ストライク・ザ・ディメンション (青は澄んでいる)
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聖者の右腕編
門矢 零


魔族特区(まぞくとっく)

本来であればおとぎ話の存在である、獣人・精霊・半妖半魔・吸血鬼などの魔族の存在が公に認められている都市のことである。

 

日本の領海に位置する海の真ん中にもそれは存在する。

 

その名を絃神島(いとがみじま)

 

その島では、現在夜の街で本来であれば人が居ないはずの夜の森で一人の男が呼吸を荒げながら逃げていた。

 

その男は体をまるでマグマに包まれたかのような姿

”マグマドーパント”に姿を変え何かから逃げていた。

 

「ハアッ、ハッ…な、何なんだよアイツは!?」

 

男は体中に手傷を負っていた。

男は先ほどまで、戦闘を行っていたのだが全く歯が立たずこうして逃げに徹しているわけだ。

 

「ま、まあ流石に此処までくれば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げられるってか?」!?」

 

男は一安心したと同時に突然聞こえた声に目を見開き体を強張らせた。それは恐らく高校生くらいの少年の声である。

男は先ほどまでこの声の主と戦って敵わなくて今逃げているのだ。

 

そして声の主は男の目の前の木々の間を歩いて現れた。

 

ソレは奇妙な鎧を身に着けていた。

マゼンタを主体としたカラーリング。胸の装甲には『十』や『X』を思わせる意匠が施されており頭部はバーコードの様なものが刺さって目や額に当たる部分には緑の複眼と黄色のポインターが備わっていた。

そして目を引くのがソレの腹部より少し下の部分に巻き付けられたマゼンタと黒のカラーリングで、まるでカメラの様な見た目で中央の赤い秘石「トリックスター」の周りに19ものマーク「ライダーズクレスト」が施されているバックル

「ネオディケイドライバー」である。

その存在は右手にまるで本から剣が生えたような見た目の武器「ライドブッカー ソードモード」を構えていた。

 

「な、なんでだよ…なんで俺がこんな目に…」

 

「そりゃあお前、ガイアメモリ使って殺人働こうとしたんだから当然だろ。まあ使わなくてもアウトだけどな」

 

「あ、あれはアイツらが悪いんだよ!今まで会社の為に働いていたってのに急にクビにしやがって!」

 

「まあ確かに何にも知らされずにクビにさせられるのは理不尽だわな。そこは同情してやるよ。

だけどな、いくら憎いからってアンタの選んだ方法を肯定することは出来ない」

 

鎧の男、仮面ライダーディケイドは静かにこう告げた。

その返答にマグマドーパントは激しい怒りを覚え声を荒げた。

 

「うるせぇ!邪魔すんならテメェから焼き殺してやるっ!」

 

マグマドーパントはそういうと手元に火球を作り出し鎧の男に放った。

 

それをディケイドはソードモードの斬撃で難なく切り裂いた。

 

「なっ!?」

 

「はぁ仕方ない。山崎 隆(やまざきたかし)、ガイアメモリの不法所持及び殺人予備の罪でお前を拘束する」

 

ディケイドはソードモードにしたライドブッカーでマグマドーパントに切りかかった。

 

「ハァッ!」

 

「グゥオッ!」

 

ディケイドはマグマドーパントを何度も切りつけそのたびに火花を散らし数度目の大振りの斬撃でマグマドーパントはたまらず少し後ろへと吹き飛ばされた。

 

「グッ…」

 

マグマドーパントが倒れた隙にディケイドはライドブッカーから1枚の黄色のバーコードにディケイドのライダーズクレストが描かれたカード「ファイナルアタックライド ディケイド」を取り出した。

 

「これで、終わりだ」

 

ディケイドはそのカードを開いた状態のバックルに装填しサイドハンドルを片手で閉じた。

 

FINAL ATTACKRAIDE

De・De・De・DECADE

 

するとディケイドとマグマドーパントの間に数枚のカードの壁が並べられて展開された。

 

「ハァッ!」

 

ディケイドはその壁を貫くように走り抜けると、ライドブッカーの刀身がマゼンタ色の光を纏った。

そして斬撃技「ディメンションスラッシュ」をマグマドーパントに喰らわせた。

 

「フッ!ハァッ!」

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

斬撃を数発喰らったマグマドーパントは火花を散らし爆発四散した。

 

 

「ぐあっ…ぐぅ…」

 

マグマドーパントは地面に倒れると、その姿は50~60代ほどの髭を生やした男性の姿になり気絶した。

男性の近くには男性から排出されたガイアメモリ「マグマメモリ」が砕け散った状態で煙を上げていた。

 

「ふぅ、全くこれで何本目だよ」

 

「全くだな」

 

ディケイドが呆れていると突如一人の女性の声が聞こえてきた。

ディケイドがそちらを振り向くと、小学生くらいの見た目で黒いゴスロリの服に日傘を閉じた状態で手にぶら下げた少女がいた。

 

「”那月”さん」

 

「ご苦労だったな門矢、にしてもまた”財団X”によるメモリ購入者か」

 

「ええ。しかも最近になってゾディアーツスイッチの方もこっちの世界に流通しているみたいですしね」

 

「まあなんにしてももう少しで特区警備隊(アイランド・ガード)が到着する。現場の後処理はしておくから、お前はもう帰宅しろ。良い夏休みをな」

 

「そうですか?それじゃあお言葉に甘えて、お疲れさまでした」

 

「ああ、お疲れ」

 

そんな挨拶を交わすとディケイドの後ろに灰色のオーロラ「オーロラカーテン」が出現し、ディケイドはそのオーロラを通るとディケイドの姿は消えオーロラは消えた。

そんな様子を見送った後少女、南宮那月は倒れている男と傍で砕け散っているマグマメモリをみてふんと息を吐いた。

 

「こんなメモリやスイッチ1つで人間を怪物に変えてしまうとは、仮面ライダーとやらがいる世界とはどんな魔境だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイランド・サウスの703号室

そこにディケイドは立っていた。彼はベルトのバックルを開きカードを引き抜くと体の色が抜け鎧が数人の巨像を描き霧散した。

そこにはネオディケイドライバーを片手に持った、上下黒の服を着た高校生くらいの少年

 

この名前は彼にとっての恩人が名前を付け司自身もそれを了承してついた名前だ。

 

「それにしても魔族がらみだけでもきついのにそこに財団Xか」

 

司は今回の事件について頭を悩ませていた。

 

「この分だとセルメダルなども出てきそうだな。スゥはぁ~」

 

司は深くため息を吐き手に持った1枚のカード「カメンライド ディケイド」に視線を落とした。

 

「まっ、それでも俺はやりますよ”士”さん。皆さん。これは俺が選んだ事ですからね」

 

この場にいない自分の恩人に向けて、零は強く決意を示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうだったでしょうか
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聖者の右腕編Ⅰ

マグマドーパントを倒した翌日、零は自身が住んでいる部屋のベッドで目を覚ました。

 

「ふぁあ…ねっむ」

 

そう言いながら零は今日の予定を思い出していた。

 

(そういえば今日は古城の夏休みの課題手伝うんだっけ)

 

零は今日、友人の終わらない課題を手伝うために本日の昼にファミレスに集合することになっていたのだ。

 

(まだ時間あるし適当に暇つぶしでもするか)

 

零は時間が来るまで朝食をとったりTVを見たりなどして時間をつぶした。

 

 

 

 

 

 

そして約束の時間が近づいてきた。

 

「さてとそろそろ古城のやつ呼びに行くか」

 

零は隣に住んでいる彼の友人を呼ぶために部屋を出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絃神島にあるファミレス。

 

そこのテーブル席に零の他に3人の人影があった。

服の上から白いパーカーを羽織った少年、暁 古城(あかつきこじょう)

金髪の髪に制服を校則ギリギリまで崩した少女、藍羽 浅葱(あいばあさぎ)

茶髪の髪をかき上げヘッドフォンを首にぶら下げた少年、矢瀬 基樹(やぜもとき)

 

そんな彼らの一人、古城はテーブルに頭を付し目の前の課題を力なく見つめる。

 

「あっちぃかったりぃ、なあなんで俺は夏休みギリギリでこんなに課題やらされなきゃなんねえんだ?」

 

「いやいやあんだけ遅刻なり欠席なり堂々と繰り返しておいて、なんではねえだろなんでは」

 

「そもそもお前が日常的にそれを繰り返して積りに積もった結果がこれだ。諦めろ」

 

「いやあれは不可抗力なんだよ。…今の俺の体質だと朝一の授業やテストは辛いって分かってんだろうにあのちびっ子担任は

 

「それって体質の問題?吸血鬼じゃあるまいし」

 

「ッ…だ、だよな…アハハ」

 

 

浅葱の言葉に古城はバツの悪い顔をした。

彼女の言葉は古城にとって思いっきり心当たりのあることだからだ。

 

そんな古城の事情を知っている零は話をそらそうと話題を変えた。

 

「そういえば最近、人間や魔族が怪人になってるって事件が多いよな」

 

「ああ、確かガイアメモリやらアストロスイッチとかっていう変な機械とかの所為だろ?」

 

「ほんと変な話よね、メモリやスイッチ1つで人も魔族も怪物にしちゃうんでしょ?」

 

「おまけにソレを密売している麻薬組織みたいなもんもあるみたいだし物騒な話だよな」

 

「そうよね。でもそれ以上に話題になってるのがこれよ」

 

