戦姫絶唱シンフォギアオルタナティブ (オルタナティブティガ)
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1話

思いつきなので筆が進んだら進みます。


「はぁ、学校だるいなぁ。平和が一番とはいえ退屈すぎるし将来の夢とかないんだよな…うん?」

帰宅途中信号待ちで愚痴を溢していたらふと目の前にサッカーボールが飛び出ていくのが見えた。

『まさか、転生物でもあるまいし飛び出ていく子供なんていないだろ……』

すると小学一年生ぐらいの子が赤信号の道路にボールを拾いに飛び出していった。

「うっそだろ!?おいッ!」

小学生はその声にびびってしまいボールを拾ったはいいが動きを止めてしまう。無情にもトラックが猛スピードで突っ込んでくる。それもそのはずそのトラックの進行方向の信号が黄色に変わり赤になりそうだからだ。

『これって俺のせいだよな……もしかしたら子供は戻って来れたかもしれないのに俺がビビらせたから……どうするッ』

考えている間にもどんどんトラックと子供の距離は縮まっていく。子供の方はトラックに気付きはしたがパニックになり動けないでいる。トラックの運転手は信号の方に意識が集中し前の子供に気付いていない様子だ。

『俺はただのオタクで帰宅部だ。ウルトラマンの様に光速で助けることなんて………違う俺はヒーローじゃない、けど俺のせいで死ぬなんて可哀想だろッ。まだ間に合うかもしれないだったら』

少年は駆けた鞄を投げ出しなりふり構わず全力で走った。少年は全力で物事に当たったことがなかった、少年の中でもこれ程全力を出した事がないだろうと思うほどだ。そのおかげで子供はぎりぎり助かった勿論少年は助からなかった。当たり前の話だいくら少年が全力で走ったとしても相手は自動車で、かつ信号ぎりぎりで突っ込んでくるその速さは法定速度なんで意味をなしていなかった。単純な話少年は子供の代わりに轢かれた。

よくはないが日本の交通事故の一件に過ぎなかった。しかし、それを見ていたものがいた。

 

「ウッ……あれ俺どうなった」

「縺ゅ?繧ゅ@繧ゅ@閨槭%縺医∪縺吶°?」

「うわぁッなんだ!?」

少年の目の前には謎の白い光の塊がふよふよと浮いていた、現実から目を逸らそうと少年はあたりを見渡すがまるで真っ赤で目に悪そうな見た目の空間が広がっていた。

「縺ゅ?縺昴▲縺九■繧?>蠕?▲縺ヲ繝シあーあよしこれでわかる?」

「え、あれ?さっきまでこの世のものというかSAN値直葬みたいな声?だったのに」

「失礼だねッ君は!?そりゃそうさただの人間が宇宙の管理者である上位な存在の言語が理解できるわけないだろ」

「え、なに俺事故で死んでなくてこんな変な夢見てるのか?」

「君は本ッ当に失礼な奴だねぇ!?あれ、おかしいな僕の様な上位種に会えるというのに……」

「うん?上位種って何なんだ」

「うん?あぁそっかごめん宇宙の中にいる生命体は僕らのこと知らないんだったね。簡単に言えば宇宙の管理者という存在さ、まぁ特に行うことがないから観察者に近いけどね」

「じゃあ管理者様(笑)は何で俺のこと助けたんだ?」

「君はッ……もういいやはぁ……てか君頭大丈夫?

普通に考えてあの状況から助かるわけないじゃん

てかあれ、君サブカル好きじゃないんだっけ?」

「いやッそれはッそうだけど……まさか自分に降りかかるなんて思わないだろ」

「じゃあ良いじゃない、君は退屈なんだろ折角のチャンスだ」

「なぁ、何で俺なんだよ別に俺じゃなくてもいい人いるだろ絶対に」

「うーん、それはね君の様な人間の方がいいと思っただけだよ。だって探せば性善説の人や平和主義で主人公みたいな人はいるよ、でもね君みたいに自分のやったことにすぐ責任を取ろうとする人は少ないんだよね。大体の人は違うそんなつもりはとか言って立ち止まってしまう君の人生を見る限り立ち止まることはなかっただからさ」

少年は「そう、なんだ」といっても頬を掻く顔も赤く照れているのがわかる。

「君はあんまり褒められてないからね、僕らから見れば凄く良い人だと思うけど生き物っていうのは何かしら悩みがあるもんだね」

「色んな人の中で俺っていうのはわかったけどどうするんだ?」

「そりゃあ、勿論転生してもらうに決まってるでしょ。といっても転生させるのが精一杯特典は挙げられないけどその世界で必要なものには巡り合わせられるよ」

「巡り合わせる?」

「そっ、僕らは色んな宇宙の技術を学ぶ為に色々してるけどある程度安定してその技術を発展させたいでしょ。けど過度に干渉すると意味ないんだよね結局僕らの模倣に過ぎないんだよね。だから運命を弄ってなるべく良い方向に向かわせるの、まあその道筋はそれを専門に研究しているタイプがいてそのせいでちょくちょく運命を弄ることになるんだけどさ」

「つまり、世界の大半はアンタらの都合で色々変えられるのか……てことはこの世界はまだマシなのか?」

「そうだね、場合によって世界が核に包まれたり巨大生物や地球外生命体に人類が奴隷になる世界もあったけなぁ…思い出しただけでも吐き気が」

「そうか…‥.俺がいく世界は?」

そうだねとソプラノボイスで話し出す光の塊から見覚えのあるDVDとネットで見たことのある作品のタイトルが出てくる。

「その世界はね申し訳ないことに僕らのそうだなぁ君達でいうガン細胞みたいに元から狂ってた奴らが他の世界のものを持ち出して元々の運命とかをごちゃごちゃにしてしまうんだ。僕達はそういう風に変えられた世界に干渉しにくいんだ。だから君のような死んだ人を使って転生させるという程その世界をなるべくよくするんだ」

「だったら、お前らがいなきゃそんなことには無かったんじゃないのか?」

「そうなると君らどころかまずこの宇宙が存在しないよ。なにせ僕らがビックバンが何故起きその原理を理解した生命体だから様々な可能性を含んだ宇宙を創れたんだ。というか僕自体もクローンのように造られた存在だ、オリジナルはもっと重大な問題に取り組んでる。それこそいろんな宇宙が滅ぶような問題だ、まぁこの程度なら僕のような管理しなるべく良い結果を導く管理者で充分なのさ」

「なんかスケールがデカすぎてわかんなくなってきた……」

「君には必要無い話だからね、で転生する世界だけどウルトマンティガの要素が持ち込まれた歌って戦うシンフォギアの世界さ」

「それなんて地獄?」

 

