魔水晶王女(俺)は魔王の一人である (ちゅーに菌)
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魔水晶王女(俺)と最弱少女(リリウム)
始まりはTSと共に


今日の朝。

バスに揺られながら日課の小説あさりをしているとふと思い立った。



"そうだ小説を再開しよう"



と、言うわけで再び書き始める事になりました。

冷やし中華感覚でお読みください。





一面、クリスタル、クリスタル、クリスタル、床から壁、天井に至るまで様々な色のクリスタル覆われた洞窟の中の一番奥で光る10m程の逐お鏡の前で俺は鏡のように銀色のクリスタルの前で立ち尽くしていた。

 

「ははは……確かに強い身体にしてほしいとは言ったさ…………」

 

鏡には顔を引き釣らせた17~18歳程に見える謙遜しても美人、贔屓目に見れば絶世の美女がそこにいた。

 

「だが……………」

 

新雪のように白く柔らかい肌。

 

精巧な人形のような完全なプロポーション。

 

メロンかボウリング球でも入っているのではと思うような豊満なバスト。

 

170を越える身長。

 

地面につくほどの艶のある白の長髪。

 

深紅の瞳はルビーのような赤々とした光沢を放っている。

 

こんな美人がいたら俺は間違えなく

ファンになるだろう……だが。

 

「これはないだろぉぉぉぉ!!!!?」

 

その美人は紛れもなく、ただの男子高校生だった俺そのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し…いやかなり錯乱した…状況を纏めよう……」

 

鏡の中のあるびの美人(俺)はorzの体勢から顔だけ上げて死んだような目で鏡を見つめていた。

 

そんな姿勢でそんな顔するなよ……美人が台無しだぜ?………………ぐすん…泣いてなんか無い…鏡の中の美人が泣いているだけだ…俺は泣いてない……ぐすん…。

 

 

俺は所謂転生者という奴だった。

 

色々…うん…それはそれは色々あり豆腐の角に頭をぶつけて死んだ俺は神様の手違いという見事なテンプレで1つだけ転生特典付きの転生を果たした訳だが、今思えばその時に頼んだ転生特典がマズかった。

 

"強い身体…後、魔法とか使ってみたいな"

 

そう頼んだ……え?1つじゃない?気にすんな。

 

男女の指定ぐらいしておけば良かった……これじゃあ性同一性障害じゃないか………………………ぐすん…あれ?頬をなみ…違う…違うこれは塩水だ!断じて涙ではない!………………もうやだ死にたい……。

 

「ひっく……ひっく…ううう…」

 

止めろよ、美人を泣かせるなんて最低だぜ?…チクショウ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつまでも泣いているわけにもいかないのでとりあえず生きることにした。

 

もういいや……………性同一性障害の私は頑張ることにするわ!……………………………ダメだ…女言葉と一人称私とか無理だ。

 

「しかし…ここはどこだ?」

 

あ、声が多少高くなってる。

 

それはおいといて一体この空間は何だろう?壁床天井一面クリスタルで覆われやたらに光っている。

 

ん?

 

「な、なんだこのエロい服は?」

 

よくよく銀に映った自分を見てみるとやたらにデカイ胸をザックリと開け谷間が非常に強調された髪と同じ白のドレスに手足に白銀の籠手とレギンスを装備していた。

 

なんというか…見れば見るほどゲームか何かのボスキャラのように見えてくる。さながら何かの女王的な。

 

「……とりあえず普通の服が欲しいな」

 

女王様はどうだか知らんが俺はこんな服では外を歩けません、せめてジーパンとカッターシャツを求む。

 

「とりあえずここから出るか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお…光だ」

 

輝くクリスタルのせいで目に毒なほど明るかった洞窟を10分程かけて歩くとやっと光が見えてきた。

 

さて、外の景…色……は……。

 

「……………ふふふ…まさかとは思ったがな…うふふふふふ…」

 

え?突然どうしたか?だってさ、まず"太陽が青い"んだぜ…。

 

うん、真っ青だ。超ブルーだ。それに周りを見渡すと様々な色のクリスタルの地面に草花に木に虫に鳥や小動物だらけだった、と言うよりも全ての存在がクリスタルで出来た世界が広がっていた。

 

………間違えなく異世界だ。

 

「なんだよここは……」

 

まさか性別を変えられるだけではなく異世界にまで飛ばされるとは………魔法とか使ってみたいなって言ったのがマズかったか…魔法?

 

「魔法かー、何か使えるのかな?」

 

んー…ステータスとか見れたら楽なのにな。

 

そんなことを考えていたら頭の中にモヤモヤと思い浮かんできた。

 

 

魔水晶女王(クリスタルノヴァ)

 

 

ランク:SSS

 

身体値:530000

魔力値:530000

 

スキル:

《魔水晶女王》

《魔水晶魔法Lv99》

《火魔法Lv99》

《水魔法Lv99》

《風魔法Lv99》

《土魔法Lv99》

《闇魔法Lv99》

《光魔法Lv99》

《魔王》

《女王道》

《魔水晶生命創造》

《迷宮創造》

 

 

……………なんだこれは…53万?俺はフリ〇ザか。

 

スキルもやばそうなものしか無いんだけど?水魔法に闇魔法に光魔法はまだ解るが魔水晶魔法ってなんだ?

 

「魔法ねぇ…責めて使い方を知りたいな」

 

「お困りのようだね?」

 

近くからかなり低めの男性の声が聞こえた。

 

「ん?」

 

俺は背後から声を掛けられたので振り向くとそこにはなにもいなかった。

 

「あれ?今声が…」

 

「ここだ、足元だよ」

 

「足元?」

 

下を見てみると古めかしい本が落ちていた。

 

薄めの辞書程のサイズのそれは黒緑色の表紙にギロギロと動く紅色の目玉が1つついた異様な本だ。

 

「そうだ、拾ってくれないかね?」

 

「あ、ああ…」

 

「カッカッカッ。随分と綺麗な娘な事だ」

 

拾い上げると本は笑いだしカタカタと震えた。

 

綺麗とか娘とか言うなバラすぞこの野郎。

 

「おっと、それは怖い。失敬失敬」

 

そう、おどけて話す本には一切の反省の色は見受けられない。

 

あれ今声だしたっけ?

 

「私には他人の心が読めるのだよ娘よ」

 

「心が!?なんだよお前は…って娘っうな!」

 

「おっと、名乗るのがまだでしたか。私の名は"ダンダリアン"。世界の観測者として君の知識となることを使命されたモノだよ」

 

世界の観測者?使命?なんの話だ?

 

「まあ早い話、チュートリアルと攻略本と図鑑がセットになって本屋で2500円ぐらいで売っている完全攻略本だとでも思ってくれ。ちなみに神からの贈り物だよ」

 

「うん、凄く良く解った」

 

あれか、本屋の会計の近くの棚に置いてあるこのネット社会で誰が買うのか解らない絶滅危惧種のゲーム攻略本の異世界版か。

 

「うむ、そんなところだ。早速色々使ってみるといい」

 

そう言うと勝手動いて1ページ目が開かれた。

 

「え、読めってこと?」

 

「ああ、時間ならタップリあるのだから」

 

確かに今俺に一番必要なのは情報だ。

 

「………仕方ない、読むとするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~勉強中~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず、この世界について要約した事を話そう。

 

この世界は人間と魔人が共存して魔物なんかもいる世界らしい。

 

んで、魔界の人は魔人、人間は人間と呼ばれている。

 

そして人間は人間だけなのに対し、様々な魔人がおり例をあげると、人間に友好的なエルフ族やドワーフ族などが存在する。

 

それに対し敵対的な悪魔族(デーモン)植人族(プランター)なども存在する。

 

更に中立の淫魔族や天使族(エンジェル)など様々な種族がこの世界には存在する。

 

そして何より忘れてはならないのが"魔物"の存在だ。

 

魔物とは所謂ゲームやマンガのように無差別に襲い掛かって来るあれだ。

 

自我は持たず本能的に魔力の濃いモノをひたすら捕食し続ける生き物だ。

 

魔物の幅は広く、踏んだ程度で潰れる弱さの魔物から単身でエルフが束で掛かっても撃退しか出来ないような魔物も存在し、魔物の実力はF~Sまでの段階評価で決まる。

 

だが魔物の中で極稀に出現する異常な力や魔力を持った強力な魔物も存在する。

 

そういった魔物を"魔王"と呼び現在魔界に256体いるそうだ。

 

俺の持っているスキル魔王がそれに当たるらしい……ということは俺は魔物かい、勇者に狩られたりして…がくがくぶるぶる。

 

それはそれとして、魔王は他の魔物と違い完全に独立した自我を持っている為、魔物を統べてよくあるゲームの魔王のようになっている魔王、ひたすら力を求めて強者を求める魔王、快楽的に特定の種族を殺害するものなど様々な魔王がいる。

 

まあ、共通していることは基本的にそいつらは他種族にとって天災でしかなく、ろくな奴がいないということだ。

 

 

 

 

「そんなところか?」

 

「ふむ、まあ及第点だ。追加するなら人間や魔人は上質な魔力を内包している為、魔物は優先的に人を襲うと言ったところか」

 

「なるほど…」

 

この本《ダンダリアン》かなり使える、口が悪い事を除けばだが。

 

「お褒めいただき光栄だ。お嬢様」

 

そう言うとダンダリアンはカタカタと笑った。

 

「この野郎…また呼びやがって」

 

「まあ、それは置いておいて次はステータスの話をしようじゃないか」

 

「ああ…」

 

なんか流された気がするが仕方あるまい、さっきから話してて解ったがダンダリアンにはどうやっても口で勝てん、本当に何なんだこの本は?

 

「まず主のステータスのを確認しようか、どれどれ…ほう…SSSランクに53万…魔水晶魔法に全魔法とは…いやはや大した娘だ」

 

「一人で勝手に解釈するな。娘って言うな」

 

「いやはや、感銘を受けていたのだよ。53万など魔王の中でも指折りの高さだ」

 

「そうなの?」

 

「そうだな、例えを出すなら他のSSSランクの魔王の魔力と身体能力の平均値は20万ぐらいだ」

 

20万?…約2.5倍。

 

「俺ってヤバくね?」

 

「ああ、人外なんて生ぬるい言葉だな」

 

……本格的に人間止めたんだな…俺、今ならフリ〇ザのデス〇ームとかも撃てそうな気分だ。

 

「ふむ、デス〇ビームという物はわからないがビームならうてるぞ?それはそれとして魔法とスキルの説明を始めよう」

 

射てるんだ…。

 

「ああ…」

 

「魔法には火・水・風・土・光・闇の6つとそれに属さない固有の特殊な魔法が存在する」

 

と言う事は俺は大体全ての魔法を使えると言うことか。

 

「魔法は君の思ってるようなものだ。火魔法なら火球(ファイアボール)、水魔法なら水球(ウォーターボール)などが初歩の魔法だ。そしてスキルレベルに応じて上位の魔法が解放されるのだ。ちなみにLvの上限は99だ」

 

「へー………ん?てことは俺って既に」

 

「究極魔法(Lv99)が使えるな」

 

なんたるチート…。

 

「話を戻そう、魔法とはそもそも……

 

 

ダンダリアンの話を聞きながら俺は異世界転生した事もTSしたことも既に大分適応してきた自分に気付くのだった…。

 

そしてこの時はまだこのダンダリアンの話が3日もぶっ通しで続くなんて考えてもいなかった。

 

 




注意
今に始まったことではありませんが、作者は超絶ルーズ、スーパー気まぐれ、コジマ汚染患者、フロム脳、~すると言ったな?あれは嘘だ、などの数々の汚点を抱えています。用量、用法に注意し、適度な生暖かい目で見てくれると作者は奇声を上げながら喜ぶので注意して下さい。


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本は投げるものである

「ふむ…まあ、これぐらいで終わりにしておくとするか」

 

その言葉を聞いて俺は地面に突っ伏した。

 

「つ…疲れた」

 

結局あの後のダンダリアンの魔法から始まりこの世界の一般常識まで叩き込まれ、青い太陽が登り降りを3回ぐらい繰り返したところで終わった。

 

コイツ…鬼だ…スパルタンだ…。

 

「まあ、丸3日は使ったからな、それなりに君も精神的に疲れているだろう」

 

「疲れた…」

 

「ふむ、ひとまずチュートリアルは終了したのでこれからの事は自由にするといい」

 

「え…あの長い話はチュートリアルだったの?」

 

「カッカッカ、そう言うことだ。これは餞別だ」

 

そう言うと俺の目の前にピンク色で花の柄が刺繍された小さい弁当箱をいれるような巾着袋と金色の手乗りサイズの招き猫の貯金箱が出現した。

 

「え?なにこれ」

 

触ってみるてもただの巾着袋と貯金箱に……………………前言撤回、この巾着袋中身に底がないし貯金箱は何故か裏に16桁(千兆)までメモリがあるメーターがあった。

 

「それはいくらでもモノが入り出し入れ自由な袋と無茶苦茶金が入り取りだせる貯金箱だ。まだ中身は空だがな」

 

……なんだこのファンタジー分の無駄遣いの物体は…。

 

「カッカッカ、では私はこれで失礼するとしよう、また会うこともあるだろう。ではその時まで」

 

「お、おい」

 

そう言い終わるとダンダリアンから目玉が消えてただの緑色の本になった。

 

「結局なんだったんだアイツ…」

 

パッと出てパッと消えやがった…世界の観察者ねぇ。

 

「たっく…」

 

渋々身体を起こしてとりあえず巾着に貯金箱を投げ入れると吸い込まれるように貯金箱は巾着の闇へ消えてた。

 

「マジで四次元〇ケットかよ…いや四次元巾着か?」

 

次に本を手に取りパラパラ内容を確認するが至って普通の本だった。動いたりはしなさそうだ。

 

「ん?魔物図鑑?」

 

めくっているとその単語が目に入った。

 

「へーこれは便利そうだ」

 

そう思いページをめくると白紙だった。

 

「あれ?」

 

パラパラとめくってみるが白紙白紙白紙、文字も絵も何もなかった。

 

あの野郎…不良品を掴ませやがったな…。

 

次あったらぶっ殺すと憤慨していると1ページだけ絵が見えた。

 

「ん?今絵が…」

 

ページを戻し絵のあったページを見るとそこには胸をざっくりと開けたドレスと手足の鎧が一体化した服を着たアルビノの美人が描いてあった。

 

名前は…魔水晶女王(クリスタルノヴァ)

 

「…てっ俺じゃねぇか!」

 

本を地面にビターンと投げつけた。

 

しまった。思わずツッコんでしまった。

 

本を再び拾い上げ俺のページを見た。

 

 

魔水晶女王(クリスタルノヴァ)

 

《概要》

256体目の最後の魔王で魔力値は魔王3位、身体値は魔王4位、総合序列は魔王2位。

 

魔水晶世界の統治者で魔水晶生命の頂点に君臨するエレメント系最強の魔物。魔水晶生命を創造する能力と魔水晶を自由自在に操る能力を持ち更に6大魔法を全て使えまた、魔水晶系固有の魔法吸収能力も持ち合わせているため魔法を受けると逆に回復し、魔法を行使する時に髪の色が変わる。更に魔法を使わずとも力だけで大概の魔王をなぶり殺しに出来る程の身体値を有する。

 

 

…………………………………………………………………………………一言言わせてもらおう。

 

なにそれこわい。

 

256体中2位?魔水晶世界の統治者?魔法吸収能力?他の魔王をなぶり殺し?

なにそれこわい。

 

どんだけ強いんだよこの身体!確かに強い身体が欲しかったけど規格外過ぎるわ!人間のにの字のたて線の一本目すら原型がねぇじゃねぇかよ!というか息継ぎ無しでこれだけ叫んでるのに何故息切れしないこの身体!?」

 

多少錯乱しながら本に目を落とすとまだ説明に続きがあることに気が付いた。

 

《スリーサイズ》

99/57/84

 

《趣味嗜好》

GLの気があります。女性要注意。

 

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

全力で本を投げた俺は悪くない。



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黒光りするカマキリ

 

 

 

「しかしなんて身体能力だよ…」

 

投げ飛ばしてリアルにキラーンってなった本を2日掛けどうにか回収して四次元巾着(仮名)にぶちこんだ後、このクリスタルの森を抜けようとひたすら同じ方向に走り続けているのだが木が凄まじいスピードで前から後ろに移動していく、バイクで並木通りとか森の中を激走するような感覚だ。

 

まあ要するに凄まじく速い、時速150Kmぐらい出てそうだ。

 

しかも日の傾き方てきに半日はずっと走っているのに息切れひとつしない。

 

だがこの身体の凄まじさはそれどころではない…ふざけた事になんとコレで小走りなのだ……全力疾走したら一体なんキロ出るんだか、木にぶつかったら痛そうだからしないけどな。

 

「おっ!」

 

目の前に前世で見慣れた平原が見えた。

 

やっとクリスタルの森を抜けた。

 

そして俺は勢い良く飛び出すと平原に降り立った。

 

ふふふふふ……ついに。

 

「大地だ…俺は帰ってきたぞぉぉ!!」

 

 

………………………………………。

…………………………………。

…………………………。

 

 

特に意味はないぞ?

 

うん。べ、別になにか反応を期待した訳じゃないぞ?…………………コラッそこのなんかよくわからん小動物!そんな憐れなモノを見る目でこっち見んな!

 

小動物相手に1人漫才をしていると突然、日が遮られ俺を後ろから影が覆った。

 

「なんだ?」

 

ふと振り向くと5mはあろうかという巨大な黒いカマキリが俺を頭上から見下ろしていた。

 

振り上げられた巨大な鎌がキラリと光った。

 

なんだカマキリか、取り敢えず出たけど人里はどこだろう?正面には平原が広がるだけだし後ろにはクリスタル森とでかいカマキリがいるだけだ……………ん、カマキリ?

 

「………………カマキリ!!?」

 

俺が再び後ろを向いた瞬間に鎌が降り下ろされた。

 

あ、死んだわこれ。

 

あーあ、せかっく転生したのにな……ごめんなさいお母様、お父様、妹様、糞神様。親不孝テイクツーな息子(?)をお許しください。次生まれ変わるなら男で魔王になりたいです。後、次は最初に巾着や貯金箱だけじゃなくお金も欲しいな。それから妹よ愛してるライクじゃなくてラブの方で。

 

そこまで考えたところで俺に鎌が降り下ろされた。

 

「ふあっ…」

 

スポッ。

 

変な声と効果音が出た。

 

「あぅ…やめ…」

 

ふよんふよん。

 

確かに鎌は俺に刺さっていた…………胸の谷間に。

 

挟まった鎌を引き抜こうとカマキリが暴れるがなぜか俺の身体は全く動かないので胸を揺らすだけの行為になっている。

 

身体と服は傷ひとつないが男としての尊厳がガリガリ削り取られるのを感じる。

 

ブチッ…。

 

俺の中の何かがキレた。

 

「………この………この糞虫野郎ぉぉ!」

 

俺は片手で胸を庇いながらアッパーを放った。

 

「ギギュッ…!?」

 

ズドン!!

 

小さな断末魔と轟音を上げながらカマキリの頭が空高くぶっ飛んで雲に隠れ見えなくなった。

 

頭を失ったカマキリの黒い巨体は力無く俺に向かって倒れこんできた。

 

「寄るな大型昆虫!」

 

俺は谷間から鎌を抜くと背負い投げの要領で後ろに投げた。砂煙を巻き上げながらカマキリは地面に転がった。

 

なんて生き物だ……まさか人様の胸

を揺らすだけの虫がいるとは……カマキリ恐ろしい子。

 

「全く……ん?」

 

カマキリの死骸を見ると死骸が急激に収縮しボーリング球程の黒い宝石になった。

 

「なんだこれ?」

 

拾い上げてみるが特に変化はない。

 

そうだこういう時の……。

 

ちゃらちらっちらーん、攻略本。

 

「魔物魔物っと…えーとなになに魔物を損傷を少ない状態で倒すと魔結晶石になる事があります。魔結晶石は装備の材料にもなりまた非常に高く売れます。魔物図鑑のしたの方を見るとドロップアイテムや魔結晶石が書いてあります。魔物図鑑?さっき白紙だったような…」

 

ぺらぺらとめくると俺以外の絵が描かれたページが見つかった。さっきのセクハラカマキリが両鎌を上げ威嚇している絵が書いてあった。

 

 

《スティンガー》

 

ランク:A

討伐難度:S

 

系統:マンティス系

 

ドロップアイテム:

魔石スティンガー

黒マンティスの鎌

黒マンティスの脚

黒マンティスの装甲甲殻

スティンガーの卵巣

 

《概要》

マンティス系の最上位種、通称黒マンティス。巨体に似合わぬ機敏な動きと鋼鉄をもチーズのように切り裂く鎌を持ち全身が金属のような質感をしておりかなり固く魔法耐性もある。弱点は柔らかい腹。

また、蟻蟷螂

アリカマキリ

とも呼ばれ通常のマンティス種と違い蟻のように女王を中心としたコロニーを地中に形成している為、某お家の中の悪魔ことG様の如く一匹いたら百匹は軽くいると思っていい、ランクより討伐難度が高いのはそのせい。

ちなみに黒マンティスの卵巣は非常に珍味、ビールに良く合う。身体の方は柔らかい腹の部分を素揚げでからっと揚げで塩だけで食べるのがオススメ。強火で良く火を通せば固い殻もパリパリして食べやすくなる。

 

 

…………………ん?途中から料理本になった?と言うか食えるんだあのカマキリ、そういえばいつまで経っても空腹が来ないなこの身体、あと睡魔と疲れも、なんたるチート。

 

ふと本に向けていた視線を平原に戻すと横一列にキレイに並んだ数十匹のスティンガーがコチラを見ていた。

 

おや?まだ説明に続きがあるぞ?

 

《注意》

一匹殺すとそれから流れ出た体液によって周囲にいる仲間を呼びます気をつけて下さい。

 

「って手遅れ!?」

 

「キシャァァァ!!」

 

スティンガーは俺の声に合わせるように雄叫びを上げると一斉に進行を開始した。

 

距離は約500mってとこだろうか?いずれにせよ俺絶体絶命である。

 

取り敢えずさっきダンダリアンに叩き込まれた魔法でも使ってみようか。

 

魔水晶女王(俺)の魔法は魔法を使う前にすることがある。まず形態を変えることだ。別にしなくても使えるがダンダリアン曰く魔法を最高威力で使えるらしい。

 

「えーと…火形態(インフェルノモード)

 

そう唱えた瞬間俺の髪の色が紅に変わった。

 

「すげー変わった」

 

まる炎眼灼眼のう…おっとこれ以上は言えないな。まあ、あのうるさいうるさいうるさいの娘とは似ても似つかないけどな、主に体型が。

 

おっと、触っている場合じゃない、さっさと魔法を撃たなければ。

 

どんな威力になるか知らないが一発で一匹ぐらい倒せるならもうけもんだ。最悪全力疾走して逃げればなんとかなるだろう。

 

俺はカマキリの波に向け手をかざした。

 

火球(ファイアーボール)

 

俺が唱えたのは初歩の初歩の火の魔法だ。次の瞬間ての平に拳台の"白い火の玉"が現れた。

 

「白?ま、いっか……ていっ!」

 

野球ボールを投げるように火の玉を飛ばすと真っ直ぐと進んでいった。

 

そして、一匹のスティンガーの頭に触れた。

 

 

 

ズドオオオォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!

 

 

 

その瞬間、俺の視界は真っ白になった。

 

 

 



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色々規格外な魔法

 

 

 

強い光を浴びてとっさに目を瞑っていたので開けてみると辺りがとんでもないことになっていた。

 

「なんだよこれ……」

 

まず最初に目に写ったのは赤々とした焦土だ。所々に赤熱した岩や石が転がっている。

 

更に、地表はまるで隕石の衝突の如く500m級の巨大なクレーターが出来ている。ん?中央に溜まった赤い所って溶岩じゃないか?

 

爆心地にいたのに何故か俺の立つ半径1m程の地面にだけさっきと変わらぬ緑があり俺が無傷なのは魔力吸収能力のせいだろうか?

 

あれだけの数のスティンガーはたった一撃の火球で地表面もろとも融解したということだろう。

 

あれ?火球って小太陽を造る呪文だっけ?……ってそんなわけねぇだろ!?

 

「これはヤバい…とりあえず暫く形態変化はお蔵入りだな…女王形態

ノヴァモード

 

髪の色が紅から白に戻って行った。一様このアルビノ形態がデフォルトである。

 

それはそうとこんなん人里で使った日にゃあ即人類の敵決定だな。いや…そもそも魔王が元から人類の敵という設定だったらヲワタけどな。

 

それを抜きにしてもこの威力は某メラがメラゾーマ級の威力の大魔王を遥かに越えている。というか究極魔法撃ったらどうなるんだろう?………間違いなく国1つは滅ぶな…。

 

「仕方ない、暫くは形態移行を封印して魔水晶魔法を中心に使うか」

 

魔水晶魔法とは前にダンダリアンの言っていたように魔水晶族固有の魔法だ。とは言ってもあの世界(クリスタルワールド)に俺以外の魔法が使えそうな生物がいなかったから魔水晶女王(俺)の固有魔法に近いけどな。

 

まあ、どういう魔法かと言うとこういう魔法だ。

 

魔水晶の剣(クリスタルブレイド)

 

そう言いながら手を空にかざすと俺は魔力を放出した。

 

魔水晶魔法は思ったモノを魔水晶で創造し操作出来る能力だ。

 

俺が考えた通りに全てのありとあらゆるモノを魔水晶で創造できる。

 

例えば物質から生物、更には世界に至るまで万物の全てが創造できると言うことだ。

 

しかも魔水晶は他の魔法を吸収する特性がある為、魔法では逆に増幅しダイアモンドを遥かに越える硬度を誇る物質だという。

 

俺の手から出た魔力がダイアモンドダストのようにキラキラと結晶が手に集まりだし2秒程で象を結び"100m"程の巨大で淡く白い光を放つ両刃の剣が現れた。

 

…………………いかん失敗した。1mぐらいにしようと思ったのにな、まだまだ練習が足りんな。

 

うむぅ…余りにも魔力が膨大過ぎて例えるならドラム缶に入った水をティースプーンに注ぐような作業だからな、加減が異常に難しい。

 

更にはまだ造り出すモノのイメージが俺の中に定着していないので今は出すモノを声に出さなければ成功しない。

 

まだまだこの身体を3%も扱えている気がしないな。

 

それはそうとこんなもの造ったからにはもちろん理由がある。

 

俺の目の前の地面が不自然に突起しているからだ。

 

次の瞬間そこから黒い何かが飛び出した。

 

「ジュアァァァァァ!!!!」

 

ああ…来た来た。

 

下部を殺られ過ぎてキレたカマキリの女王様が地中から文字通り飛び出てきたな。

 

今度のは一匹だがこれまでのと比べても異様にデカイ、ほぼ山だ。50mぐらいの体躯に普通のスティンガーより遥かに強靭そうな巨大な鎌と黒光りする装甲のような甲殻が目を引く。

 

だが、一番の特徴は女王様はその巨体からは考えられないスピードで現在進行形で空を飛んでいる事だろう、少なくともヘリよりは早そうに見える。たぶん普通の人が見たらトラウマになりそうな光景だ。

 

「はぁ…」

 

皆さんもそろそろ思っている頃だろう…………くどいわテメぇら!いい加減にしねぇと話が進まねぇんだよ!!

 

俺は無駄にデカイ魔水晶の剣を羽虫に向かって飛ばした。

 

いや、飛ばしたとは言うが俺は今の瞬間も一番も剣に触っていない。

 

つまり某ガ〇ダムのファ〇ネルよろしくで大半の小中高校の校庭の斜めの長さより長い剣を飛ばしたのだ。

 

規格外過ぎてアクビが出るわ。

 

「死ねゴラァァァ!!」

 

剣は軽く女王様の飛ぶ3倍程の速度を出しながら飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は"黒い地面"に寝そべって青空を眺めていた。

 

そう言えばいつの間にか太陽が赤い太陽に戻っていた。

 

ひょっとしてクリスタルワールドの中だけ限定なのかも知れないな。

 

それはそうと"コイツ"便利だな。

 

「ほれ、飛べ飛べ~」

 

「キ、キシャァ……」

 

ふむ、快適快適。ん?何してるのかって?さっきいた女王様をO・HA・NA・SHI(調教)して足につかってるだけだ。

 

え?絶対魔水晶使ってお前がとんだ方が速いって?

 

またまたご冗談を~。自分で車運転するよりタクシー乗った方が楽だろ?しかもコイツは飛べるし乗車賃無しだ。最高だね。

 

まあ、ちょっと運転が荒っぽいし今寝そべってる頭の上にはシートベルトも命綱も無いが些細な事だ。うんうん。

 

そうそう、剣は消し方が解らなかったので突き刺して置いてきた。誰かが見つけたら驚くだろうなぁ。

 

「よっと…」

 

立ち上がって地上を覗くと平原ではなく森が広がっていた。

 

地上500mぐらいを飛んでいるようだ。

 

人のいる方へ行けと命令しているので直に村にでも着くだろう。

 

こんな所に立てるのは異常な身体能力とそれのお陰で落ちても絶対に死なないという保証があるからだろう。たぶん手から落ちても突き指すらしないと思う。

 

「ん?」

 

よく見ると森の中で白のワンピースを着た十代半ば程の女の子が走っていた。

 

チートぼでぃのお陰で表情まで良く解るが何か焦っているようだ。

 

ふと彼女の後ろを見ると10m程の巨大な毛虫のような気色悪い魔物が彼女を追いかけていた。

 

「うぇぇ…気持ちワル……」

 

あんなもんに追いかけられるなんて夢に出たら暫くうなされそうだ。

 

「でも夢じゃなくて実際に追いかけられてるもんな、御愁傷様……じゃない!命令だあの少女を助けろクロロ!」

 

ちなみにクロロとはコイツの名前である。さっき付けた。

 

「キシャァァァ!!」

 

クロロは元気良く雄叫びを上げると下に直滑降した。

 

ちょっ…まっ…落ち…アー…。

 

 

 



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実は凄いぞクロロちゃん

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

私は息を切らしながら森の中を必死にこの静寂の森の最上位捕食者のクローラーワームから逃げていた。

 

「キュリリリリ!!」

 

「ひっ…」

 

後ろから聞こえるクローラーワームの黒板を引っ掻いた金切り声のような声に一瞬強張るがそれでも足は止めなかった。

 

止まったら食べられてしまう、あの魔物に…。

 

「くっ…クローラーワーム…ステータス」

 

私はそう言うと頭の中にクローラーワームのステータスが思い浮かんだ。

 

 

貪り喰らうもの(クローラーワーム)

 

ランク:B

身体値:9000

魔力値:0

 

 

クローラーワームは魔力を一切持たない代わりに身体値がAランク程もある魔物で人里の近くに発見されれば領主の討伐隊が組まれるほど危険な魔物…。

 

ランクG(最低ランク)の私が天地がひっくり返っても勝てる相手じゃない……私はまだ"契約魔物(パートナー)"もいないしそもそもFランクの魔物と契約が出来るかも怪しい実力なのに…。

 

「あっ…」

 

私は考えていたせいで足下の木の根に躓いて転んでしまった。

 

痛い…足首が真っ赤になって立てそうもない……。

 

「キュリリリリ♪」

 

「イヤッ来ないで!!」

 

私が動けなくなった事を確認するとクローラーワームは速く動くのを止め、這って逃げる私を狩を楽しんでるようにゆっくりと近付いて来た。

 

違う…きっと最初から私の走る速度に合わせて追いかけて来てたんだ……いや…死にたくないよ…ただ私は私みたいな落ちこぼれでも契約魔物になってくれる優しい子が欲しかっただけなのに…なんで…なんでこんな…。

 

「いやぁ…助けてぇ…誰かぁ…」

 

だけど、そんな言葉はこんな森の中では通じることもなくクローラーワームのおぞましい口から数本の触手が伸びて私にゆっくり、ゆっくりと向かってきた。

 

ああ…私もう死ぬんだ…。

 

私は観念して目をぎゅっと瞑った……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あれ?