浅葱は一旦話を区切るとスマホを操作し、その画面を零達に見せた。

そこには、市街地で戦闘を繰り広げているドーパントと零が変身したディケイドが映し出されていた。

 

「このピンクの奴よ、この怪物が現れるとコイツが怪物を倒すみたいね」

 

「しかも、目撃されてんのはそのピンクの奴だけじゃないだろ?」

 

「ええ」

 

浅葱は再びスマホを弄って別の動画を見せてきた。

そこには、バックルはディケイドと同じだが

赤い鎧金の角を持つ戦士

赤い兎青い戦車をモチーフにした戦士

赤い宝石のような仮面で魔法使いを思わせる戦士

の2色の仮面の戦士

の3色に分かれた戦士

宇宙飛行士を思わせる白い戦士

など様々な動画を再生した。

 

「こんな風に複数の姿の奴が目撃されて最初は別人じゃないかって話と、腰のベルトみたいなのが一緒だから同一人物なんじゃないかっていう話もあるみたい」

 

「こうやって見ると随分と派手な奴らだよな。そういえば古城と凪沙ちゃんもこいつらに助けられたんだったよな」

 

「ん?ああ、前に凪沙とコンビニに寄ったら怪人に襲われてよそこに映ってる奴じゃないけど助けてくれたな」

 

「確かその助けてくれた人って顔に「ライダー」って書かれてたんだっけ?」

 

「ああ、それ見たときは結構印象に残ったな」

 

「そういや零は見たことあんのか?」

 

「え?」

 

零は矢瀬の質問に一瞬固まった。

まさか自分ですだなんて馬鹿正直に答えられる訳がないからである。

 

「いや、見たことないかな」

 

零に出来ることは無難に見ていないということである。

そもそも矢瀬には那月同様正体はバレてはいるが古城と浅葱は知らないので、零は矢瀬に心の中で文句を言いながらも誤魔化すことに成功した。

その際に見せたにやけ顔を見て「こいついつか泣かす」と誓ったのは秘密である。

 

「そうなのか」

 

「にしても古城が見たやつの特徴を聞くと、ますます定着するわね「仮面ライダー」って」

 

「まあそうだな」

 

この世界ではディケイドのことを最初は未確認生命体1号と呼ばれていたのだが、ドーパントなどの怪人がそう呼んでた事もあり、仮面ライダーと呼ばれるようになった。

 

「あっ私そろそろバイトだ。じゃあね古城」

 

「そんじゃ俺も、ノートも写させてもらったしな」

 

「えっ!?お前らもう帰るのかよ!」

 

「それじゃあ古城ごちそうさまー」

 

「ごちになりまーす」

 

古城の攻めるような視線を軽く受け流し浅葱と矢瀬はファミレスを後にした。

 

「…れ、零」

 

「はぁ、流石に浅葱の食った分は俺が払うよ。その代わりさっさと課題を済ませろ」

 

「零~ありがとう!」

 

「礼言う暇があるなら手を動かせ」

 

こうして零と古城は、はたして本当に終わるのかどうかわからない課題を前に、憂鬱な気持ちで取り組みを再開したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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聖者の右腕編Ⅱ

 

 

 

 

「ったく浅葱に矢瀬のやつ、本当に食うだけ食って帰りやがって」

 

「まさか浅葱の分だけでここまで払う事になるとはな」

 

零と古城はあの後ファミレスで課題を終え会計を済ませたのだが、浅葱が予想以上に食べていたため高額な出費をすることとなった。

 

「古城、今後は浅葱を課題の手伝いに指名する時はファミレスなど飲食店以外にしておけ。お前の財布の為にもな」

 

「おう、そうする」

 

二人は互いに人生における要注意人物(財布にとって)の上位に藍羽浅葱の名前がリストアップされたのであった。

 

「そういえばさ、さっきの仮面ライダーについてだけどよ、零はどんな奴だと思う?」

 

「?なんだよ急に」

 

「いや、俺と凪沙が昔その仮面ライダーに助けられたって話はしたろ?それでさっき零は見たことないって言ってたからその…」

 

「その恩人が他の人がどう思ってるのか気になるってか?」

 

「ああ、仮面ライダーって殆どが良い噂ばかりだけどそうじゃないやつもいるからさ」

 

「…」

 

古城の言う通り、(仮面ライダーディケイド)に対する噂はその殆どが好意的なものばかりであり世間では『怪人から人々を守るヒーロー』といった認識になっていた。

だが、どの世界にも悪意、あるいは怯えなどの負の感情は存在する。

一部の人間は

 

”本当は怪人を街に出現させているのは仮面ライダー”

 

”ヒーロー気取りの目立ちたがり”

 

”自作自演の偽りのヒーロー”

 

”本当は正義の仮面を被った悪魔”

 

など、仮面ライダーをよく思わない者たちもいる。

勿論そのことは零本人も知っていた。

 

それも無理もないことだ。力のないもの、或いは違う存在は自分とは違う存在に本能的な恐怖を覚える。

 

「勿論ほとんどの奴が根拠もないうわさ話を面白おかしく言っているのは分かってる。けどさ、恩人が悪く言われるのはなんか、気分悪いんだよ」

 

「…(本当にこのお人よしが)自分も似た立場のくせによくもまあ他人の心配なんかできるよな。第四真祖」

 

「うっせ」

 

古城は世界最強の吸血鬼”第四真祖”である。

その存在は噂されているが実際に見たものはおらずそのため都市伝説として噂されている。

 

それでも古城とは関係ないところで噂は広がっており、世間に認識されている仮面ライダーよりかはましだがそれでも滅茶苦茶な噂が多いのは事実だ。

 

それでも仮面ライダーのことを気に留めているのは彼の人柄によるものであることを零はよく知っている。

知っているから零も古城をほっておけないのだ。

 

「まあ実際のところ、意外と俺たちと同じただの一般人かもしれないぞ」

 

「え?」

 

「そもそも完全無欠なヒーローなんていないんだよ。実際戦うのは嫌だ、怖いって思ってるかもしれない。それでも戦うってことはその仮面ライダーにも自分の命を懸けてでも守りたいものがあるからなんじゃないか?その為ならたとえどんなに後ろ指刺されようとも戦う人だっているかもしれない」

 

零が脳裏に描いたのは、街の人々の為に戦っても犯罪者の疑いをかけられていた相棒を逃がした危険人物として扱われても人々の為に戦った一人の天才物理学者だった。

彼は見返りを求めず、他人が笑顔でいると仮面の下で思わず自分のことのようによろこぶお人よしだった。

そして、ラブ&ピースという理想を絶対に諦めなかった零にとってのヒーローの一人だ。

そんな彼も、苦しければ苦しむし、悲しければ泣きもする。それを知っているから、零は古城にこう語る。

 

「結局さ、俺たちは仮面ライダーってやつと長い年月を共に過ごしたわけでもない。そんな俺たちが勝手に幻想しているだけで、本当は気の弱かったり不器用だったりする普通の人だったりするんだとおもうぞ。実際俺は、お前と会うまでは第四真祖が普通の学生をしているだなんて思ってもみなかったからな」

 

「零…ありがとな」

 

「なんでお前が礼を言うんだよ、俺は俺から見た仮面ライダーのイメージを言っただけだぞ?」

 

「そうなんだけどさ、なんとなくだよ。なんとなく」

 

「ははっ、なんだよそれ」

 

二人はそれぞれの言葉がおかしかったのか互いに笑った。

零も最初はいわれもない事を噂されて苦しかったじきがある。だが彼の正体を知っている魔女と彼の正体を知っている友人が怒ってくれたのと、古城達のように正体は知らないが自分の事を信じてくれている。

それがあったからこそ、零は戦い続けることができた。

 

(こりゃあ、いつかは本当の事を話さないとな)

 

零は古城に近々自分の正体を明かそうと思っていた。そしてそれがそんなに遠くない内にやってくるともおもっている。

 

だが、今はそれとは別の問題に直面していた。

 

「そういえば古城、気付いてるか?」

 

「ああ、あの娘だろ?」

 

零と古城は先ほどから自分たちの後を付いてくる少女の存在が気になっていた。

 

「とにかく、一旦そこの建物の日陰に入るぞ」

 

「おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零と古城は少し進んだ建物の日陰に入り、そこの窓ガラスを利用して背後からくる少女の姿を視認した。

その少女は零と古城が通っている学園の中等部の女子の制服を着ていた。

 

「なんだあの娘、零知ってるか?」

 

「嫌知らない。凪沙ちゃんの知り合いって訳ではないのか?」

 

「さあ俺は会ったことはないけど」

 

「そうか(まあ仮面ライダーとしての俺を嗅ぎまわっている線もあるが変身中は顔は隠れているし可能性が高いのは古城か。だとすると獅子王機関である可能性が高いな)」

 

零がそんな風に思考していると突然彼のスマホに電話がかかってきた。

電話の相手は彼の教師であり彼の正体を知っている人物の一人「南宮 那月(みなみやなつき)」だった。

 

「那月さん?はいもしもし」

 

【零、お前今どこにいる?】

 

「?アイランド・ウエストのショッピングモール近くですけど」

 

【ならば近いな、そこの近くで怪人が現れたとの通報が入った。今は特区警備隊(アイランド・ガード)が応戦しているがどうやら相手は姿を消すタイプらしくてな手こずっている。直ぐに向かってくれ】

 

「分かりました(古城を残していくのは不安だが街の人たちにこれ以上被害を増やすわけにはいかないからな)。古城ワリい、ちょっと野暮用ができちまったから失礼するぜ」

 

