異世界ツクール (昆布 海胆)
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第1章 第1部 ゴンザレス太郎編『プロアクションマジリプレイ』
第1話 ヤバイ死んじゃった!


第1部、前タイトル『スキル「プロアクションマジリプレイ」が凄すぎて異世界で最強無敵なのにニートやってます。』再編集版となります。
連載済みまで毎日更新予定ですので宜しくお願いします。


何処にでもある平凡な一般家庭、そこに住む一人の青年が今まさに人生最大の危機を迎えていた。

 

「うぐっ?!」

 

大晦日の大掃除を終え、こたつに入り年越しそばではなく焼いた餅を食べていた達也。

テレビを眺めながら突然、餅を喉につまらせて悶絶した!

家族は初詣に行って家には誰もおらず、達也は何とかしようと死に物狂いで部屋の中で暴れる!!

 

(ヤバイこれマジで死ぬ!)

 

救急車を呼ぼうにも声が出せず絶望する達也、呼吸が出来ない苦しさに暴れまわる事で、大掃除を終えたばかりの部屋がまるで泥棒が入ったかのように荒れていく、そんな中達也は最後の望みに掃除機を掴んだ!

昔テレビのCMでお坊さんが喉に餅を詰まらせたのを掃除機で吸引して取ったのを思い出したのだ!

先端部分を口に入れてスイッチを入れる!

 

ぎゅいぃぃぃぃぃぃん!っと言う音と共に口の中が吸われるが、ショウソンの吸引力の変わらない掃除機は達也の餅ではなく舌を吸引してしまい、達也はそのまま吸引する掃除機の先端を口に含んだまま窒息死するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃははははははははは!!!あっーっははははははは

!いひゃひゃひゃひゃひゃ!!!ぷギャーぷギャー!!!もう止めてお腹痛いwwww」

 

達也は真っ白の空間に立っていた。

目の前には全身真っ白のもじもじ君みたいな人形の何かが、腹を抱えて転がり回りながら大笑いしている…

 

「はぁ…はぁ…いやー笑った笑った。ここ数百年で俺が担当した人間の死に方で、あんたがナンバーワンだよ!」

 

よく見ると周りも真っ白なその空間はまるでアニメ鋼の錬金じゅ…おっと危ない危ない。

目の前にいるその真っ白の人形の何かはこっちを見て、再び吹き出して腹を抱えて笑い出した。

 

「あの…」

「あぁ、ごめんごめん。ここは君たちの言う死後の世界『アノヨー』だ」

「死後の世界『アノヨー』ですか…」

「ってあのよー…ぎゃはははははははははwwww」

 

駄目だこいつ早くなんとかしないと…

 

「はぁ…はぁ…いや、わりーわりー残念ながら君は死んだんだよ」

「やっぱりそうですか…」

「っでだ、君に相談があるんだけど…異世界って興味ない?」

「へっ?異世界?」

「そう、なんか今ね俺達神の間で流行っている異世界ツクールってゲームがあって、それで俺が作った異世界で暮らしてくれる人間を募集してるのさ。どう?このまま成仏するより考えてみない?」

 

俗に言う異世界転生と呼ばれる様な話、そんな非現実的な事を言われ、達也は突然の提案に困惑するのであった。



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第2話 ヒドイ転生しちゃった

神…なのかは分からないが、目の前の白い人形が作った世界…

ゲームとは言ってたが、世界を作るって事は創造神なのかと考えれば、目の前の白いのが凄い存在なのでは無いかと思えてきた。

達也は徐々に沸き上がる好奇心を押さえられず口を開いた。

 

「ちなみにどんな世界なんですか?」

「おっ?興味有る?興味あったりなんかしちゃったりする?」

 

前言撤回、こいつウゼー

 

「君の記憶にあるRPGみたいな世界だよ。レベルがあってスキルがあって…でも教会で生き返ったりはしないぜ!死んで所持品そのままで金だけ半分になって生き返るとかなんだそりゃだよな!ぎゃははははははははは」

「レベルって事は魔物とかモンスターとか居るわけか…」

「あぁ居る居る!俺が色々考えて作ったモンスターがわんさかいるさ!可愛いのからエロいのからエグいのまでな!」

 

RPGの様なモンスターが居る世界で、スキルが存在する…

でも死んだら終わりか…

まぁ一度こうして死んでる訳だし、自分で選べるのならこのまま成仏ってのもなんか勿体無い気がするし…

 

「あっちなみにレベルは999まであってレベルを消費してステータスに割り振ったりも出来るんだぜ!だから無限に成長なんかも可能だ!どーだ?すげーだろ?」

 

普通に言われたその言葉に達也の目が輝く!

 

「何それ凄い!」

「だからドラゴンも魔王もその気になったら一人で素手で倒したりも出来るんだぜ!」

「えっ…」

 

ドラゴン?魔王?そんなのまで居るなんてそれ何かのゲームそのものなんじゃ…

 

「でもさ、なんか色々と問題があったらしく修正パッチが配布されて色々制限掛かってたから、内緒なんだが俺の力で色々弄ってね、中々面白くできたと思うから是非楽しんできてよ!」

 

次々に伝えられる情報に困惑する。

それはそうだろう、修正パッチなんてエロゲーでしか聞いたことの無い言葉だ。

つまりそれってその世界を作るナニかを作った上位存在、ゲームだったらゲーム会社的なナニかが存在すると言う事に他ならない。

達也はそこまで考えて気付いた。

 

(あれ?これってなんか勝手にその世界に行くって話になってない?)

 

「いやっ俺まだやるとは…」

「それじゃ新しい人生楽しんできてねー!」

 

ちょっ?!おまっ!?

そう叫ぶ暇もなく達也は意識が飛散するのを感じた。

散り散りになると言う言葉がピッタリなんて考える暇もなく、達也の意識と存在は四方に霧のように散って消えていく…

自身の意識がバラバラになる様な、初めて感じる不思議な感覚だが、悪い気分ではなかった…

 

 

 

 

 

 

ふと気付くと知らない天井が見え、達也は口を開いた…

 

「おぎゃーおぎゃー」

 

こうして、達也は異世界に転生したのであった。



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第3話 キツイ名前を付けられた!

気付くとそこはとても天井の高い部屋の中だった。

 

(ここが異世界!?あの白い人形は確か転移じゃなくて転生って言ってたな、つまり俺は今赤ん坊って事か!?)

 

達也は筋肉が全然ないからなのか、仰向けのまま全く動けないし、声を出そうとしても泣くことしか出来ないのでそうだと確信した。

 

「あらあら、起きちゃったのね」

(この人が母親か!中々の美人さんじゃないか!)

「おっ起きたならちょっと抱かせてくれよ」

(っとなるとこっちがお父さんって…うわわわ)

 

頭の重さに首が耐えきれず、首がもげるイメージが頭を過りヒヤッとする。

 

「あなた気を付けて、まだ首が座ってないんだから」

「おっとと…こ、こうか?」

 

父親の腕に頭を乗せて貰い、持ち上げられた浮遊感に心が踊る。

力強い腕に包まれる安心感、達也も昔感じていた筈の感覚であるが凄く新鮮であった。

 

「おっ?!今こいつ笑ったぞ!おーいパパだぞー」

(やはり父さんか、中々の男前で鼻筋も通ってて…これは自分の顔に期待してもいいんじゃないか?)

 

父親の顔を見て、自分が今回の人生ではイケメンになるかもしれないと考えて嬉しくなった。

 

「きゃっきゃっ」

「ををっ?!パパが大好きか!パパも大好きだぞ!」

 

親バカである。

 

「ところでアナタ、この子の名前は決まった?」

「いやーまだ二つの候補で悩んでいるんだよなー」

「この子の将来得られるスキルがとても良いものになる名前を占ってもらったんでしょ?」

「それがな、候補の名前が5つくらい出たそうでな…占い師もこんなことは初めてだと言ってたよ」

(ん?もしかして俺の名前の話か?生まれ変わるならやっぱり格好良い名前に憧れるよな)

「最終的に候補に残ってるのが『ぺニス太郎』と『ゴンザレス太郎』なんだ」

(ちょっと待て!なんでそんな名前?!けど絶対ぺニス太郎だけは嫌だ!)

「俺的にはぺニス太郎に決めようかと思って…」

「ビエーンビエーンビエーン!!!」

 

全力で阻止するために泣いた!とにかく泣いた!

その名前では将来絶望する未来しか見えないのだ。

 

「もしかしたら『ぺニス太郎』は嫌なんじゃない?」

(そうだよママンその馬鹿な親父をどうにかして止めて!)

「しかしだな、これからの時代これくらい個性的な名前じゃないと女の子にモテないんだぞ」

(いや、モテてもそんな名前だったら逃げられるから!歩く変質者だから!)

「それにゴンザレス太郎って呼びにくくないか?」

(そこっ?!最終的に悩むとこそこっ?!)

「いいじゃない、ゴンザレス太郎…私は好きよ」

(ママンその調子だ!だけど出来れば違う名前がいいよぅ)

「そうか、お前が好きと言うならそうするか!今日からこいつはゴンザレス太郎だ!」

 

この残念な両親に付けられた名前で時は進み、ゴンザレス太郎は6歳になっていた…



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第4話 ユニークスキルと礼拝堂

この世界では6歳になると礼拝堂と呼ばれる場所で祈りを捧げ、神のような存在からユニークスキルを授かる。

このユニークスキルは先天性のモノで、後から取得することはできない。

つまり、ある意味これで将来の進路が絞られるとも言われてる。

 

そして遂に、今年で6歳になるゴンザレス太郎も両親に連れられて礼拝堂へ来ていた。

 

「パパ!私『思考加速』ってスキルなんだって!」

 

すれ違った女の子がどうやら思考加速というスキルを授かったらしく、両親も鼻が高そうだ。

これは物事を考える速度が早くなるスキルで、このスキルを持ってるだけで働き先は引く手数多らしい。

お父さんは今日のために色々勉強したらしく胸を張って教えてくれる。

 

「ママー僕『絶対浄化』ってスキルって言われたけどこれなーにー?」

 

今度の男の子は絶対浄化ってスキルらしく、母親は微妙な顔付きだ。

これは呪われた土地の浄化やアンデットに対してかなり有利になるスキルなのだが、働き先としては冒険者や不動産屋、教会と言ったちょっと片寄った内容の仕事がメインとなる。

勿論スキルは現代の資格みたいなもので、後から取得できる通常スキルで似たような事はできる。

ただ通常スキルとユニークスキルではユニークスキルの方が効果が高く、比較されたときは優遇されるのがよくある話なのである。

 

すれ違う中には多分あまり使えないスキルを得た人も沢山居る。

子供は良く分かっておらず新しいスキルを得たことに喜んでいるが、親が浮かない顔をしているので一目で良くわかる。

それでも努力すれば通常スキルを得て希望の仕事に就ける人も沢山居る。

そう考えればそこまで落ち込む必要は無いとゴンザレス太郎は考えていた。

 

そんな中、いよいよ自分の前の女の子が礼拝堂の祈りの部屋に入っていった。

ここは親は同席できず子供が一人で祈りを捧げる部屋で、言うことを聞かない子はスキルが貰えない!と小さい頃から躾の一環としてどの家庭でも教え込まれているので悪戯っ子も今日だけは良い子にしている。

 

「をををををを?!」

 

礼拝堂の職員達が歓声を上げる!

どうやら前に入った女の子が凄いスキルを得たようだ。

女の子の両親が近付き女の子に聞くと女の子は…

 

「良く分からないけど『聖剣召喚』と『能力全強化』なんだって」

 

回りの人もそれを聞いて歓声を上げる。

特に聖剣召喚は伝説の勇者が持っていたとされるスキルらしく「勇者様!」と女の子に大の大人が頭を下げていたりする。

 

くじ引きでは無いのだが、どうにも当たりの次に引くと再び当たりが出ることは無いと感じるゴンザレス太郎は少し落ち込み気味だ。

 

そして、いよいよゴンザレス太郎の順番がやってきた。



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第5話 女神様からプロアクションマジリプレイのスキルを得た。

順に奥の部屋へ行き、帰ってくる…

その順番待ち、流れる様な作業的光景に、どの世界でもこういうのは同じなんだな…

っと達也は適当な事を考えながら時間を潰していると、いつの間にか自分が先頭になっていた。

 

「それでは次の者、前へ」

「はいっ!」

 

両親に言われた通り、元気良く返事をして一人で前に出る!

過保護と言うわけではないが、いつも付きっきりで親が側に居た為に少し寂しかったりもする…

だがルールだから仕方ない、両親はここまでで、自分一人だけで教えられた祈りの間と言う個室にに入っていく。

そこは円形の小さな個室で、中は少し涼しいが寒いほどではなく、正面の上に小窓が一つ在った。

その小さな個室の部屋の中央には女神像と呼ばれる石で出来た像が置かれており、聞かされた通りその前の床に描かれてある魔方陣の中に座って達也は目を閉じて祈りを捧げた。

 

そのままの姿勢で何を考える訳でもなくじっとしていると、突然の魔方陣から光が昇って空気が一気に暖かくなる。

目を閉じているのに明るさを感じるが、言われた通り

そのままゴンザレス太郎は女神像の前に頭を下げて祈り続ける…

すると正面の窓とは少し違う場所、言うならば空から美しい女性の声で御告げが脳内に届いた。

 

「6歳のお誕生日おめでとうございます。私達の力で貴方に祝福を…」

 

全身がポカポカするのを感じ、心臓が大きく『ドクンッ』と一回動いた。

その瞬間から血管内を流れる血がまるで違う物に変化した様に感じ、『力がみなぎる』という言葉はこう言う事なんだと一人納得した。

そんな達也の脳裏に再び女神様の声が届いた…

 

「アナタにはユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』を授けます」

「はっ?えっ?」

 

突然後ろから変な声が聞こえた。

どうしたものかと困惑するが、最後の言葉以降脳内に聞こえていた女神様の声が聞こえなくなっていたので、女神様はお帰りになられたと考え、達也は目を開けて振り返る。

そこに立っていたのは先程出入口横に立っていた神父様風の男性で、必死に手に持っていた聖書らしきものを開いて必死に何かを探している。

 

あまりにせわしなく聖書を扱っているのでハラリと表紙が外れ『異世界設定資料アルティマニア』って書かれている本だと分かったのだが、そんな事はどうでも良いと言わんばかりに神父風の男性は暫く手にした本を読み込み…

 

「無い、そんな『プロアクションマジリプレイ』なんてスキルは乗ってないぞ!?」

 

そんなこと言われても…

っとゴンザレス太郎は困惑するのであった。



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第6話 分からないのなら試してみればいいじゃない

「神官様、どうなされたのでしょうか?」

 

祈りの間から出てきたゴンザレス太郎と神官、ゴンザレス太郎は少し困った感じ程度なのだが、隣の神官は特に神妙な顔付きをしていたので、お父さんが心配して聞いてきた。

 

「いや、うむ…大丈夫だ、スキルは無事に得られた…ようなのだが…」

 

どうにも口ごもってる、ここで普通なら神官から親に子供の授かったスキルの説明を本来ならするのだが、ゴンザレス太郎の得た『プロアクションマジリプレイ』と言うスキルの内容が全く理解できなかったのだ。

子供に向いた職業や、将来進むべき道を示してくれる筈の神官が困った様子だった為、ゴンザレス太郎の父親も少し困惑をし始めていた。

そんな様子を見ていたこの神殿の信者と思われる男性、何か思い付いたのか神官に声を掛けてきた。

 

「神官様、どうでしょう?とりあえず発動させてみる形では?」

 

信者らしき人にそう言われ、神官は礼拝堂裏の空き地でゴンザレス太郎のスキルをのち程試すことになった。

しかし、神官の手が今は空かない為、親子3人で礼拝堂の会議室で神官の手が空くまで待たせて貰うことになった。

 

「うーん、ゴンザレス太郎のスキル『プロアクションマジリプレイ』かぁ~…リプレイって言うくらいだから、前に誰かがやった行動を真似できるとか?」

「あなた、それじゃ『ものまね』スキルと被ってるわ、それにあっちは完全なユニークスキルよ」

「それなら記憶にある人の動きを完全に再現できるとか?」

「『トレース』に似たスキルね、確かにそれなら凄いわね」

 

両親がゴンザレス太郎放置し、二人で勝手に色々想像して話に盛り上がる。

だがゴンザレス太郎は前世の達也だった頃にこれに似た名前の物を知っていて、もしかしたら…という想像を膨らませていた。

両親が話に盛り上がるのをゴンザレス太郎は止める気が無かったわけではない、期待され過ぎるとこの分外れだった時にガッカリされるのが少し怖いからだ…だが息子の将来に関わるユニークスキルだから、両親が盛り上がるのは仕方ないだろう。

特に神官が分からないユニークスキルとなればその価値は計り知れない、とらぬ狸の皮算用ではないが、本当に異質なユニークスキルで国から保護されたりする可能性も無くはないのだ。

技術や叡知の再現、はたまた空想を実現出来る可能性も特殊なユニークスキルであればあるのである!

この世界のおとぎ話にある英雄達のように…

ゴンザレス太郎は両親の話に加わったり止めたりする訳でもなく、二人の話を聞き続けるのであった…

 

 

 

そんな両親の盛り上がってる話を1時間ほど聞いてると数名が会議室にやってきた。

どうやら6歳の子供が祈りに来るのが途切れ、時間が空いたとの事で手の空いた神官様達が呼びに来たのだ。

一同は神殿の裏の空き地に移動し、早速この謎スキルの実験を始めるであった…



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第7話 スキルの謎

「よーし!良いぞー使ってみてくれー」

 

未知のスキルを使用するということで、神官達と両親は後方に10メートル程離れ、更に神官の持ってるスキル『マイティガード』を使用して未知のスキルが広範囲に影響を及ぼす可能性も視野に入れ、体勢を万全にして合図が来た。

防御力と魔法耐性が倍になり、もしもの時は直ぐに回復魔法も使えるように治癒スキルを持ってる神官も待機している。

『プロアクションマジリプレイ』という名前からではどんなスキルなのか全く予測のつかないので、仕方ないと言えば仕方ない。

 

「それじゃいきます!」

 

ゴンザレス太郎は大きく宣言してスキルを使用する。

初めてのスキル使用と言う事で、前世では体験のしたことの無い行為に胸が踊った。

 

(確かユニークスキルの使い方はスキル+スキルの正式名+発動の3つの言葉を使いたい時に連続して唱えるって言ってたな)

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

中二病を彷彿させる条件に少し照れを覚えつつ、ゴンザレス太郎は声に出して叫んだ!

スキル発動を宣言すると同時に、ゴンザレス太郎の目の前に透けた横長四角のウィンドウが2つ上下に現れる!

内容は上部に入力された内容、下部に数字とアルファベットの一覧が現れ、ゴンザレス太郎は内心超歓喜した。

だが、これを知られるわけにはいかないと考え…

 

「知らないウィンドウが出て知らない記号が並んでいる」

 

っと自分にしか見えてないのを良いことに、地面に簡単に略したウィンドウを絵に描いて近付いてきた人々に説明した。

それを見た人達は一同に…

 

「これは…錬成系スキルかな?」

 

っと口々に話し始めた。

 

※錬成系スキルとはその名の通り、スキルを使って物を加工したり出来るスキルで、鍛冶士や料理人が扱うスキルである。

 

ゴンザレス太郎は神官達の会話を遮ること無く、そのまま成り行きを見守る…

そう、このスキル…

ゴンザレス太郎が達也の知識として知っているモノであれば、とんでもないモノなのは確実なのだ。

だから余計に知られてはいけないと理解していたのだ。

 

「錬成系スキルならそこまで騒ぐことじゃないでしょ」

 

っと言う神官の言葉に安堵し、神官達が次々に納得し、その場は解散となった。

一応本に追加記載したいので、どんなスキルなのか分かったら連絡が欲しいとだけ神官に伝えられたが、勿論ゴンザレス太郎は教える気はなかった。

それは既に分かっていた事すらもゴンザレス太郎は口に出さず教えなかったのだ。

ウィンドウ右下に『コードナンバーガチャ』って項目があり、中を見ると5000神力でガチャが一回回せる事が分かっていた。

 

この世界ではスキルの使用には神力が必要で、神力は魔物を倒す他にも日常生活で何かをする度に少しずつ溜まる。

ゴンザレス太郎も親のお手伝い等をやって貯めた神力がガチャ1回分あり、今夜家で試そうと内心ワクワクしながら少し落ち込み気味の両親と家路についたのであった。

この場に居るゴンザレス太郎を除く誰一人として、このスキルの異常な正体に気付かないまま…



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第8話 スキル初発動!

その日の夕飯はお母さんが注文しておいてくれた。

とても豪華な、まさにディナーと言うに相応しい豪華な料理が並んだ。

我が家でこんな御馳走は初めてなのでお父さんもご機嫌だ。

 

「まぁなんだ、スキルは良く分からなかったが、息子が6歳まで無事に成長してくれたって事を祝って頂こうじゃないか!」

 

お父さんのこういうポジティブなところは凄く好きだ。

少し暗い表情に感じていたお母さんも、お父さんのその言葉に表情をぱぁっと明るくして豪華な夕飯を家族3人で頂いた。

両親の仲が良い家庭で本当に良かった♪

 

御馳走に大満足しその夜、遂に、秘密裏に俺のoperation作戦を開始する!

ん?意味が被ってる?コーポレーション株式会社より良いだろ?

 

誰に言ってるのか分からない突っ込みを考えて苦笑しつつ、自室のベットに潜り込み小さく唱える

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

再び心臓が大きく一回ドクンッと反応し、目の前に不可視のウィンドウが現れる。

緊張で震える指先で画面を操作し『コードナンバーガチャ』の項目をタッチする。

 

『神力5000を消費してガチャを回します。宜しいですか?Y/N』

 

勿論yesだ。

Yの部分をタッチしたら立体的な宝箱がウインドウ内に出てきて、手も触れてないのに自然に開く…

そして、中から一枚の紙が浮かび上がり!折られていたらしい部分が勝手に開く!

そこに書かれていたのは…

 

『所持金MAX AA215475 42121254』

 

「…マジか?!」

 

夜中に布団の中で大声を出してしまい慌てて口を塞ぐ。

俺の声に反応したのか廊下から足音が聞こえた。

 

「ゴンザレス太郎?どうしたの?」

 

お母さんが声に驚いて部屋まで様子見に来てくれたよ、とりあえず夢でビックリしただけ、と伝えて再び布団の中に潜る。

 

(えっ?マジで?これってあれだよね?)

 

震える指先で操作して表示されているコードを入力していく…

 

(あっ間違えた、えっ?左ボタンで戻して削除しないと駄目なのか?不便だなぁ~)

 

操作性は最悪だが、これを入力したら大金持ちになれると言う希望が面倒臭がりやのゴンザレス太郎を動かす!

 

(よし、入力ミスは無し。コード実行!)

 

実行ボタンを押すとウィンドウが光り、ゴンザレス太郎の体の中に吸い込まれるように消えた。

何がどうなってるのか分からない、ゴンザレス太郎は確認してみようとベットから起き上がり、自分のお小遣いを入れている財布代わりの小さい袋を手にとって恐る恐る開いてみたら…

 

「銅貨が2枚…増えてないし…」

 

その袋を持ったままベットに戻り何がおかしいのか考えるが…

結局理由は分からず、眠くなってきたのでゴンザレス太郎は諦めてそのまま布団に潜って眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「んん…おしっこ…」

 

数時間後、トイレに行きたくなって目が覚めたゴンザレス太郎はベットから出て、家にあるトイレに入る。

おしっこを済ませたゴンザレス太郎は一人で部屋まで戻り、自分の体温がまだ残ってる布団に入る…

 

「チャリッ」

「ん?」

 

布団の中で体勢を変えたら何かが手に触れる。

 

(あぁそう言えば財布をベットまで持ってきていたな…)

 

だが、手に触れたその感触にゴンザレス太郎は違和感を覚える…

 

(なんだ?銅貨2枚にしては随分とパンパ…)

 

そこで眠る前の記憶が甦る!

そして…

 

「う…嘘だろ…」

 

真夜中の月明かりに照らされたベットの上、ゴンザレス太郎の手元には限界まで膨らんだ袋と、中から1枚取り出した白金貨が輝いていたのだった。

 

 

 

※単純にこの世界では銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚で金貨1枚が10万円くらいとなります。



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第9話 人の夢と書いて儚いと読む

窓から差し込む月明かりに照らされる輝く硬貨…

夢じゃないかと疑いたくなるが、ずっしりと手に重さを感じて現実だと再認識する…

 

「こ…これ白金貨ってやつだよね…」

 

ゴンザレス太郎の声が震える…

それはそうであろう、この白金貨を日本の通貨価値からすると、手にしたその白金貨1枚で約1000万円くらいの価値があるのを知っているからだ。

以前両親に連れられて買い物に行った際に、一度だけ目にしたそれが手の中にあるのだ!

 

ゴクリ…

 

そして、もう一つ確かめたい事があったのでゴンザレス太郎は白金貨を取り出した財布を手に持つ。

手にある白金貨と入っていた袋の大きさを比較して…

 

「入っても15枚だな…」

 

つまり、実に1億5千万円がこの中に在ることになる。

この家を売ったとしても半分にもならない金額である。

だが、手が震えるゴンザレス太郎が考えていたのはそんな事ではない。

 

「1.2.3.4.5」

 

袋に手を入れ、手に5枚の白金貨を掴んで袋から取り出す。

そして、枕元に5枚の白金貨を置いて袋の中を見る…

それを確認したその顔がほくそ笑む。

 

「はは…マジでか…」

 

もう笑うしかない状況に興奮を覚えるが、ゴンザレス太郎は暴れだしたい自分を必死に押さえていた。

騒いでママンがやってきて、この光景を見たら気絶するかも知れないからだ。

 

目の前にあるこれだけで約5000万円くらいの価値があり、この世界の価値換算から真面目に頑張って、生涯稼げる額くらいが目の前にあるのだ。

しかもそれだけではない、取り出した袋の中には白金貨が中から取り出したにも関わらず、袋の入れ口限界まで入っていたのだ。

そう、これがプロアクションマジリプレイによる所持金MAXの効果で、使用しようが中に追加しようが入るだけ限界まで入った状態が維持されるのてある。

 

ゴンザレス太郎は手に持っていた白金貨を袋の中に戻した。

予想通り、違和感を覚えるほど不思議な現象が現実のものとなった。

袋の中にはもう白金貨が入らない筈なのに、まるで入れた分だけ減ったかのように袋の中に白金貨は戻ったのだ…

それを見て、再度興奮をし始めたゴンザレス太郎…

使っても減らず、隠したいのなら戻せば良い…

ゴンザレス太郎は明日この白金貨を一体何に使おうかとニマニマしながら再び眠るのだった。

高額硬貨を両替しないと使いにくい、という事実に気付かず…

 

 

 

そして、翌朝…

ゴンザレス太郎の部屋から絶叫が響くのだった…

 

「うわぁー!銅貨2枚しか入ってないー!?なんでー?!」



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第10話 スキルのルール

目覚めたゴンザレス太郎は眠気が吹き飛び、何度も目を擦って袋の中を覗き見る…

 

「えぇ?!なんで?!なんで?!なんでぇ?!」

 

先程から袋を何度開いて中を覗き直しても、その袋の中にあるのは銅貨2枚しかない…

銅貨2枚は日本円換算で約20円である。

だがそれは最初から袋に入っていた額そのまま、ゴンザレス太郎は落胆しつつも現実を受け止め…

 

「ハハッなんだ夢だったのかよ…」

 

そう落ち込みつつ、お母さんが呼んでいるので朝御飯を食べようとベットから立ち上がった時、それは聞こえた。

 

「チャリン」

 

枕元から金属の何かが落ちた音がして、ゴンザレス太郎は視線をやった。

その音のした床を見ると…

なんとそこには白金貨が1枚落ちていた!

 

「えっ?!うそっ?!じゃあやっぱり夢じゃなかったんだ!」

 

それを拾い上げ、目を輝かせる。

だがその白金貨を袋に戻すと、もしかしたら他の白金貨の様に消えてしまうかもしれない…

そう考えたゴンザレス太郎は、両親から以前プレゼントされて大切にしている、どこか犬っぽい形をした魔物をイメージして作られたぬいぐるみの口の中にそれを隠し入れた。

このぬいぐるみの口の中には作った人が手抜きをしたのか、喉の奥に縫われていない隙間があり、それを知っていたゴンザレス太郎はその中に隠したのだ。

手作業でこういう物が作られる世界だからこそ出来るライフハックである!

 

そして、ゴンザレス太郎は少し考える…

それは6歳とは思えない思考だが、前世の記憶があるせいか大人顔向けレベルの考え方で、スキル『プロアクションマジリプレイ』の効果に付いて1つの仮説を考えた。

 

「もしかして、眠るのがトリガーなのか?」

 

そのあと試しにもう一度やってみようとスキルを発動させてみる!

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

再び出現したウィンドウを見てゴンザレス太郎は固まってしまった。

それはそうだろう、どうやら使用したコードの紙は消滅するらしく、入力した中身のコードも流石に覚えてなかったので再度発動させることは出来なかった。

だが、いつの日か再びくじで引ければ問題は無いと考え、手元にある白金貨1枚を大事にし、再びくじを引ける日を楽しみにする。

その時はスキルに使用するコードを忘れないように、メモを取ろうと決意し…

 

「ゴンザレス太郎~朝ごはん要らないの~?」

「食べるから今行くよ~」

 

朝食を食べに部屋を出ていくのであった。

 

 

 

 

 

そして、一年後。

ゴンザレス太郎は7歳になり念願の5000神力が学校に行く前に貯まった!



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第11話 タヌキ型ロボットは出てきませんwww

後ろから聞こえた声にゴンザレス太郎の表情が暗くなる…

 

「おーいゴン太!何か芸やれ~」

 

朝から嫌なやつに出会ってしまった。

この世界にも学校があり、小学校と同じような一般常識を教えるための授業が6年間ある。

現在ゴンザレス太郎はこの学校の2年生である。

そして、学校に行く途中で出会ってしまった。

いつもゴン太を虐めてくるコイツは虐めっ子の『アイアン』。

ユニークスキルは『熱血』らしく、1回だけどんな攻撃も倍になると言うスキルだ。

これのせいで喧嘩に強く、まさにガキ大将という立場の少年だ。

 

「んん?!ゴン太の癖に無視するとは生意気だー!」

「ちょっとアイアン止めてよ~」

 

いつもゴンザレス太郎の事をゴン太と呼んでくるこのアイアンには取り巻きの子分が居る。

 

「おはよーアイアン」

「おーホネオ!ちょっとゴン太押さえろよ」

「アイよ」

 

この髪の毛が3本前にとんがった変な髪形、嫌がらせな好きそうな吊り目のコイツがホネオ、彼はアイアンの子分だ。

折角神力が5000貯まったから、早めに学校に行ってトイレでガチャ回そうと思ってたのに最悪だ。

ホネオはゴンザレス太郎の後ろから羽交い絞めにするように体を固定する。

ゴンザレス太郎よりも背の低いホネオだけならば簡単に振りほどけるのだが、それをするとアイアンに更に虐められる…

だからゴンザレス太郎はグッと歯を食いしばる!

そして、目の前に立ったアイアンが拳を振り上げ・・・

 

「ちょっと何してるのよ!」

「やべっシズクだ逃げろー」

 

殴られるところを間一髪で助けられたゴンザレス太郎。

助けれくれたのはクラスのマドンナ的存在の美少女『シズク』ちゃんである。

アイアンが虐めをしているのを目撃したら、それをいつも止めに入る彼女…

シズクちゃんはゴンザレス太郎が去年すれ違った勇者と同じユニークスキルを得た少女だった。

なんの偶然かと思いたいところだが、この町に住んでいる以上は同じようにあの礼拝堂で6歳の時に祈りを捧げる。

なのであそこに来ていた子供はほぼ同級生として同じ学年に居るのは言わなくても分かるだろう。

 

「またゴン太君アイアンに虐められてたのね・・・たまにはやり返したらいいんじゃない?」

「冗談じゃないよ、そんな事をしたらどんな酷い目に合わされるか・・・」

 

実際やり返したとしても相手は二人、どう考えても不利である。

それに今のゴンザレス太郎の頭の中は、ガチャで何が出るかって事で一杯なのである。

 

「もぅ、男の子なんだからもっとシャキっとした方が良いわよ」

 

そう言い残し、シズクちゃんは先に学校へ行ってしまう。

クラスのマドンナ的存在の彼女は本当にモテる。

だから自分なんかに興味を持つ訳がない、とゴンザレス太郎も考えている。

でもクラスメイトの中で唯一自分の事だけは『ゴン太君』と略称で呼んでくれるのが嬉しかった。

ただ単にゴンザレス太郎って呼び難いからなのかもしれないが、それでも他の誰を呼ぶときでも本名をそのまま呼んでいる彼女…

だからこそ、自分だけが特別扱いされていると感じて嬉しくなっているゴンザレス太郎であった。

 

そして、学校に到着し一人トイレに入りコードナンバーガチャを選択する。

実に1年振りにスキルを使えるという事で、どんな内容が出るのかワクワクが止まらないゴンザレス太郎。

現れたウインドウにあの時と同じように立体的な宝箱が現われ、その中から紙が出てくる・・・

ゆっくりと開かれたそこに書かれていたのは・・・

 

『好感度MAX ○○○○○○○A 12324493』

 

っと表示されていた。



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第12話 好感度MAX

「好感度MAXだと…」

 

それはRPGで言えば仲間になる条件、恋愛シミュレーションなら交際の条件。

だが現実世界だったら…

そこまで考えてゴンザレス太郎はトイレでほくそ笑む。

だが問題がひとつあった。

 

「このコードの『○○○○○○○A 12324493』にある○は多分キャラの指定だろうな…」

 

そう、コードを入力することで誰の好感度をMAXにするかを指定できるって考えたら、この7桁のマイナンバーみたいなのがそれぞれ誰かに割り当てられていると言うことになる…

 

「問題は誰が何番か分からないって事だな…」

 

そう、適当に入力してアイアンにいきなり告白されて、力ずくで「心の友よー」とか叫ばれて初体験が「アッー!!」なんて事にでもなったら目も当てられない。

同じ鉄は踏まない、今回はしっかりとゴンザレス太郎は用意しておいたメモに表示されているコードを控えて、人のナンバーを調べる方法を探そうとトイレを後にするのだった。

 

 

 

 

 

「ん?人それぞれのナンバーかい?」

 

早速学校が終わってから先生に聞いてみた。

あまり勉強が得意ではない様に見せているゴンザレス太郎、前世の記憶があるので普通に高校卒業くらいの知識はあるのだが、目立ちたくないのと、頭が良いと色々と押し付けられたりするのでわざと平均くらいの成績に押さえているのだ。

それはクラスの秀才と言われている『デカスギ』君を見てれば誰もが思うだろう。

勉強が出来るだけでクラス委員までやらされてるからだ。

 

「しっかし、ゴンザレス太郎が質問をしに職員部屋まで来るから驚いたぞ」

 

異世界だからなのか職員室ではなく職員部屋らしい。

どうでもいいがこの先生は四角い眼鏡に、真ん中で髪の毛を分けて後ろは刈り上げている中々ユニークな先生だ。

 

「おっと、人のナンバーだったな。確か『解析』の上位に位置するユニークスキル『スキミング』ってので調べられるらしいけど、このスキル自体が個人情報を丸裸にしてしまうから、誰がこのユニークスキルを持ってるかは分からないんだ。っておっと、難しい話で分からなかったかな?」

「いえ、大丈夫です」

 

それが分かれば十分だ。

ゴンザレス太郎はまた新しいアイデアが浮かび職員部屋を後にした。

そして、レベルを上げて最初に会得したいスキルを『プロフ』にしようと心に誓ったのであった。

 

※『プロフ』とは『解析』の下位スキルで、自らの情報のみを見れる解析系スキルである。

主に冒険者が状態異常を自分で確認したり、所持してるスキルを確認したり出来る。



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第13話 初めての課外授業

夏が来て、今日クラスの皆は騒がしくなっていた。

それもその筈、今日は学校で狩りの実技授業があるのだ。

この日の為に冒険者がギルドの依頼を受けて、この町の冒険者数名が町の城壁外の草原で狩りをする補助に来てくれる。

それに学校の担当の先生も同行し、クラス単位で狩りを行う課外授業なのである。

しかも初めて町の城壁から外に出ると言うこともあり、子供達は浮かれているのだ。

 

「その日、人類は思い出した。奴らに支配されていた恐怖を。鳥かごの中に囚われていた屈辱を…」

「ゴン太君何一人でブツブツ言ってるの?」

「あわわわシズクちゃん?!」

 

町を囲う高い壁を見上げながらポツリと呟いたゴンザレス太郎、その小言を聞いたシズクちゃんが声を掛けてきたのだ。

この高い城壁は町を魔物やモンスターから守る物で、外に巨人なんて居ないのだが、何度見ても町が高い城壁に囲まれてるのを見ると前世のあの作品を思い出してしまう。

駆逐してやるとか言い出さないか、今から心配である。

ゴンザレス太郎、7歳にして中二病が発症していた。

 

「なんでもないよ、ちょっと頑張ろうって気合い入れてたんだ」

「そっか頑張ろうね」

 

あぁ~シズクちゃんは今日も可愛いな。

中身は前世の記憶もあるので、合算で25歳くらいと考えると完全にロリコンであった。

中二病は輪を掛けて大問題である。

 

「よぅゴン太、今日どっちが沢山狩り出来るか勝負しようぜ」

 

アイアンがまた突っ掛かってきた。

こいつも相変わらずシズクちゃんが好きで、ゴン太とシズクちゃんが話していると必ず絡んでくるのだ。

だが今日のゴン太はアイアンの事なんてどうでも良かった。

そう、狩りを行うと言うことは神力を大量獲得のチャンスなのである!

 

「え~だってアイアンのユニークスキルの『熱血』使ったら勝てるわけないじゃん」

 

ここはおだてて気分良くして貰って、構わない方向でいいだろう。

まぁアイアンのスキル『熱血』はどんな攻撃であろうと威力が2倍になるのだから、弓矢で狩りをするだけでもスキルを使えば結果は目に見えているのだが。

普通に考えて、威力が2倍ということは致命傷じゃない部位に当たっても十分に獲物を動けなくさせられるのだ。

 

「まぁゴン太じゃ一匹も倒せないかもしれないけどね」

「ちげぇねぇや!」

「「あははははははは」」

 

相変わらず子分のホネオがウザイ。

泣きだしたら「ママー」とか言うのに、アイアンの横に居る時はこんなんだから更にウザイ。

ゴンザレス太郎はどうでもいいやとその場を離れて授業が始まるのを待つのだった。



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第14話 初めての町の外

クラスの人数は全部で15人で、3人を1組にして冒険者を加えた4人パーティーで一つの班となった。

メンバーは春に行われた体力測定を元にバランスよく振り分けられ、全然本気を出さず成績が悪かったゴンザレス太郎は予想通り一番成績のいいデカスギ君と同じ班になった。

 

「ゴン太君、今日は宜しく!」

「う…うん…」

 

何故か彼まで自分の事をゴン太呼ばわりしていたので戸惑ってしまった。

何にしてもクラスでも優秀な彼と居れば、狩りが出来なかったと言う事態は防げるだろう。

 

「フーカさんも一日宜しく」

「……」コクン

 

っで体力測定ぶっちぎりの最下位を記録した女子のフーカさんが同じ班になったわけだ。

長い髪の毛で目が完全に隠れ、今一表情も分からないし声を殆ど出さないから影が薄く、彼女の名前を覚えてないクラスメイトも居るくらいだ。

 

「よぅお前等が俺の班だな」

 

そう言って声を掛けてきたのは今日一日一緒のパーティーに加わってくれる冒険者の『ヤバイ』さんだ。

もうね、名前からしてヤバイってヤバイだろ…

親のネーミングセンスを疑うっ…て自分もゴンザレス太郎でした。

 

「ヤバイさん、今日一日宜しくお願いします。僕がデカスギでこっちがゴン太、彼女がフーカさんです」

「デカスギにゴン太にフーカか、よし覚えた。俺がいるから今日は安心していいぞ!なんたって俺は豚ドラゴンを倒した事もあるんだ!」

「豚ドラゴンを!?それは凄いです!」

 

豚ドラゴンと言えばドラゴンの一種で、そのお肉は高級食材としても有名だ。

 

「それじゃ早速行くか!」

「「ハイッ!」」

「……」

 

4人はそのまま歩いて門番に通してもらい、町の外へ出た。

そして、目の前に広がる地平線が見えそうな草原の景色に3人は目を奪われた。

ヤバイも初めて外を見たらそうなるのは仕方無いだろうと少し待つのだった。

 

「デカスギ…凄いな…」

「あぁ、僕を呼んだのか、世界がでかいって言ってるのか分からないが凄いな…」

「……」

 

感動で立ち尽くす3人の横でヤバイがそろそろだと考え声を発する。

フーカさんだけは特に変わった様子は無いままである。

 

「どうだ?凄いだろ?これが世界の姿だ。さぁそれじゃ行くか!」

 

ヤバイが歩くその後を3人は付いていく。

そして…

 

「おっ居た居た!さぁお前達のデビュー戦だ」

 

ヤバイがこちらを向いて指を指す方向にはジャンプしながら移動する蛇が居た。

どうやら僕達のデビュー戦の相手はあの『蛇ラビット』になりそうだ。

僕たちは戦闘の準備をするのであった。



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第15話 レベルとスキルと新たなコード!

正直に言おう、蛇ラビットは何も出来なかった。

デカスギが木刀を構えたと思ったら、物凄い勢いで一人飛び出し、目にもとまらぬ速度でヘビーラビットを滅多打ちにして直ぐに倒してしまったからだ。

だがこれでもここにいる全員に経験値は入るらしく、デカスギに遅れてワタワタと学校で渡された木刀を用意しているだけの俺達も、レベルが上がってる筈とヤバイが言う。

戦闘に参加の定義が良く分からないけど、技術職の人がレベルを上げる為の救済措置なのかもしれない。

 

「学校で習ってると思うが、初めての戦闘で全員レベルが2になって最初のスキル『オープン』を会得してるはずだから使ってみろ、『スキル、オープン、発動』だ」

「「スキルオープン発動」」

 

ををっ半透明のメニュー画面が出てきて現在のレベルと消費の項目が出た!

『プロアクションマジリプレイ』のウィンドウよりも青色が濃いな!

 

「これも学校で習ってると思うが、そのレベルを消費してステータスを伸ばすんだ。伸びたステータスに応じてレベルが10上がる毎に、条件を満たしていたらスキルを会得できる。」

 

二人がステータスに割り振る画面で初めて自分のステータスを見ているのだろう、色々と悩んでいるようだ。

だが、ゴンザレス太郎は迷うことなくレベルを神力に投資する!

理由は簡単、デカスギに任せておけば何もしなくてもレベル上げられるし、絶対に有る筈だと確信しているからである…

 

コード『レベルMAX』が!

 

その後もデカスギ無双は続き、レベルが9回上がったところで神力が5000を超えた。

なのでヤバイがデカスギの倒した『カタツムリゴブリン』の素材取りをしている間に、一人背を向けて、皆に聞こえないように小声で呟いた…

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動」

 

久しぶりの心臓のドクンって鼓動、これの事を毎回忘れて驚く。

まぁそれも毎度の事で、直ぐに落ち着いて操作を続ける…

表示された中から『コードナンバーガチャ』の項目をタッチして…

 

『神力5000を消費してガチャを回します宜しいですか?Y/N』

 

勿論yesだ。

Yの部分をタッチしたら、三回目にもなれば見慣れた立体的な宝箱が出てきて、同じ様に自然に開く…

忘れないようにコードをメモする為に左手に準備をしてウインドウ内の宝箱に視線をやる。

そして、中から一枚の紙が浮かび上がり開いてそこに書かれていたのは…

 

『アイテム減らない 14E14030 1A935521』

 

「…マジで?!」

 

突然の叫び声に、パーティー全員に注目されるのであった。



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第16話 課外授業終了。得たものは大きかった

思わず叫んでしまった事で注目を集めてしまった。

 

「んっ?どうかしたか?」

 

ヤバイが声を掛けてきた。

ヤバイがヤバイ、こんな特殊なユニークスキルの事がバレたら間違いなく利用される。

このプロアクションマジリプレイがある意味、無から有を生み出す非常識な超レアスキルと言う事は部屋に隠してある白金貨で証明されているのだ。

 

「いや、あの、その…れ…レベルを神力にしてみたら500神力になって驚いたんですよ」

「なんだお前スキルもまだ覚えてないのに神力に変えちまったんか?レベルを神力に替えるのは、魔物なんかにやられそうになって、もうどうしようもなくなった時にスキルを使いたいけど使えないって時に替えるか、技術職の者が直ぐに使いたい時に替えるもんだぞ」

「あっあはは…ですよねー」

 

なんとか誤魔化せた。

そう安堵してデカスギの視線も反れたのだが…

寒気を感じる程の視線の厚を感じた?!

その視線の先をチラリと確認すると、フーカさんがめっちゃこっち凝視してるみたいなんですが…

長い前髪で視線は分からないが、頭がこっちをずっと向いている…

なんだ?まるで全てを見抜かれているような視線を感じる…

 

「おーしそろそろ次行くぞー」

 

ヤバイが合図を出したので、これ幸いとその視線から逃げるように歩き始めた。

そして、本日最後の獲物を見付けた。

 

「をっ『ザリガニスパイダー』だな、あれを何匹か倒したらレベルが10になるだろうから、新しいスキルを獲得したら今日の課外授業は終了だ。」

 

50センチくらいの蜘蛛なのにハサミを持っている、その魔物もやはりデカスギが一人で数匹退治してしまい、結果全員のレベルが10に上がった。

ゴンザレス太郎も予定通り『プロフ』のスキルを会得出来て満足していた。

このプロフの獲得条件は得られるスキルが無い状態で、神力が200以下でレベルアップと教科書に載っていたので狙って取れたのだ。

 

「よし、それじゃあ戻るぞ。町に入るまでは授業だから気を抜くなよ」

 

ヤバイがそう言い、来た道を引き返してゴンザレス太郎のパーティーは町へ帰った。

まぁ予想通りヤバイの報告で、デカスギ以外は一度も戦ってないと報告された結果、フーカとゴンザレス太郎の二人は宿題を出されたのだが、ゴンザレス太郎はそれを差し引いても大きなモノを得ていた。

 

そして、その夜。

待ちに待った一人の時間、ゴンザレス太郎は二つの実験をするのであった。

一つは新しく得たアイテム減らないの実験と、もう一つは同じコードを複数回使えるのかという実験であった。



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第17話 アイテム減らないの実験1

「アイテム限定だろうから、武器防具は後から試すとして…」

 

ゴンザレス太郎は日中に買っておいた傷薬とリンゴと自分のおもちゃ、筆記用具に道で拾った石ころなんかを用意した。

 

「よし、それじゃあ!スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

スキルの発動の宣言と共に表示された上下のウィンドウ。

メモしておいた紙を取り出しそれを見ながら、上のウィンドウに下のウインドウのキーをタッチしてコードを入力していく…

入力の仕方が非常に手間なのは文句を言っても仕方無い、こう言うものだと割り切るしか無いのだ。

そして、一応確認もしておく…

 

「やっぱりクジ引いて出たあの紙は、使わなくても表示はされないか…」

 

使用、未使用に関わらず、クジのメモはスキルを解除すれば消えるのは『好感度MAX』で確認済みだったので、分かっていたがやはり確認は大事だ。

特に良いコードが当たった時に記載をしておかないと、後から後悔するのを事前に知れて本当に良かった。

 

「再確認もよし、コード実行!」

 

ウィンドウが光り体の中に消えたのを確認し、ベットから体を半分出した状態でゆっくりと目を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴトンッ!

「うぅ~」

 

少し寝てベットから落ちたことで目を覚ましたゴンザレス太郎。

目覚まし時計みたいな物があれば良いのだが、正確な時計のような物が無いので考え抜いた末に思い付いたのがこれだったのだ。

 

「痛て~」

 

頭を擦りながらまずは傷薬を試してみる。

実験するのはアイテム用の袋から取り出した物と机に置いていた物だ。

少量の小瓶に入った傷薬はポーションの劣化版で簡単な擦り傷や打撲を癒す効果がある。

 

「んじゃあ袋から出したこれを頭に…」

 

一応袋の中を使う前に覗くが中に傷薬は無い。

そして、頭にかけて空になった瓶を床に置く。

再び袋を覗くと…

なんと中に傷薬が在った!

 

「床にある空瓶もそのままか…」

 

アイテムが使用しても減らないどころか空き瓶はそのまま残った事から、高級な容器に入ったものを使えばそれだけで容器が無限増殖出来る事実に気持ちが高ぶる!

この世界でも貴族が使う用の家具などもあり、それらを増やすことが出来る事実に、このスキルを得てから何度目か分からないほくそ笑んだ顔をするゴンザレス太郎。

 

「次はこっちか」

 

そう言ってまだ少しズキズキする頭に机の上に置いていた傷薬を手に取り使用した。

痛みがすっかり無くなった頭を撫でて、空いた瓶をさっきの空き瓶の横に置く。

 

「おいおい…マジかよ…」

 

目を疑う、まさにその言葉通りで、振り返ると机の上に先程と全く同じ中身の入った傷薬が置いてあるのだった。



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第18話 アイテム減らないの実験2

傷薬の容器増殖を確認したゴンザレス太郎、使い終わった空の容器を片付ける…

一応捨てはせず、今後の実験に使えるかもしれないので保管しておくことにした。

今は増殖が可能と言う事が証明されたが、逆に減らす実験をする事なんかもあるかもしれないからだ。

そして、次の実験に移ろうと少し悩んで…

 

「よし、次はこれだな!」

 

ゴンザレス太郎が袋から取り出したのは、帰り道の途中適当に拾ってきた1つの石。

何処にでも落ちているが、加工されている訳でも無いので、全く同じ石はまず見つからないであろう物である。

それを手に持って、一度そのまま床に置く。

袋の中を覗き見ると勿論石は入っていない。

次にそれを拾いゴミ箱に入れる。

再び袋を見ると、なんと全く同じ形とサイズの石が入っていた!?

 

「つまりこれは『捨てた』って動作がトリガーなのかな?」

 

そして、袋の中の石を取り出してゴミ箱の中の石と合わせ、完全に同じな二個の石を窓から投げ捨てる。

勿論外に人が居ないことは確認し、更に誰にも見られてないのを確認した上でだ。

 

「お宅の息子さん窓から石投げてましたわよ」

 

なんてご近所の人に告げ口されたら大変だからな!

そうして石が地面に落ちたのを確認してから袋の中を覗くと…その中には先程と同じ石が2つ。

 

「捨てて拾うことで増殖も可能なのか…」

 

投石をしても石が用意できる、つまり…

 

「雪合戦なんてしようものなら無双出来るな!」

 

独り言を言ってニヤリと笑って、石は片付けた。

最後にリンゴを取り出して噛る、ムシャムシャと一口だけ食べて飲み込んだ後、袋の中を覗くと…

予想通り、袋の中に食べ始めたリンゴと同じ物が元の状態で在った。

そのリンゴと筆記具入れから取ったペンを持って…

 

「アァン!アッポーペーン!」

 

突き刺した。

リンゴの刺さったペンはこのままじゃ使い物になら無いだろう。

そして袋の中を見ると…

 

「あれっ?リンゴだけある…???」

 

突き刺したペンは無かった。

おそらくこれは武器として扱ったから、アイテム扱いはされなかったのであろう。

リンゴは壊された判定なのだろうか?

ゴンザレス太郎は今の結果をメモに纏めていく…

この世界には無い科学の実験の様で、楽しくて仕方無いゴンザレス太郎、しかも確実に誰もやった事の無い実験だ。

そして、次の実験…

 

「スキル『プロフ』発動!」

 

現状の自分の状態を調べるのだ。

もしスキル発動中に『解析』系のものを使われた時に、どういう風に他人から見えるのか、それを上手く誤魔化して説明できるようにする為にも必要な事である。

その結果…

 

「あっ…状態の項目がバグってる…」

 

そこには状態異常を受けた時にそれを知らせる項目が、この世界には存在しないアルファベットに文字化けしていたのだった。



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第19話 最後の平穏

ポカポカとした日差しが窓から差し込み、だらしない表情のゴンザレス太郎がライトアップされている。

小鳥が朝の挨拶を交わす爽やかな朝、下の階から聞こえるお母さんの声…

変わらず永遠に毎朝続く気がするだけで、ある日突如終わりを告げるような平和な朝…

前世がそうだったのを覚えているのか、ゴンザレス太郎の目が勢い良く開いた!

 

「ゴンザレス太郎ー朝御飯早く食べちゃいなサーい!」

「んん…あれっ?」

 

気が付いたら朝だった。

あれから同じコードを再使用出来るか試そうとして、スキルを解除する為に一度寝たら、どうやらそのまま朝まで寝てしまったのだ。

 

「あちゃーやっちゃったか」

 

不幸中の幸いと言うほどではないが、アイテム減らない状態のまま朝を迎えたら、まさしくとんでもない事になってたのは直ぐに予想できるだろう。

朝御飯は食べても減らないし、捨てた物は増えるし…

ドッキリでした!じゃ絶対に誤魔化せない。

 

「うん、次からは気を付けよう!」

 

 

 

そんな事を考えていた朝が、実は最後の平穏な時間である事をゴンザレス太郎はまだ知らない。

ダラダラしたせいで、遅刻しそうになりながら学校に行ったゴンザレス太郎、教室に入り皆に軽く挨拶をして自分の席に着いた時にそれに気付いた。

 

「ん?えっ?これって…」

 

机の中に手紙が入っていたのだ。

誰にも見つからないようにそれをポケットに入れて授業を受け、休み時間にコッソリ一人でトイレにてそれを見たゴンザレス太郎…

それが前世も含めての初めて貰ったラブレター?だと気付いたのだ。

 

『ゴンザレス太郎君、突然のお手紙でごめんなさい。貴方の事が気になって仕方ありません、放課後体育倉庫まで来て下さい』

 

うん、とても7歳の書いたラブレターには見えない。

書き方が随分と堅いが、自分の事がどうやら気になると言う誰かからの手紙、きっとこれはラブレターに違いない!

差出人も書かれていないので、悪戯や同性からの告白かもしれないなんて全く予想していないゴンザレス太郎。

文字自体も何処か丸みがあると言うよりカクカクっとしているが、きっとこれは女性の字だと疑わないゴンザレス太郎。

恋に関してはウブである。

 

 

 

その日程、授業が頭に入らない日は無かったかも知れない。

彼女の居る学生生活、仲良く通学、公園デート、遠足は準備している時間が一番楽しいとは良く言ったものであるが、間違いなく取らぬ狸の皮算用である。

 

そして、ついにやって来た放課後…

一人で体育倉庫まで行ったゴンザレス太郎を待っていたのは、課外授業を同じ班だった女子のフーカであった。




いつも誤字報告ありがとうございます!
『取らぬ狸の皮算用』が『捕らぬ』じゃないのかと調べたけど『取らぬ』になってたのでこっちにしておきましたが…なんか怖い(笑)


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第20話 フーカとの交渉

「来てくれてありがとうゴン太君」

 

彼女の口から出たその声は驚くほど繊細で、まるで心を清められるように心に響いた。

清んだ音とは、こう言う音を言うのだと納得させられるような声に、魅了にも似た感情が沸き上がった。

 

「フーカさん、その声…」

 

そこまで言って気付いた。

彼女の声を初めて聞いたのだ。

そして…

 

「声?まぁそれはどうでもいいわ、それより貴方一体何者なの?」

 

突然のその言葉に意味が分からなかった。

前髪で視線は分からないが、顔の方向的に僕の方を見て言っているのは間違いない。

 

「一体何を言って…」

「話す気は無いのね」

 

そう言って彼女は近付いてきた。

フワリと優しい香りが鼻を擽り、妙に親近感にも似た気持ちが混乱を招く…

そして、目の前に立って彼女は言う。

 

「私は貴方を知らないのよ」

 

一体彼女は何を言っているんだ?

意味が分からずただ立ち尽くしていたら…

 

「そして、そのユニークスキルは何?タツヤ君」

「っ?!」

 

まるで世界が壊れる音がしたような気がした。

彼女は今なんて言った?

間違いなくゴン太ではなく、僕の事をタツヤと言った。

 

「何故…その名前を…」

「私の持つユニークスキルの一つ『スキミング』で見たら書いてあるわよ、貴方の本名」

「スキミング…って?!」

 

そう、それは先生から聞いた通りならば『解析』の上位に位置するスキルだ。

更に彼女は言った『私のもつユニークスキルの一つ』と。

 

「貴方のそのユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』の事を説明しなさい!何故課外授業のレベルを全て神力にして5000も使って一体何をしたの?!」

 

目の前で僕を見るフーカさんの前髪が横に流れ、そこから覗く彼女の赤と黄色の目が真っ直ぐに僕を見ていた。

左右の目の色が違う、確かオッドアイと前世で言われていたやつだ。

しかしフーカさんの口調がどう考えても7歳のものじゃない。

 

「分かった。だがこちらの質問にも答えて貰えるかな?」

 

彼女のスキミングは非常に重要だ。

そして、彼女の何処か大人っぽい仕草や、何かを恐れている感じが違和感を増幅させる。

 

「いいわ、それで何を聞きたいの?」

「君の正体と関係があるのか分からないが、もう一つのユニークスキル」

「そうね、それじゃ私の事を話すから貴方のユニークスキルを教えて。そしたら私のもう二つのユニークスキルを教えるわ。」

「もう二つ?!…分かった。交渉成立だ。」

「まずね、私は次の春に死ぬの。そして、それを回避する方法を探してる」

 

彼女の口から語られたのは予想も出来ない内容であった。



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第21話 フーカの告白

「もしタツヤのユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』が私を助けられるユニークスキルだとしたら、お願い…私を助けてほしい…」

 

彼女は少し寂しそうにそう告げた。

未来予知か?

いや、なにかおかしい…

そう、彼女は自分の事を『知らない』と言った。

『見てない』ではなく、『知らない』だ。

 

「それで貴方のユニークスキルの事を教えて貰えるかしら?ただし嘘は駄目よ、私のもう一つのユニークスキル『スピリチュアリティ』は私が質問した事に対する答えが嘘かどうかを見抜くスキルだから」

 

ゴンザレス太郎はそれで理解した。

何故彼女が普段目を隠し、言葉を全然発しないのか。

相手を見て会話をすることで、『スピリチュアリティ』で嘘を全て見抜き、『スキミング』も併用すれば相手を丸裸にしてしまうからだ。

彼女もまたゴンザレス太郎と同じく、あまりにも特殊すぎるスキルを得ていたのだ。

 

「分かった。少し長くなるけど教えるよ…俺の『プロアクションマジリプレイ』は…」

 

ゴンザレス太郎はフーカに今現在分かっている範囲で自分のスキルを説明した。

普通ならとても信じられない内容だが、彼女のスキル『スピリチュアリティ』がそれが真実だと証明した。

フーカの吸い込まれそうなオッドアイが、話への驚きで大きく見開かれる。

 

「嘘はついてないようね…なにそのふざけたスキル…」

 

だが、ゴンザレス太郎も全てを語らなかった。

話したのは5000神力でクジが引けて、クジでコードが当たる。

そのコードを発動して寝て起きたら効果が現れ、再び寝るまで続く、そしてまだ誰にもこのスキルの内容を話していないと言うことだった。

『好感度MAX』のコードや、コードが分からなくなった『所持金MAX』については口に出さなかった。

嘘を見抜くフーカさんだが、質問した内容の返答に真実が混ざっていれば誤魔化せると、奇妙な立ちポーズで有名なあの漫画が教えてくれたのだ。

 

「でも『アイテム減らない』っと言うのは使えるかもしれないわね…」

 

そう言って、フーカは暫く一人で考え込んだあと再び話し始めた。

一度下を向いた事で彼女の前髪がオッドアイを隠してしまう。

 

「もう気付いてかもしれないけど私の最後のユニークスキルは『転生タイムリープ』よ、その効果は死んだら生まれた瞬間から死ぬまでの記憶を持ったままやり直すの、強制的に…」

 

彼女の口から語られた内容に再び驚くゴンザレス太郎。

一人の人間がこんな特殊過ぎるスキルを3つも得ていた事実に開いた口が塞がらなかった。



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第22話 フーカとコンビを組む

運命から抜け出せず、次の春に繰り返し死んで、その人生を何度も抗いながら繰り返している…

何度も諦めた事だってあっただろう、だがそれだと未来は永遠に変わることはない…

変わらない永遠の幼少期を想像するだけで、その絶望は想像以上のものだと理解できる。

だからこそ彼女は諦める事を諦めたのだろう…

 

「そうか…フーカさんも大変だったんだな」

「えぇ、もう何度やり直したのか分からないわ」

「うん分かった。何ができるか分からないけど僕に出来る事なら協力するよ」

「…あ、ありがと…」

 

少し照れながらもお礼を言う彼女は微笑んだ。

僕は気付かないが、本心だと彼女には分かったのだろう。

その時見た彼女の笑顔はまだ出会って短いが、今までで一番可愛かった。

変わらない運命を繰り返した中で、初めて僕と言う新たな変異点に出会えたのが嬉しいのもあるのだろう。

神様に転生させられたからこそ、彼女の永遠に存在しない自分が生まれた。

きっと僕は1つの希望に見えているに違いない。

しかしこれは…

 

「…?」

 

突然彼女は首をかしげた。

そこでフト我に返る、どうやら僕は彼女に見とれてしまったようだ。

 

「ご、ごめんあんまり可愛かったんで…」

「っ?!」

「フーカさんは優しいんだね、人と話すと相手の事が分かりすぎてしまう、だから自分を押さえてるなんて…」

「へっ?」

「だって今まで全然会話もしないし、前髪で相手を見ないようにしてたんでしょ?」

「なにか勘違いしてるみたいだけど、私のスキルは常時発動型なの、だから相手の顔を見たり、会話の中で質問として捕らえられる言葉が入るだけで、神力を消費するからそうしてるだけ…」

「そ…そうですか…」

「でもそんな風に思ってくれたのには感謝しておくわ、それじゃこれから宜しく」

「あぁ」

 

差し出された手を軽く握り返す。

そう、彼女は永遠を繰り返し生き続けている、だから見た目以上の人生経験を持っているのだろう。

きっと今の僕は子供にしか見えていないに違いない、だけど僕も前世の記憶があるから、似たような境遇と言えばあながち間違いではない。

妙に親近感をフーカに感じた僕は気付かない、彼女に惹かれ始めている事に…

 

こうしてゴンザレス太郎はフーカと組むこととなった。

そして、フーカの提案でゴンザレス太郎の神力を貯める方法を実行するのであった。

 

「それじゃあ、早速見せて貰うわよ」

「わかった。スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

いつものウィンドウが出てコード入力画面に取り出したメモを見ながら『アイテム減らない』のコードを入れていくゴンザレス太郎。

再確認も済ませ、ぶっつけ本番で同じコードを複数回使用できるかの実験も行うのだった。



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第23話 勘違いのチョロイン

スキルを発動させ、体育倉庫に在ったマットを床に敷いて、そこで仮眠をとるゴンザレス太郎。

少ししてフーカがゴンザレス太郎のおでこをペシペシ叩いて起こす。

寝付いて直ぐなので寝ぼけることなく、目を覚ましたゴンザレス太郎を見て聞いていた通りだとフーカは驚く…

 

「本当、状態の項目が変な記号になってるわ」

 

フーカは右手で前髪を持ち上げてゴンザレス太郎を見る。

この仕草で見えるようになるオッドアイが彼女の魅力を高める…

 

(駄目だ駄目だ、俺にはシズクちゃんって人が…)

 

勝手にシズクを脳内彼女にしているが、別に今は単なる友達である。

そんな事をゴンザレス太郎が考えているとは知らないフーカ、ポケットからリップクリームを取り出してゴンザレス太郎に渡した。

 

「これを増やせばいいの?」

「えぇ、まだ未使用だし売っても良い値段で売れると思うわ」

 

この世界でも女性の化粧品は作られているが、現代日本みたいに量販店等が在るわけではなく、職人が一つ一つスキルを使って作るのでその価値は非常に高い。

ゴンザレス太郎は一度そのリップクリームを道具袋に入れて再び取り出す。

そして、床に敷かれたマットの上にそれを捨てた。

 

「あっ…」

 

話しには聞いてたが、やはり高級品のリップクリームを捨てられるというのに少し反応してしまったフーカ。

小さく声を出したが、それを気にせずゴンザレス太郎は道具袋に手を入れて再びそこからリップクリームを取り出す。

 

「頭では分かってるつもりだったけど、実際に見て改めて驚いたわ…」

 

フーカが見つめてるのを気にせずに、ゴンザレス太郎は再びマットにリップクリームを捨てる。

そして、また道具袋からリップクリームを取り出して…

 

「あはは…あははは…本当何なのそのスキル?!」

 

質問形式になってるのできっと神力を消費しているのだろう、だがそんなことはお構いなしとフーカは興奮した様子で声を大にして話し出す。

だがしかし、それが不味かった。

 

「ん?誰かいるのかー?」

 

体育倉庫の外を偶然通りがかった教師がその声に反応して見に来たのだ。

マットの上には高級品のリップクリームが幾つも転がっている、これを見られるのは不味い!

ゴンザレス太郎は声から教師の存在に気付き、慌てて一か八かの賭けに出た!

 

「誰だー?お前らなにやって…」

 

勢いよく体育倉庫のドアが開けられ教師が中に入ってくる!

だが教師はそこで動きを止めてしまった。

丁度発せられたゴンザレス太郎の言葉に驚いたのだ。

 

そこには二人の男女が居た。

女の方は体力測定でぶっちぎりの最下位を記録したことで有名な二年生のフーカであった。

しかし、男子生徒は誰か分からなかった。

何故ならば彼は敷かれたマットの上に居て、その顔が確認できなかったからだ。

そして教師が二人を確認したと同時にゴンザレス太郎は叫んだ。

 

「前からずっと好きでした!俺の彼女になって下さい!」

 

それは見事な土下座であった。

額を完全にマットに付けている為にゴンザレス太郎の顔は確認出来なかったのだ!

そして、それを見た教師は…

 

「青春の一ページを満喫しろよ若者共」

 

っと小さく呟いて体育倉庫を後にする。

そう、ゴンザレス太郎はマットの上に在ったリップクリームをその体で隠して、教師から見えないようにするためにうずくまったのだ!

だがそれだけでは明らかに不自然、なのでその姿勢を取ってるのに一番分かりやすく一目で理解が出来て、尚且つ教師に乱入されない方法を取ったのだ!

 

暫しの沈黙…

体でリップクリームを隠しているゴンザレス太郎からは教師がまだ居るか分からない、なので暫くその姿勢で居たのだが、フーカからなんの反応も返ってこなかったのでゆっくりと顔をあげて…チラリと教師が居ないのを確認した。

 

「ふぅ…間一髪だったな」

 

そう言った時に気付いた。

下から見上げるようにしたから分かったのだ。

フーカが顔を真っ赤にしてモジモジしているのに…

 

「あっあの…フーカさん?」

「ご、ごめんなさい!ちょっと考えさせて下さい!」

 

そう言ってフーカは走って体育倉庫から出ていった。

一人残されるゴンザレス太郎とリップクリーム…

 

「あれ?これなんか…ヤバくね?」

 

フーカの勘違いもそうなのだが、ゴンザレス太郎は『アイテム減らない』状態のままなのである。

とりあえずリップクリームを全て回収して持ち物を落としたりしないように慎重に帰宅するのであった。



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第24話 クラス公認カップルの誕生

翌日、無事に一日を乗りきったゴンザレス太郎は学校へ向かっていた。

昨日は帰ってからも仮眠を取る時間がなく、『アイテム減らない』状態は維持されたままだったが、夕飯前に少しだけ寝れて解除出来たので被害はトイレの紙が減らないだけで済んだ。

 

そんな昨日の事を思い出しながら学校の教室に入った。

いつもと変わらないクラスメイトの笑顔がいつもの様に広がる…

そんな幻想は一瞬にして崩れ去った。

僕が登校したのを確認したアイアンとホネオが、それを突然始めたのだ!

 

「前からずっと好きでした!俺の彼女になって下さい!」

 

ホネオがアイアンに土下座をし、アイアンがそれを無視して振り返り歩き出す。

そう、昨日のアレを再現しているのだ。

突然のそれに固まっていると、突如としてゲラゲラとバカ笑いをする二人とクラスメイト達。

だがゴンザレス太郎は最初見られていたのかと驚いて焦ったが、二人は自分のスキルの事に気付いてないと知ってホッと安心する。

ゴンザレス太郎にとってあれは教師を欺く演技、自分とフーカさんのスキルの秘密が漏れていないのであれば特に問題は無い!

7歳の子供達と前世の記憶があるゴンザレス太郎では精神年齢に差があるのは当然であり、それは死を繰り返しているフーカさんも同じだろうとゴンザレス太郎は微笑んだ。

その余裕の態度を見たアイアンとホネオ。

特に動じないゴンザレス太郎の様子が気に食わないアイアンはゴンザレス太郎に掴みかかろうとするのだが、その足が直ぐに止まった。

 

教室に入った所に居るゴンザレス太郎のすぐ後ろにフーカが立っていたからだ。

いつものように前髪を垂らし目を隠しているので表情が分からず、もしかしたら泣かせたかとアイアン達は罪悪感を感じたのだが、フーカはそのままゴンザレス太郎の背中に抱き付き皆に聞こえる様に…

 

「おはよ、ダーリン 」

 

その一言に教室の全員が固まった。

上目使いでゴンザレス太郎を見たので前髪が流れ、彼女のオッドアイが露になりクラスの殆んどの者が初めてフーカの素顔を見てその美声を聞いた。

その表情と仕草は妖艶な魅力を感じさせ、見ている全員を魅了したのだ。

伊達に人生を何回もやり直してはいなかった。

そして、ゴンザレス太郎の耳元で…

 

「今日の放課後から始めるわよ…」

 

っと小さく告げフーカは自分の席に着いた。

予想外のフーカの様子に一瞬驚いたゴンザレス太郎だが、小声の内容から演技だと理解したので、頬をポリポリ掻いてゴンザレス太郎も自分の席に着くのだった。

二人してアイアン達を完全に無視して…



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第25話 初めての冒険者ギルド

この世界の学校では二年生の課外授業が一つの区切りになっていて、それ以降は授業は午前中のみとなる。

これは一般常識や一通りの基礎学力を納め終わったとされるのがこの時期で、これ以降は親の元で家業の手伝いをしたり、冒険者登録をして薬草採取やお使い系の依頼をこなして金銭を稼ぐようになるからである。

ただ、正式な冒険者登録は9歳からなので、7歳のこの頃は登録して幾ら依頼をこなしてもランクは変動しない、言わばお試し期間なのである。

だがそれでもギルドは冒険者として扱うし、取引売買はギルドの名に懸けてしっかりと行われる。

 

「って習ったよね?」

「は…はい…」

 

近い、顔がすごく近い…

今朝からフーカの態度がやはりおかしい…

昨日までなら神力を使うから質問形式での会話は控えるって言ってた筈なのに、朝から普通に僕にだけは話してきてるし…

まぁ他の連中に話しかけられてもいつも通り無口キャラを通していたのは優越感が有って嬉しかったんだが、その後の自分に話し掛ける時の豹変振りが凄くて、むしろ自分が変な目で見られてた気がした。

 

「ねぇ、聞いてるの?」

「聞いてる!聞いてます!」

 

綺麗な美声に柔らかい優しい香り、そして綺麗な瞳が僕を魅了する…

だから近いって!?

 

「じゃあ一緒に冒険者ギルド行くか」

「うんっ♪」

 

何この娘、絶対昨日までのフーカと別人だろこれ…

何故か腕の袖を摘ままれながら、一緒に向かったのは中に初めて入る冒険者ギルド。

きっと女連れで入ったら強面の冒険者達に絡まれて…ってイベントが始まるんだろうな…

そう覚悟を決めて入ると…

 

「ん?ゴン太じゃないか!」

 

そこに居たのはアイアンだった。

横にはホネオも居る。

 

「なんだ?お前が冒険者登録?無理だって!アハハハハハハハ」

 

相変わらずホネオうぜぇ…

そんな二人は後ろに続いて入ってきたフーカの事に気付き、その態度を一転させる。

しかもゴンザレス太郎の袖を摘まんでいるのを見て更に怒りを露にする。

ゴンザレス太郎もこのままそこに居たら何されるか分からない、一応ギルド内での揉め事はご法度だが、7歳の子供同士だからとスルーされると困るので逃げるようにフーカを連れて受付へと移動する。

 

「ようこそ冒険者ギルドへ、新規のご登録ですか?」

 

ゴン太は7歳で背が低いため、受付嬢がカウンター越しに前のめりで話し掛けてくるもんだから、目の前にたわわが二つで立派なたわわわが…

ゴンザレス太郎、やっぱり男の子である!

するとすぐ後ろのフーカの不機嫌な気配がゴゴゴゴゴ…

更に反対側からはアイアンの怒りの視線がギギギギギ…

正面からは受付嬢のたわーがタワワワワ…

 

そうか、これが四面楚歌ってやつか!

ゴンザレス太郎、前世の知識で現実逃避するのであった。



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第26話 女って生き物は実は怖い

受付嬢からギルドの説明が始まり、何故かフーカがずっと僕の手を握ってる…

暫くして、たわわに視線が誘惑されそうになったら今度は腕を抱き締められた。

ごめん、たわって無いから少し痛い…

 

「………以上がギルドでのルールとなります」

 

少し長めの説明が終わり、ギルド会員カードが各々に手渡される。

ルールについてはよくある異世界物と大体一緒で、ランクより一つ高いものまで受けられる、ランクアップには試験がある、おやつは銅貨30枚まで、カードを無くすと再発行にお金がかかる、怪我などしても自己責任、月に一回あるギルド主催のパーティー参加費は自己負担、と言った内容だった。

 

カードを受け取った二人、暫くカードを見つめてから同時に互いの視線が偶然合い恥ずかしくなって同時に視線を反らす。

そんな初々しさに受付嬢は微笑み、ゴンザレス太郎とフーカはギルドを出ようとするのだが…

 

「ちょっと待てよ、フーカだったな。こんなやつに付いていっても直ぐに大怪我したりするぜ、悪いことは言わねぇ俺が守ってやるから俺の仲間に入れよ」

 

アイアンが前に立ち塞がりフーカを勧誘し出す。

だがフーカは首を横に振るだけで何も言わず、ゴンザレス太郎の袖を摘まみながら一緒に横を素通りして外へ出ようとする。

だが更にホネオが前に立ち塞がり…

 

「おい、アイアンが誘ってるんだぞ!」

 

っと怒鳴った所にフーカが

 

「うるさい!覗き魔!!」

 

っと一喝!

その言葉に驚いて固まったホネオを放置して外へ出る二人。

ユニークスキル『スキミング』を持つフーカには全てお見通しであった。

ホネオのユニークスキルが『設置盗聴』と『望遠眼』だと言うことを。

 

※スキル『設置盗聴』、その名の通り盗聴機の様に設置した場所の音を聞くことが出来るスキル。

※スキル『望遠眼』、望遠鏡を覗くように直線上の遠方を見ることが出来るスキル

 

ホネオは昨日の体育倉庫の出来事を先生の体に付けていた設置盗聴で聞き、慌てて望遠眼で離れた場所から見ていたのだ。

 

 

ギルドを出て隣に在るギルド専用の販売店。

そこに昨日増やしたリップクリームを売りに行くのが今回の目的で、その為にギルド会員カードを手に入れたのだが、それだけでどっと疲れたゴンザレス太郎。

その横では…

 

「ダーリン…怖かった…」

 

っとゴンザレス太郎の腕にいつの間にかしがみついて歩いているフーカ…

 

(いや、お前の方が怖ぇーよ!)

 

どこの世界でもでも女って怖い生き物だと認識したゴンザレス太郎であった。



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第27話 スキルでのお金稼ぎ成功

雑貨屋の様な店内を予測していたゴンザレス太郎は店内の綺麗さに驚いていた。

予想外に綺麗に掃除され、宿泊施設のロビーのように物があまり無い、ポカーンお口が開いたままのゴンザレス太郎はフーカの視線を感じ我に返る。

だが良く良く考えれば、大きな魔物なんかを持ち込むのに店内が狭いと困るからだろうと気付いた。

二人はそのまま正面のカウンターへと足を運ぶ…店の外では横に並んでいたフーカが、何故か店内では少し後ろを付いてくる位置取りなのにゴンザレス太郎は気付かないまま…

 

「いらっしゃいませ」

 

ギルド隣の専用販売店。

ここはギルドの会員カードを持ってる者のみが売買を行える店で、依頼を受けて魔物を討伐した際に余分に出たアイテムや壊れた武器から何でも買い取って貰える店なのだ。

ゴンザレス太郎とフーカ二人はスキルで増やしたリップクリームを売却する為にここを訪れていた。

二人がここでリップクリームを売ろうとしている理由は2つある。

 

1つは価格が固定制だからだ。

同じ物を複数個売る場合店側も買い取った品を売ってさばけないと利益にならないので、個人経営のお店では同じ物の複数個買い取りは同額ではしない、しても安く買い叩かれるのが理由だ。

 

もう1つは匿名性だ。

誰が売ったという情報はギルド内でしか扱われないので、情報の流出を防げるのだ。

なので盗品を売るならここって思うかもしれないが、ここを扱えるのはギルド会員カードを持ってる者のみなのがポイントだ。

前科持ちはギルド会員カードを持てないし、買い取りを行うのは最低でも『鑑定』のスキルを持つ者のみとなる。

明らかに価値の高い品はそうやって調べられるので、犯罪の抑制にも効果的なのだ。

 

「はい、買い取り価格は新品のリップクリーム14個で銀貨56枚になります」

 

銀貨10枚のリップクリームが買い取り価格銀貨4枚で、それが14本で銀貨56枚になった。

現代日本の価値に直して約5600円である、実に純利益4600円…

二回昼寝するだけで7歳が稼げる額と考えれば破格なのは間違いない。

 

「それでは確かに、ありがとうございました」

 

ゴンザレス太郎、所持金MAXの時ほどではないが、自分のスキルでなんの苦労もなくこんなに稼げるのに驚いていた。

ちなみに隣ではそんなゴンザレス太郎に前髪越しにうっとりとした視線を送るフーカがいたりする。

だが直ぐにフーカは意識を切り替え…

 

「それじゃ次行くわよ」

 

フーカがゴンザレス太郎の手を取り、隣の冒険者ギルドへ戻っていく…

そして、二人は予定通り依頼を出すのであった。



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第28話 レベル上げ代行

世界にはその世界に合った様々なルールがある、そのルールによっては必要とされるモノも当然変わってくる。

この世界でもそれは例外ではな、異世界モノに良くある冒険者ギルドに出される依頼に『レベル上げ代行』と言うものがあった。

この世界ではスキルを使って鍛冶職や製造職が仕事を行う、だがその為に日常生活の作業でスキルを使って仕事が安定して出来るほど神力が貯まることは殆どの者が無い。

その為に必要経費として冒険者ギルドに依頼を出して、一時的にパーティーを組んでもらい同行する事でレベル上げを行ってもらう仕事が存在する。

金額に応じて手強い魔物を倒す冒険者の質が上がり、冒険者側も依頼をこなせば自身のレベルが上がりギルドランクも上がる、そうすれば更に強い魔物を倒して…

っと持ちつ持たれつの需要と供給が安定したこのレベル上げ代行がこの世界のギルドの1つのメインの依頼となっているのだ。

 

「レベル上げ代行の依頼をお願いします。報酬は銀貨30枚で」

 

フーカが受付に依頼を出して1割の手数料込みで銀貨33枚をゴンザレス太郎が手渡す。

ハッキリ言ってこの額は高過ぎた。

通常のレベル上げ代行の場合、場所にもよるが銀貨5枚から10枚が相場なのだ。

だがこれにはフーカの考えがあった。

 

「私達二人を護衛出来て専属契約を受けれる人を募集して下さい、面接の後決めさせてもらいます」

「わ…分かりました」

 

とても7歳の依頼とは思えないほどしっかりしたフーカの依頼を処理し、直ぐに書類を作成する職員。

子供であろうが金銭を支払う以上一人の依頼主として扱う受付嬢、それを見ながら周囲をチラチラと意識するゴンザレス太郎。

少しして、既にアイアン達がギルドに居なかったのを確認し、幸いだったとゴンザレス太郎は安堵する。

依頼書を発行し終わり職員が確認を求め、確認後二人が許可をしたら掲示板に依頼書が貼り出される。

 

「おっおいこの依頼を見ろよ!」

 

朝方の依頼を終えて報酬で食事をして居た一人の冒険者が声を上げた。

この時間に貼り出される依頼には大したものは無い、だが午後は暇だし簡単なのならやっとくか…

って気持ちでそれを見て驚き、相棒の冒険者に声を掛けた。

 

「せ…成功報酬銀貨30枚?!」

 

その声に近くに居た冒険者達も次々に集まる。

それもそうだろう、高額報酬な上に専属契約を結べれば依頼を優先して回してもらえ、しかもこの高額報酬を定期的に得られるかもしれないのだから。

冒険者達は我先にと受付に押し掛ける。

だが次々に苦虫を噛み砕いたような顔をして受付を去る冒険者達。

そう、報酬に目が先に行ってしまい依頼主の指定した場所を確認していなかったのだ。

 

『慟哭の洞窟』

 

そこはギルドランクC以上のメンバーが居るパーティーが入れる難度の高いダンジョン、そこの魔物は非常に手強いのである。

特にギルドランクCと言えば一流冒険者と呼ばれる強さと技術を持った者しか到達出来ないランクなのだ。

二人はそのギルド内の様子を確認し、そのまま帰宅する。

いつの間にかフーカはゴンザレス太郎の袖ではなく小指を摘まみながら…

 

そして、翌日学校帰りにギルドに寄った二人に面接希望の冒険者が待っていたのだった。



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第29話 冒険者パーティー『マジメ』

学校帰りに冒険者ギルドに寄ったゴンザレス太郎とフーカ、昨日と同じ様に小指がしっかりと握られている。

そんなゴンザレス太郎達を待っていたのは、男1人女2人の冒険者パーティー『マジメ』であった。

面接と言うことでギルドの会議室の一つを借り、その部屋にて向かい合わせに座ったのだが…

 

「すみません、少し先に気になるので…何故パーティー名が『マジメ』なんですか?」

「あっそれは俺が剣士の『マコト』でこっちが魔法使いの『ジル』そして彼女が結界士の『メール』なので頭文字を取ってなんですよ」

「なるほど、あっすみません僕がゴンザレス太郎で、隣の彼女がフーカです。」

 

ペコッと頭を下げる二人にマジメの3人も会釈を返す。

彼等は若いが3人共Cランクのパーティーで、今回ギルド側から話を持ち掛けてくれたとの事だった。

最初に聞いたゴンザレス太郎は話をするのをフーカに代わる。

 

「それでは先に説明させてもらいます。今回の依頼はレベル上げ代行の依頼で場所は慟哭の洞窟、幾つか追加で話すこともありますが、まずここまでは大丈夫ですか?」

「あぁ俺達は構わない、しかし驚いたな見たところまだ幼いのに綺麗な声でしっかりとした話し方だ。」

「ありがとうございます」

 

フーカは嘘をついてはいない事の確認をした。

高額報酬な為、依頼を受けた振りをして悪いことを企んでいないか確認をしたのだ。

基本的に依頼主の詳細を冒険者が尋ねることはない、その為冒険者側が聞くことはこれだけである。

 

「っで二人は自身を守る術は何か持ってるのか?」

「僕達は二人共非戦闘系のスキルしか無く、しかも特殊過ぎるスキルなので身を守ったり回復したりは出来ません」

「分かった。それじゃ結果を聞こうか」

 

ゴンザレス太郎とフーカは互いを見つめ合い、互いに頷く…

ちなみにフーカはゴンザレス太郎の小指をずっと握ったままであった。

もしもジルとメールと名乗った目の前の女冒険者に見とれたら、小指の関節が増えたかもしれないかは秘密である。

 

「合格です。宜しくお願いします」

「あぁ任せてくれそれでいつ行くんだ?」

「皆さんの都合が良ければ今から行きたいのですが…」

 

マジメの3人も互いに顔を見合わせ頷いて。

 

「よし、それじゃ行くか!」

 

こうしてパーティーを組んだ5人は町を出て慟哭の洞窟へ向かった。

徒歩で町から1時間くらいのそこに行くまで3人の戦いを見せて貰ったが、流石のCランク冒険者と言えるくらい見事なものだった。

魔物を確認したらメールがゴンザレス太郎とフーカに結界を貼り、ジルが遠距離から魔法で攻撃、撃ち漏らしや避けてきた敵をマコトが剣で斬りつけ、敵が複数の時はメールが敵を結界に閉じ込めて時間稼ぎをするという素晴らしい連携だった。

 

そして、歩くこと1時間後、5人は何の問題もなく慟哭の洞窟にたどり着くのだった。



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第30話 いきなりのピンチも稼ぎポイント

慟哭とは酷く悲しみ声を上げて泣く事を指す。

その名の通り、ここ慟哭の洞窟は恐ろしい場所だった。

魔物は強く仕掛けられた罠も凶悪なものだったが、何よりも恐ろしいのはマッピングが役に立たないと言うことだろう。

そう、この世界のダンジョンは生きているのだ。

中は常に変動しており来た道を戻るだけで違う場所に辿り着く、まさに悪夢の中に居るようだ。

その為マッピングは役に立たず、脱出するための方法を各々用意するのが基本である。

 

「って習ったよね?」

「…はっはい!習いました!」

 

また近いよフーカ!?

