【完結】闇と世界樹の魔法使い (アイナll)
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向かう先は・・・

『ブラッククローバー』×『魔法少女リリカルなのは』
始まります。


「でな、そん時なのはちゃんがな〜」

 

「ふっ、そんな事があったのか?それで最近2人でいないと思った」

 

「せやから、私らで何か出来んかね?」

 

「…考えとこうか。明日くらいにまた話そ」

 

 ここは時空管理局の食堂。

 俺はとある女性と向き合って会話をしながら昼食をとっていた。この女性は局の中でも珍しい方言をしており、出身地では“オオサカベン”というらしい。

 そんな彼女も俺もあまり暇な仕事ではないが、最低でも週に一度は一緒に昼食をとるようにしている。これは俺の提案ではなく女性の提案だ。彼女が言うにはそうしなければ俺の食生活が乱れるから、らしい。

 これがいつもの日常だ。昼食が終われば僕も彼女も仕事に戻るだろう。

 

 

バキ!バキバキバキバキ!パリンッ!

 

 

 そんな日常は何の前触れも無く壊れた。

 俺自身、何が起こっているのかイマイチ理解できない。

 強いて言葉にするなら「空間にヒビが入り、破れた」だ。

 このヒビは建物に入っているわけではなく、空、空間に入っているのだ。

 周囲の人物は誰も何も気が付いていないような様子をしている。おいおい、笑って食ってる場合かよ。とか言う俺自身も体が動かない。動けないのだ。

 程なく、地面を残して食堂の景色は崩れ去った。そして俺が立っている地面も崩れ、どこともわからない渦の中へ飲まれるように落ちていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 …。

 ……。

 ………。

 見慣れた天井だ。

 無茶な任務をした時のよくお世話になっている天井。

 

「お、目を覚ましたかい」

 

 周囲のカーテンを開いて白衣に身を包んだ人がやってきた。ここは医務室だな。

 

「驚いたよ。キミ、食堂で急に倒れたそうじゃないか。寝不足かい?まだ若いんだから体を大事にしなよ」

 

 慣れた手つきでライトを当てる。

 

「問題はなさそうだね。今日はこのまま帰りな。上司には私が言っとくから」

 

「申し訳ねぇなバァさん」

 

「………。あ、あぁ。あぁ。分かったよ。うん。早く帰って寝なよ。…こりゃ重症だ(ボソッ)」

 

 医務室の婆さんに礼を言って出る。 

 気分は…良くない。

 なんか、頭の中でセミが小さく鳴いているような感覚がする。うるさい。今は家へ帰って休もう。

 

「おや。おい、どうしたの。ふらふらじゃないか」

 

 俺の家は管理局から少し離れた場所にある一軒家だ。毎日車で通勤している。

 家へ帰るために局を出ようとするとたまたま通りかかった同僚に止められる。

 

「すまねぇ。今日は体調が優れねぇから帰るわ」

 

「……あ、あぁ。そうか倒れたんだってな。でもお前、家は真反対だろ。ボケたか?」

 

 …何言ってんだ。俺の家は帰るために車がいるんだ。まずは駐車場に行くのが当たり前だろう。真反対にあるのは職員用の寮だ。

 確かに俺は寮で過ごしていたが、それはもう3年くらい前の話だぞ。

 

「ったく、ついにボケたか?俺がおぶって連れて行くよ」

 

 お、車まで連れて行ってくれるのかそりゃ助かる。

 

「悪ぃな。だが大丈夫だ。お前も会議があるんだろ」

 

「……お前マジでヤバいな」

 

 さっきからコイツらなんなんだ。人が一言返事言うだけでフリーズしやがって。容量がギリギリ状態のPCかっての。

 おまけにマジでヤバいだの。失礼もいいとこだなオイ。

 

「…着いたぞ。お前の部屋だ」

 

「…ウソ…だろ」

 

 なんでだ。俺は一軒家に住むようになって寮は出たはずだ。それも3年前に。あれから俺の部屋に別の人が入った話も聞いていたんだ。

 なのになんで俺の部屋がまだあるんだ!

 それに家具も。俺が当時使っていたまんまじゃないか。

 

 …どうなってやがる。俺はあの人と同棲してたはずだぞ。なのに…。そういえばあの人に連絡入れてないな。

 

「おい、俺は横になっとくから。俺の嫁さんに一言言っといてくれ」

 

 そう。俺は3年前にあの人と結婚したんだ。それから一軒家で同棲しつつ、お互い忙しいから昼だけでも一緒に食べるようにしてるんだ。

 

「……は?何言ってんだ。お前独身だろ?」

 

「お前こそ何言って…ぁあ!!」

 

 ない。ない!ない!!

 あの人ととの婚約指輪が無い!それに一緒に写真を撮ったはずなのにそれも無くなっている。どう言う事だ。

 

「なぁ、特別捜査官の八神はやて二等陸佐を知らねぇか」

 

「八神…そんなヤツ管理局にいたっけ…?」

 

 いたっけだと?八神はやてはあのJS事件を解決した機動六課の隊長だった人だぞ。ミッドチルダで知らない人はいないくらい有名人だぞ。それを“いたっけ?”ってお前、えぇ?

 そんで3年前に結婚した仲なんだぞ。当時は軽いニュースになったモンだよ?俺インタビュー受けたんだぞ?

 

「お、おい、どこ行くんだよ!大人しくしとけって!お前今日おかしいぞ!普段は返事の一つもくれねぇじゃねぇか!どうしちまったんだ!」

 

 こんなんじゃおちおちベッドで横になってられねぇ。人事に連絡を入れて聞いてやる。

 

『八神二等陸佐ですか…二等陸佐に限らず、管理局にそのような名前の方はいませんよ』

 

 何をぬかしてやがる。だったら高町空尉だ。…クソ、連絡先がない。登録してあるはずなのに!

 だったらフェイト執務官だ。あの人ならいるはず…って連絡先少なくないか?元より多くはないにしても友人だけでも20はあったぞ。それが今やほぼ0じゃねぇか。

 クソ、誰もあてになんねぇ。何がなんだか知らねぇが、ここからは自力で調べるしかないな。

 

 

 

 

 

 あれから1週間経った。

 初めは小さな違和感だった。周りの反応がおかしい、寮の部屋がある、婚約指輪が無い…。その小さな違和感はやがて大きなモノとなった。

 それが気になって調べてみたら。人はダメだ。頼りにならない。

 書物だ。俺が知りたいのは今のはやてだ。彼女はスゲーヤツだから管理局での活動は何かしらの報告書になっているはずだ。

 ない。としたら…管理外世界の地球の書物しかない。調べるには…無限書庫しかないか。

 

 

 

 あれから3週間経った。無限書庫に入り、はやての故郷である地球のニュースを約10年分調べ上げた。すると小さな記事にこのように書いてあった。

 

『9歳の車椅子の少女、交通事故で死亡。 海鳴市』6/11

 

 俺が聞いた話によればはやては過去、海鳴市という街に住んで当時は車椅子だったとそうだ。記事の時期もはやての年齢に合致する。

 となるとなんだ。はやては既に死んでいるというのか?約10年前に。ウソだろ…?

 だとするとどういう事だ?俺はあの日はやてと一緒に昼食を食べていたが、実は10年前に事故で死んでいたってか?

 …………非現実的な話だが、もしかすると過去が変わったから現在が変わったのか?

 

「んだ、これ」

 

 たまたま取り出した本と一緒に出てきたファイル。これは過去に起こったプレシア事件の報告書だった。

 その報告書も俺が知っている内容と異なっているが、今はどうでも良い。事件が起こった場所、アルハザード。ここは時空が歪んでいるとか…。

 

 この歪みを利用すれば過去へ行けるのでは?

 過去に行けばはやてを救えるのでは?

 

 そこからは早かった。次元渡航船をハイジャックし、アルハザードへ向かう。

 管理局から奪った数個のロストロギアを利用してはやてのいた世界、時間に繋がるゲートを作り出した。

 

(これは完全なる犯罪行為だ。それでも行くのか)

 

 完成したゲートを前に、今までの自分が言葉をかけてくる。これが理性と言うのだろうか。

 でもな、もう遅いんだよ。次元がヒビ破れたあの日からこれ以外の方法は無いんだ。はやてが助かるのであれば、俺は罪に問われても構わない。彼女を助けれるのであれば、俺はそれでいい。

 

「待っててくれはやて。今から行くよ」

 

 俺はゲートの中に飛び込んだ。

 それからアルハザードが、世界がどうなったか、俺は知らない。




ぶっちゃけます。SS後のはやての階級が分からんのだ。
だからSS時の階級にしました。

〜いろいろ補足コーナー〜
・主人公
 管理局に勤めている。
 八神はやてとは機動六課の時に知り合った。
 はやてと結婚するまでツンツンしており、誰に何を言われても返事はなく無愛想。触るものを全て傷つけるオーラを纏っていた。仕事は出来る人だった。
 そんな彼だが六課はやてと出会い、他人の中にズカズカ入り込んでくる原作組と触れ合って、丸くなった。

・その後の世界
 主人公が過去へ向かった後の世界。
 彼が開けたゲートはそのままらしい。


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第97管理外世界

全話の後書きに少し手を加えたので見ていただけると嬉しいです。


 アルハザードでゲートに飛び込んだ。

 すると様々な色の流れが一方向に流れている空間だった。そして時折流れる白い球体を覗き込むと人々の生活、戦争、発展などが断片的に見える。ジオラマを見ているような感覚だった。時間が経つにつれて人々の格好から時代が遡っているのが分かる。

