僕のヒーローアカデミア~吸血鬼と為った者~ (暁月鈴)
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一話~悪魔の目覚め~

一話ですよ~




「ごめんね。優真に"個性"を持って産んであげられなくて……」

 

そう泣きながら、お母さんが僕に抱きついてくる。4歳になった僕……夜桜優真(よざくらゆうま)は病院で『個性』の診察をした。その結果、僕は『無個性』だと判明した。

 

お父さんとお母さん、二人のプロヒーローの間に生まれた子ということもあって、今までもてはやされていた。けど、『無個性』と診断されたその日から、全てが変わった。

 

幼稚園の頃には、友達が少しずつ離れていった。そして……

 

「おまえ『無個性』の癖に生意気なんだよ!!」

 

「お前の親はかわいそうだよな~ こんな役立たずが子供なんて」

 

小学生に上がる頃には友達はみんないなくなり、クラスの人から、いじめられるようになった。テストでずっと高得点をキープしていたのがダメだったのかもしれない。

 

最初は物を隠されるだけだった。けど、しだいに事はエスカレート。暴言、暴力は当たり前。ひどい時には、『個性』の実験台にもされた。先生に相談しても、ろくに受け持ってくれない。

 

三年生になる頃には、学校に行くのが怖くなって、四六時中家にいるようになった。俗に言う『引きこもり』だ。お父さんとお母さんはヒーローとしての仕事を休んででも、どっちかは家にいてくれた。そんなある日、お母さんが『気分転換になれば』と、一つのゲーム……【東方紅魔郷】と書かれた物を僕にくれた。

 

もともとゲームが好きだった僕は、そのゲームにのめり込んだ。毎日のようにそのゲームをプレイしたし、【不思議の幻想郷】や【東方スカイアリーナ】など、東方に関係した作品も遊ぶようになった。

 

しだいに僕は『東方のキャラクター』に憧れた。その中でも、『フランドール・スカーレット』というキャラクターが好きになった。ありとあらゆるものを破壊する……そんな力に引かれたのかもしれない。

 

そんなある日のことだった。いつものようにゲームをしていると、お母さんが部屋に入ってきた。すると、お母さんは驚いた顔をして、「髪を染めたのか」と聞いていた。その質問に染めた覚えはないと答える。そしたら、お母さんに鏡を見せられる。鏡に移った僕の姿はいつもの黒い髪ではなく、金色になっていた。その後、僕は病院に連れていかれた。そこで診断した結果、この髪色は染めた物ではなく、地毛との事らしい。何らかの『個性』によるものかもしれないから、何か進展があったら来るように、と言われた。

 

それからまた時がたち、今日はお母さんの誕生日ということで、部屋から出てお父さんと一緒にお祝いしていた。そんな時……

 

ズキューン

 

その銃声と共に、(ヴィラン)が襲撃してきた。お父さんとお母さんは僕を(ヴィラン)から遠ざけつつ、片っ端から倒していく。そんな中、一人の(ヴィラン)が注射器を手に取り、それを自分の腕に押し当てた……すると、その(ヴィラン)の身体は異常なまでに膨れ上がった。その後、ソイツはものすごい速さでお父さんとお母さんを捕まえると、地面に思い切り叩きつける。それだけでお父さんとお母さんは動けなくなっていた。そこに、別の(ヴィラン)が刃物を持って近付いていく。その光景を前に、僕は体の震えが止まらない。そんなとき………

 

ドクン!!

 

(……あ…………え…………?)

 

今までに感じたことの無い感覚が、身体中から沸いてきた。口の中や背中はとてもムズムズするし、恐怖とはまた違った感じで、体の震えが激しくなる。

 

その後、ワたしノしラナいきオくがアたマニながレテきタ。

 

そシて、ワたしはテのヒラをソいつラにムけるト

 

キュッとそノテをニギりシめた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

「があぁぁぁぁ!!!」

「腕が!腕がぁ!!!!」

 

俺達を殺そうとしていた二人の(ヴィラン)の腕と足が、急に破裂したかのように消し飛んだ。そして……

 

「アハッ アハハハハハハハ!!」

 

と、狂ったような笑い声が聞こえてきた。俺達はその声が聞こえた場所……優真がいる所を見る。

 

「サア アソビマショウ?」

 

そこには、左の手のひらをこちらに向けて優真が立っていた。けど、その姿は大きく変わっていた。金色の髪に赤い瞳、背中には宝石のついた羽が生えていた。そして、炎を纏った巨大な剣を構えると……

 

まだ残っている(ヴィラン)を目掛けて襲いかかった。

 




好評なら続きます


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二話~個性と改名~

二話ですよ~
好評なので続けることにしました。
気に入ってくれた方は評価と感想をお願いします。


???視点~

 

「どういう状況だ?コレは」

 

ある連絡をうけた俺は、(ヴィラン)が襲撃してきたという場所に向かっていた。しかもそこは、二人のプロヒーローが住んでいる家とのことらしい。そのうちの一人は(ヴィラン)退治をメインにやっている。そんな場所を襲撃するくらいだから、相手は相当な手練れだろう。激しい戦闘になることを覚悟して、俺はその場に向かったのだが……

 

「た、助けてくれ!ヒーロー!!」

 

「頼む!!お、俺を捕まえてくれ!!は、速く!!」

 

目的の場所についた俺を待っていたのは、(ヴィラン)との戦闘ではなく、(ヴィラン)からのSOS……助けを求める声だった。

 

(いったい、どうなってやがる………?)

 

一般人に助けを求められるのはわかる。だが、今回助けを求めてきたのは(ヴィラン)なのだ。あまりにも予想外すぎる光景に俺は驚きを隠せない。

 

全くわけのわからないまま、俺はソイツらを拘束した後、(ヴィラン)が襲撃した家に突入する。そこには……

 

二人のプロヒーローに抱き締められたまま、わんわんと泣きわめく一人の少女がいた……

 

(いや、まじで何があったんだよ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バァン!! ボン!! ザシュッ!! ゴオォォォォォ!!

 

「があぁぁぁ!!!」

 

「死ぬ!!死ぬぅ!!!」

 

私は炎を纏った大剣……【レーヴァテイン】を振り回して、コイツらを片っ端から潰していった。時には目を『キュッ』と握り潰して、コイツらの身体の一部………腕や足を破壊していく。

 

そんなことをしていると……

 

「こ、こんなヤツがいるなんて聞いてないぞ!!」

 

「ヒイィィィ!!た、助けてくれぇ!!!」

 

侵入してきたヤツらがこの家から逃げ出そうとしている。

 

「アハハッ!ニガサナイヨ!!」

 

私は、笑いながらそういうと、逃げ出そうしているアイツら手のひらを向ける。そして、『目』を手の中に移動させるとその手を『キュッ』と握りしめようとした。そのとき……

 

「優真!!」

 

その声が聞こえると同時に、私の身体は抱き締められたーー

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

「ーーてな事があったんです………」

 

(ヴィラン)の襲撃が片付いた後、私は病院に来ていた。お父さんとお母さんの他にも、現場に駆けつけてくれた、プロヒーローの【イレイザーヘッド】……相澤消太さんも一緒にいる。相澤さんも一緒なのは、『“個性”が暴走してしまった時に止められるから』とのこと。

 

検査の報告を待っている間、私は相澤さんに(ヴィラン)が襲撃してきた時のことを話していた。すると……

 

『ガチャ』という音と共に扉が開いて、お医者さんが入ってきた。

 

そして、お医者さんが検査の結果をお父さんとお母さんに報告する。

 

「まず……お子さんに『個性』が発覚しました」

 

その言葉を聞いたお母さんは「どんな個性なのか」と、お医者さんに訪ねる。

 

「あ~ それに関してなんですけど、まず、見て欲しい物があります」

 

そういうと、お医者さんは私の手が届かない位置にコップをおいた後、私にこう訪ねてくる。

 

「お嬢ちゃん。そこから動かずに、コップを壊してごらん?」

 

そう言われた私は、右の掌をコップに向けて『目』を手の中に移動させる。そして、その手を『キュッ』と握りしめる。すると……

 

パリィィィィィン!!

 

と、音を鳴らしてそのコップは砕け散った。

 

それを見ていたお医者さんは説明を始めた

 

「まず、お子さんの『個性』は、東方Projectのキャラクター『フランドール・スカーレット』の力を扱える という物になります」

 

その説明に、お父さんとお母さんは驚いていた。その間にも、お医者さんの説明は続く。

 

「それに加え、身体も【吸血鬼】の肉体……『フランドール・スカーレット』の姿へと変化しています。まあ、言ってしまえば『性転換』ですね。それに伴い、精神も女の子よりになっているようです」

 

その説明を聞いた私は納得していた。自分の一人称が、『僕』から『私』になったのに違和感を感じなかった理由がわかったしね。

 

「それでは、お子さんの『個性』の名前を決めてもらうのと、新しく『戸籍』を作ることになりますのでもう少し、お時間よろしいでしょうか」

 

そうして、私は個性の名前を決めた………と言っても、フランドールの持つ『程度の能力』それをそのまま名前にして登録した。

 

その後、新しく『戸籍』を作る際に、お母さんが「せっかくだから女の子らしい名前に変えましょう!」っていう事で、名前を改名することになった。まあこれも、この身体の持ち主である『フランドール・スカーレット』という名前からとったんだけどね……

 

そうして、私の『戸籍』が完成した。

 

名前は『夜桜(よざくら)フラン』

 

個性は『ありとあらゆるものを破壊する程度の個性』

 

これが今の私だ




家族のプロフィールって書いた方がいいですよね……?


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三話~将来の夢~

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評価は8~10辺りだと嬉しいです


私の『個性』が発覚してからも、私の生活はあまり変わらない。いつものように家に引きこもっている。けど、家でやることは少しだけ変わった。その内容と言うのが……

 

『シュゥゥゥゥ』あ、あつっ!!」

 

『魔法』の練習だ。今やっているのは、吸血鬼の弱点である日光や流水から身を守るための魔法の開発といった所か。

 

「う~ また失敗かぁ~」

 

この身体になってから、私は何故だか魔法の使い方が分かるようになっていた。おそらく『フランは魔法少女である』という設定が、この身体にも反映されたのだろう。

 

よく二次創作では、レミリアやフランが昼間から外に出る際に、パチュリーがそう言う魔法をかけてあげるっていう描写がある。つまり、私にもそう言う魔法が使えるのではないか?と思い、その魔法を習得するために研究を始めた。

 

そもそも、なんでそんな魔法を習得しようとしたのか。それは、私が『ヒーローになりたい』と思うようになったからだ。

 

そのことをお父さんとお母さんに伝えると、「人と接することになるけど大丈夫なのか」と心配された。まあ、人間に虐められて引きこもるようになったんだから、そりゃあ心配するよね。でも、自分の夢がようやく決まったんだから『諦める』なんて事はしたくない。半年くらい時間をかけて、頑張って説得したら、お父さんとお母さんはその夢を応援してくれるようになった。

 

ヒーローとして活動するんだったら、日光、流水がアウトって言うのは流石に不味いだろうしね。能力で破壊するっていう方法も思いついたが、それはお父さんとお母さんに止められた。まあ、失敗した時にどうなるか分かんないから、仕方ないよね。

 

そんなことを考えつつも、私は研究を再開するのだった……

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

そうして、研究を続けること二年。ようやく私は、目的の魔法……日光や流水をある程度防ぐ障壁のような物を身に纏う魔法が使えるようになった。それに、この身体……吸血鬼の肉体にも、大分なれてきた。例を挙げるとすれば、身体をたくさんのコウモリや霧に変化させることが出来るようになった、とかだろう。

 

 

◇◇◇

 

 

 