「じゃぁ転生させるよ〜」

「待てッ!せめて何が運命で何が使えるのか教えろよ‼︎わかんなかったら、場合によっては速攻終わりだろ。やっぱりティガだとのスパークレンスとかなのか!」

「わかった、わかった言うよえっと君のは、あ」

「おい今あ、っていったよな」

「大丈夫、大丈夫同じ超古代の戦士だから気にしないで、さぁ行ってこい!」

「おいッ!?ふざけんなぁぁぁぁぁぁ」

少年の目の前は周りから暗くなり身体の感覚がなくなっていくのがわかる。そして気づいた時には……赤が濃いオレンジ色の髪の女の子が顔を覗き込んでいた。

『神は死んだ………』

「おい、大丈夫か?椅子から落ちたけど痛くないのか?」

「あ、うん大丈夫全然痛くないよ」

地面に頭を打ちつけ間抜けな状態のまま周りを見渡してみると普通より少し大きめの子供部屋だということがわかる。

「ドンって落としたけど大丈夫ケイちゃん⁉︎」

「あ、ママ‼︎」

さっきまで学生だった筈なのにすっと前に卒業した筈のママ呼びに精神が身体に引っ張られてるということから本当に転生したんだと少年は実感した。

『あのボクっ子、ある程度成長してから転生させてくれる点はいいんだが……』

「おーい、本当に大丈夫か?」

「ケイちゃん本当に大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。ちょっとボーッとしちゃって」

「それならいいけれど……あ、挨拶した?奏ちゃんに」

「こんにちわ、真崎 磬護です。よろしくね」

「おう、私は天羽 奏よろしくな!」

 

 

しっかし、親が聖遺物の研究者で発掘チームの天羽家と同級生だって知った時はこれもボクっ子の仕業かと思った。けど夢で「なんでなんも弄ってないところで繋がりができてんの⁉︎」ってキレてたしな。俺と奏は同じ幼稚園だし幼馴染かぁ……

実際接してみると良い子で世話焼きだからなぁ。死ぬっていうのは見たことないけど有名だから知ってた。こんなことなら選り好みするんじゃ………ダメだ気持ちがネガティブになってるウルトラマンはこんなことで挫けないんだ。

よし手に届く範囲は救う為にも運動するか、どうせ鍛えるつもりだったんだ守る理由があった方がモチベになるし頑張るか。

前世みたいに家にこもって特撮ばっかり見るんじゃなくてランニングを始めた。ちょうどパパも研究ばっかじゃなく体を動かそうとしてたから

「パパと一緒に走る〜」って言ってランニングだったり公園でキャッチボールとかを習慣にした。

ただこの世界の一部の人間イカれてないか?普通の人間は木の上の子猫を助ける為に跳ばないな。てかあの赤髪絶対に主要な人物だろうなぁ、まぁちょっと話したぐらいだし覚えられてないだろ。

 

しかし原作に関わるメンツに会いすぎたろ…………ウルトマンになるとしては顔バレしたらダメだしなぁ今からフード付きのパーカー着るか? 

いやそこまですると……「おい、おいってば‼︎」

「あっ、ごめん考え事してた……」

「気をつけろよ……ケイゴはボーッとしていっつも先生に怒られてるだろ」

まぁ何事もなくそのまま成長して小学6年生になったが……いつ奏の家族が聖遺物発掘に行くのかわからないとやばいな、絶対うちの親も行くだろうし早めに石像を探さないとだしあ”〜やることが多いッ‼︎

「ほらまたッ‼︎」

「ごめん、ごめん。はぁ〜」

「うん?どうしたんだため息なんかして悩み事か?」

「あ〜いや〜うん何でもないよ」

「うそつけー絶対なんかあるだろほら言ってみろ

お姉さんに言ってみろって」

「しつこいってばぁ、てか大体数日の差で……」

「ふ、それでも年上なのは変わらないだろほらぁ敬えよー」

こんな風にふざけあう日がずっと続けば良いんだがなぁ

 

私には、幼稚園の頃から一緒の幼馴染がいる。

いつもボケーッとしてて先生だったり親に怒られてる、いつも怒られた後すぐに謝ってため息をする大人びてるやつだ。普通幼稚園児って遊んでばっかなもんだろケイゴは一人で図鑑読んでたりしてた、親同士が同じ学校で仕事も似たようなのしてたからよく会うのもあって遊んでた。勉強が好きな奴なら無視すればいいのにこっちが誘うとしっかり遊ぶ、まるでそうした方が楽かのように。

まぁ、コイツ下手したら日々の運動以外あまり部屋の外に出たがらないから飯を食い忘れたりするから世話してる。

本当大人なんだか子供なんだかよくわかんないやつだけど優しくて弱い奴のために戦えるやつなんだ。小学二年生ぐらいの時私は女の子らしくなくて男女とか、揶揄われてた。そしたらアイツ

『女の子虐めて恥ずかしくないの?』っていじめっ子に言ったんだぜ。まぁ、滅茶苦茶アイツ傷だらけになったけど喧嘩して勝ってんだよなぁ。少しカッコいいなぁって思ったアイツみたいに誰かを守れるようになりたくなったからアイツの運動に付き合った。アイツ、スポーツ何もやってないくせに鍛えてるから本当意味わかんねぇんだよな聞いたら『男は誰かを守る為に強くなきゃいけないから』って言ってて笑っちまって怒られたっけな。最近は、親の研究に着いて行こうとして怒られてたんだけど夏休みに一緒に九州の遺跡にセイイブツ?みたいの探しに行くらしいから楽しみなんだよな。

 

「なぁケイゴ、熊本の方に父さんたち研究で行くんだが行くか?」

「………うん、行くよ‼︎」

『鬱イベとセットにしやがったあの野郎ォ‼︎』

 

はい、私は今どこにいるでしょうか。そうです九州の熊本にある遺跡に来ています。

ヤッベェよ超古代の巨人になれるチャンスだけどあれだよねこれ奏の家族が全員炭化しちゃう奴じゃん。夢で光の巨人はちゃんとノイズ触れても大丈夫って言ってたけどそれなれたらの話だよね…

あれ俺もしかしてウルトマンになれなかったらやばいのでは?

