かぐや様は告らせたい ✕ 五等分の花嫁 (キャメル16世)
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第1部
第1話「映画に誘わせたい:改」


人を好きになり
告白し
結ばれる
それはとても素晴らしい事だと、誰もが言う

だが、それは間違いである!!

恋人達の間にも、明確な力関係が存在する!!
搾取する側とされる側
尽くす側と尽くされる側!

勝者と敗者!!

もし貴殿が気高く生きようと云うのなら、決して敗者になってはならない!!

恋愛は 戦!

好きになったほうが、負けなのである……!



私立秀知院(しゅうちいん)学園!

かつて、貴族や士族を教育する機関として設立された由緒正しい名門校!

 

貴族制が廃止された今でなお、富豪名家に生まれ将来国を背負うであろう人材が多く就学している

 

「…っ!」

 

そんな彼らを率い纏め上げる者が、凡人であるなど許される筈もない!

 

「皆さん…!ご覧になって!」

 

「……ふっ」

「……ふふっ」

秀知院学園の廊下を堂々たる姿で歩む男女…

 

「生徒会のお二人よ!!」

 

秀知院学園 副会長 四宮(しのみや)かぐや

 

総資産200兆円

鉄道、銀行、自動車

ゆうに千を超える子会社を抱え、4大財閥の一つに数えられる『四宮グループ』

その本家本流

総帥・四宮雁庵(がんあん)の長女として生を受けた、正真正銘の令嬢である

その血筋の優秀さを語るが如く

芸事、音楽、武芸、いずれの分野でも華々しい功績を残した正真正銘の『天才』

それが四宮かぐやである

 

「……」

そしてその四宮が支える男こそ!

 

秀知院学園 生徒会長 白銀(しろがね)御行(みゆき)

 

質実剛健

聡明英智

学園模試は不動の一位!

全国でも頂点を競い、天才たちと互角以上に渡り合う猛者である!

多才であるかぐやとは対照的に、勉学一本で畏怖と敬意を集め、その模範的な立ち振る舞いにより生徒会長へと抜擢される

 

代々会長に受け継がれる純金飾緒の重みは秀知院200年の重みである!!

 

「いつ見てもお似合いなお二人ですわ…」

「えぇ、神聖すら感じてしまいます…」

「もしかしてお付き合いなされているのかしら?どなたか訊いてくださいな」

「そんな!近付くことすら烏滸がましいというのに…出来る筈がございません……っ」

 

 

 

秀知院学園 生徒会室

 

「…なんだか、噂されているみたいですね。私たちが交際してるとか……」

四宮かぐやは白銀御行に紅茶を淹れながら話題を吹き込んだ。先程の生徒達が話していた事だろう

 

「そういう年頃なのだろう、聞き流せばいい」

「ふふ……そういうものですか」

かぐやは御行の前に紅茶が入ったティーカップを置き、お盆を抱える

 

「私はそういった事柄に疎くて…」

「……」

 

(…ふん、俺と四宮が付き合っているだと?くだらん色恋話に花を咲かせおって…愚かな連中だ……が、まぁ……)

 

「……」

 

(四宮がどうしても付き合ってくれって言うなら考えてやらん事もないがな……!)

 

「……?」

 

(まぁ確実に向こうは俺に気があるだろうし、時間の問題か……)

白銀は以前読んだ恋愛本に記載されていたものを思い出した

 

(くく……さっさとその完璧なお嬢様の仮面を崩し、赤面しながら俺に哀願してくるがいい)

 

「……ククク」

「……」

 

〈全く、下世話な愚民共。この私を誰だと思ってるの?国の心臓たる四宮家の人間よ?どうすれば私と平民が付き合うなんて発想に至ったのかしら〉

 

「……」

 

〈…まぁ、会長にギリのギリギリ可能性があるのは確かだけど。向こうが跪き、身も心も故郷すら捧げると言うならこの私に見合う男に鍛えてあげなくもないけれど……まぁこの私に恋い焦がれない男なんて居ないワケだし?時間の問題かしら?〉

 

「……ふふふ」

「……ククク」

 

などとやっているうちに……半年が過ぎた!

その間、特に何も無かった!

 

「そういえば今日、庭の噴水にある甘いりんごとさくらんぼのレリーフの奥深くにかたつむりが……」

「あぁ、俺の妹が昔暑いからといって噴水に入って風邪を引いてな。本当、感情で動くとろくな事に……」

 

このなんもない期間の間に二人の思考は

『付き合ってやってもいい』から『如何に相手に告白させるか』という思考へとシフトチェンジしていた!

 

この生徒会室の中で超高校級の頭脳が高度な駆け引きを行っていることに書記の藤原(ふじわら)千花(ちか)は全然気付いていなかった!!

 

「あ〜そういえばですねぇ〜」

藤原はカバンから2枚の映画のチケット取り出す

 

「懸賞で映画のペアチケットが当たったのですが、わたくし家の方針でこういったものを見るのは禁止されておりまして…どなたか興味がある方がいらっしゃればお譲りしようと思って持ってきたのですが……映画の公開が今週末までで……」

「……ほぅ」

備考:ドケチ

 

「そういえば週末は珍しくオフだったな」

御行は自身の手帳と日時を照らし合わせた

 

「だったら四宮、俺たちで……」

「なんでも〜!この映画を男女で見に行くと二人は結ばれるジンクスがあるとか」

「…っ!」

 

(な…んだと……!!)

 

「あら会長…今、私の事を誘いましたか?男女で見に行くと結ばれる映画に、私と会長の()()で行きたいと、今そう仰ったのですか?」

「…………ゴクッ」

「…それはまるで──」

 

(──まるで告白のようではないか!!)

 

白銀 突然の窮地!!

 

恋愛関係において、『好きになった方が負け』は絶対のルール!!

即ち『告白した方が負け』!!

 

プライドの高い両者に於いて自ら告白をするなどあってはならないのである!!

 

(どうする……!?あからさまではあるが誤魔化すしか選択肢は…ッ)

 

「お…俺と一緒にチケット屋に売りに行くか?」

「あらまぁ、会長ともあろうお方が慌てふためいて……」

「……ッ」

「お可愛いこと…」

 

(許されない!!白銀の征く道に逃げ道無し!逃げるのは貴様だ四宮!!)

 

「…あぁ、四宮を誘った」

「……」

「俺はそういった噂など気にせんが、お前はそうではないようだな」

「……ッ」

「どうする四宮?()()()俺とこの映画を見に行きたいのか?」

「……」

 

(さぁ……どうでる……?)

 

四宮、刹那の思考

しかし、それは常人に於いての熟考に値する!!

 

〈あえて切り込んできましたか……勧誘の意思を強く示した上で映画を見に行くかの選択権を私に譲渡する……上手い切り返しです……〉

 

〈誘い自体を断るという選択肢もありますが、それではここまでの下準備が全て無駄になってしまう……これまでの──〉

 

〈わざわざ懸賞を偽造し……藤原さんのポストに投函……会長の少ない休日を狙い撃ちした計画が……!〉

 

〈それにここで誘いを断ってしまえば、案外メンタルの弱い会長に映画へ誘われるなんて状況は今後無いかもしれない〉

 

〈それは乙女的にNO!そのような選択肢はNO!退路は無い!〉

 

「そうですね……」

「……」

「やはりどうしてもこういった話は信じてしまうもので…行くならせめて、もっと情熱的にお誘い頂きたいです……」

「……ッ!?」

スキル『純真無垢(カマトト)』発動!!

これは四宮家の帝王学が編み出した一子相伝の交渉術である。この計算され尽くした表情、声音の前では、神でさえも胸キュンしてしまうという────

 

「…ガハッ!」

事実、白銀も思考を乱される!

頑ななプライドは霧散し

(まぁ、告白は男の役目なのかな……)

なーんて思考が頭をよぎり、思考に揺らぎが生まれた!!

 

「……ッ」

その隙を四宮が見逃す筈もなく、すかさずの追撃!

四宮は白銀の手を握り初々しい表情で言った!

 

「私だって恋の1つもしてみたい年頃なのです」

この思考戦は詰将棋の様相を呈し始めていた!

 

追い詰める四宮!

逆転の機を探す白銀!

 

「……ッ!」

「……ッ」

二人の思考は決着の論理を組み立つつあり、その理論を先に完成させた方が勝者と──

 

「あ、もし恋愛映画がお嫌でしたら『とっとり鳥の助』のチケットもありますよ〜」

「…!?」

「…!?」

 

『カオス理論』!!

書記・藤原の何気ない一言により完成寸前の理論に一点のカオスが混入する。たかが一点であるが、その乱数(カオス)はビックバンの如く可能性を増大される!!

 

「……」プシュゥゥゥ

「……」プシュゥゥゥ

 

莫大に増えた選択肢を処理する為に、二人の頭脳は限界を越えた回転を強いられる!!

 

「あのー……どうか致しました?」

 

結果……!

脳は大量の糖分を欲する!

この生徒会室に存在する糖分はこの饅頭一つ限り!!

 

「……ッ!」

「…ッ!」

お互いに饅頭に手を伸ばす白銀とかぐや!

即ち!この饅頭を手にした者が勝者と──

 

キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン

 

「御三方とも、午後の授業が始まりますよ!」パクッ

「…ッ!」ガクッ!

「…ッ!」ガクッ!

「中野さん!」

「藤原さん、午後の授業は調理実習だそうですよ」

「本当ですか!?楽しみ〜!」

「……」

「……」

 

これは、互いの知略とプライドを掛けた

高度な恋愛頭脳戦である

 

本日の勝敗結果

両者敗北

 

 

 

 

 

秀知院学園 生徒会長 白銀御行…

学園模試は不動の一位

全国でも五本の指には入る成績だ…

 

「……おもしれぇ、生徒会に興味はないが、ちょいと腕試しと行こうか」




次回

第2話「五つ子ちゃんは教わりたくない」


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第2話「五つ子ちゃんは教わりたくない」

「…起きてください、新婦様のご準備が整いましたよ」
「……ッ」

夢を見ていた

君と出会った
高校2年の春

あの夢のような日の夢を──



「焼き肉定食、焼き肉抜きで」

秀知院学園高等部二年、上杉(うえすぎ)風太郎(ふうたろう)

貧相な家に生まれ、貧乏生活を余儀なくされている彼

 

《この学食での最安値はライス(200円)と思いがちだが実は違う。焼き肉定食(400円)から焼き肉皿(200円)を引くと、同じ値段で味噌汁とお新香が付く!水は飲み放題だし、学食最高!》

 

彼もまた、由緒正しき生徒の1人である

 

「……?」

 

《らいはからか…メール…?》

 

「……なッ!?」

 

上杉は妹、上杉らいはからのメールを見て仰天した

 

《なんだってぇ〜!?》

 

 

 

 

 

「……家庭教師?」

「はい!今日から私達姉妹に家庭教師が付くことになったんです!」

「ほんとですか!?私も負けずに勉強頑張らなきゃな〜」

「藤原さんはそこそこの成績取れてるんですから、別に頑張る必要なんてないんじゃ?」

「かぐやさん、そこですよ!その“そこそこ”って言うのがどれだけ虚しいか…」

 

(中野に家庭教師か……意外とも取れるが…)

 

秀知院学園高等部二年、中野(なかの)五月(いつき)

生徒会では会計監査を務めている

父は病院の医院長を務めているため秀知院でも知らない生徒は少なくない

 

秀知院には家柄ヒエラルキーが存在し、中野は5段階中2段階に該当する

 

しかし、この中野五月に…いや、中野姉妹における弱点の1つ、それは……

 

(中野の姉妹全員石上会計並の学力なんだよな…)

 

絶望的な勉学の出来なさ!

 

その根拠とも言える事例が、以前の学校で姉妹全員進級試験に落第したと言われている

その為、先月この秀知院学園に転校してきたのだ

 

(まだ彼女だけならいいが…彼女の姉妹は…)

すると、生徒会室の扉を誰かがノックした

 

「五月〜帰るよぉ〜」

「さっさとしないさい、今日は少し寄り道してから帰るんでしょ?」

「……五月…今日は家庭教師の先生が来る」

「どんな人なんだろ〜!楽しみだね!」

 

(五つ子なんだよなぁ〜…しかも全員赤点常習犯なんだよなぁ〜…家庭教師を雇って正解なのかもな…)

 

「……白銀カイチョー……今失礼な事考えてる…?」

「…そ、そんな事は無いぞ!中野!」

「……私…三玖」

「……そ、そうか…三玖」

「あ〜どうせなら私も名前で呼んでよぉ〜カイチョー君」

「…分かった、一花」

「皆さん、もう少し待ってください!今監査の仕事が…」

「そんなの明日でいいでしょ、良いわよね?白銀」

「…あぁ、ノルマは達成してるからな、今日は帰って構わない」

「ほら、白銀もそう言ってるんだし、今日は帰るわよ」

「白銀さん!皆さん!また明日会いましょう!」

「あ〜!待ってくださ〜い!」ガチャ

 

五姉妹が生徒会室を退室し、静かになる生徒会室

 

(……)

 

「…元気がいいですね、皆さん」

「あぁ、藤原書記並にな」

「私はあんなにうるさくないですよ〜!」

「五つ子揃ってのあの賑やかさだ。本当に元気な事だな」

 

(……さて…)

 

「……四宮、頼めるか?」

「……はい、私も興味があります。中野さん方の家庭教師…逸材でなくてはいけません」

「……というか、家庭教師なら会長が適任じゃないですか?学年で一位ですし…」

「会長には生徒会長としての激務があるでしょ?家庭教師なんかしている余裕はないんですよ」

「それは四宮も同じ理由だろうな」

「……だとしたら…」

「……あぁ、俺も目星は着いている」

 

秀知院学園生徒会の情報網は凄まじく、知りたい情報は生徒からの証言、そして生徒会の憶測や推論、結論を元に知りたい情報をキープしている

以前にもそういった事があったのだ

 

翌日──

 

「……なか…五月、どうした?」

「…いやぁ…なんと言いますか…」ドヨーン

「昨日は家庭教師の初日だったんですよね?」

「そうなのですが…実は昨日…」

 

「……なるほど、昼食中にたまたま会った男子生徒が、その家庭教師だったと……しかもデリカシーの無い発言に激怒し、二度と会わないと思っていたから家庭教師に猛反発したと…」

「……はい」

「……名前は?」

「…上杉…風太郎と言うそうです」

「……っ」

 

(やはりな……上杉風太郎…学園模試は俺と四宮に続く三位。家柄はあまり良くなく、俺と同じ外部生…生徒会にも委員会に属さないあいつにはピッタリだ)

 

〈……〉

 

 

 

「上杉風太郎、家柄はあまり良くなく、会長と同じ外部生だそうです」

「他に情報は?」

「いいえ。あくまで、ただの成績のいいガリ勉、みたいなものです」

「……そう」

先日四宮は自身のお付である早坂(はやさか)(あい)に情報収集をさせた

彼女が淹れるコーヒーもまた興がある

 

「あまり害のないように思えますが…?」

「分からないわ、人は見た目や周りのイメージとかけ離れたものよ、それは早坂も重々承知の筈でしょ?」

「…そうですね、人は外見だけでは分からないものです」

「…そうよ」

「……」

「……」

「…会長も、裏では誰かとお付き合いしているかも」

「ブゥゥゥゥヴ!」

かぐやはコーヒーを吹き出した

 

「……」

「ななな!何を言ってるの!?会長に限ってそんな事有り得ません!」

「でも人は外見だけでは分からないんですよね?」

「…そうだけど…会長は違うの!」

「…それとも何ですか?少しは親密な関係になりました?」

「な、なぜ私が会長と親密になる必要があるんですか?私はただ会長に告白をさせればそれでいいんです!」カタカタカタ

震えるかぐやの手を見て呆れる早坂であった…

 

「……はぁ…いつまで経っても進展ないんだから…」ボソッ

「…え?何か言った?」

「いいえ、何も」

 

 

 

「……だが、何故教わろうとしない?お前達が勉強が出来るようになるのは、こっちとしても利点がある」

「…私、1人で勉強はしてるんです。でも、なかなか身につかなくて…」

 

(…五月監査は真面目だからな…生徒会の仕事はきちんとこなすし、人振る舞いも良い。だが、きっと要領が悪いのだろう)

 

「…彼だけには絶対に教わりません!あんなに無神経な人、初めてです!」

「……しかし、あちらの懐事情は把握しているのか?」

「……え?」

「……いい機会だ、お前にも社会勉強をさせてやる。俺が考えた作戦で、上杉の自宅まで行ってみろ」

 


 

五つ子豆知識!

 

五月は五人の中で1番の食いしん坊!

目の前にデザートを置けば無意識に食べてしまうぞ!

 


 

「五つ子ちゃんは教わりたくない②」

 

「…お客さん…」

「……ん」

「お客さん着きましたよ」

「…ッ!」

「ここ、お客さんの家ですよね」

「……えっ」

夜中のタクシー、運転手は上杉の自宅の目の前で停車していた

 

「……なぜ」

「…お乗りになる前からぐっすり眠られていましたよ」

「…ッ!」

 

《あの時…!》

上杉は本日の家庭教師の時間、中野二乃に渡された水を飲んで眠ってしまっていたのだ

 

「あの野郎…そこまでするか…」

「運賃4800円になります」

「え!?金!?タ、タクシー高っ!」

上杉の持ち金はせいぜいコンビニでおにぎりを買えるか否かくらいの金額だった

 

「そんな大金…」

「カードで」

「…!」

「まいど」

タクシーの助手席、中野五月が運転手にクレジットカードを渡す

 

「五月!」

「あなたを送ったついでに買い物です。住所は生徒手帳を見させていただきました」

「え…しゃ、写真見た…?」

「そんなのどうでもいいでしょ」

 

〔…白銀会長…やはり私にはこの男は分かりません…〕

 

「一泡吹かされましたね、これに懲りたら私たちの家庭教師は諦めることです」

「……それは出来ない」

「……なぜそこまで」

「あ、やっぱりお兄ちゃんだ」

道沿いの建物から少女が向かって来る

 

「らいは!」

上杉家長女、上杉らいは

上杉風太郎の妹であり、家事をする上杉家のお母さん的存在である

 

「その人ってもしかして!」

「な、なんでもない人だ、帰るぞ!」

「嘘!あの人が生徒さんでしょ!」

「……?」キョトン

「良かったらウチでご飯食べていきませんか?」

「え!?」

「それは…ほら!な!?この人忙しいらしいから!」

「…嫌…ですか…?」

「…っ」キューン

 

中野五月、上杉家への侵入に成功

 

「……んで、どうだった?」

後日、白銀は中野五月に事情聴取をしていた

 

「…お家は貧相で、借金があるとか…」

「……そのようだな」

「…私はやはり彼の言いなりにはなりたくありません。それでも…!」

「……」

「…あの家を…あの家族を守れるなら…私は、一人でもやり遂げてみせます!全教科赤点回避!」

「…そうか、お前がそれでいいのならそれでいい」

 

白銀は知っていた

それがどれだけ大変な事か

それがどれだけ苦痛な事なのか

 

天才たちにとって、彼女達の存在はイレギュラーであり同時に、なくてはならないものなのだ…

 

「…安心しろ、バカと天才は紙一重と言うように、お前にも何か秀でている部分がある筈だ。それを見出すのが秀知院、生徒会だ…」

 

(それはお前の正義感や真面目さもそうだ…だが、それ以上に…)

 

「…はい!白銀会長!」

「……あぁ」

 

(その真っ直ぐな目は、五つ子の中でもずば抜けて輝いている)

 

「…それより、()()()()?」

「…ん?」

「…さっきのはつまり…私たちがバカと…そう仰ったのですか?」

「……あ」

「……」ムゥ!

「すまない!すまない!中野監査!」

「私は五月です!」

 

「…またやってるんですか?あなた達は…」

「2人もなんだかんだ言って仲良いですからねぇ〜」

「あの4人がいれば、もっと騒がしくなるんでしょうね」

 

「白銀くーん!?」

「ほら!校長から差し入れがあるぞ!」

「あ!ほんとですね!」

 

本日の勝敗結果

五月の勝利

(その後3人分のケーキを全部食べた)




次回

第3話「中野三玖は恋したい…?」


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第3話「中野三玖は恋したい…?」

秀知院学園生徒会室はどんな者でも入室が許可されている

生徒会メンバー以外の秀知院の生徒、更には中等部の生徒までもが入室可能である

その日もまた、白銀の元にお客様が来ていた…

 

「……君は確か…」

「……中野三玖…また忘れたの?」

「…いや、すまない!なんせ顔が同じだからな…」

秀知院学園高等部二年、中野(なかの)三玖(みく)

中野家の三女、姉妹の中では1番の引っ込み思案である

 

「…それで、俺に何の用だ…?」

 

(中野三玖……少し暗めのタイプだが、接するうちに仲良くなるだろう。多分石上会計と同じパターンだ)

 

「……うん…カイチョーは…」

「……」

「……好きな人いるの?」

「…え」

 

(今、こいつなんて言った?好きな人?なぜそんなことを聞く?)

 

「……ゴクッ」

「……」

「……と、突然来て…突拍子もない質問をするな…三玖」

 

(一体何が目的だ…?四宮とは違い計算され尽くされていない表情、多分今のは素に近い状態での質問……だとするとなんだ?……もしかして…俺の事好きなのか!?)

 

白銀はモンスター童貞であった

 

「……うん…私はね…」

「……」

「……(すえ) 晴賢(はるかた)とかいいと思う」

「……ん?」

 

(…すえ…はるかた…?)

 

陶 晴賢!

戦国時代を生きた武将!

大内家の家臣である!

が、知る者は多くない!

 

(なぜそんなマイナーな武将を!?)

 

「カイチョーはもちろん知ってるよね」

「…あぁ、まぁな」

 

(危なかった…たまたまこの間読んだ本に載ってたんだよな……だが…)

 

「……」

「…好きなのか?武将」

「……」コクッ

「……なぜ今まで黙っていた?隠す必要などないだろ」

「…カイチョーには分からないよ、人には知られたくない事もある」

「……」

 

(知られたくない事、か…)

 

「…だが、なぜ俺には打ち明けた?」

「……試そうと思って…カイチョーで」

「…え?」

「…私、今度フータローを呼び出す」

 

(フータロー…上杉の事か)

 

「…今朝、厳島の戦いで毛利元就を破った武将を問題に出されたけど、姉妹(みんな)の前だから言えなかった」

「……」

「……でも、私もそれくらいは分かる。だからちゃんと言いたい」

「……強いな、三玖は」

「……え?」

「……俺にも、誰にも知られたくない事はある。そして決して誰にも打ち明けるつもりもない。だがお前は、その壁を乗り越えようとしているんだ……俺からしたら、お前は誇らしい度胸を持ってる」

「……カイチョー…」

「…呼び出してどうするんだ?」

「問題の答えを言って…それだけ」

「本当にそれだけか?他にも言いたい事があるんじゃないのか?」

「……」

 

 

 

その日の放課後、三玖は上杉を呼び出し…

 

「…陶 晴賢!」

「…陶 晴賢…!!」

「……よし」グッ

「…??」

「…言えた、スッキリ」

「ちょ、ちょっと待て!捻った告白…じゃないよな!」

「うるさい、問題の答えだけど──」

 

 

 

「…隠れてみてるなんて、趣味悪いね」

「……」ギクッ

中野三玖と上杉の接触の最中、白銀は影で様子を見ていた

 

「……ば、バレてたのか…」

「……バレバレ…はいっ」

「……ん?これは?」

「……抹茶ソーダ」

「…え」

「……今日はありがとう、おかげで話す事が出来た」

「……」

「……」

階段を降りる三玖

そんな彼女を白銀は引き止めた

 

「……ま、待て!」

「……なに…?」

「…上杉とは話せたのか?その…家庭教師の事とか」

「……あぁ…話したけど、大した事なさそうだったから…いいかなって…」

「……」

「……それとも何?カイチョーも私たちをフータローに習わせたいの?」

「……それは…」

「……やっぱり……私の気持ちなんて……誰も分かってくれない…」 ガチャ

「……」

 

白銀は思った

人の気持ちを理解するのは、不可能に近いと

勉学の出来る出来ないに関係なく、人の心を読み解くのはそう簡単なことでは無い

現に白銀は、四宮かぐやの気持ちを理解するのに苦しんでいる

人には出来ないことがある

向き不向きなど関係ない…だがしかし…

その矛盾が、白銀の心に火をつけた…

 


 

五つ子豆知識!

 

三玖は五人の中では一番料理が苦手!

三玖が作る料理は全て“石”みたいになるぞ!

 


 

「白銀御行は教わりたい」

 

「……」シュッ

 

「……」フワッ

 

「…ふんっ!」ゴッ! バゴッ! ドン! ズシャァァ…

 

「……」

 

(あとちょっとだったのに……!)

 

運動音痴!!

 

白銀が今やっていたのはバレーのサーブ

勉学に関しては非常に秀でた白銀であるが、こと運動全般に関しては人様にお見せできない程の壊滅ぶりを見せる!

長年の新聞配達、夏場の引っ越しバイト、毎日往復15キロの自転車通学は平気でこなす!彼は決して身体的能力が低い訳では無い

彼の運動音痴の原因……それはひとえに

 

「……」ズルゥン! ゴッ!

絶望的運動センスの無さ!

いまさっきも転がったバレーボールで横転する程である!

 

リフティングが2回以上続いた事がなく、跳び箱を1度でも飛べたことがない

そんな彼が秀知院で地位を守るには、日々並々ならぬ修練が必須なのである!

 

(まずい…人並みには出来ていないと…このままでは…)

 

「お可愛いこと……」

 

「ダメだー!ぐわーっ」ブン! ビターン!

バチーン!

 

「なぜ上手くいかない!」

「会長、大丈夫ですか?怪我ないです?」

「あぁ…問題な……藤原書記!?」

 

(見られた…今のアホみたいな動きを見られた!?)

 

「……グッ」

「…ん?」

 

(終わった…文武両道、なんでも出来る白銀会長のブランドが……!別になにかしてるワケでもないのになんでもソツ無くこなしちゃう俺のイメージが……!)

 

「……へあっ…へあっ……あわあわ……ボール!たのしい!」

バレーボールで遊ぶ藤原

それは無邪気以外の何者でもない

 

(まーいっか、藤原書記相手なら。コレに何思われても大してダメージ無いわ)

 

「実は諸事情で俺の苦手分野を克服したくてな、どうもサーブが苦手でな」

「あ〜なるほどです〜。私でよければ教えましょうか?」

「はぁ……お前なぁ、人に教える時には自分が出来てなきゃ駄目なんだぞ?」

「私だってバレーくらい普通に出来ます!」ムゥ

ベシッ ポーン

藤原はいとも簡単にサーブを入れて見せた

 

「ねっ!」

「……す…すげぇぇぇぇぇ!※会長基準なんて洗練された美しいサーブなんだ!※会長基準

「むふふー」ドヤサッ

「お……お前にこんな特技があったとは……!!」

「私に教わったらきっとすぐ上手になっちゃいますよ〜。会長、人に教えを請う時はどんな態度が適切ですかね〜」

「……お…おえてください」

「はいっいいですよ!」ニコニコ

 

(俺が藤原書記に頭を下げる日が来るとは……!)

 

その後、藤原と白銀の地獄の特訓が行われた……

 


 

生徒会豆知識!

 

白銀は意外とポンコツであり、カナヅチ、虫嫌い、音痴などの特性があるぞ!

 


 

「白銀御行は分からしたい」

 

「……なに…?」

「急に呼び出してすまない、三玖」

白銀はバレーボールを片手に、コートに向かってサーブを打った

バレーボールはスピードを出しながらコートの枠内に入り、サーブは成功した。これが藤原と培った努力の証である

 

「……上手だね」

「…昨日まではボールに手も当てられないド素人だったがな」

「……」

「……三玖……俺はな、大抵の事を努力して掴み取った。地位も、名誉も、俺は全部自分の努力だけを頼りに生きて来た。だがな、藤原書記に教わる中で、いつしか思った。教わるのも…悪くない!」シュッ バシ!!

「……っ」

「…俺には出来ない事が沢山ある。だがな、お前の姉妹に出来る事がお前に出来ないわけが無い」

「……っ!」

「だってお前らは、五つ子なんだろ?」

「……」

「俺にも妹がいてな…互いに出来ないことは、2人で補い合えって父さんに言われた事がある。お前達五つ子もそうだろ?足りない所は五人で補い合い、支え合う、それが…お前ら姉妹に出来る事だ…」

「……ふふっ」

「……」

 

(……笑った…?)

 

「……今日…フータローにも同じ事言われた…フータロー…私が出した問題の答えを図書室で調べたんだって…それで…一人で出来る事は、全員出来るって言われた」

「……そうか」

「…私達の五人は全員で100点…だけど、それはつまり…全員が100点を取れる潜在能力があるって事だって…」

「……」

「……私、フータローともう一度話してみる」

「…あぁ、それがいい」

 

後日──

 

「……」

「…図書室で勉強なさってたんですね」

「…あぁ、そのようだな…って四宮!?」

「会長ったら、昨日は生徒会室に来なかったですから…」

「す、すまん…」

「許しません!」ムゥ

「……」

「……ふふ…なんちゃって!」

「え!?」

「早く行きましょう!会長!」

「……はぁ、わかったよ…」

 

(やはり俺には四宮が考えている事が分からん……だが…)

 

「……フータロー…ここ教えて欲しい」

 

(三玖の事が段々分かってきた……それに……)

 

「…あぁ、そこか…ここは三角法の定理を…」

 

「……」

 

(上杉風太郎という人間の事もな…)

 

 

 

 

「……うん…私今、フータローに教わってる」

「…そうか、これでお前の問題も解決したな」

「……私は元々問題なんて無い……問題有りなのはフータローの方…」

「その通りです!彼は私たちの事を全く分かっていません!」

「それにしても〜…上杉君も大変ですね〜、五人も受け持つなんて…」

「……今はまだ3人」

「……推測するに、三玖、四葉、五月の3人か?」

「私は彼には教わっていません!認めた気もございません!」

「……今は一花と私と四葉、あと勉強に全く手をつけてないのは二乃くらい…」

「……中野二乃か…あれは確かに堅物の匂いがするな」

「誰が堅物ですって?」ガチャ

 

(……げっ!)

 

「…二乃!」

「言っておくけどね!私はあいつのこと大っ嫌いだから!あいつの指導なんて死んでも受けるもんですか!」

「…二乃さん、なるべく静かにして貰えますか?勉強中なので」

 

(…四宮…!?)

 

「あら四宮さん…そんな貧相な体型で可哀想ね〜?」

「あなたこそ、校則ギリギリの格好でよくもまぁぬけぬけとしていられますね」

「…はぁ?オシャレって知らないの〜?」

「オシャレなど必要ありません。美貌は備わっているものですから」

「……チッ……帰るわよ!三玖!五月!」

「……う、うん」

「…あ、あの…本日は穏便に済ませてくださいね!皆さん!」

「…お、おう」

「……」ムカムカ

「……」

 

本日の勝敗結果

白銀の負け

(人に弱みを見せたうえ、微妙な空気になったから)




次回

第4話「四宮かぐやは理解したい」


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第4話「四宮かぐやは理解したい」

四宮かぐや

彼女には友人バロメーターが存在し、友人となり得る人材を見定めてきた

彼女のやり方は非常に冷酷なものである

その為、彼女の試験を合格した者は数少なく、彼女における親友や友人とは、かけがいのないものだった

 

しかし、これまでの方法で彼女が失敗してしまった事

それは、相手を理解しようとしていなかった事

四宮かぐやにとってそれはとても難しい事だった

 

「…中野二乃…ですか」

「えぇ、全く困ったものよ…会長に対してあんな失礼な態度…副会長として見過ごせません」

その日は四宮別邸にてかぐやと早坂が話していた

 

「……そうですね…ですがかぐや様、彼女は貴方が思う程失礼な方ではないですよ?」

「……もう偵察済みってこと?」

「えぇ、私のギャルモードで」

 

早坂愛

四宮家使用人 かぐや専属近侍(ヴァレット)

その多彩な能力で、かぐやの身の回りの情報を集めている

 

ギャルモード!

早坂が普段秀知院で行動する為の形態

 

メイドモード!

四宮家の使用人で活動する為の形態

 

その他彼女は様々な人物になりすます事が出来るのだ!

 

「彼女は同種である私には友好的な態度を取ってきました。それは故に、かぐや様、貴方は異分子と思われているようです」

「それはそれでどうかと思うけど……え?それって私に問題があるの?」

「いいえ、ただ…彼女だけの問題で無いことを忠告しておきます」

「……ふんっ!…誰があんな自己中心的な人と仲良くするもんですか!」

「……かぐや様、会長をオとしたいんですよね?」

「……まぁ、会長に告白させるのが私の目的ですから」

「…でしたら、少しでも人の気持ちに気付いてあげないと、会長は振り向いてくれませんよ?」

「…っ」

「完全に理解するのは非常に困難です。人の気持ちを理解するのは、不可能に近いです。ですが…」

「……」

「…思いやることなら、誰だって出来ます。もちろん、かぐや様にも」

「……」

 

 

 

「……」

 

〈思いやること…私に出来るのでしょうか…〉

 

「まずは人を観察する事です。その人が何を考えているのか、行動、口調、眼なんかを見ると分かりやすいと思います」

「どうして眼なの?」

「眼は人の心を映す鏡みたいなものですから」

 

〈人を観察……〉

 

「……」

「……」ジーー

 

(四宮がめっちゃ見てくるぅ!?俺何かした!?)

 

白銀は勘違いをした

 

(いいや待て白銀御行!最近あった事を思い出すんだ…最近なにか四宮の気に触る事をしたのか……)

 

「……」

 

(いや、したー!三玖と放課後2人で話した!藤原書記に特訓してもらった!)

 

「……」ジーー

 

(ま、まずい…もしあの事がバレたら……)

 

「会長、浮気性だったんですね……数々の女性に言い寄られて鼻の下を伸ばして……お可愛いこと……」

 

(それだけはダメだ!ってか事実とは違う!)

 

〈会長……何か焦っている…?もしや何か言いたい事が……まさか!今朝早坂につけてもらったネイルに気づいたのかしら!?〉

 

四宮は勘違いをした

 

〈んもぅ!そうならそうと言ってくれればいいのにっ!〉

 

四宮は今朝、オシャレに疎い四宮にオシャレを教えこもうと、ネイルをしてもらっていた!

 

〈そんなに見たいなら…見せてあげてもいいけど…?〉

 

(どうする?白銀御行!?)

 

すると、生徒会室のドアを誰かがノックした

 

「失礼しま〜す」

「…君は確か…一花か」

「お!ようやく覚えてくれたんだね?カイチョー君」

 

秀知院学園高等部二年、中野(なかの)一花(いちか)

五姉妹の長女である

 

「…ん?今日はお前らは家庭教師の日じゃ?」

「あ〜それなんだけどね〜…」

 

「……なるほど、中野二乃にな…」

「フータロー君も大変だよ〜、五人を受け持つうえに二乃の妨害まであるからね」

「……はぁ…やはり、あの子は邪魔ですね」

「…ん?なにが?四宮さん」

四宮の言葉に反応する一花

 

「彼女は貴方達の成績向上を妨害する邪魔者です。会長、早急に対応する必要が…」

「その必要は無い」

「…っ?」

 

〈……会長…?〉

 

白銀御行の表情は、曇っていた

四宮の言葉に彼は反応したのだ

 

「…四宮、なぜ中野二乃が彼の妨害をすると思う?」

「……さぁ、単に目障りなのでは?」

「…それだけじゃないさ、俺は数日だが…中野二乃という人間がどんな人間なのか把握出来ている…つもりだ」

「……?」

「…お前にも次期にわかるさ」

「……」

「…ところで一花、今日は何の用だ?」

「五月ちゃんを待ってて──」

 

 

 

「……」

学校の帰り道…

かぐやは1人で校門を後にした

 

〈会長の眼……あんな眼、久しぶりに見たわ……私がまだ、人を知ろうとしていなかった時期の……〉

 

「…白銀さん、私は人との関わりを良しとしません。1人にして貰えますか?」

 

〈……思い出すだけで…〉

 

「眼は人の心を映す鏡みたいなものですから」

 

〈……あながち間違いじゃなかったわ…やはり、早坂が言っていることが正しいのかしら…〉

 

「しーのみーやさん!」

「…うえっ!?」

「一緒に帰りましょっ!」

「……藤原さん…」

 

「なるほど〜、中野さんの次女さんに…」

「…私、彼女を理解するのが難しくて…」

「そんなの当たり前じゃないですか!」

「…え?」

「かぐやさんだって、たまに自分がわからなくなる時ありません?」

「……あります」

「でしょ!?それと同じように、人には分からない事があって当然なんです!かぐやさんは天才だから、そんな事も気にした事ないと思いますけど!」

「…そんなことは…」

「それでいいんです!むしろ羨ましいですよ、人間関係に悩まないのは…」

「……藤原さんも、悩んだりするんですか?」

「その通りです!私はもうしょっちゅう!」

「……」

「……ふふっ」

「……な、なんですか…?」

「…こうやってまたかぐやさんとゆっくりお話するのが楽しくって……」

「……」

 

〈藤原さん……〉

 

「…かぐやさん、私…かぐやさんと出会えて幸せです!」

「……私もよ、藤原さん」

「はいっ!」

 

四宮かぐや

今まで友人と認めた者は少なく、藤原はその少ないうちの1人である

しかし、彼女にとって友人とは

本人が嫌う四宮かぐやという人間を認め、敬う

そして何より、思いやってくれる

そんな存在なのである……

 


 

五つ子豆知識!

 

二乃は五人の中で一番ツンツンしてるが、実は可愛いが好きなのである!

 


 

「四宮かぐやは話したい」

 

「…いらっしゃい、二乃さん」

 

秀知院生徒会室

その日、四宮かぐやは中野二乃を呼び出していた

 

「急に呼び出してなんの用?あたし、これから買い物があるのよね」

 

秀知院学園高等部二年、中野(なかの)二乃(にの)

中野家の次女であり、五人の中では上杉を一番毛嫌いしている

 

「まぁ、軽い雑談を……」

四宮は二乃に紅茶を淹れた

 

「……まぁ…それくらいなら…」

ソファに向かい合って座る2人

その空間は2人だけのものであり、何者にも邪魔は出来ないのである

 

 

「…かぐや様…上手くやってくださいね…」

 

 

 

「……」

「……美味しい…」

「それは良かったです、紅茶を淹れるのは自信があるんですよ?」

「…そうね、あたしもそれくらいは出来るわ」

「……ふふっ」

「……で?その作り笑いはなに?」

「……やはり、貴方には解るのですね…」

「当たり前よ、あんたがあたしにそんな顔するわけないじゃない」

「……」

 

四宮かぐや

彼女は生まれてからここに至るまで、四宮家の思考を植え付けられて来た

それに変化を与えたのは…紛れもない、白銀御行

この1年で彼女は友人が数人出来る程に人として成長していた

しかし、彼女の“それ”は仮面を被った偽りの姿…

 

「……では、ここからは本音で話し合いましょうか」

 

そしてかぐやは…リボンを解いた

 

 

 

「……」

「…どうかなさいましたか?二乃」

「……なんでもない。五月、今日も生徒会?」

「えぇ、会計の方がよく働くおかげで、私も忙しいいんですっ」ニコッ

「……楽しそうね、あんたは」

「……二乃も生徒会に入ってみたらいかがですか?」

「はぁ!?あたしが!?なんで!?」

「…だって二乃…寂しそうです」

「…っ」

「一花はバイト、私は生徒会、四葉や三玖は上杉君の家庭教師……今の二乃は独りではありませんか?」

「……バカ言わないで…私が寂しがってる…?冗談じゃないわ!」バン!

「…っ!」

机を強く叩く二乃

 

「あたしはね!あんな奴があたしたち五人の家に入る余地なんてないと思ってるだけよ!勝手に他人の家に上がり込んで……だからあんた達の事なんてなんとも……!」

「……二乃…?」

「……なんでもない!」スタスタスタ ガチャッ!

「………二乃…」

 

 

 

「……ん?」

「白銀、ちょっと話があるんだけど」

「……」

廊下で鉢合わせした白銀と二乃

 

「俺に話とはなんだ?二乃」

「……あんた…四宮さんに何吹き込んだの?」

「…なんの事だ?俺は何も…」

「嘘つかないで!あたしには分かるわ!」

「……あいつは…お前の事を心配して…」

「それも嘘ね、あの人はあたしの事なんて心配してない」

「……仲良くなりたいと…」

「それも嘘!だったらあんな眼しないわ!」

「……」

「…っ」

 

(……ここまでか…)

 

「…そんな事を聞かずとも、もう答えは出てるんじゃないのか?」

「……え?」

「…四宮の家はとても複雑でな、腹違いの兄が3人いるそうだ」

「……」

「……これはあくまで推論だが……四宮は…お前が羨ましかったんだろう」

「…羨ましい…?なんで?」

「……家族に愛を注ぐ事が出来るからだ」

「…っ!」

 

「二乃さん、貴方にとって家族とはなんですか?」

 

「……」

「…五つ子であるお前たちは、互いに互いを支え合ってきた。お前たちの固い絆は強く結ばれていた…しかし、上杉風太郎の介入により、その絆が解かれようとしている……違うか?」

「……」

「俺は家族が大好きだ!その気持ちに嘘偽りは無い!お前もそうなんだろう!二乃!」

「……」

「…四宮はそんなお前が羨ましかったんだろう。誰よりも家族を愛し、誰よりも愛されるお前が……」

「……」

「…お前は間違ってなんかない。お前はお前なりに家族を思っていればいいんだ…どんな方法であろうと、家族なら、それを受け入れてくれる。それが家族、それが姉妹だ」

「…っ」

「……」

 

(一体四宮が二乃にどんな話をしたのかは知らないが…この反応を見るに、おそらく図星だろう。それ且つ、四宮の本音を聞いたのだろう……)

 

「…四宮さんに、言われた…」

「……え?」

「……」

 

「二乃さん、私には家族の何がいいのか分かりません。家族というのは、どれだけ自分の利益になるかどうかで存在価値が変わる。そんな存在です」

「……っ」

「それの何がいいのか……やはり私には貴方が理解出来ません……」

「あんたね!いい加減に……!」

「理解出来ないからこそ!……知りたいんです」

「……え?」

「家族というものの何がいいのか、家族というものは己にどんな効果を見出すのか……私に教えてください……」

「……っ」

「二乃さん…私は貴方が理解出来ません……でも、貴方の事をもっと知りたいです」

 

「……」

 

(四宮がそんな事を……)

 

「あたしにも、四宮さんが何考えてるかなんて分からない……だけど!」

「…っ」

「あたしも!知りたい!四宮さんの事!」

「……」

「…あたしも!生徒会に入る!」

「……あぁ、歓迎する」

 

本日の勝敗結果

二乃の勝利

(生徒会への参加を認められた為)

 

その後……

 

「二乃さん、これお願い出来るかしら?」

「分かったわ、これをボランティア部に渡せばいいのね」

生徒会へ加入した中野二乃

 

「……」

 

(四宮と二乃の関係が良くなってよかった…俺には女子の事は分からんからな…)

 

「…あ、そういえば白銀…会長」

「…ん?」

「…あたし、あいつの事認めないから!それであの子達に嫌われようともね!」

「…そうか、考えものだが……勉強は生徒会室でするといい」

「それは遠慮しとくわ、あたしまず勉強が無理だし」

「……」

「二乃さん、それはそれで困りますよ。生徒会として示しがつきません」

「別にいいじゃない、減る物じゃないし!」

「減る物です!」

「なによ〜!」

「あの〜…お二人共静かにして貰えますか?」

「「うるさい!」」

「それはこっちのセリフです!」

 

「……ふっ」

 

(まったく……また、賑やかになるな……)

 

 

そして次回──

 

「だから!何回言ったら分かるんだ四葉!ライスはLじゃなくてR!お前シラミ食うのか!」

 

「……上杉風太郎…本当に大変だな…」

 

この二人が、交差(クロス)する──




次回

第5話「五つ子ちゃんは生徒会に入りたい」


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第5話「五つ子ちゃんは生徒会に入りたい」

その日、生徒会室には異様な空気が流れていた…

 

「……」ゴゴ…

「……」ゴゴ…

「……」ゴゴゴゴゴ…

「……」ゴゴゴゴゴ…

ゴゴゴゴゴ……

 

白銀と上杉!!

