ハイスクールD×D〜転生して作る物語〜 (傘理)
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プロローグ

プロローグです。
うまく書けていませんが、暖かい目で見てください。


暗い闇の中、その男は森の中を逃げ続けていた。どうしてこんなことになったのだろうか、自問自答してみても答えは出ない。彼は堕天使中枢組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』にスパイとして潜入していた。自分の潜入は完璧だった。本来ならば、自分が手に入れた情報を組織に流し、今頃は任務報酬で酒でも飲んでいたはずだ。それがどういうわけか、潜入して2年。自分がスパイであるということが気づかれてしまった。

 

「ハァ・・・・ハァ・・・クソッ‼︎」

 

前だけを向いて全力疾走しているため後ろの様子は分からないが、恐らく追ってきているだろう。あの白い怪物(・・・・)が。最初は興味本位だった。スパイとして潜入する前、その噂を聞いた。

 

曰く、あらゆる攻撃はあの怪物に跳ね返される。

 

曰く、あの白い少年が触れたものが内部から弾け飛ぶのを見た。

 

曰く、腕を振るうだけで敵組織の構成員を誰1人殺さずに戦闘不能にした。

 

噂は他にもあるが、それを聞いた自分は所詮噂だと、全く信じていなかったのを今でも覚えている。だが、『神の子を見張る者(グリゴリ)』に潜入してしばらく経った頃、噂の少年が戦闘している所を偶然見ることができた。そして理解した。彼がその気になれば自分など雑草を引き抜く感覚で消されてしまうだろう。だから自分は彼に近づかないようにした。彼に近づかないようにしているのは自分だけではなかった。『神の子を見張る者(グリゴリ)』にいる殆どの人間が彼を避けていた。彼と普通に接触していたのは幹部クラスの者だけだろう。彼を避けている者の1人として、気づかれないように潜入していた。そして話は冒頭に戻る。

なぜ自分はこんなに死に物狂いで逃げているのだろう。

なぜ自分はあの白い怪物(・・・・)から逃げているのだろう。

何より、

どうして彼は会ったことも、話したこともない自分が敵のスパイだと見抜いたのだろう。だが、今はそれよりもここから逃げ延びる必要がある。男は木々の間を縫うように走り抜け、あの白い怪物の視界内に極力入らないようにする。自分が今何処を走っているかなんて分からない。

それでも、逃げ切れば選択肢は増える。ここで逃げ切れば帰れる。そう自分を鼓舞する。暗闇だった視界の中に一筋の光が差し込んだ気がした。気がしただけだった。

気がついたら吹っ飛ばされていた。

突然後ろから凄まじい風が吹き荒れ、周りの木々もろとも男の体が吹き飛ばされる。

 

「ガッ・・・・・・ア⁉︎」

 

地面を何度も転がってやっと止まる。起き上がろうとしても全身が痛み力が入らない。

 

「・・・・」

 

近くに落ちてる木を杖代わりにしてなんとか立ち上がった時には目の前に人がいた。

白を基調とした冬服を着込み、中性的な外見で赤い目に白い頭の怪物がそこに立っていた。

怪物は赤い目でギロリと男を睨む。

 

「文句はねェよな?」

 

ただ一言、それだけで男は自分が今置かれている状況を理解した。恐怖だけが滲み出してきて自然と涙が出てくる。身体中の震えが止まらない。それでも男はなんとか言葉を絞り出す。

 

「あ・・・‼︎ッ‼︎・・・ま、待ってくれ‼︎まだ情報は流していない‼︎組織に戻ってから渡す予定だったんだ‼︎コ、コピーしたデータを全部渡すから‼︎頼む‼︎見逃してくれ‼︎」

 

必死の命乞いをした。自分でも伝えられたかどうかなんて分からない。怪物はしばらく黙り。

そォか、と呟いた次の瞬間には男の体が地面に落ちた。自分の下半身が吹き飛んだのを自覚したのは白い怪物が足を振り上げて自分の頭に合わせているのが見えてからだ。

 

「な・・・・・ん・・・・で・・・?」

 

 

それだけ言った男に向けて足を振り下ろし頭を砕く。男の意識はそこで永遠に落ちた。

 

 

 

「命乞いが通用する程この世界は甘くできてねェンだよ」

 

頭を砕いた少年は手を首元に持っていき、そこにあるチョーカー型の電極を操作し、能力使用モードをOFFにする。そして自分の右手でグリップを握るような動作をすると、肘から下を覆う巨大な腕輪のようになったパーツから四本の脚のついた杖が伸びる。杖に体重を預けながらポケットを探り携帯を取り出し電話をかける。

 

「・・・・終わったぞ」

 

『おう、ご苦労さん。悪いな、いつもこんな仕事ばっかやらせちまってよ」

 

電話の向こうからは少し申し訳なさそうな声が聞こえてくる。少年は顔を変えることなく答える。

 

「気にすンな。今に始まったことじゃねェだろ。それより、これからどうすればイイ?」

 

『そうだな、もう仕事はないし自由にしてかまわねぇぞ?それとも、すぐに帰るか?」

 

少年は少し考えた後、

 

「・・・・とくにすることなンざねェ。帰って寝る」

 

それだけ言って少年は電話を切り、別のポケットから一枚の紙を取り出し何かを呟く。すると、彼の身体を光が包み込み、光が収まるとそこには何もなかった。

 

 

 

突然だが、神様転生というのをご存知だろうか?ありきたりな話では、神のミスで死んだ人間が特典という能力をもらい、別の世界に転生するといったことが多い。

さて、何が言いたいかというと、分かっている通り、先程の白い少年はこの物語の主人公であり、転生者でもある。だが、彼は転生前の記憶を全て消している。この理由はもう本人にも分からない。彼が唯一覚えているのは自分が神によって転生された人間だということだけだ。

さて、そんな彼が転生特典として何を選んだのかはここで言わなくても分かっているだろう。その力で彼はこの世界でどんな物語を作るのか、お暇があればこの少年の作る物語を見て頂きたい。

閑話休題

 

 

 

そろそろ物語の続きを始めようか。

幼い頃から化け物と罵られ、今となっても怪物と恐怖を抱かれる、そんな少年の、ちっぽけな物語。

 

 




あまりキツイ感想貰うと心に来るものがあるので、できればオブラートに包んでくれるとありがたいです。


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一話

難しいです。書くの。
コツとかあるんでしょうか。


堕天使中枢組織神の子を見張る者(グリゴリ)のある一室を眩いほどの光が包む。光が収まると、そこには白髪赤眼で上下共に白い冬服を着込み、杖をついた少年が立っていた。

 

「・・・・・」

 

少年は少し辺りを見回し、部屋から出て行く。通路に出て歩き出す。すれ違う奴らは少年に目線も合わさず避けるようにすれ違う。たまに挨拶をしてくる者もいるが、必要最低限の返事だけをし、少年は自室に歩いていく。

 

「ん?帰ってたのか、一方通行(アクセラレータ)

 

後ろのほうから話しかけられた。知っている声だったため、一方通行と呼ばれた少年は立ち止まり振り返る。

 

「・・・・ヴァーリか」

 

そこにいたのは銀髪碧眼の美少年が自分に向けて笑みを浮かべていた。

 

「相変わらずで何よりだよ」

 

ヴァーリと一方通行は並んで歩き出す。

 

「オマエも、相変わらず戦いばかりしてンだな」

 

ヴァーリはフッと笑いながら、

 

「勿論だ。戦いほど楽しいことはないよ」

 

一方通行は呆れたようにヴァーリを見る。

 

「別に否定する訳じゃねェけどよ、オマエ絶対早死にするぞ?」

 

「死ぬ時は誰かと戦って死にたいな。それも強いやつと」

 

ヴァーリはそこで更に好戦的な笑みを浮かべる。

 

「そう、例えばキミみたいな奴とかね」

 

「くっだらねェ。そンなに戦いてェンなら最近見つかった赤龍帝にでもケンカ売りにいけよ」

 

一方通行が言った赤龍帝というのは、神器(セイクリッド・ギア)と呼ばれる不思議な能力を持った人間の中でも、神滅具(ロンギヌス)と呼ばれる13種の神器のうちの、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)と呼ばれる神滅具を宿した人間のことである。それと対をなすのが、白龍皇と呼ばれる白龍皇の光翼《ディバイン・ディバイディング》という神器を宿した存在だ。この二つの神滅具を宿した者達は何代にも渡り、互いに争い合っている。

 

「生憎、今代の赤龍帝はまだ発展途上中でね。もう少し様子を見てからにするさ」

 

「確か、兵藤一誠だったか?」

 

「ああ、直に会うのはまだ先になりそうだ」

 

そして、2人は互いに話しながら歩き続ける。すると、一方通行の携帯が鳴る。取り出し電話に出る。

 

「なンだ?アザゼル」

 

『おう、度々すまんな一方通行。頼みたいことがあるんたけどよ、ヴァーリと一緒に俺の部屋まできてくれ」

 

アザゼルはそれだけ言って電話を切る。余程重要な要件らしい。一方通行は携帯をしまい、ヴァーリ方を見る。

 

「聞こえたか?」

 

「ああ、行くとしよう」

 

2人はそれだけを言い、アザゼルの元へ向かう。

 

「さァて、堕天使総督様は一体どンな要件なンだろォな」

 

「さあな、だが俺達を呼ぶぐらいだ。ろくなことじゃないのは確かだろう」

 

2人は互いに笑みを浮かべながらアザゼルの部屋に着く。ヴァーリがドアを開けて中に入ると、デスクに座り、豪華なローブを着ている堕天使総督アザゼルがこちらを見ていた。

 

「急に呼び出して悪いな。何分緊急事態なもんでよ」

 

「そンなことはわかってる。さっさと要件を話せ」

 

アザゼルは真剣な表情をし、ヴァーリと一方通行に話し出す。

 

「単刀直入に言うと先日、グリゴリの幹部コカビエルが教会からエクスカリバーを盗み出し、魔王の妹であるリアス・グレモリーが統治している駒王町に潜伏した」

 

一方通行とヴァーリは眉を寄せる。

 

「・・・・理由は?」

 

ヴァーリがアザゼルに問う。その問いに答えたのはアザゼルではなく一方通行だった。

 

