夢幻泡影 (烊々)
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前編

 

 

「はーい、おねーちゃんのかちー」

「……参りました」

 

 今日のプラネテューヌ姉妹の模擬戦も、ネプテューヌの勝利に終わった。

 

「また負けちゃった……こんな調子で本当にお姉ちゃんを超える女神になんてなれるのかな……」

「なれるなれる。ていうか、今のネプギアってわたしがネプギアぐらいの歳の頃よりもう全然強いし」

「そうなの……?」

「うん。まぁ、わたしにもそんなに強くない頃があったんだよね…………」

 

 空を見上げながら呟くネプテューヌ。その表情はどこか儚げなものだった。

 

「……お姉ちゃん? どうしたの?」

「あ、なんでもないよ。だからネプギアは気にしなくて良いってこと。ていうかわたしがネプギアに簡単に負けちゃったらわたし女神やめなきゃいけなくなるし」

「そ、それもそうだよね。でも、私もいつかお姉ちゃんみたいにみんなを護れる強い女神になってみせるよ!」

「うんうん。がんばれネプギア」

 

 愛妹の頭を撫で、歩いて教会まで戻るネプテューヌ。

 

(みんなを護れる、か……)

 

 ネプギアの言葉をきっかけに、ネプテューヌは過ぎ去りしある記憶を思い起こしていた。

 

 

 

 

 

        - 夢幻泡影 前編 -

 

 

 

 

 

 それは十数年前、まだネプギアが生まれていなかった頃の話である。

 

「本当に行くのですか? 今回の件、ネプテューヌさんが頑張っても、シェアには繋がりませんし、何よりネプテューヌさんが危険です」

「わかってる」

「ならもう止めません。お気をつけて。こちらからもできるだけのサポートはしますので」

「ありがとう! 行ってきまーす!」

 

 イストワールに見送られ、教会から駆け出すネプテューヌ。

 その様子を見た教会員の女が、不思議そうな表情でイストワール問いかける。

 

「……教祖様、今ネプテューヌ様が教会を飛び出して行きましたが、どうかされたのですか?」

「えっとですね……ラステイションとの領域沿いにある小国をご存知ですか?」

「はい。存じています」

 

 ゲイムギョウ界には、プラネテューヌ、ラステイション、ルウィー、リーンボックスの四つしか国がないわけではなく、四大国の領域内ではあるが大国に統治されていない周辺の小国が存在する。

 その一つのある小国が、現在存続の危機に晒されていた。

 近頃、その小国の領主が亡くなり、その一人娘がまだ若いながらも後を継いだが、それを好機を見た周辺諸国が小国を取り込もうと圧力をかけてきているのだ。

 そして、場合によっては新領主が命の危機に及ぶ可能性もあることを見かねたネプテューヌが立ち上がったのである。

 ネプテューヌの狙いは、その小国とプラネテューヌで同盟を結ぶことで、圧力をかけてくる周辺諸国に対して逆にプラネテューヌが圧力をかけることであった。

 

「一部の有識者の中からは、あそこは軍事的価値が高いため同盟という生温い手段ではなく強引にでもプラネテューヌに併合した方がいいとの声もあります」

「しかし、ネプテューヌさんはそんなことを望んではいませんよ」

「でしょうね。それでこそネプテューヌ様です」

「私もできるだけネプテューヌさんのサポートをします。たとえこの国のシェアに繋がることではないにしても、ネプテューヌさんの……女神様のやりたいことをサポートするのが私の役目なので」

「私にも何かできることがあればお手伝いさせていただきますよ、教祖様」

「はい。ありがとうございます」

「では、失礼します」

 

 教会員の女は、軽く頭を下げ、イストワールの元から離れて仕事に戻っていく。

 

「……まぁ、領主の暗殺計画は既に始まっているんですけどね」

 

 そんな独り言を、誰にも聞こえない声量で呟きながら。

 

 

 

 

「……というわけで、かの小国の領主暗殺、どうでしょう?」

 

 教会員の女は、髪型を変えスーツに着替え、薄暗い路地裏で、そこにいるもう一人の女に話す。

 

「報酬はどんなもんよ? まずはそっからよ」

 

 聞き返したもう一人の女は、無地のTシャツとジャージズボンという路地裏に似合う地味で柄の悪い格好をしている。

 スーツの女が仕事の仲介人役、ジャージの女が仲介人によって斡旋された仕事をこなす役といったところだろう。

 

「プラネテューヌの狂信者が出す分を全て足すと、おそらく二億にのぼるかと」

「……へぇ。良いじゃない」

 

 ジャージの女はニヤリと笑う。

 裏社会での暗殺業の相場は一人約二か三千万、高くても五千万を超えるか超えないかといったところだが、提示された額はそれを大きく上回っていたからだ。

 

「しかし問題がありまして、プラネテューヌの女神様が、その小国と同盟を結び、手続きが完了されるまでのあいだに、その娘を護衛をすると言い出したのです」

「はぁ? なんで女神がお姫様の護衛なんてすんのよ? それに、わざわざ同盟なんて結ばなくても、お姫様が死んで小国の存亡が危うくなれば、プラネテューヌに併合できるんじゃないの?」

