因子継承!?あの娘とあの娘をレッツ・ラ・まぜまぜ! (アマノジャック)
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作中の用語解説

どうも、初めましての方は初めまして。アマノジャックです。

作中内で出てきた用語をそれっぽく並べてみました。多少のネタバレも含まれますが…楽しく見てもらえると嬉しいです。


主要

 

因子(いんし)

ウマ娘だけが持っている、レースにおいて力を発揮出来る物質。ウマ娘の身体全体でどれほどの割合を占めているか不明なものの減れば再び体内で生成される。体内の細胞に溶け込んでおり、抽出するとすぐに気化するほど不安定で回収用の『腕輪』が出来るまでは専用の液体での保存が必須だった。

また『因子』同士を近づけると磁石のように弾けるか引かれ合うためアグネスタキオンの『因子』を基準に弾くのをS極、くっつくのをN極と定義した。そしてそれは後述する『合成因子』の原料にもなる。

『因子』を全て抜いた後、間をあけて再投入することでそのウマ娘の治癒力が上がるとされているが…現在のところ原理は不明。

 

 

合成因子(ごうせいいんし)

異極の『因子』を組み合わせることで出来る新たなる『因子』。ビー玉のように透き通っており、硬度もかなりある。しかし熱には弱く、体温で液体へと溶けるため温度管理は必須。

なお、S極とN極の組み合わせでも完成後に爆発しその場から消失したり*1、黒い液状で現れたり*2とまだまだ謎は多い。

また、人間がそれを体内に入れることでウマ娘レベルのフィジカルを得ることが出来る。この状態は『ウマ人』と呼ばれている。

『ウマ人』になることで初めてその『合成因子』の性質を知ることが出来る…逆に言うとそれ以外の性質を知る方法は今のところはほぼ無い。

性質は元になった『因子』の特長を持っていることが多いが、中には理性が無くなり暴走する*3もの、理性が有りながらも身体のコントロールが全く効かないもの*4、さらには非現実的な能力を持つもの*5、と様々で現在100種類以上が作成されている。その中にはG1ウマ娘に匹敵するものもある。

 

 

ウマ人(うまびと)

人間が『合成因子』を体内に取り入れた状態。『合成因子』を口から飲み込むか『腕輪』から投入することでなれる。耳が変形しつつ頭の上へと移動し、尾骨とその周りの体毛が伸びることで尻尾も生え、ウマ娘そっくりの姿へと変わる。

最初はどの『合成因子』でも(おそらくは)コントロールが出来ず、理性が無くなり、本能のみで動き出すため、身体に馴染み理性を取り戻すまでは実験体をきつく拘束しておく必要がある。

フィジカルがウマ娘レベルに強くなったことで担当と共に併走や模擬レースが可能になりトレーニングの効率が上がる…かもしれない。

取り入れた『合成因子』により適性や脚質が異なり、中には異形で走ることそのものが出来ない場合*6もある。

『腕輪』で『合成因子』を回収することにより元の人間に戻れるが…その時に『ウマ人』時の反動も一気に来るので万全での状態で行うことが必須である。

なお、体つきはウマ娘に近いものの元の性別は変わらない*7

 

 

腕輪(うでわ)

『因子』や『合成因子』を回収するための装置。手首に付けることで回収出来る。初期型はツボにひ鍼を刺して2日程かかっていたものの回収効率が大きく上がり、最新型だとひ鍼が不要*8で時間も10秒とかからない。

ウマ娘に使用すると特別なカプセルで『因子』を保護しつつ回収する。

回収だけではなく投入する機能もあり、後述する『アナザー』では専用の『腕輪』を使用する。

 

 

アナザー(あなざー)

『ウマ人』のウマ娘版。『合成因子』の入った『腕輪』と『アナザー』用の『腕輪』を左右の手首に付けてウマ娘が持っている『因子』を全て『アナザー』用の『腕輪』に全て移し、もう片方の『腕輪』から『合成因子』を投入することでなれる。

得意とする距離や脚質の適性が『合成因子』基準のものとなり、元の適性を失う。

元がウマ娘であるため『ウマ人』程ではないものの負担がくるのでレースが近いウマ娘には使用厳禁である。

 

 

特別レース(とくべつれーす)

アグネスタキオンが『合成因子』の実験を行うためのレース。ゴールドシップとメジロマックイーンが実況と解説を行っている。

ドリームトロフィーへと行ったウマ娘が参加するため見に来る生徒やトレーナーも多い。参加者にはニンジンが貰える。

35話から学園公認となった。

 

 

タキオンメモ(たきおんめも)

『特別レース』後に掲載される『合成因子』の経緯を記録したメモ。

 

 

ーーー

アグネスタキオンの発明品

 

合成因子作成装置(仮)(ごうせいいんしさくせいそうち)

1話に登場。『因子』が弾くだけではなく引かれる性質もあると証明するため作れた装置。

2つの『腕輪』をセットし、異極同士の『因子』であれば『合成因子』が作られる。

 

 

拘束椅子(こうそくいす)

3話に登場。『ウマ人』化したソウジが理性を戻すまで身体を抑えるために用意された椅子。実験を重ねていくうちに必要無くなったが、その後も何度か別の目的で使用されている。

 

 

増毛薬(仮)(新薬1)

11話に登場。アグネスタキオンがソウジに飲ませた新薬。ソウジの全ての体毛が10cmずつ伸びた。

 

 

ケーキ味になる調味料(仮)(新薬2)

12話に登場。味蕾を刺激し、10分間食べる物全てをケーキ味へと変える薬。

ニンジン焼きに使用し、アグネスフライト、スイープトウショウ、メジロドーべルがそれを食べた。

元ネタはアプリ版でラーメン味に変える調味料のイベント…名前を忘れた。

 

 

合成因子分析装置(ごうせいいんしぶんせきそうち)

13話に登場。『因子』を回収した『腕輪』から情報を数値化する装置。何の数値か詳細は不明。

 

 

痛み止め(新薬3)

18話に登場。有マ記念でゴール後にケガの痛みで倒れたエアシャカールとジャングルポケットに病院までの繋ぎとして使用した。…法的に大丈夫だったかは不明。

 

 

アロマキャンドル(あろまきゃんどる)

18話に登場。アグネスタキオンの手作りで有マ記念後にソウジへと送ったクリスマスプレゼント。樹木系の香りがする成功品。

62話でツインターボにもプレゼントした。

 

 

人差し指がマイナスドライバーになる薬(新薬4)

22話に登場。効果は名前の通り…23話の罰ゲームとしてソウジに使われた。嫌がらせ以外の何でもない。

 

 

耳に蚊が飛ぶ幻聴が聞こえる薬(新薬5)

23話に登場。効果は名前の通り…罰ゲームとしてソウジに使われた。嫌がらせ以外の何でもない。

 

 

中身を入れ替える首輪(例の首輪)

23話に登場。罰ゲームとしてソウジとアグネスフライトに使われた。その後も何度か登場しており、エアグルーヴとジャングルポケット*9、アグネスタキオンとアグネスフライト*10らが使用した。

2つの首輪が5感と思考の情報を送受信し合うことにより共有し、入れ替わったように錯覚させる。また、片方の情報を遮断することで一方的に情報を送り込み相手の身体を好きに動かすことも出来る*11。ただし、意識があれば身体の持ち主の動きが優先される*12

 

 

毛色を変えるカチューシャ(例のカチューシャ)

24話に登場。ウマ娘の耳が付いているカチューシャ…特殊な電波と超音波で光の屈折を操作し変色しているように見せている。

栗毛、鹿毛、黒鹿毛、青鹿毛、芦毛、と5種類あり、耳の色に合わせた毛色へと変化する。人間、ウマ娘、両方に使用が可能。なお、ウマ娘の場合は尻尾の色が変わらない。

ファン感謝祭にてファンとの交流で30個ほど用意されていた。

その後はネオユニヴァースが栗毛になるカチューシャを1つ所持している。

 

 

半端となった『因子』を回収するための薬(新薬6)

28話に登場。回収に失敗し、ソウジの体内に残った『合成因子』を全回収するために作られた薬。

カプセル内にある物質が出す特殊な波長によりあるモノと融合させる。そして…何とか体外へと発射させた。

 

 

耳を再生させる薬(新薬7)

47話に登場。アグネスフライトに問い詰めている時に出てきた薬。千切れた耳を再生出来る…既に人間(ソウジ)の耳で実証がされている。

 

 

謎の下半身(ソウジのトラウマ)

53話に登場。タブレットで操作し動く下半身を模した機械。これ単体でも走るがウマ娘、もしくは人間と一体化することも可能。

プログラムで速さや歩幅などを調整出来るが…アグネスタキオンの想定していた動きではなかったようだ。

作中ではソウジにつけてウマ娘の速度で走らせたため…大惨事となった。

 

 

回復促進薬(新薬8)

53話に登場。服用者の回復力を大きく上げる…これにより完治に1年かかる大ケガをしたソウジの下半身をを1ヶ月で歩ける程にまで回復させた。何の成分か不明なものの副作用として全身が発光する。

 

 

霊可視化照準器(デサイレンスコープ)

54話に登場。アグネスフライトがマンハッタンカフェに憑依したサンデーサイレンスを視るために使用した。

91話からはメジロマックイーンも所持している。

 

 

胸が小さくなる薬(新薬9)

57話に登場。効果は名前の通り…アグネスフライトに使われた。3日ほど貧乳状態が続いた。

バランスが崩れ走りに影響したあげく、ドーピング検査に引っ掛かる成分もあり、さらには貧乳ウマ娘たちからの圧力により使用は中止となった。

 

 

ウマソウル強化マシン(うまそうるきょうかましん)

60話に登場。厳密には"別世界"のアグネスタキオンが作った機械。

原理は不明なものの模擬ゴール直後に行方不明になったジャングルポケットを痕跡から魂と上手く繋ぎ合わせ"別世界"から呼び戻した。

大きいのか重いのかは不明だがゴール板まで運ぶのは大変だったとのこと。

 

 

自分の好みを暴露するガス(仮)(ばくろがす)

69話と109話に登場。効果は名前の通り…喋る度に自分の性癖を吐き出す。特に無い場合は効果がない。効果時間は実験中断により不明。

69話ではガス缶へと移す前にサンデーサイレンスに持ち出され…うっかり落としてしまったことにより学園全体へと流出。大惨事となった。

109話ではスイープトウショウがハジメの本音を知るために保管されていたのを持ち出して再び学園全体へと流出した。しかし、2度目で慣れたのかそこまでの騒ぎにはならなかった。

 

 

暴露ガス中和剤(ちゅうわざい)

69話と110話に登場。上記の『暴露ガス』を中和するガス。影響を受けた者を正常にし、暴露ガスが効いてない者が吸っても大丈夫という安心安全なガス。

 

 

消臭剤(カレー用)(しょうしゅうざい)

96話に登場。在庫が無くて何となく作った時の余り。効果はアグネスタキオン曰く既存のよりは強いが手間を考えると買った方が楽だった、とのこと。

 

 

好感度メガネ(こうかんどめがね)

107話に登場。アグネスタキオンとソウジの深夜テンションにより作成された多機能なメガネ型レコーダー。

好感度を可視化出来ることは機能の一部に過ぎないが、アグネスフライトによりそう名付けられた。この機能はアグネスタキオンからは相手から自分に対する評価、だと言われたが実際は自分から相手に対する評価であるため…アグネスタキオンは大きく嫉妬することになった。

作中には出なかったかが『前日のそろぴょい回数』、『うまぴょい人数』、『守護霊』、『現在の財布の所持金量』、『前日の睡眠時間』、『本日の摂取カロリー』など様々ものが可視化出来る。

 

 

ーーー

その他のアイテムや用語

 

麻袋(あさぶくろ)

7話に登場。アニメではお馴染みのアレ。

昼寝をしていたセイウンスカイにアグネスタキオンが使い、部屋まで運んだ。

 

 

病院(びょういん)

トレセン学園近くにある総合病院。

名前は特に考えていない。トレセン学園を始め、アグネス家、メジロ家、華麗なる一族から多くの支援を受けている。

直接の登場は27話。院長とその一人娘の2人で経営しており、トレセン学園からの患者も多い。

ソウジがアグネスタキオンの担当になったばかりの頃は週5日は運ばれていたのですっかり顔馴染みとなっている。

チヒロは前院長の息子であり、現院長の兄でもあるため、トレーナー引退後はたまに外科手術を担当している。

 

 

トレセン地下室(ごうもんべや)

公式にもあるらしい謎の部屋。

19話にアグネスフライトがソウジの治療のために『レロレロ』の『ウマ人』となったソウジと手錠などで無抵抗にしたアグネスタキオンを閉じ込めた。

94話ではアグネスフライトのメンタルケアのため、タイキブリザードにより入れられた。なお、アグネスフライトは過去にシリウスシンボリと全面戦争をした時にも入れられている。

 

 

ジャングルポケットからの贈り物(折紙作品)

アグネスタキオンがレース出走前に渡されるジャングルポケットの手作り作品。

フェブラリーSからレースへ出走する度に渡されるようになった。アメリカのレースへ出走した時も届いてきた。

 

 

ハイヒール(タキオン様、お踏みください)

23話から登場。フェブラリーS勝利により、ジャングルポケットからアグネスタキオンにプレゼントされた。色は原案と同様に白色。

レースで走るのには向いてなかったが、その後のウイニングライブで必ず履くようになった。

 

 

ぱかプチ(折紙)(ぱかぷち)

折紙で出来たぱかプチ。作中ではジャングルポケットが折っており、クオリティはかなり高い。本物のぱかプチとは異なり、スカートの中はスパッツではなく普通のパンツとなっている。

また、行方不明となったウマ娘が戻った時に何故か一緒に付いてくる、という謎のジンクスがある。

 

 

改造スタンガン(すたんがん)

アグネスフライトが所持しており、改造により出力が既存の物より高い。36話でソウジへと使用した。その後は暴走するウォーエンブレムによく使われている。

なお、スタンガンがあることでアグネスフライトの戦闘力がワンランクダウンしている。

…ここだけの話、ヤンデレっぽいアイテムとして1回出したかっただけなのにここまで出番があるとは思わなかった。

 

 

Service Guardian(サービスガーディアン)

46話に登場。メダグリアドーロが起業した会社でイージーゴアやペイザバトラーが所属している。主にケガや病気などで未練を残し引退したウマ娘たちで構成されおり、働きながらレースへの復帰を目指している。

また、アメリカのレースをさらに盛り上げようとメダグリアドーロが世界中から優秀なウマ娘やトレーナーをスカウトしている。

 

 

WIN☆ポンッ☆プリファイ(ウィン☆ポンッ☆プリファイ)

プリファイシリーズの最新作。カワカミプリンセス曰く今までのプリファイとは違い武器を中心に戦うシリーズとのこと。

カワカミプリンセス、スイープトウショウ、ニシノフラワーが大ファンで毎週見ており、合宿での視聴をきっかけにデュランダルも見るようになった。

3人のプリンセスファイターが悪の組織トゥ・レーナを撃退し続ける物語。中盤に新たなプリンセスファイターが加入したことにより究極の武器『風林火山合成剣絆』が完成した。

 

 

風林火山合成剣絆(ふうりんかざんごうせいけんきずな)

プリファイたちがそれぞれに持つ風の剣(バスラットレオン)炎の鞭(アカイイト)花の槍(ソングライン)土のメリケンサック(ディープボンド)が1つに合体した究極の剣。必殺技時には4人で振り、敵を倒す。

また54話ではそのオモチャを買ってきたチヒロがニシノフラワーへとプレゼントしていたが………気に入ったデュランダルの勝負服の一部となった。スイープトウショウも持っている。

 

 

前掛け(黒き王の想い)

ハルウララが勝負服に追加した赤い布で初登場は58話。ナムラコクオーと同じく左目を覆うことで前への集中力を上げる。

 

 

覇王のチョコ像(ボクをお食べ)

63話で登場。テイテムオペラオーがウォーエンブレムと5本勝負をし、勝利の景品として送った等身大のチョコ像。

かなり大きかったものの一瞬にして食べられ…さらに興奮したウォーエンブレムの暴走スイッチが入り、テイエムオペラオー自身も食べられそうになった*13

 

 

ルーズバーズ(よくあるマナーの悪いファン)

80,81話に登場。元々は推しのウマ娘がいて、最初はその娘を応援していたもののレース中の事故により引退。レースそのものを憎むようになり、野次を飛ばす集団になった。レース運営は迷惑だとは思われているもののメンバーに権力者*14の子供がいたため強く言うことはなかった*15

ある日、レース後のぶちギレたメダグリアドーロにより全員がボコボコにされ『ルーズバーズ』という蔑称を貰うこととなった*16

ブリダーズカップでアグネスタキオンを拐おうとするも誤って姉のアグネスフライトを拐ってしまい、助けに来たソウジとSGたちの活躍により壊滅した。

 

 

超ロイヤルビタージュース(絶対に苦いやつ)

87,88話で登場。ソウジが面白半分で買ってきたジュース。薄めて飲む必要があり苦くて青臭い。アグネスタキオンとタイキブリザードが罰ゲームとしてアグネスフライトに原液で飲ませ…大惨事となった。

その後、責任を感じたソウジが原液で1瓶全て飲み干した*17

 

 

ミニマスコットたち(ウマ娘ちゃんグッズ)

108話に登場。ハルウララが借りたスターリングローズの所持品で有マ記念へ出走するウマ娘たちを模したマスコット。USBにあるデータを読み込ませることで動くため、後述のシートと合わせることでレースのシミュレーションが出来る。データを更新することで結果が変わる。

 

 

中山レース場シート(ありまきねんようしーと)

108話に登場。畳一畳分の大きさで中山レース場を再現しているシート。ゲートは無い。

*1
アグネスタキオン+メジロドーベル、セイウンスカイ+ニシノフラワーなど

*2
アグネスタキオン+ダイワスカーレット…ただし、後の『腕輪』の性能向上により『合成因子』化に成功

*3
レロレロ、シュンミンアカツキなど

*4
エンプレススズカ、クルマバナなど

*5
デビルジュピター、シンアルテミスなど

*6
髪が異常に伸びるピンクバナナなど

*7
2話

*8
作者が設定を忘れていた訳ではない…本当だよ?

*9
24話と25話と60話

*10
87話

*11
36話で意識の無いソウジの身体をアグネスフライトが操った

*12
25話ではエアグルーヴの身体に2つの意識がある状態で走っていた

*13
アグネスフライトにより阻止されたが…ウォーエンブレムを避けるようになった

*14
メディアを使い印象操作できるレベル

*15
後にメダグリアドーロによりメディアの関係者共々サウジアラビアへと飛ばされた

*16
それに開き直ってかメンバーは鳥のコードネームを使っている

*17
良い子は真似しないように



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U 登場するオリジナルウマ娘一覧 U

明けましておめでとうございます

今日から中央競馬がスタートなので投稿します。
ここに載せているのは基本的に本家ウマ娘にはいない競走馬たちで…この作品に登場予定を含めた全員です。公式サイトを参考に五十音順で並べており、未登場キャラは誕生日のみ書かれてます。よければ予想してみてください…キャラが登場すれば更新する予定です。

では、今年もこの作品をよろしくお願いします。

追記:ぱかライブTVの2周年記念にて、ジャングルポケット、タップダンスシチー、ネオユニヴァース、ヒシミラクルらが追加されましたがこの作品では別キャラとして見てください。


「あなたに夢はある?なら私がそこまで連れていってあげる♪」

 

アグネスフライト(Agnes Flight)

 

誕生日…3月2日

身長…159cm

体重…微減

スリーサイズ…B85・W55・H81

 

誰かの夢を叶えることが大好きなウマ娘。

優秀な妹がおり、それに恥じない姉であることをモットーにトレセン学園の風紀委員として今日も活動する。また交友関係が広く、融通をかなり利かせてくれるため全生徒からの人気は高い。

レースでは1人を徹底的にマークし、最後の直線で捉える走りを行う。

 

 

ーーー

 

「目標。快速。それより速い。スーパー快速。」

 

アグネスワールド(Agnes World)

 

誕生日…4月28日

身長…160cm

体重…もりもり増量中

スリーサイズ…B85・W56・H85

 

自然が大好きで、キャンプが趣味のウマ娘。

アメリカ生まれであるが、姉の影響もあり、日本の食にはまりつつある。好物は天ぷら。

レースでは『快速』を呼ばれたスピードを武器にターフを駆け抜ける。

 

 

ーーー

 

「裁きの時は来た…私の勝利だ!」

 

アジュディケーティング(Adgudicating)

 

誕生日…4月27日

身長…164cm

体重…測定の必要無し!

スリーサイズ…B83・W60・H82

 

アメリカのウマ娘。

日本にいるものの詳細不明。

 

 

ーーー

 

「絶対に並ぶんだ!あの星に…孤独で煌めくあの星に!」

 

アドマイヤドン(Admire Don)

 

誕生日…5月17日

身長…157cm

体重…増減無し

スリーサイズ…B84・W56・H82

 

姉とのレースを目標に日々の練習を全力で行う爆進ウマ娘。

その結果、姉にかなりの心配されているもののそれに気づく気配はない。

レースでは凄まじい集中力で位置取りを行いつつも足を溜め、最後の直線で外からまとめてかわすスタイル。

 

 

ーーー

 

「前へ進めば勝てる…簡単でしょ?」

 

イージーゴア(Easy Goer)

 

誕生日…3月21日

身長…185cm

体重…アメリカじゃ測らないわよ

スリーサイズ…B95・W61・H96

 

アメリカのウマ娘。

アメリカ最強と呼ばれている以外詳細不明。

 

 

ーーー

 

「滾る…滾る…しゃっ!お前ら全員、ぶっ千切ってやる!!」

 

ウォーエンブレム(War Emblem)

 

誕生日…2月20日

身長…188cm

体重…まぁ、結構ヘヴィーかな?

スリーサイズ…B99・W62・H97

 

アメリカのウマ娘。

レースに勝つ時は圧倒的に勝つらしいが詳細不明。…栗毛のウマ娘が好き。

 

 

ーーー

 

「表か裏か…さてさて、王が化かしてあげるよ。」

 

ヴォルポニ(Volponi)

 

誕生日…4月13日

身長…160cm

体重…ほぉ、王にそれを聞くか?

スリーサイズ…B79・W56・H78

 

アメリカのウマ娘。

芝とダート両方を得意とし、王を自称してること以外は詳細不明。

 

 

ーーー

 

「お姉ちゃんが繋いでくれたバトン…無駄にはしない!」

 

オグリローマン(Oguri Roman)

 

誕生日…5月20日

身長…156cm

体重…微増

スリーサイズ…B80・H55・H79

 

姉であるオグリキャップを追い、地方から転入してきたウマ娘。

姉が受けた重い期待が自分へも向けられていることを知りながらも、それに答えようとする努力家である。

レースでは瞬発力を活かして、前の方から最速の上がりで逃げ切るスタイル。

 

 

ーーー

 

「今回の反省点は…さて、新しい作戦を練ろうか。」

 

オフサイドトラップ(Offside Trap)

 

誕生日…4月21日

身長…152cm

体重…計算内だよ

スリーサイズ…B79・H52・H79

 

理想のレースを追求する自称頭脳派ウマ娘。

それに向けた走りでレースに挑んでいるものの思うよういかないが…その日が来ることを信じて今日も走る。

レースでは中段から前の隙を伺い、一気に仕掛けるスタイル。

 

 

ーーー

 

「次の勝利までヨーソローです~!」

 

キャプテントゥーレ(Captain Thule)

 

誕生日…4月5日

身長…155cm

体重…相対的に変化なし

スリーサイズ…B80・W56・H82

 

 

マイペースでいつものんびりしているウマ娘。

詳細不明。

 

 

ーーー

 

「あの人よりも速く…前へ…」

 

グランデッツァ(Grandezza)

 

誕生日…3月3日

身長…159cm

体重…微増

スリーサイズ…B83・W55・H81

 

 

普段はボーとしているが、レースとなればスイッチが入るウマ娘。

憧れのウマ娘がいるらしいが…詳細不明。

 

 

ーーー

 

「金塊というのは磨くから輝くものだろ?」

 

ゴールドアリュール(Gold Allure)

 

誕生日…3月3日

身長…168cm

体重…増減無し

スリーサイズ…B89・W59・H85

 

ダートを走る自信に溢れたウマ娘。

自己研鑽を欠かさないその走りは金色に輝く金塊そのもので彼女に惹かれファンになる者も多い。

レースでは前方をキープし続け、最後のコーナーから抜け出す先行脚質の王道な走りをする。

 

 

ーーー

 

「風が教えてくれるんだ…勝てる走りってやつをさぁ!!」

 

コナゴールド(Kona Gold)

 

誕生日…3月19日

身長…170cm

体重…分からないなぁ

スリーサイズ…B83・W50・H83

 

アメリカのウマ娘。

短距離が得意らしいが詳細不明。

 

ーーー

 

「私にあるのは…ただ確信だけだ!」

 

コントレイル(Contrail)

 

誕生日…4月1日

身長…155cm

体重…雲くらい軽いよ?本当だよ?

スリーサイズ…B79・W53・H79

 

 

空への憧れを持つウマ娘。

その実力はディープインパクトの再来と言われているが詳細不明。

 

ーーー

 

 

「ハッハッハ!もっとだ!もっと俺を楽しませろ!」

 

サンデーサイレンス(Sunday Silence)

 

誕生日…3月25日

身長…180cm

体重…知るか!

スリーサイズ…B90・W60・H92

 

アメリカのウマ娘。

イージーゴアに勝つなどかなりの実力者ではあるものの詳細不明。体中に大量の傷痕がある。

 

 

ーーー

 

「私のポケットの中には…フフフフ♪」

 

ジャングルポケット(Jungle Pocket)

 

誕生日…5月7日

身長…155cm

体重…微増(折り紙補正)

スリーサイズ…B80・W52・H83

 

練習、勉強問わず面倒見が良く、みんなから慕われるウマ娘。

折り紙を趣味としており、ファンから送られた想い(折り紙)と共にレースを走る。

レースでは大外から一気に差しきるスタイル。

 

 

ーーー

 

「堅実に行くわ!」

 

スターリングローズ(Sterling Rose)

 

誕生日…3月20日

身長…166cm

体重…増減無し

スリーサイズ…B83・W59・H80

 

あらゆるレース展開を予想し、作戦を立てる頭脳派ウマ娘。

想定外の展開には実力でごり押す脳筋な部分も…。

可愛いものが大好きで部屋にはぱかぷちやマスコットでいっぱい。

 

 

ーーー

 

「一定のリズム、一定のリズム…ソイヤソイヤソイヤッ!よしっ!」

 

タップダンスシチー(Tap Dance City)

 

誕生日…3月16日

身長…160cm

体重…増減無し

スリーサイズ…B80・W57・H80

 

タップダンスを得意とするウマ娘。

その足で奏でる感覚はレースで自身のリズムを作り出すことに活かさせており、一定のリズムでターフを駆け抜ける。

無意識にタップを行うため、じっとすることは苦手。

 

 

ーーー

 

「吹雪を突き抜ける走り…見てみるね!」

 

タイキブリザード(Taiki Blizzard)

 

誕生日…3月12日

身長…177cm

体重…パーフェクトね!

スリーサイズ…B77・W53・H90

 

誰とでも仲良くなりたいが、引っ込み思案なウマ娘。

高身長がコンプレックスで相手に目線を合わせるためよく屈む。

レースでは先行脚質で前をキープしつつ低い姿勢から一気に抜け出す走りを行う。

 

 

ーーー

 

「…どんな壁も乗り越えてみせる!」

 

ダイワメジャー(Daiwa Major)

 

誕生日…4月8日

身長…165cm

体重…不明(計測拒否)

スリーサイズ…B91・W57・H83

 

シスコン。

 

 

ーーー

 

「…絶対に私という衝撃を残すんだ!」

 

ディープインパクト(Deep Impact)

 

誕生日…3月25日

身長…153cm

体重…衝撃の軽さ

スリーサイズ…B75・W52・H80

 

シスコン。

 

 

ーーー

 

「んー、気持ちいい空ですね~私が雲をぶっ飛ばしたからかな?」

 

ディープスカイ(Deep Sky)

 

誕生日…4月24日

身長…162cm

体重…変化無し

スリーサイズ…B85・H57・H86

 

挟まれることに定評のあるウマ娘。

後方からの上がりタイムが凄いらしいが…詳細不明。

 

 

ーーー

 

「…」b

 

デュランダル(Durandal)

 

誕生日…5月25日

身長…154cm

体重…増減無し

スリーサイズ…B73・W54・H76

 

無口なウマ娘。

基本的に喋らず、リアクションのみでコミュニケーションを行う。騎士に憧れ剣道をしており、その腕力は巨大な剣を片手で軽々と振り回せるほど。また、結構大食い。

レースでは前半に足を溜めるに溜め、最後の直線から鋭い末脚で一気に差しきるスタイル。

 

 

ーーー

 

「私は何度でも立ち上がり、走り続ける!」

 

ナムラコクオー(Namura Kokuo)

 

誕生日…5月6日

身長…163cm

体重…増量中

スリーサイズ…B90・W57・H90

 

どんな状況でも諦めることはない不屈のウマ娘。

生まれ持った脚部不安により、大きなハンデを背負っているものの前述の理由により悲観はしていない。

とあるウマ娘に勝つことを目標としているが…。

 

 

ーーー

 

「テキストを入力してください」

 

テキストを入力してください(テキストを入力してください)

 

誕生日…4月18日

身長…テキストを入力してください

体重…テキストを入力してください

スリーサイズ…テキストを入力してください

 

テキストを入力してください

 

 

ーーー

 

「ワタシはユーニヴァース☆つまり、無限大な可能性☆」

 

ネオユニヴァース(Neo Universe)

 

誕生日…5月21日

身長…158cm

体重…ユーニヴァース☆

スリーサイズ…B78・W55・H81

 

元気いっぱいな挑戦者。

母につけて貰った自身の名の由来から、宇宙クラスのウマ娘を目指す。自身の実力と成長の可能性を信じ、今日も練習をユニヴァースレベルに頑張る!!

口癖は『ユーニヴァース☆』。

 

 

ーーー

 

「…これが世界、でも私の闘志は岩より固い!」

 

ノーザンロック(Northern Rock)

 

誕生日…4月10日

身長…145cm

体重…測らないから分からないな

スリーサイズ…B65・W50・H68

 

アイルランドのウマ娘。

日本生まれではあるものの詳細不明。

 

 

ーーー

 

「テキストを入力してください」

 

テキストを入力してください(テキストを入力してください)

 

誕生日…3月28日

身長…テキストを入力してください

体重…テキストを入力してください

スリーサイズ…テキストを入力してください

 

テキストを入力してください

 

 

ーーー

 

「万全は尽くしたぞ天命よ!では…我輩に勝利を!」

 

ヒシミラクル(Hishi Miracle)

 

誕生日…3月31日

身長…151cm

体重…不明(直前の人事による)

スリーサイズ…B70・W50・H72

 

『人事を尽くして天命を待つ』をモットーに自身と他人のために動ける奉公ウマ娘。

その行動はあくまで彼女の中での自己満足に過ぎないのだが、周りには評価されることが多い。

レースではスタミナを武器に早めにスパートを切り、逃げ切る走りが得意。

 

 

ーーー

 

「私から逃げれるとお思いで?」

 

ピルサドスキー(Pilsudski)

 

誕生日…4月23日

身長…165cm

体重…微増(ラーメン美味しい)

スリーサイズ…B85・W59・H87

 

アイルランドのウマ娘。

ファインモーションの姉で、日本でも走ったことはあるが詳細不明。エアグルーヴが大好き。

 

 

ーーー

 

「よしよし…いい子だ。」

 

ファルブラヴ(Falbrav)

 

誕生日…2月28日

身長…172cm

体重…増量中

スリーサイズ…B84・W60・H83

 

イタリアのウマ娘。

日本でも走ったことはあるが詳細不明。

 

 

ーーー

 

「流れがみえる…どんな渦になるのだろ?」

 

ブラックタイド(Black Tide)

 

誕生日…3月29日

身長…160cm

体重…増減無し

スリーサイズ…B85・W55・H85

 

シスコン。

 

 

ーーー

 

「テキストを入力してください」

 

フォアゴー(Forego)

 

誕生日…4月30日

身長…テキストを入力してください

体重…テキストを入力してください

スリーサイズ…テキストを入力してください

 

アメリカのウマ娘。

生ける伝説、などと呼ばれているが詳細不明。

 

 

ーーー

 

「ここが…私の…舞台か…!」

 

ペイザバトラー(Pay the Butler)

 

誕生日…2月20日

身長…182cm

体重…???

スリーサイズ…B??・W??・H??

 

アメリカのウマ娘。

日本でも走ったことはあるものの詳細不明。

 

 

ーーー

 

「華麗であれ…わ、私には無理っす!」

 

マイネルセレクト(Meiner Select)

 

誕生日…5月29日

身長…170cm

体重…華麗っす

スリーサイズ…B80・W62・H84

 

凛としていて寡黙なウマ娘。

『華麗なる一族』の血を引くことを最近知ったものの、一般の家庭で育ったため令嬢の振る舞いを知らずいた。周りのイメージを損なわせないために出来るだけ喋らないように過ごしている。

 

 

ーーー

 

「銀はもう要らない!金こそが!金こそが最高の勲章よ!」

 

メダグリアドーロ(Medaglia d'Oro)

 

誕生日…4月11日

身長…169cm

体重…測らないけど…金メダル級?

スリーサイズ…B85・W53・H85

 

アメリカのウマ娘。

バランスの取れた抜群のプロポーションを持つものの詳細不明。

 

 

ーーー

 

「強敵ばかりだ…いい時代に生まれたものだな!」

 

リンカーン(Lincoln)

 

誕生日…3月18日

身長…155cm

体重…増減なし

スリーサイズ…B77・W55・H77

 

真面目で誰に対しても敬語を使うウマ娘。

強者を引き寄せやすく体質、とのことで目に付けたウマ娘と模擬レースを行い、自身を次々と進化させていく。

ただ、調子が不安定で本番でも実力が出せないことも多い。

 

 

ーーー

 

「…三女神よ、私が走れることに感謝します。」

 

レディブロンド(Lady Blond)

 

誕生日…3月20日

身長…151cm

体重…増減無し

スリーサイズ…B79・W53・H80

 

レースへの出走を待ち続けているウマ娘。

ポテンシャルが高く、本格化はしているものの虚弱体質から中々出走出来ずにいる。

しかし、いざ出走となれば速いスピードと上手いコース取りで内からも外からもかわして突き抜ける。



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第1話 『因子』を合成せよ!

どうも、アマノジャックです。

私は前回、自身の作品内で産駒を考えていたのですが、この競走馬の産駒ならもっと活躍してたんじゃない?と思った競走馬がかなりいました。

早くに亡くなってしまったナリタブライアン、エルコンドルパサー、エアシャカール、受胎しなかったファインモーション、レース中に亡くなったライスシャワーやサイレンススズカなど…まだ出てくると思います!

長生きしてたりちゃんと受胎出来てたら、どんな産駒がレースで暴れてたでしょうか?

そんなことを妄想しつつ書いてます!


ここはトレセン学園内にある、アグネスタキオンの実験室。現在、奇妙な実験が行われていた。

 

ボカーン!

 

「また、反発してしまった!デジタル君と私もダメと…」カキカキ

 

アグネスタキオンはケガによりトゥインクルを引退した。そしてそのまま、勉学のちトレセン学園から卒業をするつもりだった。しかし、その間の研究でウマ娘の力を引き出すのが2つの『因子』なるものだと発見した。それがどのように合わさり出来るのか不明でその研究に没頭するようになった。唯一参考になるのは後輩のダイワスカーレットから回収した『自身の因子と別の因子で構成された因子』だけだ。

 

「あぁ、もっとサンプルが欲しいよモルモット君。」

「貼り紙はしてるんだけどね…」

 

彼女が現在持っている因子は自分自身の他には、ダイワスカーレット、マンハッタンカフェ、アグネスデジタルのみである。募集をかけているものの当然、こんな怪しい実験に協力してくれるウマ娘はほぼいない。元担当トレーナーであるソウジはタキオンの復帰を信じて(監視役として)協力してくれているが、サンプルは集めは難航していた。

 

「モルモット君、何かアイデアはないのかね?」

「アイデアね…物で釣る、くらいしか出てこないな。」

「ふむ、ごもっともな意見だ。早速、試してくれたまえ!」

「何を用意するつもりだ?」

「それを考えるのが君の役目だろ?早くしろ!」

「分かった!分かった!張り紙にちょっと書き足してくる!」

 

ソウジは部屋を出ていった。

 

………

 

2時間後…

 

「ダメだった…」

「モルモット君、君は貼り紙に何と書いたんだ?」

「『牛丼食べ放題』って書いたんだ…」

「…そんなので寄ってくるのはオグリキャップ君かスペシャルウィーク君くらいだぞ。…ん?その2人は来なかったのか?」

「来てたのだが…タマモクロスとサイレンススズカに止められてしまった。」

 

サイレンススズカに抱えられるスペシャルウィークとタマモクロスに引きずられるオグリキャップが容易に想像できた。

 

「残念だ。」

「…後、女帝にも目をつけられた。貼り紙に余計なことを書くな、だとさ。」

 

貼り紙を貼るにあたっては生徒会の許可を得て貼っているため、変更があるのであればまた許可が必要だということだ。

 

「なるほどね。こうなれば1人1人に直接話にいくしかなさそうだ。」

「そうだな…で、誰に声をかけるんだ?」

「………」

『うーん…』

 

2人は悩む。

 

………

 

「で、オレのところに来たと?…帰れ!」

「エアシャカール!そこを何とか…」

「知らねェ、帰れ!『因子』とかロジカルじゃねェことを抜かす奴に使う時間はねェよ。」

 

2人が出した結論は『エアシャカールなら話は出来るんじゃね?』であった。当然、断れるのは想定してたがせめて何か収穫が欲しいところだ。

 

「その研究の成果を1つ教えよう!2つの『因子』がウマ娘の力を構成している話は前もしたね?」

「あァ?覚えてるがそれがどう進歩した?」

「私とカフェの構成してる『因子』の半分が全く同じだった。そして、スカーレット君の構成している『因子』が私が持つ『因子』と全く同じだった。そのスカーレット君の『因子』を参考に私から取り出した『因子』をカフェやデジタル君の因子に合わせて見たところ反発したんだ。しかし、私の『因子』は誰かの『因子』と結合すると考えてる。」

「…つまり、サンプルが足りねぇから合否も法則もまだ全然分かってねェってことだろ?で、オレの『因子』も欲しいと…帰れ!要するにオレの体のデータを調べたいってことだろが、気持ち悪ィ!」

「タキオン、さすがにこれは…」

「ふむ…では、これならどうだろか?私の『因子』の結合できる『因子』が見つかればそのデータを君に渡そう。そしたらまた交渉といこうじゃないか。と、いうわけでモルモット君戻ろう。結合の合否が分かればまた来るよ。」

「2度と来るな!」

 

………

 

そして、サンプル集めの話はまた振り出しに戻る。

 

「さて、次は誰に声をかけようか…」

「ニシノフラワーはどうだ?」

「ダメだ。うまくいきそうだったが、セイウンスカイ君に邪魔された。」

「邪魔が入らないウマ娘か…」

『うーん…』

 

2人が再び悩んだその時…

 

「タキオンさん、こんにちは!『因子』のサンプルになりそうなウマ娘を連れてきました!」

「おい、スカーレット!離せよ!」

 

ダイワスカーレットとウオッカが部屋に入ってきた。が、ウオッカの顔はかなり怯えている。

 

「やぁ、スカーレット君。サンプルとはまさか、ウオッカ君のことかね?」

「はい!タキオンさんの力になりたくて連れてきました!」

「オレはまだ普通のウマ娘でいたいんだ!離せ!」

「彼女、かなり怯えてるが…私の研究をどう伝えたんだい?」

「え?体から『因子』を抜き取って、究極のウマ娘を作り出すって言いました。」

「その説明ではまるで私がマッドサイエンティストみたいじゃないか!」

「間違ってないだろ。」

「モルモット君?」ギロッ

「あー、ウオッカ。この腕輪を付けて24時間経てば自動的に採取は終わるから!痛みとか疲れとかは無いから!」

「…オレ、ちゃんと普通のウマ娘でいられる?」

「…スカーレット君?この話ってウオッカ君以外にもしたかね?」

「えぇ、クラスのみんなやスペ先輩たちにも伝えました。」

「それが原因でみんなからスカーレットが洗脳されたウマ娘を見るような目で見られてました。」

「…道理で誰も来ない訳だ。そしてスカーレット君、すまなかったね。」

「??何で私に謝るのですか?」

 

とりあえず、2人はウオッカを説得し、安心してもらった後、実験に協力してもらい、『因子』のサンプルを手に入れることが出来た。そして、具体的な採取内容を書くため張り紙を変更をすることにした。ついでに報酬はニンジン3本と追記した。

 

ーーー

 

サンプルであるウオッカの『因子』のデータを取り、アグネスタキオンは自身とウオッカの『因子』を合わせていく。

 

ピカーン

 

『!!』

 

反発ではない、だが今までにない反応である。

 

「モルモット君…」

「あぁ…やったなタキオン!成功したな!」

 

未知なる『因子』が誕生した瞬間である。

 

「で、この『因子』…どうするつもりだ?」

「今までと同様にまずはデータを取る。そして…おっと、この先を言うのは後の楽しみにしておこう。」

「そんな、勿体ぶらなくても…」

「この『因子』にはそうだね…"ジンソニック"とでも名付けよう。」

「ジントニック?」

「ジンソニックだ。ウオッカ君から酒繋がりでジン、私の異名から速さ繋がりでソニック、を合わせた名前だ。くくく…さて、どんなデータが取れるのやら…」

 

マッドサイエンティストは笑う…これから出てくるであろうデータはもちろん、その後の展開も想像して。




血統による強さとか特徴とか全然分かってませんが、みなさんも良かったら、ファインモーション+エアシャカールなどウマ娘アプリ内(*ここ重要!)で見たい組み合わせがあれば感想などで教えてください!

エアグルーヴ+サイレンススズカ、エアグルーヴ+キタサンブラックなどあり得ない組み合わせでも構いません!

メジロドーベル+エルコンドルパサーなど既にある組み合わせは無しでお願いします!


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第2話 超光速の貴公子 + 強酒 = 音速の精霊

頭を捻って名前を考えたジンソニックですが、ジントニック+ソーダのお酒でありました。…競走馬にはまだいないはずです。

今回、ジンソニックがレースをします。因子しかないのどうするのかって?こうなりました!では、どうぞ!


アグネスタキオンとウオッカの因子合成により『ジンソニック』が完成した数日後、アグネスタキオンは再びエアシャカールを訪ねていた。

 

「やあ、シャカール君!」

「チッ、2度と来るなつッただろ!サンプルは増えたのか?」

「1つ手に入っただけだよ。貼り紙を変えたのだが…全然効果が無くてね。」

「何しに来たんだお前?」

「何、研究成果の報告だよ。その1つが私の『因子』と合成することが出来た。そして、その合成因子『ジンソニック』の適性距離がマイル~中距離、ということも分かったのだよ。」

「はん!どうせお前とソイツの『因子』が得意な距離だっただけだろ?そんな、机上の空論なデータが信じられるかよ!」

「机上ではないとも。走らせて分かったデータだよ。」

「は?走らせただァ?」

「大変だったよ…」

「お前、普段から死んでる目がさらに死んでるぞ?」

 

また、時間は数日前に戻る。

 

ーーー

 

『ジンソニック』のデータを取り終わったアグネスタキオンはホクホクした顔で満足していた。

 

「間違えない、これは私とウオッカ君の因子で出来ている!」

「でタキオン、その因子はどうするつもりだ?」

「どうするって…こうするのさ!」グイッ

「タキオン!何を…ぐぎゃっ!」ゴクン

 

アグネスタキオンは完成した因子を躊躇いも無く、ソウジの口へと入れた。ソウジは激しく悶え始める。

 

「がっ、があぁぁぁーっ!」

「さてさて、モルモット君の変化は…おぉ!早速、体温が上昇しているね。」

「タ、キ、オン…」

「ふむ、耳が上に移動して来ているな。モルモット君はウマ娘へと体が変化しているのか人間にない尻尾も…いや、これは…!」

 

それはうまだっち(意味深)したソウジの前尻尾だった。ソウジはそのままアグネスタキオンを掴みかかる。

 

「タキオンタキオンタキオン!」ガシッ

「モ、モルモット君!?そんなモノを私へ向けるな!ええい!離れろ!くそッ、なんて力だ!」

「タキオン!タキオン!」ハァハァ

「ええい!いい加減にしない、かっ!」

 

ゲシッ

 

「タキッーー!!!」バタン

「ふー、危なかったよ。まさかこんな副作用があったとは…君の子を孕むのはいいが今じゃない。今はこの研究を優先させてくれ、ソウジ。」

「………」

「おっ、普通に尻尾も生えてきたね…」

 

ソウジを蹴りで気絶させたアグネスタキオンは観察を続けた。そして15分後…

 

「…はっ!」

「目が覚めたかねモルモット君?」

「ったく、俺に飲ませるなら飲ませるって言っておけよ。」

「それでは私の楽しみにならないじゃないか。早速、鏡をみてくれたまえ。」

「え?これはウマ娘の耳…あ!俺の耳がない!」

「そこに移動したんだよ。あとは尻尾も生えている。」

「俺…ウマ娘になったのか?」

「安心したまえ。性別は男のままだよ。」

「何でそんなことが言いきれるんだ?」

「それはその…」もじもじ

 

思い出すのは先ほどの前尻尾。

 

「歯切れが悪いな…、まぁいい。まさか、このままずっとこの姿で生きろとか言わないよな?」

「それは腕にあるここのツボにひ鍼をして、サンプル採取用の腕輪を3日付けて入れば君の体内にある『ジンソニック』は全て回収出来るとも。君の体への副作用は…多分、大丈夫だ。」

「今多分って言ったか?」

「言ったとも。何、問題が起きれば解決するまでずっと側にいるまでさ。」

「お前な…」

「さて、早速だが君には何回もレースを走ってもらう。先ずは1200mからだ!」

「はいはい、分かりましたよ。…どんなタイムになるのやら。」

 

その日、レース上を走る謎のウマ娘(?)が目撃された。

 

ーーー

 

「ってことがあったのさ。」

「…お前はオレに元担当トレーナーとの惚気話を聞かせに来たのか?聞いたから帰れ!」

「惚気じゃない!コホン、それにまだ話はある。」

「『因子』ならやらねェよ。」

「それじゃない。レースのお誘いだよ。」

「レースだァ?」

「モルモッ…では無かった!『ジンソニック』の実力が気にならないか?」

「基になってるのは人間だろ?ならねェよ。」

「気が変わったらでいい。見るだけでも構わない。1時間後にレース場へ来てくれたまえ!では!」

「……チッ!」

 

ーーー

 

ウマ娘たちが練習で使っているレース場。今日はそこで特別なレースが行われるようだ。

 

「やぁ、諸君。今日はレースを見にきてくれてありがとう。何、今日は私が呼んだ特別ゲストと参加者がレースしてもらうだけだ。距離は2000m、バ場は良、天気は晴れ、といったところか。参加賞にはニンジンを5本用意した!まだまだ参加者は募集中だから是非参加してくれたまえ!」

「………」

 

ザワザワザワ

 

「誰だろうあのウマ娘?」

「何か、カッコいいよね?」

「んー、何処かで見たことあるような…」

 

ウマ娘たちが集まってきたが、現在参加しているウマ娘は『ジンソニック』の他はアグネスデジタルとダイワスカーレットだけだ。ちなみにウオッカは観戦側。アグネスタキオンとしてはもっと人数が欲しいところだ。

 

「はいはーい!参加しまーす!」

「スペちゃん!?…私も参加するわ。」

 

スペシャルウィークとサイレンススズカが参加することになった。

 

「お!2人追加されたね。他に誰かいないかね?」

「私も参加しよう。」

「君が参加するとは意外だねエアグルーヴ君。」

「スズカが参加するからな。」

 

エアグルーヴの参加も決まった。

 

「まぁ、人数はこれくらいで良いだろう。では、準備をしてきてくれたまえ!」

 

そして30分後、準備が終わったウマ娘たちが集まり特別レースが始まる。

 

………

 

「ピスピース!本日のレースを実況するゴルシちゃんだぞ!」

「どうも皆様、本日のレースの解説をしますメジロマックイーンですわ。」

「何かタキオンの奴がさ、何処かのウマ娘を連れてきたらしくてな………あれ?コイツってタキオンの元担当トレーナーじゃね?」

「何をおっしゃってますの?どう見てもウマ娘ではありませんか?」

「いや、分からないぞ!タキオンの実験でこうなってる可能性もある訳じゃん。」

「否定はしませんが、今は実況に集中してください。」

 

「分かったよ…1番はサイレンススズカだ!」

「レースをする以上、かなり気合いが入ってますわね。」

 

「2番はダイワスカーレットだな。」

「ちょっと前に学内で話題になってましたね。」

 

「3番、今回のゲスト!謎のウマ娘、ジンソニックだ!」

「肩幅といい、筋肉の量といい、かなり立派ですわね。どんな力を持ってるか楽しみですわ。」

 

「4番、アグネスデジタル!」

「幸せそうな顔ですわね。ちゃんとレースに集中してるのでしょうか?」

 

「問題無いと思う。5番はエアグルーヴだ!」

「スズカさんに対抗心を燃やしていましたわね。」

 

「最後、6番はスペシャルウィーク!」

「ジンソニックさんの走りにワクワクしている顔ですわね。」

 

「以上、この6人で走ってもらうぜ!」

 

紹介が終わった各ウマ娘たちがゲートへと入っていく。そして、スペシャルウィークのゲートインが完了し…レースが始まった!

 

「スタートしたな。先頭争いはサイレンススズカとダイワスカーレット、その後ろにジンソニック。スペシャルウィークとエアグルーヴが並んで、最後方にアグネスデジタルだ!」

「ゲストのジンソニックさんですが、軽やかな走りをしていますわね。足にあまり力を入れていないようですわ。」

「確かにテイオーステップみたいな動きだな。おっ、第2コーナーを超えてサイレンススズカがさらに前に出る!これは大逃げで行くつもりか!最後方のアグネスデジタルとは10バ身ほど離れていく!」

「ダイワスカーレットさんは少し後方へ引いてきましたね。冷静な判断かと。」

「ん?ジンソニックも引いてきてるな。それをスペシャルウィークとエアグルーヴが追い抜いた!スタミナが尽きたか?」

「それにしては妙ですわね。アグネスデジタルさんの前をキープしていますし…」

 

「第3コーナー、先頭は変わらずサイレンススズカ。んー、もう特に言うことはないな!」

「いや、真面目にやってくださいませ!ほら、エアグルーヴさんがペースを上げてきて、スペシャルウィークさんを追い抜きましたわよ!」

「ジンソニックもペースを上げてきたな!スペシャルウィークをかわし、エアグルーヴの後ろに付いた!」

「ジンソニックさんはペースを上げてもあの走り方ですのね!」

 

「最終コーナーカーブ、大逃げをしていたサイレンススズカだが、少しずつ差が無くなってきてるか?ダイワスカーレットが仕掛てきた!一気にサイレンススズカに迫る!」

「他のウマ娘たちも一気に仕掛てきましたわ!そして、ダイワスカーレットさんがサイレンススズカをかわしました!」

 

「残り200m!ここでジンソニックだ!エアグルーヴとサイレンススズカをかわしたジンソニックが前に出てダイワスカーレットと競り合ってるぞ!」

「…?今、一瞬ウオッカさんが映りませんでした?」

「何言ってんだマックイーン?おっと、ここでジンソニックが抜け出してきた!これは決まったか!」

「いえ、大外から誰か来てますわ!」

「何と、大外からスペシャルウィーク!スペシャルウィークが爆進してきた!」

「全身全霊…すごい末脚ですわ!」

「スペシャルウィークがジンソニックへ迫る!スペシャルウィークか?ジンソニックか?…スペシャルウィークだ!スペシャルウィークが差しきってゴールイン!」

 

(ワアァァーッ!)

 

「1着はスペシャルウィークだ!」

「しかし、ゲストのジンソニックさん…中々侮れない方でしたわね。…あれ?ジンソニックさんはどこに行きました?」

「知らね。」

 

ーーー

 

ソウジは誰もいないところで息を整えていた。

 

「はぁ、はぁ…これがウマ娘のレースか…」

「いや、私の想像以上の走りだったよモルモット君。」

「タキオン!」

「慣れない体を使いこなすのは難しかっただろ…だが、そろそろ『ジンソニック』は回収させてもらうよ。ついでに変化があるかも調べたいからね。」

「分かった。腕輪と針を用意してくれ。」

「その前に…シャワーをしてきてくれ。体臭が凄くて敵わん。」

「す、すまない!ウマ娘の『因子』があろうと体は男だもんな!」

「私は好きなのだが…このままでは…その…」もじもじ

「タキオン?」

「コホン、研究室のシャワーを使ってくれ。一緒にさっきのレースも見返そう。」

「あぁ。」

 

レースを終えた2人は研究室へと戻り、『ジンソニック』の特徴について書きまとめた。その後3日かけて因子を回収し、さらに3日間ソウジは激しい筋肉痛で寝込んだ。

 

ーーー

 

「んだよ、これが本当に人間へ『因子』を入れただけの結果かよ。タキオンもだが、あのトレーナー…マジでヤバいんじゃねェか?」




ジン(お酒ではなく砂漠の精霊の方)とソニック(音速)で『音速の精霊』です!

タキオンの産駒といえば、ダイワスカーレット、ディープスカイ、キャプテントゥーレ、などが出てきます。

もしウオッカと交配していればウマ娘でスカーレット(義理の娘)とタキオン(夫)を取り合う仲に変わっていたかもしれませんね。

以上、アグネスタキオンとウオッカの産駒の話でした!


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第3話 『ジンソニック』の研究終了、そして…

トレセン学園内では謎のウマ娘、『ジンソニック』が噂になっていた。そして、サイレンススズカとエアグルーヴが『ジンソニック』に再戦したいと言ってきたのだ。困ったソウジ、チャンスだと考えたアグネスタキオンと対照的な反応であったが考えたことは同じである。そう、『ジンソニック』とのレースを条件に2人の『因子』を手に入れたのだ。その後、再び『ジンソニック』となったソウジは2人にレースで敗北し、また筋肉痛に苦しんだ。

 

ーーー

 

「サイレンススズカ君も私やカフェと同じ『因子』を持っているねえ…。で、私との反応は…」

 

ボカーン

 

「やはりダメか。同じ『因子』があると、反発がするようだ。それだとデジタル君が…いや、今はいい。エアグルーヴ君と私だと…」

 

ピカーン

 

「なるほど、成功だ。」

「第2号の完成か。早速試す…」

「いや、これはこれで取っておくが今回から調べたいのは別のことだ。今まで手に入れた私以外の『因子』も組み合わせみよう。またウオッカ君とエアグルーヴ君から『因子』を貰ってきてくれ。その間に私は実験を続けよう。」

「またって…その『因子』を分解したりは出来ないのか?」

「モルモット君、それが出来れば私自身の『因子』を分解しているよ。『因子』は頑丈だがとても不安定で、現状は分析が限界だ。合成する時もかなり慎重に扱っている。2つが合わさったことでようやく飲ませるレベルに安定するんだ。仮にモルモット君へ私から取り出し『因子』だけを飲むと…君の体内で私の『因子』が完全に付着して回収出来ず、一生そのままになる可能性がある。」

「タキオンとなら俺はいいのだが…」

「何を言ってるんだ!それだと、将来私との交配に支障が…」もじもじ

「将来?」

「コホン、とにかく完成した『因子』は分解が出来ない。反発した『因子』はまだ使用できるからサイレンススズカ君の分は大丈夫だ。」

「分かった、お願いしてこよう。」

「さて!カフェやデジタル君のも試していくか!」

 

マッドサイエンティストによる実験は続いていく。

 

………

 

アグネスタキオンとエアグルーヴの『合成因子』を調べつつ、他の『因子』との実験を続けて数日後…

 

「モルモット君、法則が少し掴めてきたよ。」

「法則?」

「まずは『因子』そのものについてだが…磁石みたいものだと分かった。」

「磁石?」

「私をS極だとすれば、ウオッカ君とエアグルーヴ君はN極だから合成できた。逆にカフェやサイレンススズカ君は同じS極だから反発した、と言ったところか。」

「その2つだけとは限らないだろ?エアグルーヴとウオッカ、マンハッタンカフェとサイレンススズカを組み合わせた『因子』は反発したのか?」

「反発したとも。あ!そう言えば1つだけ試していない『因子』があったね。」

「えーと…何だっけ?」

「スカーレット君の『因子』さ!貴重なサンプルとしていくつか大切に保管していたが、私の『因子』が既に入ってるスカーレット君の『因子』に私の『因子』を加えるとどうなるのか…試してみようじゃないか!」

「まぁ、少なくともS極かN極かは分かるよな。」

「実験開始さ!早速合成して…」

 

ピカーン、ドローン

 

出てきた『因子』はドス黒く、液体化していた。

 

「何だこの反応は!?」

「光った…よな?」

「『因子』ではあるね…飲んでみるかね?」

「いや!これは俺でもマズイのは分かる!」

「…私の成分が濃すぎたか?回収して調べるしかないな…」

 

その後もダイワスカーレットの『因子』の実験は続き、マンハッタンカフェ、サイレンススズカにもアグネスタキオン程ではないが同じ反応があった。結局、アグネスデジタルとの合成が上手くいったことでN極と確定した。

 

「どうやら合成出来て、かつ構成している『因子』が濃くなるとこうなるようだ…」

「『因子』が濃いと異常が起きるってペットのインブリードみたいだね…」

「…ふむ。まずはこの完成した『因子』を調べよう。」

 

ーーー

 

アグネスタキオンはダイワスカーレットとアグネスデジタルの『合成因子』を調べまとめた。

 

「よし、この『因子』のデータはこんなところだろう。」

「そういえばタキオン、『ジンソニック』の時みたいに俺は『因子』を飲まなくていいのか?」

「…そうだね。次に合成する本命の『因子』で試して貰おうか。」

「本命?」

「S極とN極の話はしただろう?だから、このウマ娘とこのウマ娘を…クククッ…」

 

ピカーン

 

「さて、飲ませる前に…」

「はい、はい…大人しく拘束されますよ。」

 

前回の反省からアグネスタキオンはソウジが『因子』を飲み、理性を取り戻すまでの間は暴れないよう抑えることにした。

 

そして、マッドサイエンティストはモルモットを椅子に座らせて拘束し…『因子』をその口の中へと入れた。

 

ーーー

タキオンメモ:『合成因子について』

 

XX月7日

・誕生

→アグネスタキオンの『因子』とウオッカの『因子』を合成したことで完成した第一号の『合成因子』に『ジンソニック』と名付ける。

 

 

XX月8日

・分析後に人間の男性、被験者Sに合成因子『ジンソニック』を飲ませた

→被験者は激しく暴れたのち、体が変化。髪の色が栗毛へと変わる。ウマ娘と区別するためにここでは『ウマ人』と呼ぶ。

*この時点で被験者Sは人間離れした力を持っていた。

 

・ウマ人はウマ娘同様に耳と尻尾有り

→ウマ娘と異なる点はその性別。男の生殖器が残っていた。

 

・ウマ人の人間時の記憶に変化無し

→ただし、『因子』を飲んだ直後の暴れていた記憶は無し。

 

・身体能力

→1200mと1600mを測定。1600mが走りやすかったと発言。短距離は無く、マイルは適性あり。

 

 

XX月9日

・関係者に被験者Sと分かるよう白衣を着せておく

 

・身体能力2

→2000mと2400mと3000mを測定。2400m以上はキツいと発言。よって『ジンソニック』の適性距離はマイル~中距離とする。

 

→ダートの1600mを測定。全く思うように動けなかったとの発言からダート適性は無しと判断する。

 

・脚質

→アグネスデジタルとの併走で、逃げ・先行・差し・追い込みを確認。タイムにより先行=差し>追い込み>>>逃げ、と記録。

 

 

XX月10日

・レース実行

→アグネスデジタル、ダイワスカーレット、スペシャルウィーク、サイレンススズカ、エアグルーヴとの特別レースに出走。レース中に先行→差しと脚質を変え、2着となる。

 

→見た目の割に(ウマ娘基準で)パワーは弱く、バ群で耐えきれるかは不明。

 

・『ジンソニック』回収

→レース終了後にウマ人はひ鍼と回収用腕輪を装着。3時間後に髪色が戻り、12時間後にはほぼ被験者Sの姿と戻った。回収率は12時間で60%。

 

 

XX月11日

・『ジンソニック』回収2

→回収ペースが落ちていった。その日の回収率は60→90%に変化したのみ。現状は被験者Sに副反応はなし。

 

XX月12日

・『ジンソニック』回収3

→被験者Sの体から『因子』が全て回収されたのを確認。直後、被験者Sが体の痛みを訴える。調べたところ全身の筋肉に激しい炎症を確認。回収による副反応とウマ娘レベルの筋力を使った反動と思われる。ロイヤルビタージュースと大量の湿布で対処を行った。

 

 

XX月13日

・被験者Sの容体

→一般人レベルの筋肉痛まで回復を確認。バイタル40を飲ませた。

 

 

XX月14日

・被験者Sの容体2

→ニンジンハンバーグDXを完食出来なかったものの完全な回復を確認。

 

 

以上が『ジンソニック』の実験レポートである。問題点の改善後にまた、新たな『合成因子』での実験を行う。




おまけ(合成因子の2号と3号の名前及び特徴)

エアグルーヴ + アグネスタキオン = クイーンフォノン
適性 バ場・芝、距離・マイル~中距離、脚質・先行&差し

ダイワスカーレット + アグネスデジタル = アカキユウシャ
適性 バ場・芝&ダート、距離・マイル~長距離、脚質・先行


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第4話 女帝 + 異次元の逃亡者 = 三重の帝

今回のソウジに使う『合成因子』は…タイトル通りです。では、どうぞ!



アグネスタキオンは作成した『ジンソニック』のレポートをエアシャカールに見せていた。

 

「成果はこんな所だね。」

「…オレの『因子』をやる。」

「む?それはありがたい話だが急に何故だい?」

「代わりにオレのところにその顔を2度と見せにくるな。これは本気だ。」

「………そうか、君には理解して貰えなかったか。」

「自分の元担当トレーナーをボロ雑巾のように使う研究なんて理解したかねェよ!研究をやめろ、とかは言わねェが…せめてオレの視界には入るな。不愉快だ。『因子』を回収する腕輪はアイツに持ってこさせろ。…帰れ、今のお前の顔を見ているとマジで吐きそうだ。」

「…ご協力感謝するよ。今日はまたレース…」

「帰れ!!」

「………」

 

ーーー

 

再びアグネスタキオン主催の特別レースが行われようとしていた。

 

「本日のレースも特別ゲストがいるよ…『エンプレススズカ』君だ!」

 

(ワァァァーッ!)

 

「ジンソニックさんみたいに強いのかな?」

「今回はどの距離のウマ娘かな?」

 

『ジンソニック』の時と同様に盛り上がっていた。

 

「あの人ってスズカさんの知り合いですか?雰囲気が似ています!」

「確かに私と同じスズカは入っているけど、初めて見るウマ娘よ。」

 

「お母様に似てるだと!?」

「いや、どちらかと言えば君に似てるような…」

 

そう、この『エンプレススズカ』はエアグルーヴとサイレンススズカの『合成因子』で出来た存在である。

 

「今日の条件は…ふむ!距離は2400m、バ場は良、天気は曇りってところだ。参加者はいるかね?今回も参加賞はニンジン5本だよ。」

 

今回はダイワスカーレットもアグネスデジタルもいない。果たして誰が参加するのか…

 

「はいはーい!参加しまーすっ!」

 

1人目はウイニングチケットだった。

 

「ねぇねぇ!タイシンとハヤヒデも参加しようよ!」

「私は来週レースがあるからダメだ。」

「私は昨日のレースで疲れてる。」

「そっか…それじゃあ無理だね。応援しててね!」

 

ウイニングチケットは同じBNWの2人も誘うが断れ、1人だけ参加することとなった。すると、もう1人手が上がった!

 

「私も参加します!」

 

キタサンブラックだ。やる気も満々だ。その後に次々と手を上げたウマ娘が現れ、8人でのレースとなった。

 

………

 

「ってことでピスピース!本日も実況ゴルシちゃんと…」

「解説を私、メジロマックイーンで始めていきますわ。」

「なぁ、マックイーン…今日誕生日だろ?おめでとう!」

「いや、絶対に今言うべきタイミングではないでしょう!…ありがとうございます。」

「まぁ、命日でもあるんだけどな…」

「縁起の悪いことを言わないでくださいまし!」

「ってことで本格的に実況に戻るからな!えーと、今回のゲスト『エンプレススズカ』は……ってやっぱりタキオンの元担当トレーナーじゃね?」

「あなたそれ、前回も言ってましたわよ。髪の色は確かに黒ですが耳と尻尾があそこにある以上はウマ娘ですわ。」

「うーん、モヤモヤするな…」

「それよりも出走するウマ娘を紹介してください!」

「分かった、分かった!すぅー…」

 

ゴールドシップが一呼吸を入れて出走ウマ娘の紹介を始めた。

 

「1番、エルコンドルパサー!」

「ギラギラとした目でエンプレススズカさんを見てますわね、気合い十分ですわ。」

 

「2番は今回のゲスト、エンプレススズカだ!」

「コースをじっと見て…もの凄く集中していますわ!実力は未知ですが…手強そうです!」

 

「3番、ライスシャワー!」

「今日は誰の後ろに付くが見所かと。」

 

「4番はトウセンジョーダンだぁ…」

「やる気を出しなさい!」

 

「5番、ウイニングチケット!」

「彼女は真っ先に参加していましたわね!どんな作戦でくるのでしょうか?」

「いや、ウイニングチケットは単にダービーの距離だから参加したんじゃね?」

「もう!実況でそういうことは言わなくていいですから!次の方は?」

 

「6番は…キタサンブラック!」

「今のところ…エンプレススズカは分かりませんが今のところ逃げは彼女だけですね。歴戦の猛者を率いる姿が浮かびますわ…」

 

「7番はサクラバクシンオー!」

「…はい?彼女ってこの距離を走れましたっけ?」

「まぁ、参加は自由だからな!本人は1200m×2本の気持ちじゃね?」

「…」

 

「最後はトウカイテイオーだ!」

「彼女もエンプレススズカさんの実力が気になるみたいですわね。ずっと彼女を見てますわ。」

 

「以上!この8人でレースを行っていくぜ!」

 

紹介が終わった各ウマ娘たち全員がゲートに入り…レースが始まった!

 

「スタート!全員綺麗なスタートだな!先頭争い…はなくキタサンブラックが前に行ってる!」

「サクラバクシンオーさんは前の方ですわね…ペース配分を考えているのでしょうか?」

「だけど…完全に先行集団に入ってるな。前からサクラバクシンオー、エルコンドルパサー、トウカイテイオー、トーセンジョーダン、ライスシャワーってところか。」

「その後ろにウイニングチケットさん、最後方にエンプレススズカさんですわね。」

 

「第1コーナーカーブ、先頭は変わらずキタサンブラック。先行集団は…エルコンドルパサーとサクラバクシンオーがちょっと競り合い始めたか。」

「ライスシャワーさんは少し下がってきましたわね。トウカイテイオーをマークしたようです。最後方のエンプレススズカさんは…さらに速度を落としている?」

 

「第2コーナーで…先頭はキタサンブラック。それにサクラバクシンオー、エルコンドルパサーが続いている。」

「競り合い過ぎて最早"逃げ"になってますわね…スタミナは持つのでしょうか?」

「お?エンプレススズカがウイニングチケットをかわしたな!」

「え!?第1コーナーであんなに離れてましたのに!?」

 

「第3コーナー、先頭は変わらずキタサンブラックだが…」

「サクラバクシンオーさんが後退…スタミナは持たなかったようです。」

「そして、エルコンドルパサーが2番。トウカイテイオーとライスシャワーがそれに続く。」

「そしてトーセンジョーダンさん…をエンプレススズカさんがかわした!この方、どこまで伸びますの!?」

「焦ったのかウイニングチケットとトーセンジョーダンもあがってきたな。」

 

「最終コーナー、キタサンブラックが集団で率いている!2番にはトウカイテイオーだが仕掛けて、っとライスシャワーも同時に仕掛けてきた!」

「エンプレススズカさんは後退してきたエルコンドルパサーさんをかわして4番まであがってきましたわ。」

「先頭キタサンブラックだがトウカイテイオーとの差が無くなってきた!ここでライスシャワー!ライスシャワーが抜け出した!ライスシャワーが先頭になる!残り200!」

「ここでエンプレススズカさんも仕掛けてきましたわ…ってものすごい加速!一気にトウカイテイオーとキタサンブラックさんをかわしてライスシャワーさんへ迫りま……すっ!?」

「…嘘だろ?ライスシャワーをかわした上に1バ身くらい差をつけてゴールしたぞ?」

「ええ、ゴールしましたわね…」

「いや、ゴールしてるじゃねぇか!1着はエンプレススズカだ!」

「そうでしたわ!2着にはライスシャワーさん、3着はキタサンブラックさんですわ!…エンプレススズカさんはどこへ?」

「ちょっと捕まえてくる!」

「ゴ、ゴールドシップさん!?」

 

ーーー

 

ソウジは今回も誰もいないところで息を整えていた。

 

「ぜぇ、ぜぇ…ちょっと無理をしたかな…」

「お疲れ様だよモルモット君。」

「タキオン…ん?何でゴールドシップを抱えているんだ?」

「何、君の後をつけてたから不意を突いて眠って貰ったのさ。」

「俺の後を?」

「そんなことよりこれを見てくれたまえ!」

 

ゴールドシップを下ろし、タキオンがあるものを取り出した。

 

「『因子』サンプル回収用の腕輪か?」

「改良してすぐに回収出きるようになったんだ。もちろん、私自身で試してるから危険はないとも。これをゴールドシップ君に付けて…」

 

ピッ、ピッ、ピッー!

 

ゴールドシップのつけた腕輪から機械の電子音が鳴り響く。

 

「これで回収完了だ!早いだろ?」

「あぁ、早いな。じゃあ、俺もそれを使えば…」

「ダメだ。」

「え?」

「今のモルモット君に使えば…前回とは比べ物にならない痛みが襲い死ぬかもしれない。『エンプレススズカ』の回収はモルモット君の疲労が完全に無くなってからだ。」

「分かった。心配してくれてありがとうなタキオン。」

「…礼などいい。さて、私も汗をかいてしまったし、早く研究室へ戻り、一緒にシャワーをした後にさっきのレースを見ていこうじゃないか。」

「あぁ!ん?一緒に?」

「私の後にという意味だ!同時ではないからな!ないからな!」

「2回も言わなくても分かるって…」

 

マッドサイエンティストとモルモットは人目を気にしつつその場を去る。1人の目撃者に気付かず…。

 

ーーー

 

「…やっぱり、タキオンの元担当トレーナーだったか。しっかしな…、この件どうしようかな…?マックイーンにでも相談するか?何かの実験だろうけど…このままなのは不味いよな?うーん…」




エンプレス(女帝の英語)と鈴鹿(三重県の地名)と3(エアグルーヴ+サイレンススズカのG1勝利数)で『三重の帝』です。

サイレンススズカの『スズカ』は鈴鹿御前からか三重県の地名からか分かりませんが、3勝と三重を合わせたかったのでここでは後者としています。


サイレンススズカが生きていれば、多分ですがエアグルーヴと交配してたと思います。アプリでも結構絡みが多いので合成してみました!

えー、ここで1つお知らせです。
毎朝9時に投稿していたこの作品ですが、書き貯めてた話のストックが尽きたため、しばらく投稿出来ません。書き貯めましたらまた投稿しますのでよろしくお願いします!


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第5話 『エンプレススズカ』の研究終了、上書きされる身体

アグネスタキオン、誕生日おめでとう!

まだ、3話分しかストックないけど君の誕生日を祝い今日は投稿しよう!機会があれば君の兄のアグネスフライトを生で見てみたいですね…。


タキオンメモ:『合成因子第四号エンプレススズカについて』

 

XX月20日

・誕生

→サイレンススズカの『因子』とエアグルーヴの『因子』を合成したことで完成した第四号の『合成因子』に『エンプレススズカ』と名付ける。

 

・被験者Sを椅子に拘束し、再び合成因子『エンプレススズカ』を飲ませた

→被験者Sは前回同様に激しく暴れたのち『ウマ人』へと変化した。

 

・髪色の変化は無し

→エアグルーヴの因子が強かったからと思われる。

 

・身体能力

→1200mと1600mを測定。『ジンソニック』と比べるとマイルは明らかに遅くなっていた。短距離、マイルは適性無しと判断する。

 

 

XX月21日

・身体能力2

→2000mと2400mと3000mを測定。『ウマ人』は全て問題なく完走。『ジンソニック』との比較より適性距離は中距離~長距離と判断する。

 

→ダートの2000mを測定。ダート適性は無しと判断する。

 

・脚質

→マンハッタンカフェとの併走で、逃げ・先行・差し・追い込みを確認。タイムにより追い込み>差し>>先行=逃げ、と記録。先行と逃げが苦手なのは意外である。

 

 

XX月22日

・レース実行

→エルコンドルパサー、ライスシャワー、トーセンジョーダン、ウイニングチケット、キタサンブラック、サクラバクシンオーとの特別レースに出走。ロングスパートにより1着となる。

 

→第2コーナーから既に仕掛けており、加速し続けれる豊富なスタミナがあった。ステイヤー向きでありそうだ。

 

・被験者Sの状態

→レース終了後の精密検査により両足に骨折が判明。あの走りに『ウマ人』としての体が持たなかったようだ。安全を考慮し『エンプレススズカ』の因子回収は後日にまわす。

 

余談

・因子回収腕輪の改良

→装着から『因子』回収まで24時間かかっていた腕輪だが、無駄を省きに省き10秒で回収できるようになった。後遺症は今のところは特に無い。現在の被験者はアグネスタキオン、ゴールドシップのみ。

 

 

XX月23日

・被験者Sの状態2

→ギプス固定で歩けはするものの、基本的には車いすで移動することになる。早く治ってご飯を作って欲しい。とりあえずロイヤルビタージュースとお手製の骨密度UPの薬を飲ませておいた。

 

余談2

・『因子』入手

→エアシャカール、エルコンドルパサー、サクラバクシンオー、ウイニングチケットの『因子』を入手した。腕輪は旧式の24時間かかるものを使用。

 

 

XX月28日

・『エンプレススズカ』回収

→被験者Sに改良した回収腕輪を装着し、『エンプレススズカ』を回収する。1週間を跨いだためか、被験者Sに筋肉の炎症等は無く、骨折以外は問題なし。

 

・『エンプレススズカ』の解析

→他の『合成因子』と比べても特に面白いところなし

 

 

以上が『エンプレススズカ』の実験結果である。被験者Sが回復後にまた、新たな『合成因子』での実験を行う。

 

ーーー

 

「こんなところだね。」

 

アグネスタキオンはメモと分析データからレポートを作成した。

 

「タキオン、お疲れ様。紅茶でも飲む?」

「あぁ、いただくよ…じゃなかった!モルモット君、君はケガをしてるのだからあまり無理はしないでくれ!」

「別に紅茶入れるくらいなら無理には…」

「ダメだ!君には少しでも早く治ってもらうんだ!」

 

アグネスタキオンはそう言うとソウジを座らせ、自分と彼との2人分の紅茶を用意した。それを2人で飲んでいく。

 

「ありがとうタキオン。」

「…モルモット君、私はこれでも君に罪悪感を感じてるんだよ。」

「いや、タキオンは悪くないよ。上手くウマ娘の走りを俺が出来なかっただけで…」

「ウマ娘に勝った以上、モルモット君の走りは下手じゃない。それに少人数とはいえ、レースである以上はケガのリスクは付き物だ。こんな状態の君を走らせる訳にはいかない!」

「だが、それだと研究が…」

「私が走ろう。」

「え?」

 

ソウジの思考が止まった。

 

「私が『合成因子』を入れて走ると言ったんだ。」

「ダメだ!君はまだケガをしてるだろ?」

「とっくに治ってるさ。何なら今から研究しつつ復帰してもいい。」

「だとしてもリスクが未知過ぎる!君は『アグネスタキオン』と言う因子が既にあるウマ娘だ!『因子』が無い俺なら走らずとも…」

「クククッ…それだよ、モルモット君。」

「え?」

 

マッドサイエンティストの笑いにモルモットの表情が凍る。彼女にとっては想定済な質問に…彼の質問にこう答えた。

 

「私の体から『アグネスタキオン』という因子を全て抜くんだよ。」

 

………

 

数十分後…とある研究室…いるのは椅子に腕足胴を固定された男と両腕に腕輪をはめたウマ娘のみ。

 

「んー!んーー!」ジタバタ

「ケガ人のクセに暴れないでくれ。何…後3分もすれば自動で解除されるさ。君の役目は実験後の私を何とかすることだ…『アグネスタキオン』の因子回収率50%を確認…意識に問題なし…合成因子第八号『ブレジーケン』を注入開始…」

 

ピーピーピーピー

 

「んんーー!!」ジタバタ

「入っ、て、き…た!ぐっ…まだ5%か…」

「んー!」

 

マッドサイエンティストは10秒で因子を回収出来る腕輪を改造し、回収するための出力を大きく上げた。そして、自身の『因子』を全て抜きつつ『合成因子』を入れるという一発勝負な実験を行っているのだ。苦悶な表情が顔に映る。

 

「んんんん!」

「ハハッ、もう96%か…後、ちょっ…と…」

「んー!」

 

ピピッ、ピピッ

 

「か、ん了、だ…うぅ…」

 

バタン

 

「んー…、外れた!タキオン!」

「だい、じょ、ぶだか、ら…きろ、く、した、まえ…」

 

アグネスタキオンの体に変化が起きる。体毛が黒くなり瞳が青くなり消えていたハイライトが灯る。

 

「タキオン!…くそっ!どうすれば…」

「この、ままで、いい…すこし、ねる…」

「タキオン!しっかりしろ、タキオン!誰か!誰かいないのか!?」

 

アグネスタキオンはそのまま意識を落としてしまった。

 

ーーー

 

「むっ…ここは?」ガバッ

「保健室ですよ。」

「カフェ!?」

「全く…何をやってるのですか?たまたま、私が通っていたから…良かったものの…アナタは本当にタキオンさん…ですよね?」

「そうだが?」

「私は目にハイライトのあるアナタを知らない…のですが…」

「ハイライト?あー、なるほどね。これも実験なのだよ!私自身を使ったね。」

「…実験ってまさか…」

「その通り!ウマ娘への『合成因子』の注入実験さ。」

「私で試さなかった…ってことは本当に危ない実験で…」

「何、こうなった時点で既に成功しているようなものさ。次は君にも頼むよ。」

「気絶するほど危ないのであればお断りします。では、失礼します。」

「待ってくれ!モルモット君は?」

「隣にいますよ。では…」

 

マンハッタンカフェが出ていったと同時にアグネスタキオンは横を へと振り向いた。そこには車椅子の上で眠るソウジがいた。

 

「…」

「…心配をかけてすまなかったねソウジ。だが、本当に大変なのはここからだ。…ってことで明日からまたよろしく頼むよ、ソウジトレーナー。」

「…」

「さて、レースへ出走するんだ。私用のシューズをまた新調しないとねえ。後は復帰届けと…その前に適性の計測をトレーナー君に…」

 

アグネスタキオンは…いや『ブレジーケン』は次のレースに向けての準備を考える。全ては自身の研究のために…




スズカエンプレスという競走馬が既にいたという…競走馬って名前が考えるのは簡単なようで難しいですね。

冠名とかがある理由が分かった気がします。
私が使用したい冠名は…"ラウンド"で!
元ネタは私の別作品にいます架空馬の"ラウンドピーチ"からです!

因みに『ブレジーケン』って何だと思いますか?分かった人は…もしかすると誰と誰かの合成因子も分かるかもしれないです。

では、7話くらい溜めたらまた毎日投稿します!さらばです!


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第6話 ミス・パーフェクト + 怪鳥 = 赤の魔術師 、そして皇帝は貴公子を見定める

どうもアグネスタキオンの育成でついにSSランクが取れてテンション上がってる作者です。


生徒会長シンボリルドルフは驚きを隠せなかった。ケガにより引退していたアグネスタキオンが復帰し、しかも過去に2回行っていた特別レースに自ら走ると言うのだ。無敗の実力…当然気になる。復帰したてとはいえ、彼女の走りを競いたくなるのは強者の性質だ。同じ事を考えていた副会長ナリタブライアンと同時に特別レースの行われる場所へと向かった。

 

ーーー

 

ザワザワザワ

 

レース場が騒がしい…それもそのはずだ。

 

「あれがアグネスタキオン?」

「どうみても別人…」

 

前回の特別レースでみた時のアグネスタキオンの姿と別人なのだ。いつもの白衣が無ければ誰も分からなかっただろう。アグネスタキオンはそんなことを気にもせずにいつも通りに進行する。

 

「やぁ、諸君。本日も特別レースを行っていくよ。今回は…距離は2200m、バ場は良、天気は晴れ…前回とあまり変わりないね。参加賞にニンジンを3本を用意している。是非とも参加してくれたまえ。」

 

「少しいいだろうか?」

 

シンボリルドルフが手をあげる。

 

「これはこれは生徒会長…どうかしましたか?」

「君は…アグネスタキオンでいいのだな?」

「あぁ、そうだとも。ただ、今回の実験でこのような姿になってるだけさ。私はこの状態の私を『ブレジーケン』と呼んでいる。好きに呼んでくれたまえ。」

「そうか…では私もブレジーケンと呼ばせてもらおう。それでブレジーケン、君が今回のレースを走るというのは本当かい?」

「勿論さ。ただ…実力は保証しよう。」

「ほぉ…では私は参加しよう。」

 

ザワザワザワ

 

「マジかよ。」

「皇帝が参加するだと…」

 

皇帝シンボリルドルフの参加に周りのウマ娘やトレーナーも驚きを隠せない。そして、強者は強者を引き寄せる。

 

「私も出る。元よりそのつもりだったが。」

 

シャドーロールの怪物ナリタブライアン。

 

「マヤも!マヤも!」

 

変幻自在マヤノトップガン。

 

「ふむ、ニンジン3本か…」

 

芦毛の怪物オグリキャップ。

 

「おいおいおい…こんなの…ゴルシちゃんも出るしかないだろ!」

 

不沈艦ゴールドシップ。その他、様々なウマ娘たちが参加していき、11名でのレースとなった。

 

………

 

「どうも皆さん、こんにちは~。ゴルシさんに任せられた実況のグラスワンダーです~」

「解説のメジロマックイーンですわ。…まさかゴールドシップさんが参加するとは思いませんでした。」

「私も参加したかったですね~。はぁ、ゴルシさんはこの展開を読んでいたのでしょうか…とはいえ、全力で実況させていただきます~」

「よろしくお願いしますわ。アグネスタキオンさんが黒髪に染めた理由が凄く気になりますわね。」

 

「ではでは、出走するウマ娘を紹介していきましょう~。1番はゴールドシップ。」

「珍しくやる気を出してますわ…何かあったのでしょうか?」

 

「2番、オグリキャップ。」

「彼女も凄いやる気です。これは特別レースのはずですが…」

「出走するウマ娘が豪華ですからね~」

「私もあの場にいれば…」

 

「3番、マヤノトップガン。」

「このメンバーの中でどの脚質でいくのかが注目です。」

 

「4番、シンボリルドルフ。」

「今回のレースの本命と言っても過言じゃないですわね。全体的に注目したいところ。」

 

「5番、キングヘイロー。」

「注目するのはその末脚…一流の走りを期待していますわ。」

 

「6番、ビワハヤヒデ。」

「どのようなコース取りをしていくのか注目です。」

 

「7番、アグネスタキオン…もとい『ブレジーケン』。」

「黒いアグネスタキオンさんですわね。…一体の何の実験なのやら。」

「…エル?」

「はい?」

「いいえ。何でもありません。」

 

「8番、テイエムオペラオー。」

「どこで仕掛けてくるのかが注目です。」

 

「9番、ウオッカ。」

「彼女もどこで仕掛けてに注目したいですわね。」

 

「10番、ナリタブライアン。」

「いかにバ群に捕らわれないかが勝負の鍵になるかと…」

 

「11番、ツインターボ。」

「マヤノトップガンさんがどう来るかによりますが…分かってる中では唯一の"逃げ"のウマ娘ですわ。これが有利になるかどうかが楽しみです。」

 

「以上の11人が出走しますウマ娘になります。では皆さん、ゲートに入ってください。」

 

紹介が終わった各ウマ娘たちがゲートに入って…

 

「ゲート嫌だ~!」

 

ゴールドシップがゲートに入るのを嫌がり、5分ほど手間取ったが、全員のゲートインを完了し…レースが始まった。

 

………

 

「スタートしました。ゴールドシップが出遅れましたがそれ以外は綺麗なスタートです。先頭争いは…なく、ツインターボが先頭。2番手争いにビワハヤヒデ、オグリキャップ、ブレジーケン。その後ろにキングヘイロー、マヤノトップガン、テイエムオペラオー、ウオッカ、ナリタブライアン、シンボリルドルフ、最後方はゴールドシップ。」

「これは…いかに良い位置を取れるかが重要になってきそうですわね。」

「もう集団が出来てますね…前の3人集団と後ろの7人集団が位置を激しく奪いあってます~」

「レースはまだ始まったばかりというのに…スタミナは持つのでしょうか?」

 

「第2コーナーカーブ、先頭は大きく離れてツインターボ。2番手にビワハヤヒデ、オグリキャップとブレジーケンがそれに続いてます~」

「"差し"の集団も縦長になってきましたわ。マヤノトップガン、テイエムオペラオー、ウオッカ、キングヘイロー、ナリタブライアン、シンボリルドルフ、といったところでしょう。ゴールドシップさんもやっと第2コーナーに入ってきました。」

 

「第3コーナーカーブ、先頭はツインターボ。まだまだターボエンジンは全快のようです。"先行"の集団は先頭変わってオグリキャップ、その後ろにブレジーケン。ビワハヤヒデは少しペースを落としたようです。その隙をつき、マヤノトップガンがかわしました。」

「マヤノトップガンさんはペースをあげてきたようですわ。ここでシンボリルドルフさんとナリタブライアンさんも大きくペースをあげてきましたわ。"差し"の集団から抜け出してきました!」

 

「最終コーナーカーブ、先頭はツインターボ…ペースがかなり落ちてきてます。しかし、それでも10バ身以上の大差があります。ここで抜けてきたのはブレジーケン。その後ろからシンボリルドルフとナリタブライアンも迫ってきてます。」

「全員仕掛けてきましたわね。ナリタブライアンさんは大外の良い位置ですが…シンボリルドルフさんはオグリキャップさんが前にいて、抜けにくい位置ですわ。どうするつもりでしょうか?」

「ブレジーケンが一気に走ってきます!しかし、ナリタブライアン!ナリタブライアンも凄まじい末脚!ブレジーケンへと並びにかかります!」

「シンボリルドルフさんも内を突いて、抜け出してきました!ナリタブライアンさんとブレジーケンさんを捉えにきてますわ!」

「ナリタブライアンが並んでブレジーケンと競り合って…あら!?ブレジーケンが更に加速しました!あそこからまだ余力があるようです!ナリタブライアンを離していきます!」

「シンボリルドルフさんもナリタブライアンさんをかわし、ブレジーケンさんへと迫っていきますわ!一体、どうな…あ!」

 

(ワアァァーッ!)

 

「ツインターボがゴールしました。2着にブレジーケン、3着にシンボリルドルフです。」

「前半の位置取りでの競り合りが大きかったのでしょう。とはいえ、お見事ですわツインターボさん。」

「この強豪揃いの中、逃げ切るなんて…本当に凄いですツインターボさん。以上、トレセン学園の特別レースでした~。さようなら~」

 

ーーー

 

後日談。『ブレジーケン』の合成因子を自身の体内から無事回収したアグネスタキオンは生徒会室へと来ていた。シンボリルドルフはアグネスタキオンに渡されたとある資料を確認する。

 

「以上が『ジンソニック』、『エンプレススズカ』の研究レポートだよ。今回の『ブレジーケン』もレポートが出来れば見せようとも。」

「…やはりあれはエアグルーヴだったか。しかし、人間がウマ娘を超えてくるとは…サイボーグみたいだな。」

「ほぼ初見殺しみたいなものだよ。ちなみに私はサイボーグではなく『ウマ人』と呼んでいる。体験しているのも私のトレーナー君1人だけさ。これを活かせれれば、ケガで引退せざるを得ないウマ娘を救えると私は考えている。…もっとも、ドーピングに近いことをしているため、公式のレースには出れないがね。」

「それ以前に倫理的にアウトだと思うが…」

「好奇心で行っているからね。…心配しなくとも公式で走る時は『アグネスタキオン』として走るとも。」

「好奇心…公式…ふふっ!」

「??何かおかしなことを言ったかね?」

「何でもないよ。」

 

エアグルーヴのやる気が下がった。

 

「そうか。それはそうと君の『因子』も貰っていいかね?後はナリタブライアン君とエアグルーヴ君のも。」

「またか…」

「私はいいが…ブライアン!どうだ?」

「24時間も腕輪を付けていられないから嫌だ。」

「安心したまえ!新式の腕輪なら10秒で終わるとも。ちゃんと3個あるから頼むよ~!」

「今度は『アグネスタキオン』として公式のレースに来い。私から言うのはそれだけだ。…それを貸せ。」

「ふふふ…では、私も協力しよう。」

 

ピッ、ピッ、ピー

 

電子音が3つ重なり鳴り響く。アグネスタキオンはシンボリルドルフとナリタブライアンとエアグルーヴの『因子』を手に入れたのだ。

 

「ご協力感謝する。またレースを開いた時、よかったら見にきてくれたまえ。…次からはモルモット君になりそうだが。では、失礼するよ!」

 

アグネスタキオンはホクホクした顔で生徒会室を後にした。

 

「会長、アグネスタキオンはそのままでよろしいのでしょうか?」

「彼女のことだ。外部に漏らすなんてことはしないだろう。それに…」

 

『ケガで引退せざるを得ないウマ娘を救える』

 

「彼女の言葉が気に入ったんだ。現に彼女はレースへと戻ってきた。嘘だとしても…私は信じたい。さて、仕事へと戻ろうじゃないか。書類の山を片付けていこう。」

「おい、ブライアン。…何処へ行く気だ?」

「…見回りだ。」




最初はダイワスカーレット(赤)とエルコンドルパサー(鳥)でアヴドゥルのスタンド『マジシャンズレッド』(赤の魔術師)にしたかったのですが…既に競走馬としていました。なので、姿が似てるポケモンの『バシャーモ』の外国語の発音『ブレジーケン』にしました。

ヴァーミリアン?知ってます…彼を芝で覚醒させたかっただけです、はい。

エルコンドルパサーってものすごく考えられたインブリードらしいのですが…ノーザンダンサー3×4の段階から私にはちんぷんかんぷんな話でした。もし、長生きしてたらヴァーミリアン、アロンダイト、ソングオブウインド以外のG1馬やトウカイトリックのような長年走れる馬が産まれていたかもしれないです。ただ、種牡馬として2年しか動けてないのに、ここまでの成果を出せてるのもすごいと思いますが。

さて、ナリタブライアンの『因子』を誰とまぜまぜ!させようか考え中…では、また明日!


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第7話 『ブレジーケン』の研究終了、貴公子は花を愛でたい

そういえばアグネスタキオンとセイウンスカイの直接の絡みって少ないですね…。


タキオンメモ:『合成因子第八号ブレジーケンについて』

 

XX月5日

・誕生

→ダイワスカーレットの『因子』とエルコンドルパサーの『因子』を合成したことで完成した第八号の『合成因子』に『ブレジーケン』と名付ける。

 

・人間ではなくウマ娘で行った場合に興味が出る

→ダイワスカーレットであれば私の体に馴染みやすそうだ。

 

 

XX月6日

・XX病院で自身の精密検査を受ける

→足の完治を確認。レースへの復帰が許される。

 

・新型腕輪の改造

→『因子』の収納性を大幅にUP

 

→『アグネスタキオン』としての『因子』の全体量の再計算、改造腕輪貯蔵量が問題ないかを確認。

 

→改造腕輪の名前は後日考える。

 

XX月7日

・分析後、トレーナー君協力の元、私自らへ合成因子『ブレジーケン』を注入する

→右腕に『ブレジーケン』の合成因子の入った腕輪、左腕に『アグネスタキオン』因子を全て回収するための改造腕輪を装着。暴れて外れないように腕と腰を椅子へ固定しておく。

 

→体から私自身の因子『アグネスタキオン』を全体の50%回収したのを目処に『ブレジーケン』を注入開始。

 

→2分後に『アグネスタキオン』因子を100%の抜き取り、それと同時に『ブレジーケン』の合成因子を100%注入完了。

 

*意識は正常。脱力感有り。

 

・カメラによる記録から注入完了から30秒後に体毛(栗毛→黒鹿毛)と瞳(茶→青+ハイライト)に変化あり

 

・変色後に大きな疲労感が出てきて眠りにつく

→マンハッタンカフェにより保健室へと運ばれた。

 

 

XX月8日

・身体能力

→計測結果より『ブレジーケン』の適性距離は中距離のみ。ただし、マイルも適正ではないものの可能と判断。

 

→ダートも可能レベルで適正有り。

 

・脚質

→マンハッタンカフェとの併走で、逃げ・先行・差し・追い込みを確認。タイムにより先行>逃げ>>>差し=追い込み、と記録。

 

 

XX月9日

・レース実行

→ウオッカ、オグリキャップ、キングヘイロー、ゴールドシップ、シンボリルドルフ、ツインターボ、テイエムオペラオー、ナリタブライアン、ビワハヤヒデ、マヤノトップガンとの特別レースに出走。先行で挑むも激しい位置取りの競り合いによりツインターボの大逃げを許し、2着となる。

 

余談

・『因子』入手

→キタサンブラック、キングヘイロー、サトノダイヤモンド、ツインターボ、ビワハヤヒデ、マヤノトップガン、ライスシャワーの『因子』を入手した。腕輪は新式を使用。

 

 

XX月10日

・『ブレジーケン』回収

→トレーナー君の協力の元、『アグネスタキオン』因子を注入しつつ、『ブレジーケン』を回収。

 

→回収後に激しい疲労感有り。ロイヤルビタージュースを飲まされた…許さないぞトレーナー君!軽減方法を何か考える必要有り。

 

余談2

・『因子』入手

→シンボリルドルフ、ナリタブライアンの『因子』を入手。

 

 

以上が『ブレジーケン』の実験レポートである。次回からはトレーナーの回復とレースのスケジュールに合わせ行っていく予定だ。

 

ーーー

 

アグネスタキオンとソウジ(骨折完治済み)は新たな研究のため、学園内を歩いていると、花壇にいるニシノフラワーを発見した。

 

「やぁ、フラワー君!」

「あ、タキオンさんとソウジトレーナー!こんにちは!」

「こんにちは、ニシノフラワー。今ってお話出来る?1分で終わることなんだけど…」

「はい!何でしょうか?」

「ちょっとモルモット君!私に説明させてくれよ!」

「えー、いつもは俺に説明を任せるくせに…」

「い・い・か・ら!で、フラワー君!話というのはだね…君の『因子』を分けて欲しいのだよ。」

「『因子』…ですか?」

「私はとある研究をしていてね…今は短距離が得意なウマ娘の『因子』が少しでも多く欲しいのだよ。で、採取方法は…これだ!」

 

ニシノフラワーはコテンと首を傾げた。そこでアグネスタキオンは説明のために腕輪を自分に付ける。

 

「それで、このスイッチを押すと…」

 

ピッ、ピッ、ピッー!

 

「これで採取は完了さ!これを君にもして欲しい!」

「私の『因子』でいいのですか?分かり…」

 

「ちょっと待った!」

 

後少しでニシノフラワーの『因子』が手に入ろうとした時に誰か乱入してきた。

 

「ビコーペガサス君?」

「通報だ!採取した『因子』を使って改造ウマ娘を作る奴がここにいるって聞いたぞ!」

「ちょうど良かった!君も探していたところだよ!」

「へ?」

「ちょっと失礼。」

 

ガチャ

 

「何?この腕輪?カッコいいじゃん!」

「『因子』を採取する腕輪だよ…ポチッと。」

 

ピッ、ピッ、ピー

 

「これで君の『因子』を採取したわけだ。…危険を感じたかね?」

「むぅ…でもこれで改造ウマ娘を作ってるのだろ!?」

「これはウマ娘の力の源を知るための研究だよ。この研究が進めば…ケガで引退するウマ娘が減ることになる。現に私が復帰してるじゃないか!」

「それはそうかもしれないけど…」

「まぁ、悪意は無いと理解してくれればいいよ。短距離向けの『合成因子』が出来た時はまた特別レースを開くから君も参加してくれたまえ。」

「結局、どんな研究はよく分からないけど…分かった!これからも研究頑張ってくれよ!じゃあな!」

 

ビコーペガサスは去っていった。そして、ニシノフラワーのいた方へアグネスタキオンは顔を向けたが…

 

「おぉ、タキオン。終わったか?」

 

いたのはトレーナーのソウジだけだった。

 

「あれ?フラワー君は?」

「あぁ、さっきやることがあるって帰っていったぞ。あ、これはニシノフラワーの『因子』だ。」

「…」

「さて、俺たちも研究室で合成してみようかタキオン。」

「先に帰ってもらってもいいかなモルモット君?少し用事を思い出したよ。」

「分かった。あんまり遅くなるなよ?」

「何、すぐに終わるさ。」

 

ソウジは1人、研究室へと戻っていく。この時、ソウジは見えてなかったが…角の生えたマッドサイエンティストがそこにいた。

 

………

 

数分後、歩いているのは大きな何かが入った麻袋を担ぐマッドサイエンティスト。

 

「んー!んーー!」じたばた

「おっとっと…よく暴れるモルモットだね。しかし、練習も行かずに近くで堂々と寝てるくらい暇なのだろう?カフェがいなくなって困ってたんだ。ちょっと実験に付き合ってもらおうかな………セイウンスカイ君?」

「んんー!」じたばた

 

アグネスタキオン(マッドサイエンティスト)セイウンスカイ(モルモット三号)を手に入れた。




二号はマンハッタンカフェです。


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第8話 合成開始、新たなる『例外』

どうも、牝馬大好き作者です。

今日からヤエノムテキが実装か…しかし、スイープトウショウ、ユキノビジン、イクノディクタス、シーキングザパール、アストンマーチャンまで貯めておきたい…。

アーモンドアイやリスグラシュー、ジェンティルドンナ…とまではいかなくてもシーザリオやブエナビスタ(没になったらしい)の実装を期待する自分が…。


「お帰りタキ…オーン!?」

「んー!んん!」バタバタ

「待たせたねモルモット君。早速、実験を始めようか。」

 

ある程度実験の準備を済ませていたソウジであったが、目に入ったのはアグネスタキオンと激しく動いている大きな麻袋。

 

「いや、その袋何?動いてるの何?まさか、またマンハッタンカフェを無理やり連れてきたんじゃないだろな?俺が1週間、悪夢にうなされたことを忘れてないだろな?」

「カフェは今、フランスだよ?大丈夫、ただの釣りの好きな子猫さ。寝るくらい退屈なようだったから誘ってみると喜んで付いてきたんだ。」

「んんー!んんんん!」バタバタ

「思いっきり否定してるよね?彼女多分助けて、って言ってるよね?」

「そんなことは無いさ。ねぇ、セイウンスカイ君?君は私に同意して付いてきた?これで合ってる?………ソウデスヨ、タキオンサンノトレーナーサン。…ほらね?」

「んんんー!」じたばた

「お前の裏声じゃねぇか!…まぁ、マンハッタンカフェじゃないならいっか。」

「んー!?」

 

予想外の返しに戸惑うセイウンスカイであったが、アグネスタキオンにより麻袋と口枷を取られ、椅子へと拘束される。

 

「大声出しますよ?」

「モルモット君、防音対策は?」

「もう終わってる。」

「という訳だよセイウンスカイ君。ここでどれだけ叫ぼうとも助けは来ない。」

「何て悪役臭い台詞を…。でも、私のトレーナーさんが今頃…」

「タキオン、実験するので今日はお借りしますって連絡終わったよ。了解、たっぷりしごいてやってくれ、って返事も来た。」

「ありがとうモルモット君。」

「ついでにサボり癖も矯正して欲しいってさ。」

「…救いは無いのですか?」

 

無い。

 

………

 

セイウンスカイを拘束しつつもアグネスタキオンたちが始めたのは『因子』の選別からだった。『因子』が入った腕輪を2つ装置に設置し、タキオンの『因子』と今まで採取した『因子』をぶつけ合う。しかし、N極の『因子』は見つからない。

 

「後はさっき手に入れたビコーペガサス君とフラワー君のみか…どっちかはN極であってくれよ…。」

「まぁ、N極は希少みたいだしな…」

「では、ビコーペガサスと私は…」

 

バチーン

 

「S極か…」

「残念だ。後はニシノフラワーだけだな。」

 

反発したビコーペガサスの『因子』を腕輪から取り出し容器へと移す。

 

「あのー、提案なのですけど…フラワーのじゃなくて、私の『因子』が求めてる物なのか調べてもらってもいいですか?」

「今回、私が求めるのは短距離のウマ娘の『因子』だ。しかし、君の『因子』は貰っておこう。さて、この腕輪を…」

「待てタキオン!それは体内全ての『因子』を吸い取った改造腕輪だろ!?セイウンスカイを殺す気か?」

「アー、タキオンマチガエタ。コレハウッカリウッカリ…」

「うわぁ…セイちゃんもしかしなくても大ピンチ?」

「タキオンが飽きるまでは諦めてくれセイウンスカイ。ったく、さっきのビコーペガサスの腕輪でいいだろ。ほらよ!」ポイッ

「っとっと!精密機器なのだから投げないでくれたまえ!…装着して…」

 

ピッ、ピッ、ピー

 

「採取完了っと。では腕輪の回収を…」

「えい!」

 

ブンッ…スポッ

 

一瞬の隙を突き、セイウンスカイは自身の『因子』の入った腕輪を釣りで得たテクニックで、タキオンの『因子』が入っていた腕輪の場所へと入れ替えるように投げたのだ。そして、合成が始まった。

 

「あぁ、何てことを!これではセイウンスカイ君とフラワー君の『因子』で合成が………!?」

 

ピカーン、ドーン、ビューン

 

「え?」

「は?」

「はい?」

 

『合成因子』が完成したと同時に爆発し、何処かへと飛んでいってしまった。その日は解散となり、セイウンスカイは真面目に練習へといった。

 

ーーー

 

後日、再びニシノフラワーから『因子』を貰った。そして再び拘束したセイウンスカイの『因子』とともに解析を行うも、共通する『因子』は見つからなかった。

 

「ふむ…なぜこうなったのか…?」

「そもそもセイウンスカイだけかな?君のでも試してみるのは?」

「そうだね…」

「ダメ!」

 

セイウンスカイが止めようと叫ぶもアグネスタキオンは無視し、合成を始める。

 

「さて…どうなるか…!」

 

ピカーン、ドーン、ビューン

 

「前と同じじゃないか!」

「タキオンとダイワスカーレットを混ぜた時と似ている…のか?」

「せめて、『合成因子』の行方が追えればな…また『例外』が増えてしまったよ…。」

「私のフラワーが…」

「しかし、光ったということは久々のN極じゃないか?」

「今さらだが言われれば…そうだね!良し、フラワー君をメインに合成開始だ!」

「フラワーの『因子』が特殊で、他のでも同じことが起きるかもしれませんよ?」

「その時はその時だよ。」

「…救いは無いのでしょうか?」

 

無い。この後、爆発は起こらず、ニシノフラワーがメインの『合成因子』が5つ作成された。

 

………

 

「はぁ…はぁ…」

「もう、無理…」

「ふむ…本命のサクラバクシンオー君との合成も短距離適正は無し、と。」

 

ニシノフラワーと様々な『合成因子』よりソウジは20分くらいの間隔で別の『ウマ人』となっていた。完全に夜遅くなっているものの、次が最後の『合成因子』になる。

 

「最後はこれだね…モルモット君、ちょっとくすぐったいよ?『タニウツギ』回収…からのあーん♪」

「こぼっ!」

 

ゴクッ

 

「がっ!あ、あぁぁぁ…あー!あああ…」

「ねぇ、タキオンさん?セイちゃん毎回これ見るの怖いんですけど?」

「慣れたまえ。大丈夫だ、モルモット君が理性を無くし襲ってくるなんてもうないから。」

「過去にはあったんですか!?」

 

ソウジの身体がまた別の『ウマ人』になる。体毛の鹿毛が黒鹿毛へ、目が銀色へと変化する。しかし、ソウジも慣れたためか、叫び声が出るだけに抑えられている。

 

「さて、10分後に最後の計測を行う。」

「セイちゃん、短距離苦手なんですけど…」

「最後の実験だ。付き合ってくれたまえ。」

「こうなるなら、見つかる前にさっさとトレーニングに行けば良かったな…」

 

………

 

「おりゃぁぁぁ!」

「ウソでしょ!?」

 

『ウマ人』はついにセイウンスカイに勝利した。

 

「これは…適正有りだよ!まさかこの組み合わせで出来るなんて…流石はモルモット君だ!」

「じゃあ、名前も決めないとな!」

「フラワーがメインだから、また花の名前ですか?」

「『ローズゼラニウム』というのはどうだい?」

「蚊除けのあの花か…」

「その花言葉の意味は?」

「予期せぬ出会い、さ。」

「選択、恋煩い、とかじゃなかったか?」

「ほほぉ、モルモット君は意外にも花言葉を知っているのだね。しかし、フラワー君の勝負服は黄色だろ?ならこれでいいのだよ。」

「『ローズゼラニウム』で予期せぬ出会い…意味が違う気がしますけど、いい名前じゃないですか。」

「では、また特別レースを行っていこう!」

 

こうして、また新たな合成因子『ローズゼラニウム』が誕生したのだ。

 

「はいはい~、お疲れ様でーす。長居したくないのでセイちゃんはクールに帰りますよ~。」

「あぁ、今度は…邪魔をしないでくれたまえよ?」

「…何のことでしょう?」

「クククッ、今度はあの腕輪で『セイウンスカイ』としての『因子』を全て回収した君の様子を観察したいねモルモット君三号。」

「…その呼び方はやめてください。」

 

その後、『ブレジーケン』のレポートをシンボリルドルフに見せたアグネスタキオンだったが実験で研究室を爆発したことをうっかり喋ってしまった。結果、エアグルーヴによりアグネスタキオンとセイウンスカイは罰として反省文を10枚、ソウジはその後始末をすることとなった。




本文で書く予定がないのでここに詳細を…。

『因子合成』で交配のある組み合わせは不受胎以外は『例外』になる予定です。飛んでいった『因子』は誰かの母体に入り受精した卵子と結合し、その名を持つウマ娘になる…って設定でお願いします!


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第9話 花の妖精 + 漆黒の刺客 = 予期せぬ出会い 、貴公子は天皇賞(秋)へ出走する

今回からオリジナルウマ娘がちょいちょい出てきます。しかし、『因子合成』の対象外です。


本日もアグネスタキオン主催の特別レースが行われようとしていた。

 

「今回のレースも特別ゲストがいるよ…『ローズゼラニウム』君だ!」

 

(ワァァァーッ!)

 

「久しぶりのゲストだ!」

「体が大きいのに…子犬みたいで可愛い!」

 

走るのは『ローズゼラニウム』を飲んだソウジこと『ウマ人』。

 

「さて、今回の条件だが…距離は1200m、バ場は重、天気は晴れだ。短距離のウマ娘の参加を望むよ。」

 

「はーい♪カレン参加しまーす♪」

 

1人目に手を上げたのはカレンチャン。

 

「短距離なら負けませんよ!」

 

2人目にサクラバクシンオー。

 

「おっ!例のレースだな!私も出るぞ!」

 

3人目にビコーペガサス。その後も参加者は集まり、7人でのレースが行われることが決まった。

 

ーーー

 

「ピスピース、実況担当のゴルシちゃんだぞ!お前ら、前回のレースは見てくれたか?ゴルシちゃんの活躍、凄かっただろ?」

「あなたはゲートを嫌がったあげく、大きく出遅れて順位もボロボロだったでしょう!それでアグネスタキオンさん自身が参加していた復帰レースでしたわよね?」

「マックイーン、お前はあれがタキオンに見えたのか?」

「髪を黒く染めただけでしょ?普通に分かりましたわよ。」

「そんなレベルの話じゃないんだけどな…。今回のレースはタキオンのトレーナーが復帰か…骨折は治ったようだな!」

「その妄想まだ続けてましたの?ほら、ゴールドシップさん!早く出走ウマ娘の紹介を!」

 

「1番、シーキングザパール!」

「誰に付き、どこから仕掛けてくるかに注目ですわ。」

 

「2番、タイキシャトル!」

「マイラー最強の走りを短距離でどうするのか期待ができますわ!」

 

「3番、ビコーペガサス!」

「うまく位置取りが出来るかが勝利への鍵となるでしょう。」

 

「4番、カレンチャン!」

「どこで抜け出してくるかに注目です。」

 

「5番、今日のゲストのローズゼラニウム!」

「未知のウマ娘です。どんな走りを見せてくれるのかが楽しみですわ。」

 

「6番、ヒシアケボノ!」

「この重バ場で彼女のビッグボディが吉と出ると凶と出るか…」

 

「最後、サクラバクシンオー!」

「今レースの有力候補ですわね。その力を存分に発揮してください。」

 

「以上、この7人で競ってもらうぜ!んじゃ、全員ゲートに入ってくれ!」

 

紹介が終わった各ウマ娘たちがゲートに入っていき…レースが始まった!

 

………

 

「スタートしたな!前からサクラバクシンオー、タイキシャトル、ヒシアケボノ、カレンチャン、ローズゼラニウム、シーキングザパール、ビコーペガサスってところだな。」

「ローズゼラニウムさんは"先行"もしくは"差し"といったところでしょうか?」

「先頭は変わらずサクラバクシンオー。前の集団はタイキシャトル、カレンチャン、ローズゼラニウム、ヒシアケボノ、後ろの集団にビコーペガサス、シーキングザパールってところだな。」

「ビコーペガサスさんが良い位置を取れてますわ。」

 

「さて唯一のコーナーをカーブ…おっと!タイキシャトルとビコーペガサス以外は膨らんだか!?」

「重バ場ですからね…ダートの経験が活かされたのでしょう。最後の直線、前に出てきたのはタイキシャトルさん、その後ろについたローズゼラニウムさん、体制を立て直したカレンチャンさん、ビコーペガサスさんも大外につき、堅実に足を溜めてますわね。」

「この4人の争いか?ここでローズゼラニウムが仕掛けて、抜け出した!少し遅れタイキシャトル、カレンチャンも仕掛けてきた!しかし、1バ身キープしたまま残り100!」

「…」

「おい、マックイーン!解説しろって!っと、大外からビコーペガサスだ!ビコーペガサスが差しきった!ビコーペガサスが1着ゴールイン!…急に黙り込んでどうしたマックイーン?」

「この抜け方は…ライスさん…」

「何言ってんだよ?…ん?あー、そういうことか。そうだぞ、多分今回のタキオンのトレーナーはライスシャワーの力を使ったんだと思うぞ!」

「ライスさんの力を…?意味が分かりませんわ!コホン、1着はビコーペガサスさんです。」

「まぁ、そのうち分かるか…。んじゃあ、今回のレースはここまでだ!またな~!」

 

ーーー

 

レースが終わったソウジは研究室でタキオンと合流した。

 

「モルモット君、『ウマ人』としての走りにかなり慣れてきたのではないかね?」

「あぁ、前回よりもペースは早かったはずなのだが…特に身体に違和感とはないな。この『合成因子』のお陰かな?」

「前回もそう言って骨折があったじゃないか。大丈夫かもしれないが、今回も精密検査は受けて貰うよ。」

「しかし、何で痛みとか違和感が無かったんだろ?」

「多分だがドーパミンによる誤魔化しだろうさ。おそらく『ウマ人』となっていることで、その量は人間時と異なってると考えられるね。」

「そうか…」

「分かったら早く大人しく検査されてくれ。そして、私のご飯を作ってくれたまえ!」

「はいはい…」

 

その後、検査により右足に捻挫が見つかった。

 

ーーー

 

別の日、アグネスタキオンは秋の天皇賞に出走していた。

 

『天皇賞(秋)、1着になったのはアグネスタキオン!

その速さに衰え無し!

復帰後のレースを勝ち取った!』

 

(ワアァァァー!)

 

「はぁ…はぁ…よし!」

「チッ、普通に絶好調かよォ。」

「アグネスタキオンさん、おめでとうございます!」

 

アグネスタキオンがガッツポーズを取っていると、エアシャカールとナリタトップロードが声をかけてくる。そこにもう1人のウマ娘が現れた。

 

「タキオンちゃん…1着おめでとう。」

「お姉ちゃん!」

「復帰するなら一言くらい言って欲しかったな…。お姉ちゃんもタキオンちゃんと走りたかったから…。」

 

同じくケガにより、同じ天皇賞(秋)にて復帰予定だったアグネスタキオンの姉、アグネスフライト。彼女の顔は妹がいたことで天皇賞(秋)に出走出来なかった悔しさと妹の勝利を喜ぶ複雑な顔だった。




ニシノフラワー(花)とライスシャワー(帽子にある青いバラ)から『ローズ』の付く花が良いと思い、『ローズゼラニウム』という名前にしました。

ライスシャワー産駒は現実では出来ませんでしたが…リアルシャダイにマルゼンスキーの血も入っているので需要は高いと思います。しかし、ライスシャワーが小柄だったので種付け出来た繁殖牝馬は限定されたかもしれません。そのため、小柄なニシノフラワーとの相性は良かったのではないかと思ってます。

・おまけ
アグネスフライト…アグネスタキオンの全兄。主な勝利は京都新聞杯と東京優駿。東京優駿後は勝ちに恵まれず、産経大阪杯(現在の大阪杯)後にケガをしたため長期休養をしていた。その後も勝ちは無く、6歳の阪神大賞典を最後に引退。種牡馬になるも、重賞馬は地方競馬のエトワールカップを勝利したインザエアのみ。


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第10話 『ローズゼラニウム』の研究終了、貴公子はジャパンカップを目指す

私もタキオンにお姉ちゃんと呼ばれたい…そんな人生です。もしアグネスフライトが実装されれば…まぁ、公式のタキオンがお姉ちゃんと呼ぶキャラでは無いと思いますけど…。


タキオンメモ:『合成因子第十七号ローズゼラニウムについて』

 

XX月11日

・誕生

→ニシノフラワーの『因子』とライスシャワーの『因子』を合成したことで完成した第十七号の『合成因子』に『ローズゼラニウム』と名付ける。

 

→その他、ニシノフラワーと合成した『因子』はキングヘイローとの『ロードプロテア』、サクラバクシンオーとの『タニウツギ』、ツインターボとの『クルマバナ』、ビコーペガサスとの『ツノゴマ』の4つ。何れも短距離適正は無し。ただし『ロードプロテア』は可能レベルで有り。

 

・被験者Sが適正距離テスト中に体内の『タニウツギ』を腕輪に回収直後に『ローズゼラニウム』を飲ませた

→今回は短距離適正の調査のため、被験者Sは常時回収のツボにひ鍼をしている状態

 

→被験者Sは5秒程叫ぶと『ローズゼラニウム』の『ウマ人』へと変化した。(慣れてきてるね。)

 

・髪色は黒鹿毛

 

・身体能力

→短距離適正有り。後日、他の適正も検査する。

 

・脚質

→セイウンスカイとの併走でタイムより先行=差し>>追い込み>逃げ、と記録。

 

 

XX月12日

・レース実行

→カレンチャン、サクラバクシンオー、シーキングザパール、タイキシャトル、ビコーペガサス、ヒシアケボノとの特別レースに出走。"先行"でいくも重バ場に足をとられ、ビコーペガサスに敗北。

 

→その後の精密検査により被験者Sの右足に捻挫あり。

 

余談

・『因子』入手

→カレンチャン、シーキングザパール、タイキシャトル、ヒシアケボノの『因子』を入手した。使用した腕輪は新型。

 

 

XX月16日

・『ローズゼラニウム』回収

→被験者Sは捻挫以外問題なし。

 

 

XX月17日

・アグネスタキオンへ『ローズゼラニウム』注入

→『ブレジーケン』同様に私自らの体へ注入した。

 

→前回との違いは旧型の腕輪を使用。ゆっくりと『アグネスタキオン』の因子を抜き、『ローズゼラニウム』もゆっくり入れることで体への負担が減った。

 

・身体能力2

→計測結果より『ローズゼラニウム』の適正距離は短距離、長距離と異質な適正であった。しかし、マイル、中距離も可能レベルではある。

 

→ダート適正はなし

 

 

XX月18日

・『ローズゼラニウム』回収

→『ブレジーケン』同様にトレーナー君の協力の元、回収。

 

→これにより旧型の腕輪を使用することで急な疲労感を軽減できた。それはそうと疲れているだろうとロイヤルビタージュースを飲まされた…許さないぞトレーナー君!しかし、時間を掛けずに軽減が望ましい。

 

 

以上が『ローズゼラニウム』の実験レポートである。次回はジャパンカップ後にスケジュールを合わせつつ行っていく予定だ。

 

ーーー

 

ソウジはアグネスタキオンからとある提案をされた。

 

「トレーナー君、ジャパンカップに出走してもいいかな?」

「ん?有マ記念じゃなくてか?」

「どうしても出たいんだ。ダメ…かな?」

「テイエムオペラオーやゼンノロブロイみたいに3冠取りにいくのか?」

 

目が泳ぐアグネスタキオン。何とか口を開く。

 

「えーと、海外のウマ娘の『因子』を貰いたくてね…」

「それは国際問題に成りかねないので辞めておきなさい。で、本当は?」

「…お姉ちゃんが最後のG1レースとして出るらしいんだ。」

「お姉ちゃん…?あ、『アグネスフライト』か!しかし、君から家族の名前を聞くとは意外だな!」

「トレーナー君は私のことを何だと思ってるんだ?」

「マッドサイエンティスト。」

 

至極真っ当な回答にアグネスタキオンはキレる。

 

「あー、耳が無い状態でモルモット君が『ウマ人』になったらどうなるか、気になってきたね。ちょっと拘束してゴッホにするだけだから今すぐにでも…」

「冗談だって!俺の愛バ!世界一愛してる俺の愛バ!」

「そんな…!可愛い奥さんだなんて…」もじもじ

「言ってないからな!」

「子供は最低でも6人は欲しいね。全員ウマ娘で私たちの指導でG1レースを勝たせてあげて…」もじもじ

「タキオン!?…タキオン?おーい…」

 

掛かったアグネスタキオンが正気に戻るまでに後10分。

 

………

 

「コホン、とにかく私はお姉ちゃんとともにジャパンカップに出たいのだよ。」

「分かった登録してみよう。では、ジャパンカップで勝つために…今日は出そうなライバルたちを確認していこう!」

「もちろんだとも!」

「早速だがこれは去年のレース映像だ!…勝ったのは君の同期でダービーウマ娘の『ジャングルポケット』。あのテイエムオペラオー、メイショウドトウ、ナリタトップロードと7名のゲストを抑えての勝利だ。」

 

そこにはテイエムオペラオーをギリギリ差し切りゴールをするジャングルポケットの姿があった。

 

「ジャングルポケット君ね…」

「彼女は去年の年度代表バにもなっている。前回の天皇賞(春)出走後にケガをしたため宝塚記念は出れなかったが…、最近治ったとのことでジャパンカップに来る可能性は十分にある。」

「復帰レースということだね。」

「また、天皇賞(秋)でも出走したナリタトップロードやエアシャカールも参加してくるだろう。」

「ふむふむ…カフェは?」

「フランスでの出走後にケガが見つかったらしく、ジャパンカップにはいない。」

「つまりはいつも通りにケガだけしないでいれば勝てるということだね。」

 

ソウジはアグネスタキオンのあまりにあまりな回答に固まってしまった。

 

「いやいやいや。君の実力は認めてるけど、なぜそうなる!」

「何?私が勝てないとでも思ったのか?私は無敗のウマ娘だぞ?」

「公式ではな。『ブレジーケン』の時はツインターボに負けたじゃないか。」

「『アグネスタキオン』としての私は負けてない!…さて、後は『合成因子』の実験と行っていこうじゃないか。」

「ねえ?話聞いてた?今日はライバルたちの考察を…」

「いつも通りに過ごすで話は終わっただろ?とりあえず…これを飲みたまえ!」グイッ

「ごばっ!」

 

ゴクン

 

「かぁっ…!あ、あぁ…っと!急にするなよ!ったく、慣れないな、この感覚…」

「いや、その反応は慣れてきてるからだよ。ふむ…髪の色は黒いままか。見た目は『エンプレススズカ』に似てるねぇ…エアグルーヴ君の『因子』はかなり強いのかもしれない…なっ!!」ガクッ

 

ソウジの体は『ウマ人』へと姿を変えた。その姿は『エンプレススズカ』に近いものの纏うオーラが明らかに違った。痺れるような…潰されるような威圧感、アグネスタキオンは直にそれを肌に感じていた。それを気にしつつ、練習場へと向かった。

 

「タキオン、大丈夫か?」

「ハハハ…私はとんでもない怪物を生み出したのかもしれないねぇ…」

「タキオン?」

「では、2200mを走ってきてくれ。適正があると判断したら、データ採取を兼ねて私との並走を頼むよ。」

「分かった。」

 

『ウマ人』が2200mを走り終わった後、アグネスタキオンとの並走が始まった。

 

………

 

「はぁ…はぁ…。モルモット君…今日はここまでにしてくれないか?」

「ん?いつもよりバテるの早くないか?」

「重力10倍の環境でティラノサウルスとトレーニングをしてる気分だよ…とりあえず、『ブレジーケン』に代わってくれ。」

「分かったよ。」ゴクン

 

ソウジはツボにひ鍼を刺し、腕輪を付け、今実験していた『合成因子』を抜き取り、『ブレジーケン』の合成因子を飲み込んだ。

 

「ーー!!ぐぅ…」

 

そして『ブレジーケン』の『ウマ人』へと姿を変えた。

 

「ふぅ…ようやく楽になったよ。モルモット君、君のオーラが強すぎるよ。」ペタン

「と言われても俺は普通にしてただけなんだけどな…」

「ってことは、本人は威圧しないようにかなり普段からかなり抑えていると言うのか!?」

「なぁ、エアグルーヴと誰を混ぜたんだ?」

「…皇帝シンボリルドルフ。」

「マジかよ!よく手に入れれたな!」

「『ブレジーケン』でのレースの後でちょっとね…」

「なるほど…名前はどうするよ?」

「感電と同時に魂を吸い取られてる感覚だったよ…『デビルジュピター』だ。」

「悪魔と木星?」

「ジュピターは雷神ゼウスも表すのだよ。」

「悪魔と神って…まぁ、いい。これは特別レースを行うのか?」

「まだ『ローズゼラニウム』のデータをまとめれてないんだ。だからレースを行うつもりはない…それと今はジャパンカップに向けて集中したい。」

「この負荷は役に立ちそうだから、しばらくは『デビルジュピター』との並走を中心にトレーニングを行っていくこととしよう。よし、今日はここまでだ。明日からまた頑張ろう。」

「その…モルモット君?悪いのだが…運んでもらってもいいかな?ずっと威圧を感じていたからか腰が抜けてしまって…」

「…はぁ。」

「出来ればお姫様抱っこで頼むよ。」

「分かった、分かった!」

 

ダキッ

 

「へ?本当にお姫様抱っこ?えーと、やっぱり下ろしてもらっても…」

「さっさと戻るよ?」

「…はい。」

 

その日、顔を真っ赤にして運ばれるマッドサイエンティストが目撃された。




・おまけ(ニシノフラワーの組み合わせでの選択)
アグネスタキオン→ビコーペガサス、サクラバクシンオー(短距離適正だから)
ソウジ→ツインターボ、ライスシャワー(小さいから)
セイウンスカイ→キングヘイロー(キングだから)

・おまけ2
ジャングルポケット…アグネスタキオン、マンハッタンカフェと同期。元ネタは『おかあさんといっしょ』の童謡『ジャングルポケット』。主な勝利は東京優駿とジャパンカップ。この2勝によりマンハッタンカフェを抑え年度代表馬となる。天皇賞(春)のケガによりジャパンカップに復帰し、出走するもその次の有馬記念でのケガで引退する。引退後は種牡馬になり、トーセンジョーダンやジャガーメイルなど8頭のG1馬が生まれた。この競走馬の活躍からお笑いタレント『ジャングルポケット』が結成された。余談だがジャングルポケットの斉藤さんはジャングルポケット産駒(母父エルンコンドルパサー)の『オマタセシマシタ』の馬主である。能検に通ったらしいので今後の活躍に期待。


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第11話 ジャパンカップにて貴公子はライバル達とぶつかり合う

あらすじ(嘘)

ソウジ「(人体実験の被験者は…)任せろ!」
アグネスタキオン「…っ!!トレーナー君はいつもそうだね…!自分の体のことを何だと思ってるんだ!?」


ついにジャパンカップの日が来た。アグネスタキオンは控え室で静かに深呼吸していた。そこに1人のウマ娘が訪ねてきた。

 

「やぁ、久しいねアグネスタキオン!天皇賞(秋)は見事だったよ!」

「…ジャングルポケット君か。」

 

ジャングルポケット…アグネスタキオンとは同期で2度戦うもいずれもタキオンが勝利している。タキオンがケガで引退後、ダービーとジャパンCを勝利し、去年の年度代表ウマ娘に選ばれた猛者である。しかし、天皇賞(春)に出走後にケガをしたため彼女にとっては半年ぶりの復帰のレースとなる。

 

「アグネスタキオン、君とまた走れる日がきて嬉しいよ。」

「そうかそうか。しかし、誰であれ、私が負けるだなんて思ってないよ。…今回のレースも最速の私が勝つだけさ!」

「これでも去年勝ったのは私なのだけど…まぁ、いいや。東京じゃないのが悔やまれるが後は…ターフで語ろうか。そしてその勝利をフジ先輩に…」

 

ジャングルポケットはライバル宣言を済ますと戻っていった。

 

「ジャングルポケット君、君のことを警戒してない訳じゃない。しかし、今日は…今日だけは…」

 

ーーー

 

ザワザワザワ

 

観客が騒がしい。

 

「あのウマ娘…でかいな。名前は…『ファルブラヴ』?」

「イタリアのウマ娘でG1レースを2勝してるらしいよ。凱旋門でもマンハッタンカフェと走ったとのこと。」

「ジャパンカップには初参加のようだ。それよりも…オーラが…すごいな。」

 

ゲストの1人、ファルブラヴ。彼女は芝の状態を確かめる。

 

「『…軽い。いいバ場だな。』」

「『やぁ、ゲストさん。凱旋門では私の同期と競ったそうじゃないか?』」

「『お前は…無敗のアグネスタキオン!…ちょうどいい。お前を倒し、ジャパンで私の名を残してやる。』」ゴゴゴ

「『おぉ、怖い怖い。しかし、私だけに気を取られてもいいのかい?』」

「『まさか。私は私の走りをするだけだ。お前以外だとジャングルポケット…だっけか?甘く見てる訳じゃねぇが復帰したての奴に私は負けない!』」

「『もちろん、私もだとも!日本最速の実力…忘れなくしてあげよう。』」

 

「タキオンさんってイタリア語喋れたのですね…」

「てか、何だよアイツのオーラ…いるだけでデバフ掛けてきやがるな。」

「そんな中、タキオンさんは平気な顔でいますね。」

「痩せ我慢って訳じャなさそうだなァ…何をしたんだ?」

 

ーーー

 

『ジャパンカップが始まりました。

今年は中山レース場でのレースとなります。

そして一昨年のダービーウマ娘の『アグネスフライト』、去年のダービーウマ娘の『ジャングルポケット』が復帰してきました。

特にジャングルポケットは去年のジャパンカップを制していますから、先月の天皇賞(秋)を制したアグネスタキオンとの対決に注目が集まります。』

 

アグネスタキオンはすでに地下バ道を通り抜け、ゲートインを待っている。番号は5番…6番である姉のアグネスフライトの隣だ。

 

「タキオンちゃん、私はこのレースに全てかけるわ。そのために体調、体重、戦略…出来ることを全て完璧に整えてきた。だから…全力で来なさい!」

「お姉ちゃん…言われなくても全力でいくとも!」

 

皐月ウマ娘アグネスタキオンVSダービーウマ娘アグネスフライトの1冠姉妹対決が今、始まった。

 

ーーー

 

『スタートしました!

各ウマ娘、綺麗なスタート!

先頭にいくのはマグナーテン!

その後ろにイタリアのイリジスティブルジュエル、イギリスのゴーランがこれに続く。

ナリタトップロードは4番手。

アグネスタキオン、香港のインディジェナスが集団を引き連れて、第1コーナーをカーブした!』

 

「(大体はトレーナー君の予想通りだ。今回のお姉ちゃんは…かなり後方か?)」

 

『緩やかな直線を終え、第2コーナーをカーブ!

先頭はマグナーテン!

ナリタトップロードが下がってきた。

ジャングルポケット、アグネスフライト、エアシャカールは並んで最後方!』

 

「(まだ仕掛けてる様子は無い…なら、そろそろ私から仕掛けるべきか?仕掛けるタイミングは…ここだ!)」

 

『第3コーナーをカーブして、残り600m!

先頭はマグナーテンだが、ここでアグネスタキオンが抜け出してきた!

さらに大外からテイエムオーシャンとナリタトップロード…アグネスフライトが一気にあがってきた!』

 

「(…よし、タイミングは完璧だ!後は、このまま駆け抜けるだけだ!)」

 

『最終コーナーカーブ!

中山の直線は短いぞ!

先頭はアグネスタキオン!

その差は5バ身!

しかし、内からイタリアのファルブラヴ、外からシンボリクリスエスも伸びてきている!

ここでアグネスフライトだ!

アグネスフライトが大外から大きく伸びてきた!』

 

「ターキオーン!」

「ー!はぁぁぁ!」

 

『アグネスフライトが大外からまとめてかわす!

妹のアグネスタキオンへと迫る!

並ぶか…並ぶか…並んだ!

いや、差しきった!

そのままゴールイン!

1着はアグネスフライト!

奇跡の復活!

ダービーウマ娘としての意地をみせた!』

 

ワアァァァーッ!

 

「はぁ…はぁ…」

「はぁ、はぁ、タキ、オンちゃん…お、お姉ちゃん、の勝ち、…だね。」

「…あぁ。最高の状態で挑んだはずなのに…まさか、こうなるとはとはね…おめでとうお姉ちゃん。…ん?」

 

「『ジャパンでのレース…中々楽しかった。…アグネスタキオン!君以上の強豪がいたとはね!』」

「『…まさか、負けるとは思っていなかったがね。』」

「『ふふふ…ジャパンが気に入った。ドリームはこっちで挑もうかな?』」

「『その時は是非、私の研究に協力して欲しいね。では、ウイニングライブに行こうじゃないか!』」

 

姉妹の対決は姉の勝ちで終わった。そしてウイニングライブ後に、アグネスフライトは引退を宣言し…みんなから温かな拍手と声援を送られた。

 

………

 

ウイニングライブが終わったタキオンとソウジは荷物をまとめ、タキオンを寮へ送ろうとしていた。ずっと無言でいたタキオンであったがついに口を開く。

 

「…トレーナー君。」

「どうしたタキオン?」

「…。お姉ちゃんに負けてしまったよ。無敗、という私のアイデンティティを失くしてしまったね…」

「タキオン…」

「君はそんな私でも好きかね?」

「大好きに決まってるだろ!」

「なら、今日だけでいいんだ…ソウジ。私を君の家に泊めてくれないか?」

「何を言ってるんだ?」

「…言わないと分からない?」

「…。…寮長には俺から連絡しておこう。」

「その…優しくしてくれるね?」

 

ーーー

 

数日後、研究室にとあるウマ娘が訪ねてきた。

 

「ってことだからこれからはお姉ちゃんも協力するね♪」

「…タキオン?どういうこと?」

「私も初耳だよ。お姉ちゃん、本当にどういうこと?」

「フフフ…タキオンちゃんはお姉ちゃんの『G1レースを一緒に走りたい』ってお願いを叶えてくれたでしょ♪だから…今度はお姉ちゃんがタキオンちゃんの力になるの♪『因子』の研究でしょ?引退した私の体…好きに使っていいからね?」

「いいからね、って言われても…。あぁ、私とトレーナー君の場所が…」

「何?お姉ちゃん、お邪魔女どれみ?…まぁ、何か頼れることがあるなら何でも言って。…あ!何でも、とは言ったけど、内臓取るとかは勘弁してね?」

「そんな実験はしない!」

「後、ソウジトレーナー!」

「何だ?」

「その…タキオンちゃんをこれからもよろしくお願いします。本当にいい子なんで!」

「お姉ちゃん!?」

「あぁ、任せておいて。」

「私は基本的にシャカールかマヤノちゃんのところにいるから呼ぶ時はそこら辺で…それじゃ!…タキオンちゃん。」

「何かね?」

「ここでヤるならちゃんと着けて貰うのよ?後はこまめに換気して匂いがこも…」

「何の話!?もう、そういうことはここではしないから!さっさと行きたまえ!このムッツリ!」

「またね~」

 

嵐を纏った飛行機(アグネスフライト)は、荒らしに荒らして、何事も無かったかのように去っていった。姉に振り回される妹、ソウジはタジタジになるアグネスタキオンを見てニヤニヤが止まらなかった。

 

「その顔は何かねモルモット君?」

「いやー、お前の意外な一面が見れたな、って。」

「…」

「ところでそういうことって…」

「アー、キョウハスカーレットクンカラ『インシ』ヲモラウヤクソクガアッタ。チョットイッテクル!」

 

顔を赤くしたアグネスタキオンはその場を離れていった。そして、戻った後にソウジに新薬を飲ませ、ソウジの体毛が全て10cm伸びる事件が起きるのだが…それはまた別のお話。




・おまけ
ファルブラヴ…イタリアの競走馬で本来のジャパンカップの勝者。様々な国のG1レースに出走し8勝を勝ち取った。引退後は日本で種牡馬となりワンカラットなどの重賞馬は出すもG1馬は出せなかった。母父として桜花賞を勝ったハープスター、マイルCSを勝ったステルヴィオ(現役)がいる。

アグネスフライトの勝負服はCA風の青い制服と3原色のスカーフをイメージ。

ジャングルポケットの勝負服はトーセンジョーダンの原案のスカジャンを緑と黄緑の迷彩柄にして目立つポケットがついてるイメージ。

ファルブラヴの勝負服はエルンコンドルパサーのスカートを黒くしたのをイメージ。

…ストックが尽きてしまいました。明日、もう1話書き終われば投稿して、また書き溜めて連日で投稿していきます。…ここまで読んでいただきありがとうございました!


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第12話 飛行機はとある三銃士を連れてきた

アグネスフライトの『因子』も使用するか考え中…そうなればジャングルポケットも解禁することになるような…うーん…。

とりあえず、『合成因子』のレースを10人分書き終わってから考えます。


今日もアグネスタキオンとソウジは『因子』の研究を行っていた。

 

「ふむ…お姉ちゃんと私の『因子』は全く同じ『因子』で構成されているが…ビワハヤヒデ君とナリタブライアン君は片方は異なる『因子』だね。姉妹といえど同じ『因子』でない場合もあるのか…」

「で、ナリタブライアンの方はマヤノトップガンと同じ『因子』があると…」

「ウォッカ君にも少しだがその『因子』が入っていたよ。」

「しかし、タキオンとアグネスフライトで『因子』が同じ組み合わせでも別の『因子』として存在しているのだよな?」

「これは面白いことになってきたね…」

「アグネスフライトのも合成するのか?」

「それはもちろん行う予定だが…今はサンプルがもっと欲しいところだね。N極が少ないからね…」

「この前2つ手に入れただろ?」

 

カレンチャンとシーキングザパールの『因子』のことだ。

 

「カレンチャン君からはライスシャワー君とウイニングチケット君ほどでは無いが…同じ『因子』があった…くらいだね。」

「誰かと合成しないのか?」

「既にサクラバクシンオー君と合成済みだよ。」

「シーキングザパールは?」

「サクラバクシンオー君と合成済みだよ。」

「2つともサクラバクシンオーかよ!?」

「君がバクシンする姿を見たくてね…」

「何て理由だ…!」

「ほらほら、早速この第二十一号の『ロケットメテオ』を…」

 

アグネスタキオンがソウジに『合成因子』を飲ませようとした時だった。

 

ガチャ

 

「タキオンちゃ~ん♪」

「お姉ちゃん!?」

 

アグネスフライトが訪ねてきたのだ。

 

………

 

「え?S極とN極のウマ娘の法則が分かった?」

「確証は無いけどね…とりあえずお姉ちゃんがN極だと思う3人のウマ娘を連れてきたから…試してみてくれる?」

「それはありがたい話だが…え?連れてきた?」

「では、どうぞ!」

 

『こんにちは(邪魔するわ)(どうも…)!』

 

アグネスフライトが連れてきたのはニシノフラワー、スイープトウショウ、メジロドーベルだった。

 

「…お姉ちゃん、既にフラワー君の『因子』は持ってるのだが?」

「あれ?そうなの?」

「えーと、また『因子』の件でしょうか?」

「トレーナー君!紅茶とケーキを4人分、早く用意したまえ!」

「はいはい…」

「ケーキ!?…コホン、フライト先輩、ここで見れる魔法って何?」

「すぐ見れるわよ。」

「フライト先輩…何しにアタシをここへ…」

「まぁ、いい。では、早速だがこの腕輪を付けてくれたまえ!」

 

アグネスタキオンは3つ腕輪を取り出し、ニシノフラワーたちに渡した。

 

「これが魔法のアイテム?どう使うの?」

「スイープさん、こうですよ。」ガチャ

「こう?」ガチャ

「重くはない…アンクルって訳じゃないみたい。」ガチャ

「後はスイッチを押すだけです。」ポチッ

『分かったわ。』ポチッ

 

ピッ、ピッ、ピー

 

部屋に3つの機械音が重なり鳴り響く。そして、アグネスタキオンは全員から腕輪を受け取った。

 

「ご協力ありがとう…まぁ、紅茶でも飲んでゆっくりしていってくれたまえ!トレーナー君、ケーキは?」

「ニンジンしか無いぞ!」

「何!?…しまった、明日買いにいく予定だった!」

「いや、別にアタシは紅茶だけでも…」

「えー、折角ならケーキが食べたい!」

「スイープ、我が儘言わないの!」

「いや、待てよ…あれを使えば…ちょっと待っててくれ!」

「あの、私はスカイさんとの約束がありますので…すみませんがお先に失礼します。」

「ニシノフラワー、ご協力ありがとう。メジロドーベル、スイープトウショウ、お前らも用事があるなら別に無理にいなくてもいいぞ?」

「えー、タキオンちゃんの実験見て欲しいのに~!」

「アグネスフライト、お前はタキオン以外にも"配慮"って言葉を覚えろ。で、どうする?」

「魔法をまだ見せてもらってないわ!見るまで帰らないわよ!」

「いるわよ、悪い?さっきの腕輪を使うのよね?…ちょっと気になってきた。」

 

どうやら2人は残るようだ。ニシノフラワーは帰ってしまったが、10分ほど経ちアグネスタキオンは戻ってきた。

 

「やっときた!ねぇ!ケーキはまだ?」

「待たせたねぇ…フラワー君は?」

「セイウンスカイとの約束があるって帰ったよ。」

「…そうか。」

 

しょんぼりしながらも皿に乗せていたあるものをテーブルへと置いた。

 

「わーい…ってこれ、ただのニンジン焼きじゃない!ケーキはどこよ?」

「まぁまぁ…まずは1口食べて見たまえ!」

「…分かったわよ。ーーっ!ケーキの味!何これ!?魔法?」モグモグ

「どれどれ…本当だ!食感はニンジンだけどケーキの味だ!」モグモグ

「タキオン…まさか…ラーメンの時の…」

「安心したまえ。ちゃんと調整した完成品だよ。効果は10分だけさ。」

「もしかしてこれも魔法!?ねぇ!次はキタサンも連れてきていい?」

「あぁ、来る日が決まったら教えてくれたまえ。しっかりと準備をしておこう。」

「ありがとう!」

「で、さっきの私たちの付けた腕輪はどうするの?」

 

メジロドーベルが核心をついた質問をしてきた。

 

「実験に使うのだよ。では、早速始めていこうか。」

「お姉ちゃんにも見せてよね♪」

「…お姉ちゃん、危ないものもあるから勝手に触らないように。」

「分かってる♪」

 

アグネスタキオンはアグネスフライトを不安に思いつつ、スイープトウショウとメジロドーベルに実験の説明を始めていくのであった。

 

「あら?この紅茶、ケーキの味が…?」




えー、ここまで読んでいただきありがとうございました。ストックがなくなったので連日投稿はここまでです。
次はいつ投稿するか未定ですが、しばらく書き溜めてから、また連日で投稿させていただきます。…天皇賞(春)は多分過ぎるかな、と思います。

天皇賞(春)はディープポンド、テーオーロイヤル、メロディーレーンの応援馬券を買います!では、また!


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第13話 シスコン飛行機の想い

実験を始めたアグネスタキオンたちだったが………結果から言おう。3回爆発した。

 

「ケホッ!ケホッ!まさか…『例外』が3回も起こるとは…」

「タキオンちゃん!大丈夫?」

「そんな!…アタシとキタサンじゃ合成出来ないってこと!?」

「本当に『合成因子』なんて出来るの?」

 

こうなった経緯を語っていこう。

 

………

 

30分前…アグネスタキオンとソウジは合成準備に取りかかっていた。

 

「まずは『因子』について説明しよう。私たちウマ娘の力は体に2つの『因子』が入ることで人間以上の力が出せていることを私は発見した。」

「え?何かその発見の時点で普通に凄くない?」

「体と2つの『因子』?」

「そこで私は"ウマ娘となっている"『因子』を取り出せる腕輪を開発した。そして、今から行うのは君たちの『因子』の分析だよ。今まで調べた『因子』のデータと一致する部分が無いかを調べるんだ。」

「あのー、タキオンちゃん?お姉ちゃんはもう全然話についてこれてないのだけど…」

「まぁ、ここは大して重要ではないからねえ。」

「いや!普通に凄いからね?」

 

アグネスタキオンは装置にスイープトウショウの『因子』が入った腕輪を設置した。

 

「大きい装置…!」

「今から行うのは『因子』の分析さ。そして、ここで出てくるのは、君たちの数値の書かれたデータだけだよ。」

「俺も1度見たが…何が何やら全然分からなかったな。」

「分析完了。詳細は後で確認するとして…さて、次がいよいよ本番だよ。」

 

アグネスタキオンは別の装置にまで腕輪を持っていった。そして、再び説明を始める。

 

「今度はこの装置に腕輪を2つ設置して『因子』の性質をみる。」

「性質?」

「この『因子』はね…磁石みたいなものなのだよ。そしてその『因子』のもつ性質なのだが…S極とN極に別れている。」

「ってことは…同極同士だと離れて、異極だとくっつくってこと?」

「その通り!で、そのくっついたものを『合成因子』と呼んでいる。」

「『合成因子』!?」

「基本的に最初に採取した『因子』は私と合成することでS極かN極かを判断しているんだ。そして、N極であれば合成され『合成因子』が完成する。しかし、中には『例外』があるんだ。」

「例外?」

「ウマ娘の力を引き出せるのは2つの『因子』が宿ってるからだ、という話はさっきしたね?」

「えぇ…」

「中にはその2つの内、同じものが混ざった場合…溶けた『因子』が出てくる。…これがその時のサンプルだよ。」

 

アグネスタキオンは自身とダイワスカーレットを混ぜた時の『合成因子』のサンプルを取り出した。何度みても全ての絵の具を混ぜたようなグチャグチャした何かで不気味である。

 

「うわぁ…ヤバい色ね!」

「もう1つは…爆発だ。」

「爆発!?」

「そうだ、特定の『因子』の合成は爆発が起きるようだ。そして、『合成因子』も何処かへ飛んで消えてしまい回収も出来ない。なのでこれも『例外』とした。」

「まぁ、それはN極だと証明にはなるのだけどね。」

「私たちはN極の『因子』を求めるんだ。お姉ちゃんの勘が正しければ、君たちがN極だとのこと…始めていくよモルモット君。」

「はいよ!」

 

ソウジはスイープトウショウの『因子』が入った腕輪とアグネスタキオンの『因子』が入った腕輪を2つセットして…

 

ピカーン、ドーン、ビューン

 

爆発に巻き込まれた。

 

「のぉぉ!?」

「えーと…これは『例外』だね。」

「タキオン、大丈夫なの?」

「むむむ…大丈夫だ、装置は無事だとも。」

「そっちじゃない!ソウジトレーナー!思いっきり巻き込まれてた!」

「あぁ、よくあることだから問題ないよ。…はぁ。しかし、これで反省文確定か。」

 

ソウジ、一時リタイア。

 

………

 

何事も無かったかのようにアグネスタキオンは次の腕輪を設置した。

 

「では、次はメジロドーベル君と私を合成していこう。」

 

ピカーン、ドーン、ビューン

 

再び爆発が起きた。

 

「きゃっ!」

「タキオンちゃん!?」

「…ケホ。お姉ちゃん、凄いね。2つとも…いや、フラワー君を入れると3つか。よくN極だと分かったね。」

「タキオンちゃんが好きそうな女の子を選んだだけだよ♪」

「ブー!私は同性愛者じゃない!普通に異性が好きだから!」

「え?お姉ちゃんは嫌い?」

「そういう話じゃ…あぁ!もういい!」

「ねぇ…タキオン。タキオン以外なら爆発しないのよね?」

「その通りだが…」

「えーと、その…キタサンの『因子』って持ってる?」もじもじ

「キタサンブラック君のことかい?ならあるよ。彼女はS極だったから君と合成出来るとも!」

「なら、私とキタサンを合成しなさい!」

「あぁ、いいとも。では、もう一度スイープ君の『因子』をもらおうか。」

 

スイープトウショウから『因子』を貰ったアグネスタキオンはキタサンブラックの『因子』も腕輪に入れて装置へと設置した。

 

ピカーン、ドーン、ビューン

 

3回目の爆発が起きた。そして、冒頭へと戻る。

 

ーーー

 

スイープトウショウは怒って帰ってしまった。残っているのはアグネスタキオン、ソウジ、アグネスフライト、メジロドーベルの4人。

 

「で、私の『因子』は誰と合成するの?」

「そうだね…サイレンススズカ君何てどうだい?」

「じゃあ、それで…」

「…しまった。この前の『ハナアヤメ』に使ってしまっていたよ。」

「別に誰でもいいわよ。」

「そうかそうか…あ!そういえば彼女の『因子』はまだ使っていなかったねえ…」

 

メジロドーベルに言われ、アグネスタキオンはとあるウマ娘の『因子』とメジロドーベルの『因子』を合成した。

 

ピカーン

 

「このビー玉みたいなのが…『合成因子』?タキオンちゃん、すごーい!」

「で、これをどうするの?」

「こうするのだよ!」グイッ

「がっ!」

「ソウジトレーナー!?」

 

ゴクン

 

「あ、あぁぁ…ふぅー…タキオン!不意打ちに飲ませるなっていつも言ってるだろ!」ガバッ

 

ソウジの体は黒鹿毛の『ウマ人』へと姿が変わる。その変化を初めてみたメジロドーベルとアグネスフライトは…固まっていた。

 

………

 

「えーと?今までタキオンちゃんが開いていた特別レースを走っていたのはソウジトレーナーで…、タキオンちゃんはそのデータを取っていたと?」

「その通り!これが今までのレポートだよ!」

「『ジンソニック』に『エンプレススズカ』、『ブレジーケン』、『ローズゼラニウム』…特別レースに出走していたゲストだ。あれ?『ブレジーケン』って確か…」

「あぁ、私だよ。」

「この『アグネスタキオン内の『アグネスタキオン』という『因子』を全て抜き、『ブレジーケン』を注入』って何を…フライト先輩!?」

「タキオンちゃん!何、危ないことしてるの!?」ガシッ

 

突然アグネスフライトがアグネスタキオンへと掴みかかる。その顔は怒りで真っ赤に染まっていた。

 

「お、お姉ちゃん?」

「理屈は分からないよ。でも要するに瀉血しながら輸血してるようなものでしょ!もし、タキオンちゃんの体に何かあってレースに出れなくなったらどうするの!無事だったから良かったものの…レースで勝つための研究で、レースに出れなくなったら本末転倒じゃない!」

「………ごめんなさい。」

「ソウジトレーナーも何やってるのですか!タキオンちゃんの意思を尊重したのでしょうけど、タキオンちゃんのことを思うなら止めるべきだったでしょう!」

「アグネスフライト…止めれなくて申し訳ない。」

「違う!トレーナー君は止める気だった!けど、私がそうさせなかっただけだよ、お姉ちゃん!」

「…私がなってあげるから。」

「え?」

 

アグネスフライトの表情が今度は悲しみへと変わる。

 

「引退した私なら好きに『合成因子』を注入してもいいから…お願い。タキオンちゃん自身の体でそんな危険なことしないで!」

「お姉ちゃん…」

 

涙を流すアグネスフライト()の懇願にアグネスタキオン()は下を向くことしか出来なかった。




どうも、GW10日目の作者です。ゴールドシップで鬼ゴルシモードをクリア出来ました!その後はひたすらゴールドシップを育成しているものの、納得の出来るゴールドシップになりません…。なぜ切れ者が付き、さらに芝と追い込みがSになれた時に限って、お守りと回復アイテムが来ず、寝不足と太り気味と片頭痛が発症し、3%で練習を失敗を2回も引くんだ…orz(Sランクで終了)


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第14話 5つ星の女王 + 準3冠 = 虹の帝王 、女帝 + 超光速の貴公子 = 音速の女王

今日もアグネスタキオン主催の特別レースが行われようとしていた。

 

「今日も実験レースを行っていくよ。今日のゲストはお姉ちゃんと…『ロイアルコンシエル』君だ。」

 

ザワザワザワザワ

 

「フライト先輩ってあんな感じだっけ?」

「何というか…タキオン先輩に似てる気が…」

「タキオン先輩はフライト先輩をお姉ちゃんって呼んでるんだ…ちょっと意外。」

 

「今日のゲストは何かツンツンしてそうじゃない?」

「ちょっと不機嫌なオーラを感じるような…」

「でも…カッコいい!」

 

周囲の反応は様々だ。そして、それを気にせずアグネスタキオンは言葉を続ける。

 

「今回は3000mの長距離だよ。バ場は良、天候は晴れたいったところか…参加者はいるかね?」

 

『…』スッ

 

手を上げたのはメジロマックイーン、メジロライアン、メジロパーマー、メジロアルダン、メジロブライトの5人だ。全員無言だが、その一人一人の雰囲気が普通じゃないことが分かる。

 

「…おいおい、メジロ家のウマ娘たちが総出で来る気だぞ?」

「あれ?メジロドーベルだけがいない?」

「何か…怖くないか?」

 

「タキオンさん、私たちメジロ家の5人が参加しますわ。…約束、守ってくださるわよね?」

「君たちが参加……ん?約束?」

「…あくまで惚ける気なのですね?いいでしょう、…後悔させてあげますわ。」

「はい?」

 

アグネスタキオンは覚えのない殺意を向けられ混乱した。そして、メジロマックイーンは『ロイアルコンシエル』の元へと歩く。

 

「ドーベルを拐うなんて…メジロ家を敵に回すとはどういうことか教えてさしあげますわ!」

「はい?」

 

『ロイアルコンシエル』の『ウマ人』ことソウジも混乱した。メジロマックイーンが自分にメジロドーベルの名前を出してきたのだ。そんな状況だが…レースは始まるのであった。

 

ーーー

 

「ピスピース!お前ら、久しぶりだな!実況担当のゴルシちゃんだぞ!」

「…どうも、解説のメジロドーベル…何でアタシ?」

「マックイーンは今回レースに出てるからな。代理だよ!」

「マックイーンが出走決まる前から私を連れてこなかった?」

「事前に手紙を送っていたからな!『メジロドーベルは預かった!返して欲しければレースに出ろ!』ってな!」

「脅迫状!?…それ、あなたからって書いた?」

「何言ってんだ?書くわけないだろ?」

「長距離が苦手なアルダンさんまで参加してるし…絶対誤解してるよ…」

「まぁ、マックイーンが参加してるから結果オーライだぜ!んじゃ、出走メンバーの紹介もしていくぜ!」

 

「1番、メジロパーマー!」

「この中では唯一の"逃げ"になるのかな?」

 

「2番、アグネスフライ…じゃなかった!『クイーンフォノン』!」

「タキオンさん曰く『合成因子第二号』らしいよ。」

 

「3番、メジロライアン!」

「アルダンさんほどじゃないけど、長距離は大丈夫かな…」

 

「4番、メジロブライト!」

「…そういえば、マックイーンとは同じ天皇賞(春)のG1レースを勝利してるわね。マックイーンとのステイヤー対決がちょっと楽しみかも。」

 

「5番、『ロイアルコンシエル』!」

「昨日の実験で作られた『合成因子』ね。私の力を活かすとかタキオンは言ってたけど…長距離のレース?」

「もう1人は誰だ?」

「エアシャカールって聞いてるけど…」

「なら、問題ないな!」

「そうなの?」

 

「6番、メジロアルダン!」

「無事に走りきることを願います。」

 

「最後は…メジロマックイーン!」

「ブライトに並んで長距離レースの本命ね。」

 

紹介が終わり、全員がゲートへと向かう。

 

ーーー

 

「さてさて…全員がゲートに入って…スタートしたな!綺麗に並んだスタートだ!」

「前に行ったのは…やっぱりメジロパーマーね。あれ?『クイーンフォノン』は前の方にいる?フライト先輩の普段の走りを考えると…『合成因子』の影響かな?」

 

「最初の第3コーナーカーブだ!縦長な展開になってきたな!先頭はメジロパーマー。2番手にメジロアルダン、続いて『クイーンフォノン』、メジロマックイーンはその後ろ!」

「後方はメジロライアン、メジロブライトと『ロイアルコンシエル』は最後方ね。」

「とはいえ、メジロ家のウマ娘が5人も走るって…圧巻だな!」

「…多分、あんたの手紙が原因だと思うけど。」

 

「第4コーナーカーブ!まぁ…同じ状態のままだな…。特に誰も仕掛けてこない!」

「いや、あと1周するのに仕掛けるには早すぎるでしょ!スタミナが持たないよ!」

「ただ…メジロマックイーンが『クイーンフォノン』にぴったりついてるな…」

「プレッシャーを掛けに行ってるね。」

 

「第1コーナーカーブ、『クイーンフォノン』は後退。メジロマックイーンに前を譲るつもりか?」

「ー!メジロマックイーンも同時に後退した!」

「プレッシャーを掛けるのを優先してきたか…。今の順位は、前からメジロパーマー、メジロアルダン、『クイーンフォノン』、メジロマックイーン…」

「その後ろにメジロライアンとメジロブライト、最後方に『ロイアルコンシエル』と変わらない展開ね。」

 

「第2コーナーカーブ、メジロアルダンはバテ始めたか?ここで『クイーンフォノン』がペースを上げて、メジロアルダンの前についた!走行妨害にならないか!?」

「なってないとは思うけど…。メジロアルダンの前につくことで、メジロマックイーンからのプレッシャーを回避した、ってところかな?」

「後方は…メジロブライトがペースを上げてきたな!で、メジロライアンと『ロイアルコンシエル』はそのままのペースだ!」

 

「2回目の第3コーナーカーブ!先頭はメジロパーマー。メジロアルダンは後退か?ここでメジロマックイーンが仕掛けてきた!『クイーンフォノン』も仕掛けてくる!2人はメジロパーマーをかわした!」

「まだ距離はあるのに!?」

「後ろも集団も仕掛けてきたな!ここでメジロブライト!メジロブライトも大きく仕掛けてきた!」

「メジロライアンと『ロイアルコンシエル』もペースを上げてきているね。」

 

「最終コーナーカーブ!ここでメジロマックイーンが『クイーンフォノン』をかわして先頭だ!このまま差を広げれるか?」

「外からメジロブライトも来ている…!!メジロブライトの後ろに『ロイアルコンシエル』がいる!いつの間にいたの!?」

 

「最後の直線!先頭はメジロマックイーン!しかし『クイーンフォノン』も食らいついている!」

「大外から『ロイアルコンシエル』がメジロブライトをかわして3番に上がってきた!?何て速さなの!」

「お前の力だろーが!っと、ここで『クイーンフォノン』は後退か?となれば後は『ロイアルコンシエル』がメジロマックイーンを差せるかどうかだな…」

「これが…私とエアシャカールの力…」

「『ロイアルコンシエル』が『クイーンフォノン』をかわした!メジロブライトもそれに続く!しかし、メジロマックイーンだ!メジロマックイーンが先頭でゴールイン!『ロイアルコンシエル』は追い付けず…」

「仕掛けるのがもっと早かったら…」

「とはいえ…スゲェな!早くゴルシちゃんの『因子』も使って欲しいぜ!」

「そんなことより…早く、マックイーンたちのところに行きましょう!」

 

ーーー

 

「チッ、オレの『因子』でそこそこの順位になってンじゃねェよクソが!オレの最後のレースが近ェってのに…見るんじゃなかった、クソが!……待てよ?アイツはオレだよなァ?オレにとっての新たなデータってことだよなァ?…へッ!選択肢が増えたな…計算のやり直しだ!」カタカタカタ

 

ーーー

 

レースを終えたアグネスタキオンたちであったが、その場は修羅場となっていた。メジロマックイーンが参加賞のニンジンを運んでいたアグネスタキオンの胸ぐらを掴んだのだ!

 

「さぁ、タキオンさん!私たちが勝ったのですからドーベルを解放しなさい!」

「落ち着きたまえ!…メジロドーベル?解放って一体何の話だ?」

「脅迫状を送っておいてまだシラを切るつもりですか?」

「あの~、マックイーンさま?ドーベルならそこにいますよ?」

「はい?ブライト、何を言ってますの?」

「お…コホン、私のことですか?」

「ん~、もう1人いる感じがしますが…あなたはドーベルですよね~?」

「えーと、その…」

 

メジロブライトの発言にソウジはどう言うべきか凍ってしまった。見た目も脚質も違う、有るのは『合成因子』による要素だけ、それをメジロブライトは感じ取っているのだ。どういう言うべきか、ソウジは考えていると…

 

「マックイーン!ブライト!」

 

メジロドーベルが走ってきたのだ。

 

「あらあら~?ドーベルが2人いますね~?」

「ドーベル!?あなたはタキオンさんに拐われて…」

「違うから!レースに出るマックイーンに代わって、ゴールドシップと一緒に実況してただけだから!」

「ですが、こんな手紙が…」

「いや、それゴールドシップが送った手紙だから…やっぱり、誤解してた。」

「手紙…あぁ、なるほど。読めてきた。つまり、君はドーベル君がいなくなり誘拐されたと思った。そしてその犯人が私だと思った…ってところだね?」

「昨日、あなたの研究室にいたらしいので…疑ったりして、申し訳ございません。」

「まぁ、誤解が解けたならいいよ…ね、タキオン?」

「…はぁ。あまり、いい気分はしないがね。」

「…何か私に出来ることはございませんか?」

「タキオン!…これはチャンスじゃないか!」

「そうだとも!君のを…いや、君たちの『因子』を手に入れれたなら、寧ろおつりがくるねえ…」

「『因子』…ですか?」

「この腕輪を付けて、ボタンを押し、10秒待ってくれたまえ!折角だ、メジロ家全員の分を頂こう!いいね?」

「承知しましたわ。アルダン、パーマー、ライアン、ブライト、ドーベルいいですわよね?」

『はい(うん)(勿論ですわ~)!』

「腕輪を付けて…ボタンを押す、でしたわね?大丈夫ですの?」ガチャ

「アタシが昨日したところ問題は無かったよ。」ガチャ

「なら~、大丈夫ですね~」ガチャ

 

ピッ、ピッ、ピー

 

「これで採取完了だよ。ご協力ありがとう!参加賞のニンジン、3本と言わずに全て持って帰ってもかまわないよ!」

「いえ、3本いただきますわ。…それでは、私は用事がありますのでここで失礼しますわ。ドーベル、ゴールドシップは今どこにいますの?」

「あ…!ごめん、分からない。」

「いいですわ、私自らが探して…フフフ。」

「メジロマックイーン君、ゴールドシップ君のお仕置きが終わったら私の研究室の前に縛っておいてくれ。ククッ、やりたい実験を思い出したよ。」

「承知しましたわ。では、ご機嫌よう…」

 

メジロマックイーンが去っていく後ろでアグネスタキオンは邪悪な笑みを見せていた。そんなウマ娘に声をかけるメジロがいた。

 

「アグネスタキオンさま、『ロイアルコンシエル』…いえ、ソウジトレーナーの現状について教えしていただけますか~?」

 

マイペースながらも核心を捉えているメジロブライトだった。




・命名の経緯
メジロドーベル(G1を5勝)+エアシャカール(G1を2勝)で7勝。7で出てきたのが幸運か虹…シャカール的に幸運は無いな!よし、『虹の王』にしよう!

ロイ(王)+アルコンシエル(虹)=ロイアルコンシエル(虹の帝王)

エアグルーヴとアグネスタキオンだと…女王(クイーン)+音響量子(フォノン)=クイーンフォノン(音速の女王)


書き溜めはここまでです。…また、適当なタイミングで投稿しようと思います。ここまで読んでいただきありがとうございました!


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第15話 『ロイアルコンシエル』の研究終了、計算された同盟

どうも、明日のヴィクトリアマイルが楽しみな作者です。
まぁ、今日も今日でウルトラマンとゼンカイジャーの映画を見るので楽しみなのですが…ついでに応援馬券も買っておきましょう。

さて、本編の話ですが…あのウマ娘が出てきます。馬の方は大きく、大人しく従順だったとのことでした。なので発表を聞くまでは、私の中ではボソッと一言だけ喋るキャラでいこうと予定してましたが…こうなりました。では、どうぞ!


タキオンメモ:『合成因子第二十五号ロイアルコンシエルについて』

 

11月30日

・誕生

→メジロドーベルの『因子』とエアシャカールの『因子』を合成したことで完成した第二十五号の『合成因子』に『ロイアルコンシエル』と名付ける。

 

 

・身体能力

→計測結果より『ロイアルコンシエル』の適性距離は中距離~長距離。ただし、マイルも適性ではないものの可能と判断。

 

 

・脚質

→メジロドーベル、アグネスフライトとの併走により追い込み=差し>>>先行=逃げ、と記録。

 

 

12月1日

・レース実行

→アグネスフライト、メジロマックイーン、メジロライアン、メジロパーマー、メジロアルダン、メジロブライトとの特別レースに出走。追い込みにより最後の直線でアグネスフライト、メジロブライトをかわすもメジロマックイーンを差しきれず2着。

 

 

・『因子』入手

→メジロマックイーンを始め、レース参加者全員の『因子』を入手した。

 

→後日分析するも全員S極の『因子』であった。

 

→メジロブライト、メジロドーベルにメジロライアンの『因子』が50%含まれていた。

 

→また、以前入手していたゴールドシップの『因子』からメジロマックイーンの『因子』も25%含まれていることも分かった。

 

 

余談

・ウマ娘への『合成因子』注入

→おね…アグネスフライトへ『合成因子』を注入。私の『因子』であれば、姉の体に馴染み易いと判断したため『合成因子第二号クイーンフォノン』を使用した。

 

→アグネスフライトの『因子』を抜く際は新型の腕輪を使用。これには疲労を軽減するため開発した新薬の治験も兼ねておりそれも服用した。

 

→アグネスフライトは問題なく『クイーンフォノン』へと姿を変えた。ただし、副作用が後からくる可能性もあるため観察は続ける。

 

→人間であれば『ウマ人』だが、区別のため、ウマ娘がなるこの姿を『アナザー』と呼ぶこととする。

 

 

・『因子』回収

→今回使用した『ロイアルコンシエル』と『クイーンフォノン』を回収。

 

→『クイーンフォノン』の回収後にアグネスフライトは倒れた。原因は一気に疲れが襲ってきたとのこと。今回の新薬は体に来る疲労を一時的に抑えていただけの効果であったようだ。改良後にまた、治験を行う。どさくさに紛れトレーナー君に抱きつくなんて姉……いや、何でもない。とりあえず、ロイヤルビタージュース(超濃縮版)を飲ませた。

 

 

以上が『ロイアルコンシエル』の実験レポートである。次回は有マ記念のスケジュールに合わせ行っていく予定だ。

 

ーーー

 

「……ふぅ。」

 

とある練習場、1人のウマ娘が夜遅くまで自主練習に励んでいた。そして、エアシャカールはそのウマ娘に近づいた。

 

「よォ、ボリクリ。」

「…シャカールか?何用だ?」

「何、ただの偵察…って言いたかッたンだがなァ…」

「歯切れが悪いな…君らしくない。だが、話なら少し待ってくれ。後、5周したら付き合おう。」

「…いいぜ。その間、てめェの走りを見といてやるよ。」

「あぁ、好きにするといい。」

 

そのウマ娘の名はボリクリこと『シンボリクリスエス』。現在はクラシック級にいるウマ娘で青葉賞、神戸新聞杯、と重賞を勝ち取っている。またG1レースだと、日本ダービーでは『タニノギムレット』、天皇賞(秋)ではアグネスタキオン、ジャパンカップではアグネスフライトに敗れたものの何れも好成績を残している猛者でもある。そして、次はエアシャカールと同じ有マ記念へと出走予定…つまり、次走の競争相手にエアシャカールは接触してきたのだ。

 

………

 

「待たせた…」

「ほれ、スポドリ!」シュッ

「ありがとう。」パシッ

 

自主練習が終わり、シンボリクリスエスは一息つく。そして、本題を聞いてきた。

 

「で何用だ?」

「…ボリクリ、てめェはタキオンに勝ちてェか?」

「当然だ。私に与えられた使命は勝利…それだけだ。君も…いや、全員が思ってることだろ?何を今更…」

「オレの計算が正しければ…今回も奴がぶッちぎりで勝つと出ていた。」

「君の理論は信頼できるがレースは計算だけで…ん?出ていた?」

「オレは惨敗、てめェは2着か3着…そうなるはずだった。だがなァ、『クイーンフォノン』と『ロイアルコンシエル』…タキオンが行ってるレースで得たデータからオレかてめェかが優勝出来る可能性が出てきた。」

「ん?あの特別レースを見ただけで君とアグネスタキオンのデータが分かるのか?」

「…そこも含め詳細は後だ。結論から言うとオレは2%、てめェは25%で1着になる。オレよりボリクリの方が圧倒的に高ェのが悔しいが…そういうことだ。」

「何故それを私に教えた?」

「…悪あがきだよ。オレにとっては最後のレースだ。出来ることは全てしてェ…ボリクリ、まだ走れるな?」

「…そういうことか。いいだろう、有マまでだが…好きなだけ付き合おう。ちょうど私の闘走心も上がっきたところだ。」

「ケガしねェ範囲で、だ。本番では敵同士だということを忘れるなよ?」

「私がそんな奴に見えるか?」

「見えねェが念のためにな。…オレたちは勝つために互いを利用しあう、それだけだ。明日、オレの計算データだけを渡す…後はてめェが考えろ。」

 

有マ記念に向けて限定的ではあるものの強力な同盟が組まれることとなった。



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第16話 新たなる実験、貴公子は有マ記念へと備える

昨日の映画はどっちも面白かったな…。特にゼンカイジャーの振り切ったストーリーが…はい、ボリュームが凄い映画でした。焼き肉だけに。1時間とは思えない満腹感…いや、もはや若干胃もたれレベル。

本編にどうぞ!