「あっおい零!?」

 

零は古城を置いてその場から走り出した。

零と古城を追っていた少女は零が走り出した事に驚いたがそれだけでそのまま古城の方へ視線を固定したまま動かなかった。

 

(どうやら古城が狙いだったみたいだな。追跡の気配も無いし一旦は放置でいいだろう)

 

零は少女が追ってこない事を確認して、現場に向かって走りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零が到着した場所にソレはいた。

現場には那月の言う通り特区警備隊(アイランド・ガード)が戦闘を開始していた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「な、なんなんだよコイツ!」

 

「お、落ち着け!お前たち!」

 

現場では特区警備隊が応戦していたが、姿の見えない相手の攻撃により隊員の統制が乱れているうえに見えない何か隊員を捕まえては叩きつけたり、上に上げて落としたりを繰り返していた。

幸いなことにまだ死者は出ていないらしいが、このままではそれも時間のもんだいだった。

 

「(こりゃ指揮系統が乱れているな。まあ姿の見えない敵なんて対処する方が難しいし無理もないか。とにかくこれ以上被害が広がる前に倒さないと)」

 

零は物陰に隠れ懐からマゼンタと黒のバックル「ネオディケイドライバー」を取り出しそれを腰に当てる。するとベルトが巻かれていき完全に巻かれるのを確認するとサイドハンドルを開きベルトと一緒に出現した「ライドブッカー」を開きそこからマゼンタのバーコードにディケイドの絵が記されたカード「カメンライド ディケイド」を目の前にかざし自身を変えるあの言葉を言う。

 

「変身!」

 

そしてカードを裏向きにしドライバーにカードを装填しサイドハンドルを閉じた。

 

KAMEN RAIDE

 

DECADE

 

 

その音声の後、零の周りに20の幻影が重なり数枚のプレートが彼の頭部に突き刺さる、その後灰色だった体がマゼンタに色付きそれが終わると頭部に備え付けられたシグナルポインターが黄色く、緑の複眼ディメンションヴィジョンが緑色に輝いた。

仮面ライダーディケイドへ変身が完了した。

ディケイドは手をはたく動作をし準備を完了した。

 

「さてと、行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!は、離せぇーーーー!」

 

「あ、天野ぉーーーー!」

 

現場では、見えない怪人により隊員が宙に持ち上げられていた。

周りの隊員は助けようとするも銃による攻撃は空をきる上に下手に天野という隊員の近くを撃とうものなら彼に弾丸が当たる可能性もあり手を出せずにいた。

 

そして怯える天野をまるで嘲笑うかのように、彼は放り投げるように宙に体が投げられた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「天野ぉーーーーーーー!」

 

その場の全員がもうだめだと目を覆った。

 

が…

 

「ハッ!」

 

そんな彼を突如乱入してきたものが空中で抱き留めることで助け出した。

その人物は特区警備隊のほうに彼を引き渡した。

周りの隊員たちは突然のことで唖然としたが、すぐにフリーズから回復し乱入してきた人物を見た。

 

「か、仮面ライダー…」

 

「大丈夫か?」

 

「あ、ああ。アンタのお陰で命拾いしたよ」

 

「そうか」

 

ディケイドは間に合った事に安堵し直ぐに状況を把握し特区警備隊に言葉をなげかけた。

 

「この周辺の避難は完了しているな?」

 

「ああ、もうこの周辺には住民はいないはずだ」

 

「そうか、ならここは俺に任せてアンタ達は逃げ遅れた人が居るかもしれないからそっちを頼む」

 

「なっ!?いくらアンタが強くても見えない敵を相手にするなんてむちゃだ!」

 

特区警備隊の面々は仮面ライダーに何度も助けられている。その為彼が自分たちを気遣ってそう言っているのは全員が理解していた。

だが彼らにとっても初めて対峙する怪人の能力故に、如何に仮面ライダーが強くても苦戦は免れないと考えたのだ。

 

「安心しろ。その手の敵の対処法は持ってる、だから早く行ってくれ」

 

「…本当に、大丈夫なんだな」

 

「ああ」

 

「…わかった。ご武運を!」

 

特区警備隊の隊員達は、隊長の指示に従いその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「さてと」

 

ディケイドは彼らが退散したのを確認すると後ろを振り向いた。そこには姿を現したカメレオンの様な見た目の怪人「カメレオンゾディアーツ」が構えていた。

 

「そろそろゾディアーツが出てくる頃だとは思ったが、意外に早かったな。それもカメレオンか」

 

ディケイドがそう考察しているとカメレオンゾディアーツは口から舌を伸ばして攻撃してきた。

 

「うぉっとあぶねっ」

 

ディケイドはそれを躱すがカメレオンゾディアーツは舌を縦横無尽に振り回し攻撃を続けた。

 

「ったく舌で攻撃って気持ち悪ぃな!」

 

ディケイドは腰からライドブッカーをソードモードにして構え向かって来る舌を切り落とした。

 

『!?ッ』

 

カメレオンゾディアーツは自身の舌を切り落とされた事により口を押えもだえ苦しんだ。

 

「いくら怪人とはいえ舌を切り落とされれば堪えるよな...!?」

 

カメレオンゾディアーツはこのままでは不利だと判断したのかカメレオンの能力を使いその姿を周りの風景に溶け込ませその姿を消した。

 

「一体どこに…ッグアッ!」

 

ディケイドはゾディアーツを探そうとすると突然体に衝撃と痛みが襲い掛かり殴り飛ばされた。

 

「くっ、グッ!ガァッ!」

 

そのあとも何処からともなく攻撃は加えられ数発めにディケイドは火花を散らして吹き飛ばされた。

 

「かはっ、全く分かってはいたが消えると本当に見えないな」

 

ディケイドはこのままでは不利だと判断しライドブッカーから新たなカードを取り出した。

それには、赤い鷹の仮面に緑の複眼を持つ欲望の王の姿が描かれていた。

 

ディケイドはバックルを開くとそのカード「カメンライド オーズ」をドライバーに装填した。

 

KAMEN RAIDE

 

OOO

 

 

 

特徴的な音楽と共にディケイドの周りに色とりどりの円盤の様なものが展開され彼の前に、赤、黄、緑の動物が描かれた光の円盤が縦に並ぶとそれが一つに集結しディケイドの胸に吸い込まれるように張り付いた。

するとディケイドの体は、赤い鷹の頭、黄色の虎の胴体、緑のバッタの足をしたライダー「仮面ライダーオーズ タトバコンボ」へと姿を変えた。

 

「……ッ!」

 

Dオーズは鷹部分の緑の複眼「タカアイ」を駆使して周りを見回した。するとこちらに体から触手を伸ばして攻撃を仕掛けようとしているカメレオンゾディアーツを発見した。

 

「そこか!」

 

Dオーズは両手に折りたたまれている虎の爪を模様した武器「トラクロー」を展開した。

 

「ハァッ!」

 

『!?』

 

トラクローで襲い掛かってくる触手を切り落としたDオーズに驚くカメレオンゾディアーツ。

 

「悪いな、この姿だと見えんだわ。ハァッ!」

 

Dオーズはトラクローを両手で研ぐような仕草をした後カメレオンゾディアーツに攻撃を仕掛けた。

 

「フッ!はっ!セェヤッ!」

 

『グギャッ!ガッ!ガアァッ!』

 

トラクローによる攻撃でカメレオンゾディアーツは火花を散らしながら後退していった。

 

「ハァッ!」

 

『グぎゃあぁぁぁぁッ!』

 

数度目の攻撃によりカメレオンゾディアーツは後ろに切り飛ばされ数回地面を転がり倒れた。

 

『ッぐ』

 

「これで終わりだ」

 

Dオーズはトラクローを元の状態に戻すと、ライドブッカーを開きそこから黄色のバーコードにオーズのライダーズレクトが描かれた「ファイナルアタックライド オーズ」を取り出し開いてあったバックルに投げ入れる様に装填した。

 

FINALATTACK RAIDE

 

OOOOOO

 

「ハッ!」

 

Dオーズはバッタレッグをバッタ脚に変形させるとその脚力を利用して真上にジャンプした。

するとジャンプして到達した場所でDオーズとカメレオンゾディアーツの間に赤、黄、緑の縁が出現しDオーズはそこに向かって両足で勢いよくキックを放った。

その円を通過するとDオーズの背中に赤い羽が展開されそのままカメレオンゾディアーツにむかって必殺キック「タトバキック」を放った。

 

「ハアァァァァッ!」

 

『グぎゃあぁぁぁぁッ!』

 

キックがカメレオンゾディアーツに直撃すると爆発を起こし、そこに赤、黄、緑の円が重なった光を描き直ぐに消えた。

 

「グッ、あっ…」

 

その爆煙が晴れたとき見えたのはゾディアーツの変身者らしき20~30代の女性と彼女の隣に転がっているゾディアーツスイッチ。そしてDオーズだけだった。

 

「ふぅ、ゾディアーツ撃破完了っと」

 

Dオーズが息をついていると近くからこちらに向かって来る足音がした。恐らくは特区警備隊の隊員達だろう。

 

「あとは特区警備隊に任せますかね」

 

そういうとDオーズは背後にオーロラカーテンを出現させ迫ってくるそれに飲み込まれるように姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな光景を見ている者がいた。

その人物は水色のサメの様な鎧を身にまとい、腰にはベルトが巻かれていてサメを思わせる様なカードデッキがはめられていた。

 