 

 言われたとおり、ネプテューヌがその娘を守る意味はない。

 領主が殺され、統治者がいなくなった場合、その土地は近隣の大国であるプラネテューヌに併合されることになる可能性が高い。

 

「守護女神とはそういうものなのですよ。自らの知るところで人が傷つくことが許せない、といったところでしょうね」

「お人好しも過ぎればただのアホね。それにウケんのは、この仕事の依頼人もまたプラネテューヌの女神信者ってことかしら。教会って内輪揉めでもしてるわけ?」

「女神信仰も一枚岩じゃないということです。女神様の思うようにするべきという信者もいれば、女神様の望まぬ方法でも国の発展をすべきという信者もいる……という感じですかね」

「ふーん……」

 

 ジャージの女は十秒ほど考え込んでから、ニヤリと笑いながら口を開いた。

 

「……うん、お姫様の暗殺、承ったわ。ロクに戦えもしない小娘を殺せば二億なんて、こんなに割の良い仕事はないもの。その代わり、必要なものを色々と請求させてもらうわよ?」

「ええ、構いません」

 

 スーツの女も小さく笑い、彼女たちの間で契約が交わされた。

 

「あんたも悪〜い教会員ね。女神様裏切って、こんなことの仲介人やってるなんて」

「教会員の姿は、私なりのビジネスの中の一つでしかありませんので」

「そう。まぁ、そういうとこは信頼できるわ」

 

 言いながら、ジャージの女はポケットからタバコを一本取り出し、火をつける。

 

「タバコ、やめたのではなかったのですか?」

「死んだ旦那が嫌いだったからやめてただけ」

「おっと、これは失礼。そういえば、娘さんもいましたよね? 確か、お名前はアイ……」

「別にあんたが名前覚える必要ないでしょ。ていうか、私だってもう一年ぐらい顔も見てないから元気かどうかなんて知らないし。子育てなんてめんどくさいもの。託児所に金だけ払って後は放置よ」

「そうですか、では失礼します」

 

 ジャージの女の言葉からは少し苛立ちを感じられ、スーツの女はそそくさと立ち去って行く。

 

「……あの子好きじゃないのよね。旦那に似てるから。まるで生写しってぐらいに」

 

 誰が聞いてるわけでもない独り言を呟き、タバコの吸い殻を地面に投げ捨て、ジャージの女も路地裏から去った。

 

 

 

 

「えっと、あなたが女神様……なのですか?」

「そうだよ!」

 

 領主の少女はネプテューヌに対して、筆舌に尽くし難い表情を向けていた。

 大国の守護女神が直々に自分に会いに来ると伝えられ、緊張して身構えていたのだが、いざやって来た女神は自分よりも幼い少女の見た目をしていたからだ。

 

「も、申し訳ありません。その、女神様をお目にかかるのは初めてでして……まさかそのような幼い見た目だとは……」

「あはは、よく言われる」

「しかし、女神様直々にここに来たということは、この国を渡せと言いに来たのですよね? しかしこの国は、私がお父様から託され、先祖代々受け継がれてきたものです。たとえ女神様が相手でも、ここを譲るわけにはいきせん」

「うん。いいよ」

「……え?」

 

 想定とは真逆だったネプテューヌの反応に、領主は目を丸くした。

 

「元々そんな気はないよ。小さくても、ここはあなたの国だもん。でも、あなたを消してでもこの領地を手に入れたいって人が沢山いることはわかってるよね?」

「はい。しかし私の意志はわかりません」

「だから、同盟を結ぼう!」

「同盟……?」

「プラネテューヌとあなたの領地で同盟を結べば、誰もあなたにもあなたの国にも手出しができなくなる。プラネテューヌごと敵に回すことになるからね。いーすん……ウチの教祖が、同盟の手続きが全部終わるまで三日かかるっていうから、その間はわたしが君を守るよ」

「いいんですか……? あ、ありがとうございます!」

「国のトップって大変だよね。いちいち昔と比べられたりとかさ。私もよく、昔の女神様の方が良かったー、とか言われるもん」

「……女神様もそうなのですか?」

「そうだよ。そしてやっぱりあなたもそうなんだね」

「はい。お父様が生きていればという領民も多くいます。しかし、そんな領民たちも大切な人たちなのです」

「うんうん。わかるよ、その気持ち」

 

 ネプテューヌは持ち前のコミュ力で、即座に領主の心を開いて仲良くなることができた。

 

「…………!」

 

 そんな二人が楽しそうに会話を弾ませていると、急にネプテューヌが何かに気づいた様子で、顔つきが少し険しくなった。

 ネプテューヌが、秘密裏に領主の屋敷に展開していたイストワール特製の簡易結界が何者かに破壊されたことを感知したのだ。

 

「女神様? どうかしましたか?」

「いや、ちょっとトイレ」

「出て左側の方にあります」

「ありがとー!」

 