「あの戦争狂のことだ、どォせリアス・グレモリーがいる町で暴れれば、兄の魔王サーゼクス・ルシファーが出てくる。そしてその妹のリアス・グレモリーを殺せば戦争が起こせるみたいな考えなンだろォよ」

 

吐き捨てるように一方通行は答える。アザゼルはその通りだと言わんばかりに首肯し、改めてヴァーリと一方通行を見る。

 

「天使、悪魔、堕天使の3大勢力が和平を結ぼうとしている今、戦争は絶対に避けなければならない。お前達には駒王町に行き、コカビエルを連れ戻してきて欲しい」

 

「面倒臭ェな。魔王の妹なンだからコカビエル程度軽くぶっ殺せンだろ」

 

一方通行の問いにアザゼルが首を横に振りながら答える。

 

「はっきり言って、無理だ。確かにリアス・グレモリーとその眷属悪魔達はあの年にしては強い方だろう。教会からも派遣されているエクスカリバー使いがいる。だが、コカビエルには敵わないだろうな。お前らにとってはコカビエル程度で済む話だが、古の大戦を生き残った彼奴は間違いなく強者だ。増援に魔王を呼んだとしても、到着する前に殺されているのがオチだろうな」

 

黙って聞いていたヴァーリは口を開き確認をする。

 

「つまり俺達は駒王町に行き、リアス・グレモリーとその眷属悪魔達が交戦している所に向かい、コカビエルを回収して来ればいいんだな?」

 

ヴァーリがそう言うと、アザゼルは首を振り首肯する。

 

「そんなわけで、今から行ってきてくれ。それと、ついでにコカビエルについているはぐれエクソシストのフリード・セルゼンにも聞きたいことがある」

 

「チッ面倒臭ェ。先に行け、ヴァーリ。俺は少しやることがある。別にお前1人でも問題ねェだろ」

 

一方通行は面倒臭そうに顔をしかめ、部屋から出て行く。そして、ヴァーリも少しアザゼルと話した後、自身も部屋から出て駒王町に向かう準備を始める。

 

 

 

 

アザゼルの部屋から出た一方通行は携帯を取り出し、何処かえとかける。数秒のコールの後、ガチャリという音がする。どうやら出たようだ。

 

『もしもし、一方通行?何の用?』

 

向こうから聞こえてきたのは女の声だ。と言っても別に深い関係があるわけでもない。一方通行は単刀直入に要件を話す。

 

「情報が欲しい。リアス・グレモリーの眷属悪魔だ」

 

『・・・えらく急ね。まあ、細かい事情は聞かないことにするわ。えーと、少し待ってね、すぐ探すから」

 

電話の向こうではガサゴソという紙をめくったり引っ張り出している音が聞こえる。1分程待つと再び声が聞こえてくる。

 

『ごめんね、慌ただしくて、えーと、グレモリー眷属のことよね?まずは女王の姫島朱乃。堕天使バラキエルの娘ね。彼女のことは貴方も知っているでしょ?』

 

「あァ、詳しくは聞いてねェがな」

 

『彼女はバラキエルを恨んでいるようね」

 

「他人の事情だ。俺にできることなンざ何もねェよ」

 

「そうかしら?貴方でも出来ることもあると思うわよ。・・・あの時、私を暗闇の底から助けてくれたように・・・・」

 

「あァ?なンか言ったか?」

 

『なんでもないわよ・・・次は騎士、木場裕斗。聖剣計画の生き残りで神器は魔剣創造(ソードバース)

 

「聖剣計画?」

 

聞きなれない単語に一方通行は眉を寄せる。

 

『聖剣計画っていうのは教会関係者が人工的にエクスカリバーを使える者を生み出そうとした計画のことよ。でも被験者は全員聖剣に適応できなかった。だから教会は被験者を全員処分したの。でも木場裕斗はその中で唯一の生き残り。多分エクスカリバーに対しての憎しみは相当の物ね』

 

「その計画の責任者は?」

 

『バルパー・ガリレイ。皆殺しの大司教と呼ばれた男よ。』

 

「アイツか・・・」

 

その名は聞いたことがある。自分の目的の為なら手段を選ばない男だ。コカビエルと一緒にいたという情報があったため、恐らくバルパーもエクスカリバー強奪に関与しているのだろう。

 

『次は戦車、塔城小猫。彼女は人間からの転生悪魔じゃなくて猫の妖怪。猫又からの転生悪魔ね。でもあることから猫又の力を使うのを怖がっているみたい。ちなみに、彼女の本名は白音。どこかで聞いたことない?』

 

(白音・・・・?あのはぐれ悪魔の確か・・・黒歌って奴がそンなこと言ってなかったか・・・?)

 

確かそうだ。恐らくあの黒猫の妹だろう。色々あって昔、黒歌という猫又のはぐれ悪魔を助けた際に、そんな話をした覚えがある。

だが、今はそんなこと関係ない。

 

「まァイイ。次だ」

 

『はいはい、えーと、次は僧侶。アーシア・アルジェント。元シスターで・・・へぇ。治癒系の神器所有者だそうよ。かなりレアね・・・あと、もう一人僧侶がいるわ。名前はギャスパー・ヴラディ。これに関してはあまり情報が少ないわね・・・神器は停止世界の邪眼。これまたレアな神器保有者ね』

 

「ヴラディってのは確か吸血鬼の名門だったな・・・それに神器保有者ってことはハーフか。吸血鬼ってのは純血重視する種族だ。大方、家を追い出されて逃げていた所をリアス・グレモリーに助けられたってとこじゃねェのか?」

 

『そこまでなら私でも分かるわよ。だけど、それだけじゃない、ギャスパー・ヴラディには他にも秘密が隠されている・・・』

 

「・・・それも何処かの情報か?」

 

『いいえ、女の勘よ』

 

「・・・・・」

 

一方通行は黙ってしまった。

 

『・・・次よ。兵士は1人、ああ、これは貴方も知ってるんじゃない?』

 

「赤龍帝、兵藤一誠か」

 

『ええ、それにしても今代の赤龍帝は弱すぎない?魔法陣で転移しようとしても魔力が足りないのよ?悪魔なら子供でもできるっていうのに』

 

「ヴァーリはこれからに期待するとか言ってたがな」

 

『望み薄ね・・・。後、彼は相当な変態みたいよ。彼が通っている駒王学園でも女子から嫌われてるらしいし』

 

「・・・同情するぜ・・・ヴァーリに」

 

『本当にね・・・・さて、これでざっくりとした眷属の情報は以上よ。更に詳しく聞きたなら連絡して頂戴』

 

「悪ィな」

 

『いいのよ。貴方には仮があるし・・・』

 

「そォか。何かあったら連絡する。じゃあな」

それだけ言って一方通行は電話を切る。これで大体のことは掴めた。一方通行は再び紙を一枚取り出し、何かを呟く。光が彼を包み込み彼を戦場へと運ぶ。

 

 

 

 

 

場所は駒王町。駒王学園。ここでは現在、コカビエルとリアス・グレモリーの眷属悪魔。そして教会から派遣されたエクスカリバー使いのゼノヴィアという人間が死闘を繰り広げていた。

一方通行の予想通り、コカビエルはリアス・グレモリーの根城である駒王学園を中心として暴れ、再び戦争を起こす予定だった。

リアス・グレモリーの眷属である兵藤一誠、塔城子猫、そして駒王学園の生徒会長。支取蒼那こと、もう一人の魔王の妹。ソーナ・シトリー。彼女の眷属である匙元士郎と共に、教会から派遣されたゼノヴィアともう一人、兵藤一誠の幼馴染でもある紫藤イリナらにエクスカリバー回収に協力したいと申し出た。彼女らは最悪エクスカリバーの核さえあれば問題無い為、ドラゴンの力を借りるということで協力を受け入れた。そして、エクスカリバーに強い憎しみを抱いている木場裕斗と共にエクスカリバー破壊として行動し始めた。

その結果、紫藤イリナがコカビエルによりエクスカリバーを奪われ、戦闘不能に陥る。盗まれたエクスカリバーはこれで4本。コカビエルに協力しているバルパー・ガリレイはこの4本のエクスカリバーを一つにし、フリードに渡した。さらに4本のエクスカリバーが一つになったことで術式が発動し、駒王町が崩壊の危機に瀕している。解除する為にはコカビエルを倒すしかない。木場裕斗はフリードと戦い、自分の持つ神器。魔剣創造を禁手という神器の覚醒状態へと昇華させる。

そしてその力。双魔の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)。によってフリードを倒すことに成功する。その際に、バルパー・ガリレイは聖と魔が融合したことによって古の大戦で魔王だけでなく神も死んだことに気づく。

だが、コカビエルはバルパーを最初から捨て駒と割り切っていた。コカビエルはバルパーを殺し、その場にいる全員に聖書の神は死んだことを告げる。

元シスターであるアーシア、教会のゼノヴィアはその場に崩れ落ち心が挫けそうになる。

 

「俺は1人でも戦争を始める、これを機に!お前達の首を土産に!我ら堕天使こそが最強だと魔王サーゼクスにも、ミカエルにも見せ付けてやる‼︎」

 

だが、赤龍帝。兵藤一誠はそんなことでは挫けない。

彼は立ち上がり、コカビエルへと立ち向かう。

 

「ふざけんな‼︎お前の勝手な言い分で俺の町を、俺の仲間を、部長を、アーシアを殺されてたまるか‼︎俺はハーレム王になるんだぜ‼︎こんな所で死んでたまるか‼︎」

 

理由はどうであれ、彼の力が。兵藤一誠の。赤龍帝の力が湧き上がる。赤龍帝の力は持ち主の力を十秒ごとに倍加させる。

コカビエルは目をひくつかさせながら尋ねる。

 

「・・・なんだ・・・お前は何者だ?」

 

一誠は胸を張って堂々と答える。

 

「俺はリアス・グレモリー様の兵士‼︎兵藤一誠だ‼︎覚えとけ‼︎コカビエル!俺はエロと熱血で生きる赤龍帝だ‼︎」

 

先程までの絶望感が嘘のように吹き飛ぶ。全員の目に光が戻り、再び闘志が湧き上がる。全員の気持ちが一つになった。その時。

 

 

 

 

「ふふふ、面白いな」

 




一誠ってエロくなければかなりイケメンですよね。
どうしてああなったのでしょうか?