 

いつまで経っても触手が私の身体に触れる感触が来ないので私は恐る恐る目を開けた。

 

「キュ…キュリリ…キュ…キュリ…」

 

そこにはやはりクローラーワームがいた。

 

だがどこか様子がおかしい。

 

よく見るとクローラーワーム私ではなく空を見上げて小刻みに震えていた。良く辺りを見渡すとまだ正午のはずなのに日が陰ったように暗かった。

 

空?

 

私は空を見上げた。

 

「……う…うそ……な、なんで?」

 

見上げた先には漆黒があった。

 

森の木々の隙間一杯の漆黒と赤く毒々しく輝く2つの光が見えた。

 

「ぐ、死神(グリム・リーパー)……」

 

そう言うとまた頭の中にステータスが浮かんで来た。

 

 

 

死神(グリム・リーパー)

 

ランク:S

身体値:90000

魔力値:70000

スキル:

《スティンガー創造》

《超再生能力》

《闇魔法Lv31》

 

 

この魔物を知らない人はこのスピカの国には多分いない…。

 

小さい頃からこの国

スピカ

の子供は何か悪さをするとグリム・リーパーが来るぞって戒められているから…でもグリム・リーパーを見た者はほとんどいない、私だって今の今まで図鑑でしか見たことが無かった…。

 

マンティス系の頂点、虐殺平原の女王、魂喰らい、魔王にもっとも近い魔物。

 

呼び方なんていくらでも有るけどまさかこんな近郊の森に出てくるなんて……。

 

Sランク……別名、禁忌(タブー)ランク。

 

あまりにも高過ぎる戦闘能力の為、国からすら野放しにされている魔物…動く天災とまで言われているランク。

 

その一角が今、目の前にいるなんて……。

 

私が呆けているとクローラーワームが逃げ出した。

 

「キュリリリリ!?」

 

さっきまでも私への余裕はどこへやら、一目散に逃げている。

 

それを眺めていると突然突風が吹き荒れた。

 

「うっ…」

 

私は思わず目を瞑ったけどすぐ開けて見ると森の木々が斜めにずれていた。

 

「え?」

 

私の声と同時ぐらいに木々は地面にずり落ちた。

 

木々は一撃で斬り倒されたように滑らかな表面をしていた。

 

木々が無くなった事でグリム・リーパーの全貌が見えるようになった。

 

まるで町を守る外壁のように長く大きい身体、騎士の持つランスなんかの何十倍も太く強靭な四本の脚、二本の触角と裁ち鋏のような顎の付いた頭、どんな名工の剣であってもそれを嘲笑うかのような輝きを放つ2つの巨大な鎌。

 

それらを全て深い闇色に統一したその姿はまさしく死神だった。

 

多分、突然木々が倒れたのは私の頭の上を鎌が通過したから…なんて切れ味…なんて力…森そのものを切り裂くなんて…。

 

「キシャァァァァァァァァァ!!!!」

 

グリム・リーパーは大地を痺れさせるような咆哮を上げると次の瞬間クローラーワームに鎌が突き立っていた。ブシュッという音を立てて緑色の体液が噴き出した。

 

鎌を降り下ろすところが全く見えなかった…あの大きさであんなに速いなんて……これがグリム・リーパー…。

 

グリム・リーパーは鎌に突き刺さってもまだうねるクローラーワームを持ち上げると頭から丸飲みにした。

 

暫く、ぐちゃぐちゃと柔らかいモノが磨り潰される音が辺りに響いた。

 

そして食べ終わるとグリム・リーパーは私へと赤い目を向けた。

 

あ、死んだわ私。

 

そう思った瞬間、全身の力が抜け目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アホ!突然、急降下するな!死ぬかと思ったわ!」

 

俺はジェットコースターやらフリーフォールやらの尻の浮く感じのする絶叫系が嫌いだ。

 

死なないとは言え突然、命綱無しフリーフォール状態になったら誰だって死んだと思うだろう。

 

なんとか触角に掴まり事なきを得たが。

 

ちなみに俺が恐怖で暫く竦み上がっている内にクロロは一部の森の森林伐採とグロテスクな食事を済ませていたようだ。

 

「さて、女の子わっと…」

 

俺は頭から飛び降りると(高さ約50m)意味もなく膝を抱えくるくると五回程回転してから片手で地面に着地しようとした。

 

くるくるくるくるくるズドン!

 

…………………………全く痛みはないが片腕が埋まった。バカなことはやるもんじゃないな。

 

俺は腕を引き抜くといつの間にか気絶している彼女に向かった。

 

余談だが、膝を抱えた時、物凄く胸が邪魔でした、まる

 

「とりあえず彼女をどうにかしないとな…が、その前に…おいクロロ、一旦消えろ」

 

そう命じるとクロロの身体がボヤけ崩れた。更に崩れたクロロが俺の影に急激に吸い込まれるように入ると何事も無かったように俺の影に同化した。

 

闇魔法の影潜(シャドーダイブ)だ。

 

影という対象に自分を同化させる呪文で、闇魔法が20Lvの時に覚える。

 

クロロは虫の癖に魔法が、しかも隠密性の高い闇魔法が使えるようなのであの巨体も楽々隠す事ができるのだ。

 

最初は巾着にぶち込もうと思ったが暇潰しにクロロのステータス闇魔法のLv見て止めた。

 

それはもう置いておき彼女よく見る。

 

色白の肌に金髪のショートヘアの可愛い女の子だ。

 

顔立ちは日本生まれ日本育ちの俺からするに日本人のハーフのように見えるが多分、これがこの世界のデフォなんだろう。よく考えれは鏡の前で見た俺もそんな感じだったな。

 

「うんしょっと…」

 

硬い地面に寝かすのも可哀想なのでとりあえず俺が彼女を膝枕しておく事にした。

 

ああ…こんなこと前世にされたかったな…主に妹に。

 

「すー、すー」

 

胸が邪魔で膝にいる彼女の顔が見辛いが音で寝息を立てているのが解る。走りすぎて疲れたのだろう可哀想に。

 

ちなみに俺の地面についている髪やら服やらの汚れについては一切問題ない。

 

何故か汚れまで弾くのだこの身体と服は、どんなご都合主義だと思ったが便利なので許す。

 

そう言えば俺も随分寝てなかったな…肉体は大丈夫でも人間だった習慣と精神的に寝たいと思う。

 

俺は彼女が起きるまでの間寝ることにした。

 

目覚まし兼自動魔物撃退装置(クロロちゃん)も影にセットされてるので大丈夫だろう。

 

 

 

俺は瞼を瞑った。

 

 

 

 



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水晶の王女様って…俺?

 

 

 

『お母さん!ご本読んで!』

 

『あらあら、じゃあ今日はこれにしましょうね』

 

『なにそれ?』

 

『これは"水晶の王女様"って言う本よ』

 

『すい…しょう?』

 

『そう、とってもキレイな宝石のことよ。じゃあ読むわね』

 

『うん!』

 

『昔々それはうーんと昔。水晶の王女様は生まれました』

 

『王女様は凄い力を生まれつき持っていて生まれるとすぐに王女様は自分の世界を作りました』

 

『王女様はきらめく白い髪に赤い宝石のような目をしていました』

 

『王女様は自分の世界でとっても長い時間暮らしました』

 

『王女様はある日ふと思いました。外の世界が見てみたい、と』

 

『そして王女様は旅に出ました』

 

『それでそれで!王女様はどうしたの!』

 

『ふふふ、それでね…王女様は…』

 

王女様は……王女様は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

 

目が覚めて最初に目に入ったのは傾いた木々だった。

 

「夢?」

 

随分懐かしい童話の夢だったなぁ、私が小さい頃に一番好きだった話。

 

水晶の王女様が色んな世界を旅する話で最後は…最後は…どうなるんだっけ?

 

私が物語を思い出そうとしていると頭がついてる地面が柔らかい事に気付いた。まるで膝枕されてるような感触が……。

 

私が何気なく上を向くと白くて丸い山が2つあった。

 

「え?」

 

「おはよう寝坊助ちゃん」

 

私が困惑していると山の向こうから凄く透き通ったような女性の声が聞こえた。

 

私が身体を起こして後ろを向くと女性がいた。

 

「…!?」

 

その女性は透き通るような白い肌に白銀の糸のように白く細い髪、更に赤い宝石のような目をした女性はまるで物語の水晶の王女様のみたい…。

 

でも…それ以上に目を見張るのがメロンでも入ってるような大きな胸…。

 

ふと、自分の胸に目が行った。

 

………………………………………違う…彼女が大きすぎるだけ…私は小さくない…彼女が(ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ぼそぼそ)巨乳なんて滅べばいいのに……」

 

おい…聞こえてるぞ、好きで巨乳になったわけじゃねぇよ。

 

そんな恨みがましい眼でこっちを見るな。

 

「お前、名前は?」

 

「巨乳なんて…え?あ、はい。私はリリウム・イーグルアイ・ベイオウルフです」

 

そう言うと彼女は手を前に合わせてペコリと頭を下げた。

 

いかにも育ちの良いお嬢さんと言う感じだ。

 

「そうか、どうしてこんな森の中に?」

 

「それはその…」

 

「キュリリリリ!!」

 

そこまで言った所で黒板を爪で引っ掻いたような声に遮られた。

 

「ひっ…クローラーワーム!?」

 

「クローラーワーム?」

 

後ろを振り向くとさっきの巨大毛虫がいた。

 

うえぇ……近くで見ると更にキモいな…全身を覆う針が忙しく蠢いてるし、頭から大量に触手のようなもの伸びてるし。

 

「ふむ、クローラーワームステータス」

 

 

貪り喰らうもの(クローラーワーム)

 

身体値:9000

魔力値:0

 

 

「ふ…戦闘力たったの9000か」

 

「なにいってるんですか!?速く逃げないと…」

 

ほら、なんとなく言ってみたいじゃん?ラディ〇ツ的な。

 

俺は右手の人差し指を指を巨大毛虫に向けた。

 

光弾(レイ)

 

指の先に直径1m程の黄色く光る光の球が現れた。

 

「え…光魔法?」

 

「初歩の初歩だ。失せろ害虫」

 

光が俺の指から解き放たれた。

 

その瞬間、叫ぶまもなくクローラーワームの頭と直線上の木々を消しながら空へと消えていった。

 

まあ、形態以降しなければこんなもんか。

 

てっ…キモ!?頭無くなってもバタバタもがきやがる。

 

死ね!死ね!

 

バスンバスンと光弾を撃ち込むとクローラーワームの身体は地面と共に跡形もなく消えた。

 

「凄い…光弾であの威力なんて…」

 

俺のSAN値は大分下がったがリリウムちゃんは唖然とした様子でこちらを見ていた。

 

「とりあえず家までは送ってやるよ。俺も町まで行ければ…」

 

「あの!」

 

リリウムちゃんは俺の手を握ってきた。

 

「ん?」

 

「私を弟子にして下さい!」

 

「は?」

 

「私も光の魔法持ちなんです。は、恥ずかしい値ですが…ステータスを見てください」

 

「ん?リリウム・イーグルアイ・ベイオウルフステータス」

 

ちなみに当然のようにステータスを開いているが、相手のステータスを見れる条件は自分のステータスに表示される名前をフルネームで言い、その後にステータスと言うことだ。魔物なら種族名でステータスが見れる。

 

 

リリウム・イーグルアイ・ベイオウルフ

 

種族:人間

年齢:16

職業:学生

ランク:G

身体値:150

魔力値:220

スキル:

《駆け出し魔物使い》

《光魔法Lv2》

 

 

「低っ」

 

合わせても500いってないな…これは…その…御愁傷様です。

 

「ご、ごめんなさい。わ、私落ちこぼれで……」

 

リリウムちゃんはしゅんとして肩を落としてしまった。

 

いかん、美人は幸せになるためにいるのだ。

 

「弟子か…」

 

確かに、俺はLvと魔力値だけ見れば大賢者も真っ青であろう。

 

だが、だ。俺は生後5日半だ。ぶいぶい。

 

とは言え魔法だけはダンダリアンに叩き込まれたならなんとかなるな。

 

「俺で良いなら構わないぞ?」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

リリウムちゃんは花が咲くような笑顔を浮かべた。

 

ああ、可愛い。これだけでご飯三杯は行けそうだ……ごめん三杯は無理、せめてキムチかメンマか妹の顔写真くれ。

 

そう言えば昔、『お兄ちゃん!ご飯は私が炊いたんだよ!でも炊きすぎちゃた…えへへ』って妹に言われた時はご飯だけで十杯は軽く行けたな。

 

「ありがとうございます!私には夢があるんです!」

 

「へー、夢?」

 

夢は良いことだな。うんうん。

 

「笑わないで下さいね?」

 

「笑わないよ」

 

「いつか童話の水晶の王女様に会うんです!」

 

「は?」

 

童話の水晶の王女様…?

 

「はい。童話ですけどずっと昔からこの森のずっと先に魔水晶世界(クリスタルワールド)が確かにあるんです!私は見たことはありませんがきっとそこにいると思うんです!それで…もし、居るなら水晶の王女様と一緒に旅がしたいんです!」

 

普通なら童話を本気にしてるメルヘン娘だと思うだろう…だがその森でちょっとまえに生まれた俺からすると間違えなくその童話の水晶の王女様って俺の事だろ!?

 

「そうか、それならきっといつか会えると思うぞ?」

 

ユーの目の前にいますけどね。これじゃあ名前は明かせないな。

 

「え……笑わないんですか?」

 

「笑わないよ。お前は信じてるんだろ?水晶の王女様とやらを」

 

水晶の王女様?呼んだ?俺だよ俺。

 

「し、師匠は優しいんですね…」

 

師匠か、なんか良い響き…。

 

「ま、そろそろ町に戻ろうか?町ってどっち?」

 

「あ、はい!あっちです!」

 

俺とリリウムちゃんは歩き出した。

 

しかし…こんな森の中ので会った変な女の事を完全に慕うとは…リリウムちゃんは天然なのか?天然なんだな。萌えポイント1追加だ。

 

彼女の住む町に到着したのは日が傾いた頃だった。

 

 

 



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レズっ娘師妹

 

 

 

結局、リリウムちゃんが言う町に着いたのは夜だった。

 

「あれが魔物都市ポラリスです!」

 

訂正、町じゃなくて都市だった。

 

元気よくリリウムちゃんの指差す方向には巨大な鉄扉に守られた門があり、それを外壁が囲っていた。

 

都市の門や外壁は50m程の高さがありそうで更にそれがどこまでも続くような光景は現代人の俺でも圧巻だった。

 

ポラリス…北極星か……魔物都市と言うのは気になるがそれより一つとても気になることがある。

 

「…到着したのは良いがあの門…閉まってないか?」

 

「え……えぇぇぇぇ!?あ…夜には正面大門は閉まるんでした……」

 

「oh…」

 

それは大変だ。入れないじゃないか。

 

「いえ、入れないことは無いんですがここから反対側に回らなければならなくて…」

 

「ちなみにこの巨大な外壁をつたって裏に回るまで掛かる時間は?」

 

「えっと…えへへ、半日ぐらいあれば…」

 

「却下、ダルいな正面から入れば良いだろ」

 

「え?でもどうやって…きゃっ!?」

 

「ちょっと飛ぶぞ、と」

 

俺はリリウムちゃんを小脇に抱えると外壁目掛けてジャンプした。

 

「へ?きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

ははは、そんなに喚くなよ。

 

高々100mぐらいジャンプしただけだろ?

 

俺はそのまま内壁の近くにそっと着地した。

 

「ひいぃぃ…師匠ぉぉ…ホントに人間ですかぁぁ?」

 

「ははは、やだな。(元)人間に決まってるじゃないか」

 

今でも人間だぞ?心は。

 

「ふぇぇぇ…腰抜けちゃいましたぁ……」

 

リリウムちゃんは立てなくなってしまったようだ。仕方ない。

 

「よっと…」

 

「はわっ!?い、いったい何を?」

 

「お姫様抱っこ…かな?立てないんじゃ仕方あるまい」

 

今は(身体は)女同士だ。何も問題あるまい。

 

「あ、はい…」

 

リリウムちゃん一々反応が可愛いな、名前の厳つさからは想像できない。

 

「家はどこだ?」

 

「え~と…街のあっちです!」

 

「あっちだな、とうっ」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!?また飛ぶんですかぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛇足だが、目撃者の証言からこの街の一角では夜に叫びながら空飛ぶ白い謎の女の都市伝説が出来たと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだよな……?」

 

「はい!家です!」

 

「もう一度聞くぞ?ここだよな?」

 

「はい!私の家ですよ?」

 

「はぁ…病院行こうか…リリウムちゃん」

 

「な、何で信じてくれないんですか!?ここが私の家ですよ!!」

 

だってお前ここ…。

 

「公爵家だろ…」

 

ドーンと言う表現が正しそうな凄まじく立派な門構えの建物が建っていた。

 

「私はベイオウルフ家の長女ですよ!」

 

「嘘…どう考えても町娘の末っ子だろ」

 

「ヒドイです!?」

 

「リリウム?…リリウムか!?」

 

リリウムちゃんとコントをしていると檻のような門の中から声を掛けられた。

 

「あ!お父様!」

 

抱かれたままのリリウムちゃんの父親のようだ。

 

「い、今開けるぞ!」

 

「はい!お父様!」

 

父親とやらは門を開けるとリリウムちゃんに駆け寄った。

 

ふむ、娘思いで何よりだ。

 

リリウムちゃんは父親似らしい、父親は金髪だ。眼の色はリリウムちゃんと違い青だがな。

 

ちなみにリリウムちゃんの眼は緑色だ。

 

「心配したぞ!こんな夜遅くに帰るとは…」

 

「ごめんなさい…お父様…」

 

「まあ、帰って来たから良しとしよう…で?抱えてくれている美人はいったい誰だね?」

 

はて?美人とは一体誰のことやら…………………ああ……解ってるよ…俺だよな…はあ…。

 

「いや、それよりリリウム…まさか…怪我をしたのか!?」

 

ああ、リリウムちゃんがお姫様抱っこされてるからな…いや、俺が先だろお父様。

 

「いや、違うの…その…もう、師匠…あんなに激しくスル(ジャンプする)からじゃないですか…」

 

と、頬を赤らめてイヤンイヤンと首を振りながらリリウムちゃんは答えた。

 

結構怖かったのだろうな。

 

「ははは、(空を駆け回る体験は)中々イイものだっただろ?」

 

「もう…師匠ったら…今度は優しく(運ぶことを)シてくださいね?」

 

「それは約束できないなぁ。可愛いなあ、リリウムちゃんは……ボソ(妹の次に)」

 

「も、もう…し、師匠ったら…お世辞が過ぎますよ…」

 

はて?何か親の前でしてはいけない会話をしているような気がするが気のせいだろ。うんうん。

 

「リリウムが……………」

 

ん?

 

「リリウムが禁断の花園に足を踏み入れてしまった!!!?リリウム!私のリリウム…そっちはダメだ…百合園に行っては……リリウム…うっ(ガクッ)」

 

お父様とやらは話途中で段々目が虚ろになってきて終いにはぶっ倒れてしまった。面白いお父さんだ。

 

「お父様!?」

 

はて?何か気絶するような要因があっただろうか……『もう、師匠ったら…あんなに激しくスルからじゃないですか』『ははは、中々、イイものだっただろ?』『も、もう、し、師匠ったら…今度は優しくシてくださいね?』『それは約束できないなぁ、可愛いなあリリウムちゃんは』『も、もう…し、師匠ったら…お世辞が過ぎますよ…』…………………ふう、結論から言おう。

 

エロ同人漫画出せるわ。

 

タイトルは師弟百合姦物語とか?禁断の花園でサブタイトルはレズっ娘師弟とか?

 

なんでもいいがそんなもん間近で見たら親ぶっ倒れるわ。

 

「お、お父様!しっかりして!」

 

やっと歩けるようになったリリウムちゃんが俺の腕の中から離れ、お父さんを揺すった。

 

お父さんは『すまんマリアよ…娘の子は見れそうに無い……』とか『やはり母の温もりを求めたか………孫が見たかった…』とか地面に突っ伏して口から白い魂のようなものを吐きながら呟いてる。

 

おいコラ、今、母の温もりがどうとか言っただろ、俺は男だ、全く。

 

しかし流石ファンタジー、リアルに口から魂が見えるぜ。

 

しかし…このカオスどうしようか?

 

俺は親子漫才のBGMをバックに現代日本からは考えられない満天の星空を見上げながら思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お父様の誤解を解いた頃には日が登っていました。やったね!リリウムちゃん!晴れて朝帰りだよ、まる

 

 

 



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ベイオウルフ家の家庭事情と二女(自宅警備員)

 

 

 

「いやー、クローラーワームから助けて頂いた上、娘を家まで送り届けて貰った上にリリウムの教師にまでなっていただいてどうもありがとうございます」

 

朝まで掛かり何とかお父様…もといヴィッセル・スワローアイ・ベイオウルフことヴィッセルさんの誤解を解き、今は屋敷の客間にいる。

 

 

んで、俺のステータスを公開しないという条件付きでリリウムの家庭教師を住み込みですると言う事で落ち着いた。無論、給料も出る。

 

こんないかにも妖しそうな女を好条件で雇うのは、何でも光魔法を使える人が極稀な上、基本的に光魔法使いは国の騎士団に入っている為、雇うならトンでもない金額が必要らしい。

 

それがどれぐらいかは解らんが、公爵家が雇わないぐらいなら相当取られるんだろうな。

 

ちなみに月謝は金貨三枚だと。

 

だが、俺はこの世界の金貨の価値が解らないぜ!ぶいぶい!

 

「いいえ、俺はリリウムちゃんの師匠ですから」

 

ちなみに、何で俺をそんなに信用するんだと聞いたところ、リリウムちゃんが俺に非常になついており慕っているからそんな人が悪い奴な訳がないと言われた。

 

「師匠ー!よろしくお願いいたします!」

 

リリウムちゃんがペコリと頭を下げた。

 

うむうむ、リリウムちゃんはどことなく妹に似てて可愛いいなぁ…でも何で俺の膝の上にいるんだ?しかも俺の胸に寄りかかって、でも可愛いから許す。

 

「所でスドーさん」

 

「はい?」

 

ステータスを見られるのはマズいので地球での本名の須藤(スドウ)と名乗っている。

 

どうもスドウではなくスドーと呼ばれているがまあ、いいだろ。

 

「家事とかできますかな?」

 

「出来ますよ?」

 

ふっ…誰が妹に家事を教えたと思っている……この俺だ!

 

食事を作る度に産業廃棄物(ダークマター)が出来上がり、白いシャツを七色に染めるバリバリのキャリアウーマンの母親に代わり俺が須藤家の家事全般を行っていたのだ!

 

お陰で『いつでも嫁に行けるな』と母親に言われる程だ……………………………………………………………………本当に嫁に行けるよう(女)になっちまったよ……あ、目から塩水が。

 

「どうしたのですかな?」

 

「いや…昔を思い出してちょっとね…」

 

「スドーさん…名を偽るのは深い事情があるのですな」

 

「師匠……」

 

いや違う。とは言えないピュアな目で見つめてくる二人、コイツら確実に親子だ…。

 

「そ、それより家事が何ですか?」

 

視線に耐えられなくなり話を戻した。

 

「おお、そうでした。出来れば家事もして貰えませんか?」

 

「え?家事を?別に構いませんが公爵家なら使用人も沢山いるんじゃないですか?」

 

勝手な貴族のイメージだけどな、メイドやら執事がズラーっと。

 

「いや…ウチは…」

 

「私が説明するのですよ」

 

ヴィッセルさんが口ごもるとヴィッセルさんの座るソファーの後ろから半眼の眠そうな顔をした金髪の女の子がひょこっと顔を出してきた。

 

「リリアナ…一体どこから入ってきたのだ?」

 

「あ!ただいまですリリアナ!」

 

「お帰りなのです。おねーちゃん」

 

そう言えばリリウムちゃんが自分は長女だとか言ってたな…本当だったのか。

 

「すどーさん。私はリリアナ・アロバトロスアイ・ベイオウルフなのです。よろしくーなのです」

 

この娘はリリアナちゃんと言うらしい。

 

リリウムちゃんと違い髪はツインテールにして服はゴスロリ服のようなものを着ている。

 

ツインテール、萌えポイント1追加だ。

 

袖の長さが自分の手より長い為、手が袖のなかに隠れ、萌を醸し出している。

 

ゴスロリブカブカ袖、萌えポイント1追加だ。

 

リリウムちゃんと顔はとても良く似ているが、リリウムちゃんより遥かに胸があり逆に身長は10cm以上小さいようだ。

 

ロリ巨乳、萌えポイント1追加だ。

 

「わーい、合計3萌えポイントなのでーす」

 

そう3萌え…って心読まれた!?

 

「リリアナまた訳の解らない事言って…師匠を困らせちゃダメですよ」

 

「なにやら不思議な電波を受信したのですよー」

 

バカな…魔王の心が読めるはずなど…リリアナ・アロバトロスアイ・ベイオウルフ、ステータス。

 

 

リリアナ・アロバトロスアイ・ベイオウルフ

 

種族:人間

年齢:14

職業:自宅警備員

ランク:B

身体値:3600

魔力値:8000

スキル:

《魔物使い》

《土魔法Lv10》

《電波少女》

 

 

自宅警備員って何だよ………心を読めたのは電波少女のせいか、恐るべしロリツインテゴスロリ萌え袖巨乳…。

 

「あー、それで家の事を簡単に説明すると、とっても貧乏なのです」

 

…ナンですと?

 

「公爵家なのに?」

 

公爵家って言ったら爵位は一番上、超上流階級じゃないか。

 

「爵位は一番上でも財産の量とは比例しないのです」

 

「そうなのか?」

 

「そうなのです。確かにベイオウルフ家はスピカ国が創国以前から今まで500年以上ある由緒ある名家なのですよ」

 

へー、凄いじゃん。

 

「だがしかし、由緒やら名家やらで暮らせたらお金はいらないのです」

 

…眠そうな顔してズバズバ言うねこの娘。

 

「なぜなら、魔物都市ポラリスを含めたベイオウルフ領は他の公爵領の約10倍と言う広大な領地を持っているからなのです」

 

「?……それって問題あるの?」

 

「ちっちっち、大問題なのです。広大な領地を持っていても収入は他の公爵家と大差無いのです」

 

「え?それって」

 

「そうなのです。他の公爵家と同じぐらいの収入で10倍の領地を治めなければならないのです」

 

うわぁ…。

 

「更に、家の領地の約85%がランクB以上の魔物の巣窟になっているのでとても人が住めたものではないのです。実際の収入源はポラリス内での収益ぐらいなのです」

 

「えげつないなぁ…」

 

「ちなみに領内の10%は魔王が住むと言われる魔宮となっているのです。ポラリスを中心として東部に"魔水晶の森"

、北部に"理想郷"、南部に"棘の山"と言う名の魔宮があり、西部には王都フォーマルハウトがあるのです」

 

って事は人が住めるのは精々5%ぐらいの土地かよ……スイマセン…多分魔水晶の森は俺の領地です。

 

「トドメにこのポラリスの防衛費やら、兵士の給料やら、兵士の死亡手当てやら、王都への納税やらetc…家の家計は火の車なのです」

 

「なるほど、つまり俺に家庭教師とメイドさんを頼みたいと?」

 

「そう(だ)(です!)(なのです)」

 

ハモりやがって…。

 

「だが断る。と言いたい所だが、乗り掛かった船だ。それぐらい構わないぞ?」

 

「ありがとうございます師匠!」

 

リリウムちゃんが俺に抱きついてきた。コラッ胸に顔を埋めるな。

 

「良かっなぁ」

 

「良かったのです」

 

残りの二人はその光景をほのぼのと見ている。

 

「これでやっとマトモな夕飯が食べれそうだ」

 

「食べれそうなのです」

 

「おい、ちょっと待て」

 

『?』

 

二人合わせて首を傾げるな、と言うかおっさんの首傾げとか誰得だよ。

 

「その会話だと一体お前ら何を食べてたんだ?」

 

「我が家には誰もご飯を作れる人が居ないので素材本来の味を楽しんでいたのですよ」

 

ヤバい…俺の居ない日の須藤家と大差無い。

 

「不憫な……そろそろお昼時だな、早速昼食でも作ってくる」

 

「あ、私がキッチンまで案内します」

 

俺はリリウムちゃんと手を繋ぎながら厨房に向かった。

 

マトモな食材があることを祈る。

 

 

 



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ベイオウルフ家の食卓

 

 

「……何でだよ…」

 

俺は厨房の鍋の前でトマトのようなものとニンジンのようなものとタマネギのようなものとコンソメ風の固まりやその他の調味料などを鍋に入れてミートソーススパゲッティのミートソースを木製のヘラでかき混ぜていた。

 

「何で俺が…」

 

俺は着てる服に目を落とした。

 

それは白と黒を基調とした服だ。

 

それは丈の長いスカートと袖や襟などにフリフリがあしらわれた服

だ。

 

その服は究極の萌を体現する服だ。

 

それは男のロマンだ。

 

そう、それは。

 

「……メイド服着てるんだよ…」

 

メイド服だったりする。

 

「なぜだ?……なぜだ俺は……」

 

 

 

 

それは20分程前に遡る。

 

『師匠!これ着て下さーい!』

 

『なに?ってグハッ!?……本物のメイド服じゃないか!!』

 

『はい、着てくれませんか師匠…?』

 

『いや…俺には尊厳が有ってだな、それを着るのは尊厳をゴミ箱にポイして、学校裏の焼却炉にぶちこみ、更に残った灰を畑の肥料にしてピーマンを栽培するような事で…』

 

『そうですか…ダメですか…私の家…貧乏ですからメイドとか雇えなくて…少し憧れてたんです…ごめんなさい……』

 

『……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ちょっと待ってろ』

 

 

回想終了。

 

 

 

 

いや…ほら…俺にも尊厳とか有ったさ…でもなぁ…。

 

「わぁ…ホントにメイドさんです!料理作ってます!わぁ……働くメイドさん……素敵ですぅ…家にメイドさんがいますぅ…」

 

後ろでこんな嬉しそうにされたらなぁ………ほら、美少女は生まれながらに幸せになる権利があるんだよ、だから仕方ない…仕方ないんだ。うんうん。

 

「そろそろ出来るから家族呼んでこいや」

 

もうパスタはゆで上がって麺にオリーブオイルがからめられております。

 

食材をそのまま食べてたからこの厨房には味付けの為の調味料が多いこと多いこと…砂糖、食塩、バルサミコ、オイスターソース、コンソメ(?)、ラード、チリソース、ケチャップ、マヨネーズ、料理酒、味噌、醤油、みりん、豆板醤、カレー粉、ウスターソース、魚醤、腐乳、しょっつる、柚子胡椒まで有りやがる……待て…この酒瓶は…沖縄のコーレーグースか……どうなってんだ異世界の食文化は?

 

ま、嬉しい限りだけど。

 

「はーい!」

 

とたとたとリリウムちゃんは走って行った。

 

この厨房のカウンター越しにテーブルがある。

 

作ったものを直ぐに食べれるようにだろう、無茶苦茶庶民的な貴族だな。

 

「ふう…こんなもんか」

 

え?そんなことよりなぜ俺が本場物のメイド服を普通に着れるのか気になる?

 

ふっ…我が妹に着せていたからに決まっておろう!