 ネプテューヌは結界が破壊された方向へ駆け出して行った。

 

「あら女神様、左と言いましたのに、右に出て行ったわ」

 

 

 

 

 結界を突破した侵入者の男は、余程自分の腕に自信があるのか、屋敷の正面玄関から堂々と入って来ていた。

 

「俺が一番乗りだな! さぁて! ぶち殺しに来たぜぇ? 領主のお嬢ちゃ〜…………あん?」

 

 男は、自分と同じように堂々と正面から歩いて来たネプテューヌに対し、不満そうな声を漏らす。

 

「あなた、何者?」

「名乗るほどの者じゃねえよ。一介のハンターさ。てか、マジで女神が護衛してんだな」

 

 ネプテューヌはその言葉を聞き、眉を顰めた。

 自分が領主の護衛をすると決まったのはついさっきのことであり、見ず知らずのハンターが知っているわけがないからだ。

 

「……それ、誰から聞いたの?」

「誰からって……あの領主のお嬢ちゃんには懸賞金がかけられてんだ。ネットで調べりゃすぐ情報が出てくるぜ? 五千万だ五千万。そんだけありゃ、ちまちまとハンターなんてやらなくてもいいってな」

 

 ハンターの男は、背負っていた大剣を両手に持ち換え、ネプテューヌに襲いかかる。

 

「女神だろうがなんだろうが、俺の稼ぎを邪魔するやつには消えてもらうぜ‼︎」

 

 

 

 

 ハンターの男を数秒程度で撃破したネプテューヌは、領主の元へ戻った。

 

「あ、女神様おかえりなさい。トイレは左の方でしたのよ?」

「あー……ごめんトイレってのは嘘」

「え?」

「思ったより深刻な事態になってたから、誤魔化さずに言うね」

「……はい」

「今君には懸賞金がかけられているんだ。今君を狙ってきた人はわたしが追い払ったけど、多分これからもっともっと君を狙う人が来ると思う」

「申し訳ありません……私のせいで女神様まで危険な目に……」

 

 領主は、強気に振る舞っているが、命を狙われ続けるという恐怖が抑えきれず、身体の震えに出てしまっていた。

 

「君のせいじゃないよ。君のことは絶対にわたしが守るから、わたしから離れないで」

 

 言いながらネプテューヌは、震える領主を優しく抱きしめる。

 

「もう大丈夫です。ありがとう女神様」

「どういたしまして! さて、君の情報が出回ってることについて、ちょっと調べてもらおうかな」

 

 ネプテューヌは携帯端末を起動し、イストワールに通話をかける。

 

「もしもし、いーすん? あの子に懸賞金がかけられてるらしいんだ。どんな感じか調べてみてくれない?」

『こちらで既に確信しています。丁度今こちらから連絡しようと思っていたところです。ネプテューヌさんの端末にメールでサイトのURLを送りますね』

「ありがとう。助かるよ」

 

 ネプテューヌが携帯端末に送られたURLを開くと、そこには領主の画像と、

 

『懸賞金 50000000credit あと68:45』

 

 というメッセージが表示されていた。

 

「このサイト作った人の特定ってできる?」

『それが……特定しても、既に使われていないアドレスでして……』

「まぁそうだよね。足がつかないようにするに決まってるか。あと68時間……タイマーは72時間から作動してるようだから、丸三日ってことかな」

『おそらく、全ての手続きが完了し、プラネテューヌとの同盟が結ばれる時間まで、ということでしょう』

「そっか。とりあえずあと68時間。気合入れて守り切るもんねー!」

 

 

 

 

「やっぱり、そこらへんのザコじゃ女神に手も足も出ないわねぇ」

『いきなりインターネットにサイトを作れと要求された時は少し驚きましたが、まさか、あなたが領主に懸賞金をかけるなんて思いもしませんでしたよ』

「これで三日間、懸賞金に釣られたザコどもが絶え間なくお姫様を狙う。おかげで、私は一切手を下さすに女神を疲弊させれるわけ」

 

 ジャージの女は双眼鏡を片手に、先程のネプテューヌの戦いを遠くの高台から眺めながら、携帯端末の通話越しに領主暗殺計画の一部を語る。

 

『しかし、誰かがあの娘を殺してしまったらどうするのです? 誰でもできる簡単な任務だとわかれば、クライアントも支払いを躊躇すると思いますが。加えて五千万という報酬金、あなたに払えるんですか?』

「そこは大丈夫よ。女神が護衛してるターゲットを抹殺するには、まず女神を倒すなりしないといけないわけだし、金に釣られるようなザコどもじゃ女神に勝てるわけなんてないわ」

『……では、あなたなら?』

「さぁ、どうでしょうね? とりあえず、私は女神とターゲットの様子見を継続する。そっちも色々頼むわね。それじゃ」

『はい』

 

 ジャージの女は通話を切り、サンドイッチを頬張りながら、ネプテューヌたちを監視し続ける。

 

「さて、どこまでのもんか見せてもらおうじゃない。女神サマ?」

 





 謎のジャージの女……一体誰のお母さんなんだ……?