鼻先か触れそうな距離で告げられる言葉にドキがムネムネし始める。

最近隙あらば急接近されてる気がする…

 

「もぅ二人共仲良いわねぇ~」

「本当に肝の座った子供達だわ…」

 

ジルとメールの二人は護衛対称の二人があまりにも落ち着いているのでその雰囲気に流されて居た。

現状パニックになっててもおかしくない状況なので逆に落ち着けて助かっているのだが…

 

「しかしまぁ咄嗟とは言えこんな余裕なのもおかしいんだがな」

 

マコトのため息と共に出た言葉に反応するように結界が大きく振動し魔物の攻撃を防ぐ。

 

「ジルさん、風魔法で首です」

「はいよ、ウィンドウブリッド!」

 

弾丸の様に圧縮された風の塊がクラゲワイバーンの首を撃ち抜き一撃で仕留める。

一体何体の魔物を倒したかもう分からない、その魔物の死体を別の魔物が一斉に食べるからだ。

そして、また魔物同士で取り合いが始まる…

 

 

何故こんな事になったのか…

時は慟哭の洞窟に入って直ぐの頃に戻る…

 

 

 

 

 

 

「さぁここからは魔物の巣窟だ。罠も凶悪なものばっかりだから決して勝手な行動はしないように!」

 

マコトが振り返り護衛対称の二人にしっかりと言う。

だがその直後、いきなりマコトは足元にあったスイッチを押してしまう?!

5人の足元に転移魔方陣が浮かび上がり、慟哭の洞窟に入って15秒でトラップにより強制転移してしまった。

 

「し、しまっ…」

 

入り口にマコトの声が響くと共に、全員の姿はその場から消失するのであった。

 

 

 

 

「ねぇ…ここって…まさか…」

 

メールの声に反応し全員は辺りを見回す。

そこは現代日本なら東京ドーム何個分とか言った表現をされそうな程広い空間で、あちこちから新しい魔方陣が浮かび上がった。

 

「やばい、転移石は?!」

「駄目、ここ使えないみたい!」

「くそっ」

 

マコトとジルは慌てた感じで会話を行う。

そして、魔方陣から次々と現れる魔物達。

そのどれもがCランクの冒険者数人で一匹を相手に出来るレベルの魔物だった。

サソリ猪にコウモリ蟹、氷狼に至ってはBランクが相手する魔物だ。

 

一同は絶望した。

脱出用の転移石は使用できず、目の前には勝ち目の無い無数の魔物の群れ。

しかも現在もその数は増え続けているのだ!

そう、ここは洞窟内で最も魔物が発生する魔物の巣窟『モンスターハウス』であった。

だが、そこで1人落ち着いて回りを見渡すゴンザレス太郎は叫んだ!

 

「皆!あそこの壁まで移動するぞ!」

 

ゴンザレス太郎が1人走り出しその後をフーカが追い掛ける、仕方なく護衛する面々も渋々後を追い掛ける。

ここまで追い込まれても見捨てないのは流石プロと言えるだろう。

そして、まだ囲まれてなかった一同は壁際まで移動した。

だが、そこは逃げ場を自ら無くしたも同然の状況にマコトも背水の陣が狙いか?とゴンザレス太郎の考えを読む。

一応後ろが壁なので背後を警戒しなくてもよいと考えれば悪くは無い案ではあったが、それは戦力が拮抗してればの話だ。

逃げ場の無くなった一同は物量で圧殺されるのを予想した。

だが…

 

「ジルさん!壁に魔法で穴を開けて下さい!」

「えっ?あっ…はい!ストーンブレイク!」

 

ジルの土魔法で壁に穴が開けられた。

 

「もっとです!もっと奥まで!」

「なんなのよもー!ストーンブレイク!ストーンブレイク!ストーンブレイク!ストーンブレイク!」

 

どんどん穴は奥へ広がり、大きく開いたその中へ転がり込むように全員が入る。

 

「メールさん!入り口に結界を!」

 

そこまで言われて一同はやっと何をやっているのか気付いた。

そう、籠城戦である。

っであれば役割は決まっている!マコトは入り口を結界越しに無理矢理通ろうとした魔物を剣で突き刺す。

怯んだ敵はひしめき合った別の魔物に襲われる。

それはアマゾンのピラニアを彷彿させる光景だった。

怪我をした魔物は別の魔物の餌となり、そこから獲物の取り合いで共食いが始まる。

後はその間に中を広くジルが魔法で拡げ完全な籠城が完成したのだった。

しかし、このままでは神力を使いすぎたジルは魔法を使えなくなり、結界を張り続けるメールもいずれは神力が尽きて結界を張れなくなる。

だが、それもゴンザレス太郎の視線で全て片づいた。

 

「はぁ…仕方無いわね皆さん聞いて下さい」

 

フーカは3人に自分のユニークスキル『スキミング』を話した。

そして、共食いから逃げるように飛び出した魔物を指差して…

 

「ジルさん、頭部に雷撃魔法お願いします」

「スパークアロー!」

 

矢の形をした雷魔法は満身創痍で逃げようとしているキノコトカゲの頭部を一撃で撃ち抜き絶命させる。

 

こうして一同は現在もモンスターハウスの横穴に籠城しているのだった。



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第31話 スキル発動の膝枕

「そいやっ!」

 

マコトの剣が犬ウナギの頭部を切り裂き絶命させる。

間違えてはいけない、頭が犬で体がうなぎの魔物だ。

地面をウネウネ動くのに吠えてくる奇妙な生き物である。

 

メールの結界で籠城して倒せる相手だけをフーカが見抜き、それをマコトかジルが指示通り一撃で仕留める。

ミスしてもメールの結界で敵を防ぐので安心だし、入り口が狭いので複数匹が同時に入ってくることはない。

特にこの前方の一角だけ結界を張ればいいというのはメールにとってもありがたかった。

消費神力は少なくて済むし、全面に比べての強度は何倍にもなる

その為、怪我を負うこと無く戦い続けていられる。

だが、いくら神力が使う分以上に貯まるからと言ってもそれを行うのは人間である。

当然疲れも溜まってくる。

 

「ふぅ、レベルをドンドンステータスに振ってるから倒すのは楽になってきたが、流石に疲れてきたな」

「でもこの後どうするの?ここから帰れなかったらいくら強くなっても同じよ?」

 

マコトとジルがどうやってここを出るかの会話をさっきからしているが結局結論は出ず、魔方陣から途切れること無く魔物は延々と出現する。

強行突破しか無いのかもしれないが、今みたいに一方的に攻撃できるわけもなく、一斉に攻撃をされたらいくら強くてもどうしようもない。

多勢に無勢とは上手いこと言ったものである。

そして、なにより一番の問題は食事だろう。

倒した魔物は全て別の魔物が食べてしまうため食料には出来ないのである。

 

まるで酸素の切れるの時間を逆算した映画の中のように場の空気は重くなる…

そんな時だった。

 

「あっ、出た…」

 

壁際に座ってずっと1人で空中に指で何かをしていたゴンザレス太郎が声に出した。

3人はその姿を先程からチラチラと見て、凄まじい違和感を覚えていた。

モンスターハウスで閉じ込められ飢え死にするのが先か、魔物に特攻して一か八かで命がけの脱出をするか、という時に何かをメモしながらずっと何もない空間に何かをやっていたのだ。

思い付くと言えばスキルを使って何かをしていると言うことなのだが、この状況下で一体何をやっているのか見当も付かなかったのだ。

何かを作り出す訳でもなく、何かが変わった様な感じは全く無いのだから…

そんなゴンザレス太郎がマジメの3人の方を向いて話し出す。

話しだすゴンザレス太郎に対して、若干フーカが興奮している気がするのは気のせいだと思いながら、3人はこの後アンビリーバボーな体験をする事になるなんて想像もしていなかった…

 

「皆さん、話があります。これから使うスキルでここを安全に出られるかもしれないのですが、この事を誰にも話さないと約束してくれますか?」

 

ゴンザレス太郎の言葉に、あり得ないと言う表情を浮かべる3人。

この状況下で『安全』に外に出られる方法などあり得ないと思うのが普通なのだ。

だがここに避難した時の行動といい、3人が驚く程のスキルを使って戦闘補助をしていたフーカが絶大な信頼を寄せていたのを見ている。

そう、フーカはゴンザレス太郎が何かをやっているのを見てここから出られる確信をしていたのだ。

少し考えた後3人は…

 

「分かった。」

「分かりました。」

「約束します」

 

そう次々に答え、近くに寄ったフーカにゴンザレス太郎は何かを耳打ちする。

それに驚いた仕草をしたフーカはその後、ゆっくりとその場に座り自らの膝を手でパンパンッと叩いた。

 

(あれは一体何をやってるんだ?)

 

マコトがそう考えていたのだが、気付けばゴンザレス太郎は顔を真っ赤にして嫌がってる…

だがそのままの姿勢で見つめ続けるフーカに負けたのか、ため息を一つ吐いてゆっくりと寝転がり、自分からその膝に頭を乗せた。

 

「って君ら何やってるの?!」

 

マコト、依頼主に対する口の聞き方を忘れるほどの衝撃を二人の行動に受けたのだろう。

だがその突っ込みも無視され、そのままゴンザレス太郎は眠りについたのだった。



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第32話 無事脱出!

(ん…唇に柔らかい何かが触れてる…)

 

まどろみの中ゴンザレス太郎はその感触を感じた。

そして…

 

「ん…んんんん?!んんんんん?!ぷはぁ!」

「おはよダーリン」

 

呼吸が出来なくて慌ててゴンザレス太郎は目を見開いた!

目を覚まして驚く、目の前にフーカの顔があったのだ。

近い…近すぎる…

そのままフーカの唇がゴンザレス太郎の唇に触れる…

 

「って何やってるの?!」

「えっ?目覚めのキスとおはようのキス?」

「何故神力使ってワザワザ疑問型にした?!」

 

そして、ゆっくりとゴンザレス太郎の鼻から離される指…

口を塞いで鼻も塞いで起こしてくれたらしい…

勿論それを見ていた3人は口を開けてポカーンである。

その視線に気付き、顔を真っ赤にしたままゴンザレス太郎は立ち上がり、一つ咳払いをして何事もなかったかのように…

 

「んじゃま、帰りますか」

 

そう告げて結界の方へ歩きだした。

それに続くようにフーカもゴンザレス太郎の袖を摘まんで斜め後ろを一緒に進み、結界を超えてモンスターの中へ…

そこで我に返ったマコトが叫ぶ!

 

「って危ない!」

 

マコトは慌てて叫び、出ていったゴンザレス太郎の後ろを追い掛け外へ出た。

そして、信じられない光景を目の当たりにするのであった。

 

「なん…だこれ…」

 

3人は文字通り自らの目を疑った。

魔物達がひしめき合い乱闘とも言える殺し合いが行われている真っ只中、その中にゴンザレス太郎とフーカは立っており、魔物は二人を物理的にすり抜けて居るのだ…

有り得ない光景に再びポカーンな3人にゴンザレス太郎は振り返り手を伸ばして告げる。

 

「さぁ帰りましょう」

 

意味が全く分からない、だが説明も何もないままでも完全に信頼しきってるフーカを見て3人は共に頷き合い足を踏み出す。

意を決して結界の外へ出た3人、タイミング良く振り返った魔物の尻尾がぶつかりそうに襲いかかってきた!

慌ててマコトがガードしようと剣を盾にするが、その剣もマコトの体も尻尾はすり抜けた?!

 

「はぇ?!」

 

すっとんきょんな声を上げるマコトだったが、とりあえず意味が分からないが大丈夫なのだと理解し、ゴンザレス太郎の元へ移動した。

その後、魔物達から5人の姿は見えてすらいないのか、一応ゴンザレス太郎からあまり離れずに出口を探し、10分程した時についに上に上がる階段を見つけた!

そして、階段を上がった事でモンスターハウスを抜けだけたので、直ぐに転移石で一同はダンジョンの入り口まで飛ぶ。

久方振りの外、本来であれば助かった事を喜び合うのが普通だが、3人…特に納得がいかないジルが声を上げた!

 

「じゃ説明してもらうわよ!こんなあり得ない事を見せられて説明もなしなんて許さないわ!」

 

ジルの少し怒った感じの声が響く。

それはそうだろう、どう考えても異常な現象だ。

そんなジルの言葉にゴンザレス太郎は返事を返す。

 

「分かりました。他言無用ですよ、さっきのは僕のユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』の効果です。」

「はっ?プロ…えっ?」

 

年上のお姉さんってイメージだったジルはその赤髪に手を当てて、全く意味が分からない…と言った感じの表情になる。

残りの2人も首をかしげている。

そんな名前のスキルは聞いたことも無いからだ。

 

「詳しくは話せませんがそれの効果の一つ『ダンジョンのエンカウント操作』です。」

 

実はゴンザレス太郎、先日のリップクリーム増加の時に気付いたことがあった。

それはスキルの効果は一緒にいるメンバーにも反映されると言うことである。

あの時!フーカが走り去った後に気付いたのだが、フーカがリップクリームを取り出した時に一緒にポケットに入っていた物をフーカは落としていた。

それはフーカが困った時用に親から渡されていた『光石』で、それを落としていたのだ。

説明を受けた3人は意味が分からないと更に首をかしげるのだった。

 

※光石とは割れると強い光を放ち相手の視界を見えなくするこの世界独特の防犯グッズである。

 

※『ダンジョンのエンカウント操作』とはダンジョン内の魔物と接触してもエンカウントせずにすり抜けるか通常通り戦闘になるかを操作で指定できる。

使用者の目には常にエンカウントするか、すり抜けるかが表示されている。



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第33話 大量に増えたコード

「す、すまないがちょっと考える時間をくれないか?」

 

マコトだけでなく一緒に居た二人も頷いた。

やはりゴンザレス太郎のスキルについて考えたいらしい…

それは当然であろう、こんな無茶苦茶なスキルの存在を知ってしまったのだから。

しかも3人が耳を疑うのは神力の消費についてだろう、通常であればスキルを使うのに神力を使うのだが、ゴンザレス太郎の『プロアクションマジリプレイ』はコードを引き当てるのにしか神力を使わないのだから…

本当にそれはユニークスキルなのか?っと疑いたくなるのは仕方ないと言えるだろう。

そんな3人の提案に…

 

「分かりました。ここで夜営して明るくなったら帰るって事にしましょうか」

 

既に夜も更けており、このまま帰路に付くより夜営して明るくなってから帰った方が安全と言うこともあり、フーカもゴンザレス太郎の言葉に首を縦に振っていた。

明日は朝帰りで学校には行けなさそう…と考えながら簡単な夜営の準備をする。

っと言ってもこのパーティーにはメールが居る、なので気配を遮断する結界のお陰でそれほど準備も困らない。

それでも見張りは必要で、依頼を受けているマジメの3人で交代で見張りを行うのは言うまでもないだろう。

 

少しして落ち着いたところでフーカが近付いてきて、予想していた通り聞いてきた。

そう、ダンジョンの中で他にどんなコードが出たのかである。

ゴンザレス太郎は「驚いて大きな声は出さないでね」っと伝えコードを控えたメモを見せた。

 

『弾無限 41714171 15151285』

『料理で食材減らない 13711371 15123212』

『戦闘後HP全快 BA434292 21126323』

『主要キャラの名前変更 A5141551 55171E』

『埋めたアイテムランダム変化 A92E5112 25035155』

『燃えた物原価に変わる 75813244 15215452』

『ステータス開くと所持金ランダム変化 15215463 14932151』

『親指口に入れると移動速度3倍 94939493 61811285』

『回復でダメージ 51159151 12439112』

『建物素通り 32851364 22511285』

『ダンジョンのエンカウント操作 44225103 44125112』

 

それらを見ながら一つ一つ考えているのだろう…

あの時聞いた、次の春に自分が死なないようにする何かがあるかを…

一通り目を通してため息を吐くフーカ。

どうやらお目当てのコードは無かったらしい。

 

「使えそうなのは無かった?」

「ううん、単に驚いて呆れてるだけ…もうなんでもありね…」

 

フーカはそう言ってゴンザレス太郎の横で横になった。

そしてそのまま眠りに就くフーカを眺め、自分の唇に指を這わせ起こされる時にキスされたのを思い出すのだった。



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第34話 パーティー勧誘

朝日が洞窟に差し込み、内部が少し照らされる。

その入り口の横を少し奥に行った場所、そこで夜営していたマジメの3人とゴンザレス太郎とフーカは無言で出発の準備をしている。

荷物をまとめ終わり、マコトが2人に代表して話をする。

 

「色々聞きたいことや言いたい事もあるが、今回は俺のミスが原因で危険な目に遭わせてしまってすまなかった」

 

そう言って最初にマコトが謝罪してきた。

そう今回の最大の失敗は、マコトが洞窟に入って直ぐに転移の罠を踏んでしまい、全員をモンスターハウスに飛ばしてしまったのが原因なのだ。

 

「そこで、今回の依頼に関しては失敗とさせてほしい」

 

冒険者にとって依頼の失敗とは自らの経歴に傷をつけると同じ事である、なのでこれは彼等が自らに課した罰なのだろう。

昨夜の内に話し合ったのか、二人もマコトの言葉に口を挟みはしない。

信頼し合ってるのが見てとれて、好感が持てた。

 

「それと護衛対称の二人が居なかったら、ここにこうして生きていられなかった事も確実だ。感謝をしてもしきれない」

 

転移して直ぐにゴンザレス太郎の作戦で穴を堀りそこに籠城し、フーカのスキルで魔物の弱点を見抜いてもらい、最後は極秘のゴンザレス太郎のスキルの一端を披露して貰い助けてもらった。

彼等にもプライドがあるのだ。

 

「だから…」

「いいですよ」

 

ゴンザレス太郎が言葉を被せた。

昨夜マジメの3人が話し合っていたのは薄々気付いていた。

 

「今回の事でかなりの神力を得ることが出来ましたし、謝罪をしたいのであればこちらから提案があります」

「って、提案?」

「僕達を皆さんのパーティーに加えて貰えませんか?」

「えっ?」

 

ゴンザレス太郎はフーカと先程話して決めていた。

ゴンザレス太郎のスキルの秘密を漏らさない為にも、仲間になった方が良いと判断したのだ。

特にこの世界では個人のスキルは秘匿にするのが普通、一端とは言え教えてしまった以上抱え込む方向でフーカが提案したのだ。

まぁこの3人であればそんな心配も要らないかもしれないが、ちなみにフーカは余程の事でない限り提案はしても最終的にはゴンザレス太郎の決定に従う…

もしも何かあれば、自分が全力でどうにかするつもりなのだろう。

これが愛の力だと自分を奮い立たせるに違いない、フーカ…恐ろしい娘!?

 

「もし認めてくださるのなら…もう幾つか皆さんの為に僕のスキルを披露させて貰います。」

 

その言葉は悪魔の囁きのようだった。

あんな無茶苦茶なスキルが他にもまだある、それを伝えるには充分な言葉だった。

それにフーカのユニークスキル『スキミング』は冒険者にとって喉から手が出るほど欲しいスキルである。

なにせ見るだけで相手の名前や使えるスキル、更には弱点まで分かるのだから。

その他にも、採取に関しても役に立つのだから冒険者にとって喉から手が出るほど欲しい人材なのは間違いない。

そしめ、3人は知らないがその他にも『スピリチュアリティ』と言う嘘を見抜くスキルもあるのだが、それは内密である。

ゴンザレス太郎のその提案が余りにも予想外だったのだろう、話を聞いてマコトは慌て…

 

「も…もうちょっと相談させてくれ!」

 

マジメの3人は再び会議を始めるのだった。

ちなみに、ゴンザレス太郎、もし自分達がマジメの3人のパーティーに加わったら『マジメゴフ』になるのか…

まるでロシア人の名前みたいだな…って考えていた。



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第35話 町へと帰還

「分かった。君達二人をパーティーに加えさせてもらう。」

 

30分ほど悩んだ末マコトが告げてきたのは了承の返事であった。

特にマジメの3人としてもフーカの存在を手元に置いておきたいっと言うのが大きかった。

便利なスキルと言うのもあるがそれよりも…

 

「だから俺達の事は…」

「大丈夫ですよ。皆さんがレアエルフと言うのは他言しませんから」

「やっぱり分かってたか」

 

※レアエルフとはエルフの上位種のハイエルフと人間との間に生まれる種族、見た目は人間なのにハイエルフ並みに長生きする幻の種族である。

 

「さて、それじゃ町に戻るとするか」

「それじゃあ早速、皆さん自分の親指を口に入れるか咥えるかして下さい」

「「「???」」」

 

一同は再び首をかしげているが、ゴンザレス太郎の事だから何かあるのだろうと先にやっている二人を真似て口にくわえる。

 

「そへふぁしゅっはふふぃんほぉうー」

 

そのまま歩き始めたゴンザレス太郎達に続いて3人も歩き始めるのだが、親指を口にくわえている意味が全く分からない。

少し歩いて、流石にこれは恥ずかしいと思ったジルが口から親指を離したその時であった。

ジル以外の4人が物凄い速度でジルを置き去りにして歩き去ったのだ?!

 

「はっ?!」

 

今目の前で起こってる事の意味が分からないが、こんな所で置いていかれる訳にもいかないと考え、ジルは走って4人を追い掛けるのだが、その距離はどんどん離れていく…

しかも何故か視界に入ってる4人は歩いているのに、全然追い付けないのだ!?

そこでやっとジルが後ろに居ないことに気付いたマコトとメールが歩きながら振り替えると、少し離れてまるでパントマイムの様にゆっくりと走る動作で付いてきているのに気が付いた。

その姿に2人は驚愕した。

ジルの地面を蹴って次の足が地面に着くまでの体の落下速度が明らかにおかしかったからだ。

 

そう、これがゴンザレス太郎が昨夜寝る前に打ち込んだ新コード『親指口に入れると移動速度3倍』の効果であった。

 

ジルは2人の姿を見て親指をくわえ直すと直ぐに追い付けた。

追い付いてから一緒に歩いてまさにその異常性を体感した。

なにせ魔物が居てこっちに気付いていたとしても、こっちは歩いているだけも追い付かれないのだ。

ただ攻撃したりすると解除されるらしく、正面に出た魔物をマコトが切りつけようとした時に魔物の動きが急に加速して驚いていた。

ゴンザレス太郎はそれを見て…

 

(弾幕シューティングゲームの敵弾が画面外に消えて処理落ちが収まった時みたいだな~)

 

っとマコトが蛙ネズミを倒すのを見ながら考えていた。

そうして出た時の半分の約20分で町まで帰った一同はギルドの方向に行くのだった。



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第36話 シズク、ゴンザレス太郎の家に行く

無事にギルドに帰還したゴンザレス太郎とフーカは職員に出された書類に依頼完了のサインをして返却し、横で待っていた3人は成功報酬の銀貨30枚を職員から受けとる。

そうして一同はその場で解散となった。

流石に約丸一日徹夜でダンジョンに潜ったのだから仮眠をとったとはいえ各々の疲労はかなり溜まっており、ゴンザレス太郎も自宅に戻るやお母さんの小言を聞きながらそのまま眠るのだった。

 

 

 

 

 

 

「こんにちわおばさん、ゴン太君居ますか?」

 

日が沈み始めたその日の夕方、ゴンザレス太郎の家を訪れたのはシズクであった。

シズクは学校でアイアン達から、昨日冒険者ギルドでフーカとゴンザレス太郎が一緒に居たと聞き、更には二人揃って学校を休んでいたのを不審に思い家を訪れたのだ。

シズク自身はゴン太の事を友人としか見ていないのだが、ゴン太が自分に気があるのは知っていた。

だがそれがフーカに奪われたかもしれないと考えて気になって伺ったのだ。

子供とはいえ乙女心は複雑である。

 

「あらシズクちゃん久し振りだねぇ~ゴンザレス太郎なら今朝帰ってきてそのままずっと寝てるんだよ、そろそろ夕飯だし起こしてやってくれないかい?」

「あっはい、分かりました。失礼しま~す」

 

シズクはゴン太の自宅に約1年振りに入った。

学校に行き始めた頃は何度かアイアンやホネオと4人でゴン太の家で遊んだのだが、気付けば男女を意識するようになりそういう事も直ぐになくなった。

なのでシズクは変に緊張していた。

 

「ゴン太君?起きてる?」

 

ゴンザレス太郎の部屋をノックするが、少し待っても返事がないのでゆっくりとドアを開ける。

ゴンザレス太郎は布団で寝ていた。

だらしなく涎を垂らし、完全なアホ面を晒していた。

 

「フーカちゃんもなんでこんなのが良いのかしら?」

 

それは教室でフーカがゴンザレス太郎の事を「ダーリン」と呼んでいたのを聞いていたから出た言葉だった。

あの言葉で二人は交際を開始したのだとあの場にいた全員が考えていた。

そんなゴンザレス太郎の頬を指で摘まみシズクは愚痴る。

 

「あんた私の事が好きなんじゃなかったの…」

 

とても7歳とは思えないおませさんである。

ゴンザレス太郎は前世の記憶があるし、フーカはやり直した分だけ長生きしているので考え方が大人でもおかしくはないのだが、シズクは正真正銘見も心も7歳である。

 

「う…ううんんん…フーカ…近いよ…」

 

頬を摘まんでいるゴン太から発せられたフーカの名前に、思いがけずイラッときたシズクはゴン太のおでこを平手で叩いた!

何とも思ってない異性の友人に対して抱く感情とは明らかに違うのだが、本人は無自覚である。

 

「いい加減におきろー!」

 

パチーン!と良い音と共にゴンザレス太郎は飛び起きた。

まだダンジョン内で魔物に襲われ続けていた時の感覚が残っており、魔物の攻撃が来たのかと驚いて反応したのだ。

だがステータスは全く上げておらず、神力にレベルを注ぎ込んでいたゴンザレス太郎の動きは遅く、シズクは逆に反応できなかった。

これが素早く飛び起きていたら、条件反射で能力全強化のユニークスキルを持つシズクは反応し、避けるなり反撃するなりしていたのだろうが、ゆっくりなため逆に反応できなかったのだ。

バッティングセンターの遅い球が打ち返しにくい感じである。

 

「アイタッ」

 

頬を摘まんでいたその手を殴るように払い除けられ、シズクは痛みを感じた。

寝ているゴンザレス太郎の頬を摘まんでいたのが悪いのだが、それに先程までのイラつきも加算され見事なビンタがゴンザレス太郎の左頬に炸裂!

寝起きのその頬に綺麗な紅葉を咲かせる。

そして、いきなり他人を叩いてしまった自分が怖くなりシズクは近くにあった犬っぽい魔物のぬいぐるみを抱き締め、慌てて部屋を飛び出して家に帰るのだった。

 

「えっ?なにっ?」

 

好きな人が先程まで部屋に居たなんて思いもせず、寝ぼけたゴンザレス太郎は痛む頬を擦るのであった…



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第37話 絶望への歯車が狂う

「フーカちゃん…私達生まれ変わっても友達だよ…」

「シズク…ごめん…」

 

シズクの家はその家に住む住人の血に染まっていた。

途切れそうになる意識を必死に繋ぎながら、そこに立つ男達を睨む…

 

「ん?この娘まだ生きてるな」

 

そう言った男は手に持ってたナイフをシズクの首元に突き立てる。

目が灰色に変わりながらフーカの手を最後まで握り続けたシズクの握力がフッと無くなる。

次の瞬間涙が止まらなく流れ出る…

それと共に背中の傷から血が吹き出す。

 

「また…助けられなかった…」

 

それが彼女の最後に口にした言葉であった。

部屋にはシズクの両親の死体を踏みつけて強盗に押し入った男二人が目当ての宝石を手にしていた。

 

「へへへ…これが金貨8枚の価値があるのか…」

「これさえあれば俺達やり直せるんだな」

 

二人組はシズクの家を後にした。

もう何度目か分からないこの惨劇…

 

(また…助けられなかった…)

 

止めどなく流れる涙。

これを最後にフーカはシズクに関わるのを止めた。

何度やり直してもシズクの家族は皆殺しにされ、助けようと何かをすると自分やその他の人も殺される。

それならば犠牲者を減らすためにフーカはシズクに関わらない様にしたのだ。

だが自分が生き残る選択を選んだとしても、フーカは春に逃れられない死の運命が待つ事になるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「またこの日が来たのね…」

 

朝目覚め、今日の日付を見てフーカは天井を見上げ、一人自室のベットの上で呟く…

マジメと行ったダンジョンから帰って一週間が過ぎていた。

フーカは昨夜シズクの一家が惨殺された事を知っている。

『転生タイムリープ』の力で何度もやり直して、何度も殺されて、結局変えられない運命に絶望し、自分と言う犠牲者を減らすために彼女はシズクと関わらない様にすることを決めていたのだ。

一人逃げたと言うと聞こえは悪いが、それまで何度も抗って共に死を迎えていた事で助からないので仕方無いと自分を納得させ、そう思う事にしていたのである。

 

「私…最低よね…」

 

シズクの最後が脳裏に焼き付いているフーカは首を振って顔を洗いに行く。

そして、いつもより早めに家を出てゴンザレス太郎を向かえに行った。

もしも自分が助かる為に、ゴンザレス太郎が好意を寄せているシズクを見捨てたと知られたら…

そんな恐怖心を押し殺しながら…

 

「おはようございます。」

「あら?ゴンザレス太郎のお友達かしら?」

 

フーカはゴンザレス太郎の母親が玄関先で郵便受けを覗いている時に声をかけた。

今までは途中で合流していたので初めての顔合わせであった。

学校ではまず見せない、よそ行きの笑顔を披露し、挨拶をするフーカ…

 

「はい、同じクラスのフーカと言います」

「あらあらあの子も隅におけないわね、ちょっと待っててね」

 

母親はゴンザレス太郎を家の中に呼びに行った。

そうして出てきたゴンザレス太郎、母親に茶化され照れながらも否定しないゴンザレス太郎に対する嬉しそうな態度はフーカの母親へのアピールである。

そんな外堀埋めを気付かれずに行ったフーカと一緒にゴンザレス太郎は学校へ向かう。

 

その途中でフーカは何度もゴンザレス太郎にシズクの事を伝えようとしたが、結局何も言えなかった。

昨夜シズクの一家が皆殺しにされているのを自分は既に知っており、それを見捨てたと思われゴンザレス太郎に嫌われるのが怖かったのだ。

『転生タイムリープ』でシズクの死を知っていた筈と突っ込みを入れられたら、どうやって誤魔化そうかと考えるフーカはいつも通りを装う…

そうしている間に学校に着いた。

 

「よーゴン太おはよう」

「あっおはようホネオ」

 

ホネオとすれ違い朝の挨拶をする。

アイアンが居なかったら普通に接するホネオの性格にはゴン太も慣れているので、気にもせず普通に挨拶をして教室に入る。

そして、フーカは目を疑う事になる。

 

「ゴン太君ごめんなさい!」

 

その人物を見て、フーカは目を丸くして驚いていた。

教室に入るなりゴンザレス太郎に謝罪をしてきたのは居る筈の無いシズクだったのだ。



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第38話 そして誰も死ななくなった

時は昨夜まで巻き戻る。

日が暮れ、街灯などが無い外が真っ暗になった頃、二人の男がシズクの家の前に立っていた。

 

「ここだ。」

「本当にこんな民家に金貨5枚以上の価値のあるものがあるのか?」

「あぁ、俺のユニークスキル『トレジャーサーチ』は財宝の方向と金額をサーチするスキルだからな」

 

10日以上前にこの家に金貨8枚の価値のある物が在ると分かった時から、この二人はタイミングを見計らっていた。

元々は冒険者だったこの二人は悪徳商人から詐欺に遇い、金貨5枚の借金をしていた。

金貨5枚を支払わないと二人とも奴隷に落とされると言うので切羽詰まって強盗を計画したのだ。

それも仕方あるまい、金貨5枚と言えば日本円換算で約50万円。

払えない額ではないが直ぐには無理と言う金額である。

 

しかし、中々チャンスは巡ってこず支払日の前日になっていた。

それもその筈、その金貨8枚の価値のある物とはシズクの母親が首から常に下げているネックレスの宝石なのだから。

 

「いざと言う時は俺のユニークスキル『影縫い』で動けなくして始末すればいい」

 

まるで強盗をするために揃ったような二人は音を立てないようにコッソリと玄関から侵入したのだが…

 

「おいまて!」

「どうした?」

「今、場所を調べようとスキル発動したら金貨100枚の価値のある何かが反応したぞ!」

「金貨100枚?!」

「バッバカ!声がでかい」

 

シズクの家は二階建てで現在一階に家族が集まって夕飯を食べている。

そして、そのスキル反応は二階からしていた。

 

「行くか!」

「あぁ、金貨100枚もあれば返しても豪遊出来るもんな」

 

二人は予定を変更して二階に上がってシズクの部屋に入った。

 

「えっ?これか?」

「あぁ、これみたいだ」

 

二人の前にあるのはシズクがゴンザレス太郎の部屋から持ってきていた犬のような魔物のぬいぐるみであった。

そう、本人すらも忘れているのだが、このぬいぐるみの口の中にはアレが入っているのである!

その時であった!

 

「ヤバイ、誰か来る!」

 

階段を上がる音が聞こえ、自分達の顔を見られるわけにはいかない二人は半信半疑ながらもスキルを信じ、そのぬいぐるみを掴んで窓から飛び降りた!

ちょうどシズクが部屋に戻った時に影が窓から出ていくのが見え、慌てて窓まで近寄ったが既に二人は何処かに逃走していた。

気のせいかと思ってシズクは振り返りそれに気付いた。

 

「あれ?…ゴン太君のぬいぐるみが…無い…」

 

そして、家の中に残された靴の跡から泥棒が入った事が発覚したのであった。

だが大人達は皆不思議に思っていた。

盗まれたのが娘が友人から借りた犬のぬいぐるみだけだったからだ。

誰も知るわけがない、予想もしないだろう…

そのぬいぐるみの中に白金貨が1枚入っているなど…



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第39話 認知されなくても運命は少しずつ変化する

「し…シズク…本当に…」

 

ゴンザレス太郎に謝っていたシズクに突然フーカが抱き付く。

理由は分からないがシズクは死ななかった。

かつて親友として仲良くしていた、だけどどうやっても死の結末に到達していた。

絶望の果てに諦めていたシズクが生きているのだ。

 

「えっ?えっ?えっ?フーカちゃん?えっ?」

 

抱き付かれたシズクは意味が分からない、元々そんなに仲が良い訳でもなく話したことも数回しかない、しかもゴンザレス太郎の件でむしろ苦手意識があったクラスメイトが突然抱き付いてきたのだ。

 

「えっと…なにこれ?」

 

ゴンザレス太郎はもっと意味が分からなかった。

 

 

 

その後、教師が来て解散となり、学校が終わった昼から3人で集まって話し合う事となった。

 

「まずはゴン太君、ごめんなさい!勝手に部屋から持っていった魔物のぬいぐるみを昨日泥棒に盗まれました」

 

シズクが謝罪をする。

その言葉を聞いて初めて部屋からぬいぐるみが無くなってる事に気付いたゴンザレス太郎。

 

「ぬいぐるみ?盗まれたのはおばさんのネックレスじゃなくてタツヤのぬいぐるみなの?!」

「タツヤ?」

 

フーカ、二人っきりの時以外は呼ばないようにしていたゴンザレス太郎の名前を呼んでしまう。

そんな中、部屋のぬいぐるみと聞いて何かが頭に引っ掛かっていたのだが…

 

「あっ!」

 

そこでゴンザレス太郎、ぬいぐるみの口の中に白金貨を入れたのを初めて思い出した。

 

「あのぬいぐるみ去年部屋に行った時に大切にしてたでしょ、本当にごめんなさい」

「あーうん、えっと…」

 

ゴンザレス太郎、フーカと仲良くなってからシズクと関わることが余り無かったので忘れていたが、やっぱりシズクが可愛いのだ。

口ごもってるゴンザレス太郎は置いておいて、シズクは話を変える。

 

「それでフーカさんはなんで突然抱きついてきたの?」

「あーうん、えっと…」

 

ゴンザレス太郎と全く同じ事を言って口ごもってるフーカにシズクは我慢できなくなり吹き出す。

 

「プッアハハハハなんなのよもー二人して息合いすぎだよもー」

 

結局詳しい事は全員が理解しきれずそのままお開きとなった。

でもこれで良かったのかもしれない、どうあれシズクの家族は全員無事だし、あなた本当は昨日死んでたとか言っても脅かすだけだし。

そう考えフーカは納得した。

そう、大切なのは自分がどれだけ足掻いても変わらなかった運命、それがゴンザレス太郎のお陰で変わったと言うことだ。

フーカはゴンザレス太郎なら自分も救える、救ってくれると信じるのであった。

 

 

 

 

 

一方その頃…

 

「な…なにかの間違いだ!ちゃんと調べてくれ!」

「そうは言っても、支払いにこんな薄汚いぬいぐるみを渡されて何をどう納得しろと言うんだ?」

 

薄暗い路地裏で屈強な大男二人を連れた商人風の男はゴンザレス太郎のぬいぐるみを手にしていた。

あれから二人は幾つかの店を巡ってぬいぐるみを売ろうとした、だがどの店もゴミとしか見てくれなかつた。

確かに自分達から見ても何処にでもある安物の古いぬいぐるみ、だがスキルがその価値を証明している…

なので仕方無くそのまま商人の所へ持ってきたのだ。

それもその筈、鑑定と言うスキルではその物の価値を見ることはできても、その中に入っているものまでは分からない。

だがこの男のユニークスキル『トレジャーサーチ』は箱の中であろうと壁の向こうであろうと射程圏内なら方向と価値を知ることが出来る、その為こんな食い違いが発生していたのだ。

 

「も…もう一度調べてくれ!」

「うるさい、連れていけ」

「ちゃんと調べてくれー!」

 

 

「ふんっこんなぬいぐるみが金貨100枚の価値のがある訳がないでしょ」

 

そう言って商人の男はぬいぐるみを捨てるのだった。

 

 

 

 

 

「あっ熊さんのぬいぐるみだ…」

 

それは路地裏に住む両親に捨てられた少女であった。

犬のような魔物なのだが、熊も魔物も見たこと無い少女にはそれが熊だった。

 

「落ちてるけど要らないのかな?」

 

そっと拾う少女。

 

「あなたも行く宛が無いの?私もなの…私サリアって言うの、ねぇ一緒に行こ?」

 

ぬいぐるみに話し掛け少女はそれを抱き締めて寝床にしている橋の下へ戻るのだった。



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第40話 帰ってきたマコトの3人

シズクと分かれたゴンザレス太郎とフーカは冒険者ギルドに来ていた。

今日はマジメの3人が戻ってくる予定の日なのだ。

っと言うのもマジメの3人、ゴンザレス太郎達とモンスターハウス稼ぎでかなりレベルアップして能力値を上げていた。

それで戻ってきて早々にBランクの試験を受けていたのだ。

試験内容はその都度それに見合った難易度の依頼をギルド員も同行して受けると言うもので、依頼は達成出来ても失格になる場合もあれば逆もある。

 

そんなマジメの3人が丁度戻ってきた。

だがその顔は何故か暗そうだ。

まさか試験に落ちたのか?

そう考えたゴンザレス太郎とフーカであったが、2人の姿を見たマジメの3人は互いに見合い頷いて試験管に聞く…

 

「今日中なら良いんですよね?」

「それが依頼だからな」

「分かりました。」

 

そして3人は急ぎ足でゴンザレス太郎とフーカを拉致するようにギルドから連れ出すのだった。

 

 

 

 

「ちょっちょっと!」

 

運ばれながらフーカが声を上げる。

マコトがゴンザレス太郎を両手で持ち上げ、ジルがフーカを右脇に抱えて走っている。

端から見たら誘拐犯そのものである。

 

「少し待って下さい!」

 

ゴンザレス太郎の大声に我に返った3人は走るのを止めて二人を地面に下ろした。

そして、ゴンザレス太郎とフーカが言葉を発するのを待たずに3人の突然の土下座である。

 

「頼むゴンザレス太郎君、こないだのスキルを使って助けて欲しい!そしてフーカちゃん、これからマラナ渓谷まで付いてきて欲しい!」

 

※マラナ渓谷とは町から徒歩で約5時間の場所にある。大型の飛行系魔物が多数生息する危険地帯である。

 

「理由を聞いても良いですか?」

「実は…」

 

3人は理由を話した。

試験には無事に合格したのだが、依頼内容の「金貨15枚以上の価値のある魔物の素材が欲しい」と言う錬金術師からの依頼の品として渡す予定だった『牛スライムの体液』を瓶に入れていたのだが、運悪く蓋がちゃんと閉まってなくて中身が蒸発してしまったらしい。

その為、この辺りで一番近くて金貨15枚以上の価値のある物と言えば、マラナ渓谷に生息する人参ワイバーンのメスの子宮なのだ。

その為、移動にゴンザレス太郎のあの『親指口に入れると移動速度3倍』で移動してフーカの『スキミング』で数の少ないメスを選別し倒そうと考えていたのだ。

 

「それでしたらこれから実験に付き合ってもらえませんか?」

 

話を聞いたゴンザレス太郎のその言葉に3人は期待に胸を膨らませた。

またゴンザレス太郎の無茶苦茶なスキルが見れると期待したのだ。

しかもそれはこの切羽詰まった状況をなんとか彼なら出来るかもしれない!という期待も込められ、3人は悩むことなく首を縦に振る。

他力本願だが、ゴンザレス太郎のスキルをもっとみたい気持ちと試験を合格したいと言う気持ちの方が勝った。

 

そのまま5人はゴンザレス太郎の後ろに続き、町の河川敷へと移動した。

何故かゴンザレス太郎の指示で全員簡単なスコップみたいな物を持っている。

 

「それじゃ少し待ってて下さい!」

 

そう言ってゴンザレス太郎は慣れた感じでスキルを発動する。

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

大きく心臓がドクンッと脈動し、ゴンザレス太郎の目の前にウィンドウが現れる。

その流れでポケットから出したメモを見ながらテキパキとコードを打ち込んでいく…操作性が悪かった筈なのに慣れとは恐ろしいものである。

そんな端から見たらまるで演奏の指揮をしているような動きを見つめてると、作業が終わったのかゴンザレス太郎はメモをポケットに仕舞う。

それを見ていたフーカがその場に座り込み、ゴンザレス太郎は少し困った様な表情を浮かべた。

 

固まって見詰め合う二人…

心根しか、少し興奮気味のフーカの手招きに仕方なくゴンザレス太郎はため息を一つ吐き、自ら頭をその膝に乗せてスキル発動の為眠るのだった。



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第41話 穴を掘って埋め直す。まるで囚人だな

ゴンザレス太郎が座り込んだフーカの膝枕に頭を乗せたのを見て…

 

「ね、ねぇ…それって毎回必要なの?」

 

ジルがフーカに聞いてきた。

その言葉に何故か自信満々の表情を見せたフーカは…

 

「ゴンザレス太郎のスキルは私の膝枕がないと発動しない、これは私達の愛の力なの!」

「ってうぉい!お前なに言ってるの?!」

 

ゴンザレス太郎は飛び起きた。

眠ろうと目を閉じた所でフーカの台詞を聞いて慌てて飛び起き否定したのだ。

だがそんなゴンザレス太郎の頭を膝の上に押し戻し…

 

「ゴン太君、そう言うことにしておけば貴方一人だけ誘拐されたりする事を回避できる。これは貴方を守るため」

「フーカ、嘘を付くときは視線をそらす癖を直さないとスキルなくても分かるんだが…」

「いいから寝る、おやすみのキスが要る?」

「要りません!」

 

そう言ってゴンザレス太郎は再び目を瞑る。

暫しその寝顔を見つめるフーカ、優しいその笑みが彼女がゴンザレス太郎をどれだけ想ってるかを表していたのだが…

その甘い空間に居心地の悪い3人は苦笑いすることしか出来なかった。

 

 

 

「そろそろかな?ゴン太君起きて」

 

膝枕をしていたフーカは乗っかってる頭を揺すってゴンザレス太郎を起こす。

今回はおはようのキスはしないようだ。

目を擦って起きたゴンザレス太郎は、これから一体何が始まるのか期待に胸を膨らませる3人に…

 

「じゃあ穴を掘りますか」

「「「えっ?!」」」

「その為のスコップですよ」

 

そう言って穴を掘り出すゴンザレス太郎、意味が全く分からないがとりあえずそれに続いて3人も同じ様に穴を掘り出す。

それぞれの前に小さめの穴が出来たのでゴンザレス太郎はバックの中から使って小さくなった消しゴムを穴の中に入れる。

 

「皆さんも持ち物で要らない物を穴に入れて下さい」

 

そう言われそれぞれ使用済みポーションの空き瓶とか小さい魔石とかを適当に入れた。

 

「それじゃあその穴を埋めて下さい」

「ってちょっと待ってこれ不法投棄じゃないの?!」

 

メールが大きな声を出して突っ込みを入れる、だがゴンザレス太郎は微笑みを向けるだけで気にせず穴を埋める。

埋め終わってゴンザレス太郎は全員を見詰めて一言。

 

「初めてのスキル効果なので一応念のためにマコトさんに掘ってもらって、僕らは離れて構えておきますか」

 

そう言ってマコト以外の四人は少し離れて装備を整える。

意味が分からないが、ゴンザレス太郎のスキルだからどうなるのか分からない。

ジルとメールは言われた通り装備を構える。

 

「それじゃあマコトさんお願いしまーす」

「はいよっ」

 

そう言って自分の埋めたポーションの空き瓶を掘り起こして…

 

「へっ?!」

 

すっとんきょうな声を上げるマコト。

恐る恐る穴の中から取り出したのは細長い黄色い角であった。

それを見たフーカが近付いてスキル『スキミング』っで鑑定する。

 

「これはドラゴンユニコーンの角ね」

「「「はぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?!」」」

 

3人は奇声を上げる。

ドラゴンユニコーンと言えば伝説上の珍獣だ。

その角なんて下手すれば白金貨が10枚は必要なくらいの価格なのだ。

驚きつつも次のジルが小さな魔石を埋めた場所を嬉々として掘り出すマコト。

そして出てきたのは大きな羽であった。

それを見てフーカは声が裏返る!

 

「こ…これわ…キメイラの羽!?」

「「「えぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」」」

 

キメイラの羽と言えば今は絶滅したと言われるキメイラと言う魔物の羽、それを使えば瞬時に行きたい場所まで移動することが出来たとされる。

これまた伝説級のアイテムである!

ちなみに学校で習った歴史によると、このアイテムの為にキメイラは乱獲されて絶滅したとされている。

勿論価値は白金貨8枚は確実にする。

更にマコトはメールの埋めた壊れた時計を掘り起こす。

出てきたのは見た感じポーションだった。

 

「まぁハズレもあるか…」

「あわわわわわ…」

「ん?フーカちゃんどうかした?」

「そ…それ…ラストエリクサーです…」

「「「……はっ?」」」

 

※ラストエリクサー、伝説の霊薬とも言われる『エリクサー』の上にある『ハイエリクサー』の更に上の『エクスエリクサー』の上の神話級の薬。

その価値は白金貨5000枚でも買えない。

 

「はぁ~」

 

メールがあまりの衝撃に気を失った。

マジメの3人も困り果てていた。

こんな高価な物を一体どうしろと?

依頼で必要なのは金貨15枚以上の価値のある素材なのだが…

これは異常すぎる…

恐るべきゴンザレス太郎の入力したコード…

『埋めたアイテムランダム変化』

であった。



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第42話 油断大敵

『ラストエリクサー』と言う神話にしか出てこないアイテムを見て気を失ったメール。

ぶっ倒れるのではなく、フラ~と意図的にゆっくり倒れる様子に少しワザとらしさを感じるが…

そのメールをまるで演技するようにジルが支え…

 

「おーい、大丈夫かぁ~」

 

気を失ったメールをまるで演劇のように介抱するジル。

いつもと逆で普段はジルがメールに介抱されているその光景に、マコトも遠い目のまま微笑んで現実逃避する。

今自分が手にしているのがラストエリクサーで、これ一つで下手すれば国が買えるのだ。

なんの打ち合わせもせず、同じタイミングで三人揃って違う形で現実逃避しているのである。

 

「しかしまぁ、またとんでもない物が出たわね…」

 

フーカがため息を吐きながらゴンザレス太郎に語りかける。

その値段もそうだが、その効果をフーカはスキルで見ていたのだ。

 

「まぁ実在するアイテムなら出るみたいだし、仕方ないんじゃない?」

 

そう、ここが大切なのだ。

正確には『実在する』ではなく『実在した事実がある』なのである。

つまり現代に残っているアイテムに限らず、現存しない歴史、伝説、神話に残されているアイテム、その他にも絶滅した魔物の素材に至るまで全てからランダムでアイテムが変化するのだ。

 

「あれっ?私…あれれっ?」

 

メールが目を覚ましジルに手を借りて体を起こす。

その様子から『ラストエリクサー』の存在に驚いて意識を失ったのを覚えていないようである。

やはり少し演技臭いが、天然なのであろう。

 

「さて、んじゃあメールも起きたし、次のを掘りますか」

 

メール、ジルに続きマコトも手にしたラストエリクサーは見なかった事にしたようである。

気を取り直して一体次は何が出てくるのか?とワクワクしているマコト…

依頼の品をどうするのかすら忘れている辺り、結構彼も流されやすいようだ。

 

「ここ掘れバウバウ…ん?なんだこれ?」

 

その声に反応し、マコトからラストエリクサーを受け取っていたフーカが視線をやると、マコトは何やら黒い紐のような物を持ち上げていた。

それを見たフーカは慌てて叫ぶ!

 

「あぁっ!?それを切っちゃダメ!」

 

だがフーカのその声が届くと同時に、マコトはその紐を持ち上げようとして引きちぎってしまった。

その瞬間、マコトを中心に周囲が強烈な光に包まれ、大爆発が起こった!

誰もその爆発に反応できず、全員一瞬にして視界も思考も真っ白の世界に染め上げられた。

その刹那の一瞬、フーカが最後に見た表示は…

 

『クイーンボムの堪忍袋の緒:切れると切れた場所を中心に半径500メートルを吹き飛ばす大爆発を起こす』

 

っであった。



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第43話 運命の歯車は連鎖し続ける

町外れを一人、ぬいぐるみを抱えて歩いている少女が居た。

彼女の名前はサリア、生まれた時に母親の中から出る際に逆子で片腕が引っ掛かり、そのまま片腕を生まれると同時に失った少女であった。

彼女の人生はとにかく絶望に包まれていた。

家族に最初は片腕ながら大切に育てられたのだが、5歳の時に妹が生まれて全てが変わった。

両親が彼女を無視して妹ばかりを可愛がるようになったのである。

 

そして、彼女は両親から無視される日々を過ごした。

それが彼女のスキルに関与する事だと誰も気付かず、やがてその日がやって来た。

彼女が6歳になり、本来なら礼拝堂でユニークスキルを授かるのだが彼女は礼拝堂には連れていって貰えなかったのである。

それが最大の失敗だった。

 

実は彼女は生まれた時に母親に礼拝堂に連れていかれ、片腕でも幸せに生きられるようにと母親に祈られていた。

その時に本来ならあり得ないことなのだが、彼女は奇跡的にユニークスキルを得ていたのだ。

そのスキルの名前は『セーブラック』、名前の通り運を蓄積し限界を越えると周りにばら蒔くスキルであった。

 

切っ掛けはほんの些細な出来事であった。

何時ものように母親が彼女に忘れた振りをし、わざと食事を与えなかったのだ。

だが彼女も普段から無視され、何度も食事を抜かれていたので敢えて何も言わず空腹に耐えた。

これがその日、スキル『セーブラック』の悪い運を蓄積できる限界を超えたのだ。

 

その夜、悪い運を本人の意思と関係なく初めてばら蒔いた事で…幸か不幸か彼女は自身のユニークスキルの正体を理解した。

それは彼女にしか見えない現象、色の付いた運が自分の体の中から他者に向かって流れる光景だった。

悪い黒い運は彼女の家族にばら蒔かれ、彼女の中の運をプラスマイナス零にした。

 

そして、その夜…火事が起こった。

幸い死人は出なかった。

だが、父親は両足を、母親は顔を、妹は両腕を大火傷し、家族全員後遺症と火傷の後が残ることになったのだが…サリアだけは無傷であった。

 

そして、その無傷のサリアがその火事を起こしたと家族は疑った。

よく考えれば分かる事なのだが、出火原因も台所の火の始末がちゃんと出来てなかった事でサリアは夕食すら食べさせて貰えなかったので台所に近寄ってすらいなかった。

しかし、近付きすらしてなかったのにも関わらず家族はサリアの仕業だと考えたのだ

そして、サリアは自身のユニークスキル『セーブラック』が一度発動した事で、自らの中に悪い運が蓄積されるのを認識していた。

このまま自分に悪い運を与え続ける家族の元に居ると、いつの日か再びこんな悲劇が起こり家族を更に不幸にする。

無視され酷い目に遭っても、妹が生まれる前の幼い頃に家族から受けた愛情だけは忘れられなかったのだ。

そんな彼女は着の身着のまま片腕で持てるだけの食料を持って家を飛び出した。

 

 

数日後…持ち出した食料も既に残っておらず、何とかして食べれるものを得ようと町を徘徊し、偶然にも裏路地で犬の魔物のぬいぐるみを拾ったのだ。

 

そのぬいぐるみを抱いた時に彼女は気付かなかった。

マイナス方向に運が貯まるのは一度限界を越えてばら蒔いた事で分かるようになっていたのだが、プラス方向には一度も限界を超えてないので増加に気付かなかったのだ。

 

そのままサリアは河川敷を歩き、ここ数日寝床にしている橋の下を目指す。

空腹で視界が揺らぎ意識が朦朧としていたのでサリアは気付かなかった。

そこでゴンザレス太郎達が実験を行っているのを…

そして、人が居る場所に到達した事で偶然にもサリアのスキルが発動する。

幸運はその場に居る全員にばら蒔かれ、マコトが掘り出したアイテムは凄く良い物となった。

だが残念な事にサリアのスキルによって配られた運はラストエリクサーを掘り起こしたことで使い切られていたのだ。

 

そして、運を使いきったマコトはクイーンボムの堪忍袋の緒を掘り出す際に、運悪く制止の前に切ってしまい大爆発を引き起こした。

その爆風はゴンザレス太郎達を視界に入れられる場所まで近付いていたサリアにまで届き、サリアは吹き飛ばされ意識を失うのであった。



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第44話 また一人の運命は変わる

焼け焦げた地形の変わった河川敷、そこに周囲に偶然居合わせた人達は何事かと集まっていた。

まさに魔王の魔法、極大魔法クラスの大爆発により現地は悲惨な現場と化していた。

焼け焦げた肉片が吹き飛ばされており、その場で数人が犠牲になったと言うのが一目で分かった。

幸いな事に爆発は真上に向かって大きく発生した為、少し離れていた人に被害は殆ど無く、爆風で舞い上がった砂利がパラパラと降る程度である。

だが誰一人として近付こうとはしない、爆発の原因も分からないし、爆発があれ一度か分からないからだ。

 

その爆発の跡地に動く何かがあった。

砂埃にまみれたフーカであった。

なんと彼女だけは無事だったのだ!

それにはいくつもの偶然が重なっていた。

まず爆発の目の前に居たマコト、彼が胸元に入れていたドラゴンユニコーンの角。

それが最初の壁になり、マコトの体は完全に消し飛ぶ事なく腹部だけは残った死体となって吹き飛んだ。

次に何かの際にと考えていたメールの結界が爆発の威力を遮った。

コンマ何秒しか耐えれなかったのだが、それでも僅かばかりの障壁にはなった。

最後にメールとジルとゴンザレス太郎の3人が肉壁となったのだ!

その代わり、3人の体は大火傷を負って瀕死となって転がった。

 

これらの壁が偶然にも直線上に並んでいた為、奇跡的にフーカだけは吹き飛ばされただけで助かったのだ。

フーカはゴンザレス太郎の焼けた体を視界に入れ、空気が焼けているために呼吸すらままならない場所で状況を確認する。

辺りに散らばる悲惨な状況を見て、かつて自分が経験した死に方の一つと同じ状況なのにトラウマが甦る。

だが今回の彼女は生きている!そして、その手元にはそれが在った。

 

「やっぱりゴンザレス太郎こそが私を助けられる王子様ね…」

 

そう呟きフーカはラストエリクサーの蓋を開ける。

それがラストエリクサーの使用方法であった。

空気に一瞬で溶けたラストエリクサーは一気に周囲に広がり、周囲に居る全ての人の元に届いた。

その効果は…

 

病気怪我は一瞬で治し、欠損部位は勿論瞬間的に復元する、更に死者すらも死んでから10分以内なら完全な状態で生き返らせ、効果を受けた者の身体能力は数倍に跳ね上がる。

その効果は近ければ近いほど強く、離れて見ていた人達にも超協力な回復薬として機能した。

そして、その人達から見えていたのは一人の少女であった。

 

爆発に巻き込まれたサリアは何が起こったのか分からなかった。

ただ空腹で意識が朦朧としていたらいつの間にか何かに吹き飛ばされていた。

爆発の中心から離れていた彼女は殆んど怪我する事なく、擦り傷程度だった。

暫し倒れたまま呆然としていたサリアだったが、そのまま手に持ってたぬいぐるみを抱いて立ち上がる。

その時、タイミング良くその体に空気に溶けたラストエリクサーの効果が届いた。

全身が輝き体の傷は癒え、生まれた時に無くした片腕がなんと復元したのだ!

そして、身体は少し離れていた為少しだけ健康体と呼べるくらいに強化され、彼女は何が起こったのか分からずその場に立ち尽くしていた。

 

だが、彼女のその姿は周囲に居た人々から神々しく見られた。

後光、いや全身が輝いていたので挙身光だろう。

そして人々はその光を見て驚いていた。

立ち上がった片腕が無かった少女は全身を輝かせ、その腕が復元する様子を見せつけたのだ。

更にその輝きを見た人々は体の怪我や病気が治った。

全てはフーカが蓋を開けたラストエリクサーの効果であったのだが、そんな物が実在することすら知らない一般の人々にはそれが少女の起こした奇跡にしか見えなかった。

 

その瞬間少女は神の化身として崇め奉られる存在となった。

それはサリアにとって降って湧いた幸運であった。

人から無視され、家族に不幸をばら蒔か無いように家から自ら出た少女にとって、不幸のドン底から再び幸運が流れ込み、限界を超えてスキルが再び発動したのだ!

少女を崇めていた人々に幸運がばら蒔かれる幸運の連鎖がこの瞬間始まったのであった。

少女はその時に偶然にもそこに居た子供の居ない老夫婦に引き取られ、それからの日々を幸せに暮らした。

他者から貰った幸運を人々に還元し続ける幸運の女神として数年後、少女の意思と関係なく本人の居ない場所で新しい宗教が生まれるのだがそれはまた別の話であった。

 

 

 

閑話休題

 

 

「う…ん…ここは?一体何が…」

「起きた?」

 

マコトが目を覚ますとそこにはメールが居た。

二人はラストエリクサーの効果で一度死んだ状態から生き返ったのだ。

 

「う…ん…一体何が?」

「あのね…」

 

メールから話される事故の話とラストエリクサーによって生き返った話、そして…

 

「そういう訳で爆発で粉々になった『ドラゴンユニコーンの角の欠片』を持って今ジルがギルドに行ってるわ。」

 

※ドラゴンユニコーンの角の欠片:錬金術の素材として使用でき価値は金貨20枚ほどでサイズによって価値は変動する

 

「はははっ全くなんて幸運だ」

 

マコトの呟きも仕方無いだろう。

結果的に依頼の品はゲット出来て彼等はBランクとなる。

更にキメイラの翼と言う貴重なアイテムをゲットでき、ラストエリクサーの効果で実力は数倍に跳ね上がり彼等の強さは既にAランクに届いていた。

これも全てゴンザレス太郎に出会わなければ起こらなかった事である。

 

「っであれはなにをやってるんだ?また新しい効果を試しているのか?」

 

マコトが視線を向けた先にはゴンザレス太郎にしがみつくように抱き付いているフーカの姿だった。

 

「なんかね、離れたくないんだってさ」

 

ゴンザレス太郎に抱き付き、まるでフーカアーマーと化したフーカの背中を優しく手で叩き、子供をあやすようにしているゴンザレス太郎…

実は自分の埋めたアイテムを掘り起こしてない事を皆に伝えるか悩んでいたのだが、次同じ様なことが起これば助からないと考えてこのコードは封印し、埋めたものは忘れることにしたのだった。



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第45話 好感度MAXを遂に試す!

「おい聞いたか?昨日河川敷で爆発があって、女神様が被害者を救ったらしいぞ!」

「アイアンも聞いたの?!じゃやっぱり本当なんだ!」

 

朝から教室でアイアンとホネオが昨日の事件の噂話をしていた。

昨日の爆発事件に女神様が現れた話で盛り上がり、教室は騒がしく賑やかだった。

だが、そんな教室にゴンザレス太郎とフーカが登校してきて一気に静まり返る…

 

「あ…あのフーカさん?教室に着いたから自分の席に行こうか」

「ん…分かった」

 

ゴンザレス太郎の腕にしがみつくように、両腕でゴンザレス太郎の腕を抱き締め、頭を寄り添わせ体重を預けたまま登校してきたフーカを見た事で周囲の意識は完全に持っていかれた。

相変わらず前髪で目は完全に隠れてあるのだが、それが照れつつも甘えているように見えて周囲の人達は異世界にも関わらず「リア充爆発しろ」っと誰もが考えていた。

 

「お…おはよう…なんか今日は一段と凄いね…」

 

シズクが声をかけてきて二人は挨拶を返すのだが、そんな二人を見るシズクは若干引き気味だ。

日に日にスキンシップがレベルアップしている二人の間に入る余地が全く見当たらないのである!

そして、分かったと言いつつ全く朝から同じ状態で離れようとしないフーカを見てゴンザレス太郎は溜め息を吐く…

そんなゴンザレス太郎を見上げて…

 

「迷惑?」

 

っとフーカはオッドアイを潤ませながら甘えた美声で聞いてくる。

慌ててそれを否定するゴンザレス太郎、それが嬉しくて再び腕を抱き目直すフーカ。

それを見るだけで何度か同じやり取りが朝からあったのだろうと想像に容易い。

それを呆然と見たシズク…

 

(あかん、これ完全に堕ちてるわ)

 

っと諦めるように首を振るのだった。

 

 

 

 

授業時間が終わり、授業終了の度にゴンザレス太郎の腕が自分の居る場所!と言わんばかりのフーカにいよいよゴンザレス太郎は話をする…

 

「今日、このコードの実験をしたいんだけど…」

「んっ?…私だけじゃダメ…なの?」

「試しておかないと…何が何に使えるか分からないからね。もしかしたらって事もあるから…」

「んー…納得はしないけど…分かった。でも、一番は私だからね?」

 

こんなに愛されているにも関わらず、ゴンザレス太郎は必要な事とフーカを説得する。

説明に対して少し不満だが、ゴンザレス太郎に頼られる事に幸せを感じるフーカは前髪をソッと手で上げてシズクをスキミングで見る、そして手元の紙に数字を書いていく…

それはゴンザレス太郎の見せたメモの上に書かれ、フーカのスキミングで確認できる個人を特定する人ナンバーと呼ばれるもの。

ちなみに、そのメモに最初書かれていたのは…

 

『好感度MAX ○○○○○○○A 12324493』

 

っであった。



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第46話 恋には下心がある

学校が終わり2人はいつもの冒険者ギルドに来ていた。

もう冒険者ギルドでも2人の事は知り渡っており、もうすぐAランクに届くと言われてるマジメの3人と組んでいる『ラブラブ過ぎる謎の子供』として有名になり噂が広まっていた。

それもその筈、二人はまだ7歳で正式な冒険者として登録できるのは9歳から、なのでそんな2人がBランクのマジメと組んでいると言うのは2人共に何か秘密があるからだろうと推測されていたからだ。

 

ここ数日マジメの3人はBランクの依頼を受けて出ているので現在冒険者ギルド内には2人しかおらず、その理由が知りたい冒険者達が何人か声を掛けてきてはいたのだが、フーカはゴンザレス太郎に甘えて口を開かないし

、ゴンザレス太郎は「マジメの3人に勝てたら話してあげます」っとマコトに言われた通りの返答であしらっていた。

 

っで今日二人が訪れた目的は依頼である。

ゴンザレス太郎は目的の依頼が残っているのを掲示板をチェックしてやっと見つけた。

ギルドの掲示板に貼り出されている依頼書は基本的に早い者勝ち、更に見習い冒険者として選べる依頼は基本的にはランクの関係で常時依頼が多い。

これは薬草の採取や空き瓶の回収など簡単な雑用がメインなのだが、それでも必要数以上は乱獲を防いだりする為に一定数までしか受け付けないようになっている。

ゴンザレス太郎とフーカは目的のその依頼書を持って受け付けに行き、その依頼を受けるのであった。

 

 

15分後、2人は依頼を受けて教会まで来ていた。

受けた依頼の内容は常時依頼の『教会裏の雑草取り』である。

だがこれは表向きの依頼で本当はカカシ代わりが本来の目的なのだ。

っと言うのも教会裏には教会内で使用する花が育てられているのだが、その花を狙う魔物の『なめくじバード』を寄せ付けないのが目的なのだ。

この魔物は人間を極端に怖がる性質があるので誰かがそこに居てさえすれば良いのだ。

 

そんなわけでこの依頼は何もしなくても報酬が貰える美味しい依頼として有名なのだが、如何せん報酬がとても安い。

本当に世の中はうまく出来ているものである。

半日働いて貰える報酬は何人で受けようが参加者全員で銅貨2枚、一人で受けても時間換算で考えれば子供のおこづかいよりも酷いのである。

 

※銅貨2枚は現代日本の価値で約20円

 

だがこの教会の裏は町を囲う壁と教会で囲まれており、依頼を受けないと入れない空間である。

言い換えれば誰にも邪魔をされない実験場には最適なのであった。

前回のアイテムを埋めるのは、もしもここで何かあると教会が困るかもしれないので河川敷を利用したのは正解だったであろう。

こんなところで爆発なんかが起これば、大切な教会の花が大変な事になってしまうのは目に見えているからだ…

 

「それで本当にやるのね?」

「まぁ、困った時はもう一度寝ちゃえば良いんだし、実験だよ」

「タツヤがそう言うなら…分かった…」

 

相変わらず腕にしがみついたままのフーカ、彼女は先日から二人っきりの時はゴンザレス太郎をタツヤと呼ぶようになっており、基本的に彼の言うことに従う。

予期せぬ事が起こるのは毎度の事、だがそれが結果的に歴史を大きく変えているのはフーカには分かっているからだ。

自分が必ず死ぬ次の春のあの一日を乗り越えたい一心の為に彼女はゴンザレス太郎に従う。

 

「それじゃやるよ」

 

フーカはコクンっと頷きスッとゴンザレス太郎の腕から離れる。

それを確認し、ゴンザレス太郎は目を閉じて唱えた!

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

唱えると共にゴンザレス太郎の目の前にいつもの青いウィンドウが出現し、心臓が大きく一回跳ねる。

目を開いて迷うことなく

慣れた手つきでコードの入力を開始しようとするのだが…

 

「フーカ、シズクの人ナンバーはこれであってるんだよね?」

「確認もした、シズクのナンバーはそれで間違いない」

「っとなるとそういうことかな?」

 

ゴンザレス太郎は紙に書かれたシズクのコード『04427521』を見て少し考えた。

 

『○○○○○○○A 12324493』

 

これが好感度MAXのコード、○に対象の人コードを入れると考えるとフーカの見たシズクの人コードは一桁多かったのだ。

それで頭の0を使わずに入力して実行したのであった。

 

「それじゃタツヤ、今日はゆっくり出来る」

 

そう言いフーカは座り込んで毎度の膝枕を用意し、ゴンザレス太郎も何も言わずにそこに頭を乗せる。

頭を乗せるときに下から覗いたフーカの幸せそうな光悦の表情を見て…

 

(何だが最近特にヤンデレフラグがビンビンな気がするんだが…怖いなぁ…)

 

そのまま眠りにつくのであった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、とある場所で…

 

「えっ?何?この胸の高鳴り…あっち?愛しい…切ない…会いたい!」

 

一人の少女にスキルが発動していたのであった。



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第47話 恋はハリケーン?!

「お待ち下さいお嬢様!」

「そこを退いてニセバスチャン!私こんな気持ち初めてなの!」

 

とある場所の禍々しい形をした城の中、一人の少女が執事姿の男と揉めていた。

少女はこの城を飛び出し、突然湧いた想いを確かめに行きたいと訴える!

自室に引きこもって日々を暮らしていた彼女の豹変ぶりにニセバスチャンは焦っていた。

 

「あぁお嬢様が外に出たいと言い出す日を待ちわびておりました。てすが、このニセバス…御主人様の許可なくお嬢様を外へ出すわけにはいきません!」

「どうしても?」

「どうしてもでぇぼぉ!?」

 

瞬間少女の拳がニセバスチャンの腹部にめり込み貫通した!

その衝撃にニセバスチャンは後ろの壁を突き破り隣の部屋に転がる。

 

「あぁ、この胸の高鳴りの答えを見付けに私は旅立つのよ!」

 

そう言って城から駆け足で城を飛び出し、少女は垂直の壁を駆け降りて一直線に人間界に向かって走っていく…

腹部に大穴を開けられ転がるニセバスチャンは自らに回復魔法をかけながら這って移動していた。

 

「ま…魔王様に知らせなければ…」

 

この日、魔王が計画しているよりも早く魔界から人間界に魔海を渡って一匹の魔物が移動したのだった。

 

 

 

 

 

 

「フーカどう?」

「ん?」

「僕の事…好き?」

「うんっ!」

 

飛び付くようにゴンザレス太郎に抱き付くフーカ。

逆に自分の事は好きか聞き返して来ない辺りまだ病みきってはいないようだ。

 

「一人の好感度がMAXになっても他の人の好感度は変化なし…っと」

 

エロゲーでよくある話なのだが、攻略可能なキャラの好感度が規定値を超えたらそれまで好感を持っていたキャラの態度などが通常キャラに戻る。

それがあるのかというのをゴンザレス太郎は確認していたのだ。

一時的にでもフーカから離れたい時に使えるかもしれないと期待したのは秘密だ。

 

「後はシズクちゃんがどうなってるか…もしかしたら今頃僕の事を探してるかもしれないな…」

「タツヤ…なんか嬉しそう…」

「いやいや、そんな事はないぞー」

 

一瞬ゾクリと寒気がしたので慌てて否定したゴンザレス太郎。

凶器を持ち出したら完璧にヤンデレ化が完了すると危機感を感じたのも秘密だ。

そして、そのまま終了の時間が来た。

教会の依頼者に完了のサインをもらいギルドに戻る最中に…

 

「あっゴン太君!」

「あっシズクちゃん」

 

偶然にもシズクに鉢合わせしてしまったゴンザレス太郎とフーカ。

もしもこれが待ち伏せだったら偶然を装うのが上手すぎる、恐らくは本当に偶然なのだろうと考えゴンザレス太郎は会話を続ける。

スキルが無事に発動していれば、今シズクの自分に対する好感度はフーカ位になってる筈だから…

 

「ギルドの依頼の帰り?フーカちゃんと相変わらずラブラブだねぇ~」

「えっ?あっ…うん?」

「それじゃ私これからデカスギ君と勉強会だから、また明日学校でね~」

「ん?…んん?…う、うんまた…」

 

そう言ってスキップしながら去っていくシズクを見送る2人…

好感度MAXにしては普段通り過ぎて拍子抜けであった。

もしかして?と考えフーカに声を掛けた。

 

「なぁフーカ?」

「再確認した、間違ってない」

「それじゃあどうして…」

 

どうやらシズクの人コードは間違っていないらしい。

困惑しながらも二人はギルドに戻り、以来完了の報告と報酬を受け取った。

とりあえず終わったので帰ろうかと振り替えると、丁度マジメの3人が見掛けない男と共にギルドに帰ってきていた。

 

「をっゴンザレス太郎じゃないか!どうした?」

「マコトさん、なんか新しいスキル効果の実験したんですが…なんか原因不明の失敗したみたいで」

「はぁ…今度は一体何をやろうとしたのよ?」

 

もう予想が出来ないゴンザレス太郎のスキルに恐怖しか無いジルは溜め息混じりに聞く…

それはそうであろう、彼等は先日一度死んでいるのだ。

その質問に対してゴンザレス太郎…

流石に女性の気持ちをスキルで動かすというのは人として色々と不味いと感じ、苦笑いをして誤魔化すのであった。

 

「そうそう、聞いてくれよゴンザレス太郎!俺達来週の試験に合格したらAランクだぜ!」

「マジですか!凄いじゃないですか!」

 

そう、BランクとAランクにはそびえ立つ壁と呼ばれるくらいの差があり、特に冒険者自身の実力差が凄まじい。

Bランクの冒険者10人で倒す魔物をAランク冒険者は1人で倒す位である。

なお、世界にはSランク冒険者が5人だけ居るが、それはもはや人外魔境と呼ばれるらしい、噂によれば一人で竜ドラゴンを退治出来るとか…

 

そんな事を考えていたら突如ギルド内に聞いたことの無いサイレン音が鳴り響いた!?

 

「緊急事態です!現在この町に強大な魔力の塊みたいな未知の生物が接近中!到達まで後1時間!緊急クエストです!Cランク以上の冒険者は受付まで来てください!」

 

ざわざわと騒がしくなるギルド内でギルドマスターと思われる法衣を着た老人が二階から降りてくるのであった。



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第48話 作戦会議

Cランク以上の冒険者が集められ、受け付け前の奥の会議室みたいな場所へ次々と入っていった、一気に人が減ったギルド内は静けさを取り戻す。

マジメの3人もBランクの為に奥へ進み、先程の見掛けない男と共に入っていった。

どうやらさっきのもCランク以上の冒険者の様だったがゴンザレス太郎は見たことが無い。

高ランクの冒険者のみが集められたこの事態に何事かと誰もが固唾を飲み、ギルドの運営が一時停止した為に動きがあるのを待っていたのだが…

 

 

 

暫くして会議室の方が騒がしくなり、逃げるように何人かの冒険者が飛び出していった。

その光景に嫌な予感を感じた低ランクの冒険者達が後を追うようにギルドを去る。

野生の勘と言うのか危険を察知して逃げたのであろう、こういう時に勘に頼るのはやはり冒険者の危機察知能力として大切な事なのであろう。

 

暫くして会議室のドアが開き、まるで覚悟を決めたような冒険者達が次々に出てきた。

物々しい雰囲気を纏った冒険者達はそのまま隣の店にアイテムを求めに行った。

誰も何も言わず、聞ける雰囲気ではないのでそれを誰もが見守る…

そんな中、受付は一ヶ所を残して閉鎖された状態で営業を再開し、冒険者ギルド内は物々しい雰囲気を漂わせている。

人が一通り出終わり、少ししてからマコトだけが出てきた。

キョロキョロと何をしてるのかと思った矢先、ゴンザレス太郎を探し見つけて近寄ってくる。

 

「ゴンザレス太郎とフーカ、大変なことになった。すまないが協力を頼みたい、来てくれ」

 

普段の態度からは想像も出来ない真面目なマコトの顔と態度に少し気圧されたが、何か事情があるのかと思い大人しく付いていく。

そして、会議室に入ると…

 

「ん?お前らは?!」

「へっ?あっ!?ヤバイさん!」

 

そこに居たのは数名の冒険者で、その中に学校の課外授業で教え役をしてくれたヤバイさんがいた!

何故か緑と紫色のハチマキをしている…センスがヤバい!

 

「おいマコト!こいつらがお前の言う秘密兵器なのか?」

「はい、きっと我々の力になってくれると思います!」

 

その後、ギルドマスターと呼ばれる老人から先程連絡があった通り現在ランクSSSクラスの魔物が一匹ここへ向かっていると聞いた。

はっきりいってSSSクラスの魔物は人間の手に負える相手ではなく、この件の解決法として提案されたのが、ここに居る精鋭で町の被害を最小限に押さえて相手の目的を果たさせて帰って貰うか、秘宝『封印石』でその力を封印してマコトの持ってる『キメイラの羽』を使って住んでいたところに無理矢理戻すという2つが荒業が提案されていた。

どちらにしても勝率の低い命懸けの作戦である、冒険者が逃げ出すわけだ。

 

「それで僕達がその作戦にどう役立つと?」

「第3の選択として二人の未知の力を借りたい」

 

そう告げてきたのはギルドにマジメの3人と共に帰ってきたあの男であった。



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第49話 早すぎる接近

「第3の選択として二人の未知の力を借りたい」

 

そう告げてきたのはマジメの三人と共に帰ってきたあの男であった。

左腕に装着された小さな盾、それを見たゴンザレス太郎は聖闘志のクロスを想像する…

アニオタは転生しても治らないようだ。

そんな男の視線にゴンザレス太郎の腕を抱き締めるフーカの手が強く握られた。

その様子から、スキミングで見てかなり強い人なのだと分かった事が感じ取れた。

 

「手を貸すのは構わないです。ただこちらは貴方の事を知りません、どちら様ですか?」

 

マコトが妙に親しくしており、この場に居る全員が一目置いてる。

更にはギルドマスターすらもその男の言動を意識していた、その様子から予想はしていたが…

 

「これはすまなかった。俺は盾極のデニム。Sランク冒険者だ」

 

ゴンザレス太郎の想像した通り、世界に5人しかいないとされてるSランク冒険者であった。

デニムと名乗ったその男は7歳でしかない少年少女の二人にも敬意を持った話し方をしてくる。

やはりSランクともなると、特殊なスキルを持つ者が規格外の何かを成し遂げる事を知っているのだろう。

かの宮本武蔵の様に、常にどんな相手でもどんな時でも警戒を怠らないのであろう事が感じ取れた。

その証拠に頭を下げつつも全く隙がないのだ。

 

「これは失礼しました。僕の名前はゴンザレス太郎、こっちはフーカです。」

「うん?ゴン?」

「長いんでゴン太でいいですよ」

「あぁ分かっ…」

 

その時会議室に一人の職員が血相を変えて飛び込んできた!

 

「大変です!迂回してくると思っていたマラナ渓谷を真っ直ぐに対象は進んできてます!このままですと約10分程でここに到達します!」

 

その言葉に一同は驚愕した。

マラナ渓谷と言えばこの町から徒歩で5時間は掛かる場所、それなのにも関わらず職員は約10分と言ったのだ。

しかもあそこは人参ワイバーン以外にも集団で狩りをする吸血胡瓜コウモリや、恐ろしいクチバシで岩にすら簡単に穴を開ける蓮根キツツキ、知性を持つ大根ガーゴイルと高ランクの魔物でも逃げ出す危険地帯なのにそこを真っ直ぐに向かってきていると言ったのだ。

 

「全員、計画した通りのフォーメーションに直ぐ着くぞ!」

 

冒険者達は急いで町の外に出てデニムの指示通りのポジションに着く。

 

「全属性障壁展開!物理半減障壁展開!多重結界障壁展開!」

 

ゴンザレス太郎、フーカ、マジメの3人の計5人は町の障壁の上へ案内されていた。

そして、町の前に立ち塞がる多数の冒険者の先頭にデニムが立ち、そのSランクの実力と二つ名の盾極の名の由来となった障壁を展開する!

50…いや、100に届きそうな程の多重障壁が冒険者達の前に展開され、まるでお伽噺の一つを実際に見ているような光景がそこに広がる…

 

「なんて障壁なの…あれの中の一枚ですら私の全力よりも凄いわ…」

 

結界師のメールの呟きに全員が驚く。

そして、地平線に砂埃が舞い上がっているのが視界に入ると共にそれがこちらに向かってきているのが分かった。

 

「違う…これじゃダメだ…」

 

全員が前方を見つめる中、ゴンザレス太郎一人だけが空中に向かって何かをやりながら呟いているのであった…



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第50話 魔人族の進軍と魔王姫サラ

「なんだと?!一体どう言うことだ?!」

 

王座に腰掛け周囲に異形の怪物達に囲まれた一人の男が居た。

見た目は人間だが顔は青く本当に人間なら顔色が悪いなんてレベルじゃない、そして叫び声と共に体から同じく青いと言うより黒に近い靄のような物が昇る。

異常な程濃密に圧縮された魔力が肉眼で確認出来るのだ。

その男の発する声は空気を振動させ、天井に吊るされたシャンデリアの様なものが揺れる…

 

「申し訳ございません魔王様」

「謝罪よりも説明を求めているのだニセバスチャン!」

 

腹の傷が癒えたニセバスチャンが魔王と呼ばれた男の前に頭を下げ首を横に降る。

 

「突然でした。お昼のおやつをお食べになられていたお嬢様が突然胸を押さえまして、暫く動かなくなられたと思ったら「会いたい!」っと突然申されまして…」

「それでお前に攻撃を仕掛けて我が家を飛び出したと?ペットの銀獅子を寝惚けて抱き枕にして絞め殺してから自分の力が怖くなり、外に出なくなった娘が突然だと?」

「はい、もしや何か精神支配的なスキルの持ち主の仕業ではないかと…」

 

王座に腰掛けた男は少し考える…

 

「まさか我等の計画が漏れて人質として利用されたと言う可能性は?」

「魔王様、その可能性は低いかと思われます」

 

ニセバスチャンとは反対側にローブを被った男がいつの間にか立っていた。

気配を消していたとかではなく、今そこに出現したのだ。

 

「悪魔大元帥アモン戻ったか、してその根拠は?」

「人間族は未だに魔海を超えることが出来ず、こちら側に我々魔族が存在する事すら知りません」

「ならば偶然我が娘は被害に遭ったと?」

「もしかしたら神が何か手を出したのかもしれませぬ…」

「異世界召喚か…」

 

魔人族には以前神が人間を異世界から召喚し、魔人族を滅ぼすと占われた事があった。

これは将来的にこの世界を作った神がやる予定の事だったのだが、それはまだまだ先の話。

だが勿論この世界の住人はそんな事は知らない。

ただ、未来を占うスキルの持ち主は居て、そのスキルの持ち主が遠い未来にそんな事が起こると言うのを占っていたのだ。

 

「魔王様、もし異世界から召喚された勇者が居るとするならば、強くなる前に全戦力を使って先に葬った方が宜しいかと」

「悪魔大元帥、何故だ?」

「その者が力を付けて我々魔人族を滅ぼすのならば力の無いうちに倒してしまう、出る杭を引き抜いて石橋を叩いて壊しウサギを倒すのに全力を尽くすと言う人間族の諺を逆手に取るのです」

「出る杭を引き抜いて石橋を叩いて壊しウサギを倒すのに全力を尽くすか…良かろう!予定していた進軍は来期の春だったが今!行動を開始する!まずは我が娘『サラ』を助けに行くぞ!」

「オオオオオオオオオ!!!!」

 

この日、人間族の住む島から魔海を隔てて存在する魔人族の島から魔人族が人間族の島に攻め混む行動を開始したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「近い…近いわ!あの町…あそこに居る!あぁ、早く会いたい!」

 

禍々しいオーラを全身からまるでジェットエンジンの様に後ろに放ち、空中を滑走する一人の少女が平原を爆走していた。

あまりの勢いに少女の背後の地面は大きく抉れ、内陸まで海水が流れ込み始めている。

勿論海水の流れ込む速度が彼女の移動速度に追い付くわけもなく、それははるか向こうでの出来事なので知りもしないが…

 

「あれ!もしかしてあの人が!」

 

町の入り口からピラミッド状に冒険者達が彼女に対してSランク冒険者『盾極のデニム』を先頭に待ち構えているのだが、彼女の視界には遥か彼方の城壁の上に居るゴンザレス太郎しか見えていなかった。

そして、最初の障壁が彼女『魔王姫サラ』と接触し障壁67枚を貫通し、遂に彼女の突進は止まるのであった…



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第51話 魔王姫サラ遂に辿り着く

盾極のデニムは目の前で起こってる事実に冷や汗を流しながら平静を装っていた。

自らが張った障壁99枚の内67枚が魔王姫サラの突進で一瞬にして砕けたのだ。

これ一枚ですらAランクの冒険者数人掛かりで破壊できるかどうかという障壁だと言うのに、67枚も一瞬にして砕け散ったのだ。

しかもデニムには分かっていた。

目の前の存在は攻撃を仕掛けたわけではない、魔力を後方に放出する事で自身の体を加速させていただけで彼女自身は障壁に何の保護もなしに顔面から突っ込んだのだ。

つまり、その肉体の強度だけで67枚を一瞬にして砕いたのだ。

 

「おいおい、冗談きついぜ…」

 

そう呟いたデニム、目の前の存在が拳を握りしめ振り上げるのを最後にその意識を失う。

 

「邪魔っ!」

 

その一言と共にサラの無慈悲な拳が振るわれた。

残った全ての障壁がその拳の風圧で木っ端微塵に消し飛び、デニムの構えていた巨大な盾をデニムの体ごと後方へ吹き飛ばしたのだ!