 ここは、そう。言うなれば時間の流れの中なんだ。

 俺は自分の魔力と管理局から盗んだロストロギアのおかげで無事なのだろう。だがあまり長居はできそうにない。

 俺も人間だ。時間が遡れば同時に俺の体も幼くなって行く。それよりも早くはやての事故に遭う世界、日付を探さなければいけない。

 クソ、次から次へと流れて行く。今はもう8年ほど遡っているな。

 

〜〜〜

 

「これか!」

 

 やっと見つけたはやての故郷 第97管理外世界 通称「地球」。今は9年前の世界。これから更に1年分の波を遡って…流れて来た白い球体を発見。

 

「ふぅ…来い!“クロ”!」

 

 俺の持つ3つのデバイスの内の一つ、〈黒の暴牛〉略して“クロ”を手に取る。

 このデバイスは俺用に調整された物で俺特有の魔法属性 闇属性を最大限活かせる刀型のデバイス。

 起動させるとネックレスの状態から刀型へ変形する。

 

 このデバイスに闇の魔力を流すと刀身が闇を纏い黒く染まる。

 

闇魔法〈闇纏・次元斬り〉

 

 闇を纏った刃で白い球体を“次元ごと”斬りヒビを入れた。〈黒の暴牛〉をネックレス状態へ戻し、空いたヒビに手を入れる。

 ヒビは俺もろとも周囲を吸い込むように埋まっていき、俺は白い球体の中に入る事に成功し、ヒビは治った。

 

 

 こうしてなんとか世界に割り込んだわけだが、ここで早速試練がやってきた。

 俺が出てきたのは目視推定で地面から約300m上。ぶっちゃけ死ぬ。

 …と普通の人なら考えるだろう。だが残念だ。俺は普通の人ではなかったのだ。俺は(元)時空管理局の局員だ。この程度造作もない。

 

 全身を魔力で強化、クロを手に取り闇魔法〈闇繭〉を自身の周囲に展開しガード

 地面に着地する寸前に…!

 

 

ドォォォォォンッ!!!

 

 

「っあ〜。ひとまず着地成功…」

 

 地面に大の字になる。

 地面に着地する少し前に闇魔法〈闇纏・無明峰打ち〉で思いっきり地面を叩いて衝撃を殺し、地面に衝突する寸前に〈闇繭〉を前面に集中展開した。更には前転する事で衝撃を殺す。

 多少擦り切ったが大した怪我は無い。その代わりに反動で体が動きそうにない。

 

「…ここが10年前の世界か」

 

 未だに実感が湧かない。運良く人目が少ない原っぱっぽいところに落ちたので大した騒ぎにはなっていない。

 

「それにしてもこの世界は本当に魔法の気配が無いな」

 

 話には聞いていたあい、実際に来たことがあるので分かるが、魔法で発展したミッドチルダとは反対の化学で発展した世界。それは10年前でも10年後でも変わらなかった。

 

 

 

 

「誰…なの…?」

 

 知らない人だが強力な魔力を感じて、1人の少女は山を見つめた。




何故時の流れを自由に動けたかって?ロストロギアのおかげだよ(ゴリ押し)

〜いろいろ補足コーナー〜
・クロ(正式名称:黒の暴牛)
 ヤミが持つ3つのデバイスのうちの1つ。
 闇魔法と非常に相性が良く、切れ味は普通の刀と同じくらいだが闇を纏うことでなんでも斬れる強靭な刃となる。
 イメージは遊戯王OCGに登場する〈閃刀姫 レイ〉の閃刀。普段はシグナムのやつみたいに小さいストラップになって首にかけているチェーンに付いている。呼べば手元にくる。

・闇の魔力
 ヤミは他の人と魔力の構造そのものが違う。
 通常は魔力をそれぞれの属性に“変換”するところ、ヤミは魔力“そのものが”属性を持っている。
 そのため、並のデバイスでは扱いが難しく専用のデバイスを所持している。
 闇の魔力には様々な特性がある。引力があり、光を吸収する。射程と速度が極端にない。射程と速度は武器に纏うことでカバーしている。


 各話の後書きにこんな感じで補足コーナーを作ろうと思います。


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10年前の…

 このの世界に落ちてから3時間ほど経った。その間、全身が反動で動けず大の字で爆睡かましてしまった。

 全くもって不甲斐ない。10年後の俺であれば魔法を使うまでもなかった。デバイスでバリアジャケットを身につけ、魔法で身体強化、マナゾーンを駆使しるくらいで大丈夫だっただろう。それを〈闇纏・無明峰打ち〉〈闇繭〉を使うとは。

 え?バリアジャケットとマナゾーンはできただろうって?バリアジャケットは身長が縮んだことで再調整が必要だし、ジャケットと同様の理由で総魔力量が減り、空気中の魔力を使おうにもミッドと違い地球は魔力がめっちゃ薄いし…とにかく無理だった。

 

「まだ少し痺れるなぁ」

 

 一度出ると体力と魔力はある程度回復し、手足も少し痺れるが程々に動くようになった。

 起き上がって伸びたり曲げたり…日常的な動作に問題はなさそうだ。

 

「…誰、なの?」

 

 いざ人が多い場所へ行こうと思った矢先、1人の少女がフェレットを連れてやってきた。

 近くに来ていたのだろう。爆音で驚かしてしまったのか。それはすまない。

 

『君、魔法使えるよね』

 

 念話だ。知っている人に声が似ている気がする。だが、余計な人と余計な縁ができると未来へどんな影響を及ぼすか分からない。よって無視しよう。

 

「すみません。ちょっとした…化学の実験に失敗してしまい爆発しちゃいましたハハハ」

 

『キミは漂流者なのかい?』

 

 無視。

 

「お騒がせして申し訳ありません」

 

『危ない!後ろ!』

 

「なっ、」

 

 念話の主が警告を出した。俺がいた時代ならまだしも、10年前の地球なんて知らない。もしかしたら凶暴な生物がいるのかも!

 

「…」

 

 ……何もない。

 

『キミ、念話は聞こえていたみたいだね』

 

「…あ」

 

 ハメられた。

 

〜〜〜

 

「改めて、キミは漂流者なのかい?」

 

 使い魔(?)のようなフェレットにハメられて、少女の家に入れてもらった。

 そこで自分達の情報を交換しようと言う話になった。

 

「まぁ…そんなところだよ」

(未来の住人とは言えないわな…)

 

「どこの世界だい?僕はミッドチルダのスクライア一族出身だ」

 

「俺は…まぁ、ミッドの辺境だよ」

 

「…君も異世界人なの?」

 

「一応、そうなるね。にしてもここがあの地球とは。噂には聞いていたが、本当に魔法無しで栄えているんだな」

 

「あぁそれ!僕もこっちに来た時は驚いたよ。いや〜感覚を共有できる人が来てくれて良かった〜」

 

 なんか共感されたんだが。

 

「で、キミは何なんだい?この子の使い魔?」

 

「いいや。僕の名前は“ユーノ・スクライア”だよ。この子は、」

 

「“高町なのは”って言います。よろしくお願いします。君の名前は?」

 

(やっぱりね…。この子が「エース・オブ・エース」高町一等空尉の10年前の姿。で、このフェレットが時空管理局「無限書庫」司書長 スクライア先生か。話には聞いていたけど、こんな若い頃から末恐ろしいな)

 

 予感はあった。10年後の世界では2度だけだが地球の高町家に呼ばれた事もあり、家と表札を見て確信していた。この魔力量…本当に幼い頃から才覚に溢れてたんだな〜。

 

「俺の名前はやが…いや、ヤミ・ウィリアムだよ」

 

 危ない危ない。八神の名を出すところだった。ひとまず適当に思いついた名前を名乗ろう。にしてもなんだよウィリアムってw

 

「ヤミ君の使う魔法ってすごいね。どんな魔法なんだい?」

 

 …あぁ、あの事か。

 

「あれは世界樹魔法って言うんだ。制圧力と後方支援に長けている代わりに魔力をバカみたく消費するんだ」

 

 俺が着地した場所はもれなく地面はめくれて軽いクレーターが空いている。

 現地人が見たら驚くと考えた俺は闇魔法とは別のもう一つの魔法 世界樹魔法〈ミスティルテインの種〉を使用し、回復したての魔力をほとんど使って木を作り出して穴を埋めた。多少不自然でもクレーターを見られるよりかマシだろう。

 

「…じゃあもう一つのデバイスは?」

 

「うん。予想通り、別の属性用だよ。俺の魔力は特殊で専用デバイスじゃないと扱えない代物なんだ」

 

 流石スクライア先生。俺が魔法を発動する時、ネックレスの1つを使用したのを見てもう1つの属性を当てるとは…末恐ろしい。いやマジで恐ろしい。

 

「ねぇユーノ君…」

 

「あぁうん。いいね」

 

 2人は耳打ちで何かの相談をしている。

 

「君に頼みたい事があるんだ」

 

「うん。無理だ」

 

「え?」

 

 話は察しがつく。高町一等空尉が言っていた。幼い頃、とあるロストロギアの収集をしていた。と。その時にスクライア先生と出会ったとも。

 俺にその収集を手伝えと言いたかったのだろうが申し訳ない。10年後の友人のよしみで手伝いたい気持ちはあるのだが、俺はやらなければいけない事があるんだ。だから、ごめんちゃい。