 

ドレスやらメイド服やら色々な(コスプレ)を着せては写真を撮る過程で妹に服を着せていたのだ!

 

ちなみに妹は未だ小学生だったので一緒にお風呂に入るなどざらだ!

 

幸か不幸かその影響で大概の女物の服なら着せれる(着る)事が出来るようになってしまったのだ…………無論メイド服や元から着ていたドレスや鎧も例外ではない。

 

ちなみにドレスと鎧は脱いだ瞬間にキラキラと淡い光になって消えました。着る服がメイド服しか無くなりました、まる

 

え?リリウムちゃんとかの服借りればって?………………入ると思ってんのか?主に胸が。

 

胸と言えばこのメイド服も胸が窮屈で若干苦しいです。

 

「師匠…私の胸は…小さくは無いです……師匠が大き過ぎるだけです……」

 

「うぉっ!?いつの間に!?」

 

「師匠が遠回しに私の胸が小さいと言った辺りからです……」

 

あぶねぇ…妹との事を思い出してたら熱がはいっていつの間にか思っていた事を声に出してたらしい。

 

それはそうとリリウムちゃん?

 

ハイライトの無い目をしながら無言で俺の胸を凝視しながらぶつぶつ言うの凄く怖いから止めてください、お願いします。

 

「おー、いい匂いだ…マトモな食事などいついら……」

 

目にハイライトの無いリリウムちゃん(黒)の後ろからヴィッセルさんが話ながら入って来た。

 

いつ以来のら、まで言ったところで俺に気が付き言葉を止めた。

 

「……家にメイドが…メイドが…うぅ…」

 

リリウムちゃんのお父さん!?そんなことで男泣きしちゃダメだろ!せめて貴族として。

 

「おー、ミートソーススパゲッティなのです」

 

気が付けば隣に鍋を覗きこむリリアナちゃんがいた。

 

コイツ…さっき見た時はまで居なかったはずなのだが……いや、電波少子について深く考えるのは止めよう…うん。

 

「これで全員か?」

 

リリウムちゃんはまだ目が怖かったのでリリアナちゃんに聞いた。

 

「そうなのです。今はこれで全員なのです」

 

「ん、そうか。じゃ、お前ら座ってろよ。運んでやるから」

 

『はーい』

 

よい返事ですね。皆さん。

 

とりあえず今後の事は飯を食べてから考えるか、俺は食べる必要があるかどうかは疑問だが。

 

……しかし…やはり胸がきつい…せめてもう少しバストの大きいメイド服は無いのだろうか?……ってリリアナちゃん?俺が考えてたことリリウムちゃんに伝えなくていいから!ってリリウムちゃん目が怖い!マジで怖いから!その目できっとクローラーワーム追い払えたよ!?……ってヴィッセルさん!、スパゲッティ食べて美味しすぎる…とか言いながら号泣しないで!絵面が不憫過ぎる!

 

あー……もう…食事一つでなんだこのカオスは?…俺…就職先間違えたかな?

 

俺の疑問は決して晴れることは無いのであった。

 

 

 



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3億のカマキリ

 

 

 

突然だがこの世界の魔法とは素晴らしい。

 

国一つ余裕で滅亡させられるような魔法から生活にとても役立つ魔法まで様々だ。

 

更に、魔法で出来た魔法具とやらも色々凄い。

 

中に入れた物を冷やし長持ちさせる明らかに冷蔵庫のような魔法具があったり、ダイ〇ンの掃除機に非常によく似た掃除が出来る魔法具があったり、エアコンの代わりらしき魔法具があったりする。

 

共通してるところと言えば全て魔力を流すと動いたり魔石(バッテリー)で動く事だろう。

 

この世界の魔法は現代科学を再現出来るほど高度なようだ。

 

しかし、誰がこんなやたらに前世の物に似た魔法具があるんだろうか?やはり俺と同じような転生者が広めたのだろうか?それなら顔も知らんソイツらに拍手を贈りたい、おそらく調味料もソイツらが製法を伝えたのだろうな。

 

ちなみにこの世界は中世ヨーロッパのような町並みだが魔法を使っている為、昭和初期ぐらい生活水準をしているかなりマジカルな世界だ。流石にテレビやラジオは無いけどな。

 

何で突然こんなことを言い出したかと言うと魔法は凄いということを皆様にお伝えしたいからだ。

 

 

「きゅー…」

 

 

決して、食後に訓練で初歩の初歩(Lv1)の光魔法(光弾)をたった一発放ったらリリウムちゃんがきゅーとか言いながら目を回して気絶た事にたいして現実逃避しているわけではない。

 

「流石お姉ちゃんなのです。家でナンバーワンなのです」

 

「止めてあげなさい…本人は聞こえてないとは言え妹にそんなことを言われるのは可哀想過ぎる…」

 

ベイオウルフ家の敷地内の頭を抱えた俺の横では眠たそうな顔をして毒を吐くリリアナちゃんがいる。

 

「リリウムちゃん起きろ」

 

「きゅー…ん…あ、師匠…やっぱり私ダメでしたか…」

 

起きたリリウムちゃんはしょぼんと頭を垂れてしまった。

 

oh…リリウムちゃん…。

 

「やっぱりですねー」

 

「やっぱりって?」

 

「お姉ちゃんはLv1の魔法も撃てないのです。魔法を使い続けて魔力量を上げるものですのでLv1の魔法も撃てないお姉ちゃんは昔からずっと魔法が使えないし成長しないままなんですよ。私はそろそろ自宅警備に戻るのです」

 

そう言ってリリアナちゃんは屋敷に戻っていった。

 

なるほどな…ええと確か…。

 

俺はダンダリアンの本(仮名)を花柄巾着から取り出した。

 

「ペラペラと……………あった」

 

『魔法図鑑』

 

これは名前の通り魔法のあれこれが載っているモノだ。

 

魔物図鑑同様、自分が見たことのあるものが自動で更新される。

 

まあ、6大魔法全てを覚えている俺にはさして必要ない図鑑だが他の魔王の固有魔法を知るときには便利だ。

 

えーと…光弾は。

 

 

光弾(こうだん)

 

光魔法Lv1

魔力消費量500

 

光魔法の初歩の初歩。手に光球を発生させる非殺傷魔法。直線上に光球を飛ばし辺りを照らす事もでき敵へは目眩ましに使うことも出来る。

 

 

………ん?非殺傷魔法?クローラーワームを消し飛ばしたよな………気にしないことにしよう。うんうん。

 

しかし魔力消費量500か、なるほどリリウムちゃんの魔力量が220だからかなり足りないな…どっかから持ってこれればな…持ってくる…ん?待てよ確か…。

 

俺は目次から魔結晶石のページを開いた。

 

 

魔結晶石

 

F~Aランクまでの魔物が損傷が少なく一撃で倒された時に極稀に発生する魔石で極めて希少価値が高く特にAランクは幻とされる。

 

 

使用用途は使用者の魔力量を上昇させる為の物で上昇値と色は以下の通り。

 

F=1

E=4

D=9

C=16

B=25

不特定(魔物によって異なる)

A=1000

 

※スキル《魔王》か《勇者》持ちは魔結晶石を吸収しても魔力量が上昇しない。

 

 

……要するに俺(魔王)にとって魔結晶石はゴミ同然だということだな。

 

よし!リリウムちゃんにポイしちゃお♪

 

「リリウムちゃんとりあえずこれやるよ」

 

俺は巾着から明らかに巾着に入らないボーリング球大の魔結晶石を取り出しリリウムちゃんの手の上に置いた。

 

最初の胸揺らしスティンガーから出たやつだ。

 

「へ?」

 

リリウムちゃんは唖然とし、目を開いたまま停止した。

 

「こここ…」

 

「こ?」

 

「これってAランクの魔結晶石じゃないですか!」

 

「おう。それがどうかしたか?」

 

「どど、どうかしたって!こ、これ!金貨300枚はしますよ!」

 

金貨300枚ねぇ俺の給料の100ヶ月分やん。そういや金貨の値段ってどんなもんだろう?えーと目次目次…。

 

 

《この世界のお金》

 

単位は、赤銅貨1枚で1ベガ。1ベガは日本の100円程の価値。

 

黒銅貨10枚で赤銅貨1枚。

 

赤銅貨10枚で白銅貨1枚。

 

白銅貨10枚で銀貨1枚。

 

銀貨10枚で白銀貨1枚。

 

白銀貨10枚で金貨1枚。

 

ベガは人間の世界共通貨幣。人間に友好的な種族のところでも大概使える。

 

ふむ、つまり黒銅貨が10円で赤銅貨が100円で黒銀貨が1000円で銀貨が1万円で白銀貨が10万円で金貨が100万円か。

 

ふーん金貨300ってことはスティンガーの魔結晶石は3億ぐらいだな。うんう…ん?…3億?…………………………3億!?

 

あれ?てことは俺の月給300万…?スゲー……。

 

「こ、こんなもの受け取れませんよ!」

 

いや…しかしそれぐらいいくらでも量産できるんだけどな、死神

グリムリーパー

いるし。

 

「つべこべ言わずに使え」

 

俺は魔結晶石を掴むとリリウムちゃんの胸に強引に押し込んだ。

 

「はえ!?」

 

魔結晶石はズブズブリリウムちゃんに入り見えなくなった。

 

すっかり吸収されたようだ。よきかなよきかな。

 

「よし。リリウムちゃんステータスと」

 

 

リリウム・ホークアイ・ベイオウルフ

 

種族:人間

年齢:16

職業:学生

ランク:G

身体値:180

魔力値:1220

スキル:

《駆け出し魔物使い》

《弟子》

《光魔法Lv2》

 

 

ぬ?弟子?スキル増えてるな、そろそろ図鑑でスキルも確認しないとな。

 

「し…師匠」

 

リリウムちゃんがふらふらしながら真っ青の顔で俺にすがり付いてきた。

 

はっ!?まさか副作用でも…。

 

「そんな大金絶対にはらえませんよぉぉぉ!!!!」

 

貧乏性だった。

 

「金は心配するな。あれぐらい、いくらでも森の奥で取れるだろ?」

 

「も、森の奥って…まさか!虐殺平原ですか!?」

 

「なにその物騒な名前、ただ黒いカマキリがうじゃうじゃいるところだったけど?」

 

「そこが虐殺平原ですよ!」

 

え?あのよく燃えるカマキリがいたところが?

 

「へー、ま、それはそれとして早く魔法撃てや。さあ、撃て!早く撃て!即座に撃て!」

 

鬼気迫る目で急かしてみた。

 

「は、はい!光弾!」

 

リリウムちゃんの手に淡いビー玉大の光が灯った。

 

「あ…魔法…魔法です…」

 

リリウムちゃんは手を突きだしたまま、ポロポロと泣き出した。

 

「ありがどうございますぅ師匠ぅぅ…」

 

リリウムちゃんは魔法を止めると俺に抱きつき顔を胸に埋めてきた。

 

「よしよし」

 

ナデナデ、あー可愛い。

 

「これで学校でもまともに授業を受けれま…え?」

 

「ん?」

 

突然リリウムちゃんが何か思い出したように顔を上げた。

 

「学校…」

 

「学校?」

 

リリウムちゃんは何か思い詰めたような暗い表情になり暫く顔を伏せて暫く片言に学校…と呟いてから再び顔をまた上げるとこう言った。

 

「宿題忘れましたぁぁぁ!!!?」

 

……………アホだ…アホの娘がいた…。

 

 

 



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純粋な思いより怖いものはそう無い

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!速すぎますぅぅぅ!?高い高いぃぃぃ!?」

 

「フハハハハ!行くのだクロロよ!どこまでも!」

 

只今、リリウムちゃんを小脇に抱えながらクロロの頭の上に仁王立ちして魔水晶の森の前の虐殺平原に向かって飛んでいる(クロロが)最中でございます。

 

一様、リリウムちゃんを守る為に正面に透明のバリアを張ってるから呼吸は問題あるまい。

 

こうなったのにはもちろんリリウムちゃんの宿題に関係する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡ること約一時間前。

 

日は高く登り太陽の位置から考えると時間は一時過ぎぐらいであろう。

 

「で?宿題とは何ぞや?師匠に話してみなさい」

 

ちなみにリリウムちゃんは芝生の地面に正座させられております。

 

宿題忘れはダメだ。

 

そんなことではろくな娘に育たないからな。

 

妹にも心を鬼にして宿題をしろと注意したもんだ。

 

結局いつも俺が妹の宿題をしていた気がするが気のせいだ。うん気のせい…。

 

「夏休みの最後の宿題が残ってるんです…」

 

ほう、夏休みの宿題か…妹が宿題の問題をだらだらと解く横で、妹の為に極限まで筆跡を似せて作文を書いたり、紙粘土で8分の1スケール動物を作ったり、絵画の模写書いたり、生き物の自由研究をしたりしたな。うんうん。

 

全ての作品(メイドイン兄)に金賞の張り紙が付いて戻ってきた時の妹の引き釣り顔は今でも鮮明に覚えているぞ。

 

「ほう、今は夏休みだったのか」

 

セミでも鳴いてれば解ったのだが生憎この国にセミはいないらしい。

 

鳴蟲(ゼミラ)と言うでっかいセミ(魔物)ならこの辺にもいるらしいが見たことは無いな。

 

「はい…今日で最終日なんです…」

 

「ふーん…で?宿題って?」

 

「夏休み中に魔物を一体使役する事です!」

 

あー、コイツ一様、魔物使いだったな。

 

だから森にいたのか。

 

「師匠、今酷いこと考えませんでした?」

 

「気のせいだ」

 

魔物使いか、クロロみたいのを使役してる奴の事かね?

 

「ならばさっさと行くぞ。時間が惜しい」

 

「はい。師匠」

 

「全く…課題を溜めるんじゃない。お兄さんとの約束だ」

 

「はい。あれ?お姉さんですよね?」

 

「心はお兄さんとの約束だ」

 

「師匠…」

 

なんだその同情した目は…止めろ…そんな無垢な目で俺を見るな!!

 

心は男なんだ!メイド服着てるけど!

 

「大丈夫ですよ師匠」

 

リリウムちゃんは優しい目でにっこりと語りかけてきた。

 

「師匠は身体は女の人ですけど心は男の人なんですね。解ります。きっとそのせいで中々就職できなかったんですね可愛そうに…家は捨てたりしないから大丈夫ですよ師匠。私はそんな師匠も大好きですよ」

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ぐすっ(心の折れた音)…。

 

「うるさい……うるさいうるさいうるさい!!リリウムちゃんの癖にリリウムちゃんの癖にぃ!!うわあぁぁぁぁ!!」

 

「師匠まっ…いつぅ!?あ、足が痺れて動けない…た、助けて!師匠!行かないでぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

あと後、直ぐ戻ってきてくれた師匠と大体50分程で人気の無い静寂の森の中に師匠と来ました。

 

ポラリスはとっても広いです。

 

森に出るまでそんなにかかりますかならね。

 

ちなみに時間は側面の四面が針盤のとっても大きな時計台が都市の中央に一つだけあるのでそれで解かります。

 

「蟲の森まで来ましたね」

 

「来たな」

 

そういえばこの森で何か忘れてるような……………………あっ!?死神(グリムリーパー)!!そうでした。すっかり忘れていました。

 

「し、師匠!大変です!私昨日見たんです!」

 

「どうした?トイレで〇キブリでも見たか?」

 

「いや…確かにそれも凄く怖いですけど違いますよ……」

 

それもとっても怖いですね…密室でアレに会うなんて最悪です…。

 

でも師匠も女の子なんですからそんなこと言っちゃダメですよ…あ!師匠は心は男の人なんでしたね。私は味方ですからね師匠。

 

「なんだ…その暖かい目は…」

 

「何でも無いですよ。そうじゃなくて死神です!死神!Sランクの魔物!あれが街に入ったら大変です!お父さんに話さなきゃ…きゃ!?」

 

「まあ、そう慌てるな」

 

戻ろうとしたら師匠に襟を捕まれぷらーんとされました。

 

「ま、ここならバレないだろ」

 

「何かするんですか?」

 

「出てこい。クロロ」

 

師匠が手を振り上げると師匠の影が急激に大きくなり地面を覆いました。

 

「な、なんですか!?や、闇魔法?」

 

「まあな、最も俺の魔法じゃないけどな」

 

更に、影で覆われた真下の地面に2つの赤い光の球が現れ妖しく光りました。

 

そして…黒い地面が急激に盛り上がり森の木々の何倍もの高さになって止まりました。

 

「きゃぁぁ!?…一体なんですか!?」

 

「良く見ろ」

 

師匠に襟を放され私は黒い地面に落ちました。

 

地面はかなり固いですって高っ!?ひぃぃ…私高いところダメなのに…。

 

恐る恐る最も安全な所(師匠)にしがみつきながら下を見ました。

 

「え?」

 

まず第一に巨大な2つの黒い鎌が目に留まりました。

 

次に太い脚に硬そうな身体、そして全て漆黒に統一されていました。

 

最後に斜めを見下ろすと赤い巨大な一つの目と目が合いました。

 

気まずくなり顔を反らしました。

 

「コレハ……魔物デスカ?」

 

「ああ、俺の僕だな。言葉が変だぞリリウムちゃん」

 

「ぐ、死神?」

 

「うん死神のクロロ」

 

私と師匠は死神の頭の上に乗っていたのです!

 

「は、はぇー…」

 

し、師匠の使い魔だったんですか…まさかSランクの魔物を使役出来る人なんて実在したんですね…でも師匠なら可笑しくないですね…光弾でBランクの魔物倒しましたし。

 

「さて…さっさと行くぞクロロ」

 

私は何故か師匠の脇に抱えられました。ネコか何かですか私は。

 

「シャアァァァ!!」

 

死神のクロロさんは一声上げると高く飛び立ちましたって高いぃぃぃ!?怖いぃぃぃ!!!!しかも速いぃぃ…。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!速すぎますぅぅぅ!?高い高いぃぃぃ!?」

 

「フハハハハ!行くのだクロロよ!どこまでも!」

 

※始めに戻る。

 

 

 



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水晶の王女様と少女

 

 

 

クロロを過労死させる勢いでこき使い、行きとは比べ物にならない早さで戻って来ましたクリスタルの森。

 

見渡す限りクリスタルクリスタルクリスタル。

 

木も草も土も鳥も虫もクリスタルだ。

 

青い太陽にが反射するクリスタルが眩しいぜ。

 

きっと、ここならなにかしらいい生き物がいるに違いない。うんうん。

 

「きゅー…」

 

小脇に抱えていたリリウムちゃんは気付けば可愛く気絶していた。

 

「ほれ、リリウムちゃん。起きろなんかしら魔物を使役するんだろ?」

 

「きゅー………は!ここは誰?私はどこ?」

 

「クリスタルの森だぞ?リリウムちゃん」

 

「そうですか…明るくてキラキラして素敵なところですねぇ…クリスタルの森、御伽話でしか見たことかなったので始めてみましたよ…本当にあったんですね……クリスタルの森…そうクリスタルの森……………………クリスタルの森!!!?」

 

気付くまで大分かかったな。

 

「な、な、な、なんでこんなところにぃぃぃ!?魔王領じゃないですか!?」

 

「うん。そうだね」

 

俺のホームでございます。

 

「殺されちゃいますよ!?魔王ですよ魔王!!魔王の直属の配下の魔物ですら王都の騎士団やハンターズギルドのSランクでもなければ相手にすらならないのにぃ!!」

 

リリウムちゃん、アホの娘の割には詳しいのね。

 

へー、やっぱりハンターズギルドとか有るんだ。

 

「問題ないと思うぞ?それに水晶の王女様に会って旅するのが夢なんだろ?」

 

一声掛けて貰えれば行きますが何か?

 

「うぅぅぅ…無理ですよぉ…私みたいな子なんて見た瞬間、鼻で笑われて殺されちゃいますよぉ…」

 

時々弄られながらリリウムちゃんの家の家庭教師やって宿題手伝ってますけど何か?

 

「俺、そいつの居場所知ってんだよね。というわけでレッツらゴーだ」

 

いつまでも自分を隠すのは寝覚めが悪いからな。

 

リリウムちゃんぐらいには教えてもいい気がする。

 

「え?ひゃぁぁ!?」

 

またリリウムちゃんを小脇に抱えて今度は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に巨大な鏡がある。

 

俺が最初に見ていた鏡のような巨大なクリスタルだ。

 

最初と違うところといえば、リリウムちゃんと並んで立っている事と俺がメイド服を着ていることだろう。

 

「ここで水晶の王女様は生まれたんだぞ?」

 

「そうなんですか…ってなんでそんなこと知ってるんですか?」

 

まあ、少ししか一緒に居ないが解る。

 

リリウムちゃんはとても優しい、それに性格も良い、嫁にするならこういう娘がオススメだな。

 

俺が魔王だと知っても一緒に居てくれるだろうか?

 

いや、普通なら無理だろう。

 

だが、それでも…この娘にだけは嘘をつきたくなかった。

 

ダメなら俺が出ていくまでだ。

 

「なあ…リリウムちゃん。俺の本名知りたいか?」

 

「え?良いんですか?私に教えても」

 

「嫌いにならないか?」

 

「嫌いになんてなりませんよ」

 

リリウムちゃんは笑顔で頷いた。

 

「そうか…俺はなぁ…魔水晶女王(クリスタル・ノヴァ)っていうんだ」

 

言った言ってしまった……もう後戻りは出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

師匠に抱えられて来た洞窟の一番奥にはとっても大きな鏡のようなクリスタルがありました。

 

綺麗です…。

 

「ここで水晶の王女様は生まれたんだぞ?」

 

「そうなんですか…ってなんでそんなこと知ってるんですか?」

 

師匠は凄いですけどまさかクリスタルの森にまで入れるなんて予想外です。

 

「なぁ…リリウムちゃん。俺の本名知りたいか?」

 

え?教えてくれるんですか?嬉しいです!

 

「え?良いんですか?私に教えても」

 

「嫌いにならないか?」

 

そんなことあり得ませんよ。

 

「嫌いになんてなりませんよ」

 

私は師匠の事大好きですよ。

 

「俺はなぁ…魔水晶女王(クリスタル・ノヴァ)っていうんだ」

 

クリスタル・ノヴァさん?不思議な名前ですね。

 

「クリスタル・ノヴァ、ステータス」

 

ふふふ、これで師匠のステータスがいつでも見れますね。名前を言うか本などで一度知れば相手を見ながら思うだけどステータスが見れますからね。

 

 

 

魔水晶女王(クリスタル・ノヴァ)

 

ランク:SSS

 

身体値:530000

魔力値:530000

 

スキル:

《魔水晶女王》

《魔水晶魔法Lv99》

《火魔法Lv99》

《水魔法Lv99》

《風魔法Lv99》

《土魔法Lv99》

《闇魔法Lv99》

《光魔法Lv99》

《魔王》

《女王道》

《魔水晶生命創造》

《迷宮創造》

 

 

 

へ?ま、魔王…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、魔王……」

 

リリウムちゃんは口をぱくぱくさせて暫く俺をジーッと見てからふるふると震えてぽろぽろと涙を流した。

 

ああ……失敗したか…やはり魔王は害悪でしか無いのか…。

 

「……です…」

 

ん?

 

「素敵です!師匠!本当に凄いです!」

 

「え?おわっ!?」

 

そう言ってリリウムちゃんは俺に抱き着いてきた。

 

「えへへへ~」

 

リリウムちゃんは微笑みながら胸に顔を埋めている。

 

「…怖くないのか?」

 

「なんでですか?」

 

首をかしげながら聞いてきた。

 

「俺は魔物の中の魔物、魔王だ。人間一人を指一本で殺せる程の化け物だぞ?」

 

その気になればそんな小さな体なんてすぐに潰れてしまうだろう。

 

「それでも師匠は師匠ですよ」

 

「俺は俺?」

 

「師匠は森で私を助けてくれて私の師匠と家のメイドになってくれました。しかもいつも優しいし、料理も美味しかったし、頼んだら服も着てくれました。それに今も宿題も手伝ってくれています。そんな師匠が悪い魔物なわけないですよ」

 

「リリウムちゃん……」

 

リリウムちゃんは本当にいい娘だよ……本当に…でもなぁ…これだけは譲れない。

 

「俺はメイドじゃなくて家庭教師だぞ?」

 

「…………え?」

 

なんだそのコイツ何いってんの?そんなこと初耳だし、的な表情は…俺はメイドじゃない、なんと言おうとメイドじゃない、メイドじゃないったらメイドじゃない、これはメイド服じゃない…そうだきっと住み込みのお手伝いさんだの奉仕活動用の正装だ。うんうん。俺は住み込みのお手伝いさんだ。

 

え?それを世間一般ではメイドと言う?そんな常識……修正してやる!

 

「あのー…師匠?」

 

リリウムちゃんが上目遣いで俺を見てきた。

 

くっ…なんだこの可愛さは!?静まれ!俺の右腕!静まれ!

 

ナデナデ

 

ゴメン…静まらなかった…。

 

「なんだ?」

 

「い、いつか旅に出るときは私も連れてってくれませんか!」

 

そんなの決まりきっているじゃないか。

 

「喜んで」

 

「やったぁ!!」

 

そう言ってリリウムちゃんはまた顔を胸に沈めた。

 

まあ、それ以前に宿題を終わらせないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、俺はまだ知らなかった。

 

この後に起こるリリウムちゃん"達"との旅が全人類規模でとんでもない事になるとは。

 

 

 



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リリウムちゃんの小鳥

 

 

 

リリウムちゃんに秘密を話した俺はリリウムちゃんの契約魔物(パートナー)探しを続けていた。

 

「リリウムちゃん。これはどうだ?」

 

「カー」

 

俺はクリスタルな3本足の50cm程の大きめなカラスを手に乗せて持ってきた。

 

ちなみにクロロは既に俺の影に戻っている。

 

「む…無理ですよ。能力値が高すぎて絶対契約できませんよ!?」

 

「カー」

 

 

魔水晶小悪魔烏(クリスタリア・レッサークロウ)

 

ランク:C

魔力値:2000

身体値:2000

スキル:

《魔水晶族》

 

 

「ふむ…これならリリウムちゃんでも契約できると思ったんだけどな」

 

ちなみに元のレッサークロウは精々300そこらのFランクの魔物なのだが値が異様に高いのは魔水晶族の生態が関係しているからだ。

 

魔水晶族(クリスタリア)なんて無理ですよぅ…」

 

「ふむ…」

 

俺はダンダリアンの本の魔水晶族について見ていた。

 

 

 

 

 

魔水晶族(クリスタリア)

 

:魔水晶族の生態

魔水晶族とは名前通り魔力でできた水晶生命体の為、エレメント系の最高位に位置する魔物である。

魔水晶族には自然に発生したタイプとスキル魔水晶生命創造で造られたタイプの二種類が存在する。

自然に発生したタイプはF~Aまでの魔物が水晶の森に入り、長時間いた為、魔水晶族になってしまうタイプで魔力値か身体値の高い方に量方の値が固定される。

また、"魔水晶生命創造"で造られたタイプはランクがS固定で造られた時に込めた魔力量だけの魔力値と身体値を有す。

 

 

 

:魔水晶族の特性

魔水晶は現存する有りとあらゆる物質の中で最も硬い。

魔水晶族は空気中の魔力や如何なる魔法を受けてもそれを吸収することができる。

また、吸収した魔力は蓄積され、蓄積量が限界に達すると自らを進化

ランクアップ

させ蓄積された魔力を空にする。

ランクが高いほど進化までに莫大な魔力が必要になり、Sランクになるとそれ以上進化せず、Sランクの魔水晶族が吸収した魔力の蓄積量が限界達した場合水晶の森の成長に注がれる。

 

 

 

:固有魔法

魔水晶族の固有魔法は魔水晶魔法で例を上げると以下の魔法がある。

Lv1《終撃魔水晶(ファイナル・クリスタル)

魔水晶族が生命の危機に陥り敗北が確実と判断した時に99%の確率で使う。体内の魔力を全て解放し魔力爆発を起こし、自分ごと周囲の全てを吹き飛ばす魔法。

Fランクの魔水晶族ですら20m規模の爆発を起こす事が出来、Sランクになると10km以上の範囲が一瞬にしてクレーターになる。

ただし自身は消滅する。

魔水晶族が魔物使いにとって超レア物で魔物市場に滅多に出回らないのは主にこの魔法

じばく

のせい。

 

 

 

:調理法

煮ても焼いても決して食えないコック泣かせの種族だ………。

 

 

 

 

 

………………とんでもない種族だな。

 

要約すると

 

水晶の森に魔物が入る→魔物が魔水晶化→魔物が進化→魔力を吸収しSランクまで進化→あー…もう魔力いらんわ→代わりに森へエネルギー注入→森拡大→水晶の森に魔物………

 

という無限サイクルから出来ているのか。

 

そう言えば魔法もアホだな、1レベから自爆だもんな…まるでどこぞの捕食者やら天敵やら…………俺がやったらどんな規模になるんだろう?………実験しても俺は見れないな、別にしないけど多分大陸に新しい海を作れると思う。

 

調理法は…知るか水晶食べんじゃねぇよ。涙拭けコック。

 

「リリウムちゃん、もう一度魔物契の条件を言ってくれ」

 

「えと…魔物契約をする為には魔物を力で屈服させて従わせるか、自分の意思で契約してくれないといけないんです」

 

うむぅ…その条件だと魔法バッチ来い!で見ろこの水晶!カッチカチやぞ!の魔水晶族をリリウムちゃんの使い魔にするのは無理か………奇跡的に追い詰められても終撃魔水晶されたら元も子も無いしな。

 

「どうしたものか………ん?」

 

「どうしたんですか?」

 

「いや…何か聞こえるような…」

 

ヒューーン……ポテッ。

 

俺とリリウムちゃんのそばに何かが降ってきた。

 

「きゃ!?」

 

訂正、リリウムちゃんの頭に当たった。

 

「いてて…」

 

「ん?鳥?」

 

黄色で目の赤い、掌に収まるほど小さな小鳥だった。

 

「ですね…でもなんで元気がないのでしょうか?」

 

心なしか…いや、明らかにぐったりしている。

 

「へー、そうなんだ…元気?ああ多分この森にいるからだろ」

 

「へ?」

 

「この森は魔物はいるだけで魔力を根こそぎ持ってかれるからな」

 

多分何かの魔物だな。

 

しかし森の中央まで入ってくるとは、凄いガッツだ。

 

「えぇ!可哀想ですよ!」

 

「あ、死にはしないから大丈夫だ」

 

魔水晶化はするけど。

 

「あ、そうなんですか、でも連れて帰りませんか?このままじゃ不憫ですよ…」

 

「え?魔物探しは?」

 

「それよりこの子です!」

 

ピュアで優しいねぇリリウムちゃん。宿題を犠牲にしてまで助けたがるなんてそこに痺れる憧れるぅ。

 

「良し帰るか!飛べクロロ!」

 

「キシャァァァァ!」

 

ちなみにクロロがこの森にいられるのはクロロのスキルの影響だ。

 

「え?きゃぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、普通(?)の森ですよ~」

 

リリウムちゃんは小鳥を街の近くに持っていき放した。

 

「ピィ」

 

しかし、まわりこまれてしまった。

 

「あれ?行かないんですか?鳥さん」

 

「キュイキュイ…」

 

小鳥はリリウムちゃんにスリスリ寄ってきた。

 

「ふぇ…可愛い…」

 

「なついてるな、契約魔物にしちゃえば?」

 

「え?この子を?」

 

「良いじゃん。なついてるし」

 

「そうですね。小鳥さん、私の契約魔物になってくれますか?」

 

「ピィ!」

 

元気のいい返事が帰ってきた。

 

「なら…よろしくお願いいたしますね?」

 

そう言って小鳥にキスをした。

 

その瞬間、リリウムちゃんの手の甲と小鳥の胸の部分に紋章がうかんだ。

 

よく見るとベイオウルフ家の家紋だった。

 

「契約完了です。よろしくです小鳥さん!」

 

「良かったなリリウムちゃん。じゃあ家に戻るか夕飯の仕度をしないとな」

 

「はい!楽しみです!」

 

「ピィ!」

 

「カー」

 

あ、お前忘れてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後にこの黄色の小鳥がリリウムちゃんの学校…スピカ魔物使い養成学校を震撼させることになるのだがそれは少し先の話。

 

 

 



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スピカ魔物使い養成学校

 

 

 

只今、スピカ魔物使い養成学校へ行く為、徒歩で街に出ている。

 

学校はこのポラリスの中にあるので行くのが楽だ。

 

「そういえば普通に街を歩くのは初めてだな」

 

ポラリスの街は中世ヨーロッパのような石造りの建物が立ち並び、道も舗装されて、朝から活気が溢れている。

 

「そうでしたか?………そうですね」

 

ここを最初は夜空をジャンプで駆け、次は外壁をリリウムちゃんを抱えながらダッシュしたからな、街並みなど見ていない。

 

「ピュー」

 

「くすぐったいですよ」

 

しかし、街並みよりリリウムちゃんが契約した黄色い小鳥(?)のチィちゃんと戯れるのを見る方が目の保養になるのだがな。

 

「きゃっ…そんなとこ入っちゃダメですよ~」

 

うむ、眼福、眼福。

 

 

 

 

そんなこんなしているうちにリリウムちゃんの学校に付いた。

 

「………デカイな」

 

俺は下からその建物を見上げた。

 

「凄いでしょう?ここがスピカ魔物使い養成学校です」

 

いや…学校と言うか…。

 

「まんまコロッセオじゃないか」

 

その昔、剣闘士らの奴隷が見世物として戦わされたりした施設に似た建物があった。

 

ただ、俺の知っているのと違うことは作られた当時のように外壁の崩れやヒビは無く、建物がなんか不自然にピカピカしていることだろうか。

 

「コロッセオですか?なんですかそれ?」

 

「いや、何でもない」

 

この世界に同じ名前のモノは無いか、それに見世物なら人と人や、人と魔物より、魔物と魔物が主流だろう魔物使いがいるしな。

 

「ここは休日は魔物使い同志の闘いの場として一般解放され賭け事が行われているんですよ?」

 

やっぱコロッセオじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリウムちゃんとコロッセオ…もといスピカ魔物使い養成学校……長いなスピカ学校に入ると中は予想と大分違った。

 

観客席と闘技場があり天井が無いのは普通だが観客席がバリアのような水色の膜で覆われており、闘技場も天井の代わりに半球状の水色の膜で覆われていた。

 

「スゴいな」

 

「凄いですよね。こっちです!」

 

「はいはい」

 

ちなみに当たり前のように学校にメイド服の俺が着いてきているがそれはスピカ国中から生徒が来る為、その従者として同行が認められているからだ。

 

まあ、殆んどの魔物は茶も沸かせんだろうしな。

 

俺は炊事洗濯家事全般何でもできるぞ?