それからまた月日が流れ、雄英高校入学試験当日になった。私がここを目指したのは、名のあるヒーローのほとんどがこの学校からでているから、というのが理由だ。お父さんからも、「目指すからには立派なヒーローになれ!!」って言われたしね。

 

そうして私は、試験会場の雄英高校に向かう準備をしていた。必要な物をカバンに入れて、羽を隠すために大きめのコートをはおり、帽子を目深にかぶる。

 

準備が出来た私は、久しぶりに自分の意思で玄関のドアを開けると、雄英高校に向けて、足を運ぶのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は短くなりました……


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四話~入学試験~

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評価は8~10だと嬉しいです。




「うわ~ やっぱたくさんいるな~」

 

試験会場である雄英高校についた私の目に入ったのは、入試を受けに来たのであろうたくさんの人達だった。

 

(よかったぁ~ 対して怖くなくて)

 

お母さんからカウンセリングを受けたとはいえ、こんなにたくさんの人がいるところに行ったら、恐怖で取り乱すかもと思っていた。けど、『個性』の発覚と共に、価値観や考え方にも変化が生じているみたいで、人間に対する恐怖心とかは全くわかなかった。

 

そんなことを考えていると……

 

「どけよチビ」

 

と、そんな声が聞こえてきたから、辺りを軽く見渡す。

 

「オメーだよクソが!!」

 

どうやら私のことだった見たいだ。振り向くと、そこには不良を思わせるような人が私のことを見下ろしていた。

 

私が横に移動すると、その不良っぽい少年は『チッ』と舌打ちをしてそのままそこを通りすぎた。

 

「私も入ろっと」

 

さっきの人の事を気にも止めずに、私はそう言いうと、少しずれた帽子を被り直して雄英高校の門をくぐった

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

『今日は俺のライヴへようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!』

 

筆記が終わって、実技試験。今、その試験内容をプロヒーローのプレゼントマイク……略してプレマイが説明している。

 

その内容をまとめると……

 

・実技試験の内容は10分間の【模擬市街地演習】

 

・道具の持ち込みは自由。各自指定のA、B、C、D、E、F、Gの試験会場に移動

 

・目的は市街地に現れる三種の仮想敵(かそうヴィラン)の行動不能、方法は問わない

 

・倒した仮想敵によって貰えるポイントが違い、その合計値を競う

 

・アンチヒーローなどの行為はご法度

 

と、こんな感じになる。要するにひたすらロボットを破壊していけばいいっていう、私向きの試験内容だ。

 

そう考えていると……

 

「質問よろしいでしょうか!」

 

その発言と共に立ち上がるのは、眼鏡をかけたいかにも真面目そうな人。そして彼はこう質問する。

 

「このプリントには4種の敵が記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!!我々受験者は、規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」

 

「ついでにそこの縮れ毛の君!先程からボソボソと気が散る!物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」

 

まあ、最後のは質問じゃなくて前の人に対する注意みたいな物だったんだけどね。でも、物見遊山のつもりで受ける人なんていな……いや、私は似たようなものかもね。私が『ヒーロー』を目指したのって『好奇心』によるものかもしれないし。

 

ーって緑髪の子、周りから笑われてるね。あの眼鏡の人もなかなかひどいなぁ

 

すると……

 

『オーケーオーケー、受験番号7111番君、ナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0ポイント!ソイツは言わばお邪魔虫!スーパーマリオブラザーズやった事あるか!?レトロゲーの!アレのドッスンみたいなもんさ!各会場に一体、所狭しと大暴れしている『ギミック』よ!倒せない事は無いが、倒しても意味は無い!リスナーには上手く避ける事をオススメするぜ!』

 

と、プレマイから先ほどの質問に答える。そして……

 

『最後にリスナーへ我が校『校訓』をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!“Plus Ultra”!それでは皆、良い受難を!』

 

最後にプレマイによるエールで実技試験の説明が締めくくられた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

実技試験の会場についた私は、『魔法』を使って身体全体を障壁で覆った後、着ていたコートと帽子を外し、帽子の変わりにナイトキャップを身に付けてから準備運動を始める。

 

「なにアイツ……」

 

「コスプレイヤー?」

 

「記念受験かよ……」

 

周りの人達からこそこそと影口を叩かれるけど、まあしょうがないよね。

 

なんせ、今の私の格好は【フランドール・スカーレット】と全く同じなのだから。東方を知ってる人から見れば、『コスプレしたまま試験を受ける』っていうふざけてるようにしか見えないもんね。

 

そんなことを考えながら、私は開始の合図を待つ。すると突然

 

『ハイ、スタート!!』

 

と、試験開始の合図が出された。それと同時に、私は会場に飛び込んだ。イヤ、()()って言った方がいいかな?




母親のプロフィール
夜桜燐(よざくら りん)
ヒーロー名 守護ヒーロー ロッカ
個性、結界
体力を消費して防壁を展開する。
形、大きさ、強度は自由。
レスキューをメインに活動している
カウンセリングもできる

とりあえず簡単に書いてみました


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五話~悪魔の妹の実力は~

今回は連続での投稿になります
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『目標ハ「ズパァァァン!!」』

 

『ブッコ「チュドォォォォン!!」』

 

開始と同時に、私は【フォーオブアカインド】を使って四人に分身し、片っ端から仮想敵を破壊していく。分身が破壊したのを含めると、今はだいたい320くらいは稼いでいるだろう。これだけ稼げたら実技は十分合格ラインに入っているよね。でも……

 

せっかく、自由に力使えるんだから、もうちょっと仮想敵(コイツら)で遊んでもいいよね

 

そうして笑みを浮かべると、視界に三体の仮想敵をとらえる。そしてして、仮想敵(アイツら)のもとまで飛び立ち、近づくと共に【レーヴァテイン】を振るう。その一撃をまともに受けたコイツらは、その機体(からだ)を燃やしながら崩れ落ちた。

 

そのまましばらくの間、私は仮想敵を破壊していく。すると……

 

ガラガラガラガラ

 

と、近くで何かが崩れ落ちる音がした。その場所を見ると、仮想敵が一体暴れていた。それに、ソイツの攻撃が当たったのだろう。家が一つ破壊されていて、そこから落ちてくる瓦礫がほかの受験生に降り注いでいく。

 

ほとんどは瓦礫を避けようと移動しているが、何人か全く動いていない。防御系の『個性』の可能性もあるけど、『個性』を使おうとする様子もない。逃げ遅れたのかな?

 

(仕方ないなぁ~)

 

正直、私がコイツらを助ける必要はない。けど、おそらくこの試験は、人()()()()()()()()()()()()()()()()()と思う。そうでなきゃ、受験生を妨害するためだけの敵……0ポイント(ヴィラン)なんて出す必要ないしね。

 

そうして、私は落ちてくる瓦礫に手のひらを向けて、その手を『キュッ』と握りしめる。たったそれだけで、瓦礫は粉々に破壊される。その後は、仮想敵目掛けて弾幕を発射。仮想敵は弾幕に身体を貫かれ、これまたあっさりと壊れた。

 

(仮想敵はもうほとんど壊れちゃったし、ヒマになっちゃったな~ 0ポイントはいつ出てくるんだろう?)

 

そんな事を考えながら、私は分身を消すと、ビルの屋上に座りこんだ。速く出てきてくれないかな~

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「敵は何処だぁぁ!!!」

 

「せめて、せめて1ポイントだけでもっ…!!」

 

「何で敵見つからねぇんだよぉお!?一体どうなってんだぁぁぁ!!!」

 

周りからはそんな叫び声がちらほらと聞こえてくる。まだほとんどの人があまりポイントを稼げていないのだろう。まあ、それもそのはず。この会場にいた仮想敵のほとんどは私が破壊したのだから。

 

まあ、そんなことになってるなんて誰も思ってないみたいで、受験生は皆、仮想敵を探そうとあちこち走り回っている。そんな中……

 

ズドーン!!

 

と、辺りに轟音を響かせて現れたのは、0ポイントの仮想敵。

 

(やっと出た!!)

 

ようやく現れたソイツは今までの奴らよりも大きな姿をしていた。周りの人が逃げ惑う中、私はソイツがいる場所を目掛けて飛行し、ソイツの目の前で停止する。そして……

 

「それじゃあ遊ぼうよ!!【スターボウブレイク】!!

 

放たれた弾幕がソイツを包み込み、大量の光と轟音を放つ。それらが止み、煙が晴れると……

 

そこには原型を留めずに粉々に破壊された0ポイントの仮想敵の残骸があった

 

『終了~~~!!』

 

その後、プレマイから試験終了の合図がだされた。周りの人達は皆、暗い顔をしている。そんな中……

 

「ん~ 楽しかった!」

 

思う存分暴れられて満足した私は、コートと帽子を身に付けた後、自分の身体を覆っていた障壁を解除してその会場を後にした。




やってることはもう無双に近い感じになりました……
しばらくはこっちをメインに投稿するかもです。


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六話~合格発表~

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雄英高校の入学試験が終わって一週間がたったある日、私はいつものように部屋にこもって東方のゲームをしていると……

 

「フラ~ン!!雄英から試験の結果が届いたわよ!!」

 

と、リビングの方から通知が来たことを知らせる声が聞こえてきた。それを聞いた私は、ゲームを中断してからお母さんのいる所まで移動する。すると……

 

「はい、コレ。自分の部屋で確認してきなさい」

 

そう言われ、お母さんから封筒を渡される。私はそれを受け取った後、お母さんに「一緒に見ないのか」と聞く。すると、

 

「私はフランの口から直接聞くから。こういうのはまず、自分で確認するものよ」

 

こう、笑顔で返された。それを聞いた私は、足早に部屋まで戻り、届いた封筒を開ける。その中には一つの機械……投影装置が入っていた。

 

私は、その装置を部屋にあるテーブルの上に置く。すると、『ブゥン』という音と共に空中に映像が浮かび上がる。

 

『私が投影された!!』

 

その映像とともに現れたのは現在ヒーローたちの頂点に立っていると言われるNo1ヒーローの『オールマイト』だった。その後、この映像にオールマイトが写った理由が説明される。どうやら、オールマイトは今年から雄英高校の教師を勤めるらしい。そして、

 

『さて、早速だが君の合否を発表しよう!!』

 

ようやく合格してるかが分かるみたい。装置から写し出される画面が暗くなり、オールマイトが立つステージのみにライトが照らされる。更には『ダララララ』、とドラムの音も鳴り響く。そう言うのはいいから早いとこ教えてくれないかな~なんて考えていると、

 

『おめでとう!合格だ!筆記試験は問題なく、実技は352ポイント!合格者の中でもぶっちぎりの成績だ!しかし我々が見ていたのは敵ポイントだけにあらず!!』

 

ふ~ん、やっぱりアレも評価対象に入ってたのかな?