「やはりこの程度の当て馬では力不足だったか」

 

その人物は、仮面によって分からないが先ほどの零が変身したディケイドを恨むよう雰囲気を纏っていた。

 

「たとえ紛い物であったとしてもディケイドはディケイド、必ず潰す。そうだな、あの世界の時の私の言葉を使うのであればこういうべきだな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今度こそこの私が死刑を申し渡す」

 

そういうとその人物は近くに合ったビルの窓ガラスの中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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聖者の右腕編Ⅲ

これまでのストライク・ザ・ディメンション

「零は仮面ライダーについてどう思ってるんだ?」

「意外と俺たちと同じ普通の一般人かもしれないぜ」

「ありがとな。零」

「何でお前が礼を言うんだよ」

「か、仮面ライダー…」

「そろそろゾディアーツが出て来るとは思ったが意外と早かったな。しかもカメレオンか」

「これで終わりだ」

「やはりこの程度の当て馬では力不足か」

「今度こそ私が、死刑を申し渡す」












そこは、誰もいない廃ビルの中。

 

その中には古びた椅子、テーブル、ビリヤード台などが置かれていた。

そして、その廃ビルにはふさわしく無い恰好の人物がいた。

夜とはいえこの常時真夏の島では珍しいパーカー付の黒のコートに黒の長ズボン。白のTシャツ、そして白のメッシュが入った黒髪の高校生くらいの少年だ。

その少年は手に持っているカードを見て細く笑みを浮かべていた。

 

「ふふっ、…ん?」

 

すると何か気配が近づいてきてそちらを見ると水色のサメの鎧の男が入ってきた。

 

「お、アビスじゃないか。お帰り」

 

「…ふんっ」

 

鎧の男”アビス”は男の挨拶に鼻を鳴らす事で応えた。

そんな失礼な態度に男は笑みを崩すことなく話を進めた。

 

「おやおやどうした。何か嫌な事でもあったのかな?」

 

「いや、貴様の様な男に復活させられるとは私も運がないと思っただけだ」

 

「うわヒッドイなぁ、君を蘇らせてあげたのは僕なんだよ?それにそんな態度だと折角のメモリやスイッチを買ってくれる人の僕たちの印象が最悪になっちゃうじゃないか。営業の基本はスマイルだよ?」

 

「その時は上手いことやっているから問題はない」

 

「ふーん、ま、そんなことよりどうだった?今回のディケイドは」

 

「どうしたもこうしたも、やはりただの一般人を怪人にしたところで直ぐに返り討ちにされたよ」

 

アビスは男に今回のカメレオンゾディアーツ事件の出来事を報告していた。

今の話からも分かるようにこの二人、正確には黒コートの男が今世間を騒がせている怪人事件の首謀者なのだ。

 

「なるほど、するとまた彼はそのライダーの基本フォームで勝ったのかな?」

 

「ああ、やはり私が直々に出た方がいいか」

 

「それでは意味がないだろう、アビス」

 

2人が話していると突然違う声がして2人はその声の方向を見た。

そこには、Aを象った仮面にそれと同じくAを思わせる黄金の鎧。そして腰にはアビスとは違う扉が開いたかのようなベルトで中心には同じくAと刻まれていた。

そしてベルトの横には一本の剣

 

「”グレイブ”…」

 

「お前が出たら紛い物とはいえ返り討ちにされるのが落ちだ。そんな事も分からないのか?」

 

「…口には気をつけろよ小僧、今この場で貴様を葬っても良いのだぞ?」

 

「ハッ、お前に出来るかな?最強のアンデッドであるこの俺を相手に」

 

アビスとグレイブは会うなり急に険悪な雰囲気となった。

アビスは召喚機「アビスバイザー」を構えベルトのカードデッキからカードを引きぬこうとしグレイブは引き抜いた剣「グレイブラウザー」を構えた。

 

 

 

だが

 

「そこまでにしておけ。アビス、グレイブ」

 

『!?』

 

そんな一触即発の空気を仲裁するものがいた。

その者は正しく鎧武者の姿をしており、その鎧はまるで血の様に赤く、複眼にも赤く禍々しい模様が描かれていた。

 

「我らの目的はこの世界、最終的には全ての世界のライダーの抹殺。その為にはまずこの世界のディケイド、門矢零を倒すのが目的の筈だ。敵を見誤るな」

 

「…ちっ、命拾いしたな」

 

「こちらのセリフだな」

 

アビスとグレイブは互いに矛を収めた。

 

「いや~助かったよ”武神鎧武”2人が暴れたら折角見つけた僕のねぐらが壊されちゃうところだったよ」

 

「いたずらに消耗するのを避けるためだ」

 

「ハハッ君がまともでいてくれて助かるよ(まあまともである奴ならそもそも仮面ライダー達と敵対して倒されたりはしないけど)」

 

「勘違いするなよ。私の最大の目的は我が天下統一の野望を邪魔したあの私と同じ姿の鎧武ともう一人の武神ウィザードを葬り去るためだ。武神ディケイドの紛い物などそのついでにすぎぬ」

 

「はいはい分かってるよ。それより、いい加減に覚えてくれない?ここでは武神ライダーじゃなくて仮面ライダーっていうんだよ」

 

「知らん。私にとってはどうでもいい」

 

「どうでもいいって…まっ今はそんなことどうでもいいか。それよりアビス、君に頼みたい事があるんだ」

 

「何?」

 

男の突然の指名にアビスは困惑するが、ニコニコと手招きする彼を見てため息をつき渋々近寄った。

 

「実はね」

 

男はどこから取り出したのか一冊の新聞を見せてきた。

そこには「魔族を狙った通り魔事件」と書いてあった。

 

「この通り魔、次のディケイドにぶつける相手にしようと思うんだ」

 

「何だと?そんなちんけな犯罪者ごときをディケイドにぶつけた所で何時ものように返り討ちに合うだけだろう」

 

「それがそうとも限らないんだよなー」

 

男はアビスの疑問を説明するために新聞に書いてある一文を指さした。

 

「”被害者は全員吸血鬼”だと?それがどうしたというんだ」

 

「分からないかな、この世界の吸血鬼って眷獣っていうとんでもない化け物を使役してるの。しかも現場には戦闘の跡があった」

 

「!」

 

男の言葉にアビスは仮面の下に隠された目を見開く。

そう、吸血鬼の眷獣は真祖には遠く及ばないにしてもとんでもない魔力の塊だ。それを何人も倒しているともなれば、ただの犯罪者で片付けるには早計すぎるというものだ。

 

その情報にグレイブは察しがついたのか少し弾んだ声で話を進めた。

 

「成程、その人物であれば倒せずとも今まで以上の戦闘データを取れるというわけですね」

 

「そういうこと、あとその通り魔くんはこれだけ吸血鬼を狙うということはそれなりの欲望があるはずだ。だから」

 

男は話を一旦止めるとコートのポケットに手を突っ込んだ。

そしてそこから手を抜き出すとあるものをアビスに渡した。

 

「それは…」

 

「”セルメダル”。これは僕の特製でね、新しいヤミーを生み出す事は出来ないけど過去のヤミーを作り出せる特別性。それをその人物に投入すればさらにディケイドを苦しめられる」

 

「…ふんっ、貴様の考えに乗るのはシャクだが良いだろう」

 

アビスは男からセルメダルを乱暴に受け取ると廃ビルを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全くせっかちだねアビスは」

 

「無理もないでしょう、この中で唯一ディケイドに倒されたライダーですからね。では私はこれで」

 

「前々から思ったけどさ、君って怒るときと落ち着いた時とかの口調が変わって面白いよね」

 

「…それは誉め言葉として受け取っておきましょう」

 

男に揶揄われたのが気に食わなかったのかグレイブは速足で廃ビルを後にした。

 

「では私もこれで失礼しよう」

 

「えーもう少しここにいなよ。1人で退屈なんだよー」

 

 

「知るか、貴様と同じ空間で2人きりなどたとえ運命の巫女を差し出されてもごめんこうむる」

 

武神鎧武は手を縦に切る動作をするとまるでチャックを開けたような裂け目「クラック」が開きその先に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、全く。あいつ等の相手をすると疲れるなー」

 

男は全員が立ち去ったのを確認すると先ほどまでのフレンドリーさが嘘のように消え去りめんどくさげな雰囲気となった。

 

「まあいいさ。しかし俺がそうするようにプログラムしたとはいえ全ての世界の征服か。はっ、馬鹿馬鹿しい。僕は世界なんてどうでもいい」

 

男は懐から何枚ものカードを取り出した。

そこには何人もの仮面ライダーの姿が描かれていたが何故か”3枚”だけ色が抜け落ちたようになっていた。

 

「近いうちにあいつ等をお前にぶつけてやる。だから強くなって僕を滾らせてよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弟くん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先日のカメレオンゾディアーツ騒動の翌日、零は学校に来ていた。

 

本来なら夏休み中であるはずだが、彼は今日那月に呼び出されていた。

 

理由は

 

『今夜街の見回りがある。○○時までには来い。

ん?わざわざ呼び出した理由?そんなの私が暁の補修で働いているのにお前は自分の部屋でゴロゴロと電話でこの話を聞いてると思うとイラっとするからだ』

 

と、まあ理不尽な理由である。

 

「全く、教師が生徒をんな理由で呼び出すなっての。まああの人のお陰で俺もある程度は動けてるから何にも言えないんだけども…」

 

