呪われた少年と第四真祖(リメイク) (青は澄んでいる)
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聖者の右腕編
聖者の右腕編Ⅰ


僕には幼馴染がいた。

 

虐められていた僕をいつも助けてくれて、とても綺麗で

 

 

 

 

僕の初恋で最愛の人だった。

 

 

僕は彼女を今でも愛しているし、彼女も僕を愛していた。

 

そんな僕と彼女はとある公園でいつもの様に遊んでいると彼女から一つの小さな箱を手渡された。

 

その中にはその時の僕には嵌まらない、彼女の母親の肩身である婚約指輪が入っていた。

 

「約束だよ、大人になったら里香と憂太は結婚するの!」

 

「!」

 

その時の僕の心はとても幸福に満ちていた物だろう、それ程までに彼女の言葉は嬉しかった。

 

「良いよ!」

 

「!」

 

今度は彼女が目を見開いた、まさかこんなに早く返事が貰えるとは思わなかったのだろう。

そして彼女はそれはもう素敵な笑顔で微笑んでくれた。

 

「それじゃあ僕らは、ずーっとずーっと、一緒だね!」

 

この時、僕達はこの先の未来今のまま変わらない日々を送り、幸せになると疑いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大“人“に“な“っ“た“ら“あ“ぁ“、結“婚“す“ぅ“る“う“ぅ“ぅ“ぅ“

 

とある日を境に僕は彼女を一度失い、再び帰ってきた。

 

異形の存在へと、その姿を変えて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜現在〜

 

「しまった、遅れた!古城くん達絶対待ってるよ!」

 

少年、乙骨憂太は今、真夏の暑い街を夏服の制服姿で走っていた。

理由としてた補習が溜まっている同級生の手伝いなのだが、うっかり寝坊してしまい慌てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いわよ!憂太!」

 

「十分の遅刻だな」

 

「ご、ごめん…二人とも」

 

憂太は待ち合わせの場所に着いたが遅刻してしまい同級生の金髪でギャルの様な見た目をした女性、藍羽浅葱と髪をかき上げた茶髪でヘッドフォンをぶら下げている男性、矢瀬基樹が文句を言ってきた。

遅刻したのは事実なので何も言えない。

 

「と、ところで古城くんは?」

 

「ああ古城ならお前が遅いんで、ほら」

 

基樹の指差した方を見るとそこには制服の上からこんなに暑いにも関わらず厚着の白いパーカーを被っている同級生、暁古城に目を向けた。

 

「暑い…焼ける…焦げる…灰になる…」

 

「だ、大丈夫?古城くん」

 

「大丈夫じゃない、早く日陰な場所に行きたい」

 

「はいはい憂太も来たから、さっさとファミレス行くわよ」

 

こうして憂太も合流したことで近くにあるファミレスで古城の補習の課題を手伝うこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在午後4時

 

あれから課題に取り組んでるが一向に終わらない。

 

「暑い…焼ける…焦げる…灰になる」

 

「古城くん、それ午前中にも言ってなかった?」

 

「お前がそれ言う度に貯金してたらアイスが幾つか買えるな」

 

古城は山積みになり中々終わらない課題に頭を抱えていた。

 

「なあて言うか今何時?」

 

「もう午後4時だな」

 

「4時って6時間もやってコレかよ、て言うか明日の追試って午前9時からだっけ?」

 

今日は夏休み終了の三日目、追試を言い渡されたのが明日である。

そして目の前には合計約九科目もあるであろう課題の山がありそれを追試も含めるとたった三日で終わらせろと言うのは少し無理があるのだろう。

 

「何で俺はこんな大量の追試を受けさせられてるんだ?て言うか追試の範囲多すぎんだろ!教師達は俺に何か恨みでもあるのか!?」

 

「…まぁあるわな恨み」

 

「ま、まぁ毎日のように欠席やら繰り返すから先生達も流石に厳しくしないとって思ったんじゃないかな?」

 

基樹の呆れたような言葉に憂太は苦笑いを浮かべながらなんとかフォローを入れる。

 

「まっ、そんなアンタを哀れに思ったからこうして面倒見てあげてんのよ。泣いて感謝しなさいよ」

 

「人が払った金でそんなに飲み食いてるくせにそこまで言うか!?」

 

浅葱の言葉に古城は溜まらず反論した。

そう、古城の言ったように今回のお礼として昼飯代を奢ってはいるのだが浅葱と基樹は遠慮がなく特に浅葱は一番多く食べているので古城の言うことも尤もだろう。

 

「て言うか古城、アンタがもう少し真面目にしてたらこんなにはならなかったんじゃない?」

 

「うぐっ。そ、それはその通りなんだがこれは不可抗力なんだよ…てか今の俺の体質だと朝イチのテストはキツイって言ってんのにあのちびっ子教師」

 

「体質?古城って花粉症か何かだっけ?」

 

「あ、いやその夜行性というか何というか」

 

「古城くん、それって普通に夜更かしだよね?」

 

古城はうっかり口を滑らせそうになってしまうが古城の秘密を知っている憂太の協力で何とか誤魔化せはしたようだ。

 

「それって体質の問題?吸血鬼じゃあるまいし」

 