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後編


 前半より少し長くなってしまいました。こういうのはバランスが大事だというのに。



 

 

 ネプテューヌが領主を襲う者たちを危なげなく退け続け、制限時間の72時間が経過しようとしていた。

 

「ネプテューヌさん、お菓子と紅茶の準備ができましたよ」

「わーい! ありがとー!」

「いいえ。ネプテューヌさんにしてもらってることに比べれば些細なことですもの」

 

 最初は命を狙われる恐怖で体が震えていた領主も、何度も襲われるうちに次第に慣れていき、戦いを終えたネプテューヌのためにお茶菓子を用意するようにすらなっていた。

 また、心の距離もすっかり縮まり、『女神様』から『ネプテューヌさん』と呼ぶようになっていた。

 

「ネプテューヌさん、この三日間休んでいないけれど、大丈夫ですか? 少しお休みになられた方が……」

「大丈夫大丈夫。わたし女神だから。それに、君の懸賞金の制限時間ももう過ぎるし、休むのは終わってからにするよ。あと三十分切ってるもん」

「わかりました……ネプテューヌさんだけに負担を押し付けてしまって……私からあなたに返せるものなんて何もないのに……」

「何もなくないよ。君の想いがわたしの力になるから、決して何もなくなんてない」

 

 それは気休めではなく、真実だった。

 国は違えど、ネプテューヌを想う心がシェアとなり、ネプテューヌの力となっていた。

 

「……4、3、2、1、よし! 制限時間が過ぎた! これで君への懸賞金が取り下げられたから、もう安心だね!」

 

 そして、懸賞金のサイトに表示されたメッセージの制限時間は『00:00』となり、その数秒後サイトそのものも削除された。

 

「ネプテューヌさん、本当に……ほんとうにありがとうございました」

「とりあえず、同盟の手続きが終わって最後には君のサインがいるから、一緒にプラネテューヌまで来て欲しいんだよね。ついでに観光でもしていきなよ。わたしが案内するからさ」

「はい! 是非!」

 

 二人は屋敷からプラネテューヌへ向かうために外に出る。

 三日間、護衛のために屋敷から外に出ることはなかった二人にとって、陽の光は普段より明るく感じられた。

 

「その、ネプテューヌさんに最後のお願いがあるんです……」

「最後だなんて言わないで、もっとお願いしてくれてもいいよ?」

「えっと、じゃあ、お願いを言いますね……!」

 

 領主は緊張しているからか、少しだけネプテューヌから離れる。

 

「私……幼い頃から領主になるために教育を受けてきて、友達なんていなかったんです。だからネプテューヌさん、わ……私と……友達になってくれませんか⁉︎」

 

 その言葉を聞いたネプテューヌはニッコリと笑う。

 

「わたしたち、もう友達でしょ?」

 

 そして、ネプテューヌの言葉を聞き、領主もとびきりの笑顔を浮かべた。

 

「……っ、はい! これからもよろしくお願いし」

 

 領主が言い終わる前に、銃声が鳴った。

 

「……え?」

 

 どしゃり、とその場に倒れ込む領主。

 弾丸は見事に頭を貫いており、即死だった。

 

「はい、ターゲット殺害。遺体の回収もしなきゃいけないから、ほらどいたどいた」

 

 そして、軽薄な口調から放たれた言葉とともに、片手に拳銃を持ったジャージの女が物陰から現れた。

 

「どう……して……」

「どうしてって、その娘を殺してお金をもらう、それが私の仕事だからよ」

「懸賞金は取り下げられたんだよ……? もうこの子を殺す意味なんてなかったのに……!」

「あー、それ私が取り下げたの」

 

 状況が飲み込みきれず立ち尽くすネプテューヌを気にかけることもなく、女は話を続ける。

 

「あんたの護衛は完璧だったわ。付け入る隙なんて今の今まで存在しなかったぐらいにね。だから、偽物の制限時間を設定することで、あんたに錯覚させたのよ。72時間過ぎれば狙われることはなくなるってね。多分制限時間設定しなかったら、あんたは今みたいに気を抜いて自分のカバーできる範囲から娘を出すこともしなかったろうから、今の銃弾も防がれてたでしょうね」

 

 ヘラヘラと笑いながら話し続ける女に対し、状況を理解したネプテューヌの怒りがどんどん湧き上がる。

 自分の友人であった領主を殺した目の前の女への怒り、女の言うとおり油断した自分の迂闊さへの怒り、そして一人の少女に向けられたいくつもの悪意への怒り。

 ネプテューヌは拳を震わしながら握りしめ、無意識に歯軋りまで鳴らしていた。

 

「一番嫌なパターンは、どっかの別の誰かに領主に殺されることだったんだけど、まぁそこはあんたを守護女神として信用してたからね。私の獲物を守り抜いてくれてありがと。さ、わかったならそこをどいてくれる? さっきも言ったけど、遺体引き渡すまでが仕事なのよね」

