紙束の決闘者 (藤岡優介)
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1話

紙束。使い道がほとんどない、あるいはまともに機能しないカードの俗称であり「カードではないただの紙」という蔑称。

 

デュエルモンスターズは圧倒的なまでに強いカード、それを際立たせるコンボ。シナジーが存在する。それを守らずにデッキを組む行為は自殺行為と同じ意味でありデュエリストならば余りにも嘗めた行為だった‥‥‥‥‥‥

 

 

 

 

海馬ランド前にあるカードショップ。

その店の店長である男はため息を付いていた。今日はデュエルアカデミアの実技試験があると言う事で朝早くから大量のお客さんがカードを買い漁っていった。繁盛するのは有り難いがテスト前にカードを買ってデッキを弄るのは不味い。

特に最後に買いに来たオドオドとした小柄な坊主は買ったパックから低レベルのモンスターしか出なかったらしく泣きながら商品を置いて走りさってしまうと言う事も合ったほどだ。

 

既に店内に人影は無く閑散としている。時間的にはデュエルアカデミアの実技試験は始まっているだろう。どうにか今年も受かって欲しいものだ‥‥‥

 

毎年と同じ事を考えながら店内に散乱しているパックの空袋を片付け様と腰を椅子からあげようとした時だった。

 

 

「すいません」

 

 

不意に上から声が掛けられて腰を抜かしそうになるのをこらえる。目の前にはいつの間に入ってきたのだろうか170後半はありそうな室内でも目深に帽子を被った男が立っていた。

 

「い、いらっしゃいませ。ご、ご注文は?」

 

突然の登場に驚きを隠せなかったからか声にも震えが出てしまう。

 

「デュエルモンスターズのパックを8つ下さい」

 

 

やれやれ、また客かと苦笑いしそうになる自分の商売人としてどうなのか解らない考えを感じながらデュエルモンスターズの棚をみる。

 

今日は朝から飛ぶようにカードが売れた為、明らかにパックの数が少ない。

 

「すいません、7パックしかありませんが良いですか?」

 

すると帽子の青年は明らかに落胆した表情を浮かべた。

 

「‥‥‥‥そうですか」

 

段々と不憫になってきたがどうしようも無い。

あきらめて帰って貰おうと考えたがふと、視界の端に先程捨てられたばかりのカードが目にはいる。どうせ、捨てられたカードで低ステータスのゴミカード‥‥‥‥

 

「あの、このカードならタダでいいですよ?」

 

そう言って帽子の男に渡すと驚いた様な顔でお礼を言ってきた。

 

 

その後、7パックを買って出ていく際に男は此方を振り替えって礼をしてはっきりとこう言った。

 

 

 

「これでデッキが組めますよ」

 

 

 

店長は耳を疑い冗談と受け取った。

何故ならデュエルモンスターズとはカードを自分で選び、考えたデッキを組まないと勝負以前の問題だからだ。デッキの軸となるカードは最大枚数積んで闘うのは当たり前だし、パックと言うのは運の要素が高いとは言え確実に寄せ集め。なんのコンボも無く、戦略も無い盲打の様なデッキなんぞ回せる筈は無い。

 

 

まさかあの男はデュエルアカデミアの受験生なのだろうか?そんな考えが過るが鼻で笑う。デュエルアカデミアの入学試験はデュエルエリートだけが通り抜ける事の出来る狭き門。あんな素人がもし、あの紙束で勝つことが出来たとするなら‥‥‥‥‥‥

 

 

「決闘王にも勝てるんじゃ無いだろうか‥‥‥‥‥‥」

 

 

そんな店長の呟きを聞くものは誰一人居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

俺は昔からデュエルモンスターズが好きだったが勝つことは出来なかった。必死にデッキを考え、コンボを考え、知り合いのデッキを見て参考にしたりもしたが何故か全てが裏目に出た。

 

その弱さっぷりと言ったら家の近くにあるカードショップの星形の奇抜なヘアスタイルのお兄さん(何故か異様にデュエルモンスターズが強かった。時々テレビで似たようなヘアスタイルを見かけるので流行りなのだろうか)が匙を投げた程だった。

 

とにかく原因は解らないが俺はデッキを組むととにかく裏目裏目にでてデュエルモンスターズで勝った経験はなかったのだ。

 

しかし、諦めずカードショップで何時も通り星のお兄さんとデュエルを始めた時だった。

 

 

(あっ‥‥‥‥これ今さっき買ったパックのカードだ)

 

手札にはブルーポーション、謎の手なんて言うバニラモンスターがこんにちわしていたのだ。間違えてデッキでは無く、寄せ集めのカードを使っていた。

 

まぁ、いいかとデュエルを始めたら何故かそのデュエルで初勝利を納める事になった。

 

 

驚いたさ。ああ、驚いたね。

お兄さんもポカーンとしてる顔が印象的だった。お兄さん曰く精霊がどうたらこうたら聞かされたが宗教勧誘かと思い聞き流した。

 

つまり、俺は適当に作ったデッキで闘えばある程度勝負になるらしい。自分の好きなカードが使えないのは辛いがお兄さん曰くこの世に使えないカードは無いらしいので頑張って見たいと思う。

 

そして、今俺はデュエルアカデミアの入学試験会場に来たのだがデッキを揃えるのに時間がかかり遅れてしまった。その性で試験をあわや受けさせて貰えない事になりそうだったんだがどうやら話が着いたらしい。

 

 

「我々、デュエルアカデミアにドロップアウトボーイは二人も要らないノーネ。今から遅れてきた二人にデュエルさせて勝った方を試験合格にしてあげるノーネ」

 

金髪の長身の男が最高責任者らしく、そいつが大声で俺を見ながらしゃべっている。問答無用で失格にされてもおかしくない状況でこれはかなりの温情と言えるだろう。しかし、負けたら入学出来ないのか‥‥‥‥‥‥まぁ、負けたら潔く諦めよう。

 

俺は知り合いから譲って貰った旧式のデュエルディスクを左手に装着し、今さっき完成したデッキをセットする。

 

どうか、回りますように‥‥‥‥‥‥祈りながらデュエルフィールドに上がる。

 

観客席には受験を終えたであろう生徒達が座っている。

 

既に対戦者である、受験生がフィールドに立っていた。その受験生は入学する事が出来ないかもしれないこの場面で心からの笑みを浮かべて話しかけくる。

 

「おっ! あんたが俺の相手か。俺は遊城十代。よろしくな!」

 

明るくて、気の良さそうな奴だ。

 

「小波だ。よろしく頼む。お互いに悔いの無いようにな」

 

「ああ、わかってるさ! 早速始めようぜ!」

 

遊城がデュエルディスクを構え、俺もデュエルディスクを構える。

 

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

 

遊城LP4000

 

小波LP4000

 

 

デュエルディスクに表示された先行は遊城の方だ。

 

「行くぜ! 俺のターン、ドロー!」

 

 

遊城が気合いを入れてドローする。

さて、どんなデッキが飛び出して来るだろうか‥‥‥‥

 

 

「俺は攻撃表示でE・HEROスパークマンを召喚!」

 

 

E・HEROスパークマン

通常モンスター星4/光属性/戦士族/攻1600/守1400

様々な武器を使いこなす、光の戦士のE・HERO。

聖なる輝きスパークフラッシュが悪の退路を断つ。

 

 

遊城のフィールドにアメリカンコミックのヒーローの様な姿をしたモンスターが現れる。なるほど‥‥‥‥【HERO】デッキか。【HERO】は戦士族の下級モンスターと幅広いサポートカード、そして融合により強力なモンスターを召喚するデッキだったな。昔組んで融合が一枚も来なくてジリ貧で負けた思い出がある。

 

 

「さらに俺はカードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー」

 

 

カードを引いても解る統一感の無さだな。手札にあるカードは見事な迄にバラバラ。曰く、紙束って奴だがやってやれない事は無い。

 

 

「俺は手札から成金ゴブリンを発動!」

 

 

フィールドに恰幅の良いゴブリンが現れ、壷からカードを一枚俺の方へ渡し遊城の方へ

金をばらまく。

 

 

成金ゴブリン

通常魔法

自分のデッキからカードを1枚ドローする。

その後、相手は1000ライフポイント回復する。

 

 

「俺は効果でカードを一枚ドローし、相手は1000ポイントライフを得る」

 

遊城LP4000→5000

 

「へへっ、サンキューな!コナミ!」

 

このカードは完全に強欲な壷が主流の今時使う人も少ないカードの一つだな。

デメリット無しで2ドローが馬鹿げてるだけか。

 

とりあえず今のドローで召喚出来るモンスターが来て良かった。

 

しかし、ピンポイントにこいつが来るとはな。

 

 

「俺もE・HEROスパークマンを攻撃表示で召喚する」

 

『トァッ!』

 

掛け声と共に俺の頭上から飛び降りる様に登場する俺のスパークマン。

 

「おっ! コナミもHERO使いなのか! くぅ~ワクワクしてきたぜ!」

 

遊城が興奮するかの様に早とちりしているが俺のデッキに入っているHEROはスパークマンだけである。

 

 

「さらに俺はスパークマンに装備魔法伝説の剣を装備! これによりスパークマンの攻守は300アップする!」

 

 

伝説の剣

装備魔法

戦士族のみ装備可能。

装備モンスター1体の攻撃力と守備力は300ポイントアップする。

 

 

攻1600/守1400→攻1900/守1700

 

スパークマンが目の前に突き刺さる巨大な剣を片手で振るう姿はまさしく物語の中のヒーロー‥‥‥‥には見えないな。色物過ぎる。

 

 

 

『で、伝説の剣‥‥‥‥だと?』

『あの、微妙過ぎる上がり幅の装備魔法を採用してるのか。ドロップアウトはこれだからな』

 

 

外野が煩いな。俺も出来るならデーモンの斧が積みたいね。

 

 

「これでお前のスパークマンの攻撃力は越えた。 さらに俺は魔法カード『名推理』を発動する」

 

ターバン巻いた老人が不意に現れ空中に虫眼鏡を翳すと俺の回りに1から12までの数字が浮かぶ。

 

 

「さあ、この中の数字を一つ選べ」

 

「‥‥‥‥どんな効果かは解らないが、俺は4を選ぶぜ!」

 

「数字が選択された事により名推理の効果が起動する」

 

俺の声と同時にデッキトップのカードが捲られて行く。

 

「名推理は俺のデッキからカードを一枚づつ捲りモンスター以外のカードを墓地に送り、モンスターが捲られた時にそのモンスターが相手の選択したレベル以外の時に特殊召喚できる!」

 

名推理

通常魔法

相手プレイヤーはモンスターのレベルを宣言する。

通常召喚可能なモンスターが出るまで自分のデッキからカードをめくる。

出たモンスターが宣言されたレベルと同じ場合、めくったカードを全て墓地へ送る。

違う場合、出たモンスターを特殊召喚し、それ以外のめくったカードは全て墓地へ送る。

 

「でも、運が悪かったな! 俺もHEROを使ってるから解るけどE・HEROは殆どのカードがレベル4だぜ!」

 

 

ニヒヒと、くったなく笑う遊城を尻目に数枚の魔法・罠カードを墓地に送った後俺のデッキトップにモンスターが姿を現す。

 

「出たモンスターはレベル5モンスター『モリンフェン』! よってモリンフェン様を特殊召喚!」

 

 

『オオオオン!』

 

光輝くエフェクトの中からその悪魔は姿を現す。

 

鮫の様な肌。

ギラギラとした赤い目。

そして、魂を刈り取る形をした長い爪。

その全容から見て取れる恐ろしさは十分にモリンフェンの強さを表していた。

 

「いっ!? E・HEROじゃないのか!? 」

 

 

今さら気づいても遅い。

モリンフェン様の前に膝をついて命乞いでもするんだな!

 

フハハハハハ‥‥‥‥はぁ。

 

 

モリンフェン

通常モンスター

星5/闇属性/悪魔族/攻1550/守1300

長い腕とかぎづめが特徴の奇妙な姿をした悪魔。

 

 

そうこのモリンフェン様攻撃力がなんとスパークマンに劣るのだ。星5の上級の癖に。

 

 

『なんだ!? あのクズカードは!?』

『まさか入学試験であんなカードを使う奴が居るなんてな』

『モリンフェン様キター!』

 

 

にわかに騒がしくなる客席の反応は何時も通りである。

 

 

「畜生め! バトルだ! スパークマンでスパークマンを攻撃! 『スパークフラッシュ斬』!」

 

『トゥ!ヘァ!』

 

スパークマンはスタイリッシュに動きながら電光を纏う剣で自分の分身を切り裂く。

 

遊城LP5000→4700

 

 

「スパークマンが‥‥‥‥‥だがヒーロはそんなに簡単にはやられたりなんかしないぜ! 罠カード『ヒーロー・シグナル』発動!」

 

爆発したスパークマンの位置からスポットライトがドームの天井に写しだされる。

 

ヒーロー・シグナル

通常罠

自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時に発動する事ができる。

自分の手札またはデッキから「E・HERO」という名のついたレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。

 

「ヒーローの意志はまた、新たなヒーローへと受け継がれる! 俺はデッキから『E・HEROクレイマン』を守備表示で特殊召喚!」

 

 

ドームの天井に写し出されたスポットライトから大きな影が落ちる。

 

ドスン!という音と共に大きな壁が現れる。

 

 

E・HEROクレイマン

通常モンスター

星4/地属性/戦士族/攻 800/守2000

粘土でできた頑丈な体を持つE・HERO。

体をはって、仲間のE・HEROを守り抜く。

 

 

なるほど、これは硬い壁だ。

かぁー、辛いわー。モリンフェン様は1550しか火力無いから辛いわー。

 

 

「命拾いしたな‥‥‥‥俺はカードを三枚伏せてターンエンドだ」

 

手札も無くなりやることも無いので無駄に格好を着けてターンエンドする。

 

「俺のターンだ! ドロー! よしっ! コナミお前にマイフェイバリットカードを見せてやるよ! 俺は手札から融合を発動!」

 

 

何でピンポイントにそれを引いてしまうん?

 

 

融合

通常魔法

自分の手札・フィールドから、

融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、

その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

融合はHEROの主軸を担うカード。つまりかなり不味い。

 

 

「手札のE・HEROフェザーマンとE ・HEROバーストレディを融合! 現れろマイフェイバリットカード! 『E ・HEROフレイム・ウイングマン』!」

 

E・HEROフレイム・ウイングマン

融合・効果モンスター

星6/風属性/戦士族/攻2100/守1200

「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

 

赤と緑の配色の映えるモンスターが降り立つ。

 

 

「いくぜ! コナミ! フレイム・ウィングマンでスパークマンを攻撃! 『フレイムシュート』!」

 

 

ああ、炎に巻き込まれていくスパークマン=サン。オタッシャデー!