その勢いは凄まじく、デニムを先頭に三角形の陣形を組んでいた冒険者達はまるでボーリングのピンのように吹き飛ばされる。

 

デニムの盾により死人は出なかったが、デニムを含む冒険者は既に戦える状態ではなかった。

たった一撃のパンチで勝敗は決したのだ。

当初の作戦だった交渉の余地もなく、第一の作戦は無に帰った。

それを見たマコトは手に持つデニムから託された『封印石』を握りしめ使うことを覚悟する!

 

次の瞬間サラは軽くジャンプするように飛んで障壁の上まで飛び上がった。

まるで浮いているようにフワリと浮かび上がったサラはそのままマコト達の前に着地する。

その目にはゴンザレス太郎しか見えていなかった。

 

「隙有り!」

 

マコトの叫びが響き、手に持ってた封印石をサラに向けて使用する!

だが、その封印石が封印出来るキャパシティを超える魔力が一瞬で注ぎ込まれ、破裂するように封印石は粉々に砕けるのであった。

 

「スキ?…そうか、これが好きと言う気持ち…」

 

そう呟いたサラにマジメの3人は一斉に攻撃を仕掛けるがマコトの剣はサラに触れる直前に根元から消し飛び、ジルの魔法はサラを避けるように違う方向に飛び、メールの障壁は霧のように飛散した。

 

「そんな…ありえない…」

 

フーカはその目でサラのステータスを見て震えていた。

先程ギルドで見たデニムのステータスと全ての数値の桁が2桁違ってたのだ。

次の瞬間サラから魔力を放出しただけの突風が吹き、マジメの3人は障壁から下へ吹き飛ばされ落ちていく。

そして、サラはゴンザレス太郎とフーカの前に立ち…

 

「あ…あなた、名前…名前は何て言うの?」

 

急に魔力をゼロにして、顔を真っ赤にして目を泳がせながら両手の人差し指を胸の前でツンツンと突っつき合わせ、恥ずかしそうに名を聞いてくるのだった。




ををっと?!
投稿時間指定に4月31日があって罠に掛かるところだったぜ!?


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第52話 魔王降臨

「ご…ゴンザレス太郎ですが…」

 

ゴンザレス太郎は口ごもりながらそう答える。

先程までとのギャップが凄すぎて、ドン引きの極みである。

 

「ゴンザレス太郎様…あぁー 」

 

突然両腕で自身の体を抱き締め、頬を朱色に染めながら身震いし、光悦な表情を浮かべるサラ。

一瞬怒りに震えているようにも見えたが、知りたかった愛しい人の名前を知ったという快感と至福のハーモニーに心踊らせているのだ。

まるで学者が長年研究していた成果を噛み締めるように、サラの心の中にゴンザレス太郎の名前が染み込んでいく…

 

「なんて素敵な名前、一度聞いたら忘れないインパクトとありふれつつも独創的に溢れたシンフォニー」

 

もう支離滅裂である。

恋する乙女は何処の世界でも暴走する様だ。

そして、サラはゴンザレス太郎に抱き付いて震えている少女に気が付く…

 

「…なにアナタ、私のゴンザレス太郎様になんで触れてるのよ!」

 

途端にサラから膨大な魔力が溢れ出す。

そんなサラからフーカを守ろうとゴンザレス太郎はフーカの前にその身を移動させる。

それを見てサラは目を見開く!

 

「なんで…ゴンザレス太郎様、何故私がこんなにお慕いしておりますのにそんな小娘を…」

 

見掛けはゴンザレス太郎もフーカも7歳なのだが、そんな事はサラには関係無かった。

これ程心踊り、衝動的に魔海を渡り数時間掛けてやっと会えた愛しい相手に自分以外の女が近くに居る、それだけでサラの殺意の衝動は押さえられなかった。

まるで体から浮かび上がる魔力が具現化し、死神を形作るようにサラの殺意はフーカの体に触れること無くその命を削っていく…

じわじわと呼吸が苦しくなっていくフーカは苦悶の表情を浮かべるが、それでもゴンザレス太郎から手は離さない。

 

その時だった。

サラが駆け抜けてきた裂けた平原に突如、50体ほどの魔族が姿を現した。

その場で意識を持っていた全ての人はその瞬間、如何に自らがちっぽけな存在かを理解した。

その50体の魔物全てが怒るサラと同等か、それ以上の魔力を持っていたからだ。

そして、その中にそいつは居た。

見た目は人間だがその保有魔力はその集団の中で更に飛び抜けており、障壁の中の町の避難所に居た人々は絶望を感じ取っていた。

そして、救援にこの町へ向かってた近隣の兵士達もまだ見えてもいない距離にも関わらず、その足を止めて立ち尽くすのであった。

 

だが、その集団の出現でサラの魔力の殺意は散り、フーカは解放された。

息も絶え絶えな状態ながら、命を救われたのだ。

しかし、次の瞬間サラと共に町の障壁の上に居た筈の2人は一瞬にしてその魔族の集団の真っ只中に立っていた。

 

「パパっ!」

 

サラが驚きつつも横に居る悪魔大元帥アモンの存在に気付き、ここまで全員を瞬間移動させてきて、更に自分達をここに瞬間移動させたのだと気付く。

当たり前だが、ゴンザレス太郎とフーカは何が何か分からないままであった。

 

「どうだアモン?」

「はっサラ様のステータスの一部がおかしな事になってます。恐らくそこの人間の聞いたことの無い『プロアクションマジリプレイ』とか言うスキルの効果ではないかと推測します。」

 

そう答えたローブの男を見てフーカは驚く、その男は自分と同じユニークスキル『スキミング』を持っていたのだ。

更に『強制瞬間移動』に『永続的洗脳』に『ユニークスキル封印』と明らかに異常なレアユニークスキルを複数保持していた。

 

「パパっ私は操られてなんかいないわ!」

 

サラのその言葉を聞いたその男は迷うこと無くサラの頬に拳を叩き込んだ!?

まるで粘土を彫刻刀で掘るかのようにサラは地面を抉りながら数十メートルも吹き飛んだ。

それを見たゴンザレス太郎はフーカの震える手をギュッと上から握りしめるのであった。



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第53話 ゴンザレス太郎の最後?

「ホホホッまるでゴミのようなステータス、どうやらそのスキルのおかげでそんな平然としてられるのかもしれませんがこれで終わりです」

 

そう告げたローブの男はゴンザレス太郎に手を向ける…

ゾクッと背筋が寒気を感じた次の瞬間!

 

「スキル『スキル封印』発動!」

 

そう唱えられ、ゴンザレス太郎はスキルの使用を封じられた。

町から離れた平原に居る魔物の集団の中、そこで絶体絶命の2人。

世界最高のSランク冒険者が相手にもなら無いレベルの魔物50体に囲まれ、ゴンザレス太郎はスキルを封じられたのだ。

 

「さて小僧、俺の娘に掛けた何かを今すぐ解け!」

 

多分こいつが親玉なのだろう、明らかに一匹だけ見た目は人間だが魔力の量が違いすぎる存在が命令をして来た。

サラの事を『俺の娘』と言った事で父親なのだと理解した。

 

「魔王様の命令が聞けないのか!」

 

異様に強い者だと思ったら魔王だった。

つまり何故かゴンザレス太郎は好感度MAXで魔王の娘を虜にしてしまったのだ。

怒鳴り声と共にゴンザレス太郎に手を出そうとした魔物が一体居た。

だが魔王によってその魔物は殴り飛ばされる。

 

「クズが、こいつを殺したら娘の何かが永遠に解けなかったらどう責任を取るつもりだ?!」

 

ゴンザレス太郎のスキルを封印したローブの男が吐き捨てるようにそう告げ、ゴンザレス太郎の後ろに居たフーカを瞬間移動で自分の手元に連れてくる。

 

「おい小僧、姫様に掛けたその謎のスキルを解除しないとこの娘の首をへし折るぞ!」

 

ローブの男はフーカの首にその手をかけゴンザレス太郎に脅しをかける。

ゴンザレス太郎は歯を食い縛り…

 

「フーカを離せ!」

 

っと叫ぶと同時に横に居た馬のような魔物に攻撃を受けた。

意識外からの魔法攻撃、反応もできなかったゴンザレス太郎はそれをモロに受けた。

 

「極小風魔法微風」

 

馬のような魔物が使用したのは最弱の風魔法、だが魔力が桁違いのため人の放つ中級の風魔法クラスの威力があり、ゴンザレス太郎はそれに吹き飛ばされ地面を転がって倒れる。

 

「なんて弱い種族だ。あれだけで気を失ったぞ!?」

 

風魔法を使った魔物は子供だとはいえ、あれだけでこれ程ダメージを負って倒れるとは思っていなかった。

まさか殺してしまったか?!と一瞬で冷や汗をかいた。

だが倒れたゴンザレス太郎の胸は上下しており、まだ息があるのを確認できて一安心していた。

 

「いやぁぁぁぁ!!!!タツヤ!タツヤー!!!」

 

フードの男に捕まってるフーカが泣き叫びながら暴れる。

このまま死なれては困ると考えたフードの男、フーカに起こさせようと捕まえていたその手を離し、フーカをゴンザレス太郎の元へ向かわせる。

倒れて意識の無いゴンザレス太郎の頭をそっと持ち上げ、フーカは自らの膝に乗せて泣く。

その時、声が上がった。

 

「まさかこの私が操られているとは思いませんでしたわ…」

 

フーカが駆け寄った時にムクリと起き上がって立ち上がり、体の埃を手で落としながら歩いてくるサラ。

ゴンザレス太郎が吹き飛ばされ気を失った為に好感度MAXの効果が切れたのだった。

 

「ををっサラ様!お目覚めですか!」

「悪魔大元帥アモンね?助かったわそして、パパありがと」

「我が娘として操られるなど情けない」

「うん、ごめん。っで悪いんだけどアイツの止めをやらせてくれない?」

 

魔族として心を操られた彼女は怒りを露にしていた。

自分より強い者しか興味の無いサラ、なのに貧弱な人間の子供に操られ恋をさせられた。それだけで彼女のプライドはズタズタで、怒りの発散に殺させてくれと頼んできた。

サラの呪縛が解けた今はゴンザレス太郎を生かしておく必要もない為、全員一斉にニヤケながら頷くのだった。

 

「さようならゴンザレス太郎、愛するって気持ちは悪くなかったわよ…『炎王球』」

 

サラの手から自身の体の3倍はありそうなサイズの炎の塊が産み出され、それがフーカとゴンザレス太郎に向かって放たれる!

 

「タツヤ…次の『転生タイムリープ』したらまた直ぐに会いに行くよ…」

 

フーカは最後を覚悟し、膝枕していたゴンザレス太郎に最後の口付けをする…

サラの炎王球が着弾する直前、フーカの体にゴンザレス太郎の腕が回されたのが一瞬見えた。

そのまま二人は炎の塊に包まれ周囲の草花は一瞬で蒸発するのであった。



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第54話 悪夢の始まり

炎の塊はその場に止まり空気を焼き付くし、徐々に徐々に小さくなっていく。

熱により周囲の景色は歪み、二人の居た場所はまるで隕石が落ちたかのようにクレーターとなっているのが見え始めた。

余りの熱量に土が溶けて蒸発したのだ。

 

「いつもながらサラ様の炎王球は凄まじい威力ですな」

 

悪魔大元帥アモンがサラに話し掛ける。

サラは少し寂しそうな表情を浮かべていた。

擬似的にとはいえゴンザレス太郎を愛した気持ちの幸せが思い出され、その手で始末したのを少し後悔しているようにも見えた。

だがその表情も炎王球が消失し、黒い煙が少しずつ風に流されて驚きに変わった。

 

「う…うそ…」

「ば…ばかな?!」

 

そこには両手を広げてフーカをその身で守るゴンザレス太郎が立っていたのだ。

肩で息をしながら俯きかろうじで生きているのは分かる、だがただの人間が耐えられるモノではないのは確かだ。

実際にサラの炎王球を障壁無しで喰らって平然と耐えられるのは、魔王と打ち出した本人のサラくらいしか居ないのだ。

なので魔物達が考えついたのは一つだった。

 

「火炎属性耐性持ちか、人間にしては珍しいが種が割れれば何て事はない」

 

先程の風魔法でゴンザレス太郎を吹き飛ばした馬のような魔物が口にする。

だが火炎属性耐性持ちだとするならサラではダメージを与える方法が肉弾戦のみとなる、その為馬の魔物が一歩前に出た。

だがその馬のような魔物『ゴズ』の発言に、首を振って驚いているのは悪魔大元帥アモンであった。

 

「違う…耐性なんて持ってない…障壁無しでまともに受けて立ってるんだ?!」

 

ユニークスキル『スキミング』を持つアモンはゴンザレス太郎のステータスを全て見ていた。

だが魔法防御力も普通の人間の子供より低く、耐性属性など一つも持ってない、にも関わらずこうして立っているゴンザレス太郎に未知の恐怖を感じていた。

そんなアモンの心中など知らずゴズはゴンザレス太郎に一気に近づき、近距離から風と氷の合体魔法『マヒヤロス』を唱える!

 

「合体魔法『マヒヤロス』!この氷の竜巻は永遠にそこの女を追いかけるぜ!」

 

対象がフーカなので避けたきゃ避けろ!とゴンザレス太郎に伝えるゴズ。

空気が氷り竜巻の中で鋭利な刃物と化し、まるで動く拷問器具のように二人に迫る!

 

「タツヤ!もういい!私に構わず逃げて!」

 

フーカの叫びにゴンザレス太郎は振り返り、傷だらけで焼け焦げた顔を微笑ませて…

 

「助けるって約束したろっ…」

 

最後まで言い終わらないうちにゴンザレス太郎はマヒヤロスに巻き込まれた。

その中でボロ雑巾の様に揉みくちゃにされ、全身を切り刻まれ、傷口は凍り付き、そのまま上空に打ち上げられた。

やがて竜巻の消失と共に地面に真っ逆さまに頭から落下し、鈍い音と共に倒れるのであった。



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第55話 反撃の始まり

「や…やったか?」

 

世界のルールはどのまでも平等で、一方的に攻め続けている側の魔物サイドはフラグを立てる。

だがそんな事は知らないゴズ、魔法によるダメージが無くても、あの高さから落ちればただでは済まない、しかも頭部から落下したのだ。

魔法にいくら耐性があろうと間違いなく死んでいるだろうと思い込み、唖然としているフーカに自分を守ろうとして死んだ者の死に顔を見せて笑ってやろうと倒れているゴンザレス太郎の近くに寄り、その頭部を掴み上げた。

 

「げひゃひゃひゃひゃ!これがお前を守ろうとしたヤツの末路だ!安心しな直ぐにお前も後を追わせて…」

 

そこまで話して突然ゴズはそのまま倒れた。

そして、持ち上げられた状態から頭部を離されてゆっくり着地し、ゴンザレス太郎は掠れた声で…

 

「まず…一匹…」

 

魔物達は硬直した。

一方的に攻め続け、確実に殺したと思っていた人間の子供が立ち上がり、何故か攻撃していたゴズが倒れたのだ。

 

「お…おい…ゴズ?なに遊んでるんだよ?」

 

狼風の化物が倒れた馬風の化物に声を掛けるが、ピクリとも反応しないゴズ。

ゴンザレス太郎はゆっくりとフーカの元へ歩いて行き、女の子座りで座り込んでいるフーカに何かを耳打ちする。

その間に狼風の化物がゴズに近より…

 

「し…死んでる…ゴズが死んだぁぁぁぁ!!!」

 

その一言は魔物達だけでなく、怪我の治療を行っている人間達にも届き、場は静寂に包まれる。

その中で狼風の化物が突如ゴンザレス太郎に向かって襲い掛かった。

 

「貴様ゴズに何をしたぁぁぁ!!!!」

 

ゴンザレス太郎に対し鋭利な爪による斬激を数度浴びせ、腹部に爪を突き刺しそのまま持ち上げジャンプし、全体重を乗せてそのまま高所から地面に叩き付けた!

あまりの衝撃に地盤はヒビが入って陥没し、周囲の地面が隆起する程であった。

だが押し付けている狼風の化物をどけて、ゴンザレス太郎が一人で立ち上がった。

狼風の化物はそのまま横に倒れ、口から舌が垂れているのを見て全員が殺されたのを理解した。

 

「二匹目…」

 

腹部に穴が開き、斬撃の跡が残るその姿から呟かれた言葉に反応し、更に5匹の魔物が一斉に襲い掛かりゴンザレス太郎を囲んで滅多打ちにする。

まるで金属を叩き付けているようなその音、ゴンザレス太郎が受けている衝撃は想像も出来ない程凄まじいのが誰にも分かった。

事実、打撃の衝撃で周囲の隆起した瓦礫が砕け弾けたのだ。

だがその中の一匹がまた突如倒れた。

その時近くに居た全員がゴンザレス太郎のやったことを理解した。

ゴンザレス太郎は手にしていた『毒針』で反撃をしていたのだ。

 

「三匹目…」



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第56話 人間の反撃

まさに悪夢と言える光景だった。

魔物側がどんな攻撃を仕掛けようと、ゴンザレス太郎はそれを正面から受け、隙あらば毒針の一撃を仕掛ける。

どんな強力な攻撃をしても立ち上がり、逆に毒針の一撃を貰うだけで即死する。

まさに魔物達にとって悪夢としか言えない光景が続き、魔王も徐々に表情が険しくなっていく…

 

「15匹目…」

 

頭から丸かじりにゴンザレス太郎を噛み殺そうとした虎の魔物も口内で毒針の一撃を受けて即死した。

だがゴンザレス太郎の動きを止める事が起きた!

 

「動くな!」

 

悪魔大元帥アモンである、再び瞬間移動でフーカを人質に取ったのである。

自身だけでなく半径30メートルまでの対象を自由に瞬間移動させられるこの能力が一番厄介で、ゴンザレス太郎のスピードではアモンを捕らえることは出来ず、逃げ回られたら打つ手が無かった。

だからゴンザレス太郎は内心喜んだ。

全ては計画通りと新世界の神のように笑みが遂に顔に出た。

これまで普通なら何百回、いや千回を超す回数死んでてもおかしくない攻撃を受けているにも関わらず、気が付けばその傷跡も無くなっており、笑ったのだ。

そして、アモンは最後にその笑みを見てその命を散らした。

 

「私に触れていいのは彼だけなんだから!」

 

フーカは既に事切れたアモンに強く言った。

その手に在るのはゴンザレス太郎と同じ毒針である!

そう、これはかつてマジメの3人にレベル上げ代行を依頼した時に、もしも3人が行動不能になった時に自分のみを守るためにメールが渡した物。

身を守る最後の手段としての毒針であった。

 

当たれば0.003%の確率で相手を即死させるこの武器、レベル上げ代行の依頼を受ける冒険者が依頼人に、護衛がやられても最後まで諦めないように…と渡すのが一般的とされていて、運があれば最悪の状況を生き残れるという命綱みたいなものであった。

実に約3万回に1回敵を即死させるという、無いよりかはマシというこの武器が猛威を震っていたのだ!

 

ゴンザレス太郎の体が光り何かが弾けるように破裂した。

その光景に魔物達は恐怖した。

それはアモンがゴンザレス太郎に掛けた『スキル封印』がアモンが死んだ事で解けた印であった。

見た目は人間の子供だが、もう魔物達にとってその存在は恐怖でしかなかった。

 

「全く情けないわね!」

 

そこまで傍観していたサラが遂に動き出した。

そしてゴンザレス太郎の方を見て…

 

「守れるものなら守ってみなさい!炎王球!」

 

得意の巨大な炎の塊を再び作り出し、それをゴンザレス太郎ではなく町へ目掛けて打ち出したのだ!

ゴンザレス太郎は焦った。

今から追い掛けても攻撃に追い付けず、あの威力なら間違いなく障壁を貫通し町中に着弾する。

あんなものが町の中で炸裂したら死人がどれ程出るかと考えたのだ。

だがその心配は無かった。

 

「スキル『リフレクドシールド!』発動!」

 

そこに立っていたのはSランク冒険者デニムであった。

彼はサラの炎王球に対し『魔法を跳ね返す盾』を産み出す!

それを見てサラは笑い声を上げる!

 

「アハハハハ!私の体当たりすら防げなかった人間程度の盾でどうにかなるもんか!」

 

しかし、デニムは口元を歪め目を見開いた!

その後ろに沢山の冒険者が集まっていたのだ!

そして、デニムの体を後ろから支える!

直後火炎球はデニムのシールドとぶつかり、僅かに炎王球の方が強いようでデニムの体を少しずつ押し下げていく…

このままでは押し負ける…その時であった!

 

「子供が頑張ってるのに不様な姿は見せられないしな!」

 

障壁の近くに立つ一人の男がそうハッキリと宣言し構えをとる!

ヤバイであった。

 

「スキル『居合い拳』発動!」

 

それはヤバイのユニークスキルで遠くの狙った場所に拳の衝撃を送るだけのスキル。

基本的に飛び道具の軌道を変えたりするだけのスキルでその威力はヤバイのパンチ力に比例するのだが…

 

「なっなに?!」

 

徐々に炎王球は押し返され、そして遂に跳ね返し魔物を数匹巻き添えにして大爆発を起こすのであった。



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第57話 完全勝利!

時は少し巻き戻る。

 

「あ…あの少年は一体…」

 

デニムはゴンザレス太郎が明らかに人間が耐えられる限界を越えた攻撃を何度も喰らい、その度に立ち上がる姿を見ていた。

明らかに異常な光景、だがその不屈の闘志と表情が容易な状態で無い事を表していた。

 

「こんな様で何がSランク冒険者だ!」

 

自身の不甲斐なさに悔しがるのだが、その直後ゴズを倒すのを目の当たりにする。

周りに居る冒険者達がその少年の勇姿に絶句する。

だがデニムは叫んだ!

 

「全員あの少年を助けられる様にステータスを上げろー!」

 

そう、デニムが考えた作戦はレベル上げ代行を逆に利用したものであった。

ゴンザレス太郎が倒した魔物の経験値が自分達にも加算されるのを利用し、レベルアップした自分達のレベルを全て自分の一番得意なパラメーターに一点振りして強化する方法であった。

普通ならバランスよく成長させるのだが、今の魔物達との力の差を一点振りで補おうと考えたのだ!

結果、デニムはスキルの強度!周りの人達は力と持久力、そしてヤバイはユニークスキルを使う為の力と素早さと筋力をゴンザレス太郎が魔物を倒す度に上がる度に全振りした!

その結果、サラの炎王球を全員の力で押し返したのだ!

 

 

 

そして、現在…

 

「こ…こんな事があってたまるかぁー!!!」

 

サラの雄叫びが響く!

最早最初の恋する乙女な表情は何処にもなかった。

そして、サラはゴンザレス太郎に襲い掛かり連激を浴びせる!

ゴンザレス太郎に毒針を使わせない様に一方的に攻め続けるのだ!

しかし、ゴンザレス太郎は一瞬の隙をついてサラの一撃をかわし懐に入った。

 

「私の負けか…」

 

サラは目を閉じた。

後悔は無かった。

この少年は自分よりも強かった。

それが嬉しかった。

スキルの力を使わなくても、この時のサラはゴンザレス太郎に惹かれたのだ。

 

「俺のミスで巻き込んでごめんな」

 

サラは耳を疑った。

ゴンザレス太郎から聞こえたのは謝罪だったのだ。

元はと言えばゴンザレス太郎が好感度MAXを発動したからこうなったと言うのを謝っていたのだ。

その優しい一言がサラの心を溶かした。

そして、ゴンザレス太郎は障壁の上でマコトが落とした『キメイラの翼』をサラに向かって使用した。

毒針で刺すのではなく彼女を飛ばしたのだ。

 

周囲の魔物達から見たらまるで一瞬にしてサラが消滅した様に見えたのだろう。

勝ち目が最早無いと考えた魔物達は我先にと逃げ出し始めた。

どんな攻撃を仕掛けても通用せず、反撃の毒針を当てられたら即死する。

こんな理不尽な無理ゲーに付き合えるわけがなかった。

そして、その場に残ったただ一人『魔王』はゴンザレス太郎の前に歩み聞く。

 

「見事だ人間、一つだけ聞きたい…何故娘のサラを殺さず飛ばしたのだ?」

「彼女を巻き込んだのは此方のミスです。それに、可愛い女の子は守るべき存在ですから」

「クックックッ…遥かに自分よりも強い存在なのに可愛い女の子だから守るべき存在とな…ハッハッハッハッ!」

 

静まり返った荒れ果てた平野に魔王の笑い声が木霊する。

誰もが固唾をがぶ飲みしながら二人のやり取りを眺める。

もしも魔王が町に向かって攻撃を仕掛けてきたらとてもじゃないが防げる気がしないからだ。

 

「全く人間というものは面白い存在なのだな、分かった今回はお前の事が気に入ったから退くとしよう。俺はお前には手を出さない。だが、サラはもしかしたら…その時はお前が守ってくれるか?」

「彼女がそれを望むなら…」

「クックックッ…」

 

そう笑いながら魔王は踵を返して空を飛んで帰っていった。

こうして、魔王の進撃は死者の一人も出すこと無く無事に撃退に成功したのだった。

 

そして、障壁の内側では様子見をしているジルから魔王が去った知らせが届き、人々が暴動を起こさないように神の使いとして町の人々の先頭に立ってサリアが戦う冒険者達に向けて祈りを捧げていた。

これはマコトが障壁から落とされてゴンザレス太郎のユニークスキルに全てを賭けた時に、その秘密がバレないように行動した結果であった。

実は前々から、もしもゴンザレス太郎の力を借りて町を守ることが起こった場合に計画していた事であった。

 

サリアとラストエリクサーの事を知っていたマジメの3人の計画通り、今回の魔物の襲撃はサリアの祈りの力で一人も死者を出さなかったと大々的に話題になるのだった。

ゴンザレス太郎の秘密はCランク冒険者以上の一部の人間しか知らない形に納められたのだ。 

そして…

 

 

「タツヤー!!」

 

ゴンザレス太郎に抱き付くフーカ、それを優しく受け止めるゴンザレス太郎。

姿は7歳なのにボロボロのその姿は歴戦の勇者の様に見えていた。

服も体もぼろ雑巾の様にズタボロで、焼いて凍らされて切り刻まれてぐしゃぐしゃだが、怪我と言う程の傷は見当たらなかった。

 

「無事なの?どうしてなの?教えて説明して!」

 

死んでてもおかしくないどころか生きてるのがおかしいレベルの事象だったのにも関わらず、こうして立っているゴンザレス太郎にフーカは取り乱しながら聞く!

あの時耳打ちされた。

 

「メールさんから受け取ってた毒針用意しておいて、もし連れ去られたら相手に何処でも良いから刺して」

 

っとゴンザレス太郎に言われた通り使用したら、なんと悪魔大元帥アモンを即死させたのだ。

一体どんなスキル効果がこの場に広がっているのかフーカは気になって仕方がなかった。

 

「今発動しているのはね…」



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第58話 激戦に隠されたコードの秘密

「今発動しているのはね…」

 

フーカはその言葉にオッドアイを輝かせながらゴンザレス太郎の言葉を待つ。

ループした中では起こらなかった魔物の襲撃、人間とは隔絶した力を持つ相手の撃退。

何度も何度も死に戻った中で感じた事の無い高揚感に、興奮が押さえられなくなりつつあるのを感じていた。

 

「実は2つあるんだ。」

 

そして、語られるゴンザレス太郎のコード!

その内容に最早唖然とするしか無いフーカは口を開けたまま聞き入っていた。

 

「あの時、サラとか言うあの人が突っ込んできた時に、もしもの場合を考えてガチャを回しまくって何か使えるのが出ないかと思っていたら…今回使った一つ目のコード『HP減らない』が出たんだ。」

 

そう、一つ目のコードはHP減らないであった。

これがゴンザレス太郎がゴズの風魔法で意識を失って、フーカのキスで目覚めた時から発動していた。

サラの好感度MAXと引き換えに使用されたコードなのだ。

 

「だけどね、これじゃ駄目なんだ。だってこのコードの反映範囲は自分だけじゃないからね」

 

ここが重要であった。

以前の実験でも分かっていた通り、ゴンザレス太郎のコードは本人だけでなく周囲にもその影響を及ぼす。

その証拠に、ゴンザレス太郎がこのコードを発動して以降は回復をする者は居てもいても、ダメージを受けている者は敵味方含めて一人も居なかったのである。

これがゴンザレス太郎がどんな攻撃を受けても立ち上がり続けられた理由であった。

だがダメージを受けずHPが減らないとしても、疲労は蓄積される…

今のゴンザレス太郎が疲弊しているのはそれが理由であった。

 

「それで更にガチャを回し続けて出たのが『追加効果確定』なんだ。」

 

武器やスキルには確率で追加効果を発動するものがある、例えば『炎の槍』という武器は一定の確率で追加効果を発動して炎の追撃が、スキル『ぶんどる』には攻撃後一定の確率で相手の持ち物を盗む、と言った追加効果があるのだ。

このコードはその追加効果を確実に確定させる効果がある。

 

「このコードが出た時にメールさんから以前貰った毒針の事を思い出してね、ぶっつけ本番でスキルの並行使用が出来るか試したんだけど成功して良かった」

「なん…だそりゃ…」

 

すぐ後ろから声がした。

そこにはデニムさんが呆れた顔をして立っていたのだ。

 

「あっ…今の話聞いちゃいました?」

「あぁ…それでか、俺のユニークスキル『リフレクドシールド』は相手の属性攻撃を跳ね返せる代わりに自身のHPを半分にするのだが、使用しても俺はピンピンしていたんでな、全く大した子供だよお前達は!」

 

そう言ってゴンザレス太郎とフーカの頭をグシャグシャと撫でる。

最初の強面な感じはどこへやら、今は優しい近所のおじさんっと言った感じのデニムの笑い顔にゴンザレス太郎とフーカは寄り添い、抱き付いたまま疲れが限界で眠るのであった。

 

「お前達の秘密は他言しないから後は大人に任せてゆっくり休め」

 

意識を失う直前、デニムのその声をゴンザレス太郎は耳にした気がした。



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第59話 好感度MAXが誤発動した理由

目を覚ましたのは翌日の昼であった。

 

「知らない天井だ…」

 

そこは診療所で、両親が寝ずの看病をしてくれたらしくゴンザレス太郎が目を覚ましたことに大いに喜んでくれた。

何故か同じ診療所で治療していた冒険者達も同じタイミングで意識が戻ったことに大盛り上がりをしたのだが、ゴンザレス太郎が戦った事やスキルの事は内密だった為「こんなに沢山の人に心配をかけて!」と怒られてしまったのはもう笑うしかなかった。

 

一方フーカの方は自宅にて両親の看病により朝には目を覚ましていた。

だがゴンザレス太郎のせいでこんな事に巻き込まれたと考えており、同じクラスにも関わらず金輪際接触禁止を告げられた。

だがフーカ自身が「ゴンザレス太郎と一緒に居られないならこんな家出てってやる!」っと叫び散らしたので頭を悩ませながら撤回してた。

事実フーカを連れてきてくれた冒険者ギルドの人達も「ゴンザレス太郎にフーカが助けられ、彼が居なかったら死んでいた」と伝えられていた。

親として微妙な気持ちであったのは言うまでも無いだろう。

 

そして、町も元の平穏な毎日が戻ってき…月日は流れた…

秋も終わりになり紅葉が散り始めたとある日…

今日もゴンザレス太郎とフーカは一緒に冒険者ギルドに来ており、周りの冒険者達に弄られながらマジメの3人を待つ。

あの一件でこの町のCランク以上の冒険者は軒並みレベルが上がりすぎており、他の町と同じランクにしても明らかな力量の差が生まれていた。

なにせ他の町ではAランクの強さがこの町ではBランクというとんでもない事になってるのだから仕方あるまい。

そんな中、ギルドに帰ってきたヤバイさんが声を掛けてきた。

なんでも現在Sランクの昇格試験をしているらしいのだが…

 

「それでな、この謎を解かないと扉が開かねぇんだわ」

 

ヤバイがメモを取った紙を二人に見せる。

そこには異世界の言葉で…

 

『えさわみぬざそおをにおあ』

 

と書かれていた。

それを見てゴンザレス太郎幾つかのパターンを考える…

そして…

 

「あおいのをおさずにまわせ?」

 

オタクだったゴンザレス太郎、勿論有名な銀田一探偵の漫画も読破済みである!

その言葉にヤバイがゴンザレス太郎の肩を掴み揺さぶりながら叫ぶ!

 

「どっどうやったんだ?!」

「これ母音と子音に分けて反対から並べて読むみたいですよ」

 

この世界の字は日本とは勿論違うのだが会話は日本語でゴンザレス太郎は通じている。

その為、先程のメモもこの世界の言葉で書かれていたのだが、この問題が前世で好きだった作品にも有ったことでゴンザレス太郎は軽々と解いてしまった。

 

「あ…ありがてぇ!これで俺もSランクだひゃっほぉう!」

 

そう言ってゴンザレス太郎に投げキッスを送って走り去るヤバイ。

この人こんなキャラだったっけ?っと考えるゴンザレス太郎の脳裏に一つのアイデアが浮かんだ!

 

「なぁフーカ?」

「えっ?!なっなに?」

 

意外なゴンザレス太郎の発想を目の当たりにして驚いていたフーカは慌てて返事を返す。

 

「シズクとあのサラって魔物の人ナンバーここに書ける?」

 

首を捻りながらもフーカはその二つの数字を念のためにと控えめおいたメモを見て並べた。

 

シズク『04427521』

サラ『71464225』

 

それを見てゴンザレス太郎はメモ用紙になにやら計算を始めた…

その見たこともない計算式に『?』しか浮かばないフーカはうっとりと考えるゴンザレス太郎を見詰める…

少ししてゴンザレス太郎が立ち上がった!

 

「分かった!なんでシズクちゃんではなく、あのサラって魔物に効果が出たのか!」

 

幾つもヒントはあったのだ。

シズクの人ナンバーを入れようとしたら桁が一桁多い…

他のコードの中にアルファベットが使われている…

入力するときの文字一覧に『F』まである。

 

「これ、人の人ナンバーを入力する時は16進数に直して入力しないと駄目なんだ!」



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第60話 聖女様、ゴンザレス太郎に会う

「っで16進数ってのは何なんだい?」

「へっ?あっマコトさん!」

 

すぐ後ろにマコトがいつのまにか立っていた。

そしてすぐ横には見かけない少女が居た。

 

「あれっ?そのぬいぐるみ…」

 

ゴンザレス太郎はその胸に抱かれた犬のようなぬいぐるみに見覚えがあった。

そう、それはゴンザレス太郎の部屋からシズクが持ち出したぬいぐるみ、シズク家族の命を救った品である!

なんの因果か、回り巡って再びゴンザレス太郎の前に戻ってきたのだ。

 

「?お兄ちゃんがゴンザレス太郎さん?」

「あぁ、うん、君は?」

 

そう聞いた時に近くに居た冒険者が突然少女を見て驚き、膝をついた!

 

「せ、聖女様!」

 

その言葉を皮切りにギルド内が騒がしくなり、慌ててマコトに連れられて一同はギルドを出るのであった。

 

 

 

マコトに連れてこられたのはちょっとした空き地であった。

大通りからは少し外れ奥まっている為に人は殆んど来ない、その場所でマコトはゴンザレス太郎に突然両手を合わせ…

 

「すまん、ゴンザレス太郎!実は頼みがあって…」

 

突然そんな事を言い出すマコトの服を掴んで首をフルフルと振る少女。

何がなんだか分からないゴンザレス太郎は横にくっついてるフーカと同時に首を傾げる。

 

「とりあえず話だけでも…なっ?」

 

マコトのその言葉に少し考えた後渋々頷く少女を見てニッコリ笑顔になって話始めるマコト。

 

「実はこの娘、サリアって言うんだが前にラストエリクサー使った事があっただろ?あの時から聖女様って呼ばれてて…こないだの魔物の件でもこの娘の名前を借りてゴンザレス太郎のスキルを隠したんだ」

 

マコトの話によると、あの川辺での爆発事件以来、聖女様の加護を少しでも受けようと次々に人が押し掛けて今お世話になってる老夫婦にも迷惑が掛かり、家に居られなくなってきて現在はマコトが匿ってるという話であった。

 

「っでだ、なんとか出来ないかと思って相談に来たわけ何だが…」

 

ハッキリ言って無茶振りもいいところである。

自宅が発覚した芸能人の悩み的なこの件、流石のゴンザレス太郎も苦い顔をする…

 

「それにな、この娘を捨てた家族が手のひらを返して自分達の家族だと主張し始めて…最近じゃ町中も彷徨けないんだ」

 

しかしこんな事をどうにか出来るのは未来から来た狸型のロボットか、人の記憶を操れる宇宙人対策組織の黒服の人達くらいだ。

 

「もういっそ他の町に引っ越すってのは?」

 

フーカが口を開いて聞いた。

一応サリアが嘘を言ってないか確かめる気のようだ。

 

「私一人じゃ生きていけない…」

 

その言葉は本心であった。

事実ラストエリクサーの効果で五体満足な体になり健康体にはなったが、少女が一人で生きていくにはこの世界は厳しすぎる。

だがフーカはサリアがフーカの質問にマコトの腕をギュッと握ったのを見て嬉しそうに…

 

「マコトの事が好きで離れたくないのね?」

「えっ?!いえっそんな…こと…ごにょごにょ…」

 

フーカはサリアがマコトにぞっこんなのを理解し、何とかしてあげたくなった。

サリア、成長は遅いが実はゴンザレス太郎やフーカと同い年の7歳だったりするが知らないフーカは…

 

「分かったわ!お姉ちゃん達に任せなさい!」

 

っと勝手に約束してしまうのだった。

 

 

※16進数とは1つの桁が16で次の桁に上がる数値である。

普段日常で使われているのは10進数で0~9まで10種類が終わると次の桁に行く。

分かりやすく2進数で説明すると、0と1しか使わないので0の次は1でその次が10そして11、100、101、110、111、1000となる。

プログラミングとかを学ぶ上で必要な知識ですので覚えておくといいかも。



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第61話 ゴンザレス太郎、サリアの為にコードを打ち込む!

「そうは言っても具体的にどうする?」

 

フーカに尋ねる形でゴンザレス太郎は口にしたが、マコトが頷いた。

マコトからしてみればゴンザレス太郎の質問も最もだ。

聖女様とバレない変装をして暮らすにしても毎日変装じゃ不便だし、かと言って人々の記憶からサリアの事だけを消すなんて不可能だろう。

これが一人ならなんとかなるかも…と考えるゴンザレス太郎はかなりスキルに馴染んでいるが…

 

「簡単よ!彼女が彼女じゃなくなれば良いのよ!」

 

フーカのその言葉が綺麗な声で上がる。

その言葉に一同は首を傾げ、頭上に『?』が浮かび上がる。

身代わりでも用意するのかと思ったら続けてフーカが話す。

 

「ゴンザレス太郎、この前のコード一覧見せて」

 

ゴンザレス太郎にそう話すフーカ、そのフーカの頼みにいつものメモを渡し…

 

「これ!このコードの実験してみましょ!」

 

フーカが指差したのは…

『主要キャラの名前変更 A5141551 55171E』

っであった。

ゴンザレス太郎が敢えて避けていたヤツである。

その理由は、誰かを指定するコードを打ち込む部分が無いと言う事だった。

 

「なんか怖いんだけど…本当にやるの?」

「大丈夫よ、それに試さないと何処でどんなコードが今後必要になるか分からないからね」

 

そう、マコトとサリアが目の前に居るから聞かないが、フーカは結局自分がなんでどうやって何処で死ぬのか言ってなかった。

漠然と時期と自分が死ぬこと、そして助けてほしいしか言ってないのだ。

だがゴンザレス太郎は何か言わない、言えない理由があるのかもと考え今まで聞かなかった。

だが、フーカは今までゴンザレス太郎が使用したコードがあっても確実に生き残れるとは確信してない、それは勿論『HP減らない』を使用しても…というのをその一言で理解したのだ。

 

「とりあえずやってみるか…スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

ゴンザレス太郎はスキルを発動させコードをメモを見ながら打ち込んでいく…

その光景を不思議そうに見るサリア…

っで、

 

「これは…なに?」

「膝枕」

「なんでスカート手で持ってるの?」

「明るいと寝付きが悪いと思って目を覆ってあげようと思って…」

 

フーカはいつもの膝枕姿勢をするが、履いている長めの黒いスカートを指で持って捲ってる。

白い太股が目の毒なのだが、そこに頭を乗せると言うことは…

 

「フーカお姉ちゃん大胆ですわ!」

「サリア、あの愛の力が奇跡を起こすそうだからあれは俺達の為なんだよ」

「……フーカ、お前何吹き込んだ?」

 

マコトにフーカは知らない間に色々と吹き込んでいることが判明し!問い詰めるも片目を閉じて舌をペロッと出すフーカ…

可愛いのだがゴンザレス太郎は外堀を埋められると言うのはこういう事を言うのか…と一人納得して膝枕に頭を乗せるのであった。



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第62話 コード『主要キャラの名前変更』発動!

柔らかい膝枕、慣れ親しんだと言えるくらい直ぐにゴンザレス太郎は寝入った。

 

フーカの尻に敷かれたゴンザレス太郎に敷かれるフーカの太股、卵が先か鶏が先かではなく、尻が先か太股が先か…

そんな意味不明な夢を見始めた瞬間フーカの声が聞こえた。

 

「ほらっゴンザレス太郎起きて!」

 

揺すられて目を覚ましたゴンザレス太郎。

目を開くと真っ暗で、柔らかい香りに鼻から息を吸い込むと…

 

「起きませんね…」

 

サリアの声が聞こえ意識が覚醒する、そういえば顔にスカートが掛かってるんだった!

思い出してゴンザレス太郎は体を下にずらすようにフーカのスカートから頭を抜いて起き上がる。

フーカのスカート中を他の人に見せないようにする気遣いもしたのだが、目が合ったフーカは何か言いたげな表情をしていた。

 

「どしたの?」

「なんでもない!」

 

何故かちょっと怒っているフーカに意味が分からないままのゴンザレス太郎…

仕方無く振り返ってニヤニヤと見ているマコトの方を向いた後ろで…

 

「もうちょっとドキドキして眠れないとか…あっても良いのに…ごにょごにょ…」

 

フーカの呟きは誰にも届かなかった。

 

 

 

その後、色々と試すがゴンザレス太郎の発動した『主要キャラの名前変更』の効果が全く分からず頭を悩ませる4人…

 

「もしかしてコード打ち間違えたのかな~?」

 

ゴンザレス太郎が自分の頭に手をやった時だった。

 

「あっ!?」

 

フーカが声を挙げた!

 

「今ゴンザレス太郎が手を動かした時に、サリアの名前表示が一瞬点滅したの!」

 

フーカのユニークスキル『スキミング』では名前からステータスや使用できるスキルまで見れるのだが、意識しないと人の名前だけが表示されてるのだ。

ここまでのゴンザレス太郎の稼ぎでフーカの神力はかなり貯まっており、無駄に使用しても全く問題にならない域にまで達しているので、最近は前髪をピンで止めてオッドアイを披露してる。

本人は口にしないがゴンザレス太郎が「綺麗なフーカのオッドアイ俺は好きだな」っと言ったからしていたりするのは誰にも言えない秘密だ。

 

「ゴンザレス太郎ゆっくりさっきと同じ動きして」

「こ…こう?」

 

ゆっくりゴンザレス太郎は頭に手を当てようとして…

 

「そこっ!」

 

その位置を見てマコトは気付いた。

 

「指差しか!」

「どうフーカ?」

「そうみた…いぃ?!」

 

ゴンザレス太郎がサリアの方を指差しながら話したら見ていたフーカが驚いて裏返った声をあげた!

 

「サリアの名前が…『どうフーカ』になってる…」

 

ゴンザレス太郎の『主要キャラの名前変更』スキル効果は対象を指差して話すと対象の名前が話した言葉に替わるのであった。



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第63話 更に増えたコードのリスト

「サリア」

 

ゴンザレス太郎が『どうフーカ』に名前が変更されたサリアを指差し呼んだ。

そのままフーカに視線をやると…

 

「うん、名前が戻ったよ…でもこれステータスの名前が変わっても使い道は無さそうだね」

 

そこで何かを閃いたゴンザレス太郎!アイテム袋から普通のポーションを取り出して指を差して…

 

「ラストエリクサー!」

 

それで誰もがゴンザレス太郎の意図を理解した。

だが残念ながらキャラにしか効果は無かったようで、フーカの確認でもポーションのままであった。

 

「まぁ名前が変えられるし方法が分かったって事で収穫はアリなんだけど…」

 

どう考えても使い道が犯罪者の名前を変えて、逃げる手助けをするくらいしか思い付かないのだ。

しかも名前を変えたところで結局なんの解決にもならないのである。

そんな何とも言えない空気の中、フーカが空気を変えようと声をあげた。

 

「そ、そうだ!魔物の襲撃の時に新しく追加されたやつも見せてよ!」

「まぁ良いけど…」

 

そう言ってゴンザレス太郎はフーカにメモを渡し、少し眠ることにした。

寝て起きてを繰り返すのは辛そうだが、そこはフーカがゴンザレス太郎の為に上がったレベルで睡眠魔法『暗黒睡眠堕落沈』を覚えていたので楽に眠ることができた。

 

「ををっ!?暗黒睡眠堕落沈を覚えた人初めて見た!!」

 

マコトの驚きも最もだ。

この睡眠魔法『暗黒睡眠堕落沈』は人以外には効果がなく、その癖にこの中二病ちっくな名前のせいもあって覚える人が殆んどいないのだ。

そんなマコトの驚きを特に気にすること無く膝枕でゴンザレス太郎を寝かせて預かったメモを見ていく…

 

『アイテム売ったら持ち物全て無くなる 12511212 51126104』

『地形の影響受けない E12E0352 A932493F』

『パーティーメンバーに加える ○○○○○○○A 51412393』

『レベル譲渡 A2404939 4640493C』

『HP減らない 73442252 51944185』

『経験値○倍 43852344 121254○○』

『スキル一切使えなくなる 15019244 04327112』

『回復アイテムでダメージ 12411255 44034404』

『追加効果確定 21519133 04A4193C』

 

フーカは頭を悩ませた…

 

(駄目だろくなのがないわ…ん?…待って!)

「サリア、貴女マコトが冒険者として出掛けたらどうするの?」

「えっと…どうしましょう…」

 

何も決まってない、それが答えであった。

 

「ねぇ、相談なんだけど貴女冒険者になる気はない?」

「えっ?私がですか?!」

「駄目だ!こんなひ弱な体で冒険者になんかさせられない!」

 

マコトが割り込んで話してくるがフーカは目をそらさず答える…

 

「彼女が強ければ良いのよね?それならゴンザレス太郎のスキルでレベルを譲渡してもらって、ステータスを上げてから行ってみたら?」

「いや、だが、しかし…」

 

煮え切らないマコトにフーカは突き付ける!

 

「それに彼女のユニークスキル『セーブラック』はスキル強化出来るみたいだから、もしかしたら凄いことになるかもよ?」

 

その言葉に驚く二人…

そう、二人ともサリアのユニークスキルが『セーブラック』だとこの時初めて知ったのだ。

マコトは知っていた。

このスキルは強化しないと幸運も悪運もばら蒔くだけのスキルだが、強化することで発散する時と方向を決められるのだ!

これはかなりのレアスキルで冒険者にとっては手が出るほど欲しくなるスキルであった。

なにせ敵には悪運を、味方には幸運を任意にプレゼントできるのだから。

 

「サリア、聞いてくれるか?大事な話なんだ。」

 

マコトはサリアの肩を掴み、これまでのサリアの周りで起こったことがサリア自身のスキルのせいだと説明した。

レベルを使ってスキルを強化することで、それを自由に操れるようになると伝えようとした。

だが突然肩を捕まれ真剣な表情で「大事な話を聞いてくれ」っと言ったマコトに恋心を抱いているサリアは勿論勘違いをした。

 

とりあえずフーカはゴンザレス太郎を起こしておこうと、ゴンザレス太郎の肩を揺するのであった。



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第64話 人類最強の6人誕生の日

「かくかくしかじかなのよ!」

「なるほど!って分からんわ!」

 

目を覚ましたゴンザレス太郎が見たのは、涙を流しマコトに寄り添っているサリアと「どうしてこうなった?」っと立ち尽くすマコトであった。

それで状況を聞こうとフーカに尋ねたら…

 

「かくかくしかじか」

 

マジに言ったのだ。

愛があればこれで通じる筈!っと自信満々なフーカに呆れ顔を見せていると、マコトさんが何があったのか説明してくれた。

だが、それで何故この状況に陥ったのかが分からずゴンザレス太郎は口を開いた。

 

「とりあえずサリアさんを冒険者にする為に『レベル譲渡』のコードを使って強化する作戦なのは理解したけど…」

 

そう、この流れで何故サリアがマコトに寄り添って泣いているのか結局分からないままである。

その後、マコトに寄り添ったサリアが落ち着くまでこれから譲渡する為のレベリング計画をフーカと話し合う。

おおよその目安が決まった頃にはサリアさんは落ち着き始めており、フーカがこれからの予定を話し始めた。

ゴンザレス太郎はその間にマコトからもっと詳しく説明してもらおうと話を聞いたら…

 

「いや、俺にもよく分からないんだ。俺は「君を俺が冒険者にしてやる!何があっても俺が守ってやるから安心してくれ」って言っただけなんだ」

(あーこれ鈍感主人公がフラグを立てちゃったパターンだわ。)

 

ゴンザレス太郎には分かった。

マコトはパーティーの一員として守るって言ったんだけど、サリアはマコトが何があっても一生守るって言ったと勘違いをしたパターンである。

 

「マコトさん?サリアの事嫌いですか?」

「い、いやそんな事は無いぞ」

「じゃ好き?」

「うっ…ま、まぁな…」

 

はい、言質頂きましたー。

 

「まっマコトさん!」

「はっはい!」

「私もマコトさんが大好きです!」

 

サリアどうも恋をすると暴走する系だったようだ。

 

 

 

っとまぁそんな事があってジルとメールに事情を話し、現在慟哭の洞窟に向かって親指口に入れた6人で移動中である。

出発前に最低限のステータスは必要だろうとゴンザレス太郎のレベル譲渡を試してみたところ、コードを発動させた状態のゴンザレス太郎の近くで対象を指差して「○レベル譲渡」って言うだけで譲渡出来た。

名前変更の実験は無駄ではなかったのは何よりである。

 

それはさておき、向かう先が慟哭の洞窟と言うことで前みたいに偉い目に遭わないかとゴンザレス太郎は考えたが、マジメの3人もあの魔物騒動で随分レベルアップしていたので余裕との事だった。 

 

「はい、じゃゴンザレス太郎宜しく」

「うーこれ今夜寝れないパターンな気がする…」

 

ゴンザレス太郎、既に名前変更で1回、解除で2回、出発前のレベル譲渡で3回、移動で4回、そして今から打つ経験値○倍で5回、帰りの移動で6回、最後のレベル譲渡で7回、の強制寝て起きてが最低でも確定しているのである。

2秒で眠れる射撃が得意な小学生ではないのだ。

 

「まぁいいや、スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

いつものそれを起動し、もう慣れた手付きでコードを入力し、フーカのスカートの中膝枕で暗黒睡眠堕落沈を受けて眠る。

地べたに毎回座って膝枕してくれるフーカに今度下に敷くクッション的な物を買ってやろう!と考えながらゴンザレス太郎は眠る。

数分後、フーカのキスで強制的に目を覚まさせられ、それからの一同はえらいこっちゃだった。

 

「あーなんていうか…魔物を1匹倒す度にレベルが10単位で上がるからなんか違和感だらけだわ」

 

ジルの言葉に全員が頷く、現在ゴンザレス太郎のコードで魔物を倒して手に入る経験値は最大の255倍である。

これは2桁の16進数最大の『FF』をコードの空白部分に入れたためである。

人ナンバーの件がなければこの事にもきっと気付かなかったと考えると何が幸いするか分からない。

知識は財産とはよく言ったものである。

 

 

こうして一同のレベリングはとんでもない速度で進み、レベル譲渡しなくても弱いサリアは直ぐにレベルが999でカンストしそうになる。

なので少し進んでは休憩しステータスに振ったりスキルを得たりと着々と進んでいた。

誰一人気付かなかったのは、レベルをステータスに振り続けていて既に全員がSランク冒険者レベルの強さを手にしているという事実であった。

 

そして、一同はあの場所に再び足を踏み入れる…

そう、今回の目的地…モンスターハウスである!

この日、Sランク冒険者を軽く凌駕する人類最強の6人が人知れず誕生しているのであった。



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第65話 戦鬼

ゴンザレス太郎一行は次々に生まれる魔物を作業的に倒し続けていた。

倒せば倒すほどレベルが上がり、ステータスを増強している事でどんどん作業は楽になっていた。

魔物の強さは変わらないのにこちらは強くなり続けているのだから仕方ないだろう。

 

そうして気付けばモンスターハウスでレベリングを開始して早くも1時間くらいが経過していた。

6人いるから2人1組でモンスターを倒す組、ステータス振る組、休憩する組に別れてローテーションしているのだが…

 

「はい、次サリアやってみ?」

「はっはい!えーい!」

ズガガガガガガン!!

 

サリアが手に持ったロッドで目の前に居た5つ目サイクロプスの腰を殴ると、近くに居た他の魔物を巻き込んで3メートルはある5つ目サイクロプスが地面を削りながら滑っていった。

殴っただけなのにどうみてもオーバーキルである。

 

勿論ゴンザレス太郎とフーカも新しいスキルやステータスへ負けずとレベルを振って強化しまくっている。

倒した魔物は素材を持ち帰れば凄い金になるのは分かりきっているのだが、どう考えても持ちきれないので放置している。

その魔物の死体が山になり、邪魔になったら場所を少し移動して…を繰り返して気付けばモンスターハウスは魔物の死体で埋め尽くされつつあった。

東京ドームくらいは在るこのモンスターハウスが魔物の死体で埋め尽くされるのだから凄まじい光景なのは言うまでもないだろう。

えっ?東京ドームのサイズが分からない?

大丈夫、ゴンザレス太郎も行ったこと無いから適当に言ってるだけである。

 

 

そうして魔物の死体に追いやられ、死体を食べる魔物が追い付かず、そろそろ出ないと不味いと言う時に地面が揺れた!?

 

「地震?!」

「でかいぞ!皆気を付けろ!」

 

互いに組になってたお互いを支え合い、地震に耐えたらそいつは現れた。

モンスターハウスの地面が崩壊しその中に巨大な棺桶の様な空間が出現したのだ。

そして、その中から起き上がったのは全身紫色をした6本腕の人形の魔物…頭の角を見ればすぐ分かった。

それは鬼であった。

黄色い目が3つあり、それがそれぞれバラバラに動き、口から飛び出した牙を器用に使って近くの魔物の死体を喰い始めたのだ。

下を向いたことで黄色い髪から生えてる白い角がよく見え魔物を食う度に伸びて太くなっていく…

 

「あれは…『戦鬼』?!」

「「「なんだって?!」」」

 

フーカのスキミングで魔物の情報が分かり、その名前にマジメの3人が声をあげる

 

戦鬼:千鬼とも書く場合がある伝説上の魔物。伝説によれば蠱毒の様に鬼の一族の中で体が欠損している者や生まれつき病弱な鬼が口減らしの為と娯楽の為に狭い部屋に閉じ込められ、殺し合いをさせていた時に殺した鬼を共食いし進化した存在と言われている。

 

魔物を食らえば食らうほど進化を続けるその存在にとって、ここは宝の山であった。

何せ部屋を多い尽くす程の魔物の死体があるのだから。

フーカは焦りだしていた。

戦鬼のステータスがこの時点で以前襲ってきたサラと同等にまで上がっていたからだ。

しかも…

 

「不味いわ…アイツ今の段階でこないだの魔物と同等くらいの強さがある上に…即死耐性があるわ」

 

それはつまりゴンザレス太郎のコードを使った毒針チートが使えないと言うこと。

更に…

 

「ちぇりあー!」

 

マコトがこないだの魔物から作られた新しい剣で背中を斬りつけるが、剣は浅く皮膚を傷付けるだけで戦鬼は気にせず、魔物を食べ続けてるからなのか直ぐに背中の傷は塞がり完治する。

 

「マジかよ…」

 

魔物を喰い終わるまでは襲ってこないが、それまでずっと鬼は強化される。

一同はこんな魔物が野に放たれたら大変なことになると冷や汗をかくのであった。



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第66話 魔王の町を襲う鬼の集団

慟哭の洞窟で戦鬼が出現した同時刻、魔海の向こうに在る魔王の国は襲撃を受けていた。

 

「お嬢様!こちらでございます!」

「ニセバスチャン!まだ兄様が!」

 

サラは執事のニセバスチャンに誘導され地下通路を進んでいた。

魔王から『サラを連れて退避するように』と指示を受けたニセバスチャンは普段は使わない通路を先導する。

 

「鬼ごときに魔王子アーサー様が負けるわけはありません!」

「だったら逃げなくても…」

「もしもの為でございます!」

 

人間界で戦鬼の復活に影響を受けたのか、魔界のゴブリンとも言われる鬼族が突然凶暴化し、一斉に魔王の国を襲っていた。

当然魔王率いる国の魔物達は鬼程度に負けるわけは無い、だが問題なのはその数である。

魔界の鬼は魔界のゴブリンと呼ばれるだけあり、その類いまれなる繁殖力で同族だけでなく別種族の雌でも孕ませる、だが恐ろしいのは別種族の雄の死体からも繁殖することが可能な事であろう。

これは鬼の精子の中に卵子が含まれていると言う生物学的にあり得ない生態を持っているからであった。

 

「ぐぉぉぉおおおおお!!」

 

魔王の拳の一撃で数百の鬼が一気に粉砕され肉片が飛び散る。

だが直ぐに空いた場所に別の鬼が入り込み同族の肉片を死姦する。

戦鬼の影響か数分後には成長した成体の鬼がそこで動き出すのだ。

味方がやられても敵を倒してもその数は増える、そんな状況下で魔王の国は必死に抵抗を続けていた。

普段ならこの状況下でも対処は可能であったか、だが魔王の国はゴンザレス太郎に倒された者達の穴が大きかった。

特に悪魔大元帥アモンの知略とゴズを筆頭に、広範囲殲滅魔法を使える者が抜けたのが非常に痛手であった。

 

「くそっキリがない!」

 

一番密度の濃い北側で一人、鬼達を相手に戦う魔王に対し東西で残った精鋭が戦っており、その中の一匹が愚痴る。

まだ鬼が襲い掛かり始めて15分くらいなのだが、押し寄せる水を延々とバケツで酌む様な戦いを行っているのだから仕方あるまい。

それでも20匹ほどのゴンザレス太郎と対峙した魔物はその口を聞いて思う。

 

(アレよりマシだ…)

 

事実鬼に攻撃を受けても掠り傷程度のダメージしか無いのでそこまで緊迫もしておらず、その者達が落ち着いているので状況は落ち着いていた。

 

一方南側には鬼の一斉行動に追われて逃げてきた魔物達が集まっていた。

その先には魔海が広がっており逃げ場は無い、だが鬼の群れが魔物の町を目指しているため現在は比較的安全で状況は落ち着いていた。

 

人間界では戦鬼が、魔界では鬼の大群が世界を騒がし始めているこの大事件。

これを引き起こした原因は一人の冒険者であった。

 

「やべーこの祭壇壊したのバレたらSランクになれないよなやっぱ…」

 

封印の洞窟と呼ばれるその最奥で盛大に転び、頭から祭壇に突っ込んでぶっ壊したヤバイその人であった。



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第67話 ヤバイのダイレクトおじゃまします

時は数時間巻き戻る。

 

巨大な門に12色のスイッチが並び、その扉の奥に封印された祭壇があるらしい。

Sランク冒険者の昇格試験としてそれに挑むヤバイの姿がそこにはあった。

 

「なんなんだこの暗号は?!」

 

それは中央に置かれた石板に刻まれた、開け方を記した暗号であった。

 

『えさわみぬざそおをにおあ』

 

っと書かれたこの暗号を解き、封印されたこの奥の祭壇に供え物として魔力の込められた魔石を古い魔石と交換し、持ち帰るのがSランクの冒険者になる試練なのだ。

この部屋の外にはこの部屋を守護してきたモルタルゴーレムが倒れている。

こいつを一人で倒せる実力、この謎を解ける知力、その二つがSランク冒険者に求められる力と知性と言うわけだ。

ちなみにモルタルゴーレムは洞窟内に漂う魔力で自動的に修復され、一定時間で再び元通りこの部屋を守護する。

戦っている最中も自動回復するゴーレムなので、単独で高火力攻撃が出来なければじり貧になる恐ろしい門番であった。

 

「12文字だから文字の回数分だけボタンを押すとか?」

 

ヤバイは焦っていた。

この昇格試験は期間が明日までなのだ。

しかもモルタルゴーレムが復活する前に謎を解いて依頼を解決し、ここから脱出しないと復活したモルタルゴーレムが入口に陣取るので外に出れなくなるのだ。

 

「ちっ、後10分で復活しやがるのか…仕方ねぇ、一度町に戻って準備を整えるか…」

 

Sランク冒険者には状況判断能力も必要だ。

強いだけではAランク止まり、冒険者達のトップに立てるだけの実力以外にも色々なものが試されるのだ。

ヤバイは今日はまだ昼前だが町に戻り、この暗号を解くヒントを探すことにした。

 

………

 

「ふっ、やはりお前でも難しいか」

 

洞窟の外に出るとそこには現Sランク冒険者『盾極のデニム』が声を掛けてきた。

彼が今回の昇格試験の試験管なのだ。

 

「なーに、ちょっと町で気分変えてくるだけさ」

「ほぅ…」

 

デニムも自分がSランク冒険者になる時に同じ試験を受けている、なのでその時の事を思い出しながら諦めてないその言葉を好感を持って受け止める。

 

「とりあえず期限は明日の日没までだ。過ぎたら半年は昇格試験受けれないからな」

「はいはい、分かってますよっと」

 

そう言い残しヤバイは町に向かって馬を走らせる。

 

こうして町に帰ったヤバイは数時間後、物凄い笑顔で戻ってきてモルタルゴーレムを倒し、青いボタンを押さずに回して扉を開けた。

後は祭壇の前に置かれている魔石を持ち込んだ物と交換すれば完了である。

 

「やった…これで俺もSランク…」

 

この世界のSランク、それはギルドから依頼を受けなくても固定任務と緊急時の呼び出しに答えるだけで固定給が約束される勝ち組と言われている。

その為、多くの者の夢のランクなのだが、そこに到達するための必須条件の最大の壁が元Sランク冒険者の推薦と立ち合い付きの昇格試験であった。

それが偶然とは言えゴンザレス太郎に関わった事でデニムと知り合え、こうして試験を受けれたのは幸運と言うより奇跡に近い事なのだ。

 

だがヤバイはまだ知らない、この試験の最後にデニムとの最後の決闘と言う試験が待っている事を…

そう、Sランク冒険者とは国が認めた規定数しか成ることを許されていないのだ。

デニム自身、先日の魔物襲撃の件で自身の力不足を痛感しており、それもありまだ自分よりも若い将来性の伸び代があるヤバイを推薦した。

だがその事をヤバイはまだ知らない。

これで自分もSランク冒険者!と浮かれていた彼に天罰が下ったのかもしれない。

松明の明かりで足元がしっかり見えていなかった彼はスキップしようとして岩に足を取られたのだ。

 

「げっ?!」

 

ヤバイにとって不幸だったのはスキップをしてる最中に足が引っ掛かったのではなく、スキップをしようとした直後に足を引っ掻けた事である。

空中であればまだ体勢も立て直せたかもしれないが飛ぶ瞬間に引っ掛かった為ヤバイはリアルに…

 

「ヤバイー!」

 

っと叫びながら祭壇に頭から突っ込むのであった。



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第68話 空飛ぶ幸運

「をっ遂にやったか!」

 

封印の洞窟入口にてデニムは自慢の盾を構えてヤバイを出迎えた。

これから最後の試練として、本気で戦う自分と決闘を行うことを伝えなければならない。

デニムは10年以上前に自分も体験した事を思い出していた。

デニムの前のSランク冒険者は『法聖のタトナス』という魔導師、今となっては最早名前しか伝わってないが実は現ギルドマスターだったりする。

この決闘はタトナスにとって『相性の悪いデニム』だからこそ勝利出来たと言われてもおかしくなかった。

事実デニム以外の誰にも気づかれてはいないが、先日の魔物襲撃の時もタトナス一人で正面以外の魔物を殲滅していたりする。

 

次の世代へバトンを繋ぐと言う行為にも似たこの決闘の事を話そうとヤバイに声をかけようとしたが…

 

「デニムさん俺やっちまったよ…」

「うむ、良くやった。だがまだこの試験は…」

「違うんだ俺やっちまったんだよ!」

 

Sランクにこれで成れると興奮しているのだろう、デニムはヤバイの話を聞かず決闘の話を何とか伝えようとするのだが、ヤバイは自分が仕出かした事に混乱していた。

二人の噛み合わない会話は数分続き、やがてデニムもヤバイの様子がおかしいことに気付いて話を聞いて驚愕した。

 

「さ…祭壇に頭から突っ込んで破壊しただと?!」

「すまない、本当にすまない…」

 

その後、デニムも同行し祭壇の状況を確認した二人は急いでギルドマスターにこの件を伝えに走るのであった。

この祭壇には厄災の鬼が封印されていると聞いていたデニム、最悪の事態を想定しマコトやゴンザレス太郎の協力を頼もうと考えていた。

 

 

 

そして、その二人は現在…

 

「邪魔だぁ!」

 

芋虫の様な魔物が立ちはだかりそれを蹴り一発で吹き飛ばすゴンザレス太郎。

そして、死んだ魔物を優先して喰らいに行く戦鬼。

喰い終われば再びゴンザレス太郎達を襲うのでその隙にいくら攻撃を当てても…

 

「駄目、全快まで回復してるわ」

 

フーカの一言でその攻撃が無駄だと知らされ、逃げながら対策を考える一同。

だがこうしている間もモンスターハウスであるこの部屋には魔物が新しく出現し、次々と襲い掛かってくるので対処する。

するとその魔物を喰らって更に戦鬼は強くなる。

 

「くそっ、これじゃどうしようもな…」

「キャアアアアア??!!」

 

ジルの叫びであった。

なんと戦鬼の手から白い糸が出てそれがジルの体に巻き付いたのだ?!

 

「くっ、まさか食らった魔物のスキルを覚えたのか?!」

 

慌てて白い糸を斬りにマコトが行動を起こす、だが新しく生まれた魔物に邪魔をされて近付けない。

その時であった。

 

「飛べ!セーブラック!」

 

サリアが右手から白く光る光元体、左手から黒く光る光元体を同時に放った!

白い光はジルの体に着弾し黒い光は戦鬼の体に着弾した。

直後ゴンザレス太郎が殴り飛ばした魔物が別の魔物にぶつかり、その衝撃で空中に飛び上がる!?

そのまま天井にぶつかり天井が崩落した!?

 

だが岩盤は戦鬼の上を中心に落ちてジルは奇跡的に無傷、しかも白い糸は偶然にも尖った岩石に切られて助かっていた。

 

これがサリアのユニークスキルが進化した姿であった。

幸運と悪運を同時に飛ばす事でバランスを保たせる独自の進化を遂げたのだ!

 

だが戦鬼には殆どダメージが通っておらず、直ぐに動きだし倒れていた魔物を6本の腕のどれかが掴み戦鬼の口元へ運びその傷を癒す。

ジルが助かったのは良かったが事態は何も好転していなかった。

 

「くそっ、この化物め!これでも喰らえ!」

 

ジルのアイテム袋にあった毒草を戦鬼に投げ付ける、だがそれすらも戦鬼は掴んで食べてしまう。

 

「駄目、あれも効いてない。回復してるわ」

 

フーカはこの状況を打破するための方法を考えながら、誰かが何かをやったら効果があるか、直ぐにスキミングで確認して報告する。

だがそのフーカの言葉を聞いてゴンザレス太郎は一つの考えが浮かんだ。

 

「マコトさん!もしかしたら行けるかも!」

「?!」

 

ゴンザレス太郎の異常なユニークスキル、その想像を超えた効果を理解しているマコトはその言葉に一切の疑いを持たず…

 

「俺達は何をすればいい?!」

 

その一言だけを返すのだった。



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第69話 ゴンザレス太郎への信頼

周囲を観察しゴンザレス太郎が声を上げた!

 

「あそこです!」

 

ゴンザレス太郎が指を指したのはかつてストーンブレイクで穴を開けてこもり、レベル上げ代行を行って脱出した部分であった。

その穴へジルとフーカが先行し穴の奥を魔法で更に広げる!

ジルが開いている穴を魔法『ストーンブレイク』で更に奥へと広げ、フーカがそれを邪魔されないように守りながら崩れないように補強していく。

スキミングで崩れそうな部位に土魔法で補強を施すフーカの動きは見事としか言いようがなかった。

ゴンザレス太郎に良いところを見せたい一心、恋する乙女は無敵である!

 

そして、マコトとサリアが近くの魔物を倒して戦鬼の足止めを行い、メールの結界で安全を確保してゴンザレス太郎が結界内でプロアクションマジリプレイを発動しコードを入力していく!

 

「OKよ!」

「こっちもだ!」

 

ジルの声が響き、続いてゴンザレス太郎の声も聞こえ一同は以前と同じように穴の中へ逃げ込む!

 

戦鬼の長い腕が届かないくらい深く掘られた穴の中へ全員が飛び込み、それをを確認してサリアのスキルとジルの魔法が飛び交う!

 

「飛べ!セーブラック!」

「スパイダーライトニング!」

 

ジルの敵味方関係なく空気中をランダムに電気が走るこの使い所が難しい魔法を使い、戦鬼の餌となる魔物を量産して時間を稼ぐ!

本来であれば後方にも電撃が走る筈なのだが、それをサリアの魔法で幸運になったジルが放つことで電撃は運良く全て前方に飛び、あちこちで感電した魔物の姿焼きが出来上がる。

 

「全属性障壁展開!物理半減障壁展開!多重結界障壁展開!」

 

それはデニムが得意とするサラが襲ってきた時に使われた多重結界!

メールはあの時見たそれを再現したのだ!

結界士としての本領発揮、デニムと言う見本があったからこそメールは大きく成長していたのだ!

更にメールもあの時のデニムを遥かに超えるレベルに達しており、展開された密集したその結界は見た目は薄いが驚くことに500を超えていた!

 

「よし!この隙に!」

「こっちも良いわよ!」

 

マコトの合図でゴンザレス太郎を寝かし付ける準備の整ったフーカとジル!

ゴンザレス太郎が視線をやると…

ジルが土魔法で豪華なベットを作り上げていた。

 

「ってなにやってんの?!」

「快適な睡眠は快適なベットから…私が頼んだ」

 

枕と思われる部分はフーカが座る様に形が作り込まれ、膝枕が高くなり過ぎないように出来上がってる…

 

「さぁおいでタツヤ」

 

座り込み、スカートを少し捲って太股をポンポンっと叩くフーカ…緊張感何処へ行った?

他の者も、もう慣れた光景なのか、4人も笑顔で親指を立ててサムズアップしている。

ゴンザレス太郎に任せれば上手くいくと確信し、安心しきってる仲間に囲まれゴンザレス太郎…

 

(俺、いける『かも』って言った筈なのに…)

 

緊迫していた筈なのにゴンザレス太郎の一言で場の空気は一気に緩み、少し悩みながらこの状況を打破するためにゴンザレス太郎はフーカの柔らかい膝枕で眠るのであった。



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第70話 反撃開始!

本来であればそれは悪手だ。

魔物を喰いその都度回復しながら成長する戦鬼、無限に魔物が沸くモンスターハウス。

無限に成長し続ける戦鬼はどんどん手がつけられなくなっていくからだ。

 

しかし、考え方によってはそこに籠ると言うのは…戦鬼を倒せると言う前提条件の上ならば悪い話ではない。

強くなればなるほど倒した際のレベルアップは大きくなるのだから。

しかし現状は、ダメージも既に殆ど与えられないくらい強化された戦鬼が相手なのだ、

こいつにいつまで籠城が持つのかは分からない。

既に食べた魔物のスキルを獲得し、使い始めている戦鬼がメールの結界を破壊出来るようになるまでそれほど時間は無いのだ。

きっと普通の冒険者であればそう考えるだろう。

 

「お願い、タツヤ…私のヒーロー」

 

フーカの柔らかい唇の感触にゴンザレス太郎は目を覚ます。

既にメールの結界は戦鬼の攻撃で半分程が瞬時に破壊され、直ぐにメールが修復する不利ないたちごっこが続いていた。

籠城し始めた事で死んでいる食料となる魔物が近くに居ないため、戦鬼は彼等を標的にしてきているのだ!

モンスターハウスから産み出された魔物は直ぐに戦鬼の力を察知し、逃げるように離れているのだ。

 

「ジルさん!」

 

飛び起きたゴンザレス太郎はジルに今の位置から横穴を掘り、別の場所に出口を作るように頼む。

そして、直ぐに開けられた横穴を使い、そこからモンスターハウス内の戦鬼から逃げている魔物を次々に魔法で撃ち抜いていく!

 

「ランススパーク!」

「アイスクラッシュ!」

 

ジルは雷系、フーカは氷系の魔法で次々と魔物を倒していった。

ジルはともかくフーカは攻撃魔法を覚えたばかりで精度はそれほど高くない、だが二人ともゴンザレス太郎の指示で神力を多目に消費するが、着弾後広範囲に被害を広げる系統の魔法を使用しているので次々と魔物を撃破していく…

倒した魔物は既に体長4メートル程に成長した戦鬼が腕を伸ばし直ぐに捕獲して口に運び喰らう。

まず異変に気付いたのは魔法を使い慣れてたジルであった。

 

「神力が減ってない?!」

 

神力の消費の激しい広範囲魔法を連続して放っていれば、貯めている神力の残量はいくら魔物を倒して増やしても足し引きマイナスで残量は減少していく。

攻撃魔法での攻撃をメインに扱うジルだからこそ、その残量には常に気を配っているのが普通なのだ。

なのに魔法を幾ら使用しても神力の残量は減らず倒した魔物の分だけ増えていっていた!?

 

これがゴンザレス太郎の打ち込んだコードの一つ『弾無限』の効果であった!

これは飛び道具に限らず、遠距離を攻撃できて何かが減少するものの減少を無かったことにするチートコードであった。

弓矢なら矢が、水鉄砲なら水が、そして…

 

「これならいけるかも!」

 

ジルが戦鬼のダメージを神力の消費を考えてなければいけそうと考えていた。

丁度同じように頃にフーカも異変に気付いた。

だがフーカの場合はジルとは違い直に確認ができるのだ!

 

「戦鬼のHPが減ってきてる!?」

 

それは反撃の兆しであった。



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第71話 戦鬼との激闘!

メールの張る結界をパンチ1発で300枚ほど破壊する戦鬼、通路が狭いため戦鬼の大きくなった体では6本の腕のパンチは1本ずつしかその穴に通らず、破壊された分の結界をメールがその都度張り直す事でかろうじでゴンザレス太郎達は耐え凌いでいた。

そして、横穴から道を掘って別の場所に出たフーカとジルが魔法で周りに居る魔物を倒して行くのが見えた!

 

「よし!メールさん後少しがんばってください!」

「ハイッ!」

 

メールにはまだ余力があり、破壊された結界を瞬時に修復して次のパンチに備える。

神力を湯水の如く使うこの戦法はゴンザレス太郎が居なければとても使えるものではない。

その時、戦鬼の残りの腕が離れた場所でジルとフーカが倒した魔物を掴み、それを喰らう!

直ぐ様次のパンチが飛んできてメールの結界が大量に破壊される!

 

「やはり魔物を食べる度にパンチ力上がってます!」

 

メールの報告を聞きながらゴンザレス太郎は戦鬼の動きが変わらない事に少し冷や汗をかいていた。

だが数匹の魔物を食らった戦鬼が突然喰った魔物を吐き捨てた!?

この今までになかった動きに一同は希望の光を見た!

だが一体何が起こっているのかはゴンザレス太郎以外誰にも分からず、再び戦鬼は無意識に倒れている別の魔物を口に運ぶ…

 

「GUGYAOOOO!!」

 

まるで恐竜の様な雄叫びがダンジョン内に響く!?

 

「これは…一体何が起こって…」

 

マコトのその言葉にゴンザレス太郎は嬉しそうに答える。

 

「マコトさん、魔物を倒して残った死体から素材を剥ぎ取りしますよね?その素材ってアイテムですよね?」

「ん?あっあぁ…」

「じゃあその魔物の死体全てが素材として活用出来るとしたら、その死体はアイテムだと思いません?」

「うん…?そう…だな」

「っであれば魔物の死体を食べて回復する戦鬼にとって、魔物の死体は回復アイテムなのですよ!」

「?!」

 

もうお分かりだろう、ゴンザレス太郎が発動しているもう一つのコードは『回復アイテムでダメージ』であった!

 

「だけどこれだけじゃ後一押し足りないな…」

 

ゴンザレス太郎は戦鬼が死ぬまで魔物を喰らうとはとても思えなかった。

幾ら知性が低い魔物だとしても死ぬことを考えれば、食べるのを止めるのは火を見るより明らか。

であれば…何か止めに使える強力な一撃…

そんな時、楽しそうに無限に放てる魔法で魔物を蹂躙しているフーカ、その横でジルが手元に電撃魔法で何かをしているのが見えた。

そして…

 

「電雷弾!」

 

それはサラが使っていた炎王球を雷で再現したオリジナルの攻撃魔法であった!

丸く固められた電気の弾は戦鬼にぶつかり、戦鬼は痛みに雄叫びを上げる!

 

「駄目だ!」

 

予期せぬ強力な一撃に戦鬼はフーカとジルの方へ意識を向けてしまう。

そして、二人の元へ戦鬼の3本の腕によるパンチが叩き込まれるのであった!?



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第72話 戦鬼遂に撃破!

砕け散る岩壁、舞い上がる砂埃…

 

「ふ…フーカァァァァ!!!」

 

ゴンザレス太郎は慌てて穴から飛び出そうとする!

だがその体をマコトが捕まえる。

 

「離してください!フーカが…フーカがぁぁ!!」

「落ち着けゴンザレス太郎!」

 

マコトに肩を揺さぶられるが、ゴンザレス太郎は今すぐに飛び出して助けに行こうとする…

崩れたその場所に戦鬼のもう3本の腕が叩き込まれる!

それを見てゴンザレス太郎は絶句する…が。

 

「ジル達なら一撃だけなら大丈夫だ!」

「何が大丈夫なんですか!避けれてても崩れた岩に生き埋めになっていたら…」

「ジルのユニークスキル『うつせみ』は一日に一度だけ物理攻撃を仲間ごと転移してかわせるスキルだ!」

 

マコトの言葉を証明するように戦鬼の背後で吹き飛ばされた魔物に目が行った。

そこにはジルを支えるフーカの姿があった。

スキルの消耗なのだろう、フーカの肩を借りてやっと歩けるジルをマコトが確認し飛び出す!

合わせてサリアが幸運をマコトに、悪運を戦鬼に飛ばす。

 

メールと共にメンバーが戻ってこれるように、途中の魔物を魔法で倒して無事に合流を果たす。

だが、それに戦鬼が気付いて穴に戻ってきたフーカ達にパンチを打ってくるのはほぼ同時であった。

だがサリアのセーブラックのおかげで間一髪、戦鬼の足元にいた魔物の死体を戦鬼が踏み、足を滑らせたせいでパンチは少し外れ壁に激突!運良く全員無事であった。

だがジルはスキルのせいでまともに動けない、サリアは運を使い果たした。

メールが張る結界も神力を異常に使うので、最早それほど余裕は残されていなかった。

 

「なにか…何か無いのか…」

 

考えるゴンザレス太郎…

その時ゴンザレス太郎の視界に入ったのは、サリアが腰に巻き付けていたあのぬいぐるみ!

それは忘れもしない、ゴンザレス太郎の部屋に在ったあの犬っぽい魔物のぬいぐるみである!

 

「ちょっとサリアそのぬいぐるみ貸してくれ!」

 

ゴンザレス太郎の言葉に困惑しながらも文字通り鬼気迫る状況、サリアは腰から取り外しゴンザレス太郎に犬のような魔物のぬいぐるみを手渡す。

迷わずそのぬいぐるみの口の中にゴンザレス太郎は手を突っ込み… 

 

「あった…!」

 

そこから出てきたのはあの白金貨であった。

皆が何故そんなところから白金貨が出てくるんだ?!っと言う目を一瞬したが、ゴンザレス太郎だから仕方ないの思考で直ぐに落ち着いた。

白金貨を手にしてたゴンザレス太郎は前世で好きだったあの超有名アニメを思い出す。

 

「いけるか?…いや、やるしかない!皆聞いてくれ!」

 

ゴンザレス太郎は自身のコードのせいで回復アイテムが使えないジルも含めて説明をした。

 

「本当にそんな事が可能なのか?」

「私は…ゴンザレス太郎を信じる!」

「この現状を打破するためにそれしか無さそうね…」

 

マコトは疑問に感じフーカは絶対の信頼、そしてジル、メール、サリアは試す価値ありと考えた。

そして、一斉一代の大博打が始まる!

 

「結界!」

 

メールが台になるように結界を張り、そこにゴンザレス太郎が白金貨を置く、見た目は白金貨が空中に浮いてる状態だ。

 

「「雷撃魔法!」」

 

その左右でジルとフーカが電撃魔法で電気のレーンを作る。

これで準備はOKだ。

 

「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

マコトとゴンザレス太郎が穴から飛び出し、戦鬼の周りの魔物を次々に倒した。

戦鬼は量産される餌を両手で次々に掴み食べていく!

確かにダメージとなっていくのだがそれ以上に戦鬼自体が強化され、自己治癒力が増して体力が減らなくなってきた。

だが目的は足止めだ!

 

「サリアいけぇーー!!!!」

 

マコトが戦鬼の動きが止まったのを確認して叫ぶ!

 

「いきます!」

 

結界に乗せられた白金貨をサリアが指で前方に弾く!

前に進んだ白金貨はジルとフーカの電撃魔法で作り出された電位差のある2本の電気伝導体製の代わりとなる結界で作られたレールの間に、電流を通す電気伝導体となる白金貨を弾体としてこの弾体上の電流とレールの電流に発生する磁場の相互作用によって、白金貨を加速させる!

要は磁力を利用して加速させたのだ!

そう、金はとても電気を通しやすいのである!

それにより加速させられた白金貨はまさにレーザー兵器となり戦鬼の腹部を貫いた!

 

みんな大好き超電磁砲、レールガンである!

※正確には電磁投射砲や電磁加速砲と言う。

 

戦鬼の腹部を貫いたレーザーは洞窟の壁すらも容易く貫き、既に日も暮れ始めた空に光の道を作り出した。

 

だが、戦鬼は死んではいなかった!

腹部から出血した傷も自己治癒力で直ぐに回復に向かい始めた。

 

「くそっこれでも駄目なのか!」

 

圧倒的髙威力ではあるが、口径が小さすぎた。

どれ程速度があろうと傷自体は小さかった。

マコトがそう発言したと同時にゴンザレス太郎の叫びが響く!

 

「サリア打てーー!!!!」

 

直ぐ様次のレーザーが戦鬼の体を貫き、更にもう一発!更にもう一発!

そう、現在この空間はゴンザレス太郎のコード『弾無限』が発動している為、メールの結界の上には打ち出した後も白金貨が存在しているのだ!

次々に打ち出されるレールガンの嵐!

これの恐ろしいところはメールは1枚の結界、ジルとフーカは腕に電撃魔法で電極を作るように帯電するだけ、そしてサリアは指で白金貨を弾くだけという超省エネ極悪連射砲台なのである!