『ロイアルコンシエル』の研究が終了した数日後…

 

「タキオン、来週はいよいよ有マ記念だが…調子はどうだ?」

「あぁ、絶好調だとも。私の研究の成果…見せようあげよう。」

「参加者にはナリタトップロードやジャングルポケットもいるな。後は…ファインモーションが参加してくるらしい。秋華賞とエリザベス女王杯を連勝し、現在無敗とのウマ娘だ。」

「ふむふむ…ファインモーション君か。是非、彼女の『因子』が欲しいねえ。」

「…タキオン、間違っても本人や関係者の前で言うなよ?国際問題になりかねないから。後は…エアシャカールとシンボリクリスエスが毎日併走しているらしい。当然この2人も出走している。」

「シャカール君が併走…?いや、誰であろうと、もう私に負けはない…信じてくれたまえ。」

「俺はお前が負けると思ったことはないよ。」

「トレーナー君…よし、では今日も実験といこうじゃないか!」

 

今日も今日とてアグネスタキオンは最速を求め、研究を続ける。

 

「あのー、タキオンちゃん?これは何の実験?」ぎちぎち

「タキオンさん…何故拘束を?」ぎちぎち

「何で私まで!?」ぎちぎち

 

そこには頭、腕、腰、足を椅子に固定されたアグネスフライト、マンハッタンカフェ、セイウンスカイがいた。

 

「何って…これから君たちの体内にある『因子』を抜くのだよ。」

『はい(えっ)!?』

「あぁ、ゴールドシップ君みたいに全部抜いたりはしないから、そこは安心したまえ。お姉ちゃんは50%、カフェは75%、『因子』を抜き、その過程を観察させてもらうよ。」

「あれ?セイちゃんは?」

「君は別の実験だから…100%だね。」

「…それって私死にません?」

「大丈夫だとも。私やお姉ちゃんで試し終わってる実験だからね。」

 

今回、行われる実験は体内にあるウマ娘としての『因子』を全て抜くという実験だ。事前の実験は(メジロマックイーンによるお仕置き後の)ゴールドシップで済んでおり、結果は全て抜いて数分後に衰弱したゴールドシップ体内に『因子』の生成が確認されたのだ。その後、再びゴールドシップの体内に『因子』を全て戻したところ、ゴールドシップの傷(タンコブなど)が急速に回復したという。アグネスタキオンと『レロレロ』の『ウマ人』となったソウジが抑えたとはいえ、再注入中のゴールドシップが暴れ、拘束椅子を破壊したため、更に強化した拘束椅子にアグネスフライトたちを座らせ、今にいたる。ついでにセイウンスカイで『アナザー』の実験も行うのだ。

 

「血液ドーピングを知っているかね?簡単に言うと体内の赤血球を濃くするために事前に自分の血を抜き、直前の自身の身体に戻すというものだ。過去の長距離レースでウマ娘が行った事例もあり現在は禁止だとのこと…よって、現役の私自身で行う訳にはいかないのだよ。」

「だからって何で私たち?」

「モルモットだからに決まっているだろ?」

「フライト先輩とカフェさんだけでしょ!?セイちゃん関係ない~!」

「タキオンちゃん、これはちょっと…お姉ちゃんも怖い…」

「フフフ、いい顔だよお姉ちゃん…」

「タキオンさん……謎のスイッチが入ってますね……」

「今回のメインはカフェ、君だよ。」

「私…ですか?」

 

そう、ゴールドシップでの実験結果でアグネスタキオンが注目したのは身体の回復力。マンハッタンカフェは現在、ケガにより引退。回復後も復帰の意思はなく、後輩と共に走っていくとのこと。引退したアグネスフライトも『アナザー』の実験で治験した薬の副作用(と苦いジュース)により絶不調である。よってこの2人で実験を行うことにした。

 

「さぁ、実験を始めようじゃないか!」ポチッ

 

ボタンを押すと同時に実験が始まる…そして、研究室内で3つの絶叫が重なり響いた。

 

ーーー

 

研究室内で衰弱したアグネスフライトとマンハッタンカフェを寝かせ、アグネスタキオンたちは練習場へと来ていた。

 

「では、ウォームアップを頼むよ…セイウンスカイ君、モルモット君。」

「その姿がソウジトレーナーの『ウマ人』ですか。」

「その通り。にしても黒髪のセイウンスカイも新鮮だな…っと!フライトでの実験で慣れたつもりだが、そう簡単にはいかないものだな…」ガクン

「にゃはは…セイちゃんは会長さんの力でパワーアップですね~」

「私という愛バがいながら随分と仲が良さそうだねモルモット君?」

「お前の目は節穴か?セイウンスカイ、さっさと始めるぞ。」

「誰の目が…コホン、その後は全員で本格的な併走だからね。」

「では、私が"先行"で先頭をやってみますので、付いてきてくださいね~」

「これはシンボリルドルフの『因子』の影響か?」

「念のため、記録はしておこう。」

「いや、狙って言ってないですからね?」

 

ソウジは『カルーア』の『ウマ人』、セイウンスカイは『デビルジュピター』の『アナザー』へと姿を変え、アグネスタキオンと共にウォームアップを始めたのだが…

 

「はぁ…はぁ…ふぅー…」

「モルモット君?」

「ソウジトレーナー?」

「ごめん、もう無理…!セイウンスカイ、俺の半径10m以内に入らないでくれ!」ガクッ

「えぇ!」

「仕方ない…セイウンスカイ君、最後の1本は2人でいこう。脚質は"差し"で頼むよ。苦手な脚質だとは思うが本気で来てくれたまえ。」

「分かりましたよ~」

「俺はここでタイマーとカメラを持って横になってるから…」グデー

 

『デビルジュピター』からのプレッシャーにより残り少しのところで『カルーア』がダウンしてしまった。『カルーア』は『合成因子』の中でもスタミナが高い部類に入るが、『デビルジュピター』からの重圧でスタミナとは別の力が削られたからだろう。そして、アグネスタキオンと『デビルジュピター』のタイマンが始まった。

 

「やぁぁぁ!」

「はぁぁぁ!」

 

アグネスタキオンが最後の直線で先頭を取り、それを『デビルジュピター』が追いかける。足を溜めていた『デビルジュピター』が有利なのか、その差は縮まっていき…

 

「よっしゃっ!差し切りましたよ!」

「むぅ…、お見事だよセイウンスカイ君。…そして、私もそろそろ限界だね。」ガクッ

「タキオンさん!?」

「君は先に研究室に戻ってくれたまえ。…私はモルモット君に運んで貰う。とりあえず君の中の『デビルジュピター』を回収しよう…」

「うわぁ…、そんなにこの『合成因子』ってすごいんですね…。まぁ、早く終わるに越したことはないので先に戻ってます。遅くならないでくださいね。」

 

セイウンスカイは先に戻る。それを確認した後、アグネスタキオンは座りこんでしまった。

 

「モルモット君…大丈夫かい?」ペタン

「その言葉そのまま返してやる。…まぁ、お前を運べる体力は残ってるよ。」

「そうか。なら今回は普通に背負って…」

「よっと!」ダキッ

「いや…その…無理にお姫さま抱っこじゃなくても…」

「早く戻るぞ。研究室にはフライトとマンハッタンカフェもいるし、そろそろ『因子』を戻さないと。」

「…はい。」

 

今日も顔を真っ赤にして運ばれるアグネスタキオンが目撃された。アグネスタキオンの調子が上がった。




・おまけ
シンボリクリスエス…アグネスタキオンとは1つ下の世代で外国生産馬。元ネタは冠名+父のKris.S.(クリスエス)から。主な勝利は天皇賞(秋)(2002年と2003年)、有馬記念(2002年と2003年)。特に引退レースの2003年の有馬記念での勝利は圧倒的の9馬身差。産駒にエピファネイア、サクセスブロッケンなどG1勝利馬が5頭。母父としてはオジュウチョウサンやアカイイトがいる。…アグネスフライトより先にウマ娘で実装されるとは思ってなかった。


次回はタキオンの有マ記念を予定しています。では、また不定期に投稿させていただきます。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


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第17話 貴公子は有マ記念へ出走する、密林の覚悟

どうも、牝馬大好き作者です。
今回の話は有馬記念です。新たなオリジナルウマ娘が出てきていますが…今後このウマ娘たちをどうするかは今のところ考えてないです。


有マ記念…年末を締め括るレース。そして、数あるG1の中でも多くの伝説を残してきたレース。オグリキャップのラストラン、トウカイテイオーの奇跡の復活、テイエムオペラオーの逆転劇。…探せばまだまだ出てくるだろう。その中でアグネスタキオンはファン投票でジャングルポケットに次ぐ5位を獲得し、1番人気で出走することになった。

 

ーーー

 

ソウジとアグネスタキオンは中山のレース場に来ていた。有マ記念である。クリスマスはレースを控えているため特別なことはせず、七色に光るソウジをツリー替わりに練習を行ったくらいだ。しかし、レース後にプレゼント交換をしようと互いに用意はしているとのこと。

 

ザワザワザワ

 

それはそうと中山のレース場に集まった観客たちはウマ娘の出走を今か今かと待っている。アグネスタキオンは控え室でパドックまで時間を待っていた。

 

「…」

「タキオン、不安とかは無いか?」

「その質問はもう5回目だ。全く…君に不安を感じてきたよ。」

「す、すまない…」

「何故出走する私よりも君が緊張してるんだ?」

「まぁ、俺の夢でもあったし…こうしてお前が出走することが嬉しくてな…」

「…私もだよ。私も君とここまで来れるとは思っていなかったよ。…今だから言っておこう。私はね、レースへ復帰するつもりはなかった。また足が壊れるかもしれない…なら研究の成果は誰かで試せばいい…本気でそう思っていたよ。」

「…だったら何故?」

「君の走りから勇気を貰ったから…」ボソッ

「俺の?」

「おかしな話さ。私の走りに魅せられた君と君の走りに勇気を貰った私。表向きの理由は私での『アナザー』の実験を行うためだが、実際はまたレースへと走るためだった。…ありがとうソウジ。」

「タキオン…」

「そろそろ時間だね…ソウジ!」

「どうし…!!」

 

チュゥ

 

「た、た、タキオン!?」

「私の勝利は君の勝利だ。そして、うまぴょい伝説の歌詞通り…私は今日の勝利の女神となってくるよ。」ペロッ

「…」

「石になったか。…はぁ、君は変なところでウブだねえ。私はもう行くがレースはちゃんと見といてくれたまえ。」

 

アグネスタキオンの突然の行動によりソウジは固まってしまった。しかし、それを気にせずアグネスタキオンは地下バ道へと向かう。ソウジが正気に戻ったのはウマ娘たちのゲートイン手前であり、自身の席へと急ぐこととなった。

 

………

 

レース場へと入る前の地下バ道、そこに1人のウマ娘がいた。

 

「やぁ、アグネスタキオン。」

「ジャングルポケット君?私を待っていたのかい?」

「…忠告だよ。今回がラストランになるウマ娘も多い。…自分以外は全て敵だと思っていた方がいい。」

「今更何当たり前のことを言ってるんだ?まさか2年前の有マ記念と同じようなことが起きるとでも?」

「違うな、仮に起きたとしても君がバ郡に飲まれることはないだろ?…ジャパンカップでの君のお姉さん、これで分かるよね?」

「ーっ!まさか、ジャングルポケット君!キミも今回で…」

「君が手を抜くことはないと思うが…本気で来てくれ!いや、限界を超えて来いアグネスタキオン!」

「…私は私の走りをするだけだよ。どんな相手であれ、どんな状況であれ、私は…最速で走りきる!よって今回も勝たせてもらうよジャングルポケット君。」

「じゃあ、後は…」

「レースで語りあおう。」

 

ジャングルポケットとアグネスタキオンの対決が始まる。

 

ーーー

 

『出走ウマ娘たちがターフへと入ってきます。』

 

ワァァァーー!

 

『最初に見えたのはファン投票1位のナリタトップロードです。』

『今年は多くの重賞を勝ち取ってきました。ラストランとのことですのでG1レース勝利にも期待したいところです。』

 

『少し離れてG1勝利はまだ無いものの日本ダービー、天皇賞(秋)、ジャパンカップで好走を見せたシンボリクリスエスです。』

『天皇賞(秋)では後一歩、ジャパンカップでは少し出遅れがありながらも入着していることから高いポテンシャルを持っていることは確かです。注目したいウマ娘ですね。』

 

『次に今年の菊花賞ウマ娘、ヒシミラクル。』

『このレースでもミラクルな走りを見せて欲しいですね。』

 

『そして、6戦無敗、2番人気のファインモーションの姿が見えます。』

『現在、全てのレースを圧勝ですからね。クラシック級でありながらも優勝候補の1人になります。シニア級のウマ娘たちにどこまで競えるか見所です。』

 

『G1レース初挑戦、タップダンスシチー。』

『1着は無いもののG2レースでは2400~2500のレースで入賞しているため、この有マ記念が適しているかもしれません。また、最近本格化してきたとの噂もありますね。』

 

『復帰後2回目のレースとなるジャングルポケット。』

『ジャパンカップよりもしっかりと調整してきての参加だそうです。好走に期待が持てますね。』

 

『今年、重賞4回入賞しているエアシャカールもナリタトップロード同様にラストランとのこと。』

『…凄く気合いが入っているのここからでも分かります。』

 

『次に…え?時間が無い?コホン、最後に紹介しますのは本レースでの1番人気アグネスタキオンです。』

『去年引退を宣言をし、2ヶ月前にまさかの復帰ですがファン投票は5位となりました。天皇賞(秋)とジャパンカップでの活躍が印象深いウマ娘です。強豪と呼べるウマたちが揃っている中でも特に無敗のファインモーションとの対決に注目したいところです。』

 

『紹介出来ていないウマ娘もいますが、15名でのレースとなります。』

『ファンファーレの後に各ウマ娘たちがゲートへと向かっていきます。いよいよ、有マ記念がスタートですね。』

 

………

 

「最速の走りで…勝つ!」

 

1番人気『超光速の貴公子、アグネスタキオン』

 

 

「フフフ…ドキドキしちゃうな。」

 

2番人気『美妙の動者、ファインモーション』

 

 

「ーー使命は1着。ーー遂行する。」

 

3番人気『漆黒の帝王、シンボリクリスエス』

 

 

「タキオンに勝つんだ…絶対…全力で…」

 

4番人気『心象膨大な密林の王者、ジャングルポケット』

 

 

「…さぁ、最後の挑戦です!」

 

5番人気『頂への挑戦者、ナリタトップロード』

 

 

「人事は尽くしたであ~る。後は…運命であるな!運命っ!」

 

6番人気『奇跡を呼ぶ、ヒシミラクル』

 

 

「…」

 

8番人気『準3冠、エアシャカール』

 

 

「…遅くなったけど、こっからが私のスタートよ!」

 

14番人気『舞い刻む逃亡者、タップダンスシチー』

 

 

それぞれの想いが今、中山のターフで交差する。そして…ゲートが開かれた。




・おまけ
ヒシミラクル…アグネスタキオンとは1つ下の世代で芦毛の競走馬。主な勝利は菊花賞、天皇賞(春)、宝塚記念。菊花賞の時点では16戦3勝(未勝利、500万以下、1000万以下のレース)のみで出走権は無かったものの抽選により8分の3を枠を勝ち取り参戦。そして、最後の直線で抜け出し、追い込んできたファストタテヤマからハナ差で逃げきり勝利した。2003年の京都大賞典にケガをし1年休養。復帰するも2005年の天皇賞(春)後に再発し引退した。天皇賞(春)、宝塚記念などG1レースを勝利しつつも京都記念などG2レースは勝てず、重賞の勝利はG1レースのみという珍しい結果だった。主な産駒は地方競馬にて重賞を2勝したヒシダイアナ。

余談だが宝塚記念でヒシミラクルの単勝に1222万円投入して大勝利したミラクルおじさんなる人がいたらしい。


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第18話 有マ記念終了、貴公子の新たな可能性

どうも、最近またポケモンをやり始めた作者です。ポケモンコロシアムのダークポケモンで色ちがいのハッサムを狙ってます。…もう、50回くらいしてますが出ないです。

明日は日本ダービーですね…私の本命は『イクイノックス』!大外枠とかそういうのは分かりませんが応援させていただきます!後は『キラーアビリティ』とグラ…スクリーンヒーロー産駒の『ピースオブエイト』、母父マンハッタンカフェの『セイウンハーデス』を応援しようと思います。セイウンハーデスやアスクワイルドモアの血統をみてると、ダイワスカーレット+ゴールドシップやダイワスカーレット+キタサンブラックもアリなのか?と思ってきてます。今のところ採用予定はありませんが…。

さて、今回の話ですが有馬記念の続きです。史実通りの結果かは…お楽しみを。


ゲートが開く。有マ記念が始まった。

 

『各ウマ娘がスタート!

注目の先行争いは…タップダンスシチーとファインモーション。

おおっ!

タップダンスシチーが先頭を取った!』

 

「いけっ!ファインモーション!」

「タップダンスシチー、そのまま逃げ切れ!」

 

『第1コーナーカーブ!

ナリタトップロードは3番手!

その後ろ、内からアグネスタキオン、アクティブバイオ、コイントスが並んでいる!』

 

「はあぁぁぁ!」

 

『ここでファインモーションだ!

ファインモーションが先頭になる!

それにタップダンスシチーが続く!』

 

「いいぞ!ファインモーション!」

「落ち着け、ファインモーション!まだ序盤だぞ!」

 

「(…ファインモーション君がもう出ている?掛かってしまったか?)」

 

『数バ身離れ、3番争いはナリタトップロードとアグネスタキオン。

その後ろにコイントス、シンボリクリスエス。

エイエムオーシャン、アメリカンボス、ジャングルポケット、ノーリーズンがこれに続く!

最後方エアシャカールがペースをあげて、外からヒシミラクルをかわした!

ジャングルポケットもあがってきたか?』

『ファインモーションはペースを落としてきましたね。

先頭は再びタップダンスシチーになります。』

 

「おい、エアシャカール…もうスパートを切ってないか?」

「ジャングルポケットもだ!」

「いや…まだ第3コーナーすら来てないから流石に違うだろ?」

 

「(…ファインモーション君、気付いてペースを落としたか。しかし、ずっと前にいられるのもまずい…ここでペースをあげるか?いや、まだだ……え?)」

「があぁぁぁ!」

「どりゃぁーー!」

 

『エアシャカールとジャングルポケットだ!

大外からエアシャカールがまとめてかわしていく!

何てハイペースだ!

エアシャカール、そのまま先頭のタップダンスシチーを捉えにかかる!

ジャングルポケットはアグネスタキオンの斜め後ろのポジションについた!』

『エアシャカールは掛かってる…訳ではないようですね。

このままゴールまでロングスパートを切ったようです。』

 

「いけっ!エアシャカール!ラストランで奇跡をみせてくれ!」

「ジャングルポケット!アグネスタキオンに勝ってくれ!」

「アグネスタキオン…最速の走りはまだか!」

 

「(何てペースだ!後ろからもの凄い重圧が…!だが…後、少し…もう少し…ここだ!)」

 

ダンッ

 

『最終コーナーへと入る!

先頭はタップダンスシチー!

しかし、エアシャカールが捉えた!

代わってエアシャカール先頭!

差を大きく広げて前にいく!

ここでアグネスタキオン、シンボリクリスエス、ナリタトップロードが同時に仕掛けてきた!』

 

「3人が同時に仕掛けてきたっ!」

「完璧なタイミング…アグネスタキオン行くんだ!」

「いけるぞ、ナリタトップロード!」

「シンボリクリスエス!アグネスタキオンを差しきってくれ!」

 

「私を忘れるな!」

 

『大外からジャングルポケットも仕掛けてきた!

さぁ、最後の直線!

しかし、伸びているのはアグネスタキオンとシンボリクリスエス!

凄い速さで前の2人を捉えに迫る!』

 

「ぐッ…チッ!うおォォォ!」

 

『エアシャカール、フォームが崩れ…いや、立て直した!

しかし、スピードが落ちて…ここでアグネスタキオンだ!

アグネスタキオンが先頭へと変わる!

シンボリクリスエスも来るが先頭はアグネスタキオン!

後続を大きく突き放す!』

 

「はぁぁぁ!」

「まだだ!」

 

『シンボリクリスエス食らいつくがその差は埋まらない!

寧ろどんどん広がっている!

アグネスタキオン、アグネスタキオンだ!

アグネスタキオンが1着ゴールイン!

圧倒的な強さだ!

2着にはシンボリクリスエス、3着にタップダンスシチー!』

 

わあぁぁぁーっ!

 

ーーー

 

「おめでとうー!アグネスタキオンー!」

「これからも勝ち続けてくれよ!」

 

パチパチパチパチ

 

大きな拍手が送られる中、エアシャカールは地面に自分の拳を叩き込んだ。

 

「はァ…はァ…クソッ!!6着…結局オレは何も変えれなかッた!」

「シャカール、足が…!」

「問題ねェよ!さっさとウイニングライブにいくぞ、ボリクリ!」

「…」グイッ

「おい、離せッ!下ろせ!」

「…ダメだ。」

 

シンボリクリスエスがエアシャカールを抱える。エアシャカールの左足に変色が見られたからだ。一方、ジャングルポケットも歓声を浴びるアグネスタキオンの元へと近づいた。

 

「おめでとう、アグネスタキオン。君は本当に速いね。」

「ジャングルポケット君…」

「…私はこれで最後だ。最後に君と走れて良かったよ。」

「…最後と言うにはまだ早すぎるだろ?」

「本当に最後だ…もう私がターフを走ることは無いよ。」

「…ん?」

「左足…もうダメなんだ。それでも今日だけはどうしても走りたかったから……ぐっ!」ガクッ

「どうした!?」

「がぁぁぁ!」

「ジャングルポケット君!?」

 

レースを終えたジャングルポケットであったが、左足を抑えて叫ぶ。それは日本ダービーでみせた雄叫びでなく、苦悶の叫びであった。

 

『審議です!

9着のジャングルポケットですが…『痛み止め注射』の使用が発覚!

よってこれよりドーピングの審議を行います!

そのまま、お待ちください。』

 

ザワザワザワザワ

 

ジャングルポケットの叫びと突然の審議に観客たちは動揺し始めた。

 

「ドーピング?ジャングルポケットがか?」

「見ろ!そのジャングルポケット…足を抑えて倒れてるぞ!」

「正当な理由の筈だ!」

「それより応急処置が先だろ!救護班早く来てくれ!」

「シンボリクリスエスが運んでいるエアシャカールもヤバそうだ!」

「これが全力の代償なのかよ…」

 

その後、2人は救急車で病院へと運ばれた。また、ジャングルポケットの『痛み止め注射の使用』は理由と成分が合法的な物であったため除外では無いものの、後日に厳重注意が下されるとのこと。有マ記念…アグネスタキオンの勝利への喝采と2人のウマ娘のケガによる悲鳴があがる大会となった。

 

ーーー

 

ウイニングライブが終わったアグネスタキオンはソウジたちと合流した。

 

「タキオン…よくやった!」ダキッ

「なっ!トレーナー君はステージの女神じゃないだろ!離したまえ恥ずかしい!」

「フフフ…タキオンちゃん、本当におめでとう!」ダキッ

「お姉ちゃんまで…」

「ところでソウジトレーナー…姉妹○に興味は…あぅ!」ボカッ

「何を言ってるだ、このムッツリ!トレーナー君は私だけの物だ!」

「『独占力』が出てるよタキオンちゃん。3割冗談なのに…」

「半分以上本気じゃないか!」

「それも冗談よ…で、シャカールとジャンポケちゃんはどうなったの?」

「前にお姉ちゃんへ飲ませた試作品で今のところは痛みは無いはずだ。次に目が覚める頃には治療も終わっているさ。」

「それ、法律的に大丈夫?血液検査とかされてもヤバい成分とか出てこない?」

「問題無いとも…多分。」ボソッ

「しかし…まさかジャンポケちゃんも引退になるとはね…」

「完全にタキオンの一強になってきたな。テイエムオペラオーみたいに来年のG1レースを全部勝っちまうか?」

「トレーナー君、そのことだが…」

「まさかタキオンちゃんも引退!?確かにもう十分過ぎる成績だけど!」

「違う、最後まで聞きたまえ!現役はこのまま続行するとも。それでその…」

「『天皇賞(春)』は回避か?」

「ーっ!?何故分かった?」

「まぁ…、2人もケガしてるのを見たから俺でも慎重になるよ。最長の天皇賞(春)は消耗が激しいから走るべきでは無いと思ってな…。そこでだタキオン、『フェブラリーS』に出てみる気はないか?」

 

フェブラリーS…2月の東京レース場で行われるダート1600mのG1レース。ダートであるためアグネスタキオンにとっては未知の領域…ソウジのまさかな提案に彼女は固まった。

 

「デジタル君が今年勝ったレースを…私がかい?」

「ソウジトレーナー、タキオンちゃんにとってダートは長距離よりも適正ではないと思うのですが?それにダートはダートで別の消耗があるでしょ?」

「そうかもな。…だが、タキオンの研究ではまだ実験していない分野だろ?タキオン自身が走ることで最速への近道になると思ったのだが…」

「…考えてみよう。ところでその…トレーナー君、年末の予定は…?」もじもじ

「仕事だよチクショー…。大晦日と正月に何とか休みをいれた結果だがな…」

「そうかそうか!そこが休みか!フフフ…、ちょっと実験をしたくてね!付き合ってくれるね?」

「いいよ。場所は…また明日決めよう。」

「タキオンちゃん、お母さんたちには私が上手く言っておくから好きにしなさい。後、ヤるならちゃんと付けてもらうこと。」

「そんなことはしない!………本当にしないよ?」

「タキオンちゃん?」ゴゴゴ

「本当にしないってば!コホン、さて明日からまた『合成因子』の実験に戻ろう。メジロマックイーン君の『因子』での合成を色々と試したい。いや、久々に私が『アナザー』になってみるのもいいかもしれないな…」

「はいはい、全部付き合うから…ほら、プレゼント!気に入ったら使ってくれ。」

 

ソウジは紙袋をアグネスタキオンへと渡す。

 

「あれ?それは明日の予定だったような…使う?今開けてもいいかね?」

「フライトがいるからダメだ。これは今日の勝利の分。明日は明日で別のプレゼントがあるから。」

「何で私がいたらダメなのですか?…まさか、タキオンちゃんに変なものを…」

「んー、何となくね。」

「あっさり流された!?普通に気になってきたよ…タキオンちゃん、開けたら私に教えなさい!変なものだったら、ちゃんとコイツをぶっ殺しておくから!」

「コイツって…俺、トレーナーなんだが…」

「クククッ!それはそれで面白そうだね。」

「おい!っと、長くなったな。そろそろ帰ろうか。フライト、悪いがタキオンを送ってやってくれ。俺は学園に戻ってタキオンは来年も続行しますって理事長に報告してくるから。」

「はいはい~!」

「トレーナー君…また明日。そして、私からのプレゼントを渡そう。」

「あぁ、また明日。」

 

こうして有マ記念が終了した。そして、アグネスタキオンはシニア級2年目へと突入する。




・おまけ1(それぞれのプレゼント)
ソウジ→羊の着ぐるみパジャマ、極太の赤いリボン
タキオン→樹木の香りのするアロマキャンドル(成功品)

・おまけ2
タップダンスシチー…アグネスタキオンの1つ上の世代で逃げと得意とする外国生産馬。主な勝利はジャパンC(2003)と宝塚記念(2004)。デビュー後は入賞はしつつも重賞での勝利はなく、6歳になり、G3レース『朝日チャレンジC』で重賞を勝ち取った。そこから本格化が始まり、金鯱賞、京都大賞典と勝利。その流れでジャパンCも勝利した。その翌年には凱旋門賞に出走した晩成型の競走馬。主な産駒は地方競馬にて重賞を4勝しているタッチデュール。

次回は明日更新です。ここまで読んでいただきありがとうございました。


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第19話 カワイイカレンチャン、モルモットのプランと貴公子の決断

日本ダービーです…。そういえば友達から『粗品』さんという競馬予想するうえで参考になる芸人さんを教えていただきました!まだ『クセスゴ』での粗品さんしか見てないですが確かにパチンコとか競馬とかめっちゃ詳しそうですね…。ネタは普通に面白い!

それはそうと『イクイノックス』、頑張ってください!今からあなたの応援馬券を買いにいきます!後、目黒記念に出走します『アサマノイタズラ』の母父がキングヘイローだそうなので購入したいと思います!

東京優駿、勝ったのは…ドウデュース。しかもまさかのレコード記録…イクイノックス惜しかった…。
お疲れ様です、あなたたちの馬券はとっておきます!


さて、今回の話ですが…ウマ娘としての『ヒシミラクル』を妄想してみました!ですが…まぁ、どうしてこうなった!?な話になった気も…。とりあえず…カレンチャン本人は出てこないです。タイトル詐欺?すみません、予告はしたので許してください。…では、どうぞ!


年が明け、セイウンスカイはアグネスタキオンに呼ばれ研究室へと来ていた。

 

「はいはい~、お邪魔しま…す?」

「来たか!カフェ、お姉ちゃん、確保だ!」

『確保~!』

「何何何っ!?」

 

入室と同時にマンハッタンカフェとアグネスフライトにより取り抑えられ拘束椅子に座らさせる。その状況に慣れてきたセイウンスカイは疑問を投げる。

 

「で、どうしたのですか?何の実験ですか?」

「今回は実験じゃなくて…その…」

「実験じゃないのですか?」

「実は…トレーナー君が…えーと…」

「タキオンさんとの実験でウマ娘がトラウマで真っ白になったそうです。」

「…はい?」

「カフェ!?」

「後、長舌もダメだそうです。」

「んんん?ちょっとセイちゃん何言ってるか分かりませんね?」

 

アグネスタキオン曰く詳細は伏せるものの大晦日に『レロレロ』の『アナザー』になってみたところ暴走したらしく、アグネスフライトが挨拶に研究室に来るまでその状況が続いたとのこと。その間、ソウジトレーナーはそれを受け続けていた訳で…ウマ娘がトラウマになっていた。その真っ白なソウジは部屋の隅で怯えてスマホを見ながら何かを嘆いていた。

 

「レロレロ…怖い…タキオン…怖い…カレンチャン…可愛い…」ぶるぶる

 

「ご覧の通り、ウマ娘本体どころか写真すらダメな状態なのだが…カレン君にだけはこの反応だ…」

「カレンさんをここに連れてくればいいのでは?」

「私たちもそう言いましたが…『ダメだ!それではカレン君にトレーナー君を取られてしまう』と言い却下されました。」

「カフェ!?」

「タキオンちゃんはお姉ちゃんが思ってたよりも大人になっていたのね……はぁ。」

「カレンさんはソウジトレーナーのことは別に何とも思ってないでしょう?」

「しかし、カレン君が解決の糸口を持っているのは事実だ!そこで私がカレン君で出来た『合成因子』の『アナザー』になってみたのだが…効果は無かった。」

「そりゃ、あなたはトラウマの元凶ですし。」

「しかし、私は思い付いた!…芦毛のウマ娘が『アナザー』になれば効果があるかもしれない、とね。」

「どんな根拠!?ん?芦毛のウマ娘?ってことは…まさか…」

「その通り。私は思いついたことは何でもやりたくてねえ。使用するのは二十一号の『ロケットメテオ』…実験開始だよ!」ポチッ

「ぎゃーー!」

 

アグネスタキオンは問答無用にセイウンスカイを『アナザー』の『ロケットメテオ』へ変えた。

 

「後、数人欲しいところだが…」

「タキオンさん!芦毛のウマ娘、連れてきました!」

「ちょっと、どこまで行くつもりですの!?」

「離すである!我輩を離すのであ~る!」

 

ダイワスカーレットがメジロマックイーンと『ヒシミラクル』を連れてきた。

 

ーーー

 

ヒシミラクル…今年からシニア級となる芦毛のウマ娘。ナリタトップロードに憧れており、『人事を尽くして天命を待つ』がモットーで毎日あらゆる"人事を尽くすこと"をしている。また昨年の菊花賞ウマ娘であり、有マ記念に出走するも12着に敗れている。

 

「なるほど、それで私たちへ協力を…帰ってもよろしくて?貴方の後始末を何故私たちが協力しないのいけないのですか?」

「我輩も帰るのである!春の天皇賞に向けて忙しいのである!後、今日の人事ノルマがまだ終わってないぞよ!訳の分からないことに使う時間は無いのである!」

「いや、ミラクルはソリティアをしていただけじゃない。」

「スカーレット、あれも我輩にとっては立派な"人事"なのである!賢さトレーニングである!」

「悪いとは思っているが私も手段を選んでる時間はない…。大人しくモルモットになってくれたまえ。」ポチッ

 

ガチャ、ガチャ

 

「なっ!」

「椅子にこんな仕掛けが!?」

 

2人に事情を説明するも了承を得られなかったため、問答無用で拘束した。

 

「スカーレット君、二十三号と三十号の『合成因子』を持ってきてくれたまえ。ついでにデータも取っておこう。とりあえず…腕輪を付けて…」

「分かりました!」

「な、何をするつもりですの!?私の『因子』ならこの前、お渡ししたでしょう!ひぃぃ!」ぶるぶる

「うぅ…我輩の運命はここまでであるか…」ぶるぶる

「実験開始だよ!」ポチッ

『きゃーー!』

 

アグネスタキオンによりメジロマックイーンとヒシミラクルは別の『アナザー』へと姿を変えられた。

 

ーーー

 

「全員、短距離適正有りと…オッケー!ご協力ありがとう!」

『はい!』

 

アグネスフライトは3人の『アナザー』のデータ収集を終えた。ん?ソウジはどうなったかって?結論から言おう…不明だ。メジロマックイーンらが『アナザー』になった直後に乱入してきたゴールドシップがアグネスフライトと(目を合わせ無言で)タッグを組み、荒療治の強行したのだ。しかしその結果、アグネスタキオンとソウジを鍵付きの地下部屋へ監禁することとなっため『アナザー』となったセイウンスカイたちを戻せる人物がおらず、アグネスフライトが様子を見に行くまでの間にアグネスタキオンを真似てデータ収集を始めたのだ。ちなみにマンハッタンカフェは足の定期検診で病院へ、ダイワスカーレットはウオッカとの併走の時間となり練習場へ、ゴールドシップは何処かへと行ってしまった。

 

「んー、短距離の"逃げ"って何だが新鮮ですよ~。やっぱり出すスピードが違うと言いますか~!」

「ある意味貴重な体験ですわ…ゴールドシップさんとブライトが言っていたことはこういうことだったのですね…」

「ふむ…我輩の『合成因子』は短距離と長距離が適正距離とは…奇妙な感覚であるな!」

「確か私とカレンさんの『合成因子』(?)というものでしたわよね?両者の得意距離が重なったといったところでしょうか?」

「私がまとめたものでよければ、今度見せるよ。レースのデータは…流石に無理か。タキオンちゃん、フェブラリーSがあるから…」

「あら?タキオンさん、ダートのレースに出るつもりですか?」

「ソウジトレーナーが提案してきたの。タキオンちゃんはどうするつもりか、まだ聞けてないけど…多分、出走するんじゃないかな?」

「だから、焦っていたのであるな…」

「ん?誰かこっちに向かってません?」

「あれってまさか…!」

 

4人が雑談をしつつ待っていると1人のトレーナーが此方へと向かって来ている…ソウジだ。慌ててきたのだろうか白衣で目立たないものの、Yシャツのボタンは掛け違えており、靴下がズボンを巻き込んで履かれている。

 

「やっぱりソウジトレーナー?え?まだ部屋の鍵開けてなかった筈だけど…?」

「フライト!」

「は、はい!」

「タキオンの手錠とかの鍵を全部くれる?」

「え?は、はい…どうぞ……」

 

アグネスフライトは普通に鍵を渡す…どうやらソウジはトラウマを克服できたようだ。

 

「サンキュー…あ、セイウンスカイ、メジロマックイーン、ヒシミラクル…俺のためにタキオンの実験に巻き込んでしまって済まなかった。とりあえず、クールダウンをしたら研究室に戻ってきてくれ。『合成因子』を回収するから…俺もタキオンを回収したら直ぐに向かおう。」

「分かりました。」

「ようやく終わるのですね…」

「ソウジトレーナー…どう出てきたのだろう…?」

「マックイーン殿の『因子』…中々、興味深いものであった!これもまた"人事"なのであろう…」

「違うと思うよ?」

「それはそうとフライト殿、ゴルシ殿と一緒に何をしたのであるか?」

「えーと、ゴルシちゃん曰く『噛まれて吸血鬼になったのなら逆に吸血鬼を噛めば治る』ってことらしいから、タキオンちゃんに○○と○○を(無理やり)飲ませて、手錠と○○と○○とで無抵抗な状態にして部屋に入れて、んでそこに七号の『合成因子』と○○を飲ませたソウジトレーナーも放り入れたの。ごり押しに私の持ってた○○を部屋に撒き散らして鍵を閉めたよ!効果は直ぐ出るタイプのだから…多分、ずっとうまぴょいしてた…」

「いやいやいや!フライト殿の発言や行動にドン引きであるが…その前にフライト殿はかなりシスコンであるよね?タキオン殿にそんなことして良かったのであるか?」

「…ただ大切するだけが姉じゃないのよ。必要であれば心を鬼にしてあらゆる手段で分からせる…今回はタキオンちゃんの失態をタキオンちゃん自身へ尻拭いさせただけ。…ついでに、タキオンちゃんの痴態をカメラに納めたくなったの。」ブンブンブン

「(絶対最後が本音だ。)」

「(…はぁ、早く帰りたいですわ。ショートケーキ食べたいですわ。)」

「(尻尾は正直である…)」

 

ちなみに後日、分かったことだがアグネスフライトが設置したカメラはソウジにより全て破壊されていたため彼女が望む映像を見れることはなかった。そして、研究室へと戻るとジャージに着替え白く燃え尽きたアグネスタキオンとそれを指でつつくマンハッタンカフェの姿があった。

 

ーーー

 

「それじゃあ、戻すよ…はい!」ポチッ

『ぐっ…!』

 

ソウジにより『アナザー』になっていたウマ娘たちはそれぞれ、元の姿へと戻る。しかし、大きな負担がきたためかメジロマックイーンとヒシミラクルは座りこんでしまい、セイウンスカイはいつも通り眠り始めた。

 

「何ですの…この疲労感は…?」

「我輩…もう動けないのである…」

「Zzz…」

「まぁ…誰でもこうなるもんだ。フライト、2人を寮まで運んで貰ってもいい?」

「了解、とりあえずヒシミラクルちゃんからで…」

「マックイーンは私に任せな!」

「ゴールドシップさん!?いつの間に…」

「じゃあ、それで頼む。セイウンスカイは寝てるし…マンハッタンカフェにでも任せるか。」

「ソウジトレーナー、カフェちゃんの足が治るには後数ヶ月はかかる筈ですよ?」

「いえ、先ほど医者より完治が確認されました。」

「え?あの実験が上手くいったってこと?」

「………そうなります。ですがまだ無理はしないでくだ…」

「すごい!すごいよ、タキオンちゃん!」ダキッ

「…」ダラン

「んー、無理するのはダメか。エルコンドルパサーでも呼ぶ…」

「…これくらいなら無理には入りませんよ。」

 

体内の『因子』を抜く実験によりマンハッタンカフェのケガは予定よりも遥かに早く完治した。アグネスフライトはそれを褒めるもののアグネスタキオン本人は真っ白になったままで何の反応もない。

 

「…うん、じゃあメジロマックイーンはゴールドシップ、ヒシミラクルはフライト、セイウンスカイはマンハッタンカフェに運んでもらうとしよう。タキオンは正気に戻るまで俺がそばで見てるから。」

「…タキオンちゃんとうまぴょいしないでね?」

「何言ってんだお前?はい、解散!解散!しっかり身体、休めとけよ!」

『はーい!』

 

ぞろぞろと研究室からウマ娘たちが出ていく…そして、ソウジは各ウマ娘の担当トレーナー(特にメジロマックイーンとヒシミラクル)へ報告と謝罪の電話をしていくのであった。

 

………

 

「ふぅ…」

 

一通り電話が終わったソウジは一息つく。アグネスタキオンの様子は相も変わらず真っ白のままだ。とりあえず、ソウジは紅茶を2人分用意することにした。

 

「タキオン、紅茶飲まないのか?冷めるぞ?」

「…私のマンハッタンカフェが…ソウジのアグネスゴールド君によりクロフネ君の如く開国…」ボソッ

「下ネタに同期の名前を使うな!お前のジャングルポケットをダートにするぞ?」

「お姉ちゃんに飲まされたアレ、ちゃんと効果は…あるよね?…寿引退のポイントフラッグ君が立ったなんてことはないよね?」ボソボソ

「どうしたかものか…んっ!」グイッ

「もし1人目が出来…」ダラン

 

ソウジもお下品なツッコミをするもアグネスタキオンからの反応はない。今度はアグネスタキオンを持ち上げるが力なく項垂れてボソボソと喋っているだけだ。このままでいてもしょうがないので、そのまま椅子へと下ろす。

 

「まぁ、このままでいいから聞いてくれ…タキオン、アメリカに興味は無いか?」

「名前は『ロジック』なんてどう………ん?アメリカ?」

「あぁ!今のタキオンは間違えなく日本最強のウマ娘だ。ならば日本を出て、目標はマンハッタンカフェも出走したフランスでの『凱旋門賞』…と他のトレーナーは言うだろうが俺は違う!俺が考えた最終目標は…『ブリーダーズカップ・クラシック』だ!」

 

ブリーダーズカップ…正式名称ブリーダーズカップ・ワールド・ウマ娘・チャンピオンシップ。様々なカテゴリーのチャンピオン戦を1度にまとめて開催するアメリカでのレース。その中でも『ブリーダーズカップ・クラシック』は大会を締め括るダート2000mのレースで事実上世界一のダートチャンピョン決定戦である。日本からだと過去に『タイキブリザード』というウマ娘が2回挑戦したが、勝利は出来なかった。

 

「ブリーダーズカップ!?あの世界最高クラスの大規模な祭典に私を?しかも、芝のレースもあるというのにわざわざダートで出走させるつもりなのか?」

「去年は『ヴォルポニ』ってウマ娘が圧倒的な勝利を見せた…。そこで俺はタキオンにピッタリな舞台だと感じたんだ!完全にダートへと路線を変更する訳じゃないが…まずはフェブラリーSに出走してみないか?」

 

アグネスタキオンに色が戻り、紅茶を一口含む。そして真剣な顔になり深く考え数分…

 

「…。ソウジ、私は……」

 

結論を出した。




合成因子七号『レロレロ』が更新されました ▼

ーーー
・おまけ(名前の出てきた競走馬たち)

アグネスゴールド…アグネスタキオンとは同期。きさらぎ賞、スプリングSと重賞を2連勝しており、皐月賞でタキオンとの対決が期待されたがケガにより回避。復帰後は菊花賞に出走するも敗北。鳴尾記念で3着になるも、再びケガにより休養…そのまま引退となった。引退後は日本だけでなくアメリカやブラジルで種牡馬となり産駒がかなり活躍した。

クロフネ…アグネスタキオンと同期の外国生産馬。主な勝利はNHKマイルCとJCダート。日本ダービーを目標に圧倒的強さを見せ、NHKマイルCを勝利。ダービー後は天皇賞(秋)を目指していたものの賞金の優先権で出走出来ず、ダートである武蔵野Sに出走し圧勝。その後、JCダートにて前年度優勝のウイングアローに7馬身差をつけ圧勝。今後も期待されたがケガにより引退。引退後は種牡馬となり、カレンチャンやソダシなどG1馬が生まれた。

ポイントフラッグ…アグネスタキオンと同期でメジロマックイーン産駒。目立った成績はG3のチューリップ賞2着のみだが…繁殖牝馬としてゴールドシップを産みだしたことが有名な競走馬。

ロジック…アグネスタキオンの初年度産駒。NHKマイルCを勝利したが、その後は目立った活躍は無く引退。去勢され誘導馬となった。

タイキブリザード…ナリタブライアンと同期の外国生産馬。主な勝利は安田記念。経歴は省くが詰めが甘いのかなかなか勝利が出来ずシルバーコレクターと呼ばれた。ダートでの活躍を期待しカナダへと遠征しBCクラシックに出走するも最下位と惨敗。しかし、調子を取り戻したのか翌年の安田記念を勝利。そして、再びBCクラシックに出走するが6着となり、帰国後の有馬記念を最後に引退、種牡馬となる。

Volponi(ヴォルポニ)…アメリカの競走馬。重賞の勝利が芝(G3)→ダート(G2)→芝(G3)→ダート(G1)という面白い勝ち方をしている。特にG1のBCクラシックでは最下位人気でありながらもメダグリアドーロ、ウォーエンブレムらに6.5馬身差をつけ勝利。引退後は種牡馬となり暫くアメリカにいたが、韓国へと渡った。


実際のアグネスタキオンにダートは可能かどうか…、父クロフネのソダシちゃんを見てるといけるんじゃね?と私は思いました!つまり…まぁ、またボチボチ書き溜めていこうと思います。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。次回はまた日曜日に投稿予定です。では、また来週!


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第20話 新しいイベント来て思い出したけどSSRのタイキシャトルってまだ実装されていなくない?

どうも、ハルウララの新サポカをみてテンションフォルティシモな作者です!本当にハルウララは可愛いですね!うっらら~♪
サポカを当てたかですか?団長キングヘイローの時にジュエルを使いきったので回せないです…はい。とにかく!イベントのストーリーにも満足したので、本日、投稿させていただきます!

ハルウララも産駒はいないんですよね…ディープインパクトが種付けするという噂が有ったとか無かったとか…。もし産駒がいたらどうなっていたか…。とりあえずウマ娘だと誰との合成がベストマッチでしょうか?ライスシャワー?キングヘイロー?ダート的にスマートファルコンやアグネスデジタルもいいかも…では、どうぞ!


フライトメモ:『メテオロケット』、『キューティフォトン(仮)』、『ナタデココ(仮)』の『合成因子』による『アナザー』の実験について

 

・経緯

→タキオンちゃん(*混乱中)による担当トレーナーソウジへのセラピーとして、カレンチャンを含んだ『合成因子』が使用されることとなった。

 

 

・3人の犠せ…『アナザー』について

→まずはセイウンスカイを呼び出し椅子へ拘束し、サクラバクシンオーと合成した『メテオロケット』を注入。体毛が鹿毛へと変色した。

 

→ダイワスカーレットに連れてこられたメジロマックイーンとヒシミラクルもタキオンちゃんに拘束され、メジロマックイーンにはタキオンちゃんと合成した『第二十三号』、ヒシミラクルにはメジロマックイーンと合成した『第三十号』を注入した。メジロマックイーンは栗毛へと変色、ヒシミラクルは芦毛のままだった。

 

→名前がまだないので『第二十三号』に『キューティフォトン』、『第三十号』に『ナタデココ』と(仮に)名付ける。

 

 

・適正脚質

→3人の『アナザー』による並走でタイム計測により判断した。結果は『メテオロケット』は"逃げ"、『キューティフォトン』は"先行&差し"、『ナタデココ』は"先行"であった。

 

 

・適正距離

→脚質同様に並走によるタイム計測で判断。『メテオロケット』は"短距離"のみ、『キューティフォトン』は"短距離~中距離"、『ナタデココ』は"短距離&長距離"であった。

 

 

・『合成因子』回収

→ソウジトレーナーが復帰したことにより、回収作業を開始。『アナザー』となったウマ娘たちは元の姿へと戻った。

 

 

以上が記録である。…タキオンちゃんの力になっていればいいな。ちなみにダート適正は全員無し。

 

ーーー

 

アグネスタキオンは並走をしていた…その相手はハルウララ(現在60戦0勝)だった。ダートコースを走っていたところ、ハルウララも練習を始めていたので…一緒に並走を行うことにした。

 

「よしっ!完走したな!」ポチッ

「すごいよタキオンちゃん!ダートでも速いんだね!」

「はぁ…はぁ…これがダートか…」

 

アグネスタキオンは慣れないコースに足を取られながら何とか練習メニューの1400mを走りきる。そして分かったことは…

 

「踏む混むパワーが弱いねえ…」

「そーなの?」

「ハルウララ、ちょっと来てみ。」

「はーい!」

 

ソウジはハルウララを呼び、ゴール前の足跡を見せる。

 

「こっちが君の足跡。で、こっちがタキオンの足跡だ。違いは分かるか?」

「んー…タキオンちゃんの方が小さい?でもウララの方が身長も足のサイズも小さいよね?」

「それだけ踏み込んだパワーが違うということだよ。そうすぐに成果は出てこないか…」

「当たり前だよ、トレーナー君。私自身その不可能に近い案には反対だ。残り1ヵ月でダート向きへの調整を終わらせなければいけないし、誰がみても私に『負けてこい』と言ってるようなものさ。それにアメリカのダートと日本のダートはそもそも質が違う。…それでも今のやり方を続けるつもりかい?」

「あぁ、後5日あるからな。」

 

アグネスタキオンの出した結論は1週間後にダートの特別レースを行い、タキオン自身が出走する。そこで判断するという答えだった。天皇賞(春)の回避を決めたなら、次の目標となるのは安田記念か宝塚記念だ。アグネスタキオンの得意距離を考えると宝塚記念となるだろう。しかし、最速を求める研究者にとって、ダートという分野も無視できる物ではない。よって、研究を進めつつダートの練習を行う、という今の形で落ち着いた。

 

「後5日…それまではトレーナー君の指導に従うとも。さて、ダートの時間はここまでだ!そろそろ実験の時間だね…」

「実験?何々?爆発するの?」

「失敗したらするよ。」

「そしたらアフロになっちゃうね!あははは~!面白そう!」

「あはは……はぁ。」

「ではハルウララ君、君の『因子』を貰おうか。」

「いんし~?」

「この腕輪を付けたまえ。」

「おぉ!カッコいい!」ガチャ

 

ピッ、ピッ、ピー

 

「採取完了。ハルウララ君、ご協力ありがとう。」

「うん♪タキオンちゃんもウララと並走してくれてありがとう!また、一緒に走ろうね!」

「いいとも!また私がダートを走れば、だがね。今度、研究室に遊びに来てくれたまえ…紅茶をご馳走しよう。」

「紅茶!?分かった、ウララもお菓子一杯持っていくね!バイバイ!」

 

ハルウララとの並走を終え、『因子』も入手したアグネスタキオンはソウジと共に研究室へと戻った。

 

ーーー

 

アグネスタキオンはハルウララの『因子』と自身の『因子』を合成した。

 

ピカーン

 

「おおっ!N極だよモルモット君!」

「ダートの研究が進みそうだな。」

「名前は…うーん…とりあえず、飲みたまえ!」グイッ

「ーーむぐっ!」

 

ゴクン

 

「んんんー!がほっ!…っとと、久しぶりだなこの感覚…じゃねぇよ!いきなりはやめろ!この後、データ取るんだろ?毎回この姿で着替えにいくの嫌なんだが?」

 

ソウジの体がピンク髪の『ウマ人』へと姿が変わる。

 

「じゃあ、15分後にいつもの所に来てくれたまえ。」

「無視かよ…分かったよ。さっさと…!!」

 

ボキッ←ドアノブが壊れる音

 

「…」

「…」

「…」

「…モルモット君、このウマ娘用の握力計を握ってくれないか?」

「あぁ…」

 

グチョ←握力計が潰れる音

 

「…タキオン。」

「何だい?」

「このままじっとしてるからさ………1回、この『合成因子』、回収してくれないか?」

「そうだね…」

 

また癖のある『合成因子』が完成したようだ。

 

ーーー

 

「短距離適正は無し…今日はこれくらいにしよう。」

「あぁ…タキオン、何か…眠い…」ガクッ

「モルモット君!?寝る前にぐちゃぐちゃのバ場を直さないと…」

「グオー…Zzz…グオー!」

「豪快なイビキだね!?君はこんな寝息じゃないだろ!?」

「グオー!グオォ!」

 

ソウジは練習場で再び『ウマ人』になった後、その『合成因子』のデータをアグネスタキオンと共に計測した。しかし、計測が終わった直後にソウジは練習場の真ん中に急に眠り、イビキをかきはじめたのだ。

 

「全く、世話が焼けるね…」

 

アグネスタキオンは研究室まで運ぼうとするのだが…

 

「んー!」グイッ

「痛っ…モルモット君!?」

 

ビリリリ←服が破れる音

 

怪力で摘まんだ襟からアグネスタキオンのジャージを引き裂いた。瞬時に距離を取ったアグネスタキオンだったが、体に食い込んだジャージの痛みと、もし腕や足に触れていたことを考えた恐怖により動けなくなってしまった。しかし、このままでは不味いのでアグネスフライトを呼びそのまま座り込んでしまった。その後、アグネスフライトに保護され、マンハッタンカフェがソウジにひ鍼と腕輪を付けたことで何とか『合成因子』を回収出来たのであった。

 

ーーー

 

目を覚ましたソウジはアグネスフライトから事情を聞く。その直後に慌ててアグネスタキオンへ頭を下げた。

 

「タキオン、本当にすまない!」

「いや、いいんだ。」

「何言ってるのタキオンちゃん!コイツの頭が首から離れるまでお姉ちゃんは許しませんよ!」

「……それもう死んでますよ……もしくはフライトさんが殺してます…」

「マンハッタンカフェも危ないことをしてもらってすまない!」

「…はい?」

「お前が俺の体から『合成因子』を回収したのだろ?」

「いえ、違いますが…そもそも回収方法を私は知りませんよ?」

『え?』

 

3人の声が重なる。

 

「え?タキオンちゃんが呼んだじゃないの?」

「私はお姉ちゃんしか呼んでない…お姉ちゃんが連れてきたのかとばかり…」

「そういえばマンハッタンカフェって腕輪やひ鍼のある場所について知ってたっけ?」

『…』じー

「そんな顔で私を見られましても……まぁ、大きな被害にならずに済んで良かったのでは?」

「大きい被害よ!見なさい、タキオンちゃんのこの首のアザ!」

「お姉ちゃん、このアザは関係ないから!ちょっと首輪付けてただけだから!」

「ソウジトレーナー?」ギギギッ

「…スマホ首の矯正だ。何を想像した?」

 

アンドロイドのように首を向けてきたアグネスフライトに恐怖しつつソウジは答える。

 

「まぁ、私も興味が全く無い訳では…」もじもじ

「お黙りタキオン!…と、とにかくこの『合成因子』の使用はやめておこう。怪力、急な眠気、マンハッタンカフェ……色々と怖いからな!」

「賛成だとも!」

「…ソウジトレーナー?……私は関係ないでしょ?」

「マンハッタンカフェ、真面目な話、俺らと会う日はGPS付けて貰ってもいい?」

「嫌ですよ…」

「じゃあ、首輪はどうかね?実際に付けていると中々癖に…」

「……嫌です。私はタキオンさんみたいな……変態ではかりません。」

「変態って…冗談だよカフェ。」

「でもハルウララとの『合成因子』で何でこんなことが?」

「今は『突然変異』としか言えないね。…他の『因子』と合成させよう。」

「因みにこの『合成因子』は何て名前にする?」

「『シュンミンアカツキ』にしようか。はぁ、カワカミプリンセス君らと力比べをして欲しかったのだが残念だ…」

「『エンプレススズカ』や『レロレロ』以上に危険な『合成因子』があったとはな…」

 

合成因子第三十七号『シュンミンアカツキ』…お蔵入り!




ハルウララ(春) + 眠り = シュンミンアカツキ(春眠暁を覚えず)

タキオン要素無いですね…。名前に春眠を入れたかったので眠気は入れましたが、作中の怪力に元ネタは特にないです…。では、また日曜日に…さようなら!


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第21話 未勝利の星 + 不屈の王= 最高のド根性者、ミス・パーフェクト + 変態 = 紅の勇者

どうも、粗品さんの『乱数調整のリバースシンデレラ』を聞きすぎて歌詞を見ずとも歌えるようになった作者です。そして、ポケモンコロシアムでハッサムの色違いはまだゲット出来てないです…

今日は安田記念…私が応援するのは『ダノンザキット』!安田記念と言えばジャスタウェイ!なので親子制覇を期待して応援させていただきます!『ホウオウアマゾン』と『サリオス』も名前が好きなので頑張って欲しいですね!

勝ったのはソングライン!ゴールドシップの15理論が当たった!?
お疲れ様でした…あなたたちの応援馬券は取っておきましょう!

この作品のお気に入りが100件を越えました!非常に嬉しいです、登録者の皆様ありがとうございました!これからもこの作品をよろしくお願いします。

今回は作中に新しいオリジナルのウマ娘が出てきます…それでも良い方はどうぞ!


今日はアグネスタキオンの決断の日…つまり、ダートの特別レースが始まろうとしていた。

 

「さぁさぁ、お姉ちゃんと『ガッツザベスト』君をゲストに今日も特別レースを開いていていくよ。」

 

ザワザワザワザワ

 

「『ガッツザベスト』?やっぱり知らないウマ娘だ…タキオン先輩は一体どこから連れてきているのだろう?」

「やっぱり前のレースといい、フライト先輩の雰囲気が違うな…どうしてだろうか?」

 

周囲の反応が関心かは疑心になってきているが気にせずアグネスタキオンは言葉を続ける。

 

「条件は1800mのダートコース、バ場は不良、天気は雨、といったところだ。そして…今回は私も参加しよう。参加者はいるかね?」

 

ザワザワザワザワ

 

「チャンピンズカップと同じ距離だ!」

「それよりタキオン先輩がダート!?」

「やっぱりアグネスタキオンがフェブラリーSに出走するって噂は本当だったのか!」

「…あれ?フライト先輩も走るんだよね?フライト先輩ってダート走れたっけ?」

 

周囲が驚きを隠せない中、1人のウマ娘が手を上げた!

 

「は~い!ファル子参加しま~す☆」

 

スマートファルコン…トゥインクルデビューはまだなものの現時点で既にダートでのポテンシャルが高いウマ娘だ。

 

「フェブラリーS?だったらウインディちゃんも参加するのだ!」

 

シンコウウインディ…G1となった年のフェブラリーSを勝利したウマ娘。トゥインクルは既に引退済みなもののアグネスタキオンにとってはとんでもなくありがたい参加者だ。

 

「フフフ…エルも参加するデース!キングも一緒に出ましょう!」

「私、ダートは得意じゃないわよ!?」

「でもフェブラリーSは出走していたでしょ?」

「それとこれとは話が別よ!」

「ダメ…でしょうか?」

「分かったわよ!キングも出るわ!」

「流石キングデース!」

「おーほっほっほっ!やるからには勝たせてもらうわ!」

 

エルコンドルパサーとキングヘイローも手をあげた!これ以上参加者はいなかったため計7名でのレースとなった。

 

ーーー

 

「ピスピース、お前ら久しぶりだな!毎度お馴染み、実況担当のゴルシちゃんだぞ!解説は…」

「…メジロマックイーンですわ。」

「どうしたマックイーン?テンション低いぞ?」

「いえ、先日色々とありまして…あなたも見ていたでしょ?」

「おう!栗毛のマックイーン可愛かったぞ!」

「可愛っ…ではなくて!私の体が改造されたのですのよ?」

「でも自分では出来ない走りが出来たんだろ?私なんて体の『因子』を全部抜かれて、はい、放置!って感じだったんだぞ!その間、ぐったりしてて尻尾どころか口すら動かせずに過ごすことになったんだよ!」

「知りませんわよ!早く出走しますウマ娘を紹介してくださいませ!」

 

「マックイーンが言い出したことなのに…1番、シンコウウインディ!」

「G1レースとなったフェブラリーSの初代王者ですわね。タキオンさんが出ると聞いたので何か闘走心に火がついたのでしょうか?」

 

「2番、キングヘイロー!」

「確かに彼女もフェブラリーS経験者ではあるのですが…あまり、ダートは得意では無かったような…」

「まぁ、エルコンドルパサーの付き添いだろうな!だけど…やるからには絶対に手を抜くウマ娘ではないぜ!」

「そうですわね。キングヘイローさんですから。」

 

「3番、アグネスフライトこと『アカキユウシャ』!」

「デジタルさんとスカーレットさんの『合成因子』で…ん?デジタルさんって確か去年のフェブラリーSの勝者でしたわよね?でも今年は…」

「だから選んだんじゃね?次、行くぞ?」

「は、はい!どうぞ!」

 

「4番、『ガッツザベスト』!」

「これは誰との『合成因子』でしょうか?」

「ハルウララとキングヘイローらしい。」

「ウララさんですか、なるほど…ダート用に作られたのでしょう。『合成因子』の元であるキングヘイローさんが参加するのは偶然…ですわよね?」

 

「5番、エルコンドルパサー!」

「彼女はトゥインクル時代にダート重賞での勝利がありました。正直なところダートでの彼女の強さは未知ですわね。」

 

「6番、スマートファルコン!」

「ウマドルなるものを目指しているウマ娘ですわ。そしてデビューこそまだなものの、あの体つき…ダート向けですわね。」

「本人は注目される芝の方がいいみたいだがな。今回は注目が集まってるから参加したんじゃね?」

「何はともあれ好走が期待できますわ。」

 

「ラスト、アグネスタキオン!」

「昨年、天皇賞(秋)と有マ記念を勝利した彼女ですが…ダートへ路線変更するという噂が流れてます。フライトさんからフェブラリーSに出走すると聞いてますが…本当のところはどうなのでしょうか?私も真相が気になりますわ。」

 

「以上、この7人だ!全員ゲートに入ってくれ!」

 

各ウマ娘たちがゲートへと入り…レースが始まった!

 

………

 

「スタートしたな!先頭は…スマートファルコン!で、シンコウウインディ、エルコンドルパサー、『アカキユウシャ』、アグネスタキオンの激しい位置争いだ!」

「後方はキングヘイローと『ガッツザベスト』。こちらは…互いに様子見といったところでしょう。特にキングヘイローは慣れていないバ場での消耗は避けたいですからね。」

「最初のカーブ…先頭は変わらずスマートファルコン。そして2番手に来たのは…何とアグネスタキオンだ!このポジションのまま最後まで行く気か!?そのすぐ後ろにエルコンドルパサー、『アカキユウシャ』、シンコウウインディが続く!」

「後ろでは『ガッツザベスト』が前に出たようですわね。キングヘイローが最後方。」

「…タキオン、普通に走れてるよな。」

「えぇ…」

 

「さぁ、2つのカーブを曲がって長めの直線へと入っていった!先頭のスマートファルコンは少しペースを上げたか?後続を大きく離していく!しかし、アグネスタキオンがここでペースをあげてきた!スマートファルコンを捉えにかかる!」

「第3、4カーブ後の直線は短いですから、ここで差を広げにきたのでしょう。…しかし、離されないようにするのがやっとのようですわね。」

「3番にシンコウウインディ、その後ろに『アカキユウシャ』、エルコンドルパサー、『ガッツザベスト』、キングヘイローと続いていく!…なぁ、マックイーン。」

「何でしょうか?」

「タキオンとファル子…掛かってるんじゃね?」

「…そうですわね。前の取り合いをしてますわ。」

 

「さぁ、最終コーナーを曲がって残るは短い直線!先頭は…シンコウウインディ!『アカキユウシャ』がこれに食らいつく!」

「スタミナを使いきったスマートファルコンさんとアグネスタキオンさんはヘロヘロになってますわね…あ、最後方だったキングヘイローさんにかわされました。」

「さて、これはどうなるか、大外から『ガッツザベスト』が来ているが…シンコウウインディと『アカキユウシャ』の真っ向勝負だー!シンコウウインディが『アカキユウシャ』よりも半バ身ほど前にいる!そのまま、行くか?行くか…行ったぁぁー!1着はシンコウウインディ!」

「流石フェブラリーS初代G1王者…チャンピンズカップの距離も勝ちましたわね。…さて、タキオンさんはどうするのでしょうか?」

「結構ボロボロだったしな…やめるんじゃね?」

「今年は例年よりも距離が200mも伸びてますからね…」

「は?」

「ご存知無いのですか?まだ東京レース場が使えないから中山レース場で行われるとのことで…タキオンさんの今回のレースはそれを想定していたものとばかり…」

「…じゃあ、出るな。」

「はい?」

「タキオンはフェブラリーSに出走する、って言ったんだよ!…ははっ、面白いことが起きそうだぜ!」

「えぇ!?どういうことですの?」

「んじゃ、今回の特別レースはここまでだ!バイバイ!」

「いえ、まだ詳細を…」

 

ーーー

 

レースが終わったアグネスタキオンはスマートファルコンと共に研究室へ向かっていった。そして今、人間へと戻ったソウジとスマートファルコンの担当トレーナー"ハヤト"が研究室へと走っていた。…マンハッタンカフェよりファンサという名目でスマートファルコンの生体実験を行っていると通報があったのだ。

 

「ほらハヤト、置いていくぞ!タキオンのモルモットは俺だけだ!」

「ソウジ先輩、速いっす!今の先輩、下手すりゃウマ娘並みの速さっすよ!」

「いいから付いてこい!お前の愛バがモルモット5号になっちまうかもしれないぞ!」

「既に2~4号がいるんですか!?」

 

研究室へ着いたと同時に勢いよく扉を開く!

 

ガチャ

 

『タキオン(ファル子)!…?』

 

「ふむ…君はアリュール君が勝つと…」

「うん☆あの人はファル子にとってすごく特別な先輩で、ウマ娘としてのファル子の憧れなの!…協力ってこんな話でいいの?」

「あぁ。正直なところ『因子』を提供してくれた時点で十分過ぎるくらいだよ。」

 

そこにいたのは…楽しそうに紅茶を飲むアグネスタキオンとスマートファルコンの姿だった。

 

「何してるの?」

「あ、トレーナーさん!タキオンちゃんがファル子のファンになったの!それでダートに興味があるみたいで、色々と聞いてきたから教えていたの☆それで来月のフェブラリーSで誰か勝つか、と聞かれてて…」

「紅茶を飲んでいたと?」

 

「タキオン、変な薬とか入れてないよな?」

「君は私を何だと思っているんだ?」

「マッドサイエンティスト。」

「ちょうど昨日、『耳に蚊が飛ぶ幻聴が聞こえ続ける薬』が完成したのだが…」

「悪かった悪かった!俺はそんなの飲みたくない!」

「それはまた今度にしておこう…」

「おい!」

「それで例の件だが…決めたよ。私はフェブラリーSに出走しよう。」

「そうか。」

 

『え!?』

 

アグネスタキオンの台詞にスマートファルコンとハヤトが固まる。

 

「タキオンちゃん…フェブラリーSに出るの?」

「先輩、今回のレース的にハッキリと言いますが…無謀なのでは?」

「普通はそう思うよな。まぁ…良かったら月末の平安Sを見てくれよ。」

「アグネスタキオンを平安Sに出走させるのですか!?」

 

ーーー

 

平安Sの当日…

 

『スマートボーイがペースを上げて残り100!

ここでアグネスタキオン!

アグネスタキオンがかわした!

スマートボーイを1、2…3バ身引き離し、アグネスタキオンが1着ゴールイン!

ダートでもこの速さ…何て強いんだアグネスタキオン!』

 

『ワァァァーッ!』

 

「マジか…これ、フェブラリーSも勝てるんじゃないか?」

「…噂じゃアメリカのBCクラシックを目指してるらしいよ。」

「おいおい…エイシンプレストンやアグネスデジタルに続いて海外のG1勝利するんじゃないか?」

「というかアグネスタキオンって天皇賞(秋)勝ったよな?…フェブラリーSも勝てばアグネスデジタルと同じじゃないか?」

「2人が出走するレースが楽しみだな!」

 

アグネスタキオン、勝利。

 

ーーー

 

「ファル子、あれがアグネスタキオンか?」

「はい…アリュール先輩…でも、私はあなたが勝つと信じてます!スーパーウマドルのあなたなら!」

「あぁ…有マ記念を勝利している強敵だ。だからこそ倒しがいがあると言うもの…ところでファル子、ウマドルって何?」

「あっ!えーと…しゃい☆」

「…」グチョ

「アリュール先輩!?」

「ファル子…私は勝つよ。ダートとターフの違い…アグネスタキオンに教えないとね。」

 

ゴールドアリュール…今年シニア級へと入ったウマ娘。昨年ジャパンダートダービー、ダービーグランプリ、東京大賞典とG1レースを3勝している猛者である。そして、来月のフェブラリーSに出走するため、アグネスタキオンにとっては大きな壁となるだろう。ゴールドアリュールは持っていた空き缶を握り潰しニヤリと笑った。




合成因子三号『アカキユウシャ』が更新されました▼

ーーー
・おまけ
ゴールドアリュール…アグネスタキオンとは1つ下の世代の競走馬。主な勝利はジャパンダートダービ、ダービーグランプリ、東京大賞典、フェブラリーS。クラシック級でG1レースを3勝していたためイーグルカフェ、アグネスデジタル、アドマイヤドン達を抑えて、この年の最優秀ダートホースを受賞した。しかし、2003年の帝王賞後に病気により引退。その後種牡馬となり、スマートファルコン、コパノリッキー、ナランフレグなど11頭のG1馬が生まれた。ナランフレグは今日の安田記念を出走する。


さて、アグネスタキオンのフェブラリーS出走が決まりました!レース展開はどうなるか…ん?『合成因子』?忘れてませんよ!…本当ですよ!しかし…私自身が燃え尽きてしまいました。ちょっと、筆を置かせてもらいます。早ければ宝塚記念辺りにまた投稿させて貰えればと思います。ここまで読んでいただきありがとうごさいました!


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第22話 『ガッツザベスト』の研究終了、フェブラリーSより"超光速の貴公子"VS"魅惑の黄金"

どうも、2週間ぶりに投稿します作者です。この2週間…ポケモンコロシアムにFGO、ウマ娘をしてました。またスイープトウショウが引けましたので毎日5回は育成し、スイーピーをセンターにライブシアターも見まくりました。他にはビターグラッセの新馬戦を見たり、ウマ娘のダービーマガジンVol.2を読んだり、過去の名レースを見たり…結構ダラダラと過ごしてました。

さてさて、今日は宝塚記念ですね。エフフォーリア、ディープポンド、タイトルホルダーなど、現在の最強クラスの競走馬が大集合ですね。私が応援するのは『ディープボンド』です!ですが、この作品を書いているせいか菊花賞→天皇賞(春)→宝塚記念、と勝利したヒシミラクルが頭から離れず、『タイトルホルダー』と『ヒシイグアス』の応援馬券も買いました。この直前のドキドキする感じ…慣れないな。

勝ったのはタイトルホルダー…レコード勝ち!凄いレースでした!
ヒシイグアスは2着、ディープボンドは4着!
お疲れ様でした、アナタたちの馬券は取っておきましょう!

あなたたちの今後の活躍を期待します!凱旋門賞にいくのか分かりませんが…頑張ってください!


タキオンメモ:『合成因子第三十九号ガッツザベストについて』

 

1月12日

・経緯

→ダートコースにてトレーニングしているとハルウララと並走することとなり、そのまま『因子』を入手した。

 

→私の『因子』と合成するとN極と判明した。…それで完成した合成因子『シュンミンアカツキ』については割愛する。

 

 

1月13日

・誕生

→キングヘイローの『因子』と合成し、完成した第三十九号の『合成因子』に『ガッツザベスト』と名付けた。

 

 

・身体能力

→アグネスフライトとの並走による計測結果より『ガッツザベスト』はダートと芝、両方に適正あり。また、適正距離はマイル~中距離と判断する。

 

 

・適正脚質

→身体能力同様の方法で計測し、差し>>追い込み>>逃げ=先行と記録。

 

 

1月15日

・レース実行

→アグネスタキオン、アグネスフライト(*『アカキユウシャ』の『アナザー』)、スマートファルコン、シンコウウインディ、エルコンドルパサー、キングヘイローとの特別レースに出走。エルコンドルパサーとの位置取りの競り合いに勝ち、最後の直線で鋭い末脚を発揮するも直線が短く、シンコウウインディに敗北。

 

 

余談

・『因子』入手

→スマートファルコンの『因子』を入手した。

 

→S極で私やカフェ程ではないが、共通の『因子』が含まれていた。ダート用の『合成因子』として使用予定。

 

 

以上が『ガッツザベスト』の記録である。実験はフェブラリーSの後にまた行っていく予定だ。

 

 

ーーー

 

 

フェブラリーSの当日、東京レース場…ではなく中山レース場にアグネスタキオンとソウジは来ていた。今年はここで行われるのだ。控え室にて最後の打ち合わせも終わり、静かに呼ばれるのを待っているととあるウマ娘が訪ねてきた。

 

「やぁ、アグネスタキオン!」

「ジャングルポケット!?足は大丈夫なのか?」

 

去年の有マ記念にてケガを…いや、それへの出走により悪化させてしまい引退したジャングルポケットだった。左足はギプスでガチガチに固めており、車椅子でここまできたようだ。

 

「いやぁ、まだまだなんであたしらと動いてる感じぃ。ジャンポケパイセン、ドアの前にいるんでぇ終わったら呼んでくださぁい。」

「あぁ、ありがとうジョーダン。」

「…俺も席を外そう。2人で話したいことも色々とあるだろう。」

「ソウジトレーナー…ありがとうごさいます。」

 

ソウジが部屋から出たことでアグネスタキオンとジャングルポケットは2人となる。

 

「ふむ…ケガの具合はまだまだかかりそうだねえ。」

「歩けるようになるかも不明だよ。だけど…これで良かったと思ってる。さて直球に聞くが、君はダート路線へと変更するつもりなのか?」

「いや、そうではないとも。私は最速を目指しているんだ…なら、全てのバ場を熟知するべきだと思っただけさ。まぁ、噂のアメリカ出走はトレーナー君が言ってるだけで、まだ不確定だが…」

「私は君がどの道に進もうとも君を応援する。…これ、あげる。」

 

ジャングルポケットが取り出したのは折り紙で作った白いハイヒールだった。折り紙でありつつもそれは立体的に折られており、ジャングルポケットの拘りがみられる。

 

「ハイヒール?」

「私が祈るのは君が完走することだけだ。何故なら君は1着になるのだから!」

「…大袈裟だよ。私はお姉ちゃんに1度負けている。」

「引退になる程の捨て身の走りに常軌を逸した君への執着…あれが出来るのはアグネスフライト以外そういないよ。つまり、君が負けることはもう無い。…だから、全てを踏みつぶせ!」

「言われるまでもないさ!」

「今日、君が勝った暁には…本物のハイヒールを送ろう!」

「そ、それはちょっと…いや、ウイニングライブとかではありなのか?」

「あと…タキオンって呼んでいい?」

「ー!クックックッ、好きに呼んでくれたまえ…ジャンポケ君。」

「あぁ、タキオン!勝ってこい!」

 

アグネスタキオンに激励を送ったジャングルポケットはトーセンジョーダンに連れられて控え室を後にした。

 

「ソウジ、私がハイヒールを履いたらどう思う?」

「尻を踏まれたいと思う。」

「…よし!終わったら新薬の実験をしよう。『人差し指がマイナスドライバーに変化する薬』だが…1本くらい別にいいだろう?」

「いや、何もよくねぇよ!」

 

バカなやり取りをしてる間に出走時間となったため、アグネスタキオンは地下バ道を通りレース場へと向かった。

 

ーーー

 

ワアァァーー!

 

『さぁ、フェブラリーステークスが始まります。

今年は東京レース場ではなく中山レース場…距離も1800mと200m長くなっており、方向も逆の右回り。

どんなレースになるのでしょうか?』

『ノボトゥルー、イーグルカフェ、エイシンプレストン、ビワシンセイキ、さらに初参加の3人のウマ娘にもに注目したいところです。』

『ゴールドアリュール、アドマイヤドン、アグネスタキオンですね?

特にゴールドアリュールは昨年のG1ダートを3勝…前回の東京大賞典の勝利から1番人気に支持されてます。』

 

ダートへと入っていったウマ娘がゲートへと向かっていく。

 

「いけっ!ゴールドアリュール!」

「アリュール先輩頑張れ!」

「ビワシンセイキ、今度こそ勝ってくれ!」

「アヤドさん、頑張れ♪」

「…」

「アヤベさん、ほら!妹さんのレースですよ!応援しましょうよ♪」

「…別に声に出したって聞こえないし。」

 

声援を受け、次々とゲートへ収まっていく。

 

『さぁ、全員のゲートインが完了…スタートしました!

全体的に綺麗なスタート!

先行争いは…カネツフレームとスマートボーイ!

カネツフレームが有利か?

しかし、スマートボーイが食らいつく!』

『その後ろにビワシンセイキ、ゴールドアリュール、ノボトゥルー、アグネスタキオン、イーグルカフェの集団、エイシンプレストンとアドマイヤドンは後方からのスタートです。』

 

「(ポジションは…まぁ、良いところかな?)」

 

『第一コーナーをカーブして、先頭はカネツフレーム!

その後ろに内からゴールドアリュール、ビワシンセイキ、アグネスタキオンが並んでいる!』

『後方にも集団が出来ていますね。

アドマイヤドンは後方4番手、エイシンプレストンが3バ身離れての最後方です。』

 

「ドン、頑張って!」

「ーーアヤベさん!?そんなに大きい声が出るんだ…」

 

『さぁ、3、4コーナーカーブ…ここでゴールドアリュールとイーグルカフェがペースを上げてきた!』

 

「アリュール先輩、そのまま先頭にいって!!」

「アグネスタキオン、まだ来ないのか!」

「いけっ、イーグルカフェ!」

 

『直線に入る!

変わってゴールドアリュールが先頭!

イーグルカフェがアグネスタキオンをかわし4番手へとあがる!』

 

「ここだ!」

 

ダンッ

 

『大外のアグネスタキオンがここで伸びきてきた!

カネツフレーム、イーグルカフェ、ビワシンセイキをまとめてかわす!』

『ゴールドアリュールにアグネスタキオンが並びました!

ビワシンセイキもここで伸びてきます!』

 

「いけーっ!タキオンー!」

 

『かわした!?

アグネスタキオンがゴールドアリュールをかわし…1着ゴールイン!

有マ記念ウマ娘アグネスタキオン、ダートでもG1を勝利した!』

『アグネスタキオン、これで3連勝…衝撃です。

まさに…"Unlimited Impact"!』

 

ザワザワザワザワ

 

「…うそだろ?」

「本当に何なんだあのウマ娘…」

「アリュール先輩…」

「…ドン。」

 

一気にざわめく観客たち…だが…

 

パチパチパチパチ

 

「おめでとう、アグネスタキオン!」

「最高の走りだったよー!」

「ターフでもダートでもこれから頑張ってくれー!」

 

それもすぐに賞賛と拍手の音へと変わる。そんな音を聞きつつ…アグネスタキオンはガッツポーズを取った。

 

「よし!」グッ

「…見事だったよ、アグネスタキオン。」

「ゴールドアリュール君か。」

「ファル子から話は聞いてるよ。BCクラシックに出るつもりかい?」

「…すまないがまだ考え中だ。我ながら贅沢な悩みだとは思うよ。」

「…私はドバイワールドCを目指していた。だが…今回のレースでまだまだだということが分かった。君にダートの厳しさを分からせるつもりが逆に分からされた…だから、私もBCクラシックに出走する!そこで君に勝つ!」

「まだ出ると決めた訳じゃないというのに…」

「帝王賞に向けて明日からまた鍛え直しだ…また会おう、アグネスタキオン。」

「あぁ、楽しみにしているとも。」

 

ワアァァーッ!!

 

アグネスタキオンとゴールドアリュールとの握手にさらにレース場が盛り上がる。その後のウイニングライブはさらにさらに盛り上がった。こうしてアグネスタキオンの勝利により、中山でのフェブラリーSは幕を閉じた。




・おまけ
アドマイヤドン…アグネスタキオンとは1つ下の世代でアドマイヤベガの半弟。朝日杯FSを勝利し、クラシックの3冠レースに参戦するも全て敗退。その直後のJBCクラシックで圧倒しダートへの道を決めた。その後フェブラリーS、帝王賞、JBCクラシックを3連覇など、G1レースを合計7勝する。また、ドバイワールドCに出走するもそこでは8着と敗れた。引退後は種牡馬となり、中央で2頭、地方で5頭の重賞勝利産駒を送り出した。この作品ではアドマイヤベガの妹として登場…ドン、ベガ姉、と呼び合い、応援するくらいには仲がいい。


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第23話 ギャンブラーズゲーム『貴公子VSモルモットVS飛行機VS摩天楼』、そして変態は死と生を繰り返す

せっかく書き溜めたので、ある分だけ毎朝9時に投稿させてもらいます…。宝塚記念が終わってG1レースもしばらく無いので…どうぞ!


中山でのレースが終わったアグネスタキオンとソウジであったが…何故か今、アグネスフライトとマンハッタンカフェと共に麻雀をしていた。

 

「ロン!えーと…満貫、8000だよトレーナー君。」

「がぁー、飛んだ!また俺の負けか…」

「ソウジトレーナー弱すぎ!」

「というか、タキオンの親が回れば俺の負けが確定してないか?」

「…確かに。先程は私が親の時にフライトさんが箱になり、タキオンさんが勝ちましたからね。」

「あれは…運が悪かっただけよ!たまたまよ!」

「と言いますか…タキオンさん、今のところ全勝ですね。もう5回はしてるというのに…」

「ラプラスの悪魔でも憑依してるのか…?」

 

「さぁ…トレーナー君?次は『パソコンやスマホなどのちょっとした待機時間がものすごく長く感じる薬』を飲んでもらおうか。」グイッ

「嫌だ!あれはかなりイラつくんだ…あぁーー!」

 

ゴクン

 

「うぅ…」

「効果は3日程続くよ。」

「…あれって仕事に支障出ません?」

「出ないとは思うけど…ストレスは増えそうね。」

 

ソウジの体は頭だけが発光し、両手の人差し指がマイナスドライバーになり、常に耳元を手で払っている。そして、アグネスフライトの髪は『アナザー』じゃないにも関わらず芦毛へと変色していた。こうなった経緯を語っていこう。話は3時間程前に戻る。

 

ーーー

 

フェブラリーS後の研究室内にてファンから大量に送られたバレンタインのチョコを食べているととある小包を見つけた。その中身は…

 

「おぉ!すげぇ似合うじゃねぇか!」

「ありがとう、ジャンポケ君からのプレゼントだよ。…本当にくれるとは。…いい履き心地だね。」

 

ジャングルポケットより送られた白いハイヒールだった。アグネスタキオンはそれを履き、歩いてみる。

 

「じゃあ、早速それで俺の尻を踏…」

「何を言ってるんだ!これはレース用…ではないな、ウイニングライブ用だ!君の欲望を満たすためのものじゃない!」

「悪かった、悪かった、冗談だよ。ジャングルポケットからのプレゼントでは頼まないよ。普通に頼むから!」

「普通に…頼む?」

「タキオン、君の素足で俺の尻を踏んでくれ!」

「本当に君は何を言ってるんだ!?」

 

ソウジは変態であった。

 

「話は聞かせて貰ったわ!」

「お姉ちゃん?」

「ソウジトレーナー、タキオンちゃんに踏まれたいなら…勝負して勝ってからにしてください!」

「勝負?」

「これです!」

 

アグネスフライトが持っていたのは「北」と書かれた牌だった。

 

………

 

机に牌を広げ、全員の手でかき混ぜる。つまり…麻雀を始めたのだ。

 

「まさか、ここで麻雀をすることになるとはね…面白そうだ。」

「フライト、これはどこで手に入れたんだ?」

「ナカヤマちゃんからの没収品ですよ!私って風紀委員ですし!」

「にしては結構色々と持ってきたようだねえ、お姉ちゃん。」

「ゴルシちゃんもいたからかな?麻雀セット以外にはカタンとソクラテスラ、十面ダイス、イカサマダイス、ソードワールド2.5…」

「持ち込み過ぎ…いえ、それよりも没収品で遊んでいいのでしょうか?」

「私がいいって言ったからいいの!バンブーちゃんにさえバレなければ…コホン、勝った人がタキオンちゃんに踏んでもらえます!それも素足で!」

「つまり景品はタキオンの足と言うことか…」

「…私はその景品要らないのですが。」

 

アグネスフライトも変態であった。しかし、それで喜ぶのはこの2人だけであるためアグネスタキオンやマンハッタンカフェにメリットはない。

 

「まぁまぁ、景品としては『1位になった者が最下位へ命令する』にしようじゃないか。私が負けることは無いだろうが…もし、私を最下位に出来たなら、1日私のことを好きにしていいとも。雑用でも抱き枕でも何でも言うことを聞こうじゃないか!」

『絶対に勝ってやる!!』

 

アグネスタキオンの一言にソウジとアグネスフライトのボルテージがさらに上がった。

 

「盛り上がってるのはソウジトレーナーとフライトさんだけ…ではないようですね。」

「今更だがマンハッタンカフェは参加するのか?」

「…えぇ、私も参加しますよ。」

「へぇ、意外だな。何かタキオンにして欲しいことでもあるのか?」

「…前に断られたコーヒー風呂を体験して貰おうかな、と。」

 

マンハッタンカフェも参加した。

 

「ただし!私に負けたらその度にモルモットになって貰うよ。」

『うっ…!』

「いや、そうなるでしょう。…それにしても凄い自信ですね、皆さん麻雀をしたことは…」

「勿論無いとも。」

「俺も無い!」

「私も!」

「私も無いのですが…これはまず、ゲームとして成り立ちますか?このままですと、ずっと牌と牌をレッツ・ラ・まぜまぜ、することになりそうです。」

「マンハッタンカフェ、君の中の人的には牌をハギュゥって言ってくれた方が…」

「いや何の話ですか!?」

「お姉ちゃんはまだ公式にいないウマ娘だからね。何と言えばいいか…つまりトレーナー君は私に煌めく星の力で変身する虹色の戦士になって欲しいという話だ。」

「いやいや、本当に何の話!?」

「あー…気にしないでくれ。でだ、フライト。麻雀の方だが…」

「大丈夫です!スマホで調べながらしますので!」

「ふむ、机の上だとサイコロが邪魔だね。…私が預かっておこう。」

「えーと、まずは牌を2段に重ねて山を…」

 

アグネスフライトがルールを説明すると何やかんや上手くいき、ソウジが3回、アグネスフライトが1回、最下位となり、その度にアグネスタキオンからの罰ゲームを受けることとなった。

 

ーーー

 

6回目…最終局にて…

 

「ポン!よし、中と白が来たから後は發だけ…」

「ツモ!ふむ、リーチ1発でドラもかなり乗ってるからこの役は…親倍満、8000オールだねぇ…」

『飛んだー!!』

「同点で飛びましたね……どうするのですか?」

「俺はもう実験出来ないくらいに全身実験まみれだよな?フライトにするよな?」

「何言ってるのですか!?これだけ出来るならもう1つ増えるくらい何て事は…」

「よし、次はこの首輪にしよう…はい、2人とも…じっとして!」

『ー!』

 

ガチャ、ガチャ

 

「…タキオンさん、今度は何をしたのですか?」

「互いの中身を入れ替える装置だよ。検証回数がまだ数回なため、今試すことにしたよ。」

「よく作れましたね…」

 

「いやー!何で私が目の前に!?」

「あぁ…この前のやつか?ってとこは目の前にいる俺はフライトか?」

「そうですよ!私の体で変なことしないでくださいね!」

「ふむ…ではお約束のことをするか。胸はタキオンよりも大きい、と。」もみっ

「やめてー!!」ガシッ

「痛い!ドライバー指食い込んでる!食い込んでるから!」

「…って何?何か聴こえる…いや!虫!虫の羽音!?」

「お姉ちゃん、それは2回目の罰ゲームで飲ませた『耳に蚊が飛ぶ幻聴が聞こえ続ける薬』の効果だよ!」

 

アグネスフライト(inソウジ)とアグネスタキオンの2人で何とか、ソウジ(inアグネスフライト)を抑える。

 

「タキオン、この実験は別の実験と並行してするもんじゃないよ!俺以外は無理だ!」

「分かったとも!トレーナー君、首輪を外したまえ!解除キーは前と同じ右、左、真ん中だ。お姉ちゃんは私が!」

「あぁ!」ピッピッピッ

「じっとしていてね、お姉ちゃん!」グイッ

 

ピッピッピッ…ガチャ!

 

「ふー…」

「ちゃんと戻ってるよね?…うん、私の体だわ。」

「しかし…よくこんな物を作れましたね?」

「気がつけば出来ているものだよ。実験する機会があまりなかっただけさ。」

「…そろそろ、帰る時間かと。今日はただ遊んでいただけになりましたね。」

「あと1回だけ!タキオンだけの全勝で終わるのは何か嫌だ!」

「そうよ、せめてタキオンちゃんを勝たせないで終わらせたいわ!」

「…と言ってますが?」

「いいとも!また勝つのは私だがね…さっそく、混ぜて…!」

「ストップです。」ガシッ

 

牌を混ぜようとしたアグネスタキオンであったがマンハッタンカフェに止められる。

 

「どうしたんだいカフェ?」

「あなた…イカサマしてましたよね?」

「イカサマ?」

「…何を言ってるんだい?麻雀なんて今日初めてだというのにどうやってイカサマを…」

「タキオンさんが積んだ牌…役が固まってました。偶然かと思っていたのですが…意図的ですよね?」

 

アグネスタキオンが積んだ牌を返して見てみると確かに同じ牌が固まっていた。

 

「偶然だとも。それにそこの場所が毎回私が取れるとは限らないじゃないか。」

「えぇ…普通のサイコロならそうでしたとも。」パシッ

「ー!」ポロッ、ポロッ

 

マンハッタンがタキオンの腕を叩くとイカサマダイスが床に転がった。

 

「これ…フライトの没収品じゃねぇか!…タキオン?」

「タキオンちゃん?」

「…」ダラー

「…こうしましょう。最後の1回、"イカサマ無しで"タキオンさんが勝てば見逃しましょう。ただし、負ければ…」

「フフフ…」

「ククク…」

「くっ…勝てばいいのだろう?」

「…さぁ、始めましょうか。」

 

最後の勝負となり…

 

ーーー

 

「…よし!リーチだとも!」

「ロン!」

「何!?」

 

ソウジがアグネスタキオンの牌をロンしたことでアガった。

 

「これは…三暗刻とダブ東…ドラもありますね。フライトさん、何点ですか?」

「三倍満…24000だよ!」

「24000!?私が…飛んだ、だと?イカサマだ!」

「どの口が言うんだ!?…この通り、俺はイカサマなんてしてないぞ!」

「フフフ…タキオンちゃん?覚悟はいい?」

「くっ…好きにしたまえ。」

「…では、まずは私から…」

「待て待て!勝ったのはトレーナー君だろ?」

「そうですよ…ですので私たちの勝ちです。…では、今夜からさっそく一緒にコーヒー風呂に行きましょう。」

「えぇ!?」

「じゃあ、私とは次の休みにタキオンちゃんの服を買いに行くわよ!…色々試着させてあげる♪」

「通販で十分なのに…」

「ついでに踏む用のハイヒールも選んであげるわ♪」

「それは選らばなくてもいい!」

「んじゃ、その後に俺と24時間…は長過ぎるな。『12時間耐久うまぴょい伝説』だ!」

「君は何を言ってるんだ!?」

「ソウジトレーナー?何私の前でタキオンちゃんとうまぴょいとか言ってるのですか?死にたいのですか?」

「その時のタキオンの映像を送ろう。」

「ならば良し!」

「何も良くないよ!塀の向こうに行きたいのか君は!?」

「何言ってるんだ?ウイニングライブのトレーニングだよ。ひたすらに『うまぴょい伝説』を踊って貰います…俺の上で。ハイヒールはどっちでもいいぞ。」

「アウトー!法には触れないかもだけど色んな意味でアウトだよ、トレーナー君!」

「では、行きますよタキオンさん…」ガシッ

「カフェ!?」ズルズル

「私も行く~!尻尾とか耳とかおへそとか体の隅々まで綺麗にしてあげる♪」

「いや!自分で洗うとも!!トレーナー君!」ズルズル

「おう、たまには学生らしく楽しんでこい!」

 

「いやーー!」

 

アグネスタキオンはマンハッタンカフェとアグネスフライトに連れられ研究室を去った。その後、全身からコーヒーの匂いがしたり、姉の着せ替え人形になったり、トレーナーをステージに耐久ウイニングライブしたりと、全員の罰ゲームを何とか完遂したそうだ。

 

ーーー

 

そして、週が明け…

 

「…」フラフラ

「あのー、タキオンさん?随分とやつれてますが…大丈夫でしょうか?」

「あぁ…問題ないとも…あ!」クラッ

「ーー危ない!」ダキッ

「すまない…デジタル君…」フラフラ

「ひょえぇぇぇ!タキオンさんに抱きついてしまいましたぁぁ!あぁ、コーヒーのいい香り…」バタン

 

1週間、マッドサイエンティスト(アグネスタキオン)はゲッソリとした状態が続いたという。その間、変態(アグネスデジタル)が気絶と蘇生を繰り返しながらフォローをしたそうな。

 

 

アグネスタキオンの体力が100下がった

アグネスタキオンのスピードが10上がった!

アグネスタキオンのスタミナが50上がった!

アグネスタキオンのパワーが10上がった!

アグネスタキオンの根性が50上がった!

アグネスタキオンの賢さが30上がった!

「博打うち」のヒントLvが1上がった!

「注目の踊り子」のヒントLvが1上がった!

「アンラッキーセブン」になってしまった

アグネスデジタルの絆ゲージは最大だ!




イカサマダイスは重心をずらせるタイプで、タキオンが白衣の袖の中で器用にずらしてました。…そんなサイコロが現実にあるか知らないですが。


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第24話 ファン感謝祭にて貴公子は大規模なレースを行う

サトノダイヤモンドで全冠取れました!次はハルウララかキングヘイローかキタサンブラックかセイウンスカイか…スイープトウショウもいいかもしれない!アグネスタキオン?まぁ…上記の5人が終わってからかな?

タグに史実改変、アグネスフライト、ジャングルポケットを追加しました。


「撮影会?いいとも、参加しよう。」

「ありがとうございます。では、詳しくはまた後日に…!」

 

アグネスタキオンはファン感謝祭にて実行委員より撮影会の依頼をされ、受けることになった。

 

「ほぉ…意外だな。断ると思っていたのだが。」

「クックック、実験したいことがあってねえ。」

「…まさかとは思うが『合成因子』か?」

「違うよ、流石の私でもモルモット以外でその実験をするつもりは無いよ。」

「じゃあ…あれか?ファンの応援による身体への活性化の研究的な?」

「それも間違いというわけではないが…あったあった。これだよ!」

 

アグネスタキオンが取り出したのはウマ娘のミミが付いたカチューシャだ。

 

「あぁ、この前の麻雀でアグネスフライトを芦毛にしたカチューシャか。スイッチ1つで体毛の色を変えるってどんな仕組みだ?」

「体毛といっても髪だけで色を変えているんじゃない。変わってるように見えてるだけさ。そもそも色というものは光が反射することで見えているものだ。なので特殊な電磁波と超音波を頭の周りに発生させている仕組みだ。言い忘れていたが…勿論、体への害も無い。」

「ちょっと何言ってるか分からないが…で、これをどう実験に使うんだ?」

「撮影時に交流するファンたちに付けてもらい、どの色が人気かをみる。」

「見るも何もタキオンの栗毛以外あり得ないだろ?というか栗毛にしなかった奴がいたら追い出すぞ?」

「それは普通に辞めたまえ。…そして、その時の表情や心拍数、脳波などのデータを取り、特別レース後に結果をみる。」

「特別レースだと?」

「あぁ!東京レース場を借りた超大規模なレースさ!」

「俺、その話1つも知らないんだけど!?てか、まだ改修工事中だろ!」

「何、『東京レース場リニューアル記念』の前に試しに走って欲しいとの依頼が学園に来たらしく、それを生徒会長より手伝ってくれと頼まれただけさ。」

 

ーーー

 

そして、感謝祭当日を迎えて、アグネスタキオンは多くのファンに囲まれていた。

 

「『天皇賞(秋)』からの復帰を聞いてまたファンになりました!『有マ記念』と『平安ステークス』、『フェブラリーステークス』も現地で見させいただきました!カッコ良かったです!」

「ありがとう。」

「すみません、こっちにも目線ください!」

「あぁ!」

 

カシャカシャカシャ

 

「これを作成しながらレースで1着取ってるのですか?」

「研究が趣味でねえ…あ、右端から栗毛、鹿毛、黒鹿毛、青鹿毛、芦毛となっているよ。」

「では、栗毛を…おぉ!本当に変わった!一緒に写っていただいても?」

「あぁ、いいとも。」

「あれ?カチューシャはこれで終わりですか?」

「すまないがこれだけだよ。うまく交代して使ってくれ。あぁ、この後だが東京レース場にて私主催の特別レースを開催予定だ。良かったら見に来てくれたまえ。」

「え?改修工事中じゃ…行ってもいいのですか?」

「あぁ、この後に案内があるとも。ただし、人数が制限される可能性もある。あまりこの話は広げないでくれたまえ。」

 

カチューシャは30個しか用意が出来なかったもののファンとの交流をアグネスタキオンは楽しんだ。

 

………

 

そして、場所は東京レース場。アグネスタキオンはステージに立っていた。

 

「さて、では実験を兼ねた特別レースを行おうとも。その名も…『ダービーウマ娘チャンピオンカップ』だ!」

 

ザワザワザワザワ

 

「ダービーウマ娘チャンピオンカップ?」

「ダービーウマ娘ってことは…」

「シンボリルドルフ様!」

「いや、ナリタブライアンだ!」

「ミホノブルボンだろ!」

 

レース名を聞き、観客は騒ぎだす。しかし、アグネスタキオンは気にもせずにマイクで進行する。

 

「今日走ってもらうのはレース名の通り、『東京優駿』を制したウマ娘たち13人でのレースとなる。条件も『東京優駿』と同じで…バ場は良、天気は晴れだね。では、紹介を頼むよ…ゴールドシップ君、メジロマックイーン君。」

 

『ピスピース!毎度お馴染み、実況担当のゴルシちゃんだぞ!』

『解説担当のメジロマックイーンですわ。』

 

紹介を任されたゴールドシップとメジロマックイーンの声が会場へと響く。

 

『んじゃ、時間も無いから出走ウマ娘たちをさっさと紹介していくぜ!1番、ミスターシービーだ!』

 

ワアァァァーー!

 

「いきなり3冠ウマ娘かよ!」

「堂々としているな…」

 

『2番、シンボリルドルフ!』

 

ワアァァァーー!

 

「シンボリルドルフ様!」

「おぉ!走ってくれるのか!?」

 

ゴールドシップは次々と出走ウマ娘の紹介を進めていった。1人が紹介される度に会場は大きく盛り上がる!そして…

 

『12番、アグネスフライト!』

 

ワアァァァーー!

 

「あのアグネスタキオンの姉にして唯一黒星をつけたウマ娘…」

「去年のジャパンカップの末脚…まだ覚えているよ!」

「フライト先輩、足はもう大丈夫?」

 

『13番…って書かれてないぞタキオン!』

 

ザワザワザワザワ

 

「13人目って誰だ?…これまでの順番から考えるとタニノギムレットか?」

「いや、オレはここにいるぞ?誘われたんだが、今はちょっと柵蹴ってケガしちまってな…」

「え?じゃあ誰なんだ?」

「まさかアグネスタキオンがこの中に入るとか?」

 

紹介されない13人目に会場が騒ぎだす。

 

「あぁ、12人の紹介ありがとうゴールドシップ君。では、最後の13人目を私が紹介しよう…ジャングルポケット君だ!」

「…」

 

ザワザワザワザワ

 

「ジャングルポケットって…去年の有マで大ケガした…」

「絶対にまだ治ってないだろ!」

「もう治らないって聞いたけど…」

「いや!あれは…別のウマ娘だ!」

 

ジャングルポケットの勝負服を着て、アグネスタキオンの隣にきたウマ娘を見て会場はざわめき始めた。それもそのはずだ。数ヶ月前に大ケガをしたウマ娘が出走するのだと言うのだ。

 

「実験を兼ねたと最初に言っただろ?私は最速を求め、常に実験をしている。その過程で出来た発明品の1つがこの首輪だ。この首輪は…理論の説明は省くが、体の中身を入れ替えることが出来るんだ。」

 

「何その発明…」

「いや、私たちが今借りてる髪色を変えるカチューシャもすごいけど…」

「…もう下手な秘密道具よりも凄いんじゃない?」

 

周りの反応も困惑が多い。そんな中、ジャングルポケットはマイクを受け取り喋った。

 

「皆さん、こんにちは。声が違いますがジャングルポケットです。私は…もうレースで走ることは出来ません。ですので…タキオンの発明により別のウマ娘の体を借りて出走しています。これが私のラストランとして…皆さんの心に残って欲しいと思います。…よろしくお願いします!」

 

ワアァァァーー!

 

「もう、偽者でも何でもいい!応援するぞジャングルポケット!」

「また、お前の走りが見れるだけでも嬉しいぞ!」

 

ジャングルポケットの気持ちが伝わったのか会場は再び盛り上がる。そして、ジャングルポケットはターフへと向かっていった。

 

「ありがとうエアグルーヴ…君の体を借りるよ。」ボソッ

 

………

 

『じゃあ、最後の1人が来るまで…少し時間があるな!』

『…今更ですが圧巻のメンバーですわね。』

『ゴルシちゃんもデビューしたらダービーウマ娘になりたいんだぜ!』

『なりたい、だけでなれるものじゃありませんわよ。…私は出走すら出来なかったのですから。』

『それは残念だったな。んで、マックイーンは誰に注目している?』

『そうですわね…シンボリルドルフさん、トウカイテイオー、サクラチヨノオーさんですわね。』

『ほほう。その理由は?』

『ズバリ、脚質です。今回は"差し"や"追い込み"のウマ娘が多くスパートでの激しいポジション争いが予想される中、アイネスフウジンさんとミホノブルボンさんという"逃げ"も2人いるため先頭を無理に取る必要もありません。ですので、"先行"を得意とする3人が有利かと思いましたわ。あなたは誰に注目していますの?』

『私?私は…ミスターシービーだな!何か同じ波長を感じるというか…やっぱり、"追い込み"で全員抜くって気持ちいいし!…と、ジャングルポケットが合流したな!んじゃ、ゲートに入ってくれ!』

 

各ウマ娘たちがゲート入っていく。そしてG1レースのファンファーレ…の音声がスピーカーから鳴り響きゲートが開かれた。

 

ーーー

 

同時刻、レース場となるコースとなる円の中央にソウジとトーセンジョーダン、エアグルーヴがいた。

 

「ご協力感謝するよエアグルーヴ。」

「ありがとう、エアグルーヴさん。ジャンポケ先輩…あたしらの練習見てる時に表には出さないけどずっと悔しそうな顔してたからさ…」

「ジョーダン、いつもお前にはゴールドシップの確保に世話になっている。…このくらいなんてことはない。」

「タキオンが言うには君の『因子』がもっともジャングルポケットの『因子』に近かったらしい。」

「とりあえず、私はジャングルポケットをみて、走るイメージをすればいいのか?」

「あぁ!後はその信号を受信したジャングルポケットの本能がレースを走りきるだろう。…だがジャングルポケットからの発信は遮断してるとはいえ万が一もある。お前の…いやジャングルポケットの体はこの椅子に固定させてもらうよ。」

「分かった。」

「…あたしから言っておいて何だけどぉ…上手くいくかな?下手すればエアグルーヴさんの体が…」

「その時はその時だ。何、私は既に引退済みだ。デビュー前のウマ娘がそんなことを気にする必要などない。」

「…最悪何かあればタキオンが何とかする。エアグルーヴ、万が一が起こった時の君の体の治療は保障する。だから…タキオンの技術力を…いや、ジャングルポケットを信じてやってくれ。」

「…レースがそろそろ始まるぞ。」




ジャングルポケットが入れ替わる対象ですが、最初はフジキセキかトーセンジョーダンにしようと思ってました。しかし、エアグルーヴがジャングルポケットと同じくトニービン産駒でかつ、母がノーザンダンサーの直径の孫なので選ばさせていただきました。仮にジャングルポケットとエアグルーヴが交配していれば生まれる競走馬はトニービン2×2、ノーザンダンサー4×4のインブリードになったのかな?


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第25話 ダービーウマ娘チャンピオンカップ、密林よ飛び出せ!

どうも、昨日の帝王賞で母父ゴールドアリュールのオメガパフュームを応援した作者です。同時にぱかライブもみてました。発表された新イベントも楽しみですが、何より新ストーリーが更新されることが1番嬉しいですね!モンジューが一瞬映ってて…そういえばタイトルホルダーにもモンジューの血統が入ってたような…。


ゲートが開き『東京優駿』を制したダービーウマ娘たちによる『ダービーウマ娘チャンピオンカップ』が始まった。

 

『スタートだ!おぉ、全員いいスタートを切れたな!さてさて先行争いは…やはり、ミホノブルボンとアイネスフウジンだ!若干アイネスフウジンがハナを取っているな!』

『そして脚質ごとの集団も出来てますわね。前からアイネスフウジン、ミホノブルボン、サクラチヨノオー、トウカイテイオー、シンボリルドルフ、スペシャルウィークが続いていますわ。スペシャルウィーク、今回は前の方。』

 

「いけ!ミホノブルボン!」

「テイオーさん、頑張れ!!」

「スペちゃん、落ち着いて!自分のペースよ!自分のペース!」

 

『後ろの方は…アドマイヤベガとウイニングチケットが並んで、ジャングルポケット、ナリタブライアン、シリウスシンボリとやや縦長に続く。』

『ミスターシービーとアグネスフライトは最後方からのスタートとなりましたわね。』

 

「ベガ姉ちゃん!頑張れ!」

「シリウス先輩、いい位置ですよ!」

「ブライアンもチケゾーも頑張ってくれ!」

 

『っと、もう前は第2コーナーに入っているぜ。先頭はアイネスフウジンだ!ミホノブルボンはその後にピッタリとついている!』

『先頭を取ることよりも少しでも足を溜めることを優先したようですわ。続いてシンボリルドルフと…掛かり気味でしょうか、トウカイテイオー。サクラチヨノオー、スペシャルウィークが続く…あら?ウイニングチケットがもうあがってましたわね。逆にアドマイヤベガはペースを落とした?』

 

「アイネスフウジン、そのまま先頭をキープだ!」

「ミホノブルボン、まだチャンスはある!」

「テイオーさん、落ち着いて!」

「流石シンボリルドルフ…余裕そうだ。」

 

『さて第3コーナーまで半分くらい…最後方からミスターシービー、アグネスフライト、アドマイヤベガ、ナリタブライアン、シリウスシンボリ、ジャングルポケット。まだ仕掛け…ってマジか!ミスターシービーがもうロングスパートを掛けてきたぞ!』

『まだ第3コーナーでもないのにですか!?流石に早すぎません!?』

 

「おいおい…あんなロングスパート、スタミナ以前に足は大丈夫なのかよ?」

「有マのエアシャカールみたいになるぞ!」

 

『さぁ、ケヤキの見える第3コーナーカーブ…ここで先頭がミホノブルボンへと変わる。アイネスフウジンはここで後退か!後続が次々とかわしていく!』

『ケガではなさそうですが…スタミナ切れでしょうか?トウカイテイオーもバ群へと沈んでいきます。前からミホノブルボン、シンボリルドルフ、スペシャルウィーク、ウイニングチケット、サクラチヨノオー。』

 

「チャンスだ!ミホノブルボン!」

「スペちゃん!いいペースよ!」

「チヨちゃん、焦らずにいきましょう!」

 

『さぁ、そこにロングスパートを仕掛けたミスターシービー!さらにここで後続の集団が全員仕掛けてきた!第4コーナーカーブ…前の集団が一気に飲み込まれた!抜け出すの誰だ?』

『…アドマイヤベガ!アドマイヤベガが抜け出してきました!さらに大外…それもコースのスレスレにはシリウスシンボリ!そして、内からジャングルポケットが来ていますわ!』

『ミスターシービーはこれ以上は伸びないか!ナリタブライアンとアグネスフライトは…伸びてこない!いや、シンボリルドルフがここで再び勢いづいた!この4人の対決か!?』

 

「ベガ姉ちゃん!」

「アヤベさん!」

「シリウス先輩!」

「ジャングルポケット!」

「シンボリルドルフ会長!」

 

『さぁ先頭のアドマイヤベガ、このまま逃げきれるか!内からジャングルポケットとシンボリルドルフ、大外からシリウスシンボリ!!』

『残り200…!!ジャングルポケットがアドマイヤベガに並びました!それに向かってシンボリルドルフも差を詰めてきます!シリウスシンボリもさらに伸びてきしたわ!』

 

「ぐおぉぉぉ!!」

「ーー!!」

 

『…なっ!ジャングルポケットだ!ジャングルポケットが雄叫びをあげ、内から差しきった!ジャングルポケットが1着だ!』

『…えぇ、1着ジャングルポケット、2着アドマイヤベガ、3着にシリウスシンボリ…ですわよね?』

『もう1度言うぜ!1着は…ジャングルポケットだぁぁ!!』

 

ワアァァァーー!

 

ーーー

 

「ぐるるる…ぐおぉぉぉ!!」

 

「…やっぱりこの雄叫び、ジャングルポケットだな!」

「あぁ、体が違うと言われても…今回走ったのは間違えなくジャングルポケットだ!」

「歴代のダービーウマ娘たちに勝ったんだよな?」

 

1着となったジャングルポケットは雄叫びをあげてコースを1人走っていた。ウイニングランである。しかし、ゴール直前となった時…

 

「ぐおぉ…!!ー???」

 

ぐおぉぉぉ!!

 

「どうしたんだ?ジャングルポケット?」

「何か混乱しているような…」

「というか、今別のところから雄叫びが聞こえなかった?」

 

『エアグルーヴ君、今すぐにその首輪を外したまえ!真ん中のスイッチを2回、次に左のスイッチを1回を押してくれ!』

 

突然のアグネスタキオンの放送にジャングルポケットの体となっていたウマ娘、エアグルーヴは従い首輪を外す。

 

ザワザワザワザワ

 

「何があった?」

「エアグルーヴが走っていた?」

「首輪を外せって…?」

 

突然の放送に観客たちは騒ぎだす。

 

『…あぁ、心配をかけてしまったようだね。どうやら、ジャンポケ君の雄叫びに装置が耐えれなかったようだ。エアグルーヴ君の体に害が有るものでは無いからそこは安心して欲しい。…念のために聞くが大丈夫かねエアグルーヴ君?』

 

エアグルーヴ走ってきた実行委員よりマイクを受け取り答えた。

 

「問題無い…と言いたいが、ジャングルポケットの雄叫びで喉が痛いな。」

 

『後で喉の薬を渡そう。とにかく、大きな問題無くてよかったよ。…では30分後に締めのウイニングライブだ。諸君、楽しみにしてくれたまえ!』

 

ワアァァァーー!

 

その後のウイニングライブで車椅子に乗ったジャングルポケットをセンターに『winning the soul』が披露され会場は大きく盛り上がり感謝祭は幕を閉じた。

 

ーーー

 

東京レース場での片付けも終わり、研究室での片付けに入ろうとしたソウジとアグネスタキオンだったがジャングルポケットの雄叫びを近距離で聞いたソウジをアグネスタキオンは心配していた。

 

「トレーナー君、耳は大丈夫かね?」

「大丈夫だ、明日には耳鼻科にいくよ。」

「トーセンジョーダン君はその場で気絶しただけで済んだみたいだが…まぁ、聞こえているようで安心したよ。人間の耳はウマ娘ほど敏感でもないからね…では、早速だが片付けの前にご飯を作ってくれるかい?」

「ちゃんと行くから心配するなって。」

「…。ソウジ、私のことを愛してると言ってもらえるかい?」ガシッ

「聞こえてるよ。とりあえず今日はさっさと片付けて…タキオン?」ズルズル

「もしもし、お姉ちゃん?ちょっと手伝って欲しいことが…」ピッ

 

その後、ソウジは耳鼻科へと運ばれた。そして治療により3日も会えなくなったため、アグネスタキオンは大きく体重を落とすこととなった。

 

ーーー

 

後日、東京レース場にて『東京レース場リニューアル記念』が行われた。

 

『外からタップダンスシチー!

タップダンスシチーが抜けてきた!

後ろとの差は3バ身!

しかし、差は詰まらない!

タップダンスシチーがゴールイン!』

 

ワアァァァーー!

 

「重賞を勝ってきたウマ娘たちを圧倒して…凄いぞタップダンスシチー!」

「本当に最近になって好調だよな、タップダンスシチー。」

「有マ3着はまぐれじゃなかったな!」

「次はお前を応援するわ!!」

 

パチパチパチパチ

 

 

「ソイヤ!ソイヤ!ソイヤー!!すぅー、はぁー…落ち着け私。宝塚記念までまだ時間はある。少しでも勝ちを重ねるんだ!」

 

ーーー

 

さらに後日、京都レース場の『天皇賞(春)』にて…

 

『ヒシミラクルだ!

外の方からヒシミラクル!

私は菊花賞ウマ娘と言わんばかりにあがってきた!

ヒシミラクルだ!

ヒシミラクルが1着!

菊花賞ウマ娘が春の盾を手に入れた!』

 

ワアァァァーー!

 

「前回はあんなに負けていたのに…嘘だろ!」

「G3やG2勝たずにG1を2勝だと?」

「…まぐれだろ?」

「G1をまぐれで2回も勝ててたまるかよ!よくやった、ヒシミラクル!」

「おめでとう、ヒシミラクル!」

 

パチパチパチパチ

 

 

「クックック…天命は完全に我輩の味方である!さぁ、アグネスタキオン!宝塚記念に来るのである!我輩と勝負である!」

 

『ヒシミラクル!

アグネスタキオンへ挑戦状を出した!

これは宝塚記念が楽しみです!』

 

 

次のレースのライバルが増えたのであった。



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第26話 飛行機はモルモットに嫉妬し、漆黒の帝王は大器の英雄に目をつける

はぁ…イベントのドーベル可愛かったな…どうも、牝馬大好き作者です。キタサンブラックの全冠を取りました。

今回で溜めた分はおしまいです…しばらくはサンブレイクで遊んできます!遅くともスプリンターズステークスにはまた戻ってきます。ではでは、どうぞ~!


「ふふふーん♪」

「タキオンちゃん、機嫌がいいわね。」

「…先日のファン感謝祭で…ファンのデータと特別レースへ参加したウマ娘の『因子』を手に入れたそうです。ミスターシービーさんと…シリウスシンボリさんのは…手に入れれなかったそうですが…」

「ダービーウマ娘たちの『因子』か…眩しいな…」

「フライトさん…アナタもその内の1人ですからね?」

「そうだけど~、あのレースでボロボロだったから~」

 

ファン感謝祭が終わり、アグネスタキオンは再び研究の日々へと戻っていた。しかし、今部屋にいるのは彼女を除くとマンハッタンカフェとアグネスフライトのみでソウジはいない。

 

「おぉ!やはり、ファンに囲まれると普段の私よりも幸福度が上がっている!そして、ファンの方は…何だ…かなり低いな…」シュン

「え!?そんなことは無いでしょ!」

「…誰を基準にしているのですか?」

「トレーナー君だが?」

『…人選ミスよ(です)!!』

「あれ?ってことは普段のタキオンちゃんはアイツといる時の幸福度は低いってこと?」

「…本当にただのトレーナーとしか思ってなかったのですか?」

「その…トレーナー君と一緒にいるデータだと…参考にならないから…」もじもじ

「でも今使用しているソウジトレーナーのデータは……タキオンさんが一緒にいる時に測ったものでしょ?」

「…はい。」

「お姉ちゃん妬けちゃうな…」

 

………

 

一方でソウジは理事長に呼ばれ、理事長室にいた。

 

「驚愕ッ!アグネスタキオンはドバイワールドカップには出なかったのか!」

「すみません、次は宝塚記念を考えていまして…海外のレースも挟むとなればタキオンにも負担が…」

「うむ…残念だが、承知した!全力全快であってこそウマ娘は力を発揮出来るもの!今後の活躍を期待しておるぞ!」

「ありがとうございます。」

「しかし!アグネスタキオンはアグネスデジタルを追いかけているものとばかり思っていた。」

「レースが偶然重なっていただけですよ。…それに宝塚記念でタキオンがねじ伏せてくれますよ!」

「ふむ!心意気は良し!だが、彼女の次のレースは安田記念だとのこと。果たして宝塚記念に出るかどうか…」

「うっ!…と、とにかく!アグネスタキオンの今後にご期待ください!では、失礼します。」

「あぁ、頑張りたまえ!」

「って待ってください!理事長、本題を忘れてますよ!」

「本題…ですか?ドバイワールドカップのことじゃなかったのですか?」

「いや、もう1つある!コホン、君の担当ウマ娘は現在アグネスタキオン1人であったな?」

「ええ、そうですが…」

 

ーーー

 

数分後、ソウジは研究室へと戻ってきた。

 

「タキオン!聞いて欲しいこと…が?」

 

「いやー、あの時のソウジの反応といったら…」ブンブン

『おろろろろ…』コポポポ

 

「いや、どういう状況!?」

 

ハイテンションに尻尾を振るアグネスタキオンと砂糖を吐くマンハッタンカフェとアグネスフライトがいた。

 

「いや、これは…その…実験だよ!前のファン感謝祭のファンから得た情報をカフェ達に言っていて…」

「さっき俺の名前を言ってなかったか?まぁいい…タキオン、俺はチームを持つことが決まった。」

「ーー!?チーム…だって?」

「あぁ、俺に指導して欲しいという生徒がかなり出てきたらしくて…」

「ダメだ!私のご飯や片付けなどの面倒をみてくれるは君じゃなきゃ嫌だ!それに…私は…まだまだ走れるんだ!どうして今なんだ!」

「落ち着け、今すぐにではない。…今年一杯はお前の専属だ。来年になっていきなり言われるよりいいだろ?それに…トレーナーとはそういう仕事だ。」

「…」

「何、お前との時間はちゃんと確保するさ。」

「トレーナー君…」

「本当に妬けちゃうな…」

「しかし…しかしだ!トレーナー君と私と一緒にいる時間が短くなるのは…いーーやーーだーー!」

「だぁー!!最近のお前、スイープトウショウ並にワガママだなぁ!おい!」

 

結局、駄々をこね始めたアグネスタキオンが落ち着くのに30分以上かかった。

 

ーーー

 

同時刻、練習場にてシンボリクリスエスはとあるウマ娘を抱えていた。

 

「待たせたシャカール。」

「別に待ってねェよ…誰だソイツ?」

「1人端っこで自主練してたようだから並走を誘ってみた。それで断らなかったから連れてきた。…そういえば名前をまだ聞いてないな。」

「すみません…まずは下ろしていただけますか?」

「おいおい…」

「あ、あの…私はゼンノロブロイと言います。シンボリクリスエスさんとエアシャカールさんですよね?」

「…あァ!?」

「ひぃぃ!すみません!」

「何びびってンだよ。…で、それがどうした?」

「お2人は…その…仲がいいのですか?すみません、ちょっと珍しい組み合わせかなーと思いまして…」

「…別に仲がいいって…」

「私は仲がいいと思っている。」

「ボリクリ!?」

「まぁ、ファインモーション程ではないだろうが…」

「あれはアイツが私に付きまとってくるだけだ!だから仲良く何かねェよ!」

「フフフ…」

 

緊張していたゼンノロブロイから笑みが溢れる。

 

「ゼンノロブロイ、私とシャカールは有マ前に走りあっては互いを高めてきた。」

「それでもタキオンには勝てなかッたがな。ンでオレは今はケガでボリクリの走りを見ることしか出来ねェ。もう引退したから好きに過ごさせてもらってる訳だ。」

「主にファインモーションの練習を見ているようだがな。」

「だから違ェよ!それにアイツも暫くレースに出ねェから好き勝手にしていただけだ!」

「話を戻そう。ゼンノロブロイ、私と一緒に走って欲しい。…少し君に運命を感じている。」

「…運命ですか?」

「君の次の出走レースは『青葉賞』だろ?」

「ー!何故それを!?ダービーを目指してるなんて、まだ誰にも言ってないのに…」

「去年の私と同じ『山吹賞』を勝ち取った君が気になっていた。それで運命を感じている。」

「えぇ!?」

「ンなロジカルじゃねェことで感じるなよ!ッたく、おいお前!」

「は、はい!」

「乗りかかった船だ。ボリクリと一緒に見てやるから走ってみろ。」

「はい!エアシャカールさん、ありがとうございます!シンボリクリスエスさん、行きましょう!」

「私はクリスエスでいい…シャカールもシャカールでいいだろ?」

「ンなもン好きに呼べ!」

「はい!ではシャカールさん、クリスエスさん…改めて、よろしくお願いします。」

 

エアシャカールとシンボリクリスエスのコンビにゼンノロブロイが加わった。



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第27話 怪しげな『合成因子』…それが生み出すのは…

昨日でラストと言いましたね、あれは本当の予定でしたが…友達から聞いた明日新馬戦に出走しますとある競走馬の情報を聞き早く投稿したおきたくなりました。

ダンスインザダーク×エアグルーヴ産駒とゼンノロブロイ×カーリーパッション(エアグルーヴの全妹)産駒の交配で生まれた競走馬『キタノグリエル』…ノーザンダンサー5×5×5、サンデーサイレンス3×3、トニービン3×3、ダイナカール3×3…ものすごいインブリードです。アオラキ(ゴルシ産駒・白毛)も出走するので結果が気になりますわ~。


今日もアグネスタキオンとソウジは最速の研究をしていた。

 

「さて…時間は有限だ。1秒たりとも無駄には出来ない。」

「昨日の1時間くらい駄々をこねたお前に言ってやりたいなそのセリフ。」

「今回はこれだよ!」グイッ

「ん!?」

 

ゴクン

 

アグネスタキオンによりソウジは何かを飲まされた。そして、黒鹿毛の『ウマ人』へと姿を変えた。

 

「んんん…って『合成因子』か!今回は誰と誰だ?」

「フラワー君とミホノブルボン君だよ。」

「あー、確か前に手に入ったのは全部S極だったっけか?」

「その通りだ。『スペースレトリバー』同様に同室のウマ娘を2種類合成してみたよ。」

「2種類?後1つは?」

「これだよ。アドマイヤベガ君とカレン君を合成したものなのだが…」

「溶けかけのコーヒー飴?」

 

それは茶色く、球の形状を何とか保てているモノであった。

 

「だからこれは『合成因子』だよ。」

「あぁ…前にタキオンとダイワスカーレットを合成した時のサンプルに似ているな。」

「後でよく調べてみるとアドマイヤベガ君もカレン君も同じ『因子』が25%含まれていたよ。これは…どうするべきか…」

「んなもん、実験すればいいだろ?確かに色はあれだが…『合成因子』には違いない。それに…これはこれでどうなるか気になるしな。」

「…まずは今の『合成因子』のスペックを計測しよう。名前は…『アイリスリリー』だ!15分後にいつものところへ来たまえ。」

「了解了解。」

 

こうして合成因子四十一号の『アイリスリリー』の測定を始めた。

 

………

 

「…短距離適正あり。計測終了だよモルモット君。お疲れ様。」

「久々に聞いたなその呼び方。ふぅー…んじゃ、例の『合成因子』を試すか!」ガチャ

「え?モルモット君!?何故君が持って…待ちたまえ!」

 

ゴクン

 

「ん?何か言ったか?」

「あぁ!飲んでしまっただと!まだどんな危険があるか私ですら整理が終わってないのに!?」

「え…?何時もことじゃ…」

 

計測が終わったソウジは腕輪に『アイリスリリー』の『合成因子』を回収し、アグネスタキオンの言葉を聞かぬ間に茶色の『合成因子』を飲み込んだ。そして、その体に変化が起きる。

 

「おおぉぉ…っていつもと同じ感じだぞ?」

「すぐに回収したまえ!今すぐにだ!」

「あ、あぁ…」ガチャ

 

ドロドロドロ…

 

ソウジは鹿毛(若干モコモコしている)の『ウマ人』へと変化した。しかし、アグネスタキオンの指示によりすぐに腕輪による回収を始める。すると、腕輪からは謎の液体が溢れだした。

 

「タ、タキオン!この液体、熱い!」

「くっ!回収中だが今すぐ外すべきか?だが…ソウジ!じっとしてくれたまえ!」

「タキオン!?」

「ぐぐぐ…ふんっ!」

 

バキン

 

アグネスタキオンは力ずくで腕輪を壊す。そして、その液体はターフへと落ち、煙をあげ、焦げた臭いが瞬く間に練習場へと拡がった。腕輪を外されたソウジは焼ける痛みでそのまま倒れた。

 

「お姉ちゃん!今すぐ来て!ソウジが…ソウジが…!」

 

………

 

数十分後、場所は変わって研究室…

 

「…はっ!」

「起きたか!ソウジ!」

「タキオン…」

「良かった!本当に良かった!」ダキッ

「苦しい…」

「ソウジトレーナー、何タキオンちゃんを泣かせてるの?って言いたいですけど…まずは鏡見てください。」

「ー!!」

 

そこに映ったのは人間でもウマ娘でも『ウマ人』でも無いナニカであった。耳は人間の位置よりも高く、ウマ娘よりも短い尻尾が生えていて、右手は包帯越しでも大きく膨れ上がっていた。

 

「君の右手を守るために無理やり腕輪を破壊した結果…『合成因子』の一部が体内に残ってしまった。右手の火傷は1ヶ月すれば完治するだろうが…」

「そうか…」

「…すまない。私があの場でハッキリと禁止と言っておけば…」

「いや、俺が勝手に飲んでしまったばっかりに…」

「溢れた『合成因子』の分析、腕輪の新調など、やるべきことは多い。後はもう一度、あの『合成因子』の作成のため…お姉ちゃん、アドマイヤベガ君とカレン君から『因子』を貰ってきてほしい。」

「分かったわ。」

「カフェはトレーナー君を見張っていてくれるかね?」

「…分かりました。」

「すまない、タキオン…」

「必ず君を元に戻そう。」

 

しかし、練習場の異臭の通報を切っ掛けに研究室の現状が学園へとバレてしまった。ソウジは病院へと運ばれ、アグネスタキオンは2週間の謹慎、及び研究室の使用禁止の処分を受けることとなった。

 

ーーー

 

病院にて…

 

「院長、あの患者は…」

「…間違いない、血液の検査から人間でありながらウマ娘としての特徴が含まれている。しかし、あの方から2週間は検査、点滴以外何もするなとのことだ…はぁ、残念だ。実に興味深い症状だというのに…」

「因みに患者は何故あのような状態に?」

「すまないがあの方からの命令で言えないな。とりあえず、指示されたことだけを行おう。」

「…」

「はぁ、君が今想像しているような後ろめたい内容ではないよ。詳しくは言えないが…そうだな…事故だね。」

「思っていたよりは普通な理由ですね…」

「そんなことよりあの患者の様子は?」

「はい、それが…」

 

………

 

病室の個室、そこでソウジは…

 

『イブニングタイアー逃げ切った!

G1初勝利!』

 

『メダグリアドーロ1着!

これで重賞2連続勝利!』

 

『1着はスパイツタウン!

ヴォルポニ、ここでは2着!』

 

「フェブラリーSでのタキオンのデータから…いや、現地で走ったデータが欲しいな…」

「…ソウジトレーナー、私はそろそろリハビリに戻らないといけないのですが?」

「すまない、だが後1戦だけ…」

「それもう2回目ですよ…失礼します。」

「待ってくれ、ジャングルポケット!この状態じゃ端末がろくに操作できないんだって!あぁ…行っちゃったか…。はぁ、足で操作出来ないかな?」

 

アメリカのダートレースをみていた。




・おまけ(アメリカの競走馬たち)
イブニングタイアー(Evening attire)…アメリカ出身で芦毛の騸馬。G1勝利は2002年のジョッキークラブゴールドカップ。

メダグリアドーロ(Medaglia d'Oro)…アメリカ出身で黒鹿毛の牡馬。G1勝利は2002年のトラヴァーズS、2003年のホイットニーH、2004年のドンH。

スパイツタウン(Speights town)…アメリカ出身で栗毛の牡馬。G1勝利は2004年のブリーダーズCスプリント。G1産駒として2019年の高松宮記念を制したモズスーパーフレア、2016年に全日本2歳優駿を制したリエノテソーロがいる。


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第28話 準3冠は貴公子を助ける、大器の英雄は東京優駿へ出走する

どうも、サンブレイクに夢中な作者です。モンハンでまさかNPCとの共闘があるとは思いませんでした…普通に楽しいです。

さてさて、今日は例の新馬戦…8頭中5頭が実装されているウマ娘の血統が入ってます。とりあえず、アオラキとキタノグリエルの応援馬券を買って応援します!

勝ったのはシーウィザード…アオラキは4着、キタノグリエルは最下位…残念。


アグネスタキオンが謹慎になり10日が経った。

 

「よし、ソウジの体内に残った『合成因子』の量も分かった。後は…新薬の調合と腕輪の出力を上げて…」カタカタカタ

 

監視(特にアグネスフライトとマンハッタンカフェ)の目を盗み、1人で研究を続けてきたのだ。しかし、誰かが鍵を開け研究室へと入ってきた。

 

「何やッてンだタキオン?…いや、話は全部フライトから聞いているが。」

「…シャカール君か。悪いが君のお説教を聞いている時間は無い。」カタカタカタ

「ケッ!てめェを手伝ってやるつッてもか?」

「え?」

 

アグネスタキオンの手が止まる。

 

「さっきも言ったろ?フライトから全部聞いてンだよ。そのフライトが頭下げてまでお願いしてきたンだ。私じゃ何も出来ないから妹を助けて欲しい、ッてな。」

「お姉ちゃん…やっぱりバレてたか…」

「アイツなら無事だ。…血ィ抜かれたりはしたみたいだがな。」

「…」

「学園長が秘密裏に色々と動いたから大騒ぎになったりはしてねェよ。」

「…君の言う通りだったよ。私はトレーナー君をボロ雑巾のように扱っていた。結果、こんな大事に…」

「だろうな。しかし、アイツもアイツだ。てめェのことを優先に嫌な顔せずにされるがままだったンだろ?だからオレから言わせればどっちもどっちだ。…ほら、設計図と例の『合成因子』のデータを寄越せ。例の腕輪はオレの方でやッてやる。」

「…本当に感謝する。」

「代わりに今までの研究データを見せてもらうからな。」

 

こうしてエアシャカール協力の元、新薬と新型の腕輪の開発が始まった。そして、3日後…予定していた物は完成した。

 

………

 

「…よし!これでトレーナー君は元に戻る!」

「ンで、それでどう回収するつもりだァ?」

「あぁ、まずはこの薬を飲ませてトレーナー君の体内に残った『合成因子』とあるものに融合させる。」

「あるもの?」

「それを私の体内へと移し…四十三号の『合成因子』…ややこしいな。よし、今名前を決めた、『アルタイス』だ。私が『アルタイス』の『アナザー』になる。その後にこの新型の腕輪を使えば全ての『合成因子』を回収出来るはずさ。」

「体内だァ?一体どうや…タキオン!?まさかとは思うがあるものッて…!」

「…ちゃんと全て呑み込むさ。コホン、お姉ちゃんに頼んだことは終わってそうだし、今から実行してくるよ。シャカール君、ここまでありがとう。…これを」ポイッ

「…何だこれ?」

「今から30分だけ使える私のデータファイルのキーだよ。私の監視無しで見れるのは今だけだ!30分後には全てロックがかかるから…私に秘密で見たいものがあるなら早くした方がいい。心配せずとも後で私とゆっくり見てもいい。」

「だから今は見逃せッてか?…チッ、じャあ遠慮なく見させてもらう。さっさと行ッてこい!」カタカタカタ

「では、行ってくるよ。」

 

ーーー

 

とある病院の個室、暗闇の中でソウジはベッドで寝転んでいたが…

 

「ハァハァ…何だコレは!?体が熱い…クソッ…冷えピタじゃ静まらねぇ!眠れねぇし、さっき見たレースのイメージも出来ねぇ…!…フライトの差し入れが原因か?」

 

眠れずベッドのうえで1人踠くが右手は包帯、左手は点滴と思うようには動けない。生えた尻尾も短く何も出来ない。そんな中、誰かが急に現れた。

 

「…やぁ、トレーナー君?」

「タキ…ッ!!」ギュッ

「静かにしたまえ。さて…早速だかこれを飲んで貰おうか。」グイッ

「んー!」

 

ゴクン

 

「何を飲ませた?ーーぐっ!これ…さっきよりも酷く…」

「それでいいんだよ。では、始めようじゃないか。」

「何を…」

「いただきます。」ペロッ

 

………

 

30分後…

 

「………」

「さすがにもう無理か…まぁ、残りは誤差程度のものだろう。さて…後は新型の腕輪で…」ゴクン

 

ガチャ、ピッピッピッ、ピー!

 

「問題なく回収完了っと。後は私自身の『因子』を注入して元に戻すと…少し時間がかかりそうだね。」ガチャ

「…」

「トレーナー君、早く戻ってきてくれたまえ。私は君だけでなく君のご飯も食べたいのだよ。」

「…」

 

耳の位置が下がり、尻尾もなくなり、ソウジの体は人間へと戻った。そして、アグネスタキオンの体も『アルタイス』の『アナザー』から元のウマ娘へと戻る。そんなソウジにアグネスタキオンは話しかけるが返事はない。

 

「フフフ…今はゆっくり休みたまえ。では、また学園で…ぐっ!」ガクッ

「はいはいタキオンさん…早く帰りますよ…」ガシッ

「いつの間に…頼んだよ…カフェ…」

「何か臭いますね…何をしたんですか?」

「トレーナー君を…食べた…」

「…は?」

 

アグネスタキオンはそういうとマンハッタンカフェに担がれ病室から去っていった。3日後、ソウジは右手の火傷はあるものの大きな問題が治ったとのことで退院した。そして、謹慎明けのアグネスタキオンと共に1週間は研究をせずに普通のトレーニングを行った。

 

………

 

「お父…院長、あの患者さん、急に治りましたね。首の嚙み傷に…激しい体力の消耗…何があったのでしょうか?」

「…私にも分かりたくないことはある。少なくともウマ耳と尻尾が無くなり、血液検査の結果からも完全に人間に戻ったから退院させた、これが事実だ。…それにあの方は満足した、よってこの件は終わりだよ。また骨折とかで来る予感はするけどね。」

「はい…流石に次はあのような状態にはならないですよね?」

「次が無いが1番だよ。」

 

ーーー

 

場所は変わって日本ダービー…

 

『先頭はネオユニヴァース!

ネオユニヴァースが2冠達成!

2着にはゼンノロブロイ、3着はザッツザプレンティ!

ネオユニヴァース、右手を上げて喜んでいる!』

 

ワアァァーーッ!!

 

「はぁ…はぁ…うぅ!」グッ

「ロブロイ、惜しかった。」

「…オレら全員ダービー2着かよ。」

「…ますます運命を感じるな。ロブロイ、次は『菊花賞』か?それとも『天皇賞(秋)』か?」

「『菊花賞』です。ですので、その前に『神戸新聞杯』を…」

「ボリクリが去年勝ったレースか。そういえばお前はなんで『菊花賞』に出なかッたンだ?」

「…シニア級のウマ娘も出走している『天皇賞(秋)』での勝利の方が良いと思ったからだ。」

「タキオンがいなかッたら、ボリクリが1着だッたろうな。」

「…だからこそアグネスタキオンを私は越えたい。いや、越えねばならないんだ!」

「で『天皇賞(春)』にも出なかッたのか?勿体ねェな。」

「ネオユニヴァースさん…『宝塚記念』に出走するそうですよ。」

「ボリクリもタキオンも次は『宝塚記念』だったな。ははッ、今年の『宝塚記念』は面白ェことになりそうだなァ!」

 

宝塚記念は近い。




・おまけ

ネオユニヴァース…03年世代の競走馬。主な勝利は皐月賞と東京優駿。東京優駿では最後の直線から一気に伸び、同じく外から来ていたゼンノロブロイとザッツザプレンティから前を譲らず勝利。サニーブライアン以来の2冠達成となった。その後に出走したレースも掲示板内と好成績を収めるも04年の天皇賞(春)で10着と惨敗。その後、ケガにより引退し種牡馬となった。ヴィクトワールピサ、ロジユニヴァースなど4頭のG1産駒、また勝利が3歳未勝利と500万下『はなみずき賞』の2勝でありながら合計4.6億円もの賞金を獲得したサウンズオブアースがいる。


現実では問題ないと思いますが、この作品では第四十二号の『合成因子』はこうなってしまいました。トニービン3×3のインブリードを調べたのですが引っかかったのは『ロードマイウェイ』だけでしかも4×3でした。しかし、『キタノグリエル』をみてトニービンの3×3いるじゃん!となり、アドマイヤベガ×カレンチャンの『合成因子』が出来ました!まぁ、現実だとカレンチャンが生まれた時にはアドマイヤベガは既に亡くなっていたのですが…。
同じ組み合わせですが、ソウジの体内に残った第四十二号とアグネスタキオンが『アナザー』になった第四十三号は別物になります。まぁ、アグネスフライトとアグネスタキオンみたいなものです。そして今回ソウジに行ったのは…ブラックジャックのピノコにした手術の逆バージョンとでも思ってください。えーと、もっと簡単に言うとあれです、米粒が残ったお茶碗にお代わりをいれ、それを綺麗に食べきった的なあれです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。今度こそこっちはしばらく投稿しない予定です。またスプリンターズステークス辺りまでお待ちください…では、さようなら!


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第29話 『カプリティコーン』&『アルタイス』の研究終了、『アナザー』による代償

Q.何故今日投稿したの?
A.エアシャカールが実装されたから。


前回のあらすじ(?)

ソウジ「タキオンのXXX♪気持ち良すぎだっろ♪XXX気持ち良すぎだろ♪タキオ…」
アグネスタキオン「やめないか!」


タキオンメモ:『合成因子第四十ニ号カプリティコーン及び第四十三号アルタイスについて』

 

4月XX日

・誕生

→アドマイヤベガとカレンチャンの『因子』を合成し第四十二号の『合成因子』が完成した。しかし、それの色は茶色く、完全な球体ではなかった。調べるとアドマイヤベガとカレンチャンに25%同じ『因子』が含まれていたことが判明。不明なことが多いためこのまま保留…の予定だった。

 

 

・事件

→被験者Sが第四十一号『アイリスリリー』に引き続き、測定を行おうと持ち出しておりそのまま『ウマ人』となった。すぐに回収させたものの、腕輪内で『合成因子』が形を保てず液状化し、被験者Sの右手に溢れた。熱を持っており右手損失の危険があると判断し、回収中だったが腕輪を破壊。結果、被験者Sの体内に『合成因子』が残ることとなった。溢れた『合成因子』は不純物が付着したものの何とか回収した。

 

 

・特徴

→鹿毛でモコモコした体毛が現れた。触っていないため本当にモコモコしているかは不明。

 

 

5月XX日

・『合成因子』を作成

→再びアドマイヤベガとカレンチャンの『因子』から第四十三号の『合成因子』を作成。色が少し濁っていたものの形は球体となっていた。

 

 

5月XX日

・研究1

→再び私とダイワスカーレットの『因子』を合成。出来た直後の『合成因子』の熱を測定し、暗中模索で液状の『合成因子』の回収方法を探る。

 

→偶然にも垂れた合成因子がビーカーを貫通し前に作成した私とダイワスカーレットの『合成因子』に結合。同じ組み合わせなら引っ付く性質を確認。貫通したことを詳しく調べるとこの時、一瞬原子レベルで分解し結合していたことが判明。

 

 

・余談

→第四十三号の『合成因子』を紛失した。しかし研究室内にあると判断し、『合成因子』の新たな特性の調査を優先する。

 

 

5月XX日

・研究2

→液状化している私とダイワスカーレットの『合成因子』を固体にするため無理やり凝縮してみたが…固体にはならなかった。

 

 

5月XX日

・研究3

→作成時に熱が出ないように冷却しながら私とダイワスカーレットの『合成因子』を作成した。すると、色はどす黒いものの球の形をした物が完成。新しい腕輪にこの機能を追加する。

 

 

5月XX日

・研究4

→『合成因子』同士が引かれ合う特性を生かすため、『合成因子』をさらに詳しく調査。分解と結合時の波長を捉えた。

 

 

・余談2

→紛失していたと思われた第四十三号の『合成因子』を発見。そばにあったUSBのデータからアグネスフライトが『アナザー』になり、メジロブライトとセイウンスカイの協力の元、調査したことが判明。四十三号の『アナザー』の姿、測定時の映像などが記録されていた。お姉ちゃん…本当に危険なことを…だが、今はありがたく使わせてもらう。

 

 

5月XX日

・研究5

→波長より他の物に付着することが出来るかを実験。波長を出す物質を作成し、試しに私の毛髪へ『合成因子』を付着させることが成功した。また、付着している『合成因子』に近づけると優先して毛髪から離れていくことも確認した。

 

 

5月XX日

・新薬作成

→被験者Sの生体サンプル(*本人非公認)より痛みなく採取が可能な○液との融合を目標として、新薬を作成。波長を出す成分Aをカプセルに閉じ込め、胃液で溶けた後に体中を周り、『合成因子』を回収しつつ○臓へと経由し、そこで○液と合流する成分だ。

 

 

余談3

→エアシャカールの協力により、腕輪の製作を彼女へとお願いした。

 

 

5月XX日

・新薬及び新型の腕輪、完成

→新薬も新型の腕輪もシミュレーションのみで1発勝負である。

 

→第四十三号の『合成因子』に『アルタイス』と命名する。

 

 

・実行

→前準備として新薬の即効性を高めるためにアグネスフライトへ被験者Sに○○○を飲ませるよう依頼。

 

→『アルタイス』の『アナザー』になり、夜中の被験者Sの病室にて実行。新薬を飲ませ、被験者S体内の四十ニ号の『合成因子』を○液と融合させた後に○○させ、私の体内へと移動させた。打ち止めになったところで新型の腕輪で四十二号と『アルタイス』の『合成因子』をまとめて回収。その後、私自身へ『アグネスタキオン』の『因子』を再注入した。

 

→被験者Sの耳と尻尾の状態を確認。首に謎の歯形があったものの人間へと戻ったと判断し、私はマンハッタンカフェに運ばれて病室を後にした。

 

 

5月XX日

・余談4

→被験者Sが第四十二号に『カプリティコーン』と命名。

 

 

以上が『カプリティコーン』及び『アルタイス』についての報告である。

 

ーーー

 

アグネスタキオンとソウジは『宝塚記念』に向けてトレーニングをしていた。

 

「タキオン、歩幅がまた広くなっている。それだとケガのリスクも上がるし、最後まで足が溜めれないぞ。」

「あぁ…すまない。では、もう1本見てもらえるかい?」

「別に明日にしてもいいんだぞ?」

「早く普通の練習が出来るようにしたいんだ。」

「分かった、だがやり過ぎてケガをすれば本末転倒だ。次でラストな。」

「あぁ…」

「焦らなくていい、まだ4週間はあるからな?」

「…」

 

アグネスタキオンは『アルタイス』の『アナザー』になったことにより、普段の走法に支障が出てしまったのだ。アグネスタキオンは前回『ブレジーケン』の『アナザー』なっていたが、その時は走法が似ていたため特に問題は起きなかった。しかし、『アルタイス』は追い込みを得意とする『合成因子』だったためアグネスタキオンの脚質とは合わず、回収後に影響が出ている状況だ。

 

………

 

「はぁ…はぁ…」

「ほれ、スポドリ。じっとしてろ。」

「ん…んん!!ゴホッ、これロイヤルビタージュースじゃないか!」ゴクゴク

「時間が惜しいんだろ?ほら、カップケーキだ。あーん!」

「あーん…全く、私の機嫌が毎回これで取れるとは思わないことだね。」モグモグ

「この後はレースの展開とスケジュールの再確認を兼ねたミーティングだ。」

「結論は変わらないというのに…分かったよ。それで今日も…」

「はいはい…足は消耗品だからな…」ダキッ

「ゆっくり運んでくれたまえ。出来るだけ長く君とくっついていたいからねえ。」

「さっき時間が、とか言ってたのに…本当に可愛いなタキオンは…」

 

その日もトレーナーとお姫様抱っこでいちゃつくマッドサイエンティストが目撃された。



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第30話 愛と憎悪は表裏一体

Q.何故今日は2話もあるのでしょうか?
A.この作品でのアグネスフライトのキャラを公式より先に出したかったから

さて…果たしてアグネスフライトはエアシャカールの育成エピソードに出てくるかどうか…出てきたらこの作品のフライト、書き直すかもしれないですね!メジロブライトやヤマニンゼファーみたいにサプライズで出てきて欲しいな…。普通に考えれば出てくるのは発表されたタニノギムレットやシンボリクリスエスだろうけど…。まぁ、出てこなかったらもう来ないと思ってます。


アグネスフライトはいつものようにアグネスタキオンへと抱きついていた。

 

「タキオンちゃん~、今日は何か実験とかある?」ダキッ

「お姉ちゃん…みんなの前で恥ずかしい…。宝塚記念が近いからそれまではトレーナー君との調整だよ。良かったらお姉ちゃんも一緒に…」

「んー、お姉ちゃんは2人の邪魔をしたくないからいいかな~。ただ、ケガだけはしないようにね?じゃあね♪」

「あ…あぁ…」

 

「あの2人…やはり仲がいいな。私達もあれぐらいスキンシップを取るべきだろうかブライアン?」

「いらん。それに…あれは仲がいいのか?」

「ん?アグネスタキオンも嫌がっているようには見えないが?」

「…まぁ、姉妹の形はそれぞれあるのだろう。」

「ブライアン?どういう意味だ?」

「…私の姉が姉貴で良かったという話だ。」

 

………

 

「はぁ…はぁ…」

「お疲れ様…走法は後少し戻りそうだな!今日はここまでにしておこう。」

「了解した。…クールダウン後にマッサージをお願いしたい。」

「何処かに違和感があるのか!?」

「ちょっと右の腿が…クールダウンをする分には問題ない。」

「分かった!無理はするなよ?」

「あぁ…」

 

 

その日の練習場、そこにはアグネスフライトが1人、アグネスタキオンとソウジを眺めて、ため息を出していた。

 

「はぁ…タキオンの奴。早く元の走りに直せよ、クソが!」

「おいおい…素のお前が出てるじャねェか?」

「ー!誰だ?」

「オレだよ。」

 

アグネスフライトが振り向くといたのはエアシャカールだった。

 

「何でここに…」

「さっきまでボリクリやロブロイといたンだよ。で、何かあッた…いや、何があッたンだ?猫被るのに疲れたとかか?」

「別に…最近タキオンちゃんとあまり話せてないからよ。宝塚記念に集中して欲しいからね。」

「被らなくていいって言ッただろうが…それだけか?」

「それだけよ。ただ今の私はタキオンちゃんの側にいないと生きていけないの。」

「あァ!?その台詞、ケガした直後にオレにも言って無かったか?」

「そうね…私…そういう女だから…」

「…」

「タキオンちゃんが無敗のまま皐月賞を勝ってみんなに評価されていた。でも私たちは?クラシック級でのG1レースはオペちゃんやドドウちゃんに圧倒的に差を付けられ、シニア級ではカフェちゃんやジャンポケちゃんにジャパンCや有マ記念を負けた。…最弱の世代何て呼ばれたね。…それに加えてターフを去ったタキオンちゃんがずっと評価され続けたことが耐えれなかった。」

「…お前、意外と繊細なンだな。オレによく絡んで来たくせに…」

「ケガをしていたから…というのもあったからね。だから私はシャカールに依存した。『タキオンちゃんがなれなかったダービーウマ娘になった』ってことを常に考えていないと私は私でいられなくなる…そう思ったからね。」

「…で復帰したジャパンCでタキオンに勝ててそッちに依存したと?」

「私って悪運だけは強いのよ?ケガしている間に『本格化』が終わってしまったけど、勝てなかったであろう天皇賞(秋)はタキオンちゃんのお陰で出ずに済んだ。ジャパンCで勝てたのも走行妨害覚悟で無理やり大外に出れたから…まぁ、それでもタキオンちゃんに勝てたのは本当に奇跡だと思うけどね。でも勝ちは勝ち…だから引退した。」

「つまり、お前は『タキオンに勝ったウマ娘』で自分の価値を守りたいッてことか…けッ!オレから言えばくだらねェなァ。タキオンが憎いのに無理やり自分を抑え、可愛がる意味が分からねェ!」

「タキオンちゃんが勝つ度に私の価値が上がるのよ?そのためなら私は何だってするつもり。心臓くれって言われればあげるし、短距離だろうがダートだろうがどんなレースだって出ろと言われれば参加する。…言わないだろうけど。」

「結局、お前って何がしたいんだ?自分をみて欲しいのか?タキオンに勝って欲しいのか?」

「さてね…もう私にも分かんない。だから、タキオンちゃんが負けるまでは今まで通りタキオンちゃんを支えるつもりよ。負けるか負けずに引退したら…シャカールと一緒にファインちゃんやクリスエスちゃん、ロブロイちゃんを手伝う予定。」

「いらねェし、どれだけ先の話だと…」

「遅くても今年のジャパンC辺りかな~」

「は?」

「そこでタキオンちゃんの『本格化』が完全に終わるからね。お母さんもオークスの後にケガで引退してるし、そもそもの話…私の家の血統、シニア級で走れるのが奇跡だから。」

 

ーーー

 

別の日、ソウジはアグネスフライトの姿が見えたので声をかけることにした!

 

「おーい、フライト!今、何をしているんだ?」

「風紀委員の今日の活動が終わったので、ちょっとタキオンちゃんの練習をみていただけですよ~」

「せっかくだからタキオンと走ってみないか?」

「すみません、今は走るタキオンちゃんをみたい気分ですので…また今度で!」

「分かった。もし、気が変わったら教えてくれ…タキオンが一緒に走りたそうにしてたからな~」

 

「変わる訳ねぇだろ…また、噛みつくぞ。」ボソッ

 

アグネスフライトはそう小さく呟くとアグネスタキオンとソウジの練習が終わりまでずっと見続けた。

 

ーーー

 

安田記念にて…

 

『抜け出してきたのはローエングリン!

残り200m!

アドマイヤマックスが2番手に来る!

ここで大外からアグネスデジタル!

アグネスデジタルだ!

そのまま差しきってゴールイン!

タイムは…何とレコード記録です!

アグネスデジタル、これでG1レース6勝目!』

 

アグネスデジタルがレコードタイムで勝利した。そしてインタビューを受けていた。

 

『おめでとうございますアグネスデジタルさん。』

「ありがとうございます。」

『ずばり、勝てた理由は何だと思いますか?』

「やはり、経験と…スタミナ、勝負根性…何よりウマ娘ちゃんたちへの愛です!」

『オグリキャップさんのレコードタイム更新及び、G1レースで6勝目…すごいですね!後1勝すればシンボリルドルフさんやエイエムオペラオーさんと並びます。次のレースはどのレースを出走予定ですか?マイルCSですか?それともダートのG1レースですか?』

「はい、宝塚記念です。」

『…はい?』

「いやー、どうやら私を追いかけているウマ娘ちゃんがいるらしくて…ちょっと、ここで迎え撃つのもいいかな~、と思いまして!」

『その相手はまさか…』

「はい、アグネスタキオンさんです!ということでよろしくお願いしますね。」

『はいぃぃ!?』

 

アグネスデジタルの発言は大きく世間を騒がせた。それは同じくテレビをみていたアグネスタキオンも同じだった。




昨日、キタノグリエルが走っていたけど…勝てなかったな。連闘もあるのかな?でも…最下位じゃなかったからよし!後は…キタちゃんとダイヤちゃんの産駒を応援しました!そのうちキタサンブラック産駒のラヴェルが勝利!これからに期待したいですね~。


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第31話 とある星の話をしよう

どうも、昨日間違えて32話をあげてた作者です…ごめんなさい。気づいてすぐに消しました。

さて、今日は札幌記念ですね。私の本命はソダシです。後はウインマリリンやジャックドールも気になるところ…。エアグルーヴ以降連覇している競走馬がいないのでソダシに達成して欲しいですね。

勝ったのはジャックドール…お疲れ様でした。

今回の話は…ハルウララの回です。フェブラリーSに向けてアグネスタキオンと併走した後に彼女はどうなったかを書きました。…どうぞ。


『未勝利の星』ハルウララ、彼女がそう呼ばれたのは3ヶ月前までのことだった…ついに彼女は勝ったのだ。地方の高知レース場にて83回目の挑戦…1週間越しの連闘…そこで彼女は勝利の味を知ることとなる。

 

『ハ…ハルウララ1着!

つ、ついに初勝利!』

 

ワアァァー!

 

「ウララちゃんおめでとう!」

「凄いぞ!!」

 

周りは未勝利戦とは思えないほどの大盛上がり。ハルウララも大きく喜んだ。

 

「や…やったー!!」

 

パチパチパチパチ

 

彼女の勝利にたくさんの拍手が送られた。

 

………

 

さらに1週間後の高知レース場…ハルウララは再び出走していた。勝とうとも彼女のハイペースなローテーションは変わらない…3連闘である。観客は更に増えている。レースの結果はというと…

 

『ハルウララだ!

ハルウララ、連闘でありながらも…連続1着ゴールイン!』

 

「勝った!勝ったーー!!」ピョン

 

ざわざわざわざわ

 

「勝った…の?」

「連続で…嘘だろ?」

 

「みんな、応援ありがとう!!」

 

『………』

 

目の前のことが信じられない観客たち、だがハルウララの一声でこれが現実であると理解する。

 

ワアァァー!

 

「おめでとう!」

「これからも頑張ってくれー!」

 

その後もハルウララはハイペースなローテーションで出走を続けついに重賞をも勝ち取った。そして…週末、彼女は中央へとやってくる。

 

ーーー

 

「わぁ!タキオンちゃん、やっぱり速いね!」

「ウララ君こそ随分と速くなったじゃないか。…これは遅めの『本格化』かな?」

 

調子を取り戻したアグネスタキオンはハルウララとダートコースを併走していた。そして、ハルウララの成長に驚きを隠せないでいる。

 

「えへへ…何かね、体にギュンって力があふれてきて、ドンッ、って感じで前に行けるんだ♪そしたら、1着を取れて、みんなが喜んで…何だか凄く気持ちいいんだ~♪」

「ギュンでドンッ、か…実に興味深い。」

「今度ね、ちゅーおーのじゅーしょーにも出るんだ♪」

「中央の重賞?えーと、近いダートだと『エルムS』のことかな?」

「違うよ…えーと『プロメテウスS』って名前だったような…」

「…『プロキオンS』のことかい?」

「そう、それそれ!とれーなーも今ならいい勝負ができるかもって、言ってた!」

「今週末じゃないか!君は2週間前にレース出たばかりだろ?」

「大丈夫!ちゃんと走るから見にき…あ!タキオンちゃんは『宝塚記念』が近いから来れないか。でもお互い頑張ろうね♪」

「それは勿論だが…ケガだけはしないでくれるね?」

「大丈夫!私はケガしないがんじょーな体だもん!とれーなーもそれが私の武器だって言ってた!」

 

………

 

一方、ソウジはハルウララの担当トレーナーである"コハル"の話を聞いていた。

 

「ハルウララが勝てたのはタキオンのお陰だ?アイツは特別なことはしていないぞ?」

「ではなくて、『フェブラリーS』に向けたアグネスタキオンさんがウララと並走したことでいい刺激になったからだと思うんですよ。」

「にしても勝った後もあんなに激しいローテーションって…俺なら怖くてできないわ。」

「…これでも抑えれてる方なのですよ。あの娘…毎日走りたいとか言ってきて…私も毎回ケガしないかハラハラしてみています。」

「まぁ、現にケガしたとか聞いたことないが…中央で88戦とか考えられないな。とはいえ、ついに花が開いたって感じか?」

「えぇ…私、初めてトレーナーやってて良かったと思えました。…勝てたのは私のお陰ではないのですが。」

「いや、お前の成果だよ。俺からすればタキオンの並走してくれただけでもありがたい話だ。タキオンもタキオンでハルウララからの刺激で『フェブラリーS』を勝てたんだ。お互い様だろ?」

「ソウジさん、我が儘を1ついいですか?」

「何だ?」

「週末の『プロキオンS』にウララが出走します…アグネスタキオンと共に見にきてくれませんか?」

「タキオンのいい刺激になりそうだな…いいよ。観客席から応援するよ。」

「ありがとうございます。」

 

ーーー

 

そして週末の阪神レース場…『プロキオンS』の日だ。パドックでハルウララはいつものように笑顔で振る舞い、いつものようにゲートへ収まり…レースが始まった!

 

………

 

『先頭はスターリングローズ!

ツルマルファイターが追い込むがこれはセーフティリード!

スターリングローズが今ゴールイン!

2着ツルマルファイター、3着インタータイヨウ!

ハルウララは…4着!

何という好走!』

 

ワアァァー!

 

「流石スターリングローズだ!」

「連覇したな!」

「これからも勝ってくれよ!」

 

観客たちは優勝ウマ娘『スターリングローズ』を褒める一方で…

 

「ウララちゃん、お疲れ様!」

「掲示板に乗るなんて凄いぞハルウララ!」

「あの地方からの娘…凄いな…」

「次のまたこっちで走ってくれよ~!」

 

ハルウララを掲示板入りにも盛り上がっていた。

 

「…何あれ?アイドルか何か…ローズ?」

「ハルウララ…やっぱり、本物は超可愛い~!!抱きしめたい~!」ダキッ

「ローズ!?もう抱きしめてるよ!」

「可愛い!可愛い!可愛い!」すりすりすり

「わっ!ローズちゃん…いきなりはビックリするよ!ハグしたいの?じゃあ、ウララもギュッ、ってしてあげるね♪」ダキッ

「あ…!柔らかい…最高…」フニャ…

「ローズちゃん!?大丈夫?」

「はぁ…何やってるのよローズ…」

 

そして、今1人、ハルウララのファンが表れた。

 

ーーー

 

アグネスタキオンとソウジはハルウララのレースを見ていた。

 

「…」

「…」

「タキオン、来週お前はここを走る…イメージ出来るか? 」

「そんなことは既に想定済みさ。それよりウララ君の成長が気になるところだよ。」

「確信があるのか知らないが…レースに絶対はない。ジャパンCでの敗北を忘れたとは言わせないぞ。」

「…だから私はもう負けないのだよ。ところでトレーナー君が注意するべきと思うウマ娘は誰だ?」

「金鯱賞を勝ったタップダンスシチー、それに凄い末脚で迫った『ツルマルボーイ』。後は…有マ以降走ってないシンボリクリスエスだな。」

「ミラクル君は?」

「意識してない訳じゃないが…さっき言ったタップダンスシチーとシンボリクリスエスにネオユニヴァース、アグネスデジタルの次くらいかな。結局はどうなるかわからないが。」

「私が注目しているのはツルマルボーイ君だよ。毎回みれる追い込みによる上りの加速力…実に興味深い。」

「脚質もあるが…上りはタキオンよりも速いからな…とはいえ、圧倒的に差を広げれれば怖くはない。」

「さて、長々と話したが…私に負けはない。結論はそれだけだよ。」

「レースに絶対は無いが…俺も同意見だ。」

「ちょっと走りたくなってきたよ…付き合ってくれるね?」

「ハルウララに刺激されたようだな…いいよ。」

 

学園へと戻り、アグネスタキオンは『エンプレススズカ』の『ウマ人』となったソウジと併走をし…ソウジは左足を骨折した。




・おまけ

スターリングローズ…アグネスタキオンの1つ上の世代の競走馬。主なG1勝利はJBCスプリント(2002)。青葉賞までは体質や気性が安定せず短距離ダートへと路線を変更する。その結果安定した成績を出し続けダート32戦中27回(内6回は重賞勝利)入着した。主な産駒はG2アルゼンチン共和国杯を勝ち取ったアスカクリチャン。当然だが…ハルウララとの絡みは特にない。


次回はスプリンターズステークスで更新予定です。ここまで読んでいただきありがとうございました。


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第32話 帝王賞にて黄金は…、新名物不沈艦特製塩焼きそば誕生!

どうも…何度も投稿をミスしている作者です。…本当にすみません。書き溜めを作ろうとしたのですが…溜めこむのは良くないのですかね?
と、いうわけなので…毎朝9時投稿であるだけいきます。今まで溜めて分、全部出しきります。スプリンターズステークス?まぁ…間に合わなかったらその時はその時で!

さて本編の話ですが…宝塚記念までずるずると話を引き伸ばしてますね。ですが、帝王賞は入れたかったので…どうぞ!


ハルウララが『プロキオンS』へ出走した数日後、アグネスタキオンとソウジは鑑賞室にてとあるレースを見ようしていた。

 

「…タキオン、すまない。俺がケガをしたばかりに…現地で見たかっただろ?」

「君が気にする必要はないとも。元々ここで見るつもりだったからね…そろそろだよ。」

「うん。」

 

『さぁ、次は大井9R『帝王賞』!

本日のメインレースです!

フェブラリーSで好走を見せた後、重賞を勝ち取ったゴールドアリュールに注目が集まります!』

 

『アリュールさん頑張れ!』

 

「この声は…スマートファルコンか?」

「どうやら現地でみているようだね。」

 

彼女たちが見ようとしているのは帝王賞。フェブラリーSにてアグネスタキオンと戦ったゴールドアリュールが出走するのだ。

 

「うーん、今回は金運は関係ないけど…ここにあるのは不味いから西側にして…」

 

「ん?」

「アイツは…何をしているんだ?」

「さぁ…だが、少し興味が湧いてきたよ。」

 

鑑賞室の設備を移動させているウマ娘がいた。

 

「おいお前、…何をしている?」

「あ、どうもトレーナーさん。実はアリュールさんに良くない氣が回ってて…少しでも風水で良くしようと…」

「風水だ?ここでしても効果あるのか?」

「ほほぉ…風水ね。オカルトには疎いが興味深い。」

「風水はオカルトじゃないよ!…あ!もちろん、レースが終われば元に戻すからね!だから今だけは…」

「何、君を止めたい訳じゃないさ。続けたまえ。」

「あー、俺からは言えるのは…みんなの見るレースの邪魔にならないようにね。」

「ー!ありがとう。ここに緑の物…緑の物…今回はサボテンでも置いて…」

 

そのまま彼女は作業へと戻った。そして…ついに『帝王賞』が始まった。

 

『スタートしました!

バラついたスタート…先頭を取ったのはネームバリュー!

ゴールドアリュールは様子見つつの2番手…フェブラリーステークスと同じ作戦でしょうか?』

 

「王道の先行策だね。」

「このままの位置で最後まで行くつもりか?」

 

「…あぁ、もうダメだ。うぅ…今の私にはどうすることも…」ガタガタ

 

先ほど風水と言っていたウマ娘の動きが急に止まり、青い顔で体を震わし始めた。

 

「…お前、大丈夫か?」

「ごめんなさいアリュールさん…私は無力で…」ガタガタ

「おい!」

「うるさいよトレーナー君。もうすぐ最終コーナーだよ。」

 

『最終コーナーカーブ!

先頭は逃げるネームバリュー!

それを外からゴールドアリュールが捉えにかかる!

ーーなっ!』

 

「伸びてこない!?」

「いや、これは…!」

 

2番手をキープし続けたゴールドアリュールだか最終コーナー後に変化が起きた。ペースが一気に落ちたのだ。

 

『ここでゴールドアリュールは後退!

先頭はネームバリュー。

ビワシンセイキが追い込みをかけ、2番手へとあがってくる!

しかし、届かない!

ネームバリューが逃げきり1着ゴールイン!

2着にビワシンセイキ!

1番人気のゴールドアリュール、今ゴールし…胸を抑えて倒れた!

…大波乱の展開になりました。』

 

ザワザワザワザワ

 

「アリュールさん…どうしたのだろう?」

「…熱中症かな?」

「絶対ただ事じゃないよ!」

 

鑑賞室で見ていたウマ娘たちが騒ぎだす。それを担当トレーナーが静めに走る。アグネスタキオンにも少なくない動揺がみられる。

 

「一体、何があったんだ?」

「推測でしかないが…喘息だ。多分、最初から呼吸が上手く出来てない状態で走っていた。…前回の『アンタレスS』の後に何かあったのか?」

「アリュールさん…」ポロポロ

 

風水で運気を変えようとしていたウマ娘『コパノリッキー』が力なく項垂れ涙を溢す。

 

「…タキオン、悪いがこの子を頼む。」

「分かったよ。トレーナー君は今からどうするつもりだい?」

「俺は…今日のところはタクシーで家に帰るよ。『宝塚記念』も近いしタキオンもゆっくり休んでくれ…また、明日。」

「あぁ…」

 

杖と右足を頼りにソウジはゆっくりとその場を去っていった。

 

「あー、君。歩けるかね?」

「…」コクン

「君は確か栗東だったような…しかし部屋までは分からないな。よし、デジタル君を喚ぼう。」

 

その後、アグネスデジタルの案内の元、コパノリッキーを部屋まで送ったアグネスタキオンであった。

 

ーーー

 

消灯時間まで後少しの練習場にてヒシミラクルは自身へ追い込みをかけていた。

 

「はぁ…はぁ…」

「私に出来ることはここまでですわ。この走りがどこまでタキオンさんに近いものか分かりませんが…参考になればと思います。今週の宝塚記念、頑張ってくださいませ。」

「ミラクルさん、とてもいい走りでしたよ!私も応援しますとも!」

「ありがとうである…マックイーン殿、トプロ先輩。」

「フフフ…私と同じレースを勝利する姿、期待していますわ。」

「私は出走経験はありませんが…あなたの勝利を期待しています!」

「後、ちゃんと塩分摂っとけよ!ってことでゴルシちゃん特製のソースじゃない焼きそばを焼いてきたぜ!遠慮なく食ってくれ!」

「ゴールドシップさん!…って多過ぎですわよ!そんなに食べれる訳ないでしょ!」

「確かにお腹は空いてはいるであるがこの量は…」

「とても…とても多いです…」

 

ゴールドシップの後ろには巨大なフライパンへ山盛りに盛られた塩焼きそばがあった。

 

「いや、お前らの分はこっちだ。こっちは客の分だ!」

『客?』

 

ーーー

 

同時刻、別の練習場にシンボリクリスエスはエアシャカール、ゼンノロブロイ、ファインモーションと共に調整をしていた。

 

「ー!…タイムは?」ダッ

「今日の中では一番だ。…だからここまでしておけボリクリ。」

「…」グッ

 

しかし、納得が出来ないのかシンボリクリスエスは顔をしかめた。

 

「その…クリスエスさん。シャカールさんの言う通りここまでがいいかと。これ以上はやり過ぎに…」

「…分かった。3人とも…私の練習に付き合ってもらって悪い。」

「クリスエス、それは言いっこ無しだよ。私たちが好きで来てるだから。」

「だったらストップウォッチの1つくらい持ってくれませンかねェ…殿下サマ。」

「何もしてない訳じゃないよシャカール。今回は差し入れを用意したんだから!」

「差し入れ…ですか?」

「隊長!」

「はい殿下、既に毒味は済ませてあります故…冷めないうちにどうぞ。」

「毒味だァ?どうせまたラーメン…」

「違うよ!シャカールは私にラーメンのイメージしかないの?」

「ラーメンじゃねェンなら何なンだ?」

「…何か見えてきた。」

「大きいフライパン…あ!焼きそばですね!」

 

ファインモーションのSP達がフライパンごと差し入れを運んできた。圧倒的な量にエアシャカールたちの目は丸くなった。

 

「…何故焼きそば?」

「えーと、ね。日本って夏場は暑くて汗がいっぱい出るから塩分が必要になるんでしょ?だから摂取するには塩焼きそばが1番いいってゴールドシップが教えてくれたの♪」

「おい、殿下サマが思いっきり間違えたことを教えられてるけどいいのか?」

「彼女が作った焼きそば…普通に美味しかったので問題ありません。さぁ、冷めないうちにどうぞ。」

「…旨そうだな。」

「はい…折角ですのでいただきましょう!」

 

その後、練習場で塩焼きそばを食べるウマ娘たちが目撃され…トレセン学園内で塩焼きそばがプチブームとなった。



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第33話 貴公子は宝塚記念へと出走する

どうも、昨日にキタスイの象徴であるピエドラデルーナちゃんの登録抹消を知り、ちょっと落ち込んでいる作者です。とりあえず…買っていた馬券をしばらく財布に入れておきましょう。

さて…ようやく宝塚記念です。数ヶ月前にディープボンドを応援してたのが懐かしいな…凱旋門賞で勝ってくれないかな…。バーイードの参戦が気になりますね。とりあえず、今回は前編ですので…どうぞ!


宝塚記念…阪神レース場で行われる春のグランプリと呼ばれるG1レース。そこでアグネスタキオンはファン投票で1位を取り、1番人気での出走となった。

 

ーーー

 

「…」

「ゴールドアリュールの件、まだ気になるのか?」

「レースへと走る以上、ケガは常に付いてくるのは分かっていたことだ。しかし…」

「念のため、控え室でも足を見てやる。ただ、2度とお前にケガをして欲しくないからな…無理だけはするなよ?」

「分かっているとも。」

 

………

 

出走直前、最後の打ち合わせが終わり、ソウジはアグネスフライトに連れられ自分の席へと向かい、控え室で1人になったアグネスタキオンにジャングルポケットが訪ねてきた。

 

「やぁ、タキオン!調子はどうだ?」

「ジャンポケ君…問題無いとも。今回も私が圧倒的に勝つだけさ。」

「で、その靴で走るつもりか?」

「ー!」

 

アグネスタキオンが履いていたのはジャングルポケットからもらったウイニングライブ用の白いハイヒール…無意識だったようだ。

 

「…もう勝った気でいるとは…ここまで慢心しているつもりは無かったよ。」

「違うなタキオン、それは緊張だよ。」

「緊…張…?私がかい?」

「ハハハ…直前に気づけただけ良かったじゃないか?シンボリクリスエスにヒシミラクル、アグネスデジタルと君をライバル視している強力なウマ娘も多い…緊張しないのが不思議な話さ。ほら、深呼吸して!」

「すぅー…はぁー…」

「少しは落ち着いたかな。君は君の走りをすればいい…応援してるよ!これあげる!」

「これは…飛行機のプラモデル?」

「いや、折り紙で作ってるから…紙飛行機?」

「手先…器用過ぎないかい?」

 

ハイヒールに続き、ジャングルポケットは折り紙での作品をタキオンへと渡す。

 

「フクキタルから聞いた今日の君のラッキーアイテムだよ。」

「飛行機…お姉ちゃん…」

 

そして、アグネスタキオンはターフへと向かった。

 

ーーー

 

『さぁ、今年もやってきました春のグランプリ『宝塚記念』!

今年は誰が掴むか夢の舞台。

私の夢は…メジロマックイーンです。』

『あなた、天皇賞(春)でも同じことを言ってませんでしたか?

コホン、今年は参加するウマ娘は全部で18人…初のフルゲートでのレースとなりました。

ここで人気上位のウマ娘たちを紹介していきましょう。』

 

『まずは前回の『安田記念』にてレコード勝ち…アグネスデジタル!』

『G1レースを6勝している強者です。

今回のレースであのシンボリルドルフとテイエムオペラオーに並ぶかどうか…期待しています。』

 

『続いて最近絶好調のタップダンスシチー!』

『今年はツルマルボーイから猛追をかわし、金鯱賞を勝ち取っています…初のG1勝利になるか注目したいですね。』

『ゲート番号は17番…外の方ですね。』

『いかに自分のペースで走れるかが彼女にとっての課題だそうです。』

 

『3人目は今年の『皐月賞』と『東京優駿』を勝利しているネオユニヴァース!』

『クラシック級で勝利したウマ娘はまだいませんからね…期待は大きいですね。』

 

『続いて『大阪杯』『天皇賞(春)』、『金鯱賞』と好走を見せたツルマルボーイ!』

『上り最速のウマ娘ですね。

いかに気持ちよく仕掛けれるかが勝利への鍵になるでしょう。』

 

『そしてG1レースでの勝利はまだ無いものの『天皇賞(秋)』2着、『有マ記念』2着と共に好走を見せた、シンボリクリスエス!』

『ファン投票は7位と伸びなかったもののネオユニヴァースやアグネスデジタルを抑え、今回は2番人気です。』

『確かな実力はあるのですが…3年前のメイショウドトウを思い出しますね…』

『はい、ですが注目すべきウマ娘です。』

 

『6人目は私の一押し!

ファン投票2位を獲得しましたヒシミラクルです!』

『『菊花賞』、『天皇賞(春)』とG1レースを2勝したウマ娘ですね。

しかし人気は7番…春を締めくくる猛者たちが集まる今回のレースで強さを見せて欲しいです。』

『1度は偶然、2度は奇跡、3度目は…さぁ、運命の女神よ!

彼女にミラクルな勝利を!』

『ちゃんと実況してくださいね?』

 

『コホン、失礼しました。

最後に紹介しますのは『天皇賞(秋)』から復帰し1着を取るも、『ジャパンC』では2着。

そこからの『有マ記念』、『平安S』、『フェブラリーS』と重賞3連勝しておりますアグネスタキオンです!』

『芝、ダート共にG1レースを勝利しています。

現状、日本で最強のウマ娘と言っても過言ではないでしょう。』

『ファン投票、人気共に1番…さてこの期待に答え、春秋の『グランプリウマ娘』になることは出来るのか?