 

しかし、この程度では終わらないんだよなぁ‥‥‥‥‥‥

 

「更にフレイム・ウィングマンの効果により、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える」

 

ジャンプして間合いを詰めたフレイム・ウィングマンが右手のドラゴンから焔を俺に打ち出す。

 

あまりのソリッドビジョンのリアリティに頭を抱えそうな程だったが醜態を晒すのは恥ずかしいので真顔で耐えることにした。だが涙が出そうな程怖いなこれ。

 

小波LP4000→1900

 

一気にライフが削れたが、何とかなるさ。

 

俺は『四枚に増えた』手札を眺める。

 

 

「あり? 何で手札が?」

 

ようやく遊城も気づいたようだな。

 

「俺はお前の攻撃宣言時にこのカードを発動していた」

 

俺のフィールドには、一枚の永続罠が存在していた。

 

 

ラッキーパンチ

永続罠

1ターンに1度、相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。

コイントスを3回行い、3回とも表だった場合、

自分はデッキからカードを3枚ドローする。

3回とも裏だった場合、このカードを破壊する。

また、フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊された場合、

自分は6000ライフポイントを失う。

 

「そして、このカードの賭けに勝ったって訳だ」

 

既に俺は窮地に立っている。ラッキーパンチが破壊されれば俺のLPは消し飛んで何も残らない。

まぁ、モリンフェン様をフレイム・ウィングマン破壊されてクレイマンにダイレクトアタックされたら終わりだから、変わらないがな!

 

「楽しくなってきたぜ! 俺はターンエンドだ!」

 

「俺のターンドロー。俺は手札から魔法カード『カード・フリッパー』を発動! 手札のカードを一枚墓地に送り、相手フィールド上のモンスターの表示形式を入れ換える」

 

上空から現れた糸が遊城のモンスターに絡み付き強制的に表示形式を変更させる。

 

 

カード・フリッパー

通常魔法

手札を1枚墓地へ送って発動する。

相手フィールド上に存在する全てのモンスターの表示形式を変更する。

 

「げっ! クレイマンが攻撃表示に!」

 

クレイマン守備力2000→攻撃力800 フレイム・ウィングマン攻撃力2100→守備力1200

 

「行くぞ。バトルだ。モリンフェン様でクレイマンに攻撃!『テラー・ネイル』!」

 

『オボロロロロロ!』

 

一ターン生き残ったのが奇跡だったがモリンフェンが活躍してやがる、どうなってんだ。

 

「それを通す訳にはいかないな! 罠発動! 『ヒーローバリア』!」

 

ヒーローバリア

通常罠

自分フィールド上に「E・HERO」と名のついたモンスターが

表側表示で存在する場合、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。

 

『空気読めよ!モリンフェン様の活躍の時やぞ!』

 

さっきから観客が一人煩いな。

 

 

「甘いな、遊城! モリンフェンはその上をはるかに駆け抜ける! 速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』発動!」

 

ダブル・アップ・チャンス

速攻魔法

モンスターの攻撃が無効になった時、

そのモンスター1体を選択して発動できる。

このバトルフェイズ中、

選択したモンスターはもう1度だけ攻撃できる。

その場合、選択したモンスターはダメージステップの間、攻撃力が倍になる。

 

「ダブル・アップ・チャンスは攻撃を無効にされた時のみ発動できる速攻魔法! 攻撃力を倍にしてもう一度攻撃出来る!」

 

『ギョオオオオオ!』

 

モリンフェンに力が集まり姿が大きくなっていく。

 

モリンフェン攻撃力1550→3100

 

なんと伝説のブルーアイズ越えましたよ。

あのモリンフェンが。

 

 

「消し飛べ‥‥‥‥『退廃のテラーストリーム』!」

 

モリンフェン様の体が光輝き突進する。

 

『ヴアオアオア!』

 

ビームは出なかったみたいですね。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

クレイマンを破壊された勢いで後ろに押し出される遊城。あれ?ソリッドビジョンだよな?

 

遊城LP4700→2400

 

とにかくライフは削った!

 

「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

「コナミ、スゲー強いな! 俺はこんなに楽しいデュエルは初めてだ! ドロー! まずはフレイム・ウィングマンを攻撃表示に変更する! そしてバトルだ! フレイム・ウィングマンでモリンフェンに攻撃!『フレイムシュート』!」

 

この攻撃が通れば俺は負ける、ならば防ぐまでよ!

 

「俺は罠カード『ハーフorストップ』を発動する!」

 

 

ズモモモ‥‥‥‥‥‥と言う地響きと共に斧が二本現れる。

 

 

ハーフorストップ

通常罠

相手ターンのバトルフェイズ時のみ発動する事ができる。

相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●バトルフェイズ終了時まで、自分フィールド上に存在する全てのモンスターの攻撃力は半分になる。

●バトルフェイズを終了する。

 

「お前は二つの効果の内どちらかを選ばなければならない。フレイム・ウィングマンの攻撃力を半分にするか、バトルフェイズを終了するかだ。どちらを選ぶ?」

 

 

まぁ、十中八九ストップを選ぶだろ「ハーフを選択するぜ!」 why?

 

 

銀の斧がフレイム・ウィングマンに投擲され攻撃力が半減する。

 

フレイム・ウィングマン攻撃力2100→1050

 

しかし、なぜ?あの攻撃力じゃ何も出来ない。モリンフェン様の返り討ちが関の山だぞ?

それぐらい解ってる筈じゃ「俺は速攻魔法『収縮』を発動! 対策は当然モリンフェンだ!」解っとる!対策とってたわ!

 

 

収縮

速攻魔法

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。

選択したモンスターの元々の攻撃力はエンドフェイズ時まで半分になる。モリンフェン攻撃力1550→775

 

 

何て微妙なステータス!

 

「食らえ!」

 

再度俺はモリンフェンと共に焔に包まれる。

 

目がチカチカして来そうだ。

 

小波LP1900→75

 

こんな数値見たことが無いんですがそれは。

 

「俺はターンエンドだ」

 

そろそろ本格的に不味くなってきた。

次のドローに全てが掛かってる。

 

「俺の‥‥‥‥ターンドロー!」

 

引いたカードは‥‥‥‥‥行けるか?

失敗したら死ぬな。

 

 

「俺は魔法カード『未来への思い』を発動!」

 

 

『未来への思い』

 

通常魔法

自分の墓地のレベルが異なるモンスター3体を選択して発動できる。

選択したモンスター3体を特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は0になり、効果は無効化される。

その後、自分が?????召喚を行っていない場合、このターンのエンドフェイズ時に自分は4000ライフポイントを失う。

また、このカードを発動するターン、

自分は?????召喚以外の特殊召喚ができない。

 

 

「未来への思いは墓地から違うレベルのモンスターを三体、効果を無効化して特殊召喚する。俺は墓地の『モリンフェン』『E・HEROスパークマン』『ギゴバイト』を甦らせる」

 

 

三つのガラス瓶が割れ三体のモンスターが姿を現す。

 

『ギゴバイト』はカード・フリッパーの時に墓地へと送ったカードだ。

 

 

ギゴバイト

通常モンスター

星1/水属性/爬虫類族/攻 350/守 300

今はまだおだやかな心を持っているが、邪悪な心に染まる運命を背負っている…。

 

 

「だが俺はエンドフェイズに4000のライフを失う。更に」

 

E・HEROスパークマン攻撃力0

モリンフェン攻撃力0

ギゴバイト攻撃力0

 

「特殊召喚されたモンスターの攻撃力は0になる」

 

「それじゃあ、俺のフレイム・ウィングマンは倒せないぜ?」

 

そんな事は解ってる。

 

「ならば俺は装備魔法『進化する人類』をモリンフェンに装備する」

 

 

進化する人類

装備魔法

自分のライフポイントが相手より少ない場合、

装備モンスターの元々の攻撃力は2400になる。

自分のライフポイントが相手より多い場合、

装備モンスターの元々の攻撃力は1000になる。

 

「これによってモリンフェンの攻撃力は2400になる」

 

モリンフェン攻撃力0→2400

 

『ヤッダァバァァ!』

 

モリンフェンは羽が消え体が小さくなり二足歩行の気持ち悪い何かへと変化した。

 

「フレイム・ウィングマンの攻撃力を越えた!?」

 

 

まだだ。まだ終わらんよ!

 

「俺はギゴバイトに『幸運の鉄斧』を装備!」

 

 

幸運の鉄斧

装備魔法

装備モンスターの攻撃力は500アップする。フィールドに表側表示で存在するこのカードが

相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。

自分はデッキから1枚ドローする。

 

 

ギゴバイト攻撃力0→500

準備は整った!

 

 

「バトル! モリンフェンでフレイム・ウィングマンに攻撃! 『退廃のテラーストリーム』!」

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァ!』

 

フレイム・ウィングマンをタコ殴りにしていくモリンフェン。

 

なんともシュールだ。

 

遊城LP2400→2100

 

「更にギゴバイトでダイレクトアタック! 『幸運の一撃』!」

 

『テエー!』

 

 

攻撃が遊城に入る前に発動させて貰う!

 

「俺は墓地のスキルサクセサーを発動する。これによりギゴバイトの攻撃力は上昇する」

 

スキルサクセサー

通常罠

自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで400ポイントアップする。

また、墓地のこのカードをゲームから除外し、

自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。

選択した自分のモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで800ポイントアップする。

この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できず、

自分のターンにのみ発動できる。

 

「墓地から罠を発動だって!?」

 

ギゴバイトの体にオーラが纏う。

 

ギゴバイト攻撃力500→1300

 

遊城LP2100→800

 

「止めだ。俺は罠カード『破壊指輪』を発動!」

 

 

破壊指輪

通常罠

自分フィールド上の表側表示モンスター1体を破壊し、

お互いに1000ポイントダメージを受ける。

 

 

「破壊指輪は俺のフィールドのモンスターを一体破壊し、お互いに1000のダメージを与えるカードだ。俺はモリンフェンを選択する」

 

「ちょ、ちょっと待て! 俺達のライフは‥‥‥‥‥‥」

 

遊城LP800

 

小波LP75

 

「爆発せよ!モリンフェン!」

 

『グボボボ!』

 

ッボン!と言う音と共にお互いのライフが0になる。

 

「引き‥‥‥‥‥分けか」

 

ふむ、この場合入学試験はどうなるんだろうか?

 

 

「ええ!? 納得いかねー! なぁ、コナミ! もう一回デュエルしようぜ!」

 

遊城は試験の結果より勝敗が気になるのか‥‥‥‥‥‥面白い奴だ。

 

とりあえず、話を聞いて家に帰って寝よう。慣れない事をした性か体が重い。

 

 

もし、この場に霊感の強いものがいたら腰を抜かしただろう。一人の男の後ろに列を成すようにして奇妙な風貌の化け物が続いていたのだから。

 

 

 

 

 

一方、二人のデュエルを見ていた観客達。

 

「ははは! あの一番君とその相手の彼はすごいな! 俺もまだまだと言う事かな」

 

優等生は気を引き締め、

 

「あの子たち面白いわね。そう思わない?」

 

「あの、帽子の男」

 

「どうしたの? 亮?」

 

「‥‥‥‥‥‥いや、何でもないさ」

 

クイーンは何も気付かず、カイザーは男のデッキの特異性に気付き初めていた。

 

しかし、当の小波たちはそんな注目は露知らず後日、家にデュエルアカデミアの合格通知が届き物語は舞台をデュエルアカデミアへと移す。




完全に趣味でやってしまいました。
あんまりなボンコツ決闘者なので『なってない!』
と思う方はどんどん感想よろしくお願いします


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2話

デュエルアカデミアは太平洋の孤島に建設されており、そこへの移動手段はヘリか船に限られる。

 

まさか、入学と同時に寮生活を送ることになるとはな。ヘリの中でパンフレットを読みながら小波は帽子を深く被り直す。さっきから、居心地が悪い。

 

 

その原因は回りからの視線にある。

 

あの遊城との入学試験で行ったデュエル。あれによって少し悪目立ちしてしまったらしい。あの時行われたデュエルは短い物だったが、お互いにエースカードを出し合い、真っ向からぶつかり合う密度が濃厚で観るものをワクワクさせるようなデュエルだったろう。

 

 

 

俺のエースカードがモリンフェン様みたいな扱いを受けてるがな。

 

 

 

それもその筈。モリンフェンは本来、その微妙過ぎるステータスから扱われて居なかったいわゆるクズカード。実際弱いし使いこなせるか?と聞かれれば勘弁してくれと返すくらいなのだ。

しかし、小波はモリンフェンと言う弱いカードをデッキに組み込みながらあそこまでのデュエルを繰り広げのだ。

もしも、あのデッキのカードがモリンフェンがもっと強いカードだったらどうなって居たのだろうか‥‥‥‥‥‥

 

また、あのデッキを自在に操るデュエルタクティスとは底知れぬ‥‥‥‥‥‥

 

 

 

 

そんな高まり過ぎた期待は少々、重い。

実際、小波は打てるタイミングでカード打っているだけであり、そのプレイングに何らデュエルタクティスとは関係がない。

 

 

‥‥‥‥‥‥と目の前の奴にもつい今しがた説明したばかりだったんだがな。

 

 

 

「なぁー、コナミ! アカデミアに着いたらデュエルしようぜー。なぁ、いいだろー」

 

 

俺と遊城の合格条件は勝利。

 

だったが前回の試験結果は異例の引き分け。

つまり、どっち付かずだった。当然、不合格と言う流れだったらしいが、何と校長が俺達のデュエルを見ていたらしくそのまま合格と言う事になったらしい。(それが不服の裁定だったらしく合格通知には態々、直筆で『デュエルアカデミア生徒とはなんたるか』についてフランス語訛りで書かれたレポートが同封されており、とても為に成った。面倒見のいい先生が居るらしい)

 

つまり、遊城はデュエルで白黒はっきり着けたいと言う事らしい。

 

しかし、今の俺は確実に負けるだろう。

それは確信を持って言える事だ。

俺のカードの強さには回数制限がある。

一度、調子に乗って星のお兄さんに三連勝してたら、星のお兄さんの知り合いらしい凡骨っぽいお兄さんともデュエルをすることになったがものの見事にLPを削ることすら出来ずに敗北した。

しばらく、実験を重ねた事で解ったがデッキを使いなれて来るとデッキの回る確率が下がる。少しずつランダムにカードを入れ換える事で若干防げるが根本的には解決しないので、パックを買ったりしてデッキを組み直すしかない。

 

ほとんど呪いじゃね?と考えてしまうのも無理は無いだろう。それ以来、俺は出来るだけ大量のストレージカードを集めて無作為にデッキを組むことで回して来たのだ。

 

そして前回入試で使っていたデッキはそろそろ変えないと不味い。しかし、遊城を待たせるのに自分の都合を押し付けるのはな‥‥‥‥‥しばらく、お茶を濁していれば大丈夫かな。

 

 

「遊城、お前は強いからな暫く準備してから最高の状態で勝負したいんだ」

 

それっぽい事を言うと遊城は嬉しそうに笑い。

 

「ヘヘッ! そう言う事なら楽しみにしとくぜ! コナミ!」

 

何とか納得してくれたらしいが素直過ぎて辛い。

 

『デュエルアカデミアに到着します。お降りの際は忘れ物など無い‥‥‥‥‥』

 

入学式で受け取った、デュエルアカデミアの制服へと腕を通す。もともと、帽子も赤だったので問題は無いんだがな。しかし、この真っ赤な制服は俺の回りの気温を上げてるのでは無いだろうか。

 

どの学校でも学長の話は長いと言う定例通りデュエルアカデミアの学長の話は長く、遊城に至っては立ったまま寝ている程だった。

 

その話が終わったのちクラスが振り分けられる。

デュエルアカデミアでは上から順に『オベリスクブルー』『ラーイエロー』『オシリスレッド』の三つにクラス分けされているらしい。

 

 

「おっ! 俺はオシリスレッドだ!」

 

俺も支給されたPDFを確認するとオシリスレッドの用だ。と言うか制服の色がクラスを現しているのでは無いだろうか?