 

次々に体に風穴を空けられる戦鬼も堪ったものではないだろう。

超速度で打ち出される白金貨は避けることも叶わず、相手は神力を殆ど消費することなくほぼ無限に自身の体を貫く防御力無視のレーザーを放ってくるのだ。

 

その光景に唖然と立ち尽くすマコト…

ここがモンスターハウスであると言うのに彼は立ち尽くしたのだ。

だが魔物はマコトを襲ったりはしない、圧倒的兵器の前に怯えモンスターハウスから出れない魔物達は隅に逃げることしか出来なかったからだ。

 

まるで蜂の巣のように体を穴だらけにされ戦鬼は遂に前に倒れ始め、その頭部を貫いたレーザーにより遂に戦鬼はその命を散らすのであった…



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第73話 空に飛ぶ光の矢

今朝の投稿で時間設定をミスり2話投稿して話が前後していました。すみません


「一体どうしたものか…」

 

町のギルドの一番奥に在るギルドマスターの私室にてギルドマスターのタトナスは頭を悩ませていた。

先程デニムから報告があり、Sランク冒険者志望の者が誤って封印の洞窟の封印の祭壇を破壊したと聞いたのだ。

 

「なんでワシがギルマスの時にこんな変な事件ばかり起こるのじゃ!」

 

机に向かって一人怒りを露にするタトナス、それも仕方がないだろう…

何せこの少しの間に、河川敷の謎の大爆発、聖女様の出現、SSSランクの魔物達の襲撃…

そして、今回の封印の祭壇破壊事故。

どれも数百年に一度有れば歴史に残る大事件ばかりである。

最も全てゴンザレス太郎が関わっているのだが、知らないギルドマスターのタトナスは頭を抱える事しか出来なかった。

ヤバイも本来ならAランク止まりで、フーカの過去を繰り返した歴史では一度もSランク試験は受けておらず、こんな事態にはなっていなかったから本当に御愁傷様としか言えない…

 

「せめてもの救いはまだ祭壇が壊れたことで何も起こっていないことか…」

 

タトナスは知らない、今現在ゴンザレス太郎達は戦鬼と戦い、魔海の向こうの魔物の町では鬼の集団による大襲撃が起こっていることを…

 

「このまま何事もなく自体は終息すれば良いのじゃが…」

 

そんな独り言がフラグと言わんばかりにギルドマスターの部屋のドアが開けられた!

 

「ギルドマスター大変です!」

「どうした?」

「空に…空に光の矢が…」

 

頭痛の種がまたやって来た…とタトナスは部下と共にギルドの外に出た。

その時には場は騒がしくなっていた。

空は夕日が沈み始めており暗くなってきている中、全員が空を眺めているのだ。

 

「何事だ?」

 

ギルドマスターの声にその場にいたデニムが「空に光の矢が飛んでいった」と話そうとした時にそれは起こった。

一本、二本、三本…

 

光の矢は更に次々と空に向かって飛んでいく。

そして、それを見上げる者の中には鑑定系のスキルを持つ者も勿論居て…

 

「な…なんだアレは…」

 

まさかそれが戦鬼と戦う冒険者達が協力して放ったレールガンとは思いもせず、人の手には決して負えない恐ろしい神の力と説明された。

それもその筈、Aランク冒険者の中でも破壊魔法で有名なゴウセルの使う『ギガントバースト』と言うユニークスキルは一撃で鉄の塊を粉砕する威力があると有名なのだが、空に飛ぶレールガンを鑑定した者によれば…

 

「アレは鉄なんて紙以下の存在としてそのまま貫通して飛んでいく威力がある」

 

と語られた。

空に放たれる無数の光の矢…

まさかそれが白金貨を電気の力で打ち出している省エネ散財砲だとは誰も気付かない…

町の人々は各々様々な憶測をたてるのだった…



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第74話 プロアクションマジリプレイ進化する!

洞窟…ダンジョンと呼ばれるそれは生きている。

意思があるわけではなく、ただそこに存在し本能のみで生き続けている。

口を開け、獲物が入ってきたら体内に居る魔物と言う洞窟にとっての微生物が分解消化するために襲い掛かり、死んだ獲物から栄養を吸収する。

その生態はまるで食虫植物の様だ。

どんな生物であろうと体内に異物が入れば排出する。

それはどんな生物でも変わらない…

そう、どんな生物でも…

 

 

 

 

「た…倒したのか?」

 

マコトが恐る恐る戦鬼の死体に近付いて行く。

ゴンザレス太郎はモンスターハウスの魔物達が先程のレールガンの恐怖に近寄ってこないのを良い事に、全員を戦鬼の死体周りに集める。

さぁ、楽しい楽しい素材取りタイムだ!

 

「とりあえず鬼の素材って何処を取れば?」

「基本的に人形の魔物は、人には無い部分と攻撃に使用してくる部位が素材対象だな」

 

ゴンザレス太郎の疑問にマコトが答える。

しかし、全員戦鬼の腕を見て首を横に振る。

成長を続け、今では全長6メートルにも達する巨大生物だ。

腕一本でも町まで運べるかと聞かれたら無理だと答えるしかないし、切断するにしても道具がない。

それに白金貨レールガンであちこち穴だらけなのだ。

 

「っとなると角ね!」

 

フーカの言葉に全員が頷き戦鬼の角を取り始めた。

幸いなのは最後の一撃が脳を貫いたが角は無事だったことだろう。

しかも前のめりに倒れているので角が手の届く所に在ったのも助かった。

 

マコトが角の付け根をナイフで切りながら徐々に引き剥がす。

飛び散る血はメールが結界で防ぎ、ジルがその間の警護をする。

流石冒険者を続けただけあって手慣れたもので、直ぐに素材取りは終わった。

マコトの抱き抱えているその角、もう一本はゴンザレス太郎が持つ。

ここまでのレベルアップで身体能力はかなり強化されているのだが、それでもかなり重かったのかよろけるゴンザレス太郎を慌てて支えるフーカとサリア。

こうして一同は無事に戦鬼の素材を手に入れた。

不思議な事に魔物達はそれ以上出現せず、居た筈の魔物達もいつの間にかその姿を消していた。

洞窟はそのままゴンザレス太郎達が出ていくのを見送り、本当に脱出するまでなにもされなかった。

在る筈の罠すらも無かったのだ。

 

こうして慟哭の洞窟から出た一同は真っ暗になった外で夜営をする事にした。

洞窟にとって、彼等は不必要な消化出来ない異物として認識されたのであろうか、まるで出るのに協力するかのように魔物が出口以外の道に避けて道案内も兼ねてくれた様に見えた。

そのことに各々様々な意見を出したりして盛り上がる中、ゴンザレス太郎とジルは回復&スキル切り替えのため睡眠を取ることにした。

 

ゴンザレス太郎が眠る横で、フーカが死んだと思ったゴンザレス太郎の慌て方とか色々マコトの口から語られていたりするのだが、本人は寝ていたため気付かなかったのは幸いであろう。

フーカの妖艶な蕩け顔は、病みというか闇属性と誤解を受けるレベルだったからだ。

 

また、マコノも今回の件でサリアの事を認めて一人前の冒険者としてやっていけると太鼓判を押していた。

その事にフーカとメールは(遂にロリコンに目覚めたか)と内心思いつつ、サリアの想いが叶いそうなのに喜んだ。

 

そして、夜が明けて目を覚ましたジルとゴンザレス太郎。

戦鬼を倒した際に上がったレベルを振ってから出発しようと話し、二人がステータスを開いて驚きゴンザレス太郎が口にした…

 

「ユニークスキルにレベル999を振って進化出来るようになってる…」

 

そう、二人とも戦鬼との戦いでレベル上限の999まで上がりカンストしていたのだ。

通常であればレベルがここまで上がる前にステータスに振るのでカンストする事はまず無い。

新事実に驚く一同、だがそれも仕方在るまい…

サリアで実証されていたが、ユニークスキルにレベルを振って進化させられるまでレベルを他の物に振らずにためる人間が居なかった為に、ジルの『うつせみ』は進化させられるのを誰も知らなかったのだ。

流石にカンストまで上げないとスキルが成長しないなんて事実を確認する人は過去に居なかった為、成長しないユニークスキルもあると言う認識だったのだ。

そして、ゴンザレス太郎の方もユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』をまさか進化させられるとは夢にも思わなかったのだ。

 

ゴンザレス太郎は生唾を飲み込みながら、ユニークスキルを進化させるのであった。



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第75話 進化したユニークスキルの凄さ

「これで進化したのかな?」

 

ジルは自身の『うつせみ』を進化させた。

スキル名は変わらないが、自身のユニークスキルがどう変わったのかすごく楽しみである。

少ししてからフーカに調べてもらい、分かった事は以下の3つであった。

 

使用に消費するHPが半分になり日に2度使用できるようになった。

移動先を視界に入る範囲に指定できるようになった。

打撃を食らわなくても任意で発動出来るようになった(正確には空気との接触で発動出来るようになった)。

 

である。

特にユニークスキルの進化はまさにスキルの強化なのでこれには本人が一番喜んだ。

なにせ任意に発動可能なので打撃に限らず魔法や斬激に対しても使用でき、視界に入っていれば自由に行き先を決めて使える。

つまり牢屋等に入れられても脱出が可能と言う訳だ(対策としてスキル封じの手錠などが在る)。

 

そして、一番注目されていたゴンザレス太郎の『プロアクションマジリプレイ』の進化内容である。

 

まずコードリストの出現。

これにより過去にガチャで出たコードを一覧の中から選択するだけで再使用が可能になった。

次にコードのON/OFFスイッチの追加。

寝なくても切り替えが可能になった(これを伝える時にフーカが少し涙目になっていたりしたが…)。

最後に指定対象の選択や内容がリストから可能。

つまり好感度MAXを始めとするキャラや内容を指定する事が可能になった。

任意に獲得経験値の倍率を指定したり出来るようになった。 

だが逆にスキルの使用に今まで神力を消費しなかったのに対し、スイッチの切り替えに15000神力を消費したり、内容ごとにリストからセレクトするのに神力が必要になった。

勿論今まで通りコードを手入力して寝ることで発動すれば神力を使わずに使用することも可能である。

 

「いや、もうなんて言うか…凄いを通り越して呆れるレベルのスキルだな」

 

マコトの言葉も最もだと一同は揃って頷く。

だが神力の節約の為に膝枕がまた出来ると知ったフーカは口元がニヤけていた。

 

「ゴンザレス太郎君、フーカちゃんが居るんだから別の人に好感度MAXとか使っちゃ駄目よ」

 

メールさん、信用無いのか?

だがそのメールの言葉にフーカが無い胸を張って…

 

「大丈夫、誰かの入る余地無い」

 

『ねっ?!』って感じでアイコンタクトをしてきた…

フーカさんちょっとヤンデレ化も進化してません?

そんな馬鹿な現象に馬鹿な話が盛り上がり、一同は翌日の朝一で町へ帰るのだった。

 

 

「あっ!?マジメの皆さん!ちょっと待って下さい!」

 

町に入ろうとするところで門番に止められた。

何事かと思ったら…

 

「実は冒険者ギルドのギルドマスターから、マジメさん達が戻ったら直ぐに来るようにと言伝てを受けています」

 

そう伝令が来ていたようだ。

疲れもしっかり抜けぬまま向かう一同、ゴンザレス太郎は『親指口に入れると移動速度3倍』を試しに、眠ることなく解除してからマコト達と一緒にギルドへ向かった。

 

ギルドの中に入るとどうにもいつもと雰囲気が違った。

何やら暗い感じに包まれた雰囲気に違和感を覚える…

何故か皆がソワソワしていると言うか、会話が非常に少ないのだ。

嫌な予感を感じ、少し気が重くなりつつも受付に話を通してギルドマスターの所へ案内してもらう。

その時に実は受付にいた一人がマコト達を見て驚きに目をカッ開いていた。

その担当員は鑑定スキル持ちで、彼等のステータスを見てしまったのであろう。

既にSランク冒険者を軽く凌駕しているサリアがその中でも最弱と言う、その規格外の一同に驚きを隠しきれなかったのである。

 

そして、マコトはギルドマスターの部屋のドアをノックするのであった。



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第76話 ギルドマスターからの頼み

ノックの後返事が返ってきた。

 

「入りたまえ」

 

低い声でギルドマスターの声がしてマコトを筆頭に部屋の中へ入っていく。

呼ばれたのはマコトのパーティーという事でサリアも一緒だ。

多分ギルドマスターはゴンザレス太郎とフーカが一緒だろうと考え門番に伝令を出していたのだが、一緒に入ってきたサリアの姿を見て驚く!

 

「せ、聖女様?!」

 

そのギルドマスターの声に反応して奥に居た2名が顔をこちらにやった。

デニムとヤバイだ。

 

「な、何故聖女様がマコト達と一緒に?」

「あぁ、彼女は聖女ではなく冒険者として生きていく事を決めたそうなんだ。」

 

マコト、相手はギルドマスターなのにため口である。

でもギルドマスターは特に気にした事もなく、もしかしたら二人の間には何かあるのかもしれない…と考えたフーカはデニムを見て驚く…

 

(えっ?あれっ?デニムさんってステータスこんなものだったかしら?)

 

既に6人のステータスは人類最強レベルにまで上がっているのでそう感じても仕方無いだろう。

高速道路を降りたら一般道を遅く感じてしまうあれと同じである。

恐るべしは経験値255倍である。

 

「それでお話というのは?」

「う、うむ、そうであった。まずはかけたまえ」

 

そう言われギルドマスター、デニム、ヤバイの3人が向かいに座り、こちらは6人が並んで座った。

このソファーみたいな長い椅子はギルドマスターが過去に倒したシールドタイガーを加工して作った物で、実は盾極のデニムが愛用する盾もこのシールドタイガーの素材から出来ているのは余談である。

『余談だよ』は反対から読んでも『余談だよ』というくらいどうでもいい余談である。

 

とりあえず話し合いの邪魔になると思い、マコトとゴンザレス太郎は目の前の机の上に大きな角を置いて話を聞く姿勢をとる。

話しても大丈夫と判断したギルドマスターは話し始めた。

 

「お前達もお伽噺で『戦鬼』と言う名前は聞いたことあるな?実はな、あの話は真実で戦鬼は実在する怪物なのじゃ!」

 

まさかの戦鬼の話に一同は机の上の角を見る…

 

「そしてここからが本題なのじゃが、その戦鬼を封じていた封印が解かれてしまったのじゃ!」

 

一同はもしかしたら戦鬼が他にも居るのかと考えた。

 

「この国の何処かの洞窟の、人がまず入り込めない場所に封じられていると伝承には残されている…」

 

この国の…洞窟で…人がまず入り込めない場所…

 

「そいつは他の魔物を喰らって成長し、昔の冒険者達が封じれた状態よりも更に強くなっているじゃろう。きっと近い内に地上に出てくる、そこでこの町以外のギルドへも要請して対戦鬼用レギオン『勇者の集い』を結成することとなった。そこでマジメの3人とフーカさん、そしてゴンザレス太郎君にはその類いまれなる力をどうか貸してほしい」

 

そこまで言ってギルドマスターのタトナスは頭を下げた。

本来ギルドマスターが冒険者に頭を下げて頼み事をするなどあり得ないのである。

だがその行動が現状が本当に危機で人類の存続が掛かっていると言うことを証明していた。

それを見たヤバイは我慢しきれず口を開いた。

 

「すまない!本当にすまない!俺なんだ、俺が封印の祭壇を壊してしまったんだ!」

 

自身がSランク冒険者に成れると言うことで、浮かれていた時にやってしまった事で人類全体を存続の危機に落としてしまった。

その事に対してヤバイは心から後悔していた。

 

「俺もすまなかった、俺が同行して助けられていれば…」

 

ついにデニムまで頭を下げ始めた。

そんな町のトップ3が頭を下げている光景を見て固まる一同…

そして、ギルドマスターが頭を上げそれに合わせて二人も頭を上げた。

 

「多分、数日は大丈夫だと思う。もし直ぐに決められなかったら後日でも良いから考えてくれ」

「はっはぁ…」

 

マコトなんとも曖昧な返事を返す。

そこでようやくヤバイがそれに触れた。

 

「ところでこれは何の角だ?ユニコーン熊にしてはでかすぎるし…」

「あっそれ戦鬼の角です。」

「そうか…戦鬼の…えっ?」

 

ギルドマスターも何かの聞き間違いかと首を捻り耳を掻いて今度はギルドマスターが聞く。

 

「これなんの角だって?」

「戦鬼の角と言った」

 

ギルドマスターの口は閉じずに開いたままで鼻水が垂れる。

まるでギャグ漫画みたいなその光景にサリアが笑いそうになるのを堪えているのだった。



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第77話 Sランク冒険者『猛激のタイガ』

「これなんの角だって?」

「戦鬼の角と言った」

 

ギルドマスターの質問に何故かフーカが美声で答えた。

サリアは鼻水が垂れて唖然としているギルドマスターの顔を見て吹き出しそうになるのを堪えてる。

 

「実は…」

 

マコトが代表してここまでの経緯を説明した。

レベリングで経験値255倍は秘密のまま…

 

「それで止めは白金貨レーザーで仕留めたって訳だ」

「違う、白金貨ビーム」

「サリアキャノンですよ!」

「サンダーボルトジェットニンジン!」

 

俺ちゃんとレールガンって説明した筈なのに、なんか勝手に名前変わりまくってるし…つかニンジンどこから出てきた?

そんな事を考えた時だった。

 

「邪魔するぜ!」

 

ドアをバーンしてドーンと入ってきてズーンと立ちはだかる大男がそこに居た。

身長は多分190以上あるだろう。

そこに居るだけで背景にギャーン!と文字が浮かんできそうな程に圧力のある存在感のある男だった。

その後ろから小さい、とても小さい女の子が入ってきた。

多分身長は120位だろう、大男のせいで余計に小さく見えるその少女は入ってくるなり前に居た大男の足に抱きつく。

 

「ひっ?!」

 

何故かゴンザレス太郎達を見て小さく悲鳴を上げた少女を見てフーカが呟く…

 

「スキミング持ちか…」

 

それはフーカと同じユニークスキルである。

っとなると彼女は…

 

「ん?どうしたミシアたん」

「あの人達強さが異常…」

「ようやく来たか、紹介しよう彼がもう一人のSランク冒険者『猛激のタイガ』だ」

 

ギルドマスターのその紹介で一同は理解した。

あの魔物襲撃事件でこの町の冒険者のレベルが異常に高くなったと言うのは有名な話で、その強さをあのミシアと言う女の子が見抜いたのだろう。

 

「タイガ、この中じゃ一番弱い…よ」

「はっはっはっ!ミシアたんも冗談が上手いんだから!」

 

ギャハハハと豪快に笑うタイガを見て一同…

(あぁこういうタイプのやつか)

っと納得した。

 

「猛激のタイガよ、遠路遥々御苦労だった。すまんが今さっき例の件は解決したのじゃ」

 

ギルドマスターのその言葉にジューン?と意味が分からないと困った顔をするタイガ。

 

「おいおい、仮にも伝説の化物って話だが倒したやつが居るってのか?!ドイツだ?」

 

その台詞に何故かギルドマスターもヤバイもデニムもゴンザレス太郎を見詰める…

マコト達も何故か見合わせてからゴンザレス太郎を見詰める…

(ちょっと待てお前ら説明聞いてたよな?)

最後にフーカ…

 

「んっゴンザレス太郎頑張った」

 

ちょっと待てぇー!!!!

 

「んんんん?!このチビが倒したって言うのか?!」

 

ゴンザレス太郎7歳、身長はまだギリギリ100センチメートルなのですが目の前に立つタイガは恐らくその倍、しかもゴンザレス太郎は座っているのでまるで絶壁の様にズーン!と立ちはだかる。

 

「試してみたらどうじゃ?」

(こら爺!お前何言ってんだ?!)

「大丈夫ゴンザレス太郎優しいから手加減してくれる」

(おいおいフーカさん?)

「ここの訓練場じゃ狭いから町の外の広場でやりますか!」

(マコトさんあんたまで何言ってんの?!)

「お兄ちゃんの強いとこサリア見たいなぁ~」

(これは一体どうなって…ん?声が出ない?!)

「へぇ~俺のユニークスキル『バトル誘導ゾーン』の中に居るのに自我を保ち続けてるとはお前やるな」

 

パリィーンっと何かが割れる様な音がして全員がハッと我に返る。

そう、これが猛激のタイガのユニークスキル『バトル誘導ゾーン』である。

自身の攻撃力、防御力を最低にする代わりに自分の思うままの決闘の場を作り出せる空間を作るスキルである。

ただ、これを発動中は防御力も最低になるので不意打ちや事故に対処できない諸刃のスキルである。

だがその効果は絶大で、範囲内の人間はまるで洗脳されたように操られるのである。

 

「こらお主『バトル誘導ゾーン』を使ったな!」

「わりぃわりぃちょっと試しただけだよ、それにしてもこいつ凄いな…坊主、本当にちょっと力見せてくれよ」

 

タイガのその言葉に再びフーカ

 

「ちゃんと手加減してあげてね、あの人死んだら可哀想だから」

 

あぁ、フーカさんはスキル完全に無効果していたのね。

そんな事を考えながらゴンザレス太郎は渋々納得し、外に出るのだった。



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第78話 アイアンとホネオ、ゴンザレス太郎を見掛ける

「見て見て!これオフランス製の棍棒なんだ」

 

ホネオがアイアンに親がお土産で買ってきた棍棒を自慢してた。

ちなみにオフランスとはここからは少し離れた国で、猛激のタイガが在籍している国である。

その名の通りOFFランスと言うくらいその国では『槍等法』という法律があり槍を所持しているだけで罪となる変な国だ。

裏ルートで槍が高額売買される秘密組織があったりなかったりするらしい…

 

「オースゲー良いなぁー」

「へへっアイアンちょっと振ってみてよ!」

 

そう言われてアイアンは棍棒を手にして素振りをする!

手に持つ部分が指にフィットするように細工がされていて凄くしっくり来る。

 

「ををっ?!使いやすい!」

「でしょ?でしょ?いいでしょー!」

 

ホネオのいつもの自慢に付き合うアイアン、お前の物は俺の物ではないらしく、ちゃんと返していた。

だが音痴なのは本人以外の誰もが知っている。

 

「しっかし最近変な事件が多いよな」

「そうだね、魔物襲撃に聖女様に光の矢でしょ?」

「一体何が起こってるんだろう…ん?」

 

アイアンが何気に道を見ていたら少し離れた所を歩いているゴンザレス太郎を見かけた。

半日授業になってからは自由登校なので、行かなくても問題はないのだが大体の子供は通学を続けている。

 

「あれ?ゴン太のやつ最近余り学校来ないから変だと思ったら…」

 

そこまで言って詰まる、よく見るといつも一緒にいるフーカの他にも町で有名な冒険者のマジメ達、それに講師としてやってきた事もある町一番の期待株ヤバイ、それに…

 

「ねぇ!ねぇ!あれ『猛激のタイガ』さんだよ!Sランク冒険者の名鑑図で見たことあるもん!」

「それにあの人もしかして『盾極のデニム』さんじゃね?!」

 

二人は雲の上の存在であるSランク冒険者を見れたことで驚いていた。

二人だけでなく、周囲の人達もSランク冒険者が二人揃っている光景に黄色い声をあげていた。

 

「な…なぁ…サイン…貰いに行かね?」

「いいねぇ!アイアンたまに良いこと言うね!」

「たまには余計だ!ほら行くぞ!」

 

二人はゴンザレス太郎の事をすっかり忘れて後を追いかけた。

そして、追い付いたのは町の外へ続く門だった。

一足早く外に出てしまったので追い付けなかったが、門の外が見える場所でゴンザレス太郎とタイガが二人向かい合って居るのが見えた。

 

「な、なにやってるんだろうな?」

「稽古つけてもらうとかかな?」

 

二人はゴンザレス太郎があんな有名人と知り合いだと知ってワクワクしながら、これから始まる事に驚愕するなんて想像もしていなかった。



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第79話 猛激のタイガvsゴンザレス太郎

町の門を出てただっ広い場所で声が掛けられる。

 

「それじゃ…ゴザレ君だったかな?」

「ゴンザレス太郎です」

 

町の門から外に出た一同は少し離れて立ち、ゴンザレス太郎と猛激のタイガは向かい合って立っていた。

 

(どうしてこうなった?)

 

何故か一同揃って戦鬼を倒したのはゴンザレス太郎と言うことにしたので、その力が見たいとタイガはここまで連れ出したのだが、向かい合って立った事で半信半疑は疑惑に片寄る…

 

(座ってて分からなかったがここまで子供だとは思わなかったな、まぁ冗談でしたって誰も言わない所を見るとコイツのスキルの使い方が独創的って事か?)

 

タイガは向かい合って自分の身長の半分くらいしかないゴンザレス太郎を見て思考を巡らせる。

普段はおちょろけててもSランク冒険者である、実力差が大きくてもスキルの使い方次第で勝てるのが真の冒険者と言うのは身に染みて理解している。

例えば回避が異様に上手く、更に視界を妨げるスキルを使って弱者が強者を倒すなんてのはよくある話だ。

その他にも所持するスキルの相性によってはワンサイドゲームになるなんてのはしょっちゅうである、魔法攻撃しか出来ない者が魔法耐性を持つ者と戦うのをイメージすれば良く分かるだろう。

 

また、オリジナルでスキル同士を混ぜ合わせた使い方が上手いから強いと言うこともある。

例えるなら『瞬地』という一定距離を瞬時に移動するスキルと『硬化』と言う体を固くして動けない代わりに防御力を上げるスキルを同時に相手に向かって攻撃姿勢で使えば強力な攻撃を行うことも出来る。

女子供だから油断は出来ないのだ。

 

(さて、お手並み拝見といくかな)

 

タイガはゴンザレス太郎の前で構えた。

それは微塵も油断の無い真剣な表情で、下手すればその威圧だけで相手は戦意を喪失するだろう。

事実離れてみているアイアンとホネオはその覇気に驚いているのだから。

 

「えっと、すみません」

 

ゴンザレス太郎が手を上げて話しかける。

緊迫した状況にも関わらず、テスト中にトイレに行きたいと申し出るような言い方に油断を誘う作戦かと考えるが…

 

「ほぅ、俺の威圧を目の前にして平然としているのには驚いた。っでなんだ?」

「タイガさん猛激と言うくらいなので防御よりも攻撃が得意だと思うんですが…」

「あぁ、俺はこの拳で戦うのがスタイルだからな」

「分かりました」

 

そう言ってゴンザレス太郎も構える。

双方素手でジリジリと距離を縮め…

 

「なにっ?!」

 

突然目の前からゴンザレス太郎が消えた!?

この光景に一同は驚き!離れて見ていた二人はタイガにゴンザレス太郎が消されたと勘違いしたのだった。



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第80話 勝利の女神が微笑むのは!

姿が見えなくなったゴンザレス太郎、風の音だけが耳に聞こえたその時!

 

「そこだ!」

 

タイガのパンチが何もない空間を突く!

確かな肉の手応えに口元がニヤけるタイガ、そのパンチを両腕をクロスして受け止めたゴンザレス太郎が姿を現す。

 

「参った。俺の敗けだ」

 

周りの一同は意味が全然分からなかった。

消えたと思ったゴンザレス太郎に、なんの躊躇もなく正拳突きを当てたタイガ!

しかし、何故かタイガは自ら敗けを宣言したのだからそれも仕方あるまい。

 

「どうやって見抜いたんですか?」

 

ゴンザレス太郎の発動した新しいコードは『姿を消す』であった。

その名の通り自身の体を透明にして完全に見えなくする。

これは周囲には影響はなく、あくまでゴンザレス太郎一人にしか効果は無かった。

だがそれを容易く見抜いたタイガの方法に興味があり、尋ねたのだ。

 

「そこの嬢ちゃん、スキミング持ちだろ?」

 

その言葉でゴンザレス太郎も理解した。

タイガと共に来た女の子『ミシア』とフーカはどちらもユニークスキル『スキミング』持ちである。

なのでこの二人には姿は見えなくなっていてもゴンザレス太郎の居る位置に名前とステータスが表示されている。

姿を消したゴンザレス太郎が超スピードで見えなくしたのか、それとも瞬間移動で何処かへ行ったのか、そう考えたタイガはまずミシアの目を見た。

案の定全員がキョロキョロしている中、ミシアはゴンザレス太郎の居る方向を見ていたのだ。

そして、もう一人のスキミング持ちであるフーカも同じくして一方向を見つめていた。

後は二人の視線の交わる点にゴンザレス太郎が居ると言うわけである。

口で言うのは簡単だがあの一瞬でそこまで考え行動したのは流石Sランク冒険者と言えるだろう。

 

「それでそっちはいつだ?」

「消えたのと同時ですよ」

「マジか…全然気付かなかったよ」

 

タイガが聞いたのはゴンザレス太郎がいつやったのかである。

消えたゴンザレス太郎の位置を捕捉したタイガはその辺りに広範囲のスキルで攻撃を繰り出そうとした。

だがスキルが使えなかったので正拳突きで攻撃をしたのだ。

そう、ゴンザレス太郎がもう一つ発動させていたのは『スキル一切使えなくなる』である。

これが全スキルを使用できなくする効果であれば位置を捕捉されることもなかったのだが、この効果は常時発動タイプのスキルと既に発動しているスキルには適用されなかったのである。

 

「おまけに俺の一撃を正面から受け止めてピンピンしてるもんな、勝てないとは言わないが分が悪いのは間違いない。俺の敗けだ」

 

その言葉は見ていたアイアンとホネオにも届いていた。

まさかゴン太がSランク冒険者に敗けを宣言させるなど思っても居なかったので、開いた口が塞がらないまま二人はサインを貰うって事すら頭から吹き飛んでしまっていた。



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第81話 タイガの勧誘

「なぁゴザレ太郎」

「ゴンザレス太郎です」

「お前、オフランスで俺の次のSランク冒険者にならないか?」

 

突然タイガはそんな事を言い出した。

冗談と言うには目が真剣すぎた。

 

「勿論今すぐじゃない、お前が大きくなってAランク冒険者になってからの話だ」

「どういうつもりじゃ?」

 

ここまで傍観していたギルドマスターが話に入ってきた。

本来であれば何処の町を拠点にして冒険者を続けるかは本人の意志が尊重される、なので勧誘する事には問題は無い。

だが決められた町にそれぞれ一人ずつのSランク冒険者であれば話は変わってくる。

Sランク冒険者が現在5人しか居ないのではなく、5人しか認められてないと言うのはトップシークレットでもあり、誰にでも口にして良い話ではない。

 

「言葉通りさ、見たところまだガキだがそれで俺よりも強いんだ。素質と資格を考えれば唾を付けておきたくなるのは仕方ないだろ?」

 

事実、ゴンザレス太郎の異常性はギルドマスターも認めている。

謎過ぎるユニークスキルに加え、既にステータスもSランク冒険者を軽く凌駕しているのだ。

強さだけなら後の5人もSランク冒険者以上なのだが、やはりその5人がゴンザレス太郎を指名するくらい彼が特別だと言うのをここに居る誰もが理解しているのだ。

しかし、一人だけ違うことを考えている者が居た。

 

「次のってどういう事だ?」

 

ヤバイである。

デニムが既に伝えていると考えていたギルドマスターは戦鬼の件で伝わってなかったのを知らなかった。

ゴンザレス太郎、フーカ、サリアはまだ見習いで詳しい話は分からないだろうし、マジメの3人はギルドマスターが前Sランク冒険者タトナスだと知っているので気付いていると考えており普通に話してしまっていた。

 

「すまない、戦鬼の件で伝えてなかったな。昇格試験は最後に現Sランクとの決闘で勝利するのが最後の試験なんだ。」

「…マジか」

 

ヤバイ、いくら強いとは言えデニムと決闘して勝てるとは思ってなかった。

っと言うかこの中で一番弱いのがヤバイと言うのは本人だけが気付いてなかったりする。

そう、タイガと組んで行動を共にしているミシアも実はヤバイより強かったりする。

伊達にSランク冒険者と組んでないと言うわけである。

 

こうして戦鬼の件で一度は出たSランク冒険者を二人も加えた『勇者の集い』レギオンは結成前に解散することとなりタイガはオフランスへ帰っていった。

タイガにとってはゴンザレス太郎と出会えた事が何よりの収穫だったから良かったのであろうが…

 

そして、勿論翌日の学校でゴンザレス太郎がS ランク冒険者の猛激のタイガに敗けを認めさせたと言う噂をホネオが流し、偉い騒ぎになったのは言うまでもないであろう



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第82話 魔界の町崩壊への序章

タイガとゴンザレス太郎の決闘から10日が過ぎた。

月は11月になりひんやりした空気が町を覆う中、人間界はゴンザレス太郎達の活躍で戦鬼を倒し人々はなにも知らずに平和な日常を過ごしていた。

その頃、魔界はいよいよ危険な状態に陥っていた。

 

 

「東門に戦鬼5体!北門に龍鬼4体!西門に鬼王1体!出現!」

 

魔界の町の中央、鬼対策室では今日も24時間戦い続けた魔物達が交代で体を休めている。

疲弊しきった様子からここ数日のキツさが目に見えていた。

その理由が、鬼の進化であった。

最初はただの鬼ばかりであった。

だが倒しても倒してもその数は減らない。

そればかりかここに魔界中の鬼が集まり、とんでもない速度で繁殖を繰り返していた。

死体から繁殖を可能とする鬼は同姓であろうと構わず増え続け、共食いを行って進化をし続けていた。

キリンが高い木の実を食べるために首を伸ばしたように、象が体重を支える足を残したまま器用に動かせる鼻を得たように、生物は繁殖と共に進化していく。

ただの鬼だった中から属性耐性を持った鬼が生まれた時から魔王達はワンサイドゲームでは無くなり始めた、広範囲魔法で攻撃して時間稼ぎが徐々に出来なくなり、気付けば戦鬼や龍鬼、そして鬼の王とも呼ばれる鬼が近くに居る数だけ強くなる鬼王までが誕生し町を襲っているのだ。

 

「東門は少数精鋭で行け!やられて喰われると相手を強くするぞ!北門は残りの全員で死守せよ!」

「魔王様、西門は?」

「ワシが出る!」

 

そのまま魔王は立ち上がり外へ向かう。

慌てて他の魔物達も指示通り動き出す。

この程度ならまだ大丈夫…

 

「大変です!」

 

一人の魔物が慌てて駆け込んできた。

 

「東の『ロッテルダ』が陥落しました。」

「なんだと?!あそこは優秀な結界使いの魔物が沢山居たはずだぞ?!」

「そ…それが…遠隔操作系の鬼が現れたらしく、最後の伝令に『触手鬼』に気を付けろと」

「触手鬼?!」

 

触手鬼とは自らの体から極細の触手を伸ばして相手の脳に取り付き、寄生した生き物をゾンビのように操る鬼と言われてる。

触手鬼自体は大して強く無いのだが、気付かない内に取り付かれ操られたら操っている本体を倒さない限り解放されず、味方が敵になる恐ろしい魔物だ。

 

「いかん、魔王様の所へ誰か!」

 

しかし、北門へ戦える者は全員指示通りに行ってしまった為に誰も魔王の所へ行けなかった。

脳に寄生されるこの触手鬼は複数で対処すれば一人が取り付かれても対処できるのだが、この時魔王は一人であった。

そして、これが魔界の町『アムステルダ』崩壊の始まりであった…



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第83話 陥落と脱出

西門にて魔王と鬼王の戦いは既に勝敗が決しようとしていた。

 

「いくら鬼王と言っても、対処法が分かっていてはやはり話になら無いな」

 

そう言って魔王は雪崩れ込んでくる雑魚の鬼達に手を向け膨大な魔力を広げる。

 

「ダーククラビジョン!」

 

魔王の魔法が発動し、超重力の空間が出来上がる。

そこに雪崩れ込んでくる鬼達は次々に重力によって立てなくなり後ろからやってきた鬼に踏まれ絶命し、後ろの鬼もその空間に足を踏み入れて倒れる。

連鎖的に近付くこと無く死んでいく鬼達。

 

「孤独な王よ今楽にしてやろう」

 

近くに同族が居れば居るだけ強くなる鬼王は魔王の魔法で孤立し、ズタボロになっていた。

 

「ファントムクラッシャー!」

 

鬼王を闇の炎が包み込み、黒い炎は燃えるための燃料となる物体を喰らう。

焼かれながら炎に食われるという苦しみを味わいながら鬼王は絶命し、数秒後には跡形もなくなって消えた。

 

「北門はともかくとして東門はキツいかもしれないから行くか…」

 

魔王が一人呟いて歩き出そうとした時だった。

急な頭痛を感じ体が動かなくなった。

そして、目の前の地面から穴を開けて出てくる緑の鬼。

 

(グッ?!ぬかった。触手鬼か!?)

 

敵は既に魔王が来る前に地面の中に潜んでいたのだ。

その一匹を筆頭に次々と地面に穴を開けて這い出てくる緑の鬼達。

気付いた時には既に取り付かれてると言われているように魔王はその体を操られてしまった。

そして…

 

 

「アトミックスマッシュ!」

 

操られた魔王の手から放たれた超高圧に固められた炎の塊は西門の門だけでなく、その町を守る壁や近くに在った建物までも巻き込み爆破する!

幸い戦えない魔物達は城の地下へ避難しており被害は無かったのだが、そこから鬼が雪崩れ込むのは防げなかった。

 

 

 

「報告します!西門が破られました!」

「やはりか、ここを放棄する!魔王城に避難するぞ!」

 

魔王が操られるという可能性を理解していた指揮官は予定通り南側にある魔王城へ避難を始めた。

同時に伝令の空を飛べる魔物を飛ばし、東門と北門で戦ってる魔物達に避難命令が出された。

だが既に東門は更に追加で現れた戦鬼10体によって押しきられ壊滅していた。

北門に至っては全軍で対処していたので持ち堪えていられたが、避難命令が届くと同時に次々と魔物達は逃げ出した。

結果、北門東門も破壊され鬼達が雪崩れ込んで魔物の町アムステルダは城を残して鬼達の手に落ちた。

 

「サラ!もう、お前しか居ないんだ!」

「いやよ兄様!私も残るわ!」

 

魔王の娘サラの前に立つのはサラの兄『魔王子アーサー』である。

サラは魔王と同じく完全に人と同じ姿をしているが、アーサーは母親の血を濃く受け継いでおり下半身が大蛇である。

そう、魔王の妻はラミアなのである。

 

「多分鬼達の狙いは母様の魂石だ。だから俺はあれを守らないと駄目なんだ!」

 

二人の母親のラミアは既に亡くなっている。

だが魔王と結ばれた事でその存在は王核化し、死してなおこの町と子供達を守れるように魔王が頼まれてその命が尽きる前に石に変えたのだ。

理由は分からないが鬼達の狙いはそれであろうと予測していた。

 

「ですが…」

「それにお前には王子様が居るんだろ?」

「?!」

「魔海を渡って行ったと思ったら飛んで帰ってきて、それからお前が恋する乙女みたいな事してたのは良く分かってるよ」

「いえ、違うんです!ゴンザレス太郎とは別に何も…」

「へぇ、そんな名前なんだ!人間の名前って変わってるんだね」

 

アーサーは上手く妹の思考を反らしてこの場に残ると言わせなくしていた。

 

「俺もお前をそんな風に変えてしまう程の男にいつか会ってみたいから、この戦いが終わったら連れてきなよ」

 

それは良く聞く社交辞令。

決して叶わない約束…

 

「だからお前は行って生き残った魔物達を頼む」

「…分かりました。絶対に連れてきますから死なないで下さいね!」

「あぁ、お前の結婚式の仲人は俺がやりたいから会えるのを楽しみにしてるよ」

「それでは兄様また」

「あぁ、サラも元気で。ニセバスチャン後は頼むよ」

 

兄弟の最後の会話に邪魔になら無いように、影に隠れていたニセバスチャンはスッと体を出してアーサーに頭を下げ一言。

 

「畏まりました。アーサー様も…」

「あぁ、よろしく頼むよ」

 

サラとニセバスチャンは魔王城地下のシェルターへ駆けていく。

生き残った知性のある魔物達が避難しているそこに辿り着いたサラは緊急避難用の禁呪を使う。

それは魔王が作り出した大規模魔法。

その効果はそのシェルターごと思い描いた場所に転移する。

だが当然代償は必要だ。

その代償は…

 

「姫様、アイツに会ったら決着付けれなかったって言っておいて下さい。もっとも俺の事なんて魔物の中の一匹だろうから覚えていないでしょうが」

「確かにあいつは凄かったな」

「お前なんかビビってただろ」

「うるせぇや」

 

笑いながら語り合うのはサラを追って人間界に出向いたこの町の幹部の魔物達。

彼等の命と引き換えにこの大規模魔法は発動する。

サラも彼等とは子供の頃からの付き合いだ。

当然彼等が命を使って自分達を助けてくれると言うのは理解してる。

だが彼女は何も言わない、それは彼等が自分達で決めて起こす行動だからだ。

 

「それじゃ、また会いましょ」

 

サラのその言葉に笑顔を向ける魔物達。

そして、魔法が発動しシェルターは人間界へ飛ぶ。

 

 

「良くやったなお前たち。」

 

それはアーサーの言葉だった。

魔法を発動させ命を使って住民を助けた魔物の亡骸に最後の言葉を贈る。

 

「さて、俺もやるか!」

 

アーサーは母の魂石の在る部屋へ向かいそこで自身のユニークスキル『冥凶死衰』を発動させる。

 

それは一度発動すればその場から動けなくなり、自身が衰弱死するまでどんな事があっても決して解けない結界を張る、一生に一度だけ使える彼のユニークスキル。

それは例え魔王であっても破壊不可能の結界。

 

(果たして何ヵ月保つかな…)

 

アーサーはその思考を最後に永遠の眠りにつくのだった。



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第84話 有名になったゴンザレス太郎の新たなコード

午前中の学校が終わりいつものようにフーカと歩いていたら…

 

「ゴンザレス太郎く~ん」

 

まただ。

僕はいつものように笑顔で振り返って手を振る。

メキッとフーカが抱き付いてる腕から鳴る筈の無い音が小さく聞こえる。

 

「キャーキャー」

 

女の子達がゴンザレス太郎が反応したことで喜び、キャーキャー言ってる。

そして左腕に抱き付いてるフーカの力が更に入り、左腕が聞こえてはいけない音を奏で始め、女の子達のキャーキャーと言う声に合わせてゴンザレス太郎は内心ギャーギャー言ってる。

 

あの日、アイアンとホネオがタイガとの戦いを見ていたらしく、翌日学校で皆に話したもんだからそこから話が広まって、尾びれ羽びれ苦びれが追加され今では町中の人が知ってて困ったことになってる。

そして困る事がもう一つ…

 

「お前がゴンザレス太郎だな?随分チビだがお前を倒したら一躍有名になれるんだ!勝負しろ!」

 

はいはい、またですか。

ちなみにCランク以上の冒険者なら魔物襲撃の時のを見ているので、こうやって勝負を挑んでくるのはDランク以下の冒険者か他の町から来た人だけなんだが…本当にもういい加減にしてほしい。

 

「ねぇそう思いません?」

「お…俺が悪かった」

 

相手が全く反応できない速度で近付いて背後に回り、相手の持っていた武器を相手の背中にあてがって話す。

勿論左腕にしがみついているフーカはゴンザレス太郎の邪魔になら無いように同じ速度で同じ体勢で移動して、まるで二人セットの玩具みたいな動きで付いてきてる。

走ろうがジャンプしようが定位置は譲らないと動きをトレースしてくるのだ。

 

「それで今日はどの実験する?」

「そうだなぁ~」

 

ゴンザレス太郎はユニークスキルが進化したことでメモに残す必要は無いのだが、フーカが把握しておきたいと言うので今もメモ帳には控えてある。

 

『射程無限』

『戦闘終了でHP全回復』

『歩数カウントMAX』

『アイテム買うとお金増える』

『全裸になる』

 

「ちょっ?!最後の何これ?!」

「うん、使った本人だけなのか周りもなのか怖くて使えない…」

「だね…」

「タツヤと二人っきりの時以外は…」

 

ゴンザレス太郎は聞こえない振りをしてそのまま歩く…

アイテム買うとお金増えるってのが、所持金がいつの間にか増えているのか、店から渡されるのか気になるって話にシフトして盛り上がりながらいつものように二人は冒険者ギルドにやってきた。

 

「やっと来たわね!」

 

そこにはマコト達に囲まれた居る筈の無い魔王姫、サラが居たのだった。



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第85話 恋する乙女 魔王女サラ

お気に入り30件突破ありがとうございます。
記念にお昼に追加投下させていただきました(*^^*)


シェルターが転移したのはゴンザレス太郎達が住む町からすぐの場所だった。

そう、そこはかつてゴンザレス太郎が無双したあの広場である。

突然目の前に巨大な建造物が出現したのだから、町の門を警備していた者達は慌てて領主とギルドへと報告を走らせる。

 

少しして、その建物から出てきたのは一人の少女と魔物達であった。

騒がしくなっているその場、門番に出ていた者達の中に一人だけその少女を知っている者が居た。

 

「あ…あれはまさか…」

 

忘れもしないその恐怖に体が強張り、冷や汗が滝のように流れ出る…

後退りして恐怖に怯えるその表情を見て、他の門番も聞いてた話を思いだし気を引き閉めた。

全員に話ではあるが以前のサラ達の襲撃については伝えられていたのだ。

あの少女一人を止めるのに町の冒険者ほぼ全てが協力して、なんとか対処できたと聞いていたのだ。

 

「心配するな俺が出る」

 

その時後ろから声が聞こえた。

門番達が振り替えるとそこにはSランク冒険者の盾極のデニムが居た。

今朝から何か胸騒ぎがしていたので、朝から外の様子を見に行こうと門まで来ていたのだ。

 

「デニムさん」

「お前らはとりあえず警戒をしておけ」

「はい!」

 

そう告げるとデニムは一人町の外へ向かった。

その時、近くで採集依頼を受けて出ていたDランク冒険者の集団が突如現れた建造物から出てきた少女に近付こうとしていた。

 

「ちっ馬鹿共が!」

 

デニムは駆け出した。

 

 

 

「なぁ、お前この中から出てきたよな?」

 

若い冒険者がサラに声を掛けるが、サラはその声を無視して周りを見回す。

そして、自身の望んだ場所と言うのがゴンザレス太郎と会った場所、その事実に溜め息を吐きながら認めざるを得ないと理解する。

 

「あぁん?!なんだその態度は?!」

 

サラのゴンザレス太郎を想う溜め息を、馬鹿にされたと勘違いした冒険者がサラの胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。

 

「くそっ間に合わん!」

 

サラの一撃なんてくらったら一瞬で挽き肉になるのを想像したデニムであったが、その心配は杞憂に終わる。

サラの影から執事服を着た男がまるで生えてくるように出てきて冒険者の腕を掴む。

 

「そこまでにして頂けますかな?」

 

冒険者達は死を覚悟した。

触られた腕から伝わる絶対強者の力の気配に、自らが捕食される側の生き物だと理解させられたのだ。

一気に血の気が引いた冒険者だがその横にいるサラは頬を真っ赤に染めて…

 

(あの町にゴンザレス太郎が居るのよね、私の事忘れてないよね?)

 

なんて自覚してから一気に恋するモードに入り、冒険者が手を伸ばしたこともニセバスチャンがそれを止めたことも全く気付いてなかった。

 

「すまないな、うちのギルドの者が迷惑をかけた」

 

やっとたどり着いたデニムが声を掛ける声を聞いて、冒険者達はデニムの方を見て安堵の表情を浮かべる。

そして、デニムの拳で殴られて地面を転がる冒険者。

 

「ほぅ…」

「これで勘弁してやってくれ」

「ふむ、分かりました」

 

そう言い残してニセバスチャンはサラの影に再び消えた。

冒険者達は唖然として固まる。

そんな彼等を無視してデニムはサラに話し掛けた。

 

「それで、サラさんでよかったよな?」

「でもどんな顔して会えば…」

「あの…サラさん?」

「まず挨拶よね、お日柄も良く?こんにちわ?」

「…ゴンザレス太郎」

「ゴンザレス太郎様!?ほ、本日はおひにちわもよく…」

「………」

「………」

 

目が合うデニムとサラ、暫しの沈黙が流れ…

サラは涙目になりながら顔を真っ赤にして左手を上に掲げた。

 

「炎王球」

「だぁぁぁぁぁ待て待て!」

 

しかし、サラの手から出現した炎王球は次の瞬間氷の塊になって砕け散る。

予想外の出来事に真剣な面持ちでサラが振り返ると…

 

「相変わらず無茶苦茶しますね」

 

そこに居たのはマジメの3人であった。

ジルが氷魔法で炎王球を瞬時に凍らせマコトが剣圧で粉々に砕いたのだ。

それにはサラも驚きを隠せなかった。

3人の明らかに以前とは段違いの魔力を感じ取ったのである。

驚く事に、この短い期間に力の差は逆転していたのだから仕方あるまい。

 

「貴方達は確か…なんでこの短い期間でこんな…」

「とりあえず場所を変えよう、ここじゃ人目に付きすぎる」

「待って、この中に私の国の人々が居るの。」

「なら、俺がここに居るよ」

 

デニムがこの場所に残ると宣言し、それに納得したサラはマコト達に連れられてギルドの方へ向かった。

 

「あの…ありがとう…」

「いや、いいさ」

「ところでゴンザレス太郎…は?」

「ん?ギルドに居れば来ると思うよ」

「そっか、うん…そっか…」

 

それを見ていたメールとジル…

 

「奥さん奥さん、恋の臭いがしますよ」

「あらやだ奥さん、これから冬なのにもう春ですか」

「「オホホホホホホ」」

 

っと女子トークに盛り上がりながらギルドに向かい、ゴンザレス太郎が来たら全て話すとギルドマスターと一緒にゴンザレス太郎を待つのであった。



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第86話 ニセバスチャンの軽率な行動

「やっと来たわね!」

 

ギルドに入ると、ここに居る筈の無い人物があり得ない組み合わせで居た。

だがその視線にフーカは違和感を覚える。

サラのゴンザレス太郎への視線がまるで想い人に送る視線だからだ。

勿論好感度MAXは未使用なのはフーカも理解している。

 

しかし、直ぐにその視線を落とす。

フーカはサラの影にニセバスチャンが隠れている事をスキミングで見抜いた。

次の瞬間、自らの存在を見抜かれたニセバスチャンが本能でフーカを排除しようと攻撃を仕掛けた。

だが!

 

「ほぅ?!お見事です」

 

瞬時に影から鋭い突きを繰り出したニセバスチャンの手は、フーカの前に出たゴンザレス太郎によって掴まれて止まっていた。

それと同時にマコトの剣が首元に、ジルの杖が背中に、ニセバスチャンを攻撃する意思表示を示し、メールの結界が周囲を包み込み、デニムはギルドマスターの前で盾を構え、ヤバイは鼻くそほじってた。

 

魔界では実力が全て、不意打ちは受ける方が悪いと教わっていたサラはニセバスチャンの行動よりもゴンザレス太郎に庇われたフーカが気に入らなかった。

それも以前と違い、ニセバスチャンの動きに反応して反撃をしようとしたが、ゴンザレス太郎が庇った事でフーカは甘えて抱き付いてこれ見よがしに『私のナイトよ』っと目でサラを見ていたのが更に気にくわなかった。

だが、自分の態度次第でシェルターの魔者達の今後が決まるのを理解しているので、フーカに何かを言うこと無く頭を下げる。

 

「ごめんなさい、私の執事が失礼したわね」

 

その態度に一番驚いたのはニセバスチャンであった。

そして自らの軽率な行動を反省し、頭を下げて謝罪をする。

 

「申し訳ございません、大変失礼な事を…」

「ヤベェ?!鼻血止まらねぇ!?」

 

ニセバスチャンが謝罪を述べようとしたところに、鼻をほじったせいで鼻血が止まらなくなったヤバイが騒ぎ出す。

緊迫した空気は一気にほぐれ、自らの鼻の穴にポーションを流し込もうとして変な姿勢で居るヤバイにサラも吹き出した。

場の空気はすっかり変わり、警戒心なんて何処へやら…

 

「ブフゥー!もぅ、なんなのよー」

 

そのサラの言葉を皮切りにゴンザレス太郎。

 

「今回だけは許しますが次フーカに何かしようとしたら…」

 

ゴンザレス太郎の笑顔、だがその目は決して笑っていない。

ニセバスチャンは目の前の人間の子供に恐怖を感じた。

魔王様と対峙した時以来の感覚に…

 

(なるほど、お嬢様が惹かれる訳ですな)

 

っと納得し改めて謝罪と感謝を述べるのであった。



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第87話 絶望的現状

冒険者ギルドにゴンザレス太郎とフーカが来たので、一同はギルドマスターの部屋に移動して詳しい話を聞いた。

 

「半月前に突然鬼達が…ですか…」

 

サラの説明により、魔界では鬼の大群による被害で全ての町が壊滅したとの事だった。

と言っても魔界にある町は2つだけだったらしい、小さい集落に関しては把握もされておらず無事かどうかも分からない。

 

「しかし、戦鬼が10体以上に龍鬼に鬼王…触手鬼に加えて時間と共に更に強大な鬼も…ですか…」

 

ギルドマスターはゴンザレス太郎達が6人がかりで戦鬼を倒したと言う話を聞いていた、なのでその話に絶望しか想像できなかった。

しかし、それは間違いである。

ゴンザレス太郎達が戦った戦鬼、あれは慟哭の洞窟にある世界最高レベルと言ってもいいほどのモンスターハウスの魔物を無尽蔵に食したからこその強さなのである。

それも比較するのは間違いなのだが、そんな事が分かる筈もない。

ゲームでもレベル5の勇者とレベル50の勇者ならどちらが強いかと聞けば分かるだろう。

しかし数は力なのもまた事実であるが…

 

「現在は私の兄『魔王子アーサー』がユニークスキル『冥凶死衰』で母の魂石を守っているので大丈夫ですが、それが破られたら魂石を取り込んで、父である魔王と同等の力を得た鬼が誕生し、魔海を渡ってこちら側にも攻めてくるでしょう」

 

沈黙が場を支配する。

しかし、まだ語られてない事がある…

 

「サラさんのお父さん…魔王さんはやられたのですか?」

 

メールが恐る恐る聞く、あの魔物襲撃の時に鑑定スキルを持ってなくても遥か彼方に居る魔王の実力を感じ取っていた。

だからこそ魔王がやられたのか気になったのだ。

 

「いえ、父魔王は触手鬼に取りつかれて、操り人形となって町を襲いました。」

 

絶句を超えた時に人はどうなるのか、理解が及ばなすぎて思考回路が停止する者が大多数である。

そんな中、ヤバイが確認として口にする。

 

「つまり、鬼の進行で世界が滅びるまで後数ヵ月しかなく、防ぐ為には操られている魔王を倒すか無力化して、無限に近く繁殖する鬼を殲滅し、更にSSSランクの魔物が敵わなかった敵多数を倒さないと駄目ってことか?」

 

ヤバイが改めて口にした事を聞いて、サラは絶望的状況になってるのを再認識し頷いた。

説明不足に憶測が多く含まれた話ではあるが、あながち検討違いとも言えない状況を全員が理解した。

そして、現状的に完全に詰んだ状況なのを理解した上で全員が視線を向けたのはゴンザレス太郎であった。



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第88話 フーカの独白とゴンザレス太郎

こんな絶望的状況においても落ち着いて話を聞いているゴンザレス太郎。

彼ならばもしかしたら…

誰もがそう考え、視線を彼に送った時に立ち上がったのはフーカであった。

 

「皆さん、聞いてほしい話があります」

 

そして、フーカは遂に自分のユニークスキル『転生タイムリープ』を皆に話した。

その効果は死んだら生まれた瞬間から記憶を持ったままやり直す。

つまり…

 

「ここでその話をすると言う事は、この戦いは負けると言うことだな」

 

ギルドの人間にシェルターの見張りを代わって貰い、戻ってきていたデニムのその言葉にフーカは首を横に振る。

 

「私が経験した今までの世界では、私は次の3月31日までに必ず死にました。理由は様々ですがその中に鬼の大群に町ごと滅ぼされた事があります」

「待ってくれフーカ!君が死ぬ理由は色々あるのか?!」

 

ゴンザレス太郎はただ死ぬとだけ聞いていたので驚いていた。

その言葉に縦に頷くフーカ。

事実フーカが繰り返した世界で、もおフーカは様々な理由で必ず3月31日には死んでいた。

そして、今回の鬼騒動も紐解けばフーカが体験した歴史にあったのだ。

 

「ただ一つ、私が繰り返した歴史にゴンザレス太郎は居ませんでした。」

 

そう、ゴンザレス太郎が居ると言う事で歴史は既に大きく変化していた。

事実、この鬼騒動もヤバイがSランク冒険者の昇格試験を受けなければ発生しなかった。

そのヤバイも魔物襲撃の件がなければここまで強くなれず、その場合昇格試験を受ける事はなかった。

そして、過去にフーカが体験した世界で同じように別の理由で鬼騒動が発生した時も、ゴンザレス太郎が倒した魔物の幹部が生きていた為に戦況は拮抗し、これ程早く魔物の国が滅びることはなかった。

 

「ゴンザレス太郎…いえタツヤ、お願い助けて」

 

フーカのオッドアイがゴンザレス太郎を見つめる。

ゴンザレス太郎は笑顔で答える。

 

「約束だからな、フーカは俺が守る」

 

見詰め合うゴンザレス太郎とフーカ、子供同士の筈なのに桃色空間が広がる。

そしてゴンザレス太郎は全員の方を向いて頭を下げる。

 

「俺一人では限界があります。ですが皆さんの協力があればきっと…」

 

サラ以外の全員が根拠の無い言葉に何故か安堵し、各々好き勝手に「任せろ!」「便りにしてるわよ!」と事態を楽観視している雰囲気に包まれた。

それを見てサラは怒りを露にした。

 

「ふざけないで!魔王の町が半月と持たずに壊滅したのよ!そんなやつらを相手にただの人間がこの人数でどうにか出来るわけないでしょ?!」

 

サラの叫び、それに落ち着いた口調でゴンザレス太郎は聞き返す。

 

「一つだけ聞かせてくれ、魔王子アーサーのユニークスキルはどんな攻撃でも完全に防げるんだよね?」

「えぇ、そうよ。発動すれば死ぬまで絶対どんな攻撃でも防げるって聞いてるわ」

「町ごと消滅するような攻撃でも?」

「…まさかあなた…」

 

ゴンザレス太郎のまるで新しい玩具を見つけたみたいな笑顔に内心ドキドキが止まらないサラ、こんな状況だがやはり魔族と言う事なのだろう。

ゴンザレス太郎ならもしかしたらと考え協力を約束するのであった。



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第89話 俺達の戦いはこれからだ!

子供であるゴンザレス太郎に全てを委ねるのはどうかと言う意見もあるが、何か他に案があるわけでもない。

もしもの時のためのギルドを経由して『魔海の向こうからの鬼の大進行があるかもしれない』と前回結成前に解散となった『勇者の集い』を再結成し、そこに生き残った魔物達も参戦すると言う形で決着がついた。

 

「それでは馬車はこちらで用意させてもらう、頼んだぞゴンザレス太郎」

「はいっ!」

 

ギルドの方から馬車を用意して貰い、翌日の早朝に出発することが決まった。

もしかしたら生きては戻れないかもしれない、その為各々家族に伝えて挨拶をするようにとのギルドマスターからの心遣いでもあった。

魔海まで馬車で3日掛かる、サラは最初文句を言っていたが「馬車の道中で3日間ゴンザレス太郎と一緒に居られますぞ」っと影の中からニセバスチャンが語りかけて顔を真っ赤にして頷いた。

ただ問題は魔海を渡る方法が無いと言う事であった。

だがそれについてもゴンザレス太郎に考えがあるとの事だったので了承された。

全く7歳の子供の言うことを真に受けすぎだとニセバスチャンは最初考えたが、過去の実績からそれを信じて認めている一同の態度に黙った。

魔王から聞いてはいたが、本当に目の前の少年がサラを魔物の町まで飛ばし、幹部の魔物を一人で半数まで皆殺しにしたとは信じられなかったから仕方あるまい。

 

その日の夕方、ゴンザレス太郎とフーカはサラに誘われてシェルターまで来ていた。

人語を話す魔物に驚きつつも話してみたら何も人間と変わらず家族が居て、自分達と同じ様に日々を精一杯生きているのを理解した。

ゴンザレス太郎はそんな彼等の少しでも助けになるならと皆の目の前でスキルを発動させる。

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

そして、神力を消費しないように手打ちでコードを入力し初めて自分からフーカに頼む。 

 

「フーカ、膝枕お願いしていい?」

「えっ?…う、うん」

 

魔物達が見守る中、突然桃色空間を出現させるゴンザレス太郎とフーカ。

サラは膝枕と言うものを知らなかったので何をしているのか良くわかってなかったが自身が嫉妬しているのだけは理解していた。

だがゴンザレス太郎が自分達魔物の為に何かをしようとしていて、これが必要な事なのだと考え我慢した。 

 

 

 

 

「タツヤ、起きて…」

 

10分くらい寝たゴンザレス太郎をフーカは体を揺すって起こした。

目覚めのキスは無しである、サラが発狂して作戦に支障が出ると困るので…

そんな事を思いもしないサラを含め、起きたゴンザレス太郎に全員が注目する中…

 

「さぁ、皆でパーティーしましょう!」

 

突然のゴンザレス太郎の発言に混乱する魔物達であった。

 

 

 

 

「ど…どうなってるんだこりゃ?!」

 

魔物達は基本的に人間とは食べるものが違う、その為魔物達はシェルターの食料庫にあるとっておきの食材をゴンザレス太郎に言われてサラの了解と指示を得て調理しているのだが…

 

「お、俺頭がおかしくなったのかな?ここの肉を切って今炒めている筈なのに肉が残ってるし炒めてる方にも肉がある…」

 

ワニのような顔の魔物が調理をしながら混乱しつつ次々と料理を完成させていく。

影から出たニセバスチャンがそれを次々と皆の元へ運び、少ない筈の貴重食材をふんだんに使った豪勢な料理が次々と完成して並んでいく。

子供の魔物はこんなご馳走を見たこともないのですごく喜んではしゃいでいるし、大人の魔物も感謝の言葉をゴンザレス太郎に述べている。

 

「さて、どういう事なのか説明してもらえるんでしょうね?」

 

サラが最後の料理が完成する前にゴンザレス太郎に目の前で起こってる不思議な現象の説明を求めてきている。

その目は怒っていると言うよりワクワクが止まらない少年のような目付きである。

 

「これが俺のユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』の効果さ」

「…はぁ?!」

 

久し振りに常識はずれな現象をスキルの効果と説明して、全く意味が分からないと反応されたのに少し嬉しくなりつつゴンザレス太郎は続ける。

特に最近では何をやっても『あぁゴンザレス太郎じゃ仕方ないか』の一言で済まされてたので新鮮なのだ。

 

「今回使ったのは『料理で食材減らない』って効果でね、そのまま出すだけの食材は無くなっただろ?」

 

言われてサラが見渡せば、確かに注いだだけの飲み物やそのまま使用する食材は無くなっており、調理を必要とする食材だけ残っていた。

 

「はぁ…あんたが無茶苦茶だと理解していたつもりだったけど、私もまだまだ甘かったみたいね…」

 

呆れたような溜め息を一つ吐いて話すサラだが、その表情はとても柔らかくご馳走を食べている子供の魔物に視線を向けて…

 

「でも、ありがとね」

「お礼を言うなら全部終わってからっな?」

「う…うん…」

 

気付けば目を直視する事にすらドキドキがサラ、そんなサラにそう言ってゴンザレス太郎は子供の魔物に料理を切り分けているフーカの元へ行く。

こうしてゴンザレス太郎とフーカのお陰で人間と魔物の関係がかなり解れ、翌日から恐る恐るだが交流が始まる…

 

その日の夜、フーカと別れたゴンザレス太郎は自宅に帰り両親の前で頭を下げていた。

既にギルドマスターが直々に話には来ていたらしく「世界の命運を賭けた戦いにゴンザレス太郎を巻き込んでしまい申し訳ない」と頭を下げていたらしい…

帰ったらどう説明しようか悩んでいたが直ぐに話は通じた。

 

「お父さん、お母さん、もしかしたら帰ってこれないかもしれません。でも、世界を守るためにも僕は…」

 

そこでお母さんがそっと抱き締めてきた。

そして、父の口から今までゴンザレス太郎が行った実績を何かある度にマコトが話してくれていたことを知った。

その日の夜、ゴンザレス太郎は数年ぶりに両親に挟まれて川の字になって寝た。

両親は寝ずにゴンザレス太郎の寝顔をずっと見つめていたのを知らず、翌朝ゴンザレス太郎は笑顔で両親に挨拶をして家を出る。

 

その目に迷いは無かった。

町の入り口の魔物襲撃の時に立ってた門番に「行ってこい英雄」っと言われ「行ってきます」と返事を返し、ゴンザレス太郎はギルドの用意した馬車に向かって駆けていく。

 

「俺達の戦いはこれからだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

御愛読ありがとうございました。

また次回作に御期待下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何一人でブツブツ言ってるの?」

「いやぁ~こういう場面ってこういうの想像するよね?」

「寝坊した言い訳は以上で良いのね?」

 

目の前のサラが拳を握り締めて振りかぶり…

拳はゴンザレス太郎の顔面の横をスレスレを通り抜け。

 

「便りにしてるんだからしっかりしてよね」

 

そう言い残しサラは馬車に乗り込む。

それに続きゴンザレス太郎も乗り込むのであった。



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第90話 初日の夜営

「それ本気で言ってるの?」

 

町を出て最初の夜、一同は手頃な場所で夜営をしていた。

焚き火を中心に各々が座ったり立ったりの状態で今後の事を話し合っていたのだが、馬車の振動に1日揺られ痛くなった腰を擦りながらゴンザレス太郎は今回の最終目標を話した。

それに対してサラが怒り気味に詰め寄ってきたのだ。

 

「ゴンザレス太郎様、私もそれは少々無理があるのではと思いますが…」

 

サラの影から出て、何処から出したのか分からないティーカップにお茶を注ぎながら執事服ではなくパジャマ姿のニセバスチャン、頭の三角帽子が妙に気になる。

そんなニセバスチャンも続いて反論してくるが、それ以外のメンバーは特に気にした様子もなく…

 

「目標は高い方が良いし、ゴンザレス太郎には何か考えがあるんだろ?」

 

マコトが答えてくれる。

ちなみにこの旅のメンバーは、ゴンザレス太郎、フーカ、マコト、ジル、メール、サラ、ニセバスチャンである。

サリアは今回の勇者の集いに参加して人々を聖女様として導くために残ってもらったのだ。

ヤバイとデニムもそちらに加わり、少数精鋭で攻める事となった。

 

「タツヤが大丈夫と言ったから信じる」

 

フーカのその言葉にサラは「あなたと違って私はゴンザレス太郎を心から信頼してますから」っと言われてると勘違いして膨れっ面になる。

そんなサラの姿に「あぁお嬢様がお年頃に」と感動しているニセバスチャンは置いておいて、ゴンザレス太郎はメールとジルに頼み事をする。

 

「えっと?こうですか?」

「そして私はこう?」

 

それは結界士メールのオリジナル結界、平面ではなく湾曲した結界を2枚出し、結界の間にジルが水魔法を使って水を溢さないようにする合体魔法であった。

もちろんこの効果は…

 

「何これすごい!?」

「こんな小さい石の傷がが大きく見える!?」

 

そう、虫眼鏡である。

これを複数繋げれば望遠鏡代わりとして遠距離から様子を伺えると考えたのだ。

サラの話通りであれば敵は今頃は更に増えて、恐らく万を超す大軍勢。

情報は勝敗を決する鍵となるのは基本であった。

 

「お二人は到着までこの魔法の練習を繰り返して自由に使えるようになっていて下さい。僕に考えがありますんで」

 

ゴンザレス太郎のその言葉に責任重大と考えた二人は真面目な顔で頷く。

フーカはメールと同じ様な湾曲した結界が出せないか練習をし、サラはその様子を見ながらゴンザレス太郎の言った最終目標を思い出して…

 

「ちっ、無理だよ…」

 

っと歯を噛み締めながら呟き、その日は過ぎていったのであった。



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第91話 魔海に到着

2日目の旅は天気にも恵まれ快調な旅路で進めた。

道中盗賊の襲撃があったそうなのだが、ニセバスチャンが馬車の影から飛び出して『OHANASHI』で解決したらしい。

執事服に食べた記憶のないケチャップが付いてたが、隠れてオムライスでも食べてたのかもしれない。

ん?この世界にケチャップってあったっけか?

 

「ケチャップ?新しい魔法ですか?」

 

作るのはあまり得意ではないが、料理の知識はかなりあるジルさんは知らないようだ。

それじゃあれだ!きっと何か辛いものを…

 

「ニセバスチャン服が汚れてますわよ」

「これは失礼お嬢様、先程の盗賊の返り血…」

「あーあーあーあー聞こえないー」

 

っと特に障害もないまま2日目の夜営になった。

地面に座り火を囲む、キャンプをしているようで前世ではこういうのって楽しかったな…

ゴンザレス太郎は久々に前世での事を思い出しながらメールとジルの合体魔法の練習を眺める…

明後日には魔海を超えて決戦の地に着く、ゴンザレス太郎は自分が決めた目標を頭に浮かべながら火を見つめていたら誰かが横に座ってきた。

 

「ねぇ、ちょっといい?」

 

サラであった。

サラが隣に座ったのを確認した反対側に座ってたフーカは直ぐにゴンザレス太郎の腕に抱き付く。

二人の視線がゴンザレス太郎の目の前で交差する。

 

「両手に華だな」

 

マコトが要らんこと言うが、お前も両隣にジルとメール連れているじゃないか!?

と言いそうになるが3人はそういう関係じゃないのを思い出し、マコトが二人に集中攻撃を受ける未来しか浮かばなかったので口には出さなかった。

 

「フーカと言ったわね?別に貴女とどうこうしようって気はないから安心して、それよりゴンザレス太郎は昨日言ったことを本気で実現させるつもりなのよね?」

 

昨日の夜言った、この戦いの最終目標の事だと直ぐに理解したゴンザレス太郎は頷く。

そのゴンザレス太郎の顔にサラの拳が迫る、だがそれを軽々と手のひらで受け止めるゴンザレス太郎。

 

「だったら見せてもらうわよ!そのあり得ないくらい高望みした願望が実現するのかを」

 

サラは笑っていた。

ゴンザレス太郎には最悪無理だと判断したら逃げて、と言おうと思っていたのに違う事を言ってしまった。

だが…

 

(それを真剣に受け止めて夢を見させてくれる彼に惚れない訳がないじゃない)

 

ゴンザレス太郎にはフーカが居る、ニセバスチャンから『人間は基本的に番の相手を一人しか作らない』と聞いていたので自分の入る隙間は無いかもしれない、でもこの気持ちに嘘はつきたくなかった。

サラは決めた。

 

(もしこの戦いが終わってどんな結果になったとしても私とゴンザレス太郎が生きていたら告白をしよう。例え全滅して逃げ帰ったとしても…)

 

こうして2日目の夜も過ぎていき三日目の昼過ぎ、一同は魔海にたどり着いたのだった。

 

「ここから先はサラの通った後がないから道が分からないな」

 

マコトの言葉を聞いて、ここまで道案内がてら以前サラがゴンザレス太郎に会おうとして超速移動で出来た掘られた地面を見つめ、一同はゴンザレス太郎に視線を移す。

そう、ここからが問題なのだ。

この魔海を人類は渡る術が無いのだ。

水よりも重く毒があり、更にSランククラスの魔物が多数生息しているこの海を超えられない為、人類はこの先に魔物の町が在るのを知らなかったのだ。

 

「それじゃあ今日はここで夜営をして明日ここを渡ります!」

 

ゴンザレス太郎の言葉に今すぐ渡ると思っていた一同はずっこけるのであった。



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第92話 地形の影響受けない

翌朝、魔海を目の前に一同はゴンザレス太郎がどうやってこの海を渡ると言うのか楽しみにしていた。

サラやニセバスチャンは毒に耐性もあるし、その気になれば魔力を放出して飛んで渡ったり出来なくはない。

事実サラはそうやって渡ってきたのだから。

だが人間はそうはいかない、魔海の毒は強力で人間は皮膚に触れるだけで炎症を起こしてしまう。

 

「それじゃマコトさん行きましょう」

「えっ?いや…あの…どうやって?」

 

馬を操るマコトが砂浜を前にゴンザレス太郎に聞く。

もちろん馬も魔海の水に触れればただでは済まないのだ。

 

「このまま真っ直ぐ進んでください」

「真っ直ぐ…」

 

これがゴンザレス太郎と出会ってすぐなら馬鹿なことを言うなと声を大にして言うところ、だが今までの事を考え常識を忘れマコトは馬を前進させる。

馬は魔海を目の前にして止まった。

それはそうだろう、動物とはいえ…いや、動物だからこそ本能的にこの水が良くないものだと理解しているのだ。

だがマコトは一度降りて馬を落ち着かせ進むように促す。

そして、一同は馬車の中からまるで夢を見ているような光景を目撃するのであった。

 

「う、浮いてる?」

「いえ、これは水の上を進んでいる」

 

ジルとメールが驚きつつも自分達の状況を分析する。

そして、サラとニセバスチャンは…

 

「な、なんなのこれ…」

「いやはや、長いこと生きてきましたがこれ程驚いたのは初めてですよ」

 

っと語り合いフーカの一言で全員の視線が集まる。

 

「タツヤ、これアレね?」

「うん、今朝実験済みだったけどこうやって見ると凄いね。」

「本当に凄いわ…」

「ちょっと二人で分かり合わないて説明してよ」

 

ジルの言葉に全員が頷く。

 

「僕のユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』の効果の一つ『地形の影響受けない』ですよ、これを使うと水面は歩けるし坂道も平坦と同じ感覚で移動できるんです。」

 

全員絶句していた。

だが本人のゴンザレス太郎以外誰一人このコードの本当の凄さは理解していなかった。

実はこのコード、地形として捉えられるものなら全て影響を受けないので剣山や炎の中、それこそ火山の火口の中ですら普通に歩けるのだ!

 

サラもニセバスチャンも理解が追い付かないのだろう、これもゴンザレス太郎のユニークスキルの効果だと言う一言で片付けるには異常すぎるのだ。

だがそれ以外に説明のしようも無いのが事実。

 

(もしかしたら私達はとんでもない化物の前に居るのかもしれませんね。)

 

とニセバスチャンは考え、流石サラが惚れた相手だと納得するのであった。

 

その後、何事も起こらず馬車は真っ直ぐ魔海の上を進み、半日かけて魔物の町から約2時間の場所に上陸して無事に魔物大陸に到着したのであった。

 

「それじゃ今日はここで夜営して作戦の最終チェックと準備をして明日決戦です!」

 

ゴンザレス太郎の言葉に全員が頷き覚悟を決める、ここからではまだ見えてはいないが決戦の地はすぐそこである。



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第93話 配置完了、史上最高の戦争が今始まる

太陽が登り、戦いの朝がやって来た。

作戦は昨日ゴンザレス太郎から全員に行き渡り、地面に書かれた簡単な地形図を目安に最後のチェックを行う。

それと同時にジルとメールによる合体魔法で作り出した簡易版望遠鏡を覗いて一同は絶句した。

 

「鬼の…山が出来てる…」

 

サラの言葉通りそこには町の姿は無く、恐らく中心に魔王子アーサーが守る魔王の妻の魂石があるのであろう。

そこを目指す鬼が集まり押し退け合い、まるでピラミッドのように積み上がって町を覆い尽くしているのだ。

 

「ざっと見て200万匹ってところね…」

 

200万匹の鬼+魔王が相手なのにこちらは人間が5人に魔族が2人…

 

「大丈夫!僕の知ってる話では4人で表の世界だけでなく裏の世界の全ての敵と戦いゾマーと言う魔王を倒した人たちも居るそうですから!」

 

ゴンザレス太郎…全く説得力がない言葉だが、なんにしても各々は任された役割を果たすだけ。

絶望的な戦いに挑むというのに笑みが溢れるマコトに続きゴンザレス太郎も先頭に立ち。

 

「行くか相棒!」

「行こう相棒!」

 

青年と少年は握った拳を合わせ進み始める。

目指すは魔物の町の西にある山!

 

馬車は大きく迂回しながら進む。

鬼達に気付かれないように…

その中でサラは納得がいかなかった。

ゴンザレス太郎の作戦を聞いてどう考えても鬼達をどうにかする方法に辿り付かなかったからだ。

そんなモヤモヤしたサラにフーカは声を掛ける。

 

「貴女、タツヤの事本当に好き?」

「な、なによ突然!」

「最後かもしれないから聞かせて、好き?」

「ま、まぁ嫌いじゃないわよ…かなり」

「フフッそうね、だったら彼を信じてみて」

 

フーカの言葉に妙な説得力もありサラは覚悟を決める、そして然り気無くサラの本心をフーカは『スピリチュアリティ』で確認していたりする。

そんな二人の視線を背中に受けながら、ゴンザレス太郎は空を見上げた。

 

「雲一つない晴天、天も味方してる」

 

ゴンザレス太郎の言葉に首をかしげながらマコトはジルとメールを見る。

二人はゴンザレス太郎から頼まれた事を確認し合いながら話し合っていた。

そんな中、馬車は山を登り最初にゴンザレス太郎とマコトとニセバスチャンが降りる。

更に馬車はジルの操作で山を登り、魔物の町が一望できる場所でサラとフーカが降りる。

最後にジルとメールが高い場所で馬を固定して配置に着く。

 

全ての配置が完了し、ジルとメールからの水魔法の光の反射で合図を貰ったサラとフーカは町に向かって各々の最大出力魔法を放つのだった!



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第94話 フーカ&サラ vs 龍鬼群

「炎王球!」

「炸裂ライトニングボルト!」

 

二人の魔法が怒濤の勢いで鬼の山に向かって飛ぶ!

宛ら戦艦から放たれる連続砲撃の如く!

サラは得意の巨大な炎の塊を両手で作り出し、連続して交互に投げ放つ!

フーカはゴンザレス太郎から聞いた話を元にオリジナルの魔法を組み立てて使用した!

かなり距離が離れているにも関わらず二人の魔法は次々と鬼の山に着弾し、豪炎と飛び散る雷撃が山の一角を崩す。

人間ピラミッドの足場が崩れるように、下の鬼が倒れた事で山になっていた鬼の山の上にいた鬼が下の鬼の上に落ちて潰された。

棒倒しの砂が崩れる様に鬼達が落下し、何匹も死んではいるが焼け石に水とは上手く言ったものである、その数は減ってる筈だが見た目は何も変わらない。

それでも次々と襲い掛かる二人の魔法は確実に鬼を焼き感電させ、確実にその数を減らしている様に見えてはいるが、それも一時的なモノである。

実際は死んだ鬼の体を苗床に死んだ数の倍以上の数の鬼が数十分後には産まれるのだ。

 

「本当にこんなのでどうにかなるの?!」

 

愚痴りながらサラは炎王球を放つ。

ここはゴンザレス太郎の『プロアクションマジリプレイノ』の効果範囲内、なので現在発動中のコード『射程無限』の効果により二人の魔法は普段ならあり得ないこの距離でも問題なく鬼の山まで飛んでいく!

遠距離とはいえ的がどこに当たっても倒せるものだから精度よりも威力を意識できるのも大きかった。

倒した分だけ神力も補充される為、この状態が暫く続くと思われていた時にそいつらはやってきた。

 

「来たわね龍鬼!」

 

空を飛ぶ長い体を持つ龍鬼!

まさに龍の名に相応しく空を飛ぶこいつらがサラとフーカの相手だ!

空を飛ぶ龍鬼20匹程が向かってくるその光景はまさにこの世の終わりを想像させる光景であった。

1匹でさえSSSランクの魔物よりも強いとされる龍の守備力と鬼の攻撃力を持ち、更には灼熱のブレスまで吐く空の帝王を相手に二人は…

 

「あんたとはまだ話したい事があるんだから死ぬんじゃないわよ」

「サラ、意外と優しいのね」

「ばっ違うわよ!あんたが死ぬとアイツが悲しむでしょ!」

「タツヤはきっとやってくれる、だから頑張ろっ!」

 

二人の元に数匹の龍鬼のブレスが降り注ぐ!

だがフーカの張った結界でブレスは飛散し、途切れた所にサラが炎を極限まで絞った高圧縮された魔法を放つ!

 

「アトミックレイ!」

 

本来なら空気に飛散され数メートル先にまでしか届かないサラのかくし球、この距離では直ぐに消えてしまうそれはゴンザレス太郎の『射程無限』の効果でまさに炎のレーザーとなり龍鬼の一匹を貫く!

 

「お互い大変な人に惚れちゃったね」

「っ?!」

 

フーカの一言に顔を真っ赤にするサラであった。



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第95話 ゴンザレス太郎&マコト&ニセバスチャン vs 戦鬼群&鬼王

空から龍鬼が現れ、フーカとサラによる遠距離攻撃が止んだのを確認したゴンザレス太郎、マコト、ニセバスチャンの3人は行動を開始する。

雑魚の鬼は本能的に魂石を目指しているのか、サラとフーカの攻撃を受けてもこちらに全く興味を示さなかった。

だがその中でも別の鬼として進化した戦鬼と鬼王は違った。

フーカとサラにブレスを吐いて戦う龍鬼の姿を見て刺激を受けたのか、戦鬼と鬼王はゴンザレス太郎達の居る山の方へ鬼の山から抜け出して歩み出す。

その中にサラの父である魔王の姿が無いことに舌打ちをするゴンザレス太郎。

何処に居るのか分からない、他の鬼とは段違いの強さを持つ魔王の動向が勝敗を決するのは間違いないのだ。

 

フーカとサラの遠距離攻撃の邪魔にならないように、彼女達とは離れて居た彼らは駆け出し山を降りて対峙する!

そう、一度山まで移動したのは鬼の山以外の場所に敵が居た場合挟まれるのを回避するためだったのだ!

ゴンザレス太郎の予測通り、地面の中から這い出る鬼達が追加で出現し、それらと正面のみで戦える時点で作戦は成功であった。

駆け出した3人は各々が決めていた距離を保ち、先頭を走るマコトが剣を抜いた!

 

「虎空斬!」

 

マコトの斬激が飛び、こちらに走る戦鬼の頭部を真っ二つにする!

慟哭の洞窟で倒した戦鬼との経験が活きた、驚異の再生能力が食事をしていたからと言うのもあるが、それでも再生を繰り返す戦鬼の頭部を破壊すれば倒せることが分かっていたのは大きかった!

しかも戦鬼の強さもあの時とは違い、進化をそれほどしていない強くない戦鬼だった為、マコトは続けて軽々と何体も倒していく。

ニセバスチャンも迫った戦鬼の拳をヒラリとかわし、次の瞬間には姿が見えなくなった、と思ったら戦鬼の首元の影から現れ!その手刀で戦鬼の脳に穴を開け倒していく!

3人の中で最年少のゴンザレス太郎は迫る戦鬼に向かって走りだし、物凄い加速と共に両手を戦鬼の腹部に向かって突き出した!

 

「ゴムゴムじゃないバズーカ!」

 

なんだか良く分からない攻撃、だがその威力は凄まじく、体をくの字に曲げた戦鬼の頭部が下がったのを確認し、ゴンザレス太郎は地面に手を着いて叫ぶ!

 

「アースニードル!」

 

途端に地面から尖った岩が飛び出し、鬼の顎から頭部までを貫いて絶命させる。

戦鬼があの時よりも弱いというのもあるが二人があの時よりも強くなっていたのがやはり大きかった。

だが目の前に迫る戦鬼は軽く200体を超える。

3人は囲まれないように互いに背中を守り合い、次々と戦鬼を倒していくのだった。



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第96話 天の裁き

「ぐぁあ!」

 

鬼王の強烈なパンチにマコトが地面を削りながら後ろに滑る!

二倍以上ある体格差の一撃を肩と腕で受け止めたマコトの悲痛な呻き声が響く!

 

「くそっ、これで最後です!」

 

ニセバスチャンが懐の影からナイフを取り出して投げる!

ナイフは戦鬼の間に居る雑魚の鬼の眉間に刺さり、一撃でその命を奪う。

死んだその鬼を掴んで食べようと口元に持っていった戦鬼の顔面を、ゴンザレス太郎が土の槍で貫いて戦鬼を絶命させた!

 

「よし、鮮烈兜割!」

 

マコトの剣が周りの鬼が死んだことで弱った鬼王の顔面を捉え後ろへ下がらせる。

その間も次々と襲い掛かってくる雑魚の鬼と戦鬼を次々と相手する3人!

その間も次々と襲い掛かってくる雑魚の鬼と戦鬼を相手する3人!

後ろには下がれないし一匹も通せないのだ、雑魚の鬼は死体から新しい鬼を産み出すし戦鬼は死体を食べて更に強くなり回復する。

倒した鬼の分だけ3人は前に進むしかなく、中に居る鬼王は周りの鬼を減らして弱体化させたタイミングでダメージを与えていくしかない、そんなかなり辛い状況の中で3人は戦っていた。

 

 

 

 

その頃中層では…

 

「次!アイツは炎に耐性があるから!」

「他の属性は苦手なのよもぉー!」

 

サラとフーカも次々と出てくる龍鬼をフーカのスキミングで弱点を見抜きサラが倒していく!