ゲート番号は7番です!』

 

ーーー

 

「…」

「人事は尽くした!今日は我輩が最強となる日…さぁ、アグネスタキオン!勝負である!」

「はぅ~!ミラクルさんのライバル宣言いただきました~!ですが今回の私は1人のウマ娘…タキオンさん!私があなたに勝ち、G1レース7勝のウマ娘になります!」

「…」

「タキオン殿?」

「タキオンさん?」

「…あぁ、全力で来たまえ…相手が誰であれ勝つのは最速の私だよ。」

『えぇ(はい)!』

 

そして、全員ゲートへ入り…ファンファーレが鳴る。ついに『宝塚記念』のゲートが開かれた。しかし…

 

「ー!」

「え?」

「おいおい…」

 

ザワザワザワザワザワ

 

『な、な、何と!

アグネスタキオン!

アグネスタキオンが大きく出遅れた!』

 

波乱の幕開けとなった!



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第34話 最悪のスタート…貴公子よ、軌跡を残せ!

宝塚記念の後編です。

「アンラッキーセブン」、発動!


『アグネスタキオン!

アグネスタキオンが大きく出遅れた!』

 

ざわざわざわざわ

 

「タキオンちゃん!?」

「…あんな出遅れ見たことありません。ソウジトレーナー…あなたの指示ですか?」

「…嘘だろ?…何かあったのか…タキオン…」

「あなたの指示でもない…!タキオンさん…何を考えているのですか…」

 

目の前のことが信じられず、唖然となるソウジたち。それでもレースは進んでいく。

 

『アグネスタキオンは最後方からのスタートとなりました。

先頭はマイソールサウンド、バランスオブゲーム、アサカディフィート、内からタップダンスシチーが続く。』

『縦長な展開ですね…中段の集団からアグネスデジタル、シンボリクリスエス、ヒシミラクル。

第1コーナーに入ります。

後ろの集団にネオユニヴァース、ツルマルボーイ、ファストタテヤマ…最後方にアグネスタキオン。

このままのペースで行くようで…あ、アグネスタキオンがファストタテヤマをかわしてツルマルボーイの後ろに来ました。』

 

「アグネスタキオン、もっとペースを上げろー!ツルマルボーイよりは前に出ろー!」

「シンボリクリスエス!いけるぞ!落ち着いていけー!」

「アグネスデジタル頑張れ!」

 

『さぁ、もうすぐ第3コーナー!

先頭はマイソールサウンド!

ここでシンボリクリスエスが上がってきたか?

私の夢のヒシミラクルがネオユニヴァースと共にアグネスデジタルをかわした!』

『イーグルカフェ、ツルマルボーイ、アグネスタキオンと後方のウマ娘たちも仕掛けてきました!』

 

『第4コーナーカーブ!

前と後ろが入れ替わりました!

先頭変わってタップダンスシチー!

内からシンボリクリスエス!

マイソールサウンドとバランスオブゲームは後退でしょうか。』

『外からダンツフレームとヒシミラクルが追い込んで来ます!

さらにその外からもネオユニヴァースとツルマルボーイも…なっ!

アグネスタキオンだ!

大外からアグネスタキオンも来ています!

追い込み勢が内にいるウマ娘たちを次々とかわしていく!』

『先頭は変わってヒシミラクル!

ツルマルボーイがさらにペースを上げてきた…それらをまとめてアグネスタキオンが捉えにかかる!』

『ーーアグネスだ!

アグネスタキオンがまとめて撫で切り…1着ゴールイン!』

 

ワアァァーー!!

 

『1番人気アグネスタキオン、ファンの期待に答えました!』

『出遅れがありながらも何という末脚!

上り3ハロンは…はい?

33.9!?

阪神2200では聞いたことのないタイムです!』

『…ツルマルボーイ以上の上りタイム…アグネスタキオン、これは実は彼女の作戦だったのでしょうか?

まだまだ底が見えません!』

『ちょっと待ってください!

彼女が走った跡が…ここからでも確認できます!

これはまさか!

アグネスフライトが『ジャパンC』で残した…』

 

ーーー

 

場所は代わって走り終えたレース場。肩で息をするアグネスタキオンにヒシミラクルが近づく。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「…アグネスタキオン、我輩の完敗である。このような奇策を持っていたとは…予想外である。先行を得意とするそなたが追い込みだなんて…」

「…作戦じゃないんだ。」

「え?」

「…純粋に出遅れてしまったんだ。何でそうなったかはもう分からない。どうすればいいか…頭が真っ白になってしまった…」

「…嘘であれ、真実であれ、運命はタキオン殿を選んだ。しかし、そなたの本気の最速が間近で感じられて…我輩はもっと強くなりたいと思ったのである!また、戦ってくれるであるか?」

「もちろんだ…あ!」

「どうしたである?」

「蹄鉄が…壊れてしまったようだねえ。ウイニングライブ用の靴はあるから問題はないが…」

「…え?こんな壊れた方するのであるか?」

 

そこには右側が少し凹んで外れた蹄鉄があった。

 

ーーー

 

場所は変わって観客席、強張った顔でレースを見ていたジャングルポケットの緊張が解ける。

 

「勝ったか…はぁ、良かった~」

「ジャンポケ先輩!?確かにすごい末脚だったけど…」

「…タキオンの出遅れ、多分私のせい。」

「はい?」

「緊張してるって言ったからそれでモヤモヤさせたっぽい。余計なことしたな、って思った。」

「…それ、ジャンポケ先輩関係なくね?」

「ジョーダン、君もデビューすれば分かるよ。小石1つでもレースの展開は大きく変わるからね…『本格化』までに万全な状態にしておかないと。特に君は爪が…」

「分かってるし!もうすぐ夏休みだし夏合宿で…」

「期末試験…赤点は回避出来そうか?」

「…今回も助けてください。」

 

ーーー

 

同時刻…同じく観客席にてソウジたちはアグネスタキオンの末脚に驚いていた。

 

「タキオンさん…勝ちましたね…」

「…あぁ。…トレーナーとしてこんなこと言うのはどうかと思うが、勝つのは絶望的だと思ってた。」

「私も…同意見でした…」

「タキオン…」

「フライト?」

「いえ、何でもありません。…少し席を外しますね。」

「あ、あぁ…」

「…フライトさん、どうしたのでしょうか?」

「タキオンが勝ったのにあまり嬉しくないような…」

「…フライトさんの顔…真っ青でしたね。」

「そうなのか?体調でも崩したのかな?それも心配だがタキオンの足…後で検査しないとな。」

 

その後、無事にウイニングライブは行われた。

 

ーーー

 

「クソッ!何であんな状態から勝てんだよ!しかも!よりにもよって!よりにもよって…私の走りで!!クソが…!?うぷっ!」

 

ーーー

 

ウイニングライブ後、ソウジはアグネスタキオンへと合流し、すぐにタクシーでダイワスカーレットが待つ病院へと向かう。マンハッタンカフェはアグネスフライトを探すとのことだ。

 

「…」

「最初に言っておくが…あの出遅れは完全に私のミスだ。情けないことにね…」

「緊張していたのか?」

「ジャンポケ君にも言われたが…分からない、が結論だ。」

「出遅れに関してはもういい。あのツルマルボーイを…1人だけを狙った追い込みは…フライトを真似たのか?」

「そうだ。出遅れた私が取るべき走りは…無理やり前に行くか、後ろから行くか…私は後者を選択した。」

「…」

「問題は誰に付くかだったよ。シンボリクリスエス君か、デジタル君か…ただ2人とも今回は前の方だったからね…よってネオユニヴァース君かツルマルボーイ君の2択になった。」

「ヒシミラクルは考えてなかったのか?」

「選択肢に無かった訳じゃないが…もし後ろに付いていたら負けていたよ。あの追い込みは私も想定外だ。…私が選んだのはツルマルボーイ君だ。」

「…」

「『アルタイス』の影響もあるだろうが…彼女と上りの最速を競おうと思った。正直な話、私も勝つのは難しいと思ったんだ。なら、記憶に残る走りとしようと…」

「それでまた怪我して、これ以降走れなくなったらどうするつもりだ!無理だけはするなって言っただろうが!…まだまだ走るつもりなんだろ?帝王賞のゴールドアリュールをみたばかりだろ…G1レースと言えど故障すれば元も子もな…!」

「…」

「怒鳴って悪い…まずはお前の足の状態を確認しよう。」

「あぁ…」

 

その後病院に着き、ダイワスカーレットに支えられながら精密検査を受けたものアグネスタキオンの身体に異常は見つからなかった。その結果を聞きソウジは大泣きし、アグネスタキオンはそんなソウジを抱きしめた。




おまけ

・上がりタイムの参考記録
2015年宝塚記念…デニムアンドルビー : 34.0秒

おそらく宝塚記念における最速の上がりタイム


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第35話 宝塚記念終了、貴公子の新たな目標

先日アグネスタキオンは『宝塚記念』を制した…つまり、グランプリウマ娘の称号を手に入れたのだ。そんな中、アグネスフライトが調子を崩したらしく、暫くは実家へと帰るとのこと。

そして現在、ソウジ(*骨折完治)は理事長に呼ばれ、理事長室にいた。

 

「見事。アグネスタキオンの宝塚記念勝利、及び春秋グランプリ制覇おめでとう。」

「ありがとうございます。…しかし、あの出遅れは俺もビックリしました。」

「だが!勝利は勝利…ところで次の目標は『BCクラシック』と聞いた。間違いないな?」

「はい、出来るだけ早くタキオンをアメリカのダートバ場を馴染ませたいと思っています。」

「うむ!それもよし…しかし!私としては事前に1戦走っていた方がいいと思っている。」

「…はい?」

 

ソウジは目を丸くする。上の者…それもトップの理事長が1人のトレーナーに意見してきたのだ。

 

「理事長!何を言っているのですか!?」

 

秘書のたづなも驚いている。どうやら彼女も初耳らしい。

 

「あくまで私個人の推奨…しかし!その目標は君にとっては3度目の挑戦でも…彼女にとっては1度目だ。そこは分かっているのか?」

「…」

「私は君の考えを知らない…故に私の希望を言おう!『ホイットニーH』にアグネスタキオンを出走させてほしい。」

「ホイットニーH…何故でしょうか?」

「表向けには君へのお節介だ!まだ噂の段階だが『ヴォルポニ』と『メダグリアドーロ』が出走するのこと。」

「ー!ヴォルポニが!?」

 

ヴォルポニとメダグリアドーロ…去年のBCクラシックで1位、2位を取ったウマ娘たちだ。そんなウマ娘が…世界最強クラスのウマ娘が出走するというのだ。

 

「無論!ただとは言わない!アグネスタキオンの実験へ使用する予算を私のポケットマネーで出してもよいし、君とアグネスタキオンとで秋のレースまで1ヶ月程の有休を取ってもよい!」

「ー!」

 

あまりに魅力的過ぎる提案にソウジは固まってしまった。自身だけでは絶対に行えなかったことを理事長が提案してきたのだ。飲む以外に選択肢はなかった。

 

「分かりました、タキオンを出走させましょう。」

「本当か!」

「ソウジトレーナー!?」

「ただし俺から要求するのは予算でも有休でもありません…」

「ふむ…では君は何を求める?私が推奨した本当の理由とかか?」

「いえ、確かにそれも気になりますが今回はいいです。それはですね…」

 

ーーー

 

ソウジは研究室へと戻る…そこにいたのはアグネスタキオン1人だけだった。挨拶もなくソウジは結論を言った。

 

「タキオン、来月アメリカにいくぞ。」

「…随分と急な話だね。BCクラシックの下見と言う名の新婚旅行かい?」

「それもありだ…じゃなくて!レースだよ!ホイットニーH!1800mのダートレースだ。」

「ー!まだBCクラシックの結論も出していないと言うのに…」

「いや、もう出てるだろ?」

「…あぁ、出ているとも。…出ているんだが…」

「出走してくれるんだろ?」

「…」コクリ

 

黙って頷くアグネスタキオン…しかし、その耳と尻尾には元気はない。

 

「フライトが心配か?だが…フライトならきっと…」

「お姉ちゃんが何を言うかなんて分かっているさ。しかし、それと私の感情はまた別の話だ…お姉ちゃん、顔も見せてくれないんだ。」

「…そうとう重症のようだな。正直原因が分からん。」

「家でもずっと部屋に籠ってるだけらしい…」

「とりあえず、アメリカに行くことだけは伝えてくれ。」

「…」

「…悪いタキオン、まだお前の意見を聞けていなかったな。別にホイットニーHに出走せずともタキオンの成績であればBCクラシックには直接でも出来るから…フライトの側にいたいなら無理に出なくてもいい。」

「いや、行くとも。…少しでも早く、海外で自分の力を発揮したい。」

「そう言ってもらえると助かる。んじゃ、今日も練習…」

「何を言ってるんだ?宝塚記念は終わっただろ…今日からは『合成因子』の実験だよ。」

「…だよな。」

「はい、あーん♪」

 

ゴクリ

 

そして、ソウジはいつものように『ウマ人』へと姿を変えた。

 

「あ、タキオン!言い忘れていたが…」

「ん?一体何かね?」

「お前がしていた特別レース、学園公認になったからな。」

「…え?」

 

ーーー

 

「アグネスタキオンの実験レースを公認して欲しいとは…欲の少ないトレーナーだ。」

「フフフ…理事長とは大違いですね。」

「…」

「理事長が気にしてますあの娘…今週またベルモンドパークに出走だそうですよ。また1着ですといいですね。」

「…そうか。」

「ヨーロッパ、ドバイ、アメリカと色々回ってますから中々会えない…ですので元気に走る姿がみれるだけでも嬉しいですよね?」

「肯定。そして、今の日本でそれを叶えれるのはアグネスタキオンだけだ。」

「さてさて…これがあの2人にどんな影響を与えてくれるのでしょうか?楽しみですね。」

「同意。」

 

ーーー

 

「…んだよコレ。送受信何かしなくても一方的にこっちが発信だけすればやりたい放題じゃねぇかよ!ハハハ…後はどう着けるかだが…力ずくでいいよな?ハハハ…ハッハッハッ!見てろよタキオン!」



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第36話 飛行機暴走、轟く悲報

今日は紫苑Sですね!私が応援するのは『ニシノラブウインク』!
後は『カヨウネンカ』と『コルベイユ』も気になるところです。

勝ったのは『スタニングローズ』…関係ないですがスターリングローズと名前が似てますね。


そのウマ娘は希望に満ち溢れていた。祖母はオークスを、母は桜花賞を勝利しており、自分もこの家のウマ娘としてG1レースを勝利したい…そして、それを次へと繋ぎたい…そう思っていた。

 

『アグネス家の五女の子…すごい才能を持っているらしいわよ。』

『四女の子も悪くはないんだけど…あの子と比べちゃうとね…』

 

そのウマ娘は少し落ち込んだ。自身よりも妹の方が期待されていたからだ。しかし、彼女はそんな妹を嫌いにはならなかった。

 

『あの四女の子、ダービーを勝ったらしいわ。』

『なら五女の子は三冠取れちゃうわね。』

 

そのウマ娘は混乱した。祖母や母に並ぶ成果を得たにも関わらず、誰も自身を認める者がいなかったからだ。彼女は妹から少し距離を取った。

 

『あの五女の子、ケガで引退するようね。』

『皐月賞を勝ったのに…三冠も取れてただろうに…』

 

そのウマ娘は悲しみながらも喜んだ。ようやく自分だけを見てもらえるからだ…しかし、妹のことを思い、また悲しんだ。

 

『あの四女の子、全然勝ててないわね。しかもケガして暫く走れないらしいわよ。』

『まぁ、ダービー勝てたのも運が良かっただけでしょ?はぁ…何で五女の子にその運が行かなかったのかしら。』

 

そのウマ娘は絶望した。走り続けても結局周りは妹にしか興味がないのだ。彼女は妹のペンを1本盗んだ。

 

『五女の子が復帰したらしいわ。しかも、天皇賞(秋)を勝利した。』

『四女の子はそれで出れなかったみたいね…まぁ、当然よね。』

 

そのウマ娘は…。彼女は妹のパンツを1枚盗んだ。

 

『五女の子…ジャパンCで四女の子に勝ったようね。』

『はぁ…どうせ運が…』

『うるせぇよ…クソ野郎共。』

『!!』

 

そのウマ娘は…

 

ーーー

 

「…ったく、嫌な夢を見たな。」

 

アグネスフライトが目を覚ました。

 

「母さん…私、今日から学園に戻るから。」

「無理はしなくていいのよ。タキオンをずっと支えてくれていたのでしょ?」

「…そんなんじゃないよ。タキオンちゃんにはあのトレーナーがいるから、私がいたところで何も変わらない。」

「何時でも帰ってきていいからね。あなたもタキオンも私にとっては自慢の娘なんだから。」

「…タキオンちゃんは、の間違いでしょ?じゃあ、行ってきます。」

「フライト…」

 

そう言ってアグネスフライトは実家を後にした。

 

ーーー

 

時は数日進み…アグネスフライトはマヤノトップガンと共に放課後のショッピングを楽しんでいた。

 

「フライトさん、フライトさん!この服、マヤに似合う?」

「んー、年齢的にもサイズ的にもまだマヤノちゃんには早いかな~。でも、大丈夫!成長してすぐに似合うようになるから!とりあえず、今回はこっちの可愛い系とかどうかな?」

「わぁ!これも素敵~!この服はフライトさんに合いそうだね。」

「フフフ…ありがとう。じゃあ、買っちゃおうかな。マヤノちゃんのオススメだし。」

「じゃあじゃあ、今度マベちんも入れて遊園地に行くときにその服着てきてよ!」

「うん、分かった。何時でも誘っていいからね。」

「何時でも…?タキオンさんとの実験はいいの?」

「暫くはレースから離れることにしたんだ。だから何時でもいいよ。」

「そう…なんだ…」

 

ーーー

 

そしてまた、数日が過ぎ…

 

「フライト先輩、一緒に並走しませんか?」

「…ごめんね。今日も走る気にならないんだ~」

「分かりました、ではまたお誘いしますね…お疲れ様です!」

 

「だから、もう誘うなっての…」ボソッ

 

アグネスフライトは1人で宛もなく学内を歩いていた。ショッピング、カラオケ、ボーリング、ビリヤード、ダーツ、遊園地、ビュッフェ、プール…思い付く限り遊びに遊んだ彼女が1人になるのは久しぶりであった。

 

「んじゃ…そろそろ実行するとしますか。」

 

………

 

アグネスタキオンとソウジはダートコースを貸し切り、『ウマ人』での並走トレーニングを行おうとしていた。

 

「今日使うのは俺たちだけだ。さて軽めの並走を行う訳だが…ダートコースとなれば『アカキユウシャ』がいいか?」

「いや、最初から『ガッツザベスト』で差しにきて…あ!お姉ちゃんだ!?」

 

そこにアグネスフライトが現れ、アグネスタキオンの尻尾がピコピコと揺れる。

 

「やっほー、タキオンちゃん。」

「もうやりたい事ってのは終わったのか?」

「はい、もう全部終わりましたので…悔いはありません。」

 

そう言い終わるとアグネスフライトは何かを取り出し…ソウジへと当てた。

 

バチッ

 

「お姉ちゃん!?」

「ー!フラ…イト?」

「チッ、まだ意識があるのかよ!」

 

ソウジの体に電撃が走る…しかし、意識を失うことはなかった。だが、アグネスフライトの突然の行動に2人は固まってしまった。そこにアグネスフライトはさらに何か…スタンガンから電撃を流す。

 

バチッ、バチッ、バチバチバチ…

 

「…かぁ。」

「ソ、ソウジ!え?一体何が…」

「…」

 

ガチャ

 

ソウジは意識を失い倒れ、アグネスタキオンはその場で完全に固まった。そんなアグネスタキオンを無視し、アグネスフライトはソウジへと首輪を付ける。そしてソウジの体が1人でに起き上がる。

 

「はい、操り人形の出来上がり~。…ったく、私と同時に動かすってのは難しいな。えーと…あった、あった。」

 

アグネスフライトが取り出したのはビーカーに入ったどす黒い『合成因子』で…

 

「ダメだ!それは私とスカーレット君の…ぐっ!」バシッ

「うるせぇよ。操作に集中出来ないだろ?黙って見てろ。」

「…」

 

ゴクゴクゴク…

 

ソウジの体はアグネスタキオンの首を掴み…そのままアグネスタキオンの目の前でどす黒い『合成因子』を一気に飲み込んだ。

 

「ー!」

「ん~、完全に操作出来なくなったな…もういいや。」ブチッ

「ソウジ…ソウジ…ああぁぁぁ!!」

 

アグネスフライトが首輪を外すと同時にソウジの体に変化が起こる。『ウマ人』として髪が栗毛へと変色したかと思えば、一気に伸びて、尻尾を含め体の後ろを覆い隠した。そして体毛にも筋肉へも変換されなかった残り『因子』は血へと変わり…鼻、口、耳、目…身体中の穴という穴から溢れ出す。その後、ソウジはアグネスタキオンの首から手を離し…そのまま崩れた。

 

「…」

「ソウジ…?ソウジ…起きてよぉ…」

「…はぁ、私に何もしないなんて…結局、タキオンちゃんの目にも私なんていなかったようね。もういいよ、さっさと私は消え…ん?」

 

「タ、タキオンさんとフライトさん!?何があったのですか!?」

 

「あぁ、スカーレットちゃん?…早く、誰か呼んできてくれる?急なことで私たち何も出来なくて…お願い。」

「は、はい!」

 

「ソウジ…ソウジ…」

「助けは来るみたいだよ。…さようならタキオンちゃん。」

 

数分後、エアグルーヴとバンブーメモリーを連れたダイワスカーレットが戻ってきた。しかし、そこいたのは、血の海に倒れた『ウマ人』とそのすぐ横に霞む声で名前を呼び続けるウマ娘だけだった。



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第37話 風に揺られる小さな茉莉花、サイボーグは飛行機へ状況を語る

今日は重賞が2つ…京成杯は『ミスニューヨーク』を、セントウルSは『メイケイエール』を応援します。

『ソングライン』?応援馬券は買いますが…勝つのはメイケイエールかと。ゴールドシップの15の法則です…去年の阪神カップから15着→1着→5着→1着と来てるので今回は5着と予想します。そんな法則、破ってくれるに越したことはないのですが…

セントウルSはやっぱり『メイケイエール』…レコード勝ち!おめでとう!
『ソングライン』は5着…これは次は1着になりそうですわ。てか、何でこんな予想が当たってしまうかな…。

京成杯…1着は『ファルコニア』。『ミスニューヨーク』、お疲れ様でした。

あなたたちの馬券は取っておきましょう。秋のレース、楽しみにしています。


アグネスフライトが逃走し3日が経ったが彼女の行方はまだ誰も掴めていない。学園は彼女の保護を優先とし、捜索を続けていた。そんな彼女は現在…げっそりとした状態で学内の花壇の入口に座っていた。そして、水やりに来たニシノフラワーは偶然にも発見したのだ。

 

「…」

「ーーーフライトさん!?ここで何を…」

「あぁ…フラワーちゃんか。うん、花を見てたんだ。茉莉花を…」

「え?えーと…」

「私が小学生の時にこの花の歌を聞いて知って…白くて小さくて…タキオンちゃんみたいだって思ったの。それで覚えてた。」

「わ、私もその授業は覚えてます。中国語での意味は今でも全然分かってないですが…」

「それは私もだよ。ところで茉莉花の花言葉って知ってる?」

「えーと、『清純無垢』…でしたよね?」

「うん正解。まさにタキオンちゃんにピッタリの花だよ…ケガするまではね。」

「え?」

「いや…アイツが担当になった時から…!」

「フライトさん?」

「で、フラワーちゃん。白色だと別の花言葉もあるの…知ってる?」

「すみません、それしか知らないです。」

「『好色』だよ。」

「こうしょく?」

「…小学生に何言ってるだろ私。まぁ、確信したのはジャパンCの後だけど、アイツは…アイツは…!」

「フ、フライトさん?」

「あー、ごめんごめん。人を呼んでもいいよ。今の私はただの殺人犯だから…」

「…」

「…心の整理をしてたんだ。私は私よりも優秀なタキオンが嫌い。それを奪ったアイツはもっと嫌い。でも…でも…」

 

バタン

 

「フライトさん!」

 

キュルルルル~

 

アグネスフライトが倒れると同時にそんな音が響いた。

 

………

 

『うるせぇよ…クソ野郎共。』

『!!』

『消えろよ~。アグネスでもねぇ奴がここに来るなよ…目障りだよ~!』

『お前…言わせておけば…』

『まだ消えてなかったの?面倒くさ…』

『!!』

 

バチッ、バチッ

 

『…』

『った…!』

『はぁ…一人は完全にもっていけないか。もっと出力上げないとな…』

『お前…こんなことして…お父様が黙って…』

『好きにすれば?告げ口しか出来ないクソ野郎さん。はい…"今の"最大出力っと!』

『ー!?』

 

バチッ

 

 

『フライト…その、昨日ってどこで何をしていたの?』

『昨日?部屋で寮のみんなと年明けのパーティ(オンライン)してたけど…』

『本家の館には行ってないのね?』

『うん?ずっと部屋にいたけど…ってか行ってたなら聞くまでないでしょ?』

『ならいいの。何でもないから…それじゃあ、私は仕事に行くから。顔を見せてくれてありがとねフライト。』

『うん、またね母さん!タキオンちゃんに伝えたいこととかある?』

『…次にケガしたら絶対に引退しなさい、とだけ言っておいて。』

『はいはい。』

『…フライトもレースから引退したからって、ケガしないようね。』

『心配してくれてありがとう。じゃあ、いってきます!』

『今からいってくるのは私なのだけど…いってらっしゃい。』

 

ガチャ

 

『やっぱり、あのクソ野郎共…私を無礼てるな?はぁ…面倒くさ…今度から会ったら何で"お話"しようかな。』

 

ーーー

 

「ー!」

 

アグネスフライトの目が開く。

 

「覚醒確認。」

「…ブルボンちゃん?」

「ボロボロになった服は現在洗濯中、よって私の服を着せています。では、そのままでいてください。…フラワーさん、フライトさんが目を覚ました。」

 

「本当ですか!?すぐにそちらに向かいますね。」

 

目を覚ましたアグネスフライト、それをニシノフラワーへとミホノブルボンが報告したことで、ニシノフラワーがご飯の乗ったお盆を持って現れた。

 

「この3日間は何も食べれてないのですよね?どうぞ!」

「…どうして?今の私はただの殺人逃亡犯だよ?」

「フライトさん…えーと…」

「つべこべ言わずに早く食べなさい!」

「ブルボンちゃんってそんなキャラだっけ?」

「…マスターの真似です。体温上昇を確認、恥ずかしいので早く食べてください。」

「いただきます…おいしい。」

「本当ですか?」

 

にこにこと笑顔になったニシノフラワーと無表情だがほんのりと頬が赤いミホノブルボンに見つめられながらアグネスフライトは食事を始めた。

 

………

 

「ごちそうさまでした。」

「では、片付けますね!」

「…うん、ありがとう。」

 

数分後、アグネスフライトは全て食べ終わり、ニシノフラワーはそのお盆を持って部屋を後にした。それと同時にミホノブルボンの目が少し鋭くなった。

 

「フライトさん、あなたは今の状況をどのくらい知っているのでしょうか?」

「全然知らないわ。…タキオンとアイツを…んん!タキオンちゃんのトレーナーにどす黒く大量の『合成因子』という劇薬を飲ませた。で、アイツは血の海を作って倒れた。…これくらいよ。」

「把握しました。では、その後の話をしましょう。ソウジトレーナーはその後すぐに自力で起き上がりました。」

「…は?嘘だろ?ウマ娘すら気絶させるスタンガンを何回も打ち込んだのだぞ!」

「…そんなことまでしていたのですね。だからこれを持っていたと…話を戻します。そのまま、血の海が出来たダートコースの掃除を始めようとしていましたが…バンブーメモリーさんによって保健室まで運ばれたそうです。」

「何なんだよアイツの体…」

「…現在ソウジトレーナーは、タキオンさんの開発していた旧型の腕輪により体内の『合成因子』の回収中。後、1週間程で終了するそうです。」

「…そうなんだ。でも私が殺人未遂をしたことには変わらないけど…」

「本人はそのように思っていませんでしたが…」ボソッ

「ん?今何言った?」

「それより問題はここからです。タキオンさんが壊れました。」

「…え?」

 

ーーー

 

一方のアグネスタキオンとソウジは研究室にした。

 

「お姉ちゃん…ご飯…」

「タキオン、それはジャングルポケットがくれたハイヒールだ。」

「お姉ちゃん…?お姉ちゃんだ!」ダキッ

「グエッ!俺はお姉ちゃんじゃない!」

「…お姉ちゃん?何でそんな冷たいこと言うの?」

「いや、その…ダイワスカーレット、早く戻ってきてくれよ…」

「そんなことよりね、お姉ちゃん!私、今日はね、また速くなったんだ!お姉ちゃんと一緒に走れる日が今から楽しみだよ!…だから、トレセンに行っても私のこと忘れないでね?」

 

「大丈夫…ちゃんとまた会えるから…もう少しだけ待っててくれ。俺が探して連れてくるから…」



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第38話 飛行機と貴公子の苦心

ユキノビジンが実装…普通に欲しいですが石が…くっ!

えー、本編ですがこの前間違えて投稿したのを少し編集したものです…どうぞ!


ミホノブルボンが現状を話し終えた直後にエアグルーヴが部屋へと入ってきた。

 

「見つけたぞフライト!来てもらうぞ!」

「タキオンちゃん…タキオンちゃん…」

「…?どうした?」

「エアグルーヴさん、私が現状を説明しました。結果、この状態になりました。」

「…はぁ。フライト、お前に何が…いや、今はいい。連れていくぞ。」

「はい、よろしくお願いします。」

 

妹の名前を呟きながらアグネスフライトはエアグルーヴと共に部屋を後にした。

 

「あれ?フライトさんは?」

「フラワーさん…先ほどエアグルーヴさんにより連行されました。」

「そう…ですか…ジャスミン茶を入れたのですが…」

 

………

 

理事長室へと連れてこられたアグネスフライトだったが…

 

「あ!タキオンちゃんだ!」ダキッ

「困惑!?私はアグネスタキオンじゃない!」ジタバタ

「フライト!理事長を離せ…なっ!」

「ここにもタキオンちゃんだ!」ダキッ

「離せフライト!」ジタバタ

「…タキオンちゃんはここまでおっぱい大きくない。…探さないと…本物タキオンちゃんを。」フラフラ

「おい!どこに行く気だ!」

「でも…おっぱい大きいタキオンちゃんも私は好きだよ。」ガシッ

「何の話だ!離せ…かっ!」

 

バチッ

 

いきなり理事長を抱きしめ、その後にエアグルーヴをも抱きしめ…スタンガンを当てた。そして、動けなくなったエアグルーヴ担ぎ上げたまま…理事長室を後にした。

 

「なっ!話はまだ何もしてない…!」

 

ーーー

 

エアグルーヴを担いだままアグネスフライトは学内を歩く。皆が怯え、道を開けるなかスイープトウショウがアグネスフライトの目の前に立ち塞がる。

 

「ちょっとフライトさん!何してるの!グルーヴさんを下ろしなさいよ!」

「スイープ…」

「…やっぱり小さいタキオンちゃんもいいな。」じー

「は?」

「ーーースイープ!逃げろ!」

「よっと!」ガシッ

「きゃっ!え?何…スイーピーに何…をっ?」

 

バチッ

 

そのままスイープトウショウを捕え、アグネスフライトは歩き続ける。

 

………

 

「フライトさん?グルーヴさんとスイープさんを抱えて何を…え?」

 

バチッ

 

「フライトさん!!学級委員長たるこの私があなたを止め…ちょわ!!」

 

バチッ

 

「風紀委員ともあろう貴女が何してんスか…フライトさん!目を覚ま…速いっス!」

 

バチッ

 

「フライトさん、闇墜ちしたか?何でそんなヴィランみたいなこと…なら、私たちが光に導いてやる!」

「ビコーさん、2人がかりで行きますよ。ミッション開始です。」

「先手必勝!必殺ペガサスキーーック!避けられた!」

「しかし、隙が出来て…ないですね。」

 

バチッ、バチッ

 

「スタンガンによる身体の硬直を確認…ミッション失敗です。」

 

………

 

「大丈夫…重くないからね…お姉ちゃんはタキオンちゃんがいっぱいいて嬉しいからね…」

 

アグネスフライトは次々と前へと立ち塞がったウマ娘を捕えては担ぎ、捕えては担ぎを繰り返し、歩いていた。その歩みは遅いものの、その異常な光景から誰も近づけない。

 

「タキオンちゃん…どこかな?タキオンちゃん…あ!あっちにもタキオンの気配だ。待っててねタキオンちゃん…」

 

「エアグルーヴさん、何があったのですか?」

「ブルボン…こっちが聞きたい状況だ!ウマ娘を何人も運んでいるフライトをなぜ誰も止められない!」

「フライトさんが持っていたスタンガン、ウマ娘にも効果があるそうです。あの時、確かに没収していたはずなのですが…」

「ったく、ゴルシでも誰でもいい!早く、フライトを止めろ!」

 

バチッ

 

「呼んだか?」

「ゴルシ!」

「悪ぃ…普通に歯が立たなかったわ…フライト強ぇな!」

「…」

「もう…おしまいだな…」

「グルーヴさん!?」

 

「こっちね?こっちからタキオンちゃんの気配が…」

 

アグネスフライトは何人もウマ娘を担いだまま歩き続けている。その先は…

 

「まずい!このままだと旧理科室に行ってしまうぞ!」

「もうさ…行かせればいいんじゃないか?目の前がタキオンに見えるフライトと目の前がフライトに見えるタキオンだろ?本物同士が会えば解決じゃね?」

「推奨しません。精神が不安定である者同士が接触すれば何が起こるか予想がつきません。」

「でもよ~、今のフライトを何とか出来るやつがいんのか?」

「か、会長ならきっと…」

 

バチッ

 

「すまない、エアグルーヴ。」

「…よし、フライト!次の角を右に曲がって見える2番目の部屋だ!タキオンはそこにいるぞ!」

「ありがとねタキオンちゃん~」

「グルーヴさんが壊れた。」

「最後の砦が突破されたからな…生徒会長、もしかしなくてもわざとやられた?」

「フフフ…どうかな?少なくとも私はここで彼女を無理やり止めるのは良くないことだと思っているよ。」

「そのセリフ…今の状態じゃ格好つかないけどな!」

「そうだね。しかし…こう担がれ運ばれるのも悪くない。」

 

そうして、研究室へと到着したフライトは…その扉を開いた。

 

ーーー

 

時間は少し前、研究室にてダイワスカーレットは幼児退行したアグネスタキオンの髪をとかしていた。

 

「お姉ちゃん♪もっと耳の方を…いいよ…もっと…もっと♪」

「すまないな、ダイワスカーレット。こういうこと…したことなくてな…」

「いえ、ソウジトレーナーやタキオンさんの役に立てるなら私も嬉しいですから…事情は聞きました。私もメジャ…コホン!姉が信頼している人にこんなことをすれば…」

「いや、別に俺は問題なかったが…」

「大有りよ!あんなショックな出来事をそんなことと言えるのはあんただけよ!」

「ダイワスカーレット、素のお前が出てるぞ。」

「ー!お姉ちゃん?急に大きな声出して…私、何か悪いことした?」

「違います…じゃなくて、違うわ。それよりタキオンちゃん、今度は尻尾を綺麗にしよっか。」

「うん、お姉ちゃん櫛使うの上手だね!大好き!」ニコッ

『かはッ!』

 

ソウジ&ダイワスカーレット…尊死!(*30秒後に復帰)

 

………

 

「Zzz…」

「寝ちゃいましたね。」

「これでしばらくの生活は何とかなるだろうが…このままという訳には行かないよな?」

「はい…しかし、下手なことは出来ませんよ。親御さんが迎えに来るまではここにいるのが良いかと。」

「…あぁ。」

「寂しいのは分かりますよ。でも…タキオンさんはあなただけの人ではありませんからね。」

「それは分かって…って違う!違う!タキオンと俺はただの担当とモルモットの関係で…」

「いいですから。普通じゃない関係はもう周知のことですから。隠す必要はないですから。」

「…マジで?」

「担当をお姫様だっこで歩くトレーナーなんてあなただけですよ?抑えてるつもりかもしれませんが…バレバレです。」

「マジか…」

「私もあんたみたいな人が担当トレーナーになってくれるといいな…」ボソッ

 

ダイワスカーレットから衝撃の事実を聞かされたソウジであった。そして…突然、部屋の扉が開いた。

 

『ーー!!』

 

「タァキィオンちゃぁんん…」

 

そこには大勢の乗客を抱えた飛行機がいた。




これで書き溜めはラストです…出し切りました。しばらくはまた、書き溜めていこう思います。早ければ凱旋門賞辺りに投稿するかもです…では、さようなら!


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第39話 姉は強し、その女帝は着せ替え人形となる

どうも、お久しぶりです。昨日スーパーサラブレッドぬいぐるみのハルウララとキングヘイローをUFOキャッチャーで取れて、ガッツザベスト!、ガッツザベスト!、と意味不明なテンションになった作者です。昨日ビターグラッセが勝ったのもあるかもしれませんが…心臓バクバクです。

そして、今日はパクパクデスワが中京3Rで、アゲマセンが中京4Rで走りますが…メインはスプリンターズステークス!私が応援するのはメイケイエールとナランフレグです!いや~、久々のG1レースですね~、心臓が止まりませんわ…って止まったら死にますね。

勝ったのはジャンダルム…親子制覇。メイケイエール、ナランフレグ…お疲れ様です。

そして夜には凱旋門賞…日本から4頭出てますが…私が応援するのはディープボンド!でもタイトルホルダーにもドウデュースにもステイフーリッシュにも勝って欲しい!海外馬で気になるのがフランスの連対100%のヴァデニとイギリスの1着が5連続のアルピニスタ…勝つためには、この2頭に勝ってくれ!

とりあえず、フライト暴走編の続きをどうぞ。


研究室へ大勢のウマ娘を抱えたアグネスフライトが現れた。

 

「タキオンちゃん♪遊びましょう♪」

 

その目に光は無く…普段のアグネスタキオンと同じものだ。誰が見ても正気でないことが分かる。

 

「ダイワスカーレット!タキオンを守ってくれ!」

「えぇ!」

 

ソウジたちの行動は早かった。ソウジがアグネスフライトの前に立ち塞がり、ダイワスカーレットがアグネスタキオンを起こさないように抱き上げる。

 

「…タキオンちゃんじゃないのがいるな。アハハハ…消さないと。」

 

アグネスフライトは抱えていたウマ娘たちをそっと下ろし…ソウジに向けてスタンガンを構えた。

 

「おいおい…フライト、本気モードじゃねぇか?」

「…やはりこうなりましたか。何とか止め…っ!ダメですね、体が痺れて動けません。」

 

ダイワスカーレットとアグネスフライトが連れきてきたウマ娘たちが見守る中…ソウジはアグネスフライトを目掛けまっすぐ突っ込む。

 

「へぇ…バカ正直に前からくるなん…て!」

 

バチッ

 

「ー!…ふんっ!」バシッ

 

「おっ!1発もらってからフライトさんのスタンガンを叩き落としたぞ!肉を切らせ骨を断つ、だな!」

「…アイツ、今は人じゃないのは分かっているけど…色々と超越してるよな。」

「でもこれでフライトさんは…えぇ!?」

 

バチッ、バチッ、バチバチバチバチ…

 

「それは予想外…」ガクッ

 

スタンガンを叩き落としたソウジだったが再び倒れる。アグネスフライトの左手にもう1つスタンガンがあったからだ。

 

「ソウジトレーナー!?」

「ダイワ、スカーレット…タキオンを、連れて…逃げろ。」

「あー、うるさいな~」ガシッ

「ー!」

「大人しくしてくれない?」

 

ガチャ

 

アグネスフライトは痺れたソウジを運び…椅子へと座らせた。そして、そのまま椅子の装置を起動させ…ソウジを拘束する。

 

「ー!何故使い方が分かる?」

「この部屋にあるものなら全部分かりますよ~…てか、喋るな。」

「ー!」カポッ

 

ソウジの口を塞ぐ。次にアグネスフライトは眠っているアグネスタキオンとそれを抱えているダイワスカーレットへと顔を向けた。

 

「さーて、タキオンちゃん♪お姉ちゃんと遊ぼうか!」

「あ、ああぁぁ…」

「Zzz…」

 

アグネスフライトの異常な行動を見ていたダイワスカーレットは完全に腰を抜かしていた。しかし、アグネスフライトはそんなダイワスカーレットお構いなしにゆっくりと近づいてくる。

 

「あ、あ…助けてメジャー姉…」

 

ダイワスカーレットは小さく声を溢す。それと同時に、誰かがアグネスフライトへと迫る。

 

「うちの妹に何さらしとんじゃ!!」

 

ダイワメジャー…ダイワスカーレットの姉。デビューはまだなものの、その高い潜在能力からすでに多くの注目を集めているウマ娘だ。

そんなダイワメジャーがアグネスフライトに渾身の蹴りを出すがアグネスフライトはあっけなくかわした。

 

「あら?タキオンちゃん?動かないようにしっかりと締めておいたのだけど…でもいいや。どんなタキオンちゃんも可愛いから!」

「メジャー姉…これ、無理じゃ…」

「知ってるスカーレット?妹のことを考える姉って最強になれるの。だから…逃げるんだよ!」

「さっきの最強の話は!?」

「条件が同じなら私でも無理!」

「でもタキオンさんが…」

「そんなことよりスカーレットが大事…行くよ!」

 

ダイワメジャーはダイワスカーレットを背負い…そのまま研究室を後にした。

 

「そういえばアイツも捕まってた中にいたよな?どうやって動いたんだ?」

「さあ?姉の為せる技じゃないだろうか?」

「姉ってすげぇな…」

 

それはそうとポツンと置かれたアグネスタキオンにアグネスフライトが近づく。それと同時にアグネスタキオンの目が開き、起き上がった。

 

「あれ?お姉ちゃんだ!どうしたの?」

「タキオンちゃん一緒に遊ぼうか♪」

「本当!?遊ぼう!遊ぼう!」

 

先ほどまでの異常な空気はなくなり、姉妹のほんわかした空気と変わる。

 

「お姉ちゃん何して遊ぶの?」

「そうだね…おままごとなんてどう?タキオンちゃんのためにタキオンちゃんいっぱい持ってきたの!」

「本当だ!お姉ちゃんがいっぱいだ!」

 

「なんで会話成立しているんだよ、あの2人!?」

「え?ちょっと待って?こっちに来てない?」

 

「お姉ちゃんのオススメはね、このおっぱいの大きいタキオンちゃんだよ!」

 

「離せフライト!」

 

エアグルーヴだ。

 

「タキオンちゃんはどれがいい?」

「私は…この小さなお姉ちゃんがいいな!」チュゥ、チュゥ

 

「ちょっとタキオン!止めなさい! 私にチュゥしていいのはキタサンだけよ!もしくは使い魔…!!」

「…んー!ん!んーー!」

「いや何言ってるか分かんないけど、私は一歩的にやられてるだけでしょ!」

 

スイープトウショウだ。2人とも完全に姉妹のオモチャとなってしまった。

 

「じゃあタキオンちゃん!おままごとしよっか!」

「うん!やろうやろう!」

 

アグネスフライトはエアグルーヴを、アグネスタキオンはスイープトウショウを抱えたまま人形劇のように遊び始めた。

 

「ただいまお姉ちゃん。」

「おかえりなさいタキオンちゃん。ご飯できてるよ!」

「今日のご飯は何?」

「タキオンちゃんの大好きなコロッケよ!」

「わーい、コロッケ♪コロッケ♪」

 

「ふが…、ふがふが。」

 

「フライト…やめろ…」

「使い魔…助けて…」

 

「会話は可愛いのに…」

「エアグルーヴさんとスイープトウショウさんの目…完全に死んでいるっス…」

「えぇ。2人に同情します。」

 

そんな様子を倒れたウマ娘たちはドン引きした様子で見ている。そんな目も気にせず姉妹はおままごとを続けた。

 

………

 

「なんか飽きてきたねタキオンちゃん…」

「そう?私はこの小さなお姉ちゃん大好きだけど…」

 

「長かったが…」

「ようやく…終わりそうね…」

 

オモチャにされていた2人の目に光が戻るも…

 

「ずっと同じ服だからかな?」

「じゃあお着替えしましょうか!」

 

救いはない。

 

「おいフライト?マジでする気か?やめろ!今ならまだ軽いバツで許してやるから…」

 

エアグルーヴに焦りが見える。しかし、アグネスフライトは目の前のアグネスタキオンしか見えていない。

 

「お着替えって…お姉ちゃん、服なんてあるの?」

「そうだ!他の服なんて無いはずだろ!」

「だから、早く離しなさいよ!」

「フフフ…実はそこのロッカーにタキオンちゃん用の衣装をいっぱい入れているの!ちょっと取ってくるね!」

『なっ!』

 

エアグルーヴとスイープトウショウは慌て始めたが、無慈悲にもアグネスフライトは服を取りに行く。それにアグネスタキオンもトコトコと付いていく。

 

「わぁ!いっぱいあるね!どの服着せる?」

「タキオンちゃんにはどの服も似合うからね~。まずは私の勝負服なんてどう?」

「可愛い~!絶対お姉ちゃんに似合うよ!」

「そう?じゃあ私はまずこれにするよ。」

 

「やめろ!そんなヒラヒラしたの私は着ないぞ!」

 

「タキオンちゃんはどれにする?」

「私は…今の服でいいや。」

 

「ほっ…」

 

「そう?じゃあ、早速…お着替えタイム♪」

「フライト?まさか本当にするつもりか?やめろ!こっちに来るな!制服を掴むな!やめろ!やめろーー!!」

 

ソウジは慌てて目を逸らした。

 

………

 

「…」

「お着替え完了!やっぱりタキオンちゃんはすごく可愛いよね~!」

「ねぇお姉ちゃん!写真撮ろうよ!私も一緒に写りたい!」

「そうだね♪写真を撮ろっか♪」

「…早く撮れ。」

「何で私まで写る必要が…」

 

カシャ

 

「じゃあ写真も撮ったし♪次の服は…」

「おい!まだするつもりか!?」

 

エアグルーヴの地獄の時間は続く。

 

ーーー

 

数十分が経過して…

 

「いっぱい遊んだねタキオンちゃん!」

「うん!私はウサギさんが1番可愛かったと思うよ!」

「へー、こういうのが好きなんだ。じゃあ、次は逆バージョンも用意しておくね♪」

「逆?」

「腕とか肩とか隠れてなかった所を隠して、お腹とか足とか隠れてた所を隠さないの!でも…私的には地雷系が一番好きかな~」

「地雷!?お姉ちゃん爆発しちゃうの!?おっぱい大きいからおっぱいが爆発するの!?」

「おっぱいは爆発しないよ。えーと、爆発するくらい可愛いって意味だよ。それよりタキオンちゃん、次は何がしたい?」

 

アグネスタキオンがしばらく考え…

 

「そうだね…レースがしたいかな?」

「ー!」

 

アグネスフライトが固まった。

 

「じゃあ、タキオンちゃんたちと走って…」

「ううん!お姉ちゃんとレースがしたい!」

「私とレース?」

「うん!私、お姉ちゃんみたいにすっごく速いウマ娘になりたいの!だから速いお姉ちゃんと走れば、私はもっと速くなれるって事でしょ?」

「ー!」

 

アグネスフライトは言葉に詰まった。

 

「…そう…かもね。」

「ダメ?お姉ちゃん?」

「ううん、ダメじゃないよ。走ろっか。」

「わーい!お姉ちゃんとレース♪お姉ちゃんとレース♪」

「でもちょっと待ってタキオンちゃん。最後におっぱいの大きいタキオンちゃんにこの服を…」

「お姉ちゃん、その水着…サイズがちっちゃくない?全然おっぱいが隠れてないよ?」

「小さいからいいんだよ♪じゃあ…今着ているのは全部…」

 

「…嫌だ!それだけは!それだけは…!!」

 

「時間かかりそう…お姉ちゃん、早く行こうよ!走る時間が無くなっちゃうよ!」ガシッ

「あ~れ~」ズルズル

 

アグネスフライトがエアグルーヴに触れる前にアグネスタキオンが腕を掴み引き擦られていった。

 

「お前ら大丈夫か?」

「ソウジトレーナー!…ん?あの椅子から抜け出したの?」

「あぁ、思い付く限りのことをしたら…何とかなった!」

「もうあなたってウマ娘をも超越してませんか?」

「とりあえず、痺れに効くツボを押すから…いくぞ。」

 

スブッ

 

「痛っ…あ!動けるようになりましたね!」

「身体可動確認。ありがとうございます。」

「本当だ!動けるようになったぞ !すげーな!」

「なんでソウジトレーナーはそんなツボを知っているのですか?」

「『因子』を取り出す時に色んなツボを覚えた。結果そういうのも分かるようになった。」

「だから色々と超越してますって…」

「そういえばゴールドシップさんとシンボリルドルフさんがいません…どこでしょうか?」

「あぁ、アイツらなら自力で起き上がってタキオンたちについて行ったよ。」

「あの2人も私たちを超越していましたか。」

「とりあえず動けるようにはしたからな。だからお前らはもう部屋に帰って休んで…」

「そんなこと出来ないっス!」

「その通り!学級委員長としてあの2人を最後まで見守るべきです!」

「…フライトさんの確保がまだ終わっていません。私がスタンガンを取り返されてなければこんなことには…」

 

それぞれの想いを言い、帰ると答えるウマ娘はいなかった。

 

「お前らの気持ちは理解した…じゃあ、2つの班に分けよう!」

「2つ?」

「1つはタキオンたちを追う班だ。」

「それは分かっていますが…もう1つは?」

「…あの姉妹に好き放題されたアイツらを何とかしてくれ。」

 

「トレーナー…」

「使い魔…」

 

そこにいたのはぐったりとしたスイープトウショウとエアグルーヴ(メイド服)。

 

「じゃあ、私があの2人トレーナーを探してくるな!」

「あたしはここで2人の側にいるっス。」

「私はタキオンさん達を追いましょう!!」

「私もバクシンオーさんに続き、あの2人を追おうと思います。」

「よし、決まりだ!いくぞ!」

『はい!』

 

ソウジ、ミホノブルボン、サクラバクシンオーは研究室を後にした。




明日も投稿します。


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第40話 超光速の貴公子 + ミス・パーフェクト = 血濡れしケダモノ

凱旋門賞…日本馬は負けましたね…
重馬場+雨でタイトルホルダーは上手くハナが取れず…最後はディープボンドとステイフーリシュと共に最後の直線前で馬群に沈んでしまい…ドウデュースは終始後方…残念です。

やっぱりアルピニスタとヴァデニが強かった…とはいえ出走お疲れ様でした。今はゆっくり休んで日本でもまた走る日を待ってます。と言ってもジャパンCとか有馬記念には出走しますよね?


アグネスフライトとアグネスタキオンがレース場へと着くとそこには既に何人ものウマ娘が揃っていた。その中の1人、エアシャカールがアグネスフライトへと話しかける。

 

「遅かったなァ…フライト。」

「タキオンちゃんがいっぱい…どういうこと?」

「お姉ちゃんが呼んだんじゃないの?」

 

混乱する姉妹。そこにナリタブライアンが説明に入る。

 

「…会長からの命令だ。2人のレースの準備をしろとな。」

「マヤたちも参加するから…勝負だよフライトさん。」

「マーベラス☆」

「うーん、こんなにタキオンちゃんがいるなら私は要らな…」

「やだ!お姉ちゃんと走りたい!」

「タキオンちゃん…」

 

参加を避けようするアグネスフライトだがアグネスタキオンが許さない。

 

「フライト、いつまでもくっだらねェ芝居してんじャねェぞコラ!」

「このタキオンちゃんは口が悪いね…でも好きだよ。」

「てめェ…!本当に気持ち悪ィな…!」

「とりあえず、キープし…!!」

 

スタンガンを取り出し、エアシャカールを捕らえようとするが何かがスタンガンを弾いた。

 

「…殿下サマのSPだ。余計なことする…なっ!」ガシッ

「フライトさん!?」

「んー、スタンガンが使えないなら普通に締めるか~」

「があっ!離せ!」

 

エアシャカールが宙へと浮かぶ。アグネスフライトが首を掴み持ち上げたのだ。アグネスフライトはそのまま力を込める。

 

「シャカール!隊長、何とかして!」

「ダメです。射程内にシャカール様が入っています。」

 

エアシャカールは暴れ、引っ掻く、蹴るなどの抵抗をするが…アグネスフライトに効果はなく、そのままの状態が続く。そしてエアシャカールの抵抗が弱まり…

 

「もうちょっとかな~」

「お姉ちゃん?高い高いしてるの?私にもして!」

「うん、いいよ♪」

「!」

 

アグネスタキオンの言葉で酸欠寸前のエアシャカールからあっけなく手を離し、今度はアグネスタキオンの腰を掴みを持ち上げた。

 

「高い高ーい♪」

「お姉ちゃん、力持ち♪」

 

「ケホッ!ケホッ!ゴホッ!」

「シャカール!大丈夫?」

「…殺す。銃をよこせェ!!」

「ダメだよ!レースで勝負しないと!」

「うんうん、フライトさんを助けないと!」

「あァン!?完全にアイツが加害者だろうが!何で助ける流れになってンだよ!」

「だってあんなのいつものフライトさんじゃないもん!」

「そうだよ★いつも私たちと遊んでくれて、疲れて寝ちゃった私たちを運んでくれる、とってもマーベラスな人だよ☆…でも今のフライトさんはマーベラスじゃないよ!」

「…で、レースをすれば何がどう変わる?」

「マヤには分かるの!フライトさん、何か悩んでる!そして、"本気で"走りたいけど抑えてる!この前のファン感謝祭の特別レースだってそういう走りだった!」

「ファンのみんなは満足してたけど、ジャパンCで魅せてくれたマーベラスな走りじゃなかったよ☆」

「そのフライトがやる気ないみたいだがなァ。」

「タキオンさんがお願いしてるじゃん!」

「それにもうすぐマーベラスなことが起きるから☆」

「は?それは…」

 

どういう意味だ、と聞こうとしたエアシャカールの言葉は続かなかった。追いかけてきたソウジたちが合流したからだ。

 

ーーー

 

「…何でここにいる。」

「俺のことだけは認識出来るようだなフライト。」

「…そう、ですね。」

「お姉ちゃん?どうしたの?」

「お前のスタンガンのお陰で回収が促進されたようでほとんどの『合成因子』は回収出来た…残りは1人分だ。折角の機会だし…実験でもしようと思ってな。」

「…まさか、その体で走るつもりですか?」

「あぁ、そのつもりだよ。」

「ー!」

 

ソウジは腕についた大量の腕輪を外して肩を鳴らす。アグネスフライトは耳を伏せ、ソウジを睨んだ。

 

………

 

「…お前ら、こうなることを読んでいたのか?」

「ソウジトレーナーが来ることは予想してたよ!」

「マーベラース☆」

「…」

「おい、アップが終わったならゲートに集まれ。」

『はーい☆』

「…チッ。」

 

出走するウマ娘たちがゲートの前へと移動した。

 

「そういえばレース条件は?」

「東京コースで芝・左回りの2400m…ダービーやジャパンCと同じだ。」

 

ーーー

 

「ピスピース!現在、体がビリビリしているゴルシちゃんだぞ!」

「同じくビリビリのシンボリルドルフだ。」

「まぁ、アレだな!特別レースだな!準備しといてこんなこと言うのも何だが…あのフライトが走ってくれるみたいだな!」

「闘志満々、私は彼女の走りがまた見れるだけで嬉しいよ。」

「やる気っていうか殺る気って感じだけどな!てな訳で実況ゴルシちゃん、解説に生徒会長シンボリルドルフで特別レースを進行していくぜ!」

「よろしく頼むよ。」

 

「早速紹介だ!1人目は…メジロブライトだ!」

「ほぉ…彼女が参戦とは意外だね。」

「たまにタキオンの『合成因子』実験の並走に付き合ってる姿を見るけどな!『アナザー』にもよくなってるらしいぞ!」

「なるほど…『合成因子』に興味津々、といったところかな?」

 

「2人目は…マヤノトップガンだ!」

「フライトとは学園内でよく一緒にいる姿を見かけるね…いつも何をしてるのだろうか?」

「フライトかタキオンの代わりに妹扱いしてたんじゃね?知らんけど。」

 

「3番、マンハッタンカフェ…だよな?」

「?それ以外誰に見えるんだ?」

「いや…何か、悪寒が…」

「スタンガンの痺れの影響じゃないのか?」

 

「ンンン!4番、アグネスタキオン!」

「幼児退行でこうなっているのは分かっているが…普段とのギャップが…」

「あんなに目が輝いてるからな…まぁ、走れば色々と思い出すだろ多分。」

「そうかもしれないね。」

 

「5番、ナリタブライアン!」

「…彼女のお陰でこのレースが開かれている。感恩報謝…この言葉しか出てこないな。」

 

「6番、フジキセキ!7番、ヒシアマゾン!」

「寮長が2人とも参戦か…他の生徒の避難は完了したということだね。」

 

「8番、マーベラスサンデー!」

「彼女もフライトとよく一緒にいたね。」

「マヤノほどじゃないけどな!大体が運ばれている姿だが…今は気にしなくていいな!」

 

「9番、エアシャカール!」

「…因縁の対決か。このレースで一番の見所かもね。」

「ん?このメンバーならブライアンが1着になるだろ?」

「ふふふ…」

 

「…まぁ、いいや。10番、『ヘアリーブラッド』!」

「…?そのような名前のウマ娘は聞いたことないが?」

「あぁ、『ウマ人』になったタキオンの担当トレーナーだ。だいぶ、髪も短くなってきたな!」

「…え?あの人って私たち以上にスタンガン浴びていなかったか?」

「まぁ、タキオンのトレーナーだからな…」

「瞠目結舌、納得出来る自分がいる。ちなみに誰と誰の『合成因子』かな?」

「えーと…データが無いな。髪の色的に多分、ブルボンとスカーレットだと思うわ。」

「それなら前に出る走りになりそうだ。」

 

「11番、セイウンスカイ!」

「彼女もアグネスタキオンの関係者だったね。」

「本人は否定してるがたまに並走してるのを見るぜ。で、よく『アナザー』にもされてるな。」

「理事長公認の実験らしいから…私も1度なっておくべきか?」ボソッ

 

「12番、ダイワメジャー!」

「…飛び込みの参加かな?デビュー前のウマ娘にはあまりこのレースを走って欲しくは無いのだが。」

「スカーレットを怖がらせたフライトが許せないんだろ。」

「…姉の意地か。」

 

「13番、キタサンブラック!」

「彼女もデビューはまだの筈だが…ちょっとテンションが高過ぎないか?」

「スイープに命令されたからな…『キタサン、もしフライトさんをボコボコにしたら…ほっぺにチュゥしてあげる!』とでも言われんじゃね?」

「頼られたことが嬉しいだけだと思うが…というか普通に物真似が上手いな。」

 

「ラスト、アグネスフライト!」

「…」

「ん?急に黙ってどした?」

「いや、大したことではないよ。彼女の望む幸せとは何か、と考えただけだ。」

「大したことじゃん!…今の私が思い付くのは、アイツらと決着を付けることじゃないか?」

「…そうかもしれないね。」

「まぁ、そうこう言ってるうちに全員ゲートに向かって行ったな!ハラハラドキドキなレースが始まるぜ!じゃあお前ら!また次回な!」

「??レースは今から始まるが?」

「あぁ、気にすんな!明日には投稿するから!」

「だから今からレース…」

「またな~!」




ダイワメジャー…ダイワスカーレットの半兄。皐月賞を制したのち喉鳴りに苦しむも手術を行い、翌年に調子を取り戻した。その後、天皇賞(秋)、マイルCS×2、安田記念、とG1レースを計5勝した。そして、半妹ダイワスカーレットと共に出走した有馬記念3着を最後に引退。引退後は種牡馬となりカレンブラックヒル、コパノリチャード、レシステンシア(現役)など、8頭ものG1馬が生まれた。この作品ではダイワスカーレットにメジャー姉と呼ばれているが…アグネスフライトほど頻繁に出す予定はない。


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第41話 レース終了、私がここにいる意味とは?

連日投稿中…明日まで続きます。


各ウマ娘がゲートへと収まり、そして…開かれた!

 

「スタートしたな!全員綺麗なスタート、先頭は…お?いきなりアグネスタキオンだな。…これ、もうスパートきってないか?」

「どうやらレース展開まで学べてないところまで退行していたようだね。最初から最後まで全力で走り続ければ勝てる…私も思っていた時期があったよ。」

 

「まぁ、あんたなら実際に出来ても驚かないけどな!んで、5バ身以上離れてセイウンスカイとキタサンブラックが2番手争い。その後ろに内からダイワメジャー、『ヘアリーブラッド』、フジキセキに…ヒシアマゾンとマンハッタンカフェもいるな。今回は前の方!そして第1コーナーをカーブした!」

「その後ろの集団は…マーベラスサンデー、ナリタブライアン、メジロブライト。最後方にはエアシャカール、マヤノトップガン…アグネスフライト。そろそろ第2コーナー、マンハッタンカフェが4番手を上げてきた。」

 

「アイツ、あんなにコーナー上手かったっけ?とりあえず、長めの直線に入ったな!先頭は10バ身以上の差を広げたアグネスタキオンだが…バテ始めてるな。」

「ケガをしないか心配だね。…あ、外に出て寝転んだ。見たところは大丈夫そうだ…こうしてみるとやっぱり子供という感じだね。」

「アグネスタキオン、リタイア!代わって先頭にはデビュー前のキタサンブラック、その後ろにセイウンスカイ!先行集団の先頭にマンハッタンカフェだ!」

「ダイワメジャー、『ヘアリーブラッド』、フジキセキ、ヒシアマゾンが続くが…ヒシアマゾンが下がり始めたね。」

「後ろの集団はマーベラスサンデーとメジロブライトがペースを上げてヒシアマゾンをかわした!おっと、ナリタブライアンも下がり始めたか?逆にマヤノトップガンがペースを上げてナリタブライアンをかわす!」

「東京レース場だとそろそろ大ケヤキの位置かな?エアシャカール、アグネスフライトが最後方。…脚を溜めているようだ。」

 

「さぁ!最終コーナー!各ウマ娘たちが横に並んでいるが…先頭に立っているのは…何とマンハッタンカフェだ!2番目に『ヘアリーブラッド』!デビュー前のキタサンブラックとダイワメジャーはここまでか。…あれ?フジキセキとマーベラスサンデーのペースも急激に落ちたか?」

「確かに不自然な減速だが…後方集団のウマ娘も仕掛けてきたよ。後ろから伸びてくるのは…ナリタブライアンとヒシアマゾン。最後の直線、坂へと入る。」

「先頭、マンハッタンカフェ!坂を上がるが…伸びが厳しいか!『ヘアリーブラッド』が抜け出し先頭へと代わる!さらに外からナリタブライアン!ナリタブライアン!この2人の一気討ちか!?」

「大外からエアシャカールと…アグネスフライト。ここで2人が伸びてきているよ。」

「本当だ…何て伸びだ!エアシャカールとアグネスフライトが互角の速さで上がってくる!ナリタブライアン、エアシャカール、アグネスフライトが『ヘアリーブラッド』との差を詰めていく!」

「残るは200m、先頭『ヘアリーブラッド』。ナリタブライアンがそれに続くが、それらを捉えようと大外エアシャカール、すぐ後ろにアグネスフライト…一体どうなる?」

「さぁ…『ヘアリーブラッド』が逃げる!逃げているが…!ここでエアシャカールだ!エアシャカールが差しきった!2着にアグネスフライト!『ヘアリーブラッド』は3着!」

 

ーーー

 

レースが終わり、アグネスフライトは暗い顔で立ち止まる。そんなアグネスフライトへエアシャカールが声をかける。

 

「ハァハァ…オレの勝ちだなァ、フライト?」

「…うん、私の負け。強かったね…タキオンちゃん。」

「お前、本当は分かってンだろ?」

「…何を?」

「最後のコーナーで『ヘアリーブラッド』が走るのを急に緩めた瞬間、狙いをオレに変えたよな?で、オレを追ってた動き…完全にダービーと同じじゃねェかよ。オレって分かってンだろ?くだらねェ芝居を何時までもしてンじャねェよ!」

「…」

「何か言ったらどうだ?あァ!?」

「待ってよシャカールさん!…フライトさん、1つ教えて。あなたはタキオンさんとどうしたいの?」

 

エアシャカールがアグネスフライトの胸ぐらを掴む。しかし、それをマヤノトップガンが慌てて止める。アグネスフライトは黙ったままでいたが…少しずつ言葉を溢し始めた。

 

「私は…私よりも優秀なタキオンが憎い。でも大好き!ずっと一緒にいたい!アイツだけじゃなくて私だけの側にいて欲しい!早くレースから引退してもらって…また昔みたいに…一緒に遊んで…アイツも一緒に…」

「…フライトさんは本当にシスコン何だね。じゃあ、マヤといるのは嫌?」

「嫌じゃないよ!マヤノちゃんは明るくて、元気で、元気過ぎて手がかかるくらいで…でも!それで私も元気をもらって…あ!」

 

アグネスフライトは自分がマヤノトップガンの名前を出したことに気付き慌てて口を塞ぐ。…しかし、遅かった。

 

「やっぱり、私たちのこと分かってたんだね。」

「…」

「マーベラス☆フライトさん、フライトさん!また、一緒にレースしてよ!今回のフライトさんの走り、とってもマーベラスだったよ!」

「マベちゃん…うっ、ううぅ…でも、タキオンちゃんよりも優秀じゃない、私が、ここにいる意味何て…」

「…今のアイツに絶対勝てるウマ娘、学内にどれだけいると思ってる?走る距離を中距離と考えてシンボリルドルフくらいだろがッ!その理論なら学園にいられないウマ娘が何人出てくるよ?そんなタキオンに唯一勝ってるのはフライト!…お前だけだぞ?」

「…私たちはそんなこと関係なくフライトさんといたいよ。これは理由にならない?」

「ぐすっ…でも、でも…!」

 

アグネスフライトはその場で項垂れ…涙を流した。

 

ーーー

 

一方、『ヘアリーブラッド』の『ウマ人』ことソウジはターフの端で寝転んでいるアグネスタキオンの元へと走っていた。

 

「タキオン!」

「Zzz…」

「…寝てるのか?」

 

ソウジ以外にもアグネスタキオンへ近づく者がいた。

 

「ったく、マイペースな奴だな。」

「マンハッタンカフェ?」

「ん?あぁ、そうだな。さっさと戻してやるから。」

「は?」

 

マンハッタンカフェはアグネスタキオンの頭を掴み…

 

「おらっ!起きやがれ!」

「はぁ!?」

 

そのまま空中でアグネスタキオンをブンブンと振り回し始めた!

 

「おい!タキオンに何てことするんだ!」

「うるせぇな!こういうのは物理的にショックを与えれば何とかなるんだよ!おらおらおら!」

「お前は本当にマンハッタンカフェなのか?…てか、やめろ!」

 

ソウジがマンハッタンカフェを羽交い締めにするが効果はない。

 

「ふんっ!」

「なっ!?」

「痛っ!」ゴキッ

 

最後にそのままアグネスタキオンの頭を地面に叩きつけた。その衝撃でアグネスタキオンの目が覚める。

 

「…何だい?頭が痛いねえ。」

「タ、タキオン!?大丈夫か?」

「…ソウジ!起きてくれたのか!?」

「いや!それ!俺の台詞!」

「やっと起きたな。お前、次はBCクラシックか?」

「いや、ホイットニーHだが…カフェ?」

「チッ、アイツが勝ったレースかよ。まぁ、お前なら楽勝だろうが…頑張ってくれよ。じゃあな。」

「待ってくれ!君はカフェなのか?」

「あん?どうみても違うだろうが。そうだな…ホイットニーHが終わったらまた会ってやるよ。」

「いや、待っ…」

「後、お前…最後に手を抜いただろ?」

「は?いや、何でそんなこと…」

「やっぱりな。まぁ、別に理由は何でもいい…それより、何で一番間近だったお前に俺の威圧が効かないんだ?今はタキオンの力を持ってるのだろ?」

「いや、知らないけど…」

「俺を抜いた後にペースを落とすし…お前、面白い奴だな。じゃあな!」ドサッ

 

マンハッタンカフェがその場で倒れ、あわててソウジが抱える。

 

「…」

「…寝てるようだな。何だったんだ?」

「それも気になるがソウジ、…これはどういう状況だ?お姉ちゃんがマヤノ君の胸で泣いてるし、何があったんだ?」

「…あぁ。まずはフライトことだが…」

 

ソウジは全てを話し始めた。



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第42話 暴走収束、飛行機の幸せとは?

フライト暴走編の最終回です。とりあえずの連日投稿はここまでです…どうぞ!


ーーー場所は戻って、そこにいるのは項垂れ泣くアグネスフライト。そんなアグネスフライトをマヤノトップガンが抱きしめる。

 

「ううぅ…えぐっ…」

「よしよし…あ、ブルボンさんとフラワーちゃんだ!」

「フライトさん。フラワーさんがあなたに用があるようです。」

「ちょ、っと、待って!………私に用?」ゴシゴシ

「はい!さっき、渡しそびれたジャスミン茶です!実はこれ、エアグルーヴさんから頂いた物ですよ!」

「グルーヴちゃんの…いただくね。いい香り…美味しい。」ゴクゴク

「落ち着きましたか?」

「…うん、ありがとう。マヤノちゃんもありがとう。ごめんね、ジャージが涙で濡れて…」

「ううん、マヤもおぶってもらった時にフライトさんの制服を涎で何回も濡らしちゃったから…おあいこだよ!ユー・コピー?」

「…アイ・コピー。今からだけど…理事長室に行ってくる。もしかしたらもう会えないかもだけど…」

「それはねェだろ。」

「シャカール?」

「スタンガンの件は確かに擁護出来ねェが…それを含めても理事長がお前を追い出すとは思えねェよ。」

「何で?」

「お前が重賞…それもG1レースを勝ってるからだ。そんなウマ娘を退学にさせると来れば…後々面倒だからな。」

「…」

「まァ、何かしらの罰はあるだろがな。」

「そう、だね。シャカール…今さらだけど首を絞めてごめんね。」

「…忘れるまでは許さねェよ。ンなこといいから、さっさと行け!」

「…うん。」

 

アグネスフライトはみんなに見守られながら理事長室へと向かう。そして2週間…夏休み直前までの停学を受けることで話はまとまった。こうして、アグネスフライトによる暴走事件は収束した。

 

ーーー

 

後日談、夏休みに入り、ほとんどのウマ娘がトレセンの合宿所へ行っていた。夏合宿が始まったのだ。ソウジとアグネスタキオンも当然参加している。そんな中、忙しく動いているウマ娘がいた。ある時は合宿所の中で…

 

「5人追加?部屋の準備をするから30分待って、って言ってくれる?」

「いや、宿に確認を取るべきだろ。」

「ん?あぁ、後30人くらいまでなら私が勝手に決めて大丈夫って話になってるから。とりあえず、必要なものの回収ついでに女将さんに報告してくるね。グルーヴちゃんは…5人だから…3階の奥から3番目にしようかな。そこの部屋の掃除の準備しててくれない?私も終わったらシーツを持って直ぐに向かうから。」

「分かった。それでその…」もじもじ

「あぁ、担当トレーナーとの…」

「たわけ!あまり大きな声で言うな!」

「ごめんごめん。例の話だね?とりあえず掃除しながら聞くから現状を教えてくれる?」

「…分かった。」

 

またある時は砂浜の屋台で…

 

「フライトさん!並走しましょうよ!」

「うーん、今は焼きそば焼いてるし、この後は風紀委員の見回りだから…18時以降でもいい?時間とコースはスペちゃんが決めていいから。」

「はい!ありがとうございます、では19時に合宿所の入口でスズカさんと待ってますのでよろしくお願いします!」

「それはそうと…ほらよ、ゴルシちゃん特製の塩焼きそばお待ち!塩分ちゃんと取れよ!」

「あ、ついに出来ましたね!いただきます…美味しいです!」パクパク

「ゴルシちゃん、私はソースの方が好きなのだけど…」

「あん?今の時代は塩だ塩!おら!じゃんじゃん焼いていくぞ!」

 

またある時は砂浜で…

 

「トレーナーさん、どうこれ?」

「ぶっ!…お前そんな格好で練習する気か?」

「コラッ!合宿で紐ビキニはダメよ!ポロリしたらどうするの!」

「そうっスよ!遊びの場じゃないので指定の水着を着るっス!風紀が乱れるっス!」

「ほら、風紀委員もこう言ってるぞ?」

「うぅ…」

「後でトレーナー室の合鍵渡してあげるから…夜にこっそりね?」ボソッ

「ー!はい!」

 

………

 

合宿初日、アグネスフライトはその日の仕事が終わり、アグネスタキオンへと抱きついていた。

 

「タキオンちゃん~♪今日は何の実験するの?」ダキッ

「お姉ちゃん!実験は無いよ。それに今日はかなり疲れたんじゃ…」

「これくらい何てことないよ~♪ほらほら♪『アナザー』でも新薬の治験でもタキオンちゃんと一緒ならお姉ちゃんは嬉しいからね♪」

「…」

「そろそろアメリカに行くのでしょ?だからちょっとでも一緒にいたいの!私は…タキオンちゃんが大好きだから!」

「…私も大好きだよお姉ちゃん。」

「ソウジトレーナーよりも?」

「1番はトレーナー君だ。これだけは譲れない。」

「…うん、それでいい。でも、私の1番も同じだから…これは私も譲れないこと。」

「…ん?」

「フフフ…大好きだよ、タキオンちゃん♪」

「ところでお姉ちゃん…最近、私の下着がよく無くなるのだけど何か知らない?」

「え?知らないけど?」

「はぁ…困ったねえ。このままだとトレーナー君のパンツを履くことになりそうだ。」

「なっ!ダメよ!ちゃんと楽しんだ後に返すからタキオンちゃんには履か…あ。」

「…やっぱりお姉ちゃんが犯人だったんだ。知ってたけど。」

「いや…その…これは違くて…メインはタキオンちゃんのパンツじゃなくて、アイツのパンツというか…」もじもじ

「…アイツのパンツ?さっきの1番も含めて、それはどういうことかな、お姉ちゃん?」ゴゴゴ

「げっ!やぶ蛇!」

「そういえばトレーナー君も最近下着を無くすからよく買ってるとも耳にしたね。私が犯人か、と疑われた時…どんな気持ちだったと思う?」ゴゴゴ

「えーと…あ!そろそろ見回りの時間だから…」

「今日の仕事はもう全部終わってるだろ?ちょっと、ズボンを下ろしてくれるかな?」ゴゴゴ

「タ、タキオンちゃん?今じゃないとダメかな?」ブルブル

「脱がないんだ?じゃあ、私が脱がしてあげようとも♪この前のコーヒー風呂の時みたいに今度は私がしてあげようじゃないか♪」ゴゴゴ

「ひいぃぃぃ!!」

 

合宿初日の夜、誰かの悲鳴が空へと響く。翌日、げっそりとした顔で学園指定の水着を着た飛行機と怪しい笑顔の貴公子がいた。そしてその日、ソウジ宛で謎の紙袋が届いた。中身はソウジが無くしたパンツたちだったが…後ろに謎の穴があったため全て捨てられた。




次の投稿は秋華賞に予定しています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


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第43話 『ヘアリーブラッド』の研究終了、アメリカにてモルモットは吹雪と再会する

どうも、牝馬大好き作者です。昨日は『ソダシ』が出走していた府中牝馬Sでソダシ、『アカイイト』、『ローザノワール』を応援してました。…ローザノワール、いい逃げだと思ったのですがね。ソダシは最後に差されました…惜しかった!
そして今日は秋華賞!応援するのは『アートハウス』と『ウォーターナビレラ』!ウォーターナビレラは距離がキツい気もしますが…気にしない!G1ですのでキズナ産駒『エグランタイン』も応援したい!後はキタちゃん産駒の『ブライドオンベイス』!菊花賞の『ヒシミラクル』みたいに勝ってくれないかな~。

勝ったのは『スタニングローズ』…くぅ!
お疲れ様でした、あなたたちの馬券は取っておきましょう。また、エリザベス女王杯での活躍を期待します。

本編ではタキオンとソウジがアメリカへと行き…とあるウマ娘と再会します。どうぞ!


タキオン&ソウジメモ:『合成因子第五十五号ヘアリーブラッドについて』

 

??月??日

・誕生

→ダイワスカーレットから採取した『因子』の性質を見るためにアグネスタキオンの『因子』と合成したところ固体ではなく、どす黒い液状化した『合成因子』が完成した。原因は私の成分が濃すぎたためと思われるが…サンプルとして取っておく。

 

 

5月XX日

・再調査

→『カプリティコーン』の因子回収を失敗した被験者Sを助けるべく再調査。強制凝縮、新規作成などの実験の末、作成時の発熱による液体化と合流時に起こる物体のすり抜けなど『合成因子』の新たな特性を発見。回収時に冷却機能を追加した液体化しない腕輪が開発し、スカーレット君と私の『合成因子』が合計5人分が作成された。

 

 

7月XX日

・事件

アグネスフライトによる暴走により、俺こと被験者Sは5人分の『合成因子』を一気に飲み込んだ。結果、髪が地面に付くくらいまで伸び、体内に収まらなかった分は血として体外へと排出された。前回、アグネスタキオンにより作成された腕輪で回収出来ているため問題はなかったが…体が重い。そしてショッキングなことを間近で見ていたアグネスタキオンの精神が壊れた。

 

7月XX日

・事件2

→体が重い。部屋で5つの腕輪を付けて、アグネスタキオン、ダイワスカーレットと共にいるとアグネスフライトが襲撃してきた。ウマ娘相手に真っ正面から立ち向かい、右手のスタンガンを叩き落とすものの隠された左手のスタンガンにより敗北。大量の電撃を浴びた。

 

・特別レース出走

→体が急に軽くなってきた。電撃により旧型でも回収が速くなるようだ。付けていた腕輪を全て外して『ヘアリーブラッド』と名乗り、アグネスタキオン、アグネスフライト、エアシャカール、キタサンブラック、セイウンスカイ、ダイワメジャー、ナリタブライアン、ヒシアマゾン、フジキセキ、マーベラスサンデー、マヤノトップガン、マンハッタンカフェ、メジロブライトが走る特別レースへ出走。終始良い位置で走り続け、最後の直線でトップになったもののエアシャカールとアグネスフライトに差され敗北。…手を抜いただ?レースにおいてそんな失礼なことはしない。…ただ、急に力は抜けたのは事実だ。

 

・適正チェック

→芝が走りやすく、マイルと中距離のタイムが良かった。…タキオン?何でそんな水餃子みたいな顔をしてるんだ?

 

・余談1

→新たにヒシアマゾン、ファインモーション、フジキセキ、マーベラスサンデーの『因子』を入手した。

 

・余談2

→マンハッタンカフェに誰かが取り憑いているようだ。ホイットニーH後にまた会ってくれるらしいが…

 

 

7月XX日

・回収

→測定後に旧型の腕輪にて『ヘアリーブラッド』の『合成因子』を回収。芝2000mの最速タイムが1分55.5秒…日本でこの記録はなく、世界記録に近いタイムだ。バ場が違ってこの記録…色々と怖いのでこの『合成因子』の使用は禁ずる。今の私が触れていいものじゃない。その時が来るまでは私しか番号を知らない金庫へと封じておく。また、余った4人分の『合成因子』も燃えるゴミとして処分する。

 

 

以上が『ヘアリーブラッド』の記録である…ホイットニーH後に大量に出来た『合成因子』の実験を行おう。

 

ーーー

 

場所はアメリカの何処かの空港…アグネスタキオンたちはホイットニーHへの出走を前にしていた。

 

「しかし…アメリカに君の知り合いがいたとはねえ。君はかなり交友関係が広いようだ。」

「いや、今日会う相手は…」

 

ソウジが言い切る前にこちらへと走ってきたウマ娘がソウジへと抱きついてきた!

 

「ハローソウジ!ロングタイムノーシーね!」ダキッ

 

「ぐぇっ!…久しぶりだなブリザード。」

「イエース!」

 

タイキブリザード…ソウジが担当していた黒鹿毛のウマ娘。ナリタブライアンと同世代であり、重賞を入着はするものの勝ちきれないレースが続いていた。しかし、挑戦を続けて3回目の安田記念を勝利しG1ウマ娘となった実力者だ。現在はトレセン学園を卒業し、故郷のアメリカへと戻っている。

 

「…大きい体だね。」

「オゥ!アナタが今ソウジが担当ウマ娘のアグネスタキオン?フライトそっそりね!」

「お姉ちゃんを知ってるの?」

「イエス!フライトは私の可愛い妹ね!」

「…妹?」

「ブリザード…混乱するようなことを言うな。てか普通、本物の妹に言うか?」

「ということで…アナタも妹ね!」ダキッ

「うわっ!離したまえ!」ジタバタ

「おい!ブリザード!」

「フフフ…グッドスメ…?ソウジの匂いもするね?ホワイ?」

「いや…その…」

「そういう関係だからだよ。」

「ー!」

 

タイキブリザードが固まった。

 

「…ソウジ?本当?」

「…あぁ。」

「…のに。」

「ブリザード?」

「私、ソウジが大好きね!またソウジに会うため日本に戻ろう思ってたのに!こんな…こんな…」

「ブリザード…」

「…会って早々に何て話だ。いや、私が原因なの…か?」

「私もソウジの匂いにするね!」ダキッ

「ブリザード!?」

 

タイキブリザードがソウジに抱きつき頭を擦る。負けじとアグネスタキオンもソウジへと頭を擦り始めた。

 

「やめろ!やめろ!!」

「トレ~ナ~君~!」ゴシゴシ

「ソ~ウ~ジ~!」ゴシゴシ

 

この状況が10分程続いた。

 

………

 

「ソーリー、熱くなったね。」

「私もだ。」

「俺は物理的に熱いけどな…」

 

今は夏…冷房がある程度効いているとはいえ当然暑い。そして、周りの視線による羞恥の熱でも熱かった。

 

「タキオンは妹…妹の幸せを奪う訳にはいかないね。でも…でも…」

「私は既にお姉ちゃんがいるからね?君の妹ではないからね?」

「それよりブリザード、日本に戻るというのは?」

「私のホームで育ててるコーン…日本のベタベタ環境でも育ちやすいのに改良したね。だから…日本でソウジと一緒に…うぅ…」

「ブリザード…」

「君はトレーナー君にアピールしなかったのか?」

「したね!ハグしたり、ほっぺにチュゥしたり…頑張って勇気出したのに…ソウジはただの挨拶と思ってたね!ありえないね!」

「…すまない。だが、担当をそういう目では…」

「じゃあ!なんで!今の担当とそうなるね!」

「ぐっ…」

「卒業したから…また会えばソウジも親身に受け入れてくれると…思ったね。ソウジからこっちに来ると、連絡来たから…私…楽しみに…」

 

とうとうタイキブリザードは泣きだしてしまった。

 

「やれやれだ、これはトレーナー君が悪い。」

「うっ!」

「しかし、ブリザード君。これは私の魅力が君より凄かったということだよ。」

「むぅ…タキオンはソウジのどこに惚れたね?」

「え?私は…その…」もじもじ

「私はソウジの優しさね。勝ちきれずクラシックレースに出れなかった私に変に気を使う訳でもなく、出来るだけいつも通りに接しようとして…でも、結局は自分の責任だと裏では泣いていて…」

「え?何で知ってるの?」

「レース後の練習時は目が真っ赤だったし、涙の匂いが隠せてなかったね。…それに私の我が儘を全部聞いてくれたね。」

「我が儘?」

「映画館、海、カラオケ、ゲームセンター、遊園地…行きたいところでいっぱいデートしたね。」

「…」

「一番嬉しかったのは…安田記念に勝てた時…温泉に連れていってくれてご飯をあーんしてくれたことね。我が儘で弱い私をソウジはずっと優しくしてくれた…だから私はソウジが好き…」

「ブリザード、お前は弱くなんかない!だが…その…」

 

話しているうちにタイキブリザードの涙が止まっていた。ソウジは顔を赤くして伏せている。

 

「ふーん、トレーナー君と何度もデートをねえ…私はあまり連れていってもらえたことがないのだが?」

「お前は実験ばっかりしてるからだろ。俺との実験道具の買い出しかフライトに連れられる以外で出るところを見たことないぞ。」

「…ごもっとも。」

「決めたね。」

「ブリザード?」

「私、日本でソウジの愛人になるね!タキオンが別れれば正妻ね!」

「いやいやいや!何言ってるの?そもそも俺がお前を受け入れるとは…」

「ソウジは私のこと嫌い?」

「嫌いじゃないが…」

「なら決まりね!タキオンもいいよね?」

「ククク…面白そうだ。」

「タキオン!?」

「いいじゃないか。お姉ちゃんも君のことが好きみたいだし…」

「…フライトが?何で?」

「フライトも?ワォ…ソウジはモテモテね!ハーレム王ね!」

「やめなさい!俺はタキオン一筋だ!」

「とりあえず家に来るね。近くの練習場とかも教えるから。後はパピーとマミーを紹介するね!私の今後も伝えるね!」

「タキオン…俺生きて帰れるかな…」

「何を言ってるんだ?君ならトラックに轢かれても生きていただろ?」

「あの時は10分くらい死んでたからね…」

 

ーーー

 

その後、ソウジはタイキブリザードの父親よりピストルを向けられるハプニングもあったが…タイキブリザードがソウジらの帰国と共に日本にくることで話がまとまった。

 

「『ふぅ…死ぬかと思った。』」

「『ソウジ!大丈夫?』」

「『何、次にブリザードを泣かせたら本当にショットガンで頭と心臓撃ってやるから。』」

「『殺す気ですか!?と言いますかピストルで向けた時点でダメですからね!本当に死ぬと思ったんですよ!』」

「『でもパピーに反撃しないソウジもカッコいいね!』」

「『そうだバカ野郎!銃の撃ち合いなんで日常茶飯事だろうが!何故反撃してこない?銃を持ってないのか!』」

「『いや、日本じゃ持てないですから。』」

「『持ってなくても殴りこいよ!死ぬかもしれないぞ?』」

「『死ぬわけにはいきませんが…俺はあなたを殴りたくありません!よってこの四肢を失おうとも何もしません!最悪再生するので!』」

「『日本人は我慢強いと聞くが何て覚悟だ…分かった、俺の負けだ。試すようなことをして悪かったな。』」

「『パピー?』」

「『…ブリザードとずっといろとは言わねえ。だが…ブリザードが頼ってきたら助けやってくれ。その時はお礼に俺がお前の望むことを何だってやってやる…頼む。』」

「『契約が終わっても…俺とブリザードの繋がりは失くなっていませんよ。会いたいといえば会いにいきますし、行きたいところがあれば連れていきます。ですから…安心してください。』」

「『…約束だ。もし破ろうものなら…お前を殺す。』」

「『その時は黙って殺されますよ。そして生き返り、あなたが納得するまで殺されます。』」

「『…ガハハハ!気に入ったよ!とりあえず今はじゃんじゃん食ってくれ!コーンブレッドもいいがナチョスも旨いぞ!』」

「『ありがとうございます…美味しいです!』」バクバク

「『ビールも飲め飲め!』」

「『はい!』」ゴクゴク

「『さすがソウジ!いい飲みっぷりね!』」

「『ガハハハ!樽ごと一気とは俺にも出来ねぇな!』」

「『ぷはー!最高です!あ、これは日本のお酒ですが飲みますか?』」

「『おう!今度は俺が…!!』」ゴクゴク

 

オロロロ…

 

「『あれ?』」

「『パピー!?』」

「『ハァ…ハァ…あんた…普段からこんなの飲んでるのかよ…』」

「『すみません…責任もって俺が飲みますね。』」ゴクゴク

「『おい!死ぬぞ!』」

「『ソウジ…お酒強かったのね…』」

「『ぷはー!』」

 

「私は完全に蚊帳の外だねえ…『すまないが、お代わりをもらえるかね?』」モグモグ

「『よく食べる子だ…いいよ!たーんとお食べ!』」

 

その後、普通に歓迎されていた。




芝2000mの参考記録
日本レコード:トーセンジョーダン タイム1:56.1(2011年 天皇賞(秋))
世界レコード:クリスタルハウス タイム1:55.4(1999年 ナシオナル・リカルド・リオン賞)

追記
日本&世界レコード;イクイノックス タイム 1:55.2(2023年 天皇賞(秋))


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第44話 現地でのライバルたちとの出会い、貴公子はホイットニーHへと出走する

どうも、鬱(2回目)になって休職中の作者です…辞めたいな。昨日はトーセンジョーダン産駒の『バリアントバイオ』が新馬戦で圧勝するところを現地で見てました…凄かったです。その後、4R後に疲れて帰ってしまいました。5Rに出走した『プレンティーハーツ』ちゃんが見たかったな…順位は最下位だったらしいですが。

今日は菊花賞ですが、私の応援するのは『セイウンハーデス』です。その次に『ガイアフォース』、『フェーングロッテン』…後は『ポッドボレット』と『アスクワイルドモア』です。『アスクビクターモア』や『ドゥラドーレス』など強力なライバルもいますが…頑張って欲しいです。

勝ったのはアスクビクターモアでした。セイウンハーデス、速い逃げでしたね…お疲れ様でした。

本編ですが、アメリカのウマ娘が出てきます。全員分かりますかね~?今さらですが、「」内の『』は英語で喋ってます。


現在いるのはアメリカのサトラガレース場。今日アグネスタキオンとソウジは『ホイットニーハンデキャップ』に挑戦する。タイキブリザードを含めた3人が気合いを入れ、レース場内に入った瞬間に青鹿毛のウマ娘が声をかけてきた。

 

「『初めまして、栗毛のお嬢様…サトラガへようこそおいでくださりました。』」

「『君は…ウォーエンブレム君だね?』」

 

ウォーエンブレム…アメリカにてクラシック2冠を達成したウマ娘。彼女が勝ったレースをは何れも圧倒的で、非常に力強い勝ち方をしていた。

 

「『おぉ!私のことをご存知でしたか!光栄の極みでございます。どうです?この後、一緒に食事でも…痛っ!誰だ?』」ボカッ

「『ウォーエン!栗毛の娘を誰でもナンパするんじゃないわよ!さっきもやめろと言ったばかりでしょ!』」

「『メタグか…いやいやいや!こんな綺麗な栗毛だよ!ナンパしない方が失礼…』」

「『この娘を誰だか知ってるの?G1レースを4勝してるアグネスタキオンよ!今日出走するの!』」

 

ウォーエンブレムを止めようと黒鹿毛のウマ娘が現れた…彼女の名はメダグリアドーロ。BCクラシックでは2着だったのもののその後、重賞レースを2連勝しているウマ娘で今日の『ホイットニーH』にも参戦する。

 

「『メタグ、ケガする前にも勝ってるから正確には5勝だよ。知っているとも…ぜひ、我が国に欲しいウマ娘だ。』」

「『光栄だね。』」

「『あー、ウォーエンブレム。君はなぜここにいるんだ?君はすでに引退済みだろ?』」

「『あんたが担当トレーナーのソウジさんか。何、アグネスタキオンのスカウトだよ。あの走り…ここでも十分通用するレベルだ。彼女と共にここにいるつもりはないか?』」

「『ウォーエン、レース前よ。そういう話はまた後にしなさい。ほら、行くわよ!』」

「『あぁ!もうちょっとあの栗毛の姿を私の眼に…また、後で話しましょう、栗毛のお嬢様。』」

「『…アグネスタキオン、ジャパンからわざわざ来たようだけど…勝つのは私。知ってると思うけどジャパンとここのダートバ場は全然違うわ。初めてのバ場を走る娘に負けたなんて話にならない。私がヴォルポニもあんたもまとめて倒してあげる。』」

「『フフフ…お手柔らかに。』」

 

「すげぇなタキオン!早速、メダグリアドーロにウォーエンブレムに会えたぞ!しかもスカウトされたぞ!」

「そうだね。しかし…ククク、私がお嬢様と呼ばれるとは新鮮だね。」

「間違ってはないだろ?」

「それはそうだが…なら、トレーナー君もそう呼んでくれるかね?」

「今日勝ったら好きなだけ呼んでやるよ。」

「本当かい?約束だよ!」

「…」

「どうしたんだブリザード?」

「ウォーエンがスカウト?あの子…とある国の王様にスカウトされてSPになるって聞いたね。…ここで走るかって言ってたけど何でだろう?」

「そこら辺の事情は知らん…」

 

そして、アグネスタキオンとソウジとタイキブリザードはレースの準備のため用意された部屋へと向かう。

 

 

「『…あれがジャパンのアグネスタキオンか。』」

 

ーーー

 

控え室にて打ち合わせが終わったアグネスタキオンがタイキブリザードと話している中、戻ってきたソウジが声をかける。

 

「タキオン、ジャングルポケットから手紙が届いてるぞ。」

「え?国外までそれは続くの?で、内容は何かね?」

「その前に何か入ってるな。これは…狸?」

 

中には銀の折り紙で折られた狸が入っていた。

 

「ん?意図が分からないが…手紙には何て書いてある?」

「『Disguise each other.』…とだけ。」

「互いに騙しあえ、…って意味ね。誰かと駆け引きしろってこと?」

 

コンコンコン

 

控え室にてノック音が聞こえた。

 

「『どうぞ。』」

 

訪ねてきたのは栗毛のウマ娘だった。

 

「その…、日本語で大丈夫ですよ。」

「そうかい。えーと、君は?」

「…私は『ノーザンロック』と言います。生まれは日本、育ちはアイルランド。まぁ、ドバイやアメリカにもよく来てるけど…まだ重賞は勝てたことがないから…知らないですよね。」

「ドバイ…あぁ!3月のジュベラリーマイルで2着だったりする?」

「え?はい、そうですけど…」

「何でトレーナー君は知ってるんだ?」

「いや、お前をドバイで走らせるか悩んでいた時にちょっとな。結局走らせなかったから…今は関係ないね。とりあえずそのレースを俺は見てたわけだ。」

「あ、ありがとうございます…嬉しいです。」

「で、どうしたんだノーザンロック君?」

「その…アグネスタキオンさんが日本のウマ娘と聞いたから…一目会いたくて…」

「応援に来てくれた訳だね。」

「違います…ライバル宣言です!今日!初のG1で!あなたに勝ってみせます!それでは!」

「ちょっと…」

 

栗毛のウマ娘…ノーザンロックはそう宣言をすると同時に部屋から出ていってしまった。突然な行動に慌ててアグネスタキオンも追いかけるがもう姿は見えなかった。諦めて部屋に戻ろうとするアグネスタキオンの耳に何かが弾ける音が聞こえる。その音が聞こえた方角をみると…今度は鹿毛のウマ娘が手を重ねこちらをみていた。

 

「Heads or tails?」

「Heads.」

 

開かれた見えたコインは何も書かれていない…つまり裏だった。

 

「『みこーん!残念ながら外れだよ。初めましてアグネスタキオン…予告しよう。君は今日、アタマ差で負けるね。』」

「『こちらこそ初めまして。随分なご挨拶じゃないかヴォルポニ君。』」

「『この国は今日、君が来たことで大騒ぎだ。ダートと芝、どちらのレースも得意とする『スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ』な私だが…今回は賢い可愛いダート王として君を倒そう。いい加減3連続の2着から抜けないといけないからな。』」

「『ハハハ…全力で来たまえ。勝つのは最速の私だよ!』」

 

「おいタキオン、何時まで…ヴォルポニ!?」

 

「『あなたがアグネスタキオンのトレーナー…初めまして。』」

「『おぉ!話せるとは思わなかった!サインもらっていいか?この色紙に…』」

「『もちろん♪この『スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ』な私がサインをしよう!』」かきかき

「『オブザスターズを2回言った?いや、何でもないよ。ありがとう。今日のレースは君を応援出来ないが…いい走りを見せてくれよ!』」

「『ハラショー…応援はしてもらえないのか。』」

「『君の出身はアメリカだよね?なぜロシア語?』」

「『トレーナー君、そろそろに部屋に戻るよ。』」

「『あぁ。』」

「『ヴォルポニ君…』」

 

アグネスタキオンが10円硬貨を弾き…手を伏せる。

 

パチン

 

「『表か裏か?』」

「『ん?裏だよ。』」

 

開かれて見えたのは例の寺院。

 

「『数字じゃない…よし裏だ!どうやら運は私にある!また、レースで会おう!』」

 

そういうとヴォルポニは去っていった。

 

「なぁ、10円玉の表裏って…」

「あぁ、数字が裏だとも。ククク…さてさて、これがどうなるやら。」

「タキオン、早く準備するね。」

「あぁ…」

 

………

 

レースに向けて最後の準備をするアグネスタキオンだったが…どこか上の空だ。

 

「白のハイヒール?」

「おいタキオン!…その靴で走るつもりか?」

「あ…!これはその…景気づけにトレーナー君を踏もうと…」

「ソウジ?タキオンといつもそんなことを?」

「んな訳ないだろ!バカなこと言ってないで早く履き替えろ!宝塚記念に続いてまた出遅れたら引退させるぞ!」

「…はい。」

「緊張してるのは分かったから…ったく、こういう時は…」

 

ソウジはスマホを取り出し…

 

「あ、フライトか?あぁ、タキオンのことで…そうだ。ちょっと代わるな…ほれ!」ポイッ

 

アグネスフライトへと電話をかける…そしてアグネスタキオンへとスマホを投げた。

 

「もしもし…」

『タキオンちゃん?緊張してるの?』

「いや、そんなことは…」

『こっちは日が明けるくらいの時間だけど合宿所で理事長が砂浜に特大モニターを用意してくれて…みんながタキオンちゃんのレースを見ようとしてるわ。』

「え?」

『特にアリュールちゃんなんて最前列でデジタルちゃんと謎の儀式を始めているし。』

「…」

『今期待に答えれるか不安になったでしょ?』

「…あぁ。少し前ならこんなこと気にもしなかった筈なのに…」

『それはタキオンちゃんが実験やレースを通して色んな子達と繋がってきたからよ。』

「お姉ちゃん…」

『そういえば、お姉ちゃん気づいたことがあるの!』

「ん?何かな?」

『男の人のパンツって前に穴があるけど後ろには無いじゃない?だから、この前は尻尾を通すために穴を開けたんだけど…前後逆に履けば解決だっだんじゃないかな~って。』

「ブッ!…お姉ちゃん、一体の何の話をしているんだ?」

『そうすればソウジトレーナーの前尻尾と私の後尻尾で間接尻尾に…』

「間接尻尾って何!?というか前尻尾って…アレじゃないか!」

『最近、尻尾ハグっていうのが流行ってるらしいじゃない。タキオンちゃんもソウジトレーナーしてみれば?何ならお姉ちゃんがソウジトレーナーをやってみたいな~』

「こんな時に何てことを言うんだ!このムッツリ!」

『フフフ…余計な力は抜けたようね。じゃあ頑張って♪』

「あ…うん。」

『帰ってきたら3人で尻尾ハグしようね~♪』

「その話はいいから!国際通話だしもう切るよ…ありがとう。」

 

通話が終わり、ソウジはアグネスタキオンからスマホを受けとる。アグネスタキオンの顔は晴れやかな顔へと変化していた。

 

ーーー

 

「ふふふ~ん♪」

「今の電話は…タキオンか?」

「そうよジャンポケちゃん。何か話したかった?」

「いや、伝えたいことはもう伝えたさ。タキオンが勝つよ。」

「ふーん…それはあれを見ても同じことが言えるの?」

 

『ウォーミングアップが始まったが…ジャパンのアグネスタキオン、慣れないバ場に苦しそうだ!』

『…ジャパンのダートバ場とはかなり違いますからね、仕方がありませんよ。

彼女のスピードを活かした走りとはかなり相性が悪そうです。』

 

モニターに映るアグネスタキオンは重そうに足を動かしていた。それを見たジャングルポケットは口角を上げ、アグネスフライトへと答える。

 

「あぁ、アグネスタキオンが勝つね。」

「へぇ~…」

 

アグネスフライトは探るような、だが嬉しそうな顔でジャングルポケットを見つめた。ホイットニーHがいよいよ始まる。




ウォーエンブレム(War Emblem)…アメリカ出身の青鹿毛の牡馬。走る時はかなりの走りを見せ、クラシック期にイリノイダービー(G2)を6馬身以上の圧勝で初重賞を勝ち取った。その強さがサウジアラビアのサルマン殿下の目に止まり、馬主が変わった。BCクラシックにてヴォルポニに負けて引退し、サルマン殿下の元で種牡馬になる予定だったが…急死したため、日本の社台が21億で購入。しかし、小柄な栗毛の牝馬にしか興奮しないという性癖により、思うように種付けが出来ず2016年にアメリカへと返された。なお、この時の検査でも種付けを拒否したため、去勢が行われセン馬となった。思うように種付けは出来なかったもののオールブラッシュ、ローブティサージュ、ブラックエンブレムなど3頭のG1馬を出した。

ノーザンロック(Northern Rock)…ノーザンテースト産駒で日本生産のセン馬(栗毛)。1998年、ジョン・ファーガソン・ブラッドストックにより3780万で落札され、アイルランドにてデビューする。暫くはアイルランドで走っていたものの、後にドバイとアメリカのレース場へ転々と出走した。生涯成績は33戦7勝(7-7-4-15)で、主な重賞はジェベルアリマイルの2着。現在、どうなっているか不明。

ーーー

余談ですが、今日走りますジャスタウェイ産駒の『ポッドボレット』の母父がメダグリアドーロなんですよね…頑張って欲しいな。


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第45話 ホイットニーHより"超光速の貴公子"VS"金メダル"VS"ベテラン狐"、レース後にモルモットは眠る

どうも、鬱の休職届は受け取られず、有休全部使っての退職となった作者です…一生怨んでやる…。
大阪からも出ていき地元へと帰ります…。

今日は天皇賞(秋)ですね、私が応援するのは『イクイノックス』と『アブレイズ』です。頑張って欲しいですね。

勝ったはイクイノックス!!やりました!!


トレセン学園合宿所ではホイットニーHに出走するアグネスタキオンを今か今かと生徒たちが待っていた。

 

「ローズちゃん…もうすぐタキオンちゃんが走るんだよね…Zzz」

「起きなさい!寝るんじゃないわよ!」

 

その生徒の1人、ハルウララは睡魔に負けそうになっていた。時間は明け方…夕方には眠り、30分程前に起きたハルウララだったがその瞼は眠そうだ。

 

「寝てるウララちゃん可愛いな…キング、このまま寝かせてあげない?」

「何言ってるの!ウララさんが言い出したことでしょ!タキオンさんのレースをみたいから何としても起きる、って!」

「だから起こして、とは言われてないのに…流石キング。」

「…」コクン、コクン…

「ライスさんも起きてください!ウララさんと一緒にレースをみるのでしょ?」

「…はっ!ライス、寝てないよ…ほら!髪の下では起きてるから…」

「嘘仰い!…紅茶を入れたわ。少しは目が覚めるわよ。ウララさんとローズさんも…」

『ありがとう~』ゴクゴク

 

眠気と戦うグループがいる一方で…

 

………

 

「ふむふむ…ここでこの色に変えて…腕を回す…あ!」スポッ

「ちょちょちょ、アリュールさん!?動きはもう少しゆっくりでいいですからね!」

「ん?デジタルはもっと速いだろ?」

「あれは慣れと言いますか…じゃなくて!サイリウムが飛ぶと普通に危ないですから!今回はゆっくりでいいですから!」

「…そうだな。すまない、続きを教えてくれ。次のファル子のライブで出来るようになっておきたい。」

「えぇ、お任せください!」

 

「アリュールさん…何してるのだろ?」

「サイリウムのラッキーカラーは緑よ!」

 

謎の動きの練習をするグループもいて…

 

………

 

「あの…エアグルーヴ?」

「何だ?」

「何でお前は俺の膝の上に乗ってるんだ?熱いし…周りの視線が痛いのだが?」

「…嫌か?」

「嫌とかそういうのじゃなくて…」

「安心しろ。今の私をエアグルーヴと思う奴はいない。満足するまで座らせろ。」

「いやどう見てもエアグルーヴだろ。まさか、その為だけに髪を染め…あー、イメチェンしたのか?」

「染めてはいないぞ。普段の私がいいなら今すぐ戻すが?それに金髪以外にも変えれるぞ。貴様の好みは芦毛か?栗毛か?」

「すぐに戻せる?変えれる?…さらに混乱しそうだからこのままでいてくれ。」

「あぁ。」

 

レースそっちのけな(エア)グルーヴもいた。

 

ーーー

 

ウォーミングアップが終わった各ウマ娘たちがゲートへと収まっていく。そして…ゲートが開かれ、『ホイットニーH』が始まった。

 

『スタートしたぜ!

8人全員が前へと進む…ヴォルポニがやや出遅れか、ハナを取ったのはアイルランドのノーザンロック!

続いて2番に我らがアメリカのクラウドシチズン!

3番手争いにメダグリアドーロとジャパンのアグネスタキオン!

ダート王のヴォルポニは6番手からのスタートとなった!』

 

「よっしゃ、いいスタートだタキオン!」

「頑張るね!」

 

『さぁ、最初のコーナーを曲がっている!

先頭はノーザンロック!

その内にハナを狙ってクラウドシチズン!

1バ身差を保ったまま3番手メダグリアドーロ、その外にアグネスタキオン!

すぐ後ろにヴォルポニ、その外にはサザーランド!

4バ身以上離れ、イブニングタイアとパズルメントが控えている!』

 

「『いけ!メダグリアドーロ!さっさと先頭に立っちまえ!』」

「『ヴォルポニ、絶対にチャンスが来る!それまでがまんだ!』」

 

『先頭はノーザンロックのままだ!

ここでメダグリアドーロ少しペースを上げてきたか、クラウドシチズンをかわして2番手になる!

このまま、ノーザンロックを捉えにかかるか?

しかし、そのままの展開が続いていく!

サラトガの長い直線、各ウマ娘たちは足を溜めているようだ!

さぁさぁ、全ては最終コーナーで…と、ここでノーザンロックがさらにペースを上げたか!

引き離しにいった!

クラウドシチズンは後退気味!』

 

「『でしゃばるなノーザンロック!ペースを下げろ!』」

「『バテろ!そのまま下がってアグネスタキオンとぶつかれ!』」

 

『きたぜ最終コーナーカーブ!

先頭はノーザンロックが何とかハナを取っているが…!

ここでメダグリアドーロが捉えた!

先頭はメダグリアドーロ!』

 

「はあぁぁぁ!」

「『くっ…うおぉぉ!!』」

「勝つんだ!G1を何としても!!」

 

「『私も忘れるなよ?』」

 

『さらにここで外からヴォルポニ!

外からヴォルポニ!

前の3人を捉えにかかる!』

 

「ここだ!はあぁぁぁ!」

 

ダンッ

 

『ここでアグネスタキオンが仕掛けてた!

メダグリアドーロを捉えるか?

かなりの混戦!

先頭はメダグリアドーロ、その内にアグネスタキオン、外からヴォルポニ!

しかし、ジャパンのアグネスタキオン速い!

内からメダグリアドーロをかわした!』

 

「タキオン!」

「そのまま行くね!!」

 

「はあぁぁぁ!!!」

 

『アグネスタキオンがやや抜け出し…そのままゴールイン!

勝ったのはジャパンのアグネスタキオン!

このバ場でもスピードを武器にした!

2着にメダグリアドーロ、3着にはヴォルポニ!!』

 

ざわざわざわざわ

 

「『おいおい…』」

「『ジャパンのウマ娘が勝った?』」

「『嘘だろ?』」

「『ふざけんな!ドーピングだろ!』」

「『降着だ!降着にしろ!』」

 

ゴール後に聞こえたのは歓声や拍手では無くブーイング。それでもアグネスタキオンは笑顔で観客へと手を振り…コースを後にした。

 

ーーー

 

日本のトレセン合宿所では…

 

『アグネスタキオンやりました!

アメリカにて日本ウマ娘初のダートG1勝利です!』

 

わあぁぁぁぁ!

 

「タキオンちゃん勝ったね♪凄いね♪」

「凄い何てものじゃないわよ!…凄く凄いのよ!」

「キング、トプロ先輩みたいになってるよ。…でも本当に凄いしか言葉が出てこないよ。」

「海外の、それもG1勝利だからね。でも…」

「えぇ、現地のファンからしたら悔しいわよね。だからと言ってブーイングを出すのは間違いよ。」

「…」ブルブル

「ライスちゃん、大丈夫?」

「…うん。ライスは平気だよ。」

「あれ?何か静かになってきた?」

「本当だ…え!?誰かが暴れてる?喧嘩かな?」

 

ーーー

 

「『ふざけんな!真剣に走った奴らにバテろとかドーピングとか抜かしてんじゃねぇよ!おらぁ!』」

「『がっ!』」バキッ

「『おい、ウォーエンブレム!お前は悔しくないのかよ?メダグリアドーロやヴォルポニが負けたんだぞ!ジャパンとか訳の分からん国に…』」

「『私が走るレース以外にそんなのあるか!それより、戯れ言抜かした奴を全員ブン殴ってやるよ!おらっ!』」

「『ーっ!』」バキッ

 

レース場の観客席はブーイングが突然に止まり騒然とし始めた。1人のウマ娘…ウォーエンブレムがブーイングを飛ばした観客を殴りだしたのだ。逃げる者、止めようとする者、一緒に殴りだす者、辺りは地獄化とした。

 

「ったく…ブリザード、俺が止めてくる!」

「ホワッツ!?ソウジが?ダメね、ベリーデンジャーね!」

「俺にはこれがある…」

 

ゴクン

 

ソウジは『合成因子』を飲み込んだ。そして『デビルジュピター』の『ウマ人』へと姿を変えた。

 

「ソウ…ジッ!?」ガクッ

「『何だこれは?』」ガクッ

「『体が…重い?』」ガクッ

 

タイキブリザードを含め、周りの観客に重圧がかかる。そんな中、ウォーエンブレムだけはケロっとした顔でソウジを見る。

 

「『…何故止めようとする?君の担当ウマ娘を貶した奴らだぞ?』」

「『タキオンが望まないからだ。やめてくれ、ウォーエンブレム。』」

「『…私にも私の意地がある。そんなに止めたきゃ…力ずくで来い!』」

「『…分かったよ、最強の力で抑えてやるよ。』」ガチャ

 

ゴクン

 

ソウジは腕輪を付けて『デビルジュピター』の『合成因子』を回収し、別の『合成因子』を飲み込んだ。普通の鹿毛からピンクの鹿毛の『ウマ人』へと姿が変わる。

 

「『ずいぶんと可愛い髪色じゃないか…じゃあ、さっさと寝んねしな!おらっ!』」

「『…』」バコッ

「『ー??おら!おらぁ!おらぁ!』」

「『…』」バコッ

「『効いてないだと!?』」

 

ソウジが飲み込んだのは『シュンミンアカツキ』…アグネスタキオンとハルウララによる『合成因子』。その特徴は規格外のパワー…ウマ娘1人の力で対応出来る術はない。ウォーエンブレムはパンチを繰り返すがノーダメージなソウジに怯む。その隙を付き、ソウジはウォーエンブレムを取り抑えた。

 

「『しまっ…離せ!』」

「…」

「『…私の負けだ、もう誰も殴ったりはしない。だから離してくれ。』」

「…」

「『??おい!聞いているのか?』」

「Zzz…」コクン

「『寝てるだと…!起きろ!待てよ、このまま力ずくで…ダメか!クソッ!何てパワーだ!』」ギチギチ

「Zzz…」

「タ、タキオン呼んでくるね!」

 

ウォーエンブレムを取り押さえたままソウジは眠る。重圧から解放されタイキブリザードがアグネスタキオンの所へと向かった。それと同時に…

 

「ぐおぉぉぉ!ぐおぉぉぉ~!」

「『喧しいイビキだな!離せ!起きろ!いやあぁぁぁ!!』」

 

『シュンミンアカツキ』による大きなイビキが響く。タイキブリザードがアグネスタキオンを引き連れ戻った時にはウォーエンブレムも気絶していた。



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第46話 ホイットニーH終了、貴公子らは吹雪と戦勲章を連れ帰国する

どうも、楠木ともりさんのせつ菜ちゃん降板に動揺が隠せない作者です。歌うだけまだしもステージで踊る必要もある訳ですし…難病か…うぅ、悲しいですが無理はして欲しくないですね。

そんな訳で投稿します。


ウイニングライブが終わり、アグネスタキオンはソウジとタイキブリザードに加え、ウォーエンブレムとメダグリアドーロらと合流していた。『シュンミンアカツキ』の『合成因子』はアグネスタキオンにより既に回収されており、ソウジは『ウマ人』から人間へと戻っていた。

 

「『酷い目にあったよ。』」

「『…すまなかったウォーエンブレム。』」

「『ふっ…あの時は私も血が頭に上っていたからな。止めてくれて感謝するよ。』」

「『ウォーエンブレム君、私のために怒ってくれたのは嬉しいよ。ただ…暴力はいただけないがね。』」

「『そうよウォーエン!あなたはウマ娘の中でも特にパワフルなのよ!大事にならなかったとはいえ、今回はケガ人出てしまったじゃない!』」

「『アグネスタキオンの勝利を貶した奴らだ。後悔はない。』」

「『…』」

「『と言うか、ウォーエンの暴走を抑えたあなたが凄いわ。何者なの?』」

「『俺はタキオンのトレーナーで…モルモットだ。』」

「『???どう言うこと?遺伝子組み換えで人間の姿をしてるってこと?』」

「『いや、彼は人間だよ。ただ…私の実験によって一時的にウマ娘並みのパワーを引き出しただけさ。』」

「『いや、ウォーエン以上となるとウマ娘をも超えてない?』」

「『まぁ、アレは実験による副産物だよ…』」

「『副産物?』」

 

プルルル

 

「『ん?私の電話だな。少し席を外そう。あぁ、私だ…』」ピッ

 

ウォーエンブレムが部屋から出る。

 

「『それにしてもアグネスタキオン…あなた、凄いわね。あのバ場は初めて走ったのでしょ?ウォーミングアップではかなり手こずっていたような…』」

「『あのバ場なら3歩で適応したさ。ククク…あの小細工に効果があったようだね。』」

「『…嘘でしょ?初めてのバ場に短時間で慣れるって…ジャパンのウマ娘は凄いのね。』」

「『タキオンが規格外過ぎるだけだよ。』」

「『ソウジの指導のお陰ね!』」

 

コンコン

 

「『ウォーエンブレム君が戻ってきたのかな?どうぞ!』」

「…」

 

入ってきてのはノーザンロック。

 

「アグネスタキオンさん、優勝おめでとうございます。」

「あぁ、ありがとう。」

「私、本当は重賞…それもG1レースに出走出来ただけで満足と思いました。ですが…ですが…やっぱり勝ちたかったです…」

「うんうん、分かるねその気持ち!」

「で、ノーザンロック君。君はこれからどうする予定だ?」

「…ここに暫くいます。まずは1勝…その後にまた考えます。」

「『あなた…いい逃げだったわよ。また、あなたと走れる日を待ってるわ。』」

「ありがとうござ…あ!『ありがとう、メダグリアドーロさん。…それまでもっと強くなるから。』」

「『とりあえず…あの栗毛好きが来る前に戻った方がいいよ。またナンパされるから。』」

「『そうだね…では、さようなら。ソウジさん、秋川理事長によろしく。』」

「え?何?理事長の知り合い?」

「ふふふ…内緒です。」

 

そういうとノーザンロックは部屋を後にした。それから数分後にウォーエンブレムが戻ってきた…真っ青な顔で。

 

「『ウォーエン、どうしたの?』」

「『…追い出されることになった?』」

「『…はい?』」

「『『ジャパンのウマ娘が勝って称賛し、愛国者にケガを負わせた無法者よ。我が組織にお前ような者は不要だ…よって追放を命じる。もうこの国にお前の居場所は無い物だと思え。』…と言われた。』」

「『酷い!こんな話が許される訳が無いわ!抗議にいくわよ!』」

「『もう遅いよ…メディアは私を悪者扱いさ。元々別の国に行こうとしていた私だ…邪魔だったのだろう。』」

「『…ねぇ、アグネスタキオンのトレーナー。』」

「『何だ?』」

「『ウォーエンをさ、ジャパンに連れていってくれない?』」

「『はい?』」

「『私がこの事態を治めるから…それまでウォーエンを守ってくれない?』」

「『普通に考えて、今日会ったばかりの…それも人間の俺に頼むか?』」

「『だってあんた、ウォーエンより強かったじゃない。』」

「『いや、あれは…』」

「『私は日本語分からないし…メタグと離れたくは…』」

「『ウォーエン、お願い。あなたが直接の非難される所を見たくないの。』」

「『日本のメディアを見てみたよ。君の行動に非難の声もあるが…称賛を送る声も少なくない。』」

「『ウォーエン、トレセン学園に来るね!』」

「『トレセン学園?引退済みの私でも入れるのか?』」

「『イエース!ルドルフと理事長ならきっとあなたを受け入れてくれるね!』」

「『まぁ、プロ野球の外人助っ人みたいなものだ。』」

「『…何故、私のためにここまでしてくれるのだ?』」

「『まぁ、私のために動いてくれたことに責任を感じてなくはない。』」

「『ぶっちゃけ、俺もスッキリしたしな。』」

「『タキオン…ソウジさん…ブリザード…感謝する。』」

「『ただし、学園の生徒をナンパしないようにな。』」

「『………善処しよう。』」

「『ウォーエン!今のあんたの立場分かってるの?』」

「『分かっているのだが…こればっかりは…』」

「『ったく、最悪フライトかヤエノムテキが止めるだろから問題無いだろうけど…』」

「『む!フライトとはジャパンCに出てたアグネスフライトのことか?そして、ヤエノムテキって娘は栗毛か?』」

「『えーと………鹿毛だ。』」

「『栗毛だな?栗毛なんだな?よっしゃー!メタグ、トレセン学園に行ってくる…痛っ!』」バキッ

「『…バカッ!もう、知らない!』」

「『…メタグ?』」

「『終わったら連絡するから、それまでジャパンを好きに楽しんだら?私のことなんて忘れて、ね!じゃあね!』」

「『メ、メタグ…』」

「『…ふん!』…ソウジさん、彼女をお願いしますね。」

「あぁ。」

「『待って!今、何て言ったの?何故そこだけ日本語に…』」

「『ウォーエンの荷物は送りますのでもうそのままジャパンに向かってください。』」

「『分かったよ。』」

「『ちょっと待って!私はまだ…』」

「『ウォーエン!』」

「『ジャパンに…って何?』」

「『少し眠ってもらうわよ…ドクター!』」

「『承知しました。』」

「『何…を?…Zzz』」プスッ

 

首に何かを注射され、ウォーエンブレムは眠ってしまった。

 

「『2人ほど護衛もつけましょう…バトラー、ゴア。』」

 

『はい。(はいは~い)。』

 

メダグリアドーロに呼ばれ2人のウマ娘が現れた。

 

「『…ゴア、お嬢の前よ。ちゃんとして。』」

「『クビにしたきゃしろっての。ふわぁ~』」

「『あなたたち…今からこの人たちとジャパンに行きなさい。必要な物は後で送るからウォーエンを監視して。』」

「『え?日本!?久々だね!』」

「『ん?ジャパニーズを話せるバトラーならまだしも何で私まで?』」

「『ウォーエンが1番心開いてるからよ。それに…あんたなら飛行機乗ってる間にマスター出来るでしょ?』」

「『出来るけど…分かったわよ。行かせていただきますよ。』」

 

バトラーと呼ばれたウマ娘は金髪の鹿毛で毛先が青に染まっており、目に星のマークがついていた。ゴアと呼ばれたウマ娘は栗毛にやる気の無さそうな目をしていた。

 

「えっと、君はアグネスタキオンで君はそのトレーナーで…君は?」

「タイキブリザードね。現役時は日本にいたけど、ここの生まれだし英語でいいね。後、私もこの後日本へ行くね!」

「…そうなんだ。私はSG(サービスガーディアン)No.88…バトラーって呼んで。」

「『ん?自己紹介か?私はSG(サービスガーディアン)No.89。名はイージーゴア。』」

「『イージーゴアだと!?』」

「『…ジャパニーズでも知ってた奴がいるんだね。』」

「トレーナー君、解説を頼めるかい?」

「詳しくはまた後で話すが…G1レースを9勝している猛者だ。」

「9勝!?」

「『挨拶は終わったでしょ、無駄話してないでさっさと行くわよ!バトラー…私のことは何も話さないでよ。』」

「『別に言わないわよ。君たちは何時の便に乗るの?』」

「『3時間後だな。そろそろ空港に向かわないとね…席は取れるか?』」

「『えーと、はいはい。その時間ね…取ったわよ。ゴアはウォーエンを運んでくれる?』」

「『分かったわよ。ついでにウォーエンが起きて暴れないよう縛っておくわね。』」

「『ソウジ、私はパピーとマミーに最後に会ってくるね!後で空港で合流ね!』」

「『あぁ。』」

 

タイキブリザードはレース場を後にした。

 

「『とりあえず、俺とタキオンは空港で土産でも見る予定だが…お前らはどうするつもりだ?』」

「『どうするも何も寝てるウォーエンがいるのよね。スーツケースにでも入れようかしら?』」

「『亡命かな?いや、今回はそうだけど…うーん、職員でも買収する?』」

「『ゴア!目立つのはダメよ!』」

「『流石にそれは冗談よ。でも…どうしようかな…』」

「『その件なのだが…タキオンに任せてもらえるか?』」

「『アグネスタキオンに?』」

「『タキオン、例の首輪ってあった?』」

「『あるとも。例のカチューシャもあるよ。』」

「『え?どうするつもり?』」

「『空港に行きながら説明文しよう。ではメダグリアドーロ君、私たちもそろそろ行くとも。…BCクラシックでまた会おう!』」

「『えぇ、次こそは私が勝つわ!』」

 

アグネスタキオンたちもレース場を後にし空港へと向かった。こうして、ホイットニーHは幕を閉じた。

 

ーーー

 

「『…いるんでしょ、ヴォルポニ?』」

「『バレていたか。』」

「『アグネスタキオンに何か言わなくて良かったの?』」

「『敗北した王が語れることは無いさ。そして今回は君にも負けた。そろそろ潮時のようだからね…次のBCクラシックをラストランにするよ。』」

「『そう。じゃあ、私が勝って引退させてあげる。』」

「『王は最後まで足掻くものさ。それでもダメなら諦める。』」

「『あんた、潔いわね。』」

「『ジャパンにはこんな言葉がある…"押してだめなら諦めろ"。どうしようも無い時はどうしようも無いものさ。』」

「『私が知ってる言葉と違うのだけど!?』」




イージーゴア(Easy Goer)…アメリカ出身の栗毛の牡馬。サンデーサイレンスのライバルとして知られており、G1レースを9勝と大きな成績を残している。その後、アメリカで種牡馬となるも4年目に心臓麻痺で死亡。136頭の産駒が生まれた。代表的な産駒としてG1レースを4勝したマイフラッグ(My Flag)、日本でもトパーズSでレコードを取ったプレミアムサンダー、などがいる。

次回はエリザベス女王杯の時に投稿予定です…では、また!


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第47話 雪美神に迫る2つの影、やはり姉は強し!

どうも、大阪から離れたついでに競馬も止めた作者です。

今日はエリザベス女王杯です!…馬券は買わずとも応援はしたいですね!私が応援するのは『ローザノワール』です!他にも唯一現役でウマ娘になった『デアリングタクト』や去年の勝者『アカイイト』、オールカマーを制した『ジェラルディーナ』…応援したい馬が多すぎる!

勝ったのは…ジェラルディーナ!ジェンティルドンナの血健在…デアリングタクト、復活ならず。
とはいえ、お疲れ様でした。いいレースでした!

とりあえず、本編どうぞ。


ホイットニーHが終わり、アグネスタキオンとソウジは、2(+2)人のウマ娘を連れて帰国した。タイキブリザードはそのまま就活へ、ウォーエンブレムは転入にあたっての手続きを学園で行うことが決まったはずだが…

 

「塩焼きそば~!塩焼きそばはいらんかね~!」

「焼きそばと言えばソースよね?ソースもいかが?」

「ハーイ!ベイクドコーンね!焦がしバターでベリーデリシャス!ポップコーンもあるね!焼きそばと一緒にどうね?」

 

そこにいたのは塩焼きそばを売るゴールドシップ、ソース焼きそばを売るアグネスフライト、そして…焼きトウモロコシを売るタイキブリザードだ。

 

「『あぁ…太もも…脚…そしてキュートなお尻…何て素晴らしい体だ。そこの栗毛のお嬢様、どうすればそんな美しくなれるのだい?』」

「あなた…は?」

「『今から一緒に砂浜で散歩なんてどうだい?そこで詳しく…』」クイッ

「何故顎を触るのでしょうか?すみません、練習の邪魔ですので後にしてください。」

「『流石はサイボーグことミホノブルボンだ!私を振り払うとは…これは今すぐにでも2人になりたい。』」ハァハァ

「理解不能…マスター、不審者を発見しました。対処法の指示をお願いします。」

「不審者じゃなくてアメリカのウォーエンブレムっていうウマ娘な。お前と同じクラシック2冠取ってる凄い奴で…あー、俺は英語ダメなんだよな。とりあえず砂浜あるし…併走でも頼んでみてくれ。英語でな。」

「承知しました。マスターの指示により、あなたとの併走メニューを開始します。『ウォーエンブレムさん、準備をお願いします。』」

「『お?ここで待つからデートの準備をしてこいですか?オーケーですとも!楽しい砂浜デートにしましょうとも!では少し席を外しましょう。』」

「対象の移動を確認しました。どうやら言葉が通じたようです。」

 

さらに離れたところにミホノブルボンをナンパしているウォーエンブレム。その後、派手な水着で戻ってきたウォーエンブレムを見てミホノブルボンの頭はショートした。

 

ーーー

 

ソウジは2人を呼び出し、イージーゴアもやってきた。

 

「『ウォーエンさぁ…早速何してくれてんの?』」

「『あんな素晴らしいお尻の栗毛ちゃんを私が見逃すと思うのかい?いや、無理だ!』」

「『ウォーエン…だからと言って練習の邪魔したらダメね。あ!ソウジ、私の就職先はここね。』」

「『ここ?』」

「『私、調理師の資格持ってるからトレセン学園の食堂で働くね!理事長も人手が足りないから助かる、と大喜びね!』」

「『大丈夫か?かなり食うやつは食うぞ?オグリキャップとかオグリキャップとか…』」

「『ノープログレムね!』」

「『そのオグリキャップってウマ娘は栗毛かね?ぜひ1度見てみたい…』」

「『芦毛だな。』」

「『じゃあいいや。』」

「『お前、栗毛なら誰でもいいんだな?』」

 

栗毛大好きウォーエンブレム。

 

「『ウォーエンブレム、君への併走のお誘いはあるだろうから…その時は一緒に走ってくれ。日本語が分からなければ俺かイージーゴアを呼ぶか、もしくは『ゴメン』とだけ言って黙って見学してくれ。』」

「『分かった、栗毛ちゃんが来ることを期待するよ。その間に少しでもこの国の言葉を…!!』」ダッ

「『ウォーエンブレム!?』」

「『全く、世話が焼けるわね!』」

 

ウォーエンブレムが急に走り出す。走った先にいたのは…ユキノビジンだ。

 

………

 

体をゲーミングカラーに光らせ回転しながらユキノビジンに迫るウォーエンブレム(クリゲスキー)…そのまま、彼女の顎に手をあてナンパをする。

 

「『そこのベリーアルティメットキュートな栗毛のお嬢様♪良ければ私とお茶しませんか?』」クイッ

「じゃじゃじゃっ!?また!?今度は英語?あなたは誰でがんすか?うぅ…あたし、英語は喋れないンです。」

「『あぁ、なんて可愛いウマ娘だ♪トレセン学園に入ったら是非あなたと同室に…あばばば!』」ビリビリ

「ユキちゃん、大丈夫?」

「フライトさん、ありがとうごぜぇいます。」

「…」チーン

「災難だね。まさか2度もナンパされるなんて…とりあえず、私が連れていくから。」

「2人も運べるンですか?」

「前の事件で10人くらい抱えてたから余裕余裕♪」

 

ユキノビジンをナンパしていたウォーエンブレムをアグネスフライトがスタンガンで締め、担ぎ上げる。それと同時に誰かが走ってくる。

 

「ユキノ!!」

 

「シチーさん!大丈夫でがんす、フライトさんが助けくれンした。」

「そうなんだ、フライトさんありがとうございます。」

「ごめんね、まさか2度目があるとは思わなくて。さっさと連れてブタ箱にでもぶちこんでおくから…」

「2度目もあったのですか!?とはいえ、お願いし…!!」

 

ゴールドシチーの顔が真っ青になる。

 

「あの…フライトさん。この人って…」

「あぁ、合宿所に侵入してきた学園外のウマ娘でしょ?大丈夫、私がいる限り生徒たちには指一本触れさせないから。」

「ウォーエンブレムさんと『ピルサドスキー』さんですよね?」

「あぁ、1人は転入生の子だったんだ…で、ピルサドスキーって誰?」

「…ファインモーションさんのお姉さんですよ。レースは海外が中心でしたが、日本でエアグルーヴさんとジャパンCで競って勝ってます。」

「へぇ、ファインちゃんの…あ!」

「…王族です。」

「あちゃ~」

 

アグネスフライトが頭を抱える。それと同時にウォーエンブレムを追いかけてきたイージーゴアとソウジが合流する。

 

「フライト!ウォーエンブレムがここ…ってもう捕らえてる!?」

「ソウジトレーナー…王族に正当防衛って効果ありますかね?」

「急に何の話…あ!」

 

ソウジの目に写るは焦げて気絶しているピルサドスキー。

 

「エンコのマエストロ…覚悟はできました。ソウジトレーナー、小指が無い私でもお嫁にしてくれますか?」

「いや、話が飛躍し過ぎだわ!」

「とりあえず、ウォーエンは私に渡してくれないか?」ゴゴゴ

 

その後、ファインモーションに連絡をしたところピルサドスキーが監視の目を盗み、いなくなっていたことが発覚。アグネスフライトは逆に見つけて捕まえてくれたことに感謝された。また、ウォーエンブレムはイージーゴアからの説教を1時間以上受けた。

 

ーーー

 

「ってことがあったんだわ。」

「ウォーエンブレム君を捕らえるとは流石はお姉ちゃんだね…ところで何時まで私の足に抱きつもりだ?」

「報復の恐怖が無くなるまで…」すりすり

「嘘つけ!お前、普通にピルサドスキーを投げて渡してたし…ただタキオンの足に触れたいだけだろ!俺のだぞ!」

「あー、タキオンちゃんー。ソウジトレーナーが怖いよー。」すりすり

「トレーナー君、ちょっと黙っててくれるかい?」

「ぐぐぐ…」

「タキオンちゃん♪」すりすり

「えい!」

 

ファサッ

 

アグネスタキオンがアグネスフライトのスカートを捲った。見えてきたのは…前後逆に履かれたトランクス。

 

「きゃっ!タキオンちゃん!?…ソウジトレーナー、見ましたか?」

「悪い、見えたわ。うん、予想外なやつだな。」

「ち、違うんですよ!これは…前にみたいにパンツを盗んだ訳でなく、その前に自分で買ったので試して…」

「…前に盗んだ?」

「じゃなくて、えーと…えーと…忘れてください!」

 

バチッ

 

「…。お返しだ。」バチッ

「あばばば!!」ビリビリ

 

アグネスフライトはソウジへスタンガンを当てて気絶を狙うが効果は無く、逆に自身がその電撃を浴びる。

 

「で、盗んだって何?前に無くなった犯人ってお前?」

「うっ、ぐっ…何で効いてないのですか…」

「質問に答えろ。俺のパンツを盗んで、後ろに穴開けて返したのはお前か?」

「…」

「タキオン、ずっと前に耳の再生薬作ったから飲ます前に俺をゴッホするって言ってたよな?俺でする前にフライトで…」

「私が犯人です!耳が無くなるのは嫌です!」

「やれやれ、せっかく黙っていたというのに。」

「逆に聞きますけど、ソウジトレーナーはタキオンちゃんのパンツを盗まないんですか?」

「バカ野郎!俺とてモラルくらいはあるわ。」

「でも、ソウジトレーナーの部屋ってタキオンちゃんが履いていたタイツがありますよね?」

「…何のことだ?」

「トレーナー君、まさかとは思うけど前に練習中に伝線してボロボロになった私のタイツ…捨てておくと言って受け取っていたね。実は持って帰っていたのか?」

「…」ダラー

「それで毎晩、ソロ…」

「ぶっ!お前、俺の部屋にまで隠しカメラ仕掛けていたのかよ!」

「いえ、釜をかけただけですよ。まぁ、私とソウジトレーナーはタキオンちゃん好き好き同士ですので分かっていましたけど。」

「この…卑怯者!」

「これで引っかかるトレーナー君もどうかと思うよ。…とりあえず、今から2人ともゴッホにしてあげようじゃないか。」ゴゴゴ

「今からって…タキオン?ここは研究室じゃないだろ?」

「そうよ!ここだと、血が飛び散るから、後始末とかが…」

「安心したまえ。必要なものは揃っている…これで凍らせて取れば血は飛び散る心配は無い。」

「はぁ…さっさとしてくれ。」

「ソウジトレーナー!?タ、タキオンちゃん!冗談だよね?本当に私の耳取ったりしないよね?私、痛いのは嫌よ!内臓取る、とかの実験は無いって言っていたよね?」

「ん?耳を取る実験が無い、とは言って無いだろ?大丈夫、理論上は再生するし痛みなんて無いさ。」

「嫌、逃げないと…ぐっ!痺れて動けない。あぅ…」

 

涙目になるアグネスフライトへアグネスタキオンがゆっくりと近づく。そして、スプレーを右耳に当て…中身を放出した。

 

プシュー

 

「あっ…!!」

 

耳が冷える感触を得たと同時にアグネスフライトの意識が無くなる。

 

「おや、ただの打ち身用の冷却スプレーなのに気絶したようだ。」

「まぁ、既に実験済みだけどな。…今さらだが、ちゃんとあるよな俺の耳?」

「当然じゃないか。それにしてもお姉ちゃん…いい顔だったよ。是非ともカメラに収めたかったよ。」

「お前も結構歪んだシスコンだよな。」

「否定はしないさ。そんな姉妹から愛を向けられる気分はどうだいソウジ?」

「タキオン、誰に何と言われようと俺はお前一筋だよ。」

「フフフ…嬉しいことを言ってくれるじゃないか。それでこそ私のトレーナー君だ…ところでカフェの様子はどうだい?」

「ユキノビジンに聞いてみたが、特に変化は無いらしい。」

「終わったら会ってやると言っていたからね…何時でも対応出来るようにしておこう。」

 

「あん?別に今からでもいいぞ?」

『ーー!?』

 

どこからか聞こえた謎の声。突然の出来事にアグネスタキオンとソウジは驚き振り向いた。そこには気絶していたはずのアグネスフライトが立っていた。

 

「いや~、勝つことは分かっていたよ。しかし、テレビでみてる感じ余裕の無さそうな走りだったじゃねぇか。それだとBCクラシックはキツいぞ?」

「…何故、お姉ちゃんの体に入っている?」

「お前の体にも入ることも出来るぞ。」

「オカルトに常識は通じないようだね。」

「とりあえず、今はこのままでいい。お前は一体何者だ?」

「俺か?そうだな…『デサイレン』とでも呼んでもらおうかな。…よし、レースでもするか。俺が全部用意しておくから、呼ばれたら来てくれよ。じゃあな!」

 

『デサイレン』と名乗ったナニカは一方的にそう言うと同時にアグネスフライトの体が倒れる。

 

「…デサイレン、か。タキオン、調べたいことが出来た。今日はもう休んでくれ。フライトは俺が部屋に連れていくよ。」

「了解した…ソウジ。このままお姉ちゃんとうまぴょいとかしないでくれよ?」

「誰がするか!…お休み、タキオン。」

「あぁ、お休み。」

 

こうして、アグネスタキオンらの合宿は続いていく…デサイレンに予告されたレースを心に留めて。




ピルサドスキー…アイルランド出身で鹿毛の牡馬。ファインモーションの半兄。ヨーロッパ、アメリカ、日本と様々な場所で走り、G1レースを6勝した。引退レースであるジャパンCのパドックにてアレをうまだっちしたことで有名。その後、日本で種牡馬になるも産駒の成績が振るわずアイルランドへと返された。障害レース用の種牡馬として現在も現役らしい。本家アプリにもそれっぽいキャラはいる…ダメだ。彼女のことを考えると某キャラソンが頭に流れれれ…◯◯たま!◯◯たま!私の息子よ~♪


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第48話 夢ならばどれほどよかったか…

どうも、ポケモンのバイオレットに夢中の作者です。現在はジム2、ヌシ2、スター1、でホゲータが最終進化した辺りです。伝わる人には伝わる進行具合…

昨日はニシノデイジーが走ってましたね…2着でした。

今日はマイルCSですね!私が応援するのは『ソダシ』…と『ダノンザキッド』です!友達は『ダノンスコーピオン』を応援するため、バーベキュー味のスコーンを買ってました。ですので私は馬券の代わりにソーダとキットカットでも買おうと思います。『サリオス』と『ホウオウアマゾン』も頑張って欲しいな。

勝ったのはセリフォス…親子制覇ですね。ソダシ、ダノンザキッドお疲れ様でした。

後はキタノグリエルが久々に走りますね…勝ってほしいな。


アグネスタキオンが目を覚ます…そこにはアグネスタキオン自身と寝ていた布団以外は何も無い所…いや、正確には他数人のウマ娘も自分と同じ状況にいた。

 

「…ここは?」

「ようやく…起きましたねタキオンさん…」

「カフェ?…これは一体どういう状況かな?」

「私が…聞きたいです。」

 

周りを見渡すと…アグネスタキオンとマンハッタンカフェ以外のウマ娘がまだ眠っている。ひとまずアグネスタキオンは近くにいた姉のアグネスフライトを起こすことにした。

 

「お姉ちゃん、起きて。」

「フフフ…首輪似合ってるよタキオンちゃん…Zzz…」

「いや、どんな夢!?」

「タキオンさんが首輪…ふふふ。」

「カフェ!何を笑っているんだ!起きてよ、お姉ちゃん!」

「待て、ですよソウジさん。タキオンちゃんにこれ以上ご飯をあげたら…け○あ○確定ですよ…Zzz…」

「うわぁ…」

「起きろ!このムッツリ!!」

「タキッ!?」バキッ

 

ドン引きするマンハッタンカフェをよそにアグネスタキオンはアグネスフライトの顔へグーを叩き出し何とか起こす。頬にグーの跡を残しながらアグネスフライトは起き上がった。

 

「何よ…いいところだったのに………タキオンちゃん!?」

「随分と楽しい夢を見ていたようだねえ…お姉ちゃん?」

「私の夢なんだからいいでしょ!何で私の部屋に…ん?ここどこ?」

「私も聞きたい状況だよ。他のみんなも起こさないと…」

「さっきのタキオンさんの声で…起きたようです…」

 

アグネスフライトを皮切りに次々とウマ娘たちが起き上がる。

 

「スズカさん!こ、ここ…ここここ…」

「落ち着いてスペちゃん。まずは走りましょう。」

「スズカさん!?パジャマで走るつもりですか!?」

 

混乱するスペシャルウィークといつも通りのサイレンススズカ。

 

「ここはどこ?私はマーベラス☆」

「ワタシはユーニヴァース☆」

 

マイペースなマーベラスサンデーとネオユニヴァース。

 

「スカーレットはどこ?無事なのよね?」

「ドン…」

 

自身の妹探し始めるダイワメジャーとアドマイヤベガ。

 

「ロジカルじゃねェ…ロジカルじゃねェぞ…」ブルブル

「あわわわ…大丈夫ですかシャカールさん?」

 

頭を抑え震えるエアシャカールとそれを何とかしようとするゼンノロブロイ。

 

「…フジ、これは何のイタズラだ?」

「私は何も知らないからね。…本当にここってどこだろう?」

 

困惑するフジキセキとそれを問い詰めるゴールドアリュール。

 

「…」

 

そして、無口な『デュランダル』。以上の14人がこの謎の空間にいた。

 

ーーー

 

「引退した子もいれば現役の子もいる…法則が分からないな。しかし、このメンバーは何か覚えが…」ぶつぶつ

「タキオンさん…誰か来ましたよ。」

 

そこに現れたの…マンハッタンカフェに似たボブカットのウマ娘だった。

 

「カフェが2人!?」

「タキオンちゃん、よく見てみて…左右のシューズの色が違うわ。それにカフェちゃんよりも刺々したオーラを感じる。」

「いえ…それよりも…髪型が違います。もしかして…あの娘がお友…」

 

「よぉお前ら!集まってもらって悪いな!」

 

「…誰なんだ?」

「カフェさんに似てるような…」

「…」

 

「俺のことはデサイレン、って呼んでくれ。」

 

「デサイレン?」

「やっぱり、カフェやお姉ちゃんに取り憑いていたのは君か!」

「え?私、取り憑かれたの?」

 

「おう、お前らになら全員取り憑けれるぞ!」

 

「と、取り憑くだァ?ロ、ロジカルじゃじゃじゃ…」ブルブル

「もし取り憑いてスカーレットに何かしたら…分かってる?」ゴゴゴ

「ひいぃ!ス、スズカさん!幽霊ですよ!」ブルブル

「安心して…私が守るから。あなたの目的は何か教えてくれる?」

 

「おぅ!レースだ!」

 

パチン

 

デサイレンが指を鳴らすと同時に世界が変わる。太陽に照らされた客のいない東京レース場。そして、各ウマ娘たちも格好がパジャマから自身の勝負服へと変わっていた。

 

ーーー

 

「ルールは芝・左回りの2000mで行く…おわっ!」サッ

 

ブンッ

 

「…」

「お前!危な…ちょっ!」サッ

「…」ブンッ

「待て待て待て!何が…おっと!」サッ

「…」ブンッ

「いい加減にしろよ?」ゴゴゴ

「ー!」ビクッ

 

デサイレンがルールを説明すると同時にデュランダルが勝負服として背負っていた大剣を振るう。デサイレンはかわすもののデュランダルが攻撃を続けたため威圧し、デュランダルの動きを止めた。

 

「…」シュン

「で、何でコイツは俺を攻撃した?」

「多分だけどその娘の適性距離が短距離とマイルだからだと思うよ。」

「そういう意味では私も芝よりもダートの適性が高いのだが…」

「そうか。まぁ、そこは根性で走ってくれ。」

「嘘だろ?」

「…」スチャ

「剣を構えるなよ…学習しろ。」ゴゴゴ

「ー!」ビクッ

 

再び剣を構えたデュランダルをデサイレンは威圧する。怯んだことを確認し、デサイレンは言葉を続ける。

 

「まぁ、俺も芝は自分で走ったことねぇからな…気軽に行こうや!ウォーミングアップを始めてくれ!んで満足したらゲートに来てくれ!」

 

ーーー

 

全員のゲートインが終わる。各ウマ娘の番号は…

 

1番:サイレンススズカ

2番:デュランダル

3番:ネオユニヴァース

4番:アドマイヤベガ

5番:アグネスフライト

6番:フジキセキ

7番:エアシャカール

8番:アグネスタキオン

9番:スペシャルウィーク

10番:デサイレン

11番:マーベラスサンデー

12番:ゴールドアリュール

13番:ゼンノロブロイ

14番:ダイワメジャー

15番:マンハッタンカフェ

 

となっていた。誰もいないはずだかG1レースのファンファーレが聴こえてきて…そのままゲートが開かれた。

 

『ー!』ダッ

 

各ウマ娘が一斉にスタートする…ダイワメジャーとデュランダルがやや遅れてのスタートとなった。

 

ーーー

 

「(やはり、先頭になったのはサイレンススズカ君か…。)」

 

静かなレース場でアグネスタキオンはサイレンススズカ、デサイレン、フジキセキに続く4番の位置を走っていた。すぐ後ろにはゴールドアリュールとゼンノロブロイ、2バ身ほど離れ内側にスペシャルウィーク、真ん中にマーベラスサンデー、外側にマンハッタンカフェとネオユニヴァースが付いており、そのまま第1コーナーを曲がる。

 

「(やはり、コーナーでの減速が絶妙に上手い…前のレースはカフェではなく彼女が…)」

 

コーナーを曲がる。先頭は変わらずサイレンススズカだが…デサイレンが少しペースを上がり差が狭まる。しかし順位は変わっておらず、ネオユニヴァースからの後ろはと言うとダイワメジャーが掛かったのか焦った表情でペースを上げてくる。それを追うようにアドマイヤベガ、アグネスフライトが続き、3バ身ほど離れエアシャカール、さらに大きく離れデュランダルが最後方となっていた。

 

「(しかし…直線では私よりも遅いか…コーナー前に彼女をかわしておくべきか?いや…)」

 

直線が続き、5番目まで上がってきていたダイワメジャーだったが、その表情はキツそうだ。しかし彼女以外のウマ娘の動きに変化はない…そして、欅超えて第3コーナーへと入る。

 

「(やっぱり、勝負は最後の直線だね!)」

 

ここで仕掛けてきたのはデサイレンとフジキセキ、逆にマーベラスサンデーは少し下がる。第4コーナーにサイレンススズカが入った時に…それは来た。

 

『ー!』

「(これは『デビルジュピター』の…だが、問題は無い!)」

「タネさえ分かれば何てことは無いよポニーちゃん。」

「…チッ。」

 

前にいたウマ娘たちの動きが鈍る…そして、フジキセキ、デサイレン、アグネスタキオン以外の前にいたウマ娘たちがバ群へと沈んでいく。特にゴールドアリュールとダイワメジャーは大きく速度を落とした。最後の直線となり…後ろのウマ娘たちも一気に仕掛けてくる。

 

「ーーーここっ!」

「マーベラス☆」

「タキオンちゃん!」

 

残り400m…先頭はフジキセキだがデサイレン、アグネスタキオンが差を詰めてくる。さらに外からマーベラスサンデー、大外からアドマイヤベガとアグネスフライトが加速する。

 

「ここから…行こう!…んん?」

 

ダンッ

 

アグネスタキオンも仕掛けた。しかし…その走りにいつもの伸びは無く、後ろとの差が詰まっていく。そして…

 

「マーベラス☆」

 

マーベラスサンデーが前の3人を差しきりゴールした。

 

ーーー

 

レースが終わり、アグネスタキオンは1人無言で立ちすくんでいた。そんなアグネスタキオンへアグネスフライトが声をかける。

 

「…」

「タキオンちゃん、大丈夫?」

「…すまない、お姉ちゃん。少し1人で考えさせてくれないか?」

「分かった。私に出来ることがあれば何でも言ってね。」

「ありが…っ!」ガシッ

「タキオンちゃん!?」

「何あの走り?」グググッ

 

デサイレンがアグネスタキオンの首を掴み、そのまま力を込める。

 

「俺はお前の情けない姿をみるためにこんなことしたんじゃねえぞ?ああん?」ギチギチッ

「ぐっ…あ…!」

「…おい、タキオンを離せ!」

「あん?何……ぐえっ!!」ガシッ

「ー!はぁ…はぁ…」ドシン

 

アグネスタキオンの顔が青くなる。しかし、デサイレンの首をアグネスフライトが掴んだことでアグネスタキオンが解放された。

 

「お前は一体何?何でレースをした?いや、それはどうでもいい…何でタキオンの首絞めた?」ギチギチッ

「く、る…し…」

「答えないんだ…本当に殺すよ?」ゴゴゴ

 

アグネスフライトは凄まじい殺気をデサイレンへとぶつける。そんな姉にアグネスタキオンも恐怖する。

 

「お、お姉ちゃん?この状態じゃ、話出来な…」

「ごめんねタキオンちゃん…コイツを殺してから話を聞くからちょっと待っててね。」グググ

「がっ…!に、ども…し、ねる…か。…も、ど、れ。」

 

パチン

 

「ー!?」

「お姉ちゃん!?」

「けほっ!ごほっ…ふぅ~…」

 

突然とアグネスフライトの姿が消える。解放されたデサイレンが息を整えている間にフジキセキ、ゴールドアリュール、デュランダルが前へと立ち塞がる。

 

「おいたが過ぎるよポニーちゃん?」

「タキオンに手は出させない。」

「…」ガクガク

 

「ったく、面倒だな…タキオン以外全員消えろ!」

 

パチン

 

『ーー!?』

 

デサイレンが指を鳴らすとアグネスタキオンを除く全員の姿が消えた。

 

「ようやくこれで話が出来るな…そう怯えるなよ。悪かったって…落ち着いたから。もう、あぁいうことはしねぇから。」

「嘘だとしても今の私は何もできないのだが…それでデサイレン君、君は何故こんなレースを強行したんだ?」

「その前に俺の質問が先だ…何だあの走りは?」

「…いつもの走りが出来なかったんだ。原因は10個以上考えられるが…全部聞くかね?」

「1つでいい。シンプルな説明で頼む。」

「これが夢だからさ。」

「…」

「14人ものウマ娘を連れての瞬間的な移動、職員無しで聞こえたファンファーレに開いたゲート、そして今は夜の筈だがレース場を照らした太陽…全てが非現実的じゃないかい?」

「…そうだな。仮にそれらが全て現実に起きていたことだとすれば?」

「おやおや、納得していないようだね。仮の話で次に考えられる可能性が高いのは…私の『本格化』の終わりが近い。」

「…嘘だろ?」

「可能性の話だよ。いずれは来るものさ…私はそれが近かっただけだよ。では次は君が私の質問に答えてくれたまえ。」

「レースの理由?俺が走りたかったから、それだけだ。」

「…はい?」

「…やっぱりアイツじゃなきゃ満足出来ねぇな。」ぶつぶつ

「なるほど…君は私を誰かと重ねていた訳だね。」

「本当は俺を感じているカフェがなってくれるのが1番だったが…ダメだった。フジもマベもスズカもスペもベガもシャカールもアリュールも…俺を満足させれなかった!お前なら俺を満たせると思ったのだがな…」

「強いウマ娘なら他に一杯いるだろう?シンボリルドルフやオグリキャップやメジロマックイーン、ナリタブライアンとか…」

「マックちゃん!?いや~、アイツとはそんなのではなくて…」

「???何だい?君はマックイーン君と知り合いかね?」

「あ…、そうであり、そうじゃねぇ、って感じだ。」

「???」

「お前…例の腕輪はあるか?」

「いや、無理やり連れてこられて…あれ?ある…あ!」

「よっと!」ガチャ

 

ピッ、ピッ、ピー!

 

デサイレンが奪った腕輪を自らに付けて『因子』を抜き取った。

 

「え?」

「これで夢かどうかは分かるかもな。俺は次の奴を探す…お前ともう会うことは無いだろう。じゃあな!」

 

パチン

 

デサイレンが指を鳴らすと共にアグネスタキオンの視点が反転した。

 

ーーー

 

「タ…オ…さん!…きて……さい!」

「…」

「タキオンさん!起きてください!」

「ー!」カバッ

 

アグネスタキオンの目が覚める。

 

「ここは…」

「合宿所のお部屋ですよ。ところでタキオンさん…何故勝負服で寝ていたのでしょうか?」

「え?」

「…汗の臭いもするのですがレースでもしましたか?何て…」くんくん

「…」

「え?靴まで履いてる?まさか本当に…しかし、いつの間に着替えたのでしょうか?私は寝ていて気づきませんでした…デジたん一生の不覚…」

「…夢じゃ…なかったのか?」

 

アグネスタキオンの右手に握られていたのは…例の腕輪。中には誰かの『因子』が入っていた。

 

その日の朝、勝負服で寝ていたウマ娘が14人おり、何れもレース後レベルの消耗、さらにアグネスタキオンの首とアグネスフライトの頬には青痕が確認された。そして各担当トレーナーによる全力のケアが行われたそうだ。

 

余談だが東京レース場の芝コースがまるで誰かが走ったかの様に荒れていたらしいが…カメラには誰も映っていなかったため自然現象として処理された。




デュランダル…02世代の競走馬。主な勝利はスプリンターズSとマイルCS(2003年、2004年)。短距離を得意とする血統であったが気性が荒く、出遅れ癖があったため追い込みの脚質を取っていた。短距離追い込みと不利そうなスタイルであったが、鋭い末脚を活かしG1レースを3度も勝ったのだ。代表産駒はオークスを勝ったエリコート。
余談だが父サンデーサイレンスと母父ノーザンテーストの配合は8年もの間、G1勝利が無かったため相性が悪いとされていたが彼を皮切りにダイワメジャー、エアメサイア、アドマイヤマックスが勝利した。


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第49話 酒の席で話す内容の9割は雑談

どうも、バイオレットをクリアして図鑑完成を目指している作者です。ナンジャモちゃん可愛いな…

今日はジャパンカップ…応援するのは『デアリングタクト』!スプリンターズSのビリーヴとジャンダルム、天皇賞(秋)のキタサンブラックとイクイノックス、そして先週のダイワメジャーとセリフォスと親子制覇が続いてます…つまり、今回勝てる気がします!…『シャフリヤール』もその対象になっていますが。

勝ったのはヴェラアズール!…デアリングタクト復活ならず!お疲れ様でした。


ある夜、ソウジは同僚のニヘイと合宿近くの飲み屋で飲んでいた。

 

「生中2つ、お待たせしましたなの!」

「来た来た!」

「それじゃあ…」

 

『かんぱーい!』

 

「ぷはー…2人だけで飲むってのは結構久しぶりだな!どれくらい前だっけ?」ゴクゴク

「グルーヴとオフサイドの有マ以来だから…4年ぶりだな。いや~、まさかアグネスタキオンがアメリカのダートG1を取っちまうとはな~!」ゴクゴク

「ニヘイこそ今はアドマイヤドンと『リンカーン』が大活躍してるじゃんか!後、ジャングルポケットが数ヶ月で車椅子から降りれるかもしれないのだろ?」ゴクゴク

「あぁ…もっと様子を見に行きたいが、ジャンポケだけに集中する訳にはいかないからな…」ゴクゴク

「今担当してるの何人だっけ?」

「オフサイドとノースは卒業してるから除くとして…チケゾー、グルーヴ、アヤベ、ジャンポケ、アヤド、リンカ…で、来年でチーム試験結果次第ではまた数人増える。くそ忙しいがサブトレーナーの申請は10人以上だからな…はぁ、早くハッキリしてぇな。お前も来年からチームを持つのだろ?最初は2人でもキツいぞ?何人申請が来てるんだ?」

「5人だな…お前は試験とかするんだな。」

「全員入れてたら50人は越えるぞ?」

「お前のチーム、そんなに人気だったのか!?いや、納得しかないけど…」

「体が2体以上は欲しいな。」

「タキオンにクローンでも作ってもらうか?」

「ハハハ…お前じゃなきゃ無理だろ?まぁ、実際にした時には1人俺の所を手伝ってくれよ。」

「なら、ヤダね。」

 

『アッハッハッハ!!………はぁ。』

 

2人同時に溜め息が出る。

 

「…やめよう、人数の話は。」

「…そうだな。」

「お刺身の盛り合わせ、お待たせなの~!」

「ありがとう!」

「ソウジ、シソは俺が食っていいか?」

「いいよ。あ、店員さん!日本酒の冷やをボトルで!」

「了解なの~!」

「お前、本当に酒強いよな…依存性か?」

「こういう場でしか飲まないよ…じゃあ、本題に入ろうか。相談って?」

「実は俺…最近彼女が出来てな。」

「おいおい、担当ウマ娘がたくさんいる中で会う時間とかあるのか?」

「えーと、『ベロちゃん』っていう名前なんだけど…」

「女帝じゃん。」

「女帝じゃない!ベロちゃんだ!」

 

ニヘイは否定する。

 

「日本酒、どうぞなの~」

「あぁ、ありがとう…で、何が悩みだ?」ゴクゴク

「そのな、ベロちゃんとな、休日にどう過ごせばいいのか分からなくなって…ソウジはアグネスタキオンとどう過ごしてるんだ?」

「モルモットになってるが?」

「参考にならないな…ベロちゃんとは付き合う前から色んなことをしてたよ。でも、恋人となったらそれ相応のことがあると思うのだけど…」

「まぁ、女帝は現役JKだからな。大人な世界にはまだ連れてはいけないと。」ゴクゴク

「女帝じゃない!ベロちゃんだ!」

 

ニヘイは否定する。

 

「現役JKの部分を否定しろよ…別に変える必要はないと思うぞ。」ゴクゴク

「…そうなのか?」

「向こうはお前と過ごせれば何だっていいの。だから、普通にいつも通りにデートをすればいいじゃん。それにお前のことだからプランの大体は向こうが決めてるだろ?」

「それはそうだが…」

「というか…急に進展した詳細が知りたいな。知りたいな~!」ゴクゴク

「いや…その…気づいてはいたよ。しかし、最近急に積極的になってきて…」

「へぇ~、どんな感じ?どんな感じ?」

「いつも通りに掃除に来たと思ったら…メイド服に着替えてきてビックリした。」

「ん?」

「この前の植物園では地雷系?っていう服装で来てた。」

「んん?」

「後は変なカチューシャで髪色を変えてくるんだよな…」

「あぁ、そういうことか…」

「…何か知っているのか?」

「フライトの入れ知恵だろ…お前には効果は抜群だったようだな。」ゴクゴク

「ぐぬぬ…否定できん。あ、生中1つ頼む!」

「了解なの~」

「しかし、女帝とお前がな…」

「女帝じゃない!ベロちゃんだ!」

 

ニヘイは否定する。

 

「で、チームのみんなには伝えたのか?」

「いや、プライベートなことだし…これはちょっと…指導に影響は出せないしな。」

「そういうものか。しかし、複数人の担当ってどうすればいいんだ?」ゴクゴク

「人にもよるぞ。俺だとそうだな…まずはそのウマ娘の目標を聞き、仮題を見つける。そして、ウマ娘毎に直接指導する日をローテーションに回しつつ、指導しない日にはメニューを渡して自分で練習をしてもらう。あ、言うまでもないが体の状態はよく見てやれよ。いつ故障が起きていても不思議じゃない…発見が早ければ早いほど治る時間も短い。」

「…ジャングルポケットの件はどうなんだ?あの時…もの凄い批判を食らっただろ?」

「ケガを分かって出していたことか?何度も止めたがそれでもアイツが出たいと言ったからな…俺はそれに合わせた。…責任を取る覚悟も決めてな!」

「…」

「辞職届けと担当全員の紹介状も書いた…って、この話は今はいいな。これはかなり極端な例だが…こんな場面なんてよくあるぞ?」

「そう、なのか…」

「後は、ジュニア級とクラシック級の娘がいる間はそちらを優先した方がいい。」

「それは…そうだな。」

「生中持ってきたの!」

「ありがとう。…ぷはー!で、他にはチームの2人が同じ日に別の場所でのレース出走の場合はだな…」ゴクゴク

「ふむふむ…」ゴクゴク

 

その後もソウジはニヘイから様々の経験を聞いた。しかし、数分後…

 

「で、ベロちゃんったらうっかり俺の洗濯物に加えて自分のパンツも一緒に引き出しにしまってさ~。そんで、慌てて電話してきて言い訳しちゃってさ~可愛いのよね~。いつもとは逆に俺がペロペロしたいくらい~。あ、この時はまだ恋人じゃないよ~」ゴクゴク

「この前貰ったタキオンのタイツで白身と黄身が逆転したゆで卵を作ってみたんだ。そしたら急にタキオンから電話がきてビビってさ~」ゴクゴク

 

気がつけば自身の愛バとのノロケを話し始めたのだ。

 

「んで、このままのベロちゃんと上手くいけそうなのか?うまぴょいしちゃうのか?」

「ベロちゃんじゃない!エアグルーヴだ!…流石に卒業して結婚するまでは待つよ。現役の、増してや担当ウマ娘に手を出すなんて裸でマグマに飛び込むようなものだぜ?」

「…」ダラー

「ソウジ…お前…まさか…」

「俺からは何もしてない。俺からは何もしてない。俺からは何もしてない。」

「おいおい…」

「そ、それより、お前今女帝って認めただろ?」

「女帝じゃない!ベロちゃんだ!」

 

ニヘイは否定した。

 

「そういえば、ピルサドスキーが来てたがベロちゃんは大丈夫だったのか?」

「ベロちゃんじゃない!エアグルーヴだ!」

 

ニヘイは否定した。

 

「今エアグルーヴって言った!完全に言ったじゃん!」

「エアグルーヴじゃない!ベロちゃんだ!…ピルサドスキーだが何故か今はユキノビジンに夢中のようだし…あの娘には悪いが、名一杯練習出来てるよ。」

「そのせいでフライトとゴールドシチーが交代で守ってるのだが?」

「それはピルサドスキーに直接言ってくれ。」

「言ったら『愛しの女帝陛下に男…いやいや!これは何かの間違いだ!何としても彼女を我が国に連れて帰るんだ…トレーナーごとな!』とか言ってたぞ?」

「…」

「で、何故ユキノビジンにアタックしたのかと聞けば…単純に暗くてエアグルーヴと間違えただけらしい。何か無意識に体が反応したとかどうとか…」

「…勘弁してくれよ。ぷはー…姉ちゃん、芋焼酎をロックでお願い。」ゴクゴク

「俺は普通の焼酎をロックで!」

「はいなの~」

「え?もうボトル飲みきった?」

「うん、アルコールは次でラストにするよ。」

「よく飲めるな…すみません、お冷やも2人分お願い!」

「了解なの。まずは芋焼酎なの!」

「で、アイルランドに行っちゃうのか?」

「バカ野郎!そんな話にはならない…といいな。ぷはー!」ゴクゴク

「自信を無くすなよ…そんなペースで飲んで大丈夫か?」

「うぅ…俺はかなり担当には恵まれてるんだ…。みんな…素直でいい娘たちで…」ポロポロ

「急に泣くな泣くな!目から酒が溢れてるぞ?」

「こっちが出した…厳しい試験を…クリアして…チームに入ってきてくれた娘たちには……それ相応の結果を出せる…指導を…」ポロポロ

「色々と教えてくれてありがとな!だから、今日はこれくらいにしような?な?」

「う…うぅ…ソウジ…俺、ちゃんとトレーナー出来てるよな?出来てるよなソウジ…?」ポロポロ

「出来てるよ。出来てるから。」

 

急に泣き出すニヘイを宥めるソウジ。店員のアイネスフウジンもビックリしている。

 

「焼酎とお冷や持ってきたの…ニヘイトレーナーは大丈夫?」

「ただ泣き上戸なだけだよ。…ほら、お冷や!」

「あ…」

「う、うぅ…うわーん!!」ゴクゴク

「そっちは焼酎なの…」

「落ち着けニヘイ!どうどうどう!大丈夫だよ…大丈夫だよ…アイネスフウジン、エアグルーヴを呼んでくれるか?消灯時間前だし起きてると思うから…」

「了解なの。」

「あと、焼酎ロックで。」

「いや、今は絶対頼む流れじゃないでしょ!…でも了解したの。」

「うわっ、うわーん!うわわっん!」ポロポロ

「よーしよしよし。よしよしよしよしよしよしよし…もうすぐ女帝が来るからね?」

「しょていしゃはい!ぺろひゃんしゃ!」ポロポロ

 

その後、エアグルーヴが来るまでニヘイは泣き続けた。

 

ーーー

 

「…私のトレーナーがすまなかった。」

「ベロちゃん…大好き…Zzz…」

「その…ニヘイとは上手くいってるようだな。」

「ふ、当たり前だ。私にとってコイツがいない生活など考えられないくらいだ。こういう弱い所をなかなか見せてくれないから心配になるが…」

「男とはそういうものなの…フライトから連絡だ。『ニヘイトレーナーの部屋の鍵は着いたら渡すから、寝かせた後に返しにきてね』、だってさ。」

「了解した。」

「後、『2時間以内に返却が無かったらこっちが勝手に部屋の鍵を閉めるから安心してうまぴょいしてね』、だってさ。」

「す、するか!このたわけ!もう連れていくぞ?2時間か…」

 

エアグルーヴは泣き疲れ寝たニヘイを背負い…そのまま合宿所へと歩いていった。そして、ソウジも1人で飲み直し始めた。

 

………

 

「ん…これで終わりか。じゃあ、会計頼むわ…俺たち以外誰もいなくてよかったわ。」ゴクゴク

「はいなの!えーと…1万と5千円なの!」

「結構飲んだな…ほい、ちょうど!アイネスフウジンも消灯時間前には戻るんだよ~」

「分かってるの!」

 

最後の焼酎を飲みきったソウジも会計を済ませ居酒屋を後にする。しかし、ソウジはそのまま真っ直ぐに合宿所へは帰らず月に照らされた砂浜を歩き始めた。

 

「本格化の終わりが近い、か…」

 

帰り道にてソウジが思い出すのは今日の朝に聞いたアグネスタキオンの言葉。彼女が言うにはデサイレンとのレースを行い、最後の直線でいつもの伸びが出来なかったと言うのだ。ただの夢だと、と思っていたソウジだが…実際に今日のタイムを測ると確かに悪くなっていた。ただのスランプか?BCクラシックに出すべきか?もう引退させるべきか?様々な考えが頭へと流れる。

 

「ん?」

 

「で、サ…ちゃ…は何…こ…にい…の?」

「…」

「へー、…んな…私…走……か…た…だ?でも…ケ…でもう走…ない…。」

「…」

「え!?本…にそ…で治……娘が他……の?」

「…」

「担……レー…の…ウジさん…近…にいる?こっちに来てる?」

 

誰かがいる?そう思いソウジが近づきよく見てみるとシートを敷き、イージーゴアが1人で缶ビールを飲んでいた。

 

「イージーゴア?1人か?」

「あぁ…、えーと、1人だよ。ソウジさんこそどうしてここに?」

「いや、同僚と飲んでいてな…たまたまここを通っただけだ。で、声が聞こえたから生徒かと思い、こっちに来たんだ。」

「そうなんだ。」

「ウォーエンブレムの所には行かなくていいのか?」

「あの娘ならもう寝てるからね。それに今回はバトラーが側にいるし。」

「そっか…じゃあ、俺はもう行くよ。」

「待って!お願いがあるのだけど…」

「お願い?」

「私にとある実験を行って欲しい。」

「…はい?」

 

イージーゴアより耳を疑うことを言われた。




リンカーン…03世代の鹿毛の競走馬。主な勝利は阪神大賞典、京都大賞典、日経賞。G1では2着が3回(菊花賞、有馬記念、天皇賞(春))、3着が2回(宝塚記念、有馬記念)とあと1歩の所で届かない成績であった。産駒は重賞馬が6頭おり、その中には『オマワリサン』という珍馬名の競走馬もいる。

リンカーンを前回出さなかったのはゼンノロブロイとネオユニヴァースが既にいたから…とか深い理由は無いです。単純に入れ忘れてました…。


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第50話 とあるウマ娘たちの日曜日 前編

どうも、バイオレットで図鑑完成した作者です。…投稿日間違えましたけどもういいや。

今日はステイヤーズSですね。私はメロディーレーンを応援します!後、中山9Rにビターグラッセが出走ですね…彼女も応援します!中山12Rにカレンチャン産駒のカレンヒメが出走…あぁ、今日だけでも中山競馬場に行きたかった!

ビターグラッセは2着、メロディーレーンは5着、カレンヒメは…10着ですかね?お疲れ様でした!


