上里ひなとはts勇者である (エフさん)
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初投稿です。自分の妄想とか書いてます。 最初に言っておく続くかわかんねぇ。 あと語彙力ないです。
にわかです。 ストレスが出てくるかもしれません。あーゆーおーけー? たまに適当になったり 自分で作った設定だったり、原作の設定を無視します。
因みに死に設定になったので見なくていいです


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主人公 上里ひなと

身長160 体重50 黒髪ソフトモヒカン 特技チートなしじゃ特にない 趣味ゲーム 読書だが杏や千景の会話にはついていけない うどんよりそば

異世界転生したときにチートを授かる 戦いの才能 全知全能(使いこなせないが) いろんな技、能力が使える 原作の知識があるなど

前世の記憶を持った転生者

前世の人の創作物の技が使えるチートだが本人は使い方などの応用が利かないため好きだった仮面ライダー電王やディケイドを使う(核兵器なども使えるが樹海が傷つくため使わない)

上里ひなたの弟であるが拾い子のため血のつながりはないので同い年

小3の時母が高知に転勤する際寂しいということでついっていった。そこで郡千景と出会う。原作の知識があったのでずっと助けていたら流れで仲良くなった(察しろ)。

変身する際にts化する身長が145になり体重が35 巨乳 黒髪ロングになる。球子よりちっちゃくなるためあおられたりワザリングハイツに狙われたり姉に盗撮されたり

千景にかまわれたりする。

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上里ひなた 

主人公の姉 弟とは血がつながっていないことは知っている 弟にも若葉と同じような愛情を持っているいわゆるブラコン

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乃木若葉

主人公とは幼馴染にあたる 主人公にひなたに振り回されたときの愚痴などひなた関連の話をよくする そば好きなのはいけ好かない

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郡千景

主人公の一個上 主人公がいじめをかばってきたときは警戒していたがずっと助けてくれていたため信頼していくようになっていく 主人公は原作の知識を持っていたため

親に縛り付けられないように親を説得し上里家の養子となる。7・30天災の少し前に主人公の彼女となる。(少しヤンデレ気味)主人公とゲームするが大体勝つ

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伊予島杏

一緒の本を読んでたらそれについて話す程度 主人公のたまに出る全知全能で戦略を立てる tsしたらワザリングハイツが発動する

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土居珠子

虫や魚が触れない主人公を見て自分のほうが男子っぽくない?って思ってたりする ts化したら自分より小さいのが出るのであおりまくるが胸に関しては少しのいら立ちを持つ

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高嶋友奈

やばい特に設定ないぞ 主人公と一緒に千景のサンドバックになる ts化した主人公に対してかわいいなーという感情しか持っていない

主人公とは何か知らんが本音で話せる。うどんを食べろと思ってる。



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番外編
番外編第一話 上里ひなたという勇者(4話)


はいいつも通りです
感想で来てたので書いてみました。
四話の一部の補足みたいな感じです。
いつもより短いです。
途中文章がおかしいです。
お気に入り登録、評価、感想ありがとうございます。
寝ぼけてた頭が一気に現実に引き戻されました。もっと文章書くのがうまくなりたい...
今回も?皆様の暇つぶしになれば幸いです。



初陣が勝利に終わったあと、俺は大社に呼びだされていた。

 

「どうぞそこにお座り下さい」

 

「え、あ、はい」

 

俺は職員が指すなんか豪華そうな椅子に座った

やばいコミュ障発動してる...しっかり受け答えできるかなぁ

 

「まず、大社は勇者をメディアなどを通して公表することにしました」

 

俺は相槌をうつ

 

「その際、大社は女子の集団の中に女子になったとはいえ男子がいるのは世間的に良くないとの意見が出ました」

 

ふむふむ

 

「そこで大社は勇者の名前を上里ひなとではなく貴方の姉の上里ひなたにすることにしました」

 

以下同文

 

「そこで貴方には姉になれとは言いませんが、少なくとも女口調にして貰わなければなりません。明後日にはインタビューを控えておりますので」

 

急すぎじゃありませんかねぇ…

 

「そこで今日で女口調をマスターして頂こうかと思います。しかしただ女口調をマスターするだけでは面白くありません。ということで男性受けが良いキャラを作っていこうかと大社は考えました」

 

ん?雲行き怪しくなってきたぞ?そう思いつつ俺は黙って話を聞く。

 

「今勇者には主人公ぽい奴と、元気、物静か、バカ真面目、ダークなどの属性が集まっております。そこで今ここにはいないかつ、ひなと様の今の容姿に合っているお嬢様で行こうとの意見が出ましたので、お嬢様の口調を覚えてもらおうと考えております。意見があるならどうぞ」

 

「ありまくりだボケェー!なんで俺がお嬢様口調なんだ女の容姿で俺とかいえばいいだろ!?」

 

と俺はツッコミをする。帰ってやろうかな?

 

「いえ、それではダメです。容姿に合いません」

 

と、淡々と職員は言う。何淡々としてんだ。

 

「話が通じ無いようだ...俺は帰らさせてもらう」

 

と俺は立とうとする

 

「そうですか...なるべく勇者様には手荒な手を使いたくなかったのですが…」

 

と、職員が言った瞬間俺が座っていた椅子の腕掛けと足元から足と手を固定する装置がでてきた。わかりやすくいえば、俺が座っていた椅子が拷問でよく出る椅子になった!

 

「ちょっと!何してんだ!?自分で言うのはなんだが勇者にこの対応はないんじゃないか!?」

 

「大社も真面目なのです...何とかして市民受けを良くして、安全だと思わさせる必要があるのです!ついでに経済効果も出ればいいなとも思っていますけど...」

 

「後者の方が本音だよな...」

 

俺は呆れるように呟いた。

 

「とりま、貴方様にはおぜうさま語をマスターしてもらいます。反抗的な態度を取った場合、ひなた様から聞いていた貴方様の苦手なものを突っ込んだり目の前で見せます。ちなみに順従なまま終えた場合。最高級うどんを大量に食べさせてあげましょう」

 

「どっちも罰ゲームなんですけど!?」

 

え、完璧に俺メリットないやん...

 

「さて、時間がありません。今からもう始めますよ。ではまずはじめましてをお嬢様語にしてみてください」

 

「え?はじめましてじゃないんですか?」

 

シンプルに分からないのでそのままにして返す

 

「ふざけてるのですか?ゴーヤ突っ込みましょうか?」

 

「待って!やめてください!ほんとにわかんないんです!すいません!」

 

俺が慌てて主張すると、職員は眉間に手を当て

 

「これは...先が思いやられますね...」

 

といった

 

「ちなみにはじめましては『ごきげんようでございますわ。お目にかかれてうれしうございますわ。』です」

 

長くね?

 

数時間後...

 

「では次は皆様の安全は私たち勇者が保証致します。をお嬢様語にしてみてください」

 

「皆様の安全はわたくし達勇者が保証致します。です」

 

「違いますわたくし達ではなくあたくし達です。何回間違えるんですか?」

 

職員は睨んできた怖い...もう帰りたい...と思い俺は

 

「すいません...トイレに行きたいのですが...」

 

といった。拘束さえ外してしまえば勇者システムを起動し、逃げれるからだ。だが職員は

 

「そこで漏らせばいいのでは?そもそもひなた様から女体化してからトイレに行かなくても良くなったとひなとが言っていたと聞いたのですが?」

 

と冷酷に言った。

 

「ぐぬぬ...」

 

もう大人しく従おう。そう思った。

 

数時間後...

 

「では、今度は、皆様の応援と声援で私たちはやっていけます。これからも応援お願いします。をお嬢さま語にしてください」

 

「皆様の応援と声援であたくしたちはやっていけます。これからも応援お願いしとう存じます。」

 

「...よろしい。あとはしぐさですね。」

 

「...え?今度こそ帰らせてくださる!?お願いします!もうめんたるぼろぼろなんです」

 

「いえ、ただ手を重ねて膝の上に置いたり、おなかの上に置けばいいだけなのでもう帰って大丈夫ですよ。これを覚えたのならですが」

 

その言葉を聞いた瞬間あたしは首を縦に振り

 

 

「もう覚えました!この拘束を解いてくださる!?」

 

「...少し思うところはありますが、まぁできているようなのでまぁいいでしょう」

 

と言って拘束を解いてくださったわ。とりあえず早く帰りたい一心で寮の道を行くんですわよ。おねえさまのメールによると、みんな食堂にいるらしいんですの。

 

食堂...

 

食堂に着くといち早く気づいた若葉さんがこっちに手を振り声をかけてきたわ。

 

「おー、ひなと、大社に行ってたんだってな。ご苦労様だ。ちなみに何やってたんだ?」

 

「ほんとに疲れましたわ...えっと大社にはでございますわね、近日行われるインタビューの説明を受けていましたわ」

 

と両手を重ねてを腹にあて...ん?あたし...じゃなくて俺は今誰に向けてお嬢さま語を使った?そう思って前を向くと

みんなが混乱してるような顔をしていた。すると正気に戻った球子が、

 

「ククっ...フフフ...( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \」

 

と大声で笑った。俺は慌てて

 

「ちょっ、ち、違う!笑うな!忘れろ!お願い忘れて!」

 

と言ったが無理そうだ...お姉ちゃんは、ニマニマしてるし、杏は笑いをこらえているし、友奈はにこにこしていて、若葉は憐れそうにこっちを見ている。ちーちゃんは下を向いててよくわからない。

 

「だってよー、普段男のやつが大社に行って帰ってきたらお嬢さまっぽい口調になってたんだぞ...笑うしかないだろ!( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \」

 

なんか顔腹立つな...そう思ってたらお姉ちゃんがボイスレコーダーを取り出し再生ボタンを押した。

 

『ほんとに疲れましたわ...えっと大社にはでございますわね、近日行われるインタビューの説明を受けていましたわ』

 

という音声が流れてきた。流れた瞬間俺はお姉ちゃんの持っているボイスレコーダーを奪いに行った。

するとお姉ちゃんは自分の手を高く上げた。身長の低い自分では届かない位置だ...

 

「お姉ちゃん!お願いだからすぐ消して!」

 

と懇願してみたが、お姉ちゃんはからかうような顔をして、

 

「いやですよ...何でこんな貴重な素材を手放さなければならないんですか」

 

と悪びれもせず言った。ちーちゃんは

 

「ひなたさん、後でそれコピーして、もらえないかしら?」

 

「いいですよ。ついでに盗撮していたのであの仕草の写真も上げましょう」

 

「最高よ、ひなたさん」

 

と、お姉ちゃんとこそこそ話をしていた。その話を聞いて殴りにでも行こうかなと思っていたら友奈が近づいてきて、

 

「その口調とってもかわいいと思う!」

 

とよくわからないことを言ってきた。

 

翌日...

 

俺が教室に入ると、球子と杏がこっちに向かって礼をして、

 

「「おはようございます。お嬢さま」」

 

と言ってきた。もう無視した。次に入ってきたのは友奈だった。

 

「おはよう!あんちゃん!タマちゃん!お嬢さま!」

 

あ、これ一日中続くやつだ...

 

そして昼休み

 

俺の心がまだ持ってるのはちーちゃんにある。まだ今日は話していないので、まだおぜう呼びされていないのだ。ちなみに若葉とお姉ちゃんからはもう言われている。俺が久しぶりにうどんを食ってたらちーちゃんが隣に座ってきて、

 

「お嬢さま毒見は大丈夫ですか?」

 

と言ってきた。正直ちーちゃんは言ってこないだろうと信じていたのでむっちゃ心に来た。あれなんかうどんがしょっぱくなってきたな...とりあえず八つ当たりだがもううどんは食わないようにしよ...そう思ってると周りが騒ぎ始めた

 

「ちょっと乃木さん!ひなと君泣き始めちゃったわよ⁉どうするの⁉」

 

「え⁉わ、私のせいか⁉えーとこういう時はご機嫌どりだ!」

 

本人の横で言うなや...

 

「そうですね!若葉ちゃん!ひなと、なんかしてほしいことありませんか?」

 

「若葉のはいいけどカメラにある写真をバックアップ含めて全部消してほしい」

 

「無理ですね!一生そこで泣いていてください」

 

「「「「「ひな(ちゃん)た(さん)⁉」」」」」

 

「ひなた!いいから消せ!」 「そうよ!カメラにある中でいいのよ⁉現像すればいいじゃない!」

「千景さんそれです!」 「ほらひなちゃん!早く現像して消そう⁉」「そうだぞひなた!」

 

「...っしょうがないですね...ほらひなと消しましたよ...これでいいんですか?」

 

正直真横でそんな会話されておいて許してくれると思っているほうがおかしいのだが、まぁいいか

 

「いいよ」

 

と言って許した。

ま、この数日後雑誌の勇者でありお嬢さまというメディアの説明で煽ってきて不貞腐れるのだが...

 

 




オリジナル?なので展開をどうするのか一から考えなければならなかったので大変でした。
次回はフツーに戻るかなぁ。


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番外編第二話 盟約に誓って(閑話ともいう)

超絶遅れのメイドの日とゆゆゆい五周年記念です(ゆゆゆい要素無いに等しいけど)
因みに番外編はふざけると決めました。なのでキャラ崩壊などが多いです(ついでに♡ネタも)
因みに休みは継続中です(休みとはいったい...)
お気に入り登録ありがとうございます!
あ、ここから先は地獄ですキャラ崩壊が我慢できない人はブラウザバック推奨です。



それは、この間起きた大侵攻の後の夕方くらいのことであった。

 

カチャカチャ『うわー!』『ドーン!』

今俺はちーちゃんの部屋に来ており、一緒にゲームをしていたをしていた。まぁ即死コンボされて一瞬で負けたんですけどね!

そうやって負けて、次の勝負に行こうとしていた時に突然ちーちゃんが

 

「そういえば、五月十日ってメイドの日らしいわ...」

 

と言ってきた。

 

「へぇ~なんで?」

 

「えっと...確か五月を英語にするとメイで、十日をドと読んでくっつけるとメイドになるからね」

 

「ふ~んなるほど。でもねちーちゃん、そんな話をしたところで今は二月後半だよ?」

 

「まぁそうね...確かにこの話題が季節外れなのは認めるわ...」

 

「というかなんで今その話したのー?」

 

俺が小首をかしげながら言うとちーちゃんは不敵に笑いながら

 

「それは私がいろんな店を回って、ド〇キ(以下鈍器)で買ってきたらよ。さすが鈍器ね...何でも売ってるわ」

 

とどや顔で言った

 

「へ、へ~それはすごいね。えっと...俺ちょっと用事を思い出した帰るね」

 

「彼女と遊ぶことよりも大事なようがあるのね...やっぱり私を捨てるのね...」

 

ちーちゃんは顔をうずめていったので俺は慌てながら、

 

「ちょっ⁉違うよ⁉捨てないし!というか今の流れで着せてくると思ったから、逃げようとしてきただけだし...」

 

と言った。そうしたらちーちゃんは顔をこっちに向けさっきヤンデレ化?してたのがウソのような態度で言った。

 

「もちろん着させるわ...そのために買ってきたんだし...でもただ着させるだけじゃつまらないからゲームをしましょう?」

 

「いや俺確定で負けるやん」

 

「安心して、ハンデをあげるから...そうね...今やった格ゲーで勝負するのはどう?ハンデは私はガードをしない、即死コンをしないとかでどう?」

 

「そんなにいいの?」

 

ちなみにやっているのは、スマ〇ラである、ギリ製作が間に合ってSPが発売された世界戦ね、ここ

 

「全然いいわよ...と言っても攻撃をガードしないだけでガードキーは押させてもらうけどね」

 

「ちなみに俺が勝った時のメリットは?」

 

「そうね...メイド服着用の免除となんでも好きな命令でいいわよ」

 

「いったねちーちゃん。『なんでも』って言葉に男子は実力以上の力を発揮できるんだよ...」

 

「ふん...私がひなと君に負けるわけないでしょう...?早速始めるわよ...と言いたいところだけどひなと君がさっき逃げようとしたから、少し不安ね...今から誓約書的なものを作るから少し待ってて...」

 

そう言ってちーちゃんは立とうとしたので俺は呼び止めた

 

「ちょっと待ってそんなことよりいい方法があるよ」

 

そう言って俺は勇者機能を起動して、ディケイドドライバーを取り出す。そしてそれを腰に取り付け装着する。バックルをひっぱってから、左にあるライドブッカーから一枚のカードを取り出しディケイドドライバーに差し込む

 

『ブレイブライドォ...』

 

そして俺はバックルの両サイドを両手で押した

 

『サザンカ!』

 

そうして俺は勇者に変身する。ゆゆゆのコスチュームはそれぞれのイメージの花が装飾されてるが俺はなぜかそれがない。黒のTシャツの上によく異世界で見る鉄のチェストガードとSAOのき〇とと同じようなコートを羽織っていて(ちなみにこのコートの裏に赤白ピンクの三輪のサザンカがあったりする)、下は膝より少し丈が短いスカートとタイツを履いていて靴はブーツだ。ただ部屋だったからか、靴は履いておらず玄関にあった靴が変化していた。

変身が終わった俺はちーちゃんのほうを向いて少し笑いながら両手を広げ言った

 

「【一つ】この世界におけるあらゆる殺傷、戦争、略奪を禁ずる

 【二つ】争いは全てゲームにおける勝敗で解決するものとする

 【三つ】ゲームには、相互が対等と判断したものを賭けて行われる

 【四つ】゛三゛に反しない限り、ゲーム内容、賭けるものは一切を問わない

 【五つ】ゲーム内容は、挑まれた方が決定権を有する

 【六つ】゛盟約に誓って゛行われた賭けは、絶対遵守される

 【七つ】集団における争いは、全権代理者をたてるものとする

 【八つ】ゲーム中の不正発覚は、敗北と見なす

 【九つ】以上をもって神の名のもと絶対不変のルールとする

 【十】みんななかよくプレイしましょう」

 

ちーちゃんは少し怪訝そうな顔をしていた。

 

「今の覚えられた?」

 

「ええ一応...でもそれが何だというの?」

 

「えっと...ここを今言ったことが起こるような空間にした?」

 

「なぜ疑問形...」

 

「まあ物は試しだよ。今からじゃんけんして負けたほうがそうだなぁ...思ってもいないことを言うとかどう?」

 

「いいわよ」

 

「それじゃ」

 

「「盟約に誓って(アッシェンテ)!!」」

 

そういった瞬間ちーちゃんが口を押さえながら

 

「口が勝手に...」

 

と言葉をこぼした。

 

「とりあえずじゃんけんしよ」

 

そう言って俺は拳を出す。するとちーちゃんも拳を出した

 

「「最初はぐー、じゃんけんポイ!」」

 

俺はぐ―、ちーちゃんはパー。いわゆる俺の負けである。しかしじゃんけんでも勝てない俺っていったい...?

