超戦艦:富士 (小説七つ球)
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眼を開けてみれば大海原

「ん…ここは…?」

 

確か、さっきまで横須賀に記念艦として浮かんでいたはず…。なのに気が付いたらここにいた…。

 

「うーむ……、何もわかっていない今、ひたすら考えても仕方あるまい、とりあえずは…。そういえば何故私は喋れているのだ?」

 

まさかと思い水面を覗いてみると、女性になった自分がいた。着ているのは巫女装束のような服装。衿が白く、後は水色の無地の着物に、青無地のズボンタイプの袴。腰には菊花紋章をあしらわれた恐らく艦首を模したであろう帯。それに艦の頃のものと思しき主砲や副砲、対空砲、そして艦橋や煙突であろう機械を身に着けている。艤装というらしい。その艤装には乗組員と思しき小さな生物が沢山いる。妖精さんと名乗っていた。可愛い。

 

「装備の確認…主砲、51cm三連装砲4基12門、異常なし。副砲、20.3cm三連装砲8基24門、異常なし。13cm連装砲18基36門、異常なし。対空砲、機関、操舵装置、電探、ソナー、爆雷投射機、いずれも異常なし。燃料、弾薬、共に満載。龍雲も全機いつでも発艦可能。何故か大太刀(刃渡り5尺6寸)もあるが…まぁいいでしょう」

 

さて、装備に異常がなく、航行も可能という訳でどうするかだが……とりあえず日本を目指して北に行くとしよう。

 

 

―数十分後―

む?この音は…。砲戦か。それも41cm砲と思しき大口径砲の音も聞こえる…。あの大戦以降、航空機が主流になってからめっきり聞かなくなったものだ。

それはともかく、電探には敵味方合わせて12隻の反応があった。どちらが味方か今のところ分からない以上、龍雲を飛ばしてより詳細な情報を集めることにした。

 

結果として、年端もいかないであろう少女たちが、人型の異形を相手に戦っていた。が、少女たちの方は、既に満身創痍であり、片や異形の方は魚か鯨みたいな奴はボロボロ、頭に何か被っている奴はその被っている何かが穴だらけだったがそれ以外の奴は掠り傷ほどしか損害がない。見たところ異形の尾を生やした黒いパーカーの様な服を羽織っている奴が一番の脅威と見た。妖精さん曰く、深海棲艦というらしい。尾を生やしたのがレ級。戦艦の癖に雷撃はするわ航空機は繰り出すわさらには主砲の威力もデタラメだわと色々盛りだくさんな敵さんらしい。他は戦艦ヲ級(flagship)、重巡ネ級、軽巡ツ級(elite)、駆逐ロ級(elite)が2隻の6隻の艦隊らしい。

対して少女たちは艦娘と言い(私も恐らくそうなのだろう)、軽巡天龍と龍田。あとは暁型駆逐艦4隻(暁・響・雷・電)の水雷戦隊らしい。恐らくは輸送任務中に遭遇してしまったのだろうが…。

それにしても装備が貧弱な気がする。暁型は12.7cm連装砲三基六門、魚雷発射管は四連装が三基十二門のはず…。なのになぜ魚雷発射管が三連装なんだ?

しかし妖精さん曰く、暁型はもともと魚雷発射管は三連装だという。おかしい…私の記憶では四連装だったはず…。いや、今はそんなことはどうでもいい。早く彼女たちを助けねば。

飛ばした龍雲に着弾観測を頼み、主砲の照準を合わせ―――

 

「全砲門、斉射!撃て(って)ぇぇーーーー!!!!」

 

轟音と共に、重量約二トンの徹甲弾を12発放つ。

結果は…ヲ級とネ級、ツ級を撃沈、レ級も中破した。瀕死の駆逐艦には避けられたが、当たったとしても過貫通してそれほどダメージは入らなかっただろうからまぁいい。

着弾後、機関をフル稼働させ、最大戦速で天龍達と合流する。天龍達の方はというと、いきなり敵が三隻も沈んだことに動揺していたが、すぐに立ち直り、瀕死の駆逐二隻を仕留めている。が、レ級は中破しているのにもかかわらず、魚雷は避けるは主砲は効かないわ。かといってレ級の兵装は一部の副砲と尾の主砲以外オシャカになっており、尾の主砲も砲身が割れている影響か精度が悪く、互いに攻撃が当たらないというジリ貧に陥っていた。