「!そ、そうだよな…アハハ」

 

「あっ。私そろそろバイトの時間だ、それじゃ古城、憂太、基樹じゃあね」

 

「じゃっ。俺もお暇しますかね」

 

浅葱と基樹はそれぞれ用事があるらしく会計を古城に任せてそのままファミレスを後にした。

 

「全くアイツら食うだけ食って帰りやがった」

 

「アハハ、会計は僕も払うよ流石にこの量は古城くんも色々辛いでしょ?」

 

「…スマン憂太、頼むわ」

 

憂太の提案に少し抵抗を感じた古城だがこのままでは自分の財布もピンチなので仕方なくその提案を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憂太と古城はファミレスを後にした後住宅街を歩いていた。

 

「ったくアイツら」

 

「まあまあそろそろ落ち着いて。それにしても古城くん、さっきのアレは少し危なかったよ。もう少しで君が第四真祖は無いにしろ吸血鬼だってことがバレるところだったんだよ?」

 

「ぐっ。そ、それはすまねえつい」

 

「気をつけてよ?」

 

「…ハイ」

 

憂太は古城に先程までの会話を注意していた。

 

絃神島

この島には本来であれば物語などの存在である吸血鬼や獣人が人間と同等の権利を有して住んでいた。

 

そしてその為魔族特区という別名まで付けられている。

 

そして世界には3人の吸血鬼の真祖達が収めている国があり本来であればその3人以外に真祖は居ないはずだった。

 

だが都市伝説の類ではとある噂が広がっていた。

 

それこそ先程出てきた第四真祖である。

暁古城は昔とある事をキッカケにその力を引き継いだ存在である。

 

だが何故その力を引き継ぐことになったかは何故か少年は思い出せないでいた。

 

そして乙骨憂太はそんな彼の秘密を知る人物の一人である。

 

「…なあ憂太」

 

「うん、つけられてるね」

 

そんな彼らを尾行する存在がいた。

だがその人物は尾行というには余りにもお粗末過ぎた。

 

特に何の訓練も受けていない古城が気づくくらいには分かりやすすぎた。

 

「なあ俺たちつけられてるんだよな?」

 

「うん。そのはずなんだけど」

 

「と、とにかく一旦そこで止まるぞ」

 

憂太と古城は近くにあった建物の窓ガラスの前で止まると尾行してた者もそれに合わせて物陰に隠れた。

 

二人は窓ガラスに反射して写った尾行者の姿を確認した。

その尾行者は中学生くらいの少女で憂太達の通う彩海学園中等部の制服を着ていた。

 

「あれってウチの学校の制服だよな?」

 

「うん。凪沙ちゃんか古城くんの知り合いとか?」

 

「いや少なくとも俺は会ったことねえし凪沙の知り合いなら、何でわざわざ尾行なんてするんだ?」

 

憂太達は色々考察するが結局結論は出なかったので次の行動に移ることにした。

 

「とにかくこの状況をどうにかしないと」

 

「それなら確かこの先にゲーセンがあったはずだから一旦はそこでやり過ごすぞ」

 

 

そして二人は更に先に進みその先にあったゲームセンターに入りその中のクレーンゲームの影に隠れた。

 

だが尾行者は何か戸惑っていたのか中に入ってくることはなくゲーセンの中に入るかどうか葛藤している様子だった。

 

「なあ憂太、自分で言い出しておいてあれだけどよ、なんか罪悪感半端ねえんだけど」

 

「うん。僕もそう思っていたところ」

 

「…出るか、ひょっとしたら本当に凪沙の知り合いかもしれないし」

 

「そうだね、そうじゃなくても単に声を掛けづらかっただけかもしれないし」

 

二人はそう言うとゲームセンターから出るために出口を通った。

 

だがその時何か決心をしたのか尾行者の少女が入ってこようとしたことで鉢合わせしてしまった。

 

「「「あっ」」」

 

3人はまさかこんな形で鉢合わせするとは思わなかったので思わず一瞬固まるが直ぐにその硬直から解放された少女は背負っていたギターケースを構えて後ろへと下がった。

 

「だ、第四真祖!」

 

「!?」

 

(古城くんが第四真祖だって事を知ってる!?)

 

 

こうして一人の吸血鬼の真祖とその監視役は出会い

一人の少女に呪われた少年の物語は始まりを告げた。

 

これは愛と呪いと吸血鬼の物語である。

 

 

 

 



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聖者の右腕編Ⅱ

第四真祖。

それは伝説上にしか存在しない筈の世界最強の吸血鬼。

その象徴たる12体の眷獣を従え厄災を撒き散らすともまで言われた幻の吸血鬼だ。

 

それは伝説であるが故に都市伝説として扱われて来たが第四真祖は実在する。

 

そう、今憂太の目の前にいる友人、暁古城こそがその第四真祖なのだから。

 

そしてその秘密を知る者は憂太を含めた極少数の人間だけだ。

 

そしてそんな古城の存在を知る者と言えば憂太達以外でいえば。

 

(獅子王機関!)