 

「もしもロストロギアを見つけたら念話するけど、収集の手伝いは出来ない。俺には俺のするべき事があるから。ごめんね」

 

「いいや、こっちこそ僕たちの問題に巻き込んで申し訳ない」

 

「じゃあね。また会おうなの」

 

 こうして俺は高町家を後にするのだった。

 

 

 

 

 

なのはside

 

「断られちゃったの」

 

「仕方ないよなのは。やっぱり僕達で探すしかないよ」

 

 家を出て行くヤミ君を見送ってから、自室でユーノ君とお話しする。

 私達は2人でとある探し物をしているのだが、全く見つからないのでヤミ君に手助けを求めたが、あっさり断られてしまった。

 

「それにしても、何か引っかかるんだよな〜」

 

 フェレット姿のユーノ君はヤミ君とのやりとりをずっと気にしていた。私も正直言えば気にはなっている。

 私たちの会話は何か、何かが噛み合っていなかった。

 

「…あ!彼は“収集の手伝い”と言っていた!」

 

「あ!」

 

 違和感の正体が判明した。ヤミ君は私達が探している物をロストロギアと勘違いしたのだろうか。

 テーブルの上に置かれた紙を手に取る。その紙の中央には茶毛の虎猫の写真が載っており、その猫の名前や性格、好物などが細かく書かれてあり、「探しています」の文字がやけに目を引く。

 

「すずかちゃん家の猫を探していただけなんだけどな〜」

 

 そう。私達は今日一日すずかちゃんの家から脱走した猫を探していた。

 街中や路地裏など猫が居そうな場所を巡って、最終的に入った森でヤミ君と出会ったんだ。

 

ピピピ「あ、すずかちゃん?え、猫見つかったの?よかったね〜!うん。うん。気をつけてね〜。おやすみなさーい」

 

 すずかちゃんから着信があり、出てみる。脱走した猫はご飯の時間になると帰ってきたらしい。

 猫が見つかって何よりだ。

 さて、学校の宿題をやろう。

 

「そういえば、どうしてユーノ君はフェレット姿なの?」

 

「聞いてくれなのは!クロノのヤツが変身魔法の練習とか言ってかけてきたんだ!あと数時間で解けるらしいが、散々な目にあったよ!」

 

「ははは…」

 

 そっとしておこう。

 

なのはside out




〜いろいろ補足コーナー〜
・マナゾーンとは
 自身の中を流れる魔力を自身のを中心に展開しする技術のこと。これにより、自分の周囲の魔力を味方とし、魔力に関して特に機敏となり、同名の技でも大幅に強化され、離れた場所の魔力を駆使して魔法を放つ、空気中の魔力を蹴って移動など、その恩恵は強大。魔導師ランクS以上でも極僅かの人しか使えない。

・世界樹魔法
 闇とは違うもう一つの属性。自分や周囲の魔力を糧に育つ世界樹を操る。
 育てる都合上、種や根をあらかじめ植えなければいけない手前や育てるための魔力が必要な点からして非常に扱いにくい。
 10年後の世界では乱戦状態の戦場に根や種を仕込み、ある程度魔力が散布し、育つのに十分な魔力が溜まると味方を撤退させ、敵を幹に巻き込んで大樹が生える感じで使っている。
 地球は空気中の魔力がほぼ無いため、数時間で回復したヤミの(生命活動に支障がないくらいの)全魔力を消費して使った。

・ヤミの魔力球
 魔力は人それぞれの光を放っている。なのはだったらピンク、フェイトならイエローに光ってる。ヤミの場合、闇魔法の黒色と世界樹魔法の金色の2色が同時に混在している。

・すずかちゃん家の猫
 最近は柵の穴から外へ出るのが楽しみ。居なくなって大騒ぎになっているなんて知る由もない。


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八神家

 高町家を出て数時間。適当に歩き回ってある事を確信をした。街並みは10年後とほとんど変わっていない。

 そりゃ、道路が広くなったとか知らない店があるとかは多いが、街並みそのものはあまり変わっていない。

 記憶力は悪くはないと思っていたのだが、本当にその通りだ。一度、見覚えがある大通りに出て、スーパーに立ち寄る。そこから自分の記憶を頼りに家へ向かう。

 周りの人は少し怪我をしている少年が歩き回っているのを見てほっこりとした顔をする。どうせ“友達とケンカでもしたのかな”とでも思っているのだろう。

 形はどうであれ、魔法さえ使わなければ俺はこの社会に溶け込めるんだ。

 

 そうして約30分。途中知らない道に入り2回ほど迂回をしたが、無事に俺は八神家へ辿り着いた。

 

(ついに着いてしまった。あぁ、なんだろうこの我が家感)

 

 というか我が家だ。10年後の。

 基本はミッドに過ごしているから俺がこの家を使ったのは地球に滞在する数回しか使った事がない。

 

「あぁ〜緊張する〜」

 

 インターホンに指を近づけるがボタンを押せずにいた。

 

(はやてと会ったら俺は何て話しかければいいんだ。こんにちは?いや、本日はお日柄がよく?それともはじめまして?俺の事は何て言えばいいんだ?未来の旦那やで!とか言えるわけもなく、同僚?友達?守護騎士たちに会ったらどうしよう!………ってかよく考えたら俺この先ノープランじゃん…)

 

 今更気がついたのだった。

 俺はここに来るまでは完璧だったのだが、いざ八神家に着いてからの事は考えていなかった。

 

(…まぁなるようになるか)

 

 色々考えるのは一旦やめて当たって砕けよう。

 拒否されても俺の目的は10年後のはやての存在が消えた原因を探して阻止する事にある。はやてが無事ならば問題はない。

 

「あの〜、ウチに何か用ですか?」

 

 振り返ると金髪でおっとりとした雰囲気の女性がそこにいた。俺はこの人を知っている。

 シャマルさん。はやての守護騎士の一人。後方支援に長けており、俺たちを後ろから支えてくれる人。医務室に勤務しており、怪我をした時なんかよくお世話になる。

 シャマルさんが手にもっている袋には野菜などが入っているのを見るに買い物帰りなのだろう。

 

「えぇっと…な、なんでもないです〜」

 

「あ、ちょっと待って!」

 

「はい!?」

(不審者と思われた?!他の騎士を呼ばれたら勝ち目は無いぞ俺)

 

 シャマルさんはゆっくり俺を見る。そして買い物袋を地面に置き、ゆっくり近づいてきた。

 

「っ!」

 

 シャマルさんの手が近づく。かくなる上は追われる覚悟で応戦するしか…!

 

「君、どうしたの?傷だらけじゃない。友達と喧嘩したの?手当するからウチに上がって」

 

 今の俺を怪我人と勘違いしてるのか?めっちゃ良い人じゃん。知ってるけど。

 でも世話になるわけにはいかない。

 

「いえ、大丈夫です。シャマルさんに治療して頂かなくてもこのくらい大丈夫ですよ。それじゃあ…いてっ!」

 

 立ち去ろうとするが、緑の魔法陣から作られる結界に閉じ込められる。デコを打ったじゃないか!

 

「…君、何者なの?」

 

 さっきのおっとりとした空気から一転して真剣な顔つきで、その手にはペンデュラム型のアームドデバイス〈クラールヴィント〉を俺へ向けられていた。

 

「いや、何者って聞かれても…」

 

「どうして私の名前と私が治癒できるのを知っているのかしら。私はまだ名乗ってないし、手当するとは言ったけど治癒とは言ってないわよ」

 

 う〜わ。戦犯じゃんこれ。

 あまりにテンパってしまったので自分の知るシャマルさんを話してしまった。だってシャマルさんは10年後と顔がそんなに変わらないんだもん。こうやって少し目を閉じて声を聞くと、つい最近任務で怪我して帰った時に説教されながら治してもらった記憶が蘇ってくる。というわけで容姿が変わってないシャマルさんが悪い。戦犯シャマル。まぁどう言っても戦犯は俺でこの状況はマズイんですけどね〜。

 

「今、私の仲間を呼んだわ。観念しなさい」

 

「…!」

 

 もう程なく他の守護者達がやってくるだろう。シャマルさん1人ならまだしも全員を相手に生き残れるなんて思っていない。

 だがこのまま逃げてしまうわけにもいかない。

 やる…か?



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俺の戦いはこれからだ!

「観念しなさい」

 

「…!」

 

 やる…か…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうして八神家の前にいたんだ」

 

「八神はやてさんが気になて…」

 

「それは本当か?」

 

「は、はいぃ!」

(顔が近い!顔が近い!顔が近い!)

 

 

 

 実は最初は抵抗する気でいた。(ケン)で。守護騎士達がやってきたとしても互いに10年前の身。意外とイケるんじゃね?とか思っていた。

 だが扉を開けて出てきたシグナムさんの顔を見た瞬間、突如脳裏に映し出された存在する過去の記憶…!

「おい!もっと走らんか!」「剣を腕で抜くな!腰を使え!」「魔力に頼りすぎだ!」「ほら!さっさと動け!」「魔力操作に集中しすぎだ!」「敵は平気で痛いところを突いてくるぞ!」「魔力だけを伸ばすな!体も頭も鍛えろ!」「休んで死ぬか死ぬ気で動くかどっちか選べ!」「そんな柔な剣で生きて帰れると思うな!」「私から一本取るまで帰さんぞ!」

 これは…俺がまだ局に入ってすぐに味わったシグナムさんとの訓練の時の記憶!動きを止めれば殺されるそうになり、チンタラ動けば殺されるそうになり、下手したら殺されそうになり、上手くできても殺されそうになり、自分の痛いところを平気で突いて殺そうとしてくるこの記憶…!