敵のブレスはメール直伝の結界でフーカが防いでいるので今のところ戦況は拮抗している。

ただ倒した龍鬼は勿論地面に落下し、それを戦鬼や雑魚鬼が喰ったり繁殖したりして状況は全く変化していなかった。

そして、遂にそれは生まれた。

 

「なに…あれ…」

「嘘でしょ…」

 

繁殖すると言うことは世代交代が行われると言うこと、生き物は必要なものは進化によって得て、必要ないものは退化していく。

空に浮かぶ龍鬼の中に一匹異様な姿のそれは現れた。

ファンタジーで見かける二足歩行する形の龍、マコトから聞いたことのあるその姿はあのSランクモンスター『龍ドラゴン』のそのものだが体の大きさはその倍はあり、頭には二本の黄色い角が生えている。

名付けるなら『鬼龍ドラゴン』であろう。

 

「不味い!」

 

フーカは結界を先程までの3倍の厚さで出現させた!

直後鬼龍ドラゴンから吐かれた七色に輝くブレスは二人の居た場所を飲み込む!

だが二人は生きていた。

フーカは両腕が焼け、サラの盾になるように庇っていた。

 

「こ…の…なにくそがぁぁぁぁぁー!!!!」

 

フーカの後ろでサラは鬼龍ドラゴンのブレスの炎を自分の炎と混ぜ合わせ、巨大な炎王球を超える塊を産み出していた。

フーカが守ってくれてると信じていたからこそ生成に全力を注いで完成させたそれ、今にも暴発しそうな状態をサラは気合いで押さえ込んでいた。

そして、それを気合いで投げ返す!

名付けるなら『灼熱王球』であろうか、他の龍鬼がブレスで止めようとするが全く効果はなく、鬼龍ドラゴンの前でそれは極大の大爆発を引き起こす!

 

両腕を焼かれ膝をついて肩で息をするフーカはサラの慣れない回復魔法で痛みが引くのを感じ、そのタイミングでステータスにレベルを振る。

次はノーダメージで防いでみせる!と意気込むフーカ達の前方には爆発の煙の向こうに新しく生まれた鬼龍ドラゴンの大群が見えるのだった。

 

「ははっまだやれる?」

「とーぜん!」

 

二人は手を貸し合い次のブレスに備える!

 

 

 

 

 

上空で大爆発が起こったと言うのに、誰一人気にもしていない状態でゴンザレス太郎達は戦い続けていた。

 

「うぐぁぁ!!」

 

ニセバスチャンが突然叫び声をあげて頭を押さえる。

ゴンザレス太郎はそれを見て直ぐに地面すれすれにウォーターカッターの魔法を使用し、雑魚鬼の足と共に見えない触手を切断する。

そして、地面から出てくる緑の鬼を優先してマコトが飛ぶ剣激で倒していく!

話に聞いていた触手鬼である!

そして、こいつらが出てきたと言うことは…

 

「避けろー!」

 

ニセバスチャンの叫びに反応して後ろに飛ぶマコトとゴンザレス太郎!

直後二人の周りの地面が地盤沈下の様に沈み、範囲内に居た雑魚鬼だけでなく戦鬼すらも潰れて絶命する。

圧倒的魔力による重力魔法、そんな事が出来る存在と言えば…

 

「ようやくお出ましってね」

 

ゴンザレス太郎は忘れもしないその顔を見て冷や汗が流れるのを感じた。

鬼達の中に一人、人間の姿をした男性が立っていた。

片手を上げてそこから放たれた黒い渦は前に居た鬼達の体を抉り取るように飛んできて、マコトの前に居た雑魚鬼達の体を貫いてマコトに迫る!

雑魚鬼達の体でマコトはそれに気づくのが遅れた。

 

「危ない!」

 

ニセバスチャンがマコトを突飛ばし、黒い渦はそのまま後ろに何処までも飛んでいく…

そう、ゴンザレス太郎の『射程無限』が影響してしまっているのだ。

そして…

 

「ぐぁぁぁぁぁ」

 

マコトを庇ったニセバスチャンは左足の膝から下をさっきの黒い渦に抉られて無くしていたのだった。

それにより陣形が崩れ、鬼達はゴンザレス太郎とマコトの横を一気に通りすぎ後ろにあった死体の山々に繁殖を開始する!?

状況は完全に不利、囲まれる前に脱出を図るゴンザレス太郎とマコトは左右に分かれる!

魔王の前に多数の鬼が居り、その先に片足をなくしたニセバスチャンが残された状況で魔王から先程よりも巨大な黒い渦が再びニセバスチャンに向かって放たれる!

 

「御嬢様、どうか…幸せを…」

 

黒い渦はニセバスチャンの居た場所を飲み込みながら多数の鬼を巻き添えに突き進んでいく!

 

「くそっ!」

 

マコトがその状況を確認しながら逃げつつ叫ぶ!

そして、すぐ横に居た鬼王の存在に気付かなかった。

 

「しまっ?!」

 

鬼王の強烈なパンチは溢れるほどの雑魚鬼のせいで先程よりも更に強烈な一撃となり、マコトを大きく後ろへ吹き飛ばす!

意図せず山のふもとまで吹き飛ばされ転がるマコト、今の一撃で肋骨が折れ肺に刺さっており口から血を吐いた。

 

「ぐっぐはぁ…」

 

そして、その場所から動けなくなる。

ここまでの戦いで疲労も限界に達し、意識はあるが指一つ動かせなくなっていたのだ。

 

「マコトさん!?」

 

ゴンザレス太郎が叫ぶが、その前には目にも止まらない速度で瞬間移動してきた魔王が居た。

魔王の掌がゴンザレス太郎の胸元にあてがわれ、ゴンザレス太郎の耳に魔王の声が小さく聞こえる…

 

「ブラックホール」

 

咄嗟にその手を蹴りあげ、魔王の手から出たその闇の穴とも思える球体はゴンザレス太郎の左肩を少し削り、少し進んだ後周りの空気を吸い始め、近くに居た雑魚鬼の体を空気と共に飲み込む。

吸い込まれながら粉々に潰れていく雑魚鬼の姿に視線をやる間もなく、魔王の拳がゴンザレス太郎の顔面を捉えゴンザレス太郎は後ろへ大きく吹き飛ばされた。

地面を転がり切れた口の中から血が流れるのを気にする間もなく、目の前に現れた魔王に今度は腹部を蹴り上げられる!

蹴りにより空中に浮いたその子供の体を魔王は更に思いっきり殴り付ける!

狙ったのか分からないが、数百メートルも吹き飛ばされ地面をボロ雑巾の様に転がるゴンザレス太郎はマコトの直ぐ横に転がりながら辿り着いた。

仰向けに寝転がり内蔵が破裂しているのか、ゴンザレス太郎の顔色は真っ青になっていた。

そして、魔王が瞬間的に二人の前に現れ歩み寄る。

 

 

 

 

 

ゴンザレス太郎達が魔王の出現で危機的状況に陥っているのと並行して、中層でもフーカとサラはピンチに陥っていた。

フーカは結界をさっきまでの10倍以上の強度で更に枚数を増やし、鬼龍ドラゴンの絶えず常に数匹で吐き続けられるブレスを防いでいた。

フーカの背中に密着するようにサラはフーカを熱から守り、結界を押し込まれないように直接手で結界を押さえて支えていた。

いくら炎に耐性があるとは言え、生身の素手で鬼龍ドラゴンのブレスに焼かれ続けている結界を押さえているその手は既に皮膚が焼け爛れ、直接骨が焼かれていた。

 

「あと少し!踏ん張るわよフーカ!」

「ええ、ゴンザレス太郎を…私達の愛する彼を信じて!」

 

結界は溶け始め二人が飲み込まれるのも時間の問題、ニセバスチャンは消滅しマコトとゴンザレス太郎は動けない。

勝敗は決した。

誰もがそう考えてもおかしくないこの状況、だがそれを覆す叫びが響いた!

 

「この時を!待っていたぁぁぁ!!!!」

 

仰向けに倒れ、息も絶え絶えのゴンザレス太郎の叫びと共に空に放たれる一筋の魔法。

それは空に向かって放たれ大きな爆発音を響かせる!

晴天の空には音しか響かなかったが、それに反応した二人は動きだす!

 

「合図よ!」

「曲げるわよー!!!!!!!」

 

空に向かって手を挙げているジルとメール。

二人はかつて誰も経験したことの無い超大規模魔法を操る!

 

直後周囲の気温が上がったと思った次の瞬間、光の柱が現れる!

圧倒的熱量によりその光は全てを飲み込む、そこに存在する生物や空気中の粒子、更には音すらも飲み込みその光の柱は鬼の山を中心に収束し何も聞こえなくなる。

 

その日、遥か離れたゴンザレス太郎の住んでた町でもそれは観測され、後に天の裁きと呼ばれるのであった。




長くなりすぎましたね(汗)


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第97話 絶望は何処までも…

「光を集める…ですか?」

 

魔海へ向かう最中の夜営中、ゴンザレス太郎はこの合体魔法の本当の目的をジルとメールへ説明していた。

その内容にいまいちピンと来ない二人は顔を見合せ、ゴンザレス太郎へ向き直る。

 

「でもそれって明るくなるだけじゃないんですか?」

「簡単に言うと夜より昼の方が暖かいでしょ?あれは太陽の光が暖めているから暖かいのは分かるよね?その光を凝縮すると火を起こせる位の熱を持つのさ」

「でも火を起こすくらいでしたら火の魔法を使えば…」

「これくらいで火を起こせるくらいの熱を出せるんだ。だからこれがもっと大きくて遠くにあれば、その熱はそれこそ岩を蒸発させるよりも高いエネルギーになる」

 

岩を蒸発と言う想像も出来ないその言葉に二人は喉の乾きを覚える。

想像もしたことの無いそんな力を二人が扱えるのか…

そんな疑問にゴンザレス太郎は気楽に答える。

 

「メールさんは合図があるまで出来るだけ大きく二枚の結界を空高くに維持して、ジルさんはその間の水を漏らさないように魔法で押し止める事だけに集中してくれればいいから、後の角度とかは曲げる時に光の端と端を見て調整してしてくれればそれだけで大丈夫です。」

 

まるで新しい玩具の使い方を説明するように話すゴンザレス太郎に頷き、二人はそれからその練習だけをひたすら繰り返すのだった…

 

 

 

 

 

空を飛ぶ鬼龍ドラゴンを飲み込み、地上に居た鬼達のを一網打尽にする灼熱の光の柱は逃れた近くに居た鬼すらもそのあまりにも高い熱で発火させ、燃え上がり絶命させる。

また地面の中に隠れていた触手鬼も地面の土ごと蒸発するように塵も残さず消滅していく。

 

フーカとサラは先程からの結界を引き続き展開し続け耐えていた!

直接の攻撃でなくなっただけ二人には楽になったと思われるかもしれないが、既に七色のブレスの嵐で二人の状況はかなり悪かった。

結界を素手て押さえていたサラは特に深刻な状況である。

 

ジルとメールはゴンザレス太郎に言われてた通りに、別で前面に張っておいた結界でその熱を防ぐ。

元々一番距離が離れているためそれほど深刻になることもなかったのだが、遥か上空に展開している合体魔法を安定させるために必要だと判断して張らせていたのだ。

 

そして、マコトとゴンザレス太郎は護られていた。

二人の前に立つ片足を無くした執事。

ニセバスチャンであった!

魔王に殺されると思われた瞬間、ゴンザレス太郎が逃げながら目の前に出した光魔法で自分の影を伸ばし、ニセバスチャンはゴンザレス太郎のその影の中に隠れて命拾いをしていたのだ。

そして、今二人の前でサラを有事に守るために覚えた結界障壁の魔法を使用して耐えていた。

それでもニセバスチャンの力では数秒の間しか持ちこたえられなかったが、それで十分であった。

そのニセバスチャンの後ろに地面に潜ってた触手鬼が死んで解放された魔王が回り込み、ニセバスチャンの結界障壁の前に闇魔法の結界を張り光そのものを飲み込むように防いだのだ。

 

 

血を吐きながら眩しすぎる光を避ける為に目を瞑ることしか出来ないマコト、真っ青な顔で最後の合図を送ったままの姿勢で動かないゴンザレス太郎…

 

 

ゴンザレス太郎の指示通り約30秒の光の柱はメールが更に結界の形を変えて終了する。

目の前に広がるのはクレーターではなく巨大な大穴。

全てが熱により消滅したのだ。

 

「ごふっ…勝ったのか…」

 

マコトの言葉にニセバスチャンが振り返らずに親指を立ててサムズアップする。

しかし、その前に立つ魔王だけは気を抜かず穴を見つめていた。

 

中層では、両手が手首まで無くなったサラの体を介抱するフーカ、その穴を見つめるフーカの表情は歪んでいた。

魔王の位置より上に居る為、いち早くそれに気付いたのだ。

 

「うそ…でしょ…」

 

巨大な穴の中から手が出てきてそいつは這い上がってきた。

鬼王の更に進化した熱と光に耐性のある鬼王の上位種『鬼神』であった。

回りを見渡し、まだ一人動ける魔王はそいつに向かって瞬間移動のように襲い掛かる!

その圧倒的体格差、巨人対人間の様な構図に魔王ならばなんとか出来るのかもしれない…

だが次の瞬間、その速度を見切った鬼神は魔王を手で叩き落とし、地面にめり込んだ魔王に更に鬼神の拳が叩き込まれる!

地面が割れ魔王は大ダメージを負いながら地中を突き進み、違う場所から飛び出すのだった。



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第98話 鬼神の猛威

地中を通り、違う場所から飛び出した魔王だが左腕を押さえながら苦渋の表情を浮かべていた。

たった2撃、その2撃だけで魔王は大ダメージを負っていたのだ。

叩き落とされた時に受けた左腕は折れ、更に叩き込まれた拳によって左腕は粉砕骨折していた。

幸いなのは、左腕を犠牲にする事で即死を免れた事であろう。

 

「ブラックホール!」

 

近付くのは危険と判断した魔王は遠距離戦に切り換え、得意の闇魔法で攻めることにした。

巨体のわりに素早い攻撃を受けたので、動きを封じる作戦に出たのだが…

 

「GOAAAAAA!!!」

 

鬼神目掛けて飛んでいた闇の魔法は鬼神の口から放たれた叫び声だけで粉砕した。

そして、その音の衝撃は魔王にまで届き…

 

「ぐぅわぁぁぁあああ!!」

 

扇状に広がる音の波は避けることもできず、魔王の全身の細胞を振動させズタズタに破壊する!

一同があれほど苦戦した魔王だが、まるで子供のように一方的にあしらわれた。

音の攻撃が止み、魔王は目、鼻、耳…至るところから血を流しながら鬼神を睨みつける。

だが鬼神はそれがどうしたと言わんばかりの態度で魔王に向かって悠々と地響きを立てながら歩みを進める。

まるで何をしてきても全て正面から叩き潰す!と宣言しているかのような優雅な歩みは魔王の選択肢を狭めていた。

闇魔法とは基本的に虚を付く魔法だからだ。

 

その時、空を見上げながら手を天に掲げ倒れたままのゴンザレス太郎の口元が歪んだ。

誰も気付かないその小さな行動。

ゴンザレス太郎によって準備は着々と進んでおり、彼の放つ魔法によりそれは完成した!

ゴンザレス太郎が使用していたのは液体の温度を下げるだけの生活魔法、主婦であれば誰もが使える基本中の基本魔法、料理にも大活躍の冷蔵庫代わりになる『クール』と言う魔法。

そしてそれが完成したのを感じ取ったメールが結界を動かし、ジルが位置を調整する!

 

そして、次の瞬間!

巻き上がる粉塵とこの世界そのものを揺らすほどの振動が発生し、その衝撃に浮かんでいた魔王は吹き飛ばされる!

やがて巻き上がった粉塵が落ち着きそれは姿を現した。

その光景を見ていた一同、前もって聞いていた者以外は誰一人として一体何が起こったのか、目の前にあるそれが一体何なのか分からなかった。

目の前の鬼神が居た場所に超巨大な氷の塊が生えていた!それを現実として受け止められなかったからである。

空に向かって笑みを浮かべるゴンザレス太郎がボソッと呟いた…

 

「名付けて『メテオアイスインパクト』ってね」



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第99話 死と終わらない悪夢

決戦前日、馬車に揺られながらジルとメールがゴンザレス太郎と話をしていた。

フーカはサラとの共闘の為、外で互いの戦い方を話し合っているので馬車内は3人だけである。

 

「本当にそこまで必要なの?」

 

ジルはゴンザレス太郎の言葉に疑問を投げ掛ける。

それはそうだろう、ゴンザレス太郎の話通りなら最初の太陽の光を凝縮して焼く攻撃だけで地図を書き換えないといけないくらいの被害が出ると言うのに…

 

「何事も、もしもの事を想定してですよ。実際に慟哭の洞窟にも、炎を吸収して回復する魔物居たじゃないですか」

「サラマンダーダックスフンドでしょ?確かに居るけどさぁ…」

 

可愛い犬なのにフェニックスの羽根の生えた魔物を思い出し、煮え切らない返事を返すジル。

火を食べて、水を浴びると溶ける不思議な生体は地球には居ない存在である。

 

「もしもですよ、もしも動いてくる敵が居たら使うことも考慮に入れて下さい」

「分かったわ」

 

ゴンザレス太郎の更なる案とは、もしも太陽光を集束した攻撃に耐性を持って耐え抜いた鬼が居た場合に、追撃として考えた方法。

それは太陽光を集めるのに使ったジルの水をそのまま氷らせ、メールの結界で溶けないように守りながら加速させ遥か上空から落下させる攻撃であった。

氷にも耐性があったとしても、大気圏よりも高い位置から落ちてくるそれに物理的に潰させてしまえ!と言うことである。

本来ならば空気抵抗で落下速度というのは限界があるのだが、メールが結界を意識した場所に落とすよう操作すれば音速を遥かに超えた速度で落下させる事が可能と予測していた。

 

そして、それが今目の前にある巨大な氷の正体であった。

ジルとメールは経垂れ込んで座り込む。

 

「はっははっこれあたしたちがやったんだよね…」

「そうね、あの子の言う通りだったね」

 

二人は目の前の数十分前と何もかもが変わり果てた風景を眺めながら語り合う。

神力は鬼の山を消滅させた際に一気に補充されたが、魔法のコントロールに集中力を使いすぎてバテたのだ。

 

「本当、初めて会った時は何処のボンボンかと思ったけど、まさかこんな所でこんなことをする事になるとは思ってもみなかったね」

「全くよ、ゴンザレス太郎に大人の色気で迫っておけばよかったわ」

 

メールの意外な発言にジルは目を大きく開く。

フーカに聞かれたら色を無くした目で迫られるのは間違いない。

 

「あんたって誰か守れる人が好きって言ってたのにあの子がいいの?」

「だってあんな強い子を守れるなんて最高じゃない!」

 

どうにも少し好みの男性のタイプがずれているらしいメールの発言に笑うジルであった。

 

 

 

「終わったの?」

「えぇ、倒したみたいよ」

 

フーカはサラの背中を包み込むように支えて話をする。

両腕だけでなく体の前面は熱で焼け爛れ、酷い有り様であった…

 

「ははっ本当にやりのけたのね」

「だから言ったでしょ?彼を、タツヤを信じろって」

「本当に凄い人に恋しちゃったもんだわ…」

「サラ…もしかして目が…」

「うん、実はもう全然見えてないの。パパは?魔王は生きてる?」

 

フーカは視線を向けるが飛ばされた時に何処に行ったのか分からなかった。

 

「ちょっと見当たらないけどきっと無事よ」

「そうね、アイツ言ったもんね。最終目標は鬼を全滅させて全員無事で更に助けられる人を全て助けてこの町の復興資金も用意するって」

「タツヤが言ったんだから絶対大丈夫だよ」

「そうね、あぁ…ちょっと眠るわ、彼が来たら起こして、乙女の寝顔は刺激が強いから…」

「うん、おやすみサラ」

 

サラはそのまま息を引き取る…

フーカは泣きながらサラの亡骸を後ろから抱き締めて回復魔法を息をしてないサラに使い続ける…

 

 

 

 

「終わりましたか…」

「みたいだな、ありがとな」

 

マコトはニセバスチャンの回復魔法でとりあえず会話が出来るくらいまで回復していた。

ニセバスチャンも片足を失いその状態で二人を守り治療まで行っていた。

 

「ゴンザレス太郎は何処に飛ばされたのかな?」

「彼の事です。きっと無事ですよ」

 

ニセバスチャンはまだサラが死んだ事を知らない。

そんな二人が談笑をしている時に目の前の氷が動いた。

 

「なっなぁ、今動かなかったか?」

「まさか、もうお腹一杯ですよ」

 

ニセバスチャンの冗談を聞いたと同時に目の前の氷に次々とひび割れが入るのが目に入った。

そして、氷が砕けその奥底から聞きたくない叫び声が響く!

 

「GUGOOOOAAAAA!!!!」

 

悪夢は再び地の底から這い上がってくるのであった。



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第100話 チートですがなにか?

絶望、それは望みが絶たれると書く。

ジルとメールは穴から這い出てくる殆ど無傷の鬼神の姿に言葉も出なかった。

動かないと…既にまともに戦えるのは自分達しかいない、だがどうやって?

魔王すらも軽くあしらわれた鬼神の威圧に身動きが取れない。

 

 

 

懇願、それは真心を込めて願うこと。

フーカは徐々に冷たくなっていくサラを抱き締めながら祈りを捧げる。

もう自分の両腕も火傷が酷く、結界が後何枚張れるか分からない、だがその目には諦めの色はまるでなかった。

最後のその瞬間まで恐れない!

フーカは両手の痛みも無視して鬼神を睨む!

 

 

 

決意、それは決める意思。

マコトとニセバスチャンはボロボロの体で鬼神に己の武器を向ける!

折れない心は魔物襲撃の時にゴンザレス太郎から教わったマコト。

守るための力は壊す力よりも強い、それを理解したニセバスチャン。

二人は死を覚悟して吠える!

 

「「オオオオオォォォォォ!!!!!!」」

 

言葉になら無い魂の叫びは鬼神に届き視線を向けさせる。

そして、無慈悲に叩き込まれる拳によって二人は傷の一つも付けられなかった絶望に包まれながらその命を散らす。

 

 

 

奇跡など起きない。

そう、奇跡など信用しては駄目だ。

あるのは必然、願うのではなく実行すること。

全てはゴンザレス太郎の計算通りであった!

 

「皆、待たせたなぁ!」

 

フーカ達とマコトの居た場所の丁度中間にゴンザレス太郎は居た。

そして、その手に在ったのは蓋の開いた瓶!

それは町を出る前にゴンザレス太郎がサリアと共に河川敷で新しく産み出したラストエリクサーであった。

ゴンザレス太郎の『埋めたアイテムランダム変化』とサリアの『セーブラック』を使用し、穴を掘ってゴミを埋めて掘り起こし、違う物が出たら直ぐに埋め直すを繰り返し、やっと出た1本!

その効果はご存知『効果範囲内の全ての者の全回復&死者すらも死んでから10分以内なら生き返る』である!

 

その効果により死んでしまったマコトとニセバスチャン、そしてサラが生き返る!

ゴンザレス太郎は待っていたのだ。

光の柱に焼かれて死んだ鬼達が、死んでから10分以上が経過するのを!

フーカも怪我が全快し、目を開けたサラに泣きながら抱き付く!

 

だが、ラストエリクサーの効果は鬼神にも影響し、メテオアイスインパクトのダメージを回復させる。

しかもラストエリクサーの副次効果で身体能力が一定時間数倍になるというおまけ付きでだ。

魔王すらも歯が立たなかった鬼神が全回復しパワーアップした。

壊滅的状況は回避できた、だが危機的状況になにも変化は無かった。

しかし、それを上から見ていたジルとメールは次の瞬間、一体何が起こったのか理解できなかった。

 

「えっ…?」

 

何故ならば、メテオアイスインパクトのダメージが抜けて回復し、更に強くなった鬼神が動き出そうとした次の瞬間!

鬼神の頭部はそこに無かったからだ。

 

ゆっくりと後ろに倒れる鬼神を唖然と見つめる一同。

その頭部の無い倒れた鬼神の胸の上に「いやぁ~いい仕事したなぁ~」って感じで肩を押さえながら腕を回すゴンザレス太郎が立っていたのだった。

 

「はっははっははははは…どうなってんだー!!!!???!」

 

全く理解の及ばないニセバスチャンは狂ったように叫び声を挙げる!

しかし、残りの一同は…

 

(やっぱりゴンザレス太郎だな)

 

っと変に納得する。

何が起こったのかは単純明快だ。

ゴンザレス太郎がジャンプして鬼神の頭部をぶん殴った。

そしたら鬼神の頭部は原型を止めず粉砕し、鬼神の命を即座に奪ったのだ。

 

 

実はゴンザレス太郎『経験値255倍』を発動しており、合図の花火を上げ空から天の裁きが降ってきて鬼達を全滅させたあの時、目まぐるしく上がるレベルをリアルタイムにステータスに振りまくっていたのだ。

この世界のレベルは上限999、だがレベルの上昇は一気に上がった場合瞬間的にそのレベルに成るのではなく、リアルタイムにメーターが増えるように上がり続ける。

その為ゴンザレス太郎はあのままの姿勢で空に浮かぶ合体魔法を凍らせながら、ずっとレベルをステータスに振り続けていたのである。

天の裁きの破壊力と鬼神の登場で誰一人自分のレベルを確認していなかったが、全員上限の999で止まっている。

それはもし気付いても気にしないであろう。

鬼を一匹倒すだけでも数レベル、鬼神や龍鬼、ましてや鬼龍ドラゴンなんか倒せば一匹で100近くレベルが上昇するのだ。

そして、その敵約200万匹を一瞬で倒して入る経験値は更にその255倍。

単純に考えて100億以上のレベルが最低でも上昇する計算となり、それを全てステータスに振ったゴンザレス太郎は次元がどうのこうのというレベルを遥かに超えた強さを手に入れ、事実上の断トツの史上最強の座に辿り付いたのである。

 

後は時間を計算し、鬼達が死んでから10分以上が経過した段階で、最初配置に着いた場所に置いておいたラストエリクサーを持ってフーカ達に届く場所で蓋を開ける。

自分の身体能力は更に数倍になり鬼神との差は更に開く。

10の2倍と20の2倍の差は同じではないと言うことである。

 

呆れつつゴンザレス太郎の元に近寄ったマコトとニセバスチャンにゴンザレス太郎は突然困った顔をして言う。

 

「しまったー!!!!鬼神の素材の角…粉々になっちゃった…」

 

遠くの空をゆっくりと飛んでくる魔王の姿を眺めながら、ニセバスチャンは本当に言ったことを実現したゴンザレス太郎に膝を着いて頭を下げ感謝の言葉を送るのであった。



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第101話 サラ、その身を捧げる覚悟を決める!

「タツヤー!」

 

フーカがゴンザレス太郎に抱き付いてきた。

ゴンザレス太郎は受け止めつつ、衝撃を逃がすようにフーカを抱き締めたままその場で一回転してフーカを下ろす。

その顔は涙と泥で汚れていたが、それはこの場に居る全員が同じである。

 

「あ、あのさ…ゴンザレス太郎…」

 

サラが妙によそよそしく話しかけてきた。

予想外のモジモジした様子に、ニセバスチャンがオヨヨとしてる。

ゴンザレス太郎はサラの顔を見て頷く。

 

「あのね、ゴンザレス太郎私…」

「大丈夫、おいで」

 

そう言ってゴンザレス太郎は右腕にフーカを抱き締めさせたまま、反対の左手をサラに差し出す。

二人共彼女にするというのか?

ゴンザレス太郎ならハーレムも可能だろう、7歳だが…

その差し出された手に…

 

(フーカと共に愛してもらえるのならそれも良いか!)

 

っと解釈をしてフーカと同じ様に抱き付ついた!

その行動に驚いたゴンザレス太郎であったが、仕方ないかと考えてマコトとニセバスチャンに伝える。

 

「じゃ、ちょっと行ってきます」

 

サラはこのまま3人でキャッキャウフフタイムなのかと覚悟を決めた。

ゴンザレス太郎よりも年上であるサラは、お姉さんとして色々とリードしてあげねばなるまい! 

 

(もしかしたら大人の階段を登ることになるのかな…キャー!!)

 

っと脳内で一人ハイテンションになりつつ、今着けてる下着が全然可愛くないことを思い出した。

この事で少し悩んだりしているサラは歩き出したゴンザレス太郎に抱き付きながら付いていく。

目の前の少年は本当に約束したことをやり遂げたのだ。

だったら、もし彼が自分を欲するのなら奴隷でも構わない彼の側に居よう。

そう気持ちを切り変えて共に歩いていく。

辿り着いたのは最初の天の裁きで出来た大穴。

ゴンザレス太郎はフーカをお姫様抱っこしてサラの顔を見て頷く。

 

(えっこの中でするの?!確かにこの中なら誰にも見られないけど…パパが近くに居るのに…)

 

そして、飛び降りたゴンザレス太郎に続いてサラも覚悟を決めて飛び降りる!

 

(お父さん、サラは今日大人の階段を登ります!)

 

ゴンザレス太郎に続いてサラも飛び降りて穴の中へ入っていく。

そして底に到着し、ゴンザレス太郎の光魔法で照らされた地面を見て驚く!

穴の底は白金貨で埋め尽くされていたのだ!?

そして、その中に一ヶ所開けた空間があり、そこに彼は居た。

 

「サラ、彼が君のお兄さんの魔王子アーサーかい?」

「わ…」

「わ?」

「忘れてたー!!!」

 

サラ、いつでも裸になれるように脱ぐ準備魔までして一人で大暴走であった。



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第102話 最終目標達成!

そこには白く輝く球体の結界があり、その中に上半身は人、下半身は大蛇の男性が虹色の石を守るように胸に抱いて鎮座していた。

魔王子アーサー、彼は自らのユニークスキル『冥狂死衰』により自分の母の魂が籠っている魂石を守っているのだ。

このスキルの効果は自分の周りに自らの命が尽きるまで完全防御の結界を張り、自らの意識は昏睡するという命を懸けて何かを守るスキル。

彼は命を懸けて母の魂石を守り、その石を目指してきた鬼達を引き付ける事があったからゴンザレス太郎達は勝利できたのだ。

 

「兄さん、忘れててごめんね。でも私達、勝ったよ。皆の仇取れたんだよ」

 

結界内のアーサーは妹のサラの言葉にも反応しない。

まだ胸元が動いているので呼吸はしている、弱々しくだが生きては居る、だが彼が死ぬまでこの結界は解けない。

でも結界が無くならないことには彼は助けられない。

戦う鬼達は居なくなっても彼はそこで死ぬまで戦い続けるのだ。

 

「流石俺の自慢の息子だ。あの光の柱だけでなくアイツの魂石も守り通したか」

 

声がして見上げると上から魔王が降りてきた。

魔王もまたかなりの重症だが、それよりも息子の事を気にして降りてきたのだろう。

魔王の言葉通りアーサーは天の裁きだけでなく、ここに居た筈の鬼神からも母の魂石を守り抜いたのだ。

 

「パパ、どうにかならないの?」

「無理だ、このスキルはどんな攻撃でも破壊できないし、相手のスキルを解除する『デスキル』を持ってる者がこの場に居たとしてもアレは使用者に触れなければ発動しない」

 

そう話し魔王はアーサーの結界に手で触れる。

触れた対象に一切危害は加えないが、絶対に何も通さない結界の存在に悔しそうな顔を一瞬見せる魔王。

だがすぐに表情を切り替えて振り返りゴンザレス太郎に問う。

 

「それよりもだ少年、この足元の白金貨は何だ?」

 

魔王は足元を見ながら問う。

穴の底を埋め尽くす白金貨の量はもはや数えられる気すらもしない。

一枚の価値は現代日本で1000万円程の価値と言うのを魔王は理解しており、過去に実際に見たこともあった。

だからこそこの光景が異常なんて言葉で言い表せ切れない事も理解しているのだ。

 

「あぁそう言えば魔王さんは僕のユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』を知りませんでしたね」

 

聞いたことの無いスキルの名前に首をかしげる魔王は…

 

「いやいい、俺よりも強いやつにさん付けされるのは困るから魔王でいい。っでなんだそのスキルは?」

「今回のは僕のスキル効果『燃えた物原価に変わる』ですよ」

 

そう、これがゴンザレス太郎が今回発動させていた最後のコードである。

鬼の山の下には当然破壊されてはいるが魔物の町があった。

壊されていても原価は変わらず、天の裁きの超高温で焼いて消滅させられた建物や家具等町にあった全ての物は原価に変わる。

更にここに居た鬼達の体から取れる素材もギルドや以来主が買い取る最初の金額が暫定計算され、全ての原価が白金貨に変わったのだ。

特に戦鬼等SSSランク以上の魔物の素材なんてとんでもない額に膨れ上がる。

その証拠にゴンザレス太郎達が立っている場所は実は天の裁きにより溶岩の様になっているのだが、その上に白金貨が重なり合い地面みたいになっていたのだ。

平面で見てもとんでもない額なのは間違いないのだが、果たして下にそれが何キロ続いているのかはまるで検討も付かなかった。

 

「あっ!」

 

サラが気付いて声を上げる。

そう、ゴンザレス太郎は言ったのだ。

 

『最終目標は、鬼を全滅させて全員無事で更に助けられる人を全て助けてこの町の復興資金も用意する』

 

サラは今日何度目か分からない涙を流しゴンザレス太郎を見る。

だがゴンザレス太郎は人差し指を立てて横に振る。

 

そして、サラは涙で前が見えなくなるほどの驚きと感動、そして感謝をゴンザレス太郎に送るのだった。

 

「はい、魔王子アーサーさんだよ」

 

サラの目の前にゴンザレス太郎がアーサーを背負って歩いてきたのだった。



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第103話 救出完了!

「あっ」

 

サラの声に、この白金貨の事を理解したと気付いたゴンザレス太郎は小さく呟き最後の実験を行う。

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動」

 

心臓が一回大きく鳴るのにはもう慣れた。

そのままウィンドウを操作して、リストから目的の項目を見付けてONに入れる。

使用するのは初めてなので上手くいくか分からないが、多分大丈夫であろうと予測できる理由がゴンザレス太郎の頭の中にはあった。

そして、ゴンザレス太郎はサラに向けて人差し指を立ててまだ終わってないよと左右に振り、魔王子アーサーの結界に向かって歩いていく。

魔王が何かを言い掛けたが、ゴンザレス太郎の視線が魔王子アーサーしか見ていなかったのに気付いて、何を言っても無駄だと思ったのか様子を見ている。

そして、ゴンザレス太郎はそのまま結界を素通りして中へと入っていった。

 

「えぇ?!」

 

魔王は口を大きく開けて固まる。

それを気にせずにゴンザレス太郎は意識の無い魔王子アーサーを背負い、魂石を手に取って歩いて結界から出てきてすれ違い様に魔王に魂石を手渡す。

まるでマジシャンの手品の様に結界はそのまま残され、魔王の手には妻の魂石、ゴンザレス太郎の背中には魔王子アーサーが背負われていた。

 

「はい、魔王子アーサーさんだよ」

 

ゴンザレス太郎はサラの前に魔王子アーサーを白金貨の上に寝かせ、自分で回復魔法を掛ける。

ゴンザレス太郎自体は回復魔法が得意ではなく、レベルを振って覚えた使えないことはない…という程度の熟練度なのだが現在のゴンザレス太郎のステータスは史上最高。

勿論魔力も異常な高さまで上昇しており、簡単に言うとマッチをすれば核爆発を起こすくらいの影響がでる。

その為、初級の擦り傷の血を止める程度の効果しか無い筈のその回復魔法だが、魔王子アーサーは低下していた体力すらも全快しゆっくりと意識を取り戻し目を開ける。

 

「に…兄さん…兄さん!」

 

サラはアーサーに抱きつく。

もう会話も出来ないと考えていた兄がこうして目覚めたのだ。

もはや奇跡の大バーゲンセールみたいな事態の連続にサラは心の緊張が完全に切れた。

 

ゴンザレス太郎は兄弟の再会に大きく一回頷き起動しているコードの『建物素通り』を解除する。

この世界にゴンザレス太郎を転生させた神は確かに言ったのだ。

 

『俺達神の間で流行っている異世界ツクールってゲームがあって…』

 

そう、これが人間界にもあるツクールシリーズのゲームと同じ仕様なら『建物素通り』とは操作で通れない場所を歩ける効果ではないかと考えたのだ。

結果それは的中し、結界はキャラが進入禁止なだけで呼吸も出来てるしこのコードで何もなかったかの様に通れるようになったのだ。

 

そして、結界内のアーサーの生命力が無くなったので結界は消滅する。

ゴンザレス太郎サラとの約束を全て果たせた事に満足しフーカに向かって親指を立ててサムズアップを行うのであった。



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第104話 賑やかな日常へ

「おっ無事に救出できたみたいだな」

 

マコトの言葉に集まっていた全員が反応する。

背中にアーサーを背負って、左腕にフーカを右腕にサラを抱き付かせて、飛び上がってきたのはゴンザレス太郎であった。

正確にはフーカとサラは抱き付いて一緒にジャンプしているのだが…

 

ゴンザレス太郎がその背中に男を背負ってるのを見て、ジルは何か自分の中の新しい扉が開きそうになるのを感じたのは大人だけの秘密だ。

腐の属性に適性があるのかもしれない。

 

その後ろに続いて魔王も飛び上がり、地上に全員が集合した。

ゴンザレス太郎の宣言通り、全員無事で鬼を全滅させ助けられる魔王とアーサーを救出に成功した。

まさに伝説に残る瞬間であった。

 

「こ、これだけなのか?!」

 

アーサーは地上に人間の軍が待機していると考えていた。

それが外に出てみれば、居るのはニセバスチャンを入れても僅か4人、魔物の町が壊滅させられた時は町中の戦える魔物が奮闘したのはアーサーも知っていた。

あれから人間界に逃げて助けを求めて、ここまで来るのにも日数が掛かっていると考えれば、その鬼の数や強さは更に上がっていたと予測は容易いだろう。

 

「そ、そうかこの大穴を開けた人間の兵器があるのだな!それが人類の最強の兵器なのだな!その兵器は何処に在るんだ?」

 

一体何が在ったのか想像もつかない、痕跡の一切無い町の跡地。

風景の山々からここが町があった場所だと理解はできる、だが実際に目の前にあるのは焼け野原と巨大な大穴が二つ。

なのでアーサーは人間が作り出した兵器が在って、それでこの惨状と巨大な頭部の無い鬼の死体を作り出したと予想をした。

だが質問に返ってきたのは指差しであった。

しかも魔王まで全員ゴンザレス太郎を指差しているではないか!

 

「アーサー様、信じられないかもしれませんが全てそこの少年の力によるものです」

 

ニセバスチャンの言葉に振り替えるアーサーに魔王は伝える。

 

「こいつは俺よりも何倍も強い、俺でも歯が立たないぞ」

 

ゴンザレス太郎に抱き付いたままのサラも…

 

「この人が居なかったら私達は勝てなかったわ」

「………そうか分かった。少年よ、妹が欲しかつたら俺と勝負しろ!」

 

突然の宣言に一同…『どうしてそうなる?!』っと内心突っ込みを入れ。

 

「クハハハハハ!!それは良い!ゴンザレス太郎よ、アーサーに勝ったら息子と呼んでやるから俺の事はお義父さんと呼んで良いぞ!」

 

魔王の言葉に勝手に話が進む中。

 

「ちょっと止めてよ兄さんパパッ!私まだちゃんと好きだと伝えてないのよ!」

 

っと本人の前で宣言する始末。

更に追い討ちを掛けるように…

 

「じゃあ私も立候補しちゃおっかなぁ~」

 

っと正面からゴンザレス太郎を抱き締めたのはメールであった。

 

「メールふざけないで、サラは一緒に彼女にしてもらうけど貴女は認めてない」

 

フーカまで勝手に言い出し、ゴンザレス太郎の体からメールを引き離す始末。

マコトは爆笑してるし、ニセバスチャンはもうどうしたら良いのか分からないでパニクってるし…

場は完全にカオスとなったが、そんな和気藹々とした光景にやり遂げたのだとゴンザレス太郎は理解して晴天の空を見上げる。

 

変わらない日常をいつも照らしてくれる太陽は今日も暖かい一日を送り届けてくれる。

これから魔物の町の復興は大変だろうけど、人間と魔物が協力すれば今までよりも更に良い関係を築けて素敵な国に成るだろう。

その時もきっと太陽は暖かく皆を守ってくれるだろう。

 

「ねぇ?!聞いてるのタツヤ?!」

「んっ?何フーカ?」

「だから私達二人と婚約するだけなのか、メールも入れて三人共婚約するかって話よ!」

「俺にも孫が出来るのか…」

「お姉さんが色々教えて上げる」

「私は別にどっちでも私が側に居られるのなら…」

「許さんぞ!妹だけでなく二人もだと?!決闘だ!戦争だ!」

「ハハハハハッ本当に一緒にいると飽きないよ」

「お嬢様、私はどうすれば…」

「メールもいい加減にしなよ!」

 

周りは更に賑やかになるな。

この楽しい日々が永遠に続けば良いのに。

そうしたい、だからこそフーカは死なせない!

ゴンザレス太郎は半年を切ったフーカの死を回避する為に自分に誓うのだった。

 

『明日から頑張る!』

 

 

 

 

 

 

 

 

御愛読ありがとうございました。

また次回作で…

 

 

 

 

「ちょっとゴンザレス太郎聞いてるの?!」

「分かった。分かったってば!とりあえず一度町に帰ろうぜ」

「「「「「さんせーい!」」」」」

 

こうして一同は町に向けて出発するのであった。



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第105話 魔王の秘密

俺の名は『麻田 舞男(あさだ まお)』

芸能人と同じ読みだが、男でたまにからかわれる。

家は代々神様に踊りを捧げる家系で、俺は兄の予備として小さい頃から踊りの教育を受けてきた。

高校を卒業してからは親から軟禁に近い形で家に閉じ込められ、兄がもし踊れなくなった時の代用品として生きて踊るためだけの存在として飼われていた。

その日々はハッキリ言ってただの地獄だった…

そんなある日、兄が体調を崩して初めて表舞台に出て兄の代わりを一日した。

 

なんだこれは…兄は毎日こんな沢山の人達に囲まれ、こんな良いものを食べて、こんないい生活をしているのか?

 

舞男は神に踊りながら祈りではなく怒りを捧げた。

神なんて要らない、普通の生活がしたい。

こんな毎日はもう嫌だ!

 

それは天罰だったのか、神様に祈りを捧げるべき時に神を否定することを言ったからなのかは分からない。

踊っている最中に突然の心臓麻痺で舞男は人生に幕を閉じた。

 

だが舞男は感謝していた。

 

(神様ありがとう、これでこの地獄から抜け出せる。)

「いやいや、どういたしまして」

 

舞男は驚いた。

気が付いたら一面真っ白な空間に居たのだ。

そして目の前には真っ白な人影みたいな者がいた。

それは告げる。

 

「君に第二の人生をあげよう、こことは違う異世界だけど何か希望はあるかい?」

(まさか神様?!そ、それなら俺は人間が居ない場所に行きたい)

「そうか、君は他人が怖くなっちゃったんだね。よし分かった、君のために僕が力をあげるよ!」

 

そう言って白い空間に居る白い神は舞男に何かをした。

白に白と言うとても見にくい姿だったので何をしたのかは分からなかったが、体の底から力が溢れるのを感じた。

 

「それじゃ第二の人生を楽しんでね~」

 

 

 

そして、舞男が目覚めたそこは知性のある魔物の住みかであった。

 

「あっ目が覚めたみたい、坊や大丈夫?」

 

目の前に居たのは胸だけを布で隠した女性、下半身はなんと大蛇であった。

 

「坊やそこに倒れていたんだけど何処か痛いところ無い?自分の名前言える?」

「ありがとうございますお姉さん、僕は舞男です。痛いところは特にないですね」

「マオーちゃんね、私は…」

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?じゃあ魔王も転生者だったの?!」

「お義父さんと呼べ、そうだ。日本の鎌倉って場所の出身だ」

「僕は北海道ですよ。」

「二人共違う世界から来たってこと?」

 

鬼との決戦から一ヶ月と少しが過ぎて、12月の後半に入っていた。

あれから魔物の町の復興のため魔物と人間の交流が始まり、あっという間に月日が流れていた。

魔海の魔物も魔王の配下らしく、魔海を船で渡るのに協力をしてくれ、今では魔界にも多くの人間がやって来ていた。

観光目的の者も多く、魔界魔んじゅうなる人間も食べられるお土産なんかも販売されていたりする…

他種族同士で技術の流入や、魔界でしか採掘できない素材など互いの発展に大いに貢献し合えて友好関係は末長く続きそうである。

 

今日はたまたま魔王がゴンザレス太郎の町のギルドマスターに用事があるとかで人間の町まで来ていたので、久々にゆっくり話をしようとギルド近くの飲食店に集まったのだが、フーカが魔力の放出を止めた魔王の名前をスキミングで見てしまう。

その名前が『魔王』ではなく『マオ』だったのでゴンザレス太郎と同じだねって事で話してみたらビックリなのであった。

ただ、魔王の会った神はゴンザレス太郎の会った神と聞いてる限り別人っぽいのが気になった。

 

「そっか、じゃあタツヤは見た目通り7歳じゃないんだね?」

「そんな事言ったらフーカだってやり直した分だけ…」

 

フーカがゴンザレス太郎の内腿をつねる。

 

「いだだだだだ」

「女の子に年の事を言うのは良くないわ」

 

自分で話振っておいて酷いものである。

 

「そういえば魔王は今日は一人なの?」

「お義父さんと呼べと言うに、サラの事気になるんだろ?」

 

ゴンザレス太郎、フーカに二人一緒に彼女にするよう言われているので気にしないわけにはいかない。

っというか、嫉妬とか無いのか気になるところだが、フーカとサラは死線を潜り抜けた親友よりも強い絆でお互い結ばれているので、むしろ二人一緒じゃないと嫌だと言い張ってるのだ。

 

「サラなら今日の昼には用事が住んで、年内は予定が空いてるはずだぞ」

 

魔王のその言葉にゴンザレス太郎は「ちょっと実験したいんで」と言い腰掛けてた椅子から立ち上がる。

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

もう慣れたそのスキルを使い初めての実験を行う。

大きく鼓動が鳴るのも慣れて気にもしなくなっている。

 

「おっ!リストから選べるのか!」

 

ゴンザレス太郎が発動したのは『パーティーメンバーに加える』である。

ゴンザレス太郎がリストを操作してサラを選択し決定を押す!

目の前に突然下着姿のサラが現れたのだ!?

 

「あれっ?えっ?私今御風呂に入ろうと…」

 

混乱するサラの視界にゴンザレス太郎と魔王が入る…

 

「キャァァァァァアアアア!!!!」

 

サラの拳が魔王の顔面を捕らえて魔王は椅子ごと後ろにぶっ倒れる!

そしてゴンザレス太郎から体を隠すように小さくしゃがみこみ震えながら…

 

「見た?」

 

っと聞くのだが可愛いお尻とパンツが…

 

「い、いや見たと言うか…見えてる…」

 

っと答えるゴンザレス太郎、彼とサラの間にフーカが入ってサラにコートをかけてやる。

12月と言うことで外は寒く、コートがあって良かったと考えるフーカにサラは抱き付いていた。

明らかに伸長差があるのでコートからやはりパンツが見えているのだが、ゴンザレス太郎は指摘せずに倒れた魔王の…

 

「なんで俺だけ…」

 

っと言う台詞を聞くのだった。



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第106話 ファンタビジョン

年末と言えば…そう、クリスマス!

異世界にはそう言った行事は勿論無いのだが、暫くニート生活を満喫していたゴンザレス太郎の発案で、魔物と人間の交流の場としてパーティーが開催されていた。

と言っても貴族の参加するような洒落たモノではなく、一般の人も気楽に参加できる、歌って騒げる立食パーティであった。

食事に関しては魔物サイドから白金貨が寄付され、ゴンザレス太郎のコード『料理で食材減らない』で多量に作って無限に出せるため参加費も食事も無料となった。

 

「ひゃっほー!祭りだ祭りだぁー!」

「おぅおめえ魔物の癖にいけるじゃねぇか!」

「あんたこそ人間にしてはいい食べっぷりだねぇ~」

 

あちこちで盛り上がる会場!

なんといつの間にか魔物と人間のカップルまで出来上がってるではないか!?

 

「なんだよ別に俺の好きに飲ませろよ」

「良いじゃん注がせてよ」

 

ゴンザレス太郎はメールがヤバイに迫ってるのを目撃したが、見なかったことにして両手にフーカとサラと言う華を持ったままパーティーに参加していた。

時には喧嘩が起こったりもするがそれも…

 

「ほらっ今日は楽しむ日だからその辺で止めておけ」

「そうよ、喧嘩は両成敗しちゃうんだからね!」

 

デニムの腕に抱き付きながら酒を飲んでるジルが…

やはり見なかったことにして…

 

「おっおぅゴン太久し振りだな」

「フーカさんも変わらずで…」

 

目の前に居たのは学校のクラスメイトのアイアンとホネオ。

鬼の大群を殲滅させるほどの人間に教えることはもうない!と学校を飛び級になったゴンザレス太郎とフーカは久々の再会に思わず吹き出す。

彼等は勿論知らない、ここ暫くゴンザレス太郎が働きもせずに引きこもりになっていた事など…

 

「シズクちゃんもデカスギと付き合いだしたし、俺達こんな日でも男同士なんだよー」

「ををっホネオ!俺達心の友だよなー!」

 

抱き合う二人…

こらこら、男同士でそういうことやってると…

 

『ゾクッ?!』

 

チラリと振り替えるとデニムの腕に抱き付きながら目を光らせてるジルの姿が…

 

そそくさとその場を退散する3人であった。

そして、川の方へ予定のサプライズを行おうと移動をしたらそこに人影があった。

一人は腰を曲げてもう一人は背伸びをしてキスをしているその二人…

マコトとサリアであった。

いつの間にか一緒に暮らすようになった二人が離れるのを確認し、少し時間を空けてから近付いて挨拶をする。

 

「よっロリコン(やぁ元気かい)」

 

おっと本音と考えていることが逆転してしまった。

だが…

 

「ろり?よく分からないがサラさんも来てたんだ。」

 

異世界で英語がなくて助かった。

軽く挨拶をしてこれからサプライズをやるから見晴らしのいい場所に移動することを薦め、二人と分かれゴンザレス太郎達は予定の場所に到着する。

 

「待ってたぞ息子よ!」

 

魔王である。

働きもせずに毎日を過ごしているゴンザレス太郎に娘が惚れてる事はまだ知らない…

合流後、準備と言うような物も特に無いのでそのまま四人はサプライズを開始する!

 

ピューーーードーン!

 

空にでかでかと描かれる炎の魔法は夜の町を明るく染め天を彩る。

そう、花火である。

日本では絵が描けない複雑な形も、魔法で空に描け火の魔法が得意なサラとゴンザレス太郎が花火を演出し、フーカが次の花火を見やすく空の煙を風魔法で飛ばす。

そして、落ちてくる火の粉等を魔王が闇魔法で吸収し地球ではあり得ないほど美しい光景をその夜ゴンザレス太郎達は皆の記憶に残させるのであった。

 

 

第1章 第1部 完



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第1章 第2部 フーカ編『パンドラ』
第1話 スキル『パンドラ』


「お父さん、私のユニークスキル何かなぁ~?」

「こらフーカ、もう6歳のレディなんだからもっと女の子らしくしないと駄目だぞ」

 

明るく綺麗な声を持つ少女が父親と手を繋ぎながら礼拝堂への道を歩く。

父親は優しい顔つきで娘に微笑んでおり、黄色い目がまるで外人のように見える。

少女は父親と違い青い目をしており、おかっぱ頭の髪を揺らしながら楽しそうに歩いている。

 

「うん、フーカレディだからおしとやかにする~」

「よーし良い娘だぞフーカ」

 

礼拝堂の列に並び順番を待ってる時に男の子が出てきて、女神様からスキルを2つ授かったと喜んでいた。

人によっては希に2つユニークスキルを授かる者も居て、あの男の子もそうなのだろう。

 

「次の方どうぞ」

 

少女は中に入り、片膝を付いて祈りを捧げる。

そして、どよめきが神官達に広がる。

父親は何事かと心配しながら神官と共に出てきた少女のスキル名を聞いた。

 

「ユニークスキル『パンドラ』ですか?」

「えぇ、聞いたこともないスキルです」

 

少女は大人達がざわめく意味が分からない、なので父親の説明を待つが父親のユニークスキル『スキミング』をもってしてもその詳細は分からなかった。

仕方なく「大人になったら使える凄いスキルだけど人に話してはいけないスキル」っと教えて家に連れて帰るのだった。

 

「そう、誰も知らないスキルなのね?」

「あぁ、俺のスキルでも見抜けなかったよ」

 

赤い目をした母親は旦那の言葉に嘘がないことを理解して娘の寝顔を見つめる。

母親のユニークスキルは『スピリチュアリティ』、質問したことに対する返答が嘘か本当かを見抜くスキルであった為、旦那の言葉を信じるしか無かった。

 

 

 

そして、翌年…

運命の日はやってくる。

 

 

「どうもシズクの父です」

「フーカの父です。今日はお招き頂きありがとうございます」

「いえいえ、娘のシズクもフーカちゃんと仲良くなってからガラリと変わって明るくなりましたから、フーカちゃんには本当に感謝してるんですよ」

 

隣では二人の母親同士も会話をしておりフーカとシズクは仲良く遊んでいる。

そして、悪夢の惨劇が始まった。

突然の襲撃、不意を突かれて殺されるシズクの一家。

フーカの両親は強盗が最後に残していった炸裂魔法からフーカを庇う。

 

フーカに覆い被さった父親は背中に大火傷を負う、だがフーカの無事を確認し安堵の息を吐く。

しかし、フーカの目の前に炸裂魔法で吹き飛ばされたシズクの変わり果てた姿が写り混む。

声にならない叫び、そして後ろで覆い被さってる父親の息が徐々に弱っていくのを感じた…

母親はフーカからは死角の位置で事切れていた。

絶望の最中、どうすることも出来ないフーカは必死に祈りを捧げた。

 

 

「助けて下さい神様!助けて下さい神様!助けて下さい神様!助けて下さい神様!…」

 

炸裂魔法の炎が家中に広がり、炎の中呼吸が苦しくなってもフーカは祈り続けた。

目の前に見えているシズクが焼かれ、覆い被さっている父親と共に自分も炎に包まれていく。

彼女を庇った両親が彼女を押さえて動けなくしていると言う皮肉な現実…

その時、フーカのユニークスキル『パンドラ』が発動した!

 

『パンドラ』絶望に包まれた最後の最後に希望を与える幻のユニークスキル。

 

それはフーカとフーカに触れていた両親の最後の想いが溶け合い一つに成る!

シズクを助ける為に人生をやり直せる『転生タイムリープ』と両親がフーカを守るためにそのユニークスキルをフーカに自身の代わりとして譲渡した。

そして、フーカも焼け死にユニークスキル『転生タイムリープ』によって生まれた瞬間へ時が巻き戻る。

だが、フーカの中に両親の魂はスキルとして入っており、その存在はパラドックス回避の為に転生後の世界には存在しなかった。

捨て子としてフーカは子供の居なかった老夫婦に拾われ、その家で暮らして成長する。

今度こそシズクを助けるために…

 

 

 

 

「うぁぁぁぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

 

その日、自室のベットの上で飛び起きたオッドアイのフーカは悪夢を見たのだと理解する。

だが、一体どんな内容だったのかは思い出せ無かった。

 

1月1日、フーカはこの世界にはシズクが生きてこの日を向かえられたのを理解し、ゴンザレス太郎なら自分を助けてくれると信じてベットから降りる。

 

「残りの3ヶ月絶対に生き延びてやるわ!」

 

フーカの意気込みを嘲笑うかのように運命の歯車は回り出す。

 

 

 

 

真っ白の空間、そこに居る真っ白の存在はそれに気付いた…

 

「ん?アップデートのお知らせ?」



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第2話 フーカ、死の原因

白い何もない空間に突然歪みが発生し、そこに人形の白い何かが現れた。

 

「んー何年くらい寝たのかな?げっ7年しか寝てないや」

 

それはゴンザレス太郎を異世界に転生させた一人の神であった。

 

「まぁ起きちゃたんだから仕方無いよね、なんかメールとか来てるかなぁ~」

 

神は意識を何処かへ飛ばす。

人知を超えた何かを行ってるように見えるが、やってることは単なるメールのセンター問い合わせである。

 

「メールも結構来てるなぁ~ん?アサッテキーから重要なお知らせ?」

 

ご存知アサッテキーとは神のゲーム『異世界ツクール』を制作販売した神の世界の会社である。

過去に大きなバグが発見された事件から、こうやってメールを定期的に流し、修正プログラムを更新させて修正等を行えるようにしているのである。

アサッテキーのプログラマーが人間の世界のアダルトゲームからこの案をパクったと言うのは神の世界では有名な話なのだが、改善されるのであれば問題はないと誰もなにも言わない。

 

「ん?アップデートのお知らせ?」

 

メールを開いて神は声をあげる。

そこを読み進めるとみるみる神の機嫌は良くなっていく。

 

「新たな素材の追加にイベントスイッチの増量、魔物の種類も増えて任意で気候変化まで操れる?!凄いじゃんこれ!」

 

神の頭の中ではずっと雷の降る町や!全てが砂で出来た町などそこに住む生物の事など考えてない、面白いからってだけで作りたいアイデアが増えていく。

 

「これいいね!早速落として更新しよー!」

 

パソコンで言えばダウンロードしてアップデートしている作業であるが、神の作った世界の摂理を操れる様に真理を変革すると言うとんでもない事をしているのだ。

 

『エラー、不正プログラムまたはバグがあるためにアップデートを完了できませんでした』

 

神の前に表示されたそれに神は混乱する。

不正プログラムに心当たりはない、かといってバグの様なモノにも心当たりが無かったのだ。

 

『エラーの詳細を表示しますか?』

「ををっこれは便利だ!勿論してくれ!」

『エラーNo.104 ユニークスキルを3つ以上所持している個体が居る為』

「そんな馬鹿な!?バグで重複しても2つまでに成るように間違いなくしているはずだぞ?!」

 

神はその個体が居る為に、自分が想像した面白い事が出来ないと言うのが許せなかった。

 

「よし、殺しちゃおう」

 

そして、神は対象を殺すために仕掛けておいたいくつかのプログラムを作動させる…

全ては神が『面白い』と感じる作りになっているそれ、他社から見れば迷惑でしか無い代物なのは言うまでも無いだろう。

 

「ふーん、フーカって人間の女の子か、悪いけど死んでね~」

 

神はそう呟き対象が死ぬまでの間、暇潰しに人間界で書かれた小説サイトを覗いて読みふけるのだった。



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第3話 小さな変化

「フーカこれなんてどう?」

「もうちょっと小さくないと…」

「ん?こう?」

 

現在ゴンザレス太郎とフーカは冒険者ギルドの余った依頼の処理、通称ゴミ拾いを行っていた。

どうしても依頼料金が安かったり、難易度がおかしい依頼は放置され残される、なのでこういった仕事を行う専門の依頼が存在するのだ。

要は受けた冒険者ギルドの信用に関わるので不良債権処理というやつである。

実はSランク冒険者の副業として成り立ってたりする、定期的にこれをやる事で手当て金が支払われるのだが、その実態はあまり知られていない。

だが、ゴンザレス太郎の両親が引きこもったゴンザレス太郎を心配していたのと、ギルドマスターがゴンザレス太郎のスキルの汎用性が高すぎるのに目を付けた事が重なり、特例で補助金を支払うと言うことで二人は仕事として行っていた。

現在二人が受けているのは『翡翠の石でネックレスを作って母の墓石に備えたいので翡翠の石が欲しい』と言う依頼である。

二人は翡翠が取れる東にある西山鉱山の麓に来ていた。

 

「あらら…」

 

ゴンザレス太郎のチョップで翡翠を小さく割ろうとしたのだが、攻撃力が高過ぎる為に翡翠ほ粉砕してしまったのだ。

ちょっと力入れたらこれなので、ステータスが高過ぎるのも困りモノである。

魔物の町から帰ってから急ぐ度にドアノブ握り潰したりスプーンが指の形に変形したりと力加減に苦労してたりする。

だが甘えてくるフーカとサラの全力を平気な顔して受け止めれるので、二人にとっては有り難いことでもあった。

 

「あっ、まただね」

 

ゴンザレス太郎は少し離れた所に魔物の姿を見掛ける、実はこの魔物達は神のプログラムでフーカを狙っているのだが、フーカ自身も強くなりすぎていて魔物は近付いたところで傷一つ付けられず、しかも横にいるゴンザレス太郎の強さは異次元レベルである。

その為、本能で逆らったら種族単位で絶滅させられると魔物も一瞬で理解する事となる。

実際に鬼族はゴンザレス太郎によって絶滅させられているのもあるだろう。

 

「最近魔物を変に見掛けるけど、なんなんだろうな?」

「………多分、始まってるんだと思う」

 

フーカは繰り返した死の原因の一つに、魔物に追われ続け殺された経験があったのでそれを理解していた。

だがゴンザレス太郎のお陰もあり、並の魔物には目の前で昼寝してても殺されないレベルに強くなっている。

神の誤算でもあった。

人間の7歳の女の子が強制集中ヘイトを集める、これだけで事故で勝手に死ぬだろうと神は考えていたのだ。

 

「まぁ、これくらいなら問題はないだろ?」

「うん、タツヤのおかげで今までの人生では考えられないくらい強くなってるし」

「帰ったら他にどんな内容だったか、思い出すのは辛いかもしれないけど話してくれるか?」

「うん…分かった…」

 

二人は手を繋いで町へと帰っていく。

ギルドの人間は知らない、依頼の翡翠の石20個は全てフーカが見付けて集めていて、もしもゴンザレス太郎が一人でこの依頼を行っていたら20どころでない数を持ち帰っていたであろう事を…

依頼に出る必要もなく、適当に購入した翡翠一個を『アイテム増殖』で増やしたであろう事を…

相場の崩壊を回避したフーカのお手柄である。



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第4話 神の試練はまだ始まったばかり

ゴンザレス太郎とフーカは町に戻り、依頼の品をギルドに渡して報酬を貰い、二人で歩きながらこれまでフーカが死んだ数々の内容を聞いたのだが…

 

「…まだあるの?」

「うん、でも後は似たような死に方ばっかりかな?」

 

かなりの数の死因を一通り聞いたが、半分以上は魔物や人に殺されるって内容だったのでそれは除外しても大丈夫だろう。

今のフーカを殺すならSランク冒険者を全員揃えるか、SSランク以上の魔物が襲ってくるくらいでないと不意打ちでも殺せないからだ。

 

「そうだ、フーカこれ渡しておくよ」

 

そう言ってゴンザレス太郎は瓶を取りだし渡した。

その中の赤い液体に見覚えが勿論あり、フーカはそれをスキミングで見て驚く!

 

「タツヤ、これ?!」

「実はこないだからまたガチャ回しててね、やっと出たんだよ『使用したことのあるアイテムランダム復元』が」

 

それはご存知『効果範囲内の全ての者の全回復&死者すらも死んでから10分以内なら生き返る』アイテム『ラストエリクサー』であった。

だがこの『使用したことのあるアイテムランダム復元』は過去にゴンザレス太郎が使用したことのある全てのアイテムからランダムでアイテムを復元するのだが、無から作り出す為に神力を異常な量消費するのだ。

今のゴンザレス太郎には同行の洞窟や、鬼の山や、鬼神を倒した時の神力があるが、それでも超希少アイテムのラストエリクサーの出現確率は滅茶苦茶低かった。

その為、ゴンザレス太郎がこれを出すまでにかなりのアイテムと呼んでいいのか分からないゴミが出ていたりする。

ちなみにアッポーペンが大量に出たのは使い道がない事が関係しているのかと一人納得しつつ、町の孤児院に寄付したりしていたが、何故リンゴにペンが刺さった状態で寄付されるのか孤児院の人は首をかしげていた。

 

「もし、俺が守りきれない事があってもこれがあれば最悪の状況でも助かる可能性があるからね」

「タツヤ…ありがとう…」

 

自分の身を心配しているゴンザレス太郎がラストエリクサーを複数用意出来たのなら、一本ではなく複数渡す筈だと理解しているフーカはこれがやっと用意できた一本なんだと理解した。

 

「でもね、これはタツヤが持ってて。もし私が死んでも10分以内なら生き返らせられるでしょ?」

「そう…だね、分かった。これは俺が持ってるよ」

 

こうして、突然やって来るフーカの死に警戒する二人であったが、特に魔物のヘイトを集めるくらいで何事もなく、たまに働くだけのニート生活を送る二人は2月を迎えていた。

 

 

 

 

 

ちょうどその頃、白い部屋で長編小説を読み終えた神がそこに居た。

 

「あれ?まだ死んでないのか…そっか、この娘町から出てないのか。確かこの町には…あぁ、こいつらが居たな。じゃコイツらを使うか!」

 

何かのイベントを操作した神はまた別の小説を読み始める…

 

「悪徳令嬢にシンデレラに桃太郎…

人間は本当に面白い話を考えるなぁ!」

 

再び趣味に没頭する神であった。



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第5話 発生しないイベント

薄暗い洞窟の中から呻き声のようなものが上がりだした。

 

「う…ううううう…」

「あ…あがががが…」

 

奴隷として売られ首輪に繋がれて、鉱山奴隷として働かされている二人の男、かつてシズクの家に強盗として入り一家を惨殺する筈だった二人である。

本来の歴史であれば、二人の借金はシズクの母親の宝石を売り捌いた金で借金を返済するが、泡銭で儲けた二人は再び金に困り、神の操作により任意の相手を襲うように設定を作られていた。

だが、ゴンザレス太郎により二人はシズクの家族を殺すこともできず、本来であれば死んでいるはずのフーカはスキルの力により両親が既におらずフーカ本人も生きていた。

つまり、ゴンザレス太郎だけでなく実はフーカも歴史に干渉していたのだ。

そして、二人の男は神の操作によりフーカを襲う様に行動を起こしたいのだが、鉱山奴隷として鎖で繋がれて逃げることも出来ず、突然の苦しみに悶えていた。

 

「っど、どうしたんだこいつら?」

「分からん、さっきまで『俺、ここを出たら田舎に帰って家業を継ぐんだ』とか言ってたのに突然…」

 

あまりにも異様な二人の急変に、鉱山から毒ガスが発生したのではないかと騒ぎになってこの鉱山が暫く閉鎖されたのは言うまでもないだろう。

勿論二人は解放されず、そのまま奴隷として拘束されたままだった為、次第に廃人のようになるのであった…

 

 

 

 

 

丁度その頃、町の方では小さなイベントが起こっていた。

 

「えっ?!」

「あの…ゴンザレス太郎…これ…パパから聞いて…」

 

それはサラからバレンタインのプレゼントであった。

勿論異世界にそんな文化もなく、チョコの代わりにお菓子を渡しているのだが…

 

「サラ、抜け駆けとはいい度胸」

「なによフーカは毎日会ってるんでしょ?」

「うぅ言い返せない…」

「ゴンザレス太郎、来月のお返し楽しみにしてるよ」

「っ?!どういうこと?!」

「バレンタインの翌月にホワイトデーと言うお返しをするイベントがあるんだって。」

「タツヤ、私も用意してくる!待ってて!」

 

命を狙われている筈のフーカは特に何事もなく一人駆けていく。

魔物のヘイトを集めるくらいでここ暫くは特に何事もなく、彼等は幸せな毎日を過ごしているのだった。

 

 

 

 

 

 

「ど、どうなってる?!俺は確かにイベントを起動したぞ?!くそっこうなったら可哀想だがこの手で行くか…」

 

神はフーカがまだ生きていて、奴隷となった二人が指示通り行動してない事実に苛立っていた。

設定したイベントが何かの不具合で途中で止まることは良く有り、これもその一つだと考えた結果、間接的にだが自ら手を下すことに決めたのだった。

全てはアップデートの為に…

 

「良く考えたらネタで作ったこの呪いのアイテム、こういう事態にピッタリじゃないか!ハハハッ」

 

神はまだ知らない、フーカを守る規格外のゴンザレス太郎という存在の事を…



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第6話 イタチゴッコ

それは気付けばそこにある。

まるで呪いのように…

 

「タツヤ、遂に始まったみたい…」

 

フーカはゴンザレス太郎にそれを見せる。

小さな黒い石であった。

フーカの話では朝起きたら手の中に入っていたとのことだ。

 

呪縛石:対称に取り付き死ぬまで生気を吸い取る呪いのアイテム。取り付かれたら二度と外れず、死んだ後も生気を吸い続け生気が吸えなくなったら爆発して消滅する。

 

「これがその『呪縛石』なんだね」

「うん、以前と違ってHPが高いからまだ平気だけど今も吸い続けられてる…」

 

ゴンザレス太郎の力でも呪縛石は破壊することは出来ず、その石を見詰めてゴンザレス太郎は考える…

力ずくでどうにか出来れば一番楽だったのは言うまでもないからだ。

 

(どうしてフーカは殺されなくてはならないのだろうか?スキルのせい?それとも死ぬはずだったのが生きているから?)

 

考えるが全く原因の分からず悩むゴンザレス太郎を見てフーカは落ち込む…

やはりゴンザレス太郎でも難しいのかと…

 

「どうしよう、やっぱり手首ごと切り落とすしか無いのかな…」

 

フーカの言葉にゴンザレス太郎焦る!

フーカは今のHPなら直ぐに死なないし、片手無くなるけど最悪ラストエリクサーがあるので再生も出来るのでどうとでもなる、やはりゴンザレス太郎が居て良かったと考えるが…

 

「何言ってるの?!簡単な事じゃないか!」

「へっ?」

 

ゴンザレス太郎、前にフーカから聞いた死因で今回の事は予想していたので対策も決定済みだったのだ。

ただ、別の方法が思い付ければそれを試そうと思っていただけである。

 

「とりあえずギルドの店に行こう」

 

ゴンザレス太郎が何を考えているのかは分からないが、自分を助ける簡単な方法があると言う言葉に安心し、感謝と尊敬の念を持ってゴンザレス太郎の腕に抱き付き移動する。

そして、店の前に到着し…

 

「フーカ、今持ってるアイテム全部出して」

「えっ?う、うん…」

 

そしてフーカが着ていた服から次から次へとアイテムが出てくる…

ちょっと引いたゴンザレス太郎だったが、女の子には秘密のポケットがあると言うくらいだから仕方ないのかとそれを全部預かる。

そして、二人は店に入る。

 

「いらっしゃい、おや英雄君じゃないか!今日はどうしたんだい?」

 

もう顔も知れ渡り、ギルド会員カードを提示しなくても大丈夫なのだが二人ともカードを律儀に提示する。

これに笑いながら「あいよ確認したよ」っと陽気に笑う受け付けの前に立って。

 

「すみません、ちょっと協力お願いしますね」

 

っと告げゴンザレス太郎はフーカから一応ギルドカードを預かりスキルを発動する。

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

心臓のドクンッと鳴る鼓動をいつものように聞いてゴンザレス太郎は操作する。

フーカも邪魔にならないようにゴンザレス太郎の腕を離れて様子を見守る。

ゴンザレス太郎、どうやらあれから更にコードが増えたらしく、目的のコードが中々見付けられなかったが、やっと見付けて安心しそれを起動する。

 

「よし、それじゃフーカさっき預けたアレを俺は店から出てるから買い取ってもらって」

「わ、分かったわ。」

 

そう告げゴンザレス太郎は店から出て入り口で待つ。

フーカが店員に売るために出したのはあの思い出のリップクリームであった。

 

「おっ!懐かしいねこれ!はいよっ買い取り価格の銀貨4枚だ」

 

フーカはそれを受け取り、これからどうしたらいいのか分からなくて困惑したのだがその時やっと気付く…

 

「えっ?あれっ?呪縛石が…無い!」

「ん?何か落とし物かい?」

「あっいえ、なんでも無いんです。買い取りありがとうございました」

「こちらこそ、あっ彼氏に言っといて。今度またなんかレアな素材売りに来てって」

「わ、分かりました!」

 

フーカ、ゴンザレス太郎の事を正式に彼氏呼ばわりされたのは実は初めてで、凄く嬉しいのに加え、どうやったのか分からないがまた助けられたのに嬉しくなりすぎて声が裏返ってしまった。

だが気にせずにそのままゴンザレス太郎が待っている店の外へ駆け出していく。

 

「んふー少しでも早く彼氏と一緒に居たいのね、可愛いわぁ~声も綺麗だしあの子は美人になるだろうなぁ~」

 

そんな独り言を呟くギルド専用販売店の彼女はまだ独身であった。「ほっとけ!」

 

 

外に飛び出したフーカを見たゴンザレス太郎はスキル操作をして、使用していたコードのスイッチをOFFにする。

そのゴンザレス太郎に飛び付いて抱き付くフーカ。

 

「ありがとうタツヤ、でもどうなってるの?なんで?教えて?」

「まぁまぁとりあえず落ち着けって、はい荷物」

 

そう言ってゴンザレス太郎は預かってたフーカの荷物を返す。

その作業が必要と考えてフーカもゴンザレス太郎が何を行ったのかに辿り着いた。

 

「分かったみたいだね、考えれば簡単な事でしょ?」

「でもこれタツヤが居なかったらやっぱり私、手首切り落とすしか無かったよね?」

「んーまぁなんとかなったから良いじゃん」

「うんっ!」

 

凄く嬉しそうなフーカはやっぱりゴンザレス太郎しか自分を助けられないと確信していた。

今回の様に頭が切れる大好きな彼、世界中の中で二人が出会う確率は天文学的確率と言う言葉を知りはしないのだが、フーカはこの時代のこの時の為に何度死んでも諦めなかったという事を喜んでいた。

 

「いやーしかし内心成功するとは思ってたけど、フーカの荷物も僕の所持品ももしかしたら…って考えていたから全くラッキーだったね」

「そっか、その可能性もあったのよね…」

 

そう、今回ゴンザレス太郎が発動したコードは『アイテム売ったら持ち物全て無くなる』であった。

これがパーティー単位ではなく個人単位での効果で良かったと安堵しているが下手したら範囲内の全ての人に影響を与えていた可能性もあった。

ちなみに衣類が無くなった場合も考えて、店員は女性で店内に他に人が居ない事を考え、入り口で他のお客さんが店内に入らないようにゴンザレス太郎がガードしていたのはフーカには秘密であった。

なんにしても予定通りで良かったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ死んだかなぁ~?ってあれー?!なんで!?僕確かにあのフーカって女の子の手の中に送ったよ!確認したもん!なんで無くなってるの!?」

 

神はかなり混乱していた。

全知全能と言える筈の世界での出来事に、自身の理解が及ばないのである。

そして、神の中にどす黒い感情が産まれる…

 

「なんだか面倒くさくなってきちゃったな…町に住む人全員一緒に壊しちゃうか!」

 

思い付きで行動する神はやはり…面白いかもしれない、という理由だけで町にも色々仕込んでいた。

破壊神も疫病神も神で間違いない訳だ。

 

「うん、じゃあ町ごと全滅して貰っちゃおう!」

 

そして、神は最悪の細菌兵器のスイッチを入れる。

それは一日で町中に広がる伝染病のウィルス兵器。

そして、感染したら一日で確実に死ぬ。

神がオリジナルで組み込んだ最低最悪のそれは遂に動かされた。

 

「いいさ、こんな町一つくらい。僕は神なんだから」

 

神の笑い声が木霊するが、翌日神はまた驚き怒り狂うのを本人はまだ知らない…



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第7話 全ての事象にはあらゆる変化が影響する

神の仕込んだウィルス兵器『デスポイズン』は空気感染し、感染した全ての生物はHPを一時間で30%減らす猛毒であった。

感染後即処置をしなければ3時間程で死に、回復アイテムで一時的にHPを回復させて治療したところで毒そのものは決してなくならない。

ただデスポイズン自体は炎に弱い性質がある、その為感染者を火葬すればそれ以上の拡散は防げる。

だがそれはあくまでも全員が死んだ状態での話で、生き残りが居れば更に感染は広がると言う悪夢のようなウイルスであった。

唯一の懸念として、火に弱い事から民家などに忍ばせた場合、その民家が火事になったりして消滅してしまう。

それを避けるために、そのウィルスが入った兵器は民家から離れた土の中に神は設置して埋められた状態で保管されていた。

しかも、もしも地中で拡散されれば土壌も汚染する…

使用されたその土地は暫く使用できなくなる恐るべきものであった。

 

 

 

 

「なのに何故だ!何故何も起こらない!?」

 

神は苛立っていた。

確実に仕込んだ筈のネタ兵器が不発に終わったのだから仕方あるまい。

そして、その原因はやはりゴンザレス太郎にあった。

 

元々町の中に在って、民家の立てられない場所で、人が入れる場所にこの兵器は仕込まないと意味がない。

その為、神が作成時に設置した条件に合う場所は河川敷であった。

そう、この兵器はゴンザレス太郎の『埋めたアイテムランダム変化』の実験で使用された場所の地下深くに埋まっていたのだ。

そして、マコトのミスで『クイーンボムの堪忍袋の緒』の大爆発に巻き込まれこのデスポイズンは吹き飛んでいた。

だがそれでも地中で汚染が少しはあったのだが、その場所が聖女様の誕生の地として祭られ人が入らなかった事で人的被害は皆無となっていた。

更にサリアの『セーブラック』と組み合わせて埋められた、結局掘り起こされてないゴンザレス太郎が埋めたアイテムが『女神の涙』と言うあらゆる汚染を浄化する伝説級のアイテムに幸運にも変わり、土壌を浄化していたのである。

結果、この場所は『女神の涙』の効果で美しい花を一面に咲かせ、聖女の聖地としてなにもしなくても聖女の力で清められ続けていると噂されて更に崇められ、観光名所となり大事に保護されていたのであった。

全ては偶然の産物、幸運の大バーゲンセール効果はとんでもなかった。

 

「こうなったら、アイツに殺らせるか…高々人間一人相手にだが折角魔王を名乗らせてるんだ。」

 

そう呟き、実力行使に出る事を決めた神…

神はいよいよ何も知らないまま、自分の作った異世界へ入ることを決めたのだった。



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第8話 魔王様のお断り

一人の少女が居た。

身長は低く120センチくらいであろうか。

セミロングの銀髪の髪に花をイメージした小さな飾りを着け、ヒラヒラと踊る白いワンピース姿で少女は魔物の町の中を徒歩で歩いていた。

細くて白いその腕の先には、人よりも大きなハエの姿をした魔物の頭部が握られ引きずられていた。

 

「魔王お土産喜ぶかな?」

 

その少女の通った後には、少女の見た目で判断して襲い掛かった魔物の死体が道標のように一定間隔で転がっている。

見た目で判断して襲い掛かった愚か者共の末路であった。

知性のある者ならその異常性にすぐ気付くであろう。

よく見れば彼女は宙を歩き、風は彼女を避けて通っているのが分かるからだ。

そして、少女は魔物の町に到着し唖然とする。

 

「どうなってるのこれ?」

 

この世界の魔物の町と人間の島の間には行き来が出来ないように魔海を神は作っていた、それにも関わらず人間と魔物が共に町を復興しているのだ。

少女は自分が設定していないあり得ない光景にただ立ち尽くす…

そこに、ただならぬ気配を感じて飛んできた魔王が降り立った。

見た目は少女だが明らかに異質な存在感を持った少女。

魔王は少女を一目見て理解した。

 

「なんの用だ神よ?」

「ん?あぁ魔王か、良く分かったね」

「これだけ人間でも魔族でも無い気配、しかもそれだけ異質なモノを展開していればな」

 

魔王に言われ思い出したかのように少女は体の周りに張っていたモノを解除する。

そして、手に持っていた魔物を魔王に向けて放り投げ…

 

「お土産だよ」

「ふむ、一応礼は言っておこうか」

 

軽々とその魔物の死体を受け止め、魔王は周りに闇の結界を張る。

 

「ここなら会話は漏れない、それでなんの用だ神よ?」

「うん、実はさ人間を一人殺してほしいんだ」

「ふむ…何か理由があるのか?」

「ちょっとね…」

 

神の言葉に疑問を持ちつつも、目の前の存在がこの世界を作った唯一神だと理解している魔王は断るのは避けるべきかと考えていた。

かといって無差別に言われるままに人間を殺すと言うのも抵抗がある。

理由と相手次第だと考えた魔王は質問に質問を返す。

 

「折角この世界までわざわざ来てくれた事だし神には恩義も感じている、だから相手と理由次第では考えなくもないが教えてもらえるか?」

「理由はちょっと言えないんだけど、相手はね『フーカ』って名前の人間の女の子のなのさ」

 

その言葉に目を大きく開いて驚いた魔王。

だが、直ぐに態度を変えて高々に笑い声を響かせる。

 

「はっはっはっはっ!断る!」

「へぇ、魔王でも女の子を殺すのには抵抗があるって事かな?」

「いや、そんな事が出来るわけもなく、実行しようとすればゴンザレス太郎に魔族は根絶やしにされてしまうからな」

「ゴンザレス太郎?誰だいその変な名前のやつは、それに魔族を根絶やしにって魔王でも冗談言うんだね」

「フフフッ知らないのか神のくせに、悪いことは言わん諦めてあの白い部屋にでも戻るんだな」

「へぇ!僕にそんな口を聞いてただですむと…」

 

次の瞬間少女の首はもぎ取られ、体がその場に崩れ落ちる。

魔王はその頭部を闇魔法で粉々にするのだが…

 

「ひっどいなぁ不意打ちで殺すなんて」

 

魔王の目の前には銀髪の少女が立っていた。

勿論足元には首の無い死体が倒れている。

 

「俺の返答は変わらん、ゴンザレス太郎には一生掛かっても返せない恩があるんでな」

「ふーん、僕の大切な体を殺しておいてそんな事言うんだ。後悔してもしらないよ?」

「好きにするといい、この件に関して俺はアイツ等の側に付かせてもらうぞ」

 

その言葉を聞いて少女は魔王を睨み付けてその姿を消す。

足元にあった神の姿をした首なし死体も風に融ける様に消えた。

 

「ゴンザレス太郎に伝えねばな…」

 

魔王は闇の結界を解除しサラの元へ急ぐのであった。

 

 

 

 

 

「くそっ!くそっ!くそっ!くそぉー!!!」

 

怒り狂っている少女姿の神は数日後、人間界のとある洞窟に来ていた。

 

「もうこうなったら最後のアレを起動してやる!こんな失敗作の世界なんて壊れちまえばいいんだ!」

 

そして、扉を無理矢理開けてその中にある祭壇の前に立つ。

 

「魔物の国も人間界も滅びるといいさ!僕に逆らった事を後悔しながら死ね魔王とゴンザレス太郎!」

 

そこは封印の洞窟と呼ばれる場所、ヤバイが適当に並べ直した滅茶苦茶な配置になっていた祭壇に気付かないまま、祭壇は神の手により跡形もなく破壊される。

しかし、神はまだ知らない…

復活する鬼どころか鬼の全種類が絶滅している事実を…

何も知らないまま高らかに神の笑い声が洞窟内に木霊するのであった。



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第9話 出会う神とゴンザレス太郎

「ゴンザレス太郎?やっぱり居ないぞそんなやつ」

 

神は鬼の祭壇を破壊してから確認の為に白い空間に戻っていた。

そして、キャラクターのデータベースからゴンザレス太郎の名前を探したが、何度見てもそんな名前のキャラデータは存在しないのである。

それもその筈、名前とは魂に刻まれるもので、転生したゴンザレス太郎と魔王は転生前の名前が登録されているのを神は知らなかったのだ。

 

「まぁいいや、あれから何日か経ってるしそろそろ人口半分くらいになったかな?」

 

神は自分の行った事を想像して快感に身を震わせた。

そして、自らの管理する異世界を覗いて…

 

「はっ?えっ?なんで?どうなってるの?」

 

そこには変わらず平和な町が映し出され、魔王の居る魔物の町も戦闘とは無縁の復興作業の中で友情や恋愛に発展している異文化交流の様子が流れていた。

 

「おかしい、流石におかしすぎる…」

 

神は裏ボス的存在としてこのイベントを仕込み、最後の一匹は弱い神にまで届く力を持つ鬼『鬼神』に進化するイベントを用意した。

絶対に勝てないとは言わないが、人間の寿命で勝てるレベルにまで到達するのは不可能と考えていた。

しかし、調べてみたらその鬼神は既に撃破されている事が分かったのだ。

 

「ゴンザレス太郎か…こいつが僕の世界を滅茶苦茶にしたんだな…」

 

名前しか分からないその人物の事を調べるため神は再び異世界へ足を運ぶ。

神の中では既にゴンザレス太郎も殺す候補に入っていた。

 

「ただじゃ殺さない、じっくり痛め付けて苦しめて…地獄すら生ぬるいと感じる苦痛に沈めて殺してやる!この僕をこんなにコケにしたんだから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

3月も下旬になりゴンザレス太郎とフーカは今日も冒険者ギルドの販売店へ足を運んでいた。

いい加減サラへのホワイトデーのお返しを考えないと駄目なのだが、魔族と言う文化の違う生き方をして来た彼女が何を欲しがるのか全く検討も付かないからかなり困っていた。

 

「フーカ、こう言うのはどうなのかな?」

「大丈夫、タツヤから貰ったら何でも喜ぶと思う」

 

フーカはサラのために悩むゴンザレス太郎を見て嫉妬していた。

だがフーカは知らない、ゴンザレス太郎がサラにホワイトデーのお返しを渡す時に一緒にフーカにも新しいリップクリームを渡すつもりで用意していることを…

 

「それにしてもあれから何もないね…」

「うん、こんなの初めて…逆になにか怖い」

 

例のフーカの手に現れた呪縛石以降、フーカの身に危機になるような事が何もないのだ。

実は裏で神が様々な方法でフーカを殺そうとしていたのだが、全てがゴンザレス太郎が過去に行った行動の結果未然に防がれ不発に終わっていた。

だから状況を知らない二人には何もないと感じさせていたのだ。

 

「あっこれどうかな?」

 

そう言ってゴンザレス太郎が手に取ったのは一匹の魔族と二人の人間が手を繋いでいる絵であった。

鬼の件以来人間と知性のある魔族の関係は良好になっており、こういう物も増えてきたのだ。

 

「うん!これ凄くいいよ!」

 

チラッと見てフーカもその絵の事がまるで自分達の事を描いているようで気に入ったらしく、今度サラが来たときに渡そうと料金を払い取り置きをお願いするのであった。

 

やっと返す物も決まり、今日はこれからどうしようかと考えながら隣の冒険者ギルドへ移動すると、何やら中が騒がしくなっていた。

どうしたのかと思いながら中へ入ると、冒険者の一人が中腰でこちらを指差し何かを話していた。

その話している相手はゴンザレス太郎やフーカと同じくらいの銀髪の少女であった。

何故か少女はこちらを見て再度確認をして教えてくれた冒険者へ頭を下げてこちらへ走ってきた。

 

「初めまして、貴方がゴンザレス太郎さん?私、ミリーって言います」

 

その言葉に手を繋いでいたフーカの手がピクリと反応した。

もう慣れたものだ、このタイミングでの反応は偽名である。

だがこんな少女が偽名を使って名乗ってくるには訳があるのかもしれない、と一応警戒をしつつ話を聞く。

 

話によるとミリーは西の砂漠を越えてここまでやって来たらしく、その道中で魔物に襲われ同行していた馬車が大破。

残った馬車で護衛の人たちが守ってくれてここまで辿り着いたのだが、壊された馬車の中に母親の形見が乗っていてそれを回収したいとの事だった。

 

「その形見の品物ってのは何?」

 

フーカの質問だ。

 

「ペンダントです。」

 

ピクリ、これも嘘…か…

 

「それでこの町で一番便りになる冒険者と聞いてゴンザレス太郎さんと言われたのですが…」

「誰に聞いたの?」

「名前までは知りませんが道であった人に聞きました」

 

ピクリ、また嘘…

 

「まさか私と同じくらいの男の子だとは思いませんでしたよ」

「うん、まぁね」

 

ゴンザレス太郎の警戒心もかなり高くなったがフーカが…

 

「いいわ、私達これから暇だから一緒に行ってあげる」

「ほっ本当ですか!?良かった~」

 

目の前の少女の言動はフーカが居なければ確実に信用していた。

だが嘘だと分かっててもフーカはミリーと名乗る少女の依頼を受けた。

これは何かあるとゴンザレス太郎は考えながら直ぐに行きたがるミリーに手を引かれ、歩くフーカの後を付いていくのだった。



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第10話 今、最後の戦いが始ま…?

