一の規模を誇っていた。

 

そんな基地から静寂は消えていた。ミルメリアとか言う侵略者からラグナを守るべく,海軍と特務軍の艦隊は出港準備を急ピッチで進めていた。

 

所属している軍艦には燃料が給油され,砲弾がクレーンで甲板に下ろされる。

1隻が終われば,また次の艦がやってきて補給を行う。これがライメナトリアの各地で繰り返されていた。

 

そんな絶え間なく人々が動く様子を特務軍司令官のミネケレス・アルネッタは自身の執務室から眺めていた。

 

「まさかこの基地がこんな動くなんて。本当,人生って分からないわね。」

 

彼女が発した言葉は自身へも向けられていた。昨日,仕事中にBGMとして聞いていたラジオからミルメリア皇帝の宣戦布告ともとれる演説を聞き,直ぐ様帝王府の緊急会議に呼ばれた。

 

会議は混乱した。今までひた隠しにしていた本土と首都の位置をあっさりと全世界に公開された挙げ句,名指しで攻撃対象にされたとあって,全員がミルメリアに対して徹底抗戦の意志を見せていた。

 

だが問題になったのは,「グレートアトラスター」の居場所だった。現在彼女はムー大陸を挟んだ先におり,1~2日ほどでは帰ることの出来ない位置にいた。

加えて彼女は全世界への宣戦布告後にカルトアルパスの艦艇を全滅させる予定だったが,ミルメリア皇帝の演説によって予定が全部狂わされたのだ。

 

もし,宣戦布告後にあの演説が流れていたらと帝王府の全員が危惧したが,幸いにも寸前でしていなかった事が判明した。

 

これを聞いたグラ・バルカス帝国皇帝 グラルークスこと,ルークス・ベルガ・フリュム・ヘリア・レーゲルステイン・ハバルト・フォン・グランデリアは直ぐ様共同で戦う様に指示を出し,沖合いの2艦隊についても同様の指示を送るように指示した。

 

加えて“帝国の三将”と呼ばれる海軍東方艦隊司令長官 カイザル・ローランド,帝都防衛隊長 ジークス・レベクレト,そしてミネケレスにラグナの防衛体制を取るように命じた。

 

それを受けて3人はラグナ周辺の部隊や艦隊をかき集めて,ミルメリアに対抗しようとしていたのだが,ガラスにうっすらと反射するミネケレスの顔は重かった。

 

刹那、彼女の部屋のドアがノックさせる。,ノックした人物が木製の扉を開けて入ってくると,彼女は振り返って目尻の上がった目で見つめた。

 

「カイザル·········」

 

彼女の視線は三将の1人で話すことも多いカイザルの姿を捉えた。

彼の顔もミネケレスと同じように重かった。

 

「あまり良い感じではなさそうね·······」

「それはお互い様だろ。それにあいつらにヘルクレス級なんかで大丈夫なのか?」

 

重かった顔を紛らわそうと冗談交じりに言ったが,カイザルに一蹴された。

加えるように言われた言葉にミネケレスは言い返す。

 

「それはあなたも同じでしょう。「グレートアトラスター」がいない以上,最大級の(ふね)はヘルクレス級よ。」

海軍(こっち)には「マンゼラン」がある。「グレートアトラスター」程ではないが,あいつも装甲は厚いからな」

 

「グレートアトラスター」のプロトタイプとして建造された戦艦 「マンゼラン」。

就役後に練習艦になっていた船ですらも投入するという状況にミネケレスは苦笑いした。

 

「練習艦も使うなんて,本当に国家の一大事なのね。」

「現実味はないがな。何しろ空飛ぶ船に対処しろなんて俺でも理解に苦しんでいる。」

 

ミルメリアが空飛ぶ船を有しているという情報を知った2人は驚愕した。

二次元の海面の上しか動けない船と三次元の空を自由に飛び回れる船なら,圧倒的に後者の方が有利だからだ。

 

「流石異世界と言いたいところだが,今だけは言えんな。」

「圧倒的に我々の方が不利よ。幾ら乗組員の士気が高いとはいえ,それで敵を倒せるわけではないのだからね。」

 

ミネケレスは窓の外を眺めながら,そう吐き捨てた。ミネケレスは振り返って,カイザルへと再び向く。

 

「それで,ここに来た理由は何かしら。まさか別れの挨拶を言いに来たんじゃないでしょうね。」

「まさか,だが単刀直入に言う。弾薬を優先的に補給されてくれないか。」

 

カイザルの頼みにミネケレスが返事を考えた時間は10秒もなかった。

 

「いいわ。出撃はあなたの方が先だものね。あなた達の艦隊の方が弾薬切れになったなんて,後世の笑い話になるものね。」

「そっちが弾薬切れになったらどうするんだ?」

「こっちは港から近いからギリギリまで補給を行うわ。最悪その場から砲台として動かすわ。」

 

ミネケレスの返答にカイザルは“ふっ”と笑った。カイザルは“分かった”と言って,部屋を去るべく木製の扉を開けたが,途中で振り返った。

 

「ラグナは任せたぞ。」

「あなたの帰る場所はしっかり守っておくわ。」

 

そう言ってカイザルは去っていった。




・ロッペン鳥
ミルメリアに生息している鳥。外見は考えていません(めんどい)
この鳥は扱い方が非常に難しく,ちょっとのミスで死んでしまう為に,生活環境を維持出来る上級階層の人々でペットとして飼われている。
またこの鳥の肉と羽毛は高値で取引されている。

モデルは2199に出てきたロクロック鳥です。料理に関しても同じです。

・ミバンサン
ミルメリアに生息している生物。外見は知らん()
こちらはミルメリア領内では広く飼育されており,移動手段や家畜として飼われている。

肉や乳は食用として使われ,皮や骨も服や加工品になるために,捨てる所がない。

モデルはスターウォーズのタトゥイーンに棲息するバンサです。
こういうのって考えるの楽しいよね?

・首相の武田実成以下閣僚·······
取り敢えず4巻まで確認したところ内閣は変わっていないと判断したので,武田さんや厳田防衛大臣・佐藤外務大臣を出しました。
赤住環境大臣は原作の環境相にオリジナルの名前を与えました。

・外務省大臣のペクラス・ライアン······
ここにいたのは原作基準ではリアージュでしたが,ペクラスさんに変更しました。
ペクラスさんはカルトアルパスにいて不参加だったようですが,リアージュと一緒に戻っていてもおかしくなく,その場合役職の高い彼が出るだろうと考察したので,出しました。
最も彼は公式wiki曰く“影が薄い”と言われていたという事もありますが·······
その場合,前話に出てきたベリアンさんがいらなかったのでは?

・ライメナトリア
ラグナ郊外に位置する巨大な海軍基地。本国艦隊全艦が所属している他,特務軍(監査軍)の艦艇も所属する為に200隻以上の艦艇が停泊でき,両司令部も存在している為に基地面積はグラ・バルカス帝国領内で最大規模を誇る。
基地内には司令部以外にグレートアトラクターが入れるドック,無数の倉庫と燃料タンク,設備の揃った兵舎や施設が建ち並んでおり,“軍に必要な物はここで揃う”と言われている程。

察しているとは思いますが,オリジナルの海軍基地です。

原作5巻で第52地方艦隊(イシュタム)がラグナから出撃しているので,そこに書かれているのだろうと思いますが,その5巻だけが手元に無いので確認のしようがなく,やむ終えずオリジナルで書かせてもらいました·········


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効かない攻撃

今回から漸く戦闘パートです。

ただミルメリアに一方的にやられる展開ですが,ご了承をお願い(強制)します。

それと今回あまりにも文字数が多くなったので,3つに分割します。
今までの回は1つの話に出来る限り内容を詰めて8000字ほどになっていましたが,それだと余りにも時間がかかりすぎるので,


様々な恒星が照らし出す(そら)を地球連邦防衛軍第13艦隊は突き進む。

黒く染まった世界に灰色の船体をした艦艇はよく目立っていたが,蒼色の船体をした第1戦隊旗艦の「AAA-013 オーシャン」と第3戦隊旗艦「CCC-002 アクエリアス」はずば抜けて目立っていた。

 

そんな「オーシャン」は4艦隊を指揮する為に通信設備を向上させ,索敵装置を増設する等して艦隊指揮能力を向上させていた。

そんな設備が集約される艦橋の大画面ディスプレイには地球の様に青い星へと降下していく緑色の船の姿が写されていた。

 

「ミルメリア艦隊,降下を開始しました。」

「一歩遅かったか········」

 

増設された超高性能索敵カメラで撮影された映像にフェルド・ヴェルズリー大将は唸った。

 

艦隊はあと1回のワープで目的地のノルースへと到着する場所にまで来ていたが,ミルメリア艦隊が降下を開始する方が一足早かった。

 

「あと数時間遅ければ········」

「歴史にもしもはない。我々は最善を尽くしたが,間に合わなかっただけだ。

だが·······今からでも出来る最善を尽くそう。通信士,アレヴィンに繋いでくれ。」

 

副官のフレシデント・ヤラヴェー中尉がそう言ったが,ヴェルズリーは冷静に返す。

ヴェルズリーの指示で通信士が目の前のキーボードを操作する。数分ののちにフェイエン・アレヴィン中将の姿が写し出される。

 

「アレヴィン。状況は分かっているよな。」

『ええ,勿論です。私を読んだということは,もしかして()()をやれということですか?』

「その通りだ。()()をやってくれ。」

 

ヴェルズリーの言った()()に,アレヴィンは苦い顔をした。

 

()()をやるともれなく補助エンジンに高い負担をかけることになって間違いなくドック行きですが,構いませんよね?』

「寧ろこう言う時の為にそれはあるのだろう? この場で一番奴らに打撃を与えられるのが君の「アンドロメダⅡ」だ。」

 

ヴェルズリーの返答にアレヴィンの表情はあきらめに変わる。

 

『やるしかありませんね。ドック側からどう言われても知りませんよ。

準備とか色々ありますので,失礼します。』

 

そう言って通信は切られた。それから1分もかからずに,第2戦隊は動き出した。

 

姉妹艦の中で唯一3()()の波動砲を有する長女(アンドロメダⅡ)は配下の艦艇を引き連れて第1戦隊の前に展開した。

 

「彼らの後に続いてワープするぞ。第3/4戦隊にも伝えておけ。」

 

第13艦隊はミルメリア艦隊を迎撃すべく,戦闘態勢に突入した。

 

 

日本本土から約1000km南南東に位置する小笠原諸島。東京都の一部ではあるものの,非常に離れている為に都心とはかけ離れてた光景が広がっていた。

 

島には緑が溢れ,海は紺色に染まり,空はサファイアの如き水色に所々白い雲が浮いており,その姿はまるで絵画のようだった。

 

ビルに囲まれた都心では絶対に見ることの出来ない景色を見るべく,大勢の観光客が国内外問わず来ているの。だがそんな場所に非日常的で,現実味のない物が存在していた。

 

水色の空と対極的に目立つ緑色と白色で構成された巨大な船は飛行船の如く空を飛んでいた。

船体には煙の出ていない煙突や艦橋らしき構造物,そして巨大な3連装砲がそこかしこについていた。

 

砲塔こそ島には向けられていないが,島民はその姿だけで混乱に包まれる。島民・観光客問わず混乱に包まれる島を余所目に14隻のミルメリア艦隊は北へと進んでいった。

 

14隻の艦隊ことメディナ戦隊は機動力に優れつつも,多数の砲塔を持つ駆逐艦や巡洋艦を中心に構成されていたが,中心には唯一平たい甲板を持つ船が展開していた。

戦隊唯一の航空母艦で旗艦でもある「レパグラン」の右側に寄せられた艦橋では1人の女性が眼下の父島と母島を見下ろしていた。

 

「こんな近いのに意外にも迎撃はないのね。首都の発展具合から推測するに対空兵器は届く位に発展しているはずだから,ここにはそもそも配備していないのかしら。」

 

戦隊司令官のメディナ・レト・フォルベリサ少将は,こんなに島に近づいているのに,何の抵抗もなく進んでいる事にそう考察した。

 

事実小笠原諸島に自衛隊基地は眼下の父島には海上自衛隊の基地があり,硫黄島や南鳥島等にも飛行場が存在しているが,配備されているのは主に飛行場の管理員等で,戦闘部隊は愚かミサイルの1つも配備されていなかった為に迎撃は出来ず,出来るのは本土に艦隊の存在を知らせるだけだった。

 

「司令官。準備運動ついでにこの島を砲撃しますか? こんな島など,我が戦隊なら主砲だけで消滅させることも出来ると思いますが。」

「レナドサ。バカを言わないでもらえる? こんな島に構っているなら,早く東京(攻撃目標)に向かって皇帝の話を蔑ろにした罰を受けさせるのが先決よ。それにこんな島いつでも潰せるしね。」

「そうでしたか。これは失礼しました。」

 

参謀のレナドサ・アワン・クレビアノ大佐が,メディナに進言するが,彼女は直ぐ様却下した。

彼女の反応にレナドサは謝罪したが,彼女は“大丈夫よ”と返した。

 

「レーダーに航空機及び艦艇の反応多数あり!! 速度からしてジェット機だと思われます!!」

 

レーダー員の報告を受けて,島を見下ろしていた2人は振り返る。

艦橋上部に設置されているディスプレイには,レーダーが捉えた敵の様子が写し出された。

 

ミルメリア艦隊は各地の星に侵略を行い,星の文明を攻撃する事が非常に多い。その為にルックダウン能力を強化したレーダーを船底の下部艦橋に備えている。

 

性能の良いレーダーが捉えたのは,複数の航空隊と2つの艦隊だった。速度・位置・陣形までもがありのままに写し出されていた。

 

多くの機体と艦艇がレーダー画面に写っている中で第8飛行隊所属のF-2A 12機(12個の光点)とその後ろを飛ぶ第3航空隊所属のP-1 18機(18もの機影)は明確にメディナ戦隊へと進路を向けていた。

 

航空隊の背後には8隻の艦隊(第1/2護衛艦隊)も展開している様子に,メディナは司令官席に座って自衛隊側の思考を推測する。

 

「ジェット機でこっちの戦力を削って艦隊で止めを刺す気ね·····中々楽しませてくれるじゃない。こうじゃないと戦った気がしないわ!

拡散ランチャーを搭載している艦を前に出しなさい!!」

 

メディナは興奮しつつも冷静に指示を出す。「レパグラン」の両脇に展開していた軽巡洋艦「メラヴィアン」と「ドラメアン」が艦隊前方に進出する。

 

「敵機ミサイル発射!!」

「っ!?」

 

2隻の軽巡が艦隊の先頭を追い越したと同時に,12機のF-2A(先頭の編隊)から48発の93式空対艦誘導弾(ミサイル)が発射された。

レーダー員の報告にメディナは思わず舌打ちした。

 

「近すぎる·······これでは拡散ランチャーが使えない!! 各艦主砲や魚雷で迎撃しなさい!!」

 

「レパグラン」は艦載機を運用する空母ではあるが,航空甲板と船体の間や船底には3連装カノン砲が装備されており,航空母艦らしかなる重武装艦として知られていた。

 

そんな戦艦と空母の2つを備えた艦の艦橋前に装備された連装カノン砲の仰角が艦橋の指示でミサイルへと向き,緑色のショックカノンを発射した。

 

続けて航空甲板下の3連装カノン砲からもショックカノンが発射され,接近するミサイル群へと向かう。

 

周囲の艦も主砲からショックカノンを発射して迎撃しようとする。ショックカノンに誘導能力は存在していない為に93式空対艦誘導弾(ミサイル)の間をすり抜けて,そのまま直進する物が半数を越えていたが,命中するものも少なくなく,既に10以上の93式空対艦誘導弾(ミサイル)が落とされていた。

 

だが30発の93式空対艦誘導弾(ミサイル)は未だにメディナ戦隊に向かってきていた。

 

「艦首魚雷発射!!」

 

艦首の四隅に2門ずつ配置された魚雷発射管から魚雷が発射される。

 

上述の様にミルメリア艦隊は各地の星に侵略を繰り返している。その為に武装は安価な3連装カノン砲を中心としており,ミサイルや魚雷といった高価な誘導弾の搭載数は全体的に少なかった。だが,メディナは躊躇いもなく発射を指示した。

 

誘導装置を備えた8発の魚雷は迷うことなく,接近する93式空対艦誘導弾(ミサイル群)へと向かっていき,盛大に爆発を起こした。

 

他の艦も魚雷や艦橋側面の9連装対空レーザーで93式空対艦誘導弾(ミサイル)を迎撃して,盛大な花火を打ち上げたが,1発だけ明確に異なる爆発音が響き渡った。

 

メディナが爆発音がした方を向くと,1隻の駆逐艦の船体から黒煙が激しく上がっていた。

 

「駆逐艦「レウフェ」被弾!!」

 

第1砲塔下部に被弾した駆逐艦「レウフェ」は黒煙を上げて速度を落としていた。

 

「「レウフェ」より通信。『本艦被弾したが,航行に異常無し』との事です!」

「本当に大丈夫なのかしら? 私が敵の司令官だったら真っ先に狙うわよ。万が一の為に艦隊最後尾に下げなさい。」

 

「レウフェ」の通信は無事を知らせるものだったが,メディナは寧ろ不安になった。戦力を失わずに出来る最善の指示をメディナが出すと同時に,レーダー員が叫んだ。

 

「敵編隊ミサイル第2射発射!!」

 

メディナは直ぐ様レーダー画面を向く。第8飛行隊(第1波を放った航空機)は既に反転しており,第3航空隊(後ろを飛ぶ航空機)から計144発もの91式空対艦誘導弾(ミサイル群)が発射された。

 

第1波よりも数の多いミサイル群だったが,メディナは落ち着いていた。表情にはうっすらと笑みが見えていた。

 

「今度は拡散ランチャーがいけるわ!! 拡散ランチャー発射!!」

 

艦隊先頭に展開する2隻の軽巡の艦橋後部の煙突型の構造物から計16発の弾頭が発射される。発射された弾頭は前方へと広がっていき,一定の距離になると1つ1つが激しく自爆して艦隊前方を覆い尽くす爆発の壁を作り出す。

 

爆発の壁に突入した91式空対艦誘導弾(ミサイル群)はなす統べなく誘爆を起こし,たちまち壁と一体化する。

 

爆発の壁が消えると,144発もの91式空対艦誘導弾(ミサイル群)は消えていた。

 

2回の波状攻撃を駆逐艦1隻の損傷で防いだメディナ戦隊はほぼ無傷と言って良い状態だった。

 

「敵の波状攻撃は終わったみたいですね。」

「意外に呆気ないわね·······まあ良いわ。反撃開始よ。 第4護衛隊群(左の艦隊)は「メラヴィアン」と駆逐艦3隻で対応しなさい。 第1/2護衛隊群(正面の艦隊)は私達が引き受けるわ。」

 

意外にも呆気なく終わった事にメディナは残念がったが,未だ脅威度の高い艦隊を対処するべく,冷静に指示を出した。

 

ミサイル群を迎撃したばかりの軽巡洋艦「メラヴィアン」は駆逐艦「マノ」・「デュレイ」・「アバリサ」を引き連れて大きく左旋回する。

 

4隻の艦隊が分離した事を確認したメディナは隣に立っているレナドサに話かけた。

 

「レナドサ。制空権は1飛行隊で奪えるかしら?」

「どうでしょうか? マッハ越えのジェット戦闘機にミサイルですから,被撃墜は避けられません。

万が一も想定して第3飛行隊も投入しましょう。」

「そうね········第1/3飛行隊は対空装備満載で,制空権を取りなさい。第2飛行隊はそのままスプレッドポッドを搭載して残る航空隊を殲滅させましょう。」

 

メディナの指示で「レパグラン」の格納庫から並列に並んだ2基のエレベーターで艦載機のテレスガーベーターが次々と航空甲板に上がってくる。

 

垂直尾翼が下を向いた独特の形をして,空気抵抗を出来る限り少なくしたテレスガーベーターには白くて大きな主翼の上下に十数発もの誘導弾を取り付けていた。

 

航空甲板前の2基の電磁カタパルトに機体が取り付けられる。ブラスト・ディフレクターが展開して,2基のジェットエンジンが出力を増す。

 

艦橋員の操作よってカタパルトが動作して機体が発艦していく。2機の機体が発艦を終えると,また次の機体がカタパルトへと取り付けられる。

 

第1飛行隊が先行して発艦し続ける中,格納庫内では第3飛行隊の機体に対空ミサイルを取り付ける作業をロボットと作業員が共同で急ぎ行われていた。

 

そんな機体の横で待機している第2飛行隊のテレスガーベーターには主翼の下側に機体の半分程の大きさを持つ巨大なスプレッドポッドを2つ取り付けられていた。

 

ミルメリアによる一方的な攻撃(殺戮)が幕を開けようとしていた。




・アンドロメダⅡ
自分としてはアンドロメダⅡはマジでチートです。数話後にその凄さを感じるだろうと思いますが,そのチート能力がどんなものか期待しといてください。

・武装は安価な3連装カノン砲を中心にしており······
これを分かりやすく端的に纏めると,
「高いミサイルや魚雷を星に何発も撃ち込むのはコスパ悪いから,安い主砲沢山積むべ」
という感じ

・拡散ランチャー
まず前提としてミルメリア艦の煙突型の物体は基本的に組み換えを前提としたユニットになっている。
今回の対空用の拡散ランチャー以外にも機雷敷設装置やミサイル発射管・補給物資入れとしても使われている。

それを踏まえた上で拡散ランチャーについてだが,簡単にいえば一定の距離で自爆する小型の弾頭を発射して,爆発の壁を作り,接近するミサイルを誘爆させて阻止する兵器。

モデルは「星廻る方舟」でデバステーター攻撃機を迎撃した爆雷発射機。

・テレスガーベーター
ミルメリアの主力戦闘機。垂直尾翼が下を向いている奇妙な形をしている機体形状をしている。だがその分機体上部の空気抵抗は非常にすっきりしている。

固定武装は機首脇のレーザー砲 2基と機体上部の涙滴型のレーザー砲 1基のみ。涙滴型のレーザー砲は360°回すことができ,敵機攻撃からミサイル迎撃まで使用できる。

大きな主翼は強度が高く,対空ミサイルを十数発搭載可能で,スプレッドポッド等の重い物も搭載できる。

外見としては復活編に登場するコスモパルサーです。スプレッドポッドも重爆撃機仕様をベースにしました。

スプレッドポッドは次話でどんなものか分かると思いますので,お待ちください。


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自衛隊 崩壊

辛うじて7月中に更新できました。


「一発も当たらなかった·········だと!?」

 

第204飛行隊(ミステックイーグル)所属のF-15Jのパイロット 町田英介三等空佐は入ってきた通信に驚愕した。

 

実際のところは1発だけ命中していたが,100発以上発射して1発しか当たっていないので,当たっていないのとほぼ同じだった。

 

ミルメリア艦隊は未だに全戦力を有している。加えて艦隊の中には空母らしき船がいるらしく,艦載機を放つ可能性が高いだろう伝えられていた。

 

今まで日本国はロウリア王国・パーパルディア皇国と戦争をし,多くのワイバーンを墜としており,彼自身もパーパルディア皇国の首都 エストシラント郊外の基地を空爆する際に首都上空を飛んでいたワイバーンオーバーロードを撃墜していた。

 

最高時速430kmで火炎弾しか撃てないワイバーンオーバーロードと,マッハ2.5の最高速度と10発以上の百発百中のミサイルを搭載できるF-15J(イーグル)とでは負ける理由が見当たらないが,空飛ぶ船を実用化しているミルメリアならこのF-15J(無敗の鷲)を上回る性能を持つ戦闘機を持っている可能性も充分ありえる。

 

不安になりながら考えていると後方を飛んでいるE-767(J-WACS)から通信が入る。

 

『ミルメリア艦隊より艦載機発艦!! 数増えていきます!!』

 

E-767(J-WACS)からの通信が切れると入れ替わる様に,飛行隊長から通信が入った。

 

『聞いたな!! 奴らを日本上空に絶対いれるな!! それと絶対に墜とされるなよ!!』

 

エストシラント空爆でも飛行隊を引っ張った飛行隊長の掛け声で町田は操縦桿を強く握りしめた。

 

91式空対艦誘導弾(ASM-1C)を撃ち尽くして厚木基地への帰路につくP-1の上を飛び越し,14機のF-15J()は戦場へと向かっていく。

 

彼が被るヘルメットにつけているヘッドマウントディスプレイ(HMD)のJHMCSにE-767(J-WACS)AN/APY-2(レーダー)が捉えた敵編隊 第1飛行隊の情報が写し出される。

 

敵機の数は28機とちょうど2倍の差があるが,彼らは動揺していなかった。自分達がここでしくじれば,自分たちの大切な人・家族が死ぬかもしれない。そう考えると彼らに恐怖という感情はなくなっていた。

 

『日本の命運は我々に託されている!! 1機でも落とせ!! 兵器自由使用(ウェポンズフリー)!!』

 

飛行隊長のその通信をトリガーに,町田は操縦桿を前に押し倒した。

機体は機首を下に傾け降下を開始する。IHIがライセンス生産したF100-IHI-100 ターボファンエンジンも出力を増し,空を切り裂く様に突き進んだ。

 

降下してくるF-15J(イーグル)に気がついたのか,第1飛行隊も編隊が崩れたが,すぐさま迎撃すべく急上昇を開始する。

 

『FOX3!!』

「FOX3!!」

 

操縦桿のスイッチを押して,胴体下部のハードポイントに取り付けられた99式空対空誘導弾(AAM-4)を切り離す。

切り離された2発の99式空対空誘導弾(AAM-4)は固形燃料ロケットに火を灯し,慣性航法装置(INS)に従ってマッハ4の速度で飛翔を開始した。

 

そしてほぼ同時に敵機 テレスガーベーターも主翼の上に取り付けられていたミサイルを発射する。

 

計28発の99式空対空誘導弾(AAM-4)に対してミルメリア側はたった7機で同じ数に達していた。

 

28発同士のミサイルはすれ違う。ミサイル同士が接触して誘爆して,それに連鎖する様に爆発の花火が起きる。

 

だがそれぞれ10発以上が誘爆を逃れ,まっすぐ自らの目標である敵機へと突き進む。

 

町田機のコックピットにミサイル接近のブザー音が鳴り響く。町田は今まで押していた操縦桿を逆に引いた。

 

主翼のフラップが動作して,機体は急降下から一転して急上昇していく。上昇すると同時にAN/ALE-45J(チャフ・フレアディスペンサー)からチャフとフレアがばらまかれる。

 

急上昇したF-15J(イーグル)の下をミサイルは通過する。危険が去ったことを確認した町田はうっすらと視野が赤くなる状態(レッドアウト)になりかけながら,機体を水平に戻す。

 

「やっぱりミサイルはどこでも一緒かっ!?」

 

安心して声を漏らした町田だったが,安全だったのは自分だけだった。さっきのミサイルで4機ものF-15J(仲間)が墜とされ,真下では今も激しい空中戦が広げられていた。

 

テレスガーベーターの中にも墜とされた機体はいたが,F-15J(イーグル)も同じように墜とされていた。

地球では空戦で落とされたことの無い無敗の鷲がいとも簡単に墜ちていく。それは仲間が殺されていると彼に認識させた。

 

「あいつらっ!!」

 

町田は操縦桿を押して再び降下を開始する。仲間を殺された事に対する感情が彼を戦場へと向かわせた。

 

町田は飛行隊長の機体を追いかける1機のテレスガーベーターを標的に捉えた。

 

標的にされたことに気がついたテレスガーベーターは機体を左右に振って撃ち落とされない様にしていたが,町田は冷静に敵機を捉え続けた。

 

(変な形の機体だな······)

 

ミルメリアの戦闘爆撃機 テレスガーベーターは所謂無尾翼機で,機体上部にはあまり凹凸の無い空気抵抗に優れた機体だったが,町田には奇怪な形の機体だと認識していた。

 

ロックオンされない様に回避を続けるテレスガーベーターだったが,機首のAN/APG-63(V1)(火器管制レーダー)に捉えられた。

 

「FOX2!!」

 

町田の掛け声と共に操縦桿のボタンが押され,両翼のハードポイントから04式空対空誘導弾(AAM-5)が1発ずつ切り離される。

 

固形燃料を燃やしてマッハ3の速度で,2発の音速の矢は突き進む。

 

テレスガーベーターは機体を大袈裟に動かしてかわしつつ,胴体上に取り付けられた涙滴型のでっぱりから緑色のレーザーをばらまく様に連射するが,04式空対空誘導弾(ミサイル)には全く当たらない。

 

2発の04式空対空誘導弾(AAM-5)はそれぞれ胴体と左翼に突き刺さり,弾頭を爆発させる。

左翼に搭載されていたミサイルが誘爆して,左翼は真っ二つに割れる。片翼を失い,エンジンからも黒煙を上げるテレスガーベーターは重力に捕まって落下を開始する。

 

海面へと落下し続けるテレスガーベーターだったが,海面に触れる前に機体は爆発四散した。

 

「まず1機!!」

 

町田は敵機撃墜に士気が上がる。そこに通信が入ってきた。

 

飛行隊長(ライエン)より町田(クロノス)へ。助かった。ありがとうな。』

町田(クロノス)より飛行隊長(ライエン)へ。大したことではありませんよ。」

 

飛行隊長と言葉をかわしていると,E-767(J-WACS)から切羽詰まった通信が入ってきた。

 

E-767(J-WACS)より全機へ!! 50機以上の敵機が向かってきている!! 気を付けろ!!』

「なっ!?」

 

現状でもかなりギリギリなのに,更に増援が来るという連絡に一瞬恐怖を感じたが,彼は恐怖を振り切って戦う意志を固めた。

 

『聞いたな! 墜とされるなよ! 町田(クロノス)!!』

飛行隊長(ライエン)も!!」

 

飛行隊長と言葉をかわすと,機体を翻して敵機へと向かっていく。14機いた味方は既に半分以下になっているが,第1飛行隊の機体も少なからず墜とされていた。

 

状況は不利だが,抗えないことはない。そう町田は思っていたが,コックピット内に響くブザー音に驚かされた。

 

直ぐ様チャフとフレアをばらまいて機体を右に旋回させたが,既に遅かったらしく機体後方から爆発音と衝撃がコックピットに届いた。

 

コックピットへの直撃は免れたが,ミサイルが直撃したF100-IHI-100エンジンからは黒煙が上がり,推力を失った機体は落下を始める。

 

町田は緊急脱出(ベイルアウト)を試みたが,被弾の影響か正常に動作しなかった。

 

「どうやら·······もう駄目みたいだな····」

 

町田が自分の運命を察したと同時に,海面へと落下し続けていた機体は盛大な花火となって空に散った。

 

第3飛行隊が合流して40機以上の機数になったテレスガーベーターは勢いを取り戻し,町田が墜とされてから約10分後にはその空域からF-15J《イーグル》の姿は消えていた。

 

 

第204飛行隊が数の暴力で落とされている中,ミルメリア宙軍第35艦隊メディナ戦隊第2飛行隊は第8飛行隊/第3航空隊を墜とすべく突き進んでいた。

 

24機のテレスガーベーターは白い大きな主翼の下に機体と同じくらい大きな物体を搭載しており,物体の後方のノズルからはテレスガーベーターのエンジンと同じように噴流を発生させていた為に,機体重量が重くなっているにも関わらず,マッハ2を越える速度で飛んでいた。

 

その様子はE-767(J-WACS)にも捉えられていた。機体上部のAN/APY-2(レーダー)は正確に敵機を捉えていたが,正確に捉えていたからこそ自分達への恐怖がより強く感じられた。

 

現に本来迎撃を担当する第204飛行隊(ミステックイーグル)は50機程の敵機に袋叩きにされている為に,自衛用に90式空対空誘導弾(AAM-3)を装備している第8飛行隊(ブラックパンサーズ)が急遽迎撃に向かっていた。

 

やがて双方の編隊は敵機の姿を捉えたが,そこには第8飛行隊のパイロットの視線には奇妙なものも写っていた。

 

『あれが敵機かっ··············!?』

 

第8飛行隊の飛行隊長が見ている奇妙な物体から,1機あたり20発ものスプレッド()が発射される。

合計で約800発もの光が一直線に自分達へとへと向かっていく。光の正体がなんだか分からないが,何かしらの攻撃だと言うことだけは頭が理解していた。

 

『全機回避!!』

 

飛行隊長の指示でF-2Aは回避しようと動き出す。IHI/GE F110-IHI-129 ターボファンエンジンが唸り,速度を増す。ミサイル相手ではないがAN/ALE-45J(チャフ・フレアディスペンサー)からチャフとフレアがばらまかれる。

 

P-1もフレアをばらまくが,発射された弾丸のようにただただ飛んでいくスプレッドには無効だった。

 

回避が追い付かず,2機のF-2Aがスプレッドに巻き込まれて墜とされたが,残る機は回避に成功した。

 

刹那青白い光を放っていたスプレッドに更に光が増す。90式空対空誘導弾(AAM-3)より小さかったスプレッドは一瞬でF-2Aを飲み込む程の大きさに膨張する。

 

『な!? なんだこれ!? うわぁ!?』

 

一瞬で膨張したスプレッドにF-2Aは回避する間も無く,巻き込めれる。第8飛行隊は瞬く間に全機が飲み込まれていき,青白い光の中で幾つもの爆発となって散っていった。

 

そしてスプレッドは第3航空隊とE-767(J-WACS)ですらも飲み込もうとした。

 

『来るな!! 来るなぁぁ!!』

『神様ぁ!!』

『やめてくれぇ······』

 

隊員の悲鳴や懇願も虚しく,機体は無慈悲に膨張するスプレッドに飲み込まれていく。

主翼は軽々と折られ,胴体も引き裂かされる。光の中でP-1とE-767(J-WACS)は乗組員と共に爆発に飲まれて消滅していった。

 

たった一瞬でこの空域から自衛隊の機体は消滅した。飛行隊を全滅した事を確認した第2飛行隊はスプレッドポッドで艦隊の露払いの役割も兼ねて,東京へと進路を向けた。

 

 

横須賀基地所属の第1護衛隊群第1護衛隊と第2護衛隊群第6護衛隊の計8隻の艦隊は紺碧の海を突き進む。

 

本来ならばそれぞれ違う艦隊に所属しているが,今回の事態を受けて緊急で編成された艦隊だった。

 

「こんなことがあっていいのか·········」

 

臨時艦隊旗艦の「DDH-183 いずも」の戦闘指揮所(CIC)で第1護衛隊群司令の荒木 正次郎海将は艦橋上部に設置されたOPS-50(対空レーダー)が捉えた情報を見て絶句した。

 

F-2AやP-1による攻撃は全く効かず,逆に奴らの艦載機でF-15J(イーグル)E-767(J-WACS)ごと全滅させられた。

 

軍隊では3割がやられたら全滅とか言われているが,目の前の全滅は言葉本来の意味を示していた。

 