 

双方は少女が臨戦体制をとっており古城は唖然とそれを見つめ憂太は少女に警戒を示した。

 

「オゥ、ミディスピアーチェ!アウグーリ!」

 

『・・・は?』

 

古城の突然の奇行に憂太と目の前の少女は思わず気の抜けた声を上げてしまう。

 

「ワタシ通りすがりのイタリア人デス、日本語よくワカリマセン。アリヴェデルチ、グラッチェ、グラッチェHAHAHAHA」

 

そう言い古城はその場を去ろうとするがフリーズから復帰した少女が慌てた彼の服の裾を掴んで止める。

 

「ちょっ、ちょっと待ってください!本当は人違いじゃ無いですよね⁉︎」

 

「…誰?アンタ」

 

「私は獅子王機関の剣巫です、機関の命令で暁古城、貴方を監視する為に派遣されました」

 

(やっぱり獅子王機関のそれも剣巫だったのか)

 

憂太は彼女の役職を再認識し二人のやり取りに目を向けた。

 

「いや監視とか間に合ってるから、他当たってくれ、そんじゃあな!」

 

「ちょっ」

 

「あーえっと、ごめん!」

 

「えっ⁉︎あの」

 

古城と憂太はその場から逃げるように立ち去り剣巫と名乗る少女はしばらくその場で立ち尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憂太と古城は何とか少女から離れてショッピングモールの外へと出てきた。

 

「たく何だったんだ今の子、俺が第四真祖だって知ってるし何か監視役だとか訳わかんねえよ」

 

「…」

 

「?どうした憂太」

 

「彼女は獅子王機関から君を監視場合によっては始末する為に送られてきた剣巫だよ」

 

「だからその獅子王機関とか剣巫?とかよくわかんねえんだよ、なんなんだそれ」

 

「ああそれは…!」

 

憂太は説明を始めようとしたが後ろから気配がしたので慌てて振り返るとそこには先程の少女がまたついてきていた。

だが今度はその両隣にホスト風の金髪とアロハシャツの男がついてきていた。

 

「さっきの娘だ。けど」

 

「いい歳した大人が中学生をナンパかよ」

 

古城は仕方なく助けに行こうとすると男達の手首についている物に目がいった。

 

「魔族登録証…」

 

それは魔族がこの魔族特区の住民の登録魔族である事を示すもので普段は様々な行政サービスを受けられるが同時に犯罪防止の為の監視装置としての役割も果たしていた。

 

魔族絡みだと面倒な事になると思っても古城は少女を助けに行こうとしたがそこで予想外な事が起こる。

 

「なっ⁉︎」

 

「////」

 

ホスト風の男が少女のスカートを捲り上げその下に隠されていた彼女の下着が露わになってしまったのだ。

それを古城はガッツリ見てしまい憂太は反射的に目を逸らした事で何とか見ずに済んだ。

 

それに男達はニヤつき少女は顔を赤くした。

そしてそこから少女は動き出した。

 

「若雷!」

 

「グェッ」

 

「なっ⁉︎」

 

少女はその小さな体からは想像できない威力で掌を突き出し男に浴びせ、雷のような呪力を纏った攻撃はアロハシャツの男を突き飛ばし少し後ろにあった電信柱に激突させた。

 

「て、テメェ攻魔師か!」

 

男は少女が攻魔師である事を察すると全力を出す為か目が赤くなった。

 

「D種」

 

それは様々な血族に別れた吸血鬼の中でも、特に欧州に多く見られる“忘却の戦王”を真祖とする者たちを指す。

他にも真祖はいるのだが今はそれどころでは無い。

 

吸血鬼の男は魔力を使い自らが使役する吸血鬼にしか使えない眷獣を召喚した。

男が召喚した眷獣は馬のような見た目をしていた。

 

眷獣。

それは魔力によって作り出されたもので特性として宿主の寿命を消費するので負の生命力を持つ吸血鬼以外には使役は出来ない。

 

「おいおいこんな街中で眷獣使うとか正気か⁉︎」

 

「古城くん」

 

そんな様子を見て古城は焦るが憂太は落ち着いた様子で持っていた竹刀袋から一本の刀を取り出していた。

 

「ここは僕に任せて」

 

「お、おう…」

 

憂太は先程までの優しげな雰囲気から一変し目つきを鋭くして眷獣と吸血鬼、少女を見据える。

古城はこの状態の憂太を知ってはいるが急に雰囲気が変わると驚くのは無理もない。

 

そんな彼らを他所に展開は進んでいく。

 

灼蹄(シャクテイ)!その女をやっちまえ!」

 

男は自身の眷獣に指示を出し少女を攻撃しようとするが少女は背中に背負っていた楽器ケースから一本の槍を取り出した。

 

「雪霞狼!」

 

その槍はまるで十字架を思わせる形に展開すると少女はその槍を眷獣に振るった。

すると眷獣はその槍に斬りつけられると一撃でその場から消え去った。

 

「そんな、俺の眷獣を一撃で」

 

(第四真祖の古城くんの監視って事で予想はしていたけどやっぱり)

 

憂太がそんな事を思っている間に少女は吸血鬼の男に槍を振るおうとした。

 

(っと流石にそれはまずいよ)

 

憂太は素早く移動すると少女が槍を振るう瞬間に鞘から抜いた刀を振り抜き少女の槍と鍔迫り合いになった。

 