【この間僅か0,2秒】

 

 こりゃ無理だぁ〜!

 

「降参…します…。何もしません…全てを話すので…命だけは…ご勘弁を…!」

 

「…オマエは何をそんなに怯えている?」

「知らないわよ。…とりあえず家へ上げて話を聞きましょう」

 

 

 

 こうして今に至る。

 こうして今に至る前にシャワーに入れてくれたり、ザフィーラさんの服を貸してくれたり、温かい飲み物をくれたり色々してくれた。デバイスは没収されたが。

 

「主とはどういう関係だ」

 

「お金を出してる親戚からはやてさんの話を聞いてやってきました。別に危険な目に合わせようとかはありません」

 

 嘘です。未来から来たとか言えんだろ。

 

「このデバイス…謎の技術が使われているけど、それについては?」

 

「俺の魔力が特殊なんで、それに合うロストロギアを加工してねじ込みました」

 

 これはマジ。どこの世界に闇魔法と世界樹魔法に対応できるデバイスがあるよ。ミッドにある訳ないだろ。という事で上に話をつけて管理局に保管してある2つのロストロギアの使用許可をもぎ取って、俺専用のデバイスに改造した。

 

「どこで私達のことを知ったのかしら」

 

「そこの魔導書型デバイスを作る時に闇の書について調べたんですよ。そこでヴォルケンリッターについて知れたんですよ」

 

 めっちゃ嘘です。めっちゃしごかれて実戦の心得を叩き込められました。

 俺が仕事で生きてこれたのはシグナムさんのおかげっす。皆さんのおかげで短・中・長距離対応のオールラウンダーになれました。

 

 その他にも話せる事を洗いざらい話した。話せる事を。

 おかげで少しは信用してくれたかな。

 

「…時間だな。私は主迎えに行くこう」

 

 気がつけばもう5時。シグナムさんはカバンを持ってはやての所へ迎えに行くらしい。その間、俺はこの家で大人しくしておくそうだ。

 守護騎士達は俺を“危険性はない”と決定したらしいが、最終的な判断は全て主であるはやてに委ねるらしい。

 

(ついに10年前のはやてと顔をお合わせる事になるのか…)




〜いろいろ補足コーナー〜
 主人公は管理局に入った直後、新人教育として守護騎士たちにめっちゃシゴかれた。これは“エースばかりに負荷をかけないために局員の強化”という名目で行われたものだった。
 結果として、その年の新人はめざましい活躍をするのだが、自主退職する者も続出したため廃止された。


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10年前のはやて

(あぁ〜緊張する〜!こういう時は素数を数えればいいんだっけ)

 

 リビングに座らされ、守護騎士達に監視されて過ごす。静かな部屋では時計の秒針の音のみが響いていた。

 

(1、3、5、7、11…11?…なんか大事な数気がする…)

 

 素数を数えてすぐ。頭の中で何かが引っかかる。この「11」という数が何かの警告に聴こえて仕方ない。

 

「ッ!今は何日ですか!?」

 

「どうした急に」

 

 ちっちゃくて可愛いヴィータさんが若干引いたように聞き返してくる。

 

「いいから、今は何日何ですか!」

 

「11日だけど。それがどうかしたか、っておい!」

 

 今日は11日だと?!不覚だ!10年後の世界で見たはずじゃないか!

 ヴィータさんの手元に置かれているデバイスを取り返し、窓ガラスを蹴破って外へ出る。

 

 

『9歳の車椅子の少女、交通事故で死亡。 海鳴市』6/11

 

 

 この日、何処かではやては交通事故で死んでしまう!

 

「バリアジャケット起動!来い“クロ”!“コン”!」

 

 携帯型デバイスのボタンを押す。するとデバイスから白い光の帯が全身を包み、黒いロングコートのバリアジャケットを身につける。まだ細かいサイズ調整はできていないが、今の身長には合わせている。多少動きにくいが許容範囲内だ。

 刀型デバイス〈黒の暴牛〉、魔導書型のデバイス〈金色の夜明け〉を展開。刀を手に持ち、魔導書は俺の周りに浮いている。

 この世界にはリンカーコアを持つ者が少なくて助かった。携帯型のデバイスで周囲2km圏内にある全てのリンカーコアをソーナーのように表示させる。

 

(シグナムさんが迎えに行くと言っていた。だとしたらこの中で2つが一緒に移動しているもの…あった!)

 

 ここからそう遠くない距離だ。全身に黒い魔力を纏って表示された方向へ飛ぶ。

 

 

 

 

 

「フハハハハ!やっとこの時が来た…まずは1人目だ」

 

 目に入ったのは黒いキモノ?という地球のニホンに伝わる伝統の装束に身を包んだ男が身の丈程ある大刀を持ち上げ、魔力を圧縮して溜めているだった。

 

「月牙!」

 

「ッ!」

(目測30m!ここからじゃ斬撃の瞬間に間に合わない!だったら魔力を飛ばして防ぐんだ…!)

 

 一度足を止め、クロを腰に当てて構える。

 普通の斬撃じゃダメだ。闇魔法の欠点は極めて遅い所にある。

 イメージしろ…“薄くて素速い斬撃”…!

 

「天穿!!!死ね!八神はやて!」

 

闇魔法〈闇纏・無明斬り〉

 

「なに?!」

 

 イメージは魔力を通じて形となる。

 俺の“薄く素速い斬撃”のイメージは形となり、威力半減・時間にして0,5秒のみの斬撃となったが相手の腕に命中。傷はつかないものの、急な衝撃に溜めた魔力は散った。

 動揺している隙に相手の顔を左手で鷲掴み、人気のない場所まで飛んだ。

 

 

 

はやてside

 

「ん?」

 

「どうかされましたか?主」

 

 アリサちゃん家で一緒にお茶をした帰り道。

 空に何かを感じて見上げてみる。私の車椅子を押してくれているシグナムは不思議そうに聞かれる。

 

「いやな、さっき、流れ星が通らんかったかな〜って思うて」

 

 この違和感を言葉にするなら流れ星。ピカッと光って何処かへ去っていった。

 

「流れ星…とは何ですか?」

 

「あれ?話したことなかったっけ?たま〜に見れるお星様で見つけたら消えるまでに3回願い事を言うと願いが叶うっちゅうもんや」

 

「へぇ。主は何を願うのですか?」

 

「そりゃあ…もちろん、家族の安全やろ」

 

 あの流れ星は何か他人の気がしなかった。

 よく見えなかった。それでもあの星の安全を思ってしまう。

 

「そういえば、今日はおかしな少年がウチに訪ねて来たんですよ」

 

「へぇそうなんや。どんな子?」

 

「少し不思議な子でしたが…おそらく、主と仲良くなれるかもしれません」

 

「家におるんやな?今から会うのが楽しみやわ〜」

 

 どんな子なのだろう。最近はミッド関係の人とも交流が増えてどんどん友達が増えていく。

 

 

「それにしてもいつまで車椅子乗らなあかんの?」

 

「シャマルが言うには明日からは杖デビューとのことです」

 

「そうなんや。頑張らなあかんな!」

 

 ちなみに、私は複雑な事情がありつい最近まで車椅子だったのだが、今はもう歩けるようになっている。

 では何故今車椅子に乗っているのかって?

 それは任務で少し無茶をしてしまい、両足を痛めてしまったからだ。それも今や回復し、明日から杖だ。リハビリ、頑張るぞー!

 

はやてside out




〜いろいろ補足コーナー〜
・バリアジャケットはクロノと同じタイプです。
・今回の無明斬りはワールドトリガーの生駒旋空モチーフです。
・いつ「この作品の時系列がA’s」だと言った?


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黒幕は…

「クソッ!クソッ!失敗した!」

 

 鷲掴みした男の頭を地面へ叩きつける。砂埃の中から聞こえる男の声は心底悔しそうだった。

 

「誰だアンタ。何故はやてを狙う」

 

「誰だって?グリフィス・ロウランだよぉ!」

 

 グリフィス・ロウラン。階級は准陸尉。レティ・ロウラン提督の息子。機動六課では部隊長補佐を務めていた。解散後は本局次元航行部隊に転属、事務官として艦船の事務業務を担当していると聞いたのだが、そんな彼がどうしてここに?