演習でも見たことがない状況に艦長の山本光邦一等海佐やCICの隊員も苦い顔をする。

 

「第4護衛隊群は間に合わない。我々だけで戦うしかないのか·········もう二度と日本には帰れないかもしれんな······」

「司令。そのようなことは我々も承知です。私達の犠牲で国民を守れるなら,私はこの命を捧げましょう。」

 

荒木が漏らした言葉に,山本がそう返事を返す。周りの隊員も覚悟を決めた顔つきになっている事に気づいた荒木も覚悟を決めた。

 

「そうか········なら迷うことはないな。全艦両舷前進!! 戦闘用意!! 奴らを何としてでも食い止めるぞ!!」

 

例え二度と日本に帰れないと分かっていても,自分達が時間を稼ぐ事で,少しでも多くの人間の命を救うべく,8隻の護衛艦は一方通行の航海に突き進んでいった。

 

そして遂に荒木らの前にミルメリア宙軍第35艦隊メディナ戦隊の姿が見えた。

 

「いずも」の全長 248mをも上回る巨大な船が空に浮いている様子に未だに現実味を感じられないが,これは非現実(アンリアル)ではなく現実(リアル)だと荒木は自分自身に言い聞かせた。

 

「ミルメリア艦隊 主砲向けました!!」

 

先頭を進む2隻の駆逐艦の艦底に取り付けられた3連装カノン砲が動く。標的を定めた主砲から緑色のショックカノンが発射される。

 

計6本の緑色の光は「いずも」の右前を進む「DD-101 むらさめ」に集中した。砲撃戦を想定していない護衛艦の船体をショックカノンはいとも簡単に貫く。

 

ショックカノンが貫いた場所から爆発が起こり,艦中央に搭載されていた90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)や中甲板のMk.48VLSに搭載されていた発展型シースパロー(ESSM)に誘爆して瞬く間に船体全体を包み込む爆発になる。

 

爆発の轟音が響き渡るなか,「むらさめ」は白い文字で艦番号が書かれた灰色の艦首と艦名が刻まれた艦尾を空へと向けた。

 

「「むらさめ」が········」

 

真っ二つに引き裂かれた「むらさめ」は海水に抗う間も無く海底へと引きずり込まれていく。自衛隊初の喪失艦艇となった

 

「「むらさめ」の仇を取るぞ!! 全艦攻撃開始!!」

 

「いずも」以外の6隻に荒木の指示が飛ぶ。直ぐ様艦首甲板に設置されたMk.41 VLSからSM-2(スタンダードミサイル)RIM-162(ESSM)が発射される。

 

本来はミサイルや航空機を落とす為のものだったが,空飛ぶ船に一番有効な兵器だとされた為に,本来の目標から何百倍も大きな船へと放たれた。

 

ミルメリア艦は艦底に飛び出している艦橋の脇に取り付けられた9連装対空レーザーを迫ってくる艦対空ミサイル(SAM)へと向けて放つ。

 

緑色の光がまるでゲリラ豪雨の様に降り注ぎ,ミサイルを打ち落としていく。雨粒の如き多さのレーザーに加え,主砲から放たれたショックカノンも合わさって護衛艦隊から発射されたミサイルの第一陣は既に8割が落とされていた。

 

荒木は自分達の攻撃が効いていない現状に顔をしかめたが,画面越しにある違和感に気がついた。

 

「後方の船から煙が上がっている? あの船なら撃沈できるかもしれんぞ!!」

 

荒木が指差した先には先程の攻撃で唯一被弾した駆逐艦「レウフェ」がいた。「レウフェ」は他の艦と同じく空を飛んでいたが,被弾した箇所からは灰色の煙が今も少量ながら出続けていた。

 

その事に気がついた荒木は直ぐ様判断を下した。荒木の指示は全艦に通達され,標的も「レウフェ」に絞る。

 

艦対空誘導弾(SAM)を全部打ち落としたメディナ戦隊は先頭の駆逐艦 2隻の後ろに控えていた軽巡・重巡もショックカノンを発射した。

 

先程の砲撃とは比べ物にならないショックカノンが流星の如く護衛艦隊へと降り注ぐ。

 

「「DDG-171 はたかぜ」艦首消滅!!」

「「DD-107 いかづち」被弾!! 損傷甚大!!」

「お,「DD-111 おおなみ」が真っ二つに!!」

 

1分程度で2隻の艦が沈没確定の被害を受け,1隻が大破した。この時点で艦隊の数は既に半数になっていたが,

 

「全艦艦対艦誘導弾(SSM)発射!!」

 

荒木の指示で戦闘能力を残している「DD-110 たかなみ」・「DD-116 てるづき」・「DDG-174 きりしま」の艦中央から白い爆煙を排出しながら,計12発の90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)が発射された。

 

本来は海面に浮かぶ船に対する兵器だったが,戦う相手が200~400m程度の空飛ぶ船だと知った防衛省と護衛艦隊司令部は艦対空誘導弾(SAM)では威力不足だと判断し,短期間で製作可能かつ効果的な対処法として“高威力の艦対艦誘導弾(SSM)のプログラムを無理矢理弄って敵艦に当てる”という本当に無理矢理な物になった。

 

奇しくもこんごう型イージス護衛艦が搭載しているAGM-84(ハープーン)には高空巡航モードがあった為にこのプログラムを他の船が積んでいる90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)に無理矢理読み込ませていた。

 

時間がないために発射試験などは行われておらず,ぶっつけ本番での使用となった。

 

固形燃料を燃やしながら進む12発の90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)はメディナ戦隊の艦には見向きもせず,「レウフェ」に標的を定めた。

 

「レウフェ」が標的だと気がついた他の艦は主砲や対空レーザーをミサイルへと向けて放つ。碧い空に緑色の光が流星の如く飛んでいき,ミサイルを打ち落としていく。

 

12発しかない90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)は直ぐ様全滅してしまったが,荒木は冷静だった。

 

「全艦旋回完了!! 」

「第2陣発射!!」

 

ミサイルへと対処で攻撃が少なくなった隙をついて,「いずも」・「はたかぜ」以外の3隻は旋回を行い,残っていた90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)を発射した。

 

1回目とは違って海面に沿うように発射された12発のミサイルにミルメリア艦隊の対処は遅れた。奇しくも最初に発射したミサイルが上空を飛んだために注意を引き付け,2回目の攻撃に気づくのが遅れた。

 

艦底の主砲と対空レーザーが発射され,ミサイルを落としていくが,初期対処が遅れた為にミサイルを全滅させられなかった。

 

そして3発の90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)が「レウフェ」に着弾した。船体と艦底艦橋・主砲に着弾した事で爆発が起こり,それが艦内へと誘爆していき,駆逐艦は力を失った。

 

艦内から連続して爆発を起こす「レウフェ」はそのまま高度を下げていく。海面へと触れた「レウフェ」は護衛艦のマストを越える程の水飛沫を上げて,海底へと沈んでいく。

 

船体の大半が海の中に沈むと,「レウフェ」は大爆発を起こした。海水がドームの如く膨らみ,爆発と共に凄まじい勢いで破裂して,海水が周囲に広がっていく。

 

爆風で円形に広がっていく海水の波で護衛艦が揺さぶられる。爆煙は噴火した火山の噴煙の様は空というキャンパスに広がっていく。

 

「やったぞ!!」

 

ミルメリア艦を撃沈出来た事に「いずも」の戦闘指揮所(CIC)の士気は一気に高まる。

あまり感情を露にしない山本も小さくガッツポーズをする。

 

「やれないことはなかったな!!」

 

荒木もミルメリア艦を撃沈出来た事に安堵したが,直後に隊員の1人が悲鳴のような声をあげた。

 

「敵艦隊多数発砲!!」

 

メディナ戦隊の全艦が「レウフェ」の仇と言わんばかりに主砲を「たかなみ」に向け,ショックカノンを放つ。数十本のショックカノンは最早1本の緑色の光線の如く集まり,全長 151mの「たかなみ」に突き刺さる。何十本ものショックカノンが船体を貫き,巨大な爆発と大量の爆煙を発生させる。

 

10本以上のショックカノンが命中した「たかなみ」は爆発の煙が薄くなる頃には船体を海の底へと沈めていた。

 

「「たかなみ」·········消滅···」

 

1分足らずで150mの護衛艦と175名の乗組員を消滅させた事実に,高まっていた士気は一気に底辺へと落ちる。

 

目の前の事実を理解しようとする前に,メディナ戦隊はショックカノンの雨を降らした。

 

「「きりしま」大破炎上!! 沈没は免れません!!」

「「DD-116 てるづき」・「はたかぜ」も同じです!!」

 

「いずも」を除く全艦が戦闘不能に追いやられた。僅かな時間で「きりしま」は転覆し,「はたかぜ」と「てるづき」も船体を海面に沈め始めていた。

 

残るのはこの「いずも」。全員がこの後起きる事を察し,絶望が室内を支配する。奇声を上げる者,手を合わせる者,運命を受け入れる者など多種多様な行動を皆がとる。

 

荒木はメディナ戦隊が自らの命を奪う攻撃を放つその時まで奴らを睨み付けていた。そして艦底の3連装砲の砲身に緑色の光が宿った。

 

「来るぞぉぉぉぉ!」

 

発射された何十本ものショックカノンをたった1隻で食らった「いずも」は艦内の燃料・弾薬に引火し,そのまま盛大な爆発を起こす。

 

爆煙が晴れた海面に「いずも」の姿はなく,乗っていた520名もの乗員に生存者はいなかった。




・自衛隊隊員について
町田さんなどはオリジナルですが、山本さんはオリジナルの名前をつけて出させて頂きました。

荒木さんは竜の伝説編で第1護衛隊群司令をしていた人で,継続する形で登場させました。
山本さんは原作1巻位しか出ていませんが,今回登場させて頂きました。
登場と共に退場となりましたが···········

・スプレッドポッド
アンドロメダ級が搭載している重力子スプレッドを参考に,開発された航空兵器。主にテレスガーベーターの主翼の下に取り付ける。

1基あたり10門のスプレッド発射口を備えており,1機あたり最大で20発のスプレッドが発射出来る。
スプレッドは発射してから一定時間が経過すると,何倍にも膨張して敵機やミサイルを破壊する。

スプレッドを発射する為にポッドには小型のエンジンを搭載しており,これをブースターとしても使用できる。

実をいうとこれは即興で思い付いた兵器。当初はミサイルポッドだったが,“ミサイルが高価で勿体無い”としているミルメリアの理論と矛盾すると感じたので,スプレッドポッドに変更しました。

ですが寧ろ艦載機の武装として搭載できるなら,軍艦にも積めるじゃんという更なる矛盾が発生しているような·······

・無理やりプログラムを弄った艦対艦誘導弾
これは空対空誘導弾(SAM)は威力不足だから,どうにかして艦対艦誘導弾(SSM)を発射できないかと考えて思い付いた兵器。

奇しくもハープーンに高空を飛ぶモードがあったから,助かった··········なんて思ってたら原作で全く同じ兵器が出た。

これマジで偶然です。原作見てから思い付いたとかじゃないですよ!!


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東京炎上

話を分けることで投稿頻度を高めようとしたが、結局8月前半は更新できなかった·······というよりもう9月になりそう。

当初は日本側の回は最初の1回だけで終わるはずでした。
それが3回に分けて投稿する事になりました。全部合わせると1万5000~20000字ぐらい行くんじゃないですかね?



第2飛行隊は艦隊の露払いとして東京(攻撃目標)に向けて,ノルースのサファイアの様に青く染まった空を飛んでいた。主翼に吊り下げられたスプレッドポッドをブースターとして使用する事で,重いスプレッドポッドによる速度低下の影響を最低限に抑えていた。

 

飛行隊長 デレビア・カノ・ファンベナイアはノルースの美しく染まった空を眺めていた。ミルメリア本星の空も同じように蒼く染まっていたが,彼はミルメリア(生まれ故郷)とノルースの空は言葉では表せないが,違っている様に見えていた。

 

「良い空だ。綺麗で美しい。」

『見~つけたぁ!!』

「っ!?·······もう来たのか····」

 

彼が美しき空に心を落ち着かせていると,それを邪魔するかの如く甲高い声が無線に入る。デレビアは雰囲気を一瞬でぶち壊した犯人に該当するのは1人しかいなかった。

 

彼が乗るテレスガーベーターの下から,別のテレスガーベーターが上がってきて,同じ高度で並ぶ。

 

2機とも同じテレスガーベーターだったが,デレビアの機体は重いスプレッドポッドを下げているのに対して,隣の機体は主翼の両面にミサイルを満載していた。

 

見るからに機動性が自機より良さそうな機体を見て,デレビアは全部を理解した。そして答え合わせの様に,隣の機体のパイロットから通信が入った。

 

『どうも~もう追い付いちゃいましたよ~鈍間な鳥さん達~』

「仕方ないだろ,これでも燃費を抑えている方なんだから。それに君のせいで雰囲気が台無しだ。」

 

メディナ戦隊唯一の女性飛行隊長 カフィス・ポル・ロードネルシェはその甲高い声でデレビアに話す。静かな場所が好きなデレビアにとって彼女は騒音そのものだった。

 

デレビアは機嫌を悪くしたが,カフィスはそんな事を気にしておらず,甲高い声で話を続けた。

 

『でもさ~あなたがつけているスプレッドポッドって本気を出せば,もっと速度出せる筈ですよね?』

「バカか? 本当の緊急時以外ではフル出力では使うなと航空学院で習っただろ。忘れたのか?」

 

テレスガーベーター自体のエンジンと,スプレッドポッド(ブースター)をフル出力(パワー)で使用した場合,テレスガーベーター自体の最高速度を大きく上回るマッハ3で飛ぶことが出来るが,あまりの速度に直進しか出来ず,加えて機体に負荷がかかり,燃費も非常に悪化するとデメリットしかない為に,試験以外に使われることは殆んどなかった。

 

勿論これは2人の母校である パラフェライル航空学院で試験にも出る必修事項として習わされていた。そんな重要な事すら忘れていそうなカフィスはデレビアは溜息をついた。

 

刹那ヘルメットのレーダー画面に複数の機影が写る。機影は編隊の真っ正面にいるので,間違いなく敵機だ。

 

『敵機発見!! それじゃあお先に~』

 

そう言ってカフィスの機体はエンジン出力を上げて,前方へと去っていく。それに第3飛行隊の機体が続いていく。

 

第2飛行隊は再びさっきの状態へと戻った。

 

「五月蝿いのがいなくなった。これでまた静かに···!?」

 

漸く静かになった無線に入れ替わる様にミサイル接近のアラート音が響く。ミサイル接近という事実を脳が認識する前に隣を飛んでいた機体が爆発する。続くように後ろを飛んでいた2機も爆発して墜ちていく。

 

重いスプレッドポッドを搭載したテレスガーベーターは機動性が考えられない程低下しており,ミサイル。回避など不可能だった。

 

「ミサイル!? どこから!?」

『隊長!! 下に艦隊が!!』

 

仲間からの連絡を受けたデレビアはコックピットのボタンを操作して機首のガンカメラの画面を見る。ガンカメラが写し出した映像には数隻の軍艦の姿が写っていた。灰色の船体をした船の1隻から白い煙が上がっていた。

 

「あの艦か·····」

 

画面の先には3機のテレスガーベーターをSM-2(スタンダードミサイル)で墜とした「CG-54 アンティータム」(犯人)の姿が写っていた。

 

その周りにも同じような船が集まっており,「DD-152 やまぎり」・「DD-153 ゆうぎり」(その内の数隻)Mk.29ミサイル発射機(箱形の砲塔)からシースパロー(ミサイル)を発射していた。

 

ただミサイルの行き先は第2飛行隊ではなく,第3飛行隊だった。下方からの攻撃に重石を積んでいない第3飛行隊の機体は軽やかに動いてミサイルを回避しようとしているが,この状態ではまともに戦闘など出来なかった。

 

『デレビア!! 下の艦隊を何とかして!!』

 

カフィスからの支援要請がデレビアの耳に聞こえる。デレビア自身も同じ部隊の仲間をやられていた為に,彼の戦闘意欲に火がついていた。

 

「全く要求の多いお嬢様だな。だがこっちもやられているんだ!! あの艦隊を黙らせるぞ!! 全機続け!!」

 

デレビアは操縦桿を倒して機体を下に向ける。重い機体の動きは鈍足だったが,デレビアは手慣れた動きで機体を操る。

 

残りの機体もデレビアに続くべく動き出したが,その瞬間に彼らは混乱に陥った。

 

『敵機反応だと!? どこから!?』

『上だ!! 上から敵機がぁ!?』

「なっ!?」

 

無線の混乱具合から生命の危機を本能で感じたデレビアは無意識の内にボタンを押し,ブースターの出力を一段階強くした。

 

ブースターの出力も相まってデレビアの機体はより一層突き進む。咄嗟の判断で状況を切り抜けたデレビアだったが,重いスプレッドポッドを搭載していた仲間は充分な回避行動も出来ないまま,ミサイルの餌食になった。

 

第2飛行隊を上空から奇襲をかけた第201飛行隊(ファイティング・ベアーズ)第304飛行隊(テング・ウォーリアーズ)第306飛行隊(ゴールデンイーグルス)の一斉攻撃によって一瞬で第2飛行隊は9割の機体を失った。

 

辛うじて攻撃を免れて生き残った機体もF-15J(戦闘機)04式空対空誘導弾(空対空ミサイル)や,軍艦から発射された艦対空ミサイルによって次々と数を減らしていった。

 

「駄目か········」

 

デレビア自身も回避できない事を悟ったと同時に,|「DDG-62 フィッシジェラルド」から発射されたESSM(ミサイル)が機体に命中して爆発した。

 

それから数分も経たない内に第2飛行隊の機体は1機もいなくなった。そして第2飛行隊に続くように第3飛行隊も艦隊のミサイル攻撃と,米海軍第5空母航空団第102戦闘攻撃飛行隊(ダイヤモンド・バックス)の集中攻撃で,日本の空からいなくなった。

 

 

東京を囲むように張り出した房総半島。水に囲まれたこの半島の洗濯に館山市は存在している。里見八犬伝の舞台となったこの町の一角に海上自衛隊の館山航空基地がある。

 

日本海軍の基地を前身とするこの基地には,本来なら哨戒ヘリコプター SH-60J/K(シーホーク)を配備する第21航空群が駐留していたが,現在この基地には陸上自衛隊松戸駐屯地配備の第2高射特科群第334高射中隊所属の03式中距離地対空誘導弾 8両が展開していた。

 

重装輪回収車をベースにした車体に乗せられた発射装置は既に立ち上がっており,指示さえあればいつでも発射出来るように準備してあった。

 

発射装置に加えて,レーダー等のミサイル発射を補助する車両も多数展開している為に,館山基地の滑走路は半分以上が車両によって埋まっていた。

 

その内の1両 73式大型トラックに乗せられた対空戦闘指揮装置内で中隊長の立川弘美ニ等陸佐が画面と睨みあっていた。

捜索兼射撃用レーダー装置が探知した情報はレーダー信号処理・電源車を経由して対空戦闘指揮装置へと伝えられる。

 

発射装置と同じく重装輪回収車に乗せられたアクティブフェーズドアレイレーダーは東京に向かって真っ直ぐ突き進むミルメリア艦隊を正確に探知していた。

 

「まさかこうも正面突破してくるとは·······奴らはそれほどに自信があるのか?」

 

彼自身遥か上空から東京へ直接乗り込むか,迎撃が難しくなる陸地を通ってくると予想しており,正面から突っ込んでくる事は選択肢から除外していたが,除外した選択肢が正解だったことに驚きを隠せていなかった。

 

だが東京湾から来るということは,日本側もかき集めた陸海空の全戦力をミルメリア艦隊に投入できる事を意味していた。

 

(空自のF-2A・F-4EJ改(ファントム)と米空軍のF-15E(ストライクイーグル)が空対艦ミサイルを上から,海自と米海軍の艦艇が艦対艦ミサイルを下から叩き込む。

そこに我々と空自のPAC-3(パトリオット)が畳み掛ける。どこまでシナリオ通り進むか分からないが,奴らは自分の意思でここに来たんだ。盛大に出迎えないとな)

 

これから戦う相手は駆逐艦1隻の損害と引き換えに、3つの航空隊と1艦隊が全滅する大損害を負わせた自衛隊処か日本史でも最強クラスの強敵だった。

 

だが先程の航空戦で2つの航空隊を全滅させた為に,我々でも何とかすれば抗えるのだと彼は確信していた。

 

「隊長。攻撃開始時間です。」

「始まったか。」

 

隊員の言葉で立川が左手のアナログ式腕時計を見ると,ちょうど先程通告された飽和攻撃開始の時間になっていた。

 

攻撃開始の通信を受け取った飛行隊と艦隊は一斉に動き出す。

 

空自の第3飛行隊のF-2Aと第301/302飛行隊のF-4EJ改(ファントム)からは93式空対艦誘導弾(ASM-2)が,米海軍の第115戦闘攻撃飛行隊(イーグルス)第195戦闘攻撃飛行隊(ダムバスターズ)F/A-18E(スーパーホーネット)からはAGM-84J(ハープーン)が発射され,艦隊上空から襲いかかる。

 

海上の第11護衛隊と米軍第7艦隊に加えて海中に展開している第2潜水隊群からRGM/UGM-84(ハープーン)が発射され,ミルメリア艦隊へと突き進む。元から高空巡航モードを有している何十発もの(もり)は約マッハ0.8の速度で空を切り裂くように進む。

 

加えてミルメリア艦隊を少しでも混乱させるべく,EC-1と第141電子攻撃飛行隊(シャドー・ホークス)EA-18G(グラウラー)による電子対抗攻撃(ECM)が実施されていた。

 

無論迫って来る攻撃にミルメリア艦隊も黙ってはおらず,電子対抗攻撃(ECM)を受けながらも,対空レーザーを周囲にばらまき,主砲からショックカノンを放って迎撃していた。

 

ショックカノンと対空レーザーは多くのミサイルを船に当たる前に墜とし,飛行隊や艦隊にも被害を与えていたが,上下同時の飽和攻撃とジャミングの影響もあるのか,徐々にミルメリア艦隊に被害が出始めた。

 

『第301飛行隊半数が撃墜されました!! 被害甚大!!』

『「DD-154 あまぎり」が真っ二つに!!』

『駆逐艦1隻撃破確実!! 』

重巡洋艦(戦艦)1隻,駆逐艦1隻被弾!!』

 

2発の93式空対艦誘導弾(ASM-2)と1発のUGM-84(ハープーン)が直撃した駆逐艦「ライヴェ」は高度維持が出来なくなり,艦首を下に向けながら落下を開始する。

 

重力に従って降下した「ライヴェ」は海面に触れる前に大爆発を起こして,海に漂うゴミとなった。

 

撃沈出来たのは「ライヴェ」のみだったが,重巡洋艦と軽巡洋艦 1隻ずつと駆逐艦2隻が被弾して,黒煙をあげていた。

 

別の場所から撮影された映像を見ながら,立川は標的を定めた。

 

「あの被弾している艦を中心に狙おう。1隻でも撃沈できれば優位に立てる。」

 

立川の指示が隊員の操作で対空戦闘指揮装置から,高機動車に乗せられた幹線無線伝送装置と幹線無線中継装置を経由して射撃管制装置へと送られる。

 

攻撃目標がミサイル弾頭内の誘導装置に入力され,準備が完了した事が立川に知らされる。準備完了を確認した立川は迷うことなく合図を言った。

 

「発射ぁ!!」

 

立川の掛け声でスイッチが押され,03式中距離地対空誘導弾が白煙を上げながらキャニスターの蓋を破って,飛び立つ。1両あたり6発,全車で計48発の弾頭が飛翔し出した。

 

数秒遅れて習志野と武山の分屯地に展開している空自の第1高射群第1/2高射連隊のPAC-3(パトリオット)もPAC-3弾が発射される。

 

更なる攻撃にミルメリア艦隊も主砲と対空レーザーの発射機をミサイルへと向けて迎撃を開始したが,先程から続いた飽和攻撃の際にもフル使用していた為に,それぞれの発射機に不具合やら故障が出ており,まともに迎撃出来ていなかった。

 

拡散ランチャーを使うにも艦隊との距離が近すぎて巻き込まれる可能性が高く,ミサイルや魚雷も元からの勿体無い精神がこの危機でも作用して,発射を躊躇っていた。

 

その為に4割程のミサイルが迎撃網を突破して艦隊へと突き進み,次々と被弾する。

その内の2発が重巡「カルファティア」に命中する。エンジン部分と艦橋へと1発ずつ直撃し,人間で言うと脳と心臓を同時にやられた船はもはや死んだと同じだった。

 

重巡洋艦(戦艦)2発着弾!! 落ちていきます!!」

 

「カルファティア」は右に傾きながら降下を始め,そのまま10階建てのビル程の水飛沫を上げて,東京湾へと滑り落ちた。

 

水中へと沈んだ「カルファティア」は大爆発を起こし,先程の水飛沫を軽々上回る高さの水の柱が出現する。巨大な水の柱はミルメリア艦隊に甚大な一撃を与えた証拠として立川らに写った。

 

「よくやったぞ。これで少しは優位に立った·····!?」

 

立川が安堵した瞬間,水柱を10本以上の緑色のショックカノンが貫く。ショックカノンは館山基地の上空を通って,それぞれが海を切り裂き,住宅地へと着弾した。

 

切り裂かれた箇所からは爆発が幾度も発生し,直撃を免れた家々も飲み込む。館山は東京から離れている事から,自主避難とされていた為に市内には多くの住民が残っていた。

 

安全だろうと思われていた館山は一瞬で悲劇の現場と化し,多くの市民の命が奪われた。

 

「やりやがった······」

 

立川は心髄まで動揺する。立川ら自衛隊はミルメリアが,フェン王国で観光客200名を殺害し,日本国民に民族浄化(ジェノサイド)を宣言したパーパルディア皇国の様な奴らだと伝えられていたが,ミルメリアはパーパルディアよりも何倍も残忍で恐ろしき存在であると同時に,我々では絶対に勝てないという事実を目の当たりにした。

 

「市街地を撃ったぞ!!」

「あいつら正気か!?」

「どうするだよ!!」

 

隊員達もミルメリアの恐ろしさを目の当たりにし,冷静さが失われる。冷静さが失われた隊員達に畳み掛けるかの如く戦隊唯一の航空母艦であり旗艦の「レパグラン」からの砲撃が基地を切り裂く。

 

ショックカノンは滑走路のアスファルトを意図も簡単に抉り,展開していた03式地対空誘導弾の車両達や建物を真っ二つに裂いた。

 

03式の代えの弾頭を搭載していた運搬装填装置搭載車両や館山基地内の弾薬庫のAGM-114(ヘルファイア)や97式/12式魚雷が次々と誘爆する。

 

爆発は瞬く間に基地を飲み込み,燃料タンク内の燃料にも引火して激しい火柱を上げて燃え上がる。爆発と炎は立川ら第334高射中隊と館山基地の要員を一瞬で飲み込み,命を奪った。

 

館山基地は一瞬で機能を失い,爆発と業火に包まれる地獄の様な場所と化したが,それは館山の町も同じだった。基地の()()()感覚で町にショックカノンが何本も降り注ぎ,館山の町は一瞬で惨劇の舞台へと変わった。

 

幾つものショックカノンが地面と建物を切り裂き,町を簡単に破壊した。そもそも市民が避難していなかったことに加え,東京都心等から避難してきた人々もいたことから,数えることを躊躇うほどの一般市民が犠牲となった。

 

メディナ戦隊は重巡と駆逐艦を1隻ずつ失う損害を受けたが,大気圏外に待機している第35艦隊の増援と第4護衛隊群を全滅させた軽巡1隻と駆逐艦3隻が合流して一気に体勢を立て直した。

 

その結果館山基地に続くように艦隊と航空隊・地対空ミサイルも無力感し,障害を排除した。

 

そしてミルメリア艦隊は遂に東京への攻撃を開始した。

 

 

茨城県中部に位置する百里基地。元々は航空自衛隊の基地だったが,2010年からは茨城空港としても使用されていた。

 

関東唯一の戦闘機が運用できる基地で,2つの戦闘機部隊と偵察航空隊が配備されていた。本来であればこの3つの飛行隊にはそれぞれアメリカ製の最新鋭ステルス戦闘機F-35A(ライトニングⅡ)と無人偵察機RQ-4(グローバルホーク)が配備される予定だったが,日本の異世界転移によって予定は消滅し,現在も初飛行から50年近く経っているF-4EJ改(ファントム)RF-4E/EJ改(リコン・ファントム)が配備されていた。

 

機体自体が古いために日本唯一の高速偵察機であるRF-4E(リコン・ファントム)以外は実戦には投入されていなかったが,今回の事態を受けてこの2つの部隊にも出現指示が届いた。

 

その為に93式空対艦誘導弾(ASM-2)を搭載出来るF-4EJ改(ファントム)と,機首にM61バルカン砲を残しているRF-4EJ改(リコン・ファントム)が数合わせとして出撃しているので,現在百里基地に残っているのは固定武装を持たないRF-4E(リコン・ファントム)()()()F-4EJ改(ファントム) 1機だけだった。

 

そのたった1機だけ残っていたF-4EJ改(ファントム)だったが,エンジンの緊急修理を終えて,21Rから青い空へと飛び立っていった。

 

パイロットの牧野浩介はコックピット内の機器を再確認しつつ,思考する。いざ出撃しようというときにエンジンが不調を起こした為に,彼の出撃は見送られた。

 

部隊内では“帰れないかもしれない”と言われていたが,誰も出撃拒否をする事なく,牧野以外の全員が二度と帰れないかもしれないフライトへと飛び立っていった。

 

そしてその言葉の通り彼が所属している第302飛行隊の被害は甚大だった。第4.5世代ジェット戦闘機のF/A-18E(スーパーホーネット)とF-2Aが簡単に撃とされているのだから1世代前のF-4EJ改(ファントム)の被害が甚大なのは誰にも想像できた。

 

だが彼は逃げようとはしなかった。同じ仲間達は迷わず行ったのに,自分だけが行かないという選択肢を選べる筈がなかった。

 

牧野はヘッドセットで管制塔へ通信を行う。

 

「エヴォーラから管制塔へ。状況は今どうなっているんだ?」

『管制塔からエヴォーラへ。状況は·········もう駄目だな。増援の部隊も来たらしく,かなり押されているらしい。都心部には既に甚大な被害が出ているらしい。詳しくは分からないけどな。』

「そうか·······」

 

牧野はそう返す。分かっていたのかもしれなかったが,こうして言われたことで彼は明確に認識できた。

 

そんな彼のヘッドマウントディスプレイ(HUD)に館山市の隣 南房総市に位置する峰岡山分屯地に配備されているJ/FPS-4(警戒管制レーダー)が捉えた情報が写る。

 

そこの写っていたのは巨大なミルメリア艦ばかりで,友軍機を意味する敵味方識別装置(IFF)の反応はほぼないに等しかった。

 

現状を再度,そして明確に認識した牧野は管制塔に連絡を取る。

 

「なあ。アフターバーナー(A/B)使っていいか?」

『おい待て。アフターバーナー(A/B)を使うと帰りの燃料が確実になくなるぞ。いいのか?』

「こんな時に帰りの燃料なんか気にしてなれるか。それにどうせここには帰れないんだろ?」

『········使うタイミングを見極めろよ。』

 

牧野の辛辣な発言に返す言葉もないのか,諦めたような声で管制官は容認した。確認した牧野はボタンを操作する。ジェットエンジンの排気に燃料が吹き掛けられ,更なる高推力を得たF-4EJ改(ファントム)は徐々に速度を増していく。

 

空を彷徨う亡霊(ファントム)の如く進む牧野は千葉県の佐倉市上空を飛行して東京へと入ろうとしていた。そんな彼の前に広がっていたのは,まさに惨劇そのものだった。

 

東京都心上空に侵入したミルメリア艦隊はビル群に向けて艦上部の3連装カノン砲から発射されたショックカノンはビルを意図も簡単に幾つも貫き,そのまま斜めにずらしてビルを切断する。

 

真剣で切られた竹の様に切られたビル群はそのまま重力に従って地面へと落下し,土煙と共に崩壊する。

 

艦底の主砲も地上に向けて発射されており,土煙と共に地面が切り裂かれていった。

 

東京には避難命令が出ているとはいえ,1300万にも及ぶ人々を数日で避難させるなど不可能に均しく,現に大勢の人々が東京から脱出できずにいた。

 

この攻撃によって何人の人々が巻き込まれている等,考えたくもなかった。

 

「っ!?·············嘘だろ·····」

 

予想よるも遥かに酷い現状に牧野は感じたことのない恐怖を感じる。自分が落とされていないのは,まるで自分がミルメリア(奴ら)の手のひらで踊らされているだけなのではと疑ってしまう程だった。

 

周りには自衛隊と米軍(友軍)の機影は見えず,この場にいるのは自分だけだった。牧野は今仲間のいない孤独な亡霊だった。

 

だが牧野は諦めようとはしなかった。今この場にいるのは自分だけという事は,自分しかこの状況を変えることが出来ないという事の裏返しだった。

 

そんな状況に牧野は逃げるという選択肢はなかったが,同時に課題も認識していた。

 

牧野の機体は機動性を重視する為に重い空対艦誘導弾(ASM)は搭載されておらず,4発の90式空対空誘導弾(AAM-3)のみが搭載されていた。

 

空対空誘導弾(AAM)4発だけではどんなに当たりどころが良くても,駆逐艦すら撃沈出来ないのは明白だった。

 

状況は非常に厳しかったが,牧野は打開できるかもしれない手段を思い付いていた。それは同時に自分は死ぬことが確定しているものであったが。

 

だが牧野は東京に残っている大勢の人々の命を守るべく,百里の管制官に通信を行った。

 

「エヴォーラより管制塔へ。海上にいる艦もしくは海に近い艦はいますか?」

『ちょっと待て······駆逐艦が1隻いるが·········おいまさかお前!?』

「········本当に基地には帰れなさそうだな.」

 

そう言って無線を一方的に切ると,操縦桿を強く握りしめた。J79-IHI-17Aターボジェットエンジンの出力を最大限まで上げ,同時にアフターバーナー(A/B)のスイッチを押して,速度を最大限まで上昇させた。

 

大気を切り裂きながら流星の如くオンボロの亡霊(ファントム)は突き進む。ミルメリア艦隊も漸く対空レーザーで迎撃を開始したが既に遅く,牧野は海上にいる駆逐艦へと一直線に突き進んでいた。

 

「こんなあっさり人生が終わるなんてな······後悔なんてないぜ!!」

 

牧野はより一層操縦桿を押した。牧野を乗せたF-4EJ改(ファントム)は駆逐艦「トエハ」の艦橋へと命中した。

 

艦橋という頭脳を失った「トエハ」は制御を失い,そのまま東京湾の海面へと突き進んでいった。

 

海面に着水した「トエハ」は海水を巻き込んで大爆発を起こした。これによってメディナ戦隊は重巡1,駆逐艦3隻を失う大損害を受けた。

 

だがミメディナ戦隊は撤退せずに攻撃を続行した。寧ろ艦を失った腹いせとして徹底的な攻撃を実施して被害を拡大していくのだった。




・パラフェライル航空学院
ミルメリアにある戦闘機パイロットを育成する学校。

モデルは日本国召喚に出てくる学校系。実をいうとこういう学校系好きだから“出してみるか”といった軽いのりで出したから詳細など知らん。

・ミルメリア艦隊が苦戦した理由
前々回と前回は攻撃を3段階に分けて行った事で,各個撃破されてしまいましたが,今回は一斉に攻撃を行った事で迎撃が追い付かず苦戦を強いられました。

加えて2航空隊が日米戦闘機による飽和攻撃で全滅されられ,艦隊や地上のミサイル群を無力化出来なかったことも理由の1つです。

・立川弘美と牧野浩介
この2人はオリジナルキャラクターなのですが,一応モデルがいます。日本のモータースポーツを知っている方なら多分分かると思います。

分からない人に向けてヒントを書いておきますと,立川は38とZENT。牧野は100とエヴォーラとRAYBRIGとSTANELY。

・まるで自分がミルメリア(奴ら)の手のひらで踊らされているだけ·······
これにはちょっとした理由があります。次話ほどで紹介されると思います。

連絡?ですが,この夏休みに自動車学校に通うことになったので更新がより遅くなるかもしれません。


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合同軍と古代兵器

なんとか頑張って早めに更新できました。今回も一方的にやられる回ですが,あと1話だけお待ちいただければ爽快な展開になると思います。

あと艦艇の設定集とか見たいですか?