デュランダルはある日を境に部屋へと閉じ籠ってしまった。彼女の担当トレーナーも無理に練習はさせず、暫くは好きに過ごしてよいと伝えた。その結果…彼女は1日中ずっと竹刀を振り回す毎日となっていた。

 

「…」ブンブンブンッ

 

すると、突然扉が開く。

 

「デュランダル起きてる?」

「…!」チラッ

 

一目、スイープトウショウを見たかと思えば…

 

「…」ブンブンブンッ

 

再び竹刀を振りだした。

 

「ちょっと!無視するんじゃないわよ!」

「…!」ピタッ

「あんた、最近元気がないじゃない。何かあったの?」

「…」

「まぁ、何でもいいわ。とりあえず来なさい。」

「?」

「いいから!来なさい!」ガシッ

「!!」ジタバタ

 

デュランダルの抵抗も虚しく、スイープトウショウに引っ張られ部屋を出た。

 

………

 

「待たせたわねカワカミ、フラワー。まだ始まってないわよね?」

「後3分!もうすぐですわよ!」

「アイスココアを用意しました。デュランダルさん、どうぞ!」

「…??」ゴクゴク

 

展開について来れないままデュランダルはその場に座り、ココアを飲む。そして…3人はアニメを見始めたのでデュランダルもそれに合わせた。

 

………

 

『プリファイ!ホーリーエクスカリバー!!』

『まだだプリファイたちよ…俺にはこれがある!ダークネスブラックソード!』

『はあぁぁぁ!!』

『ぐっ…ぬわぁぁ!!この俺が…!!』

 

展開は至って王道。友達が困り、主人公たちが手助け。そして、解決後に敵がそれを台無しに…からの変身してバトル!さらに今回はピンチになってからのパワーアップ。子供だな、そう思いながらデュランダルは見ていた。しかし、そう思いながらも1つ、彼女が惹かれる物があった。

 

「おぉ!プリファイ全員の武器が1つの大剣になりましたわ!激熱展開ですわ!」キラキラ

「大剣ですけどハートがたくさんあって可愛いです。」キラキラ

「どうなってるの?魔法?私も出来るようになるかしら?」キラキラ

「…」キラキラ

 

輝く大剣…それは聖剣の名を持つ彼女に取っての憧れである。スイープトウショウ、カワカミプリンセス、ニシノフラワー…そしてデュランダルの目も輝いたのだ。その日以降、デュランダルは大きな成長を見せるのだが…それはまた別の話。

 

ーーー

 

同日、イージーゴアはアグネスタキオンにある依頼をしていた。

 

「イージーゴア君の『因子』を全て抜く実験を行いたい?ふむ、このことはまだ公表していない内容の筈だが…どこで知ったのかね?」

「あれ?そうなの?サンちゃんから聞いたのだけど…あれ?」

「サンちゃん?」

「タキオンさん…私が…教えました…」

「カフェ!?何故君がこんなことを…というか君たちはいつの間に知り合っていたんだ?」

「カフェ?サン…むぐっ!」

 

慌ててマンハッタンカフェがイージーゴアの口を手で塞ぐ。

 

「コーヒーとサンドイッチをあげたら…こう呼ばれていました…話を合わせなさい。」ボソッ

「そうそう!この娘が実際に受けて足が完治したって聞いたわよ!」

「あの実験での本来の目的は『因子』の生成の有無、及びその速度を見る実験であり、あの再生力の発見は偶然の産物なのだが…それにデータは揃っているから私としてはもう実験そのものをする必要が無いんだよ。まぁ、ハッキリと言おう…気味が悪いから行いたくない。」

「え?」

「何故…でしょうか…?」

「いい加減にカフェの真似は辞めたまえ…デサイレン君。」

「…チッ、バレてんのかよ!」

「サンちゃん変な呼ばれ方してるんだね?真ん中の…むぐっ!」

 

マンハッタンカフェ…改めてデサイレンはイージーゴアの口を再び塞いだ。アグネスタキオンは険しい表情で睨む。

 

「だから、余計なことを言うなって!」

「デサイレン君が探していたアイツとは…イージーゴア君のことかい?」

「…あぁ、そうだよ!カフェの体でコイツともう1回本気のレースを行う…それが俺の願いだ!日本の…盆、っていうのだっけか?それでこの時期は霊力の強いようでな…今しかそれが出来ねぇ!」

「サンちゃん…」

 

ヤケクソ気味にデサイレンが言う。それ聞きアグネスタキオンの表情が少し緩んだ。

 

「気が変わった。君の願いを叶えるともデサイレン君…いや、『サンデーサイレンス』君。」

「お、お前!俺の名前を知っていて…」

「確証に変わったのは今だよ。…トレーナー君からイージーゴア君のことは聞いていたからねぇ。サンデーサイレンス…アメリカのクラシック2冠を達成し、イージーゴア君との対決は4戦3勝のライバル。引退後の消息は不明…まさか、生霊としてカフェの側にいたとはね。」

「…そうだよクソが!俺の死んで………生霊?」

 

デサイレン…さらに改めてサンデーサイレンスが困惑する。それを無視してアグネスタキオンは話を続けた。

 

「以前、君が行ったレースの後にお姉ちゃんに君の首が絞められたことは覚えてるね?」

「…あぁ。その前にお前の首を絞めたことも覚えている。」

「サンちゃん…相も変わらず本当に危ない娘ね…」

「うるせぇな!で、それがどうした?」

「その時に君はこう言った…『2度も死ねるか』、と。」

「…」

「君の体は今…とある病院で昏睡状態とのことだ。」

「は?嘘だろ?俺が…生きて…?」

「詳しく教えてくれるかしら?サンちゃん、アメリカでは行方不明の1文しか報道されなかったからさ…いいよね?」

「…悪いが細かい所は私も知らない。だが私のトレーナー君なら全てを知っているだろう。少し待ってくれるかね?」

「分かったわ。」

「俺が…生きている……」ボソボソ

 

サンデーサイレンスは上の空となりその場でただ同じ言葉を呟き続けた。

 

ーーー

 

数分後、ソウジとアグネスフライトが1人のウマ娘を連れて合流してきた。

 

「タキオン!今日の練習だが…ん?マンハッタンカフェとイージーゴアもいるのか?実験なら合宿が終わった後にして…」

「ソウジさん、サンデーサイレンスというウマ娘を知ってる?」

「知ってるも何も君のライバルじゃないか。」

「そうじゃなくて…今、どうなってるのか知ってるの?」

「………タキオン?」

「トレーナー君、今日の練習メニューは何かな?」

 

ソウジは声色を重く変えてアグネスタキオンに目線を向けるも本人は気にせずいつも通りに返事をする。

 

「…今日はフライトらと練習してくれ。この娘との併走がメインだから…それで頼む。」

「あぁ…分かったよ。行こうか、お姉ちゃ…ん?」

「ちょっ…どうしたの?」

「…」ガクガク

 

アグネスタキオンが部屋から出ようとするも足が止まる。サンデーサイレンスがイージーゴアの背中に隠れていたのだ。

 

「カフェちゃん?どうしたの?」

「何でもありません!練習頑張ってください!」

「いつもとテンションが違うような…まぁ、いいや。案内よろしくね『ワールド』ちゃん!」

「はい。」

 

そう言い、アグネスタキオンはアグネスフライトと『ワールド』と呼ばれたウマ娘と共に部屋を後にした。

 

「…行ったよな?流石にもう戻ってこないよな?…ふぅ。」

「マンハッタンカフェ?」

「サンちゃんはあの娘が苦手なの?アグネスタキオンと似てるあの娘は?」

「アグネスフライト、タキオンの姉だ…サンちゃん?」

「ふーん、で悪いけどサンデーサイレンスについて知ってること全部私に教えてくれるかしら?」

「あぁ、分かってる。マンハッタンカフェは悪いが席を…」

「私も…ここにいます…」

「サンちゃんも聞いた方がいいと思うから。」

「…分かった。まずサンデーサイレンスが日本に来た理由だがそれは知ってるか?」

「…知らないわ。ケガで引退した直後に日本行った…って私も引退した後に聞いたくらいよ。」

「そうか。彼女は10年ほど前にトレセン学園でトレーナー…いや、正確にはトレーナー見習いとして来る予定だった。しかし…運転手が心臓発作を起こしたトラック事故に巻き込まれ意識不明の重体。今も学園近くの病院で眠っているよ。」

「俺が…トレーナー…?」ボソッ

「マンハッタンカフェ?」

「で、10年も眠っていて何の進展もないの?」

「体は傷痕を多く残しているもののほぼ完治状態だよ。ただ…意識が戻らない。保険金と賠償金と理事長のポケットマネーで入院がずっと続いてる状況だ。」

「…」

「…おい、人間。その病院はどこだ?」

「…やっぱりお前か、デサイレン。今から連れていってやるよ。イージーゴア、お前はどうする?」

「付いていくわ。ウォーエンはバトラーに任せるから…」

「そうか、今から車を出す。10分くらいで行くから入り口で待っていてくれ。」

『あぁ(分かったわ)。』

 

そして、ソウジたちは合宿所を後にした。

 

ーーー

 

一方、アグネスタキオンたちは合宿所近くの山を歩いていた。

 

「でお姉ちゃん、彼女は何だ?」

「あぁ、彼女は私と同室の『アグネスワールド』ちゃん…ヒシアケボノちゃんの妹よ。」

「よろしく。」

「いや、スプリンターとしての彼女は知っているとも。何処にむかっているのか、何故彼女と併走するか知りたいのだが…え?お姉ちゃんと同室?」

「まぁ、教えてないから知らないか。」

「理由。私のコース。使うから。」

「君のコース?」

「もうすぐ着く。着いた。」

 

山の中の木々を抜け出すとそこには平地があり、小さなレース場が出来ていた。

 

「ここ…は?」

「理事長。許可くれた。私のコース。まだ開拓中。」

「ワールドちゃん…これって1人で全部してたの?」

「全部違う。木はボノ姉。切ってくれた。タキオン。歩いてみて。」

「この感触は…!アメリカのダートコースだねぇ!」

「私もアメリカ。ドリームトロフィーシリーズ。BCスプリント行く。だからタキオン。併走お願い。」

「分かったとも。君の快速と私の最速…ククク、可能性は無限大だね!」

「とりあえず、ウォーミングアップからしてね~」

 

こうして、アグネスタキオンはアグネスワールドと共に練習を始めるのだった。




アグネスワールド…98世代の黒鹿毛の競走馬。半兄はヒシアケボノ。快速と呼ばれるスピードを重視した走りが得意。主なG1勝利はアベイ・ド・ロンシャン賞(フランス)とジュライC(イギリス)。日本調教馬の中で初めてイギリスのG1レースを勝ち取った。日本で短距離レースを走りながらもアメリカのBCスプリントを最後に引退。日本、イギリス、オーストラリアで種牡馬となる。代表産駒はファルコンS(G3)を勝ったカズサラアンと東京盃(G2)など重賞を6勝したアグネスジェダイ、オーストラリアでコーフィールドギニー(G1)を勝利したWonderful Worldがいる。


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第51話 とあるウマ娘たちの日曜日 後編

どうも、今日のG1レースで粗品さんを真似た買い方をしようとしたら5600円も使っていたので早々に諦めた作者です。他の馬券が56枚買えますわ。

今日はチャンピオンズカップですね。私が応援するのはハピとクラウンプライドと…粗品さんが推していたオーヴェルニュです。テーオーケインズに勝てるかどうかですね~。

勝ったのはジュンライトボルト…クラウンプライドは2着でハピは3着!お疲れ様でした。


数時間後にソウジらは病院へと着き、中に入る。

 

「あぁ、ソウジトレーナー。今回はどうしましたか?複雑骨折ですか?靭帯損傷ですか?」

「いえ、サンデーサイレンスの友人が訪ねてきたのでちょっとお見舞いに…彼女の病室って今入れますか?」

「今日の検査は終わっていますのでいいですが…騒いだりはしないでくださいね?」

「分かってますよ。タキオンがいないのでそれは大丈夫です。」

「挨拶のすぐ後がケガの名前って…」

「それだけコイツはお世話になってるんだよ。」

「お前はずっとなっているようだがな。」

「…チッ。」

 

そして、そのままサンデーサイレンスの病室へと入る。そこにはボブカットで青鹿毛のウマ娘が眠っていた。

 

「サンちゃん…相変わらず綺麗な顔ね。」

「傷だらけだが…皮肉かゴア?」

「違うわよ、素直な感想よ。…で、どうするの?」

「…確証はねぇ。だが…俺の体というなら…!!」ガクッ

 

マンハッタンカフェの体が倒れ、慌ててソウジが支える。それと同時にサンデーサイレンスの目が開きそのまま起き上がった。

 

「やっぱり出来たか…痛ててて!!!」

 

起きたと同時に苦しみだした。慌ててソウジはナースコールボタンを押す。

 

『どうかしましたかソウジトレーナー?また顔が大きく膨らんだのですか?それとも腕が1本増えましたか?』

「違います、サンデーサイレンスが目を覚ましたんです!」

『えぇ!?お父さん、変態!じゃなくて大変!!』

「サンちゃん…良かったよ…」

「んなこといいから、この痛みを何とかしてくれ!痛ててて!!」

 

こうしてサンデーサイレンスは10年ぶり目を覚ましたのだ。そして、医師による診断が始まる。

 

ーーー

 

「は?リハビリに1年以上だ?」

「状態にもよりますよ。しかし、それくらいは必要かと…」

「…」ガリガリ

「たづなさんからはいつでも待っていますよ、とのことだ。」

「…」

「サンちゃん…」

「ふんっ、治る見込みはあるなら俺から言えることはねぇ!寝るから帰れ!」

「あの…」

 

起きたマンハッタンカフェが声をかける。

 

「何だカフェ?」

「名前を呼ばれるとは…やっぱりあなたが……『お友だち』ですか?」

「…さぁな?霊感あるからか俺に気付いていたのはお前だけだったが…俺じゃない奴に反応してただけかもしれないぜ?」

「…あなたはコーヒーは好きですか?」

「よく飲んでたが…好きってほどではない。」

「また来ます…今度は美味しいコーヒーを…持ってきます…」

「…好きにしろ。今度こそ俺は寝る。じゃあな!」

 

ゴロン

 

「痛ててて!!!」

「だから急に動かすとそうなるって言われたばかりでしょ!」

「うるせぇな!今までそんな動きしてこなかったのに出来るか!」

「2日後にリハビリを始めます。それまではゆっくり休んでください。」

「体は10年間ずっと休んでいたのだが?」

「いいから、休みなさいよ。」

「…分かったよ、今は寝る。」

「では、俺たちも帰ります。この娘をよろしくお願いします。」

「えぇ、ソウジトレーナーもケガしないように気を付けてください。」

「はい。…あ、ジャングルポケットは…」

「今はニヘイトレーナーが面会中ですね。トーセンジョーダンさんも一緒ですが会っていかれますか?」

「いえ、また今度にします。」

 

こうして、ソウジたちは病院を後にしたのだが…

 

「おい人間、退屈だ。何か歌え。」ゲシッ

「座席を蹴るな!…何でまたマンハッタンカフェの体にいるのかな…サンデーサイレンス?」

「サンちゃん!?」

「ゴア、何か歌え。」

「無茶言うんじゃないわよ!あんたこそ病院で大人しくしてなさいよ!」

「暇なんだからしょうがねぇだろ!」ゲシッ

「おい、大人しくしろ!事故るだろ!?」

「うるせ…」

「フライト呼ぶぞ?」

「ひぃ!…帰る。」ガクッ

「サンちゃん…」

 

現状が大きく変わることは無かった。

 

ーーー

 

一方のアグネスタキオンたちはというと…

 

「はぁ…はぁ…嘘だろう?」

「タキオン?調子悪い?」

「…」

 

順調とは言えなかった。

 

………

 

少し、時を戻そう。アグネスタキオンはアグネスワールドと共にウォーミングアップを行い、トレーニングへと励んでいた。

 

「はあぁぁぁ!!」ダッダッダ

「ふんっ!」ダッダッダ

 

「いいタイムよ!じゃあ、最後は思いきった走りで!」

 

『あぁ(はい)!!』

 

アグネスフライトの指示により、スパートをかける。しかし…

 

「ー!」

「ふんっ!!」ダッダッダ

 

アグネスタキオンはアグネスワールドに大きく離されたのだ。その後、何度か繰り返したもののアグネスタキオンがアグネスワールドと並ぶことは無かった。

 

………

 

「体の調子は悪くないはずだ…しかし、ここまで思うようにいかないとは…」

「フライトさん。普段のタキオン。もっと速い?」

「ホイットニーH見てたでしょ?慣れないダートコースというのもあるかもだけど…それにしても酷いわね。…タキオンちゃん、次は私と走りなさい。ワールドちゃんはタイム測ってくれる?」

「お姉ちゃんがダートコース?」

「はい。」

 

こうして、アグネスフライトが併走相手となったのだが…

 

「ーーーそんな!?」

「…」ダッダッダ

 

最後のスパートでアグネスタキオンは伸びが出ずアグネスフライトにも差を広げられ敗北したのだ。

 

…………

 

「はぁ…はぁ…」

「…今日はもう併走トレーニングは無理ね。ごめんねワールドちゃん。」

「謝罪不要。いい練習になった。そろそろお昼。戻って何か食べ…」

 

ぐるるる~

 

「…」かあっ

「今の音…タキオンちゃん?」

「そうだとも…うぅ…」

「可愛い音ね~♪」

「もう!しかし…帰るまで我慢するしかないね。ここに食材何て…」

「お腹。少しだけ満たす。ちょっと待ってて。」

 

15分後…猪を引きずり戻ってきたアグネスワールド。もう片方の手には鍋と中に大量の山菜が入っていた。

 

「ちょっと…それ狩ってきたの?…そもそもワールドちゃんって免許は…」

「大丈夫。これただの毛皮。去年貰った。加工した。中に色々入れてる。」

「ややこしいわね!」

「スーツケース風。お気に入り。後、山菜。少し採ってきた。」

 

そういい、アグネスワールドは猪(?)の中からコンロや紙皿、割り箸などを取り出し、準備を始める。

 

「ワールドちゃん、私たちも何か出来ることある?」

「フライトさん。マダケとフキ。アク抜いて。タキオン。コンロと机。風避け設置。お願い出来る?」

『分かったわ(了解した)。』

 

その後、山菜の天ぷらを食したアグネスタキオンたちは山を後にした。

 

ーーー

 

夕方になり、アグネスタキオンはソウジと合流し…足を揉まれていた。それ同時にソウジは今日のアグネスワールドとの併走映像も見ていく。

 

「…」もみもみ

「それでこれがタキオンのタイムか…ありがとうなフライト。」

「いえいえ、これくらい大したことでは…できれば私と尻尾ハグを…」もじもじ

「次に『ウマ人』になったらな~。」

「はーい♡」

 

ガブッ

 

「おいフライト…俺の首を噛むな。血が出てきただろ…これで何度目だ?お前はネコ科の猛獣か?もしくは吸血コウモリか?」

「…あ、ごめんなさい。つい…」ペロペロ

「まぁいい。それでこれがタキオンのタイムか…」

「…」もみもみ

「タキオン。」

「…何かねトレーナー君?」もみもみ

「明日からしばらく、俺は指導をしない。」

「…え?」もみもみ

「ソウジトレーナー?」

「俺で実験したいことがあるなら前日に言ってくれ。それに予定を合わせよう。」

「え…その…」もみもみ

「そうだ!何も思い付かなかったら生霊を可視化出来る装置でも作ってくれないか?」

「…」もみもみ

「ソウジトレーナー、タキオンちゃんに喋らせなさいよ。」

「悪い悪い。で、どうだ?」

「私は君の判断を信じるだけだよ。…しばらくは走ることから離れろと言いたいんだね。」もみもみ

「違う。」

「は?」

「え?」もみもみ

「俺から練習の指示をしないだけでタキオンは好きにしていい。ただ…17時にはここでミーティングだ。俺が知らないことはその時に口頭で教えてくれ。それで次の日をどうするか決める。」

「…」もみもみ

「ソウジトレーナー、タキオンちゃんの現状分かっていますか?『本格化』の終わりが近く、心も体も不安定なのですよ?こんな大事な時に…」

「大事な時だからだ!…明日は1日タキオンのために空けておく。好きに過ご…せ!」グイッ

「了解し…ふにゃ~!!」もみもみ

 

ソウジより出された指示をアグネスタキオンは返事をする…腑抜けたままの顔で。




サンデーサイレンス(Sunday Silence)…アメリカ出身の青鹿毛の牡馬。現役を14戦9勝(内G1レースを6勝)かつ連対率100%で終え、日本で種牡馬となる。そしてフジキセキ、スペシャルウィーク、アグネスタキオンなどウマ娘になった競走馬以外にもステイゴールド、ハーツクライ、ディープインパクトなど45頭のG1馬を排出し、トニービン、ブライアンズタイムらをも超える大種牡馬となった。また父ヘイロー譲りのかなりの気性難持ちだがメジロマックイーンの側では大人しくなったという逸話もある。容姿はマンハッタンカフェに似ているとのこと。


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第52話 超光速の貴公子 + 雪美神 = 凍えし結晶

どうも、昨日のターコイズSがローザノワールのラストランだったらしく感無量な作者です。マンハッタンカフェの産駒だからという理由で応援してましたが…ヴィクトリアマイルの逃げからファンになりました。昨日のラストランは上手く逃げれなく12着でしたが…本当にお疲れ様でした。

今日は朝日杯FSですね…頑張って欲しいのがデビューから応援してた『オールパルフェ』、『オオバンブルマイ』、『ニシノベストワン』、『エンファサイズ』の4頭。…どうなるか?

勝ったのはドルチェモア…お疲れ様でした。


夏合宿の終わりが近くなる中…今日はアグネスタキオン主催の特別レースが行われようとしていた。

 

「今回のレースの特別ゲストは…『クリスタルディネベ』君だ。他にも実験を兼ねたレースとなっているよ。」

 

(ワァァァーッ!)

 

ゲート近くには『ウマ人』と『アナザー』になっていたウマ娘たちが既に準備をし始めていた。

 

「毎回思うけどあのゲストってどこから連れてきてるのだろ?」

「カフェさんにデジタルさん、スカイさんにブライトさんも走るみたいだね…別人みたい。」

「フライトさんだけは何時に近い姿だね。」

 

「さて、条件だが…芝コースで距離は1800m、バ場は良、天気は晴れだね。ただ今回は…」

 

「おうタキオン!ウチらも入れてくれや!」

「観戦のみで…む?」

「何や?今回は募集はあらへんのか?」

「あぁ、その通りだ。だから次回に…」

「そんな固いこと言いなさんなや!ウチとオグリと『バトラー』も混ぜてくれや!」

「タマ、無理を言ったらダメだ。」

「そうよ。それに私はもう引退していて仕事が…」

「後でフライトの焼きそば奢るで?」

「バトラー、走ろう!」

「えぇ!?」

「私はまだ了承をしてないのだが?」

「後でウチとオグリの『因子』やるで?これならどうや?」

「…分かった。これは実験レースだ…データ採取の邪魔になる走りはしないでくれるかね?」

「分かっとる。要するにいつも通りに走ればええんやろ?」

「ちょっと!まだ私は参加するとは言ってないわよ。ゴアも何か…!」

 

バキッ

 

「…」チーン

「ふぅ…」

 

バトラーが振り返ると頭に大きなタンコブを付けて気絶したウォーエンブレムと殴ったであろう拳から煙が出ているイージーゴア、そしてその様子を困惑した顔で見るゴールドアリュールとスマートファルコンとコパノリッキー。

 

「この栗毛バカを連れて説教してくるから参加していいわよ。たまには体を動かさないと鈍るだろうし…久々に友人に会えたのでしょ?」

「もう!…いい走りは期待しないでよ?」

「よっしゃ!いくで!」

 

こうして、タマモクロスたちもレースへと加わった。

 

ーーー

 

『ピスピース…お前ら…アタシの焼きそばとは遊びだったのか?ゴルシちゃんだぜ…』ズーン

『ずっと塩だと飽きますわよ。あら、美味しいですわね。』ずるずる

『マックイーン!お前までフライトの方がいいって言うのか!?前はゴルシちゃんの差し入れたのを掃除機みてぇに食ってくれたじゃねぇか!』

『…目が覚めたら周りが塩焼きそばに囲まれていた時…私はどんな気持ちだったとお思いで?』

『うまそう!超食いてぇ!…だろ?』

『違いますわよ!あれのお陰で先週まで麺そのものが食べれなかったですのよ!』

「それは1人で全部食ったからじゃね?」

『まぁ味は普通に美味しくて…じゃないですわよ!体重管理がもの凄く大変でしたのよ!トレーナーさんとの一心同体トレーニングが無ければ私は…私は…!』

『トレーナーとの一心同体トレーニングだ?』

『オ、オホン!今は関係ありませんわね…今回のレースはあら?参加者以外にも誰かいますわね?』

『見学か?えーと、タマモクロスとオグリキャップと…誰だアレ?』

『彼女は…『ペイザバトラー』さんですわね。』

『あぁ!ジャパンCでG1初勝利したアメリカのウマ娘か!…何でここにいるんだ?』

『私もそこまでは知りませんわよ。…では、そろそろ紹介をお願いしますわ。』

 

『1番、セイウンスカイこと『バンケットシー』!』

『セイウンスカイさん…にしては白いですわね。あそこまで白くなる芦毛のウマ娘は始めて見ましたわ。』

『いや、芦毛でなく白毛っていう珍しい毛色らしい。生まれた時から既に白いとか何とか。』

『な、なるほど…ところで『バンケットシー』とは?』

『『合成因子』の名称だな。セイウンスカイとファインモーションの組み合わせで、それでセイウンスカイが『アナザー』になったらしい。今回のメンバーはほぼそんな感じらしいぜ。ゴルシちゃんも『アナザー』になってみたいな!』

『…オススメはしませんわよ。』

『何だ?マックイーンはなったことがあるのか?』

『年明けに少々…いいから次へ!』

 

『後で詳しく聞かせてくれよ?2番、アグネスデジタルこと『ドゥンワイマラナー』!』

『あら?アグネスデジタルさんがいつもより逞しくみえますわね。誰との組み合わせでしょうか?』

『アグネスデジタルとメジロドーベルだな!』

『…ドーベル?』

 

『3番、オグリキャップ!…ん?おい、参加するって聞いてないぞ?』

『どうやら彼女はえーと、タマモクロスさんから焼きそばをご馳走してもらえるから、での参加だそうです。』

『マジで!?ついにゴルシちゃんの時代が…』

『フライトさんの、だそうですわよ。』

『…マックイーン。お前ってそんなに性格悪かったっけ?』

『あなたにだけですわ。』

 

『…ま、いっか。4番、メジロブライトこと『アンステーブル』!』

『直訳すると"不安定"ですが…ブライトと誰の『合成因子』でしょうか?』

『スイープトウショウだな。』

『…不安しか無いですわ。特にスタートが。』

 

『5番、マンハッタンカフェこと『アラビアンザパール』!』

『パールということは…マンハッタンカフェさんとシーキングザパールさんの『合成因子』でしょうか?』

『正解!しかし…『ローズゼラニウム』といい、タキオンは短距離と長距離の組み合わせが好きなのか?』

『何となく分かりますわよ。アイスクリームにお醤油を少し垂らすような感覚かと…』

『また太るぞ?』

『お黙りなさい!次の方を紹介してくださいまし!』

 

『6番、ペイザバトラー!』

『アメリカのウマ娘ですが…日本の芝コースが一番馴染んでいたとも耳にしました。『ゴールデンフェザント』さんもですが…やはり、海外のウマ娘のレベルは高いですわね。』

『まぁ、最近はデジタルが香港カップ、タキオンがホイットニーH勝ったりと日本のウマ娘も力を付けるようだしこれからに期待してくれ!ゴルシちゃんも本格化が来たらデビューして海外で大活躍の予定だぜ!』

『ふざけた走りだけはしないでくださいね?』

 

『7番、アグネスフライトこと『ヴァンプスカラー』!』

『彼女はそこまで見た目が変わっていないような…誰と誰の『合成因子』なのでしょうか?』

『えーと、アグネスタキオンとヒシアマゾンの『合成因子』らしいな。そういえばフライトの『合成因子』ってまだ無いよな。何でだろ?』

『タキオンさんのお姉さんだからでは?』

『ならハヤヒデとブライアンはどうなのよ?普通にあったぞ?』

『ゴールドシップさん、あなたはどこまで知っているのですか?ちょっと怖いですわよ?』

 

『8番、『クリスタルディネベ』!』

『『アナザー』だらけで忘れていましたけど、あの方がゲストでメインでしたわよね。…目にクマがあって怖いのですが?』

『あれは単に4日徹夜してるかららしいわ。』

『その様な状態でレースをしても大丈夫なのでしょうか?』

『何とかなるだろ?以上!この8人で…』

 

「ちょいちょい、待たんかい!ウチの紹介もせんかい!」

 

『悪い!悪い!ラストはタマモクロスこと『ランニュウシャ』!』

『えぇ!まさかタマモクロスさんも『アナザー』に…』

 

「んな訳あるかい!ちゃんと紹介せえや!」

 

『…ラスト、タマモクロス。まぁ、大外貰ってるから『アナザー』たちをどう差しきるかに注目だな。』

『さてさて…どんなレースになるのでしょうか?それでは皆様、出走の準備をお願いしますわ。』

 

紹介が終わった各ウマ娘たちがゲートへ向う!そして、全員のゲートインが完了し…レースが始まった。

 

………

 

『スタートしたぜ!やはり、メジロブライトこと『アンス…って、長くて言いにくいから止めだ。メジロブライトが出遅れた!それ以外は綺麗なスタート!』

『…あら?前に出るウマ娘がいませんわね?セイウンスカイさんが前に出ると思ったのですか…結果的に先頭はオグリキャップさん。後ろが気になるようです。』

『そのすぐ外に『クリスタルディネベ』、半バ身離れアグネスフライトとセイウンスカイが続く。』

『そして少し後ろの内側にアグネスデジタル、その外並んでマンハッタンカフェ。すぐ後ろにタマモクロスとペイザバトラー…タマモクロスさん、完全にマークしてますわね。』

『で、大きく離れて最後方にメジロブライトだな。そろそろ3コーナー辺りだな…』

 

「…フライト先輩たち、見たことない走りだね。いつも通りなのはブライト先輩だけかな?」

「ううん、ブライトさんのほんわりした空気が感じないよ。何か…力強いって感じ?」

「力強い?うーん…それより、オグリ先輩には厳しい展開かな。」

「かもね…」

 

「…タキオン?それにフライトもブライトも何やってんだ?」

 

『全体的にスローペースな展開ながらも第4コーナーを超えて…先頭は変わらずオグリキャップ!…と、ここでセイウンスカイが抜けてきた!そのすぐ後ろに『クリスタルディネベ』!1バ身離れ…マンハッタンカフェ、アグネスデジタル、ペイザバトラー、タマモクロスとかなり混戦状態だ!』

『3バ身程離れ、メジロブライトがアグネスフライトをかわしてペースを上げてきましたわね。そのまま最後の直線…どうなるのでしょうか?』

 

「Win again you …Tama!」

 

「せやな、そう来ぇへんと…な!」

 

ダダンッ

 

『おっと!ペイザバトラーとタマモクロスが同時に仕掛けてきたな!そのまま前へと突き進む!』

『前は『クリスタルディネベ』がセイウンスカイをかわし先頭になりましたわ!そして…内からアグネスデジタルも伸びてきています!』

『さぁさぁ!どうな…っと!タマモクロスがペイザバトラーをあっさりとかわし、アグネスデジタルと『クリスタルディネベ』へと迫る!ここで大外からメジロブライト!凄い末脚で一気にくる!メジロブライトが…全員を差しきってゴールイン!勝ったのはメジロブライトだ!』

『ブライト…あんな鋭い走りができましたのね。『アナザー』も侮れませんわ。』

『1着メジロブライト、2着にはタマモクロスで確定だ!アメリカのペイザバトラーが参加したり、オグリキャップが先頭になったりと中々見れない面白いレースだったな!んじゃ、またな~!』

 

ーーー

 

レースが終わったペイザバトラーは木陰で大の字となり寝転んでいた。

 

「はぁ…はぁ…ソーリー、タマ。期待に、答えれる…走りが、出来なくて…」

「いやいや、ウチが無理言うて参加してもうたから…ほんま、おおきにな。」

「タマ、早く焼きそばを買いに行こう。」

「マイペースか!てか、フライトさっき走ったばっかやし、まだ店はしてへんやろ?」

「ん?ブリザードさんならもう屋台にいるが。」

「んん?フライトやなくてブリザードさん?」

「あぁ、ゴルシとフライトの焼きそばはブリザードさん1人が用意するようになった。それに加えて焼きトウモロコシもある。」

「…」

「ゴールドシップと頼めば塩焼きそば、アグネスフライトと頼めばソース焼きそばが出てくるのだが…」

「何やそれ!初耳やで!?…あぁ、もう何でもええわ。バトラー、動けるか?」

「はぁ…はぁ…もう少し待って…」

「オグリ、焼きそばの前に悪いけどバトラーに冷たい飲み物か何かを持ってきてくれへんか?」

「わかった。タキオンへ『因子』を渡すのだろ?」

「せやな…腕輪も頼むわ。」

「手間をかけるわね…タマ…オグリ…」

「うちわで扇いだるからそのまま横になっとき。」バサバサ

「Thank you…」

 

こうしてペイザバトラーにとっての久々のレースはスタミナ切れで終わった。

 

ーーー

 

一方、ソウジは走った後に横になっていた。

 

「…」チーン

「大丈夫かいトレーナー君?」

「あぁ…後はこのレースのレポートをタキオンに…」

「急がなくていいとも!…少し、休みたまえ。」

「…1時間後に…起こし…ZZzz…」

 

そしてそのまま眠った。

 

「あらあら~、ラブラブですわね~」

「セイちゃんもちょっと憧れちゃいますよ~」

「ドーベルさんを含んだ『因子』が私の体外に…!いや、戻したくは…でも戻さないと…はうぅぅ!」チーン

「早く…元に戻してください…」

「タキオンちゃん、ソウジトレーナーを戻すのは…もうちょっと後にしてくれない?」

 

そして、『アナザー』になっていたウマ娘たちも集まった。アグネスタキオンはソウジを背負い、研究室(合宿所版)に向かっていたのだが…

 

「お前は一体何をしてるんだ…タキオン?」

 

1人の男がアグネスタキオンに声をかける。

 

「おじいちゃん!?」

 

「あの~、この方はもしかして…」

「タキオンさんの……前の……担当トレーナーで…」

「私とブライトちゃんの元担当トレーナーでもある…」

「お久しぶりですわ~、『チヒロ』様~!」

 

そこにはアグネスタキオンとアグネスフライトの祖父にして、元担当トレーナーのチヒロがいたのだ。




ペイザバトラー(Pay the Butler)…アメリカ出身の鹿毛の牡馬。フランスにてデビューするも中々勝てず、アメリカに帰国。初戦のレッドスミスH(G2)を勝利し重賞馬となった。その後、G1レースを2回2着と経験を重ね、日本のジャパンCへと挑む。タマモクロスとオグリキャップ、欧州最強のトニービンが参戦した中で9番人気であったものの、最後の直線でタマモクロスを差しきり勝利。G1馬となった。しかし、その後は勝てないレースが続き、2度目のジャパンCはホーリックスとオグリキャップに敗れ3着。引退後は日本で種牡馬となるも事故により早期に死亡、1世代を残すだけとなった。代表産駒は重賞を4勝したパルブライト。ウマ娘の公式マンガであるシンデレラグレイではオベイユアマスターという名前で登場する。…この作品ではレースからは引退し、アメリカで社会人となっている。


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第53話 過去編は1話くらいか別作品としてやれ!

どうも、色ちがい厳選が忙しい作者です。ブロロン、カイデン、パモット、テツノカイナをゲットしました!しかもパモット以外は証持ちという豪運ぶり!

今日は中山大障害ですね…『オジュウチョウサン』のラストランです。『ニシノデイジー』も出走です!また中山の新馬戦にグラスワンダーのラストクロップの『ファイナルワンダー』が出走…勝って欲しい!

勝ったのはニシノデイジー!!!!
セイウンスカイ、ニシノフラワー、アグネスタキオンの血統を持った競走馬が勝った!!!!

ファイナルワンダーは勝てませんでしたが…次を期待します!

あ、急ですが過去編です。


時は2年前の夏へと戻る。ソウジにとっては唯一の担当ウマ娘であったタイキブリザードがドリームでも活躍した後にトレセン学園を卒業した。そのためソウジは新たな担当を持つべく他のトレーナーと共にウマ娘の練習をみていたのだが…

 

「…」ダッダッダッ

 

この時点でポテンシャルが高い娘もいた。自分の指導で大きく伸ばせる娘もいた。しかし…この日もソウジが誰かをスカウトする動きを見せない。

 

「先輩?スカウトしないんすか?」

「うーん…いい娘はたくさんいるんだけど…」

「タイキブリザードが忘れられないんすね?」ニヤニヤ

「その顔やめろ。…お前はどうなんだハヤト?」

「いや~、面白い娘がスカウト出来ましたよ。ウマドルなるものを目指していて…ほら!あのツインテールの娘っす!」

 

ソウジが見てみるとダートコースの先頭で走っているウマ娘がいた。

 

「…ハヤト。あの娘だが…」

「何すか?ファン2号になってくれるんすか?」

「『本格化』の傾向が全く見えない。おそらくだが…デビューするのはかなり先だな。」

「…え?マジすか?」

 

ーーー

 

数日後、ソウジは1人のウマ娘へアドバイスをしていた。

 

「コーナー時に足首に力が入り過ぎだな。捻挫の原因にもなるから気をつけてくれ。」

「はい!ありがとうございました!…このまま私の担当になってもらえませんか?」

「嬉しいことを言ってくれる。だがお前の『本格化』はまだ先だ。故に今はお前の担当にはなる気はない。だからと言って焦らずにマイペースにケガだけはしないよう練習をして欲しい。もし、俺以外にいいトレーナーがいたらソイツを選べるし…結局は自身の道を決めるのはお前だ。」

「はい!もしその時にまた、私の担当がいなければ…なってもらえるか考えていただけますか?」

「勿論だ。…今日はここまでにしておけ。」

「はい、失礼します!」

 

「ふぅー…これで2人目か。」

 

ソウジは一息つく。トレセン学園においてトレーナーがスカウトするのは基本的に『本格化』の兆候があるウマ娘で多い。早めに担当を持つに越したことはないが、それはそのウマ娘の専属になることを意味する。しかし『本格化』が来ないまま卒業となるウマ娘も過去にいたのでそれを嫌うトレーナーも多い。そのため、目をつけたもののまだその兆候がないウマ娘にトレーナーが青田買いを行うことも珍しくはないのだ。1人のウマ娘に複数のトレーナーから声がかかることもあるが、その場合はウマ娘が誰をトレーナーにするかを選ぶため、問題はないとのこと。

 

「ブリザード…」

 

それは現在のソウジにとってはありがたい風習だった。スカウトしてこそトレーナーだがタイキブリザードが卒業した今、どうしても次の担当を持つ気になれないのだ。

 

「さて…遅くなったし後は見回りをして…ん?」

 

辺りは暗くなり学内の消灯されていく中、ソウジは練習場の方へと目を向けた。

 

ダッダッダッ

 

「誰かが走っている?」

 

練習場は既に暗く、誰も走ることは出来ないはずだ。そう思いながら近づくと同時にソウジは目の前の光景に息を飲む。誰かの下半身が練習場を走っていたのだ。もう一度言おう…下半身が走っていたのだ。恐怖を感じたソウジはその場で慌てて身を隠す。

 

「…動きが悪いねぇ。想定の10%もいかないとは…やはり、尻尾も付けておくべきだったかな?」ポチポチ

 

こっそりと様子を見てみると、近くにはタブレットを片手に下半身の動きを観察するウマ娘がそこにいた。

 

「(あれは…今年の皐月賞を勝ったアグネスタキオンか?)」

 

アグネスタキオン…4戦4勝(内重賞3勝)を記録しつつも皐月賞直後のケガにより引退となったウマ娘。彼女が下したウマ娘の中には後にNHKマイルを勝ったクロフネ、日本ダービーを勝ったジャングルポケットがおり、今後の活躍が期待されたウマ娘だ。

 

「(…そんな彼女がなぜ練習場で?いや、そもそもあの下半身は何だ?)」

「機械は苦手だ。やはり、ここは人体実験といこう…そこの君でね。」

「ー!?(バレてる!)」

「隠れる必要はないさ。何…ちょっと実験に協力して欲しいだけだよ。」

「おいおい…人体実験と聞いて『はい、そうですか』と答えるトレーナーがいるとでも?」

「ウマ娘の希望を聞くのが君たちトレーナーの仕事だろ?」

「あぁ、レースを控えた真面目なウマ娘ならそうなるな。少なくともケガで引退し、授業をサボるようになったお前は含まない。姉や母に申し訳ないとか思わないのか?」

「やれやれ…私の悪名もここまで有名になったものだ。しかし、これは私にも譲れないこと…力ずくでもやってもらおうじゃないか。」

「バカか。やらないと言っただろ…じゃあな。」

 

そう言いソウジはその場を去ろうとするが…

 

ガシッ

 

「があっ!」

 

背中を向けた瞬間、アグネスタキオンに取り抑えられた。

 

「バカはどっちかな?人間がウマ娘に敵う訳ないじゃないか?」

「お前!ケガしてるはずなのに…おい、離せ!こんなことしてただで…」

「黙りたまえ。君は大人しくモルモットになればいいんだよ。」

 

ガチャ

 

そのままソウジの足に何かを付けて、アグネスタキオンはタブレットを操作する。

 

「さてプログラム完了だ。20分でいい…筋肉と骨の動きのサンプルをもらおう。」ポチポチ

「おい、これどうなって…くそ!外れない…おわっ!」

「あまり喋らない方がいい。20分は走り続けるからねぇ…それじゃあ、よろしく頼むよ。」

 

ポチッ

 

アグネスタキオンの言葉と共にソウジの足が勝手に動き出す。

 

ダッダッダッ

 

「は、速…痛い!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」

「おや?ウマ娘の速度で設定してしまったようだ。しかし20分は止まれないから我慢したまえ。」

「これが…後…20分だと…!?痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」

 

痛みを訴えながらも、人の力を越えたスピードで走り続けるソウジ。その様子を光のない瞳で観察し続けるアグネスタキオン。20分が経つ頃には走りながらもソウジの意識は既に無くなっていた。

 

ーーー

 

「…知らない天井だ。」

 

ソウジが目を覚ますとそこはどこかのベッドだった。

 

「…悪い夢でも見ていたのか?まぁ、そうだよ…な?」

 

体を起こすと見えてきたのはギプスで固定されていた自身の下半身。

 

「…」

 

現状の理解。現実逃避。自身の今後…様々な思考が出てきたソウジがまず行ったのはナースコールのボタンを押すことだった。

 

………

 

「完治まで…1年ですか?」

「えぇ。筋肉の炎症、肉離れ、複雑骨折、剥離骨折、など数えればキリがないくらいですね。」

「そう…ですか…はぁー。」

 

ソウジから溜め息が出る。昨日まで出来ていたことが急に出来なくなってしまったのだ。すると、誰かが訪ねてきた。

 

「失礼します。」

 

入ってきたのはアグネスタキオン…ではなくその姉のアグネスフライトだった。

 

「…何の用だ?」

「私の妹がごめんなさい。」

「…アイツは?」

「1ヵ月の停学です。学園から出られず、生徒やトレーナーとの接触が禁じられました。」

「…そうか。」

「…怒りはないのですか?」

「あるに決まってんだろ!…だが、お前にぶつけるつもりはない。治ったら本人に言うだけだ。」

「…」

「お前からの謝罪は聞いた。悪いがアイツと顔が似てるお前を見たくない…もう帰ってくれるか?」

「…」

「何?まだ何かある?」

「タキオンちゃんを…妹を…どうか許してくれませんか?」

「許す訳ねぇだろ?帰れ。」

「私が何でもします!だから…あの娘の希望を…未来を…どうか…」

「なら今すぐ帰ってくれる?そんなことも出来ないか?」

「最後にこれだけ…タキオンちゃんのレースを1度でいいから見てください。…失礼しました。」

 

アグネスフライトは病室を去る。

 

「はぁ…たづなさんに連絡しよう。」

 

………

 

数時間後、届いたパソコンでソウジはアグネスタキオンのレースを見ていた。ドリームでのレースが中心となっていたソウジがトゥインクルのレースを見るのは久々だったのだが…

 

『ジャングルポケットを離す離す!

アグネスタキオン、まず1冠!』

 

「…何だよコレ。こんな…こんな悔しいことがあるかよ!」

 

圧倒的強者の速さ…言葉はそれだけに尽きない。数多くのウマ娘を見てきたはずのソウジだが、それでもこれほどの逸材をみたことはなかった。それほどに…怒りを忘れるほどにアグネスタキオンの走りに魅了されたのだ。そんなソウジにまた誰かが訪ねてきた。

 

「入るぞ。」

「あ…お疲れ様ですチヒロトレーナー…??」

 

ソウジの先輩であるチヒロは『アグネスレディ』を始め、メジロラモーヌ、ダイイチルビーなどG1ウマ娘を育ててきた大ベテランであり、かつてサブトレーナーとしてソウジもチームに所属していた。現在もニシノフラワーやメジロブライトらを担当しておりトレセン学園で彼に頭が上がるトレーナーはいない。そんな彼がいきなり自分へと頭を下げたのだ。当然ソウジは混乱する。

 

「…俺の孫がすまなかった。」

「孫?」

「アグネスタキオンのことだ。」

「…はい?」

「俺が無理やり引退させたばかりに…あんな奇妙なことをするようになった。」

「謎の下半身に走らせていたことですか?」

「元々頭が良かったんだ。それに加えて速いスピードを活かした走りでレースにも勝ってきた。まさか、引退後にこんな形で使われていたとは思っていなかったがな。」

「そう…ですか…」

「で肝心の話の内容だが…俺はもうすぐトレーナーを辞める。」

「え?そうなのですか?」

「お前…あのタイキブリザードを担当していただろ?お前になら、うちのルビーやブライトたちを任せていいと思っている。…これで許して欲しいとは思っていないが、お前にとって悪い話ではないだろ?」

「…」

 

大ベテランが育てたウマ娘を担当出来る。最初の1勝を勝ち取れるのが一握りとなるこの界隈で重賞レースを勝ってきたウマ娘を担当出来る。これほど美味しい話はないだろう。

 

「これが今のチームメンバーのリストだ。1人…いや、最悪全員でもいい。選んでくれ。」

 

そう言われてチヒロから受け取ったリストをソウジはみる。メジロラモーヌを始め、ダイイチルビー、メジロブライトとG1を勝ってきた強力なウマ娘たちの名前がそこにはあった。そしてソウジが選んだのは…

 

「アグネスタキオンを担当させてくれませんか?」

「…お前、正気か?」

 

リストには無い名前だった。

 

「…彼女のレースをみて思いました。彼女ならナリタブライアン(怪物)テイエムオペラオー(覇王)…いや、あのシンボリルドルフ(皇帝)をも超えれる、と。」

「…」

「チヒロトレーナー、お孫さんを俺にください。」

「…それで満足するなら。」

「ありがとうございます。」

 

こうして、アグネスタキオンの担当トレーナーになったソウジだが…

 

「あのー、タキオンさんからはトゥインクルシリーズの除名届をもう受け取りました。よって復帰する場合には復帰届やタキオンさんのケガの完治証明書など色々と手続きが…」

「はい?」

 

「指令。アグネスタキオンの元トレーナーとして彼女の行動を監視するように。」

「はい?」

 

「君が私のモルモットに志願したトレーナーかね?物好きなことだ…では、早速このクスリを飲んで貰おうか。」

「もがっ!」

 

ゴクン

 

「これで下半身のケガは1月後には歩けるくらいに治るだろう。さっさと次の実験までに治してたまえ。」

「お前…ん?」

 

ピカーン

 

「どうやらこのクスリには発光する副作用があったようだ。実に面白い。」

「…もしかしてこれが完成すればお前のケガは治り、レースに復帰してくれるのか?」

「ん?私がいつ完治後に復帰するとか言ったかね?君はこれから私の研究の実験動物になるんだ…満足するで壊れないでくれよ。」

「…」

 

そこから約1年…ソウジはアグネスタキオンのモルモット兼監視役となるのだった。その間、アグネスタキオンと共にソウジはケガを負ったり、絆を深めたり、ケガを負ったり、胃袋を掴んだり、ケガを負ったりするのだが…それはまた別の話。




アグネスレディ…1976年生まれの鹿毛の牝馬。主な勝利は当時のOPクラスの優駿牝馬(オークス)。引退後は繁殖牝馬として桜花賞を勝ったアグネスフローラを出した。さらにそこからアグネスフライト、アグネスタキオンが生まれた。この作品でもアグネスフライトとアグネスタキオンの祖母であるが…チヒロとの関係は不明(次回分かる)。


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第54話 貰ったオモチャはなかなか捨てれない、易行者の復活

どうも、昨日のニシノデイジーの勝利により興奮が収まらず、カラオケで2時間うまぴょい伝説を叫ぶように歌った結果…喉を痛めた作者です。…馬鹿かな?

とりあえずメリークリスマス!今日は有馬記念ですね!私が勝って欲しいのは…『ディープボンド』です。しかし、大外ですからね…はい。ダイワスカーレットはそれでも勝ててましたが…はい。今年は親子制覇が多いので『イクイノックス』、『ジェラルディーナ』、『ウインマイティー』、『ジャスティンパレス』、『ポタジェ』の誰かが勝つと思ってます。とはいえ…私が今回応援するのはディープボンド!勝ってください!

勝ったのはやはりイクイノックス!
…ディープボンド、そしてこの有馬記念を走った皆様お疲れ様でした。

では、本編どうぞ!


「何をしてるんだ…タキオン?」

「おじいちゃん!?どうしてここに?」

 

アグネスタキオンは背中にソウジを背負ったまま祖父のチヒロへと質問する。

 

「いや、質問してるのはこっちなのだが…まぁ、いい。ラモーヌ嬢のトゥインクル時代の取材で呼ばれてこっちに来た。ついでにフラワーちゃんの顔でも見ようと思ってな。」

「私たち孫ではなくフラワー君か…」

「じいちゃん…相変わらずあの娘には甘いのね。」

「お前ら孫2人が冷たいからな…で、何をしてた?」

「模擬レースさ。詳しくは長くなるので省くが…ウマ娘から抽出した『因子』を合成し、その性質を観察しているのだよ。」

「…何を言っとるか全然分からんが…ソウジはおるか?」

「あぁ、今は4徹で寝てい…!!」

 

「はい!お呼びですか?」

 

アグネスタキオンの背中から返事が聞こえる。ソウジが反射的に目を覚まして答えたのだ…『ウマ人』の状態で。

 

「は?あんたが…ソウジ?」

「お久しぶりですチヒロトレーナー…あ、見苦しい姿ですみません。タキオン、下ろしてくれる?」

「あ、あぁ…」

 

アグネスタキオンに下ろさせ、姿勢を正したソウジはチヒロへと頭を下げる。

 

「お久しぶりですチヒロトレーナー。タキオンの宝塚記念での出遅れの件でしょうか?」

「あんた…その耳と尻尾どうした?」

「耳…あ!すみません、すぐに元に戻しますね。」

 

ガチャ

 

回収用の腕輪を付け『クリスタルディネベ』の『合成因子』を回収し、ソウジは人間へと戻る。チヒロはその様子をポカンとした顔でみていた。

 

ーーー

 

研究室にて『アナザー』となったウマ娘の『合成因子』を回収している間にチヒロとソウジ、そしてアグネスタキオンが話をしていた。

 

「なるほど…人間がその『合成因子』って物を飲み込むことでウマ娘に近い力を得れると…そんなの見つける俺の孫、マジでやべぇな。それって俺が飲んでもなるのか?」

「なるだろうけど…絶対ダメだ。」

「何故だ?」

 

ガチャ

 

「いや、じいちゃんのウマ耳や尻尾って誰得よ?」

「お姉ちゃん、今は回収中じゃ…」

「グルーヴちゃんから緊急要請があってね。ピルちゃんがまた窮屈だと逃げたらしいから…捕まえてくる。」

「ピル?…もしかして、ピルサドスキー殿下?」

「グルーヴちゃんが関わらなれけばいい娘なんだけど…シチーちゃんには連絡したからユキちゃんの方は大丈夫!」

「いや、そこの心配ではなくて…相手は王族なのにそんな調子でいいの?」

「いいのいいの。『合成因子』は後で回収して渡すから!じゃあね~」

 

アグネスフライトは研究室を後にした。

 

「面白いと思ったのだがな…」

「おじいちゃん、私が止めたのは違う理由だよ。」

「違う理由?」

「今でこそトレーナー君は瞬時に『ウマ人』へ変化、そして回収も可能だ。しかし、最初に飲み込んだ時は変化に時間もかかり身体にも大きな負担があった。トレーナー君以外の人間だと…おそらく死ぬ。」

「はぁ!?」

「…お前、ソウジにそんなことをさせてたのか!?」

「当たり前じゃないか!トレーナー君は私のモルモットだ!彼以外にこんなことはしないさ!」

「タキオン…」

「いやソウジ?ここは怒るところだからな?死ぬかもしれなかったんだぞ?」

 

アグネスタキオンの力説に顔がうるっ、となったソウジだったがチヒロがそれにツッコミを入れる。さらにアグネスタキオンは力説を続けた。

 

「おじいちゃんはトレーナー君の耐久力を知らないんだ!トレーナー君はお姉ちゃんから何回スタンガンを当てられても数分後にはケロっと立ち上がれるんだよ!」

「その前にフライトのスタンガンって何?」

「ん?お姉ちゃんが暴走して学園中のウマ娘たちをノッキングした事件を知らないの?」

「初耳だわ!…俺の孫たち、本当にやべぇな。」

「えーと…チヒロトレーナーは何故『ウマ人』になりたいのでしょうか?」

「いや~、レディと尻尾ハグってのをしてみたくてな~。最近流行ってんだろ?アイツ、今でも俺の足に尻尾を巻き付けてくるからさ~」

「…年下の叔父か叔母が出来ないことを祈ろう。」

 

………

 

『アナザー』となったウマ娘たちの『合成因子』回収、アグネスフライトによるピルサドスキーの捕獲、などがありつつも数時間が経過した。そして…1人のウマ娘がトレーナーと共にソウジたちの元へ来た。

 

「あの…お待たせしまし…た!?」

「フラワーちいゃぁぁんん!!」ダキッ

「きゃっ!お、お久しぶりです…チヒロトレーナー…」

「元気にしてたか?ご飯はちゃんと食べてるか?ケガとかしてないか?ホウカとは上手くやれてるか?」

「おじいちゃん、フラワー君が混乱しているよ。」

「い、いえ。チヒロトレーナーも元気そうでなによりです…」

「あ、これ!プリファイの新しいオモチャ!結構大きいから遊ぶ時以外はタキオンの研究室にでも入れといてくれ!」

「これってこの前出てきた剣…ありがとうございます!」

 

そこには久々に孫に会えてテンションがフォルティシモとなったチヒロ(おじいちゃん)がいた。いや、ニシノフラワーは本当の孫じゃないし、本当の孫(アグネスタキオン)の扱いはかなり雑だった。

 

「フラワー君、迷惑ならそう言っていいからね?」

「いえいえ。とても嬉しいです!」

「そうだろ!そうだろ!で、ホウカ…フラワーちゃんをちゃんと指導出来ているのか?」

「はい…お陰で彼女以外の担当出来ないくらいでして…」

 

ニシノフラワーの担当トレーナーであるホウカは目を泳がせながら答える。しかし、その答えにチヒロは満足した顔をみせる。

 

「それだけ彼女に全力で指導しているってことか…素晴らしい!」

「アハハ…チヒロトレーナーの期待が重いです…」

「そんなに固くなるなって…よし!俺はもう帰ろう。」

「あれ?もう行くのですか?」

「引退した奴がずっといても困るだろ?フラワーちゃんに渡したいものは渡したし…」

「あの!クッキーを焼いてきたのですが…食べていただけますか?」

「本当か?嬉しいけど時間が無いから1枚…頂こう。」

 

パクッ

 

「どう…でしょうか?」

「うまい!また腕を上げたな。」なでなで

「本当ですか?えへへ…ありがとうございます!」

「こっちこそありがとう…今度こそ本当に行こう。」

「はい!また何時でも来てください!」

『え…』

「その反応は何だよ…本当にフラワーちゃん以外冷たいな!…帰る!」

 

そう言いチヒロは合宿所を後にした。

 

ーーー

 

同時刻、イージーゴアとマンハッタンカフェ(inサンデーサイレンス)はアグネスタキオンの研究室にいた。

 

「…こんなことしていいのサンちゃん?」

「あん?タキオンは俺の願いを叶えると言った…なら、勝手にしてもいいってことだろ?」

「タキオンが来るまで待っていた方が…ってかやり方分かるの?」

「ん?適当にすれば何とか…」

「はい、アウト…フライト!」

「はいはい~」

「は?」

 

研究室の設備を使い、イージーゴアでとある実験を行おうとしていたサンデーサイレンスだが、目の前にアグネスフライトが表れスコープのようなものを覗きこんだ。

 

「お、お前…」

「どれどれ…あ、サンデーサイレンスさんが憑いてますね。ちょっと"お話"しませんか?」

「く、来るな!クソッ!こうなれば逃げ…」

「フクちゃんから貰った怪しい手袋で…よしっ!」

 

ガシッ

 

アグネスフライトがサンデーサイレンスの腕を掴む。

 

「おい!離せ!これはカフェの体で…は?」

 

サンデーサイレンスの目が丸くなる。目の前に自身が憑依していたはずのマンハッタンカフェの体があったからだ。

 

「カフェちゃん!?…フライト、カフェちゃんはどうなっているの?」

「サンデーサイレンスさんが…いない…?」

「サンデーサイレンスさんを引っこ抜いただけですよ。あ、これ…タキオンちゃんが開発した生霊が見える装置です。名前は"デサイレンスコープ"らしいのですが…とりあえず私の右手辺りをみてください。」

「どれどれ…あ、サンちゃんが暴れてる。」

「えぇ。しかしフライトさん…全く動じませんね…」

「これからサンデーサイレンスさんを私の体の中に引きずりこんで"お話"しますので!」

「んんん?ちょっと何を言ってるか分からないわ。」

「すぐに終わりますよ…"お話"してるところを見られたくないので少し席を外してもらえますか?」

「えーと、分かったわ…フライトって凄いね。メダグのお嬢といい勝負じゃない?」

「友達のために大組織を相手にしようとする彼女の方が凄いですよ~。では…!?ゴア!行くな!俺を助け…!!あー、すみません。生霊を取り込むとちょっと表に出てくるみたいですね~。大人しくさせてますので少しお待ちください。」

「サンデーサイレンスさん…フライトさんと完全に重なりました…」

「ヒィィ!!」ダッ

 

イージーゴアはマンハッタンカフェを抱え、逃げるように研究室を出る。そして、そのままドアの前で待機した。数分後、アグネスフライトが部屋から出てくる。

 

「サンデーサイレンスさんだけど…夏合宿が終わるまではカフェちゃんには憑依しないって。でもお見舞いには来て欲しい、って言ってたよ。」

「そう…ですか…。イージーゴアさん…貴方が行く時は……私も一緒に…」

「ウン、ソウダネ。」

「後はタキオンちゃんを待つだけね…あ!そろそろシャカールたちとの練習の時間だ!それじゃ、私は失礼しますね!」

 

アグネスフライトはイージーゴアたちにサンデーサイレンスのことを伝えその場を去った。それと同時にイージーゴアが座り込む。

 

「ふぅ…カフェちゃん。彼女って何者?」

「タキオンさんの姉…ですね…」

「…うん、もういいよ。何か知らない方がいい気がしてきた。」

 

さらに数分後、アグネスタキオンが到着し…イージーゴアの『因子』を抜く実験が行われた。




水曜日のホープフルSに今年最後の投稿をします。よろしくお願いします。


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第55話 貴公子の復活、やりたいことはやれる時にやっておけ

どうも、仮面ライダーギーツ&リバイスの映画を見てきた作者です。龍騎勢の参戦が嬉しかったな…普通に面白い映画でした。こういうのでいいんですよ…シン・仮面ライダーも警察とか政府とかそんな政治的な描写要らんのにな…。シン・ウルトラマンがそうだったから期待低めに見に行く予定です。

今日はホープフルSですね…私が応援するのは『ガストリック』、『セブンマジシャン』、『ジェイパームス』、『ジュンツバメガエシ』、『キングズレイン』…ってキングズレイン以外がジャスタウェイ産駒やないですかい!ガストリックには特に期待してます…東スポ2歳Sを取った実力、見せてください!キタサンブラック産駒である『ヴェルテンベルク』とサトノダイヤモンド産駒である『モンドプリューム』も頑張って!!

勝ったのはドゥラエレーデ…荒れましたね。ガストリック、次に期待していますよ。お疲れ様でした。

今年最後の投稿です。夏合宿編の最終回ということで…どうぞ!


夏合宿最後の日、場所はアグネスワールドが開発したダートコース。イージーゴアとアグネスワールドが併走トレーニングを行っていた。

 

「ーーよし、いい感じ♪」ダッダッダッ

「ー!速い!」ダッダッダッ

 

イージーゴアとアグネスワールドは並んでいるが徐々にその差は広がっていく。そして、イージーゴアがゴールを突き抜けた。

 

「はぁ…はぁ…。イージーゴアさん。速い。」

「んー、こんな所かな。」コキコキ

「まだ1週間しか経っていないはずだが…何て走りだ。」

「…もしかして、俺らはとんでもない奴を復活させたのでは?」

 

そのタイムを測ったアグネスタキオンとソウジ。アメリカ最強と言われていたイージーゴアの実力は今も健在であった。

 

「じゃあ、次はタキオンね。」

「休憩は?」

「大丈夫よ。むしろ久々でもっと走りたいわ!」

「タキオン、行ってこい!」

「あぁ、よろしく頼むよ。」

 

そして、アグネスタキオンとイージーゴアは併走トレーニングを始めた…そして、再びイージーゴアが先にゴールを突き抜ける。その後も彼女らの練習は続いた。

 

………

 

「私たち2人を相手に余裕とは…」

「想定外。」

「あはは…流石に少し疲れたよ。」

「…」

 

練習が終わり、息を整えるアグネスタキオンたち。ソウジは先ほどの併走トレーニングの映像を黒いクマのある目で見ていく。

 

「やっぱり最後の伸びだな…仕掛けるタイミングといい、膝の使い方といい、足に問題のある所は無いはずだが…」ブツブツ

「あの、ソウジさん。」

「変に走り方を変えるよりは出来るだけ……何?」

「タキオンですけど…今だけ私とワールドの2人に預けてくれません?」

「ダメだ。タキオンは俺の…」

「そうしよう!トレーナー君、君が最後にベッドで寝たの何時だ?」

「えーと、ここ最近は合宿所以外では学園と病院を行ったり来たりだったから…11日前だな。だ、だけどブリザードが運転してくれた時は寝てて…」

「8日前に学園に行った時の1回だけだろ…休んでくれ。」

「…ダメだ。」

「お姉ちゃんを呼ぶよ?」

「それでも…っ!!」

 

バチッ、バチバチバチバチバチ…

 

突然の痺れる感触によりソウジは気絶する。アグネスフライトがどこから現れ、ソウジにスタンガンを当てたのだ。

 

「連れていくわね♪」

「…ベッドに寝かせておいてほしい。」

「あら、ついてこなくていいの?お姉ちゃんが持って帰って食べちゃうかもよ?」

「…信じてるから。」

「…ずるいわね。安心して、ブリザードさんと交代で見張っておくから。まぁ…ちょっとご褒美はもらうけど。」

「頼んだよ。」

「はいは~い♪…タキオンちゃん、背中向けて。」

「ん?こう…っ!!」

 

バチッ

 

アグネスフライトはアグネスタキオンの肩へ何かを当て、そのスイッチを押した。一瞬電撃が走った感覚があったもののアグネスタキオンの体は立ったままだ。

 

「…お姉ちゃん、何をしたの?」

「ただのマッサージ機よ。タキオンちゃん、足はソウジさんがケアしてみたいけど上半身はそうでもないでしょ?とくに肩がすごく重かったらしくて…」

「ん?どうやってそれが分かって…」

「それはサンデ…コホン!秘密よ!とにかく一時的なものだから後でソウジさんから上半身もケアをしてもらってね。じゃあ、練習頑張って!」

 

ソウジを担ぎ、アグネスフライトはその場を後にした。

 

「フライトさん。いつからいた?」

「ワールドも分かってなかったの!?…やっぱりあの娘怖いわ。」

「…ゴア君、併走をお願いしてもいいかね?」

「…はぁ、いいわよ。ワールド、記録をお願い。」

「了解。」

 

アグネスタキオンとイージーゴアがコースを走り始める…ほぼ2人が並んだ状態が続き、最後の直線へと入る。そして…

 

ダンッ

 

「はぁぁぁ!!」

「ーー嘘!?」

 

アグネスタキオンが仕掛けたところからものすごい加速をし、イージーゴアを大きく離しゴールしたのだ。

 

「これが。タキオンの。最速の走り!」

「この末脚でホイットニーHを勝ったのよね…納得だわ。私も似たような勝ち方だったし!」

「…はぁ…はぁ…これだ!…ありがとう、お姉ちゃん。」

 

息を整え、自身の調子を取り戻したことを実感するアグネスタキオン。それを間近で見ていたイージーゴアとアグネスワールド。彼女たちにとってここでの練習は非常に有意義なものとなった。

 

ーーー

 

一方でアグネスフライトは既に合宿所に戻っていた。そこにタイキブリザードが合流する。

 

「ハイ、フライト!部屋に来て、って急にどうしたね?風紀委員の方は大丈夫?」

「はい、今日は夕方の退去まですることはないので。それにもう学園に戻った娘たちも多いですから…でないとブリザードさんも休みじゃないでしょ?」

「それもそうね。…ん?背負っているのは…ソウジ?」

「何で分かるのですか!」

「ラブパワーね。」

「…」

「それで…どうしたね?」

「ちょっとブリザードさんにも共犯になって欲しくて…」

「共犯?」

 

眠ったソウジの首には…謎の歯形があった。

 

………

 

イージーゴアはそのまま学園へと帰り、アグネスタキオンとアグネスワールドは合宿所へと戻っていた。

 

「トレーナー君は部屋にいないようだ…お姉ちゃんの部屋かな?」

「タキオン。一緒に来る?」

「忘れていたが君はお姉ちゃんと同室だったね…いいかね?」

「了解。フライトさん。門限過ぎた生徒。よく部屋に入れてた。」

「いや、トレーナー君の場合はどうなの?男だよ?」

「所詮は人間。ウマ娘に勝てない。」

「そういう問題じゃ…」

 

そしてアグネスワールドの部屋の扉を開ける。

 

「お帰りね、タキオン!ワールド!」

 

部屋にはタイキブリザードがいた…右膝にソウジ、左膝にアグネスフライトが眠った状態で。

 

「…どういう状況?何か匂うような…」

「ソーリー、私の膝は2個しかないね。」

「普通そう。何で。フライトさん。寝てる?」

「ソウジは見て分かるけど…フライトもヘロヘロだったね。ちょっと頭を撫でるとすぐに眠ったね。」

「寝顔レア。フライトさん。私より寝るの遅い。でも起きるのは早い。多分今月は。寝てない日あった。」

「お姉ちゃん…ブリザード君、感謝するよ。」

「別にいいね。久々にフライトの可愛い顔が見えたし…バスが出る2時間前くらいには起こすね。タキオンにもしてあげるね。」

「それは次の機会にお願いしよう。では私はこの前の模擬レースのデータの整理でも…」

 

部屋を去ろうとするアグネスタキオンであったが…

 

「タキオン、待つね。」

 

タイキブリザードに止められる。

 

「どうかしたかいブリザード君?」

「練習後のケアをするね。ソウジにしてもらってたの覚えてるから横になるね。」

「いや、私はこれから…」

「…」じー

「…はい。」

 

その後、タイキブリザードの右太股を枕に眠る者が増えた。

 

………

 

「ブリザードさん。山の片付け。後、トレーナーとのミーティング。行ってくる。」

「了解ね。バスの時間を忘れないようにね!」

「はい。」

 

アグネスワールドが部屋を出たため、室内で起きているのはタイキブリザードだけとなった。

 

「フライトもまだまだ子供ね。」

 

タイキブリザードがアグネスフライトの頭を撫でながら思い出すのは先程の光景。

 

ーーー

 

『共犯?』

『私と一緒に…今からソウジさんをいただきませんか?』

『…』

『好きなのでしょ?…このままタキオンちゃんに独り占めされたままでいいのですか?』

『…』

『私も彼が好き。でも、彼が好きなのはタキオンちゃんだけ…悔しくないですか?』

『…』

『私は…私は…!!』

 

アグネスフライトの言葉が止まる。タイキブリザードの手が自身の頭に優しく触れたからだ。

 

『フライト、今まで辛かったのね?』なでなで

『…ブ、ブリザードさん?』

『フライト、本当は共犯ではなくて、私にこれを止めて欲しかったのね?タキオンを悲しませないために。』

『…』

『こういうところはソウジにそっくりね。大切な人を悲しませないように自身のことを省みず、無我夢中で動き続ける…そこがフライトの素敵な所でもあるね。』

『う、うぅ…』

『前の事件…聞いたね。それでずっと合宿の間、何か理由をつけてみんなのために動き続けていたのでしょ?私がまた、いつでも聞いて、何でもしてあげるね。だから…今はゆっくり休むね。』なでなで

『…はい。お休みなさい…Zzz。』

 

アグネスフライトが完全に眠ったことを確認し、タイキブリザードは立ち上がる。

 

『さて、フライトが起きる前に…』

 

そして、ソウジの方を向く。

 

『いただくね。』チロッ

 

タイキブリザードはソウジの首にあった歯形の痕を撫で…

 

……………

 

…………

 

………

 

……

 

 

『ごちそうさま。』

 

ーーー

 

数時間後、寝ていた3人はタイキブリザードに起こされ帰りの準備を始めた。そして予定通りにバスが出れたため、全ての生徒が合宿所を後にする。こうして、トレセン学園の夏合宿は終わったのだ。




次回はフェブラリーSに投稿予定です。ここまで読んでいただきありがとうございました。よいお年を!


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第56話 とある星の話をしよう2 前編

本日、アグネスフライト号が老衰で亡くなられました。26歳…長生きだと分かっているのですが…生きている間に1度会いたかったです…。

今回の話に彼は出てきませんが…彼への敬意として投稿させていただきます。


『元・未勝利の星』ハルウララ。彼女は地方レースの未勝利戦での勝利を皮切りに6連勝したのち、中央レースである『プロキオンS』に出走。4着というかなりの好成績を叩き出した。そして…

 

『1着はハルウララ!

もうこの高知で彼女を止めれる者はいないのか!』

 

パチパチパチパチパチ

 

「ウララちゃん、おめでとう!」

「ずっと応援するからね!!」

 

「みんなありがとう!!」

 

地方、高知のレースにて7勝目を勝ち取った。

 

………

 

「トレーナー!トレーナー!勝ったよ!すごいでしょ?すごいでしょ?」

「うん、すごいよ…本当に。」

「ねぇねぇ。次のレースはなぁに?」

「次は…重賞レースよ。」

「ジューショー?またチューオーに行くの?」

「ううん。高知で行われる『建依別賞』よ。」

「たけよりわけしょう?…うーん、よく分かんないけどジューショーなんだよね?今度こそ勝つから…みててねトレーナー!」

「そうね、頑張ってね。」

「うん!!」

 

そして、夏合宿の始まる直前…その日は来た。

 

ーーー

 

『さぁ、始まりました今日のメインレースの重賞『建依別賞』。

注目が集まるのはこの2人。

1ヶ月前に中央でありました『プロキオンS』で掲示板内に入った『ハルウララ』!

前回のレースでも1着を取っています。』

 

パチパチパチパチ

 

「ウララちゃん!頑張ってー!」

「初重賞期待してるよー!」

 

「うん、頑張るね♪」

 

『そしてもう1人は中央での成績を含め重賞を5勝。

その中には『プロキオンS』の勝利もあります。

ケガに何度も泣かされつつもその度に復活。

そして現在5連勝中の大ベテラン『ナムラコクオー』!』

 

ワアァァーーーッ!

 

「コクオー!」

「お前ならまだいける!」

「ケガには気をつけてくれよ!」

 

「…」

 

ナムラコクオー…怪物ナリタブライアンと同期の黒鹿毛のウマ娘。重賞を2勝した後、ダービートライアルにも勝利。そして、『打倒ナリタブライアン』を胸に挑んだ日本ダービーは6着と敗れた。その後はケガにより2年近くの休養…復帰後に『プロキオンS』を勝利するも再びケガにより休養。その間に『本格化』も終わり、この高知へと移籍した。その後も何度もケガでの休養があったものの今まで現役を続けており、最近も勝っているのだ。

そんな彼女を含め、各ウマ娘たちはゲートへと向かっていく。

 

『12人がゲートに収まって…スタートしました!

さぁ、広がりまして…真ん中の2人が前へと出てきました。

マチカネジュウベエ、その斜め後ろにナムラコクオー、さらに…マッケンリーダーが続いています。

ハルウララは中団で様子を伺っているか残り1000、第2コーナーへと迎います。』

 

「いいぞコクオー!!」

「ウララちゃん、頑張れー!」

 

見事なスタートを切ったハルウララは内側の位置を取り、6番辺りをキープしていた。

 

『前の2人はそのままペースを上げ、3番との間が開きます。

4番にオースミレパードとジョイフライト。

その後ろにハルウララ、ペースを上げてきたか、第3コーナーに入ります。』

 

「コクオー!押し切れー!!」

「ハルウララ!!いけるぞ!!」

 

『ここでジョイフライト後退か、オースミレパードがかわす。

先頭はナムラコクオー。

さらに後ろからゼンノスピリットも上がってきた!

ハルウララは外へとくる!

そのまま第4コーナーへと入ります!』

 

「よしっ!」

 

ダンッ

 

各ウマ娘が仕掛けていく中、ハルウララもここでスパートを切る。

 

『さぁ、第4コーナーを越えて残るは200mの直線!

先頭はナムラコクオー、後続を突き放しにいったか!

しかし、ここでハルウララ!

ハルウララが外から迫る!

完全にこの2人のマッチレースとなりました!』

 

「ナムラコクオー!!」

「ハルウララ!!」

 

「はあぁぁぁ!!」

「ー!おらあぁぁぁ!!」

 

『残り100!

先頭は僅かにナムラコクオー!

しかし、ハルウララがその差を詰めてくる!

ナムラコクオーが逃げ切るか、ハルウララが差し切るか!

…ハルウララだ!

ハルウララが差しきりました!!

1着はハルウララ!

ついに重賞を手に入れました!』

 

ワアアァァーーーッ!!

 

「や…やったーー!!」ピョン

「はぁ…はぁ…!くっ!」

 

『ウララ!ウララ!ウララ!!』

 

先程までナムラコクオーを応援していたファンの方が多かった。しかしその場には今、ハルウララの名前が響いている。こうして建依別賞はハルウララの勝利で終わったのだ。

 

ーーー

 

「トレーナー!勝ったよ!ジューショーレースに勝ったよ!」ダキッ

「…うん。ぐすっ…本当によく頑張ったねウララ。」

「トレーナー?何で泣いてるの?…あ!そうだね!チューオーのジューショーも勝たないとだね!明日からもぉーと練習頑張るから!それで勝てたら笑顔になる?」

「ううん、泣いてるけど私は笑顔よ。次また中央に行けるまで勝っていこうね!」

「うん!あ、今からこっちの友達に会ってきていい?」

「いいよ。…2時間後にここに集合ね。」

「はーい!」

 

………

 

「うらら♪うっらら~♪うっ♪うらら♪うっらら~♪う…?」

 

地元の友達の会話を終え、上機嫌に歩いてハルウララの足が止まる。どこからか声が聞こえてきたからだ。

 

「……も…限…か…」

「???」

 

そして、声が聞こえてきた方へと足を進めると…1人のウマ娘が泣いていた。そのウマ娘はナムラコクオー…先程のレースで競った相手だ。

 

「コクオーさん?」

「ー!ハルウララか。私を笑いに来たのか?」ゴシゴシ

 

慌てて涙を拭うものの、真っ赤なその顔は誰が見ても泣いていたのは明らかだった。

 

「違うよ!えーと…」

「…すまないな。君がそんな娘ではないのは分かっている。…君はケガをしたことはあるか?」

「ううん、無いよ。とれーなーやみんなにも言われたけど私ってガンジョーな体らしいの!」

「…羨ましいよ。『無事これ名ウマ娘』って言葉は知っている?」

「あぅ…ごめんなさい。知らないから後でキングちゃんに聞いてみる…」

「…ハルウララ。私は…悔しかった。目標にしていたレース中にケガをして、復帰してもケガをして…そして『本格化』が終わってしまった。」

「…あれ?『ほんかくか』が終わったらレースって出れないんじゃ…」

「中央だとそうだ、だが私は諦めることができなかった。だからトレセン学園を退学して…地方へと移籍した。…そしてまたケガをして、どんどん周りが成長していった。」

「…ごめんね。コクオーさんの辛さはウララには分からないよ。」

「それでいい…これからも頑張ってくれハルウララ。」

「でも!今日コクオーさんと走ったことは忘れないよ!キングちゃんが言ってたの!『しょーしゃにははいしゃのおもいを背負う責任がある!』って!だから…えーと…うーん…」

「…フッ、フフフフ!」

「コクオーさん?ごめんね、いい言葉が出てこなくて…」

「大丈夫、君の想いは伝わってるよ。」

「うん!やっと笑顔になったね!」

「…あ。」

 

ナムラコクオーは自身が笑ったことに気づく。そして、立ち上がりそのまま歩きだした。

 

「ありがとうハルウララ。」

「ウララって呼んでよ!またレースした時はよろしくねコクオーちゃん!」

「ーー!!あぁ、ウララ。またね。」

「うん、バイバイ!!…あ、私も早く行かないと!」ダッダッダッ

 

ハルウララもその場から走りだした。

 

ーーー

 

「…ハハハ、まさか退学した学園の娘から元気を貰うとは複雑だな。」

「…おい。」

「ーーーナリタブライアン!?なぜ君が…」

「重賞レースだ。学園の関係者くらいいる。」

「…そうなんだ。初めまして、私は…」

「学園にいて、レースをした相手くらい覚えているぞ…ナムラコクオー。」

「…え?」

「トゥインクルで…今も走っていたのか。」

「…うん。でも、次にケガをしたら完全に引退だ。重賞ウマ娘とはいえ、退学して地方にまで移籍した私が今さらドリームになんて…」

「…そうか。その後はどうするつもりだ?」

「ここで過ごすよ。中央の時と比べれば少ないけど…応援してくれるファンがいる。だから…」

「…それはお前の本心か?」

「…」

「私はもう行く。…じゃあな。」

 

ナリタブライアンはそう言うとさっさと去ってしまった。そしてナムラコクオーは、その場でまた長時間立ち続けた。

 

ーーー

 

ハルウララは数分の遅れはありながらもコハルと合流し、トレセン学園へと戻るバスに乗っていた。そして、疲労のためかハルウララはそのまま眠ってしまった。

 

「キングちゃん…Zzz…ちゃんと…Zzz…歯は磨いたよ…Zzz…」すーすー

「本当によく頑張ったねウララ…!?」

 

プル…ピッ

 

コハルの携帯が鳴る。ハルウララを起こさないよう、ワンコールでその電話へと出て席を離れる。

 

「はい、中央トレセン学園の…え?ウララをまた中央のレースへ?しかもまた重賞?」

 

ハルウララ、中央出走決定。




ナムラコクオー…1991年生まれの黒鹿毛の牡馬。主な勝利はNHK杯(当時のG2。後のNHKマイル)、ラジオたんぱ杯(当時のG3。後のホープフルS)、シンザン記念(G3)、プロキオンS(G3)、黒潮スプリンターズC(地方重賞)、建依別賞(地方重賞)。名前の元ネタは冠名+北斗の拳の『黒王号』から。ナリタブライアンと同期で特に東京優駿では2番人気に推されるも途中のケガにより6着、2年もの休養を挟むことになった。その後も復帰とケガを繰り返し、高知へと移籍。さらに6年間、現役を続けた。引退後は種牡馬にはなれず、余生を高知で過ごした。

ーーー
▼登場人物にナムラコクオーが追記されました。


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第57話 貴公子の夏休みメモ

どうも、法事によりフェブラリーSが見れないことが確定した作者です。…リアルタイムで見たかったですね。今回、私が応援するのは『オーヴェルニュ』…というよりは福永騎手です。キングヘイロー、エイシンプレストン、シーザリオ、ジャスタウェイ、コントレイルなど…数々の名馬で勝ってきた彼の最後のレースを見届けたいと思います。

勝ったのはレモンポップ。オーヴェルニュ、そして福永騎手…お疲れ様でした!リメイクでのラスト騎乗、頑張ってください!

…ハルウララの後編?それは次回で…どうぞ!


7月18日

・夏合宿がスタート

 

・私とトレーナー君の下着を盗んだ犯人(お姉ちゃん)が発覚

→持っていた全ての下着を没収した

 

ーーー

 

7月26日

・アメリカへと移動

 

・トレーナー君の元担当ウマ娘であったタイキブリザード君と出会う

→愛人宣言には度肝を抜いた

 

タイキブリザード君の家にてトレーナー君が撃たれたりしたが…特に問題無し。ここでのバ場に慣れるため明日はトレーニング場を走るとしよう。

 

ーーー

 

8月2日

・サトラガレース場で行われた『ホイットニーH』に出走

→出走直前にジャングルポケット君より折り紙で折られた『銀の狸』を貰った。『騙しあえ』のメッセージを元にウォーミングアップにてあえて動きを重くした。結果、目立つことはなく出走

 

→お姉ちゃんが電話により緊張をほぐしてもらった。しかし…トレーナー君の前尻尾で尻尾ハグか…うーん…ありかも

 

→メダグリアドーロ君、ヴォルポニ君、ノーザンロック君たちから最後の直線で抜け出し勝利した

 

 

・野次を飛ばした観客にウォーエンブレム君がキレて暴走、それをトレーナー君が『デビルジュピター』と『シュンミンアカツキ』の『ウマ人』となり取り抑えた

 

もともと予定していたタイキブリザード君を始め、亡命によりウォーエンブレム君、(+イージーゴア君、ペイザバトラー君、)と共に帰国することに。日本語を話せるのはタイキブリザード君とペイザバトラー君のみだったが…イージーゴア君が飛行機にいる数時間でマスターした。

 

ーーー

 

8月6日

・合宿所へと帰ってから初の練習、砂浜でのスタミナトレーニングを行った

 

・お姉ちゃんがソース焼きそばを焼いていた…普通に美味しかった

 

・お姉ちゃんがウォーエンブレム君とピルサドスキー君を捕獲していた

→凄いな…

 

・お姉ちゃんがトランクスを履いていた

→このムッツリめ!

 

・お姉ちゃんに『デサイレン』と名乗ったナニカが憑いた

→お姉ちゃんに…許さない!

 

…帰国後、私の調子がすこぶる悪い。特に最後のスパートを切った後の伸びが悪い。何が原因かが不明で…トレーナー君の顔が青い。それはそうと、ユキノビジン君とゴールドシチー君の『因子』を入手した。後日に合成を行おう。

 

ーーー

 

8月7日

・デサイレンによる謎の力でレースが行われた

→最後の直線で伸びが出ずにマーベラスサンデー君に敗北

 

・レース後のお姉ちゃんが怖かった…でも助けてくれてありがとう

 

今回のことで色々と考えることが多い。呼ばれたメンバーの法則、不調の原因…そして入手したデサイレン君の『因子』…どうしようかこれ?

 

ーーー

 

8月10日

・ウララ君が高知のレースに出走するとのこと

→『ハルヒカゲ』の実験を行った

 

結果は『シュンミンアカツキ』程ではなかったものの強いパワーがある『合成因子』であった。…ダート適性があったのを知れたのは大きいと思う。ただ…トレーナー君がウララ君のトレーナーと楽しそうに電話で話しているのが気に入らない。

 

ーーー

 

8月17日

・イージーゴア君より『因子』を抜く実験の依頼を受ける

→断ろうとしたもののデサイレン…いや、サンデーサイレンス君自身に興味が湧き承諾

 

→サンデーサイレンス君への詳細説明はトレーナー君へと丸投げした

 

 

・アグネスワールド君の開拓したコースで併走トレーニングを行った

→やはり、最後が伸びない。お姉ちゃんにも負けるレベル…あれ?お姉ちゃんってダート適性あったっけ?

 

 

・トレーナー君より私の好きにしろ、との指示をもらった

 

トレーナー君からかなり焦りが見える。やはり、私の調子が戻らないからか…うーん…

 

ーーー

 

8月18日

・トレーナー君とデートした

 

ーーー

 

8月19日

・トレーナー君はいない

→チームに入るウマ娘に会うために学園に戻るそうだ

 

とりあえず…サンデーサイレンス君の『因子』を使い、視認出来る装置を作った。夕方には戻ってきたトレーナー君とご飯を食べた。

 

ーーー

 

8月20日

・トレーナー君はいない

→サンデーサイレンス君とジャンポケ君に会いに病院にいくそうだ

 

ワールド君と共に併走トレーニングを行った。私の調子は戻らない。今日はお姉ちゃんとご飯を食べた。

 

ーーー

 

8月21日

・トレーナー君はいない

→ブリザード君と共に学園へと戻るとのこと。ひどく疲れた顔をしている。

 

今日は新たな『合成因子』を作成した。ユキノビジン君がN極の『因子』だった。………。

 

ーーー

 

8月22日

・トレーナー君に作成した『合成因子』で『ウマ人』になってもらい実験を行った

→怪しい色だった『クリスタルディネベ』のデータ収集も問題なく行えた。

 

久々にトレーナー君に会えた。どうやら月末までは予定は決まっているらしい。明日は私のために使ってくれるとのこと。

 

ーーー

 

8月23日

・『ウマ人』となったトレーナー君とモルモット団(お姉ちゃん命名)を『アナザー』にして特別レースを行った

→『アンステーブル』になっていたブライト君に差しきられ、『クリスタルディネベ』は敗北した。

 

→乱入してきたオグリキャップ君とタマモクロス君の『因子』を手に入れた

 

・レース後に眠ったトレーナー君を運ぼうとすると何故かおじいちゃんがいた

 

→フラワー君を待っている間に昔の私とお姉ちゃんのことをトレーナー君へ喋っていたらしい…恥ずかしいな。フラワー君にオモチャをあげると帰ってしまった。

 

・イージーゴア君の『因子』を抜く実験を行った

→ほぼ100%抜いたはずだが衰弱したような様子はない。これがアメリカ最強と呼ばれているからか?と思ったが…単なるやせ我慢だったのこと。すぐに眠った。

 

 

特別レースを行ったり、おじいちゃんが来たり、実験をしたりと濃い1日だった。そういえばデサイレンスコープが見つからないな…どこにしまったのだろうか?お姉ちゃんに探すのを手伝ってもらおう。

 

ーーー

 

8月24日

・今日は休みだがトレーナー君がいない

→ウララ君のレースを見に高知に行くとのこと…私も誘って欲しかった

 

→レースは勝利したらしい

 

今日はお姉ちゃんと過ごした。夏休みの課題は既に終わっており、特に何かをしたわけでもないが…気づけば夕方になっていた。戻ったトレーナー君からお土産(鰹のたたき)があったためブリザード君も加えて一緒に食べた。

 

ーーー

 

8月25日

・ワールド君のコースにてワールド君、ウララ君、トレーナー君と併走トレーニングを行った

→トレーナー君は『ハルヒカゲ』の『ウマ人』で行った。

 

ウララ君の成長に驚きを隠せない。次は『エルムS』に出走するらしいが…あの速さなら本当に勝てるかもしれない。…そして、その成長が実に興味深い。

 

ーーー

 

8月26日

・トレーナー君はいない

→チームに入るウマ娘に会いに学園へと戻るらしい。

 

この前の特別レースのデータを整理した。…今日は1人でご飯だ。いや、作ってくれたブリザード君が近くにいるけどね!

 

ーーー

 

8月27日

・トレーナー君より足のマッサージを受けた

→トレーナー君の顔は険しい。やはり…私の調子が戻らないからだろう。

 

・フラワー君が学園に戻るらしくお菓子の差し入れをもらった

→紅茶に睡眠薬を入れ、トレーナー君には眠ってもらった。今日は私のための日だから問題ない。

 

ここ最近トレーナー君は働きすぎだ。いつ休んでいるのか不安になる。担当ウマ娘を不安にさせるなんて…いつもならそんなことくらいすぐに気づける筈だが…本当に大丈夫だろうか?

 

ーーー

 

8月28日

・今日は芝コースでトレーナー君と併走トレーニングを行った

→前よりに踏む力が上がったからか走りやすくなっているのに…やはり、最後が全く伸びない。

 

トレーナー君が険しい顔でブツブツ何かを言いながら映像を見ていた。…ちょっと怖いと感じた。それはそうとイージーゴア君がもう普通に動いていた。

 

ーーー

 

8月29日

・今日はトレーナー君がいない

→サンデーサイレンス君に会うために病院へ行くとのこと

 

今日は1日眠っていたようで気づけば夕方になっていた。起きると枕元にお姉ちゃんからスポーツドリンクの差し入れがあったのでありがたく飲んでおく。トレーナー君が戻ってきたため一緒にご飯を食べた。

 

ーーー

 

8月30日

・『合成因子』の実験を行った

→残念ながら新たなN極の『因子』は無かった

 

今日はお姉ちゃんもいた。ほとんどの生徒が帰って暇だ、と嘆いていた…実験に協力してくれるのはいいけど少し黙ってほしい。というか、トレーナー君にくっつくな!

 

ーーー

 

8月31日

・夏休み最終日、ワールド君のコースでイージーゴア君、ワールド君と併走トレーニングを行った

→お姉ちゃんが乱入し、トレーナーを気絶させた。とはいえ、働きづめだったためそのままトレーナー君をお姉ちゃんに任せた。

 

→お姉ちゃんが私の肩に電気を流す…調子が戻った。ん?

 

・トレーニングが終わり、トレーナー君を探していたら…ブリザード君の膝枕…いや、腿枕で眠っていた

 

・起きた後、バスに乗り合宿所を後にした

 

トレーナー君は本当にここ最近は忙しそうだ。何か私に出来ることは「お姉ちゃん?」

 

ーーー

 

「タ、タキオンちゃん!?ど、どうしたの?」

 

声をかけられたアグネスフライトは慌てて日記を閉じ、アグネスタキオンへと顔を向けた。

 

「いや、約束していた実験の時間なのだが…一体何を隠したのだい?」

「その…夏合宿の出来事をまとめていたの。」

「ほうほう…『タキオンちゃん観察日記Vol.8』。ふむふむ…私の行動やら心情やら記録しているようだねえ。ツッコミどころは色々あるが…何でお姉ちゃんがアメリカでの私を知ってるんだい?」ペラッ

「あっ、いつの間に!その…ブリザードさんに聞いたの。」

「他にもお姉ちゃんがいない時の行動も記録されているようだが?」

「ピルちゃんのSPを1人、借りていて…何でもピルちゃんを捕まえてくれたお礼ってことで…」

「…お姉ちゃん、正座。」

「え?」

「せ・い・ざ!」

「…はい。」

 

アグネスフライトが床へと正座する。

 

ガチャ、ガチャ、ドシン

 

それと同時にアグネスタキオンが手首と足首に手錠をはめ、重石を膝へと乗せる。

 

「え?」

「全く…私が観察するのは好きだがされるのは嫌なんだよ。」

「タ、タキオンちゃん?」

「ちょうど今、スズカ君の機能美を目標に開発している『胸が小さくなる薬』のサンプルを持っていてね…観察させてもらうよ?」グイッ

「んぐ!」

 

ゴクン

 

そのまま、試験管をアグネスフライトの口へと突っ込んだ。飲み込んだのを確認したと同時にアグネスフライトの服をめくり、口枷をはめた。

 

「ん!?んー!んんーー!!」

「ほほお…実にいい胸だ。私よりちょっと大きいくらいかな…では、実験スタートだ!」もみっ

「んんん!?」

 

妹に胸を揉まれ、顔が真っ赤になる姉。しかし、どれだけ体を動かそうとも頭を掴まれているため抵抗にはならず、妹に観察を続けられる。そして、薬の効果が表れるまで姉はその状況を耐え続け…

 

「タキオンいるか…あ。」

「ト、トレーナー君!?」

「ん、んんん…ああああ!!!」プルプル

 

当然ソウジが部屋へと入ってくる。結果…

 

「い、嫌ぁぁーー!!」ゲシッ

「ごえっ!」バコン

「トレーナー君!?」

 

アグネスフライトが激しく暴れ、膝に乗っていた重石が扉を貫通し、ソウジのお腹へと当たる。そして、ソウジはそのまま後ろの壁へと叩きつけられた。

 

「トレーナー君!!大丈夫かい?」

「あああ…見られた。ソウジさんに私のおっぱい…見られた…」プルプル

「お姉ちゃん!そんなことどうでもいいから!トレーナー君!しっかりしたまえ!」

「…いや、大丈夫だから。扉、直さないとな…」ガクガク

「大丈夫じゃないだろ!あー、もう!お姉ちゃん…はダメか。カフェ!デジタル君!スカーレット君!誰でもいいから早く来てくれ!!」

 

騒ぎに駆けつけたキタサンブラックやバンブーメモリーらによりソウジは保健室へ、悶えるアグネスフライト(貧乳)はアグネスワールドにより自分の部屋へと運ばれた。その後、ソウジは20分後には完全に回復し壊れた扉の修理へ、アグネスタキオンには反省文10枚の罰が与えられた。ちなみにアグネスフライトの貧乳状態は3日も続き、走法に思いきり影響が出た他、薬からドーピングに引っかかる成分が検出され、さらにサイレンススズカ、マンハッタンカフェ、タイキブリザード達からのもの凄い圧により、この実験は中止となった。




▼合成因子第三十八号『ハルヒカゲ』が更新されました


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第58話 とある星の話をしよう2 後編

ハルウララ、27歳の誕生日おめでとう!
今年も元気で過ごしてください!私も27歳…新しい職場が不安だな…。


昨日のドバイのレースをみましたか?

最初のレースで応援していた『バスラットレオン』が見事に勝利!『ソングライン』はまさかの10着。ついにゴルシの15法則がくずれましたね…勝手に私が呼んでるだけでしたが。

2つ目の長距離は『エヒト』を応援してましたが…『シルヴァーソニック』が勝利!日本馬が2勝!

3つ目は阪神レース場で私の推し馬(バリアントバイオ)に勝ち、そのままG1を勝利した『デルマソトガケ』を応援。…3着でした。

4つ目は福永騎手の『リメイク』によるラストラン…3着。お疲れ様でした。後、柴田騎手がいましておっ?珍しい?、って調べてみると12年ぶりの海外だったようで『リュウノユキナ』での6着…お疲れ様でした!

最後はメインもメイン!世界最高峰のダートG1『サウジカップ』!私は『クラウンプライド』を応援していたのですが5着…まさか初ダートの『パンサラッサ』が逃げ勝つというとんでもない結果に!…これで13億を手に入れたため獲得賞金がキタサンブラックを追い抜き、アーモンドアイに次ぐ2位という…賞金もえげつないレースでした。


…では、ハルウララの後編をどうぞ。


『元・未勝利の星』ハルウララ。彼女は先々月、高知の重賞レースである『建依別賞』をナムラコクオーとの接戦に勝利。夏合宿の間にも高知の通常レースを2連勝した。そして、今日…

 

………

 

『さぁ、札幌レース場で始まります今日のメインレース『エルムステークス』!

快晴、バ場状態も良い状態です。

今回はどんなレースとなるのでしょうか?』

『休養明けのアドマイヤドン、芝ダート両刀のイーグルカフェ、去年の勝者プリエミリンス、高知からの挑戦者ハルウララなどと豪華なメンバーです。』

『各ウマ娘たちがパドックへと入っていきま…す?』

 

ザワザワザワザワ

 

『エルムS』に出走するウマ娘たちが地下バ道から現れた。そして…観客の目線は1人のウマ娘へと集中する。

 

「ハルウララ…ケガでもしたのか?」

「おぉ!カッコいいなアレ!」

「何なんだ一体…」

 

「…」

 

そのウマ娘はハルウララ。彼女は何時もの勝負服に…左目を隠すような赤い布を巻いていたのだ。

 

ーーー

 

時は数時間前、ハルウララとコハルは最後のミーティングをしていた。

 

「いい、ウララ。105秒… 初めてのコースだけど…そのタイムでゴールしたらいいから。」

「うん!頭で数えながらその時間にゴールするように走る…だったよね?」

「そう。他の娘のペースに惑われないように。」

「オッケー!チューオーのジューショーレース勝ってくるね…コクオーちゃんの想いを背負って!」

「…それだけウララの中で印象に残ったのね。」

 

コハルより笑顔で送られたハルウララは部屋を出て、地下バ道へと向かった。

 

………

 

一方、アドマイヤドンとニヘイも最後のミーティングをしていた。

 

「トレーナーさん!7ヶ月ぶりのレースですが何かありますか?」

「何もない。今回、お前が負けることはあり得ない。むしろ、どれくらいの圧勝を見せるか期待しているくらいだ。」

「本当ですか!?…じゃあ、じゃあ!10バ身以上の大差で勝てたら有マ記念に出走してもいいですか?」

「有…!?お前な…!」

「…ダメでしょうか?」

「いいだろう…ただし、口に出した以上は達成してこい。出来なければ地獄を見せる。それでもやるのか?」

「やりますよ!…ベガ姉とまた走るために!」

 

「…ドン。」

 

「でアヤド、お前は今日はどう走るつもりだ?」

「大差をつけるために…最終コーナーで一気にスパートをかけて後続を突き離します!」

「…そうか。」

「それだけですか?」

「…今回はお前の復帰戦だ。それで負けないと言うなら俺からは何もない。」

「はい!では行ってきます!ベガ姉、見ててね!」

「…」

 

頭を抱えたニヘイを余所にアドマイヤドンも地下バ道へと向かう。そんなニヘイにアドマイヤベガがお茶を渡した。

 

「…ありがとうアヤベ。」ゴクゴク

「…別に。それでドンの話は本気?」

「あぁ、あれだけの大口を叩ける実力はある…本当に出来たなら有マへ申請する気は満々だ。」

「…そう。じゃあ、失敗したら本当に地獄を見せるの?」

「あぁ、本気だ。…リンカの枠を取ろうとしているからな。」

「…」

「安心しろ。アイツが泣こうが喚こうが…さらに強いウマ娘にはするさ。まぁ、お前はドーンと構えて応援してろ…少なくともアイツが今回負けることはない。」

「…分かった。もしもの話だけど…あの娘に手加減出来る?」

「聞くまでもないことだが答えてやる…無理だな。そんな俺を止めるか?」

「…しない。こればかりはあの娘の自業自得。」

「ならばよし!んじゃ、さっさと俺らも移動するか。」

 

ーーー

 

「…え?ウララちゃん?その前掛けは…」

「あっ!ドンちゃんだ!今日はよろしくね~♪」

「うん、よろしく♪それで…その左目を隠してるのって何?」

「これはね、コクオーちゃんがしていたのを真似したの!そしたらコクオーちゃんが後押ししてくれて、さらにパワーアップしたよ!」

「プラシーボか。でも…だからといって手加減はしないよ?」

「もちろん!」

「…圧倒的に勝って、今年こそ有マに出るんだ!…よし、先に向かうね!」パンッ

 

アドマイヤドンは自身の頬を軽く叩き、地下バ道を通り抜けた。

 

「有マ記念か…タキオンちゃんも出るんだろな…私もタキオンちゃんと一緒に走りたいな…よし!」

 

ーーー

 

場所は戻って札幌レース場のパドック。

 

『え…?えーと、2番人気のハルウララはどうしてあのような状態に?』

『あれはハルウララ陣営より出されました勝負服変更についての申請が承認されたからですね。

前々回と前回はあの状態で出走していましたよ。』

『前々回!?

まさか…前の重賞から2回も出走していたのですか!?』

『えぇ、中央ですと考えられないローテーションですが…それでも問題のない頑丈な身体がハルウララの強みでもあるかと。』

『そうでしたか、失礼しました。

今回のゲス…ンン!

地方より参戦してきたハルウララ…どんな走りを見せてくれるか注目です!

しかし…アレは走れるのでしょうか?』

『あえて片目にすることで前への集中力を高める効果はありますね。

ライスシャワー、タニノギムレットなど活躍したウマ娘がいるのも事実です。

ですが視界を狭めるわけですから…当然デメリットでもありますね。』

『…なるほど。

では他のウマ娘もそろそろ…1番人気のアドマイヤドンはどうでしょうか?』

『いつもよりもややテンションが高くみえますね。

しかし、レースの走りに影響はないと思われます。

前走と比べて体の仕上がりも非常に良く、人気通りの期待を持てるかと。』

『つまりはかなり好印象だということですね。

では、続いてはイーグルカフェについて…』

 

放送席での解説がしばらく続き…ついに出走の時刻となった。

 

ーーー

 

各ウマ娘たちがゲートへ向かっていく。そして…

 

『14人のウマ娘全員がゲートに収まりスタートしました!

バラついたスタートですが…スマートボーイ、シルバーサーベル、外からタニノゴードンらの先頭争い!

そして、その集団の後ろにプリエミネンス、並んで外側にハルウララ!

中段にアドマイヤドン、そのすぐ後ろにイーグルカフェが続いて第1コーナーをカーブする!』

 

ハルウララは見事なスタートを切り、先行集団の大外へとついていた。

 

『向こう正面に入り、ここでの先頭スマートボーイ…とここでハルウララ!?

ハルウララがいきなり先頭へと並んできた!』

 

「ハルウララ落ち着いて!最後まで持たないよ!」

「まだ距離はかなりあるよ!!」

 

そしてカーブと同時にペースを大きく上げて先頭へと入る。

 

『3番手にタニノゴードンがあがってきており、プリエネミンスが外へと回る。

そしてトシザボスとアドマイヤドンが外からじっくりと上がってきています!

イーグルカフェは後方3番手!

いよいよ第4コーナーに入ります!

先頭は…まだハルウララだ!

その差は5バ身ほど!

このまま行くのか残り400!』

 

「これ…もしかして…」

「行けっ!ハルウララ!」

「まだだ!差しきれアドマイヤドン!!」

 

そして、そのままハルウララだけが先に直線へと入る。

 

『先頭はハルウララ!

少し苦しそうだが、垂れる気配は無い!

このまま行くのか!

ここで、後続も直線へと入る!

イーグルカフェはまだ集団の後ろ!

トシザボス、タニノゴードン…そしてアドマイヤドン!

アドマイヤドンが一気にハルウララへと迫る!

そして、一気にかわしアドマイヤドン先頭に変わり残り100!

ハルウララ、負けじと粘るが差が広がっていく!

5バ身差が広がりアドマイヤドン1着ゴールイン!

ハルウララは2着!

3番争いはトシザボスかタニノゴードンか!』

 

パチパチパチパチ

 

「見事だアドマイヤドン!!」

「ウララちゃん!2着おめでとう!」

 

序盤から仕掛けたハルウララだったが…結果は2着であった。そして掲示板をみたアドマイヤドンの顔が青くなり、それをニヘイが圧のある笑顔でみていた。

 

ーーー

 

ウイニングライブが終わったハルウララにコハルが慌てて駆け寄ってくる。

 

「ウララ!足は大丈夫?違和感あるところはない?」

「トレーナー?大丈夫だよ!それに私の体ってとぉてもガンジョーだし…時間通りに走れていたでしょ?」

「…まさか、前で走るとは思ってなかったから…2着おめでとう!」

「ありがとう!…ねぇ、トレーナー。ウララね、走りたいレースが出来たの!」

「何々?盛岡のマイルCS?大井のJBCスプリント?」

「ドンちゃんも言ってた有マ記念!そこでタキオンちゃんと走りたいの!」

「あ、あああ有マ記念!?ウララ…本気?」

「うん!チューオーのジューショー勝てたら考えて欲しいな♪」

「えっと…その…うん…」

「トレーナー?」

「ウ、ウララ…2着になれたし、好きなの食べてもいいよ。どこか行きたいところある?今から行こうか。」

「本当!?じゃあ、じゃあ…にんじんハンバーグが食べたい!」

「うん、1番凄いのを食べに行こうか。」

「わーい♪トレーナー大好き♪」ダキッ

「その後は検査だよ、それじゃあ待ってるから着替えてらっしゃい。」

「はーい!にんじん♪ハンバーグ♪にんじん♪ハンバーグ♪」

 

「…ウララ。」

 

嬉しそうに控え室に戻るハルウララを余所にコハルは頭を抱えた。その後、ハルウララと共ににんじんハンバーグを食べ、検査を行ったところ異常は無く、新たなレースプランを練ることになった。

 

現在のハルウララの成績

総合:94戦10勝(10-5-4-75)

今期:15戦10勝(10-1-0-4)




明日から連日で投稿します。


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第59話 異次元より現れし密林 前編

やぁみんな!私だ!今さらだがアプリ2周年おめでとう!そして、公式が私に追いついたみたいだ!ってことだから彼女について書いてみたぞ!どうぞ!


夏休みが終わり…ついにジャングルポケットは退院出来ることとなった。しかし足はギプスで固定されており、松葉杖無しで歩くことは出来ない状態である。

 

「お世話になりました…」

「まだ完治ではありませんので…十分に気をつけてください。」

「ジャンポケ…慌てる必要はない、ゆっくりと歩け。無理だと思ったらすぐに言え。」

「ありがとうエアグルーヴ。」

 

エアグルーヴに見守られる中、ジャングルポケットはニヘイの待つ車までゆっくりと歩いていく。

 

ーーー

 

トレセン学園は今日も生徒たちが己を鍛えるべく練習へ励んでおり、活気付いていた。そんな中、当然…ゴール板の前に謎のウマ娘が表れた。

 

「ーーしゃっ!俺の勝ち……???」

 

髪の右側に黒いヘアピンを3つ付けたそのウマ娘はゴール板を過ぎると同時に止まり辺りを見わたし始める。

 

「おい!タキオン!どこ行った!!」

 

そして、学園全体に響くほどの大声でアグネスタキオンの名を呼んだのだ。

 

………

 

突然ターフに現れた謎のウマ娘を預かることになったソウジはアグネスタキオンのいる研究室へと連れてきた。

 

「おや?彼女は誰だい?」

「あー、名前は…」

「ジャングルポケットって言ってんだろ!?」

「声がでけぇよ…」キーン

「…ん?ジャングルポケットと言ったかい?私たちの知っているジャンポケ君は今、ケガで入院中だが?」

「あぁん!?ピンピンしてんだろ?てか、さっきまで一緒に走っていただろ?」

「…幾つか質問をさせてくれ。君は私のことを知っているのか?」

「知ってるも何もお前はアグネスタキオンだろうが!」

「では、次の質問だが…」

 

………

 

「質問は以上だ…なるほど。君が私たちのことをある程度知っていることは分かったよ。」

「それでお前は俺のことを全然知らない…どうなってんだよ。」

「それはこちらの台詞なのだが…まずは君の話をまとめよう。君の名前はトレセン学園にいるジャングルポケット君。それで私と模擬レースをしていて、外からかわしたと思ったと同時に私が消えていた。それで私の名を呼んだと。」

「その通りだ!…で、コイツは誰だ?」

「コイツって…」

「私のトレーナー君だが?」

「トレーナー!?お前に?てか、お前デビューしてたのかよ!」

「…ジャンポケ君、声が大きい。」キーン

「そのジャンポケってのをやめろ。いつも通りにポッケって呼べ。」

「あー、タキオン。コイツの『因子』を貰ったらどうだ?とりあえず何か分かるだろ。」

「『因子』?」

「この腕輪を付けてくれたまえ。」

「ん…こうか?」

 

ピッ、ピッ、ピー!

 

ジャングルポケットと名乗ったウマ娘の『因子』が回収され、アグネスタキオンが腕輪を受け取り、PCの電源を付けて、作業を始める。そして、5分ほどが経過し…

 

「…驚いたよポッケ君。君とジャングルポケットのデータが完全に一致した。」

「そりゃそうだろ…いや?そうなのか?んんん?」

「お前とフライトみたいに同じ『因子』で出来てるとかじゃなくてか?」

「あぁ、同じ『因子』で出来ているお姉ちゃんと私でさえ多少の違いはあったさ。しかし、彼女には全くそれが無かった…つまり、彼女は間違えなくジャングルポケットだということだ。」

「で、何で俺以外の奴らが変わったんだ?」

「ふぅん…今の話だけで推測出来るのはポッケ君。君はどうやら"平行世界"というものに来てしまったようだね。」

「"平行世界"だ?さっきも言ってたがこの学園にも俺がいるってのかよ?」

「あぁ、…ダービーとジャパンCを制覇した君がいる。」

「…マジか!俺、そんなに大活躍したのか!会ってみてぇな………じゃねえ!!どうやったら帰れんだよ?俺…まさか一生このまま…」

「…出来るだけのことはしよう。諦めるのは全て終わってからにしたまえ。」

「…つまり、現状はどうしようもないってことか?」

「そうなるね。何せ私ですら想定出来ない状況だ。」

「…」

「…とりあえず、理事長に報告してくるわ。ジャングルポケット、お前も付いてきてくれ。タキオン、さっきのデータを紙に印刷しろ。」

「…分かった。」

「了解した。」

 

そして、ソウジたちは理事長室へと向かう。

 

ーーー

 

「驚愕ッ!ジャングルポケットが2人だと?」

「えぇ、タキオンが持っているデータから分析したところ、一致しておりました。…別の世界から来たかも、とタキオンも言っております。このまま学園で彼女を保護出来ませんかね…」

「承知した!たづな、すぐに彼女のため部屋や生活品の準備を!」

「はい、分かりました。」

「早っ!!…いやいや、理事長!何でこんなにあっさりと信じてくれるのですか?…いや、俺の所でもこういう人だったけど!?」

「ポッケ君、一先ずは安心出来たかね?」

「…あぁ、ありがとう。お前、本当にタキオンか?」

「変なこと言うね…」

「悪い、気味が悪いくらい俺に優しいから…」

「そちらの私はどうかは知らないが…さすがにこの状況で君で実験するほど酷くはないさ。」

「あー、そうだねー。たきおん、いいこだねー。」

「何だいトレーナー君、その棒読みは?またゴッホにされたいのかい?」

「なるほど、この狂った感じ…ちゃんとタキオンだな。」

「ポッケ君!?」

「しかし!準備には1日はかかる…それまではアグネスタキオンの研究室で過ごしてくれ!以上!」

 

ーーー

 

同時刻、ニヘイの運転する車は学園へと到着していた。

 

「じゃあ、ベロちゃん。アヤベと一緒にジャンポケを部屋まで連れていってくれ。」

「たわけ!今はエアグルーヴと呼べ!」

「ご、ごめんて…」

「別に私は気にしないのに…」

「他の奴らにはそう呼ばれたくないからな。そうだろ、ニヘイ?」

「ベロちゃん…」

「あのー、2人の世界に入るのは後にしてもらえます?外でアヤベとリンカが待ってるので…」

「…っ!んん!行くぞジャンポケ!」

「んん!俺はアヤドの様子を見てくるよ。チケゾーに任せてるから問題はないだろうけど…とりあえず、今日はこのままゆっくりと休んでくれ!」

 

そして、ジャングルポケットは車を下り…エアグルーヴとアドマイヤベガと共に、学園までゆっくりと歩く。リンカーンはジャングルポケットの荷物を持った。

 

………

 

「みんな、ありがとね。リンカ…それ、重くない?」

「かなり重いですね…中に何が入っているのですか?」

「折り紙。」

「折り紙!?」

「右の鞄はファンのみんながくれた分。左の鞄は私が入院中に折った分。」

「いや、ジャンポケさんが折った折り紙の方が倍くらい多いじゃないですか!」

「レース用とファンに送る用が一緒に入ってるから…あ!タキオン用に折ったのがあるのを思い出した!悪いけどタキオンの所に寄ってもらってもいい?」

「…分かったわ。」

「手短に頼むぞ。」

「私は先に軽い鞄をジャンポケさんの部屋に入れておきますね。そしたら重い鞄だけ持って合流しにいきます!」

「みんな、ありがとう!」

 

リンカーンが先に学園の方へと行くと、ジャングルポケットたちもまた、ゆっくりと進みだした。




▼登場人物にリンカーンが追記されました。


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第60話 異次元より現れし密林 後編

やぁ、私だ!昨日も投稿したが、ぶっちゃけ1話にまとめていても良かった気がしてるぜ!ハハハ…どうぞ!


アグネスタキオン、ソウジ、ジャングルポケット()は研究室へと戻り、紅茶をすすっていた。

 

「ん…こっちのお前はそんなに砂糖を入れないのな。」

「…俺が管理した結果だよ。」

「でないとご飯を作ってくれないとか言うからね…酷い話さ。私はたくさん入れたいのに。…さてと、これからどうするかね?」

「まぁ、俺はレースさえあれば別に…」

「しかし、このままだと公式大会には出れないぞ?」

「困ったな。それじゃあ"最強"になれない…」

「ならば私のモルモット6号になる、というのはどうかね?」

「ならねえよ…てか、もう5人もいるのかよ!」

 

そんな他愛もない会話をしていた3人だったが…

 

「タキオンいる?」

 

ジャングルポケットが訪ねてきたのだ。

 

『ー!』

 

「や、やぁ!元気そうだね。今日、退院だったのかな?」

「そうだよ。でもギプスはしばらく取れなくな…ん?その娘…」

「えーと、何の用だい?」

「あぁ、いい作品が出来たから君にプレゼントしたくてね。リンカ、鞄取って!」

「はいは~い!」

「えーと…あった!あった!これだよ!」

 

ジャングルポケットが取り出したのはアグネスタキオンのぱかプチ…を折り紙で再現したものだった。

 

「ハイヒールまで再現してるとは…」

「可愛いな…パンツはピンクか…」

「いやトレーナー君!?どこを見てるんだい!」

「タキオンの脳内を再現した。」

「失礼だな!」

「だが、今日はライトグリーンだぞ?」

「トレーナー君?何で君がそれを知っているんだ?」

「そのバージョンもありますよ。」

「何であるの!?」

「フライトさんが君のパンツのローテーションを教えてくれたからね。」

「あのムッツリめ…」

「最初は着脱可能なのを作ろうとしたよ?でも実際に作ると履き替える時に足が胴体と離れてしまうから…数でカバーした。」

 

次々とアグネスタキオンのぱかプチ(折り紙)を鞄から出すジャングルポケット。その中に1つだけアグネスタキオンじゃないものもあった。

 

「これは…トーセンジョーダンか?そういえばよく一緒にいたな。仲がいいのか?」

「まぁね♪あの娘、結構抜けてて可愛いんだ♪」

「…ジョーダンだ?お前…」

「あー、これはこれは!かなりエグいのを履かせているようだが?」

「似合うだろ?実際に履いてるかは知らんけど!」

「へー、どんな…痛っ!」ペチッ

「君は見るな!私のだけを見ろ!」

「確かにこれは脳内ピンクだな…納得。」

「でしょ?で、君は…」

「こ、こんなにも研究室には置けないよ!」

「大丈夫だよタキオン。ここに置くのはピンクだけだから。後はフライトさんの分だから明日には無くなってるはずだよ。」

「私のぱかプチをパンツで種類分けするのは止めてくれないか!………お姉ちゃんの分?」

「にしてもお前…凄いな!手先が器用なんだな!」

「えーと、君は…」

「用事は以上かね?」

「あ、あぁ…」

 

強引に話を遮ろうとアグネスタキオンはするがジャングルポケット()はそれを許さず大声を出す。

 

「俺、ジャングルポケットって言います!」

「ー!」キーン

「え?ええ?」キーン

 

衝撃の内容がジャングルポケットへと伝わった。

 

………

 

「"平行世界"ね…」

「お前が、こっちの世界の俺か。G1レースに勝ったんだよな?」

「まぁね。…詳しく知りたいかい?」

「いや、いい。最強への目標に何か影響が出そうだからな。」

「…」

「…」

 

「おい、タキオン。今度は何をした?」

「私が聞きたいくらいだよ…突然ターフに現れたらしくてね。」

「…"平行世界"…もしかして…あの娘がいる世界も…」

「アヤベさん?」

「…何でもない。」

 

「あんたのことは…ジャンポケ、でいいかい?」

「では、私はポッケ、と呼ぶよ。」

「ジャンポケ、俺の走り…見てくれないか?」

「いや、見るだけではなくて一緒に走ろうか!」

「ん?あんた…どうみても走れるような状態には見えないのだが…」

「心配ないよポッケ…体を借りるから!」

「は?何言ってんだ?」

 

「…またか。」

「ちゃんと整備済みさ!!」

 

アグネスタキオンはジャングルポケットとエアグルーヴに『中身を入れ替える首輪』を渡す。そして、首輪を付けたエアグルーヴに案内されジャングルポケット()はターフへと向かった。

 

ーーー

 

練習場ではウイニングチケットとアドマイヤドンが走っていた。

 

「…後、8セットだ。」

「ほらアヤド!ペースが落ちてるよ!もっと足を動かしていこー!」

「ひーん!助けてベガ姉…」

「…ほぉ、口を動かせる余裕はあるようだな…アヤド?」ボソッ

「ー!」ダッ

「おぉ!何か復活したぁ!」

「チケゾー、無駄口を叩くな。今のペースで黙って走れ。」

「はい!」ダッ

 

ひたすらに芝コースを周回するウイニングチケットとアドマイヤドン。ニヘイが常に目を光らせており、気を抜ける隙もなく、ウイニングチケットが元気に走る後ろでアドマイヤドンが泣きながら走ってる。それを見た周りのトレーナーやウマ娘たちはニヘイの厳しさに身震いした。

 

「トレーナー。」

「あ、ベ…エアグルーヴか。どうした?」

「少し模擬レースをしたくてな…1回で終わる。変わってもらってもいいか?」

「…分かった。チケゾー、アヤド…少し休憩だ!」

『はい!』ピタッ

「ところでその首輪って…」

「まだスイッチは入れていない…そろそろ押すぞ。」

 

そして…スイッチが入り、エアグルーヴとジャングルポケットの中身が入れ替わる。そして、ニヘイの目にジャングルポケットとジャングルポケット()が入ってきたため2人を交互に見ていた。

 

「…ジャンポケが2人?」

「え?トレーナーさん、ジャンポケならリンカの隣にいるよ?」

「…あぁ。しかし…」

「あんたは俺のことが分かるようだな…だが、俺はあんたが知ってる俺じゃねえ。」

「…頭がこんがらがりそうだ。」

「まっ、トレーナーはあんまり深く考えないでいいですから。模擬レースでこの娘と走るだけですから。」

「エア…じゃなかった。ジャンポケさん~、感謝です~」

「アヤド…中断となったからまた最初からな?」

「ひ、ひーん…」

「良かったじゃんアヤド!まだまだ練習出来るじゃん!」

「チケゾーさんのポジティブさが怖い…」

「休憩の間に足裏のツボを押すから2人とも裸足になってそこに座れ。」

 

直後、2つの絶叫が辺りに響いた。

 

………

 

ジャングルポケットとジャングルポケット()はアップを始めていた。

 

「ルールは2400mを1本、でいいかな?」

「あぁ!いつでもいいぜっ!」

 

2人がゲートへと収まる。

 

ガコン

 

『ー!』ダッ

 

ゲートが開かれ、飛び出す。同じ名前、同じ脚質、異なるのは体と経験…そんな2人が行うレースはずっと互いが並ぶ展開となっていた。そして…最後のコーナー…内を取ったジャングルポケット()が有利なのかやや前へと抜けてくる。

 

「しゃっ!このまま…押し切るぜ!!」

 

ダンッ

 

後続を離すべく、ここでジャングルポケット()が仕掛ける。

 

「…」

 

ダンッ

 

しかし、ジャングルポケットもここで仕掛けてくる。末脚勝負となった最後の直線…

 

「おらおらおらっ…なっ!」

「…甘いね。」

 

ジャングルポケットが差しきり、ゴールした。ジャングルポケット()は悔しさから数回、地団駄を踏んだ後にジャングルポケットへと顔を向ける。

 

「…ハハハ!流石はジャンポケ()だ!強ぇな!」

ポッケ()もとっても速かったよ。これでデビュー前とか信じられないよ。」

「…ならタキオンにも勝てるか?」

「無理だね。」

「即答かよ!…おぉ!?何か体が透けてる?」

「元の世界に帰れるんじゃないか?」

「それ以外考えたくねぇよ!…ありがとうな俺!」

「あぁ。また会おう…私!最後にプレゼントだ!そっちでも仲良くしてやってほしいね!」

「…っとと。」

 

ジャングルポケットから投げられた何かを掴むと同時にジャングルポケット()はターフから消えた。

 

………

 

「…帰れたみたいだなタキオン。」

「"平行世界"のデータを取りたかったのだが…残念だよ。」

「理事長に報告しないとな…ジャングルポケット!首輪を取ったら一緒に来てもらってもいいか?」

 

「…分かりました。」

 

ーーー

 

「失礼します。先ほど報告しました2人のジャングルポケットの件ですが…」

「ん?疑問?2人のジャングルポケットとは?」

「え?"平行世界"のジャングルポケットの保護のために部屋を用意するって…」

「んん?」

「あのー、ソウジトレーナー?先ほど貴方が報告したのはメダグリアドーロさんが近い内にトレセン学園に来る、とのことでしたが?」

「え?」

「既にイージーゴアさんから話を聞いていたので、準備は進めているとお答えしましたよ?」

「…そうでしたか。」

「困惑!働き過ぎか?体調管理は大丈夫か?」

「い、いえ!問題ありません、失礼しました!」

 

理事長室へと入ったソウジたちだったが、誰も2人目のジャングルポケットについては覚えていなかった。そして…気がつけばソウジとアグネスタキオンもそのことを忘れていた。

 

ーーー

 

「しゃっ!俺の勝ちだ!!…ん?」

 

「…ポッケさん…戻ってきましたね。」

「あぁ!実験は成功だよ!ポッケ君、お帰り!」

「はぁ?お前は何言ってんだ?…おい、いつの間に着替えた。」

「いや、本当に良かったよ!…このまま帰ってこないと思ったからねえ!」

「…お帰りなさい。」

「…ん?さっきから何の話だ。てか、真っ暗だな!」

「…ポッケさん、ゴールしたのと同時に……あなたは姿を消しました。」

「…え?」

「いやー、この『ウマソウル強化マシン』を君が消えたところから使用し続けて良かったよ!」

「…痕跡が残ってる場所を教えたのは…私です。あなたの魂と…繋がって…良かったです…」

 

マンハッタンカフェの話を聞きジャングルポケット()の顔が青くなる。

 

「痕跡…魂…まさか…そういうこと?うわあぁぁぁ!!俺、生きてるよな?生きてるよな?」ガクガク

「えぇ、…生きていますから。…おや、何か持ってますね?」

「ん…ジョーダンのぱかプチか?…折り紙で出来てる?」

「…すごい出来ですね。…誰が作ったのでしょうか?」

「そうだ!ポッケ君、消えた時の記憶とかあるかね?」

「あん?ンなもん…あれ?何か誰かとレースをしたような…」

「ほほぉ…興味深い。後で詳しく教えて欲しいね…他には何かあるかね?」

「んー、後はお前の脳内がピンクだとか…」

「どんな記憶!というか私が出てきたのかい!?…あぁ、興味と不安が入り雑じり聞くのが怖くなってきた。」

「…私は…興味が出てきました。」

「あー、走ったら思い出しそうだ!タキオン、カフェ、走ろうぜ!」

「…いえ、早く帰らないと…消灯時間が…」

「マジか!フジさんに迷惑かけちまう…今日は帰るわ!じゃあな!」ダッ

「では…私も…!!」ガシッ

「カフェ…この装置を運ぶの手伝ってくれよ~。手伝ってくれよ~」

「…知りません。」プイッ

「そんな~、これ運ぶの大変だったんだよ!協力してくれよ…カフェ?カフェ!!カフェ~!!!」

 

無事に栗東寮に戻ったジャングルポケットだったが…ぱかプチのスカートの中を見てしまい発狂…寮全体に響くほどの絶叫、からのトーセンジョーダンにスカート捲りを実行。結果、フジキセキから拳骨と1時間の説教を受け、トーセンジョーダンからドン引きされることに…なお、そのトーセンジョーダンのぱかプチは自室の机の上へと置かれた。



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第61話 華麗なる一族 VS メジロ家 VS アグネ…あ、別に傍観でいい?

今ある分だけでも毎日投稿します。…ぶっちゃけ、社台系のウマ娘たちが追加されたから2023年中には作品を書き終えたい。


「おじいちゃん?」

「ー!チヒロトレーナー!?何故ここに…?」

「おぉ!タキオンとソウジか!」

「まさか、復帰…」

「違う…アメリカの知り合いが秋のレースに日本から出走するウマ娘がもう1人いないかと聞かれてな。…ったく、俺は既に引退済みだというに。」

「アメリカの秋のレース…『ブリーダーズカップ』ですか?BCクラシックならタキオンが出走しますが…」

「トゥインクルじゃない、ドリームのBCスプリントだ。日本からの出走は既に2人決まっていたがもう1人登録出来るとのことで…心当たりのあったアイツに会いにな。」

「…ダイイチルビーですか?」

「違う。ルビー嬢ら元担当に俺はもう干渉はせんよ…正直フラワーちゃんにはまた会いたいけど。」

「最後で台無しですよ。ダイイチルビーかニシノフラワーじゃなければ誰ですか?」

「俺がドリームに推薦した奴だよ。」

 

ーーー

 

時はお昼休み、場所はトレセン学園の食堂…ニシノフラワーは1人のウマ娘を探していた。

 

「…」モグモグ

「あ、いました!ルビーさん!今、少しお時間よろしいでしょうか?」

「…フラワーさん?構いませんよ、どうされましたか?」

「実はチヒロトレ…」

「詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?」グイッ

「きゃっ!!」

「ー!失礼しました。チヒロ様がどうされましたか?」

「はい、実は先ほど学園内で見かけまして…」

「…学園内にチヒロ様が?」

「はい。どうして来たのかルビーさんなら知ってるかもと思いまして…」

「申し訳ござません…私も存じあげておりません。ですので…直接聞いてきましょう。フラワーさんが最後に見た場所はどちらでしょうか?」

「理事長室近くの廊下…」

「ありがとうございます…早速行って参ります。」シュン

「も、もういない…」

 

ダイイチルビーは一瞬で食堂を後にした。

 

ーーー

 

ダイイチルビーはその後すぐにチヒロの姿を発見したものの、側にはケイエスミラクルとダイタクヘリオスがいたため、物陰へと隠れて様子を見始めた。

 

「…」

 

「ドリームトロフィーリーグのBCスプリント?ま?アメリカでのレースとかまじ卍!」

「アメリカのレースか…」

「日本からはワールドと『キャット』が参加するからな…ミラクル、お前もどうだ?」

「嬉しい誘いですけど…何でおれなのですか?ルビーじゃダメなのですか?」

「いや、ルビー嬢は先月のフランスのレースに出走したばかりだし…引退した俺がでしゃばる訳にもいかんだろ。それでお前を選んだ理由だが…現在のドリームでの短距離部門でお前があのサクラバクシンオーに次ぐ成績だと聞いた。レースでのバ場の適正もあるが…これはトゥインクル時代のお前の目標でもあったからな…個人的にはお前に出走して勝って欲しいと思っている。」

「それはありがたい話ですけど…」

「参加するかしないか、今すぐとは…」

「出走したいです!アメリカまで連れていってください!」

 

ケイエスミラクルは迷わず答えた。

 

「…分かった。そう返事をしておこう。話は以上だ。」

「…チヒロトレーナー、ルビーはかなり貴方に会いたがっていましたよ。」

「それな!お嬢ってばチヒロッピがいなくなって1ヶ月はご飯食べるもつらたんだったし!」

「それは…」

 

「…お久しぶりですチヒロトレーナー。」

 

BCスプリントの出走の有無が終わり、ダイイチルビーに会うかどうかを議論して始めたチヒロたちの前にダイイチルビー本人が現れる。そして…

 

「ルビー!?」

「お嬢!?」

「ルビー嬢…!!」

「…会いたかったです。」ダキッ

 

そのままチヒロへと抱きついた。

 

………

 

ダイイチルビーを落ち着かせ、4人でベンチへと座り、話を再開した。なお、ダイイチルビーの尻尾はチヒロの右腕へと絡んでいる。

 

「チヒロッピ、うらやま…」

「ルビー嬢…どうやって俺が来てることを知ったんだ?」

「…ルビーで構いません。食堂でフラワーさんから教えていただきました。」

「あー、見られていたのか…」

「…何故トレーナーを辞められたのですか?」

「…前にも言ったが歳だよ。身体が付いてこれなくなったからな。後続のエリとは上手くやれてるか?」

「…彼女の用意するトレーニングメニューに問題ありません。毎日、実行しております。ですが…あなたとの過ごす時間こそが有意義だと感じます。」

「…」

「私たち『華麗なる一族』にとって貴方は必要不可欠なトレーナーです。もう一度私と契約をいえ…我が一族に来てもらえませんか?」

「いや、どっちも無理だからな?トレーナーは引退してるし、俺アグネスの婿養子だし。」

「…分かっています。…ですが貴方が心変わりするまで…私は待ち続けるつもりです。」

 

「ねぇミラクル。お嬢ってさ…」

「見ての通り、彼に完全にお熱だよ…」

「…ウチ、お嬢のあんな顔見たことない。」

「おれも初めて見た。」

 

「チヒロ様、私もアグネスに…!!」

 

「あら?チヒロ様ではございませんか?」

 

「ラモーヌ嬢!?」

「ラモーヌ様…」

 

ダイイチルビーの決意の言葉が止まる。目の前にメジロラモーヌが出てきたからだ。

 

「…ルビー様ったらチヒロ様に尻尾を巻きつけて…はしたないのでは?」

「ー!これは…その…」

「私も言えたものじゃありませんが。」グルグル

「ラモーヌ嬢!?」

「昔みたいにラモーヌでよろしいですわよ?」

 

そして、流れるようにチヒロの左腕に尻尾を巻きつけて隣へと座る。

 

「チヒロ様…来ているのであれば教えてくだされば良かったのに。」

「トレーナーを引退した以上はでしゃばるの良くないからな。で、サトリは?」

「はい。とても可愛い首輪を付けてメジロ家にいますわ♪」

「…お前、ちゃんとトレーニングは出来ているのか?」

「えぇ、メジロ家として大問題ですわ…また貴方に契約していただかないと。あぁ、ブライトの方は大丈夫です。今の担当トレーナーととっても良い関係ですので。」

「…」

「ラモーヌ様、大事なお話の途中ですので…」

「えぇ、ケイエスミラクル様がBCスプリントに出走する話でしたわよね?では、アメリカに行く際はメジロ家が自家用ジェット機を用意しましょう!」

「は?いや…お前は何でその話を知ってるんだよ?」

「私、メジロですので…」

「答えになってねぇよ!」

「…ダメです!チヒロ様は私のジェット機で行きますので!」

「…」

「…」

「痛い痛い!お前ら尻尾に力を込めるな!俺、もう若くねえから!」ギチギチ

 

「ミラクル。今更だけどチヒロッピって奥さんいたよね?」

「奥さんどころかお孫さんもいるよ。確かフライトさんとタキオンがそうだったはず。」

「ま?…マジやばくね?」

「…彼は令嬢を虜にしやすい人柄なのかもしれないね。」

 

『チヒロ様?どちらのジェット機の乗られるので?』

「だぁぁ!だから、俺はアメリカには行かねえっての!」

 

ここでチャイムが鳴ったため昼休みが終わり、この場も解散する…はずだったが、ダイイチルビーもメジロラモーヌも譲る気配はなかった。結局チヒロが折れ、行きはメジロラモーヌのジェット機、帰りはダイイチルビーのジェット機に乗ることで納得してもらったとのこと。



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第62話 個性派逃亡者師匠は尊い!…反論は受け付けるよ、出来るもんならね?

ゴールドシップ産駒G1馬ユーバーレーベンが引退か…産駒に期待したいですね。初年度は誰になるのでしょうか?本命ロードカナロア、対抗エピファネイヤ、穴キタサンブラック、大穴エフフォーリアと予想しておきましょう。…ゴールドシップだったら頭を坊主にします。

後はツインターボ師匠、欲しいですね。有償でチマチマ回してたら…その内来るとは思いますけど…欲しいですね。


アグネスタキオンの研究室に1人のウマ娘が訪ねてきた。そのウマ娘はツインターボ…その手にはどっしりとした箱があった。

 

「待たせたなタキオン!これはどこに置けばいい?」

「すまないが…私の側まで持ってきてくれるかい?えーと、この部品は奥の棚で…この薬品はトレーナー君に調合してもらうために計量器の側へ…」

「何度みても凄いところだな!」

「ハハハ…散らかっているだけだよ。この前、カフェのスペースにはみ出して怒られてしまったよ。」

「あ!後、この前の映像に言われた通りにテロップ入れといたぞ!ゆーえすびーを渡すからパソコンでみといて。」

「もう終わっていたのかい!仕事が早いよターボ君…」

「だって早くタキオンと走りたいもん!」

「…何て眩しいんだ。コホン、では整理が終わったらすぐに練習場に向かうから…もう少し待っていてくれるかね?」

「もちろん!」

 

ツインターボは笑顔でアグネスタキオンを待つ。

 

ーーー

 

ダートコースの練習場…ツインターボとアグネスタキオンが模擬レース前のアップを行っていた。

 

「よしっ!いつでもいいぞ!」

「ルールだが1800mでいいかね?」

「うん!1本勝負だぞ!」

「じゃあ2人ともゲートに入ってくれ。」

 

2人がゲートに収まり…ゲートが開かれた。

 

「ターボエンジン全開!!」ダッ

 

ツインターボが凄まじい勢いでアグネスタキオンとの差を開いていく。一方のアグネスタキオンはというと…

 

「…」ダッダッダッ

 

自身のペースで走っていった。

 

………

 

結果はアグネスタキオンの勝利に終わる。そしてツインターボは大文字で横になり、アグネスタキオンも水分補給を行っていた。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…ありがとなタキオン…」

「…私もいい練習になったが、こんなことでいいのかい?」

「うん!タキオンって今は日本最強じゃん!」

「トゥインクルシリーズでは、ね。」

「で、アメリカのでかいレースにも勝って…次は世界最強のレースに出るんだろ?」

「あぁ、そうなるね。」

「…ターボもいつかは絶対に最強になるんだ。だから、今は…タキオンの力を知れれば近づけるかも、ってネイチャが言ってたの。」

「…君は本当に眩しい娘だよ。」

「でもな…ターボ、本当はタキオンが怖いんだ。」

「怖い、か。詳しく教えてもらえるかね?」

「おい、タキオン!…悪いなツインターボ、無理に…」

「いや、いいよ。言うよ。タキオンってレースの時、前の方で走るよな?」

「"先行"の脚質だね。」

「でも…宝塚記念は…後ろの方でいても、最後には勝てた…」

「あれはお姉ちゃんを真似ただけ…」

「それだよ!ターボには絶対出来ないもん!他にもタキオンはダートも走れるし、何か研究していてめっちゃ賢いし…とにかく天才じゃん!最初に逃げるだけのターボとは違う世界にいるんじゃないかと思うもん!」

「安心しろツインターボ。トレーナーの俺でもそう思うから。」

「…怖くないの?」

「無いよ。だって俺、強いから。」

「???…どういう意味だねトレーナー君?」

「プッ…アハハ!自分で強いって…お前子供だな!」

「ツインターボ、君も強いよ。」

「本当か!?」

「怖い相手に戦いを挑める…なかなか出来ないことだ。これからもタキオンと走ってくれ。」

「うん!ありがとうな!」

「折角だ、このまま並走練習と行こうじゃないか…隠れている君たちもね?」

 

「ありゃりゃ…バレてたか。」

「3人固まっていたため目立ってしまったかと。」

「あはは…それはそうとターボとレースしてくれてありがとうね。」

 

出てきたのはマチカネタンホイザ、イクノディクタス、ナイスネイチャ…ツインターボとよくいるウマ娘たちだ。

 

「あぁ、そうだ…君たちの『因子』を貰ってもいいかね?」

「いや、タキオン…腕輪はここには無いぞ。」

「なら早く取ってきたまえトレーナー君。ついでに『ガッツザベスト』と『ハイオクタン』の『合成因子』…後は例の試作品も頼んだよ。」

「はいはい…」

 

ソウジは練習場を後にする。

 

「『ガッツザベスト』って前にレースに出てたウマ娘?」

「あのレースを見ていたのかい…すぐに分かるよ。」

「???」

 

15分後、ソウジがパンパンとなったリュックを背負い戻ってきた。

 

「で、タキオン。今日はどっちを飲めばいい?」

「『ガッツザベスト』だよ。ターボ君、君は大逃げ以外の走りをしてみたくはないかい?」

「大逃げ以外?んー、分かっていてもそれ以外の走りなんてターボは出来ないけど…」

 

「準備出来たぞ。」

 

「わわっ!『ガッツザベスト』さんが来た!?」

「いえ、先程の流れからしたソウジトレーナーの姿が変わったのかと。」

「え?これが特別レースのゲストの正体?」

「というかどうやって変わったの?」

 

驚く4人を余所にアグネスタキオンが説明を始めた。

 

「これこそが私が現在行っている実験…『合成因子』さ!」

「『合成因子』?」

「私たちウマ娘の体は人間と同様に細胞で構成されているが…他にも『因子』というものあるのだよ。」

「そのような情報は聞いたことがありませんが?」

「それはもちろん、私が発見したからね!」

「えぇ!?すごいね!タキオンさん博士だね!」

「本当?何か急に胡散臭くなってきたのだけど…」

「んん?それってソウジトレーナーの姿が変わったのと何の関係があるんだ?」

「んー、俺もずっとなってきたけど…ぶっちゃけ分からん。」

「それはそれでいいんですか?」

「先程も言ったが私たちウマ娘の体は細胞の他にも『因子』と呼ばれる物体で構成されている。であれば、人間に『因子』を投与すればウマ娘に近い身体能力を得ることが出来るのでは、ということだ。」

「…つまり、ソウジトレーナーは誰かの『因子』が投与されている状態と?」

「いや、誰か1人だけの『因子』での状態はとても不安定でね…投与後に回収することが困難だ。そこで出てきたのが『合成因子』だよ。」

「なるほどなるほど…つまり、タキオンさんと誰かの『因子』を合体させるってこと?」

「正解。しかし…誰の『因子』でもいいという訳でも無くてね…相性があるみたいだ。」

「相性?」

「例えば私とカフェであれば合成せずに反発してしまったよ。」

「ふむふむ。」

「しかし、ウオッカ君の『因子』とは合成出来た。」

「へー…磁石みたいだな!」

「まさしくそれだ!よって私を基準に反発するのがS極、合成出来るのがN極と呼んでいるよ。提供してもらった『因子』のほとんどがS極だったため…N極のサンプルが少しでも欲しいところだよ。」

「『因子』…ってことは前にターボから取ってたよな?ターボは何極だ?」

「君はS極だったよ…ということで君たちのもいただいてもいいかね?」

「まぁ、体に害があるわけじゃなさそうだし…」ガチャ

「ターボがしているのなら問題ないのでしょう。」ガチャ

「私のでもいいのかな?」ガチャ

「ターボのをもう1個あげる!」ガチャ

 

ピッ、ピッ、ピー!

 

4つの音が重なり鳴り響く。そして、『ガッツザベスト』が全員から腕輪を受け取った。

 

「さて、本題はここからだ…ターボ君、先程言っていた大逃げ以外の走りをしてみたくはないかい?」

「なるほど!ターボも『合成因子』を入れたら別のウマ娘になれるんだな!」

「私はこれを『アナザー』を名付けたよ。ちなみにトレーナー君がなっている状態は『ウマ人』と呼んでいる。」

「どう違うのでしょうか?」

「『ウマ人』は人間に『合成因子』を投与すれば完了だ。しかし『アナザー』の場合だと…ウマ娘には既に『因子』がある以上は『合成因子』を投与することが出来ない。」

「んん?じゃあ、どうやって『アナザー』になるんだ?」

「そっか!別の『因子』をそのまま入れて…」

「残念ながらはずれだよ。答えは…体内の『因子』を全て抜き、別の『合成因子』を投与する、だよ。」

「…え?それって身体は大丈夫なの?」

「今は大きく疲労するくらいだよ。」

「…今は?」

「コホン、でターボ君。やってみるかね?」

「うん!やってみる!」

『えぇ!?』

 

即答に驚くアグネスタキオンとツインターボを除いた4人は必死に止めようとする。

 

「いや、ツインターボ。よく考えろ?お前はタキオンのよく分からん実験に付き合わされようとしてるんだぞ?」

「よく分からんって君が言っちゃダメだろう…」

「そうそう!自分の体はもっと大事にしないと…」

「ターボ、宿題はちゃんと終わっていますか?」

「いやイクノ?心配する所は絶対そこじゃないよね?」

「大丈夫!タキオンの所へ行く前にイナリに見張られてやったから!」

「では私から言うことはありませんね。」

「だって大逃げ以外が出来るまたとないチャンスだよ!やってみたいよ!」

「うっ…確かにやったことない脚質って憧れるけど…」

「さて、反対意見が少数派になったことだし始めていこう…ターボ君、この腕輪を1つずつ両腕に付けてくれ。」

「了解!」ガチャ、ガチャ

 

ツインターボが腕輪を嵌めたのを確認し、アグネスタキオンがスイッチを押すとツインターボの毛色が一瞬で変わった。

 

『!!』

「試作品だったが…成功のようだね。」

「ん…何か変わったか?」

「変わってるよ!髪が青じゃないよ!黒いよ!ほら鏡!」

「ん…本当だ!染めてないのに黒くなってる!そんで何かタキオンが怖くない!」

「…怖くない?なるほど、もしかするとターボ君の恐怖心とは…」ブツブツ

「おーい、タキオン。1人の世界に入るな。」

「んんん!では、練習といこう。…ターボ君、不便だとは思うがその腕輪は外さないでくれたまえ。」

「わかった!じゃあ、ターボについてこい!」

「いやいや!逃げはしないって…」

「それはそれ。これはこれ。後でもう1回模擬レースするからその時にやってみる!」

「…始めてもいいかね?」

 

こうして、5人(+1)での練習が行われた。その後の模擬レースにて初めて行った"差し"にツインターボは大喜びし、全員にとって充実した時間となった。練習が終わり、ツインターボから『合成因子』を回収すると…そのまま眠ってしまい、同室のイナリワンにより運ばれる。さらに翌日、アグネスタキオンよりお手製のアロマキャンドルがツインターボへと送られた。




▼合成因子第十号『ハイオクタン』が更新されました


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第63話 世紀末覇王VS戦勲章の5本勝負…私はただ栗毛が好きなだけなのに…

…やべっ。これで書き溜めたのこれで最後だ。

今日はチューリップ賞があるので『ドゥーラ』を応援します。
他にはエフフォーリアの妹の『ペリファーニア』とデビューから応援していた『コナコースト』!
この2頭にも頑張って欲しいですね!

勝ったのはモズメイメイ…コナコースト差しきれずの2着。ペリファーニアは3着!

さらにカワカミプリンセスとカレンチャンの産駒も出走してるので応援します!

ひとまず…本編をどうぞ!


「さぁ、最後の勝負と行こうじゃないかウォーエンブレム!」

「えぇ、テイエムオペラオー!」

「そのぉ…今度こそは…終われますよね…?どう思いますかイージーゴアさん?」

「…何も聞かないで。」ズキズキ

 

異様な空気で覆われたその場所でテイエムオペラオーはウォーエンブレムと共に肩を組み、高らかに宣言する。2人の姿は既にボロボロで、近くにはオロオロするメイショウドトウと頭を抑えたイージーゴアがいた。

 

ーーー

 

時は数日前、ウォーエンブレムはイージーゴアから日本語を教えてもらっていた。

 

「『この場合は…『足が棒になる』だったね!』」

「『正解よウォーエン。…頑張ったわね。もう私が教えなくてもいけるかも…』」

「『それはそれで悲しいのだが…』」

「『何で?』」

「『ゴアさんが日本語を教えてくれるこの時間…普通に好きだったから…』」

「『嬉しいこと言ってくれるじゃん♪栗毛好きあんたがここまで成長して…このこの!』」ツンツン

「『いや、ゴアさんも栗毛…コホン!では早速、誰かと会話してくるよ!』」

「『ナンパはしないでね?』」

「『分かってるよ…お!あの方は…7冠ウマ娘のテイエムオペラオーだ!』」

「『いや、どこ…ってもういない!?』」

 

体をゲーミングカラーに輝かせウォーエンブレムは風よりも速くテイエムオペラオーのいる場所へと移動した。

 

………

 

「おぉ!ボクの物語に誰かが参加してきたよう…だ!っととと!」

「おっと、失礼。」ガシッ

 

異様な速さで目の前に現れたウォーエンブレムの風圧により、バランスを崩しかけたテイエムオペラオーだったが、それをウォーエンブレムが支えた。そして、何事も無かったかのようにそのままの体勢で話始める。

 

「初めましてテイエムオペラオー…私はウォーエンブレムと言います。」

「あぁ、君が…噂は色々と聞いているよ。フフフ…実に豪華なキャストじゃないか。ボクに何か用かい?」

「実は日本語を勉強していて…マスター出来たから誰かと会話をしたくなりました。であれば誰から会話をするか…私はジャパンの栗毛最強のあんたが良いと判断しました!」

「なるほどなるほど!それでボクが最初とは…実に光栄なことだ!」

「私との会話…していただけますか?」

「勿論だとも…では、勝負をしていこうかじゃないか!」

「…はい?」

 

………

 

『ピスピース!お前らに実況(?)をしていくゴルシちゃんだぞ!』

『解説は私メジロマックイーン…何ですのこれ?というかここはどこですの?』

『いやー、何かオペラオーがウォーエンブレムと面白いことをしてたみたいだが…観客が全く集まらなかった。で、オペラオー、ドトウ、ウォーエンブレム、イージーゴアの4人が淡々と準備して、淡々と勝負してるだけのつまんない絵面だったからな。折角だからゴルシちゃんが冒頭までの内容を読者に向けて楽しく説明しようと思った訳よ!』

『…読者?』

『細かいことは気にすんな!とりあえずオペラオーが勝負こそが強者の最高の語り合い、とか何とか言って始まったこのイベント…早速みていこう!『世紀末覇王VS栗毛スキーの5本対決!』』

『なるほど…5回それぞれの勝負を行うということですわね。では、最初の勝負内容とは?』

『最初の対決はスタミナを競う…『遠泳』だ!』

『長距離をどちらが速く泳げるか競っていただくのですね?』

『いや、ただどっちかがぶっ倒れるまで泳ぐだけらしい。』

『…この後、4本も勝負が残っているのですよね?』

『とか言ってる間に…2人とも大体10kmくらい泳いだな!』

『どちらも凄まじい体力…あぁ!』

『決着が着いたようだな!勝者、オペラオー!!』

『ウォーエンブレムさんが溺れていますわよ!イージーゴアさんが慌てて飛び込みましたわ!』

『んじゃ、助けてもらったところで次の対決だな!』

 

『次の対決はパワー…『瓦割』だ!』

『50枚重なった瓦をどこまで割れるかですわね。ウォーエンブレムさんが有利に見えるのですが…』

『いや、瓦割って日本の文化だしオペラオーならやれる!30枚くらい割ってくれるさ!』

『人間用ならまだしも…トレーニング用なら20枚割れれば十分なのですが…』

『おっ!オペラオーが32枚割ったぞ!』

『お見事ですわ。ウォーエンブレムさんは…』

『…50枚全部割ってるな。勝者、ウォーエンブレム。』

『全部!?』

 

『次は根性対決の『タイヤ引き』だ!』

『これもウォーエンブレムさんが有利なように見えるのですが?』

『大丈夫だ!これはあくまで根性の勝負だ!』

『と、言いますと?』

『タキオンとシャカールが開発したソフトで2人の筋肉力を計算してギリギリ引きずれる重さのタイヤをそれぞれ用意した!それを10秒でどこまで運べるか、らしい!始まるぞ!』

『2人とも必死に運んでいますわね…あら?もう時間ですの?』

『イージーゴアがメジャーで測って…オペラオーの片手を上げた!ほぼ並んでいるようだが判定はオペラオーの勝ちみたいだな!オペラオーが2勝でリーチをかける!』

『残りの勝負内容は果たして…』

 

『4番目の対決は賢さ…『将棋』だ!』

『日本のチェスですわね。今度はオペラオーさんが有利な気が…』

『どっちも初めてみたらしくコマの動かし方を今、教わっている状況だ!これは分からないぞ!』

『…あ。今更ですがウォーエンブレムさんって…』

『んん?ウォーエンブレムが結構上手いな。』

『…サウジアラビアで国王のSPをする予定でしたわよね?テロ対策だとかでそういう動きについて詳しいのでは?』

『それがどう関係あるか知らんが…普通にウォーエンブレムの勝ちだ。というかオペラオー、玉将を動かし過ぎだろ…2勝2敗、最後の勝負だな!んじゃ、ここまでの実況解説はゴルシちゃんでした!』

『ちょっ!私は!?と言いますかここはど…』

 

ーーー

 

練習コースにてウォーエンブレムとエイエムオペラオーがアップを始めていた。そうしているとボールを持ったメイショウドトウが現れた。

 

「では…最後の勝負の…『ショットガンキャッチ』を始めさせていただきますね。ルールは簡単ですぅ。イージーゴアさんが投げたボールが落ちる前に先に取った方が勝ち…ジャンプするのは禁止!最後に…ケガだけはお気をつけてくださぁい。」

「最後まで説明をありがとうドトウちゃん。じゃあ、投げるからあっちに向いて…行くわよ!」

 

ブンッ

 

イージーゴアがボールを勢いよく投げると同時にテイエムオペラオーとウォーエンブレムが駆け出した。それは強豪レベルに相応しいウマ娘2人の走りであった。そんな2人が1つの目標へと向かい…

 

「よしっ!」

「くっ…」

 

結果、ウォーエンブレムが先にボールをキャッチした。

 

ーーー

 

「キミの勝ちだウォーエン!これはボクからのプレゼントだ!」

「プレゼント?」

「…あの…お待たせしました~」

 

制服への着替えが終わり、エイエムオペラオーとの会話を楽しんでいたウォーエンブレムに突然の報告が入る。後ろから布に隠された何かをメイショウドトウが運んできたのだ。

 

「…早速見てみても?」

「もちろんだとも!」

 

ファサッ

 

「お…おぉ!!」

「ボクの等身大チョコさ!」

 

それはチョコレートで出来たのテイエムオペラオーの像だった。勝負服で華麗なポーズを取っており細かい所にエイエムオペラオーの拘りが見られる逸品だ。

 

「一生大事にします!」

「いや、食べなさいよ…量はかなり多いけど。暑いし溶けない?」

「ハッハッハッ…遠慮は要らないさ!さぁ、食してくれたまえ!」

「あのぉ…こういうの食べる場合…どこから食べるのか…気になりますね…」

「…では今、少しいただきましょう。まずは敬愛を込めて腕から…」

 

チュッ

 

ウォーエンブレムはチョコ像の手の甲にキスをする。

 

「ハッハッハッ…流石のボクも少し照れるね…!?」

 

チュッ…チュ、チュ、チュ…レロレロレロ…ズルルルルル…バクッ!

 

「オ、オペラオーさんの腕が一瞬で無くなりましたぁ~!!」

「ウォーエン!?」

「ハッハッハッ…」

「フフフ…凛々しい顔だ…」バクッ

「顔も一瞬!?」

「…ハハハ。」

「鎖骨も美しい…」バクッ

「…」

「いい脚だ…」バクッ

「…」ガクガクガク

 

撫でられ、揉まれ、舐められ、吸われ…次々と食べられる自身のチョコ像に最初は顔を赤くしていたテイエムオペラオーだったが、その顔は青に変わり…身体全身が震えて始めてる。そしてウォーエンブレムはチョコを完食し…

 

「…足りない。」

「は?」

「もっと…もっとだ…」ハァハァ

「ひぃ!」ガシッ

「ウォーエン、離しな…うっ!」ガシッ

「ゴアさん!?」

 

ウォーエンブレムがテイエムオペラオーとイージーゴアの尻尾を掴む。

 

「栗毛が1人…栗毛が2人…」ハァハァ

「…まずい完全にスイッチが入ってる!オペラオー、何としても逃げろ!私がウォーエンを抑え…いや、時間を稼ぐから!」

「この状況…ボクでも分かる…もうダメだ…」ガクガクガク

「ドトウちゃん!バトラーを呼べ!」

「は、はい~…あわわ!」ステン

「ドトウちゃん!?」

 

転ぶメイショウドトウ、尻尾を掴まれ全てを諦めたテイエムオペラオー、尻尾を掴まれながらもテイエムオペラオーを逃がそうとするイージーゴア、そんな栗毛2人の尻尾を強く握り捕食者の目を向けるウォーエンブレム…辺りに大きな緊張した空気が流れる。そして…ついにウォーエンブレムが動きだした!

 

「いただきま……!!」

 

バチバチッ!!

 

「ふぃー…大丈夫?」

 

ウォーエンブレムが迫る…と思った同時に、突然背後に現れたアグネスフライトがスタンガンでウォーエンブレムを締めた。そしてそのまま気絶したウォーエンブレムを担ぐ。

 

「『あ、ありが…』」

「フライトさん!!」ダキッ

「わッ!?オペラオーちゃん?」

「怖かったよ…怖かったよ~!」

「あー、うん。大丈夫だよ…大丈夫だからね…」なでなで

「フライトさん~!ありがとうございますぅ…!」ダキッ

「ドトウちゃんまで…」なでなで

 

その後、テイエムオペラオーとメイショウドトウに抱きつかれ片手を器用に使い分けて2人の頭を撫でるアグネスフライト。一方、イージーゴアはその場でペタリと座りこんでしまった。

 

「『…はぁ。』」

「『大丈夫ゴア?』」

「『バトラーか…君がフライトを呼んでいたのか?』」

「『逆よ。フライトが私を呼んだのよ…歩ける?』」

「『…肩を貸してくれ。ウォーエンを抑えるための私なのに…恐怖に負けて…情けない。』」

「『何言ってるの。あんたのお陰であの娘は出来るだけ我慢しているし…止めれるあんたの前でしかナンパをしてしないわ。今回はその抑えていた分の反動かもしれないけど。』」

「『…アグネスフライト、彼女は凄い。スイッチが入ったウォーエンを抑えることは私でも無理なのに…それが出来るなんて。』」

「『不意打ち気味だけどね。正面からはお嬢だけしか…いや、ウォーエン相手にそれが出来るのも凄くない!?』」

「『他にもサンちゃんの霊体をカフェちゃんの身体から引きずりだして自分に憑依させたり…』」

「『なにそれ?怖っ!』」

 

ウォーエンブレムはアグネスフライトに、イージーゴアはペイザバトラーに運ばれそれぞれの部屋へと帰った。翌日、正気を取り戻したウォーエンブレムだったが…テイエムオペラオーからはかなり距離をとられ、イージーゴアとの接触も制限されるようになったため…泣いた。




また、書いたら投稿します!


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第64話 夢を持った飛行機

どうも、ダイイチルビーに350連回した作者です。…いいストーリーだし引いて良かった。

今日の重賞は金鯱賞とフィリーズR。とりあえず金鯱賞は『ディープモンスター』、フィリーズRは『ブトンドール』を応援する予定です。個人的に気になるのは中山11RのアネモスS…スイープトウショウの孫である『ジュエルピーチ』と『シルバージュエリー』が出走するのでどっちかに勝って欲しいな。


ウォーエンブレムはベンチに1人座り、鏡をずっと眺めていた。

 

「『アハハ…栗毛だ…栗毛…。どうして体って1つしかないのだろうか?』」

 

その髪は青鹿毛から栗毛へと変色しており、そんな自分の姿を眺め続けていたのだ。

 

「ユニ♪ユニ♪ユーニヴァース♪ユニ♪ユ?」

 

そんなウォーエンブレムに気付き話しかけるウマ娘が1人。

 

「こんにちわ☆貴女は誰?ワタシはネオユニヴァース!銀河を駆けるウマ娘☆」

「『あぁ…栗毛…栗毛…』」

「チェスナット?違う!違う!ワタシはユーニヴァース☆」

「ー!…すまない、話ならまた後にしてほしい。今はとても話せる状態じゃない。」

「貴女って速い?」

「話聞いてる?…これでもアメリカではクラシック2冠は勝ってるよ。」

「え?本当?わーい☆3冠ウマ娘になれるかも~!」

「…3冠?」

「これってタキオンのカチューシャ?とってもユーニヴァース☆」ひょい

「おい!返し…いや、それを付けてくれるかな?」

「ん?オーケー♪こうか…な!?」スポッ

「『可愛い…いただき…』」ハァハァ

「ユ…ユーニヴァース☆」ダッ

「『逃がさない。』」ダッ

 

ーーー

 

トレセン学園の練習場にてアグネスフライトはエアシャカールたちと共に練習をしていた。

 

「おい、ファイン!掛かってンぞ!少し落ち着け!」

「…あ。またか…」

「ファインちゃん、もしかして先月のレースで負けたこと…引きずってる?」

「ううん、違うよ。ただ…思うように体が動けてないのかな?トレーナーとは調整をしているのだけど…!」

「…」ポンッ

 

最近、不調気味のファインモーション。そんな妹を心配してか、姉の『ピルサドスキー』が頭に手を置いた。

 

「お姉さま?」

「我が妹よ。今は存分に焦れ。」

「…え?」

「焦りは判断を狂わせる…だが、焦った今しか分からないこともある。全てを糧にしろ。」

「…はい。」

「ピルちゃん…良いこと言うね!とりあえず、ラーメンでも食べに行く?」

「そういう話じゃねェだろ!」

「あぁ、魚粉を使用したものが食べたいな。」

「…乗るのかよ。ッたく、ボリクリ!ロブロイ!後、どれくらいで終わるンだ?」

 

「…ロブロイ、いい動きだった。今日はここまで…」

「まだです!もう1本だけ…」

「…分かった。シャカール、後1回走る。」

 

「…だとよ。」

「じゃあ、じゃあ…皆で走らない?」

「あん?何言ってンだフライト?」

「最下位だった人が超ギガ盛りに挑戦で!」

「聞けよ!てか、ロブロイは今週はレースだろうが!」

「フフフ…面白そう♪お姉さまも走りましょ!」

「え?私はブランクが…」

「もしピルちゃんが参加してくれたらグルーヴちゃんのコスプレした写真をあげようかな…」ボソッ

「よし!世界を又にかけた私の走りを見るがいい!」

 

その後、ラーメン屋からお腹を膨らませて出てくるピルサドスキーの姿が多数目撃された。

 

ーーー

 

そして週末…『菊花賞』の前哨戦『神戸新聞杯』にゼンノロブロイ、ネオユニヴァース、リンカーンらが出走していた。

 

『最後の直線、先頭はサクラプレジデント!

ゼンノロブロイが伸びてくる!

大外からはネオユニヴァース!』

 

「…ここです!」

 

ダンッ

 

『ゼンノロブロイがかわして先頭!

これはネオユニヴァースは届かないか!

2番にサクラプレジデント!

3番にリンカーン!

ゼンノロブロイがリードを広げる!』

 

「いけっ!ゼンノロブロイ!」

「ロブロイ!」

「ロブロイちゃん!」

 

「はあぁぁ!」

 

『ゼンノロブロイ、先頭で今、ゴールイン!

2番にサクラプレジデント!

3番争いはリンカーンとネオユニヴァース!』

 

勝者ゼンノロブロイ。

 

………

 

勝利したゼンノロブロイをアグネスフライトたちは出迎えた。

 

「おめでとうロブロイちゃん。」

「…見事だ。」

「ありがとうございますクリスエスさん。」

「で、次走はどうするの?普通に菊花賞?それともボリクリちゃんみたいに天皇賞に来る?」

「トレーナーとの相談になりますが…私は天皇賞に出走しようと思います!」

「…そうか。」

「…」

「シャカール?」

「…何でもねェよ。」

 

………

 

一方、4着と敗れたリンカーンがニヘイ待つ控室へと戻っていた。

 

「リンカ、まずはお疲れさん。」

「トレーナーさん…すみません。優先出走権…取れませんでした。」

「いや、今回の成績なら菊花賞に出走することは出来るだろう。切り替えていけ。」

「…そうですね。ネオさん、プレジデントさん、ロブロイさん…彼女らと走ったことでパワーアップしたと考えれば!」

「…明日から菊花賞に向けた調整を行う。パワーアップの実感をするのはタイムを見てからにしろ。」

「はい!」

 

ーーー

 

レースが終わり、アグネスフライトたちも解散し、それぞれの帰路へとつこうとしていた。

 

「…」スタスタ

「…」スタスタ

「おい、フライト。何後を付けてンだ?寮はあっちだろうが。」

「シャカール、ロブロイちゃんが天皇賞に出るのは反対?」

「あぁ!?何の話だ?」

「ロブロイちゃんが天皇賞に出るって言ったら…シャカールの様子が変だったから。」

「…ちッ。ンなもんロブロイの好きに走ればいいだろう!俺が一々茶々入れることはねェよ。」

「…私が気になっただけだから。で、どうなの?」

 

しばらく、アグネスフライトを睨んでいたものの、エアシャカールが折れて口を開いた。

 

「…元々は俺とボリクリがタキオンを越えるために行ってたことだ。そこにファインとロブロイ…ンでフライト、お前が加わった。ドリームに行かねェのにな。」

「…やりたいこと出来たの。だから…卒業までやりたいことしたいな…って。」

「…そうかよ。俺もボリクリも仲良く練習しようとしてた訳じゃねェ。1つの目標に向けていただけだ。」

「…」

「そういう意味ではファインもお前もまだいい。だが、ロブロイは…ボリクリの後を辿っているだけに感じてきてな。」

「私たちは優先権取れたから迷わず菊花賞に行ったよね。」

「…去年のボリクリの判断も間違ってはいない。タキオンがいなければ間違えなく勝ってた。」

「…」

「結局はロブロイがどうしたいか、だがな。」

「ありがとねシャカール。」

「あん?」

「あなたの悩みが聞けて良かったよ。でも大丈夫。ロブロイちゃんが出走するのは菊花賞だから!」

「は?」

「言ったでしょ。私も夢のために色々勉強してるって!」

 

後日、アグネスフライトたちはゼンノロブロイが菊花賞に出走する報告を聞いた。

 

ーーー

 

「そういえばお前…最近タキオンの所に行ってねェンだろ?何かあったのか?」

「…」もじもじ

「胸隠してどうした?まさかタキオンに貧乳にされたのがトラウマ…とかじゃねェよな?」

「…違うの。」

「あん?」

「その…ソウジさんに…見られて…」もじもじ

「…見られた?そンなことか?」

「そんなことじゃない!それで…ソウジさんの…顔…見れなくなって…」もじもじ

「お前、結構ウブなンだな。歩く変態野郎と思ってた。」

「失礼な!」



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第65話 表・とある星の話をしよう3 前編

JRAがストライキとのことですが…このままレースをしても大丈夫なのでしょうか?

*今回の話には危険な行為があります。ソウジが特別な体質なだけで普通であれば急性アルコール中毒になり、中には死亡した事例もあるので絶対に真似をしないでください。


『元・未勝利の星』ハルウララ。彼女は前回、札幌の重賞レース『エルムS』で2着となり大活躍をした。そして…1ヶ月の休憩を挟み、今回は阪神の重賞レース『シリウスS』に出走する。

 

「…83…84…85。…よしっ!イメージは完璧!それじゃあ、とれーなー!行ってくるね!」

「うん、頑張って!」

 

ハルウララはコハルに見送られながら控室を後にし、パドックへと向かう。

 

「前をキープしつつ、最後はインタータイヨウとツルマルファイターから逃げきる。…しかし、連勝中のあの娘とうまく合わせれるかな?まぁ、その時はプランDでいくとして後は…ウララちゃんが…」ぶつぶつ

「あっ、ローズちゃんだ~!呼んだ?」

「ー!ウララちゃん!?…今日はよろしくね。」

「うん♪よろしく♪」

「その新しい勝負服…似合ってるよ。」

「本当!?ありがとう~!コクオーちゃんのを参考にしたんだ~!」

「………コクオーちゃん?」

 

その瞬間、スターリングローズの頭の中が真っ白になった。

 

ーーー

 

時は『シリウスS』の前日の夜、ソウジはタイキブリザードの運転するトラックの助手席に乗っていた。

 

「いやー、ありがとな。わざわざ兵庫まで乗せて行ってくれて…」

「ノープログラム!私も学園用のキャロットやコーン取りに行くからグッドタイミングね!タキオンは一緒じゃなくていいの?」

「見たいレースがあればタキオンの方から言ってくるからな…今回は特に無かったみたいだ。」

「それにまたアメリカに行く日も近いしね♪」

「あぁ、だから今日くらいはゆっくりと休んでもらおうとな。ブリザードは明日、荷物を積め終わったらすぐに帰るのか?」

「ノー!ソウジとレースを見て一緒に帰るね!」

「夕方だぞ?食べ物傷まない?」

「ノープログラム。約束の時間は明日の18時ね!」

「…あれ?レースが終わってる時間?じゃあ、何でもう兵庫に向かってるんだ?」

「それは…ホテルで教えるね!」

 

疑問を持つソウジを他所にタイキブリザードは小さく微笑んだ。

 

………

 

『乾杯!』カラン

 

ゴクゴクゴク

 

『ぷはー!』

 

とあるホテルの一室で、ソウジとタイキブリザードはビールを飲んでいた。机の上には他にも日本酒、梅酒、ウイスキー、ワインなど大量のアルコールが置かれていた。

 

「いやー、まさか早めに来た理由が成人したから俺と酒を飲みたいから何て…別に東京でも良かっただろ?」ゴクゴク

「ううん。何時もじゃない所だからこそいいね。」ゴクゴク

「とはいえ、あんまりグイグイ飲むなよ?お前がどれくらい酒が強いか知らないが…」

「ソウジがベリーストロングなのは知ってるね。だから、酔わない飲み方を事前に調べたね…それは水を挟んで飲むことね。」ゴクゴク

「まぁ、そうだな。」

「お酒。」ゴクゴク

「ふむふむ。」

「水。」ゴクゴク

「うん。」

「お酒…」ゴクゴク

「うんうん。」

「水…」ダバダバ

「水が溢れてる!もう酔った!?」

 

タイキブリザードの顔が赤くなり…そのまま水の入ったコップを置いた。

 

「…わぁお!何かぽかぽかするね!」

「ブリザードはお酒弱かったようだな。早いがもう解さ…ん?」ガシッ

「まだね。ソウジが酔ってないね…」

「いや、俺は簡単には酔えないから…」

「そういえば…強い人でも簡単に酔わす方法があるね…」

「ブリザード?何する気?」

「じっとするね…」カチャカチャ

「おい!どこ触って…んん!」

「…フフフ、相変わらずなかなかのモノね。でも、今はこっち…」

 

ズブッ

 

「んんん!?」

 

コポコポコポ…

 

タイキブリザードがソウジの頭を抑えつけ、そのまま酒瓶を突っ込んだ。大量のお酒がソウジの体内へ直に注がれる。瓶が空になったことを確認し、引っこ抜かれた。その後、しばらく暴れていたソウジだったが動きが弱くなったためタイキブリザードが解放する。そして…

 

「あ…あひゃひゃひゃ!にゃんかしゅごぉいかんじだぁ~」

「そうね!すごい感じね!」

「にゃんかあちゅい…」

「私もね!じゃんけんするね!負けたらテイクオフね!」

「いいよぉ~、じやぁんけぇん…」

 

…………

 

………

 

……

 

 

「ごちそうさま。」

 

ーーー

 

「…はっ!」

 

ソウジの目が開く。そしてトイレまで走り…

 

「おろろろ…!!」

 

盛大に吐いた。

 

「うへぇ…酒で吐くなんて何年ぶりだ?ブリザードめ…ってか今何時だ?」

 

ソウジが時計を見ると14時前であった。

 

「やべっ!着く頃にはレースが始まっちまう!ブリザードはどうして…ん?置き手紙?『阪神レース場で合流ね!』だ?アイツ、置いていきやがったな…」

 

ソウジは慌ててホテルを後にした。

 

ーーー

 

場所は阪神レース場のパドックの観客席。ソウジはほぼ満員となった人混みを上手く避け前へと入る。そんな息を切らしたソウジにコハルが話かける。

 

「ソウジさん!?何でここに…ウララのレースを見に来たのですか?」

「あぁ…そうだ…。ブリザード…見て…ないか?」

「見てないです。」

「ありが…とう…とりあえず…探して…」

「ここにいるね♪」ダキッ

「わっ!」

「…あまり、騒がないくださいね。ウララたちが来ました!」

 

大きな拍手と共にハルウララたちがパドックへと入ってくる。今回の出走者の中にはスターリングローズの姿もあった。しかし、そんな中で一際目立つウマ娘が1人いた。

 

「…完璧な仕上がりだな。だが…初めて見るウマ娘だ。」

「2連勝中のウマ娘ですね。とくに前回のOP戦、3バ身差レコードタイムという凄い勝ち方をしていました。重賞は今回が初めてみたいですけど…」

 

凛とした態度で歩くその姿は観客の注目を大きく集めた。そして、いつの間にソウジの隣にも同じ雰囲気のウマ娘が現れる。

 

「『マイネルセレクト』…彼女もまた、私と同様に『華麗なる一族』の血を持つ者です。」

「ー!」

「ダ、ダイイチルビー!?」

「わぁお!気づかなかったね!」

「そうなのか。教えてくれてありがとう。」

「…礼には及びません。」

 

ダイイチルビーはそう答えるとパドックの方へと目を向ける。ソウジたちもパドックに目を戻すと楽しそうなハルウララ、覇気が無いスターリングローズ、涼しい顔のマイネルセレクトなど…出走するウマ娘たちのそれぞれの姿が見えた。

 

ーーー

 

「ウララ、頑張ってくれよ。」

「…おい。」

「ナリタブライアン!?来ていたのか?」

「こっちの台詞だナムラコクオー。ハルウララのアレはお前の影響か?」

「…そんなに話してはいないはずだけど、そうなるのかな?少しでも彼女の力になれてるのなら嬉しいことだけど。」

「…答えは出たのか?」

「出たよ。2年後…いや、上手くいけば来年の4月にはトレセン学園に戻れるかな。」

「…ふっ、そうか。」

「君が期待してる姿とは違うと思うけど。」

「………ん?」




マイネルセレクト…02世代の栗毛の牡馬。『華麗なる一族』の血統であり、ダイイチルビーの甥(半妹ウメノアスコットの4番目の子)。スピードを武器にダートを駆け抜けた。主なG1勝利はJBCスプリント(2004年)。重賞を計5勝するも黒船賞(2005年)の勝利を最後にケガを発症し引退、種牡馬となる。そしてコスモワッチミーやサウスウインドなど地方重賞産駒を6頭出した。2011年からはイーグルカフェと共に韓国で種牡馬になった。

ーーー
▼登場人物にマイネルセレクトが追記されました。


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第66話 裏・貴公子の休日 前編

…ディープボンド頑張れ!