 

「グリフィス准尉、あなたが…どうしてこんな事を…?」

 

「…その剣、魔導書、バリアジャケット…まさかヤミ二佐」

 

 あ、はい。そのヤミです。実は上から5番目の階級にいるヤミです。見た目の割に地味に階級が高い男TOP3入りのヤミです。実力的にはもうちょい上へ行けるんだけど昇格に興味を示さないので下の人がバンバン上がってきて若干ビビっているヤミです。

 

「俺の問いに答えて下さい。どうしてはやてを狙うんですか」

 

「あなたも確か特例措置で上級キャリアに合格してましたよね」

 

「あぁ。そうだが」

 

「僕はそれが憎いのですよ!」

 

 グリフィス准尉魔力が業火のように燃え上がる。

 

「知ってますか?私はll種キャリア通過なんですよ。誰よりも努力してこれなんですよ!」

 

「何が言いたい」

 

「あなた方は稀少技能(レアスキル)持ちの特例措置があったでしょうが僕にそんな物は無いんです。おかしいでしょ!誰ほど頑張った僕よりもたった1つの才能が勝るなんて!卍解!!」

 

 卍解。その掛け声と同時にグリフィス准尉の魔力は更に膨れ上がり、暴風と共に消えた。

 今まで持っていた大刀は黒い刀となり、黒い装束を新たに身につけていた。

 魔力の圧は無い。だが目には見えないプレッシャーがかかる。

 

「だから消すんですよ。過去のあの人達を。そして私がトップの世界を作り出す!」

〈月牙天穿〉

 

「んだよこの威力!」

〈闇纏・無明斬り〉

 

 互いが放つ黒い斬撃は衝突した。が、俺の斬撃は押し負けて直撃する。

 すごい威力だ。対応しきれなかった。

 

「どこを見ている?」

 

 俺は准尉から目を離してなかった。刃を握って斬りかかる隙を窺っていた。

 だが気がつけば背後から声が聞こえ、目の前から姿が消えた。

 

「ッ!」

 

 振り向く要領で斬り払おうとするが、刃は砂埃を斬り准尉の姿はなかった。

 

「こっちだよ」

 

「やっぱそう来るか」

〈闇繭〉

世界樹回復魔法〈ユグドラシルの芽吹き〉

 

 更に背後に回って斬りつけられる。が今回は“予測を立てて先手を打った”。

 斬られるまで引きつけて、刀を振っている瞬間に〈闇繭〉でガード。刀が止まっている間に〈月牙天穿〉で受けた傷を世界樹回復魔法〈ユグドラシルの芽吹き〉で回復。

 

「っ、確か…ヤミニ佐の世界樹魔法を使うには世界樹を植えなきゃいけないのではなくて?」

 

 そう。〈ユグドラシルの芽吹き〉を使うには世界樹を植える必要があるのだがここには世界樹は無い。

 ならどうしたって?

 

「俺が考えなしにこの場所に来たと思ってんのか?既に植えてるんだよココに」

 

 ココは俺が初めてこの世界には降りた所。

 思い返して欲しい。俺がココに来て、着地して、空いた穴を塞ぐ為に…植えたのだ。世界樹魔法〈ミスティルテインの種〉で育った木の根を他の木々の根と絡めてこの山全体を覆っている。つまり世界樹魔法1番の欠点 世界樹を植えなきゃ事案は解決しているのだ。

 

「もう既にココはヤミニ佐のホームという事ですか。仕方ない…だったら私も本気でお相手しましょう」

 

(え、お前まだ本気じゃなかったんか(汗))

 

 グリフィス准尉はかけていたメガネを取り握り潰す。そして全身から今まで抑え込んでいただろう爆発的な魔力が膨れ上がる。

 一歩動けばもう姿は見えない。その目に止まらない速さで俺の周りを囲む。残像が多すぎて本体を狙いきれない。これだと防御専用の世界樹魔法〈魔守のトリネコ〉も起動しないだろう。

 

「これなら僕を捕らえられまい。行くぞ」

 

「…」

 

 俺は刀を両手で持ち、構えていた。相手の刀が体に触れた瞬間にカウンターを決めるために全身の全神経に集中していた。

 一瞬たりとも気を抜いていない。だが一瞬にして全身に切り傷が生まれた。一瞬にして全身を斬られたのだ。

 刀を地面に突き立て、膝をつく。目の前で立ち止まったグリフィス准尉の髪は、先端から黒く染まり、全身から黒い魔力をが溢れていた。




〜いろいろ補足コーナー〜
Q グリフィスって誰〜?オリキャラ?
A なのはSSに登場した六課で隊長補佐を務めていた白い髪のメガネ。しれっと登場しているので認識している人は少ない(と思う)。

Q グリフィスの持っている剣は?
A 斬月だよ。本来は偽崎零護というキャラだったけど…なんか短編で終わらせるには惜しいキャラになったので単発消費ができる八神に近い男性キャラを血眼で探しました。グリフィスは(作品の)犠牲者です。


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黒vs黒

「おぉ、これが卍解…すごい!全身から力が溢れてくる…!」

 

 グリフィス准尉の髪は、先端から黒く染まり、全身から黒い魔力をが溢れている。そのスピードは一瞬で俺の全身を切るほどだ。

 あまりにも速いもんで、俺の持つ防御手段が通じない。

 

「この速さがあれば誰も僕を止めることは出来ない!ハハハハハ!!」

 

 溢れる力を使いたくてしょうがないように、黒い斬撃を周囲に放つ。

 

「アンタ、ちょっと身勝手すぎんか」

 

「…なんとでも言いなよ。僕はこの誰にも負けない力で僕は平等な力の世界を作り、トップに立つんだ!

 

「そうかい。別にアンタがトップに立とうと知ったことじゃ無いが、大切な人には手出しさせねぇぞ!」

 

「…戯言は僕に勝ってから言いなよ!ヤミィ!!」

 

(大振り!)

 

 グリフィス准尉は大きな横振りの一撃を放った。これなら躱せる。

 斬撃を躱し、懐に入り込んで刀を薙ぎ払う。

 

「残念だったね。当たらなかったよ」

 

 間合いを読まれて数歩下がって鋒スレスレで避ける。

 

「いや、当たりだ」

闇魔法〈闇纏・黒刃〉

 

 闇で刃を伸ばし、浅いながらも切る。初ダメージだ。

 

「っ、クソッ!」

 

 グリフィス准尉は目を丸くしていた。今の自分がまさか傷を受けるとは考えもしていなかったという顔だな。

 お互い後方へバックステップを踏み、距離をとる。

 

「もうやめるんだグリフィス准尉」

 

「まだだ。僕はこんな力を得たんだ…特別な力を得たんだ!僕は強い!誰よりも!ヤミよりも!」

 

「チッ、“ニ佐”か“さん”をつけろよメガネ野郎がぁ!」

 

「うるさい!黙れぇ!!〈月牙天穿〉!!!」

 

「闇魔法…〈闇纏・無明斬り〉ッ!」

 

 再び黒い斬撃が衝突する。大きさこそグリフィス准尉の方が大きい。また斬撃を飲み込んで当たる。この大きさなら致命傷になる。

 とグリフィス准尉は考えただろう。だが今回は俺が一枚上手だった。

 

「グハッ…。な…何故、だ…」

 

 グリフィス准尉の斬撃すらも斬り裂いて俺の斬撃が命中する。俺は心臓を狙ったつもりなんだが、斬撃を大きくしたせいでキモノを斬り多少彼を切っただけに過ぎない。

 

「“純度”だよ。なんだってそうだろ。同じ黒が衝突した時、“純度”が高い方が勝つ。それはキャリアにも言える事だろ」

 

 確かに俺らは特殊な力があったから今の階級だと言ってもいいだろう。だがそれは一筋縄ではなかった。

 はやては闇の書事件で心に大きなダメージを受けたそうだ。俺だって魔力の質のせいで小学生の頃は酷いイジメに遭っていた。

 それを乗り越えて、力を正しい事に使いたくて今が生まれたんだ。

 l種キャリアだろうとll種キャリアだろうと、関係無いのだ。

 

「グリフィス准尉には確かに特殊な物は無かったかもしれない。自分よりも下の人が特殊な力を持っているってだけですぐに追い抜いたのかもしれない。だが、それだけで准尉の積み上げてきたキャリアは傷つかない。准尉には准尉の強さがあるだろ」

 

「ヤミ…」

 

「“ニ佐”か“さん”をつけろよ。メガネ、買い替えないとな」

 

 手を差し出した。グリフィス准尉は刀を置き、応えるように手を取った。

 その瞬間、

 

「ッ!う、うわぁぁぁぁぁあああああッ!!!!!」

 

「んだこれ!」

 

 俺が切った傷から白いナニカが溢れ出てすぐに准尉を飲み込んだ。

 咄嗟にナニカを斬ったが斬られた側から生えてくる。

 

「グルルルァァ…」

 

 程なく、グリフィス准尉は白いナニカに完全に覆われてしまった。

 黒いキモノはそのままで体が白く染まり、2本の角が生えた妙な仮面を身につけていた。

 

「…良い雰囲気は壊さないお約束だろうが!」

〈闇纏・無明乱れ斬り〉

 

 〈無明斬り〉を何発も放った。目の前が真っ暗にまるほど斬りつけた。

 

「…無傷ってそりゃ無いでしょ。ッ!!」

 

 傷一つついていなかった。

 白いヤツのパンチを闇を纏った刀でガードした。あわよくば斬ってやろうなんて思っていた。

 俺の刀はヤツのパンチを受け、ひび割れて砕けた。

 

「これ…ちょっとヤバいかも…」




“さん”を付けろよデコ助がぁ!


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限界を超えろ

ヤミ団長の名言。カッコいいですよね。


「これ…ちょっとヤバいかも…ハハハ」

 

 いや笑ってられない。

 何あの白いヤツ。刃は通らないは、刀が折られるは、尋常じゃない硬さだ。

 

「ンン、」

 

 白いヤツは手をかざした。ヤツの黒い刀が引き寄せられるように手に収まった。何の引力だよ。

 

「クロが壊された…闇魔法は使い物にならない。なら!」

世界樹魔法〈魔守のトリネコ〉

 

 来た時に発動した〈ミスティルテインの種〉でできた根を操作する。

 地面から鞭のように扱って攻撃する。今扱える3本。1本は地面に埋めたままの守備用、2本は出して手動操作で攻守の両方で使う。

 本来は防御魔法だが、闇魔法が使えない今これしか無い。

 

「グアァッ!!」

 

 うわ〜、簡単に斬られた〜。萎えるわ〜。まぁ斬られた側から生やせばまだどうにかなるんだけどね。

 ヤツも自分も手数は消えない。ただ、樹は時間が経てば確実に短くなっている。生やす速度より斬られる速度の方が速いんだ。

 消耗戦になればこっちの勝ち目はない!