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二話

「ふふふ、面白いな」

 

空から声が聞こえてきた。駒王学園にいる全員はすぐに空を見上げ何者かを探る。

木場祐斗はそれを見つける。そして気付いた。

全身を駆け巡る緊張感と体の底から湧き上がる恐怖に。

それは空から降ってくる。シトリー眷属によって駒王学園全体に貼られた結界をいともたやすく破って。

最初に見えたのは白い閃光だった。闇の世界を切り裂いて凄まじい速度で地面へと降下してくる。地響きと共にクレーターが生まる筈だが、白い閃光は地面スレスレで止まる。

全身を白い鎧によって包まれたものがそこにいた。

体の各所に宝玉が埋め込まれ、背中から八枚の光の翼が闇夜を切り裂き、神々しいまでの輝きを発している。

その姿はかつて、兵藤一誠が自分の左腕を対価にしてなった姿。赤 龍 帝 の 鎧(ブーステッドギアスケイルメイル)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)禁 手(バランスブレイカー)状態にそっくりだった。

 

『白い龍』(バニシング・ドラゴン)

 

コカビエルがその名を呟く。

やはりそうだ。二天龍の片割れ。赤龍帝『赤い龍』(ウェルシュ・ドラゴン)と対をなす者。白龍皇。

その存在が今、目の前にいる。

 

「鎧となっているということは禁 手(バランスブレイカー)状態。白 龍 皇 の 鎧(ディバインディバイディングスケイルメイル)という訳か・・・赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)同様、忌々しい限りだ」

 

コカビエルは舌打ちをし、吐き捨てるように言う。

 

「・・・赤に惹かれたか。白龍皇。邪魔だてはーー⁉︎」

 

気づいた時にはコカビエルの黒き翼が鮮血を撒き散らし宙を舞う。

 

「まるでカラスの羽だ。アザゼルの羽はもっと薄暗く、常闇のようだったぞ?」

 

木場だけではない。その場にいる全員が彼がいつ動いたのか気づかなかった。

 

「き・・・貴様ぁぁ‼︎俺の羽を‼︎」

 

コカビエルは怒り狂い空に無数の光の槍を出現させる。

だが白龍皇は小さく笑い、ハッキリと口にする。

 

「我が名はアルビオン」

『Divide!』

 

鎧から音声が聞こえ、コカビエルが展開していた光の槍の半数以上が霧散した。

 

「我が神 器(セイクリッドギア)白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)の能力の一つ。触れたものの力を十秒ごとに半分にさせていく。お前の力は我が糧となる。さあ、いつまで持つ?早く倒さなければそのうち人間にも勝てなくなるぞ?」

 

伝説の通りだ。

赤龍帝は自らの力を倍加し、他人に譲渡する。

白龍皇は相手の力を奪い、自らの糧とする。

コカビエルは残りの翼を羽ばたかせ、空中にいる白龍皇へ立ち向かう。だが、白龍皇は捉えきれない速度でコカビエルを翻弄する。

 

『Divide!』

 

「おのれ‼︎」

 

コカビエルは光の槍と剣を両手に持ち、白龍皇へ攻撃を仕掛けるが、白龍皇が腕を横に振るうだけで槍と剣は消失する。それだけではない。再び十秒が経ち、コカビエルの力が更に半分になっていく。

 

『Divide!』

 

もはやコカビエルの動きは誰の目にも止まるほどに落ちていた。白龍皇が嘆息する。

 

「もはや中級堕天使クラスまで落ちたか。つまらないな。もう少し楽しめると思ったんだが・・・終わらせるか」

 

フッ。と白龍皇が消え去り、再び現れた時にはコカビエルの腹に拳を突き立てていた。

ドゴッ!

体がくの字に曲がり、コカビエルが地面に落ちる。

吐瀉物を撒き散らし立ち上がることができない。

白龍皇を睨みつけ何かを言おうとした瞬間、

 

この場にいる誰でもない声が聞こえてきた。

 

 

「あァ?結局終わっちまってるじゃねェか」

 

 

突然だった。

倒れているコカビエルの横に空から音もなく降り立つ白髪赤眼の白い服を着た少年。年はそれほど離れていないだろう。

 

「・・・き・・・貴様は・・・一方通行(アクセラレータ)・・・⁉︎」

 

「一方通行ですって⁉︎」

 

「一方通行だと⁉︎あいつが⁉︎」

 

コカビエルが呟いた少年の名前にリアスとゼノヴィアが驚愕をあらわにする。

 

「一方通行・・?誰ですか?それ」

 

一誠やアーシアは彼が誰なのかはわかっていない。

リアスだけではないその場にいる白龍皇、一誠やアーシアを除いた全員が衝撃を受ける。

 

「一方通行・・・彼はグリゴリの中でも白龍皇以上の強さを持っていると言われている人間だよ、イッセー君」

 

「教会の間でもその名前は有名だった。噂によれば、教会の者が50人程エクソシストを引き連れ彼を殺そうとした話があるが、そのエクソシスト全員が2度と帰って来なかったらしい」

 

「なッ・・・・・⁉︎」

 

木場とゼノヴィアが一誠に説明し、一誠は絶句する。

一方通行は首元に手をやり、右手についている巨大な腕輪のような部分から杖を出して白龍皇の方を見上げる。

 

「ハァ、やっぱ来なくてもよかったかもなァ」

 

白龍皇は地面に降り立つ。

 

「コカビエルの方は俺がやろう。キミはフリードの方を頼む」

 

「チッ、面倒くせェなァ」

 

一方通行は舌打ちをしながら倒れているフリードの方へ歩いていく。

それを見た白龍皇はコカビエルを抱えようとした瞬間。

 

「ふ・・・ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!!俺が‼︎この俺が負ける訳がないんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

叫び散らしながらコカビエルは立ち上がり、背を向けている一方通行の方へ向けて光の槍を放つ。白龍皇によって力が落とされているが、それでも致命傷を負わせられるだけの威力はある。

一方通行の方へ向かう槍。すると一方通行は再び首元にあるチョーカーのような物に手を伸ばす。

その瞬間、光の槍が一方通行に当たる。

そして血を吐く声がする。だが、それは一方通行では無い。

コカビエルだ。

 

「ゴフッ‼︎・・・・・・ば、馬鹿・・・・な・・・」

 

一方通行に当たった筈の光の槍はコカビエルの腹に刺さっていた。

コカビエルはそのまま地に崩れ落ち、動かなくなる。

 

「あン?殺しちまったか?・・・まァ、いいか」

 

一方通行はなんでもないことのように言い、再びフリードの方へ向かい、白龍皇は溜息を吐きながらコカビエルを肩に担ぐ。一方通行はフリードを担ぎ上げるとポケットから紙のような物を一枚取り出す。

 

「ンじゃ、先に帰ってるからな」

 

そう白龍皇に言った後、小さく何かを呟き彼の身体を光が包み込み消える。恐らく転送されたのだろう。

 

白龍皇は光の翼を展開し、空へ飛び立とうとした。

 

『無視か、白いの』

 

一誠の左腕にある赤い籠手が光だし声を発する。

 

『起きていたか、赤いの』

 

白龍皇の鎧についている宝玉も白く光る。

赤龍帝と白龍皇。

2人の中にいるドラゴンが会話を始めたのだ。

 

『せっかく出会ったのにこの状況ではな』

 

『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういうこともある』

 

『しかし白いの、以前のような敵意が伝わってこないが?」

 

『それはそちらも同じだろう?』

 

『お互い、戦い以外の興味対象があるということか』

 

『そういうことだ。こちらはしばらく独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くないだろう?また会おう、ドライグ』

 

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』

 

お互いにそれだけを伝え、光が消える。だが、一誠は納得できていないかのように前へ出る。

 

「おい!どういうことだ⁉︎お前とさっきの一方通行ってのは何者で、何をやってんだよ⁉︎」

 

白龍皇は浮かび上がり一言だけ残す。

 

「全てを知りたければ強くなることだ。また会おう、俺の宿敵くん」

 

一瞬で白い閃光となり飛び立っていく。残された全員があまりの出来事に言葉を失っている。

コカビエルの展開していた破壊の魔法陣はいつの間にか消滅していた。 終わったのだ。戦いが。

木場は暫く呆然としていた。

すると木場の頭を叩く物がいる。何かと思い振り返れば一誠がいた。

 

「やったじゃねぇか、色男!へー、それが聖魔剣か。白と黒が混じっててキレイなもんだなぁ」

 

興味深そうに一誠は聖魔剣を見る。

 

「イッセー君、僕は」

 

「ま、いまは細かいのは言いっこ無しだ。とりあえず、いったん終了ってことでいいだろう?聖剣もさ、お前の仲間のことも」

 

「うん」

 

心が感謝の気持ちでいっぱいになる。復讐にとりつかれていた自分の為に、彼は本当に色々と考えて動いてくれた。

 

「・・・木場さん、また一緒に部活できますよね?」

 

アーシアが不安そうに木場に問いかける。神の存在を否定され、心中はショックの筈なのに、彼女は木場の心配をしていた。大丈夫。そう答えようとした時、

 

「祐斗」

 

リアスが笑顔で木場の名前を呼んだ。

 

「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。それに禁手だなんて、私も誇れるわよ」

 

「・・・部長、僕は・・・部員の皆に・・・何よりも、一度命を救ってくれたあなたを裏切るような真似をしてしまいました・・・。お詫びする言葉が見つかりません・・・」

 

リアスの手が木場に伸び、彼の頬を優しく撫でる。

 

「でも、あなたは帰ってきてくれた。もう、それだけで十分。彼らの想いを無駄にしてはダメよ」

 

「部長・・・僕はここに改めて誓います。僕、木場祐斗はリアス・グレモリーの眷属、『騎士』として、あなたと仲間達を終生お守りします」

 

「うふふ、ありがとう。でも、それをイッセーの前で言ってはだめよ?」

 

一誠の方を向けば、彼は嫉妬の眼差しで木場を睨んでいた。

 

「俺だって騎士になって部長を守りたかったんだぞ!でも、お前以外に騎士を務まる奴がいないんだよ!責任持って、任務を完遂しろ!」

 