場所は中山レース場、今日はG1レース『スプリンターズS』が行われる予定である。

 

「…」

「タキオン…いい加減に機嫌を治してくれよ…」

「…放っておきましょう。」

 

そこには無表情で場内のモニターを眺めるアグネスタキオンとそれを宥めるジャングルポケットと我関せずのマンハッタンカフェがいた。

 

『さぁ、阪神メインレースの『シリウスS』が始まります!』

 

ーーー

 

時は1週間ほど前、ソウジは発光した状態で薬の調合をしつつ、アグネスタキオンに声をかけた。

 

「タキオン、来週の日曜だが…ちょっとレースを見てくるわ。」

「あぁ、了解した。その日は実験データの整理でもするとも。」

「お弁当は多めに作っておくから…1人で大丈夫?」

「何をそんなに心配するのかな?暫くは派手な実験の予定はないし、お姉ちゃん来なても平気だったし…たまには1人になるのも悪くはない。君も好きなように過ごすといい。」

「あぁ。」

 

そう言いつつも…アグネスタキオンの耳と尻尾は寂しそうに垂れていた。

 

………

 

そして、日曜日。ソウジもマンハッタンカフェもいない研究室でアグネスタキオンは1人、パソコンのキーボードを打ち続けていた。

 

「『以上が『合成因子八十号コクテツ』の記録である。』、と。これで溜まっていた分は終わりだね。今は…12時か。随分と早く終わったね。とりあえずお弁当でも…」カタカタ

 

そこには既に空となったお弁当箱があった。

 

「トレーナー君、ご飯…って今日はいないのだったね。はぁ…」

 

ため息をつきながらミキサーを取り出していると誰かが研究室へと入ってきた。

 

「タキオン、レース見に行かない?」

 

松葉杖を持ったジャングルポケットだった。

 

ーーー

 

「『ウォーエン、どうして逃げるの?』」ダッ

「『メダグ…君が怖いからに決まってんだろ!というかレースが近いはずだろ?こんな所に来ていいの?』」ダッ

「『そんなことはいいの…その娘は誰?栗毛ならまだ許してあげようと思ったけど…詳しく教えてくれない?』」

「『知らないよ、何か懐かれたんだよ!離れろ、ネオユニヴァース!』」

「ユーニヴァース☆ワタシは英語分かんない~☆」ダキッ

 

ーーー

 

アグネスタキオンたちは中山レース場に着くと早速知り合いに出会う。

 

「あら?タキオンじゃない。あんたがここに来るなんて珍しいわね。」

「こんにちはタキオンさんにジャンポケさん。」

「ごきげんようですわ!」

 

スイープトウショウ、ニシノフラワー、カワカミプリンセスだ。

 

「珍しい組み合わせだね…誰かの応援かい?」

「そうよ。うちのデュランダルが出走するの!だから…私たちで勝てるように魔法をかけたの♪」

「魔法?」

「見れば分かりますわよ!」

「見れば分かる魔法?」

「あはは…」

「あ!そろそろメインレースのパドックが始まるわ!早く行くわよ!カワカミ、ジャンポケさんを運んで!」

「承知しましたわ!」ダキッ

「いやっ、自分である程度は…!」

「フラワーもタキオンも置いていくわよ!」

 

そう言いスイープトウショウとカワカミプリンセスはジャングルポケットを背負いパドックへと向かう。それをアグネスタキオンとニシノフラワーが追いかけた。

 

ーーー

 

しかし、パドックにはまだ誰もいなかった。

 

「…まだ早かったみたいだね。」

「これでいいのよ。だってデュランダルが一番近くで見れるから!」

「私もそれはありがたいな。」

「そういえばジャンポケ君。君は誰を見に来たんだい?」

「来たら教えるよ。とりあえずモニターはあるし、阪神の方でも見ておくかい?」

「…あなたたちも…来ていたのですね。」

「カフェ!?君も来ていたのか!」

「…彼女が…見たいとのことです。…ってことだ、よろしくなタキオン!」

「急にカフェのキャラが変わった!?」

「…暴れたりしたらお姉ちゃん呼ぶからね?えーと…あったあった。ジャンポケ君、これでカフェの姿を見てくれたまえ。」

 

アグネスタキオンはジャングルポケットに『デサイレンスコープ』を渡す。ジャングルポケットが覗き込むとマンハッタンカフェともう1人誰かが重なった姿がみえた。

 

「ん…何これ!?背後霊?幽波紋?」

「カフェが『お友だち』と呼んでいたただの生霊だよ。トレセン学園でトレーナーをする予定だったが事故にあって今は入院中さ。名前はサンデーサイレンス…」

「待て待て待て!情報量が多い多い!え?トレーナーで生霊?てか、サンデーサイレンスってアメリカの年度代表ウマ娘になった大ベテランだよね?何で日本にいるの?何でカフェに取り憑いてるの?」

「おいおい…一気に聞くなって。それよりモニター見てみろよ。」

 

サンデーサイレンスに指を指され見てみると、そこには阪神レース場のカメラにタイキブリザードに抱きつかれたソウジが映っていた。

 

ーーー

 

「へー、私を1人置いてレースに行った思えば…まさか、ブリザード君と不倫をするためとはねえ。」ゴゴゴ

「…そもそもの話…タキオンさんとソウジトレーナー…結婚はしていないでしょ。」

「カフェ、これ以上タキオンを刺激しないでくれ。」

 

不機嫌なオーラを出すアグネスタキオン。そんなことを無視してスイープトウショウが背後からチョップを食らわす。

 

「コラっ!そんな顔してここにいるじゃないわよ!他の観客に迷惑でしょ!それに出走するウマ娘に悪影響が出ちゃうかもしれないじゃない!」

「…尤もだ、すまなかった。ところでだが…君はもし自分のトレーナーが他のウマ娘とイチャついていたらどうする?」

「…使い魔が?そんなの決まってるじゃない!後でとことん問い詰めるわ!それで誰がご主人様かみっちりとその体に教え込むのよ!」

「フフフ…いい答えだ。」

 

スイープトウショウの答えに満足したアグネスタキオン。気づけば周りは他の観客で一杯になっていた。そして…出走ウマ娘たちの姿も見えてきた。

 

「…あ!来たわよ!」

「確か見れば分かる魔法と言っていたね。どこ…が!?」

 

「…」クルッ

 

ザワザワザワザワ

 

パドックに現れたデュランダルが背中を向けた瞬間に観客が騒ぎだす。

 

「おい、デュランダルの大剣ってあんなファンシーだっけ?」

「何だよアレ…ん?俺もしかしたらどこかで見たことある気が…」

「てか、勝負服とミスマッチ過ぎるだろ!」

 

「スイープ君、もしかしてあれが…」

「ふふーん!凄いでしょ?見たことないでしょ?」

「いや、すごい見覚えのある剣なのだが?フラワー君からはちゃんと許可は貰ってる?」

「え?何でフラワーのって知ってるの?まぁ、いいわ!アレは…えーと…カワカミ!詳しい説明をお願い!」

「はい、あれは今シリーズの『WIN☆ポンッ☆プリファイ』に出てくる『風林火山合成剣(キズナ)』というプリファイたちの合体武器ですわ!ファイスラッシュの持つ風の剣『羽巣落登麗音(バスラットレオン)』、ファイスイングの持つ炎のムチ『赤糸(アカイイト)』、ファイランスの持つ花の槍『宋具羅因(ソングライン)』、ファイナックルの持つ大地のメリケンサック『泥武梵土(ディープボンド)』が1つに合体した武器でして、4人の愛を何十倍にも高めた『プリファイ!ホーリーエクスカリバー!』で相手を浄化しますわ!」

「何で女児向けアニメの武器が漢字ばかりの名前なのか、とかメリケンサックが出ていいのか、とか色々と突っ込みたいところだが…いいのかいフラワー君?」

「チヒロトレーナーから頂いた物ですが…デュランダルさんが強くなったのも事実です。で、あれば彼女が使うべきだと思います。きっとチヒロトレーナーも喜んでくれるかと。」

「あー…うん。おじいちゃんなら別に問題ないか。」

 

話が終わり、パドックへと顔を向けたアグネスタキオンにジャングルポケットが声をかける。

 

「話は終わったかタキオン。」

「すまないね、で君は誰を応援しに来たのかな?」

「彼女だよ。」

 

ジャングルポケットが目線を向けたのは青と白の勝負服のウマ娘。

 

「『レディブロンド』さん…デビューはかなり遅れたけど、私たちと同期だよ。」

「何故彼女を応援するのだい?」

「さっきも言った通り、彼女のデビューはかなり遅くてね。今年の6月だ。」

「…ん?ちょっと待ってくれ。たった3ヶ月でG1に出走かい?しかもジュニアやクラシックじゃない…シニアのG1レースに?」

「5回レースに出て…全勝している。何なら先週に出たレースも中山1200m…同じ条件だ。」

「…!ウララ君に並ぶハイローテじゃないか!確認だが彼女は中央のウマ娘だよね?」

「あぁ。そして、ラストランだ。」

「なるほど…『本格化』の終わりか。」

「今回の成績次第ではドリームに進めれるかもしれない。実は私がケガする前は彼女とよくライブの練習をしていたんだ。ダンスとかよく教えてもらっていたよ。だから…そんな彼女のトゥインクルでの姿をどうしても生で見たかったんだ。」

「…パドックが終わったようだ。後はレースでその勇姿を見ようじゃないか。」

「あぁ。」

 

ーーー

 

「頑張ってねディブロ姉!ほら、『プイ』も!」

「…頑張れ。」ボソッ

「声が小さいよ…」

「大丈夫、きっと届いているから。そろそろ行こうか…『クタ』姉さん。」




レディブロンド…アグネスタキオンと同期の鹿毛の牝馬。デビューが5歳というとても遅い時期ではあったものの条件戦を5連勝。そして…連闘でスプリンターズSに出走するもデュランダルに敗れ、ケガもあり引退、繁殖牝馬となる。しかし、アグネスタキオンとの間に出来た牝馬ガールオンファイアを産んだ後に死亡。産駒は5頭のみとなった。代表産駒は帝王賞など重賞を4勝したゴルトブリッツ、後に日本ダービーと天皇賞(秋)を制覇したレイロデオ…を産んだラドラーダ。

ーーー
▼登場人物にレディブロンドが追記されました。


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第67話 表・とある星の話をしよう3 後編

パドックが終わり、ダートコースへと移動した各ウマ娘たちは自身のゲートへと収まっていく。

 

『さぁ、阪神レース場。

今日のメインレースはG3の『シリウスステークス』!

交流競走でもある、このレースには金沢からタクミシルバー、高知からハルウララの2名が参戦しています!

全員のゲートインが完了…スタート!

ミスイロンデルがいいスタートですが…ハナを取ったのはタガノラフレシア!

そのままダートコースへと入っていく!』

 

出遅れのなかったハルウララであったが、10番手とかなり後方からのスタートとなった。

 

「ウララちゃん、頑張れ!」

「セレクト!今回も期待してるぞ!」

「スターリングローズ、連覇!連覇!」

 

『向こう正面に入って先頭はタガノラフレシア。

2番にニチドウマジック、そしてマイネルセレクト、スターリングローズ、エイシンラグランジが固まって、内からツルマルファイターとインタータイヨウと人気ウマ娘が前の方へと集まっています。

注目のハルウララは…後方4番手の外から前の様子を伺っているか。

このまま第3コーナーへと向かいます。』

 

ハルウララはその順位を保持したまま最終コーナーまで進んでいった。

 

『さぁ、第4コーナーカーブ!

ここでタガノラフレシアは後退、ニチドウマジックとエイシンラグランジが前へと出るが…外からマイネルセレクト!

マイネルセレクトが仕掛けてきた!

スターリングローズも続いているが伸びないか。

大外ハルウララ!

ハルウララも仕掛けてきた!

マイネルセレクトとハルウララ、2人の争いか!』

 

「「はあぁぁぁ!!」」

 

『マイネルセレクト逃げる、ハルウララが追う!

しかし、ハルウララ凄い伸びだ!

2人の差はほとんど無くなってきた!

マイネルセレクトか、ハルウララか、マイネルセレクトか、ハルウララか…2人並んでゴールイン!

3番争いはツルマルファイターかインタータイヨウ!

これは写真判定か!』

 

ワアァーーーッ!!

 

………

 

「ハルウララ凄い伸びだったなコハル!…コハル?」

「…」ガタガタ

 

コハルは身体を震えながら爪を噛んでいた。

 

「コハル?」

「どうしたね?」

「ウララ…どうして…」

「コハル!?」

「ー!?すみません、すぐにウララの所に行ってきます!」ダッ

「おい!」

 

コハルは観客席を後にした。

 

「…」

 

一方でダイイチルビーはマイネルセレクトへと目線を向けていた。

 

「ルビー!あなたはどっちが勝ったと思うね?」

「そうですね…率直にも申し上げますとハルウララさんかと。」

「オゥ…ワンダフル!私はどっちが先か分からなかったね。」

「それは私も同じですよ。」

「ん?なら普通ここはセレクトと言わないの?」

「普通…かは存じませんが、彼女の今回の走りは『華麗なる一族』としてはまだまだです。」

「つまり、今回勝っていても負けていてももっと強く成長した姿が見たいってこと?フフフ…ルビーは手厳しいね。」

「…では私は次の予定がありますので。ソウジトレーナー、これを。」

「ん?これって…『因子』回収用の腕輪か?何で君がこれを?」

「タキオンさんのレポートから必要なデータは全て把握しております。まずは私の『因子』を提供します。」

「え?」

「この件に『華麗なる一族』は関係ありません。しかし、私個人はタキオンさんの研究にご協力したく思います。何かあれば5日前までに連絡を…それでは。」

 

ダイイチルビーは言い終わるとその場を去った。

 

ーーー

 

数分後…ついに掲示板に順位が灯る。ハナ差でハルウララの番号が1番上となっていた。

 

『写真判定の結果…1着はハルウララ!

ハルウララです!!

ついに中央での重賞制覇を果たしました!!』

 

ワアァーーーッ!!!

 

阪神レース場から大きな歓声と拍手が響き渡る。笑顔でウイニングランをしようとしたハルウララだが、ダートコースへと全力疾走で乱入してきたコハルに背負われ、そのままコースを1周する前代未聞のウイニングランとなった。しかし、そんな姿にも観客たちは大きな拍手を送った。

 

………

 

コハルはハルウララを背負い、そのままの足で控室へと入る。

 

「とれーなー?どうしたの?」

「ウララ、すぐに横になって。」

「え…うん。」

 

コハルは横になったハルウララの足を揉む。

 

「…」

「あはは…ちょっとくすぐったいよ。」もみもみ

「静かに!」

「??」もみもみ

 

しばらく揉んだ後、コハルは一息ついた。

 

「ふぅー…ウイニングライブは大丈夫そうね。」

「どうしたのとれーなー?」

「…ウララ、どうして言われたタイムよりも速く走ったの?」

「あ…!その…途中から分かんなくなっちゃって…」

「ケガしたらどうするの!これからのレースに出れなくなるよ!」

「…ごめんなさい。でも…ちゅーおーのじゅーしょーだったから…どうしてもとれーなーに勝つところみてほしくて…」

「ー!!ウララ…私こそごめんなさい。ウララの身体のことばかり考えて…ウララの気持ちまで考えてなくて…うぅ。」

「とれーなー?どこか痛いの?」

「いや、結局は私のわがままか。私なんかが貴女の担当トレーナーになったから…折角の…ウララの勝ったレースを…」

「とれーなー?」

「ウララ…ウイニングライブに行ってきて…」

「ダメだよ!泣いてるとれーなーを置いてなんていけないよ!」

「…」

「とれーなー…ウララのこと嫌いになった?」

「それだけは絶対にない!でもウララにケガをして欲しくは…」

「大丈夫。ウララは…大丈夫だから。」

「ーー!」なでなで

「涙は止まったね。じゃあ、ライブに行ってくる!」

 

「…ウララ。」

 

その後のウイニングライブは無事に終わった。

 

ーーー

 

レースが終わり、ソウジはタイキブリザードのトラックへと乗っていた。荷物は既に積まれており、後は帰るだけの状況となっている。そして、2人は今日のレースについて話していた。

 

「今回のスターリングローズはちょっと不調だったか…堅実を重視する彼女が掲示板を外すとは珍しい。」

「きっと寝不足ね。目の下にクマがあったね。」

「作戦を綿密に立てる娘だからあり得るな。ハルウララや『華麗なる一族』のあの娘のことをずっと考えていたのだろうか?」

「めいびー、違うね。」

「ん?と言うと?」

「彼女…ハルウララと走れる喜びで寝れなかったね。」

「あー…納得出来るな。パドックの時もチラチラと見てたし…」

「それで勝った後が…凄かったね。」

「コハルな…よくハルウララの側まで行けたな。アイツの現役時よりも速いんじゃないか?」

「ホワッツ?彼女もトゥインクルで走っていたの?」

「そうだよ。…残念ながら1回走った後にケガで引退だったがな。コーナー不利を受けながらも上がり最速で3着…これからが期待出来たウマ娘だった。」

「…」

「…あ、俺のサブトレーナー時代の話な。とは言え…あんなにも拍手が出たものだからURAの職員もその場では怒るに怒れなかったみたいだな。後でかなり言われてると思うが。」

「今も続いてると思うね!…それはそうとソウジ!」

 

急にタイキブリザードの声色が真剣な物へと変わる。

 

「どうした?」

「…昨日のホテルのことは覚えてる?」

「全部覚えてるぞ。」

「ー!!」ダラッ

 

タイキブリザードから汗が流れ始める。

 

「お前が俺の○に酒瓶突っ込んで、その後に着てたやつをXXXして、お前からうまぴ…」

「やめるね!!」ダラダラ

 

タイキブリザードの汗が滝へと変わる。少しして近くのサービスエリア見えたため、トラックを止め2人同時に降りた。そして…

 

「ご、ごめんなさいね!!」

 

タイキブリザードは盛大な土下座をした。

 

ーーー

 

休憩を挟みつつトレセン学園へと帰る2人。タイキブラザードの目はアグネスタキオンとなり、そんなタイキブリザードをソウジはニヤニヤと見ている。

 

「いやー、俺としてはいいよ。お前はもう成人だし、長い付き合いでもあるからな。だが…1番はタキオンだ。ブリザード、お前はそんな俺でいいのか?」

「…私の1番はソウジだから勿論いいね。でも、それでソウジの仕事が無くなると考えると…」

「別に俺は構わんが?」

「ホワイ?」

「トレーナーになる前から株で大当たりを引いててな…1人や2人増えたところで一生養えるくらいの貯蓄は既にある。最悪は俺の内臓売れば何とでもなる。それにタキオンに改造されたからか心臓と脳以外なら1月くらいで再生するし。」

「バ、バイオレンスなアイデアね…」

「外野に何言われようが知ったこっちゃねえ。…ブリザード、また俺と契約してくれ…レースじゃなくて人生の方の、な。」

「ー!!じゃあ、早速またホテルで…」

「コラコラ!学園用の荷物あるだろ?仕事はちゃんとしろ。」

「オゥ…」

「…タキオンのレースが終わるまでは待ってくれ。こればかりは譲らない。でも、それが終わったら…おわっ!」

「ソウジ!?」

 

「やぁやぁ…今帰ったのかな?」

 

当然に背後よりアグネスタキオンが現れ、尻尾をソウジの足へと巻き付ける。

 

「タキオン、今何時だと…」

「…トレーナー君からいつもと違う匂いがするねえ。これはどういうことかなブリザード君?」

「それは…その…」

「さて急遽行う実験が出来たよ…トレーナー君、来てくれるね?」

「いや、明日から仕事が…」

「来てくれるね?」

「…はい。ブリザード、運転ありがとうな。今度何かお礼するから…!」

「さっさと行くよトレ…モルモット君?」グイッ

「自分で行くから引っ張るなって!」

 

「…ソウジ。…仕事しないと。」

 

タイキブリザードはトラックの中の荷物を1人で運んだ。翌日、ゲッソリとした顔のソウジが目撃された。



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第68話 裏・貴公子の休日 後編

書き溜めはこれでラストです。
ボリクリちゃん…欲しかった…多分、発表されたタップダンスシチーやヒシミラクル、ネオユニヴァースも出てきたのでしょうけど…くっ!

…あっ。今さらですがもしかしたらタップダンスシチーの実装時にアグネスフライトがワンチャン出てくるかも…出てきて欲しいですね。


中山レース場…場内のモニターには『シリウスS』の様子が映っていた。

 

『ハ、ハルウララ!

ハルウララが1着!

高知からの挑戦者が…ハルウララが中央重賞を勝ち取った!』

 

パチパチパチパチ

 

モニターへと映る笑顔のハルウララ。現地ではないにも関わらず中山レース場には大きな拍手が響いていた。

 

「ウララちゃん!おめでとう!」

「すごいよ!」

 

中には声援まで出すファンもいた。そんな興奮が止まない中…『スプリンターズS』が始まった。

 

………

 

『スタートしました!

ナムラマイカとビリーヴがいいスタート!

さぁ、注目の先行争いは…ショウナンタイムとテンシノキセキ!

続いてサーガノヴェルとカルストンライトオ!

その後ろにビリーヴとキーゴールド、さらにゴッドオブチャンスの前集団!

後方はイシノグレイス、ナムラマイカ、レディブロンド、ハッピーパス!

2バ身ほど間が空いて、アグネスソニックとアドマイヤマックス!

イルバチオと続いてデュランダルが最後方!

末脚にかけてきたか?

600を通過!

ラストランのビリーヴは6、7番辺り!」

 

レディブロンドは後方でのレースとなった。

 

「ビリーヴ仕掛けろ!」

「デュランダル!そろそろ魔法の準備よ!」

「いけっ!ディブロ姉!!」

 

「ホーリー…」ボソッ

 

『さぁ、第3コーナーカーブに入る!

残り400!

ビリーヴが外に持ち出した!

しかし、さらにその外からレディブロンド!

大外からはデュランダル!』

 

「エクスカリバー!!!」

 

ダァァンン!

 

『デュランダル喋った!!

いや、先頭はビリーヴ!

内からアドマイヤマックス!

外からレディブロンドも来ている!

しかし、ものすごい脚でデュランダルが迫る!

ビリーヴか、デュランダルか、ビリーヴか…今ゴールイン!

際どい勝負!

どちらが勝ったのでしょうか?』

 

暫くして、掲示板が灯る…結果はデュランダルがハナ差で勝利した。そしてレディブロンドは4着と敗れた。

 

ーーー

 

「4着か…でも、すごいよね。G1に出て…掲示板に入れるなんて。私、今年デビューするけど…大丈夫かな?」

「…クタ姉なら大丈夫。私より身体頑丈だし…何より普通の足だから。」

 

「おい、お前ら。」

 

「あなたは…マンハッタンカフェさん!?」

「話したは無いけど…イメージとかなり違う?」

「…」じー

「私たちに何か用ですか?」

「…2人ともそうか。お前ら、俺の担当にならねぇか?」

「「はい?」」

「あー、いきなり悪いな。とりあえず名前を教えてくれ。」

「『ブラックタイド』です。」

「…『ディープインパクト』。」

「よし!詳しくは…」

「あのー、私はもうトレーナーいるし、今年中にはデビューするんで…」

「…ちっ、まぁいい。詳しくは此処で話してやる。興味があるならここに来い。」

「ここって…病院?」

「じゃあな。」

 

ーーー

 

レースが終わり、デュランダルは担当トレーナーのハジメと話していた。

 

「デュランダル…初重賞おめでとう。」

「…」コクリ

「合宿で本当によく成長してくれた。お前を俺は誇りに思う。」

「…」もじもじ

「照れる、ってか?よし、この調子なら来月の『マイルCS』もいけそうだな。明日からまたよろしくな!」

「ー!」なでなで

 

ハジメがデュランダルの頭を撫でると顔が赤くなる。そんな中、もう1人の担当ウマ娘でもあるスイープトウショウが合流した。

 

「…あ!何してんのよ使い魔!」

「何って誉めただけだが…」

「…」ギロッ

「デュランダル何その目?お腹空いてるの?しょうがないわね…ほら、グランマ直伝の焼き芋魔法よ!」

「ー!」パクパク

 

スイープトウショウはリュックから大量の焼き芋を取り出した。するとデュランダルが目を光らせて食べ始める。

 

「おい…レースが終わったとはいえ、そんなに…」

「別にいいじゃない。デュランダル美味しい?」

「…」b

「そう、なら良かった。その…これ…使い魔の分。」もじもじ

「あぁ…ありがとう。…美味いな。」パクパク

「本当!?じゃなくて…当然よ!会心の出来なんだから!」

「ー!」ピクッ

 

デュランダルの動きが止まる。そして、ハジメの持つ焼き芋を目を向ける。

 

「ん?もういいのか?」

「…」じー

「あんたまさか…こ、これだけはダメよ!魔法をかけた使い魔への特別な焼き芋だから!」

「いや、別にこれくらい…」

「バカー!」グイッ

「んごっ!」ズボッ

 

スイープトウショウは焼き芋をデュランダルに渡そうとするハジメから強引に焼き芋を奪い取り、皮ごとハジメの口へと突っ込んだ。

 

「信じられない!もういいわよ!私、帰るから!ふんっ!」バタン

「ん、んんー!」ジタバタ

「…」じー

 

勢いよくドアを閉めスイープトウショウは控室を後にした。残るのは口に入った焼き芋であたふたするハジメとそれを(冷たい目で)見つめるデュランダル。

 

「…」パクパク

 

そして、デュランダルは焼き芋を食べることを再開した。

 

ーーー

 

ジャングルポケットはレディブロンドの控室へと来ていた。

 

「レディブロンドさん、お疲れ様です。」

「ジャンポケちゃん!来てくれたの?…ありがとう。」

「掲示板に乗って…凄かったです。」

「無理に褒めなくていいのよ。…残念ながらドリームには行けないわ。」

「そう…ですか。」

「悲しそうな顔をしないで。…本当はデビュー出来ただけでも良かったと思っているの。しかも連続で5回も勝てたのよ。だから…満足よ。」

「…私の足が治れば、また一緒に走ってくれませんか?」

「いいわよ、約束する。それに…復活したあなたのドリームでの活躍…期待してるから。私が卒業した後はクタとプイのこともお願い。」

「…はい。」

 

ジャングルポケットは控室を後にする。そしてアグネスタキオンと合流した後…学園へと戻った。




ブラックタイド…04世代の黒鹿毛の牡馬。半姉にレディブロンド、全弟にディープインパクトがいる。体格が良く、9700万円で落札され、重賞を勝ったりしたものの皐月賞後に屈腱炎を発症…2年の休養を要した。その後、勝利することはなく引退…しかし、ディープインパクトの活躍により安価な代替種牡馬となった。重賞勝利はスプリングSのみ。代表産駒としてG1レースを7勝したキタサンブラックの他、タガノエスプレッソ、フェーンブロッテン(現役)などがいる。

ディープインパクト…05世代の鹿毛の牡馬。…最早解説不要の名馬。種牡馬としてクラシック3冠を取ったコントレイルとジェンティルドンナ、G1レースを6勝したグランアレグリア、ウマ娘にもなったサトノダイヤモンドなど63頭ものG1馬を産み出した。


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第69話 貴公子と沈黙と暴露ハザード

どうも、ドバイのレースにてデルマソトガケ、イクイノックス、ウシュバテソーロの勝利が嬉しい作者です。

特にイクイノックス…ハーツクライ同様に逃げての勝利。あんなにのんびりしたレース、とか思ってたのにまさかのレコード勝ち!もしかすると…ジャスタウェイ以来のWBRRのトップに選ばれる日本馬かもと期待をしています。

それはそうと、今日は高松宮記念ですね…メイケイエールやピクシーナイト、アグリ、と強豪揃いの中、私が応援するのはウォーターナビレラです。去年のクラシックで応援していたのもあるのですが、オークス、秋華賞と早く垂れてしまっていたので、この舞台で輝いてほしく応援します!

勝ったのファストフォース…クッ。出走した皆様…お疲れ様でした。


アグネスタキオンは今日も新たな実験を行おうとしていた。

 

「よし…ついに完成だ!」

「お疲れ様。今回はどんな実験だ?」

「浴びれば分かるさ!」

「浴びる?」

 

シュッ

 

その瞬間にソウジはスプレーを吹き掛けられる。しかし、すぐに変化は見られずソウジは首を傾げる。

 

「???タキオン、別に何に起きないぞ?(俺を踏んでくれるか?)ーー!!」

「ほほぉ。君にそんな趣味が…」

「ち、違う!こんなこと思ってないから!(踏むだけじゃなくて太股で顔を挟まれたい!)ーー!!?」

「効果が出てきたようだねえ。」

 

「うわぁ…」

 

ドン引きするマンハッタンカフェ。

 

…これはあれか?(素足こそ至高。)誰かを足フェチにするナニカか?(だが、ストッキングやニーソも捨てがたい。)

「ハハハッ!君が何を伝えたいか分からないが多分違うよ。これは『自分の好みを暴露するガス(仮)』だよ!」

何てものを(君が履いてるストッキングを)作ったんだ(ビリビリに破りたいんだ)!」

「とりあえず、君は心の底から足が好きなようだ…意外でも何でもなくてつまらない。」

だー(そして)全然話に(足の親指と人差し指で)ならねえ(鼻を摘ままれたい)!」カキカキ

 

ソウジは紙に言葉を書く。

 

「『いつ効果が切れるか』、ね。今、実験中さ!」

マジかよおい!(おっぱい揉むペラペラソース)

「揉むだけでいいのかい?」

もう勘弁してくれ…(XXXXもしてくれる?)

「ハッハッハッ!自分に正直過ぎるトレーナー君に流石にドン引きだよ…私以外には言わないでくれよ?」

「…」ズーン

 

ソウジは真っ白になった。

 

「さて、この時点でもこれは厳重に管理をする必要あるようだ。これは鍵付きのケースに…って無い!どこに行った!?」

おい(足、胸、尻)嘘だろ?(一周してまた足に戻るんだよな…)

 

………

 

一方のマンハッタンカフェはサンデーサイレンスに取り憑かれ、廊下へと出ていた…タキオンが開発したスプレー缶を持った状態で。

 

『タキオンもたまには面白そうなことをしやがるな!』

「(…サンデーサイレンスさん、今なら…まだ間に合います。…止めませんか?)」

『いやいや!こんな面白いことなんてそうそう起きねぇよ!楽しまないと損だ!』

「(…私は面白く…ないです。…本当に止めてください!)」

『…おっ?ゴア発見!おーい、ゴア…あっ!』ブンブンブンッ

 

サンデーサイレンスが大きく手を振った瞬間、スプレー缶が手から離れて…床へと落ちて…蓋が開く。すると、ピンク色の煙が現れ…一瞬で学園全体を覆った。

 

ーーー

 

開発したガスの入ったスプレー缶が見つからず、アグネスタキオンはガスマスク着けて、ソウジと共に研究室で慌てて探していた。

 

「どこに転がった?トレーナー君、早く見つけてくれたまえ!」

俺だって一生懸命に(あぁ、タキオンの履いている)探しているわ!(ストッキングが欲しい!)

「…変態!クッ、こんな時にもカフェもいないし…」

「…」カキカキ

『そのマンハッタンカフェが持ち出したんじゃない』

「カフェがそんなことする訳じゃないじゃないか!」

「…」カキカキ

『マンハッタンカフェは、な。』

「…まさか!」

 

次の瞬間に研究室の扉が開き、エアグルーヴが中へと入ってきた。

 

「たわけペロペロ!たわけペロペロ、ペロペロ…ペロッ!」

女帝か?どうしたんだ?(君には網タイツとか似合いそうだ!)

「ー!たわけ!」

「…」カキカキ

 

状況を理解したソウジは『内容はこの紙に書いてくれ!』と書き、それを渡す。エアグルーヴもそれに従い紙へと書く。

 

『学園で謎の現象が起きている…貴様の仕業か?』

「…まさか、アレが学園にばらまかれたのか?…犯人はカフェに憑依したサンデーサイレンス君だろう。エアグルーヴ君、君はカフェの行方を探してここに連れ帰ってきてくれたまえ!何かあればお姉ちゃんを使ってくれ!私はトレーナー君の抗体を元に中和剤を作成する。トレーナー君、私の準備が完了する10分ほどでいい…あのガスを浴びれるだけ浴びてきてくれ。」

「は?」

「そうすれば少しでも多く抗体が出来る。空気より少し重いから今は下の方に溜まっているはずだ。君が戻り次第、作業を始めよう。」

「…」コクリ

「…」コクリ

 

エアグルーヴとソウジは頷くと同時に研究室を後にした。

 

ーーー

 

謎のガスにより学園内は混沌と化していた。

 

「ご主人様のことをちゃんと理解しない使い魔には首輪をつけないと…え?」

「チヒロトレーナーにまた…頭を撫でて欲しいです…はぅ!」

「殿方には私以上のパワーを持ってもらう…と?」

「…!?」

 

プリファイの話をしていたはずが急に内容が代わり驚くスイープトウショウ、ニシノフラワー、カワカミプリンセス、デュランダルの4人。

 

「キタちゃん、今日も可愛いな♪食べちゃいた…い?」

「キタちゃんの今日のパンツは白か。後でラッキーカラーの青色に変えない…と?」

「スイープさんと同じシャンプー使ったこと、気づいてもら…え?」

「「キタちゃ~ん?」」

「ひ、ひぃー!」

 

サトノダイヤモンドとコパノリッキーから逃げるキタサンブラック。

 

「『どこ行ったサンデーサイレンス!!』」

「『ゴアさん!ゴアさん!ゴアさん!ゴアさん!ゴアさん…』」ダキッ

 

『…』ガタガタガタ

「(はぁ…サンデーサイレンスさん。…早く出ないと…大変なことになりますよ?)」

『もうなってるよ!』

「(…もっと…大変なことに…なります。具体的には…フライ…)」

『ひぃ!その名を出すな!』ガタガタガタ

 

隠れた友人を探すイージーゴアとそれに抱きつくウォーエンブレム。そして、恐怖で隠れたサンデーサイレンスにそれを諭すマンハッタンカフェ。

 

「XXXX!!XXXX!?XXXX!??」

「フライトさん、何言ってるか分からないッス!あぁ、もうアタシが指示するッス!」

 

焦った顔で放送できないワードを連呼するアグネスフライトと冷静な対処を行うバンブーメモリー。

 

他にも諸々…

 

ーーー

 

残ったガスを浴びたソウジは研究室へと戻っていた。その途中にタイキブリザードとすれ違う!

 

「ソウジ!」

「ブリザード!無事だったんだな!(網タイツを履いてくれないか?)

「ホワッツ!?ソーリー、今は持ってないね。」

「違う!違う!…ごめん、後で説明する!(この後、ホテルに行かないか?)

「…パードゥン?…もう、今はまだ昼よ…でも…どうしても言うなら…」もじもじ

「…」ダッ

 

戦略的撤退をソウジは選んだ。

 

………

 

「XXXX…」ズーン

「たわけ!」

「XXXX!XXXX、XXX…」

「た、たわけ!!…たわけペロペロ!」カキカキ

「…」コクリ、ダッ

 

落ち込んでいたアグネスフライトにエアグルーヴが発見し活を入れる。それと同時にエアグルーヴの指示を見て、アグネスフライトは動き出した。

 

………

 

『…』ガタガタガタ

「(…何時まで…恐れているのですか?)」

『び、ビビってねぇし!ここがバレるのが怖いだけだし!』ガタガタガタ

「(…認めている…じゃないですか。…フライトさん、動き出したよう…?サンデーサイレンスさん?………。…私の体から…いなくなったようですね。…恐れて自分から逃げたか…或いは…)」

 

ーーー

 

全員が研究室へと戻ってきた。そして、アグネスタキオンはソウジの体内からガスへの抗体を取り出し、中和剤の調合を始める。アグネスフライトは目だけは笑っていない笑顔で端の方に座っていた。…たまに叫び声をあげるが突っ込む者はいない。

 

「後はエタノールを60g入れて、スターラーで均等になるように混ぜてくれ。私は使用前に圧縮装置の点検を行う。」

「了解した。」

「…XXXX。XXXX…助け!XXXX…XXXX……頭がおかし……XXXX……あ、あぁ…」

「おい、フライト。ほどほどにな?(ニーソを履いた君が見たい。)

「…」カアァ

「やべ。まだ完全には治って無かったわ。」

「トレーナー君?何、私のお姉ちゃんに色目を使ってるんだい?」

ち、違うんだ!(ストッキング、網タイツ、ニーソ。)治ったと思って(…素足を守る三種の神器を)油断しただけなんだ!(揃えたいだけなんだ!)

 

「ソウジ、履いてきたね!ホテル行くね!」

 

網タイツを履いたタイキブリザードが入ってきた。それによりアグネスタキオンとアグネスフライトがソウジにゴミを見るような目を向ける。

 

「やめろ!誤解だ!そんな目で俺をみるな!」

 

その後、中和剤がばらまかれ、事態は収束した。その間、睨まれ続けたソウジは新たな扉を開きかけたが…何とかなった。




また、書けたら投稿します。


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第70話 華麗なる紅玉 + 驀進王 = 爆ぜ砕く金剛石、貴公子たちはブリーダーズカップへと備える

シン・仮面ライダー…期待してたよりは面白かったです。ギーツを見てると戦闘シーンがうーん、ってなりましたけど…まぁ、普通に楽しめました。個人的にはクモの怪人との戦いが1番かな~。


場所はアグネスワールドが開拓した練習場。ブリーダーズカップが開かれるアメリカへの出発も目前となり、出走者たちがトレーニングをしていた。

 

「ケイオスミラクル、もっと早く仕掛けろ。サンタアニタの直線は結構短いぞ。」

「はぁ…はぁ…はい!」

「アグネスワールド、コーナーでのカーブが膨らみ過ぎ。最後の直線が短いんだ…長所ばっかを伸ばすのはいいが…今回はそっちの方を強く意識しろ。」

「ぐぅ。分かった。」

「タイキシャトルとヒシアケボノも手伝ってくれてありがとな。」

「ノープロブレム!私も故郷のコースを走れて嬉しいデース!」

「あたしもワールドちゃんと走れて楽しいよ~!よしよし~!」

「ボノ姉。止めて。照れる。」なでなで

 

アグネスタキオンを含めた数人が出走するアメリカのレース『ブリーダーズカップ』…そのレースまでソウジはアグネスタキオンに加え、アグネスワールドとケイオスミラクルの指導をすることとなった。その指導をみてマンハッタンカフェに憑依したサンデーサイレンスが意見する。

 

『…お前のコースへの認識、あってるのか?てか、お前の担当…走ったことあったか?』

「ブリザードはBCクラシックの前に一度サンタアニタで走っている。…結果は3着だった。」

「…悪いけど私とバトラー、ウォーエンは走ったことないからコースについては何も言えないわ。」

「いや、私はダートを走ってないだけでターフはあるからね。」

「で、何かアドバイス出来る?」

「出来ないけど…」

 

ペイザバトラーの口が止まる。それをみたサンデーサイレンスがドヤ顔で口を開く。

 

『俺はG1含めて3回あるぜ。」

「へぇ…で?どうすれば勝てるの?」

『前をキープしてりゃ勝てる。』

「…ただのあんたの脚質じゃない。」

「大丈夫、最初からその答えは知ってたから。」

『ゴア…どういう意味だ?』

「…私も。ない。アメリカは。ケンタッキーだけ。」

「ほらほら、次!タキオン行くぞ!ブリザード、ウォーエンブレム、エルコンドルパサー、併走相手を頼む。」

 

「いつでも行けるとも。」

「あぁ!よろしく頼むますよ!」

「大丈夫ね。」

「はいデース!」

 

「ユーニヴァース☆」

 

「『ちょっ、お前…何でここにいるの!?』」

「菊花賞まで時間が無いからね☆ユーニヴァースなことをしないと★」ダキッ

「『だから、私に抱きつくな!』」

 

いつの間にかネオユニヴァースも加わっていた。こうして、出走ウマ娘たちの日本での最後の調整は進んでいった。

 

ーーー

 

「キャット…お前、本当に10年以上走ってなかったのか?」

「…チヒロ、いい加減にキャットと呼ぶのはやめろ。指導してりゃ走ることも多かったからだ。で、お前は私の走りをどう見る?」

「まぁ、いい勝負にはなるだろうな…」

「…やっぱり、勝てないか。」

「まぁ、帰国するくらいの気持ちでいいだろ。…キャット…正直言うわ。相手が悪過ぎる。ワールドはともかく…ミラクルには申し訳ないことをしたと思っている。」

「キャットをやめろって言ってるだろ。…ったく、チヒロってトレーナーやめた癖に結構干渉してくるよな。」

「…うるせぇ。自覚はしてるし、レディにもよく言われとる。だけどな…はぁ…」

 

ーーー

 

「よし、タキオンはここまでだ!アグネスワールドとケイオスミラクルは最後に…俺と模擬レースだ。」

「?意味。分からない。」

「ソウジトレーナー、あなたと…模擬レースですか?」

「あぁ。本番のつもりでかかってこい。」

 

ソウジはそういうと『合成因子』を取り出し…

 

ゴクン

 

飲み込んだ。そして、体が鹿毛(ピンク)の『ウマ人』へと姿が変わり、靴から蹄鉄へと履き替える。その光景に驚いたウマ娘たちを無視してソウジはゲートへと向かう。

 

「サンデーサイレンス、映像やタイムの記録を頼むわ。タイトルは…『合成因子第八十二号ダイヤマイトについて』で。」

『へいへ~い。』

 

そして、3人での模擬レースが始まった。

 

………

 

「…速い!」

「これは…ルビーと走ってる感覚が…」

「ケイエスミラクル!模擬とは言えレースだ!無駄口を叩くな!」

「失礼しました。」

 

レース展開はアグネスワールドを先頭に『ダイヤマイト』、ケイエスミラクルがほぼ固まって続く。そして、コーナーへと入る!

 

「ーーくっ!」グラッ

「そこだっ!」

 

ダンッ

 

アグネスワールドがコーナーでやや膨らみ、それにより空いた内に『ダイヤマイト』が突っ込む。最後の直線、先頭は『ダイヤマイト』、それに3バ身ほど離れアグネスワールドとケイエスミラクルが続く。

 

「…ここから決める!」

 

ダンッ

 

ケイエスミラクルが仕掛けた。そして、アグネスワールドをかわして『ダイヤマイト』へと迫る。しかし…結果は『ダイヤマイト』の勝利で終わった。

 

「…よし、ここまでだ。後でデータを送るから…改善点を自分でも考えてみてくれ。アメリカで最終調整を行う。」

「…はい。」

「ありがとうございました。」

「…出来るだけ今回の俺の走りを覚えていてくれ。よし、学園に帰るぞ!」

 

こうして、合同練習は終わったが…ソウジは足を骨折し、杖は必要ないもののギプスで固定することとなった。

 

ーーー

 

アグネスタキオンとソウジは研究室内で『合成因子』についてまとめているとチヒロと1人のウマ娘が入ってきた。

 

「…よう。」

「チヒロさん?」

「…おじいちゃん?何の用だい?」

「…ソウジがケガしたと聞いた。お前…なんでタキオンのみに集中しなかった?」

「それが俺たちトレーナーの仕事ですよ。担当で無くても、経験から指導できることを行ったまでです。」

「…模擬レースの映像を見せてくれ。」

「その前に彼女は誰だい?」

「あー、そうだったな。キャット、挨拶しろ。」

「『アジュディケーティング』だ。普段は地方でトレーナーをしているが…今回のBCスプリントにアグネスワールドとケイエスミラクルと出走する予定だ。」

「…さっきキャットって呼ばれてなかったか?」

「私はアメリカのトゥインクルを走っていた。それで最後のレース、チヒロが私の指導をすることになってな…その縁もあってか引退後は日本でトレーナーになった。」

「それとキャットがどんな関係で?」

「当時のチヒロは英語が分からなかったようでスペルで見せた"Adjudicating"の"cat"の部分しか読めなかったかららしい。」

「おじいちゃん…」

「挨拶は済んだろ。映像を見せてくれ。」

「分かりましたよ。」

 

先ほどの模擬レースの映像をチヒロへと見せた。

 

………

 

「で、どうでしたか?」

「…日本のウマ娘が勝てる未来が見えない。」

「そう、ですか…」

「いっそ、お前を出せたら向こうも大満足だったろうな。」

「成長は期待出来ませんか?」

「『本格化』がとうに終わっとるだろ。…とりあえず、善戦出来るだけまだ良い。そのデータを俺にも送ってくれ…キャット、帰るぞ。」

「これだけでいいのかチヒロ。」

「元々はお前の顔合わせが目的だ。またな、ソウジ、タキオン。」

「えぇ、また空港で。」

「メジロ家のプライベートジェット…実に興味深い。」

「…俺だけ別ので行ったらダメだろうか?」

「よろしいのではないでしょうか…メジロ家や華麗なる一族の目を掻い潜ることが出来るのなら。」

「だよな……はぁ。」

 

チヒロはため息をついた。




アジュディケーティング…90世代のアメリカの黒鹿毛の牡馬。2歳にG1レースであるカウディンSとシャンペンSを勝ち、3歳のBCスプリント4着を最後に日本で種牡馬となった。大井、川崎など地方でのダートレースで活躍馬が多かったことから『南関東のサンデーサイレンス』と呼ばれた。主な産駒は東京大賞典(2回)、川崎記念、かしわ記念、帝王賞、とG1を5勝したアジュディミツオー。

ーーー
▼登場人物にアジュディケーティングが追記されました。


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第71話 漆黒の帝王の奇妙な体験 前編

どうも、FGOのエイプリルフールのゲームでサーヴァント380体のうち372体しかゲット出来なかった作者です。

今日は大阪杯ですね。スターズオンアースやジャックドールなど強豪がいるなかで私が応援するのは…ダノンザキッドとキラーアビリティです!どっちもホープフルS以降にG1勝てていない馬ですのでここで勝って欲しいな~。

勝ったのはジャックドール…ダノンザキッドは3着。お疲れ様でした。

今回の話ですが、ぶっちゃけ育成キャラ実装前にシンボリクリスエスを出していたため本家とはかなり異なるキャラへとなっていました。ゼンノロブロイを育成した時にちょっと補完した話を書きたくなりました。

…まぁ、私の作品で出したウマ娘って結構キャラ崩壊しているので今さらな話かもしれないですが。本家へのリスペクトは忘れていないのでそこはご安心を…どうぞ!


ある日、シンボリクリスエスは自分の部屋にて目が覚めた。そして天皇賞(秋)に向けて、いつも通りにトレーニングの準備をしようとするとある違和感を覚える。

 

「???ここは…私の部屋の筈だ?しかし…何かが可笑しい?…これは冬のパジャマか?」

 

1つ目は自身の付けていた寝間着。秋が始まったといえ、今の時期にはあまりにも分厚かった。

 

「…ん?」

「ラモーヌ!?…いつ戻ってきたんだ?」

「何言ってるのクリスエス?昨日は同じ時間に眠ったわよ?」

「…メジロ家での療養は済んでいたのだな。」

「???」

 

2つ目は同室の存在。メジロラモーヌは現在、学園には来ているものの体調不良により寮からは離れての生活となっていた。

 

「…ねえ、クリスエス。」

「どうした?」

「貴方、誰?」

 

3つ目…それはこの世界でのシンボリクリスエスの認識であった。

 

ーーー

 

数分後の生徒会室にて、シンボルルドルフはシンボリクリスエスと話をしていた。

 

「…なるほど。君は現在、トゥインクルシリーズにいると認識しているんだね。」

「あぁ。」

「現在は宝塚記念が終わり、秋のG1レースに向けての時期だと…」

「そうだ。…G1レースに私は勝たないといけない。」

「…。クリスエス、落ち着いて聞いて欲しい。君は今…ドリームシリーズのウマ娘だ。君のトゥインクルシリーズは何年も前に終わっている。」

「…!」

「そして…私たちが知っている君は…もう少し堅い口調をしていたよ。」

「???意味が分からない。」

「…いや、まずはレースの方に話を戻そう。君の次のレースは天皇賞(秋)だと聞いた。しかし、前走が宝塚記念とも聞いた。…つまり、クラシック期に天皇賞(秋)に出走したということでいいのかな?」

「あぁ。だが…復帰したアグネスタキオンに敗れての2着だ。」

「ーーーアグネスタキオンが復帰!?」

「…なるほど。私の認識と異なることがたくさんあるようだ。ルドルフ、詳細を教えてくれるか?」

「あ、あぁ…」

 

………

 

「…私が天皇賞(秋)と有マ記念をそれぞれ連覇か。…信じられないな。」

「私としてはアグネスタキオンの復帰が1番の驚きだよ。しかもダート路線に変更してアメリカのG1レースも勝っただって?…クリスエス、君を疑いたい訳では無いが…とても信じられないよ。」

「…」

「情報を共有したところで…まずは今後について考えよう。君のトレーナーにも来てもらうとして…今の君の実力を見ておきたい。準備が出来たらグラウンドまで来てくれるかい?」

「分かった。」

 

ーーー

 

シンボリクリスエスがストレッチをしていると、背後から誰かに抱きつかれる。

 

「クリスエス!」ダキッ

「…ノリカか。」

「私のことは分かるのね?良かった…」

「…私は本当にG1レースを勝てたのか?」

「…うん?」

「どうした?やはり変なことを聞いて…」

「ううん。そこじゃないの…何と言うか…日本語上手くなった?」

「…ん?まだまだ勉強中だ。…いや、その辺りも違うのかもしれないな。ノリカ、慣れてくれ。話を戻そう…私は本当にG1レースを勝ったのか?」

「それはもう!凄いレースだったよ!日本中があなたに大絶賛だったんだから!」

「…そうだったのか。…それは一体、どんな景色だったのだろうか?」

「クリスエス…」

 

シンボリクリスエスは無表情で上を眺める。そんな様子にどこか悲しみを感じたのかノリカの口が止まる。そのタイミングでシンボリルドルフが現れた。

 

「待たせたねクリスエス。」

「…問題ない。」

「さて、コースは空いているだろうか?」

「…あれは…アグネスタキオンと…誰だ?」

「クリスエス、分からないのか?彼女はジャングルポケットだよ。」

「…ジャングルポケット?…私が知ってる彼女と違う。」

 

「おい、そこ!聞こえてんぞ!」

 

ジャングルポケットが大声を上げてシンボリクリスエスのそばへ寄る。そして、そのまま胸ぐらを掴んだ。

 

「クリスエス…さっき何言った?俺を知らないだ?2度も同じレースで走っただろうが…それともあれか?俺ごとき眼中に無いと言うのか?あぁ?」

「やめてジャングルポケット!彼女は今、記憶が無い状態なの!」

「嘘つけ!タキオンのことは知ってただろうが!」

「…アグネスタキオンは今はアメリカにいる筈だ。」

「あん?目の前にいるのが見えるだろうが!適当なことを抜かすんじゃねえ!」

 

ノリカが宥めようとするもジャングルポケットが耳を搾り、シンボリクリスエスを睨む。それに対してシンボリクリスエスは無表情で視線を返すだけだ。

 

「まぁまぁ…ポッケ君。少し話を聞こうじゃないか。クリスエス君、記憶が無いとか私がアメリカにいるとか聞こえたが…何があったのかな?」

 

アグネスタキオンが光の無い瞳を向ける。シンボリクリスエスは説明を始めた。

 

………

 

「そんなことがあったのか。記憶喪失…じゃないんだろうが、その…悪かったよ。」

「…ジャングルポケット、こちらも不快にしてすまなかった。」

「私がトゥインクル復帰にダート路線への変更か…実に興味深いな。」

「…アグネスタキオン、君はとても強かった。…今の私は君を越えることが目標だ。」

「私は直接対決していないのだがね…これは推測だがクリスエス君、君は別世界の記憶が入ってしまったようだ。」

「別世界の記憶…?」

「アグネスタキオン、彼女を治せる方法はあるかな?」

 

シンボリルドルフの問いにアグネスタキオンは少し考え込む。

 

「ここで言う治す、とはこちらの記憶を思い出すということかな?それとも彼女の認識をこちらに合わせていくということかな?どちらにしろ…私には専門外の話だが。」

「やはりそうなるか。」

「…そうか。…いや、ゆっくりとこちらに馴染めばいいだけのことだ。」

「クリスエス…」

「話はまとまったね。クリスエス、まずは今の君の実力を見せてくれ。」

「…了解した。」

「あー、俺も一緒に走ってもいいか?」

「私も協力しよう。」

「…よろしく頼む。」

 

そして、4人は走り出した。

 

ーーー

 

レースが終わった4人はノリカを加えて再び話を始めた。

 

「…驚いた。これが今のクリスエスにとってのトゥインクルでの走りかな?」

「…その通りだ。…いつもの体とは違うが…走りやすい。…未来の私の体だからだろうか?」

「確かに…何時もと違うわね。まるで別のトレーニングをしてきたみたいだわ。」

「…ノリカ、私の普段の練習メニューはあるか?」

「えぇ、これよ…」

 

ノリカから渡された内容を確認したシンボリクリスエスの顔が少し歪む。

 

「…!合同練習が少なくなっている。」

「え?えーと、その…あまり組んでくれるウマ娘がいなくて…」

「…シャカールやロブロイもか。」

「ロブロイちゃんとは時々してるよ!…エアシャカールとは無かったけど。」

「となれば…ファインやフライトもいないのか…」

「ちょっと待ってくれ。…今、誰の名を呼んだ?」

「…ファインモーションとアグネスフライトだ。」

「…何故彼女の…アグネスフライトの名が出てきた?」

「…普段から共に走ったからだ。…私の知る世界では復帰した君に唯一勝った相手だ。」

「…ハ、ハハハ!冗談だろ?事実だとしても気分が悪い話だ。」

「…」

「いや、君の中の認識での話だと分かっている。しかし、それ理解した上で…最悪に不愉快だ!…私はもう行こう。クリスエス君、君の記憶が元に戻るまで…私の視界に入らないでくれ。」

 

アグネスタキオンはその場を去っていく。ノリカが…いや、全員が目を丸くしシンボリクリスエスを見つめた。

 

「…何か不味いことを言ってしまったか?」

「不味い、じゃないよ…」

「無知蒙昧…クリスエス、彼女に姉の話をするのは最悪のタブーだよ。」

「お前…本当にここでの記憶が無いんだな。」

「…」

 

シンボリクリスエスは無表情のまま、下を向いた。



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第72話 漆黒の帝王の奇妙な体験 後編

後編です。

…気がつけばこの作品も1話を投稿してから1周年を迎えてました。完結までよろしくお願いします。


シンボリルドルフたちの模擬レースが終わり解散となったため、シンボリクリスエスはそのまま自分の部屋へと戻ってくる。

 

「…」

「あら、かなり落ち込んでいるのね?」

「…ラモーヌ…邪魔になったな。…すまない、すぐに部屋から出て…」

「じっとしていなさい。」

「?」

 

メジロラモーヌがシンボリクリスエスの顔へと触れ、見つめる。

 

「…酷い顔。でも…温かい。」

「??」

「今日はもう眠りなさい。」

「???…あぁ。」

 

シンボリクリスエスはメジロラモーヌに言われた通りベッドで眠りについた。

 

………

 

次の日、シンボリクリスエスはノリカとメジロラモーヌと共に練習場へと来ていた。

 

「…ラモーヌと走るのか?」

「そうみたいだね。」

「えぇ、今の貴方なら…私を燃やせそうだから。走れる?」

「…私は問題ない。すぐに準備してこよう。」

「貴方…追い込みは出来る?」

「え?急に何言ってるの!?」

「…見様見真似で得意ではないが不可能ではない。」

「いいわ、2200mを1本…貴方は追い込みで来て。」

「いや、勝手に決めないで!」

「…分かった。」

「クリスエス!?」

 

そして、そのままメジロラモーヌとの模擬レースが始まった。

 

「…」ダッダッダ

「…」ダッダッダ

 

シンボリクリスエスは足を溜める走りをしているため、メジロラモーヌとの差はどんどん広がっていく。しかし、シンボリクリスエスに焦る様子はなく…最後の直線へと入った。

 

「…ここ!」

 

ダンッ

 

2人だけのレースには必要ないほどの大外からシンボリクリスエスは仕掛け、メジロラモーヌへと迫る。そして…

 

「…」ピッ

「お疲れ様。随分と遅かったわね。」

 

大敗した。そのままノリカとメジロラモーヌの元へと歩く。

 

「…すまない。…練習相手になれなかったな。」

「いや、当たり前…」

「次が本命よ。」

「…本命?」

「来たわ。」

 

「…ウォームアップとは随分と精が出るじゃないか、ラモーヌ君?」

 

アグネスタキオンが現れた。

 

「ー!…アグネスタキオン、昨日はすまなかった。」

 

「ラモーヌ君、さっさと模擬レースをしようじゃないか。条件は?」

「2400mを1本。クリスエスと走ってもらうわ。」

 

アグネスタキオンはシンボリクリスエスを無視し、メジロラモーヌへと話す。

 

「…ハハハ、話が違うじゃないか。私は君と走るために来たんだ…ふざけているのか?」

「ふざけているのはどっち?それに貴方と走るとは言ったけど…それが今日とは一言も言ってないわ。」

「…ラモーヌ?話が見えてこない…」

「私からは以上よ。もう話すことはないから。」

「はぁ…分かったよ。クリスエス君、昨日の話は無しだ。君が元に戻るまで私に出来ることをしよう。まずは目の前の模擬レースと行こうじゃないか。」

「あ、あぁ…」

「クリスエス!…貴方の好きに走ってきて!」

「…分かった。任務を遂行する。」

 

シンボリクリスエスとアグネスタキオンがゲートへと向かい…模擬レースが始まった。

 

………

 

「…」ダッダッダッ

「…」ダッダッダッ

 

シンボリクリスエスは先ほどと同じ追い込み脚質を取っていた。それにより先行脚質のアグネスタキオンとの差はどんどん広がっていく。メジロラモーヌと走った時と同様に焦ることなく最後の直線へと入った。

 

「ーここっ!」

 

ダンッ

 

先ほど同じくかなり大外から仕掛けアグネスタキオンへと迫る。そして…

 

「…私の勝ちだ。」

「ーー!?」

 

より直線が長くなったコースにてアグネスタキオンを半バ身程差しきりゴールした。

 

ーーー

 

「…ふふふっ。」

「メジロラモーヌ…これも貴女の考えなの?」

「さあ?私はもう行く…っ!?」

「何アレ!?」

 

………

 

「…アグネスタキオン、改めて謝罪させて欲しい。昨日は不快な話をしてすまなかった。」

「…私もそろそろ本格的に向き合うべきなのだろう。」ボソッ

「…アグネスタキオン?」

「何でもないさ。さっきの走りといい…本当に君は姉と関わりがあったようだね。…クリスエス君、教えてくれ。君の知る世界の私の姉は…アグネスフライトはどんなウマ娘だ?」

「…風紀委員でルドルフに次ぐ、トレセン学園の顔だ。」

「…プッ、アハハハ!そんな世界も存在するんだねえ。アハハハ…久々にこんなに笑ったよ。」

「…そう…なのか?」

「おっと、無駄話はここまでだ。君のこれからのプランを立てないといけない。しかし…君の知る私についても教えて…ん?」

 

アグネスタキオンの言葉が止まり、上を見上げる。シンボリクリスエスも同じく目線を向けると…空から自分に向かってゆっくりと何かが落ちてきていた。それを両腕でやんわりと受け止める。

 

「君のぱかプチか?いや、これは…折紙で出来ている?」

「…ジャングルポケットが作ったのか?」

「ポッケ君が?…いや、君の知るジャングルポケットは別人だったね。」

「…何故、空から…!!?」

 

シンボリクリスエスが持ったぱかプチが突然に輝きだし、周囲が光へと包まれる。シンボリクリスエスの目に最後に見えたのは…いつも共に練習をしていた仲間たちだった。

 

ーーー

 

「ーーーースさん!クリスエスさん!」

「…む?」

「あっ、起きてくれました!良かったです~!」ダキッ

「…ロブロイ。」

「ったく、急にぶっ倒れるもンだからこっちも肝が冷えたわ。」

「…シャカール。」

「良かったよクリスエス!」ダキッ

「…ファイン。」

「クリスエス!俺に酔わずして…何故眠ってしまった!あぁ、だが目覚めた以上は再び俺に酔い潰れる日も近い!」ダキッ

「…ギムレット。」

 

目が覚めたシンボリクリスエスの前にはゼンノロブロイ、エアシャカール、ファインモーション、タニノギムレットの4人。

 

「…そうか…私は倒れてしまっていたのだな。…体調管理には気をつけていたつもりだが…」

「天皇賞(秋)が近ェから焦っていたのか?」

「…」

「ッたく、図星かよ。お前らしくもねェな…とりあえず保健室に行ってこい。お前のトレーナーも呼んだからたっぷり叱ってもらえ!」

「…あぁ。」

 

シンボリクリスエスは練習場を後にした。

 

「…あれ?これって…クリスエスさんのぱかプチ?折り紙で出来ているから…ジャンポケさんが作ったのでしょうか?でもどうしてこんな所に…」

「あぁん!?まさかボリクリが持ってきて…たりしてねェよな。…何時からあったンだ?」

「持ってたら目立ちますしね…」

「その…ね。…言いにくいことなんだけど…」

「ファインさん?」

「クリスエスが起きる直前には側にあったの。ギムレット、最後に来てたけど持って来たりした?」

「悪いが俺も知らないな。」

「おいおい…まさか…」

 

エアシャカールの顔が青くなった。

 

ーーー

 

保健室にてシンボリクリスエスはノリカに1時間の説教を受けた。その内半分以上は泣きながも目覚めた安堵を喜ぶ言葉だったが…今のシンボリクリスエスにはかなりの効果はあったのか顔を下へと向けていた。

 

「何時ものメンバーが駆けつけてくれて良かったよ…あ、アグネスフライトはもういなかったっけ?」

「…そういえばさっき見なかった。」

「アグネスタキオンと一緒にアメリカに行ったらしいよ。」

「…アグネスタキオン、か。」

「…今後の対決を考えると次の天皇賞(秋)は絶対に勝たないといけないね。」

「…勿論だ。」

「でも、無茶はしたらダメ。今回のようなことがまたあったら私は…」

「…すまなかった。…ノリカ、少し話を聞いてくれるか?」

「うん?それは勿論いいけど…クリスエスから何て珍しいわね。早速聞かせて。」

「…これは倒れていた時に見た夢の内容だが…」

 

シンボリクリスエスは先ほどのことをノリカへと語る。その顔は相も変わらず無表情ではあったが…楽しさが感じられた。




続きを書いたらまた投稿します。


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第73話 魔性VS紅玉、アメリカにて貴公子たちは…

どうも、昨日の阪神牝馬Sで『サブライムアンセム』を2着に入れてたら100万円ゲット出来ていた作者です。…何故、3着だけに入れてしまったのか………くっ!後、『マンダリンヒーロー』がアメリカのG1でハナ差の2着だったとか…すげっ!

今日は桜花賞ですね。『リバーラ』が出なくなったためサトノダイヤモンド産駒の『シンリョクカ』が参戦ですね!私が応援するのは…『ブトンドール』、『コンクシェル』、『コナコースト』、『シンリョクカ』、『ドゥーラ』、『ジューンオレンジ』、『ラヴェル』…応援って規模じゃないですね。…まぁ、キズナ産駒、ジャスタウェイ産駒、キタサンブラック産駒は基本的に応援しているので…はい!頑張ってください!

勝ったのは…やっぱり…『リバティアイランド』。『コナコースト』は2着でした。お疲れ様。


場所はアメリカ、ロサンゼルスのとあるホテル。今回はトレセン学園により全てが準備がされていた。そんな所に力尽きた男が1人。

 

「かぁ……あ……」チーン

「じいちゃん、ここで寝るな。邪魔。」

「フライト…いや……機内でずっと……ラモーヌ嬢が近くて……」

「ふーん、うまぴょいしたんだ?」

「するか!眠れんかっただけだ!……ったく、この耳年増が。お陰で目が覚めたわ。」

「ーーなっ!誰が耳年増だ、このクソじじい!私にだって好きな人くらいいるし!」

「…ソウジか?」

「えっ…?あぅ……その…」もじもじ

「分かりやす過ぎだろ。適当に休んだら部屋に戻るから俺のことはほっといてくれ。」

「……早くしないとあの2人に連れ去られるかもね。」チラッ

 

アグネスフライトが目線を向けた先にいたのはタブレットを操作しつつ執事と話すダイイチルビーとコーヒーを片手に1人で読書をしているメジロラモーヌ。2人とも目立つ場所ではないものの確実にチヒロの居場所を把握出来る位置にいた。

 

「…俺、レディの所に無事に帰れるかな?」

「無事じゃなくてもいいんじゃない?その方がばあちゃんは喜ぶと思うし。」

「は?」

「ほら、ばあちゃんってXXXX好きじゃん。ルビーちゃんとラモーヌちゃんによるアメリカでのじいちゃん争奪戦の様子、聞かせてあげようかなって。」

「何それ!?数十年も一緒にいて初耳だが!?てか、何でお前はそんなこと知ってんだよ!」

「忠告はしたから…じゃあね~」

「待てフライト!嘘だよな?嘘だって言ってくれ!このままだと俺、普通にレディの顔が見れなくな…」

 

アグネスフライトはチヒロを置いて去っていく。そして…2人のウマ娘の目が光った。

 

ーーー

 

一方のアグネスタキオンはアグネスワールドとケイエスミラクル、アジュディケーティングらと共に練習をしていた。

 

「はぁ…はぁ…これが君たちの実力か…嘘だろ?映像よりもずっと速いじゃないか。」

「当主の旦那様。機械音痴。多分スロー再生。してた。」

「いや、流石にないと思うけど…でも、これならあの方に…」

「あの方?」

「毎年BCスプリントのみに出走しているドリームクラスのウマ娘だよ。私の現役時も含め…もう何度も連覇し続けている猛者だ。」

「ケーティングさんの現役からって…そんなにも長く!?…どうして日本にいるおれ達にも声がかかったのでしょうか?」

「それは…」

 

アジュディケーティングの言葉が詰まる。替わりにアグネスタキオンが口を開いた。

 

「なるほど、読めてきたよ。そのウマ娘が強すぎて誰も参加しなくなったんだね?」

「…そうだ。運営はヨーロッパやアジアにも声をかけたらしいが…チヒロ以外はダメだった。」

「当主の旦那様。お人好し。」

「へー、そんなんだね。」

「…何で孫の君は知らないんだよ。」

 

「タキオン、準備はいいか?」

「カメラの固定完了ね!待たせたね!」

 

そうこうと話している間にソウジ(*骨折完治済)とタイキブリザードも合流してきた。

 

「じゃあ、タキオンはブリザードと模擬レースをしてきてくれ。俺はスプリント組の調整を行う。」ゴクン

「了解ね!タキオン、レッツゴー!」

「あぁ、よろしく頼むよ。」

 

ソウジは『ダイヤマイト』の『ウマ人』となりアグネスワールドたちと短距離用の練習場へ、アグネスタキオンはタイキブリザードと中距離用の練習場へと向かう。それぞれのブリーダーズカップに向けての練習を再開した。

 

ーーー

 

「(部屋に戻るか…現状維持か…)ん?フライトの奴、スマホ忘れていきやがって…タキオンからか?どうした?いや、フライトが忘れていってな…」ピッ

 

ホテルのフロントで留まっていたチヒロは電話に出る。

 

「…何、ケガ人だと!?すぐに行こ…う?」ガシッ

「お待ちを。」

 

チヒロが大声を出し、立ち上がる。するといつの間にか側にいたダイイチルビーに手を掴まれる。

 

「ルビー嬢、俺は急がねば…」

「…これを。トレーニングで起こるケガの応急処置に必要な物は全て入っているかと。」

「おぉ!ありがとう!では、行ってこよう!」

 

ダイイチルビーはチヒロに鞄を渡し、ホテルから出るのを見送った。

 

「あら?一緒に行かなくていいの?」

「…まだするべきことがありますので。」

「そう。私は行くわよ?」

「…」

 

メジロラモーヌもチヒロを追い、ホテルを後にした。

 

………

 

チヒロはメジロラモーヌに担がれ、練習場まで着く。

 

「おい、誰がケガを…」

「オゥ!サンキューね!」

「………お前だったか。」

「おじいちゃん、最後まで私の話を聞かないからだよ。」

 

その場にはアグネスタキオンと足首が変色したタイキブリザードがいた。急いでチヒロが容態を確認する。

 

「これは…捻挫だな。ラモーヌ嬢、鞄…」

「はい、保冷剤とタオル。後はテーピング用の包帯。」

「…何から何までありがとう。」

 

チヒロは適切な処置を行う。

 

「うぅ…タキオン、模擬レース中だったのにケガしてごめんね。」

「君が走るのも久々なのもあるだろうが…日本とはバ場も異なるから仕方ないさ。…さて、トレーナー君はしばらく来ないだろし…どうしたものか。」

「…何でソウジの奴、タキオンから目を離してんだよ。BCスプリントの奴らは適当でいい、って言っておいたのに…」

「トレーナー君は…本気で彼女らを勝たせるつもりみたいだよ。」

「キャットも含めてか?…ハハハ、知らないってのは幸せだな。」

「…おじいちゃん、ドリームでのBCスプリントで連覇し続けているウマ娘は一体誰なんだ?」

 

チヒロはしばらく黙ったままでいたが…口を開いた。

 

「ソイツの名前は『フォアゴー』…トゥインクルを引退して20年、ドリームのBCスプリントを連覇し続けている猛者だ。」

「20年だって!?」

「…流石はアメリカ歴代でも10本指に入る名ウマ娘。…でも全盛期ほどでの実力は無いのでしょ?」

「知ってたかラモーヌ嬢。…アイツは毎年、このBCスプリントのみに出走している。1年の全てをそこに出しきっているようだな。」

「さっきケーティング君もそう言っていたような…」

「話に水を差すようで悪いけど…タキオン、練習はいいの?私のケガが原因だけど…ソウジ呼ぶ?」

 

タイキブリザードに言われ、アグネスタキオンは体を伸ばす。

 

「…おじいちゃん、教えてくれてありがとう。ブリザード君を連れてホテルに戻ってくれるかね?」

「1人で走る気か?ったく、せっかくだ。久々に俺が見てやる。ラモーヌ嬢、ブリザードを…!?」

「…」

 

チヒロが…いや、アグネスタキオンとタイキブリザードの目も丸くなる。先ほどまで私服であったメジロラモーヌが既にジャージへと着替え終わり、ストレッチを始めていたからだ。

 

「ラモーヌ嬢…いつの間に…」

「鞄の中には運動着や蹄鉄もあった…私がブリザードの代わりをするわ。チヒロ様、ご指導を。」

「…タキオン、確認だが模擬レースをしてたんだよな?」

「あ、あぁ…」

「タキオンはラモーヌ嬢を相手に模擬レースだ。ブリザード、そのままの体勢でいい…ストップウォッチでタイムを測ってもらえるか?」

「了解ね!」

「気づいたことは後でソウジに俺が伝えるから…合図をしたら走ってくれ。ラモーヌ嬢、病み上がりだ…無理はするなよ?」

「えぇ。…ふふふ、アメリカのダートコースってどんな感じかしらね。」

 

こうしてチヒロの指導の元、アグネスタキオンの模擬レースが行われた。結果はメジロラモーヌが途中で力尽きて伸びず、アグネスタキオンの快勝。その後、ソウジらが合流し一悶着があったものの…ソウジがタイキブリザードを、チヒロがメジロラモーヌを背負い全員がホテルへと戻る。そして…ソウジの足はまた骨折していた。




フォアゴー(Forego)…アメリカの鹿毛のセン馬。57戦34勝(内G1を14勝)し、3年連続でエクリプス賞(*アメリカ版年度代表馬)を勝ち取った。同期にはアメリカの大名馬セクレタリアト(Secretariat)、大種牡馬ミスタープロスペクター(Mr.Prospecter)などがおり、セクレタリアトとはケンタッキーダービーで1度だけ対決するも2着に31馬身をつけたセクレタリアトの圧勝、フォアゴーは4着と敗れた。セン馬なため産駒はいないが、フォアゴーS(BCスプリントのステップレース)というレースで名を残すこととなった。
余談だがフォアゴーの日本の同期はハイセイコー。ウマ娘として最古参であるマルゼンスキーは彼よりも4年遅く生まれていたが…彼よりも引退は早かった。(マルゼンスキーは1977年7月、フォアゴーは1978年7月がラストラン)

ーーー
▼登場人物にフォアゴーが追加されました


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第74話 執事は戦勲章(with銀河)を元気付ける、奇跡の絶望

…タキオンの別衣装がみたい。バニーとかメイドとか水着とか着ぐるみとか…露骨に萌えっ!、って感じのやつがみたい。…公式の実装を待つしかないですね。


場所は盛岡レース場…G1レース『南部杯マイルCS』が開催されていた。

 

『アドマイヤドン!

アドマイヤドン強い!

アグネスデジタル、イーグルカフェらを突き放す!

1着はアドマイヤドン!

強い!』

 

「…はぁ…はぁ…、地獄での…成果…みてくれた…ベガ姉ェ…」ガクッ

 

アドマイヤドン、勝利。

 

………

 

さらに数日後の京都レース場、G2レース『京都大賞典』にて…

 

『さぁ、タップダンスシチーが先頭をキープしたままだ!

ここまでずっと2番手のヒシミラクル、仕掛けてきたか?

しかし、伸びない!

いや、伸びてはいるがタップダンスシチーに届かない!

勝ったのは…タップダンスシチー!!

重賞3勝目!!』

 

「ソイヤ!ソイヤ!ソイヤ!よっしゃー!!」

 

タップダンスシチー、勝利。

 

ーーー

 

数日後のトレセン学園、ウォーエンブレムは真っ白になっていた。

 

「『ゴアさん…ゴアさん…』」チーン

「『ウォーエン、ゴアはまだ数週間は戻ってこないわよ…しっかりしなさい。』」

「…意外と頬っぺたは柔らかい☆」ツンツン

 

原因はイージーゴアが帰国してしまったからである。意気消沈としたウォーエンブレムの頬をネオユニヴァースがつつく。

 

「『全く…しょうがないわね。何か元気になる方法は…あ!』」

 

何かを閃いたペイザバトラーが動き出した。

 

………

 

そして…ペイザバトラーに呼ばれたウォーエンブレムはくっついたネオユニヴァースを引きずりつつ練習場へと向かう。

 

「『バトラーさん、どうしたのだ…ろ!?おぉ!!』」

 

ウォーエンブレムは目の前の光景に目が輝く。ゲートに向けて栗毛のウマ娘たちが歩いていたからだ。

 

ーーー

 

『ピスピース!お前ら、ぱかチューブを見てくれてありがとな!ついに登録者100万人を突破したぜ!ってことでこれからもよろしくな!』

『…ゴールドシップさん、何の話をしてるのですか?』

『マックイーン!いや~、お前の誕生日にこんな感じの特別レースの話を投稿したかったが…何やかんやあって出来なかったからゴルシちゃん、お前を祝うことが出来なかったんだ。』

『はぁ…?私の誕生日は半年も前には済んでおりますわ。あなたからも普通(?)に祝っていただきましたわよね?』

『それはそれ、これはこれ!とりあえず、杏仁豆腐を作ったから後で一緒に食べようぜ!』

『何故に杏仁豆腐を…いえ、せっかくの手作りスイーツです。いただきますわ。』

『おっと、余計な発言はここまでだ!今日は…ウォーエンブレムホイホイな栗毛のウマ娘たちによる特別レースを行うぜ!』

『まぁ、実際にペイザバトラーさんによる開催ですからね。条件は…天皇賞(秋)をイメージに芝2000を左回りとのことです。』

『おっ?ウォーエンブレムの姿も見えてきたな!んじゃ、出走メンバーの紹介だ!』

『ネオユニヴァースさんも付いているのですが…2冠ウマ娘でこれでいいのでしょうか?』

 

『気にするなって。1番、ナリタトップロード!』

『…早速ウォーエンブレムさんが虹色に輝きだしました。』

『まだだマックイーン!アイツの栗毛愛はそんなもんじゃねぇ!』

『あれは最初からクライマックスでしょ!…ですわよね?』

 

『それはどうかな?2番、マーベラスサンデー!』

『その場で回転し始めましたわよ!栃栗毛でも範囲内(ストライクゾーン)ですのね!』

 

『3番、マチカネタンホイザ!』

『表情が笑顔と興奮が交互に繰り返されて怖いのですが?』

 

『4番、サイレンススズカ!』

『…何か音楽が聞こえてきませんこと?』

 

『5番、バンブーメモリー!』

『『○○たま♪私の息子よ♪』…って何かお下品なワードが聞こえてくるのですが!?』

 

『6番、サクラローレル!』

『…あれ?回転が止まって…震え始めた?』

 

『7番、イクノディクタス!』

『ウォーエンブレムさんが3人に増えました!?』

 

『8番、ミホノブルボン!』

『分裂した1体が倒れた…いや、そこから出てきた半透明のウォーエンブレムさんが出走者たちを囲むようにグルグルと動いてますわ!』

 

『9番、ゴールドシチー!』

『もう1体が倒れてまた半透明のウォーエンブレムさんが…今度は巨大化!?』

 

『10番、マチカネフクキタル!』

『最後の1体も倒れた…だけですわね。』

 

『11番、ユキノビジン!』

『普通に倒れた本体(?)が血を吐いてますわ!?』

 

『12番、グラスワンダー!』

『…え?何か瞬く間に全部元通りに戻ったかと思いきや…急に真顔になって正座し始めたのですが…怖っ!』

『トラウマが蘇ったんじゃね?この前グラスをナンパした時に薙刀…』

『撃退されたのですね。』

『いや、逆に薙刀の方が壊れちまった。』

『えぇ!?』

『で、戦意喪失したグラスが汗ダラダラでその場で動かなくなって、ウォーエンブレムもどうしたらとオロオロしちまってよ。結局は垂れてきたグラスの汗の臭いに興奮して担いで連れ去ってるところに駆けつけたエルコンドルパサーがバックドロップ!とどめにフライトがスタンガンで締めて解決!って感じだ。』

『結局は己の欲望に負けたのですね…あら?今の話にトラウマになる要素は皆無では?』

『いや、後で直したとはいえグラスの薙刀を壊してしまったことがトラウマらしい。いやー、あの時のグラスの泣き顔…フライト曰く超可愛かったから味見で我慢した私を褒めて、らしいぜ。』

『味見?………後半は聞かなかったことにしましょう。それにしても武器が壊れるって…ウォーエンブレムさんはどのようなトレーニングをしてきたのでしょうか?』

『まぁ、グラスの持ってたのは厚さ10cmのコンクリートの壁を切れるくらいの物だしな。』

『それって充分に業物では?…ウォーエンブレムさんって本当にウマ娘なのでしょうか?』

『んなこと言ったらフライトもどうなんだよ。』

『フライトさんは…えーと…ノーコメントで。』

 

『紹介に戻るぞ。13番、ヤエノムテキ!』

『…再び虹色に輝きましたわね。』

 

『ラスト、マヤノトップガン!』

『栗毛LOVEの団扇を持つことで落ち着きましたわね。…ラストですか?アメリカに行ったアグネスタキオンさんとフライトさん、エアグルーヴさんに捕まっているシンコウウインディさん、中距離適性のないタイキシャトルさん、マイルCSが終わったばかりのデジタルさんらはともかく…テイエムオペラオーさんがいないのは何故でしょうか?』

『あぁ、例の5本勝負以降ウォーエンブレムが怖いかららしいぜ。』

『…グラスさんといいあの覇王までを恐れさせるなんて…』

『んじゃ、ゲートに向かってくれ!』

 

各ウマ娘たちはゲートへと向かう。そして、ゲートが開かれた。

 

ーーー

 

『スタートしたぜ!バラついてる気もするが…派手な出遅れは無いのいいスタート!先頭に来るのは…やっぱりサイレンススズカだ!ミホノブルボンがそれに続く!ヤエノムテキ、ナリタトップロードが3番争い。5番目にはユキノビジン、2バ身程間が空いてマヤノトップガン!』

『さらに1バ身後ろは…内からサクラローレル、ゴールドシチー、バンブーメモリーに続いてグラスワンダー、マチカネタンホイザが固まっておりますわ。そしてイクノディクタス、マチカネフクキタルが並んで、最後方はマーベラスサンデー。…サイレンススズカがかなり飛ばしていますわね。』

 

『結構縦長な展開だな。ミホノブルボンも同じペースでサイレンススズカに続いている!ナリタトップロードが3番手、ユキノビジン、ヤエノムテキが並んで…マヤノトップガンが外に出てきたか?まだ最終コーナーまでは遠いぞ!』

『さて…後方の集団は…バンブーメモリーがやや前に出てますわ。続いてサクラローレル、グラスワンダー。ゴールドシチーは後退気味でマーベラスサンデーがペースを上げ…あら、もう先頭のサイレンススズカは最終コーナーですわね。』

 

『さぁ、最後の直線!サイレンススズカがこのまま逃げきるか?2番手にはミホノブルボン、すぐ後ろにナリタトップロードが並びにかかる!マヤノトップガンも伸びてきているが…これはどうなる?』

『後続の集団もペースを上げてきましたわ。その中から抜け出してきたのは…サクラローレル!バンブーメモリーとグラスワンダーをかわし、外からサクラローレルが迫ります!』

『残り200!先頭はサイレンススズカ、ナリタトップロードが捉えようと伸びる!外からサクラローレル!!外からサクラローレルが突っ込んできている!しかし…サイレンススズカが逃げ切ってゴールイン!2着にナリタトップロード、3着にサクラローレル!』

 

「おおぉぉぉお!!」

 

パチパチパチパチ

 

『ウォーエンブレムからの拍手がこっちにまで聞こえてきそうだ!』

『えぇ、見事な逃げでしたわね。ウォーエンブレムさんは…あぁ、拍手しながらデジタルさんみたいに幸せそうな顔で気絶していますわ。』

『ネオユニヴァースが体を揺すってるけど…まぁ、成功ってことで…いいんじゃね?じゃあ、お前ら!またな~!』

『ゴールドシップさん!杏仁豆腐!杏仁豆腐をお忘れなく!』

 

ーーー

 

「『はぁ…最高ぉ…』」

「ユーニヴァースなレースだったね☆」

「『ウォーエン、ちょっとは元気出た?』」

「『うん…バトラーさん、ありがとう!…ちょっと走りたくなってきたよ。』」

「本当!?じゃあ、私のトレーナー呼んでくるから一緒に走ってよ☆」

「『いいよ………あれ?お前って英語分かるの?』」

「あ…ユーニヴァース☆」

「『誤魔化すな!』」

 

その後、ウォーエンブレムと併走トレーニングをするネオユニヴァースの姿が見られた。

 

ーーー

 

「今回の模擬レースは差し脚質のウマ娘が多くて完全にスズカさんのペースに…あ、ミラクル!」

「…トプロ先輩?練習帰りであるか…お疲れ様である…」

「はい、お疲…!!その右足…」

「…前のレースの後に検査したのである。結果は………マックイーン殿やアヤベ殿と同じケガである。我輩…もう…」

「…」

「タキオン殿と…もう一度だけ…勝負したかったな…う、うぅ…」

「…」ダキッ

 

ヒシミラクルは涙を流す。ナリタトップロードはそんな彼女に何も言えず…ただ、抱き締めた。



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第75話 BCスプリントにて海外弁慶は黄金の風と再会する

タキオン、ハッピーバースデー!とりあえずサラコレの君のマスコットを5個取ってきましたよ。リュックとベッドと…他のはどこに付けるか後で考えておきましょう。

まぁ、今回は君がメインの話では無いのだけどね…どうぞ。


サンタアニタパークレース場…本日、ドリームシリーズでのブリーダーズカップが行われる。そして、BCスプリントに出走する5人がパドックへと入ってきた。

 

「うぇーい!ミラクルかましちゃえ!ぶぶぶぶーん!!」

「ワールドちゃん~、頑張れ~!」

 

観客席は既にほぼ満員…日本のウマ娘が応援される中で…

 

「『フォアゴー、今年も勝てよ!』」

「『ジャパンのウマ娘に負けるなよアメリカ大将!』」

「『まだお前の伝説を見ていたいんだ!!』」

 

圧倒的にアメリカのウマ娘『フォアゴー』を応援する声が多かった。

 

ーーー

 

『さぁ、ドリームトロフィーシリーズのブリーダーズカップが今年も始まります。

まずはBCスプリントから…今年は何と5名も参加しております!

紹介していきましょう、まずはこのアメリカでトゥインクルを走りきり、現在は日本でトレーナーをしている…『アジュディケーティング』!!』

『G1を2勝した実力者です。

早めの引退が残念でしたが…また彼女の走る姿が見れて嬉しいですね。

今回のレースのために再登録したとのことですが…今の実力がどうなのかが気になる所です。』

 

『2人目は…『アグネスワールド』!

アメリカで生まれ、日本でトゥインクルを走っていたウマ娘です。

トゥインクル時はレコード勝ちがあったり、イギリスとフランスでG1を勝ち取るなど遠征でもかなりの成果を出しております。』

『トゥインクルのラストランはこのBCスプリントに出走していましたね。

スピードはあるので…やはり、バ場への適応力を始め、序盤の位置取り、コーナーのカーブを決めれるかが勝利のカギとなるでしょう。』

 

『3人目は2ヶ月前にトゥインクルを引退し、そのままこのレースへの出走を選んだ『コナゴールド』!

BCスプリントは今回を含め6回出走しており、レコードで勝ち取ったこともあります。』

『アグネスワールドが出走していた時ですね。

いや~、アグネスワールドにとっては因縁の相手になるかもしれません。

そして…彼女が新たなスプリント王になることにも期待したいです。』

 

『4人目は『ケイエスミラクル』!

彼女もアグネスワールド同様にアメリカ生まれで日本で走っていたウマ娘ですね。

このメンバーの中では唯一G1勝利はありませんが…トゥインクル時にレコードタイムを3度叩き出すという実力者。

ケガから何とか復帰しての出走だそうです。』

『…私は彼女の経歴を見てビックリしましたよ。

…そして、実際に彼女がケガをしたレースを見ましたが…もう2度と走れなくても可笑しくない、と映像越しでも分かる悲惨な状態でした。

名は体を表す…彼女がまた走れるのは…本当にミラクルなことなのでしょう。』

 

『最後は…我らがアメリカ、最強の生きる伝説『フォアゴー』です!

ドリームでこの大会が開かれて以降、ずっと連覇し続けてきました。

現在は20連覇でしたっけ?』

『正確には19回です。

10連覇した辺りから毎年このレースのみに出走するようになりましたね。

13回目と15回目、16回目、19回目は彼女1人だけの出走ですので連覇に入れていいのかどうか…。

ブリーダーズカップ以前のレースでも毎年G1クラスを最低1勝はしていたので、とんでもないウマ娘です。

本人は衰えた、などと言っているのですが…全くそうは見えません。』

『他のドリームでのウマ娘が引退する中、彼女はどこまで伝説を伸ばし続けるのでしょうか。』

『負けるまでは続けていくみたいですよ…例え、1人だけのレースになろうとも。』

『…以上が放送席からの解説となります。

では、レースが始まるまでもう少しお待ちください。』

 

ーーー

 

サンタアニタパークの観客席にアグネスタキオンたちはいた。

 

「もうすぐ始まるのか…」

「…そのようだね。」

「はぁ…ソウジめ。きっちりと仕上げよってからに…」

「あら?チヒロ様も指導してたわよね。」ギュッ

「…羨ましかったです。」ギュッ

「ラモーヌ嬢、ルビー嬢…離れてください…お願いします…」

「「ダメです。」」

「…」

「…」

「タキオン…フライト…知らんぷりせず助け…」

「お姉ちゃん、トレーナー君、あそこのゴールが近いところで見ようじゃないか。」

「賛成。じゃあ、ソウジさんは私が運ぶわ。」ダキッ

「フライト…恥ずかしい…」

「ケガしてるのですから諦めてください。」ガブッ

「…さりげなく噛むな。」

「ただの味見です♪」

 

アグネスタキオンたちは移動する。

 

「…俺の孫たち、冷たいな。」

「私たちが温めるわ。」

「…尻尾も追加しましょう。」グルッ

「そうね。」グルッ

「やめて…本当にやめて…」

 

ーーー

 

ダイタクヘリオスとヤマニンゼファーはケイエスミラクルと控え室で話していた。

 

「んでんで、パマちんが飛行機でネムネムな時に寝言で言ってたことがマジ激ヤバでさ~!ラモヌンが休学した理由がチヒロッピがいなくなってつらたんでお嬢とは逆に激太…」

「ヘ、ヘリオス?その話を聞くの今じゃないといけないかな?」

「……ふふふっ。ではレースの話をしましょうか。…ミラクルさん、このレースでは黄金の風があなたの走りを妨げるでしょう。」

「黄金の風?」

 

ケイエスミラクルは首を傾げる。

 

「流れに身を任せ……最後は風より速く…」

「えーと、とりま爆アゲでいけばおけまる?」

「はい。…この風はミラクルさんの理想へと導くことでしょう。」

「おれの…理想…」

「まっ!いつものミラクルの走りでいいっしょ!」

「そうとも言えますね。」

「…そっか。ヘリオス、ゼファー、おれのために来てくれてありがとう。そろそろ時間だから…」

「んじゃ、ウチらも行くわ!」

「ミラクルさん、あなたの風を見せてください。」

 

ケイエスミラクルは見送られダートコースへと入っていった。

 

ーーー

 

一方、場所はアグネスワールドの控え室。そこにはアグネスワールドとヒシアケボノが話していた。

 

「日本に戻ったらいっーぱい、ご馳走するよ。ワールドちゃんは何が食べたい?」

「鯛の天ぷら。私が釣ってくる。ボノ姉、一緒に作ろ。」

「いいね、いいね~♪あっ!マツタケとか銀杏も採れるから茶碗蒸し何かもいいかもしれないね。」

「…美味しそう。楽しみ。」

 

食べ物の話をしていると誰かが訪ねてきた。

 

コンコンッ

 

「…?どうぞ。」

「『久しぶり、アグネスワールド。』」

 

入ってきたのは鹿毛(金髪)のウマ娘…名前は『コナゴールド』。

 

「『コナゴールド!久しぶりだよ、この前までずっとトゥインクルを走っていたのだっけ?私はトゥインクル引退した後は中々重賞に出走が出来なくて、ドリームで海外に来れたのも今回が初めてでさ…』」

「ワールドちゃん…英語だと凄く話すよね~」

「『…私もこのレースに出れるのは出るウマ娘がいなかったというのが大きいかな。生きる伝説のフォアゴーさん…彼女を越えて、私の名を知らしめる。…私以外が出走するとは思わなかったけど。』」

「『まぁ、私たちの場合は当主の旦那様の影響が強いかな。あの人がいなきゃ、今回の話はまず無かった訳で…そんなにこのレースって集まらなかったの?』」

「『実際に去年は1人だけだったし…退屈なレースになるからな。だからこそ…この連鎖を私が断ちきるつもりだよ。レコードで勝った私なら…君らもまとめて勝たせてもらう!』」

「『来るなら全力で!私は勿論、他の2人も本気で勝ちに来ている…日本を無礼ないで?』」

「『こっちの台詞だよ。ここはアメリカ、私たちのフィールドでもあるんだよ。久々に話せたし…』」

「『後はレースで語ろう。良い走りを!』」

「『良い走りを!』」

 

コナゴールドは控え室を後にした。

 

「ボノ姉。私、勝つよ。」

「うん♪凄い走りを期待してるよ♪」

 

時間が来たため、アグネスワールドも控え室を後にした。




コナゴールド(Kona Gold)…アメリカの鹿毛のセン馬。デビューしたのが4歳と遅かったものの、一般戦を3連勝し、その年のBCスプリントにも出走…3着に敗れる。5歳ではOP戦を勝つもその後BCスプリントを含め全て2着と敗れた。そして6歳…3戦目のG2のポトレログランテBCHの勝利をきっかけに3連勝し、3度目のBCスプリントに出走…レコードタイムでの勝利しG1馬となった。その後も勝ったり負けたりと9歳まで走り続け引退…計5回もBCスプリントに出走した。セン馬なので当然産駒はいない。

ーーー
▼登場人物にコナゴールドが追記されました。


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第76話 BCスプリント開始、奇跡VS弁慶VS逆境VS黄金の風VS裁判者

どうも…昨日の障害G1に出走した『ニシノデイジー』が完走出来て安心した作者です。

今日は皐月賞ですね…『セブンマジシャン』がいないのが残念ですね。今回応援するのは『ソールオリエンス』と『フリームファクシ』です。勝って欲しい!

勝ったのは…ソールオリエンス!!!!
見事な末脚でした!!!

どうでもいいですが『コナゴールド』と『コナコースト』って何か似てないですか?…どうぞ。


BCスプリントに出走するウマ娘たちがゲート前へと集まった。その中でも一際目立つ巨体が1人…『フォアゴー』だ。

 

「…」

 

観客が…いや、出走するウマ娘たちも彼女へと目を向ける。スタート前にも関わらず、ケイエスミラクルとアグネスワールドの額からは汗が見えた。

 

「(何て気迫だ。でも…)」

「(ボノ姉より。大きい。でも…)」

 

「「(勝つのはおれ()だ。)」」

 

「すぅ…はぁ…!よしっ!」パンッ

「ふしゅぅぅぅ…!!…よし!」パンッ

 

ケイエスミラクルが深呼吸を、アグネスワールドが体内の空気を全て吐き出し…自身の頬を叩きゲートへと入る。そして全員がゲートへと収まり…BCスプリントのゲートが開かれた。

 

『さぁ、BCスプリントが始まったぜ!

先頭に来たのは…いいスタートを切れた我らがアメリカのコナゴールド!

2番争いにジャパンのアグネスワールドとアジュディケーティング!

4番はケイエスミラクル!

フォアゴーは最後方からのスタートだ!』

 

「『いいぞ、コナゴールド!』」

「ミラクル!アゲアゲでゴー!」

 

ゲートが開き全員が一気にダートコースを駆ける。応援の声が聞こえるが…明らかに声援が少ない。

 

「『……はぁ。フォアゴーの出遅れ無し…こりゃいつもの展開だな。』」

「『だな…』」

 

「…おいおい。こんな反応されるレース何か見たことないぞ。」

「それだけ彼女の実力への信頼と…新たな王者への期待が強かったのだろう。…お姉ちゃん?どこにいくの?」

「スパイ掃除。」

「…トイレならそう言いたまえ。」

「…すぐに戻るから。」

 

アグネスフライトはその場を去る。

 

『向こう正面に入って…先頭はコナゴールド、さらにペースを上げて前へと出る!

2番にアグネスワールド、その後ろにアジュディケーティングが続く。

ケイエスミラクルもややペースを上げてきた、変わらず最後方にフォアゴー!』

 

「『おいおい…これって…』」

「『あぁ。5人だとしても…かなり、縦長だよな?』」

 

ザワザワザワザワ

 

一部の観客が騒ぎだす。

 

『第3コーナーカーブ…先頭のコナゴールドにアグネスワールドが差を詰める。

アジュディケーティングはここで後退か?

ケイエスミラクルが3番手に上がり前へと迫る。

ー!

フォアゴー、ややペースを上げる!』

 

「『…』」

 

『最終コーナーカーブ、先頭はコナゴールド!

だが、コーナーを上手く決めれたアグネスワールド…さらにケイエスミラクルも続く!

4番手にはフォアゴー…徐々にペースが上がっているが…仕掛けてくる様子はない!』

 

「『いけっ!コナゴールド!フォアゴーを超えろ!!』」

「『コナゴールド、勝てるぞ!!そのままだ!』」

 

一部の観客がコナゴールドを応援し始める。

 

『さぁ、最後の直線…アグネスワールドが伸びてきたか!

コナゴールドと並ぶ!

外からケイエスミラクル!

6バ身離れ、フォアゴー!』

 

「『いけっ!フォアゴー!!』」

「『お前の出番だ!!』」

「『飛ばせ!飛ばせ!飛ばせ!』」

 

レースのクライマックス…ほぼ全ての観客がフォアゴーへと声援を送る。そんな中…ついに全員が仕掛けてきた。

 

「『…突き放…す?』」

「ここっ!」

「…いくぞ!」

「…」

「『…』」

 

ドンッ

 

『前の4人が一気に仕掛けてきた!

誰が伸びるか…アグネスワールドだ!

アグネスワールドがここで伸びてきて先頭にたった?

…あぁ!?

コナゴールド後退、ハプニング発生か?

アジュディケーティングがかわす。

そしてケイエスミラクルがアグネスワールドを追いかける!

そして、その2人をフォアゴーが捉えにかかる!

アグネスワールド逃げる!

大外からフォアゴーがものすごい末脚で迫る!

ケイエスミラクルも外から伸びる!

完全にこの3人の争いだ、誰も譲る気配はない!

アグネスワールド、ケイエスミラクル、フォアゴーとほぼ並び…ケイエスミラクル!!

ケイエスミラクルが差して粘って…ゴールイン!

1着ケイエスミラクル!!

このアメリカの地で、初G1勝利!!』

 

ワァァァーーッ!!

 

「『おめでとうケイエスミラクル!!』」

「『ジャパンのくせ…に!?』」バタン

「『見事な走りだったぞ!』」

「『アグネスワールドもやるじゃねぇか!』」

「ミラクル!ナイスラン!ウェーイ☆」

「『ふざけ…っ!?』」バタン

「『フォアゴー、凄い追い上げだったぞ!!』」

「『コナゴールド!大丈夫か!?』」

 

ケイエスミラクルを讃える者、ダートコースの上で立つコナゴールドを心配する者、倒れる者…会場の声は様々だ。

 

「ーー!!」

 

そんな中、ゴールしたケイエスミラクルが引き返し、コナゴールドの元まで走る。そこには既にアジュディケーティングもいた。

 

「『酷いケガ…あまり、動かさない方がいい。』」

「『痛みはある?』」

「『ー!君たちは?』」

「『…大丈夫。すぐに彼が処置してくれるから。』」

「『もう少しだけ待ってくれ。』」

「『彼?』」

 

「ケガ人はそこか!」

 

チヒロがフェンスを飛び越えて駆け寄ってきた。すぐに鞄から痛み止めの注射器を取り出し、その場で出来る処置をする。そして…コナゴールドは救急車で病院へと搬送された。

 

ーーー

 

「…本当におれが勝ったのか?」

 

レースが終了しウイニングライブが終わった控え室で1人、ケイエスミラクルが自問自答をする。自身が勝ったという実感がまだ沸かないのだ。すると誰かが訪ねてきた。

 

「『はい、大丈夫ですよ。』」

「『失礼する。』」

「『ーー!!フォアゴーさん!?』」

 

入ってきたのは先程まで戦っていたフォアゴー。扉より低く頭を下げながら部屋へと入ってきた。

 

「『ケイエスミラクル…まずは私と戦ってくれてありがとう。そして、見事な走りだった。…久々に満たされるレースだったよ。』」

「『あ、ありがとうございます。』」

「『…本当にありがとう。私の出走を知っていたのだろ?…いや、ジャパニーズには私のことは分からないか。』」

「『おれは君の知っていましたが…実は君が出走するということは知りませんでした。いえ、正確には教えてもらえませんでした。』」

「『…私が言うのも何だが…気にならなかったのか?』」

「『…おれの恩人が薦めてくれたレースです。それに答えたかったのもありますが…正直に言いますと、このレースのため一時的に担当とは別のトレーナーの指導を受けていまして、それどころではありませんでした。…おれはそのトレーナーについていくことで必死でしたから。』」

「『…アジュディケーティングのことかな?どうであれ…結果は私の負けだ。漸く、レースから去ることが出来るよ。』」

「『…え?』」

「『退屈はレースにあってはならないものだ。それに…私の身体はもう、限界に近い。去り際を失っていた、とも言うべきだろうか。…私に勝ってくれてありがとう。』」

「『…』」

「『…まぁ、急にこんなこと言われても困るよな。出来れば来年も参加して欲しい…その時は絶対に見に行くから。』」

「『…はい。必ず参加します!』」

「『…いや、出来ればでいいからな?アグネスワールドやアジュディケーティングにも伝えてくれ。…そうだ。残りのレースも見に行くのか?』」

「『えぇ。折角ですので。』」

「『一緒に見てもいいか?』」

「『勿論です!あ、おれの友達も紹介しますよ。』」

「『そうか?…でかい私見てビックリしないか?』」

「『大丈夫ですよ!…逆にあなたがビックリするかもですが。』」

 

ケイエスミラクルとフォアゴーは控え室を後にした。

 

ーーー

 

一方、アグネスワールドの部屋にはヒシアケボノが訪ねていた。

 

「…」

「レースお疲れ様、ワールドちゃん。」

「ボノ姉…」

「3着だなんて凄いよ!ちゃんこ鍋と…ホールサイズのモンブランも作ってあげる~♪」

「無理して。褒めないで。」

「無理してないよ!だって苦手なカーブを克服して、最後までワールドちゃんのレースが出来てたじゃない。」

「でも…最後に。後数mの所で…2人に…抜かれた…」

「悔しいんだね。」

「当たり前。本当に。後ちょっと。だったから…」

「…うん、分かるよ。こんな時だからこそ…えーと…んん?」

「ごめんボノ姉。今は1人…!」

 

話していると誰かが控え室へと入ってくる。

 

「お疲れ様ワールド。」

「当主様!?」

 

入ってきたのはアグネス家の現当主の『アグネスレディ』だった。



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第77話 貴公子は世界の強さを知る

キングヘイロー、誕生日おめでとう!

…まぁ、今回の話には名前すら出てこないけどね。京都競馬場の入場券当たったから孫のディープボンドを応援しに行くね♪

では本編にどうぞ。


「ふぅ…あのケガなら数ヶ月で治るだろう。骨が砕けて無かったのが不幸中の幸いだな。キャットが気付いてすぐに支えていたからな…いい判断だった。」

「チヒロ様、お疲れ様でした。…ありがとうございます。」ギュッ

「ルビー嬢?何で礼を言ったか分からんが…ケイエスミラクルの所に行かなくていいのか?」

「こちらに来るそうです。ゼファーさんやヘリオスさんも一緒だと思われます。」グルッ

「そうか。…で、ラモーヌ嬢は?」

 

コナゴールドを見送り観客席に戻ったチヒロは…ダイイチルビーの腕と尻尾に捕縛された。その場にメジロラモーヌの姿はない。

 

「ヘリオスさんと話していた後にパーマーさんに用があるとか何とか…少し、お怒りの様子でした。」

「(あー、ダイタクヘリオスが何か地雷踏んだ感じだな…)そうか。それにしてもワールドらは既に『本格化』が終わってた筈だろ。何であんな走りが…」

「タキオンさんのレポートを見る限り…『ウマ人』という存在が大きいかと。ソウジトレーナーしか出来ない未知のトレーニングです。」

「えーと、模擬レースのソウジがなってたアイツ…」

「『ダイヤマイト』…私とサクラバクシンオーさんの『因子』で出来た『合成因子』です。レポートはまだ出来ていないようですが、短距離特化の『合成因子』と考えられます。」

「使う度に骨折しとるが…ん?待てよ…ソウジの奴、模擬レースから最近までの数週間で骨折を完治させてなかったか?そして数ヶ月で2回も同じ所を骨折するか?」

「…普通では?」

「んな訳あるか!俺が治療した訳じゃねぇし…どうなっとるんだアイツの体は。」

「…チヒロ様。電話が鳴っていますよ。」

「…ん?本当だ。ルビー嬢、ありがとう…あぁ、俺だ。今?アメリカだが…はぁ!?2ヶ月でとある患者のケガを治せだぁ?お前、何でそんな仕事を引き受けて……分かった分かった。お兄ちゃんが直ぐに向かうから泣くな泣くな。だが…帰国には数日はかか…分かった分かった。出来るだけ急ぐから…でもいきなり抜ける訳にはいけないから2日待て…あぁ、ちゃんと日本の時間で2日後だ…じゃあな。………ルビー嬢、頼みが」

「承知しました。では、早速準備といたしましょう。」

「…判断が早い。」

 

ーーー

 

「ふぃ~、メダグちゃん!終わったよ。」

『お疲れ様、報酬は振り込んでおいたから。…ねぇフライト、私の所で…アメリカで走るつもりはない?』

「…ごめんね。私…日本でトレーナーになりたいから。」

『…そう。いや、いいの。あなたが欲しいのは事実だけど強制したい訳じゃないから。』

「そういえばウォーエンちゃんの件ってどうなってる?」

『ほぼ終わってるわ。ウォーエンを非難してた奴らは少数派までに減ったから。今回のリストでかなり減ったし…あなたが倒してくれた工作員はこっちで処理するから。』

「出来れば今年中に引き取れない?あの娘、スタンガンに耐性が付いてきたみたいでさ…毎回素手で締めるのは流石に不味いでしょ?」

『…そうね。トレセン学園にこれ以上迷惑をかける訳にはいけないわ。後はアイツくらいか…』

「…アイツ?」

『多分、トゥインクルのブリーダーズカップに現れるけど…まぁ、私たちに任せて。』

「…タキオンちゃんたちを巻き込まないでよ?」

『えぇ。それは約束する…それじゃ。』ピッ

 

ーーー

 

ソウジとアグネスタキオンはメインレースであるBCクラシックを見ていた。

 

『さぁ、最終コーナー…先頭にいるのはフレンチデビティ!

しかし、それをシガーが捉える!

後方のイージーゴアが内から外へと動く。

エーピーインディ、ファーディナンドも仕掛けてきたか…さぁ、最後の直線!

先頭はシガー!

ここでフレンチデビティ、後退か!

エーピーインディがシガーを追う!

3番手、イージーゴアが一気に来る!

残り、100!

内のエーピーインディ、先頭のシガーに迫る!

しかし、外からイージーゴア!

イージーゴアが2人に並び…そのまま前へと出た!

大外からスキップアウェイ伸びきてきた!

しかしイージーゴア!イージーゴアが粘ってゴールイン!

何と…何と何と何と!!

勝ったのはイージーゴア!!

大復活だ!!』

 

ワアァーーー!!

 

歴代最強クラスのウマ娘が集まる中、イージーゴアがレースを勝利した。

 

「これが…アメリカのドリームレース…」

「…アイツ、あんなに速かったのか。」

「練習や模擬レースで本気を出すこと何て無いだろ?…トレーナー君、何故目を反らす?」

「いや…、俺は…その…」

「…練習相手となるウマ娘にとってはありがたい話だね。…あ、お姉ちゃん!」

「お待たせ~!やっと片付いてさ~」

「…もう終わったぞ?」

「レースは全部見てたので。…次はタキオンちゃんとメダグちゃんだね。」

「あぁ…ん?いつの間にメダグリアドーロ君と知り合いに?」

「ウォーエンちゃんの件でちょっとね。…勝てる?」

「勿論、勝つとも…それ以外の答えはないさ。」

 

アグネスタキオンは拳を強く握る。トゥインクルのブリーダーズカップは近い。…そこにアグネスワールドたちも合流してきた。

 

「フライトさん。発見。」

「あぁ、ワールド君。出走お疲れ様…おばあちゃん!?」

「え?何でばあちゃんここにいるの?」

「ワールドとタキオンが出走するなら来るに決まってるでしょ。…チヒロには言ってないけど。」

「じいちゃんならちゃんと仕事してたよ。ケガしたウマ娘たちの応急処置をしていたし。」

「さすが。当主の旦那様。」

「フラフラしているのは相変わらずね。まぁ、別にいいのだけど…フライト、危ないことしてない?」

「してないよ。」

「…ならいいの。でチヒロはどこ?」

「…」クイッ

 

アグネスフライトが指差した先にはダイタクヘリオスとヤマニンゼファー、BCスプリントに出走していたケイエスミラクルとフォアゴー、そしてダイイチルビーとそれにピッタリとくっつかれたチヒロがいた。

 

「へぇ…まだ想われているのね。」

「ラモーヌちゃんもさっきはいたのだけど…どう?濡れる?」

「…全然、あれくらいじゃダメね。」

「おばあちゃん!?何とんでもない発言してるの!」

「当主様。XXXX好き。」

「ワールド君!?…アグネスにはろくなウマ娘がいないねえ。」

「タキオンも。そうじゃん。」

「…」

 

こうしてドリームトロフィーシリーズのブリーダーズカップは幕を閉じた。数日後…トゥインクルシリーズのブリーダーズカップが始まる。

 

ーーー

 

日本のトレセン学園でもブリーダーズカップの様子が映されていた。

 

「『か…か…勝った!!バトラーさん、ネオ!見てた?ゴアさんが…ゴアさんが勝った!!』」

「ユーニヴァース!!凄いね☆凄く凄い走りだったね★」

「『えぇ。…ゴア、本当に強いわ。』」

「『…早く戻ってこないかな。出来れば直接言いたいな…』」

「『…ウォーエン。その件なんだけど…』」

「『?』」

「…待ってバトラーさん☆…せめて今日だけはこのままでいさせてあげて☆」ボソッ

「『…何でもないわ。』」

「『そう?よしっ!この感動を栗毛の誰かと共有してくるよ!』」ダッ

「ユーニヴァース☆」ダキッ

「『あ!ちょっと!』」

 

ウォーエンブレムはネオユニヴァースに抱きつかれながらその場を後にした。…数分後、スマートファルコンのゲリラライブに担当トレーナーであるハヤトを始め、アグネスデジタルとゴールドアリュールと共にオタ芸をする姿が目撃された。



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第78話 出会うは銀河と銀河 前編

どうも、京都競馬場へと移動中の作者です。…生の『ディープボンド』が見れる。それだけで興奮が止まりません。

今日は天皇賞(春)…『タイトルホルダー』が圧倒的人気の中、私が応援するのは『ディープボンド』!!勝ってほしい!ただ、それを思い…『タイトルホルダー』の単勝を3000円で買います!カッタラキマセン…あ、姉の『メロディーレーン』ちゃんも出走なので写真を撮らないと…今思えば彼女だけが京都競馬場を走っているのでは?

…勝ったのは『ジャスティンパレス』、『ディープボンド』は2着でした。『タイトルホルダー』と『アフリカンゴールド』の競争中止は本当に驚きです。…私が買ったから?怖いので、…ちょっと競馬を買うのから離れます。

他には香港で『アグリ』がチェアマンズSPに、『ジェラルディーナ』、『ダノンザキッド』、『プロゴノーシス』がエリザベス女王2世Cに出走…『ダノンザキッド』頑張れ!!

さぁ、本編ですが…もう私の作品恒例のあのネタですね。彼女を所持してないのもありますけど…『』と""の使い分けが全然分からないままです。まぁ…とりあえず、どうぞ!


「絶対に3冠ウマ娘になるよ☆」

 

週末に菊花賞を控えたネオユニヴァースは大樹のウロへと叫ぶ。その声が辺りへと響き…さらにネオユニヴァースは叫んだ。

 

「そして…アグネスタキオンに勝つ!!」

 

「『…満足したか?』」

 

ネオユニヴァースの足で挟まれた状態のウォーエンブレムが声をかける。そのまま、壁を走る虫のごとくネオユニヴァースはウォーエンブレムの背中へと移動した。

 

「うん☆同室の子がティアラ3冠を達成したからね★ワタシも出来ることはしておきたい…だから、ここに来たんだよ★ウォーエン、待っててくれてありがとう~☆」

「『これは待ってたと言うのか…あー、ネオ?いい加減に私にくっつくのは止めてくれないか?』」

「どうして?ウォーエンっていい匂いするよ?クンクン…とってもユーニヴァース☆」

「『嗅ぐな!…お前がくっついてると栗毛のウマ娘ちゃんが近づいてくれないんだよ。』」

「しょうがないな~、はい★」スポッ

 

ネオユニヴァースは栗毛になるカチューシャをつけると…ウォーエンブレムは目の色を変え、息を荒げ、ネオユニヴァースを押し倒した。

 

「『いただきます。』」

 

………

 

数分後、たんこぶが出来たウォーエンブレムが体育座りの状態で顔を下に向けていた。…ペイザバトラーによる遠距離からの投石により割りとすぐに正気に戻ったのだ。ネオユニヴァースもカチューシャを外して、服装を整えその背中へともたれて座る。

 

「『…』」ズーン

「痛い?」

「『…あぁ、こっちは大丈夫。帰らないゴアさんの喪失感と自分の単純さ…もあるけどお前への罪悪感に落ち込んでいるだけだから。』」

「気にしなくていいのに~☆…ねぇ、このまま日本にずっといてくれない?」

「『それは出来ない。…ここがいい所なのは認めるし、ずっといたいとも思う。だが…それでも私の故郷はアメリカだ。…ゴアさんもいるし。』」

「そっか…残念☆…ワタシはトレーニングに行ってく…っとと。」

「『おいおい、大丈夫か?今ケガしたら……ネオ!危ない!』」

「…え?」

「『ネオ!?』」

 

ネオユニヴァースは立ち上がると体勢が崩れ…ウォーエンブレムが気を付けるよう声をかける。と次の瞬間、ネオユニヴァースは大樹のウロへと姿を消した。

 

ーーー

 

「あのぉ…大丈夫ですか?」

「ー!」ガバッ

 

誰かに起こされネオユニヴァースは身体を起こす。声の主はゼンノロブロイだった。

 

「ユーニヴァース☆ロブロイ!起こしてくれてありがとう☆」

「私のこと知っていたのですか…嬉しいです。」

「知ってるも何もこの前の『神戸新聞杯』でワタシに勝ったじゃん!『菊花賞』では負けないよ!」

「………え?何年前の話ですか?」

「んん?」

 

その後、ネオユニヴァースはゼンノロブロイの話を聞く。それによると現在はネオユニヴァースが知る時空よりも数年は未来であり、既にゼンノロブロイはトゥインクルを引退し、今はドリームにいることのことだった。

 

「そんな…菊花賞が昔に終わってただなんて…ワタシの3冠ウマ娘の夢が…」

「…3冠?…貴女のお名前は?」

「…ん?んん?まぁ、いいけど…ワタシはネオユニヴァース☆銀河を駆けるウマ娘★」

「……これってクリスエスさんが前に言っていた…少し待っていただけますか?」

「ユーニヴァース?」

 

ゼンノロブロイは誰かに電話をかける。そして、1分程が経過して…

 

「ネオユニヴァースさん。ちょっと、一緒に来てもらっても…いない!?どこに行ったのですか?」

 

そこにネオユニヴァースの姿は無かった。

 

ーーー

 

ネオユニヴァースは1人学園を歩いていた。

 

「んー、ここが未来のトレセン学園か…あまり変わらないね☆」

「ネオユニヴァースは"未知"と"遭遇"。ネオユニヴァースと"コネクト"求む。」

「ユーニヴァース?…あなたはバトラーさん?それにしてはかなり小さいけどね☆」

「"否定"。『私』はネオユニヴァース。」

「おぉ!ワタシの名前もネオユニヴァース☆ユーニヴァースな偶然だね☆」

「"困惑"。見えなかった別宇宙の『わたし』と"交信"…」

「多分、ワタシは過去のあなた★…より詳しくは菊花賞を前にしたあなたかな?」

「"否定"、しかし"不明"。似ているのは"事実"。」

 

そこに遭遇したのは…同じ名前のウマ娘。ネオユニヴァースとネオユニヴァース()が出会った瞬間である。

 

「"質疑"、『あなた』はどうしてここに?」

「んー☆大樹のウロに吸い込まれて目が覚めるとここにいたの☆」

「…"大樹のウロ"?それが『わたし』と別宇宙を"コネクト"した?」

「そこにロブロイちゃんがいてね、ちょっと待っててって言われたから未来の学園を見ていたの★」

「…"質疑"、ここにいていいの?」

「分からない☆でも早く帰らないとウォーエンが心配するし!」

「…『ウォーエン』?誰?」

「ん?」

 

「あっ!いました!」

 

ゼンノロブロイがネオユニヴァースを発見する。

 

「ユーニヴァース☆もう用事は終わった?」

「ゼンノロブロイ、ネオユニヴァースは『彼女』の"処遇"聞く。」

「ってユニさん!えーと、2人ともユニさんって呼ぶとややこしいですよね。」

「ならなら~☆ワタシはネオって呼んでよ☆」

「ネオユニヴァースは『ネオ』と"呼ぶ"する。…やはり、違和感。」

「慣れて慣れて☆」

「…では、ネオさん。私と一緒にに来てもらえますか?ユニさんも一緒に。」

「ユーニヴァース☆」

「…」コクリ

 

ネオユニヴァースとネオユニヴァース()はゼンノロブロイと共も生徒会室へと向かった。

 

ーーー

 

「失礼します。」

 

生徒会室へと入るとそこにはシンボリルドルフとシンボリクリスエスがいた。

 

「あぁ、来てくれたか。話はゼンノロブロイから聞いているよ。」

「…もう1人のネオユニヴァース…welcome。」

「ユーニヴァース☆ボリクリさん、ちょっと固くない?」

「…やはり…あの時の私と…知り合いか?」

「?」

 

ネオユニヴァースは首を傾げる。

 

「気にしないでくれ。それで君の名前はネオユニヴァースで間違えないんだね?」

「ユーニヴァース☆あなたと同じ3冠ウマ娘になるウマ娘だよ!後は『菊花賞』だけ…の筈だったよ…」

「…なるほど。前とほぼ同じ辺りか。」

「…前?」

「Questionだネオユニヴァース。お前が前レースで走った…宝塚記念に…勝ったウマ娘は誰だ?」

「ん?アグネスタキオン☆」

「確定したね。…ネオユニヴァース、聞いて欲しい。ここは君がいた世界とは別の世界だ。」

「…そっか、薄々分かってたよ☆でも不安は無いよ★だって前例があるのでしょ?生徒会長?」

「…その件だが、何とも言えないな。クリスエス、何か思い出したことはないか?」

「…ここでボリクリさん?」

 

ネオユニヴァースが首を傾げる横でシンボリクリスエスは暫く目を瞑り何かを考える。そして、口が開く。

 

「Sorry、ルドルフ。…やはり、あの時のことは…don't remember。」

「…そうか。それならそれでいいんだ。」

「もしかして、ボリクリさんが来てたのかな☆」

「いや、直接来たのは君が初めてだよ。」

「ふむふむ…☆」

 

ネオユニヴァースはシンボリルドルフの話を聞いた。

 

ーーー

 

数分後、話を聞いたネオユニヴァースは頭の中を整理する。

 

「んー、となるとそのぱかプチを捜せばいいってことかな?でもでも~☆この世界のジャンポケさんは折紙が得意じゃないんだよね★」

「…アグネスタキオンを呼んでみるか?」

 

「既にいるとも!」

 

ソファーの後ろからアグネスタキオンが現れた。

 

「ネオユニヴァース、タキオン"観測"出来ず。いつからそこに?」

「話が始まった時には既にいたとも…と、そんな話はどうでもいい。早速だが君たちのサンプルを貰ってもいいかな?」

「アファーマティブ。」

「ワタシもいいよ☆じゃあ、腕輪…」

「腕輪?何だいそれは?」

「ユーニヴァース?こっちのアグネスタキオンは『因子』を集めていないの?」

「『因子』?」

「他にも何か面白そうなものも発明して…あ!例えばこれ☆」

 

ネオユニヴァースはカチューシャを取り出した。

 

「…これは一体?」

「つけるとね…ほら☆栗毛になったよ★」

「君の世界の私は一体何をしてるんだ…だが、実に興味深い。それを借りてもいいかな?」

「いいよ☆」

「さて…他には君たちの血液と髪の毛と爪とで…ククク。さぁ、実験を始めようじゃないか。」

「…ねぇ、ユニ。あのアグネスタキオンは大丈夫?ちょー不安☆」

「"同意"。私と『ネオ』、"INTI"可能。」

「…だが、私たちが今出来ることはなさそうだ。アグネスタキオン、彼女を任せいいかな?」

「あぁ、任せたまえ!ではネオユニヴァース君…ついてきたまえ!」

「「どっち?」」

「2人ともだよ。」

「「は~い☆」」

「急に息ピッタリだねえ…」

 

ネオユニヴァースたちは生徒会室を後にアグネスタキオンについていく。



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第79話 出会うは銀河と銀河 後編

どうも、先週の天皇賞(春)が忘れられない作者です。またダイヤちゃんの産駒『サトノグランツ』が昨日の重賞勝って何か嬉しいです。後は…ケンタッキーダービー、『デルマソトガケ』は6着で『マンダリンヒーロー』は12着…。もっとスタート決めて前に出れたらな…。とはいえお疲れ様でした。

今日はNHKマイルCですね~。友達との予定(映画)が入っており、リアルタイムでは見れませんが…『オールパルフェ』、『オオバンブルマイ』、『ドルチェモア』を応援します。

では…どうぞ!


ネオユニヴァースたちはアグネスタキオンの研究室へとつくと、紅茶を入れてもらい、それを飲んだ。

 

「んん~!ユーニヴァース☆」ゴクゴク

「…何か"盛った"様子無し。私も"DRIN(飲む)"。」ゴクゴク

「砂糖を入れてないだけだよ。カフェがここにいればコーヒーも選べただろうが…今日はユキノ君と山デートだとか。」チャポン、チャポン…

「アグネスタキオン!砂糖入れすぎ☆トレーナーさんに『水筒』扱いされたの忘れたの?」

「私にトレーナーはいないのだが…水筒?何の話だ?」

「あー、こっちのアグネスタキオンのトレーナーは、『無人島に1つ持っていくなら何?』とのアンケートにあなたを選んだの☆」

「…無人島で私と過ごしたいとは…面倒な話だ。それで、それと水筒に何の関係が?」

「『水が無くなったときに甘いのが飲めそう』、だからね☆」

「ぶー!…ネオ君、君が戻ったらそのトレーナーをブン殴ってくれるかい?…いや、こっちの世界に連れてきてくれないか?」

「『極限環境』での"甘味"と"水分"貴重。…"別宇宙"の『タキオン』とトレーナー"INTI"。」

「ただの変態だろ!何てことだ…今の話、砂糖を味わう度に頭に出てきそうだ。」

「控えれば『タキオン』"HEAL(健康)"…結果オーライ。」

 

アグネスタキオンは砂糖を入れることを止め、一気に紅茶を飲み干した。

 

「…話を変えよう。ネオ君、君は"大樹のウロ"に落ちてここに来た、…間違いはないね?」

「ユーニヴァース☆何か…引っ張られるような感じで吸い込まれた★」

「ネオユニヴァースは"提案"する。"大樹のウロ"向かう。」

「まずはそれが1つだね。私個人としては模擬レースを行い…謎のぱかプチを出して帰還、もアリだと思う。前回と同じことが起こる確証はないが。」

「出来ることをやってみよう☆」

「その前に私の実験に付き合ってもらうよ。まずはネオ君のサンプルをいただこう。」

「ユーニヴァース…忘れてなかったのね…」

 

この後、めちゃくちゃ実験した。

 

ーーー

 

「アハハ…、先ずは"大樹のウロ"だね…☆」

 

やや死んだ目でスキップをしながら自身が移動した原因であろう大樹へと向かうネオユニヴァース。後ろにはホクホクした顔のアグネスタキオンとそれを睨む(?)ネオユニヴァース()。何はともあれ…大樹へと着いた。

 

「ここでね、ここで『想い』を叫んだの☆それでウォーエンと色々してたら…こっちの世界にいたの★」

「ふむふむ…特に変わった所はない。…その時のことを再現してもらってもいいかね?」

「了解☆じゃあ、アグネスタキオン★こっちに来てよ☆」

「…?了解し、た!?」

 

アグネスタキオンが大樹のウロの前にいるネオユニヴァースの側へと移動する。そして…それをネオユニヴァースが足で挟んだ。

 

「…少し痛いのだが?」ギチギチ

「ちょっと我慢してね☆すぅ…」

 

ネオユニヴァースが息を吸い…ウロへと叫ぶ。

 

「『絶対に3冠ウマ娘になるよ☆』」

 

さらに足に力を込めて息を吸う。

 

「『そして…アグネスタキオンに勝…!?』」

 

しかし、言葉は最後まで続かなかった。足で挟んだアグネスタキオンが体勢を崩したのだ。それによりネオユニヴァースの額も大樹へと当たる。

 

「『ネオ』と『タキオン』から"異音"発生。」

「痛て…アグネスタキオン、脆すぎ~☆」

「私の方が痛いのだが…さっき仕返しか?それにしても君を支えていた…『ウォーエン』とはどんなウマ娘だい?」

「"推測"、クラシック2冠を達成した『ウォーエンブレム』?」

「うんそう☆ウォーエンブレム!栗毛の娘が大好きで学園内でよくナンパしてるよ★」

「ウォーエンブレムだと!?…彼女はアメリカのウマ娘だろ?なぜトレセン学園に?」

「まぁ…色々あってね…というかアグネスタキオンが連れて帰ったんだよ?」

「私がかい!?」

 

ネオユニヴァースの発言に目を丸くするアグネスタキオン。

 

「とにかく★アグネスタキオンがこれじゃあ、再現出来ないよ☆」

「…私が『ネオ』と"コネクト"する。」

「本当!?じゃあ、ユニ!お願い!」

「アファーマティブ。」

 

ネオユニヴァース()を足で挟み…ネオユニヴァースがウロへと叫ぶ。そして、その後のことも再現するも…特に何も起きなかった。

 

ーーー

 

場所は再びアグネスタキオンの研究室。そこでアグネスタキオンが栗毛になるカチューシャを調べていた。

 

「ふむふむ…特殊な電波で光を屈折を操作して15cm以上遠くからは栗毛に見える、といった所か?」

「ユーニヴァース☆ワタシは感謝祭に出してたことくらいしか知らない☆」

 

何気ない会話をしつつも、ジャージへと着替えるネオユニヴァースたち。

 

「次は…"模擬レース"?」

「ユーニヴァース☆…これでダメだったらどうしよう。」

「何、その時は他の手段を考えるまでだよ。」

「元々"MIP"。私は『ネオ』と"交信"…もっと"INTI"になる。」

「何言ってるか分からないけどありがと~☆」

「では、練習場へと向かおうじゃないか。」

 

そして、3人は研究室を後にした。

 

………

 

「ルールは…」

「はいは~い☆3000mの右回りで!」

「『ネオ』は菊花賞"HOPE"?」

「ユーニヴァース☆3冠ウマ娘になるからね★」

「では、そうするとしよう。ユニ君、準備は?」

「アファーマティブ。始めよう。」

 

ネオユニヴァースとネオユニヴァース()はゲートへと入り…模擬レースが始まった。

 

………

 

レース展開は互いに接戦…そして、最後の直接…先に仕掛けたのはネオユニヴァースだった。

 

「ユーニヴァース☆」ダッダッダ

「…」ダッダッダ

 

一気に差を広げにいくネオユニヴァース。それに対し、ネオユニヴァース()が仕掛ける気配はない。しかし、そのままペースを上げてネオユニヴァースへと迫る。

 

「ー!」

「いい"流動"…でも、…ふっ!!」

 

そのまま、スピードを上げてネオユニヴァース()はネオユニヴァースをゴール前で差しきった。

 

………

 

「はぁはぁ…完敗か☆」

「『ネオ』は『本格化』中。私が勝つのが"OFCO(当然)"。」

「けどさ…ワタシは大きいレースを控えてるんだよ?手加減してよ…☆」

「…」

「どうしたの☆」

「スタミナ不足。これじゃ、菊花賞に勝つことは…"MIP"。天皇賞(秋)を"推奨"。」

「ユーニヴァース?」

「私は『ネオ』。『ネオ』は私。"THRF"、長距離より中距離が私に合ってる。」

「…そう、忠告ありがとう。耳に入れておくけど…ワタシはワタシの道を行くから。」

 

レースが終わり、ネオユニヴァースに感想を語るネオユニヴァース()。ネオユニヴァースはそれをそのまま聞き流した。

 

「…で、ぱかプチは?」

「"TINO(無いね)"。」

 

ーーー

 

そして、場所は再びアグネスタキオンの研究室。辺りは暗くなり始めていた。

 

「ふむ…ダメだったか。」

「ど、どど…どうしよう…」

「今日は時間無い。私の部屋"来る"?」

「待て待て。一度、生徒会長と合流だろう?一息ついたら向かうとしよう。」

「ユーニヴァース…ワタシはカフェさんのコーヒーが飲みたい…」

「明日まで我慢したまえ…」

「…?誰か"来る"?」

「生徒会長か?」

 

ガチャ

 

扉が開くと…入ってきたのはマンハッタンカフェだった。

 

「…何の集まりですか?」

「あぁ、カフェ。デートは楽しかったかい?」

「…ただの登山で…!?…タキオンさん、彼女は!?」

 

マンハッタンカフェがネオユニヴァースを見ると慌てたようにアグネスタキオンへと質問する。

 

「ユーニヴァース☆ワタシはネオユニヴァース!…あ!ユニとは別のネオユニヴァースね★」

「ユーニヴァース☆…これ、"楽しい"。」

「…少し待ってください。」

 

マンハッタンカフェがリュックから荷物を次々と取り出し始めた。そして…折り紙で出来たとある物をネオユニヴァースへと見せる。

 

「あぁ☆ワタシのぱかプチ!?」

「カフェ、なぜ君がそれを?」

「…山の山頂に…ありました。紙で出来ていたので…このままでは朽ちてしまいます。…ですのでゴミとして…私が持って帰りました。…後は『お友だち』が…とても気にしていましたがまさか…」

「これがあればワタシは…!?」

「あ!待ちたま…!?」

 

ネオユニヴァースがぱかプチへと触れる。すると辺りが光に包まれ…ネオユニヴァースの姿が消えた。

 

「さようなら、"別宇宙"の『ネオユニヴァース()』。」

 

ーーー

 

「『…き…、…オ!』」

「…」

「『起きてくれ!ネオ!』」

「…ん?」ガバッ

「『起きたか?…良かった。本当に…』」

「…ウォーエン?」

 

ネオユニヴァースの目が覚める。そこには涙を流し自分へと抱きつくウォーエンブレムがいた。辺りは既に暗く、やや肌寒い。そんなネオユニヴァースの様子を見てかウォーエンブレムが上着をかける。

 

「『おーい!ネオが見つかったぞ!!』」

「ウォーエンブレムが何か見つけたみたいだね。」

「…アイツが抱えてるの本人じゃない?」

「ハッハッハッ!見つかったようで何よりです!」

「マジで良かったし…」

 

ネオユニヴァースを捜索していた関係者たちが一斉に集まる。

 

「ユーニヴァース…戻ってこれたんだ…」

 

「『ネオ…無事で良かった…』」

「ウォーエンブレム、お疲れ様。彼女は私が部屋まで送ろう。」

「あぁ、頼みまする…」

「無理に日本語で言わなくていいからね?ネオユニヴァース、いくよ?」

「…」

「『ネオ?』」

「嫌!ワタシはウォーエンとずっといるの!」

「…ん?これは…」

「あれ?折り紙で出来たネオユニヴァースのぱかプチ?」

「ジャンポケさん、あなたが作ったのですか?」

「いや、覚えがないけど…じゃなくて!ネオユニヴァース、離れなさい!」

「ジャンポケパイセンの言うこと聞けし!」

「嫌!」

「『ネオ、早く離れろ!』」

 

その後、ネオユニヴァースはジャングルポケットたちにより何とか回収された。



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第80話 貴公子はBCクラシックに出走する(前編)

どうも、ウマ娘やゼルダよりもサンブレイクに夢中な作者です。…そもそもゼルダは買ってないですが。

今日はオークス!応援するのは…『ラヴェル』、『ヒップホップソウル』、『コナコースト』、『シンリョクカ』の4頭!キタちゃんとダイヤちゃんの産駒です!特に『ラヴェル』は『リバティアイランド』に唯一勝っているので…期待したいですね。

勝ったのは『リバティアイランド』…強すぎる…

さて…ついにここまで来ましたよ。ダート最高峰の大レース…今年はドバイWCを勝った『ウシュバテソーロ』が挑むとのことですが…どうなるのでしょうか?


『第4コーナーカーブ!

先頭にたったのはザッツザプレンティ!

ゼンノロブロイと後方からネオユニヴァースが後を追う!

リンカーンがすごい伸びだ!

しかし、しかし…勝ったのはザッツザプレンティ!!

ネオユニヴァースは3冠ならず…』

 

京都レース場にて『菊花賞』が行われた。結果はザッツザプレンティの勝利。それにリンカーン、ネオユニヴァース、ゼンノロブロイが続く結果となった。

 

 

ーーー

 

同日、場所は変わってアメリカのサンタアニタパークレース場。この日、トゥインクルシリーズの『ブリーダーズカップ』が行われる。会場には既にたくさんの観客で盛り上がっていた。その中にソウジとタイキブリザードとマンハッタンカフェもレースを見ていた。

 

「サンデーサイレンス…まだ歩くことは無理か。」

『だから言ったろ。はぁ…体だけでも日本に置いていくべきだったな。』

「いや、ずっとそのままってのもな。…俺の体には入れないのか?」

『あー、ダメだダメだ。どうやら俺の『因子』が入ったウマ娘限定らしいわ。』

「んー、じゃあちょっと試してみるか。」

『あぁん?何をだ?』

 

ゴクン

 

ソウジの姿が『ジンソニック』の『ウマ人』へと変わる。

 

「これでお前の『因子』があると思うが?」

『…上等だ。…!!』ガクッ

「おっと!危ないね!」

『ー!!成功、だな。』

 

サンデーサイレンスがマンハッタンカフェから『ジンソニック』へと憑り移る。そして、そのまま倒れるマンハッタンカフェの体をタイキブリザードが支えた。

 

「…サンデーさんそうですが…貴方も無茶苦茶ですね。」

「…そうか?」

『そうだろうが。』

「でもそれがソウジね♪」

「タキオンさん…そろそろかと…」

『だな。…アイツら、ちゃんとここまで戻って来れるのか?』

「うぅ…私もケガが無ければついていけたね…」

 

………

 

場所は変わってアグネスタキオンの控え室。日本から応援に駆けつけたウマ娘たちがそこにいた。

 

「タキオンさん!頑張ってください!応援してます!」

「世界最高のダートレース挑戦する最強ウマ娘…異次元の存在が目の前に…」

「アナタの全力を見せてください!」

「…ファイトです。」

 

「待て待て!こんな狭い部屋に多すぎるだろ!」

「それだけ皆タキオンちゃんを応援したいのよ…あ!これジャンポケちゃんから!」

 

アグネスフライトから渡された封筒を開くと…中から金の折り紙で折られた王冠で出てきた。

 

「ジャンポケさんはタキオンさんの勝ちを確信してるのですね!私たちも…」

「うん!折角連れてきてもらったもん!全力で応援しないと!」

「それで…何時かはタキオンさんを追いこすくらいに強くなる!」

「…ファイトです。」

 

『それでは失礼します!』

 

応援しに来た4人は控え室を後にした。

 

「さっきの娘たちがソウジさんの担当になるウマ娘たち?」

「…あぁ。元々青田買いをしていたとのことだ。まさかその中にスカーレット君も含まれているとは思わなかったが。」

「楽しそうじゃない♪…緊張は無い?」

「…無いとも。」

「そう…ならいいの。」ダキッ

「お姉ちゃん!?」

「…勝ち負け関係なく、楽しんでおいで。」

「…うん。」

「それじゃ、ソウジさんのところに合流してるね♪」

 

アグネスフライトは控え室を後にする。

 

ーーー

 

数分後の観客席…ソウジたちは『BCターフ』を見ていた。

 

『さぁ、最後の直線…ここで先頭がファルヴラブへと変わる!

外からハイシャパラル!

ハイシャパラルが迫る!

おっと!

さらに大外からジョハー!!

ジョハーも前の2人を捉えにきた!

先頭のファルヴラブが粘る!

しかし、ジリジリ迫るハイシャパラルとジョハー!

3人並んでゴールイン!!

これは…誰が勝ったのでしょうか?』

 

「…フライトさん…来ませんね。」

「控え室まで戻ってきたのですが…姿が見えなくて…」

「トイレ…って訳でもないか。さすがに長過ぎる。」

「スマホもつながらない…」

「ちょっと心配ね…」

「…」

 

ソウジ(*『ジンソニック』回収済)はしばらく黙った後に指示を出す。

 

「よし。俺とマンハッタンカフェで探してくるわ…お前らはブリザードと一緒にレースを見といてくれ。…マンハッタンカフェ、来てくれるか?」

「…分かりました。」

 

そして、マンハッタンカフェと共に観客席を後にした。

 

………

 

出た直後、ソウジはマンハッタンカフェ…に憑いているサンデーサイレンスへと質問する。

 

「サンデーサイレンス、フライトの状況は分かったか?」

『視界が閉ざされて…手足まで縛られる。こりゃ完全に何者かに拐われてるな。…詳しい場所は近くまでいかねぇと分からん。』

「…ありがとう。とりあえず、動いてる間に気配とか何か分かればすぐに教えて欲しい。」

『いいだろう。…ん?あれは…ゴアか?』

 

ソウジたちの目の前にスーツ姿のイージーゴアがいた。何か無線のような物を持っている。

 

「『定時連絡、こちらNo.89…変わらず手がかりなし。引き続き、捜査を行う。』」

『よぉ、ゴア!』

「カフェちゃん…じゃなくてサンちゃんか。ごめん、今は相手してる時間が…」

『誰か拐われた、とかか?』

「ー!何でそれを…」

「おそらくだが…いや、ほぼ100%フライトが拐われている。」

『タキオンの控え室から戻って来ねぇんだわ。』

「フライトが!?あの娘ほどのウマ娘が…何で…?」

「頼む、俺らに手を貸してくれ。」

『…少なくともアイツに憑依出来る俺は力になれるぜ?』

「…そこで待ってて。」

 

イージーゴアがソウジたちに背中を見せる。しばらくすると此方へ顔を向けた。

 

「代理より許可が下りたわ。…条件は私から離れないこと。約束出来る?」

『あぁ。』

「恩に着るよイージーゴア。」

 

ソウジたちはアグネスフライトを探す。

 

ーーー

 

数分前の地下バ道…アグネスタキオンはとあるウマ娘と再会していた。

 

「『おや…君は…』」

「『アグネスタキオン!?なぜお前がここに…』」

「『レースに出るために決まってるじゃないか。』」

「『…そうだったか。去年の『ジャパンC』を忘れたことはない。』」

「『それは私も同じだよファルヴラブ君。…今期だけでG1レースを4勝したそうじゃないか。』」

「『…今日の『BCターフ』を含めて5勝だ。お前に勝つ!』」

「『何か勘違いしていないかい?』」

「『ん?』」

「『私が今日出るのは…『BCクラシック』だよ。』」

「『…嘘だろ?お前、ダートを走れるのか?』」

「『あぁ…前走の『ホイットニーH』を勝っている。そして今回は君の後に出走するとも。』」

「『…なら、ジャパンCでまた戦おう。その前に勝ってくる。』」

「『私の応援は必要ないかもだが…頑張ってくれたまえ!』」

「『…ふんっ。見ていてくれ!』」

 

そして、ファルヴラブは3着と敗れた。

 

ーーー

 

レース場の隅にある物置にて…レースのNTRA(*サンタアニタ版URA)の職員たちが集まり騒いでいた。

 

「『おい、『スパロウ』!パドックにアグネスタキオンの姿があるぞ!どうなってやがる?』」

「『はぁ?俺は確かに控え室から出てきた栗毛のウマ娘を連れてきたぞ!』」

「…」

 

…いや、NTRAに扮した格好をした者たちだ。うちの1人が大袋を開けて中身を引っ張りだす。そこから出てきたのは眠った栗毛のウマ娘が1人。

 

「『…んー、ちょっとおっぱい大きいね♪この娘はアグネスタキオンの姉のアグネスフライトだね♪』」

「『…姉だと?』」

「『去年のジャパンCを制したウマ娘よ♪」』

「『確かに容姿が似てるが…『スパロウ』、お前のミスだ。』」

「『…チッ。分かるかよ!』」

「『地下バ道に引き返した所でまた拐っちゃう?」』

「『…いや、脅した方が早い。『スパロウ』、アグネスタキオンに『勝てば姉を殺す』とでも伝えろ。』」

「『へいへい…了解しましたよ…『クロウ』さん。念のために『オウル』もついてきてくれない?俺がメダグリアドーロらに捕まってここの情報吐くかもしれないし。』」

「『いいよ♪だけど…私でも助けるのが無理かなって思ったら…殺してあげるよ♪』」

「『…『クロウ』さん、代わってくれない?』」

「『今、死ぬか?』」チャキ

「『分かりましたよ…はぁ。』」

 

ーーー

 

ソウジたちはイージーゴアから詳細を聞いた。

 

『『ルーズバーズ』だぁ?』

「元々はレースに野次を飛ばすだけの迷惑集団だった。それが石やゴミを投げつけるようになってね…」

「誰も止めなかったのか?」

「そのリーダーがNTRAのお偉いさんのご子息だとかで誰も何も言わなかったけど…ある日のレースでお嬢がついにブチ切れたの。それでそのリーダーをボコボコにしてね…後、その報復に来た奴らも全員ボコボコ。すごいでしょ?」

「…うん、言葉が出ない。」

「んで、お嬢がソイツらを『鳥のように騒ぐしか脳が無いのか』とか言ったのが派生して…『ルーズバーズ』と呼ばれるようになってね。」

「…」

『で、ソイツらがフライトを拐ったのか?』

「恐らく。アイツら…今ではお嬢への嫌がらせが中心だからね。…実はね、今私のいる『SG』ってお嬢が起業した組織なの。メンバーの殆どはケガや病気で引退したけど…レースに未練のあるウマ娘たち。私もその1人だった。」

「イージーゴア…」

『…だから、そのお嬢ってのに尽くしたいってか?けっ、下らねえな。…さっさとフライトを探すぞ。』

 

ソウジたちはアグネスフライトを探す。

 

ーーー

 

地下バ道にて…『スパロウ』と呼ばれた男と『オウル』と呼ばれた女が歩いていた。

 

「『…チッ、もうメダグの手下が探していやがるな。』」

「『スパロウ~、言うだけだからさっさとしてこいよ~!でないと殺しちゃうよ?』」

「『分かった分かった。…おい、そこのお前。』」

 

出走を間近に控えたアグネスタキオンが振り向く。そしてスパロウの突然の問いに英語で答える。

 

「『ん?私かね?』」

「『お前の姉を預かった…勝てば殺す。誰かに喋っても殺す。』」

「『は?』」

「『ホラよ…証拠だ。』」

 

アグネスタキオンの目に拐われたアグネスフライトの画像が映る。アグネスタキオンはただ固まった。

 

「お姉ちゃん…!?」

「『警告はした…無様に負けろクソジャップ。』」

「『はい、よく言えました~♪偉い偉い!』」

「『…いくぞオウル。』」

 

スパロウとオウルは固まったアグネスタキオンを余所にその場を去った。

 

「『…』」

 

その様子を影から見る狐が1人。そして、静かにアグネスタキオンへと近づいた。



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第81話 貴公子はBCクラシックに出走する(後編)

どうも、ぱかライブでタキオン(の中の人)が出ててテンションが上がった作者です。昨日のタキオンの名言といえば…

「ただしミスターシービー君、君はダメだ。」
「これは…見せても大丈夫かい?」
「モルモット君、私の初舞台で光ってくれるかね?」

てるてる坊主の中身のマイクを当てる時の台詞はシュヴァルグランの方だった気もしますが…大体こんな感じです。因子研究のレポートの告知が来た時点で察しましたが…新衣装はお預けでした。まぁ、カフェと一緒に水着でくるかもと期待します。

今日は日本ダービー…『ソールオリエンス』、『スキルヴィング』、『タスティエーラ』、『サトノグランツ』…実装ウマ娘であるキタちゃん、クラちゃん、ダイヤちゃんの産駒を応援します!

勝ったのは『タスティエーラ』!…『ソールオリエンス』は2着!…後、『スキルヴィング』大丈夫かな?

…『スキルヴィング』、お疲れ様でした。貴方の活躍…私はずっと覚えておきますので…天国でゆっくりと休んでください。

では、本編にどうぞ!


ソウジとサンデーサイレンスはイージーゴアと共にアグネスフライトを探していた。

 

「さっきの話の続きだけど、前の『ホイットニーH』でウォーエンが最初に殴ったの…そのリーダーだったんだ。だから…その原因の一端となったアグネスタキオンに対しても個人的に怨んでるみたい。」

「…アイツか、顔は覚えているよ。ただの八つ当たりじゃねぇか…!!」

 

イージーゴアの話にソウジが憤っているとサンデーサイレンスの動きが止まる。

 

『ー!おい、フライトが近ぇわ…あそこだ!』

「待ってサンちゃん!せめて応援を…」

「あの倉庫か…まとめて潰す。」

「ソウジさん!?」

「サンデーサイレンス、俺に憑け。イージーゴアはマンハッタンカフェを守ってくれ。」

『分かったよ。』

「ちょっと!!」

 

ゴクン

 

ソウジは『シュンミンアカツキ』の合成因子を飲み込み、物置へと突入した。中には5人ほどの男女がいた。

 

「『この負け鳥ども。俺がその翼を引き千切ってやるよ。』」

「『なっ!』」

「『何だこの化け物!?』」

 

ソウジは…いや、『シュンミンアカツキ』は男も女も関係なく、鉄パイプで殴られても、ナイフで刺されても、拳銃で撃たれても、自分の歩みを邪魔する者を一撃で沈めた。そして最後の1人の男がアグネスフライトへと拳銃を向ける。

 

「『動くな。』」カチャ

「ー!…。」ボソッ

 

『シュンミンアカツキ』の動きが止まる。それと同時に何か言葉を溢す。

 

「…」ピクッ

「『ー!バカな!まだ動ける…!!?』」

 

バキッ

 

アグネスフライトの体が少し動く。『シュンミンアカツキ』はそれに動揺した男を殴り…そのままアグネスフライトを抱きしめた。

 

「『そこまでよ!』」

 

イージーゴアを皮切りに次々とスーツのウマ娘が入ってくる。

 

「『なめ…るな…よ!』」

 

バンッ

 

「ソウジさん!?」

 

ーーー

 

一方の地下バ道では…

 

「お姉ちゃん……」

 

パチン

 

「ー!」

「『表か裏か?』」

 

何かが弾ける音…アグネスタキオンが振り向くとそこには前走『ホイットニーH』で凌ぎを削ったヴォルポニが手を重ねていた。

 

「『…何のつもりだ?』」

「『聞こえなかったか?表か裏かって聞いてんだよ。』」

「『…裏だ。』」

 

ヴォルポニの右手が離れる…そのコインには何も書かれていなかった。

 

「『正解だ。』」

「『…それで何のつもりだ?』」

「『デマ何かに流されるじゃないよ。』」

「『…デマだと?』」

「『アイツらはメダグに嫌がらせがしたいだけの迷惑集団だ。メダグがけろっとしてるだろ?なら、何も事件は起きてない。』」

「『…』」

「『この『スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ』な私のラストラン…全力の君とまた走りたい。だから…君に憂いがあると困る。』」

「『…そうだね…その通りだ。お姉ちゃんは私に楽しめって言っていた。私は…それに答えるだけだ!ヴォルポニ君!』」

 

パチン

 

今度はアグネスタキオンが10円硬貨を弾く。

 

「『表か裏か?』」

「『表。』」

 

開くと寺院が描かれた面であった。

 

「『ちぇ…外れか。』」

「『いや、これが正解だよ。』」

「『…え?』」

「『ククク…全力で来たまえ!』」

「『みこーん!言われなくても!ダート王の最後の力…君に見せようとも!』」

 

 

「『…フライト、巻き込んでしまって…ごめんなさい。』」

 

ーーー

 

『BCクラシック』のスタート直前となり、マンハッタンカフェは1人、観客席へと戻っていた。

 

「…あ!カフェさん!フライトさんは?」

「アグネス家の…当主の方が来ていたため…離れられない状態になったそうです…」

「…ソウジはどこね?」

「…彼も…離れられなく…なりました。しばらくは私と行動して…とのことです…。」

「そうでしたか…分かりました!」

「…あ!タキオンさんがゲートに向かい始めたよ!」

 

メダグリアドーロ、ヴォルポニ…そしてアグネスタキオンと出走するウマ娘たちがゲートへ収まり…『BCクラシック』が始まった。

 

ーーー

 

『スタートした…おっと!

外のコンガリーが内へとよれてメダグリアドーロにぶつかった!

ハナを取ったのはホールザットタイガー!

いや!その外からコンガリーとメダグリアドーロの2人がかわして…ハナを取り合い始めたぞ!!

3番手になったホールザットタイガー!

その後ろに内からヴォルポニ、ファニーサイド、パーフェクトドリフトの3人が固まっているぜ!

その外からテンモストウォンテッドも並んできたか!

『ホイットニーH』を勝ったジャパンのアグネスタキオンはそれらの後ろ!』

 

アグネスタキオンはいいスタートを切れず、かなり後方からのスタートなった。

 

「タキオンさん!」

「…前を…防がれましたね。」

「ノン!ノン!チャンスを待つね!」

 

『ダイネバー、プレゼンテリーパーフェクトと並んで最後方はイブニングタイアー!

最初のコーナーを曲が…おっと!

ファニーサイドが大きく膨らんだ!

パーフェクトドリフト、テンモストウォンテッドも巻き込まれ膨らむ…これはかなりロスか!

ここでアグネスタキオン、内を走るヴォルポニと並んできた!』

 

外を走っていた3人が膨らんだことにより、アグネスタキオンは内へと入り、ヴォルポニと並んだ。アグネスタキオンに気づいたのはヴォルポニの口角が僅かに上がる。

 

『向こう正面に入って…先頭は僅かにメダグリアドーロか。

コンガリーがこれに並ぶ、ホールザットタイガーは3番手!

4番手は…ヴォルポニかアグネスタキオン。

その外からファニーサイド!

ここでパーフェクトドリフト、仕掛けにきたか!

外へと周り前の3人を捉えにかかる!

アグネスタキオンも負けじとペースを上げて前から4人目の位置へとつく!』

 

アグネスタキオンはそのままヴォルポニをかわし、前へと立った。そして…ヴォルポニはそのままバ群へと沈んでいった。

 

『ここでヴォルポニ後退か!

ファニーサイドとプレゼンテリーパーフェクトがかわす!

さぁ、最終コーナーカーブ!

先頭は…コンガリー!!

しかし、メダグリアドーロが内から競り合う!』

 

「ここで決めるっ!」

 

ダンッ

 

『アグネスタキオン仕掛けたか!

コンガリーとメダグリアドーロを捉え…先頭に立った!

さらにホールザットタイガーが続くが…これをプレゼンテリーパーフェクトがかわす!』

 

「『負けるかーーっっ!!』」

 

『メダグリアドーロ、ここで内から盛り返す!

しかし、先頭はアグネスタキオン!

外のプレゼンテリーパーフェクトがさらに伸びる!

コンガリーをかわして前2人へと迫る!

アグネスタキオン、このまま逃げきるか!』

 

「はああぁぁぁぁ!!!」

 

ダンッ

 

「『ーー!?嘘だろ!』」

 

『アグネスタキオン、ここでさらに伸びる!

2番との差が…2バ身、3バ身…まだ広がる!

そして、そのままゴールイン!!

勝ったのは…勝ったのは…ジャパンのアグネスタキオン!!

これがジャパンの『超光速の貴公子』だあぁぁぁ!!』

 

ワアァァァーーッ!!

 

レースは大歓声に包まれる。

 

「はぁ…はぁ…勝てたよソウジ…お姉ちゃん…」

 

「『ハァ…ハァ…クッ!!最下位…これで…終わりか……メダグ!?』」

「『…!』」ダンッ

 

メダグリアドーロはその場に足を叩きつけ砂煙を巻き上げた。その後、息を数回は吸っては吐いて、吸っては吐いてを繰り返し…アグネスタキオンへと言葉を送った。

 

「『おめでとうアグネスタキオン。悔しいけど…本当に悔しいけど…あんたの勝ちよ!!』」

「『あぁ、私の勝ちだ!』」

 

そして、両者は…互いの手を取り合い笑った。

 

………

 

「『クソッ!アイツ…俺らのこと気にもしていねぇ…!!』」

「『アハハ…殺しちゃおっか?』」チャキ

 

「『そこまでだ。銃を捨てろ。』」ゴゴゴ

 

「『ーー!!』」

「『アハハ…フォアゴーだ♪こりゃ…ダメだね♪』」ポイッ

「『来てもらうぞ。』」

 

また観客席よりとある男女がフォアゴーにより連行された。

 

ーーー

 

ウイニングライブが終わり、アグネスタキオンはマンハッタンカフェ、メダグリアドーロと共にとある部屋に来ていた。そこには車椅子に座ったサンデーサイレンスとその側に立つイージーゴア、そして…アグネスフライトを抱きしめたまま眠ったソウジがいた。

 

「ソウジ!お姉ちゃん!」

「…あ、タキオンちゃん。1着おめでとう。これで正真正銘のダート王だね…」

「…何があったか教えてくれないか?」

「何か私がタキオンちゃんに間違えられて拐われたみたい。で、それをソウジさんが助けてくれた…いやー、タキオンちゃんが拐われなくて良かったよ~!!」

「…良くない!!…お姉ちゃん、怖くなかったの?」

「怖いも何も…私が寝てる間に全部終わってたから…後、ソウジさんが離してくれない…幸せ。」

「俺がお前に憑依して隙を作ったことも忘れるなよ?」

「…いや、だから寝てたから分からないって。」

 

アグネスタキオンはソウジの体を覗きこむ。アグネスフライトを離せなかったためしっかりとした治療は出来ておらず、大雑把に巻かれた包帯の上からでも青痣、刺し傷、弾痕…などが確認され、ボロボロとなった服の下はさらに無惨なことになっていた。

 

「…ソウジ。」

「『シュンミンアカツキ』だっけか?それのお陰で無茶したみたいだなぁ…回収するのに苦労したぜ。俺ごと腕輪に移動したからな…2度としたくねぇ。」

「感謝するよサンデーサイレンス君。」

「…けっ。結局、俺が憑いてもソイツはフライトを離さなかったがな。」

 

話が止まったところでメダグリアドーロが声をかけた。

 

「フライト…ごめんなさい。私のせいで…あなたやアグネスタキオン…そして、そのトレーナーも巻き込んでしまって…」

「いいのいいの。それで…ウォーエンちゃんの邪魔になってる人たちは終わりなの?」

「…えぇ。今日ので最後…後は私の方で処理するわ。本当にありがとう…」

 

メダグリアドーロから涙が零れ始めた。

 

「…あれ?アグネスタキオンに負けたからかな?それともウォーエンが戻れるようになったから?…涙が…止まらないわ…」

「お嬢…」

「重荷が下りたからねえ…」

「…ゴア、空気が重い。別のところに移動しろ。」

「はいはい…お嬢、ちょっと席を外すから…」

 

イージーゴアとサンデーサイレンスは部屋を後にする。

 

「…それで…どうしますか?」

「とりあえず、私はスカーレットちゃんたちに連絡するわ。…タキオンちゃん、ポケットのスマホ取ってくれる?ソウジさんの力強くて上手く動けないの…はぁ、最高。」

「『シュンミンアカツキ』は回収済みの筈なのだが…はいスマホ。ソウジの体の傷は明日には治るだろうし今はゆっくりしたまえ。」

「「「ん?」」」

 

3人の声が重なった。

 

「タ、タキオンちゃん?今何て言った?」

「ソウジの傷なら明日には消える、と言ってのだが?」

「…じいちゃん呼ばなくていいの?」

「必要ないし…今は帰国中だろ?」

「…タキオンさんが…嘘を言うとは思えませんが…信じられません。」

「…アグネスタキオン、ソウジトレーナーって本当に人間かい?」

「当たり前じゃないか。今回は『シュンミンアカツキ』の副作用で眠っているだけだよ。…色々と実験していく内にちょっと回復が早くなる体質にはなったけど…」

「…納得です。」

「いやいやいや!アグネスタキオン!原因は君じゃないか!」

「…とはいえ、傷は残らないのね。良かった…」

 

安堵したアグネスフライトはスマホでダイワスカーレットたちに連絡する。そして、駆けつけたタイキブリザードが眠ったソウジによりアグネスフライト共々捕まったり、それに怒ったアグネスタキオンがソウジの頬をつねったり、怪しい薬を飲ませたりするのだが…それはまた別の話。こうして…『ブリーダーズカップ』は幕を閉じた。

 

………

 

「『…』」

「『どうしたのヴォルポニ?…何かのチケット?』」

「『…ジャパンからの招待状だよ。』」

「『ふーん、あなたにも来たのね…でどうするの?あなた、もう引退なのでしょ?』」

「『…そうだ。王の称号が無くなった今、もうアメリカで私が走ることはない。故にこの招待に答えるとも…実際は最下位で引退が嫌なだけだが。』」

「『ここでは走らないって…それは早計過ぎない?いや、あなたの好きにすればいいことだけどさ。私は調整が間に合いそうにないからパスよ。ここでウォーエンを待つことにするわ。』」

「『メダグ…君とのレースはとても楽しかったよ。出来ればで良い…私の最後のレースをみて欲しいかな。』」

「『フフフ…見るに決まってるでしょ。困ったら何時でも帰って来なさい…仕事くらいなら紹介するわ。』」

「『…ありがとうメダグリアドーロ。そして…さようなら。』」

「『さようならヴォルポニ。』」



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第82話 目覚めるモルモット 前編

…『スキルヴィング』の死が未だに信じられない作者です。レースではどんな事故が起こるのか分からないものですが…それでもここまで引きずるとは思いませんでした。

今日は安田記念…『ソダシ』、『メイケイエール』、『ジャックドール』、『ガイアフォース』、『ドルチェモア』など…もう、すごいメンバーです!その中で私が1番応援するのは『ソングライン』!連覇に期待です!
…そういえば、昨日知ったのですが…『メイケイエール』の血統に『シラユキヒメ』がいたのを見てお前、白毛の一族だったのか!?となりました。

勝ったのは『ソングライン』!!連覇達成!

書いてたら長くなったので分けました…どうぞ!


ブリーダーズカップが終わった次の日、ソウジは目を覚ました。そして、まず目に入ったのは自身にくっついたまま眠っているアグネスフライトとタイキブリザードの2人。起こさないようにそっと離れベッドから下りる。

 

「そっか…ちゃんと守れたんだな…で、ブリザードは何でだ?夜這いか?…にしても喉乾いたな。」

 

健やかな寝息を立てるアグネスフライトとタイキブリザードを見つつ、ソウジは水を求めて1度部屋から出ようと動き出す。すると目の前で扉が開いた。

 

「…あ。」

「ー!ソウジトレーナー!起き…」

「しーーっ!!」

 

入ってきたのはアグネスワールドとケイエスミラクルの2人。ソウジは寝ている2人を起こさないよう慌てて静かにするよう指示をする。

 

「…すみません。しかしソウジトレーナー、目が覚めて良かったです。急いで新しい服を…」

「服?」

 

ソウジが自身の状態を見る。着ていたスーツには無数の穴が開いておいており、所々がどす黒く汚れている。少なくとも『何もなかった』、では誤魔化すことは出来ないレベルでボロボロになっていた。

 

「こ、これは…何故か飛んできたキツツキが激突して…」

 

「いや、おれたちは事情を知ってますので…」

「情報共有済。…キツツキ?」

 

「………。あ…ああぁぁぁ!!」

 

羞恥により大声を出してソウジはその場で物理的に丸くなる。これによりアグネスフライトとタイキブリザードは目を覚まし、アグネスタキオンやメダグリアドーロらが部屋へと駆けつけた。

 

ーーー

 

少し時間が経ち、別の服に着替えて落ち着きを取り戻したソウジは昨日の出来事を聞き…アグネスタキオンの『BCクラシック』勝利を喜んだ。

 

「…タキオン、よく頑張った。…昨日言えなくて…すまないな。」

「…状況が状況だ。私こそ…お姉ちゃんを守ってくれてありがとう。」

「タキオン…」

 

「…ソウジさん。ごめんなさい…私が拐われたばっかりにタキオンちゃんの応援が出来なかったですよね?タキオンちゃんにとって最後の舞台だったのに…」

「…最後?」

「お姉ちゃん!」

「…もうすぐタキオンちゃんの『本格化』が終わる。となればトゥインクルやドリームでの活躍は絶望的。タキオンちゃん自身も分かっているでしょ?」

「…」

 

姉の言葉に何も言えずただ妹は下を向く。

 

「前にタキオンちゃんにしたのもただの気休め…合宿辺りから既にその傾向は出ていた。ソウジさんも気づいていたでしょ?」

「あぁ…だがな、フライト。それはお前が決めることじゃない。」

「…え?」

「タキオン、お前はどうしたい?このままドリームトロフィーに行くか…まだトゥインクルシリーズで走るか…レースそのものから引退もありだ。」

「それは…」

「今すぐに決めろ。」

「!?」

 

ソウジからの指示にアグネスタキオンは目を丸くした。

 

「ソウジさん!?そんな慌てて決めることじゃ…」

「もう一度言う。タキオン、今すぐに決めろ。」

 

アグネスフライトの言葉を遮り、ソウジは再度アグネスタキオンに指示をする。そして、10秒も経たずしてアグネスタキオンの口が開く。

 

「…まだだ。」

「ん?」

「まだG1レースを7勝…『皇帝』と『覇王』に並んだだけだ。今の私なら超えられる、だから…私はまだ引退しない!!」

 

アグネスタキオンがそう力強く言う。その瞬間にソウジの顔は笑顔へと変わる。

 

「分かった。帰国後にまた俺の指導で調整を行おう…去年2着となった『ジャパンC』用のな。」

「…私の次走を勝手に決めないでくれるかね?」

「なら『ジャパンCダート』にするか?」

「いや、去年と同じジャパンCを走るとも。お姉ちゃんに負けたあのレースを…」

「…え?アグネスタキオンに勝った唯一のウマ娘ってフライトなの!?」

 

今度はメダグリアドーロの目が丸くなる。

 

「…お嬢。知らなかったの?」

「そこまで詳しく調べれる時間が無くて…」

「いや…まぁ…たまたま勝てただけだし…」

「たまたまで勝てる訳ないでしょ!!フライト、やっぱりここに残らない?私が知る限り最高のトレーナーをつけるわよ?」

「だから私はトレーナーにな…」

「そうだったわね!じゃあ、トレーナーライセンス取得用のスクールで倍率50は超える大人気な所を…」

「あー!もう!!」

 

キラキラと目を輝かせながら迫りよるメダグリアドーロからアグネスフライトは距離を取り…ソウジの顔を掴む。そして、顔を近づけた。

 

「げっ………ん?」

 

チュゥ

 

いつもの噛みつきを警戒し、反射的に首を守るソウジだったが…今回は違った。アグネスフライトとソウジの…互いの唇が触れあい一瞬で離れる。

 

「あぅ…チュゥしちゃった。じゃなくて!こういうことだから!ソウジさんと離れたくないから!もし、彼がアメリカにいるとなったら考えるから!だからこの話はおしまい!タキオンちゃんの次走はジャパンCよね?私はばあちゃんの所に行くから!それじゃ!」

 

アグネスフライトは耳と尻尾を激しく動かしながら早口で言い切るとすぐに部屋を後にした。

 

「…お姉ちゃん、おばあちゃんの現在地が分かるのかな?…後で覚えとけ。」ボソッ

「フライトさんだし。何とかなる。」

「フライト、大胆ね!成長したね!」

 

………

 

数分後、我に返ったソウジがパソコンを開きつつ、アグネスワールドとケイエスミラクルに顔を向ける。

 

「練習記録や模擬レースでのタイムとか引継ぎデータは全部お前らの担当トレーナーに送ったから…俺の仕事はここまでだな。お疲れ様…2人ともいいレースを見せてくれた。」

「…私たちも。貴重な経験。ありがとう。」

「また担当していただいた時には『ダイヤマイト』を超えてみせますよ!」

「ハハハ、それは俺の足壊れるから無しだ。だけど…2人の今後の活躍を期待するのは本当だ。これからも頑張ってくれ!」

「「はい!!」」

 

「ではおれたちはフライトさんを追ってきます。」

「病院から。当主様いる。ホテルまで。かなり遠い。フライトさん。多分迷子。」

「そうだね。まだ病院内だと思うから早く探そうか。」

 

ケイエスミラクルとアグネスワールドらも病室を後にする。残ったのはソウジ、アグネスタキオン、タイキブリザード、メダグリアドーロ、イージーゴアの5人。

 

「とりあえず、ホテルに戻るとして…ダイイチルビーのジェット機出るのは何時だっけ?」

「それならもうドリームトロフィーのブリーダーズカップのあった日には出終わっているとも。」

「…え?」

「日本で急患だと言っておじいちゃんがルビー君やラモーヌ君ら共に帰ったそうだ。…私たちの帰りは普通にファーストクラスの飛行機だよ。」

「そういえばここ数日は姿をみてなかった。ファーストクラスか…いや、それでも十分だけどさ…で、何時出るの?」

「明日だそうだ。まぁ、トレーナー君の状態的に問題ないだろう。」

「ねぇ、ミスターソウジ。」

「…ん?どうしたメダグリアドーロ?」

「このままアメリカでトレーナーをするつもりは無い?」

「いや…無いけど…そんなにフライトが欲しいのか?」

「確かに貴方が来ればフライトも来て一石二鳥にはなるけど…それだけじゃないわ。私は純粋に貴方も欲しいの。」

「…わぉ!」

「なっ!?」

 

タイキブリザードが手で口を覆っている隣でアグネスタキオンが耳を絞り、メダグリアドーロを睨む。そんなアグネスタキオンにメダグリアドーロは慌てて弁明する。

 

「あ…誤解が無いように言うけどビジネスパートナーとして、ね?それに…」

「ー!?」

 

メダグリアドーロはアグネスタキオンの顎に指を添えて、軽く持ち上げる…いわゆる顎クイを行った。

 

「私が一番欲しいのはアグネスタキオン…貴方よ。走りは勿論だけど、貴方がしている実験の『合成因子』の研究レポートも素晴らしい…もう、貴方の全てが欲しいわ。」

「ずいぶんな口説き方じゃないか。…不覚にもドキッとしたよ。」

「タキオン!?おいコラ、人の愛バに何を…!?」クイッ

「あら?貴方も対象なのを忘れてない?私好みの顔で…美味しそう…」チロッ

「…そりゃどうも。」

 

ソウジにも顎クイをしつつ舌なめずりをするメダグリアドーロ。その後、タイキブリザードとイージーゴアが慌てて止めに入り、その話は有耶無耶となった。



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第83話 目覚めるモルモット 後編

どうも、宝塚記念のファン投票を忘れてしまっていた作者です。『ディープボンド』君…ごめんね。とりあえず、現地行くために指定席を予約してみます…当たるといいな。


ソウジは病院内にいたサンデーサイレンスを呼び出して、アグネスタキオンの出走した『BCクラシック』を見返していた。

 

「うーん、スタートが悪くて最初に内に寄ってきたコンガリーとメダグリアドーロに進路防がれてるな…というかメダグリアドーロ?よれたコンガリーとぶつかったようだが大丈夫だったのか?」

「後で謝ってきたけど…あれくらい何てことないわ。よくあることよ。」

「そうか…タキオン、スタート時は調子が悪かったか?」

「…私としては好調で普通に切れたつもりでいたとも。…周りのレベルが高かっただけさ。」

「いや、『ホイットニーH』と比べると完全に出遅れだ。だが、タキオンが言ってることも一理ある。慣れねぇバ場だろうし…俺がジャパンの芝を走ったらそうなるかもしれねぇ可能性もゼロではないな。」

「ふむふむ…」

 

ソウジは映像に目線を戻し、レースをみる。

 

「…ん?あー、最初のコーナーで3人も大きく膨らんで…そこを上手く突いたのか。で、最内のヴォルポニをマークしたと。」

「ふーん、後ろでこんなことが起きていたのね…」

「これに関してはラッキーだったよ。いいポジションに付けた。」

「もっと前に行けよ。」

「いや、サンちゃんじゃないんだから…」

 

「向こう正面でファニーサイドとパーフェクトドリフトが外から伸びてきてタキオンも仕掛ける…あー、ここでヴォルポニは力尽たか。」

「…」

「…おっ!一気に伸びて直線より前で先頭に立った!このまま、いけっ!」

「いや、これ映像…」

「外から…プレゼンテリーパーフェクトか?これはギリギリ…マジかよ!ここでタキオン再加速かよ!おぉ!タキオンが勝った!」

「…おいおい、あそこからさらに伸びたのかよ…」

「トレーナー君、サンデーサイレンス君…なぜそこまで喜ぶ?結果は知っていただろ?」

「いや、別に俺は喜んでなんか…」

「照れなくていいぞサンデーサイレンス。俺もまだレースを見てなかったからな…特に最後の末脚は想像以上だった。直接見たかったな…あ!」

「ソウジ、どうしたね?」

「タキオンの足を見るわ…サンデーサイレンス以外はちょっと席を外してもらってもいいか?」

「あー、あの件か。」

「ホワイ?私は慣れるから気にしないね…」

「これも仕事だから…すぐに終わるから…」

「うぅ…分かったね…」

「お嬢、私たちも行くよ。」

「えぇ~…ミスターソウジの仕事ぶりを見れる機会なのに~」

「彼の機嫌を損ねるわよ…」

「ちぇっ。」

「近くの控え室で待ってるね!」

 

タイキブリザードらが退出し、ソウジ、アグネスタキオン、サンデーサイレンスが部屋に残る。

 

「んじゃタキオン。ちょっと、ベッドで寝転んでくれる?」

「いや、座るだけで…」

「…ソウジとお姉ちゃんの臭いだ。」ゴロン

「十分だろ…早っ!?」

 

ソウジは寝転んだアグネスタキオンの足を揉み始めた。

 

「んー…特に疲労が見られないな。しっかり出来たみたいだなサンデーサイレンス。」もみもみ

「やったのはカフェの身体でだ…足は俺たちの命。だが…何年経とうが覚えてるものだな…」

「それだけ大事なことだからな…うん。…ん?尻尾のケアもしたのか?」もみもみ

「…分かるのかよ。レース後でボロボロだったからな…余計なことして悪かったよ。」

「お姉ちゃんがしたとは思わないのかい?」

「いや、いつもと臭いが違ってたからな。サンデーサイレンス…実は俺、これが苦手でな…教えてくれないか?俺がすると…」

 

ソウジが櫛を取り出して、アグネスタキオンの尻尾へと触れる。

 

「ひゅん!?」ビクッ

「…こんな具合だ。どうやら力が入り過ぎてるようでな…フライトに任せることが多い。」

「…逆だ。」

「ん?」

「手の力が入ってなさ過ぎる…櫛だけの力だとそうなるだろうよ…ちょうどいい。必要はないだろが出来るに越したことはねぇ。俺の尻尾で言う通りにしてみろ…痛くしたら殴る。」

「…お、おう。」

「まずは俺のを見てろ…タキオン、またするぞ。」

「あぁ…よろしく頼むよ…」

 

ソウジはサンデーサイレンスより尻尾のケアを教わった。

 

………

 

「『サンちゃん、かなり心開いてるよ…あの人凄いね。』」

「『確かに当時のサンデーサイレンスの世間的なイメージはもっと攻撃的だったわ。私ももっと尖ってる人かと思ってたし。』」

「『フフフ…ソウジの人柄ね。私も最初は引っ込み思案で根暗だったね…でもソウジのお陰で…』」

「『へ?ブリザードが引っ込み思案?意外だわ…本当にいい所のサブトレーナーになれたねサンちゃん。』」

 

「お待たせ。」

 

「ソウジ!終わったね!待ってた…ね!?」

「サンちゃん?」

「…ちっ。」プイッ

 

待合室で待っていたタイキブリザードらと合流したソウジだったが…それをみた3人は固まった。昨日大ケガした重症患者が普通に歩いていたからでも、脇にグッタリしたアグネスタキオンを抱えていたからでもない。ソウジの右目に付いた青アザ…パンダになっていたからだ。その隣では不機嫌な顔で、かつ罰が悪そうに目をそらすサンデーサイレンス。明らかに彼女が殴ってきたのが伝わってくる。

 

「…前言撤回。やっぱりあの娘は尖ってるわ。」

「…アハハ。」

 

「ソウジ!冷やさなくて大丈夫ね?」

「大丈夫大丈夫…後、1時間もすれば消えるから…」

「タキオンは何してたね!」

「…身体がほぐれすぎて…ろくに動けない…ところに憑依された…」

「…サンデーサイレンス?」ゴゴゴ

「ひっ…お前もキレたらフライトかよ!」

「私…フライトより優しくないね。とりあえず、その耳に風穴を開けるね…」ゴゴゴ

「や、やめろ!そんなのを向けるな!仕方ねぇだろ!コイツ、痛くしねえって言ったのに無理やり力ずくで…」

 

その瞬間、タイキブリザードがソウジに凍てつく視線と銃口を向けた。

 

「ブリザード、まずはそのオモチャを下ろせ。サンデーサイレンス、お前も誤解しか生まない言い方やめろ。…尻尾のケアを教えてもらってたんだよ。」

「…テール?…ホワイ?」

「ブリザードの時に俺がしてたケアはマッサージくらいだったろ?今回、サンデーサイレンスがタキオンの尻尾までケアをしてくれてたから教わってたんだ。」

「ジャパンの習慣は分からないけど…尻尾って普通、自分でしないの?」

「ノー、自分でするね。…私もソウジにならして欲しかったね。」

「…研究室内で何日も着替えず、ミキサーしただけの食材を飯として食ってたタキオンがそんなのするように見えるか?」

「トレーナー君、私に対して失礼だな。…否定は出来ないが。」

「なるほど。それで、サンちゃんが実践相手になった…色々と許し過ぎでしょ。」ボソッ

「…コイツ、引っ掛かってるのに無理やり櫛を通しやがった…俺の毛が2、3本抜けたぞコラ。」

「いや、力が足りないって…」

「次は左目がいいか?」

「サンデーサイレンス?」ゴゴゴ

「ひいぃ!」ビクッ

「いや、ブリザード。これは全面的に俺が悪いから…ごめんなさい。」

 

その後、アグネスワールドらと合流し…ホテルへ戻るだが…その間、アグネスフライトはずっとタイキブリザードの背中に隠れていた。



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第84話 さらばアメリカ、帰国の準備をしろ

今日はガチャ更新の発表日…そろそろビコーペガサスかマーベラスサンデーが来そう…個人的にはタップダンスシチーが来てほしいかな。

BCクラシック編はこれでラストです。では、どうぞ。


帰国の日となり、場所はロサンゼルスの空港…トレセン学園の生徒やトレーナーなど関係者が既に集まっていた。そして、メダグリアドーロとイージーゴアもそれらを見送りにきていた。

 

「あれ?タキオンさんはいないのですか?」

「あぁ。フライトやアグネスワールドと共にアグネスの当主を連れてくるとか言ってたな…それより、俺の出した課題を忘れるなよ。」

「えぇ、タキオンさんのレースから何を学んだかをレポートにまとめて提出、ページ数は問わない…でしたね。私たちはデビュー前ですが…たくさんのことを学ばさせていただきました。」

「…文字で表現するのは苦手です。」

「私は…その…不安になってきました…」

「未知の領域…ワクワク…」

 

そんな状況下でソウジはダイワスカーレットを始め、新たな担当となるウマ娘たちと共に軽いミーティングをしていた。

 

「まぁ、締切は11月中だからそこまで慌てる必要はないが…俺からはこれくらいだ。飛行機が出るまでまだ時間はあるから、皆で意見を交換してもいいかもな。」

 

『はい!』

 

………

 

ソウジはアグネスタキオンを待っていると、メダグリアドーロが声をかけてきた。

 

「やっぱり、帰るのねミスターソウジ。」

「そりゃこれからが大変だからね…そういえば、昨日聞き忘れていたのが、フライト拐った奴らはどうなったんだ?」

「まずリーダーは普通に逮捕よ。」

「逮捕か…」

「あんな事件起こしたから当然よ。その父親もサウジアラビアに異動が決まったわ…それに癒着していたメディアの関係者も一緒にね。」

「何でそこに?」

「あそこはね、ウォーエンをスカウトした国王がいたところなの…これ以上聞きたい?」

「いえ、結構です。」

 

メタグリアドーロの意味深な表情を見て、ソウジはやや距離をとる。そばにいたイージーゴアも苦笑いをしていた。

 

「アハハ、向こうに着いたらウォーエンやバトラーによろしく。」

「何言ってるのゴア?あなたも帰るのよ?」

「…はい?」

「はい、チケット…あなたの今年いっぱいの仕事はウォーエンの監視よ。」

「いやいやお嬢!?そんな急に言われても!だいたい荷物がこっちに…」

「来ないわよ。」

「え? 私バトラーに連絡…」

「私が止めたわ。」

「…BCクラシック勝ったから大量のスカウトが来てるのだけど?」

「あら、そう。来年まで待ちなさい。」

「…」

 

イージーゴアはその場で肩を落とした。

 

「…分かりましたよお嬢。ちゃんと仕事してきますよ。」

「分かればいいの。」

「もうちょっと一緒に居られるようだなぁ…ゴア?」

「そうだね、サンちゃん。」

 

イージーゴアは俯きつつもその口角は上がっており、それをニヤニヤと見るサンデーサイレンス。

 

「そういえばメタグリアドーロ、ヴォルポニってどうなったんだ?」

「貴方、本当にヴォルポニが好きね…彼女なら来月ジャパンに行くわよ。」

「本当か!?」

「彼女も私もジャパンから招待状を受けたのよ。私は調整が間に合わないからパスさせてもらうけど…これが彼女のラストランだから会えた時にしっかり話したいことを話しておきなさい。」

「そうか、ありがとう!」

「そういえばアグネスタキオンの姿が見えないわね…フライトもだけど。」

「そうなんだよな…連絡がまだ来ないんだわ。ホテルで何してるんだ…」

 

ーーー

 

一方、ソウジ達が滞在していたホテルでは…

 

「ばあちゃん!飛行機出ちゃうから早くしてよもう!」

「もう、ちょっとだけ待って!今いいところなの!チヒロと華麗なる一族の娘がいい感じで…そこにメジロの娘も…濡れるわぁ。あー、小型カメラも仕掛ければ良かった…」ハァハァ

「早くしろこのムッツリばばあ!ドア壊して無理やり引っ張り出すぞコラ!」

「お姉ちゃん、口悪いよ…」

「こんな姿。他の人に。見せるわけには。いかない…」

「チヒロは奥さんもとんでもない人だな…」

「ケーティングちゃん、拳銃とか持ってない?」

「持ってる訳ねぇだろ!…孫が1番とんでもないわ。」

 

一悶着していたようだ。

 

ーーー

 

「とりあえずブリザードと飯でも食ってしばらく待ってみるか…」

「私はソウジのビッグなホットドッグが食べたいね!」

「そういうの今はいいから…」

「へー、大きいんだ。」

「そんな所に興味を持たないでくれメダグリアドーロ…」

「3割冗談よ。」

「それだと半分以上は本気になるのだが?」

「ソ、ソウジのソーセージはあげないね!」

「ブリザード、表現がドストレートになってるぞ。」

「あら?そもそも貴方の胸だと挟めなくてホットドッグにならないわよ?ミスターソウジ、私の胸の方が良いホットドッグになると思わない?」

「…イージーゴア、このお嬢さんの暴走を止めてくれない?」

「私を巻き込まないでくれる!?」

「ふんっ!私にはこのヒップがあるね!ソウジも凄く気に入ってくれたね!」

「ーーーッ!?」

「ブリザードッ!!………この話は止めて。本当にマジで…」

 

タイキブリザードの衝撃的な発言にメダグリアドーロが顔を真っ赤にしつつ目を丸くする。その隣でソウジの顔も赤くなり俯いていた。慌ててメダグリアドーロが話を戻しに口を開く。

 

「コホン、それはさておき…ファーストクラスだし機内食はかなりゴージャスよ?今食べていいの?」

「そうだな…タキオンの実験データでも整理するか…いや、サンデーサイレンスにスカウトについての資料でも…」

「あん?俺は既に1人、契約してるぞ?」

「…は?初耳だぞ?え?いつの間に?何で俺に言わなかったの?」

「…お前のサブになるとは思ってなくてな。」

「いやいやいや!そもそもどうやってスカウトしたんだよ!てか、お前がそんな状態でどう指導するつもりだよ!」

「…まとめて聞くな。全部、話すから…」

「何でもいいけど、ここだと邪魔よ。…せめてロビー内の椅子にでも座って話しなさいよ。入口付近ならアグネスタキオンも気づくと思うから。」

 

サンデーサイレンスに問いつめ始めるソウジだったがメダグリアドーロが止めに入る。

 

「それもそうか。」

「私はこのままソウジの側にいるね!」

「で、あれば私とはここまでね。いつでも歓迎するから…また来てちょうだい。」

「あぁ、担当するウマ娘が挑むかもしれないからな…その時はよろしく。」

「バイバイね、メダグリアドーロ!」

「ではお嬢、私も行ってきます。カフェちゃん、ビックリしそう…」

「しっかりしなさいよ。」

「そうだぜゴア。てな訳でお前に俺の車椅子を押す権利をやろう。」

「はいはい、謹んでお受けしますよ…お嬢。私が帰るまでに契約トレーナーのリスト、この中から30人くらいまで絞ってくれない?これ、名刺…」ドサッ

「多っ!?え?私が普段から持ち歩いてる名刺より多くない?」

「お願いしますね…では!」

「おいゴア!もっとゆっくり…」

「サンちゃん、喋ると舌を噛むわよ。」

「…俺がケガ人ってこと忘れてないか?」

 

その後、ミーティングをしていたソウジたちは離陸時間ギリギリで駆け込んできたアグネスタキオンたちと合流し、飛行機へと乗った。そしてそのままアメリカから日本へと帰国したのだ。

 

ーーー

 

同時刻、日本のとある病院にて手術室より1人の男が出てきた。それを1人のウマ娘が出迎える。

 

「ふぅ…」

「チヒロ様、お疲れ様です。」

「ルビー嬢…待ってくれていたのか…」

「ヒシミラクルさんの手術…どうでしたか?」

「これからの経過を見るしかないが…全治するのに半年ほどに縮まったとは思う…お?」

 

チヒロの背後から気配を感じ、振り向いた。いたのは先ほどの手術の助手をしていたユウト(弟)とマリカ(姪)だった。

 

「兄さん!!無理言ってごめんね!!」ダキッ

「悪いユウト、2ヶ月は…有マに間に合わせることは無理だった。半年…来年の宝塚記念に間に合うか合わないかくらいだ。」

「十分過ぎるよ!…僕だったら、自然治癒で待ってって断っていたから。」

「お父さん、普通はそうだから…叔父様が凄すぎるだけだから。…というか断り切れなかったからこんなことになったのでしょ?」

「だって!ナリタトップロードとメジロマックイーンに何度も何度も何度もお願いされて…前者はともかく後者は断れないよ!兄さんがあの娘を治したからメジロ家とかあの方がめっちゃ支援してくれるし…兄さんいない、って言っても止めないし…気づいたらトレセン学園の関係の病院になってたし…」

「ユウト、それはお前のお陰で…」

「違うよ…全部、兄さんの功績だよ…トレーナーしてなかったから兄さんがこの病院を引き継いでた筈だったし。どうせ僕なんて…」

 

ユウトが下を向く。しかし、チヒロはユウトの肩に手をおいた。

 

「お前がいなかったら俺はトレーナーが出来なかったからな?今だから言うけどお前が継ぎたい、とか言わなかったら親父に無理やり辞めさせられてたかもしれなかったからな?いや、俺がアグネスに婿入りするまで諦めてなかったような…」

「私はあなたが華麗なる一族に来るまで諦めるつもりはございません。」

「ルビー嬢、流石に空気読んでくれる?マリカ、ユウトの仕事振りはどうなんだ?」

「普段はきっちりしてますよ。…院長が…お父さんがこんな情けないのは叔父様の前だけです。」

「だって、僕がするべき手術を兄さんに押し付けたんだよ!情けないじゃん!」

「…はぁ。もうすぐサンデーサイレンスが帰ってくると言うのに…」

「…ん?ちょっと待てマリカ!サンデーサイレンス?アイツ、ついに目を覚ましたのか!」

「…え?アメリカで一緒に行動してなかったのですか?」

「車椅子に乗って、トレセン学園のメンバーと一緒に『ブリーダーズカップ』を見に行ってた筈だよ兄さん。」

「…嘘だろ?」

 

病院内は騒がしくなる…1人を除いて。

 

 

 

「あの…誰かいないであるか?ワガハイのことを忘れないで欲しいある…」




次回は25日(宝塚記念)に投稿予定です。


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第85話 不死鳥の恩返し

アグネスタキオンたちが帰国して数日が経ったある日のこと…アグネスフライトはグラスワンダーと共にお洒落なカフェでケーキを食べていた。

 

「フライトさん、美味しいですか?」

「うん!美味しいよ~、グラスちゃんのも美味しそう♪」

「えぇ、とっても。…そうだ!1口ずつ交換しませんか?」

「いいよ。はい、あーん!」

「え?…あ、あーん。…美味しいです。…お返しですよ。」

「あーん…んん!甘さの中にほんのり苦さもあって美味しい♪…あれ?イチゴは食べないの?」

「私、好きなものは最後に食べますので…」

「じゃあ…はい!私のイチゴ!」

「んぐっ?」

「あ…ごめん。ふふふ…イチゴ食べるグラスちゃん可愛い♪」

「もうっ!!」

 

お互いに食べさせ合うその姿は完全にカップルそのものだ。

 

「うぅ…エルのグラスがフライトさんにXXXXたデス…」

「グラスさんはあなたのじゃないでしょ…後、どこでそんな言葉覚えてきたのよ。」

「あのケーキ、美味しそう~」

「スペちゃん、涎出てるよ。」

「ゲッホ!ゴホッ!お茶でむせた…」

 

その後をつけているエルコンドルパサー、キングヘイロー、スペシャルウィーク、セイウンスカイ、ツルマルツヨシの5人。どうしてこうなったのだろうか?