 

 

「やぁ、少しいいかな?」

 

 

不意に声を掛けられ振り返るとそこには黄色い制服を纏った好青年然とした男が立っていた。

 

「お、二番じゃないか! お前もオシリスレッドか?」

 

「いや、俺は見ての通りラーイエローさ、一番君。そしてそっちがこの前の試験で一番君と闘った小波くんかな?」

 

「ああ、小波だ。よろしく。あんたは?」

 

「ああ、俺の名前は三沢大地。君達の入学試験を見て感銘を受けたよ。あんな低ステータスカードも戦略次第ではあんなにも強くなるんだね」

 

 

うん、モリンフェンが強いんじゃ無くて運が良かっただけなんだがなぁ‥‥‥‥

しかし、謙遜するのも嫌味ったらしいので素直に受け取っておく。

 

「まぁな。デッキが答えてくれたのさ」

 

これ、毎月デッキを変えてる奴の言葉じゃないな。

 

 

「なるほど、その自信も強さの秘訣か‥‥‥‥‥‥『デュエリストたるもの常にエンターテイナーであれ』と言う言葉もあるぐらいだしね。しかし、君達が何故オシリスレッドなのか解らないが‥‥‥‥‥‥」

 

 

自分で都合良く解釈した後に三沢は何やら不穏な事を呟いた。

 

「何か引っ掛かる言い方だな」

 

「失敬。では失礼するよ。後、オシリスレッドの寮はあっちだよ」

 

 

去るときまで爽やかな奴だったな。

 

「よし、行って見ようぜ!」

 

 

遊城の提案を断る理由もないので三沢に教えられた方向へと歩いて行くと遠くに見える赤色の建造物。段々と近づくにつれその全貌が明らかになっていく。外壁が長い年月で劣化し茶色く染まり、鉄製の階段や手すりは表面を覆うように錆び付いている。まるで映画のワンセットのような作りだ。

 

 

「なかなか、風情があるな。造りも確りしていて悪くない」

 

「コナミもそう思うか? 悪くないよな。海のすぐ近くだから潮風が気持ちいいぜ」

 

俺と遊城はとりあえず荷物を置くことにする。オシリスレッドでは基本的に一部屋に三人で生活するらしい。

 

「コナミいいなぁ。一人部屋かよ!」

 

遊城は定例通りだが俺だけ溢れたらしく、一人部屋だ。

 

「そんな事は無いさ。俺も友人との共同生活を楽しみにしてたさ」

 

後ろ手を振りながら部屋を開けるとこまめに掃除されて居たからか埃一つ落ちていない畳の上に荷物を置く。スケジュールでは歓迎会があるようだが暫く時間がある。

 

少し、デュエルアカデミアを探索してみるか‥‥‥‥‥‥デュエルディスクにカードを入れ込み部屋をでた。

 

 

とりあえず一番近い所から回るか、オシリスレッドから近いのはデュエル場か。実技試験などはここで行い、また授業以外では一般解放されているらしい。とりあえず観に行ったら誰かデュエルしてないだろうか。

暇潰しにでもなればいいんだが。

道を幾つか曲がり、拓けた場所に出る。

10メートル程の円に競り上がった舞台のようなデュエルフィールド。その回りを囲むように全校生徒を収用出来る観客席。最新式のソリッドビジョン機器にサウンドシステムも良質と言う触れ込みだが見ただけじゃ全く判断出来んな。

 

 

残念ながらデュエルをしている奴は居ないらしい。とりあえず体感して見るのがベストなんだが本当に誰かデュエルしないのか。

 

回りにはデュエルを開始する気配は無く、談笑しているオベリスクブルーの生徒のみ。

 

うーん‥‥‥‥‥‥彼らに行きなり『お二人でデュエルしてください』とは言いづらいし、俺がデュエルに誘うことになるのか‥‥‥‥‥‥

 

とりあえず敬語は同学年に対してどうだろうか?

礼儀正しいのは結構だが慇懃無礼感が否めないもう少しフランクな感じで良いか。

 

 

小波は意を決しオベリスクブルーの生徒の前へと進み一番後ろの男に話しかける。

 

 

「おい、デュエルしろよ」

 

 

瞬間辺りの温度が一度程下がったのでは無いか。う

 

む、ダメだったか?

 

 

「おい! お前! お前は誰に向かってデュエルを挑んでる!」

 

「中等部ナンバーワンで未来の決闘王と名高い万丈目さんだぞ! オシリスレッドのお前なんざ相手にしてる暇は!」

 

お、おう。良くわからないが。

そんな中一番後ろにいた男が声を上げる。

 

 

「Be Quiet、諸君。こう言う雑魚が付け上がるのはアカデミアに取っても損失だ。この万丈目準が直々に鼻柱を叩き折ってやる事にしよう」

 

 

うーん、凄い自信満々だな。

此くらい自信を持てるって事はかなり強いのか。近所のお兄さんにしか勝てないような紙束何だが大丈夫だろうか。

 

「ふん、オシリスレッドのクズごとき一瞬で片付けてやろう」

 

 

とにかくデュエルしてくれるならありがたい。

さぁ、最新式のソリッドビジョンとやらを見せて貰おうか!

 

 

「「デュエル!」」

 

小波LP4000

万丈目LP4000

 

 

ディスクによると俺が先行らしいな。

 

 

「先行は貴様に譲ってやろう」

 

「どーも。俺のターンドロー」

 

 

よし、召喚出来るカードが来た!

 

 

「俺は『イエロー・ガジェット』を攻撃表示で召喚する」

 

俺のフィールドに複数の黄色い機械部品が集まり一体のモンスターとなる。

 

 

『ギィーン!』

 

 

凄いな。まるで生きてるみたいだ。イエロー・ガジェットが俺の足元を喜ぶ様に走り回りフィールドへと戻っていく。最新設備恐るべし。モンスターの登場の仕方も独特だな。

 

 

「『ガジェット』か。あの決闘王も愛用していたと言うカードか。確か効果は‥‥‥‥‥」

 

「そう。イエロー・ガジェットには召喚に成功した時発動する効果がある」

 

 

イエロー・ガジェット

効果モンスター

星4/地属性/機械族/攻1200/守1200

このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「グリーン・ガジェット」1体を手札に加える事ができる。

 

 

ことデュエルモンスターズにおいてモンスターを手札に加える手段はあまり多くは無い。だがガジェットのカードには標準で違うガジェットを手札に加える効果を持っているのだ。その効果によるアドバンテージは素晴らしい。

 

 

「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

「何!? 何故イエロー・ガジェットの効果を発動しない!?」

 

 

発動しないのでは無く発動出来ないのである。

このデッキにはイエロー・ガジェット『しか』ガジェットモンスターは入っていないからな!

 

「チッ! ドロップアウトかと思えばデュエルの文字も知らんド素人とはな! デッキは最大限力を発揮出来るように構成することが当たり前! そんな事も理解出来んのか!」

 

いや、解る。俺もこんなデッキを使って来る奴がいたら頭が沸いてるんじゃないかと思う。でも、仕方ないな。これが俺にとってのベスト何だから。

 

「これが俺の最大限、力を発揮したデッキだ。御託は良いから掛かってこい」

 

取り合えず、デュエルを続けよう。

 

「デカイ口を叩くだけなら子供だって出来る! 良いか! デュエルモンスターズはその性質、どうしても運の要素が入るが結局勝敗を決めるのは洗練されたプレイング、つまり知性だ。それが足りない貴様の様なドロップアウトなぞ俺様の敵ではない! 俺のターンドロー!」

 

 

さて、相手のターン。

どんなデッキ何だろうか。

 

 

「俺は『地獄戦士《ヘルソルジャー》』を攻撃表示で召喚する!」

 

鎧兜に身を包んだ戦士が相手フィールドに姿を現わす。

 

地獄戦士

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1200/守1400

このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、

この戦闘によって自分が受けた戦闘ダメージを相手ライフにも与える。

 

なるほど、相手から与えられた戦闘ダメージをそのまま返すカードか‥‥‥‥‥‥厄介だな。

 

 

「さらに俺は地獄戦士に『悪魔のくちづけ』を装備する!」

 

突如現れた緑色の肌をした女悪魔が地獄戦士にキスをした瞬間、地獄戦士の体格が大きくなっていく。

鎧まで大きくなるのは何故だろうか。

 

 

悪魔のくちづけ

装備魔法

装備モンスターの攻撃力は700ポイントアップする。

このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、

500ライフポイントを払う事でこのカードをデッキの一番上に戻す。

 

地獄戦士攻撃力1200→1900

 

一瞬にしてイエロー・ガジェットの攻撃力を越えた。俺のデッキの伝説の剣とはえらい違いだ。

 

 

「バトル! 地獄戦士でイエロー・ガジェットを攻撃! 『地獄突き』!」

 

万丈目の地獄戦士の無慈悲な一撃がイエロー・ガジェットに襲いかかるがその攻撃を通す訳には行かんな。

 

「罠カード発動。『燃える闘志』」

 

カードの効果を受けたイエロー・ガジェットは全身からオーバーヒートしたかの如く焔を撒き散らす。

 

「なんだ!?」

「燃える闘志は特定条件下でしか効果を発揮しない罠カード。その条件は『相手フィールド上に元々の攻撃力より高い攻撃力を持つモンスターが存在する時』だ」

 

こんな使いづらいカード、ブラフに伏せてたんたが運が良かった。

 

 

燃える闘志

通常罠

発動後このカードは装備カードとなり、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体に装備する。

元々の攻撃力よりも攻撃力が高いモンスターが相手フィールド上に存在する場合、装備モンスターの攻撃力はダメージステップの間、元々の攻撃力の倍になる。

 

「燃える闘志を装備する事によりイエロー・ガジェットの攻撃力は倍になる。反撃しろ、イエロー・ガジェット!」

 

イエロー・ガジェット攻撃力1200→2400

 

飛んでくる剣を華麗に交わし昇龍の要領で地獄戦士の顎を爆散させる。

 

 

万丈目LP 4000→3500

 

地獄戦士の効果は自爆特攻のダメージなので発動しない。

 

 

「ぐっ! イエロー・ガジェットの効果を発動しなかったのも、油断を誘い罠を発動するためか! しかし、その程度時間稼ぎにしかならん! 俺はカードを二枚伏せてターンエンドだ!」

 

 

違います。

カードが入ってないだけです。

 

「俺のターン、ドロー」

 

さて、いよいよ紙束の本領発揮だな。

出来るだけダメージを与えたかったが出せる中に攻撃力が1000を越えたモンスターが居ないんですがそれは。

 

「バトルだ。イエロー・ガジェットでダイレクトアタック。『ガジェット・ナッコー』!」

 

イエロー・ガジェットの歯車カラテが万丈目を襲う。

 

「ふん。罠を警戒しないクズめ! 俺は『リビングデッドの呼び声』発動!」

 

 

万丈目のフィールドに墓場が現れ、その中にある棺桶から地獄戦士が出てくる。

 

リビングデッドか、汎用性の高い罠を入れてるな。羨ましい限りだ。

 

 

リビングデッドの呼び声

永続罠

:自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。

そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。

このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。

そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

 

攻撃を止める事も出来るが相手の場にカードを残す事はない。

 

「攻撃を続行だ。イエロー・ガジェットで地獄戦士を道連れにする」

 

イエロー・ガジェット攻撃力1200

地獄戦士攻撃力1200

 

爆発音と共に煙が上がり、晴れた時にはお互いのモンスターが‥‥‥‥‥‥いますね。相手のフィールドには地獄戦士が平然と立っていた。

 

「はっ! この万丈目様が苦し紛れにモンスターを蘇生させるわけが無いだろうが! 俺は戦闘時に速攻魔法『収縮』を発動していた! これにより地獄戦士は貴様の歯車を粉砕したのだ!」

 

「出た万丈目さんのマジックコンボだ!」

 

 

マジか、イエロー・ガジェットが破壊されるとなかなか厳しいな。

 

収縮

速攻魔法

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。

選択したモンスターの元々の攻撃力はエンドフェイズ時まで半分になる。

 

「俺はモンスターをセット。更にカードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

ここは壁モンスターで凌ぐしかないな。

 

「オシリスレッドにしては良くやったと誉めてやるが、それでもこの俺様には程遠い! 俺のターンドロー! 俺はフィールドの地獄戦士を生け贄に捧げ、『地獄将軍・メフィスト』を召喚する!」

 

馬の蹄の音が鳴り響き、全身を漆黒の鎧で身を包んだ騎士がフィールドへと駆け込んで来る。

 

地獄将軍・メフィスト

効果モンスター

星5/闇属性/悪魔族/攻1800/守1700

このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、

その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

相手に戦闘ダメージを与えた時、相手の手札からカードを1枚ランダムに捨てる。

 

モリンフェンと違い効果モンスターか。

 

「地獄将軍・メフィストには守備貫通効果がある! バトルだ! そのセットモンスターを粉砕しろ!『ヘル・ジェネラル・スラッシャー』!」

 

俺のセットモンスターへと吸い込まれる地獄将軍のハルバード。

 

 

「俺のセットモンスターは『コマンダー』だ」

 

 

コマンダー

通常モンスター

星2/闇属性/機械族/攻 750/守 700

ロケットランチャーとバズーカ砲を装備した実戦部隊。

 

 

地獄将軍・メフィスト攻撃力1800

コマンダー守備力700

 

 

小波LP4000→2900

 

コマンダーは助かると言ったな。ありゃ嘘だ。

なんだよ! ロケットランチャーとバズーカって意味被ってんじゃねーか!

