英雄と饅頭とアカデミア (パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ..)
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英雄なので、1番すごいです。

 

郊外のとあるビルの地下1階にて、少年は1人座っていた。

その部屋はまるで会議室のように机が輪を作るように置かれているが、その部屋にいるのは少年ただ1人であった。

時折、壁にかかった時計を眺め、周囲を見渡す動作をしている。

日は既に沈んでおり、彼の周りを包むのは静寂のみである。しんとした部屋に机を指でコツコツと叩く音が響く

 

 

「遅れましたー。」

 

 

突然扉がガチャリと開き、桃色の髪のボーイッシュな少女が1人入ってきた。

 

 

「おせえんだよ!!」

 

 

少年はキレた。

 

 

「集合時間6時って言ったじゃん!外見てみろよ真っ暗だよ?!春に近づいて来て明るい時間も長くなってきたけど真っ暗なんだよ!!」

 

「お待たせしましたー!」

 

 

また1人部屋に入ってきた。茶髪の好青年で、どこか狐を印象させる見た目をしていた

 

 

「いやぁ、北○無双がフィーバー入っちゃって..」

 

「パ○ンコ行ってんじゃねえよ!!」

 

「まあまあそんなおこらないで下さいよ、仮にも教祖様じゃないですか」

 

「そうッスよ、むしろ幹部の懐があったまったんだから喜ぶべきッスよ」

 

 

教祖様と呼ばれる男は頭を抱えてしまった。

 

 

「それにほかの人たちは?ギルザレンとか環がいないのはわかるけどほかの人たちも来てないんですか?」

 

「任務中だよ暇なおめえらと違ってなあ!!」

 

 

男はまだキレていた

 

 

「...あとギルザレンばどうせ見てるだろ多分」

 

「んじゃ、始めますか、虚空教幹部集会」

 

「ほとんど揃ってねぇんだよなあ...」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「なぁんでアラームがなってないんだよぉーー!!」

 

 

叫びながら街中を疾走する少女。その速さはお世辞にも早いとは言えないが、本人は必死である。

なぜなら、今日は雄英高校の登校初日。あの倍率300倍の試験をくぐり抜け、合格を勝ち取った彼女にとっては、最初の1歩を踏み出す重要な日である。

しかし、あろうことか彼女は寝坊していた。

 

 

「まずいまずい、初日から遅刻なんて絶対まずいよ!初日から先生に怒られたくねえ!同級生にいじられるのも嫌だ!かと言って個性は使えないし..」

 

「おやおやぁ?天下の雄英高校の生徒ともあろうお方が登校初日に遅刻ですか?考えられませんねぇ、」

 

 

少女は驚きながら声の聞こえてきた方に目を向ける。失礼なことを言ってきた奴は自分よりもはるかに背が高く、金髪に碧眼でガタイのいい、かなり目立つ見た目をしていた。

 

そして何より、自分と同じ雄英高校の制服を着ている

 

 

「まあ、僕もなんですけど」

 

「おめぇどの立場で言ってきたんだよ!」

 

 

頭が混乱している少女を、金髪の少年は追い越していく

 

 

「まあ、僕は遅刻しないと思いますけど、あなたのスピードだと厳しいんじゃないですかね。まあ、せいぜい頑張ってくださいよw」

 

そういうと少年はさらに速度をあげて少女を抜き去っていってしまった

 

 

「あんのやろう...『スピーダー』」

 

 

周囲を見渡し、ボソリ、と少女は呟いた。すると彼女の周りに風が起こり、彼女を包み込んでいく。

先程までのスピードとはうってかわり、まるで風と一体になったような速さで走り出した。

1分もしないうちに、先程の金髪の少年の背が見えてくる。

 

 

「悪いねえ先輩、先に行かせてもらいますよ!」

 

「はっ?!なんで急に、速く走ってるの!?ずるじゃん!」

 

 

騒ぐ少年を背に、彼女はさらに速度を上げる。

 

 

(よし、この分なら間に合うだろ。てか、さっきの人年上だよね?1年生で遅刻するやつなんて他に居ないと思うけど...)

 

 

そんな考え事をしてるうちに雄英高校が見えてきた。この雄英高校は、日本トップクラスの学校であり、有名なプロヒーローを何人も排出している、いわゆるエリート高である。

 

 

「うわぁ、でっけぇー....って!早く入らなきゃ!1年A組ってどこだよ....」

 

「えっ、あなたもA組なんですか?」

 

 

振り向くとそこには金髪がいた。

 

 

「あなたもって...てことは先輩も?」

 

「そうなりますね。俺はエクス・アルビオって言います」

 

「うぇっと...アルス・アルマルです...」

 

「まあ今朝のことは水に流してあげるので早く行きましょ。もう時間ないですよ」

 

「あぁ..うん...って、最初に仕掛けてきたのおまえじゃねぇかよ!!」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「「ギリギリセーフ!!」」

 

 

2人が教室の扉を開けると同時に始業のチャイムがなる。クラス中の視線が痛い。

 

 

「登校初日から遅刻ギリギリなんていい度胸だな 。それも2人揃って」

 

 

クラスの中にいる小汚い謎の男からお叱りを受ける。まるでそうは見えないが、状況から察するに担任であろうか。

 

 

「...アルスさん、なんでヒーロー科に不審者がいるんですかね。入試の時みたいなもう始まってるパターンみたいな?」

 

 

エクス・アルビオは小声で呟いてきた。

隣のアホは男が誰かよくわかってないらしい。困惑の表情を浮かべながらケータイを取り出し、どこかに電話しようとまでしている。

 

 

「おい待てエクス、そのケータイで何をしようとしている」

 

「110番ですけど..」

 

「俺は担任だ、だからそれを早くしまって席につけ。」

 

 

アホはしぶしぶと言った様子で席に着いた。ぼくもそれに続いて席に着くと、担任が咳払いをひとつして話を始めた。

 

 

「んじゃ、改めて担任の相澤消太だ。よろしくね。

早速だがこれを着てグラウンドに出ろ。」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

更衣室に入ると、エクス・アルビオは数人の生徒に絡まれていた。

 

 

「おまえエクス・アルビオっつうんだっけ?俺、瀬呂範太!んで、なんでいきなり遅刻ギリギリで来たんだ?」

 

「めちゃくちゃ寝坊しましたね。昨日ゲームやりすぎたのが原因じかと思います。」

 

 

「俺!切島鋭児郎!エクスすごい体だな!なんかスポーツとかやってたのか?」

 

「いや、普通に帰宅部でしたね。気づいたらこんなんなってたんで個性が関係してるのかな。」

 

 

「そんなことより、なんでアルスさん?と一緒にきてたんだ?あ、俺上鳴電気ね」

 

「アルスさんは登校中に後ろから絡んできまして、まあ華麗に抜いてったんですけど、さすがに校門のところで待ってあげてましてね。まあ舎弟みたいなもんですかね。」

 

 

「君達!親睦を深めるのは構わないが、早く着替えた方がいいぞ!」

 

 

メガネのクラスメイトに注意され、ようやく着替えを終わらせた。グラウンドに向かうと既に相澤先生は来ており、早くしろと目で訴えてきていた。

 

 

「これで全員だな。それでは、今から個性把握テストを行う」

 

 

「「「個性把握テスト!!?」」」

 

「入学式とかガイダンスは!?」

 

「雄英高校は自由な校風が売り文句。当然、先生側にもそれは適応される。そんじゃエクス、お前中学の時ソフトボール投何mだった」

 

「72mですね」

 

「..チッ」

 

 

トゲトゲの少年に舌打ちされた..こわぁ...

 

 

「んじゃ、個性使ってやってみろ、円から出なきゃ何やってもいいぞ 」

 

「了解でーす」

 

 

ボールをもらい、円の中心に立つ。息を整えて個性を発動させた。

 

 

「エェェェェェックス!!」

 

 

いつものように個性を発動させると、腕が青白く光だし、表面に稲妻のようなエネルギーが走る。そのエネルギーをボールに流しながらボールを全力で投げると、その風圧によって周りに土埃が起こり、当たり一体が覆われた。

 

土埃が晴れた頃、相澤が持っていた記録系を皆に見せた。

 

 

「1076m!?すげぇな!個性使えるってめっちゃ面白そうじゃん!!」

 

 

先程話しかけてきた切島さんが大声でそう言うと、相澤の表情が変わった。

 

 

「面白そう...か、ヒーローになるための3年間、君たちはそんな腹づもりで過ごすのかい?」

 

 

声のトーンがさがり、全員に緊張が走る。

 

 

「よし、トータル記録最下位のものは除籍処分にしよう。」

 

「「「はあああぁぁ!?」」」

 

 

クラスに絶叫が起こり、先生に抗議するものも現れた。その中をかいくぐって元の場所に戻り、アルスさんの隣に座った

 

 

「改めてこれから3年間よろしくお願いしますね、アルスさん」

 

 

聞けば雄英高校にはクラス替えというものが無いらしいので、長い付き合いになるであろうアルスさんに挨拶をして見たのだが、何やら驚いた情報を浮かべ、すぐに呆れた顔へと変わった

 

 

「それはいいけどさぁ...エクス先輩ちゃんと聞いてた?最下位は除籍なんだよ?」

 

「もちろん聞いてましたけど、俺やアルスさんはあんま関係ないじゃないですか、あんなすごい個性なんですから。」

 

 

当然だ。この英雄の走り(本気では無い)を追い越せるだけの力があるのだ。上位に入り込めるかはともかく、最下位になんてなるわけが無い

 

 

「はぁ..能天気だなぁ..まあ、確かに緊張してパフォーマンスを発揮できないよりも、肩の力抜いて頑張った方がいいよね。んじゃこちらこそよろしくね。エビ先輩。」

 

呆れた目は変わったものを見る目に変わっていた。講義したい気持ちはあるが、その中の好意のようなものも感じれたため許そう。だがそれよりも...

 

「....えっ?今なんて?」

 

「エクス・アルビオだから略してエビじゃん、あ!エビオの方いいかも?」

 

「こいつ!!あーもー覚悟しろよ?!そのうちヴォゴヴォゴにしてやるからな!?」

 

「ヴォゴヴォゴww」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

第1種目 50m走

 

 

【アルス】

 

「『スピーダー』」

 

アルスはスピードの補助魔法を唱えてスタートラインに立つ。ちなみに中学の記録は9秒13だった。

 

「5秒41!!」

 

「グシ!」

 

それがほぼ半分にまで縮まってアルスはご機嫌であった。

 

 

【エクス】

 

先程のエネルギーを全身に行き渡らせ、少し足に集中させる。

 

 

「3秒48!」

 

 

中学の時は6秒49。こちらも約半分まで縮まった。

 

 

「ところでアルスさん、グシ!ってなんですか?」

 

「はあ?そんなの言ってねぇよ!」

 

 

 

第2種目 握力

 

 

【アルス】

 

「ふんぎゅあ''ぁ''!!」

 

 

記録28kgw。ちなみに中学は19kgw。今回の記録は『パワード』を使ってこの記録である。

 

 

「wwwwアルスさんザッコwww」

 

「うるせぇよお''ぉ''!!」

 

 

【エクス】

 

「バグれ!!!」

 

 

記録138kgw。中学では54kgw。

 

 

 

第3種目 立ち幅跳び

 

 

【アルス】

 

「『フリー グラヴィティ』!!」

 

魔法を唱えるとアルスは中に浮かび、自由に動き出した。

 

「ええぇぇぇ!?アルスさんすっご!?」

 

「おいアルス、その状態でどのくらい持つ」

 

「1時間くらいです。」

 

「じゃあ約∞で、早く降りてこい」

 

「グシ!」

 

 

【エクス】

 

「おっりゃあああああああ!!!」

 

記録、9m28cm

 

 

 

第4種目 反復横跳び

 

 

【アルス】

 

「あ''あ''あ''あ''ぁ''ぁ''ぁ''!!!」

 

 

記録67回。『スピーダー』を使ったが、細かい切り返しは経験がなかったのと、体力不足ためこの記録

 

 

【エクス】

 

「エエエェェェェェックス!!」

 

 

記録131回

 

 

 

第5種目 ボール投げ

 

 

【アルス】

 

アルスが円の中に経つと、彼女を中心にして風が集まってきた。集まった風はやがて、彼女の正面に、球体となってとどまっていった。

 

 

「『ウィンドブレイク』!!」

 

 

球状の風にボールを乗せ、一気に発散させると、ボールは目にも止まらぬ速さで飛んで行った。

 

 

「アルス・アルマル、記録702m。」

 

「....師匠あんなのもできたんですか?」

 

「あんなのって?あと師匠?」

 

「攻撃魔法みたいなやつかっこよすぎませんか!?師匠と呼ばせてください!!」

 

「えっ?お、おう?」

 

 

いまいち考えの読めないエクスに詰め寄られ、うっかり師匠呼びを許可してしまった。

 

 

 

【エクス】

 

最初にやったためなし。

記録1076m

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「おいどーいうことだコラ、説明しろ!デク!!」

 

 

見ればトゲトゲ頭の少年が、デクと呼ばれたもじゃもじゃ頭の少年につかみかかろうとしていたため、担任の相澤によって止められたいた。どうやら相澤先生はちゃんとプロのヒーローのようだ。少なくとも不審者ではない

 

 

この後、長座体前屈、上体起こし、長距離と測った。

エクスは長座体前屈以外平均よりもやや上の記録をたたき出した。

アルスはどれも平均よりも下を行く結果となっていた。主に体力不足が原因である。

 

 

「んじゃ、パパっと結果発表するぞ」

 

 

トータル最下位が除籍の結果を簡単に発表しようとしていた。アルスとエクスは両者とも、最下位はないと感じ取っていたが、このクラスから早くも除籍者が出てしまうと考えると、緊張せずにはいられなかった。

 

 

「ちなみに、除籍は嘘な。君らの可能性を引き出すための、合理的虚偽」

 

 

嘘らしい。その報告に周囲は1部を除いて驚いていた。

 

ちなみに結果はエクス1位、アルス 5位だった。

 

 

 

 

 

 

 




エクスの個性の見た目はデクと似た感じをイメージしてます。
道具にもパワーを流すことができ、性能が上昇します。
アルスは魔法です。MP的なものを消費しています。


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師匠と一緒に相手をヴォゴヴォゴにします!

戦闘描写ムズいんじゃあ...


 

初日が終了し生徒はそれぞれ下校して行った。

学校生活が始まったばかりだからか、 新しく出来た友達と帰る生徒は少なく、バラバラに帰っているものが多かった。

 

 

「いやあ、疲れましたねー」

 

「なんでナチュナルについてきてるわけ?」

 

 

そんな中エクスはアルスと帰っていた。

 

 

「えっ?ダメですか?」

 

「ダメじゃないけどさ、こんなグイグイ来るやつとは思ってなかっただけ」

 

「登校も一緒だったんですから帰りも一緒なのかと」

 

「言われてみればそうだけどさぁ...あれは一緒に来たって言えるの?...」

 

 

そのあとはお互いくだらないことを言い合いながら帰った。

 

ちなみに家は割と近かった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

2日目

 

 

「おらエビバディヘンズアップ!!盛り上がれ━━━!!」

 

(普通だ)

(普通だ)

(普通だ)

(くそつまんね )

(関係詞の場所が違うから4番!)

(パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンディシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ )

 

ヒーロー科とはいえ午前中は普通の授業もするらしい。プレゼントマイクの声がでかい以外は普通の高校でやっていることと余り変わらないだろう。

 

 

 

 

「師匠は何食べてるんですか?」

 

「ほんと自然に隣に座ってくるなあ..大トロだよ。」

 

「ふぐみたいな顔してるのに?」

 

「おいてめぇ表出ろ」

 

昼は大食堂で、ランチラッシュによる一流のメニューを安価でいただける。

 

 

そして午後。ヒーロー基礎学の時間がやってきた

ヒーロー基礎学の初回である今日の授業は、なんと早速2対2の戦闘訓練をするらしい、基礎訓練や座学もなしに始めるのかとの指摘も上がったが、先に戦闘訓練をすることで、その基礎を浮き彫りにするのが目的のようだ。

そして戦闘訓練のため、皆入学前に要望を出したコスチュームを着用していた

 

 

「エビ先輩のコスチュームなんだかごついね」

 

エクスのコスチュームは、赤と青のラインが入った、西洋風の鎧だった。

 

 

「師匠のはなんだか魔法使いみたいで似合ってて可愛らしいですよ」

 

アルスは黒と金を基調としたマントを羽織っており、フードには金色の飾りがついている。

なんの前触れもなく可愛らしいと言われたアルスは、顔を真っ赤にさせ、頭から湯気を登らせた。

 

 

「うぇっ!?あ、ありが...」「てか師匠顔でかいからフードもめちゃくちゃでかくていいっすね」

 

「...おい、てめぇーー今なんつった!!?あーもう知らねえよ!お前が対戦相手だったら絶対ぶっとばしてやるからな!!」

 

 

気分は反転、モッチーンと効果音が聞こえてきそうな勢いでアルスは激怒してしまった。そしてそのままエクスから離れていくアルス

 

 

「えぇ!?ちょっ、俺なんかしました!?ねぇ!師匠!!」

 

 

1人叫ぶがアルスは振り返ってくれず、1人反省会を始めるエクスだった。

 

 

訓練の内容は、凶悪ヴィランがアジトに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを回収する。

ヒーローの勝利条件は、ヴィランを捕まえるか、核兵器を回収すること。

ヴィラン側は、ヒーローを捕まえるか、制限時間まで核兵器を守り抜くこと。

お互いを捕まえる方法はテープを巻くこと、核兵器の回収はタッチをすれば良いとのことだった。

 

「それじゃあ早速チームを決めよう!このクジを引いてくれ!」

 

 

オールマイトはどこからか穴の空いた箱を取り出し、みなにクジを引かせていった。

 

 

「師匠何でした?」

 

「..........Fだったよ、先輩は?」

 

「マジっすか師匠!俺もFです!」

 

「うわぁ...」

 

 

顔を引きつらせるアルス

 

(.....まあ、戦闘面に関しては信用できるし、僕もサポートに回ればまず負けないでしょ)

 

先程無視すると決めたばかりであったが、仕方なく返事をする。

 

 

「はぁ、よろしくねエビ先輩」

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

クラス全員がクジを引き終わり、組み合わせも決まった。

 

第1試合、ヒーロー側Aチーム(緑谷、麗日ペア) ヴィラン側Dチーム(爆豪、飯田ペア)

 

第1試合の内容としては、お世辞にもいいものとはいえなかった。爆豪勝己の暴走、ヒーローチームの核兵器という設定を無視した攻撃方法などが目立った。

とはいえ、この戦闘訓練の目的からしてみれば、課題点が見つかるのはむしろ良い事と言えるだろう。

 

 

 

続く第2試合、ヒーロー側Bチーム(轟、障子ペア)

ヴィラン側Fチーム(エクス、アルスペア)

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ということで、作戦会議をしましょう」

 

「あい」

 

「ああ、通信機がギリ拾うくらいのなるべく小声で、障子さんの個性で聞き取られちゃうんで」

「(あい)」

 

ビルに入ったところで、5分間の作戦会議の時間が始まった。

 

 

「まず僕の個性から大まかに説明しますね。僕の個性は自分の体や道具にエネルギーを流して、流したものの性能を大幅にアップすることができます。体に流した場合は個性把握テストの時みたいになります。道具の場合は..

例えば剣ならより鋭く、盾なら丈夫に、飛び道具は飛距離が上がる等の、そのものの性能面が強化されるイメージです」

 

「シンプルだけどほんとに強いね。エネルギー切れとかはないの?」

 

「切れたことないです」

 

「うわぁ....」

 

 

まじかよお前という目でエクスの顔を見るアルス。

 

 

「師匠の個性も聞いていいですか?」

 

「えぇっと、僕の個性は魔法だね。サポート系ならパワードとかスピーダーみたいに肉体の補助ができるよ。制度はイマイチだけど探知もできる。あと戦闘用だけど...今んとこ火と雷と風が使えるよ」

 

「うわつっよ、えぐいて」

 

 

お前も人のこと言えないだろとめで訴えるエクス

 

 

「いちばん得意なのは雷だね。火は火力の制御がまだいまいちで、ここで使ったら一瞬でサウナみたいになっちゃうかも」

 

「なるほど..だいたいわかりました。基本的には僕が前衛やるんで師匠が後衛やってください。もし予定外のことが起こったら臨機応変に指示を出すので、聞いてもらってもいいですか?」

 

「あい。普段からそんくらい真面目だと助かるんだけどね」

 

 

作戦会議も終了したところで残り時間もわずかとなった。

 

 

「それじゃ、一丁やったりましょう師匠」

 

 

「わかったよ、エビ先輩」

 

 

《それでは、訓練開始!!》

 

 

耳元のイヤホンから、オールマイトの声が響いた。

 

______________その瞬間ビル全体が氷に包まれた!!

 

 

「.....緊急事態です師匠!!」

 

「はええなぁ!!!」

 

 

足元までガッチリと固定されており、動くのは非常に困難な状態となった。

 

 

「師匠自分のは溶かせますか?」

 

「炎はコントロールできてないんだって!」

 

「じゃあ僕が壊すので師匠は探知してて下さい!」

 

「えっ?り、了解!『サーチエネミー』!」

 

 

エクスは足にエネルギーを流し、無理やり氷を破壊、続けてアルスの近くの床を叩きその振動でアルスの氷を破壊した。

 

 

「1人2階に入ってきてて、もう1人はまだ外にいるよ!」

 

「わかりました!おそらく入ってきてるのが 轟さんでしょう。障子さんと一緒にいると広範囲を凍らせることは出来なそうなので」

 

 

エクスは冷静に戦況を分析し、作戦を立てた。

 

 

「師匠は3階に降りて、轟さんと戦って下さい」

 

「えぇっ!?無茶言うなよぉ!」

 

「時間稼ぎなら絶対できます、僕は先に下の障子さんを捉えてきます、そして後ろから挟み撃ちの形で轟さんを仕留めましょう」

 

「わ、わかったよ!...ってどうやって轟くんに合わないで障子くんのところに..」

 

 

アルスが言い終わる前に、エクスは窓から飛び降りていた。

 

 

「...無茶するなぁ」

 

 

アルスが3階に降り少し待っていると、轟がゆっくりと階段を上がってきた。

 

 

「アルス..だったか、なんで動けてるんだ?」

 

「エビ先輩、轟くんが来たよ、なるべく早くお願いね」

 

 

アルスはマイクに向かって小声で呟いた。

 

 

「無視か。まあいい、そんじゃ...行くぞ」

 

 

轟くがつぶやくと同時に、彼の足元から氷が生成され、アルスへと向かってきた。エクスがいない今、体のどこを凍らされても致命傷となってしまう。

 

 

「『ファイア』!!」

 

 

火属性魔法は調整ができていないが、轟の個性とならば相殺できると考えた。

アルスが手を突き出し唱えると、彼女の前に人の顔サイズの火の玉が生成される。火の玉はそのまま轟が作りた出した氷へと向かっていった。アルスの制御下を離れた火の玉はそのまま膨張していき、轟の作り出した氷を飲み込み、さらにその余波が轟へと襲いかかる

 

 

「っ、!」

 

 

轟は少し驚いた表情を受かべ、自身へ向かって来た炎を躱した。そのまま次の攻撃に移ろうとするが、アルスの姿が見当たらない

 

 

「どこに行きやがった?」

 

「ここだよ。『サンダー』!」

 

「なっ!?」

 

 

アルスと轟の距離は10mほどあったが、アルスは轟の後ろへと一瞬で移動していた。そしてそのまま放たれた加減された雷をくらい、轟は膝をつき倒れ込んでしまう

轟がアルスの背後を確認すると、魔法陣のようなものが床に書かれていた

 

 

「グシッ、初見殺しで悪いけど、決めさせて貰うね。このままテープを..」

 

「さ..せるかよ!!」

 

「ぅえ!?」

 

 

しかし寝たままの轟が放った氷によって、アルスは首から下を固定されてしまった。

 

 

「足だけだと攻撃できるかもしれねえからな。悪い。」

 

 

轟はアルスの雷によって麻痺して倒れているが、彼の氷は体の一部が何かに触れてさえいれば作り出せる。

動けないことを逆手にとり、不意打ちの形でアルスを凍らせることに成功していた。

 

痺れが弱くなってきた轟はゆっくりと立ち上がり、アルスにテープをつけようとする。

轟がアルスにテープを巻つけようとした瞬間フロアに慌ただしい足音が響いた

 

 

「師匠!無事で...ブッ、何してるんですか師匠、頭だけ出してw、真面目に訓練してるんですから巫山戯ないでくださいよ!」

 

 

階段から上がってきたエクスが顔から下を氷で固定されたアルスを見て吹き出していた。

 

 

「そっくりそのまま返してやるよクソ野郎ぅ!!来るのが遅いんだよぉ!!」

 

「だいぶ頑張りましたよ?!師匠がやられるのが早すぎるんじゃないですか!」

 

「いい加減うるせぇぞお前ら!!」

 

 

轟が怒り気味で氷を放ってきた。エクスには氷を防ぐ手段はないと轟は思っている。しかしエクスは

 

 

「英雄パンチ!!」

 

 

と叫びながら、迫ってくる氷に飛び蹴りをかました。

飛び蹴りが当たった衝撃で、轟の生み出した氷は全て粉々に砕け散っていた

 

 

「「はあ!?」」

 

 

驚きを隠せないアルスと轟を無視し、エクスは轟に接近、テープを巻いた

 

 

「っしゃあ!」

 

 

1人ガッツポーズを決め込むエクス。訓練はFチームの勝利で終わった

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

時は遡り、エクス視点

 

 

「こんばんエエエェェェェェックス!!!」

 

「んな!?」

 

 

外で待っていた障子の頭上から、手をクロスされたエクスが降ってきていた

 

 

「なぜ上から!?..っ、!!」

 

 

困惑しながらも、エクスの落下地点から回避することに成功した障子。先程自分がいた地点に人型の穴が空いていた。

 

 

「...大丈夫なのか?」

 

 

と障子が覗きこんだ瞬間、穴からテープをもった手が出てきた。

 

 

「危なっ、」

 

 

驚いた障子は大きく体を仰け反ってしまう。するとエクスの手は方向を変え、障子の足を掴み、手前に引っ張った。

 

足元をすくわれた障子は後ろに倒れ混んでしまう。すかさずエクスは穴から飛び出し、障子を抑え込む

 

 

「はい、ゲームオーバーです」

 

 

障子が起き上がった時には、既に手にテープが巻かれていた。

 

 

「それじゃ戻んなきゃないので!」

 

「...何も出来ないまま瞬殺されてしまった」

 

 

ビルの入口前で、障子の1人事が悲しく響いた。

 

 

 

 



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英雄は学級委員にふさわしいと思いませんか?僕は思います。

エクス達の戦闘訓練が終わり、講評の時間、

 

 

「さて今回のベストはエクス少年だ!何故なら___」

 

「ビル全体が凍らされるという予想外の自体に陥った際の冷静な判断と、迅速且つ適切な作戦の組み立て、あとは純粋な戦闘力でしょうか、アルスさんは轟さんへの電撃が弱く拘束が不十分でした。轟さんは個性による制圧力が素晴らしかったものの、相手が対応していた場合を想定していなかったこと、障子さんは気の緩みが挙げられます。ただ、エクスさんの戦闘の際の真剣さのなさは気になりますわ」

 

 

(今回は聞く前に言われた...)