先進11ヵ国会議が開かれているカルトアルパスから西に500kmの海域に位置するマグドラ群島。海流の乱れや霧が発生しやすい為に,地元民すら近寄らず,島の殆んどが無人島になっている。

 

だがその状況を利用して先進11ヵ国会議中はカルトアルパスを母港とする神聖ミリシアル帝国海軍 第零魔導艦隊が周辺海域で訓練に勤しんでいた。

 

そんなマグドラ群島沖の海域では砲撃と爆発の轟音が絶え間なく鳴っていた。それは訓練ではなく実戦を行っているのだと周囲に明確に分からせていた。

 

第零式魔導艦隊は絶え間なく上空のミルメリア艦隊に向けて砲撃を行っていた。各艦の魔導砲から発射された砲弾は青い軌跡を描きながら,流星の如く飛んでいったが砲弾は標的に当たる前に速度を失い,重力に掴まってそのまま海面へと次々と落ちていった。

 

第零式魔導艦隊は航空戦力こそ有していないが,神聖ミリシアル帝国海軍の最新鋭艦のみが集められており,練度も含めて世界最強の艦隊として君臨していた。

 

だが今この場にこの艦隊が世界最強だと思うものは誰もいなかった。自艦隊の砲撃は全く当たらず,逆に10隻しかいないミルメリア艦隊の砲撃で艦艇は意図も簡単に沈む。

 

既にゴールド級魔導戦艦「ガラティーン」と重巡洋装甲艦「アルミス」等多くの艦が海中へと没していた。旗艦のミスリル級魔導戦艦「コールブランド」もショックカノンが1発だけ,魔法障壁で強化された帯魔性装甲材を簡単に貫いていて損傷していた。

 

「コールブランド」の艦橋内で第零魔導艦隊司令官アルテマ・バッティスタは苦い顔でミルメリア艦隊を見つめていた。

 

最新鋭の艦艇が敵艦を沈められずに,赤子の如く簡単に沈んでいく事実に彼は自分達が抱いていた世界最強の威厳は井の中の蛙だったことを痛感していた。

 

「第零魔導艦隊がこんなにあっさり沈んでいく········我々は案外弱かったんだな····」

「気を落とさないでください。あんな奴らを相手にするなんか想定されていませんし。」

「だな。()()()も苦戦している様だしな······」

 

艦長のインフィール・クロムウェルの言葉を受けてバッティスタは右を向く。視線の先には第零魔導艦隊とは全く別の艦隊がミルメリア艦隊に砲撃を行っていた。

 

その艦隊はミリシアル艦隊の白い船体とは真逆の灰色の船体に,円柱の構造物からは炭のごとく真っ黒な煙を勢い良く排出している艦艇のみで構成されていた。

 

グラ・バルカス帝国東征艦隊こと第61任務部隊はカルトアルパスに突入する「グレートアトラクター」の露払いと威力偵察の任務を受けていたが,ミルメリアという共通の敵が現れた為に本来戦うはずだった第零魔導艦隊と共闘していた。

 

だが第61任務艦隊も有効打を与えられず,オリオン級戦艦「プロキオン」とタウルス級重巡洋艦「プリマヒヤドゥム」・「タウタウ」等を喪失しており,状況が厳しいことに変わりはなかった。

 

2艦隊に対して上空に浮かぶミルメリア艦隊は1隻も失っていない処か被弾すらしておらず,ただ一方的に攻撃を行っていた。一定間隔で発射される砲撃は最早手を抜いているか,遊んでいると思えるほどだった。

 

「「クラレント」が!!」

 

「コールブランド」の同型艦 「クラレント」に戦艦(艦隊で一番大きな艦)が発射したショックカノン3発が命中して,霊式38.1cm3連装魔導砲の天板を簡単に融解させ,船体を貫き通す。

 

ショックカノンは第1砲塔下の弾薬庫内の38.1cm砲弾を誘爆させ,第2砲塔の弾薬庫も巻き込んで大爆発を起こす。2つの弾薬庫の爆発は「クラレント」の船体を内側から破壊して,船体を真っ二つに切り裂く。

 

ミリシアルが誇る最新鋭のミスリル級魔導戦艦ですらもたった1撃で沈んだ衝撃的な事実だったが,バッティスタは驚きもしない。もはや現実を受け入れられず,呆れる様な表情を浮かべていた。

 

「「クラレント」ですらもか·······もう叶う術はないな。」

「そうみたいですね·······あの航空隊も一瞬でやられましたしね。」

 

バッティスタの言葉にクロムウェルも答える。2人は最早驚く気力すらなかった。そしてとある光景が2人の脳裏に浮かぶ。

 

艦隊戦の前に周辺基地からエアカバーとして展開したジグラント2 25機と,東征艦隊の航空戦力を一任している第17任務部隊のペガスス級/ペルセウス級航空母艦から発艦した200機ものアンタレス07式艦上戦闘機やシリウス型爆撃機・リゲル型雷撃機の合同航空隊がミルメリア艦隊に上空から襲いかかったが,対空レーザー砲で瞬く間に撃墜され,双方とも戦果を上げられずに全滅していた。

 

グラ・バルカスの機体とミリシアルが誇る天の浮舟も緑色の光で簡単に落とされていく。最新鋭の戦艦と天の浮舟が文明圏外国のワイバーンや魔導戦列艦の如くやられていく様子に,世界最強のプライドは完全に破壊されていた。

 

最早抗う事は出来ない。抵抗しても1発も攻撃を与えられない。何にも変えがたい絶望が艦隊を支配していた。

 

「グラ・バルカス艦隊戦艦被弾!! 被害甚大!!」

 

見張り員の悲鳴に振り返ると,第61任務部隊の旗艦「ベテルギウス」に駆逐艦3隻のショックカノンの集中砲火を受け,爆発炎上していた。戦艦ではあったが,旧式となっていたオリオン級は瞬く間に燃え上がる。

 

ビルの如く威厳を醸し出していた艦橋は崩れ落ち,前甲板の35.6cm連装砲は上を向いたまま沈黙していた。真っ黒な黒煙を上げて激しく炎上する様子に,乗組員と艦自体の生存が絶望的な事が目に見えて分かった。

 

バッティスタは戦闘前に無線で話し合った第61任務部隊の司令官 アルカイド・パフティールの事を思い出したが,あんな状況での生存は絶望的だった。

 

旗艦がやられたことで残された艦艇が混乱し出す。辛うじて保たれていた冷静さが遂に失われ,不規則に四方八方に動き出した艦艇は,ミルメリア艦隊の絶好の標的だった。

 

最初に狙われたエクレウス級駆逐艦「ベレロフォン」は,ショックカノン3発が命中して,真っ二つに切り裂かれる。約100mの船体は直ぐに海中へと沈み始める。

 

周囲の残存艦艇は空のミルメリア艦隊に向けて砲撃する艦や,何としてでも攻撃から逃げ出そうと旋回する艦・混乱によって正常な判断力を失った為に何も出来ずにその場に留まる艦が混在して,第61任務部隊は集団では無くなっていた。

 

その結果は誰にも分かるように,“下手な鉄砲も数撃てば当たる”の理論で行われた砲撃はあらぬところに飛んでいき,無我夢中で逃げようとするキャニス・ミナー級駆逐艦「アンバーサー」は周りが見えず,タウルス級重巡洋艦「エルザー」と衝突する。僅か2000t程度の「アンバーサー」の船体が紙のようにグシャグシャになり,衝突の衝撃で「エルザー」の砲塔下の弾薬庫が爆発して2隻とも激しく炎上する。

 

旗艦という名のリーダーを失い,無法地帯と化した第61任務部隊の様子を見ていたバッティスタはある覚悟を決めた。

 

「通信士!! 最大出力の魔信で呼び掛けよ!! “全艦全速で群島の基地へ退却せよ!! 敵は「コールブランド」が全て引き付ける”と!!」

「はっ····はい!!」

 

バッティスタの指示に通信士は直ぐに答えた。彼の指示は第零魔導艦隊の敗北を意味していたが,1発も命中弾を出せずに,半数の艦を失った現状では敗北処か完敗だった。

 

グラ・バルカス艦隊も崩壊した今では,彼らに抵抗する術が消滅した事を意味していた。

 

冷静さを保っていたバッティスタは1隻でも逃すべく,最大出力の魔導通信で全艦に指示を伝えた。最大出力ならばグラ・バルカスの機械式無線でも,拾える確立が上がるだろうという急場凌ぎの策だった。

 

だが急場凌ぎの策は効果があったようで,第零魔導艦隊も第61任務部隊もこの海域から何としてでも逃げるべく旋回を開始していた。

 

だが「コールブランド」のみは旋回していなかった。寧ろ速度を上げてミルメリア艦隊に突き進んでいた。

 

「皆スマンな·······この艦で時間を稼いでいる間に1隻でも多く逃すんだ!!」

 

バッティスタの決断にクロムウェル以下艦長要員全員が従った。魔導エンジンの出力を上げ,できる限りの魔力を装甲へと注いで硬度を増していた。

 

ミルメリア艦隊の前衛として展開している3隻の駆逐艦の3連装カノン砲が「コールブランド」へと向く。数秒のラグを開けて連射されたショックカノンが魔法障壁を纏った装甲を貫通して,「コールブランド」の船体を破壊する。

 

約20発のショックカノンが命中した「コールブランド」は艦内の弾薬や魔石が誘爆した為に,内部から大爆発を起こす。大爆発によって生じた爆風で駆逐艦の船体も少しだけだが揺さぶられた。

 

第零魔導艦隊の旗艦「コールブランド」は司令官のバッティスタ,艦長のクロムウェル等の乗組員全員と共に海の塵となった。内部からの大爆発で船体は粉々に引き裂かれ,残骸は艦の原型を留めていなかった。

 

「コールブランド」の犠牲で少しながら時間を稼いだかに思えたが,全て誤解にだった。直ぐ様残存艦隊に追い付いたミルメリア艦隊は容赦ない攻撃を続け,両艦隊を僅か30分足らずに海の底へと沈めた。

 

 

両艦隊を文字通り全滅させた10隻のミルメリア艦隊ことエルメ戦隊はついで感覚で,マグドラ群島に点在する基地を完全破壊した。砲撃の跡地には基地の面影など残っておらず,地形すらも原型を留めていなかった。

 

4隻を先陣として派遣した為に,僅か10隻となったエルメ戦隊は,戦隊唯一の戦艦で旗艦でもある「ディメイナライト」を先頭にしてミリシエント大陸(前方の大陸)へと突き進む。

 

400m越えの船体を持つ「ディメイナライト」の艦橋では,1人の見るからに不機嫌そうな男が,座っている椅子のひじ掛けを人差し指で一定周期で叩いていた。ひじ掛けから鳴る甲高い音に艦橋要員は怯えながら,自らの業務を行っていた。

 

エルメ戦隊の名前の由来でもあり,司令官のエルメ・ザフェ・ルエンベータ少将は不機嫌だった。自艦隊に損害を出していないにも関わらず,不機嫌な理由は“戦いが一方的すぎてつまらない”というミリシアルとグラ・バルカスからすれば非常にふざけた物であった。

 

()()()()()()()が,余りにも温すぎる。もう少し抵抗があった方が面白いのに。」

『馬鹿なこと言わないで貰える!! こっちは重巡1と駆逐艦2隻を失っているのよ!!』

 

エルメの呟きに激しい声で噛みついたのは,東京を攻撃中だったメディナ戦隊の司令官 メディナだった。無傷のエルメ戦隊とは真逆にメディナ戦隊は自衛隊の総攻撃によって大損害を出していた。

 

思いもよらない大損害に艦隊司令官のペイン大将への報告をどうしようか頭を抱えていた所にエルメの発言が聞こえてきた物だから,彼女は吠えるしかなかった。

 

メディナな通信越しでも吠えたりなさそうな雰囲気が感じられたが,それを止めようとする者がいた。

 

『まあまあ落ち着け。戦闘で損害が出るのは当たり前だ。司令だって怒ったりしないだろう。』

 

メディナを宥めたのは同じく戦隊を率いてグラ・バルカス帝国に侵攻していたベリメサ・バンル・ヘンフェルメサ少将。彼はメディナと同じく空母を旗艦として為に,結構な頻度で話し合う中だった為に,彼に宥められたメディナも吠えることをやめた。

 

第35艦隊に所属している4つの戦隊の司令官の中では冷静なベリメサは,自らの戦隊で得られたデータと,エルメとメディナ・そしてアニュンリール皇国を攻撃しているクレビトから送られたデータを分析して,とある疑問を抱いていた。

 

『にしても,少し違和感はあるな。2つの国は()()が使っていた兵器を使っているが,残りは見たことすらない兵器を使っている。これは流石におかしいぞ。』

「それは同意だ。私が戦ったもう片方の艦隊は見たこともない形の艦で構成されていた。ここまで丸ごと違うのは流石に違和感があるな。

それにメディナの方には誘導魔光弾(ミサイル)があったそうじゃないか。これでどういう文明が支配している星なのかより一層分かんなくなってきたぞ。」

 

古の魔法帝国(ラヴァーナル帝国)の遺物に全てを頼っている神聖ミリシアル帝国。

 

魔帝の遺物を完全に解析して成り立ったアニュンリール皇国。

 

ユグドで幾重もの戦争を繰り返して成り立ったグラ・バルカス帝国。

 

一度国土が焦土に化しても,僅か数十年で越える発展をした日本。

 

彼らが攻撃している国はそれぞれの世界で異なる理由と経緯で発展し,世界でも有数の力を手にしていた。それ故にそれぞれの世界で最新の技術で作り上げられた兵器は唯一無二だった。

 

全く結び付かない技術で作られたそれぞれの兵器はダメージを与える,与えない関係なく彼らに難解な疑問を抱かせていた。難解にさせている理由の大半はこの星由来ではない国が2つ混じっているからなのだが,彼らにそれを知る術はなかった。

 

『それは今考える事なのかね?』

 

ベリメサの思考に水を刺すような返事をしたのは,クレビトだった。

 

艦隊の先陣としてノルース1の観測基地と駐留していたパトロール艦 2隻を全滅させたクレビト戦隊は,アニュンリール皇国首都 皇都マギカレギアの攻撃に入っていた。

 

ミルメリアの人間からしても,異常なほどの皇帝への忠義を持っている彼からすれば,ベリメサの考えている事などどうでも良かった。

 

ただ皇帝の指示通りにこの星を焼き尽くす事こそが我々の指名。そういうように考える人物だった。

 

『そのような難しいことは政府の組織がしてくれるだろうさ。今,最優先にやるべき事はこの星を不当に支配している屑どもを1人残らず消し去る事ではないのか。

それに相手は()()()()()()()()()じゃないか,今の我々に勝てない理由なんてあるのかい?』

『まあそうね。私達はそういうことは専門外だからね。私達は任せられた役目をこなす····え,ちょ·····やめてやめて!? あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』

『またやられたか·········』

 

メディナもクレビトの意見に賛成の証明をしていると,彼女の悲鳴が通信越しに響く。また1隻やられたのかとベリメサは溜め息をつく。

 

エルメも五月蝿い声に嫌気がさし,メディナの音声だけを一方的に切断する。

 

「ん?·······これは·······」

 

エルメはレーダー員の小さな呟きを聞き逃しておらず,話しかける。

 

「どうした? レーダーが壊れたりでもしたか?」

「いえ,1時方向に巨大な物体を確認しました。大きさは凡そ250m程度です。上部のモニターに写します。」

 

エルメは艦橋上部の空中に投射されたディスプレイに写されたレーダー画面を見て驚いた。そこに写っていたのは直径が260mもの円で,画面で少しずつ動いているのでこれが稼働している兵器だと認識していた。

 

エルメはレーダー画面に写っている物が,()()()()()()()()()()()()()()()()だという確信を得ていた。

 

「これは·······まさかあの()()()()()()()か?」

「詳しくは分かりませんが·······あと数分でカメラの範囲内です。確認されますか?」

「無論だ。なんなら今すぐにでも使ってくれ。」

「ぼやけますが,いいですか?」

「大体の形さえ分かれば充分だ。」

 

エルメの指示で艦底の下部艦橋に内蔵されているカメラがレーダーが捉えた艦の方を向く。カメラが最大まで拡大すると,その先には空に浮かぶ1隻の空中戦艦パル・キマイラが写っていた。

 

「やはりパル・キマイラか··········」

 

思わずエルメもそう呟く。大きさこそミルメリア艦より小さかったが,リングの船体から醸し出されるインパクトは劣っていなかった。

 

エルメ以外の3人も興味津々そうにパル・キマイラを眺める。

 

『まさかあの兵器の実物を見れるなんて········これは感謝しなければ』

『今からすれば宇宙ステーションみたいだな·······』

『どちらかといえば,宙域監視要塞じゃない?』

 

3人も歴史の教科書でしか見たことのない兵器に思わず興味を抱く。

ミルメリアからすれば()()()1()()()()()()()()()()()貴重な品物で,歴史学者が喜んで調べそうな物だったが,軍人と今の状況からすれば目の前のパル・キマイラは破壊しなければいけない存在だった。

 

「貴重な物だが,今は敵だ。あれは撃沈しなければいけない。主砲は撃てるか?」

「射程圏内です。充分いけます。」

「主砲発射ぁ!!」

 

エルメの指示で艦上部と艦底部の3連装カノン砲がパル・キマイラへと向き,緑色のショックカノンが発射される。

「ディメイナライト」に続くように重巡洋艦・軽巡洋艦・駆逐艦も3連装カノン砲を向け,ショックカノンを発射する。

 

何十本もの緑色の光が流星の如く空を飛ぶ。切り裂くように飛んでいったショックカノンはパル・キマイラ 1番機に次々と着弾する。

 

何十発ものショックカノンが直撃したパル・キマイラは煙に覆われる。煙が晴れると,そこには()()のパル・キマイラが鎮座していた。

 

「砲撃を防いだだと!? あんなに硬いのか!?」

 

対空魔導弾に対応すべく魔素で強化されていた装甲によって砲撃を防いだ事実にエルメは驚愕する。今までの相手はショックカノン1発で沈む事すらあったにも関わらず,パル・キマイラは沈む処か被弾すらしていなかった。

 

()()()()ながら予想以上の強敵だと感じ取ったエルメは沸き立った。漸く自分を沸き立ててくれる存在な上に,その存在は我々が残していった考古遺物だという事がより一層沸き立てた。

 

「まさかこんなバケモンだったとは!! これは倒しがいがあるぞ!!

主砲が駄目なら魚雷だ!! 艦首魚雷発射!!」

 

艦首の魚雷発射管から8発の魚雷が発射される。8発の魚雷はパル・キマイラの上下に4発ずつ別れて接近していく。

 

魚雷に対してパル・キマイラは外縁のリングと艦橋を結ぶ支柱に上下1基ずつ取り付けられたアトラタテス砲を稼働させた。3連装の砲身から分速3000発もの速度で光弾が発射され,豪雨の如く魚雷へと降り注ぐ。

 

誘導魔光弾を迎撃すべく造られたアトラタテス砲は製造理由を叶えるが如く魚雷を撃ち落としていく。僅か8発もの魚雷は一瞬で消え去った。

 

「まさか魚雷までも撃ち落とすなんて········こんな代物だったのか·····」

「パル・キマイラ主砲展開!!」

 

外縁のリング部に設置された15cm3連装魔導砲がエルメ戦隊へと火を吹いた。青い尾を引いて飛んでいく魔導砲弾の内2発は「ディメイナライト」に直撃する。

 

「ディメイナライト」は戦艦であったと同時に戦隊の旗艦であったために,装甲は厚く造られていた。その為に2発の魔導砲弾による被害は外壁が歪む位だった。

 

だが隣を航行していた駆逐艦「リシメス」の被害は甚大だった。15cm魔導砲弾は駆逐艦の装甲を貫通し,艦内で爆発を起こす。

 

台形の様な形をした艦橋が爆発し,艦橋前の3連装カノン砲が大爆発で海面へと落下していく。追加で命中する魔導砲弾の爆発で,駆逐艦の船体は内部から破壊され,真っ二つに引き裂かれた船体は爆発と共にそのまま海面へと落下していく。

 

沈んでいく「リシメス」にエルメは驚きを隠せなかった。

 

「駆逐艦だが撃沈させるとは!? やむ終えん9連装重衝撃ビーム砲を展開させろ!!」

 

エルメの指示で艦底の第1砲塔の前にポッカリと空いた空間から箱形の物体が競りだしてくる。競りだした物体は長方形をしており,艦首には9つの黒い穴が空いていた。

 

ショックカノンの発射装置が9つ取り付けられた9連装レーザー砲はミルメリア戦艦の最終兵器と言っても過言ではない。

 

艦正面を向いていた9連装レーザー砲は斜め下を向く。「ディメイナライト」はパル・キマイラを確実に沈めるべく,エンジンの出力を上げて上空へと上がっていった。

 

周りの8隻はショックカノンと魚雷を撃ちまくって,注意を引き付ける。牽制をしている間に「ディメイナライト」はパル・キマイラの斜め上へと到着する。

 

9連装レーザー砲の砲口には緑色の光が集まりしだす。砲口に集められたエネルギーが一定まで達すると,エルメの指示で9本の重衝撃ビームが発射された。

 

主砲から発射されるショックカノンの何倍もの威力を誇る重衝撃ビームは別物と言っても過言ではない。9本の重衝撃ビームはパル・キマイラをショックカノンから守ってきた装甲を貫いて,船体を貫通する。

 

パル・キマイラの船体を貫いた重衝撃ビームは主砲の魔導砲弾や機関の反重力魔導エンジンに使用される魔石,そして艦内に6発搭載されている超大型魔導爆弾ジビルを誘爆させた。

 

ジビルに使われている火属性魔石は崩壊する際に周囲の酸素を大量に巻き込む。それが6発全部で起きた為に広大な範囲の酸素が一気に吸い込まれる。

 

ミルメリア艦は大気圏内の運用も考慮されているので,大気を測る機器類が下部艦橋に取り付けられているので,エルメ戦隊がこの変化を見逃す筈がなかった

 

「酸素濃度が急速に低下しています!! 危険です!!」

「不味い!! 全艦離れろ!! 機関フルパワーだ!!」

 

エルメの素早い指示で「ディメイナライト」はエンジンをフル出力に上げて,上昇を開始する。残る8隻も急いでパル・キマイラから離れていく。

 

周囲の酸素を大量に取り込んだ火属性魔石が崩壊し,6発のジビルが爆発を起こす。パル・キマイラ 1号機の船体は内部から破壊され,艦長のワールマン以下魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部の乗組員を巻き込んで,崩壊していく。

 

ジビルが酸素を巻き込んだ為に周囲は一種の真空状態へと化し,超高圧力と衝撃波が周囲を襲う。エルメ戦隊はもろに衝撃波を食らってバランスを崩したが,各艦がエンジン出力を上げて乗りきった。

 

だがそれがかなわなかった艦もいた。上昇に出遅れた重巡洋艦「アルファニオア」は衝撃波でバランスを崩し,建て直す前にジビルの爆発が艦を襲った。

 

機器では計測不能な高温が艦を襲い,船体に深刻なダメージを与える。「アルファニオア」はエンジン出力を最大まで上げて,一刻でも早く逃れようとしていた。

 

その判断が功を奏して「アルファニオア」は脱出に成功したが,艦底の3連装カノン砲の砲身は融解しており,使い物にならなくなっていた。下部艦橋に至っては溶けきって,原型を留めていなかった。

 

「あれは酷いな·······急いで待避させろ。代わりに重巡洋艦2隻ぐらい寄越して貰おう。」

 

エルメは予想以上の被害に直ぐ様退却を命じた。「アルファニオア」はその指示に従って,そのまま青い空の彼方にあるミルメリア艦隊本隊が展開している黒い宇宙へと向かっていた。

 

パル・キマイラ1号機は自らの犠牲でエルメ戦隊に駆逐艦1隻撃沈,重巡洋艦1隻大破の損害を与えたが,進行を止めるまでには至らなかった。




・第零魔導艦隊
後述のグラ・バルカス艦隊とは違ってあまり改変はありませんが,今話登場した「アルミス」はWeb版から取ってきました。当初は「シルバー」という名前でしたが,ミリシアルの艦艇にネームシップは内との事なので変更しました。

バッティスタとクロムウェルさんのフルネームもWeb版で使われていた名前と合体させました。

・第61任務部隊
これはオリジナル設定で,Web版で登場した第44任務部隊から発想を得て,グラ・バルカス帝国海軍は任務部隊制度を採用している事にしています。
東征艦隊は“第61任務部隊と後述の第17任務部隊”で編成された艦隊という設定です。

この設定は私が前書こうとしていた“日本がムーとミリシアルの間に召喚される作品”で作っていた物で,それを流用したという経緯です。後述の設定もその際に作った物です。

因みに上述の作品は書くのを諦めました。でも色々作品のアイデア自体は思い付いていて,最近は日本国召喚×太平洋戦争突入寸前だった大日本帝国とか面白そうだなと思っている。

それをやる前にこの作品を一区切りさせないといけないけど。

・第17任務部隊
東征艦隊の航空戦力を担っている艦隊。第61任務部隊と同じく監察軍(特務軍)所属という設定です。旗艦はペガスス級航空母艦「ヘルウェティイ」

艦隊編成はペガスス級1隻とペルセウス級数隻······って感じかな? 実を言うと旗艦以外全く決まってないというオチ。一応司令官は決まっているけど出ませんでした。

・ペルセウス級航空母艦
ペガスス級航空母艦の前級。外見は蒼龍型航空母艦。
ペガスス級の就役で現在は監察軍(海軍特務軍)の主力空母として使われている設定。
これ以上のこと? 今話はたたでさえ後書きの量が多いので書きません。

・タウルス級・エクレウス級etc·····
オリオン級やペガスス級は外見が分かっていますが,重巡洋艦以下は分かっていないので,私の独断で酷似している艦を決めました。
公式設定ではないのでご注意してください。

タウルス級重巡洋艦→妙高型重巡洋艦
レオ級巡洋艦→阿賀野型軽巡洋艦
キャニス・メジャー級巡洋艦→長良型軽巡洋艦
エクレウス級駆逐艦→秋月型駆逐艦
キャニス・ミナー級駆逐艦→陽炎型駆逐艦
スコルピウス級駆逐艦→吹雪型駆逐艦

・駆逐艦「トエハ」を失った理由
前話でメディナ戦隊が駆逐艦「トエハ」を失った理由ですが,“他司令官と話をしていて注意が向いていなかった”というものです。
··········こう書いてみるとふざけた理由ですね。

・パル・キマイラについて
なんか色々と伏線?的な物が出てきましたね。これに関しては本編で追求する予定です。


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世界最大の戦艦

出来るだけ早く更新できる様に頑張りました。が早く更新する事にこだわったので,中身が薄いかもしれませんがご理解をお願い(強制)します。

あと前も聞いたかもしれませんが,この作品って日本国召喚の二次創作欄ではどこに入るんでしょうかね? その他でしょうか?


先進11ヵ国会議が開催されていたカルトアルパスは細長い湾の奥に位置している。最大幅が14km程しかない為に海上封鎖された場合は,文字通り身動きが取れなくなる欠点があるが,空中からの封鎖を想定していた人間はいなかっただろう。

 

ミルメリア艦隊は重巡洋艦1隻と駆逐艦3隻のたった4隻の艦隊だったが,戦力差からすれば過剰戦力だった。

 

艦隊で一番大きな艦の重巡洋艦「ディラメノア」は旗艦の役割も担っていた。それ故に艦長のツノアン・ガバノ・シェーチェリン大佐は艦隊の司令官も兼任していた。

 

ツノアンは第35艦隊の中でも特に冷酷で容赦ない攻撃を行う人物として認識されていた。その一例がミルメリアの攻撃から避難する人々を乗せた船団の護衛艦だけを沈めて抵抗する手段を失った船団を時間をかけて,恐怖を存分に味会わせた上で全滅させるという手段を取っていた。

 

そんな彼はカルトアルパスを出港してフォース海峡を進む9ヵ国で構成された臨時連合艦隊を見つめていた。

 

54隻の臨時連合艦隊の先頭を進むのは,グラ・バルカス帝国が誇る世界最大最強の最新鋭戦艦「グレードアトラスター」で,その後ろには神聖ミリシアル帝国の魔導巡洋艦8隻・ムーの機動部隊・日本国の巡視船「PLH-31 しきしま」が展開していた。

 

だがその後ろに航行している艦艇の大半が木造の魔導戦列艦と竜母で構成されていた。速度が遅い為に引き離されていたが,余りの差に別の艦隊と言っても過言ではなかった。

 

「ふむ·········数の多い木造船から狙おう。」

「宜しいのですか? 「グレードアトラスター」(先頭の大型艦)の方を先に潰すべきだとおもいますが。」

 

ツノアンの考えに副艦長が意見する。一番脅威とも取れる艦を後回しにする判断はあまり効率的では無いからだ。

だが副艦長の意見を予測していたツノアンは直ぐに返答した。

 

「構わん。例えあの大型艦であったも我々にダメージを与えることなど不可能だ。それに倒しがいのある物は後にじっくりと沈めようじゃないか。」

「そういう事でしたか。ではそうしましょう。」

 

ツノアンの意見に副艦長は直ぐに賛同した。ツノアンは下部艦橋のレーダーが捉えた艦隊の様子と周辺の地形図を見ながら,少しだけ口角を上げた。

 

「にしても不運だったな。奴らはこんな場所で戦う事になるのだから。」

「ですけど降伏しようとはしていませんね。さっきの航空隊といい,勝てないと分かって果敢に挑んでくるのが私としてはとても面白いですね。」

「確かに。最早喜劇だな。」

 

ツノアンの独り言に,同じく性格の悪い副艦長も賛同する。

 

先程この艦隊には神聖ミリシアル帝国の天の浮舟 エルペシオ3 42機とジグラント2/3・ムーの最新鋭戦闘機 マリン・エモール王国の風竜・ニグラート連合のワイバーンロードで構成された飛行隊が襲撃を行った。

本来ならばエルペシオ3は最新鋭の制空戦闘に特化した機体で,ジグラント2/3の様に爆撃を行う機体では無かったが,少しだけでもミルメリア艦隊にダメージを与えるべく本来搭載する事の無い爆弾を搭載して出撃していた。

 

だが最速のエルペシオ3でも600km/hしか出ておらずとミルメリアの艦載機と比べると格段に遅い上に,飛行隊の攻撃手段は接近しての水平/緩降下爆撃もしくは風竜の圧縮空気弾・ワイバーンロードの導力火炎弾しか手段が無かった為にミルメリア艦隊の対空レーザーによって僅か10分足らずで全滅していた。

 

航空戦力には最新鋭の技術が使われているとミルメリアでは言われており,その航空戦力が瞬殺だった為に彼らには絶対に負けることが無いという自信が生まれていた。

 

その自信は慢心と言っても良かったが,ノルース側にはミルメリア艦隊に確実にダメージを与えられる手段は無かったのだが。

 

それ故に負けることがあり得ないと言わんばかりの状況にツノアンと副艦長は気を緩めており,先程の航空隊も喜劇の一部だと感じている程だった。

 

「全艦攻撃開始。狩りを楽しむようにな。」

 

ツノアンの指示は駆逐艦3隻にも伝わると,我先にと「ディラメノア」に先行して進み出し,それぞれが標的を定めて一方的な攻撃を開始した。

 

それは貴族が余興として嗜む狩猟そのものだった。

 

 

駆逐艦「ピエサ」艦底の3連装カノン砲から発射されたショックカノンがニグラート連合の竜母「ヘドグル」に直撃すると,そのまま切り裂くように動かして後方の魔導戦列艦「パラグル」にも直撃する。

「ヘドグル」と「パラグル」を形成している木造の船体は簡単に溶かされ,真っ二つに折れて海水の中へと沈みだす。

 

それを皮切りにミルメリア艦隊の攻撃が始まった。「ピエサ」の標的となったニグラート連合の艦隊は真っ先に攻撃を受けて全滅した。

 

パンドーラ大魔法公国の魔導船団に狙いをつけた駆逐艦「ドュレーサ」は堂々と魔導船団の真上にやってくる。常識ならば敵の真上に展開するなど考えられないが,魔導船団がどう足掻いても攻撃できないという事をミルメリアは確信していた。

 

「ドュレーサ」は下部艦橋脇の対空レーザー4基を魔導船団に向ける。本来ならばミサイルや艦載機を落とす為の武装だったが,戦場では地上への掃射にも使用されていた。

1基あたり9発。計36発の対空レーザーが豪雨の如く降り注ぐ。

 

パンドーラの魔導船はパーパルディア皇国やレイフォル等の文明圏の魔導戦列艦が搭載している対魔弾鉄鋼式装甲なんてついていない為に,対空レーザーが1発当たる度に木造の船体が破壊される。

 

対空レーザーは船内の魔石庫内に積まれていた魔石に引火し,船体を完全に破壊する爆発を起こす。たった1分足らずで旗艦「ドーラ」以下8隻の魔導船団は全滅した。

 

もう1隻の駆逐艦「レザーナ」も攻撃を開始して,外輪付きの機甲戦列艦で構成されたマギカライヒ共同体の艦隊を文字通り消滅させた。

 