「⁉︎」

 

「それは流石に過剰防衛じゃないかな?」

 

「貴方は!」

 

少女は憂太が乱入した事に驚くも直ぐに距離を離す為に飛び退いた。

 

それで余裕が出来た憂太は背後に庇った尻餅をついている吸血鬼に話しかけた。

 

「貴方、これに懲りたら中学生をナンパしたり、街中で眷獣を使うのはやめときなよ」

 

「あ、ああ分かったが気をつけるよ」

 

「とにかくこれが片付いたらアイランドガードに引き渡すから。そこで気絶してる仲間と一緒に待ってて?」

 

「わ、分かった」

 

憂太は男をその場に待たせると少女に目を向けると彼女は如何にも不満ですと言いたげな顔で睨んでいた。

 

「どうして邪魔をしたんですか?」

 

「いや君、いくら相手から絡んできたと言えど流石にさっきのはやり過ぎだよ。下手したらあのまま殺そうとしたでしょう」

 

憂太の言葉に少女は不満げな顔を崩さず反論した。

 

「公共の場での魔族が、しかも市街地で眷獣を使うなんて明白な聖域条約違反です。殺されても文句を言えなかったはずですが?」

 

「それなら先に手出したのお前だろう」

 

追いついてきた古城が少女の言葉に反論する。

 

「えっ?いえそんなことは…!」

 

古城に指摘されて反論しようとするも途中からバツの悪い顔になる

どうやら自分から手を出した自覚はあるようだ。

 

「それじゃあ古城くん、僕は彼らをアイランドガードに引き渡すから。君は彼女の方をお願い」

 

「えっ?お前も行くの?」

 

「実際に現場を見た第三者の見解も必要だとは思うし、一応僕も攻魔官の立場ではあるからさ」

 

「そっか、じゃあそっちも頑張れよ」

 

そう言い憂太は少女を古城に任せて自身は吸血鬼の男とのびている獣人種の男を連れてアイランドガードの事情聴取に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男達をアイランドガードに引き渡し彼らからの事情聴取を終わった憂太は帰宅している途中にある裏路地に来ていた。

それは先程の騒動での“彼女“は暴れなかったが念の為確認する為だ。

 

憂太は目の前に現れている黒いモヤに話しかけていた。

すると危惧した通り“彼女“は不機嫌そうだった。

 

「良いかい?今回は僕から介入したんだから気にしちゃダメだよ?」

 

『で“ぇ“も“ぉ“』

 

「分かったね?」

 

『…ハ“ァ“イ“』

 

黒いモヤは渋々と言った感じでその場から消えた。

 

「ありがとう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“里香ちゃん“」

 

 

 

 

 

 

 



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聖者の右腕編Ⅲ

昨日の尾行少女関係の騒動の後憂太は無事帰宅して今日ある人物に呼び出され彼の通っている学校である「彩海学園」の高等部に向かっていた。

 

そして目的の場所である教室に着いた。

 

「失礼します」

 

「うむ、来たか乙骨」

 

「えっ?何で憂太が来てるんだ?お前補習とか無かったろ」

 

憂太が教室に入ると彼のクラスメイトである古城とこの常夏の島にもかかわらずゴスロリのドレスを身につけた小学生位の少女がいた。

 

南宮那月。

一見すると少女の様な見た目だがちゃんと成人しており自称26歳の女性であり憂太に攻魔師として訓練をつけてくれている人物でもある。

そして憂太は絃神島では彼女の自宅に住まわせてもらい衣食住も提供されているので憂太は彼女に頭が上がらないのだ。

 

「乙骨を呼んだのは別の案件でだ。暁、お前と違ってちゃんと必要な単位は全て取ってるので安心するが良い」

 

「うぐっ。そ、そこまで言わなくても那月ちゃんって痛って!」

 

「教師をちゃん付けで呼ぶなと何度言ったらわかるんだ?お前は」

 

「アハハ…」

 

那月はその見た目故に殆どの生徒からちゃん付けで呼ばれる。

そうして彼女の持っている扇子で頭を叩かれた古城は蹲り憂太は苦笑いを浮かべた。

 

「まあ良い、暁お前は今日はもう帰れ。言っておくが夜遊びなどは控えろよ?私の仕事が増える」

 

「しねえよ!あっ憂太じゃあな」

 

「うん、気を付けて」

 

そうして古城は教室を後にして室内には憂太と那月だけになった。

 

「さて、今日お前を呼んだのは他でもない。乙骨、獅子王機関の剣巫が来ている様だが知ってるな?」

 

「はい」

 

「連中は暁の監視及び必要に応じての抹殺を目論んでいる様だが。乙骨、場合によってはお前も危険だということは分かってるな?」

 

「それは十分に分かっています」

 

憂太は攻魔師であると同時に一人の少女の怨霊をその身に宿している。

「祈本里香」

憂太の幼馴染にして現在は訳あって彼の普段から身につけている指輪に封じられている少女の名前だ。

憂太はその若さにも関わらず攻魔官の資格を取得しており、下手をすれば真祖の眷獣にも匹敵する彼女を使役している事から他の勢力からは脅威として映っていた。

 