 

 

「ま..まあ、八百万少女の言ったように、アルス少女は適切な火力の調整を!轟少年と障子少年は不足の事態への想定が今回から学べる課題となるね!エクス少年は...もうちょっと真面目に戦おうか。それじゃあ次の試合に行こうか!」

 

 

そのまま授業は第3試合へと移った。第3試合のチームの準備時間中、エクスの元へアルスが近づいてきた

 

 

「...お疲れ、エビ先輩。」

 

「あ、お疲れ様です師匠、どうしたんですか?」

 

「思ったんだけどさ、エビ先輩僕より強いよね」

 

「当たり前じゃないですか、何言ってるんです?」

 

 

この発言にアルスはとても腹が立ったが、グッと怒りを抑えた

 

 

「だからさ、僕に戦い方を教えて欲しいんだよね」

 

「戦い方..ですか?師匠と俺じゃあ戦い方が違いすぎません?」

 

「確かに僕は中距離で戦うのが得意だけどさ、近接もできた方がいいと思うし、近寄られたら何もできないのは困るんだよね」

 

「なるほど...じゃあ明日の昼にでも訓練場みたいなのないか聞きに行きますか。俺にできることならなんでも手伝いますし」

 

「ありがと、エビ先輩」

 

 

いつもよりもしおらしいアルス。どうやら今回轟にやられてしまったのが、堪えているようだ

 

だがそこで腐らずに自分から行動できるのがアルスの良さだとエクスは思った

 

「...冷やしまんじゅう(ボソッ)」

 

「あ゛?」

 

それはそれとして煽るのは忘れない

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「お疲れさん!緑谷少年以外は大きな怪我もなし!初めての訓練にしちゃ、皆上出来だったぜ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせなくてはならないから!皆着替えて教室にお戻り!」

 

 

そう早口に告げると、オールマイトは走って行ってしまった。

 

 

 

更衣室にて、

 

「てかエビオ凄かったな!戦い方はあれだったけど、まじで強いじゃん!」

 

「俺もわけの分からないうちにやられてしまった。あの高さから落ちてきて無傷なところといい、一体どうなってるんだ?」

 

「てかアルスさんも凄かったよな!火出したり電気出したり、あと瞬間移動してたな!」

 

 

切島や上鳴、訓練で戦った障子などから口々に感想を告げられる。ここまで面と向かって褒められるとさすがのエクスでも少し恥ずかくなってくる。だが、そんなことよりも聞き捨てのならないワードがあった。

 

 

「ちょっと待って、今エビオって言いました?」

 

「ああ、アルスさんが言ってたの聞いてな!エクスより言いやすかったけど、まずかったか?」

 

「いや....別にいいですけど」

 

 

エクスは決めた。明日以降の訓練はとてもハードなものにすると。

 

 

その後はクラスへと戻り、訓練の反省会を行った。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

その晩、夜遅くにオールマイト自宅にて、オールマイトの数少ない友達である塚内から電話がかかってきた。

 

 

「塚内くん!どうしたんだいこんな時間に電話なんて!....もしかしてなにかあったのかい?」

 

「あぁ...嫌なお知らせというか..君の意見を聞きたいんだ。...ここ最近、刑務所に囚われているヴィランの個性が無くなる事件が多発しているんだ」

 

「んなっ!?」

 

「初めのうちは看守も相手にしていなかったんだけど、ある異形型個性のヴィランの見た目がただの人間になっていてね、調査したら、各地でヴィランの個性がなくなっていたんだ。それも凶悪な個性を中心にね....俺はこれをオールフォーワン絡みの事件として考えているんだけど、どう思う」

 

 

その知らせはオールマイトにとって、想定していた何倍も嫌な知らせだった。オールフォーワンは他人の個性を奪うことができる、個性が無くなった被害が出ているのならば、奴の犯行で間違いは無いはずだ...だが、

 

 

「奴の犯行である可能性は高い...だが、奴が今更そんな大々的に個性を集めるとは考えづらと思う、自ら目立つような行動は避けるはずだ....考えたくはないが、オールフォーワンと同じような、個性を奪うことができる存在がいることを考えた方がいいかもしれない..」

 

「はぁ、できることなら考えたくなかったな。急に電話してすまなかった、また進展があったら逐一連絡する」

 

 

彼はそう告げると電話を切ってしまった。

 

 

「警戒を...強めなくては...」

 

 

その日、オールマイトは寝付くことができなかった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「...エビ先輩、あの人混みはなんだろ」

 

 

朝、エクスとアルスが登校していると、雄英高校の校門に、人だかりができていた。

 

 

「マスコミとかですかね、カメラ持ってるし」

 

 

見れば、クラスメイトの何名かがマスコミに捕まっていた。

 

 

「えぇー...めんどくせぇなぁ...」

 

「よし、師匠がまず前に行ってマスコミを引き付けて下さい、俺はその隙に行くので」

 

「お前が先いけよぉー、弟子は師匠を守るものだろうがよぉ」

 

「いやいや、師匠が弟子を守らないと、てか時間なくなってきたんで行きましょ」

 

 

仕方なく人混みを突っ切ることにした。

 

 

「あの!オールマイトの授業はどんな感じですか?」

 

 

マスコミのひとりがアルスにマイクを向ける

 

 

「うぇっ、えっと、あの..えっ!?」「まだオールマイトの授業を受けてないのでわかんないです。急いでるので避けてもらっていいですか」

 

 

マイクを向けられているアルスの前に体を入れ、適当な嘘をついて質問を終わらせた。

エクスはアルスの腕を掴み、マスコミの群れを多少無理やりつき進んで中へと入っていった

 

 

「あ、ありがと..」

 

 

アルスは少し顔を赤くしながらエクスへと感謝の言葉を告げた

 

 

「別にいいですよ、今度焼肉でも奢ってください」

 

「嫌に決まってるだろ、対価に見合ってねぇよ」

 

 

クラスに入ると、皆校門前のマスコミについて和気あいあいと話していた。爆豪だけは不機嫌そうにしていたが。

 

 

朝のホームルームの時間になり、相澤が昨日の戦闘訓練について、緑谷と爆豪に小言を挟んだ。

 

 

「さてHRの本題だが..今日は君たちに...

学級委員長を決めてもらう

 

 

「「「学校っぽいの来た━━━━━━━━!!!」」」

 

「委員長やりたいっす!!」

「リーダー!!やるやる!!」

「オイラのマニュフェスとは女子全員膝上30cm!!」

「ウチもやりたいス」

「僕のためにあるやつ☆」

 

 

相澤の発言に、クラスは大いに盛り上がる。普通、学級委員は、雑務を押し付けられ、みな嫌がることが多いが、ここはヒーロー科、集団を導く素質を鍛えられるため、やりたがる生徒が非常に多い。当然エクスとアルスも例外ではない。

 

 

「僕もやりたい!」

「みんな落ち着いて!オールイン!!」

 

 

「静粛にしたまえ!!」

 

 

しかしそんな中、飯田天哉が浮ついた場の空気を制するように発言した

 

 

「多を牽引する責任重大な仕事だ..!やりたいものがやれるものではないだろう!民主主義に乗っ取り、真のリーダーをみんなで決めるというのなら..これは投票で決めるべき議案!!」

 

 

正論を述べる飯田にみんなの目は集まっていた。

いや、正しく言うのなら飯田の頭の少し上。彼から突き出ているその手に。

 

 

「「「そびえ立ってんじゃねーか!!」」」

 

 

 

 

投票の結果、緑谷3票、八百万2票で、それぞれ委員長、副委員長が決まった。

 

エクスとアルスは当然のように自分に入れた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「ほら、師匠行きますよ」

 

「えっ?何?食堂?」

 

 

昼休みになり、弁当派以外のクラスメイトが食堂に移動している時、エクスがアルスに話しかけた。

 

 

「いや、昨日言ったじゃないですか、訓練できる場所聞きに行くって」

 

「あぁ!そうだったね。行こ行こ」

 

 

ようやくアルスも思い出し、職員室へと移動を始めた

 

 

「それにしてもマスコミまだいるね」

 

「彼らもあれが仕事なのは分かりますけど、他にもっとやることがあるんじゃないですかね。」

 

 

廊下の窓から外を見ると、朝のマスコミがまだ張っていた。なんとしてでもオールマイトの話を聞きたいようだ。

 

 

 

 

そのまま職員室へ向かっていると、いきなり警報が鳴り響いた。

 

 

『セキュリティ3が突破されました!生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください』

 

 

「うえぇっ!?エビ先輩!セキュリティ3って何!?」

 

「いやいや知りませんって!とにかく早く避難しないと!」

 

 

突然のことに驚き、慌てていると、正面から先生方が沢山走ってきた。その中には当然相澤先生もおり、

 

 

「エクスとアルスか!この警報は今朝のマスコミが入って来ただけだ。このことをみんなに伝えてくれ!」

 

 

と言い残し、外へと走って行ってしまった。

 

 

「え..えーと、僕達は戻ればいいのかな?」

 

 

アルスが落ち着きを取り戻し、エクスに訪ねるが、反応はない、エクスを見てみると、顎に手を当て何やら考え込んでいる。

 

 

「...エビ先輩?」

 

「師匠、ただのマスコミが、雄英に侵入って出来ますかね?ここの警備システムはオールマイトでも壊せないが売りだったはず.....師匠!訓練の時の、探知魔法を使って下さい!」

 

「えぇ!?わ、わかったよ!『サーチエネミー』!!」

 

 

「...どうですか?変なとこはありますか?」

 

「職員室に2人いる。先生たちはさっきみんな出ていったよね?」

 

「っ!師匠は先生を呼んできて下さい!俺が時間を稼ぎます!」

 

「エビ先輩!!?」

 

 

アルスに先生を呼ぶのを任せ、エクスは個性を使い走り出した。

 

 

 

 

 

職員室のドアを開けると、中には、全身手だらけの男と、黒いモヤのような男が何かを見ていた。

 

 

「...どうゆうことだ黒霧、なぜ生徒がここにいる?」

 

「なぜ避難していないのでしょう...困りましたね」

 

 

あからさまに主犯の二人を前に、エクスは躊躇なく個性を発動させ、2人に肉迫し、殴り掛かる。

 

 

「こいつ本当に生徒か?なんの躊躇もなく襲いかかってきやがった」

 

 

手の男は悪態をつきながら、エクスへ手を向ける。その手を見た途端エクスは全身に寒気が走り、殴り掛かる手を止め、近くの椅子を投げつけた。手の男はそれを躱して、突き出した手を下げた

 

 

「チッ勘のいいやつだ。黒霧、今日は帰るぞ。目的は達成した」

 

「よろしいので?」

 

「あぁ、今日じゃなくていい」

 

「分かりました」

 

 

モヤの男がつぶやくと、黒いモヤは大きくなり、2人を包み込みその姿を消した。

エクスが全身に嫌な汗を感じていると、廊下から慌ただしい足音が聞こえてきた。

 

 

「エクス!!無事か!!」

「エビ先輩!!」

 

 

担任である相澤と、アルスが息を切らしながら戻ってきた。エクスは今遭遇した2人の見た目と、話していた内容を相澤に告げた

 

このことはまだ内密にするよう告げられ、この日は終わった。

 

 

 




多機能フォームとやらに触ってみた。今後増えるかも


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クラスみんなでUSJに来ました!

戦闘シーン短くなりがち。どうしたらええねん


 

P.M0:50

雄英高校では5時間目が始まる時間であり、中でもヒーロー科では、ヒーロー基礎学が始まるチャイムでもある。

 

 

「今日のヒーロー基礎学だが...俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることとなった」

 

 

先日のヴィラン潜入事件は生徒には知らされていない。余計な不安を起こさないための措置であろう。

代わりに、ヒーロー基礎学につく先生を増やし、対策するようだ

 

 

「災害水難なんでもござれ、人命救助訓練だ」

 

 

人命救助というヒーロー活動をするには欠かせない授業を前に、クラスのみんなはやる気を燃やしていた

 

訓練場は離れた場所にあるらしく、この後すぐバスに乗り移動する。コスチュームの着用は自由らしい。

エクスは甲冑を着るとガシャガシャうるさいので着ていない。

 

 

「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に2列で並ぼう!!」

 

 

 

昨日の事件の後何故か緑谷に委員長を譲られ、非常口の名を手にした飯田がみなを仕切っていた。支持の通りに番号順にバスへ乗り込むが、対面で座るタイプの座席だったため、飯田の頑張りは無駄になってしまったようである

 

 

「こういうタイプだった、くそ!!!」

 

 

 

 

 

「私なんでも思ったことを行っちゃうの緑谷ちゃん。あなたの個性、オールマイトに似てる」

 

 

突然、緑谷の隣に座ったていた蛙水が切り出した

 

 

「そそそそそうかな!?僕はそのいや..」

 

「あとエビオちゃんの個性も似てるわ」

 

まあ、俺オールマイトの息子なので

 

 

 

一時バスを静寂が包み込む

 

 

 

 

 

 

「「「「「ええええぇぇぇぇ!!!!????」」」」」

 

 

 

 

 

 

その発言にクラス全員が驚く。あの爆豪でさえ口をあんぐり開けており、轟は目を見開いている。

 

 

「まぁ、嘘なんですけどね」

 

 

 

「「「「....はあああぁぁぁぁぁぁ!!?」」」」

 

 

 

「そんなみんな信じると思ってなかったんですけど...」

 

 

「わかりにくい嘘つくなよ!金髪だし紛らわしいわ!!」

 

 

今の一瞬でクラスの大半は疲れた。息を切らすものもいた。

 

 

「ま、まあエビオとか緑谷みたいな増強型のシンプルな個性はいいな!派手でできることが多い!俺の硬化は対人じゃつええけど地味なんだよなー」

 

「僕はかっこいいと思うよ!プロにも十分通用する個性だよ!」

 

「派手でつええって言ったら、轟と爆豪、あとアルスさんだな!」

 

「うぇっ!?」

 

 

突然名前を出されたアルスは変な声を出してしまったが、周りは気にせず続けた。

 

 

「アルスちゃんは可愛いし強いから絶対人気出るよ!」

 

「あっ、アリガトウゴザイマウ..」

 

 

アルスは面と向かって褒められていることに慣れていない。中学では友人があまり多くなく、陰のものとして過ごしていたため、同性に褒められても照れてしまう

 

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなそ」

 

「んだとコラ出すわ!!!」

 

「ホラ」

 

 

蛙水が爆豪をイジる。アルスは大変肝が据わっていると感じた。自分ならば、あの暴言厨をイジることは不可能である

 

 

「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげえよ!!!」

 

「てめぇのそのボキャブラリーはなんだコラ!!殺すぞ!!」

 

「もう着くぞいい加減にしとけよ...」

 

「「「ハイ!!」」」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「すっげー!!USJかよ!!? 」

 

 

本当にテーマパークのような広さの会場につき、広場に集まる。少し待つと、宇宙服のようなコスチュームを着た先生が現れた

 

 

「水難事故、土砂災害、火事..etc. あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も....

嘘と事故の災害(USJ)ルーム!!

 

 

(((USJだった!!!)))

 

 

「えー始める前にお小言を一つ二つ...三つ...四つ」

 

 

(((増えてく....)))

 

 

「皆さんご存知だとは思いますが ....」

 

 

内容を要約すると、皆人を殺せるような力を持っている。しかし、人を殺せるような力でも、人を助けるために使うことができる。今回の授業でそれを学ぼうとのことだった。

 

「そんじゃあ、早速...!!」

 

不意に広場の方へ目を向けると、中心になにやら黒い渦のようなものがあった。それは先日エクスが遭遇したヴィランの個性の情報と一致している

 

一かたまりになって動くな!

 

 

それを確認した相澤が叫んだ。

 

 

「13号!!生徒を守れ!!」

 

「なんだありゃ?もう始まってますよパターンか?」

 

「動くな!あれはヴィランだ!!!」

 

 

見れば噴水の前に黒いモヤができており、その中から、手の男を筆頭に、大量にヴィランが出てきていた。

 

 

「っ、先生!!」「わかってるエクス!!早く避難の準備を進めろ!」

 

 

「先生は1人で戦うんですか!?あの数じゃいくら個性を消すって言っても!!」

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん」

 

 

そう言うと相澤はヴィランに向かっていった。 相澤はゴーグルで目線を隠し、ヴィラン達を撹乱しながら倒していく

 

 

「すごい!!多対一こそ先生の得意分野だったんだ!」

 

「分析している場合じゃない!早く避難を!」

 

 

「させませんよ」

 

突然モヤのヴィランが目の前に現れ、退路を塞がれた

 

「初めまして、我々はヴィラン連合、僭越ながらこの度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは___

 

 

 

 

平和の象徴オールマイト『サンダー』にぃ!?

 

 

モヤの体に雷が流れ、セリフが中断される。

 

(((オールマイトサンダー?)))

 

 

「いいぞ師匠!もうちょい強めでも大丈夫そうですよ」

 

「あいよぉ!隙だらけなのを黙って見てる訳ないんだよなぁ!!」

 

 

当然雷を放ったのはアルスで、指示したのはエクスである。

 

 

「グッ..我々の目的『サンダー』はぁ!?..ぐ、平和の象徴『サンダー』おぉ!?い、いい加減しなさい!」

 

 

黒モヤはなかなか喋らせて貰えない。

 

 

「はぁ、はぁ、生徒とはいえ優秀な金の卵..『サン..』

 

 

 

散らして殺す!!

 

 

次の雷を放つ前に、キレたヴィランがモヤを広げ、A組を包み込んだ。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「...ここは?」

 

 

気がつくと嵐の中にいた。空には黒い雲がかかっておりゴロゴロと音を鳴らし、横殴りの雨が顔にかかってきた。

 

 

「あそこにさっきの広場が見えるので、USJの1部でしょう。おそらく、他のみんなも別の場所に飛ばされたと思います、ここに飛ばされたのは僕達だけみたいですね」

 

 

「おいおい、悠長にお話かぁ??」

 

 

声のする方へ目を向けると、10数人のヴィランがいた。

 

 

「ガキを殺すだけで金が貰えるなんて、こんないい仕事はねぇなぁ。」

 

「なんかすごい頭悪そうな人達が出てきましたよ師匠、掛け算とか出来なそうな顔してます。どうしましょう?」

 

「任せて!たまには僕もいいとこを見せてあげるからさ!」

 

「てめぇら舐めてんのか!!行くぞお前ら!!ぶっ殺してやる!」

 

 

バカにされ、舐められた発言にキレたヴィランがいっせいに襲いかかってきた。しかし、彼らが今対峙しているうちの1人は、雷魔法を得意とする魔法使いである

 

 

「こんな場所に僕を送ったのが間違いだったね!

 

 

 

 

『トールライトニング』!!

 

 

 

「「「ギャアアアアアアアアアア!!!!」」」

 

 

空から無数の雷が広範囲に降り注ぎ、地面を伝ってヴィランの体に流れていく。殺さない程度で強めの雷を放ったため、ヴィラン達は何も出来ずに地に伏した。

 

 

「どう?エビ先輩!僕だってこれくらい強いんだかr.....」

 

 

アルスが振り向くとそこには、ヴィランと同じように地に伏したエクスがいた。

 

 

「あっ.....スゥーーーーー.....ごめんね?」

 

 

アルスは気絶したエクスを担いで、ゆっくりと広場へ向かった

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

広場では相澤が多数のヴィランと戦っていた。

 

だが今戦っている相澤の姿はなく、ある1人の、脳みそがむき出しのヴィランに組み伏せられていた。

 

 

「対平和の象徴、改人、脳無」

 

 

倒れている相澤は血まみれで、もう戦えるようには見えなかった

 

 

「個性を消せる...素敵だけどなんてことはないね。圧倒的な力の前ではただの無個性だもの」

 

「がぁ...!!!」

 

 

脳無は小枝を折るかのように、相澤の腕の骨を潰した。

 

「死柄木弔...」

 

「黒霧、13号はやったのか?」

 

「行動不能にはできたものの、散らし損ねた生徒がおりまして....1名逃げられました」

 

 

「.....は?...はぁ━━━、お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ...さすがに何十人ものプロ相手じゃかなわない。今回はゲームオーバーだ。帰ろっか

 

 

 

 

 

 

 

けどもその前に、平和の象徴としての教示を、

へし折って帰ろう!

 

 

死柄木は一瞬にして、隠れていた緑谷たちに近づき、手を顔に伸ばした_____その時!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トウ!!」

 

 

横から飛んできた少女にドロップキックを食らい、死柄木はふっ飛ばされ、地面に転がっていた

 

 

「よくわかんないケド、あぶなかったのカナ?」

 

 

緑谷たちを助けたのは、角を生やした、カタコトの少女であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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こんにちファ!遊びに来ましタ!

感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます!!
モチベーションに直で繋がります!


 

 

「うぉい、亜人!あんま勝手なまねすんな!」

 

 

「アァ、ごめんなさいデビ様、デモ危険が危ない気がしテ」

 

 

先程まで誰もいなかった場所に、雄英高校では見た事のない2人が現れた。緑谷を助けてくれた少女は、頭に螺旋状の角を2本生やし、首と足に同じひし形の並んだ刺青のようなものが入っている

 

そして彼女の後ろから、コアラに角と羽が生えたような生き物が飛んできた

 

 

「おいおいおい、もうヒーローの増援が来たのか?」

 

「死柄木、この学校とこの地域にあんなヒーローはいません」

 

 

「おい亜人、いれいざーへっどってやつはどこにいるんだ?」

 

「えぇーっと...アレェ?さっきまで戦ってたらしいんですケド...」

 

 

死柄木と黒霧は、いきなり現れた2人を警戒するが、2人はまるで気にしていない。死柄木と黒霧を無視して、相澤を探しているようだった

 

 

アァー!?あんなところ二!踏まれちゃってますヨ!?」

 

「血だらけだけど...むしろ好都合かぁ?...よし、ボクが時間稼ぐから、亜人は回収してきて」

 

 

「まあいい、先生からも何も聞いてないんだ。おい脳無、あいつら殺せ」

 

 

死柄木に命じられた脳無が、ものすごい勢いで、色白の少女に襲いかかった。

 

 

「うぉ?!危ネェ!」

 

 

少女はすんでのところで、体制を低くし攻撃をかわした。焦りの言葉を吐いていたが、少女は獰猛な笑顔を浮かべていた

すると横にいたコアラっぽいヴィランが、上昇していき...

 

 

「異界の扉が〜開かれた〜」

 

 

コアラっぽいヴィランが宙を混ぜながら唱えると、空間がグニャリとねじ曲がり、重厚感のある扉が作られた。扉が開くと、中からこの世のものでは無い生き物達が現れ、黒霧と死柄木に襲いかかる

 

 

「おぉっ!じゃあボクも頑張っちゃうゾ〜!」

 

 

それを見た少女は楽しげに叫ぶと、メキメキという音と共に、脳無と同じくらいのサイズに巨大化した

 

 

「そぉい!!」

 

 

そして今度は逆に、少女から脳無へと襲いかかり、組合の形となる。ミチミチと肉が潰れる音が鈍く響き、彼女らの足下が陥没し始めた。

 

しばらく経つと、ドスンと、膝を着く音が聞こえた。

 

 

なんと、見れば膝をついたのは脳無の方であった。

死柄木がと黒霧が、ありえないと言いたげな顔で少女を見る。続けて少女は膝をついた脳無に何発も膝蹴りを入れた

 

 

「ガアアアアアアアアアアア!!」

 

 

すると脳無は叫びながら体を後ろへ逸らし、少女を投げ飛ばし、その方向へと走り始めた。そして壁に激突した少女にラッシュを叩き込む。

そのラッシュは少女を壁ごと破壊し続け、その揺れは離れた水辺にいる緑谷たちまで届いていた。

 

 

「ははっ、ざまあみやがれ」

 

 

死柄木はほくそ笑みながら殴られている少女を見た

 

 

しかし、あるタイミングで脳無のラッシュが止まった.....いや、止められていた。

脳無の拳は、白い手に掴まれている。

脳無を押し出しながら、少女は頭から垂れてきた血をぺろっとなめ、楽しげに笑う。

 

 

 

「そんじゃア、こっちのターン...ネ''!!!」

 

 

少女は掴んでいた手と反対の手を振りかぶり、脳無の顔面に叩き込んだ。肉と肉がぶつかる音がまるで太鼓のように辺りに響き渡り、脳無の頭は潰れていた

 

 

「んな!?」

 

「アァ!?やっちまっタ!?」

 

 

貫いた本人であるはずの少女は、咄嗟に手を引き抜き、後ろに下がった

 

 

「ヤバい、殺すのはダメなの二....」

 

 

倒れた脳無の腹を見て少女がうろたえていると、脳無の顔がグチュリと音を立て再生していく

 

 

「エェ?!」

 

「...そいつはなぁ、対オールマイトの特別兵器なんだよ、

オールマイトと同等の力に、超再生とショック吸収を併せ持っているんだ。そう簡単にやられるかよ、」

 

 

死柄木が、魔獣を塵にしながら説明した。しかしその声に余裕はなく、焦りの感情が窺えた

 

 

「超再生にショック吸収!?....めちゃくちゃ強イ!!デビ様!あれはどうせ悪いやつです!回収しましょウ!!」

 

「勝手にしたらぁ〜?」

 

 

目を輝かせる少女に対し、コアラっぽいヴィランはやる気なく返した。返事を聞いた少女は、ポケットから白い固形物(・・・・・)を取り出し、口に放り込んだ。

 

 

「何をする気だ?」

 

 

固形物を飲み込んだ少女は脳無を押し倒し、大きな手で脳無の顔を押さえつけた。

脳無は初めのうちは少女を殴るなどの激しい抵抗をしていたが、数秒もしないうちに動きが鈍くなり、10秒を数える頃にはもう動かなくなっていた。

 

気絶した脳無の体がビクッと震えると、脳無の体から白い固形物が何個か落ち、少女はそれを回収した

 

 

「....は?おい、なんで脳無がやられてるんだよ!あれは対オールマイト用の特別製じゃなかったのか!!?なんでどこも馬の骨かもわかんねえやつにやられてるんだよ!!!」

 

「フッフッフ、僕が使ったのは加熱の個性だヨ」

 

 

癇癪を起こし始めた死柄木に対し、少女は得意気に話し始めた

 

 

「この個性は触れた箇所の温度がどんどん上がっていくものでね、触れ続けたら一瞬で温度が上がるんダ!こいつは脳の温度を上げられて血管が広がり、血圧が下がって気絶したのサ!!ちゃんとお風呂でのぼせるくらいに調整したから安心してネ!」

 

 

幼い少女が自慢するように、楽しそうに説明を終えた少女は相澤がいた場所へ向かう

 

 

「....アレェ!?またいなくなってる?ナンデ!!?」

 

 

しかしそこには血溜まりのみが残り、相澤の姿はなかった

緑谷たちが戦いの隙に相澤を回収し、入口まで逃げていたのである

 

 

「ンー...まあいいカ、これさえあれば問題ないし.....デビ様!回収終わりましたヨ!」

 

「ん!んじゃもう早く帰ろう。急に駆り出したあいつに文句言ってやんなきゃないし、おい!終わったよ!早くしろ!