なので副砲の20.3cm砲を15門撃つ。この距離だと当たるかは微妙だが、当たればあのレ級に引導を渡せるだろう。事実、そうなった。命中した瞬間、レ級は大爆発を起こし、木っ端みじんになった残骸は海の底へと沈んでいった。




次回、天龍視点


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会敵、そして邂逅

遠征ってあれどういう仕組みなのかわからんからどう書けばいいのかわからんね…


この俺こと、軽巡洋艦天龍は今日も今日とて遠征に出ていた。安全が確保された海域を通って資材が沸いて出る島(どういう原理かは知らないが)に向かい、資材を持って帰投するだけ。そのはずだった。

 帰投中に敵艦隊に遭遇。それでも水雷戦隊程度ならまだよかったのだが、あろうことかあのレ級がいた。レ級は、単体ですら並大抵の艦隊では歯が立たず、それこそ四大鎮守府の第一艦隊程の戦力が必要だ。そんな奴が随伴艦を連れているのだ。戦艦ヲ級(flagship)、重巡ネ級、軽巡ツ級(elite)、駆逐ロ級(elite)が2隻と、一筋縄ではいかない奴らばかり。

 対してこっちはそれなりの練度はあるもののそれだけ。せめて周りに島があればまだどうにかなっただろうが生憎目に見える範囲には島一つない。おまけに太陽はまだ真上にあり、当分夜はこなさそうだ。

 まぁつまり―――俺たちはここまでらしいってことだ。一応提督に報告したらすぐに援軍を送ると言ってくれたが、それでも着くのは夕方ごろだろう。ま、だからってこのまま黙って沈むつもりは全くねぇ。せめてこいつらだけでも…!

 

「お前ら、隙を見て逃げろ。俺が殿になる」

 

「天龍さん、そんなの無茶よ!私も――」

 

「ダメだ!さっさと逃げろ!!今ここで皆が沈むより俺だけ沈んだ方がましだろうが!!」

 

「でも!天龍さん一人で戦うより皆で戦った方が援軍が来るまでの時間も稼げるじゃない!」

 

「それに天龍ちゃん一人で時間を稼ぐって言ってもレ級が相手じゃすぐ沈められてその後逃げた私たちも各個撃破されるのがオチよ?それに、もう逃げる時間もないわよ~?」

 

龍田の言うとおりだ。レ級相手に俺一人じゃ碌に時間も稼げずに全員沈む。それにここで言い合っている間に敵に距離を詰められている。

 

「っ…仕方ねぇ!全員、戦闘用意!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、どれくらい時間が経った…?太陽を見てみると、さっきより少し西側にある。時間にして、一時間くらい、か…。まだそれだけしか経っていないのか…。ったく、一隻くらいは道ずれにしたかったんだがなぁ……。

 

砲弾が大気を切る音が聞こえる…ここまでか…。

 

……?待て、音の方向がおかしい。敵の方に向かっているような……?

 

 

瞬間、轟音が空気を揺るがした。爆炎でよく見えないが…敵に命中したのだろう。煙が晴れると、さっきまでいたはずのヲ級とネ級、ツ級が沈んでいるのが見えた。レ級も中破しており、それも兵装の殆どをやられたらしい。俺はボロボロの身体に鞭を打ち、声を絞り出した。

 

「っ…お前ら、気張れぇ!!今のうちに畳みかけるぞ!!」

 

その声に、俺と同じくボロボロだった龍田や六駆の主砲が火を吹く。弾は吸い込まれるように大破していた二隻の駆逐艦に当たり、海の藻屑に変わった。

 

だが、

 

「ああもう!往生際が悪いわね!」

 

肝心のレ級に当たらない。砲を撃っても、残っていた魚雷を放っても当たらない。だが、レ級の攻撃も当たらない。砲身が割れたのか、砲弾が明後日の方向に飛んでいく。

すると、また砲弾が飛んでくる音が聞こえた。飛んできた弾は全てレ級に命中し、レ級は木っ端みじんになって海に沈んだ。

 

