突然目の前にエロゲの人気ヒロインが現れた時どうするかを答えよ。 (ケロもり)
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すべての始まりのプロローグ

前作を読んでいただいている方はお久しぶり、初めての人は初めまして。ケロもりです。

久々の投稿です。先に連載してるやつ書けよ!という意見はあると思います。ここ2、3年は精神的な余裕がなかったこともあり小説を書けていませんでした。しかし久々に喫茶ステラと死神の蝶をプレイしたところ創作意欲がわいたので書きました。楽しんでいただけたら幸いです。


輪廻転生というものをご存じだろうか。

今私の手元にあるスマホによると輪廻(りんね)または輪廻転生とは、サンスクリット語のサンサーラ(संसार saṃsāra)に由来する用語で、命あるものが何度も転生し、人だけでなく動物なども含めた生類として生まれ変わることを指す言葉らしい。

 

突然こんなことを言い出したのは訳がある。私だって暇じゃない。

こんなことが無ければこの言葉をしみじみと調べることもなかっただろう。

 

思い返してみると自分が普通じゃないことは成長していくにしたがってハッキリとしていったように思う。学校で習う漢字や計算のやり方は教科書を見た瞬間理解できていた。このことを両親に伝えると、やれ天才だのやれ神童だの言いベタ褒めしていた。

なおその後夫婦そろって子供の前でいちゃついており、「情操教育的にどうなんだ…」なんて教育を受ける側が思っていたことは秘密である。

 

このような違和感は年々増えていき齢が二桁になったころおのずと理解し、確信した。

”私には前世の記憶がある。”と

 

今世の経験から察するに、どうも記憶を思い出すのには何かトリガーが必要らしく、好き勝手に前世の記憶をのぞき見できるわけではないらしい。まったくもって面白くない。何か具体的な内容でも思い出せれば大っぴらに前世があると他人に言えるものの、何もなければただの痛いだけの人間でないか。

 

まあ転生ものによくある乳児期の赤ちゃんプレイの記憶が無かったのは心の底からよかったと思うことにしよう。

しかし前世からの記憶というスパイスがあったことで全国の青少年が罹患する若き病に侵されてしまったことは今世における最大の汚点である。

みんなもあるでしょう?え、ない?うそでしょ?まあ、い、今はマイノリティの方の意見が重要視される世の中ですし、多様化ですぅ~。ほんと多様化だーい好き。多様化サイコー。世界平和も夢じゃない。

 

そんな古傷を抱えたりしながらも私はすくすくと成長を続け大学に入学し勉強を続け、内部推薦で大学院が確定したのがつい先日のことである。

教授や先輩方、友達のサポートのおかげもあり、無事に合格でき肩の荷が下りた。

 

しかしまだ私にはやることがある。基本怠惰な私だがさすがに22にもなって親の脛を後二年もかじり続けるのはいかがなものかと思っていた。

前世も合わせると最低でも40歳は超えているだろう精神年齢的に親孝行はしておきたい、前世ではろくに親孝行もできなかったようで焦燥感に似た感情が私にはあった。

 

そんなわけで善は急げと本日、快適な環境を求めわざわざ大学までやってきたのである。この時間の食堂は人も少なく、エアコンにより年中快適な温度に調整されていることもあってか静かな環境を求める同志がまばらにいる。

時折聞こえる本をめくる音やパソコンのタイプ音などが程よい環境音となっており個人的には非常に落ち着くところだ。まさしくベストプレイスの名に恥じない場所であろう。

 

どこか落ち着ける場所は無いかと私はあたりをぐるりと見まわす。するといつも人に使われているコンセントが2つ使用できる壁際の席が目に留まった。

今回はパソコンを使うし、携帯の充電残量も少々心もとないこともあるので渡りに船だ、同志たちには悪いがそこのVIPシートを使わせてもらうことにしよう。ついでに作用スペースの確保のために多少行儀が悪いが両隣の席にも荷物を置かせてもらうことにする。