....よし。ではな〜」

 

 

コアラっぽいヴィランはそう言い残すと、突如現れた真っ黒な四角形に入って消えてしまった。少女たちを飲み込んだ黒い四角形が消えると、死柄木たちを襲っていた魔獣も消えてしまった

 

 

「.....くそがくそがくそが!!脳無がやられた!俺達も何もできなかった!なんなんだよあいつらは!!」

 

「死柄木、1度脳無を回収して帰りましょう、このままでは_____」

 

 

突然、USJの入口の扉が開き、頼もしい声が響き渡った

 

 

「もう大丈夫、私が来た!!!!」

 

 

生徒たちにとっては最高の、ヴィランにとっては最悪の形でオールマイトが到着した

 

 

「......帰るぞ。脳無を回収する時間も無さそうだ」

 

「.....わかりました」

 

 

主犯である死柄木と黒霧はオールマイトを見てすぐに帰って行った。

 

 

「あれぇ?!校長先生を振り切って、急いで来たんだけど...」

 

「オールマイト!まだ向こうにヴィランと皆が!」

 

「わ、わかった!今行こう!」

 

 

肩透かしをくらった気分のオールマイトは、すぐに気持ちを切り替え、USJに残っているヴィランを倒し、生徒を救助した

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「おい、話が違うぞ先生」

 

 

どこかのバーにて、死柄木は小さな画面に文句をつけていた。

 

 

『違わないさ。にしても早かったね。オールマイトはそんなに強かったかい?』

 

「違う、オールマイトじゃない、わけのわからないやつらに横槍をさされたんだ!脳無もそいつらにやられた!」

 

『横槍...確かなのかい?黒霧』

 

「確かです。角を生やした異形1人に脳無は負けました」

 

『なんと!?オールマイト以外にやられたのか!?そんなばかな?!あれは最高傑作じゃぞ!?』

 

『まあ悔やんでたってしかないさ、今回だって無駄じゃない!精鋭を集めよう!我々は自由に動けない、だから!君のようなシンボルが必要なんだ 。死柄木弔、次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』

 

 

画面先の男はそう言い残し、通信が切れた。

 

 

 

 

 

 

「にしても、あの脳無を倒せるものがいるなんて...」

 

「はぁ...十中八九、忌々しい彼が束ねている

虚空教だろう

 

「虚空教?なんですかそれは?」

 

「ドクターには話してなかったっけ?今から十数年ほど前にできた宗教団体だよ。最近は動きを見せてなかったけど、ここに来て動き出すとはね....」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

「おらぁ!帰ったぞ教祖!!任務明けに駆り出しやがってぇ!さっさと貢ぎ物をもってこい!!」

 

「教祖に対する態度じゃねえんだよなあ、まあおつかれ、例のものは回収できた?」

 

「ハイ!ここにありまス!」

 

 

少女が手を挙げ、ポケットから小瓶を取り出す。その中には、相澤の血液が入ってた

 

 

「そんでその場にいたヴィランの1人から個性も回収できましタ!」

 

 

少女が別のポケットからも白い固形物を取り出し、教祖に渡す

 

 

「おぉっ!大手柄じゃん、あれ?でびるは何してたの?レヴィちゃんが全部やってない?」

 

「い、いやぁ??僕だって足止めとかちゃんとしたよ?」

 

「でも足止めしたのってでびるの魔獣でしょ?でびる本人は何もしてないの?」

 

「う、うるせえよ!おめぇだってなんもしてねえだろうが!」

 

 

完璧な逆ギレを披露するでびるに、教祖が苦笑を浮かべていると廊下から足音が聞こえてくる

 

 

「回収成功したんですか?さすがですねぇ〜、早速研究に使わせていただきますよ!」

 

 

ドアを開け入ってきたのは、白衣を身に纏い、胸ポケットに謎の生き物を入れた青髪の男だった。手には火のついたタバコが握られている

 

 

「あれ?レオスさんがわざわざ来るなんて珍しいですね」

 

「ちょうどヤニ入れてたので。じゃ、これは預かりますね」

 

 

レオスは相澤の血液をポケットに入れ、さっさと部屋から出ていった。

 

 

「それじゃ2人にはしばらく休みをあげようかな。なにか要望とかはある?」

 

「アイスか酒」

 

「いっつもそれだな。レヴィちゃんは?」

 

「エェっとボクはねぇ...アッ!

 

 

 

 

 

 

 

雄英体育祭を見に行きタイ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




レヴィ・エリファ
個性:亜人

人の数倍の身体能力に加え、体を巨大化させることができる。


でびでび・でびる
個性:悪魔

悪魔っぽいことが出来る。闇をモチーフにしたエネルギー弾を飛ばしたり、異界の扉から魔獣を呼び出せたりする


レオス・ヴィンセント
個性:???


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僕は思いませんけど


俺は見逃さなかった。一瞬だけ性能が3倍になっていたのを。(評価バー赤くなってました、本当にありがとうございます)


ヴィランに襲撃された翌日は急遽臨時休校となり、クラスは不安な夜を過ごした。

幸い、相澤以外大きな怪我をしたものはなく、すぐに登校が再開された。

 

 

「師匠」

 

「あっ!みんなおはよう、昨日は大丈夫だった?」

 

「師匠」

 

「昨日不安でちゃんと休めなくてさー、相澤先生大丈夫かなぁ?しばらく学校来れなかったりして」

 

「師匠」

 

「み、みんなどうして離れていくの?お茶子ちゃん!?梅雨ちゃn」

 

「師匠」

 

 

だんだん大きくなる声とは反対に、クラスは静かになっていくクラスの視線は、青筋を浮かべアルスにゆっくり近づくエクスと、逃げられないことを悟りあたふたしだすアルスに向けられていた

 

 

「....なにか俺に言うことは?」

 

「....本当にすみませんでした」

 

 

アルスは潔く土下座をした。

エクスはあの後保健室で目を覚ました。聞けばもう全ては終わっており、みんな帰ったあとだったという。

 

 

「え、えーと2人とも、席につきたまえ...朝のHRがまじまるよ」

 

 

学級委員である飯田が、普段よりも少し控えめに注意してきた。

エクスとアルスが席につくと、入口のドアがゆっくりとスライドした

 

 

「お早う」

 

「相澤先生復帰早えええええ!!!」

 

そこには全身に包帯をまかれ、足取りが不安定ながらも、しっかりとみんなに挨拶をする相澤先生がいた

 

「先生!無事だったのですね!!」

 

「いやどう見ても無事ではないだろあれ」

 

「俺のことはどうでもいい。何より_____

 

 

 

 

まだ戦いは終わってねぇ」

 

 

相澤のその一言でクラスは静まり返った。相澤の不安を煽る一言に、みな先日の出来事を思い出しているようだった

 

 

「雄英体育祭が迫っている!」

 

 

「「「くそ学校っぽいの来たああああああああ!!!」」」

 

雄英体育祭、雄英高校において毎年行われる恒例行事にして、かつて個性が世間に浸透する前に行われていた、オリンピックに匹敵する程の一大イベントである。

 

ヴィランに侵入されたばかりで開催できるのか?といった声が上がるが、相澤曰く、開催することで雄英の警備体制が磐石であるとアピールする目的もあるらしい。

 

そして何より、この雄英体育祭は、後に控える職場体験の体験先の判断材料となるため 、開催しないメリットよりも、デメリットの方が大きいのである

 

 

「あとエクス、選手宣誓はお前だから、考えとけよ」

 

「えぇ...」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

放課後皆が帰る準備をしていると、何やらクラスの前が騒がしくなっていた。

 

 

「えぇ何怖っ!?師匠先に行ってください、後ろは僕が守るんで」

 

「何言ってんだよお前が先に行って師匠を守れよぉ」

 

「てか何しに来たんだよ、出れねえじゃん」

 

足元を見れば峰田が困った表情で呟いていた

 

 

「敵情視察だろザコ」

 

 

するといきなり後ろから爆豪が暴言を吐きながら出てきた。 面白いから何かを訴える顔でこちらを見ないで欲しい

 

 

「ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だもんな、体育祭の前に見て起きてえんだろ

 

 

 

 

意味ねえからどけ、モブ共」

 

 

「ほんとに発言がこの前の三下みたいですね」

 

「あぁ!?なんだとクソ甲冑コラ!!」

 

「って師匠が言ってました」

 

「あぁ!?」

 

「言ってねぇよ!?」

 

 

キレ散らかす爆豪の前に、1人の少年が人混みの中から出てきた。

 

「どんなもんかと見に来てみれば、ヒーロー科はこんなんばっかなのかい?」

 

「あぁ!?」

 

「爆豪さんあぁ!?しか言ってなくないですか?」

 

「あぁ...うるせぇぞゴラ!!」

 

 

「こういうの見ちゃうと幻滅するなぁ、」

 

 

先程出てきた少年が、爆豪に向けて呟いた

 

 

「普通科とか他の科って、ヒーロー科落ちたから入ったって奴結構いるんだ。知ってた?体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科への編入も検討してもらえるらしいよ。....その逆もまた然りらしいよ...」

 

「らしいですよ、気を付けてくださいね師匠」

 

「エビ先輩こそ、体育祭中の流れ弾に気をつけなよ」

 

 

「...敵情視察?少なくとも普通科は、調子乗ってると足元ごっそり掬っちゃうぞっつ_________

宣戦布告しに来たつもり」

 

「そうですか、じゃあ頑張ってください。師匠行きますよ、....皆さん避けてもらっていいですか?」

 

 

エクスは何事も無かったかのように少年の横を通り抜け、人混みを抜けようとする

 

 

「おいお前、馬鹿にしてんだろ、普通科にそんなことできるけないって」

 

 

少年は激昂しエクスの肩を掴んだ。周りが慌てて少年を止めようとする中、エクスは真顔で振り返った

 

 

 

「え?いや応援してますよ?ヒーロー科に転入できるかもしれないんですよね?ヒーロー科が増えたら、プロヒーローになれる可能性のある人が増えて、苦しむ人が減るじゃないですか。だから僕は応援してますよ」

 

 

エクスは少年の目をじっと見つめ、そう答えた。

少年はハッとした表情を浮かべ、肩を掴んでいた手を離し、頭を搔きはじめた

 

 

「...あんた名前は?」

 

「エクス・アルビオです。皆エビオとか呼んでるんで好きに呼んでください」

 

「じゃあエビオ、俺は必ずお前と同じ場所に立つ。だから間違ってもヒーロー科から落ちたりすんなよ」

 

 

宣戦布告した時の、暗い表情とは違い、軽く晴れやかな表情を浮かべた少年はエクスにそう宣言した

 

 

「大丈夫、僕最強だから」

 

 

エクスは謎のポーズを決めながら少年に答え、アルスを連れてその場を去った。

 

 

 

 

 

 

「まあ先輩僕にやられてるけどね」

 

「え?しばきますよ?」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

あっという間に2週間はすぎ、迎えた雄英体育祭当日

 

一年A組の控え室では、皆それぞれ精神を統一していたり、周りの人とおしゃべりをしていたりと、それぞれの時間の過ごし方で開会式を待っていた

 

そんな中、轟が緑谷に近づいていった

 

「緑谷」

 

「轟くん....何?」

 

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う。」

 

「へ!?うっ、うん..」

 

「おまえ、オールマイトに目ぇかけられてるよな.....お前には勝つぞ」

 

 

宣戦布告である。大体2週間前にも同じような光景を見た気がする。

 

 

「.....師匠、実力は俺の方が上です」

 

「は?」

 

「師匠だけには勝ちます」

 

「ぼくもお前だけはやってやるからな」

 

 

緑谷が轟の宣戦布告に答えている間。暇だったエクスが、雑にアルスに絡んだ

 

 

「1年A組!そろそろ入場の時間だ!移動するぞ!」

 

 

 

 

 

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!ヒーロー科!!1年!!!

 

 

A組だろおぉぉぉ!!!?』

 

 

 

プレゼント・マイクによる実況を受け、会場のボルテージは1段階上昇する。周囲360°からの声援を全身に受け、言語化できない高揚感が体を包み込んだ。

 

 

『B組に続いて普通科C・D・E組...!!サポート科F・G・H組も来たぞー!!!そして経営科.....』

 

 

1年の入場が終わり、整列が終了したタイミングで主審である18禁ヒーローミッドナイトが登場した

 

 

「選手宣誓!!1-Aエクス・アルビオ!!」

 

 

ミッドナイトに呼ばれ、エクスが壇上へと上がって行く

 

「エビオ何話すと思う?」

 

「普通の選手宣誓じゃねのか?」

 

 

『ヒーロー科以外の人でこの体育祭にやる気を出している人は何人くらいいますか?多分数えるくらいしかいないと思いますけど』

 

なんの脈絡もなく、唐突にエクスは宣誓を始めた。それも、ヒーロー科以外の生徒を煽るような始まり方で

 

『私たちヒーロー科にとってこの体育祭は、職場体験に繋がる大切な行事です。逆に言えば、この体育祭はヒーロー科のためにあると言っていい』

 

既に会場のものは皆エクスを見ていた。中でもヒーロー科以外の生徒の多くはエクスのことを睨んでおり、ヒーロー科のものも、エクスが言っている内容を許すことができないものが大半だった。

 

 

『この体育祭において、主役私達はヒーロー科で、それ以外の皆さんは、私達を目立たせるための捨て石で、私達の活躍のための脇役で、私達をプロの世界に繋げるための引き立て役です。

...そう思いませんか?

 

 

普段と変わらぬ調子でヒーロー科以外をバカにするエクスに、会場ではブーイングが鳴り響き、多くの生徒たちがエクスの発言に憤っていた。エクスは会場の全ての者が自分の発言を聞くようになったタイミングで言い放った

 

 

 

『僕は思いません』

 

 

その一言で会場は静寂に包まれた。エクスは真剣な表情で続けた

 

『普通科の方の大半の生徒は、ヒーロー科から落ちた人だと聞いています。そんな皆さんに聞きたい。

もうヒーローになるのを諦めてしまったんですか?たった一度の失敗ぐらいで諦められるくらいの夢だったのなら、なぜ雄英に入ったんですか?』

 

もうエクスを睨むものも、ブーイングをするものもいなくなっており、皆エクスの言葉に集中するようになっていた

 

『....この体育祭の結果次第では、ヒーロー科への編入が検討されるようです。雄英高校に合格するまで努力できた皆さんなら、ここで踏ん張るくらいわけがない、チャンスを掴めないわけがないはずです。

ヒーローを本気で目指していたものならば!これくらいの壁を越えられないはずがない!

先生方の目に留まるよう醜くていいから足掻いてください

皆さんはまだ、ヒーローになれる!』

 

 

奇しくもオールマイトが緑谷にかけたのと同じ言葉に、普通科の生徒は拳をあげ叫んだ。入試に落ちた苦しみを、先程のエクスに対する怒りを、諦めきれないその夢を拳に乗せ、叫んだ

 

 

『そしてサポート科や経営科の皆さん、自分は関係ないと思ってませんか?皆さんだってヒーローなんです。ヴィランを倒す者がヒーローじゃない、困っている人を助けるのがヒーローです。サポート科の皆さんは、開発した物で人々を、経営科の皆さんだって、会社や事務所を通して人々を助けるヒーローです。

みんな誰かのヒーローになれるんです

 

 

その言葉に、サポート科と経営科の生徒の目に闘志が宿る

 

 

『そしてこれは体育祭、お祭りです。みんなで楽しまなきゃそんでしょ?みんなでぶつかりあって、楽しんで、盛り上げて行きましょう!!!!

 

 

以上を宣誓とさせていただきます。選手代表1-Aエクス・アルビオ』

 

 

エクスの言葉に会場の心は一つとなり、会場は熱狂に包まれた。

 

 

 

 

雄英高校体育祭、スタート

 



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障害物競走は大得意なんですよ、やったことないけど



お気に入り登録と、評価ありがとうございます!
大変励みになります!


第1種目の障害物競走の会場に移動していると、アルスがエクスに小走りで近寄っていった

 

 

「先輩ってあんな熱いこと言えたんだね。好感度稼ぎ?」

 

「失礼な。あれは割と本心ですよ。ヒーローが多ければ、助かる人も増えるでしょうし..」

 

 

アルスには、そう呟くエクスの顔に、影がかかっているように感じた

 

「...先輩なにかあっ」「あっ!あれがゲート......師匠!ちょっと相談があるんですけど..」

 

 

相談をアルスに持ちかけるエクスの顔にはもう影がなく、いたずらっ子のような悪い笑みを浮かべていた

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

『スタ━━━━━━━━━━━━━━ト!!!!』

 

プレゼント・マイクの声と同時にゲートが開いた。生徒達は一斉にゲートに走り出す

 

 

『さーて実況開始していくぜ!Are you ready?ミイラマン!』

 

『無理やり呼んだんだろうが...』

 

プレゼント・マイクと相澤による実況が始まったその時、

 

 

「痛ってえぇぇぇぇ!」

 

「なんだこれ!?凍った!?」

 

 

スタート地点の地面一体が凍りついた。犯人は間違いなく轟だろう。しかし、このことを予期していたヒーロー科の生徒達等は各々の方法でこれを回避した

 

 

 

 

「クラス連中は当然として、思ったより避けられたな。.....!!」

 

 

その瞬間、凍った生徒達の上から声が聞こえて来た

 

 

「危なかった!!師匠と組んでなきゃ終わってた!ラッキー!!!」

 

「いいから前見ろよぉ!!あと絶対離すなよ!?」

 

 

アルスを小脇に抱えたエクスが、生徒の頭上をものすごい速さで飛んできていた

 

 

『なんだありゃー!!?あんなのアリかよ!?』

 

『別に誰かと組むのは反則じゃない。なんでもありって言ってたろ』

 

 

 

時は少し遡り

 

 

 

「師匠の飛ぶ魔法って俺にかけれますか?」

 

「えっやだよ?確かにできなくはないけど、1人にしかかけれないから、えび先輩にかけたら僕が使えなくなっちゃう」

 

「いや!それで大丈夫です、あそこをよく見てください師匠」

 

そう言ってエクスはゲートの方を指さした

 

 

「横幅がめちゃくちゃ狭いので前が詰まると思いませんか?」

 

「だからそれを避けるために僕の魔法を使えって?そしたら僕が行けなくなっちゃうだろ」

 

 

エクスはアルスの顔の前に指をもっていき、左右に振る

 

「チッチッチ、話は最後まで聞くものですよ師匠、師匠が1人で個性を使った場合、浮くだけで前に進めない、もしくは余計に魔法を使わなければいけない。浮く魔法は

魔力消費が激しいらしいじゃないですか。俺も1人で飛び越え用よとしたら、体が重くて途中で落下します。そこで、協力ですよ師匠」

 

「協力?」

 

「師匠は俺に魔法をかけて、俺は師匠を抱えます。すると俺は自分の半分以下の重さで飛べば良くなって、確実に飛び越えることができます。師匠はじっとしているだけで集団を超えれます。どうですか?」

 

「...えび先輩って頭良かったんだね。それでいこう」

 

 

2人は集団の最後尾で、悪い顔をしながら握手を交わした

 

 

 

 

 

時は戻り、集団の最前線にエクスとアルスは着地する

 

 

 

「大成功だね先輩!じゃあここからは別々で頑張ろ!」

 

「.....」

 

「えび先輩?もうはなしていいよ?なんか恥ずかしくなってきたし」

 

「.....」

 

「先輩?」

 

 

しかしエクスはアルスを離さないまま走り続けた

 

 

「..師匠の魔法って便利ですよね、ほんと」

 

「えび先輩?さっきより抱える力が強いんだけど!?まさかこのまま行くの!!?」

 

「役割分担です。俺が走るんで師匠はサポートしてください。それで1位なれます」

 

「いやだー!!てかよく考えたらこれ放送されてんじゃん!僕の親だって見てるんだぞ!?」

 

 

アルスはエクスの脇に抱えられたままじたばたと抵抗するが、楽して勝てる方法を見つけたエクスは離そうとしなかった

 

「おいエビオてめぇ!羨ましいことしてんじゃねえぞ!!喰らえオイラの必殺...ブベッ!?」

 

エクス達にもぎもぎを投げつけようとした峰田が、巨大なアームで横に吹っ飛ばされた

 

 

『さぁいきなり障害物だ!!まずは手始めに、 第一関門!!ロボ・インフェルノ!!』

 

「入試の時の0ポイントヴィランじゃねぇか!?」

 

「多すぎて通れねえ!?」

 

 

目の前の広場に、 巨大仮想ヴィランが所狭しと並べられていた

 

 

「師匠!前の2体の動きを一瞬だけ止めることって出来ますか?!なるべく派手に!! 」

 

「あぁもう分かったよ!!『フェイクサンダー』!!」

 

 

やけくそになったアルスが、正面を塞いでいた2体のロボに魔法を放つ。アルスの放った雷撃は、2体のロボの体を激しい光と音を出しながら包み込み、その動きを停止させた

 

 

「おいあそこの2体が止まったぞ!!」

 

「あそこなら通れる!!」

 

 

後ろを走っていた何名かが、エクスとアルスの後ろを走り出す

 

 

「今の魔法は?フェイクってついてますけど」

 

「昔雷の出力をあげようとしてた時に作った失敗作の魔法。見た目と音の出力だけ強くて、威力が弱すぎたんだよね、電子機器を一瞬止める程度の威力しかないんだよ」

 

 

「んな!?」

 

「へぶしっ!!」

 

 

アルスが語り終わると、動きを止めていた2体は再び動き出し、後続の妨害を再開した

 

 

『1-A エビマルペア!攻略と妨害を一度に!しかも誘い込むような方法で!こいつはシヴィー!!』

 

『エビマルってなんだ、雑にコンビ名をつけてやるな、広まったらどうすんだ』

 

『それに同じく1-A轟も、後続の妨害をしながら突破!おいおいイレイザー、お前のクラスどうなってんだ?どんな教え方したらあんなのが多くなるんだ!?』

『俺は知らん、あいつらが勝手に高めあってるだけだ』

 

 

「師匠、酔いませんか?酔わないならもっと速度あげてもいいですか?」

 

「全然平気だよ、確かに走らなくていいから楽だわこれ。んじゃ先輩頑張ってね。『スピーダー』」

 

 

エクスの体を風が包み込み、更にスピードは上がる

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

『さて、かなりの人数が第一関門を突破したところで、戦闘は既に第二関門に到達してるな!! 第二関門!!!落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォール!!!』

 

 

第二関門では、巨大な窪みの中に足場が点々とあり、その足場同士がロープでつながれていた

 

 

「来ましたよ師匠!またゲートの時みたいに、浮遊の魔法をください!飛び越えます!」

 

「ちょ、ちょっと待って先輩...ウェップ、た、たんま..」

 

 

抱えられているアルスを見ると、顔を真っ青にしながら口を手で抑えるアルスがいた

 

 

「ちょっ師匠!?さっき聞きましたよね!?大丈夫かって!!」

 

「いや、加速した後の揺れがすごくて..さっきから我慢してたけどもう限界かも...」

 

「そ、そんな...あぁっ!?轟さんが見えてきましたよ!?」

 

「だ、だって先輩の腕だけで抱えられてるからもろに振動が!」

 

 

エクスがグロッキーな顔で蹲るアルスの背中をさすっていると、轟が追いついてきた

 

 

「....何してんだお前ら」

 

 

止まっている2人を、不思議なものを見るかのような目で轟が見ていた

 

 

「「...お気になさらず」」

 

「そうか、じゃあな」

 

 

そう言い残すと轟はロープに向かってしまった。後ろを振り向くと、爆豪を筆頭とした後続達がどんどんと追い上げてくる

 

 

「っ、こうなったら!」

 

「え?えぇっ!?何すんのえび先輩!!」

 

 

エクスはアルスの背中と膝に手を入れ、抱き抱える形でアルスを持ち上げた。俗に言うお姫様抱っこというものである

 

 

「これでいくらか振動はマシになるはずです!」

 

「おおおおおぉおまええぇぇぇ!?!?いや、これだって、えぇ!?」

 

 

普段のアルスの真っ白な肌は赤く染っていた。顔だけにとどまらず、手足まで真っ赤である

 

 

「とにかく師匠魔法ください!あと気持ち悪いのは我慢して!」

 

「気持ち悪いだなんて別に..ああぁそっちか!じゃなくて!えぇっと!『フリーグラヴィティ』!!」

 

 

完全にパニックになりながら、アルスは魔法を唱えた。 後日談ではあるが、アルマル家では、一同あらあらまあまあな雰囲気だったという。父親を除き。

 

 

アルスを抱えたエクスは、足場を飛び移りながら反対岸へとたどり着いた。アルスはエクスの腕の中で、手で顔を覆っていた

 

 

「覆いきれてないですよ?」

 

「うるせぇよぉ!!」

 

エクスは先頭を走る轟の背を追いかけた

 

 

 

 

『さあ先頭は既に最終関門に到達しているぞ!最終関門は、一面地雷原!怒りのアフガンだ!!どこに埋まっているかがよく見れば地雷の場所はわかるようになってるぞ!』

 

 

「師匠!そろそろ目つぶってないで!周り見といてください!」

 

「そうだバカップル共、周りちゃんとみろクソが!!」

 

 

頭上を見上げると爆豪がこちら目掛けて手を振りかぶっていた

 

「やばっししょ「カップルじゃなねぇよ!!!」

 

爆豪が2人に向けて爆破を放った

 

 

『おいおいいきなり爆破したぞ!?2人は無事か!?』

 

『ああ見えてあいつは冷静だ。少し吹っ飛ぶ程度の威力に抑えれている。だが今回はアルスがしっかりしてたな』

 

 

2人が爆破された次の瞬間、爆豪の体が後ろに放り出された

 

 

「んな!?今のは..俺の..」

 

「やば師匠!さすがすぎる!何やったんですか!」

 

「『リフレクト』っていう飛び道具とか反射する壁を作る魔法、最近作ったの。てか早く進んで」

 

 

一刻も早くエクスに降ろしてもらいたいアルスは淡々と魔法の説明をした。

 

 

「任せてください師匠!」

 

 

エクスは答えると地雷原へと走り出した。それもひとつも地雷をふむことなく。不思議に思ったアルスはエクスの顔を見た

 

 

「えぇなんで目光ってんの。キモ...」

 

 

見ればエクスの瞳は青白く発光していた。

 

 

「ええめっちゃ悪口言うじゃないですか。これは最近わかったんですけど、僕の個性目とか耳の性能もあげてくれるんですよ。なんで目にめっちゃ集めて地雷避けてます」

 

「待てやコラァ!! 」

 

「後ろ気にしてる場合じゃねえなっ!!」

 

 

後ろを振り向くと、轟と爆豪の2人がエクスに迫って来ていた。

 

 

「やばいです師匠!俺の個性目に使ってるんでこのままじゃ追いつかれます!」

 

「了解!『スピーダー』」

 

再びアルスの補助魔法をもらい、2人と互角のスピードで走るエクス。3人は肩を並べながらのデットヒート状態へと差し掛かった

 

 

『ひゅー!喜べメディア!お前ら好みの熱い展開だ!』

 

 

BOOOOOOOOOM!!!!

 

 

並んだ3人がゴールを目前としたその瞬間、後ろで大爆破が起こった

 

『A組緑谷!爆発で猛追....つうか!抜いたあああぁぁぁぁ!!!!』

 

 

先頭を走っていた3人の上を緑谷が通過し、更に持っていた金属板を地面へと叩きつけた

 

 

「!?っ、『リフレクト』!!」

 

 

再び大爆発が起こった瞬間アルスは爆風から身を守るために壁を貼った。緑谷は反射された爆風によってそのままゴールへと飛んで行った。

 

『緑谷間髪入れずに後続妨害!!なんと地雷原を突破しその勢いのままゴールだ!!!イレイザー!お前のクラスほんとどうなってんだよ!』

 

『だから俺はなんもしてねえよ』

 

『更に後ろに続いて、アルス・アルマル、エクス・アルビオ、轟焦凍、爆豪勝己の順でゴールだ!!!』

 

 

 

 

「すみません師匠、俺のせいで1位逃しちゃいました」

 

「別にいいよ、僕だけだったらこんな順位は高くなかったし、それに最後僕からゴールさせてくれたしね」

 

「感謝するんだったら焼肉とか奢ってください。もし次も組めたら一緒にやりません?」

 

「奢んねーよどんだけ焼肉食べたいの..組むのは..まあ、いいけど...」

 

 

2人は次の競技に備えて休憩に入った。アルスはあとからゴールしたクラスメイトにめちゃくちゃいじられて顔を真っ赤にした

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

第1種目終了時、観客席にてとある3人が競技を見ていた。

 

アァァァァァ!?エクス君負けちゃっタ!!!!」

 

 

「あぁうるさい!耳元で叫ばないでくれ!ああもうなんでヴァンパイアが子供のお守りなんかしなきゃないんだよ全く」

 

「まあまあギル様、普段仕事しないんですからこれくらいはやってくださいよ」

 

 

一人は悪態をつきながら、売店で買ってきたポップコーンを食べ、一人は画面を見ながら叫び、一人はそれを微笑みながら見ていた

 

「アァァァァドウしよ!エクス君3位じゃん!!」

 

「ああもうまだ第二種目もあるから!落ち着きたまえよ全く..」

 

「アハハハハハ」

 

ピンク色の髪の少女はお腹を抱えて笑っていた

 

 

 

 

 



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騎馬戦で無双します!背中は任せました!