学年模試では不動の1位の白銀!それに並ぶ四宮かぐや、そして上杉は四宮に次ぐ第3位!

前回の学年模試では3位の上杉だが…総合的に考えれば四宮と同等!力の差はほぼ無い!

白銀の永遠のライバルである四宮と同等の天才

それは四宮同様に白銀のライバルの1人であった…!

 

「……久しぶりだな…上杉」ゴゴゴゴゴ…

「……あぁ…1年の春ぶりか…?」ゴゴゴゴゴ…

 

そんな二人の仲は──

 

「妹は元気か!?」

「あぁ!らいはは絶好調だ!そっちは!?」

「圭ちゃんは最近反抗期に入り始めてな…」

「あぁ…いつかは来ると思っていたが……」

 

──意外と良かった!!

 

白銀と上杉は両者とも秀知院には外部生として入学した!

その為、1年の春はお互いに仲の良い友人は現れなかったが……

貧乏!妹!父子家庭!勉強好き!

様々な共通点を持つ彼らはいつしか意気投合!

1年の一学期は共に学校生活を楽しむ仲となっていた!

 

「お久しぶりです、上杉さん」

「あぁ、久しぶりだな、四宮。以前より大分まるくなったな」

「太ったって意味ですか?」

「違ぇよ、内面的な話だ」

「……冗談ですよっ」ニコッ

 

四宮も同様、白銀が生徒会に入ってから上杉とは知り合いとなった

 

「上杉…あんた友達いたのね…」

「うるせぇ、お前こそちゃっかり生徒会の庶務だな」

「これであんたの勉強会とやらにも参加出来ないから!ざまぁ見なさい!」

「……それなら…生徒会室(ここ)勉強会したらいい」

「三玖」

「…え?今あんたなんて言った…?」

「……だから、ここで勉強会を…」

「冗談でしょ!?それだと生徒会(ここ)に入った意味無いじゃない!」

「……ん?生徒会に入ったのは四宮の事を…」

「…ん"〜?」ゴゴ…

「……いや、なんでもない」

 

(図星じゃねぇか……)

 

「…だが、それだと生徒会(こいつら)に迷惑が掛かる。生徒会の仕事を邪魔するのは癪に障る」

「そうよ!分かったらさっさと……」

「……じゃあ…私も生徒会に入る」

「…え?」

「それじゃあ!私もぉ!」

「四葉!?」

「お姉さんも入っちゃおうかな〜?」

「一花!?あんた達……!?」

「いいんじゃないでしょうか?それなら生徒会の仕事も早く済ませることができ、空いた時間に勉強が出来ます」

「五月!?」

「……だが、そんなに沢山…一気に入れるのか?白銀」

「……まぁ、入れない事も無い。会計監査、庶務、書記を1人ずつ増やせばな」

「それでは…会長と私は変わらず、書記を藤原さんと四葉さん、会計を石上くん、会計監査を五月さんと三玖さん、庶務を二乃さんと一花さん、でどうですか?」

「待て待て!ほんとにいいのか!?」

「そうよ!普通1人ずつでしょ!?」

「そんな規定はない。それに、会長である俺の権限でもある」

 

秀知院学園生徒会!

この秀知院学園は会長のみを選挙で選出され、他の役員は能力に応じて任命されるシステムである!

つまり、誰を選ぶかは生徒会長である白銀の自由!

人数も指定されていないため、臨機応変に人数を選べる!

 

「……」

「入りたいのであれば遠慮なく言ってくれ。俺は歓迎する」

「あたしは反対!」

「私は皆さんの意見に任せます」

「私も…」

「いや〜仲間が増えるのはいい事ですよね〜」

 

結果……!

 

「……お前ら本気なのか…?」

「フータローも入ればいいのに…」

「フータロー君は生徒会の仕事してる場合じゃないからねぇ」

「上杉さん!ファイトです!」

「四葉!一花!お前らは流されただけだろ!そして三玖!勉強会はどうするんだ!?」

「……だから、ここでしたらいい。さっきの五月が言ったみたいに、仕事が終わればすぐに勉強会に移れる」

「…それもそうだが……」

「まぁ1度試して見たらどうだ?上杉」

「……白銀…」

「俺は何人受け持とうが最後まで面倒見るつもりだぞ?」

「……分かった、五人をよろしく頼む。白銀」

「あぁ、任せろ」

 

「……」ムムム

「…二乃、いいじゃないですか…?」

「なにがよ」

「これでまた、五人でいられるんですから」

「……まぁ、それもそうね…」

 

生徒会メンバー、3名獲得

 


 

生徒会豆知識!

 

世間知らずのお嬢様、四宮かぐやは

初体験の事をキッスだと思い込んでいるぞ!

 


 

「中野二乃には分からない」

 

「「恋愛相談?」」

その日、白銀と二乃はとある男子生徒に呼び止められた

 

「はい…もうぼく…どうしたらいいのかわからなくて…恋愛において百戦錬磨との呼び名の高いお二人なら、何かいいアドバイス頂けるのでは無いかと思って!」

「……」

「…判った、生徒の悩みを解決するのも、生徒会長たる俺の役目だ」

「任せないさい!」

「会長!中野さん!」

 

(恋愛百戦錬磨ってなに!?俺いつの間にそんなイメージ付いてたの?)

 

白銀 御行 (16) 交際経験 無し

 

〔何よそのイメージ!恋愛はしたいけど…した事なんて無いのに!〕

 

中野 二乃 (17) 交際経験 無し

 

(え?なに?じゃあこの相談でボロ出してしまえば…)

 

「会長、童貞だった」

「えー!童貞!?」

「マジー!幻滅ー!」

 

「…し、四宮…!」

「お可愛いこと……」クス

 

(乗り切るしかない!)

 

「恋愛の事なら、俺に任せろ!」

「……」

「俺は今まで1度も振られた事がない!」

 

〔…お?〕

 

なお告ったことも無いので、嘘ではない

 

2人はその男子生徒を生徒会室に招き入れ、ソファに座らせる

 

「一度もですか……流石は会長…」

「…だ、だろう」

「……?」

「…それで相談と言うのは…?」

「クラスメイトに柏木(かしわぎ)さんという子がいるのですが……彼女に…告白をしようと思うんです!」

 

(ふむ)

 

〔あら〕

 

「でも断られたらと思うと……色々考えてしまって…」

「ちなみにその子と接点はあるのかしら?」

「バレンタインにチョコを貰いました!」

「お……どんなチョコなの?」

 

〔最近だと手作りの生チョコなんかよね…〕

 

「チョコボール…3粒です」

 

〔えーー!!〕

 

「これって義理ですかね?」

 

〔義理以外の何物でもない無いわよ!〕

 

「あーうん、それは…もう…」

 

〔ほら!言ってやってよ!白銀!〕

 

「間違いなく惚れてるな」

 

〔!?〕

 

「いいか!女ってのは素直じゃない生き物なんだ!常に真逆の行動をとるものだと考えろ!」

 

〔!?〕

 

「つまり!その一見義理のチョコも──」

「逆に本命……!?」

 

〔逆に本命ってなに!?〕

 

(よし……!なんとかそれっぽい事言えた)

 

「でも、彼女にそんな気はないと思います。この間も──」

 

「ねー君って彼女とかいるのー?」

「え……居ないけど…」

「やっぱり!彼女居ないってー!」

「居そうにないもんねー」

「超ウケる!」

「ふふっ」

どっ

 

「っていう事がありまして、からかわれてるだけなのかなと」

 

〔それは……残念ながらからかわれてるわね…〕

 

「お前……モテ期来てるな」

 

〔ええええ!〕

 

「なぜそんなに女を疑ってかかる!女だってお前と同じ人間だ!」

 

〔さっきと言ってる事違うわよ!?〕

 

「その状況を分かりやすくするとこうだ!」

 

「ねー君って彼女とかいるのー?」(いないなら付き合って欲しいなー)

「え……居ないけど…」

「やっぱり!彼女居ないってー!」(ホッとしたー)

「居そうにないもんねー」(だって高貴すぎるもの……)

「超ウケる!」(フリーなんだ!超ウレシー!)

「ふふっ」(彼に相応しいのはこの私)

どっ(きどき)

 

〔ポジティブ過ぎない!?〕

 

「そんな…バカな…」

 

〔そうよ!その通りよ!〕

 

「彼女たちの中からたった1人を選ばないと行けないなんて……!」

 

〔あんたもバカなの!?〕

 

「彼女たちの関係にヒビが入ったりしませんか?」

「有り得るだろうな、最悪イジメに発展するかもしれん。女の友情というのはそういうものだ……」

 

〔なにこの上から目線な会話〕

 

「僕告白なんて初めてで…どういうふうにしたらいいのか……」

「いいアイデアがある」

白銀は立ち上がり扉の前に立った

何故か扉は半開きになっていた

 

〔……扉?〕

 

「ここに(くだん)の女がいるとするだろう」

「はい」

「それを…こう!」ダァン!

 

〔!?〕

 

「俺と付き合え……」

 

〔ビックリした〜…〕

 

「……と、突然壁に追い詰められ女性は不安になるが、耳元で愛を囁いた途端、不安はトキメキへと変わる」

「……」

「俺はこの技を『壁ダァン』と名付けた」

 

〔それ壁ドン!もうあるやつ!〕

 

「天…才…?」

 

〔無知ばっか!?〕

 

「ありがとうございます!会長達のおかげで勇気出ました!」バタンッ

満足した男子生徒は生徒会室を後にした

 

〔あたしなんもやってないけど…〕

 

「……ふぅ」

「……」

「…どうだ二乃?これが生徒会だ」

「え?」

「内容はどうであれ、生徒達が気軽に相談に来れる場所。俺はこの空気の生徒会を守りたい」

「……」

「生徒会での初仕事だったな、おつかれ」

「…あんたさ、四宮さんの事どう思ってるの?」

「……え?」

「……あんた達傍から見たらいい感じに見えるけど?」

「……いや、むしろ逆だ」

「…えっ」

「最近…嫌われてるんじゃないかと…興味すらないんじゃないかと」

「……白銀…あんたはどう思ってるの?」

「……俺が四宮をどう思ってるか、か…」

「……」

「…まぁ正直、金持ちで天才とか、癪な部分もあるな……案外抜けてるし、内面怖そうだし、あと胸も……」

「……?」

「でも、そこが良いっていうかな!可愛いよ、実際!美人だし!お淑やかで気品もあるし!それでいて賢いとか、完璧すぎんだろ!」

「……??」

「四宮!マジ最高の女ァ!」

 

(っぶねええええ本人めっちゃいるし!!!!!気付けて良かったあああぁぁ!!)

 

「…貧乳が好きなの?」

 

後日

 

この後彼は柏木さんに告白し、何故か付き合えたという

 

本日の勝敗結果

白銀の1人負け

(大分無駄骨を折ったうえ、要らぬ誤解を生んだ為)




次回

第6話「白銀御行は遊ばせたい」


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第6話「白銀御行は遊ばせたい」

「……」

白銀御行、17歳

彼の人生において、大金が目の前にある事など、滅多にない

家が貧乏な為、毎日を貧困生活で補っていた

そんな白銀の目の前にある一通の封筒

その封筒には「給与」と書かれていた

 

「5万ある、少し貰っていけ」

「いや貰えるか!」

 

給料!!

 

上杉風太郎が行う中野家の家庭教師

1日1人5000円、日給25000円である

 

これまでに上杉が中野家に入ったのは計2回

それゆえ2日分の給料が届いていた

 

「どうしてこれを俺に…?上杉が使えば良いだろう」

「俺はこの2日間何もしてねぇ。家には言ったが、1度は眠らされ、1度はセクハラ容疑をかけられた」

 

(1回目に関しては俺にも非があるな…だが2回目は知らん!)

 

「だから、この給料の使い道に困ってるんだ。だから半分でもいいから貰っておけ」

「中野に返せばいいのでは?」

「五月にも言ったが…断られた。どう使おうが俺の自由だとよ」

「……ん〜…」

 

白銀とて、金の使い方が上手い訳では無い

勉強意外趣味のない彼にとって、意外とお金を使うというのは至難の業なのかもしれない

 

(自分の為に使う事も出来る…だが、これはあくまで上杉の給料…俺が無闇に手を出してはいけない……となると、お互いにとって利害が一致する事をすれば良いのでは…)

 

「……上杉…週末は空いてるか?」

「あぁ、その日なら家庭教師もない」

「俺も珍しくオフだ…上杉…」

「なんだ?」

「妹を連れて来てくれ」

 

 

 

週末──

 

「はじめまして、私は白銀(しろがね)(けい)。白銀御行の妹です」

 

白銀圭!!

秀知院学園中等部生徒会会計を務める

白銀御行の実の妹であり、彼女もまた外部生の1人であるが、白銀御行の功績とその模範的な態度から、生徒会に抜擢された

 

「はじめまして白銀さん!私らいはです!」

「らいはちゃん、今日はよろしくね」

「はい!」

 

白銀の作戦、それは!

 

(お互いの妹仲良し大作戦!)

 

白銀と上杉は互いの妹を認知していたものの、2人を合わせたことが無い!その為、今回2人に交流の場を設けたのだ

そして白銀と上杉は影から見守る事となった!

 

「…白銀の妹とらいはがいるのは分かる…だがなぜ…」

 

「らいはさん、私は四宮かぐやです。よろしくお願いしますね?」ペコッ

「藤原千花ですっ!」

「らいはちゃん、この間はご馳走様でした!」

「四宮さん!藤原さん!はじめまして!五月さん久しぶり!」

 

「なぜあいつらまでいる…?」

「俺が呼んだんだ。2人っきりもいいが…沢山いた方が良いだろう」

「なぜらいはに……?」

「……」

 

「らいはちゃんは〜普段はどんな事してるんですか〜?」

「普段は家事とかやってるよ?うちは父子家庭だから!」

「そうなんですか〜……え?」

「上杉君のお宅のお母様は、らいはちゃんを産んですぐにお亡くなりになったそうです…」

「…そ、そうだったんですか……それはまぁ…なんというか…」

「でも大丈夫!私にはお父さんとお兄ちゃんがいるから!」

「…つ、強い!」

「頼もしいですね、らいはちゃんっ」

「……」

 

「……」

 

〈これはチャンスよ四宮かぐや!〉

 

本日の四宮の作戦、それは!

 

〈家族ぐるみ仲良し大作戦!〉

 

以前白銀圭と面識を持った四宮は、圭と家族ぐるみで仲良くなる事で白銀御行にも近付き易くなると踏んだ!

 

将を射んと欲すれば先ず馬を射よ!

 

男を落とすなら、まずは周囲から籠絡すべきなのである!

 

「かぐや姉さん!」

 

〈あっ良い!良いですよこれ!〉

 

かぐやは長年妹が欲しかった

 

〈以前会った時は石上くんや四葉さんのせいで色々失敗してしまいましたから……今回は大丈夫の筈です……ただ問題が……〉

 

「圭ちゃん!らいはちゃんがお洋服買いに行きたいってさ〜!」

「ほんとー?じゃあ私も行こうかなー!()()()()はなんか買うの?」

 

〈藤原さんと仲良いのよねー!!〉

 

藤原と圭!!

藤原家の三女、藤原(ふじわら)萌葉(もえは)と親友である圭は、家族ぐるみの仲で藤原千花とも仲が良かったのだ!

 

〈おまけに姉呼びだし!何なのよもう…!〉

 

「かぐやさんも一緒に行きますよねっ?」

「行くぅ!」

 

〈でもやっぱり憎めないのよね…〉

 

 

 

「……新聞配達450軒分か…」

「新聞がどうかなさいました?」

「…あ、いえ……ええっと…」

「改めまして、私は中野五月と言います。生徒会では会計監査を務めています」

「あ、はい。私は白銀圭です……あの、おに…兄はちゃんとやっているでしょうか…?」

「はい、生徒会長として彼に出来る事を…彼にしか出来ない事をやっていますよ。私たちはあまり頭が良くないので…白銀君や四宮さんにはなかなかついていけないですけど…」

「……そう…ですか…」

「……お兄さんの事が心配ですか?」

「…いえ、そういう訳じゃないのですが…妹として…」

「分かります、私も末っ子なので」ニコッ

「……お互い、大変ですね」

「それはらいはちゃんもですよ……若くにお母様が亡くなって…母親の愛情を知らないまま育ってしまったのですから…」

「……母親の…愛情…」

「圭さんにとって、お母様はどんな存在なのですか?」

「……私たちの母は、出ていきました…家を」

「…え?」

「…父の会社の倒産がきっかけで、2人は離婚して…」

「……」

「…私にとって、母親は……」

 

「五月さーん!圭さーん!藤原さんがカフェに行こうだってさー!」

 

「……うん!いま行きます!」

「あ、あの!圭さん…!」

「……」

「…貴方のお母様は、きっとずっと貴方を想っていると思いますよ…?」

「……私はそうかもしれないけど…兄はどうでしょうね」

「……え?」

 


 

生徒会豆知識!

 

藤原千花の妹、藤原萌葉!

彼女は圭の事を徹底的に汚したくなるタイプとしてみているぞ!

 


 

「白銀御行は遊ばせたい②」

 

「……」

「……」ゴクッ

「……で、なぜ俺達は男二人でコーヒーを飲んでいる?」

「仕方ないだろ!見失ったんだからぁ!」

 

しばらく五人を尾行していた白銀と上杉だが、途中で迷い&上杉の運動不足のおかげで見失ったのだ!

 

「そもそもお前がバテるからだろ!」

「お前が迷うからだろ!」

「……」ムムッ

「……」ムムッ

「……はぁ…ここで争ったところで意味も無い。大人しく2人で休日を楽しむか」

「……そうだな…」

「……」

「……」

「……なぁ…上杉…」

「なんだ…?」

「…お前、四宮の事どう思う?」

「なんだ急に……ま、そりゃ良い奴だろ。今日もらいはの為に来てくれたしな。それに…」

「違う」

「…あ?」

「…上杉は…四宮の事……なんとも思ってないよな…?」

「……お前…まさか…っ」

「……」

「……まさかお前がそんな事言うとはな……」

「……」

「……俺はなんとも思ってねぇよ。むしろ怖いと思ってるくらいだ」

「……そうか」

「…お前でも…そんな顔をするんだな」

「…う、うるさい!」

 

 

 

「……」

 

〔…上杉君…私はどうしたら…〕

 

「五月…今度の休み、らいはと遊んでやってくれねぇか?」

「…なぜ上杉くんが私にお願いを?」

「今回の給料を効果的に使いたいんだ。そしたら白銀が妹を連れてくれと言ってきたもんでな」

「……」

「らいはには色々と面倒や苦労をかけてきた…本当はもっとやりたい事がある筈だ……あいつの望みは、全て叶えてやりたい」

「……上杉くん…」

「ついでに白銀の妹と知り合える。友達の少ないお前にとっては好都合だろ?」

「…はい……って!最後のは余計ですぅ!」

 

「……」

 

〔貴方の言った通り仲良くなろうとしましたが…〕

 

「……」

「……」

 

〔どうやら地雷を踏んでしまったようですぅ…!どうしましょう…!!〕

 

「……」

 

〈五月さん…ちゃっかり妹さんの横をキープして……私も隣を歩きたいのにぃ…!〉

 

その後も、気になる相手には積極的なアプローチが出来ないかぐやである。白銀圭の横は圭に気を全く使わない藤原と気を使う五月でガッチリ抑えられていた!

 

「……」

 

〈日用品の買い出しは全部早坂に任せてるのよね……勝手が分からない〉

 

「……ふぅ」

 

〈ここで皆さんの買い物が終わるのを待っていましょう〉

 

「……」サラッ… トッ

「……」

ベンチに座るかぐやと圭

傍から見たらそれはまるで…

 

〈横顔、会長に似てるなぁ…〉

 

「あの…」

「はい!どうかしましたか妹さん!」

「妹さん…?」

「あっなんと呼べば宜しいでしょう?白銀さんだと会長と区別がつかないし…」

「圭…でいいですよ、年上なんですから」

「じゃあ圭さん」

「圭」

「…圭ちゃん」

「圭です」

「……圭」

「はい」

 

〈人の下の名前を敬称も付けずに呼ぶなんて生まれて初めてです……でもこれはいい進展!この調子で……〉

 

「あ!四宮さん!圭さん!こんな所にいた!」

「らいはちゃん…千花姉ぇ達は?」

「千花さんと五月さんならクレープ買いに行ってるよ〜全種類制覇するんだってさ!」チョコ

「……」

「……」

ベンチに座るかぐやと圭とらいは

傍から見たらそれはまるで…

 

〈ちょっと!なんでそこに座るの!?私と圭の間よ!?〉

 

「えへへ〜」

 

〈えへへじゃないわよ!何なのこの子!〉

 

「…らいはちゃん…」

「…ん?なに〜?圭さん」

「…そこ、四宮副会長が狭そうだよ…?」

「あ、ごめんなさい!」スタッ

「……」

 

〈……〉

 

「……///」

 

〈圭〜!!〉

 

 

 

「……」

「…やっと見つけたが、どうやら上手くやれてるみたいだな」

「…あぁ、上手くいって良かった」

「……白銀…改めて思うが…」

「……」

「…お前、良い奴だな」

「……まぁ…生徒会長、だから」

 

「……」グー

「らいはのやつ…ヨダレ垂らしながら寝てやがる…」

「よっぽど楽しかったのでしょうね…私としては良かったですよ」

「ほんと!皆さんのおかげで私も楽しめましたよ〜!」

「私も楽しかったです!」

「…私も」

「……ありがとうな、圭ちゃん」

「…別に…兄さんの為じゃないから」

「…ふっ」

「…何笑ってるやがる?白銀」

「……いいや、お互いに良い妹を持ったな」

「…そうだな」

 

「…四宮先輩」

「…はい…?」

「……あの…今日は楽しかったです…出来れば今度は…」

「……」

「…ふ……ふたりき……」

「私も今日は楽しかった〜!!」ギュウ ニュゥ

 

〈…下賤…なんの躊躇いもなく男に躰を預ける性欲の化身…〉

 

そもそも圭は男ではない

 

〈男を食い物としてしか見ていない下賤の女なんだわ…ついに越えては行けない一線を越えたわね…〉

 

「ほら!四宮さんも!」

「…え?あっ……し……しかたないですね!」ギュウ

 

本日の勝敗結果

白銀(シスコン)とかぐや(下賤の女)の勝利




次回

第7話「石上優と中野三玖は生き延びたい」


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第7話「石上優と中野三玖は生き延びたい」

ご無沙汰しております
4月に入り新入社員研修が始まった為、不定期更新となります。楽しみにしてくださっている皆さま、ご了承くださいませ。
正直、1日に2話分は頭おかしい



秀知院生徒会

第4のメンバー

 

会計 石上(いしがみ)(ゆう)!!

 

そして、第6のメンバー

 

会計監査 中野三玖!!

 

彼らが今まさに満を持して──

 

「はい、「生徒会を辞めたい」んです」

 

生徒会を辞めようとしていた!!

 

 

 

「…なるほど、生徒会を辞める……」

「……」

「……」

「勘弁してくれ!お前らがいなくなるとマジで破綻する!このとーり!」ガンッ

 

石上優!

彼はデータ処理のエキスパートである!

 

彼は入学間もない1年生にも関わらず白銀のスカウトにより生徒会に加入した優秀な人材である!

普段は仕事は家に持ち帰り、生徒会には打ち合わせ程度しか顔を出さないが、れっきとした生徒会のメンバー

紛れもない、秀知院生徒会会計である!

 

そして、中野三玖!

彼女は最初は仕事は上手くこなせていなかったが…

四宮や白銀の教育により生徒会に入り数週間で中野五月以上の功績を残すようになった!白銀にとっては今ではなくてはならない存在なのである!!

 

「しかし…どうして急に辞めるだなんて…?」

「……会長…いつの間にか生徒会の人増やしたじゃないですか」

「…あ、あぁ…中野達の事か」

「……正直あれ、キツいんです」

「そうなの!?」

「……先週──」

 

「……」ガチャ

「…あー!石上くん!」

「え!この方が石上さんですか!」

「四葉、はしゃぎすぎだよ」

「……っ」

 

(だれ…?)

 

「石上くん!この間生徒会に入った四葉さんと一花さん!よろしくね!」

「石上さん!よろしくお願いしますね!」

「君が石上くんだね〜、よろしくっ」

「……ど、どうも」

 

(巨乳が3人も!!)

 

「藤原先輩何してんですか?」

「今は書記の仕事を教えてるんです!」

「えっ…藤原先輩に出来んですか?」

「バカにしないでください!私だって立派な生徒会の一員なんですから!」

「でもこの間藤原先輩「果肉」っていう字間違えてましたよね?」

「え!?そうだったんですか!?」

「……」

 

(自覚なしか……)

 

「……」カタカタカタ

「…へ〜君ってタイピング早いんだ〜」

「…まぁ、パソコン好きなので」

 

(近っ…いい匂い…!)

 

「…君って三玖に似てるね、ヘッドホン付けて、前髪で目が隠れてて、ちょっと暗そうなとことか…」

「一花?あんまりそういう事を言うもんじゃないですよ」

「……五月先輩」

 

(そういえば五月先輩の顔、2人にそっくりだ……)

 

「……?」

 

(…いや違う!同じだ!3つ子だ!なんだよこれ!ラブコメかよ!?)

 

ラブコメである

 

「…あ!私ペスの散歩があるのを忘れてました!」

「…え?」

「四葉さん!あとはよろしくお願いしますね!」スタスタスタ

 

(……嘘っしょ…?)

 

「それじゃ、私たちは皆さんが来るのを待ちますか」

「……皆さん…?」

 

(…あぁ…四宮先輩と会長の事か)

 

「戻ったわよー」ガチャ

「……ただいま」

「……」

 

(いや…だれぇ…?しかもこの5人…同じ顔だ!)

 

「…あら、あんた誰?」

「こちら会計の石上くんですっ」

「……よろしく」

「…あ、あぁ…どうもっす」

 

(五つ子だ!初めて見た!)

 

石上は大分興奮していた

 

 

 

「…そこまでは良かったんです。普段見かけることの無い五つ子をまじかで見ることが出来たし……でも…」

「……でも…?」

「……耐えきれないんです…五人の巨乳美女に囲まれるのが…」

「何故!?普通嬉しいものではないのか!?」

「そうですよ!美女ですよ!巨乳ですよ!それも五人ですよ!?嬉しいに決まってますよ!……でも…」

「……」

「……なんだか僕が入ってはいけない領域の気がして…なんというか…男子禁制みたいな……」

「…っ」

「…おかげで生徒会室に行きずらくなりました……あのハーレムには耐えられません…」

 

ハーレム!!

別名、一夫多妻制

ハーレムとはそれに至るまでの状況のことも言う

1人の男性を多数の女性が取り合う、または取り囲むことを言う。ラブコメでは大道の手法であり男であれば、誰しもが憧れるシチュエーションである!

沢山いるヒロインの中で最推しを決め、ガチ恋をする者もいる!ヒロインの中で推しが定まらず、箱推しのまま結末を迎える者もいる!

それが、ハーレムが生み出す可能性なのである!

 

「…でもハーレムの主人公ってだいたい幸せにならないんですよ」

「…え?」

「沢山いる内の1人と結ばれても、別のキャラを推してる人からすると「なんで?」ってなるんですよ。しかもそれを回避しようと全員とハッピーエンドを迎えると炎上するんです。どちらにせよ主人公は世間から叩かれるんです」

「…そ、そうなのか…」

「だいたいラブコメの主人公はイケメンで運動神経も良くて人当たりもいい。僕とは真反対な存在なんです。それだから周りの人は主人公の深みにだんだんハマっていって次第にズキュンです。主人公も主人公で誰を選んでいいのか分からず女友達に相談なんかしたらそれが修羅場になったり、大きな波乱を作り出すんですよ。それもこれも全部女が周りにいるから成立することであって今まで女子と関わりを持たなかった僕からしたら外道ですよ外道」

 

(すっげ、一瞬でスイッチ入った)

 

「…だが、男ならば1度は憧れるシチュエーションなのでは無いのか?」

「それはイケメンに限ります。僕みたいな陰キャが陥っていい場面じゃないんですよ」

 

ハーレムは男であれば1度は憧れるシチュエーション!

しかし!

石上のような陰キャにはハードルが高いものなのである!

 

「分かってるんです。僕がハーレムの中心じゃないくらい……でも──」

 

「石上くんおつかれ〜」

「石上、紅茶淹れたわよ」

「……おつかれ」

「石上さん!お疲れ様です!」

「石上くん、いつもお仕事ご苦労さまです」

 

「みんな優し過ぎんですよ!ちょっとだけ意識しちゃうんです!……あと…」

「……」

「中野さん達が、僕と関わる事で…何か言われないか心配で……」

 

(…石上会計の言う事も少しは分かる……しかし、それは石上会計の過去に由来するもの…中野の5人はその事を知らないからな……だが…)

 

「…石上会計、君はいつも被害妄想が過ぎる。石上会計が中野達に優しくしてもらってるのは、君が中野達に優しくしてるからじゃ無いのか?」

「…っ」

「中野達は律儀だからな、借りた恩は必ず返す」

「……そういうもんですか」

「…あぁ」

 

(これは石上会計が人と触れ合うチャンスだ。いつまでも過去の事を引きずる石上にとって、中野達の生徒会への加入はいいキッカケだったのかもしれないな…)

 

「…分かりました、僕もうちょっと頑張ってみます」

 


 

生徒会豆知識!

 

石上優は現在、ラブコメ漫画「モモちゃんは考えない」

略して「桃缶」にハマっているぞ!

 


 

「石上優と中野三玖は生き延びたい②」

 

「…石上会計の辞めたい理由は分かった。だが三玖!何故だ!?」

「……私……」

「……」

「……命の危機を感じる」

「…えっ」

「……なんか…四宮さんとお話すると、すごく視線が痛くて…視線と言うより、殺意?に近いと思う」

「しのっ!?」

「あっそれ僕も分かります!」

「……うん、この間ね──」

 

「……」ガチャ

 

〔……あっ…今日は誰もいないんだ〕

 

放課後一人で来た三玖

ソファに座り、本日を振り返り…

 

「……ふぅ」

 

〔フータローと知り合ってどのくらい経つんだろう……てか私……なんでフータローの事……ん?〕

 

「……なんだろこれ」

 

〔喫茶店の割引券…?〕

 

ふと机の下を探ると

チケットが1枚机の裏に貼ってあった

 

「喫茶店はなかなか行かないな、結構高くつくだろ、あれ」ガチャ

「そうですねー」

 

〔あっ…カイチョーと四宮さん…〕

 

「どこかに割引券があれば話は別なのですが…」スカスカ

 

スカスカ

 

「…ッ!」バッ

「…ッ」

 

〔……えっ…?〕

 

「そのチケットについては…他言しないでおく事ね」

 

〔……〕

 

「…何があったかは…脅されてて言えない…」

「おどっ!?」

「……それだけじゃない……先週──」

 

「……四宮副会長…カイチョーの事好きなの?」

「ブーーッ!」

「……」

「な、何を言ってるの……」カタカタカタ

「……いえ…何となく…」

「私が会長をっ!?馬鹿な事言わないで頂戴!そんな訳ないでしょ!」

「……恋愛対象として見てないんですか」

「え……えぇ勿論……!」カタカタカタ

「……ほんとに?」

「むしろそんな噂されて迷惑な位です!」

 

〔そんなんだ……2人はお似合いだと思ったのに……やっぱり私には…恋愛が分からない…〕

 

「……わかりました」

「……今の話、誰かに言うつもりですか?」

「……えっ?」

「……絶対に……誰にも…言わないでくださいね…?」

「……は、はい…!」

 

「……やっぱり言えない…!」

「何があった!?四宮!三玖に何をしたんだ!?」

 

三玖は四宮にトラウマを埋めつけられた!

 

「でも、三玖先輩の言いたいこと、少し分かる気がします」

「……ほんと?」

「はい、この間なんかソファの角で首絞めてきましたから!」ニコッ

「……」

 

(まずい…石上会計はもう手遅れかもしれん…!)

 

「……」

「……でも、優しいんですよ、なんだかんだ言って」

「……」

「あの人のいい所は、悲しんでたり、苦しんでたりする人を見ると、声をかけてくれるところですかね」

「……っ」

 

「三玖さん、紅茶が入りましたよ」

 

「……」

「僕はまだ1年で四宮先輩達とは知り合ったばっかりですけど……あの人がいい人なのは分かります」

「…いい事言うな、石上」

「僕も四宮先輩に色々と指導してもらったり、生徒会の一員として僕を育ててくれましたし……まぁ、それなりに尊敬してるんで」

「…そうか」

「……」

「…三玖、俺は四宮がお前をどうこうするとは思えん。それに、その厳しさが、四宮なりの優しさだ」

「……カイチョー…」

「…もっと仲間を信じてみろよ、な?」

「……」

 

〔仲間を……信じる…〕

 

「……」コクッ

「…よし。これで万事解決だな!」

 

 

 

「……あ」

「あら三玖さん、お疲れ様です」

「…四宮さん…あの…」

「そういえば、昨日は生徒会室で何を話していたんですか?」

「……え?」

「……」

「……」

「……それより…あの件、黙っててもらって嬉しいです。口が固いのは美徳ですよね」

「……」

「……もし喋ってたら……」

「……」ゴクッ

「……なーんてね、冗談ですよ」

「……ハァ」

 

〔なんだ…びっくりした…〕

 

「仲間を信じてみろよ、な?」

 

「自分が好きになったものを信じろよ!」

 

〔……仲間を…信じる…〕

 

「……そうだ、それと…」

「……」

「…会長を困らせてはいけませんよ?生徒会、もう辞めるなんて言わないでくださいね?」

「……」

 

〔……もしかしてこの人…〕

 

「……ふふっ」

 

〔……昨日全部聞いてたんじゃ…?〕

 

「……さ、生徒会室に行きましょう?」

「……は、はい…」

 

〔…いや、信じなきゃ……このままじゃ…何も分からないまま…!〕

 

本日の勝敗結果

三玖の敗北

(かぐやが怖いから辞めたいけど、かぐやが怖いから辞められないため)




次回

第8話「中野四葉は交換させたい」


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第8話「中野四葉は交換させたい」

アニメ かぐや様は告らせたい 第3期
最高のスタートでしたね!
僕も負けじと頑張ります!



放課後──

 

「…会長!…そ、それもしかして…!」

「……ふっ」

「ついにスマホ買ったんですか!?」

「……フフ…まぁな」

「頑固一徹…なんと言っても『不要だ』『周りに合わせるつもりは無い』と買わないの一点張りだった会長が……ようこそ文明社会に…!」

「人を原始人みたいに言うんじゃない。見ろ、ラインだって入ってるぞ?」

「わー!じゃあ交換しましょ〜!」

 

世はIT時代!

スマホ不要論を唱えていたド堅物の白銀も、近頃の通信料金の低価格化もあり、ようやく重い腰をあげた!

高校生活に於いて、スマホの重要さは今更語るまでもない!

 

遊びの約束や雑談をケータイで行い、どんな口調で送るか一つでドギマギし、返信がなかなか来ないことに一喜一憂

一説によると、告白すらもメールで済ませる事もあるとか……

 

そう!この無駄な半年間は、ラインをやっていなかったのが原因!

 

IDの交換は、現代式恋愛のチケットなのである!

 

(さぁ!いつでもIDを訊いてくるがいい四宮!!)

 

「……」

「……」

「……」ズズッ

 

(なぜ訊いて来ない!?この俺の個人情報だぞ!一体どれ程の価値があると思っているんだ!!)

 

「……」

 

(物の価値が分からん女め……仕方ない、こっちから訊くか…?……だがそれは…!)

 

異性に連絡先を訊く!

その行為には多少の必死さと下心が読み取れ

特別な『意味』が生まれてしまう!

 

意味……すなわち『LOVE』!!

 

恋愛関係に於いて「好きになった方が負け」は絶対のルール

 

すなわち好意を認める事は「敗北」を意味する!

プライドの高い両者に於いて、それはあってはあってはならないこと!!

 

異性の連絡先を訊くなど、もはや告白同然の行為!

『好き認定』情報は女子会やラインのグループなどを介して拡散!瞬く間にクラスの常識と化す!

 

つまり、迂闊なアドレス交換は……

連絡先を訊く→好き認定→告白同然としてクラス中に拡散→

……と、最悪死に至る大変危険な行為なのである!

 

(絶対に駄目だ!俺から訊く事はあり得ない!四宮!貴様から訊きに来い!)

 

「……」フッ

 

〈会長……私から訊いて来るのを待っているのでしょうが、全くの無駄です。私からは絶対に訊いたりしません。異性の私に会長が恥ずかしがりながらも聞いてくる事に『意味』があるのではないですか…!〉

 

争い!それは世界の必定!

勝者と敗者!

殺るか殺られるか!

 

(連絡先を)訊くか訊かれるか!

 

人間の優劣はそこで決まると言っても過言では無い!

 

 

 

そんな高度な恋愛頭脳戦が行われている生徒会室

 

一方、上杉達の放課後は──

 

「アドレス交換!大賛成です!その前にこれ終わらせちゃいますね!」

「……一応聞くが、何やってんだ?」

「千羽鶴です!友達の友達が入院したらしくって!」

「勉強しろー!!」

 

秀知院学園高等部二年、中野(なかの)四葉(よつば)

生徒会では藤原と共に書記を務める

そのお人好しの性格から、運動部、文化部、委員会などの組織から仕事を依頼され、それを引き受ける毎日を過ごしていた

 

《こいつ……どこまでお人好しなんだ……もしや、勉強を避ける為に時間を稼いでいるのでは…!?だとしたら二乃なんて目じゃない程の悪女だぜ…》

 

「どうしたの?フータロー君、急にメアド交換なんてさ」

「家庭教師的に知っておいた方がいいと思ってな、一花、まずはお前とだ」

「ほいほーい!ほら、三玖も出して」

「……う、うん…」サッ

「……これでよし、五月と二乃は今度で良いだろう」

「五月と二乃ならさっき生徒会室に入るのを見ましたよ!今のうちに聞きに行きましょう!」

「なんでお前も行くんだよ!ってか四葉!お前のアドレスは…」

「早くしないと帰っちゃいますよ!」

「やっぱ勉強する気ないだろ!」

 

「よかったね」

「……うん」

 

 

 

生徒会室──

 

「お断りよ、お・こ・と・わ・り!」

「確かに私たちにはあなたのアドレスを訊くメリットがありません」

 

《想定してた通りの反応……》

 

「白銀、何とか言ってくれないか?」

「…え?俺?」

「こいつらと連絡先を交換しなきゃ、これからの家庭教師に支障が出る可能性があるんだが…」

「ですから、私たちは私たちで勉強を進めるのでご安心を!」

「お前一人だと頼りないから言ってるんだ!」

「そんな事ありません!現に今もこうして勉強してるではないですか!」

「だからだ!そこの問3の問題!間違えてるぞ!」

「え!?」

「あとそことそこと…ほとんど間違えてるじゃねぇか!」

「……五月、生徒会としても勉強が出来なきゃ示しがつかん。今度の期末試験、お前達にはしっかりやってもらわなきゃ困る。念の為、連絡先だけでも良いんじゃないのか?」

「……ですが…!」

「これならどうだ!今なら俺のアドレスに加えてらいはの連絡先もセットでお値段据え置きお買い得だ!」

「……背に腹は変えられません…!」

「身内を売るなんて卑怯よ!」

 

《最初からこうしてれば良かったぜ…》

 

(その手があったか!)

 

「二乃さん、貴方は教えないんですか?」

二乃に言い寄るかぐや

その笑みには含みがあった

 

「当たり前よ!」

「そうですか…仕方ないですね……では上杉さんはきっと貴方抜きで話をするでしょうね…上杉さんとほかの4人で内緒の話を……」

「……う、上杉……か、書くものを寄越しなさい…」

「……流石だな、四宮」

「いいえ、私も彼女達には頑張って貰わないと困りますから…」

「これで全員分揃いましたね!」

「……あと一人いるだろ」

「え?一花、三玖、五月、二乃……」

「……」

「あー!!四葉!私です!」

 

《やっぱこいつただのアホだ》

 

「こちらが私のアドレスです!」プルルル

「……電話来てるぞ」

「……あぁ…私もうひとつ頼まれ事があったんでした…失礼しますね!」

「は?」

 

《なんだあいつ……》

 

「……ッ!」

 

《まさか…!》

 

「あ、ちょっと……メアド、書いたんだけど…」

 


 

五つ子豆知識!