 

ちなみにスピカ学校は貴族でも庶民でも関係無く在籍しているらしい。

 

能力があるものは家柄や身分に関係無く育てるのがスピカ王の方針だとか。

 

昔の一万円札みたいな人だなスピカ王。

 

「ここが、校舎です!」

 

「ふむ、観客席の一角に建物か」

 

全体の270°程が観客席で、60°程に客席を削り落としたような緩やかな台形の建物があった。

 

流石に青空教室ではないようだ。

 

ちなみに残りのは30°はでっかい掲示板だ。

 

「中に入りましょう!」

 

「ピュー!」

 

「うむ」

 

 

 

大学の講堂のような教室の中はリリウムちゃんと同じぐらいの歳の生徒とまばらなその従者と大量の魔物で溢れていた。

 

生徒の数はざっと見て90、従者は10ってとこか。

 

魔物は………大小バラけすぎてわからないが、多分生徒と同じぐらいいるだろうな普通に考えて。

 

しかし、思ったより従者が少ないな。

 

貴族が少ないのか?いや、でもリリウムちゃんの家のように貧乏…質素な貴族もいるのかもな。

 

「師匠…なにか失礼な事考えませんでしたか?」

 

ニコッという笑顔の後ろにどす黒いオーラが見えた。

 

な・ぜ・ば・れ・た?

 

「いえ…滅相もない」

 

「ピ…ピ…ィ」

 

チィちゃんよ………決してリリウムちゃんを怒らせてはならないぞ?

 

「あ、リリウムおはよう」

 

黒のローブに、黒の魔女ハットに、黒ブーツに、黒手袋、片眼鏡をした絵に描いた黒魔導師のような黒髪の女の子が話しかけてきた。

 

肩に3本足のカラスが乗っている。多分、レッサークロウだろう。

 

箒………箒はどうした!?魔女っ娘!!

 

「おはようございます。ミリンちゃん」

 

え?味醂

みりん

 

「ひっさしぶりだねー。その超美人だれ?」

 

そう言った瞬間、なぜかクラス中の人間が俺を見てきた。

 

暇だなお前ら、性欲をもて余すってやつか?

 

「えへへ、師匠はとっても美人さんですからね。私の師匠で家のメイドさんなんですよ。スドーさんって言うんです」

 

おいこら、メイドさんじゃなくて家庭教師だ。

 

ついでにスドーじゃなくて須藤(スドウ)だ。

 

まあ、リリウムちゃんに通じるとは思っていないが…。

 

「へー、私ミリン・クロウリー。よろしくね」

 

「ああ、よろしくな」

 

手を出してきたので握手した。

 

「………………………」

 

「………………………」

 

なぜか中々放してくれない。

 

「………なにも感じないの?」

 

「何がだ?」

 

「寒いとか冷たいとか」

 

「?」

 

冷たいとか寒いとか暑いとか熱いとか無いんだよね。

 

「魔法で手を-50°ぐらいにしてるんだけど…」

 

え?なにそれ?オレじゃなきゃ火傷しちゃうよ?

 

『マジかよ…』

『ミリンちゃんの悪ふざけが効かないなんて…』

『なん…だと…』

 

外野(生徒)が何か言っている。

 

ドッキリか、オチャメな娘だな、やや悪質だけど。

 

「はーい!皆さん授業を開始しますよー!」

 

講堂にピンクのスーツの女性が入ってきた。

 

二十代後半程に見える美人だ。

 

ん?ピンクのスーツ?

 

「先生です!師匠、座りますよ?」

 

「ん?ああ」

 

この講堂は300席以上ありそうなので従者も座って良いようだ。

 

「よいしょっと…」

 

ふかふかした椅子に腰掛ける。

 

ん、良い生地使ってんな。

 

「では私も…」

 

そういってリリウムちゃんは俺の膝の上に乗ってきた。

 

「………………………」

 

「………………………」

 

ふむ、学校の授業か…どこの世界でもあるものだな。

 

「って…ちょっと待ちなさいよ!」

 

「なんですかミリンちゃん?」

 

「なんだ味醂?」

 

いつの間にか隣に座っていたミリンちゃんに声を掛けられた。

 

………肩のレッサークロウ可愛いな、トウモロコシとかパンとか持ってくれば良かった。

 

「味醂じゃなくてミリンよ!なに当たり前のように膝に!?」

 

ふむ、どうやらこの娘にはツッコミの才能があるようだ。

 

「師匠はふかふかして柔らかいんですよー」

 

「リリウムちゃん…俺の胸は背もたれじゃないぞ?」

 

周りの男子からあんな美人に羨ましい…とか、くそっ…あんな巨乳メイドが…とか言っている。

 

ほう………貴様らよほどに魔水晶像にされたいようだな。

 

「ふ、ふーん…そうなんだ」

 

歯切れの悪そうな顔をしてミリンちゃんは黙った。

 

慣れろ、最近のベイオウルフ家のいつもの光景だ。

 

そんなこんなしている内に授業が始まった。

 

「皆さん。夏休みはゆっくり休めましたか?それでは宿題の確認をしますね。では、契約魔物を見せてください」

 

そういいながら先生は見回りを始めた。

 

生徒の魔物見ながら時々撫でたりしている。

 

「ドリルラビットにエアフィッシュにマッドワームに…ルシルシル君のは…」

 

先生が立ち止まったルシルシルとやらの所には目算で8m程のフルプレートの黒い鎧で全身が覆われた巨人がいた。

 

ふむ………どうやって3m程の入り口から部屋に入れたんだろう?

 

鬼王(キングオーガ)です。先生」

 

そう言ったのはルシルシル君とやらだろう、金髪で背の高く爽やかなイケメンだ死ね。

 

「キングオーガ?Aランクの魔物ですか…」

 

その言葉に周りが騒然となる。

 

ふむ、キングオーガか、そんなに良いのか?

 

小声でいうとステータスが出てきた。

 

 

 

鬼王(キングオーガ)

 

ランクA

魔力値:0

身体値:12000

契約者:ルシルシル・ルル・ブルーム

スキル:

《怪力》

《契約魔物》

 

なんだろう?高ステータスを見すぎているせいか何とも思えない。

 

リリウムちゃんはわー凄いですとか言ってるけどな。

 

「キングオーガの全身を鎧で覆ったんです。まあ、こんなこと一般庶民にはできないか、あはは」

 

そう言って見下すわりには背の高いキングオーガが後ろの席の人が黒板が見えるように一番端っこの席にいるのねルシルシル君。

 

「ルシルシル君は侯爵家の出でちょっとプライドが高いんですが強くて根は優しい人なんですよ?」

 

だろうなリリウムちゃん。

 

それにAランクを屈服させられるほど強いんだよな下から読んでもルシルシル君、名前面白いなルシルシル君。

 

「そ、そうですか」

 

先生もやや引きつった様子だ。

 

そんなこんなして暫く見回っていた先生はリリウムちゃんの前で止まった。

 

「おや?なんですかこの魔物は…見たことない種ですね。新種でしょうか?」

 

「新種?チィちゃん新種なんですか?」

 

「ピ?」

 

ふみ、本人(?)に聞いてもわからないようだ。これはお手上げだ。

 

「後でスケッチさせてくださいね」

 

「はい、先生」

 

この先生は魔物が大好きなようだな。よきかなよきかな。

 

「では宿題の確認も済んだことですし夏休み前に言った通り、早速実技に移りますか、皆さん契約魔物と夏休み中、鍛練を積んだんでしょうから生徒どうしで契約魔物と魔物使いの2対2形式の黄昏決闘(ラグナロク)といきましょうか!」

 

そう言って先生はパンと手を叩いた。

 

ん?魔物と魔物使いVS魔物と魔物使い同士の2対2のバトル?なにそれ初耳なんだけど………って夏休み前に言ったことを俺が知るわけ無いか、そうだリリウムちゃんならもちろん知ってる…。

 

「ふ、ふぇ…?」

 

ダメだぁー!完全に黄昏決闘(ラグナロク)とやらを忘れてた顔してるぅ!

 

あれ?リリウムちゃんチィちゃんとの戦闘訓練なんてしてないぞ?

 

というか契約したの昨日だし…。

 

「では、なるべく皆さんの契約魔物の能力の近いものを黄昏決闘の相手に対戦表を作ったので発表しまーす!」

 

なんだそれなら安心だな、あの短時間でそれを仕上げるとはこの先生やりおるな。

 

良かったなリリウムちゃん。

 

この後の事を今思えば俺の考えは浅はかだっだだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1戦目、リリウムさんとルシルシル君です。リリウムさんの契約魔物の能力が不明なのでこの対戦です」

 

「へ?」

 

「ピ?」

 

………………………どうやら夏休み明けの初授業は波乱の幕開けになりそうだ。

 

 

 



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チィちゃん

 

 

 

場所を移して黄昏決闘(ラグナロク)をするためのコロシアムの中央に生徒+その他+魔物全員で集まっていた。

 

コロシアムは端から端が霞むほど広いため観客席に移動するとかなり見辛いらしい。

 

あくまでリリウムちゃんとミリンちゃん基準で俺が一番端から端の壁を見ると表面の数ミリほどの微妙な凸凹までよく見えるのだが………。

 

まあ、解りづらいのでクロロ(約50m)が縦に50匹は軽く入りそうなぐらいだと思う。

 

無茶苦茶デカイ。

 

「では皆さん一回戦目の黄昏決闘を始めまーす!リリウムちゃんとルシルシル君は所定の位置に着いてください」

 

「はわわ…」

 

リリウムちゃんはなんかあたふたしている。

 

そんなに構える必要ないと思うんだけどなぁ…。

 

「だ、大丈夫なの!?相手はAランクよ!化け物よ!!」

 

ミリンちゃんが俺に慌ただしく聞いてきた。

 

「まあ、問題ないだろうな」

 

リリウムちゃんを見ると既にガチガチになりながらチィちゃんを肩に乗せて位置についていた。

 

向こうのルシルシルくんもキングオーガを斜め後ろに控えさせ、位置についている。

 

「それでは…、」

 

先生が黄昏決闘開始の合図が…。

 

「待ってください先生」

 

………?ルシルシルくんに遮られた。

 

「僕は辞退します」

 

「え?」

 

「へ?」

 

先生とリリウムちゃんが声を上げた。

 

恐らくそこにいる全員が同じことを思った事だろう。

 

「リリウムさんとその契約魔物ですが…僕とオーガの方が明らかにそれより上の実力だと思われます。それに僕は君のようなか弱い女性を傷付けたくない。しかし、オーガは力加減ができません。よって僕のポリシーに反するため辞退します!」

 

ほう…だからと言って自分が辞退するとは見上げた野郎だな。しかしイケメンは死ね。

 

………それにリリウムちゃんの肩の上で静かに憤慨するチィちゃんを……スキル超再生能力も無しに"魔王ですら魔力を奪い取られる水晶の森の最新部まで来れた実力"をナメるなよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よって僕は辞退します!」

 

よかったです…これでまだ戦わなくて済みそうですぅ、よかったねチィちゃん………チィちゃん?

 

「ピ……」

 

見るとチィちゃんがふるふると震えています。

 

「ピィーーー!!」

 

「あ、チィちゃん!」

 

チィちゃんは空高く飛び立ちました。

 

ちょうど天井のバリアー越しに見える太陽に重なって見えなくなりました。

 

そして暫くすると一対の翼の人型の影が私の目の前に降りてきました。

 

それは一対の金色の翼をもった短髪の金髪で赤い目をして、ひまわりのように黄色い肌の女性の魔物でした。

 

なぜか頭にちょこんと何かのガイドさんのような小さな帽子が乗っています。

 

「全く…下手に出れば能書きをごちゃごちゃと言いやがりまして…私に戦わずして勝ちをゆずりやがるとは思いませんでございました」

 

その女性の魔物は私を背にルシルシルくんに向かって立ちふさがりました。

 

「………チィちゃん?」

 

「屈辱…この上無い屈辱…あの姿のままで半殺しで済まそうと思いましたがもう許さんでございます…全殺しにしてやりましょう………おっと、マスターこの姿で会うのは初めてございますか?」

 

彼女は振り向くと私ににっこりと笑いかけてきました。

 

「本当にチィちゃんですか…?」

 

「ええ、ええ!私

わたくし

めはあなたに森で助けられたチィめでございます」

 

そう言うとチィちゃんは手を前に出し綺麗なお辞儀をしました。

 

「さて………全殺しでございます…」

 

そう言いながらチィちゃんは………ってチィちゃん!試合で殺しちゃダメですよ!

 

「解っております。先生」

 

チィちゃんは固まってる先生に呼び掛けました。

 

「え?あ、はい!」

 

「これでフェアでございますね?お坊っちゃま?」

 

チィちゃんはルシルシルくんにも呼び掛けました。

 

「まさか、実力を隠す魔物だったとは…」

 

「では位置について………」

 

ルシルシルくんのキングオーガは背中の巨大な斧を持って戦闘体勢に入りました。

 

チィちゃんは何食わぬ顔で小さな帽子を直しています。

 

黄昏決闘(ラグナロク)!」

 

開始の合図が下りました。

 

「行けキングオーガ!」

 

「ブォォォォォ!!」

 

ひぇ…キングオーガが斧を構えて突進してきました。

 

「マスター」

 

「は、はい!」

 

「あの愚者に罰を与える許可を」

 

「え?ダメですよ!Aランクですよ!」

 

そうです!チィちゃんは人型に変身できても相手はAランクの魔物なんです!

 

「大丈夫でございます」

 

「え?でも…」

 

「さあ、マスター」

 

チィちゃん………。

 

「解りました…でも必ず戻って下さいね?」

 

「はいマスター、では……」

 

ズドン!!

 

その瞬間、チィちゃんが光ると重い音が響きチィちゃんが視界から消えました。

 

「ごはっ…!?」

 

向こうを見るとチィちゃんが足を振り上げルシルシルくんをキングオーガの頭の高さと同じぐらい蹴り飛ばしていました。

 

「ブォ!?」

 

キングオークがルシルシルくんの異変に気付き振り向いた瞬間、既にチィちゃんは空中で踵を振り上げていました。

 

「空きだらけでございますね」

 

ゴガァァァァン!!!!

 

キングオーガの頭のてっぺんにチィちゃんの踵がめり込みました。

 

キングオークは膝を地面に折り前のめりに崩れ落ちました。

 

「まあ、死にはしないでしょう」

 

そう言うとまたチィちゃんはすたすたと歩いて寄ってきました。

 

「ふ、ふぇ?」

 

な、なにがおこったんですか…?

 

「マスター」

 

「は、はい!」

 

「またの名を神罰淑女(ネメシス)と申します」

 

チィちゃんは更に近付いて私にだけ聞こえるように耳打ちしました。

 

「え?ネメシスちゃん?ステータス」

 

 

 

神罰淑女(ネメシス)

 

[チィちゃん]

ランク:SS

魔力値:300000

身体値:180000

契約者:リリウム・ベイオウルフ・イーグルアイ

スキル:

《神罰》

《光魔法Lv80》

《魔王》

《石化眼》

《金の翼》

《契約魔物》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネメシスねぇ…やはり魔王か」

 

この魔王イヤーの前ではどんな小さな声でも聞こえるぞ。

 

魔王は水晶の森に魔力は吸い付くされるが死ぬことは無い。

 

森自体には魔王を魔水晶化させる程の能力は無いからだ。

 

どうやらステータス的には俺より大分下か、だが神罰というスキルが気になるな。

 

それは置いておいてさっきの光は30Lvの光魔法、屈折する光(リフレクションレイ)

だろ。

 

自分にあたる光をねじ曲げ、更に光の認識をずらしあたかも最初からそこにいたように見せ掛ける魔法だ。

 

つまり途中のからずっとネメシスはルシルシル君の目の前にいたのだろう。

 

会話も念話で長距離から話せば場所がバレることはあるまい。

 

もっとも魔力の場所は光の認識をずらせないので魔力でモノを見ている魔王からすると子供騙しに過ぎないが魔王以外が相手なら鬼畜だな。

 

「う、嘘…人語を解する魔物なんて…それにAランクを一撃で倒すなんて…Sランク級の魔物じゃない…」

 

ミリンちゃん達はなんか唖然としている。

 

それを横目に巾着からダンダリアンの書を取りだし、パラパラと開いて途中のページで手を止めた。

 

 

 

神罰淑女(ネメシス)

 

《概要》

 

魔力値は魔王51位、身体値は魔王131位、総合は魔王69位、SSランクの魔王ではトップの魔力値を誇る。

 

光魔法と固有技《神罰》を使う。

 

神罰淑女の名前とは裏腹にやることは常に暴虐的で極度の戦闘狂(バトルジャンキー)だが、人に受けた大きな恩は決して忘れずその人の生涯が閉じるまで傍らに付き添い続けることもある。

 

 

ふーん、バトルジャンキーなのは気になるが魔王にしてはミーハーな奴だな。

 

 

《スリーサイズ》

89/56/83

 

 

わーい、バストサイズが俺の方が10も上だー。

 

………なんでだよチクショウ…。

 

おや?まだ続きがあるぞ?

 

 

《注意》

ただし付き添い続ける対象は美人かイケメンに限る、ついでにバイ。

 

 

 

………………俺はリリウムちゃんの今後に激しく不安を覚えた。

 

 

 



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ネメシスちゃん

 

 

 

「美味しいでございますね」

 

「そうでしょ!師匠はとっても料理が得意なんです!」

 

「チィチィの翼もふもふなので~す」

 

「カー」

 

リリアナちゃんの肩にクリスタリア・レッサークロウが乗っている。

 

首輪についたネームプレートには"がらす"と書いてかる。

 

なんでもリリアナちゃんに蟲の森に落ちていた珍しいお土産としてクリスタリア・レッサークロウを渡したら突然、目を開いて、感想欄(てん)の声が聞こえたのです!と、言いながらそんな名前を付けていた。

 

………一体何の電波を拾ったのだろうか?天の声とは一体?

 

「まさか変身できる魔物だとはな」

 

「ヴィッセルさんお代わりどうですか?」

 

「ああ、貰おうか」

 

え?何してるかって?夕食だよ。

 

今日はカレーだ。

 

帰りがけに寄った市場でカレールーが売っているとはさすがに驚いた。

 

どうやらこの世界は食文化も相当発達しているようだ。魔法って素晴らしい!

 

え?違う?昼の黄昏決闘はどうしたのかって?

 

ハーピーの変異種って事で何とか誤魔化したよ。

 

変異種ならステータスが高くてもなんとかなるからな。

 

後は魔水晶の力をちょっと無駄遣いし、チィちゃんの人から見えるステータスの値を0を1つ減らしてスキルを消したり書き換えたりしたら偽造工作の完成だ。

 

ふふふ、魔王に不可能は無いのだ!

 

「師匠ー!お代わり下さい!」

 

あいよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて師匠、そろそろ本題に入りましょう…」

 

リビングにはリリウムちゃんとチィちゃんと俺の3人(?)だけが席についていた。

 

「そうでございますね」

 

やはりアレか…アレについてなのか…。

 

「そうか……」

 

「師匠そろそろ………………………」

 

リリウムちゃんは長い間を開けてからゆっくりと優しく語りかけた。

 

「お風呂に入りましょう?」

 

「ごめん被る」

 

イヤだ。

 

この体で風呂になど入ってたまるか!

 

そもそも魔王は体が汚れる前にその汚れが勝手に消滅するから風呂など入らんでも全く問題ないのだ!

 

「師匠!往生際が悪いです!観念してください!」

 

イヤだ!なにがなんでもそれだけは譲れん!

 

「そうでございます!マスターの成長途中のお体も素晴らしいでございますが、あなた様のその完成したお体も堪能…げふん…拝見したいのでございますよ!」

 

てめぇはまず、煩悩を隠してその鼻血を拭きやがれ。

 

大体、風呂場で自分の裸体なんか見たら自分が女だと痛感するだろうが!

 

「え……あ………師匠…そうでしたねすいません」

 

そう言うとリリウムちゃんはとてとてと歩いて部屋から出ていき、暫くすると何か布を持ってきた。

 

「師匠、これをどうぞ」

 

「ん?」

 

持ち上げてみると………………大人物の黒のビキニ水着だった。

 

「これなら大丈夫ですね!」

 

「そうでございますね」

 

「なにが?」

 

「体が汚れないなら毎回水着に着替えて入ればいいんですよ!」

 

「え?いや、それ以前に入る必要ないし…」

 

「レッツゴー!」

 

「でございます」

 

ちょっ……リリウムちゃん引っ張らないでそこはダメだメイド服脱げる!脱げるって!だから………あ………アーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「汚された…」

 

主に心が………。

 

俺はメイド服でリビングのソファーに崩れ落ちていた。

 

俺の膝の上にはリリウムちゃんが座っており横にはチィちゃんが座っている。

 

「師匠の水着可愛かったですねー」

 

「そうでございますねー、少し胸を揉んだぐらいであんなにいい声で鳴かれるとは思いませんでございました」

 

コイツ………あのまま森に捨て置くべきだった。

 

「ふふふ、チィちゃんは悪戯が大好きですねー」

 

リリウムちゃん…君は気づいていないけどチィのアレは悪戯なんかじゃない……あの目は…あの手つきは…明らかに性欲を満たしているだけだ!

 

「しかしこんな水着どこにあったんだ?ピッタリだし」

 

まさかリリウムちゃ…無いな、全然足りないもん。

 

先行投資なら…かなり無謀だな。

 

「師匠…チィちゃん……ものすごく失礼なこと考えませんでしたか…?」

 

ニコッ…。

 

「ナ、ナンノコトデショウカ?」

 

「い、いえ滅相もございません!」

 

ブルータス… お前もか……。

 

「お母様のモノです」

 

「母親の?」

 

「はい、私のお母様です」

 

リリウムちゃんはどこか悲しそうに遠い目をしながら言った。

 

「…死んだのか」

 

「はい…10年ほど前に」

 

「そうか……」

 

俺の母親は先に俺が死んでどう思ってるだろうか?

 

妹は元気だろうか?

 

二人共どうしてるだろうか?

 

俺はそれ以上は聞かずリリウムちゃんが寝息を立て始めるまで頭を撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと……」

 

リリウムちゃんをベッドに運ぶとリビングに戻りソファーに座っていた"ネメシス"の隣に座った。

 

「聞きたいことがあるのでございましょう?」

 

「当たり前だ」

 

俺はネメシスを見た。

 

頭にちょこんと乗った帽子、ミニスカにスーツを足したような服。

 

金の翼を持つ黄色いバスガイドにしか見えない服装だ。

 

「お前はなんの為にあの森にいた?」

 

「勿論、SSSランクの魔王のあなたを殺し、私がSSSランクに上がるためでございましょう?」

 

ネメシスは悪びれる様子もなくニッコリと笑いながら言った。

 

「だろうな」

 

他に理由がない。

 

ネメシスは元からSSSの俺と違い、ただの魔物から魔王になった魔王だからだろう。

 

魔王には二種類いる。

 

最初からSSSの魔王と魔物から叩き上げの魔王だ。

 

圧倒的に最初からSSSの魔王の方が多いが最初から持つ大元の能力値は変わることがない。

 

逆に魔物から魔王になった魔王は強いがごく少数だ。

 

なぜらな魔物が魔王になるためには同じSランクの魔物を数千数万という途方もない数を補食しなければならないからだ。

 

SランクからSSランクへ直ぐに上がれる裏技もあるが俺には関係ないことだ。

 

その代わりSSランクで平均的な最初からSSSの魔王と同じぐらいの能力値を持ち、SSSランクの魔王を補食し、SSSランクに成れれば逸脱した能力を持てる。

 

まあ、最初からやたらに高い俺のような例外もいるがな。

 

「それで?俺を殺すか?」

 

「いいえ、最初はそのつもりでしたが森に入ってから今の私ではではまず勝てないと痛感したしだいでございます」

 

まあ、森に魔力ちゅーちゅー吸われてのびてたからな。

 

今の私では……ね。

 

「それにマスターが悲しんでしまわれます」

 

「なんでお前はリリウムちゃんに尽くすんだ?命を救われたと言っても魔王にそこまでの義理は無いだろ」

 

俺は例外だが魔王は基本的にとてつもなく自己チューだ。

 

自分がイラッとしたから国を滅ぼすなんて日常茶飯事らしい。

 

「それは勿論…」

 

「もちろん?」

 

「マスターが私好みの美少女だからでございますわ~」

 

ネメシスのは体を抱き締めてくねくねし始めた。

 

心なしかネメシスの回りにハートが飛んでいるように見える………いや魔法で飛ばしている。

 

………やはり自己チューの極みか。

 

「ぐへへへ………まずは日頃のスキンシップからでございます……じゅるり」

 

コイツ…外堀から埋める気か。

 

「はぁ………もうわかった……」

 

「ではでは私はこれで、マスターとソフトな添い寝でございます♪」

 

そう言うとチィはスキップしながら部屋から出ていった。

 

「………………………………………強く生きろリリウムちゃん………」

 

俺は窓越しに夜空に浮かぶ月を見ながら呟いた。

 

 

 



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薔薇(ヘンタイ)と魔水晶(俺)
薔薇の嘲笑


 

 

 

棘。

 

棘が螺旋を描く事で作られた苦痛の塔。

 

その最上階の中央で薔薇の華のような美しさを持った女性が棘に腰掛けていた。

 

その女性は所々に刃があしらわれた深緑色のドレスに新血のような深紅の淡い輝きを放つ髪をしていた。

 

「ふーん……魔水晶のとこの魔王が動き出したのねぇ……」

 

女性は目の前に生えているこの塔に不釣り合いな名前もない質素で小さな花に問い掛けた。

 

当然、花は何も答えない。

 

「1000年も沈黙を護ってきたあの森の魔王が動き出すなんて不思議ねぇ…あなたはどう思うかしらぁ?」

 

だが女性は花に言葉を投げかけ続けた。

 

「そう、あなたも解らないのねぇ………それならぁ…」

 

そう言うと彼女はゆっくりと立ち上がった。

 

「ちょっと行ってこようかしらぁ?」

 

次の瞬間、その場には女性も小さな花も消え、ただ棘だけが残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハクション!」

 

「どうしました師匠?風邪ですか?」

 

「いや、それはないだろ」

 

魔王が街で病原菌にヤられたら今頃街中、即死者続出だ。

 

誰かが俺の噂でもしたか?いや、あんなの迷信だろ。

 

ちなみに現在、リリウムちゃんを膝に乗せ授業を受けている真っ最中だ。

 

今日は魔法の勉強らしい。

 

「えへへ、チィちゃんくすぐったいですよ」

 

「チィ!」

 

………リリウムちゃんは服のなかに入ってこようとする小鳥(エセ淑女魔王)と戯れている。

 

このアマ…俺が授業中手出しできないことを逆手に取りやがって…。

 

「もう、チィちゃんは甘えん坊さんですね」

 

甘えん坊って……なぜそのアホの丸出しの性欲に気づかないリリウムちゃん………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…」

 

俺はリリウムちゃんとチィちゃんを家に残し、街の外の人目につかない森の一角に来ていた。

 

目の前にはバカでかいカマキリのクロロがいる。

 

「お前、修行に行ってこい、というか魔王になるまで帰ってくるな」

 

無理難題を突きつけてみた。

 

「キ、キシャァ…?」

 

眼に見えてクロロが狼狽えた。

 

"ムリです"と、言っているように見えなくもない。

 

「つべこべ言わずさっさと逝け!」

 

「ギ!?シャァ!!!」

 

クロロの胴体をドロップキックで蹴り飛ばすと50m程の巨体はまだ日の高い空の星になった。

 

え?クロロに対してバイオレンス過ぎる?良いんだよそもそも俺、虫嫌いだし。

 

まあ、あれぐらいでアイツは死なない、スキル《超再生能力》持ちだしな。

 

俺は巾着からダンダリアンの書を取り出し、ペラペラとページを捲ってあるページで手を止めた。

 

 

 

《超再生能力》

 

自然回復スキルの最上級スキル。

 

身体と魔力を急速に回復し、例え小さな肉片しか残っていなくとも瞬時に再生する。

 

最強レベルのスキルだが基本的に低ランクのモンスターしか持っていない、上にこのスキルは再生能力を急激に上げるため毒の回りが数千倍速く、毒が効きすぎるという弱点もある。

 

が、抗体ができるまでも異常に速く、それまで生命が持てば即座にその毒の耐性がつくのでこのスキル持ちは猛毒でさっさと殺すか跡形もなく消し飛ばすことをオススメする。

 

尚、このスキル持ちの魔王は未だ確認されていない。

 

スキル持ちモンスター例:

Sランク:グリム・リーパー

Fランク:リバイバルフラワー

Fランク:ブラッディースライム

など

 

 

 

これのせいで最初に剣で微塵切りにした時も直ぐに再生してとてもキモかった。

 

そして何をしても死なないのでクロロに対する雑な扱いが始まったのだ。

 

「ふーん…便利ねぇ、その魔道具ぅ」

 

「だろう?結構役に立つんだよ………ん?誰だお前?」

 

いつの間にか後ろから緑のドレスを着た赤い髪の女性が覗きこんでいた。

 

「それはそれとしてあなた綺麗ねぇ…」

 

彼女はうっとりした顔をした。

 

ゾクゾクゾクッ!?