特に獅子王機関は真祖さえ滅ぼせるという槍を所持している機関だ、那月の心配も無理もない事だろう。

 

「分かってるなら良い。流石に教え子を殺されるかもしれんともなると、私もいい気はしないからな」

 

「…ありがとうございます那月さん」

 

「学校では先生と呼べ馬鹿者」

 

那月は憂太のお礼に少し微笑みながら次の話へと移った。

 

「それから乙骨、今夜予定はあるか?」

 

「え?いえ有りませんけど」

 

「それならばちょうど良い。今夜私に付き合え」

 

「はい?」

 

『憂太アァァァ?』

 

「里香ちゃん⁉︎落ち着いて!誤解だから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてこれから見回りを開始するが、準備は良いな?憂太」

 

「はい、それにしても今朝のアレはやめてくださいよ。お陰で里香ちゃん落ち着けるの大変だったんですから」

 

憂太と那月は夜の街を歩いていた。

現在二人は学園ではない為名前で呼び合っており憂太は今朝の事を咎めていた。

 

「そう怒るな。それより憂太、最近吸血鬼コウモリが襲われてる事件は知ってるな?」

 

「はい。魔族、しかも殆どが吸血鬼の被害者ですよね?」

 

「ああ、幸い全員負傷しているが急所を外されている」

 

近頃この絃神島では魔族への被害が多発していた。

 

「この被害者達の共通点は吸血鬼って位でしたっけ」

 

「そうだ、だが未だにその犯人の目的が掴めん。しかしそうなってくると問題なのは暁だ」

 

「はい。万が一古城くんが傷つけられるとなると彼の中に眠る眷獣が黙ってませんからね」

 

第四真祖、暁古城。

彼は確かに第四真祖が従える12の眷獣を宿している。

しかしその全てが古城を宿主として認めておらずしかもタチの悪い事に宿主である古城に危害が及ぶとその災厄の如き力を無差別に解き放つ可能性が高い。

 

「そうなっては面倒だから暁には夜遊びは控えろとは鍵を刺してある。よっぽどの事でもない限りは大丈夫だろう」

 

「だと良いんですけど」

 

少し嫌な予感を抱えながら二人は街の見回りを続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして暫く見回っているとクレーンゲームの前に立つ二人組を見つけた

そして一人は憂太と那月も見覚えのある人物だった。

 

「…」

 

「…」

 

二人はまさか過ぎて言葉も出なかった。

 

「憂太」

 

「はい」

 

「いたな、バカが」

 

「はい」

 

普段ならここでフォローに入る憂太も今回ばかりはフォロー出来なかった。

すると那月は何やら思い付いたのかニヤリと笑みを浮かべ二人に近づいていった。

 

「おいそこの二人ウチの生徒だな?うん?そこのパーカーの男は見覚えがあるな。コッチを向いてもらおうか?」

 

二人は那月に声をかけられてビクッとしクレーンゲームの台のガラス越しに背後を見た。

 

憂太もそのガラスを見て顔が見えそれが彼の同級生の古城と昨日の尾行少女だと気づいた。

古城に助けを求める目を向けられるが憂太はただ手を合わせて謝るだけだった。

 

(ごめん古城くん。今回は僕も庇えないや)

 

(憂太ーーーーーー!)

 

「ほら早くこっち向け」

 

友人に見捨てられた古城が追い詰められているのを那月は実に面白い物を見る目で見ていた。

 

その時突然近くから爆発音が聞こえた。

 

『⁉︎』

 

その爆発は近くにある港辺りから発生した様だ。

するとその混乱を利用して古城と少女はその場から逃げ出した。

 

「なっ⁉︎待て暁!」

 

「那月さん、僕は彼らを追います」

 

「ああそうしろ!私はアイランドガードを呼ぶ」

 

「はい!」

 

憂太は先程の爆発音がした場所を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして憂太は爆発音のした場所の近くに着くとそこには既に戦闘を開始していた少女と片眼鏡の大男がいた。

 

(アレは、魔族狩りの犯人?)

 

憂太が疑問に思っていると突然男が誰かに指示を出すとその背後から亜藍色の髪色をしたロングヘアでケープコートの小柄な少女が出てきた。

 

そして少女は背中からケープコートを突き破り一本の巨大な腕を出現させた。

 

「アレはまさか眷獣⁉︎」

 

憂太は驚愕した。

何故なら眷獣はその特性故に使用者の寿命を食らう。

しかも見たところその眷獣を使ったのは吸血鬼でない上にホムンクルスだ。

ホムンクルスはただでさえ短命な上に戦闘をする様に作られてはいない。

 

(まさかホムンクルスに眷獣を植え付けたのか⁉︎だから今までの被害者の吸血鬼達からあの眷獣の能力か何かで魔力を吸っていたって事?とにかく助けないと!)