後方の艦隊が反撃する間も無く一方的に沈められる様子は艦隊の先頭を進む「グレードアトラスター」からもバッチリと見えた。

 

『ニグラート連合艦隊・パンドーラ大魔法公国魔導船団全滅!!』

『マギカライヒ共同体艦隊もだ!! あぁ!! アガルタ法国艦隊も!!』

 

急遽取り付けられた魔信を通じて入ってくる情報に良い報告など無かった。

 

「奴ら······敢えて木造船から狙っているのか? なめきっているな。」

「なんて趣味の悪い奴らだ·········」

 

一方的にミルメリア艦隊に沈められていく艦隊の様子に艦長のラクスタル・フェーンドナと副長のラミス・ベルリッタは不快感と怒りを声に出す。

 

確実に反撃すら出来なさそうな木造船を優先して沈めていくミルメリア艦隊の攻撃は弱い物虐めと言っても過言では無かった。そんなミルメリアにラクスタルらは怒りを覚えた。

 

ただグラバルカス帝国もレイフォルやイルネティア王国相手に同じような事はしていたのだが。

 

「本艦も攻撃するぞ!! フラグストン準備はいいか!!」

『出来ております!! いつでもどうぞ!!』

 

「グレードアトラスター」が3基装備している最大の武器 46cm3連装砲の砲手 フラグストン・ベーリッツは意気揚々と答える。帝国海軍でも最高レベルの命中率を叩き出す腕を持つ彼の返事にラクスタルは自信を抱く。

 

「1.2番主砲を「ディラメノア」(デカイ艦)に向けろ!! 副砲,高角砲も向けろ!! 当たらなくても良い!! 出来るだけ引き付けるんだ!!」

 

ラクスタルの指示で3基の15.5cm3連装副砲と無数の3連装高角砲が「ディラメノア」を向く。「グレードアトラスター」に続いてミリシアルのシルバー級魔導巡洋艦,ムー艦隊の戦艦「ラ・カサミ」,日本国の「しきしま」も向けられるだけの砲塔を向ける。

 

向けられた砲塔の中で「ディラメノア」に一発でも当たれば奇跡とも言える確率だろう。だがそれでも彼らは向けた。

 

我々が突破されれば次に襲われるのはカルトアルパスの市街地だ。避難が進んでいるとはいえ,未だに大勢の人々が街には残っている。

 

その人達を1人でも生き残らせるべく,彼らは攻撃の時を待っていた。

 

『1.2番主砲指定の角度を向きました!!』

「1.2番主砲一斉射!! 副砲と高角砲も撃ち方始め!!」

 

ラクスタルの指示で46cm3連装砲が火を吹き,衝撃波が周りへと広がる。レイフォルの首都 レイフォリアとイルネティア王国の経済都市 ドイバを灰燼に化した世界最大級の砲弾がミルメリア艦艇へと向かっていく。

 

主砲が次の砲弾を装填している間に副砲と高角砲が穴を埋めるかの様に発砲を開始する。

 

「グレードアトラスター」に続いて「しきしま」・ムー艦隊・ミリシアル艦隊も砲撃を開始する。ミリシアル艦隊は青白い軌跡を,ムー艦隊と「しきしま」は砲煙を残して砲弾は飛翔していく。

 

口径等全てがバラバラな砲弾は全てがたった1隻の艦めがけて飛んでいくが,重力と言う強敵に阻まれて徐々に落伍していき,最終的には1発も届くこと無く海面に落ちていった。

 

海面に落ちた弾は海中で爆発していき,衝撃波が艦を揺らす。揺れる艦橋でラクスタルは舌打ちをした。

 

「やはり1発も当たらんか·····分かってはいたが···」

「敵艦主砲を向けました!!」

 

ラクスタルが上を向くと,「ディラメノア」が艦底の3連装カノン砲を「グレードアトラスター」へと向けていた。

 

砲身に緑色の光が溜まり,ショックカノンが放たれる。重力を味方につけたショックカノンは,「グレードアトラスター」の後甲板へと直撃し,鉄の船体を貫いてそのまま切り裂く。

 

切り裂かれた箇所は爆発を起こして,自艦の砲弾による衝撃波とは比にならない衝撃が艦橋を襲った。ラクスタルもバランスを崩すが,羅針盤に捕まることで直ぐに立て直して無線機を取った。

 

「被害報告!!」

 

ラクスタルの指示から間も無く被害状況が報告された。

 

『第37~42区画被害甚大!! 同区画からの浸水を確認!!』

『右舷側のスクリュー2機切断!! 速度低下します!!』

『艦尾艦載機格納庫火災発生!!』

 

予想以上に深刻な被害にラクスタルは動揺を隠せなかった。だがそれ以上にミルメリアに対しての不快な気持ちが浮かび上がってきた。

 

「敢えて変な所に当てたましたね·····」

「どれだけ我々をいたぶりたい気なんだ······しかし不味いな。スクリューが2機もやられたのは痛すぎる。」

 

さっきの砲撃からミルメリアの砲撃は「グレードアトラスター」の重装甲を簡単に貫く性能を有している事が分かった。その為やろうと思えば火薬庫に直撃させて一撃で轟沈させる事も出来る。

 

幾ら6万tを越える巨体であっても,内部からの爆発には耐えられずに確実に沈むのは確定だろう。だがミルメリアは敢えて砲撃を火薬庫等が無さそうな船体後部へと当てた。

 

その結果はスクリュー2機を失う甚大な物だったが,艦自体は生きており,航行も砲撃も難なくこなすことが出来る。

 

だがそれはミルメリアが「お前を沢山いたぶるから,今は沈めない」と宣言している物だった。

 

「グレードアトラスター」以下連合艦隊は砲撃を続けるが「ディラメノア」には1発も当たらないにと対照的に,「ディラメノア」の攻撃は百発百中で,ショックカノンが直撃したシルバー級魔導巡洋艦「ゲイボー」が真っ二つになって沈んでいった。

 

一方的な状況にラクスタルは苦い顔になった。

 

「こっちの砲撃は当たらず,向こうの砲撃は全部当たる。演習でもこんな状況は無かったぞ。」

「ふざけた奴らだぁぁ!?」

 

ラミスが話している最中に左舷から強い衝撃が艦を揺らした。思わず左舷を見ると,15.5cm3連装副砲が破壊されており,高角砲郡が文字通り溶けて消滅していた。

 

「左舷副砲及び高角砲郡全滅!! 後ろの駆逐艦の砲撃だ!!」

 

ラミスの叫び声でラクスタルは事態を把握した。木造船団を全滅させた駆逐艦3隻は反転して,こちらに攻撃を開始して,その内の1発が命中したのだと。

 

事実連合艦隊の被害は拡大していき,魔信には敵艦ではなく自艦隊の被害報告しか入ってこなかった。

 

『ムー装甲巡洋艦「ラ・シルム」撃沈!! 巡洋艦「ラ・ワオト」・「ラ・ニナワ」轟沈!!』

『ミリシアル魔導巡洋艦「アーイン」轟沈!! 「ゲイブルグ」大破!!』

 

ミリシアル・ムー艦隊は次々と沈んでいき,艦艇の数はあっという間に半分にまで減っていた。ミルメリアの砲撃は止むことはなく,遂に左舷を航行していた「しきしま」にショックカノンが直撃した。

 

「日本国の巡洋艦が!!」

「あの白い非武装船か·······大丈夫なのか?」

 

駆逐艦「レザーナ」のショックカノン3発を交わしきれずに,上部構造物に命中して貫かれた「しきしま」は爆発を起こす。爆煙によって150mもの白い船体は見えなくなる。

 

ラクスタルは数日前に会談から帰ってきたシエリアから「日本国の船は海上警察の船で,軍艦ではないらしい」と聞いていた。彼自身は海上警察な船であれ程までに大きい物かと少々驚いたが,それよりも軍艦では無いために戦闘に参加できるのかが不安だった。

 

「グレードアトラスター」の装甲ですらミルメリアにとっては紙装甲だったが,あると無いではあった方がまだマシだろう。そもそも今の日本国には装甲をつけている船など1隻もいないが。

 

それが故にラクスタルは被弾したら間違いなく助からないだろうと思っていたが········

 

「日本国の巡洋艦······生きてます!! 辛うじて生きてます!!」

「なんと·······まさか!!」

 

彼は驚愕して「しきしま」を見る。「しきしま」は上部構造物こそショックカノンによって溶けて破壊されていたが,船体は無事だった。加えて被弾を回避するために左に舵を切っていた事が幸いして,制御を失った「しきしま」はそのまま暗礁へと乗り上げた。

 

「しきしま」は奇跡に奇跡が重なり,座礁したことで沈没を免れることに成功した。

 

「まさか助かるとは······奇跡もあるもんだなぁぁ!!」

 

ラクスタルは「しきしま」に集中させていた意識が被弾という強い衝撃で強制的にミルメリアへと引き戻された。

 

「艦首に被弾!!」

 

艦橋から艦首を見ると,艦首甲板に3つの切りされた被弾痕が刻まれていた。正面の「ディラメノア」(大型艦)の物だというのは確かだった。

 

だがそれに反撃する前に次の衝撃が艦橋を襲う。ミリシアル・ムー艦隊は殆んどの艦が撃沈され,海面に残っているのは「しきしま」位だった。

 

そうなってくると最後まで残していた「グレードアトラスター」に砲撃が集中する。4隻の集中砲火にさらされた「グレードアトラスター」の被害は拡大していく。

 

『右舷高角砲群全滅!!』

『第5~8缶全損!!』

『艦内各地で浸水拡大!! 食い止められません!!』

『第2主砲の砲身が切られました!!』

 

艦のあちこちから被害報告が艦橋に入ってくる。装甲を一瞬で貫通するショックカノンによって船体は破壊され,戦闘能力は喪失したと言っても過言ではない。

 

この状況に艦と自分の運命を悟った

 

「すまぬな·······お前たちを故郷に帰られなくて·······」

 

ラクスタルが思わず口にした言葉に,副艦長のラミス以下艦長要員もラクスタルを向く。

 

「艦長。私達は精一杯やることを果たしたのです。例え故郷に帰れなくても,誰かを守って死ねるのです。こういう死に方だってありでしょう。

それに私は貴方の元にいれた事が光栄です。」

「そうか·······私は幸せだな····」

 

ラミスの言葉に思わずラクスタルは泣きそうになった目を閉じた。

 

まさにその時,蒼い空の一点が一瞬だけ白く輝く。白い輝きは目を閉じていたラクスタルでも感じる程に眩しく,ラミスらも思わず目を瞑ってしまう程だった。

 

眩しい光は一瞬だった為に目を開けた彼らは思わず上空に視線を向ける。

 

彼らの視線の先に広がる空の更にその先の宇宙で瞬く間に光が数えきれない程起きる。一瞬光ったと思ったら消えて,また別の光が起きる。

 

彼らはノルースに転移してから既に4年ほど経過しているが,目の前で起きている現象は見たことも聞いたこともなかった。

 

「な,なんだあの光は·······」

「こんな現象は始めてです。あれは一体········ん?」

 

ラクスタルら艦長要員全員が見つめているが全員答えは浮かばない。そんな中ラミスがあることに気がついた。

 

「艦長。あいつらの攻撃が止んでいませんか?」

「ほんとだ········· 攻撃が止んでいる」

 

さっきまで艦の周囲を通り抜けていた多くのショックカノンは1発たりとも撃たれていなかった。ミルメリアにも何があったか不明だが,さっきの光が関係しているのは間違い無い事実だった。

 

何はともあれ「グレードアトラスター」は撃沈を避けることに成功した。艦は多数被弾して武装も機関もズタボロに破壊されて,艦の一部を海水が支配していたものの,艦は首一枚繋がって生き長らえる事になった。

 

「もしかして······あの光が我々を救ったのか?」

 

艦橋要員の誰かがそう言った。今の状況からすればあの光は我々の命を救った神のような存在だと認識しても可笑しくはない。

 

ラクスタルは思わず空に向かって海軍式の敬礼を決めた。ラミスら艦橋要員も同じように敬礼を行った。

 

敬礼をしている最中にあの光の後から行動を止めていたミルメリア艦が動き出す。艦尾のエンジンで200mを越える船体を陸地へと動かしていった。

 

ラクスタルらは迎撃しようとしたが,ミルメリア艦は攻撃する素振りを見せずに,何かから急いで逃げるかのように去っていく様子にただ呆然としているしかなかった。

 

「艦隊が去っていく·········」

 

ラミスは思わずそう言った。さっきまで威勢よく攻撃していたミルメリア艦隊が,逃げるように去っていく様子は状況の理解に時間を要した。

 

ラクスタルも理解に苦しむ中,艦橋に設置されている無線機を操作していた通信士がラクスタルに声をかけた。

 

「艦長。宛先は不明ですが通信が入ってきました。」

「直ぐに聞かせてくれ。」

 

ラクスタルの指示で通信士はヘッドフォンを渡す。渡されたヘッドフォンをラクスタルがつけると見知らぬ男の声が聞こえてきた。

 

『·····ースの諸君。私は地球防衛軍第13艦隊司令官のフェルド・ヴェルズリー大将だ。』




・連合艦隊について
とりあえず·········雑ですね。もうちょっと色々書けたよな?って自分では思っています。

ただ後述の通り次回から遂に地球艦隊の戦闘が始まるので,それを早く書きたかったから無意識の内に急いで雑になったんだと思っておきます。

・『私は地球防衛軍第13艦隊etc······
さあ地球防衛が遂に到着しました。次回から反撃が始まります。
謎の光の正体は次回判明します。


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反撃の狼煙は拡散する

・陸自の新型装甲車確認
・ドイツ空軍のユーロファイター来日
・ズムウォルト横須賀来港

ミリオタには濃すぎる数日間だった········

僕としてもめっちゃビックリしたけど、それよりも問題を抱えることになったんですよ。
前連載していた「New Japan Fleet」の続編を今作っているんですけど、それに陸自の新型装甲車を出さなきゃいけなくなりそうなんですよね。

それにズムウォルトが横須賀配備!? あれも出さないといけないという衝撃事実·········

それと遂に日本国召喚の単行本5巻と外伝1·2を手に入れることが出来ました!!
これで漫画版含めて日本国召喚書籍はコンプリート!! 創作が捗ります!!


「攻撃は順調だな。」

 

ミルメリア宙軍第35艦隊旗艦「ドルヴィーオン」の艦橋で司令官のペイン・ドン・プレクティリア大将は自信満々にそう言った。

 

彼は4つの攻撃目標に対してそれぞれ自分が信頼をおく部下を司令官にして,10隻程度の艦で戦隊を組ませて攻撃を指示した。

 

部下の1人 メディナに割り当てられた日本国(攻撃目標)は意外にも強力で大損害を食らったが,既に東京(首都と思われる大都市)に大きな被害を与えていると彼女から伝えられていた。

 

それ以外にも本国では骨董品処か聖遺物レベルのパル・キマイラ(存在)も確認される等,色々想定外はあったが概ね想定どおりに攻撃は進んでいた。

 

「ドルヴィーオン」以下100隻程の第35艦隊本隊は数日前よりノルース本星と2つの衛星の間に展開していた。損傷を受けた艦を戻して,代わりの艦を送るなどの事はあったが,本隊に損害は出ていなかった。

 

その為にペインには自信と余裕が出始めていた。

 

「ええ,重巡1・軽巡1・駆逐艦5隻を失い,重巡1が大破しましたが,まだ想定内の範囲です。ですが1つ大きな懸念があります。」

「地球艦隊か·····」

 

だが副官のクフェン・カフ・レデナベリサ中佐の言葉でペインも頭の片隅に存在していたたった唯一の懸念が頭中に広がる。

 

ノルース攻撃の前に衛星 ノルース1には地球の観測基地とカナダ級パトロール艦(小型艦)2隻があり,ミルメリア艦隊はその全てを撃沈もしくは破壊していた。

 

少ないながらも地球艦隊がいたということは,地球がこの星と何かしら関わっているもしくは関わろうとしていることが明確だった。その上でミルメリアにやられたとなれば,地球は迷わず艦隊を送り込むだろうと,ペインは今までの戦いから予測していた。

 

その為に第35艦隊は数日前から戦闘態勢を維持させて,万全の態勢を整えていた。だが数日間にも及ぶ戦闘態勢は乗組員に大きな負担を与えており,疲労感を隠さない者も出始める位だった。

 

「いくら戦闘態勢を取らせているとはいえ,そろそろ限界だな。今来られたら苦戦は間違いない。」

「敵戦力次第ではかなり損害を被る可能性もあります。嫌な予感が当たらなければ良いのですが····」

 

クフェンの不安げな発言は直ぐに的中した。「ドルヴィーオン」の広範囲を探知できるレーダーを逐次確認していた乗組員が突如声を上げた。

 

「3時方向にワープ反応を複数探知!! この波長は·····地球艦隊です!!」

「っ·······よりにもよって今来たか!! 全艦主砲をワープ反応へと向けろ!!」

 

レーダー員の報告にペインは舌打ちしながらも,指示を出した。

 

満足できる戦闘は出来ないだろうが,敵が来る以上対策をせねばならず,今出来る最善の策を命じた。

幸いにも艦隊が側面を向けていた事で,艦に装備している3連装カノン砲は一部の艦を除いて全ての砲塔を右舷へと向けることが出来た。

 

「ドルヴィーオン」も艦上部と艦底・右側面の3連装カノン砲をワープ反応の方向へと向けた。

 

ペインはワープし終えた直後の地球艦隊にショックカノンの集中砲火を浴びせることで優位にたとうとしていた。

 

ワープし終えた直後の攻撃ならば地球艦隊に反撃の余地を与える間もなく撃破する事が可能で,士気的に不利な状況を打開できる可能性が高いとペインとクフェンは考えていた。

 

だがレーダー員の右隣に座っていた乗組員が写し出されたデータを見て困惑し出した。目の前のデータを信じることが出来ず,混乱しだす様子にペインは気づいたのはレーダー員が声をかけると同時だった。

 

「おい,どうしたんだ? おい! おい!!」

「あり得ない········こんなのはあり得ない!!」

「どうした何があった!?」

 

ペインの言葉に乗組員は混乱しながらも答えた。

 

「わ,ワープ反応の方向より高出力エネルギー反応があって,エネルギーパターンを解析した所·····は,波動砲の物なんです·····」

「なっ!?·········ど,どういうことだ!?」

 

その言葉に艦橋は騒然とした。“波動砲”というたった3文字の言葉が彼らを動揺させた。

 

地球艦隊最強の兵器にして,ミルメリア最も恐れられる存在 波動砲。

その威力やいなや星を1つ消し去る程と言われており,それがミルメリア艦隊に襲いかかれば瞬く間に消し飛んでしまう,ミルメリアにとって恐怖を象徴する兵器と言っても過言ではない。

 

そんな波動砲だがその威力が故に発射された回数は少なく,ましてやワープアウト直後の発射は1つも確認されていなかった。

 

ミルメリアにとって最大の恐怖の波動砲が,ワープアウト直後に発射される可能性。

 

今までに体験したことの無い状況に艦橋は混乱に包まれた。

 

「ワープアウト直後に波動砲だと·········見間違いじゃないだろうな!?」

「見間違いじゃありません!! 何度確認しても波動砲の物です!!」

「まさか地球はワープアウト直後に波動砲を発射できる技術を得たのか·········」

 

ペインやクフェンも混乱した様子で,何か答えを探し出そうとしていたが,全くもって見つからない。

そうこうしている間に遂にその時は訪れた。

 

「地球艦隊ワープアウトします!!」

 

レーダー員の言葉でペインら艦橋要員は3時方向を向いた。

 

黒に染まった世界に1つの白い閃光が出現して空間が歪む。増幅していく白い閃光の中からさっきまでそこにはいなかった1隻の巨大な船が姿を現す。

 

灰色の船体に艦首に巨大な波動砲口を横に2()()並べた,特異な姿を持つ特徴的なアンドロメダ級宇宙戦艦「BBB-001 アンドロメダⅡ」は,地球艦隊特有のワープ後に纏う白い氷を剥がしながらその姿をミルメリア艦隊へと見せつけた。

 

「アンドロメダⅡ」は他のアンドロメダ級とは違って艦首の次元波動爆縮放射機,通称 波動砲口を3()()兼ね備えている唯一の艦だったが,ミルメリア艦隊は2つしか見ることが出来なかった。

 

その理由はいたって単純。下に増設された3つ目の波動砲口に波動エネルギーが充填されていたからだ。()()の波動エンジンから出力された波動エネルギーは3つ目の波動砲口いっぱいに充填されていた。

 

エネルギー充填率が発射可能な120%に達した波動砲口から,ミルメリア艦隊に向けて巨大な青白い1本の光線が発射された。

 

蒼白い光は捻れながら物凄い速度で漆黒の世界を貫いて進んでいく。ミルメリアにとっては絶望の象徴ともされる光線が高速で迫ってくる。

 

捻れながら光線は突如として分裂した。何百本にも分裂した波動砲が黒かった宇宙を白く染めていき,ミルメリア宙軍第35艦隊に上下から襲いかかった。

 

波動砲が直撃した軽巡や駆逐艦は1発で船体を真っ二つに折って沈んでいき,重巡や空母も数発の直撃によって船体を爆発の中へと消していく。

 

「ドルヴィーオン」にも拡散波動砲が直撃して,船体を貫いかれて破壊する。艦内で爆発が発生し,船体を破壊していく。

爆発は艦橋にも到達し,ペインら艦橋要員を包み込んだ。

 

「アンドロメダⅡ」が発射した拡散波動砲が消えた時には第35艦隊の艦艇は約8割が沈められていた。残りの2割の内,半数以上は損傷を負っていた為に実質的な戦力は1割にも存在していなかった。

 

旗艦だった「ドルヴィーオン」も船体の下部を失い,上部の3連装カノン砲も爆発によって機能しなくなっていた。

艦橋も外壁が破損して大気が漏れるような事は無かったが,内部は爆発によって完全破壊されて機能を喪失していた。

 

クフェンら艦橋要員の殆んどは爆発の衝撃と衝撃波による破壊によって命を奪われていたが,ペインは辛うじて生存していた。

だが体の各所から鮮血を流しており,致命傷と言わんばかりの怪我を追っていた。

 

ペインの視線の先には第35艦隊を壊滅させた「アンドロメダⅡ」と次々とワープアウトしてくる地球艦隊の姿が写っていた。

 

「地球艦隊め···········」

 

そう言葉を発したペインはそのまま永久に意識を失った。

 

 

「アンドロメダⅡ」が拡散波動砲を発射し終わる頃には,

ドレットノート級・エンケラドゥス級等の第2戦隊所属の艦艇が次々とワープアウトしてくる。

 

その内の1隻に「DDD-187 フリーダム」がいた。10隻配備されているドレットノート級の1隻で第2戦隊を構成している戦隊の1つ 第1321宙雷戦隊の旗艦を担っていた。

 

ドレットノート級共通の艦橋で,艦長兼第1321宙雷戦隊司令官のクリスファン・デンリオン大佐が拡散波動砲によって大損害を受けたミルメリア艦隊を見つめていた。

 

「アレヴィン司令官より通信です。“第1321宙雷戦隊をもって敵残存戦力を撃滅せよ”との事です。」

「了解した。全艦に通達せよ!!」

 

通信士が「アンドロメダⅡ」からの通信を報告すると,彼はすかさず命令を実行に移した。

 

同戦隊所属のドレットノート級宇宙戦艦 3隻とエンケラドゥス級宇宙護衛艦 10隻が次元波動エンジンの出力を上げて,艦尾のスラスターにエネルギーを集中させて後方へと放出しだす。

 

放出されたエネルギーによって13隻の船は高速で前進して,壊滅したミルメリア宙軍第35艦隊へと突入していった。

 

先頭を突き進むドレットノート級の「DDD-208 コントラスト」は艦橋前の2基の30.5cm三連装ショックカノン砲をそれぞれ右舷と左舷に旋回させる。

 

旋回を終えたショックカノンは3つずつの砲身を斜め上に向けて,標的を定めるとショックカノン砲から青白い光が3本ずつ発射された。

 

ミルメリアの緑色とは異なる青色のショックカノンは辛うじて生存していた駆逐艦「ベーリュン」と「カメヴァ」を貫く。3発ずつ命中したショックカノンによって2隻の駆逐艦は内部から大爆発を起こして,船体を真っ二つに折った。

 

「コントラスト」に続くようにエンケラドゥス級「EEE-117 アウトノエ」も3インチ連装砲 3基から6本のショックカノンを発射した。

 

「アウトノエ」が標的に定めた駆逐艦「ネビゼ」は反撃すべく3連装カノン砲から緑色のショックカノンを発射したが,破壊された艦の残骸に命中するに留まった。

逆に「アウトノエ」の青色のショックカノンが「ネビゼ」へと命中した。6発が命中した「ネビゼ」は船内から爆発を起こして,そのまま爆沈していった。

 

辛うじて生存していたミルメリア艦は反撃しだすが,ショックカノンは拡散波動砲によって撃沈された艦の残骸によって阻害される。誤射による被害防止の為にミルメリア側のショックカノンを中和する装甲が現状では途轍もない障害として自らに降りかかった。

 

逆に地球艦隊のショックカノンは簡単にミルメリア艦の残骸を貫通して,命中していく。命中した艦は次々と沈んでいき,数少ない戦力はさらに減っていく。

 

クリスファンはより効率よく全滅させるべく,指示を出した。

 

「「ダグラス」は戦艦を,「スィオネ」と「ヘルミッペ」は空母を沈めろ!!

本艦は目の前の重巡洋艦を沈める!!」

 

クリスファンの指示で各艦が,それぞれに与えられた標的へと向かい出す。

 

損壊した空母「ベルミナーエ」へと向かった「EEE-123 スィオネ」と「EEE-124 ヘルミッペ」は3基の主砲と共に左舷の3連装魚雷発射管 2基ずつを向けた。ショックカノンと計12本の魚雷が発射され,全弾が「ベルミナーエ」に命中する。

全部命中した「ベルミナーエ」は船体各所から爆発を起こして,船体全部を包み込んだ。

 

「フリーダム」も正面に捉えた重巡洋艦「アルビニオネ」へと6発のショックカノンと,艦首両舷の小型魚雷発射管から8発の魚雷を発射した。

 

「アルビニオネ」も「フリーダム」を沈めるべくショックカノンと艦首魚雷を発射したが,入れ違いにやってきたショックカノンと魚雷によって撃沈された。

 

だが発射された緑色のショックカノンと魚雷は「フリーダム」へと迫っていった。しかしながらクリスファンは冷静だった。

 

「波動防壁展開!! 及び司令塔防護ショックフィールド砲発射!!」

 

クリスファンの指示で,艦全体を波動防壁が包み込み,同時に彼らがいる艦橋の真下に設置されている司令塔防護ショックフィールド砲が発射される。

 

5つの青いエネルギー弾は艦前方で広がって,波動防壁と共に「フリーダム」を守る防護フィールドとなった。

「アルビニオネ」の遺言の如く発射されたショックカノンと魚雷は2層もの防壁に着弾したことによって,「フリーダム」には何の被害も出ていなかった。

 

「DDD-089 ダグラス」は損壊して漂流を続ける戦艦「ドルヴィーオン」に照準を定めた。前甲板の30.5cm3連装ショックカノン砲が右舷を向き,6発のショックカノンと共に右舷の対艦グレネード 4発が発射される。

 

ショックカノンと対艦グレネードは機関が損傷して回避不可能な「ドルヴィーオン」に次々と着弾して,爆発していく。瞬く間に「ドルヴィーオン」の損傷した船体は爆発によって真っ二つになって沈んでいった。

 

艦隊旗艦が撃沈されてから間も無く,第35艦隊本隊は全艦が撃沈された。

 

 

『ノルース上空の艦隊は全滅させました。』

「そうか、取り敢えず本隊は片付いたな······にしてもいくら訓練したとは言え,いざ実戦で()()をすると緊張したな····」

 

「BBB-001 アンドロメダⅡ」の艦橋でフェイアン・アレヴィン中将はクリスファンから報告を受け取った。

ミルメリア艦隊の意表を突いて行った攻撃によって,損害なしで全滅させることが出来たが,アレヴィンの思考は別の不安を抱えていた。

 

「機関長。補助エンジンの調子はどうだ?」

『今のところは無事ですが,やはり数値が乱れているので,一度地球で補助エンジンを見てもらう必要がありますね。』

「そうか,やっぱり()()は補助エンジンに大きな負担を与えるから、あまり使いたく無いんだがな······」

 

アレヴィンは機関長の報告に苦い顔をした。

 

「アンドロメダⅡ」は波動砲口を改修によって3基に増設していたが,従来の波動エンジンでは3基の波動砲口全てにエネルギー充填が出来ないために,艦底部に補助エンジンという名のドレットノート級の波動エンジンを搭載していた。

 

計3つの波動エンジンによって3基の波動砲口から波動砲を撃てるようになったが,これを応用して従来の波動エンジンでワープを行い,補助エンジンで1基の波動砲にエネルギーを充填して,ワープアウト直後に波動砲を発射するというとんでもない戦法が考えられた。

 

この戦法はワープアウト直後に波動砲を発射して,敵に大打撃を与えられるとして大いに期待されたが,この戦法は補助エンジンに大きな負担をかけると推測され,試射によってそれは確実な物になった。

 

その為にこの奇襲戦法は緊急事態とされる時に使用される物とされた為に今まで実戦では使用されていなかったが,今回の事態を受けて初めて実戦で使用されたのだった。

 

初めての実戦だったために訓練では見られなかった不具合があるのではと不安視していたが,その様な物は起きなかった為にアレヴィンは一安心していた。

 

“今回の発射で得られた沢山の貴重なデータを元にして補助エンジンをもう少し改善して貰いたい”と,アレヴィンが考えていると次々と目の前の視界に艦艇が現れだした。

 

「残りも来たか。」

 

第13艦隊の残る3戦隊の艦艇が次々とワープアウトして,ノルースへとやってきた。地球艦艇特有のワープ時に船体に貼り付く氷を剥がしながら,第13艦隊全艦 204隻はノルース上空に展開した。

 

広大な範囲を防衛する為に他艦隊の4倍もの戦力を有している第13艦隊全戦力がたった1つの惑星に集まっている様子は,あるものには絶対の安心を,あるものには死という絶望を与える存在だった。

 

「アレヴィン司令,「AAA-013 オーシャン」から通信です。」

「直ぐに繋げ,間違いなくフェルド大将との通信だ。」

 

通信士はアレヴィンに従って,通信を繋げる。艦橋上部の巨大ディスプレイには,アレヴィンの予測通り艦隊司令官のフェルド・ヴェルズリー大将が現れた為に,アレヴィンは思わず苦笑いした。

 

『その表情だと,私の行動は読まれていたようだね。』

「まあそうですね。司令官の指示通りノルース上空の艦隊は全滅させました。

この後については考えているんですよね?」

 

アレヴィンの質問にヴェルズリーは“勿論さ”と迷うことなく答えた。

 

「まさか私が無策で君に指示を出すと思うかい? 残っている奴らのこれからの行動は今までに経験から予測済みさ。

後は奴らの神経を逆撫ですれば,簡単に我々戦う気になってくれるさ。」

「その言葉を信じましょう。我々も惑星降下の準備をしておきますので。」

「こっちも君の言葉を信じよう。」

 

そう言い残して通信は切られた。ヴェルズリーの言い残した言葉にアレヴィンは微かに笑った。微かに笑った事に気がついた「アンドロメダⅡ」艦長のポリス・バレンティア大佐が口を開いた。

 

「ヴェルズリー司令の考えている事が分かったのですね。」

「ああ,ミルメリア人の神経を逆撫でさせる方法はあれしか無いからな。」

 

ヴェルズリーのやることを察したアレヴィンは視線を先に見える蒼き星 ノルースを見つめるのだった。




・アンドロメダⅡ
ワープ直後の波動砲発射を単艦で行える··········もうチート以外の何でもないですね。

一応補助エンジンが不安定になる制約はつけましたが,正直言って2202でドレットノート級をブースターにして行っていた事を単艦で出来るんですから,チートそのものですね。

・第1321宙雷戦隊
前に書いたかどうか分からないのでここで書きますが,基本的に宙雷戦隊はドレットノート級 3隻とエンケラドゥス級 10隻で構成されています。

これが2つ+旗艦直属部隊+空母&補給母艦の支援艦隊で1艦隊を構成しています。

・艦尾のスラスターにエネルギーを集中させて······
このシーンの表現は悩みました。艦尾の波動エンジンの出力を放出する部分は何て言うのか,どう表現すれば良いのか苦労しました。

どの部分か想像できていると思いますが,もしその部分の名称が分かる方が入れば,教えてほしいです。

・戦闘シーンについて
取り敢えず戦闘シーンに関しては単調にならないように頑張りました。
ショックカノンばかりではなく,ミサイルや魚雷・対艦グレネード・司令塔防護ショックフィールド砲など多種多様な兵装を使わせて貰いました。

アンドロメダ級やドレットノート級は沢山の武装が搭載されているので,出来るだけ沢山の武装を使っていこうと思っています。





最後に·········更新遅れて申し訳ないです。


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それは希望の声

先日携帯を変えまして,まだ操作が慣れておらず更新が遅れてしまいました。

本編前に少々悲しい?話をしますが,この作品は私が本気で書きたい作品が出来るまでの繋ぎ作品という立ち位置です。
なのでその作品が出来上がりそうだったら,こっちの作品は更新を行わなくなると思います。

もし更新をしなくなる場合は連絡すると思いますが,もし更新が無くなったら察してください。

·········こんな事を書きましたが,日本国召喚×大日本帝国とか別の日本国召喚ものを書きたいという欲望が出始めてる。もしかしたらそっちの連載を行う可能性もあるかも····

あと名前を変えました。Twitterの名前と同じにしました。


「本隊が展開している空域から無数の爆発を確認!!」

「!?」

 

メディナ・レト・フォルベリサ准将は通信士の報告に思わず上を向いた。青色に染まった空のその先で無数の爆発が起きているのが,彼女の視線に写った。

 

「まさか········本隊がやられたのか!?」

「一体何が··········まさか奴らが!?」

「心当たりがあるのか!!」

 

参謀のレナドサ・アワン・クレビアノ大佐は心当たりがありそうだと感じたメディナは話しかけた。

 

「私の推測なのですが,遂に地球艦隊が来てしまったのでは!!」

「地球艦隊········だが通信も送らずに全滅するなどありえるのか········」

 

レナドサは推測を交えながら話したが,メディナとしても理由として合致するものだった。地球艦隊が来る可能性は当初から懸念されていたが,遂に来てしまったのかと思わず彼女は舌打ちをした。彼女は周りから見れば冷静を保っている様に見えるが,内心は動揺していた。

 

(一体どんな方法を使ったかは分からないけど、あの様子だと本隊は助かっていないわね······こうなれば逃げに徹するのが得策ね。)

 

彼女は自分でも驚く程に冷静に状況を分析していた。自分達がどうすれば助かる確率が高いのか,少しでも生き残る時間を伸ばすべく頭を全力で稼働させる。

 

僅か数秒の短い時間だったが,彼女にはとても長く感じられた。その結果,彼女はとある選択肢を見つける事が出来た。

 

「通信士!! 全艦に攻撃中止と今すぐ内陸に向かう様に通信しなさい!!」

「は,はい!?」

 

メディナの指示に通信士は困惑した。彼女の指示は今まで行っていた東京(大都市)への攻撃を唐突に中止して,一目散に逃げる事を意味していた。

 

困惑する通信士に対してメディナは,声を強めてもう一回言った。

 

「何してるの!! 今すぐ伝えなさい!!」

「い,良いのですか!?」

「無論だ!! あの様子では,本隊では助かっていません!! ならば我々は何をしてでも情勢を立て直して,反撃の機会を伺うのが最善です!!」

 

レナドサもメディナの考えを察したのか,彼女の意見を補足した。2人の圧に圧されて通信士は全艦にメディナの指示通りの通信をした。

 

僅か数分で東京近郊(大都市)を焼き払っていた緑色のショックカノンは止んだ。彼女らが乗る旗艦「レパグラン」以下メディナ戦隊 14隻は東京(攻撃目標)への攻撃を中断して,内陸へと動き出した。

自衛隊(ここの防衛戦力)は既に壊滅状態にしていた為に反攻を食らうことなく,戦隊は内陸への移動に成功した。

 

メディナ戦隊はそのまま赤石山脈(標高3000mの山々が並ぶ山脈)周辺に辿り着いた。戦隊は高度2700m付近を飛んでいたが,地上探知に優れたレーダーと航路指示AIを使用して安全な航路を航行していた。

 

南アルプスの山々を背景にしながらメディナ戦隊は航行を続ける。

 

「陸地に逃げ込めば流石に地球艦隊も攻撃は出来ませんね。」

「攻撃してしまえば間違いなくこの星の奴らも巻き込んでしまうからね。取り敢えずは凌いだけどこの後どうするか考えないといけないわね。

それと言うのが遅れたけど反撃以外の攻撃は禁止ね。下手にエネルギーや弾を失う訳にはいかないもの。」

 

そう通達するとメディナは艦橋中央の椅子に足を組んで座った。彼女は腕を組んでこの後どうするか思考しだす。

 

(これは一時しのぎに過ぎない。地球艦隊(奴ら)は絶対何か仕込んでいくる。だが一体何をしてくるんだ!?)