 

この感覚はいつぞやの風呂場の時と同じ感覚!?

 

「あなたぁ、私のモノになる気はないぃ?」

 

ひいぃぃ!!?変態だぁ!!!!

 

「ごめん被る!」

 

俺は変態から即座に(リリウムちゃんの)自宅逃亡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が逃走するのを少し残念そうに彼女は見ていた。

 

「あらぁ?つれないわねぇ、残念ねぇ、良いわ今度は自分から来てくれるものねぇ」

 

そう言うと木陰に移動して指を振るうと草が退き、覆われていたものが現れた。

 

そしてそれをうっとりしながら抱えあげた。

 

「うふふふふぅ、可愛いわねぇ」

 

「すー…すー…」

 

それは小さく寝息を立てるリリウムだった。

 

「待ってるわよぉ…私のモノになるのをねぇ…私好みの綺麗な魔王さん♪」

 

そう言うと彼女、南部の魔宮、棘の山の頂の塔に住まうSSSランク魔王、"混沌妖薔薇(クロノス・ローズ)"はリリウムを片手で抱き抱えながらゆっくりと自分の住みかへ、鼻歌混じりに歩き出した。

 

 

 



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黄色い一撃

 

 

 

これは…どういうことだ?

 

クロロを蹴り飛ばしに行く間、リリウムちゃんの教師をチィに代理を頼んで帰って来てみれば家や門は無事だが、庭に500m級の巨大なクレーターが出来ていた。

 

クレーターに近付くと中心にネメシスがめり込んで倒れていた。

 

「ッ!?おい!何があった!」

 

俺は駆け出しネメシスを助け起こした。

 

「ま…まさかあんな大物が出やがりますとは……やられてしまい…まし……た………」

 

「大物?何の事だ?おい!」

 

聞く前にネメシスは気絶した。

 

くそっ…まさかSSランクとは言え魔王が倒される程の敵が来るとは一体何があったんだ?

 

俺はとりあえず担いで家のなかに入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入るとヴィッセルさんとリリアナちゃんがリビングにいた。

 

「あ、スドーさん!」

 

「すどーさんなのです!」

 

二人は俺に気付くと同じタイミングで詰め寄ってきた。

 

やっぱり親子だなコイツら。

 

「り、リリウムが拐われてしまった!」

 

「のです!」

 

ふむ、そうか………………………ん?リリウムちゃんが拐われた?

 

「なんだと…」

 

「「…!?」」

 

俺を中心に温度がかなり下がった。

 

いかん、キレかけて勝手に魔法が発動しかけた。

 

「詳しいことを…いいえこいつから見ましょう……記憶魔水晶(メモリアルクリスタル)

 

俺の右手は淡く七色に輝きだした。

 

「それは…六属性に属さない魔力を感じる…まさか固有魔法?」

 

リリアナちゃんとヴィッセルさんは手を見て驚愕していた。

 

「ヴィッセルさん説明は後です」

 

俺は肩に担いでいたネメシスを左手で抱えると輝く右手を勢い良く頭に差し込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光線(レイライン)!』

 

マスターの放った光線は人形の的の丁度中心の胸に当たりました。

 

私特性の的には傷ひとつ付きませんが接触ヶ所が発光するので当たったのがマスターでも良くわかります。

 

『良くできましたでございますよ。後は命中率を上げるだけでございます』

 

『えへへ~』

 

褒めるとマスターはにへらと笑いました。

 

全く、本当にマスターは可愛いでございますね…あ、涎が。

 

『…?どうしたんですか?』

 

『いいえ、なんでもございません。それより続きをしましょう』

 

しかし…あのヴィッセル様はマスターに性教育はしなかったのでしょうか?今時こんなに純粋無垢な娘なんてそういませんでございますよ。

 

…………ならその内、私が手取り足取りお教えしましょう…じゅるり。

 

『ところでチィちゃん?』

 

『なんでございましょう?』

 

『なんで的が二等身ぐらいの師匠(黒ビキニ水着バージョン)のヌイグルミなんですか?』

 

………………。

 

『憂さ晴ら…げふん。目の保養…げふん。どうせなら見て楽しい的の方が良いと思いまして』

 

あの鬼畜森の水晶メイドめ…あの時は危うく死にかけたでございます…。

 

憂さ晴らしにはピッタリでございます♪

 

しかし、マスターは何故か非常に胸に攻撃を当てる確率が高いでございますね。

 

………まあ、そこには触れないようにしましょう…マスターが怒られると本当に恐いでございます。

 

『そうなんですかー』

 

スドー様のスリーサイズや身長、体重その他もろもろに至るまで全て把握しておりますので小指大から原寸大の成功な人気をお造りすることができます。

 

今度、セクシーポーズの等身大人形でもキッチンに置いて置きましょうか……ぷ…引きつった顔が目に浮かぶでございますよ。

 

え?等身大人形のしよう用途でございますか?

 

夜のお供げふん、言わぬが花でしょう……ぐへへへ…。

 

『へぇ…ここが彼女の住む所ねぇ。中々良いと頃ねぇ』

 

『へ?誰ですか?』

 

『!?』

 

私はその人物を見るとマスターを抱えて後ろに飛び退きました。

 

『…混沌妖薔薇(クロノス・ローズ)……なぜ貴様が…』

 

『あらぁ?良く見たらネメシスちゃんじゃないのぉ?久しぶりねぇ』

 

『え?知り合いですか』

 

『すいませんマスター、白昼夢(ホワイトアウト)

 

『ふぇ?………すー…すー』

 

マスターが淡い光に包まれるとマスターは眠りに落ちました。

 

マスターを木陰に移動させると混沌妖薔薇に向き合いました。

 

『要件はなんでございましょうか?雑草様』

 

『あらぁ?酷い言われようねぇ、まぁ良いわぁ。魔水晶の魔王は何処かしらぁ?魔力を辿ったらここに来たのよぅ』

 

そう言うとクロノス・ローズは人差し指を立てました。

 

『あんな綺麗な森の魔王ならさぞ美しいのでしょうねぇ………うふふふふ…』

 

この雑草妖怪…スドー様を喰うきでございますね……そうはさせません!

 

私は地面を蹴り低く飛び、空中を蹴りクロノス・ローズの真横に片脚を振り上げた体勢で止まりました。

 

振り上げられた私の脚は黄金色に光っていました。

 

その瞬間、私の脚が揺らぎ、消えたように見えました。

 

神速(スーパーソニック)!!!』

 

ズゴォォォォン!!!

 

クロノス・ローズを中心に威力の余波で地面が円形に潰れ土煙が巻き起こります。

 

75Lvの身体を私のような魔王ですら視認できない速度で動かす魔法でございます。

 

そのせいで私ですら脚などの部分展開が限界なのでございます。

 

流石に腕の一本ぐらい…、

 

『あらぁ?激しいのねぇ』

 

『なっ!?』

 

土煙が晴れるとクロノス・ローズは人差し指一本で私の脚を受け止めていました。

 

なんて馬鹿げた身体能力…顔色一つ変えずに受け止めるとは……いやその前にコイツ…神速が見えてやがります…。

 

『悪い子にはぁ』

 

飛び逃げようと思いましたが、既にクロノス・ローズは私の脚を掴んでいました。

 

あ、ヲワタのでございます。

 

『お仕置きよぉ♪』

 

クロノス・ローズは私を地面に転がすと上私の胴に股がって両手を押さえつけてきました。

 

『な、何を…』

 

そのまま、クロノス・ローズは私の首筋に舌を這わせてきました。

 

『オ・シ・オ・キ・よぉ。私とぉ…シましょう?』

 

『………………………優しくシて欲しいでございます』

 

あっ…あんっ……そこは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は途中で記憶の読み取りを止めた。

 

クロノス・ローズ………さっきの女か…。

 

記憶魔水晶は魔水晶魔法Lv30で覚える魔法で、対象の記憶を見たり消したり改竄したり、逆に俺の記憶を見せたり他の人に見せたりできる便利な魔法である。

 

「むにゃむにゃ…そんな激しいでございますよ…」

 

ネメシスは蕩けた顔で口の端にヨダレを滴ながら寝言を言っている。

 

「………………」

 

要約するとコイツはリリウムちゃんを守ろうとしたが結局、クロノス・ローズとやらに双方同意の上で食べられてネメシスが先に落ちて伸びていただけなようだ。

 

しかも庭のクレーターもネメシスが作ったようだな。

 

「おい、起きろや」

 

ズドン!

 

一撃ボディーブローを入れ、床にそっと投げ落とした。

 

「ゴハッ…あれ妙にお腹が痛い?スドー様おはようございます」

 

さて、とりあえず…、

 

「………………」

 

ピピピピピピピ…。

 

「す、スドー様?何故無言で片足を上げて脚にゆっくりと神速を掛けているのでございますか?」

 

俺のねんど〇ろのようなソフビ人形を勝手に作成した上に職務放棄してよろしくヤって止めにリリウムちゃんを奪われるとはね……。

 

「なあ…ネメシス…」

 

「は、はい?なんでございましょうか?」

 

「光の速さで蹴られた事はあるかい?」

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その直後、凄まじい轟音と共にリビングの庭側の壁が吹き飛び、直線上のモノをなぎ倒しながらくの字に折れ曲がった黄色い何かが吹き飛んで行った。

 

後日、ポラリスの外壁の内側に翼の生えた人の形をした何かが激突したような割れ跡があったらしいが俺はなにも知らん。

 

 

 



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棘の山へ

 

 

 

「……ひ、酷いのでございます…」

 

目の前にボロボロになって戻ってきたネメシスが伸びていた。

 

「ダ・マ・レ。精々1割殺しぐらいで済ませたのだからありがたく思え」

 

俺はネメシスを足蹴にするとヴィッセルさんとリリアナちゃんに向き合った。

 

「スドーさん…」

 

「ヴィッセルさんリリアナちゃん良く聞いてください」

 

俺はこれ以上ないぐらい真剣な顔をした。

 

「私の本当の名前は…、」

 

「クリスタル・ノヴァさんだね?」

 

「クリスタル・ノヴァでしょう?」

 

「そう…クリスタル・ノヴァ…あれ?」

 

…なんで知ってんの?

 

「な、なんで知ってるんですか?」

 

「一様気付かない振りはしていたが……だってほら……なあリリアナ…」

 

ヴィッセルさんは物凄くばつの悪そうな顔をした。

 

「何時も部屋の机の上にあるお姉ちゃんの絵日記に書いてあるのですよ~」

 

ぶふっ…リリウムちゃん…ちっとも隠し通せてない…。

 

「えっと…俺は魔王なのになんで…」

 

「リリウムがなついてるんだ。悪い人な訳がない」

 

「お姉ちゃんがなついてるんだから悪い人な訳ないのですよ」

 

「それにスドーさんが居なくなってはあの美味しい料理が食べられなくなってしまうしな」

 

「そうなのですよ~」

 

そう言うと二人ともドヤと言いたげな顔をした。

 

えぇ…そんな顔されても……俺が間違っているのか?人間の魔王の間の溝なんて2mmぐらいなのか?ひょっとして人間は魔王に対してウェルカムコーヒーを出す店並に非常にウェルカムなんだろうか…。

 

突然、蘇生したネメシスから肩に手をポンと置かれた。

 

「大丈夫でございます…スドー様は何も間違ってございません…この家が特殊なのでございます」

 

何か悟ったような顔で言われた。

 

「そうか……」

 

もう復活したのかこの痴女は…。

 

「話は後で、まずリリウムちゃんを助けに行きます」

 

俺は空中にジャンプして高く飛び上がると空に止まった。

 

最近気付いたんだが、俺……生身で空飛べた。

 

まあ、良く考えれば全身が魔水晶で出来ているから俺自体も飛べたわな。

 

更に全身に魔力を溢れさせると、身体が淡く光り、着ていた服は生まれた時に着ていた手足が甲冑のドレスに変わっていた。

 

身体に魔力を流せばこの姿になると気付いたのはメイド服生活1週間目の日である。

 

「待ってろ、リリウムちゃん」

 

「待ってくださいませスドー様」

 

ネメシスは下から神妙な顔つきで声を掛けてきた。

 

「なんだ?」

 

「夕飯までには帰ってきて下さいませ♪」

 

「てめぇも来やがれぇ!!!てめぇのご主人様でもあるだろうが!!!」

 

俺は魔水晶の縄を造るとネメシスを縛り上げると、一瞬にして音速の壁を超えるギリギリの速度で棘の山へ飛んでいった。

 

後から死ぬとか体が千切れるとかなんて上級プレイとか言っている気がしないでもないが知らん、知らんったら知らん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、棘の塔ではクロノスローズは切り株のような机に向かいながら頭を抱えていた。

 

何故かドレスは着ておらず黒い下着姿で豊満な胸を露にしていた。

 

「嘘でしょぉ………私これでも何千年も前からずーーーっと生きているのよぉ…コレだって得意なのにぃ…それなのにぃ…それなのにぃ」

 

切り株の向かい側にはニコニコしたリリウムが座っていた。

 

勿論、服は着たままだ。

 

「えへへー、ローズさんの番ですよ?」

 

向かいながらしていたのはなんと…、

 

 

チェスだった。

 

 

「なんで一度も勝てないのよぉー!!!せっかく裸に剥いちゃおうと思ったのにぃ…」

 

否、脱衣チェスだった。

 

盤を見ると白の駒に黒のキングが完全包囲されていた。

 

誰がどう見てもチェックメイトである。

 

「ローズさんよわよわですねー、もう脱ぐものが無いですよ?」

 

「嘘っ!?100年は無敗だったのにぃ………」

 

リリウムは屈託のない笑顔で言ったが、無垢な笑顔から告げられたそれはクロノスローズの心に塩を塗りたくるのだった。

 

「なら今度は将棋よぉ!」

 

クロノスローズは何処からともなく将棋と書かれた箱を取り出した。

 

「良いですよ、私ボードゲームは結構強いんですよ?」

 

「今度こそぉ…は剥いてみせるわぁ!」

 

そう言うとクロノスローズは一瞬光り、元のドレス姿に戻った。

 

切り株の隅にはこれまでしたであろうトランプやら花札やらジェンガやら様々なパーティーゲームが散乱していた。

 

ちなみに、どちらが圧勝したかはご想像におまかせする。

 

 

 



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そんな夢…修正してやる!

 

 

 

「死ぬ…死んでしまうのでございます………」

 

「黙れ、駄鳥」

 

植物系の魔物が大量に棲息する動植物森の上空を抜け、渓谷の谷から見上げる崖のようにそびえ立つ棘の壁の前に、飛んでいる30分ほど紐付き首輪のせいで頸が絞まり続け、伸びているネメシスの手綱を持ちながら立っていた。

 

目の前の棘の壁の中は混沌妖薔薇(クロノスローズ)の魔王領だ。

 

高さは1・2kmは軽く有りそうだ。

 

「高いのですねー、魔王ってスゴいのです」

 

「カー」

 

「そうだな、全く…物理法則は何処へ行ったのやら」

 

全く…肩にレッサークロウのペットのがらすを乗せたツインテロリ巨乳のリリアナちゃんも魔王の人外さに驚いて…は、無いな相変わらず眠たそうだ………………………………ん?

 

「なんでここにいるんだ?リリアナちゃん」

 

「魔法で卵形の防壁で自分を囲んでチィチィの足にしがみついて来たのですよ」

 

手で卵の形をジェスチャーしながらそう答えた。

 

ええ………なにそれ気づかなかった。

 

「いや、危ないからな家に帰…」

 

「スドーさん、こんな楽しそうなイベント…ではなくお姉ちゃんの一大事にいても立ってもいられなくなって付いて来てしまったのですよー」

 

後半は非常に棒読みで言ってきた。

 

こ、コイツ…姉の一大事をイベントぐらいにしか思ってねぇ!

 

と、思うだろうが実はリリアナちゃんはリリウムちゃんの事をいつも一番心配してるんだよな。

 

「大丈夫なのですよ、危なくなったらチィチィと帰るので」

 

リリアナちゃんはリリウムちゃんぐらい頑固だからな一度言い出すと言聞かないんだよな…。

 

「………はぁ…解った…その代わり俺から離れるなよ?」

 

「ハイなのですよ」

 

リリアナちゃんは俺の手を両手で握った。

 

ムニュ。

 

リリアナちゃんの谷間に俺の手が沈んだ……前世でこういう事されたかったな…………いかん、鬱だ……さっさと壁を壊すとするか。

 

「リリアナちゃん」

 

「んー?」

 

「これがこの世界最強の生物の魔法だ」

 

俺の握られていない片手の平を上に上げると拳ほどの黒い焔が現れた。

 

虚無の焔(ヴァニティーフレイム)

 

俺の中心から焔は壁に当たった瞬間、棘を這うように伝い、やがて全ての棘を薄い黒い焔の膜で覆った。

 

焔はそれだけに留まらず俺達を中心とした空間以外の地を木々を空気を空をそこにある全てを覆った。

 

さながら漆黒の世界が広がった。

 

「凄い…のです…」

 

「カー」

 

流石のリリアナちゃんもこれには驚いていた。

 

そして、焔が晴れると元は青々とした棘は白々としていた。

 

土色だった地面は白い焦土と化していた。

 

木々はそのままの形で葉の一枚一枚まで全てが灰になっていた。

 

そしてその白い死の世界はまるで全てが虚無のように思えた。

 

「失せろ」

 

その言葉と共に棘の壁や木々は崩れ落ち、ただ灰の山になった。

 

憤怒の焔、90Lvの炎魔法だ。

 

自分以外の空気を数kmに渡って超高温の焔の膜で覆い焼失させる魔法だ。

 

包まれた物体は形を保ったまま灰になる。

 

丁度、線香の灰のようにな。

 

まるで見渡す限り雪景色だな、全て灰だけど。

 

ここまでの魔法を使ったんだ。リリアナちゃんでも流石に引かれるだろ…、

 

「ほらチィチィ見るのですよー、灰でできたゴーレムなのです。10/1(10倍)スケール白がらすちゃんなのですよー。がらすちゃんも気に入って頭に乗ってるのでございますよー」

 

「カー」

 

「リリアナ様いいでございますね。どれ私も………ここを固めて…胸はもう少し丸く…フリルの数を揃えて…ほら!スドー様メイド版の等身大灰像でございますよ!」

 

………う、

 

「わー、スゴいのです。魔力で固めているのです?」

 

「カー」

 

「そうでございます。そのがらす様の灰ゴーレムもリアルでございますね」

 

「ゴーレムだから動くのですよー」

 

「カ!?」

 

「おお、走るのでございますか、がらす様が危ないのでは?」

 

………な?

 

………もし今の光景を例えるならきゃいきゃいやらきゃぴきゃぴやらだろう………コイツらに常識を求めたのが間違いだったのだろう…うん。

 

てか、いつの間に復帰したし駄鳥。

 

………なんだその妙に完成度の高い灰像は…。

 

「凄いでございましょう?スドー様のお体を拝見して以来、核に焼き付いたその神秘的な造形を再現するのに全てを掛けその結晶…それは私の夢そのものでございま、」

 

「そうか………オラァ!。よし、悪は潰えたそろそろ行くぞお前ら」

 

「私の夢が一撃!?」

 

「行くのですよー」

 

「カー」

 

俺たちは灰の地面に膝を付く駄鳥をほって、さっさっと焼き払い尚続く、棘の森の先に見える遠くに小さく見える棘の塔へ向けて歩き出した。

 

「あ、待ってくださいませ!スドー様ー!」

 

………………追い付いたネメシスに蹴りを入れた俺は悪くない。

 

 

 



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植物人の森

 

 

 

俺ら御一行(2体と1人と1羽)で棘の塔を目指し、出来たばかりの灰の山を抜けると100m級の高く深い木々の森の前に到着した。

 

どうやら森全体を覆う巨大な結界が張ってあるようだ。

 

憤怒の焔が森目前で途切れている。

 

「高いな」

 

「そして深いのです」

 

「カー」

 

リリアナちゃんとがらすも驚きだ。

 

高い木々、蛍のような妖精の小さな光、苔むした地面、倒れ苔むした木に芽吹く新芽。

 

もの〇け姫かと思うような深い深緑の森だ。

 

木の神が棲んでいるなどと言われれば信じるな、生憎棲んでいるのはレズの誘拐犯だがな。

 

「他にもこの"裁きの森"には植物人

プランター

がいるのですよ」

 

「プランター?」

 

「それは私が説明いたします」

 

黄色いバスガイドことネメシスが出てきた。

 

「プランターとはこのような秘境のようなところに棲息する希少戦闘民族でございます」

 

「戦闘民族?」

 

サイヤ的な民族ではあるまいな?

 

「基本的に環境過激派が多く、人間と交流することは無く、寧ろ森からの人間廃絶運動をよくする人達でございますね」

 

環境過激派……一瞬シーシェ〇ードが浮かんだ俺は悪くない、鯨物語だな。

 

「えー……なにそれこわい」

 

「個体数は少ないのでございますが1人1人がそれなりに強いのが特徴でございます」

 

「へー、具体的にはどれぐらい?」

 

「魔力値も身体値も2万ぐらいは軽く行くそうでございますよ? 特徴としては黄緑色の肌をした女性の民族といったところでしょう」

 

そりゃ高いな、人間と比べればだが、女性ねぇ。

 

「秘境に棲息し、人間と交流せず、戦闘力の高い女性民族。たまにアマゾネスなどと呼ぶ方もおりますね」

 

「ふーん」

 

「ちなみに私的には初めはツンツンしていますが押しに押し倒すと折れる彼女らはツンデレ属性の……」

 

俺はクネクネし始めた黄色い変態をほっておき、腕を絡めているリリアナちゃんと共に歩き出した。

 

実はそろそろ修復途中の棘の壁が迫って来ているのだ。

 

数kmの焼失をほんの数分で再生するとはな、一々相手にする必要もないな。

 

俺達が結界の中の裁きの森に入ったのと棘の修復が完了するのはほぼ同時だった。

 

「さて…」

 

俺は指をふると空中に100本ほど魔水晶の剣を展開した。

 

もう大分小さなモノでも造れるようになったぜ。

 

「たぶん来るぞ」

 

「そうなのですか?」

 

「ああ、あの結界は広域魔法を分散し消去させる結界だがアレの維持には数百人規模の術者が必要だ。恐らく全ての植物人が少しずつ分担して担っているのだろう。結界は異変が起これば術者にすぐわかる。だとすれば…だ」

 

「強い魔力のモノが入れば一瞬で全員にバレるとゆうことなのですか」

 

「そうだな」

 

いやらしい結界だ。

 

寧ろそっちが主な使用用途の結界だろう。

 

「ほー、魔法のことだけはなんでも知ってるのですね」

 

そりゃあ、ダンダリアンに死ぬほど叩き込まれたからな。

 

忘れたくても後、50年は忘れられそうにねぇよ…。

 

「スドー様、私がお相手致しましょう」

 

ネメシスが前に出た。

 

「ん?そうか」

 

手を握り力を込めると剣は霧散して消えた。

 

「ほらお出迎えだ」

 

高い木の上を跳びながら数人の肌の黄緑色の女性が近くに集結してきた。

 

また1人1人と少し離れた木上や幹や地面に集まり直ぐにかなりの大所帯になっていた。

 

ざっと200~300人はいそうだ。

 

「侵入者か…」

 

1人のプランターが言った。

 

「ならば死罪だ!我らのことを外に漏らすな!」

 

我らのことを外に漏らすな? なんのことだ? 棲んでいることはばれているはずだが?

 

そう言うと彼女らは一斉に魔法やら弓やらを放ってきた。

 

一つ一つが洗礼され一目で達人クラスの使い手だとわかった。

 

「だからなんだ」

 

俺はリリアナちゃんに掴まれてない片手を前に突き出した。

 

途端にリリアナちゃんと俺を包むように球形の魔水晶の障壁が出現し中に閉じ籠った。

 

リリアナちゃんに万が一があってはいけないからな。

 

魔法は着弾すると吸収され、矢などでの破壊はまず不可能だろう。

 

内側から外は見えないが外の炸裂音や打撃音や怒号が聞こえた。

 

「チ、チィチィは大丈夫なのですか? 2万クラスの相手が何百人もいるのですよね?」

 

ふむ、アイツの心配か。まあ単純に考えれば押し負けそうなものだ。

 

「なあリリアナちゃん」

 

「はい?」

 

「当たり前だが魔王はな、魔の王なんだよ」

 

外から音がしなくなった。

 

俺は障壁を霧散させた。

 

「ふえー……」

 

そこには倒れ付した植物人とその中で唯一立って不敵な笑みを浮かべるネメシスがいた。

 

「多種にとっての絶対強者、どうしよもない絶望、悪夢、それが魔王だ」

 

呻き声を上げる植物人を見る。

 

まだ動けるのもいるようだが戦闘は無理だろう。

 

「魔王1体相手に10秒、まあ持ったほうか。本気で相手しいほしいなら後、10万人は連れてくるんだな」

 

「全くでございますね。可愛かったので半殺しぐらいで済ませましたが………」

 

次の瞬間、ネメシスの目から光が消え、濃厚な殺気の重圧が辺りを襲った。

 

「次は…ないでございますよ…?」

 

 

 




新コーナー~人外魔境~

『えーと…どうもリリウムちゃんの家庭教師をしているスドーだ』

『このコーナーでは後書きでこの小説、あるいはキャラクターなどに対する読者の疑問を人外魔境の魔王どもがQ&A形式で答えていくコーナーだ』

『何か疑問があったら是非感想をくれると嬉しい』

『とりあえず次回は俺とチィことネメシスが答えるとする………ん?そんなに暇じゃない?ほう……穀潰しのニートの分際でよくそんなことが言えたものだな………む?そうか急にやる気が出てきたか、そうかそうか』

『と、言うわけで第1回の人外魔境は俺とチィが答えることにする。感想待ってるぞ』




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混沌妖薔薇

 

 

「ふーん、やっぱり足止めにもならなかったわねぇ」

 

クロノスローズは遊び疲れてテーブルに伏して寝てしまったリリウムを横目にいつの間にか切り株のテーブルに生える小さな花に話しかけ始めた。

 

「なら次はあなたかしらぁ?うふふ冗談、あなたは戦力にならないものねぇ」

 

クロノスローズは小さな花を撫でながらゆっくりと立ち上がった。

 

「そろそろ行こうかしらぁ?勿論あなたもね」

 

そう言うと花は溶けるようにクロノスローズの手に吸い込まれた。

 

その時、一瞬白い何かが2度横切った。

 

「あらぁ?」

 

前を見るとそこに小さな寝息を立てていたリリウムがいなかった。

 

「やられたわぁ」

 

そう言い前を向いた刹那。

 

轟音と共に視界を白が埋め尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は棘の塔だった場所に丸く空けられた禿山を下に見ながらリリアナちゃんと爆睡中のリリウムちゃんを両脇に抱え空中に浮いていた。

 

横では魔法を放ち終わったネメシスが浮いている。

 

俺がリリウムちゃんを救出し、ネメシスが魔法を放った。ただそれだけのことだ。

 

「Lv80光魔法、天崩(アマノオワリ)でございます」

 

Lv80光魔法、天崩(アマノオワリ)

直径数百~数千mの極太のビームを上空から落とし、その通った空間の全てを殲滅する広域魔法だ。

 

依然として空から流れ落ち続ける光の光景は天が崩れ落ちるように見える。

 

「いるな…」

 

だが、依然として天崩の光の中に莫大な魔力の渦を感じる。

 

すると中から素手で天崩を割り、人影が現れた。

 

天崩が丁度終わり、鮮明に見えるようになったその人影は蕩けた笑みを浮かべ、地より俺達を見上げるクロノスローズだった。

 

「ちゃんと来てくれたのねぇ。嬉しいわぁ~」

 

まるでダメージを受けてないな…。

 

「これを受けてほぼ無傷とは流石は七大罪祖王の1体なだけはあるのでございますね……」

 

七大罪?

 

「なにそれ?」

 

聞き返したらネメシスは、え?なにコイツあり得ないだろ。とでも言いたげな顔をした。

 

悪かったな穴だらけの知識で。

 

「スドー様もその1体の"憤怒(ラース)"でございませんか…」

 

「なん…だと……」

 

なんだか知らんけど………ってそんなこと考えている場合ではない、リリウムちゃんとリリアナちゃんを抱えたままでは戦闘など出来まい、ネメシスは帰るように言うか。

 

 

「……とりあえずお前たちは帰…」

 

横を見ると既にネメシスはいなく、代わりに"ファイトでございます"と魔力で書かれた文字が浮いて、遠くに米粒みたいになった金色の翼が見えた。

 

あのアマァ…リリウムちゃんの回収が済んだからさっさと帰りやがったな………。

 

まあ、どうせこの場では戦力にはならんから良いか。

 

「あらぁ?空気を読んで消えてくれたのねぇ、うふふ、利口な娘は好きよぉ」

 

「混沌妖薔薇ステータス」

 

色魔はほっておきステータスを開いた。

 

 

 

混沌妖薔薇(クロノスローズ)

 

職業:古代武術家

ランク:SSS

身体値:730000

魔力値:300000

スキル:

《混沌妖薔薇》

《自然魔法Lv99》

《火魔法Lv99》

《我流太古武術Lv99》

《魔王》

《女王道》

《植物生命創造》

《迷宮創造》

《魅了の眼》

《生存本能》

《自然再生》

《宿り木》

 

 

 

………身体値は俺より200000上か。

 

魔王も職業取れるのか、古代武術家ねぇ…百合強姦魔の間違いだろ。

 

「うふふ、もう逃がさないわよぉ」

 

その言葉と共に裁きの森や塔だった場所から次々と大樹の幹を遥かに越すような太さの棘が生えてきた。

 

10本20本どころ話ではない、400…いや500本以上の数kmの長さがある巨大な棘が俺を囲うように生えていた。

 

「別に逃げねぇよ。どうせ逃げたら地の果てまででも追ってくるだろ?」

 

「当たり前よぉ。絶対私のモノにしてあげるわ」

 

変態もここまで来ると清々しいな。

 

「黙れ、テメェはこの場で殺す」

 

俺は手を上に上げ翳すと光の粒が集まり、空を覆い隠すほどに巨大な海色の物体が現れた。

 

数kmはあろうかという剣だ。

 

振り上げられた状態で空に浮いている。

 

「あらぁ…本当に良いわぁ…アナタ」

 

あいかわらずクロノスローズは悪寒のする笑みを浮かべたまま俺を見上げていた。

 

「死ね」

 

手を下に下げた。

 

それと共に質量からはあり得ないスピードで剣は地面に吸い込まれるようにクロノスローズに落ちた。

 

さながら空が落ちるように見えた。

 

「良いわぁ…良い」

 

次の言葉は爆音、地割れ、衝撃波、破壊という破壊によって地表と共にかき消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

降り下ろされた剣は塔の建っていた丘を削るだけに留まらず高い土煙と土石を巻き上げ、地表に大規模なクレーターを作っていた。

 

………おかしい…コレほ巨大だが魔水晶製の剣だ。全ての鉱物を凌駕する硬度と万物を超えた切れ味をしている。

 

それなのにクレーターが出来るというのはおかしい…。

 

土石が再び地面に落ち、土煙が徐々に晴れるにつれて剣先とクレーターの中心の接触部が見えてきた。

 

「うふふ、本当に良いわねぇ……」

 

そこには健在のクロノスローズが笑みを浮かべていた。

 

「マジかよ………」

 

俺が驚愕したのはそこではない、元より攻撃が当たるとは思っていない、牽制程度に放った攻撃だ。

 

だが、剣はかなりの威力があったはずだ。それこそネメシスなら木っ端微塵になるような威力が。

 

それをクロノスローズはそれを避けることもいなすこともなくクレーターの中心で中指と人差し指の指のたった2本の指で剣を挟み止めていた。

 

「良いわぁ…そんなにされたらぁ…」

 

その時のクロノスローズの笑みは捕食者が獲物にするような獰猛で狂喜の孕んだ笑みだった。

 

「…私もぉ、壊したくなっちゃうわぁ」

 

 

 




~第1回人外魔境~

『さあ、記念すべき第1回目が始まった。進行はお馴染み魔水晶女王こと俺と、ベイオウルフ家の穀潰しこと神罰淑女でお送りするぞ♪』

『前回のことまだ根に持ってるんでございますか!?』

『持たれたくないなら働け。魔王は食わんでも死なんし空腹にもならんのだから飯を…、』

『さあ皆さん!この穀潰しめにどしどしお便り(感想)をお寄せください!』

『よし、まず最初のお便りだ。どれどれ…』


Q:この世界に魔力汚染的なのは在るんだろうか?