照れ臭そうに一誠は言う。

 

「うん、わかっているよ、イッセー君」

 

「さて」

 

ブゥゥゥゥン。

木場の全身から冷や汗が出てくる。恐る恐る音のする方を見てみると、ニッコリ微笑んでいるリアスの手が紅いオーラに包まれていた。

 

「祐斗、勝手なことをした罰よ。お尻叩き千回ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今帰ったぞ。アザゼル」

 

白龍皇。ヴァーリはコカビエルを捕らえ引き渡したのち、

神の子を見張る者グリゴリのアザゼルの部屋にいた。

 

「おう、お疲れ。で?どうだったよ。赤龍帝殿は?」

 

アザゼルに聞かれたヴァーリは楽しそうに笑いながら答える。

 

「今はまだ弱いね。恐らく禁 手(バランスブレイカー)にならなくても倒せるだろう。だが、実に面白い赤龍帝だったよ」

 

「そうか、それなら俺も会ってみたいもんだ。今代の赤龍帝に・・・お、そうだ。いいことを考えたぞ?」

 

アザゼルは悪戯を思いついた子供のような笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

一方通行はフリードを引き渡した後、アザゼルの部屋には行かず、自室で電話をしていた。

 

『ふーん、じゃあコカビエルは死んだの?』

 

「いいや、ギリギリ息があったらしい。まァどォでもいいが」

 

電話の相手は先程グレモリー眷属の情報をくれた人物だ。

 

『え?身体貫かれたのにまだ息があったの?まさにゴキブリ並みの生命力ね・・・で?コカビエルはどうしたの?』

 

「さァな。今度軍法会議で決定するらしい。まァ、2度と光を見ることはねェと思うがな」

 

『ふーん、ま、どうでもいいけど。それより、私が教えたグレモリー眷属の情報、役に立ったの?』

 

「・・・ああ、まァな」

 

口ではそう言っているが、グレモリー眷属と特に何かあった訳でもないので、ぶっちゃけあまり役立っていなかった。

 

『(今少し言葉に詰まったわね)・・・まあいいわ。それじゃ、そろそろ私も仕事があるから切るわね』

 

「あァ、じゃあな。メリア」

 

『ええ、またね。一方通行』

 

メリアと呼んだ女性と通話を終えた一方通行は自室にあるベッドに寝転がる。

 

(そォいや、あの時の視線はなンだったンだ?)

 

一方通行が駒王学園に降り立った時、あの場にいる全員以外の視線を確かに感じた。今代の赤龍帝を探りに来たのか、別の目的なのか・・・

ここで考えてもしょうがないと判断した一方通行は目をつぶりそのまま眠りに入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白龍皇の勧誘には成功したか?」

 

「ああ、問題は無い。一方通行はすぐに転移してしまったから接触できなかったがな」

 

「どうせ監視していたことには気付いていたのだろうな」

 

「どうする?」

 

「白龍皇だけでもこちらに引き込めたのは大きな収穫だろう」

 

「だが今の・・一方通行はあの頃と違う。仮に接触できたとしても返り討ちにされるだろう」

 

「赤龍帝はどうだ?」

 

「ガードが硬い。魔王の妹の眷属だぞ?」

 

「それに弱い。引き込めたとしても戦力になるまで時間がかかるだろう」

 

「・・・その辺にしておけ。そろそろ本題に入ろうじゃないか」

 

「本題?」

 

「前に話しただろう。3代勢力のトップ会談についてだ・・・」

 




主人公の活躍の場はちゃんと作ります・・・!
頑張ります・・・!


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三話

コカビエル襲撃事件から数日後、一方通行(アクセラレータ)は駒王町に来ていた。

目的は二つ。

近々開かれる3代勢力のトップ会談場。駒王学園の視察。

そして今日の朝、アザゼルに貰った一方通行の歩行補助機能を追加したチョーカーのテストだ。

一方通行は数年前、ある事件で脳に大きなダメージを負ってしまった。その際。理由は不明だがどんな治癒魔法をかけても治らなかったのだ。そのため、一方通行はアザゼルに貰ったチョーカー型電極から脳に流れる特殊な電流で日常生活の補助をしている。普段は杖をついて歩行補助をしているが、昨日アザゼルによる一ヶ月に一度のメンテナンスがあり、そこでアザゼルは「折角電極の調整をするんならこの際歩行補助機能もつけちゃおうぜ」、などと言い始めた。最初は拒否していたが、アザゼルの熱意に押され渋々承諾した一方通行だったが、まさか一日で終わらせてしまうとは思わなかった。そのため、会談場の視察もかねて電極のテストをしているのだ。

 

そして現在、一方通行は非常に面倒な状況になっている。

 

「おい、シカトしてんじゃねぇぞコラァ‼︎」

 

「女の子助けて善人気取りですかぁ?かっこいいですねぇ?」

 

「面倒くせェなァ・・・・」

 

時は少々遡り、

こんな暑い日は太陽の下を歩きたくない為、日陰が多い路地裏を歩いていた一方通行は主人公特有の「ナンパされて困っている女の子に遭遇!」的なラブコメイベント(本人は全く自覚していないが)発生中なのだ。

ことの成り行きは、

路地裏を歩いていた一方通行。

ナンパされて困っている少女を発見。

面倒臭いことになる前に引き返そう。

そこまで考えて後ろを向こうとしたら不良(笑)と目が合う。

なんじゃてめぇこらぁいてまうぞおらぁ

少女がこっちに走って来て背中に隠れてしまう。

不良(笑)A、B。一方通行が少女を助けに来たと勝手に解

釈。

不良(笑)「シカトしてんじゃねぇ」少女「(期待の眼差し)」

一方通行(面倒臭い)

 

 

別に一方通行は少女を助けようとしている訳ではないが、このまま少女を見捨てるというのは流石に後味が悪い。と言うわけでまずは平和的に解決する為、話し合いというコマンドを選択してみる。相手は男だが。

 

 

「見逃せ」

 

「何様だてめぇ‼︎」

 

「ケンカ売ってんのかゴラァ‼︎」

 

話し合いとは何なのだろうか。

 

 

 

 

 

(あーもー最悪・・・)

 

目の前にはニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべている2人の世間一般でよく言う不良という存在がいる。

 

「なあ、俺達ちょーっと暇してんだよねぇ、変な事しないからさ、暇潰しに付き合ってくんね?」

 

チェーンをジャラジャラと鳴らしながら金髪のガタイのいい男が話しかけてくる。

気持ち悪い。

 

「キミ外人さん?綺麗な顔してるねぇ、モデルか何かやってんの?」

 

次はピアスを大量に付けた細身の男が話しかけてくる。

ああ、気持ち悪い。

 

(はぁ、こんなことなら近道して路地裏なんか通るんじゃなかった・・・)

 

今までもナンパなんて数え切れない程されている。基本的にはその度に相手をぶっ飛ばして(・・・・・・)いるが、ここは日本。自国以外では一番好きな国で、あまり揉め事を起こしたくはない。

どうしようかと考えている時、

 

「あ?おい、てめぇ何見てんだよ?」

 

「ああ?」

 

不良の1人が横を向いてドスの効いた声を出す。それにつられもう1人の方もそちらを見る。

何事かと視線を向けると、白い髪に赤い目。首元にチョーカーのような物を付けた上下とも白い服の目つきの悪い少年が立っていた。

少年は面倒臭い事になった、と言いたげな顔をしている。

少女はできるだけ困っている感じの顔をして少年の背中に隠れる。気のせいか、少年に睨まれた気がした。

 

(この際この人でいいや、頼むぞ〜男の子、このか弱いな少女を助けておくれ!)

 

なんかめちゃくちゃ失礼なことを考えているが、か弱い少女は恐らくナンパしてくる男達をぶっ飛ばしたりはしない。そんなツッコミを受けたような気がした。

 

「おい、シカトしてんじゃねぇぞコラァ‼︎」

 

「女の子助けて善人気取りですかぁ?かっこいいですねぇ?」

 

不良達が近づいて少年の目の前に来る。とても近い。少年の顔をジロジロ見ている。すると、そこで少年が始めて口を開いた。

 

「見逃せ」

 

「何様だてめぇ‼︎」

 

「ケンカ売ってんのかゴラァ‼︎」

 

ごもっともである。

不良達がブチ切れる。ガタイのいい方の不良が少年に殴りかかってくる。思わず目を瞑るが、殴られたような音は聞こえてこない。それどころか、

 

(今、パシッて鳴らなかった?)

 

恐る恐る目を開くと少年が不良の右拳を左手で受け止めていた。

 

「ハァ。どォしてこう、面倒な事に遭遇しちまうンだァ?」

 

ドガッ‼︎

拳を受け止めた少年はそのまま右拳を不良の顔面に叩きつける。不良はそのまま数メートル吹っ飛び動かなくなる。細身の方は何が起こったのか理解するのに数秒かかり、我に返ると怯えながら後ずさりを始める。

 

「失せろ」

 

少年がそう言うと男は倒れている大男を細い体で必死に担ぎ、全力で逃げ出していく。少女は呆然としていた。彼女が再起動したのはそれから数分後のことだった。

 

「ハッ‼︎あれ⁉︎あの人は?」

 

気付いた時には少年は居らず、静かな路地裏に1人残されていた。

 

「うーん、また会えるか分からないけど、次会えたらちゃんとお礼しなきゃね!」

 

そう言って少女は歩いていく。あの白い少年とは意外な形で再会することになるとは思いもせずに。

 

 

 

 

 

「なにしてンだ?ヴァーリ」

 

少女救出ミッションを完遂した一方通行は駒王学園に着き、そこで知人に遭遇した。

 

「一方通行、奇遇だな。会場の下見かい?」

 

銀髪の青年、ヴァーリは駒王学園の校舎を見上げていた。

 

「まァな。そォいうオマエは「ああ‼︎お前‼︎」あァ?」

 

突然驚いたような声が一方通行の言葉を遮る。

そちらを向くと信じられないような物を見る目でこちらを指差す男子高校生がいた。

 

「お、お、お前‼︎なんでここに⁉︎」

 

なにやら自分の事を知っているようだが、生憎記憶に無い。

 

「あァ?誰だオマエ」

 

「赤龍帝だよ、一方通行」

 

「赤龍帝・・・?ああ、そォいやコカビエルの時にいたな、オマエ」

 

ヴァーリに言われてようやく気づく。するとヴァーリが赤龍帝に話しかける。

 

「俺はヴァーリ。白龍皇。『白い龍』(バニシングドラゴン)だ」

 

あまりの展開に赤龍帝は言葉を失っている。

 

「え・・・・・・は?」

 

「ここで会うのは二度目か、『赤い龍』(ウェルシュ・ドラゴン)。赤龍帝、兵藤一誠」

 

しばらく呆然としていた一誠は我に返ると、とっさに身構える。

 

「遅ェよ」

 

警戒するまでの時間が長すぎる。

それでは一瞬で殺される。と一方通行は思う。

するとヴァーリは不敵な笑みを浮かべ、

 

「そうだな。例えば、俺がここで兵藤一誠に魔術的な物をかけたり」

 

と言って一誠の鼻先に手を伸ばした時

 

ザッ!