 

「えっと...たしか思ってもいないことだったね...じゃいうよ?」

 

そう俺が言うと、ちーちゃんは首を小さく縦に振った

 

「じゃ行きまーす...ちーちゃんなんて大っ嫌い!髪はぼさぼさだし変なにおいするし、あんまかわいくないし!大っ嫌い!」

 

ふぅ...あ、なんか自殺したくなってきたなんで大好きな人の悪口言わなきゃならないんだろ...そう思いながらちーちゃんのほうを見ると、ちーちゃんが涙目になっていた

 

「...そう...そんなに私のことが...」

 

「違うからね⁉全部真逆のこと言ってるから!ほら!今言ったことを逆の意味にしてみてよ!」

 

「...わかったわ...えっと...私が大好きで、髪はサラサラで、いい匂いがして、すごくかわいい...」

 

「...あんま声に出さないで...はずい...」

 

俺が少し顔を赤くさせながら言うとちーちゃんも顔を赤くさせながら

 

「...そうね...私も恥ずかしくなってきたわ...声に出して言うんじゃなかった...」

 

と言った

 

「ま、まぁこれでこの部屋がどんな風になったかわかったでしょ?」

 

「えぇ...よくわかったわ。じゃ、改めて、勝ったほうが好きなことを命令できて、ハンデありの格ゲーでいいかしら?」

 

「うんオッケー。それじゃ...」

 

「「盟約に誓って(アッシェンテ)!!」」

 

そして勝負が始まった。その瞬間ちーちゃんのキャラが接近してきて、()()()()()()()()()()

 

「えっちょ即死コンボしてこないって...」

 

そう戸惑いながら言うと、ちーちゃんは笑いながら、

 

「えぇ、即死コンはしないわだって途中で止めるもの...」

 

そういった瞬間ちーちゃんはコンボを止めた。ただし俺のダメージは百を超えており、結局ちーちゃんの攻撃ですぐ落とされるのであった...

 

 

 

 

 

「私の勝ちね」

 

上機嫌のちーちゃんが言った。

 

「そうだね」

 

まぁ知ってた。

 

「それじゃ命令を言うわ...今日一日私の奴隷になりなさい

 

その言葉が聞こえた瞬間、疑問よりもこの人に従わなければならないという感覚に襲われた。

 

「ふむ...ほんとに奴隷になったのかしら?まぁ最初の命令を言うわよく聞きなさい」

 

「かしこまりました」

 

「...敬語か...まぁいいか雰囲気って大事だし...このメイド服を着て私がいいっていうまで私のメイドになりなさい」

 

そう言いながらお嬢さまはリゼロのレムのようなメイド服をおさしになった。ちなみに違うところといったら、靴下が本来なら膝まであるはずなのだが、くるぶしまでしかなく、スカートはギリ下着が見えないくらいの丈しかない。これが痴女というものなのだろうか...

 

「かしこまりました、えっと...私はどちらで着替えればいいのでしょうか?」

 

「ここで着替えなさい。あとブラは外しなさい。このメイド服胸を少し見せるタイプなんだけどあなたの胸のサイズとブラのデザインではブラが見えてしまうから」

 

「かしこまりました」

 

そういって私は変身を解除し、来ていたし服を脱ぎ始める。因みに変身を解除しても盟約が続くように設定してあるので安心だ。

そしてパンツ以外を脱ぎ終わった私はメイド服を着始める。わかっていたが露出が多い胸は半分くらいまでしか隠れておらず少しずれたら色々アウトになる。そして今は二月下旬だ何が言いたいかというと

 

「へくちっ!」

 

寒いということだ。それでもお嬢さまは何も気にしていない様子。当然だ命令でメイドになったとはいえもともとは奴隷だ気にするほうがおかしい。

瞬間

 

『パシャ』

 

目の前から音がした。見てみるとお嬢さまがスマホをこちらに向けていた。私が使えないから売り飛ばされてしまうのだろうか...困った私はお嬢様のこと大好きでお慕えしているというのに...

 

千景はこんなことを考えていた

かわいい!何このかわいくて虐めがいのある生き物!でも奴隷にしたのは失敗ね...恥ずかしがっているひなと君が見たかったわ...というか最初からこの命令にしとけばよかったわ...

 

お嬢さまが少し考えるようなポーズをとってこっちを見ていた。すると私とお嬢さまのスマホから音が鳴った。

 

その瞬間私はお嬢さまの土下座していた。

 

「すいません!電源を切っていなくて、お嬢さまに不快な音を聞かせてしまいました」

 

「え...いいわよ別にそのくらい...ほら顔をあげなさい。高嶋さんがみんなで食堂でみんなでご飯を食べるから来てだそうよ...早くいくわよ。服装はそのままね」

 

「かしこまりました」

 

そうして私とお嬢さまは食堂に向けて足を運ぶ。

 

「あ、千景さん達来ましたよ...ってええ!どうしたんですかひなと君!というかその服露出高いですね...絶対こんな服着るとは思わなかったのですが...」

 

食堂に入ってきたときにいち早くお嬢さまに気づいた杏様(以下杏)が声を上げた。そのこえを聞いた姉様がこっちを見て叫んだ

 

ひなと!なんでそんな破廉恥な格好してるんですか⁉お、お姉ちゃんはそんな子に育てた覚えはありませんよ!」

 

姉様がこっちに向けていってくるがただの奴隷が声を出してはいけないので、受け答えはしない。

 

「えっと...その服かわいいね!」

 

と友奈様(以下友奈)

 

「えっと...とりあえず何か羽織るか...?今は一応二月だしもうすぐ夜だから寒いだろ?」

 

といって自らの上着をこっちに差し出そうとする若葉様(以下若葉)

 

「...」

 

そして無言になる球子様(以下球子)

 

「なぁ...ひなと...その見せつけてくる胸はタマに対する当てつけ、挑発か?だとしたらタマは許さないぞ...」

 

そういってくる球子。奴隷なので受け答えができないでいると

 

「無視かよ...じゃ、とりあえずくらえー」

 

そう言って球子は私の胸を揉んでくる。

 

ひっ

 

私は小さく悲鳴をこぼす。普段なら殴り飛ばしているだろうがお嬢さまのご友人なので拒むわけにはいかない

 

「な、なぁもしかしてひなとのーブラか...?」

 

なんですって⁉千景さん...何でこうなったか詳しく聞かせてもらいましょうか...?」

 

「...わかったわ...土居さん一回説明するからやめてあげて」

 

「しょうがないな...タマも反応がなくてつまらなかったとこだからいいぞ」

 

そう言って球子は胸を揉むのをやめたくださったので、私は乱れた服装を正す。少し体が火照っているが気にしないようにする。

そうしてお嬢さまは今日起きたことの説明をなさった。

 

 

 

 

「そうですかゲームですべて決まりその賭けが絶対遵守される空間...それで千景さんがひなとを奴隷化したらこうなったと...とりあえずひなとがこの格好を好んできたわけではないとわかって安心しました。ということは安心して写真を撮ることができますね」

 

そう言ってカメラを構える姉様

 

「まぁ奴隷化したのはわかったけど、もうお腹ペコペコだからとりあえず食べよー」

 

「そうですねうどんを食べて気分を落ち着かせましょう...」

 

「そうだな...ひなと!今日こそうどんを食べてもらうぞ!」

 

と、若葉が指を指してきた。

 

「そーいえばさっきからなんでひなとは無言なんだ?言葉を発したのは、タマが胸もんだ時の悲鳴ぐらいだ」

 

「そーいえばそうね...どうしてかしら?ひなと君?」

 

私はそれを命令だと認識し答える

 

「それは...奴隷なんぞが、お嬢様方の会話に入っては行けないし、言葉を発するのも行けないことだと思っているからです...」

 

それを言うと、お嬢様方が絶句し、私に聞こえないような声で話し始めた。私捨てられるのかな...メイドっぽいことしてないし...

 

 

 

 

「おい千景!何とかしろ!空気がすごく重くなるぞ!」

 

「知らないわ!やり方わからない...」

 

「ここはひなと本人に聞いてみればいかがでしょう?」

 

「そうね...」

 

内緒話が終わったのか、お嬢様はこっちに向いて話しかけてきた

 

「ひなと君、どうやったら奴隷の命令を無効にできるのかしら?」

 

そんな、衝撃的な言葉がお嬢様の口から出てきた。

 

「...私は捨てられるのでしょうか...?それとも売り飛ばされるのですか...?」

 

そう私が聞くとお嬢様は慌てながら

 

「違うわ!そうじゃない!あーもーめんどくさいわねー!いい!あなたは私の質問に答えればいいの!わかった?」

 

「はい...わかりました。えっと命令を取り消せばいいんですよね?えっともう1回盟約に誓ってゲームをして命令をそれにすればいいのです」

 

「なるほど」

 

お嬢様は納得した感じで頷く

 

「な、なぁ今ひなとが奴隷化しているってことはタマ達が何か命令してもひなとは聞くってことか?」

 

「はい。お嬢さまのご友人ですので...」

 

「ほんとですか⁉ではひなと、お姉ちゃんを抱きしめてください!」

 

「かしこまりました」

 

そう言って私は姉様を抱きしめる。まぁ私のほうが身長が低いから、抱きしめるより抱き着くのほうがあっているのだが...それにしても姉様を抱いているとなぜか知らないけど安心する

 

っ♡‼は~なんてかわいいのでしょう...私の妹は...‼もう一生このままでいいです!」

 

「ひなとくんものすごくリラックスしたような顔してるね...あんな顔もできたんだ...どうしたの?ぐんちゃん、若葉ちゃん?少し震えているけど...」

 

「おのれひなとあんなにひなとにくっつきおって...」

 

「あんな顔私の前でしたことない...ひなと君の姉とはいえなんかやるせない気持ちになるわ...ひなと君今すぐ離れなさい...!」

 

そうお嬢さまからの命令が入る。もう少し抱き着いていたいが命令なので仕方ない...私が離れようとすると姉様の抱く力が強くなるが無理やり離脱する。

 

「それにしてもほんとにノーブラでしたね...千景さんの趣味ですか?」

 

「いや違うわ...すべてはひなと君の胸が大きいのが原因よ...」

 

「というか千景さん...何でメイド服なんですか?もっとロリが着てそうなの着せましょうよ...今のひなと君の状況ってロリ巨乳メイドですよ...少しはドジも入るかもしれないですけど...属性の入れすぎはよくないですよ...」

 

「なんとなくよ」

 

「なんとなくなのかよ」

 

そう球子がツッコミを入れた後お嬢様達とうどんを頼みに行った。

 

「奴隷またはメイドが一緒に食べていいのですか?」

 

といったら皆様から怒られた...私悪いことしただろうか...

 

 

 

 

そしてお嬢様達との食事が終わった後、若葉がお嬢さまに

 

「もうこの賭けが絶対に起こる空間使うの禁止な」

 

と言っていた

 

「わかってるわ...さすがにもう懲りたわ...」

 

「「「「「「おやすみ」」」」」

 

そう別れの挨拶をしてそれぞれが部屋に戻る。私はお嬢さまのメイドかつ奴隷なのでお嬢さまと同じ部屋に行く。

 

「私お風呂に行くからそこで待っていなさい」

 

部屋に入った瞬間お嬢さまはそう言い、自室にあるお風呂に足を向けた。

お嬢様が風呂に入っている間に私は部屋の片づけ、掃除をしたりベットをきれいにしたりしていた。

 

 

 

 

「あがったわ」

 

そう言ってお嬢さまが入ってきた

 

「ほら次はひなと君よ。入りなさい」

 

と命令されたので入る

入っている途中にお嬢さまが風呂の外から

 

「着替えここに置いておくわね...」

 

といってモノを置く音がした

色々終わって着替えを見てみるとさっきまで着ていたメイド服と新しいパンツが置かれていた

着替えてお風呂場から出ると、お嬢さまがベットに座っていて自分の隣を指した。

 

「髪を乾かし終えたら一緒に寝ましょ?」

 

といった。私は髪を乾かし終え、お嬢さまのベットに座った。少し雑談や、ゲームをしていると近くの時計が十一時五十五分を指していたのでもう寝ようということになった

私がテレビの電源を落とした瞬間、私はお嬢さまに押し倒された。リモコンはどっかに飛んで行った。そしてそのままお嬢さまは私の上に乗っかったそしてそのままお嬢さまはこちらに話しかけてくる

 

「私ね今日ひなと君がひなたさんに抱きしめられている時の顔を見て思ったの...私たちはもっと進展しなくちゃって」

 

そう言ってお嬢さまは私の胸に手を伸ばそうとしてくる

私は無意識で抵抗をしていた。伸ばしてきた手を両手でつかみ首を横に振る。お嬢さまの顔を見てみると、黒いオーラが見え、こちらを捕食でもするような目をしていた。

 

怖い

 

不覚にも私はそう思ってしまった

 

「どうして泣いているのかしら...ひなと君?」

 

その言葉に私の背筋は凍り、手は少し震えていた。

 

抵抗するな

 

その少しトーンが低くなったお嬢さまの言葉を聞いた瞬間私の手は力を失い、よくs〇xする前の女の子の姿勢になっていた...そうして邪魔がなくなったお嬢さまの手は片方は私の胸にもう片方は私の足のほうに伸ばされている。そしてもうすぐ触れるというところで

 

時刻が十二時になった

 

その瞬間俺はちーちゃんを突き飛ばしていて片方で露出しすぎている胸を、もう片方で短すぎるスカートを押さえていた。そして涙目でちーちゃんを睨んだ

するとちーちゃんは舌打ちをしながら

 

「あともう少しだったのに...」

 

と言葉をこぼした

 

「なに?そんなに私のことが嫌いだったの?」

 

と不機嫌そうに聞いてくるちーちゃん。その質問に俺は

 

「違うよ...少し...いやかなり怖かっただけ」

 

とボソボソとした声で言った

 

「まぁいいわ少しかわいいのも見れたし、今日はもう寝ましょ?同じベットで」

 

そう言ってベットに戻るちーちゃん

 

「ねぇ着替えちゃダメ?」

 

「だめ」

 

そんな会話をしながら俺たちは睡魔に身をゆだねた。

 

 

 

 

朝になる、起きる。ちーちゃんが目の前にいて俺はやけに短いスカートと、胸がやけに露出している服を着ている

 

あぁそういえば着せられたんだっけ...

 

そう思いながら今日見た夢を思い出す

やけに不思議な夢だった友奈と同じようなのが四人おり若葉とお姉ちゃんを足したようなのが二人いて、なんかもっと国を守んなきゃと思わせるような夢だった...ついでに自分がもう一人いた。なぜか名前は違ったけど

まぁ夢だしどうでもいいか...

そう思いながら俺は隣にいるちーちゃんを起こさないように起きて、隣にある自室に足を運ぶ。

 

早く着替えたい

 

そんなことを思いながら

昨日、そういう描写が多かったので、自分の体を見ることに慣れてしまったのだろうか...?何にも抵抗がない

 

「なんでブラ着てないんだ...」

 

昨日の自分に腹を立てながら着替える。そうして着慣れた私服姿になる。

そういえばちーちゃんに何も言わないで部屋から出たなと思い、ちーちゃんの部屋に行く。

部屋に入るとちーちゃんは泣いていた。そうして俺に気づいたのか涙を拭きながら

 

「あ、ひなと君...よかった...昨日のことで嫌われて出てったのかと思った...」

 

「だとしたら昨日のうちに出ていってるから...」

 

それを聞いたちーちゃんは、安心したように息をついた。

 

「じゃ私着替えるから...」

 

「あ、うん。先食堂言ってるね」

 

そう言って俺は玄関からでて食堂へ向かった。

 

「あ、ひなと!おはよう」

 

歩いている途中で球子が声をかけてきた。

 

「あぁ、おはよう」

 

そう返すと球子はニヤッと笑い

 

「ビバーク!」

 

といい、俺の胸に飛びついてきたので殴っといた

 

「ぐはっ!うぐぅ...よかったひなと戻ったんだな!」

 

「メイド服見てないので気づけよ...」

 

そうつぶやきながら、俺たちは食堂へ向かう

 

「あ、ひなとくん!タマちゃん!」

 

俺らに気づいた友奈が手を振る

 

「「よう」」

 

俺らの声が重なる

 

「戻ったの?」

 

と友奈が心配したように言ってくる

 

「うん。しっかり戻ったよ」

 

「そっか~戻らなくても面白そうだったけどね!」

 

そう言って友奈はにやにやしてくる

 

「え、いやだよ。何が好きであんなもの着ないといけないんだ...」

 

「そう?かわいかったけどなー」

 

そんな会話をしながら引き続き食堂へ行く

 

 

 

 

食堂に着くと、お姉ちゃん、若葉、杏がいた。

 

「杏!今日は早いんだな!」

 

そういって球子が杏のほうに走り出した。

俺に気づいたお姉ちゃんがこっちに来て

 

「おはようございます。ひなと。さぁおねえちゃんにおはようのギューをしてください!」

 

そういって笑顔で両手を広げるお姉ちゃん

 

「いやもう戻っているから...しないからね」

 

とあきれながら俺は返す

すると姉は笑顔を浮かべ

 

「そう!それでこそひなとです!しっかり反抗的な態度をとる可愛らしい弟です!」

 

とよくわからないことを言う。そしてお姉ちゃんはカメラを取り出して画面を見せてくる。俺が露出の高いメイド服を平然と来ている写真だ。

 

「もう一回着ません?」

 

と言ってきたので

 

「二度と着ないから」

 

と即答する。

 

「しょうがないですね...ひなと昨日開いた空間をもう一度開いてください。ゲームをしましょう。私が勝ったらもう一回あれを着てもらいます。ひなとが勝ったら昨日取った写真など諸々の素材をすべて消しましょう」

 

「...いいだろう」

 

少し考えてから発言すると

 

「いやダメだからな⁉」

 

と若葉のストップが入った

 

「若葉ちゃんのも消すを追加しましょう」

 

「よしやれひなと」

 

即落ちにコマである

 

「なんか遅れてきたけど面白そうな展開になっているわね...」

 

「あ!ぐんちゃん!おはよう!」

 

友奈が遅れてきたちーちゃんに挨拶、説明を行った。その間に俺は変身した。そして言葉を発する

 

「【一つ】この世界におけるあらゆる殺傷、戦争、略奪を禁ずる

 【二つ】争いは全てゲームにおける勝敗で解決するものとする

 【三つ】ゲームには、相互が対等と判断したものを賭けて行われる

 【四つ】゛三゛に反しない限り、ゲーム内容、賭けるものは一切を問わない

 【五つ】ゲーム内容は、挑まれた方が決定権を有する

 【六つ】゛盟約に誓って゛行われた賭けは、絶対遵守される

 【七つ】集団における争いは、全権代理者をたてるものとする

 【八つ】ゲーム中の不正発覚は、敗北と見なす

 【九つ】以上をもって神の名のもと絶対不変のルールとする

 【十】みんななかよくプレイしましょう」

 

「さぁ勝負だよお姉ちゃん!」

 

そう言いながら俺はお姉ちゃんに向けて指をさす

 

「フフフ...ひなと...今あなた私に勝負を挑みましたね?」

 

不敵に笑うお姉ちゃんに俺は返す

 

「うんそうだね」

 

「じゃ私が勝負方法を決めますね。勝負方法は先に恥ずかしくなったり、興奮したほうの負けという勝負で、かけるものは私は写真、ひなとは今日一日、昨日着たメイド服を着て私のそばにいるということでいいですか?」

 

「少し言いたいところがあるけど、まぁいいよ」

 

「それでは...」

 

「「盟約に誓って(アッシェンテ)!!」」

 

その瞬間俺は若葉のカードを使った

 

『ブレイブライドォ...桔梗』

 

身長が伸び少し胸がしぼむ

 

そうして俺はお姉ちゃんを壁に追い詰め、壁ドンをして耳元で囁く

 

「私のものになれ、ひなた」

 

そういった瞬間

 

(≧∇≦)って感じに杏がなった

 

「フフフ...ひなと...それで私が落とせると思いましたか?残念でしたね...若葉ちゃんの中に少しのひなとが混じっているんですよ...」

 

そう言いながらお姉ちゃんはスマホを取り出し、音を流す

 

『私のものになれ、ひなた』

 

それは俺がついさっき言った言葉だった。

 

「痛いですねー。いつの間にこんな姑息なことを覚えて...お姉ちゃん大好き―ギューの時代は終わってしまったんですねー。それに最近は若葉ちゃんとの仲もあんまりですしねー昔は手をつないでにこにこしていたというのに」

 

「俺の負けだからもうやめてください...」

 

そう敗北した瞬間だった。俺の服が変化し、昨日着ていたメイド服になる。急に丈の短いスカートになり胸が露出し始めたので、慌てて手で隠す。

するとお姉ちゃんはカメラをこっちに向けながら

 

「いいですね!この羞恥の混じったものが見たかったんですよ!は~♡かわいい!」

 

といい、連続でシヤッターがきられる

開いている窓から風が来てスカートが捲れそうになったので抑えたが、後ろのほうは抑えられず後ろにいた球子たちに見られる

 

「おーひなと。なかなか可愛らしいのはいているな」

 

「やめてあげなってタマっち先輩...ほら涙目で睨んできてるよ。かわいい。やっぱロリって最高だね!