 

世界樹魔法〈ミスティルテインの種〉

 

 自分の手に現れた光の種を地面に落とす。種は芽となり木となり樹の根まで一瞬で成長した。

 

「グルアァァッ!」

 

 目の前から消えた。

 

「マジかよ!」

 

 普通考えんやろ。ゴツゴツしてガタイが良くなったのに速さそのままとか。

 いや、そのままではないか?前は残像が残っていたが今はそれがない。ブラフだとしてもおかしい。

 硬くなったことで重量が増して早く動けないのか?!

 

「グアァァ!」

〈月牙天穿〉

 

「ッ!」

 

 やられた!黒い斬撃で根のほとんどが斬られた。

 接近してくる!このままじゃ胴体を両断される!

 

(このままだと死ぬ!今の俺じゃマナゾーンは…!)

 

 

 今の俺じゃここが限界…?

 

 

「だったら、今ここで限界を超えろ!!」

 

 全身に魔力を行き渡らせ、それを周囲に展開する。

 距離は問題ではない。今はただ、ヤツの剣を避けることができるだけの機動力を…!

 

〈マナゾーン〉

(…躱せた!できた!マナゾーンが!)

 

 “(くう)を蹴り”、横に構えられた剣を避けることができた。

 半径にして約5m!決して広くないが今はこれで良い。この5m圏内は俺の領域だ。

 

「…アァ?」

 

 刀を振った白いヤツは不機嫌そうに振り向く。

 自分の思う通りにいかなかったのがそんなに嫌か。同情するぜ俺もだよ!

 

(つっても武器が有るのと無いのとじゃ戦力が違うな)

 

 今の俺は攻撃を捌けるというだけで白いヤツを倒せるようにはなっていない。このままだと魔力切れで俺が先に倒れる。俺の魔力残量もそう多くない。

 世界樹魔法は制圧力に長けているだけであって攻撃力はほとんど無い。マナゾーンで対処できる内は回避や防御には使えない。

 

(だったら!)

世界樹魔法〈魔樹降臨〉

 

 空から巨大な木の根を出現させる。その根と地面にある根を使い、白いヤツの手足を縛り付ける。

 

(創りだせ!白いヤツを斬る事のできる刃を!世界樹魔法の全魔力を!)

 

 〈魔樹降臨〉で降ろした根を束ねて磨いて徐々に刀の形になってゆく。

 

(もっとだ!クロよりも鋭く、クロよりも頑丈なイメージ…!)

 

 根の中で少しずつイメージは形になっていく。

 

ブチブチブチ!

 

 ヤツを拘束していた根を引きちぎられた!迫ってくる!ヤバい!集中を切らすな!今動じればイメージが崩れてただの木刀になるぞ!

 ヤツが迫ってくる!集中しろ!イメージしろ!迫ってくるヤツを斬るだけの刃を!!

 

 

ドォーーンッ!!!




~いろいろ補足コーナー~
・次回、ブラッククローバーの単行本勢、アニメ勢にとって知らない魔法が登場します。弱ネタバレです。ただ、この魔法はめっちゃエモいので是非とも自分で見てほしい。
・実は残り3話なんです。この戦いは次回で決着です。


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決着

※弱ネタバレ注意!
 まだ単行本になってない魔法が登場します。


ドーンッ!!!

 

 

 轟音と土埃が舞い上がる。

 地面に黒い液体が垂れる。

 

「ア!ア!アァァァァァッ!!!」

 

 白いヤツは自分の手首を必死に抑えていた。

 手首はひび割れ、その間から妙な黒い液体が溢れている。

 

「…土壇場で完成しやがった」

世界樹創成魔法〈ミスティルテインの刃〉

闇魔法〈闇纏・居合い斬り〉

 

 ギリギリだった。ヤツの放つパンチが目の前に来るまで動かず刀の形成に集中し、完成したと同時に5mに展開していたマナゾーンを収縮し居合い斬りの要領で斬りつける。

 

「ア、アァァ!」

 

 ヤツは自分から距離をとった。そして刀をとる。すると傷は一瞬で塞がった。

 

「ッ!?」

 

 ヤツは四つん這いの姿勢になり、そして2本の角の間に赤い魔力の球体が形成していく。

 

「ウルゥァア!」

〈虚閃〉

 

 圧縮された魔力はヤツの叫び声と共に一直線に放たれる。

 俺は避けもせず、躱しもせず、マナゾーンを消し、ただ手をかざす。

 

「…」

闇魔法〈黒穴〉

 

 闇の魔力によって形成された闇の穴。ヤツの圧縮された魔力は穴に吸い込まれて消えた。

 

「…今ならできる気がする」

 

 〈黒穴〉と〈マナゾーン〉を併用する。10年後の俺はこの技に何度も挑戦したが、全く上手くいかなかった闇魔法最高の技。

 10年後よりも総魔力量は少ない。魔力も体力の限界なんて既に超えている。デバイスによるコントロール補助も無し。それでも謎の自信があった。

 

 〈黒穴〉を出した状態で〈マナゾーン〉を展開する。〈黒穴〉は上空へ上がって行き、領域内に留まる。〈黒穴〉が止まったと同時に〈マナゾーン〉の領域内のが薄暗くなる。

 

「完成した。これが闇魔法最高の技。その名も」

闇魔法〈黒月〉

 

 マナゾーンの領域を5mに広げ、ゆっくり歩く。いずれ領域内に入ったヤツは肩から崩れて膝を地面につける。

 この〈黒月〉は〈黒穴〉の特性を合わせ持っている。〈黒穴〉は自分以外の魔力を吸収する能力だ。範囲が狭いのがネックなのだが、〈黒月〉ならば、俺以外の領域内の人の魔力を吸収する。常人であれば入ってものの1分もすれば魔力を全て干上がっているだろう。

 

「白い液体。お前の正体は“刀”だな」

 

 〈闇纏・居合い斬り〉でヤツを斬って距離を取った時、俺は見逃していなかった。刀を手にした瞬間、傷と同時に身につけている“黒いキモノも”直ったことを。

 俺はこの戦いの中で一度もキモノを斬る事はできていなかった。傷すらまともに与えれていない。それでも“キモノは破れていた”。

 自身の攻撃の反動で破れたというなら分かる。ものすごい衝撃だったしパワフルな行動もとっていた。だがそれだとキモノが直る現象は説明できない。ましてや傷と同時に直るなんて分からない。

 そこで俺が出した結論は身につけているキモノも“含めて”ヤツはなのだ。

 あの白い液体はグリフィス准尉を飲み込んだものだ。だがキモノはそれ以前から着ていた。だったら結論は一つしかないだろう。黒いキモノは刀の変形と共に身につけていた。

 

「…グ、グアァァ…」

 

 この考えが正しい事は今のヤツが物語っている。

 今までとは打って変わった弱々しい声。魔力を強制的に吸収され続け惨めに地面に両肘両腕をつく姿。そして魔力と主に吸収されていく黒いキモノ。

 

「グリフィス准尉。今救いますからね!」

 

 〈黒月〉収縮。その際、闇魔法の引力を応用してヤツの持つ黒い刀を引きつける。俺の持つ刀は鋒を向けて突きの構えをとる。

 

(もっとだ。凝縮した〈黒月〉を更に超凝縮しろ!〈ミスティルテインの刃〉に集中さて…………放つッ!!)

闇魔法〈死突〉

 

 放たれた極限まで凝縮された〈黒月〉は透明な突きとなり、鋒の直線上にある黒い刀も木々も山肌も、全てを貫通する大砲となった。

 黒い刀は刀身に間が空いて破損した。落ちた鋒部分と柄部分は端から徐々に崩れ、最終的に全て砕けて粒子となり消滅した。刀が完全消滅した事によりグリフィス准尉を覆っていた白いナニカも崩れて消滅した。

 

「グリフィス准尉の安否を、あれ、地面がおきあが…」

 

 グリフィス准尉の安否を確認するために一歩を踏み出したのだが、起き上がってくる地面に頭をぶつけて視界が真っ黒になる。



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その後

「っは!」

 

 知らない天井だ。俺はどうしてこんな所へ…。

 

「うっ、」

 

 体を起こそうとするが激しい痛みによって動かない。腕を使おうにも少し動かせば激痛が走り、足に関してはほとんど感覚がない。

 

「…あら。ダメよ〜まだ動いたら。完治したわけじゃないんだから」

 

 動けない俺を覗き込むように金髪の女性が覗き込む。

 その金髪と赤い瞳は…まさか。

 

「“クラールヴィント”お願い」

 

 彼女が使う指輪型デバイスから振り子のような物に変形し、俺の体のあいこちに当たる。先端が冷たいのでくすぐったい。

 

「ありがとうございます。シャマルさん」

 

「本当よ。体のあちこちがもう酷い有様なんだから。こんな無茶しちゃダメよ」

 

 そう言われる俺の腕は包帯でぐるぐる巻きになっている。見てはないが、体のあちこちにも包帯を巻いてあるのを感じる。

 クラールヴィント。このデバイスを使う人なんかこの人しかいない。シャマルさんはクスッと笑っておでこに軽くデコピンをする。

 

「あの…グリフィス准尉は…?」

 

「…一緒にいた彼は隣にいるわよ」

 

「え?」

 

 首を逆方向へ回す。すると驚き。発掘された棺の中身と間違えてしまうほどのミイラマンがそこにいた。

 

「うぁん」

 

 口が十分に動いていないのか何か言っているが何いてるか分からない。全身の9割が包帯で目以外が真っ白なの面白すぎw

 

ガラガラ

 

「目が覚めたんや」

 

 扉が開き、部屋に車椅子に乗った少女がやってきた。

 

「はじめましてやな。私は八神はやてといいます」

 

 …よく知ってる。俺はこの人を守りたくてこの時代までやってきたんだ。無事なら良かった。

 それにしても茶髪にアクセサリーって10年前とあんまり変わってないんだな〜。

 

「…ども」

 

 何を話せばいいんだろう。頭の中が真っ白になった。

 色々話したいような…何も話したくないような…なんだこの複雑な感情。

 

 

「アンタが私の未来の旦那さんなんやな〜」

 

 

「えぇ。まぁ」

 

 ・・・ん? 何 て 言 っ た ?