そこまで干渉できないとかあまりその世界のことについてを言うのは許可されてないって言ってたから難易度高すぎないかこれ……よし遺跡に入ったら迷子になったふりして巨人像探そ。

 

「おい、ケイゴ何してんだ?」

ビクッと肩を震わせケイゴは「ちょ、ちょっとトイレ」と言ってトイレの方に走っていった。

「あれ、ケイゴくんは?」

「トイレだとよ」

じゃあ少し待つかと天音、真崎一家は遺跡の前の仮設研究所で一息ついていた。

それが命運をわけた。遺跡の方から悲鳴が聞こえてくる。

「ノ、ノイズだー」

遺跡の方はこの世の地獄のような惨状が広まっていた。

「は、ケイゴ‼︎」

「とりあえず私が行こう」

「貴方……」

「私達は避難しましょうね、」

「ええ……」

『ケイゴなら大丈夫、大丈夫』

 

 

少し前

「トイレに行くって言ったけど戻るのを考えると十分が限界か…ま、呼んでる感じがする方向に行くか」

直感で仮説トイレのを通りすぎ少し行った先に成人男性がギリギリ通れそうな洞穴を見つけたその穴は人どころか生物の気配が一切ない穴から風が吹いているところからどこか他に穴があることが感じられる。

「とりあえず、入るか……」

穴を道なりに歩いていくと開けた場所に出たそこには巨大な人形の像と怪獣の像がある。その両方の胸に似たものがあることからそれらは姿が違えど仲が良かったのかもしれない。

「これが、あの「巨人」……は?」

さっきまで人どころか生物の気配すらなかったはずの場所に銀髪の女性が立っていた。

「ようこそ、超古代の遺伝子を受け継ぐものよ。貴方には時間がありません」

「はぁ?なんで……まさかもう?」

「ええ、ゴルザがここに向かって掘り進めています。なので早く巨人と同化するしか……」

「まて、あんたはどうすんだゴルザがここに来るなら粉々に破壊されるんじゃ」

「ええ、そうなるでしょう。しかし私はAIのようなもの他の場所にもバックアップはあります。なので「それじゃダメだ、俺が光の継承者なら例えどんな困難に遭おうとも諦めちゃダメだ。そしたら俺は踏ん張れないんだ」

「わかりました、ではそこの腕輪を付けてください」

「わかった」

「三分、三分稼いで貰えれば私のデータをそちらの腕輪に転送できます」

「おう、じゃあ行ってくる」

ケイゴは巨人に触れ光に包まれていく、石の巨像が元の色を取り戻す。銀色の体に胸に赤と黒そして金のラインが入っていて目は優しい青色をしていた。

 

ドコォッと音共に巨大な生物が地面を破り現れた。全身が岩石のような皮膚で手脚は薄い青で顔は赤く首から頭の上まで鎧のように硬い皮膚に覆われている。

ゴァァァァァ

古代怪獣ゴルザが咆哮をし辺りを踏み鳴らす。

「やばいケイゴに近づけないぞこれじゃあ」

「ッ‼︎」

「おいよせやめろ、死ぬ気か⁉︎」

「いつあの化け物にケイゴが踏まれるかわからないんだぞッ、黙ってみてられるか‼︎」

ゴルザがケイゴが家族に黙って入った穴を見つめる。するとゴルザの額に紫色の光が集まっていくそれが収束した瞬間穴が開いていたところを超音波光線で破壊する。

するとその破壊した場所に銀色の何かがいるのがわかる。

「なんなんだよ一体⁉︎」

銀色の巨人が立ち上がりファイティングポーズをとる。

ゴルザは予想していたものとは違い首を傾げた、その瞬間巨人が飛び出して右ストレートを顔面に叩き込んだ。ゴルザはあまりの衝撃に体勢を崩し地面に叩きつけられた巨人は手を握ったり開いたりしている。その仕草は震えていてまるで初めて殴ったかのような行動だった。

ゴルザが立ち上がり体を捻り尻尾で巨人の腹部に強烈な一撃を喰らわせた。衝撃を受けきろうと踏ん張ったが一歩及ばす巨人の体は宙を浮き叩きつけられた。

 

『痛ったぁ、後どれぐらいで転送できるッ⁉︎』

『後10,9,8,7,6,5,4,3,2,1,転送完了です』

『よっしゃってあっぶなぁ、あいつに掴まれたらいくらウルトラマンの肉体といえどダメージは避けられないな』

『てか近くに人が‼︎って父さんたちじゃん、どうしよう取り敢えずゴルザが危ないからあっちいけぇぇ』

掴もうとしてきたゴルザの剛腕を巨人は受け流し投げ技に派生させた。

ゴルザの巨体が地面に沈む。巨人は少し後ろに下がり両手を握り大きく広げ胸の前でクロスする、そして逆L字のような形に組んで光線を放った。

「やめろーーぉぉ」

ゴルザは爆発し死体が粉微塵になった。しかし近くにあった仮説トイレを巻き込んでしまった。

『あ”、やらかした』

「お前を絶対許さないぞ銀色の悪魔ぁぁぁ」

『どうします?この状況で戻ることは可能ですが……』

『ねぇ、他に古代怪獣で目覚めそうなやつどこにいる』

『ッ、それは……はい何体か日本の外から国内にもいます』

『よし、じゃそれを倒して一般人に被害が出るのを防がなきゃね』

『………はい』

銀色の巨人は飛び立ったその後ろ姿は何処か哀しみを背負っているように見えるが誰も気付くことがなかった。




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第二話

天羽 奏side

 

「……ケイゴが死んだ?嘘だ、あいつが死ぬ訳……死ぬ訳ねぇだろッ‼︎」

 

「おねぇちゃん……」

 

親達に八つ当たりしてしまうが自分でも何処か腑に落ちないところがあった。

あんなに発掘が楽しみって言ってたやつが急に遺跡に入る直前にトイレに行くなんておかしいんだ。もし止めていれば別に後でもいいだろって言えば……けど許せねぇ、あんな怪物を倒せる実力があったのにどうしてケイゴだけを助けてくれなかったんだ。怪物を倒せればそれで良いのかよ、なんであたし達だけ助けたんだよ……

絶対にあの巨人に問い詰めてやる、話しが通じないかもしんねぇけどだがあの木偶の坊がした事を言って聞かせないとあたし達の気が済まねぇ。

 

天羽 奏 side out

 

真崎 磬護 side

 

「ふぇっくしょんッ、風邪か?」

 

『風邪にしては体調が良いので埃や塵もしくは噂ではないでしょうか?』

 

「え、迷信信じてんの?というか、名前聞いてなかったんだけど……」

 

『………言ってませんでしたっけ?』

 

「うん、言ってないというか何者かも聞いてないんだけど?」

 

『……ヴッヴン、えぇ地球警備団団長、ユザレの記憶を基に作られた人工知能です。人類に闇の勢力からの脅威を伝える為でしたがこれからは光の継承者である貴方のサポートをさせていただきます』

 