 

「さぁひなと、今日はお姉ちゃんの部屋でいろいろ遊びましょうねー」

 

と死の宣告が飛んでくる。ちーちゃんのほうに目を向けると

 

「今日高嶋さんと買い物に出かけるから...」

 

と見捨てられる

若葉に目を向けると

 

「今日は鍛錬があるから...」

 

と同じように見捨てられる

ここに味方はいないようだ

そして俺は朝ご飯を食べた後、お姉ちゃんに部屋に連れてかれ、いろんなポーズを取らせられた。そうしてまた俺の脅しのネタが増えるのであった

 

 

 

 

これは勇者たちの日常のひと時である...




さて休むか...
今回の話でもう少しこんな風にしたほうが良いんじゃない?と思った方は言ってくれると嬉しいです。参考になるので
さて次回がいつになることやら...
あ、(言うの)遅れましたがゆゆゆい五周年おめでとう!
いつもあっちも!こっちも!どっちも!ぜーんぶしゅきしゅきー!萌えパワーチャージフルマックスにしてくれてありがとう


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番外編第三話 託されたバトン(32話)

特に書くことがなくなったエフさんです。
いつも通りです。
いや番外編だからいつも通りじゃないです。


 薄暗い社殿の中で蠟燭の炎が揺れる。唯一の光源は、集まった者たちの姿を薄闇の中で照らしていた。

 ここに円座似て集まった者たちは、主に大赦所属の神官である。特に発言力の高い者たちだけが集められていた。

 だが、それほど高位の神官たちが集められていても、今この場を支配しているのは彼らではない。まだ中学生に過ぎない一人の少女...上里ひなたであった。

 今日、神官たちを招集したのはひなたである。彼女は、非常に重要な要件があると言った。

 神官たちは緊張に包まれていた。

 一人の勇者を導き、もう一人の勇者の姉と言う実績かどうかわからんがとりあえず実績を持っているため、今や上里ひなたの発言力は強力なものとなっている。加えて昨今、彼女は安芸真鈴をはじめとした有力な巫女たちをまとめ、大赦内で大きな勢力を成し始めていた。よくよく考えれば二人の勇者を導いたやつがいるのにひなたの方が発言力が強いというのは少しおかしいような気もするが、まぁいいか。

 巫女の最高権威たる少女は、大人たちに囲まれながらも、ただ静かに目を閉じ、正座をしていた。少女の無言の姿は社殿内に厳かな沈黙をもたらし、空気はまるで重みをもっているかのように神官たちを押さえつける。彼らは、自分よりもはるかに年下の少女が放つ威厳に、完全に支配されていた。

 神官たち全員の前には、紙の束が置かれている。

 ゆらゆらと揺れる蠟燭の炎。

 呼吸さえ止まっているような静寂。

 質量すら持っていそうな重圧感。

 神官たちは巫女の少女を見つめ、その言葉を待つ。

 やがて上里ひなたはゆっくり目を開け、話し始めた。

 

「それでは企画書の一ページ目をご覧ください。本日の議題は、勇者システムのアップデートに際し、新たなイノベーションをもたらすメソッドのご提案となります。題して『初代勇者応援プロジェクト』。続いて二ページ目をご覧ください」

 

 ひなたの言葉を受け、神官たちは目の前に置かれた企画書の表紙ページを、厳かにめくった。

 同時に、プロジェクターからスクリーンに、プレゼンテーションソフトで作成された映像が映し出される。

 一部の高齢の神官はコンピューターに疎く、アニメーションで動くスクリーン上の文字に感嘆の吐息を漏らした。

 ひなたは企画の概要を語り始める。

 

「本プロジェクトは勇者のメンタル面の保全に対し、大きな効果をコミットするもので...」

 

 

 

 

時は二日前に逆上する。

 

「勇者システムの強化案...ですか?」

 

 食堂でうどんを食べている時、若葉が勇者システムについて提案してきたのだ。

 

「ああ、少しでも未来の勇者たちの手助けになればと思ってな。基礎的な戦闘能力の強化だけでなく、心理的な面でもサポートできるシステムを咥えられないだろうか」

 

 勇者の戦いにおいて、精神面は重要である。人間を超越した身体能力を持つ勇者であっても、心はただの少女に過ぎない。傷つきやすく、脆く、壊れやすい。精神面の無防備こそが、千景がひなとを殺そうとすることに発展したのだ。少し関係なさそうだけど...

 

「心理面のサポートですか...確かにそれができればいざと言うときに役に立ちそうですが...」

 

 心とは複雑なもの。どうすれば心を健全に保てるか、正解はないだろう。

 

「私も具体的に確信のある案は出せないが...本の一手間でいいんだ。そうだ、こういうのはどうだろう?変身すると、私の声がどこからともなく聞こえてくるんだ」

 

「最悪ね」

 

「何を言ってるんですか千景さん!素敵すぎるじゃありませんか!」

 

「だろう!...千景はなんだ?私の声が出るのが嫌なのか?ならお前の声も収録すればいい!」

 

「もっと嫌よ!」

 

「え、じゃあタマの声も使えるのか?」

 

「ああ!何ならみんなでやらないか?」

 

「私はいいわ...」

 

「俺も」

 

「私もいいかな...」

 

「ですね...」

 

「どうしてですか⁉別にいいじゃないですか⁉声の一声や二声くらい!」

 

「と言うかそれ必要なの?使われた機能なの?」

 

 千景がそういった瞬間、視線はひなとに集まった。

 

「ん~...使われていなかったような............あ!俺の記憶している限り一回だけ使われてたわ!」

 

「ほらな?やっぱり必要なんだ!」

 

「やりましょう!音声を再生するだけですからきっと実現可能です!」

 

「よーし!早速組み込むぞ!」

 

「「「「えー」」」」

 

「そ、そえで...皆さんはどんなことをしゃべるんですか?」

 

 期待を込めて、ひなたは若葉を見つめる。

 若葉と球子はかなり長く熟考した後、意気揚々と答えた。

 

「負けるな!立て!頑張れ!とか、ポジティブなことを言い続けるんだ!」

 

「あと、日本の太陽神が言っていいたようなことも言うんだ!」

 

「逆にやる気がなくなりそうね...」

 

「ちーちゃんさすがにそれは言い過ぎのような...」

 

「...考えてみなさい?ひなと君がサイヤ人?だっけ?とりあえず尻尾が生えていた時に乃木さんのそんな言葉が聞こえたらどう思う?」

 

「...端末をぶん殴る自信がある...」

 

「でしょ?」

 

「二人とも意外とひどい...」

 

「確かに人によってはポジティブな言葉で傷つく人もいますからね...」

 

 そんな四人の意見をスルーし、若葉と球子の言葉...いや若葉の言葉か、にひなたは目を輝かせる。

 

「まあまあ、なんて素敵な...!」

 

「「だろう!」」

 

「きっと未来の勇者たちも元気づけられて、くじけたりすることはなくなるでしょう!」

 

「うんうん!我ながら名案かもしれないぞ!」

 

「この人たち...なんで人の意見を聞かないんでしょうね...」

 

「一時的にナルシになってるか、酔っぱらってるんでしょ」

 

「早速、大赦に提案しましょう!今から企画書を作ります!徹夜です!徹夜で企画書を仕上げるんです!」

 

 四人はやる気のなさそうにうどんを食べ、三人は乗りに乗っていた。

 ひなたはパソコンで企画書を作り始め、翌朝までに数十枚にも及ぶ企画書を作り上げた。そのまま一睡もせず丸亀城を出立して、大赦に向かった。

 その間、球子と若葉はどんな言葉を未来の勇者たちに告げようか、鍛錬をしている時と同じくらいの真剣さで考え続けていた。ほかの人はゲームをしたり本を読んだり武道をしたりと各々好きなことをやっていた。

 

 

 

 

 そしてひなたは今、大赦の神官たちにプレゼンしているわけである。

 企画書の最後のページまで語り終えたひなたは、神官たちの頭を下げた。

 

「私からのご提案は異常になります。勇者システムのグランドデザインにおいて、重要な要素であると断言します。ご検討のほど、よろしくお願いします」

 

 

 

 

 翌日、ひなたは丸亀城に帰還した。

 非常にがっかりした顔で。

 

「ボツになりました...」

 

「「何ぃっ⁉なぜだっ⁉」」

 

「そりゃ...そうだ」

 

「逆に没になってくれないとこちらが困るわ...」

 

 若葉と球子は未来の勇者に向けて吹き込む言葉を、すでに原稿用紙五十枚分は書き連ねていた。『初陣の時』『戦いが優勢の時』『技を出すとき』『敵の隙を突いたとき』『強大な敵に恐怖してしまった時』『他人へ憎しみを抱いてしまった時』『気分が落ち込んでいる時』『仲間のことを考えずに飛び出そうとしている時』『お腹が減った時』など、状況ごとに応援の言葉を変えて吹き込むつもりだった。

 

「戦闘中ずっと声が聞こえているなんて、集中できないだろう...と言われました」

 

「う...!確かにそうかもしれない...」

 

「そもそも勇者に選ばれる者たちは、応援されなくても戦えるくらいガッツはあるはずだ、と」

 

「...」

 

 球子は静かに千景の方を見た。

 

「なんでそこで私を見るのよ...⁉」

 

「確かにちーちゃんは初陣の時にあれだったけどガッツはあるよ」

 

 ひなとは千景の肩を掴みながら言った。

 

「うん!ぐんちゃんは一番最初は動けてなかったけどやっぱりガッツはあるよ!」

 

「二人とも慰めるのならもうちょっとましなことを...」

 

 若葉は大きくため息をついた。

 

「ふう...仕方ない、諦めるか」

 

「だな」

 

「ええ、それが賢明よ...」

 

「いいえ‼諦める必要はありません‼」

 

 ひなたは前のめりで叫ぶ。

 

「えー、まだ何かやるの?」

 

「当然です!と言うか必要と言ったのはひなとですよ?」

 

「必要といっておらんわ」

 

 ひなたは無視して話し始める。

 

「ボツになりましたが、初代勇者が励ますシステムは決して悪いことじゃないと思います!若葉ちゃんからこの案を聞いたとき、私ビビビッと来ましたから!」

 

「おお、ひなたもそう思ってくれるか!」

 

「もちろんです。そこで、より有用に深いところで役立つプランを考えました」

 

「...それはどういうものだ?」

 

 球子が興味津々でひなたに尋ねる。若葉も期待を込めた目でひなたを見ている。

 

「精霊システムですよ」

 

 その言葉にひなたひなと以外の勇者の顔が訝しげになる。

 

「精霊を体の中に入れるのは危険だから、その機能はなくすはずですが...」

 

「はい。でも人造の精霊...もどきならが害はないかと」

 

 ひなたが言わんとすることを、若葉はすぐに察した。

 

「そうか!私が義経のような精霊になるのか。なるほどなるほど、だったら未来の勇者たちとともにずっと戦い続けることができるぞ!」

 

 精霊になった自分の姿を、若葉は想像した。もっとも、精霊は勇者たちにも見えていないから、あくまでも想像である。未来の勇者の傍らに、守護霊のように威風堂々と立つ自分の姿を思い描いた。

 ...約三百年後に誕生する、目に見える形の『精霊』がマスコットキャラクターのような姿だと知っているひなとはわざと黙っていた。

 

「うむ、かっこいいかもしれないな!そして同じ勇者である私がそばにいることで、未来の勇者たちも心強く感じるだろう。一人で戦っているのではない、と。よし、やろう!」

 

「なんだかよくわかんないけど、面白そうだしタマもやるぞ!」

 

「いえ、残念ですが、狙って精霊になる技術なんてありません」

 

「む、そうなのか...」

 

「逆にあると思ったのかしら...」

 

「な」

 

「二人の機嫌が悪くなっていく...」

 

 即答で否定され、再び落ち込む若葉球子。

 

「ただ疑似的なことならできるかもしれません。能力を持つ精霊ではなく、あくまでビデオ映像のような、再生専用の精霊でしたら」

 

「再生専用...?」

 

「今での戦いを思い出してください。精霊のせいでたまった穢れは内側から、ネガティブな言葉や映像を出してきましたよね?若葉ちゃんの疑似精霊は、内側からポジティブな声や映像を出すんです」

 

「声や映像...だけか?」

 

「それだけあれば十分でしょ...」

 

「はい。おそらくそれが限界です」

 

「でも結局邪魔になるんじゃないか?」

 

 球子の疑問に、ひなたはにっこりと笑って答える。

 

「ですから、邪魔にならない時に限定します。例えば精神攻撃で、心が砕けた勇者。戦いのせいで、心を病んでしまった勇者。そういう勇者に対して、若葉ちゃん達の疑似精霊が現れて、元気づけるんです」

 

「それならば戦いの邪魔にはならないな」

 

「さらっと達をつけやがった」

 

「ええ。そう言った人の心になら、若葉ちゃんの疑似精霊が現れるよう、インプットできそうです。...まぁ、心の隙に入り込むといったら聞こえが悪いですが」

 

「「悪すぎだろ!」」

 

「冗談です。ただし期待しないでほしいのは、あくまで若葉ちゃん達の記録が励ますだけです。ぬくもりのある励ましができるとは思いますが、それ以上は何もできません。その声も映像も、決してすべてをそのまま伝えられるとは限りませんし、抽象的なイメージのようになるのかもしれません。...結局、心折れた勇者が立ち直れるかどうかは本人次第です」

 

 ひなたの言葉に、若葉は頷いていう。

 

「構わない。少しでも手助けになれる可能性があるなら...それでいい」

 

 

 

 

 こうして勇者疑似精霊化計画はまとまり、大赦からも許可が出た。大赦からは一部、効果を疑問視する声も出たが、それでもやらせてほしいとひなたは強く訴えたのだ。

 

 

 

 

 大赦から許可が下りた翌日、ひなたが丸亀城の教室に行くと、まだ誰も登校していなかった。いつもなら若葉が先に来て、黒板のチョークの準備をしたり、花瓶の水を変えたりしているのだが。

 ひなたはぼうっとしながら、朝の教室で一人、過ごしていた。

 やがて時間は十分、十五分...と過ぎていく。

 

「...おかしい...」

 

 もうすぐホームルームが始まる時間だというのに、誰も来ない。こんなことは一度もなかった。

 ひなたは急に不安になり始めた。そう言えば、朝の食堂でも誰の姿も見なかった。誰かしらいるだろうと思ったが寝坊しているか先に学校に行ったのだろうと、その時はあまり気にもしなかった。一応ひなとの部屋に行ったが、不在で珍しく早く起きて先に行っているのかと思っていた。

 昨夜、みんなに「おやすみなさい」と言って別れてから、ひなたは彼女たちに合っていない。最後に若葉に会ってから、すでに十時間以上は経っている。

 それだけの時間があれば、どんなことだって起こり得るだろう。

 もしかしたら、突然バーテックスが攻めてきたのではないか。バーテックスの侵攻の間、ひなたは勇者が戦っていることにさえ気づけない。ひなたにはわからないが彼女たちは戦いの中で何回も命を落としている。そして今回も命を落として時が戻っていなかったら?

 そんなことを考えているうちにひなたは絶対に怒らないであろう事故も想像していた。

 

人は、簡単に死ぬ。

 

「...‼」

 

 ひなたは椅子を弾き飛ばすような勢いで立ち上がり、教室の出入り口へ駆けだす。

 

(嫌だっ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!みんながいなくなるなんて...!)

 

 なぜ昨夜皆と別れてしまったのか。よくよく思い出せばみんなは昨夜ずっと一緒にいそうな雰囲気であった。勇者として何か話すのかなと思って巫女の自分は離れてしまったが、ずっと一緒にいればよかった。自分にはわからなかったが、全員が一日で命を落とした。そうなってしまえば...一人だけになってしまう。

 そんなことになったら、もう生きていける自信がない。

 

「わかばちゃ」

 

「うあ!」

 

 ひなたがドアを開けた瞬間、目の前にひなとが立っていた。ちょうどドアを開けようとしたところだったのか、ひなとは驚き隣にいた千景の腕をつかんでいた。さすがセミで驚く男、面構えが違う。

 

「どうしたんだ、ひなた?真っ青だぞ」

 

「わ...若葉、ちゃん...皆...さん」

 

 ひなたの声が震えていることに、若葉は気づかない。

 

「よかた、まだ朝礼前か。未来の勇者たちに伝える言葉を考えていたら、徹夜しても終わらなくてな」

 

「なぜか全員で考えることになったのよね...」

 

「それなのに何でこんなにかかったんだろうな」

 

「二人がゲームを始めて若葉さんが切れたからですよ」

 

「「私(ちーちゃん)の部屋でやろうとするのが悪い」」

 

「あのーみんな?ひなちゃん見なくていいの?」

 

「?ひなたがどうかしたのか?」

 

 球子がそういいつつひなたを見ると、ひなたは静かに泣いていた。

 

「お、おい、ひなた?どうしたんだ...?」

 

 急にひなたが泣いたため、若葉は困惑の表情を浮かべた。

 

「だって、だって...皆が...来なくって...ひっく、...いなくなっちゃったかって...うぅ...うあああっ‼」

 

「お姉ちゃん...」

 

 泣きじゃくるひなたの姿を、勇者たちは少し驚いて見つめる。今までひなたがこんなに人前で感情を爆発させたことがなかったからだ。

 

「うう、ひっく...ううう...」

 

「...すまない。少し心配させてしまったな」

 

 若葉がひなたの頭を優しく撫でる。

 

「そうです...ひっく、心配、したんです...」

 

「大丈夫よ...ひなたさんがこんなに泣いたんだものもう、乃木さんやひなと君が過保護になるわ...」

 

「言い方...まぁそうだね。俺はいなくならないから」

 

「もちろん私たちもね!」

 

「はい...ずっと一緒にいてください...」

 

「ああ。学校を卒業しても、大人になっても、おばあさんになっても、ずっと一緒だ」

 

「トイレやお風呂の時もか?」

 

「タマっち先輩、しっ!」」

 

「絶対...絶対ですよ...」

 

「約束する」

 

「誓いの言葉、病めるときも、健やかなるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、死がふたりを分かつまで、俺はお姉ちゃんと一緒にいることを誓います」

 

「なにそれ...」

 

「少しヤンデレみたいですね...」

 

 ひなたが泣き止むまで、みんなはひなたの傍にいた。

 

 

 

 

 その日の放課後、若葉たちは放送室にいた。未来の勇者に託す言葉を、ひとまず録音するためだ。若葉たちの音声データは、のちに大赦内で霊的な処理が施され、勇者システムに組み込まれることになる。