毎年決して安くない施設利用料を払っているのだ、これぐらいは大目に見ていただきたい。いや見ろ。(豹変)

 

そんな小ボケをかましつつ、大学のwi-fiを使いPCで求人を見る、しかし出てくる工場のライン作業員やらスーパーのレジ打ちやらは前世が警告を出してくる。曰くどれも『精神や肉体的にきつい』とのこと。主に腰がやばく爆弾を抱える羽目になったとか、ならなかったとか…

どうでもいいことも共に分かったが、さすがにきついだけの仕事はやりたくないし、職場関係が良ければなおのこと良い。

「ラクで楽しそーなの無いかなぁ~」なんて社会をなめ腐ったことを考えたことが悪かったのか液晶とにらめっこすること数時間、まったくと言っていいほどピンとくるものが無い。

 

さすがに頭が回らなくなってきたのでおもむろに机に突っ伏す。

ほんとこの前世、ありとあらゆるバイトの揚げ足取りばかりがうまい。勤労意欲を失わせることにかけては天下一品である。後今回ので分かったが、ありとあらゆる仕事に詳しすぎるし、職歴不詳すぎる。絶対碌な奴じゃねぇ。知れば知るほど前世のなぞは深まるばかりである。

 

わからないことは考えてもしょうがないと諦めて顔を上げると外の景色が目に入ってきた。どうやら日が傾き始めているらしい。空の茜色に染まるグラデーションが綺麗だ。

気合を入れるために買ってきたお供のコンビニのホットコーヒーもすっかり冷え、苦いだけの液体になってしまっている。

せっかくPCを使っているのでスタバとかの窓際でドヤっている意識高い系を意識して(激うまギャグ)コーヒーを買ったのが失敗だったようである。

私は続いて椅子から立ち上がると大きく伸びをし、そのまま体をひねった。軽快なパキポキという音とともに筋肉が弛緩し、血流が戻りほのかに背中が温かい。そのせいかあくびも出てきた。

まだまだ暑いが暦の上では9月、立派に秋である。もう少し涼しくなったら昼寝もしやすいな、なんて考えながら冷めたコーヒーを一気にあおり、PCを鞄にしまい大学の正門を出た。

余談だがコーヒーにフレッシュミルクと砂糖を入れ忘れないようにしようと私は心に誓った。決してコーヒーが苦かったからでは無い。無いったら無いのである。

 

私が通う大学は近年再開発され近代的な装いとなった、比較的大きな駅が最寄りとなっており住宅街の中にある。交通の便もよく、近くにうちのような教育機関があるからか、やたらと学校が多く小中高大とここらの地区で事足りるほどである。そんな学生の町の中で私はここ数年のんきな一人暮らしをしている。

一人暮らしというものは勝手に御飯が出てくるなどの恩恵はないものの、それ以上の自由を与えてくれるものだと私は思う。その自由の中で私が目覚めたものは煙草である。

 

きっかけは暇つぶしにと家の周りをプラプラと散歩していた時に、レトロな煙草屋を見つけたことから始まる。今思い返せば多分前世の影響もあるのだろう、私は誘蛾灯に惹かれる虫のようにその店の中に入った。

煙草といえばコンビニでよく見るマルボロやらマイルドセブン…あぁ今ではメビウスだっけ、まあそんなメジャーなところしか知らなかった私には壁一面に並べられている数多の煙草に目を丸くした。私でも見たことのある銘柄の他にも、フルーツやチョコレートのフレーバーがある煙草など見たこともない物まであった。

 

そんな風にしげしげと煙草を見ているとこの店の店主とおぼしき御仁に声をかけられた。なんでも年若く、見たことのない顔だから声をかけたらしい。この時驚いて「おうぅ!!?」なんて声を上げてしまったものだから優しいものを見る目で見られてしまった。お恥ずかしい限りである。