「……もういいよ。喋らなくて……っ!」

「……ん?」

「あなただけは……絶対に許さない‼︎」

 

 ネプテューヌの怒りは頂点に達し、自身のシェアエネルギーを解き放ち、パープルハートへと女神化した。

 

「まぁ、どくわけない、か」

「随分と余裕ね……!」

「そうね、あんたよりは余裕よ。ここ数日、睡眠どころかろくに休息も取ってないんでしょ? 今変身して立ってるのもギリギリなぐらい疲れてんのなんて見ればわかるわ」

「それでも、人間如きに負けると思う?」

「そういうセリフ吐く時点で余裕ないって言ってるようなも……」

 

 女が言い終わる前に、パープルハートは前進し、その首に刀を伸ばす。

 

「……おー怖々、殺意全開じゃない」

 

 しかし、その刀は空を斬る。

 

(速い、避けられた……!)

 

 女は拳銃から鉛弾を撃ち出しながら、ひたすらパープルハートとの距離を取る。

 しかし、銃弾がパープルハートを捉えることはなく、その全てが斬り落とされる。

 

(ん〜、やっぱり女神相手じゃ、こんな玩具じゃ役に立つわけないわね)

 

「こっちの方がいい、か」

 

 女が両腕を前に突き出すと、そこから爆炎が吹き出した。

 

「……っ」

 

 熱で怯んだパープルハートに、追撃と言わんばかりに炎の玉を撃ち出す。

 

(この炎……魔力で作り出されているもの。これほどの炎魔法の使い手……そうはいない。けど、魔法を使う相手なら、近づけば……!)

 

 パープルハートは地面を蹴って飛び上がり、プロセッサユニットで空を駆ける。

 

(飛ばれんのまぁまぁだるいわね。けど、飛び道具ならこっちの方があるし、問題ないけど)

 

 この頃のネプテューヌはまだ『32式エクスブレイド』や『デルタスラッシュ』を習得しておらず、遠距離攻撃ができないため、敵にダメージを与える為には近づく必要がある。

 撃ち出される炎弾を旋回しながら回避し、そのまま接近する。

 女は魔法陣から剣を取り出し、パープルハートの刀を受ける。

 反射神経に加えて予測、人の身で修羅場を潜り抜けて来た者が得られる強さ。

 膂力や機動力では自身が劣る守護女神を相手に、互角に剣をぶつけ合う。

 

(この女……近接もいける口なのね……っ!)

 

 女は剣に魔力の炎を纏わせ、振り回すことで斬撃だけでなく炎の渦を発生させ、ほんの少しずつでも確実にネプテューヌの体力を削っていく。

 

(魔法と剣技を巧く織り交ぜている……こんなこと、私にすらできないわ……)

 

 自らが使う『ブレイズブレイク』をも凌駕しているその見事な手捌きに、敵でありながらネプテューヌは感心していた。

 

(……けど、炎と炎の中に、僅かに隙間がある!)

 

 感心しながらも、敵の様子を伺い、その隙を看破したパープルハートは、一瞬発生した炎の隙間を狙い、一気に距離を詰める。

 

「はぁぁぁっ! 『クリティカルエッジ』!」

 

 パープルハートは多少のダメージを覚悟し、炎の隙間から突進、その勢いを殺さず、技を繰り出す。

 

「……っ、やばっ」

 

 女は新たな短剣を取り出して迎撃しようとするが、女神の渾身のスキルの前では人間の抵抗など無意味。そのまま『クリティカルエッジ』が炸裂し、勝敗が決する。

 

「……なんて、この時を待ってたのよねぇっ!」

 

 ……かのように思われたが、パープルハートは急な目眩に襲われ、視界が歪み『クリティカルエッジ』が不発となった。

 

「この刃、あんたら女神には良く効くんだけど、何せ脆いのよね。純度の低いアンチクリスタルは、耐久性が大きく下がるから」

 

 アンチクリスタル。

 放たれる負のエネルギーが、女神の力の源であるシェアエネルギーの供給を妨げ、女神の力を奪う悪魔のアイテム。

 女は切り札であるアンチクリスタルが刃に含まれた短剣をこの時まで隠していた。

 確実にトドメを刺す際の布石にするために。

 

「これ……は……?」

 

 万全のパープルハートならば、この程度の量のアンチクリスタルには行動不能になるほどの大きな影響を受けなかっただろう。しかし、今のパープルハートは不眠不休での度重なる戦闘により最悪のコンディションであり、少量のアンチクリスタルでも多大な影響を受けてしまう。

 そして、女はよろけたパープルハートの顔面に、容赦なく拳を叩き込んだ。

 

「がっ……」

「私がノコノコとあんたの前に現れた理由わかる? 私はあんたと"良い勝負"がしたいわけじゃないの」

 

 パープルハートが刀を握る腕を動かそうとする前に、腕に側面から思い切り女の膝蹴りが叩き込まれると、骨が折れた鈍い音が鳴る。

 そして、痛みで一瞬動きが鈍った隙を狙われ、脇腹に短剣を刺し込まれる。

 