馬車を操作し、ゴンザレス太郎とフーカはミリーと名乗る銀髪少女と西の砂漠まで来ていた。

自然の神秘なのか、この砂漠は赤砂と呼ばれる砂が赤くなっている地域があり、その手前で3人は馬車を止める。

この馬車は冒険者ギルドでゴンザレス太郎が買い取った物だ。

魔族の町に向かうときに共に旅した仲間でゴンザレス太郎が買い取りギルドで飼われている。

名前は『クロコダイル』馬なのに。 

 

ミリーの話を聞いて、ボランティアで依頼を受けるとギルドに一応話を通した時にマジメの3人に話を通してもらうように伝えてあるので、もしかしたら後から付いてくるかもしれないな…っとゴンザレス太郎が考えた時にフーカが馬車を止めるように言ったのだ。

 

「じゃあそろそろ話してもらえるかしら?」

 

フーカはミリーに話しかけるが、なんの事か分からないと言った感じの態度で返すミリーに…

 

「全部嘘だと分かってるのよマリス」

 

その名前を呼ばれて一瞬驚いた表情を見せた少女、だが直ぐに今までに見せたことの無い影を落としたニヤケた顔を見せた。

 

「へぇ、どうして僕の名前が分かったのかな?」

「それが私のスキルだから」

「フフフ…そう言うことか」

 

顔を上げたマリスは謎が解けた探偵のようにゴンザレス太郎を指差し…

 

「全て分かったよ、ゴンザレス太郎と言うのはチーム、またはレギオン名でそこの君がスキル『人心掌握』みたいなスキルでまとめあげているって訳だな!見切ったたぞ!」

 

自信満々にゴンザレス太郎を指差し、自分が今まで邪魔されていたのは個人ではなく集団だと予測した。

実際に現代でも人類は科学の力で宇宙へ飛び出すことまで成功している、人間と言うのは力を合わせればとてつもない事を仕出かすと知っていたからだ。

しかもゴンザレス太郎の名前はデータベースには無く、逆らえばレギオン全戦力で戦いを挑まれる、なので魔物も絶滅させられると魔王は言ったのだと予想したのだ。

更にフーカをどうやっても殺せなかったのは、フーカと言う人物がこの集まりの上層部の人間かそれに近い立場の人間に保護されていると考えた。

まさか目の前に居る少女が探していたフーカだとは夢にも思ってなかったのだ。

そう考え宣言した少女姿のマリスは噛んでしまったのを誤魔化した。

 

そんなマリスのあまりの豹変ぶりに驚き固まる二人…

そして、丁度そこに魔物の町から魔王に言われて町に着き、人伝えでマリスの事を聞いてやって来たサラが二人を見つけて空を飛ぶ魔物『ムササビコアラ』から飛び降りてきた。

 

「大変だよ!この世界を作った神様とやらが二人を探してるらしいのよ!セミロングの銀髪の髪に花の飾りをして白いワンピース姿の少女に気を…つ…け…」

 

そこまで言って二人の目の前に居る少女からとてつもない威圧が放たれる!

 

「フフフッそうさ、僕が…僕こそがこの世界の全知全能唯一神のマリス様だ!」

 

あまりの威圧に地面の砂が波打ちながら逃げるように波状に跡を描いていく…

神がその力の一端を解放したのだ!が、

 

「タツヤ、神様が狙ってるらしいわ」

「大丈夫、俺が守るよ」

「ちょっと、二人の世界に入らないでよ…」

 

ステータスが高くなりすぎてた3人には、この程度の威圧では風が吹いたと思わるだけで気付かれず。

更にその威圧のせいで発言が届いてなかったのであった。



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第11話 集う仲間達!

「ここまでバカにされるとは思わなかったよ、もういい。お前達は死ね!」

 

その言葉はゴンザレス太郎達にも聞こえたようで、銀髪の少女の方を見ると少女の背中にいつの間にか翼が存在しており、それを広げそのまま空に浮かび上がった。

その姿はまさに神と呼べる姿をイメージしてマリスは造形したのだが…

 

「羽ばたかなくても飛べるなら、翼の意味無くね?」

 

ゴンザレス太郎の無慈悲な一言にサラが吹き出し、マリスは遂に無表情になる。

そのまま手を空にあげ一振り振り下ろす。

すると赤砂の中から頭が3つある巨大な狼が10頭出現する。

ランクAの魔物『ケノレベロス』だ!

 

「人間にはちょっと酷な相手かもしれないけど、僕を怒らせた事を後悔しながら死ね!」

 

マリスの言葉と同時にケノレベロスは一斉にフーカに向かって襲いかかる!

神の力のせいでヘイトが全てフーカに集まっているのだ。

だが…

 

「優し~くチョップ」

「ワンちゃんごめんねタッチ」

「ふんっ」

 

っと3人が軽く攻撃を加えるだけでいきなり3頭が意識を無くして沈んだ。

そのあまりにも差のある戦闘力に、野生の勘で残りの7匹も攻撃を中断した。

特にフーカとサラだけなら警戒しながらも襲いかかったケノレベロスだが、ゴンザレス太郎だけはあまりにも異質、見た目は人間の子供なのに獣の目には自分達の到底敵わない魔神に見えていたのだ。

 

「ばかな…人間…だよな?」

 

その実力の一端を見てマリスもようやく理解する。

先程の威圧も、今使用している肉体の強さがA級冒険者くらいなのだが、それにピクリとも反応しなかったゴンザレス太郎達はそれよりもかなり強いと言う事である。

 

「生きたまま喰われながら命乞いする姿が見たかったが…仕方ない」

 

空に浮かぶマリスが再び手を振ると、今度は赤砂から巨大な一つ目のおでこに柱時計の付いた巨人が現れた。

Sランクの魔物『サイクロックス』である。

 

サイクロックスは持っていた巨大なこん棒で目の前に居たケノレベロスを一掃し、それをそのまま振り上げフーカの上に振り下ろした!

 

「やったか?!」

 

マリスはフラグを立てる言葉を口にする。

そのこん棒はフーカに当たる手前、ゴンザレス太郎が片手で受け止めていたのだ!

そして、直ぐに飛び上がったサラの火炎魔法で顔面を焼かれ、ゴンザレス太郎が殴り返したこん棒がその顔面を潰しサイクロックスは生き絶える。

 

「ふ、ふざけるな!仮にもSランクの魔物だぞ?!」

 

そして、遂にマリスはそいつを呼び起こす。

赤砂の中から現れたのは戦鬼である。

 

「ハハハハハ!こいつなら…」

 

だが戦鬼は出現と同時にサラの炎の矢で頭部を貫かれ絶命する。

サラのその目には鬼に対する憎しみが燃え上がっていた。

 

「そ、そんなば…」

 

そして、空に浮いていたマリスはおまけとばかりにサラに炎で射ぬかれて空中で燃え上がる。

 

「無駄だよ」

 

すぐ後ろで声がして振り返ると、そこに銀髪の少女マリスは立っていた。

すぐさまサラはその腹部を貫く攻撃を仕掛ける!

確かな手応えと流れる血…

 

「流石魔王の娘だね、躊躇ないんだもんなぁ」

 

目の前に銀髪の少女は居た。

流石にその光景にゴンザレス太郎とフーカも気を引き閉める。

 

「やっぱり神ってだけはあるわね…」

 

サラは腕にもたれ掛かる銀髪の少女の死体を捨て、マリスの方を向き直す。

 

「さて、もうそろそろ飽きてきたし君達の絶望する顔が見たいんで終わりにしようか」

 

そう告げマリスは再び背中から翼を出す。

 

「ゴンザレス太郎、フーカ気を付けて!」

 

サラのその言葉にマリスは目元をピクリと動かしフーカの方を見る。

無表情だったマリスの顔が変化し、フーカを見る目付きが変わった。

 

「ククッフフフ…ふははははは!なんだ、君がフーカだったんだ!探して殺す手間が省けたよ!」

 

一転して嬉しそうな表情で笑いながら話すマリスの異様な気配が周囲に広がる。

そして、次々と赤砂から生まれて出てくるSランク以上の魔物達…

 

「もう気付いたと思うけどこの赤砂の正体は魔物の核、これが有る限り無限に魔物は僕の思うままに産み出せ、僕自身このお気に入りの体も作れるのさ。さぁ始めようか、君達が力尽きるまで終わらない死のダンスを!」

 

マリスは空高く浮かび上がり待避し、それを合図に一斉に襲い掛かってくる魔物達!

 

「居合い50連斬!」

 

ゴンザレス太郎達の後ろから突然聞こえた叫びと共に物凄い数の斬撃が飛来して、目の前の魔物達を一気に細切れにする!

フーカは振り返り笑みを浮かべる。

マコトだけじゃない、ジルにメール、ヤバイやデニム、その他にも沢山の冒険者が馬に乗ったり走ったりして向かってくれていた!

 

更に空を飛来する魔物が撃墜され、見上げると魔物の町からも魔王を筆頭に沢山の味方が向かってきていた。

 

「ちっ、ゴミがまた増えたか…」

 

空中で苦虫を噛んだような表情を浮かべたマリスは魔王の放つ闇の球体に飲み込まれて死ぬ。

直ぐに地上の砂から復活したマリスは更にSランク以上の魔物を次々と放つ!

神と異世界の存続を賭けた決戦が今始まる!



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第12話 神の最大の誤算

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

ゴンザレス太郎が皆に聞こえるように大声でスキルの発動を知らせ、全員がその準備が終わるまでゴンザレス太郎を守る!

 

「甘い!スキル『居合い拳』発動!」

 

ヤバイのユニークスキル『居合い拳』で魔物の顔面を殴り、怯んだ魔物を他の者が一斉に攻めかける!

ヤバイのただ離れた場所を殴ることができるだけのユニークスキルだが、その実態は透明の拳が遮蔽物があってもお構い無く目的の場所を殴れるのだ!

つまり、防御不能の拳の打撃を任意の場所に遠距離から放てるこのユニークスキル、現在のヤバイの強さによってかなり強力なのは本人が一番よく知っていた。

伊達に町で一番Sランクに近い男と呼ばれている訳ではない!

 

「いつでもいいわよ!」

 

サリアを守る親衛隊の中でも魔法が得意な二名、ジルとメールがサリアの前に電気のレーンを作り、メールがその上に左手で結界を出し白金貨を置く!

 

「いいぞー!」

「みんな当たるなよー!」

 

ゴンザレス太郎の完了の合図と共にサリアの白金貨レールガンの乱射が始まる!

 

『弾無限』によるレールガンの乱射は次々とSランクの魔物を貫き、SSランクの魔物ですらそのあまりにも早く恐ろしい攻撃を回避できず大ダメージを負う!

 

「みんな下がってー!」

 

ジルの大声に一斉に冒険者達は後退し、数名で結界を張る!

次の瞬間空から天の裁きが生まれた!!

瞬間の魔物も生まれる前の魔物も赤砂ごと消滅させる!

更に照射しながら角度を変えて動く極太レーザーとなった攻撃は灼熱の砂漠を蒸発させていく!

 

だがそれでも広大な砂漠の砂のほんの一部を蒸発させたにすぎず、地平線に広がる赤砂から生まれた魔物は空へと次々と登っていく!

そして、遥か上空の成層圏で展開されているメールの結界に次々と辿り着きそれを破壊する!

だがメールはもう一枚の結界をそのまま下へ落下させ、赤砂へと飛んでいた魔物を巻き込みながら叩き付ける!

その間も地上ではひっきりなしに魔物が襲い掛かり次々と撃退していく!

 

「やつだ!」

 

魔王が闇魔法で上空の魔物と戦っている時に地上に現れたそいつは因縁の『鬼神』である!

しかも30体は居る!

 

「この前とは違うぞ!喰らえダークデスマスク!」

 

魔王から放たれた黒い霧は鬼神の頭部にまとわりつく!

霧なのでもがいて取ろうとするが触ることも出来ず、暴れる鬼神の頭の周りで霧は細長い突起を作り回転させる!

そしてそれはもがく鬼神の耳から侵入し脳内を破壊し鬼神を絶命させる!

 

「貴様にやられてから編み出したこの新魔法しっかりと味わえ!」

 

そう叫ぶ魔王だったが、ゴンザレス太郎がもがく鬼神の頭部を次々と粉砕しその命を奪っていく!

しかも今回はしっかりと角を折ってから殴り、鬼神の素材である角を残していた。

 

「全くあいつめ…」

 

ゴンザレス太郎の異常性にはもう慣れた魔王はにやけながら呟き、空を飛ぶ魔物の撃墜に戻る。

 

 

 

「な、なんなんだこれは…」

 

マリスは理解が出来なかった。

Sランクの魔物は人間には倒すのは不可能だろうとされるレベル、SSランクは魔族でも魔王クラスでないと相手になら無いレベル、SSSランクに至っては異世界中の戦力を集めれば一匹位は倒せるかもしれないレベル、そして鬼神は神に届く強さで倒せるわけがない。

それが今目の前で起こってる事実に驚きを隠せなかった。

 

「こんなのはバグだ。そうに違いない、こんなのあり得ない、嘘だ…」

 

そう呟くマリスは遂に禁断のモノに手を伸ばしてしまう。

それは本当に冗談で作った反則のモノ。

マリスはそれを産み出してしまった。

 

一斉に戦っていた魔物が動きを止める。

それの誕生を察知したのかは分からないが、人間と戦っている場合ではないという気配が伝わるくらい生み出されたそれに一斉に威嚇をする。

SSSランクの魔物だけでなく鬼神までもその存在に恐怖していた。

神々しくフワリと地に足を付けてないそれは、人の形をした背中に羽がある金髪の天使であった。

それはゆっくりと空に浮かび上がり手をかざす。

何かを察知したゴンザレス太郎が動こうとするが、次の瞬間その手から放たれた白い光はその射線上にあった全てのモノを消滅させる。

魔物も人もその光の通った場所にあった全てのモノは消滅した。

 

そう、その光はヘイトを集めていたフーカを狙って放たれたのだ。

当然目標であったフーカは…

 

「えっ…あれ…フーカ…」

 

ゴンザレス太郎の手が宙をさ迷う。

最後の一瞬フーカはゴンザレス太郎の方へ手を伸ばしその手首から先だけを残して消滅したのだ。

そして、更に追加の光は落下したフーカの残った手首も消滅させる。

 

音が止まった。

何が起きた?

フーカが消えた?

周りが静けさに包まれる中、笑い声が響き渡った。

 

「ははははははは!どうだいこれが僕が冗談で作った最強の魔物『心ない天神』だ!ゴンザレス太郎、君のその表情が見たかったんだ。教えてあげるよこの心ない天神の事を!」

 

そう言ってマリスは機嫌を良くして説明を始める。

 

「ステータスは全てMAX!更に『絶対物理遮断』と『全属性攻撃魔法無効』と『全ステータス異常無効』!そして、全てを無に返す『消滅の光』が使えるのさ」

 

ゴンザレス太郎の耳にその言葉が入っては来るが何も言わない。

 

「その表情は分かっているようだね、こいつの消滅の光は通過したものを消滅させる。死ぬのではなく消滅、分かる?消えるんだよ当たったら最後僕でさえも消えるし生き返れない!どう?素晴らしいでしょ?」

 

全員が絶句して言葉を聞き続ける。

魔物さえも動かずその話を聞き続ける。

 

「そして、君達は僕を怒らせ過ぎた。だからこんな絶望はどうかな?」

 

マリスが手を上にあげて指をパチンと鳴らす。

すると赤砂から次々と産み出される心ない天神達。

その数は増え続け空を埋め尽くしていく。

 

「だけどこいつらは僕の命令すら聞かなくてね、使うのは躊躇してたんだ。でもこいつら用に方法は考えて準備してあるんだ。」

 

ゴンザレス太郎は黙ってその言葉を聞く、無表情だが心の内に怒りの炎は燃え上がっている。

 

「それがこれさ!おいで、僕のもう一つのボディ」

 

マリスは呼び掛ける。

だが何も来ない…

 

「あっ?あれっ?おかしいな?」

 

マリスは後ろを見る、今は自分の力で止めてはいるが今もし心ない天神達が動き出したら間違いなく自分が一番最初に消滅させられるのを理解しているからだ。

 

「ま、魔王!お前に預けてた『悪魔大元帥アモン』は、僕の体はどうした?!」

「アイツなら死んだぞ、フーカに殺された」

「なっ?!そんな馬鹿な!」

 

実は悪魔大元帥アモンはこの世界の創造神であるマリスが作った人工合成生命体なのであった。

それに知性と意識を与えて魔王の部下として生かしていたのだ。

その為、悪魔大元帥アモンのみ2つの生命を混ぜた混合生物としてこの世界で2つまでしか持てないはずのユニークスキルを4つ持っていたのだ。

更に殺されないようにダメージが一定量を超えると自動的に全回復するスキル『全自動フルケア』と、どんなダメージを喰らってもHPが10残るスキル『ふんばり』という隠されたユニークスキルを持った特別な存在としてマリスは完成させていたのだった。

だが、悪魔大元帥アモンはゴンザレス太郎のプロアクションマジリプレイの効果でHPを一切減らさず、予期せぬ毒針で即死させられた為そのスキルを発動することなく死んだのだった。

 

「じ…じゃあ…これは…不味いっ!」

 

そう言って慌てて駆け出すマリス。

マリスの予定では悪魔大元帥アモンのユニークスキルの一つ『永続的洗脳』を使用し、心ない天神を全て操るつもりでいたのだ。

そして、マリスが逃げ出したと同時に心ない天神達は動き出す。

 

戦場は惨状に変わった。



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第13話 次々に消滅する仲間

マリスが逃げ出したと同時に一斉に動き出す心ない天神達。

その心ない天使達にはまだマリスが残していたヘイトの指令が残っていた。

 

『フーカ、そしてゴンザレス太郎を殺せ』

 

フーカが居なくなった今、心ない天神達は一斉にゴンザレス太郎に向けて消滅の光が照射する!

名の通りそれは光そのもので、照射されると光の速度で目標に向かって飛んでくる!

だが手をかざして固定してからその方向へ真っ直ぐ照射し、目標を定めてからその場所から動かさないという事は、その直線上からかわせば避けられるということ。

ただ手を向けられて照射されるまでに避けるなんて史上最高のステータスを持ってるゴンザレス太郎だからこそギリギリ出来る事で、運悪く直線上に居た魔物や冒険者は巻き添えを喰らって消滅する。

 

「皆俺から離れて逃げろ!」

 

ゴンザレス太郎の悲痛な叫びに蜘蛛の子を散らす様に逃げ出す面々、だが中には心ない天神に攻撃を仕掛ける者も居た。

ゴンザレス太郎にヘイトが向いているならこの隙に倒せばと考えたのだが、マリスが言った通り心ない天神には『絶対物理遮断』と『全属性攻撃魔法無効』と『全ステータス異常無効』が備わっている、更にはHPが理論値まで上げられている。

しかもそれが空を埋め尽くすくらい居るわけだ。

そして、殴り付けたり魔法をぶつけた者には消滅の光の反撃が始まる。

まさに地獄絵図であった。

反撃に使用された消滅の光はゴンザレス太郎とは違う方向に照射され、待避した者に当たり消滅させるのだから…

 

「ダークグラビジョン!」

 

魔王の重力制御魔法も直接攻撃ではないので効果はあるのだが、心ない天神のステータスがMAXの為殆ど効果はなく、反撃の消滅の光で魔王の軍も多大なる被害を被る。

間一髪かわした魔王に見えたが、やはり光の速度には勝てなかったようで片腕を持っていかれた。

 

「くそっ、どうすれば…」

 

場の状況は最悪、倒す手段もなく誰もが諦めた時に諦めてなかった者達が居た!

 

「いっけぇー!」

 

サリアの白金貨レールガンが一体の心ない天神に当たり、差し出した手から照射する瞬間だった消滅の光はレールガンの衝撃で動いた為、別の心ない天神に当たりそいつを消滅させる。

そして、消滅の光がかすった心ない天神の反撃で…っと仲間割れが始まった。

 

それでも数体の心ない天神が消滅しただけで状況は何も変わらず影響としては雀の涙ほどである、だがゴンザレス太郎にはそれが希望の光だった。

すなわち!

 

(防いでいる訳ではなく無効にしているだけか!)

 

ゴンザレス太郎は一つの方法を思い付いた。

だが、ここではそれは使えない。

そのゴンザレス太郎の表情の変化に気付いたのはマコトであった!

共に戦ってきた戦友だからこそ気付いたのだ!

だがゴンザレス太郎に向かって縦横無尽に放たれる消滅の光、それを必死にかわし続けているゴンザレス太郎には近付くことも出来ない。

 

「マコト、任せて」

 

ジルが飛び出す!

そして、ゴンザレス太郎に体当たりを行う!

突然飛び込んできたジルを焦って受け止めたゴンザレス太郎。

そして二人に照射される消滅の光!

狙いはそれであった。

ジルのユニークスキル『うつせみ』である!

進化した為打撃に限らず仲間ごと転移でかわせるこのスキルを使ってゴンザレス太郎への連続照射を止めた。

少し、本当に少しだが心ない天神達からゴンザレス太郎を見失わせたのだ。

 

「サラ!」

 

マコトが叫び空に居たサラは飛び降りてくる。

そして、マコトはサラにアイテムを手渡す。

 

「どうするつもり?」

「ゴンザレス太郎と共に逃げろ、あいつならきっとなんとかしてくれる。このままじゃ俺達は全滅してそのまま世界が終わる」

「貴方、死ぬ気?」

「死なないさ、主人公は不死身なのさ」

「バカね、でも嫌いじゃないわ」

「よし、頼んだぞ!」

 

マコトはゴンザレス太郎とジルの転移した場所と反対方向に走り抜け、空にいるゴンザレス太郎に一番近い心ない天神を中心に飛ぶ斬撃を叩き込む!

 

「居合い100連斬!」

 

攻撃を受けた心ない天神達、だがやはりダメージは皆無で反撃として一斉にマコトに向かって消滅の光を放たれた!

マコトは技の硬直で動けない!

そんなマコトは何かに殴り付けられたように突然横に吹き飛ぶ!

ヤバイのユニークスキル『居合い拳』であった!

 

「まだ諦めてんじゃねぇ!アイツならきっとなんとかしてくれる!そうだろ?」

「あぁ、そうだな先輩!」

 

二人は再び心ない天神達の注意を自分達に向ける!

しかし、僅か一分も持たず二人とも反撃の消滅の光で消滅するのであった。

 

 

 

 

「ジルさん!ジルさん!」

 

ゴンザレス太郎は危機的状況から助けてくれたジルの体を揺すっていた。

 

「ゴンザレス太郎、あんたしか居ないんだ。きっとあんたならやれる、後を頼むよ」

「はい、はいっ、はいっ!」

 

うつせみで転移した二人だったがジルには下半身が無かった。

そして、そこに走り込んできたサラはジルの姿を見て一言。

 

「後は任せて」

 

ジルは安らかな顔をして一回だけ頷いてそのまま目を閉じる。

そして、その時一体の心ない天神がゴンザレス太郎を発見し消滅の光を放つ!

 

「しまっ…」

 

だがそこに飛び込んだのはメールとデニムであった!

二人はゴンザレス太郎達の前に千枚にも及ぶ結界を複合させて展開させる!

 

「二人とも!」

「今のうちに!」

 

二人の結界は僅か2秒だけ消滅の光を防いだ。

その間にサラはマコトから預かった『キメイラの翼』を使用しそこに居た4人は瞬時に飛ぶ!

4人が消えた次の瞬間その場を消滅の光が照らし、残っていたジルの上半身も消滅するのであった。



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第14話 一時的な安息

乱射された消滅の光により、地形そのものが無茶苦茶になった場は静寂に包まれた。

心ない天神達の消滅の光によりゴンザレス太郎達が消された様に見え、絶望の二文字が生き残っていたその場にいる全員に浮かんだ。

その中でマコトの消滅を目の当たりにしたサリアは、遠くなりそうな意識を必死に堪えて天へ祈りを捧げる。

しかし何に祈っていると言うのか…

神など居ない、いや、糞みたいな神ならこの現状を作り、手に終えなくなり放棄して逃げているのに…

 

命からがら逃げてるマリスも心ない天神達が動きを止めた事に気が付き、離れた場所で覗き込むようにそれを見る。

少しして、心ない天使の一体が何かを察知したように動き出し、それに感化されたかのように次々と心ない天神達は同じ方向へ向かって空を飛んでいく。

 

マリス以外は何が起こってるのか分からなかったが、その光景を見ていた各々の目には祈りを捧げるサリアの姿が入り、最後の最後で聖女様の祈りに天の使いが怒りを納め帰っていったと勘違いをした。

仲間を失った者、手足を消された者、もうすぐ息絶える者…

誰もがその天へ祈りを捧げるサリアの姿に祈りを捧げるのであった。

 

「心ない天神達が無差別に皆殺しを行わないと言うことは、あのゴンザレス太郎とか言う人間がどうやったのか分からないけど逃げ切ったと言うことか…助かった~」

 

クズな神マリスは自身の保身しか頭に無かった。

 

 

 

 

 

場所は変わって魔物の町入り口。

そこへ転移してきた4人が居た。

ゴンザレス太郎、サラ、デニム、メールである。

 

「なんて事だ…ジル…」

 

デニムは悔しそうな顔をして拳を地面に叩き付ける。

あの仮クリスマスの日から二人は交際を続けていた。

そんな最愛のジルを目の前で助けることも出来ず、自分だけ助かったと言うのが許せなかったのだ。

そして、それはメールも同じであった。

彼女もまたヤバイとの交際をスタートさせていたのだ。

そして、彼女のお腹の中には…

 

「ゴンザレス太郎、アンタなら…アンタしか出来ないことだ。フーカの、私の親友の…そしてパパの仇を取って!」

 

サラの信頼の込められた言葉はゴンザレス太郎にも響く、彼もまた目の前でフーカを失ったのだ。

そして、彼女はもう生き返れない。

彼女だけではない、あの場で消滅の光を浴びた全員が二度と戻ることはないのだ。

死ではなく消滅、それを理解しているゴンザレス太郎は最後の最後でフーカを守る約束が果たせなかった事を呪った。

あの場に残された人々の末路は想像に容易かった。

だからサラも魔王は死んだと考えたのだ。

だが実際には残された人々は生きて見逃され、心ない天神達は一斉にゴンザレス太郎目指して向かっている。

 

「皆、知恵を貸してくれ。アイツ等を倒す方法はあるんだ」



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第15話 ラストハルマゲドン

「あっ、やっぱりゴン太だ。」

「オッスゴン太久しぶり」

 

ゴンザレス太郎達が魔物の町の入り口で作戦会議をしていると、町の中からアイアンとホネオがゴンザレス太郎に気が付きやって来た。

学校の社会見学でクラスの一同で来ているらしい。

遠くから偶然ゴンザレス太郎を見かけたので見に来たとのことだ。

ゴンザレス太郎はここにホネオが偶然にも居る幸運に感謝するのであった。

ホネオのユニークスキル『望遠眼』は望遠鏡を覗くように直線上であればかなりの距離まで見れるのだ。

 

「ホネオ!頼みがある!」

 

ゴンザレス太郎はホネオに30分ぐらいごとに魔海の向こうを確認して、金髪の天使の姿をした何かが飛んできたら知らせてほしいと告げた。

ゴンザレス太郎は心ない天神達が必ず自分を目掛けて飛んでくると確信していた。

あの時、創造神のマリスは言ったのだ。

 

『この赤砂の正体は魔物の核、これが有る限り無限に魔物は僕の思うままに産み出せ、僕自身このお気に入りの体も作れる』

 

つまり心ない天神は魔物なのである。

もう一つ、マリスは言っていた。

 

『ステータスは全てMAX!』

 

つまり感知もMAXの筈なのだ。

100億を超えるレベルを全てステータスに振ったゴンザレス太郎でさえまだステータスは伸ばし続けられる事を理解しており、心ない天使の理論値まで上げられた感知は必ずここに居る自分を見つけて追って来ているはず。

そう考えていたのだ。

そしてそれは正解で、あの場にいた一匹も残らず全ての心ない天神達はかなりの速度でこちらに向かって来ていた。

 

「なんだかよく分からないけど分かったよ」

 

そして彼等は作戦に必要なあの男を訪ねるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「な…なんだありゃ?!」

 

ホネオがゴンザレス太郎に頼まれた確認を数回行った時にそれは見えた。

空に浮かぶ金の物体。

それはみるみる空を埋めつくし魔海を渡っていた!

 

「来た!来たぞー!ゴン太来たぞー!」

 

こちらへ向かう心ない天神達の金髪が空に輝いていたのだ。

到着まで約30分、ゴンザレス太郎達はホネオの報告を受けて町を出て親指をくわえながら3倍の速度で魔海の海岸に辿り着き準備に取り掛かる。

泣いても笑っても勝てば存続、負ければ異世界の終わり。

ゴンザレス太郎は一人砂浜に立ち叫ぶ!

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

各々はそれぞれの決めた役割を果たすため配置に着く。

そして、射程に入った一匹の心ない天神から放たれた消滅の光をゴンザレス太郎は避けた。

それを合図にラストハルマゲドンが今始まる!



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第16話 突き抜けろ!チャンスは一回のみ!

海辺の砂浜を駆けるゴンザレス太郎!

金髪の美女達が次々と彼に向けて手を伸ばし追い掛けてくる。

これだけ聞くとまるでハーレム物のワンシーン!

ただ違うのは、どす黒い魔海の海辺を全力疾走している男一人と、空を飛ぶ無表情の同じ顔をした天神達が男に向けて伸ばした手から照らされると消滅する光を放っていることだった。

 

「こっちだ!」

 

ゴンザレス太郎は駆ける!

追い掛けてくる心ない天神達の消滅の光を浴びないように上がっていたレベルを全て速度に割り振って、砂の上を縦横無尽に避けて避けて避けまくる!

一直線に飛んでくる手の平サイズの消滅の光、追い付いてきた心ない天神の数と共にその数はどんどん増え、弾幕シューティングも真っ青な状況にゴンザレス太郎は逃げることしか出来ない。

 

空には一面に心ない天神が並び始め、黒い魔海の上空は天神が光を放つと言う状況…まるで神話を描いた壁画の様な光景に、魔物の町から見守る人々は絶句する。

 

(まだだ…)

 

なにかを待つゴンザレス太郎、避け続ける光に一瞬でも照らされたら即終了のデスゲームの中、たった一人の少年は必死に逃げ続ける!

 

やがてゴンザレス太郎は左右への移動回避を止め、少しずつ後ろへ下がる回避へと切り替える…

そして、予定の場所に辿り着きゴンザレス太郎は合図を送る!

 

「ここだ!」

 

空に放たれた合図の花火魔法が大きな音を立てる!

そして、その合図に合わせて心ない天神達の頭上に天の裁きが照射される!

大気圏近くから放たれたその一撃は心ない天神達の大群の中央へ集点を縮め照射された!

メールの結界に合わせて使われた水魔法は魔王子アーサーが使用していた。

だが全属性攻撃魔法無効の心ない天神には全くダメージはなく、熱による圧力により海面へ叩き付けるのが精一杯であった。

 

「タツヤ!行ってぇー!!」

 

サラがゴンザレス太郎に大声で叫ぶ!

ゴンザレス太郎の事をタツヤと呼び、ゴンザレス太郎の居る上空に炎王球が放たれた!

心ない天神からの消滅の光を飛び上がって回避したゴンザレス太郎、その飛んできた炎王球の前に結界を張り、それを足場に蹴りを入れると同時に炎王球が爆発した!

その爆発の推進力も加え天の裁きへとゴンザレス太郎は物凄い速度で突っ込む!

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

ゴンザレス太郎が突っ込む瞬間天の裁きは消え、心ない天神達が下へ落ちた空間へとゴンザレス太郎は突っ込む!

ゴンザレス太郎の周囲は心ない天神で埋め尽くされてる、その中を突き抜けきったゴンザレス太郎の正面には結界を張り空中で待ち構えていたデニムが盾を構えて居るのであった。



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第17話 究極の極限

飛び上がったゴンザレス太郎はその身体能力の全てを使って自ら出した障壁に足を乗せて力を入れた!

障壁は作用反作用の法則により後方へ吹き飛ぶ筈なのだが、それと同時にサラの放った炎王球が障壁にぶつかりゴンザレス太郎はその一瞬の力の均衡を利用し、心ない天神を上から攻撃している天の裁きへ向かって突っ込んだ!

更に蹴った瞬間にサラの炎王球は障壁との接触によって爆発し、飛び出したゴンザレス太郎を更に加速させる!

音速まで到達しそうなゴンザレス太郎はその身一つで真っ直ぐに天の裁きに突っ込んだのだ!

ゴンザレス太郎が結界を蹴るのを確認し、直ぐに上空の結界を解除したメールにより天の裁きはゴンザレス太郎を攻撃することなく消失する。

だが寸前まで焼かれていた空気は高熱となっており、その空間を突き抜けるゴンザレス太郎を容赦なく焼く!

勿論そんな事は覚悟の上である、そんなことは気にせず止まることの出来ないゴンザレス太郎は一瞬の迷いもなく作戦をそのまま決行する!

その瞳にはフーカを消滅させられた怒りの炎が燃え滾っているのだろう!

 

「うぉぉぉおおおおおおお!!!!」

 

その移動速度が早すぎて、心ない天神達はゴンザレス太郎に手を向けるのが間に合わず、一時的にだが消滅の光の嵐は停止する。

そして、心ない天神達の中を突き抜けたゴンザレス太郎の正面には盾を構えた極盾の名を持つデニムがその自慢の盾を構えて空中で待機していた。

そして、音速で突っ込んでくるゴンザレス太郎に合わせてユニークスキルを発動する!

 

「スキル『リフレクドシールド』発動!」

 

魔法を跳ね返すその盾に向かってゴンザレス太郎は結界を展開し、そのままその盾に突っ込んだ!

ゴンザレス太郎自身も結界を使えるようになったことで、この結界自体が魔法なのだと理解していた通りデニムの盾は接触したそれを跳ね返そうとする。

だが衝突の力は作用反作用の法則によりデニムも後方へ吹き飛ばそうとする。

それをデニムは自らの後方に限界まで展開している結界を壁にして無理矢理耐え、なんとかゴンザレス太郎を更に約1.5倍速度加速させて跳ね返す事に成功した。

 

「後は、頼んだ…」

 

デニムもその余りにも凄まじい衝撃に全身の骨が折れて砕けていた。

そして、自分の体に掛かる圧で背後に展開した結界が全て吹き飛び、ゴンザレス太郎とは反対側へ吹き飛んでいく…

体はボロボロ、下は猛毒の魔海。

デニムの口から最後を悟った時に出たのは、この年になって初めて愛を教えてくれたたった一人の名前…

 

「ジル…」

 

吹き飛ぶデニムと反対側へ飛んだのは遂に音速を超えたゴンザレス太郎!

人の身で音速の壁を越えると言うのは並大抵の事ではなく、全身は悲鳴をあげズタズタになりながら再びゴンザレス太郎は心ない天神達の中へ突っ込んでいく!

自らの右手と口元だけを庇い一度通過したその場所を再び通過する。

この往復の期間は僅か0.5秒!

 

そして、ゴンザレス太郎は再び魔物の町の方の陸へと飛んでいきその彼をサラが受け止める!

音速を越える人間を受け止めると言うのは魔界の姫であっても耐えきれるものではなく、その身は一瞬でボロボロになるが、それでも彼女はゴンザレス太郎を死ぬ思いで受け止めて地面にめり込みながら物凄い勢いで後方へ滑っていく。

 

「くっのぉぉ止まれぇぇぇぇええええええ!!!」

 

サラの後方には衝撃吸収用にメールの展開した結界があり、それがサラの背に次々と当たり徐々にサラの体を破壊すると共に減速した彼女に向けて心ない天神達からの消滅の光が放たれる!

だが彼女とゴンザレス太郎が後方へ滑っていく間に魔王子アーサーが飛び込み、遮蔽となるように彼は心ない天神達の消滅の光を防ぐようにユニークスキルを展開する!

 

「妹と未来の弟を殺らせはしない!スキル『冥狂死衰』発動!」

 

二人を庇うように両手を広げ立ちはだかるアーサーの周りに白く輝く結界が展開される!

それは如何なるモノも防ぐ最強の結界!

スキルの発動直後に消滅の光に照されるが、やはり最強の結界は少しの間持ち堪えることに成功した!

メールとデニムが限界まで重ね合わせた1000枚にも及ぶ結界ですら2秒しか持たせられなかった消滅の光を約5秒も止めたのだ!

だがそれが限界で、アーサーの前方の結界すらも消滅しその体を消し去り消えかけた後方の結界に遮断されたところで消滅の光は止んだ。

 

地面に削られ下半身どころか体の背面が削れ、骨すら見えかけてる瀕死のサラは、最後の力を振り絞って抱き締めているゴンザレス太郎だった肉片に回復魔法をかける!

そして、かろうじで守り抜いた口を動かし瀕死のゴンザレス太郎が呟く…

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

その宣言と同時に魔海の上に居た心ない天神達は突如次々と魔海へ息耐えて落下するのであった。



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第18話 最後の作戦

「と言う作戦です」

 

ざわざわと話を聞かされたメンバーはその無茶苦茶な作戦とも言えない内容に驚愕する。

そして、その内容はゴンザレス太郎が耐えきれなかったら、彼は死に世界の終わりを意味している。

 

「他に方法は無いのだな?」

 

デニムの言葉にゴンザレス太郎は頷く。

もしかしたらまだなにか方法があるかもしれない、だが今この時も心ない天神の大群はここを目指して向かっているだろう。

時間は余り無いのだ。

 

「分かったわ、私が炎王球で打ち出してあげる」

 

サラの役目についてはゴンザレス太郎が決めていたので本人の了承のみがあれば良かった。

 

「私も分かりました。天の裁きと砂浜の結界は任せてください」

「俺もだ」

 

メールとアーサーも了承が出た。

ヒントはサリアの放ったレールガンが当たった心ない天神は、ダメージは無いが仰け反ったと言うことにあった。

そして、動きやすく砂浜を結界で覆い尽くす事もこれで大丈夫だ。

 

「駄目だな」

 

デニムの言葉が響く。

一同はデニムの方を見てゴンザレス太郎の作戦とも言えないそれに反論する。

 

「上陸を許してしまったら囲まれた時はどうする?町から少しでも離して被害を減らすことを考えて、やるなら海上だ!」

 

その言葉にゴンザレス太郎は反論する。

議論は続きデニムの一言で決着がついた。

 

「俺がゴンザレス太郎を跳ね返す。そうすりゃ問題ないだろ?」

 

誰もがその言葉に出来るわけがないと考える。

いくらSランク冒険者とは言え今のゴンザレス太郎の全力を空中で跳ね返せるわけがないと考えていたのだ。

そして、跳ね返せたとしても陸の上なら兎も角、空中で止まっていたらゴンザレス太郎に向けて放たれる消滅の光に照されるのは間違いない。

 

「しかし…」

「それに今のままの作戦じゃ射程が足りないんたろ?」

「?!」

 

デニムのその言葉は的を射ていた。

そして…

 

「往復で左手から外に向けてやれば射程は更に広がる…だろ?」

「でもそれじゃデニムさんが…」

「いいかゴンザレス太郎!お前一人で戦ってるんじゃねぇんだ!『人』って字はな、短い間俺達みたいな者がお前みたいな長いやつを支えて出来てるんだよ!俺達はお前を信じている、自分の命を賭けるなら一緒に乗っからせろよ、お前さえいてくれたらきっとなんとか出来るんだろ?」

 

それは決して楽観的な考え方ではない、本当に本心からゴンザレス太郎なら全てを何とかしてくれると信じているのだ。

そして、それはこの場に居る全員が同じ気持ちだった。

 

マコトのミスでモンスターハウスに飛ばされて確実に全滅してた筈のメール。

サラと魔王の襲撃で町ごと全滅してたはずのデニム。

魔物の町を埋め尽くした鬼の大群に殺されてたサラ。

母親の魂石を守るため自身の命を懸けて鬼の大群から守り死ぬはずだったアーサー。

 

誰もがゴンザレス太郎にその命を救われ、幾度も奇跡を見せられていたのだ。

ゴンザレス太郎はデニムの想いを受け止め作戦を練り直す。

そして…

 

 

 

 

 

震える右手しか残っておらず目も見えない、体は徐々に崩れていくゴンザレス太郎は最後の力を振り絞りスキルを操作する。

その右手に握られた一つの瓶…

ゴンザレス太郎の命も尽き果て手からそれが落ちる…

ゴンザレス太郎はサラに抱き締められながら崩れていく…

サラの手からも既に力は無くなっており、最後の最後まで回復魔法をゴンザレス太郎にかけていたというのが分かる形で止まっていた。

 

そして、作戦の最後の要!

そこまで走ってきたメールが飛び込みその転がった瓶の蓋を開ける!

 

全てを決めたそのラストエリクサーを使用したのであった。



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第19話 勝利の方程式

ゴンザレス太郎が立てた作戦、それは心ない天神を作った神であるマリスの言葉を全て信じた上での内容だった。

 

まず『命令を聞かない』

これは心ない天神達の動きを見ても分かるように各々の知性が有るわけではなく、目標を捕らえ射程内まで移動して手を翳して消滅の光を放つ。

これと何か攻撃をされたら消滅の光で反撃をする。

 

この二点!

これが心ない天神の行動の全てであった。

余りにも単純で分かりやすいこれをゴンザレス太郎はまず利用した。

浜辺で左右に逃げ回ることで左右に広がっていた心ない天神達は、射程内から外れたゴンザレス太郎を追いかける為に外側のモノが中央へ寄る。

まずこれでゴンザレス太郎は心ない天神を広がらせずに出来るだけ集まらせた。

そしてその状態で頃合いを見計らい後方へ下がり、予定の場所で合図の魔法を放つ!

 

音に反応してメールがゴンザレス太郎の発動している『射程無限』を利用してはるか上空に用意していた結界の中にアーサーが水魔法を固定しているアレを曲げて天の裁きを心ない天神の中央へ落とす!

 

太陽光を集めたそのレーザーは心ない天神に対して神の言った通り『全属性攻撃魔法無効』によりダメージは一切無い。

だがサリアのレールガンで衝撃を受けると仰け反る事を知っていたゴンザレス太郎の狙い、それは心ない天神達の中央にいるヤツラを海上へ叩き落とす事であった。

 

そして、そのタイミングで上空へ飛び上がり結界を張りサラの炎王球との合わせ技で開けた空間へ突っ込む!

そして、ゴンザレス太郎の心ない天神対策の最大の切り札を使う!

それはプロアクションマジリプレイで発動させたコード『回復アイテムでダメージ』を発動させ、心ない天神の中央を通りすぎる時に左手で蓋を開けつつ左側へ投げたフーカから託されたただ一つの『ラストエリクサー』である!

 

ここでラストエリクサーの効果について説明するとしよう。

ラストエリクサーとは蓋を開けて空気に触れたと同時に一定範囲に効果が広がる回復薬で、風が吹いてようが空気があれば遮蔽物が在ったとしても関係なく射程にまで効果を発揮する。

そして、その効果は『欠損部位すらも治しHPを最大まで回復する』と『死んでから10分以内の死者を生き返らせる』である。

 

つまりプログラム上では『生物死者問わずHPを理論値増やす』なのでゴンザレス太郎の回復アイテムでダメージと合わさると『HPを理論値分減らす』と言うわけだ。

そして、マリスが言ってた通り「ステータスは全てMAX!更に『絶対物理遮断』と『全属性攻撃魔法無効』と『全ステータス異常無効』!」つまり回復アイテムは効果があると言うことだったのだ!

 

デニムの力を借りて反射したゴンザレス太郎はそのダメージを受けるラストエリクサーの効果範囲内に再び飛び込み、右手と口元だけを保護し左手の中にあるラストエリクサーを再度使用する!

そう、『アイテム減らない』を発動していたので開けて捨てたラストエリクサーはゴンザレス太郎の左手の中に復活していたのだ!

二度目の通過時に今度は逆側にラストエリクサーを使用するのだが、そこは既に最初のラストエリクサーの効果内。

音速を超えた速度で飛んでいるゴンザレス太郎の全身にラストエリクサーの効果が速度に関係なく発動し、その身を急速に汚染する。

そして、ゴンザレス太郎は全身を音速を超えた衝撃とラストエリクサーの効果により全身を崩しながら飛び続け、ラストエリクサーの射程外でそれをサラがキャッチする。

そのゴンザレス太郎を追うように心ない天神達は消滅の光を当てようと追い掛けるのだが、一番の胆だったデニムに反射される瞬間も攻撃されなかった為に見事やり遂げたのだ!

後はサラがその命を懸けてゴンザレス太郎が生きている間に停止させ、HPがリアルタイムに減り続けるゴンザレス太郎の猶予を少しでも伸ばすために最後の力で回復魔法をかける。

 

もしもこれが似た効果の『回復でダメージ』を使用していたらこの時点で詰んでいたであろう。

そして、ゴンザレス太郎も最後の力を振り絞りスキルを発動させ『回復アイテムでダメージ』を解除すれば完了だった。

だが最後の最後で体を崩しながら心ない天神達は消滅の光をゴンザレス太郎に向けて放ってきていた。

完全にゴンザレス太郎の予定から外れた事象ではあったが、魔王子アーサーのユニークスキルにより間一髪彼の消滅と引き換えに二人の体は助かったのであった。

 

そして、最後に全てを託されたのはメールであった。

ゴンザレス太郎の左手が崩れる前に右手に移していたラストエリクサーを彼女が使用し、二人を助けるのが彼女の役割なのだが…

ゴンザレス太郎が寝た場合はスキル効果はリセットされるが、死んだ場合はどうなるか分からないと言うのが最大の問題であった。

その為にゴンザレス太郎は死ぬ間際スキル効果を解除するために発動の為の口元と操作の為の右手を庇っていた、だがしかしゴンザレス太郎が死ぬ間際にスキル解除が間に合ったかは彼女には分からないのだ。

 

もし解除前にゴンザレス太郎が死んでいて効果が解除されてなかったら、ラストエリクサーの蓋を開ければ確実に自分も死ぬことになる。

そんな極限状態にあった中彼女は迷うことなくその蓋を開けた。

ゴンザレス太郎への絶大なる信頼と、もし死んでもお腹の中の子供と父親の元へ行けると信じていたからだ。

そして、ラストエリクサーはゴンザレス太郎の予定通り、効果範囲外で魔海に浮かんでいる心ない天神の死体を一体も生き返らせる事の無いまま、ゴンザレス太郎とサラの二人だけを生き返らせるのであった!

 

どれか一つでも欠けていたり間違ってたら全てが終わっていた戦いに彼等は勝利したのだ!



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第20話 プロアクションマジリプレイが凄すぎる効果を発揮した件

消えかけた肉片は再生し、ゴンザレス太郎は光の中で肉体を再生しながら目覚める。

サラも動かぬ体に光が染み込み、瞳をゆっくりと開く。

意識を取り戻した二人に涙を流しながらメールが抱き付いた。

 

「良かった、本当に良かった」

 

大人のメールに抱き締められ、ゴンザレス太郎とサラは終わったんだと安堵の息を吐いた。

その体はとても小さく、特にゴンザレス太郎は戦いであれだけの事をこんな小さな体で実現させてきたとメールの心を驚かす。

先日8歳になったゴンザレス太郎だが、まだまだ子供なのは変わらない。

少ししてメールが腕を離し笑顔を見せるが、やはりその表情には陰りが見えた。

この戦いで失ったものが大きすぎるのだ。

 

「兄さん…」

 

サラも最後の最後に自分達を守り抜いた兄であるアーサーが居た場所を見つめながら、生き残ったのは自分一人なのだと心を強く持つ。

 

「終わったようだな」

 

その時上空から声がした。

3人が見上げるとそこには魔物の軍隊と魔王が居た。

そして…

 

「デニムさん!?」

 

空を飛ぶ魔物に座席に寝かされた状態で運ばれて、空中で治療を受けているデニムがそこに居た。

全身の骨は粉々にやられ、まさに死を覚悟したその時…

偶然にも魔物の町へ向かった心ない天神達を追い掛けていた魔王軍に空中でキャッチされていたのだ。

 

「どこの鉄砲玉かと思ったぞ」

 

魔王の言葉にゴンザレス太郎は吹き出す。

魔王は前世の世界での任侠映画を思い出したのだ。

魔王もゴンザレス太郎が居るからこんな冗談も言える、それが楽しかった。

 

「そうか、アーサーも逝ったか…」

 

魔王にアーサーが自分達を助けて死んだと告げるサラ。

魔王の目には悲しみよりも、命を懸けて世界を救った一員として誇り高い息子を自慢にする様な雰囲気をゴンザレス太郎は感じた。

 

「それでも、よくぞ世界を救ってくれた。魔王ではなくこの世界の住人の一人として礼を言わせてもらうぞゴンザレス太郎」

 

魔王のいつもの冗談ではなく、本気で心からの礼なのだと伝わる気持ちを受け止める。

しかし、ゴンザレス太郎は首を横に振り告げる。

 

「まだやることが残ってます」

 

一同の頭に浮かんだのはやはりあの神であろう。

この件の元凶でもあるし、ヤツが居る限り再び同じことが起こり得るのだ。

しかし、ゴンザレス太郎の口から出たのは誰もが予想をしなかった言葉であった。

 

「俺のスキル『プロアクションマジリプレイ』の真価を試す実験を今からします!」

 

意味が全く分からない、その場に居る全員に動揺が広がる。

様々な事象に常識を無視した影響を与えるゴンザレス太郎のスキルの事はこの場に居る誰もが分かっていた。

だがこれから起こることはまさに神をも超えた現象なのをこの時誰も理解していなかった。

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

空に向かって叫ぶゴンザレス太郎!

発動するだけならこんな大声を出す必要は無いのだが、この声には彼の願いが込められていたのだ。

そして、ゴンザレス太郎は自分にしか見えないウィンドウを操作する。

彼が選んだのは『パーティーメンバーに加える』であった。

そして、セレクト後キャラを選ぶ一覧が表示されゴンザレス太郎は笑みを浮かべ叫ぶ!

 

「頼む!帰ってこい!」

 

そして、決定を押すと奇跡は起きた。

突如ゴンザレス太郎の目の前に驚くべき人物が姿を表した!

 

「ぐぁぁぁぉぁあ…あれ?」

 

目の前に魔王子アーサーが出現したのだ。

 

※『パーティーメンバーに加える』

世界の何処に居ても、生きている限りパーティーとして認可される範囲に強制的に瞬間移動させて無理矢理パーティーに加える効果

 

そう、これは加わっていない人間をパーティーに加える効果ではなく、データベース上に存在する生きた人間を無理矢理パーティーメンバーに加えて一緒に行動できる場所に一方的に呼びつける効果だったのだ!

神マリスは心ない天神を説明する時に言った。

 

『こいつの消滅の光は通過したものを消滅させる。死ぬのではなく消滅、分かる?消えるんだよ当たったら最後僕でさえも消えるし生き返れない!どう?素晴らしいでしょ?』

 

つまり消滅したので、死んだとは違う扱い!と言う訳なのだ!

混乱している一同、自分に何が起こったのか分かってないアーサー。

全員を放置してゴンザレス太郎は再び叫ぶ!

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

最早それはチートなどを超えたデバックと呼べるレベルの行為。

この世界を作った神すらも超えた人間の知恵の結晶が起こした奇跡であった。

その中で魔王だけが前世の知識から一つの伝説を思い出す。

 

『改造データを使って起こすエア○ス復活バグ』

 

かつて地球と言う星で産み出された伝説のファンタジーRPGゲームの7作目で、世界中で話題になったそれを思い出しながら魔王は一人高らかに笑い声を上げるのであった。

消された仲間が帰ってくる、その事実に歓喜する一同。

だが、その中で一人…ゴンザレス太郎だけがそれに気付き影を落としている事実に誰も気付かなかった…



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第21話 現実は常に苛酷

「ヤバイー!」

 

メールがゴンザレス太郎のスキルで戻ってきたヤバイに抱き付く!

何が何だかよく分かってないヤバイはキョロキョロと見回し、一同の拍手の中困惑した表情のまま頭をポリポリ掻いている。

 

「あれっ?俺、確かあの天使どもと戦って…」

 

そのヤバイの口をメールが口で塞ぐ!

突然の行動に周りから「おー」とか関心の声が上がった。

 

「ヤバイ、私やっぱりあんたが好きなんだ!お腹の中の子供と3人一緒に暮らそっ!」

「はっ?えっ?んへぇ?!」

 

戦いで死を覚悟して、気付いたら突然メールに抱き付かれ、そのままキスされて突然の告白に子供が出来た発言、そしてプロポーズとフルコースで迫られたヤバイの頭の中はまさしくヤバイ!

 

「おっ俺の子か?!」

「そうだよ、あの時の子だよ」

 

どの時だよと突っ込みが入りそうでヤバイ。

お子様にはちょっと刺激の強い話が続きそうなので、ゴンザレス太郎は次の人をスキルで戻す。

 

「デニム…あぁ、大丈夫なの?」

「大丈夫っとはこれじゃ言えないな、もう冒険者は引退をしなくてはならないだろう」

「いいよ、私のために戦ってくれた結果だろ?私が養ってやるよ」

 

こっちはこっちで宜しくやってるみたいなので次の人に移るゴンザレス太郎…

どうでもいいがジルの魔力なら、デニムの傷ぐらいであれば直ぐに全快出来る回復魔法が使えるってのは言わないでおこう…

 

そうして、次々と消された人もどっちか分からない人もゴンザレス太郎はスキルで出して一同はその時を心待ちにする。

そう、全員がゴンザレス太郎がフーカを復活させるのを待っているのだ。

だがゴンザレス太郎には一つの予感があった。

誰にもそれは言えず、遂に最後のフーカを呼び出す時が来た。

 

「いいのよゴンザレス太郎、私はフーカも好きだから」

 

サラはゴンザレス太郎の考え込んでいるのを少し勘違いしているようである。

だが見当違いのサラの言葉に笑顔で頷いてスキルを発動させる。

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

もう慣れた手付きで項目の中からフーカを選びそして、決定を押す。

次の瞬間、目の前に出現した赤と黄色のオッドアイがゴンザレス太郎を見ていた。

周りからは歓声が上がるが、ゴンザレス太郎だけはその目を見て気付いてしまった。

そして、彼女から出た一言で場は凍りつく。

 

「貴方、誰?」

 

ゴンザレス太郎は分かった。

いや、分かってしまった。

そして、周りに居た人だかりの中で見ていた彼女の姿を見つけてフーカは飛び出す。

 

「シズクー!良かった。生きてる、シズクが生きてる!」

「えっ?ちょっと、フーカさん?」

「なによシズク?いつもみたいにフーカちゃんで良いのよ」

 

そうなのだ、ここに居るフーカはゴンザレス太郎とずっと一緒に居たフーカではなく…

最初の転生タイムリープを行う前のフーカなのだ。

 

「ちょっとフーカ!ゴンザレス太郎にお礼くらい言いなさいよ!」

 

流石に様子がおかしいと感じたサラがフーカに詰めかける、だがそんなサラに冷たい視線を向けて彼女は伝えた…

 

「ゴンザレス太郎?なにその変な名前?あの人タツヤだよ。もしかして偽名使われてるの?!」

「フーカ、あなた…」

「サラ、良いんだ。もう、良いんだ…」

 

ゴンザレス太郎は涙を堪えながらサラにそう告げる。

今のフーカは歴史を繰り返す前の記憶しかなく、ステータスもその時のものである。

下手すればサラの身体能力でちょっとしたことで大怪我をするかもしれないというのもあった。

 

こうして、心ない天神が魔海一面に浮かぶのをそのままにして、一同は魔物の町へ帰還し翌日住んでいた町に戻して貰うことになった。

 

勿論フーカの豹変振りにクラスメイトも驚き、記憶の差異を埋められないままゴンザレス太郎達の説得で彼女は学校にまた通う事となった。

町に帰ってからは記憶がおかしくなっていると本人には説明し、本当の両親の住んでいた家はこの世界には存在せず育ててくれた老夫婦の元へ連れていき事情を説明した。

 

そして、ゴンザレス太郎は帰宅後数日間両親と共に暮らし、フーカと顔を合わせる事が無いように旅に出る決心をした。

あれから時が流れたが、神は何処へ行ったのか分からないままなんの音沙汰も無いので警戒する必要も無いだろうと言う一同の結論であった。

ゴンザレス太郎が一人向かったのは以前話を振ってくれたSランク冒険者『猛激のタイガ』の元で、そこでしばらく厄介になりそのまま消息が途絶えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「これでどうかな?」

 

表示されたメーターが右端まで行き画面に『アップデートが完了しました』と表示され、満足げに頷くのは白い空間に白い姿で居る神マリスであった。

 

「あれからもう10年くらい経つし、流石に人類は全滅してるだろうから新しく世界を作り直すかな」

 

心ない天神達を異世界に放置して、滅ぶのを待っていたマリスは思い出したかのように異世界のアップデートを完了させる。

それはあの世界にユニークスキルを3つ以上持ってる存在は居ないと言う証明でもあった。

そう、フーカのユニークスキル『転生タイムリープ』はシズクが生きているため消滅したのであった。

 

「しっかし、人間が絶滅しないと新しい世界を作り直せないなんて不便な仕様だよな~」

 

愚痴りながら世界のフォーマットを選ぶマリスだったが、表示されたのは『エラー!人間が存続しているためフォーマット出来ません』と表示された。

 

「えぇ?!嘘だろ!心ない天神達が蹂躙している世界で10年も生き続けてるなんてどんだけだよ!?」

 

驚くマリスであるが異世界をリセット出来ないのにかわりはなく、仕方無く様子を見るためその世界を覗いて驚きの声を上げるのであった。



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第22話 THE LAST OF GOD

「そんな馬鹿な…心ない天神が全滅してる…」

 

マリスは絶句しながら世界中を捜し見つけた。

魔海を渡るのに改造された、心ない天神達の変わり果てた姿を…

魔王達の研究でどうやっても破壊できず、全属性を無効にするそのボディ…

それは絶対に沈没せず破損せず燃えない無敵の素材、それを使って魔海を渡る船の材料として再利用されていた。

それを知った神マリスは直ぐに異世界に入り、現存している事を確認した魔王の元へ向かい、魔王の元に現れたマリスは早速何があったのか問い詰める。

 

「ん?なんだ神か、生きていたのか?」

「ハハハッそれはこっちの台詞だよ魔王、一体どうやったんだい?」

「なんだ今頃気付いたのか?」

「う、うるさい!僕は忙しいんだ!さっさと答えろ!」

「お前の作った玩具ならタツヤ、おっとゴンザレス太郎が皆殺しにしたぞ」

「そんな…馬鹿な…」

「それよりさっさと逃げた方が良いんじゃないか?ゴンザレス太郎は大事な大事な彼女を失ったから、きっとお前を見付けたら後悔してもしきれないくらいの酷い目に合わされるぞ」

「はっ!それは面白い!やれるものならやってみろってんだ!」

 

そう言ってマリスは魔王の元を走り去る。

後に残された魔王はにやけながら…

 

「クククッ本当に単純なヤツだ。さぁゴンザレス太郎、俺には出来なかったがお前ならアイツに一泡吹かせる事が出来るだろ?頼んだぞ」

 

10年と言う時を得て魔王も白髪が増え、ダンディーな風格で笑うのであった。

 

 

 

 

「何処だ?何処だ?何処だ?ゴンザレス太郎?!」

 

マリスは戻った白い部屋でゴンザレス太郎を探す。

やがて諦め掛けていた頃にその姿を見つけた!

そこはかなり田舎の集落、何故そんなところで暮らしているかなんて勿論考えない、マリスは迷わずゴンザレス太郎の元へ向かう。

それがこの白い空間に居られる最後の時とも知らずに…

 

 

 

『ど』が付く程の田舎の中にある広い部屋があるだけの家、日本で言うなら集会所だろうか?

そこでゴンザレス太郎は集落を魔物から守ったり、村の人の手伝いや魔法を使っての治療等を行う何でも屋を経営していた。

とは言っても殆ど仕事もなく、大体の日々はその家でゴロゴロしているだけのニートと化していた。

 

「遂に見つけたぞゴンザレス太郎!いや、タツヤ」

 

玄関を律儀に開けて入ってきたマリスをチラリと見て、ゴンザレス太郎はボソボソ呟いてから何か操作をし、それが終わってからまるで今気付いた様にマリスの方を指差し名前を呼ぶ。

 

「あっ!君は確か…『ミリー』」

「違うわ!この世界の唯一神マリス様だ!」

 

銀髪少女姿のマリスは19歳になったゴンザレス太郎と再会を果たしてしまうのであった。



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第23話 神は逃げ出した。しかし、回り込まれてしまった

青年に成長したゴンザレス太郎を前にして落ち着いたのか、マリスは何かを思い出した様に目を見開いた。

そして、その口から驚く真実が語られる…

 

「そうそう、君には教えてあげないと駄目なことがあったんだったよタツヤ君」

 

マリスが突然表情を物凄く嬉しそうにしながら上機嫌に語り出した。

 

「前世で君を殺したのはね、僕なんだよ!」

「何?」

「君は選んだのは本当に偶然でね、丁度家族が居なくて簡単だったから君が食べてる餅を細工してね」

「なるほどね」

 

ゴンザレス太郎はもう呆れて何も言えなかった。

これからのマリスの事を思うと気の毒で気の毒で…

思わず笑いが込み上げてきた。

 

「ハハハハハハー!そうかそうか~…いや~一応その体が女の娘だからあまり酷いこともって悩んだけど、これなら大丈夫だね」

「何笑ってるのか知らないけど不愉快だよ、そんな余裕もここまでさ」

 

マリスの顔に獰猛な肉食獣の様な笑みが浮かぶ。

自分が負けるはずはないと心から信じきってるその目、それを絶望に染めれると感じたゴンザレス太郎は心底嬉しくて仕方がなかった。

 

「どうでも良いけどその体で戦うつもりなのかい?」

「君は知らないと思うけどあれからこの世界はアップデートしてね、僕は新しく追加された数々の魔法もアイテムも全て自由に使えるし、君を絶望させて神に逆らった愚かさを嘆いて土下座させながら殺してやるよ!」

 

マリスは手から地面に砂を溢した。

いつもの赤砂だ。

これがいつものマリスの手だ。

 

「そんな10年前と同じ手を使ってて勝てると思ってるのがおかしくて仕方無いよ」

 

ゴンザレス太郎はマリスの行動が予想通り過ぎて再び笑いだす。

 

「その笑みもここまでだ!神に逆らった事を後悔するといいさ!さぁ出てこい新しい魔物達!」

 

マリスが手を振り下ろしあの魔物を召喚した動きのまま固まる…

 

「あれ?」

「プッ、アハハハハハハハハ!!!」

 

ゴンザレス太郎の高らかな笑い声が響く。

笑われている事にマリスは普段なら怒りそうだが、本人にとって今はそれどころではなかった。

 

「な、何故だ?!何故魔物が生まれない!?」

 

何度も腕を振り下ろし魔物を生み出そうと繰り返すが!その手は空を切るばかりで何も起こらない。

困惑の中、焦りがマリスを支配していく。

 

「おいたしちゃダメだよミリーちゃん」

「さっきから一体何を言ってる?私は神のマリスだぞ!」

「お前はやり過ぎたんだ。俺はもう謝っても許す気は無いから覚悟した方がいいよ」

 

ゴンザレス太郎の気配に気押されてマリスは一歩下がる。

その頬に一筋の汗が流れる。

それに気が付いたマリスが驚きの声をあげる。

 

「な、なんだこれは?!」

「汗がどうかしたのかい?」

 

ニヤニヤしながらゴンザレス太郎は持ち物からそれを取り出した。

一見するとただの首輪、だがそれを見てマリスは驚きの表情を浮かべ、顔をひきつりながら話す。

 

「そ、それは主従懇願奴隷の首輪?!」

 

※『主従懇願奴隷の首輪』自らが主と定めた相手から受け取り、自らが装着することで発動する呪いの首輪。装備すると死ぬまで取れず主人が受けた痛みや快楽苦悩等全ての感情をどんなに離れていても共有する首輪。この世界には奴隷制度が無いためマリスがお遊びで作ったネタアイテム。

 

「そ、それで我に永遠の忠誠を誓うから許してほしいって言いたいわけか?!」

「ばーか、そんなことあるわけないだろ」

 

作った本人のマリスも理解しているのだ。

これは他人に装着されては駄目で、自らが望んで装備しないと効果を発揮しないことを。

 

「これはお前へのプレゼントだよミリーちゃん」

 

全身から汗が吹き出る…呼吸が苦しい…

謎のプレッシャーを受けてマリスはゴンザレス太郎に恐怖を覚える。

そう、忘れていたのだ。

目の前の存在が今まで数々の事象を悉く妨害してきたという事を…

ヤバイ、何かヤバイ、逃げなきゃ、今すぐここから…

 

「ほら、俺からの気持ちだ受け取ってくれ」

 

ゴンザレス太郎が主従懇願奴隷の首輪を差し出してきてマリスはそれを手で払い除ける。

そして、全力で逃げ出した。

家を飛び出し獣道に入り奥へ奥へと進んでいく。

 

(おかしい、何かがおかしい、なんだこの変な感じは?!)

 

マリスは自分の体に起こっている事をその時初めて知った。

呼吸が荒れて、足がどんどん重く感じ始めた時…

 

「痛っ?!」

 

感じた事の無い痛みを感じた。

慌てて自らの腕を見ると木の枝で切れた腕から血が垂れていた。

 

「えっ…」

 

そして、マリスは気付く…

先程の汗も体の疲労もこの痛みも神である自分にはあり得ないこと…

 

「これじゃあまるで…」

「人間みたい…か?」

 

声がして見上げるとそこにはゴンザレス太郎が先回りし仁王立ちで立っていたのだった。



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第24話 二代目魔王

「心配しなくても良いよ、君はもうミリーと言うただの女の子だから」

「ふ…ふざけるな!」

 

余裕のゴンザレス太郎に怒りをぶつけるように叫び、マリスは自身に手を添えた。

きっとマリスは何かをしようと思ったのだろう、だがそれは発動することなく彼女は固まる。

 

「これで…勝ったつもりか?」

「いや、こんなんで済ますつもりはないよ」

 

そう言ってゴンザレス太郎は主従懇願奴隷の首輪を手に近付いてくる。

その表情は穏やかで、マリスの焦りを増長させる…

 

「私が作ったんだから知ってる、それを私に無理矢理つけても効果は無いぞ!」

「知ってるよ、だけど宣言するよ。ミリーは自分からこれを着けることになると」

 

その言葉にマリスは固まる…

そんなことはあり得ないと考えているのだが、今までのゴンザレス太郎がしてきた事を考えると油断はできない。

そして、その時は来た。

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

ゴンザレス太郎の突然の言葉に身構えるマリス。

マリスはゴンザレス太郎のユニークスキルをしっかり見るのが初めてなので、一体どんなことをされるのか恐れたのだ。

だが何も攻撃は来ず、ゆっくり目を開いたマリスの目に映ったのは…

愛しの王子様タツヤであった…

 

「た、タツヤ様!あ、あぁ私はなんて事を…貴方に出会える前の私の日々が如何に酷かったか分かりますか?あぁ愛しのタツヤ様、どうか私を抱き締めて下さいませ!」

 

あまりのマリスの豹変振りにちょっと引いたゴンザレス太郎であったが、とりあえず目の前の銀髪少女にその手に持っていた首輪を差し出す。

 

「ミリー、分かってるよね?」

「はい!一生貴方の奴隷として私の全てを捧げます!」

 

そして、ミリーが首輪を装着したのを見て再びスキルを発動させ解除する。

呆気ない結末に拍子抜けなゴンザレス太郎の顔を見て我に返ったマリスは半狂乱になり始めた。

 

「さて、どうだったかな?」

「なん、なんなんだお前はー?!」

 

主従懇願奴隷の首輪をその首に自ら装着したマリスは涙を流しながら泣き叫ぶ。

もうこの首輪は死ぬまでとれないし、どうやったのか体は定着し完全に人間みたいな存在となっていた。

 

「この世界さ、ミリーが作ったこと以外に色々な物が生まれてるの知ってる?」

 

ゴンザレス太郎は自分の事を含めて遠い目をして話し始めた。

 

「これもそうさ」

 

そう言ったゴンザレス太郎の手に在ったのはリンゴにペンが突き刺さった『アッポーペン』である。

 

「アッポーペンって言うんだけど知ってる?」

 

泣きながら首を横に振るマリス。

これから一体どうなるのか予想も出来ず、神としての威厳なんてとっくの前に失くしていた。

だがそんなマリスはゴンザレス太郎の言葉に希望を見出だした。

 

「もしこれの対になる『パイナッポーペン』を君が見付けて、俺の所に持ってこれたら助けてあげるよ」

「ほ、本当だな?!」

「あぁ、アッポーペンが在ったんだきっとある筈だから頑張って」

 

そう言ってこの世界でただ一人の奴隷になったミリーは旅立つ。

ゴンザレス太郎が痛みを感じたら同じ場所に痛みを、快楽を受けたら快楽を感じると言う特殊な人間の体で、彼女はこれからアップデートで広げてしまった世界を永遠に旅するだろう。

存在する筈の無いパイナッポーペンを探し続けて…

 

 

 

「終わったな」

「魔王か?」

 

木の影から二人のやり取りを見ていた魔王がスッと姿を表す。

ゴンザレス太郎がマリスをどうするか楽しみで仕方がなかったから見に来たのと、もう一つの用事で来ていたのだ。

 

「全く酷いことをする、クククッ」

「優しいだろ?それにいつでも好きに出来るからな」

「っでだ、何をしたのか聞かせてもらえるんだろうな?」

「簡単な話さ、魔王も日本の生まれなら分かるだろ。『主要キャラの名前変更』でアイツの名前を『マリス』から『ミリー』に変えたのさ』

「なるほど、名は体を表すって訳か」

 

外の世界であれば何の事はない事象なのだが、この異世界RPGと言うゲームの世界の中では名前を変えられたことで神はゲームマスターの権限を失ったのだ。

この世界では『マリス』の名を管理者と登録されている為に、名前の変わった彼女はもう二度とその力を使えない、寿命が無いが何かの拍子に死んだら終わり。

その体を作った時の設定通り、A級冒険者の実力を持つ寿命が無いだけのただの人になったのだ。

 

「そして、もう一つはサラにも使ったことがあるあれだな」

「まだ根に持ってるのかよ、良いじゃん事故だよあれは。偶然『好感度MAX』がサラに効果を発揮したんだから」

 

そう、マリスが自ら首輪を装着したのは『好感度MAX』でゴンザレス太郎にフォーリンラブになったからであった。

しかし、装着してすぐ解除するゴンザレス太郎は余程マリスが嫌いだったのだろう。

むしろあれ以上美少女の姿でも近寄られたくなかったのである。

 

「いや、全く大したもんだよお前は。それで本題だが、どうだ?考えてくれたんだろ?」

「そうだな…サラを10年も待たせてしまったからな」

「ありがとう、二代目魔王の誕生だ!」

「こちらこそ、これから宜しくお義父さん」

 

こうして、ゴンザレス太郎はニート生活を満喫していた田舎を引き払い、魔物の町『新アムステルダ』でサラと結婚し幸せな人生を歩むのだった…



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第24話 そして、80年後…

この世界から神が居なくなって約80年の時が過ぎていた。

世界は相変わらず同じような毎日を繰り返し、少しずつ人々はその記憶からゴンザレス太郎の起こした奇跡を忘れていっていた。

 

そんな時代、魔物の町だった場所には『アムステルダ王国』が出来上がっていた。

その王国で今、世界を救った元二代目魔王がゆっくりとその人生を終えようとしていた。

 

「父さん、また来てるよ」

「あぁ、通してやってくれ」

 

ベットに寝ているのは年老いた英雄ゴンザレス太郎。

その横に居るのはその息子の現魔王『アルス』であった。

アルスが声を掛けるとドアが開き、一人の青年と銀髪の少女が入ってきた。

 

「ほら、ノロ。お爺さんとミリーは大事なお話があるらしいから外で待とうな」

「うん・・・」

 

寂しそうな顔をしてノロはミリーと離れて部屋から出て行く。

部屋に二人きりになったゴンザレス太郎とミリーは顔を見合わせて微笑む。

あれから長い年月が過ぎてミリーも変わった。

人間として生きて様々な事を学び、一人の女性として生きているのだが、その姿は当時のままであった。

 

「お前の孫のノロにまたプロポーズされたぞ」

「全くあいつは・・・」

 

二人は笑いながら会話をする。

嘗ては宿敵として対峙した関係であったが、主従懇願奴隷の首輪を装着してからはすっかり大人しくなり、彼女がこの世界の元神だとは今では誰も知らない。

ゴンザレス太郎は疲れ切った目で天井を見上げ、昔の事を思い出す。

 

「なぁ、お前今でもまだ神に戻りたいか?」

「んーどうだろ、今更戻ってもあの時間も何もない退屈な日々はもうゴメンかな?」

「はははっお前変わったよな」

「そうかな?もしそうだとしたら変えたのはお前だぞ」

 

見た目は少女と爺さんだが、まるで対等な会話を続けている様にも見える。

ゴンザレス太郎はミリーの姿を見つめた。

 

「なんだ?今更になってプロポーズでもしてくれるのか?」

「バカ言え、お前みたいなの白金貨積み上げてもお断りだよ」

「ちぇ、俺はお前の事嫌いじゃないのにな」

 

そうである、結局彼女はパイナッポーペンを見付ける事が出来ず、ゴンザレス太郎に土下座をして今から20年程前に許してもらっていた。

フーカは記憶を無くしてはいるが、今も元気に暮らしテイルと聞いていた。

彼女は今では魔道研究所の署長を勤めているらしいのだ。

旦那と子供3人が居り、何度か会った事もある。

そんな事もあり、もうミリーを恨むのは止めたのである。

 

「ただいま~あれ?ミリー来てたんだ」

 

窓から飛び込んできたのはサラであった。

ますます大人の色気が出てきた彼女は半魔族、なので寿命が人間の4倍~5倍はある。

あの日、魔王と共にこの国に来てゴンザレス太郎の方からプロポーズをして魔王の座を継いだ。

それからゴンザレス太郎の力で様々な事件を解決し、なんやかんやで城が完成し現在に至る。

彼女も既にミリーとは打ち解けており、むしろゴンザレス太郎の良さが分かる仲間みたいな関係が続いていた。

 

「私の苦しみも結構短い間隔で感じるようになってきたから、そろそろかと思ってね」

「そう・・・」

 

二人の会話でゴンザレス太郎も自分の寿命を悟る。

ミリーに着けられている『主従懇願奴隷の首輪』は主が感じた感覚を奴隷も共有するアイテム。

ゴンザレス太郎の寿命が終わろうとして苦痛等がミリーにも流れ込んでいるのだ。

だが彼女はそれを一切顔には出さない。

彼女なりのケジメもあるのだろう。

 

「サラ、悪いがちょっとミリーと二人にして欲しいんだ。」

「タツヤ、その年で逢引する気?」

「ばーか、お前もこいつの事をもう恨んでないだろ?なら解放してやろうと思ってさ」

「タツヤは大丈夫なの?」

「どうかな?でもこのまま俺が死んだらこいつも一緒に死ぬだろ?それはちょっとな」

 

そう、この主従懇願奴隷の首輪は主が死んだ場合奴隷も一緒にその命を終わらせるのである。

ゴンザレス太郎はもう彼女は償ったと判断し、解放してやろうと考えたのである。

 

「分かったわ、でも無理だけはしないでね」

「あぁ、そうだ!ついでにこいつの着替えも頼む」

「ん?…良く分からないけど分かったわ」

 

そうしてサラは出て行く。

部屋に再びミリーとゴンザレス太郎だけが残り、寝た状態から上体を起こして呟く・・・

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

そして、ゴンザレス太郎の心臓にドクンッと言う大きい1回の鼓動が響く!

久し振りのスキル使用にその表情が歪む。

 

「ぐっ・・・」

 

その苦しさにゴンザレス太郎は心臓を抑える。

慌ててミリーが近付いてくるが、それを手で止めて指で操作をする。

そして、最後に決定を押す!

次の瞬間二人の体が光に包まれる。

 

「ミリーの着替えは下着も要る・・・の・・・」

 

サラがドアを開けて中に顔を覗かせた時に目を見開く!

なんと二人は全裸であった。

一応ゴンザレス太郎の前で全裸になるのには少し抵抗があったのか、手で胸と股だけ隠して顔を赤らめながらミリーは言う。

 

「その年になってやりたい事が、私の裸を見る事だったって言うのなら別にこんな事をしなくてもいいのに・・・」

「それなら俺も全裸になる必要ないだろ・・・」

 

そう、ゴンザレス太郎の選んだコードは『全裸になる』である。

使い道が全くないと思われていたこのコードだが・・・

 

「ミリー、あんたその首・・・」

「えっ?」

 

ミリーが自分の首に手をやるとそこには主従懇願奴隷の首輪は無かった。

呪いのアイテムで自らが一度装着すると永遠に外れない筈のアイテムが消えていたのだ。

これがコード『全裸になる』の正体。

装備している物をどんなものでも強制的に消滅させるコードだったのである。

 

「これでお前はもう自由だ。好きに生きるとイイ、神に戻す事は出来ないってのは分かってるだろうから、それは諦めてくれよ」

 

そう、このゲームの中にいる限りミリーは神にはもう戻れないのである。

それでも彼女は『不老』と言う女性なら誰もが欲しがるユニークスキルを持って居るのだが・・・

 

「タツヤ、大丈夫?かなり辛そうだよ」

「とりあえず私は服を着るとしよう」

 

ミリーの生着替えの横でハァハァ呼吸を荒くしているゴンザレス太郎、ここで孫とかが入ってきたらエライコッチャなのだが多分大丈夫であろう。

そんなゴンザレス太郎は呼吸が落ち着いたらミリーに語る。

 

「ミリーもノロの事気にしてるんだろ?」

「へっ?う・・・うんまぁ、昔のお前にそっくりだからな」

「ならアイツのプロポーズも真剣に考えてやってくれないか?」

「いいのか?お前はそれで」

「ハハッ昔のお前なら首輪が取れた時点で喜んでここから飛び出して、何処かへ行ってた筈なのに本当変わったな」

 

そんな二人の会話にサラも笑いながら参加し暫く談笑が続いた。

 

「さて、そろそろ俺もお迎えが来た様だ・・・」

 

ゴンザレス太郎は再び上体を寝かせて天井を見上げる。

そして、サラの方に首を曲げて話す。

 

「サラ、本当に色々ありがとうな。お前が居なかったら俺はここまで幸せな人生を送れなかったよ」

「ううん、私もタツヤに会えなかったらこんな素敵な人生を歩めなかった。」

「でも本当はフーカも一緒に暮らしたかったな」

「そうね、私とフーカの二人でタツヤのお嫁さんになるって約束してたのに・・・」

「もしもあの世でフーカと再会できたら俺達はサラを待ってるよ、そしたら3人で一緒に暮らそうぜ」

「なにその夢物語、でもタツヤが言うと本当にそうなりそう」

「きっと大丈夫さ」

 

そう言ってゴンザレス太郎はゆっくりと目を閉じようとする。

慌ててミリーが部屋の外に居る全員を呼びに行く。

ゴンザレス太郎の最後が近いのだ。

 

(あぁ、いい人生だった。前世で聞いた話では死ぬ時に周りにどれだけ自分を愛してくれる人が居るかでその人の価値が決まる、そんな話を聞いた事があったな・・・)

 

そんな事を考えながら目を閉じたゴンザレス太郎はフト思いだす。

 

(そう言えば神と戦った時以来コードナンバーガチャを回してなかったな・・・)

 

それは最後の最後に走馬灯の様に人生を振り返ったゴンザレス太郎の単なる思い付きであった。

そして、皆の見守る中小さく呟く・・・

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動」

 

その呟きが最後の力だったのだろう。

心臓がドクンっと響き、心臓がそれ以降動かなくなったのを理解した。

ゴンザレス太郎は目を閉じた状態でもウィンドウが表示されてるのが分かり、その右端に表示されているガチャを回す。

思えばこれで最初に出たのが所持金MAXだったな・・・と内心笑いながらYをタッチし懐かしい宝箱が出てくる。

そして、それは自然に開きそこに書かれていたコードを見て驚くゴンザレス太郎!

徐々に意識が遠くなる中、ゴンザレス太郎は最後の力を振り絞ってそれを発動させ、遠のく意識の中探し続けそれを見つける・・・

そして、決定を押して更にもう一回・・・

 

 

「父さん!」

「ゴンザレス太郎!」

「爺ちゃん!」

「タツヤ!」

 

 

遠くなりかけた意識の中、全員の名前を呼ぶ声が聞こえ僅かだが意識が戻った。

今しかない!

ゴンザレス太郎は最後のコードをもう一度起動させて先程と同じものを選び最後に決定を押す。

これで・・・もしかしたら・・・

 

 

 

ゴンザレス太郎 享年99歳

アムステルダ城にて死去



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第25話 奇跡なんて無い、あるのは結果である

やっぱり駄目だった。

もうあんな奇跡はきっと起こらない・・・

だから私はもう抗うのは止めにしよう・・・

あんなに頑張ったのに無理だったのだから・・・

 

 

 

 

少女は礼拝堂に老夫婦に連れられて来ていた。

身寄りのない自分を引き取って育ててくれた老夫婦だ。

もう何度この時間を繰り返したのか分からない。

だが結果はいつも同じだ。

 

「ををを!この娘には3つもユニークスキルがある!」

 

周りが騒がしくなる中、少女は反応を示さない。

それは元から知っているから・・・

 

そして、その帰り道少女は同い年くらいの少年と、少し年上の少女とスレ違った。

人生になんの希望も持ってない少女は俯いたままその横を素通りしようとした、その時に声が掛けられる。

 

「リップクリームでお小遣い稼ぎしようぜ!」

 

懐かしい愛しい声、自分なら絶対に聞き間違える事は無いと自信を持って言えるその声が聞こえた。

その声に反応して少女の顔が上がり、更に声が届いた。

 

「二人で一緒にお嫁さんになるって約束でしょ?」

 

懐かしい愛しい声、自分なら絶対に聞き間違える事の無い親友の声・・・

 

少女は顔を上げて目を見開いて振り返った。

その瞳は赤と黄色のオッドアイが輝く。

そして、少女の瞳に映る2人の男女。

少女は涙を浮かべながら両親の手を振りほどき、走り出す。

最愛の彼と最高の親友の元へ!