 

「おちょくっとるのか! 貴様!」

 

失敬な大真面目だ。

 

「チッ! 地獄将軍・メフィストの効果で貴様の手札をランダムに一枚墓地へと送る!」

 

三枚ある手札の真ん中のカードが墓地に送られる。

 

「俺はこれでターンエンドだ! さっさサレンダーでもすれば貴重な俺の時間を奪った詫びの一つで許してやろう!」

 

 

うーん、次のドローでカードが引けなかったら負けかな。取り合えず、この紙束を信じるか。

 

「俺のターン‥‥‥‥‥‥ドロー!」

 

 

ドローカードは‥‥‥‥‥‥

 

 

『ディメンション・マジック』

 

 

 

「来たか」

 

 

デステニードローって奴かも知れんね。

 

「俺は手札から『炎を操る者』を通常召喚する」

 

炎を操る者

通常モンスター

星3/炎属性/魔法使い族/攻 900/守1000

炎の海や炎の壁を自在につくり出し攻撃する。

 

 

「そんな、クズカードを召喚しても俺の地獄将軍は倒すことなど出来はしない!」

 

「それはどうかな? 更に俺は手札から速攻魔法『ディメンション・マジック』を発動するぜ!」

 

 

炎を操る者と地獄将軍・メフィストの体にアイアンメイデンが被さり蓋が閉じられる。

 

「な、何だ!? 何が起きている!?」

 

 

そして蓋が開いた時、現れるのは鋭い刺で穴だらけになった地獄将軍・メフィスト。

 

「ディメンション・マジックはフィールド上の魔法使い族モンスターを一体をリリースし、手札から魔法使い族モンスターを特殊召喚する。そして、相手のフィールドのモンスターを一体破壊する!」

 

 

ディメンション・マジック

速攻魔法

自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在する場合、自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。

選択した自分のモンスターをリリースし、手札から魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。

その後、フィールド上のモンスター1体を選んで破壊できる。

 

「ふざけるな! 土壇場でその逆転のカードを引いただと言うのか!」

 

 

そう、だから俺も驚いている。

魔法使い族のモンスターは俺のデッキには二枚しか入っていない。それが運良く回った物だ。

 

 

「そして、俺は手札からこのデッキ最強のマジシャンを特殊召喚する!」

 

俺の後ろから神々しい光が溢れる。

 

「ま、まさかあの伝説の!?」

「決闘王のパートナーにして!?」

「そのトレードマークとも言えるあの!?」

 

 

騒がしい外野を無視して俺は高らかに召喚する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『レオ・ウィザード』を特殊召喚!」

 

『ガルルルル!』

 

 

「おい、ブラック・マジシャンじゃないのか!」

「ふざけんな!」

「マジシャンとか言いつつウィザードじゃねーか!」

 

何故、こんなにボロクソ言われてるんだろうか。

 

 

『レオ・ウィザード』それは『モリンフェン』とも双璧をなすデュエルモンスターズに暗黒時代をもたらした『レオ・ウィザードパーミッション』の主軸カードである。

 

 

 

嘘である。

 

 

レオ・ウィザード

通常モンスター

星5/地属性/魔法使い族/攻1350/守1200

黒いマントをはおった魔術師。

正体は言葉を話すシシ。

 

 

そう、このモリンフェンにも劣る劣悪なステータスである。

 

「ええい、俺はレオ・ウィザードでダイレクトアタック! 『ウィザードショット』!」

 

レオ・ウィザードの手から衝撃波が放たれ万丈目のLPを削り取る。

 

万丈目LP3500→2150

 

「この程度のダメージ、次のターンで巻き返して終わりだ!」

 

ふむ。何か勘違いしている様だな。

 

 

「残念だが、まだ俺のバトルフェイズは終了して居ない」

 

「なに!?」

 

俺は伏せていたカードを使う。

 

 

「速攻魔法発動!『狂戦士の魂』発動!」

 

 

 

狂戦士の魂

 

速攻魔法

「狂戦士の魂」は1ターンに1枚しか発動できない。

自分フィールドのモンスターが直接攻撃で相手に1500以下のダメージを与えた時、手札を全て捨てて発動できる。

自分のデッキの一番上カードをめくり、それがモンスターだった場合、そのモンスターを墓地へ送り、相手に500ダメージを与える。

その後、モンスター以外がめくられるまでこの効果を(最大で7回)繰り返す。めくったカードがモンスター以外だった場合、そのカードをデッキの一番上に戻す。

 

「レオ・ウィザードのダイレクトアタックにより発動条件は満たされた」

 

都合五回発動すれば勝ちだな。

 

「はっ! 最初に言った筈だ! デュエルは知性だと! 運に任せた奴は身を滅ぼすんだよ!」

 

 

そうか。確かに普通のデッキならすぐモンスターカードは途切れるだろうがな。

 

「俺のデッキは少々特殊でな。デッキの8割がモンスターカードなんだよな」

 

それは万丈目に取っての死刑宣告に等しい言葉だった。

 

 

「行くぞ!ドロー、モンスターカード『ハングリーバーガー』!」

 

万丈目LP 2150→1650

 

「まさか‥‥‥‥‥‥」

 

「ドロー、モンスターカード『カクタス』!」

 

万丈目LP 1650→1150

 

「こんな‥‥‥‥‥‥」

 

「ドロー、モンスターカード『科学特殊兵』!」

 

万丈目LP 1150→650「ゴミカードばかりの‥‥‥‥‥‥」

 

「ドロー、モンスターカード『シーホース』!」

 

万丈目LP 650→150

 

「ドロップアウトに負けるだと!?」

 

「ドロー‥‥‥‥‥‥モンスターカード『モリンフェン』!」

 

 

万丈目LP 150→0

 

「そんな、バカな‥‥‥‥‥‥」

 

この世の終わりかの様に膝を付く万丈目。

そんなに紙束に負けたのがショックだったのか取り合えず軽くフォローだけしておけば良いか。

 

「この世に使えないカード何て無い。いい暇潰しになった。ありがとう」

 

 

PDFの時間を見ると歓迎会までギリギリだった。相手をしてくれた、万丈目に礼を言って走り出す。

 

歓迎会間に合えば良いけど‥‥‥‥‥‥

 

小波が居なくなったデュエル場には万丈目が一人だけ取り残されていた。万丈目をあれだけ慕っていた取り巻き達は万丈目が負けた時から寮に帰って行った。しかし、万丈目は自分自身の眼の曇りが晴れていくような気分だった。

 

あの小波とか言うオシリスレッドの学生は自分に魅せ付けたのだ。

 

『どんなカードも使う事が出来る』と言うデュエリストとしての芯を。中等部ナンバーワンの自分に勝利する事でより強くなろうとする向上心。わざと低ステータスのカードを中心にデッキを組む事で自分に枷をかけて己を鍛えて居るのだろう。つまり、手加減された訳だ。この万丈目準が。

 

 

「ふ、フハハハハッ! クソッタレ! 小波とやら! 今に見ていろ! 貴様のその余裕も全て剥がして、地に叩きつけてやる!」

 

誰も居ないデュエル場には一人分の朗らかな笑い声が響いていた。




何かレオ・ウィザード以外にもちらほらとカードが出ていますが気にしては行けません。

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3話

遅れてすいません。携帯が直ったので投稿します。


レッド寮の入学歓迎会はつつがなく行われた。

 

他のクラスでは派手にパーティーをしたりもしたようだが、レッド寮では簡素な食事が振る舞われた程度。

隣に座っていた、遊城はバクバクと一心不乱に食べているのが印象的だ。寮長である大徳寺先生の挨拶を聞き部屋に戻る。

 

 

デュエルアカデミアで過ごす入学初日も終わりに近い。

 

明日からはデュエルモンスターズに関する授業が始まるそうだ。万丈目とのデュエル後、パックを買いに購買部に向かったが生憎今日は開いてはいなかった。

 

暇なのでデュエルアカデミア周辺を探索した所、十枚ほどカードを拾ったが何らかの作為を感じてならないラインナップだ。

 

『地霊使いアウス』

『風霊使いウィン』

『水霊使いエリア』

『火霊使いヒータ』

『光霊使いライナ』

『ブラックマジシャンガール』

『ガスタの静寂カーム』

『アトラの蠱惑魔』

『久遠の魔術師ミラ』

『サイレントマジシャンLV8』

『ゴーストリックの雪女』

 

しかも、汚れもなく新品同様で落ちていた上に点々とカードが続いていた。この手のカードは一部のマニアが欲しがるカードだが何故落ちていたのだろうか。

 

デュエルアカデミア特有の新手の怪奇現象かもしれない。拾った以上カードを大切にするのはデュエリストとしての義務だ。拾ったカードと今日まで使って来たデッキをシャフルし、特製カードボックスの中に納める。

 

伝説のブルーアイズを多用してくる偉そうな人(ブルーアイズは世界に6枚無いらしいから半数をあの人が持っていると言う事になる。海馬コーポレーションの社長の人と同じ枚数もっているとは凄い)とのデュエルの賞品として貰ったこのボックスの中にはデュエルモンスターズを初めてから今日まで手に入れたカード全てが入っている。

 

その無数のカードの中から一枚づつカードを引いてデッキにする。俺からしても正気の作業ではないが既に何回も繰り返した作業だ。なるべくまともな構成になるように願いながらカードを四十枚引く。

 

恐る恐るデッキ(紙束)を確認するとやはり統一感は一切無い。そして、何より問題なのは、枠が紫色のカードが入っている。融合モンスターとかどう使えばいいんだ!融合素材はおろか、融合事態入って無いんだが!

 

俺はやり場の無い悲しみと共に融合モンスターをデッキから外しもう一枚カードを引いてデッキに加えデッキケースにしまう。

 

明日から実技とかあったらどうしようか。

一応やれるだけやってみよう。

俺はトレードマークの帽子を深く被り直しベッドに横たわった。

 

 

どうやら万丈目とのデュエルの後、俺が万丈目に勝ったと言う噂は急激に広まっていた様だ。朝早くに確認したPDFには大量のデュエルの申請メールが来ており、データ容量がマッハとなっている。

 

レッド寮からイエロー寮、さらにはブルー寮の生徒からも申請が来ている。

 

しかし、こんな大量のデュエルをする自信は無い。更に俺のデュエルの腕なんて街の奇抜なヘアスタイルのお兄さんとどっこいどっこいのレベルだしな。

 

とりあえず、断りのメールを一括で送っておく事にする。内容は『実力が足りない。相手にならないので断らせてもらう』にしておこう。

 

いやー、これで皆の誤解も解けるだろうな。

俺はそのまま、食堂に向かい朝食を取り教室へと向かった。

 

 

 

 

 

オベリスク・ブルーの女王《クイーン》と言う異名を持つ生徒がデュエルアカデミアには存在する。

天上院明日香。

 

戦士族のモンスターを扱い華麗に敵を粉砕する。

その美しい容貌と気さくな性格からファンは多く存在している。

だが、それらは全てが他人の意見であり明日香本人からしてみれば自分の実力は確かに高いかも知れないがトップでは無い。

 

その為日々研鑽に励みそれ相応の努力をしていたから今の自分があると理解していた。

そんな彼女が小波にデュエルの申請をしたのは紛れもない偶然だった。入学試験の時に見かけた、帽子を深く被った男。遅れてやって来た二人でのデュエルを見ていたが最初は呆れた物だ。

 

低ステータスカードにシナジーのないデッキ構成。

対する相手の男の子は使用難易度の高い融合のカードを容易く使いこなしていた。

 

正直、勝負にならないと思っていた。

 

しかし、そんな考えは簡単にひっくり返されていたのだ。お互いのエースカード同士が火花をぶつけあい、死力を尽くす手にあせ握る決闘。

 

久しぶりに自分が興味を持った相手でもあった。

いずれ、決闘したい。

 

そんな時だった。

 

 

入学式が終わり歓迎会の始まる前に二人のうちの一人が中等部男子トップと言われていた万丈目をデュエルで下したと言う噂が流れて来た。

 

その男子は帽子を深く被り、低ステータスのカードを自在に操ったと言うではないか。

確実に帝王が興味を持った男だろう。

 

いずれ、とは考えていたがこの疼きは収まりそうにも無かった。

 

だからその日の内にクロノス・メディッチ教頭先生に頼み込みあの男子、小波のPDFの番号を教えていボイスメールを送りつけた。

 

明日の放課後にでもデュエルをしたい。

 

デッキを調整しなくちゃ。

なんて事を考えながらベッドの中で微睡みに落ちていく。明日が楽しみ。

 

そんな淡い期待は朝一番に打ち砕かれたのだ。

 

起きた時には既に返信が帰って来ていた。

その返信の内容は全く想像とは違っていた。

 

『実力が足りない。相手にならないから断らせてもらう』

 

 

ショックだった。

 

自分の実力を見たわけでも無い者に実力不足と判断する小波に対して怒りが溢れる。

 

「上等じゃない・・・・・・!」

 

何がなんでもデュエルで白黒付ける。

 

明日香は自分の持てる人脈を全て駆使して動き始めた。

 

 

 

 

「シニョール小波。装備魔法について答えるノーネ」

 

最初の授業と言う事で授業の難易度もそんなに高くはない。今、授業しているのはデュエルアカデミアの教頭を勤めているクロノス教諭だ。

 

装備魔法か・・・・・・頭の中で覚えている事を纏めて答えを出す。

 

「装備魔法はモンスターに装備させることでステータスを変化させることが出来ます。攻撃力・防御力の上昇、破壊耐性の獲得、守備貫通能力の付与などが主な効果として挙げられます」

 

「フーム・・・・・・ドロップアウトの多いレッド寮の生徒にしてーは、なかなか勉強してるみたいなノーネ。では次はシニョール丸藤。フィールド魔法について答えるノーネ」

 

どうやら俺の答えは正しかったらしい。

次に指されたのは遊城の隣に座っている水色に染めた小柄な生徒だった。

 

 

「えーと、フィールド魔法は・・・・・・う、う・・・」

 

どうやら答えが纏まらないようだ。

その様子を見てクロノス教諭は困ったような顔をして

 

「もう良いノーネ! やはーり、レッド寮の生徒はもっと勉強しないと駄目なノーネ!」と言って次の問題へと 進んで行った。

 

回りの生徒たちは口々に笑い声を上げ、悔しそうに下を向く生徒を遊城は慰めている。

 

遊城がフォローしてるなら大丈夫だろう。

俺は目の前の授業に思考を落として行った。

 

 

今日の授業のハイライト。

 

一時間目デュエルモンスターズのカード基礎知識。

二時間目大徳寺先生による錬金術の授業。

三時間目不動性ソリティア論。

四時間目体育。

 

初日なのでここまでとなったが、四時間目に体育とは。やはり、デュエリストは体を鍛えなければ行けないと、言うことなのだろうか。

 

そのうちデュエルでバイクに乗ったり、フィールドを駆け巡らない事を切に願う。

 

そんな風に現実逃避している理由。

 

それは寮に帰る直前だった。

十代と水色ヘアーの丸藤に声を掛けられ一緒に帰ろうとした時に起こったのだ。教科書を鞄に納めようとしたら机の中から手紙が出てきた。

 

ご丁寧にハートのシールまで付いている。

その時点で俺は半分諦めていた。

横にはこういうイベントに敏感な遊城と色恋沙汰に敏感である事が判明した丸藤に見られてしまった時点で。そこからはあれよあれよと言う間にレッド寮の自分の部屋。

 

そして今に至る。

 

「すごいね! 小波くん! まだ入学して間もないのに!」

 

丸藤は興奮しすぎな気がするが。

取り敢えず中身を読んだがどうにもキナ臭い。

まず、差出人の名前がない。

 

しかも、このラブレターの文面には熱を感じない。

綺麗な文字で綺麗な文体で書かれているが近所に住んでいた乙女から感じていた熱意が伝わらない。

 

しかも、こんな帽子をかぶった顔も殆ど見えない男に一目惚れ?