 

ほどなくして異常にデカい主砲を持った一人の艦娘が現れた。



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鎮守府へ

なんか半年たってて草

夏イベは土壇場でE-3(丙)をクリアして終了。
イベが終わる六時間前に装甲破砕ギミックの存在を思い出す

Sマスから手を付けようとしたら編成ミスってボスマス直行

北上様が旗艦をぶちのめしてゲージ破壊


 天龍達と合流した富士。お互い自己紹介を済ませたが、天龍達にはさらなる疑念が募るばかりであった。富士と名乗った艦娘の持つ明らかに長門型の41cm砲より口径が大きい三連装砲。彼女が未だ建造、あるいはドロップしていない大和型の大和、あるいは武蔵であったのならそれが46cm砲だということで片付いただろう――だとしてもなぜ主砲が四基あるのかは説明できないが――。

 

 しかし、その艦娘は超大和型戦艦(・・・・・・)である富士型戦艦の一番艦、富士と名乗った。そんな艦は天龍の知る限り存在しない。まして、それが超大和型戦艦ともなればだ。超大和戦艦は戦中に計画こそあったが終ぞ建造されることはなかった幻の戦艦だ。

 この世界に現れた艦娘は国籍は異なっていても全てかつてこの世界に実在した軍艦の名を冠した者のみである。だが、前弩級戦艦の富士は存在するが、超弩級戦艦富士は存在はおろか、計画すらされていない。そもそも前弩級戦艦富士は古すぎて(進水日1896年3月31日)現れていない(近年イタリアにて弩級戦艦コンディ・カブールが発見されてからは彼女が最年長の艦娘(進水日1911年8月10日)である)。

 ともかく、これ以上ここで考え事Wしていても仕方ないので詳しい話は一旦鎮守府に帰投してからということになった。

 

 

 

 

 

 一度鎮守府に帰投し、天龍達の入渠をすませてから改めて提督を交えて話をすることとなったのだが、彼女――富士の艦生と交えて語られた日本は天龍達が知るそれとは別物だった。

 

「…にわかには信じがたいが、それが君の生きてきた世界なんだな」

 

 あまりに突拍子もない話に思わずそう呟く横須賀鎮守府支部館山泊地の提督、小沢翔。彼は32歳という若さでありながら冷静な判断力・指揮能力と大胆な作戦展開によって北方海域をはじめとした数々の海域を開放することに成功。その戦果を認められ、横須賀鎮守府支部の提督を任されたという経歴を持つ言わば超エリートである。しかし流石に話が突飛過ぎたためか彼にしては珍しく険しい顔で眉間を抑えている。

 

「…とりあえず、上に話を通すまではうちで預かることになるが、構わないか?」

「えぇ。この世界がどんな感じなのかも見てみたいですし」

「そうか。それと、ついでに君の性能を見せてもらうための試験を行いたいのだが、構わないか?」

「構いません」

「わかった。それじゃ、試験の日程が決まり次第連絡する。それまではこの鎮守府内に限って自由に過ごしてくれて構わない。部屋は艦娘寮3階に空き部屋が一つあるからそこを使ってくれ。鎮守府の案内は天龍、任せていいか?」

「おう、良いぜ!」

「わかりました。天龍さん、よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 天龍の案内の元、工廠、食堂、浴場、艦娘寮、甘味処『間宮』、居酒屋『鳳翔』、倉庫等、鎮守府を一通り見て回った富士は、途中で合流した龍田や第六駆逐隊(暁・響・雷・電)の面々と共に夕食を食べることになった。

 

「それで…そっちの世界にも俺たち天龍型は存在したんだよな?」

「存在しましたよ。私が生まれる前に横須賀で解体されましたが」

「え…」

「そもそも旧式すぎてあのまま現役だったとしても隔離されてたでしょうし」

「まぁ~…それは否定しないわぁ。事実そうだったしねぇ」

「天龍さんが固まっちゃったのです…」

「ねぇねぇ!私たちの話はあるの?」

「暁たちの話ですか?そうですね―――」

 

異世界の話に花を咲かせつつ、夜は更けていく―――



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