 

『その名は救助活動(レスキュー)ポイント!!しかも審査制!!夜桜少女、レスキューポイント72ポイント!!合計424ポイントという雄英初の大記録を君は叩き出した!!』

 

『そんな君は通常の枠とは別に特別合格枠として君を合格させる事に決定した!!』

 

特別枠か~ てことは一クラス40名の所に一名だけ増えるのか~

 

『さぁこいよ!夜桜少女!!ここがきみのヒーローアカデミアだ!!!』

 

その後、しばらくして雄英に合格したことをお母さんに伝えると、目にうっすらと涙を浮かべ「おめでとう」と言って抱きしめてきた。夜に仕事から帰ってきた父にも伝えると「将来は一緒に働けるかもな」と大喜びしていた。

 

その日の夜はお祝いということで家でパーティーをした。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

入試試験直後の雄英高校大会議室。

 

そこでは雄英の教師陣が受験生たちの合否について話し合っていた。

 

「救助ポイント0点で2位とはなあ!」

 

「後半、他が鈍っていく中、派手な個性で敵を寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」

 

「対照的に敵ポイント0点で9位」

 

「アレに立ち向かったのは過去にも居たけど…ブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」

 

「思わず、YEAH!って言っちゃったからな~」

 

ワイワイと騒ぎながら講評を行う教師陣。そして話題は次の注目者に移った。

 

「そして、2位に対して圧倒的な差をつけて1位になったこの少女」

 

その教師の声と共にスクリーンに写ったのは炎を纏った剣を振り回す一人の少女。

 

(ヴィラン)ポイント352、救助活動(レスキュー)ポイント72の合計424ポイントって……」

 

「名前は夜桜フラン。個性は、『ありとあらゆるものを破壊する程度の個性』と記載されています」

 

「ちょっと待って。それだと最初の分身はどう説明するのよ?」

 

と、教師たちは彼女について話し合う。そんな中……

 

「はぁ~」

 

と、一人の教師…相澤消太は大きなため息をつく。すると……

 

「おい、どうしたよ?イレイザー。あのコスプレリスナーの事知ってんのか?」

 

と、隣にいたプレゼントマイクに声をかけられる。

 

「マイク……お前はちゃんと資料を見ろ。アイツの個性を厳密に言うと東方Projectのキャラクター、フランドールの力が使える個性だ。その個性の影響で身体もフランドールと同じになったらしい」

 

「オイオイマジかよ!!ってことは、あの分身は『フォーオブアカインド』ってことか!?」

 

「なるほど……育て方を間違えたら危ないわね……」

 

「ええ、なので彼女は合格……と言いたいのですが、中学校の成績がかなり悪いですね」

 

「どうやら彼女は昔いじめられていたらしくてね。小・中学校はずっと家に引きこもっていたみたいなのさ。彼女の親からも、「不安定な彼女を導いて、正道を歩ませて欲しい」とお願いされていてね。そのため、彼女は『特別枠』を設け、そこに入れることにしたのさ。どうだい?皆」

 

「「異議なし!」」

 

根津校長の提案に他の教師達は皆、同意する。彼女が(ヴィラン)になってしまえば、それはもう恐ろしいことになる。なんでも破壊できると言うのは、それくらい脅威なのだ。国の破壊なんてことも彼女なら出来てしまうだろう。

 

そうならないように、我々で導いていかないといけない。雄英の教師達は皆して、そう思うのだった……

 

 

 

 

 

 

 




フランちゃんは特別枠での合格になるため、順位からは除外されてます。そのため、爆殺くんが首席合格となっています。


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七話~入学式なんて物は無い~

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四月

 

晴れやかな春の日差しが部屋へ差し込む朝。空気の入れ替えのために開いた窓の外から、気持ちの良い風が吹いてきてカーテンを揺らす。

 

今日は雄英高校登校初日。

 

私は早めに家を出ようと、指定制服の上から、受験の時にも受験の時にも身に付けていたコートを羽織り、荷物と帽子を手に取り玄関へ向かう。そのタイミングで、リビングからお母さんが出てきた。

 

「あら、もう行くの?」

 

「まあ、久しぶりの学校だから早めにね」

 

お母さんからの質問に、私はそう答える。その後、お父さんも見送りしたがってたわよ~なんて簡単な会話をする。そして、手に持っていた帽子を目深に被り、玄関の扉を開ける

 

「それじゃ、もう行くね」

 

「ええ、気をつけてね」

 

と、見送ってくれるお母さんに手を振って、私は家を後にする

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「1-A……あ、ここだ。お~、扉大きいな~。入試の時も思ったけど、この学校と紅魔館ってどっちが大きいんだろう?」

 

そんなことを呟きながら、私は扉を開けて教室に入る。どうやら速くつきすぎた見たいで、まだ誰も来ていない。

 

あまりにも退屈で少し眠くなってきた私は、自分の席を見つけるとそのまま机に突っ伏して眠ることにした。自分の席が直射日光が当たらない場所でよかった~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

 

「思わねーよ!てめーどこ中だよ端役が!」

 

と、急にそんな騒ぎ声が聞こえてきた。その煩さに、私は目を覚ます。どうやら、私が寝ている間にある程度人が教室に集まっていたみたい。現在、入試の時に見た二人……ツンツン頭の不良みたいな人と眼鏡を掛けた真面目そうな人の二人が言い争いをしていた。やかましいし、速く終わらないかな~なんて考えていると、

 

『ガラガラ』という音と共に扉が開き、緑髪の子……入試の時にブツブツ言って人子が入ってきた。すると、それに気づいたのか眼鏡の人はそのまま彼に話しかけていた。そこに、後から来たんふわふわした感じの人も加わり、また一段と騒がしくなる。すると、

 

「お友達ごっこがしたいなら余所へ行け。ここは…ヒーロー科だぞ」

 

寝袋に入ったままの人間……もとい相澤さんがゼリー飲料を一瞬で飲み干しながら、そう言い切った。モゾモゾとうごめきながら寝袋ごと立ち上がり、教室に入ってくる。その人物の登場にクラスは一気に静まり返る。

 

「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね……担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

生徒たちは皆して、相澤さんの言葉に驚いたような顔をしていた。相澤さんはそんな生徒達を見ながら

 

「早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ」

 

そう言うと、戸惑う生徒たちを残し教室を出る。……ってちょっと待て

 

私は慌てて席から立ち上がると、急いで体操服を受け取り、相澤さんを追いかける。まだ、相澤さんが出てそんなに時間が立ってなかったため、すぐ追い付くことができた。追い付いた私は、相澤さんに声をかける。

 

「夜桜か。お前もさっさと……ああ、そう言うことか。ついてこい。適当な個室をあてがってやる」

 

どうやら、私の言いたいことが伝わった見たい。いくらフランに為って、精神的にも女の子になったとはいえ、元は男だったからね。女子と一緒に着替えるのは、少し問題がありそうだ。そう思いながら、私は相澤さんについていくのだった……

 

 

 

◇◇◇

 

 

「「「「「個性把握テストォ!?」」」」」

 

生徒達が皆グラウンドに集まると、相澤さんは「個性把握テストを始める」と言い出した。今日の予定って入学式やガイダンスじゃなかったっけ……?

 

なんて思っていると、ふわふわした人が相澤さんにその事を聞いていた。

 

「ヒーローになるなら、そんな悠長なことをしている時間はないよ。雄英は自由な校風が売り文句で、それは先生側もまた然り」

 

と、ふわふわした人の質問に相澤さんはこう返す。なるほどね~ようは入学式に出る必要はないと相澤さんは判断したのか~

 

そう考ええている間にも、話はどんどん進んでいく。

 

「実技入試の成績トップは……あー、爆豪だったな」

 

相澤先生は少し言い淀んで、不良みたいな人にこう質問する。特別枠として合格した私は順位から外れているみたいだ。そうして相澤さんは、彼に個性無しのソフトボール投げの記録を聞く。そして、

 

「じゃあ“個性”を使ってやってみろ。円から出なきゃ何をしてもいい。早よ。思いっきりな」 

 

そう言って相澤さんが彼にボールを渡す。すると……

 

「んじゃまぁ……」

 

そういいつつ、彼は円の中に入る。そして……

 

「死ねぇ!!!」

 

そう叫びつつ、ボールを投げた。その瞬間、大きな爆発音が轟いた。辺りを爆煙が舞い、ボールは見えなくなるほどの勢いで吹き飛んでいった。しばらくした後、相澤さんの持つ液晶に『705m』と記録が示される。

 

生徒たちからは歓声と共に楽しげな声が聞こえる。皆、個性を使用しても良い体力テストなど経験が無かった。個性を思いっきり使える事に『面白そう!』と声を上げた。

 

すると、その言葉に相澤先生は反応し……

 

「面白そう……か。ヒーローになるまでの三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?……よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

 

 

相澤さんが静かに放った言葉に一瞬全員が凍りつく。しかし、すぐに我に返った生徒たちが抗議の声を上げていく。なるほどね。生徒の除籍も先生の自由ってことか。

 

「生徒の如何は教師の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

私が思った事と同じことをいうと、相澤さんは髪をかき上げ、ニヤリと笑う。そんな彼に理不尽だとふわふわした人は言い寄るが相澤さんは気にしない。

 

「今日まで日本は大規模な自然災害や凶悪犯罪の脅威にさらされてきた。ここは理不尽に塗れている。そんな理不尽を覆してこそヒーローだ。いいか、これから三年間、我々はこれから全力で君たちに苦難を与え続ける。Puls Ultra(プルスウルトラ)、全力で乗り越えてこい

 

そうして、楽しい個性把握テスト(遊戯)が始まる……と、思ったんだけどなぁ……

 

「質問よろしいでしょうか!!」

 

と、声をあげるのは眼鏡の人。相澤さんから質問の許可を貰うと彼は質問を始めた。その内容は、なぜ自分たちのクラスは定員より一名多い21人なのかというもの。その質問に対して、相澤さんはちょうどいいと言うと私に向かってボールを投げ渡してきた。

 

「夜桜、お前もそれを投げてみろ」

 

そう言われた私は、円の中に入ると入試の時と同じようやに、魔法を使って身体全体を覆う。その後、コートと帽子を外して、相澤さんにそれを預ける。私の姿を見たクラスの皆は、それぞれ様々な反応をする。

 

周りの反応を聴きながら、私は軽く身体をほぐす。そして……

 

「せーのっ!!」

 

という掛け声と共に投げ飛ばす。すると……

 

ズガン!!!

 

その音と共に強風が巻き起こり、ボールはものすごい勢いでぶっ飛ぷ。そして、ボールはそのまま見えなくなった。

 

「記録……8256m。この地点でシグナルロスト(途中で消滅)だ」

 

首席の人が出した記録を大きく上回る結果にクラスの皆がざわめく。最初に投げた不良くんにいたっては呆然としている。

 

「なん………だと………」

 

「いい機会だ……コイツの、夜桜のことを教えてやる。コイツの実技試験の結果は、(ヴィラン)ポイント352、救助活動(レスキュー)ポイント72の合計424ポイント」

 

「夜桜はこの圧倒的な成績から、通常の合格枠とは別の特別合格枠を設け、そこに入った人物だ。うちのクラスが一名多いのは、それが理由だよ」

 

相澤さんは、皆を挑発するかのように私のことを説明する。その説明を聞いて、皆とても驚いていた。

 

「俺の……六倍近くだと……ふざけんなよ……あの宝石女……」

 

一方で不良くんは身体中をワナワナと震わせながら私のことを睨み付けていたんだけどね……ってか宝石女ってなに?ほかに言い方無かったの?

 

そう思いながら、私は円から出るのだった……

 

 

 

 

 




父親のプロフィール 書くの忘れてた
夜桜悠(よざくら ゆう)
ヒーロー名 イマジナリー
個性:物質変化
手に持っている物を別の物に変化させる(木の枝を槍にするなど)。自分より大きい物、生きているものは変化させることができない。また、変化させるときは、変化させた後の物質の構造を理解してないといけない


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八話~個性把握テスト~

このお話が日間ランキングに入ってました!!素直に嬉しかったです。
気に入ってくれた方は評価と感想をお願いします。



「特別枠って……点数は爆豪の6倍はあんじゃねえか!」

 

相澤さんの口から発せられた言葉にクラスの皆は各々違った反応を見せる。その成績に驚きを隠せない者や素直に感心した者。そして、憎悪の視線を向ける者に、いい刺激を受けている者。

 

そんな中「デモンストレーションは終わり」と相澤さんが告げる。そして、個性把握テスト(サバイバル)が始まった……

 

 

第一種目:50m走

 

出席番号が最後のため、私は最後に一人でやるようだ。いや、ありがたいんだけどね。ペアの心配しなくていいし。そうして、私はスタートラインに立つ。特別枠と言うのもあってか、皆が私に注目している。

 

『位置ニツイテ……ヨーイ』

 

パンッという音と共に私は走り出す。その瞬間……

 

バァァァァァァァン!!!