 

そして疑念に拍車を掛けるのが隣で首をひねる遊城である。

 

「うーん、なんかデュエルの臭いがするんだよなぁ?」

 

遊城の勘は馬鹿に出来ない。

こいつが大量のおにぎりから意図も容易く鮭を召喚しているのを見かけたしな。

 

まぁ、でも行ってみるしかないか。

指定されたのは灯台。

何故かデュエルディスクを持ってくる様に書かれていたのは何故だろうなぁ・・・・・・はぁ・・・・・・

 

 

 

 

夜。灯台は港に建っており、辺りが十分明るく成るほどの光を放っていた。

 

そのたもとにオベリスクブルーの制服を着た女子が立っている。

 

「来たわね! 小波!」

 

 

どう考えても告白という気配ではないんですがそれは。

 

「貴方に与えられた屈辱・・・倍にして返してあげるわ!」

 

 

気のせいじゃないんですか。

逃げ出したいが何か逃がしてくれる雰囲気じゃない。畜生。

 

こうなったら。

 

「言いたいことはそれで終わりか。文句があるからデュエルで掛かってくるんだな」

 

「言われなくても!」

 

いやー、お互いデュエリストだと楽でいいな。

取り敢えずデュエル終わったらクールダウンしてることを願おう。

 

『デュエル!』

 

 

天上院LP4000

小波 LP4000

 

 

「先行は私よ! ドロー!」

 

さてはて彼女はどんなデッキの使い手だろうか。

 

 

「私は『エトワール・サイバー』を攻撃表示で召喚!」

 

『トォア!』

 

驚異的な身体能力を活かした動きでフィールドに登場する全身タイツのお姉さん。

 

効果モンスターかー。辛いわー。こっちまともな効果モンスター殆どいないわー。ふぅ・・・。

 

 

『エトワール・サイバー

効果モンスター 星4/地属性/戦士族/攻1200/守1600 このカードは相手プレイヤーを直接攻撃する場合、 ダメージステップの間攻撃力が500ポイントアップする』

 

「私はカードを一枚伏せてターンエンドよ!」

 

確実に罠じゃないですかヤダー。

 

 

「俺のターン。ドロー!」

 

手札を眺めると相変わらずのバラバラ感であるが何時もの事だ。

 

 

「出でよ! 旧支配者の一族よ! その大いなる力を示せ!『グラッジ』召喚!」

 

その瞬間。

フィールド上に亀裂が現れその中から赤い液体が漏れだし一つの形を取る。

 

 

『――――――――――――!』

 

叫び声を聞き取る事は出来ない、何故ならば存在の次元が違うのだ。

 

 

「グラッジで攻撃! 『這いよる悪夢』!」

 

グラッジはその体を高速回転させながら突進し、エトワール・サイバーをすり抜けて天上院に向かう。

 

「直接攻撃効果ですって!?」

 

そう、グラッジは相手モンスターを無視して相手を攻撃する効果がある。

 

「さらに俺は速攻魔法『天使のサイコロ』を発動! 旧支配者よ! 天使の加護を受けよ!」

 

凡骨っぽいお兄さんから譲り受けたこのカードを見よ!

 

帽子をかぶった天使が大きなサイコロを振る。

 

『ダイスロール!』

 

出た目は4!

 

「4の目が出たのでグラッジの攻撃力と守備力は400上昇!」

 

 

『天使のサイコロ

 速攻魔法 サイコロを1回振る。 自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターの攻撃力・守備力は、 エンドフェイズ時まで出た目×100ポイントアップする』

 

グラッジはますます勢いを増し天上院に突撃する。

 

「クッ! やるじゃない・・・・・・罠を警戒して直接攻撃効果モンスターを召喚なんて。先制攻撃を貰うとは・・・・・・え?」

 

 

天上院の顔が訝しげな表情を浮かべる。

 

 

天上院LP4000→3600

 

そう天上院のライフは400しか減っていない。

天使のサイコロで上昇した数値は400。

 

つまるところ。

 

 

「何が旧支配者よ! 攻撃力0じゃない! 」

 

 

いや、テンション上げていかんとやってられんよ。

グラッジ使うのなんて。

 

「グラッジは無限大の攻撃力を持つ。ダイレクトアタックに成功した次のスタンバイフェイズに攻撃力を1000上昇させる」

 

「何ですって!?」

 

そう、ダイレクトアタックに成功する限りこのカードの攻撃力はブルーアイズをも凌駕する数値まで上昇・・・するがそう甘くない。

 

 

『グラッジ

効果モンスター 星3/闇属性/水族/攻 0/守 100 このカードは相手プレイヤーに直接攻撃をする事ができる。 このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた場合、 次の自分のスタンバイフェイズ時このカードの攻撃力は1000ポイントアップする』

 

そう、攻撃力の上がるタイミングは『次の自分のスタンバイフェイズ時』にだ。

 

つまり、返しのターン攻撃力0のグラッジただの案山子になる。

 

「俺はカードを三枚伏せてターンエンドだ」

 

相手はエトワール・サイバー一体に伏せカードが一枚。まだ、どんなデッキかは判断がつかない。

 

「私のターン。ドロー!」

 

天上院はドローカードを見て笑みを浮かべる。

さてはてどんなカードが飛んで来るのかな。

 

「私は手札から『サイクロン』を発動! 私から見て右側の伏せカードを破壊する!」

 

そんな強いカード羨ましい事この上無いな畜生!

 

『サイクロン

 速攻魔法 フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。 そのカードを破壊する』

 

フィールドに存在する魔法か罠を破壊すると言うシンプル故に強力なカード。

 

俺がサイクロンいれようもんなら手札に来ないか逆に最初から手札に三枚合って事故る。100パーセント事故る。

 

砂埃を巻き上げながら伏せカードへと向かっていくサイクロン。

 

「だが甘い! チェーンして罠カードを発動! グラッジを生け贄に現れよ。『ナイトメア・デーモンズ』!』

 

「グラッジを生け贄に捧げたですって!?」

 

グラッジ残す理由は無いだろ。

フィールドから緑色の炎が溢れその内部から真っ黒な肌をした悪魔が三体現れる。

 

「「「キャキャキャキャ!」」」

 

悪魔は何が嬉しいのか知らんが俺の回りを高速回転している。

 

ええい!鬱陶しい!

 

「この罠は三体のナイトメア・デーモン・トークンを特殊召喚する。その攻撃力は2000!」

 

「攻撃力2000のモンスターを三体も!?」

 

ああ、素晴らしいカードだろ。

 

ただし、悪魔が天上院のフィールドに居なければな。

 

 

『ナイトメア・デーモンズ

 通常罠 自分フィールド上のモンスター1体をリリースして発動できる。 相手フィールド上に「ナイトメア・デーモン・トークン」 (悪魔族・闇・星6・攻/守2000)3体を攻撃表示で特殊召喚する。「ナイトメア・デーモン・トークン」が破壊された時、 このトークンのコントローラーは1体につき800ポイントダメージを受ける。』

 

「よし!」

 

「よし!・・・じゃないわよ! さっきからふざけて無いで真面目にデュエルしなさい!」

 

ふざけてるだと?

大真面目だ。使えないカードなんてこの世には無いと蟹のお兄さんは言ってた。

 

確かにそうだ。使い難すぎるカードが大量にあるだけなんだよ。

 

「俺は更に罠カード『大落とし穴』を発動する!」

 

「え?」

 

その瞬間、エトワール・サイバーの下に大きな穴が現れる。そして、横にいた悪魔が足を掴み穴へと引きずり込んでいった。うわぁ、あんな演出になるのコレ。

 

「私のエトワール・サイバーが・・・・・・何故」

 

『大落とし穴

 通常罠 同時に2体以上のモンスターが特殊召喚に成功した時に発動できる。 フィールド上のモンスターを全て破壊する。』

 

実際このカード使うならブラックホールや奈落の落とし穴を使った方がいいレベルのカードだ。条件が厳しい上に効果には自分のモンスターが巻き込まれると言う殆ど使う人は居ないカードの一枚だ。

 

「さらにナイトメア・デーモン・トークンは破壊された時に800のダメージをコントロールしていたプレイヤーに与える。つまり、合計2400ダメージだ」

 

「キャア! やってくれるわね・・・・・・」

 

天上院3600→1200

 

「正直に言って貴方の事、期待外れだと思ってたの。だけどいつの間にか私は追い詰められてる。だから認めるわ。貴方は素晴らしい決闘者よ」

 

お、おう。何か急に認められた。

 

「だからと言って私が負ける理由には為りはしない! 私は手札から魔法カード『死者蘇生』を発動! 蘇れエトワール・サイバー!」

 

光と共に破壊されたエトワール・サイバーが現れる。

 

『死者蘇生

 通常魔法(制限カード)

自分または相手の墓地のモンスター1体を選択して発動できる。 選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。』

 

デメリット無しの完全蘇生か。

相手の墓地からも奪い取り可能な鬼畜カードだ。

 

昔、星のお兄さんに墓地に送っていたエグゾディアパーツを取られて負けたのはいい思い出。

 

「更に私は手札から『ブレード・スケーター』を攻撃表示で召喚!」

 

フィールドをフィギュアスケートの様に滑る全身タイツモンスターが現れる。

 

『ブレード・スケーター

 通常モンスター 星4/地属性/戦士族/攻1400/守1500 氷上の舞姫は、華麗なる戦士。 必殺アクセル・スライサーで華麗に敵モンスターを切り裂く』

 

これで都合、3100のダメージ。

此のままではじり貧。

ならば!

 

 

「バトルよ! ブレード・スケーターとエトワール・サイバーでダイレクトアタック!」

 

「この瞬間、永続罠『ラッキーパンチ』発動!」

 

フィールドにレスキュー・ラビットが現れ突撃してくるブレイド・スケーターとエトワール・サイバーの前でシャドーを始める。そのレスキューラビットの前には回転する三枚のコイン。

 

「そのカードは入試の時の!」

 

そう、三枚カードをドロー出来るか。

6000ダメージを受けるかのギャンブルだ。

もっとも、どちらにせよ12.5%の確率であり何も起こらない事が多い。しかもライフダメージは正確には失う為回復させることが出来ないクソ仕様だ。

 

 

「運命の時だ! コインストップ!」

 

高速で放たれたレスキュー・ラビットの拳はコインを止め・・・・・・

 

表 表 表

 

「ラッキーパンチ成功! 俺はカードを三枚ドローする」

 

「そんな!?」

 

だがしかし、ラッキーパンチは攻撃を止める効果はないので確実にダメージは入るのだ。

 

高速で近づいて来る二体のモンスターからのダメージを受ける。

 

小波LP4000→900

 

「手札を補充されてしまったけどまだターンエンドじゃないわよ! 私は手札から融合を発動! フィールドのエトワール・サイバーとブレード・スケーターを融合! 現れよ『サイバー・ブレイダー』!」

 

 

バイザーを装着したスピードスケートがしたいのかフィギュアスケートがしたいのかよくわからないモンスターが現れた。

 

これ以上は死体蹴りレベルじゃないですかね。

 

 

だが有難い。

この状況で特殊召喚してくれるとはな!

 

「俺はこの瞬間、手札の『エクストラ・ヴェーラー』の効果を発動! このモンスターを守備表示で特殊召喚する!」

 

「手札から特殊召喚されるモンスターね・・・・・・だけどこの瞬間、サイバー・ブレイダーの効果を発動! 『 パ・ド・ドゥ 』!」

 

サイバー・ブレイダーに続いてフィールドに光が走る。

 

『ハァ!』

 

掛け声と共にマタドールがフィールドに登場。

 

でた!エフェクト・ヴェーラとバトル・フェーダに喰われた効果を持つ悲しみのカードのエクストラ・ヴェーラさんだ!

 

『サイバー・ブレイダー

 融合・効果モンスター 星7/地属性/戦士族/攻2100/守 800 「エトワール・サイバー」+「ブレード・スケーター」 このモンスターの融合召喚は上記のカードでしか行えない。 相手のコントロールするモンスターが1体のみの場合、 このカードは戦闘によっては破壊されない。 相手のコントロールするモンスターが2体のみの場合、 このカードの攻撃力は倍になる。 相手のコントロールするモンスターが3体のみの場合、 このカードは相手の魔法・罠・効果モンスターの効果を無効にする』

 

『エクストラ・ヴェーラ 効果モンスター 星2/光属性/魔法使い族/攻 600/守 200 相手がモンスターを特殊召喚した時、手札からこのカードを特殊召喚する事ができる。 この効果で特殊召喚したターン、 相手のカードの効果によって発生する自分への効果ダメージは代わりに相手が受ける 』

 

成る程、サイバー・ブレイダーは相手フィールドのモンスターの数で効果が変化するのか。今はエクストラ・ヴェーラが一体なので戦闘破壊耐性か。

 

かぁー助かったわー、俺のフィールドにサイバー・ブレイダーの攻撃力を上回るモンスター居ないから只の通常モンスターと変わらんわー。ふぅ・・・・・・

 

「私はこれでターンエンドよ」

 

相手フィールドにはサイバー・ブレイダーに伏せカードが一枚?こんな逆境は何時もの事だ。

ラッキーパンチ破壊されたら負け?

次のターンに新しいモンスター引かれたら負けだ。

 

何が何でも諦めないで俺の紙束を信じるのみ。

 

「俺のターン・・・・・・ドロー!」

 

引いたカードは・・・・・・ん?

 

これは行けるのか?

つかこんなカードデッキに入ってたか?

 

まぁ、いいか。

手札で腐りまくってたカード達が一気に頼もしく見えてきたぜ。

 

「俺はモンスターを裏側守備表示で召喚!」

 

「あら、いいカードが引けなかったようね。だけど容赦はしないわ。サイバー・ブレイダーの効果を発動! 相手フィールドのモンスターが2体のため攻撃力は倍になる! 『パ・ド・トロワ』!」

 

サイバー・ブレイダー攻撃力2100→4200。

 

ああ、一気にサイバー・ブレイダーが化け物レベルのステータスになった。

それにこのデッキにいいカード何て殆ど無いんですがそれは。

 

「まだだ、俺は手札から『太陽の書』を発動する!」

 

俺の頭上に光輝く本が現れ、その光で裏側守備表示のモンスターを照らす。

 

『太陽の書

 通常魔法 フィールド上に裏側表示で存在するモンスター1体を選択し、表側攻撃表示にする』

 

「わざわざ魔法カードを使ってまで攻撃表示にすると言う事はリバース効果モンスターね!」

 

当たりだな。俺のデッキにはリバース効果モンスターは入ってなかった筈なので完全に限定的守備封じとして使う事しか出来なかったのだが漸く本来の使い方が出来る!