 正座する若葉の前にマイクが置かれ、マイクはノートパソコンに繋がっている。ひなたはパソコンに向かい、録音ソフトを調整していた。

 

「しかし、ひなたがあんなに泣くのを見たのは、初めてだな」

 

「ねー」

 

「...!もう言わないでください、恥ずかしいんですから...」

 

 パソコンを操作しながらひなたは赤面する。

 

「せっかくだから写真を取っとくべきだったな」

 

「そんな若葉のためにとっておいたぞ」

 

 ひなとはそういい、スリープ状態のスマホを取り出した。するとその瞬間ひなたが立ち上がり、ひなとのスマホをぶんどって窓から投げた。

 

「お姉ちゃん?自分が嫌なことは人にしちゃいけないんだよ?」

 

「さぁ?何のことでしょう?」

 

「...ごめんお姉ちゃんの部屋行ってくるわ」

 

「...ああ!もう!さっき誓いの言葉したばかりでしょ⁉ひなちゃんも嫌だからって投げちゃだめだよ?ほら姉弟仲良く!」

 

 そう言って友奈は扉に向かっていたひなとの手とそのひなとを見ていたひなたの手を取りお互いの体を密着させた。

 回りが早く仲直りをしろと言う空気であった。

 

「「...」」

 

「...ごめん」

 

「いえ、こちらこそ...次からは控えますね」

 

「やめてはくれないのね」

 

「はい...明日一緒に新しいスマホ買いに行きましょうか...」

 

「うん...ちなみに写真撮ったのは冗談だよ?」

 

「...好きな写真一枚だけ消させてあげます」

 

「じゃ、私の...」

 

「乃木さんは一回黙ってなさい」

 

「いやいいよ...その代わりカバーとかかってね」

 

「それでいいのであれば」

 

 若葉は咳ばらいをして話を戻した。

 

「...このマイクを使うのは久しぶりだ。白鳥さんと通信していた時は毎日のように使っていたのだが」

 

「そうですね...随分と昔のことのように感じます」

 

「私たちは使っていないわね...」

 

「ねー、一度は使いたかったな...」

 

 そして録音ソフトの調整が終わり、準備が整った。

 

「はぁ...私たちもしゃべらなきゃならないのよね...」

 

「しょうがないですよ...だってしゃべるってことになっちゃったんだから」

 

「こうなったらもうがんばろー」

 

「俺もしゃべるのか...」

 

「別にいいだろ声だけなんだから」

 

「球子さんの言う通りですよ?生ける限り、私たちは歩き続けなければなりません...。ね、若葉ちゃん」

 

「ああ、そうだとも」

 

 

 

 

「初めまして、未来の勇者よ。私は乃木若葉」

 

「土居珠子だ!」

 

「伊予島杏です」

 

「高嶋友奈!」

 

「郡千景...」

 

「上里ひなと...」

 

「私たちは西暦二〇一九年、いや、神世紀元年において、勇者の御役目を担っている者。何十年もしかしたら何百年もの先の貴方に、未来の希望を託したものだ」

 

 そしてマイクは杏に渡された。

 

「バーテックスが出現した日、私たちは多くの物を奪われました。それを取り返すために、私たちは強大な敵に立ち向かい、戦いました」

 

 マイクが友奈に渡される

 

「一番初めは白鳥歌野ちゃんと藤森水都ちゃん。その次が私たち、さっき自己紹介した人たちと巫女のひな...上里ひなたちゃん」

 

 球子(略)

 

「神世紀元年の今、四国は戦いから逃れているけど、この声を聞いている勇者の時代にいたるまで、バーテックスとどれほどの戦いが起こるのか、何人の勇者が生まれるのか、タマたちにはわからない!ほんとはわかるけど...

 

 千景(略)

 

「でも...すべての勇者たちが...時に恐怖して、悩んで、苦しんで...守りたいもののために生き、戦っていくのだろうと...信じているわ...」

 

 ひなと略

 

「俺たちの代の勇者は、白鳥歌野からバトンを引き継いだ。そのバトンはいずれ次の代に渡される」

 

 若葉略

 

「そして次の次の代へ。その次の代へ。それまた次の代へ。何代でも、何度でも、どれほど時間が経とうと...引き継いで行かれるのだろうと私は思う」

 

 杏

 

「そのバトンは勇気でもあり、希望とも言い、願いともいいます。今の私たちは未来の貴方に対し、何もしてあげることはできません」

 

 友奈

 

「こうやって声をかけることしかできないね!でも...信じてほしい!あなたの後ろには、バトンを引き継いできたたくさんの人たちがいる。」

 

 球子

 

「見回してほしい。お前の隣には、今までお前が一緒に過ごしてきた友達や家族がいる」

 

 千景

 

「あなたが...一人ではないことを知ってほしい...多分、今の貴方はとても苦しんでいるんだと思う...痛いこと、悲しいこと、絶望すること...頑張って、頑張って、それでも耐えられないくらい、つらいことがあったのでしょう...?だからこそこの声が届いている...」

 

 ひなと

 

「そんなあなたに、俺らが言いたい言葉は、『もっと戦え』でも『もっと頑張れ』でもない。そんな言葉は足かせにしかならないと思うしな」

 

 そうしてみんながマイクに集まる。

 

「「「「「「生きろ。ただ生きてほしい」」」」」」

 

 若葉

 

「大切な人がいるなら、その人のことを思い出してほしい。あなたが生きることを諦めたら、その人が悲しむことを思い出してほしい。私は多くの友達を失った。いや友達になれた人だろうか?嫌、友達だ!あなたの大切な人に、私と同じ思いをさせないでやってくれ。その人のところへ、必ず戻ってあげてくれ」

 

 ふぅ、と若葉はため息をついて、満足げな笑みを浮かべた。

 

「...これ数週間後に黒歴史になってくるやつじゃね?」

 

「ひなと君、言ってはダメよ...」

 

「...ちょっと長くなってしまったが、伝えられたいことは伝えられたな!」

 

「うふふ、ただの勇者システムを残すだけじゃなくて、隠し味を入れることができましたね」

 

「いるかどうかはさておき、未来の勇者のためにシステムはもっと強化していきたいですね...」

 

「ええ。でも敵を欺きながら事を進めるには、慎重を期さねばなりません。基礎能力の向上だけでも途方もない時間がかかると覚悟してください。...危なくなれば...一時的に凍結することもありえます」

 

「まぁその時は俺が何とかする」

 

「あんまり無茶するなよ?」

 

「そうだぞ...長く細く研究していく、と言う話だったしな。これ以上の機能を追加する必要もない」

 

「はい。何よりも基礎戦闘能力の向上に重きを置く、でしたね」

 

「スキルだけレベルアップしても素早さだったりが足りてないと死んじゃうしね...」

 

「急いだって仕方がないね!まずは基礎!どんなことでも一緒だね!」

 

 どんなに遅い歩みでも、戦う力と牙を必ず未来に残す...それがこの時代の誓いだ。

 

「ねぇ、皆さん。私も時々は、『鬼』と言う精霊を憑依させてるんですよ」

 

「いつもじゃなかったのか」

 

「球子さん?」

 

「な、なんでもないです」

 

「...物の例えですけどね。組織を切り盛りする人間は、心を鬼にしなければいけない時もあります。そのために...大切な人がやってきた功績を奪うということをしなければなりません」

 

「...俺のことか」

 

「はい。ひなとは今世間的な名前は私の名前を使っていますから...功績を使ったほうがより楽に、そして安全に大赦内で立ち回れることができます」

 

「...政治家みたいなことを言うわね」

 

「大赦の権力は強大です。...ですが、その内部にいる人間がすべて聖人君子と言うわけではありません。権力を利用し、身勝手なことをしようとする人も...きっと出てくるでしょう。そのような人たちに、大赦の実権を渡すわけにはいきません。何とか私が立ち回って、大赦と言う組織の健全さを守っていかなければ...」

 

 『大社』と言う組織は『大赦』として新生した。今後、人員整理や社殿の変更・改築なども行われるだろうし、組織としての権力も一層強まっていくだろう。大赦は変わっていく。その過程で堕落が起こらないとも限らない。

 ひなたは、大阪地下で見た日記のことを思い出していた。身勝手な人々が起こした悲劇...あのようなことを、もう起こしてはいけないのだ。

 

「ではひなと、お願いします」

 

「うん...と言うかさっきの音声おれやらないほうがよかったんじゃない?」

 

「いえ、それは私が声を変えたということにしておきましょう」

 

「はぁ...」

 

「あ、あとひなとと仲のいい人まで記憶を消してはいけないですからね」

 

「うん分かってる。うまくいくかはわかんないけどね」

 

 そう言ってひなとはディケイドライバーを取り付け、一枚のカードを使う。

 

『BRAVERIDE 彼岸花!玉藻の前』

 

 ひなとの姿が玉藻の前を宿している時の千景に変化した。そしてひなとは目を閉じ集中する。するとひなとぁら怪しげなオーラが出て世界...四国を包み込んだ。

 その瞬間人々は上里ひなとのことを忘れ、上里ひなとだったところには上里ひなたが出るようになった。そして新聞やネットなどに出ていたひなとは一瞬消え、ひなたの姿になった。俺のことを他の人が見れない様な形で書いたものだったり、俺が書いたものは俺が許したもの以外は空白に見えるようになった。そして世界の書き換えが終わった後ひなとは一つのベルトと、表が緑色、裏が黄色のカードを複数持っていた。

 

「それは?」

 

「気にしなくていい。ただ勇者適正や端末がなくても変身できるアイテムだ」

 

「めちゃくちゃ大事なものじゃないですか!」

 

「厳重に保管ですね...」

 

「大赦じゃなくて俺らでね?」

 

「...もしかして女や無垢じゃなくても変身できるんですか?」

 

「もちろん」

 

「...ほんとに重要なものじゃない...」

 

 

 

 

 ひなたたちは丸亀城を出て、寮に戻っていく。

 本丸の城郭から見える町は夕暮れの茜色に覆われていた。

 ひなたが空を見上げる。

 四国は今日も平和で、広く高い空が広がっている。

 ひなたは空に向かって手を伸ばした。

 空はあまりにも高く、人の手には遠すぎる。

 

「私たち人間は地に住み、天に見下され監視されながら生きていく...でも、人間は弱いですが、だからこそあきらめが悪いんです」

 

「そうね...長い長い戦いになるのだろうけど...」

 

「それでも一歩一歩進んでいくんだね!」

 

「俺は全員一緒にいれば前を向ける。これまでも、これからも」

 

「そうだな!」

 

「...これからもよろしく頼む」

 

「ずっと一緒にいると約束してくれましたし。それに、どんなに困難な目標でも、為せば大抵なんとかなるものです」

 

「...ひなと君何笑っているの?」

 

「いや、やっぱりいい言葉だなって」

 

「?」

 

 西暦時代の終幕。

 バーてくっすとの戦いは一時終焉し、しかし勇者と巫女たちの戦いは続いていく...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神世紀三〇〇年、秋。

 讃州中学勇者部の面々は、乃木園子の家で本の整理を手伝っていた。小説のネタのために、その子が実家から送ってもらった大量の本だ。

 その中に、『勇者御記』と題された本が発見された。

 

「のぎ...わかば...私のご先祖様~?この人が日記を書いたのなら、ご先祖様は勇者?」

 

「そのっ地の先祖が勇者御記をかいていた。家むしろ、子孫のそのっちだからこそ日記に同じ名前が付けられた?」

 

「そんな昔に勇者がすでにいたってことね...悪戯ってわけじゃないでしょうし...おどろしたわね、友奈」

 

「...」

 

 風に話を振られるも、友奈は何も答えず勇者御記の最後のページに張られた乃木若葉の写真に、じっと見入っていた。まさに『心ここにあらず』といった表情だ。

 

「友奈、どうしたの?」

 

 再び尋ねられて、やっと友奈は我に返り、口を開いた。

 

「いえ、なんでもないです」

 

「?そう...」

 

「もっと詳しく調べてみましょう」

 

 東郷は真剣な表情でページをめくっていく。

 ほかの人も本を覗き込んだ。

 

「どのページも塗りつぶされているか空白ばかりね...あ、この辺り、まだ文章が残ってる。御記は一人で書いていたわけじゃないみたいね」

 

 めくられていくページの一部を、夏凜が指差した。検閲を逃れた部分には、人名と思われる単語が記されていた。

 

「土居珠子...伊予島杏...謎の空白...郡千景...高嶋友奈...え、友奈ちゃん?」

 

 東郷は本と友奈を見比べるように、交互に見る。

 

「私と同じ名前だ...偶然かな」

 

「ううん、偶然じゃないと思うな~」

 

「え?」

 

 園子に注目が集まった。

 

「えっとね~、昔、聞いたことがあるんだ。『友奈』って名前は特別だって。ずっと昔から、生まれてきたときにこ~んなことをした人にあげられる名前なんだよ~」

 

 園子が両手を打ち合わせるような所作をする。

 

「...?赤ん坊がじゃれてて遊びをしたときに、偶然そんな動作をする...って感じ?縁起がいいことなのね、それ」

 

「うんうん、そういうこと~。にぼっしー、冴えてる~」

 

 生まれたときに特別な所作をした赤ん坊には、かつての勇者からとった名前が与えられる...一種の縁起担ぎなのだろう。

 

「『友奈』と言う名前は、この高嶋友奈と言う勇者から端を発し、神世紀の長い歴史の中で受け継がれた名前なのね...」

 

 東郷が歴史に思いを馳せる一方、風雅片目を押さえながら無駄にポーズを取りながら言う。

 

「そうか...オヌシは、結城友奈とは...友奈因子を持つ、友奈の一人であったか...」

 

「訳が分からないよ、お姉ちゃん」

 

 みんなが吹き出すように笑った。

 東郷は色合わせた勇者御記を見ながら、

 

「恐らく、この本はかくして残そうとしてくれたんでしょうけど...」

 

「結局は見つかって検閲されちゃう辺り、おちゃめな初代様ね...でも、残っているわずかな記述だけでも、西暦時代にも大変なことがあったのはわかる。それは伝わった」

 

 かつての勇者たちも、悩み、苦しみ、傷つき...けれど、懸命に生きてきたのだろう。

 友奈は自分の手を見つめる。

 

「私たちの今があるのは、ずーっと昔からの、たくさんの人たちの積み重ねのお陰なんだね。...感謝しないといけないね」

 

「そういえばこんな昔でもあんたみたいな異質なのはいないのね」

 

 夏凜がからかうように一人の少年を見た。

 その少年、髪が黒で右目が赤く左目が黒い少年は

 

「わかんねーよ?もしかしたらそのあとにいたかもしれないじゃないか」

 

 と言いながら全面白紙のページを見て笑った。




今は自己満の自己満をかいている途中です。
そのうち外伝をかきます。リリナとか友奈が来るまでは書きません。多分
あ、前に若葉しか生存しなかったルート書いたけど、その場合勇者御記からは千景が消えてひなとが出てきます。ついでに謎の男子()も出てきません。


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乃木若葉は勇者である
プロローグ1(リメイク)


はいかなり遅くなりましたがプロローグのリメイクでございます...
ホントはこの小説の一周年に投稿しようとしていましたが...徹夜をしても時間が足らず...断念していたらいつの間にか日にち的にバーテックスが襲ってくる日にちになってしまいました...
これが完成するまでいろいろなことがありました...ドッカンだったりドッカンだったりドッカンだったり...あとゼルダもあったか...まぁ自分買ってないですけど...
さてこんなにじらして待ってる方も絶対にいない状況でございますでしょうが...なんとタグがほとんど機能しません!
百合もなければ、TSもなく、何なら仮面ライダー要素もない!いったい誰がこれを読むというのだね...
そんなプロローグでございますがこのプロローグはリメイクでありながらきっと誤字脱字がいっぱいです!ひどいですね!
ちなみにこのリメイクはリメイク前ののプロローグをより詳しくしたものになっております。よってさっさと本編を読みたい方はリメイク前をご覧ください。そうすればタグが機能するのが早まります。
このリメイクは後付けなのにもかかわらず多大な本編との矛盾を含みます。あとで見返しに来ないでください。
因みにプロローグ間でい一日で数話分やったところや、数か月やっとところが入り混じっており、設定がごっちゃになってる可能性がございます。ついでにプロローグを読んだ後の本編の文章がひどいことになってる場合もございます。というかなってます。
はい。九話分の注意書き終わり!いや終わってないわ。多分胸糞もある気がします。ハイ終わり!ゆっくりしていってね!


 俺こと高橋祐樹はゆゆゆ好きの高校二年生である。

 ゆゆゆが好きと言っても、俺は大満開の章がやっているあたりから見始めたからそこまで詳しくはない。だけどゆゆゆは今まで見てきたアニメの中で一番俺が長く続いたものだと思う。ソシャゲだって俺はいつも続かなかったけど続いたし...(すぐサ終しちゃったけど)いつもはアニメを見終わったらそのスピンオフやラジオなんて読まないし、聞かないのに(ラジオに関してはそもそもそんなことがあるとか知らない)読んだし、聞いた。まぁ、普通のアニメ好きの人からしたらこんな事普通なのかもしれないけど...

 とまぁこんな感じの俺はブックオフに妹と来ていた。普段は一緒に行動しない妹だが、欲しい漫画があるらしく一緒に出掛けていた。まぁ会話なんていつも通りなかったけど...お互いイヤホンしてたしね

 

 

 

 

そして買いものが終わった...

 

「やったー--------------!」

 

「祐樹うるさい」

 

 これに関してははしゃいでも仕方ないと思う。なんか知らないけど追憶の園子が20,000で売っていたのだ。俺は全財産をはたいて買った。本当はゆゆゆの漫画やのわゆを買いに来ていたのだがまぁいいだろ!一回読んだし...

 

「それにしても祐樹お金あるね。そんなアニメの本に普通、二万も掛ける?二万だよ?TDL行けるよ?それか服も買えるし、ス〇バも行けるよ?と言うかそんな金あるなら〇〇(妹の名前)の本とかも買ってよ」

 

「いやだよ。これは俺がお小遣いを必死こいて貯めて買ったんだよ。お前みたいにたくさん物を買っていないの。わかる?」

 

「わかんない。そもそも祐樹の見てるアニメの面白さがわからない。かわいいキャラ出てこないじゃん。あ、でも黒髪の子は可愛いよね」

 

「てめーしばくぞ?全員かわいいだろうがよ!特に友奈!」

 

「友奈って誰?」

 

「赤髪の子」

 

「あー私主人公嫌いなんだよね」

 

「てめー...というか何でリリスパは好きなのにゆゆゆは嫌いと言うか見ないのかなー」

 

「今、○○はハイキューで忙しいから、後転スラでしょー、後夏目ももう一度見直さなきゃならないしーあと本好きも!」

 

「なんかお前とアニメの好み合わないよなー」

 

「そもそもキャラの好みが違うじゃん」

 

「ま、そーだね」

 

 

 

 

 

 

 そこから会話はなく、家の近くの交差点まで来た。

 

「○○ちゃーん」

 

 突然右から声がした。別に俺が声をかけられたわけでもないのにその声がした方向を見ると妹の友達の△△ちゃんがこちらに向けて手を振っていた。

 

「あ、△△ちゃん!あ、祐樹。はいこれ」

 

 妹は買った荷物を俺に押し付けてきた。

 

「これ持って帰っといて。私は△△ちゃんと話すから!」

 

 そう言って妹は俺が文句を言う暇を与えずに点滅している信号を歩いて渡り始めた。

 

(めんど)

 

 そう思いながら俺はふと妹が渡っていった方向の左を見たトラックが止まる気配を感じさせずに走っていた。

 この時の俺の視力と集中力と反射神経は神がかっていたといっても過言ではなかった。そのトラックの運転手は真昼間なのにもかかわらず寝ていた。

 俺は今まであった反射の何倍も速いスピードで妹の方を向き、持っていた荷物を落としながら、加速をし始めた。妹はトラックが止まらないことに驚いたのか硬直していた。

 俺はトラックがあたる前に妹の方へたどり着き妹を△△ちゃんの方へ突き飛ばした。俺とトラックがあたる瞬間、時が止まる...かのように思えた。実際はものすごい遅いスピードで時間は進んでいるのである。

 こういう時って走馬灯みたいなのが流れるのであろうか?まぁいいや俺は今思ったことをただただ自分も心に秘めておくことにしよう...