 

彼女は思考に没頭するあまり,腕を組んだ事で強調された胸部装甲に一部艦橋要員がチラ見している事にも気づいていなかった。

 

通信士も男であるためにちょくちょくチラ見をしていたが,通信が入った事を伝えるランプが点滅しだした事を見逃さなかった。

 

「メディナ准将!! 地球艦隊から通信です!!」

「っ!? と,取り敢えず繋げなさい!!」

 

思わぬ報告に彼女は没頭していた思考を強制中断して指示を出した。

 

通信士が目の前の機器を操作すると,艦橋内に通信が流れ出す。自動翻訳プログラムを介してミルメリアの言語に変換された通信がメディナらの聴覚へと入ってきた。

 

『·······の諸君。私は地球防衛軍第13艦隊司令官のフェルド・ヴェルズリー大将だ。』

 

ヴェルズリーと言った彼は議会の場で演説するが如く話し出す。

 

『我々は日本国がかつていた星 地球からあなた方の星 ノルースをミルメリアから防衛するべくやってきた。

到着が間に合わず多くの被害を出してしまい,大変申し訳無い。』

 

メディナらからすれば白々しい謝罪だったが,ノルースの人々からすれば理解が追いついていないだろう。

 

『だが安心して頂きたい。我々は先程星の周辺に展開していた艦隊を全滅させた。後は惑星に降下していた艦隊だけなのだが········彼らは我々に恐れをなしたのか内陸へと逃げ込んだ。』

「なっ!?」

 

ヴェルズリーの発言にメディナらは顔をしかめた。一気に爆発寸前になったメディナらにヴェルズリーは爆発のトリガーを引いた。

 

『彼らは今我々に恐れをなして,逃げに徹している。あなた方だって奴らに仕返しをしたいでしょう。

今の奴らなら後ろ盾を失って不安に怯えている真っ最中でしょう。今ならあなた方の攻撃も届いて仕返しが出来るかもしれません。

もしミルメリア艦隊に聞こえているのであれば,ここで言っておこう。君達は戦いで散りたいのだろう? ならば陸地に逃げるという卑怯な手段を使わずに堂々と私達と海上で戦うではないか。君達が堂々と戦い選択肢を取ることを願っているよ。』

 

通信は終わったが,艦橋は静寂に包まれた。静寂を破る様に艦橋内に大きな音が響く。その音が何かに拳を叩きつけた音だという事を艦橋要員全員が理解していた。

 

大きな音を出した当本人のメディナは,膝当てに叩きつけた右拳が赤くなっている事を気に止めなかった。

 

「馬鹿にしやがって·········レナドサ!! 分かっているな!!」

「ええ!! 全艦攻撃用意!! 陸地を出て海上に出ますよ!!」

 

メディナ含め艦橋要員は全員激昂していた。冷静だった理性は地球艦隊に対する怒りで満ちていた。

 

ミルメリア人はどんな冷静な人物でも一度馬鹿にすると,一瞬で激昂しだす事をヴェルズリーは利用した。敢えて挑発するように話したことで彼らを海上へと引きずり出そうと考えた。

 

その思惑は大成功した。冷静さを失った彼らは自ら地球艦隊との戦場へと歩みだした。

 

 

ミリシアル東部最大の観光都市 カン・ブリット。ゴースウィーヴルに次ぐ東部の都市で,周辺のビーチやが国内外問わず観光客を呼び,一大観光地として発展した。

ルーンポリスやカルトアルパスへの高速鉄道も通っている為にゴースウィーヴルに次ぐミリシアル第4の都市として発展していた。

 

そんな都市には住民と同じくらいの人々が押し寄せていた。先日のミルメリア皇帝によるルーンポリス破壊宣言によってルーンポリスとその周辺都市からの大勢の避難民が市内に溢れかえっていた。

 

避難民は住人と同じくらいの数に達し,人々の対処にカン・ブリットに勤務している国家公務員やミリシアル軍人は相殺されていた。

 

それは海岸沿いに建っているカン・ブリット1の高級ホテルとして機能していたシクテッドホテルも同じだった。カン・ブリットで一番人気のホテルだったが,今は周囲のホテル群と共に避難民を受け入れる施設の1つとして機能していた。

 

観光シーズンの来客の何倍もいる避難民をどうにかすべくホテルの従業員らは世話しなく動いていた。少しでも大勢の人を受け入れるべくホテルの部屋を全部使ってでも対処を目指していた。

 

そのシクジット・ホテルの上階にはミリシアルでも上位のレベルに入る豪華さを誇るスイートルームがあった。ここだけは避難民ではなく先進11ヵ国会議に参加していた外交官が泊まっていた。

 

スイートルームだけあって部屋の備品は豪華で,ベットも素晴らしいものだったが,彼らはミルメリアへの恐怖から充分に眠れていなかった。特に直接攻撃目標にされたミリシアル・日本・グラ・バルカス帝国の外交官らは酷いクマをつけていた。

 

酷い疲れが外交官らを苦しめていたが,攻撃開始の日付になると皆が大きな披露宴会場に集まっていた。

彼らの要望でカン・ブリット庁舎の倉庫で予備として眠っていた魔信が室内に,日本国から緊急時の連絡手段として渡された携帯無線機がテーブルに置かれていた。

 

披露宴会場に魔信は異質だったが,これによって彼らは少しでも情報を得ようとした。だが入ってくる情報は魔信・無線共に一方的にやられているという悲痛なものでしか無かった。

 

こんなならば置かなければ良かったと皆が思ってしまったが,その考えはヴェルズリーの演説で一変した。

 

ヴェルズリーが乗艦している「AAA-013 オーシャン」は実質4艦隊分の艦艇が所属している第13艦隊の旗艦であった為に,艦隊指揮能力を高めるべく,各種通信機器を統合した“サフィールS16通信システム”を搭載していた。

 

他の艦よりも強力な通信機器を搭載していた為に,大規模な艦隊を指揮できるが,それ以外にもミルメリア等の全く異なる通信にも介入したり,ジャミングを行う事も出来た。

 

その為にヴェルズリーの演説は無線と魔信の両方で聞く事が出来た。

 

2つの通信機器から流れてくるヴェルズリーの言葉に全員が驚愕したが,特に近藤の衝撃は大きすぎた。

 

「地球···········防衛軍?·········」

 

近藤は衝撃のあまり椅子から落ちていたが,そんなことどうでもよかった。

日本国が異世界に来てから一生見ることすら出来なかった故郷 地球。二度と見ることすら出来ないと言われていたが,その地球からヴェルズリーらはやって来た上にミルメリアによる危機を救うという,とんでもないことをしてくれた。近藤は理解が全く追いついていなかった。

 

近藤以外の全員が困惑していたが,モーリアウルは声を荒らげた。

 

「やはり“空間の占い”は当たっていたのか!!」

 

その言葉をきっかけに次々と喜びの声を上げだした。

 

「信じられん!? まさかこんな奇跡が!!」

「あのミルメリアを破るなんて,地球艦隊はなんて強さだ!!」

「これなら私達を救ってくれるに違いない!!」

 

パンドーラやトルキア・マギカライヒの外交官らは生気を取り戻した。今まで一方的にやられていただけに,ミルメリアを倒せるかもしれない地球艦隊の登場に沸き立った。

 

そんな様子の中でも近藤はつきかけていた生気を復活させていた。彼自身東京がどうなっているのか気が気でなかった上に地球が全ての鍵を握ると言われていた為に余計に神経をすり減らしていた。

 

そんな中で遂にミルメリアを倒せるかもしれない地球連邦という存在が現れたことで,彼は安堵した。

 

「良かった······本当に良かっ········た·····」

 

声を途切れさせながら,近藤は壁越しの遥か先にいる地球艦隊に対して感謝をすると,そのまま床に倒れ込んだ。

 

「え,ちょっと!? え!?」

 

シエリアは突如倒れた近藤に困惑を隠せなかったが,ベリアンが直ぐに駆け寄って,首元に指を当てて脈を確認する。

 

「脈はちゃんとあります。多分寝て··········いますね···」

「ずっと寝れていなかったのだろう。今は休ませとこう。」

 

近藤は今まで恐怖のあまり寝ていなかったのか,ぐっすりと寝ていた。

ベリアンは直ぐに役員を呼んで彼を自分の部屋へと運んでいった。

 

ヴェルズリーの演説は魔信・無線を通じてノルース全土に伝わった。

 

その演説は直接攻撃を受けていたグラ・バルカス帝国やミリシアル・日本国に加え,ムーやエモール・パーパルディア・アルタラス等のいつ攻撃されるか分からない周辺国の人々も沸き立たせた。

 

一方的な虐殺によって絶望が支配していた全ての人々に希望という火が点った瞬間だった。




・カン・ブリット
この都市は公式情報が少ないので,オリジナル要素を付け加えました。
当初は東部方面最大の都市という設定でしたが,wikiで再確認した際にゴースウィーヴルが東部の重要都市だという事に気づいたので急遽変更して,この様な設定になりました。

ゴースウィーヴルはずっと西部の都市だと思っていました。

モデルはニース。もうこれで僕がミリシアルに抱いているモデル国が分かったはず?

あと先日コメントで“戦艦がいるのに宙雷戦隊って名前はおかしいんじゃないか?”と来ていたのですが,みなさんはどう思います。
一応代替案は打撃部隊・機動部隊とかかな~


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神の名と水瓶座の名を持つCCC(トリプルシー)

実は更新していない間に艦の細かい箇所の設定が大幅に増えました。前話に唐突に出てきたサフィールS16通信システムはそれによって後付されたものなので,唐突に出てきてハテナマークが浮かんだと思います。
今話からその要素を入れていこうと思うますが,機会が取れ次第今までの話にも入れていきたいですね。

それとスマホを変えたせいだと思いますが,記号欄で半角鉤括弧(カギカッコ)が出せなくなってめっちゃ面倒くさい事になっていました。
艦名とかを表記する際には半角鉤括弧使っているので,最初は困惑しましたけど頑張って表示する方法を見つけたので良かったです。

最後に日本国召喚wikiの二次創作一覧にこの作品を入れてくださって,ありがとうございます。




実はしれっと1万字超えてます


海の色が反射して水色に染まった空に,明らかに自然物ではない巨大な水色の幕が出現していた。

何百メートルもの巨大な幕の端には,五角形の対角線上に5隻の艦と中央に1隻の艦が展開していた。5隻の後ろには総勢46隻の第13艦隊第3戦隊が展開しており,水色の幕と一緒に降下していた。

 

水色の幕こと波動防壁を展開しながら第2320戦隊所属のトウキョウ級武装補給母艦 5隻が五角形対角線に展開し,戦隊旗艦のアンタレス級宇宙航空母艦「GGG-145 ラス・アルゲティ」の指揮の元,第3戦隊を護りながら降下していた。

 

アンタレス級とトウキョウ級はどちらもインペリアル星系連合との大規模戦争 レヴィン戦争後に提案された「航空機動打撃艦計画」と「艦隊随伴型支援艦計画」によってドレッドノート級宇宙戦艦をベースに建造された艦で,役割は違うものの船体を延長して船体後部に航空甲板を備えている点が共通していた。

 

アンタレス級とトウキョウ級最大の違いが波動砲発射口が蓋によって塞がれている事だった。トウキョウ級はそもそも波動砲発射機構自体が撤去されており,それによって空いたスペースに艦隊全部を覆える程の波動防壁を展開できる XD-7波動防壁共鳴システムが搭載していた。

ヴァンクライト研究所によって開発された XD-7波動防壁共鳴システムによって他艦の波動エンジンと共鳴させる事で波動防壁を強化出来たり,他艦に波動エネルギーを共有する等の波動エンジンに関わるサポートを行うことを役割としていた。

 

それ以外にも多目的な任務に対応しているトウキョウ級だが,この艦は波動防壁をフル展開することで惑星降下時に敵の攻撃から艦隊を護ることを最大の役割としていた。

波動防壁フル展開を一定時間維持する為に主機も本来ドレッドノート級に搭載されているものを製造元のパラード・ツェルナイン社で出力強化改造された PNC-412次元波動エンジンを搭載していた。

 

このシステムによって艦隊は防御が甘くならざるおえない惑星降下時に,安心して降下することを可能としていた。

 

無論第3戦隊も「HHH-069 トロント」・「HHH-078 サンフランシスコ」・「HHH-143 リオデジャネイロ」・「HHH-174 イルクーツク」・「HHH-201 フランクフルト」の5隻が展開した波動防壁に守られながらノルースの大気圏に突入していた。

 

大気圏に入った51隻の艦隊の中央には地球防衛軍艦隊の中でも異様な形状をした巨大艦でもあり地球防衛軍で唯一日本由来の艦名を持つ第3戦隊旗艦 「CCC-001 アマテラス」が陣取っていた。

「アマテラス」は第4戦隊旗艦の「CCC-002 アクエリアス」と共にアンタレス級が作られた「航空機動打撃艦計画」でアンドロメダ級をベースに作られた試験艦として建造された。

建造コストを抑える為に艦橋後部に格納庫と電磁カタパルトを備えた航空ユニットを搭載しており,見た人をもれなく驚愕させる異質な外見を手にしていた。

 

その結果100機以上の戦闘機運用能力とアンドロメダ譲りの高い攻撃能力を両立する事が出来たものの,それでも改造費が高くついた為に2隻のみの建造となっていた。

その2隻は行き場を失っていたが,第13艦隊新設に伴ってそれぞれ戦隊旗艦として配備された。

 

「アマテラス」こと通称 CCC(トリプルシー)クラス最大の特徴でその巨大すぎるが故に入渠出来るドックが限られている要因でもある艦橋にエドラスト・スフィンシャー中将は仁王立ちして,正面を睨みつけるが如く見つめていた。

 

艦橋上部のディスプレイには第3戦隊が戦うべき相手 ベリメサ戦隊が写っていた。ベリメサ戦隊は14隻の艦艇で構成されており,巡洋艦や駆逐艦が大半を占めていたが,艦隊旗艦のみ航空母艦「フルメティス」が努めていた。

たった1隻の空母の甲板上には無数の機体が展開しており,カタパルトを使って次々と発艦している様子をスフィンシャーは艦長のタリオン・マクギスと共に見ていた。

 

「どうやらまずは艦載機で攻撃を仕掛けるみたいですね。」

「恐らく艦載機で混乱している隙に襲撃でも仕掛けるのだろう。」

 

2人はディスプレイを見ながらそう答えた。機動力に優れた艦載機を持ってして,第3戦隊(我々)を混乱させた隙に,残る艦で打撃を与える。

航空機と艦隊で同士討ちする可能性があったものの,戦力差が激しい現状なら最善の策かもしれなかった。

 

「それでどう対処しますか?」

 

タリオンの疑問にスフィンシャーは間を開ける事なく返答する。

 

「艦載機は本艦だけで何とかなる。それよりも「トロント」に対光学ミサイルを装填するようにと指示を出せ。」

「結構貴重ですけど、いいんですか?」

「構わん。こういう時の為に取ってあるのだから。」

「左様でしたか。通信士,「トロント」に今の指示を伝えろ。」

 

スフィンシャーの発言にタリオンが再び疑問を投げたが,スフィンシャーは動ずることなく答えた。その様子にタリオンの疑問は消え,直ぐ様通信士に指示を出した。

 

「対光学ミサイルを発射した後はどうしますか?」

「あっちが艦載機で戦うのならこちらも艦載機で戦うとしよう。アマテラス中隊は出せるか?」

「アマテラス中隊は既に出撃準備を整えて,発進を待っているだけです。」

「手際がいいこと。」

 

既に航空隊の準備を終えていた事にスフィンシャーは思わずそう言った。

直後,レーダー員の声が艦橋に響いた。

 

「敵航空隊がこっちに来ます!! 総勢52機!!」

「重力子スプレッド弾発射用意!! 発射機展開!! 艦首を下げろ!!」

 

スフィンシャーの指示で「アマテラス」の艦首波動砲発射口の少し後方から4基の箱がせり出す。横長の長方形の箱ことクワイラント工廠製のR2U重力子スプレッド発射機には真円が並列に並んでおり,真円に蒼白いエネルギーが充填されると同時に,スラスターを展開して艦首を航空隊ヘと向けた。

 

計4機の重力子スプレッド発射機から8発の重力子スプレッド弾が下の航空隊に向けて発射された。

 

8発の重力子スプレッド弾は低空から雲を突き抜けて上昇中の航空隊へと向かっていった。航空隊が重力子スプレッド弾に気がついて回避行動をしようとしたがもう遅かった。

 

重力子スプレッド弾は急激に膨張して航空隊を飲み込む。超高圧増幅装置で極限まで原子や分子を圧縮して発射する重力子スプレッド弾は,原子や分子が圧縮から解放される事で広範囲を爆縮に飲み込んで破壊する。

その爆縮に航空機は耐えきれる筈が無く,瞬く間に52機全てが文字通り消滅した。

 

役割を果たすことなく航空隊が消滅したことを確認すると,スフィンシャーは間入れずに指示を出す。

 

「対光学ミサイル発射!!」

 

艦隊を波動防壁で守っている「トロント」の多目的ランチャーから1発のミサイルが発射された。

1発あたりの製造コストが高すぎるが故に艦隊でも数えられる程しか配備されていない貴重なミサイル CL-1024対光学ミサイルが。

 

CL-1024対光学ミサイルは重力も味方につけて,速度を増しながらベリメサ戦隊へと向かっていく。

 

一定の位置まで降下していった対光学ミサイルは突如爆発した。

対空砲火も上がっていなかった為に突然の爆発は不自然そのものだったが,誰も動揺していなかった。

 

「対光学ミサイル()()!! チャフ粒子の散布を確認!!」

「アマテラス中隊出撃!!」

「アマテラス中隊出撃許可!! カタパルト始動!!」

 

レーダー員の報告を受けたスフィンシャーが即座に発した指示を艦橋の航空参謀が格納庫に伝える。

 

まもなく艦橋後部の格納庫から地球防衛軍の主力マルチロール戦闘機 コスモファルコンが次々と発艦していく。片舷12基のガルフェイオン社製 Qw-58Cv電磁カタパルトによって勢いよくノルースの空へと飛び出したコスモファルコンは各種スラスターを動かして機体を安定させると,編隊を作り出した。

 

コルスファイス・エアクラフト社が作り上げた地球防衛軍最高峰の多目的戦闘機(マルチロールファイター)4中隊 計100機は,機体後部のセルティアルム社製のSR-22Aコスモエンジンの出力を上げ,光学的な対抗手段を失ったミルメリア艦隊ことベリメサ戦隊へと突撃していった。

 

 

「航空隊が·········全滅だと!?」

 

ベリメサ戦隊旗艦の空母「フルメティス」の艦橋で戦隊の名称でもあり,司令官のベリメサ・バンル・ヘンフェルメサ少将は冷静さを失っていた。

 

本隊の第35艦隊を失った事に加え,出撃した航空隊も重力子スプレッド弾で文字通り消滅してしまった為に,彼のメンタルは尽くやられていた。

他と違ってグラ・バルカス帝国(今まで戦っていた相手)から損害らしい損害を受けていなかったのも,余計にメンタルを破壊していた。

 

「戦隊司令!! 錯乱する前に指示を出してください!!」

 

「フルメティス」艦長の言葉でベリメサは正気を取り戻した。

 

「そ,そうだな。全艦向けられるだけの主砲を上に向けろ!!」

「敵艦隊ミサイル発射!! 数1!!」

「なっ!?」

 

ベリメサが指示を出し終えると入れ違いに女性レーダー員がミサイル発射を報告した。

この報告でベリメサは困惑した。今ならミサイルによる飽和攻撃で戦隊を全滅させることも出来るだろうが,何故たった1発だけミサイルを発射したのか彼には理解できなかった。

 

加えてそのミサイルが迎撃する前に自ら爆発した事も彼をより困惑させた。

 

「自爆しただと? 何だあのミサイルは?」

 

艦隊の遥か上空で自爆した為に被害はなく,破片すら届く事は無いだろう。

何故わざわざ1発だけミサイルを発射して,それを自爆させたのか、ベリドサは理解できていなかった。

 

だがベリドサが考察する前に異変は起こりだした。

 

「ショックカノン及び対空レーザー砲のエネルギー出力が急速に低下していきます!! 」

「どういう事だ!?一体何が起きている!?」

 

唐突に起きたエネルギー出力の低下。ショックカノン等の光学兵器を中心とするミルメリア艦隊にとって,エネルギー出力低下で使えなくなるのは戦力が8割型消えたのと同義だ。

 

突如として起きた緊急事態だったが,ベリドサはある答えが浮かんだ。

 

「出力低下······まさか対光学ミサイル!!」

 

1発だけ発射されたミサイルこと対光学ミサイルで光学兵器は無効化された。数少ない情報で辿り着いたベリドサの推察は当たりだった。

 

CL-1024対光学ミサイルは弾頭にZc-1908A粒子,通称 チャフ粒子を満載している。光学兵器を無効化できるチャフ粒子だが15分弱しか機能しない上に製造コストが高すぎる兵器な為に,艦隊には数えられる数しか配備されていなかった。

 

加えて15分弱しか使えない対光学ミサイルを効果的に使える戦場は限られている為に,ミルメリア側は存在は周知していても詳細な情報は入手出来ていなかった。

 

だが答えを導き出しても現状は改善されなかった。エネルギー出力低下は止まらず,遂に対空レーザー砲発射すらも出来ない程に出力が低下しまった。

 

「対空レーザー砲も使用不能になりました!!」

「なんてことだ·······これでは我々は丸腰ではないか!!」

 

1発1発の単価が高いミサイルや魚雷等の実弾ではなく,安価で連射も効くショックカノンや対空レーザー等の光学兵器を中心に構成されているミルメリア艦にとってこの状況は絶望に等しかった。

 

加えて積んでいる魚雷とミサイルも数は限られており,艦隊全部を合わせても第3戦隊全艦を撃沈することは不可能に近かった。

 

「こんな状況になるのであれば,拡散ランチャーでも搭載するべきだった!!」

「司令官落ち着いてください!!」

「敵航空機 計100機来ます!!」

 

ベリドサは絶望的な状況に錯乱しそうだったが,艦長が抑えた事と女性レーダー員の報告で現実に引き戻された。

 

第3戦隊はベリドサ戦隊が混乱している間に航空隊を出撃させた。いつもなら脅威にはならないはずの航空機が今はとてつもない脅威へと成長していた。

 

「不味い!!·······対空ミサイルと魚雷を発射しろ!!」

 

レナドサは冷静にミルメリア艦隊に残されている最後の抵抗手段を使用する指示を出した。

 

「フルメティス」の船体両舷から計8つもの正方形のハッチが開き,片舷に8基ずつ搭載されている対空ミサイル発射管が姿を見せる。レナドサ戦隊の全艦から発射された弾頭は約100発にも及び,機体と同数の数でアマテラス中隊へと向かっていった。

 

ベリドサ戦隊が保有するミサイル全弾を発射した為に,もしこれで駄目ならばこの戦隊は抵抗手段を失ったと同義だった。

ベリドサらは祈るように見ていたが,無常にもアマテラス中隊は動じていなかった。

 

敵航空機こと コスモファルコン胴体下部が開き,ウェポンベイに格納されていたヴァルセート社製のSE-194空対空ミサイル(AAM)が姿を現す。

4発のSE-194は接続されていたアームから外され,ブースターに点火して飛翔を開始する。SE-194は1機あたり4発搭載されている為に僅か数十機程度でベリドサ戦隊が発射した対空ミサイルの総数を上回る。

 

蒼色の空に一瞬で黒の花弁の華が幾つも咲いた。ベリドサ戦隊側とアマテラス中隊の対空ミサイルがすれ違いざまに近接信管によって次々と爆発して,空を黒い花弁で埋め尽くした。

 

蒼い空を真っ黒に染めた黒煙の中を切り裂いて,ほぼ無傷のアマテラス中隊が姿を現し,ベリドサ戦隊へと向かっていた。

殆どのミサイルを使い切ったベリドサ戦隊に回避以外の対抗手段は残されていなかった。

 

「全艦回避行動を取れ!!」

 

ベリドサは回避指示を出したが,それは自暴自棄に近いものだった。アマテラス中隊は回避命令に混乱するベリドサ戦隊に引導を渡しに行った。

 

コスモファルコンの主翼についているハードポイントからVE-200空対艦ミサイル(ASM) 4発が切り離される。ミサイル後部のブースターに点火して,燃料を消費しながらベリメサ戦隊へと向かい出した。

 

最初の1機に続くように後方の機体もハードポイントのVE-200を次々と切り離して発射した。計400発の対艦ミサイルがベリメサ戦隊へと向かっていった。

いつもならば対空レーザー砲で数割が撃墜されている筈の対艦ミサイルが,1発も落とされる事なく僅か14隻の艦艇に襲い出した。

 

VE-200は外縁に展開していた駆逐艦「ビジュン」に最初に命中した。短時間で6発も被弾した「ビジュン」は瞬く間に船体を破壊され,降下する間もなく爆発を起こして沈んだ。

 

「ビジュン」を皮切りにベリメサ戦隊に次々とVE-200対艦ミサイルが命中していった。

 

「駆逐艦「ヴァーメナ」・「ベリノ」轟沈!!」

「下部艦橋大破!! 格納庫にも被弾!!」

「重巡「ファングテレア」爆沈!! 軽巡「ドレイダー」も!!」

 

僅か数分でベリメサ戦隊は崩壊し,旗艦「フルメティス」も何発も被弾した為に撃沈は免れなかった。

 

「スマンみっ······」

 

ベリメサが発した言葉は最後では話される事は無かった。10発以上のVE-200を被弾した「フルメティス」は格納庫の航空燃料やミサイルに誘爆して,船体を内部から破壊した。海に落ちる事なく「フルメティス」は爆沈し,艦橋にいたベリメサは爆発に呑まれてこの世を去った。

 

ベリメサ戦隊は過剰とも言える数の空対艦ミサイルの飽和攻撃で残骸へとなり,パガンダ島西方のヴァンテノ海へと落下していった。

 

ベリメサ戦隊の消滅を確認したアマテラス中隊は「アマテラス」に回収され,回収を終えた後にグラ・バルカス大陸(目の前の大陸)へと向かい出した。

 

 

ベリメサ戦隊が一方的に攻撃されている頃,伊豆諸島東部近海でも戦闘が始まろうとしていた。

 

海面から200m程の高度には東京等の都市圏を火の海へと変貌させたメディナ戦隊が展開していた。自衛隊と在日米軍の猛攻で半数の艦載機と数隻の艦を失っていたが,第35艦隊からの艦艇補充も受けて戦力を維持していた。

 

一時は本州の奥に逃げ込んでいたが,ヴェルズリーの挑発によって自ら戦場へと駒を進めていた。

 

そのメディナ戦隊を見下ろす様に地球防衛軍第13艦隊第4戦隊が遥か上空に展開していた。

第3戦隊と同じく第2330戦隊旗艦のアンタレス級「GGG-104 アルタイス」の指揮でトウキョウ級「HHH-071 バンクーバー」や「HHH-081 ボルティモア」等5隻が波動防壁を展開していた。

 

第4戦隊の中心には第13艦隊旗艦「AAA-013 オーシャン」と同じく蒼色に塗られた船体を持つ旗艦 「CCC-002 アクエリアス」が

 

「アマテラス」と同じく航空機格納庫とカタパルトを内蔵した特徴的で巨大な艦橋で司令官のヒエリス・グランベイン中将と参謀のヒューア・ヴァントリノ中佐はメディナ戦隊を見落としていた。

 

「どうやら艦載機は出さないみたいだな。恐らく砲撃戦で戦う気だろうな。」

「艦載機ぐらいは日本が保有している戦闘機でも落とせると思います。艦載機は出さないではなく出せないのでしょう。」

 

ヒューアの推測は正解だった。メディナ戦隊の艦載機 テレスガーベーターは国内からかき集められた航空自衛隊のF-15J/DJ(イーグル)とF-2A/B・F-4EJ改(ファントム)RF-4EJ(リコン・ファントム),アメリカ海軍のF/A-18E/F(スーパーホーネット)や海兵隊のF/A-18C/D(ホーネット),空軍のF-15C/D(イーグル)F-16CJ/DJ(ファイティングファルコン)によって多くの機体が撃とされていた。

 

日米も約8割が撃とされて再起不能レベルの打撃を受けたが,それはメディナ戦隊側も同じだった。

艦艇に関しては代わりの艦が来ていたが,艦載機は補填出来ていなかった為に戦力になれる数を揃える事が出来なかった。

 

ベリメサ戦隊とは違ってメディナ戦隊は航空機による攻撃戦力を実質的に失っていた。メディナ戦隊に残された攻撃手段はショックカノンとミサイルのみだった。

 

「流石に睨み合いも疲れて来ただろう。そろそろ痺れを切らす事だろうな。」

「既に20分。相手もイライラしてきているでしょうね。」

 

ヒエリスは敢えて攻撃を行わず,兎に角相手からの攻撃を待ち続けた。最善の策を見出す為でもあったが,これを行った最大の理由はヒエリスの性格そのものにあった。

 

彼は根っからの戦闘狂で戦闘そのものに自身の喜びを見出していた。特に彼は戦闘開始の緊張感を一気に高めてからの戦闘に快感を覚えており,実質的に1艦隊の司令官となった今は毎回の様に行っていた。

 

ヴェルズリーは彼の行為を気にしてはいるものの,第4戦隊が高い戦果を上げてくる為にあまり指摘して調子を壊すのは良くないと結論づけ,特定の事情がない限りは見逃していた。

 

今回も彼はいつも通りやっていたが,彼が予想していた以上にメディナ戦隊が耐えている事は想定外だった。攻撃を仕掛けない理由は第4戦隊は知ることが出来ないが,2艦隊は約20分も睨み合っていた。

 

常人なら20分も睨み合っていれば疲れが出てくるものだが,彼に疲れなど存在していなかった。寧ろ彼は内心で“ここまで焦らす相手は久しぶりだ”と喜びを抱いていた。

 

そして彼が望んでいた展開が遂に訪れた。

 

「敵艦隊ミサイル発射!! 数56!!」

「来たな··········右舷を下に向けろ!! ()()()()()()()()()()()展開!!」

 

この瞬間を待ちわびていたかの如くヒエリスの意気揚々と出した指示で「アクエリアス」最大の特徴でもある右舷側の重力子スプレッド発射機 6基がせり出す。

 

本来ならば舷側には舷短魚雷発射管や多連装ミサイル発射機等が搭載されているが,側面防御能力を高める為にR2U重力子スプレッド発射機を片舷に6基ずつ搭載していた。

 

これを搭載する為に魚雷発射管やミサイル発射管は撤去していたが,防御能力は格段に向上していた。

 

スラスターによって「アクエリアス」の船体は右へと傾き,エネルギーが充填されつつあった重力子スプレッド発射機がミサイルと相対した。

 

舷側の膨らんだバルジのような箇所に上下 3基ずつ搭載しているR2U重力子スプレッド発射機から12発もの重力子スプレッド弾が発射された。

 

青白い12個の光がミサイルへと迫る。ミサイルを目前にして重力子スプレッド弾が威力を解放する。

 

広範囲の爆縮によってミサイルは破片すら残さずに消え去った。

ミサイル群の消滅を確認したヒエリスは間を開ける事なく次の指示を出した。

 

「全艦ミルメリア艦隊へと主砲旋回!!」

 

彼の指示によって艦橋前に設置されているバクファック・エンジニアリング社製のO4-C 40.6cm3連装ショックカノン砲 2基が右舷へと回り出す。

 

ドレッドノート級も3基のAS-7V 30.5cm3連装ショックカノン砲を,エンケラドゥス級も 3基のTA-6G 12.7cm連装ショックカノン砲をメディナ戦隊の方へと向けた。

本来ならば砲撃戦にはあまり参加しないアンタレス級とトウキョウ級もドレッドノート級から引き継いだAS-7V 3連装ショックカノン砲を向けていた。

 

主砲をメディナ戦隊に向けると同時にスラスターによって船を傾け,主砲をメディナ戦隊と正対させた。

 

「主砲発射ぁ!!」

 

O4-C 40.6cm3連装ショックカノン砲から発射された6本もの蒼いショックカノンがミルメリア艦隊へと向かっていく。「アクエリアス」に続いて第4戦隊全艦からメディナ戦隊に向けてショックカノンが降り注いだ。

 