 

ーーー

 

2日前、グラスワンダーはアグネスタキオンの研究室へと来ていた。

 

「お姉ちゃんの好きな食べ物かい?特に好き嫌いは聞いたことはないねぇ。美味しければ何でもいいと思うよ。」

「ありがとうございます。では、予約したケーキ屋で大丈夫そうですね。」

「グラス君…お姉ちゃんとデートでもするのかい?」

「そうですね…私としてはこの前、ウォーエンブレムさんから助けてくれたお礼のつもりですよ。ですが…確かにデートと言われればそうかもしれません。」

「ククク…お姉ちゃんを狙ってるライバルは多いよ?まずはお姉ちゃんの時間を勝ち取れるかな?」

「それは大丈夫です…明後日の放課後に約束出来ましたので~」

「…手が速いね。っと、例の腕輪だよ。」

「では、早速…」ガチャ

 

ピッ、ピッ、ピー

 

「『因子』の提供、感謝するよ。」

「いえいえ~、それにしてもウォーエンブレムさんを真っ正面から抑えれるなんて…フライトさんって強いですね。」

「うーん、それは正確ではないね。」

「と、言いますと?」

「実際に握力とか、踏み込む力とかお姉ちゃんのデータはあるのだが…何れも高いとは言えない数値だ。現に合宿場で私にパンツを脱がされた時は力負けしていたからねえ。」

「…何があってそんな状況に?」

「まぁ、成り行きだよ…話がずれたね。私の出した現段階での考察だが…お姉ちゃんは『誰かの為に動いてる時が強い』だ。」

「誰かの為…前に学園内の生徒を大量に背負って徘徊した事件もそうなのでしょうか?」

「あの時の記憶は殆ど無いため私は何とも言えないが…私を元に戻すため、というのがシャカール君の考えだ。ブルボン君の話が相当ショックだったとか。」

「なるほどです~。でも、実際に数人分のウマ娘を背負って戦えていたのでフライトさんのポテンシャルそのものは高いのでしょうか?」

「高いだろうさ。…これも私の意見だが…お姉ちゃんは常に自分自身はどうなってもいい、と考えてる。この前のアメリカでも…」

「この前?」

「すまない。あまりいい話じゃないから忘れてくれ…と、紅茶がもうないね。グラス君、今日はここでお開きだ。お姉ちゃんとのデート、楽しんできてくれたまえ。」

「はい、ありがとうございます。紅茶、ごちそうさまでした…それでは~!」

 

グラスワンダーは研究室を後にした。

 

ーーー

 

そして、その日は来る。グラスワンダーは校門にてアグネスフライトと合流し、街へと向かった。

 

「今日はお時間いただきありがとうございます~」

「いいのいいの。早速行こうか♪」

「では、予約していたケーキ屋に…」

 

会話をしているうちに目的地と着き、それぞれケーキと飲み物を注文した。

 

………

 

ケーキ屋を後にアグネスフライトとグラスワンダーは街の方へと歩いていた。

 

「それにしても意外かな~、グラスちゃんって和菓子が好きだと思っていたからもっと和風なカフェに行くかと思ってた。」

「フフフ…それも考えましたよ。ですがここの抹茶ケーキがとても美味しいと聞きまして…是非フライトさんと味わってみたくなりました。」

「私と?えへへ…何か照れるよ。」

「では改めて…この前はありがとうございました。」

「ううん!私もグラスちゃんの可愛い顔が見れたし。」

「…もう!…その時にしたこと忘れてないですからね?」

「げっ…!あの味見は…その…グラスちゃんが可愛くて…つい…」

「そうだ!この後、行きたいところがあるのですけど…ご一緒いただけますか?」

「ずるいよ…こんな状況断れる訳ないじゃん。まぁ、それは関係なく…いいよ。どこに行きたい?」

「それはですね…」

 

「ショッピングモールに行ったデス!追いますよ!」

「慌てないの…あれ?スペさんとスカイさんはどこに?」

「スペちゃんは併走の約束があったとかで学園に、セイちゃんは飽きたから帰るって…」

「私も帰ろうかしら…」

「…ダメですキング!エルを見捨てないでください…」

「大丈夫だよエルちゃん!私がいるよ!」

「しょうがないわね…一緒にいるから泣きそうな顔しないの。」

「キング…」

「あれ?私、頼られてない?」

 

………

 

「ん~、もっとピチピチのでもいいと思うけどね。」

「あまり露出が多いのは…」

「向こうじゃそれが普通じゃないの?」

「そうですけど…私は肌が見えるのは抵抗が…」

「すっかり日本に染まったわね…よし!じゃあ、これにしよっか!」

「お腹丸出しじゃないですか!…話聞いていましたか?」

「いや、アメスクと比べりゃ少ない少ない!」

「言っておきますけど…アメリカに制服はありませんからね?マンガの見すぎです。」

「んー、いいと思ったけどな。」

「ならフライトさんはそれを着れるのですか?」

「普通に着るけど?はぁ…これを着たグラスちゃんのおヘソをペロペロしたいな…」

「フライトさん、それはただのセクハラですよ。……あなたならいいですけど。」ボソッ

「まぁまぁ。私が試着してみるから考えてみてよ。」

 

とある服屋にて色んな服を見ていくアグネスフライトとグラスワンダー。いくつか取ったのち、試着室へ向かった。

 

「じゃーん!」

「いいですね~」カシャ

「グラスちゃん、写真撮るの?」

「参考にするためです♪」

「まぁ、いいけどさ…」

 

次々と服を試着するアグネスフライト、その度に写真を撮るグラスワンダー。そしてポーズも要求し始め、それにアグネスフライトは全て答えいく。1通り、試着が終わり写真を見ていくことした。

 

「私的にはやっぱり、このヘソ出しがいいかな~」

「私はこの緑のワンピースがフライトさんに似合っているかと…美味しそう。」

「ん?」

「フライトさん、この2着を買いましょう。そのままこれに着替えて歩きませんか?」

「制服じゃないから寮には戻れないよ?」

「時間はまだありますし…プチ女子会と行いましょう♪」

「なるほど。じゃあ、私が何時も行ってるカラオケで…」

「フライトさん、私が行きたい所でもいいですか?」

「え?どこどこ?」

 

着替えたグラスワンダーたちは街を後にする。

 

「また何処かに行くようデース!」

「追うわよ!」

「待って…あっちの方角って…」

 

ーーー

 

「グ、グラスちゃん?あそこって…」

「気になっていたのですよ~。女子会でオススメの場所で出てきた場所でそこがあったので…ダメでしたか?」

「ダメだよ!あそこは学生じゃ入れないから!」

「…今の格好で、学生に見えますか?」

「まさか着替えたのって…」

「行きましょうか…フライトさん?」

 

カプッ

 

「ひうっ!」ビクッ

「この前のお返しです…大丈夫です。怖いのは最初だけ…」

 

「ダメデース!」

 

アグネスフライトの首に一瞬噛みつき、そのまま手を引こうとしたグラスワンダーの前にエルコンドルパサーが現れる。それに続きキングヘイローとツルマルツヨシも出てくる。

 

「何考えてるのグラスさん!学園にバレたら退学よ!」

「グラスちゃん…私たちまだ中学生だよ!」

 

それをみたグラスワンダーは微笑んだ。

 

「やっと出てきてくれましね。皆さん、驚きましたか?」

「…ケ?」

「いや~、後を付けてるのはバレバレだったよ。だから一緒に驚かそうって話になってさ~。…何故か噛みつかれたけど。」

「フフフ…さっきのフライトさんの声、可愛かったですよ~」

「そう…でしたか…」

「だとしてももっと他にも方法があったでしょう、この…おばか!」

「はぁ…マジで寿命が縮まった…」

「でも…グラス?エルたちが出てこなかったら、どうしていたデスか?」

「そういえばそんな話はしてなかったね?どうするつもりだったの?」

 

グラスワンダーは舌を出しながら笑顔で答える。

 

「秘密です。」

 

その後、5人は寮の門限までカラオケを楽しんだ。

 

ーーー

 

次の日、グラスワンダーは再びアグネスタキオンの研究室へと足を運んだ。

 

「なるほど…つまり、君はお姉ちゃんが好きなのかい?」

「はい…昨日のデートでよく分かりました…」

「お姉ちゃんは…その…」

「分かっていますよ。想いを寄せてる方がいるのですよね?」

「…あぁ。」

「…私、好きな物は最後に食べるのですよ。」

「ん?」

「最後に…卒業式に…フライトさんにこの想いが伝えれば…」

「…何時でもここに来たまえ。お姉ちゃんの卒業までなら…相談に乗ろう。」

「…ありがとうございます。」



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第86話 とある星の話をしよう4

どうも…宝塚記念の入場券が当たり、現地へ移動中の作者です。現地でグランプリレースを見るのは初めてですね。

今日の宝塚記念…応援するのは『ディープボンド』!!『マーベラスサンデー』、『メイショウドトウ』、など宝塚記念でG1を初勝利した例も珍しくない…ゆえにここは勝って欲しい!
後は現時点で世界最強の『イクイノックス』、好走をし続けている『ダノンザキッド』を応援します!
…全員の完走を祈ります。

勝ったのは『イクイノックス』…最初蓋されていたのに…強すぎる。ディープボンドは5着…喉痛い。


11月に入った週末…東京レース場にてG1レースの『天皇賞(秋)』が行われていた。

 

『さぁ最終コーナー入って、現在の先頭はローエングリン。

このまま逃げきれるか?

ここでシンボリクリスエスが追い込んできた!

シンボリクリスエス、すごい伸びだ!

一気に先頭に立った!

大外、ツルマルボーイも伸びるが…これは届かない!

シンボリクリスエス、圧勝!

シンボリクリスエス、ついにG1に手が届いたっ!!』

 

パチパチパチパチ

 

………

 

「クリスエスおめでとう!!」

「おめでとうございます。」

 

「…ありがとう。」

 

ウイニングライブ後、シンボリクリスエスは控え室にてゼンノロブロイたちと共に勝利を喜んでいた。

 

「どうしたボリクリ?不満そうだなァ?」

「…あぁ。」

「どうして?レコードタイムでの勝利だよ?」

「…今回の私の勝利はアグネスタキオンがいなかったからだ。彼女に勝たなければ…私が満足することはないだろう。」

 

「クリスエスさん………やはり、あなたの目に私は映っていないのですね…」

 

「…はい!じゃあ、明日からまた練習です。…クリスエス、その前にテレビのインタビュー来てるから…行ってきて。」

「了解した。ノリカ、また後で。」

 

シンボリクリスエスは控え室を後にした。

 

「では、私たちも…」

「ロブロイちゃん、ちょっといい?」

「え?何でしょうか?」

「まぁ、大したことじゃないんだけど…」

 

控え室に残ったノリカとゼンノロブロイを背にエアシャカールとファインモーションもその場を後にした。

 

「…」

「シャカール?…ロブロイなら心配しなくても大丈夫だよ。」

「…別にしてねェよ。」

「そうかな?フフフ…今からフライトとギムレットを呼んでラーメンでも行く?」

「行かねェ…てか、てめぇもレースが近ェだろうが!炭水化物は控えろ!」

「…うん。分かってるけど…その…ね。次のね、私のレース…その…」

「…不安があるならてめぇのトレーナーに言えよ。」

「…」

「…チッ。話くらいは聞いてやるから早くしろ!」

「ー!ありがとうシャカール!」

 

その後、2人でラーメンを食べた。

 

………

 

『ーー次の質問ですが、シンボリクリスエスさんが課題としている部分はどこでしょうか?』

 

『末脚…今回以上に速くキレのある走りにしたいと思っている。』

 

『今回以上…ですか?それはかなり期待したいですね…それで次走はやはり『ジャパンC』になるのでしょうか?』

 

『…『ジャパンC』には出走しない。』

 

『…え?』

 

『アグネスタキオン…彼女に勝つことが今の私の最大の目標。世界最強となった彼女に対抗するため、この11月は末脚を…私の武器を徹底的に磨く。そして…ラストランとして『有マ記念』で全てを出しきる予定だ。』

 

『ラストラン!?』

 

『…私の走りに期待して欲しい…以上だ。』

 

 

ーーー

 

シンボリクリスエスの『天皇賞(秋)レコード勝利』、インタビューでの『ジャパンC回避』、『有マ記念ラストラン』という衝撃的な出来事があった翌日…大井レース場にて『JBC競争』が行われいた。

そして『元・未勝利の星』ハルウララ…彼女は今日、メインレースの1つである『JBCスプリント』に出走する。そんな彼女は現在…控え室にて横になり、大きく身体を伸ばしていた。

 

「んんーー!!」グイッ

「ウララ、準備はいい?」

「うんっ!久しぶりのレースだから楽しみでしょうがないよ!」

「いや、まだ1ヶ月くらいしか…ってウララにしたら長かったか。体調は大丈夫?」

「たいちょーはだいじょーぶ!でも…初めてのG1レースだから…ちょっときんちょーはあるかも…あ!とれーなー!今日のタイムは…」

「ないわ。」

「…え?」

「もう必要ないわ。だから…ウララにとって一番の走りをして!大丈夫…私が知るウララなら…大丈夫だから!」

 

コハルはハルウララの頭を軽く撫でる。するとハルウララは笑顔になって立ち上がった。

 

「ーーうんっ!行ってくる!」

「って、待ちなさいウララ!左目に巻く赤いの着けてないじゃない!変更したんだから忘れたらダメでしょ!」

「…あ。」

「締まらないわね…ウララらしいけど。ほら、座って。」

「えへへ…」

 

コハルに赤い布を巻いてもらい、ハルウララはパドックへと向かった。

 

………

 

地下バ道にて、スターリングローズはバインダーに挟んだ資料とにらめっこしていた。

 

「今回のレースはウララちゃんはおそらく後ろから来るはず。一番警戒するのは東京盃を勝ったハタノアドニスとして、サウスヴィグラスと共に前に来たならプランGとQを頭に入れつつコーナーを越えたらマイネルセレクトより早く前に出てウララちゃんから逃げ…」ぶつぶつ

「ローズちゃん!」

「ウ、ウララちゃん!?」

「何々?考えごと?」

「今日のレースに向けて色々と作戦を練ってきたからね…とりあえず5つまでには搾れたわ。今回も掲示板は確保する予定だよ。」

「へー、すごいね!私はただ楽しく走るだけだから…でも、勝てたらすっごく気持ちいいよね!」

「…気持ちいい?」

「うん!勝つために全力で走る!…私ね、最初に勝てるまで勝てなくても楽しいからいいや、って思ってたの。でもね、実際に勝ったらさ、また勝ちたい!勝ってやる!って感じになってね、えーと…」

「…勝ちたい、か…よし!」

「ローズちゃん!?」

 

その瞬間、スターリングローズは資料をバインダーごと真っ二つに折り、ゴミ箱へと捨てた。

 

「…良かったの?大事なものなのでしょ?」

「勝ちたい、からね。これでいいの…お互いに頑張りましょ。」

「うんっ!」

 

ハルウララとスターリングローズはパドックへと向かった。

 

 

「…うぅ、初のG1…緊張するっす。でも、ルビー様の前でカッコ悪い姿何て…うぅ。…すぅ…はぁ…すうぅぅ…はあぁぁーーんんっ!ゴホゴホッ!ゴホッ!」

 

ーーー

 

「ハルウララのパドックが始まったぞ…なぁ、タキオン。現地じゃなくて良かったのか?」

「…私たちにそんな余裕はないだろ?宝塚記念の時とは違うんだ…指導を頼むよトレーナー君。」

「とか言いつつ、お前が今やってるのは『因子』の合成じゃないか…」

「グランプリウマ娘であるグラス君の『因子』が手に入ったんだ…ククク、気になってトレーニングどころじゃないよ。」

「…。(フライトからタニノギムレット、シンボリクリスエス、ゼンノロブロイの『因子』を貰ったことは黙っておこう。)」

「ふむ…誰かと重なっている成分は無さそうだ。」

「…あれ?今、テレビで一瞬チヒロトレーナーが映らなかったか?」

「おじいちゃんがかい?君の見間違いだろ?」

「そう…かな?」

 

ーーー

 

一方、大井レース場でチヒロはダイイチルビーとアジュディケーティングと共にパドックをみていた。

 

「ハタノアドニス、キャットが担当しているウマ娘か…きっちりと仕上げてるじゃないか。前哨戦の『東京盃』も勝ってるし…期待出来るな。」

「『かしわ記念』でスターリングローズに敗れたりはしたが…その後は重賞を3連勝。調子は最高だよ。」

「マイネルセレクト…彼女のこともお忘れなく。練習データを見る限り、彼女も優勝候補の1人です。」

「あぁ、身体が前より少し絞ったか…いい感じだ。」

「彼女も『華麗なる一族』だったよね?身内贔屓とは紅玉様も甘くなったね。」

「…私は事実を発言したまでです。」

「おいキャット!ルビー嬢を煽るな!」

「別にそんなつもりはないけど…チヒロ、お前は誰が勝つとみる?」

「俺か?俺はだな…」

 

ーーー

 

パドックが終わり、各ウマ娘たちが次々とゲートへと収まっていった。

 

『最後に名古屋のユウキュウがゲートに収まり…スタートしました!

サウスヴィグラス、いいスタートだ!

それに続くナイキアディライトにハタノアドニス!

続いて内にフェスティバル、外にマイネルセレクト、その後ろに昨年の覇者スターリングローズ!

間を狙うシルバーサーベル、その外からハルウララ、大外からはエスプリシーズ!

ここまでが先行集団!』

 

ハルウララは見事なスタートをきり中団の外へと付いていた。

 

『後方集団はノボトゥルーとツルマルザムライを前に、ナイキアフリートと外からノボジャック!

後方の3人はエムエフファルコン、ケンチャム、ユウキュウ!

前は3コーナーへと入り、ナイキアディライトとサウスヴィグラスが先頭を取り合っている!

外からハルウララが一気に3番手まで上がってきた!』

 

「よしっ!ここだ!」

 

ダンッ

 

『4コーナー曲がり、最後の直線でハルウララが先頭へと立った!

ナイキアディライトは後退か!

先頭を追うサウスヴィグラスとマイネルセレクト!

さらに内からハタノアドニス、外からスターリングローズが追い込んできた!

先頭、ハルウララ!

ここで末脚を伸ばしてきたか、外のマイネルセレクト!

ハルウララとの差が無くなってきた!

ハルウララ先頭だが苦しいか!

ハルウララとマイネルセレクト、2人並んでゴールイン!

3着争いはスターリングローズかサウスヴィグラスか!

最後にマイネルセレクトがハルウララを捉えたかどうか…!』

 

ワアァァァーーッ!!

 

ゴール直後、観客席が一気に盛り上がる。

 

「ウララちゃんかな?ウララちゃんだよね?」

「分からなかったわ…結果が出るまで待ちましょう。」

 

「マイネルセレクトが差しきった…よな?」

「あぁ、俺はそう思うけど…」

 

「やっぱりスターリングローズは安定してるよな。」

「…でも…いつもと違う走りじゃなかったか?」

「確かに何時もより悔しそうだな…G1だからじゃね?」

 

「…ダイイチルビー、身内贔屓などと言って悪かったよ。彼女の実力は本物だ。」

「…いえ。ハタノアドニスさんもまだまだこれからかと。」

「そっか…うん!また1から鍛えていくよ!」

 

周りが騒がしくなる中でチヒロが小さく呟いた。

 

「…やはりハルウララ、か。コハル、お前は本当によくやったよ。」

 

ーーー

 

『判定が出ました!

1着はハルウララ!!

高知から初のG1ウマ娘爆誕!!』

 

ザワザワザワザワ

 

数分後、写真判定での結果が発表された。画面にはほぼ並んだ状態のハルウララとマイネルセレクトの写真が写っており…ハルウララの鼻が先にゴール線へとついていた。

 

「や、や…やったーー!!」

「おめでとうウララちゃん!」ダキッ

 

ハルウララが笑顔で大きくジャンプする。それと同時にスターリングローズがハルウララへと抱きついた。その結果…

 

「…ぐえっ!」ドサッ

「ローズちゃん!?ごめん!」

 

2人のバランスが崩れ、そのままスターリングローズがハルウララの下敷きとなった。

 

「あぁ…ウララちゃんの柔らかい感触が……じゃなかった!ねえ、ウララちゃん…今、嬉しい?」

「うんっ!とっても!これで私もG1ウマ娘!ローズちゃんと並んだよ!」

「G1…そっか。このレース…去年は私が勝ったレースだったね…よし、決めた!私…ドリームに行くよ!」

「ドリーム?」

「…ウララちゃんのお陰で決心が出来た!私も…大舞台で勝ちに行く!」

「私の…お陰?」

「ウララちゃんが何時来るか分からないけど…先に待ってるから!それじゃ!ウイニングラン行ってきて!」

「待ってる?え…?あ、うん!走ってくるね!また後のライブで!」

 

その後、ハルウララをセンターにしたウイニングライブが行われた…歴代最高の盛り上がりだったという。

 

現在のハルウララの成績

総合:98戦14勝(14-5-4-75)

今期:19戦14勝(14-1-0-4)

主な勝利:建依別賞、シリウスS、JBCスプリント

 

ーーー

 

「…またあの娘に負けたっす。あと10mあれば…でも負けは負けっす。でもこれじゃあ…ルビー様に合わせる顔が…」

「顔を上げなさい。」

「ー!?」

「華麗であれ。至上であれ。常に最たる輝きを。」

「ル、ルビー様…何故ここに…いや!私のことをご存知で…」

「貴女は何故、下を向いているのですか?」

「え?それは…その…前回負けた相手に…今回も負けたから…っす。」

「…」

「私…最近まで自分が『華麗なる一族』のウマ娘だって知らなかったっす。母が黙っていたのもあるっすけど…デビューした後に言われてビックリしたっす。…正直怖くて逃げたくなったっす。不様に負けてルビー様たちの顔に泥を塗らないか、その不安がずっと私に纏わりついてるっす。」

「…貴女は走ることが嫌いですか?」

「う、うぅ……そんなことは…ないっす。トレーナーに止められて長期間走れなかったこともあったっすけど…走ることは大好きっす。」

「…なら背筋を伸ばしなさい。」

「ー!?」

「華麗であれ。至上であれ。常に最たる輝きを…結果は何であれ私は貴女のこれからに期待します。」

「ル、ルビー様…?」

「…ではご機嫌よう。最後に…私に様付けは結構です。」

 

ーーー

 

その後、『JBCクラシック』が行われた。

 

『最終コーナー曲がって、先頭はカネツフルーヴ!

しかし、アドマイヤドン!

アドマイヤドンが捉えた!

アドマイヤドンが先頭に変わり、外からはスターキングマン!

しかし、アドマイヤドンだ!

アドマイヤドンがドンドン伸びる!

そのまま差を広げ…ゴールイン!』

 

アドマイヤドン、圧勝。

 

「『有マ記念』に出るまで…私は負けない!」

 

 

力強く宣言するアドマイヤドンに大きな拍手が送られる。こうして『JBC競争』は幕を閉じた。




ハタノアドニス(Hatano Adonis)…アグネスタキオンより2つ上の世代の鹿毛の牡馬。アジュディケーティング産駒。(現在で)2歳から走っては休養、走っては休養を繰り返し、4歳になり3勝(その間に7戦しており全て3着以内)。その後も掲示板内を外さず…900万以下の条件レースを3連勝。その中には後にJBCスプリント(2003)を勝ったサウスヴィグラスもいた。しかし、その後は勝てなくなり6歳で地方へと移籍。掲示板をキープしつつ7歳で東京盃を勝利。その後は地方のレースで掲示板に乗りつつ現役を続けるも8歳のアフター5スター賞の勝利を最後に勝利は取れず10歳で引退…その後は不明。主な成績は東京盃1着(2003)、JBCスプリント2着(2005)、地方重賞1着×5回。


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第87話 ギャンブラーズゲーム2『飛行機VS吹雪VSマスコットVSギャンブラー』 前編

どうも、昨日のぱかライブでトーセンジョーダンの新衣装にテンションあげあげの作者です。ギャルしか勝たん!

帝王賞だから投稿…って訳じゃないんですが、投稿したくなったのでします!…とりあえず頑張れ『クラウンプライド』!!


「リーチだ!」

「それ、ロンです!やりました!またマーちゃんの勝ちです!」

「ちっ…仕掛けるのが早かったか。」

「ナカヤマちゃん…何でそんなリスクの高い牌を捨てたの?逃げれば良かったのに…」

「山を見てみろよ。」

「…嘘!これが流れてたら1発来てた並びだ!」

「すごいねフェスタ!」

「すごいです…ですがそれを見逃すマーちゃんではないのです。」

 

「さぁ、最終局面だよ。罰ゲームが誰になるか…楽しみだねぇ。」

 

アグネスタキオンの研究室内で再び麻雀が行われていた。

 

ーーー

 

時間は数時間前、アグネスタキオンの練習が休みとなっていた放課後。研究室に1人のウマ娘が訪ねてくる。

 

「フライトさんはいるか?」

「お姉ちゃんなら今はいないけど…何か用かい?」

「何、雀荘行くから麻雀セットを返してもらいにきた。」

「おい、未成年ウマ娘。何でそんな所に行こうとしてんだ。」

 

ナカヤマフェスタの発言にツッコミをいれるソウジ。すると、研究室に誰かが入ってきた。

 

「はい、ソウジ!仕事が早く終わったから遊びにきたね!…わぉ!フェスタ!」

 

入って来たのはタイキブリザード。入ったと同時にナカヤマフェスタへと抱きついた。

 

「ブリザードさん…やめろ…」

「ブリザード、彼女を知っているのか?」

「フェスタは私の妹ね♪」

「違う、ただの親戚だ!…フライトさんを見てないか?」

「ワッツ?フライトなら後ろにいるね。カモン!」

「ブ、ブリザードさん…ちょっと待って…」

 

タイキブリザードはナカヤマフェスタから離れ、扉の前にいたアグネスフライトの手を引いた。

 

「よぉ、フライト。久々だな。」

「あぅ…ソウジさん…ご機嫌うるわしゅう…」

「まぁ、俺のことは気にせずこの娘の話を聞いてあげて。」

 

アグネスフライトは顔を真っ赤にしつつ、タイキブリザードの背中へと隠れる。ソウジはそれ以上のことは言わず、パソコンへと目を向けた。

 

「えーと、ナカヤマちゃん?雀荘行くのって来週じゃなかった?」

「お前もかフライト…」

「はぅ…ごめんなさい…でも…」

「…フリーなんだからあんたが思ってるようなことじゃないからな。それで、前に没収した麻雀セット返してくれないか?没収期限は終わってるだろ。」

「え?私はもう風紀委員は引退したよ。引き継ぎも終わってるし…バンブーちゃんに言ってよ。」

「言ったら『それは知らないっス。うーん、とりあえずフライトさんに聞いてみてください。』って返されたんだよ。あんたが没収してたはずだが?」

「んん?バンブーちゃんも知らない………あ!ごめん!ここにあるわ!前に遊んで戻すの忘れてた!」

「何で人の没収品で遊んでいるんだ…」

 

ややお怒りの顔のナカヤマフェスタ…アグネスフライトは急いでロッカーから取り出し渡した。

 

「…ん?…麻雀?グッドタイミング!早速、私たちと遊ぶね!フライトはもう風紀委員じゃないから安心ね!」

「いや、まぁ…相手は今から探そうとしてたけど…ここはダメだろ?」

「トレーナー君の仕事の邪魔にならなければ、私は構わない。」

「そんな俺だが今から会議で席を外すぞ。だからお金を賭けるとかやべぇこと以外なら好きにしてくれ……っと時間だな!またな、ブリザード!フライト!」

 

ソウジは慌てて研究室を後にした。アグネスフライトは名残惜しそうに扉をみる。

 

「あ…行っちゃった…」

「お姉ちゃん、トレーナー君は私のってこと忘れてないよね?」

「ん?言われなくても知ってるけど?」

「…」

 

アグネスタキオンの質問にアグネスフライトは真顔で答えたため、アグネスタキオンは言葉を失った。

 

「ブリザードさん、あんた麻雀出来るのか?」

「初めてね!」

「何でやろうと思った…」

「マンガでみたからね!」

「…私が後ろで教えるとしよう。」

「タキオンちゃん、それだと3人になるよ…」

「何を言う。後1人はカフェ…」

「カフェちゃんならドーベルちゃんと可愛い喫茶店へデートに行ってるわよ。」

「えぇ…」

「私は三麻でもいいが…」

「サンマ?お魚?」

「…3人でする麻雀だ。1度みてもらった方がいいか?」

「人が足りないなら…ルドルフ呼んでくるね!」

「「「やめて(ろ)(たまえ)!!」」」

 

「お困りのようですね。」

 

『ーー!!』

 

突然、研究室内に誰かの声が聞こえた。4人は急いで辺りを見渡した。

 

「ここです。わたしの名前が聞こえたので…入っちゃいました。」

「誰だ?」

「あぁ、マーちゃんか!…あれ?マスコット活動の約束は明後日でしょ?」

「お姉ちゃんの知り合いかい?」

「そうよ、彼女の名前は『アストンマーチャン』。マスコットに憧れてる女の子………でいいのかな?」

「その通りです。どうぞ気軽に『マーちゃん』とお呼びください。」

「わぉ!キュートでぷにぷに♪マーちゃん、私の妹になるね♪」ダキッ

「わわわ!ブリザードさん、すごい包容力です…マーちゃんはブリザードさんの腕の中で遭難しそうです。」ジタバタ

 

扉の前にいたアストンマーチャンにタイキブリザードは抱きついた。

 

「『麻雀』が『マーちゃん』に聞こえたってところか…ちょうどいい。お前、麻雀は出来るか?」

「マンガで読んでただけですがルールは分かります。…役の名前とか点数の計算は全然ですが。」

「十分だ…よし、早速始めるとしよう。」

 

机の上に牌がばら蒔かれる。

 

「ではブリザード君、まずはその牌たちを混ぜて…全て裏に向けて山を作ってくれ。」

「山?」

「…2つに重ねることだ。それを並べて…あ、ルールだが今回は半壮ではなく東風のみで行おうじゃないか。」

「まぁ、最初はそれくらいがいいだろう。」

「どう違うね?」

「普通は2回親になるのですが…今回のルールですと1回だけになります。」

「マーちゃん、簡単な説明をありがとう。とりあえず、流れを掴んでもらうって感じかな。ビギナーズラックが見れるかもしれないし…」ズーン

「フライト?」

「気にするな。まだ1度も和了(あが)れたことが無いだけだ。」

「ククク、その時のドーパミンを是非観測してみたいのだが…」

「ダメよ。今日はブリザードさんにやり方を教えること…また、イカサマとかしないでよ?」

「しないとも…あのコーヒー風呂は2度とごめんだ。」

「コーヒー風呂?…ってかイカサマしたのかよ。どんなやつだ?牌のすり替えか?それとも相手の牌を発明品で透視でもしたか?」

「今してる洗牌で当りの牌を固めて山を作って、イカサマダイスで自分が取れるようにしたの。サイコロも全部タキオンちゃんが振っててね…カフェちゃんが気づかなかったどうなってたやら。あ、並べれたわね。」

「…今回はしないって。次に親だが…まぁ、サイコロを2つ振って目の大きい人でいいだろう。」

「では、マーちゃんからやらせていただきます。7です。」

「そうだ…今回はビリになった人に罰ゲームを受けてもらおう。」

「その内容は?」

「トレーナー君が興味本位で買った超ロイアルビタージュースを飲むってのはどうだい?ブリザード君が負けた場合は私が飲む。」

「タキオンだけじゃなくて、私も一緒に飲むね。8ね!」

「罰ゲームか…私はいいぜ。3…」

「マーちゃんも同意します。ふふふ…ゲームらしくなってきました。」

「えぇ!?まぁ…いいけど…あ、12だ。」

「…早速、運を使ってないか?」

 

結果、親はアグネスフライトとなり麻雀が始まった。

 

………

 

東1局、次々と牌が流れていき…ついにアストンマーチャンがドヤ顔で牌を横に置く。

 

「リーチです!」

「それ、ポンね!」

「あらら…マーちゃんの一発が無くなりましたね…」

「それもポンね!」

「…連続ですか。」

「鳴きか…悪くねぇな。」

「ポンね!」

「ブリザード君、数が連続するのはチーだ。」

「ソーリー、チーね!」

「むぅ…これは錯誤(チョンボ)ではないでしょうか?」

「んー、ブリザードさんは初めてだし…ナカヤマちゃん、どうする?」

「…次したらそうする。気をつけてくれ。」

「オーケー…ロンね!」

 

タイキブリザードがナカヤマフェスタの牌を取り和了る。

 

「…(ハク)のみか。いや、最初に和了(あが)れただけでも上々だねえ。」

「イエス!ビクトリー!」

「すごいよブリザードさん!私なんて…まだ和了(あが)れたことすらないのに…」

「…はんっ!楽しくなってきたじゃねえか!」

「むむ…今度こそ取り返しますよ。」

 

ナカヤマフェスタとアストンマーチャンの点数が1000ずつタイキブリザードへと渡り、親はナカヤマフェスタへと変わる。

 

………

 

東2局…牌が流れ、再びアストンマーチャンがドヤ顔を見せる。

 

「リーチです!」

「早いよマーちゃん!?」

「タキオン…どれを捨てたらいいね?」

「これが安牌(アンパイ)だよ。ただ役が…」

「分かったね!」

「早い決断…嫌いじゃねえ!」

「待つだけとはいえ…ワクワクしますね。」

「タキオン!…今度はどれを?」

「…勘でいきたまえ。」

「欲しい牌が来たが…タイミングが悪いな…」

「あ、ツモです。何点ですか?」

 

アストンマーチャンが和了(あが)り、ナカヤマフェスタに自牌を見せる。

 

立直(リーチ)門前清自摸和(ツモ)に赤ドラが1つか…5200だな。ブリザードさんとフライトさんは1300ずつ渡しな。…立直しなくて良かったぜ。」

 

タイキブリザードとアグネスフライトから1300、ナカヤマフェスタからは2600の点数がアストンマーチャンに渡る。親はタイキブリザードへと変わった。

 

………

 

「ロンです!やりました!」

 

東3局は早かった。アストンマーチャンが積極的に鳴き、ナカヤマフェスタの捨牌で和了(あが)る。

 

「…(チュン)のみか。東風だけだから早めに終わらせに来たか?」

「マーちゃんは短距離勝負が得意なのです。」

「さぁ、最終局面(オーラス)だよ。罰ゲームが誰になるか…楽しみだねぇ!」

 

ナカヤマフェスタの1000点がアストンマーチャンへと渡り最終局面へと入る。アストンマーチャンがトップのままで親となった。




長くなったので分けました。後編は明日に投稿します。


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第88話 ギャンブラーズゲーム2『飛行機VS吹雪VSマスコットVSギャンブラー』 後編

クラウンプライド…勝ったと思ったんだけどな…


「むぅ…今回は引きが悪いですね…」

「運が収束し始めたか?」

「なら私にもその運が来て欲しいのだけど?」

「元から無いものは巡回しねぇよ。」

「納得だね。」

「タキオンちゃんまで酷い…でも今のビリはナカヤマちゃんだし~。今回は罰ゲーム回避できたら別にいいし~。」

「タキオン、ここから作れる役って何か無いね?」

「これは厳しい…ブリザード君、今回は上手く流すんだ。」

「了解ね。」

「流れれば私の勝ちになりますよ?」

「しまった…マーチャン君が親だった!ブリザード君…来る牌の運に身を任せよう。」

「とりあえず、いいの来たら教えて欲しいね!」

 

最終局面…誰も仕掛けないまま次々と牌が流れていく。

 

「チーね!」

 

焦ったタイキブリザードが鳴きをする。そして、アグネスフライトも安牌(アンパイ)を出すようになってくる。余裕そうな顔をするのはアストンマーチャンとナカヤマフェスタの2人。

 

「フェスタ、ビリなのに余裕そうね。もうすぐ、山が無くなるね。」

「はんっ!だからこそ燃えてるんだ…面白え。」

 

ナカヤマフェスタが取った牌を捨て、積まれたは牌は残り4つ。そして、3人の牌が流れ…最後の牌をナカヤマフェスタが取る。口角が上がった。

 

「ツモだ。」

 

『ーー!?』

 

4人の目が丸くなる。

 

「タキオン、フェスタはリーチしてないね!和了(あが)れるの?」

「役があれば和了(あが)れるとも…今回だと河底(ホウテイ)かな?」

「いや、ツモだから海底(ハイテイ)だ。さらに単騎待ち、赤を含めてドラ4、三暗刻(サンアンコウ)…倍満!16000だ!はぁ…久々に出来たぜ…」

「16000!?」

「あぅ…マーちゃんから8000点も取られました…」

「あれ?これって順位どうなるの?」

「フライトさん…あんたが最下位だ。」

「嘘!?マーちゃんじゃないの?」

 

アグネスフライトたちは点棒を数え始める。

 

「22200です。」

「36400だな。」

「21700ね…フライトは?」

「…」ズーン

 

アグネスフライトの顔が沈む。代わりにアグネスタキオンが答えた。

 

「19700だねえ…最下位だよ、お姉ちゃん?」

 

コポポポ…

 

アグネスタキオンがコップにロイヤルビタージュースを淹れる。その青臭さにアグネスフライトが鼻を抑える。

 

「タ、タキオンちゃん?前に味覚を替える薬とか調合してたよね?あれと一緒じゃダメ?」

「それじゃあ、罰ゲームにならないだろ?…飲まないのかい?なら、私が飲ませてあげよう…」

「ひぃ…嫌…」

「逃げちゃダメね♪」ダキッ

 

アグネスフライトは逃げようとするもタイキブリザードに抑えられた。そして、ロイヤルビタージュースが自身の口へと迫る。

 

「んー!」

「口を開けないと終わらないよ、お姉ちゃん?」

「んんん!」

 

アグネスフライトは口に力を入れて抵抗する。そんなアグネスフライトにタイキブリザードが耳元で何かを言う。

 

「…私、今日の夜はソウジの家で過ごすね。」ボソッ

「ー!」

 

その瞬間にアグネスフライトの力が抜けて口が開く…そこにアグネスタキオンがロイヤルビタージュースを一気に流し込んだ。

 

「苦っ!!あー、後かららくく来るる!いや…がっ…!!喉痛っ…!」

 

あまりの苦さに暴れるアグネスフライトだが…タイキブリザードに捕まっており、思うように動けない。

 

「タキオン、それって薄めて飲むやつじゃないのか?」

「…え?」

「パードゥン?」

 

「ごほっ…ご…おぇ…」

 

ナカヤマフェスタの言葉に顔が青くなるアグネスタキオンとタイキブリザード。それ対してアグネスフライトは紫になり始めた。

 

「わぁ…地獄絵図ですね…」

 

「苦いいよ…助けてぇぇ…」

 

「塩!いや、何か甘いもの!?」

「まずは水を飲ませるね!フライト!黒いトウモロコシは好き?モチモチしていて美味しいね!この前、スイートコーンを目指して品種改良したサンプルの栽培が上手くいったね!それで…」

 

アグネスタキオンは慌てて冷蔵庫まで走り、タイキブリザードは抱きしめたままの状態でトウモロコシの話を始める。そんな様子にナカヤマフェスタとアストンマーチャンはただドン引きした。

 

ーーー

 

「ごめんね、お姉ちゃん…」

「フライト…ソーリー…」

 

「…」

 

アグネスフライトは土下座するアグネスタキオンとタイキブリザードをしばらく見つめたのち…1つの金庫(*鍵付き)を無理やりこじ開けて、あるものを取り出すと自分とアグネスタキオンに付けた。

 

「お姉ちゃん!これ…!?」

 

「苦い!!こんな…あぁ!!」

 

「ワッツ?フライト?」

 

アグネスフライトがスイッチを押すと同時にアグネスフライト(アグネスタキオン)が苦悶の声を出す。アグネスタキオン(アグネスフライト)はそれを気にせずアグネスフライト(アグネスタキオン)を担ぎ、どこかへと運んだ。

 

「何があったね!?」

「ブリザードさん、恐らくだが…」

「はい。感謝祭でみせた『中身を入れ替える首輪』かと。エアグルーヴさんとジャンポケさんが使ってました。」

「ってことは…タキオンの中身がフライトってこと?それでフライトはどこに行ったね?」

 

数分後、戻ってきたアグネスタキオン(アグネスフライト)が麻雀の席へと座った。

 

「ブリザードさん、流れはもう分かりましたよね?タキ…私無しで大丈夫ですよね?」

「オ、オフコース…」

「じゃあ、今度は半荘で…罰ゲームは別のものにしましょう。」

「あの…フライトさんの体は…」

「タキ…お姉ちゃんならしばらく戻らないよ。この体を傷付ける訳にはいかないから。」

 

3人の額から汗が垂れる。

 

「罰ゲームは何だ?」

「洗牌しながら説明するわ…ソウジトレーナーが戻る前に始めましょ。」

 

ーーー

 

数時間後の研究室の光景はというと、ニット帽を取ったナカヤマフェスタ、半袖体操服に制服スカートなアストンマーチャン、スポブラとストッキング姿のアグネスタキオン(アグネスフライト)、パンツ1枚となったタイキブリザード…彼女らの足元には脱いだであろう衣服が置かれている。4人は牌を取っては捨て、取っては捨てと麻雀を繰り返していた。

 

「流局です。これで終了…フェスタさんの勝ちです。」

「ノー!私は聴牌(テンパイ)で…」

「ちっぱいの間違いでしょ…ナカヤマちゃんも聴牌(テンパイ)だから終わりです。はい、最下位ですので罰ゲームですよブリザードさん。」

「フライト、ずるいね!私しか狙ってないね!」

「何度も錯和(チョンボ)したブリザードさんが悪いです…そういえばブリザードさんの勝負服って緑でしたよね。それって今日の勝負パ…」

「違うね!ただの偶然ね!普通にソウジにご飯食べてもらうだけね!」

「…で、ついでにブリザードさん自身も食べてもらうと。」

「だから違うね!」

「期待してないんですか?」

「………ちょっとだけ。」

有罪(ギルティ)。」

 

アグネスタキオン(アグネスフライト)がタイキブリザードを押さえ込んだ。

 

「止めるねフライト!」

「暴れないでくださいよ。パンツが脱がせにくいじゃないですか。」

「い、嫌ね!これが最後の1枚だしもう終わりで…」

「何言ってるのですか?次にブリザードさんが負ければXXXにXXXXをXXXXして…」

「フライト!ここは学園内ね!そんなことしたらダメね!」

「バレなきゃ問題ないですよ…えい!」

「ノォーン!か、返して…」

「なら私も裸にすることですね……ふぅ。はい、席に戻る。」クンクン

「あ、あうぅ…嗅がないで…」

「早く戻らないとペナルティを追加しますよ?」

「すぐに戻るねっ!」

 

「…フライトさん、怖いです。」

「…マーちゃん、お前だけ逃げてもいいんだぜ?」

「…無理です。下手に動けば何をされるか分かりません…エアグルーヴさんたちも捕まって運ばれてる時、こんな気持ちだったのでしょうか?」

「とにかく、1秒でも早く終わらせるぞ。」

 

終了宣言と共にタイキブリザードからパンツを剥ぎ取るアグネスタキオン(アグネスフライト)。そして、その場から1歩も動けず体をガタガタと震わながらも洗牌を始めるナカヤマフェスタとアストンマーチャン。

 

 

「何やってんだお前ら!!」

 

この時、会議から戻ってきたソウジが大声で怒鳴ったことを誰が責めるだろうか?

 

「あぁ…ソウジじゃないか!終わったようだね。お帰りのチュゥをしよう。」

「…お前、フライトか?」

「え?何で……いや、私はタキオンちゃんよ。」

「ボロ出しすぎだろ…」

「あぅ…えーと…その…さようなら!………。ーーハッ!ソウジ、すぐに甘い紅茶を入れてくれないか?口の中が苦さにやられてしまっているんだ。さっきまで目の前も真っ暗で…って何だね!?私のこの格好は!?」

「ゾウジ!グッドダイミング!怖がっだねえ~っ!!」ダキッ

 

アグネスタキオン(アグネスフライト)が首輪のボタンを押すと元に戻り、自分の状況に混乱する。同時に全裸のタイキブリザードも背中から抱きついてきた。

 

「何でこうなったんだよ…ブリザード、お前は服を着ろ。タキオン、お前も服着てニンジンジュースでも飲んどけ。…ナカヤマフェスタとアストンマーチャンは何があったか聞いてもいいか?」

 

その後、事情を聞いたソウジは頭を抑え…原因となった超ロイヤルビタージュースをストレートで1瓶飲みきった。そして、ナカヤマフェスタとアストンマーチャンから『因子』をもらった後は寮へと帰らせ、アグネスタキオンとタイキブリザードと共にアグネスフライトを探し始めた。…すると近くの女子トイレの個室で縛られたアグネスフライトをタイキブリザードが発見した。その時、アグネスフライトは死んだ目でアグネスタキオンたちに謝罪の言葉をブツブツと述べていたが…その身柄は同室であるアグネスワールドへ渡され、解散となった。

余談だが、アグネスフライトとナカヤマフェスタの約束は…雀荘からビリヤードに変更されたとのこと。



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第89話 女帝の意思を継ぐ密林、奇跡の消失

…昨日に間違えて投稿してたみたいです。読んでいたらごめんなさい。


放課後になり、エアグルーヴがいつも通り生徒会室へと入る。すると紅茶を片手に書類を眺めるシンボリルドルフが目に写った。エアグルーヴはやや速足で近くに移動し、声をかける。

 

「お疲れ様です、会長。」

「やぁ、エアグルーヴ。今日もよろしく頼むよ。」

「…ブライアンはまだ来ていないみたいですね。重要な話があるのですが…先に聞いてもらえますか?」

「私にだけではなく、ブライアンにも伝える内容かい?」

「実は…」

「ー!」

 

生徒会室の床に茶色の水溜まりが出来た。

 

………

 

数分後、ナリタブライアンが生徒会室へと入る。中には洗剤を片手にカーペットをタオルで叩いているエアグルーヴと光の無い瞳で窓の外を眺めるシンボリルドルフがいた。

 

「おい、来たぞ…何をしている?」

「染み抜きだ。」

「…ルドルフは?」

「見ての通りだ。」

「………あぁ、ブライアンか。…千錯万綜、私でも理解が追いつかないことがあってね…」

「…何を言っている?」

「エアグルーヴ、さっきの内容をブライアンに伝えてくれるかな?」

「あぁ、私は今年一杯でドリームトロフィーから引退し、来年には学園を卒業することになった。」

「…は?」

 

ナリタブライアンの口から葉っぱが落ちる。慌てて拾い、何事もなかったかのように再びくわえた。

 

「あんた程のウマ娘が…随分と急な話じゃないか。ケガでもしたのか?」

「いや、寧ろケガが出来なくなった。」

「…話が見えてこない。どういうことだ?」

「………子供が出来た。」

 

自身のお腹をさすりながらその事を言ったエアグルーヴ…その瞬間にナリタブライアンの鼻テープが剥がれ落ちた。

 

ーーー

 

しばらく、無表情で窓の外を眺めていたシンボリルドルフとナリタブライアンの2人だったが、正気に戻りエアグルーヴに向かうように椅子へと座った。

 

「…相手は誰だ?…いや、聞くまで無いことだとは分かっているが…お前の口から聞かせろ。」

「…担当トレーナーのニヘイだ。」

「…他にも色々と言いたいことはあるけど…君のチームメンバーにはもう伝えたかい?」

「はい、リンカとアヤドを除いては通達済みです。2人には有マ記念後に話す予定です。」

「チケゾーにも伝えたのか…黙っているよう言っててもうっかり姉貴辺りに喋るだろ。」

「その時はその時だ。」

「コホン…退任の件は分かったよ。とりあえず、君の引き継ぎについてだが…有マ記念が終わればトゥインクルを引退するクリスエスに…」

「いえ、引退直後となれば彼女もドリームに向けて忙しくなるでしょう。ですので私から推薦したい者が1人います。」

「…まさか、フライトじゃないだろな?」

「違う。そもそもアイツも来年には卒業だろ。」

「ならいい。」

「ふむ…一体誰なんだ?」

「今から呼びましょう。」

 

エアグルーヴは電話をかけた。

 

………

 

数分後、1人のウマ娘がやってきた。

 

「失礼します…エアグルーヴ、急にどうした?レディブロンドさんと約束があるから早くして欲しいんだけど…」

「彼女です。」

「採用だ。」

「採用だね。」

「…いきなり何の話?」

 

ジャングルポケットだ。ケガの回復は順調なのか既に杖はなく、スタスタとした歩みで部屋に入ると同時にシンボリルドルフとナリタブライアンが発した言葉に頭をかしげた。

 

「あぁ、すまない。ジャングルポケット、1つ確認だ。エアグルーヴが来年卒業することは知っているよね?」

「知っているよ。チケゾー以外はあっさりした反応だったけど…いや、トレーナーが泡吹いて倒れたからそっちの方にビックリした。」

「…以外と冷めた反応だったんだな。」

「そりゃ、普段からあんなにいちゃついている所を見ていたらな…」

「なっ!私は公私混合しないとようにして…」

「せめて私たちがトレーナーの指導受けてる時に耳と尻尾をシュンとすることだけでも我慢出来ないか?」

「…おい、話がずれているぞ。」

 

ナリタブライアンの発言により話の軌道を元に戻す。

 

「コホン、それでエアグルーヴが抜けるため副会長の席が空くこととなったんだ。そこでジャングルポケット、君に副会長をしてもらいたい。」

「…え?それで私?私なんて折紙を作ることくらいしか出来ないよ?」

「…面倒見がいいこととか自覚はないんだね。」

「ジャンポケ、お前なら私の…いや、私以上の働きが見込めるとして指名した。だが無理にとは言わない。お前さえ良ければの話だ…考えてくれるか?」

「いいよ、副会長になる。」

「返事はすぐにとは……ん?待て?今、何て言った?」

「引き受けるって言ったよ…エアグルーヴにはケガの間に色々とお世話になったし、君の願いなら何でも答えたい。」

「…感謝する。早速、引き継ぎについてだが…」

「それなんだけど、今日じゃないとダメ?さっきも言ったが、この後は約束があるからさ。」

「そうだね…急な話だから今日はこんなところでいいと思う。ジャングルポケット、よろしく頼むよ。」

「はい!」

「…」

「…トレーナーには私から言っておこう。明日から引き継ぎについて説明する。」

「了解…じゃあ、今日はお先に!」

 

後日、正式にエアグルーヴの副会長退任、及び後続にジャングルポケットの就任が発表された。

 

ーーー

 

今年の天皇賞(春)を勝ったウマ娘のヒシミラクルは杖を片手にいつも通りに登校し、教室へと入っていた。

 

「ふわあぁ…みんな…おはようである…」

「おはようミラクル!…眠そうだね?」

「昨日もらった薬の副作用である…授業では眠らないように気を付けるである…」

「先生来るまで寝る?」

「そうするである…適当に起こして……Zzzz…」

 

これがクラスメイトがみた彼女の最後の姿だった。

 

………

 

「ヒシミラクルさん。…?ヒシミラクルさん?」

「ミラクル!起き……あれ?いない?」

「トイレにでも行ったのかな?」

「…ちょっと待って!杖があるよ!行くにしてもどうやって行ったの?」

「え?え?どうなってるの?」

 

パニックになる教室内…そこにヒシミラクルの姿はなかった。

 

ーーー

 

「あの~、そこ私の席で…」

「Zzz…」

「もしも~し?」

「Zz…はっ!先生が来たであるか!?…ん?どちら様で?」

「いや、それ私の台詞…あなたは誰ですか?」

「我輩?我輩は菊花賞と天皇賞(春)を勝ったG1ウマ娘!ヒシミラクルである!」

「………え?」

 

眠ったヒシミラクルに声をかける芦毛のウマ娘がいた。ヒシミラクルが目を覚まし…自分の名前を名乗る。芦毛のウマ娘の目が丸くなる。

 

「私も…ヒシミラクルだけど?」




書き溜めが終わったのでまた書いたら投稿します!


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第90話 モルモットと沈黙

100話めの投稿か…何だかんだ書いてきましたね。とりあえず…どうぞ!


「さて…全員のレポートが揃ったな…締め切りよりも早い提出で感心!感心!早速、見ていくか。」

 

ソウジが来年から担当となるウマ娘たちより提出された課題を机へと広げる。そして、それぞれの内容の確認を始めた。

 

「まぁ、まずは優等生のアイツから…」

 

レポートを1部取る…作成者は『ダイワスカーレット』だ。

 

『最初に私が感じたことは憧れのタキオンさんがダートレースを走ったことへの驚きでした。

無敗のまま引退したかと思えば天皇賞(秋)で復帰し勝利…その後のジャパンC、有マ記念でも大活躍。

なので…ダートレースである平安Sの出走することが最初、信じられませんでした。

このBCクラシックために走ったと聞きましたが…日本とアメリカではバ場もかなり異なるはずです。

なぜ走ったかは…私にはまだ分かりません。

それはまた、ソウジトレーナーに教えてもらうとして…今回のBCクラシックでタキオンさんは見事な走りで…(以下略)』

 

………

 

「うわぁ…真面目だな。本当にタキオンに憧れているんだな。俺からスカウトしてて何だが…俺で良かったのか?…てか、本当に中学生か?俺が高校生の時の課題でもこんなにガチガチに書いた記憶はないぞ?…最初に読むべきではなかったな…いや、次だ次!」

 

10分ほどで読み終わり、ダイワスカーレットの感想に満足しつつ…次のレポートを手に取った。

 

「おっ、綺麗な字で書かれているな…『キャプテントゥーレ』!?お前かよ…意外だな…マイペースな娘だと思ってた。」

 

『まずはソウジトレーナーへ…アメリカに連れて行っていただきありがとうございます。

まさか私のデビューより前に日本のウマ娘が…それもタキオンさんがアメリカのダートG1レースを勝つところを見れるとは思っていませんでした。

実は以前からアメリカのダートコースは日本のダートコースよりは芝コースと似ているとのことを耳にしました。

なのにソウジトレーナーが日本のダートを走らせたのはタキオンさんの"適応力"を試すためかなー、と推察します。

実際にホイットニーHでは初めてのバ場にも関わらず…(以下略)』

 

………

 

「んー、しっかりしたレポートだったな。それに"適応力"か…良いところに目を付けてくれた。…よし、次いくか…おいおい、Wordでの作成かよ…」

 

ソウジが次のレポートを取り出した。作成者は…『グランデッツァ』である。

 

『そんなにブリザードさんと勝てなかったことが悔しかったの?』

 

………

 

「やかましいわ!ってこれだけかよ!…てかグランデッツァ…ブリザードが過去に出走したこと知ってるのかよ。…はぁ、短いながも何てインパクトのある文章…次で俺の担当はラストか。『ディープスカイ』…普通の感想であってくれよ…」

 

『今回のBCクラシックでまずは目に入ったのはスタート時の出遅れ…タキオンさんらしくないとも言われているが調べるとレースを重ねる毎にそうなるウマ娘も珍しくはないとのこと。

宝塚記念ほど酷いのはもう起きないにしても、これからのレースでも出遅れがみられるようになるかもと感じた。

正直な話…先行を得意とするタキオンさんにとっては致命的ではないだろうか…(以下略)』

 

………

 

「いや、それを考えるのが俺の仕事だから!確かに思っているけどさ…なんでトレーナー目線の文章になるんだよ!」

「うるせぇよ!お前は黙って読むことも出来ねぇのか?」

 

レポートを読む毎に騒がしくなるソウジにサンデーサイレンスがついに怒鳴った。

 

「悪い悪い…こっちは全部読み終わったから。お前がスカウトした『ディープインパクト』のレポートを見せて貰えるか?」

「あん?プイのならそこのゴミ箱の中だぞ?」

「何でだよ!?」

「何でも何も…『タキオンさんは強いかもしれないですがディブロ姉さんとクタ姉さんの方が強いです。』としか書かれてなかったんだよ!」

「…。まぁ、全員何かしらを学べたようだから良いけど…いや、グランデッツァはダメか。」

 

そう言いながらソウジはゴミ箱から捨てられたレポートを回収し、全員のレポートを持参したファイルへと閉まった。

 

「…で、わざわざ病院に来たのはこれのためか?」

「それもあるけど…お前と契約したディープインパクト、順調にいけば最初に彼女に『本格化』が来て、デビューすることになるだろう。だから…それに向けてお前の考えた練習を確認しておきたくてな。」

「そんなことかよ。わざわざ俺の所に来るほどのことじゃねぇだろ…ったく、ほら予定表と練習メニューだ。実際に俺がアメリカでしていたトレーニングも入っている。」

 

ソウジはサンデーサイレンスから渡された資料を受け取り目を通す。

 

「ちょっと坂路練習が多くないか?身体作りの段階ならもう少し減らした方がいいと思うけど。身体へのダメージも大きいからケガにつながるぞ。」

「あん?この段階でこれくらいはしとかねぇと最後に伸びねぇぞ。」

「しかし、ケガしたら元も子もない…」

「んな奴なら最初からスカウトしねぇよ!アイツはこれを超えれる素質のある!」

 

ソウジの指摘にヒートアップするサンデーサイレンス。その後もミーティングは長時間続いた。

 

………

 

「…今はこんなところかな。」

「結局、お前が俺のやり方に茶々いれただけだろ。」

「俺とお前の指導方針が違う以上は必要なことだよ。…そういえば最近はマンハッタンカフェの身体に入ってないのだろ?アイツ…ちょっと寂しそうにしてたぞ?」

 

それを聞いたサンデーサイレンスは気まずそうに目を反らす。

 

「まぁ…直接来てくれるからわざわざ取り憑く必要がなくなった…それにアイツの時間をこれ以上奪うわけにはいかないだろ。」

「次の土曜日、昼の12時。」

「はぁ?」

「その時間に新たな『合成因子』の実験レースを行う。マンハッタンカフェに取り憑いて参加してくれ。」

「それで俺に何のメリットが…」

「メジロマックイーンに会えるかもしれないぞ。」

「よしっ!任せろ!」

「さて、俺はそろそ…ん?」ガシッ

「…」

 

ソウジの言葉にご機嫌になるサンデーサイレンス。その流れでソウジは帰ろうとするとサンデーサイレンスに手を掴まれた。

 

「どうした?まだ話したい内容でもあるのか?」

「いや、特に無いが…また暇になるのも嫌だ。お前から何か無いか?」

「土産のスイーツならさっき食っただろ…何も無ぇよ。」

「…あ、そうだ!ちょうどいい!また俺の尻尾をといてくれよ!」

「えー…また殴られるのは嫌だな…」

「痛くしなきゃ殴らねぇよ…ほら!この櫛でとけ!」

「はいはい…って付け根丸出しかよ!それって隠すもんだろ?」

「お前だからいいんだよ!さっさとしろ……ひゃん!」ビクッ

「…あら可愛い声。」

「急にやるなよ!殴るぞ!」

「どっちなんだよ…いくぞ!」

「ひゃん!」ビクッ

 

その直後、イージーゴアとマンハッタンカフェが顔を真っ赤にしつつ部屋に入ってきたためサンデーサイレンスがあたふたしたのは別のお話。

 

ーーー

 

夜の練習コースを走るウマ娘が1人…先月の京都大賞典を勝ったタップダンスシチーである。

 

「ソイヤ!ソイヤ!ソイヤ!」

「タップ…あんた最近張り切り過ぎ。もうちょい自分の身体、労りなよ。」

「シチー…まだジャパンCまで日はあるし…後、数日だけ!そしたらちゃんと休むから!」

「はぁ…とりあえず、これでも食べる?ユキノと作ったし。」

「はちみつレモン!シチ~、ありがとう~。これでジャパンCは勝てるよ~!」

「何それ。大袈裟だし。うける。」

「よっしゃ!もう1本!ソイヤ、ソイヤ、ソイヤ!」ダッ

「ちょっ…タップ!?話聞いてた!?」

 

タップダンスシチーははちみつレモンを口に入れて再び走りだす。それをゴールドシチーが追いかけた。




▼登場人物にキャプテントゥーレが追加されました。
▼登場人物にグランデッツァが追加されました。
▼登場人物にディープスカイが追加されました。


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第91話 グランプリ不死鳥 + ワイルド女傑 = 掠める弾丸

どうも七夕賞で『セイウンハーデス』が勝って重賞馬になったことが嬉しい作者です。去年のダービーから応援してた馬ですからね…。後は昨日のJDDではイージーゴアの血統が入った『ドラケン』を応援していたのですが…『ミックファイア』には敵わなかったか…。


トレセン学園から少し離れた練習場、そこでアグネスタキオンの特別レースが行われていた。

 

「やぁやぁ諸君、ここまでご足労だったね。G1シーズン中だからか流石に学園の練習場は使えなかったよ…すまないねえ。…さて、今日のゲストは『ハーピーバレット』君だよ。」

 

やや目付きの鋭い『ウマ人』がアグネスタキオンの隣に立った。少し周りが騒がしくなる。

 

ザワザワザワ

 

「ちょっとワイルドな感じね…」

「誰の『因子』を組み合わせたのかな?」

 

「さて、距離は2200mの右周り…天気もバ場状態も良好だ。ちなみに今回の出走メンバーは他にも3人は決まっていてね…来てくれたまえ。」

 

「「「…」」」

 

マンハッタンカフェ、セイウンスカイ、メジロブライトの3人だが…全員の様子が違う。マンハッタンカフェは荒っぽい歩みで刺々しさを纏っており、セイウンスカイは毛色が芦毛ではなく鹿毛へと変色していた。メジロブライトも見た目こそはあまり変化はないものの…いつものホワホワとした雰囲気が感じられない。

 

「さて…今回は出走する4人にここにいるウマ娘の中から指名してもらうとしよう。もちろん、指名されたからといって無理に参加する必要はない。その場合は出走者が減るだけのことだ…では、スカイ君。君は誰を指名するかね?」

「そうですね~、じゃあキングで!」

 

セイウンスカイはキングヘイローを指名する。

 

「勿論いいわよ。参加するわ!」

「よっ!流石キング!」

「ふふん♪キングと一緒に走る権利をあげるわ!」

 

5人目にキングヘイローの参加が決まる。

 

「ではブライト君…君は誰を指名する?」

「ドーベル、参加してくれますか~?」

「え?アタシ!?ライアンじゃなくていいの?」

「はい~、私の中のナニカがドーベルに対抗心を燃やしているようでして~………どうですか?」

「ブライトの中のナニカ?んー、とりあえず分かった。参加する。」

 

6人目、メジロドーベル。

 

「ではデサイ…んん!カフェ、君の番だよ。」

「あん?マックちゃんに決まってんだろ!」

 

ザワザワザワ

 

「マック…ちゃん?メジロマックイーンさんのこと?」

「仲良かったの?」

「確かにステイヤー同士ではあるけどさ…」

「というかアレ…カフェ先輩だよね?」

 

マンハッタンカフェの発言に周りは混乱する。

 

「あら?私をご指名で?」

「そうだ……!!……はい。アナタと…走りたいです……。」

「カフェさん?もしかして、何かに取り憑かれています?」

「…はい…正解です。ですが、アナタと…走れれば…満足するそうです。」

「まさか肯定されるとは…コホン!霊であれ、何であれ、メジロの名において…お受けしますわ!」

「ありがとうございます………不機嫌そうですので……そろそろ代わります……!!ったく、初めましてメジロマックイーン。俺の名は……後でいいや。とりあえず、ボコボコにしてやるよ。」

「やれるものならやってみなさい。」

 

7人目、メジロマックイーン。

 

「さぁ『ハーピーバレット』君。ラストメンバーを指名してくれ。」

「…タニノギムレット。頼めるか?」

「いや!ギム先輩はまだ調子が…」

「…理由は過去のワタシか?どちらにせよ、今の俺はオマエがみたい理想の姿(イデア)には…」

「ケガは治ったんだろ?近くで魅せて欲しいな…お前の走りを。」

「………。ハッハッハッ!!!俺らしくなかったな!!!美酒を求める者がいる!!なら、なら…酩酊させるこそ俺の美学!感謝する…不調という不純物が今、消え去った!」

「ギム先輩かっけぇ!!」

 

ラスト、タニノギムレット。

 

「(特別レースに興奮して柵壊しそうだからとは言えないな…)」

「ここがトレセン学園外の練習場だからかい?心配せずとも君なら一瞬で直せるだろ?」

「…タキオン、俺の心読まないでくれる?」

 

この8人でのレースとなった。

 

ーーー

 

「ピスピース!実況担当のゴルシちゃんだぞ!…マックイーンは今回参加する側かよ…羨ましいぞ!」

「指名されたんだからしゃーない、しゃーない。代わりにアタシが解説するから元気出しなって。」

「グラス……じゃない!誰だお前は!?」

「おいっす~、ナイスネイチャでーす~。まぁマックイーンに頼まれた感じかな。ちなみにグラスならフライトさんとデート中らしいよ。絶対墜とす、と張り切っているとかいないとか。」

「1t超えのブクブク野郎め…」

「いや、こっちでは普通にスレンダーな女の子だからね?」

「…ちょっと待て。お前、最近あっち側にいったよな?なんでこっち側の話がまだ分かるんだよ?」

「いや~、まだ49日過ぎてないからギリギリこっち側なのですよ~。とりあえずメンバー紹介しちゃう?」

 

「そうするか…1番、メジロドーベル!」

「同条件のエリザベス女王杯を勝ってるし…いかに位置取りを上手く出来るか、かな?」

 

「2番、タニノギムレット!」

「最近足が完治したんだっけ?とはいえ柵は壊して無いらしいから…調子は悪そうに見える。」

 

「3番、『エターナルクラウド』!」

「…ん?髪色違うけどセイウンスカイじゃないの?」

「あぁ、セイウンスカイの『アナザー』だ。えーと…セイウンスカイとアストンマーチャンの組み合わせみたいだな!」

「デビュー前の娘を掛け合わせるとかチャレンジャーなことをしますな~。前の方で走りそう。」

 

「4番、『ハーピーバレット』!」

「んー、誰との組み合わせなのかが全然分からんわ。」

「目付きの鋭さにバレットという名前…シンボリクリスエスか?えーと…おっ!?グラスワンダーとヒシアマゾンみたいだぞ!」

「わぁ…予想外だ。2人とも中団の前後で走れるから…これはどういう脚質で来るか注目かな。」

 

「5番、メジロマックイーン!」

「そういえば宝塚記念も同条件だったね。それ抜きにしても高いスタミナで押し勝ちそう…」

 

「6番、マンハッタンカフェ?」

「何で疑問系?」

「いや、前に感じた悪寒が…マックイーンが心配だな…」

「アンタが心配するレベルって…まぁ、こんなにも人がいるし大丈夫でしょ。」

「…アイツ、前の方で走るぜ。」

「ん?マンハッタンカフェって後ろからの"差し"が得意だったよね?」

「見れば分かるよ。」

「は、はぁ…?」

 

「7番、『グアンダッキ』!」

「…え?メジロブライトも『アナザー』なの?」

「おう!メジロブライトとエアグルーヴの組み合わせらしいわ!」

「あー、だからメジロドーベルを指名したのかもね。エアグルーヴが走れない以上、ここで見れるのは貴重かな?」

「そもそもこのレースそのものが貴重だろ。」

「それもそっか。」

 

「ラスト、キングヘイロー!」

「キングか…やっぱり位置取りの勝負になってくるかな。メンバーみる感じだと後ろからのレースになりそうだし。」

 

「んじゃ、ゲートに向かってくれ!」

 

出走する8人がゲートへと向かい…レースが始まった。

 

ーーー

 

「スタートだ!先頭には…『エターナルクラウド』!やっぱり逃げて来た!続いてメジロマックイーン、そのすぐ後ろにマンハッタンカフェ!」

「本当に前にいる!?…3バ身くらい間が出来ての中団グループ…メジロドーベル、『グアンダッキ』が並び、少し離れて『ハーピーバレット』とキングヘイロー!最後方にタニノギムレットというやや縦長な展開で第1コーナーカーブ…マンハッタンカフェがメジロマックイーンをかわして2番手に上がった!?」

 

「向正面に入って先頭は変わらず『エターナルクラウド』。マンハッタンカフェ、メジロマックイーンと続いて外から『グアンダッキ』がメジロドーベルへと並びかける!」

「『ハーピーバレット』もペースを上げて、後続に2バ身程差が開く。それにキングヘイローとタニノギムレットが続いている。」

 

「第3コーナーカーブ…マンハッタンカフェが上手く曲がり、前の『エターナルクラウド』を捉えにきたぞ!メジロマックイーンも負けじとペースを上げる!そこに『グアンダッキ』が迫ってきた!」

「メジロドーベルはここで後退か…『ハーピーバレット』とキングヘイローがかわし…最終コーナーに入る!」

 

「おぉ!?マンハッタンカフェが『エターナルクラウド』を捉えて、先頭に立った!しかし、『グアンダッキ』とメジロマックイーンが捉えようと仕掛けてきた!」

「ここでタニノギムレットも仕掛けてきたか外へとまわる。残り200。」

「先頭マンハッタンカフェ、差し返そうと『エターナルクラウド』、さらに後ろからメジロマックイーン、『グアンダッキ』、『ハーピーバレット』が迫ってくる!」

「『ハーピーバレット』凄い伸び!『グアンダッキ』と『エターナルクラウド』をかわし、メジロマックイーンと並んでマンハッタンカフェを追う…残り100!」

「先頭との差が縮まって…ここでメジロマックイーンが先頭!『ハーピーバレット』、これをかわせるか?かわせない!メジロマックイーンが1着でゴールイン!3着にマンハッタンカフェ…4着争いに『グアンダッキ』とタニノギムレット!」

「いやー、後方からのタキノギムレットの伸びも凄かったね。何よりアンタの予想通りマンハッタンカフェが前から行ったのがビックリだわ。」

「…まぁ、ちょっとな。コホン…今回のレースはここまでだ!またな!」

 

ーーー

 

レースが終わり、制服へと着替え終わったメジロマックイーンがソウジの元へと向かった。そこには既にアグネスタキオンとマンハッタンカフェもいた。メジロマックイーンに気づいたのかマンハッタンカフェが刺々しいオーラを纏い笑顔を見せた。

 

「おう!お疲れ様!」

「それで…カフェさんに憑いてるあなたは誰ですの?」

「フフフ…聞いて驚け!俺の名はサンデーサイレンス!G1を6勝、全レース連対率100%のスーパーウマ娘だ!」

「そうですか。」

「あれ?何かあっさりした反応だな?」

「いえ、あなたの名前は10年前から知っていますわよ。アメリカが活躍するもケガで引退。その後日本でトレーナーになり、来日した日に事故に会い死亡。それで未練が残りカフェさんに取り憑いたと。」

「いや死んでねえからな!ちゃんと身体は入院してるからな!後、コイツのサブトレーナーだからな!」

「それで私に馴れ馴れしいの何故ですか?そういうのは既に間に合ってますので。…1人でも厄介だというのに。」

「そりゃ、ずっと見てたからな。」

「もしもし警察ですか?ストーカーが…」

「別にいいけど…カフェが連れていかれるだけだぜ?安心しろ!担当に摂取したカロリー誤魔化したり、練習休んで野球を見にいこうとしたり、夜な夜な担当の名前を言いながらベッドの中でマス…」

「お黙りなさい!あなたは本当に何者ですか?私の半径50km以内に近寄らないでくださいます?」

「…とりあえず、お前のファンだよ。そういう弱味は黙っておくから。」

「今おもいっきり喋っていましたよね?」

「あ…普段が完璧過ぎるから気を緩めた時の行動がレアで頭に残ったんだよ。…お前の担当の秘密も教えようか?」

結構です。(是非!)興味ありませんわ。(教えてくださいまし!)

「…本音が漏れてるぜ…くくっ。今日はこんなところでいいや。また今度、紅茶でも飲みながらゆっくりお話しようぜ!じゃあな!」ガクッ

 

マンハッタンカフェの体制が崩れ、慌ててアグネスタキオンが支えた。

 

「…終わりましたね……お疲れ様でした。」

「こ、これはやましいことではありませんわ。そう、一心同体!一心同体の為であって…」ぶつぶつ

「聞いていないようだね。…マックイーン君!」パンッ

 

1人の世界に入ったメジロマックイーンの前で手をたたく。

 

「…はっ!失礼しました。」

「コホン…とりあえずデサイレン君のことで困ったらお姉ちゃんに言ってくれ。すぐに対処してくれるだろう。」

「…ちょっとした地獄絵図を……覚悟してください。」

「どんな対処方法ですの!?」

「えーと、マンハッタンカフェに取り憑いたサンデーサイレンスを素手で引き剥がしたり…」

「素手!?」

「トレーナー君、流石に素手は盛り過ぎだよ。フクキタル君からもらった特殊な手袋を付けていた筈だろ?」

「俺やブリザードが試した時は引き剥がせなかったから…パチモノってことが分かった。ほぼ素手で間違いじゃない。」

「…嘘だろ?」

「他には自分に憑依させて…」

「あのー、もういいですわ。そろそろ学園に戻りたいので…」

「これを持っておくといい。」

 

アグネスタキオンはあるものを渡した。

 

「これは…何ですか?」

「"デサイレンスコープ"。デサイレン君が半径10m以内に入れば通知が来るように設定した。いくつか作ったから1つ君に渡しておこう。」

「…ありがとうございます。」



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第92話 酒の席で話す内容は雑談とアメリカンジョーク

2人のトレーナーがぐだぐだ喋るだけの回です。


トレセン学園近くのとある居酒屋…ソウジが1人で飲んでいると背後から誰かが声をかけてきた。

 

「よぉソウジ。かなり飲んでるな…何かあったか?」

「ニヘイ…何でここに?」

「俺も飲んでた。」

 

現在学園内で話題になっている同僚だった。

 

………

 

2人は会計を済ませて、2軒目へと足を運び席につく。先に口を開いたのはソウジだった。

 

「まさかお前が担当に手を出すなんてな。」

「お前には言われたくないよ。」

「いやいやいや!流石に現役のウマ娘と子供が出来たりはしてないからな!あ、店員さん、生中とポテサラお願い!」

「痛い所を突くな…すいません、俺は軟骨の唐揚げと烏龍茶で。」

「かしこまりました……お待たせしました。生ビール中と烏龍茶、ポテトサラダと軟骨唐揚げです。」

「「早っ!」」

 

早い到着にビックリしつつ、2人は乾杯し…自分の頼んだ物を飲む。

 

「あー、ソウジ…俺、父親になるんだ。」

「いや知ってるし、さっきまでその話をしてたじゃねぇか。何だ?あれか?妻にはまだ言ってない、とかつまらんアメリカンジョークでも言うのか?」

「いや、俺はベロちゃん一筋だから。…3日前にベロちゃんの両親にも挨拶してきたよ。そしたら…娘をよろしく、って返された…」

「公認になったんだな。ならなんでそんなに暗いんだ?」

「その…父親になることが不安なんだ。」

「どうした?逃げ出したくなったのか?」

「いやいや!そんな非人道的なことはしないが…気持ちは整理したいんだよ。ほら、去年の有マでの件で俺は散々叩かれただろ?ジャンポケを出走させたことな。それに加えて今年は…担当のウマ娘との間に子供ができた。世間的には厳しい評価…実績があるからクビにはなっていないだけの状態だ。」

「まぁ…今もトゥインクルでアドマイヤドンとリンカーンが活躍している訳だしな。それにお前の指導を受けたいウマ娘はたくさんいるし…学園長も追い出すことはないだろう。そういえばエアグルーヴが抜けるからチームへの加入試験が行われるのではとの噂もあるな。」

「いや、もう試験は行わない。入ってくる娘は決まってるし。」

「へー、試験以外での加入とは珍しいな。」

「ジャンポケに紹介されたとあるウマ娘だよ。ベロちゃんみたいな優等生とは真逆なタイプな娘。実力は最低限あるとはいえ『本格化』はまだ遠そうだし…今のところは成長に期待かな?後は爪が脆いんだよな…」

「お前の言う最低限ってそれだけでエグいからな。しかし爪が脆い…俺だったら担当しないタイプだな。」

「ジャンポケの頼みってのもある。だから必ず一流のウマ娘にしてやるよ。」

「お前そういうところ真面目だよね。」

「お前も最近は真面目(こっち)側だろ。」

「そうか?まぁ、そのジャングルポケットだけど…生徒会の副会長に就任したんだってな。」

「ベロちゃんから聞いた時はびっくりしたよ。ていうかそもそも指名したのもベロちゃんだってさ。ジャンポケには悪いけど…まだろくに練習もできない状態でチームメンバーのサポートがメインになってたからいい気分転換になるなるのかなとは思ってるよ。」

「サポートだ?」

「タイム計測にスポドリ作り…替えのシャツやタオルなどの洗濯。後は練習データの整理とか。」

「ケガ以前に担当してる奴にやらせることじゃねぇだろ…」

「言っても『じっと出来ない』って言って聞かねんだよアイツ。少しでも早く走りたいんだとよ。…そういえばお前のところにサブでトレーナーが入ったんだってな。…俺にはまだいないのに。」

「本当は10年前に俺の代わりにチヒロトレーナーに付く予定だったらしく…何故か俺に付くことになった。」

「あー、原因は日本に来て早々にトラック事故だったな…マジで同情するわ。俺は確かチケゾーとオフサイドに…デビュー前のベロちゃんの3人を担当してた辺りか…ベロちゃん、あの時から…」

「はいはい。そういうの今はいいから。」

「んん!サンデーサイレンスだっけか?お前から見たあいつはサブとして優秀か?」

「すでに担当を持っててビックリ。練習メニューもその娘に合わせたものではあるのだが…俺が求めているのとはかなり方針が違っていてな…はぁ…」

「アメリカと日本じゃ考え方は違うからじゃね?」

「いや、アメリカや日本以前にウマ娘と人間としての違いだろう。アイツ自身の走りは成績を見るだけでも超一流なのは分かる。だからか自分以上の成長に期待しているようでな…はぁ…」

「合わないなら向こうが勝手に離れるだけだよ。それに現役で優秀だったとしてもトレーナーとしてはまだ新米だ。色々とお前の意見が知りたいだろうさ…とりあえずは焦らないことだな。そういえば、お前の担当の次走はジャパンCだっけ?」

「その予定。」

「1番のライバルとなるのは天皇賞(秋)をレコード勝ちしたシンボリクリスエスと思っていたのだが、まさか回避とはな…」

「とはいえタキオンに本気で勝ちに来てるのは伝わってくるよ。それに前走で見せたあの追い込み…フライトに似ているよ。 全力でターフを踏み、自分の限界スレスレの速さを出す。ケガにつながりやすい追い込みだ。できるだけ休養を挟んでおくのが正解だろう。まぁ、結局出走していようがタキオンが勝つけどな。」

「凄い自信なことで…あ!サブがいるってことは新メンバーも入ったんだろ?どんな感じだ?」

「今のところ顔合わせした以外だとレポートをもらったぐらいなんだが…ドイツもコイツもはかなり大人びていたよ。あの中だとまだダイワスカーレットが1番子供に思えるぐらいだよ。」

「おいおい、あの身体付きで子供はないだろ。」

「何だお前?アイツをそういう目で見てるのか?殴った後に女帝にチクるぞコラ!」

「女帝じゃないベロちゃんだ!…いや違うからな!ダイワスカーレットって『本格化』前に関わらず明らかに他の同期と比べて走りとか身体が出来てるのはお前でもわかるだろ!」

「分かるけど…何か雰囲気がな…」

「アイツは絶対強くなるよ。自由にスカウト出来るなら俺だってあの娘に声かけたからな!」

「行けば良かっただろ?」

「基本的にはチームに加入希望する娘の中からしか選べれないの!」

「…トレーナーとしては羨ましいが?」

「そうだけどさ!…はぁ、これはこれで結構な悩みだぜ?本人の希望と適性が合ってなかったりして…あー、やめだやめ!ソウジ、お前は悩みはあるのか?」

 

ソウジは気まずそうに目を反らし、残ったビールを喉へと流し込んだ。そしてジョッキを置くと同時に口を開く。

 

「…あるぞ。ニヘイ、俺も父親になるんだ。」

「はぁ!?お前!ジャパンCあるのにアグネスタキオンに手を出し…」

「…タキオンにはまだ言ってない。」

「…ん?え?はあぁぁ!?」

 

ニヘイの叫びがソウジの頭へと響いた。



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第93話 『ハーピーバレット』の研究終了、マイルCSにて聖剣と妖精はぶつかり合う

『ニシノサキュバス』…船橋に移籍して勝ったんだ…。某たぬき動画で名前を知って、馬券も買ったことがあるから何か嬉しい。


タキオンメモ:『合成因子第八十八号ハーピーバレットについて』

 

 

11月XX日

・誕生

→グラスワンダーとヒシアマゾンを組み合わせた『合成因子』に『ハーピーバレット』と名付けた。

 

・特徴

→体毛は栗毛へと変色、目付きがやや鋭く、パワー…それも握力がかなり高かった。

 

→エンジンがかかるのが遅いのかスタート時のスピードはあまり速くはない…短距離は厳しそうだ。

 

・適正検査

→例のごとく、メジロブライトとの並走で測定。バ場は芝、距離はマイル~長距離、脚質は差し>>先行=追い込み>>>>逃げと記録。

 

 

11月XX日

・レース出走

→キングヘイロー、セイウンスカイ、タニノギムレット、マンハッタンカフェ、メジロドーベル、メジロブライト、メジロマックイーンと共に特別レースへと出走した。中団後ろをキープしつつ、最期の直線で大きく伸びたものの前にいたメジロマックイーンを捉えきれず2着となった。

 

→セイウンスカイは『エターナルクラウド』、メジロブライトは『グアンダッキ』の『アナザー』となり、またマンハッタンカフェにはサンデーサイレンスが憑依しての出走であった。こちらのデータはまた別のものへとまとめる。

 

 

以上が『ハーピーバレット』の記録である。

 

ーーー

 

場所は京都レース場…今日はそこでG1レースである『マイルCS』が行われる。出走するデュランダルは控え室にてチームメイトのスイープトウショウと共に話をしていた。

 

「いいデュランダル、絶対に勝って来なさい!!」

「…」コクリ

 

ブンッブンッ

 

頷きつつ、竹刀を振るデュランダル…それを見たハジメが苦笑いをする。

 

「そんなに力まなくていいからなデュランダル…お前の走りをしてこいよ。」ポンッ

「ー!?」コクッ、コクッ

 

軽く頭を撫でられてデュランダルは顔を真っ赤にしつつ頷いた。その様子にスイープトウショウは頬を膨らまし、デュランダルの手を引いた。

 

「むぅ~!デュランダル!だらしない顔しないの!」グイッ

「…」

「分かってる?私達がレースで活躍すれば使い魔はとっても忙しくなる…つまり、これ以上担当が増えなくなるってこと。」ボソッ

「…!」

「私達だけの使い魔にするわよ!」ボソッ

「ー!」b

 

デュランダルは部屋を後に…

 

「デュランダル!プリファイの剣忘れてる!」

「ー!!」

 

部屋を後にした。

 

ーーー

 

同時刻、ファインモーションの控え室の前でエアシャカールとゼンノロブロイが誰かを待っていた。

 

「フライトの奴…遅ェな。何してンだ…」

「ピルサドスキーさんとは前日から合流している筈ですが…あ!来ましたよ!」

 

「ごめんごめん!道がすごく混んでてさ…」

「我が妹の出走には間に合ったか?」

「少しなら時間はある…さっさと中へ行けッ!」

「…感謝する。」

 

アグネスフライトとピルサドスキーが走って現れた。そして、ピルサドスキーはそのまま控え室へと入る。

 

「…でフライト、何でギリギリになった?」

「その…ピルちゃんと妹トークとかで盛り上がってさ…起きたらお昼過ぎ。急いで一緒にシャワーして、ホテルを出た感じ。」

「…くだらねェ理由だな。」

「まぁまぁ。そういえばピルサドスキーさん…最近みたスカーフを付けていましたね。流行ってるのですか?」

「え?あ…うん。その…」

「赤青黄…あれってお前の勝負服のと同じ柄だったな…まさか…」

「違う違う。私の勝負服に付けてるのとは別だから!」

「…?フライトさんの勝負服?あれ?最近、図書室でグラスワンダーさんも付けていたような…」

「…あァン!?フライト、どういうことだ?」

「その…プ、プレゼントよ!決して首の痕を隠したかったとかではないから!」

「…誰も首についての話はしてねェが?」

「首…痕…え?まさか、フライトさん?」サァー

 

何かを察したエアシャカールと顔を青くしたゼンノロブロイは距離を取る…アグネスフライトは慌てて言葉を出した。

 

「そ、それよりボリクリちゃんは?」

「アイツはずっとトレーニングだとよ。てか、オレらの半径2mに入ってくンな。ブリザードを呼ぶぞコラ!」

「…」ブルブル

「それだけは止めて!だから違うんだって!グラスちゃんのはこの前、マヤノちゃんとマベちゃんの『ブートキャンプ』に参戦してきて…帰りに寝ちゃった3人を運んでいた時に尻尾ハグしてきて。その前のデートでもホテルに誘ってきたからね…マヤちゃんたちはテイオーちゃんとネイチャちゃんに渡した後で…」

「何も違わねェだろうがァ!…待てよ。アレって夏合宿の時に元副会長も尻尾に巻いてたよなァ?」

「ー!まさかエアグルーヴさんにも!?」

「…それも違うから。ちょっと私の知るテクニックを軽く身体に教えただけだから。」

「手ェ出してンじゃねェか!」

「軽くよ!軽ーく!それに同意の上だからいいじゃない!むしろ最後は私が負けそうになった…じゃなくて!!その後、ニヘイトレーナーとも上手くいったんだしさ!!」

「コイツ…開き直りやがった!」

 

ガチャ

 

『ーー!!』

 

ヒートアップする控え室の前だったが、扉が開き中から誰かが出てきた。『マイルCS』に出走するファインモーションだ。

 

「ありがとう、フライト。お姉さまとゆっくりお話できたよ。」

「ファインちゃん…ごめんね。時間ギリギリだったよね?」

「ううん。話したいことは話せたから…レースに行ってくるよ。」

「うん!頑張ってね!」

「ねぇ、フライト。」ガシッ

「ー!?」

「レースが終わったら…お姉さまの身体中についてたキスマークについてお話しよっか♪」ギチギチ

「………え?」

 

ファインモーションは笑顔でアグネスフライトの肩を力強く握りそう言い切るとパドックへと向かった。

 

「自業自得だなァ…フライト。」

「…」ガタガタガタ

「…フライト、すまない。首だけは守ったのだが…我が妹は色々と鋭かった。」

「こうなればファインちゃんも堕とすしか…」ガタガタガタ

「これ以上問題を増やすな!」

「妹には手を出さないでくれっ!というかその分をもっと私にしてくれ!」ハァハァ

「それはそれでダメだろうがッ!」

「後はSPも…ピルちゃん所属の娘を1人だけじゃなくてファインちゃん所属のSPも全員堕と…」ガタガタガタ

「まだ手ェ出してるヤツがいたのかよ!?ブリザード確定だッ!!」

「い、いや…それだけは…それだけは…」ガタガタガタ

 

そうこうしているうちに『マイルCS』の出走時刻となっていた。

 

ーーー

 

『マイルCS』が始まり、ファインモーションは中団を、デュランダルは後方を走っていた。そしてレースはクライマックス…最後の直線へと入る。

 

『第4コーナーカーブして先頭はギャラントアロー!

それにマグナーテンが続く!

後続よりバランスオブゲーム…外からファインモーション!

大外からはデュランダル!!

粘るギャラントアロー!

しかし、ファインモーションとデュランダルが外から突っ込んでくる!

デュランダルだ!!

デュランダルが一気に外からかわしてゴールイン!

名剣の切れ味で…G1レースを連勝したっ!!』

 

勝者、デュランダル。

 

 

ーーー

 

ウイニングライブが終わり、デュランダルが控え室に戻るとチームメンバーのハジメとスイープトウショウに加え…ニシノフラワーとカワカミプリンセスらが既にいた。そして、何かが弾ける音が聞こえる。

 

パンッ

 

「やるじゃないデュランダル!」

「デュランダルさん!おめでとうございますですわ!」

「お疲れ様ですデュランダルさん。実はさっきまでタキオンさんも見ていまして…『素晴らしい。是非とも君の『因子』が欲しいよ。何時でも研究に来たまえ…ケーキくらいは出そう。』と褒めていましたよ。」

 

「…」b

 

クラッカーが鳴り、続いて自身の勝利を祝福する親友たち。デュランダルはそれらに対してサムズアップで返答する。

 

「よくやったデュランダル。自分の武器を上手く活かすことが出来たな。」

「!」フンッ

 

『プリファイ!ホーリーエクスカリバー!』

 

『おおーーっ!!』パチパチパチパチ

 

ドヤ顔をしつつ、プリファイの剣のスイッチを押してポーズを決めるデュランダル。全員から惜しみない拍手が送られた。

 

「…って電池入れたままだったのかよ!ダメじゃないかデュランダル!」

「ー!」フルフル

「そんな訳ないでしょ。これはスイーピーのよ。勝負服の方はまだデュランダルの背中にあるから。」

「そ、それならいいんだ。ごめんなデュランダル…」

「…」プクー

「本当にごめんって…」ポンッ

「ー!」カアァ

「コラッ!」グイッ

 

ハジメに頭を撫でられ顔が赤くなるデュランダル…スイープトウショウが慌ててハジメの手を取り、顔を近づける。

 

「デュランダルばっかりズルいじゃない!!スイーピーだって来月のG1レース『阪神JF』を勝つんだら、ちゃんと見ていなさいよ!」

「勿論だよ。」

「本当に…ちゃんと見ていてよね!使い魔!」

 

その後、部屋にいた全員で焼肉屋へと行くと…食事制限が解除されたデュランダルの凄まじい食欲によりハジメの財布が吹き飛んだ。




『ハーピーバレット』の名前の元ネタはアマゾン最強猛禽類のオウギワシ(Harpy Eagle)です。狭い木々の中を突っ込んでナマケモノとか捕まえるそうです。その時の消費エネルギーが弾丸レベルだとか。

また書いたら投稿します!


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第94話 飛行機は吹雪により冷やされ、モルモットにより癒される

どうも昨日のぱかライブでタキオンの新衣装を期待しつつもマヤノかクリークの3つ目かクリスエスが最速で来るかもと警戒していた作者です。

とはいえ…ちゃんと来ましたね!はぁ~、嬉しいです…天井まで回さないと。あとはサポカでカフェとエアグルーヴの水着姿が見れたのも眼福…カフェって白も黒も似合うな~って感じです。

後はローレル主役のスターブロッサム!次回はデビュー3戦目としてダート戦に入るのでその数戦後にタイキブリザードと対決することになるんですよね。…彼女がそのままか別の名前になるのか気になるところです。

最後にウマ娘のサークル内のレース(*条件はアイビスSD)にて私のキングが見事に勝ってくれました!昨日のクイーンSでも『ドゥーラ』が勝ってくれたからか私からキングへの親愛度も12を越えそうです。

長くなりましたが…本編にどうぞ!


場所はトレセン学園の地下牢。中にはアグネスフライトが収監されていた。

 

「…はぁ、ここでも落ち着かない。」

 

原因は前話をみてもらうとして…既に反省文は書き終わっており、来年に行われるトレーナー試験に向けて自主勉強中である。しかし、反省文の時と違って全く筆が進む気配ない。

 

「えーと、レースはデビュー戦か未勝利戦を勝たないと1勝クラスや重賞に出れないか?いや、出れるっと。実際にアヤベちゃんとか勝ってないし…定員割れのレースだったら重賞でデビューとかもあり得るからね。次は…打撲の対処法?動かさず冷やす、長く痛みが続くなら骨折してないか医者に診断もらう…っと。はぁ…」

 

もはや筆すら持たず、買った参考書をペラペラと見ているだけの状態だ。誰かが中へと入ってくる…タイキブリザードだ。

 

「ハイ、フライト。ここに入るのは何時ぶりね?」

「…ブリザードさん、ですか。前にタキオンちゃんとソウジさんをぶちこんで…いや、私の話でしたね。シリウスちゃんと全面戦争になって以来ですよ…」

「覚えているのね…えらいね!」

「今、身体のあちこちから色んなものが漏れそうになりました。」

「トイレならさっさと行ってくるね。」

「トラウマを呼び起こすなって言ってるの…てか、何をする気だ?…無響室はもう私が暴れて壊したからもう入れられることは無い筈…いや、あれはシリウスちゃん慕ってる娘に手を出した私が100%悪かったけど自分の心臓の音が聞こえるとか…」ボソッ

「何を1人でブツブツ言ってるね。」

「…あとちょっとでシリウスちゃんを堕として終わりって所にブリザードさんとルドルフちゃんのタッグ参戦とか勝てる訳ないですよ。」

「今さらその話?」

「そうですね、どうでもいい話でしたね…それで何の用です?反省文なら終わってますよ。」

「早っ…!数十枚はあってあと数日はかか…いや、そこは私の仕事じゃないからいいね。…今回はフライトのメンタルケアね。」

「…メンタルケア?」

「コレをみてみるね。」

 

アグネスフライトはタイキブリザードの手元にある何かをみる。

 

「あ、タキオンちゃん。何か元気無さそうだけど…あれ?ここって通信出来たのですね?」

「…ただのミラーね。それが今のフライトの顔ね。」

「…え?私の…顔?」

 

そこに映ったのは光無い瞳に痩せ細った顔の栗毛のウマ娘。

 

「自由登校になってからずっと部屋や図書室にいると聞いたね。ご飯はちゃんと食べてる?最後に食べたのはいつ?」

「食べてますよ…一昨日、ワールドちゃんの差し入れ食べましたよ。」

「…!…ワールドが差し入れたのは5日前ね。それに昨日食べてないってピルサドスキーと一緒にいたのに…」

「だって全然お腹減らなかったですし。」

「フライト…」

「…何ですかその目は?私は自分の夢のために…」

「…」

「黙らないでくださいよ…怖いじゃないですか。…ってどこに行くのですか!…はぁ、何だったんだ?」

 

ーーー

 

「東京レース場内にある大ケヤキとは本当はケヤキじゃありません。何の木ですか?答えはエノキっと…本当にこんなのが試験に出るの?…ん?ブリザードさん?」

 

しばらく本に目を戻し、勉強して過ごしていたアグネスフライトだったか誰かの気配を感じて手が止まる。

 

「熱心だなフライト。差し入れ持ってきたぞ。」

「ソ、ソソソ…ソウジさん!?」

「ん?あぁ、違う違う。俺はアイツのクローンだわ。タキオンが作り出すことに成功してな…」

「えぇ!?」

「頭部はかなり本物に近いがそっから下は皮膚を除いて骨とか結構適当らしい。まぁ、とりあえずの実験としてお前に飯を持っていって食わせろってさ。」

「私と…ソウジさんとの2人で?」

「お前が収監されてる間だけな。といっても俺はお前が食い終わったらに外に出るけど。」

「はぅ…クローンとは分かっていても…落ち着かない。」

「こんな所で落ち着ける訳ないだろ。とりあえず、飯を食え。話はそれからだ。」

「は、はい!そ、その…あーんしてもらっても?」

「食ってくれるなら何でもいいぞ。ほら!」

「…あーん。…美味しいです。」モグモグ

「ブリザードが作ったから当然だ!」

「ブリザードさんが?そういえばメンタルケアとか言ってたような…」

「それに関しては知らんが、話したいことがあるなら聞くぞ。まぁ、次来るときには別のクローンで記憶には無いだろうがな。」

「結構ドライな実験ですね。な、なら…早速聞いて欲しいことが…。実は昨日、うっかりピルちゃんを噛んじゃって…原因は私を抱き枕にしたピルちゃん何だけどピルちゃんトップレスのまま私の頭を自分のお腹に押さえ込むように寝てしまって息苦しくて…」

「ふむふむ。」

 

Cソウジはアグネスフライトの話を聞く。

 

………

 

「…で、ギリギリまでキスマークと噛み痕を消そうとしたけど上手くいかなくて…変に誤魔化そうしたら拗れてしまいました。反省文にちゃんとそのことも書きました。」

「うん。お前が言ったならエアグルーヴの件もグラスワンダーの件も全員、普通に真実だとして信じてしまうわ。」

「こんなに突っ込みどころのある話ですのに!?」

「お前ならあり得るな、で終わり。お前だってクローンの俺という突っ込みの塊にそれほど驚いていないだろ?」

「タキオンちゃんやソウジさんならあり得ますし…」

「そういうことだ。さっきの話だってお前のアドバイスでエアグルーヴとニヘイが上手くいったのも、ブートキャンプ後の3人を背負って帰ったのも、ピルサドスキーのSPやエアグルーヴ、グラスワンダーにお前の勝負服に似たスカーフをあげていたのも全部…事実だろ?」

「事実ですけど…」

 

アグネスフライトは目をそらしつつ答える。

 

「話変わるがお前ずいぶんやつれてるな…昨日は何食べた?」

「食べてないです…実は食欲が出なくてピルちゃんには心配されましたけど…」

「今食べてれたじゃないか。」

「…あれ?本当ですね。何でだろ?」

「おっと、そろそろ時間だな。またな…でいいのかな?」

「次に会うのは別のソウジさんだから記憶には残らない、からですよね?…それでいいですよ。今度は別の話を聞いてもらいので。ところで何時まで私はここで過ごすことになるかは…」

「悪いが知らん。」

「…ですよね。」

 

それから1日3回、アグネスフライトはCソウジと過ごすこととなった。



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第95話 とある日のモルモット(前編)

ぱかライブ…新シナリオ…ナリタトップロードの実装、アニメに『サウンズオブアース』登場…はぁ、濃い内容でしたね。特に『サウンズオブアース』のウマ娘化により同じ馬主の『ロゴタイプ』、『デュランダル』、『スクリーンヒーロー』、『エリンコート』のウマ娘が見れる日が近いかも…ふぅ↑↑

久々の投稿…内容は決まってるけど…書くモチベが…とりあえず今回はすごく長くなったのを分けたので…どうぞ。


俺の1日が知りたいだ?そんなに面白いことなんてないが何時のが…今日のことでいい?まぁ、大体でならいいか…耳をかっぽじってよく聞けよ。

 

ーーー

 

午前4時:起床

 

「ふわあぁぁ……うわ!汗とかの臭いでベッドがやべえ…!シーツの洗濯は…物理的に無理か…」

「Zzz…」

 

早い?まぁ、今日はちょっとな…。

 

………

 

午前4時30分:家を出る

 

「ブリザード、先に出てるからな~」ボソッ

「Zzz…アイシー…ワッツ!?もう出るね?今日はまだ何も…」

「起こしてしまったか…俺が用意した。たまには作らんと腕が鈍る…とりあえず、机にあるのと食っといてくれ…レトルトだがしじみ汁もある。まだ寝とけ。」

「サンキューね、ソウジ!アタタ…」ズキズキ

「しばらく禁酒な。」

「イエス…」

「いってくる。」

 

「いってらっしゃいね………パパ。」ボソッ

 

 

何でブリザードがいるかだって?そりゃ、昨日は泊まっていたからに決まってんだろ。

 

………

 

午前5時:出社

 

「たづなさん、おはよう。」

「おはようございますソウジさん。今日は早いですね…はい、地下室の鍵です。」

「ありがとう。こんな時間に来た俺が言うのも何だけど…体調崩したりしない?大丈夫?」

「大丈夫ですよ、今日は徹夜するトレーナーもいるとのことで昨日は早めに帰りましたので。何年ここで働いてると思っているのですか?」

「それもそうか。野暮なこと言ったね…鍵は帰りに渡すから。」

「はい、よろしくお願いします。」

 

どこにいくか?質問が多い奴だな…すぐに分かるって。

 

………

 

午前5時30分:地下牢

 

「尻尾が無いウマ娘はカーブが不利となり……え?」

「おはようフライト…また夜更かしか?」

「ち、違っ…今から寝よう…じゃなくて!今、起きたところです!」

「カメラあるから確認出来るぞ?」

「………嘘ですよね?」

「冗談だ。」

「ですよね~」

「冗談だ。」

「2回言わないでくれます!?…それで?何で今日はこんなに早いのですか?」

「夜更かししてないかの抜き打ちだ…ってことでこの参考書は没収だ。トレーナーになりたきゃ睡眠はちゃんと取れ。」

「それ貴方が言いま…あぁ!まだ40回くらいしか読めてないのに…」

「怖っ!…今日は寝るなり食べるなり大人しくしてろ…飯だ。」

「はぁ…大人しくって…あれ?今日はブリザードさんのじゃないのですね。」

「分かるのか?」

「はい。匂いで。」

「匂いか。」

「でもソウジさんからブリザードさんの匂いがするのですが…」

「スーツの消臭忘れてたな…」

「…タキオンちゃんの匂いがしませんけど?」

「…」

 

おいおい…そんなにビビるなよ。いや、俺はビビってないからな?本当だぞ。あん?俺のクローン?そんなの常識的に考えてある訳ないだろ。

 

………

 

午前7時:地下牢

 

「結局は取り巻きちゃんたちの追撃がありながらも総合力では私が上でした。周りで全員倒れてシリウスちゃんの頭を抑え込んで大笑いしてる所をブリザードさんに不意打ちで取り抑えられて…ここに入れられたって感じです。その翌日にじいちゃんが来たんですよ。最初は『怒られる』とか『睨まれる』とか思っていたんですけど…違いました。じいちゃん…泣いたんですよ。ビックリですよ。ばあちゃんにすらそんな顔を見たことなかったらしいですし。」

「確かにそんな人では無いだろうけど…」

「何を言ったと思います?『俺が悪かった』…それだけですよ。確かにじいちゃんの孫だからって理由で色々ありましたけど…何かそれで私の中の全部が吹っ切れたみたいでして…」

「ようやく今のフライトに落ち着いたと。まぁ…俺が入った時のお前ってやべぇ奴…いや、今と変わらんか。」

「もぉ~、脱獄しますよ?」

「しなくていいから…」

「まぁ、その印象はすぐには抜けず、選抜レースで活躍しても誰もスカウトしてくれなかった訳ですけど。だからじいちゃんを脅し…ゴホン!じいちゃんに『悪いと思うならスカウトして』って言ったらチームに入れちゃいました。」

「結局、そうなるのか…」

「だから私だけが…まだじいちゃんの正式な担当ウマ娘なのですよ!」

「チヒロさんって退職した筈だよね?」

「知らないのですか。現役中に担当トレーナーが退職した場合…1度だけなら担当なしでもレースに出走が出来るのですよ?」

「…だからあの時のお前のトレーナーが誰か分からなかった訳か。さて、そろそろ時間だな…また昼休みな。」

「その時に参考書返してくれますか?」

「…とりあえず、お前は寝ろ。代わりに折り紙でも置いて行くよ。」

「ソウジさんが膝枕しくれたら………ってもういない!?」

 

だからそんなにビビるなって…あの話は事実だろうけどさ。まぁ、言っての通り今のフライトは…ヤバい。こうやって動きを制限して話を聞くだけで少しずつマシになってる筈なんだ。…タキオンといい姉妹揃って目を離せねぇよ。というか、こういうところはそっくりだなコイツら。ハハハ!

 

………

 

午前8時:トレーナー会議室

 

あぁ、言い忘れてたな。月に1回あるんだ…全トレーナー、もちろんサブトレーナーや担当無しも参加だ。遠征行ってる奴はリモートで…お前の分は現在申請中だよ。そういえば昼に送ったのは見たよな?

 

「まずは今月のウォーエンブレムの行動についてだが…」

「えーと、報告があったのは全部で17件ですね。ネオユニヴァースが懐いてからは激減して…コホン、失礼。余計なことでした。で、12件は気絶したアグネスデジタルを保健室に送っていただけとして残り5件…サイレンススズカとのタイマン勝負。ゴール直前でウォーエンブレムが差しきったとのこと。負けたショックで真っ白になったサイレンススズカを連れ去りそうになったけどアグネスフライトにより保護されたため未遂。次はマヤノトップガン、マーベラスサンデー、アグネスフライトらとの遊園地。最後は疲れてか全員アグネスフライトに背負われてたとのこと。3つ目はシンコウウインディに噛まれたが恍惚な顔で撃退した。まぁ、大したことではないな。ただ残りの2件がなぁ…」

「ゴールドシチーへのナンパ…これはゴールドシチーの地雷を踏むし、そばにいたネオユニヴァースは泣くし最悪。…あの時はマジでアグネスフライトがいて良かったよ。スタンガンで締められた後はペイザバトラーに引き渡し、続いてゴールドシチーとネオユニヴァースへのフォロー…風紀委員引退したってのにトレーナー試験への勉強の間に良くもあんなに動くよな…」

「だから体調が崩れたんじゃない?」

「今は地下牢で無理やり休ませてるんだっけ…あんな使い方もあるのね…」

「話を戻すよ。最後に地方から研修で来た新人トレーナー(栗毛)へのナンパ…さらに勘違いによりスカウトされかけるという珍事件。まぁ…新人が海外のウマ娘を知ってるとは思わないけどさ!アグネスフライトがいなかったからイージーゴアとペイザバトラー、さらにナリタブライアンとジャングルポケットが出てきて何とか対処出来たって所か。」

「そのウォーエンブレムも来月の末には帰国だっけ?それまで俺の担当が無事でいられるかどうか…不安だな。」

「そういえばお前の担当のテイエムオペラオーは復帰したんだっけか?」

「えぇ。ただ、ウォーエンブレムの名前を出すと生まれたての小鹿みたいにガクガク震えて私に抱きついてくるの…それが可愛くて…つい何回も…」

「性格悪いな…」

 

ざわざわざわざわ

 

「この日は別件でチームで予約していたグラウンドを使わなくなった…誰か使いたい人はいるか?」

「「「はい!」」」

「…3人か。上手く相談してくれ。」

「俺としては担当と併走してくれたらありがたい。」

「私はチームだから独占したいけど…」

「あー、他に使いたい人がいるなら私は遠慮するよ。予定どおりにトレーニングするから。」

 

ざわざわざわざわ

 

「俺のチームに担当が1人増えたから、よろしく。」

「え?ニヘイさん選抜レース無しでスカウトしたのですか?」

「ジャンポケの紹介で…あった。このウマ娘だ。名前は『トーセンジョーダン』。本格的な指導はまだまだ先だがどこまで育ってくれるやら。」

「このウマ娘って…昨日に補習受けてたような…」

「…マジか?ジャンポケの奴…トレーニングに影響する程の成績とか聞いてねぇぞ…」

 

ざわざわざわざわ

 

「今月の領収書は全員提出した?」

「はい。問題ありません。」

「では、たづなさんにそう伝えますよ~。」

 

ざわざわざわざわ

 

「行方不明のヒシミラクルについてだけど…学園長より報酬が出ることになったから。」

「報酬だ?」

「発見したウマ娘またはその担当トレーナーが望むトレーニングマシンを1つ…1年間優先的に使用出来るようにするそうだ。3日前に予約を入れさえすれざ何時でも…流石に使わない時は他のウマ娘が使うことにはなるけど。」

「おぉ!実質独占…って言いたいけど…全然手がかりが無いんだよな。」

「噂ではネオユニヴァースが捜索しているとか…」

「ネオが?アイツ…俺に隠れてそんなこと…ジャパンCがあるってのに…!」

 

月に1度の大会議だけど…意外だろ?結構緩いんだぜ?全体の話が終わったらちょっとした交流会だ。俺のところにも何人か来たぞ。

 

「ねぇ、ソウジくん。私の担当とアグネスタキオンを併走させてくれない?」

「ちょっと待てよ!俺だってずっと前からお願いしてるからな!…で、どうなんだソウジ?」

「悪いが今回も約束は出来ない。タキオン…最近は不調気味でな。ジャパンC控えてるのもあって調整が難航している。」

「…それってここで喋って大丈夫なの?」

「……あ。まぁ、問題はないかな。」

 

…ハハッ。こんなところかな。

 

………

 

午前11時30分:地下牢

 

「ソウジさん♪」

「折紙る…テキストを読んでいないとか珍しいな。」

「いや、朝に没収したの貴方でしょ!返してくださいよ。」

「…とりあえず、飯。今回は忙しくて…あんまり動けそうにない。今回はこのまま戻る。」

「えぇ!?」

「夜に本物が来るそうだ。だが…ブリザードが代わりに来る可能性もある。」

「そう、ですか…」

 

ん?何で参考書について知らんふりしたかだ?勉強に一生懸命な姿…何か研究してるタキオンと重なるんだよな。無茶してぶっ倒れないか…おい、何だその目は?…と、まあ午前はこんなところだ。



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第96話 とある日のモルモット(後編)

どうも、チャンミ決勝でデバフグラスに大逃げスズカという逃げ潰しの人と当たり、エースのリッキーが最下位に沈んだ作者です。サブエースのタイキが3位で…結果は3位…ファ○○!

今日から凱旋門賞…ハルウララで…取る!…ただモンハンのサンブレイクが終わらない。後は最小サイズの勲章さえ取れれば終わりなのに…

雑談はここまでにして…本編どうぞ!


…ふぅ。冷たい水が俺の喉を潤すぜ…はいはい、午後の話な。スタート!

 

ーーー

 

午後0時:トレーナー室

 

「やぁやぁ、トレーナー君。今日のお弁当は…」

「タキオンか…そこに置いてるから勝手に食べてくれ。」カタカタカタ

「ほほぉ。この卵焼きは…久々に君が作ってくれたのかな?お礼に紅茶でも入れてあげよう!」

「ありがとう…入ったら教えてくれ。」

「君…食事はまだのようだね?」

「あぁ…ちょっと今は忙しい…放課後のトレーニングには間に合わせるから…んぐ!」

「今日は特別に私が食べさせてあげようじゃないか…ほら?口を開けたまえ。」

「いや、それはお前の…」モグモグ

「ほら、次は紅茶だよ♪」グイッ

「ー!熱っ!?」ゴクゴク

 

…餌付けされるモルモットだぁ?しゃーねぇだろ!会議の後にたづなさんからチーム紹介の資料が早めにいるって言われたんだしさ。他人事じゃないからな…お前の分もしてるんだからな。この後だがマンハッタンカフェが俺にコーヒーを入れてくれてな…え?それは取り憑けば分かるからいい?そうですか。

 

………

 

午後1時:トレーナー室

 

「…あ!サンデーサイレンスに会議のデータ送らねぇと!」カタカタカタ

 

…いやいや。遅くはないだろ。実際にちゃんと送ったんだしさ…ここからはただ資料作ってた。

 

………

 

午後4時:トレーナー室

 

…授業の終わる時間だな。まぁ、誰かが来れば休め…んん!業務の手も止まるってもんだ。…あ、来たのは最近チームに入ったダイワスカーレット。授業で気になった所を聞きに来た感じだな。英語だから本場のお前の方が良かったかもしれないが…いや、俺で良かったわ。…違うぞ。お前が悪い訳じゃないからな。同じ日本人だから、という感覚の話な。

 

「だからその解答は③になるってことだ。『~tion』や『~ic』で終わる単語はその前にアクセントがつくことが多い。覚えておいて損はない。」

「はい!ありがとうございます!」

「しかし、わざわざ俺の所で英語を聞くってことは…海外のレースに興味があるのか?」

「えぇ。タキオンさんが活躍したのもありまして…アタシも世界で1番のウマ娘をなりたいです!」

「んー、俺が見ている感じだと…『本格化』が後3年くらいで来る筈だからその時に考えるとして…」

「3年…!?もっと早くならないですか?」

「ならねぇよ…まぁ、焦る必要はない。『本格化』までにすることは身体作りだったり、適性の調整だったり、とたくさんあるからな。」

「それは…そうですけど…」

「慎重ってのが俺のスタイルだが…それは連闘とかリスクあることをしないのではない。必要であると判断したら行えれるようにするためだ。」

「…」

「…実はな、あのメンバー内だと俺が1番に声かけたのはダイワスカーレット。お前だよ。」

「アタシが1番?」

「うん。あの時の俺はまだタキオンのことも全然知らなかった…その中でお前がいいと思ってたってことだ。…俺以外にも声をかけられただろうけど。」

「…アタシがアンタを選んだ理由は何だと思う?」

「タキオンがいるからだろ?」

「…1番にスカウトしてくれたからよ。」

「………へ?」

「あ!もうすぐタキオンとトレーニングの時間ですね!では、アタシはこれで…勉強みていただきありがとうございました!」

 

…いい娘だろ?だから彼女に声をかけたトレーナーはたくさんいたよ。俺なんて『『本格化』が来て誰も担当がいなければまたスカウトするよ。』とか消極的な誘いだったってのに…アイツの中ではそれが最初のスカウトだったらしいわ。何でそんな腑抜けたって…ブリザードが卒業したからか俺の全てが燃え尽きて…いやいや、今はダイワスカーレットの話だからな!タキオンも慕われているからかあの娘の前では大人しいし…お前も気に入ると思うぞ。…痛っ!?何で今俺は殴られたの?…まぁ、いい。この後はタキオンとのトレーニングだな。

 

………

 

午後5時:グラウンド

 

「よしっ!ここでスパートをかけろ!」

「はあぁぁぁ!!」ダッ

「…」ピッ

 

「はぁ…はぁ…タイムはどうかな?」

「…今日のベストタイムだな。」

「それで?どれくらい落ちているのかな?」

「先週と比べて0.5秒くらいは…今日のトレーニングはここまでだ。」

「分かってはいたが想定よりも酷いねえ。正確なデータや考察は後にしよう。…足のマッサージを頼む。」

「どこか痛むのか?」

「何…君に触れて欲しいだけだよ。」

「なら足以外もみるよ。」

 

ジャパンCが近いからトレーニング時間は短めだな。この後は念入りにマッサージを行って…ついでに尻尾もケアした。お前のお陰でタキオンが液体になるレベルでリラックス出来てるよ。んで最後に俺の血を採ってタキオンは研究室に向かった。俺はまた資料作りだ。

 

………

 

午後6時:トレーナー室

 

「…」カタカタカタ

「ハイ!ソウジ!」

「今日はもう上がりか…ブリザード。」カタカタカタ

「イエス!ソウジはまだ仕事?」

「あぁ…これはもうすぐ終わるかな。でも、この後は別の用事がある。」カタカタカタ

「オゥ…今日はダメそうね…、返すね!ルームキーね!」

「ん…ありがとう。」カタカタカタ

「グッバイ!」

 

…合鍵作れ?いや、マンションのルール的に無理だからな。あー、これも言い忘れてたな。俺はトレーナー寮じゃなくて自宅通いなんだわ。…うん、トレーナーになる前から住んでる。だから担当を連れ込んでも…いや、うまぴょいはし…し…してはなかったヨ。んん!とりあえず、鍵は1つしかないの。

 

………

 

午後7時:地下牢

 

チームの資料を作り終わって、たづなさんにオーケーもらえたから終了。とりあえず飯持ってフライトの所に行ったよ。まぁ…案の定不機嫌だったけど。

 

「…遅くなったなフライト。…痛っ!噛むな!噛むな!鍋が落ちる。」

「…ふーんだ。」

「お?タキオンのぱかプチか…折紙?ジャンポケに教わったのか?」

「はい。前にたくさん作って貰ったので…私も作れるようになれました。」

「???…いや、意味が分からんが。いつも読んでた参考書は?」

「朝来たソウジさんに没収されたましたが?」

「ん?俺は知らないぞ?とりあえず…後で部屋に置いてあるか探しておくよ。」

「それで、晩御飯は何ですか?」

「カレー。」

「匂いが籠るじゃないですか!?」

「換気扇を付けろよ。心配なら…ほら!タキオンが作った消臭剤(カレー用)。ついでに俺もここで食うからか。」

「…え?ここで?えへへ…ソウジさんのご飯…」

「これはブリザードが作った残りだけどね。」

「…残り?ブリザードさん、お弁当以外も作ってるのですか?」

「カレーって俺は1日目の辛さと野菜の固い感じが好きなんだよな。だから、大体食べきれるくらいしか作らんが…ブリザードは1度にドーンと作るタイプだった。それのお裾分け。ついでにフライトにも食べて欲しいんだとよ。」

「ブリザードさん…美味しい…」もぐもぐ

 

で、カレー食って適当に解散。フライトの体調は日に日に良くなってるから…今週中には終わりかな。おいおい、ずっとは収監出来ないから…別に素行が悪かった訳じゃないんだしさ。こんな理由で入ったのはフライトが初だとか。そういえば蝶は羽ばたくと羽が傷つくから長生きさせたい奴は紙に挟んで暗いところにしまうらしいな……おい、人をサイコパスのような目で見るな。

 

ーーー

 

「って感じだな。後はたづなさんに鍵を返してここに直行した。」

「クソ濃い1日じゃねぇかよ!…ハァ、聞くんじゃなかった。俺のリハビリだけの1日が虚しく思えるわ。」

「ようやく自力で歩けるようになったんだっけ?お前も早い回復で安心してるよ…サンデーサイレンス。」

 

時間は午後9時前。仕事が終わったソウジがサンデーサイレンスの見舞いに来ていた。

 

「ほら、出来たチームの資料。お前とディープインパクトの紹介も書いたから明日にでも目を通しておいてくれ。」

「へいへい…おい待て。俺の写真がスーツ着たカフェに見えるんだが?」

「似てるから問題ないだろ。」

「ありまくりだわ!せめて髪を短くするとか胸にパッド入れるくらいは出来ただろ!」

「髪はともかく…パッドを入れようとしたらマンハッタンカフェは嫌がってたし…」

「当たり前だろ!何でお前が入れようとしてんだよっ!」

「サンデーサイレンスやタキオンが居ない2人きりところならオーケーは出たんだけどな…」

「何でだよ!?絶対にやらせねぇよ!お前、カフェにエロいことする気だろ!」

「いや、貧乳はブリザードで十分だし…」

「お前1回カフェに殴られた方がいいぞ。」

 

ヒートアップするサンデーサイレンス。それを無視してソウジは荷物をまとめ帰る準備を始める。

 

「お、おい…もう帰るのかよ…」シュルッ

「流石に今日は時間が遅いからな…てか尻尾を離しなさい。」

「そうだ!尻尾!尻尾といてくれ!それだけでもさ…」

「…分かったよ。しょうが…」

 

「面会時間は終わりですよ。」

 

「「ー!?」」

 

入り口から声が聞こえ2人が振り向く。そこにはこの病院唯一の看護師であるマリカ…ではなくダイイチルビーだった。

 

「…え?何でここにいるの?寮の門限過ぎてない?」

「まずは2つ目の質問にお答えします。寮長に事前に言いましたので問題はありません。最初の質問ですが…ここに『華麗なる一族』も出資しております。ならば私がいてもおかしくはないかと。」

「いや、おかしいから。ナース服は似合うけど。」

「答えは単純だ。チヒロ…だっけか?アイツがここにいるからだろ?」

「…」

「え?チヒロさんってまた医者してるの?」

「今いるかまでは知らねぇが…この前はヒシミラクルってウマ娘の手術してたぞ。」

「行方不明になったウマ娘じゃないか…」

「はい。その件について多数のマスコミがこちらの病院にアポ無しで押し掛けて来ました。よってアグネス家、さらにメジロ家と共にその対処をしております。」

「まぁ、学園内でいなくなった訳だから分からないとしか言えないよな…」

「…時間です。家の者があなたの自宅までお送りしますので今日はもうお帰りください。」

「分かった…ってそこまでしなくていいよ。」

「マスコミがいる可能性がありますので…お送り出来ればこちらとしては…」

「分かった分かった。お言葉に甘えさせていただきます。」

「いやいやいや!俺の尻尾…」

「明日も来てやるから。」

「…約束だからな?」

 

こうして、ソウジは病院を後にした。

 

 

「サンデーサイレンスさん。あなたはずいぶんとあの方に心を開いてるようですね。」

「…カフェのせいだ。アイツに取り憑いてる時に心臓がバクバク鳴ってるのが俺にも移った。」

 

ーーー

 

午後10時:帰宅

 

「予定よりも早く帰れたな…おっ?ベッドが新しいシーツになってる。ブリザードが交換してくれたのかな…ありがたい。さて…シャワーして寝るか…いや、今日は湯船に浸かろうかな。」

 

数分後、そのままソウジは湯船の中で眠ってしまい、起きたのは朝の6時であった。この時にのぼせも脱水症状も溺水も無かったため、ソウジは運が良かったのか、自身の身体が異常なのか数秒頭を悩ませた。



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第97話 狐は化かされる(自業自得)

仮面ライダーギーツが最終回か…楽しかったな。

『ヒヒーン』が新潟2歳Sに出走です!でも『ニシノクラウン』と『ジューンテイク』も応援したい…。キーンランドCは『ウォーターナビレラ』と『トウシンマカオ』で。


トレセン学園のダートコース…タップダンスシチーがゴールドアリュールと共に併走をしていた。

 

「ソイヤ!ソイヤ!ソイヤ!」ダッ

「ー!速いっ!」ダッ

「セイハッー!!」

「…」ピッ

 

「はぁ…はぁ…どうかな…」

「タップ、お前ダートもいけるんじゃないか?ファル子やリッキーが喜びそうだな。」

「タイムも悪くないよ。ブランクがあるとはいえアリュールと並べれるとか…やるじゃん。」

「…よしっ!前日まで付き合ってくれてありがとなシチー、アリュール。」

「しかし…ダートコースで良かったのか?ジャパンCは芝だろう…」

「これでいいんだ。全ての経験が…私の『変身』への糧となる…」

「はいはい。とりあえず、これも食べて糧にしなよ。」

「はちみつレモンだ!シチ~、大好き~!」ダキッ

「ちょっ!苦し…」

「ふぅー…『変身』か…面白いな。かくゆう私もこの半年で『変身』したと思うな。」

「あんなキレキレなヲタ芸するのは『変身』じゃなくて『変態』じゃん…悪いことじゃないけどさ…」

「それであの娘たちが私を超えれるなら…私は変態で構わない。」

「そんなこといいからタップを連れて帰るよ。私たちで止めなきゃ当日まで続けそうだし。」

「あと1回!あと1回だけ…んぐ!美味しい…」もぐもぐ

「それでも食ってろし。」

 

タップダンスシチーはゴールドシチーとゴールドアリュールに引きずられダートコースを後にした。

 

ーーー

 

場所は変わって東京レース場…ソウジはニヘイと共にとあるレースを見に来ていた。

 

『さぁ、いよいよ始まります『ジャパンカップダート』。

今年は雨によりあまりいいバ場状態ではありません。

全員のゲートインが完了し…スタートしました!

アドマイヤドンがやや出遅れか…カネツフルーヴ、スマートボーイ、と内の2人が前へと出ます!

3番手にフリートストリートダンサー、その外にネームヴァリューとユートピア…アドマイヤドンはその内いるようです。

そのまま最初のカーブへと入る!』

 

「いけー!ヴォルポニ!!焦るなよ!!」

「…俺と来るならアヤド応援してくれない?ファンなのは分かるけどさ…」

「…わ、悪い。」

 

かつて『BCクラシック』でアグネスタキオンとしのぎを削ったウマ娘…『スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ』ことヴォルポニのラストランを見に来ていたのだ。

 

『向正面に入り、先頭はカネツフルーヴ、ペースを上げてスマートボーイを離す離す!

後方の外からサイレントディール、いきなり仕掛けてきたか?

アドマイヤドンをかわし、5番手まで上がる!

ヴォルポニもサイレントディールに続いてアドマイヤドンをかわしました!』

 

「いいぞ!ヴォルポニ!!」

「アヤド…まだだ。我慢しろよ…」

 

『最終コーナーカーブ!

先頭はカネツフルーヴ…を外からとらえたフリートストリートダンサー!

いや、それをさらにヴォルポニが外からとらえる!

先頭はヴォルポニ!

アドマイヤドンは来ないのか!』

 

「ここだぞ、アヤド…」

 

「…ここだ!」

 

ダンッ

 

『残念…もう遅いよ。』

 

ダンッ

 

 

『最後の直線…4番のアドマイヤドン、ここで仕掛けてきた!

フリートストリートダンサーをとらえにかかる!

なっ…ここで先頭のヴォルポニが伸びる!

ヴォルポニが完全に抜け出した!』

 

「ー!嘘だろ!?」

「いけえー!ヴォルポニー!!」

 

『先頭ヴォルポニ!

2番手争いはアドマイヤドンとフリートストリートダンサー!

だが先頭のヴォルポニがそんな2人をどんどん突きはなす!

アドマイヤドン、フリートストリートダンサー届くのか!

届かない!

ヴォルポニ、ゴールイン!

これがダートの本場、アメリカのスターの実力だ!!

5バ身離れ、アドマイヤドンとフリートストリートダンサー、2人並んでゴールイン。』

 

「うおぉぉ!!おめでとうヴォルポニィィ!!」

「2着…だといいな。…アヤド、お疲れ様。」

 

結果はヴォルポニの圧勝…アドマイヤドンは3着に敗れた。そして、ニヘイはソウジの尻に蹴りを入れた。

 

………

 

ウイニングライブが終わり、ヴォルポニのサインを片手にホクホクした顔でレース場を後にしていたソウジだったが…なぜかヴォルポニと共に近くの喫茶店にいた。

 

『お疲れ様、ヴォルポニ。ラストラン…どうだった?』

『ふっ…この『スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ』に相応しいレースが出来たよ。…ミスターソウジ、質問をいいだろうか?』

『どうした?』

『アグネスタキオンの次走は『ジャパンC』だと聞いていた…なぜ、今回のレースを走っていないんだ?』

『…え?『ジャパンC』じゃないからだけど…』

『何を言う…『ジャパンC』だろ?招待状にはそう書いてあった。』

『それが本当なら大問題だな。見せてみろ…』 

 

ソウジはヴォルポニの持つ招待状を確認する。

 

『『ジャパンCダート』だと書かれているな。『ジャパンC』は明日だぞ。』

『?明日は『ジャパンCターフ』だろ?芝のレースならターフがついてないとおかしいからな。』

『…ヴォルポニ。残念ながら『ジャパンC』は芝のレースだ。日本の主流は芝だけど…もしかして、知らなかった?』

『…』

 

ソウジの指摘にヴォルポニの目が泳ぎ始めた。

 

『あー、今から登録出来たりは…』

『無理に決まってんだろ。招待状も無いんだしさ…』

『…クソッ!この『スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ』の私が化かされるとは…』

『化かしてねぇよ。君がバカなだけだよ。』

『…まぁ、いい。ラストランを勝利を飾れた訳だ…私のレース人生に悔いは無いさ。』

『これからどうするんだ?アメリカに戻るのか?』

『あぁ。メダグリアドーロの紹介でトレーナースクールに入るのだが…少しだけジャパンにいるよ。』

『本当か!?じゃあ、トレセン学園に…』

『いや、今は普通に観光がしたいよ…ラストランを勝った自分へのご褒美としてさ。』

『そっか…まぁ、気が向いたら来てくれよ。明日のタキオンのレースは見に来たりは…』

『んー、今のところはノープラン。まぁ、寿司をご馳走したら考えなくもな…』

『よし、銀座に行くか。』

『みこーん!?…チェーンの回転寿司でいいからね。』

 

その後、ヴォルポニと回転寿司を食べて解散したソウジだったが…家へと帰ると何故かいたタイキブリザードに小一時間問い詰められることになったのは別のお話。

 

ーーー

 

ニヘイは車にアドマイヤドンを乗せてトレセン学園へと向かっていた。

 

「…」

「お疲れ様アヤド。雨も降ってたし…今回は相手が強かったな。」

「…トレーナー。アイツ…最初から私のことなんか見てなかったよ。」

「アヤド?」

「アイツ…ずっとアグネスタキオンだけを探していた。…悔しいよ。日本に来る=アグネスタキオンと走る、としか思われてなかったんだよ。だから…絶対に勝ちたかった。」

「…」

「…有マ記念は出ない。ダートでずっと勝ち続ける。アイツに…いや、私と走る外人全員に私の存在を刻み込んでやる。」

「…」

「もうトレーニングで泣き言を言わない。だから…また…明日から…う、うぅ…」

「…分かった。今は我慢しなくていいから…」

「…泣いたこと…ベガ姉には…内緒にして…ね…」

 

「…ドン。遅いわね。」

 

傘を差し、望遠鏡を片手に妹の帰りを待つアドマイヤベガ。星は雲に隠され…雨はしばらく降り続いた。



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第98話 貴公子は再びジャパンカップの舞台に立つ(前編)

どうも、スターブロッサムの最新話でタイキブリザードっぽいウマ娘を確認して本名ダメだったかとorzしていた作者です。

今日からG1シーズンになり…まずはスプリンターズSですね。私が応援するのは『ピクシーナイト』です。1度ケガをしたら元通りの走りをするのは厳しいと言いますが…それでもまた勝って欲しいですね。他にも『マッドクール』、『ママコチャ』、『メイケイエール』も応援したいところ…

勝ったのは『ソダシ』の全妹の『ママコチャ』…『ピクシーナイト』は8着…お疲れ様でした。


さらには凱旋門賞…日本からは『スルーセブンシーズ』が参戦です。好枠とのことですので彼女に勝って欲しいです!気になるのは無敗の『エースインパクト』をはじめ、『イクイノックス』とドバイで戦った『ウエストオーバー』、レーティング128を記録した『フクム』、ハーツクライ産駒の『コンティニュアス』も気になるところ。…頑張れ『スルーセブンシーズ』!

勝ったのは『エースインパクト』。『スルーセブンシーズ』も最後に伸びてきたけど4着…お疲れ様でした。良いレースをありがとうございます。

余談ですが『ソダシ』の引退が発表されました。『ママコチャ』の勝利による馬主の判断とのこと…お疲れ様でした。繁殖牝馬としての活躍を期待しています。


「おはようトレーナー君…おや?随分とやつれているようだね…何かあったのかい?昨日はヴォルポニ君のレースを見に行っていたようだが…」

「ヴォルポニとなら勝った祝いに回転寿司を奢ってそのまま解散したよ。」

「ほほお。堂々と自身の不倫を報告するその度胸は認めよう。」

「不倫じゃねぇからな!それよりヴォルポニは『ジャパンC』そのものを理解していなくてだな…お前が昨日の『ジャパンCダート』いなかったことに混乱していたよ。」

「いや、それを聞いた私も混乱するのだが…」

「とりあえず、レース場へと行くぞ。…勝つんだろ?」

「あぁ…私に敗北を与えた唯一の心残りだ。ラストランに相応しい走りを行おう。」

 

ーーー

 

場所は東京レース場…『ジャパンカップ』が行われる。アグネスタキオンは控え室に…ソウジはタイキブリザードとヴォルポニと共に観客席におり、後は出走時間を待つだけとなっている。

 

「『やぁ、ヴォルポニ。見に来てくれて嬉しいよ。』」

「『この『スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ』な私に2度も敗北をくれたライバルだ…見に来ない訳が無い。…それに寿司、奢ってくれたし。』」

「『ハッハッハッ!満足してくれたならファンとして嬉しいよ!』」

「『…』」ギロッ

「『あのー、ミスターソウジ?あなたの奥さんが私を睨んでくるのだけど?』」

「『ん?ブリザードのことか?確かに俺との子供が最近できたけど嫁じゃないぞ?』」

「『……はい?』」

「『俺の嫁はタキオンだからな~』」

「『ソウジは渡さないね!』」

「『要らないよ!…え?待って。色々と待って。頭の整理が追い付かないのだけど…』」サッ

「『何で距離を取る…とりあえず、タキオンのレースは見てくれよ。』」

「『こんな状況でレースを見ろと!?』」

 

………

 

同時刻、場所はアグネスタキオンの控え室。中にはアグネスタキオンが1人いる。すると扉のノック音が聞こえた。

 

「どうぞ。そろそろ来ると思っていたよ…ジャンポケ君。」

「…やぁ、タキオン。先日のインタビューの件だけど…」

「『ジャパンカップを最後にレースから引退する。』…のところかな。」

「…あぁ。理由も『本格化』の完全終了と誰もが納得できる理由だ。こればっかりは私たちも避けられない。だが…本当にいいのか?」

「何が言いたい。」

「君が得意なのは中山だろ?だから初めての東京でラストランじゃなくても…」

「+1.4秒。」

「ん?」

「この1ヶ月で私の走りが衰退したことを表すタイムだ。そして…さっき君が言っていたように初めてのレース場に加えて得意ではない重バ場、客観的に不安な要素しかないだろ?」

「…それでも君なら勝てるはずだ!」

「ふっ…簡単に言ってくれるね…その通りになるだろうが。」

「本当か!?」

「大口を言っておいてなんだが…100%可能という訳ではない。それに『本格化』が終わっているという事実は変わらない。…待てよ。去年、お姉ちゃんが『本格化』が終わった状態でレースに出走して勝った…その謎が分かるかもしれない。」ブツブツ

 

1人の世界に入るアグネスタキオン。

 

「タキオン?」

「…ククッ。最後かもしれないというに…私はこの通りだ。ジャンポケ君、君もいつも通りに観戦してくれたまえ。」

「分かったよ…ほら、今回の作品だ。」

「これは…扇子かい?」

「…調子が悪い、というのは前から知ってたから。何か出来ないかと調べてたらこれになったよ。えーと、邪気を祓う効果がある、とかゴールドシップが言っていたな。」

「ジャンポケ君…君は私のこと嫌いだったのか…」

「え?は?いや、何で…」

 

手で顔を隠したアグネスタキオン…その様子にジャングルポケットが慌てだす。隠した手の下でアグネスタキオンの口はにやけていた。

 

「ジャンポケ君…覚えておくといいよ。扇子には"散らばる"、"縁が遠のく"と関係性に対してマイナスの意味があるからね…」

「違っ…!そんなつもりじゃ…」

「傘や置き時計もダメらしい………中国では。」

「いや、だから…は?中国?」

「ハッハッハッ!ちょっと君を困らせたくなっただけだよ。この贈り物はありがたく頂くよ。」

「ったく、ビビらせるなよ!…絶対に勝ってきて。」

「おや、随分と強気なことをいうね…」

「君がいつも通りにしろとさっき言ったじゃないか。」

「そうだったね…行ってくるよ。君はどこから見る予定かな?」

「ジョーダンらと上の指定席から…じゃあな。」

「あぁ。」

 

2人は控え室を後にする。

 

ーーー

 

東京レース場の入場口に1人、巨体のウマ娘が立っていた。

 

「あなたは…ファルブラヴさん!?どうされましたか?」

「レースミタイ。ハイルチケットホシイ。」

「す、すみません。既に当日販売のチケットは既に売り切れでして…」

「ワカタ…ソレナラシカタナイ。アキラメル…」ズーン

 

「『…あら?あなたは…』」

「『ー!BCクラシックを走っていたメダグリアドーロか。残念ながら入場券はもう売り切れだそうだ。』」

「『私は既に購入済みよ。そうだ!良かったら一緒に見る?指定席が1人分余っているの。お代は結構よ。』」

「『入れるだけでもありがたい話だけど…いいのか?』」

「『いいのよ。まさかこのレースに出走するとは思ってなかったから…』」

「『出走?BCターフを勝ったジョハーか?』」

「『違うわ、ネオユニヴァース…日本人よ。ウォーエンのお友達。』」

「『ウォーエン………ブレム?』」

「『正解…っと、無駄話はここまでね。ウォーエンやバトラーたちを待たせているから早く行きましょう。』」

 

メダグリアドーロはそういうとチケットを2枚取り出して、ファルブラヴと共に入場した。

 

ーーー

 

とある観客席では…

 

「ねぇグラスちゃん…尻尾離してくれない?完全に尻尾ハグになってて恥ずかしいのだけど…」

「ダメですよ~。フライトさん、私が目を離すとすぐにどこかに行ってしまうじゃないですか~。」

「尻尾ハグ。同じ栗毛同士。けど、微妙に違う色。いいコントラスト。」じー

「じろじろ見ないの…ほら、ワールドちゃんも一緒にいるし尻尾だけでも離して…」

「グラス。強情。諦めて。」

「…うぅ、ソウジさん…」

「…」キュッ

「ちょっ!?急に尻尾に力込めないでよ!」

「すみません、つい…」

 

アグネスフライトがグラスワンダーとアグネスワールドと共にいた。そして…ついにメインレースの出走時刻となる。

 

 

ーーー

 

『さぁ、『ジャパンカップ』が始まろうとしています。

午前は雨が降っていましたが、現在は曇りとなっています。

海外からは9名のウマ娘が参戦…それに対して日本も9名の参戦…計18人フルゲートでのレース。

1番人気は日本の総大将にて現在フェブラリーS、宝塚記念、ホイットニーH、BCクラシックとG1レースを4連勝中のアグネスタキオン、2番人気にクラシック2冠のネオユニヴァースと日本勢が続きます。

3番人気はフランスのアンジュガブリエル…サンクルー賞を連覇した猛者…今回のジャパンCがラストランとのことですがどのような走りを見せてくれるか注目です。

さぁ、最後にタップダンスシチーがゲートが収まりまして…ゲートオープン!』

 

ついに『ジャパンカップ』が始まった。

 

「先手必勝!!」

 

「『なっ…!』」

「こんなバ場だってのに…」

「『もう行くのか!?』」

「…」

 

『最内のタップダンスシチー!

いきなり前へときた!

2番目に争いにアグネスタキオン、ザッツザプレンティ、アクティブバイオと日本勢が前へと行く!』

 

「こっからが私のステージだ!」



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第99話 貴公子は再びジャパンカップの舞台に立つ(後編)

どうも、秋華賞だけど友達とのドライブで馬券を買わない作者です。即パットだと紙で残らないからしようとは思わない…

さて、今日は秋華賞…『リバティアイランド』が目立ってますね。もう彼女が1着と思ってます。それでも私が応援するのは同じドゥラメンテ産駒の『ドゥーラ』、キタサンブラック産駒の『ラヴェル』、『コナコースト』、『ヒップホップソウル』、ジャスタウェイ産駒の『マラキナイア』、キズナ産駒の『コンクシェル』、『フェステスバント』、『グランベルナデット』、ルーラーシップ産駒の『ドゥアイズ』、『マスクトディーヴァ』です。出走する50%も応援してますね。東京HJもあります…頑張れ『ニシノデイジー』!
何より全頭の無事の完走を望みます…応援している馬が亡くなるのは悲しいので。『ストーリア』、『ニシノボルテージ』…天国でお休みください。

勝ったのはリバティアイランド…三冠達成!!マスクトディーヴァも凄い末脚で…ドゥーラも3着と思ったけど…4着。とはいえ全員、お疲れ様でした!



『ジャパンカップ』が始まり…アグネスタキオン見事なスタートを決めて2番手にいた。

 

「…出遅れは無し…だな。タキオン…よくやった。」

「『…?ミスターソウジ?』」

「『見てろヴォルポニ…今の日本の総大将の走りを…』」

 

『さぁ、最初のコーナーカーブして先頭はタップダンスシチー、さらにペースを上げてきた!

その後ろに1番人気のアグネスタキオン。

中段にはアンジュガブリエル、ネオユニヴァースがそれに続く。

サクラプレジデントは後方からのレースとなっている。』

 

「ソイヤッ!ソイヤッ!」

 

「いけっ!タップダンスシチー!!」

「逃げろっ!!」

「焦るなよアグネスタキオン!!」

 

『向こう正面に入り…先頭タップダンスシチー、2番のアグネスタキオンとの差は3バ身!

さらに4バ身離れ、ザッツザプレンティとアグレッシブバイオ!

内からアメリカのスルーヴァレイも上がってきた!

アンジュガブリエル、BCターフの勝者ジョハーもきた!

2番人気のネオユニヴァースはまだまだ後方!』

 

「『ミスターソウジ、まだなのか!アグネスタキオンはまだ仕掛けないのか!?』」

「『…もう仕掛けているよ。…先頭との差が縮まってないだけだ。』」

「『確かに…後続との差は広がっている。』」

 

『最終コーナー曲がって先頭はタップダンスシチー!

その後ろのアグネスタキオン、苦しそうだが並びにかかる!

後続との差は5バ身以上、完全にこの2人の勝負となったか!

さらに伸びるタップダンスシチー!

とらえにかかるアグネスタキオン!

しかし、伸びが甘いかアグネスタキオン!

とらえるか、逃げ切るか!

残り100!

ここで並んだかアグネスタキオン、しかし、タップダンスシチーも盛り返す!

アグネスタキオンかタップダンスシチーか…2人並んだままゴールイン!!

これは…これはどっちが1着だ!?』

 

ざわざわざわざわ

 

「どっちなんだ?しかし、アグネスタキオンが勝ったとしても負けたとしても…あんなギリギリの勝負になるなんてな。」

「アグネスタキオンも『本格化』が終わったからって急にここまで落ちるとは思えないな、つまりタップダンスシチーが凄かったってことだろ。もし彼女が勝っていたらついに初G1勝利か?」

「重バ場だったとはいえ、3着にあそこまで離せるとな…」

 

騒がしくなる観客席。

 

「タキオンちゃん…!」ギュッ

「ーー!フライトさん…尻尾…」

「あ!ごめん、力が入っちゃって…」

「もっと締めても大丈夫ですから。それにしてもタキオンさん…調子が悪かったのでしょうか?いつもの伸びが無かったですね。」

「…」

「タキオン。重バ場。慣れてないから?」

「違うの。これはもっと根本的な話。そう、いつかはあなたたちにも来る残酷な…」

 

心配する姉。

 

「『アグネスタキオン…伸びなかったな。調子が悪かったか?あるいはバ場が合わなかった?』」

「『いや、今のタキオンにとっては最高の走りだった。』」

「『あれが…最高の走り?冗談だろ?BCクラシックではもっと伸びていた筈だ!』」

「『『本格化』の完全終了…ここからは落ちていくだけさ。』」

「『何だよそれ!…アイツはまだトゥインクルだろ!早過ぎる!』」

「『………だが、現実はこうだ。タキオン自身がどう思っているか知らないが…俺は悔しいよ。』」

「『ー!ソウジ、ヴォルポニ、結果が出たね!』」

 

アグネスタキオンの現状を語るソウジ。そして掲示板が灯る。結果は写真判定よりクビ差でアグネスタキオンの勝利。この瞬間アグネスタキオンは、シンボリルドルフとテイエムオペラオーのG1勝利数を超えた歴代最強のウマ娘となったのだ。

 

………

 

「『勝ったとはいえ…あれは本当にアグネスタキオンか?』」

「『ケガか或いは手を抜いたか…』」

「『いいえ。彼女の顔を見てみなさい…あれは全力を出しきってウマ娘の顔よ。…どうやら私は最高潮の彼女と走っていたようね。』」

「『だから、これからは落ちていくと…どうするつもりだアグネスタキオン。』」

「『実は私…来年からトレセン学園に編入するんだ。だから…挑むなら早い方がいいかな。』」

「『あー、ファルブラヴ。私は来年にはいなくなるけど先に来た者としてアドバイスするよ。アグネスタキオンに限らずトレセン学園は化け物揃いだ。特に栗毛の…』」

「『はいはい。レースは終わったんだからさっさと行くわよウォーエン。』」

「『…へ?どこに?』」

「『バトラー、どこを取ったの?』」

「『えーと、このホテルです。ここから徒歩15分、防音も完備されてます。これが鍵と…例のカチューシャです。』」

「『お嬢、頼みますよ。』」

「『ってことだから行くわよウォーエン。』」

「『何がどういうこと!?私、この後ネオと…『ふんっ!』ごぼっ!?』」ガクッ

「『ふー、久々だったけど上手くいったわね。それじゃ、ガス抜きが終わったらまた連絡するわ。』」

「『ごゆっくり。』」

 

メダグリアドーロは気絶したウォーエンブレムを担ぎ、観客席を後にする。

 

「『さて…私はネオユニヴァースへの対応を引き受けるわ。ゴア、あんたはどうする?どうせ夜中まで暇になるしこのまま帰ってもいいわよ。』」

「『じゃあ、サンちゃんの見舞いにでも行ってくる。ファルブラヴ…あなたは?』」

「『このままレースを見ていく。…後日改めてメダグリアドーロには礼をするよ。』」

「『お嬢の気まぐれだから全然気にしなくていいのに…まっ、そういう奴って私は好きよ。来月のトゥインクル引退レース、頑張って。』」

「『ありがとう。』」

 

海外組も解散となった。

 

ーーー

 

ウイニングライブが終わり、アグネスタキオンはインタビューを受けていた。

 

「今回のレース、かなりギリギリな展開になりましたが…どこか思うようにいかないところがあったのでしょうか?」

「いや、初コースや重バ場への順応、出遅れ無しのスタート、仕掛けたタイミングなどなど、それらが全てが上手くいき…それで勝てた。」

「…全力を出せた、ということですね。今回の勝利により海外でのレースを含めG1を8勝、連対率100%、素晴らしい成績だと思います。ラストランを終えての感想を…」

「あぁ、その件だが…『今回でラストラン』というのは撤回しよう。次の有マ記念がラストランだ。」

「…はい?」

「…衰え始めてるとはいえ、まだ負けるつもりはないとも。ゆえに出走者全員に言おう…最後のチャンスだ!全力で私を倒しに来いっ!」

「これは引退撤回からの勝利宣言…素晴らしいですっ!絶対に見させていただきます!」

 

アグネスタキオンのその一言は世間を騒がせた。

 

ーーー

 

帰り道…アグネスタキオンはソウジの車の中にいた。

 

「…本当にあんなこと言って良かったのか?今も限界ギリギリなんだろ?」

「何を言う。今回のレースで『本格化』が終わろうとも勝てるということを証明した。」

「全部が上手くいったからってのは理解しているけど…俺としては心臓に悪いレースだったよ。」

「何ケガをしたらそれはそれで諦めはつくさ。」

「…取り消せ今の言葉。お前がまたケガしようものなら…俺はお前を置いて消えるぞ?」

「取り消そう。トレーナー君には一生私の面倒を見てもらう必要があるからねえ。」

「はぁ、俺も言い過ぎた。何か食べたい物はあるか?」

「ソウジ。」

「………分かった。フジキセキには俺が言っておこう。…ブリザードには前もって言っておいて良かったよ。」

「…長い夜になりそうだ。」

 

車は夜の闇へと消えた。




おまけ:

帰りのコンビニにて…

「待たせたねえソウジ!」
「ん、早かっ…おい!この箱は何だ?」
「見ての通りだよ。あぁ、店員にはすぐに使うから袋は要らないと言っておいたよ。」
「誰がそんなことをしろと言った!」
「君は必要な物を買ってこい、と言った…ならばこれはこの後の必需品じゃないか!」
「違ぇよ!晩飯買ってこいって言ったんだよ…いや、ある意味合ってるけど!とにかく!エコバッグ渡すから買い直してこい。」
「むぅ…私は今日レースを走った後だというのに…人使いが荒いねぇ…」
「後…もう1箱買ってこい。」
「ー!ククク、おかわり前提…ということだね。」
「やかましい。」


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第100話 銀河と密林と奇跡と… 火

間は埋めるべき…


「『アハハ…栗毛だ…』」

「ウォーエン☆…ウォーエン?」ダキッ

「『…あぁ、これが…新世界への扉…』」

「ねぇ!ウォーエン…ダメか。バトラーさん、ウォーエンに何があったの?」

「…知らない方がいいかな。あえて言うなら…ガスが抜けて萎んでる、って感じ。」

「なるほど…閃いた☆コーラを一気飲みさせたらいいんだね!」

「コメディアンじゃないんだから…」

 

ジャパンCが終わり、ネオユニヴァースはウォーエンブレムを見つけて抱きつきにいくも彼女は真っ白になっていた。原因をペイザバトラーに聞くも気まずそうに目をそらすだけだ。

 

「…はぁ、協力してほしいことがあったのにな☆」

「…協力?」

「ユーニヴァース☆ヒシミラクルをお迎えにいくの!学園長からは必要なものは預かってるから☆」

「ヒシミラクルを迎えに?必要なもの?」

「うん☆前にワタシが行方不明になった時、別のトレセン学園にいたの★だから、ヒシミラクルもそこにいると思うんだ!」

「…その話って本当なの?」

「ワタシだけじゃない!シンボリクリスエスも体験したの☆だから…もう一度あのトレセン学園に行く!!」

「…そのためウォーエンと同じことを再現すると………私個人としては止めて欲しいのだけど。」

「ユーニヴァース☆…なら、1人でそこに向かうだけだよ★また帰ってこれる保証は無いけどね。」

「ネオちゃん…」

「ワタシ、トレーナーとのミーティングで…今年は走り過ぎたから有マ記念はパスすることになったの☆だから…実行するなら今しかないの!」

「…今からすることはトレーナーに言ったの?」

 

その瞬間、ネオユニヴァースの星の瞳が曇りガラスへと変わった。

 

「言うわけないじゃん。」

 

………

 

場所はトレセン学園の大樹のウロ近く…前にネオユニヴァースが行方不明になった場所だ。

 

「数日分の着替え、おこづかい、学園長からの荷物………ヨシ☆準備オーケー!」

「…本当にするの?もし、またその違う世界に行ったとしたら…ウォーエンと会えなくなる可能性も…」

「大丈夫☆ワタシは帰ってくるよ!ウォーエンにはヒシミラクルを探してくるって伝えてね★」

「…あなたのトレーナーには?」

「何も言わなくていい。」

「そう…」

 

ペイザバトラーに見守られながらネオユニヴァースはウロへと歩く。

 

「花壇への水やり完了っと…さて、エアグルーヴがしていたことはこんなところか。ん…、あれはネオユニヴァースか。凄い荷物だな…」

 

その様子が1人のウマ娘…ジャングルポケットの目に入る。

 

「ユーニヴァース☆」ピョン

 

ピカーン

 

「嘘…」

「おい!何をしているんだ!!」ダッ

「ーーージャングルポケット!?」キーン

 

ネオユニヴァースがウロへと飛び込むと辺りは光に包まれる。ペイザバトラーが驚いている横からジャングルポケットが通ったと同時に大声をあげてネオユニヴァースの元へと突っ込んだ。そして次の瞬間、ペイザバトラーの前には大樹のウロのみが残っていた。

 

 

ーーー

 

「ミラ子殿、起きるである!」

「ん…後、2時間…」

「どれだけ寝るつもりであるか!?早く、起きるである!」カンカン

「んんっ!!起きたから…それ、やめて…」

 

葦毛のウマ娘が寝ていると、もう1人の葦毛のウマ娘により起こされる。

 

「ってまだ7時じゃん。早すぎるよ!」

「今日は日直であろう?我輩と一緒に行くである!」

「それにしても早いよ…というかミラクルにとっても早過ぎない?」

「何を言ってるであるか?我輩、普段はもっと早く出てるである。今日はミラ子殿に合わせただけ…寝癖酷っ!じっとしてて!」

「うへぇ……同じわたしのはずなのに…というか、わたしの方が年上なのに…」

「はい、直したである。早く着替えて食堂に行くである!」

「待って!そんなに急かさないで!」

 

ヒシミラクル()はヒシミラクルと共に部屋を出る。

 

………

 

「それにしても…ミラクルが来てもう1年か…」

「我輩の足も完治して…本当、理事長殿には頭が上がらないである。」

「わたしもあなたに頭が上がらないよ…何で高等部の授業内容がもう分かるの?」

「これもまた人事である。」

「人事って凄いね…あ!ミラクルちゃんだ!おーい!」

 

ヒシミラクル()はケイエスミラクルへと声をかけた。

 

「おはよう、ミラ子にミラクル。今日は2人お揃い?」

「そういうミラクル殿も早いであるな…リハビリは順調?」

「まだまだかな。今日はちょっと早くに目が覚めて…あ!いつも更衣室の掃除ありがとう。今日も気持ち良く使えたよ。」

「あそこの掃除は週一であるからな…これもまた我輩の人事である。それはそうと早起きはミラ子殿にも見習って欲しいであるな。」

「いや、わたしは普通のウマ娘だし…」

「普通のウマ娘はG1レースを…それも3勝も出来ないである………はぁ。」

「ミラクル、気持ちは分かるよ。ちなみにおれはG1レース勝ててないからね?」

「いや、去年の『BCスプリント』で勝って………すまない。我輩の世界の話であった。」

「フフフ…おれにとっては嬉しい話だよ。一緒に食べようか。」

「そうだよ。早く、朝ごはんにしようよ~…お、今日の日替わりは干物か。ミラクル、骨取って~」

「自分で取れ、である。」

 

ざわざわざわざわ

 

「ユニヴァースさん、見てください!今日は3人揃っています…何か凄いことが起きるかもしれませんね。」

「凄い…こと?」

「そうですね…今食べている納豆が踊りだすとか?」

「『踊る納豆定食』……それ…"ANOI"(食べたい)かも。」

「…やっぱり無いですね。自分で言っておいてなんですが…あ、ミラクルです!卵が双子…当たりですね!」パカッ

「ビッグバン。ネオユニヴァースの『タマゴ』は"ハズレ"だよ。」パカッ

「ハズレって何ですか!?白身しか入ってなかったのですか!?まさか私の卵に移動して…いや、それこそあり得ませ…」

「フラッシュ…落ち着いて。」

「コホン、すみません。ユニヴァースさん、2つありますので私の黄身を1つどうぞ。」

「フラッシュ、ありがとう。」

 

今日もトレセン学園は平和である。

 

………

 

「…こちらナリタブライアン、大樹のそばに倒れているウマ娘を2人発見。1人は前にも来ていた別世界のネオユニヴァース、もう1人は…学生証にジャングルポケットの名前が書かれている…とりあえず生徒会室に連れていく。どうするかは任せる。」



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第101話 銀河と密林と奇跡と… 水

「1年ぶりだねネオユニヴァース。」

「ユーニヴァース?ワタシにとっては2ヶ月ぶりだよ☆」

「…えーと、ルドルフだよね?これは…どういう状況?何か暑いけど…今って『ジャパンC』が終わったばかりだから…12月だよね?」

「今は『宝塚記念』が終わり、夏合宿が近い状況だよ。」

 

ナリタブライアンに担がれ、生徒会室まで運ばれたネオユニヴァースとジャングルポケット。目が覚めると最初に夏服のシンボリルドルフの姿が映り、ネオユニヴァースは普通に挨拶したもののジャングルポケットは完全に混乱してエアグルーヴのお腹を見つめていた。

 

「…何なんだ?本当、一体どうなってる?ブライアンもルドルフも…私のことを知らない。エアグルーヴは妊娠していない…」

「何だ貴様。誰が妊婦だ?」

「…エアグルーヴ。私は卒業する君から副会長を引き継いだはずだ…何故、今もここにいる?」

「私は卒業しないし、今も副会長だからだ。だが、今のお前には何を言っても分からないだろ…というかずっと私の腹を眺めるな!とりあえず、これでも飲んで少しは落ち着け。」

「エアグルーヴ!ハーブティーおかわり☆」

「お前は落ち着き過ぎだ!!」

「ごぼぼぼ……」ゴクゴクゴクゴク

「ポットごと飲むな!」

「それより火傷は大丈夫なの☆」

「隠し芸、マーライオン!」ジョボボボ

「飲んだのを目から出すな!部屋を汚すな!」

「…普通に凄くない☆」

「狂乱怒濤…彼女は今はこのままにしておこう。」

「なりません会長…私が引き受けます。」

「そうか。頼んだよエアグルーヴ…コホン。ネオユニヴァース、話を聞かせてもらえるかな。」

 

混乱のあまり奇行を繰り返すジャングルポケット。それらの対処をエアグルーヴに任せ、シンボリルドルフは仕切り直しネオユニヴァースの声に耳を傾ける。

 

「えーと、教室にいたはずのヒシミラクルが急に行方不明になっちゃったの☆ワタシも行方不明になっていたからこれはもしかしてと思って…こっちにまた来ちゃった!」

「…帰る方法はあるのかな?」

「………あ!」

「…ハハハ。もしかして、私って一生ここで…アハハハハハッ!!」ガクッ

「おい!しっかりしろ!おいっ!……会長、彼女を保健室まで連れていきます。」

「よろしく頼むよ。」

 

ネオユニヴァースの発言がトドメとなり、脳の限界を迎えたジャングルポケットが泡を吹き気絶した。そしてそのままエアグルーヴに運ばれ、部屋を後にする。部屋に残ったのはシンボリルドルフとネオユニヴァースの2人。

 

「さっきはああ言ったけど…帰るアテはちゃんとあるよ☆…誤算だけど。」ボソッ

「誤算?」

「何でも無いよ★」

「それでそちらの理事長がこちらの理事長にあてての荷物があると。」

「うん☆結構重くてね…よいしょ!これだよ☆中身は本人に渡すまで誰にも見せるな、って言われているよ★今出すから…」

「慌てる必要は無いよ。その理事長だが、もう少しで会えるようになると思うから待っていてくれ。」

「ユーニヴァース☆…後ね、何でワタシの世界のジャングルポケットがいるかは分からないの。ごめんね。」

「あぁ、大丈夫だよ。落ち着いたらジャングルポケット本人に聞いてみるからね。」

「…あ!またユニに会えるかな?前回は帰れることが分かってすぐに帰っちゃったから…」

「放課後になれば会えると思うよ…来たようだ。」

 

シンボリルドルフが扉に目を向けるとやよいとたづなが入ってきた。

 

「到着!すまない、少しバタバタしていた。」

「理事長!?すみません、呼ばれると思い待機してまして自らこちらに来るとは…ご足労をかけました。」

「構わん!それに場所はここでいい。」

「ユーニヴァース☆初めてまして、ワタシはネオユニヴァース☆銀河を目指すウマ娘★」

「驚愕!?聞いてはいたがやはり、私の知っているネオユニヴァースと違うな。」

「これ☆ワタシの世界の理事長から…」

 

ネオユニヴァースは金庫をリュックから取り出した。

 

「金庫!?中に一体何が…!?」

「あなたなら解除できるってこっちの理事長が言ってたから…」

「ふむ………開いただと!?確かにこれは私しか知らない番号の筈だが…」ガチャ

「それより理事長。中身は…」

「…現金が入っているな。正確な額は分からないが…もの凄い額だ。」

「えぇ!?」

「後は封筒に入った手紙と……USBメモリだ。たづな、これのデータを確認してくれ。私は手紙を読む。」

「了解しました。」

 

やよいは封筒を開け、たづなはパソコンを立ち上げ始めた。そんな中、シンボリルドルフは目を丸くしてネオユニヴァースの方へと顔を向ける。

 

「ネオユニヴァース、君は一体…」

「ヒシミラクルを連れ戻しに来ただけよ☆こっちの世界ではほぼ進捗がなくて…ワタシくらいしか手がかりが無いの。」

「君とヒシミラクルは仲がいいんだね。」

「全然★『宝塚記念』を一緒に出走したくらいだよ☆」

「そうなのか!?それなのに…君は…」

「連れて帰ったら好きなトレーニングマシンが使いたい放題だからね☆………だからだよ。結局は自分のために動いているに過ぎない。」

「ネオユニヴァース?」

「何でもないよ☆」

 

シンボリルドルフとネオユニヴァースが話している間にパソコンを触っていたたづなの手が止まる。

 

「データが出てきました!これは、あちらのヒシミラクルとネオユニヴァース…さらにはアグネスタキオンの出走記録です。全レースの映像も入ってます。」

「…こちらも読み終わったところだ。別世界での状況と…これは万が一帰れなかった彼女らを保護してもらうためのお金、とのことだ。…ネオユニヴァース、君の学生証を借りてもいいだろうか?」

「ユーニヴァース☆どうぞ!どうぞ!」

 

ネオユニヴァースはやよいへと自身の学生証を渡した。その後、ネオユニヴァースはジャングルポケットのいる保健室へと向かった。



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第102話 銀河と密林と奇跡と… 木

早く、今日あったウマ娘の最新話がみたいな…ゴルシ回、楽しみ。


「………ッ!?」ガバッ

「あ☆起きた☆」

 

ジャングルポケットの目が開く。その隣にはネオユニヴァースがいた。

 

「ネオユニヴァースか。何か変な夢を見てな…私が君と一緒に変な世界に来ていてだな…」

「ジャングルポケット、いい?落ち着いて聞いてね☆…ワタシたちが今いるのは別世界のトレセン学園だよ。夢じゃないよ。」

「ー!?ア、アハハハハハ……」

「ヤバい☆エアグルーヴ、折紙を持ってきて!大丈夫、大丈夫…落ち着いて、落ち着いてね。ほら、折り紙だよ☆」

「…」

 

ジャングルポケットは無言で渡された折紙を折り始めた。

 

「…言われた通り持ってきたが…これでいいのか?」

「オッケーオッケー★できればあるだけ全部持ってきてくれない☆ワタシたちが帰る手段になるから…」

「コイツが帰る手段?」

「うん☆何でいるか分からないけど…前は折紙製のぱかプチで帰れたの。ジャングルポケットなら折れるから…それで帰れると思う。だから…ジャングルポケットには正気に戻ってもらわないと☆」

「…いいだろう。集めれるだけ集めよう。」

「ごめんね。授業とかあったよね…」

「事態が事態だ…別に構わん。それより、そちらの私について聞いてもいいだろうか?」

「いいよいいよ☆まずは妊娠していて…」

「コイツの妄言じゃないのか…それまでにつながる話を教えてくれないか?」

「ユーニヴァース☆」

 

ネオユニヴァースが自分の世界のエアグルーヴについて語りだす。時々、顔を真っ赤にしつつもエアグルーヴは最後まで話を聞いた。

 

………

 

「もう十分だ。それにしても…そちらの私はチームに所属していたのだな。」

「ユーニヴァース☆こっちでは違うの?」

「あぁ、ここではウマ娘1人に対して担当は1人のことが多いな。」

「いっぱいトレーナーがいるんだね☆こっちは人手不足でマンツーマンは珍しいよ~。」

「…しかし、それでも私のトゥインクルでの成績は一緒か。お前の話を聞く限り…大きな違いはハルウララの勝利とアグネスタキオンのトゥインクル復帰…」

「んーハルウララはともかく…こっちのアグネスタキオンはケガで皐月賞後にトゥインクル引退…今も走れるけど完全復帰に向けて治療中か…ワタシの世界だと次の有マ記念がラストランなんだ☆」

 

「おや?今、私のことを呼んだかい?」

 

2人が振り向くとアグネスタキオンがそこにいた。

 

「…おい、授業はどうした。」

「何、あまりに退屈だったから仮病を使って抜けてきたよ。それにしてネオ君…また君がいるとはねぇ。」

「…実験はNGだよ、したらまた胴絞だよ☆」

「ハハハッ、やはりわざとだったか。君の目的はヒシミラクル君かな?」

「ユーニヴァース☆ワタシはあなたに勝ちたい★なら…可能性を上げるしかない。トレーナーには今のワタシだと勝てないと言われたから…」

「ネオ君?」

「…別に帰れなくて帰れてもワタシはどっちでいいの。正直、ヒシミラクルのこともジャングルポケットにこともどうでもいい。ワタシは…ワタシは…ただ、あなたと走りたかっただけ…」

「…エアグルーヴ君、どういう状況だ?」

「私にも分からん…だが、向こうの世界で色々とあったのだろう。ほら、もう少し休め。」

「…ありがとう★」

 

ネオユニヴァースはベッドに横になる。すると10秒も経たない間に寝息が聞こえ始めた。

 

「ところでそこの虚ろな目で折紙を折っている彼女は?」

「あぁ、このネオユニヴァース同様に別世界のジャングルポケットだ。」

「………そうかい。」

「どうした?苦虫を噛み潰したよう顔をして。」

「何。前に別世界のシンボリクリスエス君が来た時のことを思い出しただけだよ。向き合うと決めたのに…まだ何もしていない状態からね。」

「何の話だ?」

「…すまない、忘れてくれたまえ。あー、ジャングルポケット君でいいんだよね?」

 

アグネスタキオンは千羽鶴を折り続けているジャングルポケットに声をかけた。

 

「…タキオンか。君も私のことを…知らないようだね。」

「すまないが君とは初対面だ。こっちのジャングルポケット君はポッケ君と呼んでいるが…君は何と呼ばれている?」

「ジャンポケって呼ばれることが多かったよ。混ざらないからこっちの方がいいかもな。」

「了解したよジャンポケ君。早速だか質問をいいかね?」

「…あぁ。分かることなら答えるよ。」

「君は…ネオ君と一緒にヒシミラクル君を探しに来たのかな?」

「違う。私は生徒会室に戻る途中に大樹のウロに飛び込むネオユニヴァースを止めようとしたら…ここにいた。」

「その時の状況を詳しく覚えているかい?」

「何か光ってた、ぐらいかな。」

「ほうほう…発光か。前にネオ君が戻った時と似ているねぇ。」

 

アグネスタキオンが口をにやけ、呟いた。

 

「こっちからもいいか?ヒシミラクルがここにいるのか?」

「あぁ、2人いるとも。1人は1年程前、急に高等部の教室に現れたそうだ。」

「…私の認識では1ヶ月くらい前の筈だが?」

「別世界だ…時間のずれがあるのだろう。普通は混乱してその場から離れようとするものだが…彼女は逃げることはしなかったとのこと。」

「それはケガでギプスしてたからだろ。」

「まぁ、状況から見ればそうなるだろうけど…どちらにしろ結果は変わらなかっただろう。ここから先が面白いことなってね。彼女が提供してくれてた学生証をURAで調べてもらったところ…ICチップのデータから出走記録がほぼ一致したんだ。」

「…ほぼ?完全じゃなくて?」

「あぁ…ほぼ、だとも。その中に…私が有マ記念と宝塚記念に出走した記録が残っていた。どういうことかな?」

「???当たり前だろ?君とヒシミラクルとかぶっていたレースはその2つだけだが…」

「おい待てタキオン。それは私ですら知らない話だ!そもそもデータが読み込めたのか!アレは厳重な管理がされていた筈だろ!」

 

アグネスタキオンの疑問に首をかしげ、ジャングルポケットはさも当然だと答えた。しかし、その話の内容からエアグルーヴに新たな疑問を与えたらしく、アグネスタキオンへと迫る。

 

「その件に関してはURA本部もかなりゴタゴタしていたらしいから何とも言えないねえ。そもそも私自身が直接URAに呼ばれて知ることになったのだから…いや、その話は今はいい。ジャンポケ君…私は皐月賞後から1度もレースを走っていない。にも関わらず私の出走記録が出てきた。」

「いや、君は走っていた……忘れていた。今のタキオンは私の知ってるアグネスタキオンじゃなかったね。だが…結局は私のいた世界の記録だ、としか答えれないな。私からも質問だタキオン。私の世界のヒシミラクルはどうなっている?」

「あぁ、トレセン学園での保護が決まって今は中等部で普通に授業を受けているとも。ケガをしているにも関わらず、グラウンドのコース整備にトイレ掃除、図書室の本の整理…さらにフラワー君と共に差し入れ作りなど、かなり学園に貢献していてね…」

「…普通だろ?」

「君の世界ではそれが普通なのかい!?こっちのヒシミラクル君は控えめに言って…自称普通のズブいウマ娘だよ。」

「控えめに言ってそれ!?…想像出来ないな。まぁ、こっちのヒシミラクルと違って泳ぐのはいけそ…」

「あぁ、それは彼女も苦手だねえ。」

「そこは一緒か…」

 

「私は無視か…」

 

エアグルーヴの言葉がアグネスタキオンの耳に入ることはなかった。



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第103話 銀河と密林と奇跡と… 金

どうも…メジロラモーヌが天井まで来なかった作者です。育成してみますと…はぁ…久々に緊張感のあるストーリーでした。

ちょっとネタバレですけどジャパンCでのルドルフ&シービーとの対決とか20年の再現でしたね…あの娘も出てきたし。3冠のぶつかり合い…いいですね。


その後、放課後まで保健室で過ごすこととなったジャングルポケットとネオユニヴァース。といってもジャングルポケットは無言で紙を折り続け、ネオユニヴァースはずっとベッドで眠っていた。すると、誰かが保健室へと入ってる。

 

「…失礼するである。やっぱり、我輩が知っているジャンポケ殿とネオ殿であるな…我輩のために迷惑をかけたである。」

 

行方不明になっていたヒシミラクルだった。

 

「しー、ネオユニヴァースが寝てるから静かに。」

「す、すまないである。…生徒会長から事情は聞いたである、理事長…あ!今言ってるのは我輩たちの世界の理事長であるぞ。理事長が色々と手を回してくれたと…」

「…私はそれ、初耳だよ?」

「…ん?んー、あっ!ジャンポケ殿は完全に巻き込まれた、って話であったな…本当に我輩のせいですまない。」

「謝らなくていいから…今、君のぱかプチを折っている。…戻る準備をしてくれ。」

「我輩のぱかプチ?折紙で?」

「何か前にネオユニヴァースが行方不明になったときはそれで帰れたらしい。」

「…前例があるなら疑う訳にはいかないである。」

「ちょっと失礼。」

 

ファサ

 

「きゃっ!?ちょっ!ジャンポケ殿!?」

「白と青の縞々か…」

「何で我輩のパンツを見たのであるか!?」

「…?ぱかプチ作るのに必要だろ?」

「我輩の知るぱかプチのスカートの中はスパッツである!」

「私が作る以上はそんなものはない…ネオユニヴァースのプリファイのよりは折りやすそうだな。青と白の折紙で…いや、青の折紙だけでいけるか。それよりヒシミラクル、1年過ごしていたのだろ…やり残したこととかは無いの?」

「…」

「急に言われて困惑しているだろうけど折れるまでにはまだ時間がかかるし…別れの挨拶くらいは出来るよ。」

「…で、あるか。ミラ子殿たちに会ってくる…また来るである。」

「ワタシも行ってくるよ☆」

「分かった、私は作業に戻ろう………ん?」

 

ヒシミラクルたち(・・)は保健室を後にした。

 

ーーー

 

ネオユニヴァースはネオユニヴァース()に再会していた。

 

「やっほ~~ユニ☆」

「ーービッグバン!?別宇宙の『ぼく』…否、『ワタシ』と"再会"。」

「ヒシミラクルを回収しにきたの☆いやー、こっちでは1ヶ月くらい前だけど、ここでは1年前って聞いてびっくり☆」

「…すぐに"FOBN(帰るの)"?」

「んー、何言ってるか分からないけど長くはいないかな☆ほら!前って謎のぱかプチに触ったら帰れたじゃない☆今回はそれを作れる人が一緒に来たの!」

「"UNDY(理解)"。何時でも帰れるということだね。ちなみに今のネオユニヴァースは"TACS(走りたい)"…どうする?」

「併走のお誘いかな?…ごめんね、ワタシは走る気が起きないの。ちょっと色々とあってね…」

 

ネオユニヴァースはネオユニヴァース()と再会し、模擬レースを提案されるも断った。

 

「『私』は『ワタシ』、『ワタシ』は『私』…故に分かる。今の『ワタシ』は"ABSS(良くない状態)"。ネオユニヴァースは"聞きたい"する。」

「…」

「ネオユニヴァースは『ぼく』の"宿命"を語る。…『ぼく』はシニアの2戦目で"旅人"に敗北し"エクリプス"。そして、"デブリ"で"FOBN(退場)"。だから、暗い?」

「…何言ってるか分からないけどワタシはケガしてないし、まだクラシック級だよ。まぁ、年明けるまで走らないけど…」

「となれば『ジャパンC』でタップダンスシチーに負けた後?」

「?確かに『ジャパンC』が終わった後だけど…タップダンスシチーは勝ってないよ?勝ったのはアグネスタキオンだよ。」

「ビッグバン!これはまさに"別宇宙"…??なぜ、『ワタシ』は暗い?」

「ストレートだね…ワタシがアグネスタキオンに勝ちたいってことは知っているよね?」

「アファーマティブ。」

「そのアグネスタキオン…次の有マ記念がラストランなんだ…」

「"UNDY"。ネオユニヴァースはトゥインクルで出走してないレース。つまり…『ワタシ』も走らないってこと?」

「…うん。トレーナーに止められた。今期はかなり走ったからトレーナーとしては正しい判断だと分かっているけど…最後のチャンスなんだ。本当は出たいのに…そのことが…トレーナーに伝えれなくて……」

「…」

 

ネオユニヴァース()はネオユニヴァースの肩に手を乗せた。

 

「ユニ?」

「ユーニヴァース☆」

「それワタシの…」

「今回のネオ、まだこれをしてない。ユーニヴァース☆」

「いや、ユニの前でしてないだけで…」

「ユーニヴァース☆」

「…」

「ユーニヴァース☆」

「やめて。」

「やめない。ユーニヴァース☆」

「…」

「…一緒にやるべき。これは素晴らしい…ユーニヴァース☆」

「…一回だけだよ。」

「アファーマティブ。せーの…」

 

「「ユーニヴァース☆」」

 

2人の声が周りに響いた。

 

「一緒に走ろう…それで『ワタシ』は"FUNV(完全復活)"だよ。」

 

ーーー

 

同時刻、ヒシミラクルもヒシミラクル()と会話をしていた。

 

「という訳である。ミラ子殿、世話に…いや、世話をしていたのは我輩だったような…」

「もう!…でも事実だから強く言えないな。それならわたしの焼いたお好み焼きをもっと食べて欲しかったな。」

「また会えるであるよ。全部盛りはその時までにとっておくである。」

「…帰ったらまた、トゥインクルに復帰するの?」

「どんな扱いになるか想像は出来ないけど…そのつもりである。」

「じゃあ、最後にわたしが…あなたの相手になってあげる。これが今のわたしに出来るさよならだから…復帰レースの力にして!」

「ミラ子殿…承知したである!」

 

2人は練習場へと向かった。



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第104話 銀河と密林と奇跡と… 土

どうも温泉旅行を狙ってラモーヌを14回育成したのですが…まだ当たらない作者です。『切れ者』イベントがラーメンだったので某ドーベル大好き絵師さんのラーメン学割ラモーヌを思い出しクスッとなりました。

んー、今日の重賞である富士Sは『ジャスティンスカイ』と『キラーアビリティ』を応援しているのですが…個人的には京都9Rの北國新聞杯に出走する『バリアントバイオ』が気になります!やっぱり…あのデビュー戦を生で見たため…今も心に残っていると言いますか…重賞まで勝って欲しいな…

本編にどうぞ!