 

(ったく、どっちもどっちだけど交通ルールは守れよな...○○...お前は俺がなんか悪さをしたときに黙っていてくれたよな...俺はチクったけど...小さい頃のお前は本当にかわいかったよ...年を取るにつれただただうざくなってきたけど...まぁ俺の死によってその尖った性格も少しはましになるといいな...俺の分まで生きろよ...そして俺は追憶の園子、読みたかったぞ!畜生!)

 

 

 

 

 

 そうして俺の十七年の短い人生は幕を閉じた。今回は男だから、次は女がいいかな。

 

 

 

 

 気づいたら俺は光源がないのにも変わらずなぜか周りが見れる空間にいた。

 

「あれ?俺死んだんじゃなかったっけ?」

 

「うん君は死んだよ」

 

「誰?と言うかなぜアクア?」

 

 声をした方向を見ると玉座っぽところに座ったアクアがいた。一つ言えることはアクアに似合わない雰囲気と顔をしていたということだろう。

 

「そうか君には私がアクアに見えるのか...私はね人によって姿が変わるのだよ...正確に言えばその人の女神に対するイメージだが...あ、私の名前は武蔵野坐令和言霊大神ね略して言霊大神」

 

 令和と言うことは新しい神様なのだろうか...

 

「へぇ~...でその言霊大神様は自分に何の用があるのでしょうか?」

 

「ん?あ、いやぁ広く浅くの君ならこの後の展開分かるでしょ?そーゆ―ことだよ」

 

「いや転生するのはなんとなくわかったのですが、俺はどの世界に行って何をすればいいのかと思いまして...」

 

「あーそーゆ―ことね...ごめんごめん君理解力ないって勝手に誤解してたよー」

 

「は、はぁ...」

 

「ちなみに私は新しい神様じゃないよ」

 

(⁉心を読まれている⁉)

 

「そそ、この空間だと私は君の心の声が聞けるんだよ。なんたって、私の作った空間だからね!」

 

「...」

 

「あ、もう時間がないや!じゃパパッと説明するね!質問は受け付けないし、一回しか言わないから耳の穴かっぽじってよく聞いてね!あ、死んでるから耳くそないか!」

 

「早く」

 

「...君には今から『結城友奈は勇者である』の世界に行ってもらいます。とりあえず思った限りのチートあげるから頑張ってねー」

 

 そう言って目の前の神は指パッチンをした。その瞬間俺の足元に穴が開き俺は重力に従って落ちた。

 

「ちょま、うそでしょ⁉」

 

 それが高橋祐樹としての最後の言葉だった。

 

 

 

 

 

「さて...なんか物語の中にいる神様から二次元と三次元の壁を越えて助けを求められたときは困ったけどちょうどよく近くで死んだゆゆゆを知っている若者がいて助かったー!さ~てチートの内容を考えなきゃね!え~と...」

 

 そう独り言をつぶやきながら神は周りを見渡した。すると自分がさっきまで読んでいた本の束を見つけた。

 

「う~んこれでいいか!」

 

 そう言いながら神が手に取ったものは仮面ライダー図鑑と書かれている絵本と言うか資料集であった。

 

「あと、能力を理解するために必要な全知全能はつけるとして...う~ん...もう考えるのはめんどくさいや!能力は自分で作るものだ!と言うわけで後は自分で能力を作り出せる能力でいいや!まぁ人間が使いこなせるわけがないけどwまぁ勇者になったら使いこなせるかもね、知らんけど。さ~て何かの縁だ!ゆゆゆもう一回、一から見るか!」




神の性別は不明です


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プロローグ2(リメイク)

 気が付くと俺は病室にいて見知らぬカップルに抱えられていた。

 いや生まれたばかりって視力とかないやんっていうツッコミは置いといて、なるほどこの人たちが俺を生んだのか...そう思いながら俺は再び目を閉じて意識を落とした。

 

 

 

 

 次俺が目を覚ました時、俺はなぜか倒れた車にいて血まみれの両親が目に映った。

 

(え、は?何でこうなってんの?と言うか俺急成長しすぎだろ⁉)

 

 俺の体はなんか知らんけど五歳くらいに成長していた。どうやって見たかって?そりゃバックミラーとか使って頑張ってみたんだよ。

 そしてそこから救急車だったりいろいろ来て俺は病院に搬送された。何日か入院すると思ったけど、なぜか知らんが俺は無傷だったらしい...

 そしてすぐ退院になったわけだが、また新たな問題が発生した。引き取り先がいないのである。

 

(おじいちゃんいないのかよ)

 

 両親は若かったため、いると思ったがどちらも早死にしたらしい。なんでだよ。そして親戚に引き取られると思ったのだが、なんとうちの家系...と言うか両親は嫌われていた。なぜならその親戚が用意した土地をうっ

ぱらって上京した先に家を建てたからであった。

 

 因みに余談だが俺は交通事故にあった後の入院で初めて自分の名前を知ることができた。俺の名前は前田ひなとと言う名前であった。少なくとも前世で聞いたことはないがどうなんだろう...まぁなんでもいいか。あまりかかわってないしもはや他人と同じようなものだが授かった命と名前だ、形見のようなものである。だから大切にしようと思った。

 

 そして引き取りが見つからずに葬式の日になった。適当に引き取り先が見つかるまで俺は学童的な場所に入れられて暮らしていた。

 俺は一番前の椅子に座り俯きながらお坊さんがなんか唱えているのを聞いていた。両親は嫌われていたが一応お葬式には来てくれたらしくそれなりの人数がいた。でもすすり泣く声などは全く聞こえなかった。と言うかそもそもこの葬式は誰がやってくれたのだろう...

 

 そして葬式が終わり親族がいっぱい集まっている部屋に入ろうとした時であった。

 

「あの子どうして泣かないのかしら?」

 

「まだ幼いから状況がよくわかっていないのよ」

 

「えー、さすがにわかるでしょう...それにあんなに無表情な子供は初めて見るわ...気色が悪い...」

 

「と言うか誰があの子を引き取るんだ?うちは嫌だぞ!あんな両親の子なんて恩知らずに決まっている!」

 

「私だっていやよ!あんな子引き取ったって親孝行なんてせずに金をとられるだけよ!」

 

「もう孤児院送りでいいんじゃないか?両親の罪を子供に償わせるって考えたら全く罪悪感がわかん!」

 

 あ、終わった。いや終わってはいないんだが終わった。俺の人生はお先真っ暗かな...はぁ前世の両親に会いたい...正直俺は今の親のことなんてよくわからない。どんな人たちだったのか、どんな料理を覚えているか、どんな仕事をしていたのか、どんな名前で、いつが誕生日だったのか、俺をどのように呼んで、どのように接していたか、そんなことが一切わからないのである。だから俺は今の両親を両親と思っていない。でもこの流れだと孤児院の人たちが親になりそうだな...

 そう思っていたのだが、その考えはなくなった。

 

「いや僕が引き取りますよ」

 

 俺を孤児院送りにすると盛り上がっていた人たちの中に新しい意見が生まれた。びっくりして声がした方を見ると少し真面目っぽい黒髪の男性であった。

 

「...そうか上里君は知らなかったね、あの子供の親はね...」

 

「知ってますよ。調べましたので。別に僕からしたらなんだそんなこと、とも思いましたね。とりあえず子供に償わせるほどのものではないということは確かです」

 

「...ふんっ!勝手にするがいい!」

 

「はいそうさせていただきます...と言うわけだ!これからよろしく!」

 

 話が済んだのかその上里と言う男は俺の方を向いて少し大きな声を出して呼びかけた。と言うか気づいていたのね...その男が呼びかけた瞬間視線が俺に集中した。

 

「まさかさっきの聞かれてた?」

 

「と言うかいつからいた?」

 

「まぁ聞いたとしても理解していないか...」

 

「ふんっ、別に理解してようともう私らには関係ないわ」

 

「それもそうだな」

 

 結構ぼろくそに言われているなおい。まぁ俺がなんて言おうが反感を買うだけだから何にも言わないけど...

 

「あ、僕が引き取ってもいいってことですよね」

 

「ああ、引き取るなら引き取るで好きにすればいいさ。まぁ君が引き取らなかったらその子は孤児院行きだろうけどw」

 

「では僕は失礼します」

 

 そう言うと男はお辞儀をして俺の方へ来た。

 

「こんにちわ」

 

「え、あ、こ、こんにちわ...」

 

 やっべ―知らない人だ...俺人見知りだからな...あんまうまくしゃべれん...

 

「今日から僕が君のお父さんだ。お父さんなりパパと呼んでくれてかまわないよ」

 

「え、あ、じゃ、お、お父さんで...」

 

「うん!いいね...じゃ早速家に行こうか。こんな嫌な大人たちしかいないところは君も嫌だろうし」

 

 そう言って目の前の男は俺の手を握り歩き始めた。

 

「あ、あの!」

 

「なんだい?」

 

「その、なんで僕を引き取ったんですか?よくわからないけど、僕嫌われているのに...あ、あとお父さんは嫌な大人じゃないと思います...」

 

「そうか...ありがとう...あ、引き取った理由かい?まぁ個人的なるんだけどね、娘がいるんだ」

 

「は、はぁ...」

 

「でその娘が先日僕にこんなことを言ってきたんだ『弟が欲しい!』って」

 

「は、はぁ...」

 

「でちょうど引き取り先のいない子供がいると聞いてね、全く関係ないし、すごく遠い親戚だったけど葬式に参加することにしたんだ」

 

「新しいのを生むっていう考えはなかったんですね...」

 

「?あぁ、ひなた...あ、ひなたと言うのは娘の名前だ。で、そのひなたが欲しがっている弟と言うのはもう喋れたりする弟でね...今から弟を作ろうとすると時間がかかりすぎてしまうんだよ...

 

「は、はぁ...」

 

 と言うか今さりげなくすごいことを言わなかったか?この人...確かこの人の苗字が上里で、娘の名前がひなた...あっ(察し)

 

「で、一応弟候補として君を調べたわけだが...本当にギリギリひなたの方が年上でね、君を引き取ることにしたんだ」

 

「もし俺...僕の方が年上だったらどうしてたんですか?」

 

「う~ん...候補と言っても君しかいなかったから、ひなたにはあきらめてもらうか、君に誕生日を詐称してもらうかだったね」

 

「...そうですか」

 

「あと誤算だったけど君若干ひなたに似ているよ、容姿も名前もね」

 

「そうですか...」

 

 そうして俺は新たなお父さんの車に乗り新しい家に向かった。その車の中での会話はなかった。

 

「着いたよ...」

 

「...でけぇ...」

 

「ふふ...そうだろ?」

 

 目の前に見える家は庭は広くなものの、家の大きさはほかの周りにある家に比べて大きく高かった。

 

「ただいまー」

 

「お、おじゃまします...?」

 

「ただいまだよ」

 

「...ただいま...」

 

 玄関を開けて挨拶をすると奥の方からどたどたと物音がして足音を出しながら一人の黒髪ロングの女の子が近づいてきた。

 

「お帰り!パパ!...?その子は?」

 

「ああ、この子かい?ほら自己紹介」

 

 そう言ってお父さんは俺を軽く小突いた。

 

「えっと前田「上里」...上里ひなとです...」

 

「と言うわけだひなた。新しい弟だぞー!」

 

「えー!ほんと⁉私上里ひなた!よろしくね!」

 

 俺の上里ひなとのイメージが崩れそうな接し方をしながら目の前の少女は俺の腕をぶんぶんと縦に振った。

 

「そういえばひなと君」

 

「ひなとでいいです...」

 

「ではひなと、ひなとの荷物がなかったんだけどどこにやったんだい?」

 

「孤児院?に入るときに費用として全部質屋?に入れられました」

 

「そうか...」

 

「ねーねーパパ?」

 

「どうしたんだい?ひなた?」

 

「ひなとにおうち紹介しに行ってもいい?」

 

「ああ、いいよ転ばないようにね」

 

「うんわかった!ほらいこ!」

 

 そうして俺はひなたに引っ張られた。

 

「あのひなた「お姉ちゃん」え?」

 

「私のことはお姉ちゃんて呼んで!あ、ひなと何歳?誕生日は?」

 

「五歳、生まれた日は十月十四日」

 

「そっか私は同じ五歳で十月四日なんだ!だから私の方がお姉ちゃん!だからひなとは私のことをお姉ちゃんって呼ぶの」

 

「う、うん分かった...」

 

 そこから俺は精神年齢も生きている年数も確実に俺より短い姉に家の様々なところを説明させられた。いや、精神年齢云々を考えている俺はやはりいろんな意味で年下なのかもしれない...

 

「ここが私の部屋!もうすぐ私たちも小学生だからね!最近机買ってもらったんだ!」

 

「良かったね...」

 

「うん!あ、ひなともこの部屋で暮らすんだよ!」

 

「え、空き部屋いっぱいあったのに?」

 

「姉弟っていうのは一緒の部屋で過ごして一緒の布団か部屋で寝るんだよ!」

 

「テレビの見すぎだな...」

 

「ん?なんか言った?」

 

「何でもないよ...お姉ちゃん」

 

「わ~お姉ちゃん!いい響き!これからお姉ちゃんがなんでもやってあげるからね!あ、文字教えてあげようか⁉私ももう小学生だからね!文字かけるようになったんだよ!」

 

「あー...いいかな...」

 

「う~ん...そっか!新しい家で疲れたんだね!大丈夫だよ!お姉ちゃんが今お菓子持ってきてあげるから!」

 

 そう言ってお姉ちゃんはどたどたと下にあるリビングに向かっていった

 

「ココアかよ...」

 

 俺は姉のいなくなった部屋でそうつぶやいた。

 

 そうしてしばらく待っているとお姉ちゃんが少し涙目で入ってきた

 

「どうしたの?」

 

「ママがね、ひなたは食べすぎるからお菓子食べちゃダメ!って言ってきたの」

 

「へ~...え、今お母さん居るの?」

 

「うん下にいるよ」

 

「ちょっとあってくる」

 

 そう言って下に向かおうとしたが、服の裾を引っ張られ歩くのをやめた。

 

「お姉ちゃんも一緒に行く」

 

 そうして俺らは一緒に下へ向かった。

 

 

 

 

 下にいたのは黒髪巨乳美人であった。子が美人なら親もやはり美人らしい...。

 

「あら?君が今日から私たちの家族になる...」

 

「あ、はい...ひなとです...」

 

「ひなと...聞いてはいたけどほんとに名前似てるわね...あ、ひなとって呼ばせてもらうわね。自分の部屋、ひなたから聞いたかしら?」

 

「ひなとの部屋は私の部屋だよ!」

 

「ん?」

 

「だからひなとは私と同じ部屋で過ごすの!」

 

「え、ん?確かにひなたの部屋は広いけど...少し成長したら後悔するよ?いいの?」

 

「いいの!絶対しないもん!」

 

「そう...ならいいけど」

 

「あのお母さん...」

 

「何かしら?」

 

「えっと...なんか手伝うことありますか?結構できること少ないですけど...お世話になる身ですし、何かしたいと思ってるのですが...」

 

「ん~...じゃ、ひなたとお使いに行ってきてもらえるかしら」

 

「あ、別に僕は一人でも...」

 

「お店の場所分かるの?」

 

「...そう言えばそうでした」

 

「ひなた」

 

「なにー?」

 

「お姉ちゃんとしてひなとが迷わないようにしっかりついていってあげてね」

 

「うん!わかった!」

 

「はいひなと。これ買うものね」

 

 そう言ってお母さんはいつの間にかいたのか買い物リストと鞄、そしてお財布を渡してきた。子供でも余裕で持てるもので安心した。

 

「余計なものを買わないようにね」

 

「はい。わかりました。じゃ行ってきます」

 

「あ、まってひなとー」

 

 そうして俺らは玄関の方へ向かっていった。

 

 

 

 

「あれが葬式が終わったばかりの子供...ね...」

 

 一人の美人は夕ご飯を考えながらそんなことをつぶやいた。

 

 

 

 

「えっとお姉ちゃんここら辺のスーパーに行きたいんだけど...」

 

「スーパー?えっとね...多分こっち!」

 

「多分って...」

 

「私一人でお使い行ったことないんだ」

 

(初めてのお使いじゃねーか!大丈夫だよね?警官に扮したカメラマンいないよね?)

 

 あたりを見回すがそんな人は一人もいなかった。

 

 

 

 

 難なくスーパーにつくことができた俺たちは渡されたメモに書いてある商品を探していた

 

(えーとまずはカレールーだろ...でうどん...あとはリンゴが三個...だけか...うん、すぐ見つかりそう)

 

 そう思いながらカートを押して商品を探しているわけだが...

 

「お姉ちゃん...」

 

「なにー?」

 

「なんかよくわかんないものが追加されてるんだけど?」

 

「チョコレートだよ?」

 

「うんそうだね...どこから持ってきたの?」

 

「あそこ!」

 

 そう言ってお姉ちゃんが指を指した方向はお菓子売り場であった。

 

「戻してきなさい...」

 

「なんでー?」

 

「リストに載ってないからです」

 

「でもお姉ちゃんは欲しいよ?」

 

「駄目です」

 

「どうしても?」

 

「どうしても」

 

「むーしょーがないなー。私はお姉ちゃんだからゆうこと聞く」

 

「わーおねーちゃんさすがー」

 

 だんだん面倒になってきたがまぁよし。

 

 

 

 

 そのあとは何事もなくレジに言ってお金を払って取引をした。ちなみにお財布にはチョコレートを追加しても買えるぐらいのお金が入っていた。

 

「あ、お姉ちゃんが持つ」

 

「いや俺...僕が持つよお姉ちゃんは道案内してくれればいいよ」

 

「いやお姉ちゃんが持つ」

 

「えー、じゃあちょっと待てて」

 

 そう言って俺は袋の中に入っていた袋を取り出し、うどんとカレールーを入れてお姉ちゃんに渡した。

 

「はいお姉ちゃんはこっち持って」

 

「わかった!」

 

 

 

 

 二人で少しだけ会話を見て帰路を辿ってる途中であった。

 

「あ、ひなた!おーい!」

 

 交差点の方から声が聞こえた...ん?この光景どっかで見たことがあるような...