 

「タツヤ!サラ!」

「やっと見つけたよフーカ」

「お帰りフーカ」

 

抱きしめ合う少年と少女二人。

奇跡は起こらないから奇跡と言う。

だから人は奇跡を奇跡とは言わない、それは結果である!

3人は遂に再会を果たしたのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうタツヤ?」

「うん、やっぱ最高だよ!だって目を開けると視界にフーカしか映らないからね」

「はぁ・・・またやってるの?本当膝枕好きよね?」

「いいじゃない、それにサラはタツヤとの子供3人も作ったんでしょ?じゃあ私は4人作るからね!」

「あんた・・・そんな勝負する気なの・・・」

 

フーカの膝枕にゴンザレス太郎が頭を乗せ、それをサラが見つめる。

3人は少年と少女なのにとんでもない会話をしている、だが本人達にとってはもう普通の事なのだろう。

そして、サラはフーカの膝枕に気持ち良さそうにしているタツヤを見てもヤキモチなど妬かない、だって彼女もさっきまでゴンザレス太郎に膝枕をしていたからだ。

 

「そう言えば結局なんでこうなってるのか聞いてなかったけど説明してくれる?」

「あぁ、俺が寿命で死ぬ時にミリーの首輪外しただろ?」

「ちょっと待って、ミリーって誰よ?首輪って何よ?私達の他に女が居るの?!」

「落ち着いてフーカ、ミリーはタツヤに私が居ない間に全裸にされただけの被害者よ」

「ちょっと待てぇえええええええええ!!!」

 

騒がしく中々話が進まない中、やっと落ち着き話の続きが始まる。

 

「…っでさ最後の最後にコードガチャを回したらさ、とんでもないものが出ちゃってさ」

「とんでもないもの?」

「あぁ、『スキル自由選択』だ!」

「「?!」」

 

※『スキル自由選択』指定した相手のスキルを自由自在に過去に見聞きした物の中から自由に選んで付けたり外したり出来るコード。ただユニークスキルに付いては一人に付き2つまでしか付けられない。

 

「それで俺は自分にフーカと同じ『転生タイムリープ』を付けてさ、んで死ぬ直前ギリギリにサラにも同じものを付けるのに間に合ったんだ。」

「そう、それで・・・でも何故このフーカが過去に戻ってるって思ったの?」

「勘っ!」

「全くアンタって人は・・・」

 

笑い合う3人の元へ一人の男が降りて来た。

 

「やっと見つけたぞサラ!」

「あっパパ久しぶり!」

「貴様らが俺の娘を攫った張本人か?!」

「魔王さん!」

 

魔王が威嚇の目でゴンザレス太郎を見たが、それをものともせずゴンザレス太郎は魔王の前に立ち目を見ながら告げる。

 

「サラさんを僕のお嫁さんに下さい!」

「私達愛し合ってるんです~」

「わっ私もタツヤの事サラよりもずっと好きなんだからね!」

 

ゴンザレス太郎の両腕に二人の少女が抱き付き魔王は固まる。

3人共が威圧に全く反応しなかったのもあるが、魔王の中の本能が告げていたのだ。

 

(なんだこいつらの強さは?!)

 

目の前でイチャイチャする3人の前で固まる魔王だったが、彼に続いて上空から降りてくる魔物たちで周りの人々は大騒ぎになる。

だがそんな事は気にしないとばかりに3人はあーでもないこーでもないと言い続け、ゴンザレス太郎の腕を両方へ引っ張り出す。

 

「私が先に結婚式挙げるの!」

「サラは一回やってるんでしょ?!だったら次は私の番でしょ!?」

「痛い痛い痛い痛い・・・」

 

降りて来た魔物達も3人の前で立ち尽くす。

まるでどちらの母親が子供の親かを試すあのシーンみたいな状態なのだが、恐ろしいのは両方から引っ張ってる少女二人の力はここに居る誰よりも、そう、魔王よりも強いのだ!

 

「っと、とりあえず魔王さんと魔物の皆さん。話を聞いてもらえますか?」

 

両腕を引っ張ってたはずが何故かねじり始めている二人の少女を放置して、ゴンザレス太郎はこれから起こるであろう歴史の話をし始める。

そして、魔物の町で鬼狩りが開始されるのだがそれはまた別のお話・・・

 

 

 

「あっそうそう、フーカ?ちょっとイイかな?」

「ん?」

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動」

 

ゴンザレス太郎はスキルを発動させ『スキルの自由選択』を選びフーカの『転生タイムリープ』を外す。

 

「神のマリスが3つ持ってるとやってきちゃうから一時的に『転生タイムリープ』は外しておくね」

「うん!」

「じゃあ次はシズクちゃんを助けに行きますか!」

 

 

こうしてゴンザレス太郎達はこの後起こる事件を発生前に次々と対策していき、皆とも知り合い様々な歴史をなぞって、出来るだけ交友関係を再現した。

 

 

 

「はぁ~ここ数日毎日色んな事し過ぎて疲れたわ」

「そうだね、暫くお休みって事でどう?」

「賛成~タツヤと居られるだけで私は幸せだし~」

「私の方がもっと幸せです~!」

 

二人はまた言い争いから何故かゴンザレス太郎の両腕を絞る対決に入る。

そして、この日から3人は豪邸を購入しその家で毎日ゴロゴロして過ごすのであった。

まさにそれはニート家族と言えるだろう・・・

 

「ニート生活は最高だぜ!」

 

お金はゴンザレス太郎の『所持金MAX』で幾らでも出せる。

そんな家で3人は毎日をグータラに過ごし、永遠に続くニート生活を満喫する。

 

「今回の人生はこうやって毎日ゴロゴロして過ごすとしてさ、次の人生では世界巡りとかやってみたいと思わない?」

「「賛成~」」

 

寿命で死んでも3人は『転生タイムリープ』の効果で再び生まれた時に巻き戻り、再会し別の行き方を3人で堪能する。

終わらない永遠を3人は今日も飽きる事無く過ごし続ける。

そこは神の作ったゲームの中の世界。

世界は何処までも広く飽きる事無く3人は人生を満喫し続ける事だろう・・・永遠に!

 

「ニート生活最高!」

 

 

第1章 第2部 完



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第1章 第3部 神々編『創造神とバグ』
第1話 目指すは西のオアシスの町『ニーガタ』


町から西へ進むと広大な砂漠があり、その更に奥には赤砂と呼ばれる名の通り赤い砂が広がる広大な砂漠が広がる。

そして、更にその西へと進むと赤砂が終わり再び普通の砂漠が見えてくる。

その普通の砂漠を更に西へ進んで行くとそこにはオアシスが在り、町が一つ在った。

ここで在るではなく在ったと言っているのは今はもう存在していないからだ。

 

「っとまぁそんな話を聞いた事があってね、前々から気にはなってたんだよ」

「タツヤと一緒に居られるなら私は行く」

「フーカ、もう数百年は一緒に生きて転生を繰り返しているのに本当飽きないね」

「サラはもうタツヤに飽きたの?」

「そんな訳無いでしょ、でも私はタツヤが死んでから数百年も寿命が続くのよ・・・本当寂しいんだから・・・」

「そうだよな、ごめんなサラ」

 

そう言ってゴンザレス太郎はサラの頭を自分の胸に寄せる。

サラは嬉しそうに目を閉じてゴンザレス太郎の鼓動に耳を傾けるのだが…

 

「ズルイ!タツヤ私も」

 

嫉妬したフーカゴンザレス太郎の胸に頭を寄せてきた。

相変わらず3人揃ってラブラブな状態、徒歩なのに異常な速度で移動しているのは御存知この物語の主人公、ゴンザレス太郎の『タツヤ』、黒髪の前髪で目を隠している赤と黄色のオッドアイ少女『フーカ』、腰まで伸びた赤い髪を靡かせている魔王の娘『サラ』。

 

3人が初めての転生で再会をしてから更に数回転生を繰り返し、現在は世界巡りを楽しんでいる最中である。

ゴンザレス太郎とフーカは18歳、サラは22歳になっていた。

あれから何度か人生を繰り返したが、マリスが襲撃を仕掛けてくる事も無く、試しにフーカのユニークスキルを3つの状態のまま数年生活してみたがマリスは何故か現われなかった。

 

※ゴンザレス太郎のコード『スキルの自由選択』は1人につき2つまでしかユニークスキルを付けられない、だがフーカだけは枠が3つあるので3つ付けられる。

 

その為ゴンザレス太郎の推理では、神は転生した世界でもミリーとしてこの世界の何処かに居るのではないか?という推理をしていたのだが結局彼女が現れる事は無かった。

 

 

「それにしても本当に何があったんだろうね?」

「それを確かめるって意味合いもあるからね」

 

物凄い速度で3人はゴンザレス太郎の『親指口に入れると移動速度3倍』の効果に加え、自身の異常なほど高い身体能力を駆使して徒歩で移動していた。

その速度は走らせている馬車の約4倍、とても尋常でなく異常な速度なのだが3人にとってはもう当たり前の事なので気にしてない。

3人が現在こうして西へ向かって移動をしているのには訳があり、何度か前の人生で今向かっている砂漠のオアシスの町『ニーガタ』がこの後、崩壊したのを聞いた事があったのだ。

それも街の人間が一夜にして全員消えて、その街に居た筈のSランク冒険者『妄槍のデルタ』も行方不明となっていたのだ。

 

「でも町はそのままで、住人が全員居なくなって滅んだのが知られるのが数年後ってのも不思議だけど、どうしてこの季節に滅んだって分かったの?」

「あぁ、それは住人の日記が何個か見つかって、その日付がこの数日後で途切れてたって聞いたよ」

「ふーん」

 

サラ、数回前の転生から3人で世界巡りをするのが楽しくなりすぎていた。

その結果、ゴンザレス太郎とフーカが寿命で死んでから自分が命を終わらせるまであらゆる世界の事を調べたりして残りの人生を潰していた。

旅行は当日より準備をしている時の方が楽しいという言葉もあるように、それが楽しくてサラは一人になってしまっても色々調べて退屈と寂しさを紛らわせていたのだ。

 

「それよりフーカ、あんたちょっと抱きつきすぎでしょ?!」

「そんな事ない、サラも抱き付いている」

「だって左側の方がタツヤの心音聞けて心地いいんだもん・・・」

「ん~分かった後で交代してあげる」

「うん!」

 

こんな不自然な体勢にも関わらず3人はとんでもない速度で移動をしており、砂漠に出てくる魔物も3人の気配に気付いた時には既に近くまで来られていて、臨戦態勢をとったら既に通り過ぎられている。

結果的に3人は何の障害もないまま移動を続けられていた。

ちなみに3人共プロアクションマジリプレイをかなり研究しており、この『親指口に入れると移動速度3倍』と言うのも自分のに限らず親指の一部、それも切った爪の欠片でも口に入っていれば効果を発揮するのを理解している。

なので今は口の中に爪の欠片を入れたまま、ゴンザレス太郎の腕に抱きついたまま会話をしているのだ。

 

「そう言えば、サリアのおめでた今回は祝えなかったね」

「仕方ないよ、このタイミングが重なるのは分かってた事だし。それに出産も成功するの分かってるからね」

「何度見ても赤ちゃんは可愛い・・・」

「それは同意・・・」

 

ゴンザレス太郎、今回の人生では大人の階段はまだ登ってないが、過去に二人と沢山子供を作っている。

そして、毎回フーカは生まれてくる子供に違う名前をつけるものだから覚えるのが大変だったりしている。

 

「あっ赤砂終わったみたい」

「じゃあ後はニーガタを探すだけだね、見逃して素通りしないように・・・」

 

そう言ってゴンザレス太郎はプロアクションマジリプレイを発動し『スキル自由選択』でホネオのユニークスキルである『望遠眼』をサラと自分に付けてサラが町を見逃さないようにする。

そうしているとサラが言った。

 

「あっ多分あれがニーガタだと思うわ」

 

ゴンザレス太郎の目にもそれは見えており、砂漠の中に樹が生えているというその不思議な空間が目的地であった。

その樹と樹の間を入り口に、オアシスを囲むように出来ているのが砂漠の街『ニーガタ』である。

流石にこの速度で近付いて警戒されると厄介なのでゴンザレス太郎はコードを解除し、そこからは徒歩移動に切り替える。

そうして3人はオアシスの街『ニーガタ』へと足を踏み入れるのであった。



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第2話 普通が普通ではない、なら普通とは一体?

「止まれ!」

 

3人が徒歩でニーガタの町に入ろうとしたら門番に声を掛けられた。

ここは砂漠のオアシス、現在の3人は青年と美女二人と言う両手に華な状態なので、周囲を歩いている人の目が少し気にはなっていた。

だが自分達だけ声を掛けられるのが少し気に入らないサラは少し御立腹だ。

 

「なに?」

 

伊達に魔王の娘をやってはいない、低い声と共に威圧を放ちながら返ってきたサラの返事に気後れする門番!

だが怪しい者を町に入れないようにするのが門番の仕事である!

この仕事をもう5年続けている門番の青年は町の平和の為!と気合いでその威圧を受け止めてサラを睨み返す。

 

「へぇ~」

 

自らが放った威圧、それがCランク位の冒険者なら動けなくする位の強さだと理解しているサラはその青年の態度に感心した。

と言っても青年の下半身はプルプルしているのだが…

 

「僕らがどうかしましたか?」

 

ゴンザレス太郎が助け船を出すようにやんわり話し掛けた、それにより言葉も発せれなかった青年はサラの威圧から解放され呼吸が楽になる。

 

「あ、あぁ君達は歩いてきたみたいだが旅の人かい?」

「そうです。ここからずっと東の町から来ました。」

 

ゴンザレス太郎は赤砂が広がる方向を指差し答える。

その言葉に門番の青年の目が光る。

 

「その格好で?」

 

そう、門番に止められた一番の理由はこれであった。

普通なら砂漠を旅するには太陽の熱から皮膚を守るために何か羽織る必要があるのだが、サラはまるで「これから彼氏とデートなのっ」て言いそうな短いスカートに健康的なシャツを着てポーチを着けていた。

ゴンザレス太郎はこれこそが冒険者の正装だ!と言いそうな服装なので服装には問題はないのだが、明らかに荷物が少なすぎるのだ。

それもその筈、ゴンザレス太郎には『使用したことのあるアイテムランダム復元』が有るのでその気になったら幾らでも時間さえかければ欲しいものが出せるのである。

そして、一番の原因を作ってるのはフーカのパジャマ姿であった。

ピンクの上下が揃ったパジャマを着て「砂漠を歩いて遥か東の町からやって来ました」って言われてハイそーですかドウゾとは行くわけがない。

サラの格好は、お前砂漠舐めてるだろ?だがフーカの格好は、お前砂漠って何か分かってる?である。

 

「タツヤは可愛いと言った。だからこれは正装」

 

意味が分からない。

そんなフーカの言葉に腕を組んで頷いているゴンザレス太郎、かなりフーカに染まってると言わざるを得まい。

 

「あー、ちょっと待ってくれ頭痛がしてきた。」

「舞うの?ここで?3分間?」

「頼むから少し黙っててくれ…」

 

門番は頭痛に困ってるようだった。

きっと大変な仕事で毎日疲れているのだろう。

 

「おいどうした?」

 

門番が悩んでいたらもう一人の門番もやって来て、サラとフーカの格好を見て同じ様に頭痛がしてきたのか眉間を押さえ始めた。

ちなみに3人にはサラの魔法で紫外線と熱を吸収する極薄の膜が全身を包んでいるのだが、その精度が高過ぎて見抜ける人は殆ど居なかった。

 

「あの~僕ら町に入っても良いですか?」

「あーまぁ持ち物もそんな成りじゃ持てないだろうし、一応上には話通しておくから良いぞ」

「そう言う事だから行くか」

「うん!」

「えぇ…」

 

サラは相変わらず不機嫌だが、ゴンザレス太郎の腕にしがみつくと直ぐに機嫌を直してニコニコしていた。

 

 

 

「一応、デルタさんに報告しとくわ」

「あぁ頼む…」

 

門番の一人はこの町を守るSランク冒険者の妄槍のデルタが滞在しているニーガタの冒険者ギルドへ駆けていく。

まさかゴンザレス太郎達がそこを目指しているとは知らずに…



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第3話 スリに狙われたゴンザレス太郎

ゴンザレス太郎一同が道行く人に場所を聞きながら向かったのは冒険者ギルドであった。

彼等が住んでいた町とは違い、砂漠の町の建物は石のような物で出来ており、砂漠と言う木がない場所で建物を作るための工夫と言うかそう言った技術が駆使されて作られているのだが、建築関係の知識はゴンザレス太郎だけでなく二人も皆無なので見上げて…

 

「綺麗に削ったんだな…」

 

と積み上げるのではなく巨大な岩を運んできて削って建物にしていると勘違いしていた。

そんな巨大な岩を運べるのは自分達だけと言う常識が欠落しているのである。

 

「見ない顔だね、冒険者ギルドに何か用かい?」

 

声を掛けられ後ろを振り向くと、そこにはサボテンが居た。

何を言ってるか分からないかもしれないが、身長170センチくらいのサボテンが立っていたのだ。

そして、唖然としたゴンザレス太郎達の間を子供達が駆け抜けていく。

 

「タツヤ?」

「ん?なんだい?」

 

ゴンザレス太郎の手には子供服が乗っていた。

そして少し離れたところで…

 

「うわー何でお前裸なんだよ?!」

「そう言うお前も裸だぞ?!」

 

と叫び声が聞こえてきた。

そして、目の前のサボテンがバランスを崩して倒れる。

それは崩れた瞬間に子供が肩車していたのだと分かる様になった。

 

「へぇ~器用なものね~」

 

サラがモジモジしながら感心する。

そう、この子供達は光の魔法で幻覚を見せていたのだ。

これを見て驚いてる人の間を子供達が通り抜け、誰がスリをしたか分からないと言う作戦だったのだ。

 

「ごめんなさい~服返してください~」

 

四人の男の子が全裸で股を両手で隠しながらやって来た。

ゴンザレス太郎はヤレヤレと言った感じで笑顔で服を手渡し、受け取った服を抱き締めて男の子達は「覚えてろー!」って言い残して走って行った。

そして、残った一人の女の子が震える手で手を差し出してきた。

その手には金貨が3枚乗っていた。

 

「あ、あの…これ…」

「あっ拾ってくれたんだありがとう」

 

そう言ってゴンザレス太郎はその金貨を受け取り、代わりに銀貨を3枚その手に乗せた。

 

「これは拾ってくれたお礼だよ」

「えっ?いえ、でも…」

「良いから取っときな」

 

そう言って振り替えるゴンザレス太郎を睨みつけているフーカ。

そして、走り去ってかなり遠くの方で「えー?!」ってさっきの女の子の声が聞こえた。

 

フーカのユニークスキル『スキミング』は全てを見抜いていた。

それでは何があったのか解答と行こう。

 

サボテンに擬態した少年達をフーカは何事もなく見抜き落ち着いていた。

不思議な生物とかを見たら興奮するフーカが平然としている、なのでゴンザレス太郎とサラはそれが幻覚かそれに類似するモノだと理解し、自分達に近寄る子供に気付く。

そして、ゴンザレス太郎はスラれた財布をスリ返し更に少年達の服を全部脱がせ、一人居た女の子の手の中に財布から出したお金を入れて握らせた。

ついでに一人の男の子にサラが尻を触られそうになったのを見つけ、その少年の手の下に自分の手を入れてサラの尻を代わりに撫でて瞬時に元の位置に戻った。

 

そして、さっきの女の子にゴンザレス太郎がサボテンで使われた魔法を理解して真似し、金貨に擬態させられた銅貨を少女が返しに来たら銀貨に擬態した金貨を女の子に渡したと言うわけであった。

 

正直に少女が返しに来たら得をするゴンザレス太郎の演出である。

そして、フーカのこのご機嫌斜めは…

 

「サラのお尻触った」

「いや、不可抗力で…」

「私のは触ってないのに触った」

「あ、あのねフーカさん…」

「サラのだけ触った!」

「……はい」

 

ゴンザレス太郎は正面からフーカを抱き締めて両手でお尻を撫でる。

ピンクのパジャマの肌触りにフーカの柔らかいお尻の感触が手に伝わる…

 

「あんっ」

「わざと変な声だすな!」

 

勿論人通りの多い通りのしかも冒険者ギルドの前でそんな事してるものだから人だかりが出来ていて…

 

「ママー昨日のママとパパがしてたやつだー」

「しっ!見ちゃいけません!」

 

なんて指差して言ってくる買い物親子とか居て、場は変な盛り上がりをしていた。

勿論フーカはパジャマ姿のままなので凄く浮いているので、どう考えても風俗的なお店のサービスにしか見えません。

 

「っで、こいつらがその怪しい3人組ね…確かに怪しすぎる…」

 

ゴンザレス太郎はその男の視線に気が付いた。

まだ10メートルは離れているのに射程内に入ってる気配をわざと放つその人物こそ、この町在住のSランク冒険者デルタであった。 

 

 

そして、サラは予期せずゴンザレス太郎に尻を触られてズット嬉しそうにモジモジしてるのだった。



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第4話 冒険者ギルドと言えば絡まれるモノ?

「あ~君達ちょっといいかな?」

 

デルタは少し抵抗があるが、仕事だから仕方ないといった感じで3人に声を掛ける。

だがそれに気付いているのはゴンザレス太郎のみだった。

そこ声に聞こえない振りをしてスルーし、フーカとサラの手を取ってギルド内へ入っていった。

 

(ワザと避けなかった?それとも分からなかった?)

 

デルタはゴンザレス太郎に何かをしていたのだが、反応がなかった為にますます分からなくなっていた。

3人が居なくなった事で見物していた人達も散り始めた、なのでデルタも何食わぬ顔をしてギルド内へ足を運ぶのであった。

 

 

 

 

砂漠の町、ニーガタの冒険者ギルドはやはり荒くれ者達の集まりが多く、3人が入ってきたら視線が一気に集まる。

ここで一般人の依頼人だと手を出すのは不味いのだが、もうギルド内はそれどころでは無くなっていた。

 

「ピンクだぜ…」

「あぁ、ピンクのパジャマだ…」

「俺、女の子のパジャマ姿なんて始めて見たぞ」

「俺はあっちのみにすかーとって言うやつだと思うのが…」

「お前マニアックだな」

 

ゴンザレス太郎と手を繋いでいる二人の魅力にメロメロになって後ろを付いていく荒くれ者達。

もう一度言うがフーカはピンクのパジャマ姿だ。

 

「い、いらっしゃいませ。ニーガタの冒険者ギルドへようこそ」

 

受け付けの女性も顔をひきつらせながら、なんとか営業スマイルで対応を開始する。

その視線がゴンザレス太郎に向いていたのが気に入らなかったのか、フーカがカウンターにわざと音を立てて何かを置いた!

 

「町のギルドから護衛の依頼でここまで連れてきた。これ依頼書とギルドカード」

 

そう言ってフーカが受け付けに依頼書とギルドカードを提出して一斉に叫び声が上がる!

普段であればフーカの美声に耳を奪われるのだが、受付の女性にはその衝撃が凄まじすぎた。

 

「「「「お前が護衛する側かよ?!」」」」

 

後ろの男達の叫びで突っ込みを入れそうになった受付はギリギリで踏みとどまれた。

なんとかまだ冷静にしていた受付の女性も、その依頼書を見て遂に声を上げてしまう。

 

「Gランク?!成功報酬銅貨1枚とキスぅ?!」

「そう、だから早く銅貨1枚出して。これからお楽しみ」

「ちょっとフーカ?!どういう事よ?!」

「依頼書に出す時書いておいた。仕方無いからキスする」

 

サラの質問に成功報酬だから仕方ないとそう言って、フーカはゴンザレス太郎の両頬に手をやり、人前でキスは恥ずかしいと拒否するゴンザレス太郎の首を無理矢理動かし…

ゴキゴキゴキゴキ…

見守っていた荒くれ者達もその音に流石に顔を青ざめたのだが…

そのままむちゅーとキスされるゴンザレス太郎。

 

実は3人共既にステータスは既にカンストしており、3人の力はほぼ同じとなっていた。

ちなみに首はフーカのキスしながらの無詠唱回復魔法で、両頬に当てられた手から治療されて既に完治している。

 

「ごちそうさま」

 

フーカのその一言に場の空気は一転した。

先程までは受付の方を向いて話していたのだが、キスをするために横を向いて話したからその声が聞こえたのだ。

しかもゴンザレス太郎とキスをするために上を向いたので前髪が横に開き、フーカの赤と黄色のオッドアイが見えていた。

そう、フーカの整った顔と美声がその周囲を囲んでいた冒険者達にも分かったのだ。

となれば荒くれ者達の中には自分の力量も考えずフーカの事を欲しがる者が現れるのは必然であった。

 

「おい嬢ちゃんそんな優男ほっといて俺の女になれよ」

 

その男はフーカの肩に手を伸ばした。

いや、伸ばしてしまった。

そして、フーカの肩に触れた瞬間、フーカはその男にだけ一瞬手加減抜きの威圧を掛ける。

 

既にSSSランクの魔物ですら片手で瞬殺出来る存在からの威圧を受けた男は、一瞬にして自分が如何に弱者かを理解してその場で漏らしながら腰が抜けてへたりこむ。

その場に居た全員がそれを見て驚き固まる中…

 

「きゃータツヤこの人こわーい」

 

っと甘えた美声でゴンザレス太郎に抱き付くのだった。

 

 

それを間近で見ていた受付の女性…

その手に報酬の銅貨1枚を持ったまま固まるのであった。



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第5話 妄槍のデルタ構いだす!

「た・つ・や」

 

フーカによって首を無理やり捻られて意識を失っている間にキスをされたゴンザレス太郎は、意識を取り戻したら何故かフーカが抱きついていて、目の前でサラが肉眼で確認できるくらいの赤いオーラを笑顔で発していた。

 

「ちょっと待てサラ、俺は何もしてないぞ!」

「うん分かってる。言い訳は聞かないわよ」

「何も分かってねぇ?!」

 

慌ててサラを止めようとした時にサラの赤いオーラが一瞬で消える。

その現象に3人の表情が同じ方向を見た。

 

「そこまでにしておけ、ギルド内での揉め事はご法度だぞ」

 

そこには先程のあの男が立っていた。

ゴンザレス太郎達を離れた場所で見ていたのは妄槍のデルタである。

サラの魔力のオーラを一瞬で消したのは目の前の男の仕業だと理解したゴンザレス太郎、フーカの背中に手を回し一応守りつつ戦いの体勢を・・・

 

「だから待てって!」

 

ゴンザレス太郎はそれを避けた。

目に見えないそれは空中で飛散したのか壁に当たる事無く消える。

そう、これが妄槍のデルタの異名の原因となった魔力で作られた見えない槍であった。

その効果は『固形で無い物を食らう』である!

周りの一同にはゴンザレス太郎がよろけた様にしか見えなかったのであろうが、既に攻防は始まっていた。

 

「一方的に攻撃を仕掛けておいて待てってのはどういう了見ですか?」

「ん?あぁ今のが見えたのかお前?大丈夫だ、当たっても単なる沈静効果があるだけだから」

「一般的にそれを攻撃を受けたと言うのですがね」

「ま、まぁそうだな。とりあえず気を取り直して・・・」

 

そう言うと男は決めポーズを取りながら語る!

ダブルパイセップスで胸筋をアピールしながら笑みを浮かべる男は名乗る!

 

「我こそはニーガタの町を守るSランク冒険者『妄槍のデルタ』である!」

 

デニムさんとはまた違ったどちらかと言うと、遊び人と言った感じのその男がデルタだと聞いてゴンザレス太郎は予想通りと考えた。

あの射程距離を攻撃範囲にしているのに手ブラで居たその時から気にはなっていたのだが、サラの魔力で作られたオーラが消えたと言う事はデルタは魔力を喰らって力を付ける事が出来る!

 

「ほぅ、その目はなにかを理解したようだな。」

「別にこちらから危害を加えようとする気はありませんので出来れば見逃して欲しいんですけど・・・」

「クククッ・・・Sランク冒険者と聞いて態度も変えなければ普通に話し返してきたのはお前が初めてだよ」

 

そしてデルタは手にしていた酒を持ち上げ。

 

「お近づきの印だ。飲むがいい」

「男と間接キスする趣味はありませんのでお断りさせてもらいます。」

「クックックッお前面白いな、名前を聞いても良いか?」

「ゴンザレス太郎です」

「…ゴンザレス太郎?」

「はい、ゴンザレス太郎です。」

「いや、だってお前その女さっきタツヤって…」

「ゴンザレス太郎です。」

 

場が静まり返るがゴンザレス太郎は一切引かずデルタを見つめ続ける。

明らかに力の差を感じているのに対等な態度を見せる辺り、流石Sランク冒険者と言うべきだろう。

 

「分かった分かった。ゴンザレス太郎な、覚えておくさ」

 

そう言ってデルタは酒を片手にいつも座っているのだろう、奇妙に空いてる席に座り込み酒を飲み始める。

そして…

 

「ブー!!!!辛ぇ?!!」

 

サラの仕業であった。

自分の出したオーラを消されたので、お返しに飲もうと口を開けた瞬間に魔海の水を蒸発させて作った激辛スパイス『辛子塩』をデルタの持つ酒に入れたのだ。

デルタが出た以上他の冒険者たちがゴンザレス太郎にちょっかいを掛けるわけにもいかず、遠巻きに見守るだけであった。

 

 

「あの…この銅貨1枚はどうしたら…」

 

受付の女の子はいい加減涙目になっていたのだった、



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第6話 新たなる転生者

「それではこちら、成功報酬の銅貨1枚です。」

「ん、ありがと」

 

やっと仕事が先に進んだ受付の女性は満点の笑みを浮かべ、帰ろうとしたフーカが再び振り返った事で笑顔のまま顔がひきつる。

 

「泊まれる宿教えて」

「あ、あぁ宿泊施設ですねそれでしたらギルドを出て右手に進んでいくと『冒派亭』という冒険者がよく利用する宿が在りますよ」

「ん、ありがと」

 

ニーガタの町ギルドの受付嬢『マナ』見た目は成人成り立ての女性だが、実は3人の子持ちの35歳なのはここだけの秘密である。

 

 

 

3人は受付に聞いた冒派亭の前まで来て困っていた。

看板は確かに『冒派亭』と書かれているのだが、そこに在ったのはどう見ても定食屋だったのだ。

 

「ん?なんだいあんたらは?」

 

ゴンザレス太郎達が困っているのに気付いたのか、中から太ったおばちゃんが出てきた。

緑のエプロンがデカ過ぎて、エプロンと言うより鍛冶士の前掛けみたいなそれを装備したおばちゃんに「ギルドで宿を聞いたらここを教えられた」と伝えたら…

 

「あぁ、二階が冒険者でも泊まれる様にはなってるけど…」

 

おばちゃん、フーカとサラを見て困った顔をする。

 

「皆一緒の大部屋で雑魚寝だけどいいのかい?」

 

ゴンザレス太郎は別に良いのかもしれないが、旅の途中の夜営ならまだ仕方ないとしても、宿に金を払って他の男達と一緒にフーカやサラを寝かせるのは流石におばちゃんも抵抗があったようだ。

 

「んー仕方無い!あんたら二人は私の家に泊まるかい?」

「えっ?いいんですか?」

「だけど男は駄目だよ!」

「わ、わかってますよ…」

 

こうしてフーカとサラは冒派亭のおばちゃんの家に、ゴンザレス太郎は冒派亭の2階に泊まることになった。

 

そしてその夜、事件は密かに起こるのだった。

 

 

 

 

ニーガタの町から南へ進んだ場所に無数に在る地下への階段。

ここは砂漠の迷宮と呼ばれる地下にアリの巣の様に広がるダンジョンである。

ニーガタの冒険者はここを拠点に討伐や素材を取り、それ等をニーガタで売ることで生計を立てているものが殆どであった。

しかし、このダンジョンには数々の謎があり、毎月何人かは魔物にやられるわけでもなく帰ってこない。

それもパーティーで地下へ潜っているにも関わらず、気が付いたら人数が減っていると言う報告も上がっている。

そして、今ここに探索に入っている一組のパーティーがあった。

 

「ここから先は未知の階層だ。二人共気を付けろよ」

「えぇ、帰ったら娘に美味しいもの食べさせるためにも頑張るわ」

「アーニャ、頑張るんじゃなくて気を付けるんだ」

 

先頭を行くのは若い青年で名を『ナジム』と言い、魔法も使える剣士である。

ただ魔法を剣に宿らせられないので、本人は魔法剣士ではなく魔法の使える剣士と言い張っている。

そう、魔法を剣に宿らせると言う発想から分かる通り地球からの転生者である。

 

二人目は盗賊なのに魔法が使える女性『アーニャ』と言い、ニーガタに娘を置いて冒険者をやっている。

父親は誰か分からないと言う事から察しは付くと思うが、常に前しか見てない危ないタイプであった。

ちなみに本人は魔法も使える盗賊なので魔法盗賊と言っているが、誰一人そうは呼ばない。

 

そして、最後が身長が135しかない小柄な体に凄い筋肉を搭載した男『ローグ』、実はニーガタギルドの受付嬢マナの父親だったりする。

ローグは魔法は使えないがその強靭な筋肉を使ってパワフルな一撃を得意としており、豪快な攻撃を得意とするのに凄く細かい男であった。

 

そして、3人は階段を下へ降りていく。

まさか自分達がニーガタの町を滅ぼすなど想像もせずに…



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第7話 対峙と呪い

階段を降りた先には扉が一つ在った。

 

「なぁ、これってもしかしてボス部屋ってやつかな?」

 

転生者であるナジムは前世の記憶を勿論持っており、ゲームとか小説とかでこういうダンジョンで階段を降りていきなり扉が在った場合、休憩室かボス部屋ってイメージを強く持っていた。

 

「その可能性はあるな、だがどうする?もし本当にボスが居るとしたら現状では厳しいかもしれないぞ」

 

慎重派のローグは危険だと判断し、ナジムに話を振る。

実際問題ここまで来るのにも結構回復アイテムも使用し、食料も心もとなくなっていた。

特にアーニャは娘がニーガタに居るので大怪我をさせたりしたら大変だという事も考慮していた。

 

「そうだな、もしもの事を考えて一度戻って情報を公開し、準備をもっとしっかり整えてからにしよう」

 

ナジムも実際に自分の命を掛けて冒険をすると言うのは考えない保守的な人間でもあった。

特に現代っ子と言われる様にボス部屋の前にはセーブポイントや回復ポイントが無いと文句を言うタイプでもある。

二人の実力は信頼しているがそれでも万が一と言う事を考えると無理はしたくない。

 

「あ・・・ああ・・・」

 

さぁ戻ろうとした時にアーニャが何か変な声を出した。

それに気付き二人が振り返ると・・・

目の前でアーニャの肌が徐々に灰色に変化していった。

そして、それに合わせるように二人の脳内に響く声が聞こえた。

 

「ようこそ、ここまで来て帰るとかありえないでしょ?さぁ中に入って僕と遊んでよ、じゃないとそこのお嬢さんみたいにしちゃうぞ」

 

その声を聞いてアーニャを見ると既に正気を失っており、白目になって扉の方へゆっくりと一人向かっていく・・・

まるで千鳥足と考えるナジムはアーニャの体を止めようとするのだが・・・

 

「冷たい?!」

 

その体を触って驚き、慌てて手を離す。

そして、フラフラと扉に触れたアーニャは両手で必死に押し始める。

長年固定されていた扉は徐々に動き出し開いていくのだが、その動きからかなりの重さがあるのだろう。

 

ゴキゴキボキッゴキキッ!!!

 

アーニャの両腕が異様な音を立て折れた。

だが腕が折れて変な方向に曲がっているのだが、アーニャは気にせず更に力を入れて扉を開けていく。

狂気の沙汰、それを見てる事しか出来ない二人はただ唖然とするばかり…

 

やがて、扉が完全に開いたら折れた両腕をダラリと垂らしながら部屋の中へと入ってく・・・

止めようと慌てて動いたナジムとローグだったが、部屋に入ると同時にドアが閉まり突然部屋の隅に置かれた石造の手にあるランプに火が灯り中を明るく映し出す。

そこは広い大きな部屋であった。

そして、その部屋の中央にそいつは居た。

 

「久しぶりに体が動かせる。この日を楽しみにしていたぞ人間!」

 

一見すると人に見えるのだが、肌が赤茶色で明らかに人間では無い事が分かる。

そして、そいつは立ち上がり近付いて来てアーニャに触れた。

するとアーニャは振り返りナジムとローグの方を向き、折れた腕で持っていた杖とダガーを構える。

操られてる?いや、違う・・・

そう、これは呪いであった。

 

※この世界の呪いとは状態異常の一種で、様々な特殊な状態異常を引き起こすものを一纏めにして呪いと命名されている。

 

「これは中々いい玩具が手に入ったもんだ」

 

愉快そうに笑うそいつに近付いて初めてその正体にナジムは気付いた。

それは意思を持つゴーレムだった!

ゴーレムはローグを指差し一言・・・

 

「殺せ」

 

次の瞬間ローグの腹部をアーニャのダガーが貫いていた。

明らかに人知を超えた速度で、折れて曲がっている腕から突き出されたダガーを避けることは出来なかった。

そして、その傷口からローグの体にもどんどん灰色が広がり、やがて全身を覆ってローグもアーニャと同じ様に肌が灰色になった。

しかし、この部屋が薄暗い為にナジムほ気付かない。

 

「ローグ?!くそっ!」

「くくくく・・・これで後一人・・・」

 

ナジムは緊急事態だと判断しユニークスキルを発動させる!

ナジムのユニークスキルは『近距離転移』!

だがこの転移には致命的な欠点が2つある、一つは移動距離。

数名なら一緒に連れて行けるが大体150メートル以内にしか移動できないのだ。

だがそれで十分!ナジムはローグの手を取りユニークスキルを発動させる。

アーニャは既に手遅れだと判断しローグだけでも逃がそうとしたのだ。

そして、二人は無事にドアの前に脱出する事が出来た。

 

「アーニャの事は仕方ないよ。とりあえず僕らは脱出してこの事を報告しよう」

 

コクンと頷くローグだったが灯りの魔法をずっと使っていたアーニャが居ない為、ナジムはここから自分の魔法で灯りを確保して脱出しないといけない・・・

その為、気付かなかったのだ。

既にローグの体は灰色となり一言も言葉を発していない事に・・・



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第8話 住人消失の序章

すみません、日付間違えてました


夜が明ける前にニーガタの町まで戻って来たナジムとローグ、二人は休む事無くその足で冒険者ギルドへ向かった。

基本的に冒険者ギルドは24時間動いており、緊急の時にはここに報告を入れるのが基本となる。

火事や事故の場合もここに連絡を入れれば対処をしてくれるからだ。

街の治安維持の為にも領主等から一定額の経営資金を提供する代わりに有事の際に協力する取り決めとなっているのだ。

 

「いらっしゃいませ、あら?ナジムさんこんな夜中にどうしました?」

 

血相を変えて冒険者ギルドに飛び込むように入り受付まで行ったナジム、ダンジョンの最下層と言われていた階層に階段が在るのを遂に発見し、その下に降りた話をした。

 

「なるほど、そこで謎の言葉を話す魔物と対峙して脱出して来たと・・・」

 

ナジムの話に落ち着きながら控えを取る受付。

ナジムも分かっている事だが、冒険者として魔物に倒されて死ぬのは自己責任となる。

その為ここで仲間がやられて・・・等と騒いでも相手にして貰えないのは理解しているのだ。

 

「承りました。上に話を通して依頼として出させてもらいますね」

 

この様に魔物が直接町に危害を加えに来る時以外はギルドマスターから領主に話が行って、そこから討伐依頼が発行されそれで冒険者が数名や場合によってはグループで討伐に当たるのが通常となる。

ナジムもこの流れは理解しているので、焦っても仕方ないと割り切っていた。

 

「ところで、パーティを組まれていた2人はやはり・・・」

「あぁ、アーニャは多分もう・・・」

「そうですか、残念です」

「ん?ちょっと待て二人?何を言ってるんだ?なぁローグ・・・?」

 

ナジムは振り返るがそこに町に一緒に戻って来たローグの姿は無かった。

ニーガタの町に入る為に門で手続きをした時は確かに居たのに・・・

ナジムの脳裏に嫌な予感が浮かぶ。

そして、それは既に始まっていた。

 

 

 

 

もう直ぐ日が登るニーガタの町の夜は冷える。

砂漠と言うのは気温の変化が物凄く昼間は体温よりも高くなるのに、逆に夜は氷点下以下まで下がる。

そんな夜の町の中を徘徊する集団が居た。

その全員が暗くてよく分からないのだが、灰色の顔色をしており、体の何処かに明らかに致命傷と思える傷を負っていた。

その中には勿論最初の一人ローグの姿も在った。

 

突然その中の数名が近くの民家に入っていく。

砂漠の町の民家は窓が木で出来た蓋の様な物でそれを閉じているだけ、なのでそこから入り込むのは何も難しい事ではなかった。

そして、そこの寝ている住人に覆いかぶさるように武器を持ったまま倒れこむ。

 

「ぐぁ?!なっなにが・・・?!」

 

腹部に走る激痛に目を覚ました住人が見るのは灰色の顔をした町の住人。

恐ろしいまでの強い力で動けないように抑え込まれ、刺された傷口から灰色の何かが体を浸食していき、最後には寝ていた住人も全身を灰色にして起き上がり家から出て行く・・・

そうして人数はどんどん増え、100人に達しようとしたら突然全員踵を返して町から出て行く。

既に町の門番もその中に加わっており、日が昇る頃にはニーガタの町の入り口近くの全ての住人が一夜にして居なくなる怪事件が発生しているのであった。

朝、門番の交代で入り口に向かった門番が慌ててギルドに駆け込むまで誰一人気付かなかったこの事件は早速領主にダンジョンボスの話と共に報告され依頼書が発行される・・・

 

「頼む!デルタさん!アーニャを助ける力を貸してくれ!」

「だから無理だって、俺はこの町を守ると言う任務を永続的に受けているからダンジョンには行けないんだよ」

 

夜が明けてSランク冒険者『妄槍のデルタ』が来るまでギルドで待っていたナジムは土下座でダンジョンボスを倒す協力を頼んでいた。

しかし、デルタはこの町を離れる訳には行かないとこの話を断っていた。

そんなギルドにゴンザレス太郎達が丁度やって来たのだった。



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第9話 フーカ ニーガタの町でCランクまで飛び級する

「それで隣で寝てた人の『ブラッドダメージ』を体験したと?」

「凄い珍しいスキルだったから自分でも会得したよ」

 

昨夜一人だけ雑魚寝の場所で寝たゴンザレス太郎、偶然隣で寝ていた冒険者と意気投合して仲良くなっていた。

その男性が使えるスキルが面白かったので、会得出来たゴンザレス太郎は朝からご機嫌であった。

 

「それで、今日はどうするのよ?」

「とりあえず依頼でも受けて町の様子でも見ようかと思うんだけど」

「タツヤがそう考えるのなら手伝う」

「私は別にどっちでもいいんだけどね」

 

昨夜の事件など何も知らない3人、異変が起こっている事すらも気付かず冒険者ギルドにやって来ていた。

ちなみに依頼を受ける、と言ってもフーカがGランク冒険者として登録しているのみで、サラとゴンザレス太郎は登録していなかった。

飽く迄マジメの3人と知り合う為に町で登録したっきりだからだ。

 

「でも私Gランクだから、町の中の手伝い的な仕事くらいしか無いと思う」

「まぁこのあたりの魔物は確かに強いし、冒険者成り立ての人がこの町の外でやっていけるかと聞かれたら無理としか言えないからね」

「本当人間って軟弱だわ」

 

魔王の娘であるサラは魔物と人間(正確には転生者の魔王)とのハーフなので寿命も身体能力も普通の人間よりかなり強い。

今はゴンザレス太郎の力でステータスが3人共カンストしているが、会う前の状態でも一人でこの町の住人を皆殺しにしろと言われたら出来なくは無いレベルの強さだ。

そんなサラからしたら砂漠で野営出来ない人間は軟弱だと思われても仕方ないだろう。

 

「とりあえず依頼書見る」

「だな」

 

冒険者登録していないゴンザレス太郎とサラはフーカの助手として依頼に協力する形を取っている為、複数人で依頼を達成したら人数分の報酬が出る依頼をこなしても1人分しか貰えないと言うルールがある。

これはテイムした魔物と共に仕事をするのと同じなので仕方あるまい、嫌なら登録しろって事である。

どうでも良いが現代日本でもバイクはエンジン切って手で押せば手荷物と言う扱いになるので、そのまま電車にも乗れるのを知ってる人は少ない。

まぁやる人もいないが。

 

3人は依頼ボードを一通り見て暇つぶしに出来そうな仕事を探す。

と言ってもここは砂漠の町『ニーガタ』、仕事によっては3人にはどうしようも無い物もあるだろう。

例えば、トイレ製造協力とかこういう仕事もそうだろう。

基本的に砂漠の公衆トイレは穴を掘ってそこに雨風を凌げる壁と天井を付ければ完成と言う形である。

なのでその穴掘りに冒険者を手伝わせるのが基本なのだ。

だがこの場合、以前掘られた場所を掘り返さないように等、考えたら当たり前なのだがやった事無い人には分からないかもしれない内容の物もある。

 

「タツヤ、これどう?」

 

フーカが手に取った依頼書は『毛虫スコーピオン』の毒針採取依頼であった。

毛虫スコーピオンはサソリの様な姿に、毒を持った毛虫の様な尻尾が生えている魔物である。

この毛虫状の尻尾には毒が在り、この尻尾からは毒の血清と様々な薬が作れるのだ。

 

「でもこれランクCの依頼書だよ?」

「大丈夫コレ使う」

 

そう言ってフーカが出したのはSランク冒険者『極盾のデニム』のCランクまでのランクアップ依頼書であった。

知り合ったデニムにフーカはその力を見せてこのギルドへの依頼書を作ってもらっていたのだ。

冒険者ランク分けにはやはり低いランクの冒険者に稼ぐ為とは言え、難易度の高い仕事をやらせて死なれて冒険者の数が減るのは避けたいので、このランク別依頼受注制度を設けているのだが、Sランク冒険者のみ推薦と言う形でこういう飛び級みたいな事が出来るのである。

 

「んじゃ行ってくる」

 

フーカが受付に行ってサラとゴンザレス太郎は適当に席に着いてフーカが戻るのを待つ。

 

 

 

「なぁナジム、あいつらに頼んでみたらどうだ?」

「あの3人ですか?無理ですよ、俺達Bランクの冒険者パーティだったのに何も出来ず全滅したんですよ?」

「まぁ駄目元で当たってみたらイイさ、少なくともあの3人まともに戦ったらこの町で一番強いぞ」

「えっ・・・マジですか?」

 

デルタのその言葉に固まるナジムは受付に行っているフーカを見て、受付がなにやら両手を上げて「どひゃー?!」と声を上げてそうなポーズになっているのが目に飛び込んできて少し気にし始めていた。

ちなみに今日のフーカはいつもの紺色魔道士ローブを着ているので、何処からどう見ても魔法使いにしか見えなかった。

まさかナジムどころかデルタよりも力があるとはとても思えないその後姿に視線をやるのであった。



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第10話 3人がじゃれると危険が危ない

「大変お待たせしてすみませんフーカ様、すみませんがギルドマスターがお会いしたいそうなので奥の個室まで来ていただけますか?」

 

フーカの出した依頼書をギルドマスターが拝見して面会を求めてきたらしい。

フーカは物凄く面倒臭そうな表情を前髪で隠しながら即答する。

 

「いや、お婆ちゃんから知らない人について行っちゃ駄目って言われてる…」

「えっ?いや、でも…」

 

まさか断られると思ってもいなかった職員は動揺するが、それでも仕事だからと引かない。

 

「ぐぇっ?!」

 

その時ギルドの隅で呻き声が聞こえた。

一同は目を疑った。

そこにはゴンザレス太郎が妄槍のデルタを組み付していたのだ。

 

「わ、悪かった。頼むから止めてくれ」

「ほら、こんなモノで良いだろ」

 

ゴンザレス太郎はデルタを組み付しているのだが視線はサラを見ていた。

実はデルタ、フーカの背中に見えない槍で攻撃を仕掛けようとしたのだ。

それに気づいたサラが動きそうだったので、それより先にゴンザレス太郎が襲い掛かりサラより先に組み付していたのだ。

後1秒遅かったらサラの超高速の炎を圧縮したレーザーがデルタを瞬殺していたかもしれないと考えるとゴンザレス太郎のファインプレーなのだが、何も知らない人達からしたらゴンザレス太郎が町の守護者を不意打ちでいきなり襲ったようにしか見えなかったので…

 

「おうこら!お前デルタさんになにしてくれとるんじゃ?!」

「この卑怯者め!ニーガタの冒険者の恐ろしさ見せてくれるわ!」

 

数名の世紀末の荒野に出そうな屈強な男達が立ち上がりゴンザレス太郎を睨み付ける!

だがゴンザレス太郎は男達には目もくれずサラを見詰める。

目で『手を出すなよ』って伝えているつもりなのだが…

両手を頬に当てて顔を赤らめて恥ずかしがり始めるサラ。

 

「無視してんじゃねーぞこらぁ!」

「五体満足でここから出られると思わ…」

 

そこまで言って全員驚愕する。

サラが巨大な炎の塊を手から作り出していたのだ。

しかし、次の瞬間炎の塊は氷の塊になる!

 

「サラ、建物壊れるから駄目」

「だってフーカぁ…」

 

フーカが魔法で一瞬にして炎を凍らせたのだ。

サラの炎も異常だが、炎が凍ると言うフーカの魔法も異常であった。

 

「な、なんなんだこいつら?!」

 

一部始終を見ていたナジムも目の前で起こったあり得ない現象の数々に唖然としていた。

ただでさえ不意をついてもデルタが遅れを取るなど有り得ないのに、サラの魔法もフーカの魔法も無詠唱どころか魔法の気配すらする前に発動しており、二人とも特別な魔法ではなく普通に何気なく出せる魔法があれなのだと理解していた。

ナジムの頭の中には前世で見たあの漫画のワンシーンがリピートされていた。

 

『今のはファイガではない、ファイアだ。』

 

この人達なら勝てるかもしれない!

そう考えたナジムは勇気を振り絞って声を掛けようとしたのだが…

 

「あーんタツヤ~フーカがいじめるぅ~」

 

サラは氷の塊を片手で粉砕してゴンザレス太郎に抱き付いて甘える姿をフーカに見せ付ける。

小さくペロッと舌を可愛く出して、ゴンザレス太郎にアピールも忘れない。

 

「これは一体なんの騒ぎじゃ?」

 

そして、ナジムが声を掛ける間も無くギルドの奥から一人の老人が顔を出した。

この人物こそニーガタのギルドマスター『コブラ』である。

その名の通り、左腕は義手で爆裂魔法を放つことでロケットパンチが撃てる様に改造されているのだが、実は遠くの敵には届く前に義手が空中分解してしまい何の役にも立たないと言うことを本人はまだ知らない。

 

「マ、マスター」

 

カウンターの中へしゃがみこみ避難していた職員が半泣きになりながら助けを求める。

元はと言えばギルドマスターがフーカを呼びつけたのが始まりなのだが、もうそんな事はどうでも良かった。

 

「ギルド内での揉め事はご法度じゃぞ!冒険者資格を剥奪されたいのか?!」

 

怒声が響く中…

 

「あたし冒険者じゃないし~」

「こらこら、話が拗れるから少し静かにしようなサラ」

「んふふ~じゃあキスで口塞いでタ・ツ・ヤ」

「サラ、いい加減にする!」

 

フーカが流石に怒り出したのでサラはゴンザレス太郎にウィンクしながら再び舌をペロッと見せて、近くの椅子に座った。

ゴンザレス太郎もかなり前からデルタの体を離していたのだが、考えていたのを遥かに超えた規格外な3人を見てデルタも動けなくなっていたのだった。



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第11話 始まる予定だった惨劇の回避

「たっ大変だぁー!」

 

サラが座りギルド内に落ち着きを戻りだした時、一人の冒険者がギルドに血相を変えて飛び込んできた!

その慌て様から何事かと場の空気はまた緊張する!

 

「だ、ダンジョンが・・・ダンジョンが・・・」

「ダンジョンがどうしたんですか?!」

「ダンジョンが・・・生えて来た・・・」

 

ギルド職員の質問に対して慌てた冒険者が言った言葉に一同は首を傾げる・・・

言ってる言葉の意味がこの場に居る誰一人理解できなかったのだ。

 

「良いから町の門からでも見えるから見てくれ!」

 

冒険者が外を指差してるので一同はギルドから出てその光景に驚愕する・・・

長年生きているギルドマスターですらも唖然としながらその光景を眺めていた。

その視線の先には巨大な何かが在った。

そしてそれは徐々に天へと伸びていく・・・

 

「なん・・・なんだあれは・・・」

 

それは誰の言葉か分からないが誰もが同じ事を考えていただろう。

だがその中で二人だけ・・・

そう、転生者であるゴンザレス太郎とナジムだけはそれを見て一つの物を想像していた。

 

((コミケのアレだ!))

 

半分に割れたハートのネックレスを見るともう半分をイメージできるように・・・

ドリンクホルダーを見ればそこに入る缶ジュースをイメージできるように・・・

2人はその一部を見ただけでその全体像を想像した。

ニーガタの町から10キロ程離れた場所に現われたそれ、地面から見えている部分よりも上に行くほど広くなっており、砂漠と言う事でイメージも直ぐに浮かんだそれはまさしく逆になったピラミッドだった。

地面の下は見えないが、きっと逆三角形になっているのはピラミッドを見た事無い人間でも想像できるだろう。

そして、その場所はニーガタの冒険者なら誰もが知っている場所・・・

 

「まさか、ダンジョンが地上に出てきたのか・・・」

 

ナジムの呟きに誰もが同じ事を考えたのだろう、何も言わず数名がただ頷く・・・

そして、逆ピラミッドの方向からニーガタへ向かって走ってくる人達が視界に入った。

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

ゴンザレス太郎はスキルを発動しコードを選択する。

自分とサラに『スキル自由選択』を使用し、ホネオのユニークスキル『望遠眼』を付けそれを見た。

地上に現われた逆ピラミッドの入り口らしき部分から大量の魔物が砂漠に溢れ出ていたのだ!

近くに居た冒険者と思われる集団は魔物から逃げる者や仲間を逃がす為に対峙する者様々だが、その殆どが助からないだろうと言うくらい魔物の数が多すぎた。

しかし、ゴンザレス太郎とサラはそれに気付き首をかしげた。

 

「殺されず捕らえられてる?」

「みたいね、巣に持ち帰って保存食にするのかしら?」

 

サラが怖いこと言うが生物界では良くある事だ。

身近なところで言えば蟻がそうであろう、まぁ殺しはするだろうが。

 

「ど・・・どうすれば・・・」

 

ナジムの呟きがギルドマスターを動かした。

 

「直ぐに町の門に人を集めて守りを築け!」

「俺は先に行く!ナジム、お前は人を集めて助けに来い!」

 

ギルドマスターの指示に冒険者ギルドの職員は頷き行動を開始する。

妄槍のデルタはナジムに冒険者を門に集めろと指示を出し、一足先にニーガタの町の入り口の門へと駆けて行く。

各々が行動を開始する中、それは飛んで来た!

空を飛ぶアンデット『カラスケルトン』の大群である!

いくら壁が在ったとしても空からの魔物の襲撃には対処のし様が無いのであろう、ギルドマスターを始め、魔法が使える冒険者が空に向かって魔法を放つ!

次々に倒すのだがあまりにも数が多すぎる!

ギルドの方へ一同は後退しながら撃墜するのだが、やがてその物量に押し切られそうになった時に・・・

 

「ウザイ!」

 

サラが手を払った。

次の瞬間空に居たカラスケルトンが一斉に燃え上がった!

 

「馬鹿!落ちてくるでしょ!」

 

更に燃えているカラスケルトン達が瞬時に粉々に吹き飛ぶ。

フーカが風魔法で吹き飛ばしたのだ。

僅か2秒、それで空を覆いつくしていたアンデットモンスターは全滅した。

そして、ゴンザレス太郎は地面に落ちている石を拾っては投げてを繰り返していた。

その投げられた石は音速の壁をぶち破り、物凄い衝撃波を起こしながら遥か10キロ離れた先で襲われている人達に襲い掛かる魔物を粉砕していた。

 

3人の規格外を超えたその実力に一同・・・

 

(もうこいつら居ればいいんじゃね?)

 

とか思っていたり思ってなかったりしていた。



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第12話 史上最強の3人出陣!

ゴンザレス太郎の遠投のおかげで助かった冒険者達がニーガタの町に次々と駆け込み、それを追うように砂漠に様々な魔物が姿をどんどん現す。

 

「くそっキリがないな…」

 

妄槍のデルタは見えない槍を次々と投げて魔物を足止めする。

デルタの見えない槍は魔力で作られた見えない槍で、その特殊効果は固形でないモノを喰らう。

デルタは逆ピラミッドから次々と出てくる魔物の闘争本能と理性を喰らって足止めを行っていた。

闘争本能を喰らわれた魔物はその場で立ち止まり、次から出てくる魔物の文字通り壁となって妨害をする。

理性を喰らわれた魔物は同士討ちを行う。

それならば全て理性を食わせて共倒れを狙えば良いのでは?と思うかもしれないが、デルタの能力には同じものを二度続けて喰えないと言うルールがあったのだ。

 

そして、近くまで来た魔物はデルタが土を魔法で固めて作った槍で串刺しにして倒していた。

遠距離戦も近距離戦も同時に行える冒険者!

伊達にSランク冒険者では無いのである!

 

「全員町に入ったか?!」

「多分俺等の後ろに居たやつ等はもう・・・」

「よし!お前ら伏せろ!」

 

デルタは地面に両手を着いて魔力を流し込む・・・

そして、砂漠の砂を土魔法で固めて巨大な槍を生み出す!

ニーガタの町の入り口に完成したのは数キロにも天へと伸びた聳え立つ巨大な槍!

そして、その槍の根元に手を当てて魔力を流し込む・・・

 

「くたばれ化け物共!『倒槍震』!」

 

巨大な槍がピラミッドの方向へ倒れ始め、倒れる面には細かな槍が無数に生えた!

そしてそれは直線状に居る大量の魔物達を圧倒的厚量で串刺しにしながら倒壊した!

巻き起こる砂塵、ニーガタの冒険者達はその目でSランク冒険者『妄槍のデルタ』の実力に歓声を上げる!

 

「まだだ!」

 

デルタの声が歓声の中に響く!

そう、確かに物凄い量の魔物は倒したが、現在も次々と逆ピラミッド内部からは無数の魔物が生まれ飛び出し続けているのだ。

まさに無限沸きとも思えるその光景にニーガタの住民達は絶望を覚える。

デルタ自身も何度も使える訳ではない大量虐殺奥義『倒槍震』を使って疲労が見えるが、まだまだ納まる事の無い魔物の姿に気合を入れる。

しかし、次の瞬間唖然とするのは読者の予想通りであった。

 

「こんな感じかな?『火炎倒槍震』!」

 

サラがデルタの直ぐ横で同じような魔法を使う。

だがそれはただの魔法ではなかった。

デルタの倒槍震に更に炎を纏わせ、太さも1.5倍くらいにしたとんでもなく巨大なそれをピラミッドに向けて倒す!

町の住人はそれを見て口を大きく開けて唖然とする・・・

 

「嘘だろおい・・・」

 

そして、サラの天高く雲すらも突き抜けた槍は逆ピラミッドの真上に直撃し、逆ピラミッドを破壊しながら地上に居た魔物を焼きながら押し潰した。

 

「だから、やりすぎは駄目」

 

サラの後ろにはフーカとゴンザレス太郎が居た。

ゴンザレス太郎の『射程無限』でフーカの風魔法の射程を伸ばし、サラの火炎倒槍震の逆ピラミッドにぶつかった部分を粉々に切り刻んでいたのだ。

まさにチートとしか言えない3人の力を見せ付けられデルタ自身も言葉が出なかった。

実際に逆ピラミッドは角が少し欠けただけでそのまま存在していたのだから・・・

 

「それでアーニャさんはピラミッドの中に居るんだな?」

「あぁ、おかしくはなっていたが生きている筈だ」

 

デルタはその言葉を聞いて振り返る。

そこにはゴンザレス太郎とナジムが居た。

 

時は少し遡る・・・

 

 

 

 

逆ピラミッドが出現してデルタから言われた通り、ナジムが冒険者達を集めて居た時に一人の女の子がナジムにしがみ付き叫んでいた。

 

「ナジムのおじちゃん!お母さんは?お母さんは何処?!」

「マリーちゃん・・・」

 

その姿を見たゴンザレス太郎は気付いた。

昨日金貨を渡した子だったのだ。

 

「すまない、あそこの中にまだ居るんだ。だけどきっと無事さ、皆できっと助けてくるから。だからマリーちゃんは良い子で待ってるんだよ」

「・・・うん、ナジムのおじちゃんを信じる。だからお願いね」

「あぁ・・・」

 

そして、ゴンザレス太郎はナジムに声を掛けてアーニャ事を聞き、逆ピラミッドに助けに行く事を決めたのだった。

 

 

「んじゃ行こうか二人共」

「うん、タツヤとピラミッドデート」

「フーカ、私も一緒なんだけど・・・」

 

少し前まで殆どの住人が絶望に包まれていたニーガタの町から、親指を口に咥えてとんでもない速度で逆ピラミッドに向かっていく3人を町の人々は唖然と見守るのであった。



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第13話 逆ピラミッドに到達!

「タツヤこんなに無視して大丈夫?」

「一応ナジムとか言う冒険者にラストエリクサー1本預けて来たから多分大丈夫」

「それになんかここの魔物、人間を殺さず生け捕りにするのが目的みたいだからね」

 

サラの言う通り、魔物は殺意の篭もった攻撃をあまりしてこないでいた。

ゴンザレス太郎達が早すぎて、溜めの要る攻撃をする前に素通りされていると言うものあるのだが。

 

「お前邪魔」

 

フーカが手にしていた棒で2メートルもある巨大な蟻の姿をした魔物を殴る。

片手でしかも手加減しているので粉砕する事はないのだが、それでも後ろに居た魔物達を巻き込んで吹っ飛んでいくのを見ればその実力差は良く分かるだろう。

ニーガタの町の入り口で守りを固めている冒険者達はそのありえない戦闘力が味方だと知り士気を上げていた。

 

「余所者でしかも女の子なのにあんなに頑張ってくれてるんだ!俺達も気合入れるぞ!」

「「「「オー!!」」」」

 

実はゴンザレス太郎、サラの火炎倒槍震が魔物を大量に倒す際にコード『経験値255倍』を発動させていた。

その為、周辺に居た冒険者達は軒並みレベルがカンストの999に達してるので気付いた者から順にステータスに振ったりするだろうと考えていた。

だが、実は誰一人その事に気付かず経験値を捨てていたりする。

 

 

 

ゴンザレス太郎達は魔物を吹き飛ばしながら交代で逆ピラミッドの方へ進んだ。

コード『親指口に入れると移動速度3倍』は移動のみが3倍になるので、攻撃に移った瞬間から速度は通常に戻る。

なので攻撃する者を1撃毎に交代して、出来るだけ移動速度を落とさない作戦で一気に突き進み逆ピラミッドの入り口に辿り着いた!

 

「切り刻め!」

 

フーカが魔物が次々と湧き出る逆ピラミッドの入り口に風の斬激の嵐を叩き込む!

風は壁に当たり反射して入り口から見えない刃となって中から出てくる魔物を一気に切り刻み奥へと進む!

 

「それじゃ一掃するよ!『炎王球・落』!」

 

サラが後ろを向いて空に巨大な炎の塊を出現させる!

得意の炎王球もステータスがカンストしている事で直径1キロにも及ぶ巨大な火の塊となり、それがニーガタと逆ピラミッドの間に居る魔物達の頭上から落下する!

あまりの温度に近くに居た魔物まで一瞬で蒸発し、地面に着弾後炎はまるでそこに何も無かったかのように消滅した。

飛び散ると町に被害が及ぶと困るので、サラはこういう形の新魔法として作り上げたのだ!

 

「よし、3人共中に入るぞ!」

 

ゴンザレス太郎の言葉に3人が頷き、逆ピラミッドの壁に向かう。

入り口はフーカが放った魔法で魔物の死体が埋め尽くし、通るには非常に困難な為コードを使おうと考えていた。

それを瞬時に理解した3人、まさしく最高のパーティであった。



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第14話 悪夢の連想

ゴンザレス太郎はコード『建物素通り』を使用し、逆ピラミッドの側面から壁を素通りして内部へと侵入する!

その間も入り口の奥から再び魔物の大群が外を目指し、途切れること無く次から次へと現れていた。

フーカの風魔法で倒れた魔物の死体が邪魔になって新たな魔物が外へ出るのを妨害することには成功しているが、それも一時しのぎだと言うことは3人とも理解していた。

一刻も早く魔物の出現する原因を突き止めて止めなければ!

そう考える3人は内部に入りそれを見て驚愕した。

 

「た、タツヤこれ…」

「あぁ、そうみたいだ。」

 

逆ピラミッド内部に入って驚いたのは地面である。

黄色いピラミッドの中に入って目に飛び込んできたのは一面の赤色であった。

 

「赤砂だよねこれ…」

 

逆ピラミッド内部の地面は全て赤砂だったのだ。

かつて、神であったマリスが赤砂を魔物の核と言っていたのを思い出すゴンザレス太郎。

神であったマリスはこの砂を使い魔物の大群を産み出した。

しかし、それはマリスがこの世界を作った神だからこそ出来たこと。

 

「まさかマリスが?」

「いや、この後の歴史にマリスは出てこない」

「じゃあ一体…」

 

フーカはマリスとは一度も会ってないので詳しくは聞いただけなのだが、サラは実際にその恐ろしさを理解している。

そう、もし赤砂から魔物が生まれてるのならそれを行っている者を倒さないと終わらないし、もしかしたらあの最強の魔物である心無い天使が生まれる可能性があるのだ。

 

「とにかく先へ進むぞ!」

 

ゴンザレス太郎の一声で気を引き締めて3人は奥へ進む。

不思議な事に内部に入ってから入り口へ通じる道以外の場所には魔物が一匹も居なかったのだ。

そして…

 

「タツヤ!降りる階段があったわ!」

 

コード『建物素通り』を発動させている状態なので壁なんて在っても関係なく、3人は内部を探索しサラが覗き込んだ壁の向こうに降りる階段を発見したのだ。

そして、それは昨日ナジム達が見付けて降りた階段でもあった。

 

「よし、降りるぞ」

 

頷く二人と共にゴンザレス太郎は階段を降りて行く、そして階段を降りきったそこには大きな扉が存在した。

 

「これはまさにボス部屋って感じの扉だな」

「ここにこの元凶が・・・」

 

サラとゴンザレス太郎が扉を見ながら話していたらフーカが叫んだ!

 

「危ない避けて!」

「っ?!」

 

声に反応してゴンザレス太郎はサラを突き飛ばし、自身も地面を転がり見えない何かをかわした。

二人が立っていた場所を肉眼では見えない程に極細い針が数本通過していたのだ。

 

「助かったよフーカ」

 

ゴンザレス太郎はフーカにお礼を言い、追撃が来ない事を確認してから扉に手を掛ける・・・

先程の攻撃が一体何処から飛んできたのか分からず、警戒をしながら押すが…

 

「重いな…」

 

ゴンザレス太郎は予想外に重すぎた扉に再度力を込める…

そして、とんでもなく重いその扉はゆっくりと大きな音を立てて開いていくのであった



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第15話 強すぎるゴンザレス太郎

扉が開くとそこに一人の女性が座っていた。

その周りにはニーガタの町に居た住人達が真っ白の顔をして寝そべっている。

 

「ほぅ、あの状況を抜けてここまで辿り着ける者が居るとは思わなかったよ」

 

その女性は口を開く、まるで口からではなく脳内に直接語り掛けている様に感じたその言葉…

ゴンザレス太郎は直ぐに理解した。

 

「ゴーレムか、しかも遠隔操作とかではなく自分で意思を持って動いているな」

「ご名答、一目見ただけで良く分かったもんだ。」

 

ゴンザレス太郎はコード『建物素通り』を解除してフーカの『スキミング』を自分に付けてその女性を見ていた。

その為ゴンザレス太郎の目には目の前の存在が人間ではなくゴーレムであることも、そのステータスも全て見えていた。

 

「なるほど、呪いか・・・」

「くくく、そうかユニークスキル『スキミング』持ちか貴様」

 

ゴンザレス太郎は答えない、相手に無駄に情報を与える必要など無いのだ。

 

「答えぬか、ならばお前たちの体に聞くとしよう。我が眷族達よ立ち上がりヤツを殺せ!」

 

そいつは片手を上げて指示を出すと周囲で倒れていたニーガタの住人達が立ち上がり、一斉にゴンザレス太郎へ向かって襲い掛かってくる!

しかし、ゴンザレス太郎は動かない。

 

「いい事を教えてやろう、そいつらの攻撃を1撃でも喰らえばたちまち呪いはお前の体を蝕み、直ぐにそいつらの仲間入りだ」

「そうか、なら問題ないな」

「なに?」

 

次々と襲い掛かるニーガタの住人達。

しかし、ゴンザレス太郎は何事も無いかのように真っ直ぐそいつの方へ向かって歩く・・・

ニーガタの男性が武器を振り被りゴンザレス太郎目掛けて・・・地面に当たる。

別の女性が飛びつこうと両手を広げて・・・手前に着地する。

呪われて本能で受けた指示の通りに行動するニーガタの住人達であったが、武器の攻撃も素手の攻撃もゴンザレス太郎にはかすりすらせず当たらない・・・

 

「な、なんだこれは?!」

 

敵もその異様な光景に驚く。

フーカは勿論知っていた、だから余裕のままである。

ゴンザレス太郎が発動している新コード『攻撃当たらない』ともう一つの存在を・・・

 

「くそっふざけるな!」

 

近くまで行って気付いたが、肌が茶色の人型ゴーレムだったそれはゴンザレス太郎に殴りかかる。

しかし、攻撃はゴンザレス太郎の直ぐ横を何故か通過し、その体をゴンザレス太郎は掴み動きを止める。

そして、そのゴーレムの体の左右で同時に指を鳴らす!

 

ぱちーん!!

 

ステータスがカウンターストップしているゴンザレス太郎でもそれ自体には何も攻撃力はない。

ただ、音が大きく同時に発生するだけであった。

この音自体に攻撃力は発生しないので攻撃としては認識されなかった。

そのため・・・

 

「な、なんだこれは・・・か、体が・・・崩れ・・・」

 

突然ゴーレムの体はボロボロと崩れるように壊れ始め、どんどん砂に帰っていく・・・

ゴンザレス太郎は完全にゴーレムが消滅するまでそれを『スキミング』でしっかりと確認し、再び動き出さないのを確認してフーカ達に親指を立ててサムズアップを行った。

それと同時に呪いを受けてゾンビのように次々と攻撃を仕掛けていたニーガタの住人達は、操られていた糸が切れたようにその場に倒れこんだ。

 

「まぁ、こんなもんか」

 

ゴンザレス太郎は正直この勝負もつまらない形で終わると予想していて、まさにその通りだった事実に落胆していた。

彼の中では遥か昔となっている命を賭けたギリギリの戦いの数々…

あれ程の高揚と緊張感は、ここまで強くなってしまってはもう体験する事は出来ないだろうと考えているのだ。

 

「やったねタツヤ」

「おう、余裕だったぜ」

 

フーカが駆け寄り笑顔を見せるゴンザレス太郎はスキルを操作する。

ゴンザレス太郎は発動していたもう一つのコード『音量アップ』を解除するのであった。

茶色のゴーレムを倒した彼の使った技は俗に言われる『超振動』と呼ばれるモノである。

これは二つ以上の全く同一の周波数を持つ音素を同時に聞かせ干渉させあう事で起きる現象で、ありとあらゆる物質を音によって発生した原子レベルの振動で分解する技であった。

 

「一度試してみたかったけど無事に成功してよかったよ」

「うん、タツヤはやっぱり凄い!」

 

フーカの喜ぶ顔をもう暫く見ていたい気持ちもあるが、ゴーレムを倒した事で呪いが解除され、ニーガタの町の住人は次々と意識を取り戻す。

だが呪いにより止まっていた怪我が開き、体は無理に動かされていたので全員体の異常に気付き、誰一人としてまともに立てる人はいなかった。

 

「やっぱり使うしかないか」

 

ゴンザレス太郎はあの少女に似た女性の姿を見てそう呟いた。

その女性はアーニャである。

両腕の骨が粉々に砕け、呪いにより止まっていた痛みにより誰よりも先に覚醒したのだが、自身に襲い掛かる激痛に苦しみだしたのだ。

ゴンザレス太郎は懐から瓶を取り出す。

そう、それはいつものラストエリクサーであった。



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第16話 ニーガタの町勝利する!

「サラ?サラ!おいサラ!」

「…んへっ?あっごめんボーとしてたよ」

 

声を掛けても無表情のまま立っていたサラ、ゴンザレス太郎がその肩を揺すってやっと返事が返ってきた。

 

「とりあえず重症の人に回復魔法かけるぞ」

「はいはい…」

 

ゴンザレス太郎、フーカ、サラの3人は見た目重症そうの人に回復魔法を使用し、順次治療を行っていく。

一応先程のゴーレムが生き返らないように10分以上経過してからラストエリクサーを使用するつもりなので、それまで出血多量で死んだりしないようにと痛みを緩和する為に治療を行うのだ。

 

「アーニャさんで良かったですか?」

「は、はい、あの…」

「娘さんにお母さんを助けてくれって言われましてね」

「娘は!リリアは大丈夫なんですか?!」

「えぇ、ニーガタの町でナジムさんが保護してますよ」

「良かった・・・本当に良かった・・・」

 

ゴンザレス太郎はアーニャの治療を行いながら少し話をした。

アーニャの怪我はラストエリクサーで完治する、だが実際に酷いものであった。

手足は全て複雑骨折し、内蔵もズタズタになっており、本当に生きてるのが不思議なくらいであった。

その他の人も、腹部を刺されて出血が止まらなくなっていたり、生きているのが不思議な状態だった人も数名居た。

その現状に少々違和感を感じたが、呪いの副作用の一つなのだろうと考えた。

事実、ゴンザレス太郎に襲い掛かって来た人達は、操られていた時は傷口から出血していなかったのに、今は血が流れているのだ。

 

「タツヤ、そろそろ10分」

「んっ?あぁじゃあ使うな」

 

フーカに言われ、ゴンザレス太郎はラストエリクサーの蓋を開ける。

瓶からオーロラの様な虹色の何かが空気に溶けていき、その場にいる全員の怪我が治る!

その奇跡の様な現象に場は歓喜に包まれる。

特に複雑骨折や、とても外まで歩けない人の怪我が治った時の喜びようは想像できるだろう。

救助が来るまでここで待たされるとか、とても耐えれるものではないのだから。

 

その後、3人はボスの居たその部屋を調べるが特に何もなく!ゴーレムが座っていた椅子にも特に変なところは無かった。

なので一同はニーガタの町へ帰還する。

逆ピラミッドの入り口ではゴーレムを倒したからなのか魔物は残っておらず、外に出ると少し残っていた魔物達をニーガタの冒険者達が殲滅させていた。

 

「ををっ?!本当に戻ってきやがった!」

 

デルタが目の前にいた魔物を数匹纏めて手にした槍で薙ぎ払い、逆ピラミッドから出てきたゴンザレス太郎達を見て声を上げる。

その後ろには居なくなってた住人達が居り、残り少なくなってた魔物を倒しながら冒険者達は歓声を上げる!

 

「うぉー!!」

「すげーぞおまえらー!」

 

ナジムもその場に居りアーニャが元気にしている姿を見て涙を流して喜んだ。

その後、傷の癒えた冒険者も加勢し、魔物はほぼ全滅させる事に成功!

こうして、ニーガタの町を騒がしたダンジョン隆起事件は幕を閉じた。

ニーガタの町に戻った一同はその夜、ギルドマスターが手配した宴会に盛り上がり遅くまで砂漠のオアシスに賑やかな騒ぎ声が響くのだった。

 

結局あのゴーレムの正体も、赤砂から何故魔物が生まれていたのか何も分からないが、終わってしまえば町の住人は誰一人欠けること無く今回の事件は幕を下ろしたのだった。

 

 

 

 

そして、翌朝…

宴会で誰もが色んな所に行ってたせいで、密かに起こっていた大事件に人々は気付くのが遅れたのであった。

 

 

コンコンコン…

 

「はーい、あれ?フーカどうした?」

「タツヤ、サラ知らない?」

「えっ?一緒に寝てたんじゃないの?」

「昨夜は居たんだけど起きたら居なかった」

 

その時、外が騒がしくなってるのに気が付いた。

更にゴンザレス太郎達の泊まっていた宿に走り込んでくる足音が響く。

昨日の宴会でゴンザレス太郎達がここの宿に泊まっている事はギルドにも伝えてあったのだ。

そして、走ってやってきたニーガタのギルド職員は慌てた感じで話し出す。

 

「た、大変です!」

「どうかしましたか?」

「人が、町の人が一斉に消えました!」

 

ニーガタの町の住人が消えた本当の事件はこれから始まるのであった。



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第17話 町を蝕む呪いの正体

「ををっ来てくれたか!」

 

ギルドの職員に呼ばれ、ニーガタの冒険者ギルドに来たゴンザレス太郎とフーカ。

既に町のあちこちでも人が居なくなったと騒ぎになっており、捜索願がかなりの数集まり、ギルド内は騒がしくなっていた。

 

「それでどういう状況なのですか?」

「うむ、貴方方に助けて頂いた人は全員消えたみたいです。」

「そんな・・・」

 

フーカが絶句する。

逆ピラミッドから救助した人が全員消えたと言うのだ。

 

「そして、今分かっているのは冒険者や町の人に関わらず何人も行方不明になっているという事・・・」

 

そんな時、カウンターで叫ぶ一人の男に注目が集まった。

 

「俺は見たんだ!人が突然地面に吸い込まれるように消えたんだ!嘘じゃねぇ!」

 

地面に吸い込まれるように消えた・・・

もしそれが本当なら今回の事件はありえると考えた。

事実、誰一人町の門から出て行った人は居なかったのだ。

それは今朝の門番が証言していた。

 

「大変だ!」

 

更にギルド内に飛び込んできた一人の冒険者が叫ぶ。

騒がしいギルド内ではあったが、その男の声が一際大きく全員がそちらに視線をやる。

そして、その男は言葉にする・・・

 

「デルタさんが・・・Sランク冒険者でこの町の守護者『妄槍のデルタ』さんが・・・消えた」

 

その言葉に場は静寂から再び騒然となるのであった。

Sランク冒険者が守っていると言うのがこの町のステータスでもあり、こんな事態でもきっと何とかしてくれると誰もが期待していたのだろう。

だがその希望の星ともいえるデルタが消えた。

それはこの町を混乱に落とすには十分な情報であった。

そして、この場に居た者達はそれを目にする、いや・・・目にしてしまった。

 

「だからこんな町に来るのは嫌だったんだ!」

「なにを言ってるんだ!お前がここのダンジョンに出稼ぎに行こうと誘ったんじゃないか!」

 

一組の冒険者が言い争いをしていた。

どうやらこのニーガタに出稼ぎに来たと思われる二人組みのようだが、仲間が消えた事で戦えない状態に陥っているのが直ぐに分かった。

どう見ても二人とも後衛で、前衛で戦う者が居ないと普通に辛いだろうと思われる組み合わせだ。

 

「もう嫌だ!俺は今すぐにでもこの町を出るぞ!」

「馬鹿よせ!一人であの砂漠を越えられるわけないだろ!」

「うるさい!俺に触れるな!」

 

一人の男が止めようとしている仲間を突き飛ばした。

運悪く突き飛ばされた男は置いてあった椅子に足を掛けてしまい転んでしまう。

そして・・・

 

その姿がまるで地面に吸い込まれるように全員が居る目の前で消えたのだった。

 

 

「うわぁああああああああ!!」

「呪われてる!この町は呪われている!」

「誰か助けてー!!!」

 

場は一気に騒がしくなり、冒険者ギルドから外へ逃げようと一斉に人が走り出す。

ギルドのドアは大きな魔物を狩って来た時でも中へ運び入れられる様に広く作られてはいたが、それでも中と比べると狭くはなっている。

そこに人が一斉に駆け込んだらもちろん人と人がぶつかるのは当たり前であった。

そして・・・

 

「おい!邪魔なんだよおま・・・」

 

ドアに押し寄せた一人がそこで消えた。

突然押し競饅頭になっていた状態から人が消えるのだ、押されて転ぶ人が出るのは当然である。

そして、人が人を押し外へ逃げ出そうとするのだが次々に人が転び消えていく・・・

 

「まさか・・・お前たち落ち着け!」

 

ギルドマスターの怒声が響き入り口に詰め掛けていた人々は我を取り戻す。

そして、気付く・・・

入り口から出ようとした人の半数が既に消えている事を・・・

 

「まさか・・・いやしかし・・・」

 

ギルドマスターの独り言が続き、ゴンザレス太郎が思い出す。

そう、あのゴーレムは言ったのだ。

 

『いい事を教えてやろう、そいつらの攻撃を1撃でも喰らえばたちまち呪いはお前の体を蝕み仲間入りだ』

 

この時に気付けと言う方が無理であろう。

この呪いは人から人へ伝染するのではないのだ。

そもそも呪いがこの世界では魔法による状態異常の一種だと知らない訳では無いゴンザレス太郎は懸念していた。

 

「そうか・・・これは広範囲魔法・・・効果は・・・効果範囲内で怪我を負った人物は呪いにかかる・・・」

 

ゴンザレス太郎のその言葉は呟き程度の言葉だったが、目の前で次々に人が消えた事で静まり返った人達の耳に届くには十分であった。

誰もが隣人と距離を取り、爪で引っ掻いたりするだけで呪いに掛かると他人を恐怖するのであった。



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第18話 まさかの人物

その日、ニーガタの町は静寂に包まれた。

住人の誰もが家に閉じ籠り、外に出なくなったのだ。

怪我を負うと呪われて消えてしまうので仕方ないだろう。

そして、更に恐ろしい事実が判明していた。

 

「どう?タツヤ?」

「駄目だ。リストに名前がない…」

 

そう、心無い天使による消滅の光で消えた人が、ゴンザレス太郎のコード『パーティーメンバーに加える』で戻せたので、もしかしたら戻せるかもと試していたのだが、リストにサラやデルタ、ナジム、アーニャの名前がなかったのだ。

これは本来有り得ないことである。

この世界のマスターデータに登録されているキャラデータが弄られない限り起こり得ない現象の証明でもあった。

 

「タツヤ…私、怖い…」

「大丈夫、俺が必ずなんとかする!」

 

過去の実績から信頼するフーカであったが、ゴンザレス太郎に何か良い案があるわけでもない。

事実、消えた人が何処へ行っているのかすら分からないのだ。

 

その後、二人は冒険者ギルドを出た。

そして、宿に戻り対策を考える二人だが圧倒的に情報が足りなさすぎた。

こうしている間にも町の人は何かの拍子に傷を作ってしまい、呪われて居なくなってるかもしれない。

焦り、不安、恐怖…

まさにニーガタの町の壊滅は目の前まで来ていた。

二人は知らなかったがこの時点で人口の約8割が既に消えていたのだ。

生き残りと言う表現が正しいのかどうかは分からないが、それでも自分の仕事として町を守る道を選んだ人は仕事に出ていた。

冒険者ギルドの職員、門番、衛兵・・・

彼等が居なかったらきっともっと酷い状況になっていただろう。

 

「とにかく、一度宿に戻って考えよう・・・」

「うん、でも・・・」

「互いに互いを守り合おうと思うんだけど・・・」

 

ゴンザレス太郎の案により、何があっても直ぐに対処できるようにその日はツインの部屋に移って休むことにした。

宿の従業員も既に消えており、戻っても宿泊している客も何人残っているのか分からない。

そんな状況だが、二人はとにかくこの事態をどうにか出来るのは自分達だけかもしれない、と言う最悪の事態を想定して話し合いを開始するのであった。

 

そして、その夜…

フーカとゴンザレス太郎の話し合いでは結局何も決まらず、頭痛のするゴンザレス太郎をフーカが膝枕で癒している時であった。

 

夜も更け砂漠の気温が一気に低下して極寒の世界に変わり始めた頃、ニーガタの町に一人の女性がやって来た。

深く被ったフードで顔も分からないが、そのフードを掴む手とチラリと見える銀髪でその人物は女性だと理解させた。

門番は怪我を負わないように夜の見張りを武器も持たず行っていたが、その女性の姿を見つけ慌てて立ち上がり声を上げる!