 

 

 

 

 

 

「さて!続く第二種目を発表するわ!!第二種目は...騎馬戦よ!!!」

 

 

ミッドナイトに宣言と同時に、会場の大画面に次の競技の表示が現れた

 

 

「騎馬戦!!?」

 

「個人競技じゃないけどどうやるのかしら」

 

 

「参加者は2~4人のチームを自由に作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルールだけどひとつ違うのが....先程の結果に従い各自にポイントが振り分けられるわ」

 

 

「つまり組み合わせによって騎馬のポイントが変わってくると」

 

 

 

「私が喋る前に言わないでちょうだい!?...ええそうよそして与えられるポイントはしたから5ずつ....そして、1位に与えられるポイントは1000万よ!!!」

 

 

1位に与えられるポイントは1000万。ほかのポイントとは比べるまでもなく、それを持っているだけで1位が確定してしまうほどの圧倒的な差がある。例えるならバラエティ番組のクイズの最後の問題のようなもので、1位になるのならこれを取らなければならないのだ

 

それを理解した者全てが緑谷のことを見ていた。向けられた視線は緑谷を憐れむものと狙いを定めるものの半々であった。ミッドナイトより騎馬戦の詳しいルールも説明され、15分のチーム決めの交渉タイムとなった

 

交渉タイムに入ってエクスは真っ先にアルスの元へと走った。今回もアルスの力を借りようと思ったからである。

しかしその途中で、突然目の前に出てきた心操に声をかけられた

 

 

「選手宣誓感動したよ。正直俺は自分の個性が嫌いだった。でもお前の言葉をきいて、今までの自分が情けなくなったんだ...自分に出来ることを全力でやろうとおもった。だから俺も、今から本気で目指すことにした」

 

「あぁ、どう..も....!?」

 

「だから悪く思うなよ、これが俺の全力だ...次のやつを探「あぁ!この前宣戦布告した人ですね!!」

 

「....は?」

 

「いやっ、すいません今急いでるんで、終わったらまた話しましょう!!」

 

 

そう言って再びエクスは走り出した。残された心操は困惑した顔で小さくなっていくエクスの背を眺めていた

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

人混みの中にアルスの姿を見つけたエクスは人をかき分けながらアルスに近づいた

 

 

「師匠!!」

 

「うわぁっ!?びっくりしたぁ...いきなり後ろから話しかけんなよ!びっくりしちゃうだろうがぁ!!」

 

「そんなことより師匠!!」

 

「わかってるって、組んでやるから..」

 

「ありがとうございます!じゃあ来てください」

 

「え?..えぇっ!?」

 

 

強引にアルスの手を取り再びエクスは走り出した

 

 

「ちょっ、誰のとこいくの!?先に教えてくれない?」

 

「ほかの人に取られる前に行きたいんですけど...あっ!居た!」

 

 

エクスの視線を追うとそこには麗日と緑谷が立っていた

 

 

「デクくん?!えっ?不利になっちゃわない!?」

 

 

エクスが緑谷に声をかけようとしているのを察したアルスは、急いでエクスを止めた。1000万ポイントを持つ緑谷を誘うのは得策でないと考えたようだった

 

 

「いいですか師匠、この騎馬戦は大きく2つのことをしなければ行けません。ポイントを奪うことと、守ること。漁夫られるのを考えると同時にしなきゃない時もあります。ですが、緑谷さんと組めば前者はしなくていいんです。緑谷さんの持っているポイントは1000万、つまり持っているだけで1位なので奪うことの意味は薄い。守りに集中していれば勝てるんですよ」

 

「でも取られちゃったら負けじゃない?確かに僕とエビ先輩なら大抵の相手には負けないと思うけど、囲まれたらキツくない?」

 

「いいですか、師匠の個性はチートです。味方に対するバフ、集団をまとめて攻撃できる攻撃魔法、妨害性能の高い風魔法など、汎用性が高すぎます。そして本来緑谷さんの後に誘う予定だった麗日さんの個性があれば、俺は実質麗日さんだけを支えて動きまわれます。正直いって負ける要素が見当たりません」

 

 

自信満々に言い放つエクスの言葉にアルスは納得させられ、緑谷と交渉することにした。見れば緑谷の誘いを断った飯田が離れていくところだった

 

 

「緑谷さんと麗日さん!まだ2人余ってますか?」

 

「エクスくんにああ、アルスさん!余ってるけど..もしかして!!」

 

「俺とアルスさんをチームに入れてください!」

 

「もちろん大歓迎だよ!!麗日さんも大丈夫だよね?」

 

「うん!てかさっきのTOP3勢揃いやん!」

 

「よ、よろしくね」

 

 

無事チームが決まり作戦会議に移る。と言ってもエクスの考えていた作戦と緑谷の考えていたものが近かったため大まかな流れはスムーズに決まった

 

 

「基本は麗日さんがみんなを軽くして、俺の機動力で逃げ切る、そんでアルスさんは補助魔法と追ってきてるやつの妨害と、飛んできた攻撃を撃ち落としてください。緑谷さんは周りを見ながら指示をお願いします。それでさっき思いだしたんですけど....みんな手を出して貰っていいですか?」

 

 

エクスに促されるまま3人は手を前に出す。それをエクスがまとめてつかみ、個性を発動させた。すると、

 

 

「これは!?」

 

「っすごい」

 

「...先輩こんなこと出来んなら先に言ってよ」

 

 

エクスの手から青白いエネルギーが3人の体の表面を流れた

 

 

「いや使う機会があんまなかったんで忘れてたんですけど...このエネルギーは身体能力と個性をサポートしてくれます。どんな強化かは人によって変わってくると思うので今のうちに試しておいてください」

 

「先輩もなかなかぶっ壊れてない?」

 

 

そのあと、作戦の細かい部分を詰めた所で作戦タイムは終了した。緑谷は係の者からハチマキを受け取り、額に取り付けた。騎馬は先頭にエクス、後方が麗日とアルスという形になった。

 

 

『さぁ起きろイレイザー、もう作戦タイムは終了してるぜ?』

 

 

プレゼントマイクが寝袋に入った相澤を起こし、マイクのスイッチを入れた

 

 

『さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!狼煙をあげる!!』

 

 

「麗日さん!」「っはい! 」

「アルスさん!」「おぅ!」

「エクスくん!」「はいっ!」

 

 

『3.....2.....1....スタートォ!!』

 

 

プレゼント・マイクの宣言と同時に、A組葉隠の騎馬とB組鉄哲の騎馬がエクスたちに向かってきていた。

 

 

「実質それの争奪戦だ!!!」

 

「はっはっは!!緑谷君!いっただくよー!!」

「緑谷さん!指示を!」

 

「もちろん!!逃げの一手...!?」

 

 

緑谷が指示を出そうといた瞬間、騎馬の足が地面に沈み込んだ。

 

 

「沈んでる!あの人の個性か!」

 

「やばい詰んだかも!俺ジャンプできない!?師匠!!」

 

「先輩いっつも最初ミスるよね!?『ウィンドランページ』!!」

 

 

アルスが足元にはなった魔法は、液状化した地面ごとエクスたちを上へ吹き飛ばした

 

 

「師匠ナイスすぎる!!一生ついてきます!!」

 

「エビオくん作戦立ててる時はめちゃくちゃしっかりしてたのに...」

 

「着地するよ!アルスさん!エクスくん!」

 

「あいよ、『ウィンド』!!」

 

 

再びアルスが魔法を唱え、威力を殺して安全に着地することができた。

 

 

「エビ先輩はとりあえず後でみんなんにジュース奢ってね」

 

「いやこっからっすよ!?見ててください!」

 

「...エビ先輩なんか踏んでない?」

 

「え?」

 

 

足元を見ると峰田のもぎもぎを踏んでいた

 

 

「峰田くんの!!一体どこから....」

 

「ここからだよ緑谷ぁ...」

 

 

前から向かってくる障子の背中の隙間から峰田が顔を出していた。次の瞬間その隙間から舌が伸びてくる

 

 

「私もいるわよ緑谷ちゃん....」

 

「蛙吹さんまで「梅雨ちゃんと呼んで」」

 

「ちょっ!?とれねぇ!!」

 

「エビオくん靴脱いで!!」

 

 

ギリギリのところで上に飛ぶのが間に合ったエクス。だが片方だけ裸足になってしまった

 

 

『峰田チーム、圧倒的な体格差を利用しまるで戦車だぜ!!』

 

「靴下まで脱げたんだけど!?」

 

「調子乗ってんじゃねぇぞクソが!!」

 

 

空中にいるはずのエクスたちの横から聞き覚えぼえのある声とともに連続する爆発音が聞こえてきた

 

 

「っ!!アルスさん!!」

 

「『リフレク「それはさっきも見たわ!!」

 

 

自身の背後に爆発を起こし、アルスの反対側に回り込んだ爆豪。そのまま緑谷の鉢巻きにてをのばした。

 

 

「そいつをよこせコr「そおい!!」へぶ!!」

 

 

しかし、下から飛んできた何かが顔にぶつかりバランスを崩し落ちていった。地面につく寸前に瀬呂に回収されていたため失格にはならなかったようだ

 

 

『騎馬から離れてたぞ!?アリかあれ!!?』

 

「テクニカルなのでオッケー!!地面についてたらだめだったけど」

 

「エビ先輩何投げたの?」

 

「靴です。どうせ片方脱いでたので変わんないかなと」

 

「なめてんのかテメェ!!!!!」

 

 

下から爆豪のどなる声が聞こえてくるが。その隙に横からハチマキを取られていた

 

再び着地する頃には、緑谷チームを狙うものも少なくなり、場は混戦と化していた

 

 

『やはり狙われる1位と猛追を仕掛けるA組の面々共に実力者揃い!さて、今現在の保持Ptはどうなって....あら!!?どうしたんだ爆豪!ポイント0じゃねーか!!』

 

 

「よっしゃみんな!この調子で.....そう上手くは、いかないか」

 

 

制限時間が半分になったタイミングで、轟チームが目の前に現れた

 

 

「.....そろそろ奪るぞ」

 

「あぁ!かかってこい!」

 

 

 

 

 

「師匠魔法で靴とか作れないすか、小石がめちゃくちゃ刺さるんですけど」

 

「今いい所だから黙ってなよエビ先輩..」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「そこの売店で雄英たこ焼き買ってきたからみんなで食べようじゃないか」

 

 

両手に袋を持ったギルザレンが席に戻ってきた

 

 

「いや買いすぎじゃないですか?3人で食べきれないと思うんですけど...」

 

「始まったヨ!!アァ!?エクスくんもう囲まれちゃっタ!!?」

 

「余ったら事務所にでも持ってきゃ誰か食うだろ」

 

「それもそうですね」

 

「アァ??!エクスくん踏んでル!なんか踏んでるっテ?!」

 

「そんなことより、君からみて誰か気になる人はいたかい?」

 

「そうですねー..熱ッ!...んー、まあ元々最高のヒーローの学生時代は気になってましたし、他にも教科書で見たことのある人達は当然気になりますかね。でもやっぱり雄英高校だけあってみんな見所がありますよ」

 

「そんなもん「アブナイヨ!!?」うるせえなぁさっきから!もうちょっと静かに見なさい!他の方に迷惑でしょうが!!ほらたこ焼きも食べて!」

 

「保護者みてえだな」

 

「頑張レー!!エクスくん!!」

 

 



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後半戦!前も任せます!師匠!

 

 

 

 

 

(アカン!!今んとこバフしかできてない!!思ってた倍師匠が優秀だったおかげで助かった!!)

 

 

エクスは焦っていた。試合前にアルスにあれだけ啖呵を切っていながら、今だ目立った活躍が爆豪に靴を当てたことぐらいしかないからである。

 

騎馬戦の残り時間はちょうど半分を切り、後半戦へと差し掛かっていた。緑谷達の周りには轟の騎馬をはじめ、複数の騎馬が集まりはじめる

 

 

「今だ、上鳴」

 

「わかってるぜ!しっかり防げよ...」

 

「ッ!アルスさん!」

 

「任せて!」

 

 

こちらへと近づきながら上鳴に指示を出す轟を見て、緑谷は即座にアルスに指示をだした

 

 

「無差別放電130万V!!」

 

「『マジック・チェンジ』!」

 

 

上鳴の個性によって周囲の騎馬は感電し、短時間ではあるが強制的に動きを封じられた。対する緑谷達はアルスの魔法によって電気を防ぐことに成功していた

 

 

「んな!?何でもありかよ!?」

 

「電気はぼくが1番得意な魔法属性だからね。普段の逆をすればいいだけだから何も問題はないのさ!」

 

「なら、これはどうだ!」

 

 

轟が個性を発動し、周囲の騎馬の足元が一気に凍った。

そのまま動けなくなった騎馬達からハチマキを回収し緑谷達に近づいてくる

 

 

「師匠やばい!動けない!てか素足だとめっちゃいてえ!?」

 

「落ち着いてエビ先輩。何度も同じ攻撃にしてやられるぼくではないよ!『フレイムフィールド』!!」

 

 

アルスが魔法を唱えると、足元に炎が広がり氷を溶かしていった

 

 

「ぼくはこう見えて負けず嫌いなんだ。最初のヒーロー基礎学で氷漬けにされてからずっと対策を練っていたんだよ!」

 

「さすがに一筋縄じゃいかねえか」

 

「エクスくん、距離をとるよ!」

 

 

アルスが溶かしたのは自身の足元の氷のみで、周囲は依然として高い氷の壁に囲まれていた。それ以上溶かしてしまうと、他の騎馬も復活してしまうからである

 

 

「エクスくんあの壁は超えれそう?」

 

「なんの妨害もなければ問題なく飛び越えれますが、何かしら妨害は飛んでくるかと思います」

 

「...だったらこの場で凌いでしまった方が得策かな、みんなエクスくんにしっかりつかまって!残り5分しのぎきるよ!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「おー!レヴィくんの言う通り彼らなかなかやるじゃないか。学生にしてはいい動きをするねえ!」

 

 

ギルザレン達はたこ焼きを頬張りながら、エクス達の戦いを眺めていた

 

 

「正直周りを氷で囲まれた時点で、1000万ポイントを奪われるのは時間の問題かと思ってましたが、なんだかんだ逃げれてますね」

 

「.......」

 

 

エクス達の戦いぶりを好評する2人とは対照的に、レヴィは頬を膨らませ不機嫌そうにたこ焼きを頬張っていた

 

 

「どうしたんですか?何か嫌なことでも?....たこ焼きにタコ入ってなかった?売店員ぶっ飛ばしてこようか?」

 

「違いまス!...なんだかエクスくん手を抜いてるっていうカ、全然本気じゃないかラ...」

 

 

レヴィの発言に2人は目を丸くし首を傾げた。彼女から見たエクスの動きは全然本調子では無いらしい

 

 

「あの頃のエクスくんならもっと早く動けたシ、あんな壁、全身鎧でも飛び越えれてたの二...」

 

「まあまだ成長途中だからじゃないのかい?レヴィくんの言うあの頃っていうのはもう少し大人になった頃だろう?」

 

「....でもボクは問題なく動けましたヨ?」

 

「うーむ....」

 

「まあ考えていても仕方がないんじゃないですか?彼には彼なりの考えがあるのか.....あるいは本気を出さない(・・・・)んじゃなくて出せない(・・・・)のか..」

 

「....出せなイ?」

 

「...まあまだ体育祭は続きますから、ゆっくり考えましょう」

 

 

夕陽は気づいたことを誤魔化すかのように、既に冷めたたこ焼きを口へ運んだ

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

(まずいな..常に距離を取りながら左側にまわられてる....これじゃ最短で凍結させようとしても飯田が引っかかる...まわりこもうにもその間に飛んで逃げられそうになる...残り1分...!)

 

「皆...残り1分弱、俺は使えなくなる。頼んだぞ」

 

「..飯田?」

 

「しっかり掴まっててくれよ...トルクオーバー!

『レシプロバースト』!!」

 

 

突如轟達の騎馬が超加速しエクスたちへと肉迫した

レシプロバースト、それはトルクと回転数を無理やり上げ爆発的な加速を生み出す飯田の隠し玉であった。

実際緑谷は飯田の急激な加速に対して全く対応が出来ていなかった。自身の額に巻かれたハチマキを奪われるのは確定した未来であるかのように思われた

 

しかし、轟の腕はあと一歩のところで緑谷のハチマキには掛からなかった。轟がミスをしたのでは無い。

緑谷の騎馬がそれを避けたのだ

 

 

「....エクスくん!?」

 

「やっぱりまだ切り札持ってたか!危ねー!」

 

「んな!?...すまない!」

 

「エクスお前...なぜ今のが読めた?」

 

 

轟はエクスが飯田の加速に対応したことが信じられなかった。自分でさえ直前に話しかけられたことでギリギリ対応できた加速を、エクスが見てから躱したとは思えなかった。

つまり、エクスは飯田の隠し玉を読んでいた

 

 

「確信はありませんでしたけどね...隠し球がある人はだいたい目で分かります。飯田さんはまだ何か残してる目をしてたので警戒していたんです」

 

 

エクスは答え終えると高く跳躍した。飯田が動けない今、氷の壁を登り、壁の外へと逃げることに決めたのだ

 

対する飯田は自身の切り札が通じなかったことで、強い自責の念に囚われていた。自身の表情から行動を読まれたこと、切り札のデメリットで残り時間個性を使えないことがそれに拍車をかけていた

 

 

「みんな...本当にすまな____」

 

「まだ諦めんな!」

 

 

飯田の溢れた謝罪を止めたのは、騎手である轟であった。

轟チームは既に持っているポイントだけでも上位4チームには食い込んでいるため、最終種目へ進むことは出来る。だが1000万ポイントを取ることに関しては絶望的だと誰もが思っていた。

 

轟ともう1人を除いては

 

 

「反省は後だ!まだ時間はある!それに...

チャンスもちょうど今転がって来た!」

 

「1000万寄越せやコラァ!!」

 

 

爆発音と共に氷の壁を突き破り爆豪達の騎馬が乱入してきた。

それにより場は一気に混沌と化した。

跳躍中の緑谷達を確認した爆豪は騎馬から飛び立ち1000万ポイントを奪いに向かった

 

続いて轟達も足元に氷を盛り続けることでそれに続く。

爆豪の突撃で崩れた緑谷からハチマキを奪うつもりであった。

緑谷達に届いた後、大きな隙が出来るこの氷の足場は、自分達をピンチにし得る諸刃の剣であったが、既にそんなことは関係ない。

 

なぜなら、

 

 

『さあ残り時間は10秒だ!カウントダウン行くぜ!』

 

 

「まずいっ!アルスさん妨害を!」

 

『10!』

 

「させるかよ!お前らシート被れ!ありったけ食らわせてやる!『200万V』!!」

 

『9!』

 

「っ、『プロテクト』!」

 

『8!』

 

「こっちががら空きだ!寄越せやデク!!」

 

『7!』

 

「さ、せるかよ!!守り切ってみせる!!」

 

『6!』

 

「やっと追いついたぞ!緑谷!」

 

『5!』

 

「俺を忘れないでもらっていいですか?

 

『4!』

 

ハチマキは絶対に取らせない!」

 

『3!...2!...1!...TIME UP!!』

 

「...『ウィンドクッション』!」

 

 

時間が切れたのと同時にアルスが個性を使い3チームともゆっくりと着地した

 

 

『ナイス判断だアルマル少女!それじゃあ結果を確認していくぜ!』

 

 

 

『1位.....緑谷チーム!!』

 

 

「いよっしゃああ!!!!あちいぃぃぃ!!!」

 

「か...勝った!!」

 

「やったねデクくん!!」

 

「危なかったああああ!!」

 

 

1人は飛び跳ね、1人は目から放水し、1人は騎手を称え、1人は安堵に胸を抑えていた。緑谷達はラスト数秒間ハチマキを守り切ることに成功していた。最後はどのチームが1000万ポイントを手にしていてもおかしくないギリギリの戦いであった

 

 

『2位!轟チーム!』

 

 

「...わりい、最後も掴み損ねちまった」

 

「いや、最後俺たちを引っ張ってくれてありがとう。反省こそすれど、後悔は少しもないよ」

 

「ウェーイ...ウェイウェイ、ウェーイ!」

 

「えぇ!結果は2位ですが、得られたものはそれ以上の価値があると思いますわ!」

 

 

『3位!爆豪チーム!』

 

 

「ク、ソ、があああああああああああああああ!!!」

 

「おい落ち着けって爆豪、最終種目には出れんだから切り替えよう、なっ?」

 

「お前はよく頑張ったよ爆豪」

 

「でもやっぱり悔しいよー!次は絶対勝とうね!!」

 

 

『そして4位....心操チーム!?いつの間に?!』

 

 

「ご苦労。助かったよ」

 

「......!?」

 

「え....?」

 

「な、何が....」

 

 

『以上の上位4チームの生徒が最終種目に出場するぜ!』

 

 

プレゼントマイクのアナウンスに、会場からは雷のような歓声と拍手が降り注いでいた

 

 

『それじゃあ昼休憩を挟んで午後の部だ!リスナー達は昼食を済ませて置くように!』

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「いやー、めちゃくちゃ危なかったですね師匠」

 

「ほんとだよ、最初に聞いてた話だと楽勝だったはずなんだけどね」

 

 

エクスとアルスは会場近くのベンチにて昼食を取りながら、先程の競技の話をしていた。初めは食堂に行くつもりであったエクスだったが、OBなどが懐かしの味を楽しみにくることにより食堂はパンクしていた。普段穏やかなランチラッシュが暴言を吐きながら料理していたと言えばどんな状況だったか想像がつくだろうか

 

仕方が無いのでアルスを誘って昼食を取れそうな場所を探してようやく見つけたのである

 

 

「いやー、思ってた以上に皆実力がありましたね...いや、1番驚いたのは師匠の強さですけど」

 

「..うぇっ!?僕?!」

 

 

評価の矛先が自分に向くと思っていなかったアルスは不意をつかれ驚いた

 

 

「はい。正直個性の強さで言ったらこの学校の誰よりも強いんじゃないですか?しかもゴリ押しじゃなくてちゃんとコントロールできてるし、判断力も悪くないと思います。

普通それだけの手札があったら選んで出すのにもっと時間がかかると思うんですよ。でもほぼノータイムでそれができるあたりすごく努力してきたんだなと、素直に尊敬しました」

 

「ちょ、おま、おまえ、そんな一気に褒められたら恥ずかしいだろぉ!?」

 

 

普段自身をバカにしてくるばか弟子が、一切の曇りのない瞳で自身を見つめ、褒めまくったことに対して、アルスは思わず赤面してしまった

 

 

 

「あれ?嫌でしたか?」

 

「いや、嬉しいけど!急だったから..あつー...え、えーと、えび先輩も凄かったよ!僕たちにエネルギー流しながら走り回ってたし....あとあれ!飯田くんの必殺避けたやつ!目でわかったって言ってたけど、どこでそんなの覚えたの?」

 

「どこなんでしょうね、気づいた時にはできてたので」

 

「...うわぁ、天才かよ。気づいた時にはって、いつぐらい?」

 

「えぇーっと...確か12歳だから...小6ぐらいですかね?」

 

「うえぇ!?そんな小さい頃から!どんな小学校生活送ってたら身につくんだよ」

 

「ほんとにどんなことしてたんですかね」

 

「...え?」

 

 

ただ恥ずかしさを誤魔化そうと適当に変えた話題の中で、とてつもない違和感が生まれたことをアルスは感じた。

エクスは今自分の幼少期を他人のことのように話した

 

 

「それって...どういうこと?えび先輩」

 

「....ん?あれ?言ってませんでしたっけ。俺、12歳より前の記憶がないんですよ」

 

 

 

 

 



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番外編:お花畑な日常

 

 

 

 

ここはとある都市のとある飲み屋を曲がり、とある路地を進んだ先にある店である。

え?詳しい場所を教えろって?自分で考えろ馬鹿野郎!何でもかんでもなあ、人に聞くようになるとろくな大人にならんぞ?

話が脱線しちまったじゃねえか、えーと...

 

この店は昼は喫茶店、夜はバーを営業しており、まさに知る人ぞ知る名店と言っても過言では...

あ?知名度がねえだけだろだって?さっきからうるせえよてめえはよお!!てか誰なんだよ!!どうやって私の脳内プロローグに割り込んできてんだ!?

 

...さては作者かてめえ!!黙って本編の続き書いてろよ!!続き気になってんだよ!なんでこのタイミングで番外編なんだよ!今いいとこだったろ!あ?あまりメタいことを言うのは控えろだ?先にしかけてきたのはてめえだろうがぁ!

....ああもう、わあったよ。今後はあんたをいない物として話を進めてくし、あまりメタいこともいわない。だからあんたも私のプロローグに割り込むのをやめろ。これは契約だ...よし、いなくなったな。

 

ゴホンッ、この『喫茶花bartake』はふだn「チャイカさん!さっきからひとりでなにしてんの!オレンジジュースひとつ!」

 

....どいつもこいつも私の邪魔をしやがってぇ!!いいのか!?私がその気になれば作者のメモ帳から設定集をコピーしてめちゃくちゃなネタバレを「いい加減にしろや!せっかくこのクソみたいな立地の店の数少ない常連客であるあてぃしが顔だしてんねんから!」

 

「....いいか椎名、客っていうのはな、金を払って飲み物を飲むやつのことを言うんだ。お前みたいに何ヶ月もツケでジュース飲んでく奴のことを客とはいわない!」

 

「ええやんか別に、払わへんとは一言も言ってないんやから」

 

 

こいつは椎名唯華。半年ほど前からこの店に入り浸り、支払いを踏み倒し続けるクソガキだ。聞いた話によると普段は副業で探偵紛いのことをしてるんだとか。

...てかそんなことしてんなら毎回ジュース代くらい払ってけよ!