外れたものが大半だったが,それでも50発近くのショックカノンが流星の如くメディナ戦隊に襲いかかった。

 

小さな駆逐艦はショックカノンの直撃で瞬く間に爆発に飲み込まれ,大型な巡洋艦や航空母艦はある程度装甲があった為に耐えることは出来たものの,日米軍が損傷を与えた艦は耐えきれずに沈んでいった。

 

ショックカノンの流星群が消える頃にはメディナ戦隊の艦艇は半数まで減っていた。

 

「駆逐艦3隻,重巡及び軽巡1隻ずつに撃沈確認!!」

「敵空母被弾!! 航空甲板に被害が出ています!!」

 

観測員の報告をヒエリスとヒューアは艦橋上部の巨大ディスプレイに写された映像と共に確認していた。

メディナ戦隊の周りには撃沈された事による未だに黒煙が広がっていた。

 

「一撃で半数が消えるとは。楽な戦いかもしれませんね。」

「不吉な事を言うな。」

「敵艦隊発砲!!」

 

2人が不吉な話をしているとレーダー員からメディナ戦隊が発砲した旨が伝えられた為に2人はディスプレイを見た。

 

メディナ戦隊が発射した緑色のショックカノンは数は少なく,照準もいい加減でその場しのぎで撃ったようなものだった。事実緑色のショックカノンは当たることなく通り過ぎたが,奇跡的も軽巡「メラビアン」が発射した一発だけが「アクエリアス」の前を行く第1341宙雷戦隊旗艦 「DDD-087 エキスプレス」の補機エンジンに命中した。

 

主機であるPNC-257型次元波動エンジンを補助するために両脇に搭載されたレーベナイン発動機製のHU-32ケルビンインパルスエンジンの右舷側はショックカノンの直撃で損傷して出力が低下した為か,艦自体の角度が増した様にも「アクエリアス」の艦橋から見えた。

 

「戦艦「エキスプレス」被弾!!」

「申し訳ありません。私があんなこと言ったせいで。」

「構わぬ。どちらにしろ当たっていただろうからな。全艦に自由攻撃を許可!! 存分に暴れまわれ!! 但し同士討ちはするな!!」

 

ヒューアの謝罪も程々に聞いて,ヒエリスは各艦に同士討ちをしない範囲での自由攻撃を指示した。許可が降りて30秒も経つと各艦がそれぞれショックカノンに加えて,ミサイルや魚雷を発射し出した。

 

第1341宙雷戦隊所属の「DDD-101 ライナー」もその内の一隻で右舷に搭載されている多連装ミサイル発射機からミサイルを発射した。

 

ミサイルは主砲から発射された9発のショックカノンと共にメディナ戦隊の重巡「メルナデック」へと降り注ぐ。ショックカノンは外装を溶かして艦内に侵入し,ミサイルも艦内部を破壊する。

 

僅か1分たらずで「メルナデック」は爆発して,残骸は旧太平洋へと散った。

 

同じく第1341宙雷戦隊所属の「DDD-307 ハーメルン」もショックカノンと同じく右舷の短魚雷発射管 12基から1発ずつ魚雷を発射した。

 

12発の短魚雷と蒼色のショックカノンは緑色のショックカノンとすれ違いながら,メディナ戦隊へと向かう。

 

ショックカノンは駆逐艦「メイヘ」に命中し,短魚雷は駆逐艦「ライヴェ」と旗艦の「レパグラン」に命中した。

 

駆逐艦2隻は瞬く間に爆沈し,「レパグラン」もさっきの損傷と共に艦に大きなダメージを受けた。

 

そこに「アクエリアス」から発射されたショックカノンが命中したことが留めとなった。「レパグラン」は船体各所から爆発を起こした。

 

爆発は空母としては巨大な艦橋にも及び,戦隊名称の由来でもあり司令官のメディナや参謀のレナドサは爆発に巻き込まれた遺品すら残さずに消え去った。

 

制御を失った「レパグラン」は徐々に海面へと落ちていった。

 

「空母高度を落としていきます!! 撃沈は確実かと!!」

 

レーダー員がそう報告した直後,「レパグラン」は海面に落下して落下の衝撃で今までで一番大きな大爆発を起こした。膨大な量の海水を巻き上げて爆発はメディナ戦隊の全滅を物語っていた。

 

東京都心を崩壊させた14隻の艦隊は全てが旧太平洋へと散った。「レパグラン」の爆発が収まったことを確認した第4戦隊はそのまま進路を東京へと向けた。




・アンタレス級宇宙航空母艦とトウキョウ級武装補給母艦
外見というより全てが2205に登場した戦闘空母ヒュウガと補給母艦アスカです。細かい設定とかはいつか書きたいですね。

・重力子スプレッド弾
こいつの詳細な説明はwikiにもPixivにも書いてなかったので描写に困りましたが,たまたまYahooのQ&Aで書いてあった事を参考にして書きました。
細かく書かれていたので今回使わせて頂きましたが,公式設定では無い可能性が高いことを理解してください。

・CL-1024対光学ミサイルとチャフ粒子
対光学ミサイル自体はこの話の初期段階からありましたが,いざ書いていくと“ショックカノンを封じれるのであれば,例え高価でもガンガン使っちゃうんじゃね?”って思ったので,時間制限を設けました。
書いている際にふとガンダムの“ミノフスキー粒子”ぽいな?と思って調べたら全く違ってました。

余談ですが私はガンダムよりもマゼラン級等の艦にしか目が行きません。

・ヴァンテノ海
パガンダ島とグラ・バルカス大陸の間の海。

ヴァンテノ海はグラ・バルカス帝国近海の名称が分かんなかった為に作ったオリジナル設定です。
グラ・バルカス大陸も大陸名が原作では明記されてなかった為に名付けたオリジナル設定です。間違って使用しない様にお願いします········間違える人はいないと思いますが。

・側面重力子スプレッド発射機
銀英伝の“マウリヤ”をベースに,大幅に増備された副砲として側面に重力子スプレッド発射機を置きました。

恐らくマウリヤでヒエリスのモデルは分かった人がいると思います。

・宙雷戦隊·····
良い名前が思いつかん··········

・今話に出てきた会社及び工廠について
これを作った理由ですが,簡単に言うとスターウォーズの兵器解説動画を見てたら,付けたくなったという安直な流れです。
それに細かい設定があれば世界観が深まると思ったので。

簡単すぎる解説
ヴァンクライト研究所
ヴァンクライト・シティ(ダブリン)に置かれている地球防衛軍の研究所。波動防壁共鳴システム等を開発した。

パラード・ツェルナイン社
ツェルナイン・シティ(シドニー)に本社を置く会社。アンドロメダ級やドレッドノート級の波動エンジンを製造している。

クワイラント工廠
クワイラント・シティ(ニューヨーク)に置かれている地球防衛軍の工廠。重力子スプレッド発射機等を開発した。

ガルフェイオン社
テレシアルトア・シティ(バルセロナ)に本社を置く会社。地球防衛軍艦艇の電磁カタパルト全般を製造している。

コルスファイス・エアクラフト社
セントラル・シティ(デトロイト)に本社を置く会社。コスモファルコン等の航空機を製造している。

セルティアルム社
アンステル・シティ(コペンハーゲン)に本社を置く会社。航空機エンジンを製造している。

ヴァルセート社
クワイラント・シティに本社を置く会社。航空ミサイル全般を製造している。

レーベナイン発動機
ヴァレクアイト・シティ(ブエノスアイレス)に本社を置く会社。地球防衛軍艦艇の補助エンジンを製造している。

バクファック・エンジニアリング社
バーベニアム・シティ(サンフランシスコ)に本社を置く会社。地球防衛軍艦艇の主砲は全て製造している。


多分この話が2022年最後の更新になると思います,来年も宜しくお願いします。


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2つの戦い方と終わりのとき

明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。
いつ連載が止まるか分かりませんが,ノルース戦記を宜しくお願いします。

2023年初投稿の本話をどうぞ!!


グラ・バルカス大陸と日本列島近海で戦闘が行われていた頃,ミリシエント大陸西部のアンティレ海でも戦闘が始まろうとしていた。

 

第35艦隊を一方的に全滅させた第13艦隊第2戦隊 51隻はミリシエント大陸に攻撃を行っていたエルメ・ザフェ・ルエンベータ少将率いるエルメ戦隊を殲滅すべくノルースの空を進んでいた。

 

旗艦の「BBB-001 アンドロメダⅡ」は先程行ったワープアウト直後の波動砲発射で補助エンジンに不安を抱えていたが,通常戦闘には支障は出ないだろうと戦隊司令官のフェイアン・アレヴィン中将含め上層部全員が結論づけていた。

 

司令官のみが身につけられるコートの軍服を着て,自身の椅子に座らずに立っているアレヴィンに,レーダー員と通信士が話しかけた。

 

「ミルメリア艦隊捕捉! 10時方向,50km地点に展開しています!! 高度は我々の方が上です!!」

「司令官。先行させているコスモレイの機首カメラと繋げられますが,繋げますか?」

「無論だ。ディスプレイに写してくれ。」

 

アレヴィンの言葉を受けて通信士がタッチパネルとキーボードを操作すると,艦橋上の巨大ディスプレイに偵察として第1320宙雷戦隊旗艦「DDD-274 シヴィライゼーション」から発艦したSTOL多目的偵察機 コスモレイが撮影した映像が写し出される。

機首に搭載されたパーセシャル社製のSo-20V観測カメラによって鮮明に映し出された映像には14隻ものミルメリア艦隊が海の上を進んでいた。

 

アンティレ海という蒼く染まったキャンパスに緑色のミルメリア艦艇は小さくても目立つ存在だった。それが魚群の如く14隻も集まっていれば,高空にいるコスモレイにもハッキリと視認出来る程に目立っていた。

 

アレヴィンは参謀のライナ・パラーティノ少佐と「アンドロメダⅡ」艦長のキルエト・ガンリッター大佐と意見を交わした。

 

「相手に空母はいないみたいだが,油断してはならんな。」

「我々の艦は艦底に主砲がありませんからね。主砲を向けられる彼らの方が有利ですぞ。

加えて波動防壁の効力も若干ですが減少していますので気をつけたほうが良いと思いますぞ。」

「ミサイル・魚雷・対艦グレネードの残弾は充分ありますので,遠慮なく撃つことが出来ます。」

 

参謀のライナがタブレットを操作しながら実弾兵器の残弾を報告していると,タブレットにメッセージが入ってくる。彼女はメッセージの内容を読むと,アレヴィンへと報告した。

 

「司令官。先程第3戦隊と第4戦隊は既にミルメリア艦隊を全滅させたと通信が入りました。」

「もうやったのか,早いもんだな。そうなると負けていられないな。」

 

既にスフィンシャーの第3戦隊とヒエリスの第4戦隊が役目を果たしたと知ると,アレヴィンはフッと笑うと手元の通信機を取った。

 

「第1320宙雷戦隊及び第1321宙雷戦隊攻撃開始!!」

 

アレヴィンの指示で第1320宙雷戦隊と第1321宙雷戦隊所属のドレッドノート級5隻とエンケラドゥス級宇宙護衛艦15隻がFE-224艦対艦ミサイルとXaS-332AD 対艦グレネード弾をばら撒くように発射する。

エンケラドゥス級宇宙護衛艦は艦底のTA-6G 12.7cm連装ショックカノン砲も発射して対艦ミサイル・グレネードと共にエルメ戦隊へと降り注がれた。

 

雨の如く降り注がれる攻撃に対して,エルメ戦隊はショックカノンを発射して,対空レーザー砲をばら撒いて迎撃体制を整える。

対空レーザー砲で次々と対艦ミサイルとグレネードが撃墜されていったが,数が多すぎた為に落としきれず次々と被弾する艦が現れる。

 

先頭を進んでいる軽巡洋艦「マリエディア」と左斜後ろにいた駆逐艦「ジェリト」には対艦ミサイルが何発も着弾して,高威力の弾頭で船体を破壊される。

 

「ジェリト」は爆発によって船体を真っ二つに引き裂かれて沈んでいく。沈んでいく最中,辛うじて生存していた第1砲塔が最後の一撃を放つが,地球艦隊ではなくあろうことか友軍の「マリエディア」に命中してしまった。

 

本来ならば防御フィールドによって防がれるはずの砲撃は「マリエディア」の船体を溶かすように貫き,最後の引導を渡した。ショックカノンが致命傷になった「マリエディア」は機関が爆発し,そのまま艦を包み込む爆発に呑み込まれていった。

 

沈んだのは2隻だけだったが,エルメ戦隊の約半数の艦が何かしらの損傷を受けていた。エルメ戦隊旗艦の「ディメイラナイト」は側面の主砲も上に向けて,砲撃の密度を増していった。

 

緑色のショックカノンが蒼色のショックカノンとすれ違って,第2戦隊に向かっていく。

現状エンケラドゥス級のみが発射出来る第2戦隊と上甲板と側面の主砲を向けられるエルメ戦隊とではショックカノンの数に大きな差が発生している。

 

何発もミルメリア側のショックカノンが第2戦隊に到達するが,波動防壁で防がれていた為に被害は発生していなかった。だがあまりの数とアンティレ海でパル・キマイラ1号機が爆沈した際に誘爆したジビルによって周辺の魔力が不安定になっていた事も合わさって波動防壁の消耗が加速していった。

 

そして遂に第1321宙雷戦隊所属の「EEE-123 スィオネ」の波動防壁がショックカノンの集中砲火によって破られた。

 

自らを守る壁を失った「スィオネ」をエルメ戦隊旗艦「ディメイナライト」が放った6本のショックカノンが貫いた。113mの小さな船体は大口径高出力のショックカノンによって簡単に破壊される。

 

「「スィオネ」轟沈!!」

 

観測員の言葉が放たれると同時に「スィオネ」の姿は爆発に消えていった。空母「ベルミナーエ」を沈めた武功艦はアンティレ海へと散った。

 

アレヴィンが見た頃には「スィオネ」は元いた場所に黒煙を残してアンティレ海に消えていた。遂に一隻沈んだ事にアレヴィンの顔は苦いものになったが,直ぐに艦長へと向き直った。

 

「艦長,本艦も前に出るぞ!!」

「了解!! 機関出力上げ!! 面舵一杯!!」

 

キルエトの指示が機関室へと向かい,主機のPNC-350W型次元波動エンジンと補機のHU-47ケルビンインパルスエンジンが出力を増す。

 

444mの巨大な船体を持つ艦は航海長の操縦でその進路を右側へと変えた。エルメ戦隊で最も左側に展開していた軽巡洋艦「パスフェライネ」は「アンドロメダⅡ」の動きに気づき,主砲を発射するが波動防壁によって防がれていた。

 

「艦を左舷に傾けろ!! 射角を確保でき次第主砲発射!!」

 

アレヴィンの指示でスラスターが動作して「アンドロメダⅡ」が左側に傾いていく。

 

1・2番主砲のO4-C 40.6cm3連装ショックカノンが左舷側に向き,照準を未だに撃ってくる「パスフェライネ」に合わせると間を開ける事無くショックカノンを発射した。

 

6本のショックカノンが「パスフェライネ」の船体を溶かして艦を貫く。40.6cmの大口径ショックカノンに貫かれた「パスフェライネ」は瞬く間に爆発に呑まれて沈んでいった。

 

「対艦グレネード及び左舷ミサイル発射!! 打撃を与えろ!!」

 

左舷側の四連装対艦グレネード投射機と多連装ミサイル発射機からXaS-332AD(対艦グレネード弾)FE-224(対艦ミサイル)が発射され,エルメ戦隊に襲いかかる。

 

第1321宙雷戦隊のドレッドノート級も上に回り込んだ上で右舷に傾かせることで主砲の射界を確保して,エルメ戦隊を上から砲撃していた事で,2方面から攻撃を受けたエルメ戦隊はたちまち攻撃が途切れる事になった。

 

この隙を逃さず第1322宙雷戦隊は敵前会頭し,正面のエルメ戦隊に横腹を見せつけた。艦の全火力を集中投射出来るT字になったことで,より一層攻撃の密度は増した。

 

3方向からの攻撃で次々とエルメ戦隊の艦は爆発に呑まれて消えていった。旗艦の「ディメイラナイト」も多すぎる直撃弾で次々と壊れていった。

 

そして第1322宙雷戦隊所属の「DDD-335 カテドラル」の砲撃が止めとなり,「ディメイラナイト」は艦内から爆発して真っ二つに折れて,エルメ准将と共にアンティレ海に消えていった。

 

黒煙と共にエルメ戦隊が消えていく様子を眺めているアレヴィンにライナがタブレットを操作しながら話しかけた。

 

「司令官。損害集計が完了しました。護衛艦「EEE-123 スィオネ」が撃沈,戦艦「DDD-291 クレセント」と護衛艦「EEE-097 イオカステ」・「EEE-117 アウトノエ」が損傷を受けました。」

「いつも通り早すぎる仕事だな。にしてもちょっと多すぎたな······」

 

アレヴィンはライナの驚異的な仕事の速さを褒めたが,同時に自艦隊の被害が大きいことに苦い顔をした。第4戦隊の被害は戦艦「DDD-087 エキスプレス」のみで,第3戦隊に至っては損害無しで終えていた。

 

「いや寧ろ被害がある方が普通か,無い方が可笑しいのか。」

 

アレヴィンは被害が無い方が可笑しいと結論づけ,自分の罪悪感を打ち消した。だがそんな彼にふと1つの疑問が浮かんだ。

 

(この状況ならヴェルズリー司令官はどう戦うのだろうか?)

 

彼の疑問に対する答えは直ぐに出ることになった。

 

 

ミルメリア宙軍第35艦隊の生き残りだったメディナ・ベリメサ・エルメ戦隊が殲滅させて,最後の生き残りとなったクレビト戦隊にも終末が迫っていた。

 

ドファイアン・レド・クレビト准将率いるクレビト戦隊は目標であるアニュンリール皇国へと向かっていたが,皇国軍が保有している天の浮舟や空中戦艦・魔導艦・誘導魔光弾等を投入した総攻撃で駆逐艦「セラト」・「ガフィア」の2隻を喪失して,それ以外の艦も損傷を受けた。

だが熾烈な戦闘の末に殲滅させて首都 マギカレギアを砲撃していたが,第35艦隊本隊の全滅を受けて退避していた。

 

取り敢えず避難して戦局を見極める筈だったが,ヴェルズリーの挑発とも言える演説でベスタル海という戦場へと艦隊を進めていた。

 

アニュンリール皇国唯一の外交窓口 プシュパカ・ラタンとベスタル大陸の間に広がるベスタル海の上空でクレビト戦隊は蒼色の船体の「AAA-013 オーシャン」に座乗している第13艦隊司令官のフェルド・ヴェルズリー大将が直接率いる第1戦隊と相対した。

 

ほぼ同じ高度で向き合う2艦隊のだったが,第1戦隊が戦いの火蓋を切った。

 

「対艦ミサイル及び対艦グレネード発射!! 補給母艦は波動防壁を全力で張れ!!」

 

第1310宙雷戦隊と第1312宙雷戦隊所属のドレッドノート級宇宙戦艦 5隻が艦底のミサイル発射管と上甲板の対艦グレネードからそれぞれ8発ずつ発射した。

続いて第1310宙雷戦隊と第1312宙雷戦隊所属のエンケラドゥス級からもXaS-332AD(対艦グレネード弾)FE-223(対艦ミサイル)が発射された。

 

2種類の対艦誘導弾はそれぞれの誘導装置に従って,クレビト戦隊へと向かっていく。

 

対空レーザー砲とミサイルで迎撃するが,エルメ戦隊と同じくミサイルの数が多すぎた為に落としきれず,次々と被弾する。

 

先頭を行く駆逐艦「トエラ」と「ナハディア」は被弾すると,瞬く間に爆発に消えていった。

 

クレビト戦隊も反撃として次々とショックカノンとミサイルを発射するが,トウキョウ級補給艦母艦が展開する波動防壁によって防がれ被害を与えられていなかった。

 

緑色のショックカノンが防がれる様子は艦隊を守る盾だと安心づけると同時に,破られたら瞬く間に被弾するという不安を与えるものでもあった。

ヴェルズリーは安心しきった目で波動防壁越しに真正面のクレビト戦隊を眺めていた。

 

「彼らの目は充分に引き付けられているな。」

「充分すぎる程に引きつけられていると思いますよ。」

 

ヴェルズリーの言葉に艦長のマラキス大佐が答える。クレビト戦隊は正面の第1戦隊への攻撃に集中していたが,集中しすぎるあまり第1戦隊の艦艇が()()()()()()()()()()事には気づいていなかった。

 

「もう充分だろう。第1311宙雷戦隊に突入指示を出せ!!」

 

ヴェルズリーは自らの想定通りに戦局が進んでいる事を確認すると,低空に降下させていた第1311宙雷戦隊に突入の指示を出した。

「DDD-047 エンタープライズ」を旗艦としたドレッドノート級 3隻,エンケラドゥス級10隻の計13隻の艦隊がクレビト戦隊の下へと回り込んだ。

 

クレビト戦隊はミルメリア艦の特徴でもある下部艦橋で接近を探知したが,反撃する前に第1311宙雷戦隊の攻撃が始まった。

 

「DDD-102 イマジン」の1・2番主砲のAS-7v 30.5cm3連装ショックカノン砲からショックカノンが発射され,重巡「パラドニア」の艦底に直撃する。

ショックカノンによって下部艦橋は接合部を切断され,星の重力に捕まってベスタル海へと落下する。艦底を6本ショックカノンが溶かし,船内から爆発させる。

 

衛星ノルース1の観測基地を破壊した重巡は皮肉にも本星の海へと船体を消していった。

 

続く様に「エンタープライズ」の艦首両舷に4門ずつ装備されている小型魚雷発射管から8本のCF-98S 対艦魚雷が一斉に発射される。

 

対艦魚雷は頭部のDZ-10画像識別誘導装置の指示通りに進み,軽巡「メレハザード」へと直進する。「メレハザード」も対空レーザー砲を向けて,反撃して3発を落としたが残る5発が「メレハザード」へと着弾した。

高威力の弾頭が5発も命中した「メレハザード」は瞬く間に沈んでいった。

 

エンケラドゥス級「EEE-039 タイタン」・「EEE-054 イペアトゥス」も3連装魚雷発射管から対艦魚雷を発射して,駆逐艦を1隻ずつ沈めた。

 

クレビト戦隊も反撃して,旗艦の右斜め後ろに展開していた駆逐艦「バルファー」の砲撃が「EEE-066 パーリアク」に命中して損傷させたが,複数の艦の反撃によって沈められた為にそれ以外の戦果を出すことは出来なかった。

 

2方向からの攻撃で一方的にやられ続ける事に業を煮やしたのか,旗艦「アグウェイオン」の艦底から箱型のものがせり出して,「ディメイラナイト」が空中戦艦 パル・キマイラを沈めた重衝撃ビーム砲が姿を現す。

 

エネルギーが溜まりだした9つの砲口を「DDD-169 ディスティネーション」へと向けた。

自身が狙われている事に気づいた「ディスティネーション」は司令塔防護ショックフィールド砲を発射して,船体を二重に防御した。

 

エネルギー充填が完了した重衝撃ビームが発射される。ショックカノンの何倍もの威力を誇る重衝撃ビームは波動防壁と司令塔防護ショックフィールドをガラスの如く割って「ディスティネーション」の船体へと侵入した。

 

重衝撃ビームが命中した「ディスティネーション」は船体各所を突き破る爆発を起こし,爆発に呑まれながら高度を下げていく。

 

激しい黒煙が大破した250mの船体を包み隠すが,艦橋最上部に設置されている6連装大型エネルギー砲に光が宿る。

 

黒煙を切り裂くように発射された6発のエネルギー弾は1発も外れる事なく「アグヴェイオン」へと着弾した。

そのうちの1発が重衝撃ビーム砲の根本に直撃した。重衝撃ビーム砲は多くのエネルギーを使用する上にチャージに時間がかかるために,主機関から直接供給パイプが伸びているのだが,よりによってエネルギー弾は供給パイプを巻き込んで爆発した。

 

2つのエネルギーが混ざった爆発は直ぐに船内全体に広まり,主機関を完全に破壊して致命傷を負わせた。爆発は船外にも及び,主砲を空中に吹き飛ばして,クレビトが指揮を取っていた艦橋も内部から破壊された。

 

致命傷を受けた「アグウェイオン」は船体を突き破る爆発を幾つも起こして,推力を失って落ち始める。重力に掴まった「アグウェイオン」はその400m超えの船体で「ディスティネーション」を真っ二つに切り裂いた。

 

それぞれ致命傷を受けた2隻の艦はそのままベスタル海へと落ちていく。何十mもの水飛沫を上げて着水すると,それを上回る爆発を起こして2隻は散っていった。

 

「戦艦1隻喪失,護衛艦3隻損傷か·····艦隊の下に潜り込ませるのはやはり危険すぎたか。」

「ですけどやっていなかったら,時間がかかってより被害が出ていた可能性もありますので,これが最善だったと思いますよ。」

「そうかい? まあ君がそういうなら私は最善だと信じよう。それじゃあ目的地に向かおうか。」

 

副官のフレシデント・ヤラヴェー中尉からヴェルズリーは自分の選択が正しいと信じることにした。戦列を組み直した第1戦隊進路をブランシェル大陸へと向けて進みだした。




・アンティレ海とベスタル海
この2つはオリジナル設定です。
ベスタル海は近くのベスタル大陸から取ってきましたが,アンティレ海は書かずに終わった日本国召喚作品から取ってきました。

・コスモレイ
早い話が100式空間偵察機です。これだけコスモファルコンみたいな名前が無いので,オリジナルで名前をつけました。
逆に言えば名前以外は100式そのままです。

・パーセシャル社
地球防衛軍が装備しているカメラ全般を製作しています。

・FE-223 対艦ミサイルとXaS-332AD 対艦グレネード弾····
主砲や航空機搭載ミサイルには名称があるのに,艦の方には無いのは違和感があったので,今回名称を与えました。
名前の付け方は·········適当です。

・誘導魔光弾等を投入した·······
ここはまだWeb版でも不明な点ですが,クルセイリースが持っているらしいのでアニュンリールが持っていても問題ないと判断しました。

にしてもまさかのパル・キマイラが敵側として登場とは·······海自に落とされる未来しか見えん()

・ディスティネーションを真っ二つに切り裂いた·······
戦艦 ディスティネーションにはここで退場して貰いました。
因みにこの名前はカッコいいから採用したのですが,先日意味を調べてみたら“目的地・行き先”との事でした。
よくこんな名前選んだな········

まあそれを言ったら他のドレッドノート級も“冒険(エンタープライズ)”や“幻想(イマジン)”・“クレセント(三日月)”・“ディメンション(次元)”だったりしますがね。


取り敢えずミルメリア艦隊との戦闘は一旦今話で終わりました。
次からはノルースの戦後処理ですが,その前に地球連邦軍のメカニックでも上げようかな?とか考えています。


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国と星への執着

1月に2話更新できた事に満足した結果, こんなに更新が遅れました。

今話で序盤にしか出てきていなかった人物や組織が再登場します。死に設定にはさせません!!


地球連邦の首都 セントラル・シティは“光に覆われた町”という別名を持つ。

北米(セントラル)大陸の都市同士を結ぶ高速リニアや他大陸や他惑星との定期便が24時間絶える事なく,出発と到着を繰り返すこの都市に眠るという言葉は存在していない。

 

五大湖(ファイブ・レイク)が巨大な宇宙港の役割を担った為に地球の入口として大々的に発展したこの都市には,コルスファイス・エアクラフト社等の様々な企業が幾つも本社を置き,300mを超える超高層ビルが百単位で建ち並んでいた。

 

その中でも700mもの五角形をした超高層ビルを6つの円形のビルが囲む 地球連邦官邸の存在感は格段に際立っていた。条件さえ揃えば雲によって隠される最上階は1フロア丸ごと大統領 ヨヘン・ライエンゼードの執務室でもあった。

 

ヨヘンは白い本革の椅子に座りながら,テーブル越しに巨大なディスプレイを見ていた。

 

『ノルースに侵攻していたミルメリア艦隊は全滅させました。戦艦と護衛艦を1隻ずつ失いましたが,艦隊の被害はそれだけです。』

 

ディスプレイにはノルースにいる第13艦隊司令官 フェルド・ヴェルズリー大将の姿が写っていた。幾つもの星を経由して送られている映像は鮮明で,その場にいるかの様な雰囲気を感じさせた。

 

「そうか。ノルースの方の被害はどうだね?」

『それですが······東京を含め3つの都市に甚大な被害が及んでいます。』

 

ヴェルズリーが言いづらそうと言うと,ディスプレイに3つの都市の映像が映し出される。映された都市は3つとも建物を破壊され,燃え上がった黒煙に覆われていた。

元の姿を完全に破壊された惨状にヨヘンも思わず苦い顔をした。

 

「これは酷いな·······」

『救助には我々第13艦隊と惑星 ベルーガから出せる戦力を投入させて貰いますが,食糧や医療品等の救援物資の不足が確実視される為に迅速な救援をお願いします。』

 

ヴェルズリーの訴えにヨヘンは何処か分かっていた様な表情をしていた。

 

「それに関してだが,先日大規模な輸送船団を第12艦隊の護衛付きで派遣する事が決定した。第12艦隊は第2,第3戦隊と交代でノルースの防衛に当たることになる。

それとノルースの復興に関してだが,オルデランやインペリアル星系連合も協力してくれるとの事だ。彼らはあの星に興味を抱いているようだ。特にインペリアル星系連合に関しては大規模な救援船団と護衛戦力を送ってくれるそうだ。」

 

ヴェルズリーが望んでいた救援を送ってくれる事に加え,オルデランやインペリアル星系連合も協力してくれるという事に,強張っていたヴェルズリーの表情は少しだけ和らいだ。

 

『ありがとうございます。オルデランやインペリアル星系連合も協力してくれるとは········』

「あの星は我々の常識とは色々違っているからな。彼らを引き付ける何かがあったのだろうな。」

 

ヴェルズリーもヨヘンも技術者では無いので詳しくは分からないが,ノルースの技術が我々にとって異質な存在であり,多くの星が興味を抱いている事だけは理解出来ていた。

 

「輸送船団がそっちに着くには最速でも1週間かかるが,その間は第13艦隊だけでやることになるな。」

『我々は助けられるだけの人々を救おうと思います。それでは。』

 

そう言うと通信は切られ,ヴェルズリーが写っていたディスプレイは暗転して,椅子に座るヨヘンの姿が反射して写っていた。

 

ヨヘンは右の肘置きに埋め込まれている液晶パネルを中指で操作すると,彼が座っていた椅子が180°回転する。回転が終わると彼は立ち上がって,執務室の壁の半分を支配していた巨大なガラス越しに,セントレア・シティを見下ろした。

 

今日は天候が良く,雲も少なかった為にセントレア・シティは太陽の光に照らされて,隅々まで見渡すことが出来た。

空を突き刺しているかの如く並んでいるセントレア・シティの姿からは,この場所が約100年前は全てが破壊されていたと気づくことは不可能であろう。

 

「あの日,日本が消えてから地球は一度完全にリセットされて今の姿になった。日本というたった1つの小さな国に我々は翻弄されてばかりだな。」

 

ヨヘンの視線は蒼い空の先にあるであろうノルースに向いていた。

 

 

「何故だ!? 何故だ!? 何故だあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ミルメリア現皇帝 ミルメリア16世は声を荒げ,手当たり次第の物を投げて暴れ回っていた。

 

綺羅びやかなクリスタルが部屋の各所に使われている専用の執務室で支配下の星から献上された資源や物資が纏められた報告書をタブレットで確認していた所に,ノルース侵攻が完全失敗した事が伝えられた。その報告に彼は憤慨し,勢いのまま癇癪を起こした。

 

彼の周囲には金色で縁取られた彼専用のテーセットやタブレット端末・花瓶・ランプが破片として散らばっており,ティーカップの中に入っていた紫色のお茶や花瓶に生けられていた水色の花が無残にも床に広がっていた。彼は希少で高価なクリスタルが埋め込まれた壁にも傷をつけ,クリスタルが持っていた輝きを失わせた。

 

ミルメリアの最高権力者で各地で神と同格として国民から崇められている彼が,子供の様に暴れ回り散らかす姿は違和感そのものだったが,宙軍の最高指揮官として各地の戦況を皇帝に直接報告を行う立場にあるミルメリア宙軍長官 ヴェレスタ・エムズ・グアンバーロ元帥はこうなる事を分かりきっていた。

 

戦闘で敗北したと聞こえると彼は一瞬で火山の様に憤慨し,どんな状況であっても自身を感情を抑えられずに部屋を荒らし回る。そうなる事を分かっていてどうするか報告を躊躇うと彼は"報告が遅い!!"と自分勝手な罵倒を浴びせ,報告の内容を聞くとより怒り狂った。

 

それでいて自分自身を"冷静沈着で全てを受け入れる完璧な人物"だと思っている矛盾した思考をしていたが,皇帝自身がその事実に気づいている素振りは1つも感じられなかった。

 

今回も内容を言う前に確認したが,本人が"問題ない"と言った為に報告したが,その結果はこの有り様となった。事前偵察で少ない損害で占領できると報告していた事が,より一層激怒させた要因だった為に事前偵察でもそう言わない様にしようと彼は内心で決めていた。

 

「ノルースの原始人なんか1日で消し去ることが出来た筈なのに!! 地球め·········我らの聖戦を邪魔するとは········絶対に許さん!!