 

「あ、若葉ちゃん!」

 

 お姉ちゃんが返事をした方向を見ると、点滅した信号の向こうで少し薄めの金髪ポニーテール少女が手を振っていた。

 次にお姉ちゃんを見ると横断歩道を渡ろうとしていた。

 

「お姉ちゃん!」

 

 俺は慌ててお姉ちゃんの首根っこを掴みこっちに引き寄せる。

 

「な、何⁉」

 

 お姉ちゃんはびっくりした様子でこちらを見た。向こうの少女が俺の方を睨んでいたが気にしないふりをする。

 

「駄目でしょ⁉信号はしっかり見ないと!死んじゃうよ!」

 

「大げさだよー?でもごめんね...」

 

「あ、わかればいいよ...いたくなかった?無理やり引き寄せちゃったけど...」

 

「大丈夫!」

 

「ならいいんだけど」

 

「ひなたに何やってんだ!」

 

 俺が安心した瞬間俺に飛び蹴りが飛んできて、俺の頭は勢いよく地面にぶつかった。

 

「何やってるの⁉若葉ちゃん⁉」

 

「だってこいつ今ひなたに乱暴なことを...!」

 

「この子は今日から私の弟になったひなとだよ!」

 

「はぁ~ひなと?確かに名前は似ているが」

 

「大丈夫?ひなとー」

 

「いってて...いきなり蹴るとか...なんかすごい子だね...」

 

「この子は生まれた頃からずっと一緒にいる若葉ちゃん!」

 

「乃木若葉だ...」

 

「私たちの住んでるところよりもおっきな家に住んでいるんだよ!」

 

「へ~...あ、俺は上里ひなと...」

 

 それだけ言って俺は荷物の方を見た。勢いよく地面とぶつかったが、リンゴは砕けていないようである。

 

「それで若葉ちゃん何か私に言おうと思ってたことでもあったの?」

 

「いや今日初めて見かけたから声をかけただけだ」

 

「そっかー...あ、今私たちお使い中だから家に帰らなきゃ。遊ぶとしたらまた明日遊ぼうね」

 

「ああ」

 

「ほらひなと...っていない⁉」

 

「あいつならさっきひなたの家の方へ向かったぞ」

 

「えー⁉私ママからひなとのこと任されているのにー!」

 

「勝手に離れたヤツのことなんて放っておけばいいだろ」

 

「私はお姉ちゃんだからそんなことはしないの」

 

「お姉ちゃんね~...まぁあいつはどうせ歩いているから走ったらまだ間に合うだろう」

 

「そうだね!」

 

「あ、ひなたちょっと待て!私も行く!」

 

 

 

 

「ひなと!」

 

 積もる話があったと思ったので先に行っていたが、そんな気遣いは必要なかったのか、若葉とお姉ちゃんが走って近づいてきた。

 

「なんで先に行っちゃうの⁉」

 

「えーだってお姉ちゃん若葉と話していたし...」

 

「いきなり名前呼びか...」

 

「若葉ちゃん、乃木ちゃん、若葉...どれがいい?」

 

「若葉」

 

 若葉は嫌そうな顔をしながらぶっきらぼうに言った。

 

「あいよ」

 

 

 

 

 

 なんやかんやあって家に着いた。

 

「それじゃ、また明日ね若葉ちゃん」

 

「ああ」

 

「ほらひなとも」

 

「じゃあの」

 

「明日はひなとも連れてきますね」

 

「え...」

 

「露骨に嫌な顔された...」

 

 俺たちは若葉が見えなくなるまで見ていた。

 

「これから毎日楽しくなりそうだね!」

 

「はは...そうだね...」

 

 

 

 

 家に入るとお母さんが目の前にいた。

 

「あ、おかえりー」

 

「ただいまー」

 

「ただいまです...」

 

「少し遅かったから心配したのよ?」

 

「若葉ちゃんと話をしていたんだ!」

 

「そう...」

 

「あ、お母さん...これお釣り...」

 

「?へ~...」

 

 お財布の中身を見てお母さんは少し笑った。

 

「ひなた、お菓子我慢できたんだね」

 

「え⁉あ、あ~...うん...お姉ちゃんだから!」

 

 そう言ったお姉ちゃんはものすごくきょどっていた。

 

「ひなともありがとね」

 

「あ、いえ...当然のことをしたまでです...」

 

「そう...あ、手を洗ってから部屋に行ってみなさい?きっとうれしいことが待っているわよ」

 

「はーい」

 

「はい。わかりました」

 

「ほらひなと!早く行くよ!」

 

「えちょ⁉手は?」

 

「そんなのはどうでもいいよ!早く部屋に行くよ!」

 

「それママの前で言う...?」

 

 

 

 

 そして部屋の中に入るとさっきまでは一つしかなかった机の横にもう一つだけ机が置かれていた。そしてお父さんもいた。

 

「やぁおかえり、ひなたひなと」

 

「ただいまー」

 

「ただいまです...えっとそれは?」

 

「これはひなとの机だよ。ひなたと一緒の部屋にするんだろう?」

 

「うん!そうなの!」

 

「はは、夜になったら布団も持ってくるから...とりあえず今のところはこれだけね。じゃ、パパはママとお話してくるから仲良く過ごしていてね」

 

「あ、はいわかりました」

 

 

 

 

 お父さんが出てきて一分後くらいであった。

 

「お姉ちゃんは...ちょっとお花摘みに行ってくるね...」

 

「あーうん行ってらっしゃい」

 

 

 

 

両親会議...

 

「ねぇひなとのことなんだけど...少し大人すぎないかしら?あんなに五歳児って敬語を使ったりするものだったかしら?」

 

「まぁいいじゃないか...まぁひなたは弟が欲しかったんだろうけど...」

 

「あれじゃ兄ね」

 

(敬語を使えば大人...?じゃ私が使えばもっとお姉ちゃんに近づく...?)

 

「今の会話...ひなたに聞かれたようだけど...?」

 

 美人はどたどたと響く足跡を聞きながらそう言った。

 

「別にいいさ...これでひなたがどうなるのかも気になるしね...とりあえず俺たちがしなければならないことは」

 

「あの子を家族とみることでしょう?」

 

「そうだな」

 

 

 

 

「ひなと!」

 

 お姉ちゃんが勢いよくドアを叩き俺の肩を持ってブンブンを揺らした。

 

「な、なに~?」

 

「私に敬語を教えてください!」

 

「もう使えてるじゃん!」

 

「それでも間違っている使い方をしているかもしれないじゃないですか!」

 

「と言うかなんで敬語?」

 

「大人になれるからです!」

 

「は?」

 

「だから大人になってよりお姉ちゃんになるためです!」

 

「もうお姉ちゃんは俺にとってはお姉ちゃんだけど...」

 

(嘘だけど)

 

「それじゃダメなの!とりあえず私は敬語が使いたいの!」

 

「わかったよ...とりあえず世間話をしよ?間違ってる使い方をしたら教えるから」

 

(まぁ丁寧語さえ使えればいいだろ)

 

 そうして俺とお姉ちゃんの敬語レッスンと言う名の世間話が始まった。まぁ俺が話せることはないけど。

 

 

 

 

 数時間後...

 

「ふたりとも~ご飯だよ~」

 

 お父さんが俺らを呼びに来た。

 

「あ、お父さん...わかりました...今行きます...」

 

「⁉」

 

(やってしまった...人様の子供の性格を完璧に変えてしまった...)

 

 お姉ちゃんは俺のイメージ通りの上里ひなたになってしまった。

 

「たかが数時間でこうなってしまうのか...」

 

「ほらひなと、行きますよ」

 

 さっきまで無邪気だった少女は敬語を習得したせいか落ち着きを見せる性格になってしまった。

 

 

 

 

 夕食が終わってお姉ちゃんが離席したときである。

 

「本当にすいません!」

 

 俺はお母さんとお父さんに向けて土下座をしていた。

 

「なんで急に謝るんだい?」

 

「え、いや俺のせいでお姉ちゃんが色々変わったから...」

 

「別にそのくらいいいわ...まぁ確かに急に大人になったけれども...遅かれ早かれこうなったでしょうし...」

 

「と言うわけだ...まぁ今日からの付き合いだがこれからもひなたと仲良くしてくれよ?」

 

「はい...」

 

 なんか許されてしまった...

 

 

 

 

 しばらくして...

 

「ひなと、一緒にお風呂に入りましょ?」

 

「ふぁ⁉」

 

「あら、いいじゃない。ほら入っておいで」

 

「え、ちょ、い、いや俺は一人で入ります...あと着替えないです...」

 

「あ、着替えなら買っといたよ」

 

「え、はや、と言うかサイズはどうしたんですか?」

 

「見たら大体わかるわ...」

 

「良かったですね。じゃ、一緒に入れますね」

 

「お父さん...」

 

 俺は救いを求める目でお父さんを見たが

 

「この日本では裸の付き合いという単語がある...と言うわけで頑張れ」

 

 普通に見捨てられた。

 

 

 

 

 おれはまぁまぁ広い湯船につかりながら思う。

 

(今日家族になったばかりの俺と自分の娘と一緒の風呂に入らせるとかあの人たち何考えてるんだ...)

 

 俺はお姉ちゃんの姿をあまり見ないようにしていた。なのに

 

「ひなと、お姉ちゃんの背中、洗ってくれませんか?」

 

「...自分で洗えば...」

 

「ん?」

 

「洗わせていただきます...」

 

 そして俺は小さな背中を洗った。

 

 

 

 

 俺がお姉ちゃんの背中を洗っているころ...

 

「ひなと、少しだけ砕けてきたわね」

 

「そうだな...このまま敬語もなくなればいいんだが...」

 

「なくなるわよ...きっとね...」

 

 

 

 

 風呂から上がって自分の部屋に向かうと布団が二枚敷いてあった。

 

「一緒に寝ます?」

 

「いやさすがにいいや...」

 

「そうですか...」

 

「電気...消すね?」

 

「はい」

 

「ひなと...」

 

 俺が布団に入るなりお姉ちゃんは俺に話しかけてきた。

 

「なに?」

 

「私はお姉ちゃんをしっかりとやれているのでしょうか?」

 

「知らない」

 

「そうですか...」

 

「でも、俺もお姉ちゃんは欲しかったから...お姉ちゃんやれているとかどうでもいいかな...」

 

(少し性格が変わったとはいえ、おれはまだお姉ちゃんだと思っていないけど)

 

「なら、本当の意味でお姉ちゃんになれるように頑張りますね...おやすみ」

 

「うん...おや須美」




ブラコンの兆し...こういうひなたがいてもいいよね...キャラ崩壊?二次創作はそんなもんです...


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プロローグ3(リメイク)

翌日のことである。

 朝、目が覚めてまず思ったことは

 

(見知らぬ天井だ...)

 

 この一言に尽きる。

 

(えーとこの世界に来てから何があったんだっけ...)

 

 まず赤ん坊になるだろ、そしたら五歳児になって交通事故に遭遇してるだろ、病院を退院したら誰かに引き取られるかと思ったら、なんか持ってたもの売られて孤児院入れられたと思ったら、突然連れられて親の葬式に参加させられたと思ったら、突然引き取り先ができてやけに姉を主張してくる主要人物出てきて色々一緒にやって一緒に寝ると...濃いなおい。

 そう自分に起きた出来事を復習し終わった後にゆっくり横を見ると新しくできたお姉ちゃんがすやすやと眠っていた。

 

(昨日、この人の性格変えちゃったんだよね...おれ)

 

 時計を見てみると六時を指していて少し起きるのが早かったかなと思った。

 今の年は二〇〇九年...あと六年で例の事件が起こるのだが、俺には何もできないのだろう...

 

(勝負は四国に侵攻してからだ...)

 

 そうして俺は二度寝をした。

 

 

 

 

「ひなと...ひなとー、起きてください」

 

「ん?ん~」

 

 俺は目の前の赤目黒髪ロングのようjy..お姉ちゃんが起こしたのを理解して寝たまま背伸びをした。そしてそのまま目を閉じた。

 

「ひなと~?」

 

 声をかけてくるが無視をする。俺はまだ眠いのだ。

 

「も~...」

 

 そうお姉ちゃんがつぶやいた瞬間突然体に重いものが乗っかり息が一瞬できなくなった。

 

「おも...」

 

「な、重いって女の子に行っちゃだめなんですよ⁉」

 

 見るとお姉ちゃんが俺の上に乗っかっていた

 

「知らないよ...早くどいて」

 

「もう起きますか?」

 

「あー起きる起きる」

 

「じゃあどきます」

 

 そう言ってお姉ちゃんは離れたので俺は掛布団の中に入り丸まった。

 

「あー!もー!なんで起きないんですか⁉朝ご飯なくなっちゃいますよ!朝ごはん食べたら若葉ちゃんのところに行くんですから早く起きてください!」

 

(さて、そろそろ意地悪はやめてあげますか...)

 

 そう思いながら布団から出てドアの方を見ると頬をぷくーと膨らませたお姉ちゃんとドアのところでにこにこと笑っているお父さんがいた。

 

「やぁ寝坊助、おはよう」

 

「あ、おはようございます」

 

「ひなとー私には?」

 

「あ、お姉ちゃん若葉のところに行くって言ってたけどいつ頃?」

 

「...」

 

 お姉ちゃんは頬を膨らませたまま何にも言わなかった。

 

「...おはよう、お姉ちゃん。それで若葉のとこに行くのはいつ頃?」

 

「八時です」

 

「え、今七時半だよ?」

 

「そうですよ。だから早く起きてって言ったじゃないですか」

 

 俺は慌てて下に向かった。

 リビングのドアを開けるとお母さんがいたので

 

「おはようございます、お母さん」

 

 そういってあたりを見回し、お姉ちゃんの言う朝ご飯を探した。

 

「あ、おはよう、ひなと。ひなたはずいぶん起こすのに時間がかかったらしいわね。ご飯ならそこにあるから食べなさい」

 

 そう言ってお母さんはキッチンの目の前にある机を指差した。見るとパン一枚が置いてあった。

 

「いただきます」

 

 急いで座り手を合わせいう。パンを食べ始めるとお姉ちゃんがリビングに入ってきた。

 

「ひなと移動早い...あ、お母さん...ひなとの服はありますか?」

 

「...あー昨日買った服がタンスの中にあるからとってきてあげて」

 

 なんでそんなすぐに服が買えるんですかね...

 

「わかりました」

 

 そうしてお姉ちゃんはとてとてと上に向かっていった。

 

「ご馳走様でした」

 

 食い終わった俺は皿を台所にもっていった。

 

「あ、ありがとうね。タンスはひなたの部屋にあるからそっちに行ってあげて」

 

「わかりました」

 

 

 

 

 そうして俺は再び寝ていた部屋に向かった。するとお姉ちゃんが服を出しており、それは女物であった。

 

「お姉ちゃん?俺男だよ?」

 

 鼻歌を交えながら服を選んでいる姉に俺はそう言う。

 

「わかっていますよ。でもひなとはこれも行ける思うんです!」

 

「やめて?」

 

「え、でも...」

 

「やめて?」

 

「...しょうがないですね。はいじゃこれとこれ」

 

 そう言ってしぶしぶお姉ちゃんが差しだしてきたものはジーンズと無地の長袖であった。

 

「ん、ありがと...でいつまでそこにいるの?」

 

「?ここ私の部屋ですよ?」

 

「いやそうだけどさ、俺着替えるから...」

 

「昨日一緒にお風呂入ったのに気にしてるんですか?大丈夫です!私は気にしてません!」

 

 そうして胸を張りどや顔をする姉。お前まだ胸ないぞ。

 

「俺が気にするの!いいから出てって!」

 

 そうして俺は姉を無理やり部屋から出した。昨日来たばっかのやつの態度とは思えねぇ...

 

 

 

 

 そうして俺は着替え終わり部屋から出た。

 

「着替え終わりましたか...じゃ早速若葉ちゃんの家に行きましょう!」

 

「いいけど若葉の家に行って何をするの?」

 

「稽古の見学とかいろいろです」

 

「そーなのかー」

 

 しゃべっている間に玄関に着いた。

 

「サイズは大丈夫かしら?」

 

 靴を履いている時にお母さんが話しかけてきた。

 

「びっくりするぐらいちょうどいいです」

 

「ならよかったわ」

 

「「行ってきます」」

 

「行ってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

若葉の家に向かっている途中...

 

「若葉ちゃんの家は意外と遠いです」

 

「じゃあ何で仲いいのさ」

 

「幼稚園が一緒と言うのと親同士の仲が良かったからですね。生まれたときからお隣さんだったそうです」

 

「へ~」

 

 そうして他愛もない会話をしているうちに若葉の家に着いた。遠いとは言っていたが子供の足で五分程度であった。

 

「お姉ちゃん」

 

「なんですか?」

 

「別に遠くなくない?」

 

「遠いですよ!若葉ちゃんと会うのにそんなにすぐ着かないじゃないですか⁉」

 

「さいですか」

 

 若葉の家は家が大きいというより土地がでかいという感じであった。道場的なところと一軒家がたっており、家は上里家よりも小さかった。

 

 ピンポーン

 

 俺が若葉の家に対して感想を心の中で言っているうちにお姉ちゃん背伸びをしてインターフォンを押していた。

 

『はーい』

 

 若葉ではない声が出た。女性の声だったので恐らく母親だろう。

 

「上里です。若葉ちゃんに会いに来ました」

 

『上里...?あ、ひなたちゃん⁉え...ん...?まぁいいか...あとで電話して何があったか聞けばいいし...入ってきていいよー』

 

 そうして俺らは乃木家のテリトリーに入る。そして家のドアの前に行くと目の前でドアが開き、金髪の三つ編みロングの美人が出てきた。そしてその美人は俺の方を見てなんだこいつみたいな顔をした後にお姉ちゃんの方を見て話し始める。

 

「おはようひなたちゃん」

 

「おはようございます。若葉ちゃんのお母さん」

 

「...えっと...その子は?」

 

「昨日から私の弟になったひなとです」

 

 俺は適当に会釈をしとした。

 

「...そう...えっと若葉なら部屋で寝てるわ」

 

「わかりました。お邪魔します」

 

「お邪魔します」

 

 そうして俺らは若葉の部屋であろうところに向かった。

 

 

 

 

 

 

「え、どゆこと?え?弟?と言うかひなたちゃん変わりすぎてない?...とりあえず聞いてみるか」

 

 美人が電話に直行したのは言うまでもない。

 

 

 

 

「ここが若葉ちゃんの部屋です。いつも休みの日だったり若葉ちゃんが鍛錬している日は起こしに行ってあげているんですよ」

 

「へー、昨日はいかなかったの?」

 

「あ、昨日は若葉ちゃん達は朝から出かけていたので...じゃ、早速起こしに行きましょう」

 

「あ、行ってらっしゃい」

 

「?ひなとも行くんですよ?」

 

「あのねお姉ちゃん...よく考えてみてよ?俺昨日キックされたばかりなんだよ?そんな人が自分の寝ているところにいたらどうよ?」

 

「?」

 

「普通は嫌なんだよ...だから起こした後に入っていいよって言われたら入るから...それまでは俺は入らないよ」

 

「...そうですか...じゃ、起こしてきますね」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

 俺がそういうとお姉ちゃんはドアを開け若葉の部屋であろう場所に入っていった。

 そして数十秒後...