 

という音が鳴り響き、スタート地点の地面が破壊される。吸血鬼の力で走ったらそりゃそうなるか。吸血鬼は、鬼に届き得る身体能力と天狗に匹敵する飛行能力を誇ると言われている種族だ。普通なら飛んだ方が速いのだろうが、この種目は50m走だから、走ることにした。まあ、それでも……

 

『記録、0秒06』

 

十分速いどころか、クラスの中でもぶっちぎりで1位なんだけどね……この手の種目に自信のあったらしい眼鏡君は目に見えて悔しがっていた。

 

 

大二種目:握力測定

 

特に言うこともなく、全力で握る……が……

 

バギッッッ!!

 

「あ………」

 

「……………【測定不能】」

 

あっさりと測定器具を握り潰してしまった。まあ、こうなることは予想出来てたんだけど。あと、弁償はしなくてもいいらしい。腕たくさんの人と、万力を出した人は唖然としていた

 

 

第三種目:立ち幅跳び

 

コレに関しては空を飛ぶ

 

「夜桜、それは後どれくらい維持できる……」

 

その相澤さんの質問に、1日中は飛べると答える。

 

「…………∞だ」

 

∞が出たことにクラス全体がざわめく。うん、分かってた。

 

 

第四種目:反復横飛び

 

どうやら、腕たくさんの人が数えてくれるみたい。

 

──禁忌「フォーオブアカインド」

 

私は4人に分身する

 

「増えたぁぁぁぁ!!」

 

「今の技……やっぱりアイツの『個性』って……でも、そんなことあんの……」

 

分身したことに驚く人もいれば、私の『個性』がどんなものか予想できた人もいるみたい。そして、その状態で私は計測を始める。

 

「「「「ねえ、何回だった?」」」」

 

「済まない……見えなかった」

 

またもや『測定不能』。今のところ、ちゃんとした記録計れたの50m走しか無いんだけと……

 

 

第五種目:ソフトボール投げ

 

本来なら二回計測を行うが、私の場合はさっきのデモンストレーションで終わりみたい。まあ、もっかい投げてもシグナルロスト(途中で消滅)しそうだしね……だから、皆の計測が終わるまでのんびり待つことにする。ふわふわした子が∞を出して、本日二度目の∞にクラス全体がざわめく。そして、計測が進み、次は緑髪の子……除籍候補No1が投げる見たい。

 

彼とは知り合いらしい眼鏡君とふわふわした子は、彼のことを心配している。眼鏡の子が「なぜ『個性』を使わないんだ……?」と心配と疑問が入り交じったような声を出す。

 

「ハッ、たりめーだろうが。()()()の雑魚だぞ?」

 

そんな彼の疑問に、不良君がそう嘲笑するように声を上げる。すると二人は、『そんなことはあり得ない』と言いたげな表情で彼の方に顔を向ける。そして、眼鏡君が彼にこう反論する。

 

「君、彼が何を成したのか知らないのか!?彼は、()()()()()0()P()()()()()()()()()!?」

 

その言葉に同意するかのように、ふわふわした子もコクコクと首を縦に振る。不良君はそれこそあり得ないと言いたげな表情をしている。ここまでの会話で、気になることが出来た私は、彼らに声をかける。

 

「………その後、アイツはどうなったの?」

 

「君は……いや、それより『その後』とは?」

 

「0Pを破壊した後」

 

その私の質問には、ふわふわした子が答えてくれた。どうやら彼は、0Pを破壊した後、両足と右腕がバッキバキに折れていて、着地も出来なかったらしい。この説明を聞いて、彼が『個性』を使わない理由があらかた予想できた。

 

「多分だけど、後から『個性』が発覚したんじゃない?だから、『個性』のコントロールが全くできず、使用する度に怪我をする。要は『個性』が発現したての幼児と同じだよ」

 

二人に私の立てた仮説を説明している間に、彼はボールを投げた。しかしその記録は『個性』を使ったとは思えない、いたって平凡なものだった。

 

「え……」

 

その記録に、本人が一番驚いている。

 

「……つくづく、あの入試は合理性に欠くよ。お前のような奴まで入学出来てしまう」

 

やっぱり、相澤さんが彼の個性を消したみたい。

 

忌々しげに呟いた相澤さん。すると彼は、相澤さんのヒーロー名とかを解説(?)しだした。相澤さんのヒーロー名【イレイザーヘッド】という名に聞き覚えのない人もいれば、名前だけは知ってる人がいたりと反応は様々だ。

 

そんな周りの反応を余所に、相澤さんは首に巻きつけた捕縛布を手にして緑谷を自身の近くに引き寄せる。そして「また行動不能になって誰かに救けてもらうつもりだったのか」と問うと、彼は「そんなつもりはなかった」と弁明する。しかし、「周りはそうせざるを得なくなる」と相澤さんはそれを一蹴した。

 

そんな二人の会話…もとい、相澤さんの警告を聞いていると、眼鏡君が話しかけてきた。

 

「君の仮説はよくわかった。しかしそれでは……」

 

「うん、彼にはもう後がない。残りの種目から考えてもここで結果を出さなきゃ除籍は確定だろうね」

 

「そ、そんな……!!」

 

そんな私の言葉に、ふわふわした子はショックを受けたような顔をする。そんな話をしていると二投目を投げる準備が出来たらしく、彼はボールを構える。二人はそんな彼を見守る。そして彼は──

 

「SMAAAAASHッ!!!」

 

そう叫びつつ、彼はボールを投げる。その記録は705.3m。初のヒーローらしい記録にクラスの皆がどっと沸き立つ。

 

「まだ……やれます!」

 

彼は腫れ上がった指の痛みを堪えつつ、こう言葉を発する。そんな彼を見て、相澤さんは笑みを浮かべていた。

 

そんな彼のパフォーマンスに、私は素直に感心していると……

 

「どーいう事だコラァ!訳を言え!デクてめぇ!!」

 

そう叫びながら、不良君は『個性』を発動させながら彼に向かって飛びかかる。しかし……

 

「んぐぇ!!」 

 

相澤さんの布が爆豪の顔と身体に巻き付き、不良君は動けなくなった。更に『抹消』も発動してる見たいで、爆発が止まっている。

 

「ぐっ…!!んだ、この布、固っ…!!」

 

「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ『捕縛武器』だ。ったく、何度も“個性”を使わすなよ…俺はドライアイなんだ」

 

それを聞いて、少しもったいないなと思った。

 

そんなこともありつつ、テストはどんどん進んでいく。第六種目の上体起こしは、支えられる人物がいないため、測定不能に。長座対前屈は身体の一部をコウモリに変化させ、そのコウモリを使って押していく。記録は∞。持久走は身体能力に者を言わせ普通に走る。さすがは吸血鬼と言うべきか。この種目でもあっさりと1位をとれた。

 

そうして、全ての種目の測定が終わった……私の場合、走る計の種目以外、測定不能と∞なんだけどいいのかな……?

 




ソフトボールはシグナルロストのため、計測不能扱いになってます


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九話~放課後の出来事~

今回はグダグダになりました……
投稿が遅れて申し訳ありません


「さてと、結果発表だ。順位は単純に各種目のスコアの合計でつけてる……おかしな奴が一人居たけど、口頭で一つ一つ発表なんて時間の無駄だから一括開示で行く」

 

相澤さんがそう言うと共に、空中に結果が表示される。……ってかおかしな奴って私のことだよね?そんなことを思いながら、私は結果に注目する。

 

案の定、私は1位だった。そのせいか、不良君と紅白君から視線を感じる。一つはライバル視のような感じだからまだわかる。けど、もう一つ…不良君からは殺意も感じるんだけど……

 

そして、最下位は緑髪の子だった。彼は青い顔をして震えている。そこに、相澤さんが一言言い放つ。

 

「ちなみに除籍はウソな」

 

その言葉にクラス全体が静まり返る。

 

「君たちの個性を最大限を引き出すための、合理的虚偽」

 

「「「はあああああああああああああ!!!???」」」

 

「あんなのウソに決まってるじゃない…ちょっと考えれば分かりますわ…」

 

続いて放たれた言葉に驚きを隠せず、叫ぶ三人。そんな彼らを見て、道具を作っていたポニーテールの子はあきれていた。

 

除籍が無くて安心した者もいれば、逆にいつでも受けて立つと張り切っている者もいた。どうやら、これで終わりみたい。教室にカリキュラム等の資料があるから目を通せとのこと。

 

そして、相澤さんは緑髪の子に保健室に行って治してもらえと紙を渡すと、そこから立ち去った。

 

一方で、相澤さんの「除籍はウソ」という言い方にどこか引っ掛かりを感じた私は、身体を霧に変化させて相澤さんの後を追うことにした。相澤さんの向かう先には、なぜかオールマイトがいた。そしてその場で、相澤さんとオールマイトが話始めた。その内容は相澤さんは前に丸々一クラス除籍したこと、オールマイトが緑髪の子に肩入れしてることなど色々なことを話していた。相澤さんの除籍宣言が本気だったと確認できた私はその場を後にした……

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「えっと………どうしたの?」

 

教室に戻ると、私は不良君と紅白。そして、保健室に行った緑髪の子以外の人達に囲まれた。そして、口々に質問される。私のことや『個性』の事など、質問の内容は様々だ。まあ、いずれ話さないと行けないしちょうど言いか……

 

「わかったわかった。話すから落ち着いて」

 

私がそう言うと、クラスの皆は少しずつ落ち着いていく。

 

「まずは自己紹介からだね。私の名前は夜桜フラン。『個性』は東方Projectのキャラクター、フランドール・スカーレットの力が使えるって言うものだよ」

 

「はあ!何だよそれ!!」

 

「架空のキャラクターの力が使える『個性』なんて聞いたことねぇぞ!!」

 

「しかもフランドールって……完全にチートキャラじゃん!!」

 

「フランドール……?そんなに強いキャラなん……?」

 

その説明に驚きを隠せない者、東方を知らないらしく疑問に思っている者など、クラスの皆は様々な反応をする。そんな中、緑髪の子が教室に入ってきた。

 

「皆……何の話をしてるの?」

 

「お、緑谷じゃねえか!今夜桜の『個性』について聞いてたんだけどよ、コイツの『個性』な、東方のフランの力が使えるんだってさ!!」

 

セロハンテープみたいな肘をした人がそう説明するも、どうやら、彼もよく分かってないようで首をかしげる。その疑問に気づいたらしい変わった耳たぶをした子がいまいち分かってなかった人達にこう説明する。

 

「あ~フランって言うのは、東方Projectってゲームのキャラでさ。正式名称は『フランドール・スカーレット』ありとあらゆるものを破壊する能力を持った吸血鬼なんだ」

 

その子の説明で東方を知らない人もどんな能力か分かったみたいで目を丸くして驚いている。

 

「いや、何だよそのチートキャラ!!」

 

「ありとあらゆるものをって……いくらなんでも強すぎませんか!?」

 

「ありとあらゆるものを破壊する……なんて強力な個性なんだ。(ヴィラン)の持つ武器を破壊したり、瓦礫とかも壊せるから救助活動(レスキュー)にも使える。シンプル故に強力で、汎用性も高い。それに今回の体力テストを見るに、素の身体能力も相当ある上に………………ブツブツ…………………」

 

な、なんか一人変なのがいるんだけど……

 

緑谷の子によるものすごい独り言にクラスの皆が引いている。

すると、その雰囲気を壊すかのようにカエル見たいな子が質問してきた。

 

「フランドールの種族は『吸血鬼』なのよね?それじゃあ、あなたの身体も吸血鬼なの?」

 