 

四葉は五人の中で最も成績が悪く、上杉には一目置かれているぞ!

 


 

「中野四葉は断りたい」

 

(四宮の連絡先をゲットし、石上会計もだんだんこの環境に慣れてきたみたいだな…)

 

「……」カタカタカタカタ

 

(……あとは…)

 

「……ハァ…」

「……四葉、元気がないみたいだが、どうした?」

「…え!?べ、別になんでもないですよぉー…!」

「……」

 

(嘘つくの下手だな……四宮とは大違いだ)

 

「…生徒会長として、生徒の悩みを聴くのも1つの役目、なんでも話せ」

「……じ、実は…」

 

「……ほぉ…バスケ部に…」

「はい……以前から声を掛けてもらってて…でも私、勉強もあるし…」

「なら勉強の方を優先すれば良いだろう」

「…そうですけど…今のバスケ部は人員不足で、以前は助っ人として参加したんです。でも、その後に才能を見込まれて…」

「……つまり、バスケ部の連中を手助けしたいが、上杉の足手まといにもなりたくないと…」

「……はい…」

「……ふむ…」

 

(どうしたものか…俺は部活なんてやってないから勝手がわからんな……ん)

 

「…石上会計、君なら何かいいアドバイスが出来るんじゃ無いのか?」

「…え?僕、ですか…?」

「あぁ、以前は君も運動部だっただろう」

「……まぁ、運動部にはいましたけど…」

「そうだろそうだろ!なら四葉に助言を…!」

「でも部活ってチョーくだらないですよね」

「…っ」

 

部活動!!

この秀知院学園には2つのピラミッドが存在する。ひとつは家柄によるピラミッド

そしてもうひとつは『部活動カースト』!!

 

もはや説明不要と言える

体育会系を頂点としたヒエラルキー

それは当然秀知院にも存在する!

 

体育会系の部活に所属しているというだけで部内の実力実績問わず若干モテる!

この不条理に対し、帰宅部及び文化系の部員たちは言葉に出来ない負の感情を体育会系の部活に抱いている

 

「本気でやってる分にはいいんですよ。ただ大半は俺たちマジだぜって顔で仲良しごっこしてるだけじゃないですか。そういうの薄ら寒いっていうか……何楽しんでんだよっていうか……」

「……」

「あーほんと……全員死なねーかなー……」

 

(しまった…石上会計の青春ヘイトが始まってしまった)

 

「う、運動部って…そんな風に思われてたんですか!?」

 

(見ろ!純粋な四葉が反応しちまったじゃねぇか!)

 

「…ゴホン…四葉、君は何に迷っているんだ?」

「……何に…ですか…」

「……」

「……私、五人の中で1番勉強出来なくて……足でまといで…正直居場所ないと思ってるんです……でも、バスケ部の人達や、色んな人達が私を頼ってくれて…私の才能を認めてくれて……」

「……五人の中に居場所がない?それは嘘だな」

「…へ?」

「……上杉が、一度でもお前を見捨てたか?」

「…ッ!」

「……君は確かに勉強は出来ないかもしれない…しかし、上杉はそんな君を絶対に見捨てたりはしない。あいつは家庭教師である以前に、君たちの事を一番そばで見ている人物だ」

「……上杉さん…」

「…四葉、君は上杉に何をしてもらった?上杉に何を教わった?」

「……」

「…今こそ、その恩を返す時じゃ無いのか?」

「……私…上杉さんに教わりたい事、沢山あります!」

「……あぁ」

「…今からバスケ部のところに行きます!白銀さん、ありがとうございました!!」

 

(……さて、あとは…)プルルル

 

「……あぁ、もしもし…俺だ……上杉、バスケ部の部室の前に来てくれ」ピッ

 

 

 

「才能がない私を、応援してくれる人がいるんです」

「……」

 

「……ふぅ……ぬわっ!?」

「……」

「う、上杉さん!?なぜここに…?」

「あぁ、生徒会室に行くところだ」

「生徒会室は部室棟の真逆にある筈なんですが…お、おかしいなー…」

「お前の用事は終わったか?今日もしごいてやるから覚悟しろよ」

「……はいっ!覚悟しました!!」

「……」

「…あ、上杉さん!」

「…なんだ」

「アドレス!交換しましょ!」

 

本日の勝敗結果

四葉の勝利

(五人の連絡先を交換させる事に成功したため)

 

 

 

〔あいつ…結局取りに来なかったじゃない…〕

 

そしていよいよ……

 

「フータローから着信…!」

「私も!」

「一斉送信でしょうか…?」

「……あ」 これ全部宿題な!

「うわぁ〜…この量はキツイな〜…」

 

五つ子にとって最初の秀知院の試験が……

 

「…やっぱり…断った方が良かったね…」

 

始まる……!!




次回

第9話「上杉風太郎は逃れたい」


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第9話「上杉風太郎は逃れたい」

期末テスト!!

秀知院学園では、文理混合

年5回の試験が実施される!

 

そして、先日行われた期末試験の結果は──

 

第2学年(192人)

1位 白銀御行

2位 四宮かぐや

3位 上杉風太郎

と、相変わらずの接戦をようした

 

その一方、中野五姉妹の順位は──

 

「……グッ!」

 

中野一花 162位

中野二乃 176位

中野三玖 137位

中野四葉 182位

中野五月 159位

 

「……がはっ!!」

「上杉!しっかりしろ!!」

 

当然、全員赤点である

 

「改めてお前らがバカだと思い知らされるぞ…」

「うっさいわね!」

「しかしまぁ…ここまで酷い順位だと、流石にまずいんじゃないか?留年も有り得る」

「既に全科目で赤点だ…つまり……」

「次赤点を取ればイエローカードが出されますね」

「…がはっ!!」

「上杉ィ!」

 

赤点!!

秀知院では平均点の半分以下を赤点とし、赤点を取った時補修などの救済措置は一切ない!

科目ごとに3回の赤点で欠点──

必修科目は落とした時点で留年が決定する!

 

「……」

 

この窮地に於いて、上杉風太郎はある結論に至った

家庭教師の身である上杉風太郎

今まで1人で五人の教育を任せられたが、それも虚しく

長女の一花はアルバイト、次女の二乃は上杉嫌い、五女の五月は単独での勉強

1人で五人をまとめあげるのは困難と判断!

 

「……上杉…四宮…頼みがある…」

「…なんだ」

「なんですか?」

 

 

 

時は流れ──

 

第2学期、中間試験!!

 

「そういえばそろそろ中間テストですね、皆さん勉強はなさってますか?」

「ぴゅ……ぴゅう〜♪」

「藤原さん、吹けてませんよ」

「試験勉強なんて必要ない」

「…あら」

「そんなもん普段からちゃんと勉強していれば問題ないんだ。試験前だけ勉強しても身に付かん。一夜漬けなんてもってのほか、体調を崩すだけだ……君らはくれぐれも一夜漬けなんてするなよ……」

 

嘘である

この男、最近はバイトも休み、一夜漬けどころか十夜漬けに達しようとしている!!

 

白銀は現在4回連続で学年1位を獲得、学年首席の座を盤石のものとしている!

白銀にとってその成績は最大の生命線!

学年首位の座は誰にも譲る気がない!!

 

1位を守る為ならば……嘘も駆け引きも一切躊躇わない!

 

「そうですね、テストは自分の実力を見るものです。無理に背伸びをして良い点を取っても本来の自分は見えません。自然体で受けるのが一番でしょう」ニコッ

 

嘘である

この女、珍しく本気も本気で臨んでいる

 

彼女にとって敗北とは必ずしも屈辱ではない

敗北も処世術の内と考えている為である

 

だが勉学に限って話は変わる!

天才の四宮が()()を出してなお

白銀には()()()()()勝利出来ていない!!

 

彼女にとってそれは初めての真の意味での『敗北』であり

プライドの塊である彼女には到底容認出来ない屈辱なのである!

 

「石上くんはちょっと位背伸びしないとマズイかもしれませんよ。また赤点取って補習にでもなったら……」

「大丈夫ですよ、今回は試験勉強バッチリです」

「……」

「じゃあ僕は帰って勉強でもしますので」ガチャ

 

嘘である

この男、最近買ったゲームの続きが早くしたい

 

試験前にゲームを買うこの胆力!

まるで自分の死期を察したかの如く生き急ぎ!

 

そして普通に赤点を取る!

これが石上優のやり方である!

 

「私どうしても国語がダメで…外国語もスラング使っちゃうので試験だとあんましなんですよね」

「藤原書記は語学修得がちょっと特殊だからな、普通の勉強法は効率悪いかもしれん」

「勉強量が必ずしも点数に反映される訳ではありませんしね、いっそ勉強しないという選択肢もありますよ」

 

嘘である

 

「そうだな、俺も試験前は3日ほど勉強せずに坐禅組んで精神統一してる。これが効くんだわー」

 

嘘である

 

「……なるほど…分かりました!私勉強しません!」

 

本気(マジ)である

この女、白銀とかぐやの足の引っ張り合いに巻き込まれ、順調に順位を落としている

 

成績自体は平均的であるものの

学習意欲は高く、性格以外は優等生の藤原書記!

 

だからこそ秀知院TOP2の言葉を疑わない!

 

それが戦前暗闘(ダーティープレイ)とも気付かずに!!

 

試験は

ペンを持つ前から

戦いが始まっている!!

 

 

 

「えー…来週から中間試験が始まります。念の為言っておきますが今回も平均点の半分以下は赤点とします。各自復習を怠らないように」

「……」

 

《……ついに来たか》

 


 

生徒会豆知識

 

石上優は現在3科目でイエローカードが出されている

あと1回でも赤点を取れば留年が決定するぞ!

 


 

「……あの…今なんと…?」

『聞こえなかったかい?』

「……」ゴクッ

『確かに今回の事は酷だが……ここで君の成果を見せて貰いたい』

「……」

『今度の中間試験、五人のうち1人でも赤点を取ったら、君には家庭教師を辞めてもらう』

 

その日、上杉は中野達の父親と電話をしていた

彼の放った一言は、上杉を絶望させる

 

「……」ダラッ

「……」

「……くそっ!」

「私のスマホですけど!?」

「……ふぅ…悪い、五月」

「父から何を言われましたか?」

「……世間話をしただけだ」ダラダラダラダラ

「それだけでその汗の量ですか!?」

 

《全員赤点回避だと……?今週末の家庭教師の時間だけではカバー出来ない、それに二乃と五月、こいつらが素直に言う事を聞いてくれるだろうか…どちらにせよ時間が足りない、不可能だ》

 

「……?」

 

《だが、俺にも生活がある!ここで引くわけにはいかない!クビだけは逃れてみせるぞ!》

 

「…五月、今度の中間試験の対策…やってるか?」

「…なんですか?私が信用ならないんですか?」

「…いやそう言う意味じゃなくて……これでも一応お前達の家庭教師だ、分からないところがあれば教えてやるって言ってるんだ」

「なんですかその上から目線…貴方に教えは乞わないと言ったはずです」

「お前は真面目な割に要領が悪い、俺を頼ってくれたらわかりやすく教えてやれる」

「……」

「……ッ…三玖や一花を少しは見習え!」

「……」ピタッ

上杉の言葉に反応し歩みを止める五月

上杉の方へ振り向き、彼の目をじっと見た

 

「……」

「…貴方は忘れてるでしょうが、私は最初に貴方を頼りました。それを拒否したのは貴方でしょう!嫌々相手されるなんて御免です!」

「…っ…だったらお前一人で合格出来るって言うのかよ」

「出来ます。たとえ中間試験に間に合わなくても…」

「それじゃダメだ!今回赤点なら次はない!」

「…えっ」

「これも仕事なんだ、我儘言ってないで受け入れろよ!」

「我儘を言ってるのは貴方でしょう!」

「お前だって成績上げたいんだろ…だったら…黙って俺の言う事を聞いていればいいんだよ!」

「…!」

「…ハッ…いや…今のは…」

「貴方の事を、少しは見直していたのですが…私の見込み違いだったようですね……所詮、お金の為だけですか」

「…!……金の為に働いて何が悪い。何不自由なく暮らせてるからそんな事が言えるんだ……仕事じゃなきゃ、誰がお前みたいなきかん坊の世話を焼くか!」

「……無理して教えてもらわなくても結構。私は貴方の金儲けの道具じゃありません」

「そうかよ、後悔しても知らねぇからな」

「えぇ!たとえ留年になっても、貴方からは絶対に教わりません!」

「お前だけには絶対教えねー!」

 

 

 

「……くそっ…」

 

嘘である

 

《なんであんな事言っちゃったんだー!!》

 

「…上杉、どうかしたのか?」

「……白銀…」

 

「…俺が勉強をする理由…?」

「…あぁ、教えて欲しい…なぜお前は1位に拘る…?」

「……そうだな…あまり考えた事は無いが…」

 

嘘である

 

「……1位を取る事、それは俺にとっては生きる事よりも重要な事かもしれん」

「……」

「…俺は昔から何も出来なかった…運動も、家事も、料理も…そして、恋愛も…」

「……」

「…ただ、勉強だけは違った。勉強は、才能がなくても努力する事で、弱点から武器にする事が出来た。俺にとって勉学は唯一の武器だ。俺が勉強出来なくなれば、あいつは遠く、ただ見上げるだけの存在になってしまう……俺は勝たなくちゃいけないんだ…対等な存在になる為に…!」

「……対等な…存在に…」

 

『君が必要だもん!』

 

「……」

 

《バカか俺は…こんな時にまであの子の事を…》

 

「……お前はなぜなんだ?上杉」

「…俺は……」

 

《俺はいつだって金しか見えていなかった…このバイトを始めたのも金が目当てだった……らいはに美味しいご飯を…親父に楽を…そして俺には余裕を…そんな事を考えながらあいつらの家庭教師をしてきた…そう、いつも自分の事だけを思って……だが今では…》

 

「……俺が勉強する理由はただ一つだ」

「……」

「あいつらに…5人揃って笑顔で卒業してもらう為だ!」

 

本気(マジ)である

 

「…中野達の為か…」

 

《誰かの為に勉強する!それは同時に俺の為でもあり、あの子の為でもある!》

 

「……中間試験まであと1週間、お前に中野達をどうにか出来るか?」

「…出来るか出来ないかじゃない…やるんだ」

「……そうだな」

「……あいつらの父親に言われた、全員赤点回避しないと俺はクビらしい」

「…なにっ…!?」

 

 

 

「…そうですか、上杉さんがそんな事を…」

「あの人は私たちの事を何も分かっていません!所詮はお金のため…身勝手にも程があります!」

「……」

「私があの人の金儲けの道具になるくらいなら…留年する方がマシです!」

「…その言葉、本音ですか?」

「……え?」

「…本当に留年する方がマシなんですか?貴方の心は、本当にそんな事を言ってるのですか?」

「……四宮さん…?」

「…私が知る上杉風太郎という人物は、いつも素っ気なくて、まるで昔の私のようでした。ですが……人との関わり方を知った今の彼は、きっとなりふり構わずお節介をするのでしょうね…」

「……っ」

「……もう一度訊きます…貴方のその言葉は、本心ですか?」

「……本心です!私の想いは変わりません!」

「…そうですか」

「生徒会の仕事も終わったので帰ります!失礼します!」ガチャ

 

「……これは…難儀なものですね…」

 

 

 

「……」ガチャ

 

帰宅した五月はすぐさま自室にこもり、机へと体を向けた

上杉が家庭教師の日で家に来ている事も忘れ、彼女は時の動くままにペンを進めた

 

〔今日は数学の復習をしましょう、三玖にヘッドホンを借りた事ですし、集中して出来る筈です……〕

 

「……」カキカキ

 

〔私は間違っていません……悪いのは彼の方です…私たちは貴方の道具じゃない……〕

 

「……」

 

〔私1人でも…何とかしてみせます……私…1人でも……〕

 

「……」 ポタ ポタ  グスッ…

 

嘘である

中野五月にとって一人の時間というのは自分を見つめる為の大事な時間であるが…それ故に、酷い自分を、醜い自分を見つめる事となる……

それは彼女にとって屈辱…いや、悔いの残る物なのである

 


 

五つ子豆知識!

 

五月は誰にでも敬語を使うしっかり者!

その凛々しさ故に生徒会に抜擢されたという話もあるぞ!

 


 

「……」

「……い……おい…きろ…」

「……ん、ん〜…」

「おい、起きろ」

「…あ、すみませ……っ」

 

〔上杉くん…!?〕

 

「やっと見つけたぞ、三玖」

「えっ」

 

〔あっ…三玖のヘッドホン…つけっぱなしで…上杉くん…それに気付かないで…〕

 

「勉強サボって俺から逃げてただろ!許さねぇぞ!」

「……っ…あの」

「ほらペン持て」

「私は」

「教科書広げろ!罰としてスパルタ授業だ!お前には絶対、赤点回避してもらうからぞ!」

「だから三玖じゃ…」

「そういや、五月の姿が見えねぇな。今も部屋で勉強頑張ってるんだろうな間違ってもうたた寝してるなんて事は、ないだろうなー……」

「……ッ」

「…どうした…三玖?」

「……」

 

「素直になればいいのに…」

 

「貴方のその言葉は、本心ですか?」

 

「……なんでもありま……なんでもないよ」カァァァ

「…じゃあ始めよう。今はどこやってたんだ?」

「…せ、生物…」

「そのまま続けるか?わからなかったところはあるか?」

「……えっと…」

「あ、そうだ……」

「……」

「…一昨日は悪かった」

「……な…なんの事?」

「…あっ…そうだな…ははは、三玖に何言ってんだか…」

「…私こそ、ごめんね」

「……三玖こそ何言ってるんだ?」

「そ、そうだね」

「……」

「ここが分からないんだけど」

「なんだ、もうそこまで進んでたのか…それはな」

 

「…1人でよく頑張ったな」

「……うん」

 

本日の勝敗結果

五月と上杉の勝利

(仲直りが成功したため)




次回

第10話「上杉風太郎は逃れたい②」


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第10話「上杉風太郎は逃れたい②」

ご無沙汰しております

かぐや様第3期 第2話
最高でした!
ハーサカちゃん可愛すぎ!

って事で僕も頑張ります



「残り、10分」

「……」

 

《……くっ…!!みんな、頼むぞ!》

 

中間試験!!

前回、上杉は中野達の父から…

 

『今度の中間試験、五人のうち1人でも赤点を取ったら、君には家庭教師を辞めてもらう』

 

……と言われ、この一週間中野達との泊まり込みでの勉強会が行われた!

泊まり込みに反対していた二乃も、五月の説得により何とか承諾

ようやく5人揃っての勉強会が行われた

 

《一花は夏休みの件でだいぶ勉強に励むようになった……五月は俺を許してくれたのだろうか…いや、今はあいつらを信じよう……あとは二乃…お前だけだ…》

 

「赤点を取ればクビね…いい事聞いちゃったっ」

 

「……くっ…!!」

 

《みんな頼むぞ!》

 

 

社会!

 

「……」

 

〔難しい問題ばっか……でも歴史なら……フータローより良い点取ったら、どんな顔するかな…〕

 

国語!

 

「う〜ん…」

 

〔ハッ…思い出した!5択問題は4問目の確率が高いっと〕

 

英語!

 

〔討論…討論…わかんないや、次〕

 

「『でばて』と覚えるんだ」

 

〔…勝手に教えてくるんじゃないわよ…〕

 

数学!

 

〔終わった〜こんなもんかな、おやすみー…〕

 

「……」

 

〔……式の見直しくらいしてもいいかな…〕

 

理科!

 

〔あなたを辞めさせはしません〕

 

「1人でも赤点なら辞めてもらうと先程は伝えたんだ」

「本当ですか…お父さん…」

 

〔らいはちゃんの為です!念の為!〕

 

そして……

長い長いテスト期間は、終わりを告げた…

 

 

 

「集まってもらって悪いな」

「テスト返却か…?」

「何も生徒会室でやる必要は…」

「…いや、白銀…四宮…お前達にも言っておきたい事がある…」

「……」

「どうしたの?改まっちゃって」

「水臭いですよっ!」

「……中間試験の報告…間違ったところ、また教えてね」

「……あぁ、ともかくまずは…答案用紙を見せてくれ」

「はーい、私は…」

「見せたくありません、個人情報です!断固拒否します!」

「……ありがとな、だが覚悟はしてる。教えてくれ」

 

(……上杉…)

 

「ジャーン!他の四科目はダメでしたが、国語は山勘が当たってちょうど平均点の半分越えでした!こんな点数初めてです!」

「社会は67点、その他はギリギリ赤点…悔しい…」

「私は数学だけ、今の私はこんなもんかな」

「国数理社が赤点よ。言っとくけど、手は抜いてないから」

「合格ラインを超えたのは1科目…理科のみでした…」

「…そうか」

「まぁ合格した教科が全員違うなんて私たちらしいけどね」

「あ、そうかもっ」

「それに最初の五人で100点に比べたら……」

「…あぁ、確実に成長している。三玖、今回の難易度で68点は大したもんだ、偏りはあるがな。今度は姉妹に教えられる箇所は自信を持って教えてやってくれ」

「……え?」

 

中野三玖 103位

 

「四葉、イージーミスが目立つぞ、もったいない。焦らず慎重にな」

「了解です!」

 

中野四葉 176位

 

「一花、お前は1つの問題に拘らなすぎだ。最後まで諦めんなよ」

「はーい」

 

中野一花 150位

 

「二乃、結局最後まで言うことを聞かなかったな。俺がいなくても油断すんなよ」

「ふん」

 

中野二乃 168位

 

「……」

「…上杉さん?一体どういう……」

「四宮、今は聞こう」

「……」

「…五月、お前は本当に…バカ不器用だな!」

「なっ!?」

「一問に時間をかけすぎて最後まで解けてねぇじゃねえか!」

「反省点ではあります…」

 

中野五月 137位

 

「自分で理解してるならいい。次からは気を付けろよ」

「……でもあなたは…」プルルル

「……」

「…父です」

「…上杉です」ピッ

『あぁ、五月くんと一緒にいたのか。個々に聞いていこうと思ったが、君の口から結果を聞こうか。嘘はわかるからね』

「つきませんよ、ただ…次からこいつらには、もっと良い家庭教師をつけてやってください」

『という事は…?』

「……試験の結果は…」

「…っ」パシッ

突如携帯を取り上げられる上杉

五月のスマホは白銀が握っていた

 

「…っ!?白銀!?」

「もしもし、俺の名前は白銀御行と申します。秀知院で生徒会長をしています」

『生徒会長…それはそれは、娘達がお世話になっているね』

「はい。娘さん達はとても優秀で、生徒会でも立派な仕事をしています」

『……それはそうと、僕は試験の結果を知りたいのだが…?』

「……1つ質問します。なぜ上杉にこんな無理難題を押し付けたのですか?」

『僕も娘を預ける親としての責任がある。高校生の上杉君がそれに見合うか計らせてもらっただけだよ。彼が娘達に相応しいのか』

「あくまで中野姉妹の為、という事ですね。それは俺も同感です……ですが、あなたがそんな心配をする必要はもうありませんよ?」

『……どういう意味だい?』

「……中野五姉妹、五人で五科目全ての赤点を回避しました」

「なっ!?」

『……本当かい?』

「はい、嘘ではございません」

『……生徒会長が直々に教えてくれたのだから、間違いないんだろうね。これからも上杉君と励むように伝えて欲しい』

「はい、了解しました」ピッ

 

「……白銀…今のは…?」

「五人で五科目クリア、嘘は言ってない」

「そんなのありかよ!?」

「結果的に中野父を騙すことになった、二度はない。次は実現させろ、お前の力でな」

「……白銀…」

 

「……これでいいんですか?二乃さん」

「何がよ?」

「上杉さんの事、嫌ってましたよね。本当は辞められた方が良かったんじゃ?」

「……まぁ、あたしはその方が良かったのだけれどね…」

「……」

「…姉妹の事を無視してあいつを追い払って、あの子達の笑顔が減ったら嫌なのよ。それに、あたしはあたしの実力であいつを追い払うから!パパの手出しなんて無用なのよ」

「……あなたも相当腹黒ですね。私と似ています」

「それはどうも、四宮さん」

 


 

生徒会豆知識!

 

会計:石川優の赤点は四宮かぐやの特訓(拷問)により防がれた!

その詳細はまた後日…

 


 

「中野三玖にも分からない」

 

ここからは、夏休みに入る前のお話……

 

「……恋愛相談…ですか?」

「はい!私もうどうしたいいか分からなくて…生徒会はそういった相談も受け入れてくれると聞いて……!かぐや様だけが頼りなんです……!」

「……」

 

その日、生徒会室で習字をしていた四宮かぐやは1人の女生徒に呼び止められた

 

「……判りました。生徒の悩みに耳を傾けるのも生徒会の責務と、うちの会長もよく口にしております。して、どう言った内容の相談なのでしょう」

「円満に彼氏と別れる方法が知りたいんです」

「……」

 

〈あー……私あと2〜3段階手前の相談だと思ってました〉

 

「……あの、相談なら私…抜ける?」

「いいえ!なるべく沢山の意見が欲しいので!」

「……う、うん…」

 

同室にて作業をしていた三玖も同様

 

「……」

 

〈彼氏持ちの相談、しかも重めのを付き合った事ない私が答えられる筈がないでしょう〉

 

四宮かぐや(16) 交際経験 無し

 

「……」

 

〔彼氏持ち……私に何か言えるのかな…?〕

 

中野三玖(17) 交際経験 無し

 

〈しかし、四宮の人間が一度引き受けた以上無理だなんて口が裂けても言えません。何とか乗り切る他ない!〉

 

「どうして別れようと?」

「それが……彼と付き合い始めたの最近なんです。突然告白されて、私勢いでOKしちゃって、でも彼の事よく知らなくて……どうやって接したらいいか分からなくて、まだ恋人らしい事何一つ出来てなくて……なんだか気まずくてむしろ前より距離が出来ちゃった位で……彼に申し訳なくて、こんな事なら別れた方が良いんじゃないかって……」

「……」

 

〔分かる……〕

 

「そうですね、付き合ったとはいえこないだまで他人同士だった訳ですから、そういう気持ちになるのもわからなくはないです。でも告白を受ける位ですから、嫌いという訳ではないのでしょう?」

「勿論です…でもこれが恋愛感情かと言われると分からなくて…」

「でしたら別れるという結論は早計ですよ。ただ自分が彼を本当に好きなのか不安なのでは?」

「そうかもしれません…」

「……」

「まずは…彼の良い所を認識する所から始めてみては?」

 

〔良い所……〕

 

「好きな所を?」

「えぇ、誰にでも長所や可愛らしい所はあるものです。例えば真面目な所だとか、勉強が出来る所だとか」

「……」

「努力家な所とか、実はすっごく優しくて困ってる人を放っておけない所とか……」

「……」

「目付きが悪い所とか……」

「……目付きが悪いのは欠点じゃ?」

「違うのっ!目付き悪いのを気にしてる所が可愛いの!」

「……目付きが悪い人が好きなんですか?」

「……今の忘れて」

「かぐや様の周りで目付きが悪い人といえば……」

「違いますよ。話を続けますね」ニコッ

「……」

 

〔フータローのいい所は……〕

 

「一つ良い所を見つけて、そこを良いなって思い始めたら、良い所がいっぱい見えてきて……どんどん好きになっていっちゃうものだって……知り合いが言ってました!私の話じゃないですよ!」

「えっ!?違うんですか!?」

「本当に私の話じゃないですよ!私に好きな人なんていないですから!」

「でも今の流れは完全に……」

「……」

「三玖さんはどう思いますか!?」

「え!…わ、私…!?」

 

〔……〕

 

「……わ、私は……」

 

 

「変じゃない!自分が好きになったものを信じろよ!」

 

「俺と勝負だ!」

 

「もちろん鼻水は入ってない」

 

「うん、どっちも普通に美味いな」

 

 

「……私…恋愛とかよう分からなくて…あまり上手い事言えないんだけど…」

「……」

「……その人のこと、多分あなたが一番気にしてるんだと思う。罪悪感があるのは、好きな証拠…」

 

〔…って、戦国モノでも言ってた…〕

 

「多分あなたは、あなたが思ってる以上に、その人のこと好きなんだと思う…」

「……」

「だから…その気持ちを大事に育ててあげればいいと思う」

「中野さん……そっか…私告白してくれた人の事を好きになれない冷たい人間なんじゃないかって思ってたんです。そうですよね!私ちゃんと彼が好きなんですよね!」

「…う、うん…多分…」

 

「……」

 

〈なんか場がまとまりつつある!〉

 

「……」

 

〔……〕

 

後日

 

その後柏木(かしわぎ)は彼氏の想いに応え、初デートを迎えたという

 

 

 

「……はぁ」

 

〔生徒会も大変……あんな相談もされるなんて…〕

 

「…お、三玖」

「…フ、フータロー…!」

「こんな時間まで何してんだ?」

「…えっと…生徒会の仕事…」

「そうか、もう勉強会は終わったぞ」

「…う、うん…」

「……どうした?」

「…あ、いや…」

「……」

「…人って…何で好きな人と付き合うんだろうなって…」

「……そりゃ…」

「……」

「ずっと一緒に…いたいからじゃないのか…?」

「…っ?」

「…い、いや!なんでもない!忘れてくれ…!」

「……フータローが…」

「……っ」

 

〔照れてる…〕

 

「……ぷ…ふふふ…」

「…わ、笑うな!」

「…ご、ごめんごめんっ…ふふっ…!」

「……お前、そっちの方がいいぞ」

「…え?」

「…笑ってる方が、可愛く見えるぞ」

「…っ……う、うるさい…フータローのくせに生意気」

「は!?俺は気を使ってだな!?」

「……ふ、ふふふ…」

 

〔こういう所…なんだろうなぁ…〕

 

本日の勝敗結果

三玖の勝利

(上杉の照れ顔を拝められたため)




次回

第11話「生徒会は出かけたい」


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第11話「生徒会は出かけたい」

特別展かぐや様は告らせたいに行きたいこの頃



一学期の総決算──

生徒総会も無事終わり……

 

「うおらぁ!生徒総会お疲れェい!」バサァッ!

「&明日から夏休みー!!」

「いえーい!!」

「これで心置き無く夏休みを謳歌出来るね〜」

「そうね、この夏は何しようかしら…」

「……そうだ、お前達はなんか予定立ててたりするのか?」

「……特にない…フータローと勉強…」

「私も大きな予定はないですね……白銀君はバイト三昧ですか?」

「いや……思ったよりシフト調整に難航してな…結構暇な時間が多い。なんかしたいよな──」

「何かしたいですね──」

「なぁ藤原書記」

「ねぇ藤原さん」

「……ん?」

 

夏休みの予定!

夏休みに数多く行われるイベント──

それを男女混合のグループで行えるかどうかはスタートダッシュに全てが懸かっている!

 

最初に男女で出かける事で

「次はどこ行く?」

「行くならまた皆で」

と発展性が生まれる!

 

一方スタートダッシュに失敗すれば男女混合の心理的ハードルは上がり男子は男子と、女子は女子とのグループで夏休みを過ごす事となる!

 

「……」

 

これに失敗すれば

灰色の夏休み!!

 

当然の如く男女混合での旅行など無い!

海で水着もバーベキューも無い!

夏祭りで女子を背負うなど無い!

花火の音でかき消される愛の言葉など無い!

田舎に帰ったら幼馴染との再会など無い!

タイムリープも異世界召喚もひと夏の大冒険もある筈が無い!

 

現実!

それが現実なのである!

 

それでも限りなくゼロに近い希望を信じるなら夏休み最初の予定は異性と組む必要がある!!

 

「藤原書記……やっぱり夏はパーッと羽を広げたいもんだよな」

「そうですね!やっぱり夏は普段出来ない事をしたいですものね!旅行とか最高です!」

 

(そうそれ!)

 

「あら!良いわね旅行!」

「私たちもどこか行っちゃう〜?」

「……私も行きたい…!」

「いいじゃんいいじゃんっ!皆で楽しみましょー!」

「私も賛成ですっ」

 

(いいぞ…流れがいい方向に進んでいる…今日は調子が)

 

「お前ら、何言ってんだ?」

「……え」

 

(……上杉…?)

 

「この夏休みこそ勉強だろ!受験は2年の夏が天王山だぞ!遊びにうつつを抜かしてる暇なんて無ぇ!」

「…ぐっ…!」

 

(ちくしょう正論だ!)

 

「え〜!良いじゃんフータロー君!」

「ダメだ、特にお前はバイトだかなんだか知らんが勉強出来て無いからな!」

「…そ、それは…!」

「上杉さん!そんな事言わずに楽しみましょうよ!」

「…お前ら…前の期末で散々な結果だったのによく言えるな…」

「…そ、それは〜ー…」

 

《図星じゃねぇか…》

 

「…う、上杉……そうは言えど、休暇は必要だ。数日くらいなら良いんじゃないか?」

「白銀、お前が一番よく分かってる筈だ…その数日のブランクがどれだけ後の自分を苦しめるかを…」

「…くっ…」

 

(くそっ!もうどうしようもないのか!?)

 

「……でも、一度位は何か思い出作りしたいですよね」

「……」

 

(石上!?)

 

「僕は1年ですけど会長は2年、来年は受験勉強でそれ所じゃないかもしれない…会長とゆっくり遊べるのは、今年だけかもしれませんから……」

「……」

 

(石上……お前そんな風に思ってたのか……そうだよな、別に女と遊ぶだけが夏じゃない。男友達と馬鹿やる……そういう夏もアリだよな……)

 

「行こうぜ石上……夏の終わりには大きな祭りがある。たこ焼きくらいなら奢ってやる」

「……夏祭り……良いな!皆で行こうぜ!」

 

(天王山どこ行った!?)

 

今日の上杉はテンションが高かった

 

「祭りって、8月20日の!?」

「それなら私たちも毎年行ってるよね〜!」

「……毎年恒例」

「皆で行けばもっと楽しめますねっ!」

「美味しい屋台が沢山!楽しみです!」

「良いですよね〜綿あめ!射的!打ち上げ花火!」

「…ッ!」

 

〈花火!?えっ会長と花火!?良い!!〉

 

「それじゃあ8月20日だな、スケジュールを空けておこう」

「そうですね、私も!」

 

生徒会+上杉での男と女の夏休み編

突入──!!

 


 

生徒会豆知識!

 

書記:藤原は毎年ハワイやスペインなど色んな場所に旅行に行く程の旅行好きだぞ!

 


 

「藤原千花と中野四葉は仲良くさせたい」

 

「……」

「……」カタカタカタカタ

「……」

「……」カタカタカタカタ

「……あぁ〜…あいつらどこに行ったか知らないか?」

「…さぁ、まだクラスにいるんじゃないんですか?」

「……そうか…」

「……」カタカタカタカタ

「……」

 

上杉と石上!!

一見、なんの接点もないこの2人……

そんな2人の仲は──

 

「……」

「……」カタカタカタカタ

 

──さほど良くなかった!!

 

生徒会室での勉強会以外生徒会室に顔を出さない上杉

打ち合わせ程度した生徒会室に顔を出さない石上

お互いの接点は殆どなく、お互いに話も弾まないとてつもなく微妙な距離感だったのだ!

 

しかし─!!

 

「……」

「……」カタカタカタカタ

 

それを気まずいとも思わない上杉!

帰ってゲームする事だけを考える石上!

お互いの存在はそこまで影響はなかったのである!

 

しかし…

 

「こんにちはー!」ガチャッ

「……四葉先輩…」

「四葉」

「あれ?なんだか微妙な雰囲気ですね〜!もしかして2人とも喧嘩しました?」

「……いえ別に…」

「喧嘩なんかしてないぞ」

「…ん〜?ほんとにそうですか〜?」

 

疑いの眼差しを上杉に送る中野四葉

 

「こんにちは〜」

「藤原先輩…」

「藤原」

「あれれ〜?なんか重い空気ですね〜なんかありましたか〜?」

「この2人!なんか喧嘩したみたいなんですよっ!」

「えぇ〜!それはいけません!仲良し警察が出動しますよ!」ピィーーッ!

「……は?」

「…何言ってんですか?」

「つべこべ言わずに座ってください!アレ、やりますよ」

「…なんだよ、アレって」

「……」

 

藤原は棚からある物を取り出した

 

《……トランプ…?》

 

「…ズバリ!石上君と上杉さん、仲良しトランプゲーム大会です!」

「おぉー!」

「……はっ?」

「…やべぇ…なんか始まっちゃったよ…」

 

トランプゲーム!!

言わずと知れた、庶民的なゲーム

スペード♠、ハート♥、ダイヤ♦、クラブ♣の四種類のカードが1(A)~13(K)枚づつの計52枚+JOKERで行われるとても単純なもの

 

代表的なものはババ抜きや大富豪、神経衰弱や七並べ

その遊びの幅はとても広く、幅広い世代から親しまれている

 

しかし、そんなトランプでも

世界ではブラックジャックやポーカーなど、賭博に使われるほど心理戦を要するゲーム

もはや遊びの範疇ではなく、利益を産むほど大きなものとなっている!

 

「皆さんは何がしたいですか〜?私は個人的には神経衰弱をしたいです〜」

「神経衰弱!やりましょー!」

「……はぁ、分かった…付き合おう」

「…まぁ僕も暇なので…」

 

神経衰弱!

伏せられた52枚のカードから2枚のカードをめくり同じ数字であればそれを獲得しもう一度トライが可

揃わなければカードを伏せて次のプレーヤーに

全てのカードが取られた時最も獲得枚数が多かった者が勝者となる!

 

カードが机に並べられ、いよいよゲームが始まろうとしていた

 

「補足ですがジョーカーは使いません。あとイカサマ行為は露見した時点で-5ポイントですからね!」

「……あぁ」

「スタートはジャンケンで決めます」

「……あぁ」

「上杉さんからスタートですね」

「……あぁ」

「いいですか、じゃあゲームスタートです!」

「ドーンだ!藤原ァ!」ビシィ!

「なななな何の話ですか…!?」

「いやまぁ、不可解な点が幾つかあるからな…まず、記憶力で俺達に挑む所、その時点で少し不可解だ。普通ならもっと自分の得意分野のゲームを選ぶだろうに」

「……っ」

「そしてしれっと言ってくれたが、イカサマは-5ポイント?即時失格だろ、普通」

「……」

「こうなれば警戒もする……なんかこれ数字みたいに見えるんだが…?」

「……」ダラダラ

「イカサマトランプじゃねぇーか!」

「え……うっわ、マジじゃないですか……」

「…ほ、ほんとだ…!」

「藤原先輩せこっ!姑息!周到な準備しておいて速攻バレるとか恥ずかし過ぎるでしょう!そんで一応かけておいた罰則ルール(保険)のせいでバレるとかいっちばん恥ずかしいやつ!!」

「…まぁ、イカサマは罰点制裁と定めた時点でこれもルール範囲内の行為……触れてるだけフェアだ」

「そうですよ!イカサマはバレなきゃイカサマじゃないんですよ!」

「いやバレたんだけどなお前」

 

仕切り直し──

トランプを入れ替え、前半戦

 

腐っても秀才たち……ここまで波乱もなく各々出たカードと位置を正確に記憶!ただ1人を除いて……

 

「……ゲゲッ!」ペラッ

「中野さんなかなか揃いませんね〜」

「…うぅ〜…」

「……」

 

《四葉は暗記が得意ではない。神経衰弱は記憶力が試されるゲーム、四葉には不向きだ……》

 

「…ぐぬぬ…皆さん流石ですね……」

「当たり前だろ、だいたいお前は初歩的なミスが多いんだ……だからバラバラに引くんじゃなくて…」

「…そう言ってられるのも今のうちですよ…上杉さんっ!」バンッ

「…なっ!?」

 

《なにっ!?》

 

場所移動!

これは必死に覚えた記憶を破壊する非常にウザったい行為である!

 

《まずい!記憶が…!》

 

「私がダメなら混乱させればいいって四宮さんに聞いたんですっ!」

 

《ただの受け売りかよ!?》

 

四葉が何気なくやったこの行動

しかしそれは上杉や石上にとってとても異常な事であり、錯乱される!

 

四葉自身は得点を得られないものの、足の引っ張り合いを出し抜いたのは藤原!

順調にポイントを伸ばし、遂にマイナス分を返済!

上杉に追いつく!

 

《まずい!最下位に…!》

 

「ムフフ〜なんだか思わぬ収穫があったみたいですね〜正に「棚からぼたもち」です!」

「……くっ!」

 

《ゲームに負ける事自体は嫌ではない……しかし…!》

 

「あれれ〜上杉さんはそんなに弱かったでしたっけ〜?」

「頑張ってください!上杉さんっ!」

 

《このバカどもに負けるなんて絶対嫌だ!何かないか…何かいい策は…!》

 

「……くそっ!」ペラッ

「それじゃ私の番ですね〜……K(13)」ペラッ

 

K(13)……!クソっ!さっきも出てきたな…》

 

「あ……間違えました〜」ペラッ

「…ん?」

 

《ここに来て好調だった藤原の勢いが……普通にミスっただけか?……いや、まさか──》バッ

 

「…なるほどな……」

 

「もらった!」ダン

 

「もらった!」バッ

 

「もらったァ!!」バシッ!

 

「…俺の勝ちだ」

 

上杉 優勝

 

「おぉー!凄いです上杉さん!」

「怒涛の追い上げでしたね…」

「いやまぁ種さえ判ればこんなもんだ」

「…種?」

「……」ビクッ

「これは普通のトランプとは違った特徴がある。『柄が点対称ではない』という特徴だ」

「……それがなにか…?」

「この手のトランプに限ってこういう使い方がある」トッ

「あ……まさか!時計の時刻!」

「ご名答、トランプを置く角度で1〜Qまでの数字を表す事が出来る。だからKのカードの扱いに困って藤原は遠くに置きたかった。四葉の場所移動の時に思いついたんだろう。文字通り「棚からぼたもち」だな」

「藤原先輩……」

「……」ダラダラ

「せこーー!!せこっ!姑息!ちっとも懲りてない!恥知らず!どこで買えるのその図太さ!そんでバレて逆に利用されるとかいっちばん恥ずかしいやつ!!恥ずかしい!これは人として恥ずかしいですよ藤原先輩!!」

「…みないでぇ…」

「らいはと数々のトランプゲームをしてきた俺だ、見破れて当然だろ」

「……さ、流石上杉さんですっ!一生ついて行きます!」

「お前はまずは勉強しろ」

「僕もついて行きます!」

「お前もだ石上」

 

本日の勝敗結果

上杉の勝利

(なんやかんやで石上とも仲良くなれた為)




次回

第12話「白銀と五つ子ちゃんの勉強会」


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第12話「白銀と五つ子ちゃんの勉強会」

かぐや様は告らせたい 第3期 第3話

眞妃さんメインの話をずっと待ってました
次回はつばめ先輩来るかな?