 

「君!この町は危険だ!今すぐここを離れるんだ!」

「もう手遅れよ、それよりここにゴンザレス太郎と言う男が来てませんか?」

 

風に被っていたフードが捲られその顔が月明かりに照らされる。

銀髪の少女のその姿に門番は言葉を失った。

月明かりに照らされるあまりの美しさに目を奪われたのだ。

その人物はかつてゴンザレス太郎に神の力を消滅させられたマリスだった人物・・・ミリーであった。



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第19話 謎のゴーレム『ダマ』

「タツヤ…タツヤ…」

 

明け方、ゴンザレス太郎は自身を呼ぶその声に目を覚ました。

隣のベットではフーカが静かな寝息を立てている…

 

「タツヤ…タツヤ…」

 

聞こえる、間違いなくこれは…サラの声だ!

ゴンザレス太郎は音の発生源が分からない事に警戒し、フーカを起こし装備を整える…

 

「タツヤ…タツヤ…」

「聞こえないかフーカ?」

「うん、私には何も…」

 

その頭の中に響く声はフーカには聞こえないらしく、警戒を強めながらゴンザレス太郎とフーカは招かれる様に宿を出て、頭の中に響く声を便りに方向を確認する。

明け方と言うことで空気はまだ冷たく、砂漠の夜がどれだけ過酷かを理解している二人はお互いをフォローする魔法を掛け合う。

 

「寒さはなんとかなるけど、傷だけは負わないようにしないと…」

 

そう、砂漠のような乾燥した土地で寒いと皮膚がひび割れを起こす。

それが呪いに反映されるかは分からないが、警戒はした方が良いのは確かだ。

僅かな打撲ですら消えた人が居るのだから…

そして、助けた人達が再び消えたことからラストエリクサーですら呪いは解けないと言うことを現している。

 

「タツヤ…タツヤ…」

「こっちだ…」

 

二人は声のする方へ歩く…

そして、オアシスの前に二人が居た。

 

「サラ!」

 

フーカが声を掛ける。

だがサラは反応しない、まるで何も感じない人形のように直立不動で無表情であった。

そして、その横にいるのはこの町の住人の一人であった。

その人物もサラと同様に直立不動で無表情…

 

「これは一体…」

 

罠の可能性を考え二人は動かない…

そんな二人に突然声がかけられた。

 

「いやっはっはっはっ!直ぐに近付くと思ったけど中々慎重じゃないか!」

 

それはオアシスの水中から現れた。

水色の透明な体だが、直ぐに分かった。

目の前のそいつはあのゴーレムであった。

ゴンザレス太郎が逆ピラミッドの中で粉々に倒した筈なのにそいつはそこに居たのだ。

 

「初めましてっと挨拶をしておこうかな?神殺しのゴンザレス太郎君、前回は名乗れなかったからね、私はダマだ」

 

その言葉に驚く二人、何故ならばゴンザレス太郎がマリスを倒したのを知ってるのは今回の世界ではフーカとサラだけなのだ。

それはつまり…

 

「サラの記憶を読んだのか…」

「いやはや、本当に君は素晴らしい。強いだけでなく頭も回るからね、君に倒されたおかげで私の呪いは一段階成長したよ」

 

呪いの成長、とんでもない事をさらっと言われた事もあり、二人の警戒は強くなる。

何せ傷一つで敗北が確定するのだ。

 

「新しく得た『呪った相手の記憶を読める能力』のおかげで操った人間のユニークスキルまで使えるようになったからもう私は敵無しさ」

 

その言葉でゴンザレス太郎は理解した。

さっきのはサラの声を横の女性がユニークスキル『テレパシー』で送ってきてたのだ。

その表情の変化を見てゴーレムの女『ダマ』はゴンザレス太郎が全てを理解した事を確信した。

 

「やはり私の敵になりそうなのは君だけみたいだね、ますます君が欲しくなったよ。君の持つスキルさえ使えれば私は最強になるからね」

「そりゃどーも、でも悪いが俺にはもう二人も生涯を誓った人が居るんでね」

「ふふっ振られたか。なら仕方ない肉食系女子としてアタックさせてもらうよ!」

 

ダマが水面から全身を現す。

朝日が反射して煌めくダマとの戦いが今始まる!



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第20話 ゴンザレス太郎敗北する?

「さぁ踊れ踊れー!」

 

水の上に立ってるダマが手を振る、すると水面の水がまるで斬撃の様にゴンザレス太郎とフーカに襲い掛かる!

二人は軽やかな身のこなしでそれをかわしているが、フーカが血相を変えて結界で水を弾く!

 

「うんうん、そうだよね守ってあげないとね!」

 

ダマが再び手を振り水の斬撃を放つ!

狙いはサラであった!

それをフーカが結界で弾いてサラを守る。

 

「いい加減にしろ!」

 

ゴンザレス太郎がダマの顔面を蹴り抜く!

だが飛散したのは水で直ぐに顔が修復される。

 

「女の顔に手を上げるなんて酷いじゃないのタ、ツ、ヤ」

「生憎俺は男女差別をしない主義でね!それに出したのは手じゃなくて足だ!」

 

ダマの顔面を蹴り抜いた足をそのまま体ごと一回転させて、続けてローキックに移行するゴンザレス太郎!

ダマの顔が修復されたのを見て、足からオアシスの水を吸い上げて回復しているのを見抜いたのだ。

 

「んでこうだ!アイスロック!」

 

ゴンザレス太郎のローキックでダマの下半身が飛び散り、そのまま落下する体を魔法で一瞬にして凍らせた!

そして、その体を拳で粉砕する!

 

「甘いっ!」

「どうかな?」

 

直後水面からダマの上半身が現れて水の槍で突いてくる!

それを体をそらせて回避し、ダマの顔面を再び蹴り抜く!

足に氷結の魔法を付属しており、ダマの顔面は氷の結晶になり飛散する!

 

「はぁ~全く規格外にも程があるだろ…」

 

少し離れた場所に再びダマが現れ、ため息を吐きながら文句を言う。

見た目は変化していないが確実にダマにダメージは蓄積されているようである。

凍らされ、破壊された分の体は復活していなかったのだ。

 

「諦めろ、お前では勝てない」

「ふっふっふっ、一つ良いことを教えてやろう。この世界はな、神が作ったゲームの中らしいぞ」

 

突然語り始めるダマ。

一体何を言うつもりかとゴンザレス太郎は固まってしまう。

現在ゴンザレス太郎はコード『水面歩行』を発動させているので水中に落下することは無いのだが、どこまでがダマの体か分からないので警戒は怠らない。

 

「驚いたか?そして、この世界の外には更に数多の別の世界が広がっていると言うではないか。素晴らしい、私はそれを知ってお前の力を使い外に出てみたくなってな。どうだ?私と手を組まないか?」

「はっ冗談だろ、サラをあんな風にしたやつと手を組むわけないだろ」

「はっはっはっ!お前の方が先に寿命で何度も死んでいるのにな」

 

ゴンザレス太郎はその言葉にイラつきダマを睨む。

自分が寿命を終えてから、自分の生涯よりも長い時間サラが一人ぼっちな事に思うところがあるのだろう。

 

「くくくっ話を続けよう、私が呪った相手の記憶からそれを知った時は驚いたよ、そいつは異世界から記憶を持ったまま転生してきていてな、そいつの知識を私は得たのだよ。確かこういうのを知識チートとか言うらしいな!アハハハハハ!」

 

ゴンザレス太郎は答えない、何を知り何をやろうとしているのか気になったからだ。

 

「さて、これがなんだか分かるか?」

 

そういうダマの右手に足元の水が集まりだして球体となった。

 

「サラッ!」

 

突然後ろからフーカの叫びが聞こえ、ゴンザレス太郎が振り替えると操られたサラがダマに向かって『炎王球』を放った!

だが、それをにやけながら見つめるダマ。

 

「お前なら死なないだろうと思ってるが無傷とはいくまい、去らばだゴンザレス太郎。この水蒸気爆発を喰らって無傷で生き延びられたらまた会おう」

 

そう言うダマは手に作り出した水の塊をサラの放った炎王球に向かって投げつけた。

そして、二つが接触した瞬間その場を圧倒的圧力が支配し音が消えた。

 

水蒸気爆発によりオアシス周辺の住宅は木っ端微塵に吹き飛ぶのであった。

 

 

 

 

明け方のニーガタの町に大爆発が起こり、残っていた住人も爆発の衝撃で怪我をし、何人もが呪われ消えた。

その瞬間ニーガタの住人は残り10人を切るのであった。



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第21話 ゴンザレス太郎、マリスに救われる

「水蒸気爆発、水が熱せられて気体となるときに体積が約1700倍になる現象。だったか、凄まじい威力だな…」

 

銀髪の少女が座っていた。

その膝に頭を乗せているのは意識の無いゴンザレス太郎であった。

かろうじで結界の防御が間に合い即死は免れたが、かなり深刻なダメージを負ってるのは一目で分かるくらいボロボロになっていた。

 

「まさかこうしてお前に再会する日が来るなんて思いもしなかったよ。」

 

ゴンザレス太郎の顔に手を触れさせて親指でその唇をなぞる。

まるで恋人との一時を楽しむような雰囲気の中、銀髪の少女は意識の無いゴンザレス太郎に話し掛ける。

 

「お前が私の事を知っている理由も知りたいし、この世界の真実も伝えたい、話したいことがいっぱいあるんだ。でも今はこの二人だけの時間を堪能させてくれ、何万年も耐えたご褒美にこれくらい良いだろ?」

 

誰に聞くわけでもない、ただの独り言だが世界がそれに答えるように風がやむ。

神マリスだった不老不死の銀髪少女ミリーはゴンザレス太郎の唇をなぞった自分の指にキスをする。

人が居なくなり静寂に包まれた町の中で二人は静かに時を堪能するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素晴らしい、まさかあれほど凄まじい威力だとは思わなかった。」

 

そこは真っ暗な空洞、そこに一体のゴーレムが居た。

ダマである。

 

「私の液体ゴーレムのボディが一瞬で蒸発するとは思わなかったよ」

 

ダマが視線をやると、そこには無表情で両手をダラリと下げたサラとフーカが居た。

二人とも水蒸気爆発でかなりのダメージを負っており、全身はボロボロで本来なら直ぐにでも治療が必要な状態であった。

 

「フーカとか言う小娘だけか…ゴンザレス太郎は呪われてここに来ないと言うことは爆死したのか、勿体無いことをした。」

 

ダマはゴンザレス太郎の至近距離で水蒸気爆発ぎ起こった為、それに巻き込まれたゴンザレス太郎が生きていればここに居るはず。

そうでないと言うことは即死していると考えたのだ。

あの距離で自身の体が一瞬で全て蒸発する程の爆発を生身で受けたのだから、生きているわけがないと結論を出したのだ。

 

「しかし、この転生者ナジムの知識は凄い。異世界にはこれが常識レベルであると言うのだから早く行きたいものだ。」

 

そう言いダマは3つの金属を手に取る。

それは幻の金属と言われる『オリハルコン』と『アダマンタイト』と『ヒイロカネ』である。

 

「さぁ、この知識と呪われた人間達の力で最強の私の体を作ってみせる!」

 

ダマの指示に従い人間達は動き出す。

世界に残されたゴンザレス太郎と言う一つの希望のみを残して悪夢は現実に形作られていくのであった。



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第22話 目覚めるゴンザレス太郎

ニーガタの町のとある民家、住人が居なくなったその家のベットでゴンザレス太郎は目を覚ました。

ゆっくりと開かれた目に飛び込んできた光景に普段なら「知らない天井だ…」と普段なら某アニメの台詞を言いそうだが、意識を失う前の事もあり…

 

「ん…こ、ここは?」

 

と普通の呟きが漏れた。

そのまま、知らない天井から視線を移し、周りを見ようと体を起こそうとするが…

 

「あぐっ?!」

 

突然の苦悶の声、全身に激痛が走り起こしかけた体を再び仰向けに倒した。

激痛に意識が覚醒するが、どういう状況なのか理解の及ばないゴンザレス太郎。

 

「なんだ…何があった…」

 

記憶を辿ろうとするが今度は激しい頭痛に思考が停止する。

本能が思い出すのを拒絶しているかのようであった。

 

「あっ?起きた?」

 

何処かで聞いた懐かしい声が耳に届く…

倒れた状態のまま視線だけそっちに移し、ゴンザレス太郎は驚いた。

そこには何度も転生を繰り返したが会う事は無かった存在、銀髪の少女姿の元神…

マリスだったミリーが居たのだ。

水着エプロンで…

 

「おっお前何してるの?!」

「ん?いや~ゴンザレス太郎こういうの好きだろ?」

「まぁ…かなり悪くないが…って一体何が…イテテ…」

「はいはい、怪我人は無理しないの」

 

そう言ってミリーが嬉しそうに持ってきたのはお粥であった。

忘れもしない、遥か昔にゴンザレス太郎が一度だけ味見をしたミリーの手作りお粥…

この世界には米がないので、代わりにクルトンの様なパンがスープを吸ってふやけた物が入っているのだが、そのスープが問題なのだ。

あの時と同じ緑色と青色のスープ…

以前一口食べて、死ぬほどのダメージにも耐えたゴンザレス太郎が一瞬で意識を刈り取られた恐るべきスープ。

あの時は確かに言った筈だ…

 

『作ったら人に食べさせる前に自分で味見をしろ』と

 

そのスープを見ただけで全身から脂汗が吹き出る、細胞一つ一つが拒絶しているのを理解したゴンザレス太郎は必死に逃げようとするが、動こうとした全身を襲う激痛に邪魔され身動きが取れない。

 

「ほら、無理しちゃ駄目でしょ」

 

ミリーがゆっくりと近付いてくる。

綺麗な笑顔が逆に恐怖を駆り立てる!

怪我をして動けなくなった一般人がゾンビに襲われるホラー映画の光景が脳裏を過る…

ゴンザレス太郎はあまりの恐怖に顎が震えだした。

 

「まずはこれを食べて元気になって」

 

そう言ってミリーがスプーンで掬ったお粥が目の前に出される。

緑と青のスープから紫の湯気が上がり、目の錯覚か湯気がドクロの形にも見えたそれをミリーは「エイッ」っとゴンザレス太郎の口の中に突っ込んだ。

 

その瞬間、オアシスで起こった出来事を思い出した。

ダマと名乗るゴーレムに水蒸気爆発で吹き飛ばされたことを思い出したのだ。

俗に言う走馬灯である。

だが…

 

 

「むぐっむぐっ…もむもむ…ゴクン。美味い」

「本当?!嬉しい!」

 

無邪気に笑うミリー、先程までと違いその笑顔に癒されるゴンザレス太郎。

元々神に性別は無い、だから恋愛対象になった相手と違う性別に変化していく…

と以前聞いた事でミリーはゴンザレス太郎に惚れていた事をその顔を見て思い出した。

 

「へへーん!ミリーちゃん特製『ポーションとエーテルのエリクサー粥・改』美味しいでしょ?」

 

無邪気に笑うミリーの口から聞かされた料理名に色々聞きたいこともあったが、ゴンザレス太郎は彼女に一言…

 

「ありがとう」

 

その言葉にミリーは満面の笑みで答えるのだった。



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第23話 世界の真実と転生タイムリープの正体

「さて、色々話したいことや聞きたいこともお互いにあるだろうから、少し話をしようか」

 

ミリーがゴンザレス太郎の寝ているベットの横に椅子を置いてそこに座る。

水着エプロンが短いスカートみたいな感じで、パンツがチラリと見えているような状態なので目をそらすゴンザレス太郎。

 

「ふふっやっぱりタツヤなんだね」

「なんか調子狂うな、俺が死ぬときまでお前呼ばわりしてたくせに」

「そうだね、流石に何万年も少女やってるとね」

「ん?それってどういう…」

 

その時ミリーが抱き付いてきた。

いきなり予想もしてなかった行動、なので完全に不意を突かれて受け入れてしまうゴンザレス太郎。

フーカに見られていたら修羅場待ったなしである。

 

「まさか、こうしてまた会えるとは思わなかった」

「それは俺もさ…」

 

少しの沈黙。

ゴンザレス太郎は少し違和感を感じるミリーの様子に抵抗はしなかった。

そして、少しして離れたミリーが話始める。

 

「タツヤって呼ぶけど良い?」

「もう呼んでる癖に、好きにしなよ」

「うん!」

 

かつてフーカを死の連鎖に追いやっていた人物とは思えない変わりようだが、ゴンザレス太郎は話の内容が気になるので黙って話すのを待つ。

潤んだ瞳が瞬きを堺に覚悟を決めた瞳に変わり、ミリーは口を開いた。

 

「まずタツヤは自分が寿命で死んだのは分かってるんだよね?」

「あぁ」

「私はあれから生き続けたわ、サラも死んで私の事を知っている人は誰も居なくなった」

 

ゴンザレス太郎は地球で生きてた時に読んだことのある小説などで、長寿のエルフが孤立する話を思い出しながら聞いた。

 

「そしてね、異界歴999年にあることに気が付いたの。」

 

異界歴はこの世界の年号だ。

ちなみに今は異界歴175年である。

 

「ねぇ、異界歴999年の翌年って何年だと思う?」

「1000年じゃないの?」

「違うの、0年なの」

 

これが不老不死の命を持つミリーだけが知ったこの世界の秘密。

現代日本でも2000年問題と言う形で話題に上がった事もある内容であった。

 

「そして、気付いたの。自然は私が設定した形に時と共に戻っていき、アムステルダの町の西には消滅した山が出来ていた。そして、同じ年の同じ日に同じ人が生まれたのよ」

 

これがこの世界の誰も知らない形であった。

そして、ミリーがこれを知ったと言う事実が1つの事実を暗にしていた。

つまり、世界を想像したマリスがこれを知らなかったと言う事は…

 

「それじゃ、タツヤの話も聞かせて。なんで記憶があるの?」

 

あまりの衝撃の事実に頭の中で一つの仮説が立つのだが、ミリーの言葉に我に返りゴンザレス太郎も語り始める。

 

「俺達はユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』のコード『スキルの自由選択』で『転生タイムリープ』を使って…」

 

そこまで話してゴンザレス太郎も気付いた。

 

「…なるほど、納得がいったよ。」

 

そう、『転生タイムリープ』と言う言葉を紐解けば答えは直ぐに分かったのだ。

すなわち、転生して時間(タイム)を跳躍(リープ)するスキルだったのだ!

 

「そうか…タイムループじゃなくてタイムリープなんだ…」

「相変わらず凄まじいのに抜けてるんだねタツヤは」

 

これが消滅の光で消されたフーカが、フーカだけが戻らなかった理由であった。

消されたフーカは既に1000年後の世界へ飛んでいたのだ。

真実を理解して驚くゴンザレス太郎を見て微笑むミリー。

 

「歴史が延々と続いている、だからこそタツヤを助けられたわけなんだけどね」

 

そう言ってミリーは懐から水の滴みたいな形のアクセサリーを取り出した。

そう、怪我を負ったゴンザレス太郎が呪いを受けずにミリーに助けられたわけがそれだったのだ。

それはかつてゴンザレス太郎が『埋めたアイテムランダム変化』で産み出して、マリスのデスポイズンを浄化したあらゆる汚染を浄化する伝説級のアイテム『女神の涙』であった。

運命の歯車は複雑に絡み合い動き出す。



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第24話 ダマとの再戦

数日が過ぎた。

歴史は繰り返され、ほぼ無人となったニーガタの町の入り口にゴンザレス太郎は座っていた。

眺める先には逆ピラミッドが静かにその存在を主張する。

 

怪我はミリーのお粥のお陰で完治しており、彼はその時を待つ…

そして、それは現れた!

 

「あそこか」

 

ゴンザレス太郎は勢いよく立ち上がり、砂漠の中を駆けていく!

目指す先は逆ピラミッドから更に数キロ離れたその場所!

今現在も天の裁きが降り注ぐその地点!

フーカとサラを救い出せる最初で最後のチャンスを逃さぬように彼は全力で砂漠を走った。

 

 

 

天の裁きが消失し、その場に3つの人影が在った。

サラとフーカ…そして、銀色に輝く女性の姿をしたゴーレムが一体そこに居た。

 

「くはははは…これこそが最強!無敵!私はこの世界で最強となったのだ!」

 

そのゴーレムは声を高らかに上げて歓喜に震える。

ゴーレムの立ってる場所の周りの砂は天の裁きによって蒸発し、大きなクレーターとなっていた。

歴史は繰り返す。

ダマは1000年前もミリーが見ていた通りに自らの新しい体の実験を行っていたのだ。

 

そして、離れた場所に天の裁きを発動させ、その衝撃で吹き飛ばされてズタズタになって転がり、ボロボロなのに無表情で立ちあがるサラとフーカの姿があった。

ゴンザレス太郎は遂に二人を見つけた。

 

「んん?お前…まさか生きていたのか?」

「生憎しぶといのが取り柄でね」

 

ダマもゴンザレス太郎を見つけ、テレパシーの様な力で話し掛けてくる。

新しいダマの体は天の裁きですら影響を受けず、表情は人に限りなく近付いていた。

 

「でだ。それが史上最強の体って訳か」

「あぁそうさ、どうだ美しいだろ?」

「太陽の光が反射して眩しくてよく見えないよ」

 

笑いながらゆっくり歩いて近付くゴンザレス太郎。

ダマも天の裁きで出来た大穴を飛び越え、ゴンザレス太郎に近付いていく。

 

「それで何をしに来た?」

「勿論俺の愛する二人の花嫁を迎えに来たのさ」

「ハハハッやっぱりお前だけは他の人間とは違うな」

「よく言われるよ」

 

おちゃらけた会話を楽しみながら二人は一定の距離を保ちつつ向かい合って立つ。

ダマは自身の近くにフーカとサラを立たせる。

 

「こいつの記憶にあるラストエリクサーによる空中散布対策をさせて貰うよ」

「お前一人にそんな大規模な事をするつもりはねーよ」

 

ゴンザレス太郎の謎の笑みにダマは少し考える。

二人の記憶から今までゴンザレス太郎が成してきた事を知っているダマは欠片も油断をしない。

二人の潜在意識の中にはゴンザレス太郎への、どんな過酷で絶望的な状況にも彼ならば何とかしてくれると言う絶対的な信頼があるからだ。

 

「何を企てているのか知らないが良いことを教えてやろう。」

「良かろう聞いてやるから話すと良い」

「ギリッ」

 

フーカとサラは人質に取り大規模攻撃は封殺し、自身の体に絶対的な信頼を持っているにも関わらず、何故か上から目線で立ちはだかるゴンザレス太郎に苛立ちを覚えるダマ。

 

「さっきの天の裁きを連続で受けてもこの体は傷ひとつ受けない。そしてステータスがカンストしている二人の攻撃も既に試した。お前が私を倒すことは最早不可能だ!」

「ハハハッでもここじゃ水がないから水蒸気爆発は起こせないぞ」

 

ゴンザレス太郎は余裕の表情でダマをバカにする。

ダマからしたら液体ゴーレムの体は蒸発したのに無傷だったゴンザレス太郎にバカにされてると感じた。

事実は瀕死に追いやられたのだが、呪いが発動してないので誤解していた。

だが、それでもこの状況下で巻ける要因が見当たらないのも事実、何を恐れる必要があると言うのか?

しかし、迂闊に襲い掛かると何があるか分からない。

葛藤がダマの中で渦巻く。

 

「それで、二人に自身を殴らせたって訳か?」

 

ゴンザレス太郎の視線はフーカとサラの両手に行った。

二人とも痛々しく拳が砕け、指が変な方向に曲がっている。

ゴンザレス太郎の中で怒りが静かに渦巻く。

 

「そうさ、こいつらの打撃でもダメージを受けなかった、つまりこの体はお前の攻撃でもダメージを受けな…」

 

そこまで言ってダマは吹き飛んだ!

地面を転がり受け身を取ってあり得ないと表情を崩す。

飛び出したゴンザレス太郎のパンチがダマにヒットし、ダマにダメージを与えていたのだ。

 

「お前は後99発ぶん殴ってからぶっ壊す!」



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第25話 ゴンザレス太郎vs超合金ダマ

「こ…こんな…ありえない」

 

ダマは自身の体に残るダメージを認識して驚いていた。

ダメージ量的には大したことは無いのだが、それでもダメージを受けたという事実が問題だったのだ。

ゴンザレス太郎を睨めつけて怒りを露にするが、次の瞬間その姿が消えた?!

 

「ほげっ?!」

 

左頬を殴られて切り揉み状態で吹っ飛ぶダマ!

なんとか着地に成功するが…

 

「な…なんなんだその早さと力は?!」

 

ダマにはゴンザレス太郎の動きがまるで見えなかった。

事前にゴンザレス太郎と同じくステータスがカンストしているサラとフーカの動きは見切れたのにも関わらず、ゴンザレス太郎の動きはまるで見えなかったのだ。

 

「限界なんてとっくに超えてるよ!」

 

後頭部を殴り付けられ地面の砂に顔面から突っ込むダマ!

直ぐにその姿勢のまま上に飛び上がって脱出し叫ぶ!

 

「この最強のボディが何故だ!オリハルコンとアダマンタイトとヒイロイカネを合成して生み出した究極の金属だぞ?!」

「傾斜機能材料…だろ?」

「なっ…」

 

※傾斜機能材料:無重力空間で比重等の違う本来は混ざらない物質を混ぜ合わせて作り出した新しい物質、金属に限って言えば超合金とも言われることがある。

 

「なん…なんなんだお前は?!」

「通りすがりの単なる史上最強さ」

 

再び空中で殴り付けられ、衝撃で吹き飛ばされるダマ!

しかし、立ち上がったダマは不適な笑いをこぼし始めた。

 

「ふふふ…なるほどなるほど…分かったぞ!お前ユニークスキル『能力全強化』を付けているんだな」

「正解だ。だけど分かってもどうしようも無いのが純粋な強さってやつさ」

 

そう、ゴンザレス太郎は『スキル自由選択』でシズクのユニークスキル『能力全強化』を付けていた。

これは全能力が1.2倍になるユニークスキルで、理論値の攻撃力10000が12000になっていた。そのためダマの装甲の防御力を貫いてダメージを与えていたのだ。

 

「オラッ!」

「がっ?!」

 

ゴンザレス太郎に殴り飛ばされて何十回と地面を転がるダマ。

だがその顔には余裕の笑みが浮かび上がっていた。

 

「ゴンザレス太郎、お前の敗けだ。」

「何を言ってるのかな?」

 

そう告げるダマは立ち上がり、ゴンザレス太郎に殴られた箇所を見せる。

その部分の凹みがみるみる元に戻り、数秒で何事も無かったかのように直った。

 

「私の体に使用したヒイロイカネの成分が故障箇所を自己治癒しているのさ、そしてお前は人間だ。徐々に疲れいつかは私に捕まりそして怪我を負って呪われる、お前に勝ち目はない!」

 

ダマがそう告げ広範囲攻撃を防ぐ為にフーカの近くに移動する。

そして、サラが後ろからゴンザレス太郎を羽交い締めにする?!

 

「もらったぁー!」

 

ダマが鋭い突きをゴンザレス太郎に向かって放つ!

だがゴンザレス太郎はサラごとジャンプし、ダマの頭部を蹴って着地する。

空中でサラをお姫様抱っこの姿勢に移行させるのも忘れない紳士ぶりで!

 

「さて、後15発だ!」

 

ゴンザレス太郎のその言葉に威圧を感じ、頭頂部に靴の跡を残したままダマは一歩後ろへ下がるのであった。



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第26話 超合金ダマの敗北

ジリジリと後ろへ下がるダマをゆっくりと追い掛けるゴンザレス太郎。

ダマの体は自己治癒で既に完治してはいるのだが、ゴンザレス太郎の言い放った『残り15発』と言う言葉が引っ掛かり恐怖していた。

例え15発同じ箇所に集中攻撃を喰らってもやられない自信はあるが、サラとフーカの記憶を読んだ事でゴンザレス太郎と言う存在の規格外さを理解しているのだ。

その為、ゴンザレス太郎の言葉がただの虚勢ではないと言う事が頭に浮かんでいたのだ。

 

(15発殴られたら体が壊れる何かを仕込まれているのか?!)

 

そう一度考えてしまったら体は逃げ腰になり、まともに戦える状態では無くなっていた。

ここまででさえ、常識外れの事象を次々と起こされているのだから仕方ないだろう。

 

「ギャッ!?」

 

離れた位置から瞬時に接近され、殴り飛ばされる。

直ぐに起き上がり、ダマの頭の中に残り14発と言う言葉が響き渡る。

一体何が起こるのか分からない、ダマのその感情は人と同じであった。

未知なるモノへの恐怖に怯える、その根底にあるのは想像の力。

 

「ぐわっ!?」

 

残り13発…

 

「ぎゃあ!?」

 

 

 

 

…残り2発。

 

「う、うわぁぁぁぁ!!」

 

ダマは逃げ出した。

しかし、移動速度でも理論値を超えているゴンザレス太郎は瞬時にダマの逃げる先に回り込み、殴り付ける!

 

「さぁ残り1発だな」

 

ダマの頭の中で人から得た知識に『窮鼠猫を噛む』と言う言葉がよぎる。

(ばかな!そんなものは理性の無い畜生の行動だ!)

ダマは顔を振りゴンザレス太郎を睨めつける!

 

「最後に言い残すことは?」

 

ゴンザレス太郎の言葉に、まさに恐怖が具現化したように震えが止まらないダマ。

自身の金属の関節が擦れる音に、自身が恐怖を感じている自覚をしたダマは口を開こうとした時だった。

 

 

ドーン!!!

 

 

それはニーガタの町の方から聞こえた爆発音。

ゴンザレス太郎の本来の目的をダマはそれで察した。

誰も居ない筈のニーガタの町で何かをして、ここでの戦闘の真の目的は時間稼ぎなのだ!

つまり、自分を倒す方法は存在しない!

 

「見切ったぞゴンザレス太郎!全てブラフだったのだな?!」

 

そう、自分の体を傷付けるのが精一杯であるゴンザレス太郎に、今の自分が負ける筈が無いと理解したダマは威勢良く立ち上がった!

そもそも相手は素手でこちらは無敵、どんなに攻撃されようと自己治癒する自分と、傷一つで呪われるゴンザレス太郎、普通に考えれば負ける道理は無いのである。

そして、僅かに見えたゴンザレス太郎の拳の影と共に自身の体が粉砕されるのをその目で確認する…

 

「えっ…?」

 

視界の隅に見えたフーカとサラは何故かゴンザレス太郎の背後に居る。

何がどうなっている?

分からない分からない分からない…

そして、ダマの最後の意識は101発目のゴンザレス太郎の拳と共に消え去るのであった。



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第27話 最強と最凶の最共

真っ暗な部屋の中、天井から一筋の砂が上から下へと落下してくる部屋。

地面に敷き詰められた赤砂から一体のゴーレムが生まれた。

 

「なんなんだあいつはぁぁぁぉぁー!!!!」

 

産声にしては酷く怒りに満ちた怒声が響き渡り、中央に積み上がった砂山が崩れる。

飛び出したのは最強のボディを有したダマである。

 

「有り得ないだろ!ステータスがカンストしている攻撃で傷一つ付かなかったこのボディ、それを拳で殴って破壊するとかなんなんだアイツは?!」

 

銀色に輝くその体は、闇の中においても僅かな光を反射してその姿を浮かび上がらせる。

そんな叫ぶ存在を見て小さく笑う声が漏れる…

 

「クスクスクス…」

 

だがそんな笑い声が聞こえた気がしたが、ここに他の存在が自我を保っている筈はないと考えているダマは気付かない。

 

「こうなったら呪いをかけたこの町の連中を肉壁にして、何としても傷を付けてやる!こんなやつら何人死んでも構わない!」

 

そう言ってダマは視線を周囲にやり、初めてそれに気が付いた。

絶えず砂が落ちてきているその部屋に、呪いをかけた町の住人が居た筈なのにそこには既に誰も居なかったのだ!

 

「ど…どうなってる?!」

 

あり得ない光景、呪いを受けた存在は例外無く存在をここに固定され、自分の指示無くしてここから出られる筈がない、だからこそ焦り始める。

そんな困惑するダマを見ているその人物は遂に耐えきれず吹き出す。

 

「ぎゃははははははははは!!!あっーっははははははは

!いひゃひゃひゃひゃひゃ!!!ぷギャーぷギャー!!!もう止めてお腹痛いwwww」

 

腹を抱えて笑い転げる銀髪少女がそこに居た。

見た事もないその容姿、そして明らかに異質な存在だと感じさせる雰囲気…

 

「だ、誰だお前は?!」

「いやーはっはっはっ、もう久し振りだよこんなに笑ったのは。君がダマだね?初めましてって挨拶しておこうかな?私はミリー」

「ミリー?」

 

その名前には聞き覚えがあった。

確かサラの記憶に…

しかし、思い出す前にミリーが話し始める。

 

「タツヤ…いや、ゴンザレス太郎に手を出した可哀想な君に悪夢をプレゼントする者だよ」

 

そう言ってミリーは誰も居ない空間に手をかざし、スキルを発動させる!

 

「スキル『プロアクションマジリブレイ』発動!コード『パーティーメンバーに加える』選択『タツヤ』!」

 

そして、その場にゴンザレス太郎が笑顔で出現するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡る。

 

「タツヤ、僕に君のユニークスキルを付けるって本気かい?」

「あぁ、俺がダマの相手をしている間にミリーは俺のユニークスキル『プロアクションマジリブレイ』を使って町の人を全員助け出してほしいんだ。」

 

ゴンザレス太郎の怪我が治りきってない時から既に二人は計画を立てていた。

 

「でも私を信頼して良いのかい?一度は君達を…」

「俺は信じてる!」

「…ズルいよ、私の気持ち知ってるくせに…」

「それに一つ試してみたい事があってな、もしかしたら…」

 

 

 

 

 

そして、作戦決行の時。

ゴンザレス太郎に言われていた通り、天の裁きが落ちたのを確認したミリーは一人逆ピラミッドに突入する!!

 

「スキル『プロアクションマジリブレイ』発動!コード『スキル自由選択』選択スキル『トレジャーサーチ』!」

 

それはかつてシズクを殺した強盗が持っていたスキル。

呪いにより消えた住人が居るとすればここだろうと予想していたのだが、ビンゴであった!

 

「えーと、あっ金貨3枚の反応!これだな!」

 

それはゴンザレス太郎がスリにあった時に少女に渡した金貨の反応。

それを頼りに独り言を言いながらミリーは逆ピラミッドの最下層へと続く流砂の部屋に辿り着いた。

 

「この下か?えーい天さーん!」

 

流砂の中へゴンザレス太郎から治療中に聞かされた、願いを叶えてくれる七つのボール作品のネタを一人ボケながら飛び込むミリー。

そして、砂と共に落下したとても広い部屋に町の人々は居た。

まるでホラーゲームの待機しているゾンビのようにフラフラと揺れながら立ってる人に近づき、ミリーは『女神の涙』をかざした。

 

「あ、あれ?私は一体…??」

「意識が戻った?それじゃあこれ持って他の人にかざして助けてあげて」

 

そう告げミリーはゴンザレス太郎と共にスキルの使い方を説明された時に増やした『女神の涙』を複数手渡す。

勿論既にコード『アイテム減らない』を発動済みだ。

そして、次々に町の人々の呪いを解いて助けたナジムのユニークスキル『近距離転移』で次々に町の人を外へ連れ出し、ミリーはギルドマスターに「全員町に戻ったら大きな音を出して合図をして下さい!」と告げた。

 

 

 

 

町に戻ったギルドマスターのコブラは住人が全員居るのを確認し、合図に今まで使う機会の無かった秘密兵器を使うことを決めた!

 

「届けこの合図!『爆裂魔法!イオラズン!』」

 

腕の関節部分から爆発が起きて、大爆発の音と共に空高く舞い上がる左腕の義手は空中分解を開始し、予定外に木っ端微塵になるのを唖然と見上げるコブラ。

本人にとって文字通り一度限りの秘密兵器が!実は不良品だった事実を信じるまで時間を有するのであった…

 

 

 

 

 

コブラによる、合図の爆発音を聞いたゴンザレス太郎はダマへ止めのユニークスキルを発動する!

この時既に、羽交い締めにしてきた時に呪いが解けたサラに渡した『女神の涙』を使ってサラはフーカの呪いを解いていた。

 

そして、ゴンザレス太郎の発動したスキルは二つ!

シズクの『能力全強化』とアイアンの『熱血』!

そう、この時ゴンザレス太郎は『プロアクションマジリブレイ』をミリーに頼んで消してこの二つを付けていたのだ!

そして、一撃だけだが攻撃力が2倍になる熱血の効果でゴンザレス太郎の攻撃力は24000!

実に理論値の2.4倍となりダマの体を一撃で粉砕したのであった。

一応止めに12000の攻撃力で一撃追加も忘れずに。

 

 

 

 

こうして、外でダマを撃破して、そのダマが復活する部屋に残ってたミリーがダマの復活を確認し、決着をつけるためにゴンザレス太郎をその場へ召喚したのであった。



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第28話 異世界史上最高の攻撃

「なん…なんなんだお前は?!」

 

突然現れたゴンザレス太郎の姿に驚き、理性を失って怒鳴り付けるダマ!

だが二人は全く気にした様子もなく普通に会話をする。

 

「ミリーありがとな」

「うん、タツヤ戻すね」

 

そう言ってダマを完全無視し、ミリーはゴンザレス太郎のユニークスキルを消して『プロアクションマジリブレイ』を付け直す。

 

「んじゃあ早速!スキル『プロアクションマジリブレイ』発動!」

 

ゴンザレス太郎がスキルを発動させ項目を選ぶ。

ミリーとは違い、声に出さなくてもスキルを操作できるゴンザレス太郎はその項目を選び、ミリーを指差し発動させる。

それは新コード『状態異常を付ける』であった。

使い道が全く無いと思って今まで一度も試さなかったが、予想通りその中に項目があった。

それは…

『神化』

そう、この世界での神の力は状態異常の一つだったのだ!

怪我をしても死なず、操られる『呪い』や、回復するとダメージを受け毒で回復する『ゾンビ』や、魔物に変身する『獣化』も状態異常の一つなのである!

 

ミリーの体が輝き、神の力を再び使えるようになったミリーは足元の赤砂を手に取る。

 

「私を無視するなー!」

 

ダマの叫びと共に地面の赤砂から次々と超合金ダマが現れる!

呪いの力で作り出した自我の無い自分の複製を操るつもりなのだ。

だがそんな事は気にしないとばかりにミリーは力を使い、赤砂を物に変化させる。

 

「ほ、本当に出来た!?」

 

それはゴンザレス太郎の予想通りであった。

マリスの時は赤砂は魔物の核と言っていたが、魔物の持つアイテムも赤砂から生まれる。

更に確信したのはダマがその体を作るために、赤砂から3つの金属を生み出したと読めたからだろう。

オリハルコンとアダマンタイトはともかく、ヒイロイカネはこの世界に現存していない幻の金属だからだ。

 

そして、次々とダマの複製が出現する中ゴンザレス太郎はミリーからそれを受け取り、一人前に出る。

それは二つの棒状のモノの先端に果実の形をした謎の物質が付いている物であった。

 

「な、なんだそれは?!」

「右手に持ってるこれは『アッポーペン』!左手にあるこれは『パイナッポーペン』!そして、これを二つ合わせると…『ペンパイナッピがっ…』」

(噛んだ…)

(噛んだな…)

 

場は静寂に包まれる…

 

「ごほんっ、お前は確か知識チートを得たとか言ってたな?ならこれの恐ろしさは分かるだろ?」

 

そう言うゴンザレス太郎の両手の物質は魔力によって熱を持ち始める。

カンストしているゴンザレス太郎の超高熱火炎魔法が一気に熱を発し、二つの物質を超高温にする。

そして、それを一度左右に離し、気合いと共に肉眼ではまず見えない速度で全力でぶつけ合わせる!

 

その接触部分に青紫の放電に近いものが出現し、それが徐々に球体になっていく。

ちょっとでも制御を誤れば爆発するのを理解して、ゴンザレス太郎の額に汗が流れる。

その恐ろしいまでのエネルギーを感じ取ったダマが口を開く…

 

「な、なんなんだそれは…」

「お前は俺を本気で怒らせた。だからこれはほんのお礼だよ、この重水素を固めて作ったアッポーペンと、三重水素を固めて作ったパイナッポーペンを時速1000キロを超える速度で、超高温の中ぶつけるとこれが出来る。」

 

現代チートの知識を得たと豪語していたダマも、ゴンザレス太郎が何を言ってるのか理解出来ず困惑する。

水素で物を作ると言う常識を完全に無視した、あり得ない無茶苦茶な物質も赤砂からなら生み出せた。

その時点で、ゴンザレス太郎はダマをこれで完全に消滅させる気でいたのだ!

 

「そう言えばここは逆ピラミッドの地下か、つまりこのダンジョンは逆ピラミッドじゃなくて砂時計の形だった訳だ。」

「そ、それがどうした?!一体なんだと言うのだそれは?!」

「あれ~?知識チートのダマさん分からないんですか~?地下でやるこれの実験は超有名なんだけどな…なら、分かりやすい言葉で教えてやるよこれはな…」

 

そう言ってゆっくり前にその青白い球体を放つ…

手から離れたその青白い球体は緩やかに前に進み、一瞬の収縮と共にゴンザレス太郎が告げる。

 

「『核融合』って言うんだ…」

 

それがダマの最後に聞いた言葉であった。



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第29話 空から降ってくる放射能

あれ?更新9時45分になってた?!なんで?!


「地震だデカイぞ!?」

「みんな伏せろー!」

 

その時ニーガタの町に大地震が発生した。

勿論震源はダンジョンの地下である。

そして、外に居てそれを見た人々は恐怖した。

空へと登る巨大な雲。

上のほうで広がりそれはキノコ型となる。

知識でしか知らないナジムもそれを見て目を丸くする・・・

 

「きのこ雲・・・ま・・・まさか・・・」

 

ニーガタの町の近くまで地面が上空に吹き飛び、その爆発の恐ろしい威力を物語る。

当然ダンジョンは爆発の中心だ、瞬時に吹き飛び、その中は全てが消滅するクラスのエネルギーに包まれ、赤砂は全て蒸発する。

当然ダマもそのエネルギーの中で完全消滅をする。

 

「なに・・・これ・・・」

「多分・・・タツヤの仕業・・・」

 

ゴンザレス太郎の指示通りダンジョンから離れていたフーカとサラ、自身のカンストしたステータスに関係なく全てを消滅させるそのエネルギーに恐怖を覚える。

 

その日、核融合により発生したエネルギーは地下で核爆発を起こし、全てを巻き込んでダンジョンそのものを吹き飛ばした。

人々はまるで世界が終わったかのような揺れに、音に、煙に、匂いに恐怖した。

空まで巻き上がった煙は砂漠の全てを覆いつくし、そして・・・雨が降り出す。

砂漠の中で雨が降るのは本来なら歓迎されるのだが、ナジムは頭の中で知識として得ていた事を思い出しそれを目にして恐怖する。

そう、放射能が含まれた黒い雨が降りだしたのだ。

この世界ででレベルが上がり、反射的にそれが危険な物か理解できるようになっている者達は空から降る雨を見て叫ぶ!

 

「全員家の中に入れ!この雨に触れるな!」

 

町の入り口で見守っていた人達に襲い掛かった巨大な爆発による地震、そして煙と雲・・・

そして、死の雨・・・

ニーガタの人々は一斉に近くの建物に逃げ込んだ。

だが、当然人が全員屋内に隠れる前に雨は降りかかり人々に襲い掛かる。

放射能を含んだ雨は触れなくても気化する事で空気中に放射能を撒き散らす。

ニーガタの町は滅ぶ運命にある。

普通ならそうであろう。

 

「えっ?なにこれ?」

 

一人の少年に降りかかった雨が体を濡らし、頬を伝って地面に流れる。

そして、少年は自分の周りの砂が美しく輝きを放つのに驚く。

地面に降り続けている液体は間違い無く放射能を含んだ水である。

だが、少年の周りの水だけは美しく清らかな聖水となっていた。

それは少年だけではなかった。

ありとあらゆる人の周りで同じ現象が起こっていた。

 

「ふぅ、本当に無茶苦茶するねタツヤ」

 

町の入り口から少し離れた場所にミリーとゴンザレス太郎が居た、いや現われた。

ダンジョンの地下で核融合を発生させ、核爆発を起こして吹き飛ばしたので逃げる時間など無かった筈なのに二人は無事であったのだ。

 

「まぁおおむね予定通りいったからいいじゃない」

 

ゴンザレス太郎が笑顔で答える。

その二人の周りも空から降る水は聖水に変わる。

そして、ゴンザレス太郎がサラとフーカを出現させる。

 

「ミリー?!なんでここに居るの?!」

 

サラが驚いて声を上げる。

フーカはマリスの時しか知らないのでサラの後ろに隠れるように身を引く。

だがゴンザレス太郎と親しげなサラ以外の異性に向ける目は凶悪そのものである。

 

「おっと、離れる前にスキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

そして、ゴンザレス太郎はサラとフーカにも町の人と同じようにスキルを付ける。

全て、ゴンザレス太郎の作戦通りに完了していたのだった。

 

 

 

 

 

 

核融合を発生させ核爆発を起こしてダンジョン地下を自らと共に消滅させたのだが、ミリーが自分に付けていたジルのユニークスキル『うつせみ』の効果で二人は核爆発の効果範囲外に脱出する。

そして、放射能を含んだ雨はミリーがニーガタの町の人全てに付けておいたユニークスキル『絶対浄化』の効果により放射能は浄化され聖水と変化する。

そして、常時発動スキルである絶対浄化の効果でニーガタの人々の呼吸からも空気中にその効果は輩出され、広がるはずの放射能は直ぐに全部浄化される。

特に近くを流れた液体が全て聖水に変わり、その聖水も放射能を浄化するので直ぐにこの地域も浄化されるだろう。

全て、完全にゴンザレス太郎の作戦通りであった。

しかし・・・

 

 

 

 

 

 

喜ぶゴンザレス太郎の背後から大きな声が響く!

 

「ふざけるなー!!!」

 

それはダンジョンが在った場所に登る煙であった。

入る体を全て失い、最後の最後に彼女が宿ったのは放射能の煙であった。

気体と化したダマが巨大な体を構成してニーガタの町に歩みを進め始めたのだった!



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第30話 ミリー帰る

気体となったダマが歩をニーガタの町へ向けて進める。

しかし、既に誰一人ダマを恐れる者は居なかった。

 

「気体か・・・だったら余裕ね!」

 

そう言いサラが炎王球を放つ!

 

「ぐぎゃああああああ!!!」

 

通過した部分の煙が焼かれて消滅する。

続いてフーカが手を翳す。

 

「お礼参りが出来る機会があって良かったわ」

 

ダマの体がドンドン氷に固められ削れていく・・・

物理的な攻撃を防げると考えていたダマの予想外の叫び声が周囲に木霊する。

 

「ぐぅわああああああ!!!!」

 

空間を削り取られたようにダマの体はドンドン小さくなっていく。

そしてゴンザレス太郎が空に手を翳す。

 

「その体で耐えられるかな?」

 

ダマの真上に天の捌きが突き刺さる!

 

「ボォアアアアアア!!!」

 

消滅していくダマの体。

しかも千切れて飛んでくるカスすらも『絶対浄化』のユニークスキルを持って居る人の傍にいくと消滅するおまけつきである。

 

「もうあんたに勝ち目はないんだよおとなしく消えな!」

 

そう告げ、ミリーが合図を送る!

 

「やっと俺の番か!」

 

そのミリーの言葉に反応しニーガタの町の入り口から走ってくる人物がいた。

Sランク冒険者妄槍のデルタである!

そのデルタに合わせてミリーがスキルを発動させる!

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!コード『射程無限』コード『弾無限』!」

「サンキュー姉さん!くらえええええ!!!!」

 

残りカスのダマに向かってデルタが見えない槍を次々と投げつける!

その槍の効果はご存知、固形で無い物を食らう!

ミリーの発動したコードによりデルタの見えない槍は射程無限で、何発投げても消耗する事無く放てる!

 

「そんな・・・私の最後がこいつ等じゃなくてお前みたいな良く知らないやつだなんてー!!!」

 

そして、ダマはデルタの槍に喰われ完全消滅するのであった。

全てはゴンザレス太郎の読み通りであった。

 

 

 

 

 

 

「終わったな・・・」

「あぁ、終わった。」

「これからどうするんだ?」

「んー一とりあえずアイツを掘り起こしてやらないとね」

 

ゴンザレス太郎とミリーは砂の上に座り込み話している。

ゴンザレス太郎の両太股を枕にサラとフーカは寝息を立てていた。

二人共ラストエリクサーで傷は完治したのだが、精神的疲労がかなり溜まってたのでミリーの事を訪ねる前に寝てしまったのだ。

 

「ふふっやっぱり二人には勝てそうにないね」

「そらそうさ、俺にとっても大事な妻達だからな」

「全く今更ながら羨ましいよ、それじゃあちょっと行ってくるね」

「一人で大丈夫か?」

「君のこの『プロアクションマジリプレイ』が在れば十分だよ」

「何かあったら直ぐ召喚しろよ」

「もぅ、そういう優しい言葉をかけないでよ本当・・・」

 

ミリーは一人いまだ煙の上がる場所へ向かっていく・・・

それを眺めるゴンザレス太郎。

 

そして、煙の中へ入ったミリーは出来たその穴の中へ飛び込む。

まるで永遠に続きそうな穴の底へ向かって落下していき最深部に到達した。

 

「いや~本当凄いね核爆発って。さて、何処かな~?」

 

神の力とゴンザレス太郎のスキルと言うとんでもないチートの塊となったミリーは遂にそれを見つけた。

手の平サイズの水晶、ダマの本体である。

 

「あったあった。んじゃここで起こすのもアレだから戻るか!」

 

そう言って穴から大ジャンプして飛び出すミリー。

脱出と共にその大穴に向かって神の力を使い、雨を降らせる。

そして、その穴の中に女神の涙を1個放り込む。

 

「これで良し!」

 

数日後、そこには巨大なオアシスが出来上がり、底に落ちている天使の涙で浄化されたその水は周囲の土地を育て緑が育つのだがそれはまた別の話。

ミリーはゴンザレス太郎達の元へ戻る。

 

「ただ~いまぁ~」

「おわっ?!」

 

ミリーはそのままゴンザレス太郎にダイブした!

勿論膝枕で寝ていたサラとフーカは驚いて飛び起きる?!

 

「えっ?!なに?!なに?!」

「いたい・・・」

 

そして、ゴンザレス太郎に抱き付いて幸せそうな顔をしているミリーの顔を見て・・・

 

「ミリィ?なにやってるのかな?」

「誰この女?タツヤどういう事か説明して貰えるよね?」

 

サラとフーカの怒りがマッハで怒髪天に引火である。

ゴンザレス太郎に対して浮気だとか言わない辺りの信頼は流石とも言えるだろう。

そんなミリーは舌をペロリと出して二人にゴメンねって表情を見せ・・・

 

「「あぁー?!?!?!?!」」

 

ゴンザレス太郎にキスをする。

それを見た二人は叫ぶ!

 

「ごちそうさま」

「どういうつもりだ?」

「帰るからお別れの挨拶」

「・・・そうか」

 

ゴンザレス太郎だけは理解していた。

ミリーはサラとフーカを見て告げる。

 

「お幸せにね二人共」

「ちょっとそれってどういう・・・」

「あんた・・・」

 

そして、ミリーは消えた。

きっとあの白い部屋に戻ったのだろう。

空を見上げるゴンザレス太郎はこれからの事を考え・・・

目の前に居る二人の妻の怒りをどうやって静めるか頭を悩ませるのであった。



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第31話 さらば!ニーガタの町

その日の夜、久し振りの大賑わいのニーガタの町はお祭り騒ぎであった。

町の人達からしたらなにがあったのか良く分からない、けど冒険者ギルドの人達の活躍で全員救われたと言う認識の元大にぎわいとなった。

 

「おぃー飲んでるかー?」

「アーニャお前は飲み過ぎだ」

「うっせばーろー!大体ナジムお前な!いい加減覚悟決めやがれ!」

「うっ…それを言われると…」

 

ナジムの手を握るアーニャ、酒が入っているがその目は真剣であった。

 

「いいよ」

「んっ?」

「いいって言ったんだよ、今回お前を失いそうになって辛かったんだよ」

「にひひーそれじゃ娘共々これから宜しくね、パーパ」

 

実はナジム、以前からアーニャに迫られていた。

ただ子連れと言うのと、ナジムも冒険者と言う不安定な仕事を生業としているため、最後の一歩が踏み出せなかったのだ。

だが今回の一件で覚悟を決めたのであろう。

 

「つか、約束だからな。お前は冒険者辞めろよ」

「えぇ~」

「ええ~じゃない!あの子を放置するのは禁止だ」

「分かったよ~」

 

そんな二人の横で聞き耳を立ててたデルタが拍手をして会話に加わる。

 

「よーし、そう言うことなら仲人は俺が引き受けてやるよ!」

「デルタさん、盗み聞きは感心しませんが…マジでいいんですか?」

「あぁ、お前には世話になったからな」

 

賑やかに盛り上がるニーガタの町の酒場。

丁度その時ゴンザレス太郎達はギルドマスターと面会をしていた。

 

「どうしても行くのですか?」

「はい、もう決めましたんで」

「せ、せめてお礼だけでも…」

「俺達は単なる旅の途中にここに立ち寄っただけ、Cランク冒険者フーカの付き添いですから」

 

そう言ってゴンザレス太郎達、ギルドマスターからSランクの申請をさせてくれと言う願いを断っていた。

ゴンザレス太郎の頭の中は既に一つの事でいっぱいになっていたから仕方あるまい。

 

「それでは俺等は今夜のうちにここを出て、西の果ての町『テンジク』に行くつもりです。」

「そうか…ワシもギルドを経由してお前達の事は知らせておくよ」

「まぁそれは程ほどに、それじゃ」

 

そう言い残しゴンザレス太郎、サラ、フーカの3人は夜の砂漠に旅立つ。

 

「行ってしまったか…ん?なんじゃこの瓶は?」

 

ギルドマスターが見付けたのは『プレゼントです』と書かれた瓶であった。

今の今まで視界に入ってた筈なのに気付かなかったのは勿論ゴンザレス太郎のコード『指定アイテム見えない』である。

ゴンザレス太郎が離れた事でコードの範囲から外れ、コブラも認識できるようになったのである。

 

「ポーションか?」

 

そう呟いて手に取る。

すると瓶の底が抜けていて中身が一気にこぼれる。

 

「おわっなんじゃ?!」

 

慌ててギルドマスターコブラは両手でその瓶からこぼれる液体を手で押さえようとするが…

突然気化するように、瓶から零れた赤い液体はその手をすり抜けた。

 

「えっ?!」

 

そう、それはラストエリクサーで中身が空気に触れたことで気化し効果が発動する。

その効果によりコブラの遥か昔に無くした左腕が復元していたのであった。

 

「本当に、何から何まで…」

 

ギルドマスターは涙と共に彼等が出ていった方向に頭を下げ続けるのであった。

 

 

 

 

 

「さぁ、行こうか二人とも!」

「うん!」

「えぇ!」

「スキル『プロアクションマジリブレイ』発動!」

 

彼等は再び西へと歩みを進めるのであった…

 

「目指すは際果ての町『テンジク』だ!」

 

彼らはまだ知らない、その先に何が待っているのか…



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第32話 可哀想な盗賊

海沿いではしゃぐ3つの人影が在った。

 

「後3歩前だよー」

「タツヤ、もうちょっと右」

「行きすぎよ!ちょこっと左」

「そうそこ」

「いっちゃえタツヤ!」

 

目隠しをしたゴンザレス太郎は二人の声を頼りに歩を進め、指示された場所で手にした木刀を振り上げる、そしてそれを一気に降り下ろし…

 

「や、やめろー!助けてくれぇー!」

 

木刀はその勢いだけで目の前の海を割り、発生した斬撃が何処までも飛んでいく…

直ぐ斜め前で地面から首だけ生やした男はあまりの恐怖に失神していた。

 

「あら?気絶してるわ。もぅ、根性なしね」

「サラ、タツヤは私達のために本気で怒ってる仕方ない」

 

サラとフーカはゴンザレス太郎手作りの水着を着ている。

照り付ける太陽の下、他に人の居ないまさしくプライペートビーチの様な浜辺でその美貌を披露していた。

ゴンザレス太郎も二人を凝視するとちょっとアレがアレするので、目隠しを外しても視線をそらす。

転生前は二人相手に沢山子供まで作って居るのだが、それでも微笑ましいくらいウブだからこそ、いつまでも仲良くイチャイチャ出来るのだろう。

 

浜辺の地面に埋って顔だけ出したまま気絶している6人の男達、彼等がどうしてこうなっているかと言うと…

 

 

時は昨夜に遡る…

 

 

 

 

 

ニーガタの町を西へ出発し、翌朝3人は砂漠を抜けた。

そこは何処までも続く大平原。

この世界最大の弱肉強食の世界が広がっていた。

ライオンの様なカエルが、大量の犬の顔を持つ蟻に襲われ白骨になる。

ダンゴムシの様な体に羽根の生えた蝶が火を吐き、その勢いで二足歩行で追い掛けてくるキリンから逃げる。

水溜まりと思わせて実はスライムという魔物が突然空高く飛び上がり、空を飛ぶ自転車に羽が生えている様な鳥を襲う。

 

ここは人間が避けて通る事で有名なこの世の地獄『帰らずの平原』

その中をじゃんけんで負けたゴンザレス太郎が、二人の荷物を持ちながら次の大岩まで移動している。

魔物は一匹たりとも近寄らない、戦って勝てる勝てないの次元でないのを本能で理解しているからだ。

それでも怖いもの知らずな生き物は勿論居り、3人に迫るバッファローの様な大きな陸を走る海老が…

 

「はい、タツヤあーん」

「サラ、焼いただけじゃダメ。味付けしないと」

 

一瞬にしてサラにこんがりと調理され、3人のオヤツになっていた。

そして、帰らずの平原を普通に徒歩で抜けた3人は美しい海沿いの道に出た。

ここまでくれば人の行き来もあるのだろう、平原を避けるように道があり、視界に入る海を見てテンションの上がる3人。

それはそうである、その海は魔海ではなく泳いでも大丈夫な海である!

 

急ぐ旅でもない3人は海で遊ぶことを決め、そこで夜営をする事にしたのだが、3人が帰らずの平原を徒歩で抜けてきたのを見掛けた男達が居た。

 

「あいつら間違いなく強力な魔物避けアイテムを持ってるに違いない!」

「でへへ、兄貴おであの黒髪の女の子欲しいんだな」

「あの優男は奴隷に売り払うとして女二人は俺達で暫く楽しめそうだな」

「うへへへへ、今夜が楽しみだぁ~」

 

彼等は知らない、その3人が今の10000倍の戦力があっでも誰か一人に傷一つ付ける事も出来ないことを…



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第33話 どっちが可愛い?

その夜ゴンザレス太郎が見張りを行っている時に襲撃が行われた。

武器を近くに置かず、丸腰で火の番をしているゴンザレス太郎の前に現れる二人の男。

片方の男ほ手には剣を持ち、その剣を舌で舐めるという如何にも悪党と言った行為を見せてゴンザレス太郎を威嚇しようとするが…

 

「そんなもの舐めたら汚いぞ…」

 

っとまるで路上販売をしているかのように座ったまま話し掛ける。

その様子に舐めているのは自分なのに舐められてると感じた男、怒りのままにその剣を振りかぶり、そのままゴンザレス太郎目掛けて降り下ろす。

だが剣はゴンザレス太郎のすぐ前を通過し地面に…

 

「あれ?」

 

男の手には剣ではなく火の付いた木の棒が握られていた。

しかも手の中で燃えているおまけ付きで。

 

「うわっちちぃ?!」

「兄貴?!てめぇなにしやがった?!」

 

もう一人の男が掴みかかってきてゴンザレス太郎の肩を掴む!

そのまま持ち上げて握り潰すように火の付いた棒を強く握って…

 

「ぬぁっちゃー?!!」

「兄弟?!」

 

両手に火傷を負った二人、だがそれでもゴンザレス太郎にニヤケた顔を見せながら口を開く…

 

「へへへっ余裕ぶってるのも今のうちだ、お前の後ろのテントの中じゃ今ごろ…」

「うわぁぁぉ助けてくれぇー!」

 

テントから飛び出してきた男二人が泣きながら両手をあげる。

一人は両手が炎に包まれ何をしても消えない。

もう一人は両手が氷に包まれ動かすこともできない。

そして、その後ろには腕を組んだまま睨みつけるような視線を男達に向けるサラとフーカの姿があった。

フーカはピンクのパジャマ、サラは下着の上に上着を羽織った様な格好で凄くセクシーだ。

 

「あんたらにもう一度聞くわ」

「私とサラ、どっちが可愛い?」

 

その言葉に両手を使えなくされている男達は土下座して許しを乞う。

 

「俺達が悪かったー」

「だから許してくれー」

 

ゴンザレス太郎と男二人もその光景をただただ見守るだけであったが、それはこちらにも飛び火し始めた。

 

「そこのあんた!私達どっちが可愛い?」

 

サラがゴンザレス太郎に剣で襲い掛かった男に指を指して尋ねる!

 

「えっ?俺はどちらかと聞かれると…赤髪の君の方が…」

「うっしゃー!」

「あなた曇った目は必要ないよね?」

 

ヤンデレと同じ目をしたフーカ、その言葉と共に発言した男の顔面へ氷が飛び出す。

慌てて手でガードした男はその両腕を同じく氷付けにされる。

 

「そっちの貴方は?」

 

無表情で威圧感タップリのフーカの美声と視線に仲間のやられ具合を見て…

 

「ふ、二人ともとっても可愛いです!」

 

と答えたら…

 

「どちらかと聞いているのに優柔不断な男…」

「私も貴方みたいな人嫌いだわ…」

 

今度は二人同時に攻撃を仕掛け、その男は右手を氷、左手を炎に包まれる。

 

「でタツヤはどうなの?」

「わ…私よね?」

 

急に二人してモジモジしながらゴンザレス太郎に聞く二人に…

 

「フーカはとっても可愛いしサラは凄くセクシーだよ」

「もぅやだぁ~タツヤったら~」

「こんな人前で…恥ずかしい…」

(バカップル爆発しろー!)

 

と心の中で叫ぶ強盗達であった。

 

 

結局見た目だけでフーカとサラの攻撃は大した事もなく、男四人は縛られてその辺に転がされることになった。

 

 

 

「おいおい、あいつら捕まってるじゃねぇか」

「お頭、どうやら予想以上に腕の立つやつらみたいですね」

「仕方ねぇ奴等だぜ」

 

そう言ってゴンザレス太郎の前に更に二人の男が姿を表すのであった。



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第34話 アニメ化の時の為に一応の水着回

「おいお前!」

「・・・・・・」

「聞こえないのか?おい!」

「・・・・・・」

 

大男が怒鳴りつけるがゴンザレス太郎は返事もせずに動かない・・・

 

「お頭、寝てるんじゃないですか?」

「それならそれで都合がいい」

 

大男がゴンザレス太郎に音を立てないように近付く・・・

そして、その剣を振り上げ・・・手が燃えあがる?!

 

「えぇええええええええ!??!?!?!」

 

叫び声に反応してテントの中からサラが出てきた。

下着に上着を羽織っただけと言うセクシーな格好は変わらず、寝ているゴンザレス太郎の方をチラリと見て燃える腕に悲鳴を上げる男に拾った石をぶつける!

 

「シッ!彼寝てるから静かにして!」

 

そう、今はサラが見張り番の時間だったのだ。

でも3人で寝るには狭いテントの中で、フーカとだけ添い寝するのはサラに悪いと思ってゴンザレス太郎は表で寝て、そのゴンザレス太郎にサラの触れると燃える見えない結界を張って様子を伺っていたのだった。

 

「お、お頭!あべっ!」

「だからうるさいって!」

 

再び石を投げて一撃で二人を気絶させるサラ。

その後、特に何事もなく二人の男もローブで縛ってフーカと交代しサラはテントで寝る。

明け方目を覚ましたゴンザレス太郎はフーカの膝枕で寝ていたのに気付いて飛び起きる!

 

「おわっ!ご、ごめんフーカ下が砂浜とは言え、痛かっただろ?」

「ううん、昔を思い出してなんかしたくなったからいいの」

「昔・・・そう言えばそんな事もあったな・・・」

 

2人が話している昔とは、かつてゴンザレス太郎のプロアクションマジリプレイが進化する前、寝るとコードが発動して再び寝るとコードが終了する時の話である。

何回も転生タイムリープを繰り返し、ミリーだけがどれだけの年月が過ぎたのかを知っているが、歴史的には遥か昔の事を思い出し2人は朝日を見ながら微笑む。

 

「おほんっ!なんか二人だけでいい雰囲気になってんじゃないわよ~」

 

後ろからサラがちょっと泣きそうな声で話してきて、それを振り返り見るフーカとゴンザレス太郎。

その後、暫く懐かしい話題で盛り上がり、サラがゴンザレス太郎に好感度MAXで突撃した事、鬼の大群と戦った事の懐かしい話をしていた。

少しして捕まえた男達が目を覚ましたので・・・

 

「よし、浜辺で遊ぶ遊びでもやるか!」

 

実は、昨夜の見張りをしている時にゴンザレス太郎が自身にユニークスキル『錬金術』と通常スキル『裁縫』を使って、有り合わせの布で二人の水着を作っていた。

二人はそれをテントの中で着て、再び男達の前に出て・・・

 

「さぁどっちが可愛い?」

 

と言う質問に、サラが可愛いと答えたらフーカがそいつを生き埋めに、フーカが可愛いと答えたらサラがそいつを生き埋めに、二人共可愛いと答えたら二人で生き埋めにしていき、ゴンザレス太郎の発案でスイカ割りを行う事になったのであった。

ちなみに、ゴンザレス太郎はコード『HP減らない』を発動しているので当てても死ぬことは無いのだが、もちろんそんな事を知らない彼等は空振りでも海を割るゴンザレス太郎の攻撃を目の当たりにし、次々と意識を失っていく。

 

その後、魔海ではない泳げる海があるので、折角だから泳ぎを知らないフーカとサラにゴンザレス太郎が泳ぎを教えるのだが・・・

バタ足で海が割れたりしたので直ぐに断念したのは言うまでも無いであろう。

恐るべしステータス理論値である。

でも泳がなくても3人共魔力を放出して水中に自由に動けるので、手を使わないバタフライなんかを堪能して遊び、初めての海をしっかり堪能し満足していた。

 

そしてその夜、浜辺に男達6人を正座させここから西へ向かう為の道を聞いて、彼らを逃がし3人は翌朝西へ向けて出発するのであった。



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第35話 コピー藁人形

ゴンザレス太郎達が出発して1時間が経過した頃、浜辺から少し離れた場所に6つの藁人形と人数分のロープが落ちていた。

そう、その場所はゴンザレス太郎達が縛り上げた6人が居た場所である。

そして、その藁人形の前に一人の人物の姿が在った。

 

「なるほどなるほど、あれが噂の…」

 

青いローブに身を包み、前屈みの姿勢のその人物は地面に落ちていた6つの藁人形を拾って、その内の一つを頭に近付ける。

目を閉じたまま暫くそうして、ゆっくりと藁人形離して微笑む…

 

「良かった、縛られた時にちゃんと触れたみたいだね」

 

そう呟いたその人物の腕から藁人形を包み込む赤い光が出て藁人形を包み込んでいく…

そして、その藁人形は赤い光の中ですくすくと巨大化し、驚くことに下着姿に上着を羽織っただけのサラに変身した。

 

「あぁ…魔王の娘か…なんて美しいんだ…」

 

無表情の偽サラは頬を撫でられ、ハッと驚いたように意識を取り戻す。

真っ直ぐにその人物を見たサラは慌てた様子で動き出す。

 

「なっ何よ貴方?!ここは何処?タツヤ?タツヤは?」

「おやおや、お目覚めですかお嬢さん」

 

頬を触られていた手を払って辺りを見回すサラ、だがそこにはフーカもゴンザレス太郎も居ない。

そして、ステータスがカンストしている自分が無意識に払った相手の手が何ともない事実に気付かない…

 

「貴方はドッペルドールに体をコピーされたみたいですね」

「ドッペルドール?」

「この辺りに住まう魔物です。人に触って自らをコピーしてその人間と入れ替わって隙を見て人を食らう恐ろしい魔物です」

「そ…それじゃあ?!」

 

聞かされた話を鵜呑みにして、慌てて駆けていく偽サラ…

それはそうだろう、この状況で記憶がしっかりと在る自分が偽物だとは思いもしないのだから。

 

「さぁ試練は与えられた。どう乗り越えるか楽しみにしてるよ」

 

笑みを浮かべる男がもう一つの藁人形を手に持ち、再び赤いオーラが藁人形を包み込み、やがてそれは一人の魔法使いの姿になる。

黒いローブに身を包んだその人物は今の状況を理解しているのか、サラと違い戸惑った様子もないまま目の前の人物を真っ直ぐに見詰める…

その視線に笑みを浮かべ、青いローブの人物は曲がった腰をそのまま沈め頭を垂れる。

 

「ニウム様、お久しぶりでございます」

「ふふふっ、さぁ楽しいショーを堪能しようじゃないか」

 

魔法使いは地面に魔方陣を作り出し、その魔方陣に吸い込まれるように二人の姿は消える。

ゴンザレス太郎達を追いかける自身が本物だと思っている偽サラ。

新たなる波乱の幕開けであった。



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第36話 渡し船が出せなくて…

ゴンザレス太郎達が辿り着いたのは海辺に出来た小さな村であった。

ここから対岸に見える島への渡し船に乗り、更に西を目指すのが旅の正しいルートなのだが、ゴンザレス太郎達は困っていた。

 

「船が出せないってどういう事よ?!」

 

着いて早々、船着き場の強面の男達に西へ向かいたいと訪ねたのだが…

 

「渡し船は今はない」

 

そう言い渡されたのだ。

ニーガタの町でギルドマスターに聞いた話では、この村と対岸の町は定期便が毎日往復しており、町から冒険者ギルドの仕事でこちらに来る人が居る。

なのでタイミングによっては『予約が必要なほど便がある』と聞いていたのだからサラの怒りも最もだ。

だがサラの怒りの言葉に船乗りは言い返す!

 

「仕方ねぇだろ!ミミックジラが出現しているんだから!」

「ミミックジラ?」

「木の箱みたいな体のどでかい魔物さ、船の木材が好物でもう何隻もやられたんだよ、ほらあれだ」

 

そう言って漁師が指を指した方向の海の上に巨大な宝箱が浮いていた。

その宝箱の箱が海上で勝手に開き、その鍵穴から斜め上に潮を吹いている。

だが次の瞬間、突然水上で爆発が起こる!

 

ズガーーーン!!!!

 

一瞬にして木っ端微塵になるミミックジラ。

勿論サラの仕業である。

かなり距離があるにも関わらず、一瞬でそこに火の魔法を出現させ、先日見て覚えたばかりの水蒸気爆発を海の水を使用して発生させて吹き飛ばしたのだ。

 

「なっ何事だ?!」

 

座ってた漁師達がその爆音に慌てて立ち上がる。

そして、全員おろおろし出すのでサラが胸を張って…

 

「吹っ飛ばしたわ、これで行けるわね!」

「お、お前なんて事をしてくれたんだ?!」

「なによ、邪魔な魔物倒してあげたんでしょ?」

「馬鹿言え、あんな事したら…」

 

そこまで言われてサラも理解した。

こちらに向かって波が大きくなってる…

そう、津波である。

 

「全くサラは…」

 

再び漁師達は度肝を抜かれることとなる、フーカが指を鳴らそうとして…

 

「スカッ」

 

と言う手と指が擦れる音と共に津波が粉々に砕けたのである。

明らかに指パッチンの失敗であるが誰もそれには突っ込ま無い。

目を疑うような事象にそれどころでは無いのだろう。

船乗り達を飲み込みそうな津波は、まるで風に溶けるように海面から上の部分の水が細かい結晶となり、サラサラと海の中へ消えていく。

その幻想的とも言える光景にただただ海を見守るだけの一同。

 

だがそんな静寂を打ち破るように、沖合いのサラが吹き飛ばしたミミックジラの残骸を更に巨大なミミックジラが一瞬で丸飲みにする。

 

「一匹じゃないんだ…」

 

そのゴンザレス太郎の呟きで漁師達も我に帰る。

そして、何かを話そうとした時だった。

 

「やっと見付けたわよ!」

 

一同は声のした方を見て唖然とする…

そこには何故か下着姿のもう一人のサラが居たのであった。



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第37話 まるで双子のように

「さ、サラが二人?!」

 

ゴンザレス太郎が久し振りに驚く!

こんなに驚いたのはサラが好感度MAXで飛んできた以来だったので、珍しく驚いてるゴンザレス太郎にフーカも驚いていた。

 

「タツヤ!そいつ偽物だよ!私と入れ替わったドッペルドールって魔物が化けてるのよ!」

「と、突然出てきて何適当な作り話してるのよ!私が本物だよタツヤ!」

「とりあえず服着ろ…」

 

漁師達の目は下着姿のサラに釘付けだったのだが、フーカの手渡した服をとりあえず着てもらい、再び向かい合うサラと偽サラ。

赤い髪も顔の部位も全く同じで、知らない間に入れ替わっていたのだとしたら分からないかもしれない。

 

「タツヤ任せて」

 

そう、こういう時はフーカのユニークスキル程適任な物はないだろう。

『スキミング』に関しては既にゴンザレス太郎も確認済みなのだが、どちらもほぼ同じステータスで違いはなかった。

なのでゴンザレス太郎はフーカのもう一つのユニークスキル『スピリチュアリティ』に頼ることにした。

これはフーカの質問した内容に答えた返事が嘘かどうかを見抜くスキルである。

 

「貴方は本物のサラ?」

「えぇ私が本物よ」

「じゃあ貴方は偽物のサラ?」

「何言ってるのフーカ、私が本物よ!」

「…タツヤ困った…二人共本物みたい」

「マジか…」

 

ゴンザレス太郎は一つの可能性を考えていた。

それは地球に居た頃に見たテレビの内容であった。

 

それはクローンの話で、その人がその人であるには記憶と経験が全てを占める。

どんなに運動神経のイイ人のクローンだとしても、体の使い方を学んでなければ同じ結果は出せないって話である。

つまり、クローンに同じ身体能力に記憶と経験があれば、それを本物と見分けるのは不可能かもしれないと言う話であった。

 

「とりあえずこのままじゃ区別付かないから髪型変えてくれないか?」

「タツヤそれいい考え」

 

どちらにしても船は出ないとの事なので、村に一軒だけある宿に泊まる手配をしに来たわけなのだが…

 

「四人部屋しか空いてない…だと?」

「申し訳ございません、昨日から船が出せないって事で冒険者の方々の予約がもう入っておりまして…」

 

サラとフーカと一緒の部屋なのは問題ないのだが、まるで狙ったかのように四人部屋だけが空いているという事実に違和感を覚えるゴンザレス太郎。

だがここ暫くの夜営続きだったのもあり、仕方なく部屋を取ってサラとフーカを休ませることにした。

後から来たサラに詳しい話も聞きたいと考えていたのだが…

部屋の入り口でゴンザレス太郎一人だけ中に入れて貰えず、中で何やら女性同士で盛り上ってるのを暫く聞いていたら…

 

「タツヤ居るー?」

「あぁ、外に居るぞ」

「入っていいよー」

 

サラの声に返事をしてドアを開けると、そこには天使達が居た。

宿屋に用意されていた浴衣のような服を着た3人はそれぞれ違う髪型にして居た。

ずっと一緒に居たサラは左側に髪の毛を束ねサイドテールにしていた。

後から加わったもう一人のサラは左右で縛りツインテールに。

そして、フーカはポニーテールにしていた。

 

「どっどうかなタツヤ?」

「左右で縛るのってなんか子供っぽくない?」

「私もついでに髪型変えてみたけどどうかなタツヤ?」

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

突然スキルを発動させるゴンザレス太郎。

そして、何かを操作して紙とペンを用意する。

そのままゴンザレス太郎は3人の姿を自分につけたユニークスキル『画家』を使用しスケッチしていく…

 

「よし、こんなものかな?」

 

描き上がった3人の絵を今度は『アイテム減らない』で4枚に増やして各々1枚ずつ保管することにした。

 

「ありがとうタツヤ…」

「「本当にあんたは何でもありね」」

 

フーカはともかく二人のサラは複雑な心境のようだった。

お互いに相手が偽者と考えているのだが、兄しかいないサラはまるで姉妹が出来たみたいな不思議な気持ちになっていたからだ。

 

その後は全員で食事を取って海の見える風呂に入りーーーー混浴じゃないよ!ーーーーゴンザレス太郎だけ少し布団を離して就寝するのであった。



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第38話 敵の真の狙いとは?

久し振りの風呂に加え、布団で寝られたと言うことで朝日が差し込み顔を照らすまでグッスリと眠り続けた一同。

しかし、微睡みの朝は慌てた美声によって唐突に終わりを告げる。

 

「たっタツヤ!?起きてタツヤ!!」

 

フーカの慌てた声で飛び起きたゴンザレス太郎、寝起きにもかかわらず意識はハッキリしていた。

ゴンザレス太郎のステータス『精神』の値がカンストしているのも理由の一つだが、それが関係無いとしても冒険者として夜営で何かあった際に直ぐに動けるように鍛えていた経験あってのものでもあった。

そんな寝起きのゴンザレス太郎の視界に入ったのは、浴衣を着崩している事で起きたばかりなのだろう…

そう理解できるフーカとサラの姿であった。

 

「タツヤ、あれ…」

 

そう、サラが指を指したのは枕の上に頭を置いた藁人形であった。

まるで寝ながらこの姿になったかのようで、浴衣が着ていたままの姿で布団の中に入っている。

 

「きっとこれがドッペルドールの正体なのよ」

 

サラのその言葉に昨夜聞いた話を思い出すゴンザレス太郎とフーカ。

とりあえずお互いに他に何か実害が何か無かったか確認するため、3人は荷物のチェックを行う。

 

「こっちは大丈夫」

 

ポニーテールのまま浴衣が着崩れているフーカは大丈夫。

ゴンザレス太郎も特に問題はない。

まぁ何か無くなっていたとしても、いざとなったら『使用したことのあるアイテムランダム復元』のコードでアイテムを産み出せるので問題はない。

そして…

 

「もう一人の私が装備していたものは無くなってるわ」

 

居なくなったもう一人のサラがこの藁人形なのかは分からない。

状況的にそう考えるのが一番自然と言えるだろう。

しかし、確信が得られないのも事実…

その藁人形を見たフーカが何も言わないからである。

分かったことと言えば、調べた結果彼女が身に付けていた物だけが全て無くなっているらしかった。

被害としては非常に小さく、何が目的だったのか本当に分からない…

結局悩んだ末、そういう魔物だったと言う事で3人は納得した…いや、納得せざるを得なかった。

何が起こっているのか誰にも理解できなかったからだ。

 

「それにしても…この藁人形なんなんだろうね」

 

そう言って藁人形を手に取るツインテールのサラ、チラリとゴンザレス太郎の描いた絵を見ながら寂しそうな瞳で呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

少し離れた場所に二人の人物が居た。

ゴンザレス太郎達の泊まってる宿を見上げ…

 

「ククク…まず一人…」

「ニウム様、次はどちらを?」

「ヤツは最後に回して、あの黒髪の娘にするか…」

「畏まりました」

 

一人の姿が消える。

ローブを着込んだ男はそのまま何処かへ歩いていくのだった。



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第39話 ニウム接触する

「今日も駄目だな~見ての通りだ」

 

漁師の所にきているゴンザレス太郎、サラ、フーカの3人は今日こそは船が出せるか聞いていたのだが、指差された方向を見ると浮いている流木を一飲みで食べてしまうミミックジラの姿が在った。

 

「喰うものが無くなったら居なくなるんだけど後数日はこのままだろうな」

「そうですか・・・」

 

結局諦めてその日も特に何もない村をウロウロして時間を潰す事にした3人。

実はフーカが水面を凍らせながら徒歩で歩けば渡る事は可能だし、ゴンザレス太郎にも『地形の変化受けない』のコードを発動すれば水面を歩いて渡ることが可能なのだが、サラが船に乗ってみたいと言うのでまだこの村に居る事にしている。

特に急ぐ旅ではないのもあるし・・・

 

 

「それじゃ私達は雑貨屋に行ってくるね」

「あぁ、俺はそこの食堂で軽く食事してるわ」

 

サラとフーカはちょっとお店でも見るかと言う事で二人で雑貨屋へ行く事にして、ゴンザレス太郎は小腹を満たす為に食堂で海鮮料理を食べるつもりだった。

最初フーカもゴンザレス太郎と一緒に行動するつもりだったのだがサラの・・・

 

「間食は太るわよ」

 

の一言でフーカも雑貨屋へ行く事にした。

何度結婚した相手でも、綺麗な自分を見せたいと言うのは乙女心なのだろう。

食欲に勝つとは恋する乙女はやはり凄いものである。

 

雑貨屋で何に使うのか良く分からない商品を笑い合いながら物色したサラとフーカ、今朝の事を考えながらもどちらから言葉に出す事もなくお店を見て回る。

その時、サラが貝殻で出来た飾りを手に取ろうとして別の人と指が触れる。

 

「あっごめんなさい」

「いえ、こちらこそ・・・」

 

見た目魔法使いのその女性はサラと指が触れただけでサラの魔力を感じ取っていた。

それはありえない量だったのだろう、伊達にカンストしていないのである。

 

「あっごめんなさい、あまりに凄い魔力を感じたんでビックリしましたわ」

「あぁ、驚かしてごめんなさいね。貴方も船待ち?」

「そうなんですよ、私のパーティも依頼を受けてこっちに渡って来たんですけど、このままじゃ期限切れになってしまいそうで・・・」

 

冒険者ギルドの依頼には当然ながら期限がある、それは道中なにがあろうと間に合わなければ依頼失敗となるのはサラも知っていた。

なのでその話を聞いていい加減自分にとっても他人にとっても何とかしないと駄目だと考える。

そんなサラの顔を覗きこむその魔法使い風の女性は・・・

 

「あの、すみません。貴女のその魔力を見込んでお願いしたい事があるのですが・・・」

「ん?なにかしら?」

「ここじゃちょっとアレなので店の裏に来てもらえませんか?」

 

少し悩むサラであったが、フーカが触る度に表情の変わるトーテムポールみたいな顔が沢山付いた置物で遊んでいた。

なので声を掛けて待ってて貰う事にして魔法使い風の女性の後を付いて行く・・・

 

「申し送れました。私、ローラと言います。」

「私サラよ、ところでお願いって?」

「それは・・・」

 

そこまで言って二人の前に一人の男が立つ。

青いローブを身に纏いサラの目を見つめたその男は怪しく笑う・・・

 

「昨日振りですねお嬢さん、この町で会うなんて偶然ですね」

「あなたは・・・えぇ、本当ですね」

「それでお仲間とは再会できましたか?」

「はい、おかげさまで」

「それは良かった。ドッペルドールはもう元の藁人形に戻ったと思いますが・・・」

 

そう言って青ローブの男はサラに向けて手を広げる。

その手にはいつの間にか藁人形が握られており。

 

「私達の仕事もこのドッペルドールを倒して狩る依頼を受けてましてね、もしよろしければその元に戻った藁人形いただけませんか?」

「あ~まだ宿に置きっぱなしだわ」

「そうですか、それでは・・・」

「何処に行くんですか?ドールマスター『ニウム』さん?」

 

サラのその言葉にニウムは表情を一変させて距離をとる。

 

「ちっユニークスキル『スキミング』か?全く厄介な、こうなったら作戦変更だ!」

「なにっ?!」

 

次の瞬間サラの体に大量の鎖が転移してきて体を拘束される。

恐ろしい事に鎖の一部は体内に埋め込まれるように皮膚の中に出現したのだ。

 

「ニウム様、捕まえました。」

「全く、もう少し役立ってもらう予定だったのに。仕方ないな、一度藁人形に戻すか」

 

そう呟きサラに手を伸ばす。

そして、ニウムの左手から黒いオーラが発生し、それが球体となって広がる。

それが横に立っていた魔法使い風の女性に触れるとその女性も藁人形に戻って地面に落ちる。

それはニウムの藁人形を変身させた状態から強制的に元の藁人形に戻す結界。

範囲に影響を及ぼすので一定の距離までは何も抵抗できず強制的に藁人形に戻されるのだ。

 

ニウムの口元が大きく歪む。

そして、サラはそれから逃げる為に後ろに大きく跳ぶのだった。



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