普段店員から声なんてかけられたら逃げだしてしまう私であるが、恥をかいたついでだとばかりに思い切って洗いざらいしゃべってみると数種類の煙草を試喫させてもらえることになった。このとき私の前世が母親の乳首が忘れられない軟派野郎だったことが確定したのである。

 

まあそんなわけで私のヤニカスライフはスタートした。喫煙しだしてから本格的に理解したが、世間では喫煙者に対する風当たりが強いこと強いこと。細身で華奢な私が吹き飛んでしまいそうである。もちろん路上での喫煙などしようものなら周りから白い目で見られることこの上ない。なので大学以外だと専ら、家かこの煙草屋で吸うことが多い。

今日は一服ついでに新しいフィルターを買うことにする。活性炭フィルターは私には合わなかった。のどがイガイガするのが気に食わん。体に悪い方がおいしいことが証明されたな。ガハハ

なんてくだらないことを考えながらもうすっかり通いなれた煙草屋の喫煙室の扉を開く。すると備え付けのソファに優雅に腰かけパイプをふかすナイスミドルがいた。

 

彼はシゲさんフルネームは知らない、ナイスミドルだが最近家でも煙草を吸う場所を奪われてしまった上に思春期の娘に本格的に避けられている哀れな中年である。ペコリと会釈をするとにこやかに挨拶を返してくれた。相変わらずダンディである。

久々に会ったので煙草を巻きながら近況を訪ねると、なんと娘さんに「パパ臭い!!」と言われてしまったのだという。「いつか来るとは思ってたサ…」とこぼす言葉の震えが同情を誘う。臭いのは煙草のせいでは?と思ったがそれでは私まで親父臭いということなってしまうので全力で目をそらし、一時的なものですよきっと。と無難な言葉を選び励ます。この時「本当かね!?」と縋り付いてきたので、そういう必死なところも原因では?と思わず言ってしまったところ涙目になってしまった。さすがに言いすぎてしまったのでダメ元で前世の記憶に思いをはせると前世の私が『そんな鋭く繊細な父親心を切り刻んだらダメっ!シゲさんの気持ちわかる、わかるわー』と説教交じりに激しくうなずいているのが幻視できた。幻視までできるとか相当である。てか前世っ!既婚者だったのん!!?何気に人生一番の衝撃である。なんだろうこの敗北感…。性根がクソガキのくせに生意気なことこの上ない。ムカついたので幻視できた前世に吸った煙草の煙を吐き出しかき消した。

 

そんなこんなでシゲさんをなだめながら話をしていると、私がバイトを探しているという話題になった。するとなんとシゲさんから耳寄りな情報がもたらされた。ここからほど近いところにチェーン店ではないカフェが新規でオープンするらしい。最近娘さんが電話で話しているのを聞いたと言っていた。

『そういう風に盗み聞きをしているから嫌われるのでは…』と思ったが胸に秘めておくことにする。

個人経営の喫茶店では求人サイトに載らないのも納得であるし、よくよく話を聞くと求人を通り沿いに出そうとしているとのこと。これはまさしく吉報である。

オープニングスタッフとなればそれ以前にあった人間関係に煩わされずに済むし、もしかしたら友達もできるかもしれないではないか。先に言っておくが私はボッチではない。決してボッチではないのだ!(超大事なことなので2回言いました)

コホン、取り乱した。別に誰にも話しかけられないわけではない、ただ元来の口数の少なさが災いしているのか、それともその他に原因があるのか…なぜか遠巻きに見られているようなのである。私はむしろ心の中ではおしゃべりなのだもっと気軽に来てくれていいんやで?