 

「随分ヤンチャな人を好きになるんやな〜未来の私」

 

 ん?

 

「ちょ、ちょ、ちょ」

 

「あぁ、急に動いたらあかんよ」

 

 耳を疑う衝撃発言でついつい手が動いてしまう。が、動くはずなく鋭い痛みが全身を駆け巡る。

 はやては肩を軽く押して俺はベッドに横になる。

 

「ちょ、え?なんで俺の事を知ってんの?え。何?ドッキリ?」

 

「う〜ん。なんて言うか…あ、口で言うより見てもろうた方がええな」

 

 そう言うとはやては部屋を出た。しばらく、一通の手紙を持って戻ってきた。その手紙にはこう書かれてあった。

 

【10年前の私へ

 今その世界には黒髪の男の子がヤンチャしていると思います。

 まぁまぁ強いので負ける事は無いと思うけど、今頃ボロボロになって倒れているはずです。

 その人をどうか助けてあげて下さい。

 その子は未来で私と家族を支えてくれる大切な人になります。

 他は言わんでもええやろ。       

 10年後の私より

 PS.本人が起きたら顔面を叩いて下さい】

 

 手紙には1枚の写真が写っていた。

 その写真には茶色の制服を着たはやてが時計を持った自撮りだった。時計には日付も載っており、その日付ははやてが消えた日の次の日だった。

 

「…ん?何がどういう事だってばよ」

 

ぉい(おい)?」

 

 隣のミイラマンが声を上げる。手元にはフリップあり【今回の件】と手書きで書いてあった。

 

【元の世界→僕が10年前の世界で八神ニ佐を殺害→八神ニ佐は歴史から消える OK?】

 

 OK。

 

【世界が書き変わる→ヤミニ佐だけ取り残される(原因不明)→ヤミニ佐が10年前の世界へ→僕を止める<今ココ> OK?】

 

 おk。

 

【八神ニ佐が生存した世界に変わる→逆にヤミニ佐が歴史から消える→(同じ時間に同一人物は存在できない説)→10年後の世界から何かしらの方法で手紙を届ける→10年前の八神ニ佐がヤミニ佐の事を知った<今ココ>】

 

 …ん?

 

「つまり、どういう事だってばさ」

 

【八神ニ佐の代わりにヤミニ佐が歴史から消えた。そして未来の八神ニ佐が今のヤミニ佐を助けるように指示を出した。そして僕達は助かった】

 

「…はやては助かったんだな。だったらよ、」

 

「良くないで」

 

 とにかく過去へ来た目的が果たされたのであれば俺は満足だ。だが、はやてはそうではないそうだ。

 

「私は許さんで。誰かのために自分が犠牲になるなんて絶対に許さへんで。もう…大切な人を失うんは嫌や」

 

 はやての目には薄らとした涙が写っていた。

 …そういえばはやてはそういう人だった。目の前の事に必死過ぎて忘れていた。

 俺がはやてお出会ってからもよくあった。問題が発生した度に身を削ろうとする俺をいつも引っ叩いていた。

 

「せやから、罰や」

 

 どんな事を言われても甘んじて受けよう。

 

「私を…これから…ずっと守ってな…」

 

 顔を赤くしながらはやては言った。

 

「あぁ。もう二度とあんな思いはあんまりだ。もう誰にもお前を殺させない。俺が守ってやる」

 

 包帯でぐるぐる巻きの腕ではやてを手をそっと握った。はやては噴火した様に顔が真っ赤になる。

 

「も、もうやめや!シャマル!後は任せたで!」

 

「は〜い」

 

 赤面したはやては凄まじい速さで車椅子を操作し、部屋から出て行った。

 

「ふふふ、私達も混乱してないわけじゃないわ。でも安心したの。はやてちゃんが未来で幸せなのを知れて、ね」

 

 シャマルさんも軽く笑いながら自分の心境を打ち明けてくれた。そりゃいきなり“この人が未来の旦那です”と言われて飲み込める人は少ないだろう。

 それでも自分達の主が幸せなのを知れるのは嬉しいのかもしれない。

 

(そういえば、未来でシャマルさんに似たような事を言われたな)

 

 あれは俺とはやてが結婚する事を守護騎士達に報告しに行った時だった。その時のシャマルさんは「はやてちゃんを幸せにしてくれる人が現れて安心した〜」と言っていたっけ。…同時に「主を泣かせたら殺して殺す」とも言われたっけ…。

 

 う、シグナムさんの記憶が蘇って来た。寝て忘れよ。




〜いろいろ補足コーナー〜
 変わった未来ではヤミ同様、世界がヒビ破れてはやてだけが取り残されました。はやては次元の穴を発見し、手紙を出そうとしますが、考えてください。ミッドと地球では離れています。ヤミは時間の流れ移動する形で解決しました。はたして、手紙だけ送る事は可能でしょうか?
 …これは余談ですが、ヤミと暮らすようになったはやては時々“未来の出来事を語る”ことがあるそうですよ。この夫婦は似た者同士なのかもしれませんね。ナニとは言いませんが。


 次回、エピローグ
 無事はやてが死ぬ未来を変える事に成功したヤミ。2人はこれからどう過ごしていくのか…


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エピローグ

後日談です。


 管理局の地球支部で事情聴取などの事後処理などが行われた。

 今回、俺とグリフィス准尉が戦っていた時間は1時間も満たないくらいで、俺が倒れた数分後に管理局が到着したらしい。

 それから保護されたわけなのだが、どうやら俺は2週間も寝ていたらしい。原因は色々ある。重度の魔力欠乏症、無理して動かした体の筋繊維は痛み、骨にはヒビが入っていた。それでも戦えたのはアドレナリンがドバドバ分泌されていたからだとか。

 グリフィス准尉は俺ほどではなかったものの、魔力欠乏、体の負荷で1週間ほどの寝込んでいたらしい。目が覚めてから1週間治療して、まだミイラマンなのだ。明日あたり包帯をとるらしい。

 

 

 さて、事後処理を色々話そう。

 

 

 まずはデバイスだ。

 俺の持ってきたバリアジャケット兼通信用デバイスには機能の縛りとかは無いらしい。ただ、端末内にある未来のデータだけは時限式ロックを掛けるらしく、時がきたら解除されるそうだ。

 魔導書型デバイス“コン”こと〈金色の夜明け〉は内蔵魔力を全て使ってしまったため、機能を停止していた。管理局に回収され、魔力を込められた事で再起動し今は自動修復中。あと1日ほどで終わるらしい。

 戦いの中で壊された刀型デバイス“クロ”こと〈黒の暴牛〉は散らばった破片やパーツを回収したところ、ロストロギアの部品は無傷だった事が分かった。今は使えるパーツは使い、必要なパーツは新規で組み込み…と復元中だ。これは少し先の技術という事もあり、時間がかかるそうだ。それまでは“よく斬れる木刀”こと〈ミスティルテインの刃〉をメインウェポンにしていこうと思う。

 

 次に肉体、魔法面について。

 あの時はあまり気にしていなかったが、同じ未来からきた組である俺とグリフィス准尉では歳が違っている。

 俺は大体9歳くらいなのに対してグリフィス准尉は19歳、歳が変わっていないのだ。

 2人で手段や経緯など色々話し合って、整理してこう結論づけた。俺は過去の世界へ“遡った”ため「逆行」、准尉はあの刀の力を使い過去の世界へ“移動”したため「転移」ということになった。

 俺が9歳だった時は闇の魔力を少し出せる程度だった事もあり、今回の戦いは自分が想定している以上に肉体へ負荷がかかっているとのこと。今後同じような無茶をしない事を大前提として、俺の寿命は削れているだろうし、無茶して魔法を使ったツケはいずれ必ずやってくると宣言された。地獄のようなリハビリの覚悟をするようにキツく言われた。

 俺の魔法に関しては当然っちゃ当然だが、あの戦いほど上手く扱えない。俺のデバイスである“クロ”や“コン”のロストロギアは闇の魔力と世界樹の魔力を肉体への負荷がかからないようにコントロールするサポーター的な役割を担っている。それが無い今、どんな反動が来るか分からないため魔法も使えない。