「あん?模擬レースがしたいだ?ダメに決まってんだろ。今は俺が借りてんだぞ?」

「がーん!ミラクル…どうしよう…」

 

ヒシミラクルが練習場に着くも既に先約者がおり、交渉してみたもののあっさりと断られた。

 

「ポッケ殿が借りてる以上、我輩たちは使う訳にはいかないある。ミラ子殿、その気持ちで十分である。」

「ん?ミラクルもいるのかよ…ったく、しょうがねぇ。俺とタキオンの模擬レースが終わった後なら使ってもいいぜ。」

「本当!…ってポッケちゃん、ミラクルみて露骨に態度変えてない?」

「当たり前だろ。」

「酷い!?」

「はんっ!使えるだけありがたいと思え…と言いたいが今日の俺は気分がいい。何でだと思う?」

「えーと、担当トレーナーさんがパフェを奢ってくれるとか…」

「違えよ。タキオンが模擬レースでのデータ収集をしたいと言ってきたんだよ。あぁ、待ちきれねぇ…早く来ねぇかな。っと、噂をすれば何とやら…」

 

「待たせたねポッケ君。」

「「ユーニヴァース☆」」

 

アグネスタキオンは後ろには2人のネオユニヴァースがいた。

 

「遅かったなタキオン…ん?ネオユニヴァースと………誰だソイツは?」

「ユーニヴァース☆ワタシもネオユニヴァースだよ!」

「…タキオンお前、クローン技術にも手を出したのか?」

「違うよ。そこのヒシミラクルと同じ世界のネオユニヴァースだよ☆」

「………意味が分かんねえ。」

「あぁ、もう1つ君にサプライズだよ。」

「あん?サプライズだ?」

「来てくれまえ。」

「まだ折ってる途中だってのに…」

 

アグネスタキオンの言葉と共にジャングルポケットがコースへと入ってきた。

 

「「ーーっ!?」」ガクッ

 

2人のジャングルポケットが顔を合わせたと同時に頭を押さえ苦しみだした。

 

「ビッグバン。」

「え?え?何々?どういう状況?」

「アグネスタキオン、何かジャングルポケットに飲ませたりした☆」

「私も知りたいのだが…ポッケ君。何があった?」

 

「「あぁ…思い出した()。」」

 

「ポッケ君?」

「ジャンポケさん?」

 

「「久しぶりだなジャンポケ(ポッケ)!」」

 

「は?え?んん?」

「本当にどういう状況!?」

「ほほぉ…」

 

2人のジャングルポケットが立ち上がり、互いの拳を合わせたのだ。周りが困惑する中、アグネスタキオンだけが興味深そうに観察する。

 

「デビューは終わったみたいだね…」

「ケガは治ったようだな…」

「さて私、今の実力を見せてもらおうかな!」

「全力で来い俺!全員まとめて叩きのめしてやる!」

 

2人は目をバチバチさせながらゲートへと向かった。

 

「…あれ?これってわたしたちも行かないといけないのでは?」

「ユーニヴァース☆レッツゴー!」

「…"Inti"だね。」

「模擬レースのコースはゲートの位置から…なるほど。2200mの右周りであるな。」

「ククク…これは想定外だが面白いデータが取れそうだ。」

 

ヒシミラクルたちもゲートへ向かった。

 

「って、全員が入ったらゲートを開けれないじゃないか!」

「ならタキオン、お前が開けよ。まだ全力だせねぇんだろ?」

「データ収集がメインだからそれは構わないがポッケ君、彼女と知り合いだったのかい?」

「前に俺が消えた時…アイツと出会った。それを思い出しただけだ。」

「…あぁ。あの時の…後で詳しく教えて欲しいねえ。」

「いいぜ。ただ…どこまで思い出せたかは微妙なところだがな…」

 

………

 

同じ名前のウマ娘が3組…計6人がゲートへと収まった。そして…ゲートが開く。

 

「よし!まずは様子見……って一番前わたしじゃん!?」ダッダッダッ

「おいおい、レース中に喋るとはずいぶん余裕そうじゃないか?」ダッダッダッ

「なら…ここから仕掛けるまでっ!」

 

ダンッ

 

後方脚質のウマ娘が多い中、押し出される形でヒシミラクル()が先頭になる。2番手にネオユニヴァース、3番争いにジャングルポケットとネオユニヴァース()が並び、その後ろにヒシミラクル。ジャングルポケット()が最後方といった順番になる。そして、先頭のヒシミラクル()がいきなりペースを上げる。

 

「はぁ…はぁ…」ダッダッダッ

「ユーニヴァース☆」ダッダッダッ

 

先頭のヒシミラクル()と2番のネオユニヴァースとの間に4バ身ほど差が出来たまま、最後のコーナーへと入る。

 

「ユーニヴァース☆…この辺りかな?」

 

ダンッ

 

「ー!くっ…!まだだよ!」ダッダッダッ

「…『ワタシ』…だけじゃないよ。『私』もいるよ。」ダッダッダッ

「…だな。サンキューミラ子、ペースを作ってくれて。」ダッダッダッ

「あぁ…そんな~」

「ドンマイ、である。」ダッダッダッ

「やっぱり…自分の足で走れるのは最高だよ!」ダッダッダッ

 

ネオユニヴァースを皮切りに次々とヒシミラクル()をかわして最後の直線へと入る。先頭争いにネオユニヴァース、ジャングルポケット()、ネオユニヴァース()が並び、それらを捕らえようとヒシミラクルが外へと周り、そして…最後方だったジャングルポケットが大外から一気に追い込みをかける。10秒後…全員がゴール板を超えた。



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第105話 銀河と密林と奇跡と… 日

どうも連日投稿中の作者です。…まぁ、明日で止まりますけどね。

今日は菊花賞!『ソールオリエンス』に『サトノグランツ』、『タスティエーラ』に『マイネルラウレア』…『サヴォーナ』、『リビアングラス』…はぁ。応援したい馬が多すぎる!何よりケガなく完走を祈ります。

勝ったのは『ドゥレッツァ』…それにタスティエーラ、ソールオリエンスと続きました!…お疲れでした。

本編にどうぞ!


「…よし、後は頭と胴体をくっつけたら完成だ。…何でか1人分増えたけど。」

「アハハ☆何でか分からないけどタップダンスシチーもいたね★」

「夢の中でドッペルゲンガーの私とタップダンスしてるだけと思ってたら…ここ、異世界だったんだね。」

「しかし、これで元の世界に帰れるのであるな。………。」

「どうしたのミラクル?もしかして帰りたくなくなった?」

「そんなことは……少しある。」

「ユーニヴァース☆ここでの1年、帰ったらワタシに教えて欲しいな★」

「1年?1ヶ月じゃなくて?」

「我輩がここにきて季節は一周したのであるよタップ殿。ネオ殿、いつでも来て欲しいである…お茶くらいは出すあるよ。」

「ユーニヴァース☆」

「それじゃあ…帰ろうか。」

 

模擬レースが終わり、ジャングルポケットはぱかプチの作成の続きを、ネオユニヴァースはネオユニヴァース()との会話を、ヒシミラクルは自身と関わった者全員へ別れを告げにいっていた。その時に何故かこちらのタップダンスシチーが見つかったのだ。そして他にこちらに来ているウマ娘がいないか学園全体で調査が行われた後、保健室に全員が合流し、元の世界へと戻る準備が終わる。ジャングルポケットはあと1手で完成するぱかプチの頭と胴体をネオユニヴァースとヒシミラクルとタップダンスシチーに渡した。すると、外の扉から少し音が聞こえた。

 

「…別れを見送らないという約束はどうなったのであるか…ミラ子殿。」

「あはは…ごめんね。でもさ、やっぱり…見送りたいんだよね。」

「ユーニヴァース☆…ネオユニヴァースはネオと…『ワタシ』と…最後まで共に。」

「ハッハッハッ!途中参加にはなったが、こんなBig Event…見逃す訳ないだろ!」

「まぁ、同じステージを踊った仲だしな…その行動は素直に嬉しいよ私。」

「…そういう訳だ。特別に俺たちだけここにいる…いいだろ?」

「ユーニヴァース☆…あ!まだ帰ったらダメじゃん★」

「ダメ?どうしてだ?」

「ほらっ☆学生証!返してもらってない★」

 

ネオユニヴァースが口を開く。

 

「そうでしたか~、仕方ありませんね~。今日はもう暗いし、理事長も帰っちゃったし…これはちょっとお菓子でも持ってきて明日まで待つしか…」

「ミラ子殿。こんな時間に間食は…あっ!最後なのにいつもの癖が…」

「最後だからだよ。こんな"奇跡"…もう無いだろうし…ミラクルといてわたし…わたし…うぅ…」

「泣くでない、でないと…我輩も…」

 

涙を流す2人のヒシミラクル。

 

「…ネオユニヴァース。それは既にエアグルーヴから返してもらってるよ。」

「違ぇだろ俺。…コイツもそれくらい分かってるし…お前のそんなことくらいお見通しだろ。」

「…」

「俺からはこれを言わせてくれ!またな俺!次は俺が勝つ!!」

「分かったよ私。それでも勝つのは私だけど。」

 

再び拳を合わせる2人のジャングルポケット。

 

「えーと、私。貴女からは何かある?」

「そうだな…アタシ、アンタの"ロマン"は何だ?」

「んー、"ロマン"ね…強いていえば『変身』かな。強くて何でもできるウマ娘!」

「Transform…Goodだ!だが…それだけでいいのか?」

「それだけって…かなりの"ロマン"だと思うけど…」

「あぁ!だがもっとだ!"ロマン"を超えた先も考えた方がいい!その先がアンタの答えになる!」

「『変身』を超えた先か………『超変身』?」

「ハッハッハッ!その答えは正しいかアタシには分からないさ…アンタが決めるといい!」

「頭にはいれておくよ…バイバイ私。また一緒に踊ろうね。」

「Yes!その時はアンタのチームメンバーと踊りたいね!」

 

互いの手を握るタップダンスシチー。

 

「ネオ、"FUNV(完全復帰)"出来た?」

「最後まで何言ってるか分からなかったけど…元気はもらえたよ☆だから、トレーナーに言うだけ言ってみるね★でも、そうすると…ユニとは違う未来になっちゃうかもだけど…」

「アグネスタキオンの時点で…今さらだよ。」

「それもそっか。じゃあ最後に一緒に…」

 

「「ユーニヴァース☆」」

 

手を上げて同じポーズを取る2人のネオユニヴァース。そしてそのまま、ぱかプチの頭と胴体を重ねようと…

 

「あ!悪ぃ、ちょっといいか?」

「私…今、完全に帰る流れだったでしょ?」

「悪ぃ悪ぃ。思い出したことがあるんだ…もうちょっとだけ待っててくれ!」ダッ

 

ジャングルポケット()が保健室を出て、5分程で帰ってくる。その手にはトーセンジョーダンのぱかプチがあった。

 

「ジャンポケ、これ…やるよ。」

「え!?これって…ジョーダン!?髪下ろしてて…ピンクのフリフリ…超可愛い!!特に胸と首筋と脇と…」ジュルリ

「…涎を拭け。前にお前からもらったやつ…机の上に置いてたんだが風化しちまって…その代わりをゲーセンで取ってきた。その時にダブったってのもあるけど…俺もお前にこれからのアイツを見守って欲しいから。」

「フフフ…ありがとうポッケ。私も机の上に置いておくわ。それじゃあ…今度こそ…」

「了解である…」

「これを重ねたらいいんだね…」

「ユーニヴァース…」

 

4人は頭と胴体を重ね…自身のぱかプチを完成された。すると、4人の身体全体が薄くなり始めた。

 

「良かった☆本当に帰れるみたいだよ★」

「…そっか…じゃあ本当にさようならだね。ポッケ、もしまたこっちに来たウマ娘がいたら守ってあげてね。」

「はんっ!任せろよ!」

「私はまだ夢を見てる気分だよ…」

「ハハッ!目が覚めてもアタシらと踊った時間忘れるなよ!」

「…ネオ、『ワタシ』の未来はどうなるか"UNKN(不明)"。でも…"プライオリティ"はちゃんと伝えてね。」

「うん☆最後まで何言ってるか分からなかったけど…ありがとうユニ☆また来ることがあれば有マに行けたか教えるね★」

「ミラ子殿…」

「これはね、わたしのトレーナーさんの受け売りだけど…これからミラクルがすることは"奇跡"を否定するみんなを驚かせることだよ。だから…まずはもう1回G1レースを勝ってよ!そしたら"奇跡"じゃなくて現実だってなるからさ!」

「で、あるか。ならば、我輩はいつも通りに過ごすとしよう…そなたとの1年、楽しかったである。さらばである!」

 

そして、4人の姿がその場から消えた。



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第106話 銀河と密林と奇跡と… 月

…今回で連日投稿終わりです。次の投稿は天皇賞(秋)の予定…どうぞ!


「『ネオォ!ネオォォ!!』」

「『ウォーエン、落ち着きなさい!』…フライト、スタンガンは?」

「数10回は当てましたが全く効いて無いんです!だから、こうやって首を絞めているのですが…そのまま動いてるんですよ!!いつもならもう意識持っていけてるのに…」

「ウォーエンはエベレストを無酸素で登れるくらいの肺活量があるからそれは無駄よ…」

「じゃあ、何でいつもこれで倒れるのですか!?」

「あなたが栗毛だからよ。栗毛のウマ娘と同じ空気を吸おうとしてるから酸欠で気絶してるのだろうけど…今回はそれが関係ない!というかそれ以外で暴走してるっていうことが異常事態なのよ!」

「私とバトラーだけじゃなくてフライトがいてもダメって…お嬢はいないし…どうすれば…」

「バトラーさん、ブリザードさん…は今はダメだった。ソウジさん!ソウジさんに『シュンミンアカツキ』の『合成因子』を持ってくるように伝えてください!…その間はゴアさん、ビコーちゃん、私の3人で何とか取り抑えてます!バンブーちゃんは太いロープ持ってきて!」

「分かった!出来るだけ急ぐよ!」

「了解ッス!」

「ビコーちゃんには…これ!」

「尻尾で渡すって器用だな…ん?何だこれ?」

「フライトォォ!?あんた…何てものを…」

「大丈夫です。ピルちゃんとちょっと遊んでたくらいで…ほぼ未使用ですから。」

「使ってんじゃねぇか!」

「フェンシングっぽい小競り合いしただけで正しくは使ってませんから!ちなみにマヤノちゃんからの没収品ですっ!!大人とは関係無いと説得するのにどれだけ時間がかかったか…」

「だから何だこれ?」

「XXXXよ。」

「???アナ…」

「名前を出すな!こんなのでどうしようっての!?」

「とりあえず、それをウォーエンちゃんのお尻にぶっ刺して!どんなウマ娘でも絶対に鍛えれない部位だから!」

「そんなことしたら痔になっちゃうぞ!」

「そういう問題じゃないだろっ!」

「このままウォーエンちゃんまで行方不明になったら本当に収拾がつかなくなるから。最悪首の力が抜けて少しでもそっちにいけば……!?」

「『ネオォォォ!!!』」

「何でまだ叫べるの!?」

 

元の世界では…再びネオユニヴァースの行方不明を聞き、ウォーエンブレムが暴走した。それをイージーゴアとアグネスフライトとビコーペガサスが力ずくで抑えようとする。しかし、ウォーエンブレムが止まる様子はなく原因となった大樹へと歩みを進める。そんな中、聞き覚えのある声が突然聞こえてきた。

 

「ユーニヴァース☆」

 

全員が声のした方へと向くとネオユニヴァースが、ジャングルポケットが、ヒシミラクルが、タップダンスシチーが、…行方不明となった4人のウマ娘の姿がそこにあった。

 

「『ネ、ネオ……?』」

「ただいまウォーエン☆…また、栗毛の娘を誘拐しているの?」ダッ

「『ーー!?』」

 

ウォーエンブレムの動きが止まる。ネオユニヴァースはそんな状態のウォーエンブレムへと近づき…

 

ボコッ

 

持っていた金庫でウォーエンブレムの頭を殴りそのまま地面へと叩きつけた。しかし、ウォーエンブレムはすぐに起き上がりネオユニヴァースにおかえり、とだけ告げるとその場で倒れ、そのまま眠り始める。そして、そこにいた全員がヒシミラクルを囲み喜んだ。こうして、ヒシミラクルは1ヶ月ぶりにトレセン学園へと戻ってきたのだ。

 

ーーー

 

後日、4人は理事長室へと呼び出されていた。

 

「帰還!ネオユニヴァース、ジャングルポケット、タップダンスシチー、よくやってくれた!君たちのお陰でヒシミラクルが帰って来ることが出来た。」

「私はたまたまですけどね…」

「私に関してはミラクル同様に助けられた側…みたいです。」

「ユーニヴァース☆でもジャングルポケットだけが行ってればそれで解決だったから…ワタシは要らなかったかな。」

「否っ!ネオユニヴァース、全ては君の協力があってこそだ!…どうやら別の私に手紙は届いたようだな!金庫の中は向こうからの手紙と別の君たち…さらには向こうのアグネスタキオンのデータも入っていた!レース映像が見たければ何時でも言って欲しい。」

「ポッケのレースか…正直みてみたいね。」

「ユーニヴァース☆ワタシもワタシも!ユニのレース★ユニのレース★」

「そういえばミラ子殿は一切見せてくれなかったであるからな…我輩もみたいである!」

「…これに『超変身』のヒントが…」

「ならばこの後に各自USBを渡すとしよう!そしてヒシミラクル!」

「はい!」

「君のケガについての処遇だが…URAは完治したものと見なすそうだ。」

「本当であるか!?」

 

本来であれば後半年は治らなかった筈のケガ…それがこちらでは1ヶ月行方不明になったかと思えば急に帰ってきて、検査を受けると完全に治っていたのだ。ドーピングなどが疑われたものの…このタイミングで完治が認められたということは…

 

「タキオン殿と有マ記念で戦える…かも!」

「ヒシミラクル、自信持って☆アナタは今年のG1レースを勝ってるんだからさ!」

「しかし…ファン投票の結果を聞くまでは不安である…」

 

するとやよいは口元を緩め扇子を開く。

 

「特別だ!先ほど私に届いた情報を君たちだけに見せよう!」

 

画面には『ファン投票結果発表』とかかれていた。ジャングルポケットを除いた3人は目を輝かせ、それを見る。

 

1位 アグネスタキオン

2位 ネオユニヴァース

 

「わーい☆早速あったよ!ユーニヴァース☆」

「おめでとうである!」

「やっぱりタキオンが1位か…」

「今年は無敗だからね☆」

 

3位 シンボリクリスエス

4位 タップダンスシチー

 

「私の名前もある。」

「ジャパンCでアグネスタキオンと接戦だったからね☆」

 

5位 アドマイヤドン

6位 スティルインラブ

7位 ファインモーション

8位 ゼンノロブロイ

9位 ハルウララ

 

「おぉ!?ハルウララ?意外な名前だね…」

「元々の人気もすごかったし…今年はG1勝ったから特にね☆まぁ、条件が違いすぎるし流石に来ないとは思うよ★」

「…」

「ミラクル?」

「…出走するには10位以内…であるな…」

 

ヒシミラクルはマウスを動かす。すると最後に…

 

10位 ヒシミラクル

 

「あ…あったである!我輩の名前!」

「おめでとうミラクル☆きっと貴方のトレーナーが街で探していた時に皆が覚えてくれたんじゃない?」

「条件は満たしたね。そういえばネオは出ることになったの?」

「ユーニヴァース☆…トレーナーには止められたよ。でも…どうしても、って言ったら何とか納得してくれたの!だから…勝つ★」

「ならば、タキオン殿や我輩を倒す必要があるが…それを知って言っているのであろう。…この1年、別世界で鍛えた我輩ので成果を見せるである!」

「私も本番までにもっと鍛えないとな!」

「はいはい!ちゃんとレースを見るから…3人とも頑張ってね。」

「「「うん☆/うむ!/もちろん!」」」

「ではっ!君たちの活躍を祈る…解散!…あ、今回のことは公式から発表されるまでは他言しないでくれよ?」

「分かってますよ☆」

「理事長殿…感謝である。」

「では、失礼します。」

 

ネオユニヴァース、タップダンスシチー、ヒシミラクル………次走、有マ記念。




おまけ:今作品内での戦闘力(*あくまで作者の独断と偏見によるものです。) 

SSS:ソウジ(シュンミンアカツキ状態)
S+:ウォーエンブレム(通常)、カワカミプリンセス、タイキブリザード、たづな、ヒシアケボノ、フォアゴー
S:アグネスフライト(通常)、ウォーエンブレム(栗毛補正)、シンボリクリスエス、デュランダル(竹刀+風林火山合成剣絆)、ピルサドスキー、メダグリアドーロ
A+:アグネスフライト(スタンガン)、イージーゴア、グラスワンダー(薙刀)、メジロライアン、ヤエノムテキ
A:アグネスフライト(スタンガン+暴走)、エルコンドルパサー、カレンチャン、サンデーサイレンス(通常)、シンボリルドルフ、ペイザバトラー
A-:キタサンブラック、ゴールドシップ、シリウスシンボリ、タイキシャトル、ダイワメジャー(シスコン補正)、ファルブラヴ
B+:ソウジ(デビルジュピター状態)、タニノギムレット、デュランダル(竹刀)、ビコーペガサス
B:ウマ娘全般、ソウジ(ウマ人状態)
B-:サンデーサイレンス(リハビリ中)
C:人間全般


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第107話 未知への挑戦と知りすぎる罠

どうも、新作を書きつつある作者です…まずはこれを最後まで書かないといけないのにな…。

昨日のぱかライブでまさかのテイオーの新衣装にビックリしましたね。そしてキングヘイローとハルウララのSSR…勇まし可愛かったですね…最高!後は原案イラストが追加されてましたね…ダイイチルビーが小さいのとメジロラモーヌの色気がマジでやべぇ…最高!

今日は天皇賞(秋)ですね。今年は天覧競馬とのことです…デムーロさんが騎乗予定だった『スターズオンアース』の回避が残念に思います。私は『イクイノックス』と『ガイアフォース』を応援します!もう…普通に勝っちゃって!!

勝ったのはイクイノックス…トーセンジョーダンを超えやがった…マジでやべぇ…

本編にどうぞ!


「ハッハッハッ!我ながらとんでもないものを作ってしまったねえ!!」

「アハハハ!その通りだなあ!てか、俺らってそもそも何作ろうとしてたっけえ?」

「動きながら何でも透けて撮れる『カメラ』だとも!これがあれば対象の筋肉の動きを観察出来るだけじゃなく服の下の傷、骨折、内臓の損傷に血管の詰まりも1発で分かるようになっただろう!!それ以外にも木々の間にある鳥の巣から泥沼に落ちたコンタクトレンズ、さらには段ボールに隠れた伝説の軍人の発見までかなり応用が利く代物だ!しかし…X線を使うから危ないってことで他の手段を探すことにしたねえ!!」

「俺は資格持ってるのになあ!完成すればタキオンのおっぱいを見まくる予定だったのになあ!」

「まず学園から許可が下りる訳がないねえ!それに君になら今すぐにでも脱いで見せてあげるとも!それはともかくコレは…」

「温度センサーとか曇り止めワイパーとか色々な機能が付けた『メガネ』だなあ!どれどれ…お!?タキオンの頭から100って数値が見えるなあ!」

「それは私から君に対する評価だよ!初対面で10、知り合いで20、友人で30辺り…恋人で60、熟年夫婦で80くらいだからかなり高いねえ!100は最大値だねえ!!まぁ、学園内であれば20前後が普通になるだろうがねっ!」

「タキオンもかけてみろよお!」

「いいとも!ソウジも100か…私たちは最高のコンビのようだ!せっかくだソウジ、君に好意を寄せているお姉ちゃんの数値を見てくるといい!」

「いいけど…タキオンはその間どうするんだあ!?」

「仮眠をするとも!起きたら、そのメガネの機能について整理しよう!」

「オーケーだ!!お休みタキオンん!!」

「お休みソウ…Zzz…」

「…あ!今は授業中だから放課後にならないと会えねえじゃん…よっしゃ!それまで仕事だ仕事お!うおおぉぉ!!」カタカタカタ

 

ーーー

 

とある週明けの放課後…、ディープインパクトとダイワスカーレットはトレーニングの為、練習場へと向かっていた。

 

「昨日のタイド先輩のデビュー戦みたわ。突き放しにきた前の娘を捉えて、さらに3バ身差をつけての1着…凄かったわね!」

「…クタ姉なら当然…でも、嬉しい。」

「アタシもメジャー姉が年末にデビュー予定よ。だから負けていられない……ん?」

 

「おぉぉい!」

 

「…ソウジトレーナー?」

「今日は別件があるためサンデーサイレンスさんがアタシたちの指導でしたよね?ここにいるってことは…何か変更があるのですか?」

「変更はないよお!俺は今日はタキオンの実験だからなあ!フライト見てない?」

「…知らない。」

「アタシも見てないですね。あの…何かキモいんですけど…大丈夫ですか?」

「大丈夫!3日くらい寝てないだけえ!そうだあ!ちょっとだけ待ってくれる!?」

「「?」」

 

ソウジはメガネをかけて何かを書き始めた。

 

「ダイワスカーレットは56…ディープインパクトは35か…オッケー!ありがとう!ふぅー!」

 

そのままソウジはスキップをしながら去っていった。

 

「??…何だったの?…スカーレット?」

「…」ブルブルブル

「…どうしたの?」

「何で…アタシのサイズを知ってるの…!もしかして今日はバナナ2本も食べてる所見られて…」

「…絶対違うと思う。…それにそれだと私…赤ちゃんよりも細い。」

「うぅ…ダイエットしないと…」

「…必要ないよ。…練習行こ。」

 

………

 

練習場近く…サンデーサイレンスがマンハッタンカフェへと取り憑いた。

 

『んじゃ、2時間くらい身体を借りるぞ。』

「(…分かりました。そういえば……もうすぐ退院でしたね。)」

『いやー、もう何時でもいけるってのにあの爺さんがオーケー出さないんだわ。』

「(…チヒロさんが言うなら…しかたありません。…誰かが近づいてます。)」

『ん?…あ、本当だ!ソウジじゃねぇか!どうした?トレーニングメニューの変更か?』

「うん?んん…あ!サンデーサイレンスかあ!フラ…『ひぃ!』イト見てないか?…ん?サンデーサイレンスう?」

「…フライトさんの名前を聞いて……逃げ出しました。」

「じゃあ、マンハッタンカフェでいいやあ。フライトみてないかあ?」

「…すみません。今日は見ていないです…」

「そっかあ。サンキュー…ついでにお前の評価見ていくなあ?」

「??」

 

ソウジはメガネをかけてマンハッタンカフェをみる。

 

「83…オーケー!じゃあなあ?また美味しいコーヒーでも淹れてくれい!」

 

そしてまたメモを取り、その場を去った。

 

「はい、また……!?」

『行ったな?行ったよな?』

「(…急に身体に……入って来ないでください。)」

『で、83って何の数値だ?』

「(…さぁ?…評価とか言っていましたので……私の胸の大きさかと…)」

『それはない…まぁ、何でもいいや。よしっ!初めて私だけの指導になるけど…頑張るか!』

 

その後、ダイワスカーレットとディープインパントに細かい突っ込みを入れられながらも必死に指導するマンハッタンカフェ(サンデーサイレンス)の姿があった。

 

ーーー

 

中庭にて…ついにソウジはアグネスフライトを見つけた。

 

「フライトさん、試験勉強の方はどうですか?」

「ん…筆記試験は余裕かな~。後は実技試験(指導)と適性試験(面接)。どこまでいけるかが不安だけど…噂ではウマ娘ってだけで面接の方はかなり有利になるらしいね。」

「そうなのですか。では、全力で挑んでください…それはそうとフライトさん、クリスマスの予定はありますか?」

「おっ?パーティのお誘いかな?ごめんね…有マ記念もあって今年はもうタキオンちゃんたちと予定組んじゃってるの。」

「そうでしたか…残念です…」

「ちなみに大晦日は夕方までならいけるよ?どうかな?」

「本当ですか!では、その日に街へ遊びにいきましょう!」

「オッケー!じゃあランチは私、デザートはグラスちゃんに任せようかな~♪」

「はい~♪楽しみにしてください!」

「ああ!いたいたあ!」

 

ソウジが談笑していたアグネスフライトとグラスワンダーの元へと移動する。

 

「ソウジさん!?」

「ソウジトレーナー?どうしましたか?」

「お話ししてる所にごめんねえ。ちょっと、タキオンとの深夜テンションの開発で出来たものがあって…それの実験中なのお!5秒で終わるからじっとしててねえ!」

「は、はい!」

「…分かりました。」

 

ソウジはメガネをかけてアグネスフライトとグラスワンダーをみる。

 

「グラスワンダーは25で…フライトは100かあ!オッケー!協力ありがZZzzz…」ガクッ

「ソウジさん!?」ダキッ

 

数値をメモしたと同時にソウジはその場で倒れてしまった。慌ててアグネスフライトが支える。

 

「…寝てる?」

「お疲れだったようですね。…フライトさん、彼を研究室に連れていってあげてください。」

「いや…別にここに放って置いていても…」

「良くないのでしょ?私のことはいいですから。」

「グラスちゃん…ごめん!すぐに戻ってくるから!」ヒョイ

 

アグネスフライトはソウジを背負い、研究室へと歩いていってた。

 

 

「はい、お待ちしていますね………やっぱり敵わないですね。」

 

ーーー

 

ソウジを背負ったままアグネスフライトはアグネスタキオンの元へと着く。

 

「タキオンちゃん!入るわよ!」

「……うーん?…お姉ちゃん?もう少し寝かして欲しい…」

「ソウジさんがぶっ倒れたのよ!」

「何!?…って、ただ寝ているだけじゃないか。」

「Zzz…」

「このメガネは!……何だっけ?」

 

アグネスタキオンの発言にアグネスフライトがずっこける。

 

「何か実験中とか言ってたわよ。グラスちゃんが25で私が100とか…胸の大きさかな?」

「それだとグラス君の肋骨と内臓がとんでもないことになっているのだが。…あ、あー!思い出したねえ!これは走りながらもブレがなく録画しつつも、相手の目線や体温変化の感知などからの評価測定、さらにはそれらの記録を後からでも確認出来る多機能メガネさ!いや、度数は入っていないから…正確にはメガネ型レコーダーだな。せっかくだ、お姉ちゃんが名前を決めてくれるかい?」

「名前ね…何かその評価ってのが相手への好感度っぽいし、ベタだけど『好感度メガネ』でいいんじゃない。それより私はソウジさんをベッドに寝かせてグラスちゃんのところに戻るわね。」

「了解、私は実験データの整理でもしていこう。さてさて、早速お姉ちゃんのデータを…ん?ソウジ…さてはお姉ちゃん以外のデータも取ってきたな。」

 

好感度メガネとパソコンをコードで繋ぎ、取られたデータを見ていたアグネスタキオンだったが全て見ていく内に怪訝な顔へと変わる。

 

「ソウジ…何故カフェの数値がこんなにも高いんだ?」

 

アグネスタキオンは眠ったソウジに問いかけるものの…当然、返事はなかった。



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第108話 とある星の話をしよう5

どうも、先週のJBCとブリーダーズカップに大興奮した作者です。特にBCターフとBCクラシックは凄い見ごたえでした。お疲れ様、日本からの挑戦者たち。後はJBCレディスクラシックを勝った『アイコンテーラー』がチャンピオンCにも出走するとのこと…勝って欲しい!

今日はエリザベス女王杯ですね…個人的には荒れると予想。私が応援するのは『アートハウス』、『シンリョクカ』、『ルージュエヴァイユ』、『ローゼライト』の4頭…頑張って!

勝ったのは『ブレイディヴェール』…『ルージュエヴァイユ』が2着…お疲れ様でした。

では、本編にどうぞ!


『元・未勝利の星』ハルウララ…彼女は今日、中山レース場へと来ていた。しかし、そこは歓声に困惑が混じった雰囲気となっていた。それもその筈…彼女が今回走るのは芝コースだからである。

 

『さぁ、今週より始まりました中山のメイン11R…今日は『ターコイズステークス』が行われます。

芝1800mのオープンクラスのレースです。

今回は何と、先月『JBCスプリント』を勝利しましたハルウララが参戦しております!

彼女は先日の人気投票で9位と『有マ記念』への出走条件を満たしており、既に登録もしています。

つまり…今回のレースで芝での彼女の実力がどれほどなのかに注目です。

気になるその人気は4番人気…ダートのウマ娘ですからね。

さぁ、最後にそのハルウララがゲートに収まりまして…スタートしました!

ハルウララ、いいスタートです!』

 

結果を言おう…最初から先頭に立ち、2着のチューニーと5バ身もの差をつけての1着。レース場は歓声一色へと変わり、ウイニングランをしながらハルウララは観客全員に笑顔で大きく手を振った。

 

………

 

ウイニングライブが終わり、ハルウララはトレーナーのコハルと共に控え室で帰る準備をしていた。

 

「勝ったよとれーなー♪これならタキオンちゃんと走っても問題ないよね?」

「え、えぇ…」

「どうしたの?とれーなーの言ったタイムでゴールしたでしょ?」

「………」

「…もしかして、今日キングちゃんに起こしてもらったことを怒ってる?」

「違うわ。…ウララ、1つ聞いてもいい?」

「何?何?」

「ウララはさ、アグネスタキオンと走れたら満足?」

「ん?んー…」

 

ハルウララは左目を覆った赤い布を取りつつ、考える。

 

「…負けたくない、かな?」

「本当?今の彼女は世界最強のウマ娘よ?それに有マ記念を走るってことは今いる選ばれた最強クラスのウマ娘たちと走るってこと。言い方は悪いけど…負けるのが普通よ。」

「…でもウララは負けたくない。せっかくとれーなーと一緒にここまで来たんだよ。コクオーちゃんだろうとローズちゃんだろうと……タキオンちゃんだろうと…負けたくない!」

「…」ダキッ

「トレーナー?」

「合格…ウララ、次があなたのラストランよ。」

「ラスト…え?えぇぇ!?」

 

ハルウララの驚く声が部屋に響いた。

 

ーーー

 

ターコイズSがあった数日後…中庭のベンチでライスシャワーと共に昼食を取っていたハルウララだったが心ここに有らずと言わんばかりにロボットの如くパンを口へと運んでいた。

 

「ウララちゃん、大丈夫?」

「うん、にんじんパン美味しいよ。」パクパク

「それ…焼きそばパンだよ?」

「……本当だ!間違えちゃった…」

「悩みあるならライスが聞くよ?」

「…実はね、わたし、有マ記念に走るんだ…」

「うん、ライス知ってるよ。そのことはライスだけじゃなくて学園みんなが知ってることだと思うけど?」

「そうなの!?…それで、トレーナーにラストランだ、って言われて…」

「「ラストラン!?」」

「…ってローズちゃん!?」

「…あ。」

 

後ろのベンチに座っていたスターリングローズだったがハルウララの衝撃的な発言に反応したことでバレてしまい、そのままハルウララの隣へと座る。

 

「…わたし、とれーなーに嫌われたのかな?」

「何っ!?ウララちゃんを嫌う生物なんてこの世のどこにも…」

「えーと、ウララちゃんのお姉…んん!トレーナーさんは契約を解除するとか言ってたの?」

「言ってないよ。何かドリームがどうとかちゅーおーがどうとか言ってたような…」

「なるほど。ウララちゃん、君はドリームトロフィーにいけると判断させたみたいだよ。」

「どりーむとろふぃー?」

「…ライス先輩。解説お願いできますか?」

「ライスもそこまで上手く説明は出来ないけど…簡単にいえばトゥインクルシリーズで活躍したウマ娘が進めれる大会、かな。トゥインクルにもある天皇賞とか宝塚記念とかシニア級のレースに加えて夏と冬には大きなレースがあるの。ライスは今年、夏の長距離部門に出てたのだけど…ブライトさんに負けちゃって…」

「あれ?マックイーンちゃんは?」

「出てたよ。出てたけど…最後にブライトさんに差されて負けたの。ライスも差されちゃって3着。」

「…初耳だ!でも3着って凄いね!」

「…ありがとう。トゥインクルの方には結果が伝ってないみたいだね…でも、トゥインクルでの活躍で選ばれるのは間違いないよ。」

「そっかー!じゃあ、ウララはこれからもとれーなーと一緒にいれるんだね!」

 

笑顔になるハルウララを見てライスシャワーの口元が緩む。スターリングローズは全身が溶けた。

 

「そうなるね。ただ…ケガには気をつけて。」

「…ライス先輩。たしかあなたは宝塚記念で…」

「…うん。チヒロさんが手術してくれて…お兄さまと何年もリハビリして…最近になってやっと走れるようになったから…こんな思いして欲しくないの。いいウララちゃん、もう一度言うとけどケガには気をつけて。」

「ありがとう、だけどだいじょーぶ!わたし、とってもがんじょーだから!」

 

………

 

放課後になり、トレーニングの時間となる。コハルはハルウララとトレーナー室へと迎えた。

 

「ウララ来たわね。じゃあ、今日は作戦を………何それ?」

「ローズちゃんが貸してくれたの!」

 

ハルウララの手には大量のマスコットがあった。よく見てみると有マ記念への出走予定のウマ娘たち…その中には当然ハルウララのマスコットもあった。

 

「ローズちゃんね、これでいつも作戦を立ててるんだって!とれーなー、タブレット借りるよ!」

「いいけど…」

「このゆーえすびーを入れて…ほら、動いたよ!」

「えぇ!?何これ?」

 

ハルウララが床においたマスコットたちが動き出す。

 

「えーと、あとは中山用のシートを敷いて…よし!みんな!ここに並んでね!」

『…!』すたっ

「これは…ゲートがあるところ?」

「うん♪よし、スタート!」ポチッ

 

ハルウララがタブレットをタップするとマスコットたちがシートのコースを走りだした。これをコハルは黙ったまま見つめる。そして…

 

「…あ!ユニヴァースちゃんが1着だ!」

「凄い。」

 

マスコットのネオユニヴァースがゴール板を超えた。

 

「わたしは…最後だね…」ずーん

「ウララ…その娘、呼んできてもらってもいい?詳しく聞きたいの。」

「分かった!」

 

数分後、コハルはスターリングローズの話を聞き、ハルウララの有マ記念への準備を進めた。



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第109話 貴公子と魔女と暴露ハザード2(前編)

どうも…プラチナ4まで行けなかった作者です…後80ptだったのに。ウマ娘3期は2クールくらいして欲しかったと思いません?ヴィブロスの秋華賞はいいとしても…キタサンブラックのジャパンCとサトノクラウンの香港ヴァースをあっさり流すって…いや、スケジュール的にこうしないと行けないのでしょうけど…

今日はマイルCS…私が応援するのは『ダノンザキッド』です!そろそろ勝ちが見たい!

勝ったのは『ナミュール』!?完全に意識していなかった…ダノンザキッドは5着。…お疲れ様でした。


スイープトウショウはG1レースである『阪神JF』に出走していた。

 

『先頭はヤマニンアルシオン!

ロイヤルセランガー伸びてくる!

しかし、外からヤマニンシュクル!

ヤマニンシュクルがまとめてかわしてゴールイン!!』

 

最後に追い込みをかけるも…結果は5着であった。そして、阪神JFから数日後…

 

「デュランダル、作戦は頭に入った?」

「…」コクリ

「念のためもう一度、タキオンが実験するまで後10分…アタシはその時に起きる混乱に乗じて鍵を使い例の物を回収…デュランダルは使い魔をここに連れてくる。オーケー?」

「…」コクコクッ

「頼んだわよ。」

 

どうやらスイープトウショウとデュランダルは何かを企んでいるようだ。

 

ーーー

 

「さて…久しぶりの『合成因子』の実験だよモルモット君。」

「はいはい…確かお前とメジロラモーヌの組み合わせだっけ?あれは何かこう…凄く凄い感じだったな…身体が凄いというか…」

「あぁ…実に良いデータが取れそうだとも!では、口を開けたまえ。」

「あーん…」

 

ゴクン

 

「…ん!?この感じ…逃げろタキオン!」

「へ…?ぎやぁぁぁ!!!」

 

ソウジが『ウマ人』になった瞬間に部屋が白いフワフワした何かで覆われた。

 

「…うわぁ。タキオン、使う『合成因子』間違えたな?」

「そんな筈は…しかし、これは『ピンクバナナ』だねえ。」

「えーと、誰と誰だっけ?」

「ビワハヤヒデ君とスカーレット君のだよ…去年もこうなったのを覚えてないのかい?」

「覚えているよ。何かアドマイヤベガに気に入られたりしたな…じゃない!どうすんだよこれ…部屋の中、毛で真っ白じゃないか…」

「仕方ない…『因子』の回収を…あれ?腕輪が無いぞ?」

「はぁ!?」

 

『ピンクバナナ』となったソウジだったが…その特徴である超ロングヘアーにより身動きが取れなくなってしまった。すぐに回収しようとするも伸びるに伸びた髪の毛により腕輪は何処へいったか分からなくなる。

 

「あら?これは…鍵じゃないわね。」ポイッ

 

「おいおい!この状況で腕輪を探せというのか?」

「いや、下手に君に動かれるのはそれはそれで不味い…カフェの所まで侵食してることに関しては手遅れだが。はぁ、今回は何を燃やされるのやら…」

「とにかく俺は何もせずにじっと立ってろ、ってか?」

「あぁ、私が応援を呼んでこよう。幸い、出口までの場所は分かるし…何とかかき分ければ動けるさ。それまで待っていてくれたまえ。」

「…せめてハサミだけくれないか?切れるだけ切ってみる。」

「ダメだ、回収に不具合が起きるかもしれないからそのままでいてくれ。…んー、念のため動かないように椅子に固定しておこう。」ガチャ

「いや、手までは絶対に必要ないよね?外してくれない?」

「それじゃ。」

「ちょっ…」

 

アグネスタキオンは部屋を後にした。

 

ーーー

 

「ふぅ~、ミッション完了ね。何とか手に入ったわ…アタシの方が早かったようね。」

 

コンコンッ

 

「デュランダル?入っていいわよ。」

「…」ガチャ

「…ん?スイープもいたのか。わざわざこんなところまで呼び出して何の用だ?」

 

部屋の扉が開くとデュランダルとハジメが部屋へと入ってくる。

 

「使い魔、単刀直入に聞くわ。アンタってアタシたち以外にも担当を増やすって聞いたけど…本当かしら?」

「…」コクコクッ

「本当だ。まだ正式には決まってはいないがそういう話はある。」

「引き受けるの?」

「あぁ、仕事だからな。」

「…」プルプル

 

スイープトウショウの身体が震えだす。

 

「スイープ?」

「それって…アタシがこの前のG1勝てなかったから?」

「ん?」

「デュランダルは勝てたのに…アタシが勝てなかったから…アンタは別の子の担当を…」

「ー!?」

「スイープ、落ち着け…」

「アタシたちだけじゃ満足できない?それとも…アタシを担当するのが嫌になった?」

「違うからな。そもそもスイープはまだジュニア級…」

「うるさいうるさいうるさーい!これでアンタの本性を暴いてやるんだから!!」

「スイープ、それは一体…」

 

パカッ

 

スイープトウショウは手にある缶の蓋を開けるとガスが溢れ…それは部屋を…学園中を一瞬で覆った。

 

ーーー

 

「はい、分かりました。協力しますね。」

「助かるよフラワー君…後はスイープ君とビコー君辺りに声を……ん?随分と騒がしいようだが…これはまさか!?フラワー君!」

「え?何でしょ…んぐ!」

「すまないが、しばらく我慢したまえ。」

 

異変に気付いたアグネスタキオンが慌ててガスマスクを被り、ニシノフラワーの口をハンカチで抑える。そして、数十秒後に解放した。

 

「……はぁ…はぁ…タキオンさん、急にどうしたのですか?」

「周りを見たまえ。」

 

「ありえんな~…」

「リストラして…嬉しい…」

「フライトさん…フライトさん…たんぽぽ…フライトさん…フフフフライトさん…」

 

「………バイオテロだ。」

「テロ!?」

「いや、外部からの襲撃とはではないから安心してくれたまえ。これは前にサンデーサイレンス君により広がってしまった暴露ガスだね…何故またこれが…?走りに影響が出るようなものでは無いのだが…中和剤も研究室の中…フラワー君、急いで研究室へと行きデジタル君と共に腕輪を探してくれ!そして、見つけたらそれをソウジに付けてくれ。」

「分かりました。タキオンさんはどうするのですか?」

「お姉ちゃんを探してくる。頼んだよ!」

 

アグネスタキオンは走り出した。

 

ーーー

 

スイープトウショウは開けた缶を部屋の隅へと放り投げハジメへと顔を向ける。

 

…どう(使い魔)これで本当に思ってること(他の子やデュランダルじゃなくて)しか喋れなくなった(アタシだけを見てよ)…!?」

「スイープ!?」

「…!」ピキッ

「何でアタシまでガスの影響が出てるのよ!?…アタシは使い魔の本音が聞きたかっただけなのに…」

「ーー!!?」

「スイープ?大丈夫か?」

「ア、アタシのことはいいの!アンタの本音は?今ここは嘘が付けない魔法がかかっているわ!」

「はぁ、そういうことか。デュランダル、スイープ…心配かけて悪かった。」

 

ハジメは優しくスイープトウショウとデュランダルの頭を撫でる。

 

「そんな…使い魔に…効いてないなんて…」

「ー!」

「…俺はこれからもお前たちが強くなれるよう導いていくつもりだ。担当が何人増えようとも俺はお前たちをレースで活躍させてやる…だから、心配しないでくれ。」

「違うのよ…そういうのが聞きたいのじゃないのよ…」

「分かっている。だが、これがトレーナーとしての答えだ。」

「…」ブンッ

 

バキッ

 

「ーー痛っ!…デュランダルも納得出来ないか。いいよ、好きなだけ叩き込め。」

「…っ!?」バッ

「やめてデュランダル!」

「…!」ビュン

 

バシンッ

 

ハジメの言葉に納得の出来なかったデュランダルが涙目でハジメの右胴へ竹刀を振るう。それを笑顔で無抵抗に受け止めたハジメと追撃を止めに入ったスイープトウショウに動揺し、デュランダルは竹刀を床へと投げつけた。

 

「使い魔!大丈夫!?」

「…これくらい…問題無いよ…」

「…あ!あぁ…!」ガクガクガクッ

「…デュランダルこそ…大丈夫…?」

「ご、ご………!」ガクガクガクッ

「…無理に…喋らなくていいから…」

「…」ガクガクガクッ

「ありがとうデュランダル…アタシのために…ごめんね。」ダキッ

「ー!ヒュ……ヒュ……」ポロポロ

「…深呼吸…出きるか…?」

「…すぅ。はぁ…」コクリ

「…うん…大丈夫だな…」

「アタシが…全部アタシのせいで…」

「スイープ、これ…」

 

ハジメが財布からあるものを取り出した。

 

「これって…学園近くにある人気のビュッフェの…」

「…ケーキ…食べ放題券だ。…2人までなら…使えるから…デュランダルと…行っておいで。…今日は好きに…食べてきていいから…」

「ー!」

「…今日のトレーニングはどうするつもりよ?」

「…今年一杯…練習は無しにするから…好きに過ごせ。だけど…クリスマスの次の日は…予定を空けておいて…欲しいかな。」

「…何で。」

「…部屋の掃除。…来てくれたら…ご飯くらいはご馳走する…」

「…約束よ。行くわよデュランダル。」

「…」コクリ

 

スイープトウショウは泣いたデュランダルと共に部屋を出た。

 

「…痛たた。…骨までは…いってないな…この程度で…残念だ。しかし、デュラたんの愛がじんわりと伝わってきたから結果はオーライ。後はスイープたんに首輪を付けられて柔らかい足で踏み踏みされながら鞭で叩かれ……んんっ!?」

 

ハジメが溢した言葉(性癖)について…既に部屋を後にした彼女たちが知ることはなかった。




▼合成因子第十一号『ピンクバナナ』が更新されました。

ーーー

後編は明日投稿します。


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第110話 貴公子と魔女と暴露ハザード2(後編)

どうも、スターブロッサム最新話で『ナムラコクオー』の名前が出てこなくガックリしてる作者です。多分、『マツカゼリュウオー』っていう『ナリタブライアン』の傲慢発言に食べてたポッキー折ったウマ娘がそうです。…あれ?そういえば『サムソンビッグ』だけ実名?ダービーでは最下位だったけど…

追記:『サムソンビッグ』は新しいウマ娘として公式に追加されてました…投稿前に気付きたかったです。

そういえば今日の昼からはアプリで『タップダンスシチー』の育成実装に『サウンズオブアース』のSSRに『ヴィルシーナ』のSR………『ヴィルシーナ』!?もう来ちゃうの!?執筆中のをキャラ修正するかも…

ってな感じで本編にどうぞ!


『緊急放送!学園内にいる生徒諸君、よく聞いて欲しい!何やらまた変なことが起きているようだ!解決するまであまり動かないように!以上!』

 

………

 

「…どうしましょう。思ってもいない言葉を(トレーナーをパクパクしたくて)口にしてしまいますわ(たまりませんわ)。早くここから離れ…ん?あれは…」

 

ガスの影響を受けたメジロマックイーンが自身の担当トレーナーの部屋へと移動していると校舎の隅に怯えたゴールドシップを発見した。

 

「あの…ゴールドシップさん、どうされましたか?」

『俺は何も見ていない。俺は何も見ていない…』

「"俺"?………。えーと、念のために………やっぱり、貴方でしたかサンデーサイレンスさん。」

『俺は…何も…見ていない…』

 

前にアグネスタキオンからもらった"デサイレンスコープ"を覗き込むとそこには違う姿のウマ娘が写っていた。しかし、そのウマ娘…サンデーサイレンスはただ怯えていた。

 

「今回の事件も犯人は貴方なのですか?フライトさんをお呼びしましょうか?」

『フラッ!?俺、何も、知らない!!』

「やっと反応してくれましたねサンデーサイレンスさん。」

『ーーーマックちゃんか。悪いがコイツの身体、借りてるぞ。』

「それは別に構いませんが、普段はカフェさんの身体に憑いているのでしたわよね?何故、今回はゴールドシップさんに?」

『いや、今日はタキオンもプイもトレーニングが無いから…アイツに尻尾でも解いてもらうかなって、いつも通りカフェに憑いて部屋に向かっていたんだが…部屋の前に来ると部屋の中が真っ白になっていた。』

「真っ白?」

『…ドアを開けた瞬間に白い何かにカフェだけが飲みこまれ…俺だけ弾かれた。俺が入れなかったのは多分、タキオンが何かしているからだろう。…飲み込まれたカフェがどうなってるか心配だったが…怖くなって急いでその場から逃げてきた。』

「ちょっと何言ってるか分かりませんのよ。日本語喋ってもらえます?」

『全部日本語だろうが!てか、もうずっと日本にいて母国の英語すら喋れるか怪しいレベルだわ!ったく、続きを話すぞ。無我夢中に離れていたらギャルっぽいウマ娘を蹴ろうしていたコイツに取り憑いてしまって…今にいたる。』

「…ゴールドシップさんはゴールドシップさんで何をしてるのやら…」

『マックちゃん…研究室に一緒に来てくれないか?正確にはカフェの様子を見てきてくれないか?俺が直接入れれば良かったのだが…』

「…仕方ありませんわね。行きましょうか。」

 

メジロマックイーンはサンデーサイレンスと共に研究室へと向かった。

 

ーーー

 

アグネスタキオンは廊下で慌てているアグネスフライトとエアグルーヴを発見した。2人はアグネスタキオンを見つけると目の前まで迫ってきた。

 

「たわけペロペロ!たわけペロペロ!ペロペーロッ!!」

「XXXX、XXXX…XXXX。XXXX!」

「エアグルーヴ君にお姉ちゃんか。何を言いたいか分からないが…研究室で腕輪を探すのを手伝ってくれないか!まずは現状を解決する。…犯人探しはその後だ。」

「たわけペロペロ…」

「XXXX…」

「…急ぐよ!!」

 

アグネスタキオンたちが部屋の前に着くとメジロマックイーンとゴールドシップ(サンデーサイレンス)、さらには青い顔で鼻血を流し倒れたアグネスデジタルがいた。

 

「どういう状況かな?」

『カフェが白い何かに掴まれて中に飲み込まれた…俺を弾いてな。』

「…確かに君に入られないように対策をしていたがそれが今回は裏目に出たようだ。ちなみにこれはただの芦毛の髪の毛だよ…とある『合成因子』の副作用だ。」

『それが何でカフェを拐ったんだよ…』

「カフェが自ら入ったもので無いのなら…『ピンクバナナ』の暴走か、モルモット君が何かをした、くらいしか今は出てこないねえ。まずは腕輪を探し、モルモット君から『因子』を回収しよう。」

「たわけペロペロ…」

「デジタルさんですか?それがその…来たときからこんな状態でして…血の出し過ぎによる貧血かと…」

『マックちゃん、何言ってるかよく分かったな…』

 

アグネスタキオンがアグネスデジタルの状態を観察する。

 

「いや…これは貧血ではないねえ。出ている量が明らかに少ない…中で何かがあったのか?とにかく、急いで腕輪を探そう。」

「タキオンさん、その件ですが…私は助っ人を呼びサンデーサイレンスさんと共にデジタルさんを保健室に運んで帰ろうと思います。」

『マックちゃん!?カフェは…』

「たくさん入っても迷惑でしょう…なので後でカフェさん本人から連絡してもらえばよろしいかと。それよりサンデーサイレンスさん、貴方は犯行が疑われる前に病院で大人しくしていなさい。」

『…分かったよ。』

「君たちが抜けるのは構わないが…誰を呼ぶつもりかな?」

「ブライトですわ。」

 

………

 

「はい~、これですわね~」

「すごいですブライトさん!もう見つけたのですね!」

「では~、ソウジ様のところに向かいましょう~」

 

メジロマックイーンたちが去り、メジロブライトが到着すると5分くらいで腕輪を発見した。そして、ソウジの元に着く。そのそばには顔を赤くしながらコーヒーを飲むマンハッタンカフェがいた。

 

「……遅かったですね。」

「カフェ!?…それで、ソウジのシャツのボタンがなぜ全部外れてるんだい?」

「何かマンハッタンカフェのコーヒー飲んでからか身体が熱くなったんだよ…。お前が動けなくしたから……マンハッタンカフェに頼んでやってもらった。」

「…カフェ?」

「……ソウジトレーナーに……コーヒーをいれて飲ませただけです。…それでタキオンさん。……何か言うことは……ありませんか?」

「あぁ、先ずは『因子』の回収だよ。ボタンは…髪が邪魔で止めれそうにないな…悪いが全員、後ろを向いてくれたまえ。」

「XXXX!XXXX、XXXX!!」

「お姉ちゃん…はいはい、そんなにソウジの身体が見たいなら好きにしたまえ。」

 

ガチャ

 

アグネスタキオンが『ウマ人』に腕輪を付けて『因子』を回収する…部屋を覆った毛が一瞬で無くなった。そして、拘束椅子を解除するとソウジは慌ててシャツのボタンを止める。

 

「…」ダラー

「鼻血をふけムッツリ。」

「XXXX…」

「…たわけペロペロ。たわけペロペロ…たわけ…」

「あぁ、金庫に中和剤があるとも。早速……って今度は鍵がないだと!?ソウジ!君は何か知らないか?」

「…俺は触ってない。てか、鍵の在りかを知ってる奴って限られるだろ。」

「いや、君にしか教えていないのだが…まさかお姉ちゃん?」

「XXXX!?XXXX、XXXX…」ブンブンッ

「…他にはいないのか?」

「あり得るとするならスイープ君と…カフェくらいかな?」

「…私は……そもそも知らないです。」

「となれば可能性が高いのはスイープ君か…」

「それなら~、あそこにいますわよ~」

 

メジロブライトが1つのロッカーに指を指す。アグネスフライトがそのロッカーの扉を開けると…

 

「何で分かったのよ…」

 

本当にスイープトウショウが中にいたのだ。

 

ーーー

 

「…ごめんなさい。使い魔のXXXが知りたくて…!?いやああぁぁ!!」

「スイープ君もガスの影響をしっかりと受けていたみたいだねえ。」

「…こんな大事になっていたとは思わなかったの。デュランダルも泣かせちゃって…」

「実験予定だった『合成因子』を『ピンクバナナ』に替えたのも君かな。」

「…そうよ。」

「どうしてスイープさんだって分かったのですか?」

「フラワー君…いい質問だねえ。私が発表した『合成因子』の論文の詳細を学園内で知る者がそもそも限られるのだよ。ソウジを除くと候補は3人…シャカール君、スイープ君、ダイイチルビー君。そして、鍵をもっていたなら…もう彼女しかないのだよ。」

「たわけペロペロ!!」

「そうだった…スイープ君、鍵を返してくれたまえ。」

「そうね…早いところこの状況何とかしないとね。返すわ。」

「あぁ…」

 

アグネスタキオンはスイープトウショウから鍵を受け取り金庫から中和剤の入った缶を取り出した。

 

「XXXX、XXXX…XXXX 。」

「ん?お姉ちゃんがしてくれるのかい?じゃあ、屋上から頼むよ。」

「XXXX !」

「…これでようやくコーヒーが(ソウジトレーナーのXXX)……落ち着いて飲める(凄かったです)……!?」

「カフェ!?…今、何と言った?」

「XXXX !?XXXX !XXXX、XXXX !!!」

「いえ…その…コーヒーを飲ませてる時にちょっと、見えてしまっただけで…」

「…ソウジ?」

「俺!?いや、ファスナーはちゃんとしてたからな!」

「XXXXXXXXXXXX!!!」

「だから…その…えーと…」

「…お姉ちゃん、その件については後で問い詰めよう。今は早く屋上にいってくれるかな?」

「XXXX …」

 

顔を真っ赤にして慌てるマンハッタンカフェ。それにアグネスフライトが詰めよったものの…アグネスタキオンにより離される。

 

「だから違いますって!えーと…こ、これはその……サンデーサイレンスさんのドキドキが……私に移りました。」

「サンデーサイレンスの?あー、尻尾ケアのやつか!やっぱり嫌だったよな…異性に触られるって…」

「…あなたなら……嫌じゃないです。」

「そうか?ならサンデーサイレンス抜きでも解いてやるから、何時でも言ってくれ。」

「…ありがとうございます。」

「……前のメガネの件はこれが理由だったか。それはそうとソウジ…浮気とは感心しないねえ。」

「浮気じゃねえから!てか、お前にはほぼ毎日してるだろ!」

「それとこれとは話は別だよ!」

「…ねぇ?デュランダル待たせているし…アタシ帰ってもいい?」

「たわけペロペロ!」

「冗談だって。そんなに怒らないでよぉ…」

「…ほわぁ?」

 

その後、アグネスフライトが撒いた中和剤のガスが学園を覆い…事態は終息した。実行犯のスイープトウショウは20枚、管理責任としてアグネスタキオンは5枚の反省文を書くこととなり、残念ながら『合成因子』の実験は中止となった。一方、ケーキバイキングはデュランダルがスイープトウショウ(ストッパー)抜きで1人勝手に行ったため…店のスイーツを食べ尽くしてしまい出禁となった。そして、ソウジとハジメは監督者責任としてそれぞれ3ヶ月減給の処分を食らった。

 

ーーー

 

「そういえばタキオンさま。ラモーヌさまから言伝がありますわ~。」

「ラモーヌ君が?私にかい?」

「実はラモーヌさまの卒業が決まりまして…」

「えぇ!ってことはつまり…レースから引退するってことかよ!やっぱりチヒロさん以外とトレーナーとは上手くいかなかったか…」

「ちょっと待ちたまえ!?まさか、前にアメリカで私と模擬レースをした時のケガが原因で…」

「はい~、表向きはその件を理由にしていますわね。」

「表向きは?」

「では言伝の内容を伝えますわ~。チヒロさまとの子供の名前を考えて、とのことですわ~」

「何やってんだあのジジイ!!?」



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第111話 吹雪は確実に距離を詰める

どうも、今日のレースが楽しみ過ぎて過去のジャパンCをメアジードーツから全部みた作者です。個人的には2020年のジャパンCが好きですね…『キセキとヨシオの先行争い!』って実況が頭から離れません。

今日はジャパンC…応援するのは『イクイノックス』と『ディープボンド』と『インプレス』!『リバティアイランド』とか『スターズオンアース』とか『タイトルホルダー』とかいるけど…頑張ってください!

勝ったのはイクイノックス…もう、言えることがないです!…お疲れ様でした。


「ブリザードさん…大丈夫ですか?」

「ノープロブレム。まだまだ元気だけど…今日でトレセンの食堂はラストね。コーンの研究の方も落ち着いたからしばらくはお休みね。」

「…」

「フフフ…お腹が気になるね?まだそこまで目立たないね。でもここから一気に大きくなるらしいね。」

「…1人でいても大丈夫ですか?アメリカの両親を呼べないなら私の家の使用人を何人か…」

「フライト、その気持ちは嬉しいね。でも大丈夫…入る病院もソウジが決めてくれたね。」

「そうですか…」

「そんなことより、今日は中央トレーナーの筆記試験ね!頑張ってくるね!」 

「…満点取ってきます。」

 

ーーー

 

場所はどこかの牧場…ナリタブライアン、ヒシアマゾン、タイキブリザードなど多くのウマ娘たちがBBQを楽しんでいた。サクラローレルが提案した同期の集まりである。タイキブリザードがトウモロコシを次々と焼いていく。

 

「ベイクドコーン…完成ね。どんどん食べるね!」

「おぉ!凄い香ばしい匂い…美味そうだな!」

「美味そうじゃなくて、美味いんだよ!」モグモグ

「…」じー

「何だいブライアン。気になるのかい?」

「ブーちゃん、あーん!」

「…」モグモグ

「おっ!これなら食うのか?ブリザード、タレのレシピを教えてくれるかい!ついでにこのトウモロコシはどこに売っているかも知りたいねえ。」

「タレは市販のに竹炭をちょっと加えただけね。コーンは私オリジナルの品種の試作品だから…まだ売ってないね。」

「そうなのか!自分で作るとか凄えな!」

「サンキュービコー!いっぱい食べるね!復職したらまた食堂に持っていくかもしれないね。」

「それは楽しみだな!」

「となれば後は焼き加減か。実際に焼いてる所をじっくりと観察させてもらおうかね…」

「うぅ…ジロジロ見られるのは恥ずかしいね…」

 

タイキブリザードがトウモロコシを焼いてる場所から少し離れた所でサクラローレルがニンジンを焼いていた。

 

「出来たよ!コクオーちゃん、ローマンちゃん!食べてみて!」

「美味しい!ローレルちゃん、もっとちょうだい!」モグモグ

「…うまい。」モグモグ

「本当?フフフ…もっと焼いていくね♪」

 

食事を楽しみつつ、その場の会話も盛り上がる。

 

「アマさん…肉はまだか?」

「気が早いよブライアン…野菜もちゃんと食いなよ。」

「ブーちゃん!ニンジン焼きもらってきたよ!」

「…要らん。」プイッ

「ブリザードの焼きトウモロコシだけじゃなくてローレルのニンジン焼きも食いなって…」

 

「ビコーちゃん!ビコーちゃん!お姉ちゃんってトレセンではどんな感じなの?」

「んー、いっぱい食べてるな。後、よく迷子になってる。」

「お姉ちゃんはやっぱりお姉ちゃんか。えーと、その…アグネスデジタルさんはどうしてますか?」もじもじ

「アグネスデジタルか?いつも通り急に気絶してはウォーエンブレムに保健室に運ばれてるな。」

「次の有マ記念がラストランになるのですよね…絶対に現地に行きますよ!」

「いいな!喜ぶと思うぞ!」

 

「コクオー!試験…お疲れ様ね!」

「タイキブリザードか…やれるだけのことはしたよ。あとは結果を待つだけだ。」

「実は私の後輩も試験を受けていたね!合格したら同僚ね!」

「トレセン学園にいながら受けるって…その娘はかなり賢いのだな。しかし、今回のを突破したとしてもまだまだ試験はあるし…流石に私が1回で受かるとは思っていないが…」

「ノンノン!弱気じゃダメね!焼けた黒いコーンをあげるから自信を持つね!…あ、元が黒いだけだから焦げてはないね!」

「…モチモチだ。」モグモグ

 

「…」ザクザクザク

 

皆が会話をしていく中で"オフサイドトラップ"は少し離れた所で野菜を切っていた。その様子をみたサクラローレルが近くへと寄り、声をかける。

 

「あれ?オフサイドちゃん。誰とも話さなくていいの?」

「そろそろ焼く分も無くなる頃だから追加が必要だろ。それに…誰と何を話せばいいか分からなくて…」

「じゃあ、私と話そっか♪今のオフサイドちゃんについて聞かせてよ。」

「…就職したのはいいけど帰って寝るだけの生活になっている。たまに休日の公園でサッカーボールでリフティングしてるくらいで…」

「なるほど…卒業したら私もそうなるかもしれないね。」

「ローレル…お前の方はどうだ?」

「えーと、学園全体で凱旋門賞に向けてのプロジェクトが始まってて…トレーナーさんやエルちゃんらと一緒に特訓の毎日だよ。といっても来年参加出来るかは怪しいけど…絶対に代表になるよ!」

「ドリームでも大変なんだな…あ!エアグルーヴがトレーナーと結婚したとか噂で聞いたのだが…」

「んー、まだ式はあげてなかったはずだけど。でも子供は出来たのは事実だし…その時はオフサイドちゃんにも招待状が来ると思うよ。」

「ようやくか…私が卒業してから長過ぎるだろ…」

「そんなに前からだったの?」

「最初から相性は良かったんだ。特にオークス終わってからのエアグルーヴの様子が露骨に変わったのだが……何も進展もしなかった!がっかりだよ!」

「まぁ、大人と学生だから…しょうがないか。私たちからみたらトレーナーって大人の魅力を感じるし…」

「私には厳しかった思い出しかな…いや、必死にケガの治療に付き添ってくれた最高のトレーナーだったな。ローレルも自分の担当トレーナーをそう思うのか?」

「んー、私のトレーナーは大人の魅力って感じじゃないし…どうなのだろう?…けど、最高のトレーナーだと思っているよ。」

「大人か…私も大人になった筈なのだが…実感は来ないものだ。」

「レースを走っているウマ娘は所属している学園を卒業したら大人扱いだからね…」

「学園にいるためには強さを維持し続ける必要があるし、卒業するということはレースから離れることになる…難しい話だな。…さて、これくらいでいいだろ…そろそろ持っていこう。おーい、切った野菜を焼いていくぞ!」

 

ーーー

 

BBQも終わりが近づき…"オグリローマン"がクーラーボックスからあるものを取り出した。

 

「じゃーん!飛騨牛ですよ!!」

「ー!ブリザード、早く焼け!」

「慌てないねブライアン。お肉は逃げないね………ソーリー、ヒシアマ。代わりに焼いて欲しいね…」

「…あー、そうだな。アタシに任せな。」

「ちょっと…お手洗いに行ってくるね…」

 

そう言うとタイキブリザードその場を離れていった。

 

「ブリザードさん?…もしかして、お肉嫌いだった?」

「いや、アイツは今…妊娠中だからな…ちょっとタイミングが悪かっただけだよ。ローマンが気にする必要は無いさ。」

「うぅ…後で謝らないと…」

「だから気にする必要は無いってば!ブリザードも同じこと思っていそうだな…」

「アマさん、早く焼いてくれ。」

「ブライアン、アンタね…」

「…ローレルが向かった。だから問題は無い。」

「はぁ…ローマン、あまりクヨクヨするんじゃないよ。とりあえず焼かせて貰おうかね。」

「ヒシアマちゃん!あたしも手伝うよ!とりあえず、お肉を出して…」

「って塊のままじゃないか!アタシが切っていくからビッグはそれらを各プレートに均等に置いてくれるかい?焼くのはブリザードが戻ってきてからだ!」

「まかせて!」

 

そして、ヒシアマゾンと"サムソンビッグ"が準備を進める。一方のタイキブリザードはお手洗いへ来ていた。

 

「うぷっ…ブライアンとローマンには悪いことをしたね…」

「ブリザードちゃん、大丈夫?」

「ローレル…」

「お水飲める?」

「イエス…」ゴクゴク

「…」

 

サクラローレルから水受け取りそれを一本全て飲みきる。

 

「…ふぅ。サンキュー、ローレル。少し楽になったね…食べ過ぎたね。」

「いや、ブリザードちゃんって焼いてるだけで食べてなかったよね?」

「オゥ…ノォ…そういえばそうね。焼いてるだけでお腹いっぱいね…」

「食べ過ぎはダメかもしれないけど食べないのはそれはそれでダメだよ。…これ、コクオーちゃんの焼いたニンジン焼きだけど食べれる?」

「サンキュー……ん…ヤミー!」モグモグ

「良かった~、戻れそう?」

「イエス!ローマンのお肉焼いていくね!」

「その前にあのお肉を食べてみようっか♪ブライアンちゃんに全部食べられる前に。」

 

そして、タイキブリザードはサクラローレルと共に戻り…

 

「んん~!ベリーデリシャス!ローマン、柔らかくて食べやすいね!」

「えぇ!当然ですよ!いっぱい…はダメでしたね。でも好きなだけ食べてくださいね!」

「美味しいねブーちゃん♪」モグモグ

「……♪」モグモグ

「フフフ…ブライアンちゃんいい笑顔…」

「…ローレル、あんまり見てやるな。」

 

肉を食べる。それを見たナリタブライアンも肉を食べる。そして、お肉が全てなくなった辺りで…

 

「ほら!締めの焼きおにぎりだよ!」

「後は…温かい緑茶。」

 

オフサイドトラップとナムラコクオーが最後のメニューを持ってくる。それらも全て食べて無くなり…同期でのBBQパーティは解散となった。

 

ーーー

 

「ってことがあったねソウジ!」

「楽しかったようで何よりだブリザード。…んで、何で俺の部屋にいるんだ?合鍵とか無かったと思うのだけど…」

「管理人さんからもらったね!」

「…後で文句言っておかないと。」

「ホワイ?私、ここに引っ越したね!キーが必要ね。もう前住んでた所は無いね!」

「…え?」

「覚えてないね?前にサインしてもらったね!」

「あれって病院のやつじゃ…」

「…控えね。」

 

そこには確かに部屋に同居人の追加についてソウジが同意している内容だった。

 

「フフフ…いっぱい空き部屋があるし…どの部屋にするか…迷うね♪」

「…マジかよ。」

 

ソウジは頭を抱えながらもトレセン学園に提出する書類を作成した。




・おまけ
オグリローマン…ナリタブライアンと同期の芦毛の牝馬でオグリキャップの半妹。地方競馬出身で初めて桜花賞を制覇した。その後は目立った活躍は無いまま引退…繁殖牝馬となる。主な産駒はウイナーカップを勝ったオグリホット。

オフサイドトラップ…ナリタブライアンと同期の栗毛の牡馬。競走馬にとっては致命的な屈腱炎を3度発症しながらも現役を続けてG1を勝ち取った。主なG1勝利は天皇賞(秋)。その後は種牡馬になるも目立った活躍の産駒は出来ず、乗馬になった。

サムソンビッグ…ナリタブライアンと同期の鹿毛の牡馬。公式に追加されているため説明は省く。

ーーー
▼登場人物にオグリローマンとオフサイドトラップが追加されました。


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第112話 とある星の話をしよう6

どうも、イクイノックス引退に2日くらいモヤモヤしていた作者です。無事に引退した安堵と秋古馬三冠が見たかった願望が脳内で勝手に戦ってました。

今日はチャンピオンC…応援するのは『クラウンプライド』、『アイコンテーラー』、『ウィルソンテソーロ』、『ハギノアレグリアス』!ただ…大外枠で勝てたデータが『トランセンド』しかないので3連複の馬券に『アイコンテーラー』は入れないかな…まぁ、完走してくれればよし!

勝ったのは『レモンポップ』…えぇ!?ジンクス崩されちゃ当てれんわ。2着はウィルソンテソーロ…お疲れ様でした。

ってことで本編にどうぞ!


「ウララ、最後まで持たないからもっとペースを下としなさい!」

「りょ~かい~♪うっらら~♪」ダッ

「スタミナはエルムステークスの1800mでギリギリだったけど…今からは流石に間に合わない。なら…最低限のスピードを保ちつつ最適の動きで…」

 

「相変わらずね。」

 

「ラモーヌ!?え?何でここに…」

 

有マ記念に向けてトレーニングをしていたハルウララとコハルだったが目の前にメジロラモーヌが表れた。それを見たハルウララがメジロラモーヌの正面まで近づき挨拶をする。

 

「あ!ラモーヌちゃんだ!こんにちは!」

「こんにちは…ねえ、あなた。コハルの走り方って気にならない?」

「とれーなーの走り方?うん!気になるよ!わたしを背負ってても速かったし!」

「フフフ…そうね。という訳だからコハル、着替えてウォームアップをしなさい。」

「…はい?」

 

………

 

数分後、ジャージへと着替えたコハルとメジロラモーヌが共にゲートへと入っていた。

 

「ねぇねぇ~まだぁ~?」

 

「まさかまたこれを着る日が来るなんてね…というか、どうしてこうなった…」

「お尻…大きくなったわね。まだあの人のこと忘れられないの?」

「貴女には負けるよ。後、ソウジさんは関係ないから!成長分だから!」

「フフフ…条件は1200mを1本。あなたの得意な距離でしょ?」

「ラモーヌ、貴女と違って私は何年もブランクがあるのだけど。それにウララのトレーニングも…」

「なら早いところ始めましょう。」

「マイペースだな!?そもそも貴女は引退したんじゃ…」

「愛に終わりは無いわ…始めるわよ。では、お願いするわ。」

「りょうかい~!2人とも、いっくよ~!」

 

ガコン

 

「「ーー!」」ダッ

 

ゲートが開き、メジロラモーヌとコハルがコースへと飛び出した。先頭はメジロラモーヌ、2バ身離れコハルがやや外側のポジションへとつく。唯一のコーナーに入っても互いに仕掛ける様子はない。

 

「…」

「…はっ!はっ!……?」

 

ペースを上げないメジロラモーヌに疑問を持ちつつもコハルは並びにかかる。

 

「…」

「行かないのなら…先に行くからっ!」

 

ダンッ

 

最後の直線でコハルが仕掛けて、メジロラモーヌを突き放す。結局、コハルが3バ身差をつけての圧勝だった。

 

ーーー

 

「とれーなー凄いよ!ラモーヌちゃんに勝っちゃった!」

「はぁ…はぁ…ラモーヌ、貴女やる気無かったでしょ?何のつもり?」

「愛のためよ。ここにいる子へのね…」

 

そう言いつつメジロラモーヌは自身のお腹をさする。ハルウララはポカンとした顔に、コハルはトマトのような顔になる。

 

「…誰との子供?」

「コハルもよく知ってる人よ。」

「私が?チヒロさんとニヘイさんは論外として…ハヤトかハジメさん?いや、ラモーヌと話すところは見たこと無いし………誰?」

「つまらないわね。私との数少ない共通点だというのに…」

「はぁ!?いや、まさか…彼にはアグネスタキ…」

「チヒロ様よ。」

「そっちかよっ!…え?チヒロさん?………嘘でしょ?やべっ、想像し…」ブクブクブクブクッ

 

コハルは泡を吹いて倒れた。

 

「とれーなー!?FXで有り金全部溶かした顔になってるよ!」

「…どこで覚えたのその例え?」

「大変!きゅーきゅーしゃー!!」

「大丈夫よ、すぐにまた起きるわ…それよりあなた。コハルの昔話とか知りたくない?」

「でも…」

「おそらく大丈夫よ。それで…気にならない?」

「うーん、気になるかと言われれば…気になる!教えて教えて!」

「フフフ…よろしくてよ。あれは私がチヒロ様のチームに入ったばかりの頃…」

 

ーーー

 

『ラモーヌ、お前なぁ…トレーナーを何だと思ってるんだ…』

『レースに出るために必要なもの。それ以上もそれ以下も無くてよ。あなたが私の体質改善に尽くしてくれたのは大いに感謝しているけど…これとそれとは話が別。』

 

仲が悪いのかって?いいえ、当時から私にとっての彼はばあやと同じくらい慕っている人間よ。主治医が言うには医学会でその名を知らない人がいないくらいには有名だったらしいのだけど…トレーナー業を優先したため勘当され、アグネス家に婿入りしたのだとか。分からない所は後でコハルにでも聞いてちょうだい…話を戻すわ。

 

『…よし、なら勝負といこう。俺の指名したウマ娘に勝てたら何でも全て言うことを聞く…トレーナー辞めろでもいい。ただし…俺が勝ったら、練習くらいは見せてくれ。』

『いいわ…それにしても随分と自信がお有りのようで。"ニホンピロウイナー"なら私に確実に勝てると…』

『あん?ウイナーじゃねぇよ。…コハル!ちょっと来てくれ!』

『はいっ!』

 

その時は担当していた『マイルの皇帝』で勝負してくると思っていたわ。でも彼が呼んだのは左耳にピンクの花飾りを付けたウマ娘…そう、あなたのトレーナーよ。あなたと同じで元気いっぱいのウマ娘だったわ。

 

『…ん?ソウジは?』

『それがその…買い出しとか言ってまた外に…』

『ったく、担当持つ気あるのか…まぁ、今はいい。コイツと模擬レースをしてもらう…何時も通りに走れ。』

『コイツって…げっ!メジロの…勝てるわけ無いじゃん…』

『…誰が勝てと言った。何時も通りに走ってこい。1200mを1本だ…すぐにゲートを用意しろ。』

『は、はい…』

 

肩を落としてゲートを運ぶ彼女の姿に熱が冷めそうになったわ。

 

『…やる気はあるの?』

『走れば分かる。』

『…そう。』

 

今回も完璧に勝とう。そう思ってゲートに入ってレースが始まったのだけど…

 

『ー!並ばれ…』

『か…勝ったーー!!』

 

結果はゴール直前で半バ身差しきられての敗北。手なんて抜いてない…それでも負けたわ。

 

『よしっ!コハル、今日のトレーニングはここまでだ…ソウジを連れ戻したら帰っていいぞ。』

『はーい!』

 

コハルはそのまま麻袋を持って練習場を後にしたわ。…フフフ、そうよ。当時のサブトレーナー…今のアグネスタキオンのトレーナーを探しに行ったのよ。彼女、このままだと彼の担当になっていたのだろうけど…タイキブリザードと契約したことを聞いてガッカリしていたわね。…あら、興味はそそられない?それよりその後の私も知りたいのね?よろしくてよ。

 

『…』

『ラモーヌ、何で負けたか分かるか?』

『私の愛と走りは完璧だった。だから純粋な実力差ね…彼女、かなりのポテンシャルがあるわ。』

『実力はほぼ互角だ…そして、ポテンシャルだけで言うなら確実にお前の方が上だから。もう一度すれば間違えなく勝てるだろうな。』

『…無意識に彼女を下に見ていたから?』

『そんなもんレースだと普通だ。意識していようが無意識だろうが関係ない。』

 

負けて頭が真っ白になった私にチヒロ様が問いてきたの。答えても否定が返ってくるだけ…だから素直にこう言ったわ。

 

『…分からないわ。』

『経験だ。お前、今までマイルか中距離の模擬レースでしか参加しなかっただろ?』

『…言われてみればそうね。』

『お前の目標は何だった?』

『史上初のトリプルティアラの達成…そのレースに短距離は入っていない。』

『…俺はな、それだけではもったいないと思っている。いや、お前にとっては余計なことかもだが…』

『続けて。』

『トライアルを含めた完全三冠の達成だ!それ以外なら負けていいとすら思っている。』

『…ふーん、私の完璧を壊したいと。』

『それはたった今壊れたばかりだろ?』

『それもそうね。それじゃ…、練習プランを1から考えてくれるかしら?』

『ほらよ、とりあえず10パターンは既に考えてある。好きなのを選ぶといい。』

 

彼は既に私の指導についても頭に……あら、ごめんなさい。関係のない話になりそうになったわね。でも、あなたのトレーナーの強さは伝わったかしら。

 

ーーー

 

「その後、デビュー戦でのケガが原因でレースからは引退…トレーナーになったわ。」

「どーしてまた走ろうって思わなかったのだろう?さっきも走れていたし…」

「フフフ…それはあなたがもう少し大きくなれば分かるわよ。それに…1度でもケガをすると復帰は難しいと言われているわ。」

「でもライスちゃんは今でも凄い走りだよ!」

「彼女がいるのはドリームトロフィー…トゥインクルとは違う。彼女が今走れているのは本当に奇跡よ。」

「チヒロとれーなーのお陰だよね?」

「えぇ。それでも彼は全盛期の走りまで回復させれなかったと悔いていたわ。」

「…あれって全力じゃないんだ。」

 

ハルウララの額から冷汗が流れる。

 

「トゥインクルかドリームか、どちらが良かったかは人にもよるわ。私は…トゥインクルでの愛が今も残っている。」

「…うーん、ラモーヌちゃんはトゥインクルがいいんだ。でもドリームに行かないことには分からないし…うーん…」

「ゆっくり考えるといいわ。」

「う、うぅ…」

「あら、コハルは起きたようね。それじゃ、私は行くわ…有マ記念頑張ってねハルウララ。」

「うん♪お話ありがとね、ラモーヌちゃん~♪」

 

メジロラモーヌはそのまま去っていった。その後、起きたコハルは着替えようとしたもののハルウララに止められ、そのままハルウララと共に併走トレーニングを行い…翌日、コハルは筋肉痛に苦しんだ。




・おまけ
ニホンピロウイナー…83年世代の黒鹿毛の牡馬。同期にはミスターシービーがいる。グレード制導入と共にG1へと昇格したマイルCSと安田記念を勝ち『マイルの皇帝』と呼ばれた。引退後は種牡馬となり、ヤマニンゼファーやフラワーパークと2頭のG1馬が生まれた。


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第113話 有マ記念に備えし者たち(前編)

どうも、『イクイノックス』の引退により競馬熱が冷めてしまった作者です。…しばらくはポケモンでもするか。

今日は阪神JF…応援するのは『スウィープフィート』と『テリオスルル』です。後は香港での国際競走…日本馬の活躍期待します。特に香港マイルの『ダノンザキッド』を応援します!

阪神JF、勝ったのは『アスコリピチェーノ』…スウィープフィートは出遅れたか…残念。


香港ヴァーズを勝ったのはフランスの『ジュンコ』。『ゼッフィーロ』が2着、『ジェラルディーナ』は4着、『レーベンスティール』は…8着。

香港スプリントを勝ったのは『ラッキースワイネス』…強すぎるだろ。『ジャスパークローネ』が7着、『マッドクール』は8着。

香港マイルを勝ったのは『ゴールデンシックス』。『ナミュール』が3着、『ソウルラッシュ』が4着、『セリフォス』が7着、『ディヴィーナ』が11着、『ダノンザキッド』が12着。

香港カップを勝ったのは『ロマンチックウォリアー』。『ヒシイグアス』が3着、『プログノーシス』が5着、『ローシャムパーク』が8着。

出走した全馬に…お疲れ様でした。


有マ記念に備えて、シンボリクリスエスとゼンノロブロイは"模擬レース"を行っていた。

 

「………」ダッ

「やあぁぁぁ!!」ダッ

 

「…」ポチッ

 

「はぁ…はぁ…今回も届きませんでした…シャカールさん。タイムは…どうでした?」

「ほらよ…」ポイッ

「あ、あ…あー!」ワタワタ

「…キャッチしたぞ。なるほど、これは…」パシッ

「タイム更新だね。お疲れ様、ボリクリちゃん、ロブロイちゃん。」

 

エアシャカールから投げられたストップウォッチをシンボリクリスエスが掴み、タイムを見る。そして、アグネスフライトがその結果を褒めた。

 

「やった…あのボリクリさん、もう1度よろしいでしょうか?」

「…もう遅い。併走くらいにしておこう。」

「はい!」

「じゃあ、今度は私がタイム測るよ!」

「よろしく頼む。」

「お願いします!」

 

そして、再びシンボリクリスエスとゼンノロブロイが走り出した。

 

「で…てめぇは何でここにいるンだフライト?」

「筆記試験、突破したんだよ…顔くらい見せにきてもいいでしょ?」

「そうだよ!シャカールだってフライトに会えなくて寂しかったでしょ?」

「ンな訳ねェだろ!…タキオンの方には行かなくていいのか?」

「…有マ記念が終わるまで、私から会いに行こうとは思わないかな。」

「どうして?」

「ラストランだからね。本番でどんな走りを見せてくれるか…楽しみをとっておきたいの。」

「フフフ…いいと思うよ。あ、そういえばお姉さまがまた年末に日本に来るの。フライトは会ったりする?」

「んー、今回は時間的に厳しいかな…タキオンちゃんの話をしたらクリスマスはファインちゃんと過ごしたいって言ってたから…」

「そうなの!?…うぅ、トレーナーも一緒じゃダメかな…でもお姉さまがそう言ってくれて嬉しいし…うーん…」

「おい、そろそろアイツらがゴールするぞ。」

「分かってる分かってる。全部記録して……ん?」ポチッ

 

「はぁ…はぁ…」

「ロブロイ、飛ばしすぎだ…」

 

「ロブロイちゃん…ラップタイムがすごく乱れているよ…」

「はぁ…はぁ…えへへ。ついにボリクリさんと大舞台で走れると思うと嬉しくて…」

「私も嬉しいが…走りに影響するのはダメだ。」

「すみません…」

「今日はここまでにしましょう。ゴルシちゃんから焼きそばの差し入れがあるわ。」

「本当ですか!楽しみです!」

「いいよね焼きそば。ラーメンもいいのだけど…あのソースの香りに湯気で踊る鰹節…早く食べたいな。」

「オレは帰…」

「らないでシャカール。一緒に食べよ。ね?」

「…ちッ。食えばいいンだろ。食えば。」

「フハハハ!待たせたな!ゴールドシップ(黄金船)焼きそば(テオブルマ)…受け取ってきた!さらに…配膳も俺がした!さぁ、篤と味わうがいい!」

「ありがとうギムレット。では…」

「って雨降ってきたよ!急いで屋根のあるところに行かないと!」

「こっちだ!」

 

冬の空の下、激しい湯気を出す焼きそばを食べるウマ娘たちがそこにいた。

 

ーーー

 

同時刻、ヒシミラクルとナリタトップロードが模擬レースを行っていた。

 

「はあぁぁぁ!!」ダッダッダッ

「ここでもう来ますか…いいでしょう!私も…やあぁぁぁ!!」ダッダッダッ

 

結果はヒシミラクルの差し切っての勝利。それを見ていたメジロマックイーンの頬が緩む。

 

「フフフ…ミラクルさん。またロングスパートに磨きがかかりましたわね。」

「治療だけの1年では無かったのである!向こうのミラ子殿との共同逃走劇は本当に毎回凄まじかった…」

「あなたは逃げウマ娘ではありませんわよね?いえ、あちらの世界のミラクルさんが逃げウマ娘だという可能性も…」

「…もしかして向こうでもプールトレーニングから逃げていたのですか?」

「ー!?………ノーコメントである。」

「図星のようですわね。」

「ミラクルさん…」

「うるさいである!マックイーン殿、次の模擬レースの準備……!?」

 

突然にヒシミラクルの動きが止まる。

 

「あら?雨ですわね。あ…」

「み、ミラクルさん?今日はここま…」

 

「み、水であるっ!!我輩、水は…水は嫌いであるっ!!水怖い!水怖い!水怖い!」

 

そして、叫びながら一瞬で練習場を後にした。

 

「…」

「…」

「あのスピード…タキオンさんよりも速くありません?」

「あはは…菊花賞の時も最後の直線でゴール板が見えた瞬間に急加速しましたしね…」

「…本番でまたあれが出来ればと思ってしまいますわね。」

「マックイーンさん、私たちも解散にしましょうか。」

「そうですわね。風邪をひかないうちに戻りましょう。」

 

ナリタトップロードとメジロマックイーンもその場を後にした。一方のヒシミラクルはというと…

 

「水怖い!水怖い!水怖い!」ザザザザク…

「おぉ!キャベツ10玉を一瞬で…いいスピードだミラクル!後300玉くらい頼んだぜ!」

「水怖い!」ザザザ…

 

ゴールドシップのそばで大量のキャベツを切っていた。

 

ーーー

 

さらに同時刻、ネオユニヴァースはペイザバトラーと共に併走をしていた。

 

「ふぅー…こんなところかな…」

「併走ありがとうバトラーさん☆」

「いいのよ。年末には帰っちゃうから…その前にオグリたちとレースするんだ。完治してないから無理は出来ないけど…少しでも感覚は取り戻さないとね。」

「『ネオ、私も走ろうか?』」

「ウォーエンが?日本の芝だから合わないと思うけど☆」

「『何、アグネスタキオンがこっちのコースに上手く適応したんだ…私も何とかなるだろ。』」

「無理はしないでよウォーエン。」

「『分かってるって。ゴアさんはタイムをお願いします。』」コキコキ

 

ウォーエンブレムは肩を回しつつ、足でバ場の状態を確かめる。

 

「じゃあじゃあ、模擬レースしようよ☆ウォーエンがワタシに勝ったらこのカチューシャを付けてデートしてあげる★」

「『…付けなくていい。』」ボソッ

「…え?」

「『何でもない。バトラーさんもいるしそういうのは無しだ……よしっ!このバ場なら普通に走れそうだな…ちょっと本気出してみるか!』」

「…本当!?ユーニヴァース☆」

 

「本気……バトラー、私スコップと芝を買ってくる…」

「私も…被害が出来るだけ最小限になるように動いてみるわ…」

 

数分後、荒れに荒れたバ場を直すネオユニヴァースたちの姿がそこにあった。

 

ーーー

 

さらにさらに同時刻、タップダンスシチーはコースを1人走っていた。

 

「…セイハーッ!!アリュール、タイムは?」

「んー、悪くはないって感じだ。」

「…そっか。はぁ…超変身までまだまだか…」

「ジャパンCでは後一歩、って所まで来ていたのにね。」

「……負けは負けだ。だが、私はまだ成長出来る…フライトやシャカールの分も走らないと。」

「"エイシンプレストン"が最近引退して、アグネスデジタルも次がラストランだからもう同期で残ってるのは君とイーグルカフェくらいか。そういえばそのアグネスデジタルも参戦するのだっけ?羨ましいな…私も彼女と走りたかったな…」

「ダートじゃなくて芝だよ?…いや、どっちも走れる時点でヤバいけど。」

「アグネスデジタルといいアグネスタキオンといいアグネスフライトといい…アグネスってヤバい奴しかいないのかな…」

「フライトのヤバいは意味が違くない?」

 

そうこう言いつつ、タップダンスシチーのトレーニングは雨が激しくなるまで続いた。




・おまけ
エイシンプレストン…アグネスフライトと同期で鹿毛の牡馬。3歳時(現在の2歳)にG1レースである朝日杯Sで勝ち、3歳の最優秀牡馬へと選ばれた。また、香港での国際競走(全てG1)を3勝したことで『香港魔王』と呼ばれた。レース引退後は種牡馬になるも、重賞産駒を出せないまま種牡馬も引退。馬主の牧場で余生を過ごしている。


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第114話 有マ記念に備えし者たち(後編)

どうもイクイノックスの引退式をYouTubeで見た作者です。本当にかっこ良かったよ。

今日は朝日杯FSですね。応援するのはキズナ産駒の『タガノエルピーダ』と『ジューンテイク』です。

勝ったのは『ジャンタルマンタル』…『タガノエルピーダ』は3着、『ジューンテイク』は4着。お疲れ様でした。

本編にどうぞ。


リンカーンはニヘイの指導を受けていた。

 

「リンカ、もっと末脚を伸ばせ。それだとシンボリクリスエスに捉えられるぞ。」

「はい!…あれ?トレーナー、アグネスタキオンの方はいいのでしょうか?」

「あん?アイツはもう意識しなくてもいい。チケゾー、ジャンポケ、アヤド、アヤベ、来てくれ!」

「「「「はい!」」」」

 

ストレッチをしていた4人がすぐに近くまで移動してくる。ニヘイは目線をタブレットに向けたまま、指示をする。

 

「今から模擬レースを行う。そこでお前らには俺の指定した動きをして欲しい。チケゾー、お前はゼンノロブロイを意識してリンカよりも前を走れ。ジャンポケはネオユニヴァースを意識してリンカのすぐ後ろについてマークしろ。アヤドはヒシミラクルのように後ろからロングスパートでじわじわ迫れ。アヤベ…お前が一番重要だ。」

「…重要?」

「シンボリクリスエスのように最後の直線から追い込みをかけて…大外からリンカを…全員を抜け。」

「…模擬レースよね?」

「あぁ、有マ記念を想定したとびっきりの模擬レースだ。しかし、やり過ぎるのは良くないな…よし!今日と最終日の2回だけ行う。」

「…私、有マに出走しないって言ったのに…芝を走らせるなんて…」ボソッ

「何か言いたいことがあるのかアヤド?」

「そうですね…ベガ姉よりも前に私が差しきってもいいんですよね?」

「勿論だ。ベロちゃんはタイム…」

「たわけっ!」

「んんん!エアグルーヴはタイム測定、トーセンジョーダン…お前は今回のレースを見学し、お前なりにまとめたレポートを作ってくれ。」

「…ま?あーしなりでいいの?」

「俺に指摘されないようなのを作ってくれればな。」

「…無理ゲーじゃん。」

「………ジャンポケ、俺への提出前にレポートに目を通しておけ。内容はいい…誤字があれば赤ペンで直させろ。」

「分かりました…」

 

そして、模擬レースが始まり…ニヘイの指定した通り、アドマイヤベガが全員を差しきり勝利した。

 

ーーー

 

「いいですよ~、いい動きですよウララさん~…」

「本当!?よしっ!ここで…こうだね!やぁぁぁー!」

「うひょ~!…これはあたしも負けてられませんね。とうっ!」

 

「…何でこうなっているの?」

 

ハルウララはアグネスデジタルと併走トレーニングをしていた。いや、アグネスデジタルがいつの間にか加わっていたことで併走になっていたのだ。走り終わったハルウララが笑顔でコハルの前まで走ってくる。

 

「とれーなー!タイムは?」

「………すごい。大きく更新してるよ。」

「やったーーっ!!」

「流石ですウララさん。」

「…で、アグネスデジタル。こちらとしてはありがたいけど…貴女はここにいていいの?」

「…えぇ。私のトゥインクルのラストランでもありますので…やりたいことをしているまでです!…あ!これ、ゴールドシップさんからの差し入れです。冬なのでソース味にしたそうです。コハ…んんん!トレーナーさんも熱いうちにどうぞ!」

「わぁ!おいしそう~!食べていいよねとれーなー?」

「…うん、好きに食べて。私の分までありがとうね、アグネスデジタル。」

「うひょ~!それはこちらのセリフですよ~!ではでは~、デジたんはクールに去りますね~。次はタップさんで…その次にリンカさん…ぐへへへ…」

 

アグネスデジタルは大量の焼きそばを持ち、その場を去った。

 

「…あの娘、自分も出走するってのに色々と凄いね。」

「おいしい~!」ズルズル

「ウララ、それ食べたらまた再開ね。」

「は~い!とれーなーも一緒に食べようよ~!」モグモグ

「ソースついてるわよ…」ふきふき

 

その後もハルウララは雨の中、トレーニングを続けた。

 

ーーー

 

最後にアグネスタキオンとソウジはというと…

 

「アグネスタキオン!勝負するのだ!!」

「ウインディ先輩!流石にダメだって…」

「あらあら…困ったねぇ…」

 

シンコウウインディに勝負を挑まれていた。ホッコータルマエとワンダーアキュートが止めようとしているもののシンコウウインディから譲る気配はない。

 

「…シンコウウインディ、タキオンにはもうすぐ有マ記念があるんだ。それに向けてかなり慎重に調整をしている。」

「…知っているのだ。でも、最近タイムが伸びてないと聞いたのだ。芝じゃなくてダートなら…まだトゥインクルで…」

「ウインディ先輩…」

「…なるほど。トレーナー君、三十九号と例の首輪だ。」

「はいはい。」

 

ソウジがトレーナー室へと向かう。

 

「…何をするつもりなのだ?」

「君の勝負を受けよう…ただし、私の身体では無いけどね。」

「???」

 

………

 

「待たせたな。」

「…ソウジトレーナー…ですよね?」

「でも…どこかでみたことあるようなぁ…?」

「お前、『ガッツザベスト』だな!また、来てくれたのか?」

「お前は覚えていたか…タキオン、首輪だ。」

「はいはい…では、その通りに…」

 

『ガッツザベスト』とアグネスタキオンは首輪をつける。そして、シンコウウインディへと顔を向けた。

 

「では、模擬レースと行こうじゃないか!」

「…?お前が走るつもりなのか?」

「あぁ、だが私と走ることには違いない。」

「どういうことなのだ?」

「あらまぁ~。これって…ファン感謝祭の時の…」

「ウインディ先輩、彼女…アグネスタキオンですよ!」

「えぇ!?いや…違うのだ!首輪が光ってな…」

「トレーナー君、準備完了だよ!」

「ゲートを用意した。早くしたま…しろ。」

「時間がないようだ!始めようじゃないか!」

「………分かったのだ。」

「タル……ホッコータルマエ、ワンダーアキュート、君た…んん!お前らも参加していくか?」

「せっかくの機会ですし…」

「お願いしようかねぇ~」

 

そして、4人で模擬レースを行う。先頭にホッコータルマエがたち、シンコウウインディ、ワンダーアキュート、『ガッツザベスト』と続いていたが…シンコウウインディが圧勝した。

 

「くっ…差しきれずか。」

「はぁ…はぁ…流石ですねウインディ先輩…」

「…違うのだ。」

「…え?」

「こんなの違うのだ!」グイッ

「…ぐっ!タキオン、スイッチを切…」

「もう遅いのだ!」カチャ

「ー!」

 

シンコウウインディは『ガッツザベスト』から首輪を奪い、自身へと付けてスイッチを入れる。そして…アグネスタキオンと中身が入れ替わった。

 

「よし、これで走って……!?何だこれは…力が全く入らないのだ!?…アグネスタキオン…お前…こんな状態で有マ記念を走るつもりなのか?」

「…」

「…帰るのだ。…ウインディちゃんがしてあげれることは何も無さそうなのだ。」

「ウインディ君…」

「待ってください!…私たちも失礼します。」

「失礼しますねぇ。」

 

シンコウウインディは首輪を外してソウジへと渡し、ダートコースを後にする。ホッコータルマエたちもそれを追いかけた。

 

「トレーナー君。首輪のスイッチを入れず、急に私の口調になるとは…どういうつもりかな?」

「お前を走らせたくなかったんだよ…シンコウウインディには悪いことをしてしまったがな…」

「何、アポ無しで来た以上は追い返すべきだった。それくらい君でも分かるだろう。」

「…そこは大人の事情ってやつだ。」

「?」

「…トウモロコシの余り、まだあったかな…だが、今はいい。タキオン、今日はここまでだ。足の…いや、身体全体の状態を見る。」

「私は特に問題を感じてはいないが…」

「それも含めてこれから確認する…よっと!」ヒョイ

「ひゃっ!?…急に私を抱えるとは…強引だな君は。」

「お前には僅かな不安すら許さない。早く行くぞ。」

「…はい。」

 

顔を真っ赤にしながらモルモットにお姫様抱っこで運ばれる貴公子がそこにはいた。有マ記念は…すぐそこだ。



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第115話 貴公子、ラストラン 起

どうも、友達と仮面ライダーの映画を観に行く作者です…彼氏欲しいな。

今日は中山大障害…去年『ニシノデイジー』が勝ったこのレース…連覇して欲しいですね。馬場さえ悪くなれば…頑張れ『ニシノデイジー』!後はキタサンブラック産駒の『エコロデュエル』!デビューしてからしばらくは応援していた馬なので彼にも頑張って欲しいですね!
阪神Cには『ピクシーナイト』が出走!彼も頑張って欲しい!

今回…かなり削ってこの長さです。とりあえず…どうぞ!


場所は中山レース場…そして、アグネスタキオンが最も得意とするレース場。彼女は今日、ラストランとして有マ記念へと出走する。

 

ーーー

 

第4R…ダイワスカーレットの姉、ダイワメジャーのメイクデビュー。最後の直線…ダイワメジャーは2番手へとついていた。

 

『モンスターロードとダイワメジャーが前へと進む…2人並んでゴールイン!

内のモンスターロードが1着か!』

 

結果はクビ差の2着だった。

 

………

 

「く…悔しい!メジャー姉、いいポジションだったのに!」

「最後に伸びなかったからな…はぁ。スカーレットにカッコ悪いところ見せちゃったか。」

「そんなこと無いわ、でもメジャー姉が勝つところが見たいのも事実なのよね…と・に・か・く!次も絶対に見に行くから…1番を見せなさいよ!」

「勿論だよスカーレット。お姉ちゃん、頑張る!」

 

『なぁ、ソウジ。あのシスコン(ダイワメジャー)…今からでも俺の担当したらダメかな?』

「ダメに決まってんだろ。新しい担当はまずディープインパクトをトゥインクルで活躍させてから考えろ。」

『へいへい…分かってますよ。言ってみただけですよ。…てか、タキオンのところに行かなくていいのか。』

「今はジャングルポケットと一緒にいるからな…昼飯食ってからでいいだろう。お前も一緒に食うか?奢るぞ?」

『お?太っ腹じゃねぇか!じゃあ、ビールとソーセージと…』

「カフェの身体で飲酒しようとするな!というか病院でも飲んでいるのか!?嘘だよな?」

『んな訳ねぇだろ…ったく。ノリだよ。ノリ。まぁ、お前のソーセージなら俺も興味が無いこともない。』ジュルリ

「ブリザードといいメダグリアドーロといいアメリカのウマ娘は下ネタが好物なのか…」

『他の奴らは知らんが…俺はお前にだけしか言わないぜ。後はカフェも興味津々で夜中に……うっ!?』

「サンデーサイレンス?」

「はぁ…はぁ…。…何でも……ありません。……お昼ご飯を食べましょう。」

「カフェに戻ったか…そうだな。しかし、時間を考えると軽食がいいか…」

「…では何か適当に……買ってきてください。……シートとコーヒーミルを……持ってきていますので……広場でコーヒーを……作って待ってます。」

「分かった。急いで買いに行ってくるよ………興味津々か。」

 

その後、ソウジはホットドッグを買って合流してきた。マンハッタンカフェは顔を真っ赤にしつつそれを食べており、ソウジはニヤニヤしながらマンハッタンカフェを眺めつつコーヒーを飲む。そして、ホットドッグを完食したマンハッタンカフェは…睨みながら尻尾でソウジの尻を叩いた。

 

ーーー

 

場所はアグネスタキオンの控え室…ジャングルポケットがいつも通り訪れていた。

 

「今回も来たよタキオン。」

「待っていたよジャンポケ君。」

「調子は…いつも通りかな?」

「トレーナー君によるケアの成果だよ…今回の作品は?」

「ボトルフラワー…中身は生花じゃなくて折紙製だけどね。」

「これはまた手の凝った物を…」

「君のラストランだから…というのは建前で、本当はレディブロンドさんへのクリスマスプレゼントとして作ろうと思ったんだ。チームの皆もあげたら喜んでくれたよ。ちなみにレディブロンドさんにはもう少し大きいボトルフラワーを送る予定だよ♪」

「だとしても素直に嬉しいよ…全力を尽くすと約束しよう。」

「勝ってくる、でしょ?」

「…あぁ。そうだね…勝ってこよう。」

「よろしい。…本当にラストランなんだね?」

「…私のピークは夏に終わっていた。さらに『BCクラシック』が終わった辺りから走りも大きく衰えた。だが…どうしてだろうね。未だに最速を…スピードの限界を身体が求めているよ。」

「…私も君もそれだけ未練があるってことだよ。だけど、結果はどうなろうと…私は最後まで見ていくから…」

 

ジャングルポケットは控え室を後にした。

 

ーーー

 

指定席にてアグネスフライトはタイキブリザードと共にいた。

 

「もぉ、フライトは心配性ね!私1人で大丈夫ね!」

「いやいや、パドックが始まりますと本当に人がいっぱいになるんですって!ただでさえ背が大きくて目立つというのに…」

「ソウジにバレるのが怖いね?」

「バレたくないのはブリザードさんの方ですよね?」

「…確かにそうね。でも…タキオンのラストラン…近くで見たいね!」

「じっとしてくださいよ。今のブリザードさんなら私だけで抑えれ…」

「分かったね!ここで我慢するね!うぅ…ソウジと一緒ならもっと近くで見れたのに。」

「内緒で来てる人の台詞とは思えませんよ…」

 

「ヤァ、アグネスフライト!」

 

背後から聞こえた声にアグネスフライトは振り返ると…見覚えのあるウマ娘の姿が見える。アグネスフライトはそのウマ娘の服装に目を丸くする。

 

「ー!ファルヴラブちゃん!え?何でトレセンの制服で…」

「香港ノラストランデ勝チ、トゥインクルヲ引退シタ。ダカラトレセン学園二編入シ、ソコノ生徒トシテドリームヘ移籍シタ。…コレデ伝ワタ?」

「伝わったよ。日本語、練習したのかな…上手よ。」

「ハイ、ファルヴラブ!私はタイキブリザードね!今は休職中だけど…復帰したらトレセンの食堂にいるからよろしくね!」

「ヨロシク頼ム。…アグネスタキオンノ応援カ?」

「イエス!…はっ!彼女のトレーナー…ソウジには内緒にして欲しいね!」

「ワカタ。デハ私ハソロソロ自分ノ席二行ク…マタ学園デ会オウ。」

「うん、またね!」

「バイバイね!」

 

ファルヴラブは自身の席を探しに去ってしまった。その背中をアグネスフライトは目で追う。

 

「…フライト?」

「ラストラン勝ったんだ。今さらだけど…タキオンちゃんって…本当に凄かったんだな、って。」

「…ノーねフライト。タキオンは今も凄いね!だから…最後まで見ていくね!それに…」

「それに?」

「そのタキオンに唯一勝ってるのがフライトね。」

「も、もう!!」

 

アグネスフライトの顔が真っ赤になった。




続きは今日の18時に投稿します。


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第116話 貴公子、ラストラン 承

どうも、仮面ライダーと…ついでにゴジラもみてきた作者です。ゴジラは初めてみましたが…普通に面白かったです。

中山大障害…勝ったのは『マイネルグロン』。ゴルシ産駒か…『ニシノデイジー』は2着、『エコロデュエル』は3着。悔しいけど…完敗です。
阪神Cを勝ったのは『ウインマーベル』。またゴルシ産駒かと思ったら関係なかったです…『ピクシーナイト』は15着。お疲れ様でした。

本編にどうぞ。



午後のレースが始まる。そんな中、ソウジは自身のチームメンバー全員を呼び出していた。

 

「さて、お前たちの先輩にあたるタキオンのラストランになる訳だが…どう思っている?」

「どう、とは?」

「タキオンに対しての今のお前たちの気持ちをそのまま言ってくれたらいい。もちろん、言わないって選択肢もアリだ。じゃあ…ディープスカイから!」

 

「…私としては、『BCクラシック』で終わって欲しかったと今でも思っています。憧れの先輩として、そして同じチームメイトとして近くで見ていたからこそ…彼女の衰えていく姿が痛ましく思いました。ラストランであったはずの『ジャパンC』を無事に走り終わったと思えば…『有マ記念』への出走宣言…私には理解出来ませんでした。…さらにトレーニングで衰える過程を見ていって………ごめんなさい。正直に言いますと、今日のラストランを見るのが…怖いです。最強のタキオンさんが…負ける可能性があると思うと…怖いのです。」

「…怖い、か。それだけタキオンのことを見て、心配していてくれていたんだな。話してくれてありがとうディープスカイ。無理して見なくても…」

「いえ!それとこれとは話が別です…最後まで見ていくつもりです!」

「なら俺から特に言うことはないな。じゃあ…ディープインパクト!次はお前だ。」

 

「…現状、現役最強なのは衰えを込みしてもアグネスタキオンだということは認める。…でも、レースは栄枯盛衰。…数年後にクタ姉さんがその座に着くことになる。…なので今回のレースで勝ち、…少しでもクタ姉さんの功績に抵抗して欲しいと思う。」

「全盛期が終わってしまった今のタキオンでも勝てると思っているってことか。後、確かにブラックタイドのデビュー戦は凄かったのは認めるが…俺はお前の末脚も凄いと思うぞ。」

「…お世辞はいい。…私じゃ足元にも及ばない。」

「本心だよ…来年のデビューを楽しみにしてるからな。じゃあ、ダイワスカーレット!」

 

「…はい。アタシとしてはタキオンさんが無事に完走すればと…あ!タキオンさんの実力を疑っている訳では無いのですよ!ただ…プスカが言っていた、見るのが怖いってこともちょっと理解出来るなと思いまして…」

「なるほど…まぁ、いつものお前なら『タキオンさんなら最後まで1番を取る』とか言うのだろうけど…それだけ不安なんだな。」

「ー!違……わないですね。すみません…」

「レースに出走するということは常に不安とも戦うことである…つまり、その感覚はこれから何度も味わうことになる。その時は遠慮なく俺やタキオンを頼ってくれ。グランデッツァ!」

 

「…。タキオンさんは絶対に負けない。」ギリッ

 

「…お前も悔しいと思ってくれるか…俺もだよ。だが…レースに絶対は無い。だからこそ面白い…」

「タキオンさんに絶対はある!シンボリルドルフを超えた彼女になら!」

「そうだな。…俺も今日だけはそう思う。しっかりと応援しような。最後…キャプテントゥーレ。」

 

「はい。そうですね…私としましては最後にまた中山レース場で走るタキオンさんの姿が見れて嬉しい、の一言ですわね。やはり、タキオンさんと言えばここでの活躍が印象深いですし。」

「ラジオたんぱ杯に弥生賞、皐月賞…全部中山だった。まぁ、トゥインクル復帰前は俺の担当じゃなかったのだが…確かにそのイメージが強いよな。」

「あら?忘れていませんか…去年は東京レース場が使えずに中山レース場に来ていたということを。私はそちらの方も言っているのですよ?」

「…ハハハ。普通に考えればそうだよな。」

「私もちゃんと活躍できるように指導してくださいね。」

「分かってるよ。じゃあ…タキオン、今の話を聞いてどうだ?」

『え?』

 

先ほど感想を言った全員が後ろを振り向くと…そこにはアグネスタキオンがいたのだ。

 

「…」

「おい、タキオン。何か言ってやれよ。」

「あぁ…いいデータが取れたよ。君たちの本音が…今の私をどれだけ後押ししてくれるか…実に興味深い。」

「どうしよう…アタシ、変なこと言ったかも…」

「いや、私なんて走って欲しく無いって言ったし…」

「絶対勝つから大丈夫。」

 

「…」スタスタ

 

パニくるチームメイトをよそにアグネスタキオンはソウジのそばまで歩みよる。

 

「だが…君からは何も無いのかな?」

「…しゃーねぇな。」

 

ソウジはアグネスタキオンの顔に手を沿えて…

 

チュゥ

 

そのまま、おでこへとキスをした。

 

「え!?あ、ああぁ…」

「白昼堂々とそんなことを…」

「…変態だ。」

「…」フシュー

「羨ましいわね…」

「「「え!?」」」

 

「ラストラン、楽しんでこいよ。」

「おや、唇にはしてくれないのかい…今日の勝利の女神(トレーナー君)?」

「いや、歯を磨いてないし…」

「口からコーヒーの臭いがするが…カフェと浮気でもしたのかい?」

「昼飯を一緒に食べただけだよ。」

「私は食べれないというのに…酷いトレーナーだよ。」

「今夜、たらふく食わせてやるから…」

「フフフ…楽しみにしているよ。…ところでお姉ちゃんを見なかったかい?」

「見てないが…」

「そうかい。まぁ、レース場のどこかにはいるのだろう…そろそろ控え室に戻るよ。」

「なら、ついて行かないとな…。よし、解散だ。来年もよろしくな。」

 

そういうとソウジとアグネスタキオンはその場を後にした。

 

「スカーレット!?何言って…」

「ち、違うの…何というか…憧れない?ああいう感じ…」

「何々?トレーナーが好きなの?」ニヤニヤ

「指導者としては好きだけど…恋愛的な意味じゃなくて…」

「…ムッチリスケベ。」

「次言ったらぶん殴るわよ!」

「…」ダラー

「グランデッツァ!?アンタもこういうの耐性無いの!?誰か、ティッシュ!ティッシュ持ってない!?」

 

チームメイトに囲まれたダイワスカーレットを放置して…



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第117話 貴公子、ラストラン 転

…多くは語りません。

『ディープボンド』頑張れ。

勝ったのは『ドゥデュース』…後方はダメだって…


場所は中山レース場…

 

『さぁ、出走ウマ娘たちがターフへと入ってきました。』

 

パチパチパチパチ

 

レースが次々と行われ…メインである第9R『有マ記念』の出走時刻となった。パドックが終わり、出走するウマ娘たちが観客の大きな拍手と共にターフへと入ってくる。そして…出走ウマ娘の紹介が入った。

 

『ファン投票9位に入り参戦…今回で何と100戦目!今年覚醒した星はこのグランプリでも輝くことが出来るのか…ハルウララ!』

 

『不完全燃焼だった菊花賞をここで一気に完全燃焼したい…ゼンノロブロイ!』

 

『重賞勝利こそまだ無いもののその能力は他の重賞ウマ娘に引けに取らない…リンカーン!』

 

『去年から才能開花か…だからこそ!今度こそ逃げきってG1を勝ち取りたい…タップダンスシチー!』

 

『ケガを乗り越え、天皇賞(春)同様にまたミラクルを起こすのか…ヒシミラクル!』

 

『G1を8勝、今年無敗…まさに歴代最強!ラストランとなったこのレースでさらに伝説を広げにきた…アグネスタキオン!』

 

『2冠ウマ娘がこの中山で再びG1勝利となるか…ネオユニヴァース!』

 

『このレースがラストラン。G1を6勝した意地を最後に見せて欲しい…アグネスデジタル!』

 

『今年の天皇賞(秋)で念願の初G1勝利!ラストランとなるこのレースで再び主役の座を掴めるか…シンボリクリスエス!』

 

入場共に次々と紹介されるウマ娘たち…惜しみ無い拍手が送られて…次々とゲートへと収まっていく。

 

『他の15人はゲートへと収まっていきます…最後にシンボリクリスエスが16番ゲートに収まりまして…スタートしました!』

 

ゲートが開く。各ウマ娘が一気に前へと出てきた。

 

『さぁ、誰が前に行くのか…やはり、タップダンスシチーが来たか!

それに並びにかかるアクティブバイオ!

3番争いには…ハルウララとザッツザプレンティ!

アグネスタキオンは…6番手辺りか。』

 

「ウララちゃん!いけっー!」

「タップ!焦るなよ!」

 

『最初のコーナーを曲がって…タップダンスシチー下がったか!

先頭争いはハルウララ、ザッツザプレンティ、アクティブバイオの3人が並ぶ!

タップダンスシチーは4番手!

それらにゼンノロブロイ、アグネスタキオン、リンカーンが続く。

その後ろにウインブレイズとネオユニヴァース!

距離が大きく空いてアグネスデジタルはこの位置!

さらに数バ身離れ、ファストタテヤマとヒシミラクル!

最後方に…シンボリクリスエスだ!

向こう正面に入ります!』

 

「いいぞハルウララーー!!」

「いけっ!アグネスタキオン!」

「『ネオォォォ!!』」

「ロブロイちゃんもクリスエスちゃんも頑張って!!」

「タップ!お前のペースを取り戻せ!!」

 

『先頭になったのは…ハルウララだ!!

ザッツザプレンティ、アクティブバイオがそれに続く!

大きく離れて4番にタップダンスシチー!

さらに距離が開き…アグネスタキオン、ゼンノロブロイ、リンカーンと並ぶ!

1バ身離れ、内にウインブレイズ、外にネオユニヴァース!

さらに距離が開き…っとここでロングスパートか!ヒシミラクルがジワジワと上がってきているぞ!

アグネスデジタルをかわし、前へと進んできた!

さらに後方…シンボリクリスエスもペースを上げてきた!

それに、チャクラ、ダービーレグノ、ファストタテヤマが続き…最後方は末脚に掛けるツルマルボーイ!

先頭から最後方までは25バ身くらいという縦長な展開になった!

しかし、前がだんだんと固まってきたか!』

 

「ハルウララ!頑張れー!!」

「ゼンノロブロイ!抜け出すなら今だ!」

「ミラクル!いけっ!」

「…おい、シンボリクリスエスの伸び…ヤバくないか?」

「デジタルさん!頑張れーー!!」

 

『先頭は僅かにハルウララ…だが、リンカーンが捉えたぞ!

ここで前の集団が入れ代わる!

アグネスタキオンはリンカーンの後ろ!

最後の直線に入る!

先頭はリンカーン、リンカーンだ!

ネオユニヴァースがアグネスタキオンをかわした!

アグネスタキオンはここまでか!

先頭リンカーン!

さらに外からヒシミラクル!

大外からシンボリクリスエスが伸びてきている!』

 

「…くっ!」

 

アグネスタキオンのスピードが落ち…

 

「タキオン!!」

「タキオンさんっ!」

「タキオンちゃん!!」

 

自身の名前が聞こえた。その刹那、アグネスタキオンの頭に何かが走る…ちょうどソウジにキスされた額から脳へとマグマのような熱が流れ込んできたのだ。

 

『ラストラン、楽しんでこいよ。』

 

「ーーっぁ!!」

 

ダアンンッッ!!

 

『アグネスタキオン、ここで盛り返したっ!!

ネオユニヴァース、リンカーンをかわして一気に加速!

アグネスタキオンが先頭にたった!

後続を大きく離しにかかる!

しかし、それに迫るヒシミラクルとシンボリクリスエス!

シンボリクリスエスがヒシミラクルをかわした!

粘るアグネスタキオン、それを追うシンボリクリスエス!

その差は6バ身にまで縮まっている!』

 

「いけっ!アグネスタキオン!!」

「シンボリクリスエス!捉えろ!!」

「粘れ!タキオンーー!!」

「クリスエスーー!!差せ!!」

 

「……かぁぁあっ!」

「はあぁぁぁぁ!!」

 

『完全にこの2人の一騎討ちだ!

アグネスタキオンもシンボリクリスエス大きく伸びる!

だがアグネスタキオン、差を縮ませない!

5バ身離したまま…アグネスタキオンが…アグネスタキオンが連覇達成!ゴールイン!!

2着にシンボリクリスエス、3着にヒシミラクル!

タイムは……2分29秒8!?…レコードです!!

アグネスタキオン、2分30秒の壁を超えた衝撃的なラストラン!!』

 

ワァーーーッ!!

 

「……っ!」ガクッ

 

「タキオン!」ダキッ

 

フラフラになり、倒れかけたアグネスタキオンをターフへと乱入してきた『ジンソニック(ソウジ)』が支えた。

 

「ソウジ…」

「頑張った…最後まで本当によく頑張った…」

「…」

 

タキオン!タキオン!タキオン!

 

その場から聞こえる自身へのコール…アグネスタキオンは精一杯、観客席へと手を振った。その後、検査により数分遅れがあったものの、ウイニングライブが無事に行われた。




18時に投稿します。


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第118話 貴公子、ラストラン 結

メリークリスマス


『アグネスタキオンが…アグネスタキオンがゴールイン!!

2分30秒の壁を超えた衝撃的なラストラン!!』

 

アグネスタキオンがラストランを有マ記念連覇で飾ったことにアグネスフライトとタイキブリザードは大きく喜んだ。

 

「タ、タキオンちゃん……!!」

「勝ったね…フライト、私、今日見にきて良かったね…」

「はい…私もです…」

「……ブリザードさんに……フライトさん?…ここにいたのですね。」

「カフェちゃん…泣いてるの?」

「ーーー!?……みたいですね。」

「フライト、私たちもね。」

「だって…だって…」

 

近くを通りかかったマンハッタンカフェの声に反応して振り向くと、その目からは涙が流れていたのだ。慌てて拭くマンハッタンカフェ…しかし、アグネスフライトからの目にもタイキブリザードからの目にも涙が流れていた。

 

「……これでタキオンさんは……引退ですか。」

「カフェちゃんはドリームトロフィーのロングに出走予定だっけ?」

「…冬の枠には……入れませんでした。……ですので夏の枠に向けて……またトレーニングしています。」

「そうだ!カフェ、この後は予定あるね?」

「…特には。……ですので寮の門限までに……帰れれば。」

「オーケーオーケー!ヒシアマに連絡しておくね!その前にウイニングライブにいくね!」

「……間に合わないのですね。」

「…カフェちゃん、無理やり付き合わせてごめんね。」

「……フライトさんのせいじゃ……ありませんよ。」

 

ーーー

 

「質問は以上となります…お疲れ様でした。」

「お疲れ様でした。帰ろうかタキオン…」

「あぁ。」

 

引退による大量取材が終わり、アグネスタキオンとソウジは車に乗りレース場を後にする。

 

「乱入の件、厳重注意で済んで良かったよソウジ。」

「ああしないと後悔していただろうからな。…最後のあの加速は…本当にびっくりした。本当にどうやって引き出したんだ?」

「私にも分からないさ。だが…君の声が頭の中に聞こえて…君がチュゥした所からエネルギーが溢れてきて……あぁ、実に興味深い内容だ。『因子』の研究が落ち着いたら、チームメンバーで実験してみたいねぇ。」

「…チュゥは『ウマ人』の俺にだけにしてくれよ?」

「私がするのかい?君のチュゥだろ?」

「え?俺なの?いいのか?なら遠慮無くダイワスカーレットやディープインパクトにチュゥをしまくるぞ?」

「…私におばあちゃんみたいな趣味は無いからね。それは嫌だ…早速、壁に当たってしまったようだねえ。」

「まぁ『因子』の研究が終わってから考える、でいいと思うぞ。しかし検査も終わって、お前が無事だと分かったから安心したわ。…タキオン、外泊届けは出しているんだな?」

「勿論だ。しかし、今はブリザード君が居るのだろ?行っても大丈夫なのかい?」

「あぁ、明日の夕方までは病院でいないって聞いた。まぁ、ブリザードがいたら3人でするだけだったけど…とにかく!クリスエスは過ぎているが…ホワイトな時間を過ごそう。ぶっちゃけXX日もぴょいしてないから早くしたい。」

「ククク…下品なお誘いだ。だが、その前に豪華な食事を楽しみたいのだが…」

「揚げる前のオードブルセットとサンドイッチの材料がある。食べた後は…レース後の疲労もあるから…今日は軽く10回くらいで…」

「軽くないよ!…構わないが。」

 

会話をしている間にソウジの家へと着いた。

 

………

 

~♪~~♪

 

「よし、こんなところだろう。」

 

アグネスタキオンへシャワーをさせている間にサンドイッチを作るソウジ。

 

「出たよソウジ。」

「あぁ、俺も浴びてこよう。マッサージでもして待っててくれ。」

「そうしよう。」

 

入れ替わるようにバスルームへと入り、出てきたアグネスタキオンをマッサージチェアへと座らせた。そして、ソウジがシャワーをした数分後…部屋へと戻ってくると違和感を覚える。

 

「作ったサンドイッチが無い?」

 

台所にラップをした物が無くなっているのだ。

 

「タキオン?先に食べたか?…あれ?いない?」

 

マッサージチェアに座っている筈のアグネスタキオンの姿もない。別の部屋を行こうとしたその瞬間だった。

 

バチッ

 

「ー!?」

 

ソウジの身体に電流が走る。

 

「オゥ…ソウジ頑丈ね!」

「ブリ…ザ……ド…?」

 

痺れた身体で何とか見上げると…そこには少しお腹が大きくなった下着姿のタイキブリザードがおり、右手にはスタンガンが握られていた。

 

「まぁ、動けなくしたからこれでいいね。寒くないように毛布をかけて…」

「なぜ…ここに…」

「んー、サプライズね。ちょっと、これを飲んで待ってて欲しいね。」グイッ

「ー!?」

 

ゴクン

 

「ーーかあっ!こ、れ、は…身体が……熱…く…」

「もう少し待ってるね♪」

 

ソウジに何かを飲ませたタイキブリザードは扉を閉めて、その場を後にする。

 

………

 

数分後…戻ってきたタイキブリザードによりソウジはとある部屋へと運ばれる。そこは甘い匂いで充満しており、床へと下ろされたソウジが顔を上げると目の前に光景に息を飲んだ。

 

「ん!んー!」

「ん!ん!ん!」

「んんん!」

 

3人のウマ娘が全裸で拘束椅子へと囚われておりそれぞれ、生クリームとイチゴ、チョコレート、ハチミツとクッキー、とデコレーションされた状態で横一列に並んでいたのだ。

 

「ふっふふ~ん♪」

 

そして鼻歌を歌いながらタイキブリザードも下着を外し…自身の身体にアイスクリームとヨーグルトを塗り始める。そしていくつかの果物を器用にくっ付けて、残った拘束椅子へと自ら座り…こう告げた。

 

「召し上がれ♪」

 

その言葉はソウジをケダモノへと変えた。そしてケダモノは本能を剥き出しに立ち上がり…4つの甘味を隅々まで貪り尽くしたのであった。



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第118.9話 飛行機と不死鳥の大晦日

大晦日スペシャル…という名の没話です。

没の理由は暴露ハザードの時とは違い、何言ってるか何となく分かる放送禁止用語ばっかで…はい。でも、個人的に気に入ったので…はい。………どうぞ!


大晦日、グラスワンダーは楽しみにしていたアグネスフライトとのデートの集合場所へと向かっていた。着いたのは約束よりも1時間は早かったが…そこには既にアグネスフライトの姿があったのだ。

 

「あ!グラスちゃん…早いね。まだ時間じゃないよ?」

「フライトさんこそ…こんな寒い中、1時間待つつもりだったのですか?」

「あははは…」

「笑って誤魔化さないでください。…ですが、少しでも早くあなたに会えて嬉しいですよ。」

「そう言われると照れるな…よし!時間に余裕が出来たし映画でも見よっか!」

「映画…ですか?」

「この時間だと…熱帯魚のアニメ映画と侍のアクション映画、どっちがいい?」

「どちらも私の国の映画ですよね?…ではニモで。前回里帰りした時に妹と見たのですが…とても楽しかったので日本語でも見たくなりました。」

「そうなんだ…それは楽しみ♪行こ♪行こ♪」

「フライトさん!そんなに慌てなくても…」

 

アグネスフライトはグラスワンダーの手を握り、走り出した。

 

………

 

数時間後、映画を見終わった2人は昼食を食べて…街中で歩きながら感想を語り合っていた。

 

「何度みてもいい映画です。」

「うんうん、大切な人へ過剰に心配になる気持ち…よく分かるよ。私もソウジさんに何かあったらと思うと…」

「…」

「あ!いや、グラスちゃんも大切な人だからね!」

「…タキオンさんの名前は出さないのですね。」

「タキオンちゃんは…うん。もう、大丈夫だから…」

「フライトさん、何かありましたか?」

「…カラオケでも行こうか。」

 

数分後、アグネスフライトたちは行きつけのカラオケへと着いた。そして、アグネスフライトがいつも通り部屋を選ぶ。

 

「この部屋に空きがあって良かった…グラスちゃん、何か歌う?」

「…」

「…やっぱり、さっきの話が気になる?」

「…」コクリ

「実はね、有マ記念の後にブリザードさんの家…正確にはソウジさんの家に行っていたんだ。ほら、ブリザードさんって妊娠しているから心配で一緒に中山レース場にいて…」

「ブリザードさんがソウジトレーナーの家に…?元担当とはいえ何故?」

「うん…その…ブリザードさんのお腹にいるのって…ソウジさんとの子供だから。それで今は同棲中らしいの。」

「ー!」

 

グラスワンダーが息を飲む…初耳だったようだ。

 

「話を戻すよ。それでタキオンちゃんのラストランが終わった後…近くにいたカフェちゃんと一緒に家まで送っていったの。」

「…」

「無事に帰れたのを確認したからそのまま私たちも帰ろうとしたのだけど…お茶でも飲んでいって、って言われてね。それで上がって椅子に座ったら…そのまま拘束された。」

「んん?すみません、フライトさん。何を仰っているのか分からないのですが?」

「…普通の椅子かと思って座ったら一瞬で足、腕、尻尾に枷を付けられたの。」

「え?でもフライトさんなら普通に壊せ…」

「なかったのよ…隣を見るとカフェちゃんも同じ状況だった。叫ぼうとしたらブリザードさんにボールギャグを口にハメられて…腰にあるスタンガンも取られた。というか逆にそれを使われてそのまま意識を失ったわ。目が覚めると別の部屋にいて…服を全部脱がされていた。」

「服を!全部!?」ゴクリ

 

グラスワンダーが唾を飲む…アグネスフライトの姿を想像したようだ。

 

「暖房が効いていたから寒さは大丈夫だったのだけど…痺れて身体は動かせない。ボールギャグで声も出せない。私に出来たのはカフェちゃんの生おっぱいを眺めることだけだったわ。」

「…」むすっ

 

グラスワンダーが不機嫌になる…アグネスフライトが他のウマ娘の名前を出したからだ。

 

「グラスちゃん?」

「これからブリザードさんに何されるか分からない状況だというのに…余裕そうですねフライトさん。」

「…私だってここまで追い込まれると現実逃避くらいしたくなるわよ。その後にXXXに運ばれてXXによるXXXのXX。」

「ーーー!?」

 

グラスワンダーが目を白黒させる…理解が追い付かないようだ。

 

「恥ずかしかったわ…そしたらお風呂場に運ばれてXXXXをXXXXにしてXXXをXX。これを何回もされて…終わったと思ったら垢擦りタオルで全身を犬や猫みたいに洗われる。そして最後にXXを全部XX…私のターフがダートに…XXXXになっちゃった…」

「XXXX…フライトさんは今XXXX…」

「それで何とか動けそうと思った辺りで再び枷付きの椅子へと座られて逆戻り。カフェちゃんは時間差があって動けるようになってたようで慌てて部屋から出たけど、あっさり捕まって私と同じことをされたわ。ダートになってたし…」

「…そこまでしますかブリザードさん!」ギリッ

 

グラスワンダーが歯を食い縛る…愛する先輩がひどい目にあったから。

 

「怒ってくれるのは嬉しいけど…奇襲はやめておきなさい。絶対に敵わないから。」

「ですがこれってXXXじゃないですか!」

「違うわ。」

「違わないです!」

「最後まで聞いたら分かるから!次にされたのは…温めたのか冷たくないハチミツを瓶ごと私の身体へと垂らしてきて…手作りであろうクッキーを身体中にくっ付けられた。まぁ、XXXXみたいな感じかな。」

「フライトさんのXXXX…」ポタッ

 

グラスワンダーは鼻血を出す…愛する先輩のXXXXを想像したようだ。

 

「興奮しない…実際されると恥ずかしいのよ…」ふきふき

「すみません…」

「ちなみにカフェちゃんは…首から下全部にチョコレートが塗られていたわ。」

「チョコレート…」

「そうこうしているとソウジさんが帰ってきて…気づいても貰おうと動いたけど意味は無かった。そしてブリザードさんがいなくなったと思うと…今度はタキオンちゃんが運ばれて来たわ。最初から寝ていたのかスタンガン使ったかは分からないけど意識は無い状態。」

「タキオンさんが!というかソウジトレーナーと共に帰ってきたのですか!?」

「隙あらばいつも連れ込んでるわよ。私たちと同様に服を脱がさせていって…また、何処かに運ばれた。まぁ、同じことをされていたとは思うけど…それで数分後に戻ってくると椅子に捕縛されて生クリームとイチゴによるXXXX。…美味しそうだったわ。」ジュルリ

「…」ギリッ

「はい、落ち着く。」ガシッ

「ぐっ…離してください!」

 

アグネスフライトが力ずくでグラスワンダーを抑えつける…

 

「最後にブリザードさんは…スタンガンで痺れて動けないであろうソウジさんを運んできた。それでアイス、ヨーグルト、カットフルーツを自分の身体に付けて…私たちと同じ椅子へと座ったわ。」

「まさか、ブリザードさんの目的って…!?」

「そこからはまな板の上の鯉状態…結果だけ言うと立ち上がったソウジさんによって全員完食されたわ。」

「…」ギリギリッ

 

グラスワンダーの顔が歪む…対して、アグネスフライトは口角を上げてさらに語る。

 

「いい顔よグラスちゃん…ちなみに彼の口からは少しXXXの味がした。ブリザードさんが飲ませたからだと思うのだけど…とにかく最高だったわ!!この感覚はグラスちゃんにも知って欲しいと思ったのよ!」スルッ

「フ…フライトさん…そこは尻尾の…」

「グラスちゃんって私のこと恋愛対象として好きだよね?」

 

さわさわ…

 

「…!」ビクッ

「ごめんね。私、心も身体も完全にソウジさんに堕ちちゃったの…だから、グラスちゃんには2つの選択肢を選ばせてあげる。1つは私のことは諦めてこのまま最後まで普通にデートをする。私が卒業してもトレーナーとして残るから…グラスちゃんが卒業するまでは一緒に過ごせるかな。」

 

すり…すり…ずりっ…

 

「それだけでは…嫌で、す!あなたの…特別…にっ!」ビクッ

「もう1つは私やカフェちゃんみたいに…ソウジさんのXXXに堕ちること。」

「ーー!そんなこと…ソウジトレーナーが…」

「普通に受け入れると思うわよ。彼ってブリザードさんを担当する前は相当な女好きで有名だったし。一生暮らすのに困らないお金が出来て、足フェチだから良い足を近くで見たいって理由でトレーナーになった人よ。実際に『好感度メガネ』でみた経験人数も2桁はあった訳で…もしXXXになればグラスちゃんがドリームを引退して卒業した後も…いえ、一生私の特別になることが出来るわ。…どうする?」

 

ずりっ…ずりっ…ぐちょ…

 

「フライトさんと…一生…ん!?」ビクッ

「可愛くて、小さくて、おっとりしてて、お尻が大きくて、敏感で、礼儀正しくて、でも負けず嫌いで……さっきも言ったけど、私はグラスちゃんのこと大切な人だと思っているの。昔の私なら…すぐに手を出したくらい。そうだ!これからもずっと私と一緒にいたい、って言ってくれたら…今ここで……ね?」

 

ぐちょ…ぐちょ…ぐちょ…ずぶっ!

 

「ーーんんっ!」ビクッ

「声…我慢しなくていいよ。ここ、そういう部屋だから…」

「わ…たし…は…」

 

……………

 

………

 

 

「グラスゥ…」

「エル、ただいま帰りましたよ~」

「グラス!?今日は帰らないかと思っていました…」

 

美浦寮にて1人部屋にいたエルコンドルパサーだったが同室のグラスワンダーが帰ったことで驚いた。

 

「フライトさんも予定があるので夕方には戻ると言った筈ですが?」

「でもホラ!勝負下…」

 

ファサッ

 

「…あれ?」

「エ~ル~?」

「ケ!?いえ、たまたま見えていただけで……いやいやいや!待つデース!今朝見たのと違ってるデス!まさか…」

「…見間違いじゃないでしょうか。それより、一緒に年越しそばを食べに行きません?」

「うぅ…でもフライ…」

「行きませんか?」ゴゴゴ

「…分かりました。エルは七味増し増しでいきますよ!」

「私の分にはかけないでくださいね?」

 

エルコンドルパサーとグラスワンダーはそのまま年越しそばを食べにいった。

 

ーーー

 

場所は変わってアグネスタキオンの実家…

 

「ただいま…」

「お姉ちゃん、今帰ってきたのかい?」

「まぁ…ね。はぁ…明日の本家の新年会、風邪でも引いてサボろうかな…」

「何があったか知らないがやめたまえ。その分の負担が私に来る。」

「前回…いや、毎年参加してこなかったくせに…」

「今回もそうしたかった…だが、おばあちゃんにあそこまで強く押しきられるとは…」

「タキオンちゃんの成績、今年だけで無敗のままG1含めた重賞7連勝で終わるって…目立ちすぎよ。そりゃ、ばあちゃんも来いって言うわ。…フォローしてあげるからしっかりしなさいよ。」

「サボるのにかい?」

「冗談だからね。はぁ…」

 

相変わらず溜め息をするアグネスフライト。そんな姉の様子にやれやれと言った表情でアグネスタキオンが質問を投げた。

 

「それで…グラス君と何かあったのかな?」

「グラスちゃんをソウジさんのXXXに堕とそうとしたのだけど…」

「…何を言ってんだこの変態は?」

 

そして姉のぶっ飛んだ発言にドン引きした。

 

「順番に話すわね…あの娘、私に好意寄せていたの。」

「知っているとも。デートの前に私の所へ訪ねてきたこともあった。」

「…でも、私は…もう…ソウジさんが……好きになっているし…」

「お姉ちゃん…そもそもの話…ソウジは私の夫だけど!?」

「その認識は今後変えていくとして…」

「未来永劫変わらない!」

「カラオケにいる時にグラスちゃんに言ったの…私の気持ちはソウジさんに向いてるから諦めて。それが無理なら私と同じ土俵に来てって。」

「それでXXX…って自分で認めているじゃないか!やはり私がソウジの…」

「黙れ。」

「ひぃ!…お姉ちゃん?」

「ご、ごめんタキオンちゃん…!ちょっと地が出ちゃった…」

「問題ないよ。どんなお姉ちゃんであれ…私は大好きだから…」

「タキオンちゃん…んん!話を戻すよ。グラスちゃんの答えは…」

 

ーーー

 

「普通に最後までデートをした…デスか。うぅ…良かったデス…それで、何でパンツが変わったのデスか?」

「だからそれはエルの見間違い…」

「ノー!今朝のグラスのパンツは黒のドエロい紐でしたが…さっき見ると白い普通のデース。流石に間違える筈がありません!」

「…はぁ、仕方ありませんね。話しますけど…大した理由ではないですよ。」

「フライトさんとうまぴ…」

「エル?」

「…じゃあ、何なのデスか?」

「トイレにうっかり落としただけです…履き慣れてなかったので。」

「ケ?そ、そうでしたか…」

「誰にも言わないでくださいね?もし言ったら…」

「分かりましたデス!エルとグラス、2人だけの秘密デス!」

「よろしい。それに…私が卒業するまでということはまだチャンスがあるってことですし…今度は私がフライトさんを…」ボソッ

「グラス?」

「何でもありません。では、紅白でもみましょうか~」

 

ーーー

 

「顔もアソコもトロトロにしたのに…強い娘だよね…」

「…お姉ちゃん、分かっているとは思うけどグラス君に訴えられたアウトだからね。卒業してトレーナーになる前に刑務所に入れられるからね。」

「でも…こんなの履いてたら誘ってる以外に無いでしょ!」

 

アグネスフライトはポケットから黒い布…もといグラスワンダーの履いていた下着を取り出した。

 

「…何でお姉ちゃんがそれを持っているのかな?」

「あ!返すの忘れてた!どうしよう…代わりのをあげるにしてもタキオンちゃん用だと一回り小さいし…」

「洗って返せばいいじゃないか。何でそこで私の下着を渡そうとするんだい?」

「こ、これはもう私の宝物よ!それにタキオンちゃん、私が買ってきたのって全然使ってくれないじゃん!未使用なのいっぱいあるじゃん!」

「毎回チョイスが派手だからだよ…」

「…仕方ない。グラスちゃんの予定に合わせて買いに行こっと…ついでにタキオンちゃんの分も一緒に…」

「お姉ちゃん!?私はもう要らな…」

「あ!タキオンちゃんも来る?」

「行かないよ!」

「とりあえず、グラスちゃんにLANEしよっと♪」

 

ーーー

 

「今年はどちらの組が勝つのでしょうか…グラス!どう思います?」

「私は…あら?ちょっと失礼。」ピロンッ

「誰からデスか?フライトさんデスか?フライトさんからデスか?」

「…フライトさんからですね。何のご用でしょ……う!?」

「『パンツ持って帰ってごめんね。』………グラス?エルに嘘を言いましたね?」

「…」

「『代わりの一緒に買いに行こうか。何時が空いてる?』…グラス、エルが一緒でもいいデスよね?」

「………はい。」

 

 

後日のとあるデパート、アグネスフライトとグラスワンダー、さらにアグネスタキオンとエルコンドルパサーが買い物をする姿があった。そして、アグネスフライトは3人にドエロいのをプレゼントした。




よいお年を


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第119話 貴公子とモルモットのそれぞれの道

…今はただ、読者に感謝を。


年が明けて、場所はアグネス家の本家…ソウジとアグネスタキオンの正装した姿がそこにあった。

 

「ーー以上のことから彼と共にこれからもレースに関わっていくつもりだ。よろしく頼むよ…ソウジ。」

「あぁ、これからもよろしくタキオン。」

 

パチパチパチパチ

 

レースから引退したアグネスタキオンは今後の方針をアグネス家の関係者へと語り…ソウジと握手する。会場からは惜しみ無い拍手が送られた。

 

ーーー

 

「引退後もトレセン学園に残る、か……それほどまで大切な場所になったのだなタキオン。」

「私たちも気持ちは同じですわ…チヒロ様。」キュッ

「……貴女が居る所が…私たちにとって大切な場所です。」キュッ

「尻尾を巻き付けてくるな…まだパーティー中だ。レディ、お前も言ってやれ。」

「だからこそいいじゃないの。ラモーヌちゃん、ルビーちゃん。もっと大胆に…」ハァハァ

「「はい。」」

 

グルッ、グルッ…

 

「…もう、好きにしろ。」

「そうしますわ……ん!」

「んんん!?」

「…狡いですラモーヌさん。次は私が…」

「いいわ…いいわいいわっ!!!」ハァハァ

「…ふぅ。ルビー、どうぞ。」

「チヒロ様。私にも…蕩けてください…んっ。」

「んんー!!」

 

 

「タキオン、あれは何か言わなくていいのか?」

「他人のふりをしたまえ。」

「いや、どうみてもアグネスじゃないのがいるよね。しかも公然な所であれは…アウトじゃない?」

「猥褻に当たるのは晒していないから…無視で問題ない。」

「その代わりに当主が醜態を晒してるというか…」

「いいから他人のふりだ!」

「…分かったよ。」

 

メジロラモーヌ、ダイイチルビー、アグネスレディに囲まれ好き放題にされているチヒロを…アグネスタキオンたちは無視する。そして周りを見渡していると、ドレス姿のアグネスフライトがこちらへと歩み寄ってきた。

 

「ソウジさん!ソウジさん!こういうのに参加するのは初めてですか?緊張してませんか?」

「まぁ、レースと違った緊張があるな…」

「安心してください。今日来ている人たちは主にばあちゃんの会社と取引してる企業なので…トレーナーのソウジさんに話しかけてくる人は少ないと思いますよ。」

「その割にはお前の周りにたくさんの人が来てる気が…」

「それはそうですよ~。昔から私の成長を見てきた人たちですので……それじゃ、また挨拶してきます!」

 

アグネスフライトは再び人混みへと姿を消した。

 

「…すごいな、あのコミュ力。」

「荒れてた時におじいちゃんが何度もこういう場に連れてきたからねえ。………ソウジはお姉ちゃんの本質を知ってるかい?」

「本質?荒れた口調になったのは見たことあるけど…」

「例えるなら飛べるのにわざわざ車輪だけで凸凹道を走る飛行機…ってところだ。非効率で嫌悪なことに自ら首を突っ込む女だよ。」

「…意味が分からん。」

「簡潔を言おう…お姉ちゃんは私のことが大嫌いだ。だから、私に構いたがる。」

「は!?いや、そんな訳…」

「またレースも嫌いだ。だからトレーナーになった。」

「いや、そうはならんやろ!」

「そして何より…自分が嫌いだ。だから…誰かの幸せを優先する。」

「…嘘だろ?じゃあ、俺のことも本当は…」

「いや、君への愛だけは本物だよ。少なくとも私はお姉ちゃんが君に歪んだ表情を向けたのを見たことがない。」

「歪んだ表情か…」

 

言われてみればソウジにも覚えはある。アグネスタキオンが天皇賞(秋)と宝塚記念でゴールした直後、始めて研究室に来た時、アグネスタキオンが自身の身体で『アナザー』の実験を行ったのを知った時…確かにアグネスフライトは声をかける前にアグネスタキオンに一瞬歪んだ顔を向けていた。しかし、ソウジに対しては安田記念前に学園で会った時、暴走してスタンガンを当てられた時、合宿場で噛みつかれた時…全てアグネスフライトの素の顔だった。

 

「…」

「愛の力というのは未知数だ…さて、お姉ちゃんは完全に君の虜になった。これからどうするつもりかな。」

「俺としてはありだ。程よく肉が付いたいい足…、それに身体の相性も良かったし…、姉妹共々一生愛するよ。」

「…ハーレムの主にでもなったつもりかい。全く…問題はお姉ちゃんだけじゃないというのに。」

「カフェに関しては…うん。許してもらったとはいえ…何か誠意を見せないといけないよな…うん。…とりあえず、ジャコウネコの消化酵素でも培養して…」

「君はカフェをどうしたい?」

「綺麗で細い足…、身体の感度の良さ…、それにコーヒーを入れてくれる度に見せてくれる優しい笑顔……正直、嫁にしたい!」

「私の前でよく言えるよ…」

「いや!これは!その…んんん!途中でサンデーサイレンスになってたことに気付かなくてビックリしたな。」

「誤魔化せてないよ…結局、彼女も君の魔の手に堕ちたじゃないか。」

「魔の手じゃねぇよ。前尻尾だよ。」

「…ラマルクという学者が発表した進化論の中には面白い実験があったことを思い出したよ。確かネズミの尻尾を切る…」

 

ソウジの顔が青くなる。

 

「前尻尾じゃありません!XXXです!ほら、俺ってモルモットだから尻尾なんて無いし…だから、その実験だけはマジで止めて…ください!耳…は前にしたから…鼻や舌なら切ってもいいからさ…!!…やっぱり舌もダメだ!お前とベロチュゥ出来なくなる!XXXやXXXXXも…」

「ククク…君は本当に私を笑わせてくれるよ。そういえば二枚舌にする薬が完成してね…ワオキツネザルを参考にしているから上手く出来ていれば文字通りに舌が二枚に増える筈だよ。だからそれで出来たサブ舌を切るとして…何時飲むかねモルモット君?」

「結局切るつもり!?飲まないよ!」

「もし飲んでくれれば…XXXとXXXXXが同時に出来るのだが…何なら今夜私でしてみるかい?」

「うっ…!でも切られるんだよな……えーと、あ!そういえば、サンデーサイレンスがもう退院だった。トレーナー寮まで送ることになってるのだけど…正直、あの日の件で顔を見るのが怖いんだよな…」

「櫛で尻尾を解かせば機嫌は直るさ。」

「だといいが…」

「それで君は何時…」

 

「あっ!いたのだ。」

 

「シンコウウインディ?」

「君も参加していたのかい?」

 

これ以上は不味いと悟ったソウジが慌てて話題を変えるもアグネスタキオンが蒸し返す。さらにソウジが次の話題を考えていると目の前にシンコウウインディが表れた。

 

「…タキオン、有マ記念はおめでとうなのだ。」

「ありがとう…しかし、君がいるとは予想外だよ。」

「パパに無理言って付いてきたのだ。…これ、あげるのだ。」

 

アグネスタキオンはシンコウウインディからとある物を受け取った。

 

「花束?」

「お疲れ様なのだ。これからの活躍を…応援するのだ。…学園に残るのは予想外だったけど。」

「…ありがとう。君の気持ちは受け取ったよ。」

「ウインディちゃんの力が必要ならいつでも言って欲しいのだ!特別レースをもっと派手に…」

「早速だが今、1つ頼めるかな?」

「い、今!?何をお願いするつもりなのだ?」

「君の『因子』が欲しいんだ。」

「それくらいなら…お安いご用なのだ!協力するのだ。」ガチャ

 

ピッ、ピッ、ピー

 

シンコウウインディの『因子』を手に入れた。

 

「ありがとう…これでまた研究が進んでいくよ。」

「そう言われると嬉しいのだ…ソウジトレーナー!」

「どうした?」

「この前は練習の邪魔をしてごめんなさい…なのだ。後、ブリザードさんのトウモロコシもありがとう。」

「いいよいいよ。しばらくは食べれなくなるからそこは我慢してね。」

「それじゃ…ウインディちゃんはパパの所に戻るのだ。さらばなのだ。」

 

シンコウウインディはその場を後にした。

 

「…彼女もハーレムに入れる気かい?」

「何でだよ。タキオン、さてはお前…どんどんバカになってきているな?」

「失礼だな!?」

 

その後もアグネスタキオンとソウジは他愛ない会話を続けたのだ。

 

ーーー

 

「以上を持ちまして、アグネス家の新年会を終了いたします。ご参加していただいた皆様に感謝を…今後のアグネス家をよろしくお願いいたします。」

 

パチパチパチパチ

 

アグネスレディの挨拶により新年会が締められる。各自が帰っていく中、ソウジとアグネスタキオンはその場に残っていた。

 

「まだ来ないねぇ…」

「別に慌てる必要は無いけど……来たか!」

 

ソウジは自身の服装を確認し…姿勢を正す。すると、アグネスフライトが1人のウマ娘を連れてきたのだ。

 

「お待たせタキオンちゃん、ソウジさん!」

「ちょっとお時間いただくわよ。」

「いえ、こちらこそ…初めまして。私はタキオンさんの担当させていただいておりま…」

「固い挨拶は無しでいいから。…へぇ、フライトから聞いていた通りいい男ね…」じー

「あ、あの…"アグネスフローラ"さん?」

「お母さん!ソウジは私のだがっ?」

「いいえ!私のよ!」

「お姉ちゃんは違うだろ!」

「あらあら…モテモテね。あと、フローラでいいわ。」

「…はい。」

 

アグネスフライトが連れてきたの自身の母である『アグネスフローラ』だった。姉妹が言い争いをしている隣でアグネスフローラは言葉を続ける。

 

「んー、どっちも独身のまま行くのかなと思っていたけど…孫の顔を見れる日は近そうね。」

「…あの、それ…どういう意味…」

「あの2人をよろしくお願いしますね…ソウジトレーナー。」

「…フローラさん。申し上げにくいのですが…俺…他にも手を出してしまった人がいて…決して誠実な人間では…」

「全部フライトから聞いているわ…もちろん貴方の人柄についても。その上でもう一度言うわ。フライトとタキオンをよろしくお願いします。」

「はい!…必ず幸せにします!」

「ふー、1つ問題が片付いた。いやー、こっちはこっちで大変なことになっててね…お父さんが過去に担当していたメジロラモーヌとルビーちゃんの間に子供作っちゃってさ…」

「ダイイチルビーも!?本当に何してるのチヒロさん!」

「まぁ、お母さんの願いらしいけど…お陰でメジロと華麗なる一族の関係者が毎日大量に家に来て大変なのよ。終いにはシンボリ家の人も来るし…」

「うわぁ…大惨事ですね。」

「お母さんもお母さんでいつの間にか出来てるし。まさか、この年になって下の兄弟が増えるなんて…」

「…」あんぐり

 

アグネスフローラの言葉にただソウジが口が開く。同じく姉妹の言い争いも止まる。

 

「母さん!何それ!?初耳だけど!?」

「ラモーヌ君のことは聞いていたが…ルビー君まで…」

「…何でタキオンちゃんはラモーヌちゃんのことは知っているのよ!?」

「この前の暴露ガスの時にブライト君が教えてくれてだね…」

「…そもそも何でこうなったの?」

「メジロラモーヌは知らないけど…ルビーちゃんの方なら知ってるわ。その…ルビーちゃんの全ての引き継ぎが終わったから…お父さんが何か慰労しようとしたんだって。何がいいかルビーちゃんに聞いたら森林浴がしたいって答えたの。だから、いつものロッジに行ったのだけど…」

「ロッジ?」

「あぁ。トレーナー君は知らなかったね。元々はおじいちゃんが昔、実家から逃げるために買ったそうなのだが…いつしかチームメンバーでのキャンプとかBBQとかの交流イベントに使われるようになったんだ。」

「フラワーちゃんがいる時は本当にすごいテンションだったよね…いつの間にか電気風呂トイレエアコンWi-Fiまで完備していたし…」

「…話を続けるわ。森林浴を楽しんでいた2人だけど…ルビーちゃんが急に"アレ"になったの。」

「"アレ"…ってまさか…」

「…うん"アレ"。だからお父さん慌てて鞄から抑制薬を出そうと探したのだけど…何故か、それが入っていたケースだけ空になっていてね…後はお察しの通り。」

「…」

「ソウジさん。もしも2人に"アレ"が来た時は…フフフ。しっかりお相手してあげてね?」

「もう…」

「母さんったら…」

 

「「ソウジ(さん)はいつでも相手にしてくれるから私たちが"アレ"になることはないとも(わよ)。」」

 

「…そう。さて、いい時間だしそろそろ私たちも解散にしましょうか。」

「では、失礼します。」

「ソウジさん…また学園で!」

「またな、フライト。」

「これからはチームトレーナーとして忙しくなるだろうが…私との時間をしっかりと作りたまえよ。」

「もちろんだ。改めて…これからもよろしくなタキオン!」

「作成した『合成因子』が大量にあるからねえ…これからじっくりと調べていこうじゃないか!」

 

こうしてアグネスタキオンはレースから完全に引退した。

 

 

ーーー

 

後日のトレセン学園…ソウジのトレーナー室にチームメンバー全員が集まってきていた。

 

「今日から本格的にチームとして活動していく…みんな、よろしくな。」

『はい!』

「そしてサブトレーナーとして彼女も今日から本格的に加わる…来てくれ。」

「…」

『!』

 

入ってきたのはボブカットで目付きの悪い青鹿毛のウマ娘だった。

 

「…今さら挨拶がいるのかよ。」

「いるだろ…みてみろよ。」

 

「トレーナー…なのよね?」

「目付き怖い。」

「何か悪寒が…」

「フフフ…強そうな人ですね…」

 

「…」

 

みんなが警戒している中…ディープインパクトだけが無言でサンデーサイレンスを見つめている。

 

「あー、サンデーサイレンスだ。これでもG1を6勝してるエリートだ。」

 

「サンデーサイレンス!?カフェ先輩に取り憑いている…」

「つまり…本体?」

「イメージ通りの姿だった…」

「というかG1を…6勝ですって!?」

「…やっぱり、みんな知らなかったんだ。」

 

「まぁ、よろしく。でソウジ、聞きたいことがあるが…」

「何?」

「ここのチーム名は何だ?」

「チーム名…あ!決めてなかった…よしっ!チーム名を今から考えるぞ!」

 

ズコッ、といった音が部屋に響く。

 

「アンタね…」

「トレーナーらしいけど…」

「タキオンズに1票。」

「まずはみんなの意見を聞いてから…」

「…別に何でもいい。」

 

「タキオンは名前、何がいいと思う?」

 

ソウジはアグネスタキオンへと質問を投げる。アグネスタキオンはパソコンに目を向けたまま返事をする。

 

「…ん?名前かい?『エレメント』とかはどうだい?」カタカタカタッ

 

「いいわね!」

「『因子』から取ったのかな…」

「タキオンズ…」

「だからみんなの意見をですね…」

「…ふわぁ~」

 

「もう一捻り欲しいか…名前というのは非常に大事だからねぇ…」カタカタカタッ

「いや…それに決めた!チーム名は『エレメント』だ!チーム『エレメント』…活動を開始する!」

 

『はい!』

 

「…え?チームの名前だったのかい?」

 

ソウジは専属トレーナーからチームトレーナーとして、アグネスタキオンは出走者から研究者として新たな道を進む。しかし、互いを繋いだ『因子』の研究はこれからも続いていくのだろう。




・おまけ
アグネスフローラ…1987年生まれの鹿毛の牝馬。主なG1勝利は桜花賞。無敗のまま5連勝し、桜花賞を勝利するもオークスではサイシンサニーに敗れ2着となる。その後は屈腱炎により引退…繁殖牝馬となりアグネスタキオンとアグネスフライトを生んだ。また、同期にはメジロマックイーンやダイタクヘリオスなどがおり、ダイイチルビーとはオークスで、イクノディクタスとは桜花賞とオークス両方で対戦したことがある。


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最終話 超光速の貴公子 + モルモット = 『合成因子』

完結です。昨日はシャケを食べました。


ある日のトレセン学園、アグネスタキオンによる特別レースが行われようとしていた。

 

「さぁ!今回も特別レースを行って行こうじゃないか!」

 

パチパチパチパチ

 

「さてさて…今回は今まで『合成因子』たちと私の新たな技術を組み合わせた超々スペシャルなレースとなる。先に言っておくが今回のレースに『アナザー』はいないよ!さて『ウマ人』たちよ…来たまえ!」

 

ザッ

 

アグネスタキオンに呼ばれ数十人のウマ娘…否、『ウマ人』がぞろぞろとアグネスタキオンの前へと姿を表したのだ。

 

「『ウマ人』たちが…いっぱい!?」

「あの人以外に『ウマ人』になれた人がいたというの!?」

 

周りの観客が騒ぐのを見てアグネスタキオンの頬が上がる。

 

「これが私の新技術…『量産型ウマ人』だ!まぁ、単なるソウジのクローンなのだけど。1レース走れるレベルまで調整出来てねえ……さて、順番に紹介していこうじゃないか!」

 

「『合成因子』第一号…『ジンソニック』!!」

 

「第二号…『クイーンフォノン』!!」

 

「第二十二号…『パールラスター』!!」

 

「第二十三号…『キューティフォトン』!!」

 

「第三十七号…『シュンミンアカツキ』!!」

 

「第五十五号…『へアリーブラッド』!!」

 

「第五十六号…『ヴァンプスカー』!!」

 

「第五十七号…『モーションブラー』!!」

 

「第六十六号…『クリスタルディネベ』!!」

 

「第七十八号…『ルストマグネット』!!」

 

「第八十一号…『クロームグレイン』!!」

 

「第九十一号…『メテオスバル』!!」

 

「第九十九号…『ライトニンプリンス』!!」

 

「第百四号…『レックスファタリス』!!」

 

「番外『合成因子』…『シードフレア』!『クリロバーカー』!!『ドリームジーニー』!!!」

 

 

「さぁ…最後に私自身の体から生み出した…『ハリボテタキオン』だ。この18人でレースをしてもらうよ。」

 

ーーー

 

「ピスピース!実況担当のゴルシちゃんだぞ!お前ら、久々の特別レースだなっ!」

「ピスピース。解説担当のメジロマックイーンですわ。」

「すっかりマックちゃんもこの挨拶が板についてきたな。」

「貴方が無理やり何度もやらせたからでしょうが!」

「なら帰るか?」

「…いえ、ここまで来た以上は最後までしていきますわよ。」

「よろしい。と言っても、『合成因子』の奴らはもう紹介は要らないか。全員、タキオンとの組み合わせだしな。番外の奴らがフライトだっけ?それより…最後の『ハリボテタキオン』って何だよ。」

「タキオンさんの勝負服を着て…紙袋を被ってますわね。」

「走りにくそうだよな~、他には尻尾の色から栗毛ということは分かるんだけど…何なんだ?」

「さっき、タキオンさん自身のクローンだと仰っていたでしょ。」

「いやいやいや。そんな非現実的なことはあのモルモット以外には適応されないって!」

「……はっ!…確かに…言われてみれば…」

 

「まっ、何でもいっか!ゲートインが終わったみたいだしそろそろ…スタートしたぞ!…あれ?レースの条件何だっけ?」

「左回りの2000mですわよ!」

「そうだったな…おっと!いきなりハプニング!『シュンミンアカツキ』と『ライトニンプリンス』がゲートを出た直後から喧嘩を始めたぞ!」

「レースをしてくださいまし!『ライトニンプリンス』が『シュンミンアカツキ』の攻撃をかわして噛みつきにかかる…って完全に別のバトルになってますわよ!」

「無視しろ無視。さて…先頭にきたのは『メテオスバル』だ。2番争いに『へアリーブラッド』と『レックスファタリス』!」

「4番は内のポジションを取った『シードフレア』、そのすぐ外に『モーションブラー』。…最初のコーナーを曲がって向こう正面に入っていきますわね。逃げているのは『メテオスバル』だけですわね。」

 

「結構ごちゃごちゃしてきたな…しかし、先頭は『メテオスバル』、2番争いは『へアリーブラッド』と『レックスファタリス』って感じで安定しているぞ!4番争いに…お!『ハリボテタキオン』が抜けてきた!5番以降が…ごちゃごちゃしているな!」

「この集団は『パールラスター』、『クリスタルディネベ』、『モーションブラー』が並んで…『キューティーフォトン』と『シードフレア』が間を狙っていますわ。次の中団は『ルストマグネット』を先頭に『クリロバーカー』と『クイーンフォノン』が並び、外から捲りを狙う『ジンソニック』、内で足を溜めている『クロームグレイン』。3バ身離れて、『ヴァンプスカラー』と『ドリームジーニー』が後方からのレースになっていますわ!」

 

「先頭の『メテオスバル』が3,4コーナーに入った!そして、後続もペースを上げてきているが…『へアリーブラッド』、ここでさらにペースを上げてきた!合わせるように『レックスファタリス』も加速!『ハリボテタキオン』が外へと回ったぞ!後続も来ているが…まだリードがある!」

「最後の直線ですが…『メテオスバル』と『へアリーブラッド』の差が無くなってきましたわ。これは…『へアリーブラッド』が完全に抜け出しました!『レックスファタリス』が食らいついておりますが…これは厳しいですわね!」

「『ハリボテタキオン』に…後続も次々仕掛けきた!だが『へアリーブラッド』速い!『ハリボテタキオン』以外付いてこれていない!」

「ですが『ハリボテタキオン』、凄い伸び!差が4バ身…3バ身…2バ身…もう少し!」

「と、ここで『へアリーブラッド』がゴールインだ!流石はタキオンの1×2の力だ!強すぎるぜ!3着争いは『レックスファタリス』か『クロームグレイン』!」

 

パチパチパチパチ

 

『へアリーブラッド』のゴール直後、観客から多くの拍手が送られた。

 

「お疲れ様だ。『へアリーブラッド』の楽勝かと思いきや…見応えのあるレースだったぜ!」

「『ハリボテタキオン』さんの末脚が素晴らしかったですわね。しかし…まだ伸びると思いましたわ。いえ、クローンなのは分かっているのですが…」

「そうだな!成長に期待だな!」

「…成長?」

「じゃあ、レースと私たちの出番はここで終わりだ!お前ら、最後まで見ていってくれよ!バイバイ~!」

 

ーーー

 

数時間後のアグネスタキオンの研究室…『へアリーブラッド』から人間に戻ったソウジとアグネスタキオンと…紙袋を被った『ハリボテタキオン』がそこにいた。

 

「…おいタキオン、14体しか帰ってきてないぞ。後の2体は?」

「おかしいねえ。レースの疲労で帰巣本能が弱ったのだろうか…」

「…とりあえず、残りは俺が回収に向かうから…フライトに見つかる前に"ミック"のケアは任せたよ。」

「分かっているよ。」

 

ソウジはそのまま部屋を後にした。

 

「…ねえ。これって取っていい?」

「あぁ、いいとも。被り心地はどうだった…"ミック"。」

「視覚、聴覚、嗅覚と走る上では邪魔にならなかったよ。でも…この勝負服は私に合わないかな。」

「…これは想定外だ。『ソウジペーパー』によるフルフェイスの方を重視にしていたからねえ。」

「その名前はどうなの…次からは被りたくなくなるのだけど…」

「原料に彼の細胞があるのだからしょうがないだろ!さて、着替え終わったようだし…横になりたまえ。」

「はいはい…お願いするねママ(・・)。」

 

『ハリボテタキオン』…否、"ミック"と呼ばれた栗毛のウマ娘は紙袋を取り、ベッドへと寝転んだ。そしてアグネスタキオンが足を揉み始める。

 

「やれやれ…こういうのは私の専門外なのだがね…」

パパ(・・)に何回もこういうことしてもらったのでしょ?今さらじゃん。」

「…ふむ。まだまだ伸び代のある筋肉だ。お姉ちゃんによる指導の成果がしっかり出てきているねえ。来月にはデビューだっけ?」

「…うん。ママを超えるかもね。」

「言ってくれるね…だが、ケガだけは気をつけたまえよ。」

「分かってる。」

 

「タキオンちゃん!」

 

勢いよく研究室の扉が開く。アグネスフライトが中に入ってきたのだ。

 

「お姉ちゃん!どうかしたかい?」

「どうかしたかい?…じゃないわよ!何勝手に"ミック"ちゃんを走らせているのよ!」

「安心したまえ。どこも故障はしていないから。」

「そういう問題じゃないでしょ!」

「トレーナー…」

「"ミック"ちゃんも走るなら走るで私に報告しなさいよ!私の目から離れたところでケガなんてされた日には…」

「私がそんなへまをするわけ無いだろ。」

「ソウジさんもソウジさんよ…ってあれ?ソウジさんは?」

「あぁ、その紙袋がソウジだよ。」

「何で自分の夫を紙袋に改造しちゃってるの!?ソウジさん…」

 

紙袋を両手に持ち、ソウジの名を呼ぶアグネスフライト。すると…

 

「階段に引っ掛かっていた『ジンソニック』と『ドリームジーニー』をガッチャしてきたぞ!」

 

2人の『ウマ人』を両脇に抱えたソウジが戻ってきた。

 

「ソウジさん!良かった~、紙袋になったと思っていました~」

「フライトォ!?いや、"ミック"の件はだな…」

「…とりあえず、うまぴょいしましょう!私を心配させた罰です!」

「ちょっ!まだ勤務時間…ぎゃー!!」

 

そして、アグネスフライトにより連れ去られた。

 

「…いいの?」

「いいんだよ。とりあえず、残りの『合成因子』を回収して…」

「…ねぇ、ママってパパのどこを好きになったの?」

「んー、顔とかご飯とか臭いとか色々あるから…絞りきれないねえ。それに元々はソウジの方が私に惚れたんだ…」

「えー、嘘だー。ブリザードママかフライトママが正妻でしょ?」

「失礼な!私が正妻だよ!ソウジが私の走りに惚れたのは事実だ…"ミック"もそういう人と会える日が来るかもしれないねえ。」

「ならトレーナーを変えないと…フライトママだとレース以外何も出来ないし…」

「焦る必要はないさ。走ることは嫌いかい?」

「…嫌いではない。ただ…他に好きなこともない。」

「なら、答えが出るまででも走ってみたらいいさ。」

「…うん。」

 

「失礼します!タキオンさん、トレーナー来ませんでしたか?」

 

「…"コン"ちゃん。」

「おぉ"ミック"!ここにいたのか!さっきの特別レースみたか?『ハリボテタキオン』ってやつが凄かったよな!」

「うん。あとちょっとだった…でも無敗三冠の"コン"ちゃんなら『へアリーブラッド』に勝てたかも…」

「へへっ!よせよ…じゃなかった!トレーナーは?」

「えーと、パパを連れてミーティングしにいったよ。」

「あちゃ~、入れ違いか。今後のレースプランについて相談したかったけど…いっか。"ミック"、今からチームのみんなでカラオケでも行こうと思うんだけど…お前もどうだ?」

「あぅ…私、ウイニングライブ以外のだと音痴だしな…どうしよう…」

「行ってくるといいさ。今だから見えてくるものもある。」

「ママ…うん!"コン"ちゃん、一緒に行こ!」

「サンキュー!じゃあ、残りの9人にも声かけに行くぞ!」

「私が最初だったの!?」

 

"ミック"と"コン"と呼ばれたウマ娘は研究室を後にする。残ったのアグネスタキオンただ1人…パソコンのスイッチを入れた。

 

「さて…今回の特別レースのデータと『ソウジペーパー』についての詳細を整理しないとねえ。後は…」

 

研究室にカタカタとキーボードのタイピング音が響く。1時間程が経過して…アグネスタキオンは紅茶を入れるために席から離れた。その画面の最後にはこう書いてあった。

 

 

『以上が我が愛娘『ミックスエレメンツ』の成長レポートである。トゥインクルシリーズでデビューし、どのような活躍をしていくのか…今後に大きく期待。』




本編はここで終わりといたします。1年9ヶ月…ここまで長い間、読んでいただきありがとうございました。

とりあえず、1話から読み返し…誤字の修正や加執をしていきつつ、書きたくなったおまけの話をいくつか書いていこうと思います。また別の作品を投稿することがあればそちらもよろしくお願いします。

最後にもう一度…ここまで読んでいただきありがとうございました。


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その後の話1 きっと空を

アグネスフライト…あなたが亡くなり1年が経ちました。天国ではゆっくり過ごせていますか?
…この作品では私はあなたの名前を何度も使わせていただきました。今回も経緯を込めて使わせていただきます…どうぞ!