ヴェレスタ!! 増援はどうする予定だ!!」

 

ミルメリア16世から話しかけられた事で,ヴェレスタは彼の機嫌を更に損ねない様に返答した。

 

「第35艦隊の穴埋めとして,本国艦隊から第12艦隊と第48艦隊を引き抜く予定です。」

「足りん!!」

「···········はい?」

 

機嫌を損ねない様に返答した筈だったが,彼の返しは予測していない物だった。ヴェレスタは返答に困った苦い顔をしていたが下を向いていた為にミルメリア16世が気づくことは無く,彼は言われていないにも関わらず自身の考えを話し出した。

 

「彼らは我々の聖なる戦いを邪魔したのだぞ!! ノルースと地球には邪魔してくれただけの報いを受けさせなければいけない!! そうであろう!!」

「お,仰るとおりでございます。そうおっしゃるのであれば,皇帝陛下には何か考えがあるとお見受けしますが,私にお聴かせ願います。」

 

ヴェレスタは取り敢えずミルメリア16世の考えを聞いて,彼の機嫌を取ることが先決だと結論づけた。

 

「無論だ。各戦線から1つずつ艦隊を引き抜いて,全ての戦力を持って,ノルースを取り戻すのだ!!」

「各戦線からですか!? 本国艦隊なら兎も角,前線からいきなり引き抜くとなると戦況に甚大な影響が出る可能性がありますが·······」

「その代わりに本国艦隊を送れば良いだろう? 艦艇数の多い艦隊ならば何も問題はないであろう?」

 

ミルメリア16世の言葉にヴェレスタは絶句した。

 

ミルメリア宙軍の本国艦隊はミルメリア本星の警備や新兵練習・新装備実験などを目的としている為に艦艇数こそ多いが,前線で幾重にも戦闘を重ねている艦隊とは戦闘経験や練度が圧倒的に違っていた。

 

戦いに勝利する要素には数も重要なのは間違いないが,練度が余りにも低すぎた場合は足手まといにしかならず,戦闘に影響を及ぼす事は間違いなく,最悪 撤退や敗北もあり得る。

 

その結果,大激怒して暴れ回るミルメリア16世の姿がヴェレスタの脳裏に浮かんだが,ここで指摘したら自分自身に危害が及びかねないので彼は黙った。

 

だがその行為がミルメリア16世をより暴走させる事になった。

 

「いや,待て········転送レーザー砲を投入せよ。」

「···········はっ?」

 

ヴェレスタは再び絶句した。彼は軍の研究所で絶賛開発中の転送レーザー砲を投入しろと言ってきた。

転送レーザー砲は衛星を経由して視界外からレーザーを撃ち込める活気的な兵器だったが,完成していない現状では実戦投入には不安しか存在していなかった。

 

ヴェレスタは実際に開発や実射試験の様子を見学していた為に現在の完成具合と問題点を理解していたが,試験の報告書しか読んでいないミルメリア16世はそんな現状など全て無視して一方的に投入を決定した。

 

「しかし,あの兵器はまだ試験段階で実戦投入出来る段階には達していません!!

また現状では効果的に使うにはトータス星系の第4惑星 ヴァルハトに衛星を展開する必要があり,地球側に気づかれて戦闘が勃発する事が間違いなく上に,破壊もしくは鹵獲されるリスクも高いです!!」

「そんな不安など艦隊で守れば問題ないであろう!! つべこべ言わず投入せよ!!

これは我が皇帝の聖なる命令ぞ!!」

 

ヴェレスタの言葉を聖なる皇帝の命令として全て跳ね除けた事で,もはや彼に反論する術は残されていなかった。

 

自分の言ったことが間違っていると考えられず,自分の考えを無理矢理でも通そうとするミルメリア16世の様子に,ヴェレスタは幼い子供が駄々をこねている様に感じれた。

彼自身には子供が3人いるが,全員ここまで駄々をこねることは無い。それは目の前の皇帝が自分の子供以下の精神をしている存在だと認識したと同義だった。

 

ミルメリア16世はヴェレスタに子供以下の存在だと認識された事など知る由もなく,感情のまま更に言葉をぶつけた。

 

「とっとと命令を出せ!! 今すぐにノルースの原始人と地球を滅ぼして,我々が正義だと見せつけるのだ!!」

「承知しました!」

 

最早彼に構っている時間が無駄だと感じたヴェレスタは返事をして,執務室を退室した。

 

執務室に残されたミルメリア16世は背後に振り返って,徐ろに跪いた。

 

部屋の壁や備品は彼の理不尽な癇癪によってボロボロになっていたが,その中で唯一彼の背後に描かれていた巨大な壁画だけは1つも傷がついていなかった。

 

ミルメリア16世は両手を組んで,祈るような姿勢を取ると話し出した。

 

「先祖様,地球という愚か者が聖戦を邪魔して故郷を奪ってしまい,大変申し訳ありません。

我らミルメリア16世が地球という邪悪を滅ぼして,ノルースを元の持ち主であるあなた方に捧げます。」

 

彼以外正常に理解する事が出来ない言葉は返事する事が無い巨大な壁画へと吸い込まれていった。

 

壁画には赤い光で覆われた荒廃した地面に積み重なる様に倒れる様々な人種が混じった人々と,積み重なった人々の上に平然と佇む()()()()()()()()を持つ人物が描かれていた。




・東京を含め3つの都市に····
攻撃目標は東京・ルーンポリス・ラグナ・マギカレギアの4つ。甚大な被害が起きたのはその内3つ。
唯一攻撃を受けていない都市は何処なのでしょうか? もしかたら消去法で分かるかもしれませんね。

・ミルメリア16世
簡単に言うなら体だけ大人になった子どもか,痛いなろう系主人公ですかね?
自分自身も書いていて"どうしてこうなった?"と思っています。ここまで矛盾したキャラを書いたのは初めてでした······

()()()()()()()()を持つ人物が·······
もしかしてこれは·······日本国召喚ファンなら正体は直ぐにわかるかも
というより壁画のセンスがヤバすぎる······自分で書いていてもちょっと引き気味になった。


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3年ぶりと150年ぶり

本編には何一つ関係ありませんが,昔よく見ていた宇宙戦艦ヤマトの二次サイトを探しています。

改造した模型を使って,やまと型護衛艦による遊星爆弾迎撃や航宙母艦 かつらぎ・次元潜航艦ノーチラスとかを掲載していたのですが,サイトの名前を忘れてしまいました。

もし本作の読者で知っている人がいたら,教えてください。







全く関係ありませんが,日本国召喚×実写版トランスフォーマーの構想があるとだけ言っておきます。
まあこの作品ですら更新が怪しいのに,もう一作連載は無理だと思いますがw


日本で唯一(どう)の名を有する日本最大の都道府県 北海道。

広大な土地と豊かな自然を利用した農業と畜産業・漁業は日本の食料を支え,観光資源としても明治以降の日本を支える重要な場所として存在していた。

 

広大な北海道の北東 積丹(しゃこたん)岬と雄冬(おふゆ)岬に囲まれた石狩湾に面する北海道有数の港湾都市 小樽。

 

明治時代に開かれたこの港は石狩炭田から採掘された石炭の積み出しや北海道内部への中継港として機能し,現在は公園や商業施設もある観光地として姿を変えつつも,フェン王国やガハラ神国への定期便が就役する港として機能していた。

 

そんな小樽港には北海道中のメディアや小樽観光に来ていた殆んどの人々が集まっていた。集まった人々の視線は全てが港外に停泊している2隻のドレッドノート級と5隻のエンケラドゥス級に向けられていた。

 

小樽港には新潟港と敦賀港を結ぶ200m近い全長と1万8000tの総トン数を有する新日本海フェリーのカーフェリー らいらっくが停泊していたが,ドレッドノート級はその全長を有に超えている程大きい事は一目で理解出来た。

 

その上に海上に浮かんだ7隻の巨大船は人々が知っている形状とは大きく異なっていた。船は日本国や文明圏・文明圏外国でも開門に向かって船体が狭まっていく逆三角形をしていたが,7隻の巨大艦はそれぞれ四角形と半円という全く異なる形をしていた。

 

船体以外にも艦橋らしき構造物も見慣れない形状をしており,構造物の前後にはそれぞれ3連装と連装の大砲が強い存在感を示していた。

 

上述の要素だけでも人々を視線を引き付けていたが,人々の視線は特に船体に描かれた単語へと向けられていた。下半分が海に沈んで見えなくなっていたが,視認できる上半分だけでも"描かれている単語が英語なのでは?"と推測する事が出来た。

 

『こちら小樽港ですが,ご覧ください!! 港の外に巨大な船が止まっています!!

船体に描かれている文字はアルファベットの様にも見えますが,下半分が隠れているのでここからでは分かりません。』

 

右手にマイクを持ったテレビ北海道(TVh)の女性リポーターがドレッドノート級に描かれた単語に左手が向くと,テレビカメラも拡大(ズーム)して単語に焦点を合わせた。

 

その映像はリアルタイムで北海道中のテレビに映し出されていた。

 

テレビ北海道以外にも北海道テレビ(HTB)北海道放送(HBC)等のテレビ局や朝日新聞・読売新聞等の東京に本社を構える全国紙の新聞社・地方紙の北海道新聞社等の様々なメディアが巨大艦を取材すべく,小樽港に集結していた。

 

集まっている人々も自身のスマートフォンやデジタルカメラで船の姿を収めていた。スマホで撮影された写真や動画はTwitterやInstagram・Facebook等のネットを使って,日本は疎かロデニウス大陸や周辺の国々に拡散されていった。

 

リポーターはカメラ越しに生中継レポートを続けていたが,彼女の視線がカメラ脇のカンペに移った。急いで書かれたカンペを見ながら,リポーターは中断していたリポートを再会した。

 

「え〜と。たった今ですね。あの巨大な2隻の船に書かれている言葉がARCANUM(アルカナ)RHETORIC(レトリック)ではないかという情報が入ってきました。

まだ未確定ではありますが,これが事実ならあの艦隊は間違いなく地球から来た事になります。」

 

ウェルズリーの演説は日本国民も聞いていたが,その演説の内容に国民は疑心暗鬼になっていた。

地球からこの星に転移して約3年。演説の内容が事実なら絶対に果たす事が出来ない筈だった奇跡の再会だったが,あまりにぶっ飛んだ内容に信じられずにいた。

 

そんな国民の疑惑は日本政府も同じ感情を抱いていた。

 

 

北海道で唯一人口100万を越す道庁所在地 札幌市。北海道最大の都市で政令指定都市でもあるこの都市は事実上の首都として機能していた。

 

ミルメリアの東京破壊宣言を受けて,東京から大勢の国民が様々な手段で避難していたが,国民と同じく日本政府も札幌に避難して,北海道道庁に臨時の拠点を置いていた。

 

一時は通信能力が優れており,第203飛行隊(シークレット・イーグルス)が待機している新千歳空港に置かれる事も検討されたが,軍事施設でもある為に真っ先に攻撃目標になると判断された結果,北海道道庁に置かれた経緯があった。

 

皇族も例外では無く,横田基地に緊急で到着した政府専用機に乗って北海道へと降り立ち,現在は皇族御用達の札幌グランドホテルに滞在していた。

 

間借りしている北海道道庁の1室は即興の会議室として機能しているが,その部屋に武田総理含め日本政府の閣僚が集結していた。

避難前からほぼ寝ずにミルメリアへの対応策を考えていた閣僚らは心身ともに疲労が蓄積していたが,1()5()0()()()()()()()()()()()()()という外交官に会うべく無理矢理でも体を動かしてこの場に来ていた。

 

小樽港に来訪した第13艦隊第4戦隊第1340戦隊旗艦「DDD-275 アルカナ」から"日本政府との対談を望む"と通信が送られ,日本政府が承諾すると返答を行った。

 

返答を送ってから1時間もせずに,コスモファルコン 2機の護衛をつけて「アルカナ」から発艦したVTOL機 コスモシーガルは丘珠空港こと札幌飛行場へと降り立った。

 

真っ白なコスモシーガルから降り立った1人の外交官は,出迎えるべく待っていた外務大臣の佐藤 渉と流暢な()()()で会話を行ったという連絡も入ってきた。

 

流暢な日本語を話したという事実も相まって,閣僚らの興味はより一層引き立てられていた。

 

部屋の扉が開き,佐藤の先導で1人の男が部屋に入ってくる。高身長で金髪に碧眼という日本人離れした外見を持ち,グレーのスーツに見を包んだ男は正面に座る総理大臣 武田実成に向かって一礼した。

 

「総理。地球連邦の外交官をお連れいたしました。」

「初めまして武田総理。私は地球連邦外交局のダーリアス・メイゼルです。

日本の皆さんに地球連邦を代表して,150年ぶりの再開を任された事を光栄に思います。」

 

流暢な日本語を披露したメイゼルに佐藤外務大臣以外の閣僚全員が驚きを隠せない。

 

ノルースに転移した日本が今まで生き延びれたのは,自動翻訳現象で会話が成り立つ事が大きかったと言っても過言ではない。

日本人は日本語に変換され,日本語以外を話す外国人にも母国語として変換されていたが,日本人と外国人の会話が変換される事は無かった為に,魔力を持たない地球人同士では作用しないと結論づけられていた。

 

だがノルース全域に地球連邦の存在を認識させたヴェルズリーの演説も日本語で聞こえていた。魔力を持たない筈の地球人が流暢な日本語を話した事で,地球連邦が自らの言葉を日本語に変換可能な技術を有している事を認識させた。

 

眼の前にいるメイゼルはその認識を確信に変えた。彼の言葉が瞬時に日本語に変換される様子を,閣僚らにはっきりと見せつけた。

同時に地球から消えて150年も経過しているにも関わらず,地球連邦は支障なく会話をこなせるレベルの日本語を覚えている事を閣僚らに認識させた。

 

メイゼルが総理の真正面の席に座ると,武田総理が彼に話しかけた。

 

「メイゼル殿でしたか······まさかこうして地球の方からやって来てくれるとは思ってもいませんでした。

それにここまで流暢な日本語で話してくるとは思ってもいまでんでした。何を使って翻訳しているのでしょうか?」

「首元の翻訳チョーカーを使用しています。これを作動させれば,装着者の発言を地球の様々な言語から各惑星の言語まで瞬時に翻訳する事が出来ます。」

 

メイゼルの返答に閣僚は個々で違う反応を示す。自らの発言を瞬時に相手側の言語に変換する驚異的な技術に関心を抱く者と,あまり凄いものだと思えない者と分かれた。

 

「そんなものがあるとは········150年も経てば技術の進歩は凄まじいものだな。」

「確かに凄いですが,この異世界では常に翻訳機能が働いていますからね。異世界側の人々相手には翻訳チョーカーいらずに会話が成り立つかもしれませんが····」

「"常に翻訳機能が働いている?"·······それはどういう事でしょうか?」

 

メイゼルは閣僚から出た聞き覚えの無い単語に疑問を抱き,質問を行った。メイゼルの質問に佐藤外務大臣が答えた。

 

「この異世界には自動翻訳現象というものがあります。地球と同じくこの異世界では様々な言語がありますが,全て日本語に自動で変換されて聞こえるのです。」

「なんと·········そんな現象があるのですね。私も翻訳チョーカー無しで話せるのでしょうか?」

「それが地球からやって来た私達はそれが通用しないのです。異世界の人々にしか通用しないと我々は仮定しています。」

「なるほど·········やはり色々と不思議な星ですね」

 

メイゼルはノルースが数世紀も差がある文明が混在している奇妙な星だという事を認識していたが,自動翻訳現象という神が作ったとしか思えない現象に驚かされた。

 

チョーカーに関する話が一区切りしたと判断した武田総理は,メイゼルに気になっていた話題をぶつけた。

 

「それでメイゼル殿。あなた方は日本がいなくなった後の地球から来たと言いましたが,我々が消えた後の地球はどうなったのでしょうか?」

「少々長くなりますがよろしいでしょうか?」

「構いません。我々も是非知りたいですから。」

 

武田総理の返答を受けて,メイゼルは日本が消えた後の地球について語りだした。その内容に閣僚らはどんどん青ざめていく。

 

日本が消えただけで一度地球上の国家が全て崩壊して,世界が灰燼に化した事も衝撃だったが,地球連邦の設立から僅か100年程で宇宙を飛び回れる艦隊を作り上げられる技術を得た事も衝撃だった。

 

メイゼルの話が終わる頃には閣僚ら全員が,青ざめた顔で彼の語った事実を受け入れられずにいた。

 

「信じられん········」

 

佐藤外務大臣が辛うじてそう呟いた。彼の発言は閣僚全員の考えを代弁していた。

日本国が異世界に転移した事自体も信じられない物だったが,それによって地球国家が完全に崩壊したという事実も信じられない物だった。

 

「異世界転移が2つの星の全てを変えてしまったのですね·······」

「南極がアトランティス·······ムーから聞いてはいたが,そうでもされないと信じられん·······」

「グラ・バルカス帝国が元いたユグドとかいう星もこんな風に変わってのだろうか········」

 

閣僚らはポツリポツリと呟く。皆が彼の話に対してそれぞれ抱いた感情を発していった。

 

武田総理は目を閉じて黙って聞いていたが,目を見開くとメイゼルに向かって話しかけた。

 

「メイゼルさん,我々がいなくなった後の地球について教えてくださって,ありがとうございます。それで地球連邦は我々に何を望んでいるのですか?」

 

武田総理の発言にメイゼルは地球連邦の代表として答えた。

 

「我々 地球連邦は日本への接触とこの惑星 ノルース全域の防衛を行う為に派遣されてきました。

ミルメリアは数倍の戦力を持ってして,再度侵攻してくる事は間違いないでしょう。この星の全ての勢力がミルメリアに対して有効的な攻撃を行う事が出来ないという事実は,皆様も分かり切っているでしょう。

今回も我々がやって来なければこの星はミルメリアの手に落ちていたのは間違いありません。我々以外にもユグドやオルデラン・インペリアル星系連合などの勢力もこの星を守る事を宣言しています。」

 

メイゼルの返答を閣僚全員が黙って聞いた。彼が後半に語った内容は目を背ける事の出来ない事実だった。

 

「海自と空自は半壊,在日米軍に至っては8割近くを喪失する被害を出したのに,東京は守りきれなかった。メイゼルさんの言う通り地球連邦が来なければ我々は天国に行ってただろう。」

 

防衛大臣 厳田虎がそう言った。空自と海自はメディナ戦隊との戦闘によって全戦力の約半分を失い,在日米軍に至っては「CVN-73 ジョージ・ワシントン」以外の戦力の殆どを喪失したにも関わらず,メディナ戦隊を撃退する事は出来なかった。

1戦隊相手にこの結果では,1艦隊を防ぐ事など不可能だと全員が断言出来た。

 

周辺国の中で一番技術が高いであろう日本国でこの結果なら,他の国々は全戦力を投入しても被害すら与えられない可能性だってありえる。

 

ミルメリアと互角に戦闘が行える地球連邦以下各勢力がノルースを守ると宣言している以上,日本国には受け入れる以外の選択肢は残されていなかった。

 

「日本国としては地球連邦の要求を受け入れるのが最適でしょう。我々の軍事力を持ってしても東京は守れず,炎に包まれてしまったのですから······」

「それに関してですが,甚大な被害を受けた東京に対して救助活動を行う許可を頂きたいのです。

既に第4戦隊は東京湾内に展開しており,総理の許可さえいただければ直ぐに行う事が出来ます。」

「·········許可を出そう。今は1人でも助ける事が最優先だ。」

 

メイゼルの発言に武田総理は数秒の間を置いて返答した。メイゼルはその返答を聞くと,直ぐに首のチョーカーに触れた。

 

「私です。救助活動の許可が出ました。」

 

短い言葉で要件を伝えたメイゼルは再度チョーカーに触れて,通信を切った。

その様子を隣で来ていた佐藤外務大臣が話しかけた。

 

「そのチョーカーは通信機にもなるのですね。」

「ええ。連絡や翻訳も出来て便利なので,地球連邦の国民の大半は持っています。」

「それは我々にも使いこなせますかね?」

「出来ると思いますよ。最もこの星で暮らすにはいらないかもしれませんが。」

 

メイゼルが短時間で覚えた知識で披露した冗談に,数日間ドンよりとしていた会議室に笑いが起きた。




・Facebook等によってロデニウス大陸や周辺の国々に拡散されていった·······

既に転移から3年程経過しているので,ロデニウス大陸全土にネットが繋がっていても可笑しくないと判断しました。
周辺の国々はフェンやガハラ・シオス・アルタラス辺りを想定しています。

・横田基地に緊急で到着した政府専用機に乗って······
何故羽田空港ではなく横田基地なのかですが,羽田空港は民間空港なので何が何でも避難したい人々が集まって,容量がパンクして機能不全に陥る可能性があった為に,横田基地になったという事です。

・コスモシーガル
2199から登場したVTOL汎用貨物機そのまんま。地球連邦軍では使い勝手の良いVTOL汎用貨物機として,ドレッドノート級以上の艦艇に搭載されています。

・自動翻訳現象
これが無かったらマジで日本終わっていたと思います。

今作では原作での記載から転移に外国人も巻き込まれているとしています。私は自動翻訳現象は"少々の魔力があれば発生するもの"と解釈している為,魔力を持たない地球人同士では発生しないとしています。

・既に第4戦隊は東京湾内に······
アンタレス級やトウキョウ級は航空甲板を備えているので,"移動する飛行場"と言っても過言ではないでしょう。
前述のコスモシーガル等を効率よく救助活動に使うには彼女らの存在が不可欠なので,東京から遠く離れた小樽に送ることが出来ず,止むなく第1340戦隊が派遣されたという経緯です。


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瓦礫に染まった1000万の首都

5月更新できなくてすいませんでした。


日本国の首都 東京。豊臣秀吉によって故郷 岡崎から移封(左遷)された徳川家康が発展させた農村は,幕府が置かれたことで現在まで400年間続く首都へとなった。

 

明治に名を改めた後に一度灰燼と化したが僅か数十年で復興し,ノルースへの転移後は高層ビルが建ち並ぶ日本の技術力を象徴する都市という一面も手に入れていた。

 

そんな東京は黒煙と炎に覆われていた。東京を灰燼へと変えた1945年3月10日の東京大空襲から約70年後にミルメリアの手で東京は破壊された。

 

自衛隊の奮闘虚しく東京上空へと現れたミルメリア艦隊ことメディナ戦隊は,3連装カノン砲から放たれた緑色のビームによって高層ビル群を幾つも切り裂いた。高温のショックカノンはプレストレスコンクリート(PC)製の柱を簡単に溶かし,支えを失った上層階はたちまち重力に捕まって崩壊する。

轟音を伴って崩壊したビルは膨大な砂煙を巻き上げてメディナ戦隊の視界を奪ったが,レーダーによる支援を受けて射撃を行っているミルメリアにとっては何の障害にもならなかった。

 

一部の軽巡洋艦は煙突型の艦上構造物から拡散ランチャーの弾頭を発射した。本来は対空目標を全滅させる為に使用する物だったが,爆発の壁を形成する弾頭は地上の広範囲を焼き払った。

 

メディナ戦隊は日本一高い地上構造物のスカイツリーや赤と白で彩られた東京タワー・2つの高層ビルが纏まっている東京都庁・東京湾に架かる吊橋 レインボーブリッジなどの視界に入りやすい高層建築物から,数年前に当時の姿へと戻った東京駅 丸の内駅舎や飛行機の形をした東京国立博物館・日本初の屋根付き球場 東京ドームなどの名所も徹底的に破壊した。

 

ミルメリアによる破壊宣言で東京にいた全ての人々はこの地から離れようとしたが,離れる事が叶わなかった人々が数えきれない程いた。避難出来なかった人々は東京中に張り巡らせれた地下街や地下鉄の駅へと逃げ込んだ。

だがミルメリアのショックカノンはいとも簡単に地面を溶かして地下へと到達し,地上諸共破壊された。避難していた人々は逃げる事も出来ず,次々と殺されていった。

 

更に不運な事にメディナ戦隊は東京という括り(くくり)が分からなかった為に,ビル群が建ち並ぶエリアに対して攻撃を行った。その結果,横浜や千葉・大宮等の周辺都市も甚大な被害を出していた。

 

地球連邦軍第13艦隊第4戦隊によってメディナ戦隊は全て撃沈された為に攻撃は終わったが,受けた被害は計り知れないレベルだった。

 

直ぐに自衛隊の残存戦力や消防・警察を総動員して救助活動が始められたが,警察庁や防衛省等の指揮所や大型病院は完全に破壊されており,それによる犠牲者も大勢いた上に各種機材も失われていた為に救助活動は難航した。

 

魔法を使えるエルフ等の異世界人らは負傷者に対して治癒魔法を懸命に使用していたが,あまりの数と傷の酷さに対処出来ないまま亡くなる人も少なくなかった。

 

日本政府は避難先の札幌から各種情報を集めて救助活動の指揮を取ったが,情報が入る度に被害の甚大さと6桁に及ぶであろう死者数に絶望感が増幅していった。

 

 

東京都の行政の中心地 東京都庁はショックカノン(緑色の光)で文字通り切断され,隣接している東京都議会議事堂を巻き込んで崩壊していた。東京都庁には東京都知事が避難せずにいたが,崩壊に巻き込まれて生死不明になっていた。

 

崩壊した東京都庁の逆側に位置していた新宿中央公園は,あまり被害を受けていなかった為に救助拠点として機能していた。ただ救助拠点と言っても医療品は店で売られている物しか無く,医療機関や自衛隊が保有していた本格的な医療品や医療設備は攻撃で失われたり,道路が不通になり届いていなかった。

 

その為救助拠点と言いながら異世界人は治癒魔法で,日本人は消毒液や絆創膏・包帯で傷の手当てを行う事しか出来ていなかった。

 

救助拠点にいる人々は攻撃を免れた民間人が大半で,警察官や消防士・医者などは少なく,その中でも自衛隊員はより少なかった。数少ない自衛隊員の中にはかつて魔王ノスグーラ討伐の指揮官だった百田太郎 一等陸尉が含まれていた。

 

彼は部下と共に横須賀市で避難活動を行っていたが,メディナ戦隊が攻撃を行わなかった為に生存する事が出来た。メディナ戦隊が第4戦隊へと戦闘に向かった後に,武山駐屯地に駐留する第31普通科連隊の高機動車で東京都内へと向かい,東京都庁周辺で救助活動を行っていた。

 

この場にいる自衛隊員の中で最高階級だった為に実質的な指揮官として各所に指揮を行ったり,自ら負傷者の手当てを行っていたが,殆ど休憩せずに行動していた為に心身共に疲労が蓄積されていた。

 

その様子を感じ取った医官から「指揮官が倒れたら,元も子もない」と言われた為に数日ぶりの休みを取っていたが,部下が倒れた連絡が入った為に

 

「どうした城島(きじま)!?」

 

野戦病院テントの中には魔王ノスグーラ討伐でブルーオーガを撃破した城島仁史 三等陸尉が顔を青くして,担架の上に仰向けで寝ていた。

 

「百田さん。わざわざありがとうございます··········うっ」

「大丈夫か。無理せず休んでいいんだぞ。猿渡,一体何があったんだ?」

 

無理して会話を行おうとした城島に対して百田は休む様に伝えると,直ぐに彼がこうなった状況を隣にいた猿渡に聞いた。彼も魔王ノスグーラ討伐で重要な役割を果たした

 

「城島は消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)と協力して大江戸線の都庁前駅で救助活動を行っていたようですが,そこで見た光景が凄惨過ぎた様で··········」

 

猿渡の苦しそうな言葉を聞いた百田は,彼の右肩に手をかけた。

 

「猿渡,お前は城島についてやってくれ。俺はその現場に行ってくる。」

「了解しました。百田さんも気をつけて·····」

 

猿渡の忠告を受けつつも,百田はその場所へと向かった。破壊された都庁の瓦礫やそれらに潰された都営バス・燃え上がって黒焦げになった乗用車の残骸の脇を通って都営地下鉄大江戸線の「E28 都庁前駅」 A5入り口に辿り着き,明かりが消えた暗い階段を下っていく。

 

階段を下りきった百田の視線の先にはショックカノンで空いた穴から入り込んだ光と照明機材に照らされながら,各種機材で瓦礫を撤去するハイパーレスキュー隊員と,ミルメリアによって犠牲となった大勢の人々を遺体収容袋に収容する自衛隊員と救急隊員の姿が写った。

 

本来ならば大勢の人々が行き交う筈の場所は,僅か数日で防空シェルター兼墓場へと変貌した。大江戸線は比較的新しく作られた為に地下深くに通されていたが,ミルメリアのショックカノンはいとも簡単に最深部に到達して,避難民と共に駅構内を破壊しまくった。

 

避難民はショックカノンで体や首を切断されたり,崩壊した天井に押し潰されたり・爆発によって壁に叩きつけられるなど死因は様々だったが,死ぬはずの無かった人々が大勢死んだという事実に変わりなかった。

 

百田は大勢の死者に対して手を合わせる。手を合わせる百田に気づいた一人の衛生科隊員が彼に駆け寄っていく。

 

「百田一等陸尉,何かありましたか?」

「うちの隊員が迷惑をかけたって聞いてな。それにしても酷いな·········」

「ええ,最深部のホームにも地下鉄の線路を使って隊員が到達したらしいですが,かなり酷い様子とのことです·····こんなの見てしまったら,倒れてしまうのも納得できます。」

「········」

 

衛生科隊員の言葉に百田は返答できなかった。

 

ここで死んだ人々は顔も名前も知らないが,誰もがこの先に輝かしい未来を望んでいたのは間違いないだろう。

パールパディア皇国がフェン王国で観光客を殺害した事件の際も彼は怒りを覚えたが,その何百倍もの人々が今回犠牲になっていた。

 

日本を最低限の犠牲という恐怖で占領しようとしたパールパディアよりも,皇帝の歪んた自己欲求を満たす為だけに大勢の国民を殺したミルメリアに対してフェン観光客殺害事件の比ではない怒りが湧き上がってきた。

 

だがどうすることも出来なかった事を百田は分かり切っていた。

護衛艦や戦闘機をあるだけ投入しても止められなかったのだから,たった1人の一等陸尉が出来る事など無いに等しかった。

 

憤りの無い怒りを抱きつつも,どうする事も出来なかった悔しさが入り交じっている百田は隊員達の邪魔にならないように静かに去り,着た道を戻っていく。

 

暗い階段を上がりきって,A5入り口から出ると太陽光が彼に差し込む。眩しさに目を瞑った彼の鼓膜に聴き慣れない音が聴こえていくる。

 

「何だ?」

 

轟音が聴こえる方に目を向けると,白と灰色に覆われた4機の飛行機が写った。小さな翼には1つずつエンジンが装備され,胴体は箱型と6輪の装甲車らしき車を搭載している物に別れており,尾翼の形状は見慣れない形状をしていた機体の姿を百田は追いかけた。

 

「見た事無い飛行機だな········まさか!?」

 

何かを察した百田は拠点である新宿中央公園へと走り出した。

 

 

百田が新宿中央公園に着くと,その場にいた殆どの人が4機編隊で公園上空を飛んでいる白の灰色の機体 コスモシーガルを見つめていた。

日本機の象徴である赤い日の丸がついてない機体に人々は疑問を浮かべていたが,同時に正体も意図も分からない飛行機に恐怖を抱いていた。

 

89式小銃を持ちながらコスモシーガルを見ていた犬神剛 三等陸尉は,百田が帰ってきた事に気がついて彼に駆け寄った。百田は犬神から9mm機関けん銃を受け取りつつ,彼に話しかけた。

 

「百田さん!!」

「犬神,あの飛行機は間違いなく地球連邦の飛行機か?」

「分かりませんが,あんな機体見たこと無いので恐らくそうだと·······」

 

百田と犬神が会話していると,視線の先を飛んでいたコスモシーガルの短い主翼が90°回転する。機体と並行していた主翼が垂直になった事で,主翼に取り付けられていたセルティアルム社製のEO-207Lコスモエンジンも同じ方を向く。

 

垂直になったエンジンの出力で機体は徐々に降下していく。

 

「マジか·······」

「まるでオスプレイだな······」

 

2人がその様子を見ていると,機体下部の着陸脚カバーが開いて中から降着装置が現れる。3つの着陸脚でコスモシーガル 4機全てが地に触れた。

 

コスモシーガルが着陸した事を確認した百田は犬神に指示を出した。

 

「隊員達に小銃を持たせて,機体を囲む様に伝えろ。」

「いいんですよね。あっちに悪印象を持たせるかもしれませんが。」

「万が一だ。何が起きるか分からんしな。あっちだってこっちの状況を理解してくれるだろうしな。」

 

百田の指示を受けて犬神や猿渡ら隊員が89式小銃や64式小銃・9mm拳銃等の銃火器をコスモシーガルへと向けた。百田も犬神から受け取った9mm機関けん銃を向けた。

 

隊員達がコスモシーガルを囲む様に広がると,箱型の胴体後部の貨物扉が開き出す。上下に別れて貨物扉が完全に開き切ると,胴体内に数名の人間がいる事が認識出来た。

 

胴体内の人間を警戒して百田らは安全装置(セレクター)安全()から連発()へと回して,万が一の事態を想定していると,胴体内にいた1人の男がスロープになった貨物扉を使って地面に降りてきた。

 

降りてきた男は黄土色の戦闘服と同色の鉄帽に身を包み,胸部に防弾チョッキを装備していた。武装はベルトの右側に取り付けられた小銃以外装備していない事を確認しつつも,百田らは警戒を緩めなかった。

 

彼は周囲を見回して現状を確認すると,首元のチョーカーに手を伸ばした。

 

「どうも日本人の皆さん。私は第13艦隊直属歩兵機動連隊第4支隊隊長のアヴェダ・センテベーロ中佐です。

艦隊司令官より救援を支援するようにとの指示を受けて,参りました。敵意は無いので,銃を降ろして頂きたい。」

 

彼から話された流暢な日本語に一同は驚愕する。全員が話の内容を理解できたが,相手に対する疑念は消えなかった為に銃を降ろすことが出来なかった。

その様子を察した百田が意を決して話しかけた。

 

「私がこの場の暫定的な司令官の百田太郎一等陸尉だ。」

 

百田が差し出した右手をアヴェダは掴んだ。

 

「言葉が通じていた様で良かったです。我々は日本政府からの救援要請を受けて先遣隊として参りました。」

「先遣隊という事は本格的な救援部隊が来るという事で宜しいですか?」

「ええ,我々は現地の救援部隊との交渉と現状調査を行うべく派遣されました。」

「そういう事ですか。我々は人員や機材・医療品等全てが足りていないので,あなた方がそう言ってくれるのは非常にありがたいです。」

「という事は我々と協力してくださる事で宜しいですか?」

「ええ,勿論です。」

 

百田とアヴェダの立ち話で話は纏まった。日本語で会話した為に犬神や猿渡らの隊員らも話の内容を理解出来た。

 

理解を得れたアヴェダの指示でコスモシーガルのコンテナ内から複数名の兵士が降りてくる。同時にコンテナの代わりに装輪装甲車を搭載していたコスモシーガルは,釣り上げていたアームが切り離されて,装輪装甲車が地面に降ろされる。

 

「こちらは装輪装甲車ですか?」

「ええ,これは地球連邦軍が使用している装輪装甲車 La-87 APCカーゴです。」

 

陸自が保有している96式装輪装甲車に形状は似つつも,各所に未来的なデザインが施されているLa-87 APCカーゴを百田らは興味津々に見る。

アヴェダや他の隊員にとっては最早見慣れた光景だった為に気にせず,上空から見渡すドローンやサーモカメラの準備を進めた。

 

ドローンが飛び上がって隊員らが調査を行う準備を終えたが,ある問題に気がついたアヴェダは百田に話しかけた。

 

「カーゴは移動手段として持ってきましたが,この現状では徒歩で行ったほうが良いですね。先導役としてそちらから隊員を寄越して欲しいのですが,宜しいですか?」

「それならば·······犬神,先導役頼めるか?」

 

アヴェダの頼みを受けて百田は犬神を呼んだ。

 

「了解しました。出来る限り先導致します!」

「そう言ってくださるとありがたいです。」

 

犬神とアヴェダは握手を行った後に素早く周辺の現状確認へと向かった。

その様子を眺めていた百田は誰にも聞こえない声量でボソリと零した。

 

 

 

 

「もし彼らがもう少し早く来てくれればこうはならなかったのに············」




・百田太郎 一等陸尉
原作では二等陸尉でしたが,ノスグーラ討伐の功績で一階級上がったとしています。
犬神さんや猿渡さん・城島さんも同じです。

余談ですが,私は特撮好きなので百田さんをしょっちゅう“桃井太郎”と読み間違えてしまうんですよねw
そう考えてたら魔王ノスグーラ戦×ドンブラザーズという二次創作を思いついてしまいましたww········誰か書いて。

二次創作のネタは直ぐ思いつくけど執筆が追いつかない現象分かる人います?