「うん、そうだよ。私の『個性』は異形型でもあるからね。身体はフランドールと同じみたい。性別まで変化したんだからビックリだよ。ホント」

 

「「「イヤ、ちょっと待てぇぇぇぇ!!!」」」

 

カエルみたいな子の質問に答えると、クラスの皆が驚いたように声を上げた。

 

「異形型って……性別まで変わるのかよ!!」

 

「ゲームキャラになれるってのはうらやましいような気もするけど……なぁ……」

 

「あ、もしかして一緒に着替えたりしなかったのってそれが理由?」

 

「うん、そうだね。身体が変化した影響で精神的にも女の子になったからさ。男性の所で着替えるのは抵抗があるし、女性の所で着替えようにも、周りがどう思うかわかんないからさ。だから一人で着替えてたの」

 

先の質問に、私はそう答える。すると……

 

「そういう事情なら私は気にしないよー」

 

「そうそう、そんなんで仲間外れにする方が私はヤダ!!」

 

「私も構いませんわ。そもそも性転換手術なんて物もあるくらいですし」

 

「うんうん。それに、やましいこと考えてるわけでもないんでしょ?なら気にしないって!!」

 

な、なんか反応が予想外何だけと……

 

あまり人間関係にいい思い出のなかった私は、彼女らの優しさに少しだけ泣きそうになる。

 

「じゃ、じゃあオイラも女子更衣室で着替えてもいいんだよな!!」

 

「なるか」

 

「バカかコイツ」

 

すると、ブドウみたいな髪をした子がそう発言し、それを聞いた彼らは口々に突っ込む。それに、女子の皆からは汚物を見るような目で見られている。

 

「そ、それならフラン!次からは男子更衣室で着替えよう!!うん、元男なら問d…グサッギャアァァァァァァ!!!

 

「くたばれ!!」

 

それでも諦めきれなかったのか、変態ブドウくんは私に入るように促そうとして、途中で変わった耳たぶをした子に叩き潰された。

 

その後はクラスの皆も自己紹介をしていく。一人一人が『個性』を説明する度に緑髪の子……緑谷出久さんがブツブツ言ってたんだけどね……そんな彼はふわふわした子…麗日お茶子さんに、デクと名前を勘違いされていたみたい。けど、彼女が「頑張れって感じで好き」と言うと、彼はあっさりとデクと言う呼び名で呼ばれることを了承した。眼鏡の人…飯田天哉さんは、そんな彼に驚いていた。

 

※※※

 

その後、様子見がてら教室にやってきた相澤さんに「程々にしておけよ」と釘を刺され、この日は解散となった。

 




そろそろ、から傘の方も投稿しないと……


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十話~戦闘訓練~

久しぶりの投稿です。遅れてすみません。

気に入ってくれた方は評価と感想をお願いします。
評価は8~10辺りだと嬉しいです。

から傘の方、アイディアが浮かばない……


雄英高校に入学して2日目。この日から普通に授業が始まった。

 

そもそもの偏差値がとても高く、屈指の最難関校なだけあって、雄英は普段の授業も難易度が高いのと同時に進行スピードも早い。そんなハイレベルな授業に、小学校、中学校に行かずにずっと家に引きこもっていた人が追いつけるとは誰も思わないだろう。しかし……

 

(うん、流石はフラン()。インテリな性格は伊達じゃない)

 

フランは『東方智霊奇伝』にて、少ない情報から犯人を推理して、それがほとんど当たっているとうインテリっぷりを見せている。その知識は私の中にもあるらしく、雄英の授業に余裕でついていくことが出来た。

 

そして、午前中の授業が終わり、昼休みを迎えた。雄英には大食堂があり、そこでは名前は知らないけど、プロヒーローの調理した絶品料理を安価でいただき、大人数で集まっての食事ができるらしい。芦戸さんと耳郎さんにそこで一緒に食べないかと誘われたからけど、行く必要のない私はそれを断った。それに、私が行ったら騒がしくなりそうだしね。

 

そうして二人を見送った後、私は鞄の中から相澤さんがよく飲むゼリー飲料のような見た目をした容器を取り出す。すると、近くにいた八百万さんが話しかけてきた。

 

「あの、ゼリー飲料だけで午後の授業もちますの?」

 

「大丈夫。十分持つよ。あと、コレの中身ゼリーじゃなくて人間の血だよ」

 

それを聞いた周りの人達は目を見開いて驚いていたが、その後、すぐに納得したような表情へと変わった。

 

「なるほど 吸血鬼だから人間の血が食料なのか」

 

「そういうこと。驚かせちゃったね」

 

「イヤ、気にすんなって。こっちも露骨な反応したしな」

 

そんな会話の後、私は昼食…もとい血を飲み始めた。皆で集まって食事するのもなかなか楽しかった。

 

 

 

■■■■

 

 

 

 

そうして、昼休みが終わり午後の授業が始まる。普通の高校なら、午前の授業に引き続いて必修科目を始めとしたごく普通の授業を行うところだが……雄英のヒーロー科は違う。

 

午後は皆が楽しみにしているであろう授業〈ヒーロー基礎学〉時間だ。ヒーローの素地を形成し、立派なプロヒーローになる為に一歩ずつ歩みを進めていけるよう、戦闘や救助を始めとして様々な訓練を行う時間。

 

クラスの皆も授業が楽しみなようで皆してソワソワしている。まぁ、皆がソワソワしているのはそれだけじゃなく──

 

 

「わーたーしーがぁ!普通にドアから来たっ!!!」

 

 

No1ヒーローのオールマイトが直々に教えてくれるというのもあるだろうね。その証拠に、オールマイトが登場した途端にクラス全体がいっそう賑やかになる。

 

一方で私は周りとは違うことを考えていた。

 

(やっぱり……オールマイトから少しだけど()()()()()()()……でも何で?)

 

最初にオールマイトと会った時は勘違いかと思ったが、再び会って確信した。オールマイトはお腹……脇腹辺りに怪我を負っている。オールマイトが(ヴィラン)と戦った結果、怪我をした……とかなのかな?でも、そう簡単にオールマイトがダメージを受けるとは思えないし……

 

「………入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿ってあつらえた戦闘服(コスチューム)!!」

 

そんなことを考えていると、いつの間にか話が進んでおり、教室の壁が迫り出したかと思えば、そこには戦闘服(コスチューム)の入ったロッカーが現れた。

 

「着替えたら、順次グラウンドβに集まるんだ!」

 

「「「はーい!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

~女子更衣室~

 

「まぁ、要望通りかな。着てて違和感もないし」

 

オールマイトに言われて更衣室にやってきた私は、早速自身の戦闘服(コスチューム)に身を包んでいた。

 

私の戦闘服(コスチューム)は、真紅を基調としており、半袖とミニスカートを着用。スカートは一枚の布を腰に巻いて二つのクリップで留め、足元はソックスに赤のストラップシューズ。そして、頭にはナイトキャップといった、原作のフランドール・スカーレットと全く同じ服装だ。

 

それに加えて、この戦闘服(コスチューム)には私の皮膚を組み込んでいるため、破れたりしても魔力や妖力を流せば自動で修復するという、飛んでもない機能もついている。

 

着替え終わった私は、集合場所として指定されたグラウンドβに向かう。そこには、既に着替えを終えたクラスメイトが何人か集まっており、それぞれの〝戦闘服(コスチューム)〟について盛り上がっていた。

 

私もまた、「似合っている」とか「本物みたい」とか様々な評価を貰ってたのだが……

 

偶々目に写った、『空中に浮かんでいる手袋』に目を疑った。

 

「おーい、どうしたのー? フランちゃん」

 

その声からして、その手袋を着けているのは葉隠さんで間違いはないみたいだ。物凄くイヤな予感がした私は、葉隠さんにこう質問する。

 

「あのね、葉隠さん。その戦闘服(コスチューム)、さすがにギミックついてるよね?」

 

「ふぇ?」

 

そんな私の質問に対し、葉隠さんは呆けた声を上げる。今、私の目に写っているのは、宙に浮かぶ手袋とポツンと姿を露わにしている靴のみである。それが表していること、それすなわち……

 

 

「ううん。今の私、何も着てないの!身につけてるのは手袋と靴だけ!」

 

 

嫌な予感通りに何も着ていないと来た。透明人間としては正しいのだろうけど、流石に何も着てないのは色々マズい。そう考えた私は、

 

「葉隠さん、流石に作り直して!!」

 

戦闘服(コスチューム)の変更を提案した。そして、具体的な案も説明する。

 

戦闘服(コスチューム)に身体の一部…髪や爪とかを入れれば、戦闘服(コスチューム)も『個性』を使えるの!実際に……ホラ!!」

 

そう言って、私は着ていたスカートを少し破く。そしてスカートに魔力を流すと、スカートはあっという間に元に戻った。

 

その光景を見た葉隠さんは、思いもよらぬ名案を聞いたとばかりに私の手を取り、ブンブンと腕を振る。

 

「おーなるほど!それじゃあ、帰ったら早速考えてみるね!!」

 

「うんうん、そうした方がいいよ」

 

葉隠さんのその言葉を聞いて、周りからは安心したようなため息が聞こえた。皆も戦闘服(コスチューム)が全裸というのはヤバいと思っていたみたいだね。まあ、そう思ってない(変態)も約一名いるみたいだけどね……

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

「よく似合ってるぞ皆、格好いいぜ!それでは始めようか有精卵共!!戦闘訓練の時間だ!!」

 

 

クラスの皆が集合場所に集まると、オールマイトはそう声を上げた。それを合図に皆はオールマイトに注目する。すると、

 

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!」

 

レースカーのような見た目をした鎧に兜を身につけた飯田くんがピンと挙手をしながら、ハキハキと尋ねる。

 

「いいや、もう2歩先に踏み込む!今日行うのは……屋内での対人戦闘訓練だ!」

 

2歩を意味したピースサインと共にオールマイトが放った一言に、生徒達から一斉に質問が飛び交う。が……

 

 

「んん〜!聖徳太子ィ!!」

 

 

さすがに何人もの人から同時に質問されれば答えられるはずもなく、オールマイトはこう叫ぶ。

 

──そして、詳しい概要から説明することに決めたのだろう。オールマイトが懐からとても小さい掌サイズのメモ用紙……カンニングペーパーを取り出してそれを読み始めた。

 

オールマイトから説明されたルールをまとめるとこんな感じ

 

 2人1組のヒーローチームと(ヴィラン)チームに分かれての屋内における戦闘。

 

 核兵器が隠された敵のアジトにヒーローが潜入するというアメリカンな状況設定

 

〈ヒーローチームの勝利条件〉

・制限時間内に核を見つけ出して確保すること

・相手チームを両方とも捕獲して無効化すること

 

この2つのいずれか一つ。

 

(ヴィラン)チームの勝利条件〉

・制限時間いっぱいで核を守り切ること

・相手チームを両方とも捕獲して無効化すること

 

この2つのいずれか一つ。

 

余った1人は、最後に一対多の戦闘を行う

 

人数不利はPuls Ultra(プルスウルトラ)の精神で乗り越えろとのこと。

 

因みにコンビと対戦相手はくじで決めるらしい。その際、適当でいいのかと飯田くんが質問するが、その質問に対し、緑谷くんは「プロは他の事務所と急遽チームアップすることが多いし、それを見据えてじゃないのかな」と補足を加え、その回答に飯田くんは納得する、そんな光景が繰り広げられた。

 

そうして説明が終わり、名前順に一人一人くじを引いていく。私のくじには「K」と書かれていて、周りをみたところどうやら私だけペアじゃないようだ。

 

そうして、クラス全員のチーム分けが終わった後、オールマイトは、最初の対戦カードを決める為にくじを引く。

 