ところで映画 五等分の花嫁の続報はもう来ないのかな?



「……と、言うわけで…今日は上杉の代わりに俺達が勉強会を開く事になった」

「よろしくお願いしますね、皆さん」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

 

勉強会!!

週に3回行われる上杉風太郎による家庭教師

夏休みに入ってもそれは変わらず、上杉は夏季強化週間!という名目を立てその開始日に至ったが、その初日

 

「……すまん白銀、今日は腹痛であっちに行けそうにないんだ…スマンがお前があいつらに授業をしてやってくれ」

 

上杉は先日食べた三玖の大量のコロッケで腹痛を起こし、動けなくなってしまった!

 

結果、夏休みは基本的に暇な白銀とかぐやが、今回の講師を務めることになった

 

「上杉はいつもどんな風に授業するんだ?」

「……いつもは学校の課題の復習と、フータローが作ったプリントをやってる」

「プリントか……だがあいにく俺はプリントを作ってきてはいない」

「ではどうしますか?今からでも作りますか?」

「今から作るとなると、午後になってしまう。それじゃあせっかくの家庭教師の日が台無しだ」

「では課題の復習ですか?」

「おいおい、今日は夏休み初日だぞ?俺でも手をつけてないのに、こいつらがそんな野暮なことする筈がないだろ」

「ちょっとそこ!失礼よ!」

「……そうですね…ではどうしたら…」

「簡単だ。中野達に最善の勉強方法がある!」

「な、なんですかそれは!?」

「ふふふ…それはな……遊びながら学ぶ!これだ!」

「遊びながら学ぶ?」

 

遊びながら学ぶ作戦!

これは幼児教育にも適用される手法であり、それは大人でも通用する!

堅苦しい雰囲気のまま淡々と勉強するより、勉強の中に楽しみを見出し学力向上を目指すというものである!

要領の悪い中野達にと考えた白銀独自の手法である!

 

「四宮、なんでもいい。このメモ用紙に武将の名前を書いてくれ」

「これにですか?……書けました」

「…よし、俺はそれを、このように掲げる。頭の前に掲げる事で、俺は四宮が何を書いたのか分からない。ヒント無しではな」

「……まさか!」

「そうだ、君たちがこの武将の名前から導き出し、俺にヒントを出す。三玖、ヒントをくれ」

「……う、うん…えっと……かつて天下統一を目指したけど、家臣に謀反を起こされて1582年に殺された」

「簡単だな、織田信長」

「正解です」

「…と、このように声に出せば君たちの記憶にも残りやすく、オリエンテーション的な楽しみもある。やってみないか?」

「いいね〜カイチョー君にしてはやるね〜」

「良いんじゃない?まぁあたしはアイツに習わなきゃそれでいいしね」

「……やる」

「賛成でーす!やりましょー!」

「これなら皆さんで楽しみながら行えますね」

「…よし、それじゃあ…逆NGワードゲーム、開始!」

 

逆NGワードゲーム!!

以前藤原千花主催で行われたNGワードゲーム、白銀はその知識と形式を応用。勉学にも使えると踏んだ

ルールは簡単、出題者が出したお題を回答者は見えないように掲げる。次に、他のメンバーはお題をが分かるようにヒントを与える。回答者がお題を答える事が出来たら、その答えを言わせた者と回答者と出題者にポイントが加算。一番多くのポイントが取れたものが勝利となる

尚、今回は白銀と四宮は審判を務め、公平なジャッジを下す。IQの差を補う為である。その為、回答者が1人、出題者が1人、ヒントを与える者が3人、順番に交代していきなるべくお題が尽きるまで行う。尚、出題者はヒントを言う事を禁じられる。更に、直接的なヒントになるものは審判がジャッジする

 

「それじゃあ私から行くね〜」ペラッ

 

回答者 中野一花 お題『マンモス』

出題者 中野四葉

他のメンバー 中野二乃、中野三玖、中野五月

 

「あ、あれよ!茶色い角の大きい…!」

「……牙ね」

「大きな体に長い鼻、大きい牙とこぶ。大昔に生きていた生き物です!」

「長い鼻に牙……大昔……わかった!マンモス!」

「正解でーすっ!」

 

(そんなもんテストに出ないだろ…)

 

〈流石は四葉さんね…でもこのゲームの流れを作ってくれたわ〉

 

中野一花 中野四葉 中野五月 1ポイント

 

「次はあたしね」ペラッ

 

回答者 中野二乃 お題『上杉謙信』

出題者 中野三玖

他のメンバー 中野一花、中野四葉、中野五月

 

「……フータロー君の親戚?」

「…上杉さんの兄弟でしょうか…?」

「ですが、上杉君の兄妹はらいはちゃんだけのはず…」

 

(こいつらマジか)

 

〈これは長い戦いになりそうですね…〉

 

〔……そんなに難しかったかな…〕

 

正解者、無し

 

ゲームは順調に進んでいき

5人とも順調にポイントを──

 

中野一花 3ポイント

中野二乃 2ポイント

中野三玖 5ポイント

中野四葉 2ポイント

中野五月 4ポイント

 

──取れていなかった!

 

(おかしい…10問以上出てるのに…正解者がここまで出ないとは…)

 

〈……〉

 

「……よし…では形式を変えてみようか。今度は出題者を俺、回答者を四宮にしてみよう」

「何が変わるんですか?」

「君たちはヒントを四宮に出すだけでいい、こうすればもっと効率よく、効果も上がるだろう」

「…では、始めましょうか」

「ビシバシ行くからな、覚悟しておけ!」

「わかったよ!カイチョー君!」

「上等じゃない!」

「……頑張る」

「いっぱい勉強して、上杉さんにギャフンと言わせましょー!」

「頑張ります!」

 

かくして、白銀と中野達による勉強会が閉じられた

 

「…よく頑張ったな、上出来だ」

「一日でだいぶ勉強出来ましたね」

「うん〜、それに楽しかったしね〜」

「でももう懲り懲りよー…」

「……疲れた」

「上杉さん…なんて言うかな…?」

「……きっと彼なら…」

 

「これくらいやってもらわなきゃ困る!」

 

「…と言うんじゃないでしょうか…?」

「わかる〜…そういうの言いそうだよね、フータロー君」

「ほんと、デリカシーないんだから…」

「……でも…」

「それが上杉さんだからね!」

「……ふっ」

「……どうしました?白銀君」

「…いや、君たちもなんだかんだ言って、上杉の事を気にしてるんだなってな…」

「……そ、そんなわけないでしょ!」

「そそそそうです!心外です!」

「あははー素直じゃないな〜」

「……フータロー…大丈夫かな」

「上杉さんなら大丈夫だよ!きっと明日には!」

「……」

 

『……そうか、無事に終わったか』

「あぁ、特に問題はなかったぞ」

『……ありがとな、白銀』

「……どうした…?」

『…い、いや…!なんでもない…!』

「……ふっ」

『……な、なんだよ…』

「……似てるな、お前たち」

『……は…?』

「…気にするな、こっちの話だ」

 


 

五つ子豆知識!

 

五月の最近の楽しみはラーメン屋巡りだぞ!

 


 

「中野五月は超食べたい」

 

「……」

俺の名は小田島(おだじま)三郎(さぶろう)

しがない中間管理職だ

 

趣味はラーメン屋巡り、今日は家の近くにあるラーメン屋に足を運んだ

注文は勿論1番人気の豚骨……などではない

隅にひっそりと貼られた…

 

「醤油とんこつ、薄め」

「麺な硬さは?」

「カタメで」

これがこの店の最適解

理解(わか)っている注文の仕方だ

 

「……」カララ…

「らっしゃい……」

「はぁぁ…!いい匂いです…!」

 

おやおや、可愛いお客さんだ

ケーキ屋と間違えて入ったんじゃないか?

 

「ご注文は?」

「…そうですね……醤油とんこつ──薄めでお願いします!」

 

「……っ!!」

馬鹿な!

この店に於ける最適解をこんな小娘が弾き出しただと!?

偶然か?いやしかし考えてみればこの店はこんな夜遅くに女一人で入れるような店構えではない

 

まさかこの女──

喰える(こっち)側』の人間なのか?

 

「麺な硬さは……?」

「ん〜…バリカタで!」

「……」プーッ!

 

バリカタ……!?

そんな流行りに乗ったお遊戯用の硬さを選ぶとは……やはり只の小娘、とんだ杞憂……!

買いかぶりだったか

 

さっきの注文も只のビギナーズラック

少女に向けられた女神の気まぐれな微笑み!

 

仕方ねぇ、小娘に本当のラーメンの喰い方ってのを教えてやる

 

「……」スゥゥゥ

まずは香り

スープ元来の香りを探る

香りの強い紅生姜の対角線から順に香りを楽しむのがセオリーだ

無論店長もそれは重々理解しているからだろう、紅生姜を一番遠くに差し出して来た店長の気配りが嬉しい

こういった細かい部分が本物たる所以か

 

「……」ズズッ

次にスープ

空気と混ぜながらテイスティング

脳を上から使っていくつもりで嗅覚、味覚を研ぎ澄ます

 

そして麺だ、少量を確かめる程度に噛み喉で楽しむ

 

最後に(チェイサー)

繊細な味わいを愉しむ為に舌上に残った油分と塩分を水で流しリセット

単純な工程だがこれをするしないでは雲泥の差

 

「……フゥゥゥ…」

これで1セット

これを繰り返す事を「水廻し」と我々は読んでいる

 

さて、お嬢ちゃんはどうやって……

 

「…!!」

ミニラーメン!!

やはり只の子供!

ちまちまと面倒な事は恥ずかしくて大人には出来ない!

子供の特権だな

 

「……ん〜♪」パァァァ

 

美味そうに食いやがる

まぁ一概に馬鹿にも出来ないんだがな

ラーメンを食すという概念上一口で全てを食せるミニラーメンは一であり全

究極の形でもある……

 

だが前提が間違っている

そんなちまちま食っていたら麺は伸びてふやけ……

 

ふやける……?

 

「……っ!?」

だからこそのバリカタ!!

予めバリカタで注文し、ちまちまとミニラーメンを作ってるうちに麺な硬さはベストな状態へと達する!!

 

この娘……そこまで計算して!?

馬鹿な…!?これが全て計算だとしたら、高円寺(こうえんじ)J鈴木(ジェイすずき)並の状況判断センスの持ち主という事になる!!

 

だがまだだ……悲しいかな、それは性差

彼女が女であるが故に超えられない壁──

 

それはニンニク!

 

味の強いにんにく投入を邪道と呼ぶ者も多い……

だがそれは二流のラーメンしか食べた事が無い者の哀れな言い分だ

本物のラーメンはニンニクの味に負けず高め合う

 

ラーメンを語る上で切っても切れない暴力的旨味

だが引き換えに翌日まで残る強烈な臭い!

それを受け止める事が出来ないのが女という生き物!

 

その臭いから逃げるようでは残念ながら偽物……

フェイカーなのだよ……

 

具を消費しきったみたいだな……どうする!?

もうミニラーメンは使えない!!

 

「……」ガリィッ!

 

行った──!!

こいつ!超えやがった!女の壁を!!

 

こうなれば認めざるを得ない、敬意を払おう!

もうこいつを女として見ることは無い!

こいつは一人の喰う側!

ラーメン喰いだ!!

 

「う〜っ!」

 

丼を持った!

まさかスープまで!?

 

塩分過多だ!ニンニクも入ってるんだぞ!!

 

「……」グビッ グビッ

 

あああ──!!

 

──だが

俺にもあったな……そんな時代が

食い足りなければ替え玉を頼み、塩分も気にせずスープを飲み干す

今までは血圧と血糖値を気にして出来やしない……

 

──俺は

俺はどうしておっさんになっちまったんだ

 

「……」グビッ グビッ

 

そうだ走れ!振り向かなくていい!

その若さは俺が失った輝き!

 

走り抜けェ!!

 

「…ぷはぁぁ〜…!」

 

完 飲

 

「ごちそうさまでした…!」

「君……」グッ

「……?」

 

本日のラーメン戦

五月の勝利

 

「……あ」

「五月、奇遇だな」

「白銀君に石上君!半月ぶりですね!お二人でお出かけですか?」

「あぁ、石上がVR買ったって言うからちょっと触らせてもらってな」

「……」

「んでメシってきたところ」

「この辺は美味しいお店が多いですからね」

「五月もこんな時間だし、寄り道しないで帰れよ」

「はい!それでは」

「……あ、五月先輩…一応……その……」

「……っ」

「これ、どうぞ」

「……」

 

〔……イキ……ケア…?〕

 

「……あ、ありがと…ございます…っ…」ダッ!

 

 

 

「……なんなんだ?」

「…まぁ、気にせず行きましょ」

「……?」

 

 

 

「……はぁ…」

「……かぐや様、箸が止まっていますよ?」

「…これはナイフとフォークよ」

 

本日の勝敗

なし

(かぐやと白銀は出会わなかった為)




次回

第13話「花火の音は聞こえない:改 前編」


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第13話「花火の音は聞こえない:改 前編」

私は夏に思い出なんて無い

でも問題は無い

羨ましいなんて、思った事がないから

私は家族旅行に行った事が無い

でも大丈夫

皆私をトクベツ扱いしてくれるから

私は花火大会に行った事が無い

でも大丈夫

窓の中の小さな光でも

私は綺麗だと思えるから



「らいは、準備出来たか?」

「うん!」

「…楽しみか?」

「うん!五月さんの姉妹さんに会えるの楽しみ!」

「そうか」

 

8月20日

 

この日は、白銀達生徒会

そして上杉が集合し夏祭りに行く事になっていた

 

……が!!

 

「…なんであたし達家で宿題してんのよ…もう花火大会始まっちゃうわよ!!」

「夏休み終わるのに宿題終わらせてないからだ!」

 

中野達は宿題をしていた!!

 

「…わかった、こっちは藤原書記と石上会計が到着したところだ……あぁ、今のところ四宮からの連絡はない……また後で落ち合おう」ピッ

「上杉君なんですって?」

「中野たちの宿題を終わらせてから来るそうだ」

「四宮先輩からの連絡も無し…どうします?」

「……」

 

(……四宮…)

 

 

 

「やっと終わった〜!」

「みんなお疲れ様です〜!」

 

中野達の宿題が終わり、労うらいはと藤原

だが1人だけ表情が曇っていた

 

(全員……いや、四宮以外集まったか)

 

「それじゃあ!夏祭りを楽しみましょう!」

「ちょっと四葉!19時には花火始まるから!」

「分かってるよ二乃!藤原さん!らいはちゃん!屋台を回りましょー!」

「おぉー!」

「……会長…」

「大丈夫だ、四宮なら必ず来る。気にせず行ってこい」

「……分かりました!行ってきます!」

 

(……と、言いたいところだが……)

 

「…えぇ!?白銀くん!すごい顔になってますよ!?」

「…な、なんでもないぃ!」

 

白銀は夏休み初日ぶりに四宮に会えるととても楽しみにしていたのだ

 

「…て、君は五月か?」

「そうです!」

「五月、ただでさえお前たちは顔が同じでややこしいだから髪型を変えるんじゃない」

「あ、あなたにとよかく言われる筋合いはありません!どんなヘアスタイルにしようと私の勝手でしょう!」

「フータロー君、女の子が髪型変えたらとりあえず褒めなきゃ、もっと女子に興味持ちなよ〜」

「……」

 

(髪型を変えたら……か…)

 

「…あ、ごめん!ちょっと電話だからしばらく離れるね!」

「ちょっと一花!……」

「…なんだ?逸れるのがそんなに嫌なのか?」

「…別に、ただ約束なのよ…それだけ!」

「あ、ちょっ!?」

 

(お前もズカズカ行くじゃん…)

 

「テンション高いな、花火なんて毎年やってるもんじゃないのか?」

「……花火はお母さんとの思い出なんだ」

「…え」

「……お母さんが花火好きだったから、毎年揃って見に行ってた。お母さんがいなくなってからも毎年揃って……」

 

(母親との約束…という事か……)

 

「……私たちにとって花火ってそういうもの」

 

「……」

 

《そういう事か。どうりであいつが張り切るわけだ》

 

 

 

「……すごい人混みだな」

「流石は都市の夏休みね、目的地が全然見えないわ」

「どっかに集合するのか?」

「予約した店があるのよ…あんたなんかお呼びじゃないけどね!」

「はいはい、行くぞ。ここ掴んでろ」

「…はぁ?」

「黙って掴んでろ、はぐれたら困るだろ。五人で花火見るんだろ」

「……っ」

 

「……はぐれたな」

「……はぐれたわね」

 

バーンッ

 

「……花火大会始まったな」

「…始まったわね」

「……やばくね?」

「……やばいわね」

 

花火大会終了まで00:59:51

 


 

「中野一花は五人で見れない」

 

「……くそっ…はぐれちまった…」

 

(石上会計や中野達ともはぐれちまった…藤原や四葉は上杉妹と一緒にいるから安心だが……)

 

「……っ」

白銀が目にしたのは、一人でどこかに行こうとする中野一花であった

 

(あれは!?中野一花!?)

 

「一花」

「……カイチョー君…!」

「こんな所で何してるんだ。みんなは?」

「……電話してたらはぐれちゃったみたいでね〜…カイチョー君もみんなが何処にいるか知らない?」

「…知らない、俺もはぐれた」

「お互い大変だね〜…」

「……何があった?」

「…え?」

「君の表情からは嘘が見受けられる。電話で誰と話した」

「……なんで…分かるのさ…」ボソッ

「俺はお前達の生徒会長だぞ、嘘の一つくらい見抜けられる」

一花は白銀と向き合っていた身体を180°回転させた

 

「……私、みんなと花火見られないから」

「……っ…一体何が…!?」

「電話の相手、バイト先の人なんだけど…急なお仕事頼まれちゃって…だから花火は見に行けない」

「……どうしてもか…?」

「うん。どうしても行けない。これはまだみんなにも言ってないんだけどさ…」

「……」

「ごめん、人待たせてるから」

「お、おい待ってくれ!ちゃんと説明を…!」

「なんで?」

「え?」

「……なんでお節介、焼いてくれるの?」

「……それはっ……っ!?」ガシッ

すると、誰かが白銀の腕を掴んだ

 

「君、誰?」

「……」

 

(いやあんたこそ誰だ!?)

 

「一花ちゃんとどういう関係?」

「…え?」

 

(関係……?俺と一花は生徒会の中の関わり、しかしそれ以上でも以下でもない。友人…関係者…知人……そうだ!)

 

「知人ですが……」

 

(……あれ?居ない…?)

 

「知人ですがー!?」

「会長!」

「石上会計!?」

「今藤原先輩から連絡があって……四宮先輩…来られなくなったみたいです…!」

「……四宮…!」

 

花火大会終了まで00:36:29

 


 

「四宮かぐやは皆と見たい」

 

今日は花火大会に行くの!

 

本当につまらない夏休みだったけれど

 

初めて友達と、初めて会長と

 

窓の中じゃない

ずっと憧れていた大きな花火を見に行けるのだから

 

それだけでこんな夏休みも、色んな事全部ひっくるめて好きになれると思う

 

本当に──

 

「なりません」

「……」

 

つまらない夏休みだったけれど──

 

「最近のお嬢様の振る舞いは目に余ります」

 

『 ごめんなさい 今日 18:56

 

  ごめんなさい。

 

  今日は行けなく

  なってしまいました。

  本当にごめんなさい。    』

 

「……」

 

皆に会いたい

 

知らないままでいればよかった

何もしなければいつも通りの夏が

 

こんなに苦しいと気づかずに済んだのに

 

だけど

 

だけど大丈夫……

 

夏は必ず終わる

 

大丈夫

 

大丈夫

 

大丈夫

 

大丈夫……

 

『みんなと花火が見たい』

 

 

 

「……了解」

 

花火大会終了まで00:25:25

 


 

「四宮かぐやは抜け出したい」

 

「かぐや様、いつまでそうしてるつもりですか。らしくないです。普段だったら手段を選ばず家から抜け出してる所じゃないですか」

「……何をしたってどうせ上手く行かないわ……この夏何も起こらなかったのよ…?何一つ上手く行かなかったもの!今から抜け出たってどうせ無意味よ!もう皆と一生会えないんだわ!」

「いえ、学校始まったら嫌でも顔合わせますから」

四宮別邸にて、落ち込むかぐやを慰める早坂

さながらそれは、生意気な妹をあやす姉のようだった

 

「弱り目に祟り目……弱る時はとことん弱る人ですね……確かに、かぐや様は辛い夏休みをお過ごしになられました。ですがこの夏休み、白銀会長に一度も会えてなかったのは、長期的に考えればむしろ、最善の選択であったと言えます」

「…!」

「会えない時間が愛を育てる……会長だって今のかぐや様と同じ気持ちでしょう。毎日会いたくて会いたくて夏休みが終わる日を指折り数える日々……そんな中!かぐや様と運命的に出逢う事が出来れば!?今まで蓄積されてた欲望が……?」

「一気に解放される……?」

「そうです。良いですよ、いつもの顔に戻ってきましたね」

「……でも今日は執事が二人も居るのよ?なんの準備も無しにここから抜け出すなんて出来る筈……」

「準備?」フッ

 

 

 

「……かぐや様、お食事の準備が出来ました」

「いらない……」

「…ですが」

「花火を見てるの……せめてこの位はいいでしょ……」

「……畏まりました」ガチャ

「……なーんて」←早坂

 

 

 

「……ふぅ〜〜…」

 

カラカラカラカラ

 

「……?」

 

ビンッ! シュタッ!

 

「…!?」

「浜松町の方まで、お願いします!」

 

 

 

「……かぐやさん…」

 

 

 

『おかげになった番号は現在電波の届かな──』

「繋がらない……どうして…?」

 

〈人混みのせい?それとも私の携帯が古いから?〉

 

「お嬢ちゃん、花火大会に行きたいんだよね?交通規制でこの通り渋滞だ、多分間に合わない……んじゃないかなぁ」

 

〈……間に合わない?早坂がここまでしてくれたのに……そんな…どうしてこんなに上手くいかないの……!〉

 

「すみません!ここからは自分の足で行きます!」

「気をつけてな、お嬢ちゃん」

「はい」

 

〈待ち合わせは竹芝ふ頭、大通りは人が多い。裏道から走ればギリギリ間に合う筈!きっと会える!〉

 

〈初めて面倒を見た後輩……私と初めて友達になってくれた人……初めて出来た…気になる人…その他にも沢山!その輪の中に、私がいる!〉

 

〈私は私が好きな人たちと一緒に、あの大きな花火を眺めたら…どんなに幸せだろうって…どんなに素敵だろうって…そればかりを考えていた夏休みだった〉

 

〈神様、この夏……恋だとか愛だとかは要りません!だから──だからせめて、私と皆と一緒に──〉

 

『本日の花火大会は終了いたしました。ゴミや飲食物はお持ち帰り頂くようお願い申し上げます。繰り返します。本日の花火大会は終了いたしました──』

 

「……」

 

花火大会終了まで00:00:00

 

本日の勝敗結果

なし

(白銀とかぐやが出会わなかった為)

 

次回に続く




次回

第14話「花火の音は聞こえない:改 後編」


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第14話「花火の音は聞こえない:改 後編」

第1部最終回



「日本で最初に花火を見たのは徳川家康という説があるんだ。起源は中国だがヨーロッパを経て種子島に鉄砲と共に伝わり……」

「全然つまんない!何が悲しくてあんたと二人で花火見ないといけないのよ!」

「お前が悪いんだろ!」

 

「今連絡したが、四葉と藤原はらいはと一緒にいるみたいだ、時計台の近くだとよ」

「ほんと!?じゃああたしはその子たちを迎えに行くから、あんたは一花と三玖と五月を探しなさい!」

「俺だけ探す人数おかしくないか!?」

「さっさと行きなさい!みんなを頼んだわよ」

「……」

 

「花火はお母さんとの思い出なんだ」

 

「……わかった、迷子になるんじゃねぇぞ!」

「ふん!」

 

《一花…三玖…五月…何処にいる!?》

 

「フータロー!」

「三玖、良かった!よく俺を見つけられたな」

「…ま、まぁ…」

「そうだ!一花と五月を探してる!付いてきてくれ!」

「あ、待って!痛っ…」

「……!」

「足踏まれちゃって…フータローは先行ってて」

「……っ」

 

「……ごめん」

「気にするな、これで少しはマシになっただろう」

「…うん」

「……あと40分…何やってるんだあいつら…このままじゃ五人集まる前に花火が終わっちまうぞ」

「……勉強関係ないのに協力的、フータローのくせに」

「失礼な、俺にも思うところがあんだよ…この為に必死に宿題をやってるのも見たしな」

 

〔……フータロー…〕

 

「歩けるか?」

「……うん」ギュ

「すみません、花火大会に来られた方にアンケートをしているのですが……お二人はどういったご関係でしょう?」

「そこはいいでしょ、この二人はカップルに決まってるじゃん」

「そっか」

「…っ!?」

「……私たちは恋人じゃなくて」

「えっ?どう見てもそう見えますが」

「……!!」

「…こ、これは…っ」

「そんなんじゃなくって…わ、私たちは……友じ」

「ただの知り合いですよ」

「……」

「…そ、そうでしたか。失礼いたしました〜…」

「フータロー」

「?なんだ?」

「…ううん、なんでもないっ」

「……」

「…あ、フータロー、あれ見て」

 

 

 

「五月」

「……!……なんだあなたですか…」

「残念さを少しは隠しなさい」

 

「…そういえば、白銀君達は何処にいるのでしょうか」

「さぁな、アイツらもアイツらで忙しいんじゃないのか?」

 

花火大会終了まで00:36:28

 


 

「白銀御行は探したい」

 

「……そうか、四宮が…」

「どうします?藤原先輩は四葉先輩と一緒にいますし…」

「……ひとまず藤原書記達を探して、状況を判断しよう。みんなは今どんな状況なのか…」

「藤原先輩たちは今時計台の近くにいるみたいです」

「…よし、行こう」

 

「……あ、会長!石上くん!」

「藤原書記、四葉、それに上杉妹」

「白銀さん!みんなは何処に言っちゃったんですか!?」

「落ち着け!それを確認しに来たところだ!」

「…あ、あんた達!」

「二乃ォ!」

「二乃、誰かと落ち合わなかったか?」

「さっきまで上杉といたけど、今は何処にいるか分からないわ、他の子たちとは連絡が繋がらないし…」

「……」

 

(一花のこと、言うべきだろうか…だが、この花火大会は二乃にとっても大事な筈…一花なしでは達成しない)

 

「……二乃、お前は五人で花火を見たいか?」

「もちろんよ、それが毎年の楽しみなんだから」

「……俺もだ」

「…え?」

「俺もお前たち五人には、五人で花火を見て欲しい」

「……白銀…?」

「…上杉に伝えれたら伝えてくれ」

「……」

「……中野一花は、俺が探す」

 

 

 

「……っ」

「……見つけたぞ」

「…あはは…人探し上手だね〜」

「説明してくれ、あの男は誰だ?なぜ五人で花火を見れないなんて言った?」

「……」

「なぜ俺から逃げる…?」

「……さっきの人は私の仕事仲間。五人で花火を見れないのは、物理的にってこと。そして…」

「……」

「私が君から逃げてるのは…!」

「…どうした」

「私の仕事仲間!どうしよう、仕事抜けて来たから怒られちゃう!」

「知らん!奥から逃げれば…」

「あー!間に合わないよ!」

 

「……?」スッ

「……」ギュゥッ

「……」

 

(俺今一花とハグしてる!?これはどうなる!?四宮にバレたらなんて説明する!?)

 

「ごめん、もう少し」

「……アイツは何者だ」

「…あの人カメラマンなの、私はそこで働かせてもらってる」

「……カメラ…アシスタント…?」

「……うん。いい画が撮れるように試行錯誤する。今はそれが何より楽しいんだ」

「……学生の大切な時期にそんなことして大丈夫なのか?君たちは勉強に集中しなきゃ進級すら怪しいんだぞ」

「……カイチョー君は…何のために勉強してるの?」

「…っ!?」

 

(何のため──)

 

「……恋愛感情は永遠じゃないの」

 

「……」

「一花ちゃん見つけた!」

「しまっ…」

 

「こんなところでなにやってんの」

「えっ」

「言い訳は後で聞く。早く走って!」

「えっと…えっ?」

 

「……」

「三玖!?もしかして私と間違えて…」

「とにかく追うぞ……っ!」ピロン

「…どうしたの?カイチョー君」

「……悪いが、先に行っててくれ」

「……?」

「……ゲームスタートだ」

 

花火大会終了まで00:28:34

 


 

「中野一花は演じたい」

 

「一花!」

「…フータロー君…!?」

「……白銀から聞いたぞ。お前、女優だったんだな」

「……今から大事なオーディションなの…」

「それはあいつらよりも大事な物なのか…?」

「…っ」

「一花、俺はな…勉強しか出来ない…頭が良い事しか取り柄のない男だ」

「自分で言う?」

「だがな、お前たち姉妹を見ていると……どうしても黙って見てる訳には行かねぇんだよ」

「……どうして君たちは、そこまでお節介焼いてくれるの?」

「……俺とお前が、協力関係にあるパートナーだからだ」

「……っ」

「花火大会ももうじき終わる。ほんとに良いのか?」

「…これが私のやりたい事だから…協力関係にあるなら応援してよ」

「……っ」

「…これ、今日のオーディションの台本。練習付き合ってよ」

「……棒読みでしか出来ないからな」

「やったー」

「いくぞ…」

「……うん、お願い」スッ…

「……そ、そつぎょーおめでとー…」

「先生、今までありがとう」

 

《学園モノのクライマックスシーンか…?》

 

「先生、あなたが先生で良かった。あなたの生徒でよかった」

「……っ」

「…あれっ?もしかして私の演技力にジーンときちゃった?」

「あなたが先生で良かったなんてお前の口から聞けるとは…」

「そっちか……あ、社長の車だ…じゃあね」

「これだけでいいのか?」

「うんっ…とりあえず役勝ち取ってくるよ」

「……おい」パンッ!

「…!?……ほえ?」

「その作り笑いをやめろ」

「ははは…え…?」

「お前はいつも大事なところで笑って本心を隠す。ムカッと来るぜ……余裕があるフリして…白銀から聞いたぞ。震えてたって」

「……この仕事を始めて、やっと長女として胸を張れるようになれると思ったの。一人前になるまであの子たちには言わないって決めてたから…花火の約束あるのに最後まで言えずに黙って来ちゃった……これでオーディション落ちたら、みんなに合わす顔がないよ」

「……」

「それにしてもまさか君が私の細かな違いに気が付くなんて思わなかったよ。お姉さんびっくりだ」

「俺がそんなに敏感な男に見えるか?」キリッ

「自覚はあるんだ」

「お前の些細な違いなんて気づくはずもない。ただあいつらと違う笑顔だと思っただけだ」

「……参ったな…フータロー君やカイチョー君を騙せないなんて自信なくなってきたよ」

「演技の才能ないんじゃね?」

「わーお直球だね」

「言っておくがその方が俺にとって好都合だ!寄り道せずに勉強に専念してくれるからな!」

「よ、寄り道なんかじゃない!これが私の目指した道だよ!」プップーッ

 

「…っ!」

「一花ちゃん何やってんの、早く乗って!」

「は、はーい!」

 

「……まぁ、あいつらに謝る時は付き合ってやるよ…パートナーだからな」

「……フフッ」

 

 

 

「……さて、あとは…」

 

(…白銀……頑張れよ…)

 

花火大会終了まで00:01:09

 


 

「白銀御行は見せたい」

 

「……」

 

神様なんて居ない

そんな事は分かってた

 

皆は花火、楽しめたかな

 

だといいな

 

花火はビルの合間からしか見えなかったけれど

とても大きくて

皆が見た花火は……

きっと綺麗だったに違いないわ

 

皆が楽しめたなら

私は…

それで……

 

「……」

 

「…私も見たかった……花火……皆と」

「だったら俺が見せてやる」

「……会長……!?」

「来い四宮、そんなに見たいなら見せてやる」

「えっなんで……どうしてここが……」

「……ふん、『四宮の考えを読んで四宮を探せゲーム』の事か?()()()()に比べれば、100倍簡単だったよ」

 

本日の勝敗結果

白銀の勝利

 

花火大会!!

今回白銀達が見に来た東京湾花火祭は20時までの開催である!

 

「かぐやさーん!」

「会長!タクシー捕まえておきました!」

 

都内の花火大会は大体がその時刻(20時)までの開催となる

だが……郊外に出れば事情は変わる!!

 

「運転手さん!このまま首都高乗ってアクアラインで海ほたるの方へ!」

 

白銀の脳内には既に夏休み期間のイベントが全て記憶されている!

無論それらは全てかぐやとのデートを想定したもの!

その日程と時刻

延期した場合の予備日まで入念に調べ上げる執念!

 

「先日の雨で延期になった花火大会がある」

「……会長、もしかして」

 

──その執念が引き寄せる!

 

「千葉だ!木更津の花火大会は8時半までやってる!」

 

一筋の光明!!

 

「えーっ!あと20分で千葉まで行けますか?」

「知らん!だが挑戦する価値はある!四宮に花火を見せるんだよ!!」

「…っ!」

 

「ちょいと飛ばしますんでね。会社には、内緒にしてね」

「えっ?誰この格好いいドライバー」

 

「神様ー!!間に合わせてーーっ!」

 

無論

この世界に神など居ない

ロマンも愛も確率論に何の影響も及ぼさない

奇跡など無い

 

「会長!外が全然見えないです!」

「アクアラインは海底トンネルだからな!そりゃ見えん!」

「海ほたるのパーキング表示!地上に出ます!」

 

だが──

努力と思考を積み重ね行動した者たちには──

 

「間に合えーー!」

「間に合えっ!」

「間に合えぇぇ!」

「……っ」

 

必ずや与えられる光景がある!!

 

 

 

ドンッ! バーンッ!

 

「……」

 

誰もが花火に目を向ける

 

皆が私の為に見せてくれた花火

 

だけど

ごめんなさい

 

その横顔から

目が離せない

 

心臓の音がうるさくて もう──

 

花火の音は聞こえない



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第14話 おまけ

「今日はお休み」

 

「……Zzz」スピー

「……か、完全に目を開けたまま寝てる…怖っ」

「……っ!ね、寝てないぞ!目を閉じててただけだ!」

「どこから指摘していいのか…」

「それより、オーディションはどうだったんだ?」

「うーん…どうだろう…」

「どうも何も最高の演技だったよ。それもこれもきっと君と白銀という男の子のおかげだろうね。私も個人的に君たちに興味が湧いてきたよ」チュッ

「…えっ」

「……」

「とにかく、用事が終わったのなら一花借りてくぞ!」

「へ?」

「ま、待ちたまえ!どこへいくんだ!」

 

 

 

「みんな…怒ってるよね」

「…ま、そうだな」

「……花火も一緒に見れなかった…みんなを裏切っちゃった…」

「……お前は確かに、あいつらの気持ちに応えられなかった」

「……」

「……だがそれは、裏切った事にはならない」

「…え?」

「……だって、あいつらは信じてるんだ。お前が戻ってくる事を…これまでも…これからも…」

「……っ!?」

 

夜空の中に小さな花が咲く

まるで、彼女に「おかえり」というような…

 

「あ、一花に上杉さん!」

「……四葉…みんな…」

「四葉、お前が花火を買っておいてくれたおかげだ。これで心置き無く花火が出来るぞ」

「……なんで…私…」

「一花!」

「…っ…二乃…」

「あんたは今回、反省するべき点があるわよ」

「…そ、そうだね…」

「……ま、あと目的地を伝え忘れたあたしも悪いわ」

「……え?」

「私は自分の方向音痴に嫌気がさしました…」

「……私も今回は失敗ばかり」

「よくわかりませんが、私も悪かったという事で!屋台ばっかり見てしまったので」

「……みんな」

「はい、あんたの分」

「……」

 

〔花火……〕

 

「お母さんがよく言ってましたね。誰かの失敗は五人で乗り越えること、誰かの幸せは五人で分かち合うこと…」

「喜びも」

「……悲しみも」

「怒りも!」

「…慈しみも」

「……私たち全員で、五等分ですから」

 

 

 

「……」

 

《白銀達は帰ってこないが、上手く行ったみたいだな……らいはは寝てるし、あいつらは五人全員で花火をしてる》

 

「……」

 

《俺帰ってもいいんじゃね!?》

 

「行くよー!せーのっ!」

 

ドッ パパパン

 

《しょぼい花火……》

 

「……」

 

《……もう少しだけ見ておくか》

 

 

 

「……あ」

「…あは、珍しいね。私はこっちでいいよ…それは譲れないんでしょ?三玖」

「……!」

 

「パートナーだ、返してもらいたい」

 

「……」

「三玖ー!線香花火より派手な方が面白いよー!」

「私はこれがいい」

「へーそんなに好きなんだ」

「…うん、好き」

 

 

 

「……まだお礼言ってなかったね」

「……」

「応援してもらった分私も君に協力しなきゃ」

「……」

「パートナーだもんね、私は一筋縄じゃいかないから覚悟しててよ」

「……」スピー

「……もう!」

 

「……Zzz」

「頑張ったね……ありがとう。今日はおやすみ」



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第2部
第15話「白銀御行は誘わせたい」


人を好きになり
告白し
結ばれる
それはとても素晴らしい事だと、誰もが言う

だが、それは間違いである!!

恋人達の間にも、明確な力関係が存在する!!
搾取する側とされる側
尽くす側と尽くされる側!

勝者と敗者!!

もし貴殿が気高く生きようと云うのなら、決して敗者になってはならない!!

恋愛は 戦!

好きになったほうが、負けなのである……!



新学期初日!!

誰もが憂鬱と期待を胸に日常へと舞い戻る

何事も起きない長い長い夏休みの末

最後に訪れたひとつまみの思い出

 

男はそれらを振り返り──

 

「……」

 

後悔で死にそうであった!!

 

「あーーー!もぉおおおおーー!あいたたたたたたた!イタい!俺イタすぎる!!」

 

黒歴史!

夏休みの大部分かぐやに逢えない日々を送った白銀──

 

あの花火の日

かぐやに出会い…

白銀のテンションはガンアゲでキマっていた!

 

そのアガりきったテンションで繰り出される恥ずかしい名言の数々──

 

それは冷静になった白銀にとって今後十数年時折思い出しては枕に顔を埋め悶え苦しむ事になるであろう黒歴史!

 

やっちまったエピソードとして白銀史に刻まれた!

 

(もし今四宮と顔を合わせたら間違いなく──)

 

「なんて言ったら良いのかわかりませんが……あの日のお言葉は、なんというか凄く自己陶酔というか……会長──イタかったですよね(笑)」

 

(誰か俺を殺してくれ!!)

 

 

そんな最悪な新学期を迎えた白銀達

 

しかし、新たなイベントが幕を開けようとしていた…

 

「……林間学校…ですか?」

「そうです!中間試験も終わった事ですし、羽を伸ばすのには丁度いいですよね〜」

「あぁ〜…もうそんな時期か」

「林間学校は生徒会主催じゃありませんからね、私もこの間まで忘れてました」

 

林間学校!!

ここ、秀知院学園では2年生の2学期になると林間学校が行われ、毎年多くの生徒が様々な自然を堪能してくる

 

林間学校は2泊3日で行われ、2日目にはカレー作り、3日目にはスキー体験が行われる

 

「じゃあ会長達、3日間いないって事ですか?」

「粗方こっちの仕事は納めてから行くつもりだ、石上会計に負担はかからないようにするさ…まぁ、林間学校自体もう少し先の話だがな」

「…助かります」

「それより会長〜知ってますか〜?」

「…何がだ?藤原書記」

「林間学校の伝説の話ですよ!」

「…伝説?」

「林間学校の最終日のキャンプファイヤーのダンス、そのフィナーレの瞬間に踊っていたペアは、生涯を添い遂げる縁で結ばれるというのですよ〜」

「……ほぅ」

「ロマンチックですよね〜私憧れちゃいますよ〜」

「藤原先輩ってほんと恋愛脳ですよねー、自分は誰とも付き合った事ないのに」

「石上君は黙っててください!」

「……たかが伝説だろ?そんなもの、非現実的だ」

「その通りです。本来林間学校は、行事を通して生徒達に体力や健康の向上を促すものです。決して色恋咲かせるためのものではありません」

「えぇ〜!?チョードライ!?」

 

一見林間学校を否定する二人…

だが…

 

(…これは…四宮と踊らなければ!)

 

〈会長と踊らなきゃ!〉

 

考えている事は同じであった!

 

 

 

「林間学校♪林間学校♪」

 

「……」

「上杉さーん!もうすぐ林間学校ですよー!」

「…あぁ……四葉か」

「うわああああああああああ!」

「俺だ」

「なんだ〜上杉さん!」

「……」カポ

「誰ーッ!?」

「…俺だ」

「良かった〜」

「……」カポ

「助けてー!」

「図書室ではお静かに!」

「すみません」

「すみません」

 

「その金髪のカツラ微妙に似合ってますよ。こんなに仮装道具持ってきてどうしたんですか?」

「……肝試しの実行委員になったんだって」

「肝試しって林間学校の?へー上杉さんが珍しく社交的ですね」

「やりたくてやってるわけじゃない。ウチの組、肝試しを担当してたらしいんだが、クラスの奴ら、俺が自習してる隙にめんどうな役を押し付けてきやがった」

「お気の毒に…」

「……自業自得」

「とびっきり怖がらせてこの恨み晴らしてやる…忘れられない夜にしてやるぜ…」

「……ノリノリだね」

「…まぁ実際どうでもいいがな、林間学校なんて」

「…ムゥ…では林間学校が楽しみになる話をしましょう!」

「……なんだ?」

「…林間学校の伝説についてです!」

 

 

 

「…あら会長、何をしてるんですか?」

「あぁ、スキー場を利用する上での注意事項をまとめてるところだ」

「…スキー場の注意事項、ですか?」

「3日目に行うスキー体験のスキー場にはまだ整備されていない土地があるから、立ち入り禁止になってるんだ。間違っても入ってはいけないと注意喚起しないといけないんだよ」

「…なぜ会長が?」

「…ウチの組は3日目のスキー体験の担当になったからな。しかも実行委員に俺が指名された、生徒会の仕事で忙しいってのに…」

「あらあら…お気の毒に…」

「…四宮は林間学校、楽しみか?」

「……えぇ、まぁ…」

「……」

「……嘘です、ごめんなさい」

「…何故だ?山は良いぞ?涼しいし自然で溢れてる」

「…まぁ、私どちらかというと海派なので」

「…っ!?」

 

海 VS 山!