 〈マナゾーン〉〈黒月〉〈闇纏・居合い斬り〉〈死突〉〈ミスティルテインの刃〉など、あの戦いで扱えた魔法は当然使えなくなっている。この魔法は9歳が扱えるほど可愛いものではない。本当はもっと先にある技術なのだ。あの時は超集中…アスリートで言うゾーンの状態と、俺の才能・センスが奇跡的にマッチしたから扱えたのだ。

 よって、今後は無茶厳禁として、歳相応のトレーニングと実戦を繰り返して徐々に扱えるようにすることとなった。幸いにも俺には9歳の時はなかった10年分のノウハウがある。きっと、このまま進んでいけば元の時間軸よりも強くなっているだろう。と言っても、まずはリハビリからだけど。

 グリフィス准尉はって?アイツは元々魔法の才は人並みだから地道にコツコツ練習してるよ。

 

 最後に処罰について。

 グリフィス准尉には殺害未遂と危険な魔法の行使、俺には危険な魔法の行使が主な罪となった。

 グリフィス准尉に関して申し開きがない物だった。殺害未遂。それを本人も受け入れて深く反省していた。

 俺は殺害を防ぐためとはいえ殺傷能力の極めて高い魔法を使った事、世界樹魔法を使った事による地球の自然環境への被害などが主な罪だ。前述については何も言えなかった。後述については現場検証の結果、害は無いとされ特に言われる事はなかった。

 この事から、グリフィス准尉へは殺害を企てたが未遂に終わった事、本人が深く反省している事と立派なメガネに免じて「保護観察と奉仕活動」の2つを罰として与えられることになった。俺は殺害を防ぐためとはいえ危険な魔法の行使は罪だが市街地への被害は無く、本人は深く反省している事から「保護観察と蹴破った八神家の窓ガラスの修理」が課せられた。グリフィスの観察官はリンディさん、俺の観察官はクロノ君とはやてになった。

 未来から来た事については罰する基準が不確定なため、余計な情報を漏らさない限りはお咎め無しとのことだ。

 それと、当然ながら俺のニ佐、グリフィスの准尉の階級は取り消しになった。当たり前だよなぁ。

 

 最後にこれからについて。

 この世界には未来に行く術がない。だから俺たちは帰る事ができない。かと言って放っておく訳にもいかないので誰かの家の厄介になることになった。

 グリフィス准尉は保護観察と管理局での無賃奉仕活動のためリンディさんの家へ行くそうだ。本人は沢山のキャリアを積もうと息巻いていた。

 俺は八神家で面倒を見てもらう事になった。ここであればリハビリ、治療の二つが同時並行で行えるから便利だ。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 八神家に入居して1日目。

 まだ足は動かないので車椅子に座り、シャマルさんに押されながら服や食器などの生活に必要な物を購入して家へ向かった。

 八神家ではスロープがあるので、そこを上がりリビングに入る。するとはやて、なのはさん、フェイトさんなどのお友達組が【ヤミ君、八神家入居歓迎会】なる催しを開いてくれた。

 正直、気配と靴の数、様々な料理の匂いで察していたが、俺としてはサプライズよりも見ず知らずの俺を歓迎してくれる懐の深さに驚いた。驚きすぎて気づくのに遅れてしまったのだ。この衝撃の事実に。

 

「はやて…足…」

 

「ん?足になんかついとる?」

 

 はやては普通の顔して立っていた。確か、最初にグリフィス(准尉呼びしたら怒られた)を止めた時は車椅子に乗っていたのに…。

 

「足…動かないんじゃ…?」

 

「え?もう普通に動くよ?」

 

 はやては俺の目の前で軽く飛び跳ねて一回転してみせる。

 本当に、歩けるのか…?俺の知っている幼少期のはやては写真だけだからいつまで車椅子でいつから歩けるのか明確な時期を知らんのだ。

 でもそうか。歩けるのか…。はやての車椅子を押すのを少し楽しみにしてたんだがなぁ。悲しいような、嬉しいような………逆行してからこんな思いばっかだな。

 

「そうか。…みんな、俺の為にありがとうな。よし、楽しむぞ、っててうぉあ!」

 

 みんなが催しを開いてくれた事が嬉しくと車椅子から身を乗り出してしまった。

 忘れていた。俺はまだ体があまり思うように動かないのだ。当然、俺の足は体重を支えきれずに前屈みで倒れてしまった。

 

「こら!まだ動いちゃダメでしょ!」

 

「すんませ〜ん!……誰か手を貸して下さ〜い!」

 

 シャマルさんとはやての手を借りて車椅子に座る。この一連のやり取りを見た人達は「あ〜、こんな人か」という視線が送られた。

 

〜〜〜

 

 入居して1週間。

 

「よっと…はい!」

 

「おぉ〜」

 

 俺はやっと自らの足で動けるようになった。…バリアジャケットの姿勢補助付きだが。

 八神家の面々の前でようやく立つ事ができた。

 マリエルさんという本局の方がやってきて、修復した“クロ”と“コン”の調整をしてくれた時に、リハビリ用バリアジャケットの試作品をくれた。

 ウェットスーツのような生地なのだが、バリアジャケットのように防御や攻撃性能は無いものの体の筋繊維の動きからその人の正しい体勢を取れるようにサポートしてくれるものらしい。

 俺はリハビリの中で、このサポートを徐々に減らしていき、最終的にサポート無しで動けるようになるらしい。マリエルさんは「あげる代わりに感想を教えてほしい」とのこと。

 今は試作段階なので、俺のリハビリを通して実用化を目指しているらしい。

 

「これをつけていると走り込みくらいはできるようになるとのことです」

 

「ほぉ〜。便利なものだな」

 

「今はサポートのレベルをMAXにしてるんで主治医であるシャマルさんの判断のもと、徐々にサポートのレベルを下げていこうと思います」

 

「頑張れよ!」

 

 守護騎士達が温かく見守ってくれている。

 今までは動くトレーニングは主治医が禁じており、しばらくは魔力コントロールのトレーニングとなのは・フェイトの練習を見学するだけだった。

 それも今日まで。これからはしっかりと動いて一日も早く復帰したい!

 

「欲張ったらあかんよ。ニ兎を追おう者ものは一兎をも得えずや。また体を壊したら元も子もないよ」

 

「分かってるって。大丈夫大丈夫」

 

 ーーー2日後、オーバーワークで主治医と未来の嫁とトラウマ師匠にこっぴどく説教されました。

 

〜〜〜

 

 八神家に入居して2週間が経った。

 リハビリに専念したおかげで、もう補助無しで歩けるようになった。

 

「お前はこれからどうするんだ」

 

 夕飯を食べながら、シグナムさんが聞いてくる。

 今日はグリフィスと会って来たんだ。お互い落ち着いて今後について話し合っていた。グリフィスは罰の奉仕活動と自分の目標に近づくために管理局の支部で働くらしい。

 対して俺はというと、管理局で働きはするが、9歳に任される仕事はたかが知れており、ぶっちゃけ暇なのだ。

 

「そうですね…一応管理局で働こうと思って日本支部に行ってみたんですが、猫の手は借りない主義だって断られちゃいましたし。…どうしよう」

 

 クロノ君は忙しそうだったが、これは時期的なもので普段はそうでもないらしい。元機動六課部隊長補佐のグリフィスが入っているのもあり、人手は十二分に足りているらしい。

 体を鍛えるも、オーバーワーク以降しばらく訓練は禁止だし…、俺は何をしようか。

 

「これは提案なんやけど、学校へ行くのはどうやろ」

 

「学校ってここの?」

 

「そ。ヤミ君、ミッド出身やから地球のことなんも知らんやろ。この星でこれからも暮らしていくんなら、最低限の知識と教養は必要やん?」

 

 そうか。つい忘れるがこの星ではミッドとは違うんだ。魔法無しでここまで発展してきた星を俺はあまり知らない。

 確かにいい案かも知れない。

 

「シャマルの甥っ子とでも言っとけば大丈夫やと思うで」

 

 という助言を受け、俺氏、私立聖祥大附属小学校へ通うことになった。

 名前は「八神 ヤミ」と名乗り、外国人設定のシャマルさんの甥っ子ということになった。東洋人…日本人の血が8割占めているため、髪と瞳は黒い。日本語は話せるが字が書けない不思議ちゃん設定。

 入学テストの成績は主要5教科の内算英理は満点、国社は赤点という成績だった。この国の歴史なんて知っているわけないだろう。国の主導者はショウグンかチョウテイかどっちかにしろ。

 テストや面談をして無事、入学は認められた。クラスはなのは達と同じになる予定らしい。

 今は夏休み直前なので学校に通うのは休みが明けてからということになる。それまでは宿題をやっておけとのことらしい。

 ちなみにグリフィスは近くの大学へ通うそうだ。

 

 

 

 こうして俺の地球での生活が始まった。

 

 急に消えたはやてを救いたい一心で始まったこの逆行譚。

 はやてを助ける為に犯罪まがいなことをして過去の世界へやって来て、驚きの黒幕 グリフィスとの戦いで何度も限界を超え、戦いが終わって目的を達成した今、はやてと共に地球での生活している。

 

 この世界がどうなるかは、正直分からない。

 俺がはやてと出会ったのは機動六課結成がきっかけだ。しかし、今は幼少期から深く関わっていく。これが良いのか悪いのか。未来にどのような影響を及ぼすのか、誰も知らないのだった…。




はい。最終話です。


















  と思っていたのか?





劇場版『Reflection』『Detonation』編
     制作決定!!


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