「最初の対戦カードは……こいつだ!ヒーロー側がAチーム、(ヴィラン)側がDチームだ!」

 

(うわぁ……組み合わせに悪意しかない)

 

Aチームのメンバーは、緑谷くんと麗日さん。対するDチームは……爆豪くんと飯田くんだ。無事に訓練が終わるとは思えない、最悪な組み合わせである。

 

 さて、どうなるのかな──

 

そんな事を思いながら、私はモニターに目を向けるのだった……




主人公設定
名前:夜桜フラン
容姿:東方Projectのフランドール・スカーレット
個性:ありとあらゆるものを破壊する程度の個性
→吸血鬼(フランドール)の身体能力と程度の能力などをあわせ持つ複合型の個性。原作、または二次創作の吸血鬼(フランドール)が出来ることなら何でも出来る。

性格;知的だが、少し子供っぽい。二次創作のフランに近い


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十一話~遊戯(ゲーム)を始めよう~

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『ヒーローチーム……WIIIIIIN(ウィーン)!!』

 

 オールマイトがヒーローチームの勝利を告げて、第一試合が終了した。

 

 初めてのヒーロー基礎学で行われた、屋内対人戦闘訓練。その第一試合は、ヒーローチームの勝利という結果に終わった。しかし、その内容は余りにも凄惨なものだった。

 

 緑谷くんは全身ボロボロ。最後にアッパーカットを放った右腕にいたっては、他とは比べ物にならないくらいに破壊されていた。

 

 爆豪くんも、私怨丸出しの独断専行。更には、ビルの壁に巨大な風穴をぶち開ける程の大爆発を起こすという飛んでもない事をした。にしても……

 

(これはまた、思いきったことをしたね~)

 

 確かに、オールマイトは『怪我を恐れず思い切りやるように』的なことを言っていた。しかしこれは、思い切りやり過ぎである。何で核のあるビルがあんなボロボロになるわけ?

 

 訓練を終えた生徒達を迎えに行ったオールマイトを見送りつつ、私はそんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁつっても……今戦のベストは飯田少年だけどな!」

 

「なな!?」

 

 大怪我を負って保健室に運ばれた緑谷くんを除き、試合を終えた者達が戻ってきたところで講評の時間になる。

 

 笑顔のオールマイトが放った一言に、飯田くんはこう驚きながら反応した。

 

「ケロ……勝った緑谷ちゃんやお茶子ちゃんではないの?」

 

 蛙吹さんが口元に人差し指を添えながら、首を傾げて尋ねる。

 

「さてさて、何でだろうな〜?何でだと思う〜?分かる人!」 

 

「はい、オールマイト先生」

 

 勿体ぶるようなオールマイトの問いに、八百万さんが手を挙げて答える。

 

 飯田くんがMVPに値するのは、彼が一番状況設定に準じていたからだと断言し、他の面々の悪い点を指摘し始めた。

 

 爆豪くんには私怨丸出しの独断専行に加え、ヒーローとしても(ヴィラン)としても愚かとしか言いようのない大規模な爆破を。

 

 緑谷くんも、爆豪くんと同様に、ビルの天井までをブチ抜いた凄絶な風圧を。

 

 麗日さんには、中盤の気の緩みと、最後の攻撃が雑すぎたことをそれぞれに指摘していった。

 

 それらに対して、飯田くんは相手への対策を最大限にこなし、核の争奪を想定していたからこそ、麗日さんの突拍子もない行動への対応に遅れてしまった。そういう意味でも彼がMVPとして選ばれるに相応しい。

 

 今回のヒーローチームの勝利は、〈訓練という甘えから生じた反則のようなもの〉という結論を述べて、八百万さんは話を締めくくった。

 

 

 途端、その場がシーンと静まりかえる。

 

 オールマイトは笑顔を保っているものの、その笑顔は若干ひきつっていた。

 

「ま、まあ!飯田少年にも固すぎる節はあった訳だが……正解だよ!くぅ〜!」

 

 若干プルプルしながらも、オールマイトは笑顔でサムズアップする。

 

「常に下学上達!一意専心に励まねばトップヒーローなどなれませんので!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一戦目からとんでもないものを見せつけられたものの、ここはヒーロー科。誰も委縮するようなことはなかった。むしろ皆、最初以上のやる気に満ちている。

 

 そうして、二戦目、三戦目と、初戦の出来事がまるで嘘のように、スムーズ進んでいく。そして、私以外の全てのクラスメイトの個性と戦い方をそれなり把握したところで、私の番となった。

 

「ふむ、どうやらあとは夜桜少女のKチームのみのようだね!戦いたいチーム!!」

 

 オールマイトが腕を掲げて対戦相手を募る。すると、この場にいない緑谷くんと爆豪くんを除いた全員が、それに応じて手を上げた。

 

 あの爆弾魔(爆豪くん)が手を上げなかったのが余りにも以外だったので、彼の様子を見てみると、完全に意気消沈としていた。アイツに敗北したのがよっぽどショックな様だ。

 

 

『ウンウン、皆やる気のあって結構!ただし、授業の終了時間も迫ってきてるからね!!対戦相手等はくじで決めさせてもらうよ!!』

 

 

 そして、オールマイトはくじ箱に手を入れて、一つの玉を取り出した。

 

 その玉に記載されている文字は『B』。二戦目でビル全体を凍らせるという、圧倒的な実力を見せて勝利したチームだ。

 

 対戦相手の二人に視線を送る。すると、対戦相手の二人と目が合った。

 

 

『ヒーロー側がBチーム、(ヴィラン)側がKチームだ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………夜桜フラン…か

 

 俺は対戦相手の彼女についてのことを思い出す。

 

 個性把握テストで見せた、あの圧倒的なまでの身体能力に加え、どんなものでも破壊するという、余りにも強すぎる能力も兼ね備えているらしい。

 

(──最初にやった、氷結はおそらく通じないだろう。それに全員の中で一番個性についての謎の多い。油断を誘ってから捕獲するか……?いや、一人が引き付けてもう一人が核に触れるほうが勝率が高い)

 

「──どうする?轟」

 

「───どちらかがアイツを引き付けて、その隙にもう一人が核に触れる。恐らくこれが一番勝率が高い。」

 

「──二人で一緒に戦った方がいいんじゃないか?」

 

「いや、二人で挑んでどっちも捕まるほうがマズイし、俺は一人の方が戦いやすい。だから別行動にしたいと思う。」

 

「そうか………分かった」

 

 

『さて、それでは両チーム準備は良いかな?それでは!BチームKチームによる、屋内対人戦闘訓練スタート!』

 

 

 オールマイトが合図を出して、戦闘訓練が始まった。俺はまず障子に中がどうなっているのかを聞く。

 

「──くっ……」

 

「……どうだ?」

 

「すまない……夜桜の位置と核のある場所がわからない」

 

「そうか……」

 

 こうなることは、ある程度予想していた。空を飛べる以上、足音は聞こえないのは当然の事だし、こちらから視覚になる場所、または窓がない部屋とかに核があるなら核を見つけきれなくても仕方ない。

 

「……中に入って確認するぞ」

 

「……分かった」 

 

 そして、俺たちはビルの中に入る。罠が仕掛けられている様子もなく、ビルの中はシーンと静まり返っていた。

 

「俺は右から探す。おまえは左だ。ただ、アイツを見つけたら連絡しろ」

 

「了解」

 

 そうやり取りを交わした後、俺達は分かれて行動を開始しようとした、その時だった

 

 

「かーごーめー

  かーごーめー♪︎」

 

 

 突然聞こえたその声に、俺と障子は身構える。すると、さっきまで何もいなかった場所からにじみ出るかのようにして、アイツは……夜桜は表れた。

 

 

「後ろの 正面・・・・・・

   ・・・・・・だ~あれ!」

 

 

 アイツがそう言った次の瞬間、俺達の周りは緑色に光る玉で囲まれた。そして……

 

 

(ヴィラン)チーム……WIIIIIIN(ウィーン)!!』

 

 

 俺達は手も足も出ずに、アイツに叩き潰された……

 




戦闘シーン フラン側の視点も書いた方がいいでしょうか?


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十二話~講評~

十二話になります

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 先程戦闘訓練が終わって私達はモニタールームにいた。轟くんと障子くんは悔しそうにしている。まあ、何も出来ずに叩き潰されたから、そうなるのも当然なのかもしれない。

 

「はいお疲れ様! 早速講評を始めようと思うんだけど……ぶっちゃけ(ヴィラン)チームにハンデつけた方が良かった……?」

 

「「…………」」

 

「HAHAHA!……返事する体力も気力も無いね。まあ、うん。よく頑張った!」

 

 う~ん……コレやり過ぎたかな?まあ、何も出来ずにボコボコにされたからそうなるのもしかたないかも。

 

 そんなことを考えながら、私は先ほどの戦闘訓練を思い出していた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ー『キュッ』・・・として、ここに入れてっと。後は───」

 

 訓練ビル一階。私はここ一番奥にある部屋の床を破壊した。そして、その破壊したことで出来た穴に『核』を配置する。この部屋には窓はなく、灯りを無くしてしまえば、この部屋は完全に真っ暗な密室となる。いくら障子くんの『個性』が索敵に向いているとはいえ、ここまでやれば流石に見つけきれないだろう。そうして蛍光灯を破壊した後、私は部屋の扉を閉めて、訓練開始の合図を待つ。

 

 

『さて、それでは両チーム準備は良いかな?それでは!BチームKチームによる、屋内対人戦闘訓練スタート!』

 

 

 そうして、オールマイトが開始の合図をするのと同時に、私は身体を霧へと変化させて入口の方へ向かう。

 

 入口についた頃には、すでに二人とも中に入っていた。

 

「俺は右から探す。おまえは左だ。ただ、アイツを見つけたら連絡しろ」

 

「了解」

 

 どうやら二手に分かれて行動するらしく、轟くんは右側、障子くんは左側を向く。別れられると面倒臭いから、そろそろ仕掛けることにしよう。今回使用する技……もとい『スペルカード』も決まったことだしね。

 

 

「かーごーめー

  かーごーめー♪︎」

 

 

 そうして私は、【東方ロストワード】のフラン()がこの『スペルカード』を発動させる時に言う言葉()言いながら(歌いながら)、霧化を解除していく。言わなくても発動させることは出来るが、そこは気分の問題だ。特にピンチというわけでも無いしね。

 

 すると二人は先の言葉に反応して、背中合わせで辺りを警戒する動きをとる。正直かなりありがたい。これで的が一つになった。

 

 

「後ろの 正面・・・・・・

   ・・・・・・だ~あれ!」

 

───禁忌「カゴメカゴメ」

 

 

 この言葉を最後に、私はこの技を発動させる。

 

 その直後、緑色に輝く無数の弾幕が二人を囲むように配置される。そして、先ほど配置した緑色の弾幕よりも一回りほど大きく、黄色に輝く弾幕を二人に目掛けて打ち込んだ。

 

 すると、轟くんは対応して氷で壁を作り出す。防壁を築いて耐久するつもりなのだろうけど………

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 壁を作り出した事で一度目は防ぐことが出来た物の、二度目はなかった。氷の壁を出した逃げ道が減り、再び放たれた黄色に輝く弾幕が、二人を囲む弾幕を崩しながら襲いかかる。その上、崩された緑色の弾幕も二人を妨害するかのように散らばった。二人はこのスペルカードを攻略出来ずどんどん被弾していく。そして……

 

 

(ヴィラン)チーム……WIIIIIIN(ウィーン)!!』

 

 

 二人が動けなくなった所でテープをまきつけた結果、私の勝ちという結果で戦闘訓練が終了した。

 

 ・・・もうちょっと加減した方がよかったかも。ビルの中ボロボロにしちゃったしね………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな事を考えている間に、講評が始まっていた。今回のMVPは私で、ヒーローの二人に何もさせずに速攻で叩き潰したことが評価された。

 

 最後に地上でオールマイトによる今回の授業の総括と、労いの言葉を頂いて解散ということになった。オールマイトは緑谷くんに講評結果を伝えると言うことを伝えると、バヒュンと効果音を出しながら一目散に帰っていった。

 

 ・・・にしても、やけに焦っていたな………まるで時間に追われているかのような……オールマイトから血の匂いがしたことに関係あるとか……?