零は学校の廊下を歩いて一人うなだれていた。

そんな時ふとあることを思い出した。

 

(そういえば前に大樹さんが)

 

それは以前彼の知り合いである仮面ライダーの一人がこの世界を訪れたときに聞いたことだ。

 

『いくつもの世界で一度仮面ライダーに倒されたはずのライダー達が現れるという事件が起こっていてね。そのライダーは倒されたんだけど1つ妙な事があるんだ。

そのライダー達はまるで操り人形で戦い方は同じだけど、倒しても何故か僕と士が持っているのと同じカードになってね、その後どこかに消えちゃうみたいなんだ。

この世界にもいつそんなことがあるか分からないから用心したまえ』

 

「一度倒されたライダーが蘇るか…まさかまたショッカーあたりがそのライダーの偽物でも作り上げたか?(それとも、また別の何か…何にしても用心はしておかないとな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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聖者の右腕編Ⅳ

これまでのストライク・ザ・ディメンションは


「お、アビス。お帰り」

「貴様の様な男に復活させられるとは私もついてないと思っただけだ」

「お前に出来るかな?最強のアンデッドであるこの俺相手に」

「敵を見誤るな」

「それよりアビス、君に頼みたいことがあるんだ」

「そんなちんけな犯罪者をディケイドにぶつけた所で何時ものように返り討ちになるのがオチだろう」

「それがそうとも限らないんだよなー」

「世界の征服か、はっ馬鹿馬鹿しい」

「まさかまたショッカーあたりがそのライダーの偽物でも作り上げたか?」








灼熱の如き暑さの太陽が降り注ぐ絃神島。

その島の中にあるハンバーガーショップでは現在零、古城、そして姫柊雪菜が昼食をとっていた。

 

何故こんなことになったのかというと、零は那月に呼び出されたのだがその後特にやることもなくしかも最近は吸血鬼を狙った魔族狩りが出没しているため護衛の意味合いも込めて一緒に下校しようとしていたら、彼の監視役と名乗る獅子王機関の剣巫"姫柊雪菜"と遭遇した。

 

そして何やら一触即発の雰囲気になっていたところ、彼女が思わぬ事態(空腹)に襲われた為急遽昼食にすることにしたのである。

 

そしてそこで彼女は第四真祖である暁古城の監視の任務で派遣されて場合によっては抹殺も許可されているとのことだった。

そのことに古城自身は理不尽さを感じずにいられなかったが彼女の語る言葉に納得させられる始末である。

そして古城がなんで真祖になったかについてやそれを思い出そうとすると頭が痛くなることまで話した。

 

そしてそんな風に話は進んだのだが…

 

 

「…」

 

「おい零、お前どうした?ハンバーガーをそんなに睨みつけて」

 

「ひょっとして門矢先輩は本当にハンバーガーを知らないなんてことはありませんよね?」

 

そう、先ほどからこの男”門矢零”は運ばれてきたハンバーガーとにっらめっこをしていた。

しかしその顔はどこか怯えも含んだものだった。

 

「いや流石にハンバーガーは分かるけどさ、ハンバーガーというか飲食店についてちょっとトラウマがあってな」

 

「トラウマ?」

 

「お前まだ士さんと以前立ち寄ったっていう店のこと思い出してんのか?何度もいうがお前が言っているイタリアンやうどん屋が異質なだけで普通はそんなことないからな!?」

 

「先輩、何の話なんですか?」

 

雪菜は古城と零の話の内容がいまいちつかめなかった。

そんな彼女の質問に答えたのは古城だった。  

 

「ああ実は士さんっていうコイツのなんというか親代わりみたいな人が居てな、その人と零がこの島にくる前に立ち寄ったっていう飲食店の話みたいなんだけどな」

 

「…俺と士さんは以前とあるイタリアンの店に立ち寄ったんだがそこで俺は士さんの勧めで”たらこスパゲッティ”を頼んだんだ。…だが」

 

「だが?」

 

「出された料理が”ナマコスパゲッティ”だったんだ」

 

「・・・・・は?」

 

雪菜は思わず間の抜けた声を上げてしまう。

当然だ、どれだけ深刻な話かと身構えていた結果なのだから。

 

「俺はナマコが嫌いでな、後でメニューを見直したら確かにナマコスパゲッティと書いてあったんだ。そしてその後そこの店主に”さあ、冷めないうちに食べなさい”とかって言われてそれを無理矢理口にねじ込まれた事があるんだ」

 

「あのすみません!ちょっと何を言ってるのか分からないです!」

 

「姫柊、その反応正解だ」

 

「で、でもその後は大丈夫だったんですよね?さっき先輩がうどん屋と言っていましたし、流石にうどん屋にナマコは…」

 

雪菜はそう楽観的な事を言うが、それを聞いた零はまるでとんでもない者を見る目で雪菜を見た。

 

「それが普通のうどん屋だったらな」

 

「へ?」

 

「あ~姫柊悪い、ちょっと忠告遅れた」

 

古城は零のその様子を見て何やら悟ったのか雪菜に忠告しようとしたのだが、既に手遅れだったようだ。

 

「そのうどん屋はな、入店した客をどでかい音の太鼓やギター、トランペットで出迎えてまずは客の鼓膜を破壊しに来るわ頼んでもない種類のうどんを出してくるわもう滅茶苦茶だったんだ。それに力うどんを出してきたからそこに入っていた餅を食べたんだ、しかしな」

 

「しかし…まさか」

 

「ああ、ナマコだったんだよ!しかもその店員に訳を聞いたら”すいません!力うどんの餅がなかったんで代わりにナマコいれたっす!”とか言いやがったんだよ!」

 

零はそこまで言うと方で息をして”ハア、ハア”と息をして調子を整えて話を進めた。

 

「だから俺はそれ以来、飲食店で出されるものは警戒するようになったんだ」

 

「どんな体験をしたんですか一体!?」

 

「あー、まあお前この前俺の宿題を見てくれたファミレスでも俺たちに毒見もとい味見させてたしな」

 

「本当に何があったんですか!?」

 

そしてその後、零は古城が何とか説得し昼食を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~とある写真館~

 

ヘックシュ

 

「?どうしたんですか士くん」

 

「なんだ?とうとう士が風邪でも引いたのか?明日はライダーキックの雨でも降るんじゃないのか?」

 

「或いはナマコの雨だね、士にとっては地獄だろうけど」

 

「煩いぞお前ら、ま俺は色んな世界で数々の事をこなしてきた。だったら俺のファンが俺の話をしているかもしれないな」

 

「いやいやお前大体の世界で好き勝手にやらかしただけだろう!それに以前”ネガの世界”でお前がお見合いした女の子たちは結局怪人だったし!」

 

「おやそうなのかい?ユウスケその話詳しく」

 

「海東お前は黙っとけ」

 

 

ある写真館では尊大な態度の男、ロングヘアの女、爽やかな印象を受ける男、どこかキザな印象を受ける男が話をしていた。

 

「そういえば今頃どうしているんでしょうかね零くんは」

 

「そうだな、士に比べて全然可愛げがあるし意外と俺に会えなくて寂しがっているかもしれないな」

 

『それはない』

 

「なんだよ!みんなして、というか夏美ちゃんまで!?」

 

「まあ今はそんな事より、士どうやらまたダブルの世界で例の事件が起きたらしい」

 

「…またか」

 

ここ最近、主にダブル、オーズ、フォーゼ等の世界で以前怪人になった人物が襲われている事件が発生しているらしい。

ただしその人物自体は無事だったらしい。

そしてその後に零のいる世界で怪人が出現しているらしい。

 

「しかし、以前ジオウの世界で同じような事があったが今回はその怪人版といったところか」

 

「最初は財団Xあたりがまた動き出したのかと思ったけど、どこか妙な感じがするね」

 

「それにさ、その他の世界ではダークライダーも出現してるんだろ?」

 

「はい、私もこの前戦いましたが何というかその、どこか機械じみていたというか」

 

「だが実際に倒しても出て来るのは機械のパーツではなく俺たちが使っているのと同じカードだった」

 

「しかも回収しようとしても直ぐに消えてしまうときたもんだ」

 

「またショッカーの仕業なんでしょうか」

 

「その可能性もないわけではないけど、ショッカーの仕業にしてはやり方が回りくどい。奴らなら密かに準備を進めて、その後一気に攻めてくるのが彼らのやり口だ」

 

「なんにしても、世界全体しかも零がいる世界を中心に何かが起こっている事は確かだ。これは近々アイツに忠告しに行く必要があるみたいだな」

 

こうして、世界の破壊者とその他の世界の仮面ライダーの世界で怪しい影が蠢いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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聖者の右腕編Ⅴ

これまでのストライク・ザ・ディメンションは

「おい零、お前どうした?ハンバーガーをそんなに睨みつけて」

「いや流石にハンバーガーは分かるけどさ、ハンバーガーというか飲食店についてちょっとトラウマがあってな」

「お前まだ士さんと以前立ち寄ったっていう店のこと思い出してんのか?何度もいうがお前が言っているイタリアンやうどん屋が異質なだけで普通はそんなことないからな!?」

「…俺と士さんは以前とあるイタリアンの店に立ち寄ったんだがそこで俺は士さんの勧めで”たらこスパゲッティ”を頼んだんだ。…だが」

「いやいやお前大体の世界で好き勝手にやらかしただけだろう!それに以前”ネガの世界”でお前がお見合いした女の子たちは結局怪人だったし!」

「おやそうなのかい?ユウスケその話詳しく」

「しかし、以前ジオウの世界で同じような事があったが今回はその怪人版といったところか」






「ん?」

 