「真崎磬護だ、よろしくね」

 

『はい、よろしくお願いします』

 

「で、俺はどこ向かってんのこれ?」

 

『はい、今のところ一番反応が大きかったのは中国ですね』

 

「うん?どうやっていくんだよ、俺確かゴルザの爆発に巻き込まれて遺体がノイズのせいで残らなかったとされて葬式もう済んで墓も建ってるし戸籍もないんだが?」

 

『だから、帰ったらどうですかと言ったのですが』

 

「あの空気感で帰れる奴はKYなだけだと思うが」

 

ウルトラマン憎し、ノイズ許さん仇はとるぞォみたいにうちと天音一家が静かにブチギレてたのに

ウルトラマンに変身する人のお約束の「おーい」ってできる奴いるか?周りとの温度差で死ぬぞ俺が

『あの、いじめっ子も来てたのは面白かったですね』

 

「あ〜あいつね、一回喧嘩したら好敵手にされてしつこかったなぁ。まぁ丸くなっていい兄貴分になってたな。というかどうやって密入国するんだよ」

『輸送船に載ります』

 

「載る?乗るじゃなくて?」

 

『はい、載ります』

 

「マジで?」

 

『はい、マジです。輸送船にもデットスペースがありますそこで光学迷彩を使って隠れます』

 

「ぎ、技術の無駄遣いな気がする……」

 

『では、親に死んでません。実はあの銀の巨人で世界を滅ぼしかねない怪獣達を倒さないといけないんです。と言えばいいじゃないですか?だいたい贅沢過ぎます私達も当時は地球を守るため泥水を啜る覚悟でやってきたのです、その末裔である貴方ができないはずがありません』

 

「………はい、がんばります」

 

「さて、中国に不法入国している訳だが何処に反応があるんだ?」

 

『このまま20キロ先の山奥ですね』

 

「なんで無駄にそういう所にあるんだろ」

 

『元々、殆ど私達と戦って傷を負ったり伏兵にしようとして忘れられたりした残り物ですが闇の勢力が増してきたら別です……』

 

「山奥ね、てか何で俺の見た目があんな悪役っぽいままなのかねぇ」

 

『その事ですか、あなたの巨人の見た目は昔からそのままみたいです。その外見の邪悪さとティガに似ている所からイーヴィルティガと呼ばれていたとデータベースにはあります。まぁ、ティガが闇の巨人になってた時はティガの代わりとしてオルタナティブティガと呼ばれていたとか。

データが古すぎるのと本部のサーバー自体修復中という事もありこれ以上となると厳しいですね』

 

「つまり、俺の巨人はティガと常に真逆だってことか……他に巨人に適合している人はいない?」

 

『今の所は確認できていないためわからないとしか……』

 

「あー、大丈夫。流石に闇の巨人と闘うことはまだ避けたいから人手は足りないし訓練はできないからどうしようかなって話」

 

「さーて森の奥地へ出発‼︎」と中学一年生になって少し経った男の子が声をあげて森の方へと向かっていく。

森の奥深くに入り辺りに人の気配がない場所を歩くしかしその足取りは、少し不安そうな感じだがしっかりと地面を踏み締め前に進む意志を感じる歩みだった。

 

 

奏side

アタシたちはあの事故からずっと巨人やあいつの死体をカケラも残さない原因になったノイズについて文献などで調べていた。

皮肉な事にウチの家族とあいつの両親はノイズ被害にも化け物による怪我が一つも巨人が守ってくれていたのかなかった。

父さん達は、他の遺跡を探したり伝手を使ってあの巨人の正体を探ろうとしたけどちょっとずつわかってきらしい。

その合間にノイズ研究していたら特殊捜査係2課から引っこ抜きにあって巨人の研究している場合じゃなくなっちゃったらしい。

だからアタシはアタシで図書館で調べてみたけど何一つ成果がないどころかそんな事は大人に任せなさいって言われた……アタシだってあの巨人について知りたいのに………

いや、そんな事でへこんでたらあいつ成仏できないか……でもその方がまだ、ってだめだめ最近気持ちが暗くなってるし気分転換しないと。

 

「って、あれ?」

 

アタシはさっきまで見ていた午後のニュースのスイーツ特集から変わって流れているものに惹きつけられていた。

『速報です。中国で巨大な生物が暴れ、死傷者が多数出ました。今の所確認できた全員命に別状がないとのことでしたが、全員が巨大な銀色の巨人を見たと証言しており現場には巨大生物の足跡の他に巨大な人の足跡の様な物も見つかったもようです。中国政府は事実を確認し調査しているとのことです。それでは次のニュースは……』

 

「そういうことか、あの巨人は化け物を探して世界中飛び回ってんのか。道理で見つからないわけだ、じゃあ先に化け物を見つけたら出会えるってわけか……待ってろ木偶の坊、ぜってぇあいつに謝ってもらうからな」

 

「おねぇちゃん、どうしたの?……今のニュースっえケイにぃを救ってくれなかったものなのかな」

 

「さぁな。どちらにせよ手掛かりがないよりマシだとっ捕まえるにしろな」

 

天羽 奏 side out

 

真崎 磬護 side

数日前

 

 

「反応は……ここあたりか」

 

そこは誰が見てもただの森と答える普通の森林だった。

 

「さて、何処に埋まってるんだ?てかこの辺人いないよな、いたら結構怪しまれるよなこれ」

 

ケイゴは辺りをキョロキョロと見渡し手がかりを探すがただの木や草花しかない。すると背の高い草がガサガサっと揺れる。音の鳴った方向を向きながらスパークレンスが入っている上着の内ポケットに手を突っ込む。

 

「………誰だ?」

 

『生体反応反応的には人だと思われますが……警戒する事は大事かと、もし現地の人なら話を聞いて見ましょう』

 

『………俺日本語と英語しか無理なんだが?』

 

『大丈夫です、すでに主要国のニュースなどで言語学習は終了しています』

 

「だからあの半壊した遺跡に戻っていろいろ準備したのか……バレない様にすんの死ぬ程大変だったんだが?」

 

『必要な事でしたのでそれより眼前の敵なのかわからない存在に意識を割くべきでは?』

 

「はぁ、わかってるよ」

 

草をかき分けて出てきたのはケイゴより少し歳下の子供だった。背中には籠を背負っており中には野菜や果物が入っており収穫が終わり家に帰るところだったのが分かる。

 

『セットアップが完了したので中国語に自動変換して会話を行えますよ』

 

「こんにちわ、どうかしたの?」

 

「あ、こんにちわ。おにーさんこそこんなとこで何してんの、ここ鎌龍様を祀ってるところで入っちゃダメって言われなかった?」

 