「ぐぅ……っ!」

 

 なんとか折られていないもう片方の腕に刀を持ち替え振るうも、女が屈んで体勢を低くしたことにより避けられる。

 

「このタイミングで仕掛ければあんたに勝てる、その確信があったってこと。勝てる"かも"じゃなくて"勝てる"なのよ」

 

 そのまま足に何度も短剣を突き刺され、体勢を大きく崩したところに、頭部を思い切り蹴り飛ばされた。

 

「終わりね」

 

 蹴飛ばされ、地面を転がされたパープルハートは、意識を失い、変身が解除された。

 

「人なら死ぬけど、女神なら死なない程度にしといたわ。女神殺っちゃったら、依頼人に何言われるか分からないし、報酬金がおじゃんになっちゃうもの」

 

 女は、念のためネプテューヌが死なないように少量の回復アイテムを投げつけてから、領主の遺体を回収してその場を去って行った。

 

 

 

 

「こちらが報酬金の二億四千万の小切手です」

 

 遺体を指定された場所に運搬し、任務を完遂した女は、数時間後に例の仲介人から報酬を受け取っていた。

 

「おっ、上乗せされてんじゃん。どうしたの?」

「あなたの働きぶりが評価されたからでしょうね。連中は『正直ダメ元で依頼をしたが、本当に完遂するとは思わなかった』と嬉しそうに言ってましたよ」

「ダメ元、ね。まぁ、女神の護衛掻い潜ってターゲットを殺すなんて普通はできないもの。てか、連中これからどうするわけ? 正直今回の件、すぐ教会にバレてお縄につくでしょ」

「その話も少ししましたけど、彼らは『目的である領主の排除をした以上、例の小国はプラネテューヌに併合されることになる。そうなった後に自分たちが教会や女神に裁かれるならそれは本望』って感じなことも言ってました。つまるところ彼らは狂信者なので、国の発展に繋がればなんでもいいんじゃないですかね」

「はっ、イかれ野郎どもとはこれ以上関わりたくないものね」

「全くです」

 

 仕事を終わらせた途端、依頼主への文句と悪口で盛り上がる二人。

 

「あんたはこれからどうすんの?」

「そうですねぇ……おそらく教祖イストワールは私が今回の件の仲介人だったことに気づくでしょうし、これからは他の国で仕事しましょうかね。北か南か、それとも東か」

「無駄に世渡りが上手いから、どこ言ってもやってけるでしょ、あんたは」

「それが取り柄ですので。しかし、教会関係の仕事は当分の間やめておこうと思います」

「それがいいわ。あんたには無事でいてもらわないと、こっちに仕事回って来なくなるし。別の仲介人探すの面倒だもん」

「それはこちらもです。あなたと仕事をすると、リスクもありますが大きく稼げますし」

「そ。んじゃ、ひとまずは解散ってことで。おつかれ」

「はい。お疲れ様でした」

 

 仲介人の女は街の中に消えていった。おそらく、先程も言ったとおりプラネテューヌから離れるのだろう。

 ジャージの女はその背中を見送ることもしない。そもそもそういった仲ではないからだ。仕事での付き合いは長いが、お互いの人生には関与しない、それが彼女たちの暗黙のルールでもあった。

 

(私も女神に顔見られたし、もうプラネテューヌにはいられないわねぇ。しばらくは派手に仕事なんてできなそうかな。当分仕事しなくてもいいほどの金はあるし、暇だからあの子を連れ帰って育てて…………いや、私が子育てなんて柄じゃない、か)

 

 自身の今後のことについて考えていると、背後から異様な気配を感じ取った。

 

「……あ?」

 

 言いながらゆっくり振り返ると、そこにはネプテューヌが立っていた。

 身体の所々から血を滴らせながらも、女の居場所を突き止め、追ってきたのだ。

 

(……あえて殺さずにいたとはいえ、たった数時間で動けるようになるとは思わなかったわ。しかも、折ったはずの腕がもう治ってやがるし)

 

「お礼参りだなんて、女神サマも怖いことするわね」

 

 女は平静を装いながら、ネプテューヌに嫌味を吐き捨てる。

 

「負けたままじゃ終われないんだよね。わたし、主人公だから」

 

 語るネプテューヌの表情からは、領主を殺されたときのような怒りや憎悪は感じられず、逆に悍ましいほど澄んでいた。

 これが先ほど女が感じた異様な気配の正体である。

 

「……もう仕事は終わったし、報酬金も受け取った。あんたを生かしとかなきゃいけない理由はもうどこにもない。そんなに死にたきゃ、今度こそ殺してあげるわよ」

 

 女には、目の前のネプテューヌの意図が理解できずにいた。まだ、領主の仇打ちで自分を倒しに来たのならば納得がいく。しかし、先ほどから述べているとおり、ネプテューヌからはそういった感情が一切確認できない。

 だからこそ、ネプテューヌへの不快感をそのまま態度に示した。

 