 

 そんなことを考えながらも、私は更衣室で制服に着替え、その後教室に戻る。そして教室で、

 

 私はクラスメイト達から質問攻めにあいました………

 

 

 

 

 

 



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十三話~役員決め…そして一騒動~

13話になります
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 学校で初めての戦闘訓練を行った次の日のこと。

 

「・・・・・・何これ?」

 

 学校の前は、たくさんの人で群がっていた。その人達の姿は、スーツや私服と格好こそ様々ではあるが、共通してマイクやカメラ、ボイスレコーダーを構えている。それに、皆して校門前を塞ぐ様に立っているため、学校に入ることが出来ない。『オールマイトの授業についてどう思ってますか』や『“平和の象徴”が教壇に立っているということで様子など聞かせて下さい!』なんて言うのが聞こえてくる。おそらく、というかほぼ間違いなくオールマイトが目当てだろう。

 

 日除けのために帽子とコートを身につけているのが幸いして、私が『雄英の生徒』と思っている人はいないけど、普通に入ろうとすれば、すぐマスコミに捕まるだろう。だったら……

 

──・・・上から行くか

 

 そう考えた私は、空を飛んで上から校内に入り込む。マスコミの人達は皆して地上にいる生徒に視線を向けているため、誰も私に気づいていない。そのため、簡単に学校に入ることが出来た。

 

「・・・ふぅ~」

 

「おい夜桜。仕方ないとはいえ"個性"を使うな」

 

「あ、相澤さん」

 

 学校に入ると、相澤さ……じゃなかった。相澤先生に"個性"を使ったことを注意された。あと、学校では"先生"を付けろとも言われた。その後、私は教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいおはよう。昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績は見させてもらったぞ」

 

 クラスに人が集まって、ホームルームの時間。相澤先生はプリントの束を片手に教卓の前に立つと、チャイムが鳴り終わるのを見計らったように口を開く。全体に対しては特に言及はなく、爆豪くんと緑谷くんにそれぞれ注意と、激励とも取れるような言葉を伝えていた。

 

「……さて、HRの本題だ。急で悪いが今日は君らに……」

 

 相澤先生がそういった瞬間、クラス全体にピリッとした空気が流れる。また、抜き打ちテストでもするのかな?

 

 私はそう思ったけど、それは違っていた。

 

「学級委員長を決めてもらう」

 

「「「学校っぽいの来たあああああ!!!」」」

 

 うわ、物凄い学校っぽい。あと、うるさい。

 

 学級委員長というクラスを導く役を決めるとあって、クラスの大半が手を上げて立候補を申し出る。まあ、私は立候補してないんだけど。学級委員長なんて私には出来そうに無いしね。

 

 誰もが妥協の姿勢を見せず、我こそはと手を挙げ続けている。このままではキリがないのは明らかだった。

 

「静粛にしたまえ!」

 

 そんな様子を鑑みてか、飯田くんが声を上げる。 

 

「"多"を牽引する仕事だぞ!『やりたい者』がやれるモノではないだろう!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務だと俺は思う……!民主主義に則り、真のリーダーを皆で決めるのなら……これは投票で決めるべき議案ではないだろうか!?」

 

 なるほど……それは尤もな話だ。やりたいからと立候補し、実際にリーダーとして選ばれた人が人望の無い人だったら、ついていこうと思う人なんていないだろうし。

 

 確かに飯田くんの言う通りだ。ただー

 

(その"手"が無ければ、説得力があっただろうに……)

 

 そう。飯田くんは手を綺麗に上げていた。それは皆から「そびえ立ってんじゃねーか!!」と総ツッコミを食らう程には、真っ直ぐに。

 

 投票にしても自分に入れるという意見が多かったけど、相澤先生は時間内に終わればどんな決め方でも良いという。ならばと試しに投票してみた結果・・・

 

「僕三票―――!!!?」

 

「まぁ、私も三票ですわ」

 

 緑谷くんと八百万さんが得票同数のトップ、という形になった。

 

 その後は、二人で委員長を決めるジャンケンを行い、それに勝利した緑谷くんが委員長、八百万さんが副委員長に就任する運びとなった。八百万さんは少々悔しそうにしてたけど、まぁ決まってしまったものは仕方ない。他の皆も特に異論はないと言うので、さして時間もかからずに学級イベントは終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お昼休み

 

 他の皆よりも早く食事(吸血)を終えた私は、木陰でのんびりと休んでいた。そのままうたた寝をしようとした瞬間ー

 

「───・・・・・・っ!!」

 

 何か物凄い悪寒を感じて、思わず飛び上がる。辺りを見渡すも特に何かあるわけでもない。じゃあ、さっき感じたのは一体・・・?

 

 そんなことを考えていると

 

 

ウー!ウー!ウー!

 

 

〈緊急警報発令!セキュリティ3が突破されました!生徒は至急屋外へ避難してください!繰り返します……〉

 

 

 辺りに警報が鳴り響き、セキリュティ3が突破……校舎内に誰かが侵入したことを知らされる。

 

 そして、私は【レーヴァテイン】を片手に空を飛び、辺りを見渡す。すると、私の目はある光景を捕らえた。

 

「あれって・・・マスコミ?」

 

 そこには、大量のマスコミが校舎内に入り込んでいた。さっきの悪寒はこの人達が原因なのか?

 

 とりあえず、侵入者がマスコミだと分かって一安心した私は【レーヴァテイン】を解除し、地上へ降り立つ。そしてふと時計を見ると、そろそろ授業が始まる時間になるため、私は教室へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホラ、委員長始めて」

 

 お昼休みが終わると残った役職を決めるため、ホームルームの続きが始まった。緑谷くんは副委員長の八百万さんに促され、緊張から何度も言葉を詰まらせつつ進行を執る。

 

「──その前に、い、いいですか?……委員長は、やっぱり飯田君がいいと思います。あんなふうにかっこよく人をまとめられるんだ。僕は、飯田君がやるのが正しいと思うよ」

 

 さっきとはうって変わって穏やかな表情で話をする緑谷くん。いや、何があったの?というか、そういうのって勝手に決めていいの?すると、他のクラスメイト達も、緑谷くんの提案に賛同してくれる。

 

 当の本人はしばらく呆然としていたけど、我に返ると委員長になることを快く承諾した。

 

 こうして飯田くんは晴れて委員長となり、今日一日だけ、何故か『非常口飯田』なんて呼ばれましたとさ。めでたしめでたしってね。



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十四話~いざ、USJへ~

十四話になります。
今回は少し長くなりました。
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 あのマスコミの侵入の次の日の昼下がり。再びヒーロー基礎学の時間がやって来た。

 

「今日のヒーロー基礎学だが……急遽、俺とオールマイト、それに加えてもう1人の三人体制で行うことになった」

 

 開口一番に相澤先生はそう告げる。……にしても『急遽』ね。おそらくこの前のマスコミ騒動が影響しているのだろう。過去一度も侵入を許したことのない雄英の警備システムが、何者かによって隔壁が破壊されマスコミに侵入されてしまったあの騒動。幸いにも、怪我人とかは出なかったようだが。

 

 あの騒動の後、私はこっそりと突破されたゲートを見に行っていた。故障したわけでも無理矢理こじ開けたわけでもない。隔壁は無残に崩されて(ちり)のようになっており、細かい残骸が小さな山になっていた。明らかに法律を無視した個性の不正使用に加えて、ヒーローを挑発するかのような所業。

 

 この正体不明の者から生徒を守るためだとすれば、三人体制なのも納得できる話だ。

 

「はーい。何するんですか?」

 

 そんなことを考えていると、瀬呂くんが授業内容を訪ねていた。

 

「災害水難なんでもござれ。人命救助(レスキュー)訓練だ!」

 

 そんな彼の質問に答えつつ、相澤先生は『RESCUE』の文字が描かれたプラカードを掲げる。

 

 その言葉に反応してか、再びざわつき始めた教室を相澤先生が睨みをきかせることで静める。そして、戦闘服コスチュームの着用は各々の判断に任せることと移動用のバスの前に集合することが伝えられると、皆して各々の準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういうタイプだったか、くそう!!」

 

 飯田くんは、バスの席順でスムーズにいくようにと、クラスの皆を番号順で二列に並ばせた。しかし、バスの座席は、前半分が左右から向かい合う形の座席というタイプだった。結局座席にはそれぞれ好きなところに座ることになったため、二列に並んだ意味が無かった。

 

 自分の行動が無意味だったと落ち込む飯田くん。そこに芦戸さんから「イミなかったなぁ」と容赦のない言葉をかけられ、彼ははさらに落ち込む。

 

 そんな中、蛙吹さんがふと尋ねた。

 

「ねえ、緑谷ちゃん。私、思ったことは何でも言っちゃうの」 

 

「は、はいっ、蛙吹さん」 

 

 尋ねられた緑谷くんは少し顔を赤くしながら答える。

 

 そんな彼に、彼女は「梅雨ちゃんと呼んで」と微笑みながらお願いしつつ、話を続けた。

 

「あなたの"個性"……オールマイトに似てる」

 

 彼女がそう訪ねた瞬間……

 

「そそそそ、そうかな!?いや、でも僕はそのえー」

 

 と、慌てたのか、しどろもどろになってそう答える緑谷くん。にしても……

 

(分かりやすいくらいには動揺してるね。やっぱりアイツ、オールマイトと何かしらの関わりがあるのかな?)

 

 思い返すのはあの入学初日に行われた【個性把握テスト】。あの時からオールマイトは緑谷くんに肩入れしていた。それに、【戦闘訓練】の時もそうだ。あれだけのことをやったのにも関わらずオールマイトは訓練を中止にしなかった。少なくともオールマイトは緑谷くんに対して、何かしらの特別な感情を抱いてるのは、ほぼ確定だろう。

 

 そんなことを考えていると、

 

「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねぇぞ、似て非なるアレだぜ」

 

 二人の会話に切島くんが口を挟んできた。すると、緑谷くんは安心したのか『ホッ』と一息ついていた。そして、そのまま会話の流れが変化する。

 

「しかし増強型のシンプルな“個性”はいいな!派手で出来ることが多い!俺の“硬化”は対人じゃ強えけどいかんせん地味なんだよなー」

 

「僕は凄くかっこいいと思うよ、プロにも十分通用する“個性”だよ」

 

「プロなー。しかしやっぱヒーローも人気商売みてえなとこあるぜ?」

 

 そんな彼の一言がきっかけで、皆の話題が互いの"個性"のことになった。青山くんが自分の"個性"の強さと派手さをアピールするも、「お腹壊しちゃうのは良くないね」と芦戸さんに指摘されて撃沈したのを他所に、またも切島くんが話を切り出した。

 

「緑谷の個性も強力だけど、他に派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪、あとはやっぱりフランだよな!」

 

 爆豪くんは"強い"という言葉に反応するも、蛙吹さんの「キレてばっかで人気出なさそう」という一言にすぐに噛みつく。「人気出すわ!!」と言いつつ、キレれている当たり本末転倒である。そこに……

 

「この付き合いの浅さで、既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されてるって凄えよ。それにフランちゃんより人気出すのは無理じゃね?東方キャラの中でもトップに入るくらいには人気だぞ?」

 

「テメェのボキャブラリーは何だコラ、殺すぞ!」

 

 と、上鳴くんがやれやれと言った様子でそう告げる。すると、爆豪くんは身を乗り出し、般若の如く目を吊り上げた。そんな彼の態度に、緑谷くんは軽く震えていた。

 

「そろそろ着くぞ。いい加減にしとけよ……」

 

「「ハイ!!」」

 

 騒がしくなっていたバス内は、先頭に座る相澤先生の注意によってあっという間に静まる。そして、訓練を行うことになる施設が近づきつつあるのを目にしたクラスの皆は、各々が気を引き締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バスを降りて到着したのはドーム建築の大きな建物だった。相澤先生の引率の元に入口を通ると、中には様々なアトラクションのような施設があちらこちらに並んでいた。巨大なアーチのそばには、宇宙服を身につけたが立っていた。

 

「よく来てくれましたね、皆さん。お待ちしていましたよ」

 

 その人物が私達を出迎えると、緑谷くんと麗日さんが、声を上げる。

 

「スペースヒーロー『13号』だ!災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

 

「わーーー!私好きなの13号!」

 

 どうやら、あの宇宙服を着た人は『13号』と言うらしい。それにしても、アイツはヒーローに会うたびにそのヒーローの解説をするのか?