「あー、旅しながら珍しいのを見るのが好きでねバレなきゃいいかなぁってさ」

子供はどこか不審者を見ているような目をして、足がいつでも走り出せそうに力を入れているのがわかる。

 

「あ、待て待て逃げようとすんな。実際旅をしているがこの辺りにまず村があるのを知らなかったんだ……なんかここ入ったら呪われるとかそういうのなのか?」

 

きょとんとした顔をして子供はあ、と溢す。

 

「お兄さん、川から上がってきたでしょ‼︎道理で村の人と会わない訳だよ。うちの村、森の奥深くにあるし村の人も川にあまり近づかないから」

 

『半径四キロ圏内に多数の生体反応があります。その子供の言っている事は本当かと……』

 

「そうなんだ、取り敢えず真崎磬護だ。君の名前は?」

 

「李 奏、李書文の李に音を奏でるでそうって言うんだいい名前でしょ?」

 

ソウは子供らしい純粋な笑顔で名乗った。子供が名前を言っただけだがケイゴの脳裏にはあの姉御肌の幼馴染の笑顔が何故か浮かんでいた。

「ん?お兄さんどうしたの」

 

「ッな、何でもないさ。というか近くに村があるのかいそんなに野菜を背負ってどうしたの?」

 

「あ、畑から帰る途中にお兄さんを見つけて珍しいっと思ったら御神体がある方向に歩いて行ったから何するかわからないからついてきたんだ」

 

「御神体?」

 

「そう、ここら辺には鎌龍っていう龍神様の像があるんだ。ちなみに僕たちの村は鎌龍村っていうんだといっても普通の人は知らないし村の日も外部と関わろうとしないからあまり噂にもならないんだ」

 

「その御神体ってどこにあるのか知ってる?」

 

「昔、外から来た人が珍しくて持って行こうとして足の部分を欠けさせちゃってから教えないことにしてるんだ……」

 

そっかぁとケイゴは溢し脳内でユザレにサーチをかけるように頼んだ。その結果北に30メートル離れた崖の奥に闇の眷属の気配があると伝えてきた

 

『このまま、行ったら怪しまれるか……離れるふりして後でもう一度来よう』

 

「そっか、そんな事があったなら無理に見せて貰うのはやめる事にするよ。近くで休んでから他の場所で一夜を過ごすことにするよ」

 

「え、お兄さん外で寝るの⁉︎ここら辺には危ない動物はいないけど辛くないの?」

 

「そのまま寝るのは勿論大変だけど寝るところって案外簡単にできるし旅っていうのは辛いことや楽しいこともあるから面白いんだよ」

 

へぇ、とソウは変な物を見る様な顔をしていたが不審者を見る様な懐疑心ではなく仲のよい知人が奇行をしているのを眺めている様な優しい目をしていた。

数分他愛もない話をしてソウがそろそろ野菜を村に持って帰ると言い森の奥深くに行ったのを確認してからあたりの捜索を再び始めた。

ユザレの言った通りに進むと洞穴に何故か少し前に人が出入りしていた形跡のある場所についた。その洞穴に入ってみるとそこそこ広く、ある程度人の手が入っているのがわかる。

洞穴を道なりに進むと左腕がなく、確かに左脚のつま先に当たる部分が欠けている像があった。

その像は前に戦ったゴルザの様に腹から胸にかけて岩の様な体を持っており鎌龍の名の如く鎌の様な爪を持つ腕をした怪獣の石像があった。

 

「なぁ、これも古代の怪獣でいいんだよな?」

 

『はい、巨人像と同じく長い間持たせたり欠損がある場合は石化して周りの岩石や闇を取り込み再生させるところがあると考えられます』

 

「復活する前に壊すことはできるだろうけど壊しちまったらあの村のソウとかが悲しむのか……」

 

『誰か他の犠牲者が出てからは遅いのです。多少非道ですが壊しておくのが賢明かと……!?ケイゴ後ろッ‼︎』

 

「ッ何⁉︎ぐっ‼︎」

 

ケイゴは後ろから来た男に後頭部を殴られ一瞬で気絶してしまった、視界が暗くなるその一瞬巨像が少し嘲笑っている様に見えた。

目が覚め周りを見渡すと木製の柵と監視役と思われる大人二人が立っていた。

大人は柵の出入り口に立っておりもし出るとしてもその二人を倒さなければ脱出は厳しいのがわかる、それ以前にケイゴの腕と足には何か紐状のもので結ばれていてまずこれを解かなければならないという厳重な体制だった。

 

『腕輪は外されていない、バックは流石に回収されたか……さてと見えているだけでも二人の見張りこどっちかがやられたらその隙に応援を呼ばれるだろうしユザレ』

 

『はい、脱出経路ですね貴方が運ばれている時の道を記録済みで「脱出はしない」……す。運ばれた時に頭でも打ちましたか?それとも雑に運ばれた時の振動で脳にダメージが……狭い社会で過ごすのは良くないですね。それよりも貴方がもし戦えなくなったら幾ら倒せる存在とはいえ多数の犠牲が出るのですよ』

 

「そりゃあそう、だけどてかあとどれくらいで復活すると思う?」

 

『早いと明日の朝頃、遅くとも明後日には石化が解けるかと』

 

うーん、思ったより早いなぁとケイゴが溢したその時檻のドアを開けて覆面の男が入ってきた。

 

「なんだ?もう自由にしてくれるのかッグ⁉︎」

 

男は無言のままケイゴの首を持ち右腕を引いていた、そのまま引いた右腕でケイゴの腹を殴りつけた。

 

「ゴハァッ、ゲホッゲホッ、ハァー」

 

「何が目的だ」

 

冷たく無機質な声で男が質問してくる。

男は黒い色の服装で全身が隠れているが鍛えられているのがわかるほど筋骨隆々だった。

 

「吐かないのであれば拷問は続けるだけだが?」

 

「た、ただの旅行客で逸れただけだ」

 

「逸れたぁ?旅行客は全員パスポートと財布を持っている。それがない時点で貴様は旅行客ではない違うか?」

 

馬鹿そうに見えて証拠を元に推理されケイゴは鳩に豆鉄砲をくらわせたかの様な顔をした。

 

「見た目にあわねぇ……」

 

「……….フンッ‼︎」

 

ドゴッとまたケイゴの腹に若干さっきより重い一撃が入る。

「ガァッ⁉︎」

 

「煽って怒らせ冷静じゃなくして抜け出そうという魂胆か……良い線だが俺には通用せんからな。

さあ、選べお前の目的を吐くかまた血を吐くか」

 

フッとケイゴは鼻で笑い今度は顔面に拳が突き刺さった。殴られた勢いのまま牢獄の壁に激突し固い地面に崩れ落ちた。

 

李 奏side

 

「ただいま戻りました、ってどうしたのお父さん?」

 

「何だ奏か……神託が来たんだよ。奏を、村の外にいた奴が持ってきた物と一緒に捧げろってッ」

 

「…‥そう、何だ。村の人はなんて?」

 

「『光栄なことじゃないか、鎌龍様に命を捧げてしかもそれで鎌龍様がお力を取り戻すらしいよかったな‼︎』って……ふざけんなッ‼︎こんな村に外のものが入るのは誰のおかげだと思っている!