 

憂太は直様刀を取り出し今まさに背中から出てきた二本目の腕で少女を攻撃しようとしてた眷獣の攻撃を呪力を込めた刀を投げつける事で防いだ。

 

「⁉︎」

 

「一体何が⁉︎」

 

「あの刀、まさか!」

 

突然介入してきた一本の刀にそれぞれが反応を示した。

 

「君!大丈夫⁉︎」

 

「あ、貴方は確か」

 

「僕は乙骨憂太。そんな事より今はこの状況をどうにかする事が先だよ」

 

憂太は跳ね返り戻ってきた刀をキャッチしてすぐさま男とホムンクルスの少女に刀を向けた。

 

「姫柊!大丈夫かって憂太⁉︎」

 

「先輩⁉︎なんで」

 

「何ではこっちのセリフだ姫柊のバカ!」

 

「ば、バカ⁉︎」

 

「様子見するだけだって言ったのに何で戦ってんだ!俺の監視が仕事なんじゃなかったのか!」

 

「そ、それは…」

 

「二人とも!話は後にして!」

 

急に喧嘩を始めた二人を叱りながら憂太は目の前の男を見据え男もまた乱入してきた憂太と古城を見据えた。

 

「(刀を持ち明らかに戦い慣れした少年、更に後から来た少年から感じる吸血鬼の気配しかも旧き世代の吸血鬼のそれとは異なる)成程、あなた方が噂の霊呪剣に第四真祖ですか」

 

「へぇ、古城くんは兎も角僕の事も知ってるんだ」

 

「ええ、第四真祖はもちろんの事、貴方はその若さにも関わらず真祖に匹敵するであろう"呪いの女王"を従えその若さで攻魔師として空隙の魔女同様に魔族に恐れられているのですから」

 

「お褒めにあずかり光栄だけど、僕はそんな大層な人間じゃないよ」

 

「ご謙遜を」

 

「まあ今はそれはどうでも良いんです、あなた方を魔族狩りの犯人として連行します」

 

「それは聞けませんねかと言って獅子王機関の剣巫だけでなく貴方と第四真祖を相手にするのは今は分が悪いのも事実。ですので退かせてもらいます」

 

すると男は懐から一つのグレネードを取り出した。

憂太はその正体に感づくと直ぐに後ろの二人に呼びかけた。

 

「古城くん!姫柊さん!目を瞑って」

 

『⁉︎』

 

そして男はそれを投げつけると辺りは眩い光に覆われた。

 

「ぐっ」

 

「キャッ!」

 

「くっ」

(やっぱり閃光弾!)

 

そして光が収まると男と少女は既にその場にはいなかった。

 

「居ない⁉︎」

 

「逃げたのか?」

 

「そうだろうね」

(それにしてもあの二人の目的はなんなんだ?)

 

憂太は男達の目的が分からなかった。

無差別に吸血鬼を襲うのは眷獣を従える少女の魔力を補給する為なのは分かったとして何故そんな事をする必要があるのかの謎が残る。

 

(それにさっきの男の言葉、何か引っ掛かる)

 

『獅子王機関の剣巫だけでなく貴方と第四真祖を相手にするのは今は分が悪いのも事実』

 

(アレはどういう事だったんだろう)

 

憂太は一人思考するが結局答えが出てくることはなかった。

 

「取り敢えず二人とも、もう少しでアイランドガードが来るはずだ、移動しながらさっきの話聞かせてもらえる?」

 

「お、おう」

 

「分かりました」

 

 

 

そしてその後古城と一緒にいる少女の名前は姫柊雪菜という名前で先程の男はロタリンギアの宣教師ルードルフ・オイスタッハと言い少女の方はアスタルテという名前のホムンクルスだという事が分かった。

 

(それにしても何でロタリンギアの宣教師がこの魔族特区で魔族狩りなんてしかも眷獣をホムンクルスに植え付けて行ってるんだ?

とにかくこの事は那月さんにも知らせないと)

 

憂太は一旦考えを放棄してその現場を後にした。

 

余談だが古城と雪菜はその後憂太から軽いお叱りを受けたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日の騒動から翌日憂太は朝の朝食を那月と摂っていた。

そこで憂太は昨夜に遭遇した宣教師とホムンクルスの少女について話した。

 

「成程、ロタリンギアの宣教師か」

 

「はい。そこで気になるのがその目的で、ホムンクルスの少女を使って何をするつもりなのかが分からないんです」

 

「確かに、ただ単に魔族を狩りたい訳でもないだろうな。それに仮にそうなら他の獣人などの魔族が一部の例外を除いて無事な理由が無いからな」

 

「そうなんです。しかもあの宣教師、今は僕や古城くんそして姫柊さんと戦う時ではないとか言っていたのでそこが気になるんです」

 

「そうか、しかし今この場で考えても特に得るものは少ないだろう。それに今日も学校だ、早く食ってしまおう」

 

「そうですね」

(けど今回の事件、ただの魔族狩りに収まらない気がする)

 

憂太は今回の事件に何かを感じるもその答えに辿り着く事は無くいつもの朝の時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憂太はいつもの通学路を歩いていると古城と雪菜と遭遇した。

 

「古城くん、姫柊さんおはよう」

 

「おう、おはよう憂太」

 

「おはようございます乙骨先輩」

 

3人は互いに挨拶を交わすと学園に向けて歩き出した。

 

「乙骨先輩、自己紹介がだいぶ遅れてしまいましたね。改めまして姫柊雪菜と申します。獅子王機関の剣巫で暁先輩の監視役です。よろしくお願いします」

 

「よろしく姫柊さん。僕は乙骨憂太、よろしく」

 