 

突然ヴァーリと一方通行の首元にそれぞれ刀が添えられる。今度は思い出せた。聖魔剣の木場とデュランダルのゼノヴィアだ。ゼノヴィアの方からは悪魔の気配がする。転生してリアス・グレモリーの眷属になったのだろう。

 

「何をするつもりか分からないけど、冗談が過ぎるんじゃないかな?」

 

「ここで赤龍帝との決戦を始めされる訳にはいかないな、白龍皇。そして一方通行。お前も妙な真似はするなよ」

 

木場とゼノヴィアのドスの効いた声が響く。だがこの程度では全く動じない。

 

「やめておいた方がいい、手が震えているじゃないか」

 

ヴァーリの言うとおり、二人の手元は震えていた。

 

「つゥか、コカビエル程度にあれだけボロボロにされてンだ。俺らに勝てると思ってンのか?」

 

事実、あの場ではヴァーリがコカビエルを圧倒していたが、それぐらいなら一方通行でも出来る。

 

「兵藤一誠、キミはこの世界で自分が何番目に強いと思う?」

 

突然一誠にヴァーリが問いかける。赤龍帝の力は異常だと言われている。だが兵藤一誠はまだ未熟過ぎる。一誠は返答に困っている。

 

「未完成の禁 手(バランスブレイカー)としたキミは、上から四桁。千から千五百の間ぐらいだ」

 

「コイツのスペック的にはもっと下じゃねェのか?」

 

一誠は怪訝な表情をする。何が言いたいのかわかっていないようだ。

 

「この世界は強い物が多い、『紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)』と呼ばれるサーゼクス・ルシファーでさえ、トップ10内には入らない」

 

ヴァーリは指を一本立て話を続ける。

 

「だが、一位は決まっている。不動の存在が」

 

「・・・?誰のことだ?自分だとでも言うのかよ?」

 

ヴァーリは肩をすくめる。

 

「いずれわかる。ただ俺じゃない、一方通行でもないけどね。

ーー兵藤一誠は貴重な存在だ。十分に育てたほうがいい、リアス・グレモリー」

 

ヴァーリが視線を一誠の後ろの方へ向けると、リアス・グレモリーとその眷属。アーシア・アルジェント、姫島朱乃、塔城子猫が立っていた。朱乃と子猫は臨戦態勢だ。

 

「白龍皇、そして一方通行。何のつもりかしら?あなた達が堕天使とと繋がりを持っているのなら、必要以上の接触はーー」

 

「二天龍と称されたドラゴン。『赤い龍』(ウェルシュ・ドラゴン)『白い龍』(バニシングドラゴン)。過去、関わった者はろくな生き方をしていない。

あなたはどうなるんだろうな?」

 

「・・・ッ‼︎」

 

リアスは言葉を詰まらせ、一誠が心配そうにリアスを見る。

 

「今日は別に戦いに来たわけじゃない。ちょっと先日訪れた学舎を見てみたかっただけだ。アザゼルの付き添いで来日していてね、一方通行と会ったのは本当に偶然さ。

それに、俺もやることが多いからさ」

 

「なンだよ、アザゼルの野郎ォ来てンじゃねェか。下見をしてこいって言ったのはアイツだろォがよ・・・」

 

一方通行は不満を口にしながら学園を後にする。それに続き、ヴァーリも踵を返し歩いていく。リアス達、グレモリー眷属はしばらくその場を動くことが出来なかった。

 




一方通行の電極については出来るんじゃないかな的な考えで付けました。
間違ってたら申し訳ありません。ご都合主義ってことで。


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四話

「ンで?何の用だ」

 

一方通行は暗闇の中へ問いかける。

 

「やっぱ、バレてたか・・・」

 

出て来たのは危険なオーラを出している槍を持った男だ。

 

「いつから気づいていたんだい?」

 

「駒王学園を出た時からだ」

 

睨みながら答える。

 

「オマエは誰だ」

 

気は緩めない。男は特に構えていないが隙が無い。

 

「初めまして、曹操という」

 

「勧誘か?」

 

三国志で有名な曹操を名乗っているということはアザゼルが言っていた『禍の団』(カオスブリゲード)の英雄派とやらだろう。

 

「話が早くて助かる。一方通行、英雄派に加わってくれないか?」

 

「断る」

 

一方通行は即答した。曹操は目を細める。

 

「理由を聞いても?」

 

「聞く必要があンのか。さっきから俺を取り囲んでる視線からして最初から断られる前提で来てンだろォが」

 

曹操と話し始めた時点から一方通行は自分を取り囲んでいる視線に気づいていた。それと同時に、自分が別の空間(・・・・)へ転移されたのも。

 

曹操は肩をすくめながら苦笑する。そしてニヤリと笑い、

 

「分かった。それじゃあ、やろうか?」

 

そう言い一方通行へ向けて突っ込んでくる。槍の先端を一方通行に突き刺そうとするが、何かに気づいた曹操は急停止し、後ろに後退する。

曹操がいた場所には地面がえぐられた後が残っていた。

 

「危ない危ない。いつ、そのチョーカーのスイッチを入れたんだい?」

 

こいつ(チョーカー)のこと知ってンのか・・・

まァ、答える意味はねェけどよ」

 

「ま、それもそうか」

 

それだけ言い合い、一方通行と曹操はお互いに突っ込み激突する。

ズガァ!!!!

激しい音がする。

吹っ飛ばされたのは曹操の方だ。

 

「・・・ッ‼︎」

 

一方通行は飛ばされた曹操に再び接近して腕を突き出すが、素早く体制を立て直した曹操は一方通行の頭上を飛び越え、彼の後ろに着地する。

 

「・・・やっぱその能力はとんでも無いな。ベクトル変換だっけ?この最強の神滅具(ロンギヌス)黄昏の聖槍(トゥルーロンギヌス)でもキミを貫くどころか傷一つ付けられないとは・・・」

 

「そォでもねェよ。俺はベクトルを制御しているだけの能力だ。対処法は幾らか思いついてンだろ」

 

一方通行のベクトル変換能力は触れた物のベクトルを観測し、変換することができる。能力使用時は反射のベクトルに設定してあり、身体の周囲を覆うわずかな保護膜に触れた全ての攻撃を自動的に跳ね返している。

 

「頭の中で考えるのと、実際にやるのとは違ってくるものさ」

 

曹操は短く息を吐く。

 

「そンで?感想は?」

 

「無理だね、今のままじゃ勝てない。また日を改めることにしよう」

 

そう言って曹操は指を鳴らす。するとさっきまでの戦闘の傷跡が全く無い元の路地に戻っていた。

 

「オマエが転移させてたのか?」

 

「いいや、今のは合図さ。絶 霧(ディメンションロスト)。俺の仲間が、これで別空間に転移させたんだよ」

 

「‼︎・・・チッまた神滅具(ロンギヌス)か・・・俺に教えていいのかよ」

 

一方通行が苦虫を噛み潰したような表情をするが、曹操は不敵な笑みを浮かべている。

 

「どうせいつか知られることさ。それに、この力はキミに通用することが分かっただけでも十分な収穫だ」

 

そう言い曹操は踵を返す。

 

「次はせめて傷を付けるぐらいのことはして見せる」

 

闇に紛れた曹操はそれだけを言い残し去って行く。周りにあった視線も消えていた。一方通行はしばらく様子を見て、もう他に誰もいないことを確認するとチョーカーのスイッチを切り、闇の中を歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何?曹操と?」

 

禍の団(カオスブリゲード)への勧誘だとよ。まァ、断ったけどな」

 

曹操と戦った一方通行はアザゼルが泊まっているホテルへと来ていた。

 

「曹操・・・英雄派を仕切っている男だな。他に何かあったか?」

 

黄昏の聖槍(トゥルーロンギヌス)絶 霧(ディメンションロスト)を持った仲間がいる」

 

アザゼルは目を見開いた。

 

黄昏の聖槍(トゥルーロンギヌス)だと⁉︎よりにもよってテロリストの手に渡っていたか・・それに絶 霧(ディメンションロスト)・・・上位神滅具(ロンギヌス)の内二つが奴らの手に・・・こいつは他にも神滅具(ロンギヌス)を持っていても不思議じゃねぇな」

 

「上位神滅具(ロンギヌス)ってのは何なンだ?」

 

「上位神滅具(ロンギヌス)は四種類存在する神滅具(ロンギヌス)のことだ。お前が知ってる黄昏の聖槍(トゥルーロンギヌス)絶 霧(ディメンションロスト)もその一つだ。後の二つは魔 獣 創 造(アナイアレイションメーカー)煌天雷獄(ゼニステンペスト)だ。魔 獣 創 造(アナイアレイションメーカー)はあらゆる生き物を作り出す能力。煌天雷獄(ゼニステンペスト)は天候を支配する能力だ。煌天雷獄(ゼニステンペスト)の方は天界側が所持しているそうだ。魔 獣 創 造(アナイアレイションメーカー)はまだ見つかっていないがな」

 

アザゼルはそこまで説明して壁を背にして立っている一方通行の方を見る。

 

「それにしても、黄昏の聖槍(トゥルーロンギヌス)を相手にしてよく生きてたな。流石はベクトル変換能力か?」

 

「過大評価しすぎだ。俺の能力はチートって訳でもねェよ。確かに普通の攻撃なら全部反射するが、対処法は探せば幾つか見つかる」

 