『ふむ、魔力汚染か…強いて言えば有るといえば有るのだがないといえば無いな』

『スドー様答えになっておりません』

『ん?そうか。えーと要するにだな、人と魔物は根本的に魔力の意味合いが違げぇ。例えるならししゃもとカペリンぐらい違う』

『…………詳しく説明しますと、人は肉体を中心に魔力を補助に生きております。それと違い全ての魔物は大なり小なり魔力核と言われるものを中心に肉体を形成し生きているのでございます』

『そ、つまり人はその魔力核が存在しねぇんだ。それで魔物にとって魔力核は人にとっての心臓あるいは脳だ』

『ここで問題となる魔力汚染でございますが、魔物にとっては魔力を汚染されることは魔力核を汚染されること、すなわち心臓や脳を犯されるも同じでございます。が、人にとっては肉体が主で魔力はサブ程度でございます』

『例えサブが汚染されても肉体には全く影響が無い。汚染されていても問題なく魔法は使えるし肉体的にも支障をきたさない、どうしてそうなのかと言われれば進化の形としか言いようがないな。まあ要する人は魔力汚染に凄まじく強い耐性のある生き物だということだ』

『ちなみにでございますが、魔水晶森を例にとるとよくわかるのでございます。マスターは森に入ってもいつも通りなのに関わらず私が入ると魔力を粗方搾り取られ墜落するほどでございますからね』

『まあ、魔王の核は魔力核ではなく魔王核といい魔力核とは大分異なるのだがそれはまた別のお話としよう、うん』

『プラスでいうのなら魔王の魔力と普通の魔力はまた別物でございます。もっともやはり人への魔力汚染は無意味でございますけど』

『まあ深みにハマるのでこのお便りはこれぐらいにしておこう。下の方にも質問が書いてあったが他のお便りが答える時間が無くなるので1コーナー1つで頼む。えーと次々っと…ん?お前当てだな』

『え?私でございますか?』


Q:魔王の男女比率と変態、正常、清浄の比率はどれぐらいですか?
教えてエロい人(ネメシス)



『エロい人でございますか…それは誉め言葉でございますね!』

『ダメだコイツはやくなんとかしないと』

『男女比は2:6:1ぐらいでございますね。それで…、』

『待て、最後の1はなんだ?』

『両性具有、あるいは性別の無い魔王でございますね』

『そんなのもいるのか魔王は…』

『それから次のは…9:0:1ぐらいでございますね』

『正常0かよ………』

『魔王の時点でまともな思考のは0でございますよ。皆何かしらの分野で(頭が)逝ってるのでございます』

『俺は正常だ!』

『シスコン』

『ぐっ…妹を愛していることの何がいけない!?』

『………無自覚なのが1番危ないのでございますよ…それはそうと清浄でございますがスドー様?』

『なんだ?』

『処女でございますね?』

『ぶふぅー!?』

『あら?カマを掛けたら思った通りの反応でございますね。ほらここにいたでございますよ清浄』

『それは意味が違…、』

『さー、次でございます』


Q:では質問、アマゾネスのレズ比率は如何程?


『………これは私では解りかねますので人外魔境の次の追加メンバーに任すとするのでございます』

『おい、さりげなくネタバレするな。ったく…ん?コレが最後か』

Q:そういえば今一番強い魔王って誰なんでしょうか?

『………………』

『………………』

『(ボキボキ)歯ぁ食い縛れや穀潰し…』

『え?ちょっ…まっ…、』





《非常に暴力的なシーンです♪良い子も悪い子も大きなお友だちもこんな魔王になっちゃダメだぞぅ♪(お花畑を笑顔で走るリリウムちゃんの絵が替わりに出た)》





『…ひゅ ー…ひゅー…ひゅー…』

『と、言うわけで今のところの最強は俺だ。今日はこの辺でさようなら~』




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激突1

 

 

 

「なら次は私の番ねぇ」

 

クロノスローズは剣から指を離すと地面を蹴り跳躍した。

 

それでも俺は遥か高くにいる。俺は再び空気中の魔力を集め10本ほど剣を創造し、クロノスローズに飛ばした。

 

クロノスローズはそれに意を返さず体勢を空中で俺に向けニヤリと笑った。

 

次の瞬間。

 

ズドン!という通常起こり得ない音と共に剣を瞬時に潜り抜け、俺の目の前に移動した時には俺の腹にクロノスローズの片膝が入れられていた。

 

「うぉ!?」

 

俺の体はくの字に曲がっていた。

 

コイツ…間違えない、空気の壁を蹴って来やがったな………。

 

上を見上げるとクロノスローズは両手を合わせ腕を振りげていた。

 

超槌撃(ギガ・インパクト)ぉ」

 

膝が抜けると共に背中に凄まじい衝撃が駆け抜け、衝撃の赴くまま地面に急降下し、うつ伏せに落ちただけに留まらず大地を大規模に抉った。

 

「結構効いたかしらぁ?空中だから威力は大分削がれるけどねぇ。あの移動方は天翔(スプラッシュ)って言うのよぉ、あなたでも出来るんじゃないのぉ?」

 

近くでクロノスローズの声が聞こえ魔力も近くに感じる。

 

天翔ね…古代武術家は伊達じゃねぇか。

 

俺は立ちもせずただ開いていた手を勢いよく閉じた。

 

「あらぁ?」

 

クロノスローズのを囲むように数百本の魔水晶の剣が出現し、さっき創造した剣も飛来し、一斉斬りつけ始めた。

 

更に次々と一度攻撃を終えた剣が小規模な魔力爆発をして霧散した。

 

「…ナメんなよ。その程度でどうこうなるほど俺は柔じゃねぇ」

 

アイツからすれば威力な無いに等しいがそれでも衝撃で暫く態勢を立て直せなくなる。

 

俺は立ち上がると剣の防御に手間取っているクロノスローズと向き合い掌を空に向けた。

 

手に直径100mほどの水球が形成され、徐々に小さくなり握り拳ほどのサイズになった。

 

「食らえ、一閃氷葬(ストリーム)

 

水球の1ヶ所が弾け線状に水が放出されクロノスローズ目掛け、一瞬で着弾した。

 

「んぁ!?」

 

水はクロノスローズの左胸を貫通した。

 

頑丈なら一点に超特化した攻撃すれば良い、流石にこれには耐えられなかったようだな。

 

更に次の瞬間、水は凍り付きクロノスローズの左胸の傷口も凍りついていた。

 

一閃氷葬(ストリーム)はLv70水魔法だ。

 

超圧縮した水を撃ち出し対象を貫いた後、全身を凍結させる魔法だ。クロノスローズを凍らすには至らなかったようだ。

 

ならダメ押しだ。

 

俺はボー ル大の魔水晶を創造し、魔力を込めた。

 

ボールのようなものは横に一本の長い線が走り、更に線が開くと大きな眼が開かれギョロギョロと回りを見ていた。

 

そして後ろに飛びながらソレをクロノスローズに飛ばした。

 

自らに刺さった氷をへし折りまた動き出したクロノスローズはソレを腕を振りかぶり殴り付けた。

 

大方俺に打ち返すつもりだったんだろう。

 

俺はニヤリと口の端を歪めた。

 

ピイィィィィィィィィィィィィィ…。

 

そしてソレも音を響かせながらボールのように歪みむと表面に線のような切れ目が入り切れ目から光が漏れた。

 

その刹那、

 

 

 

ズドォォォォォォォォォォォォン!!!!

 

 

 

クロノスローズのいたところが激しく吹っ飛んだ。

 

クロノスローズはゼロ距離爆破で流石に後ろに吹き飛ばされ、地面を数度跳ねると受身を取りとまった。

 

ほう、やはりこれは効くか、今のは俺が即席で造った魔水晶生命のアイビーム君だ。

 

大体、身体と魔力値は10000程度で低級Sランクの浮遊して眼からビームを撃つだけの魔物だ。

 

超絶な硬度を誇る魔水晶だが最終的な強さは魔力値の高さに依存する。

 

10000程度の魔水晶ではクロノスローズにとっては豆腐を殴るようなものだ。

 

だが、魔水晶生命には終撃魔水晶(ファイナル・クリスタル)がある。

 

致命的な損害を受けた場合99%の確率で爆散するLv1の魔法、その威力は絶大で100000もあれば10kmは軽く更地に出来る。

 

10000程度でも1kmは余裕な所だがアイビーム君は特別仕様だ。

 

爆破範囲は精々1mほどだが、威力は1kmを消滅させる威力を1mほどに濃縮させているのだ。直撃してタダで済む訳はない。

 

「あぁ……痛いわぁ…久しい感触だわぁ……良いわぁ…あなた本当に最高だわぁ…」

 

クロノスローズは体を抱き締めて蕩けた眼をしていた。息も荒げている。

 

「そろそろぉ………ちょっとだけ本気出しちゃおうかしらぁ?」

 

その瞬間、クロノスローズが視界から消えた。と思った瞬間、背中に衝撃が走った。

 

「ッ!?」

 

それと同時に首に衝撃を受けたにも関わらず更に腹にクロノスローズの脚がめり込んでいた。

 

更に次に脚が消えると脇腹と胸と頭に衝撃が走った。

 

「(コイツ…一度に数ヵ所を同時に攻撃してやがる!?)」

 

そう思っている間にも次々と身体に攻撃を叩き込まれていた。

 

「あらあらぁ~、かなり硬いわねぇ~」

 

そう言っている間にも一度に全く同時に数撃の攻撃が数十、数百と叩き込まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロノスローズは上機嫌だった。

 

目の前にいるのが極上の美女だからだけではない。

 

自分の雨のような武舞を撃ち込みながらも倒れるどころか傷ひとつ付かない相手は数千年前に色欲の七罪祖王を喰らってSSSランクになって以来久しく忘れていたモノだったからだ。

 

「良い身体ねぇ、傷モノにするのがもったえないわぁ」

 

そう言いながらも全く手を緩めることはない、寧ろ加速していた。だが、それでも彼女が倒れることは無かった。

 

「埒が開かないわねぇ、良いわ良いわぁ~、最高だわぁ」

 

クロノスローズは一瞬でステップで彼女から飛び退くと次の瞬間には懐に戻っていた。

 

さっきまでと違うのは両手が限界まで振りかぶられていることだ。

 

双破点撃(ジ・ドット・インパクト)ぉ」

 

同時に両手を前に突き出された超高速の拳は彼女の右手首の一点に拳を揃えた状態で突き刺さった。

 

爆発的な衝撃で大気は揺れ再び両者の立つ大地を抉った。

 

そしてピシッ…と水を入れたグラスの氷にヒビが入るような音が響いた。

 

そしてバキンと硝子を折るような音を立てながら彼女の右手首より先が地に落ちた。

 

ソレを確認するとクロノスローズは一瞬、ほんの一瞬だけ糸のような細く洗礼された殺気が通り過ぎるのを感じ後ろへ飛び退いた。

 

「やっと片腕ねぇ、うふふふ…………あらぁ?」

 

クロノスローズはふと、自分の右手の腕の違和感に気がついた。

 

妙に軽いのだ。いつもより遥かに、それに身体のバランスも可笑しい。

 

ふと、右腕を見た。

 

「あらあらあらぁ~、やってくれたわねぇ」

 

「お互い様だろ…色魔が…」

 

クロノスローズの肘より下の右手が無かったのだ。切り口は完全な面で滑らかな断面をしていた。

 

視界の隅に落ちている腕の断面も同じだった。

 

「ふーん、大したものねぇ」

 

彼女の切断技術の高さを賛美しているとふとクロノスローズは思った。

 

切断したタイミングは恐らく双破点撃のカウンターだろう、具体的には普通の魔王なら感じ取れないような微量の殺気を感じた瞬間だ。反応が一瞬遅れた程だ彼女は気配と殺気を隠すのも超一流だろう。

 

が、切断した刃物はどこだろうか?

 

クロノスローズが仁王立ちのまま直立不動で睨む彼女をマジマジと見つめると左手の先にその答えがあった。

 

ソレを見つめるとクロノスローズは頬に残った手を宛て歓喜した。

 

「あらぁ!そんな繊細なことも出来るのねぇ!ふふふ…惚れ直しちゃったわぁ…」

 

「黙れ変態、次は頸だ…」

 

手を手刀のようにピンと立たせクロノスローズに向けた彼女の手先が日の光に照らされほんの少しだけ光を反射した。

 

それは五指の先に付く爪だった。ただし普通の状態ではなく10cmほど垂直に伸び、根本の爪と違い完全に透明の爪だった。

 

道理で気づかなかった訳だ。眼でも見えなかったのだから、流石にあのラッシュの最中では魔力を感じ取るのも多少疎かになる。それを見越した最高の一手だった。

 

「でも大丈夫なのぉ?あなたも手がないわよぉ?」

 

「ああ、心配すんな」

 

彼女の地に落ちた右手は霧散して魔力の光になり、右腕の断面を覆うとそこには折られる前の白く透き通るように綺麗な肌の手がついていた。

 

「あらあらぁ?なら心配要らないわねぇ、そんなに綺麗にくっ付けられるなんて羨ましいわぁ」

 

そう言うとクロノスローズの切り落とされた腕の切り口と残った右腕の切り口から数本の触手が伸び、数mの長さで互いの触手が結び付くと巻き取り式のコードのように勢い良く切り口と切り口が合わさり斬られた傷跡も跡形もなく修復された。

 

クロノスローズは2,3度修復した手を開閉するとニヤリと背筋が凍るような獰猛な笑みを浮かべて再び拳を構えた。

 

「あなたもやっと本気かしらぁ?」

 

「まあ、5%ぐらいな」

 

彼女の右手首から先が50cm程の紅色に赤熱する細剣(レイピア)に変わり、左手の爪は蒼く凍てつくような冷気を纏い、更に身体から紫電が走り始めた。

 

彼女は手剣を突き出し爪を胸の前に構えた。

 

「魔水晶を魔法強化したのねぇ、なら…仕切り直しねぇ」

 

「第2ラウンドだ」

 

お互い再び視線が交差すると同時に地面を蹴った。

 

「ふふふふ…」

 

「らぁぁぁぁ!!!」

 

2体の魔王の拳と手剣が交差した。

 

 

 




~第2回人外魔境~

『始まりました第2回人外魔境、今回も俺とネメシスでお送りするぞ』

『いえーい!、でございます』

『さあ、お便りだ』

『今回は……お便りは1つだけでございますね。どれどれ』


Q:乳大小値(表)は無いんですか?ぐへへへ。


『………………』

『………………』

『(キュポッ…キュッキュッキュッ…)』

『待て、マジックで何を書いている?』

『出来たのでございますよ』


百合105>乳水晶99>私89


『痛い痛い痛い!アイアンクローは止めてほしいでございます!』

『あん?誰が乳水晶だ!なぜ俺のバストサイズを知っている!?』

『私ほどになれば服の上から見ただけでスリーサイズは解るのでございます(キリッ)。ちなみにスドー様は99/57/84でございます!』

『うわっ…当てやがった…』

『胸の大小は身体値の高さに影響すると言われておりますが関連性は皆無なのでございます!なぜらな人にも巨乳シスターやらつるぺた剣士やらの人種が普通に存在するからでございます!個人的に胸とは手から溢れるほど大きければ大きいほど良し、手に収まる程のちょうど良い大きさも良し、無い程小さい胸も良しでございます!そして何良いモノは!胸の大きさで悩んでいる時の女性が1番可憐で素敵なのでございます!!!』

『掴まれたままどうでも良いこと力説するな!気持ち悪い!結局何でも有りか!』

『そうでございます…ぐへへへ…』

『そもそもこんな脂肪の塊の何が良いんだか…』

『な!?スドー様は全然解ってございません!今のスドー様のような、そう言いながら溜め息をついて自分の胸を見つめている姿が何よりも可愛らしいのでございます!』

『し、死ねぇぇぇぇ!!!』

『コッチの業界では寧ろご褒美でワブッ!?………ガハッ………………』

『はぁはぁ……たくっ…ホントに何でこんなものを…(ぎゅっ…)』←多少頬を赤らめて双丘の下乳を両手で持ち上げた。

『……エクセレントでございます…』


『(とんとん)師匠ー、チィちゃーん。物置小屋にこもってどうかしたんですかー?』


『(ビクッ…!?)』

『(ビクッ…!?)』

『………………………(ガチャ…)いや、何でもないぞ?うん。そろそろ夕飯にするからな』

『あ、解りました。わーい!(とてとてとて)』

『………………』

『………………』

『行ったか……』

『スドー様…』

『ああ?』

『貧乳はステータスでございますね』

『………………ああ…』




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激突2…だとでも思ったか!

 

 

 

夕方、ポラリスの中央の異様にでかい時計台を見ると5時半だった。

 

正直あの時計台は凄まじくデカい、どこぞの赤い電波塔並の高さだ。

 

街に時計が1つしかないのも頷ける。こんだけ高ければどんなに離れてても見えるからな。

 

それはそうと今は夕方時でも未だに活気が溢れる市場に来ている。市場には額に第3の目がある三眼族(サトリ)、胴や尻尾の長い半蛇族(ラミア)、コウモリのような羽と細い尻尾が特徴的な淫魔族(サキュバス)、二足歩行の虫の昆虫族(インセクター)、全身が半透明の水人(スライマン)など様々な種族の人が行き交いモノを売り買いしていた。

 

ポラリスは魔物都市の異名の通り周囲の大半を魔物の生息地に囲まれた都市だ。

 

当然、その魔物がポラリスを脅かさないように防衛隊が高い塀に常備されているが、それよりも遥かに多いのは俗に冒険者(スレイヤー)と呼ばれる人々だ。

 

スレイヤーとは国営のスレイヤーズギルドに所属している個人の事を指し、主に魔物の生息地に自ら出向き魔物を討伐することを生業、あるいは副業とする者達だ。

 

ポラリスの実に7割がスレイヤー登録をしているというから驚きだ。

 

ポラリスのスレイヤーズギルドは国内でも類を見ない程巨大なギルドなんだとか。

 

ちなみにポラリスの大部分の収益はスレイヤーズギルドで出たクエストの仲介料、契約料、失敗料の3料から成っているそうだ。

 

詳しいことはまた今度話すとして、ちなみにこの情報は酒に酔って仕事が辛いと愚痴りながら領主でギルドマスターことヴィッセルさんが言っていた。

 

まだ夏のせいで大分明るいが、等間隔で吊るされている魔力を込めると光るカンテラのようなものが既に光っていた。

 

この光のお陰でこの市場は早朝と夕方に食材の販売をしているのだ。

 

ちなみに俺の服装は最近、板に付いた感があるメイド服に、食材を入れる麻布のハンドバックを片手に下げている。

 

「お!スドーさん!今日は生きの良い自走赤根(マンドラゴラ)が入ってるよ!」

 

八百屋の前を通りすぎようとするとキャップに前掛けをした3m程のオークがいた。

 

豚顔の巨人だ。ビックリするほど引き締まった体つきをしている。どこぞのボディービルダーのようだ。顔も笑ってはいるがキリッと引き締まっている。

 

前世のエロゲーの孕ませ要員のような想像とは似ても似つかないよな…働いてるし……前世ならエロゲー会社名誉毀損で訴えれるよ、うん。

 

「そうですか、どれどれ…」

 

俺はそんな失礼なことは微塵も顔に出さず八百屋の前に足を止めた。

 

八百屋の前の柵で囲われたケージを見るとまだ葉がついて、根っこの先端が2本の足のように分かれたニンジンが走り回っていた……しかもかなり速い。

 

うん…これがこの世界のニンジン…いやマンドラゴラなんだよ。

 

これでも一応、魔物ではないらしい。

 

「スドーさん美人だから4本で赤銅貨2枚にするぜ?」

 

「なん…だと…」

 

赤銅貨2枚だと…地球でニンジン4本約200円…1本50円と地球的には普通だがそれは安い、コッチのマンドラゴラは1本100円ぐらいはするからな。

 

というかコッチのマンドラゴラは非常に旨い。生のままだと柔らかく甘い煮詰めたニンジンのようなのだが、火を通すと逆に硬くなり生ニンジンのような食感になるのだ。

 

「じゃあ、お願いします」

 

「あいよ」

 

そう言うと八百屋のオークは4本のマンドラゴラをつまみ上げるとテープのようなもので茎の付け根を束ね渡してきた。

 

それと引き換えに2枚の赤銅貨を渡し依然としてジタバタ動くマンドラゴラを受け取りハンドバックに放り込んだ。

 

ちなみに麻布のバックな理由はこういう入れると暴れそうなモノを入れても破れないようにする為である。

 

さて、今日はハンバーグだから後は挽き肉と付け合わせだな。

 

んー…他にも何か作るか。

 

「~♪~~♪」

 

俺は軽い足取りで市場の道を進んだ。鼻唄なんて断じて歌ってない。買い物は楽しくて仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「おかえりなさいです!」

 

「あらぁ?早かったわねぇ」

 

もぞもぞ動く袋を抱えながら家に帰るとリリウムちゃんとローゼが出迎えてきた。

 

「今日はなんなのぉ?」

 

「ハンバーグにするつもりだったがマトマトマが安かったからミートボールスパゲッティにするぞ」

 

マトマトマとはトマトみたいなモノである。違うところは妙にデカく一抱えはあるところだろう。それから大きいニコニコ顔の顔があることか、キモいというよりトマトデフォルメキャラのようで可愛いというほうが印象深い。

 

ちなみにマンドラゴラのように動いたりは基本しない。

 

「わー、おっきいマトマトマです」

 

リリウムちゃんが俺からマトマトマを受けとると顔を正面にして後ろから抱き締めるように持った。

 

なんか絵になるな、ほんわかブリが半端ない。

 

「うむ、とりあえず捌くが手伝うか?」

 

「はい!頑張ります!」

 

リリウムちゃんはキリッとした、と本人は思っているであろう顔をして胸の前で拳を2つ作った。

 

最近リリウムちゃんは料理の手伝いをしてくれる。まだかなり覚束無いが可愛いからいいや。

 

マトマトマは手を話したせいで床に落ちたが全然食えるし形変わらんから問題あるまい。

 

 

 

 

 

 

 

と、言うわけでキッチンに移動してきた。

 

「うんしょ……」

 

リリウムちゃんはマトマトマをまな板に置くと白いエプロンを着けた。

 

俺は大理石(?)のキッチンの隅に置いてある鉄檻に麻袋ごと食材を突っ込んだ。

 

「ならまずマトマトマを8つにしようか?」

 

「はい!」

 

リリウムちゃんは笑顔で元気に返事をしながら鮪の解体用みたいなデカイ包丁を取り出しマトマトマに向けた。瞬間。

 

「ヒィィィィィィィィィィィィ!!!?」

 

突然、マトマトマのデフォルメだった顔が劇画タッチの亡霊のような顔に歪み叫び声を上げた。

 

マトマトマは動きはしないが自分に危険が訪れると恐怖し叫び声を上げるそうだ。

 

その怯えきった悲鳴を上げるマトマトマに対してリリウムちゃんは…、

 

「ていっ!」

 

「ヒッグッ!!?」

 

ブシュ……。

 

特に躊躇した様子もなく眉間に包丁の中腹を当てノコギリのように切断し始めた。

 

「ヒッ!?ヒギッ!?ヒギャッ!?ヒギッ…ギッ!?ギッ!?ギギッ!?」

 

「あれー?中々切れませんね…」

 

リリウムちゃんが包丁を押し引きする度にマトマトマの切り口から赤い液が溢れ悲鳴を上げた。

 

「よし!たぁっ!」

 

「ビッ…………………………」

 

ズコン!

 

遂にまな板に包丁が届いた。

 

マトマトマは両断され悲鳴も止まった。

 

「できました!」

 

リリウムちゃんは赤い液を手とエプロンとついでにほっぺにもつけて俺に誉めて誉めてとでも言いたそうな目で寄ってきた。尻尾があればブンブン降っているだろう。

 

とりあえずなでなでしといた。

 

「こっちは少し危ないから俺がやるよ。リリウムちゃんはマトマトマを8つにしてくれよ?」

 

「はい!」

 

リリウムちゃんは包丁を持ち作業に取りかかった。

 

この世界の人は食材のせいか、狩猟生活染みているせいかは解らんが、基本的に命を奪うことに対して何も抵抗が無いらしい、あの穏和なリリウムちゃんですらこうなのだからそういうことだろう………この世界は俺にとって生きやすい世界なようだ。

 

「さてと……」

 

俺は鉄檻からじたばたする1本のマンドラゴラを取り出し、片手で持つともう片手の人差し指の爪を伸ばしてツーっとヘタの回りをなぞった。

 

遅れてヘタが落ちるとマンドラゴラはよりいっそう激しく足をじたばたさせていた。

 

更に今度はマンドラゴラを縦に爪でなぞった。

 

マンドラゴラは二等分され両足は片方づつに別れても大分元気が無くなったがじたばたしていた。

 

「ふふふーん♪」

 

俺は爪で薄皮を削ぎ落とすとステック状にしてボウルに入れておいた。

 

ボウルの中ではピクピクとステックが時より動いていた。

 

ああ…料理は良い…無心になれるからな…。

 

今だけは全てを忘れて集中できる。

 

まあ、今の俺にとって忘れたい事なんて女になった事と………、

 

既に摘まみ食いしようとボウルにそっと手を伸ばしているローゼことローゼリアこと混沌妖薔薇(クロノスローズ)の事ぐらいだけどな!

 

 

 




~第3回人外魔境~

『今日も物置からお送りする人外魔境だ』

『いえーい、でございます』

『まず最初のお便りといこうか』


A:魔法の消費量で一番多いのってどれぐらいなんでしょうか?


『うむ、消費量か………そうだな幾つか上げると…』

Lv1火球:50
Lv1光弾:500
Lv70一閃氷葬:30000
Lv80天崩:150000

『そんで中でも1番高いのはこれか』

Lv99強欲な奇跡(アルティメット・グリード):500000

『あー、光魔法のLv99でございますね』

『うむ、そうだな消費量はドーンと50万だ。それはそうと魔物と人の魔力値の根本的な違いについて話そうか』

『そうでございますね。そもそも魔力値とは魔力の総量だけでなく一定時間で全回復する魔力の量の事を同時に指すのでございます』

『人なら約半日で全回復で魔物なら1時間ぐらいで全回復するんだ。やはり核がある方が回復力は圧倒的に高い』

『そして魔王になりますと…』

『1秒だ。すなわち俺は光弾ならその気になれば秒間1060発撃てるわけだ』

『次のお便りに行きましょうか、えーと』


A:主人公が生み出した魔物は図鑑に載ってるんだろうか?


『う、産み出したのでございますか!?』

『んなわけねーだろ。俺の想像から作られた産物だからアイビーム君は載ってないな、というかクリスタリアは既存の魔物をクリスタリア化させただけたから基本図鑑には載らん、次だ次』


A:リリウムちゃんの通っている学校ってどれだけ有名でどれくらいの規模があるんですか?


『王立魔物使い学校か………俺は知らん』

『なら私が説明するのでございます。総数約5000人の生徒を抱える学校でございます』

『多くね?そんなに人居なかっただろ』

『あそこは中でも最も成績の良い生徒が集まる特進クラスでございますからね。他の一般の生徒はポラリス中にある他の教室で授業を受けてるんでございますよ』

『そうなんだ……リリウムちゃん頭良かったんだ…』

『まあ、公爵令嬢でございますからね。学はあるのでございますよ』

『そういえばポラリスってドンだけ広いんだろうな?』

『軽く小国ぐらいあるらしいわよぉ?』

『そうなのか、通りで端から橋まで物理的に見えないわけだ………………ん?ってローゼ!?どこから入ってきやがった!』

『入り口からよぉ、面白そうな事してるわねぇ。私も混ぜてよぉ』

『面白くなってきたでございますからね』

『最後は私が読んじゃうわぁ~』


A:激しく動いたら処女膜が破れると聞いたのですが、魔王様達は平気なんですかね


『処女ぅ?』

『で、ございますか?』

『そんなこと言われてもぉ、物心ついた頃にはもう処女じゃなかったものねぇ』

『同じくでございますよ』

『だとしたら確認するにはぁ…』

『………………(そろりそろり)』

『何で逃げようとしてるのかしらぁ?』

『(ビクッ!!?)』

『そう言えばスドー様は処女でございましたね…ぐへへへ…』

『良いわ~可愛いわ~…(わきわき)』

『ぐへへへ…スドー様~…(わきわき)』

『ま、待て!話せばわか』






~自主規制により省略~良い子も悪い子も大きなお友達も真似しちゃダメだぞ♪(がらすと戯れるリリアナちゃんが代わりに写された)~







『………ぁ……………ぅ…(ピクピク…ビクッ…)』

『いやー、どうやら処女膜は無事なようでございましたね(ツヤツヤ)』

『そうねぇ、キレイな膜だったわぁ~(ツヤツヤ)』

『さて…皆さんどしどしお便りを寄せてほしいでございます!』

『またねぇ~』




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心と体

 

 

 

時間は少し前に遡る。

 

 

 

「よし、帰る」

 

棘の塔が立っていた場所は戦闘の余波で更地から既に盆地に変わり、空は既に黄昏色に染まっていた。

 

そこで突然、交戦を止めた俺はそう言い放った。

 

「えぇ…?」

 

混沌妖薔薇は物凄く不満そうな顔をしながら手と足を止めた。

 

「埒が空かん」

 

それが夕方まで激突し続けた結果のだった。

 

というか、割れる→戻る。取れる→くっ付く。をお互い永遠と繰り返し続けるだけで全く決着が着かないのだ。

 

というかお互精々高くても10%ぐらいしか本気で戦っていない。

 

理由は簡単だ。

 

魔王が本気なんて出したら下手すればここからポラリスを全壊させるぐらいの被害が出かねないからだ。クロノスローズもある程度は弁えているようで今のところそんなことはしていない。

 

頭が冷えてきて思ったが、そもそもそれを考えていなければリリウムちゃんを拉致なんて回りくどい真似はしないでさっさとポラリスでおっ始めれば済んだ話だろう。

 

コイツは一体何がしたいんだろうか?