 

 そんなことを考えてると、13号がこの施設の名前を言う。

 

「水難事故、土砂災害、火災、暴風などなど……。あらゆる事故や災害を想定して、僕が作った演習場です。名付けて、ウソの災害や事故ルーム!略して……USJ!!!」

 

 そのいろいろと問題がありそうな名前に呆れていると、何やら相澤先生と13号が真剣な面持(おもも)ちでこそこそと話していた。

 

「13号、オールマイトは?ここで待ち合わせるはずだが」

 

「先輩、それが……通勤時に制限ギリギリまで活動してしまったみたいで。仮眠室で休んでいます」

 

「不合理の極みだなオイ」

 

 そんな、普通なら聞き取れない音声で行われている会話を私はしっかりと聞き取っていた。それにしても、【制限】か……あの怪我と関係ありそうだな。

 

「えー始める前にお小言を一つ二つ……三つ……四つ……」

 

 どうやら、このまま授業を始めることにしたらしく、13号が声を上げる。それと同時に私は思考を止めて、先生の話を聞くことにする。

 

 先生の個性は『ブラックホール』あらゆるものを吸い込んでチリに出来てしまう反則的な能力である。その個性を使ってどんな災害からも人を救い上げることが出来るのが先生の持ち味と言える。

 

 麗日さんが頷くなかで、先生は「しかし」と言葉を繋げる。

 

「これは簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう個性がいるでしょう」

 

 まあ、それはそうだろう。私なんて、人間の心臓や脳を『キュッ』としちゃえば、それで終わりだ。

 

 これまでの授業で自身の個性に秘められた可能性と、人に向けることの危うさを学んでもらったと言う先生。

 

「この授業では心機一転!人命のために個性をどう活用するかを学んでいきましょう。人を傷つけるのではなく、救ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな。以上!ご静聴ありがとうございました!」

 

 一通りの話を終えて胸に手を添えてお辞儀をする13号。すると、クラスの皆は拍手を送り、麗日さんと飯田君が歓声をあげる。その瞬間……

 

「────・・・・・・っ!!また!?」

 

 昨日も感じた悪寒が全身を駆け巡る。そして……

 

 USJの中央広場に設置された噴水の前に黒い歪みが生じた。その歪みが広がると、中から人間が現れた。

 

「一固まりになって動くな!!13号、生徒を守れ!!」

 

 その光景を前に、相澤先生は切羽詰まった様子で大声をだす。

 

 ただ皆は状況が良く読めていないようで、先生の言葉を受けても呆然と立っている者ばかり。そうこうしている内に、人はどんどん増えていく。

 

 

「何だありゃ?!また入試ん時みたいな、もう始まってるぞパターン?」

 

 未だに状況が飲み込めないらしく、切島くんが声を上げる。すると……

 

「動くな!あれは、(ヴィラン)だ!!」

 

 そんな切島くんの疑問に答えるかのように、相澤先生は声を上げる。その瞬間、ようやく事態を察したのか、クラスの皆が冷や汗を流した………



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十五話~火災ゾーンでの戦い~

15話になります
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(ヴィラン)ン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

 

 人命救助(レスキュー)訓練を始めようとした矢先に(ヴィラン)の襲撃。この予想外の出来事に対して、上鳴くんは皆の意見を代弁するかのように声を上げた。

 

 まぁ、アイツの言いたいことは分かる。トップヒーローを育て上げる学校なだけあって、この学校には、高い実力を持つヒーロー達が集まっている。並大抵の(ヴィラン)が喧嘩を売ろうものなら、即返り討ちに会うだけだ。

 

「13号先生、侵入者用のセンサーは!?」

 

「もちろんありますが……!」 

 

 八百万さんの質問に、13号先生は焦りを滲ませながら返答する。

 

「現れたのはここだけか、学校全体か……何にせよセンサーが反応しねぇなら、向こうにそういうことができる個性持ち(ヤツ)がいるってことだろ。校舎と離れた隔離空間、そこに俺たち少人数が入る時間割……バカだがアホじゃねぇ。これは、何らかの目的があっての、用意周到に画策された奇襲だ」

 

 生徒たちの中でも冷静な轟くんは、自身の分析を口にする。その内容に、場の緊張度が更に増す。相澤先生も轟くんと同様の判断を下したのだろう。捕縛布を手に臨戦態勢を取り、声を発した。

 

「13号、避難開始だ。上鳴、お前は''個性''を使って連絡を試せ」

 

 その指示に13号は軽く頷き、上鳴くんは、軽く声を出してイヤホン型の通信機器に手を掛けた。

 

 そして、(ヴィラン)を迎撃しようとした相澤先生を目にした緑谷くんは声を上げる。

 

「待ってください、先生!もしかして、1人で戦うつもりなんですか……?イレイザーヘッドの戦法は、''個性''を封じて、奇襲を仕掛けてからの捕縛……。正面戦闘なんて無謀過ぎます!」

 

 オイオイ、何味方(ヒーロー)の弱点をペラペラと話してんのコイツは。

 

「心配するな、緑谷。ヒーローは一芸だけじゃ務まらん」

 

 そう言い残すと、相澤先生は一人で(ヴィラン)の方へ突っ込んでいく。そして、捕縛布を巧みに操り(ヴィラン)を一人、また一人と倒していった。

 

 そのスキに、私達13号の指示に従って此処から脱出しようとするが……

 

「させませんよ」

 

 黒い霧のような姿をしている(ヴィラン)に阻まれた。

 

「初めまして、我々は(ヴィラン)連合。僭越ながら、この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて戴いたのは……

 

 

"平和の象徴"オールマイトに息絶えて戴きたいと思ってのことでして

 

 ──オールマイトの殺害──

 

 その(ヴィラン)の発言に、クラスの皆に動揺が走るのが分かった。

 

「しかしどうも、オールマイトの姿が見えない……まぁ、それとは関係なく──私の役「───禁弾」……っ!?」

 

 なんて、黒いヤツがあれこれ言っているうちに、私は攻撃の準備を整えていた。そして私は、(スペルカード)を発動させる。 

 

スターボウブレイク

 

 その宣言と同時に、私の周りには虹色に輝く弾幕が出現。その弾幕は、一度上昇し、そのまま(ヴィラン)目掛けて降り注ぐ。

 

「ガァァァッ!!」

 

 その攻撃を受けた(ヴィラン)は軽く数メートルはぶっ飛んだ。

 

「良くやりましたフランさん!これなら……」

 

 13号は、この隙に(ヴィラン)を捕らえようと”個性”を発動させる。

 

 ……が、それよりも早く、(ヴィラン)に向かって飛び出していった二つの影があった。

 

「その前に俺達にやられるとは考えなかったか!?」

 

 切島くんと爆豪くんの二人が(ヴィラン)に攻撃をしかけたのだ。しかし……

 

「危ない危ない。そう、生徒といえど優秀な金の卵」

 

 二人の攻撃は全く効いていなかった。それどころか……

 

「ダメだ!どきなさい二人とも!」

 

 二人が斜線に入っているせいで、13号は"個性"を使えない。

 

「散らして、嬲り、殺す」

 

 アイツがそう言った瞬間、黒いモヤモヤが瞬く間に広がり、私達を覆いつくした。

 

 

 

 

 

 

 黒いモヤが晴れると、パチパチと音を立てて燃える炎が視界いっぱいに広がった。

 

 おそらく『火災(かさい)』のエリアなのだろう。車や建物なんかも燃えていて、本当に火災現場にいるみたいだ。

 

 ……にしても

 

「あーづーいー。雨が降ってないのはありがたいけど、面倒なことになったな~」

 

 余りの暑さにそう呟く。すると突然、背後から私を呼ぶ声が聞こえてきた。声が聞こえた方へ顔を向けると、そこには尾白くんがいた。

 

 知り合いと合流出来て安心したのか、彼はホッと息をつく。すると……

 

「おうおう……こいつらを殺せばいいんだな?」

 

「ちっ、たった2人だけかよ……せっかくなら、もっと送ってくれりゃいいのによぅ」

 

 ガラの悪そうな人達がたくさん現れて、私達の周りを取り囲んだ。

 

「な、こいつらまさか!」

 

「うん、『お察しの通り』だね」

 

 こちらを嘲笑うかのように嫌らしい表情を浮かべて近づいてくる(ヴィラン)達。あの黒いヤツの言うとおり、数の暴力で私達を殺す積もりのようだ。

 

「おい、なんかよく見たらいい女もいるじゃねえか?」

 

「ん、ありゃ『東方』のコスプレか……?なあ、殺す前にちょっと遊んでやるのもいいんじゃねえか?」

 

「バカ、時間あんまりねーって言ってただろうが、そんな暇ねーよ……やるんなら攫って帰ってからゆっくりと、だ」

 

 そんな会話を繰り広げる(ヴィラン)を無視しつつ、私は尾白くんにあることを伝えていた。

 

「………というわけだから、そこから絶対に動かないでね。巻き込んじゃっても知らないよ」

 

「う、うん。分かった……」

 

 尾白くんが頷いたのを確認すると、私は軽く宙を舞う。そして、私は大技を放つべく、言葉を発した。

 

「思い出も 部屋も お人形たちも」

 

 私が詠唱を始めた途端に、辺りの雰囲気が変化した。その雰囲気に押されてか、(ヴィラン)の動きはピタリと止まる。そいつらを他所(よそ)に、私はイメージを続けた。

 

 イメージするのは秘封のフラン()。そのフランの姿と技を脳裏に思い浮かべながら、私は言葉を紡いだ。

 

「・・・・・・渡さない! プランクの箱へ押し込むわ」

 

 その言葉を最後に、私は技を発動させる。

 

”インフォメーション・パラドックス”

 

 ……その瞬間。

 

 周囲では爆発が起こり、その後ブラックホールのような物が出現。それは何かを吸い込むと、その形を変化させる。そして……

 

 再び爆発を引き起こした。

 

「す、すごい……」

 

 尾白くんは、この技の威力に驚いたようで、そう言葉をこぼした。

 

 それもそのはず。あれだけたくさんいた(ヴィラン)が、この技一つで全員倒れたのだから。

 

 そして、私は地上へ降り立つと、唯一意識を保っている(ヴィラン)に歩みより、こう質問する。

 

「それじゃあ質問ね。『オールマイトを殺すための手段』っていうのを教えて?」

 

 私は笑顔でそう聞くと、その(ヴィラン)は顔を真っ青にしつつも答えてくれた。

 

 まぁ、答えた後『バタリ』と音を立てて倒れたんだけどね……



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