 

零は夕食の材料を買って自分の部屋に帰ろうとすると、古城たちが住んでいる部屋の隣の705の扉の前に古城と雪菜が立っていた。

 

「何やってんだ?古城、姫柊」

 

「あ、零」

 

「門矢先輩、実は暁先輩の監視の為に隣の部屋に住むことになったんですけど」

 

「姫柊の部屋、私物らしい私物が殆どなかったからよ買いに行ったんだ」

 

「ああ、成程。でもたしか705って確かもう人住んでたよな?その人どうした」

 

零は考えられる最悪の可能性に表情を暗くしたが、古城が手を振ってそれを否定した。

 

「零落ち着け、どうやら前の部屋の住人にはちゃんと新しい職と家をちゃんと用意して互いに納得したうえで引っ越してもらったらしいから!」

 

「…そうか」

 

零が落ち着きを取り戻したところで古城は思い出したように話し出した。

 

「そうだ零、お前今日の晩飯俺たちの部屋で食べないか?」

 

「え?」

 

「実は凪沙が姫柊が引っ越してきたお祝い会とかで鍋の材料を沢山買ってきていてな、見たら俺たちだけじゃ多分ギリギリだと思うんだ。だから頼む!」

 

古城は両手を合わせて零に頼んだ。

零は少し迷ったが、これが彼なりの零への気遣いであるという事を知っている為零はそれを承諾した。

 

「分かったよ、今日那月さんに呼び出されてはいるけどそれまでだったら大丈夫だ」

 

「そうか、ありがとな」

 

「そういえばお前たちの部屋で夕食食うのって久しぶりな気がするな」

 

「そういえばそうだっけか」

 

零達はそんな会話をしたあと夕食まで解散することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~夜~

 

「ふぅー美味しかった。今回は誘ってくれてありがとな古城、凪沙ちゃん」

 

「良いって気にすんな」

 

「うんうん、私も久しぶりに零くんと御飯が食べられて嬉しかったよ」

 

現在、古城たちの部屋では夕食である鍋を零と古城、雪菜そして古城の妹である暁凪沙で囲っていて今先ほど食べ終わった所である。

 

「それにしても門矢先輩は凪沙ちゃんとも知り合いだったんですね」

 

「ああ、古城と知り合ったときに紹介してもらってな」

 

「そういえば零くん、確か今日南宮先生に呼び出されてるんじゃなかった?」

 

「あっ」

 

そういわれて零は時計を確認すると、那月と約束した時間を少し過ぎてしまっていた。

 

「ヤッべ!悪い、俺もう行くわ!」

 

「お、おう。頑張れよ」

 

零は慌てて部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、アハハ門矢先輩も大変ですね」

 

「まあ誘ったのは俺だし、今度何か奢るか」

 

「あっ!じゃあその時は私にも奢ってよ古城くん!」

 

「お前は自分で金払って食べなさい」

 

「えー」

 

古城と凪沙のそんなやり取りを見つめて雪菜は「アハハ…」と苦笑いを浮かべてると、凪沙が何やら昔を懐かしむ様な表情になった。

 

「それにしても良かったよ。零くんが変わらず元気で」

 

「ああ、そうだな」

 

「…あの、門矢先輩って昔何かあったんですか?」

 

雪菜が二人にそう聞くと、二人は少し暗い顔をしそれを見た雪菜は気まずそうにした。

 

「す、すみません!無神経なこと聞いて」

 

「いや、姫柊にも話しておいた方が良いのかもしれないな」

 

「そうだね」

 

古城と凪沙は意を決した様に話し出した。

 

「実は零は、昔の記憶がないんだ」

 

「え?」

 

雪菜はいきなり明かされた事に言葉が出なかった。

つい先ほどまで一緒に夕食を食べていた先輩が記憶喪失と言われたら無理も無い。

 

「それってどういう…」

 

「零は昔、誘拐されてその時のショックが大きかったのか記憶を失ったらしい。そのせいでアイツは誘拐される以前の記憶を一切覚えていないらしいんだ。そしてその時に自分の本当の名前すら忘れてしまったんだ」

 

「それじゃあ、門矢零という名前は」

 

「士さんっていう人が付けてくれたらしい。零が辛うじて覚えていた記憶を頼りに、零はこの魔族特区に住むことになったんだ」

 

「…そうなんですね」

 

雪菜はそこまで聞くと、ふと気になったことを聞くことにした。

 

「…あの、それで門矢先輩のご家族は」

 

「さあ、それは分からないらしい」

 

「…そうなんですか。すみません」

 

「気にするな、話し始めたのは俺だからな」

 

「いえ、私が聞き始めた事ですから」

 

「…姫柊」

 

「?」

 

古城の改まった様な雰囲気に雪菜は疑問の表情をする。  

 

「頼む、アイツの友達であってくれ。アイツは家族も記憶も何にもなくて、俺たちがアイツの心の拠り所なんだ。会って間もないお前にこんなこと頼むのはどうかとは思うけど、頼む」

 

「雪菜ちゃん、私からもお願い!」

 

古城と凪沙は雪菜に頭を下げた。

そんな彼らを雪菜はしばらく見つめると

 

「頭を上げてください二人とも、頼まれなくたって私は門矢先輩や皆さんの友達ですよ」

 

「!ありがとう姫柊」

 

「雪菜ちゃんありがとう!」

 

こうして3人は、話を終えると夕食の片付けに取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?この私を予定時間以上に待たせた言い訳を聞こうじゃないか?門矢」

 

「い、いやその」

 

零は那月との集合場所についたは良いが、その時には既に彼女はおりしかも予定時間の数分も遅れてしまった。

 

「暁達に夕食に誘われてそれを許可したのは私だ、しかしそれで予定より遅れるとはどういう要件だ?」

 

「…申し訳ありませんでした」

 

零がとった行動とは誠心誠意頭を下げる。すなわち謝罪である。

 

「ふんっ、以後気をつけろ」

 

「はい」

 

那月は一応零の謝罪を受け入れて、この話はこれで終わりかと思われた。

 

「だが、罰は必要だな」

 

「はい?」

 

「喰らうがいい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑いのツボ!

 

那月がそう言うと、彼女は零の首筋に親指を突き刺した。

 

その瞬間

 

「ぷっwwwぷっハハハハwwwちょwww那月さあはははwww」

 

零はまるで壊れた様に笑い始めた。

これぞ、彼の恩人”門矢士”の旅の仲間”光夏美”直伝、笑いのツボである。

これは普段は夏美が士に対して行う技なのだが、ある日何となくやってみたら何故か零にまで効いた事から、もし零に罰を与えるのならこうしろとの事である。by門矢士

 

「しばらく笑い転げてろ」

 

「い、いやwwwた、助けうハハハwww」

 

それから効力が消えるまで、零はその場で笑い転げ、通りかかった通行人から怪しい奴を見る目で見られたとか。

(ちなみにその時那月は避難していた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く勘弁してくださいよ、アレ結構しんどいんですから」

 

「そんなことを何時までも気にするな、しつこい男はもてんぞ」

 

「大きなお世話ですよ」

 

笑いのツボの効力が切れた零は那月と共に街の見回りを開始していた。

 

「そういえば、この前のカメレオンゾディアーツですけど何か分かりましたか?」

 

「いや、今回も購入した事は覚えているが売人の顔は思い出せんとのことだ」

 

「やっぱりですか」

 

今世間を騒がせている魔族狩りの他に怪人発生事件があるが、怪人になった人物を零が倒して捕まえても皆一貫して売人の顔だけを覚えていないとのことだ。

 

「スイッチやメモリを使った際に売人の顔だけを忘れさせる魔術か装置を使われているっていうのは間違いないでしょうね」

 

「ああ、…そういえば門矢、記憶の方はどうだ?」

 

「…いいえ、相変わらず何も思い出せません」

 

「”亡くなったかもしれないお前の家族の事もか”」

 

「はい…」

 

先ほど古城達が話していた過去には少し零が混じりこませた嘘が存在する。

そもそも彼は誘拐されたのは間違いない。

その誘拐された組織というのは恐らくショッカーか財団Xである。

 

恐らくというのは彼が目を覚ました時にはどこかの見慣れない部屋に白いシャツとズボンの姿でいて彼を救出しに来たのが門矢士を始めとした仮面ライダー達だった。

そこには恐らくそこにいた研究員が技術力を総動員して作り上げたネオディケイドライバーと一冊の資料が残っていた。

 

その資料には恐らく零の事を示すであろう実験体番号と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の家族

父、母、妹を殺害したと記されていた。

 

「そうか」

 

「でも、何時かは思い出して見せますよ。そうあの人たちにも約束しましたからね」

 

零は、必ず何時か自分の記憶を取り戻すと改めて決心を固めた。

 

 

 

 

 

 

 

しかしその時の彼は知らなかった。

その記憶を取り戻すとき、どれだけ辛い真実に向き合う事になるのかという事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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聖者の右腕編Ⅵ