一方通行は不満そうに答えるが、アザゼルは気にせずに笑う。

 

「それでも、実際神滅具(ロンギヌス)を相手に何回も生き残っているんだ。お前の実力は本物だよ」

 

「チッ」

 

舌打ちをして一方通行は部屋から出て行く。部屋に残ったアザゼルは昔を思い出すような目をする。

 

「そう、強くなったよ。一方通行」

 



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五話

遅れて申し訳ありません。
受験勉強という言い訳しか出来ませんが、本当、すいません。


「アザゼル、明日の会談に俺も出席しなければダメかい?」

 

「当然だ、ヴァーリ。おまえは白龍皇だからな」

 

「コイツが出ンなら俺はいらねェな」

 

「残念ながら一方通行(アクセラレータ)。お前も参加だ。というか、コカビエルの一件に関与した者は全員出席することになってる」

 

「チッ、面倒臭ェ」

 

「・・・なあ、アザゼル。もう、戦争は起こらないのかな?」

 

「ただ戦いを求める。典型的なドラゴンに憑かれた者だな、おまえは。長生きできないタイプだ」

 

「いいさ、長生きなんて興味無い。ただ、俺はこの時代に生まれたことを残念に思うよ。ーー俺は神を倒してみたかった」

 

「白龍皇らしい限りだ」

 

「・・・強い奴を全部倒した後、オマエはどォするンだ?」

 

「ーー死ぬよ。そんなつまらない世界に興味無いんだ」

 

 

 

 

 

 

 

「着いたぞ」

 

会談当日、一方通行とヴァーリはアザゼルと共に駒王学園の新校舎、職員会議室の前に来ていた。すでにこの学園全体には強力な結界が張られ、会談が終了するまで誰も出入りできない。さらに結界の外には、天使、悪魔、堕天使の軍勢が囲んでいる。まだ和平を結んでいる訳では無いので、一色触発の空気だ。

アザゼルがドアを開き中に入る。

中には悪魔陣営の魔王サーゼクス・ルシファー、そして駒王学園生徒会長、ソーナ・シトリー。そしてその姉であり現魔王。セラフォルー・レヴィアタン。そしてサーゼクスの眷属悪魔であり、冥界最強の女王、銀髪の殲滅女王(クイーンオブディバウア)こと、グレイフィア・ルキフグス。

天界陣営は天使長ミカエル、背中から金色の十二枚の翼を出し、隣には女性の天使が座っている。

アザゼルも席に着き、一方通行とヴァーリはアザゼルの後ろ側の壁に寄りかかる。

アザゼル達、3大勢力のトップ陣営がそれぞれ挨拶を交わし何回か話した後、部屋の扉がノックされた。

 

「失礼します」

 

扉が開く。中に入って来たのはグレモリー眷属達。

 

「私の妹と、その眷属だ」

 

サーゼクスが紹介し、リアス・グレモリーが会釈する。

 

「先日のコカビエル襲撃事件で彼女達が活躍してくれた」

 

「報告は受けています。改めてお礼を申し上げます」

 

ミカエルがリアスへ礼を言い、リアスは再び会釈する。

 

「悪かったな、俺のところのコカビエルが迷惑をかけた」

 

全く悪びれた様子もなくアザゼルが言う。これにはさすがのリアスも目元をひくつかせていた。

 

「そこの席に座りなさい」

 

サーゼクスの指示を受け、グレイフィアが壁際に設置された椅子に促す。ソーナ・シトリーはすでにそこに座っている。

 

ソーナからリアス、一誠、朱乃、木場、アーシア、ゼノヴィア、小猫と座る。

 

「全員がそろったところで、会談の前提条件をひとつ。この場にいる者達は、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」

 

サーゼクスが最後に確認する。

 

「では、それを認知しているとして、話を進める」

 

そう締めくくり、3大勢力の会談が始まる。

 

 

 

 

 

会談は順調に進む。

 

「というように我々天使はーー」

 

ミカエルが喋り、

 

「そうだな、その方が良いのかもしれない。このままでは確実に3勢力とも滅びの道をーー」

 

サーゼクスも発言する。

 

「ま、俺らは特にこだわる必要も無いけどな」

 

たまに喋るアザゼルの一言で場が凍りつくこともあるが、アザゼルはわざとその空気を作って楽しんでいるようだ。

 

 

 

 

 

一方通行は会談の内容を聞き流していながらもう一つの来訪者へと意識を向けていた。

 

(……見られてやがるな。大方テロリストどもだろォが、まだ様子見の段階だとすればこっちから動く必要はねェが仕掛けてくればすぐに動けるようにしておくか)

 

目を閉じて壁に寄りかかりながら一方通行は会談場に突き刺さる視線に苛立ちながらも首元の電極に意識を向ける。

 

(アザゼルが改良した電極の能力使用モードは30分程度……余分に残しておかねェと立つことも出来なくなっちまう。時間は15分程度と考えておくか)

 

現在の一方通行が能力を使用しないで普段の生活を送るだけなら約48時間は持つが、バッテリーの消費が多い能力使用モードでの戦闘時間はバッテリーをフルで使っても30分程度しか動くことができない。そのため一方通行は時間配分というのをきっちりしている。ちなみに一方通行は時間制限があるため時間は確実に守る男として別の意味で有名である。

 

「さて、リアス。そろそろ、先日の事件について話してもらおうか」

 

「はい、ルシファー様」

 

普段自分に関係が無いことは関わろうとしないが、先日の事件というのは一方通行も関わっていた為、目を開けて聞く姿勢になっている。

リアスはサーゼクスに促され、朱乃とソーナと共に先日のコカビエル戦での一部始終を話す。

この会談場には各勢力のトップがいる以上、自分の発言一つで大きく傾いてしまうもしれない。各勢力のトップ陣が注目している以上、リアスの手は極度の緊張から少し震えている。

 

「以上が、私、リアス・グレモリーとその眷属悪魔が関与した事件の報告です」

 

報告を受けた各陣営トップはため息を吐く者、顔を顰める者、笑う者と反応が違った。

 

「ご苦労、座ってくれたまえ」

 

「ありがとう、リアスちゃん☆」

 

サーゼクスとセラフォルーの言葉で着席する。

 

「さて、アザゼル。この報告を受けて堕天使総督の意見を聞きたい」

 

全員の視線がサーゼクスの言葉によってアザゼルへと集中する。アザゼルは不敵な笑みを浮かべて話し始めた。

 

「先日の事件は我が堕天使中枢組織

神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部コカビエルが、他の幹部及び総督の俺に黙って単独で起こしたものだ。奴の処理は『白龍皇』と『一方通行』がおこなった。その後、組織の軍法会議でコカビエルの刑は執行された。『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍の刑だ。もう二度と光は見れねぇよ。ま、白龍皇が回収してきた時にはすでに虫の息だったがな、その辺りの説明はこの間転送した資料に全て書いてあっただろ?それが全部だ」

 

ミカエルが嘆息しながら言う。

 

「説明としては最低の部類ですが、あなた個人が我々と大きな事を起こしたくないという話は知っています。それに関しては本当なのでしょう?」

 

「ああ、俺は戦争になんて興味ない。コカビエルも俺のことをこき下ろしていたと、そちらの報告でもあったじゃないか」

 

次はサーゼクスがアザゼルに訊く。

 

「アザゼル、一つ聞きたいのだが、どうしてここ数十年『神 器(セイクリッドギア)』の所有者をかき集めている?最初は人間達を集めて戦力増強を図っているのかと思っていた。天界か我々に戦争を仕掛けるのではないかと予想していたのだが……」

 

「そう、あなたはいつまで経っても戦争を仕掛けてはこなかった。『白 い 龍(バニシングドラゴン)』を手に入れ、そして神器所有者ではないのに白龍皇と同等かそれ以上の実力を持つ一方通行(アクセラレータ)の情報を掴んだ際には強い警戒心を抱いたものです」

 

ミカエルもサーゼクスと同様に発言する。

二人の意見を聞きたアザゼルは苦笑し。

 

「神器研究のためさ。なんなら、一部研究資料もお前達に送ろうか?って研究していたとしても、それで戦争なんざ仕掛けねぇよ。戦に今更興味なんてないからな。俺は今の世界に十分満足している。人間界に必要以上に干渉はしてねぇし、宗教にも介入するつもりもねぇ、悪魔の業界にも影響を及ぼすつもりもない。ったく、俺の信用は三すくみのなかでも最低かよ」

 

「それはそうだ」

 

「そうですね」

 

「その通りね☆」

 

サーゼクス、ミカエル、セラフォルーの意見がここぞとばかりに一致していた。

アザゼルはそれを聞き面白くなさそうに耳をほじる。

 

「チッ。神や先代ルシファーよりもマシかと思ったが、お前らもお前らで面倒くさい奴らだ。こそこそ研究するのもこれ以上性に合わねぇか。あー、わかったよ。なら、和平を結ぼうぜ。つか、もともとそのつもりだったんだろう?天使も悪魔もよ?」

 

アザゼルの和平を結ぶという一言で会場が驚きに包まれた。アザゼルの一言に驚いていたミカエルが微笑む。

 

「ええ、私も悪魔側とグリゴリに和平を持ちかける予定でした。このまま三すくみの関係を続けていても、今の世界の害となる。天使の長である私が言うのも何ですが、戦争の大本である神と魔王は消えたのですから」

 

ミカエルの言葉にアザゼルは噴き出す。

 

「ハッ!あの堅物ミカエルさまが言うようになったね。あれほど神、神、神様だったのにな」

 

「……失ったものは大きい。けれど、いないものをいつまでも求めても仕方がありません。人間達を導くのが我らの使命。神の子らをこれからも見守り、先導していくのが一番大事な事だと私たちセラフのメンバーの意見も一致しています」

 

「おいおい、今の発言は『堕ちる』ぜ?ーーと思ったが、『システム』はお前が受け継いでいるんだったな、いい世界になったもんだ、俺らが『堕ちた』頃とはまるで違う」

 

サーゼクスも同様に口を開く。

 

「我らも同じだ。魔王なくもの種を存続される為に、我々も先へ進まねばならない。次に戦争が起これば、悪魔は滅びる」

 

アザゼルが頷く。

 