「わたしは死なないよ。けど、戦ってくれるならお願いしたいかな」

 

 言いながら、ネプテューヌは再度の女神化を果たす。

 プロセッサユニットの強度は、装備している守護女神のコンディションによって左右される。

 今のネプテューヌは、少し休んで回復したとしてもまだまだ満身創痍。それに比例するようにプロセッサユニットもボロボロであり、所々から軋む音さえ鳴っていた。

 

(……やっぱり、折った筈の腕は治ってるし、刺し傷もある程度は塞がっているわね。けど、疲労そのものがなくなってるわけじゃないのは見れば分かる。それに、アンチクリスタルのタネは割れてるけど、そもそもアンチクリスタルはタネが割れてるぐらいでどうにかなるものじゃないし、まだ効く。だから知られてるとはいえ、アンチクリスタルによる優位性は保たれたまま)

 

 女は、そんなパープルハートを観察しながら、どう動くかを考える。

 

(……うん。問題無いわ。充分殺せる)

 

 出した答えは、戦うこと。

 しかし、一言で表すならば、らしくなかった。

 本来この女には自分の実力や勝敗に対するプライドなど存在しない。普段ならば、適当に戦うフリをして隙ができたら逃げていただろう。

 もしかすると、パープルハートに充てられてしまっていたのかもしれない。パープルハートがただ自分を倒そうとするように、女も目の前の敵をこの手で叩き潰したくなっていたのだ。

 

「行くわよ」

「ええ、来なさいよ」

 

 そのやりとりが戦闘の合図となり、パープルハートが前進し、刀を振るう。

 女も魔法で異空間に収納していた剣を顕現させ、斬撃を受ける。

 女神と人間、本来なら互角であるわけないが、疲労が溜まっているパープルハートと、ほぼ無傷で万全な女とで、互角のぶつかり合いとなっていた。

 切り結ぶ中、パープルハートの脳裏に、一瞬領主の顔が浮かぶ。

 

(ごめんね……あなたのことを守れなくて。けどそれよりも謝らなきゃいけないことは、あなたが殺されたことに対してもう怒ってないこと……)

 

 そして、次は刃を交える相手に意識に向ける。

 

(……正直、あなたにももう怒ってない。けど、私が女神であるために、私が私であるために、あなたは倒さなくちゃいけないから)

 

 パープルハートの頭にあるのは、一度敗北した相手にリベンジを果たすという、ただそれだけの純真たる戦意。

 

(傷は治り切ってないし、疲れも抜け切ってない。それなのに身体が軽くて、思うがままに動ける気さえしてくる。だから、今までは朧げなイメージしかなかった私の必殺技が、今ならできる気がする……いや、絶対にできる)

 

 パープルハートは澄んでいく思考の中、まるで世界そのものに祝福されているかのような全能感を覚えていた。

 直前の敗北は、パープルハートの成長にとって大きな糧となっていたのだ。

 

(……っ! 何か来る……!)

 

 パープルハートからシェアエネルギーの高まりを感知した女は、アンチクリスタルの短剣を構える。

 

「『ネプテューンブレイク』」

 

 その直後、目の止まらぬ動きで敵を斬り刻み、シェアエネルギーを大量に含んだ斬撃でトドメを刺す、ネプテューヌの必殺技『ネプテューンブレイク』が繰り出された。

 今この瞬間までは使用できなかった必殺技を習得したこと、それはつまりパープルハートが今ここに完全なる守護女神への覚醒を果たしたことを意味していた。

 

「……ぐっ、ああああぁぁぁぁッ‼︎」

 

 完全な覚醒を果たした守護女神の必殺技の前に、少量のアンチクリスタルなどは機能しなかった。

 そして、守護女神の渾身の一撃をその身に受けた人間がどうなるかなど、言うまでもなかった。

 

「か……はっ……」

 

 逆を言えば、人間の身でありながら守護女神が手加減できないほどの相手だった、ということ。

 そして、皮肉なことに、この女がネプテューヌを追い詰めすぎたからこそ、ネプテューヌは"完成"してしまったのだ。

 

「……なるほど。これが守護女神……か」

 

 女は薄れ行く意識の中、自身が捨てたはずの娘のことを思い出してきた。

 

「精々……長生きしなさいよ、女神サマ」

 

(……あの子の……未来のために……ね)

 

「言われるまでもないわ」

「そう……」

「……さようなら」

「ええ、さよなら……」

 

 女は小さく笑う。

 娘が生きていくプラネテューヌの未来が、覚醒したこの女神に護られるなら安泰であろうことに。

 そして、食い扶持を雑に稼ぐだけで、生きる理想も目標もなかった自分にとって、今この瞬間こそが死に場所にうってつけだったことに。

 

(今逝くわ……あなた……)

 

 左手にはめられた指輪を眺めながら、女はその場に崩れ落ち、もう動くことはなかった。

 

 

 

 