「はい。ところで乙骨先輩は本当にあの霊呪剣何ですか?」

 

「霊呪剣?」

 

「アハハ、出来ればその名前は恥ずかしいから言わないで欲しかったんだけど。まあそうだよ」

 

「なあ姫柊、憂太ってそっちじゃそんなに有名なのか?」

 

古城の質問に雪菜はまるで信じられないとでも言わんばかりに目を見開いた。

 

「先輩知らないんですか⁉︎霊呪剣、2年前に突如現れた謎の攻魔師で真祖の眷獣さえ凌ぐと言われている"呪いの女王"を従え魔族から恐れられその手に持っていた刀がある事から付けられた通り名です」

 

「へぇー、にしても今から2年前か。そう言えば憂太が転校してきたのは確か中学の最後あたりだったよな」

 

「うん。しかしそんな通り名が付いてると知った時は結構恥ずかしかったかな」

 

憂太は頬を赤くして指でかいていた。

 

「そう言えば乙骨先輩、昨日はありがとうございました。乙骨先輩が居なかったらどうなっていたか」

 

「いや気にしないで。それより古城くんの眷獣が暴走しなくて良かったよ」

 

「えっ⁉︎」

 

憂太の言葉に雪菜は目を見開いて古城を見た。

真祖の眷獣が暴走。そんな事になれば最悪この島が沈む可能性は十分すぎる程にあるからだ。

 

「どういうことですか先輩!真祖の眷獣が暴走するって、なんで先輩が昨日の戦闘の中で眷獣が暴走するんですか⁉︎」

 

「落ち着けって姫柊。確かに俺は前にも言った様に先代の第四真祖からこの体質押し付けられて眷獣も俺の中に居るにはいるけどよ、そこにいるのと実際に従えてるのとでは話が違いすぎるだろ?」

 

「え?」

 

古城の言い分を纏めるとこうだ

・第四真祖の眷獣を受け継ぎはした

・だが眷獣達は自身を主人として認めていない

・だが宿主が危害を加えられるとその名に恥じぬ厄災を撒き散らし周囲を破壊する

・眷獣達が従わないのは恐らく自分が吸血童貞であるから

だそうだ。

 

「成程。しかし童貞?」

 

「えっとつまりは、未経験ってことだよ」

 

「ああ成程、童貞とはそういうことでしたか。って先輩!吸ったこと無いんですか⁉︎」

 

雪菜は古城が吸血行為をした事がない事に驚いた。

そんな彼女の言葉が周りに聞こえ、周りからの視線が集まる。

 

「いや別に可笑しな話じゃないだろ?俺はこの前まで普通の人間だったんだから。て言うか童貞ってこんなところで大声で言うなよ!」

 

「どうしてですか?」

 

「いやそれは…」

 

「姫柊さん、そこで終わってあげて」

 

「おいおいこんな朝っぱらに公共の面前で女子中学生になんつう際どいワードを言わせてんだよ」

 

古城と憂太が雪菜のあまりの天然さに色んな意味で唖然としてると二人にとって聞き馴染みのある声が聞こえた

 

「矢瀬!」

 

「ようおはよう二人とも。とそっちの中学生ちゃんは?」

 

「あっはい。先日から中等部に転校した姫柊雪菜です。よろしくお願いします」

 

「よろしく。俺は矢瀬基樹、古城と憂太のダチだ。しっかし古城は兎も角憂太、お前まで後輩になんつう事言わせたんだよ」

 

「いや僕は何も言ってないよ!」

 

「ハハハっ冗談だって。にしても姫柊ちゃんは音楽でもやってんの?」

 

「音楽を?いえ私は…」

 

「え?けどそのギターケース」

 

基樹の視線は雪菜の背負っているギターケースに向けられた。

 

「あっ!そうでした、うっかり…」

 

雪菜は少し目を泳がせながら何かを思いついたのかのか少し早足で駆け出した。

 

「そ、それでは先輩方、私は凪沙ちゃんとの用事があるので先に行きますね!」

 

「お、おう気をつけろよ?」

 

そんなやり取りをした後雪菜はそのまま学園に向けて走り出した

 

(多分基樹くんこ質問を誤魔化す為の行動なんだろうけど少し強引過ぎないかな?基樹くんも姫柊さんの素性は分かってるだろうに人が悪いな)

 

「なぁ古城、憂太あの娘って不思議ちゃんなのか?」

 

「さ、さあな」

 

「少し天然なだけかも知れないよ?」

 

「ふーん」

 

こうして3人はその後談笑を続けながら学園に歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜彩海学園〜

 

「おはよう古城、憂太」

 

『おはよう』

 

ホームルーム直後の教室で古城と憂太は浅葱からの挨拶に応えてそのままホームルームが始まるまで談笑を開始した

 

「それにしても珍しいわね古城が遅刻しないなんて、明日は槍の雨でも降るんじゃないの?」

 

「うるせえよ俺が遅刻しないのがそんなにおかしいか?」

 

「普段から日常的に遅刻やら欠席やらを繰り返してるからじゃない?」

 

「ぐっ、痛いところを突くなよ憂太」

 