これまでのストライク・ザ・ディメンションは


「何やってんだ?古城、姫柊」

「門矢先輩、実は暁先輩の監視の為に隣の部屋に住むことになったんですけど」

「零落ち着け、どうやら前の部屋の住人にはちゃんと新しい職と家をちゃんと用意して互いに納得したうえで引っ越してもらったらしいから!」

「分かったよ、今日那月さんに呼び出されてはいるけどそれまでだったら大丈夫だ」

「良いって気にすんな」

「そういえば零くん、確か今日南宮先生に呼び出されてるんじゃなかった?」

「お前は自分で金払って食べなさい」

「実は零は、昔の記憶がないんだ」

「”亡くなったかもしれないお前の家族の事もか”」

「でも、何時かは思い出して見せますよ。そうあの人たちにも約束しましたからね」



仮面ライダー、門矢零。

 

彼は今、目の前で本来いる筈のない人物の存在に困惑していた。

 

「…」

 

「おい門矢」

 

「は、はい!」

 

「お前は先ほどまで暁の家で夕食をとっていたんだったな?」

 

「はい」

 

「ならなぜ暁と中等部の生徒がいるんだ?」

 

そう、零と那月の目の前にはついさあき程まで夕食を食べていた古城と雪菜がクレーンゲームの前にいたのだ。

 

「これはまた笑いのツボが必要だな」

 

「本当に勘弁してください!」

 

零は勢いよく頭を下げた。

 

「・・・!」ニヤリ

 

「!?」

 

不意に那月が口元に笑みを浮かべると零は嫌な予感を覚えた。

 

「あ、あの那月さん」

 

「また笑いのツボを喰らいたくなければ大人しくしていろ」

 

「はい!」

 

どの道、零に選択肢はなかったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいそこの2人組、彩海学園の生徒だな」

 

『!?』

 

突然背後から声をかけられて古城と雪菜はガラス越しに映る那月の姿を確認した。

 

「ん?そこのパーカーの男は見覚えがあるな。こっちを向いてもらおうか」

 

(完全に確信犯じゃねえか!そうだ、確か零が一緒に巡回していたはずだ!)

 

那月のまるで獲物を追い詰めるハンターの如き言葉に古城は追い詰められ、最後の望みである零の姿を確認し助けを求める目線を送るが…

 

(ごめん、無理)

 

(畜生が!)

 

しかしそれは無意味となってしまった。

零は目線と両手を合わせることで謝罪を行い、古城は内心軽くご乱心となった。

 

「おいどうした?もしや無理矢理振り向かせるのがお望みだったか?」

 

(もうダメだーーーーーーー!)

 

正しく絶体絶命。

このままでは、雪菜は兎も角古城の学生生活が危うくなるのは間違いない。

 

しかしその時

 

 

 

 

ドゴーン

 

 

『!』

 

突然夜の街に響き渡る爆発音に全員の視線がその方向に集中した。

 

「(なんだ今のは!?いや、これはチャンスだ!)行くぞ!」

 

「え!?」

 

古城はそれをチャンスと捉え雪菜の手を引いてその場を駆け出した。

 

「な!?待て、暁!」

 

「那月さん、今はそんな場合じゃありません!」

 

「ええい分かっている!門矢、現場に向かえ!私は特区警備隊に連絡を入れる!」

 

「はい!」

 

そう言い、零は今爆発音が聞こえた地点に向かい走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、雪菜は古城を待機させて爆発音がした倉庫街に駆けつけていた。

 

そこには、巨大な戦斧を構えている片眼鏡の大男が立っていた。

 

「ふむ、目撃者ですか。想定外でしたね」

 

「戦闘をやめてください」

 

雪菜は、男を睨んで警告した。

 

男は、雪菜を蔑むように眺め、

 

「若いですね。 この国の攻魔師ですか…見た所、魔族の仲間ではないようですが」

 

「行動不能の魔族に対する虐殺行為は、攻魔特別措置法違反です」

 

「魔族におもねる背教者たちの定めた法に、この私が従う道理があるとでも?」

 

男は無造作に言い捨て、巨大な戦斧せんぷを振り上げる。

 

「くっ…雪霞狼(せっかろう)!」

 

雪菜はすぐさま自身の秘奥兵器である破魔の槍”七式突撃降魔機槍(シューネーヴァルツァー)”を使い反撃した。

 

槍はその細さからは想像できない強度と威力により男の戦斧を受け止め鍔迫り合いになる。

 

「なんと、その槍!七式突撃降魔機槍(シューネーヴァルツァー)ですか!”神格振動駆動術式(DOE)”を刻印した獅子王機関の秘奥兵器!まさかこのような場所でお目にかかれるとは!」

 

男は雪菜の槍の正体が分かると感嘆の声を上げその表情は歓喜に満ち溢れていた。

 

「いいでしょう、獅子王機関の剣巫ならば、相手に不足なし。 娘よ、ロタリンギア殲教師、ルードルフ・オイスタッハが手合わせを願います!」

 

「ロタリンギアの殲教師!? なぜ、西欧教会の祓魔師が、吸血鬼狩りを!?」

 

「我に答える義理はなし!」

 

男”オイスタッハ”は地を蹴り雪菜に向かって攻撃を再開した。

雪菜はそれを紙一重で躱しその一瞬のスキを突き槍を振るう。

突き出されたその槍を、オイスタッハは咄嗟に鎧で覆われた左腕で防ごうとする。

 

「!?」

 

しかしその鎧はまるでガラス細工の様に砕かれそれを見たオイスタッハは後ろに飛ぶことで一旦距離をとった。

 

「我が聖別装甲の防護結界を一撃で打ち破りますか! さすがは、七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)。実に興味深い術式です。 素晴らしい」

 

しかしその焦りの表情は直ぐに消え逆に雪菜と彼女の振るう槍に敬意を示す言葉を送る。

 

そんなオイスタッハに雪菜は本能的な脅威を感じ彼をここで止めなければと判断し、槍を構えなおし詠唱を開始した。

 

「獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る。 破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威をもちて、我に悪神百鬼を討たせ給え!」

 

「む…これは…」

 

祝詞を唱え終えた雪菜の練り上げられた呪力に眉をひそめる。

直後、雪菜はその強化された槍をもってオイスタッハに攻撃を仕掛けた。

 

「ぐっ…」

 

振るわれた槍をオイスタッハは戦斧で受け止めるが、その威力に耐え切れず数メートル後ろに吹き飛ばされる。

しかし雪菜の攻撃はそれだけで終わらず、そのまま追撃に入る。

雪菜は一瞬先の未来を見通す霊視を使う事でオイスタッハの攻撃を先読みすることで一方的な攻撃を行っていた。

 

「ふむ、なんというパワー。それにこの速度! これが、獅子王機関の剣巫ですか!」

 

しかし、追い詰められているというのにオイスタッハの顔からは余裕の表情は消えない。

 

「いいでしょう、獅子王機関の秘術、たしかに見せてもらいました。やりなさい、アスタルテ!」

 

雪菜の攻撃が途絶えた隙を見つけ、オイスタッハが高らかにそう言い放つと彼の背後から素肌にケープコートを羽織った藍色の髪をした少女が姿を現した。

 

命令受託(アクセプト)執行せよ(エクスキュート)薔薇の指先(ロダクテュロス)”」

 

少女がそう呟くと、彼女の背中を突き破り巨大な一本の腕が現れた。

 

「!?」

 

雪菜はいきなり現れた虹色に輝く腕に驚き咄嗟に槍で防ぐ。

そのまま彼女はその巨大な腕と鍔迫り合いの体制に持ち込まれる。

 

「ぐっ…」

 

「……ッ」

 

しかしそこに突然変化が現れる。

機械的で無表情だった少女の表情が突然苦痛に歪み

 

「ああああああああっ!」

 

少女は苦悶の声を上げると、彼女の背中からなんともう一本の腕が現れ雪菜に振り下ろされる。

 

「!」

 

その突然の事に雪菜は反応が遅れてしまう。

雪菜の霊視は確かに未来を見れるがそれは一瞬先でしかもそれはあくまでも雪菜が反応できればの話で、しかも巨大な腕は彼女の眼前まで迫っていた。

 

「しまっ」

 

その時、彼女の脳裏をまるで走馬灯の様に今までの事が思い出されてきた。

獅子王機関の仲間たち、そして絃神島に来て出来た友達と先輩、そして監視対象である古城の顔が

 

(私が死ねば、先輩たち悲しんでくれるかな)

 

雪菜は真祖だというのにお人よしな吸血鬼とその吸血鬼の親友であり記憶喪失で、友達であると約束した先輩。そしてクラスメイトとなる同級生の顔を思い出した。

 

(きっと彼らは悲しんでくれるだろう。それに私、このままじゃ約束をやぶってしまう。…だから、死にたくない!)