 目の前のドアは開き、少し寝ぐせのある金髪ロングがものすごい顔をして出てきた。そして俺に掴みかかってきた。

 

「ひなたに何をした⁉」

 

「適当に敬語を教えただけです」

 

「敬語だと...?」

 

「あー、もう、若葉ちゃん何やってるんですか?」

 

「お前の変化について聞いていたところだ」

 

「変化?ああ、この敬語のことですか?ふふん♪私はこれでお姉ちゃんと大人に近づいたのです」

 

「?まぁ確かに近づいてはいるが...」

 

「これに関しては俺はほんとに敬語を教えたというか正確には教えていないんだけど...なんか話している間にこうなった?」

 

「え、話しただけなのか?」

 

「うん。敬語を教えてとは言われたけど俺、修正と言うかこれ違うっていうの一回もやってないから...」

 

「はぁ~、もう訳が分からん...でもひなたはひなただ。いつも通りに接するとしよう」

 

「そんなことより若葉ちゃん」

 

「なんだ?」

 

「もうすぐ鍛錬の時間では?」

 

「...あー!そうだ!やばい早くいかないと...向こうに行って着替えてるからゆっくり来てくれ!」

 

 そう言って若葉は走っていった。

 

「もう若葉ちゃんってば...ご飯も食べてないのに...若葉ちゃんのお母さんにおにぎりでも作ってもらいに行きますか」

 

「ん」

 

 そうそして俺らは若葉のお母さんからおにぎりを受け取ってから道場に向かった。おにぎりを作っている時に若葉のお母さんはおにぎりを全く見ずに俺の方をガン見してたが気にしないことにした。

 そして一回玄関から出て柔道場に入った。道場に入るといつの間にか寝癖が治ってアニメやゲームなどで見るポニーテールっぽい髪形をしている若葉がいた。

 

「意外と遅かったな」

 

「おにぎりを作ってもらっていましたから...はい若葉ちゃん。栄養はしっかり取らなきゃだめですよ?」

 

「...ありがとう」

 

「いえいえ。では私たちは離れたところで見ていますね」

 

「ひなとには一度見せておきたかったんです。若葉ちゃんの居合...ものすごくかっこいいんですよ」

 

 お姉ちゃんは若葉から離れた後にそう言った。

 

「...そうなんだ」

 

 そうしておにぎりを食べ終わった若葉は稽古を始めた。真剣でやるのかと思ったが、さすがに五歳児に真剣は持たせておらず、正座をして鞘に入った木刀を抜刀してから声を出して縦に振り、また鞘にしまって正座をするというのを繰り返していた。

 

(早いな...木刀を抜き出すところが全く見えん)

 

 正直これ五歳児にできていいのか?ということを考えながら俺は若葉を見ていた。

 

「かっこいいでしょう?」

 

「うんそうだね」

 

 とりあえず何かを真剣にやっている人はかっこいいのである。

 しばらく鍛錬しているのを見ていると、突然若葉は鍛錬をやめこちらに来た。

 

「なぁひなと」

 

「なんだい?」

 

「お前武道はできるか?」

 

「いや全く」

 

 一応前世の幼少期に空手をやってはいたがもうほとんど忘れている。しかも極真じゃないし。

 

「そうか、まぁやっていようがやってなかろうが練習に付き合ってもらうがな」

 

「えぇ...」

 

「いいじゃないですかひなと!若葉ちゃんのかっこいいところを間近で見れるなんて!」

 

 お姉ちゃんが余計なことを言ったせいで断れなくなった俺は、しぶしぶ立ち、若葉から竹刀を受け取る。少し重いと感じた。

 

「お前はただ私に切りかかればいい」

 

「?それだけでいいの?」

 

「ああ、何なら当ててもいいぞ。無論それを私は居合ではじき返し反撃するがな。まぁ私の居合の方が早いと思ったら弾き返さずに直接攻撃するけどな」

 

「はぁ...」

 

 そうして俺は集中して若葉と相まみえる。

 

(ん...?)

 

 その瞬間なぜか体が軽くなり、竹刀も軽くなり、物事をじっくり考えられるような気がしてきた。

 

(もしかしてこれがアクアもどきが言っていた思った限りのチートってやつか?多分身体強化と戦いのセンス向上?と言うか勇者じゃなくても使えるのかよ...とりあえずそれは後で試してみるとして、で使えたら使えたで現実で使うのはやめておこ...目立ちそうだし周りから変な目で見られるのやだし、一回は自分の力でやってみたいし、使っちゃったらもうそれ以降は気にせず使っちゃいそうだし...と言うか生身で使えるとかやばくない?勇者になった時どうなるんだよ...)

 

 俺は軽い力で刀を振りながら一歩踏み込んだ。すると一瞬で若葉の居合の間合いに入った。若葉の方を見ると一応反応できているのかさやから木刀を抜くところであった。あんなに見えなかった若葉の抜刀も、今ではゆっくりと見える。

 

(このまま昨日の蹴りの仕返しとしてぶっ叩いてもいいが、そしたら今後毎回付き合わされそうで面倒だな...大人しく刀を弾かれるとしますか)

 

 そうして俺は手の力を少し抜き、ものすごく遅く若葉を斬りかかった。あともう少しで若葉に剣が届くといったところで剣は明後日の方向に吹っ飛び、俺は頭上から衝撃を受け、地面に思いっきり顔がぶつかった。痛みは能力によって抑えられているのかあまり感じなかった。

 

(そう言えば昨日も地面に思いっきりぶつかったのにそこまでの痛みはなかったな)

 

「はぁ、はぁ...お前本当に何にもやっていなかったのか?」

 

「いってぇ...ただただ足が速かっただけだよ...」

 

「そうか...」

 

「ひなと⁉大丈夫ですか⁉」

 

 お姉ちゃんが駆け寄り木刀があたったところを触った。

 

「あー、たんこぶができていますね...」

 

「すまん、少しびっくりして手加減できなかった。まぁ報いと言うことで」

 

「若葉ちゃん、そんなことはいいから氷持ってきてください?」

 

「...わかった」

 

 

 

 

 それからずっとほぼ毎日若葉の鍛錬を見ていた。偶に一緒にやらないかと言われるがすべて断った。別に戦うときに戦闘能力あがるんだしよくね?と思ったからである。後若葉に気を使わなくちゃいけなくなるからね。

 

 

 

 

 そして俺らが小学校に入る数日前のことである。

 

「だんだん私たちの部屋も物が多くなってきましたね」

 

 そう言ったお姉ちゃんの部屋には、隣通しの二つの勉強机、ハンガーだか何だかにかけられた赤と黒のランドセル、二つのタンス、たたまれた二つの布団...あれ?いうほど増えてなくね?まぁいいか。

 

「それにしても雨、すごいですね...」

 

「そうだね」

 

 外は瀬戸内海気候とは?と思うくらいのものすごい土砂降りが降っていて、雷が鳴っていないのが不思議であった。

 

「とりあえずお風呂に入って早く寝るとしましょう...」

 

「うん...」

 

「何ぼさっとしているんですか?一緒に入るんですよ?」

 

「...これ何回目のやり取りだと思う?」

 

「さぁ?一回目ですか?」

 

「よくもまぁそんなこと言えたね...最初にこの家に来てからずっとだよ!」

 

「でも毎回入ってくれるんですからひなとは優しいですね」

 

「はいってねぇよ。俺をその気にさせるようなことを言うなや」

 

「でも一週間に一回は入ってくれるじゃないですか...で、今日はその日ですよ?」

 

「うぅ...」

 

 結局一緒に入ったのであった。

 

 

 

 

 そして風呂に入って、あがって、再び自分たちの部屋に戻ってきた。

 

「じゃ、電気消すよ?」

 

「はい、わかりました」

 

「お姉ちゃんの布団、入ります?」

 

「いい」

 

「釣れないですね...」

 

 そのお姉ちゃんの独り言をスルーして目を瞑ろうとした瞬間であった。

 

ゴロゴロ...ドドドド...ドカーン!!!!!!!!

 

 突如頭上からとてつもなく大きな音が聞こえて家が揺れた。

 

(な、何今の音...?と言うか揺れるのやめてくれー...トラウマがよみがえる...)

 

 俺は前世で起きた災害のせいで多少の揺れでも恐怖を感じてしまうのだ。その結果、俺は布団の中で丸まっていた。

 

「今の音は雷ですね...この家は若葉ちゃんの家よりかは小さいですが、縦にはおっきいですしね...あと避雷針?がついているらしいので雷は毎回ここに落ちるんですよ...ひなと、大丈夫ですか?」

 

(今のが雷...?雷ってこんなに怖いものだったっけ...うぅ...雷までトラウマになりそう...)

 

「ひなと?」

 

「ん?お姉ちゃん何?」

 

「大丈夫ですか?布団は入ります?」

 

「...」

 

ドカーン‼‼‼

 

 俺が長考している間に二回目の雷が家に直撃し、また家が揺れる。限界になった俺は

 

「入らせていただきます」

 

 とだけ言ってお姉ちゃんの布団の中に枕を持って入った。入った瞬間に俺は抱きしめられ頭をなでられる。

 

「よしよ~し...お姉ちゃんがついてますよ~」

 

(これ弟と言うより赤ちゃんなのではないのだろうか...まぁそんなことはどうでもいい。なんか安心するな...そー言えば俺も小さい頃は妹と一緒に寝ようとしてたっけ...じゃあお姉ちゃんもそういうことがしたいお年頃なのかな...いい加減お姉ちゃんをお姉ちゃんとして認めたほうが良いのかもな...どうせこの子は俺よりも大物になるだろうし知識も俺よりもつけるのだろう...ならば今見下して逆転されるよりもう年上としてみたほうが良いのかもしれない。少なくとも俺のせいで精神年齢は俺よりももう高いだろうし...と言うか安心したらだんだん眠く...)

 

「...あらあらもう寝ちゃいましたか...」

 

 

 

 

 朝になり目を開けるとお姉ちゃんの顔が目の前にあり少し驚いた。お姉ちゃんは静かに寝息をたてていてまだ寝ているようであった。

 

(相変わらずかわいいな...)

 

 俺はお姉ちゃんが起きるまでお姉ちゃんの寝顔を見ていたのであった。




感覚的にはゲームのスーパーホットみたいな感じです。(自分が動くと周りの時も動く)


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プロローグ4(リメイク)

 俺らは小学校へと入学した。だが特にお姉ちゃんとの関係は変わっていない。いや少し近くなったか?お風呂も一週間に一回じゃなくて三日に一回になったし、毎日同じ布団で寝てるし...

 あ、あと小学校特有の全員さん付けで呼べという謎ルールのせいで俺は若葉のことを若葉さんと呼ぶ羽目になっており、結局それが定着されてしまった。姉弟だったらそのルールは適応されなかったため、お姉ちゃんのことをお姉ちゃんと呼べている。よかった...学校がお姉ちゃんの逆鱗に触れなくて。

 そう言えば少し前に俺らは誕生日を迎えた。俺とお姉ちゃんの誕生日は十日しか違わないので、一緒に祝うことになった。来年は俺の誕生日でやるらしい。さすがに半年も一緒の家で暮らしていれば俺も慣れることができて、今ではお父さんやお母さんにため口で話すことができている。逆にお姉ちゃんの敬語と落ち着きさは変わらんけど。ちなみに誕生日プレゼントにお姉ちゃんはカメラをもらっていた。その結果お姉ちゃんはいつもカメラを持っており、隙あらば盗撮をしてくる。そのうち消させるかと若葉と話したが実行できる気がしない。俺?俺は適当にwiiを頼んどいた。え?3DSじゃないのかだって?別にいいだろ。

 たまに若葉さんに稽古に付き合わされるが、成長してないことを教えるために毎回同じ方法で斬りかかり反撃を喰らっている。

 

 

 

 

 

 そしてそのまま何事も起こらずに時は二年生の冬休みとなった。

 

「えー!お母さん転勤するんですか⁉」

 

「そうなの...なんか急に転勤になって...」

 

「場所はどこなの?」

 

「高知らしいわ」

 

「高知...」

 

「う~ん取り敢えず家建てるか」

 

「なぜそうなる⁉」

 

「まぁ一応お金あるし...転勤した後は戻れないらしいし...」

 

「そういうものなんですね...」

 

 ある程度会話が終わった後、俺はお父さんに話しかけた。

 

「ねぇお父さん」

 

「なんだい?」

 

「俺も高知に行きたい」

 

 高知に行けば例の人物に会えると思ったからだ。

 

「...正気か?」

 

「うん」

 

「ひなたに会えなくなるんだぞ?」

 

「別にいい」

 

「友達もう一回作り直しだぞ?」

 

「若葉さんしかいないからいい」

 

「悲しいなおい...なぁひなと、俺がお前を引き取ろうとしたときに言ったことを覚えているか?」

 

「...お姉ちゃんの弟にさせようとしていた」

 

「そうだ。それなのにお前が今していることはなんだ?姉から離れることじゃないか」

 

「...」

 

「...ただ」

 

「?」

 

「ひなたにも弟離れは必要だな」

 

「!じゃぁ!」

 

「ああ、高知に行ってもいいぞ...ひなたへの理由は、そうだなぁ...適当にお母さんが一人で可哀そうだからにでもしておけ」

 

「うん!ありがとう!お父さん!」

 

「あ、ひなたには自分から伝えておけよ?俺から伝えたらこの後の暮らしに響きそうだ」

 

「うんわかった!」

 

 俺はそう言いお姉ちゃんのところにいった。お姉ちゃんは部屋で勉強をしていた。

 

「ねぇ、お姉ちゃん」

 

「なんですか?」

 

 お姉ちゃんはペンを走らせながら返事をした。

 

「俺もお母さんと高知に行くことにした」

 

 俺がそういった瞬間お姉ちゃんはペンを置きゆっくりとこちらを見た。

 

「どういうことですか...?」

 

「言った通りだよ?俺はお母さんと一緒に高知に行くことにしたんだ!お母さんが一人で可哀そうだったし」

 

「私を一人にすることに関しては何の情もわかないんですね」

 

「え、お姉ちゃんには若葉さんとお父さんがいるでしょ?」

 

 するとお姉ちゃんは椅子から転がり落ちるように離れて、這いずって俺の方へ来た。そして俺の両肩を掴み物凄く揺さぶった。

 

「この部屋では一人じゃないですか!なんではなれちゃうんですか~?お姉ちゃんは...私はずっとひなとといたいんです!」

 

「...たまにはお姉ちゃんと離れて暮らしてみたいな~って...」

 

「.......................................私が何かしましたか?」

 

「いや?」

 

「じゃぁ!どうして離れたいなんて言ったんですか!」

 

「高知に行ってみたいと思ったから」

 

「じゃぁ休日にお母さんに会いに行けばいいじゃないですか!」

 

「休日にお母さんほぼいないじゃん」

 

「そうですけど!でも夜には帰ってくるじゃないですか!」

 

「それに俺は高知で暮らしてみたいとも思うんだ」

 

「ああ...そうですか...」

 

 それだけ言ってお姉ちゃんはずっと俺のことを見るだけになって何にも言葉を発しなくなった。

 

「ひなたーひなとーご飯だぞー...ひなと...お前どうやって伝えた...?」

 

 俺らのことを呼びに来たお父さんがお姉ちゃんのことを見てそう言ってきた。

 

「かくかくしかじか」

 

「...うん...まぁしょうがないか?...大丈夫かな...立ち直れるかな...」

 

 みんなで食事をしている時もお姉ちゃんは一言も言葉を発さずに、俺を見ながら淡々と食事をしていた。なんか怖い...

 

「...ひなた、大丈夫かしら...」

 

「ひなとに任せるか」

 

 なんか両親はこのお姉ちゃんを俺に押し付けるつもりらしい。

 そしてお姉ちゃんは何をするにしても俺についてきた。トイレに行こうとしてもついてくるし(さすがに中に入れなかったが)、お風呂無理やり入ってくるし、お姉ちゃんがトイレに行っている間に隠れたがなんかすぐに見つかったし、寝るときは抱き枕にされた。

 そうしているうちに夜が明け新しい1日が来る。

 

「ねぇひなと」

 

 お姉ちゃんは朝起きてやっと声を出した。

 

「なに?」

 

「私、昨日ひなとと一緒にいて考えたんです」

 

「何を?」

 

「ひなとが高知に行くことに関してですよ」

 

「ほえー」

 

「...私は毎日ひなとの声さえ聴ければいいのではないかと考えました」

 

「ほう...」

 

「ですので、ひなとが毎日高知であったことを言ってくれればおそらく大丈夫です」

 

「じゃぁ...」

 

「はい、ひなとが私を置き去りにして高知に行くことにまだ嫌な気持ちはありますが別に許可はしていいくらいはその気持ちも落ち着きました」

 

「よかった...このままお姉ちゃんが監禁してきたらどうしようかと思ったよ...」

 

「監禁...!その手がありましたか!じゃさっき言ったことはなしです!」

 

「ひなた~?それは少しダメなんじゃないかな~?」

 

「!お母さん...聞いていたんですね」

 

「うん...でもまぁひなたが納得してくれてよかったわ」

 

「お母さん、私はまだ納得していませんよ。もっといい方法が思いついたのですから!」

 

「犯罪はやめようね~あ、ひなと」

 

 お母さんがお姉ちゃんに向かって呆れたような顔をした後に俺の方を向いた。

 

「なに?」

 

「土地代を安くするために、私の職場の隣町の田舎の村で過ごすことになったわ。それでも大丈夫?」

 

「!うん!全然大丈夫!むしろ田舎みたいなきれいなところがいい!」

 

「そう...ならよかった。ちなみに高知に行くのは春休みからだからそれまでにやれることはやっておきなさいね」

 

「はーい」

 

「...ひなと!」

 

「な、何⁉」

 

 お姉ちゃんは俺が返事をしたかと思ったら、急に俺を押し倒してきた。

 

「これからは毎日お風呂に入りますし、いたるところでひなとといますからね!」

 

 すごい目力で行ってくるお姉ちゃんに、俺は

 

「少し怖いよ...」

 

 と呟くことしかできなかった。

 宣言通りお姉ちゃんは四六時中俺に付きまとった。

 

「ああ...なんか大変だな...」

 

 若葉さんが俺を見ながらそんなことを言ってきたことがあった。

 

「...俺が高知に行ったら次は若葉さんの番ですよ?」

 

「...頼む。行かないでくれ」

 

「お断りです」

 

「...本当にこれが私に降り注ぐのか?」

 

「いいじゃないですか。愛している幼馴染からの永遠の愛ですよ?」

 

「いや周りから変な目で見られるではないか...お前らクラスメイトから本当にやばいやつって見られているぞ」

 

「知らんがな。と言うか若葉さんは友達いないじゃないですか」

 

「な..!い、いるわ!ひなたとかひなととかひなたとかひなととか!」

 

「結局俺らじゃないですか...」

 

「う、うるさい!私は量より質なんだ!」

 

「まぁ...嬉しい...私たち若葉ちゃんにとっていい友達だそうですよ?」

 

 ちなみに今更であるが、若葉たちは普通に名前に関してのルールを破っている。その他のルールは守っているんだけどね。

 

「...あ、やっぱり友達はひなただけかもしれない」

 

「...そっか...そうだよね...だってストーカーを押し付けてるもんね...でもそのストーカーを友達だって言ってくれているんだから別にいいよね...まぁ俺は友達だと思ったけど...まぁ自称友達からの最後のお願いと言うことでお姉ちゃんよろしくね...」

 

 俺は少しテンションを落としながら言った。

 

「あ、ちょ!ま、待てひなと!嘘だ!嘘だからそんなに落ち込まないでくれ!お前は本当にごくまれだが鍛錬に付き合ってくれるからな、後ひなたについての会話もできるし...しっかり友達だと思っているぞ!」

 

「本当?」

 

「ああ、本当だ!この話はもうやめにしよう!...それにしても驚いたな...あんなにお姉ちゃんお姉ちゃん言ってたやつが急に離れるなんて...」

 

「まぁ心境の変化だね...あと心では繋がってますし」

 

「ひなと...」

 

「やっぱり離れないほうが良いんじゃないか?」

 

 うっとりとしているお姉ちゃんを見ながら若葉は言った。

 

「まぁお姉ちゃんにも弟離れが必要ってことで」

 

「弟離れ...?私は若葉ちゃんともひなととも絶対に離れませんよ?」

 

「「...」」

 

 お姉ちゃんが急に真顔で言っているのを俺らは黙ってみていた。

 

 

 

 

 そしてお姉ちゃんと一緒にいる最後の春休みとなった。思い出作りと言うことで、俺らは遊園地に来ていた。ちなみに引っ越す三日前である。

 

「わ~!意外とでかいですね~!」

 

「うん...そうだね」

 

 俺らの目の前ではやけにでかい観覧車だったり、やけに角度がついているジェットコースターが見えていた。

 

「まぁ俺らの身長じゃあ乗れないものが多そうだけど...」

 

「別にそれでもいいじゃないですか...ああ、若葉ちゃんも来ればよかったのに...そしたら幸せ空間がもっと幸せ空間になったのに」

 

「家族の思い出作りだからね、ショウガナイネ」

 

 俺らがそう言っているとチケットを買いに行っていたお父さんがこちらに戻ってきた。

 

「意外と並んでて遅くなった」

 

「春休みだからね~」

 

「はい、ひなたひなと。これチケットね。乗り放題の買ってきたからたくさん乗りなさい。お父さんたちは見てるから」

 

「はい。ありがとうございます。ではひなと、早速入りましょう」

 

「ん」

 

 そうして俺らは遊園地へ入場した。

 

「ねぇひなと、せっかくお父さんが乗り放題を買ってくれたんです。すべての乗り物に乗りましょうね?」

 

「うん」

 

 そう俺が返事をするとお姉ちゃんは手を引っ張り、目の前にあったアトラクションへ向かった。

 最初はメリーゴーランドであった。遊園地自体が大きいため、メリーゴーランドもそこそこの大きさであった。

 

「これに乗りましょう!」

 

 お姉ちゃんはやけにハイテンションであった。

 

「いいけどどっちに乗るの?」

 

 メリーゴーランドと言うのは座席に座るタイプと馬に乗るタイプの二種類が存在する。

 

「う~ん...どっちに乗りましょう...普通は馬に乗るんでしょうがそれだとひなとと乗っている気がしないですね...」

 

「隣で乗れば一緒に乗ってる感は出そうだけど...」

 

「そうですね...では隣同士で乗りましょう」

 

 そうして俺らはメリーゴーランドに乗った。まぁ特にハプニングとかはなく、単純によくわかんない音楽を聴きながら回っただけであった。

 そして俺らはいろんなところへ行った。まぁ行っただけで、身長制限がかかって乗れなかったものがほとんどなんだけど...