・横須賀市をメディナ戦隊が見逃した理由
メディナ戦隊迎撃の為に横須賀に配備されていた護衛艦や米艦艇が総出港しており,メディナ戦隊が来た頃には掃海艇や補給艦・潜水艦救難艦・試験艦ぐらいしか残っておらず,脅威と判断されなかったという経緯です。

一応試験艦の「ASE-6102 あすか」には艦対艦誘導弾(SSM)を搭載出来ますが,護衛艦への搭載を優先した為に搭載できる分が無かったという事にしてください。

・La-87 APCカーゴ
地球連邦軍が使用している装輪装甲車。コスモシーガルで輸送できるほど小柄で使いやすい為に,殆どの部隊に配備されています。
外見は漫画版宇宙戦艦ヤマト2199でヤマト搭乗時に登場した装輪装甲車です。


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裏側での再会

約5ヶ月ぶりの更新ですね。まあ活動報告にも書いたように別作の制作に専念していた訳ですが,それ以外にも4000字以上書いていた箇所を削除した事もあって,大幅に投稿が遅くなりました。
次回は来年かなぁ?


「ん?·········」

 

どんよりとした灰色の雲と白いレース越しに入った日差しがうっすらと開いたミネケレスの目に入ってくる。ぼんやりとした目線の先には白色の天井が目に入る。

 

「ここは天国?······いや病院かしら?」

 

起きたばかりのミネケレスは頭がまだぼんやりした為に,現状を把握出来ていなかった。自分が病院らしき部屋にいる事は分かったが,病院にいる理由やその前の記憶を思い出す事が出来なかった。

 

「み,ミネケレス様?·······」

 

普段から聞き慣れた声で自分の名前を呼ばれたミネケレスが声の方を向くと,紺色の軍服の胸元に特務軍の勲章をつけた1人の女性が立っていた。

彼女はミネケレスに対して目を見開いて固まっており,両手に持っていたイベリスとイタドリの花束を思わず落としてしまった。

イタドリ(回復)イベリス(復活)の花言葉を篭めて作られた花束が床に落ちると同時に彼女の涙腺は崩壊し,ミネケレスの元に駆け寄って左手を掴んだ。

 

「ミネケレス様!! よくぞ目を覚ましてくれました!! 私です! 第39任務艦隊司令官のミリス・ロートハロンです!!」

 

自身の名前を宣言し,涙を滝の如く零すミリスの姿を見て,ミネケレスは思わず微笑んだ。

 

「ミリス··どうしたのよ,そんな顔して········」

「当たり前ですよ!! あれから5日間も眠ったままだったんですから!!」

「5日間も?······」

 

そこまで口にしたミネケレスは眠る前の記憶を思い出した。

 

「思い出した······確か私は「バルサー」に乗って····それでミルメリアに···」

 

全てを思い出したミネケレスは思わず言葉を止める。思い出した記憶の中には一方的に蹂躙される特務軍の姿が写っていた。

 

テレスガーベーター(ミルメリアの戦闘機)がケイン神国やワイバーン相手に無敗を誇ったアンタレス07式艦上戦闘機を全滅させた上に,何隻もの空母や巡洋艦・駆逐艦を炎上・沈没させた。

それだけでも見るに耐えない一方的な蹂躙だが,ベリメサ戦隊(ミルメリア艦隊)が現れた後は虐殺へと変わった。空飛ぶ船から放たれたショックカノン(緑色の光線)は戦艦すら一撃で沈め,帝都 ラグナにも甚大な被害を及ぼした。

 

特務軍艦艇からの攻撃は当たりすらせず,ただ一方的に攻撃されるのを待つばかりという経験した事が無い絶望感と恐怖にミネケレス含め全員が支配されていた。

 

"死以外あり得ない"と彼女自身も覚悟を決めたが,こうして生き残る事が出来た。どうして生き残る事が出来たか分からないミネケレスはミリスへと聞いた。

 

「私はどうして生き残れたの? 途中から記憶が無くて分からなくて·····」

「「バルサー」は真っ二つになって沈みこそしましたが,船が浅瀬にいた為に海面上に姿を残した状態になりました。フイトル艦長は亡くなられましたが,デルンシャ参謀は肋骨等の複数箇所を折りましたが生存しています。」

「そうなの,良かっ····た·······」

 

少数であっても乗組員が生き残れたという事実に安堵したミネケレスはミリスの手を掴もうと右手を上げたが,それまでより軽い感覚の右手に違和感を覚えるた。

彼女の視線が右手を向くと,肘から先を失って包帯が巻かれた右腕が入ってきた。

 

「夢であって欲しかったけど,現実なのね·······うっ」

 

右手を失った現実を受け入れざる負えなかったミネケレスに切断された痛みが蘇る。

 

ミルメリアは彼女が乗っていた戦艦「バルサー」に対して砲撃(ショックカノン)を行っていたが,その内の一発が彼女の右腕に直撃して肘から先を失った。高温のショックカノンによって瞬時に止血されたが,切断された事による激痛は彼女の体に一瞬で伝わった。

 

経験した事無い激痛に藻掻いた記憶が蘇り,再び彼女の体に苦痛を与える。病院で治療を行った為に痛みは柔らいでいる様に感じれたが,それでも激痛が消える事は無かった。

 

「ミネケレス様,大丈夫ですか? あまり動かない方が宜しいかと······」

「大丈夫よ。それよりも海軍艦隊はどうなったか分かるかしら?」

 

痛みに耐えながらミネケレスはミリスに聞きたかった事を聞いた。ミネケレスの質問にミリスは気まずい表情で固まるも,直ぐに口を開いた。

 

「海軍艦隊は1隻残らず沈みました。生存者は·········いないと見た方が良いかと·····」

「そう·········」

 

ミリスの発言にミネケレスは一言しか返さなかった。彼女はライバルであり,戦友でもあるカイザルを失った事を受け入れるしか選択肢は残されていなかった。

 

ふと,海軍艦隊の出撃前に交わしたカイザルとの会話を思い出す。

 

『ラグナは任せたぞ。』

『あなたの帰る場所はしっかり守っておくわ。』

 

彼女が病院にいる事実がラグナ(帰る場所)を守れた事実を証明していたが,肝心の帰ってくる人物はいなかった。

 

「あの馬鹿が········先に死にやがって。」

 

そう溢したミネケレスの目から涙が流れる。人目を気にせず涙を流すミネケレスの姿をミリスは黙って見ていた。

 

一頻り泣いて落ち着いたミネケレスはベット脇で立っているミリスへと向き直った。

 

「そういえばここは何処かしら? 海軍病院はこんなボロくなったような感じがするけど···」

「ここは基地の第4宿舎を改装した簡易病院です。ミルメリア(あいつら)の攻撃で海軍病院も全壊しましたが,この建物だけ残ったので急遽病院として使っています。」

「成る程ね。皇帝陛下は無事かしら?」

「皇帝陛下らは避難して無事です。ですがニブルス城は全壊し,地下司令部で指揮を取っていたジークス元帥も行方不明になっています。」

「三将の中で残っているのは,私だけって事ね·······」

 

ミリスとの会話で三将最後の一人になった事を知ったが,ジークスの性格を知っている彼女に取ってはある意味納得出来る結果だった。

加えてグラ・バルカスの象徴であり,国民の拠り所でもある皇帝陛下を守れた事もミネケレスの精神を安定させた。

 

ふとミネケレスがラグナ湾を向くと,ミリスが白いレースの留め具を外して両脇に寄せた。白いレースが開けられた事でラグナ湾が一望出来る程に視界が開けたが,5日経った現在でも黒煙が上がっているラグナ港とラグナ湾に沈む艦艇の姿にミネケレスは驚愕した。

 

転移前はユグド1の規模と設備を持っており,転移後も有数の規模を持っていたラグナ港の設備や施設ボロボロになっており,湾内には軍艦・民間船問わず幾つもの船が残骸として存在していた。

 

「こんな有り様だったのね·······もしかしてアレが「バルサー」かしら,ペガスス級もあんな姿に······」

 

ミネケレスは視界を隅々まで見渡して,自らが乗っていたヘルクレス級戦艦「バルサー」が船体の中心で折れた状態で大破着底しているのを発見した。

「バルサー」の周辺には特務軍艦隊に所属していたペガスス級航空母艦の「ベンティダ」が水中に沈んでいる筈の赤い艦底を見せる様に左側に横転しており,同型艦の「アルカラブ」は船体を切り裂かれて艦首と艦尾を持ち上げた状態で存在していた。

 

戦いから5日が経過していたが,ラグナ湾の復旧は殆ど行われておらず,現状を見るだけで戦いの凄惨さを感じる事が出来た。

 

「見慣れた景色が······ん,何あれ?」

 

ラグナ湾とラグナ港の凄惨な現状にミネケレスの顔は青ざめていたが,残骸と化した船の中に異質な姿をした存在がいる事に気づいた。

 

船体は四角形を組み合わせて作られており,艦首に至っては大きな開口部が空いていて,汚水混じりの海水が入っている構造はミネケレスは疎かグラ・バルカス人が知っている船の形と明らかに違っていた。

四角い船体の上にはヘルクレス級の如く大きいながらも右側によった艦橋と3連装主砲 2基を備え,その左側に飛行甲板を伸ばした艦は極めて異質な存在感を放っていた。

 

戦艦空母とも判断できる艦の近くには煙草の葉巻みたいに細い船体に,艦橋や連装主砲を搭載した艦が複数停泊していた。

 

ユグドは疎かこの星に来ても見た事が無い姿をした艦にミネケレスは疑問しか浮かばなかった。

 

「何あの船? あんな変な形の船は見たこと無いわ?」

「あの艦は地球連邦の戦艦空母とフリゲートだそうです。」

「地球連邦? また新しく国が転移してきたの?」

「いえ,彼らは日本国がいた星から自らやって来て,ミルメリア艦隊を損害無く全滅させたんですよ。

今は海に浮かんでいますが,その船もミルメリアと同じく空を飛べるんですよ。」

「········」

 

ミリスの発言にミネケレスの理解が追いつかず,返事が出来なかった。

 

同じく転移国家である日本国がいた地球()からここまで空飛ぶ船でやって来た挙げ句,グラ・バルカス軍が傷一つ付けられなかったミルメリア艦隊を無傷で全滅させた。

 

あまりにもぶっ飛んでいる内容な上に,死神の如く強く恐ろしかったミルメリア艦隊を無傷で全滅させたという事実が混乱させる。

だが海軍艦隊と特務軍艦隊は完全敗北させ,ニブルス城も破壊したミルメリア艦隊はラグナは疎かグラ・バルカス大陸全土を焼き尽くす事も出来た筈なのに,グラ・バルカスが国として維持出来ている現状が地球連邦の存在を証明していた。

 

「·······余りにも馬鹿げてる·····」

 

ミネケレスはラグナの救助活動の拠点になっている第13艦隊第3戦隊第2320戦隊旗艦アンタレス級宇宙航空母艦「GGG-145 ラス・アルゲティ」を見ながら,そう呟く事しか出来なかった。

 

 

グラ・バルカス大陸には中央に巨大なアルテード山脈が聳え立っており,山脈を境に気候や植生・文化が大きく異なっていた。

 

4000m近い最高長の山を持つアルテード山脈を一望出来る位置にグラ・バルカス皇族の別邸 アルテード・ニブルスが建てられていた。

普段は避暑地として機能しているが,地下には大規模な指揮所が建設されており,万が一の場合に際してはこの場から指揮を取る事が出来た。実際に10年ほど前にケイン神国相手に運命戦争が勃発した際に滞在していたグラルークスは地下指揮所から最初期の指揮を行った。

 

ミルメリア襲撃に際しても皇帝専用のアヴィオール双発機で皇族や重要幹部共々この地に避難すると,ニブルス城が破壊されるまでラグナの様子が逐一伝えられていた。

 

グラ・バルカスにとって"最後の砦"という重要な存在である為に,皇族や政権幹部・三将含む一部将校しか場所を知る事が出来ないこの地に他国からの来客が初めて訪れるという前代未聞の事態が発生する事になった。

 

最もミルメリア艦隊を全滅させたという地球連邦側からの会談場所としてグラルークスが自ら選んだ為に目立った混乱は生じていなかったが,来客が垂直離着陸が可能なコスモシーガル(白い飛行機)でやって来た際にはグラ・バルカス全軍を統括する本部長 サンド・パスタルら軍幹部が驚愕の目を向けていた。

 

コスモシーガルでやって来た地球連邦ともう一カ国の来客はグラルークス率いる皇族やグラ・バルカスの国家運営に必要不可欠な影響力を持つ政権・軍幹部に出迎えられたが,地球連邦が連れてきた来客の発言がグラ・バルカス関係者全員をどよめかせた。

 

「·········すまんが,もう一度言ってくれ。」

「はい,私はケイン神国外務省から派遣されたオルン・ゼリア・デアノーザーです。

貴国との150年ぶりの再開に立ち会えて光栄です。」

 

外務省長官 モポール・ルクセエントの発言に,第13艦隊に便乗する形で派遣されたオルンは自らの名前と所属を名乗り,150年ぶりの再開に感激の言葉を述べた。

 

「信じられん·······」

 

モポールが頭を抱える中,机を強く叩いた音が室内に響く。オルン含め全員が音の発生源を向くと,グラルークスの息子で次期皇帝となる皇太子 カバル・エルーエ・ルキ・フォアデム・ハローバ・エリドル・フォン・グランデリアことグラ・カバルが疑惑と怒りが混じった目でオルンらを見ていた。

 

「き,貴様! ふざけているのか!? 運命戦争で敗北寸前まで追い込まれたケイン神国が立ち直った挙げ句,宇宙を渡ってこの星にやって来ただと!? そんな馬鹿げた話信じる事が出来るか!!」

「か,カバル皇太子の言う通りだ! 幾ら何でもそんな話信じられるか!! 貴様,嘘をついているのではないか!!」

 

カバルが立ち上がりながら怒鳴ると,帝王府長官のカーツ・ワインダールが同調した。

2人の言い方はキツいものだったが,この場にいるグラ・バルカス関係者全員が内心で同じ事を考えていた。余りにも現実離れした話に頭を抱えていたが,グラルークスは怒鳴り声を上げたグラ・カバルを向いた。

 

「カバルよ。少し言い過ぎではないか?」

「ち,父上!? しかし奴の話は余りにも現実離れしています!」

「確かに奴の話は信じられん物だ。だが我が国はユグドからノルースとか言うこの星に転移してきたのだぞ。転移なんてオカルト的な話よりも,宇宙を渡って来た方が納得できるでは無いか。」

「た,確かにそうですが···」

「それにあの者はケイン人の特徴を全部持っている。あの姿でケイン人で無い方が私には理解出来んな。」

 

オルンの肌や髪は文字通りの純白ながら眼はルビーと間違う程に紅く輝いており,首元にはエーシル神の信者である事を示す黒字の刺繍が刻まれていた。

隣にはグラ・バルカス人に酷似した地球連邦の外交官が立っているが故に,オルンの外見はより目立っていた。

 

絶対的な特徴を指摘されたカバルとカーツは反論する事が出来ず黙った。だがオルンは彼らがまだ完全に納得していない事を察知した。

 

「まあ,いきなり現れても納得出来ないのは理解出来ます。ならばと言っては難ですが,こちらは上空から撮影した首都 ミルーク・シティの現在の写真です。

建物は変わってしまいましたが,地形とかは貴国が転移した時から変わっておりませんよ。」

 

オルンはポケットから取り出した透明スクリーン型携帯端末を手元でタブレット端末程に広げると,一枚の写真を見せた。

画面の下が透けて見える上に画面の縮小・拡大が自由に出来る携帯端末にグラ・バルカス側は驚いたが,写真を見ると更に驚く事になった。

 

「この湾と山の形は確かにミルーク・シティのものだ! だが貴国の首都なのか!?」

「建物が高すぎる! 一番高いのは雲すら突き抜けているぞ!」

「我々の知っている姿が何処にも無いな······」

 

訪れた経験を持つモポールに続いて,写真でなら見た事がある要人らも写真がミルーク・シティである事に気がついたが,彼らが知っているミルーク・シティの面影は無くなっていた。

奇抜な形をしたガラス張りの超高層ビル群が建ち並び,ガラスで覆われたチューブの中を流線型の列車が走る様子は雑誌に描かれた未来都市の予想図を見ている様だった。

 

反論していたグラ・カバルとカーツも写真を見ると黙るしか無かった。

グラルークスもオルンの写真を黙って眺めていたが,脳内で思い浮かんだ疑問をオルンへと向けた。

 

「そなたは地球連邦の船に乗ってきたそうだが,貴国も空飛ぶ船を持っていたりするのか?」

「勿論保有しております。写真をご覧になりますか?」

「勿論だ。」

 

グラルークスの返事でオルンがタブレットを操作すると,グラ・バルカス人が知っている船の形とは似つかない葉巻型の船が艦隊を組んで,真っ黒な宇宙に浮かぶ赤色に染まった惑星を背景に航行している写真へと切り替わる。

艦橋と主砲が一体化した濃紺の艦の周りに,より細い葉巻型の艦とシュモクザメの様に艦首が広がった艦が展開していた。

 

「なんか·····葉巻みたいな形をしてますな。」

「地球連邦の船とはかなり違う様ですね。」

「砲身が無いのか,面白い造りをしているな。」

 

軍関係者を中心にケイン神国の宇宙軍艦に様々な意見を述べるが,自身の常識とは余りにもかけ離れた姿に困惑しながら思った事を述べるしか出来なかった。

そんな中サンド・パスタルが艦隊の背景になっている惑星に既視感がある事に気がついた。

 

「艦隊の後ろに見える赤い星に見覚えがあるのだが·····この星は何と言うのか?」

「見覚えがあるのは当たり前ですよ。この星は火星なんですから。」

「火星だと!?」

 

背景の写真が国民全員が知っている火星だった事に全員が驚愕する。

グラ・バルカスでは考えられない程に高画質な写真で見た事が無かった為に気付けなかったが,赤い星という唯一無二の特徴に全員が直ぐに納得出来た。

 

「現在,火星にはドームに覆われた都市が幾つも作られており,この星をユグドの様に海に覆われたの星へ変える計画も進んでおります。」

「えぇ·········」

 

人が住めないであろう星に海を作って人を住めるようにする。余りにも理解が出来ない話に返事もままならなかった。

 

数々の驚きを引き連れてやって来たケイン神国の使者にグラルークスは頭を抱えながらも,大被害を受けた自国を速やかに復興すべく和解する事を心で決めた。




・ミリス・ロートハイン
前にも書いたであろう「ミリシアルとムーの間に日本が召喚された作品」で出す予定だった登場人物です。
出す機会がかなり限られるだろうと思われたので,今回出しました。

・特務軍所属艦の名称
特務軍艦隊旗艦の名前は日・グ大海戦で登場した艦をそのまま登場させましたが,それ以外はオリジナルです。
ペガスス級航空母艦「ベンティダ」や「アルカラブ」はペガスス座に所属している恒星の名称から取りました。

・グラ・バルカス大陸の地理
書籍版となろう版・Web版のいずれでも記載が無かったので,オリジナルで作りました。

・ケイン神国人の特徴
こちらもどの媒体で記載が無かったので,オリジナルです。
地球人との違いを明確にすべく,色んな要素を詰め込んだら中々凄い外見になりました。

・ケイン神国首都 ミルーク・シティ
ノルースと同じくエーシル神のweb版名称から取ってきました。

・ケイン神国の宇宙軍艦
"艦橋と主砲が一体化した濃紺の艦"と"より細い葉巻型の艦"・"シュモクザメの様に艦首が広がった艦"······あいつらしかいませんねw


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魔術と科学の会合

今作では補給母艦 アスカを各都市の名前をつけたトウキョウ級補給母艦としていますが、先日発表された3199に出てくるアスカ級補給母艦の艦名にバンクーバーがあってマジでビビった····しかも確認したら今作に出ていてもう一度ビビった。

あと、今回から句読点が,から、に変わります。


エルメ・ザフェ・ルエンベータ少将率いるエルメ戦隊はミリシアル帝国首都 ルーンポリスを破壊すべく進撃していたが、その道中でミリシアル海軍第零魔導艦隊とグラ・バルカス海軍第61任務部隊の合同艦隊やミリシアル秘蔵の空中戦艦 パル・キマイラと戦闘を繰り広げたり、先進11カ国会議の為にカルトアルパスへと集まっていた各国艦で編成された臨時連合軍を迎撃すべく、ツノアン戦隊を緊急で編成していた為に大幅に時間を食っていた。

 

マドグラ諸島沖で行われた海戦で合同艦隊は一隻残らず沈められ、フォーク海峡で行われた臨時連合軍との戦闘でも「グレートアトラクター」以外の艦が全て撃沈もしくは航行不能へと追い込まれ、パル・キマイラも駆逐艦1隻を沈めたが全ての機が破壊される惨敗で終了した。

 

だがこれらに対処した事で大幅に時間を食われたエルメ戦隊はルーンポリス攻撃前に地球防衛軍第13艦隊が到着した為に、ルーンポリスを傷一つ無く守るという大戦果を上げる事に成功した。

 

ルーンポリスに被害を受けなかった事を避難先のゴースウィールズで知ったミリシアル皇帝 ミリシアル8世は、直ぐにミルメリアの攻撃を受けたカルトアルパスへ救援物資や人員を輸送する様に指示を出した。

また、エルメ戦隊を撃破した第13艦隊第2戦隊から話し合いの打診を受けると、意気揚々と受けていていた。

 

国家創立以来の危機を無傷で乗り切ったミリシアル国内には薄っすらではあるが、希望の光が見え始めていた。

 

 

グラ・バルカス帝国海軍最大の戦艦 「グレートアトラスター」はフォーク海峡の海戦後に唯一海上に浮く状態で残っていたが、彼女自身は各所から黒煙が上がっている満身創痍状態だった。

このままでは彼女も沈没を免れないと思われたが、碧い空の先から降りてきた地球防衛軍の第13艦隊第2戦隊第2310戦隊の艦艇が次々とカルトアルパス沖へと着水し始めた。

 

着水した艦艇の中で船体後部に平らな甲板を持つトウキョウ級武装補給母艦「HHH-152 ブリスベン」と「HHH-169 シンガポール」から放たれた各種機体や小型艇は、未だに黒煙が上がっているカルトアルパス市内と海上に姿を残している三隻の元へ向かい出した。

 

250mを越える全長を持つ「グレートアトラスター」の両脇には細い葉巻型の船体に武装や艦橋を取り付けたエンケラドゥス級宇宙護衛艦の「EEE-232 ナイアド」と「EEE-235 タラッサ」が横付けし、両艦をハシゴで繋ぐとエンケラドゥス級の乗組員が医療物資を持って「グレートアトラスター」の甲板へと降り立った。

 

木製甲板へ降り立った地球防衛軍乗組員は万が一に備えて地球連邦軍の正規拳銃であるNC TYPE-DE7ブラスターピストルで自衛しながらも、自動翻訳現象を味方につけて「グレートアトラスター」乗組員の救助や治療を開始した。

治療を受ける乗組員の中には艦長であるラクスタル・フェーンドナ大佐も含まれており、傷を負った右腕に向けて発射されたジェル状の液体が瞬時に固まって傷口を防ぐ様子をマジマジと見ていた。

 

「これは凄い液体だな·······もしかして魔法か?」

「魔法なんてオカルトなものではありませんよ。こちらは瞬間固形消毒薬という物で、肌に塗ると傷口を塞ぎながら消毒を行ってくれる優れ物です。」

「とんでもない代物だな。地球はこんな物を作れる程の技術を持っているのか。」

「いえいえ、これは地球ではなくエンドアという惑星で取れる植物を元に作られました。」

 

惑星というワードを軽々と使う彼の口調から自分と世界のスケール感が違う事をラクスタルは知ったが、同時に彼らが魔法を見るとどんな反応をするのだろうかと純粋な疑問を抱いた。

しかしながら、「グレートアトラスター」の惨状とは全く関係が無い事を思い浮かべてしまう程に彼の精神は落ち着き始めていた。地球防衛軍の小型艇 コスモアローが潜水して「グレートアトラスター」の浸水箇所の対処へ当たって、船体の傾斜が戻りつつある事も彼の精神を落ち着かせる手助けをしていた。

 

瞬間固形消毒液が固まった傷口に包帯を巻かれて処理が終わったラクスタルは立ち上がって、自らの背中を預けていた「グレートアトラスター」の姿を見上げた。

 

国内は疎かノルース(この星)でもトップレベルの口径を持つ46cm砲の砲身や国内の技術を掻き集めて作られた測距儀はミルメリア艦が放ったショックカノンによって無惨にも切り裂かれており、高熱で溶けた断面が固まっていた。

ラクスタルがいる木製の甲板にも艦内の様子が見える程に大きく痛々しい傷口が幾つも刻まれており、切り裂かされた木製の傷口は高温で黒く焦がされていた。

 

「痛々しいにも程があるな·······あんなに勇ましかった艦がこんなにもなるとは······」

 

いつもの様に見ていた筈の勇ましさや美しさはボロボロに砕け散らせてしまった事にラクスタルは歯痒い思いを抱いたが、その艦を水上に浮いた状態で残せた事にラクスタルは少しばかりの誇りを持てた。

 

少しばかりの誇りでメンタルを保てているラクスタルの元に、副長のラミス・ベルリッタが骨折した右脚を支えるべく松葉杖をつきながらやって来る。

 

「艦長、無事でしたか」

「ああ、副長は脚をやられたが大丈夫だったか?」

「えぇやられました。ただグレートアトラスター(この艦)と同じく何とかなりました。」

「なら少しばかり安心だな。あちらの艦も何とかなりそうに思えるな。」

 

会話していた2人の視線は自然と「グレートアトラスター」と同じくミルメリア艦の砲撃が直撃したが、座礁する事で沈没を免れた「しきしま」と「ラ・カサミ」に向いていた。

沈没こそ免れたが大破して黒煙を上げている2隻にもエンケラドゥス級とコスモアローが近寄っており、乗組員の救助と船体の損傷箇所を応急修復していた。

 

「ミルメリアと戦って生き残った貴重な艦です。地球連邦もあの艦を見捨てるわけにはいかないでしょうね。」

「あの2隻だけじゃなく、このカルトアルパスもな。」

 

2人の視線は2隻の大破艦と同じく各所から黒煙が立ち上っているカルトアルパス上空を飛ぶコスモシーガルへ移る。臨時連合軍艦隊とツノアン戦隊の戦闘で巻き添えを食らったカルトアルパス市街の各地から炎が燃え上がっていたが、アンタレス級航宙母艦とトウキョウ級補給母艦から飛び立ったコスモシーガルが消火を手助けしていた。

 

ミリシアルの都市で唯一被害を受けたカルトアルパスだったが、臨時連合軍艦隊がいなければ被害が更に拡大していた事は明らかだった。市街から立ち上る黒煙が消えていく度に、この都市を戻そうという意思がカルトアルパス市民に出来始めていた。

 

 

ミリシエント大陸こと中央世界の半分を収めているミリシアル帝国は東西南北各方角に中心地になれる大都市を有しており、東部の大都市はゴースヴィールズが担っていた。

ベリアーレ海と大河が接する場所に形成された汽水湖 ゴースヴィールズ湖が良質な停泊地になった事で、フィルアデス大陸とロデニウス大陸方面の港湾都市として発展を遂げ、日本国との国交提携後にはミリシアルの玄関口という役割も与えられていた。

 

ゴースヴィールズはミルメリアの攻撃宣言を受けた首都 ルーンポリスの真逆となる東部に位置していた為に、ミリシアル皇帝や政権幹部が退避していた。

退避した皇帝や政権幹部はゴースヴィールズの中心に位置する東部管区庁舎でマグドラ諸島沖やカルトアルパスでの戦闘結果を聞いて頭を抱えていたが、地球防衛軍の参戦でルーンポリスが無傷だった事を知ると立場関係なく喜びに包まれた。

 

ゴースヴィールズ市内に喜びが広がっていく中、ノルース上に展開していた第35艦隊本隊とルーンポリスを攻撃しようとしていたエルメ戦隊を全滅させた第13艦隊第2戦隊が政府との会談を求めた為に、カルトアルパス支援に向かう第2310戦隊とルーンポリスへ向かう第1321宙雷戦隊を切り離した第2戦隊がゴースヴィールズへとやって来た。

 

ゴースヴィールズに着水すべく低空で市街の上空を飛んでいる艦の姿を見た皇帝ら政府幹部やゴースヴィールズ市民は、思わずミリシアルが敵としている古の魔法帝国が持っていた空中戦艦を照らし合わせた。

最も魔法帝国ことラヴァーナル帝国が残していた空中戦艦 パル・キマイラは、ミルメリアとの戦闘で呆気なく沈んでいたのを市民は知っていないが、空中戦艦の概念を知っているからこそ地球連邦の凄さを直ぐに理解出来た。

 

それは皇帝ら政府幹部も同じで、地球連邦から派遣されてきた外交官と会合したミリシアル皇帝と政府幹部はゴースヴィールズ湖に停泊している艦艇の見学を申し入れた。

戦闘で負った損傷や不具合箇所の修理を行う必要があった上に、残る3戦隊と報告という名の通信を行う為に内部の見学は断られたが、湖上からの見学を許された為に皇帝と政府幹部は皇族専用のヨットに乗って地球防衛軍艦艇見学へと赴いた。

 

「あのミルメリア艦隊を倒したのだから凄いとは思っていたが、これほどまでとは······」

 

ミリシアル8世は皇族専用のヨットからゴースヴィールズ湖に停泊している巨大艦 「BBB-001 アンドロメダⅡ」を眺めていたが、発掘されたラヴァーナル帝国の艦を復元した自国海軍艦艇とは似ても似つかない外見と艦に張り付いた装備品を興味深く眺めていた。

 

ペクラス外務大臣やシュミールパオ軍務大臣・アグラ国防省長官といった政権幹部も皇族専用のヨットから湖上に浮かぶ地球防衛軍艦艇を眺めては驚いていた。

特に空中戦艦(パル・キマイラ)海上要塞(パルカオン)といったラヴァーナル帝国が使用していた古代兵器を扱う古代兵器分析戦術運用部で部長を努めているヒルカネ・パルペは、理解が追いつかずに頭を抱えていた。

 

頭を抱えて悶絶するヒルカネに周りは引いていたが、彼を見つけたミリシアル8世は近寄っていった。

 

「そんなに頭を抱えて、一体どうしたというのだ?」

「こ、皇帝陛下!? お見苦しい姿を見せてしまって、大変失礼ました!!」

「社交辞令は良いから、お主が頭を抱えていた理由を早く教えてくれ。」

「は、はい。私は古代兵器を分析・運用を統括していたので、それらに絶大な誇りと信頼を寄せていました。

しかしながらミルメリアとの戦闘へ出撃した空中戦艦は一隻残らず沈められた上に、空中戦艦を沈めたミルメリアの空中戦艦を意図も簡単に沈めてしまった地球連邦の艦艇を目の当たりにして、自分が井の中の蛙だった事を痛感しているのです。」

 

自分の予想通りではあったが、ヒルカネが頭を抱えている理由を知ったミルメリア8世は溜息をつくと、彼に諭すように話しかける。

 

「私は長い人生の中で様々な物を見ては驚いてきたが、これら船たちを見たら思わず、空中戦艦(パル・キマイラ)海上要塞(パルカオン)を初めて見た時の感覚を思い出してしまったわい。

私も古代兵器を初めて見た時は無敗の超兵器だと疑ってもいなかったのう。」

「4000年も生きてらっしゃる皇帝陛下ですら、その様に思われていたのですか?」

「私も元を辿ればただの町エルフじゃよ。町エルフがそんな感情を抱くのはイカンのかね?」

「い、いえ、何も問題無いかと·····」

「この私ですから驚くのだからお主が驚いても何の問題も無かろう。それに表には出さずともあやつらも相当驚いているであろうから心配するな。」

 

ミリシアル8世の視線の先にいたアグラやシュミールパオらが地球防衛軍艦艇を平常な顔で眺めていたが、その横顔には動揺しているであろう事を表す冷や汗を薄っすらとかいていた。

 

「この場にいる全員がこれらの艦を目にして動揺しているのさ。こんな物を直ぐに受け入れられる方が可笑しい程にな。」

 

ミリシアル8世はヒルカネを落ち着かせる様に話していたが、ふと「アンドロメダⅡ」を見上げると再度溜息をついた。

 

「にしても、この星を救った第13艦隊には最高級の勲章を贈りたいものだな。」

「同感です。彼らのお陰で我々は生き残ることが出来たのです。他の国々だって何かしらの謝礼を贈りたいでしょうから、我が国が話を振れば話を纏められると思いますが。」

「それもありだな。まあ、世界最強の称号が無くなった我々に従ってくれる国があるか分からんがな。」

 

ミリシアル8世の独り言に加わったペクラスは、皇帝の自虐に返す言葉が無かった。




・ルーンポリスを傷一つ無く守るという···
という事で攻撃宣言を受けた四都市で唯一無傷だったのはルーンポリスでした。世界最強(自称)とか言われてる事が気に食わなかったので、世界最強の維持と幸運が混ざって無傷な展開にしました。

・NC TYPE-DE7ブラスターピストルで自衛し····
ナイト=カンセラー社が開発したレーザーピストルで、書いた通り地球防衛軍が正規拳銃として採用している。詳細は兵器解説ページに載せると思います。

・瞬間固形消毒薬
どうせなら他惑星の植物由来の存在とかも出した方が世界観的に良いかと思って登場させました。

・コスモアロー
ナーティアム・スペースプレーン社が開発した水陸両用の観測機で、元ネタは星巡る箱舟で登場したコウノトリです。こちらも詳細は兵器解説ページに載せます。

・ゴースヴィールズ
この都市は原作では言及しかされていないので、今回出てきた設定は全てオリジナルです。
ベリアーレ海は原作でも出てきましたが、第13艦隊第2戦隊が停泊した汽水湖 ゴースヴィールズ湖はオリジナルなので、いないと思いますが本作を見て日本国召喚の二次創作を書こうと思った人は注意してください。



先日投稿した話を見返してたら、200年後の地球を舞台としているのに、いつの間にかに150年後にすり替わっていた事に気づきました······しれっと修正しておきます。


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