 

「えぇー、止めちゃうのぉ?」

 

「勝負が着かん。それに俺がいなきゃ誰が夕飯を作るというのだ」

 

「夕飯ですってぇ?そういえばあなたメイドやっていたわねぇ」

 

「メイドじゃねえ家庭教師だ」

 

メイド服を着ながら家事全般とリリウムちゃん(とたまにリリアナちゃんも)の魔法教育をしているだけだ。全然メイドではない。

 

「ふふふ……そうなのねぇ…」

 

さっさと飛んで帰ろうかと思ったところクロノスローズは不敵な笑みを浮かべていた。

 

「ならお邪魔しちゃうわぁ」

 

「………………」

 

「………………」

 

「帰宅!」

 

「追跡ぃ!」

 

「来んな変態!」

 

「ああぁん、ローゼって呼んでぇ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらぁ、美味しいわねぇ」

 

結局、クロノスローズもといローゼリアもといローゼは飛ぶ俺を地面を跳ねるように走って追跡してきたせいで追い付かれた。身体値ェ…。

 

下手に暴れられても困るので仕方なく家に入れた。

 

本当、普通に入れてくれたヴィッセルさんには頭が上がらない。

 

「……黙って食え」

 

「あらぁ?照れちゃって可愛いわねぇ」

 

そしてテーブルを3人と3体で囲み大皿に山ほど盛られたミートボールスパゲッティを突っつきながら今に至る。

 

………………料理を褒められて嬉しくないやつはいない。

 

「ローゼさんはとってもゲームがよわいんですよー」

 

「…別に弱い訳じゃ無いんだけどぉ ……」

 

というか拉致されたハズのリリウムちゃんとローゼはなぜ妙に仲が良いんだ?

 

まさか……リリウムちゃん…拉致られたこと気付いてないなんてことは無いよな?

 

「なあリリウムちゃん?」

 

「はい?」

 

「ローゼとなんでそんなに仲が良いんだ?」

 

「だって師匠の友達らしいじゃないですか?」

 

ローゼに目を向けるとニヤニヤしながら答えやがった。

 

魔王友(マオダチ)よ」

 

このアマァ…。

 

「リリウムちゃん…勝手に人についてっちゃダメだぞ?魔王(ああいうの)はどうにもならんが普通の不審者は人の知り合いを装って近付いて来るんだから」

 

自分で言うのもあれだが母か俺は。

 

まあ、リリウムちゃんは勝手について行ったりはしていないのだがな。

 

「はーい!」

 

リリウムちゃんは元気に返事をした。その笑顔は疲れた人の心に優しいな………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が寝静まった頃、昼ネメシスがぶち抜いたリビングの壁をネメシスに修理させながら俺とローゼは机を挟んで向かい合っていた。

 

「あれ?何で私が直してるんでございましょうか?壊したのってスドー様では…」

 

「ほう…何か言ったか穀潰し?」

 

「………………横暴でございます…」

 

直接的にぶち抜いたのお前だろうが。

 

ネメシスが黙ったのを確認すると俺は口を開いた。

 

「で?お前はどうしたいんだ?」

 

「そうねぇ、最初はあなたにしか興味無かったけどぉ、あのリリウムって娘見てたら久しぶりに人の生活をしてみるのも悪くないと思うわぁ」

 

そう言うとローゼはニヤニヤしながらお茶請けの俺作のクッキーを摘まんだ。

 

「あらぁ、美味しいわぁ」

 

べ、別に嬉しくなんか無いんだからな!

 

「つまり何が言いたい…」

 

「私ぃ、暫くここに住むわぁ」

 

「テメ…」

 

正直俺はどうなろうとそこまで問題はない。だが、この家の者を巻き込むのは我慢ならない。

 

「ちなみにヴィッセルだったしらぁ?からの了解は取っているわよぉ?」

 

「は?まさか脅し…」

 

「あなたの恋人なのぉって言ったら簡単に了承してくれたわぁ」

 

「コノアマァァ!!!?」

 

ローゼは性懲りもなく頬に両手を当てて熱のこもった目で見つめてきた。

 

「あらあらぁ…良いじゃない知らない仲じゃ無いんだからぁ…ア・ナ・タぁ♪」

 

「そこになおれぇぇぇ!!!!」

 

「そ・れ・にぃ」

 

俺が飛びかかる前に椅子からローゼが消え、衝撃を感じると床に押し倒されていた。

 

ローゼの顔がアップになり胸や腿が直に身体に押し付けられた。

 

更に抱き締めるよいに抱き着いてきてローゼの大きな胸と俺の胸がぶつかり形を歪めた。

 

「ば、バカ!止めろ!?」

 

鼻孔をアロマのような優しいにおいがくすぐった。

 

「ふーん…やっぱりねぇあなたドキドキしてるわねぇ。うふふ………あなた……男の子でしょう?」

 

「なっ!?」

 

俺は状況が付いていけず口をパクパク開くばかりだった。男の子?なんでコイツ前世の俺を…。

 

「勿論肉体的にはあなたは女性よぉ?」

 

ローゼは急に母のような優しい顔をした。

 

「だがな…」

 

喋り方がいつもの語尾を伸ばす人を嘲笑うような喋りから切れのある張り詰めた声に変わっていた。

 

「あなたの精神は紛れもなく男の子だな」

 

「くっ…」

 

俺は顔を背けた。身体が押さえられているので顔だけしか動かせないのだ。

 

「あらぁ、やっぱりねぇ」

 

ローゼは再び喋り方を戻したようだ。

 

「な・らぁ♪」

 

ローゼは顔を両手で俺の頬に手を添えて………、

 

「ん……」

 

「!?」

 

キスしてきた。それも普通のではない、舌を入れて俺の舌に絡めてきた。

 

もがこうとするがホールドされている上、力が抜けてほとんど抵抗出来なかった。

 

 

 

 

「ぷはぁ」

 

暫くそうしているとローゼが舌を抜いて顔を上げた。抜かれて一瞬だけ口と口を透明の糸が結んだ。

 

更にローゼは俺を上半身を抱き上げ抱きしめながら呟くように言った。

 

「私は女として女性が好きで身体は女。あなたは男として女性が好きで身体は女。生まれ持ったモノは仕方ないわぁ…だ・か・らぁ」

 

そう言うとローゼは立ち上がり、俺ににっこりと笑いかけた。

 

「私はいつでも一緒になってあげるわよぉ?」

 

そう言うとリビングから出ていった。

 

その場には茫然としている俺だけが残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、私は空気でございすね……」

 

訂正、ネメシスもいた。

 

 

 




~第3.5回人外魔境~


『俺は男俺は男俺は男俺は男…(ぶつぶつぶつ)』

『………………』

『………………』

『ど、どうしましょうローゼ様…スドー様が物置の隅の戸棚の中で膝を抱えたまま眼に光が無いままうわ言を呟きっぱなしなんでございますが…』

『あらぁ、簡単な話よ男の精神ではイク感覚に耐えきれなかったのよぉ。大丈夫ぅ、直ぐなれるわぁ』

『え…?スドー様ってソッチの人だったんでございますか?』

『そうよぉ、コッチの人よぉ。うふふ…天然物なんて素敵ねぇ』

『どうしましょうか?スドー様がこんな状態では人外魔境が始まりませんでございますよ』

『なら今回は良いんじゃないかしらぁ?1つぐらいしか無かったものねぇ』

『それもそうでございますね』

『(ガチャ)あれ?皆さんこんなところでどうしたんですか?』

『あ、マスターでございますね』

『あらぁ?リリウムちゃんどうしたのかしらぁ?』

『あ!師匠に聞きたいことがあるんですよ!って師匠!?どうしたんですか!?』

『俺は…俺は……リ、リリウムちゃん……』

『し、師匠!?大丈夫ですか!?師匠!!』

『うぅぅ…俺にはリリウムちゃんしかいない……リリウムちゃん!結婚してくれ!もうやだ死にたい!あ…光が…妹が見える!』

『師匠!?気を確かに!師匠ー!』

『………ちょっとやり過ぎたかしらねぇ』

『………大丈夫でございますよ…多分』


『………………………………2人とも…』


『(ビクッ!?)』

『…ど、どういうこと……この私が…怯えて』


『師匠をイジめちゃ………ダメじゃないですか?』








~リリウムちゃん怒りのすーぱーもーどにつき放送停止~







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母と黒いのと魔水晶
外伝1 その頃クロロ


 

 

 

スドーがネメシスを蹴り飛ばした丁度その頃、スピカ国の王都の更に先のとある魔宮の古代遺跡地帯の石造りの地面に奇妙な形をした穴が空いていた。

 

その穴はまるで巨大な昆虫を型どったような形をしていた。明らかに自然で出来たような穴ではない。

 

暫くするとその穴から巨大な2本の大鎌が生えてきた。

 

次に巨大で赤い双眼が穴から覗いた。

 

そして塔が生えるように現れたのは光沢のある漆黒の外殻で全身が覆われた巨大な蟷螂(カマキリ)だった。

 

言うまでもなくスドーにドロップキックで蹴り飛ばされた禁忌級(Sランク)の死神(グリム・リーパー)ことスドーの為に牛馬のように働いていたクロロである。

 

基本的には常にスドーの影に入っていた為に余り目立ってはいないが実はスドーの無茶な命令をいつも律儀に遂行していたのである。

 

例えば明日リリウムが学校の定期実習で単身で低ランクの魔物討伐に行くことになった時は、蟲の森のCランク以上の全ての魔物を一夜で殺戮して来いという自然摂理に喧嘩を売ってるとしか思えない注文が来た。

 

蟲の森は前半なら最高でも生態系のトップとしてAランクが数種か存在するぐらいの駆け出し~中堅スレイヤーが入るような森であるが、なぜか後半は番号持ち殺戮者(ナンバーズ・スレイヤー)しか入らないような森になっている。

 

なぜそうなっているかと言えば蟲の森は前半は大木が乱立するだけのいたって普通の森なのだが後半はまるで某風の谷の姫様の話で帝国の姫様が焼き払おうとしていた森のような場所なのである。別に胞子は出ていないが。

 

そもそも蟲は後半の森を基本的な生息圏としており前半の森はそのはぐれかDランク以下の後半にも生息出来ないような弱小蟲しかいないのだからこのランク分けも打倒だろう。

 

だがそれより本当に異常なのがCランク以上の魔物の異様な多さである。

 

人も弱いほど群れると言うが蟲系の魔物はレベルが違う。

 

最早波なのだ。

 

弱いほど魔物の数が増え、強ければ数が少なくなるのは魔物の常識だが、蟲系の魔物は一度の産卵数が非常に多い為か、平均的な多系の魔物のCランクの魔物が100行くか行かない程度のコロニーでスレイヤーの討伐対象になるような大きな群れ等と認定されるが、蟲系の場合の大きな群れとは最低でも1万以上のコロニーの事を言う。

 

言っておくが蟲の大きさも強さも勿論Cランク相等である。

 

それらの蟲の群れ狩りは単純だ。

 

魔力の高い対象に群がる何の策もない物量だけの戦闘だが最も恐ろしい、群れを半分も犠牲にすればAランクすら仕留められるのだ。死体から出た魔力の残骸を喰らえば群れは食らう前より大きくなるのだ。

 

故に無駄に広大な蟲の森は約数十億の蟲がいると思われその8割以上をCランク以上が占めていると言われている。

 

スドーの命令がどれほど無謀な話かお分かりだろうか?

 

実はスドーは遠回しにリリウムに危害を加えそうな前半のCランク以上の森のはぐれを刈ってこいと言ったつもりだったのだが、そんな事を汲み取る思考が存在しないクロロはそのまま受け止め前半の森のはぐれを単身で粗方一掃すると1時間で360匹の死神の使い(スティンガー)を産み出し、後半の森に対して大進行を開始したのである。

 

早朝まで行った結果は途中でスティンガーは全滅、結局クロロ単身で殲滅し合計で約10億の蟲を皆殺しにしたが時間切れで帰ってきたのだ。

 

ちなみに記憶からその報告を見たスドーは溜め息をつき頭を抱えながらクロロに強烈なツッコミを入れたらしい。

 

余談だが、10億ぐらいの数なら1週間もあれば蟲は増えるらしい。だがなぜか森が飽和しないのは多種の蟲同士で共食いをしているからだそうだ。

 

更に蛇足だが、偶々早朝に後半の森に迷い混んでしまった駆け出しのスレイヤーがクロロが30程の群れを同時に相手取った時に出来た眩いばかりに輝く魔結晶石の畑を見付けて半狂乱したという。

 

 

 

クロロはとりあえず穴から出ると自分の身体を確認した。

 

後ろ脚の1本がズタズタになりネジ曲がっていた。全衝撃がそこにかかったのか耐えられなかったのだろ。

 

だが、次の瞬間まるでストローでも曲げるように脚が元の位置に戻ると外傷が跡形もなく塞がり消えた。

 

コレがグリム・リーパーが魔王に最も近いと言われる由縁の一つ、超再生能力だ。

 

血の一滴、塵の霞み、細胞の一欠片からでも残っていれば即再生が可能な、生物を嘲笑うかのような能力だ。

 

実際、蟲の森を超え、殺戮平野に挑戦に来たナンバーズ・スレイヤーが数年で数百人も還って来ないのだからその実力は確かなものだろう。

 

クロロは使えるべきご主人様が言われた事を思い出していた。

 

"魔王になるまで帰ってくるな"

 

だが、コレが魔王に最も近い存在でもどれだけ無謀かはよくわかっていた。

 

通常魔王になるまでは他の魔物や人を狩り続け数百どころか数千年の年月が必要なのだ。そもそもポラリスが存在する迄に帰って来れるかも怪しい。

 

それではダメだ。ご主人様がいるまでに帰って来なければ意味がない。

 

そう考えたクロロは無謀とも言える"裏技"が思い浮かんだ。

 

1つだけ1日で魔王になる方法ある。

 

それは……SSランクの魔王を殺害した上で魔王核を取り込むことだ。

 

魔王の殺害という経験の上に魔王核を取り込みその魔王をベースに自分を外付けし魔王化させるモノだ。

 

以前の身体は殆ど捨てることになるがそれでも能力(スキル)と身体的特徴と能力値を引き継げるからクロロにとっては特に問題はなかった。寧ろ旨味しかない。

 

だとすればクロロは考えた。

 

自分の鎌を強化するなら身体値の高い魔王が良いだろう、だが、SSランクの魔王は稀だ。

それこそスピカ国内でも3体しか定住はしていない、1体はご主人様の近くのあの"鳥"だ。

あの鳥は本気になれば魔法主体の戦いを好むからとても勝てないだろう、"真理"は特殊だから倒せないだろう…なら"騎士"を狙うしかない。

 

そこまで来てクロロはこの古代遺跡に気が付いた。

 

ここは……騎士の魔宮?そうか…ご主人様はそこまで考えて送って下さったのか。

 

クロロは感銘を受けていた。間違えなく偶々だと思うが。

 

ふとクロロは下を見ると腰を抜かした少女がこちらを見上げていることに気が付いた。

 

それは人ではなく吸血鬼のまだ若い少女だとわかった。

 

吸血鬼…血を好み取り分け上質な魔力を持つ種族だ。

 

これは戦闘前の食事には打ってつけだ。

 

そう思い鎌を一瞬振るった。

 

その瞬間、地が縦に裂かれその上にあった少女の片手が舞った。

 

クロロはただ高速で鎌を振るった事でカマイタチを起こし地を裂いた、ただそれだけだ。

 

『え?……………あ……あぁ!?』

 

少女は最初、大きく裂かれた地面を見ていたが腕が無いことに気が付いたのだろう。悲鳴を上げた。

 

だが手をもがれた程度ではまず吸血鬼は死なない、1日も立てば綺麗に再生しているだろう。それはクロロもわかっていた。

 

クロロは更に少女にカマイタチを放った。但し今度は少女に当たらないように。

 

少女のすぐ横をカマイタチが掠めた。

 

少女は真っ青になって失禁していた。

 

クロロは更に当たらないように次々と少女にカマイタチを放った。

 

『ひ、ひぃやぁぁぁあぁぁ!?』

 

少女は一目散に逃げ出した。

 

それをみてクロロは内心ほくそ笑んだ。

 

逃げろ逃げろ、お前の家に帰れ、人が住む所に帰れ。

 

クロロは必死で逃げる少女にたまにカマイタチを放ち少女と一定距離を保ちながらゆっくりと付いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グリム・リーパーの魔王に近い要因は全部で4つ。

 

1つは超再生能力。

 

2つは切れ味の鋭すぎる大鎌。

 

3つは狩りの名手なこと。

 

そして何よりも重要な4つは………快楽的にモノを殺す生物として人に近い類い稀な残虐性だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、1つの吸血鬼の集落が1人の少女を残して壊滅したそうだ。

 

 

 




~第4回人外魔境~


『全くぅ、アレの日なぐらいでダウンするなんてだらしないわねぇ』

『えーと……スドー様は只今女の子の日で部屋で死んでいるので今回は私とローゼ様でお送りするのでございます。まず最初のお便りは…』


Q:スドーに生理はくるのか?


『来てるわぁ』

『来てるでございます。次』


Q:スドーの給料金貨3枚?高過ぎじゃね?


『安いわねぇ』

『安いでございますね』

『普通高位の光魔法使い何て教師にしたらその100倍は取られるわよぉ。しかもあの娘は究極レベルの光魔法使い、10000倍だって足りないわぁ』

『スドー様は死ぬほどお人好しでございますね』

『次ねぇ』


Q:ローゼとネメシスに妊娠・出産経験はあるのか?


『私はまだ無いのでございます』

『ん~、私は生むより孕ませる派ねぇ』

『は、孕ませる?』

『私の土地のあの娘たちを孕ませるのよぉ、触手でねぇ』

『随分、アブノーマルでございますね』

『可愛いわよぉ、赤ちゃん。あなたも生むか孕ませればぁ?』

『私がときめくぐらいの殿方が今のところ存在しないのでまだ遠いでございますね』

『あらぁ?でも非処女よねぇ、あなたぁ』

『発情期でございますよ。年に1度男性器が欲しくてとてつもなくムラムラする日が来るのでございます』

『獣の宿命ねぇ』

『SSランクになってから初のその日に狂ったのでございます』

『若さゆえの過ちって奴ねぇ、次はぁ』


Q:魔王が生んだ子供は高位ステータス又は魔王になるのか?


『ならないわよぉ、ステータスも魔王じゃない方の親のステータスと種族を引き継ぐわぁ、継がれるのは容姿とスキルぐらいねぇ。スキルはどうでもいいスキルをランダムで1・2個だけどぉ』

『魔王は1代限りでございますよ』

『でも魔王と交わった者とその子供は不老にはなるわよぉ?あと寿命が無くなるわぁ』

『そうでございますね。次がとりあえずスドー様抜きで答えれそうな最後のお便りでございます』


Q:身体値の上昇はどうするんでしょう?


『人は身体を鍛えること、魔物はランクアップ、魔王はSSSランクで終点でございますね』

『そうねぇ、私の最大値がもう上昇することは無いわぁ、進化の袋小路って奴よぉ』

『その点はどんな生き物でもいつかは着く場所でございますよ。人にも種族的な限界がございますから


『そうねぇ、今日はこの辺かしらぁ?じゃあ私はあの娘で遊んでくるわぁ』

『あ、行ってしまったのでございます。スドー様………合掌でございます』



この後、屋敷がスドーの変態撃退拳の衝撃波で揺れるまで後30秒。




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外伝2 クロロ、ケーキのイチゴは後に食べる

 

 

死神は吸血鬼の住みかだった結界で隠された中の城にいた最後の吸血鬼の子供を食べ終えると再び思考を巡らせた。

 

コイツらは中々面白かった。

 

グリム・リーパーは今回の獲物を高く評価をした。約100人程の吸血鬼の集落を襲撃したが、途中で吸血鬼の大人によって一度だけ首を落とされてしまったのだ。

 

最も首がもげようが、肢体が消し飛ぼうがグリム・リーパーにとっては全く問題ないが、グリム・リーパーは狩を楽しむためにノルマを決めていた。

 

自分の身体を破壊できたモノは高評価、生物的な弱点の頭や内臓を破壊できたモノは更に高評価と言った具合である。

 

最もグリム・リーパーからの評価が上がるだけで捕食されたり殺されたりする運命からは決して逃げられないが…。

 

そんな評価基準だからグリム・リーパーを一切、情け容赦なく微塵切りにして生物的に瞬殺した魔水晶女王はグリム・リーパーにとってはまず勝ち目のない相手であり、自分が最高に使えたい主であるわけだ。

 

要するにグリム・リーパーはド…、

 

と、ここでグリム・リーパーが背後から小さな気配を感じ、ちらりと目を回転させ斜め後ろを見た。

 

膝をつき呆然とかつて城であった瓦礫の山を見つめる少女がいた。

 

グリム・リーパーは遠くに結界を発見すると途中で空を飛び少女を追い越して城を襲撃していたのだ。今更になり少女は到着したのだろう。

 

グリム・リーパーはそれを見て少女に向き合うと方鎌を少女の目の前の地面に突き立てて添え、もう片方の大鎌をゆっくり、ゆっくりと少女に振り上げた。

 

まるで死刑執行者のギロチンのように。

 

それを見て少女は逃げることも喚くこともなくただ、目から一筋の涙を浮かべた。

 

グリム・リーパーは少女の目を見つめた。自分と同じ赤色の瞳だ。

 

グリム・リーパーはそのまま暫く静止した。

 

そしてグリム・リーパーのギロチンは降り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"自分の逆の大鎌に"

 

 

グリム・リーパーの降り下ろした方と逆の地面に突き立てて添えた自分の大鎌は前脚と鎌の接続部分から斬られ、地面に突き立ったまま身体から離れた。

 

超再生能力は今は抑えているようで瞬時に繋がることは無かった。

 

「え……?」

 

少女は目の前で行われた奇妙な光景に思わず声を漏らした。

 

だが、抑えていた超再生能力を戻したようで大鎌が離れたグリム・リーパーの前脚から延びるように鎌が生えると、再び死神の鎌のような妖しくも美しい光沢を放ていた。

 

更にグリム・リーパーは生えた方の鎌でもう片方の同じように切断した。

 

そしてやはり、切断したての大鎌と身体が繋がらないように超再生能力を抑えてから再び鎌を生やした。

 

地面には2本の数mの巨大な大鎌が突き立った状態になり、生えている鎌も合わせると4本の大鎌が並んでいた。

 

それからグリム・リーパーは一声上げると魔法を行使した。

 

すると地面の2本の大鎌はグリム・リーパーから伸びた影に包まれ、包まれた大鎌ごと影がぐにゃぐにゃと曲がった。

 

両方とも同じく奇妙に半円のように曲がった形を取るとほどけるように影はグリム・リーパーに戻っていった。

 

30Lvの闇魔法、影の処女(シャドー・メイデン)だ。本来は敵を影で全身を隙間なく縛りながら内部の影に突起や針を無数に生やし刺し殺す魔法だ。

 

だが、どうやらグリム・リーパーはそれを別の用途に使ったようだ。

 

そこには、2振りの湾曲を描くように曲がり、内側にしか刃が付いていないタイプの珍しい150cm程の大きな剣が突き立っていた。

 

少し知識のあるものならこの武器はハルパーと言う神話の曲刀で、神話のモノより遥かに大きいこと解っただろう。

 

しかし、残念ながら武器にそこまで知識の無い少女は珍しい剣だと言うことしか解らなかった。

 

そして再びは少女を見つめると顔を元いた古代遺跡に向け、羽を羽ばたかて飛んで行った。

 

少女はそれをただ見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女(グリム・リーパー)は飛びながらさっきの少女について考えていた。

 

あの少女は逸材だ。成長すればさぞ強くなるに違いない、そう直感的に感じていた。

 

これまで彼女は色々な人を殺してきた。立ち向かう者、守ろうとする者、挑戦に来た者、逃げ惑う者、復讐する者、など様々な人を斬り殺した。

 

それから、殺戮平野に定住するようになってから、挑戦に来た者ばかり相手にしてきたからなのかは解らないが、いつの間にか彼女は人の後天的な実力が直感的に解るようになっていた。

 

それにより、恐らく少女自分では気付いていないが、彼女が見てきた人の中でも1・2を争うほど少女のポテンシャルが高かった。

 

 

それこそ一握りの人の中の一粒の、"勇者"になれるほどに。

 

 

だから彼女は少女を殺すのを止めて剣を造った。

 

Sランクの中でも最上級の難度の禁忌級の魔物の大鎌から出来た剣だ。人からすれば伝説の武器などと言われるレベルだろう。

 

あの剣を少女が手足のように扱える程強くなれば間違えなく少女は魔王に届く程の一握りの勇者となり得る。

 

更に少女は一族を皆殺しにされたのだ。復讐者となり、いつか死神に復讐に来るだろう。

 

その時、魔王になっているであろう自分と勇者になっているであろう少女、どちらが上か?

 

それを考えただけで心が躍るようだった。

 

彼女はいつか再びまみえる日を待ちわびながら、まず第一歩の為に古代遺跡に向かった。

 

 

 

機巧(マキナ)系の魔物、その中の守護機巧(ガーディアン・マキナ)の最高傑作。

 

太古の昔に滅んだ先人が造りし魔王、天空機巧都市ウラヌスから堕ちてきた都市の番兵。

 

"呪怨機巧鎧《デュラハン・アーマー》"

 

通称"殺戮騎士"を殺し、喰らうために。

 

 

 




~第5回人外魔境~

『さあ、今回も始まった第5回人外魔境だ』

『いえーい! ございます』

『始まったわぁ。あなたの生理も落ち着いたしねぇ』

『うるせえ。さてまず前回保留にした2通だ』


Q:魔水晶創造のスキルで魔石を造ることはできますか?


『生活や燃料用の魔石の火石、水石、風石、氷石、土石、光石、闇石などは湯水の如く幾らでも造れるぞ? 無論、混じりけ無しの最高純度(100%)だ』

『全魔石商が涙しそうでございますね。次は』


Q:魔水晶が最高硬度の物質でスドーが全身魔水晶なら一生処女ではないのでしょうか?


『おい誰だ。こんなこと質問…』

『あらぁ? 他にも何で胸が柔らかいのかっていうお便りもあるわねぇ』

『誰得だよ……俺の身体なんて…』

『私得だわぁ』

『私得でございます』

『テメェら………仕方ない……魔水晶が最高硬度って言うのはな、正確には正しくない。魔水晶はただどんな物質よりも硬く、柔らかで、温度耐性のあり、鋭い性質を持っているだけだ』

『それって最強でございますね…』

『あらぁ? 通りで私の拳に耐えれた訳ねぇ、ただ硬いだけならギガ・インパクトで一撃だものぉ』

『序でに、任意で性質の変更が出来るから俺がそうしたいと思えば処女膜も普通に破れるようになる………死ね…みんな死んでしまえ…』

『これ以上スドー様を弄ると取り返しのつかない事になりそうなので次でございますよ』


Q:魔結晶石で上げる魔力値に上限はあるんですよね?


『あるでございますよ。普通の人ならば5万は行かないぐらいで打ち止めでございます……普通の人ならば…で、ございますがね…』

『次ねぇ』


Q:スドーの他にトリッパーはいるんでしょうか?


『トリッパー?』

『トリッパぁ?』

『………なんでございましょうか?』

『………引き裂き人形(リッパー)って魔物はいるわよねぇ』

『スドー様なら知って…』

『……みんな死んでしまえ……男なんて…男なんて………なんで……なんで俺がこんな…こんな………』

『ダメそうねぇ』

『もうダメそうでございますね』

『きっと引き裂き人形の間違えねぇ』

『次でございます』


Q:番号持ち殺戮者とはなんですか?