奏だ、奏のおかげでこんなど田舎の村なのに医療品や嗜好品が少数でも手に入るというのに……クソがッ」

 

「……ねえ、お父さん。僕が、僕がさ。鎌龍様に捧げられれば村の人は幸せになる?」

 

「………まぁ、そうだろう。ここは狂信者達の村だから村の人達は皆お前の犠牲を当たり前だと思ってる、そんな奴らの為に大切な娘を渡せるわけないだろ」

 

「お父さん‼︎そんな事したら異端審問されて殺されちゃうよ‼︎」

 

「それでもいい、これ以上奪われてたまるか」

 

「お父さん……もう行くね」

 

「ま、待て!行くな」

 

ガシッと腕を掴んで出ていくのを止める。だが、少女の苦笑が亡くなった妻にそっくりだった。

あの時手を掴めず喪ってしまった彼女の面影が少女にあった。次第に掴む力が弱くなり手をダランとさせ後ろを向く。

 

「そうだったな、君も奏も誰かの為に動ける人だったか……俺には勿体無さ過ぎるな。引き止めて悪かった、奏は奏のやりたいことの為に頑張れ」

と言い残し実際の年齢よりくたびれた男は座り込んだ。

 

「行ってきます」

 

「……ああ、いってらっしゃい」

 



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3話

真崎磬護side

 

「あ”あ”痛ってぇ……幾ら侵入者とはいえ餓鬼に対し容赦なさ過ぎでしょ」

 

『……泣かないのですね』

 

「?泣いてどうにかなるなら泣くよ,どんだけ辱められてもそれで怪獣とかが居なくなるなら泣くよ。けど俺が泣いても世界は変わらない、世界は残酷だからこんな所で腐ってたって何にもならない。だから泣くのは大切な人との生活の為に取っておくんだよ」

 

『……戸籍状は死んでますがね』

 

「やめろ……悲しくなってくる。てか見張りも減ったしどうしたんだ?」

 

『何やら鎌龍の復活の儀式があるから見張りは最低限にしろ、と言ってました』

 

「まさか……」

 

『ええ、おそらく貴方のスパークレンスを使って復活の時間と強化を同時にするつもりでしょう』

 

「あのスパークレンスにはそんな力が有ったのか……」

 

『鎌龍、いえメルバになってしまえばどうにかして彼女をどうにかしてメルバから分離する必要があります』

 

「どうすれば……ッ!?何だ?!」

 

ケエエエエン

 

『メルバが目覚めたようです……』

 

「クソッ出せよッ‼︎」

 

傷ついた体で必死にもがくが体を締め付けている縄すら外れない。

外からは歓喜とは言い難い悲鳴や何かが壊れて落ちる音や爆発が聞こえる,その音はどんどんこちら側に近づいてきている。

 

「クソッこのままじゃ何も出来ずに……」

 

ドンッと音と共にくたびれた男が牢獄に飛び込んできた。

 

「貴様!何しにここにきた!」

 

「うるせぇぇ!!邪魔だァァ!」

 

男はそのままの勢いで見張り役の男を蹴り飛ばした。

 

「グバァッ!?」

 

見張り役は宙に浮きそのままの壁にぶつかり伸びてしまった。

 

「……お前か?外から捕まった怪しい子供は」

 

「多分俺だろ、今日捕まってボコボコにされたから」

 

「よし、じゃあこれの使い方を教えろ」

 

男は背負ってたバックからスパークレンスを取り出して磬護に見せる。

 

「それは!」

 

「どう使うんだ、早く言え」

 

「……それは、適性がある人しか使えない。多分アンタには無理だ」

 

「じゃあどうすれば奏を救えるんだ!」

 

(ソウ)?アンタが奏の父親か……俺に任してくれ」

 

「お前は餓鬼だろ!餓鬼に何ができる‼︎」

 

「アンタが持ってる物さえあれば救う事ができる」

 

「……本当だな?」

 

「やってみせる!………ただここから出してくれ」

 

少年はその歳に見合わない気迫を見せるが間を開け弱々しく男に頼む。

 

「前の部分だけなら信用出来るんだがな……しかし何やっても反応しないのを見るとやはりお前が正しいらしい」

 

男は見張りから鍵を奪い牢獄の鍵を開け少年に近づく。

 

「しっかし、腕っ節強いねお兄さん」

 

「お兄さんって歳じゃないが、まぁいいか。俺は猟師だからな最低限鍛えてある」

 

「成程、だから一撃であんな屈強な男が伸びるわけか。そういえばそれはどうやって手に入れたんだ?」

 

「……長くなるが?」

 

「どうせ解けるまで何も出来ないし状況が分かんないからお願い」

 

「わかった……これを手に入れたのはさっきだ」

 

ロープを解きながら男は先程あった地獄を話し始めた。

 

真崎 磬護side out

 

李 俊side

 

 奏が家から出て儀式に向かった後俺は悩んでいた。

きっとあの子は彼女に似て優し過ぎるところがある頼まれたら断れないし知らない困っている人に後先考えず手を差し伸べてしまう子に育った。

 

俺としてはただ健やかに過ごしてくれればそれでよかったんだがどうやら神というのは意地が悪いらしい。

断れないのを良い事に時代遅れの生贄にするなんて……俺にはどうすることもできない。

あの子がしたい事の為に生きているというのに誰かの為に生贄になるという願いを聞き入れることしかできなかった。

俺自身は村と関わることが少ないから儀式している所には行けないだろう……もう行ってしまったのに俺には出来ることはない。

 

だから諦めるしか、ない……はずなんだだが彼女の、いや、彼女と俺の大切な宝物を手放したくない愚かな自分がいる。

あの時は手を伸ばさなかった癖に今更手放したものを取り戻そうなんて烏滸がましい気がするが知ったものか、二度と手を伸ばさないで後悔しない為に奏を止めようと思った。

最低限安全に進める様に俺の得物である手斧を持って玄関から出るが出た瞬間待ってましたとばかり狂信者共が武器を構えて立っていた。

 