 

雪菜はそう思い死にたくないと願うが、このままでは何も変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに割り込む存在が居ない限りは

 

「姫柊ぃーーーーーーーーーーっ!」

 

「!」

 

突然そんな声が聞こえると、雪菜に迫っていた腕が殴られ少女は腕が消されたのとその時の衝撃で後ろにバウンドしながら吹き飛ばされた。

 

そして雪菜の隣に一つの人影が降り立ち、雪菜がそちらに目を向けるとそこには先ほど待機させてきた筈の世界最強の吸血鬼”第四真祖 暁古城”が立っていた。

 

「せ、先輩!?どうしてここに」

 

「どうしてはこっちのセリフだ姫柊の馬鹿!」

 

「ば、馬鹿!?」

 

「様子見するだけじゃなかったのかよ!なんで戦闘になってんだ!」

 

「うっ」

 

古城にいきなり馬鹿呼ばわりされた上に痛いところを突かれた雪菜はバツの悪い顔をする。

 

「で……結局、こいつらはなんなんだ?」

 

「わかりません。 あの男は、ロタリンギアの殲教師だそうですが…」

 

「ロタリンギア? なんで、ヨーロッパからわざわざやってきて暴れているんだ、あいつは?」

 

「先輩、気をつけてください。 彼らは、まだ…」

 

雪菜が警告を終える前に、ケープコートを着た少女が立ち上がった。

そんな少女の後ろでオイスタッハは古城を観察して、一つの結論を導き出した。

 

「先程の魔力…貴方は、ただの吸血鬼ではありませんね。貴族(ノーブルズ)と同等かそれ以上……もしや、第四真祖の噂は事実ですか?」

 

オイスタッハはそう言い古城の正体の確認をとる様な口ぶりで話しかけるが、古城を脅威と認識したのか少女がゆらりと立ち上がった。

 

再起動(リスタート)完了(レディ)|命令を続行せよ(リエクスキュート)薔薇の指先(ロドダクテュロス)”」

 

少女は再び巨大な腕の眷獣を出現させると古城に向かってその腕を振りかぶった。

 

「やめろ、オレは別に、あんたたちと戦うつもりは!」

 

「待ちなさい、アスタルテ。 今はまだ、真祖と戦う時期ではありません!」

 

古城とオイスタッハの声が重なる。

突然の事に戸惑い瞳を揺らすアスタルテだが、最早一度命令を受けて攻撃を仕掛けた眷獣は止まらない。

巨大な腕はそのまま古城に向かって振り下ろされる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筈だった。

 

FINAL ATTACKRIDE

 

DoDoDoDOUBULU

 

トリガーフルバースト

 

そんな音が聞こえると、眷獣に向かって幾つもの光の弾丸が降り注いだ。

 

『!?』

 

「ぐあっ!」

 

その弾丸は古城と雪菜だけを避け少女の眷獣に殺到し無数の光の弾丸により少女は吹き飛ばされた。

 

「い、一体何が起こったというのです!」

 

「今の攻撃は一体…」

 

「ふぅ、危機一髪だな」

 

『!?』

 

突然聞こえた第三者の声にダメージにより動けないアスタルテ以外の全員の視線がそちらに集中した。

 

そこには、左が青く右が黄色の半分のボディーにネオディケイドライバーを付け、右手には青い片手銃”トリガーマグナム”が握られていた。

 

それは零が変身した姿”仮面ライダーD(ディケイド)ダブル ルナトリガー”だった。

 

「か、仮面ライダー!?」

 

「仮面ライダー!?」

 

「何ですって?」

 

古城の言葉をきっかけにその場にいる全員が驚愕した。

今怪人と同様に世間を騒がせている噂あの人物が目の前に現れたのだから。

 

「いやー危なかったな、大丈夫か?」

 

「あ、ああ。ありがとう」

 

「どういたしまして。さてと」

 

古城達の無事を確認すると、零はオイスタッハの方に向き直る。

そちらを見ると、流石にイレギュラーすぎたのか先ほどの余裕の表情が消え額に一筋の汗が見えているオイスタッハの姿があった。

 

「成程、貴方が噂の仮面ライダーですか」

 

「おやおや、ロタリンギアの宣教師様にまで知られているとは光栄と思った方が良いのかな?」

 

「ええ貴方の事はよく知っていますよ。何せ謎の怪物に立ち向かい人々を守る貴方の勇士は我々の間でも有名ですからね」

 

「俺はそんな大層な存在じゃねえよ。まあそれはさておきだ、お前らが近頃起こっている魔族狩りの犯人とみてまちがいなさそうだな」

 

「であれば、どうしますか」

 

「決まってんだろ」

 

零はトリガーマグナムの銃口をオイスタッハに向け構えた。

 

「このまま捕まえて、後は特区警備隊に引き渡すだけだよ」

 

「それは困りますね」

 

オイスタッハは何とかこの場を打開出来ないものかと考えたが、先ほどの曲がる弾丸をみてそれは非常に困難と結論が出て、打つ手なしという状況だった。

しかし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ADVENT

 

『!?』

 

突然鳴り響く零が使うものとは別の機械音。

 

すると、何処からともなく巨大な機械的な姿のサメが出てきた。

 

「なっ!?」

 

「なんじゃありゃ!」

 

「さ、サメ!?」

 

突然の事に零達は驚き、オイスタッハ達も驚愕の顔色を見せていた。

 

するとそのサメは零に向かって、両目の辺りが変形しそこに備えられた銃口からガトリング弾の様に銃撃を開始した。

 

「くっ」

 

零はトリガーマグナムの引き金を引き、そこから放たれる光の弾丸でそれを相殺しようとするが数発は地面に当た激しい地煙を上げた。

 

そして少しして銃撃が止み煙も晴れると、そこにはもうサメとオイスタッハ達の姿は見えなかった。

 

「今のサメは…」

 

「くっ、何だったんだ今のは」

 

「先輩!ご無事ですか!?」

 

「あ、ああ俺は大丈夫だ」

 

零は後ろを振り向くと、古城達が無事であることを確認し安堵する。

 

「どうやら無事みたいだな」

 

「ああ、ありがとうな。アンタのお陰で助かったよ」

 

「私からもありがとうございました」

 

「気にすんな。それよりもうすぐ此処に特区警備隊が来るはずだ、直ぐにここから離れた方が良い」

 

零はそう告げると、背後にオーロラカーテンを開きそれに飲み込まれるように姿を消した。

 

「!あの待ってください!」

 

雪菜の静止も虚しく、零はオーロラの向こうに消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危ないところでしたね」

 

「…助けてくれた事には礼を言いましょう。ですが、何者ですか貴方は」

 

人気のないビルの屋上には先ほどのオイスタッハとアスタルテ、そして水色のサメを思わせる鎧を身にまとった男”仮面ライダーアビス”が立っていた。

 

「私の名はアビス」

 

「アビス?」

 

「ええ、貴方方でいうところの仮面ライダーですよ」

 

「!」

 

アビスが自ら仮面ライダーを名乗ったことでオイスタッハは警戒の色をあらわにした。

 

「落ち着いてください、私は先ほどの仮面ライダーとは違う。むしろあなた方を助ける為に来たのです」

 

「何?」

 

アビスの突然の申し出にオイスタッハは困惑する。

 

「貴方とあの仮面ライダーは味方同士ではないのですか?」

 

「まさか、寧ろその真逆です」

 

アビスの声には少しばかりの怒りがにじみ始めていた。

 

「まあ私の話は良いじゃないですか。それより、どうでしょう。力が欲しくはありませんか?」

 

アビスはそういうと懐から一つのスイッチを差し出してきた。

 

「それは…」

 

「ゾディアーツスイッチ。これを使えば貴方は超人となり奴らを倒せます」

 

「…生憎ですが、そのようなものが無くとも私の計画は問題なく実行出来ます」

 

「ほう、果たしてそうでしょうか?」

 

「なんですって?」

 

アビスの何処か嘲笑う様なもの良いにオイスタッハはアビスを睨みつける。

 

「先ほどの戦闘を拝見させてもらいましたが、恐らくそこの人工生命体(ホムンクルス)が貴方の計画とやらの要なのでしょう。しかし先ほどの小娘と小僧だけならばまだしも、仮面ライダー相手では太刀打ちできない。それは先ほど対峙した貴方がよく分かっているのではないのですか?」

 

「…」

 

オイスタッハはアビスの言葉に反論出来なかった。

実際先ほどの戦闘もアビスがいなければ捕まっている可能性が高かったからだ。

 

「ですから、これは私からのささやかなプレゼントです。貴方はあの仮面ライダーが邪魔、そして私たちはあの仮面ライダーを倒してほしい。所謂利害の一致というやつですよ」

 

「……いいでしょう。貴方の口車に乗るとしますよ」

 

オイスタッハはアビスからスイッチを受け取った。

 

「しかし、あの男の言う通り中々の執念いえ、欲望といったところでしょうか」

 

「?」

 

「これならば、あの男から渡されたコレも役に立ちますね」

 

アビスは懐から一枚の銀のメダル”セルメダル”を取り出した。

 

 

 

『このメダルを何かしらの欲望を抱えている者に掲げるとコレを投入する投入口みたいなのが現れえるから、あとはセルメダルをそこに投入することでメダルの怪人”ヤミー”が生まれる』

 

 

 

男との会話を思い出しながらアビスはセルメダルをオイスタッハに向けた。

 

「!?」

 

「!」

 

するとオイスタッハの額にコインの投入口の様なものが現れ、それを見たアスタルテも驚愕の表情を浮かべる。

 

「ふん」

 

アビスはメダルをそこに向けて投げ入れると投入口は消えた。

しかしその後直ぐに、オイスタッハの体からまるでミイラの様な怪物が出てきた。

 

その怪物はオイスタッハから出て来ると直ぐに変化が訪れた。

その怪物は体の包帯の様なものが剥がれ落ちると、その下から人型のサメの怪物”サメヤミー”が現れた。

 

「グウゥゥゥ」

 

「こ、これは!?」

 

「こちらも私からのプレゼントですよ。コレは貴方から生み出された怪物”サメヤミー”ですよ。貴方の命令に従い、きっと貴方の助けになることでしょう」

 

アビスはそこまで言うと、オイスタッハの横を通り過ぎる前に彼の肩に手を置いた。

 

「では、頑張ってくださいね」

 

アビスはそこまで告げると、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ふん、貴様程度でディケイドを倒せるとは思わんが精々奴の力を引き出す踏み台となってくれる事を祈るぞ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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