古来より争われていた絶対的対立!

人間性の色濃く出る思想戦争である!

 

(しまった!星空の魔法にかけられて告白させる作戦が台無しだ!)

 

「まぁ、どれだけ足掻いても山は山ですからね…仕方ないです」ハァ

「…何故そこまで山を嫌う?星だって綺麗に見えるだろう」

「……だから嫌なんです」ボソッ

「……え?」

 

〈星が見えるということは、月が見える。月といえばかぐや姫。夜空を見上げれば、愛する人を残し月に連れ帰された女の物語を想わずには居られません…だからこそ、月は嫌い〉

 

「……なら今度、生徒会で月見をするか!明後日は十五夜だからな!」

「いいですね〜!やりましょ〜!」

「藤原さん!?」

「いいんじゃないですか?僕は乗りますよ」

「石上くんまで!?」

「もうすぐこの生徒会も解散……皆で無茶が出来るのも…これで最後かもしれないんですよ……」

「……」

 

2日後、白銀達は月見を行い

結果、白銀に新たな黒歴史が生まれた

 


 

生徒会豆知識!

 

白銀は無類の天体好きであり

将来の夢は天文学の博士だった程であるぞ!

 


 

「白銀御行は誘わせたい②」

 

(中間試験も明けていよいよ来週は林間学校……それが終われば生徒会の解散…勝負を決めるならここしかない!)

 

白銀は思った

残された時間が少ない事を

 

生徒会が解散すれば

かぐやと会う必要が無くなるからである

 

だからこそこの男は……

 

(どうにかして四宮とキャンプファイヤーのフィナーレを迎えなければ!)

 

勝負に出た!

 

 

 

「白銀〜先帰るわよ〜」

「あぁ、おつかれみんな。勉強会はいいのか?」

「今日はあいつの服を買いに行くのよ、3日分の着替えも無いってどういう事よ…」

「……フータローはケチだからしょうがない」

「まぁまぁ、この間パフェ奢ってくれたじゃん!」

「五人で1つでしたけどね、私は特盛が良いと言ったのですが…」

「あれ本気だったのね…」

「まぁいい、気を付けて行けよ。あと、明日は駅前のバス停に7時半に集合だからな、遅れるなよ」

「言われなくてもわかってるわよ〜じゃ、おつかれ〜」

「……じゃあねカイチョー」

「お疲れ様でした!」

「お先に失礼しますねっ」バタンッ

 

「……はぁ」

「会長、ため息ですか?」

「…あぁ、色々不安でな」

「何がですか?」

「……上杉の事だ」

「…上杉さんがどうかしましたか?」

「…この間の中間試験の結果、気にしてるんじゃないかと思ってな」

「…確かに…誰一人として合格出来ていませんでしたからね…」

「あの時は俺が咄嗟に中野父に嘘をついたが、期末であれを挽回出来るとは到底思えん」

「大丈夫ですよ、彼は一度決めたことは貫き通す男です。だからあの時も逃げずにいたんです」

「……四宮…」

「……信じて待ちましょう。彼の事も、彼女達の事も」

「…そうだな、今は目の前の事に集中しよう」

「明日からの林間学校の事ですか?」

「あぁやはり一大イベントだからな、楽しまなきゃ損だ」

「…そうですね、私も楽しみにしておきます」

「……そうだ、四宮は3日目は誰かと過ごすのか?」

 

(……)

 

「……3日目…ですか」

「…あぁ、スキー体験は自由参加だがお前はどうする?」

「もちろん出ますよ、藤原さんと一緒に滑る予定です」

「…そうか……では夜は──」

「ところで会長?3日目の夜のキャンプファイヤー…私誰とも一緒にいる予定が無くてですね…」

「…っ!」

()()に誘いを受ければ、その方に御一緒するつもりなのですが…」チラッ

「……」ゴクッ

 

(先を越された…!?)

 

無論!勝負に出たのはかぐやも同様!

白銀にダンスを誘わせようと策略を練っていた!

 

(もしここで俺から誘えば…)

 

「あらあら会長、あんな伝説を藤原さんから聞いた上で私にそんな誘いをするなんて……それはまるで…」

 

(まるで告白のようではないか…!?)

 

「……くっ」

 

(だがここで四宮と予定を作っておかないと、他の奴に盗られる可能性もある!四宮はモテるからな……)

 

「……」

 

(いや待てよ……林間学校は明日…しかも今は放課後……もう既に誰かに誘われていても不思議では無い…だが何故か四宮は俺に急かすような発言をした…これは…)

 

「……フッ」

 

(もう俺に誘って欲しいと言っているようなもの!求婚と同レベルの発言!あとはそこにどうやって漬け込むか…)

 

「……四宮の組はキャンプファイヤー担当だったよな…?藤原書記が話していたあの伝説……あれお前たちの組の作り話だったりしないか…?」

「…何が言いたいのでしょう?」

「つまりだ、お前たちの組の()()が結びの伝説のデマを流し、学校中にムードを作り上げ、ダンスに誘わせやすい状況を作り上げるように仕向けたんじゃないのか?」

「……っ」

「誰がとは言わんが、そう仕向けた輩がいるんじゃないのか?……なぁ四宮ぁ…?」

「…残念ながら、私たちのクラスではありませんよ?証拠に、一つ上の先輩方もこの伝説の事は知っていましたしね」

「……チッ」

 

(不発か……)

 

「それを言うなら会長もですよ?」

「…え?」

「会長はさっき藤原さんの言った伝説を「結びの伝説」と言った…しかし、藤原さんからそのような言葉は聞きませんでしたよね…?」

「……っ」

「という事は…この伝説について、深く関心があったんですよね…?そこまで調べてでもその伝説の信憑性を確信したかったんですよね?」

「……」ゴクッ

「では何故先程はあんな質問を私にしたのでしょうか…?その伝説について一番知っている会長が何故…?」

 

(……や…やっちまったぁー!)

 

かぐやの言う通り、白銀は校内の生徒やリーク情報により結びの伝説について隈無く調べ回った!

結びの伝説が実在する事を、白銀はこの場の誰よりも知っていた!

 

「誰かと一緒に踊りたかったんですよね?誰かとその伝説を立証したかったんですよね?一体誰と踊りたかったんでしょうね?」

「……ぐっ!」

 

万事休す!

白銀は為す術を無くした!

 

〈さぁ、どう出ますか?今私を誘えば、それはもはや告白同然の行為…誘わなかったら、論理的に会長の行動がおかしいと問い詰められる……チェックメイトです!〉

 

「…会長がどうしてもと言うなら…わ、私が相手を──」

「かぐやさんキャンプファイヤーのダンスの相手いないんですかー!?」

「ふ、藤原さん!?」

「仕方ないですね〜!私が相手になってあげますよ〜!かぐやさんと生涯を添い遂げる縁で結ばれたいですもんね〜!」

「…ア…アア…」

「では会長!かぐやさん!明日の林間学校でー!」バタンッ

「……」

 

〈アーーー!あと一歩だったのに!もうちょっとだったのに!どうしていつもあの子はー!〉

 

「……」

 

(助かった…)

 

本日の勝敗結果

両者敗北

(結局ダンスに誘わせられなかったため)




次回

第16話「五つ子達は追いつきたい」


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第16話「五つ子達は追いつきたい」

「らいは!大丈夫か!?」ハァ ハァ

「…うん…お出かけの最中にごめんね…なんか熱みたい」

「…お前は身体が弱いんだ、無理すんな。いろいろ買ってきたからな」

「お薬飲ませて…」

「あぁ」

「汗拭いて…」

「あぁ」

「あと学校の宿題やっといて」

「これでもかとわがまま言うな」

 

「親父は仕事で明日まで帰れないそうだ」

「そっか……お兄ちゃんも明日は林間学校だよね」

「……」

「……もういっこわがまま言っちゃおうかな…帰ったら楽しいお話いっぱい聞かせてね、私は1人で大丈夫だから」

「……わかったから、ゆっくり寝ろ」

「……ヘヘッ…」

 

 

 

「…もしもし…あぁ、おはよう上杉……あぁ、あぁ…分かった……」ピッ

「白銀君、どうかなさいましたか?」

「……五月、肝試しの実行委員、代役でやってくれないか?」

「……え?」

 

 

 

「らいは!生きてるか!?」バッ!

「……親父、まだ寝てるんだ。静かにしろ」

「看病してくれたのか…ってもう8時前じゃねぇか!林間学校のバス出てんじゃないのか!?」

「そうだっけ?どうでもよすぎて忘れてたぜ。しかし、これで三日間思う存分勉強出来るな」

「……風太郎、忘れ物だぞ」

「……」

 

《林間学校のしおり……》

 

「早く帰れなくて悪かったな。一生に一度のイベントだ、今から行っても遅くはないんじゃないか?」

「……バスも無いし、別に大丈夫だ」

「あー!お腹空いた!」

「…っ」

「…っ」

「え…らいは…?熱は…?」

「治った!なんでお兄ちゃんまだいるの?ほら早く行った!」

「お前!俺の気遣いを返せ!」

「ありがとう!私はもう大丈夫だから林間学校行ってきて!」

「だからバスが…」

「バスはもう出発してしまいましたよ」

「五月…!?なんで…」

「それはこちらのセリフです。すみません、上杉君をお借りします」

「はーい!」

 

「お前…バスは…」

「見送らせていただきました」

「なんでうちに来たんだ」

「あなたの家を知っているのは私だけですから。私にしかここへ案内できません」

「…っ!」

 

「……フータロー」

「おそよー」

「こっちこっち!」

「ったく何してんのよ」

「……お前ら…」

「肝試しの実行委員ですが、暗い場所に一人で待機するなんて事私には出来ません。オバケ怖いですから、あなたがやってください」

「……仕方ない、行くとするか…」フッ

 

「それでは…しゅっぱーつ!」

 

 

 

「……そうか、無事合流出来たか……ゆっくりでいい、明日には合流出来るといいな。んじゃまた」ピッ

「五月さん、なんと?」

「上杉と合流したそうだ、今は中野家の車でこっちに向かってるらしい」

「早く合流出来るといいですね…せっかくの楽しい林間学校ですから」

「……まぁ、俺たちも足止めを食らってるけどね…」

 

バスで移動中の白銀たち、猛吹雪により足止めを食らっていた

 

「……すげぇ吹雪だな」

「例年よりも早い猛吹雪らしいです。渋滞も酷いですね」

「…ん〜…手持ち無沙汰だな、なにか出来ないか…?」

「…それでしたら、丁度こんなものが」

「トランプ?そんな子供の遊び……」

「でしたら……勝者は敗者になんでも一つお願いごとが出来る、なんて如何です?」

「なんでも……正気か?」

「えぇ」

「まぁ、いいだろう。種目はどうする?」

「そうですね、シンプルにババ抜きでどうですか?」

 

ババ抜き!

交互に手札から1枚引き合いペアになったら廃棄、最初に手札を捨てきった者が勝者という極めてシンプルなゲーム!

 

(これは四宮から誘ってきたゲーム…なにか裏があるに違いない……しかしなんだ?林間学校当日にまでやるその理由…わからん…俺には四宮がわからん…!)

 

〈……〉

 

「ごめんなさい藤原さん、急遽キャンプファイヤーの時間は係の仕事が入ってしまって…」

「そうなんですか?まぁ、それは仕方ないですよね〜…分かりました!係の仕事頑張ってください!」

「えぇ、お手数お掛けします」

「じゃあ私はあっちのバスなので!」

「……」

 

〈……藤原さんを欺いてまで作ったチャンス…モノにする他ない!〉

 

両者の思惑が飛び交う中、ババ抜き運命戦(サドンデス)は順調に進んで行き、かぐやは9枚、白銀は8枚のカードが残った!

 

「ではババで一枚多い私から引かせて頂きます」

 

通常、ババ抜きは3人以上で行う事を想定されたゲームである

2人で行う場合、何を引いても『ペア』になるカードor『ババ』の二択となる

既にババを抱えているかぐやは当然ペア

続いて白銀の引き──

 

「……っ!?」

 

なんと初手ジョーカー!

白銀痛恨の引き!

 

(序盤にババを引く確率は低く得てして気を抜きやすい。ならばこそ手の伸ばしやすい利き手側にババを配置すると踏んでいたが、裏目…っ!)

 

ババ抜きは運ゲーでは無い!

如何に相手の心理を読みババを引かせるか高度な心理戦のゲームである!

 

(ならば……)

 

「まぁ……なかなか可愛い事をしますね」

 

白銀のとった行動!

それはカードをあからさまにはみ出させるというもの

 

「案外俺は一番取りやすい場所にババを置く可愛い所のある男かもしれんぞ?もっとも、これ以外を引けばその答えは永遠に闇の中だがな」

 

(このゲームの肝は『選択の誘導』だ、純粋な8分の1の選択肢を『引くか』『引かないか』の2分の1に落とし込む話術こそ肝!さぁどうする四宮!)

 

「……えぇ、知っていますよ」

「……」

「会長はとても可愛らしい人です」ビッ!

「…っ」

「あら残念、ジョーカーでした……ではお返しです」ニコッ

「…っ」

 

(笑っただと?ジョーカーを引いたというのに!?何故だ…何を考えている!?これも策?だとすればどんな……ますます分からない!)

 

「……」

 

(四宮は言った、勝者は敗者になんでも一つお願いごとが出来ると……だとすれば、『お願い』とは一体なんだ?定義の決定権がこちらにない以上その『お願い』は場の空気を読んだものにならざるを得ない。一見自由なようで強烈な制限!)

 

「……」ゴクッ

 

(もしだ……もし四宮が何らかの理由で藤原とキャンプファイヤーを一緒に迎える事が出来なくなったとしたら……)

 

「せっかく藤原さんにお誘い頂いたのに…これでは生徒会として示しがつきません…」ウルウル

 

(などと涙ながらに訴えられれば…)

 

「判った判った!お願いごとは『俺と踊ろう』でどうだ!?」

 

(とならざるを得ない空気になるのでは!?)

 

「……ふふっ」

「……くっ…!」

 

(ふざけるな!この俺がなぜ!?俺から誘う事などあっては……)

 

「……どうかなさいましたか?会長」

「…いや…さぁ、勝負を決めよう」

 

 

 

勝者、白銀

 

「……」

「……負けてしまいましたか…流石は会長ですね」

「…あぁ…さて、一体どんなお願いをしようか」

「そうですね、スマートで男らしく、空気を読めているものが良いでしょうね……例えば…」

「そういえば四宮、結局藤原書記と踊るのか?」

「……え?」

 

(……)

 

「……いいえ、実は…いろいろあって出来なくなってしまったんですよね…」

「そうか、ならば……」

 

(……俺も変わらなきゃな…)

 

「俺も踊る相手が今のところいなくてな、手が余ってるんだ」

「……」

「……お前の手を借りる、という『お願い』はどうだ?」

「…借りる?」

「その場限りでいい、だが秀知院学園の生徒会長と副会長が孤立しているなんて生徒達に示しがつかんだろう…どうだ四宮、俺の『お願い』聞いてくれるか?」

「……はい…会長がいいのであれば…」

 

(俺が変わらない限り…四宮も変わってくれない……男らしく…俺が変わるんだ…!)

 

「……え〜…本日は吹雪の為、移動は困難だと判断しました。本日はこの近くにある旅館に泊まりますので、準備をお願いします!」

 

「……だとよ、四宮」

「……会長…」

「…なんだ?」

「……楽しみですね、林間学校!」ニコッ

「…っ」

 

(……ったく、そういうところだぞ…)

 

本日の勝敗結果

両者勝者

(ダンスに誘う事に成功したため)

 

 

 

「……えっ!?」

「し、白銀君!?」

「五月!?なぜこの宿に!?」

 

「まさかお前らも同じ旅館で泊まってたなんてな、よく会わなかったもんだ」

「まぁ、これでようやく全員揃った。素直に喜ぼうぜ」

「…そうだな、せっかくの林間学校、だからな」

「……上杉、それは?」

「これか?らいはに貰ったミサンガだ、徳が高いだろ」

 

「……」

 

〈会長とダンス……べ、別に緊張してませんけど!?〉

 

「……」

 

〔みんな平等に…フータローは…〕

 

「……」

 

〔あの写真の子、一体何処にいるのかしら…〕

 

「……」

 

〔三玖が言うなら、良いよね…〕

 

「……」

 

〔私がこの3日間を上杉さんの思い出の1ページにしてみせます!〕

 

「……」

 

〔私たちの誰かが…上杉君を…〕

 

それぞれの考えが飛び交う中

いよいよ林間学校が始まる──!




次回

第17話「上杉風太郎は驚かしたい」


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第17話「上杉風太郎は驚かしたい」

ご無沙汰しております。
1日遅れですが、ミコちゃん&中野五姉妹誕生日おめでとうー!!
伊井野ミコも登場予定なのでお楽しみに!(第3部に登場予定)

※投稿頻度が減ってきておりますが、最近スランプで上手く執筆出来ておりません。不可解な部分があるかと思いますが、随時修正していくつもりです
今後ともよろしくお願い致しますm(_ _)m



「じゃあ私たちでカレー作るから、男子は飯盒炊さんよろしくね」

「うーい」

「……手馴れてますね、二乃さん」

「まぁね、料理当番は私だし」

「他の4人は…?」

「四葉はフィーリングでやるし、五月は大盛りにするし、一花は出前取ろうとするし、三玖は論外」

「大変ですね…一応私も花嫁修業は一通り済ませているので、多少は出来ますよ?」

「よろしく頼むわ、私だけじゃ手が足りないから」

「……っ」

 

「……お前の手を借りる、という『お願い』はどうだ?」

 

「…四宮さん?顔が赤いわよ?」

「…え!?な、なんでもないです!」

 

〈明日…私会長と踊るのよね……どうしましょう…私下手だったら…〉

 

「まさか四宮の人間がダンス一つ出来ないなんてなぁ……所詮は良いとこ取りのお嬢様ってワケか…?……お可愛い奴だなぁ…」

 

〈それだけはダメ!……って、被害妄想激しいわね…私〉

 

 

 

「……」

「……」

「……頼む藤原」

「…ですよね、この感じ」

「友人と踊る約束をしてな、どうしても明日までに完璧に踊れるようにしなきゃいけないんだ!」

「だからって飯盒炊さんの時間に呼びなさなくっても!私お腹ぺこぺこで来たんですよ!?」

「カレーが出来上がるまでの時間でいい!マジで頼む!」

「……わかりましたよ…でも!これが最後ですからね!」

「…藤原…!」

 

藤原は以前バレーの特訓に付き合わされ、白銀に酷いトラウマを植え付けられていた

 

「……ちなみに…どのくらい出来ないんですか?」

「……ちょっとだ…!」

「…ちょっと…!?」

 

藤原にとっての白銀のちょっと出来ないは、ポーカーで初手ロイヤルストレートフラッシュが出る確率よりも低い事を意味する!

 

そう!彼女にとってこの結果は目に見えていたのだ!

 

「……会長…夏が開ければ体育祭でソーラン節もあるんですよ?今からそんなんで大丈夫なんですか?」

「…わからん……だが、こんな事頼めるのはお前だけだし、それに……」

「……それに…?」

「…俺はこの林間学校で…未練は残したくない!」

「…っ!」

「…藤原…俺を、(おとこ)にしてくれ!」

「…分かりました!これはきっと私に課せられた試練なんです…!ママに任せて!」

「その母性の出され方には結構抵抗あるがな!」

 

こうして飯盒炊さんの時間、白銀と藤原はダンスの練習をみっちり行ったという…

 

 

 

「…会長…どこで何してるんでしょうか…?」

「そういえば見えませんね、白銀君」

「……もしや会長…他の誰かと密会してるんじゃ…?」

「大丈夫ですよ、白銀君はそんな薄情な人ではありませんから」

「…そうですね…貴方、随分と会長を理解なさってるみたいね」

「……そうでもありません…私には、分からないことが多すぎます」

「…?」

「…上杉君…貴方は一体…」

「……」

 


 

五つ子豆知識!

 

姉妹の合計体重は250キロ、1人50キロで換算できるぞ!

それでいい…それでいいのだ!

 


 

肝試し!

林間学校の行事のひとつ。男女か同性、いずれかペアになり夜の森を歩き目的地に向かうというもの

自由参加だが、多くの生徒が参加するという

道中にはお化け役のスタッフが忍んでおり、いつどこで脅かしてくるか分からない……

 

「このように!!」

「ひぃぃっ!」

「うわぁぁあ!」

 

「…くくく」

「絶好調ですね、上杉さん!私嬉しいです!いつも死んだ眼をした上杉さんの眼に生気を感じます!」

「そうか、蘇れて何よりだ」

「……もしかしたら、来てくれないと思っちゃったから…後悔のない林間学校にしましょうね」

「……」

「ししし」

 

《……四葉》

 

 

 

「やってやらァ!」

「食べちゃうぞー!!」

「うおっ!上杉!?四葉まで!」

「白銀…四宮…」

「…びっくりしたぞ……上手くやってるみたいだな、脅かし役」

「お前たちは…?」

「見回りついでに2人で回っていたんです」

「そうか、まぁいいが…この先は崖で危ないからな、矢印通りのルートで進めよ」

「わかった、忠告ありがとう」

「それより上杉さん?あなたの脅かし方にはまだ迷いがあります。もっと凝った登場をしないと…」

 

「うううう…」

「…こんなチープなおもちゃで誰が驚くのよ。はぁ…林間学校ってもっと楽しいと思ってたんだけどなぁ」

「二乃はよく平気ですね…私はもう限界です…」

「五月はビビりすぎなのよ、誰がこんな…」ギィィ

「…っ」ブラァァン

「…っ!?」

「うわぁぁぁもう嫌ですぅぅぅぅ!!」

「五月!待ちなさい!」

 

「四宮に言われた通りやってみたが…本当に苦手だったのかあいつ…」

「あちゃー…やりすぎちゃいましたね…」

「……あれ…?あいつら…どっちに行った?」

 

 

 

「三玖〜早いよ〜」

「……」

「せっかくフータロー君が脅かし役やってるのに…会わなくていいの?」

「…っ」

「せっかくの林間学校なんだよ?積極的にアプローチしないと…」

「……私、変かも」

「…?」

「……フータローはみんなの家庭教師なのに…」

「……」

「……一花は、フータローの事どう思ってる?」

「……え?うーん…」

「……」

「あれも一つの思春期かな、ほら正直かなーり偏ってるじゃん?あのまま大人になったらと思うとお姉さん心配だよ」

「…そうじゃなくて……一花はフータローを……」

「…三玖、やっぱり最終日のダンス変わろっか?心配なんでしょ?」

「……平等…一花が相手になってあげて…」

「…後悔しないようにしたよ。今がいつまでも続くとは限らないんだから…」

 


 

生徒会豆知識!

 

白銀はお化けなどは得意だが虫嫌いだぞ!

白銀が怯えていたのは虫なのである!

 


 

「上杉風太郎はバレたくない」

 

「……五月ー…どこに行ったのよー」

 

〔こっちで合ってんのかしら…一旦戻ろうかな…〕

 

「……」

 

「めっちゃタイプかも!誰これ!」

「…し、親戚の写真だ…」

「あんたなんかよりよっぽどイケてるわ、今度会わせなさいよ」

 

「……」

 

〔あの写真の子…一体なんて名前なんだろう…〕

 

「…あぁ!らしくないわ!」

 

ザッ!

 

「いやっ……最悪…」

 

「大丈夫か?」

「……っ」

「見つけたぞ、二──」

「嘘……キミ…写真の…」

「……え?」

 

 

 

「そっか、金太郎君っていうんだ」

「……」

 

《安直すぎたかな……二乃は俺を写真の悪ガキ、つまり「あの頃の俺」と勘違いしている……この金髪のカツラのせいでな…!》

 

「……っ」

 

《早く出てきてくれ五月!このままじゃ調子が狂う!》

 

「…っ」

 

〔金太郎君…キンタロー君かぁ………へへっ〕

 

《…そうだ…ならば幻滅させればいい……》

 

「…あー…タバコ吸いてぇ」

「…え?」

「未成年だけどタバコ吸いて〜法律犯して〜」

「……」

 

《どうだ…!》

 

「ワイルドで素敵!」

 

《えーっ!逆効果!》

 

「……」

 

《どうする?いっその事正体を明かすべきか?しかし弱みを握られそうで出来れば避けたいところ……》

 

「……ねぇ、何か声みたいなの聞こえない?」

「え……そういうのやめろよ…そ、そうだ!」

「…っ」

「俺のはこのお守りがある!どんな魔もなねのけるお守りだ!」

 

「…あぁぁ…」

 

「…っ!」ダッ!

「ちょ、ちょっと!置いてかないでよ!1人は怖いわ!」

「は?俺は怖がってないけど?」

 

〔……なーんだ…男らしくないなぁ…ちょっと幻滅〕

 

「っ…この道の方が楽そうだわ、こっちから行こうよ!」

「…向こうは確か…」

「ほら、森もすぐ抜ける!」

「おいバカ!そっちは…!!」

「……あ」

 

〔……崖…!?〕

 

「…ぐっ…!!」グイッ!

 

〔…っ!?〕

 

「……やべ…」

「手っ!」ビンッ! バタン

 

「…ハァ…ハァ…ハァ」

「……っ」

「…助かった」

「こちらこそ…ありがと…」トクン

 

「しかしお前の姉妹、見つからないな…もう帰ったんじゃないか?」

「…ごめん、ちょっと動けないかも」

「……」

「…怖いから…手、握って…」

「…は?」

「ほ、ほら!こんな所じゃまた怖い目に遭うかも!」

「…はぁ」

「って、初対面の男の子に何言ってんだろ!今のなし!」

「……」

「……」プルプル

「……わかった…」ポテ

「…え?」

「それは徳の高ーいお守りだ、持ってるだけで旅行安全、身体健康、厄除開運安産間違いなし!願いだって叶うともっぱらの噂だ!特別だぞ!」

「…キンタロー君、キミは明日もここにいるのかな?」

「…え?あぁ…」

「私たちの学校、明日キャンプファイヤーがあるんだ。その時やるフォークダンスに伝説があって、フィナーレの瞬間手を繋いでいたペアは結ばれるらしいの」

「…へ、へー初めて知ったぜ」

「結局大雑把な伝説だから手を繋いでるだけで叶うって話もあったりで、人目を気にする生徒たちは脇でこっそりやってるみたい」

「それでいいのか…?」

「ほんと、大袈裟で…子供じみてるわ…」

「……」

「…キンタロー君…私と、踊ってくれませんか?待ってるから」

「……っ、えっと…」

 

ガサッ!

 

「…!!」

 

「あぁああぁ…」

 

「さっきの…!」

「……来るっ!」

 

「わあぁあぁ!二乃ぉ…どこ行ったんですかぁ〜」

「五月!」

「ふぇぇ…」

「あんた紛らわしいのよ!」

「よかった〜心細かったです〜!」

「もう帰るわよ」

「二乃はよく一人で平気でしたね」

「違うわ、私は……あれ…?」

「どうしました?」

「……っ」ギュッ

 

〔……待ってるから〕

 

「……」

 

《どうしよう…》

 

本日の勝敗結果

上杉の負け

(正体はバレなかったが、新たな課題が生まれたため)

 

 

 

「……はぁ…」

 

《大変な事に…いや、面倒な事になった……変装した俺が二乃と踊ることになったいいが、既に一花との約束がある。両方無理だ》

 

「……どうした?上杉」

「…白銀…」

 

「…そうか、二乃と一花と…」

「面倒な事になっちまった……どうしたもんか…」

「…二乃と踊る事になった経緯は分かった。だが、なぜ元々一花と踊る事になったんだ?お前たちそんなに仲が良かったのか?」

「…あぁ…言ってなかったな……実は林間学校の前…」

 

「…一花に変装した三玖が男子生徒にダンスに誘われ、仲介に入った俺と一花(三玖)が一緒に踊ると告白。そのまま話が進み、一花とも話がついてる」

「…なるほど……」

 

(…いや複雑だな!俺が上杉の立場だったらどうしようもねぇわ!)

 

「……」

 

(…だがどちらの誘いも断るという考えに即決しないあたり、やはり上杉の優しさなのだろうな…)

 

「……」

 

(だがその優しさは、お前を苦しめる事になるぞ…上杉)

 

「……上杉、お前にとってこの林間学校とはなんだ?」

「…俺にとって林間学校…?」

「…俺はこれを機に四宮との仲を縮めようと考えている。お前はどうだ?」

「……俺は…」

「……」

「…あいつらが楽しめるようにしたい…五人で楽しい林間学校…それが俺の望むものだ」

「…本当にそれだけか?」

「……え?」

「…上杉……お前は本当はもっと…」

 

 

 

「あいつらと話してくる。ありがとな、白銀」

「あぁ、だが焦りも禁物だぞ?張られた糸はすぐにちぎれる」

「……あぁ…」

 

《……よし、まずは…》

 

「…あ、上杉さん!」

「…四葉、何か手伝おう」

 

《こいつらの好感度アップからだ!》




次回

第18話「上杉風太郎は運びたい」


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第18話「上杉風太郎は運びたい」

ご無沙汰しております
今月に入って仕事やら教習所やら歯医者やらで忙しくて全然かけていませんでした!申し訳ございませんでした!

そういえば『映画五等分の花嫁』の本予告が来ましたね!
あと約1週間!楽しみです!
ちなみに『シン・ウルトラマン』も見てきましたが最高でした

ps.今回のサブタイトルを変更させて頂きました。



「お前は確かキャンプファイヤーの担当だったな…」

「はい!今はキャンプファイヤーの時に燃やす時の薪を総出で運んでる最中です!」

「よし!俺に任せろ!」

 

「…っ〜〜!…はぁ…」

 

「上杉さん本当に男の子ですか?」

「……」

「で、でも人手は多いに越したことはないですからね!」

「そ、そうか…肝試しの時のお礼だと思ってくれ」

「そーですよ!上杉さんが戻るの遅いからあの後一人で脅かし役やってたんですからね!」

「……」

 

《どうやら俺は知らぬ間に顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまっていたようだ。早急に信頼回復しなければ家庭教師にも影響が出かねない!》

 

「四葉さーん!蔵の鍵がそこにささってるんですけど─」

「藤原さん!わかりました──」

 

「はぁ…」

 

《し…しんどい…こんなに体力なかったっけ…》

 

「…せーのっ」

「わっ重っ」

 

《一花…!?》

 

「おや、よく見たらフータロー君じゃん。この係じゃなかったよね?」

「四葉は…」

 

《いや…待てよ?四葉のみならず一花までいるなんてこれは好感度を上げるチャンスだ》

 

「…う〜…寒っ」

 

《もってくれ俺の体!コミニュケーション能力MAXだッ!》

 

「四葉を手伝ってたんだ!さぁ運ぼうぜ!」キリッ

「……」

 

 

 

「……おや会長、こんな所で何してるんですか?」

「四宮…!明日のキャンプファイヤーの準備の手伝いだ。四宮はここの係だったな」

「はい、四葉さんも一緒ですよ」

「そうか、あとはこれを運ぶだけだな…」

 

(それにしてもでかい丸太だな……最後の1本だな…早くずらかろう…寒くなってきた…)

 

「手伝いますよ?」

「あぁ、助かる……ん?」

「どうかなさいました?」

「いや、あそこ…なにか居ないか?」

「……?」

 

ズズッ……ジョウジ……

 

「……」

 

白銀御行

彼が小学生高学年の頃である

 

家族で来たキャンプの夜──

彼は喉が渇き自動販売機でジュースを買おうとした

 

その時──

 

ブブブブブブブブブブッ!

(文字だけでご想像してください)

 

以降!

彼は無視を見る度失神するようになった!

カブトムシですら失神の対象である!

 

Gなど目撃した日には──!!

 

「…ッ!」ガリッ!

が!!白銀!

咄嗟に舌を噛み気絶(スタン)を防いだ!

 

(危ない……!四宮の前で失神(オチ)る所だった……!!赤羽式活法に感謝だ……!)

 

だが──

 

(失神は逃れたが人類の敵(ヤツ)は依然目の前……!となれば解は一つ……!)

 

「……」ソローリ…

 

(四宮に怪しまれず!どうにか自然にこの場から逃げ出さねば!)

 

「……」

 

〈これはクロゴキブリ……いえ違うわね。これはウルシゴキブリ!(学名・Periplanetajapanna-Asahina)〉

 

四宮は虫に対して苦手意識は微塵も無かった

 

〈屋外種ですし害虫じゃないから怖がる必要はない……いやむしろ千載一遇の好機!ここで私が取るべきリアクションは一つ!〉

 

「きゃー会長ー!!怖いですぅー!」

「…っ!?」

 

女子力!!

虫に怖がる女子が男子に飛びつくのは自然な現象!男を惑わす流れるようなボディタッチ!

 

〈知能指数が低い行動ですが……これこそが女子力!今頃会長は顔を赤らめて挙動不審になって……〉

 

「……」

 

〈なってない!?何故……!?どういう事!?〉

 

(神様助けて)

 

白銀は神に祈っていた

 

〈なんで!?もっと積極的にやらなきゃいけないの!?こうなったら…!〉

 

「会長ゴキさん早く退治して〜!かぐや怖ぁ〜い〜〜!」

 

(俺が退治!?無理無理マジで無理!)

 

「…っ」ギュイ ギュイ

 

(だが四宮に弱みを見せる訳にはいかない…!やるしか無いのか……っ!)

 

「わかった、俺に任せろ……」

「……」

 

(虫が怖いという感情など所詮脳が生み出した戯言……)

 

「…人無我法無我 万の事 皆以て 空言戯言 全ては無」

 

白銀は仏にも祈っていた

 

ガシャン! ガチャ!

 

「……ガシャン…?」

「…ガチャ…?」

「…ま、まさか…!?」

 

(…と、扉が……閉まってる…!?)

 

「……こりゃ…」

「…一本取られましたね…」

 

 

 

「……えーっと…?」

「肝試しは楽しんでもらえたかな?」キリッ

「えっ?うんドキドキしたよ」

「それは上々!実行委員として嬉しい限りです!」キリッ

「…いややっぱ待って、何その喋り方…変」

「ええっ!?」

 

《普段俺どんなふうに喋ってたっけ…?》

 

「…何を気にしてるのか、お姉さんに教えてごらん?」

「……」

 

「…なるほど、つまりみんなに嫌われたくないって事ね」

「そ…そういう訳では…」

「ムフフ…あのフータロー君がね〜」

「だから違うって!」

「……」

 

〔……〕

 

「……優しく接してあげれば良いんだよ、人それぞれだけどね」

「……優しく、ねぇ…」

 

《……だからこいつらは…白銀には懐くのか…》

 

「…どうしたの?」

「…い、いや……お前、明日の事聞いてるか?」

「……うん、なんか踊るみたいだね…私たち」

「……やめるか」

「……」

 


 

五つ子豆知識!

 

一花は女優の仕事を続行中!

だが、そこには新たな問題も発生していた…

 


 

「……ん〜…」

「壊せば何とか行けそうですが…」

「…あぁ、衝撃感知センサーがある。無闇に警報を鳴らせば楽しい林間学校が台無しだ。それに、学園の代表二人が問題を起こすなんて言語道断」

「ど、どうしましょう会長!」

「なんて事だ!!山奥の倉庫なんて誰も来ないぞ!」

「会長!私怖いです!」

「くそっ!」

「会長……!」クシクシ

 

(なんてな…またこんなあからさまな仕掛けしやがって…分かってんだよ四宮……普通に考えてこんな状況あるワケねーだろ!わかりやすいウソ泣きまでしやがって……さしずめ吊り橋効果を狙った作戦といった所だろ。だが……ここはその作戦に掛かったフリをして不安がってやる。そして隙を突いてこの作戦を逆に利用してくれる!)

 

「……」クスッ

 

〈お可愛いことですわね会長ったら…こんなあからさまな仕掛けをしてくるなんて……そこまで私と二人っきりになりたいのですね!ふふっ…そうそう都合よく扉が閉まる筈が無いでしょう。やり口が単純なんです……でも会長から積極的に来るなんて珍しい……へーふぅぅんそうですかぁぁ……さしずめ吊り橋効果を利用して私との関係を進めようという狙いなのでしょうが浅はかでしたね会長……ですが今日は特別にその作戦に乗っておいてあげましょう!〉

 

「会長……!私怖いです!」

「ちっくしょーう!!これからどうなってしまうんだ!」

 

両者ピンチを演じる!!

 

 

 

「…あ、四葉さぁ〜ん!」

「藤原さん!どうかなさいました?」

「いや〜会長とかぐやさん見ませんでしたか?」

「白銀さんと四宮さん?さー?私も一花と上杉さんを探してるんですけどー…」

「二人して何の話をしてたんですか?」

「五月さん!」

「五月〜一花と上杉さん知らない?」

「……え?」

「会長とかぐやさんもです!」

「……」

「あそうだ!これ藤原さんに預けときますね!私無くしそうなので!」

「…なんですかコレ?」

「蔵の鍵です!」

 

 

 

──が、実際ピンチであった!!

 

互いが互いの策略と思い込み事態の深刻さに気付いていない!

それどころか、わかり易いアタックにかなりテンションが上がっていた!

 

「会長……私たち助からないんじゃ……」

「大丈夫だ、俺がついてる」

「会長……」

 

(どさくさに紛れて可愛らしく袖なんか握りやがって、わざとらしい……)クククク

 

〈あーさわった!あーさわった!乙女の柔肌をここぞとばかりに触りましたね会長!〉ニヤニヤ

 

 

 

「……夜は冷えますね、会長」ドキドキ

「……」

 

(こいつビックリする位誘ってやがる!)

 

白銀はかぐやとのハグを想像した

 

「……四宮」

 

(仕方ない乗ってやるか!)

 

「……っ」

 

〈えっいきなり!?もっと前振りとか……〉

 

「お前もそのつもりなんだよな」

 

〈会長はそのつもりなんだ!!〉

 

かぐやは四宮とのキスを想像した

 

だが──

 

〈私はそんなつもりじゃ……!!〉ヨロッ ガッ!

 

「…あぶなっ!」

「…っ!」

「……」

「……」

 

〈あ……怖い……〉

 

キスが、おとぎ話の中だけのものではないと

かぐやは今更ながら気づいた

 

〈怖い…けど……今、目をつぶったらどうなるの?〉

 

「…………っ」

「…っ!」ドッドッドッ

 

キスが、おとぎ話の中だけのものではないと

白銀は今更ながら気づいた

 

ガランッ! バキッ!

 

「…っ!?」

「な、なんだ!?」

 

(さっき四宮がよろけたせいで立て掛けておいた丸太が!?)

 

ビー! ビー! ビー!

 

「…っ!?」

「…会長!?これって…!?」

 

『センサーが衝撃を感知しました。30秒以内にアンロックしてください。解除されない場合、直ちに警備員が駆けつけます』

 

「まずい!誰かが来る前に逃げるぞ、四宮!」

「は、はい!」

 

ビー! ビー! ビー! ビー ビー…  ガチャ

 

「…っ?」

 

「鍵ならここにありますよ〜!」

「藤原!?」

「藤原さん!?」

「…えっへん!」

 


 

生徒会豆知識!

 

恋愛頭脳戦を仕掛けるのは大体がかぐやのため、

今回のかぐやはかなりテンションが上がっていたぞ!

 


 

「……やめるか」

「……」

「…ほら!その方がお前にとっても不都合が無いから、丁度良いんじゃ……」

「……」ツーー

 

中野一花の涙……

それを見た上杉は何を思ったか……

 

「え…一花?」

「あれ…なんでだろう…違うの、ごめん…」

「…どどどどどうしたんだ急に……」ガタガタ

 

滅茶苦茶動揺した!

 

「……」

「……」グスッ

 

《よくわからんが……優しく…優しく…》

 

「…っ!」

「……」

「…え?」

「使えよ、俺の上着。寒いだろ」

「……」

「……誰も見てないから」

「…っ」

 

〔…そうだ、フータロー君はいつもそう…〕

 

「……あはは…気を使わせちゃって悪いね」

「……別に」

「……」

「……」

 

〔…なんで泣いたか聞かないでくれるんだ。興味無いだけかな?〕

 

「……」

 

〔ほんと、なんで泣いちゃったかなー…〕

 

「……いいよ」

「…?」

「キャンプファイヤーのダンス。私との約束は無かったってことで」

「……おう…」

「…さぁ!みんなが心配する前に戻ろう!」

「…あぁ…ん?いや待てそっちは!」

「…え?」

 

「…あぶねぇ!」

「うわっ!」

 

ゴロゴロゴロ

バサバサバサバサ バキッ! バキッ!

バッシャーン!!

 

「……いてて」

「……大丈夫か?一花」

「…っ!フータロー君!血!血が出てる!」

「かすり傷だ、それより良かった……」

「……え?」

「……お前が無事で…」

「…フータロー君…?」

「……」

「…フータロー君!!」

 

次回に続く




次回

第19話「中野四葉は追いかけたい」


次回投稿まで暫しお待ちください
色々と立て込んでてかけてません


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第19話「中野四葉は追いかけたい」

皆様、お待たせ致しました
いいや、お待たせしすぎてしまったのかもしれません

この節は誠に申し訳ありませんでしたm(_ _)m
この度より、今作の連載を再開したいと思います。以前のような投稿スピードとはかなり違くなると思いますが、なるべく早いペースで書きたいと思っております。

よろしくお願いしますm(_ _)m



「……」

 

《最悪だ……》

 

あの時、足を踏み外した一花を庇った上杉

斜面を転げ落ち、小川に着水

 

上杉は軽いケガで済んだが、その代わり冷水を浴びてしまい体調が優れていないのだ

 

《……最終日か…だるいし寝よう》

 

「上杉さん!」ガラッ!