 かの事件から数週間後、プラネテューヌ自体は何事もなく平穏だった。

 ネプテューヌは護衛に失敗し、領主は死亡したが、その情報はプラネテューヌの国民にまで知れ渡ることはなかったのだ。

 むしろ、ラステイション領域近くの小国をプラネテューヌに併合できたことに対して、国民たちから多くの好感を得ることができ、シェアは大きく上昇した。

 たとえそれが、ネプテューヌの意に反していた結果だったとしても。

 

「……ねぇ、いーすん」

「どうしました?」

「候補生、わたしの妹って生まれるのかな?」

「ここ最近のシェアの上昇率からすると、そう遠くない内に生まれる可能性が高いですね」

「そっか……欲しいなぁ、妹。可愛いからってだけじゃなくてさ。わたしだけじゃみんなを守りきれないから、わたしが守りきれない人をわたしの代わりに守って欲しいな、って」

 

 その約一週間後のことであった。

 プラネテューヌに新たな女神『ネプギア』が誕生したのは。

 

 

 

 

「…………子、ネプ子!」

「ねぷぅ⁉︎」

 

 時は現在に戻り、居眠りをしていたネプテューヌはアイエフの怒号によって起こされた。

 

「『ねぷぅ⁉︎』じゃないわよ。仕事の途中に眠りこけて」

「ごめんなさいねぷ。でもちゃんと終わらせたねぷ。これでいーすんに怒られなくてすむねぷねぇ」

「なにその謝る気皆無な語尾」

「あれ、あいちゃんだけ? こんぱは?」

「実家に顔出してるんだって」

「実家……あいちゃんは実家帰ったりとかしないの?」

「私は帰る実家がないし」

「あ、ごめん……」

「別に気にしなくていいわよ。そういう育ちだからこうしてプラネテューヌ教会の諜報員してるわけだし。割と気に入ってるのよ、今の生活」

「あいちゃん……!」

「ちょっ、ネプ子! いきなり抱きつくな、こら!」

 

 スキンシップを拒否されたネプテューヌは、口を尖らせながらアイエフに訊ねる。

 

「ネプギアもいないけど、どこ行ったか知ってる?」

「修行だって。ネプ子に負けたのが悔しかったみたいね」

「そっか」

 

 ネプテューヌはネプギアが生まれる直前に願ったことを思い出し、小さく笑う。

 妹が強くなればなるほど自分と一緒に護れるものが増えていく、と。

 

「……何笑ってるのよ?」

「んー? 別に、なんでもないよ。じゃああいちゃんと模擬戦しよっかなぁ」

「別に良いけど、私とやってもつまらないわよ? 私人間だし」

「あんま関係ないと思うけどな。わたし昔人間に負けたことあるから」

「本当? ネプ子の言うことだからあんまり信用できないけど」

「酷い!」

「冗談よ。さ、行きましょ」

「うん!」

 

 ネプテューヌとアイエフは冗談を言い合い笑い合いなから教会の修練場へ向かって行った。

 

 

 

 

 

        -夢幻泡影 完-

 

 

 

 







・聞かれてないけど勝手にQ&Aコーナー

この作品に出てきたオリキャラ周りの独自設定をQ&A方式で勝手に解説するコーナーだゾ


Q. ネプ子はアイエフが例の女(ママエフ)の娘なのは知ってるの?

A. 知りません。アイエフは父親似で母親にはほとんど似ていないため、ネプテューヌは気づいていません。もし気づいた場合はアイエフに正直に言いますが、アイエフ的には自分を捨てた母親よりネプテューヌの方が大切なので気にしないでしょう。


Q. 既に亡くなっていたアイエフの父親(パパエフ)はどんな人だったの?

A. 朗らかで超が付くほどの善人でした。あまりにもの善人ぶりからママエフもすっかり毒気を抜かれ、パパエフが生きていた頃はあのような仕事をせずに普通の主婦をしていました。しかし、二人の間にアイエフが生まれて間もなく病気で亡くなってしまい、旦那への愛情を拗らせ全てがどうでもよくなったママエフはアイエフを捨てて裏社会の仕事人に逆戻りしました。ちなみに、作中でママエフが言っていたり、直前のQ&Aで述べられているとおり、容姿はガチでアイエフに似ています。


Q. ママエフはどうやってアンチクリスタルを入手したの?

A. ダンジョンなどで偶然見つけたり、裏社会で少量ながら流通していたものを購入したりして、少しずつ集めて短剣に加工しました。覚醒したネプテューヌには大した効果はなかったものの、売れば数千万はくだらない逸品です。ちなみに、短剣はその後ネプテューヌとイストワールによって破棄されました。


Q. 仲介人の女はあの後どうなったの?

A. あの後イストワールにその正体がバレましたが、ママエフの言うとおり世渡りが上手いので、今でもプラネテューヌではないどこかで同じような仕事をしています。また、あわよくば成長したアイエフを自分とママエフの関係のような仕事仲間にしようと思っていましたが、アイエフがプラネテューヌ教会の諜報員になったことを知ると諦めました。


 終わりです。お付き合いいただきありがとうございました。



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