アグネスフライトは中央トレセン学園のチームトレーナーである。トレーナーになり10年以上の時が流れ…現在、彼女は11人ものウマ娘と契約した。

なかなか勝てないウマ娘もいた、ケガに泣いたウマ娘もいた、中には無敗の三冠達成というとんでもない偉業を達成したウマ娘もいた。そんな経緯もあり、今やアグネスフライトは名トレーナーの1人である。そして未デビューだった最後の1人…自身の姪でもある『ミックスエレメンツ』が勝利したことで無事に全員がメイクデビューを果たしたのだ。

 

そして今日、東京レース場にて担当しているウマ娘の1人が出走する…ラストランとして。

 

「トレーナー、プイさん…行ってきます!」

「行ってらっしゃい…"コン"ちゃん。」

「…頑張って。」

 

『さぁ、三冠ウマ娘が入場してきました。

担当トレーナーのアグネスフライトがラストランを決めたこのジャパンCの舞台で…飛行機雲の軌跡を残せるのか…『コントレイル』!』

 

パチパチパチパチ

 

レース場の観客席からは大きな拍手が聞こえてきた。

 

ーーー

 

「フラ…んん!トレーナー、コンちゃん…勝てるかな?」

「大丈夫だよ、プイちゃんが応援してるから。」

「プイちゃん…って、えぇ!?ディディディ…ディープインパクトさん!?」

「…どうも。」

 

コントレイルを心配していたミックスエレメンツだったが…アグネスフライトの隣にいたウマ娘に目玉が飛び出した。ディープインパクト…無敗の三冠を達成した日本を代表するウマ娘の1人である。そんな彼女が自分の目の前にいて、軽い感じに挨拶をしてきたのだ。

 

「あ、あああ…何でこんな所に彼女ががが…」

「落ち着いてミックちゃん。ソウジさんが担当してたからその縁で…」

「パパが!ディープインパクトさんの?担当!?」

「…もしかしてソウジの娘?…正確にはソウジのサブトレーナーのデサイレンが担当だったよ。」

「デサイレン?」

「…アメリカで活躍してたウマ娘。…たまに私の身体に憑いてくる…生霊?」

「生霊!?そんなのサブトレーナーにしてた…パパって何者なの?」

「…スーパーモルモット、かな。…後はかなりのXXXX…テクニシャンで気持ちよかった。…そろそろレースが始まるよ。」

「待って!今何かとんでもないこと…」

 

頬を赤く染めながら淡々と言うディープインパクトに開いた口が塞がらなくなったミックスエレメンツ。

 

「ほら、ミックちゃん!あなただけ特別にこっちに連れてきたんだからしっかり見なさいよ!それに今日みるレースはジャパンCだけじゃないからね。」

「フライトママ!パパって…」

「ここではトレーナー、ね。そういう話なら後で聞くから。」

「…後でパパにも問い詰めないと。」

「…久々に会いたくなってきた。…フライトさん、XX飲むから()まぴょいしてもいい?」

「いいけど今は"アレ"になったカフェちゃん相手してるし…明日は私とグラスちゃんの番だから…早くても3日は後になるかな。ソウジさんに連絡させるからヤったら写真ちょうだい。プイちゃんの両手ピースでね。」

「…分かった。」

「いやいやいや、何もよくないよ!そもそもカフェさんとグラスさんって誰!?パパってブリザードママやフライトママ以外にも爛れた関係者いたの!?ディープインパクトさんも『分かった』じゃないですよ!?」

「ほら、ファンファーレ鳴ったよ!」

 

ミックスエレメンツがモヤモヤしながらもターフへと目を移し…ジャパンCが始まった。

 

ーーー

 

『第41回ジャパンCが…始まりました!

コントレイル良いスタート、ブルームは後方から。

キセキは………前にいかないようですね。

先頭争いはアリストテレスとシャドウディーヴァ。

ワグネリアン、サンレイポケット、シャフリヤールと続き、第1コーナーをカーブしました。

コントレイルは中団の前の方にポジションを取りました。』

 

「これってどうなの?」

「…囲まれてない。…内枠引いてるのもあって…いい位置。」

「大丈夫。コンちゃんなら…絶対…大丈夫。」

 

アグネスフライトは拳に力を込める。

 

 

『各ウマ娘たちが向正面へと入ってきました。

先頭はアリストテレス…2、3バ身離れてワグネリアンとシャドウディーヴァ、さらにオーソリティが前から4番手。

今年のダービーウマ娘シャフリヤールは前から5番目、その後ろからはサンレイポケット。

中団コントレイル、その外ユーバーレーベン……キセキだ!

キセキが後方から一気に上がってきました!』

 

「キセキ!キセキ!キセキ!」

「捲れ!捲れ!捲れ!」

 

「あの位置から上がっていくの!?」

「これでこそキセキちゃんね…」

「…なかなか出来ない。…私でももう少し足を溜める。」

「前のペース…崩れない?」

「崩れるわね…でも、コンちゃんなら…」

 

アグネスフライトの拳から血が滲む。

 

 

『グランドグローリー、ブルームと続き、ここで外からキセキがかわして前にいきます!

グランドグローリー、ブルームに続いてジャパン。

その後ろに続くのはロードマイウェイ、ユーキャンスマイル、さらにはウインドジャマ―。

モズベッロとマカヒキが並び…最後方からはムイトオブリガード。

先頭はキセキ!

6~7バ身離して先頭指定席にキセキ!

そのまま第4コーナーカーブへ入りました!』

 

「キセキ!キセキ!キセキ!」

「粘れ!粘れ!粘れ!」

 

「…」ガタガタガタガタッ

「ーーフライトママ!?」

「…フライトさん!?」

 

レースは終盤、ウマ娘たちは最後の直線に入ろうとしていた。そんな中、関係者席にいたアグネスフライトの身体が突然に震えだす。ミックスエレメンツ、さらにはディープインパクトまでもが驚いた。

 

「…すぅ。」

 

震えが止まったかと思えば、目を閉じて一気に息を吸う。

 

 

『最後の直線!

キセキのリードが3バ身から4バ身…ここでオーソリティとアリストテレス、さらに内からシャドウディーヴァが差を詰める。

さらには外から今年のダービーウマ娘シャフリヤールと昨年のダービーウマ娘コントレイルだ!』

 

「コントレイル頑張れっ!!」

「ーー!?」キーン

「…!?」キーン

「コントレイル頑張れ!来い来い来い来いコントレイルーッ!!」

 

大声で担当の名を叫ぶアグネスフライト…コントレイルはそれに応えるように加速する。そして…

 

 

『先頭はオーソリティ!

しかし外からコントレイル、コントレイルだ!

コントレイルがかわした!

コントレイル、完全に抜け出して…もう他には何も来ない!

空の彼方に最後の軌跡、コントレイル!!』

 

ワアッーーーッ!!

 

「はぁ…はぁ…見た?コンちゃん…コンちゃん…勝った!コンちゃん勝った!コンちゃん勝ったよ!!…あれ?」

「…」

「…流石にうるさい。」

 

喜ぶアグネスフライトのすぐ側には突然の大音量により目を回したミックスエレメンツとそれを支えるディープインパクトがいた。

 

 

『コントレイルやりました!

師のアグネスフライトが勝ったこのレースで有終の美を飾って見せました!

"飛行機(アグネスフライト)"に続く"飛行機雲(コントレイル)"…これが本来の姿です。』

 

ーーー

 

『先頭はファストフォース!

外からはエイティーンガールとタイセイビジョン!

ここでエイティーンガールが抜け出してゴールイン!!』

 

パチパチパチパチ

 

コントレイルのウイニングライブが終わり、他のチームメンバーがいる阪神レース場の最後に行われるG3レースの京阪杯を見ていた。担当している2人が出走しており、結果は1着、3着という2人とも掲示板に入るという大活躍だった。

 

「トレーナー!エイトちゃんが勝ったよ!フォースちゃんも3着に粘ったよ!」

「…すごい!コンちゃんの勝利が…繋がったのね!…あれ!?シックスちゃんから連絡来てた…」

「何て来てるの?」

「『コンちゃん、ラストランお疲れ様。』だってさ。」

「そっか…うん。ラストランか…」

「ほら!しゃきっとしなさい!まだコンちゃんのレースは夢の舞台(ドリームトロフィー)で続いていくのよ。」

「トレーナー…」

「エイトちゃんたちのウイニングライブが終わったら取材だから…それまで心の整理は終わらせておきなさい。」

「はいっ!」

 

笑顔で答えるコントレイル。彼女が駆けたターフにまた新たな軌跡が刻まれた。

 

 

ーーー

 

「…え?…今からでいいの?…カフェが"アレ"だからデサイレンを私に憑かせたいんだ…最低♡…冗談だよ、1割くらいは。でも直接デサイレン本人を呼べば喜んで…ん?制服?…まだ着れるはずだけど…うん、持っていく。アレは無しで……今回こそはちゃんと飲むから。…また後でね…私の虜(ソウジ)♡」




・アグネスフライトの担当ウマ娘たち

0:現役。無敗の3冠を達成した。ラストランであるジャパンCを勝利。アグネスフライトとディープインパクトに憧れている。トゥインクル引退後はドリームへと移籍予定。

1:クラシック級で有マ記念を勝利。凱旋門賞にも挑んだ。有マ記念の他にG3を2勝、G2を2勝している。ドリームへと移籍済み。

2:現役。アグネスタキオンとソウジの娘。デビュー戦を勝利。現在1勝。

3:菊花賞を勝利し…アグネスフライトにトレーナーとしての初G1勝利を捧げた。しかし、次走の有マ記念でのケガによりトゥインクル引退。ドリームへと移籍した現在も復帰に向けて治療中。

4:現役。中央での敗北が重なり地方へ移籍していたがアグネスフライトにスカウトされたことで中央へと再移籍…CBC賞をレコード勝利。ロードカナロアとサクラバクシンオーに憧れている。地方時含め、現在6勝。

5:短距離G1である高松宮記念とスプリンターズSを2つとも勝利した名スプリンター、針のような鋭い末脚を持つ。ドリームに移籍済み。

6:アグネスフライトが初めて契約したウマ娘。クラシック級で同期のディープインパクトに4度敗れる。翌年の京都記念で初重賞を勝利したもののケガによりレースから引退。チームを離れアイルランドに留学した後、トレーナー試験に合格。現在はアグネスフライトのサブトレーナーとしてチームにいる。たまにサンデーサイレンスにより憑依される。

7:現役。ドリームジャーニーに憧れている。オークスと秋華賞に出走したものの敗れた。現在2勝、秋華賞トライアルの重賞では2着に入る。

8:現役。アグネスタキオンに憧れている。コントレイルのラストラン日に重賞2勝目を勝ち取った。現在6勝。主な勝利はキーンランドCと京阪杯。

9:オルフェーヴルに勝ったことがある。勝った重賞は意外にもG1を1回のみ。ノースフライトの大ファン。ドリームに移籍済み。

10:現役。トゥインクルの大ベテランでフリースタイルの絶対王者。有マ記念にも出走したこともある。現在18勝、内フリースタイルの重賞が13勝(G1は7勝)。

ーーー
▼登場人物にコントレイルが追加されました


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その後の話2 魔女は銅にあこがれて

某SM百合アニメにハマりました。好きなキャラは小夜ちゃんです。私はもう駄目です。


時はスイープトウショウがドリームトロフィーリーグを引退した数年後…

 

「使い魔~!今夜こそは一緒に出かけるわよ!」

「…すまないスイープ。今日はアグネスフライトと打ち合わせがあるから…」

「フライトさんと!?…まさか浮気じゃないでしょうね?」じー

「もしそうなら俺がソウジさんに殺されるわ!!……『ブラストワンピース』について前担当である俺の話が聞きたいんだって。あと、『シックスセンス』も一緒に来るから2人だけって訳じゃないから。」

「ドリームに移籍した時に担当が変わったのでしょ?それってどうしても今日しないとダメなの?」

「契約が終わったからといって、縁が切れる訳じゃないよ。トレーナーは助け合い。」

「ねぇ…アタシも一緒じゃダメ?」

「流石にダメだよ…」

「…分かってるわ。言ってみただけ。」

「ごめんねスイープ、いってきます。」

 

………

 

とあるバーにてスイープトウショウは1人で注文したカクテルが来るのを待っていた。

 

「むぅ…何でよ…何時になったら一緒になれるのよぉ…」

「何があったかは知らないけど……ほら、スクリュー・ドライバーが出来たよ。アタシで良かったら話し聞くよ。」

「…ありがとうネイチャ。」

 

この店のバーテンダーであるナイスネイチャよりカクテルを渡され…スイープトウショウは一口飲む。

 

「あら…美味しいわね。いいオレンジジュース使ってるの?」

「まぁ、搾りたてってのはあるかな…」

「今度来たときは使い魔にも飲ませてあげようかしら…はぁ。」

「何々?旦那さんの悩み?そういえばハジメトレーナーと結婚してたんだっけ?凄いよね…三冠ウマ娘の『オルフェーヴル』とかを担当してる名トレーナーなんでしょ?」

「…そうね。それのお陰でいつも大忙し…ちゃんと休めているのか心配なのよね。」

「なるほどね。ちなみにアタシの旦那はパティシエなんだけど、最近ホテル勤めになったからか帰りが遅くなってね…あんまり休めてなさそうなんだわ。」

「ふーん…ネイチャの旦那もパティシエなんだ。キタサンと同じね。」

「キタッ…!?」

「…?どうしたの?」

「何でもない何でもない。」

 

急に青い顔になるナイスネイチャ。慌てて話題を切り替える。

 

「まぁ、トレーナー業って忙しいからしょうがないと思うよ。この前はフライトさんも忙しくて子供作れないって愚痴ってたわ。」

「…忘れがちだけどフライトさんって結婚してないわよ。タキオンの旦那のところに転がりこんでるだけ。」

「あそこは…うん、あんまり見ない例外中の例外だから。」

「奥さんいる男と子供作るってどうなのよ…」

「うぐっ!」

「…ネイチャ?」

「…何でもないから。本当に…ほら、グラスが空になったよ。他に何か飲む?」

「……オレンジブロッサム。」

「あいよー!」

 

オーダー受けたナイスネイチャはレシピ通りにシェイカーに材料を入れて…シャカシャカの振り始める。

 

「ねぇ…ネイチャ。」

「何々?」

「ネイチャって…子供っているの?」

「…はい?」ピタッ

「…アタシ、来年ママになるの。だから…ちゃんとお世話とかが出来るか不安で…」

「あ、あぁ…そういうことね。2人いるけど…」

「2人いるの!?ねぇ…この後時間ある?色々と教えて欲しくて…」

「アタシでいいの?元チームメイトのカレンとかデュランダルの方がよくない?」

「ダメよ!アイツらアタシの使い魔を()ろうとしてくるもん!」

「ならカワカミとかフラワーは…」

「…結婚してないから論外!」

「エアグルーヴさんなら…」

「今、海外!」

「キタサンは?」

「聞ける訳ないでしょ!…アタシの方がお姉さんなんだからさ。」

「…分かった分かった。でも今日は流石にダメかな…空いてる日をLANEで送るから…」

「決定ね、約束よ!よろしくねネイチャ先生!」

「先生か……デジャブだ。それはそうと…オレンジブロッサムが完成だよ。」

「いただくわ……ふぅ。ごちそうさま、会計をお願いするわね。」ゴクゴク

 

出されたカクテルを一気に飲み、スイープトウショウはバーを後にした。

 

ーーー

 

後日…ナイスネイチャがスイープトウショウの家へと訪ねてくる。

 

「お邪魔しますよっと。」

「いらっしゃい!…あら?いい臭いがするわね!スイーツ?」

「正解~、旦那が持っていけって作ってくれたんだわ。ほら、学園近くにあったあのケーキ屋覚えてる?」

「えぇ…デュランダルが食べ尽くして出禁になったあのケーキ屋でしょ?…アタシが一緒に行かなかったばかりに…」ずーん

「あちゃー、嫌なこと思い出させちゃったか…。旦那、最初はそこで働いていたんだわ。そこで問題!この箱には何が入ってると思う?」

「ショートケーキね!1番人気ってメニューに書いてあったし!」

 

ナイスネイチャがニヤリと笑い、箱からスイーツを取り出した。出てきたのは糸のようなクリームを上から纏った黄色の栗が乗ったケーキ…

 

「残念…答えはモンブランだよ。」

「へー、そうなんだ。ちなみにアタシが1番多く食べたのもそれよ。」

「お?目の付け所がいいねぇ~」

「アタシが直接買った訳じゃないわ…キタサンが差し入れでよく持ってきてくれたの!」

「…その時からかよっ!!」

「ネイチャ?」

「あー、ごめんごめん。とりあえず、まずはこれでも食べようか。」

「そうね…グランマから貰った特製のハーブティーを入れてあげるわ。少し待ってなさい!」

 

ナイスネイチャの持ってきたスイーツを2人は味わった。

 

ーーー

 

「で、まずは何をしたらいいの?」

「人にもよるけど…必要なものを揃えることかな~」

「思いついたのはもう買ってあるわよ!ほら!」

「どれどれ…」

 

まじまじとスイープトウショウの用意した物をみるナイスネイチャ…そして、苦笑いをした。その顔にスイープトウショウは怯む。

 

「な、何か足りないのあった?」

「スイープ自身のは無いの?」

「アタシ?」

「そうそう、準備が必要なのは赤ちゃんの分だけじゃないんだよ。」

「そうなのね…」

「まぁ、知らなかったらそんなもんよ。アタシもスカイから聞いて知ったくらいだし。」

「スカイ…セイウンスカイのこと?意外な繋がりね。」

「ま、まぁね…とりあえず、他に必要そうなのは後でメモにでもまとめておくから。」

 

ナイスネイチャは誤魔化すようにスイープトウショウが出した物を一緒に片付けた。

 

ーーー

 

数分後、スイープトウショウの手にはミルクの入った哺乳瓶があった。ミルクといってもただの牛乳を温めて飲める温度にまで冷やしただけの物であるが。

 

「こうやって冷やすのね…次は何?」

「いや、物が揃ってた時点で大体はいけるから…これくらいでいいと思うよ。」

「えー…他に何か出来ることないの?」

「他ねぇ。んー、イメージとか?」

「イメージか…分かったわ!やってみる!」グイッ

「んぐ!?」

 

スイープトウショウはナイスネイチャの口におしゃぶりを入れて、自身の膝へと寝かせた。突然なことにナイスネイチャの目が丸くなる。

 

「えーと、よしよし…」

「んっ!」

「コラコラ!暴れないの!」ガシッ

「んん!!」

「とりあえず、いつも使い魔に使ってるので抑えて…」

 

ガチャ、ガチャ

 

そして、スイープトウショウは左手のおしゃぶりでナイスネイチャの口を塞ぎつつ、右手を器用に使って腕と足を手錠で拘束する。

 

「んー!?」

「まずは頭を撫でる…」なでなで

「ん!んん!んー!」

「あっ!ミルクあげないと!」すぽっ

「ぷはっ!ちょっ…スイープ!待っ…んぐ!」

 

ナイスネイチャの口からおしゃぶりを抜いたかと思えば次に哺乳瓶を突っ込むスイープトウショウ。

 

「いっぱい飲みなさい!」

「んんん…んぐっ!」ゴクゴク…ドボッ!

「あら…失敗かしら。えーと、鼻を下に向けて逆流しないように…」

「ん、んん…」ゴクゴク

 

スイープトウショウはミルクをナイスネイチャへと飲ませる。しかし、むせたのかナイスネイチャの鼻からミルクが漏れる。

スイープトウショウはそれをティッシュで拭き、ナイスネイチャの頭を位置を上げて、再びミルクを飲ませる。哺乳瓶に入った全てのミルクを飲みきるまでナイスネイチャが解放されることはなかった。

 

………

 

ミルクが飲み終わり、手錠を外されたナイスネイチャは鬼の形相でスイープトウショウを睨む。スイープトウショウは困惑しながらも身体が反射的に正座して動けなくなっていた。

 

「スイ~プ~?何か言うことは~?」

「…えーと、ごめんなさい?」しゅん

「はぁ…どんなイメージでそうなったの。あんた、赤ちゃんが暴れたら手錠で抑える気なの?」

「あ!そうね…小さい手錠も買っておかないと!」

「違うわっ!…そもそも何でそんな物があるの?」

「え?ネイチャの所にはないの?」

「ある訳ないでしょ!手錠を何だと思ってるの?」

「決まってるじゃない…愛情の証よ!」

 

耳と尻尾を激しくと揺らして答えるスイープトウショウにナイスネイチャは頭を抑える。

 

「…誰から聞いたの…本当にマジで!」

「使い魔よ!付けたらとっても喜んでくれるの♪く、首輪は夜の営みでしか付け無いわよ!」

「普通は付けないからね!…いや、キタサンはがっつり付けてたわ。」

「ほら!キタサンはちゃんと分かって…あれ?何でネイチャがキタサンのそんなこと知ってるのよ?」

 

ナイスネイチャの顔が青くなる。そして、また気まずそうにスイープトウショウから目を反らした。

 

「…悪いけど、詳しくは言えないんだわ…これが。」

「怪しいわね…まぁ、いいわ。キタサン本人に聞くだけだから。」

「うーん、うん。そうしてくれるかな…あはは。因みにフライトさんは電気責めが好きらしいよ。」

「うん、知ってる。アタシ、一回やられたし。」

「…え?」

「ほら!フライトさんが何人もスタンガンで捕まえては背負って捕まえては背負ってをしたあの事件!…アタシ、グルーヴさんの次にやられたのよ。」

「…そうだった。そんな事件あったわ…」

 

ナイスネイチャは遠い目になった。

 

「それで…アタシのママ魔法はどうだったの?」

「…うん、ハッキリ言うと酷すぎるわ。本当にしてたら赤ちゃん、泣くどころの騒ぎじゃないからね。」

「そんな…」

「まぁ、アタシも出来る範囲で協力してあげるからさ…そんなに悲観しなくていいよ。最初は誰だって不安なんだから。」

「ネイチャ…」

「とりあえず、手錠は使わない…いい?」

「分かったわよ…」

 

こうして、ナイスネイチャによる育児予習は終了となった。

 

………

 

「ただいま、スイープ。」

「お帰り、使い魔~♪ご飯にする?お風呂にする?それとも…」

「カ・レ・ン?」

「ぎゃーーっ!?何でアンタがいるのよ!」

「……」ふっ

「デュランダル!?アンタまで…」

「いつスイープが産んでもいいようにサポートしてくれるそうだ。」

「絶対違うわよ!あわよくば使い魔を自分の物にしたいと思ってるだけよ!」

「そんなことないよ~!確かにお兄ちゃんのことは今も大好きだけどぉ…」

「…」コクッ

「スイープちゃんの幸せの支えになりたいだけだよ~」じー

「…」じー

「ん?」

「使い魔の方を見るな!アタシのよ!」

「まぁ、そう言うなって…」

「ハジメもデレデレしてんじゃないわよ……バカーー!!」



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その後の話3 今の星の話をしよう、未勝利の星 + 深き衝撃 = 深き跳梁

誕生日おめでとうハルウララ…&私!

時系列は『きっと空を』の後で…


「それじゃあ…行ってくる。お願いするよ、ハルウララ、ディープインパクト。」

「は~い!まっかせてー!」

「…うん。…私じゃ頼りないだろけど…グラスもカフェも今日は忙しい。…デサイレンはいるだけで邪魔。」

「有給取れたプイちゃんはともかく…ウララちゃんってもうほぼ毎日うちに来てない?家で休まなくていいの?」

「いいの~、いいの~!ここ、楽しいし!おきゅーりょーいいし………パパがいるし♡」

「ウララちゃん、メスの顔になってるよ。」

「…ピンクは○乱。…(ソウジ)はXXXX♡」

「ディープインパクト、お前は人のこと言えないからな。ハルウララ、そう言ってくれるのはありがたいが…近いうちにもう1人くらい雇う予定だから!本当お前にばっかりに負担かけてごめんね!」

「別に気にしなくてもいいのに~……これ以上他の女を増やさないで欲しいし。」ボソッ

「ソウジ、フライト、早くいくね!タキオンが餓死するね!」

「…そうだな。じゃあ、頼んだよ。」

「は~い!とれーなーによろしくね………パパ♡」

「うっ…うまだっち!」

「ソウジ、今は盛らないね!帰るまで我慢ね!」

「そんな殺生な…」

「しょうがない、学園に着いたら私が一発抜いて…」

「ダメねフライト!今日のソウジはウララのね!ソウジ、さっさと自力で静めるね!」

「……はい。」

「いってらっしゃ~い♪」

 

『元・未勝利の星』ハルウララは有マ記念を最後にトゥインクルを引退、ドリームへと移籍したことでさらにファンを増やした。その後、10年ほど現役を続けていたものの…彼女のブームも落ち着き…出走の頻度も減ってきたことによりレースからは完全に引退、学園を卒業して現在はソウジの家でベビーシッターをしていた。

 

「だっ…だっ!だぁ!」

「あ、あー!あー!」

「う、う!」

「ん~?おっぱい?ウララのは今、パパ専用だからダメ!ミルクを…順番に作るから…!!」

「わーん!わーん!」

「わわっ!!泣いちゃった!もしかしてミルクじゃなくてオムツの方!?ちょっと待っててね!プイちゃん、お湯って沸いてる?」

「…今から沸かす。」

 

ハルウララはディープインパクトに指示しつつ、慣れた手つきで3人の赤子たちを世話をする。それぞれにオムツ、ミルク、ゲップと終わらせ、ベッドへと寝かせた。

 

「うん♪みんないい子だね~♪」

「きゃっ♪きゃ♪」

「Zzz…」

「…ほとんどウララがしてた…あれ?…もしかして、私って要らなかった?」ずーん

「そんなことないよ!ミルクの準備してくれたよ!えーと…慣れだよ、慣れ!」

 

「あ、あぅあう…」

「ん?"サイロ"ちゃん、抱っこして欲しいのかな?」

「う、うぅ…」

「分かった。ねんねんころりよ~♪」

「あ、あ…」

「サイロちゃんは♪よいこだ~♪ねんねしよ♪」

「ぅ…ぅぅ…Zzz…」

「…凄い、すぐに寝た。」

「きゃっ♪きゃ♪」

「"スミユキ"くんは元気だね♪でも…今は、ねんねしよっか。」

「……すぅ。」

「ねんねしたね…いい子いい子♪」よしよし

「きゃっ♪きゃ♪」

「…ウララ、起きてるよ?」

「寝たふりだった!?よし!スミユキくんも、ねんねん…あ!プイちゃんもしてみる?」

「…私も?…うん、やってみる。」

「じゃあ、こっちにきて~…プイちゃんは~、いい子いい子♪」よしよし

「……そっち?」

 

1分後、赤ちゃんらの隣に眠るディープインパクトの姿があった。

 

ーーー

 

ソウジは学園に着き…真っ直ぐに正妻の元へと向かう。

 

「遅いじゃないか。全く…私のお腹はペコペコだ…今日はブリザード君が作ってくれたのかな。濃い味が空腹に染みるねえ。」もぐもぐ

「食べながら喋るな…で、例の『合成因子』が届いたんだよな。」

「あぁ、名前はまだ考えていないが…とりあえず、これだよ。」

「んじゃ、久々に…」

 

ゴクン

 

ソウジが『合成因子』を飲み込むと鹿毛(ピンク)の『ウマ人』へと姿が変わる。

 

「どのような感じかな?」

「んー、身体が軽い気がするな。現状はそれくらい…」

「適正をみていこう。並走相手は…Cソウジの『アカキユウシャ』と『ローズゼラニウム』でいいだろう。」

「雑だな…URA直々の依頼だぞ。」

「管理だとか言って今まで私たちが作成した『合成因子』たちを全て押収しておいて何をいまさら。最も、今の私にとってはもうこの研究に価値はないのだが。」

「確かに使用の申請が面倒だし、それによる併走トレーニング禁止とか俺の個性を完全に潰されたからな…価値がないってのには同意だ。」

「出る杭は打たれるものだ…それが叩きやすいものならなおさらだよ。しかし、Cソウジもそのうち管理されるかもしれないと考えると嫌になるねえ。」

「だよなぁ…とりあえず、適正を調べてくるわ。タキオンも食べ終わったら来るか?」

「そうしよう。」

「そうだ!せっかくだから写真撮らないか。」

「写真かい?URAの情報になる以上、何であれ流出するのは不味いが…」

「帰ったらハルウララとディープインパクトに見せるだけだから。」

「ん?今日はプイ君が来ているのかい?」

「グラスもカフェも忙しくてな…有休取ってきてくれたよ。」

「プイ君自身も色々と忙しいだろうに…デサイレン君は?」

「いるだけで子供たち全員が泣き出すから戦力外。本人は悲しそうにしていたな…ミックに使った紙袋ってどうなんだろ。」

「試す価値はありそうだねえ…ごちそうさま。」

 

アグネスタキオンが立ち上がる…届いた『合成因子』の適正を調べ、データを送信した。

 

ーーー

 

「よし、今日もトレーニングを始めるぞ。」

 

チーム『エレメント』の部屋にソウジが入るとそこには既にチームメンバー全員が揃っていた。

 

「あっ!『ウマ人』…久々ですね!」

 

1人目は大きな耳の青鹿毛のウマ娘…『ソングライン』。今年の富士Sを勝利している重賞ウマ娘でもある。

 

「ピンクって…随分と可愛らしい色じゃない。」

 

2人目は現メンバー内では最古参となるダイワスカーレット。ドリームトロフィーに所属はしているが…レースへの出走頻度はかなり減ってきている。

 

「ピンク髪ってことはアグネスデジタル?それともハルウララ?ダート適正あるなら併走相手になって欲しい。」

「私も私も!!」

 

3人目は高身長な鹿毛のウマ娘『アルクトス』、4人目は黒鹿毛のウマ娘『クラウンプライド』。どちらもダートを得意としており、前者は南部杯CSを連覇、後者は2戦無敗と素晴らしい成績である。

 

「…今日はゴロゴロしてたかったのに。」

 

5人目は鹿毛のウマ娘『クリンチャー』。クラシック三冠全てを走りきり、凱旋門賞にも出走した。現在はダート路線を走っている。

 

「焼きオニギリが出来ましたよ~!」

 

6人目は鹿毛のウマ娘『ニシノデイジー』。クリンチャー同様にクラシック三冠全てを走りきり、現在はダートに向けての調整をしている。

 

「私は初めてですね、その姿を生で見るのは。」

 

最後に鹿毛のウマ娘『カネフラ』。最近『エレメント』へと加入したウマ娘でまだ『本格化』の気配はない。

 

以上が現在、ソウジが担当しているウマ娘たちである。

 

「今日のトレーニングだが…全員順番に俺とのタイマン模擬レースを行う。」

『はぁ、正気(ですか)!?』

「条件はお前らが決めてくれ…あー、ソングライン。」

「はい!」

「この『合成因子』に短距離適正は無かったから…悪いがお前はマイルで範囲で決めてくれ。」

「分かりました。」

「よし…誰から来る?」

「アタシからに決まってんでしょ!誰との『合成因子』か知らないけど…ボコボコにしてあげるわ!」

「よし!今日もいい脚だダイワスカーレット!」

「え…?その…ありがとう……好き♡」

 

ダイワスカーレットの顔が赤くなりその場でもじもじと立ち尽くす。

 

「トレーナーさん、セクハラですよ!」

「ち、違……悪いダイワスカーレット!今日もいい気合いだ、って言おうとしただけなんだ!」

「えへへ…今お腹から動いた音聞こえた?アンタもお姉ちゃんになるのよ♡」もじもじ

「スカーレットちゃんの頭の中…お花畑になっちゃいましたね…」

「"アレ"じゃないのに…色気が…エグい…」

「…本当はうまぴょいしたことあるんじゃないの?」

「このXXXXが。」

「全面的に俺が悪かった!後、クリンチャー!どこでそんな汚い言葉覚えたんだ。絶対に俺以外には使うなよ?」

「XXXX、XXXX…」

「連呼するなーー!!」

 

その後、チーム『エレメント』の全メンバーに勝利した『ウマ人』(ソウジ)に…カネフラは恐怖を覚えた。

 

ーーー

 

一方のソウジの家では…

 

「…お邪魔します。」

「お帰り~、"ミチカ"ちゃん!キャラメルポップコーンを作る予定だけど食べる?」

「…はい、その…いただきます。…ママは?」

「サイロちゃんたちと一緒に寝てるよ~!」

「…そうですか。」

 

「「ただいま~!」」

「お帰り"チアキ"ちゃん、"トウスケ"くん!」

「ウララちゃん、今日のおやつ何~?」

「わたしはゲームする!家に帰ったらできないから!」

「宿題してからね。その前に手洗いうがいだよ!」

「「は~い!」」

 

次々と帰ってくる子供たちを笑顔で出迎えるハルウララ。そこにマンハッタンカフェも入ってきた。

 

「…お疲れ様です……ウララさん。」

「カフェちゃん!お帰り~!お店は?」

「…誰も来ないので……今日はもう閉めました。…何か私に……出来ることはありませんか?」

「じゃあ、トウスケ君たちの宿題をみてあげて!ウララはおやつの準備をするから!…あ、キャラメルポップコーンだけど…だいじょーぶ?」

「…はい、問題ありません。…ところで……プイさんは?」

「サイロちゃんたちの隣で寝てるよ~!子守唄歌ってあげたらすぐに寝たの…かなり、疲れていたみたい。」

「…そうですか。…早速行ってきますよ。」

「あ!ブリザードさんが帰ってきたら夕飯のお買い物、一緒に行ってきてね!買ってたなら荷物もってあげて!」

「…分かりました。」

 

これがソウジが帰るまでの家の様子である。

 

ーーー

 

『ただいま。』

 

「お帰り~、タキオンちゃん、フライトさん……パパ♡」

「ぶっ!?」

「ウララちゃん!?」

「…何て格好をしてるのかな。」

 

帰ってきた3人を出迎えるハルウララ…その格好は詳しく言わないが、身体に1枚布を着けているだけのラフな姿。

 

「待ちきれなくて♡…でも、好きでしょ?」

「好きだけどさ…」

「…」ベチッ

「タキオン、無言で尻尾叩きしないで…」

「…ねえ。この娘…私が食べたらダメ?」ハァハァ

「…」ゲシッ

「タキオンちゃん、痛い…」

 

「プイちゃんとグラスちゃんと子供たちはカフェちゃんの所に行ったよ……ね?しよ?」

「…分かった。」

「よしっ!まずはお風呂…あ!タキオンちゃん、フライトさん、ご飯は今台所でブリザードさんが温め直してるからそれでよろしくね。」

「はいは~い。」

「分かったよ。」

「パパ、いこいこ♡」

「お手柔らかに…っと、その前に見てほしいものがあったんだわ。」

「何々?」

「この写真。今日は久々に『ウマ人』になったんだわ。これはお前とディープインパクトの『因子』を使った『合成因子』でな、名前は『ディープスプリング』といって…」

「うんうん♪それでそれで?」

 

ソウジの足に尻尾を巻きつけ、腕を引っ張り風呂場へと向かうハルウララ…アグネスタキオンとアグネスフライトはそれを見送った。

 

「リハビリは順調そうじゃないか。この調子なら…どこかにまた再就職することになるのかな?」

「いや…完全にソウジさんに依存しちゃってるから…一生このままな気がするわ。少なくとも私ならそうするし。」

「…だろうね。彼と子供を作るくらいだ…はぁ。ソウジ…君は本当に幸せな男だよ…」

 

ーーー

 

タキオンメモ:『番外編合成因子ディープスプリングについて』

 

XX月XX日

・誕生

→URAの依頼により『ディープインパクト』と『ハルウララ』の『因子』を合成した『合成因子』が届けられる。

 

→『ディープスプリング』と名付けた。

 

XX月XX日

・身体能力

→Cソウジとの併走により計測すると、適正バ場は芝とダートの両刀。また、適正距離はマイル~中距離と判断する。

 

・適正脚質

→身体能力同様の方法で計測した結果、差し>追い込み>先行>>>>逃げと判断する。

 

XX月XX日

・レース実行

→チーム『エレメント』の全メンバーとタイマンレースを実行した。結果は以下の通り。

 

①ダイワスカーレット

条件:芝、右回り、2200m

結果:ゴール前で捉え、3バ身差で『ディープスプリング』の勝利

 

②アルクトス

条件:ダート、右回り、1800m

結果:ゴール前で捉え、半バ身差で『ディープスプリング』の勝利

 

③ニシノデイジー

条件:ダート、左回り、2000m

結果:直線で突き離し、8バ身差で『ディープスプリング』の勝利

 

④クラウンプライド

条件:ダート、左回り、1600m

結果:直線で競り合い、アタマ差で『ディープスプリング』の勝利

 

⑤ソングライン

条件:芝、左回り、1600m

結果:直線から逃げ切り、半バ身差で『ディープスプリング』の勝利

 

⑥クリンチャー

条件:ダート、右回り、2000m

結果:ゴール直前で捉え、1バ身差で『ディープスプリング』の勝利

 

⑦カネフラ

条件:芝、右回り、2000m

結果:直前から競り合い、6バ身差で『ディープスプリング』の勝利

 

 

余談(その他の特徴)

・ダート版のディープインパクトを期待していたようだが…レースの映像より彼女のキレには遠く及ばない。

 

 

以上が『ディープスプリング』の記録である。




登場人物の現在

・ソウジ
トレセン学園のトレーナー。アグネスタキオンの実験により人間どころからウマ娘をも越えた何らかの生物へと進化しており、アグネスタキオンの現役時から顔が変わっていない。
人間、ウマ娘、年上、年下(*二十歳以上)、と関係なく計XX人の女とのXX関係を持つXXXX男となった。
『ウマ人』となり担当と共に併走するトレーニングで多くのG1ウマ娘を育て上げたが、URAによりドーピングと判断され、『合成因子』が管理されるようになったため別の指導方法を考え中。
現在は7人のウマ娘を担当している。
また、タイキブリザードと共に入ったラスベガスのカジノで大儲けしており(その内の数割をトレセン学園へと匿名で寄付)…いつでもトレーナーをクビになってもいいと開き直っている。


・アグネスタキオン
ソウジの正妻。トレセン学園にて研究者として所属おり、現在は進化したソウジの細胞について調べている。
家にはあまり帰らず、研究室に引きこもっており、ソウジたちにより食事や睡眠などが管理されている。
ソウジとの間に『ミックスエレメンツ』という娘(ウマ娘)がおり、現在トゥインクルシリーズに挑戦中。
ソウジが多くの女性とXX関係を持っていることについて良くは思ってないものの、自身も原因の1つと捉えており、渋々諦めている。


・アグネスフライト
ソウジの自称愛人。トレセン学園にてトレーナーとして所属しており、現在は10人のウマ娘を担当している。
ソウジとの間に子供はいない。


・タイキブリザード
ソウジの自称愛人。トレセン学園の食堂で働いており、その傍ら日本に適したトウモロコシの品種改良に挑戦中。
ソウジとの間『ユキヤ』と『スミユキ』という2人の息子がいる。なお、ユキヤは現在、アメリカの両親により育てられている。
一家の中では一番発言権が強い。


・マンハッタンカフェ
ソウジの自称愛人。普段は1人で喫茶店を経営しているが…毎月赤字続きなのが悩み。
霊感が無くなったのか、憑依されないと霊体のサンデーサイレンスに気づけない。
ソウジとの間に『マメスケ』という息子がいる。


・サンデーサイレンス
元トレーナー。『エレメント』のサブトレーナーとしてトレセン学園に所属していたが、満足出来たと言って担当のディープインパクトの学園卒業と共にトレーナーを退職。
現在はディープインパクトの家でヒモとして養われている。
今もマンハッタンカフェやディープインパクト、アグネスタキオンらに取り憑くなど憑依能力は健在でたまにトレセン学園のウマ娘に取り憑いては凄い走りを見せている。
ソウジとの間に『サイレンスブラック』という娘(ウマ娘)がいる。


・ディープインパクト
元担当ウマ娘。『エレメント』に所属しており、サンデーサイレンスの指導で歴代最強のウマ娘と呼ばれるまで成長した。
模擬レースにて自身を負かせた続けたソウジに好意を持っており、アグネスタキオンたちの隙をみてはアタックし続けている。
現在は学園を卒業し、何らかの一流企業に就職…サンデーサイレンスと共に賃貸マンションに暮らしている。
ソウジとの間に『ミチカ』という長女(人間)と『ディープラバー』という次女(ウマ娘)がいる。


・ハルウララ
ベビーシッター。学園を卒業し、介護系の会社に就職するも理不尽なクレーム、パワハラ、モラハラなどを大量に受けて鬱になり退職。独り暮らししていたマンションに引きこもり、"アレ"を発症していた所を元担当トレーナーのコハルとソウジに助けられ、現在はソウジの家の近くで地元から来た両親と共に暮らしている。
ソウジとの間に『チアキ』という娘(人間)がいる。


・グラスワンダー
OL。アグネスフライトに好意を寄せていたものの、卒業までに実ることは無く、矛先を無理やりソウジへと向けて、アグネスフライトとの繋がりを続けることにした。
卒業後は普通に就職し、ソウジとの間に『サイロ』という娘(人間)がいる。


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『合成因子』一覧
番外編 『合成因子』一覧 (第一号~第二十号)


とりあえず、箸休めってことで今までの『合成因子』一覧です…どうぞ!


タキオンレポート(仮)

 

今までの『合成因子』を整理することを含め、ここに二十号までの『合成因子』と現段階での状態を記録する。また、新規情報などあれば追記する。

 

ーーー

 

第一号『ジンソニック』

合成元:アグネスタキオン&ウオッカ

毛色:栗毛

適正距離:マイル~中距離

得意脚質:先行&差し

能力:スピードB、スタミナC、パワーD、根性C、賢さC

 

アグネスタキオンが最初に完成させた『合成因子』。ステップを踏むような走り方をする。スピードはあるものの、パワー(踏み込み)が弱く、後半からの加速力は他のウマ娘に比べて弱い。前半の位置取りと仕掛けるタイミングが重要となる。

 

ーーー

 

第二号『クイーンフォノン』

合成元:アグネスタキオン&エアグルーヴ

毛色:鹿毛

適正距離:マイル~長距離

得意脚質:先行

能力:スピードB、スタミナC、パワーC、根性C、賢さC

 

集団の前を走り、最後の直線で抜けて差を広げる、というごく普通の先行型。前が塞がることでコーナーカーブ時に膨らみが大きくなるため、序盤の位置取りが重要だと思われる。

 

ーーー

 

第三号『アカキユウシャ』

合成元:アグネスデジタル&ダイワスカーレット

毛色:栗毛

適正距離:マイル~中距離

得意脚質:先行

能力:スピードC、スタミナC、パワーC、根性C、賢さC

 

芝とダート両方を走ることが可能な『合成因子』。得意脚質は"先行"であるものの、場合によっては"逃げ"や"差し"も行い、臨機応変なレースを行うことが出来る。特化している能力はないもののフォーム、ペース配分などバランスの取れた走りを行う。

 

ーーー

 

第四号『エンプレススズカ』

合成元:サイレンススズカ&エアグルーヴ

毛色:鹿毛

適正距離:中距離~長距離

得意脚質:追い込み

能力:スピードB、スタミナA、パワーC、根性C、賢さE

 

豊富なスタミナが特徴で早い段階から仕掛けることが可能。しかし、レースが楽しすぎて、仕掛けたところから視野が狭くなり、ただ前を走ることしか考えられなくなり、限界を超えた走りを行ったため非常に危険。

 

ーーー

 

第五号『ビクトニーフラッグ』

合成元:ウイニングチケット&ダイワスカーレット

毛色:栗毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離G、マイルA、中距離A、長距離C

脚質:逃げC、先行A、差しC、追い込みF

能力:スピードD、スタミナB、パワーC、根性C、賢さC

 

 

高いスタミナを活かして前をキープする走りを得意とする『合成因子』。ただし胸部が非常に大きく、長距離となると厳しくなる。『ウマ人』の状態でもその効果は発揮されるが…前尻尾は問題なくある。

 

ーーー

 

第六号『カルーア』

合成元:マンハッタンカフェ&ウオッカ

毛色:黒鹿毛

適正距離:長距離

得意脚質:先行&差し

能力:スピードD、スタミナB、パワーB、根性C、賢さC

 

大股での走法が特徴。スピードこそ弱いものの、どんな距離でも一定の速度をキープしたまま走ることが出来る。後半のバテたウマ娘などを差しやすい。勝つためには最後の直線より前の何処かで抜けておく必要がある。

 

ーーー

 

第七号『レロレロ』

合成元:ゴールドシップ&エアグルーヴ

毛色:芦毛

適正距離:マイル~中距離(長距離NG、理由は後述)

得意脚質:差し&追い込み

能力:スピードB、スタミナD、パワーB、根性B、賢さE

 

鼻が隠せるくらい伸びる長い舌が特徴。『ウマ人』での実験では体への馴染みがよく、力が最もコントロールがしやすい『合成因子』…であった。しかし後日の『アナザー』での実験にて疲労すると暴走し、塩分を求め人やウマ娘を永遠に舐め回す『舐め癖』があることが発覚した。被害者は人間やウマ娘問わず暫く真っ白になるため、実験を行う時は暴走を抑えるためスポーツドリンクとウマ娘2人以上の同行を義務付ける。

 

ーーー

 

第八号『ブレジーケン』

合成元:エルコンドルパサー&ダイワスカーレット

毛色:黒鹿毛

適正距離:中距離

得意脚質:先行

能力:スピードB、スタミナC、パワーB、根性C、賢さC

 

強豪のウマ娘と競り合えるパワー、また抜けた後に差を広げれるスピードを持つハイスペックな『合成因子』。レースで勝つための策らしい策は無いが、自分のペースを崩されないように走ろう。

 

ーーー

 

第九号『アジアエックス』

合成元:マヤノトップガン&ダイワスカーレット

毛色:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第十号『ハイオクタン』

合成元:ツインターボ&ウオッカ

毛色:鹿毛

適正バ場:芝A、ダートC

適正距離:短距離C、マイルA、中距離A、長距離D

脚質:逃げC、先行B、差しA、追い込みE

能力:スピードC、スタミナC、パワーB、根性C、賢さC

 

力強い走りで内から差すことが得意な『合成因子』。普通に外から差しにいくレースも得意だが、外への道が塞がれた時に真価が発揮する。

 

 

ーーー

 

第十一号『ピンクバナナ』

合成元:ビワハヤヒデ&ダイワスカーレット

毛色:芦毛

適正バ場:芝?、ダート?

適正距離:短距離?、マイル?、中距離?、長距離?

得意脚質:逃げ?、先行?、差し?、追い込み?

能力:スピード?、スタミナ?、パワー?、根性?、賢さE

 

異様に髪が伸びる『合成因子』。その量は部屋を1つ占領する程で、まずゲートに収まることが出来ないレベル。そのため、詳しく研究することが出来なかった。しかし、ビー玉サイズでしかない『合成因子』がどうしてこうなるか…興味は尽きない。

 

ーーー

 

第十二号『クレイジールビー』

合成元:サトノダイヤモンド&エアグルーヴ

毛色:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第十三号『ロードプロテア』

合成元:キングヘイロー&ニシノフラワー

毛色:鹿毛

適正距離:???

得意脚質:先行&差し

能力:???

 

現段階で分かっているのは短距離適正が可能レベルだということ、得意脚質が先行&差しだということのみ。

 

ーーー

 

第十四号『ツノバナ』

合成元:ビコーペガサス&ニシノフラワー

毛色:黒鹿毛

適正距離:???

得意脚質:先行

能力:???

 

現段階で分かっているのは短距離適正は無いこと、得意脚質が先行だということのみ。

 

ーーー

 

第十五号『クルマバナ』

合成元:ツインターボ&ニシノフラワー

毛色:黒鹿毛

適正距離:???

得意脚質:逃げ

能力:???

 

現段階で分かっているのは短距離適正が無いこと、身体が自然と逃げに動くことのみ。

 

ーーー

 

第十六号『タニウツギ』

合成元:サクラバクシンオー&ニシノフラワー

毛色:鹿毛

適正距離:???

得意脚質:逃げ&先行

能力:???

 

現段階でわかっているのは短距離適正が無いこと、得意脚質が逃げ&先行だということのみ。

 

ーーー

 

第十七号『ローズゼラニウム』

合成元:ライスシャワー&ニシノフラワー

毛色:黒鹿毛

適正距離:短距離・長距離

得意脚質:先行&差し

能力:スピードC、スタミナC、パワーC、根性C、賢さC

 

適正距離が短距離と長距離という異質な『合成因子』。スペックは何れも平均並みだが、抜けた後の超加速という強い武器がある。戦略は、序盤はスタミナを温存しつつライスシャワーのみせた強者の後ろにつき、最後の直線などで抜ける勝利が多くなるだろう。よって誰につくかが重要になる。

 

ーーー

 

第十八号『デビルジュピター』

合成元:シンボリルドルフ&エアグルーヴ

毛色:鹿毛

適正距離:中距離(*現段階)

得意脚質:先行&差し&追い込み

能力:スピードB、スタミナB、パワーB、根性C、賢さC

 

ハイスペックな『合成因子』なうえに、3つの脚質を使いこなせる。また、側にいるだけで感じられる重い威圧が特徴。レースをせずとも相手へデバフをかけれるがそれで慢心しないようにすること。

 

ーーー

 

第十九号『ハナアヤメ』

合成元:サイレンススズカ&ニシノフラワー

毛色:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第二十号『アワビパール』

合成元:サクラバクシンオー&シーキングザパール

毛色:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

完成品があるのみ、今後実験予定。




気になる『合成因子』があれば感想で是非!


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番外編2 『合成因子』一覧 (第二十一号~第四十号)

箸休めその2です。適正バ場、距離と脚質の詳細も追記しました。後々、一号~二十号の方も追記予定です。


第二十一号『メテオロケット』

合成元:サクラバクシンオー&カレンチャン

毛色:鹿毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離A、マイルC、中距離G、長距離G

脚質:逃げA、先行?、差しG、追い込みG

能力:スピードB、スタミナD、パワーC、根性C、賢さD

 

 

"先行"で走ろうと意識しても前へ前へとバクシンするため結果、"逃げ"の走りとなる『合成因子』。ただし他に"逃げ"のウマ娘が多数いる場合は、先頭に行こうとせずに"先行"に近い脚質になる。

 

ーーー

 

第二十二号『パールラスター』

合成元:アグネスタキオン&シーキングザパール

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第二十三号『キューティフォトン』

合成元:アグネスタキオン&カレンチャン

毛色:栗毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離A、マイルA、中距離A、長距離F

脚質:逃げG、先行A、差しD、追い込みG

能力:スピードB、スタミナC、パワーD、根性C、賢さC

 

 

王道な"先行"の『合成因子』。最後の直線から仕掛けたスパートの『伸び』は凄まじく、位置取りで大外を取れるかが重要となる。

 

ーーー

 

第二十四号『アケボノソウ』

合成元:ヒシアケボノ&ニシノフラワー

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品のあるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第二十五号『ロイアルコンシエル』

合成元:エアシャカール&メジロドーベル

毛色:鹿毛

適正バ場:芝A、ダートD

適正距離:短距離G、マイルC、中距離A、長距離A

脚質:逃げG、先行G、差しA、追い込みA

能力:スピードC、スタミナC、パワーB、根性C、賢さC

 

 

後方からのスタートを得意とする『合成因子』。パワーがあるため荒れたバ場でも関係なく走ることが出来る。…後は、目つきが怖い。

 

ーーー

 

第二十六号『ポチーン』

合成元:メジロライアン&ウオッカ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第二十七号『レッドトッパー』

合成元:メジロアルダン&ダイワスカーレット

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第二十八号『アンステーブル』

合成元:メジロブライト&スイープトウショウ

毛色:鹿毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離G、マイルG、中距離A、長距離A

脚質:逃げG、先行G、差しC、追い込みA

能力:スピードB、スタミナC、パワーB、根性B、賢さE

 

 

後方からのレースを得意とする『合成因子』。合成元の特徴であるゲート難(嫌悪感)とスロースターター癖を両方もっているものの、後半でそれらを補えるほどの『伸び』があるためそれを出せるかが勝利への鍵となる。

 

ーーー

 

第二十九号『スペースレトリバー』

合成元:タイキシャトル&メジロドーベル

毛色:栗毛

適正バ場:芝A、ダートA

適正距離:短距離C、マイルA、中距離A、長距離E

脚質:逃げD、先行A、差しD、追い込みG

能力:スピードC、スタミナC、パワーA、根性D、賢さE

 

 

先行を得意とする『合成因子』。レースでは力強く踏み込むためどんなバ場でも関係なく走れる。しかし、走る以外では常に放心しており、言葉でのコミュニケーションが困難、さらに無言でハグするなど、コントロールが非常に難しいとのこと。さらにタイマンが弱く、特に最後での接戦したレースが苦手。

 

ーーー

 

第三十号『ナタデココ』

合成元:メジロマックイーン&カレンチャン

毛色:芦毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離A、マイルD、中距離C、長距離A

脚質:逃げG、先行A、差しF、追い込みG

能力:スピードC、スタミナB、パワーC、根性C、賢さC

 

 

『ローズゼラニウム』同様、"先行"を得意とする短距離と長距離が適正距離という異端な『合成因子』。ただし、スタミナを活かした最終コーナーからのロングスパートが強みでコース次第ではとんでもない強さを発揮する。

 

ーーー

 

第三十一号『プラチナディスコ』

合成元:サトノダイヤモンド&シーキングザパール

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第三十二号『シェパードボム』

合成元:サクラバクシンオー&メジロドーベル

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第三十三号『コンドルクイル』

合成元:エルコンドルパサー&スイープトウショウ

毛色:黒鹿毛

適正バ場:芝A、ダートB

適正距離:短距離G、マイルC、中距離A、長距離C

脚質:逃げG、先行B、差しA、追い込みB

能力:スピードB、スタミナC、パワーB、根性C、賢さC

 

 

ゲート難(嫌悪感)はあるものの出遅れ癖はなく、バランスが取れた『合成因子』。大外だけでなく内からも差しきりも得意としているためかなり強力。

 

ーーー

 

第三十四号『ウイスキーボンボン』

合成元:メジロマックイーン&ウオッカ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第三十五号『パンプキンパイ』

合成元:メジロマックイーン&スイープトウショウ

毛色:芦毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離G、マイルG、中距離A、長距離A

脚質:逃げG、先行B、差しB、追い込みA

能力:スピードC、スタミナA、パワーB、根性D、賢さD

 

 

豊富なスタミナと高いパワーを活かしたロングスパートを得意とする『合成因子』。ただし、ゲート難(嫌悪感)、バ群苦手(嫌悪感)、を持っており、位置取り、追い競べでは無意識に掛かり易いという欠点もある。この内1つでも起きな無ければ、圧倒的なごぼう抜きが見られるだろう。

 

ーーー

 

第三十六号『キャンディーブーケ』

合成元:メジロマックイーン&ニシノフラワー

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第三十七号『シュンミンアカツキ』

合成元:アグネスタキオン&ハルウララ

毛色:鹿毛(ピンク)

適正バ場:芝A、ダートE

適正距離:短距離F、マイルA、中距離A、長距離G

脚質:逃げG、先行A、差しA、追い込みF

能力:スピードB、スタミナC、パワーSS+、根性C、賢さE

 

 

ダート用に作られたが適正はなかった。パワーとスピードを活かした走りをする、単純に強力な『合成因子』。その高過ぎるパワーはコントロールが難しく、走ったバ場を大きく荒らし、ドアノブを壊す、蹄鉄を複数個破損させるなどゲートインまで支障が出てるほどのもの。さらに疲労するとどこであれ関係なく急に眠りだし、いびきも非常に喧しい。…とりあえず、危険過ぎるため使用を禁ずる。

 

ーーー

 

第三十八号『ハルヒカゲ』

合成元:ナリタブライアン&ハルウララ

毛色:鹿毛(ピンク)

適正バ場:芝A、ダートB

適正距離:短距離C、マイルC、中距離A、長距離B

脚質:逃げG、先行A、差しA、追い込みC

能力:スピードC、スタミナC、パワーA、根性B、賢さC

 

 

パワーが高い『合成因子』。様々コースに適応しやすく、足りない分はパワーで補う。しかし気配にかなり敏感であり、長い間後ろに付かれると掛かりやすくなる。

 

ーーー

 

第三十九号『ガッツザベスト』

合成元:キングヘイロー&ハルウララ

毛色:鹿毛

適正バ場:芝A、ダートA

適正距離:短距離A、マイルA、中距離B、長距離D

脚質:逃げG、先行C、差しA、追い込みC

能力:スピードC、スタミナC、パワーC、根性B、賢さB

 

 

両バ場に適正があり"差し"を得意とする『合成因子』で追い競べが強い。また、他の『合成因子』と比べ被験者への負担が軽く、想定した動きがしやすかったとのこと…レースでの結果は置いておく。

 

ーーー

 

第四十号『ベールダウン』

合成元:ライスシャワー&ハルウララ

毛色:黒鹿毛

適正バ場:芝G、ダートA

適正距離:短距離A、マイルC、中距離G、長距離G

脚質:逃げG、先行C、差しA、追い込みG

能力:スピードD、スタミナB、パワーC、根性C、賢さD

 

 

適正がダート短距離と範囲が限定的な『合成因子』。そして短距離向けにも関わらずスタミナが強く、スピードが弱いため扱いが難しい。そして、測定後に被験者が足をケガをしていたため…この『合成因子』の研究は暫く保留とする。



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番外編3 『合成因子』一覧 (第四十一号~第六十号)

どうも、昨日のデビューから応援してたマイネルフォルツァ(父ゴールドシップ、母父グラスワンダー)が勝って嬉しい作者です。重賞もキラーアビリティが勝ってくれて嬉しい!

今日は阪神JFですね!デビューから応援してたシンリョクカ(父サトノダイヤモンド)、ブトンドール(サクラバクシンオーの直系)、ドゥーラ(母父キングヘイロー)、ラヴェル(父キタサンブラック)が出走ですね!彼女らに加えイティネラートル(父キズナ)を応援します!

勝ったのはリバティアイランド…ラヴェルが出遅れ…お疲れ様でした。

香港での国際競争でも日本馬が参戦ですね…サリオスの出走取消は残念ですが日本馬たちに頑張って欲しいですね!

香港ヴァーズでウインマリリン勝利!!やりました!グローリーヴェイズも3着…お疲れ様でした。

香港スプリントにて勝ったのは香港のウェリントン…メイケイエール、レシステンシア、ナランフレグ、ジャンダルム…お疲れ様でした。

香港マイルにて勝ったのはカルフォルニアスパングル…シュネルマイスター、ダノンスコーピオン…お疲れ様でした。

香港カップで勝ったのはロマンチックウォリアー…ダノンザキッドが2着!ダノンザキッド、レイパパレ、ジャックドール、ジオグリフ、パンサラッサお疲れ様でした。

今回は久々の番外編です…そろそろ幻覚ウマ娘たちも加えるべきか?それよりも既存のウマ娘たちをもっと出さないと…シンボリクリスエス発表以降のウマ娘で出したのコパノリッキーだけという。…とりあえず、どうぞ。


第四十一号『アイリスリリー』

合成元:ミホノブルボン&ニシノフラワー

毛色:黒鹿毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離A、マイルA、中距離B、長距離D

脚質:逃げA、先行A、差しG、追い込みG

能力:スピードB、スタミナD、パワーC、根性B、賢さC

 

 

前方をキープし続けた走りを得意とする『合成因子』。他の逃げを得意とする『合成因子』と比べ、ハナを取れた確率が高かった。

 

ーーー

 

第四十二号『カプリティコーン』

合成元:アドマイヤベガ&カレンチャン

毛色:鹿毛

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

モコモコとした毛質が特徴。完全な球体ではない、色が濁っているなど『合成因子』の見た目から既に不安があったため保留していたものを被験者Sが誤飲。すぐに回収を始めたものの高熱を発したことにより『因子』が融解。半端な回収となり、『合成因子』として崩壊したため脚質などは不明。

 

ーーー

 

第四十三号『アルタイス』

合成元:アドマイヤベガ&カレンチャン

毛色:芦毛→駁鹿毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離A、マイルB、中距離C、長距離D

得意脚質:逃げG、先行A、差しD、追い込みD

能力:スピードB、スタミナC、パワーD、根性C、賢さC

 

 

前述の『カプリティコーン』を被験者Sから回収のため作られた『合成因子』。色に濁りはあったものの球体ではあったため、お姉ちゃんが『アナザー』となり適正データを収集した。新型の腕輪に冷却機能を追加したことより、『カプリティコーン』共々回収。その後、毛色が芦毛に鹿毛の斑模様が付く変化が確認された。

 

ーーー

 

第四十四号『ウインドブルドック』

合成元:アイネスフウジン&メジロドーベル

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第四十五号『シューベルト』

合成元:スペシャルウィーク&エアグルーヴ

毛色:鹿毛

適正距離:短距離D、マイルA、中距離A、長距離B

得意脚質:逃げG、先行A、差しA、追い込みG

能力:スピードB、スタミナC、パワーC、根性A、賢さC

 

 

バランスの取れた『合成因子』。タイマン力が強く、1度狙った相手へ執拗に迫る。普通の走りも強い。

 

ーーー

 

第四十六号『ピーチザクラウン』

合成元:サクラチヨノオー&ハルウララ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第四十七号『ロートプリセンシン』

合成元:シンボリルドルフ&ダイワスカーレット

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第四十八号『エンペラープードル』

合成元:トウカイテイオー&メジロドーベル

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第四十九号『ピンクスムージー』

合成元:メジロマックイーン&ハルウララ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第五十号『ジョウゼンミズノ』

合成元:サイレンススズカ&ウオッカ

毛色:栗毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離D、マイルA、中距離A、長距離C

脚質:逃げB、先行F、差しA、追い込みG

能力:スピードB、スタミナC、パワーC、根性C、賢さC

 

 

得意脚質が極端なため、スタートともに脚質が分かる『合成因子』。

 

ーーー

 

第五十一号『ワールドファング』

合成元:エアシャカール&シーキングザパール

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第五十二号『マジカルソードマン』

合成元:キングヘイロー&スイープトウショウ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

どす黒い『合成因子』が完成。現在保留中。

 

ーーー

 

第五十三号『ソーリーフレンズ』

合成元:ゴールドシップ&カレンチャン

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。命名はゴールドシップ君。

 

ーーー

 

第五十四号『エンプレスブラック』

合成元:ライスシャワー&エアグルーヴ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第五十五号『ヘアリーブラッド』

合成元:アグネスタキオン&ダイワスカーレット

毛色:栗毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離G、マイルA、中距離S、長距離C

得意脚質:逃げB、先行A、差しC、追い込みG

能力:スピードB、スタミナC、パワーB、根性B、賢さA

 

 

『合成因子』そのものは初期からあったもののどす黒く、その禍々しさから研究が避けられていた。いざ実験となると、稲妻のような速さで芝2000mの世界記録に迫るタイムを出した。…これが最速への答えなのか?いや、これは私が超えるべき壁だ!

 

ーーー

 

第五十六号『ヴァンプスカラー』

合成元:アグネスタキオン&ヒシアマゾン

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第五十七号『モーションブラー』

合成元:アグネスタキオン&ファインモーション

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第五十八号『ピノノワール』

合成元:マーベラスサンデー&ウオッカ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第五十九号『マジックザローズ』

合成元:フジキセキ&エアグルーヴ

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第六十号『バンケットシー』

合成元:セイウンスカイ&ファインモーション

毛色:白毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離C、マイルA、中距離A、長距離B

脚質:逃げB、先行A、差しA、追い込みB

能力:スピードC、スタミナC、パワーC、根性C、賢さB

 

 

世にも珍しい白毛の『合成因子』。特化した強さは無いものの変幻自在な脚質を活かした臨機応変な走りが得意。



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番外編4 『合成因子』一覧(第六十一号~第八十号)

どうも、先週マリオとゼンカイ&ドンブラの映画をみてきた作者です。いやー、どっちも楽しかったですね。気がつけばNHKマイルCが終わってて、応援していた馬の中では『オオバンブルマイ』が3着になったようですね。

今日はヴィクトリアマイル…応援するのは『ソダシ』と『ソングライン』と『ステラリア』…頑張って!

勝ったのは『ソングライン』!『ソダシ』も2着!お疲れ様でした!後は京都11Rの栗東Sでキングヘイローの直系になる『アイオライト』も勝ってくれて嬉しい。


第六十一号『ティンワイマナラー』

合成元:アグネスデジタル&メジロドーベル

毛色:鹿毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離C、マイルA、中距離A、長距離E

脚質:逃げG、先行A、差しB、追い込みG

能力:スピードC、スタミナC、パワーC、根性C、賢さC

 

 

ダート適正を期待して作られた『合成因子』。腕周りに筋肉が付き、逞しくみえるものの…そこまでのパワーはない。

 

ーーー

 

第六十二号『アラビアンザパール』

合成元:マンハッタンカフェ&シーキングザパール

毛色:青鹿毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離E、マイルA、中距離C、長距離D

脚質:逃げG、先行B、差しA、追い込みG

能力:スピードC、スタミナC、パワーC、根性C、賢さC

 

 

広い視野を活かしつつ、近くを走るウマ娘に合わせた走りを得意とする『合成因子』。合わせた相手にプレッシャーをかけつつ、最後に外から差す。

 

ーーー

 

第六十三号『シャドウジャガー』

合成元:ナリタブライアン&ヒシアマゾン

毛色:黒鹿毛

適正バ場:芝A、ダートC

適正距離:短距離D、マイルA、中距離A、長距離C

得意脚質:逃げG、先行C、差しA、追い込みA

能力:スピードC、スタミナC、パワーB、根性A、賢さC

 

 

後方からのレースを得意とする『合成因子』。大外から末脚勝負が基本的なな展開になるが、それがタイマン勝負となると計測以上のスピードを発揮する…こともある。もっと詳しく調べたい。

 

ーーー

 

第六十四号『ボアフウジン』

合成元:ビコーペガサス&ヒシアマゾン

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品のあるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第六十五号『ブラッドテイル』

合成元:メジロライアン&メジロドーベル

毛色:鹿毛

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

被験者が『ウマ人』になった途端…背中の痛みを訴えた。急いで確認すると背骨に沿った亀裂が入り、そこから出血。その血は背中から腰へと伝わり、全て尻尾へと吸収され…結果、尻尾のみが褐色化するという現象が起きた。危険ということですぐに『因子』を回収すると背中の傷も同時に無くなった。

 

ーーー

 

第六十六号『クリスタルディネベ』

合成元:アグネスタキオン&ユキノビジン

毛色:栗毛

適正バ場:芝A、ダートA

適正距離:短距離G、マイルA、中距離A、長距離G

得意脚質:逃げG、先行A、差しC、追い込みG

能力:スピードB、スタミナC、パワーC、根性C、賢さB

 

 

ややどす黒い『合成因子』だが、コントロールがしやすくほぼ思った動きが可能。またダート適正もあり、レースではスピードを活かした王道な走りを行う。

 

ーーー

 

第六十七号『シンアルテミス』

合成元:ゴールドシチー&ユキノビジン

毛色:月毛

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

美しい…その一言に尽きる『合成因子』。同時に神聖と儚さを感じさせ、本能が走らせることを躊躇うため、この『合成因子』の使用は禁止とする。

 

ーーー

 

第六十八号『スノーシップ』

合成元:ゴールドシップ&ユキノビジン

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

何となくで作った完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第六十九号『ダンガンツララ』

合成元:マヤノトップガン&ユキノビジン

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第七十号『シティハンター』

合成元:ゴールドシチー&エアグルーヴ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第七十一号『ベレークン』

合成元:オグリキャップ&カレンチャン

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第七十二号『ブラッククロウエア』

合成元:タマモクロス&ニシノフラワー

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第七十三号『スプリングクロス』

合成元:タマモクロス&ハルウララ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第七十四号『スロンラットプーカ』

合成元:エアシャカール&ファインモーション

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第七十五号『ナイトオブマジック』

合成元:マチカネタンホイザ&スイープトウショウ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第七十六号『タイプデッドヒート』

合成元:ツインターボ&ダイワスカーレット

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第七十七号『タンブラーブロンド』

合成元:ナイスネイチャ&ウオッカ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第七十八号『ルストマグネット』

合成元:アグネスタキオン&イクノディクタス

毛色:栃栗毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離G、マイルA、中距離A、長距離C

脚質:逃げG、先行A、差しA、追い込みG

能力:スピードB、スタミナC、パワーC、根性C、賢さC

 

 

アグネスタキオンのスピード、イクノディクタスの頑丈さと両者の強みが上手く合わさった『合成因子』。息を整えるだけで最初のパフォーマンスを保ったまま連戦も可能。

 

ーーー

 

第七十九号『アイアンヘッド』

合成元:トウカイテイオー&イクノディクタス

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第ハ十号『コクテツ』

合成元:キタサンブラック&イクノディクタス

毛色:鹿毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離G、マイルC、中距離A、長距離A

脚質:逃げB、先行B、差しA、追い込みG

能力:スピードC、スタミナB、パワーC、根性C、賢さC

 

 

高いスタミナを活かしたロングスパートを得意とする『合成因子』。最初から前で粘った走りを行えなくもないが、決定打に欠けることが多く足を溜めた方が強い。



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番外編5 『合成因子』一覧 (第八十一号~第百八号)

どうも、アニメ最終回とぱかライブをみた作者です…仕事あるのに。あの新しい勝負服のキタちゃん…可愛かったですよね!後はジャングルポケット主役の映画…この作品を投稿していた時は思いもしませんでしたよ。

今日はホープフルSですが『キズナ』産駒たち…特に『センチュリーボンド』を応援します。『キズナ』の血をつないで欲しい…。そういえば『ピクシーナイト』が引退ですね…種牡馬になれるようで一安心です。


ここに乗せているので『合成因子』は全てとします。他は番外の『合成因子』として扱おうと思っています。


第八十一号『クロームグレイン』

合成元:アグネスタキオン&ダイイチルビー

毛色:黒鹿毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離B、マイルA、中距離A、長距離G

脚質:逃げG、先行B、差しA、追い込みG

能力:スピードB、スタミナC、パワーC、根性B、賢さC

 

 

接戦に強い『合成因子』。ただしバ群は苦手なため、ポジション取りが重要。

 

ーーー

 

第八十二号『ダイヤマイト』

合成元:サクラバクシンオー&ダイイチルビー

毛色:鹿毛(ピンク)

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離A、マイルC、中距離G、長距離G

脚質:逃げB、先行A、差しB、追い込みG

能力:スピードB、スタミナD、パワーC、根性C、賢さB

 

 

短距離特化の『合成因子』。スピードがありながらもコントロールがしやすく、コース取りがしやすい。

 

ーーー

 

第八十三号『コウサイメノウ』

合成元:メジロブライト&ダイイチルビー

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品のあるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第八十四号『ウインドレディ』

合成元:ケイエスミラクル&ダイイチルビー

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品のあるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第八十五号『セーブルアイ』

合成元:ナリタブライアン&ダイイチルビー

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ。今後に実験予定。

 

ーーー

 

第八十六号『ボイルドシェル』

合成元:ヒシアケボノ&シーキングザパール

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

アグネスワールドの『アナザー』用に作成。今後に実験予定。

 

ーーー

 

第八十七号『シャンパングラス』

合成元:フジキセキ&ウオッカ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ。今後に実験予定。

 

ーーー

 

第八十八号『ハーピーバレット』

合成元:グラスワンダー&ヒシアマゾン

毛色:栗毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離F、マイルA、中距離A、長距離B

得意脚質:逃げG、先行C、差しA、追い込みC

能力:スピードC、スタミナC、パワーB、根性C、賢さC

 

 

力強い走りを行う『合成因子』…しかし、スタートが弱く序盤のポジション争いは難しい。レース時は外にまわる動きが主体になるだろう。

 

ーーー

 

第八十九号『エクセレントボディ』

合成元:グラスワンダー&ダイワスカーレット

毛色:栗毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離E、マイルA、中距離A、長距離A

得意脚質:逃げC、先行A、差しB、追い込みG

能力:スピードD、スタミナC、パワーC、根性C、賢さC

 

 

下半身が丈夫になり、重バ場も安定して走れる『合成因子』。欲を言えばもっとスピードが欲しかった。

 

ーーー

 

第九十号『レロレロレロレロ』

合成元:グラスワンダー&エアグルーヴ

毛色:栗毛

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:賢さG

 

 

『レロレロ』以上に舌が長い『合成因子』。…舌が口に収まりきらず、走るには向かない。もはや『あかなめ』とか『リッカー』とかに似たただの化け物。

 

ーーー

 

第九十一号『メテオスバル』

合成元:アグネスタキオン&アストンマーチャン

毛色:鹿毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離D、マイルC、中距離A、長距離G

脚質:逃げA、先行A、差しG、追い込みG

能力:スピードB、スタミナD、パワーC、根性D、賢さC

 

 

アグネスタキオンのスピードをアストンマーチャンのピッチ走法で行うという互いの特徴が上手く混ざった『合成因子』。しかし、何故か短距離適正が無く…中距離…それも2000m以上となれば最後までスタミナが持たず、扱うのがなかなか難しい。

 

ーーー

 

第九十二号『オアシスパーク』

合成元:マンハッタンカフェ&アストンマーチャン

毛色:青毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離A、マイルC、中距離C、長距離A

得意脚質:逃げA、先行G、差しA、追い込みC

能力:スピードC、スタミナB、パワーC、根性C、賢さC

 

 

短距離と長距離と得意とする異質な『合成因子』。ピッチ走法のデメリットであるスタミナ消費を補うためにマンハッタンカフェを合わせてみたが…こうなったのは予想外である。

 

ーーー

 

第九十三号『グラシズ』

合成元:ビワハヤヒデ&アストンマーチャン

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第九十四号『ロボコスチュム』

合成元:ミホノブルボン&アストンマーチャン

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第九十五号『エターナルクラウド』

合成元:セイウンスカイ&アストンマーチャン

毛色:鹿毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離A、マイルA、中距離A、長距離C

得意脚質:逃げA、先行B、差しG、追い込みG

能力:スピードC、スタミナD、パワーC、根性C、賢さB

 

 

セイウンスカイの『アナザー』用に作成。コントロールしやすく、被験者へのダメージも少ないため…ソウジ以外でも『ウマ人』になれるかもしれない『合成因子』。

 

ーーー

 

第九十六号『パーフェクトスリル』

合成元:ナカヤマフェスタ&ダイワスカーレット

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第九十七号『デンジャラスビスト』

合成元:ナカヤマフェスタ&カレンチャン

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ、今後実験予定。

 

ーーー

 

第九十八号『グアンダッキ』

合成元:メジロブライト&エアグルーヴ

毛色:鹿毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離G、マイルC、中距離A、長距離B

脚質:逃げG、先行B、差しA、追い込みG

能力:スピードC、スタミナC、パワーC、根性C、賢さC

 

 

メジロブライトの『アナザー』用に作成。走りにキレはあるものの、終盤になるまでスイッチが入りにくい。メジロブライトだけではなく『ウマ人』でもなるため、レース出走時はそれを頭に入れておく必要がある。

 

ーーー

 

第九十九号『ライトニンプリンス』

合成元:アグネスタキオン&カワカミプリンセス

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離C、マイルA、中距離A、長距離A

脚質:逃げG、先行A、差しA、追い込みG

能力:スピードB、スタミナC、パワーB、根性C、賢さE

 

 

スピード、力、共に優秀…なのだが、衝動的に噛みつきたくなる癖がある。口籠を付けての『ウマ人』になるのが必須。

 

ーーー

 

第百号『リムブラッド』

合成元:キングヘイロー&カワカミプリンセス

毛色:鹿毛

適正バ場:芝A、ダート?

適正距離:短距離A、マイル?、中距離?、長距離?

脚質:逃げ?、先行?、差しA、追い込み?

能力:スピードB、スタミナC、パワーA、根性C、賢さG

 

 

この『ウマ人』になったと同時に…痛みが走る。両腕と両足に亀裂が入り…溢れた血により赤く染まる。そこにあるのは力強く快速の走りとそれに伴う激痛のみ。

 

ーーー

 

第百一号『モミジヒメ』

合成元:マーベラスサンデー&カワカミプリンセス

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ。今後に実験予定。

 

ーーー

 

第百二号『フック』

合成元:メジロパーマー&カワカミプリンセス

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ。今後に実験予定。

 

ーーー

 

第百三号『セイトクイン』

合成元:ウイニングチケット&カワカミプリンセス

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ。今後に実験予定。

 

ーーー

 

第百四号『レックスフェタリス』

合成元:アグネスタキオン&メジロラモーヌ

毛色:栗毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離C、マイルC、中距離A、長距離C

得意脚質:逃げC、先行A、差しG、追い込みG

能力:スピードB、スタミナC、パワーC、根性C、賢さA

 

 

身体への馴染みがすごくすごい良い感じな『合成因子』。走らずともレースの未来視が出来るため、結果を知った状態で出走することになる。

 

ーーー

 

第百五号『ブラッドクロス』

合成元:メジロアルダン&メジロラモーヌ

毛色:青鹿毛

適正バ場:芝A、ダートG

適正距離:短距離A、マイルA、中距離A、長距離G

得意脚質:逃げG、先行S、差しG、追い込みG

能力:スピードB、スタミナC、パワーC、根性C、賢さC

 

 

胸に十字架の亀裂が出来…熱が体へと籠る。ターフを踏めば踏むほどにその熱は…その感情は大きくなる。胸の痛みすらも感じないほどに…そして、亀裂は大きくなり身体を赤く染める。

 

ーーー

 

第百六号『ブレイズモンスター』

合成元:スペシャルウィーク&メジロラモーヌ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

完成品があるのみ。今後に実験予定。

 

 

ーーー

 

第百七号『アウェイクンウルフ』

合成元:シンコウウインディ&ハルウララ

毛色:???

適正バ場:???

適正距離:???

得意脚質:???

能力:???

 

 

完成品があるのみ。今後に実験予定。

 

ーーー

 

第百八号『エンプレスロア』

合成元:シンコウウインディ&エアグルーヴ

毛色:鹿毛

適正バ場:芝A、ダートA

適正距離:短距離G、マイルA、中距離A、長距離G

得意脚質:逃げG、先行B、差しA、追い込みG

能力:スピードC、スタミナC、パワーC、根性C、賢さC

 

 

長い八重歯が特徴。芝、ダート両方のバ場に適応した『合成因子』。1人をマークした走りが得意。



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天国へ行った競走馬たちへ
第EX話 5つ星の女王 + 最強マイラー = 宇宙犬


本日タイキシャトル号が心不全で亡くなりました。彼は28歳というサラブレッドとしてはとても長い馬生でした。…天国でゆっくり休んでください。

今日は特別編です。…本編が終わった後に投稿しようとしていた話を1つ、投稿させていただきます。どうぞ。


今日もアグネスタキオンによる特別レースが始まろうとしていた。

 

「さぁさぁ、『スペースレトリバー』君をゲストに特別レースを…!」

「…」ダキッ

「ちょっとモルモット君!?無言で抱きつかないでくれたまえ!」

「…」すりすり

「コホン、特別レースを行っていくよ。」なでなで

 

ザワザワザワザワ

 

「アイツ…私のタキオンちゃんを…!」

「わぁ!大きなワンちゃんみたい!」

「『スペースレトリバー』…モフモフ…」

「あの髪の大きさ…姉貴といい勝負じゃないか?」

「私の頭はでかくない!」

「頭のことは何も言ってないが?」

 

回りの反応は様々だ。

 

「条件はマイルCSと同様に1600mの芝、バ場状態は良、天気は晴れ、といったところだ。参加者はいるかね?」

 

マイル戦とのことで次々とウマ娘たちが手を上げた!

 

「マイルCS?マ?ウェーイ!ウチ参戦じゃん!」

 

1人目、ダイタクヘリオス。

 

「…よい風を感じます。」

 

2人目、ヤマニンゼファー。

 

「よっしゃ!タイマンだ!」

 

3人目、ヒシアマゾン。

 

「フフフ…では、私も。」

 

4人目、グラスワンダー。

 

「メンバー豪華過ぎない?」

「…やっぱり、私は見るだけにするわ。」

「これはいつかは追いこすための勇気の撤退…逃げたわけじゃない!勇気の撤退なんだ…!」

「ドーベル!あの子が私たちの愛の結晶デース!」

「タイキ…その言い方は色々と誤解を招くから…」

 

その後、多くのウマ娘の手が下がり…最終的には9人でのレースとなった。

 

ーーー

 

「ピスピース、実況担当のゴルシちゃんだぞ!」

「解説担当のメジロマックイーンですわ。」

「さてさて…何回目の特別レースかゴルシちゃんもう覚えてないぜ!」

「結構してきましたからね…私はまた普通に参加したくなってきましたわ。」

「まぁ~、今日のところは~、大人しくここで仕事をするけどな~!ってことで1番、マルゼンスキー!」

「いきなり凄い方が来たのですが!…コホン、最内番からスタートでどこまで離せるかが見所です。」

 

「2番、『スペースレトリバー』!」

「確か、タイキシャトルさんとドーベルの『合成因子』でしたわね…ぼーっとしてますが大丈夫でしょうか?」

「確かにショートしたミホノブルボンみたいだな。」

「あなた、失礼なこと普通に言いますわね…」

 

「3番、タイキシャトル!」

「あら?彼女も参戦ですの?」

「実際に一緒に走りたくなったらしい。…まぁ、気持ちは分かる!」

「分かるのですか…コホン!最強マイラーと呼ばれる実力…今回のレースの大本命と言っても過言じゃないでしょう。」

 

「4番、ダイタクヘリオス!」

「彼女もタイキシャトルさん同様に秋のマイルCSを連覇している猛者です。どのような勝負になるのか…特にマルゼンスキーさんとの先頭争いに注目したいです。」

 

「5番、ヤマニンゼファー!」

「彼女も春の安田記念を連覇している猛者です…どこで仕掛けてくるかに注目したいですね。」

 

「6番、グラスワンダー!」

「猛者たちに対しての闘走心がこちらにも静かに伝わってきますわね…」

 

「7番、ヒシアマゾン!」

「グラスワンダーさんよりもダイレクトな闘走心が伝わってきますわ。」

 

「8番、ゴールドシチー!」

「彼女は…この中では一番落ち着いていますわね。」

「いや、よく見てみな。アイツのやる気はマキシマムだぜ!本人は抑えてるつもりかもしれないが…ゴルシちゃんの目は誤魔化せない!」

「それ本当ですの?」

「まぁ、見ていれば分かるって!」

「は、はぁ…」

 

「ラストは…メジロドーベルだ!」

「え?ドーベル?」

「タイキシャトルに連れられての参戦ってところだな!」

「…出走するからには全力で走るでしょう。私から言えることはそれだけですわ。」

 

「以上、この9人だ!全員ゲートに入ってくれ!」

 

各ウマ娘たちがゲートへと入り…レースが始まった!

 

………

 

「スタートしたな!おぉ!ダイタクヘリオスがいいスタート!先頭を取ったな!2番にマルゼンスキー。ヤマニンゼファー、タイキシャトル、『スペースレトリバー』がこれに続く!」

「後ろにゴールドシチー、グラスワンダー、メジロドーベル…最後方にヒシアマゾンと縦長な展開になってきました!」

 

「長めの直線を越え…第3コーナーカーブ!先頭は…マルゼンスキー!続いてダイタクヘリオス!そのすぐ後ろにタイキシャトルと『スペースレトリバー』、1バ身離れヤマニンゼファー!」

「後ろの集団は…メジロドーベル、ゴールドシチーと並んでそのすぐ後ろにグラスワンダー。ゴールドシチーはペースを上げて…いえ、元のペースに戻しました。掛かっていたのでしょうか?ヒシアマゾンは堅実に足を溜めています。」

 

「さぁ、最終コーナーの坂を下って残るは400mの平坦な直線!先頭は…タイキシャトルと『スペースレトリバー』の2人だ!完全に並んでいる!」

「コーナーで前の2人をかわしたようですわね。そのまま、差を広げにいきます。」

「後ろの奴らも仕掛けてきたが…伸びてこないか?」

「いえ、1人だけきていますわ!」

「グラスワンダーだ!グラスワンダーがここで一気に迫ってきた!残り200!この3人の争いか?」

「先頭はタイキシャトルと『スペースレトリバー』ですが…ここで『スペースレトリバー』が後退…タイキシャトルが先頭になりましたわね。」

「『スペースレトリバー』をグラスワンダーがかわした!さぁ、タイキシャトルが逃げきるか、グラスワンダーが差しきるか…タイキシャトルだ!タイキシャトルが1着ゴールイン!2着にグラスワンダー、3着に『スペースレトリバー』!」

 

「最強マイラーの異名は伊達ではありません。見事なレースでした…あら?タイキシャトルさんが『スペースレトリバー』さんに近づいて…抱きつきましたわ!」

「ハハハ…『スペースレトリバー』のやつ、完全にショートしてやがる。顔が赤くなり過ぎて煙が見える…あ、タキオンがきて引き剥がしたな。」

「あの…今度は『スペースレトリバー』さんがタキオンさんに抱きつきましたわよ。さらにその上にタイキシャトルさんも抱きついて…凄い絵面ですわ。今度はドーベルが引き剥がしにいきましたわね…」

「んじゃ、カオスになってきたことだし…今回はここまでだな!次の特別レースを待ってるぜ!…タイキ、ゆっくり休んでくれよ。私はまだこっちで頑張るから…」ボソッ

「ゴールドシップさん?」

「何でもない何でもない。んじゃ、またな!」

 

ーーー

 

タキオンメモ:『合成因子第二十九号スペースレトリバーについて』

 

XX月XX日

・誕生

→タイキシャトルの『因子』とメジロドーベルの『因子』を合成し、完成した第二十九号の『合成因子』に『スペースレトリバー』と名付けた。

 

 

XX月XX日

・身体能力

→アグネスフライトとの並走による計測結果より『スペースレトリバー』の適正バ場は芝とダート両方有り。また、適正距離はマイル~中距離と判断する。短距離も可能レベルで適正あり。

 

・適正脚質

→身体能力同様の方法で計測し、先行>>>差し=逃げ>>>追い込みと記録。

 

 

XX月XX日

・レース実行

→グラスワンダー、ゴールドシチー、タイキシャトル、ダイタクヘリオス、ヒシアマゾン、マルゼンスキー、メジロドーベル、ヤマニンゼファーとの特別レースに出走。合成元のタイキシャトルとの位置取りで互角に競り合うも、最後の直線で垂れてしまい敗北。

 

 

余談(他の特徴)

・寡黙

→とにかく喋らない。喋れない訳ではないが、『スペースレトリバー』となっている間はあまり、喋る気が起こらないとのこと。

 

・抱きつき癖

→合成元のタイキシャトル君同様にハグをする癖がある。しかも、元となったタイキシャトル君と違い無言で急に行うために心臓に悪い。さらに腕力もそこそこあるため長ければ数十分は離れてくれない。個人的には嬉しいが…人前ではやめてほしい。私以外には行わないことがせめても救いだ。

 

・庇護欲

→走る以外では基本的にぼーっとした状態であるため、目を離せばいなくなり、気づけば知らない所に保護されている。この前も目を離した5分後にスーパークリーク君によって、ちゃんちゃんこに背負われていた時はビックリした。よって実験時にはGPSを仕込む必要がある。

 

 

以上が『スペースレトリバー』の記録である。




合成因子二十九号『スペースレトリバー』が更新されました▼

ーーー

次回はソダシやジャックドールが出走予定の札幌記念時に本編を投稿します。ここまで読んでいただきありがとうございました。


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第EX話 強酒 + 大器の英雄 = 酒神の宴

本日ゼンノロブロイ号が眠ったまま亡くなりました。22歳での老衰…長生きだとは分かっているのですが…。天国でゆっくり休んでください。

今回も特別編です。今日中に書きたかった…それだけですが、どうぞ!


今日もアグネスタキオンによる特別レースが始まろうとしていた。

 

「さぁさぁ、『マッドネスグレープ』君をゲストに今日も特別レースを行っていくよ。」

「…」

 

ザワザワザワザワ

 

「顔が赤くない?」

「マッドネス…やっぱり…タキオンさんとうまぴょ…」

「んな訳あるか!」

「あの娘…風邪ひいてない?大丈夫?」

 

回りの反応は様々だ。

 

「条件はジャパンCと同様に2400mの芝、バ場状態は良、天気は晴れ、といったところだ。参加者はいるかね?」

 

次々とウマ娘たちが手を上げた!

 

「ニシシ…ボクの得意分野じゃないか!」

 

1人目、トウカイテイオー。

 

「むん!シュババっと行きますよ~!」

 

2人目、マチカネタンホイザ。

 

「ほぉ…面白そうやんけ!」

 

3人目、タマモクロス。

 

「覇王のボクの出番かな。」

 

4人目、テイエムオペラオー。

 

その後、多くのウマ娘の手が上がり…最終的には11人でのレースとなった。

 

ーーー

 

「ピスピース、実況担当のゴルシちゃんだぞ!」

「解説担当のグラスワンダーです~」

「さてさて…わりと最近で開かれた気もするけど特別レースだぜ!」

「たくさんのウマ娘が参加出来ますからね~。こういうことであれば何度行われても良いことかと…」

「んじゃ、早速出走メンバーの紹介だ!1番、アイネスフウジン!」

「最内に逃げのウマ娘…いい枠を取れましたね。」

 

「2番、メジロマックイーン!」

「今回私が解説の理由です。さて…最強ステイヤーさんはここではどんな走りを見せてくれるのか楽しみです。」

 

「3番、トウカイテイオー!」

「ダービー、ジャパンCと勝利経験がある分、このレースで非常に有利なウマ娘と言えるでしょう~」

 

「4番、『マッドネスグレープ』!」

「えーと、ウオッカさんとゼンノロブロイさんの『合成因子』でしたね?…フラフラしていませんか?」

「んー、昨日飲み過ぎたんじゃね?知らんけど!」

「…公式の大会ならアウトですよ。」

 

「5番、エイシンフラッシュ!」

「鋭い末脚…やはり、最後の直線が勝利へのカギとなるのでしょうか…」

 

「6番、マチカネタンホイザ!」

「鼻血、蕁麻疹、と不幸なことに会いレースへの出走出来るかが勝負とも言えた彼女ですが…今回の調子は絶好調のようですね。好走を期待したいです。」

 

「7番、テイエムオペラオー!」

「秋の三冠を勝ち取ったウマ娘ですね…どこで仕掛けてくるのか…私でも読めませんね。」

 

「8番、ナリタタイシン!」

「末脚はフラッシュさん以上…彼女もどこで仕掛けてくるのやら…」

 

「9番、ゼンノロブロイ!」

「あら?合成元の彼女も…」

「皆まで言うな…理由は分かるだろ?」

「…そうですね。全力で挑む彼女を見守りましょうか。」

 

「10番、タマモクロス!」

「バチバチと闘走心を燃やしての参戦ですね。彼女も今回は後ろから来るのでしょうか?」

 

「ラスト、スイープトウショウ!」

「…あら?いつものスイープさんに比べては大人しいような…」

「アイツもアイツで思うことがあるんだろ。…以上、この11人だ!全員ゲートに入ってくれ!」

 

各ウマ娘たち(スイープトウショウも含め)が綺麗にゲートへと入り…レースが始まった!

 

………

 

「スタートだ!先頭は…やはりアイネスフウジン!2番にトウカイテイオー、その後ろにメジロマックイーンとテイエムオペラオーが続く!」

「後ろにマチカネタンホイザ、『マッドネスグレープ』…!!『マッドネスグレープ』がいきなりペースを上げてきました!前の3人をかわし、アイネスフウジンへと迫ります!まさか、ここから仕掛ける気でしょうか?」

「おいおい!まだ1コーナーだ…って何かペース落ちてね?また3人にかわされて…マチカネタンホイザの前に落ち着いた?何なんだ?」

「ここまで安定しない走りは見たことないですね…」

 

「さて第3コーナーまで長めの直線があるが…先頭はアイネスフウジン。その後ろにトウカイテイオー、メジロマックイーン、テイエムオペラオー。」

「後ろに『マッドネスグレープ』、マチカネタンホイザ、ゼンノロブロイ…1バ身離れタマモクロスとエイシンフラッシュが並んでいます。さらに少し間が開いてナリタタイシン。スイープトウショウが最後方ですね…。」

「おい、『マッドネスグレープ』がまた下がったぞ?何をする気だ?」

「分かりません。スイープトウショウのところまで下がって…一気に前へとスパートをかけた!?」

「何なんだよアイツ!」

 

「さぁ、最終コーナーを曲がって残るは2メートルの坂がある直線!先頭は『マッドネスグレープ』だが…またペースが落ちた!先頭変わってアイネスフウジン、しかし後続もペースを上げてきた!」

「トウカイテイオーとメジロマックイーンも仕掛けてきました。しかし、後ろの伸びには届きません…ドンドン、差を詰められてきています。」

「ゼンノロブロイがここで伸びきた!『マッドネスグレープ』をかわした!前のトウカイテイオーとメジロマックイーンも捉えにかかる!」

「後ろはエイシンフラッシュとナリタタイシンも伸びてますけど…これは厳しいですね。」

「ゼンノロブロイが前の2人をかわし…ここでまた『マッドネスグレープ』!?どうやったらそんな走りが出きんだよ?」

「…残りは100m。もう後がありませんね。」

「ここで大外からスイープトウショウ!?スイープトウショウが前の2人を一気にかわして…1着ゴールイン!2着に『マッドネスグレープ』!3着にゼンノロブロイ!」

 

「…スイープさん!?…忘れていた訳ではありませんが…途中の姿が見えなくなっていました。」

「…多分、今走ってた奴らもそうだと思う。『マッドネスグレープ』の悪目立ちもあるだろうが…スイープに1本取られたな。」

「えぇ…魔法みたいでしたね。」

「今回はここまでだ。…ロブロイ、お疲れ様。本当にお疲れ様………はぁ。」

「ゴルシさん…私も同じ気持ちですよ。」

「グラス…今年だけでもいい。まだ…こっちにいてくれよ…!」

「えぇ。あなたとまた会う日まで…ずっと待っていますから。」

「…あぁ。」

 

ーーー

 

タキオンメモ:『合成因子第XXX号マッドネスグレープについて』

 

XX月XX日

・誕生

→ゼンノロブロイの『因子』とウオッカの『因子』を合成し、完成した第XXX号の『合成因子』に『マッドネスグレープ』と名付けた。

 

 

XX月XX日

・身体能力

→アグネスフライトとの並走による計測結果より『マッドネスグレープ』は適正バ場は芝のみ。また、適正距離は中距離~長距離と判断する。

 

・適正脚質

→身体能力同様の方法で計測するも…全てがメチャクチャなペースであったため参考にならなかった。よって、適正脚質は不明とする。

 

 

XX月XX日

・レース実行

→アイネスフウジン、エイシンフラッシュ、スイープトウショウ、ゼンノロブロイ、タマモクロス、テイエムオペラオー、トウカイテイオー、ナリタタイシン、マチカネタンホイザ、メジロマックイーンとの特別レースに出走。メチャクチャなペースでの走法でレースをかき乱すし、最後の直線で先頭に立つもスイープトウショウにかわされ敗北。

 

 

余談(他の特徴)

・泥酔?

→顔が赤く、酔っ払ているようにみえる。これは体温が他の『合成因子』より高いことが理由だ。ちなみにモルモット君はお酒にかなり強い…あのスピリタスもグイグイ飲める。

 

・長めの尻尾

→私たちウマ娘の尻尾と比べて30%ほど長く、地面に擦れるほどだ。前述の体温が高い理由もこれによるものだと考えられる。しかし…なぜ長くなったか不明だ。

 

 

以上が『マッドネスグレープ』の記録である。



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第EX話 夢を乗せた飛行機 + 花の妖精 = 空の花束

彼への敬意です。良ければお読みください。


寒さが続くトレセン学園にて、今日もアグネスタキオンによる特別レースが始まろうとしていた。

 

「さぁさぁ、『シードフレア』君をゲストに今日も特別レースを行っていくよ。…大丈夫かい?」

「…」ガクガク

 

ザワザワザワザワ

 

「コロコロしてて可愛いい!」

「庇護欲?ミニマリスト?よく分かんないけど…抱き締めて暖めてあげたい!」

 

寒そうな『シードフレア』に周りのウマ娘たちはカイロを渡し始めた。最終的にカイロが大量に貼られた白衣をタキオンから渡され纏う。

 

「…走れば体も温かくなるだろう。条件は2000mの芝、バ場状態は稍重、天気は雪、といったところだ。参加者はいるかね?」

 

次々とウマ娘たちが手を上げた!

 

「猛吹雪…私の出番ね!」

 

1人目、タイキブリザード。

 

「あたしも雪ン子ですから!」

 

2人目、ユキノビジン。

 

「私も行きます!」

 

3人目、スペシャルウィーク。

 

「雪か…わ、私も参加してもよろしいですか?」

 

4人目、ホッコータルマエ。

 

その後、多くのウマ娘の手が上がり…最終的には12人でのレースとなった。

 

ーーー

 

「ピスピース、実況担当のゴルシちゃんだぞ!お前ら久しぶり!」

「解説担当のメジロマックイーンですわ。」

「さてさて…今年初の特別レースだぜ!」

「今年初?今は夏くらいでえーと、そもそも特別レースが行われる理由は?」

「細けぇことは言いっこ無しだ!鏡餅は割って食べたか?ほら、鏡餅のお汁粉だ!」

「は、はぁ…ありがとうございます。」

 

「マックイーンがパクパクしてる間に出走メンバーの紹介だ!1番、マヤノトップガン!」

「変幻自在な脚質…今回はどのような走りを見せていただけるのでしょうか?」

 

「2番、ウオッカ!」

「サンタ衣装での登場ですか…クリスマスは終わってますわよ。」

 

「3番、オグリキャップ!」

「彼女もですか!?」

 

「4番、ホッコータルマエ!」

「あら?彼女の適性はダートだったような…」

「まぁ、折角実装されたんだ!雪の中を走らせたいんだろう!」

「…誰がですか?」

 

「5番、ビワハヤヒデ!」

「前もサンタ、後ろもサンタですわね。」

 

「6番、アグネスフライト!」

「あらあら!彼女も参加されるのですね!これは注目ですわね!」

「なんだマックイーン?フライトのこと好きなのか?」

「えぇ、この前カロリーの低いスイーツを差し入れしていただいて…甘さはなくてもとっても美味しかったですの!」

「…ゴルシちゃんのお汁粉は甘いだけだから塩でも振ろうか?」

「お止めなさい!あなたのも美味しいですから!」

 

「…7番、『シードフレア』!」

「謝りますから拗ねないでください!…えーと、震えているのですが走れるのですか?」

「あぁ、それは問題ないらしい。タキオンが言うには体が温まる終わり辺りに面白いことがみれるとか何とか。」

「面白いこと?因みに今回は誰と誰の組み合わせでしょうか?」

「アグネスフライトとニシノフラワー。」

「フライトさんの『因子』が使われてますのね!素晴らしい!」

「今度はマックイーンにワサビがネタの寿司でも食わせようかな…」

「だからお止めなさい!」

 

「8番、ユキノビジン!」

「雪の天候は彼女の得意フィールド…どうなるのでしょうか?」

 

「9番、ダイワスカーレット!」

「サンタ衣装…まさかの全員参加でしたか…」

 

「10番、マーベラスサンデー!」

「マヤノさんとフライトさんに続いてでしょうか?差しに期待が集まりますわ」

 

「11番、タイキブリザード!」

「あら?ブリザードさんも参戦ですの?先行を得意していたのは記憶にありますが…久々のレースどう走るか注目です。」

 

「ラスト、スペシャルウィーク!」

「水着!?場違いにもほどが有りますわよ!早く着替えさせなさい!」

「大丈夫だろ?アイツの地元は雪積もってるくらいだし。」

「そんな訳ないでしょうが!スペシャルウィークさん、着替えなさ…速っ!」

「一瞬で普通の勝負服に着替えたな。寒かったかあるいは…以上、この12人だ!全員ゲートに入ってくれ!」

 

各ウマ娘たちが綺麗にゲートへと入り…レースが始まった!

 

………

 

「スタートしたな!注目の先行争いは…ダイワスカーレットかホッコータルマエか!その後ろにビワハヤヒデとユキノビジン、1バ身離れタイキブリザードとオグリキャップが続く!そのままコーナーカーブした!」

 

「第3コーナーまでの長い直線に入りましたわ。中団はウオッカと『シードフレア』、マーベラスサンデー、スペシャルウィーク!さらにすぐ後ろにマヤノトップガンとアグネスフライト。」

「で、ハナを取ったのはダイワスカーレットか…2番にホッコータルマエ。タイキブリザードが上がってきたか3番手!」

「そのすぐ後ろにビワハヤヒデ、ユキノビジン、オグリキャップが続いていますわね。そして3バ身程離れた後ろの集団は…マーベラスサンデーとスペシャルウィークが並んで間に『シードフレア』、外からウオッカが巻き返しを狙っていますわ。」

「第3コーナーに入ったな…後方のマヤノトップガンとアグネスフライトもペースをあげてきた。いよいよ最終コーナーだ!」

「混戦状態となってきましたわね。」

 

「さぁ、最終コーナーを曲がって先頭にいるのはダイワスカーレット!ホッコータルマエはバ群へと沈んでいった!」

「適性によるものでしょうか。そして…かなりの混戦状態…抜けてきたのはスペシャルウィークと『シードフレア』…!?」

「おいおい…何だよアレ!?どうなってんだよマックイーン?」

「私にも分かりませんわ!『シードフレア』さんが…芦毛へと変わっていますわ!」

「これがタキオンの言ってたの面白いことか…何人かが気を取られちまったな!だが、先頭は先頭しか見ていなかったダイワスカーレット!2番手『シードフレア』がどんどん差を詰める!」

「外から…アグネスフライトも来てますわ!」

「フライト…最初から狙いは『シードフレア』だったのかよ!先頭ダイワスカーレット、それに『シードフレア』とアグネスフライトが差を詰める!」

「ここで3人が並んでゴールイン!…ほぼ同時に見えたのですが…どうなのでしょうか?」

「…写真判定だな。…お、おぉ!?フライトか?『シードフレア』か?どっちだ?」

「これは…同着でしょうか?」

「あぁ…写真判定の結果、アグネスフライトと『シードフレア』の同着だ!!3着にはダイワスカーレット!」

「見事なレースでしたわ!」

「あぁ、そうだな…フライト。私はお前がいつか公式になるのことを願ってるから…今は休んでくれ。」

「ゴールドシップさん?」

「何でもない!んじゃ、またな~!」

 

 

ーーー

 

タキオンメモ:『合成因子第XXX号シードフレアについて』

 

XX月XX日

・誕生

→お姉ちゃんの『因子』とフラワー君の『因子』を合成し、完成した第XXX号の『合成因子』に『シードフレア』と名付けた。

 

XX月XX日

・身体能力

→メジロブライトとの並走による計測結果より『シードフレア』は適正バ場は芝のみ。また、適正距離は短距離~中距離と判断する。

 

・適正脚質

→得意脚質は差し>先行=追い込み>>>>逃げだった。

 

 

XX月XX日

・レース実行

→アグネスフライト、ウオッカ、オグリキャップ、スペシャルウィーク、タイキブリザード、ダイワスカーレット、ビワハヤヒデ、ホッコータルマエ、マーベラスサンデー、マヤノトップガン、ユキノビジンとの特別レースに出走。最後の直線でダイワスカーレットを差しきり、大外からきたアグネスフライトと同着。

 

 

余談(他の特徴)

・寒さに弱い

→18度以下の環境で寒いと感じる体質とのこと。

 

・形態変化

→ウマ娘や人間と同じ恒温動物ではあるものの、寒いと髪が短くなり、鹿毛(緑色)へと変化する。

 

 

以上が『シードフレア』の記録である。



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第EX話 勝利切符 + ミス・パーフェクト = 運命の赤き旗

本日、ウイニングチケット号が疝痛で亡くなりました。33歳…とても長生きでしたね。

…どうぞ。


トレセン学園にて、今日もアグネスタキオンによる特別レースが始まろうとしていた。

 

「さぁさぁ、『ビクト二ーフラッグ』君をゲストに今日も特別レースを行っていくよ。」

「…」もじもじ

 

ザワザワザワザワ

 

「…でかいわね。」

「うん、でかい…走れるの?」

 

周りのウマ娘たちが騒ぎだす。それもその筈だ…『ビクトニーフラッグ』のある所がでかいからである。

 

「条件は2200mの芝、バ場状態は良、天気は晴、といったところだ。参加者はいるかね?」

 

そんな反応を無視しアグネスタキオンは参加の有無を聞く。すると次々と手が上がった。

 

「アタシも参加するよ!!宝塚記念と同じ距離でマーベラスな感じ☆」

 

1人目、マーベラスサンデー。でかい。

 

「はいは~い!アタシもアタシも!」

 

2人目、ウイニングチケット。でかい。

 

「あらあら~!楽しそうですね~!」

 

3人目、スーパークリーク。でかい。

 

その瞬間、何人ものウマ娘の手が下がったものの参加者に誘われ…最終的には10人でのレースとなった。でかい。

 

ーーー

 

「ピスピース、実況担当のゴルシちゃんだぞ!お前ら久しぶり!」

「解説担当のグラスワンダーです~。」

「もやは何回目やら分かんない、お馴染みのレースだぜ!」

「ですね~。」

「そういえば今日はグラスの誕生日だな!おめでとう!」

「ありがとうございます~」

「プレゼントに…カツカレーを作ってきたぜ!」

「確かに美味しくて好きな食べ物ではありますが…何故カツカレーを?」

「んなもん、阪神レース場の名物に決まってるからだろ!(*個人の意見です。)」

「私はあそこで食べるものはうどんが1番好きなのですが…(*個人の意見です。)」

「とりあえずカツがサクサクな今に食べてくれよ~!」

「では、いただきますね…あ!美味しいです~!」モグモグ

「喜んでくれて良かったぜ!んじゃ、ぱぱっと出走メンバーの紹介だ!1番、マヤノトップガン!小さい!」

「あら?また彼女が参加ですか?ちょっと不機嫌なような…」モグモグ

「まぁ、参加メンバーがメンバーだからな…」

「は、はぁ…?」モグモグ

 

「2番、イナリワン!超でかいな!」

「でか…え?」モグモグ

 

「3番、オグリキャップ!普通!」

「普通?えーと、彼女の出走も連続なような…」モグモグ

 

「4番、ビワハヤヒデ!でかい!」

「ご馳走でした…前出ていたメンバー多くないですか?」

 

「気にすんな!5番、ウイニングチケット!でかい!」

「…これって私から反応しないといけませんか?」

 

「6番、『ビクトニーフラッグ』!超でかい!」

「…」

「グラスも分けて欲しいか?」

「…○にたいですか?なら、○してあげますが?」ゴゴゴ

「冗談だって…!お前には尻が…ガガガ!」

「…」ギチギチ

「やめろ!アイアンクローを外せ!ゴルシちゃんがでかくなる秘訣を教えるから!」

「…本当ですか?…今回だけですよ。」

 

「…ふぅー、痛かったな。7番、マーベラスサンデー!超でかい!」

「その紹介をいい加減にやめませんか?」

「『ビクトニーフラッグ』がゲストな以上は諦めてくれ。」

「…」

 

「8番、スーパークリーク!超でかい!」

「…もう一度しないと分からないですか?」

「何回しようが変わらねえよ!…それより何か気づかないか?」

「オグリ先輩とイナリ先輩と合わせて平成三強…まさか!」

 

「9番、ナリタタイシン!」

「BNWですね!」

 

「ラスト、サクラローレル!」

「新三強…後は、スペちゃんたちが入れば…」

「いや、入れるとしたらオペラオーたちかタキオンたちじゃね?以上、この10人だ!全員ゲートに入ってくれ!」

 

各ウマ娘たちが綺麗にゲートへと入り…レースが始まった!

 

………

 

「スタートしたな!さぁ誰が前を行くか…マヤノトップガンだ!そのすぐ後ろに『ビクトニーフラッグ』、スーパークリーク、イナリワン…でけぇな。」

「…。ビワハヤヒデ、ウイニングチケット、サクラローレル、マーベラスサンデーが集団となり、そこから1バ身離れてオグリキャップ、最後方にナリタタイシンの並びで最初のコーナーに入ります。」

 

「先頭はマヤノトップガン!掛かっているのかペースをグングンと上げている!2番手との差は10バ身!大逃げを披露しているぞ!」

「後続も向こう正面に入ってきまして…2番と3番は変わらず『ビクトニーフラッグ』とスーパークリーク、イナリワンは下がり始めましたね…」

「そのすぐ後ろに…ちょっとウイニングチケットが前に出てきてる感じか?で、ビワハヤヒデ、サクラローレル、オグリキャップ、マーベラスサンデー…ナリタタイシンが最後方のままでマヤノトップガンが第4コーナーカーブした!」

 

「最後の直線、マヤノトップガンは先頭ですが…ちょっと疲労が見えますね…」

「ここでスーパークリークと『ビクトニーフラッグ』…でかい2人が迫ってくる!後続も仕掛けてきたか!誰が抜け出すか!」

「ウイニングチケットとビワハヤヒデ、マーベラスサンデーの3人がペースを上げて前へと出てきました。さらにイナリワンとナリタタイシンも一気に伸びてきています!」

「おぉ!ナリタタイシンの伸びが凄まじいな!イナリワンとスーパークリークをかわす!」

「差しきれるでしょうか…差は縮まっていきますね…まぁ!」

「ウイニングチケットを差しきったな!やっぱり小さい方がいいみたいだぞグラス?」

「また、お顔をキュッ、ってされたいですか?」ゴゴゴ

「冗談だって…チケゾー、お疲れ様。」

「ゴールドシップさん?」

「グラス。お前はさ…その…今も私を待っているか?」

「待ってますよ~。だって、あなたは…とっても面白い方ですので。」

「…そっか。」

 

 

ーーー

 

タキオンメモ:『合成因子第五号ビクトニーフラッグについて』

 

XX月XX日

・誕生

→ウイニングチケット君の『因子』とダイワスカーレット君の『因子』を合成し、完成した第五号の『合成因子』に『ビクトニーチケット』と名付けた。

 

XX月XX日

・身体能力

→アグネスフライトとの並走による計測結果より『ビクトニーチケット』の適正バ場は芝のみ。また、適正距離はマイル~中距離と判断する。

 

・適正脚質

→身体能力同様の方法で計測した結果、先行>>差し=逃げ>>>追い込みと判断する。

 

XX月XX日

・レース実行

→イナリワン、ウイニングチケット、オグリキャップ、スーパークリーク、サクラローレル、ナリタタイシン、ビワハヤヒデ、マーベラスサンデー、マヤノトップガンとの特別レースに出走。最後の直線でナリタタイシンらに差され4着に敗北。

 

 

余談(他の特徴)

・でかい

→説明不要。『アナザー』になったカフェがキャラ崩壊レベルで喜んでいたことを私は忘れない。

 

 

以上が『ビクトニーフラッグ』の記録である。




▼合成因子第五号『ビクトニーフラッグ』が更新されました


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第EX話 強酒 + ブロンドコレクター = 銅の盃

…本日、ナイスネイチャが亡くなりました。35歳…重賞を勝ち取った競走馬としては最高齢の競走馬でした。

…どうぞ。


トレセン学園にて、今日もアグネスタキオンによる特別レースが始まろうとしていた。

 

「さぁさぁ、『タンブラーブロンド』君をゲストに今日も特別レースを行っていくよ。」

「…」

 

パチパチパチパチ

 

周りのウマ娘たちの拍手と共にゲストのウマ娘が入ってくる。

 

「条件は2500mの芝、バ場状態は良、天気は晴れ…参加者はいるかね?」

 

アグネスタキオンが参加者の有無を聞くと次々と手が上がった。

 

「はいはいはいはーーーい!!絶対に走る!!」

 

1人目、ツインターボ。

 

「…では、私も。」

 

2人目、メジロマックイーン。

 

「私もね!!」

 

3人目、タイキブリザード。

 

他にもたくさんの手が上がっていたものの…アグネスタキオンにより参加者は17人までに絞られた。

 

ーーー

 

「ピスピース、毎度おなじみ実況担当のゴルシちゃんだぞ!」

「今回も解説させていただくグラスワンダーです~。」

「しゃっ!最近のあの界隈は暗いことばっかりだからな!これで少しくらいは元気にしてやるぜ!」

「それはいいことですね。しかし…わざわざコレを読みに来る方は少ないのでは?最近、投稿する度に読者減ってるようですし…」

「誰が作者の悲しい現実を解説しろと言った!?まぁ、まだ半分も経ってないが…今年は色々はあったからな。」

「…えぇ。ネイチャさん、フライトさん、チケゾーさん…」

「フライトは非公式キャラだからな?」

「そうですけど…」

 

「暗くしちまったな…空気を変えるために出走メンバーの紹介だ!1番、ウイニングチケット!」

「さっき名前を出したばかりなのですが…」

「って言われてもこの枠に決まったからな…おら、解説しろ!後16人はいるんだから!」

「ダービーウマ娘の実力に期待です。」

 

「2番、メジロパーマー!」

「グランプリウマ娘の実力に期待です。」

 

「3番、ナイスネイチャ!今日の主役!」

「有マ記念で3年連続3着…あら?今、気づいたのですが…」

 

「4番、ビワハヤヒデ!」

「今日の参加してるメンバーって…」

 

「5番、イクノディクタス!」

「ネイチャさんが有マで戦ったメンバーのような…」

 

「6番、メジロライアン!あぁ、そうだぞ!まぁ、タキオンが手を上げた中から選んだメンバーではあるけどな。」

「ですよね…」

 

「だから、お前は解説しろって…7番、ダイタクヘリオス!」

「はい!パーマーさんとの大逃げに期待です。」

 

「8番、マチカネタンホイザ!」

「G1勝利こそないもののそれに勝るとも劣らない走りを持っています。その力を見せてください。」

 

「9番、ナリタブライアン!」

「この中ですと…唯一の3冠ウマ娘ですね。ハヤヒデさんとの姉妹対決に注目です。」

 

「10番、トウカイテイオー!」

「有マでの奇跡の復活の印象が強いですが…G1を4勝している実力者です。」

 

「11番、『タンブラーブロンド』!」

「ネイチャさんと…タンブラー…タンブラー…グラス?…もしかして私ですか?」

「違ぇよ!まさかお前、そっちの気が…」

「むぅ…ではどなたですか?」

「ウオッカ。」

「…なるほど。差しを得意とする2人の組み合わせですから…後ろからのレースになりそうです。と、なれば…末脚勝負に注目していただければ。」

 

「12番、マヤノトップガン。」

「変幻自在な彼女が今回選ぶ脚質とは…」

 

「13番、ライスシャワー。」

「強者が集まる今回のレースは誰をマークするかに注目です。」

 

「14番、ツインターボ。」

「ヘリオスさんとパーマーさんの爆逃げ以上の方がいましたか…」

 

「15番、ヒシアマゾン。」

「おそらく…最後方から一気に来るかと。先行や差しの脚質のウマ娘が多いこのレースでは…どうなるのでしょうか?」

 

「16番、タイキブリザード。」

「引退はしているものの力強さは未だに現役…今回はどんな走りをするのか。」

 

「ラスト、メジロマックイーン。」

「先行を得意とする彼女ですが…大外からいいポジションをとれるかどうか…」

「これで全員だ!お前ら、ゲートに入ってくれ!」

 

各ウマ娘たちがゲートへと入っていき…レースが始まった!

 

………

 

「スタートしたな!さぁ誰がハナを取るかだが…やはりツインターボ!そのすぐ後ろにメジロパーマーとダイタクヘリオス!!後続を大きく離していく大逃げだ!」

「先行集団がすごいです…4番手のタイキブリザードを筆頭にメジロマックイーン、ライスシャワー、ビワハヤヒデ、トウカイテイオー、マヤノトップガン…誰も今のポジションから動く気配がありません…少し不気味です。」

 

「後続にウイニングチケット、イクノディクタス、に続いてナイスネイチャ、『タンブラーブロンド』…さらに1バ身離れメジロライアン、ナリタブライアン、最後方にヒシアマゾン!」

「後続集団は…激しくポジションを取りあってますね。最後まで持つのでしょうか?」

「先頭のツインターボとの差は…20バ身くらいか?というかダイタクヘリオスも掛かっているな…3番のメジロパーマーとも5バ身差があるな。」

「後続の先行集団は…メジロパーマーを捉えにペースを上げてきましたね。…6人が息が揃い過ぎていて不気味です。」

 

「さぁ、向正面にきて…ツインターボとダイタクヘリオスはまだ粘っている!…ここで先行集団の6人がメジロパーマーを捉えたか!一気にかわす!」

「後ろからは…ナイスネイチャと『タンブラーブロンド』がペースを大きく上げてきましたね。ロングスパートか前の集団に入ろうとしているのでしょうか。」

 

「第3コーナーカーブ!ツインターボとダイタクヘリオスは…ここまでだな。先頭変わってタイキブリザード!ここで先行集団がバラバラになったぞ!」

「誰が抜けてくるのでしょうか…後続も仕掛けてきましたね。ナリタブライアンが大外に回ってきました。」

 

「さぁ、最後の直線…抜け出してきたのはビワハヤヒデだ!しかし、タイキブリザードも負けじとまた伸びる!外を取った『タンブラーブロンド』もいい伸びだ!」

「ー!大外からナリタブライアン!ナリタブライアン、すごい末脚です!」

「先頭はビワハヤヒデ!タイキブリザード、『タンブラーブロンド』が続く!ナリタブライアン、前の3人を差しきるか!残り200!」

「『タンブラーブロンド』がタイキブリザードに並びました!前のビワハヤヒデに届くのでしょうか…ナリタブライアンも迫っています。」

「さぁ、ビワハヤヒデ逃げきるか…ナリタブライアンが来る!来た!来た!ナリタブライアン差しきった!ナリタブライアン、最速の末脚で1着ゴールイン!2着にビワハヤヒデ…姉妹のワンツーだ!」

 

パチパチパチパチ

 

「おぉ!大きな拍手が聞こえるな!」

「…あら?3番争いですけど…ナイスネイチャも上がって…『タンブラーブロンド』と並んでいますね。」

「あん?…ここでこの2人の3着争いか…カメラで確認…完全に同着じゃね?」

「えーと…私にもそう見えますね…」

「3着が同着か…まぁ、らしいといえばらしいか。…グラス、1ついいか?」

「何でしょうか?」

「お前は既に長生きしてるだろ?何か長生きしてくれ、って言うのは違うと思うんだ。」

「まぁ、そうですね。」

「だから、前の発言は撤回だ。幸せに生きてくれ…もしかしたら私の方が早く逝ってしまうかもしれないが…」

「…ゴルシさん。ダメですよ…ここで暗い話をするのは。」

「…悪い。」

「ですので…あなたが来るのを待ちますよ。それも私の幸せですので。」

「グラス…んん!んじゃ、特別レースはここまでだ!またな!」

 

 

ーーー

 

タキオンメモ:『合成因子第七十七号タンブラーブロンドについて』

 

XX月XX日

・誕生

→ナイスネイチャ君の『因子』とウオッカ君の『因子』を合成し、完成した第七十七号の『合成因子』に『タンブラーブロンド』と名付けた。

 

XX月XX日

・身体能力

→アグネスフライトとの並走による計測結果より『タンブラーブロンド』の適正バ場は芝のみ。また、適正距離はマイル~長距離と判断する。

 

・適正脚質

→身体能力同様の方法で計測した結果、差し>先行>>逃げ>>追い込みと判断する。

 

XX月XX日

・レース実行

→イクノディクタス、ウイニングチケット、タイキブリザード、ダイタクヘリオス、ツインターボ、トウカイテイオー、ナイスネイチャ、ナリタブライアン、ヒシアマゾン、ビワハヤヒデ、マチカネタンホイザ、マヤノトップガン、メジロパーマー、メジロマックイーン、メジロライアン、ライスシャワー、との特別レースに出走。ゴール直前でビワハヤヒデに次ぐ2番まで上がるもナリタブライアンに差しきられ敗北。それに続いたナイスネイチャと並び同着3着。

 

以上が『タンブラーブロンド』の記録である。



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第EX話 超光速の貴公子 + 猛る姫 = 光の王子

…本日、いえ正確にいえば昨日ですがカワカミプリンセスが亡くなりました。20歳…競走馬の寿命とすれば平均だと思いますが…お疲れ様でした。


トレセン学園にて、今日もアグネスタキオンによる特別レースが始まろうとしていた。

 

「さぁさぁ、『ライトニンプリンス』君をゲストに今日も特別レースを行っていくよ。」

「ぐるる…」

 

パチパチパチパチ

 

周りのウマ娘たちの拍手と共にゲストのウマ娘が入ってくる…口籠をつけた状態で。そばにはアグネスフライトがスタンガンを構えていた。

 

「条件は1800mの芝、右回り、バ場状態は良、天気は晴れ…参加者はいるかね?」

 

アグネスタキオンが参加者の有無を聞くが…手を上げる者はいない。

 

「ねぇ、今回のゲストって…ヤバくない?レースになる?」

「あんまり関わりたくはないかも…」

 

「ぐるるる…ぐおっ…!?」ガクッ

 

バチバチッ

 

『ライトニンプリンス』と呼ばれたウマ娘が動きを見せたため、アグネスフライトがスタンガンを使い沈める。この光景から誰も参加しようとしないのだ。しばらく沈黙が続いたが…1人のウマ娘が手を上げた。

 

「何よ…全員だらしないわね…なら、アタシが行くわよ!」

 

スイープトウショウだ。しかし…それ以外に上がる気配はない。

 

「………。カワカミ!あんたは出なさいよ!元はあんたの『因子』でしょうが!」

「そ、そうは言われましても…」

「デュランダル!フラワー!あんたたちも来なさいよ!」

「ー!」フルフルフル

「…分かりました。私、出走します。」

「ほら!フラワーがこう言ってるのだから2人とも出なさい!決定よ!」

「ー!」ブンブンブンッ

「こうなればもう行くしかねぇですわ。デュランダルさん、諦めてくださいまし。」

「………。」ズーン

 

カワカミプリンセスとスイープトウショウに死んだ目で引きずられるデュランダル…こうして、何とか4人が参加することになった。

 

「ふむ…これ以上は厳しいか。仕方ない、残りの何人かはこちらで用意をしよう。」

 

アグネスタキオンはモルモットたちを(無理やり)呼び出し、合計10人でのレースとなった。

 

 

ーーー

 

「ピスピース、毎度おなじみ実況担当のゴルシちゃんだぞ!」

「解説のメジロマックイーンですわ。」

「何かマックイーン見るのが久しぶりに感じるな。」

「毎日嫌と言うほど会ってるでしょう…」

「まぁ、そうなんだけど違うっていうか…」

「それはいいですわ。それより…これはレースになりますの?」

「なる!………ガクルガ。」

「いや、某狩りゲームのモンスター名を言われましても…」

「うん、フライトいるし最悪なことにならない…といいな。」

「その自信の無い言い方をやめてください!怖いじゃありませんか!」

 

「と、とりあえず出走メンバーの紹介だ!1番、『ハイオクタン』ことメジロブライト!」

「『アナザー』になっているのですが?」

「マイル適正無いんだからしょうがないだろ!」

「私に言われましても…」

 

「2番、ニシノフラワー!」

「マイル適正があるとはいえ…彼女にはやや長い距離になるかもしれません。」

 

「3番、『ピンクスムージー』ことセイウンスカイ!」

「隣のフラワーさんを凝視してますわね…えーと、あら?私の『因子』が使われてますのね。芦毛ではないようですが…」

「どうやらウララの『因子』の方が強く出たみたいだな。脳ミソピンクなスカイが毛色までピンクになっちまうとは…面白ぇ!」

「後で怒られますわよ…」

 

「4番、『デビルジュピター』ことアグネスフライト!」

「…両隣のゲートが空なのは何故でしょうか?」

「あん?あの『合成因子』は近くにいるだけで体力がごっそりも持っていかれる。だからレース前は距離を取らないといけない、だとよ。あのビリビリはフライトのスタンガンと…いや、スタンガンほどは無いな。」

「とりあえず、次にいってくださいませ。」

 

「5番、『ライトニンプリンス』!」

「タキオンさんとカワカミさんの『合成因子』のようですが…あら?まさかとは思いますが口籠をつけたまま走る気ですか?」

「マスク付けたまま走るウマ娘もいるだ…可笑しくはない!」

「可笑しいですわよ!エルコンドルパサーさんのマスクは目元だけでしょうが!」

「あー、アイツのもマスクに含まれるか。…ったく、早いこと参戦してくれないかな…暴君3冠ウマ娘として。このままだと飛行機雲3冠ウマ娘の方が先に…」

「だから何の話ですの!?」

 

「6番、キングヘイロー!」

「…彼女は『アナザー』にならないのですね。」

「正面から勝負するのがキングオブキングよ、…だそうだ。まぁ、スカイに無理やり連れてこられた感じだな。」

「振り回されるお気持ち…よーく、分かりますわ。」

 

「7番、スイープトウショウ!」

「このレースが開催されるのは彼女のお陰と言っても過言じゃありませんわね…良い意味でも悪い意味でも。」

 

「8番、『ジンソニック』ことマンハッタンカフェ!」

「確かこれは…最初に作られた『合成因子』でしたわね。カフェさんと脚質が近いため相性は良いかと思います。」

 

「9番、カワカミプリンセス!今日の主役な!」

「なぜ主役?そういえば、ゲストの『ライトニンプリンス』の『因子』に彼女のが含まれていましたわね。力強い走りに期待です。」

 

 

「ラスト、本家参戦に期待が高まるデュランダル!」

「本家が何かは分かりませんが…名前に恥じない鋭い末脚に期待ですわ。」

「これで全員だ!お前ら、ゲートに入ってくれ!」

 

各ウマ娘たちがゲートへと入っていき…レースが始まった!

 

………

 

「スタートだ!スイープトウショウとデュランダルが出遅れるけど気にしない!さて…先頭に来たのは…『ピンクスムージー』!2番にニシノフラワー、『デビルジュピター』、『ジンソニック』と続く。」

「3バ身程開きまして、内から『ハイオクタン』、キングヘイロー、カワカミプリンスと並び…それらを『ライトニンプリンス』が凄い形相で追っています。その後ろにスイープトウショウ…デュランダルは最後方からのレースとなっていますわ。」

 

「さぁ、京都コースだからここからは坂がある!『ピンクスムージー』、楽な感じに登っているぞ…ん?ニシノフラワーと『ジンソニック』はもうバテたか?2番に『デビルジュピター』が来た。」

「後続は…『ハイオクタン』が内からペースを上げて抜けてきましたわ。スタミナは持つのでしょうか…カワカミプリンセスとキングヘイローが『ライトニンプリンス』から逃げる形になりました。」

「そろそろ3コーナーを曲がっての下り坂!『ピンクスムージー』先頭だが…『デビルジュピター』が食らいついてきた!そして、後方集団もペースを上げて前との差をつめる!残り600!」

「ここで『ピンクスムージー』が後退…先頭は『デビルジュピター』に代わりました。最後の直線、後続が一気にきましたわ!」

「先頭は『デビルジュピター』が粘っているが…その内を『ハイオクタン』が突いてきた!そしてカワカミプリンセスとキングヘイロー、2人が伸びて『デビルジュピター』をかわした!迫る『ライトニンプリンス』!」

「スイープトウショウ、ここで仕掛けるようです…果たして間に合うか。デュランダルは…仕掛ける様子がありませんわ!先頭は『ハイオクタン』ですが…ここで後退!?残り200!」

「先頭はカワカミプリンセスとキングヘイロー!それを背後からとんでもない形相で追う『ライトニンプリンス』!大外からはスイープトウショウが追い込んでくる!どうなる?どうなる?…そのままゴールイン!!1着はカワカミプリンセスかキングヘイローか…後は最後のスイープトウショウか『ハイオクタン』、どっちかが4着だが…」

「いえ、それよりも…ゴールしてもまだ『ライトニンプリンス』が2人を追っているのですが…」

「マジかよ!?カワカミ!キング!とりあえず2手に別れろ!そうだ……カワカミの方か!カワカミ!もう1周だけ走って粘れ!!……おい、デュランダル危ないぞ!!」

 

「…」ブンッ

「ーッ!」

 

パチンッ

 

「ー!?」ガクッ

 

「大人しくしなさい!!」

 

バチッ

 

「ー!………。」

 

「おぉ!?デュランダルが動きを止めた!そこからフライトがスタンガンで締めた!ナイスコンビネーション!!」

「さすがフライトさん…」

「とりあえず写真判定するわ………クビの上げ下げでカワカミプリンセスが1着!2着はキングヘイロー、3着『ライトニンプリンス』、4着はスイープトウショウだ!てな感じで今回のレースはここまでだ…またな!」

 

ーーー

 

タキオンメモ:『合成因子第XXX号ライトニンプリンスについて』

 

XX月XX日

・誕生

→私の『因子』とカワカミプリンセス君の『因子』を合成し、完成した『合成因子』に『ライトニンプリンス』と名付けた。

 

XX月XX日

・身体能力

→並走による計測はバラつきが激しく不可能と判断。『ライトニンプリンス』のみで走らせて計測し、適正バ場は芝のみ。また、適正距離はマイル~中距離と判断する。

 

・適正脚質

→身体能力同様の方法で計測した結果、先行=差し>>>>>>逃げ=追い込みと判断する。

 

XX月XX日

・レース実行

→アグネスフライト、カワカミプリンセス、キングヘイロー、スイープトウショウ、セイウンスカイ、デュランダル、ニシノフラワー、マンハッタンカフェ、メジロブライトとの特別レースに出走。終始カワカミプリンセスとキングヘイローを追いかけており、彼女らに合わせるように加速するも3着に敗れた。また、レース終了後もカワカミプリンセスを執拗に追いかけるという行動もあった。

 

余談(その他の特徴)

・衝動的な噛み癖

→物質、生物問わず突然何かに噛みつく癖があるため、口籠が必須。長時間被験者Sが『ウマ人』となっていてもコントロール出来ることはなかった。

 

 

以上が『ライトニンプリンス』の記録である。…これも封印するべき『合成因子』だねぇ。



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第EX話 女帝 + 噛みつき悪童 = 妃の咆哮

本日、シンコウウインディが亡くなりました。G1となったフェブラリーSの初代王者となり30歳まで生きるとかなりの長い馬生だったと思います…お疲れ様でした。

今年は亡くなるG1馬が多いですね…暗い話はここまでにしましょう。もうすぐ秋のG1シーズンに入ります。この作品もおそらく今年中には終わるでしょう…ぶっちゃけると今年の宝塚記念前には終わる予定でしたので自分のだらけ具合がよく分かります。そんな私の作品を毎回読んでいただける読者には頭が上がりません…もう少し、お付きあいしていただけると嬉しいです。では、どうぞ。


トレセン学園にて、今日もアグネスタキオンによる特別レースが始まろうとしていた。

 

「さぁさぁ、『エンプレスロア』君をゲストに今日も特別レースを行っていくよ。」

 

パチパチパチパチ

 

周りのウマ娘たちの拍手と共にゲストのウマ娘が入ってくる。

 

「条件は1600mのダート、左回り、バ場状態は不良、天気は曇…参加者はいるかね?ちなみに今回は私も参加しよう。」

 

アグネスタキオンが参加者の有無を聞くと次々と手が上がる。

 

「ダートか…乗った!」

 

1人目、イナリワン。

 

「うっらら~♪わたしも行くよ~♪」

 

2人目、ハルウララ。

 

「ほほぉー、これはあたしも行こうかねぇ。」

 

3人目、ワンダーアキュート。その後も手は上がり…計10人でのレースとなった。

 

 

ーーー

 

「ピスピース、毎度おなじみ実況担当のゴルシちゃんだぞ!」

「解説のメジロマックイーンですわ。」

「そろそろG1シリーズ始まるから投稿再開しようとしてたのに…まさか、お前らにこんなに早くまた会うことになるとは思わなかったぜ。」

「だから、毎日嫌と言うほど会ってるでしょう……お前"ら"?いや、そもそも投稿とは?」

 

「細かいことは気にすんな!んじゃ、出走メンバーの紹介だ!1番、スマートファルコン!」

「あの…デビュー前のウマ娘なのですが?」

「まぁ、ダートだから出走メンバーはかなり縛られるんだよな…」

「ここでのメインは芝のレースですから仕方ありませんわね。しかし、格上との経験を積んでおくのは良いことですわ。」

 

「2番、サンデーサイレンス…」

「え、え?ちょっと待ってくださいまし!この方、トレーナーでしたわよね?そもそも今はケガの治療中ではありませんでした?」

「…悪い、詳しいことは知りたくないんだ、わ!?………。マックちゃん、細かいこと気にするなよ~。』

「マックちゃん!?」

『久々に俺の身体で走るんだ…ちゃんと見ていてくれよ?』

「いや、サンデーサイレンスさん!?出走者の貴方がこちらに来ないで…ほら!貴方の身体がゲート前で倒れてみんなびっくりしてますわよ!」

『チッ…さっさと戻るわ。後でスイーツバイキング行こうぜ…コイツの身体だと遠慮なく食えそう………だー!マックイーン!変なことされなかったか?」

「え、えぇ…」

「ったく、アイツは後でフライト確定だな。」

「フライト確定?」

 

「…さっさと行くぞ3番、タイキシャトル!」

「マイル距離は彼女に合ってますし、ダート適性もあるのでかなりの良走が期待できますわ。」

 

「4番、アグネスタキオン!」

「現在の世界最強ウマ娘ですわね。マイル距離は適性外のはずですが…今回のダート戦ではどんな走りを見せてくれるのでしょうか注目ですわ。」

 

「5番、シンコウウインディ!」

「ここまでで先行ウマ娘の多いので…噛みつきませんよね?」

「流石に無いだろ……今回の主役だし。」ボソッ

「ですわよね。」

 

「6番、ハルウララ!」

「後方を得意とするウマ娘が少ないので…スタミナを温存出来ますわね。最後にうまく前方のウマ娘に食らいつけるかに注目ですわ。」

 

「7番、『エンプレスロア』!」

「えーと、エアグルーヴさんとシンコウウインディさんの『合成因子』ですわね。…犬歯長くありません?」

「気のせいだろ?ってかそこは八重歯って言えよ。」

 

「8番、ワンダーアキュート!」

「デビュー前のウマ娘ですが…今回のレースでどのポジションにつくのかなど色々と学んでいただきたいと思います。」

 

「9番、ウォーエンブレム!」

「ファル子さん、ウインディさん、タキオンさん、『エンプレスロア』さん、逃げてくださいまし!」

「あん?逃げはファル子だけだろ?」

「そっちの逃げじゃありませんわよ!あの栗毛スキーが走るのですわよ!?危ないじゃありませんか!」

「今回は何か大丈夫だ。ゴルシちゃんを信じろ!それに問題起きたらフライトが何とかするから!」

「…まぁ、今は大人しいようですし…失礼しましたわ。」

 

「ラスト、イナリワン!」

「追い込みを得意とするウマ娘ですわね…やはり、どこから仕掛けるのに注目ですわ。」

「これで全員だな…お前ら、ゲートに入ってくれ!」

 

各ウマ娘たちがゲートへと入っていき…レースが始まった!

 

………

 

「スタートだ!前に来たのはやっぱりスマートファルコン……とウォーエンブレムだ!!」

「逃げで来ましたわね…3番争いにアグネスタキオンとサンデーサイレンス、その後ろにタイキシャトル、ワンダーアキュート…1バ身離れシンコウウインディが続きますわ。」

「さらに2バ身離れ『エンプレスロア』とハルウララが並び、イナリワンが最後方。さて…コーナーに入って…ウォーエンブレムが一気に前へいったぞ!そのまま突き放しにきたか!2番にサンデーサイレンスがきた!」

「アグネスタキオンはここで後退…スマートファルコンもワンダーアキュートも後退…これはアメリカウマ娘のタイマンになるのでしょうか?前方からはタイキシャトルとシンコウウインディ、後方からはハルウララと『エンプレスロア』が上がってきましたわ!」

「さぁ、最後の直線…先頭はウォーエンブレム!サンデーサイレンスがそれを追う…。3番のシンコウウインディ、仕掛けたか凄い伸びだ!タイキシャトルと突き放す…ん?前のアメリカの2人…伸びてなくね?」

「ですわね…後続からはハルウララと『エンプレスロア』。イナリワンが大外を取り…仕掛けてきましたわ。」

「先頭は内から来たシンコウウインディに変わる!外からハルウララ!ハルウララもタイキシャトル、ウォーエンブレムとサンデーサイレンスをとらえた!残り100!」

「『エンプレスロア』も来ましたわ、完全にこの3人の争いですわ!シンコウウインディ逃げきるか…外からハルウララが迫る!」

「大外から『エンプレスロア』も来ているが…これ届くか?お、届きそう…いや、これは…」

「ここでシンコウウインディがゴールイン!ハルウララは僅かに届かず…」

「まぁ、適性の勝負だったな。1着はシンコウウインディ、2着はハルウララ、3着『エンプレスロア』。………ドーベルが年長になっちまったな。」

「?ドーベルがどうかしましたか?」

「いや、こっちの話だ。お前ら、またな………グラスゥ。」

 

ーーー

 

タキオンメモ:『合成因子第XXX号エンプレスロアについて』

 

XX月XX日

・誕生

→エアグルーヴ君の『因子』とシンコウウインディ君の『因子』を合成し、完成した『合成因子』に『エンプレスロア』と名付けた。

 

XX月XX日

・身体能力

→アグネスデジタルとの併走により計測すると、適正バ場はダートのみ。また、適正距離はマイル~中距離と判断する。

 

・適正脚質

→身体能力同様の方法で計測した結果、差し>先行>>>>>逃げ=追い込みと判断する。

 

XX月XX日

・レース実行

→アグネスタキオン、イナリワン、ウォーエンブレム、サンデーサイレンス、シンコウウインディ、スマートファルコン、タイキシャトル、ハルウララ、ワンダーアキュートとの特別レースに出走。ハルウララと共に後方のレースを進め、最後の直線でとらえにかかるも伸びが甘く3着に敗れた。

 

余談(その他の特徴)

・長八重歯?

→何故か犬歯がやや長い。物を食べるのに影響は無いようなので気にはしない。

 

雑談

・お姉ちゃん出動

→サンデーサイレンスが実況のゴールドシップに憑依したため10分ほど、アグネスフライトと"おはなし"をしたらしい。

 

・暴れない戦士

→今回のウォーエンブレム君は大人しかったなどの意見が多くあったが…あれが普段の彼女であり、おかしな話ではない。…いや、あの姿の方が珍しいのか?謎が深まった気がする。

 

 

以上が『エンプレスロア』の記録である。




ぱかライブでみたシンボリクリスエスの新衣装…いいな…、根性サポカのタップダンスシチーが欲しいな………ラモーヌまで我慢します。


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第EX話 品行方正大童 + 煌めく真珠 = 十傑珊瑚

本日(正確には昨日)、ファルブラヴが26歳の老衰で亡くなりました。
この作品に登場させていただいたからには敬意を持って書かせていただきます…どうぞ!


トレセン学園にて、今日もアグネスタキオンによる特別レースが始まろうとしていた。

 

「さぁさぁ、『テンコーラル』君をゲストに今日も特別レースを行っていくよ。」

 

パチパチパチパチ

 

拍手と共にゲストである鹿毛の『ウマ人』が入ってくる。

 

「条件は2000mの芝、左回り、バ場状態は良、天気は晴れだよ。さぁ、参加したい者は手をあげたまえ!」

 

参加希望のウマ娘たちが次々と手を上がる。

 

「参加させてもらうわ。」

 

1人目、サイレンススズカ。

 

「私もだ。」

 

2人目、ジャングルポケット。

 

「ワタシノ『インシ』カ…ハシロウ。」

 

3人目、ファルブラヴ。その後も手は上がり…計13人でのレースとなった。

 

 

ーーー

 

「ピスピース、毎度おなじみ実況担当のゴルシちゃんだぞ!」

「ピスピース、メジロマックイーンですわ。」

「連載終ってもこれをみてくれるとは…お前ら最高だな!」

「誰に向かって言ってますの?」

「第4の壁的なアレだよ!アレ!」

「は、はぁ…?」

 

「んじゃ、出走メンバーの紹介だ!1番、ツインターボ!」

「大逃げの彼女が最内とは…いい枠を取れましたわね。」

 

「2番、グラスワンダー。」

「2000mを走ったことが無いウマ娘ですのでどのような走りを見せていただけるのやら…楽しみですわ。」

 

「3番、テイエムオペラオー!」

「覇王と呼ばれる走りに期待ですわね。」

 

「4番、タニノギムレット!」

「…柵、蹴りませんよね?」

「いや、蹴らねえだろ。何言ってんだお前?」

「…次の方を紹介してくださいまし。」

 

「5番、サイレンススズカ!」

「最内にいますターボさんとの先頭争いがどうなるのかに注目ですわね。」

 

「6番、『テンコーラル』!」

「転入生、ファルブラヴさんの『因子』が使用されているのでしたわね。…普通の『ウマ人』に見えますわね。」

「普通の『ウマ人』って何だよ?まぁ、変な特徴は無さそうだけど。」

「ファルブラヴさんの『合成因子』はどんな力があるやら…」

 

「7番、マチカネタンホイザ!」

「スタミナを活かした走りを期待したいですわね。」

 

「8番、メジロライアン!」

「ライアンはやはりパワーですわね。力強い走りに期待ですわ。」

 

「9番、ファルブラヴ!」

「…トゥインクル引退し、ドリーム移籍のために転入してきたイタリアのウマ娘、でしたわね。最後の年でG1レースを5勝…ジャパンCにも参戦してきたウマ娘…『テンコーラル』同様に未知の実力ですわね。」

「まぁ、この世界ではフライトには負けたけどな。」

「確かにジャパンCはフライトさんが勝ちましたが…この世界?」

 

「気にすんな。10番、トウカイテイオー!」

「テイオーですか。フフフ…いつも通りに走ってほしいですわね。」

 

「11番、ジャングルポケット!」

「ケガは完治したようですわね…無理はしないで欲しいですわ。」

「映画があるからな…あ!このジャングルポケットじゃねぇぞ!別のジャングルポケットな。」

「…ジャンポケさんは彼女1人でしょう。」

 

「12番、メイショウドトウ!」

「同条件である天皇賞(秋)てはオペラオーさんとのワンツーを見せてくれましたわね。今回はどのようにくるのか楽しみですわね。」

 

「ラスト、ナイスネイチャ!」

「おや?テイオーが参加するからでしょうか…」

「いや~、正月衣装が可愛いよな~。髪下ろしているし。」

「…ゴールドシップさん、あなたの目には何が映ってるのですか?」

「これで全員だな…お前ら、ゲートに入ってくれ!」

 

各ウマ娘たちがゲートへと入っていき…レースが始まった!

 

………

 

「スタートしたぜ!注目の先頭争いは…ツインターボとサイレンススズカ!ツインターボがやや前へときた!」

「サイレンススズカも必死に追いかけてますわ…3番手にテイエムオペラオー、少し間が空いて『テンコーラル』とメイショウドトウの4番争い。トウカイテイオー、グラスワンダーまでが前の集団になりますわ。」

「後ろは…マチカネタンホイザ、ナイスネイチャ、メジロライアン、と2バ身離れ、ジャングルポケット。最後方争いにファルブラヴとタニノギムレット。」

 

「ツインターボとサイレンススズカが飛ばしてますわね…3番のテイエムオペラオーとの差は10バ身以上ありますわね。もの凄い先頭争いですわ。」

「んー、スズカのやつ…無意識にペースを抑えているな。無理もないが。もう、先頭の2人は最終コーナーに入ったな。テイエムオペラオー、トウカイテイオーと順番が変わって『テンコーラル』、メイショウドトウ、グラスワンダー。」

「さぁ、後ろの集団は…何と!ジャングルポケットとファルブラヴがペースをあげてきましたわ。ナイスネイチャ、メジロライアン、2バ身後ろにマチカネタンホイザ、最後方にタニノギムレットで!」

 

「最後の直線…ツインターボ逆噴射。先頭はサイレンススズカだが…テイエムオペラオーがかわす!内から『テンコーラル』、外からトウカイテイオーが迫り…大外からファルブラヴ!ファルブラヴが一気にくる!この4人の争いか!」

「先頭、テイエムオペラオー…しかし、『テンコーラル』が内からすごく伸びる。外のファルブラヴ、トウカイテイオーをかわしました!そのまま前の2人を捉えてゴールイン!」

「1着はファルブラヴ!2着争いはテイエムオペラオーと『テンコーラル』だ!いやー、さすがは世界を回った強さあるな!」

「ですわね…いい刺激になりましたわ。フフフ…次は私がお相手いたしましょう。」

「…んー、ゴルシちゃん的にアイツの力を持つウマ娘に負けて、一緒に凱旋門賞を走る未来がみえるんだよな。」

「どんな未来ですか…」

「まっ、そん時はそん時だな!お?2着はテイエムオペラオーか…んじゃ、お前ら!またな~!!」

 

ーーー

 

タキオンメモ:『番外編合成因子テンコーラルについて』

 

XX月XX日

・誕生

→サンプルとして手に入れたファルブラヴ君の『因子』とシーキングザパール君の『因子』を合成し、完成した『合成因子』に『テンコーラル』と名付けた。

 

XX月XX日

・身体能力

→アグネスフライトとの併走により計測すると、適正バ場は芝のみ。また、適正距離は中距離と判断する。

 

・適正脚質

→身体能力同様の方法で計測した結果、先行=差し>>>>>>逃げ=追い込みと判断する。

 

XX月XX日

・レース実行

→グラスワンダー、サイレンススズカ、ジャングルポケット、タニノギムレット、ツインターボ、テイエムオペラオー、トウカイテイオー、ナイスネイチャ、ファルブラヴ、マチカネタンホイザ、メイショウドトウ、メジロライアンとの特別レースに出走。テイエムオペラオーをマークしてレースをすすめ、最後の直線で内から伸びるも3着に敗れた。

 

余談(その他の特徴)

・珊瑚色の体毛?

→白の体毛が所々に見えた。白髪感覚で抜いてみるのも面白いかもしれない。

 

以上が『テンコーラル』の記録である。




・おまけ(由来)

ファルブラヴのG1勝利数(8)+シーキングザパールのG1勝利数(2)=10(Ten)
+
珊瑚の英語名(Coral)

*この作品でのファルブラヴのG1勝利数は7(ジャパンC抜け)だけど…気にしない!


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第EX話 青嵐のステイヤー + マイルの女王 = 血濡れし竜巻

本日、ビートブラックが亡くなりました。私は去年の天皇賞(春)にて、誘導馬としての彼の姿を実際にみていたので…ちょっと胸にくるものがあります。

『その後の話1 きっと空を』でアグネスフライトの担当ウマ娘の1人として紹介しており…ノースフライトが本家で育成出来るようになった後に1話その書こうとしていました。

ビートブラック…お疲れ様でした。


トレセン学園にて、今日もアグネスタキオンによる特別レースが始まろうとしていた。

 

「さぁさぁ、『ブラッドトーネード』君をゲストに今日も特別レースを行っていくよ。」

 

パチパチパチパチ

 

拍手と共にゲストである青毛の『ウマ人』が入ってくる。

 

「傷だらけね…大丈夫かしら?」

「歴戦って感じはあるけど…」

「綺麗な毛…」

 

「条件は3200mの芝、右回り、バ場状態は良、天気は晴れだよ。さぁ、参加したい者は手をあげたまえ!」

 

参加希望のウマ娘たちが次々と手を上がる。

 

「ワガハイ、参加するである!」

 

1人目、ヒシミラクル。

 

「……貴重な長距離レースですね。」

 

2人目、マンハッタンカフェ。

 

「…(ソウジ)がいる。…なら走る。」

 

3人目、ディープインパクト。一気に周りの手が下がる。

 

………

 

「よっしゃ!ゴルシちゃんも参加してやるぜ!」

 

8人目、ゴールドシップ。

 

「ビートちゃん!行ってきなさい!」

「えぇ!?あの…フライトさん?ディープインパクトがいるのですけど!?」

「トレーナー命令!もう1人、三冠ウマ娘に勝ってきなさい!」

「………はい。」

 

ラスト、『ビートブラック』。

 

これ以上手は上がらなかったため…計9人でのレースとなった。

 

 

ーーー

 

「ピスピース!みなさんの学級委員長サクラバクシンオーです!」

「ピスピース、グラスワンダーです~」

「えー、ゴルシさんとマックイーンさんが出走のようですので今回は私たちで実況をさせていただきます!」

「よろしくお願いしますね。」

「いやー、天皇賞(春)と同条件のレースですか。かくいう私も昔、1200m×3を3600mの長距離レースだと騙されたこともありましたが…」

「あのー、バクシンオーさん。コースの外にいるあなたのトレーナーが過呼吸気味になっているのですが?」

「ハッハッハッ!何時かは走らせてくれるという約束は守ってくれましたので、私にとっては笑い話ですよ!」

「えーと、去年のドリームトロフィーシリーズの有マ記念のことでしょうか?」

「ディープインパクトさんに惨敗でしたけどね…ハッハッハッ…はぁ。ドリームにて唯一の黒星を付けられてしまいました…」

「…今までデュランダルさんやカナロアさんらを抑えて無敗のまま勝ち続けられる時点で凄いことなのですよ?」

 

「ではでは、切り替えまして…出走メンバーの紹介に参りましょう!1番、『ビートブラック』!」

「フライトさんが現在担当をしているウマ娘の1人ですね。作者さんが言うには『ノースフライトが実装されたら何らかの形を登場させようとしてたけど…こんな形で…』とのことです。」

「ハッハッハッ…グラスさん?急に何を仰っているのでしょうか?」

「私…こっち側のウマ娘ですのであまりお気になさらないでください。」

「よく分かりませんが分かりました。逃げの彼女が最内枠を取れたのは大きいと思いますよ!」

「そうですね。進む距離がガラリと変わりますからね。」

 

「2番、ゴールドシップ。」

「内の枠を引いてしまいましたか…前でいかないのでちょっと勿体なく思いますね。」

 

「3番、『ブラッドトーネード』!」

「歴戦の猛者って感じがしますね…ブラッドということは誰かの成分が濃いのでしょうか?」

「感じます!恐らくですが…フライトさんの『因子』が使われているのでしょう!…あ!アグネスフライトさんではなくてノースフライトさんのことですよ!」

「…それって…長距離は走れるのでしょうか?」

「私が走ったくらいです!問題ありません!」

「心配が大きくなりました。」

 

「4番、ヒシミラクル!」

「隣のディープインパクトさんの視線を気にしていますね…ちょっと緊張気味でしょうか。」

「いやー、彼女の人事には私も何度も助けられました!主に勉強面で!」

「この世界では天皇賞(春)を連覇した猛者ですからね…ゴルシさんとのロングスパートが見所かと。」

「この世界?」

「作者さんがその時のレースを執筆しているそうなので投稿されることを気長にお待ちくださいね。」

「???」

 

「5番、ディープインパクト!」

「…2つ隣の『ブラッドトーネード』を凝視していますね。気のせいか尻尾もバタバタして落ち着かない様子です。ですが…最強なのは事実。後ろからくる末脚…はぁ、想像だけで震えますね。」

 

「6番、メジロマックイーン!」

「このメンバーの中では前の方から走るウマ娘ですね…後続をどこで引き離すかに注目です。」

 

「7番、マンハッタンカフェ!」

「彼女はやはり鋭いスパートかと…あと、ディープインパクトさんを意識してるように見えます。」

「ずばり、恋のライバルですね!」

「おそらくは…」

「…え?あの…ボケたつもりなのですが…」

「フフフ…そうでしたか。」

 

「…8番、メジロブライト!」

「ミラクルさん、ゴルシさん、同様にロングスパートを得意としていますね。どこでスパートをきってくるか…でしょうか。」

 

「ラスト、ライスシャワー!」

「強力なウマ娘たちが多い中…誰をマークするかに注目です。おそらくはマックイーンさんをマークすると思われますが…」

「出走者は以上になります!みなさん、ゲートに向かってください!」

 

各ウマ娘たちがゲートへと入っていく。特に問題なくゲートインが終わり…レースが始まった!

 

………

 

「スタートしました!ゴールドシップがいいスタートです!先頭は…まさかのライスシャワーです!ビートブラックは控えて2番手!3番争いにはメジロマックイーンと『ブラッドトーネード』。ゴールドシップは後退した。」

「後ろの集団はヒシミラクル、マンハッタンカフェと並びまして…1バ身後ろにメジロブライト。さらに間が空いてゴールドシップ。ディープインパクトは最後方からのレースになりました。」

 

「さて、第4コーナーを曲がりまして…スタンド側のコースにきましたね…あと、1周走る訳ですが…先頭はライスシャワー。やや困惑した顔が見えます。それを意識してか前とは1バ身差をキープしているビートブラック。3番にメジロマックイーン、その真後ろにポジションを取った『ブラッドトーネード』。」

「ここでメジロブライトがペースを上げてきたのでしょうか…現在5番手です。ヒシミラクル、マンハッタンカフェと並んで…ゴールドシップとディープインパクトが並んでいます。コーナーに入りました!」

 

「おやおや?ここでビートブラック、加速してきたかライスシャワーをかわして先頭へと変わりました!ライスシャワー、焦らず自分のペースをキープする。メジロマックイーン、『ブラッドトーネード』はそのままの位置をキープ。それに向かってメジロブライトが迫ってきています!」

「向こう正面…!ヒシミラクルとゴールドシップがもう仕掛けてきたようです!ペースを上げて前へ目指しています。」

 

「ここでメジロマックイーンもペースを上げてきました!高いスピードとスタミナを活かし、前のライスシャワーを捉えにかかる!それに合わせる『ブラッドトーネード』!その後ろにはメジロブライトがきています!さらにディープインパクトもここで仕掛けてきたか!すごい加速です!」

「最終コーナー…先頭はビートブラック。後ろとの差は6バ身ほどありますが…このまま逃げきれるのでしょうか。ここでメジロマックイーンと『ブラッドトーネード』がライスシャワーをかわしました。」

 

「さてさて、先頭はビートブラックですが…その差はドンドン詰められています。メジロマックイーンが迫って…ディープインパクトぉ!?ディープインパクトがもうそこまで来ています!ディープインパクトが外からかわ…せない!内の『ブラッドトーネード』がディープインパクトに併せてきました!『ブラッドトーネード』、ディープインパクトがビートブラックとメジロマックイーンをかわして…完全にこの2人の勝負になりました!」

「ディープインパクトに動揺がみられます、しかし…『ブラッドトーネード』をとらえようと外から迫ります……?…差が変わらない、これ以上は伸びないのでしょうか?残り100。」

「『ブラッドトーネード』、完全にディープインパクトの動きを読んでいるのか、彼女に差を詰めさせない!そして、そのままゴールイン!勝ったのは『ブラッドトーネード』です!!」

 

「…あの人はディープインパクトにも勝てると言うのですか。」

「グラスさん…あれはあくまでも『合成因子』の強さです!それに、担当なのですから弱点を知っているのは当然だと思いますよ!」

「バクシンオーさん…」

「私も初見では『ダイナマイト』に負けてしまいましたが…それ以降は圧勝しています!」

「あなたもあなたで凄いですね…」

「ハッハッハッ!褒めても桜餅くらいしか出ませんよ!では、みなさん!今回のレースはここまでです!また何時か会いましょう!」

「私ももう29歳ですか…時の流れは早いですね。」

 

ーーー

 

タキオンメモ:『番外編合成因子ブラッドトーネードについて』

 

XX月XX日

・誕生

→お姉ちゃんの担当ウマ娘であるビートブラック君の『因子』を入手。解析すると以前に入手したノースフライトの成分があった。『へアリーブラッド』を目標に合成し、完成した『合成因子』に『ブラッドトーネード』と名付けた。

 

XX月XX日

・身体能力

→ダイワスカーレットとの併走により計測すると、適正バ場は芝のみ。また、適正距離はマイル~長距離と判断する。

 

・適正脚質

→身体能力同様の方法で計測した結果、先行>逃げ=差し>>>>追い込みと判断する。

 

XX月XX日

・レース実行

→ゴールドシップ、ディープインパクト、ビートブラック、ヒシミラクル、マンハッタンカフェ、メジロブライト、メジロマックイーン、ライスシャワーとの特別レースに出走。メジロマックイーンと共にレースをすすめ、最後の直線で内からディープインパクトの動きと合わせることで外から差させず逃げきって勝利した。

 

余談(その他の特徴)

・身体全体の傷

→『ウマ人』化と同時に全身に浅い亀裂が走る。しかし、他の『ブラッド』が付く『合成因子』のように体毛が血で染まることは無かった。まだまだ調べれることはありそうだ。

 

以上が『ブラッドトーネード』の記録である。



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