「うおっ!四葉!?」

「自由参観だからって逃がしませんよ!スキー行きましょうスキー!!」

部屋の中に突然入ってきた四葉

上杉を無理やり連れ出して外へと出て行っしまった

 

 

 

「さぁ!滑り倒しますよーっ!」

「寒いし寝かせてくれ…というか俺滑れねーし」

「…何故俺まで……」

通りすがりにいた白銀も巻き込まれた

 

「藤原さんに頼まれたんです!白銀さんのスキー特訓は任せましたって!」

「……」

 

白銀は捨てられた

 

「つーか、四馬鹿はどうした?」

「一花は体調を崩して五月が看病してくれてます」

「あんな目にあったんだ、当然といえば当然か」

「…?」

「…上杉、五月から聞いたが……大丈夫なのか?」

「何がだ?」

「……いや、なんでもない」

「…お二人共何言ってるんですか?それより二乃はもう滑ってて私が教えるのは……あ、来た」

 

四葉の目線の先、ゴーグルとニット帽を被った女が立っていた

 

「……?」

「どーも」

「……」

「…誰だ!?」

「……三玖」

「み、三玖か…顔だけだと本当に分からないな」

「…っ」

 

〔……ち…近い…〕

 

「普段教わってばかりの私ですが今日は教えまくりますよ!」

 

 

 

昨夜──

 

「…フータロー君…?」

「……」

「…フータロー君!!」

「一花!?」

「五月!」

 

「……大丈夫です。息はありますし、怪我もそこまで酷くはないように見えますが…」

「……フータロー君…」

「…一花…貴方は上杉君の事を、どう思っているのですか?」

「……え?」

「…初日の旅館での……あれは一花でしょう?」

「……バレたか……いや!変な意味があってやったんじゃ無いよ!?ちょっとイタズラしたくなっただけって言うか…」

「変な言い訳はやめてください。分かりましたから」

「……」

「…ですが、私たちがこの方と仲良くなるのは、少々早すぎるのでは?」

「…え?」

「この方と出会って約半年……あの日食堂で勉強を教えてもらおうとした時には考えもしませんでした…」

「……そんなにフータロー君は悪い奴に見えるかな?」

「そ、そういう訳では…」

「……」

「…ただ男女の仲となれば話は別です。私は彼のことを何も知らなすぎる…」

「……」

「……男の人は、もっと見極めて選ばないといけません」

「……ん、ん〜…」

「ハッ!?フータロー君!?」

「……運びましょう。2人なら何とかなる筈です」

 

 

 

「……お、おぉ…」

 

《初めて滑るが……なかなか行けるな…》

 

「うわっ!」ドテーン!

「……大丈夫か?白銀」

「……問題ない」

 

《頭から雪被ってんぞ……》

 

「わーぎこちなー」

「……?」

「やっほ〜寒いね〜」

上杉の前にゴーグルと深く被ったフード、そしてマスクをつけた女が現れた

 

「……ほんとに誰だ!?」

「あはは…一花だよ」

 

(……!)

 

「体調はよくなったのか?」

「っ…ゴホゴホッ…まだ万全じゃないけど心配しないで」

「一花ー!この三人全然言ったこと覚えてくれない!」

「「それは俺がいつもお前に思ってることだよ!」」

同時にツッコむ上杉と白銀

 

「…っ!じゃあ楽しく覚えようよ」

「…?」

「おいかけっこ、上手な四葉が鬼ね!」

「お、おい!」

「はーい!」

「……っ」

 

《いや待てよ…これは三玖の好感度を上げるチャンス!ならば俺がする行動はただ一つ!》

 

「三玖!俺と一緒に……って、あぁっ!」

「……」

しかし、三玖は先に行ってしまった

 

 

「……く…くくっ…!」

そんな最中、苦戦する白銀に誰かが忍び寄る…

 

「…っ…なんだ一花か…」

「……いいえ、私は一花ではありません…」

「…その口調…まさか五月か!?何故一花の変装を…?」

「私は彼を見極めなければいけません……白銀君…私に少しだけ協力していただきませんか?」

「……」

 


 

五つ子豆知識!

 

中野五姉妹の得意技!それは姉妹への変装!

特に、三玖が1番得意としてるぞ!

 


 

「中野二乃は探したい」

 

「…げっ!…会長…!」

「げっ!…とはなんだ、藤原書記」

「いえいえ、ただの挨拶の一種ですよ~…」

「それが挨拶とカウントされるなら、欧米のキッスはどういう扱いになるんだ?」

「……友達契約交渉?」

「……はぁ…」

大きな溜息を付く白銀

 

「…そういえば、四宮は…?」

「あ~四宮さんなら友達と滑るみたいですよ!良かったですね~一緒に滑る羽目にならなくて~…」

「ん?そうか?」

「…今のはかぐやさんに向かって言ったんです。ところで会長、私に何か用ですか?」

「…あぁ、ある奴から依頼を受けてな…お前も協力してくれないか?」

 

 

 

「…はぁ…」

 

〈結局一人になってしまいました……でも、今会長と顔を合わせたら…〉

 

昨夜、白銀とかぐやは事故でありながらも

キス寸前まで行くという大イベントが発生!

一晩たってもかぐやの中に刻み込まれた記憶は何度も反芻し、かぐやの脳内は白銀御行によって浸食されてしまったのだ!

 

「…ちょっと!待ってよ!」

「…っ!」

かぐやの前を通り過ぎる中野二乃とフードを深く被った男子生徒

 

「……」

 

〈今走っていったのは、二乃さんと…上杉さん?なぜあの二人が追いかけっこを?〉

 

「キンタロー君!!」

「…?」

 

〈…はて、キンタロー…?……これはまた、良くないことが起こりそうですね…〉

 

様子を探るため、かぐやは二乃の後を追うことにした

 

「…あれ~…どこ行っちゃったのかしら…」

「二乃さん」

「うわっ!四宮さん!?」

「人探しですか?お手伝いしますよ?」

「ほんと!?助かるわ」

 

〈…二乃さんは恐らく上杉さんをキンタローなる人物と勘違いしている。これは秀知院学園生徒会副会長として、偵察する必要がありますね!〉

 

ホントは独りにならない口実が欲しいだけである

 

「…ところで、その人はどのような特徴があるのですか?」

「えぇっと…」

「……」

 

〈見た目で間違えたとは思えません……もしや上杉さんも中野さんたちみたいに変装するスキルを身につけたのでしょうか…?〉

 

「金髪でぇ、頭が良くてぇ、優しい人!」

「……金髪で…頭が良くて…優しい…」

「…白銀の事じゃ無いわよ」

「…え、えぇ!分かってますよ!?勿論!」

 

「…成程、つまり上杉さんのご親戚の写真を見て、更に実際に彼が現れ、貴方はその彼に想いを伝える為に、ダンスに誘った訳ですね?」

「えぇそうよ、完全なる一目惚れ。好きになっちゃったものは仕方ないわ」キリッ

「凛々しい顔で言ってますけど…貴方も結構乙女ですね…はぁ…キンタローさんですか…」

「えぇ、いい名前よね彼!」

「…は、はぁ……」

 

〈風太郎とキンタロー…安直すぎやしません!?〉

 

「…そういう四宮さんはどうなのよ?」

「…え?」

「白銀と踊らないの?」

「…っ」

 

途端に脳内に再生される記憶

かぐやは恥ずかしくなって手で顔を覆ってしまう

 

「……っっ///」

「…えっ?何!?何なの!?」

「…い、いいえ…お気になさらず…」

「……はぁ…で、彼を探すの手伝ってくれるんでしょ?」

「…え、えぇ!勿論です!」

「…彼の行きそうな場所って何処かしら…?」

 

一方その頃

 

「…おかしい…ここに五月が居ないとは…」

「……失礼…」

 

一花からの依頼で五月を探すことになった上杉と三玖

 

「…お…上杉、三玖」

そこに白銀が現れる

 

「白銀…五月を見てないか?」

「……いや、見てないな。」

「……そうか…」

「会長〜!」

食堂を出ると、そこに藤原が走って来た

 

「五月さん、どのコースにも居ないです〜!」

「…残るは上級者コースだけか…上杉」

「…ハァ…ハァ」

「…おい上杉!汗が凄いぞ?やっぱり昨日のが…」

「…大丈夫だ、この位なんて事ない」

「……だが」

 

《…やはりらいはから貰ってたか、という事は一花のも…悪いことしたな…》

 

「…会長…これでホントにいいんですか…?」ボソッ

「…あぁ、多分な」

 

(…さて、あとはお前次第だ…五月)

 

 

 

「…上級者コース?」

「えぇ、これだけ廻っても会わないのであれば、そこにいるのが妥当かと…」

「じゃあ早速向かって見るわよ!」

「あ、待ってください!」

 

キンタローを見つける為、二乃とかぐやは上級者コースへと向かった

 

「……居ないわねぇ」

「そうですね……ん?」

 

〈…あれは…?〉

 

「…あれ?一花!?」

「あれ、二乃?…と、四宮さん」

「どうしてこんなとこに居るのよ?五月から聞いたわよ、あんた昨日小川に落っこちて風邪引いたらしいじゃない!病人は寝てなきゃダメでしょ?」

「ごめんごめん、私はその五月ちゃんを探してたんだ」

「…五月?……そういえばずっと見てないわね…」

「最後に見たのはいつですか?」

「あたしは朝一で出て来ちゃったからよく分からないわ…一花、あんた確か五月に看病して貰ってたんでしょ?何処にいるか分からないの?」

「…うん…だったら探してないし…」

「…そ、そうね」

「…あの、二乃さん?キンタローさんは探さなくて良いのですか?」

「何言ってるのよ四宮さん!家族の方が心配になるのは当たり前でしょ!?」

「…っ」

「一花!四葉と合流して皆の元に帰るわよ!」

「え?う、うん!」

「……」

 

〈……〉

 


 

「白銀御行は見届けたい」

 

「……遭難?」

「…あぁ、いくら広いゲレンデとは言え、八人がこれだけ動き回って会わないのは不思議だ」

 

上杉たちと合流した二乃、一花、四葉、そしてかぐや

そこで、ここにいる誰もが五月と接触していない事に気付き、上杉は妙な胸騒ぎを感じた

 

「…ちょうど入れ違ったのかも、私見てくるよ」

「ここ、まだ見てないかも」

去ろうとした一花を他所に、四葉が上杉が開く地図に指を指した

 

「…えっ」

「…こっちは…」

「えっと…最初にカイチョーが教えてくれたよね。まだ整備されていないルートで危険だから立ち入り禁止って…」

「……」

 

(……)

 

「……ホントに居ないかコテージ見に行く」

「私は先生に言ってくるよ!」

「ちょっと待って!もう少し捜してみようよ」

 

《……一花…》

 

「なんでよ…場合によってはレスキューも必要になるかもしれないのよ」

「えっと…五月ちゃんもあんまり大事にしたくないんじゃないかなーって」

 

《……》

 

「大事って…呆れた……五月の命がかかってんの!気楽になんていられないわ!」

「……ごめんね」

 

(……二乃…)

 

「…何処にいる…五月…」

「フータローもう休んだ方がいいよ」

「……っ」

「聞いてる?フータロー…フータロー…!」

「…っ!」

 

(…上杉……そうだ、導き出せ…)

 

「もういい、あたしが先生を呼んでくるわ」

「待ってくれ、俺に心当たりがある」

「心当たりって…」

「大丈夫だ、恐らく見つかる」

「……信じていいのよね?」

「あぁ……一花、付いてきてくれ」

「…っ!」

 

一花連れて行く上杉

そんな彼らを見て1人男が微笑んだ

 

「……もう大丈夫のようだな」

「大丈夫って何よ?まだ分からないじゃない…」

「いや、あの一花の正体は五月だ」

「えぇ!?」

「証拠に、一花に電話をしてみろ」

「……」プルルル

『…二乃?どうしたの?』

「一花!あんた今何処にいるの!?上杉と一緒!?」

『…え?何言ってるの二乃?私は三玖に言われて部屋に戻ったし、フータロー君も居ないよ?』

「…嘘じゃないのよね…?」

『なんで二乃に嘘を…ゴホッゴホッ…ごめんごめん、まだ治ってなくて』

「…いや、部屋にいるのならそれでいいわ。安静にね」

『うん、心配掛けてごめんね〜…』ピッ

「……なんで教えてくれなかったのよ」

「それが彼女自身の願いだったからだ」

「…え?」

「どういう意味?カイチョー…」

「……あの時…」

 

 

 

「……上杉を見極める?」

「はい、彼は私たちと関わりはじめまだ約半年…しかしその関係は少し深く行き過ぎてはいませんでしょうか?」

「…と言うと?」

「…薄々気付いてはいましたが、私たちの姉妹は彼に心を開き始めています」

「いい事ではないか?」

「そうですが…男女の仲となると話は別…もっと彼を見極めなければいけないんです」

「……それがお前の責任か?」

「…え?」

「…ならば…周知院学園生徒会会長として、役員の責任は会長の責任。俺もそのお前の責任、担ってやるさ」

「……白銀君…」

 

 

 

「……はぁ…馬鹿ねあの子は…」

「馬鹿にだって考えはある。俺は五月のその責任感の強さに惹かれて生徒会メンバーへと選出した…なんだか五月が入って来たばかりの頃を思い出してな、未熟ながら協力させて貰ったよ」

「…あんたも大概バカね」

「え?」

「…まぁでも……納得だわ」

「……」

 

(生徒会会長として、生徒たちの成長を見届けるのも俺の責務……五月、あとは頑張れよ…)

 

その後、風邪が悪化した上杉が連れ込まれ

白銀たちは不穏な空気のまま、3日目(最終日)の夜を迎えた

 

本日の勝敗結果

四葉の負け

(自力で全員を見つけられなかった為)




次回

第20話「四宮かぐやは踊りたい」


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第20話「四宮かぐやは踊りたい」

ご無沙汰しております
よろしくお願いします。



「……」

「あれ、二乃どうしたの?」

「男の子と踊るってテンション上がってたじゃん」

「……フられちゃったわ」

 

3日目(最終日)夜

 

最終日の夜のプログラムはキャンプファイヤー

生徒たちが火を囲み、これまでの思い出に区切りを打つ大事な行事でもある

 

 

 

「え!?彼と会ったの!?」

「いいえ、上杉さんからの伝言です」

「あぁ…」

数分前、かぐやに呼び出された二乃は

キンタローが来れない事を告げられた

 

「外せない用事が出来たらしく、スキー場でたまたま会って頼まれたらしいです」

「…やっぱりあれ、彼だったんだ」

「……」

「…まぁ、待つだけ待ってみるわ」

「……最後に一つだけ…「元気出せよ」と、彼は言っていました」

「……」

 

 

 

「……」

 

〔1番元気の無いあんたが言うなっての…恩着せがましく心配なんてして……少しは自分の心配しなさいよ…〕

 

【……信じていいのよね?】

【あぁ…】

 

「…ムカつく」

 

「…あれ?二乃どこ行くのー?」

「ちょっとトイレ!」

「キャンプファイヤーもうすぐ始まるよー?」

 

 

 

「……」

「……一花、大丈夫?」

「三玖…うん、何とかね…」

焚き火の近く、階段に座っていた一花に三玖が近付く

 

「……」

「……生徒会ももうすぐ解散だねぇ…」

「…そうだね」

「生徒会が解散すれば、またあの勉強地獄の日々が始まるのかなぁ…?」

「…いつも勉強地獄だけどね」

「あはっ…私はバイトで最近は行けてないからなぁ〜…」

「……ねぇ一花…」

「ん?」

「…学校辞めるって、ほんと?」

「…っ!……誰から聞いたの?」

「フータロー…意識が朦朧としてる時に、一花の声が聞こえたんだって…」

「……あちゃ〜…やらかしたなぁ〜…」

「……」

「……分かんない…仕事が忙しくなれば、その内辞めるかも…」

「……」

「それは得策とは言えんな」

「…カイチョー君!?」

すると、2人の背後に白銀が現れる

 

「確かに夢を追いかける事は素晴らしい…しかし、それでお前の学生園生活がおじゃんになってしまえば元も子もない」

「…それは……」

「……しかし、この学園に未練がないのであれば…辞めてもいいんじゃないか…?」

「……カイチョー…!」

「……未練…か…」

すると、三玖が一花に振り向いた

 

「……一花、私は…フータローが好き」

「…っ」

「だから好き勝手にするよ、だから一花も…みんなも…」

「……」

「お好きにどうぞ。負けないから」

「……三玖…」

「……フッ…覚悟を決めたか、三玖」

「うん、カイチョーも応援してよね」

「そうはいかない、俺はいつでも中立の立場だからな」

「……何それずるい」プー

「好きに言えばいいさ…ところで、2人に質問なんだが」

「…ん?」

「どうしたの?」

「……四宮何処にいるか知らないか?」

「……」

「……」

 

 

 

「……」

「……四葉さん…?」

上杉のいた部屋に入った藤原

中には既に四葉が立っていて、上杉のしおりを持っていた

 

「…これ、上杉さんのしおり…付箋やメモがたくさん…こんなに楽しみにしてたのに…」

「……」

「…具合の悪い上杉さんを無理に連れ回して、台無しにしちゃいました…」

「……」

「…私が余計な事をしなければ…」

「……そんな事ありませんよ〜」

「…え?」

藤原は四葉から上杉のしおりを取り上げ、ページをパラパラとめくった

 

「だって……」

「…っ!」

メモの中にいくつも書かれている、「四葉」の文字

 

「これって直近の話ですよね〜?具合が悪くてもこんなメモを残すくらいです!無駄では無かったと思いますよ!」

「……藤原さん…」

「だから元気出して下さい!」

「…本当かな…三玖は寂しい終わり方って言ってたけど…楽しかったのでしょうか?」

「…さぁ〜…それは本人に聞かなきゃ分かりませんよ〜?」

「…私!上杉さんに聞いてきます!」

「はい!」

上杉の部屋を走って出ていく四葉

その後をゆっくり出てきた藤原は気付いた

 

「五月さん!?」

「…すいません、勝手に聞いてしまいました…」

「…五月さん!貴方も行ってください!」

「え!?今からですか!?」

「だって、五月さんだって上杉さんに聞きたい事があるんですよね!?」

「…そ、それは…」

「大丈夫です!きっと上杉さんなら、皆さんの話を聞いてくれますよ!」

「…そうでしょうか…」

「……上杉さんは、貴方を信じてくれましたよね?」

「…っ」

「…今こそ、上杉さんを信じるべきです!」

「……藤原さん…分かりました!私も四葉を見習って行ってきます!」

「はい!行ってらっしゃいですっ!」

 


 

「……ハァ……ハァ…」

 

(…四宮…何処にいるんだ…?)

 

 

 

「……」

「…かぐや様」

「……早坂…なんの用?」

「何してるんですか?会長と踊る約束じゃ…?」

宿舎から少しだけ離れたところ、かぐやは誰もいないところで、早坂に呼び止められた

 

「…今更何言ってるの?今から行ってもどうせ間に合わないわ。それに…」

「……それに…?」

「……っ…やっぱり昨日の事が忘れられないのっ!こんな状態で今会長と会えば!緊張してまともに喋れないわぁ!」

「……はぁ…」

早坂からは、呆れと安堵

両方のため息が1度に出た

 

「……かぐや様…この林間学校が開ければ、生徒会もすぐに解散…本当にこれが最後で良いんですか?」

「……それは…っ」

「……一生に一度の林間学校です…後悔の無いように、お願いしますね…」

そうしてかぐやから離れる早坂

 

「……分かってるわよ、そんな事…!」

 

〈……でも……でも…!〉

 

「…四宮!」

「…っ!?会長!?」

「……見つけたぞ」

「…っ」

 

「……どうしてここが?」

「…何となく、四宮が行きそうなところを手当り次第当たってみたんだ。見つかってよかった」

「……」

かぐやと白銀は並びながら座り込んだ

 

「…なんだか、夏祭りの時を思い出すな」

「…えぇ…あの時、会長が私を見つけてくれていなかったら…私はみんなとあの大きな花火を見ることは出来ませんでした…」

「……みんなで月見もしたな…」

「…はい…でも、あの時の会長は本当にどうかしていました…」

「や、やめろ!思い出させるな!」

「…ふふっ…でも、今日も月が綺麗に見えますね」

「…三日月だがな…」

「……」

「……」

 

暫く静かな時間が流れる

少し肌寒い空気が、かぐやの頬を冷やした

 

でも、心の温もりは

いつまで経っても冷めてはいなかった…

 

「……四宮」

「…はい…?」

白銀は立ち上がり、かぐやに手を差し伸べる

 

「…っ」

「…四宮、約束…覚えてるか?」

「…勿論……ですが…」

「…っ?」

かぐやは伸ばした腕を再び戻した

 

「……四宮…?」

「…本当に良いんでしょうか…?」

「……?」

「…この林間学校が開ければ、生徒会は解散です。ここで会長と踊るのも、ひとつの思い出となって、いい結果になるかもしれません…ですが…」

「……」

「藤原さんや石上君…中野さんや上杉さんがいない今、私たちだけが楽しんで本当にいいんでしょうか…?」

「……四宮…」

「確かに私は、後悔しない林間学校を望みます…ですが、私は…」

「……」

白銀は目を深く閉じ、再び開いた

 

「……俺は生徒会長として、みんなに後悔のない林間学校を、楽しい林間学校を、愉快な林間学校を…一生に一度の思い出を残して欲しかった…」

「……」

「……でも、それじゃ意味が無いんだよ!」

「…会長」

「…俺はみんなの為を思ってこの林間学校を成功させたいと思った…だけど本当は、俺が…俺たちが楽しまなきゃダメなんだよ!」

「…っ」

「…一生に一度の思い出は、今しか作れないんだ!だったら…今、俺たちには最後までこの林間学校を楽しむ権利がある筈だ!」

「…っ」

「俺たちは秀知院学園生徒会会長、そして副会長…だがその前に……俺たちはこの学園の生徒だ!」

「……っ!」

「だから、生徒として…俺はこの林間学校を楽しみたい…他でもない、お前と…」

「……会長…」

「……四宮…」

白銀は再びかぐやに手を伸ばす

 

(……紳士的に…)

 

「…俺と、踊ってくれないか?」

「……っ」

風邪が大きく吹く

遠くに見える筈のキャンプファイヤーの火が、とても大きく見えた

 

「……」

 

四宮かぐや

これまでに、幾多もの男性から声を掛けられたがその殆どがかぐやの容姿や四宮家の財産目的から来る接触

天才であるかぐやはそれを全て把握し、その殆どの男を切り捨てて来た

 

しかし、そんな中現れた男

それが白銀御行である

 

〈……こんなにも紳士的な眼を…〉

 

【眼は人の心を映す鏡みたいなものですから】

 

〈……早坂…貴方はいつも正しいわ…〉

 

「……一生に一度の思い出…大切なのは今…」

「……」

「……いいですか会長、私は会長の願いにはちゃんとこう答えるんですから」

「……え?」

「…はい、喜んで」

「……」

白銀の手に優しく置かれるかぐやの小さな手

 

「……ふふっ」

「……っ」

「…会長」

「…四宮」

「…楽しみましょう!林間学校!」

「…あぁ…!」

 


 

「早坂愛と四宮かぐやは封じたい」

 

「…あ、そろそろフィナーレですねぇ!」

「あれれ〜?千花ちゃん踊る相手いないの〜?」

 

早坂愛 対F(藤原)仕様!

 

「「「フィナーレまで!カウントダウン!」」」

 

「早坂さん!?」

「しょうがないなぁ〜私が代わりに踊ってあげるね〜!」

「え?えぇっとそれは…!?」

 

「「「 3!」」」

 

(少しでもかぐや様のサポートをしなければ…その前にこの対象Fの行動を…!)

 

「「「 2!」」」

 

「あわわわっ…」

 

「「「 1!」」」

 

(…封じる…!)

 

「……早坂さん…」

「……?」

 

「「「 0!」」」ワァァァァァァ

 

「私たち…将来を添い遂げる仲になっちゃいましたね〜」

「……えっ…?」

 

 

 

「「「フィナーレまで!カウントダウン!」」」

 

「……会長、お上手ですね」

「ま、まぁな…」

 

(藤原に特訓して貰った甲斐があった……ありがとう!藤原!)

 

「「「 3!」」」

 

〈はぁぁ…なんだか会長と踊っていると不思議と寒くないわ……どちらかと言うと熱くなってきたわ…〉

 

「「「 2!」」」

 

〈フィナーレを迎えたら少し涼まないと…流石に汗もかいてきたし……ん?汗?〉

 

「「「 1!」」」

 

〈……私の…手汗!〉

 

「「「 0!」」」ワァァァァァァ

 

「いやぁぁあ!」

「どわぁっ!」

急に投げ飛ばされる白銀!

自身の手汗に気付いたかぐやは白銀を背負い投げしたのだ

 

「…!?…!!??」

「…か、会長……ご、ごめんなさぁぁい!」

走り去るかぐや

白銀はひとりぼっちにされた!

 

「えっ…まっ…ちょっ……し…四宮ぁぁぁ!」

 

本日の勝敗結果

白銀の負け

(かぐやに背負い投げされた挙句、フィナーレを迎えれたのかどうかも微妙な為)




次回

第21話「生徒会は見舞いたい」


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第20話 おまけ

「パパパパーン パパパパーン」

 

上杉らいは

現在、高校生

 

上杉家の貧困生活を支えるべく、今日も朝から自炊をしている

 

そんな彼女のポケットに入っているスマホがバイブレーションした

 

「…はーい、もう会場についたー?……えーっ!なんでそんなもの忘れるの!もう!もっていくけどさー…」

『すまん、頼んだ…らいは』

「もう大人なんだからしっかりしてよ、お兄ちゃん」

「……なんだ、風太郎から電話か?」

「結婚指輪を家に忘れたって、こんな新郎他にいないよ」

「…ふっ…血は争えんな」

「もう一人いるんかーい!」

 

「結びの伝説 2000日目」

 

「…わぁ…一日でこんなに着替えるんだ…」

結婚式場に到着したらいはは、大量に用意されたウェディングドレスを見て感動していた

 

「いつか私も着る日がくるのかなー…」

 

「それでは、髪を上げますね」

「お願いします」

 

「…っ」

新婦控え室

少しだけ開いたドアから花嫁の後ろ姿を見て、らいははまたもや感動していた

 

「……」

「あーいたいた…こんな所で何やって…」

「……」スピー

「……はぁ…今日が特別な日だってわかってるのかな…今から結婚するんだよ?でもお兄ちゃんは超現実主義だからなぁ〜…そういうの気にしてな……」

らいはは机で寝ている風太郎の手首に着いていた

そう、あの日に渡したミサンガに目がいった

 

「…懐かし…これいつ作ったんだろ…まだ持ってたんだ」

「……」スピー

「……結婚おめでとう、お兄ちゃん」

 

 

 

「新郎、入場」

鐘の音が鳴り、協会のドアが開く

そこから白いタキシードを着た風太郎が深くお辞儀をして入ってくる

 

「……」

「…おーい…上杉さーん」

「上杉先輩」

「……藤原…石上…」

「えへへ!来ちゃいました〜」

「おめでとうございます、上杉先輩」

「…あぁ、ありがとうな……あいつらは?」

「……さぁ〜?今頃何処にいるのか…」

「…きっと、遠くから見守ってますよ。あの二人なら…」

「……あぁ」

バージンロードを進む風太郎

その背中を見て、石上は思った

 

「……ここまで、長かったですね…ホントに……でも、よくぞここまで来ました」

「石上くん何様目線ですか?石上くんだって結婚してないですよね〜?」

「藤原先輩のノーデリカシーも相変わらずですねー、だから彼氏も出来ないんですよ?」

「ノーデリカシーはどっちですかぁ?それに、私にはかぐやさんがいれば十分ですから!」

「……四宮先輩たち、元気ですかね?」

「……ふふっ」

 

 

 

「…それより知ってますか?実はあの二人…」

「はい、会長から聞きましたよ…あの二人、林間学校の最終日に──」

 

「新婦入場──」

「……」

 

あの時のことは、正直よく覚えていない

だが、災難続きだった林間学校には、不思議と嫌な覚えもなかった

 

結びの伝説

キャンプファイヤーの結びの瞬間、手を結んだ2人は

生涯を添い遂げる縁で結ばれるという

 

「……」

 


 

「えぇーっ!?みんな来てたの!?」

「し、静かに…っ」

立ち入り禁止になった上杉の部屋

しかし、結局全員集まった中野たちであった

 

「なんであんたたちがいるのよ!?」

「二乃こそ意外」

「あ、あたしはよく効くお守りを貸そうと思っただけ!」

「私たちもフータロー君が心配で来たんだよね、三玖」

「うん…」

「えへへ!なんか嬉しいな〜全員で同じ事考えてたんだね!」

「あたしは違うって言ってるでしょ!」

「……上杉君」

寝込む上杉の傍による五月

 

「みんな、貴方に元気になって欲しいと思っています。上杉君がどんな人なのか、私にはまだよく分かりませんが……目が覚めたら、良ければ…」

「……」

「…教えてください、あなたのことを」

 

「「「フィナーレまで!カウントダウン!」」」

 

「「「 3!」」」

 

「「「 2!」」」

 

「「「 1!」」」

 

「「「 0!」」」ワァァァァァァ

 

「…あの時もずっと耐えてたんだよね、私も周りが見えてなかったな」

「らしくないこと言ってないで早くいつもの調子に戻りなさい」

「私たち五人がついてるよ」

「私のパワーで元気になってください!」

「この三日間の林間学校、貴方は何を感じましたか?」

上杉の五本の指に握られる中野たちの手

一人一人が彼にエールを送っていた

 

「……」ムク…

「わっ」

「起きた…」

「元気になったんですね」

「おまじないすごーい!」

「……るせぇ…」

「「「「「え?」」」」」

「うるせぇ!寝られないだろぉ!」

「わー!」

「あはははは!」

 

「……」ムカムカ

 

ほろ苦い思い出さえ

幸福に感じるのも

多分みんながいたから

 

今なら言えるかもしれない

あの時言えなかった、一言

 

 

 

「……」

「……っ」

 

ウェディングドレスを着た花嫁が風太郎の目をじっと見る

 

「……」

 

傍にいてくれて

ありがとう



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第21話「生徒会は見舞いたい」

「……」

『今日の最下位はごめんなさ〜い!牡羊座のあなた』

「……」

『友達と会うと運気アップ!風邪が流行っています、人と会う際はしっかり対策を!』

「確かに…最下位で異論はないな…」

 

上杉風太郎

現在、入院中

 

林間学校が始まる前にらいはの風邪が既に移っていた上杉

それに度重なるような災難が

彼の風邪を悪化させ、林間学校明けすぐに入院する羽目になったのだ

 

「……ハァ…ハァ」

すると、上杉の病室に息を切らした二乃が入って来た

 

「…っ…二乃…」

「誰もいないわね…」

「な、なんだ…俺の部屋だぞ」

「いいでしょ…誰がお金払ってると思ってんのよ」

「これは大袈裟だろ…看護師の間では、委員長の隠し子じゃないかとの噂で持ち切りだ」

「仕方ないでしょ、あの子たちあんたが死ぬんじゃないかってくらい心配してたんだから……っ…」

 

二乃は気付いた

林間学校最終日に渡したミサンガを、上杉が付けていた事を…

 

「入院費を払ってくれたのもどうせお前たちの親父だろ」

「そうよ!つまり私たちが払ったも同然よ!」

「うわー…お嬢様っているんだ…」

「……」

「…どうした?」

「…いや、なんでもない…良い?私がいる事は黙ってなさい!」

二乃は病室のカーテンに隠れた

 

「……?」

「上杉さん!ここに二乃さんが来ませんでしたか!?」

「……藤原…」

「お久しぶりです、上杉先輩」

「石上…なんでお前らが…」

 

《…ったく…誰が来いって言ったよ…》

 

「上杉さーん!」

「やっほー林間学校ぶりだね〜」

「……体調はどう?」

次々と揃う生徒会のメンバー達

 

四葉は元気ハツラツな笑顔で上杉に近付いた

 

「良かった!生きてて一安心です!」

「勝手に殺すな」

「…ん?やはり二乃の匂いがします」ピコーン

「本当ですか!?四葉さん!」クンクン クンクン

「…あいつそんなに体臭がキツイのか…可哀想に…」

 

四葉の匂い嗅ぎの跡をおう藤原

その二人を見た上杉が放った言葉に二乃が反応した

 

〔香水…っ!〕

 

「上杉先輩、聞きましたよ?林間学校前から体調悪かったらしいですね」

「まぁな……そういやぁあの二人は?」

「二人はまだ仕事があるみたいで…もう少ししたら見舞いに来てくれると思いますよ?」

「そうか……」

上杉と石上の会話もままならず、一花と三玖が割って入ってきた

 

「いや〜一時はどうなるかと思ったよ〜」

「…回復して良かった」

「おう、一花も具合治ったのか?」

「うん!もうバッチリ!あ、あと、これ休んでる間のプリント。預かっちゃったけど渡せて良かった」

「ふーん…」

「安心してフータロー、一花ちゃんと学校行ってるから」

「ちょっ!三玖ぅ〜!」

「ふっ…所詮その程度の覚悟か」

「もー!また意地悪言うんだからぁ…」

 

〔学校なんてつまらないとこ、すぐ辞められると思ってたけど…もう少しこのままで…〕

 

「……」

 

〔未練が、出来ちゃったから…〕

 

「……なるほど…結構数学の範囲が広いな…」

「……」

 

〔無愛想で、気が利かなくて、意地悪……なんで、キミなんだろうね……〕

 

「あ!二乃いた!」

「二乃さん見つけました!」

「あんた達犬か!」

「ほら行きますよー!」

「じゃあ私たちも…」

「フータローも早く治るといいね」

「上杉先輩、お大事に」

6人は病室を去って行き、上杉は再び一人ぼっちになった

しかし

 

「……」

 

《…あれっ……なんだ…?少し楽になってる…》

 

彼の心の中は、いつもより晴れていた

 


 

「中野五月は聞き出したい」

 

「勉強が遅れて不安かな?君は学年三位の秀才らしいじゃないか、少しくらいわけないだろう…」

「そうですね…俺は良いんですが……俺が教えてやらないといけない馬鹿たちがいるんです」

 

診察室にて、上杉は問診を受けていた

 

「…そうかい、じゃあ診察はこれで…」

「お、押さないでよ!」

「……ん?」

廊下を見ると、先程の6人が揃っていた

 

「あいつらまだいたのか……」

 

《一応礼くらい言っておくか…》

 

「もー!注射で怖がってたらいつまでたってもピアス開けられないよ?」

「うっ…」

 

「ん?注射?」

 

「あ、上杉さん」

「お前ら…ここに何しに来たんだ?」

「あぁ…予防接種ですよ、生徒会で受ける事になったんです」

「それなのに五月さんと二乃さんが逃げ出したんでよ!」

「痛いのは嫌なの!」

「確かに嫌かもしれないけどさ〜()()()()フータロー君のお見舞いも出来て良かったじゃん」

 

《……ついで…?》

 

「……この裏切り者!」

「こらこら!病人は大人しくしてる!」

「え?はぁ…」

 

病室に連れていかれる上杉

すると、先程の診察室から声が聞こえた

顔はちゃんと見ていないからよく分からないが

その声だけは、彼には聞き覚えがあった…

 

「上杉君…これからも励みたまえよ」

 

「……」

結局病室のベットに横たわる上杉

目を閉じて先程の先生の事を考えていた

 

《あの人…どこかでみたような…》

 

彼の遠い昔の記憶

しかし彼の中に強く記憶に刻まれている景色…

 

『私がみんなのお手本になるんだ』

 

《そう…あれは……》

 

『上杉風太郎君、バイバイ』

 

「…っ!」バッ!

ベッドから勢い良く起き上がる上杉

 

「……なんであの時の事を…」

上杉が左に振り向くと、そこには『あの子』がいた

 

「あっ」

「…っ!?」

「……なんだ五月か、脅かすなよ」

 

《寝ぼけて見間違えたか…》

 

「それはこちらの台詞です!いきなり飛び起きて…」

「藤原たちが探してたぞ」

「はは…なんのことでしょう」

 

〔……〕

 

「……ここには…お尋ねする為に来ました…教えてください」

「……っ」

「…あなたが勉強するその理由を」

 


 

五つ子豆知識!

 

以前、二乃は上杉にピアスを開けてもらおうとしたが、結局断念しているぞ!

その詳細は原作を読んでくれ!

 


 

「ありし日の上杉の京都の凶と共」

 

「……」

「……」ムムッ

「……」

「……」ムムッ ムムッ

「…何してんの?」

「あなたが勉強する理由を教えてくれるまで睨み続けます」

「あっそ…なら俺はお前が諦めるまで睨み続けようか!?」

「…っ!…い、良いでしょう…どちらが先に音を上げるか勝負です」

「その辺にしておけ、上杉」

「っ!…白銀!」

「白銀君!?」

病室に入って来た白銀御行

生徒会の仕事を終えて来たようだ

 

「教えてあげろよ、お前が勉強するきっかけになった話を」

「…勉強をするきっかけ…?」

「あ、あれは…!」

「……上杉」

「……っ」

「生徒の頼みだぞ…?」

「……あれは……小六の時、修学旅行の話だ…」

 

 

 

「これ、いらね」

新幹線の客席

当時13歳の上杉は、金髪にイヤリングと

悪ガキの見本のような見た目をしていた

それは性格も同じで、彼の横暴な態度は周りと比較すると目立つものだった

 

「よっしゃー!勝ちィ!」

同じ班の2人とトランプゲームをしていた上杉

トランプを1枚引き抜き、フルハウスを完成させた

 

「風太郎君強いなぁ」

「ほんと、馬鹿なのにこういうのは得意だよね」

「あー!?うっせー!」

「風太郎!こらっ電車の中だから静かにしなさい!」

「オラ竹林!つまんねーこと言ってないでお前も参加しろ!」

「いやーっ!もー仕方ないなー」

彼女は竹林

上杉の同級生であり、班の班長でもある少女だ

 

「その代わり…真田君も誘ってあげなよ、私たち五人班なんだから」

「え…僕はいいよ…」

「……あ?」

竹林は同じ班の真田を気にかけたが、上杉はそれよりも気に触ることがあった

 

「お前、算数ドリルって…逆に馬鹿か!」

「ああっ」

そう言うと、上杉は真田から算数ドリルを取り上げ

辺りにばらまいた

 

「修学旅行にこんなものはいらないだろ!不要な物は捨てていけ!俺はこれだけで十分」

すると、上杉はバックから一眼レフカメラを取り出した

 

「わー凄いね」

「カッケー」

「親父の仕事道具からパクって来たぜ!どーだ竹林、お前も撮って…」

上杉が振り向くと、ばらまかれたプリントを拾う真田と竹林がいた

 

「……」

「あの二人、幼馴染らしいよ」

 

「……」カシャ

「風太郎も写真撮ってないで行くよー!」

「お、おう」

 

『二人とも学級委員でお似合いだね』

 

駅でクラスが解散され、班行動へと移行した時

上杉は突然前屈みにしゃがんだ

 

「……いたたたた」

「…どうしたの?」

「急に腹が…腸の野郎、いい仕事しやがる…便所行ってくるから、先に行っててくれ」

「なんで?待ってるよ」

「見くびるな!恐らくモンスター級…長期戦になりそうだ…」

「最悪…」

「風太郎君がそう言うなら先に行こうぜ」

「う、うん…ちゃんと追いついてね」

「……」

 

上杉から離れて行く班の同級生たち

しかし、実際彼は腹痛など起こしていない

それなのに何故仮病までして班から離れたのか…

その理由とは…

 

《不要な物は捨てていけ!》

 

「……俺じゃん…」

上杉は自分が不要な存在だと思い

班から逃げ出した

 

「…貴方、何してるの?」

「……え?」

上杉が顔を上げると、黒髪の少女が立っていた

 

「……別に…」

「…カメラ…写真好きなの?」

「ま、まぁ…」

「…ねぇ、見せてくれない?」

「…え?あ、あぁ別にい……あっ」

上杉は思い出した

このカメラの中には、竹林を隠し撮りした写真が詰まっている事を

 

《こんなの誰かにバレるのはまずい…!》

 

「……どうしたの?」

「いや……えっと…」

青ざめる上杉

少女の目は疑いの目へと変貌する

 

「……もしかしてそのカメラ…貴方の物ではない…?」

「い、いやそれは…!」

「そうじゃないよ」

「…っ!?」

途端に、上杉の背後から声がした

階段の上、明るい髪色の少女が上杉を見ていた

 

「私見てたもん」

「……そう…まぁいいわ」

黒髪の少女はその場を立ち去った

 

「……」

「……ふふっ」

それが、あの子との出会いだった…

 

 

 

『緊急ニュースです!未確認飛行物体が日本上空に出現!国会が占拠された模様です!』

『我々ハ将棋星人、日本デ最強ノ棋士ヨ、地球ヲ懸ケテ勝負シロ』───……

 

 

「……こうして、俺の修学旅行は終わったんだ」

「……」

「……」

「なんですかそれ!そこからが聞きたいのに凄い雑に終わりましたよ!地球はどうなったんですか!?」

上杉の唐突の話の切り替えにより、五月は驚きが隠せず

白銀は鼻で笑っていた

 

「別に話すとは言ってねー…というか話したくない」

「……」

「少し言うことを聞いたのは…この間の礼だ」

「……いまいち伝わりませんでしたが…昔のあなたと今のあなたが大きく違うことはわかります。その子との出会いが、あなたを変えたんですよね」

「……」

 

 

 

「わーっお守りだって!買っていこうよ!」

「なんで付いてくるんだどっか行け!」

「人を捜してるんでしょ?私もなんだ」

「…一人でできる。他を当たってくれ」

「他じゃだめだよ」

「…っ」

「お互い一人で寂しい者同士仲良くしようよ…私には君が…」

 

 

 

「私も変われるのでしょうか…もし…できるのなら…」

「……」

「変われる手助けをしてほしい…あなたは…私たちに必要です」

「…っ!」

 

『君が必要だもん!』

 

『ねぇ写真撮ってもらおうよ!』

『おい!勝手に触んな!』

 

「……」

「……こっち見ないでください」

「…俺に教わってどうにかなるのか?平均29.6点」

「どうにかします!やれる事はなんでもします!見てください!昔持ってたお守りを引っ張り出してきました」

「…神頼みかよ」

五月が取り出したのは赤い巻物状の御守り

しかし、上杉にはそれに見覚えがあった

 

《そういえば、あの子も似たような物を買ってたな…アホみたいにたくさん、五つも──》

 

「それ、どこで買ったんだ?」

「これですか?買ったのか…貰ったのか…よく覚えてませんが、確か……京都で五年前…」

「……」

「……っ」

「…それって」

「あ!五月!なんだここにいたんだ!」

「…っ!?」

すると、上杉の病室に先程の6人が入って来た

 

「余計な所捜しちゃったね」

「あ、会長も来てたんですね」

「お、おう」

「みんな揃ったから今度こそ行くよ」

「ぐぬぬ…」

「五月さーん!行きましょ行きましょー!」

「ま、待ってください!心の準備がぁ〜!」

 

「……」

 

《五年前……京都…》

 

「……」

 

(……まさか…)

 

「……」

 

《偶然…だよな…》

 

本日の勝敗結果

上杉の勝利

(後日、体調が治り復学出来た為)

 

 

「……おや…かぐや様、何をご覧になってるんですか?」

かぐやの就寝前、早坂はベッドで「なにか」を見つめるかぐやに質問した

 

「……これって…」

「……」

かぐやが見詰めていたのは、赤い巻物状の御守りだった

 

「…五年前…京都であの子から貰ったものよ…」

「……懐かしいですね…あの時のかぐや様、とても楽しそうでした」

「……えぇ……また、会えるかしら」

 

窓から夜空を見上げるかぐや

今日の月も、酷く輝いていた

 

あの日のように




次回

第22話「四宮かぐやは極めたい」


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第22話「四宮かぐやは極めたい」

今更ながら、登場人物の各々のイメージをまとめます

白銀御行が持っているイメージ
四宮かぐや←告らせたい
藤原千花←珍妙生命
石上優←割りと仲良し
上杉風太郎←デリカシー皆無だが良い奴
中野一花←ちょっと苦手
中野二乃←我儘なお嬢様
中野三玖←石上みたいだなぁ…
中野四葉←元気で能天気
中野五月←頑張り屋だが意地っ張り



「……」

 

《…林間学校が明けて、一週間が経った……もうすぐで生徒会も解散…だからこそ、この林間学校で四宮をものにしようとしたが……》

 

『し、四宮…!』

『す、すみません会長…ちょっと今日は用事がありますので、お先に失礼します』

『あ……おう』

 

《俺が生徒会室に来た途端に帰り支度を始め、顔も合わせてくれない……どうやら…避けられているようだ…》

 

「……」

 

《…このままではまずい!早急に対処しなくては!生徒会が解散した後ではもう遅い!》

 

白銀が考えを纏めている中ではあるが

一方のかぐやはそれ以上にそれどころではなかった!