 

 

「てかお前なんでうちの店通ってんの?毎回ジュース飲んですぐ寝るよな?」

 

 

そう。この女うちに来て閉店近くまでずっと寝ているのである。それも週に何回も。もう最近は端の方で持参した寝袋に入ってホットアイマスクまで付けてしっかり寝ている

 

 

「そりゃ、あてぃしが生物部だかですよ」

 

「....は?それとこれに一体なんの関係が..」

 

「こんな耳長ゴリラおったらほっとけないですよ。観察しなきゃ」

 

「てめえこのやろう..」

 

「まああてぃしは帰宅部なんですけど」

 

 

そう言って椎名は寝袋に入ってしまった。私はあいつについて考えるのをやめた。人間諦めが肝心って言うしな。私はエルフだけど

 

 

 

 

✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤

 

 

 

 

「おーいチャイカ!やってるー?」

「おっ社じゃーん、久しぶりだな。表の看板にOPENってかいてあったろ」

 

 

この普段から二徹明けのような隈をこさえてる男は社築。ヒーロー事務所ド葛本社に所属するプロヒーローやしきずとはこいつのこと。学生時代あと一歩でヒーロー名が『オタク君』になるとこだったという彼のエピソードはあまりにも有名である

 

 

「てか椎名はまた寝てんのかよ」

 

 

そう、実は椎名と社は知り合いであるらしい。何でも1度一緒に仕事をしたのだとか。内容に関しては守秘義務がどーたらで聞けなかったが、あんまり興味はない

 

 

「んで、注文は?」

 

「あー、ウイスキーとツマミを適当にくれ」

 

「あいよ。今日は非番なのか?」

 

「まあな、今はドーラが事務所にいて、葛葉がパトロール中だな」

 

「奥さんと息子に働かせて、父親は酒を飲んでるのか..」

 

「人聞きの悪いこというな!それに何度も言うが奥さんでも息子でもねえから!ただのビジネスパートナーだよ!」

 

 

ただのビジネスパートナーは一緒の家で暮らしたり、全員で遊びに行ったりしないと思うが...

 

 

「それで、今日はただ酒を飲みに来ただけか?」

 

「あー、頼みって程でもないんだがな...虚空教って聞いたことあるか?」

 

「虚空教?...初耳だね」

 

「10年くらい昔から存在してるらしい新興宗教なんだが、何でもここ最近になって規模が大きくなってるんだとか」

 

「それがなんかヤバいヴィランとでもつながってたりすんの?」

 

「いや....ヤバいかもしれないのはこの宗教そのものだ」

 

「ほーん」

 

「この宗教は、0への回帰を掲げているんだ。そして調べてるうちにある噂を聞いたんだ。長年自分の個性に苦しまされてきた男が、教祖に個性を消して貰ったと」

 

「..ほう?」

 

「チャイカから昔聞いた話と被らないか?お前からあの話を聞いた時は、本気にしてなかったがこれを調べてから悪い予感しかしないんだよ。..もし気になるんだったら調べてみてくれないか?」

 

「あいつがそんな遠回しな事するとは思えんが..まあ片手間に調べといてやるよ。何か分かったら連絡する」

 

「まじか!話してみるもんだな!今度なんか高い店で奢ってやるよ!」

 

 

その後は当たり障りのない話をして社は帰ってった。虚空教の支部がありそうな場所は何ヶ所か聞いたのでそのうちいてみようか

......椎名!お前はいつまで寝てんだっ!

 

 

 

 

✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤

 

 

 

泣く子も眠る丑三つ時、全身を黒い布でおおい、目出し帽を被る私は、誰がどう見てもヴィランだろう。

ただ重要なのは今の私がどう見えるかではない。

私が花畑チャイカだとバレないことが大事なのだ。たとえ騒ぎになってヒーローに追いかけられようと、まして黒ずくめの男がヒーローをぶっ飛ばそうと関係ない。

なぜなら世間的からしたらそれをやったのは花畑チャイカでは無

く、黒ずくめの男だからである

 

社から聞いた場所を順に回ってきたが、今のとこ全てハズレだった。さすがに運が悪すぎる気もしなくない。まさかほんとにただの噂だったなんてことないよな?さすがにそれは私も怒るぞ?

....おっと、誰かいるな...

 

 

「ほ、本当に私の個性を消すことが可能なんですか?!」

 

「本当だって言ってんだろ!いいからあんま大きい声をだすな!」

 

 

いかにもチンピラ風の男が、異形系個性の男を連れて歩いていた。

.....これはハズレだな。あの男のまとっている雰囲気からして、本当にただのチンピラのようだ。なんだよ、こんだけ頑張って探し回ってこれかよ

 

 

「さて、着いたぜにいちゃん」

 

「着いたって...こ、この人達は?」

 

建物の中から複数人の男達が出てきた。展開がテンプレすぎてちょっと笑いそう

 

 

「ギャハハ、個性が消せるなんてそんなこと出来るわけねーだろ!」

 

「ちょっと冷静になりゃ分かんだろうが!」

 

「おいにいちゃん、悪いこと言わねーから、金目のもん全部置いてさっさと帰りな」

 

 

100点。100点満点のモブチンピラだ。これが物語1話だったらここでヒーローが駆けつけんだろうね。まあこんなとこに都合よくヒーローが来るわけもないしな。仕方ねえからさっさと助けてやりますか.....ん?

 

 

「あなた達ですか。虚空教の名を騙ってカツアゲしてるって言うチンピラは」

 

 

深くフードを被った男が立っていた。初めからそこにいたように、なんの前触れもなく突如現れたように見えた。まとっている雰囲気もチンピラとは比べ物にならない得体の知れなさを放っていた。

そしてチンピラ!次に貴様は、な、なんだてめえ!見せもんじゃあねえぞ!と言う!

 

 

「な、なんだテメェ!見せもんじゃねえぞ!」

 

「ステレオタイプが過ぎませんか?きょうびそんなコッテコテのチンピラいませんよ?」

 

 

あいつ思ってること全部言ってくれるなワンチャンただのツッコミが上手い実力者だったりしない?...多分本物の虚空教関連のやつだろーけど。

 

 

「もういい!やっちまえ!」

 

「はあ...面倒なので終わらせちゃいますね」

 

 

フードの男が片手をあげると、チンピラ達は体から白い何かを落としながら気絶した。な〇う主人公みてえだな

 

 

「この個性な〇う主人公みたいでちょっと嫌なんだよな」

 

 

私あいつと仲良くなれるかもしれない。ちょっと声掛けて見ようかな

 

 

「あ、あの!」

 

「どうかしましたか?」

 

「あ、あなたは、虚空教の人ですか?」

 

「えぇ...ああ。もしかして個性を消したい人ですか?」

 

「っ!!はい!俺、昔からこの見た目のせいでいじめられて..」

 

「大丈夫ですよ。辛かったですね。でももう大丈夫です。虚空は全てを受け入れます。さあ、目を瞑って..」

 

 

フードの男が異形個性の男の頭に手を当てた。異形個性の体がビクンと震えたかと思うと、異形の体がみるみる縮み出し、肌が普通の人の物へと変わっていき、完全に人間の物になると、また体から白い何かが落ちた

 

....これ以上ここにいるのは不味いか、勘づかれる前に逃げちまおう

 

私は音を立てずにその場から離れた。離れていく際に誰かの視線を感じたのは気の所為だろう

 

 

 

 

✤✤✤✤✤✤✤

 

 

 

私が自分の店に帰ると中に椎名が居た

....なんでぇ!?鍵はしっかりとかけたはず...

 

 

「チャイカさん。虚空教、見ちゃいましたか」

 

 

椎名は私の前で初めて真剣な顔をし、問いかけてきた

 

 

「あ?なんのことだ?私はただ散歩してきただけだ。それよりお前、不法侵入だぞ。今なら見逃してやるから、さっさと帰りなさい」

 

「あてぃしも個性をつかって、あれを見てました。離れた所で目出し帽被った黒い男がいたのも」

 

「....椎名、お前は一体何がしたいんだ?お前の目的を教えろ、私の敵かどうかも」

 

 

誤魔化すことは諦めた。それよりも今はこいつだ。普段のおちゃらけた雰囲気がまったくない。虚空教関係者か?

 

 

「....あてぃしの目的は虚空教を潰すことです。だから、味方ですよ。そして、やしきずに今日見たことを報告するのはやめてください」

 

 

あの会話も聞かれてたか....あいつが寝てるとこまで届かないくらいの声量だったんだがな..

 

 

「なぜだ?味方は多い方がいいだろ」

 

「まだ少数で動きたいんです。どこに虚空教徒がいるか分からない。情報が集まるまで話を広げたくないんです」

 

「...わかった。ただ今度詳しく話を聞かせろ。協力するか決めるのはそのときだ」

 

「....わかりやした。なるべく早く話に来ます」

 

 

嘘をついているようには見えなかったが、まだ信用したわけではない。場合によってはこいつと戦うことも考慮した方が良さそうか...

 

 

「まだ何かあるのか?」

 

「チーム名どうしようかなと」

 

「んなもん後でいいだろ!」

 

椎名はわかりやしたぁと、いつもの気の抜けた感じで返事をすると、目の前から消えてしまった

 

「何もんなんだあいつは....はぁ..面倒くさいことに巻き込まれちゃったな..」

 

 

 

忙しくなりそうな臭いがプンプンしていた..やだなぁ...

 

 

 




________花畑チャイカ、椎名唯華参戦!!



ということで、突然の閑話でしたg「絶対このタイミングじゃなくて良かったろ」
な、何故ここに!?契約はどうした!?
「フハハハ!私はメタい話はやめた...だが、後書きの欄ならばメタくないのだ!!」
...今後も出張られると面倒なのでブロックしますね。
「なっ!?貴様それはひきょ───」

ということで花畑チャイカ登場回でした。本編も絶賛執筆中ですのでしばしお待ちください


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貰えるもんはもらっときます!!英雄なので!!

 

「12歳より前の記憶がないんですよ」

 

 

えび先輩は真顔のままそう呟いた。まるでそれが当然であるかのようにその言葉にはなんの感情も込められてなかった。

何か言葉を返そうと口を開くが、パクパクするだけで言葉は出てこない。唐突な状況に脳が追いつかないのだ

 

 

(赤くなったり青くなったり..信号機みたいだな..黄色くなったりもすんのかな...てかなんでパクパクしてんだろう、餌待ってる鯉みたいな...ハッ!)

 

 

「俺のおかずはあげませんよ!?」

 

「なんの話だよ!?」

 

 

え?ほんとになんの話??

何も気にしてないのか..?いや、えび先輩はああ見えて意外と思慮深いタイプ....場の空気を温めるためにあえて....

 

 

「えび先輩って意外と優しいよね」

 

「?まあはい。意外とは余計ですが」

 

 

ただ実際気になりはするんだよなぁ....えび先輩の強さの秘密があるのかもしんないし...でもプライベートな部分に踏入るのは気が引けるって言うか....

 

 

「気になりますか?当時の話」

 

「...気になるけど...いいの?えび先輩は辛くない?」

 

「いえ全然」

 

「あ、そう..」

 

「とは言ってもあんま話せることはないんですけどね。気がついたら街中にいて、自分の名前しか思い出せない状態でした。そこからはまあ...なんだかんだあってヒーローに保護されて、施設に入って今に至る感じです」

 

「ふえぇ....街中で気がつく前のことは何も覚えてないの?」

 

「まじで何も覚えてないんですよ。それに、保護されたあと警察とかに身元調べてもらったんですけど、何も分からなかったですし」

 

「えぇ....えび先輩ってほんとに何者なのさ..」

 

 

エクス・アルビオだから外国人?でもえび先輩英語下手だしな....

 

 

「不思議なんですよねー、なんか最初から体の動かし方が分かってたっていうか、体が覚えてる..みたいな?師匠の魔法で何とかなりませんか?」

 

「記憶を操る魔法....ないことはないと思うけど..」

 

「マジすか!?」

 

「うん..でもぼくの個性ってなかなか複雑で...実家にある魔法の本から記憶関係のを探さなきゃ..」

 

「魔法の本?」

 

「うん、うちって一族みんな魔法に関わる個性だから、家に開発した魔法を記した本みたいなのがいっぱいあるんだよ。その中に記憶に関わる魔法書がないか探してみるね」

 

「よっしゃ!師匠まじで天才!頭脳がでかいだけある!」

 

「フフフッまあね!ぼくにかかればこれくらい今なんていった?」

 

頭脳が..でかい??

聞き間違いじゃねえよなぁ?今確かにデカいって言ったな!?モッチーン!!ライン越えだからなぁ!?あーもういいよ!

 

 

「ごちそうさま!じゃあねっ!」

 

「えっ?ちょっ、師匠!?ごめんって!悪気はほとんどなかったんですって!ほんと!2割くらい!!ああまって!師匠!」

 

 

ぜってえこの後の競技でボコボコにしてやる。それはそうとお父さんに記憶関係の魔法書あるか聞かないと..

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「師匠行っちゃったなー...結局ぼっち飯やん...」

 

「アノ!隣いいですカ!」

 

 

突然後ろから声を掛けられた。

声のした方へ向いてみると、そこにはギザ歯で角の生えた少女が立っていた

 

 

「予選見てましタ!かっこよかったでス!」

 

「え、えーと、サインとかいります?」

 

「ハイ!」

 

 

せっかくなので彼女の持っていたメモ帳にサインをしておいた。なかなか見る目のある子ではないか。誰か知らんけど

 

 

「あの...お名前は?」

 

「...やっぱリ...分かりませんカ?」

 

「え?」

 

「アアいえ!こっちの話でス!」

 

 

目の前の少女の顔に一瞬陰りが見えた。すぐに明るい笑顔に変わったが、一瞬見えたあの顔はとても悲しげであった

 

 

「初めましテ!レヴィ・エリファでス!よろしくネ!エクスくん!!」

 

 

何をよろしくするんだろう?ていうか名前言ったっけ?...ああ、放送なりなんなりで聞いてるか。でもなんか懐かしいような...胸が苦しいような...?

 

 

「ソウソウ!実は一緒にお弁当を食べに来タだけじゃなくテ!あるものを渡しにきたんダ!」

 

レヴィさんはそう言うとポケットから奇妙なアクセサリーを取りだした

 

「これはネ!不死のトーテムって言っテ、1度だけ所有者の身に降りかかった不幸から助けてくれるんだっテ」

 

 

レヴィさんはキラキラとした笑顔と、ハキハキとした声で、手に持ったアクセサリーの良さを語っていた

この手法は昔テレビで見たことある...怪しい壺を買わされるやつだ!!

 

 

「いいいいいえ!大丈夫です!お金もってないんで!」

 

「イヤイヤイヤイヤ違うかラ!!怪しいヤツじゃないから!!お金もいらないってば!!」

 

 

あれ?違うの?まあタダでくれるって言うなら貰いましょうかね。にしても変な形のアクセサリーだな...

 

 

ズキリ

 

 

「...?」

 

 

今一瞬頭が...?それに苦しさも増して...

 

 

「まア、エクスくんは自力で何とかしそうだかラ、また誰か大切な人にでもプレゼントしてあげてネ」

 

「わ...かりました?....あの、どうしてそんなに辛そうな顔を?」

 

「...アッ!!ごめんね!もう戻らなきゃダ!!じゃあ、まタ!!」

 

 

レヴィさんは早口でそう告げると走ってどこかへ去ってしまった。にしてもこのアクセサリー...見れば見るほど胸が苦しくなってくるような...?ワンチャン呪われてる?

 

まあ後で師匠辺りにあげようかな?

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「だ、騙しましたわね!!峰田さん!!」

 

 

ぼくはなんでチアリーダーの格好をしてポンポンを持ってるんだろう....

焦った様子の百ちゃんに勢いのままこれを着せられて...

 

「すみませんアルスさん...わたくし峰田さんの口車に..」

 

「まあ相澤先生の名前を出されたらしょうがないよ。下手人は後でしばきまわすけどさ」

 

 

この場にえび先輩がいなくてよかった。こんな姿を見られたら。記憶操作魔法を習得し、悪用しなければならない

 

 

「とりあえずぼくは、あのバカが帰ってくる前に着替えるね」

 

「あっ居た!おーい師匠!!あれ?なんでチアの格好してんの?」

 

 

一番最悪なタイミングで帰ってきやがった!?

こうなったら仕方がない。プランB、強力な電流を流してワンチャン記憶を消し飛ばす作戦を...

 

 

「ようわからんけどめっちゃ似合ってますね師匠!!」

 

「ふぇ?!」

 

 

いいい、今こいつなんて言った?!まて、落ち着くんだアルスアルマル。まずは落ち着いて深呼吸を...

 

 

「めちゃくちゃ可愛いですよ!」

 

「「「ええええええええええ!」」」

 

 

なななななななななんて!?そして葉隠ちゃんと三奈ちゃんはニヤニヤしてんじゃねえ!!やめろ!!退路を塞ぐな!!

にしても..えぇそうなんだぁ..えび先輩...ええぇ!?!

 

 

「どうしたんですかね師匠」

 

「エクスくん、今のはどういう意図で言ったん?」

 

「いや頭身的にマスコットっぽくないですか?」

 

「あーなるほど。それ絶対アルスちゃん言っちゃダメやからね」

 

「..?わかりました?」

 

 

なんかお茶子ちゃんと話してるけどなんだろ...

ええいっ!恋バナ中毒者(ジャンキー)(葉隠と芦戸)ども離れろっ!

ぼくの両腕をホールドするなっ!

 

 

「そんなことより師匠!このアクセサリー貰ってくれませんか!!」

 

「「「えええええええええ!!」」」

 

「なんだかオイラたちの頑張りが、リア充のイチャイチャのために消費されちまったな」

 

「まあ目標達成はできたんだ。いいことにしてやろう。上鳴電気はクールに去るぜ..」

 

 

今日のお前どうしたんだよっ!!!!!さっき別れてから一体何があったの!!?あの一瞬でどうやってアクセサリーを!?まさか前々から準備を...!?

 

 

「...ってなにこれ」

 

「不死のトーテム?って名前みたくて、お守りみたいなもんですね。要らなかったら捨てますけど..」

 

「ああいや、ありがと?うん。ちょっと変わった造形してるから気になっただけで...うれしいよ」

 

 

モアイみたいな形をしたお守りみたいだけど...素材は案外ちゃんとしてる...なんかの合金かな?

 

 

「ただあの...今度からもうちょいタイミングっていうのを考えていただけると...」

 

「..?わかりました!あとそろそろ抽選が始まるみたいですよ?」

 

 

ああ行っちゃった...おいやめろ!そこの中毒者2人裏切られたって顔でこっちを見んじゃねえ!!何もねえからっ!!

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

尾白達の辞退といったイベントはあったものの、抽選自体は滞りなく行われた

俺と師匠は反対ブロックだったので、決勝で当たる予定だ

 

 

「師匠1回戦誰とですか?」

 

「ぼくは飯田くんとだね。えび先輩は?」

 

「八百万さんですね」

 

「ぼくと戦う前に負けんなよ?」

 

「こっちのセリフですけどね。絶対ヴォコヴォコにしてやるんで覚悟しててください!」

 

 

これから午後のレクリエーションが始まるが、師匠は魔力回復のため出ないようだ。僕はせっかくなので出ることにした

 

借り物競走でデカイものというお題を引き、師匠を呼びに行った僕は何も悪くないと思う

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「だから言ったじゃないですか。辛くなるだけだからやめとけって」

 

「だってェ...だってェ...」

 

「ほら涙拭いてください。せっかくの可愛い顔が台無しですよ?」

 

「...エクスくんなら、忘れてても思い出してくれるって思ってたの二...」

 

「まあまあ、この先も記憶を思い出さないって決まったわけじゃないんだ。もしかしたらふとした瞬間に思い出すことだってあるんじゃないかい?」

 

「ウゥ....」

 

「どうします?今日はもう帰りますか?教祖に無理をさせて用意した席ですし。お金的に損はしないんで」

 

「イヤ!最後まで見てきまス!!!」

 

「そうですか..ならほら、ちゃんと座って応援しましょう?」

 

「ウン...」

 

「お母さんみてえだな」

 

 



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英雄の戦い方を見せてあげますよ!

 

いや心操さん個性えっぐ、会話するだけでアウトとか初見殺しすぎるやろ。戦わなくてよかったーマジで。

緑谷さんよく耐えたな。耐えれるもんなのか?

 

「うわっ寒!?」

 

なんか考え事してたらでけえ氷出てきた!?轟さん!?ちょっとやりすぎじゃない?誰が勝てるんだこんなん。いや全身凍らされなければ叩き割れそうやけど、そうやけども、えぐすぎるって。

 

ああ溶けた。そういや氷と炎使えるんだっけ、にしては炎使ってるとこあんま見てないけど?なんかデメリットとかあるんかな。なんか怖い顔しとるし...これは師匠決勝厳しいか?

 

「次が...上鳴さん...あっ!はじまった!...おわった」

 

瞬殺すぎるて。一瞬で師匠の番じゃん。師匠の見たら俺も準備するか...

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ぼくの1回戦の相手は飯田くんだ。蹴り主体で、高速で移動ができる。そしてなにより、真面目である

 

 

「悪いがアルスくん、俺は本気で君に挑ませてもらう!君相手に蹴りを躊躇して勝てると思うほど間抜けではないからな!」

 

「いいよ!本気でかかってきなよ!ぼくは絶対負けない!!」

 

 

飯田くん相手は、正直この勝負形式だとかなり分が悪い。魔法を唱え終える前に間合いに入られる可能性が高い。良くて同時だろう。そして間合いにはいられたら中遠距離タイプなぼくに勝ち目はない

 

....キツくね?

 

まあだから勝負は一瞬。あのタイミングを逃すかどうかで勝敗が決まる

 

 

『アーユーレディ? それじゃあ4回戦、スタートォ!!』

 

 

「レシプロバースト!!」

 

飯田くんはプレゼントマイクの宣言と同時にこちらへ肉薄してきた。既に足は振り上げられ、僕の胴体へ向けて放たれている

 

この時点で僕が場外へ蹴り飛ばされることは確定した未来だろう

 

 

 

でもそれでいい

 

 

「うぐっ!?、クッ、『ウィンドランページ』!!」

 

 

場外に着く寸前に放った風魔法は僕の体をステージ上空へと押し戻していく

 

 

「何!?」

 

「からの『フリーグラヴィティ』!」

 

『おおっと!アルス・アルマル!着地地点に突風を起こし!自身をステージへと押し戻した!!』

 

『飯田の蹴りを防げないことを前提に立ち回ったのか。よく考えたな』

 

 

「ハァ、ハァ、.....おえ...やば、お昼全部出てきそう..さっさと終わらせるよ。もっかい『ウィンドランページ』!!」

 

「うおぉ!!?」

 

ステージへ向けて放った強風が、飯田くんを場外へと吹き飛ばしてくれた

 

 

「飯田くん場外!勝者!アルス・アルマル!!」

 

 

会場からぼくへ向けた賞賛が送られてくるが、今はそんなことより保険室いきたい、すごくお腹痛いぃ...ワンチャンあのまま意識飛ばされて負けてたかも..?

 

 

保険室へ向かっていると、控え室に入るえび先輩と遭遇した

 

「師匠めっちゃ凄かったですね!!お腹は無事ですか?」

 

「全然無事じゃねえよぉ...こちとら可愛い女の子だぞ..『ヒール』かけてるけどまじで辛い..」

 

「大丈夫ですか?!...俺出番まだなんで送りましょうか??」

 

「大丈夫だから...えび先輩の出番までは帰ってくるから...だから頑張って」

 

 

てかえび先輩次じゃん、嘘つきやがって....急がなきゃ...

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

大丈夫かなぁ師匠、めちゃくちゃ辛そうだったけど。

そんなことを考えながらステージへ向かうと、八百万さんがそこにいた。大丈夫?顔青くない?あれは多分色々考えすぎてますね。八百万さんの個性だと尚更考えることが多いしな...そんな状態の相手に勝っても楽しくないよな...

 

「八百万さん!」

 

「えっ?はい!なんでしょうか?」

 

「表情、すごく自信なさげになってますよ。ヒーロー目指すんなら胸張って自信見せてかないと!」

 

「...!お気ずかい感謝しますエクスさん。私、少々緊張していたみたいですわ」

 

一気にいい顔になった。ここまで切り替えが早くできるんなら、俺の不安は杞憂だったかもしれない

 

 

『さて!準備はできたか?第6回戦!Lady FIGHT!』

 

プレゼントマイクの放送が鳴り響き、試合がはじまった

八百万さんは右手に棒を、左手に盾を生み出しながらこちらへと向かって来た。ある程度戦闘の心得もあるらしく、足取りは素人のそれではなかった

 

対するこちらは軽く右足を引き、両手を構える。俗に言うファイティングポーズをとる

 

「はっ!」

 

掛け声と同時に突きを放ってきたため、それを掴み取り、こちら側へ強く引く

 

「んな!?」

 

八百万の体制が大きく崩れ、前のめりになったので勢いそのままに、遠心力をかけながら場外へと振り回す

 

「なんの!」

 

八百万さんは棒を離して受身を取りこちらへと身構えた。続けて、盾で身を隠しながらこちらへと走って来る。策もなしに近距離戦を挑んでくるとは考えづらいので、盾で隠しながらなにか作っているのだろう

 

「今ですわ!!」

 

と思いきや盾からなにかが射出された。こちらに広がりながら飛んでくるそれは、おそらく捕獲用のネットかなにかであろう。拘束される訳には行かないので奪い取った棒で巻き取り回避する

 

「それも想定通りです!!」

 

八百万さんは盾をこちらに放り投げて何かを構えた。小さめのピストルのような...?

引き金が引かれると、銃口から数本のワイヤーのようなものがこちらへ向かってきた

先程と同じように棒で絡め取ろうとするが、

 

「あがっ!?」

 

全身に電流が流れた。どうやらあのワイヤーには電流が流れていたらしい。そして俺が振り回していたこの棒もおそらく金属製であり、当然電気が流れ感電したようだ

 

「テーザー銃ですわ!!」

 

テーザー銃というらしい。なかなか電流がつよい。USJで師匠に食らわされたあれほどではないにしろ、常人なら失神しているだろう

俺でも身動きが取れないほどだ

 

「どうして倒れないんですの!?なっ、なら次の手ですわ!」

 

こちら側耐えていることを確認した八百万さんは次のアイテムを作り始めた。八百万さんの装備が整った頃にようやく電流が無くなった

 

「電気が切れた、くらえっ英雄パンチ!」

 

そろそろ反撃開始の時間だ。手始めにかっこいい技名とともに持っていた棒を八百万さんへ向けて投擲する

 

「パンチとは!?」

 

投げた棒は、八百万さんが作り出した盾の芯を捉え、運動エネルギーを余すことなく体まで伝え、当然のように八百万さんを後方へ吹き飛ばした

 

「そんな!?」

 

八百万さんは場外との境目ギリギリで踏みとどまったようだ。俺は近くに落ちていたネットを拾い、上から被せた

 

「嘘、こんな...一瞬で.....」

 

再び戦う前の顔つきに戻ってしまった....悪いことをしてしまっただろうか。これなら、最初からなにもしないまま戦った方がマシだったのかもしれない...

 

「次は、負けませんわ!」

 

かと思いきやすぐに切り替え、次を目指したようだ。俺も学ばないな。また杞憂民になってたようだ

 

「ええ。楽しみにしてます」

 

俺は八百万さんを優しく場外へと転がした

 

「八百万百場外!勝者エクス・アルビオ!」

 

俺はすぐに八百万さんにかかったネットを外し...外...あれ?

 

「ちょっ、これどうなってんの??あっ!やべえ腕に絡まった!!」

 

「...なんだかアルスさんの気持ちが少しだけ分かりましたわ」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「師匠!見てましたか!!」

 

「うん、すごく絡まってたね」

 

「余計なとこまで見なくていいんですよ」

 

観客席に戻ったら師匠がいたので、先程の戦いを称賛する権利を与えたのだが、彼女にはまだ早かったようだ

 

「それにちょっと舐めプしてなかった?」

 

「人聞きの悪いこと言わないでください?」

 

「でも個性使ってなかったよね?」

 

「......まあ」

 

そう、先程の試合ではエネルギーを使わなかった。それをしてしまったら、試合ではなくただの作業になってしまうと思ったのだ

 

「..別にいいともうけどさ、相手によってはめちゃくちゃイラッとするから気をつけなよ?」

 

「...わかりました」

 

思ってたんと違う...いや、ごもっともなんだけどさ!多少は褒められるとおもと思うじゃん!?