番号持ち(ナンバーズ)ねぇ。各都市の殺戮者ギルドの実力と、人格と、ギルドマスターの独断と偏見で選んだ上位100人に与えられる称号よぉ。例えばここだと名前と番号とギルドポラリスってロゴが入れられた金属プレートが贈られるわぁ』

『確か…一定数の討伐の義務と、緊急クエストの強制参加の義務を負う代わりに、その都市内の特定の宿屋や食事処や風呂屋など公的機関の一切の使用料が無料になるんでございますよね?』

『そうよぉ、ちなみに現在は100人中埋っているのは78人よぉ。死ぬか、その都市で1ヶ月クエストを受けなければ欠番扱いになるから日々変わるのよねぇ。1ヶ月って言うのは都市に優秀な番号持ちを留まらせる為の法でもあるけどぉ、死んで行方不明かどうかは解らないから1ヶ月って期間なのよぉ』

『そうなのでございますか…妙に詳しいでございますね』

『ほらこれぇ、ナンバープレートよぉ』

『へー、ちゃんとギルドポラリスって入ってるんでございますね。ローゼって名前で3なんですね……あれ? なんで持っているでございますか? しかも3番って…』

『100年ぐらい前に取ったのよぉ? 植人族の長って事で登録してるわぁ。勿論、植人族としてよぉ。あなたも取ったらどぉ?』

『まずSSSランクになってステータス偽造が出来るようになれば考えるでございますよ』

『ちなみに1番はヴィッセルよぉ』

『え? あの人強かったんでございますか?』

『人的にはかなり強いわねぇ。伊達にギルドマスターやってないわよぉ』

『そうなんでございますか、あら? もうお昼でございますね。そろそろスドー様にご飯を作って貰わねばならないのでございます』

『じゃあ今日はこの辺でお開きねぇ』

『また今度ー』

『またねぇ』




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外伝3 クロロ潜む狙う撃つまた狙う

 

 

 

スレイヤーからは古代遺跡ウラヌスと呼ばれる201階層からなる巨大地下遺跡。

 

地下でも地上のように明るい、天井の不思議な光源に照らされながら、"呪怨機巧鎧(デュラハン・アーマー)"は200階層を巡回している。

 

デュラハン・アーマーは3m程の人形の鎧だ。ただし、首から上の鎧は無く、代わりに胸部の中央に眼の形をした拳だいの赤い宝石が妖しく輝いていた。

 

デュラハン・アーマーは太古の昔、天空都市ウラヌスで鋳造された人工の魔王だ。

 

だが、1000年程前に天空都市に乗り込んできたスレイヤーによる不意の一撃で、地上に堕とされてしまったのだ。

 

それ以来、 天空都市への唯一の道のある201階層に造られた。大型転送装置"天の柱(ヘブンズ・ゲート)"を護り続けていた。

 

デュラハン・アーマーの思考回路は単純だ。

 

命令実行、それに尽きる。

 

ウラヌスからの最後の命令に従い、都市から落とされた今も動き続けているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュラハン・アーマーはいつも通りの規則的な順路で移動を続けていた。

 

デュラハン・アーマーには心と呼ぶべき機関は存在しない、単純な命令をこなすハードウェアに過ぎないのだ。

 

だからこそ一切情け容赦なく、楽しむこともせず、作業的に殲滅をこなすデュラハン・アーマーは非常に強力だ。SSランクの中でも破格の実力と言える。

 

最も、デュラハン・アーマーが破格ならネメシスは異次元の実力になるが。

 

そしてデュラハン・アーマーはとある行き止まりの一角に入った。

 

そして、突き当たりまで移動すると、引き返した。

 

が、不思議な事が起きたのだ。

 

突然、デュラハン・アーマーの腹からドス黒く渦巻く魔力の波動を放つ鎌が生えたのだ。

 

更にそれは二本に増え、横に咲かれると、デュラハン・アーマーは上半身と下半身に分断され地面に転がった。

 

身体を起こしたデュラハン・アーマーが最期に見た光景は、眼に突き刺さる寸前の死神の鎌と、微かな影から覗く赤い双眼だった。

 

それはデュラハン・アーマーの思考回路が、単純なハードウェアでさえなければ起こりえなかったかもしれない。

 

ただ一つ確かなことは、もう二度とデュラハン・アーマーが護ることはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュラハン・アーマーの完全停止を確認して死神(グリム・リーパー)は、落胆した。

 

こんなモノか……と。

 

例え、1対1の戦闘なら彼女を遥かに超える実力を持っていようと、所詮、デュラハン・アーマーは学ぶことを知らない単純なハードウェアだった。

 

狩猟と暗殺スキルを極めた彼女にとってはさして難しくもなく刈れる相手だったのだ。

 

彼女がしたことは結果だけいえば簡単だ。

 

死角からの襲撃、ただそれだけだ。

 

だが、その手段は彼女足り得るだろう。

 

彼女は、この(フロア)のこの一角の微かな影に2ヶ月間、潜り続けていたのだ。

 

デュラハン・アーマーが、背を向け、その角度が鎌の直線に入るまでひっそりと息を潜めて。

 

彼女は半分以上影に入りながら大通りへ、デュラハン・アーマーの身体を移動させた。

 

小道では彼女身体は大きすぎて通路に収まらないのだ。

 

移動を終えると、彼女はデュラハン・アーマーの身体を全て食べた。

 

感想は固くて不味かった。

 

そして、最後に赤々と光を放つ、魔王核だけが残った。

 

彼女は野球ボール程の魔王核を器用に、鎌の上でコロコロ転がしていた。

 

彼女は、こんなことなら早く刈っておくべきだったと思っていた。

 

そもそも彼女の襲撃も、彼女にとっては腕の一本でも奪えたらいいな。ぐらいに思ってしていた攻撃だ。

 

それで死んでしまうとは拍子抜けも良いところだ。

 

彼女の中の魔王のレベルが高過ぎたのだろう。巨乳水晶(ごしゅじんさま)とか鳥とか。

 

あのレベルなら間違えなく、直感で避ける。というか巨乳に限ってどんなに強化しても鎌が折れる。

 

ご主人様の日頃の稽古(ストレス発散)は全く生ぬるくは無いのだ。普通の生物なら何十度死ぬことか。

 

彼女はデュラハン・アーマーの雑魚さ加減に再度落胆した。

 

とは言っても上位の魔王。貴重な戦力になるのは違いない。

 

彼女は鎌を上げて魔王核を口に落とした。

 

そして、体内に入ると彼女の身体が急激に萎縮した。

 

徐々に輪郭が整うと、身体が爆発的に発光し、光が晴れると新しい魔王がそこにいた。

 

180cm程の身長で、胸の大きく扇情的な女性型のボディ。

 

女神像のような優しげな顔だが、赤い双眼は狂った妖しい光を放っていた。

 

背中には6枚の虹色に輝く透き通った薄い羽を生やす。

 

そして、無機質な身体を漆黒で統一した機巧がそこにいた。

 

彼女は身の丈より大きな、一振りの白銀の腹の鎌を構えると一度振るった。

 

その速度は今までの比ではなく、それから放たれた衝撃波の斬撃は、直線上の遺跡の数十枚の壁を全て引き裂いた。

 

彼女はあまりもの豹変ぶりに歓喜すら覚えた。

 

更にステータスを開いた。

 

 

 

"呪怨式死神機巧(タナトス)"

ランク:SS

身体値:400000

魔力値:70000

 

スキル:

《魔王》

《超再生能力》

《闇魔法Lv60》

《鎌術Lv99》

《脚術Lv99》

《暗殺術Lv99》

《波動斬》

《次元斬》

《呪怨式光子砲》

《一撃必殺》

《無音移動》

《守護神》

 

 

 

彼女(タナトス)は思った。

 

なんか、凄い増えた。

 

そして、機巧種になったことでスティンガー創造が消えた。

 

魔物は人と違い、ランクアップの時にスキルが追加されるから異様に増えたのだろう。

 

彼女はこのままご主人様のところに帰ろう考えたが、それは破棄した。

 

折角、魔王になったが、このままではまだ足りないと彼女は思った。

 

そもそもまだ人には程遠い、強いていえばロボ娘である。

 

それにデュラハン・アーマーは喋る機能など付いていなかったので当然喋れない、これではなった意味が半減だ。

 

それなら更なるSSS(ランクアップ)を狙うか…。

 

だが、彼女は行き詰まった。

 

この国にいるSSSランクの魔王は3体だ。

 

魔水晶女王(ごしゅじんさま)

 

混沌妖薔薇(クロノスローズ)

 

幻想王女(マモンアリス)

 

 

上から、憤怒、色欲、強欲の七罪魔王という豪華っプリだ。

 

特に原初の七罪魔王で、理想郷の超魔法特化型のマモンアリスとの相性は最悪である。

 

ご主人様とはそもそも戦う気は無い、最も魔法そのものであるご主人様に勝てる見込みなどゼロだが。

 

クロノスローズは本気なら技量で確実に負ける。例え1000年やりあったとしても一本も取れる気がしない。

 

八方塞がりだ。

 

そもそも七罪魔王は合計100万超の奴らだ。

 

勝てる見込みがあるのはそういないだろう。

 

だが、只のSSSランクではそこまで強くなることは出来ない。

 

最強への道は七罪魔王への道なのだ。

 

だから未だに鳥もSSランクなのだろう。

 

暫く考えていると彼女は気が付いた。

 

この遺跡がどこに繋がっているか、ということに。

 

彼女は笑った。悪寒を覚えるほど狂おしい笑みで。

 

天空都市ウラヌスへの転送装置(テレポーター)へと。

 

そして極北人造神(ルシフェルウラヌス)へと。

 

古代人が造りし究極の機巧。原初の傲慢の七罪魔王。天空都市の神にして絶対のシステム。そして古代人が滅んだ原因でもある。

 

彼女は歩き出す。

 

が………。

 

 

 

脚を引っ掛け盛大に転けた。

 

 

 

「………………」

 

流石に、彼女もこれは予想してなかったようで鳩が豆鉄砲食らったような顔をしていた。

 

それもそうだろう。急に四足歩行から二足歩行になったのだから身体の勝手が全く違う。脚の幅すら大分違うのだ。

 

結局、彼女は暫く四苦八苦した上で、宙を浮き飛んで向かうことにした。

 

 

 




~第6回人外魔境~

『と、言うわけで第6回人外魔境の始まりだ』

『やっふー、でございます』

『いつも通り豆腐メンタルのスドーと、チィちゃんと、私でお送りするわぁ』

『まず最初のお便りだ』


Q:クロロ一日十億のむし殺してるけどそこで頑張らないのかな?Cランク程度なんで足しにならないのでしょうか?魔王化の。強さの差で経験値が激減するオンラインゲームがよくあるけどそんな感じでしょうか?


『ふむ、Cランクの経験値を1とするとSSランクになるのに10000000000000(10兆)ぐらいするんだよな』

『だからSSランクになるのに何千何百年も掛かるんでございますよ。ちなみに私は2000年掛かったでございます』

『私もそんなもんだったわねぇ。オンラインゲームってなにかしらぁ?』

『気にするな、次だな』


Q:人類なんで滅んでないんでしょ・・・魔王強過ぎる。何十人もいるのに。


『それは私が答えるわぁ。そもそも人がいうところのぉ、神々の黄昏にいたのは私だけだしねぇ』

『そんなんあったのか?』

『黄昏決闘の元でございますよ。伝承通りなら魔王対魔王の決戦が、神々の戦のようだったとか』

『うん…あん…うん…よし…そんな生ぬるいモノじゃない。正確には、人を滅ぼさんとする七罪魔王2体、それの武力により集結した魔王389体と。人を護らんとする七罪魔王3体、それに賛同した158体の魔王。300万年前に起こった魔王最大の戦争だ』

『(あ、目と口調と声がマジになったでございます)……そんなにいたのでございますね。魔王』

『そうだ。その戦争のせいで100体未満に落ち込んだがな。最も100年に及ぶ戦争の余波だけで、3つの大陸をほろぼしたが』

『魔王ェ…』

『あん…ああ…うん…でもぉ、その時に七罪魔王の愛羅神楽(アスモデウスガイア)を仕留めれたからこうなれたんだけどねぇ』

『そうなんだ…』

極北人造神(ルシフェルウラヌス)を仕留め損ねたのが唯一の心残りだわぁ』

『コレぐらいにしておくか、長くなりそうだ』

『その当時から、人に味方する魔王が結構いたって事でございますよ。最近は悠久の時を生きる魔王にとって、人の文明は大切な娯楽でございますからね。好んで人を殲滅するのは少数派でございますし、大概他の魔王に淘汰されるでございます』

『あらぁ? 私は人撲滅陣営だったわよぉ。途中で裏切ったけどねぇ。次にしましょうねぇ』

『………(なんかスゲーその話聞きてぇんだけど)』


Q:スキル「女王道」「金の翼」「神罰」「宿り木」「弟子」 とはどのようなものでしょう。


『女王道は、物事に自分以外の他の魔王が関与していない限り必ず成功するチートスキルだ。女でSSSランクの魔王なら誰でも持っている。男だとスキル名が覇王道になるぞ』

『金の翼は飛ばしたり、包んだりして羽に触れた象の時を完全停止させる能力でございます。羽に触れてる面積が大きいほど効果成功率が上がるのでございます』

『神罰は…奥の手ですから秘密でございますよ。文字通り私の"必殺技"でございますから』

『弟子は師の1%の能力を弟子に補正する加護だな。時期が長ければどんどん補正も上昇する』

『宿り木は対象に私の種を植え付けるスキルねぇ。人を植物人に変えるのよぉ。あと性別もねぇ』

『は?』

『え?』

『だってぇ、天然物の百合乙女ちゅんって中々いないのよぉ。無理矢理ヤるのは何か違うのよねぇ』

『お前…まさか…』

『あの娘たちみーんなぁ…迷宮で捕まえた男の子たちよぉ?』

『殺してやるうぅぅぅぅぅ!!!!!』

『ちょ…スドー様!?』

『(ニヤリ)←手を触手にした』














~決して真似をしてはいけないぞ☆(目を細め、リリウムちゃんを膝に乗せながら風呂に浸っているスドーが写った)~














『……ぁ………ぇ………ぅ…』

『バカねぇ、室内で私に勝てるわけないわよぅ(ツヤツヤ)』

『あんなところまで触手を入れるなんて…鬼でございます…性欲の鬼でございます…』




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銀のロケット

 

 

暇だ。

 

 

 

いつも通りリリウムちゃんを膝に乗せて授業を受け、リリウムちゃんの服の中に入り込もうとしていた小鳥状態の現行犯

ネメシス

を握り締めながらそんなことを考えていた。

 

ローゼ襲来から約4ヶ月ほど経ち、俺はベイオウルフ家のメげふん…家庭教師として二充分どころか三充分に働いていた。

 

まぁ、元来なにかしていないと落ち着かない質なので別段苦でもないのだが、如何せん慣れると同じことをし続けるのも飽きるというものである。

 

「げふ…し、死ぬ…中身出る…で…ございます…」

 

「し、師匠!? チィちゃんが!?」

 

ふむ、まだ余裕そうだな。

 

「ふぐっ!? なぜ強め…………がふ………」

 

「師匠ぉぉぉ!!?」

 

 

 

 

 

 

「あの…授業中なんですけど…」

 

……先生に怒られてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スドー様は何度私に綺麗なお花畑と川を見せれば気がすむのでございますか?」

 

下校中、人型に戻ったネメシスがそんなことを言ってきやがった。

 

「ならリリウムちゃんの服に入るのを止めやがれ」

 

「だが、断るのでございます」

 

ネメシスはキリッとした顔で答えた。

 

テメェ…。

 

「良いじゃないですか師匠、チィちゃんも悪気はないんですから」

 

そう、屈託のない笑顔でいった。

 

悪気どころか邪気そのものなんだぞリリウムちゃん…。

 

「ほら、マスターもこう言っていま…」

 

「シャラップ」

 

「腹パン!?」

 

次の瞬間に俺の拳が、リリウムちゃんを挟んで反対側にいるネメシスの下腹に突き刺さった。

 

「ところでリリウムちゃん?」

 

「なんですか師匠?」

 

ちなみにリリウムちゃんにとって俺の暴力とは、魔王などに対する俺なりの愛情表現だと思っているらしい。

 

…泣いていいかな…。

 

「今日は何が食べたい?」

 

「カレーがいいです!」

 

リリウムちゃんは元気よく答えた。

 

カレーか、煮込んだり日を置いたりすると旨くなると言うが、個人的には作りたてが一番旨いと思うな。

 

「いいでございますね」

 

早くも復活したネメシスも賛同してきた。

 

チッ…浅かったか。

 

「じゃあ、そうするか」

 

「わーい!です!」

 

「わーい!でございます」

 

鳥は黙れ穀潰し。

 

「今晩はカレー、良いわねぇ」

 

「うぉぉ!?」

 

いつの間にか俺の空いている腕を自分の谷間に沈めているローゼがいた。

 

心臓止まるかと思ったじゃねぇか……核か…。

 

「テメェいつの間に…」

 

手を引き抜こうとするが完全にハマっていて全く動かない。身体値ェ…。

 

「虚空流奥義 虚空

アーカーシャ

よぉ。音も気配も魔力の残滓もなく移動し、殺した後に相手に殺されたと気づかせる隠密歩行術ねぇ」

 

なにそれこわい。

 

「ストーキングには持ってこいだわぁ」

 

「いや、それ違うだろ。てか離せや」

 

さっきからむにむにというかふよふよした感覚がダイレクトに俺に伝わって来た。

 

「もー、照れちゃって…私のお・ム・コ・さ・ん♪」

 

「………」

 

コイツ…本気で殺してやろうか?

 

掴まれている腕を爆弾に変えてやろうか真剣に悩んでいるとリリウムちゃんがとんでもないことを言い始めた。

 

「ふえ!? 師匠とローゼさんって…」

 

「リリウムちゃん、それは凄まじい誤解だ」

 

「あら残念」

 

そんなコントをしながら市場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

混沌妖薔薇ことアンネローゼことローゼは上機嫌だった。

 

市場から公爵家に戻るとスドーとリリウムはキッキンに入った。

 

無論いつものことだが、それを後ろから摘まみ食いをしながら眺めるのが今のローゼの生き甲斐になっているからだ。

 

ちなみにネメシスと違いローゼはしっかり食費を二十分に入れているので何も問題がないことがスドーの悩みの種である。

 

当たり前だが魔王は悠久の時を生きる魔物だ。

 

そんなモノたちにとって趣味は生き甲斐であり、好意とは寄せられた者の一生涯寄せ続けるものだ。

 

死して尚、好意を寄せた者を縛り続ける魔王もいるが、大概の魔王は好意を寄せた者が何らかの理由で生涯を終えると直ぐに他の対象を探すものだ。

 

少々ドライに感じるかも知れないが魔王は過ぎたことには執着しないモノが大多数だ。なぜらな悠久の中、或いは進化を突き進んできた過程で学んでいるからである。後悔も未練も何の役にも立たないことを。

 

だからなのか魔王には飽きっぽいモノが多い。

 

特に混沌妖薔薇はそうだ。

 

ローゼは最古の魔王ではないがその基質は極めてそれに近い。

 

欲しいモノは何をしてでも手にいれる。自分こそが最強で至上。後先などは考えない。

 

この三つが古い魔王である証しでもあるのだ。

 

現にローゼは昔から欲しいモノは手に入れてきた。

 

昔のローゼは今より随分血気盛んで一辺倒であった。自分より強いモノに着の身着のままで挑んでは己の拳で握り潰し、人に対して癇癪を抱えれば国ごと吹っ飛ばすなど日常茶飯事もいいところだった。

 

もっと言えばかなり男勝りでもあったがそれは置いておこう。

 

そんな彼女が精々、自分のダンジョンに入った男の中で気に入った男を拐って疑似百合乙女に改造しては楽しんだり、今のように食卓を楽しんだりするのは何があったかは解らないが凄まじい進歩であろう。

 

ちなみに前者は性癖に目醒めたことが原因だが、後者は一重に魔水晶女王ことスドーが原因だろう。

 

ローゼは今彼女に夢中だった。

 

だがそれはあまりにも異常だった。魔王が魔王のことを本気で愛すことは通常あり得ないことだからだ。

 

なぜなら悠久の時を生きるモノ同士で愛し続けることは可能かを真剣に考えてみれば解ることだ。

 

100年、200年ならまだ解る。しかし、数万年単位なら話はどうだろうか?

 

人のようなか弱い生き物ならまだ保護欲が働くが、魔王のような明らかな強者同士ならどうだろうか?

 

結果、長い時間を明らかに主張が食い違う強者が共にいることは通常不可能に近いのだ。

 

しかし、それを解って尚、ローゼはスドーの事を愛している。

 

それはローゼの基質よし根底の本質に影響している。

 

ローゼは明らかな上位者だ。世界で彼女に勝てるモノはほぼいないと言っても過言ではない。

 

だからなのか、彼女は他人に尽くされるのが好きだ。

 

よって奉仕魔王とでも呼ぶべきスドーはローゼのお眼鏡に叶ったわけだ。

 

そしてローゼは知っているのだ。ローゼでは恐らく本気のスドーに勝つことは出来ないことを。

 

別に本気でぶつかり合ったわけではない。しかし、伊達に最古の魔王に近い時を生きている魔王ではない。相手との実力差は直感で解るものだ。

 

そして、彼女は魔水晶女王と対峙して気づいた。

 

"これは勝てない"と。

 

いい闘いは出来るだろう。だが勝つことは出来ない。それはローゼにとって素晴らしいことだった。

 

つまりローゼの本質は尽くされながらも強者に屈服したいという矛盾に歪んだ性癖を持っている魔王なのだ。

 

だからこそスドーはドストライクであり久しく感じなかった胸の高鳴りをかんじるのだ。

 

本当はそれ以外にも多少あるがそれは置いておこう。

 

だが、そんなローゼには一つ気掛かりなことがある。

 

それはなぜスドーがリリウムに尽くしているのかということだ。

 

確かに人にしては随分、可憐で見ていると保護欲を掻き立てられなくもないがスドーほどの絶対強者が隣にいる理由にはならない。

 

奉仕魔王のスドーにしてもなにかしらの本質的、或いは本能的な理由があるのではないかとローゼは思っていた。

 

そして、それをローゼは知ることとなった。

 

「あらぁ?」

 

リリウムが何かを落としたのに気づいた。

 

多少の善意でそれを拾い上げるとそれは銀のロケットだった。

 

ロケットとなれば写真が入っているのは当然のこと。

 

ローゼはロケットを開けた。

 

瞬間、ローゼの世界が止まった気がした。

 

「ふふ…ふふふ…うふふふ」

 

ローゼはそれを見て笑わずにはいられなかった。

 

それを見て疑問符を浮かべるスドーとリリウムを余所に暫く笑うとロケットをリリウムに返した。

 

「ねぇ…?」

 

そして、妖艶な笑みでリリウムに語りかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママに会いたくないかしらぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唖然とするリリウムの手元にあるロケットの中にあった写真は、ベッドの上で一人の赤子を抱く幸せそうな女性。

 

マリアロッサ・ピジョンアイ・ベイオウルフの写真だった。

 

 

 




~第7回人外魔境~


『と言うわけで始まったぞ』

『いえー! でございます』

『4ヶ月ぐらい音沙汰なしだった気がするけど、気のせいよぉ~』

『と、言うわけで早速一枚目のお便りだ』


Q:スドーはいつまでメイドするつもりですか?
最終回までメイドならタイトル「魔水晶女王(俺)はメイドの一人である」に変更したほうがよろしいかと。この作品始まってからずっとスドーは一度も魔王してないですよねw


『………』

『………』

『………』

『まず一つ、俺はメイドじゃねぇ! 家庭教師だ!』

『……逆に魔王をしてるってどういう意味でございますか?』

『謎ねぇ…次ねぇ』


Q:クロロをあんなにこき使ってるんですから少しはデレてあげたらどうなんですか?


『虫は好かん』

『酷いでございますね…』

『鬼ねぇ』

『うるさい。次だ』


Q魔水晶創造のスキルで魔石が作れるのなら魔結晶石は作れないのでしょうか?


『うーん…作るのは出来ないんだよ。ただ、魔物を魔結晶石に還元することは出来るぞ? 魔王は無理だがな』

『それなんてチートでございますか…』

『次よぉ』


Q:スキル「魔水晶生命創造」「植物生命創造」で噛まれたら毒のステータス異常になる魔物を創るように噛まれたら若返る、胸が大きくなるなどの特殊な効果を持つ魔物を創ることはできますか?


『そんな回りくどいことしなくても始めから身体を弄って若返らせたり豊胸したりすればいいのよぉ』

『だそうだ。ちなみに創れるぞ。ただそんなことしてどうする気だ? エロ同人みたいに』

『次でございますね』


Q:自然に誕生する魔王はどの様に生まれるの?


『赤ちゃんはどこから来るのぉ? 的な質問ねぇ。そうねぇ…SSSランクで生まれる魔王は森の妖精さんみたいなものよぉ』

『なるほど解らんでございます』

『つまり先に魔力の溜まり場が出来るような場所が存在するとするわよぉ?』

『俺の森みたいなか?』

『そうよぉ、そこに魔力が溜まり過ぎるといつしか魔王核を形成するほど莫大な魔力が長時間溜まり続けるのよぉ。そして人なら気が遠くなるぐらいの歳月をかけて濃縮されて魔王核が出来上がるのよ』

『なるほど、森があるから森の妖精がいるのと同じように、魔力溜まりがあるから魔王がいるわけか』

『ご名答ぉ、でもアナタはまたちょっと違う出来方よぉ? それから他のお便りにあったから捕捉するけどぉ、人造魔王は人工的に莫大な魔力を濃縮し続けて魔王を造る太古の技術よぉ。もっとも技術の果ては自分たちが生み出した魔王による滅亡だったわぁ』

『皮肉だな。当然とも言えるが…次…』


Q:最初の方でスティンガーの鎌で胸を弄られた時、ネメシスとリリウムちゃんと一緒にお風呂に入った時、ローズとネメシスに処女膜を確認された時などで女の気持ち良さを味わっているスドーですがその気持ち良さについてはどう思っているのですか?恐らく後ろから手をワキワキさせながら忍び寄って来る2人に襲われる前に教えて下さい。


『………(ワキワキ)』

『………(ワキワキ)』

『お前らェ…』

『さぁ、白状よぉ』

『で、ございます』

『ううぅぅぅ……かったよ…』

『え? なんて?』

『気持ち………ったよ…』

『聞こえないわぁ?』

『気持ち良かったよ! 身体がじんじんして! 熱いのに! 嫌じゃなくて…』

『お持ち帰りよぉ!』

『お持ち帰りでございます!』

『あ…止め…』






~ノクターンに行ってしまいそうなのでカットされました(割烹着姿で小皿にお玉を持って料理の味見をするオカンスドーが映った)~







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いざ理想郷

 

「で? さっきのはどういう意味だ…」

 

食後になり、さっき妙な発言をしたローゼを俺、リリウムちゃん、リリアナちゃん、ヴィッセルさんで囲んでいた。一応、駄鳥もいるがそれはどうでもいい。

 

「お母さんは生きてるんですか…?」

 

「ふふふ、いい質問ねぇ。結論だけ言えばピンピンしてると思うわよぉ? でもそれより…」

 

ローゼはヴィッセルさんをニヤニヤしながら見つめた。

 

「あなたも隅に置けないわねぇ。どういう落とし方をしたのかしらぁ?」

 

現在机の上に置かれているロケットの写真には、人の偶像のように完璧な美と可愛らしさを兼ね備えた女性が写っていた。

 

………リア充め…。

 

いかん…現在の自分(の身体)の現状と比べて呪ってしまった。

 

「いや…それは…」

 

ヴィッセルさんは照れ臭そうに顔を下げた。

 

「まぁ、それよりもぉ……」

 

ローゼは目を細めて女神も見惚れそうな素晴らしい笑みを浮かべて言った。

 

「なんで死んだと嘘を子供たちに教えたのかしらぁ?」

 

なに…?

 

「それにあなたは知っている筈よねぇ? 少なくとも今彼女がどこにいるかぁ」

 

なぬう…?

 

そんなことは無いだろと思いながらヴィッセルさんを見つめた。

 

「………………」

 

ヴィッセルさんは暫く何も言わなかった。

 

だが、ヴィッセルさんは重い口を開いた。

 

「マリアは理想郷(パンデモニウム)にいる…」

 

「理想郷……ですか?」

 

理想郷、ポラリス三大魔宮の一つだ。

 

幻想王女(マモンアリス)の魔宮で確か、3体しかいない原初の七罪魔王の1体だ。

 

「まさか…ソイツもお前と同じような奴なのか?」

 

俺はニヤニヤした笑みを張り付けているローゼを見ながら言った。

 

「ああ…そうだ…」

 

が、答えが帰ってきたのはヴィッセルさんからだった。

 

マモンアリス…公爵家の家族にまで手を出すような奴なのか…それならマリアさんはもう…いや、考えるのは止めよう。取り戻す事だけ考えればいい。

 

記憶や、身体や、精神も俺がどうにか出来るしな。

 

「それでぇ、どうするのかしらぁ?」

 

「決まってるだろうが…」

 

俺の身体が光を放つと服装がいつものドレスアーマーへと変わった。

 

「殴り込みだ」

 

「うふふふふぅ、あなたのそういうところ大好きよぉ」

 

そういうとローゼは一瞬で消えた。と、普通の人なら見えたと思うが俺視点だと部屋に戻ったようだ。

 

「お待たぁ♪」

 

5秒もしない内にローゼは戻ってきた。

 

 

"ざっくりと胸の空き、ありえない位置にスリットのある赤いチャイナ服を着て"

 

 

「待てや色魔」

 

おい、ゴラァ。ここらコスパ(コスプレパーティー)じゃねぇんだぞ。

 

え? お前も鏡見ろ? ………………うるせえよ。

 

「何かしらぁ? 私の勝負服よぉ」

 

そう言ってから無駄にデカイ胸を誇らしげに張った。

 

「夜の勝負か?」

 

「あらぁ、こういうプレイが好みなのぉ? 可愛いわねぇ、良いわぁ、私はどんなことだっ…」

 

「ちげぇよ色ボケ」

 

「相変わらずバッサリねぇ」

 

ローゼはいつも通りの余裕綽々の笑みでクスクスと笑った。

 

…本当にコイツの考えていることは解らん…。

 

「あのー…師匠?」

 

リリウムちゃんが俺の膝から俺を見上げてきた。

 

「なんだ?」

 

「私はとっても動きやすそうな服だと思いますよ」

 

………………………マジで?

 

いやいやいやいや、そうだリリウムちゃんは変わり者なんだ一般論を言っているとは限ら…。

 

「ああ、女性の武道家が好む服装ですな。正しく勝負服だ」

 

「でしょぉ? アリスクラス相手ならこれぐらいは当然よぉ」

 

またか…またなのか…知識摩擦か…また俺が間違っているのか!?

 

なぜか押し寄せる敗北感に机に突っ伏しながらうち震えていると、自然に視線がとある場所に向いた。

 

それはヴィッセルさんの横に行儀よく座るリリアナちゃんにだった。

 

………………なんで一言も喋らないんだ? 自分の母親に何か思うことでもあるんだろうか?

 

俺が不思議そうに見つめているとリリアナちゃんと目があった。

 

ふむ、聞いてみるか。

 

「なあリリアナちゃん?」

 

「スドーさん」

 

それを聞く前に話しかけてみることにしたが、先にリリアナちゃんは俺を呼ぶと椅子から降りてテクテクと歩いて部屋から出ていった。

 

俺もリリアナちゃんに続いて部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「スドーさんにお母さんはいるのですか?」

 

部屋から出てリリアナちゃんを辿ると廊下の開け放たれた窓から外をぼーっと眺めているリリアナちゃんがいた。

 

リリアナちゃんに近くとそんなことを言われた。

 

「母さん?」

 

母さんか、一人で家族を支える家の柱で俺が知ってる人間の中で誰よりも図太く強く強情な人で…それでも俺にとって大切な人で…結局何も親孝行出来なかったな…。

 

「私は………何も覚えてないのですよ」

 

「え?」

 

覚えてない…? 自分の母親のことを?

 

「お母さんが消えた時、私は2歳。思い出なんて1つも覚えて無いんですよ」

 

そう言って何時もの眠そうな目を閉じた。

 

「初めから死んだと思っていたから特に気にしたこともなかったのです。だから………」

 

リリアナちゃんは再び目を開くとこっちを向いた。

 

「生きてるとわかっても何も感じてないんですよ。ヒドイ娘なのです」

 

そしてリリアナちゃんは笑った。

 

始めて見たリリアナちゃんの笑顔は自嘲の笑みだった。

 

「………………」

 

「スドーさん。もしお母さんが帰ってきたらどうすれば良いと思いますか? 私は…」

 

リリアナちゃんは真剣な目で俺を見つめてきた。だが、よく見れば握り締められた手は震え、瞳の中には微かな怯えが映っていた。

 

「………………………はぁ…」

 

「はぇ?」

 

俺は膝を折って屈むとリリアナちゃんの小さな身体を包み込むように抱き締めた。

 

俺の胸にリリアナちゃんが顔を多少埋める形になっている。

 

俺の母さんは俺と妹が頑張った時や、不安そうだと感じた時はいつもこうしてくれたっけな。

 

「あの…スドーさん?」

 

珍しくリリアナちゃんが動揺している。

 

いや、慣れてないから恥ずかしがってるんだな。

 

「母親はこんなもんだと思うぞ?」

 

「え?」

 

「恥ずかしいだろ?」

 

「はい…少し」

 

「安心するだろ?」

 

「………はい」

 

「温かいだろ?」

 

「………………………はい」

 

リリアナちゃんは頬を朱に染めて俺の胸に横顔を沈めていた。

 

俺はリリアナちゃんの頭をそっと撫でた。

 

俺の母さんならもみくちゃにするぐらいわしゃわしゃと撫でるところだがな。

 

母親も………悪くないかな。

 

う、うん。リリアナちゃんとリリウムちゃんにならたまにお母さんと呼ばれても…。

 

「なら私と愛を育んでみるぅ?」

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

突如、ローゼが耳元で呟いてきた。

 

「テメェ…何しやがる!」

 

「あらあら可愛いわねぇ、あんなに母性全開にしておいてよく言うわぁ」

 

「全くでございますね。マジメシウマでございます」

 

「可愛かったわねぇー」

 

「でございますねー」

 

「………じー(羨望の眼差し)」

 

お前らァ………。というかリリウムちゃんまで…。

 

「そんなことしてる暇があったら準備でもしやがれ!」

 

「もう万端でございますよ。それより下、下」

 

下?………あ"。

 

この時気付いた。気付いてしまった。

 

簡単な話だ。俺が屈まなければ胸に届かなかったリリアナちゃんの身長で俺が立ち上がるとどうなるかということを。

 

「むきゅう…」

 

足をぷらんぷらんさせて俺の胸の谷間に沈むリリアナちゃんがいた。

 

「リリアナちゃん!?」

 

「あなたねぇ、いい加減自分のバストサイズぐらい考えたらどうかしらぁ?」

 

「全くでございますね。ビックリすると力む癖も困り者でございます」

 

「うるせぇよ! リリアナちゃん!? リリアナちゃーん!!」

 

「いいなー……リリアナ」

 

こうしてベイオウルフ家(母)救出作戦は幕を開けた。

 

 

 

 




人物紹介1

魔水晶女王(クリスタル・ノヴァ)

好き:妹、風呂
嫌い:虫、今の身体
趣味:裁縫、料理の献立を考えること
マイブーム:家庭菜園、ネメシス虐め

説明
魔水晶の森に棲息する(過去形)魔王。家事全般が大得意であり、その技術は天井知らず、メイド服が非常に似合う女性である。魔王の中では珍しく良識を持っており、基本的にNOと言わない優しい性格をしている。しかし、口が悪い上、気も長い方ではない。さらに言葉より先に手が出るタイプで自覚は無いがそれを楽しんでいる。妹がいるらしく、時々欠乏性に陥るため、リリウムかリリアナを抱き締めて代わりにしている節がある。スドーという名前らしい。


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