3人がそんな会話をしているとクラスの一角で何やら男子が集まって話していた

 

「なんだ?」

 

「何かあったのかな?」

 

男子達の盛り上がりが気になり浅葱はちょうど近くを通りかかった友人、築島倫を呼び止める。

 

「ねぇお倫、男子達は何の話で盛り上がってるわけ?」

 

「ああアレ?なんか中等部にとっても可愛い転校生が来たんだって、それで今スマホ見せてる男子が後輩に命令してその娘の写真を送ってもらったんだって」

 

倫の言葉に憂太と古城の脳裏に一人の少女が思い浮かんだ

 

「なあそれって姫柊の事だよな?」

 

「うん、他に転校生が来たなんて話は聞いてないから間違いないと思うけど」

 

「暁くんと乙骨くんは行かなくて良いの?」

 

「いや俺は別に良い」

 

「僕もいいかな」

 

二人はここで行くというのも変な気がするので当たり障りのない返事をして遠慮した。

 

「ふーん、まあ当然か暁くんには浅葱がいるものね」

 

「ヘ?」

 

「なっ?」

 

倫の言葉に古城は何を言っているのか分からないという顔をし浅葱は顔を真っ赤にした

 

「そう言えば乙骨くんっていつも指輪を付けてるけど、ひょっとして昔幼馴染から貰ったとかそういう感じ?」

 

「…まあ大体合ってるかな」

 

「そ、そうなんだ…やっぱりそうだよね…」

 

憂太の肯定に倫は先程までの悪戯っぽい笑みを少し曇らせた。

 

「?どうかしたの?倫さん」

 

「えっ⁉︎ううん!何でもない!」

 

そんなやり取りをしていると雪菜の話題で盛り上がっていた男子の一人がスマホ片手に憂太達の方に近づいてきた

 

「なあ暁、お前の妹ちゃん確か中等部だろ?この娘紹介してくれないかな?」

 

「えっ?あ、いや俺の方からは何とも「暁古城、乙骨憂太」?」

 

憂太と古城は名前を呼ばれそちらに目線を向けると白のゴスロリ風の服を着た那月がいた

 

「お前たちそれぞれ要件がある。後で生徒指導室に来るように」

 

「えっと、何で?」

 

古城の質問に那月は何やら意味ありげな笑みを浮かべた。

 

(あっ)

 

憂太は何を言うのか予想が付いたが彼にはどうする事もできそうになかった。

 

「昨夜の件と言えばわかるな?お前と中等部の転校生が一晩中何をしていたのか、包み隠さず話してもらうぞ。ああ乙骨は別件だ」

 

「えっ⁉︎」

 

那月の言葉にクラス全体がシンと静まり返り返った。

そして直ぐに復帰し古城に目線が向けられた。

そんな様子を放置して那月は「では、私は伝えたぞ」と言いそのまま立ち去っていった。

 

「ちょっと暁くん?貴方、浅葱というものがいながら何をしているのかな?」

 

「いや俺と浅葱はそんな関係じゃないって築島⁉︎浅葱は?」

 

「浅葱ならあっち」

 

倫の指差した方を見ると浅葱が何かのレポートらしき物をビリビリに破ってゴミ箱に捨てていた。

 

「そ、それって俺が頼んでいた世界史のレポート…」

 

「ふん!」

 

浅葱はレポートを全てゴミ箱に捨てるとそっぽを向いて自分の席に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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憂太 古城 雪菜 『ストブラさんぽ』

 

「そう言えば古城くんと姫柊さんって初めて会った時の騒動の後何があったの?」

 

「ああそう言えば憂太はあの後居なかったな」

 

「そうでした。まあ暁先輩にはこの島を案内してもらったり凪沙ちゃんのお誘いで暁先輩と凪沙ちゃんの部屋で私の歓迎会をしてくれたり色々してくれましたよ」

 

「へぇー」

 

「しっかし姫柊ってばさ結構な天然なのかは分からないけどゴルフクラブをメイスの一種だって言ったりと色々と凄かったよな」

 

「せ、先輩!それは言わないでください!」

 

「へぇそんな事があったんだ」

 

古城の言葉に雪菜は赤面し憂太は笑いながらその話を聞いていた。

 

「せ、先輩だって(風で煽られてスカートが捲れた時)私のパンツ見たじゃないですか!」

 

「⁉︎」

 

「おい姫柊!」

 

今度は雪菜の言葉で憂太が驚く番だった。

しかし先程とは全く別ベクトルで。

 

「それに(落としてしまい届けようとしてくれた)私の財布の中を勝手に見たり!」

 

「ちょっ!姫柊ストップ!」

 

「その匂いを嗅いで興奮して鼻血を出したり!」

 

雪菜としては古城へのせめてもの仕返しのつもりだったのだが、内容が内容過ぎて憂太の顔から笑みが消えた。

 

そして彼は古城の方を見て言った。

 

「古城くん、いえ古城さん。僕たち一度友情を見直すべきだと思うんだ」

 

「待ってくれ色々と誤解があるんだ!だからその敬語やめてくれ!少しずつ後退りしないでくれよ!憂太ァーーーーーーーーー!」

 

その後古城は何とか誤解を解いたがしばらく憂太から説教を食らった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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