 

「それは別として、えび先輩って巧いよね?判断とか細かい技術とか」

 

「師匠〜!!」

 

「何!?やめろぉ!気安くぼくの頭を撫でるんじゃねえ!!離せっ!中毒者が来るだろうが!!」

 

「アルスちゃ〜ん」

 

「ちょっといい?」

 

「噂をすればあああ!!!」

 

師匠はどこからともなく現れたすごくイイ笑顔の葉隠さんと芦戸さんに連行されていった。師匠を連れていく際に軽く会釈されたがなんだったのだろうか

 

「まあ切島さんと鉄哲さんの試合はまだまだかかりそうですし、俺もトイレとか行こうかな」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「あれエ?ギル様は?」

 

「あぁ、飽きたから帰るって言ってましたよ?」

 

「エエェ!?ここからがいいとこだと思うんですケド?」

 

「私もそう言ったんですけど、モウアキタ!カエル!って言って帰っちゃいましたよ。終わったらLINEしてーですって」

 

「そっカー...」

 

「すいませんお嬢さんたち、入場確認表を見せて貰ってもよろしいですか?」

 

振り向くとそこには巡回中のヒーローがいた。観客としてではなく、警備として今日1日雇われたヒーローである

 

「アー、すみませんネ。持ってないデス。でも、大丈夫でしょう?」

 

「何を?.....ッ?!.......そうですね。ごゆっくりとお楽しみください」

 

様子のおかしくなったヒーローはその場から去っていった

 

「ほんとに便利ですネ個性っテ」

 

「でしょう?教祖のおかげですね」

 

「呼び方が1ミリも敬ってないんでスネ..」

 

 



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強敵と戦いますが英雄なので負けません!あと師匠も!



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2試合目は、俺も師匠も無事突破できた。師匠は塩崎さん相手に炎魔法で牽制しながら場外へ追い出し無事勝利、俺は芦戸さんが相手で、普通に酸を避けながら場外へ放り投げた。かなり相性がよかったと言えるだろう

 

問題なのは次の試合だろう。師匠の相手は氷結の弱点を克服した轟さん、聞いた話だと緑谷さんが頑張ったんだとか。行動がすごくヒーロー的である。彼はいづれなにかすごいことを成し遂げそうな気がする

 

ただ別に師匠と轟さんの相性は悪くないと思う。

入学当初と違い、師匠は炎魔法を扱えるようになっており、1回戦で見せたあの大氷壁だけでは沈まないだろう。炎に関しても風で吹きとばせそうだ

 

懸念点としては、師匠は個性の行使に詠唱が必要であり、轟さんはノータイムでそれができる点だろう。

一瞬の隙を突かれて敗北する確率は決して低くは無い

 

まあ何とかなるでしょう。俺の次の相手は爆豪さん。

俺が警戒しているのはあの大爆発だ。スタートと同時に打たれたら結構やばい。ただ今までの試合を見ても使っていたのは麗日さんとの勝負の終盤

 

このことから俺は、あの技を使うには一定時間のチャージが必要だと考える。てかそうであって欲しい。

初手であれを食らうのが今んとこ1番の負け筋だ

 

 

 

 

 

______裏を返せばそれ以外で負ける気はしない

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「アルス、悪ぃが本気を出せるか分からねぇ」

 

 

ステージ上で向かい合ってすぐに、轟くんはぼくにそう言った

 

 

「本気って...炎は使わないってこと?」

 

「..分からない。緑谷と戦ってから自分がどうすればいいのか、何が正しいのか分からなくなっちまってんだ」

 

「別に好きなようにすればいいと思うけど...どうしてそれをわざわざぼくに?」

 

「お前は騎馬戦の時に、俺に対抗意識を持ってるみたいなこと言ってなかったか?」

 

「あぁあれね。別に今すぐじゃなくてもいいよ。それに尚更、今悩んでる相手に勝ったって嬉しくないし」

 

「....」

 

「でもさ、悩んでるってことは、何かを掴みかけてるってことじゃない?」

「掴みかけてる...のか」

 

「うん。ぼくはそう思う。すぐにそれを自分のものにするのは難しいかもだけど、この戦いを足掛かりにするくらいの気持ちでかかってきなよ。

 

 

 

 

ぼくは全力でそれに答えるよ」

 

「....!やっぱこのクラスのやつはお人好しが多いな」

 

 

『お話は終わったか?それじゃあ準決勝、アルスアルマルVS轟焦凍!!スタートォ!!!』

 

 

轟くんは開始と同時に、1回戦で見せたような氷を生み出した。規模感こそ1回戦よりは小さいものの、それはステージ上の半分を埋めつくしており、傍から見ればぼくが飲み込まれたように見えるだろう

 

 

『おぉっと!?いきなりかましたぁ!?早くも勝者は決まったか!?』

 

 

ちょっとまてよぉ!?まだ終わってねぇって!!

 

 

「『ノヴァフレイム』!!」

 

 

大氷壁の内側からドーム状に炎が広がり、氷を溶かし尽くす。危なく負け判定食らうとこだった。轟くんは氷を溶かされても表情を変えずに、次の氷を作り始めていた。大氷壁を打ち破られることは想定済みみたいだ

 

 

「『ウィンドランページ』!!」

 

 

今日何度も使っている風魔法で生成途中の氷ごと轟を吹き飛ばすが、器用に背後にU字の壁を作りその上を滑って、勢いに乗ったままこちらへと向かってくる

中距離戦はぶが悪いと考えたのだろう

どうやら近距離戦に持ち込むつもりのようだ

 

 

「『パワード』!『スピーダー』!『ガードナー』! 」

 

 

ならばこちらも補助魔法を全開にして対応しよう。この2週間ぼくは魔法の練習に使った訳では無い。えび先輩に頼んで近接戦闘の基礎を教えてもらったのである

 

この2週間で学んだことを活かすチャンスだ!轟くんが間合いに踏み込んできたのを確認して、こちらも構える

 

相手の攻撃を躱す、攻撃が頭に掠る。攻撃を躱す、頭に掠る。躱す、掠る.....

おかしい。タイミングは完璧なはずなのに何故か絶妙に避けきれない....

 

 

「頭がでけえって言いてえのかあああぁぁぁぁ!?」

 

「うおっ!?」

 

 

怒りに任せて攻撃を叩き込むが防御され、受け流される。やっぱり付け焼き刃じゃできるのはここまでのようだ...

 

もう一度魔法を放ち距離をとり、空中へと浮かぶ

 

 

「悪いけどもう決めさせてもらうよ」

 

 

こちらを見あげる轟くんに対し、次で決めると宣言する。直訳すると、全力で受け止めて見せろ。だ

 

 

「....こっちの気持ちも知らねえで勝手なことを、

(こっち)はまだ加減がわかんねえけど、後悔すんなよ!」

 

 

轟くんは悪態をつきながらも口元に笑みを浮かべていた。悩みが晴れたわけでもないのだろう。これから清算すべきこともあるのかもしれない。ただ、今日再び、彼は悩みを忘れることができたみたいだ

 

 

「望むところだよ!!

『ウィンドエクセキューション』!!」

 

 

ぼくが使える風属性魔法の中でもっとも威力が高いものを放った。 それに対して轟くんは左半身に炎を纏い、拳を握りしめ、殴りつけるように炎を放った。彼の父親のエンデヴァーが使う技の中に同じようなものがあったはずだ

 

 

「いいぞ焦凍おぉぉぉぉ!!!!いけええぇぇぇぇ!!」

 

 

観客席からエンデヴァーが叫んだらしいが、僕らには届かなかった。荒ぶる暴風と限界を超えた炎は、ステージの中央でぶつかり合い拮抗した

 

 

「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」」

 

 

お互いに1歩も引かず、会場の温度はどんどん上昇していくが、誰も不満を漏らさない。風と炎の美しくも、荒々しい押し合いに心を奪われ、静かに、しかし拳を強く握り目締めながら決着を見守っていた

 

永遠かと思われたその時間は、時間にしてみれば数秒で、その拮抗に乱れが現れた。炎が一瞬大きく揺らめいたかと思うと、徐々に風に押されはじめ、ついにその灯火は潰えてしまい、轟は場外へと投げ出された

 

 

「...!勝者!アルス・アルマル!!」

 

 

「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」」

 

会場の割れんばかりの声援を背に受けながら、ぼくはそのばから去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ど、どうしよ....魔力使い切っちゃった....

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

ええええええええ、師匠強すぎない!!?何回俺の想像超えてくるんだ!?え?俺あれに勝てんのかな?!

おおおお、落ち着け、俺は冷静沈着エクスアルビオ。

まずは目の前の試合に集中...

 

 

「えび先輩!」

 

「エェェックス!?」

 

 

いきなり背後から声をかけられ思わず飛び上がってしまった

 

 

「えなにその驚きかたキモ..」

 

「いやいやいやなんの用ですか師匠!?」

 

「あー、試合場今修復中だから次の試合10分くらい遅れるって。やっぱり聞いてなかったでしょ」

 

 

言われてモニターを除くとセメントス先生がボロボロになったステージで復旧作業を行っていた

 

 

「あぁありがとうございます師匠!それとさっきの試合めっちゃ凄かったです!」

 

「フフん、まあね!ぼくにかかればあのくらい造作もないってことよ!!」

 

「あれだけやってまだ余力を残してるってことですもんね!ちょっと強すぎません?」

 

「ギクゥ!?」

 

「ギクゥ?」

 

「いやいやいやなんでもないよ!?とりあえずぼくは向こうの控え室行くね?!頑張ってきて!!」

 

「あっはい」

 

 

なんかすごい早口で捲し立て、早足で去っていってしまった。早くも決勝へ向けて精神統一をしているのかもしれない

 

 

 

 

『控え室のエクスアルビオー、復旧作業が終わったって放送聞こえなかったかー?』

 

いつの間にか復旧作業も終わったようなので、会場に向かって長い廊下を急ぎ足で歩いてると、客席のヒーロー達の盛り上がりがここまで聞こえてきた。既に時間はたっているがまだ興奮が冷めて居ないらしい

 

まあ気持ちはわからなくもない。まだヒーロー免許を取ってない学生が、あれだけのものを見せたのだ。

将来有望なんてもんじゃないだろう。

そしてその期待はそのまま次の俺達の試合に引き継がれる

 

....爆豪さんはともかく、俺はあそこまで派手なこと出来ないんだよなぁ...会場めちゃくちゃ盛り下がったらどうしよ...

 

そうこうしてるうちに、ステージにたどり着いた。爆豪さんは既に着いていたらしく、狂人的な笑みを浮かべ、こちらを睨んでいた

 

 

「遅かったじゃねぇかクソ鎧...」

 

「爆豪さんって意外と真面目って言うかみみっちいですよね」

 

「時間を守んのは社会人の基本だろうがぁ!!」

 

 

ここまで真面目なのに、なぜ発言はここまで残念なのか、ギャップ萌え...というやつを狙っているのだろうか

 

 

「あの大福頭を倒して、完膚無きまでの1位をとるんだ。そのためにクソ鎧、てめぇをぶっ殺す!!」

 

「その子供じみたプライドはデメリットの方がでかい気がするんよなぁ..」

 

「あ''ぁ''!?」

 

「まあだから、ここでバキバキにへし折ってあげますよ。爆豪さんなら糧にできると信じて」

 

「...やってみろやクソ鎧がっ!!」

 

 

『ハイスタート!!...あぶねえ、あと一歩遅れてたら勝手に始められてた..』

 

『ダメじゃないか?それ』

 

 

爆豪さんは開幕同時に爆風ターボを決めこちらに突っ込んでくる。良かった。これで負け筋はほぼ消えた。

となるとやはり、チャージか時間経過で威力が上がって来るのだろうか

 

勢いに乗ったままこちらにつかみかかってくる爆豪さんの手を、姿勢を低くし爆発を避けながら掴み、投げ飛ばす

 

爆豪さんは空中で爆発を起こし、体をこちらに向けてきたので、それにドロップキックを合わせる

 

「んがっ!?、チィ...」

 

さすがにこれだけで倒れる爆豪さんではなく、すぐに体勢を戻し、再びこちらへと爆速で接近する

初動と同じ動きかと思えたが、掴みかかる直前で爆発をひとつ起こし、俺の背後に回り込み、奥襟を掴もうとした

 

俺はそれを姿勢を低くして回避し、振り向きざまにドロップキックを食らわせる

 

 

「...んでだよ!!クソがぁ!!」

 

 

地面を転がった爆豪さんは三度こちらへ接近する、

ただそのスピードは先程よりも遅く、踏み込みも浅いため、麗日さんとの戦いで見せた、中距離からの爆発に切り替えたようだ

 

爆豪さんの射程距離に入り、爆発を誘発する。

爆豪さんと俺の間に爆発が発生するタイミングで、それを飛び越え、爆豪さんの背後へと降り立つ

 

「んな!?」

 

あの爆風の中でもしっかりとこちらを視認していたらしく、驚いた表情を浮かべつつも、爆豪さんは振り向きながら攻撃に移ったので、回転の際に不安定になった軸足を払い転倒させる

 

マウントを取ろうかと思ったが、爆豪さんはこれを驚きの反射神経で爆発を起こしながら回避。再び距離を取られた

 

「ハァ....ハァ...クソがっ...!!」

 

(動きを全部見切ってやがる、不意打ちも効かねぇ、数打とうにもその前に潰される!!

それになにより...!!)

 

「てめぇ....!!なんでまだ個性を使いやがらねぇ!!舐めてんのか俺を!!!」

 

「あー、やっぱわかっちゃいますかこれ」

 

 

別に悪気はなかったのだが、ただ何となく個性は使ってなかった。師匠からも言われていたが、2試合目も使うタイミングがなかっため、せっかくだからどこまで行けるのか試していたのだ

 

 

「さすがにちょっと失礼ですもんね。じゃあ、次はこっちから行きます」

 

 

勝手に始めた縛りをやめ、全身にエネルギーを行き渡らせる

 

軽くジャンプし調子を確かめて、爆豪さんに接近する

爆豪さんはこちらに身構え爆発を起こすが、ドロップキックでごり押す。爆発のダメージは食らってしまうが、こちらの攻撃を当てることにも成功した

 

間髪入れずにもう一度接近を試みるが、爆煙の中から再び爆発が起きた。爆風が晴れた場所に爆豪さんはおらず、周囲を見渡しても姿を見つけることは出来ない

つまりは...

 

 

「上...だ!!!しねぇ!!!!」

 

 

見あげると真上から爆豪さんが両手で大爆発の構えを取っていた...やべぇ!

 

 

「うおおおおおおおお!!」

 

 

エネルギーを全開にし、全力で宙返りをしながら蹴りを放つ。放たれた蹴りは、爆豪さんの両手のすぐ下を通りすぎる。一見空ぶったかのように見えたそれは、空気を動かし、爆豪さんの両手は風圧によって角度が変わっていた

 

大爆発が起こるギリギリで両手を弾かれたことによって、発生した爆発は俺のギリギリ後ろを破壊した。

爆発を起こした爆豪さんはその反動により、場外へと吹っ飛び、そのまま意識を手放した

 

俺のドロップキックを食らった時点でギリギリだったらしい。最後の気力を振り絞って攻撃を仕掛けてきたのか...

 

彼の自尊心をいい具合にへし折ることは出来ただろうか?まああの天才なら放っておいても成長するだろう

俺も少し天狗だったかもしれない

次の師匠との試合に備えなくては...

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

アカーン!!!魔力がっ....魔力がぁっ....!!

どうしよどうしよどうしよ....!?

えび先輩の試合終わっちゃったし、20分のインターバルはさんだら始まっちゃう!!?

 

 

やばいやばいやb...

 

「いたっ、」

 

「あぁすまないすまない、周りを見てなかったもんで...大丈夫かい?君は...あぁアルスくんじゃないか、試合見てたよ」

 

 

若干高めの男性の声に、顔をあげてみると、そこには紫色の肌の大男がいた。どこかのヒーローであろうか

 

 

「...おや?なにやら様子が変だねぇ...もしかしてさっきの試合で力を使い切ってしまったのかい?」

 

「えぇっ!?なんでわかっ......はい。実はそうなんです」

 

「それは困ったねえ。なにか方法はないのかい?」

 

「えぇっと...他の人から魔力を吸収する魔法とかもあるんですけど...友達には頼みづらくて...」

 

「ならヴァン...おじさんから吸ってきなよ」

 

「えぇ!?いいんですか!?」

 

「もちろんもちろん、次の試合も楽しみにしてるよ?」

 

「ああぁありがとうございます!!」

 

 

なんて親切な人なんだ...た、助かった...

 

 

「うん、じゃあヴぁ..おじさんはこれで...」

 

「あの!お名前を!!」

 

「なま、名前かぁ...えーと...剣持刀也(けんもちとうや)だ」

 

「剣持さん...ありがとうございました!!この御恩は忘れません!!」

 

「いいってことさ!それじゃあ頑張ってね!」

 

 

...にしてもあのおじさん..見たことないヒーローだったな...剣持..?それに、魔力吸収したのに全然つかれてないし、めちゃくちゃ強いのかな...指名来たら行ってみようかな...

 

そろそろ次の試合の準備しなきゃ..!

 





ギルザ...なんだただの剣持か...


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師匠をヴォコヴォコにします!!覚悟はいいですか?

 

 

 

「とうとうこの時が来てしまいましたね師匠、負けた時の言い訳は考えてきましたか?」

 

「それはこっちのセリフだよ英雄さぁ〜ん?」

 

 

20分のインターバルが終了し、決勝戦が始まろうとしていたのだが、

前二試合の雰囲気とは大きく異なり、お互いに向かい合ってかれこれ1分以上煽り合っていた

 

 

「弟子は弟子らしく、師匠に倒されておけよ〜?」

 

「何言ってんすか師匠、弟子は師を超えるものッスよ?」

 

『おいおいそろそろいいかお二人さん、お熱いのはいいが、会場はとっくにボルテージMAXだぜ?』

 

「お熱くねえから!!!!」

 

 

 

正直なところ、俺が師匠に勝てる確率はそんなに高くない。もしこれが、どちらかが倒れるまで戦い続ける勝負だったら、負ける気はしないが、この勝負は場外へ出されても負けとなってしまう

 

これが非常にまずい。限られたフィールドであの威力の魔法が直撃したら、ステージの上に立っていられる自信がない。それでもやるしかない。一応対策は考えてきたが、かなり一か八かの賭けになるだろう

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

『準備はいいな?それじゃあ!決勝戦!!レディ?ファイト!!!』

 

えび先輩相手に接近戦で勝つのは不可能、この2週間でそれは嫌なほど分からされた。だから遠距離戦、それも場外への押し出しが勝利への鍵になるはずだ。奥の手も一応あるが、可能ならば使いたくない

だからまずは隙を作って、空中に逃げる!

 

「『サンダーボルト』!!」

 

ぼくが雷魔法を好んでいるのは、着弾までの時間が圧倒的に短いからだ。ほかの魔法じゃ多分、簡単に回避されちゃう。だから打ったのとほぼ同時に着弾するこの魔法で足止めをする

 

雷が直撃したことにより、えび先輩は一瞬動きを止めた。これで一瞬で済む辺り頭おかしい

無理やり生み出した隙を使って重力を無くし浮遊する

 

ここまで順調だ、後は...

 

「危ねぇっ!?」

 

えび先輩がステージを砕いて投擲してきた

咄嗟に魔法でガードするも、数の多く狙いの精確で攻撃に転じることができない、しかも1個1個がエネルギーで強化されてて頑丈だ

 

「ならっ、『リフレクト』!!」

 

貼っていたガードをリフレクトに変え、投擲を反射する。えび先輩は跳ね返ってきたそれを転がりながら避けた。今のうちに下へ降りる。反重力魔法は重力から開放されるだけで、空中で自由に動くには外力が必要になる。つまりぼくは空中にいる間身動きがとれない以上いい的でしかない

 

加えてリフレクトはコスパが非常に悪く、そう何回も発動はできない。再び投石が開始された場合、魔力が削られ続けることになってしまう

 

幸いにもえび先輩はまだ遠くにいる。距離があるうちに仕掛けなくては

 

「『ファイアバーン』!!」

 

ぼくの予想だと、えび先輩は風魔法一発で吹っ飛びはしないはず。だからまず炎と雷でダメージを与えて、弱ったところを風魔法で吹き飛ばす作戦でいく

 

巨大な炎でえび先輩の姿が見えなくなった瞬間、

炎は消え、熱された風が吹いてきた

 

「は!?」

 

見ればえび先輩は手に脱いだ上着を握っていた

 

 

『な、なにいいぃぃぃ?!エクス・アルビオ!ジャージの上着で炎を消し飛ばした!?そんなことが可能なのか!?』

 

『...個性で強化した上着を振り下ろし、風圧と衝撃を起こしたのか』

 

「な、なら!『サンダー』!!」

 

 

スパァン!!

 

 

『......な、なあイレイザー、俺の目には今、雷も切り飛ばしたように見えたんだが』

 

『.....アルスの雷の性質的に切る事が可能なのか、エクスの個性で可能にしてるのか....だとしても飛んでくる雷にジャージを合わせたのは確かだな』

 

「い、インチキにもほどがあんだろうがよぉ!!!」

 

『俺も正直そう思うぜ、アルス少女』

 

『平等に実況しろマイク。...まあ俺もそう思うが』

 

「なんかみんな俺に厳しくない?」

 

 

雷見切れるって何??あ、えび先輩目がめっちゃ光ってる強化してるのか....だとしてもおかしいだろ?!

 

 

「来ないならこっちから行きますよ師匠」

 

「ヤバ、『サンダー』!『サンダー』!」

 

 

苦し紛れにサンダーを放つが1発目は外れ、2発目は切られる。

徐々に距離が狭まっていき、あと数歩で間合いに入られるところまで来られてしまった

 

 

「『ノヴァフレイム』!!」

 

 

自身を中心に爆炎を発生させ、時間を稼ぐ。

今のうちに風魔法を準備し、視界が開けたと同時に当ててやる

 

炎が最大まで広がり、消えていくのと同時に詠唱を完了させる。

炎が消え切り、視界が開けたがえび先輩の姿が見当たらない。

周囲を素早く見渡すが、どこにも....

ッてことは_____________

 

「上っ!?」

 

「遅いっすよ師匠!!」

 

上から降ってきたえび先輩にジャージを巻き付けられ高速される。エネルギーで強化されたそれは、ロープよりも硬く、抜け出すことができない

 

「俺の勝ちっすね師匠」

 

「....えび先輩って優しいよね」

 

「今更媚びを売ったところで、今回の勝利だけは譲りませんよ!さあ師弟関係逆転でもしますか?」

 

「先輩優しいから、女の子に攻撃しなかったもんね」

 

「なんの話してるんですか師匠」

 

「はっきりいってこれは使いたくなかったんだよ。試合に勝って勝負に負けた感じがするから」

 

「おーい、師匠?負けたショックでおかしくなっちゃいました?」

 

「『ピットフォール(落とし穴)』」

 

「......え?」

 

 

えび先輩の体はガクリとさがり、ステージを貫通して地面に落ちていた。ぼくは序盤に使った魔法のおかげで宙に浮いたままである

 

 

「し、師匠?あんたまさか...嘘ですよね!?そんなことするわけないよね!?」

 

「内容的には負けたとは思ってるよ、でも、この試合はぼくの勝ち」

 

「エクス・アルビオ場外!勝者!アルス・アルマル!」

 

 

一番の盛り上がり所である決勝戦は、なんとも閉まらない形で幕を閉じてしまった

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「それでは!表彰式に移ります!!」

 

 

ミッドナイトの進行で表彰式が始まった。

表彰台には様子が異なる4人が立っていた。

金髪の少年は膝から崩れ落ちたまま固まっており、隣の爆発少年はそれにキレ続けた結果拘束され、 その隣の紅白少年は我関せずといった感じで佇んでいる

その中で一番高い位置にいる少女はとても居心地が悪そうにしていた

 

 

「今年メダルを授与するのはもちろんこの人!」

 

「私が!!メダルを持って「我らがヒーロー!オールマイトォ!!」来た!! 」

 

 

かっこよく登場したオールマイトのセリフは不幸にもミッドナイトの司会と被ってしまった。オールマイト

は講義の視線をミッドナイトへ送り、ミッドナイトは手を合わせて謝罪する

 

オールマイトは気を取り直して表彰に戻った

 

「轟少年、おめでとう。表情を見たら分かる。変われたみたいだね」

 

「緑谷できっかけをもらって、アルスに自信をもらいました。俺は、あなたや、あいつらみたいなヒーローになりたい。...ただ、まだ精算しなきゃないこともある」

 

「深くは聞くまい...だが、今の君なら、必ず成し遂げられるさ」

 

そう言って轟を深く抱きしめ、爆豪の前へと移動する。既に爆豪は暴れておらず、まっすぐオールマイトを見つめていた

 

「お疲れ様爆豪少年。今日の戦いで、君は何を学んだのかな?」

 

「....俺は俺よりすげえ個性のやつにも、そのうち勝てると思ってたし、勝って踏み台にするつもりでいた。

でも今日、個性を使ってない状態のやつに最後の方までボコボコにされた。...根本的に何かが間違ってるって気付かされた。...それがなんなのか考ようと思う」

 

「いい友人に恵まれたね。爆豪少年。悩んだ時は、友や先生にも相談しなさい。そのために我々はいるんだから」

 

「ただ、そいつの決勝戦の負け方は心の底から納得してねえ」

 

「それは....まあ...うん..」

 

オールマイトは爆豪と強い握手を交わし、崩れ落ちてるエクスに声をかける

 

「だ、大丈夫かい?立てる?」

 

「あ、大丈夫です..」

 

「今日の試合の反省点は自分で分かってるね?」

 

「.....はい」

 

「じゃあ私からは何も言わないさ。最後の試合以外は素晴らしかったぜ?ナイスファイトだ、エクス少年」

 

オールマイトはエクスの背を叩いてアルスの前へ移った

 

「優勝おめでとう!アルス少女」

 

「あ、ありがとうござます..」

 

「あの決勝を勝った側としてはどうだった?」

 

「...気持ちのいい勝利ではありませんでした。内容だけ見ればぼくの負けです。自力では絶対叶わないと思っちゃったので、努力していつか泣かせようと思います」

 

「そ、そうかい。ただ、今回君がとった行動は間違いじゃなかっと思うよ。力はこれから伸ばしていけばいいさ」

 

オールマイトは若干苦戦しながらアルスにメダルをかけた

 

 

「今日頑張った彼らに一言!!それでは皆さんご唱和ください!せーの!!」

 

 

「「「「プルス「お疲れ様でした」ウルトラ...」」」」

 

「「「「えええええええええええ!!」」」」

 

 

長かった雄英体育祭は、オールマイトへのブーイングで幕を閉じた

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「プルスウルトラー!!っテ、エエエエェェェ!?そこハプルスウルトラでしょうガ!!」

 

「なんだかレヴィさんご機嫌ですね。満足のいくものが見れましたか?」

 

「まア...満足っちゃ満足ですネ!エクスくんに忘れられちゃってたのは残念だけド....」

 

「帰ったら教祖様に相談してみましょうか。あの人が持ってもののうちに、なにかいいものがあるかもしれませんし」

 

「その手があったカ!!そうと決まれば早く帰りましょウ!!ギル様!!ギル様!!」

 

 

少女が空間に声をかけると、黒い窓が現れた

 

 

「そんな大きい声を出さなくても聞こえているよまったく。ほらさっさと入りな」

 

「ありがとうございまス!剣持さ〜ん!!」

 

「ああ行っちゃった、まったく気が早いんですから」

 

 

 

 

 

 

 

 



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職場体験先を決めるぞ!任せた!緑谷さん!