 

「太陽の光を受けて現れよ! 『幻想召喚師』!」

 

光が消えたとき現れたのは袈裟を着こんだ坊主だった。

 

「幻想召喚師は幻想と現実を繋ぐ存在! エクストラ・ヴェーラを生け贄にこのカードは融合無しで融合モンスターを特殊召喚出来る!」

 

「融合無しで融合召喚ですって!?」

 

エクストラ・ヴェーラが光となり円を描き、新たな形へと変化していく。

 

 

「集いし想いが、地獄からの呼び声となる! 光指す道となれ! 幻想召喚! 現れよ。『アンデッド・ウォーリアー』!」

 

 

 

ガシャン・・・ガシャン・・・と言う金属音とカタカタカタカタと言う乾いた音が聞こえ、フィールドの真ん中から不意に悪意が現れる。

 

その窪んだ眼下には何を写すのか・・・・・・。

 

 

 

 

いや、写さないわ、骸骨だろ。

 

 

『アンデッド・ウォーリアー

 融合モンスター 星3/闇属性/アンデット族/攻1200/守 900 「ワイト」+「格闘戦士アルティメーター」』

 

そう、このアンデッド・ウォーリアー。

雑魚である。

 

 

遊城が使っていたHERO。

今、対峙しているサイバー・ブレイダーには効果が付いている。

 

しかし、アンデッド・ウォーリアーはデュエルモンスターズ最初期のカードの一枚であり、効果何て無い上に素材のカードも貧弱。

誰も使う事は現在まずないと言う凄惨なカードである。

 

 

「せっかく、守備表示だったモンスターを攻撃表示にしてまで召喚したモンスターがそれ? サイバー・ブレイダーの攻撃力には遠く及ばないわ!」

 

「そうだな。だがこのアンデッド・ウォーリアーがお前に止めを刺すことになる。俺は魔法カード『痛み分け』を発動! 幻想召喚師を生け贄に捧げる!」

 

「何ですって!」

 

『痛み分け

 通常魔法 自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースして発動する。 相手はモンスター1体をリリースしなければならない』

 

「痛み分けは相手に自分フィールドのカードを強制的にリリースさせるカード! さぁ、サイバー・ブレイダーをリリースして貰おうか」

 

痛み分けは実際強いが、使う奴は見たことがない。

何故なら地割れ、地砕き、クロスソウルなど類似に使いやすいカードが多いからだ。

自分のカードをリリースする効果も不人気の一つだろう。

 

「・・・・・・私はサイバー・ブレイダーをリリースするわ」

 

さて、あの伏せカード。

次元幽閉じゃねぇよな・・・・・・

 

「バトルだ。俺はアンデッド・ウォーリアーで直接攻撃! 『アンデッド・フィスト』!」

 

しなやかな動きで天上院に肉薄し、剣を使わず拳で攻撃する。

 

あれ? ソリッドビジョンって音声認識機能あったっけ?

 

「キャアアア!」

 

天上院LP1200→0

 

 

 

デュエルが終わると同時にソリッドビジョンが消えていく。

 

一瞬、アンデッド・ウォーリアーが此方を見ていた気がしたが気のせいだろうな。

 

目無いし。

 

「やられたわ・・・・・・完敗よ。あれだけの事を言うだけは有るのね」

 

クールダウンしたのか落ち着いた声色だ。

うん?あれだけ?

 

「いや、俺だって危うかった。遊城とのデュエルの時と同じくいつ負けても可笑しくはなかった」

 

何時もギリギリ何ですけどね。

 

「そう? そう言ってくれると嬉しいわ」

 

うむ、デュエルしてスッキリした。帰るか。

 

「もう夜も遅いし明日も授業だ。帰って寝る。天上院も早く帰れよ」

 

帽子を深くかぶり直してレッド寮に帰る。

 

そして、レッド寮の前まで来た時に何のために呼び出されたか結局解らなかったが呼び止められなかったと言う事は大丈夫何だろうと思って寝る事にした。

 

 

「まさか、あんなに強いなんてね」

 

 

灯台の下で未だに海を眺めながら小波の事を考えていた。よく、あんなギャンブルの様なデッキを回せる物だ。まるであのデュエル。昔、ビデオでみた初代決闘王の様なデュエル。全てのカードが使われるべきタイミングで手札に来ていると錯覚するまでのプレイング。まだまだ、自分は完成していない。私はまだ強くなれる。

 

 

「確か、遊城十代ってコも強いって言ってたわね」

 

いずれ、デュエルしてみるのも面白いかも知れない。

そう思い笑みを浮かべた。



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4話

長いこと更新できずすいませんでした。
今回は出来が微妙です。

・ゲシュタルト崩壊するクロノスの語尾
・見つからない紙束
・DODおもしろい


明晰夢。

 

夢であると言う事が認識出来る夢。

 

あれを初めて味わったのは何時だったか。初めて見たときは寝た気持ちにならなくて損をしている様な気持ちだったのを覚えている。

 

なぜ、俺が今明晰夢の話なんかをしているかと言うと現在明晰夢の中に居るからである。

 

遥かに広がる大自然。空を駆け抜けるモリンフェン、カクタス、シーホース。

 

・・・・・・夢は夢でも紙束のディストピアだったらしい。何故夢の中まで紙束なんだろうか。ここはもう少し使えるカードが出てきてくれても良いじゃないか。別に俺は紙束が嫌いな訳じゃない。

 

だが、この夢に登場しているのは綺麗に俺の紙束デッキの存在ばかり。夢の癖にかなりリアルな夢だ。

 

 

そんな時、遥か上空から光が飛来する。光は俺のすぐ目の前に墜落し、何事かと身をすくめた。

 

光が形を成していくとそれはブラック・マジシャンだった。

 

ブラック・マジシャン

通常モンスター 星7/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2100 魔法使いとしては、攻撃力・守備力ともに最高クラス。

 

あれ?今まで俺のデッキのモンスターしかでてなかった筈なんだが・・・・・・俺の願いが反映されたのか?

 

考え事をしているとブラック・マジシャンは俺に頭を下げる。

 

「お久し振りです。小波殿。私、マハードでございます」

 

ああ、なるほど。マハードさんか。久し振りだなぁ。

 

マハードさんはプロのコスプレイヤーで星のお兄さんの友達らしく、そのコスプレイヤーっぷりは弟子が居るほどらしい。

夢に知り合いが出てくるとは、今度の休暇に星のお兄さんとデュエルをしようかな。

 

「所でこちらにマナが来ていませんか? マスターの所を抜け出して此方に向かったので追い掛けてきたのですが」

 

マナというのは確かマハードさんの弟子だったかな?彼女は彼女でレベルの高いコスプレイヤーだったな。完璧にブラックマジシャン・ガールと言われても違和感が無いほど似合っていた。

 

何かしつこく火力2000のレベル6闇属性魔法使い族はどうかと聞いて来たのが印象的だった。

 

モリンフェンと比べたら雲泥の差なのでデッキにあったら有り難いと答えると上機嫌に去って行った解らん人だが。

 

しかし、夢には出てないなぁ。

 

最近、ブラックマジシャン・ガールのカードは拾ったが・・・・・・

 

「そうですか。知りませんか・・・・・・ありがとうございました! 私はこれにて! ・・・・・・あの馬鹿弟子が。見つけ出したら死のマジックボックス送りだ・・・・・・!」

 

また、光に包まれ飛び去るマハードさん。やはり、夢だなぁ。こんな突飛な物を見るのは本当に久し振りだ。これは久々に良いことがある予兆かもしれないな。

 

そんな甘い考えは登校した瞬間から吹き飛ぶ事を知らなかった。

 

 

「E・HEROサンダージャイアントでダイレクトアタック! 『ボルティック・サンダー』!」

 

「キャアアア!」

 

天上院LP1200→0

 

 

まだ太陽が顔を出してまもないと言うのにレッド寮の前では遊城と天上院がデュエルをしていた。

 

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」

 

・・・・・・と言うか時々ソリッドビジョンが実体化している気がするんだが。

 

「お! 小波、おはよう!」

 

遊城が俺の存在に気づいたようだ。

 

「いやー、ありがとうな。小波。明日香に俺の事を教えてくれたんだろ?」

 

何を言ってるんだ?

遊城は?

とりあえず、流しておこう。

 

「・・・・・・ああ、それでデュエルはどうだったんだ? 朝がお前は苦手だったんだろ?」

 

丸藤と一緒に何度か遅刻仕掛けてるのを見たことがある。

 

「ああ! でも、デュエルの為なら眠気なんて吹っ飛ぶさ」

 

なるほど、気持ちは解らなくはないな。

しばらく、話していると天上院が此方へと歩いてきた。

 

「・・・・・・強いわね、君。あら、小波も居たのね」

 

今起きたばかりだからな。

天上院は軽く伸びをする。

 

「うーん・・・・・・よし、満足したわ。これで私にも目標が出来たわ。あなた達を追い越さないとね。私があなた達に勝つまで負けてくれないでね?」

 

それじゃあと手を振って天上院は女子寮へと戻って行った。

 

何だったんだ?

あいつ。

 

「ふあーあ・・・・・・デュエルが終わったら眠気が出てきた。悪い小波一旦部屋に戻って寝るわ」

 

そう言って部屋に戻って行く遊城は確実に遅刻するであろうと言う確信が俺の中にあったのは些細な事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近、オベリスクブルーの生徒達の間で密かに囁かれる噂があった。オベリスクブルーでもトップクラスの生徒に勝ち続けるオシリスレッドの生徒の噂。実際負けた所を見た奴もいれば、本人が公言している場合もある。その噂を快くは思わない者がいた。

 

 

「この噂は何なノーネ!」

 

クロノス=メディッチ。

 

デュエルアカデミアに置ける実技の最高責任者その人である。

 

「オベリスクブルーの優秀な生徒タチーガ! オシリスレッドに負けるナンーテ、あり得ないノーネ!」

 

ハンカチを噛みしめ怒りのままに引きちぎる。噂の生徒は万丈目準に天上院明日香。

 

片や中等部トップクラスの成績を誇り。

さらに片や女子生徒の中では最強と言っても過言では無い生徒達だ。

 

自分自身教師として太鼓判を押して認める程強い生徒。そう簡単に負ける筈がない。卑怯な手を使われたのでは・・・・・・そんな疑問が渦巻く。

 

 

「ウムムム! こうはしてられないノーネ!」

 

今日の授業は一時限目からデュエルモンスターの実技訓練。これを利用しない手はない。

 

「そのオシリスレッドの生徒の鼻っ柱を叩き折ってやるノーネ! ゴルゴンゾーラ!」

 

小波の預り知らぬ所で災難は加速する。

 

 

 

 

 

一時限目。今日はデュエルモンスターの実技訓練。俺としては色んな奴と、デュエルはしたいが基本的にオシリスレッドの生徒が相手らしい。

 

遊城以外なら誰でもいいがな。

 

だって、勝てる気がしないんだよなぁ。

生徒は番号札を持った生徒と持っていない生徒に分けられて整列している。

 

整列表に書いてある俺の名前は最後尾だった。

 

 

・・・・・・普通名前順じゃないのか。

 

 

「番号を持っていない生徒は、この箱の中に入っているクジを引いてその番号の相手とデュエルするノーネ!」

 

実技訓練担当者のクロノス教諭が箱を持ってこちらに来る。

 

オベリスクブルー、ラーイエローの生徒がクジを引いていき、最後にオシリスレッドの生徒が引いていく。

 

そして俺の前まで箱が来た時、クロノス教諭が箱を奪い取った。

 

「ワターシとしたことが、クジの数を間違えたノーネ! 枚数が足らなかったノーネ!」

 

 

俺の見間違えでなければ後、1枚残って無かったか?多分、遅刻している十代の分。

 

「しかーし、このままでは授業不参加となって単位が貰えなくなってしまうノーネ。これではあまりに可哀想なノーネ」

 

涙を流しながらハンカチを噛みしめるクロノス教諭。若干、白々しい気がするんだが気のせいだろうか。

 

 

「そうなノーネ! セネョール小波の相手は私が直々にしまスーノ!」

 

その言葉を聞いた他の生徒たちは騒然とする。

 

『おい、あのオシリスレッドの奴。クロノス先生とデュエルするらしいぞ!』

 

『あーあ、可哀想に3ターンも持たないだろうな』

 

『いや、待てよ。あの室内でも頑なに帽子を外してないオシリスレッドの生徒だろ? 噂の・・・・・・』

 

色々と聞こえてくるが何なんだろうか。

 

 

「心配しなくテーモ、手加減はしてあげるノーネ」

 

おお、流石実技担当者。まぁ、手加減は当たり前だよな。

 

 

「ありがとうございます。胸を借りる気持ちで挑ませてもらいます」

 

「宜しい。では、一瞬で終わらせるノーネ。早くデュエルフィールドに移動するノーネ!」

 

あれ、手加減は?

 

 

俺は疑問を抱きつつもデュエルフィールドにあがった。周りの生徒達は観客席に座る。

 

「「デュエル!」」

 

クロノスLP4000

小波LP4000

 

 

「先攻は私なノーネ! ドロー!」

 

 

さてクロノス教諭はどんなデッキを使っているのか・・・・・・間違っても俺の様なデッキでは無いだろうな。

 

「私はフィールド魔法『歯車街』を発動なノーネ!」

 

え?

 

歯車街 フィールド魔法 「アンティーク・ギア」と名のついたモンスターを召喚する場合に 必要なリリースを1体少なくする事ができる。 このカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の手札・デッキ・墓地から 「アンティーク・ギア」と名のついたモンスター1体を選んで特殊召喚できる。

 

クロノス教諭がカードをセットすると同時に鉄と歯車で出来た街がフィールドを埋め尽くす。

 

おいおいマジかよ!

 

このカードを出してきたってことはクロノス教諭のデッキってアンティーク・ギアか!

 

しかも、このフィールド魔法を破壊したら大型のモンスターを特殊召喚出来る!

 

迂闊に破壊できねぇ!

破壊するカード無いけどな!

 

「さらにカードを二枚セットするノーネ! そして魔法カード『大嵐』を発動するノーネ!」

 

大嵐 通常魔法 フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

 

制限カードの大嵐だと!

 

そんなうらやましいカード入れてるとはな!瞬間、フィールドを強風が巻き上げ鉄の街と二枚の伏せカードを吹き飛ばす。

 

しかし、歯車街を自壊させるのは判って居たが伏せカードも何故「そして、破壊された『歯車街』と二枚の『黄金の邪神像』の効果を発動なノーネ!」意味が無いわけ無いですよねー!

 

黄金の邪神像 通常罠 セットされたこのカードが破壊され墓地へ送られた時、 自分フィールド上に「邪神トークン」(悪魔族・闇・星4・攻/守1000)1体を 特殊召喚する。

 

 

フィールドには黄金の邪神像が二体姿を表す。

 

 

「歯車街の効果でモンスターをデッキから呼び出すノーネ。現れるノーネ! 現れよ『古代の機械巨竜』!」

 

地面を引き裂き、鉄と鉄の擦れ、軋む音と共にそのドラゴンはフィールドに産声を上げた。

 

『バッキャルオオオン!!』

 

古代の機械巨竜 効果モンスター 星8/地属性/機械族/攻3000/守2000 このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。 このカードの召喚のためにリリースしたモンスターによって以下の効果を得る。 ●グリーン・ガジェット:このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、 その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。 ●レッド・ガジェット:このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、 相手ライフに400ポイントダメージを与える。 ●イエロー・ガジェット:このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、 相手ライフに600ポイントダメージを与える。

 

こいつはイエロー・ガジェットなどのガジェットモンスターとの効果でシナジーがあるがそんな物はおまけ。重要な事ではないんだ。実際、あの効果を使ってるやつ見たこと無いから。歯車街の効果でポンポン出てくる3000の攻撃力が問題なのだ。

 

 

『す、すげぇ・・・・・・生け贄も無しに攻撃力3000のモンスターを・・・・・・』

 

『それも1ターン目から、流石クロノス先生だ』

 

外野が驚きふためくのはいつもの事だ。なに、一体ブルーアイズが出てきただけだ。・・・・・・無理ゲじゃね?