「そう、次の戦争が起これば三すくみは共倒れだ。それに人間界にも影響を及ぼし、世界は終わる。俺らはもう戦争を起こせない。起こしてはならない」

 

アザゼルは一転して真剣な面持ちとなる。

 

「神がいない世界は間違いだと思うか?神がいない世界は衰退すると思うか?残念ながらそうじゃない。俺もお前らも今こうやって元気に生きている」

 

アザゼルは腕を広げる。

 

 

 

「神がいなくても世界は回るのさ」

 

 

 

アザゼルの一言により会談は今後の戦力、各陣営の対応、これからの勢力図とやらの話に移る。どの勢力も戦争を望んでいなかったせいか、先ほどよりも若干空気が軽くなった。

 

「と、こんなところだろうか?」

 

サーゼクスの一言で各陣営のトップは大きく息を吐いていた。会談が始まって約一時間、一通りの重要話が終わった。するとミカエルが一誠の方へ視線を向ける。

 

「さて、話し合いもだいぶいい方向へ片付いてきましたし、そろそろ赤龍帝殿の話を聞いてもよろしいですか?」

 

視線が一誠へと集中し、一瞬あたふたした後、一誠はミカエルの方へ質問をする。

 

「どうして、アーシアを追放したんですか?」

 

一誠の問いに全員が「なぜ今その話を?」という顔をしている。一方通行も同様に一誠の方へ視線を向けている。

 

アーシアは神を信じていた。それをどうして教会は追放したのか、一誠はどうしてもそれが聞きたかった。

 

ミカエルは真摯な態度で応じる。

 

「それに関しては申し訳ないとしか言えません。……神が消滅した後、加護と慈悲と奇跡を司る『システム』だけが残りました。『システム』は神が奇跡を起こすためのもの。神は『システム』を作り奇跡を地上にもたらしていました。例に上げれば悪魔祓い、十字架などの聖具、聖水などがもたらす効果の事です」

 

一誠は理解した後、さらに疑問をぶつける。

 

「神がいなくなって、その……『システム』に不具合が起こったっていうことですか?」

 

ミカエルは頷き答える。

 

「『システム』を神ではないものが扱うのは困難を極めます。私を中心にセラフ全員で『システム』をどうにか起動させていますが……神がご健在だった頃に比べるとどうしても劣ってしまいます。ーー残念なことですが、救済できる者は限られてしまうのです」

 

 

……神がいないために救えるものには限界がある。その言葉を聞き、一方通行は一人の女性を思い浮かべていた。暗闇の中に一筋の光を灯してくれた人を。死ぬことしか考えていなかったあの頃を救ってくれた女性をーー。

 

「そのため、『システム』に影響する可能性のある物を教会に関するところから遠ざける必要があったのです。

例として、一部の神器。『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング』)や『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』、そして『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング』)なども」

 

「アーシアの神器がダメなのは、悪魔や堕天使も回復できるからですか?」

 

ミカエルは再び頷く。

 

「はい、『悪魔や堕天使を回復できる神器』持つ者がいれば、周囲の信仰に影響が出ます。信仰というのは天界に住む者の源。その為、『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング』)は禁止神器としています。それと、影響を及ぼす例にーー」

 

「神の不在を知る者ーーですね?」

 

ミカエルの言葉を遮ってゼノヴィアが続ける。

 

「ええ、そうです、ゼノヴィア。我々セラフと一部の上位天使以外で神の不在を知ったものが本部に直結した場所に近づくと『システム』に大きな影響が出るのです。

申し訳ありません。貴方達二人を異端とするしかなかった」

 

ミカエルが二人へと頭を下げる。二人は目を丸くするが、ゼノヴィアはすぐに首を振り、微笑む。

 

「いえ、ミカエル様、理由を知れた以上、どうということはありません」

 

「ミカエル様、私も今幸せだと感じております。大切な人達が沢山出来ましたし、憧れのミカエル様にお会いしてお話も出来たのですから光栄です!」

 

ミカエルは安堵の表情を見せる。

 

「すみません、あなたたちの寛大な心に感謝します。デュランダルはゼノヴィアにお任せします。サーゼクスの妹君の眷属ならば下手な輩に使われるよりも安全でしょう」

 

すると、今まで黙っていたアザゼルがアーシアを見つめている。

 

「俺のところの部下が、そこの娘を騙して殺したらしいな。その報告も受けている」

 

一誠は私情を剥き出しにアザゼルへ吠える。

 

「そう、アーシアは一度死んだ。お、俺も堕天使に殺されたけど、それ以上にアーシアだ!あんたの知らない所で起きた事かもしれないが、あんたに憧れていた堕天使の女性があんたの為に、アーシアを一度殺したんだ!」

 

完全な私怨からの一言、この場で一誠に発言権は無い。リアスも隣で一誠をいさめている。

 

「俺達堕天使は、害悪になるかもしれない者を始末している。それは確かだ。だが、組織としては当然だろう?お前も同様だ。なんの才能もないお前では赤龍帝の力を暴走させて世界へ悪影響を及ぼしかねないからだ」

 

「おかげで俺は悪魔だ」

 

「嫌か?少なくともお前の周囲の者達はお前が悪魔になったことを喜んでくれているんじゃないのか?」

 

確かに赤龍帝の力は凄まじい。そんな力を持った者は悪魔陣営に限らずとも、喜ばれるだろう。

 

「い、嫌じゃない!皆が良い人で、優遇してもらっているのもわかる。けど!」

 

 

「なァ」

 

 

 

一誠の声を遮る。声の主は一方通行だ。この会談で初めて発言した一方通行に視線が集まる。アザゼルやヴァーリも意外な顔をしていた。

 

「な、なんだよ?」

 

「話ぶった切って悪ィンだけどよ、ちょっと聞きてェことがあンだ」

 

「聞きたいこと?それは一体?」

 

サーゼクスが一方通行に問いかける。

 

「あァ、赤龍帝。オマエはこの世界をどうしたい?」

 

「へ?え?い、いきなり何を……」

 

「だからすまねェっつってンだろォが。オマエの言いてェ事は理解出来るけどよ、今この場で話すことじゃねェよな?ありゃ完全にオマエの私怨だ。この会談はオマエの私情で話が進ンでるわけじゃねェのは理解出来るか?」

 

一方通行の言葉に一誠はだんだん頭が冷えてきた。それを確認した一方通行は言葉を続ける。

 

「簡単な話だ。オマエとヴァーリ、あと俺か?この世界をどうしたいって聞いてンだよ。割と重要な話だ。俺らは世界に良し悪しに限らず影響を与えるのはわかるか?」

 

一方通行の言葉を聞き各陣営のトップも言葉を挟む。

 

「そうだな、俺も聞きたいと思っていたんだ。この中には無敵のドラゴン様にそれと互角に張り合える奴もいるわけだ」

 

「私も同意見だ。大きな力を持つからにはその使い方を誤れば取り返しのつかないことになる」

 

「彼らに限った話ではありませんが、この場で聞いておきたいのは私もです」

 

それを聞いた一方通行は改めて口を開く。

 

「ンじゃァ、まずオマエから聞こうか?ヴァーリ」

 

一方通行の問いかけにヴァーリは笑みを浮かべる。

 

「俺は強い奴と戦えればいいさ」

 

「だろォな。聞くまでもなかった」

 

「まず一方通行。キミと戦いたいんだが」

 

ヴァーリが一方通行に視線を向けるが一方通行は無視して一誠に聞く。

 

「赤龍帝。オマエは?」

 

一誠は頬を掻きながら答える。

 

「正直、よくわからないです。なんか、小難しいことばかりで頭が混乱してます」

 

確かについ最近まで普通の男子高校生だった一誠はあまり実感がないだろう。

 

「だが、お前は世界を動かすだけの力がある。選択を決めないと各勢力の上の奴らが動きづらくなるんだよ」

 

アザゼルに言われても困った顔をする。

 

「では恐ろしいほど噛み砕いて説明してやる。戦争が起こればリアス・グレモリーを抱けないぞ?」

 

一誠に雷が落ちた。

あまりの衝撃的な一言に思考が一瞬停止してしまった。

固まっている一誠はそのままアザゼルは言葉を続ける。

 

「和平を結べば戦争はしなくて済む。そうすればあとは種の存続と繁栄だ。どうだ?ここまで説明すればもう理解出来るよな?」

 

「和平でひとつお願いします!ええ!平和ですよね⁉︎平和が一番です‼︎部長とエッチがしたいです‼︎」

 

欲望をそのまま口にした。さっき一方通行から言われた言葉などお構いなしに私情をぶち撒けた。

隣ではリアスが顔を真っ赤にし、一方通行も呆れたように一誠を見ている。……いや、見ていなかった。窓の外を見て聞かなかったことにしている。

 

「イッセーくん、サーゼクス様がおられるんだよ?」

 

木場がやれやれと苦笑しながら言う。

サーゼクスは小さく笑っていた。

一誠はハッとして慌てて話を戻す。

 

「えっと……俺、バカなんでこの会談の内容も9割くらい意味不明です!さっき一方通行から言われたように俺の力が世界に何らかの影響を与える程の力があるならその力を仲間の為に使います。部長やオカルト研究部の皆が危険に晒されたら俺が守ります!……って、俺まだまだ弱いんですけどね。けど、俺が出来るのはそれぐらいですから。体張って仲間と共に生きていこうかなってーー」

 

その瞬間、一誠の言葉が途中で途切れる。

 

それと同時に全てが停止する。

 

理由は一つ。

 

時間が止まった。

 



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六話

時が止まった。

そう認識する前に一方通行(アクセラレータ)は電極のスイッチを入れた。

 

「一方通行。気づいていたか?」

 

アザゼルが聞いてくる。

 

「……失敗した」

 

「何がだ?」

 

黒いローブを着た魔術師達が窓の外にいるのを確認しながら一方通行は呟く。

 

「会談が始まってから奴らの視線には気づいてたが、まさか時を止めて襲撃してくるとは思わなかったぜ」

 

「恐らくはあの吸血鬼ハーフの……おっと、赤龍帝の復活だ」

 

アザゼルの言葉で辺りを見回してみると、動いているものと止まっているものに分かれている。トップ陣営、グレイフィア、ヴァーリ、そして。

 