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雄英体育祭の疲れも癒え、2日後

俺はいつも通り師匠と学校へ向かっていた

 

「え、えび先輩いつまで落ち込んでんのさ、いい加減機嫌治してよ、ぼくもわるかったって!」

 

「いえ師匠、俺が色々と未熟だっただけです...わざわざ気にかけて貰ってすみません...」

 

「ふえぇ....」

 

本当はもう立ち直っているのだが、オロオロする師匠が面白いのでもう少しだけ落ち込んでるフリをしておこうと思う

...それにしても、なんだか今日は道行く人達がこちらをチラチラと見てくる気がする

 

「あっ!エビマルだー!!」

 

すると小学生くらいの子供がこちらに指をさしてそう叫んだ

 

「えび....?」「....まる?」

 

エビマル...そういえばプレゼントマイクが実況でそんなこと言ってた気がしなくも無い

 

「体育祭見たよ!」「凄かったよ!!」「決勝戦はアレだったけど」「てえてえ!」「これからも頑張れよ!!」

 

小学生の声を皮切りに、周りにいる人々から応援の声が届いた。ほんの少しだけ恥ずかしい気持ちもあるが、さすがに嬉しい気持ちが勝っていた

 

「ありがとうございます!頑張ります!!ほら師匠も」

 

「えぇっと、頑張ります!!」

 

その後も街行く人に声をかけられながら、遅刻ギリギリで雄英に到着した

 

 

 

 

どうやら他のみんなも声をかけられながら登校したらしく、クラスはその話題で盛り上がっていた

 

「おはよう」

 

しかし、あれだけ騒がしかった教室も、相澤先生が入るとピタリと静かになった

 

「相澤先生包帯取れたのね、良かったわ」

 

「婆さんの処置が大袈裟なんだよ。んな事より、今日のヒーロー情報学ちょっと特別だぞ」

 

相澤先生の言葉に、クラスに緊張した雰囲気が走る。

経験上、この流れは抜き打ちテスト等の嬉しくないイベントが待ち構えている。

みなが覚悟を決めた面持ちで相澤先生を見ていた

 

「コードネーム。ヒーロー名を考えてもらう」

 

「「「胸ふくらむヤツきたあああああ!!」」」

 

想像を良い方向に裏切られたので、クラスは一気にお祭りムードになった

 

「というのも、先日話したプロからのドラフト指名に関係してくる。これがその集計結果だ」

 

 

黒板に映し出されたそれを見ると、

師匠がトップで約3,000票

俺が四位の約1000票だった

 

体育祭3位の轟さんと爆豪さんにも負けているため、やはりあの決勝が尾を引いているのだろうか

 

 

「えび先輩だいぶ下がってんね」

 

「まあ妥当じゃないすかね」

 

「これを踏まえて、指名の有無関係なく職場体験に行ってもらう。そこでヒーロー名が必要になってくる訳だが、これはあくまで職場体験用の仮のヒーロー名で構わない。ただ、適当なもんは「付けたら地獄を見ちゃうよ!!」」

 

相澤先生の発言に被せながら、ミッドナイトがクラスに入ってきた

 

「この時に付けた名前がそのまま世に認知され!プロ名になってる人多いからね!!」

 

「まあそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。将来自分がどうなりたいのか、名をつけることでイメージが固まりそこに近付いていく。それが名は体を表すってことだ。『オールマイト』とかな」

 

 

それから15分程たって、大体の生徒のヒーロー名は決まった。残っているのは俺と師匠と緑谷さんと飯田さん。あと爆殺王。

とは言ったものの、俺はもう決まっていたりする。出ていこうと思ったタイミングが他の人と被って残ってしまった。俺以外の人はまだ考えているようなので、先に行かせてもらう

 

みんなの前に立ってフリップを裏返し、ヒーロー名を公開する

 

「あら...あなたも名前なの」

 

そう。俺のフリップには『エクス・アルビオ』と本名のみが書かれれていた

 

「俺は、昔からなりたいヒーロー像は固まっています。俺が俺に出来ることを全力でやる。そこに名前は関係ありません。だから、好きに呼んでください」

 

「かっこいいぞエビオ!」

「そういう考えもあるのね、エクスちゃん」

「名前思いつかなかっただけじゃないのかえび男!」

 

....ちょっと待て!えび男は違うだろ!?百歩譲ってエビオはわかるけど、いやわからんけど!

...まあいいや、好きに呼べって言ったしな!

 

あっ、師匠行くんだ....って、師匠も『アルス・アルマル』だ

 

「まあ考えつかなかったってのもあるんですけど、えび先輩の話聞いて結構共感できたので、ぼくも自由に呼んでください。プロになるまでにいい名前思いついたらそれにするかもだけど、この名前で定着しても後悔はないです」

 

「いいぞーツルツル饅頭!!」

 

「うるさいぞ養殖エビ」

 

 

 

 

 

ようやく全員のヒーローネームが決まったところで、相澤先生が起き上り、寝袋からはい出てきた

 

「よし、全員終わったな。それじゃ、時期外れではあるが、今からこのクラスの副担を紹介させてもらう」

 

「「「副担任!?」」」

 

「いたのかよ!?」「どうしてこの時期なの?」

 

「それは本人に直接聞け。んじゃ入ってこい」

 

教室のドアがガラリと開き、茶髪の好青年が入ってきた

 

「ピーッス!伏見ガクッス!サクッとガク先生って呼んでくれよな!ヒーロー名はガッくんなんでよろしくな!」

 

「てことでプロヒーローガクがお前らの副担だ」

「ガッくんです」

「ガクに質問のあるものはこの時間にしてしまえ」

「なんでエンデヴァーとか堅物系ヒーローはガッくんって呼んでくれないんですかね」

 

「すっ凄い、本物だ!?最近デビューした若手ヒーローだけど、その実力はトップクラスであのエンデヴァーからもサイドキックに誘われるくらい炎系の個性を使いこなしてるあのガッくんが雄英の教師だったなんて....」

 

「なんで先生だけこの時期に顔合わせなんですか?」

 

「いやー、3月くらいから凶悪なヴィランを追っててね。特別休暇をもらってたんだ。最近になってようやく捕ま得ることができたんすよ!」

 

「先生の個性ってなんですか?」

 

「炎系っすけど、詳しくは次の授業で見せますね」

 

「彼女いるんすかー?」

 

「上鳴くんは後で職員室来てくださいね」

 

「え?」

 

その質問を最後に授業終了のチャイムが鳴り、先生達は退出して行った

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「師匠職場体験どこ行きます?」

 

「悩んでる...えび先輩は?」

 

「俺も悩み中です...てかヒーロー詳しくないんですよねー。オールマイトぐらいしか知らないです」

 

「あー、えび先輩も?実はぼくも全然詳しくなくてさ、

ケータイで調べてんだけど、如何せん数が多くてね...」

 

「そやったら、デクくんに相談してみたら?デクくんヒーローめっちゃ詳しいよ」

 

話を聞いていた麗日さんがアドバイスをくれたので、2人で緑谷さんの机へ向かう

 

「_______ってことなんですけど、アドバイス貰えませんかね」

 

「なるほど、僕でいいなら全然構わないよ!それじゃあ2人ともどこから指名来てるのか見せてもらってもいい?」

 

言われた通りに、資料を緑谷さんに渡すと真剣な表情になって眺め始めた

 

「...さすが体育祭1位と2位だけあって有名所が勢揃いだ...アルスさんならここと....ここも捨てがたいか...エクスくんは.....エクスくんにとって学びのある場所ってどこなんだろ...って、ええ!?」

 

緑谷さんは小声で独り言を話し続けたかと思うと、急に立ち上がって驚いた

 

「ひ、ヒーロー事務所ド葛本社!?」

 

「そんなに驚くとこなんですか?」

 

「いや、この事務所はサイドキックをとらないことで有名なんだ。元々やしドラっていうコンビで活動してたんだけど、ある時期になってメンバーがふたり増えてド葛本社に名前が変わったんだ。このド葛本社っていうのは所属してる4人のヒーローの頭文字をとったもので、ヒーロー業界で最も仲のいいグループ論争で長年プッシーキャッツと対抗馬に出されてるくらい中がいいことで有名で、ていうかなんなら同じ事務所でシェアハウスをしているんだって。1部に人達からは結婚してるんじゃないかとか、元々家族だったんじゃないかとか、やし、きず別人説っていう考察も飛び交ってるくらいで...」

 

「師匠、どうします?」

 

「どうするって、止めれると思う?」

 

「やしきずとドーラは元々雄英高校出身で、同じクラスだったんだよ。ちょうどさっきのぼくら見たくヒーロー名を決める時に、やしきずがすごく悩んで、それを見たドーラがやしきずのヒーロー名をオタクくんにして提出しようとしたってエピソード聞いたことない?他にもね...」

 

「ストップです緑谷さん。その話は後で師匠が聞くので、一旦話を戻しましょう」

 

「え?!」

 

師匠から送られる抗議の視線を黙殺し話を続ける

 

 

「あぁごめんね、すごくレアな光景だから興奮しちゃって...でもぼくはここも結構おすすめだよ」

 

「理由を聞いてもいいですか?」

 

「まずこの事務所はヴィラン退治はもちろん、災害現場からの救助、パトロール、 メディア進出等の様々な現場で活躍してるんだ」

 

「なるほど...」

 

「それにやしきずさんは、アルスさんに近い個性で、中遠距離の戦いを得意としてるよ」

 

「おぉ...」

 

「だから僕のイチオシはここかな。他にはね...」

 

 

 

この後休み時間いっぱいヒーローの話をされた

 

 

 

 

放課後、今日は体育館が使用中だったので大人しく帰ることにした

 

 

「師匠結局どこにしますか?俺は緑谷さんイチオシのド葛本社にしてみようかなって思ってるんですけど」

 

「えぇー、えび先輩も?ぼくもそこにしようかと考えてたんだけど」

 

なんだかことある度に師匠と行動している気がしなくもないが、被ってしまったものはしょうがない。

職場体験先をズラす理由もないので同じところに出すことにした

 

「エビマルがまた浸透しちゃうじゃねえかよ...」

 

「そういえば師匠、あの件どうなりました」

 

「あの件って?」

 

「ほら、俺の記憶を何とかする魔法を師匠に覚えてもらう話ですよ」

 

体育祭の昼休憩の時に、師匠に実家で記憶関係の魔法を探してもらう話をしていた。休み時間にこの2日間で

1度実家に帰った話をしていたので聞いてみたのだ

 

「あぁそれね....実はあったにはあったんだけど、お前にはまだ早いってさ、危険が危ないって止められちゃった」

 

「あぁー、そうでしたか。まあほかの方法を探しますか」

 

「いや、あのね.....」

 

「ん?」

 

急に師匠がモジモジしだした。ポンポンペインペインなのだろうか

 

「..お父さんがえび先輩を家に連れてきたらその魔法を使ってくれるって....」

 

「マジですか師匠!!いつ行けます!?」

 

「ふえぇ...いやまって、ち、近い..」

 

思わず師匠の肩を掴んで聞いてしまった。でもそんなに露骨に嫌がられると少しクルものがある...

まあそれは置いておいて..

 

「えぇっとね、夏休みでもいい?雄英休み1日しかないし、次まとまった時間がとれるの夏休みだから..」

 

「はい!そうしましょう!いやー、楽しみだな師匠の家行くの、早く夏休みなんねぇかなあ」

 

(だ、大丈夫かな?..友達が記憶喪失って言った時はお父さんすごい心配そうな顔してたけど、えび先輩って伝えた時すごい表情なってたんだよね...)

 

 

そんなアルスの不安をエクスが知るわけもなく、自身の記憶を取り戻す手がかりを得た英雄はスキップで帰って行った

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「_____テ、ことなんですケド!なんかいい個性ないですカ?」

 

とあるビルの一室で、剣持はレヴィに詰め寄られていた

 

「なるほどねぇ....確実そうなのはないんだよなぁ..」

 

「エェ!?そんなァ....」

 

「ああ落ち込まないで?良さげなのはあるからさ..」

 

「ホント!?」

 

剣持は喜ぶレヴィの前に手を差し出し、白い固形物を生み出した

 

「これは『記憶共有』っていう個性。レヴィちゃんが体験してきた記憶を彼に見せれば、何かしらは効果はあるんじゃないかな」

 

「ナルホド〜!!じゃ!早速いってきまス!!」

 

「待って!!先に他の仕事があるから、それは今度にしてくれない?」

 

「エェ〜...」

 

「機会は絶対作るからさ、お願い」

 

「分かりましタ...」

 

渋々といった表情でレヴィは了承し、部屋から退出した

 

「はぁ、ここからが勝負だ....」

 

剣持が意味深に呟いた言葉を拾うものは存在せず、深いため息が虚空に溶けていった

 

 

 

「何カッコつけてんだおめえ」

 

ということも無く、空間に現れた窓から顔を出したギルザレンに茶々を入れられた

 

 

「帰れ!!」




誤字報告ありがとうございますm(_ _)m


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番外編:お花畑な日常2

唐突なシリアス回?です


この番外編:お花畑な日常は時系列的には原作開始1年前くらいです


 

 

「社会の平和を守るために、君の力を貸してくれないか?」

 

スーツを着た目の死んでいる大人達は、幼い私に手を差し伸べながらそういった

 

当時の私は純粋に喜んだ。憧れていたヒーローに、

もうなれるんだと。私が世界を救えるんだとそう思った

 

両親も反対しなかった。多分うちは貧乏だったから。

もう会えなくなるって聞いた時は悲しかったけど、

利口ぶった私は社会のためだと無理やり納得した

 

それからの日々はなかなかに辛いものだった

毎日早く起きて様々なことを学んだ。何時間も勉強したり、偉そうな人のお話を聞いたりした。

友達と遊ぶ暇なんてなかった

個性の使い方も練習した。入れ替える能力で遠くの物と入れ替わったり、切り離す能力で、正確に切り離せるように練習したり。

1番練習する機会が多かったのは、消す能力。毎日色々なものを消した。パソコンだったり、紙の束だったり

時にはやけに重い旅行バックを消すこともあった

 

偶に戦闘訓練もあった。本気で避けなきゃ大怪我をするような攻撃が飛んできた。実際に怪我をしたこともあった

 

それが何年も続いた。他に語ることがないくらいには同じような日々を送った。でも私はまだヒーローになりたかった。

その気持ちだけでこの日々を乗り切った

 

私は高校生になった。

可能なら雄英高校に行きたかったけど、都内の私立高校のヒーロー科に進学することになった

周りの大人達がそう決めた

 

私に選択権は無かった

 

この頃からヴィラン退治の現場に連れていかれるようになった。とは言っても既にヴィランは退治された後で、その後始末を任された

 

連れていかれた場所で、訓練で消していたようなものをいっぱい消した

このための訓練だったのかな?なんて気楽に考えていた

 

それが何回か続いたある日、旅行バックを消すことになった時、

 

 

 

 

 

旅行バックが動いていることに気づいた

気づいてしまった

 

 

 

 

 

 

動きの周期はまるで人間の呼吸と同期しているようで

 

 

 

 

その動きはまるで人間が中に入っていることを証明しているようで

 

 

 

 

真っ白な頭のまま、倒れた旅行バックを起こそうと持ち上げた

 

 

 

慣れ親しんだ重さだった

 

 

 

震える体を抱きしめながら、後ろを振り向く

 

 

 

そこにはいつもと変わらない、目の死んだ大人達が立っていた

 

 

「_______________消せ」

 

「あ、あの、おそらく中に人間が.....」

 

「_______________知ってる。消すんだ」

 

「ぇあ..だって....どうして............」

 

「いつもと同じことをするんだ。夜見れな。今まで何人消してきたと思っている」

 

「....嘘だ、そんな訳、ない」

 

「記録も全て残っている。お前は今まで累計..」

 

 

そこで私の意識は途切れた

次に目を覚ましたのは、公安ビル内の医療室だった

 

 

私の個性で消したものは、この地球上から消失する。

公安に来て最初に調べたことだった

私自身もどこに消えたのか分からない。人に使ってはいけない力だった

 

 

少しして、公安の偉い人達がやってきた

私は、今までやってきたことは私の意思じゃないと、知らないでやっていたと、藁にもすがる思いで説明した。信じたく無かった。私の周りの大人がおかしかっただけだと思いたかった

 

 

「あなたに証拠及び、死体の処理を命じていたのは我々公安委員会です」

 

 

そんな希望は、簡単に砕け散った。

私が長年信じて来たものは、私を育ててくれた大人達はみんな真っ黒だった

 

ヒーロー社会の表や裏だの、光や闇だの、

そんなことを語っていたが、私の耳には入らなかった

 

私の目指したヒーローはこうじゃなかった

幼い頃憧れたヒーローは...

 

 

 

なん....だっけ.....

 

 

 

 

 

 

気づいた時には逃げ出してた

私の個性はそれに適していたから

 

追っ手が私を見失うことはなかった

彼の個性がそれに適していたから

 

 

 

迫り来る羽を躱しながら、夜の街を逃げ続けた

この数年で学んだことは皮肉にも無駄では無かった

 

 

それでも、実力は彼の方が上だった

人の通らない路地裏で、とうとう捕まってしまった

 

 

「はあ、ようやく捕まえましたよ」

 

「流石に先輩にはかなわないね...」

 

「あなたの気持ちは分かります。だからもう少し..」

 

「無理だよ。私はあなたみたいに強くない。あんなことをして生きていくくらいなら、ここで死んだ方がマシだよ」

 

「.....そうですか。そりゃ残念だ.....」

 

 

私の人生って....なんだったんだろ...

 

 

「あのー、何してんのあんたら。てかあんたホークスじゃない?」

 

「んな!?一体どこから、てかなんでこんなところ通ってんですか、危ないですよ?」

 

「いやこの先私の家だし、それに、その娘になにしてんの?泣いてるよ?」

 

 

私....泣いてるんだ....

 

 

「.....こんな時に一体何だってんだ」

 

 

ホークスが振動するケータイを取り出し、画面を確認し始めた

 

 

「ほら、立てる?何があったら最速のヒーローに押さえつけられんの?なんかやった?」

 

「....相手は一般人ですよ?.....そうですか」

 

「っ!危ない!逃げて!」

 

「はあ?危ないってなんのこ...危ねぇ!?」

 

 

咄嗟に、彼の身体ごと、近くにあったゴミ箱と入れ替える

 

 

「一体なんのつもりですかホークス!!」

 

「残念だけど、上からの命令だ。見られてしまったからには生きて返す訳にはいかない」

 

「....?あんたらもしかして公安かい?」

 

「..なんでそれに気づける?あなたは何者だ?」

 

「今はただの喫茶店の店主だよ。その通信機を貸しな」

 

「..悪いがそれは出来ない」

 

「あっそ、じゃあ勝手に借りるよ」

 

 

隣の男はそう言って消えた。いや、咄嗟のことで目で追えなかったんだと思う

 

 

「くっ、ほんとに何者なんだ、一般名ではないな?」

 

「いやだから喫茶店の店主だけど。てかさっさと貸してくれない?あんた早いから時間かかりそうなんだけど」

 

「言ってくれますね、負ける気はないって事ですか」

 

 

あの男はホークスの翼を見切って、掴み取って、握り潰してる。このまま戦えば負けるのはホークスだ

 

本当に何者なの?

なんであなたは今戦ってるの?

 

 

「あーもうちょこまかと、鬱陶しいな。おーいあんたも手伝ってくれない?」

 

「えっ....?」

 

「あんたの個性であれ奪ってくんない?」

 

「私の...個性...」

 

「そう!私を助けてくれた個性で!」

 

「助...けた....私が?」

 

「ここは一旦ひくしかないか!」

 

「ちょっ、早く、逃げられる!」

 

「っ!『入れ替えマジック』!!」

 

 

近くにあった石と、ホークスの通信機を入れ替え、彼に渡した

 

「ありがと!手間が省けたよ!」

 

「あり...がと...」

 

 

最後に言われたのは...いつだったかな....

 

 

「あーもしもし?今の委員長って誰だっけ」

 

『何者だ貴様は、何が目的だ』

 

「花畑チャイカって言ったらわかる?」

 

『何..チャイカだと...あの噂は本当だったのか?』

 

「どの噂か知らねーけど、もう突っかかって来るのやめろって言ったよな?」

 

『ぐ、偶然なんだ!!お前がそこに住んでるなんて知らなかったんだ!!』

 

「偶然だとか、そんなのどうでもいいんだよ。さっさと帰らせろ」

 

『..わかった。この通信機をホークスに返してくれ』

 

「だってさ。今日のことは誰にも言わねえからさっさと帰んな」

 

「待て...夜見れなを..」

 

「聞こえなかったのか?さっさと帰れ。お前んとこのお偉いさんに二度と関わるなって伝えろ」

 

「....分かった。.....夜見さんを頼んだぞ」

 

「え?」

 

ホークスはそう言って、私達の前から姿を消した

 

「ちょ、頼んだってなんのことぉ...」

 

目の前の男、チャイカさんはすごく狼狽えていた

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「....で、あんたはどうしたい?」

 

あの後、チャイカさんに連れられて、彼の店に来た。何故か奥で1人寝てるけど、チャイカさんは気にしていなかった

 

「どう...したい...」

 

「そう。正直あんたをどうすればいいのか分からん。

だから、あんたがしたいことを私は尊重するつもりだ」

 

「分からないんです....どうしたいか..どうしたかったのか..」

 

そのまま私は今までのことをチャイカさんに話した

チャイカさんはそれを黙って聞いてくれた

それがどこか心地よくて、私は表情を保てなかった

私の感情とは関係なく、目から涙が溢れてくる

私の体なのに制御ができない

私の意思では涙を止めれなかった

 

話し終わってから、チャイカさんはコーヒーを1杯淹れてくれた

ミルクと砂糖がたっぷり入ったそれは、とても暖かかった

 

「なるほどねぇ..それでもヒーローであろうとするあんたは偉いよ..」

 

「...え?」

 

「さっき咄嗟に私のこと、助けてくれたろ?

それがヒーローじゃなかったら何がヒーローなんだ?」

 

「私...まだヒーローに...」

 

「何言ってんだ。お前はもう、ヒーローだろ?」

 

 

私....まだ....

 

 

「あー、チャイカさん女の子泣かせてるー」

 

「あ?いつから起きてたんだてめー」

 

「チャイカさんがその娘口説き始めたとこらへんからっすね」

 

「ねーよそんなとこ」

 

 

いや...私は...

 

 

「盗み聞きは感心しないぞ椎名。人には聞かれたくないことがあるんだ」

 

「いや聞いてませんて」

 

「チャイカさん...」

 

「お?」

 

「私、みんなを助けたいです。''ヒーロー''にはもうなれないかもだけど、だれかの''ヒーロー''として、救いたい」

 

「....そうかい。じゃあわたしの知り合いに..」

 

「いえ。チャイカさん。私はあなたと人を救いたいです」

 

「...はあ?なんで私と」

 

「尊重してくれるんですよね?私は今人間不信です。

でもチャイカさんなら信用できます。だから、よろしくお願いします」

 

「いや、だからなんd」

「夜見さん!いい話があるんすけど!」

 

 

隣で聞いてた椎名さんが、私の腕をとった

 

 

「レジスタンス、興味ないすか?」

 






何レジスタンスにしよう..


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職場体験行くぞ!あれ、どこいった師匠!?

 

 

ヒーロー事務所『ド葛本社』

ヴィラン犯罪多発都市『虹美市』を活動拠点としており、若くして他を圧倒する実力を持ち、市民に人気のヒーローらしい(緑谷談)

 

 

「ということで着きましたよ師匠」

 

「ありがとえび先輩...」

 

 

道中は師匠が道案内をしてくれていたのだが 、有り得んくらい迷った。いつまで歩いても事務所につかないどころか街中から離れていくのだ。流石に気になったので師匠の使っていた地図アプリを見せてもらうと、目的地を間違って設定していたことが判明した

 

 

「早めに出発しておいて良かったですね師匠」

 

「おかげでギリギリ間に合ったね...」

 

「師匠すぐどっか行こうとするから大変でしたよ」

 

「お前が歩くの早いんだろ?!」

 

 

この師匠俺が先導している間にも何度かはぐれかけたのだ。気づいたら後ろにいなかったから何度肝を冷やしたことか

 

 

「まあ師匠(頭が)でかいんですぐ見つけれましたけど」

 

「ぼくもえび先輩(体が)でかいから分かりやすかったよ

....でかい?」

 

 

師匠が余計なことに気づくまえにさっさと入ろう

ド葛本社は4人がそれぞれ独立したヒーローであり、チームであるため、サイドキックはいないとのことだったが、受付などの従業員は普通にいるようだ

 

 

「すいません、雄英高校から職場体験に来たんですけど」

 

「エクス・アルビオ様とアルス・アルマル様ですね。少々お待ちください」

 

 

受付の人の言うとうりにしばらく待つと、エレベーターが到着し、中から髪にひまわりを付けた少女が現れた

 

 

「あー!アルスちゃんや!かわいい!それに、そっちはエクス君!!」

 

「えぇっと、初めまして。エクス・アルビオです」

 

「あ、アルス・アルマルです」

 

「ご丁寧にどうも!でも挨拶はみんな揃ってからにしよっか!」

 

 

少女は眩しい笑顔を浮かべたまま、俺と師匠をエレベーターに載せて、上の階へと運んだ。エレベーターの中にはド葛本社のメンバーと思わしき人物達の写真が使われた虹美市のポスターが貼ってあり、そこに目の前の少女も載っていた

目的の階に到着し、彼女の後ろをついて行くと、応接室と書かれた部屋に着いた

 

 

「それじゃあ改めて、ようこそ!ヒーロー事務所『ド葛本社』へ!」

 

 

通された応接室の中には、ポスターに載っていた残りの3人が座っていた。こちらに挨拶をしながらもパソコンをカタカタしている男性と、お茶を飲んでる角が生えた女性、そしてずっと下を見ている男性がいた

 

 

「んじゃ、自己紹介するね!おはござ!頭のひまわりがチャームポイントの!プロヒーロー『ぽんぴまん』です!よろしくね!」

 

 

明るい自己紹介と共に差し出された手を握ると、大きくブンブンと振られた。元気の擬人化のような人だ

 

 

「じゃ、次はドーラ!」

 

「よく来たな人間、ワシは『ドーラ』じゃ。1週間よろしくな!」

 

「古風な喋りかたはRP(ロールプレイ)だから気にせんといてな!」

 

「言わんでいいわそんなこと!」

 

 

聞く相手に威圧感を与えるような声色と口調で自己紹介をしたドーラだったが、一瞬でぽんぴまんに役作りであることをバラされてしまった。少し頬を赤くしたドーラはぽんぴまんを追いかけだした。噂通りの中の良さが伺えた

 

 

「んじゃ、次は築で」

 

 

ドーラは狭い室内で走り回るぽんぴまんを捕まえ、メガネの男性にバトンを回した

 

 

「はい。プロヒーロー『やしきず』こと社築です。本日は来てくれてありがとうございます」

 

 

物腰穏やかな丁寧な人だ。ただ目の下にこびり付いている隈は気になるが...

 

 

「んじゃ最後、葛葉」

 

「アッ....スゥー......ヴァンパイアヒーローの『葛葉』です.....よろしくお願いします.....」

 

「くずは声小さいって。自分で指名したんやからはっきり喋りや」

 

 

ぼそりと自己紹介を呟いた葛葉さんだが、指名した?とはどういうことだろうか

 

 

「いや、あん時の俺はマジでどうかしてたんだって!