 

「この程度で驚いたらダメなノーネ! さらーに私は邪神トークン二体を生け贄に『古代の機械巨人』を召喚なノーネ!」

 

地面が砕け、その中から古代の騎士が装備していたような鎧を模した機械巨人が姿を表す。

 

古代の機械巨人 効果モンスター 星8/地属性/機械族/攻3000/守3000 このカードは特殊召喚できない。 このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、 このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、 その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。 このカードが攻撃する場合、 相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

 

また、攻撃力3000のモンスター・・・・・・だと。この連続召喚には生徒たちも言葉が出ないようだな。

 

まぁ、ブルーアイズ三体融合→アルティメット→融合解除で四連打される程じゃないからましです。

 

「オーホホ! グゥの音も出ないようなノーネ! さらにワターシは1枚カードを伏せーてターンエンドなノーネ! サレンダーするなら今のうちなノーネ!」

 

いや、手加減は?

 

 

とりあえずカードを引いてから考えよう。この状況を突破するには攻撃力3000以上か守備力3000以上のモンスターを召喚するか、除去カードを引き当てるしかない!

 

 

「俺の・・・・・・ターン! ドロー!」

 

 

神々しくも表れたカードは・・・・・・伝説の紙だった。

 

 

コカローチ・ナイト

 

効果モンスター 星3/地属性/昆虫族/攻 800/守 900 このカードが墓地へ送られた時、 このカードはデッキの一番上に戻る。

 

 

このカードはその圧倒的パワーにより使うものが存在しないカード。

 

 

嘘だが。

 

このカードは、あまりにも要らない効果を持っているために使われないと言うモリンフェン等とは違う意味で恐ろしいカードだ。

 

このカードは墓地に送られた時、デッキトップに戻ると言う効果を持っているのだ。

つまり、このコカローチ・ナイトが墓地に送られた次のターンのドローカードはコカローチ・ナイト。

 

また、送られた場合もコカローチ・ナイト。つまりセルフデッキロックだ。

 

女王様の生け贄に困らない所か涙目ではすまない。

 

専用のデッキを組めば強いと言う妄言を垂れ流す決闘者がいたらしいが生憎と専用のデッキではない。

 

しかもこんな低ステータスのカードを出せばそれだけで古代の機械巨人の貫通効果で終わる。

 

仕方ないが手札に残って貰おう。

 

「俺はモンスターをセット! カードを4枚伏せてターンエンド!」

 

俺のフィールドに現れる五枚の伏せられたカードのソリッドビジョン。

 

コカローチを残してガン伏せである。

 

「オホーホ! まだセニョール小波のターンは終わりではないノーネ! エンドフェイズに伏せていた速攻魔法『サイクロン』を発動ナノーネ! 真ん中の伏せカードを破壊するノーネ!」

 

え、エンドサイクだと・・・・・・!

 

星のお兄さんですら使わないような高等技術を持ち出してきたな!デュエルモンスターズのルールではカードを伏せたターンに仕様することは出来ないためエンドフェイズにサイクロンなどの魔法・罠を破壊する系統のカードを使用されるとなすすべもなく墓地へと直行してしまう。

 

お馴染みの竜巻が発生し、俺のフィールドのカードを粉々にする。しかし、運が悪いなクロノス教諭。ものの見事に地雷を踏み抜いたぞ!

 

 

「俺の破壊されたカードは・・・・・・モンスターカード!『白銀のスナイパー』!」

 

 

破壊されたカードの破片の中から防寒装備をしたスナイパーが現れる。

 

 

「魔法・罠ゾーンにモンスターカードなんてあり得ないノーネ!」

 

そう、白銀のスナイパーはかなり珍しいカードだ。罠カードの様に伏せて使用するモンスターカードなんて殆んど存在しない。

 

「白銀のスナイパーは魔法・罠ゾーンにセットし、相手によって破壊されることで初めて効果を発揮するカード・・・・・・破壊されたターンのエンドフェイズに特殊召喚する事が出来る。破壊されたのは俺のエンドフェイズ。よって俺は守備表示で白銀のスナイパーを特殊召喚する」

 

地面に伏せ、スナイパーライフルを構える白銀のスナイパー。白銀のスナイパー守備力1300。その姿を見てクロノス教諭は笑った。

 

「運良く壁モンスターを増やせたようデスーガ、セニョールの運命は変わらないノーネ! うひょひょひょひょ!」

 

残念だがそう上手くは行かない。

 

「白銀のスナイパーの効果発動! 特殊召喚成功時に相手フィールドのモンスターを一体破壊する! 『白き兇弾』!」

 

 

「ファッ!?」

 

スナイパーライフルから放たれた弾丸は巨大な巨人の眉間を貫く。この間0.08秒・・・・・・か、どうかは解らないが取り敢えず巨人撃破。

 

 

「ワターシの、古代の機械巨人がァー!」

 

白銀のスナイパー

効果モンスター 星4/地属性/戦士族/攻1500/守1300 このカードは魔法カード扱いとして 手札から 魔法&罠カードゾーンにセットできる。 魔法&罠カードゾーンにセットされたこのカードが 相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、 このカードを墓地から特殊召喚し、 相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

 

しかし、このカード効果発動が相手依存だから恐ろしい。このご時世、魔法・罠の除去カードを積んでいる決闘者はほとんどいない。

 

下手したらフィールド内で置物と化していたからな。

 

「だがしかーし! 私ーノフィールドには古代の機械巨竜が残っているノーネ! すぐーにLPを0にしてあげるノーネ!」

 

高らかに告げるクロノス先生。

 

しかし、それはどうかな?

 

 

やっぱり俺って(一部の)カードに選ばれ過ぎぃ!

 

 

「ワターシのターン! ドロー!」

 

この瞬間、伏せられた罠カードが効果を起動する!

 

「そのドロー時に罠カード発動!」

 

「何ですート!?」

 

そう、このタイミングならクロノス先生の妨害は入らない。確実にこのカードは通る!

 

「発動するカードは・・・・・・『はさみ撃ち』!」

 

瞬間、クロノス先生の顔は驚愕に染まる。

 

「ひょ!? はさみ撃ちデスーノ!?」

 

デュエルモンスターズにはアドバンテージという理論がある。例えば、「1枚のカードで2枚のカードを破壊した」とか、「1枚のカードで2枚ドローした」時がわかりやすい。

 

 

 前者は自分のカード1枚で相手の2枚のカードを失わせたのでカード1枚分、得をしたことになる。

 後者は自分のカード1枚が自分の手札2枚に増えたのでカード1枚分、得をしたことになる。つまり、アドバンテージを稼ぐカードをデッキに入れたり、稼ぐようにプレイングすればそれだけ有利にデュエルを進める事ができる訳だ。

 

だが全てのカードがアドバンテージを稼げるわけではない。数あるデュエルモンスターズの中でも今俺が発動したカード。

 

はさみ撃ちは伝説級のディスアドバンテージカードである。

 

はさみ撃ち

通常罠 自分フィールド上に存在するモンスター2体と 相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して破壊する。

 

つまりこのカードは自分のカード三枚で相手のカード一枚を破壊する驚愕の3対1交換。

 

しかも、魔法・罠を選択できずモンスターのみという嫌がらせ。

 

一枚でフィールドのモンスター全てを破壊する効果のカードがある中この有り様である。

 

開発者出てこいよ!

 

「何故でスーノ!? そんな実用性のないカードを!?」

 

諸事情だよ。察してください。

 

 

「俺は白銀のスナイパーとセットモンスター、そして古代の機械巨竜を破壊する!」

 

「マンマ・ミーア!」

 

挟み撃ちと言いながら自分フィールド上の白銀のスナイパーとセットモンスターが爆散し、その煙から巨大な手が伸び機械の竜を握り潰した。

 

いや、君達が挟み撃ちするんじゃ・・・・・・

 

「ぐぬぬ・・・・・・私のターンドローナノーネ!」

 

クロノス先生の手札は今ドローしたカード一枚だけ。ここから手を増やすには相当な時間がかかるはず・・・・・・もしかしたらコカローチ・ナイト=サンのゴキブリカラテ活躍の時か?

 

しかし、そのクロノス先生はドローカードを見てニヤリと笑った。

 

「オーホホホ! 確かにセニョール小波は強い、一見して完璧なノーネ! だかしかーし、このクロノス・メディッチにーは遠く及ばないノーネ!」

 

高らかにカードを掲げデュエルディスクに叩きつける。

 

「ワターシは手札から『天よりの宝札』を発動ナノーネ!」

 

 

え。なにそれ怖い。

 

天よりの宝札

 

通常魔法 互いのプレイヤーは手札が6枚に為るようにカードを引く。

 

天高くからソリッドヴィジョンの札束が舞い降りた。その光と共にデュエルディスクからカードが引かれる。

 

 

「手札は0枚よって6枚ドローするノーネ!」

 

そんなぶっ壊れドローカードを授業で使う?6枚ドローとか爆アドじゃないですかやだー。

 

「俺の手札は1枚。よって5枚ドロー」

 

しかし、手札が補充できたのは有り難いな。

このターンで決められたら終わりだがな!

 

「私は魔法カード『死者蘇生』を発動するノーネ!」

 

えー。

 

死者蘇生 

通常魔法(制限カード) 自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

死者蘇生とはデュエルモンスターズを象徴する、強力な蘇生カードである。

 

 

ノーコストかつ一切のデメリットがない完全蘇生、通常魔法故の速攻性、対象をお互いの墓地から選択可能、特殊召喚の表示形式は自由と他の蘇生カードよりも格段に性能が高い。

 

俺のデッキ?入ってねぇよ!

 

「私は墓地の古代の機械巨竜を特殊召喚するノーネ!」

 

『バッキャルオオオン!!』

 

本日二回目となる轟音を響かせ姿を現す巨大な機械竜。3000打点の復活である。

短い墓地送りでしたね・・・・・・

 

「更に私は手札より『古代の機械騎士』を召喚ナノーネ!」

 

古代の機械騎士

デュアルモンスター 星4/地属性/機械族/攻1800/守 500 このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、 通常モンスターとして扱う。 フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、 このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。 ●このカードが攻撃する場合、 相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

 

フィールドにランスを構えた人間サイズのザクが現れた。

 

「これで3000+1800=4800でワンショトキルが成立ナノーネ!さよならデスーノ! そのまま、バトルナノーネ!」

 

ギチギチという音を立てながら臨戦態勢に入るクロノス先生のモンスターたち。あと、その便利なセリフ止めて。

 

「古代の機械巨竜の攻撃! アルティメット・クロー!」

 

 

高速で飛翔した古代の機械巨竜の爪が俺の体に叩き付けられる。

 

・・・・・・やっぱりソリッドビジョンだよな?

 

風圧を感じるんだが。

 

小波LP4000→1000

 

一気にライフポイントを持っていかれたが、まだ勝ちの目はある!

 

「この瞬間、罠カード発動!」

 

「この瞬間にデスート!?」

 

クロノス先生の叫びを聞きながらカード名を高らかに宣言する。

 

「『痛恨の訴え』! 効果によって相手のフィールドの守備力の最も高いモンスターのコントロールを奪う事ができる!」

 

この効果によって守備力2000の機械巨竜のコントロールを得る。

 

 

「コントロール奪取カードナノーネ!?」

 

 

痛恨の訴え 

通常罠 相手モンスターの直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けた時に発動できる。 相手フィールド上に表側表示で存在する守備力が一番高いモンスター1体の コントロールを次の自分のエンドフェイズ時まで得る。 この効果でコントロールを得たモンスターの効果は無効化され、攻撃宣言できない。

 

しかし、このカードは一度ダイレクトアタックを受けなければ効果を使えない。

 

故に使う人はあまりいないな。

 

機械巨竜は空を舞いこちらのフィールドに降り立つ。火力3000が今ここに・・・・・・夢みたいだ。

 

えっ、モリンフェンが3100になってた?知らんな。

 

 

「わ、私はターンエンドナノーネ」

 

しかし、このカードでは攻撃できない・・・・・・他の事に利用させて貰おうかな。

 

 

 

「俺のターン、ドロー! 俺は古代の機械巨竜を生け贄に捧げ! 現れよ邪悪なる死を司り堕天使よ! 終世を導け!」

 

 

禍々しい光と共にどこか神聖な雰囲気が辺りに充満する。

 

『これはまさか・・・・・・』

 

『ああ、とんでもなく強力な気配がするぜ・・・・・・』

 

外野の声が聞こえてくる。デジャブだ。

 

 

 

「『死の沈黙の天使ドマ』!」

 

 

『フハハハハハ!』

 

高笑いと共に鎧を着た雑魚が舞い降りる。

 

 

死の沈黙の天使ドマ

通常モンスター 星5/闇属性/天使族/攻1600/守1400 死を司る天使。 こいつに睨まれたら、死から逃れられない。

 

 

闇で弱体化する天使族の癖に闇属性である。

 

なんと、こいつモリンフェンより50も火力が高い!

 

 

『ざけんな! あの神聖な雰囲気何だったんだ!』

 

『睨まれたら死から逃れられないってやかましいわ!』

 

 

 

外野からの野次が痛いだが。

 

これにはちゃんとした意味がある。

 

まず、機械巨竜の始末。

俺のエンドフェイズにはクロノス先生のフィールドに戻ってしまう。これはまずいからな。

 

更に・・・・・・あ、理由ないわ。

 

 

「あー、その、セニョール小波。カードが無いなら少し位分けてあげるノーネ」

 

何か同情されとる。

 

 

「結構です。俺は魔法カード『渾身の一撃』発動!」ドマに光るオーラが宿る。つまり闇と光が合わさり最強には見えないな・・・・・・

 

「俺は死の沈黙の天使ドマで古代の機械騎士に攻撃! 『ダーク・サイズ』!」

 

闇の力を持った鎌が機械の騎士を貫く・・・・・・事はない。火力負けてるし。

 

 

「火力が負けているのに攻撃とは愚かナノーネ! 迎撃するノーネ!」

 

古代の機械騎士のランスはドマの鳩尾辺りを貫いた。

 

 

「オーホホホ!何をするかと思えーば、少ないライフを減らしただけなノーネ!」

 

そいつはどうかな?

 

「渾身の一撃は自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する魔法カード。選択したモンスターを戦闘破壊不可にし、戦闘を行った相手のモンスターを破壊する効果を持つ」

 

 

渾身の一撃 

通常魔法 自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。 このターン、選択したモンスターは戦闘では破壊されず、 その攻撃によって発生するお互いへの戦闘ダメージは0になる。 また、このターン、選択したモンスターが相手モンスターを攻撃した場合、 ダメージ計算後にその相手モンスターを破壊する。

 

 

つまり破壊されるのは古代の機械騎士のみ!

 

「ペペロンチーノ!?」

 

爆発する騎士のソリッドビィジョンと共に吹き飛ばされるクロノス先生。やっぱり、おかしくないか?

 

「更にカードを一枚伏せてターンエンド」

 

よし、これで沈黙の死の天使(笑)はフィールドに残り相手のフィールドもがら空きだ、行ける筈。

 

「私のターン。ドロー! セニョール小波。貴方はオシリスレッドの生徒にしては優秀でしたーノ。私のモンスターを破壊し、奪い何度も追い詰めましたノーネ」

 

うん、あなたライフ変動してませんよね?