 

「……で、どうして逃げ出したんですか?」

「…だ、だってぇ!会長の顔を見ると林間学校での事を思い出しちゃって頭がぐわんぐわんするのぉ!」

「あーー……」

 

林間学校で起きた事件!

白銀とかぐやは倉庫の中に閉じ込められるという、俗に言う「体育倉庫イベント」が発生!更にその中で二人はキス寸前までいくという大きな出来事となった

それに留まらず、最終日には正気を保っていたかぐやだったが、白銀と踊り、自身の手汗が気になり踊っていた白銀を背負い投げする!

動揺し、その場から逃走!

後日白銀に謝罪と告げたが、それ等の事が原因でまともに会話が出来なくなっていた!

 

「多分脳の病気よ!やっぱりセカンドオピニオンを…!」

「…絶対にやめてください…!」

かぐやの肩を思いっきり掴む早坂

 

実は、白銀達が上杉を見舞いに行った同日

その病院でかぐやは診察を受けていた

自身の髪に付いていたゴミを白銀が取り除いた事による過剰の心拍数の上昇により倒れた為、病院に運ばれたのだ

そこで告げられた病名、それは…

 

『それは恋の病でしょう』

 

恋の病!

そう診断されたかぐやは精密検査を実施!

更に恥をばらまく行為に早坂が猛反対!

セカンドオピニオンを拒否した早坂であった

 

「もうすぐ生徒会も解散…このままじゃ会長をものに出来ないわ!急がないと…!」

「…そうですね……では、「ルーティーン」を試してみましょう」

 

ルーティーン!!

スポーツ選手などが行うメンタルコントロール法の一つ!

一定の行動(ルーティーン)を行う事により精神状態をリセットしリラックス状態に持っていく方法である!

 

「その為にはまずルーティーンを何にするかを決めなければいけません」

「…でも、どうすれば良いか分からないわ…」

「……そうですね…では、他の人の意見を参考にしてみては?」

「…え?」

 

 

 

「……ルーティーン…ですか?」

「そうです!貴方は普段どんな事をしてリラックスしてるんですか?」

「…んー…そうですね…」

後日、かぐやは生徒会の仕事終わりに五月に相談しに行った

 

「私は、美味しいものを想像しています!」

「…お、美味しいもの…?」

「はい!例えば──」

 

ルーティーンが五月の場合

 

「……はぁ…段々集中力が落ちて来ました…」グゥゥ

 

〔……お腹も空きました…〕

 

「…っ!そうです!」

 

〔美味しいものを食べるイメージトレーニングをしながら勉強すれば、きっと集中力も上がる筈!〕

 

「学食も美味しいですし、肉まんも捨てがたいですね…ケーキはカロリーが…でもやめられません〜!あとやはり格別なのはらいはちゃんのカレーですね!アレなしでは生きていけません!あとは──」

 

「──というように、美味しいもの想像しながら食べれば、自然とモチベーションも上がって勉強が捗るんです!」

「……それ本当に捗ってます?食べ物に気を取られて逆に集中出来ないのでは…?」

「……っ」ギクッ

 

〈その様子だと図星のようですね…〉

 

「……はぁ…」

「五月〜帰るよ〜」

すると、生徒会室に中野姉妹が続々と入って来た

 

「おや、皆さん」

「あれ…四宮さんまだ帰ってなかったの?」

「少し…彼女に相談を……」

「相談!?私たちで良ければ聞きますよ!四宮さん!」

「あ、ありがとうございます四葉さん…」

「で、一体どんな質問なの?四宮さん」

「……それが…」

 

「…ルーティーン…?」

「はい、どうすればリラックス状態に持ってきけるのか今模索している最中で…」

「ん〜…私は──」

 

ルーティーンが一花の場合

 

「…はぁ〜疲れたよ〜フータロー君〜!」

「つべこべ言わずにペンを動かせ!まだ五ページしか進んでないぞ!」

「だって集中出来ないんだもーん…」

「……はぁ…今日は三玖も四葉もいないんだ…お前だけでも勉強を進めなきゃ……」

「じゃあさ、映画!見ていい?」

「…はぁ?」

一花はテレビ下の収納からDVDを取り出した

 

「ホラー映画に純愛系…フータロー君はどれがいい!?」

「待て待て!勉強はどうした!?」

「…私のいつものやり方なの…集中力が切れた時は、映画を見て他の女優さんの演技を学んだり、ホッコリする気持ちになって落ち着くんだ〜」

「…そ、そうなのか…?」

「だから付き合ってよ、映画鑑賞!」

 

「──ってな感じで、映画を見るっていうのかな?」

「……映画を見ている暇があったら勉強なさったらどうですか?完全に時間の無駄かと…」

「……」ギクッ

 

〔見終わった後フータロー君にも同じ事言われたんだよなぁ…〕

 

「四葉さん、貴方はどんな風にリラックスしてるんですか?」

「はい!私はですね〜──」

 

ルーティーンが四葉の場合

 

「…上杉さーん!こっちですよー!」

「…ハァ…ハァ…ま、待って…くれ……四葉……ハァ…ハァ…」

「も〜う……あ!そうです上杉さん!」

「ぁ…?」

「コレ見てください!」

「…三葉のクローバー…?」

四葉が手を広げた地面には、三葉のクローバーが沢山生えていた

 

「今から四葉のクローバーを探しましょう!」

「はぁ!?」

「休憩がてら、こうすれば上杉さんの集中力も上がりますよ〜!」

「いや、これはスタミナ切れであって集中切れでは…」

「いっぱい見つけて皆さんを驚かせましょー!」

「話聞けぇ!」

 

「──っという感じで、四葉のクローバーを探してます!」

「それこそ時間の無駄では?しかもわざわざ外に出るんですか?ルーティーンとは少し違うような……」

「……」ギクッ

 

この後、落ち込む四葉を慰める一花であった…

 

「……二乃さん、貴方はどうですか?」

「あたしは断然、料理ね」

「…まぁ」

 

ルーティーンが二乃の場合

 

「……」コンコン

「…はーい!」

「…あ、ど…どうも…」

「…いらっしゃい!…キンタロー君!」

その日、再びキンタローへと変装した上杉は二乃の所に来ていた

 

《こいつは俺がいると勉強してくれないからな…こうするしかない…!》

 

〔まさかキンタロー君に勉強教えて貰えるなんて…!幸せぇ……上杉!今回だけは褒めて遣わすわ!〕

 

「えっと…それじゃあ勉強を…」

「それよりキンタロー君…私に言う事あるでしょ」

「……」

 

《…隠し通せると思ったが……現実はそんな甘くないよな…》

 

「……悪かった…実は俺は…」

「いいよ、キャンプファイヤーをすっぽかされた件は水に流してあげます」

「……!」

「…さ、約束通り勉強教えてよね!」

「…あ…あぁそうだな…まずは英語から──」グゥゥゥ…

次の瞬間、腹の虫がなる上杉

 

「……」

 

《しまった!朝から何も食べてないんだった!》

 

「…あはは…お腹が空いてるなら言ってよぉ!」

「…す、すまん」

「ちょっと待ってて、適当に作るから」

「…え…いや、勉強は…!?」

「腹が減ってはなんとやら、って言うじゃない?すぐ済むから、座って待ってて」

「……」

 

「──っていう感じで、彼すっごく喜んでくれたの!やっぱり人の為に作る料理が1番捗るわ!」

「誰かの為に料理をするくらいなら、自分の為に勉強したらどうです?それ、結局勉強は出来たんですか?」

「……んーー…」

そっぽを向く二乃を見て全てを察した四宮だった…

 

「……」

 

〔……〕

 

ルーティーンが三玖の場合

 

「……行き詰ってきた…」

 

〔……〕

 

「……フータロー…ここ教えて」

「ここは三平方の定理を使うんだ」

「…っ」

 

〔…近いっ!〕

 

「…そしてここで…公式にあてハメて…」

 

〔……フータローが…こんな近くに…〕

 

「これで答えが出る…どうだ…気持ちイイだろ?」

「……フータロー…」

 

「──……」

 

〔……言えるわけない……私が…フータローを想像しながらモチベーションを保ってるなんて…!〕

 

「三玖さん、貴方は……」

「……な、ない!何もないっ!」

「…そ、そうですか……」

「そもそも、どうして急に私たちのルーティーンなんて知りたくなったんですか?」

「完璧な四宮さんだったらルーティーンなんて必要ないでしょ」

「…それは…ある方と仲直りをしたくてですね……私の友達の話ですけど…!」

「……」

 

〔これ四宮さんの話だ…〕

〔これ四宮さんの話だわ〕

〔……絶対四宮さんの話〕

〔一体誰の話なんだろう!?〕

〔四宮さんも誰かと喧嘩したのでしょうか…?〕

 

この中で話を理解していないのは四葉だけだった

 

「私の友達が…最近気になっている男子と顔を合わせずらくなってしまって……本人を目の前にすると逃げ出してしまって…どうすればいいのか分からなくなってしまって──しまったようなんです!」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

 

〔〔〔〔…あーー……〕〕〕〕

 

四葉以外の4人の頭の中に白銀の顔が浮かんだ

 

「大変ですね…そのお友達…!」

しかし、四葉はこの状況を全然呑み込めていなかった!

 

「そこで、ルーティーンを極めていつでも平常心になれるように試行錯誤しようとしたんですが……やはり上手くいきませんね…すみません」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……そんなことないよ」

「…え?」

「その通りよ、わざわざ自分を隠す事なんてないんだから」

「……ありのままでいい」

「まっすぐ向き合えば、きっと仲直り出来ます!って、そのお友達にお伝えください!」

「…四宮さんはきっと顔を合わせずらくても、それを見ている周りの人たちはきっと悲しみます…」

「……皆さん…」

「きっと向き合えます…私とあの上杉君が向き合えたんですから!」

「……五月さん……そうですね…なにも私が怖気付く事ないのよね…」

かぐやの言葉に首を縦に振る5人

 

「…私、しっかりと向き合ってみます!これで最後は嫌ですから!」

勢いよく扉を開けて生徒会室を後にするかぐや

 

残った5人は顔を合わせ、微笑んでいた

 

 

 

「……はぁ…」

 

(今日も四宮とちゃんと話せなかった……もう終わりだ…何もかも…)

 

『本当は普通に話がしたいのに、気恥ずかしくて出来ないなんてよくある話でしょ…もうちょっと待ってあげなよ…』

 

(圭ちゃんはあぁ言ってたけど……)

 

下駄箱で外靴に履き替える白銀

夕暮れも深くなっていたが

すると、後ろから足音がしたのに気が付いた

 

「か、会長!」

「四宮!?まだ居たのか!?」

「…あの…会長…!」

「……」ゴクッ

息を切らした四宮は息を整えてカバンを身体の前にぶら下げた

 

「……その…」

「……」

「…今日…どうやら執事の車がパンクしていたらしく、迎えの車が来ないみたいなんです…」

「……っ」

「……その…会長さえ良ければ…駅まで御一緒しても良いですか…?」

「……も…勿論!」

「…っ」

お互いの表情が晴れ、2人並んで駅を目指す

 

(普通に話せた……!)

 

〈普通に話せたわ!ありがとう、皆さん!〉

 

本日の勝敗結果

両者勝利

 

「……つまりあれは四宮さん本人の話なの?」

「まぁね〜」

「一体誰との話なんだろぉ…?」

「……さぁ〜ね〜」

 

結果、一花に話をボヤかされて話の内容が完結しない四葉であった…

 

〔ん〜…モヤモヤする……〕




次回

第23話「第67期生徒会:改」


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第23話「第67期生徒会:改」

お久しぶりです。ご無沙汰しております。
2023年もよろしくお願いします。
遅くなりましたが、続きの方をご覧ください!



「1年てあっという間ですよね〜」

「僕は実質半年位ですから、余計にそう感じます」

「私たちはもっと短いけどね〜」

「そうね、五月は転校早々生徒会入ったのよね」

「はい!白銀くんが誘ってくれたお陰で…!」

「…でも、この生徒会には2年位居た気もしてくるから不思議だよな」

「…本当に…本当にこの1年は、一瞬…でした」

 

その日、白銀たち生徒会のメンバーは全員で生徒会室の清掃を行っていた

 

「あ!この看板懐かしいですね!フランス校と交流会の時のですよ!」

「あぁ校長が急に言い出してな、あれが一番忙しかったか」

「ですね〜…」

「……」

 

フランス校との交流会で使った看板を取り出して語り出す藤原と白銀とかぐや

 

〔それ私たち知らない…〕

 

それを聞いて一花はそう思った

 

「ゲーム類も持っていかなくちゃですよね〜」

「本当に藤原さんはすぐにゲームしたがるから」

「色んなゲームやったよなぁ」

次にトランプを取り出した藤原

 

「あとこれもやりましたよね〜〜!」

「ん……なんだっけそれ」

「覚えてないんですかー?じゃあ一度だけやってあげます」

 

今度は「好き♡」と書かれたメモ帳を取り出した藤原

 

「ドーンだYO!」

「うわっ!あったなそれ!」

「……」

 

それを見た二乃は……

 

〔私たちそれ知らないわ…〕

 

そう思ったのだった…

 

「あっ!こんなのもありましたね〜」

今度は猫耳のカチューシャを白銀に被せる藤原

 

「やっぱり会長似合わないですね〜」

「なんで似合わないってわかってて俺につけるんだよ…」

「……」

 

猫耳になった白銀を見てかぐやと三玖は思った……

 

〈おかわわわわわわわわわわわわわわわわわ!不意打ちで可愛いのやめて!びっくりして死ぬかと思うじゃない!〉

 

〔……私たちそれも知らない…〕

 

そう、薄々彼女達も気付いていた……

 

〔〔〔〔〔もしかして私達…あまり生徒会に関われてない…!?〕〕〕〕〕

 

思い出不足!

白銀達にとっては思い出深い秀知院生徒会室

しかし!中野五姉妹にとって生徒会室と言えば、生徒会の仕事をする場であり、あまり藤原を発端とする遊戯には参加してこなかったのである!

 

この場に於いて思い出を語り合う白銀達を目の前に、中野達は気まずくなっていた!!

 

「…でも、ここでは上杉さんとの思い出も詰まってますよね!」

「…え?」

ここで、四葉が口を開いた

 

「ほら!生徒会が終わった後はここで勉強会やってたじゃん?白銀さんが部屋を貸してくれたおかげで捗ってますし!」

「捗ってはいるが全然身には付いてないがな」

「…上杉さんは勉強を通して、貴女達五人と向き合っていたのかもしれませんね。彼にとっても、ここでの記憶は大切だと思いますよ?」

「……」

かぐやの言葉に、五人は言葉を失う

互いに向き合い、微笑み合う

 

だが、そんな中でも

終わりの時は近付いて来る……

 

「……こんなもんかな、探してない場所は無いか?」

夕暮れも最中、暗くなった生徒会を9人は眺めた

 

「……終わりかぁ」

「……」

「……」

石上の言葉に、またもや全員の脳裏に生徒会での記憶が蘇ってくる

 

ここで過ごした思い出を反芻し、彼らは長いようであり短かった生徒会室での活動を、仲間と共に乗り越えて来た試練を、様々な苦難を乗り越え、彼らはまたひとつ成長したのである

 

「どうします?ファミレスで打ち上げでもします?」

「折角なら甘い物が食べたいな」

「ならケーキ屋にしましょう!オススメのお店があるんです!」

 

誰も振り向かない生徒会室前の廊下

だが、ゆっくりと閉じていく扉の音に、この二人だけには耐え難いものがあった

 

「……っ…グスッ」

「……グッ…グスッ…っ…」

瞳から大きな雫を流す藤原と四葉

その二人はいついかなる時も楽しさを求め、生徒会での活動を通した交流がいつしか宝物となっていた

だが、それが無くなってしまうという喪失感に、この二人は涙を流していた

 

「……もぅ…そんなのずるいわ」

「…四葉、おいで」

だが、それを耐え難く思っていたのは二人だけでは無い

皆表には出さないが、芯では涙を流していた

 

藤原をなだめながら共に涙を流すかぐや、姉として妹をなだめる一花

その他の姉妹も目尻に涙を溜めていた

 

「…皆お疲れ様。本当に、ありがとうございました」

 

その場の全員が生徒会室に向かってお辞儀をする

 

そう、これは彼らがまだまだ成長する為に必要な事なのである

出会いがあれば別れもある

始まりがあれば終わりもある

当たり前のように思える事でさえも、かげかえのない物である事を、生徒会での活動は物語ってくれる

 

それが本当の意味での、生徒会での活動だったのかもしれない……

 

第67期 秀知院生徒会

全活動終了

 


 

「上杉風太郎は呼ばれてない」

 

秀知院生徒会会長が普段身に付ける純金飾緒

秀知院200年の歴史の中で受け継がれて来たこの飾緒を手放す瞬間。それが本当の解任式とも言える程大事な瞬間なのである

 

「…一年間、お疲れ様でした」

黄金に輝く飾緒を木箱に納めた白銀は、そのままコーヒーの入ったコップに手を伸ばす

 

「「「「かんぱーい!!」」」」

コップを合わせる一行

 

「これでようやくこの暑苦しい学ランを脱ぐ事が出来る」

「来週からまた衣替えですけどね」

「それな!」

白銀は学ランを脱ぎ、冷たいコーヒーを喉に流し込む

 

「はぁ〜肩の荷降りた〜!重いんだよこの飾緒」

「まぁ金で出来てますしね」

「へぇ〜…」

「二乃さん?盗らないでくださいね」

「と、盗らないわよ!」

「あー本当にキツかった…こんなの1年やればもういいわ。後は優秀なのが跡を継いでくれる事を祈るばかりだ…」

「うーん会長の死にっぷりを見ててやりたいと思う人は居ないと思いますよ〜」

「まぁ考えるだけ考えてみてくれ、会長役は大変だがそれに見合ったメリットもある」

 

生徒会特権!

学力本意の秀知院に於いて、勉強以外の活動は基本的に倦厭される傾向にある。その為委員会役員や生徒会役員には秀知院大学への進学点、資格取得の補助金、自習室利用の優先権

などなど数々の特典が与えられる。

 

特に生徒会会長のみに与えられる『秀知院理事会推薦状』は世界中の大学や研究機関へのプレミアムチケットであり、この推薦状を獲ればもう1ステップ上の夢を描く事が可能となる!

 

「一花はどうだ?立候補してみる気は無いか?」

「えー私〜?ん〜…女優の仕事で今はそれどころじゃないかな〜」

「そうでしょうか?生徒会長の地位は良い売名にもなるかと思われますが…?」

「四宮さん甘い!私は実力で有名になりたいの!」

「…フッ…いい心意気だな」

「はーい!私が生徒会長に立候補しましょうか!?」

「…四葉が生徒会長か……ダメだ、恐ろしい未来しか想像出来ない…!」

「なぜッ!?」

白銀の言葉に驚きを隠せない四葉

すると、そんな四葉のうさ耳リボンを掴む男がいた

 

「…お前ら、もう少し静かに出来るか?周りの客の迷惑だ」

「上杉!何故ここに!?」

「何故って…俺はここでバイトしてるからな」

上杉が務めるケーキ屋「REVIVAL」

彼はホール担当として去年から働いている

 

〈あ……そうだわ、上杉さんが生徒会長になれば…〉

 

「そうです、会長…」

「おいおい四宮、俺はもう()()じゃないぞ」

「あ……そうでしたね…」

 

〈……あれ?会長が会長じゃ無いならなんて呼べば良いのでしょうか…〉

 

呼び方!

相手をなんと呼ぶかは親密さの物差し!

また、「私と貴方はこの位の距離」と明言する事でもある!

役職呼びが出来なくなった以上、相手との距離感を改めて定義しなくてはならない!

 

〈会長が駄目ならえっと……白銀さん?白銀くん?…み……御行くん……〉

 

「…ところでお前ら、何か追加注文するものはねぇか?」

 

〈なんて……下の名前で呼ぶなんて恥じらいの無い事出来る筈ありません。私はそんな軽薄な女じゃ…〉

 

「あ、ミユキ君もおかわりいる?」

「お…サンキュー、一花」

 

〈!?〉

 

ミユキ君はコーヒーだったよね」

「あぁ」

 

〈!!〉

 

ミユキ君はホットが良い?アイスが良い?」

「じゃあアイスで」

「はーい!フータロー君、ミユキ君にアイスコーヒー一つ〜」

 

薄くて軽い(けいはく)!!えっ何!?今時はそういうテンションで良いの!?〉

 

「…二乃、お前はどうする?」

「じゃああたしもミー君と同じので頼むわ」

 

〈ミー君!?あっ「みゆき」の「み」で「ミー君」ですか!?かわいいわ!!〉

 

「あ、タピオカミルクティーあるかしら?」

「無い」

「…あっそ、じゃあミルクと砂糖も付けて」

 

〈なるほど渾名(あだな)…!下の名前を単体で呼ぶと軽薄で尻軽ですが渾名として呼べば問題は無い!〉

 

『こんにちはミー君さん』

『さんはいらん』

 

〈これっぽっちも恥ずかしくない!これは頂きました!〉

 

「はいよ、持ってくるからちょっと待ってろ」

「一度には大変でしょう、私上杉さんを手伝って来ます。アイスコーヒーでいいんですよね?み──」

「……」

……会長」モジモジ

「だからもう会長じゃないんですって」

 

全然駄目だった

 

 

 

「……そうか、生徒会(おまえら)も解散か…」

「えぇ、早いもので…」

「白銀がもう1年会長をやってくれたら、全部丸く収まるんじゃないか?」

「駄目ですよ。この学校の生徒会長は激務……勉強もバイトもしながらしてた会長がちょっと可怪(おか)しかったんです。既に理事長推薦の資格は得てるんですから、翌年も会長をするメリットは無い……会長は勉強に専念した方が良い……わがままを言っちゃ駄目……」

「……そうか、まぁ…俺には関係無いがな…」

「……」

 

〈そうよ…こんなのは……ただのわがまま……〉

 

 

 

無慈悲にもかぐやの言葉を切り捨てる上杉

だが、生徒会の一行が解散し、上杉もバイトが終わり帰路に出ようとした時だった

 

「……ん」

「…お疲れ様です。上杉くん」

「五月…帰ったんじゃなかったのか?…っ」

五月は黙って上杉にスマホの画面を見せる

電話の通話画面、上には「お父さん」と表示が出ている

 

「父から電話です。上杉くん…君を呼んでいます」

「……」ゴクッ

 

独特な緊張感が、上杉を包む

五月からスマホを受け取り、ミュートを解除し耳に近付ける

 

「…もしもし、上杉です」

『あぁ…毎度すまないね、上杉君』

「…本日は一体どんなご用件でしょうか?」

『なに…ここで一つ、君の技量を確かめさせて頂きたくてね……前期の生徒会が解散したという報告を受けた。そこで君に提案だ』

「……」

『君に、次期生徒会長に立候補してもらいたい』

「…っ!?」

中野父から放たれた言葉は、上杉を硬直させる

 

『秀知院生徒会会長の地位は巷でも高い評価を得ていてね…そんな希望ある若き者に娘達が教わっている、というのは私としても鼻が高い。君には是非当選して頂きたいのだが…』

「ちょ…ちょっと待ってください!いきなり生徒会長って…!」

『勿論、当選結果によって君をどうこうするつもりは無い。落選しても君には変わらず娘達の家庭教師をお願いする予定だよ』

「……ホッ」

お願いする予定、という言葉には少しだけ引っかかったものの、彼の意向を聞いて上杉はホッとする

 

『…だが、君が生徒会長になった暁にはそれに見合った報酬を与えよう』

「…えっ?」

『もし君が生徒会長に選抜されれば…今の給料を現在の2倍…いや、3倍にしよう』

「…っ!?」

『…さっきも言ったが、これは君の技量を確かめる為のただの提案だ。受けるか受けないかは君次第……』

「受けます」

『……ほぅ』

「必ず生徒会長に当選し、同時に娘さん達を全員笑顔で卒業させます!」

『…そうかい。では、これからも励たまえよ』ピッ

そこで会話は終了した

スマホを降ろした上杉は無表情のまま立っていた

 

「……上杉くん?父はなんと…?」

デジャブな展開に疑心感を抱く五月

すると、上杉がゆっくりと振り返った

 

「……世間話をしただけだ」ニヤニヤニヤニヤ

「なんで世間話でニヤついてるんですか!?」

 

《生徒会長になれば…給料が3倍に…3倍…という事は、現在の5人分の給料2万5000円が3倍に…総額で7万5000円…1回の授業で……》

 

「……えへ…えへへへへ」

「気持ち悪いですよ!?」

「…ハッ!……ゴホン!」

気持ちを整えた上杉は五月に問いかける

 

「…五月…生徒会長になるには、どうすればいい?」

 

 

 

翌日──

 

《…あとはこれを先生に渡せば良いんだな》

 

その日、生徒会選挙の申込書を持った上杉は職員室に向かっていた

 

「……失礼しました」

「……ん」

すると、ワイシャツ姿の白銀が職員室から出て来たところだった

 

「上杉、それは…?」

「…生徒会選挙申込書だ。色々あって生徒会長に立候補する事になったんだ」

「…生徒会長に…そうか……」

「…んで?お前は何しに来たんだよ」

「……俺も同じだ。生徒会選挙の申込書を提出しに来たんだ」

「…な、何故だ?もう生徒会長にはなる気は…」

「俺もそのつもりだった…あれも、書くだけ書いて出すつもりは無かった……だが、一生に一度…根性見せる時が来たみたいでな」

「……そうか。お前も俺と同じか」

「今日からはライバルだな、上杉」

「…あぁ…ぜってー負けねーからな、白銀」

白銀の横を通り過ぎる上杉

 

互いの健闘を祈り、2人はそれぞれの道を歩む

全ては、生徒会長になる為

それぞれの思いは、時にぶつかり合い、激しく反発する

 

次回!

漢と漢の勝負編!開幕!

 

 

 

「……ミコちゃんは今回参戦するの?」

「…勿論。それが私の目標だもん、それはこばちゃんも知ってるでしょ?」

「…うん。変わらないね、ミコちゃんは……」

「……絶対生徒会長になる。全ては…」

中庭の掲示板に貼られた選挙告示の表を見つめながら、少女は高らかに呟いた

 

「……この学園の為に…!」




次回

第24話「五つ子ちゃんは支えたい」


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第3部
第24話「五つ子ちゃんは支えたい」


大変お久しぶりでございます
前回の投稿から半年以上経ってしまいましたが、連載をやめたわけではありません!

急ではありますが今回から第3部!
待望の()()()()()が登場!
それではどうぞ!!



「ほ、本気で生徒会長になるつもりですか!?いくらなんでも無謀では…!」

「確かに無謀かもな、だが申込書も提出しちまった…もう後戻りは出来ねぇ…」

上杉はそういうと中野姉妹が待つ図書室の扉を勢い良く開けた

 

「あ、上杉さん!」

「やっほーフータロー君」

「……フータロー」

「話があるって、一体なんの用よ…」

しっかりと集まっている一花、二乃、三玖、四葉

そして、彼の後ろをついていた五月

 

全員が揃ったところで、上杉は本題に入った

 

「今日は、皆で生徒会選挙の攻略会議をする!」

 

生徒会選挙!

秀知院で行われる生徒会選挙は、立候補者による立候補演説と応援演説をそれぞれ、全生徒・教師立ち会いの元で行われる。投票結果はその日に決まり、演説による票の獲得が勝負の要と言っても過言では無い!

 

「ここで重要になってくるのが、応援演説を誰がやるかだ」

「…っていうか、なんでそんな話をあたし達にする訳?」

「……お前らしか、話せる相手が居ないからだ」

「はっ!あんた友達居ないのぉ〜?可哀想なこと〜」

「……二乃、少し黙って」

「でもそうだよ。私達じゃなくて、四宮さん達に相談すれば?」

「あいつらはダメだ」

「……どうして?」

「今回の相手は白銀だ。四宮が支えないわけが無い、藤原と石上も同様にな」

「あ〜…」

納得した一花と三玖は上杉の話に再び耳を傾けた

 

「応援演説とは、一体何をすればいいのでしょうか?」

「基本的には…立候補者の紹介、長所、そして実績なんかだな」

「上杉君に実績なんてあるんですか?」

「それは、まぁ…後々考える…」

 

〔結構ノープランなんだ……〕

 

「とにかく!俺の事を良く紹介出来る人物に頼みたい!」

「それなら四葉が適任だね!」

「……うん、賛成」

「えぇ〜!?私ぃぃ!?」

「…確かに、四葉なら適任だな。お前のコミュニケーションがあれば、一同を引き寄せる事も可能だ」

「…そ、そうでしょうか〜?」

「あぁ、応援演説…頼めるか?四葉」

「……分かりました!上杉さんの頼みなら!私なんでも頑張ります!」

「あぁ、頼もしいな」

 

上杉風太郎、応援演説者を獲得

 

 

一方……

 

「まったく……仕方の無いひと……いいですか会長、私は会長の願いにはちゃんとこう答えるんですから。演説のお願いだろうと、()()()()()()

「……」

「…はい、喜んで」

「…っ」

 

白銀御行、応援演説者を獲得

 

「ほら会長、騒ぎになる前に逃げましょう!」

「あ、あぁ!」

 

 

 

「…やはり、白銀は四宮に応援演説を頼んだか……」

「え?あれって白銀君が四宮さんに告白したんじゃ無いんですか!?」

「…は?なんで」

「だって…!白銀君と四宮さんは…その……」

「…はぁ、あのなぁ五月。選挙前にそんな色恋咲かせる連中に見えるか?確かにあの2人はそんな感じだろうが、あくまでこれは戦争だ!互いの知略とプライドを掛けたな…」

「…そ、そんな大それた話なのですか?」

渡り廊下から生徒の野次を見つけた上杉達は2人の経緯を見届けた

2人がその場から逃げると野次の生徒も後を追う

 

残された上杉と五月は、解決策を探っていた

 

そんな時に、石上が二人のそばを通りかかった

 

「あれ、二人してこんな所で何やってるんですか?」

「石上…今、白銀が四宮を応援演説者に選んだぞ」

「お、会長も本気ですねー…僕も今回は全力で応援するつもりですよ〜」

「……」

「…そういえば、上杉先輩も生徒会長に立候補したんですよね。何かあったんですか?」

「いや、まぁ面倒だがそれなりのメリットを持ってやってる」

 

《当選すれば給料三倍!当選すれば給料三倍!》

 

上杉の脳には、給料の事しか頭になかった

 

「…そういえば、今回の選挙で立候補したのは白銀君と上杉君だけなのですか?」

「…あ〜そういえばもう一人いた気がするな…名前は確か……え〜…」

「会長と上杉先輩と肩を並べようとする奴が居るんですか?そんな阿呆がいたのなら僕に紹介してくださいよっ!絶対顔も名前も知らない馬の骨ですから!」

「……伊井野ミコ…とか言ったか?一年の」

「…伊井野…ミコ…!?」

その名前を聞いた途端少しだけ顔を青ざめる石上

 

「…す、すみません…その名前は流石に知ってます」

「なんだ?有名人なのか?」

「ま、まぁ…一年の間では学年一位ですし…」

「だってよ」

「なんで私の顔を見ながら言うんですか!?」

「でもその…それ以上に強烈な部分が……」

何か重たい表情で渡り廊下を渡る一行

 

そして、廊下の窓から石上が何かを見つけ、二人の方に振り返った

 

「あ、丁度あそこでビラ配ってるのがそうですよ」

「なんだ、選挙までまだまだ時間があるのに…やけに早計だな…」

「それほど本気なのでしょう。これは手強いライバルが現れましたね…」

「百聞は一見に如かず…僕が話すより直接見た方が話が早いと思います」

「お、おう…」

 

言葉とは裏腹に重たい足取りで現場に向かう石上

その後をついて行く二人には、不安の感情が生まれていた

 

《石上があそこまで言う奴だ……どんな奴かは知らんし興味もないが…給料三倍の為!全力で調査して選挙活動に活かしてみせる!だが、もし仮に白銀よりも厄介な存在だったら…?》

 

〔上杉君…初対面の女の子に失礼な事言わないでくださいね…!?私との事があるんですから…心配ですぅ…〕

 

それぞれの不安を胸に抱え、少年少女は確実に一歩を踏み出していた

 


 

生徒会豆知識!

 

寝不足が解消された白銀はいつもの目付きとは違い好青年風な目付きに変わるぞ!

しかし!生徒会のメンバーはそれを良しとはしなかった…

 


 

「上杉風太郎は調べたい」

 

「…お願いします!」

「どうぞご覧になってください」

「お願いします!」

校舎の中庭

二人の女生徒が放課後を有意義に過ごしている生徒の道を塞がない程度に邪魔をしながらビラを配っている

だが、それでもなおビラを貰えないメガネの生徒

茶髪の生徒はビラを補充する為ダンボールにしゃがむ

 

だが、今度はそんな彼女をある男が邪魔をした

 

「……ちょっといい?」

「……石上…」

無愛想に応える茶髪の生徒

石上はイヤイヤな顔で対応する

 

「なんの用?不良に構ってる暇なんてないんだけど」

「不良……まぁ僕は只の顔つなぎ、用事があるのは…」

「お前が伊井野ミコか」

「……はい」

スっ…と立ち上がる女生徒

彼女こそが!

 

秀知院学園高等部一年 伊井野(いいの)ミコ

 

白銀と同じく学年一位成績を誇る才女!

高等裁判所裁判官を親に持ち、自身も風紀委員に属す!

精励恪勤 品行方正を地で行く優等生!!

 

身長は147cm!

 

「初めまして…でしょうか、上杉風太郎さん」

「ちょ…上杉君!いきなりお前呼ばわりはあんまりですよ!」

「…フンっ」

 

〔ああぁっ…絶対第一印象悪いですよぉ〜…!〕

 

「なるほど、見るからに真面目って感じだな…ビラ配りか、そういう地道な努力も大事だな」

「貴方こそ、選挙期間はもう既に始まっていますよ?ろくに活動もせずに当日を迎えようとしているなら…それは私から見たら、ただの怠慢ですね」

「……」イラッ

「……」イラッ

ここで、上杉と石上の額に血管が浮く感覚があった

 

「選挙活動なんて所詮単純接触効果を期待した票集め。普段の実績があればそんなまやかし必要無いんじゃない?」

「それが怠慢だというのです。生徒たちに政策を考える機会を与えてこそ、健全な学園運営に繋がるという発送には至りませんか?」

「「…ウッ」」

メガネの生徒の最もな意見にダメージを受ける石上

自身に実績が無いことに気付きダメージを受ける上杉

 

「私たちは、この秀知院がより健全で尊いものになるよう努力を重ねているだけです。その想いを、選挙活動を通して生徒たちに伝えたい。単なる票集めのつもりはありません」

「な、なかなか弁の立つ小娘だな…」

「小娘……」

そんな4人の会話を、五月はオドオドしながら見守っていた

 

「どんなに立派な理想を抱いても所詮は理想!」

「投票日が楽しみですね〜現実の厳しさをその身で知る事になるでしょう〜」

「駄目ですこの人たち!言ってる事が完全にダークサイド(あっち)側です!」

「…理想なき思想に、意味なんてないと言うのに……」

「ほら見てくださいおふたり共!こっちの方の方が良い事言ってます!」

なんとかその雰囲気を戻す為、五月は伊井野への接触を測った

 

「ごめんなさい!なんか上杉君妙に貴方の事ライバル視しちゃってるみたいで…まぁ普段とあんまり変わってないんですが……」

「…っ」

すると、伊井野が五月に対する表情を変えた

 

「…あれ?貴方、先日も会いませんでしたっけ?」

「え…?あ、私たちは五つ子なので、私の姉の誰かだと思いますよ!」

「あ…そうですか……」

五月の言葉を聞き、少しだけしょんぼりとする伊井野

だが、すぐに顔を上げ、五月に笑顔で問い掛けた

 

「…でしたら!今度その御姉妹にお伝えください!」

「…えっ?」

「……ありがとうございました…と」

「……」

呆気に取られた五月に、伊井野は不意にビラを手渡した

 

「それと、あそこのおふたりにお伝えください。理念では絶対に引けを取りません。そして、それは必ず時間と共に理解が得られる物と確信しています。この学園の為に…この選挙は勝たせて頂きます!」

「…は、はいっ」

 

 

 

「……伊井野ミコか…ライバルは白銀だけと考えていたが……これは本気も本気で望んだ方が良いな…」

「……どうでしょうかね」

「…え?」

先程の伊井野の言葉を反芻しながら、上杉達は廊下を歩いていた

 

「その心配は無いと思いますよ」

「…何?」

「そのビラ、ちゃんと読んでみてください」

「……?」

五月と上杉はビラに目を通す

 

「……っ」

そこに書いてあったのは、衝撃的な内容だった

令和になったこの現代でもなお、男子は坊主、女子はおさげか三つ編みの強制。更には男女のソーシャルディスタンスの制定。これでもかという程の癖の強いものとなっていた!

 

「ナチュラルにコレなんですよ。伊井野は融通利かないクソ真面目というか……こんなビラ配ったら逆効果ってなんでわかんないんですかね……」

「…お、おう……」

「す、凄いですねこれは……」

 

後日談

この次の週に発表された生徒会選挙の事前投票

白銀1位、上杉2位、伊井野3位と優勢を貫いていた

 

本日の勝敗

上杉と五月の勝利

(伊井野ミコの調査がほぼほぼ完了した為)




次回

第25話「中野一花は見極めたい」


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第25話「中野一花は見極めたい」

四宮かぐやが抱いているイメージ

白銀御行←告らせたい
藤原千花←頻繁に呪う
石上優←手のかかる後輩
上杉風太郎←嫌いじゃないが興味もない
中野一花←地味に危険人物…?
中野二乃←自分とよく似ている
中野三玖←石上君みたいねぇ…
中野四葉←度々困らされる
中野五月←信頼出来る



「……ん」

ある朝

校舎の廊下を歩く一花

その目の前には白銀であろう学ランを来た生徒の後ろ姿があった

 

〔…そーだ…せっかくだし私の冬服見せてあげよ〜〕

 

本日から衣替えという事もあり、そんな何一つ内容のない企みをしながら、一花は白銀の背後に近寄り肩を叩く

 

「わっ!おはよーミユキ君〜!どう?今日の私どこかが違うと……」

「制服が違う」キリッ

「全部違う!?」

振り向いた白銀

だが、彼の印象は以前とは違いどこか好青年を丸出しにしたかのような面立ちだった!その変化には流石に驚く一花

当の本人は自覚が無かった…!

 

「ど、どうしたのミユキ君!?だいぶ雰囲気が違うけど!?」

「え…?別段いつもと違いは…あぁ学ランに戻ったからな、夏服着れたのホントあっという間だったなぁ〜」サラッ

「いやいや!今はそんなほんわかトークしてる場合じゃないよ!?」

 

そんな文言をしていると、彼の背後から二人の影が近寄る

 

「あんた達朝からうるさいわよー」

「白銀さん!おはようございます!!」

まだ白銀の顔を見ていない二乃と四葉

だが、白銀が二人に振り向いた瞬間にその二人の表情が崩れた

 

「どわぁー!?白銀さん大丈夫ですか!?なんかの呪いが解けたんですかぁ!?」

「いや、最初から呪われてねぇから!!」

四葉の言葉にド派手にツッコミを入れる白銀

一方の二乃は白銀から視線を逸らした

 

〔…あっぶなかったわァ…一瞬白銀がキンタロー君に見えた…そんな訳ないのに…!〕

 

叫び狂う四葉、頬を少々赤らめる二乃、一周まわって落ち着いて来た一花と、廊下はカオスを表現していた!!