………そこ陰キャとか言うな。根性焼きするぞ♡

 

ともかく今回の話は逃したくない、ここまでの労働環境はそうそうないであろう。何よりちょっと面白そうではないか、ひそかにユニホームとかの特別感のある格好にあこがれを持っていた私としてはプラス要素である。ちなみに頭の片隅に『ラクそうなのでは…』という言葉がよぎったことはここだけの話である。

 

私はシゲさんに丁重に情報提供のお礼を言うと「貴重な喫煙仲間のためさ、お安い御用だよ」とダンディにほほ笑みながら手を振ってくれた。さっきまでの醜態がうそのようである。そうして私は喫煙所を軽快な足取りで後にした。

 

……あ、フィルター買い忘れた(´・ω・`)

 

さてさて買い物を終わらせたし、気を取り直すことにしよう。シゲさんに聞いた住所を携帯の地図アプリに打ち込む。なるほど確かにここからほど近く、しかも比較的我が家に近いのも素直にうれしい。ルンルン気分で私は件の喫茶店に足を向けた。心は遠足気分である。

地図アプリとにらめっこしながら普段通らない道をあっちでもないこっちでもないと右往左往していると表に木製のベンチがある建物に目が入った。すぐ横にある入り口にはガス灯を模した門灯が掲げられており、雰囲気のある木製の扉も相まってモダンな雰囲気が醸し出されていた。どうやらまだオープンはしていないようで、はじめは気づかなかったが扉の脇にはイーゼルがおかれておりそこに手書きと思われる『アルバイト募集』の文字が輝くカラフルな求人ポスターが立て掛けてある。

まじまじとポスターを眺めているととある問題に気付く。どこをどう見ても連絡先が書いていない。これではアルバイトの応募ができないではないか。せめて連絡先は手に入れたい。アポなし突撃をかませるほど私の精神は強くないのである。せめて何か手掛かりはないかと腰を曲げて求人ポスターを見ようとすると、肩口あたりで切りそろえられた髪が頬を撫でたので耳の後ろに掻き上げる。耳には誕生日に母からもらった女性もののデザインの小さなカラーストーンが輝くシルバーのピアスが小さく主張していた。

 

その瞬間のことである。今まで誰もいないと思っていた喫茶店の扉が急に開いたのは

 

「あいたっっ!!」

 

「わっ!?す、すいません!」

 

勢いよく開いた扉に油断していた私が反応できるわけもなく思いっきり額を打ち付けてしまった。コーンといい音がした。腫れるかもしれない、痛いなり……

 

「大丈夫ですか?今冷やすもの持ってきます!」

 

「いえいえ、扉の前に座り込んでいた私が悪…かっ……た…」

 

「??」

 

「四季……ナツメ……?」

 

「は、はい?そうですけど……?どこかでお会いしたことあります?」

 

私はあまりの混乱で四季ナツメの質問に「ああ……うん」と唸るように返事をするので精一杯だった。

全部はわからないが知っている、知っているのだ。この目の前の伝統的なデザインのメイド服を、そしてそれを着ている女の子のことも。そしてこの喫茶ステラという店名のことも。

そして何よりこの世界がフィクション…しかもエロゲの世界ということをっ!!

 

そして湧き上がる危機感、エロゲの世界に女として生まれてしまっているこの事実に!

 

(わ、私、犯されるうぅぅうううううううう!!!!)

 

(いのり) (さく) (22)人生初めて訪れた貞操の危機である。

 

問:突然目の前にエロゲの人気ヒロインが現れた時どうするかを答えよ。なお中途半端な前世の記憶により本人は四季ナツメ以外にキャラクターを知らず、このゲームが純愛系のエロゲだと知らないものとする。

 

答:




失踪してた間に世間はだいぶ様変わりしましたね。

この話は先のこととか特に考えずめちゃくちゃ見切り発車で書きました。皆さんの反応を見て連載するか考えたいと思います。なので気軽に感想、評価をお願いします。一応アンケートを下に置いておきますので反応はどちらでも構いません。

著者は筆が非常に遅いので気長に待っててくれるとありがたいです。


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