「何の様だ?俺は今から狩りに行くのだが?」

 

「ほざけ、貴様の目的は娘の強奪だろ。鎌龍様の生贄を奪わせてたまるか。何もしないというのであれば今日は家に篭っていろ」

 

「関係ない、どけ」

 

「交渉決裂だな、では死ねぇい‼︎」

屈強な男は手にした鉈を振り落とし切りつけようとする。だが、普段野生の獣を相手にしている彼にとっては遅過ぎる攻撃であり手斧の峰を鉈の側面にぶつけて弾く。要はパリィの様なものであるが彼のパワーで振った斧は鉈を砕く。

 

「な⁉︎グボッ‼︎」

 

踏み込んで利き手とは反対の腕でボディに打ち込み鉈を持っていた男を一撃で伸してしまった。

 

「邪魔すんなぁァァ‼︎」

 

男は斧を振り回し取り巻きの側頭部を的確に打ち抜く。

 

「「ゲボッ⁉︎」」

 

「ふぅ、さっさと奏のところに行かなくては」

 

男は斧と猟銃を持ち鎌龍が祀られているところに走っていく途中彼を止める為の武装した村人が居たが全員、ちり紙の様に吹っ飛ばし祀られている洞穴にたどり着く。

「う、嘘だろッ⁉︎」

本来あった洞穴より大きい穴が空きその前に鎌龍の像が色づきより生物らしくというより怪物として雄叫びを上げていた。

 

鎌龍は村を睨み両目から怪光線を出す、当たった村の家や地面は爆発し長閑な村は一瞬で地獄に変わった。

ケェェェンと何処か鶴に似た声を上げ怪獣は村を破壊しまくる。

 

「奏は、奏はどうなったんだ?」

 

男は破壊される村を尻目に祀られていたところに走る。するとそこには血だらけの村長や村人の姿しかない。愛娘である奏は影も形ない、まだ息のある村長に男は気付けをし最低限の応急処置をする。

「おい、村長どういう事だ。鎌龍様は守り神じゃなかったのか⁉︎」

 

「アレは守り神でも何でもない過去の遺物、闇の尖兵だった……」

 

「闇の尖兵?」

 

「あぁ、儂たちの先祖は超古代と呼ばれる時代の生き残り。代を継ぐごとにその力は衰え伝承も消えていったが最低限残っていてな、あれはメルバと呼ばれる闇の勢力の兵士。儂たちの爺さん方が教わったのを忘れてしまっていた……奴が出していた闇に呑まれあんな奴を神として崇め強化してしまった」

 

「道理であんなヤバそうなものが見つかった瞬間から村人がおかしかったわけか……ッだが、奏はどうなったんだ?」

 

「……捕まえた子供が居ったろ?彼が持っていたスパークレンスを持って来させろと命令で持って来させ彼女に使わせてしまった」

 

「てことはアイツは奏なのか?なぁ⁉︎村長そんな冗談つまんねぇ冗談はやめろ」

 

「事実じゃ、実際この目で彼女に闇がまとわりついてメルバの中に入って行ったと同時に、色を取り戻し胸部に青い石とそれの周りを囲うように銀色のカバーが出来た。その途端暴れ出し儀式をやっていた連中は生き埋め、離れていたとしても破片などで大怪我だ」

 

「何だよ、何だよそれは⁉︎」

 

「儂らにもわからん、ただ彼女に闇が集まって浮いた時スパークレンスが彼女から落ちて拾っておいた。もしかしたらこれで奏ちゃんを救えるかもしれん。あの牢屋にいる少年に届けてくれ、あの子なら……ってもう行ったのか。この老いぼれに出来ることはもう無いが無事を祈ろう」

 

side out

 

スパークを渡しロープで見張りを縛る。

 

「さっさと行くぞ」

 

「了解、と」

 

男と少年は牢屋から外に出て村がボロボロになっているのを目の当たりにする。

 

「……ちょっと寝てただけなんだがヤベェ」

「本当に大丈夫なんだな!」

 

「任せろ、としか言いようがないけど……やってやる!」

 

少年は赤い菱形の様なもの左右対称についた古代の空に掲げ叫ぶ。

 

「オルタァァァァァァ‼︎」

 

少年の周りが光り輝きその光の中から銀色の巨人、オルタナティブティガが立っていた。

オルタの青い両目から2本の白い光が出てメルバを照らす。

 

メルバはこちらに気づき走って向かってくるが光を当てるのをやめず何かを探す、2本の光がメルバのカラータイマーの奥に人影を見つける。

 

だがその際メルバは一切止まらず突き進んでくる、ケイゴが彼女を見つける頃にはゴルザより軽いとはいえ巨体を活かしたタックルをオルタの腹部に直撃する。

 

「グォアア‼︎」

 

さらに鎌のように薄く敵を斬り裂く為の鉤爪で体勢を崩したオルタの胸部を袈裟斬りする、胸部から光の粒子を飛び散らせながらタックルと斬撃によって後ろの方へ吹き飛ぶ。

 

『やばい、さっき迄のダメージが抜けない。身体が思う様に動かないし、彼女をどうにか気付けないで助けないと……ユザレッ』

 

『先程の、サーチ結果より彼女の生存確率。現在の貴方の使える手段では0.001%です。これ以上の戦闘行動により貴方の体に何かしらの後遺症が残る確率25%から上昇中。心苦しいですが彼女を切り捨て……』

 

『駄目だ‼︎俺はあの人に必ず助けるって約束したんだ。何よりあんな優しい子がこんな酷い目にあって助けないなんて光の巨人を受け継いたからとか関係なく男として恥ずかしい‼︎

助かる確率が低い?自分が後遺症に悩まされる?上等‼︎ウルトラマンはそんなことで諦めないし、光を継ぐ者として俺は諦めない‼︎』

 

『……分かりました、やはり貴方は光を継ぐ者なのですね。こちらも再演算します最後まで諦めないんですね?』

 

『あぁ!』とだけ返しケイゴは、オルタナティブティガは彼女を助ける為に立ち上がる。

メルバの斬撃を的確に腕を回し蹴りする事でずらし嘴の真下からアッパーを喰らわせる。

 

強烈なアッパーを食らったメルバはその衝撃で地面からに浮く、空手の蹴りの様に片脚で立ちもう片方の脚でメルバの胴体に強烈な蹴撃を与える。ゲェェェェンと痛みによって歪められた鳴き声と共に山の方へ背中から突っ込んだ。

 