 

「お前ら、通行人の邪魔だ」

「…っ…上杉…!」

そんな3人を静止させた上杉

少し驚く白銀の顔をじっと見た

 

「…あ?誰だお前」

「……お前もか…お前もなのか…!?」

「冗談だ、白銀。だが少し雰囲気が変わったな」

「少し所ではないと思いますよ?」

「フータロー冗談なんか言うんだ…」

上杉後ろから現れた五月と三玖

 

「…それにしてもなんなんだ?皆して……今日の俺はそんなに変か?」

「変」

「変よ」

「変…」

「変です!」

「まぁ…」

「……そんなにはっきり言われると傷付くな…具体的にどこが変なんだ?」

「…まぁ、はっきりと分かるのは目だな」

「…目?」

「ほら、お前いつも周りに威圧感振り撒きながら歩いてるだろ?今日はそれが皆無だ」

「威圧感……してるつもりないのに…」

「「「「「……」」」」」

上杉の指摘を鵜呑みにし、納得する中野五姉妹

 

「まぁなんだ…その調子なら票も多く取れるんじゃないか?俺が知ったことでは無いが……」

「…お前の方はどうなんだ?」

「…ん?」

「…だからほら、選挙活動の方は……」

「別に俺に気を使わなくたっていいんだぜ?お前はお前自身の心配をしろ。まぁ、最後に勝つのは俺だがな!ハハハハ!」

「…と、このように申してますが…現状は最悪です。上杉君の日頃の行いが顕になってきました……」

「おい五月、何故余計な事を言う?」

「……はぁ…」

五月にツッコミを入れる上杉を見て落胆する白銀

 

「それに、意外とライバルが手強くて…白銀君は伊井野さんの事をご存知ですか?」

「勿論、敵戦力は大体把握している…だが彼女がどうした?」

「えぇ、実は……」

生徒会選挙について詳しい話をし始めた五月達

 

「……」

そんな中、一花は考え事をしていた

先程五月の口から出た女生徒の名前についてだった

 

「……伊井野…?」

 


 

「伊井野ミコは呑まれない」

 

「……ふぅ〜ん…あの子が伊井野ミコかぁ…」

その日の放課後、一花は今日もビラ配りをしている伊井野ミコを校舎の影から見ていた。

 

「現時点ではフータロー君が彼女に負ける可能性は低いけど、やっぱり難しいよねぇ……そうだっ!」

ひとり考える一花は、とある事を思い付く。

 

「ここはお姉さんが一肌脱ぐ時かなぁ…」

 

そして、いつしかその目から光は失われていた。

 

「…こ、こんにちは」

「わぁ!貴女が伊井野ミコさん!?初めまして、私はフータロー君を応援してる中野一花って言いますっ」

数時間後、誰も居ない生徒会室に伊井野を呼び出した一花は、あからさまな演技を見せながら彼女に接近する。これは流石の伊井野も警戒を強め、嫌悪感を抱きながらもソファに促される。

 

「伊井野さんも大変でしょぉ?1年なのに生徒会長に立候補するなんて、私なら出来ないなぁ…まぁ女優の仕事でそれどころじゃ無いんだけどねぇ……」

「…一体何の御用でしょうか。私も、暇じゃないのですが……」

ここで伊井野がしびれを切らして本題に入る。自身を呼び出したその理由の究明をする為。

 

「そんな難しい話じゃないんだよ?ただ私は…」

「……」

「…貴女じゃあ、生徒会長としての器が未熟なんじゃないかなぁって思ってね…?」

「……それはつまり…出馬を諦めろ、と言いたいのですか?」

「……あれ、そう聞こえちゃった?」

一花の目のハイライトは完全に消え失せてしまっていた。それはさながら蛇のようだ。

それに対し完全なる敵意を向け始める伊井野。狂犬のような目を光らせてふたりは夕日が沈む教室で睨み合う。

まさに一触即発。こんな彼女達の輪を乱し有耶無耶に出来る人物はたった一人…!そう、藤──

 

「こんなとこに居たのか、一花。お前の姉妹全員帰ったぞ?」

「フ、フータロー君!?」

「あ、貴方は…!?」

「あ?お前までなんでここに居るんだよ。生徒会室は今は使用禁止の筈だぞ?」

この修羅場に於いて、上杉風太郎は気にすること無く生徒会室に入って行く。

 

「な、なんでフータロー君がここに?」

「三玖に頼まれたんだよ。バイトでもないのに一花の様子が見当たらないから探して欲しいってな」

携帯を取りだし三玖に一花の安否を報告する風太郎はその姿勢のまま目線だけ伊井野に移した。

 

「……」

「……んで、伊井野ミコだっけ?うちのパートナーに何の用だ?」

「……っ」

「…パートナー…ですか。本日はその方に呼び出されてここに来たんです」

「え、そうなのか?」

「あ、えぇっとぉ〜……」

目を泳がせる一花。その様子にため息を着く上杉。

 

「…まぁなんだ…迷惑をかけたんなら謝るが、何か言いたげだな。なんだ?」

「……いえ別に。ただひとつ、忠告しておきます」

伊井野は人差し指を上杉に立てて言い放った。

 

「私は貴方達のような外道なやり方で、生徒会長になるつもりはありません!」

「……あ?」

「気品のある秀知院の生徒ならば、きっと…私の考えに賛同してくれる筈……」

「……お前、先に言っておくが…自分の考えを押し付けるだけじゃ、生徒会長なんて務まらねぇよ」

「…えっ?」

上杉の言葉に、伊井野は思わず顔を上げる。

 

「正直、俺には生徒を纏めあげるカリスマ性も、人望も名誉も実績もねぇ」

「……」

 

〔…そこ、自覚はしてるんだ……〕

 

「…だが、それをイチから…いや、ゼロから積み上げて来た奴が居るのを、俺は知ってる」

「……っ…それって…」

「そいつはどんなどデカい壁にぶち当たっても、仲間と生徒の声に耳を傾けて乗り越えて来た。才能だけじゃ人は集まって来ない。ほんの少しの才能と、それまで自分を培ってきた努力が、初めて人を呼び寄せるんだ」

「……」

上杉の言葉を、伊井野は俯きながら静かに聴く。

 

「……お前の公約を見た。正直俺からしたら、ふざけてる。そういう印象を受けた」

「…っ!」

「だが、本気さだけは伝わって来た。本気でふざけてるって思った。だから、嫌いじゃねぇって思った」

「……えっ」

伊井野が顔を上げると、そこには優しい表情の上杉が居た。

 

「だから、全力でかかってこい。お前の出来る事を、精一杯やって見せろ」

「……上杉さん…」

「……フータロー君…」

「…だが言っておくが!俺はどんな手段を使っても生徒会長になってみせる!外道?上等だっ!ふはは!」

「…は…はぁぁっ!?」

「ちょっ…フータロー君〜…」

上杉のイキリ発言に頭を抱える一花。

 

「ちょっとは見直したと思ったのに…!これではっきりしました!やっぱり次期生徒会長には私がなります!投票日を楽しみにしててくださいねっ!」

「ははぁっ!望むところだ!!」

「……」

怒号を吐きながら生徒会室を後にしようとした伊井野は、ドアノブに手をかけたところで静止する。

疑問に思ったふたりだが、その時彼女の口から小さく飛び出た言葉が、彼等を綻ばせた。

 

「……ありがとう…ございました」

 

 

「あ〜あ…焚き付けちゃったね、あの子の事」

「ま、あのくらい強く言わないとあっちも本気で来ないだろ?」

「ふぅ〜ん…フータロー君が良いなら良いんだけど」

帰り道、ふたりは先程の伊井野との会話を思い出しながら2人並んで歩いていた。

 

「…ねぇ、フータロー君がさっき言ってたのってさ、ミユキ君の事でしょ?」

「……ま、まぁな…」

上杉は前髪をいじりながら答えた。

 

「へぇ〜…フータロー君も意外と他人(ひと)の事ちゃんと見てるんだねぇ……お姉さん関心っ」

「……あいつはバカが付くほどの努力家なんだよ。努力バカ。あいつが生徒会に入って、まるで人が変わったのを覚えてる」

「……」

「何があったかは知らない。知りたいとも思わない。ただひとつ、思った。努力は、裏を返せば執着心。人を簡単に壊せる、めちゃくちゃやべぇやつって事だ」

「……努力が、人を壊す…?」

「…人によってだがな。俺は壊れなかったが、あいつはどうかな……」

「……」

この日のフータロー君は、まるで遠い目をしていた。過去の自分と今の自分、そして過去の誰かと今の誰かを比べているような、今まで見せたことの無いような目をしていた。

 

そして、来週はいよいよ選挙当日。

 

それまでこれといって全く選挙活動をしてこなかった上杉は、内心バクバクであった。

 

本日の勝敗

一花の勝利

 


 

「中野五月と本物の愛」

 

「……」ズーン

「……」

「……折り入って…五月さんに相談があるのですが…」

「は、はい……」

昼下がりの校庭のベンチにて、五月はかぐやに相談をもちかけられていた。

 

「これは、友達の話なのですが……」

「……」

 

〔四宮さんの話ですね……〕

 

「最近気になっている男子の容姿が大きく変わってしまいまして…」

「……」

 

〔白銀君の話ですね……〕

 

「それで……彼女はその変化に多少なりショックを受けてしまいまして。美醜で揺らぐ程度の想いなんて、本物の愛じゃ無いのではないかと思い詰めていて……」

「……なるほど…」

 

〔……本物の…愛!!??〕

 

本物の愛(トゥルーラブ)

 

口にするだけで恥ずかしいピュアワード!

このようなワードは普通に生きている分には到底出てこないものではあるが、特殊な環境で生まれ育ったかぐやである。このワードが口に出すだけで恥ずかしい物であるという認識すらしていない!

 

流石の五月もこのワードには驚きを隠し切れない!

 

〔で、ですが…これは四宮さんが個人的に私に頼る程深刻に考えている問題……何か力になれるのであれば……〕

 

「…れ、恋愛なんてそんなものですよ!少しの事で盛り上がったり冷めたりなんて、どこにである話です!」

「…でもー……人の美貌で態度を変えるなんて『本物の愛』からは一番遠い所にあるじゃない!『本物の愛』はそんな簡単に揺らいだりしないものでしょう!?」

「……っ!?」

 

〔は、恥ずかしげもなく…!?〕

 

「大丈夫ですよ四宮さん!貴女…ではなく、その方が抱えている気持ちは間違いなくほんも……本物の愛、ですよ…?」

 

〔はわわわ!私はなんて恥ずかしい発言を…!〕

 

この出来事が後に、五月の黒歴史となる一件となった

 

〔……と、言いましても…〕

 

「……?五月さん?」

「…上杉君が退院後、私達五つ子に同じ髪型にしろと行ってきたことがあります。どうやら、私達を見分ける方法を探るべく、カマをかけたかったのでしょう」

「……はぁ…」

「……その時、四葉が彼に言った言葉があります。『愛があれば見分けられる』。これは、母の言葉なんです」

「…お母様の…?」

「母は生前、とても愛のある方でした。私達五つ子を等しく、最大級の愛で私達を満たしてくれました」

「……」

「…つ、つまり!私が何を言いたいのかと言いますと……」

「……っ」

話を本筋に戻す為、五月はかぐやの目をじっと見つめた

 

「…母は同じ見た目の私達5人を等しく愛してくれた。見た目なんて関係無いんです。自分が誰を好きなのか、そういう気持ちが大事なんですよ!きっと!」

「……そういうものでしょうか…」

視線を前に俯くかぐや。その目にはまだ疑念が残っていた事に五月は気が付いた。

 

「四宮……」

一方、2人で何かを話すかぐやと五月の存在を確認した白銀

 

(先日の俺は四宮的になんか駄目みたいだったが……今回は違う!今日の俺は──)

 

「おう、二人共」

「あ、白銀君……」

「今日もいい天気だな」

「きゃあああああああ!!」

今日の白銀は、いつにも増して黒い隈に充血した目。目つきの悪さが最高潮まで到達していた!

 

「どどどどうしたんですか!?顔が大変な事になってますよ!?」

「いやなに、ちょっと最近徹夜続きでな……だいぶ目にキてしまったようだな……」

「あわわわわ……」

 

〔こ、これは流石に限度があるのでは……!?〕

 

かぐやを気にして振り向く五月

 

「か…会長……駄目ですよ……保健室…保健室でお休みしましょぅ……」ハフ… ハァ… フウ…

 

〔あれーーーー!?〕

 

だがそこには、何故か発情したかぐやが居た!

 

「いけない……いけないわ私……いけないって判ってるのに私どうして……」

 

〔……!!〕

 

そのまま白銀の肩を持つかぐや。白銀の顔をまじまじと見ながら保健室までの道を歩んで行く。そんな彼女の姿を見て、五月はある事を思った……

 

〔ごめんなさい、四宮さん、お母さん……たぶんそれ本物の愛じゃ無いと思います!〕

 

本日の勝敗

五月の負け




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第26話「上杉風太郎は負けられない」


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第26話「上杉風太郎は負けられない」

藤原千花が抱いているイメージ

白銀御行←私が居ないと…
四宮かぐや←大♡大好き
石上優←天敵
上杉風太郎←ポンコツ度合い見極め中…
中野一花←立派な女優さん!
中野二乃←怖いけど優しい!
中野三玖←石上くんみたい……
中野四葉←お、同じ波動を感じる…!
中野五月←真面目で気配り屋さん!



選挙当日

 

「皆さんに、お願いがあるんです」

その日、石上は白銀達に向けて神妙な面持ちでいた。

 

「今日の選挙、伊井野ミコに徹底的に勝ちたいんです」

「…なんだ?神妙な面持ちで」

「まぁ勿論手は抜きませんけど…」

そんな石上の変化に、白銀達は気付いていた。

 

「事前調査では私たちが6割近く、上杉さん達が3割近くの票を抑えてますし、そこまで心配する必要は…」

「向こうに何か隠し球でもあるのかしら?」

「いえ、無いです。今日の選挙は僕等が確実に勝つでしょう」

「だったら……」

「それでも皆さんなら、それ以上の勝ち方が出来る筈です」

「……何かあるのか?伊井野ミコに」

 

 

 

「……ゴクッ」

「……フータロー…緊張してる?」

「…え?…ははっ…まさか、この俺が…?」

同じく待機所で待機する上杉達。上杉は珍しく緊張しており、それを三玖が癒していた。

 

「そ、そんな時は掌に「人」を書いて飲むといいよ…」

「そんなのただの迷信だろ?でもまぁ…」

上杉は三玖の言う通り掌に「人」の字を書きそれを飲み込む動作をする。

 

「……?」

普段ならしない行動をした上杉を見て、三玖は不思議に思った。

 

「…フータロー君〜、そろそろ準備してってさー」

「……おう」

「……フータロー…!」

「……ん?」

立ち上がる上杉の背中姿を見て、三玖は声を掛ける。

 

「…が、頑張ってね…!」

「……あぁ!」

そして会場に入った瞬間、上杉は真剣な眼差しで先を進む白銀達を見つけた。

 

「上杉さん…」

「四葉」

「白銀さん達、今まで見た事ないくらい真剣な顔してますね…」

「…あいつらはきっと、この選挙に人生を賭けるつもりで来てる。俺たちも負けていられないな」

「はい……」

「…今更罪悪感か?世話になった奴の敵になるのは」

元気がない四葉を見て、上杉は自分なりの励ましを掛ける。

 

「…えへへ…上杉さんにはなんでもお見通しですねぇ〜…」

「……四葉。今だから言うが、お前は俺の選挙には巻き込まないつもりだったんだ」

「…えっ…?」

「だが、お前は人一倍正義感が強いからな。お人好しってのもあるが……お前のそのお人好しが、俺に力をくれる気がした」

「上杉さん……」

「だから頼りにしてるぞ?応援演説、お前に任せた」

「……はいっ!任されました!」

「……フッ」

四葉のその笑顔が、不思議と上杉の肩の荷を下ろしていることに、本人は気付いていなかった。

 

そして、応援演説が始まった!

 

中野四葉 応援演説 開始

 

「…上杉風太郎は、とても誠実で…期末試験ではあの四宮かぐやさんに次ぐ第3位という成績を収めています」

壇上にて全校生徒、全教員が体育館に集まる中、照らされたステージの真ん中で1人マイクに向かって応援演説をする四葉。

 

「…なるほど、応援演説には四葉を起用したか」

「確かに四葉先輩なら、上杉先輩の事を良く伝えてくれますもんね…」

「……果たしてそれだけが起用した理由かな…」

「…え…?」

 

「それに上杉さんには、人を観る力があります。知っての通り、わたくし中野四葉には4人の姉妹がいて、全員同じ顔の5つ子なのです!ですが上杉さんは、そんな私たちを気味悪がることもなく、私たち一人一人にしっかりと向き合ってくれました。彼には、人と向き合う力があります!」

声を張りハツラツとした笑顔で全校生徒に向けて視線を送る四葉。

だが……

 

「…でも上杉くんって結構暗いイメージだよね……」

「わかる。私たちに対しては結構当たりキツいしね」

 

「ってか成績とか関係なくね?だったら俺白銀に入れるわ」

「人望も成績も、白銀には適わないよなぁ…」

 

小声でありながらも、生徒達の声は周りに聞こえたりもする。その声を聞き、四葉は1歩引いてしまう。

 

「上杉ってあれだろ?食堂でいつも単語帳開いてる変わりもんだろ?」

「やめろよお前w」

 

「林間学校で遅刻した時、中野さん達と同じ部屋で泊まったらしいよ〜w」

「えっ何それ、そういう関係?」

 

その声はどんどんとヒートアップして行き、もはや誰がどんな言葉を発しているのか分からなくなっていていた。

 

「…皆さっきから、フータローの事悪く言って…!」

「落ち着きなさい三玖。選挙に出ると分かってた時点で、この事は予測出来てた筈よ」

「……二乃は、悔しくないの…?」

「……悔しいに決まってるわよ。上杉は兎も角、私たち姉妹まで悪く言われのは、我慢ならないわ…!」

 

「……」

 

(……上杉…)

その状況を目に、白銀は上杉を見る。

 

「……」

視線を落とす彼は、白銀には俯いて落ち込んでいるように見えた。

 

「……っ」

だが後の話で、その時の上杉からは

闘志のようなものを感じたという……

 

「みなさん静粛にっ!!」

スピーカーから放たれた四葉の大きな声は、一同を黙らせた。

 

「確かに上杉さんには、白銀さんに勝る程のものは持っていません!」

「……は?」

「…ですが!私は…私たちは知っています!彼が何に喜び、何に悲しみ、何に怒るのか……それを知らない皆さんは、もっと上杉さんを知るべきだと思います!」

 

「……ククッ」

「…上杉君?」

「……ったく……これじゃあ応援演説じゃなくて、俺を慰める会じゃねぇか…」

「……っ」

 

〔…上杉君……もしかして…〕

 

五月も、上杉の考えが少しずつ読めて来た。

 

彼の笑顔の理由。もう一度確かめたかったのかもしれない

 

「私は人を見た目や周りの評価で判断しません!上杉さんを知り、上杉さんに知ってもらえた事が沢山あるからこそ!彼には、生徒会長になる素質が沢山あると、私は思います!!」

 

私たち五つ子と歩んだ、その軌跡の証を

 

「以上です!!」

プンスカという表情でステージを降りる四葉。

 

上杉の横に来たところで、上杉は四葉の頭に手を置いた。

 

「……よく頑張ったな、四葉」

「…はい…っ」

四葉の目尻に、涙が溜まっているのがわかったからだ。

 

大仏こばち 応援演説 開始

 

「伊井野ミコはとても真っ直ぐな女の子です。心が綺麗で純粋で、誰よりも正しくあろうとする女の子です。その真面目さは風紀委員の活動を通して見てきた人も多いいのではないでしょうか。彼女は中等部で風紀委員長を勤め……」

 

「淀みがない。相当練習してきてるな」

「はい、だけど…」

大仏の演説を聞く白銀と石上だが、石上は大仏ではなく会場の生徒達に目がいく。そこには先程の四葉の演説もあってか、ガヤガヤと私語を漏らす生徒達がいた。

 

「会場の意識が散漫です。真面目に聞いてる奴は半分も居ない」

 

「…ご清聴ありがとうございました」

『続きまして、白銀さんさんの応援演説です。四宮さん、お願いします』

応援演説者が入れ替わり、壇上にはかぐやが立った。

かぐやの登場に会場は更なる盛り上がりを見せ、ガヤガヤはどんどんと増していった。

 

「……っ!」

だが、突如として会場にハウリングが発生した。それはかぐやがマイクに触れた事によるハプニングが、それとも……

 

「白銀御行会長候補の応援演説を務める四宮かぐやです。こんにちは」

 

四宮かぐや 応援演説 開始

 


 

五つ子豆知識

 

選挙中

五月と四葉は上杉の元に付き添い、

一花、二乃、三玖はあくまで応援側として一般生徒と同じ客席に座って選挙を見守っているぞ!

 


 

《今のハウリング、わざとだな。教師も含め、ほぼ全員の意識が強制的に引っ張られた……》

 

四宮が起こしたハウリングが、意図して起きた事を把握した上杉は、白銀を見る。

 

《……やっぱり侮れねぇな、あいつらは》

 

「我が校の生徒会はOB会の管理の元寄付金によって運営されています。動かす金額は子供の遊びで片付けられるものではありません。皆様のご両親が朝早くから夜遅くまで働き、皆様を想って贈られたお金です」

応援演説を始めたかぐや。

すると背後のバックスクリーンが展開し、そこにプレゼンのスライドが映し出された。

 

次々と映し出されていく映像。

白銀の実績から修学旅行や文化祭などの生徒達を揺さぶるネタで会場を湧かせた。

 

《このハッタリかましたPV……そうか…石上!》

 

「盛り上がってるじゃないか」

「会長の成果をそれっぽく演出して見せただけですよ。大事なのは積み重ねと適切な出力(つたえかた)です。そのどちらが欠けても評価には繋がらない」

「だが意外だったな、石上がここまで本腰を入れるとは…」

「僕が言い出した事ですし。伊井野徹底的に勝つって」

 

「ご清聴ありがとうございました。前生徒会役員を代表しまして、白銀御行に清き一票を」

会場の拍手に見送られながら、かぐやはステージを後にした。

 

『続きまして、上杉風太郎さんの立候補演説です』

「……来たか」

 

上杉風太郎 立候補演説 開始

 

《今四宮の演説で分かった。普通の方法じゃ勝てねぇ…今会場は白銀派が一定数を占めてるだろう。このまま俺が普通に演説をしたところで、最後の白銀の演説でまた巻き返される。だったら……》

 

壇上に上がった上杉は、マイクの前に立ち深呼吸をする。

 

《それよりも、ものすげぇ演説をしてやる!もう手段は選ばねぇ!》

 

「…あー…ご紹介にあずかりました、次期生徒会立候補者の上杉風太郎です。よろしくお願いします」

会場から軽い拍手が届く。先程の四葉の演説も効いているのだろう。

 

「…と、堅苦しい感じでやろうとしたが……やっぱりやめだ…!」

手をバンザイしお手上げの仕草をする上杉。その行動に、会場の人達が驚く。

 

「まぁさっきお前らが言ってたみたいに、俺には白銀に勝てるほどの学力も実績も、人望も優しさもねぇ!だが俺にもプライドはある……だから俺も探したんだ、白銀に勝てる何かをな」

「……上杉君…」

心配そうに見つめる五月。

だが、横にいる四葉が、心配ないよと見つめ返す。

その視線を受け、五月は再び彼を信じるのであった。

 

「芸事、俺にそこまでの手の器用さはねぇ。音楽?俺にはそんな事をする金と時間がねぇ。武芸?魅力的だな、だが俺には体力がねぇ」

「…い、一体何を…!」

 

本来立候補演説とは、自分の長所や理念、公約なんかを発表する場なのだが、今の上杉はただ自分の短所を自白し、生徒に同情を巻き起こす為の小癪な手を使う者にしか見えない。周りの評価を気にせず、淡々と話す上杉を見て見かねた生徒のひとりが彼に茶々を入れる。

 

「だが!!」

「……っ!」

「…だが、俺には人と向き合う力がある。バカ共と向き合う力がなぁ!」

自信満々に言い放った上杉。

 

「それに気付くのも、俺一人ではなし得なかった事だ。あのバカ共と会えたから、俺はそれに気付く事が出来た。いや、気付かされたんだ。お前たちが俺に対するイメージが悪いことなんて分かりきってるでも!俺は本心で、お前らと向き合ってみたいんだ……」

「……上杉…」

「だから……向き合わせてくれ。あいつらだけじゃない、この学園のみんなと……秀知院の生徒として…」

軽く頭を下げる上杉。拍手も賞賛もない、そんな時間が刻々と過ぎていく。

 

「……う…上杉風太郎に、清き一票をっ!」

すると、五月が席を立ち上がり客席に向かって大きく叫び始めたのだ。

 

「清き一票を!」

「…き、清き一票を…!」

「お願いします!」

それに続き四葉、三玖、一花が立ち上がり大きく叫ぶ。

 

「……お前ら…」

その光景に唖然とする上杉。それに意外だったのは、こんな事には賛同しないと思っていた二乃が、立ち上がり他の姉妹たちと同じように頭を下げて投票を催促した事だった。

 

「……フッ…ありがとな、お前ら」

小声でそう呟いた上杉は、マイクを手を取り深くお辞儀をした。

 

「以上、上杉風太郎の立候補演説でした。ご清聴ありがとうございました」

『続きまして、伊井野ミコさんの立候補演説です』

マイクを戻した上杉はステージを降りて伊井野とすれ違う。

 

《……あいつ…》

 

上杉は違和感を察したが、伊井野はそのままスタスタと壇上に上がり、マイクに口を近付けた。

 

…私の……名前は……ザザッ…

 

「…えっ?なんて?」

「マイクトラブル?」

「きこえねーよ」

「どうかしたの?」

突然のマイクトラブルらしきものに、生徒たちはまたざわつき始めた。

だが、これはマイクトラブルなどでは無い。

当然、白銀達が仕掛けた訳でもない。

 

…………いいの……みこ…です……

そこには、壇上で台本を持った顔を真っ赤にさせた伊井野ミコが立っているだけだった。

 

「……くすっ

「えっ緊張してるのかな」

「ふふっ……まただ」クスクス

 

「……」

「…いつものパターンですよ。これが伊井野が勝てない理由」

この状況を、石上は白銀と上杉にも聞こえるように説明した。

 

「もともと人前が苦手な奴でしたけど、選挙に負ける度に酷く成ってる」

 

今も口元を口で隠しながらクスクスと笑う生徒たちを見て、石上は更に声を漏らす。

 

「……そりゃ笑えますよ。学年1位の融通が利かないクソ真面目ちゃん。普段は偉そうに指図してくる目の上のタンコブがこうも見事に生き恥さらしてくれる訳ですから。普段からムカついてる奴等からしたら、笑うなってのが無理な話でしょう」

「……」

「僕だってあいつには恨みも多い……でも」

石上は知っていた。

中等部時代、1人せっせこ委員会の仕事をこなし、人を嫌がる仕事を率先し、体格の差があっても尚不良の生徒を取り締まり、校庭の花に毎日水やりをやる。

そんな彼女が、色んな生徒達の笑いものにされ続けている事を。

 

「…でもイラつくんすよ。頑張ってる奴が笑われるのは…!だから僕は……」

「任せろ」

「……白銀」

「…伊井野ミコを笑わせない勝ち方をすればいいんだな?」




次回

第27話「伊井野ミコは踏み出したい」


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第27話「伊井野ミコは踏み出したい」

石上優が抱いているイメージ

白銀御行←割と仲良し
四宮かぐや←ただただ怖い
藤原千花←ヤベェ奴
上杉風太郎←悪い人じゃなさそう
中野一花←何故か負のオーラが見える…
中野二乃←ちょっと怖い…けど優しい…
中野三玖←僕みたいだなぁ…
中野四葉←藤原先輩みたい…
中野五月←良い人



ミコちゃんは、正しさを愛してる

 

「ミコちゃんお家に誰も居ないの?」

「うん。ママは紛争地域でワクチンを配ってて、パパは裁判所で遅くまでお仕事。とっても大事なお仕事なんだよ」

「…でも、家に誰も居ないのって寂しくない?」

「……」

 

ミコちゃんは、弱さを見せない

 

「パパとママは悪くない。世の中が悪い人ばっかだから、パパとママは忙しくて、お家に帰ってこれないだけなの……みんながもっとちゃんとしてれば!」

「……」

 

ミコちゃんは、とっても真面目

毎朝誰よりも早く教室に来て、メダカに餌を上げてお花の水を替える

 

先生の言いつけを破った事はないし、勉強はいつも一番

 

「センセー!モガミくんが学校にオモチャを持ってきてます!」

それで、やっぱり真面目

児童会長に立候補するのも自然な流れだった

 

ミコちゃんは正しさを愛してる

でも遊びたがりの小学生にとって、正しさなんて自分たちの自由を侵害する敵にしか見えない

 

中等部に上がって、私たちは風紀委員に入った

ミコちゃんはやっぱり真面目で、風紀委員の仕事を誰よりも頑張った

先輩たちが怖がる人でも、人気者の男子でも遠慮なく取り締まる

 

疎ましく思う人も多かった

中には意地悪な人も居て……

 

ミコちゃんは表情を変えず意に介さない

そういう風に見えたんだろう

 

でもそれは違う

 

ミコちゃんは弱さを見せない

ミコちゃんは人の居ない所で泣く

本当は怖がりで、悪意に晒されば人並みに傷つく

 

ミコちゃんは真面目なだけで強くなんてないのに

誰も判ってくれない

 

どうしてみんな判ってくれないんだろう

ミコちゃんは正しくありたいだけなのに…

 

「……」

 

どうしてそんな目で見るの?

そんな目で見られたら、誰だって怖いんだよ?

 

「……っ」

伊井野の手から滑った台本の紙が、ステージへと舞っていく。

 

だが、それを受け止めたのは、壇上に上がった白銀だった。

 

「もーいいだろ、時間の無駄だ」

…ま……まだ……

「……」

白銀のその行動には、意味がある。

その意味を、上杉たちは理解していた。

 

「こんなアホらしい公約掲げて、票を取れると思っているのか?伊井野ミコ」

アホ……らしい……?

「アホらしいだろ。今の時代に強制坊主とか、みんな嫌がってると思うぞ」

だ……だからそれは……

不意に、伊井野は生徒たちを見る。

当然のように、生徒たちの視線は伊井野を容赦なく締め上げる。

 

「……っ」ビクッ

「…反論があるなら俺の目を見て話す事だ」

わた……私が…言いたいのは……っ」

声を詰まらせる伊井野。

だがそんな彼女を受け止めるように、白銀は口元からマイクを離し、伊井野に優しく微笑んだ。

 

「……ん、言ってみ」

「…っ」

 

「……ったく…あの野郎……俺の事は置き去りかよ」

「ほんと、放っておけば勝手に自滅してくれるっていうのに……」

「…でもまぁ……」

「……フフッ」

「…白銀(あいつ)らしいな」

 

「この公約は全然アホらしくありません!!」

突如マイクを掲げた伊井野は、先程とは比べ物にならない程の声量で演説を始めた。

 

伊井野ミコ 立候補演説 開始

 

「いいですか。こちら各高校のブランドイメージのアンケートです!我が秀知院のブランド力は、年々下降の一途を辿っております!」

バックスクリーンに映し出されたスライドを上手く使い、自分の言いたい事を伝える。

 

「ほう、原因は摑めているのか?」

「原因はいくつかありますが、その中でもモラルの低下が強く印象付いているようです!世間には『偏差値だけ良いボンボン共』そんな風に思われているのです!」

またしても生徒たちが騒ぎ出した。

だがそれは有名人の登場や批判などから来るものでは無い。

 

“伊井野ミコの演説”

これを聴いた上でのざわつきなのである。

 

「同時に近隣住民の印象もあまり良くなく、最近は行事において地域団体の協力が得られない状況が続いております!」

 

(ミコちゃんがアガらずに言いたい事言えてる!?)

 

「地域団体の協力?具体的になんの事だ」

 

(そうか!今は白銀さんの視線しか意識していないから!)

 

「例えば文化祭でのキャンプファイヤー。3年前まで恒例行事でしたが、深夜まで居座る生徒やポイ捨て問題が取り沙汰され、夜間活動に町内会の許可が下りなくなりました!風紀の乱れが引き起こした問題の一つです!周囲の不評は校則緩和の時期と符合します!ルールはモラルを育てるのです!」

「だけどそれだけの為に坊主頭にするのはやり過ぎだろ」

「カッコイイでしょボウズ頭はぁぁ!?何で判らないんですか、一周してお洒落でしょう!あのクリクリはきゅんきゅんします!!」

「お前のフェチは知らんわ!」

「この情報社会、どんな些細な問題でブランドが崩壊するか判りません!私達が社会人になってからも秀知院のブランドを保ち続ける為、今こそ!風紀のある秀知院というイメージ改革が求められているのです!」

 

「……」

 

(ミコちゃん……)

 

「…坊主が有効なデータは?」

「あります!似た校則を導入したケースでは……」

 

討論は予定を30分以上オーバーして行われましたが、誰かが止められる雰囲気じゃありませんでした

 

 

 

生徒会選挙結果

当選 白銀御行 260票

落選 伊井野ミコ 220票

落選 上杉風太郎 120票

 

まぁ選挙には負けてしまったのですが……

 

「……っっ」ガァァン

「……ミコちゃん…」

「……おーい…伊井野〜」

「…っ」

集団で迫ってくる生徒達

 

(また、またなの?またミコちゃんは無自覚な悪意に晒されるの…?そんなの…そんなの…!)

 

「惜しかったなぁああ!俺お前に入れたのによー!」

「あの会長に一歩も引かずカッコ良かったです!」

「来年もあるんだ、切り替えていけよ!」

「ぼく伊井野さんがそこまで学校の事考えてるって思ってなかったよ……」

 

「……」

杞憂だったかもしれない

それほどまでに、ミコちゃんにはこれ以上悲しんで欲しくなかった

去年や一昨年のひとりぼっちだった少女の背中は、いつの間にか大きく、そして……

 

「あーもう…っ、相手が白銀じゃなきゃなぁ…っ」

「よく頑張った!!」

 

こんなにも素敵な笑顔を見せてくれるようになったのだから

 

「み、みこぢゃ〜ん!よがっだ…よがっだよっお…」

「えっ!?なんでないてるの!?……フフッ」

 

「こういう無茶はもうやめてくださいよ!心臓に悪いです!!」

「ごめんごめん…って四宮どうしたんだ?」

藤原はかぐやをおんぶし、そんなかぐやはぐったりとしていた。

 

「胃痛で立てなくなっちゃったんですよ!誰かさんのせいで!」

「悪かったて……ん」

謝る白銀を傍に、石上は集団の中で微笑む伊井野を見てまた微笑んでいた。

 

「……そういや、他の役職も決めないとだったな」

「そうですね……って、ちょっと待ってください?何考えてます?」

 


 

「上杉風太郎は託したい」

 

「……落選、ですか…」

「ま、最後のあの展開だ。仕方ねぇよ」

「うーん…でも結構いい線いってたと思うんだけどなぁ〜……」

選挙結果を見た上杉と中野姉妹たちは、嘆きの表情を浮かべていた。

 

「まぁ、お前たちはやれる事はやったさ。すまなかった…俺の力不足だ。やっぱり俺にはお前たちの家庭教師以外の仕事には才能が無いみたいだ……」

「……」

その言葉を聞き、二乃が上杉の前に立った。

 

「…あんた、確認だけど。この選挙で負けたら私たちの家庭教師を辞めるなんて事考えてないでしょうね」

「…も、勿論だ!今回はペナルティは無い!」

「……あっそ、ならいいわ」

「…え?」

「まぁでも、フータロー君らしい演説で…私は楽しかったよ?」

「……うん、フータロー…カッコよかった…!」

「すみません!私があの時声を荒らげてなければ…!」

「私も…見ているだけで何も出来ませんでした……」

「……お前ら…」

嘆きと賞賛、少ない人数からのものではあるが、それに心救われるものがある事を、上杉は理解した。

 

「上杉…」

「…白銀」

そんな彼らの元に白銀達がやって来た。ちなみにかぐやは藤原によって保健室で仮眠を取っている。

 

「……っ」

白銀は有無を言わさず、右手を差し出した。

 

「…いい戦いだった。ありがとう」

「……ヘッ…最後はお前らの独壇場だったがな」

「そんな事は無い。お前の演説が生徒に響いている事は、票の数からもよく分かる」

「……」

上杉は自身の投票数を見る。

120票、決して多くは無い数字だが、何故だか数字だけでは悔しいという感想は出て来なかった。

 

「…今回の選挙、上杉が本気で望んでいた事がよく分かった。弱さをさらけ出す男は強い、俺には出来ない事だ」

「……白銀…」

「だからこれからも、俺はお前の背中を追い続ける。よろしく頼んだぞ、上杉……いや、風太郎!」

「…っ!」

上杉を下の名前で呼ぶ白銀。2人が出会ってから初めての事であり、それに対して上杉は驚きを露わにする。

 

「…ヘッ……あぁ、絶対お前を超えてみせるぜ。まずは次の試験でだ!覚悟しろ、御行!」

「……フッ」

「……ヘヘッ」

固く結ばれた握手は、2人の絆を一層深めた。

 

その後、新生徒会が発足された。

かぐやを初めとする前生徒会の役員に加え、新メンバーを1名獲得。

 

伊井野ミコは、また新たな1歩を踏み出した。

 

今回の選挙戦

白銀陣営の勝利

 


 

生徒会豆知識

 

生徒会活動と委員会活動は並行して行える為、伊井野ミコは風紀委員としての活動も継続しているぞ!

(大仏こばちは生徒会には興味がなく、風紀委員で伊井野と一緒に居れればそれでいいらしい)

 


 

「上杉風太郎はまだ知らない」

 

「わぁぁぁぁん!わぁぁぁぁん!」ズビッ ズビッ

「どうした!?らいは!?」

「えぇぇぇん!お兄ちゃんこれぇぇ…!」

「…んあ?少女漫画?」

 

その日、らいはが読んでいたのはとある少女漫画。

「今日はあまくちで」という作品であり、老若男女問わず人気が高い。

更にこの作品はいわゆる『純愛泣ける系』

思春期で少女漫画に抵抗がある男子高生ですらハマる人が続出する傑作なのである!

 

「この漫画が泣けて泣けて…!」

「ってからいは、こんなものどこで手に入れたんだ…?まさか本屋からパク…!」

「四葉さんから借りたの!こんなの一人で運べないし!」

「なんだ四葉か……余計な事しやがって…」

漫画をらいはから受け取った上杉だが、中身を確認することも無く、他の巻も入っている大きめの紙袋に仕舞った。

 

「えぇ〜お兄ちゃんも読みなよ〜」

「俺は読まん。それよりも試験勉強が優先だ」

 

《生徒会選挙も開けた事だ……次の試験に向けて勉強しなくては……》

 

『絶対お前を超えてみせるぜ。まずは次の試験でだ!』

 

《あんな事を言った手前、漫画なんかに時間を割いてる場合じゃねぇ……》

 

「じゃあお兄ちゃん、これ全部読み終わったからさ。明日四葉さんに返して来てくれない?」

「あ、あぁ…それくらいなら……」

 

翌日──

 

「えっ!?上杉さんが私にプレゼントですか!?」

「違ぇよ。らいはが、お前から借りてた漫画を返したいんだとさ」

翌日、生徒会室にいた四葉の前に漫画の入った紙袋を置く上杉。四葉の横には三玖と一花が座り勉強会の準備を進めていた。

 

「おぉ〜!こんなに早く返さなくても良かったのに〜!どうでしたか?上杉さん!」

「ん?何がだ?」

「何がって、上杉さんも読んだんですよね?」

「いや、読んでないが」

「ナゼっ!?」

あっけらかんとした返事で当然のような表情をする上杉。それに対し四葉は驚きを露わにしていた。

 

「…これ知ってる。五月もこの間読んでて泣いてた」

「おぉ!じゃあ三玖も読んだのっ?」

「…い、いや……私は別に…」

「えぇぇ!?」

 

〔……伝記なら読んだ事あるけど…〕

 

「私は読んだよ?良かったナー」

「うむぅ!一花心が籠ってない!さてはちゃんとストーリー覚えてないなぁ!?」

「そ、そんなことないよォ〜?いやぁ〜あのシーンは最高だったなぁー……あの、主人公が最後にカレーを食べるシーン……」

ラストシーンじゃん!もぉー!なんでみんなちゃんと読んでくれないのぉ!?」

「……今、俺ナチュラルにネタバレ喰らったか?」

 

そんな会話をワイワイとやっていると、生徒会室の扉が開く音がした

 

「こんにちは!皆さんで何の話してたんですかぁ?」

「四葉の声が外まで響いててうるさいわよー」

「藤原と二乃か。いや何、この漫画の話を……」

「「…っ!」」

と、上杉が漫画の表紙を見せると、二人の形相が一変した。

 

「「『今日あま』だぁぁぁ!!」」

※『今日はあまくちで』の略称

「いけないわ…表紙を見ただけでだけで涙腺が…」

「これ良いですよねぇ〜私も友達に1巻だけ借りたんですけど、電子で全部買っちゃう位ハマっちゃって!」

「おぉー!よく分かってらっしゃるお二人が!」

二乃と藤原の登場で舞い上がる四葉。

そんな様子を上杉は唖然としたまま見ていた。

 

「なんだなんだ、これはそんな人気なのか?」

「当たり前よ!あんたも読んでみれば、この良さが分かるわ!」

「二乃の言う通りです!」

 

《…こいつら、急に熱入ったな……普段の勉強もこのくらい励んでくれたらいいのに……》

 

意気揚々と漫画の表紙を見せてくる二人を寂れた目で見ながら、上杉はそう思った。

 

《……まぁらいはもあれだけ俺に進めてきたし、帰ったら一度くらい読んでもいいか…》

 

そう思い、上杉はもう少しだけ漫画を借りる事とし、上杉家に持ち帰った。

 

その夜──

 

「ああああああああぁぁぁ!!!俺もこんな恋してみてぇぇぇ!!!」

 

一晩で完走した上杉は謎の「恋したいテンション」に陥り、次の朝にはその熱が覚める上杉なのであった……

 

本日の勝敗

上杉の敗北

(少女漫画の凄さを痛感した為)




次回

第28話「五つ子ちゃんには戻れない」


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