ていうか魔法使いの方来るの聞いてないって!」

 

「会議寝坊したの葛葉だろ?...ああごめんね置いてきぼりにしちゃって。じゃあ自己紹介してもらってもいい?」

 

「ああはい。雄英高校1-A、エクス・アルビオです。ヒーロー名も同じです」

 

「同じくアルス・アルマルです。ぼくもヒーロー名と名前は同じです」

 

「エクスとアルスね1週間よろしく。それじゃあ今から、1週間のスケジュールを説明します」

 

 

その場にいる全員にやしきずから資料が配られた

 

 

「ドーラ達は1度聞いてると思うけど、改めて確認してくれ。えー、我々ド葛本社では、基本的にドーラぽんぴまんペア、やしきず葛葉ペアで、昼夜のパトロールを分担しています。理由は後程説明します。エクスとアルスには、最初の4日間、2日ずつ別れて昼夜両方のパトロールを体験してもらいます。パトロールをしていない時間は戦闘訓練と書類作成、あと休憩をしてもらいます。そして残りの3日間は2人でド葛本社が今追ってるヴィジランテの調査に参加してもらいます。ここまでで何か質問はある?」

 

1人がすっと手を挙げた

 

「はいじゃあ葛葉.....葛葉!?なんでだよ1回説明したろ!?」

 

「いや多分寝てたわそんとき。でド葛本社全体の活動時間は6時から24時までの18時間で3時に交代だけど、全部参加してもらうの?2日後の切り替えの時大変じゃない?」

 

「いや、パトロールに参加するのは6時間、間にご飯休憩を入れてやってもらう予定だ。具体的には、昼の部は9時から15時まで、夜の部は15時から21時までだ。だから俺らはエクスかアルスが始まるか終わるタイミングで1度ここに戻ってくることになる。2人ともここまで大丈夫?」

 

「はい!大丈夫です!」

 

「よし。んじゃあさっき言った昼夜別れる理由だけど、主に葛葉とぽんぴまんの個性が理由だ。ぽんぴまんは個性『ウェザーパワー』その時の天気によってパワーアップする個性だが、夜は雨か雪が降っていないと力を発揮できない。葛葉は個性『吸血鬼』、吸血鬼っぽいことはだいたいできる。ただ9時から15時の太陽が高く登ってる間はただの飛べる人間になる。このことを活かして我々は昼夜を分けて活動しています」

 

 

なるほど。足りない部分を支えあってる感じか

 

 

「質問いいですか」

 

「はいエクス」

 

「やしきずさんとドーラさんにはそういったデメリットはないんですか」

 

「まあ無いな。ドーラと俺は24時間いつでも活動可能だ。強いて言うなら、俺は比較的中、遠距離タイプでドーラは近、中距離タイプって感じだな」

 

「なるほど。ありがとうございます」

 

「んじゃ早速別れて、職場体験を始めようか。じゃあ最初エクスは俺らと夜の部で、アルスはドーラ達と一緒にパトロールにでてくれ。何か分からないことがあればその度聞いてくれ」

 

 

そうして俺らの職場体験が始まった

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

というわけで、師匠はドーラさんとぽんぴまんと一緒にパトロールに出かけた。やしきずさんは取りに行くものがあると、この階を離れてしまった。

 

応接室には俺と葛葉さんが残されていた。

き、気まずい....

葛葉さんはさっきから一言も発さずに固まったままだ

俺から話しかけなきゃないのかな...

 

「え、えーと葛葉さんって、本名でヒーロー活動してるんですか?」

 

「あ、いえ、本名はアレクサンドル・ラグーザっていいます。葛葉は昔の友達につけられたあだ名っすね..」

 

「へ、へーそうなんすねー...」

 

「「......」」

 

 

本名じゃないのか..アカン、本名ヒーロー名にしてる繋がりで話広げていこうとした作戦が潰れた...

なんだアレクサンドル・ラグーザって、

かっこいいなおい

 

(やべえ、職場体験来てくれた子に気を使わせちゃった..なんかないか、俺の今までの経験で、この場を乗り切る策は!絞りだせ会話デッキ!!ドロー!!!)

 

「..ッスゥー..今日..天気いいっすね...」

 

「え?ああまあ、晴れてますね..」

 

「「..........」」

 

「おまたせー待ったー?」

 

「「やしきず!!」さん!!」

 

「え?何どうした2人とも。瓦礫に閉じ込められて絶望してた所を助けられた子供みたいな顔して」

 

 

完全に空気が終わっていたところにやしきずさんが帰ってきた。それも両手に荷物を抱えて

 

 

「やしきずさん...それって?」

 

「お?もしかしてゲームやったことない?せっかくだからマ〇オカート持ってきたんだけど」

 

「いや知ってますけど!やってますけど!いいんですか?」

 

「まずは仲良くなるとこからだろ?ドーラ達と雄英にはないしょな?」

 

「や、やしきずさん...」

 

「おっしゃ!やるぞエクス!職場体験に来てるからって忖度しねぇからな!!」

 

「望むところですよ葛葉さん!!まじヴォゴヴォゴにしてやるんで覚悟してください!!」

 

「仲良いなお前ら」

 

 

 

ー以下ダイジェストー

 

 

「てめぇエクス!!ショートカットのタイミングで赤甲羅投げてんじゃねぇ!」

 

「防御アイテム持ってないのが悪いんですよアアアァァァァ!!?やしろさああああああん!?!?」

 

「おいおいこれだから学生は、警戒が甘いんじゃあないの?」

 

「おいエクス、ここは協力だ」

 

「ですね」

 

「は?」

 

 

 

「abo一旦下がれ!甲羅ある!」

 

「了解です!」

 

「なんでだよおい!おかしいだろ!」

 

「葛葉さん俺も甲羅引いたから下がって!」

 

「おまえらあああああああ!!」

 

 

 

「葛葉さん!?仲良くしようって言ったじゃん!!」

 

「馬鹿め!昨日のヴィランは今日のヒーローだぜ!!」

 

「何言ってんのか全然わからん!?」

 

「エクス。葛葉はだいたいこんな感じだぞ」

 

「まじすか...」

 

「スリップストリイィィィィム!!!!」

 

 

 

「うああああぁぁぁぁ!?危ねぇ!叫ぶとこだった!」

 

「待ってwアカンw、息できないwww」

 

「うおおおおおお!インコオオォォォス!!」

 

「アハハハハハwwwww」

 

 

 

 

突如始まったマ〇オカートは想像以上に白熱した。ただ後半はずっと笑ってるだけだった。

この2、3時間でだいぶ仲良くなれた気がする。いつの間にか呼び方もaboになってたし

 

「いやエクス意外とゲーム上手いじゃん」

 

「やしきずさんこそめちゃくちゃ上手いっすね。途中何回か手出そうなりましたもん」

 

「いやなんでだよ」

 

「abo他にもゲームやってる?後でやろーぜ?」

 

「やりましょう!」

 

「まてまて、それは今度にしてくれ。忘れてるかもしれんが今職場体験中だから....おい待て、冗談で言ったんだがマジでハッとするのやめろ。葛葉までびっくりしてんじゃねえ!昼食べたら戦闘訓練するからそのつもりでいてくれ」

 

 

そうだった...俺は今職場体験中だった。ここからは気を引き締めなければ。

 

ちなみにお昼はやしきずお手製のカレーらしい



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葛葉さんとタイマンします!ヴォコヴォコにしてやんよ!

若干短めです




 

「はい、それではただいまより、雄英高校体育祭1年の部、準優勝エクス・アルビオ選手VSド葛本社所属、ヴァンパイアヒーロー葛葉選手の模擬戦闘を執り行いまーす。いえーい」

 

ヌルッと始まった職場体験初日午後の部

こだわりの強い美味しいカレーを食べたあと、地下の広い部屋へと移動した

スケジュール通り戦闘訓練を執り行うらしい

 

「あの、葛葉さんって昼は力が出ないんじゃ..」

 

「あーそれね。俺の個性で何とかするよ。まだ説明してなかったっけ?俺の個性『プログラミング』は空間や物に特殊なコードを書き込むことができて、任意のタイミングで実行できるんだ。んでこの部屋には既にプログラミングをしてある。これを実行すると...」

 

やしきずさんが指をパチンと鳴らすと、葛葉さんの纏う雰囲気が一気に変わった

 

 

「この部屋は夜になる。解除する方法は、俺が個性をもっかい使うか、後ろのドアを開けて空間を広げるかの2択だけど、今回はそれはなしで、葛葉と戦ってもらいます」

 

(なんかさらっとすごいことしてなかった?

空間を夜にするって何?神じゃん)

 

「いいのかよやしきず。俺ガン有利だけど」

 

「あぁ、一応血を使うのは無しで。ただあんまり舐めてかかると足元すくわれるぞ?お前決勝しか見てなかったから分かんないかもだけど、エクスめちゃくちゃ強いから」

 

「マジか」

 

「どちらかがまいったをするか、戦闘不能になるかしたら決着な。この後パトロールもあるから一発勝負で。終わったら反省会して、余った時間で報告書とかの書き方を軽く教えるから。」

 

今から葛葉さんと戦うこの部屋は、フロアが丸ごと吹き抜けになっており、身を隠せそうな障害物や持ち運べそうな障害物が沢山ある。ちなみにこの障害物もやしきずさんの個性で出している物らしいので壊しても大丈夫なのだそう。

 

「おいおい早く始めようぜ?若人に格の違いってもんを見せてやるよ!」

 

「いいんですか葛葉さん?あとで吠え面かかないで下さいよ!」

 

「よし!それじゃあ始めるから、お互い端に移動してくれ」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

(まずは一旦様子見かな、葛葉さんの個性についての情報が無さすぎる)

 

 

やしきずの開始の宣言と同時に、エクスは近くの障害物に身を隠し、移動しながら葛葉を探していると、小さな影を見つけた

 

(...?コウモリが飛んでる?葛葉さんの個性か?)

 

よく見てみると、数多くのコウモリが飛んでいる

エクスがそのコウモリに攻撃をしてみようと思ったその時であった

 

「...abo、敵は見つかったか?」

 

突如横から葛葉の声が聞こえた

 

「んな!?」

 

しかし、慌てて振り向ってみてもそこに葛葉の姿はない

 

「葛葉さんの個性...なのか?」

 

 

 

しばらく葛葉を探し続けるエクスであったが、見つけられるのはコウモリばかりであった

 

(どこにもいない...すれ違ったのか?それともやっぱりこのコウモリが関係してる?)

 

エクスの周りを取り囲むコウモリの羽音が一層強まった時だ

 

「もういいかー?」

 

背中への強い衝撃と共に葛葉の気の抜けた声が聞こえた

 

「んな!?」

 

地面を転がりながら、声のした方へ振り向くと、そこには葛葉立っており、こちらを見下ろしている

 

「いい加減待つの飽きたから、こっちから行かせてもらうze?」

 

そう言い終わると同時に、葛葉の体が無数のコウモリとなってエクスを取り囲む

 

「はぁ!?」

 

コウモリの群れの一部から葛葉が現れ、エクスに向かって拳を振りかぶった。それを視認したエクスはすぐにカウンターを合わせようとするが

 

「甘えよ!」

 

繰り出した拳は空を切り、エクスの真後ろから発せられた声と同時に、エクスは前へ蹴り飛ばされた

 

「うお!?」

 

エクスは前方に転がされながら後ろを振り向くが、そこに葛葉はいなかった。再びコウモリがエクスの周りを囲んだ

 

「『吸血鬼』って、そんなんアリですか!?」

 

「アリに決まってんだろ?」

 

再びエクスの背後から声が聞こえる。瞬時に振り返ると、エクスは確かに葛葉の姿を捉えたが、既に体の大半がコウモリになっており、振り向き終わった頃には完全にコウモリとなって消えていた

 

「遅いっ!遅い遅い遅い!!」

 

再び背後に回り込まれ、体に強い衝撃が走り、体制を崩したところに激しい追い討ちが加わる

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!無駄ァ!!」

 

360°全方向からの攻撃は止まらない。エクスが反応した方向と逆の方から攻撃が届く

 

(落ち着け...慌てるな...葛葉さんは上半身のみを出現させてヒットアンドアウェイに徹している。手数は多いけど一発一発が軽い、踏み込みができないからっ、

だからまずは、俺に攻撃が当たる瞬間に一発叩き込んで..)

 

ふと、あれだけ続いていた攻撃が止んだ。

エクスは驚いて周りを見渡すが、コウモリのままエクスを囲んでいるだけである

 

(何だ?何を狙って...)

 

「ライダーキィィィィック!!!」

 

突然コウモリの向こう側から、葛葉が猛スピードで突っ込んできた。完全にエクスの意識外からとんできたそれは、エクスの鳩尾に深く突き刺さる

 

「ゴフッ、!?」

 

(コウモリを目隠しに使って、羽で勢いをつけたのか!)

 

「おいおいこれで倒れねーって硬すぎじゃね?鎧着てるから?」

 

渾身の一撃をくらったエクスであったが、意識は保っており、かろうじて立ち上がった

 

「でもこの辺でまいったした方が身のためだぜabo?」

 

「何言ってんですか、まだ行けますよ...」

 

気丈に振る舞うエクスであったが、その足取りはおぼつかない。少なくとも、今のエクスには葛葉から逃げ回りながら戦うことは不可能だろう

 

(全身にエネルギーを回してこのダメージだと、同じことしてても次で負ける....それに勝ち筋はカウンターしか思いつかない...なら!)

 

エクスは全身に張り巡らせたエネルギーを、右腕と耳に集め、目を瞑った

 

「覚悟は決まったようだなぁ!abo! 引導を渡してやるぜ!」

 

再び葛葉の体がコウモリ化し、エクスを取り囲む。

しかしエクスは動かずにただじっと耳を澄ませていた

 

(耳にエネルギーを集めたからこそ分かる、一匹だけ羽音が違う、ほかは皆同じ周期で羽を動かしてるけど、ズレてるのが一匹いる、目の前のコウモリが肉体を作り始めてるけど、それはきっとブラフ。本体は...)

 

「そ、こだぁぁぁぁぁ!!」

 

「何ィィィィ!!??」

 

エクスが一匹のコウモリを殴り飛ばすとその1匹以外の全てのコウモリが消え、葛葉に変わりながら吹っ飛んでいった

 

「ぐ、少しはやるじゃねぇかabo...」

 

「そのまま返してあげますよ葛葉さん...」

 

既に葛葉の表情からは、エクスに対する侮りの感情は無くなっており、その様子からは確かなダメージを受けていることが伺えた。 再度向かい合い、視線を交わし、互いに走り出した

 

エクスは残る力を全力で振り絞り、葛葉は先程までの戦いで見せなかったスピードであった

 

「これで決めてやるぜええぇぇぇぇ!」

 

「かかってこいやあぁぁぁ!!」

 

「はいやめー」

 

「「ぶべらっ!?」」

 

突然現れた壁に激突し、互いに地面に倒れ込む

 

「何すんだよやしきず!」

 

「こっちのセリフだよ葛葉。血は使うなって言ったろ、それにある程度は勝ち筋残して戦えって会議の時言ったろ?いつも通りの戦い方じゃねーか」

 

「いや会議の時寝てたって」

 

「寝すぎだろ!まああとは時間の問題もあるがな、パトロールに行く前に説明の時間も取りたいし」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

どうやら最後の葛葉さんの加速は反則だったらしい。ただ、たとえあれが無かったとして、俺が葛葉さんに勝てたかと言われると自信が無い

 

結果としてプロとの実力の差を見せつけられた形となった

 

「エクスもなかなか凄いぞ?あのコウモリの群れの中から本体を見つけて一撃入れる学生がいるなんて誰も信じねーよ」

 

「まあ最強なので」

 

「すぐ調子乗る癖は直した方がいいけどな」

 

「んなことよりやしきず、早く戻してくれね?このダメージでパトロール行きたくねえんだけど」

 

「それもそうだな」

 

やしきずさんがまた指を鳴らすと、部屋にあった障害物は消えると同時に、体に残っていたダメージや疲れも消えた

 

「.....え?」

 

「驚いたろエクス、うちのやしきずは怪我も無かったことにできるんだぜ?」

 

「この部屋限定だけどな。あと何目線だその言い方」

 

詳しく聞くと、怪我を直しているのではなく、戦う前の状態に戻っているのだとか。説明にもあったように、この部屋はやしきずさんの個性がふんだんに使われた特別な部屋で、戦いがスタートした瞬間の肉体の状態が保存されるのだとか

 

難しくて分からない。要はすごい個性何だろう

 

「んじゃ、予定どうりこの後反省会するから、応接室に戻るぞ」

 

 

 

 

 

 




ちょっと投稿頻度落ちるかもです。


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お疲れ様です師匠!夜の部行ってきます!

ちょっと(3ヶ月)遅れましたね


「パトロールの目的は大きく分けて2つ、 ヴィラン犯罪の早期発見と抑制じゃ」

 

 

えび先輩達と別れ、ぼくたちはパトロール午前の部に向かった

 

ここ神奈川県虹美市は全国でもヴィラン犯罪の発生率が高いことで知られている

ド葛本社が虹美市にヒーロー事務所を構えてからそれは減少傾向にあるが、それでも他の市に比べるとまだまだ多い

 

様々な専門家達がその理由を考察しているのだが、未だに核心をついた考察はされていない

そんな肩書きのある市だから市民が引越しちゃうかと思いきや、虹美市の人口は横浜に次いで2番目だ

 

ある時某テレビ番組が虹美市の市民に対してなぜ虹美市に残り続けるのか、該当調査を行ったらしいが、多くの人が口を揃えて「他の市より安全」と答えたらしい

 

この街の顔であるド葛本社が、市民に信頼されている証拠だろう

ちなみに先程のアンケートのグラフで、2番目に大きかったのは「てえてえ」だったらしい

 

そんな市民に愛される実力派ヒーローは、どんなパトロールをしているかと言うと...

 

 

「ドーラー!お茶飲むかー!!?」

 

「飲まんわバカタレ!!さっさと会社に行けぇ!!」

 

「ぽんぴまーん!!写真撮ってー!!」

 

「ええでー!もっとこっちおいでー!!」

 

 

市民に囲まれ、仲良く交流をしていた。

 

 

「えぇっと...ドーラさん?パトロールはいいんですか」

 

「お?...ああ説明が不十分じゃったかな。さっき言ったパトロールでのヴィラン犯罪の早期発見の優先度は低くてな。というか索敵ができる個性でもない限りそうそう見つけられん。だからメインになるのは抑制の方じゃな。ヒーローが日常に紛れていると、なかなか犯罪を犯す気にはならんじゃろ?」

 

「なるほど...」

 

 

ヒーロー学の授業でも学んだ内容だが、こうして体験してみるとその大切さがわかるような気がする。

 

 

「それにな、これは自論じゃがワシらヒーローがなんのために存在するのか決して忘れないようにするためでもあるんじゃよ」

 

「なんのために....?」

 

 

ドーラさんの含みを持たせた言い方に少し引っかかる。普通に考えればヒーローは人々を守るためにいると思うけど..?

それ以外にもなんかあるのかな

 

 

「いまいちピンと来てないって顔じゃな。まあまだ職場体験は始まったばかりじゃから、自分なりによく考えてみなさい」

 

「わかりました...」

 

ドーラさんの言葉について考えていると突然放送機器からブザーのような音が響いた

 

『西区田角公園付近にて強盗事件発生!現在確認されているヴィランは4名!!ヒーローは至急現場に向かってください!周囲の一般市民はすみやかに避難してください!』

 

その内容はヴィラン出現を知らせるものだった。

 

 

「オラおまえら!今の聞こえたじゃろ!ちょっと道をあけんか!」

 

「がんばれよー!」「応援してるよ!!」「雄英の子もがんばれよ〜!!」「ドーラー!お茶飲むかー?」

 

 

ドーラの一言であれだけ集まっていた人達が離れていった。彼等にとっては慣れしんだ日常のようである。

 

 

「移動しながら説明するから、頑張って着いてきてな。ああそれと、プロヒーローぽんぴまんの名において、アルスアルマルの個性使用を許可します。一応これ言わんとアルスちゃん個性使えんから気をつけといてな」

 

ぽんぴまんがそういうと、2人は放送で指示された方向へと走り始めた。慌ててスピーダーを使い後を追いかける

 

 

「やしきずの個性を応用してな、この市内で起きた犯罪は即発見されて放送されんねん。それを聞いた近くのヒーローが現場に向かう感じや。便利やろ?」

 

「市内全域に及ぶ個性....スゴすぎません?」

 

「そういうのは本人に言ったげてな。多分喜ぶから。

ほら、もう見えてきたで」

 

 

ぽんぴまんが指さす方向を見ると、コンビニから大袋を持った男達が出てくるところだった

 

 

「白昼堂々とようやるわ。アルスちゃんは一旦見といて?プロの仕事がどんな感じか見せたげるわ。ドーラが」

 

「オラお前らァ!その持ってる物置いて大人しく投降しろォ!」

 

「んな!?もうヒーローが来やがった!」

 

「ちくしょう!大人しく捕まってたまるか!鎌田!」

 

「任せろ!喰らえ全身鎌だらけタックル!!」

 

男達の内の1人が、全身から鎌の刃を生やしドーラに向かって駆け出した。それをドーラは避ける素振りも見せず仁王立ちしていた

 

「ッ!ドーラさん!!危ない!!」

 

「フンッ!」

 

 

しかし、男の全身から生えた鎌はドーラも肌にカスリ傷も付けれずに根元から折られてしまった

 

 

「「「え!?」」」

 

思わず口から驚きの声がもれ、ヴィランとハモってしまった

 

「....いやいやいやいやおかしいだろ!?かぼちゃもスパッと切れる自慢の鎌だぜ!?刺されよ人間として

ヘブッ!?」

 

「ごちゃごちゃうるさいわ!アルス!この男縛っといてくれ」

 

「あっ..はい...『バインド』..」

 

ドーラは慌てる男に右ストレートを打ち込み気絶させた。

唖然としながら足元に転がされた男を縄で拘束していると、仲間の男達がこちらに向かって駆け出してきた

 

「鎌田をよくも!!」

「怯むな!相手は所詮女3人!俺らが負ける訳がねえ!」

「一斉にかかれ!」

 

絵に書いたようなチンピラムーブだ。どこからその自信が湧いてくるのだろうか

というかド葛本社を知らないのかな、なんでヴィランって犯罪犯す前に周辺で活動してるヒーローを調べたりしないんだろ

 

「行くぞ八蜘蛛!豆筒!いつものだ!」

 

「任せとけ!」

 

リーダー格の男の号令で蜘蛛の異形の男がドーラの足元に糸を吐き、豆筒と呼ばれた男が両手をこちらに向け大豆を射出してくる

 

「ドーラさん危ないっ!」

 

火竜の吐息(ドラゴンブレス)!!」

 

ドーラの吐いた炎は足元に撒き散らせれた糸、高速で飛来する大豆、そしてヴィランを纏めて包み込んだ

 

少しして炎が消えると、そこには少しだけ焦げたヴィランが残っていた

 

「とまあ、こんな感じじゃな。本当は何もさせない内に捕らえるのがベストではあるんじゃが、後手に回る場合もある。その時も落ち着いて対処するのが大事じゃよ」

 

「はぇー....」

 

そんなことをあっさりと言ってしまうが、ぼくに同じことをしろと言われたらできない。炎魔法は使えるが、糸と豆は一瞬で灰にし、ヴィランには軽い火傷で済ませるなんて離れ業は今のぼくには不可能である。あのクオリティの火力調整を一瞬でやってのけるあたり、プロヒーローと学生の差を感じさせられた

 

「どや、うちのドーラはすごいやろ」

 

「なんでぽんぴまんが得意げなんじゃ。次はちゃんと参加してくれ」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「..みたいな感じで、ぼくらが捕まえたヴィランを警察に受け渡しして、そのあとは落し物探したり、ファンサービスしたりしたよ」

 

 

昼の部が終わり、師匠達がパトロールから帰ってきた。疲れてはいるもののどうやら消化不良の様子。ドーラさんたちのヴィラン捕縛の手際があまりに良かったため、特にすることがなかったそうな....まあこの後の戦闘訓練で嫌という程消化させられそう

 

 

「いやーでも、アルスちゃんの個性のおかげでめっちゃ助かったわ!落し物探す魔法...さーちらてりらる?やっけ?あれで一発で見つかったもんな!」

 

「サーチマテリアルじゃろ?でもほんとに便利じゃよなアルスの個性。戦闘訓練で確認はするが体育祭の時みたいな戦闘もバッチリできるんじゃろ?.....アルス、卒業したらうちに来んか?」

 

 

ドーラさんはわりと真剣な表情で師匠を勧誘していた。勧誘を受けた側の師匠も満更では無い顔をしている

 

 

「いやいやいや、それで言ったらうちのaboも負けてねーよ?半分本気の俺に一発当てたし、ゲームも上手い!近接ゴリラ枠としてうちに採用するか検討するべきじゃないでしょうか!」

 

 

葛葉さんはからかうような口調で僕のことを褒めだしたが途中で不味いことを口走っていたような気がする

 

 

「....ゲームが上手い?どういうことじゃあ?葛葉??どのタイミングでエクスのゲームの上手さを確認したんじゃ??」

 

「アッヤッベ...ッスゥー...やしきずが持ってきたんだよなーabo」

 

「...は!?おいこら葛葉!?お前なに言って..」

 

「まあ嘘は言ってないですね」

 

「エクスまで!? 」

 

 

仕方がない。やしきずさんには尊い犠牲になってもらおう。

彼のことは決して忘れない。採用枠がひとつ増えそうだ

 

「嫌がる俺らを無理やりやしきずは....」

 

「嘘つくなよ!?...なあ待てドーラこれには深いわけが...」

 

「深いわけが?」

 

「.....ない」

 

「....はぁ、まあどうせ葛葉とエクスを仲良くさせるためにやったんじゃろ?オタクくん昔から仲良くなりたい相手をゲームに誘うよな」

 

「お、オタクくん言うな!その呼び方、職場体験中は控えてくれっていったろ!」

 

 

と思ったらドーラさんはやしきずさんの考えなんてお見通しだったようだ。世間ではやしどら結婚してる説があるらしいが(緑谷談)2人のやり取りを見てるとあながち間違いじゃない気がする

 

 

「ぽやじぃ、いいから早くパトロール行こうぜー?エクスも暇そうにしてるしよー」

 

「わかったって、ただその前に1つ。夜のパトロールは昼に比べてヴィラン遭遇率が高い。だから最初から個性使用許可は出しておくが、基本的には俺と葛葉の指示に従うように。」

 

「はい!」

 

やしきずさんは真剣な顔でそう語った。

 

「安心しろってエクス、おめーはつえーから。それに何かあってもやしきずが守ってくれるって」

 

「そんときはお前もやるんだからな葛葉?んじゃエクス、準備はいいか?」

 

「いつでも大丈夫です」

 

 

よっしゃー行くかー!と葛葉さんを先頭に部屋を出ていった。

僕も後を続こうとしたが、師匠に服の裾を掴まれ止められた

 

 

「?、どうしたんです師匠。早くしないと葛葉さんたち行っちゃうんですけど..」

 

....ってこいよ

 

「はい?今なんて」

 

「気をつけて行ってこいよ。ばか弟子」

 

どこかぶっきらぼうな言い方ではあるが、僕を心配して声をかけてくれたようだ。

 

「安心してください師匠。英雄はしなないので」

 

「なんだよそれ。行ってらっしゃい」

 

「はい!行ってきます!」

 

師匠に見送られ今度こそ出発した。思いのほか気合いが入った。今ならヴィラン50人位捕まえれそうだ

 

 

 




ドーラのお茶を飲むいじりは、いつの間にか世間に浸透しており、出処は不明
しかし、ドーラとやしきずは犯人を確信している様子


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