「眷属で動けるのは私とイッセーと、祐斗、ゼノヴィアだけのようね」

 

リアスの言うように、グレモリー眷属も動いている者がいる。

 

「イッセーは赤龍帝を宿す者、祐斗は禁 手(バランスブレイカー)に至り、イレギュラーな聖魔剣を持っているから無事なのかしら、ゼノヴィアは直前にデュランダルを発動させたのね」

 

ゼノヴィアは持っていたデュランダルを空間の歪みに戻す。

 

「時間停止の感覚は体で覚えた。停止させられる寸前にデュランダルを発動させて盾に使えば防げると思ったのだけれど、正解だった」

 

「何があったんですか?」

 

「テロだよ」

 

一誠の問いにアザゼルが答える。

 

「外、見てみろよ」

 

アザゼルに言われ窓の方に近づた瞬間、新校舎が揺れ閃光が広がる。

 

「攻撃を受けているのさ。いつの時代も、和平を結ぼうとすると必ず邪魔が入る」

 

アザゼルが指をさす先には魔術師達がこちらへ魔力の弾に似た攻撃を放っている。

 

「一応、俺とサーゼクスとミカエルで強力無比な防壁結界を展開して攻撃を防いでいるからな。おかげでここから出られないが……」

 

暫く黙っていた一方通行がアザゼルに問いかける。

 

「時間が停止したのはグレモリー眷属のハーフヴァンパイアの力か?」

 

「なんだ、知っていたのか。恐らく、力を譲渡できる神 器(セイクリッドギア)か魔術でそいつの神器を強制的に禁手状態としたんだろうな。一時的なものだろうが、まさか視界に写したものの内部にいる者にまで効果を及ぼすとは……」

 

リアスはそれを聞いて紅いオーラをほとばしらせる。

 

「ギャスパーは旧校舎でテロリストの武器にされている……。私のかわいい下僕が会談襲撃の戦力にされているなんて……ッ!これほど、侮辱される行為もないわッ!」

 

アザゼルが手を窓に向ける。すると空から無数の光の槍が雨のように降り注ぐ。

テロリスト達は防御障壁を展開するが、光の槍はそれを難なく貫き魔術師達を一掃していく。

 

「とにかく、今はここから好きに動くことは出来ない、かといって、何もしないわけにはいかない。そこでまずはテロリストの活動拠点となっている旧校舎からギャスパーくんを奪い返すのが目的となるね」

 

サーゼクスがそう言うと、

 

「お兄様、私が行きますわ。ギャスパーは私の下僕です。私が責任を持って奪い返してきます」

 

強い意志を瞳に乗せてリアスが進言する。サーゼクスはふっと笑い。

 

「言うと思っていたよ、妹の性格くらい把握している。

だが、旧校舎までどうやって行く気だい?」

 

自分達がいる新校舎の外は魔術師達が大量にいる。通常の転移では魔法に阻まれてしまう。

 

「旧校舎ーー根城の部室には未使用の『戦車』の駒を保管していますわ」

 

「なるほど、『キャスリング』か。これなら相手の虚をつくことができる。何手か先んじえるね」

 

キャスリングは『王』と『戦車』の位置を瞬間的に入れ替えることができる。これは『戦車』の駒があれば可能な技なのでリアスは旧校舎に瞬間転移が可能なのだ。

 

「よし、だが、一人で行くのは無謀だな。グレイフィア、『キャスリング』を私の魔力方式で複数人転移可能にできるかな?」

 

「そうですね、ここでは簡易術式でしか展開できそうもありませんが、お嬢様ともう一方ならば転移可能かと」

 

「リアスと誰かか……」

 

「サーゼクス様、俺も行きます!」

 

サーゼクスが一誠の方へ向いた後、すぐにアザゼルへ視線を向ける。

 

「アザゼル、噂では神器の力を一定時間自由に扱える研究をしていたな?」

 

「ああ、そうだが、それがどうした?」

 

「赤龍帝の制御は出来るだろうか?」

 

「………………」

 

アザゼルはサーゼクスの問いに対し暫く黙り込み、やがて懐を探り出す。

 

「おい、赤龍帝」

 

「俺は兵藤一誠だ!」

 

「じゃあ、兵藤一誠。こいつを持っていけ」

 

アザゼルは見知らぬ文字が刻まれている手にはめるリングらしきものを一誠へ投げつける。慌ててキャッチした一誠はリングを訝しげに見る。

 

「そいつは神器をある程度抑える力を持つ腕輪だ。例のハーフヴァンパイアを見つけたらそいつを付けてやれ。多少なりとも力の制御に役立つだろう」

 

「でも、これ二つあるけど……?」

 

「もう一つはお前のだ。『赤 い 龍(ウェルシュドラゴン)』の力を使いこなせないんだろう?なら、はめろ。短時間なら代償なしで禁手状態になれる」

 

驚愕している一誠へアザゼルは言葉を続ける。

 

「副作用で一時的にお前に施されている封印も解ける。確か、『兵士』の力を封じられているんだろう?」

 

アザゼルがどこでその情報を知ったのかは知らないが、確かに一誠はリアスによって力を抑えられている。

 

「駒配分的にドライグが七、お前が一ってところか?どちらにしても、封印の開放ってのはドライグの力を解き放つってことだな、リアス・グレモリー?」

 

アザゼルの問いにリアスは目を細めるだけで何も答えない。

 

「そのリング、使うのは最終手段にしておけ、鎧装着中は体力か魔力を激しく消費させるからな」

 

腕輪について一誠が納得しているときにアザゼルはさらにダメ押しを口にする。

 

「よく覚えておけ、今のお前は人間に毛が生えた程度の悪魔だ。強大な神器を有していても宿主が役立たずでは意味がない。今のお前でもドライグの力を振りまくだけなら相手が未熟な者に限りなんとかなる。だが、それはお前が神器を使いこなしているわけじゃない。使いこなせないのはそれだけ弱味の塊なんだよ。力に振り回されるだけでは、いずれ死ぬぞ」

 

「わ、わかっているよ」

 

一誠がアザゼルの言葉を噛み締めているとミカエルが嘆息しながらアザゼルへ訊く。

 

「アザゼル、神器研究はどこまでいっているのですか?」

 

アザゼルは不敵な笑みを浮かべている。

 

「いいじゃねぇか、神器を作り出した神がいないんだぜ?少しでも神器を解明できる奴がいた方がいいだろ?」

 

すると一方通行がポツリと呟く。

 

「……研究しているのがオマエだから問題あるンだろォがよ」

 

「「「確かに」」」

 

アザゼル以外のトップ陣が同意する。

 

「お前らいつか絶対後悔するぞ……」

 

などとブツブツ言っているが誰もアザゼルを援護しない。

 

「お嬢様、しばしお待ち下さい」

 

「急いでね、グレイフィア」

 

リアスはグレイフィアに特殊な術式を額から受けていた。一誠達が準備中の中、アザゼルはヴァーリと一方通行に指示を出す。

 

「おい、お前ら」

 

「あァ?」

 

「なんだ、アザゼル」

 

「お前らは外で敵の目を引け。お前らが前に出てくれば野郎どもの作戦も多少は乱せるだろうさ。それに何かが動くかもしれない」

 

「会談の時から俺らのことを見てたンだぞ?俺らがここにいるのは奴らも知ってンじゃねェのか?」

 

「だとしても、『キャスリング』で赤龍帝が中央に転移してくるとまでは予想してないだろう。注意を引き付けるのは多少なりとも効果はある」

 

「ハーフヴァンパイアごと旧校舎を吹き飛ばした方が早いんじゃないかな?」

 

ヴァーリはごく自然にそう言うがアザゼルが止める。

 

「和平を結ぼうとしているときにそれはやめろ。最悪の場合それにするが、ここで魔王の身内を助けられるならこれからのためになる」

 

「チッ、面倒くせェな」

 

「了解」

 

一方通行は舌打ちをしながら、ヴァーリは息を吐きながらも同意し、背中に光の翼が展開する。

 

禁 手 化(バランスブレイク)

 

Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!!!!(バニシングドラゴンバランスブレイカー)

 

ヴァーリの体を真っ白なオーラが覆い、白い光を放つ全身鎧になっていた。

 

ヴァーリは会議室の窓を開き空へ飛び出す。

 

ドドドドドドドンッ!

 

外で爆風が巻き起こり白い光の軌跡が敵の群れへ飛び込み一騎当千の様相を見せていた。

 

「ンじゃ俺も行くぜ」

一方通行はそれだけ言い残しヴァーリと同様に窓から飛び出す。

魔術師達は地上にも現れ、窓から地上へ落ちてくる一方通行へ向けて様々な魔術を放つ。

 

だが、放たれた弾丸は跳ね返され炎に包まれても吹き散らす。一方通行は地上へ足をつけた瞬間、勢いよく地面を踏みつける。

 

ズガアアアアアアアアア‼︎

 

一方通行を中心に放たれた衝撃波は魔術師達を飲み込み全方位へ広がっていく。

 

音がやむ。

 

周りにいた魔術師達は全員が地に倒れ伏しており、若干名息のある者もいるが、這って進むことすら出来ない。

 

「……グッ……!ッ……!バ、バカな……!全滅だと⁉︎貴様の力は反射をするだけではないのか⁉︎」

 

「オイオイ、甘すぎンぞ、テロ起こすぐらいなら相手の情報をそのまま鵜呑みにしてンじゃねェよ。」

 

嘆息しながら一方通行は校舎へ向けて歩き出す。

 

ヒュン‼︎ ズガン‼︎

 

一方通行の反射によって魔力の弾が跳ね返る。それと同時に悲鳴が聞こえる。

剣を振りかざして襲ってくる者もいた。身体に当たると同時に剣が折れて戦意が喪失する。

直接殴ってくる者もいた。腕が当たると逆の方向へ折れ曲がり、地べたへ這いつくばる。

 

もはや敵の方を振り返ってすらいない一方通行はただ歩いているだけ。それだけで敵の戦力は減っていく。

 

いよいよ地上の魔術師達も底が尽きたのか誰も来なくなった。会議室へ戻ろうと屈み込み、跳ぼうとした瞬間、

 

 

 

 

一方通行の身体が真横に吹っ飛ばされた。

 

 



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