 

「デスーガ、セニョール小波の使うゴミカードではオベリスクブルーの生徒には遠く及ばないノーネ! 私は教育者のプライドに掛けーて、あんな噂は嘘であると証明して見せるノーネ!」

 

 

ん・・・?噂?なんの事だ。

 

ゴミカードである事は甘んじて受け入れるが。俺の疑問を他所にクロノス先生はデュエルを続ける。

 

「私は魔法カード『磁力の召喚円Lv2』発動するノーネ!」

 

バリバリという、電気の音と共にフィールド内をサークルが覆う。

 

「この効果によって手札からLv2の機械族モンスターを1体特殊召喚できるノーネ! 私は『古代の歯車』特殊召喚するナノーネ!」

 

磁力の召喚円Lv2

 

通常魔法 手札からレベル2以下の機械族モンスター1体を特殊召喚する。

 

磁力が収まると同時に歯車に足を生やした様なモンスターがフィールドに現れた。

弱そう。

 

 

古代の歯車 

効果モンスター 星2/地属性/機械族/攻 100/守 800 自分フィールド上に「古代の歯車」が表側表示で存在する時、 手札からこのカードを攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

 

しかし、召喚権は残っている来るか!

 

 

 

「更に古代の歯車を生け贄に『古代の機械獣』を召喚ナノーネ!」

 

 

クロノス先生の掛け声と共に機械の獣が地を駆ける。その姿はまるで狼のようなしなやかさ。

 

 

古代の機械獣 

効果モンスター 星6/地属性/機械族/攻2000/守2000 このカードは特殊召喚できない。 このカードが戦闘によって破壊した相手効果モンスターの効果は無効化される。 このカードが攻撃する場合、 相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

「シニョール小波お得意の魔法・罠カードはこれで封じたノーネ!」

 

別にお得意ではないです。

はさみ撃ちがデフォルトじゃないんです。

 

「古代の機械獣でその堕天使もどきを粉砕ナノーネ! 『プレシャス・クロー』!」

 

 

軽やかに飛び上がった古代の機械獣は降り下ろされる鎌をかわし爪を振るう。

 

『ファー!』

 

叫びながら消えていく堕天使。

せめて沈黙しながら消えて下さい。

 

 

LP1000→600削りに削られたLPは既に7分の1程度になってしまった。

 

 

「これでターンエンドナノーネ! そろそろ諦めてもいいのデスーヨ?」

 

 

嘲るようなクロノス先生の顔。クロノス先生に負けたとしても別に問題は無いんだろう。走馬灯の様に駆け巡る敗北の記憶。敗北に敗北を重ねてきた自分が漸く勝てる様になったのはつい最近。負けた回数の方が圧倒的に多い俺の決闘歴史。だけど・・・やっぱりデュエルで負けるのは悔しいじゃないか。

 

 

 

「俺は最後の瞬間まで諦めない。ドロー!」

 

 

ドローカードは・・・・・・お前か。最近拾ったカードも入れて繰り直した時に入ったカード!

 

 

「俺はモンスターをセット。更に手札から装備魔法カード『幻惑の巻物』を発動する」

 

 

巻物は古代の機械獣の全身に巻き付いていく。

 

「マンマミーア! 私の古代の機械獣がオカルティックに!」

 

そんな事はどうでもいい、重要な事じゃないんだ。

 

「幻惑の巻物を装備したモンスターは属性を強制的に変更させられる。俺は地属性の古代の機械獣を闇属性に変更します」

 

 

巻物からどんどん黒い煙が噴き出し、古代の機械獣を染めていく。

 

 

幻惑の巻物 

 

装備魔法 属性を1つ宣言して発動する。 装備モンスターの属性は宣言した属性になる。

 

 

「そして俺は伏せていた魔法カード、太陽の書を発動させます」

 

天上院とのデュエルで使った太陽の書。何時ものようにブラフ要因からの華麗な転身である。

 

「今セットしたモンスターをリバースする! 現れろ!『闇霊使いダルク』!」

 

 

フィールドには少しやさぐれた様な眼をした美少年。

 

 

『キャアアアア! ダルクきゅんんん!』

 

『俺、ダルクだったら抜けるかも』

 

『えっ?』

 

 

再び騒がしくなる外野。

さすが霊使いは人気だ。

 

しかし、ダルクは霊使いシリーズ唯一の男だから男性人気が低かったらしいがそんな事は無さそうだな。

 

そんな事を考えているとダルクのソリッドビジョンはこちらに向かって苦笑いを向ける。

 

『次はアイツらを召喚してやれよ? 頼むから。俺が危ない』

 

おお、良くできてるなぁ。最近のソリッドビジョンは会話が出来るのか。

 

ダルクと一緒に出てきた使い魔であるD・ナポレオンが帽子の上に乗るのを振り払い、感心しながら頷く。しかし、なんて言ったんだ?

 

既にダルクは杖を軽々と振り回し、前を向いているから解らない。聞いても返事は帰って来ないだろうしな。

 

 

「闇霊使いダルクの効果により、相手フィールドの闇属性モンスターのコントロールを得る。よって古代の機械獣のコントロールを奪取します」

 

闇に包まれた古代の機械獣はこちらのフィールドに移る。

 

 

「ぐぬぬ、シニョール小波はトリッキーな戦略を立てるノーネ!」

 

ならざるおえないんじゃないかと言う可能性は考えないんですかね・・・・・・

 

 

「ええい、バトル! 古代の機械獣の攻撃! 『プレシャス・クロー』!」

 

 

「ワザップ!」

 

 

クロノスLP4000→2000 

 

 

遂にクロノス先生にダメージが入った。あまりにも長い遠回りだったなぁ・・・・・・

 

 

「よくーも私のモンスターを奪ってくれましたーノ! しかし、あなたのライフは600ポイント! これが勝負の分かれ目ナノーネ! 私のターンドロー!」

 

流暢に口上を並べながらドローし、そのカードを見た瞬間笑みを浮かべるクロノス先生。

 

「これにておしまいナノーネ! ファイナルターンナノーネ!」

 

それ、違うゲームじゃ・・・・・・

 

「私は攻撃表示で『古代の機械砲台』を召喚ナノーネ!」

 

 

フィールドにトーチカめいた機械の砲台が生まれる。あのカードは確か・・・・・・

 

 

「さらに私は手札から『機械複製術』を発動するノーネ! これにより攻撃力500以下の古代の機械砲台をデッキから2体、守備表示で特殊召喚ナノーネ!」

 

ホログラムの様に浮かび上がる機械が形を成しクロノス先生のフィールドには三体の古代の機械砲台が並ぶ。

 

 

「このモンスターは生け贄に捧げる事ーで相手のバトルフェイズ時に罠を抑圧する効果と・・・・・・相手に500ポイントのダメージを与える効果があるノーネ!」

 

 

つまり三体で1500のダメージか・・・・・・

 

 

古代の機械砲台 

 

効果モンスター 星2/地属性/機械族/攻 500/守 500 このカードを生け贄に捧げる。 相手ライフに500ポイントダメージを与え、 このターンのバトルフェイズ中はお互いに罠カードを発動できない。

 

 

機械複製術 

 

通常魔法 自分フィールド上に表側表示で存在する 攻撃力500以下の機械族モンスター1体を選択して発動する。 選択したモンスターと同名モンスターを2体まで自分のデッキから特殊召喚する。

 

 

「これでおしまいナノーネ! まずは一体目の古代の機械砲台を生け贄に射出ナノーネ!」

 

 

あれ、星のお兄さんが思い浮かぶのは何故だろうか。高速で迫る砲弾。だがしかし、手は既にある!

 

 

「俺は墓地のモンスター『プリペントマト』の効果を発動!」

 

 

ヘルメットを被ったトマトが大量に沸きだし、フィールドを埋め尽くす。多い、多いわ。

 

 

「プリベントマトを墓地から除外し、このターン受ける俺のダメージをゼロにする!」

 

 

プリベントマト 

 

効果モンスター 星2/地属性/植物族/攻 800/守 800 墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。 このターン、自分が受ける効果ダメージは0になる。 この効果は相手ターンにのみ発動できる。

 

 

トマトの群れに突っ込む砲弾。なんとシュールな光景か。

 

 

「くっ、墓地発動のモンスターカードなど何時の間に墓地に送ったノーネ!?」

 

はさみ撃ちで爆散した時ですがなにか。

 

しかし、プリベントマトは、ハネワタと言う手札誘発型の完全上位互換カードが在るため普通使われもしないが今回は上手く役立ったわけだ。

 

これで砲台は不発、残るのは500の壁。

 

勝てる気がして来た。

 

 

「まだまだ甘いノーネ! 私は手札から『二重召喚』を発動するノーネ!」

 

 

負ける気がして来た。

 

 

 

「これにより私はもう一度通常召喚を行うノーネ!」

 

 

二重召喚 

 

通常魔法 このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。

 

その簡単故に強力な効果は実際強い。このカード使えば1ターンの間に強力な上級モンスターを呼び出せる。

 

・・・・・・モリンフェンやドマは上級モンスターとは認めない。

 

 

「そしーて、2体の古代の機械砲台を生け贄に古代の機械巨竜を召喚ナノーネ!」

 

 

『バッキャルオオオン!!』

 

 

本デュエル三度目の登場。

 

そろそろ過労死しそうである。

しかし、呆けている暇は無いのだ。

 

「召喚時、俺は罠カード破壊指輪を発動。自分フィールドの古代の機械獣を破壊、お互いに1000のダメージを与える」

 

「何でスート!? アウチ!?」

 

突如、表れたリングにより爆発する機械の獣。破片がクロノス先生の頭にぶつかる。

 

クロノスLP2000→1000

 

 

「プリベントマトの効果によりこのターン俺はダメージを受けない」

 

 

小波LP600

 

 

遊城とのデュエルでも使用したがとんでもないアド損カードである。自分フィールドのモンスターを破壊しお互いに1000ダメージ。

 

二枚使って一枚も減らせていない。

 

「むぐぐ・・・・・・しかし、その小賢しい魔法使いには墓地に行って貰うノーネ! 古代の機械巨竜の攻撃ナノーネ! 『アルティメット・クロー』!」

 

振りかざされる鋭い爪がダルクを切り裂く。サツバツ!

 

 

「これでターンエンドナノーネ。ファイナルターン宣言を外されましたーが、本の少し延命に過ぎないノーネ!」

 

クロノス先生に言いたいことは一つだけ。

 

1000ポイントにした時点で敗北は確定しているのさ!

 

 

「俺のターンドロー。クロノス先生、貴方の実力は素晴らしい。だが、侮った。それこそ、ミステイクです。俺は魔法カード『魔法石の採掘』を発動。手札のカードを二枚墓地に送り、墓地から魔法カード幻惑の巻物を回収します」

 

 

魔法石の採掘 

 

通常魔法(準制限カード) 手札を2枚捨て、自分の墓地の魔法カード1枚を選択して発動する。 選択したカードを手札に加える。

 

 

手札2枚と言う重いコストに見合う強力なカードだが、残念ながら俺のデッキにそう強力な魔法カードは入っていないのでコストの払い損になる実にいらないカードだ。

 

「魔法石の採掘を使って戻したカードがそんなカードデスーノ? ウヒョヒョ! 大口はあまり叩かない方がいいノーネ!」

 

 

たしかに、そう思うだろうが魔法石の採掘の目的は手札から墓地にカードを落とすことにある。

 

 

「いや、大口では無いですよ」

 

疑問をクロノス先生の口に出させる前に俺は最後の伏せカードを発動させる。

 

 

「遥か戦国の武士達よ! 背水の陣を築き今ここに集結せよ! 罠カード『究極・背水の陣』!」

 

 

フィールドに突如あらわれる魔方陣の様な物。回りには旗印が立ち並ぶ。

 

「究極・背水の陣は俺のライフを100になるように支払い発動する」

 

「ライフを100にデスーノ!?」

 

ああ、まるで何処かで聞いたライフちゅっちゅっギガントみたいな効果だ。

 

 

「そして墓地より『六武衆』と名のついたモンスターを好きなだけ特殊召喚できる」

 

究極・背水の陣 

 

通常罠 ライフポイントを100ポイントになるように払って発動できる。 自分の墓地の「六武衆」と名のついたモンスターを 可能な限り特殊召喚する。(同名カードは1枚まで。 ただし、フィールド上に存在する同名カードは特殊召喚できない。)

 

その効果はまさしく背水の陣。

 

 

「墓地より舞い戻れ! 『六武衆の御霊代』! そして『六武衆ーヤリザ』!」

 

現れるのは六武衆の魂と六武衆最強のモンスターヤリザ殿でござる。

 

 

嘘である。

 

 

「攻撃力500と1000? これで古代の機械巨竜に勝つ積りとはお笑い草ナノーネ!」

 

確かに勝てない。だが逆に考えるんだ。勝てなくていいさって考えるんだ。

 

「ヤリザ殿で攻撃ィ! 『六武衆一番槍』!」

 

 

槍を構えて走り始めるヤリザ殿。

 

その後ろ姿は六武衆最強の品格を感じさせるでござる』

 

 

今さっきから何か聞こえね?

 

「迎え撃つノーネ! 『アルティメット・クロー』!」

 

『無駄でござる!』

 

 

軽やかな動きで御霊代を蹴り飛ばして回避するヤリザ殿。いや、ご先祖蹴り飛ばして・・・・・・

 

「ヤリザ殿は他の六武衆がフィールドに存在するときダイレクトアタックする事ができる」

 

「何ですーと!?」

 

六武衆-ヤリザ

 

効果モンスター 星3/地属性/戦士族/攻1000/守 500 自分フィールド上に「六武衆-ヤリザ」以外の 「六武衆」と名のついたモンスターが存在する場合、 このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。 また、フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合、 代わりにこのカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する 「六武衆」と名のついたモンスター1体を破壊できる。

 

 

『終わりでござる!』

 

槍がクロノス先生の脳天に叩き込まれる。

 

クロノスLP1000→0

 

 

『やっぱり拙者が最強でござるな』

 

 

最後まで妄言垂れ流しながら消えていくソリッドビジョンを見送る。

 

ヤリザ殿は六武衆とは見事な迄に噛み合っていない、ダイレクトアタック効果を持った残念カードである。プロデュエリストも六武衆デッキに入れない位である。

 

 

 

「そんな、私の暗黒の中世デッキが敗れるなんーて・・・・・・」

 

 

うちひしがれるクロノス先生。

 

 

『・・・・・・す、すげぇ!』

 

『あのオシリスレッド、クロノス先生に勝ちやがった!』

 

打って代わり大歓声に包まれるデュエルフィールド。う、嫌な感じだ特にオベリスクブルーの生徒。

 

このままだと直ぐにデュエルをすることに成りそうだ。俺はクロノス先生に礼をしてそそくさと観客席に戻った。

 

 

尚、遅刻してきた遊城がデュエル出来なかった事にガッカリした後で俺にデュエルを求めて来たのは言うまでも無いことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな、馬鹿な。

クロノスの心中はその気持ちで一杯だった。

自分のモンスター達がバタバタとやられ、奪われる姿は悪夢そのもの。

 

許すまじ小波。

許すまじオシリスレッド。

 

膨れ上がる逆恨みはクロノスの真意を隠す。

 

「ならーば、外部のデュエリストを・・・・・・」

 

空回りは続く。




やっぱりヤリザ殿がNo1!


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