オルタはメルバが落ちた所に走るがたどり着く前に立ち上がったメルバは背中の翼を広げ大空へ飛んでいく。

逃すまいとオルタも両足を踏み込んでメルバがいる大空へ飛び込んだ。

 

メルバは水を得た魚の様に空を飛び回るが、オルタは飛ぶことが出来ても熟練とは言い難い素人。

さらに怪我によって本来のスペックを上手く活かせないでいた。

最初はオルタがメルバを追う空中戦だったが、今はオルタが追われメルバが怪光線でオルタを狙う状況となった。

 

『ッ、前ゴルザの時以外オルタにはなってないし飛ぶ感覚が掴めない……ガァァ⁉︎』

 

グォアアと悲痛な声を上げてオルタの高度が下がる、メルバの怪光線がオルタの背中を捉え撃ち抜いた。このままトドメを刺そうとチャージするメルバの背中で四回の爆発が起こる。

 

ケェェェン⁉︎と何が起きたかわからないメルバは体を起こし飛行機の様に飛ぶのではなくヘリの様にホバリングを始める。

すると4機のジェット機が飛んでいる、この時代的には化石とも呼べるJ-20の小隊がメルバを攻撃したのである。

 

彼らが飛んできたのはレーダーに移った未確認飛行物体を確認するためでしか無かった。

だが最新機はエンジントラブルでスランブルできず、偶々近くの基地に化石とも呼べるJ-20が整備されておりスクランブル発進したのである。

 

怪獣であるメルバにとって旧世代のミサイルなど虫が刺すより弱く気をひく程度しかなかった。

 

兵士達は効いていないとわかると散開しそれぞれでメルバに攻撃を開始する。

幾ら弱くても常に嫌がらせをされたら腹が立つ、メルバは怪光線で周りを飛ぶハエを叩き落とそうとした。

国を守る為に命を捨てる事も構わない兵士達は回避行動を行い反撃のタイミングを待つ。

 

メルバは落ちないハエに怪光線を一旦止めオルタを探すが、怪光線を止めたせいで兵士達は持ってる残弾全てをメルバの顔面に集中させる。

幾ら弱いとはいえ顔面にミサイルの爆発や眼に銃弾が入れば怪獣といえど悶える。

 

ゲェェェェン⁉︎と一旦ホバリング以外の行動を止め顔面を抑える、その一瞬の隙を突いて真下からオルタがメルバの翼を斬り裂く。

左側の翼を捥がれたメルバは重力の楔に囚われ地に向かって落ちていく。

 

オルタはそのメルバの背中から抱きしめパイルドライバーの形でさらに急降下させる。

ドゴーンと爆発音の様な音共に銀と赤の線が地面にぶつかる。

土煙の中からオルタが出てきて構えるが、その目線の奥には頭から地面に突き刺さりどうにか抜けようと体を捻っているメルバがいた。

先程より力強さがなくなっている様な気がするが気を抜かずオルタは警戒を解かない。

 

地面から頭を抜きメルバが地団駄を踏む、地面が割れ踏んだ衝撃で飛んだ岩などが飛び散る。

ビコーンビコーンとメルバのカラータイマーが赤く点滅しながら音が鳴る。

 

『まずい、もし人に戻ったら怪我で追いかけるのがキツすぎる!』

 

メルバは急に鳴り出したカラータイマーに舌打ちをしたくなりながら敵の方を見る、先程からこちらを見るだけで特にしてこない。

相手はいつでも戦える様構えてはいる、だが攻めてくる気一切ない。

 

メルバはふと思い付いた、相手は自分では無くこのカラータイマーの中にいる子供を気にしているのでは無いかと。

今はあの子供と一体化していて倒せば一緒に爆散するだから相手は攻めあぐねていると気付きメルバはほくそ笑む。

 

『い、痛いよぉ、私何で大きくなってるのぉ』

 

『ッ⁉︎目が覚めたのか、よし動かないで。今必ず助ける』

 

メルバ引っかかったと思い『わ、わかった』と返すオルタがゆっくりと近付いてきて目の前までくる。

 

『今、助ける』

 

かかった‼︎と思いながら右腕を突き出す鋭い爪先はオルタの胸を貫き光の粒子を飛び散り出させる。

 

『グハァッ、あ”あ”ぁ”‼︎』

 

オルタのカラータイマーは激しく点滅をし傷口から光の粒子が溢れる。

勝った、己は宿敵を討ち取ったのだと雄叫びを上げるが、右腕が動かないことに気づく。

相手を見ると左腕を使って己の腕を砕かんとばかり掴んでいる。

 

『そう、くると思ってたさ、だからわざとお前の誘いに乗った。お前が、刺したんだ簡単には抜けないよッ‼︎』

 

ば、馬鹿な何でこんなことが出来る死ぬかもしれないんだぞ⁉︎己の命の方が重くないのか!

 

メルバは初めて恐怖した過去の大戦ですら命を惜しんで戦うのが当たり前だった故に一瞬止まるほどの衝撃だった。その一瞬でオルタは右手を手刀の形にして力を溜めメルバに突き刺す。

 

カラータイマーの真横に突き刺さった手は本物の刃物の様に貫きカラータイマーの奥の彼女まで届く。彼女を優しく掌に収め勢いよく引き抜く、と同時にメルバから赤黒い体液が飛び散る。

 

オルタは左足でメルバを蹴り距離を開けるが、それと同時にメルバの右手が離れてしまい胸からさらに大量の光を撒き散らす。

オルタはメルバからさらに離れ優しく握った手を地面に近づけ李 奏を地面に下ろす。

 

メルバを見ると体液を流しながら満身創痍でこちらを睨んでいるだが、こちらも負けずにオルタは睨み返す次がお互い最後の攻撃で決着をつくとわかった。

 

メルバは怪光線を全力で溜め、オルタは光線の構えをとる。お互い溜めが終わり同時に光線を放つ勝つ為に死に体の体からエネルギーを搾り出すだが、メルバの方が先に暴れていてエネルギーが切れた。

 

メルバの胸にゼペリオン光線が直撃しカラータイマーにヒビが入る、オルタはさらに絞り出してメルバを打ち倒そうとしてエネルギーを込める。

大量のエネルギーを受けたメルバは耐えきれず身体が弾け飛び破片は粒子の様に細かくなった。

 

全身が蜃気楼の様にぼやけたオルタは糸が切れた人形の様に崩れそうになるが、何とか膝をついて顔面から倒れることは防いだが限界であった。

ふと、奏を置いたところを見ると彼女の元には父親がいて元気そうに会話しているのが見えた。

 

彼女と父親がこちらに気付き「ありがとう」と言っているのが聞こえた。

それにオルタはグーサインで返し、大空へと飛び去っ



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