 そして俺にとっての悲劇は突然起きた。

 

「次はあれに行きましょう」

 

 そうしてお姉ちゃんが差したものはお化け屋敷であった。しかもこれまたでかいし怖そうである。

 

「やだ」

 

「はい?」

 

「いやです行きたくないです」

 

 俺は少し後ずさりながらそう言った。

 

「全部乗るって言ったじゃないですか」

 

 お姉ちゃんは笑いながら少しずつ近づいてくる。

 

「いやだー!」

 

 俺は少し大きな声で拒否りながら逃げようとした。

 しかし

 

「こらこらどこ行くんですか」

 

 お姉ちゃんが俺の腕をつかみ逃走できなくした。

 

「いやなもんは嫌だ。はなせ!と言うか何でそんな力強いんだよ!」

 

「ふふふ、なぜか妙に力があふれてくるんですよ」

 

 お姉ちゃんによって困った時俺は両親を見るようにしている。なので俺はいつものように両親を見た。

 しかし返ってきたのはいつものほほえみであった。畜生。

 

「ほ~ら、時間は有限ですよ。さっさと行きますよ」

 

 そう言ってお姉ちゃんは俺を引きずってお化け屋敷の真ん前まで連れていった。お化け屋敷に近づいた瞬間。あたりの空気気が冷たくなり、不安な気持ちになった。

 

「泣くほど嫌なんですか?」

 

 俺は無意識に泣いていたらしい。

 

「...うん」

 

「じゃあ、抱き着いてきていいですから一緒に行きましょう?」

 

「ううん」

 

「じゃ一人で行ってくださいね」

 

「あ...や、やだ...お願いだから一緒に行って...」

 

 と言う感じで流された気がしなくもないが俺らはお化け屋敷に入ることになった。

 

「ひっ!」

 

 お化け屋敷に入った瞬間とてつもない恐怖に襲われ、俺は目をお姉ちゃんの腕に押し付けた。そしてお姉ちゃんの腕を抱きしめた。

 

「ひなとがこんなにもホラーに弱かったなんて驚きです...」

 

 そして俺はお化け役の人が驚かしてくる音を聞いては悲鳴を上げた。なんだかお姉ちゃんにも驚かせ役の人にも笑われている気がした。お化け屋敷からだ出した後も俺はずっとお姉ちゃんの腕にしがみついていた。落ち着いて腕を話したときにはお姉ちゃんの袖はしわくちゃになっていて一部分が濡れていた。

 

「ごめん...」

 

「いいですよこのくらい。ひなとの弱点も発見しましたし」

 

「それをついたら俺は一週間...三日...一日...うん一日話さないから...」

 

「...わかりました。肝に銘じておきます」

 

 まぁそこからは特に何もなくただただ楽しんで帰った。

 

 

 

 

翌日...

 

「ひなとー、一緒に映画見ましょう?」

 

 そう言ってお姉ちゃんはDVDと書かれたパッケージを持ちながらそう言ってきた。特に断る理由もなかったので一緒に見ることにした。

 そう言えば結構前に机とタンスぐらいしかなかった部屋にテレビが追加された。子供が寝るところにテレビを置くのがどうかと思うのだが、まぁいいか。

 お姉ちゃんがDVDをセットしている間に俺は座布団を敷いて先に座っていた。お姉ちゃんが隣に座った瞬間

 

カシャ

 

 と何かの音がした瞬間手に少しだけ違和感を感じた。見ると俺とお姉ちゃんに手錠がかかっていた。

 

「え...?なにしてるの?」

 

「手錠をかけたんですよ?」

 

「いや見ればわかる...」

 

「ほらそんなことより映画が始まりますよ?」

 

 お姉ちゃんがこんなことまでして俺に映画を見せようとしているのだ。もう嫌な予感しかしない。と言うか予想通りホラーだったよ。

 

「お姉ちゃん...言ったよね?もう話さないよ?」

 

「話さないなら...抱き着くこともできませんよね?もし今日私と話さないつもりなら...私を頼らないでくださいね?」

 

「ううぅ...ずるい!悪魔!鬼!」

 

「...映画はもう一本用意してありますよ」

 

 お姉ちゃんは笑顔だけど笑顔じゃない顔で言った。

 

「ごめんなさい...」

 

 俺はただただそう言って、姉の腕に二時間ほど抱き着いていた。

 

 

 

 

翌日...

 

「ひなと、一緒に散歩にでも行きませんか?」

 

 お姉ちゃんが話しかけてきたが俺は無視して部屋に向かった。

 

「ひなと?何で無視するんですか?」

 

 お姉ちゃんが部屋までついてきて話しかけてきたが俺は無視してテレビを見始めた。

 

「ひなとー、怒ってるんですかー?撮っちゃいますよー?」

 

 お姉ちゃんがカメラを向けながらそんなことを言ってきたので、俺は隣にあった座布団をお姉ちゃんの腹あたりに軽く投げて、あてた。そしてテレビの音量を上げた。

 

「...」

 

 お姉ちゃんは何も言わず下へ向かっていった。

 

 

 

 

「お母さんどうしましょう⁉ひなとが無視してきます!」

 

「自業自得ね...」

 

「お父さん!」

 

「...」

 

 ひなたが母親に冷たくされたため、父親に助けを求めたが父親は目をそらし無視をした。

 

「......もう一回ひなとに会ってきます」

 

 そうしてひなたは再びひなとのいるところに戻った。

 

「あの子も切れることがあるのね...」

 

「まぁ、やめてと言った後すぐにそういうことをしてきたからな...」

 

 

 

 

「ひなと~、謝りますから機嫌直してくださいよ~」

 

 下に行ったかと思ったらすぐ戻ってきたお姉ちゃんがしつこく、また言ってきた。

 

「...」

 

「若葉ちゃんのところに行っちゃいますよー?」

 

 勝手に行けばいいと思う。思うのだが...

 

「...もうしない?」

 

「...!はい!しません!」

 

「そっか...じゃ、散歩にでも行こうか」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 玄関から出る前に一応親に散歩しに行くと伝えた。

 

「そう...行ってらっしゃい」

 

 ただそれだけ言われた。

 

 

 

「あの子たち仲直り早いわね」

 

「ひなとがめんどくさくなって許したんだろ」

 

「どうかしら?」

 

「違う意見でもあるのかい」

 

「ふふ、うちの子たちは両思いだと思うのよ」

 

「ほう」

 

「だからひなともひなたと話せなかったから許したんじゃないかしら?それに一応今日で最後だしね...」

 

「そういえばそうだったな」

 

 

 

 

 外に出た後、俺らは自然と手をつないでいた。まぁお姉ちゃんが無理やりつながせてきただけなんですけど。

 

「まずは若葉ちゃんちに行きましょう。ひなとは今日で最後になるかもしれないですからね」

 

「そうだね」

 

 適当に歩いていたらすぐに若葉さんの家に着いた。インターフォンを押して家の敷地に入り、道場の方へ向かった。そこにはいつものように刀を振っている若葉さんがいた。

 若葉は俺らが入ってきたのに気づくと素振りをやめた。

 

「おっす!」

 

「こんにちは、若葉ちゃん」

 

「ああ、今日来ると聞いてなかったが...」

 

 若葉は少し不思議そうに首を傾けた。

 

「何を言っているんですか、今日でひなといなくなるんですよ?」

 

「え...今日だったのか⁉」

 

「そうですよ」

 

「な、なぁもうちょっとここにいないか?」

 

「いやですよ...と言うか無理です」

 

「...明日からのひなたが大変なことになる...」

 

「頑張ってください...」

 

「お前のせいなんだがな?...そうだ、お前私の鍛錬に付き合え。今日で最後なんだ。このくらいいいだろ?」

 

「まぁそのくらいなら...」

 

 そう言って俺は奥にあった竹刀を取り出し、若葉さんと相まみえる。

 やることは変わらない。斬りかかって反撃されるだけ。俺は一歩踏み込み、縦に竹刀を振った。

 若葉さんはいつものように受け流し、こつんと俺の頭に当てた。

 

「...お前は何というか...成長しないな」

 

「たまに横に切りましたよ?」

 

「そうじゃないんだ。まぁいい、次来たら本格的に教えてやる」

 

「そりゃ、どうも」

 

「ひなとが若葉ちゃんの相手をできるようになったら、私としてもかなりうれしいので頑張ってくださいね!」

 

「...そろそろ行く?」

 

 このまま長居してもまた鍛錬とか言いだしそうな空気だったため、俺はお姉ちゃんにそう聞いた。

 

「そうですね、散歩する時間も無くなってしまいそうですしそろそろお暇するとしましょう」

 

「行ってしまうのか...」

 

「うん。タマに戻ってくるかもしれないからそんな顔しないでください」

 

「あ、私はいますので。毎日会いに行きますね!」

 

「ああ」

 

 若葉さんは嬉しそうで少し複雑な顔をしていた。

 

 

 

 

 そうして俺らは乃木家を離れた。そして今適当なところをぶらついている。

 

「桜がきれいですね...」

 

「そうだね」

 

 俺らが適当に桜を見て適当に感嘆している時であった。

 

「見てあの子たち、手をつないでてかわいい!」

 

「そうだね...姉弟なのかな?」

 

 そう言った声が後ろらへんから聞こえてきた。お姉ちゃんもその声を聞いたのか手を握る力を強めてきた。俺がこんなことを周りに言われたら手を離すというのを学んだためであった。

 

「桜も見ましたし、そろそろ帰りますか」

 

「そうだね、結構歩いてきたしこれ以上行って帰れなくなったら困るし」

 

「そうですね」

 

 

 

 

「あ、ここ」

 

 お姉ちゃんがそう声を発した場所は、若葉さんと初めて会った場所...つまり初めてのお使いの時の帰路の横断歩道であった。

 

「ひなとがいきなり止めるもんですからびっくりしましたよ」

 

「それは...お姉ちゃんが信号を見ていないのが悪い」

 

「でも点滅ですよ?」

 

「点滅は赤と一緒だよ」

 

「...まぁそういう考えもあるでしょう...ひなとが心配性なのもわかりました」

 

「さいですか」

 

 特にそのあとは何も起きず、単純に一緒に寝ただけだった。まぁお母さんに

 

「明日は早いから早く起きてね、起きなかったら無理やり車に乗せるけど」

 

 と言われたりしたが、特に何にも変わらなかった。

 

 

 

 

 翌日、俺はお姉ちゃんを起こさないように起きてリビングの方へ向かった。

 

「お、しっかり起きることができたのね」

 

 下に降りると、お母さんがお父さんの入れたコーヒーを飲んでいた。

 

「ひなたとは一緒じゃないんだな」

 

 お父さんがコーヒーをこちらに渡しながら言ってきた。

 

「うん、出発するときに起きてたら少しめんどそうだし」

 

「誰がめんどくさいんですか」

 

「それは持ちろンお姉...」

 

 俺は途中で言うのをやめ、後ろを向いた。少し眠そうなお姉ちゃんがいた

 

「最後だというのにふぁ~...ひどいことを言いますね」

 

 あくびをしながら言うお姉ちゃんに対し俺は

 

「いや、なんかお姉ちゃんの言葉で俺が心苦しくなるかもしれないという点でめんどくさいだけです」

 

 と言い訳することしかできなかった。

 

「そうですか、ひなとは私がいると泣き喚くんですね」

 

「ちげぇよ」

 

「そんなひなとにいい案を出してあげましょう!」

 

「だからちげぇ」

 

 俺の言葉を無視してお姉ちゃんは言う。

 

「ずっとここにいれば「お姉ちゃん」はい?」

 

 俺はお姉ちゃんの話を遮った。

 

「しつこい」

 

「っ!な、なんですか!もうお姉ちゃんは必要ないと⁉そういうことですか⁉」

 

「このくだり何回目...?何回も言うけどそれは違うって。本当に必要ないんだったら高知入った後に連絡絶対しないよ?」

 

「あ、それは本当にやめてください」

 

「うんお姉ちゃん好きだからそれはしないよ。でも少しは離れてみたいとも思うから...」

 

「そうですか...でしたら毎日連絡してくれればいいです...本当に...」

 

 お姉ちゃんは最初の言葉を聞いたからか少しうれしそうであった。

 

「納得してくれてありがと」

 

 俺はそう言って冷めたコーヒーをちょびちょびと飲んだ。砂糖がふんだんに入っているからかすごく甘かった。と言うかこれコーヒー牛乳や。

 

「ひなと、そろそろ行くわよ」

 

 俺がコーヒー牛乳を飲み終えたあたりでお母さんが言ってきた。

 

「うん...じゃ、お姉ちゃん、またね!」

 

 またね...この言葉は便利である。周りの状況、その人の状態、どんな時代になっているのか関係なしに会えはする言葉なんだから。

 

「はい...電話待ってます」

 

 その言葉を聞いてから俺は車に乗りこんだ。

 車が走り出す。

 

「最後...」

 

「?」

 

 ハンドル片手に前を向きながらお母さんは話しかけてきた。

 

「ひなたに告白してたね」

 

「してない」

 

「ふふ...でもあなた達は結婚できるわよ?」

 

「お母さんそれされてうれしい?」

 

「...どこの馬の骨ともわからないやつに取られるよりは、私たちが育て上げた子に取られるほうが良いわ」

 

「...まぁ俺はお姉ちゃんとして好きなだけで別に異性として好きなわけじゃないですし」

 

「薄情ね」

 

「薄情では無くね」

 

「でもひなたはそういう心を向けているのにまったく気にしていないじゃない」

 

「いや、恋心を抱いていないだけで普通にお姉ちゃんは好きだよ。偶に...頻繁に起こる気候は少し嫌いだけど」

 

「それは...ひなとがそうさせたんじゃないの?」

 

「いや、俺が来なくても若葉さんでああなっていたと思うよ。俺はそれを早めただけ」

 

「そう...と言うかなんで若葉ちゃんのことは若葉さんって呼んでるの?」

 

「学校の名残...ただそれだけ。別に敬意を抱いているわけではない」

 

「ふーん」

 

 それ以降会話はあまりなかった。

 高知への道なりはまだ少し長い...




なんてご都合主義...


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プロローグ5(リメイク)

「ひなと、着いたわよ」

 

 俺はお母さんに肩を揺さぶられ目を開ける。視界がぼやぼやしていて、脳があんまり仕事をしてくれないので道中で寝たんだと思った。

 俺はあくびをしながら車を出て目の前の一軒家を見る。新築だからか物凄く壁がきれいだった。しかしやはり前の家よりかは一回り、二回り小さかった。

 

「もう部屋に必要なものは置いてあるはずだから見ておいて。ちなみに二階の奥ね」

 

「わかった」

 

 お母さんが玄関を開けながらそう言った。玄関で靴を脱ぎ、前よりも細く短くなった廊下の真ん中にあった階段を上り、前よりも急になった階段を手すりを掴みながら登る。そして上った先に三つドアがあり、俺は奥にあったドアの方に向かった。

 ドアを開けるとベッドと勉強机とタンスがあり、それだけで何か大きいものを置けるスペースはなかった。しかし

 

「狭いってなんか落ち着く~」

 

 前の部屋がお姉ちゃんと同じだからと言っても広すぎたので俺はこっちのほうが良いと感じていた。まぁ過ごしているうちに前の方がよかったって思うんだろうけど...

 

「ひなと~、お母さん今からご近所さんにあいさつしてくるけど一緒に行く~?」

 

 俺が新しいベッドの寝心地を確かめているとお母さんが下から呼びかけてきた。

 

「いいや~、でも散歩には行きたーい」

 

 どうせ良好な関係にはなれなさそうな予感がするので俺はそんなことを言った。

 

「わかった~。じゃあお母さんが挨拶している時に散歩をすることでいいわね?」

 

「うん」

 

「じゃ早速行くからさっさとしてに降りてきなさ~い」

 

「は~い」

 

 俺は下に降りてお母さんと玄関から出た。さっきは家しか見なかったからわからなかったが辺りは自然いっぱいで、たまに家などの人工物があるといった感じだった。

 

「きれ~」

 

「そうね」

 

 それにしてもお母さんはご近所などと言っていたが、そんなものは近くに存在しておらず少し歩けばやっと家があるといった感じであった。

 

「じゃ、村回ってくるね!」

 

「それはいいけど迷子にならないでよ?」

 

「大丈夫!」

 

「本当に大丈夫?ひなと、たまに方向音痴なとこあるからお母さん少し心配...」

 

「...大丈夫だし」

 

「ま、信じるとするわ」

 

 そして俺はお母さんと別れた。俺はまだ散歩を開始しないで、家から奥の方をじっくりと見ていた。すると小学校っぽいのが見えた。

 

「意外と遠いな~。あの距離を歩くのか...ま、一回歩いてみますか!」

 

 目的地が決まった俺は散歩を開始した。

 

 

 

 

「思ったより近かったな...」

 

 周りの景色が、山と田んぼと家と電柱から変わらないうちに俺は学校に着いた。

 

「前の学校よりかは少し小さくて木造だな...」

 

 目の前にある学校はそれはもう昔の学校という感じがしていた。

 

「さて、学校まで行けたことだしさっさと帰るとしますか」

 

 そう俺は呟きながら帰路を辿った。少し迷いかけたが無事家に着くことができた。

 家に帰るとちょうどお母さんがあいさつ回りを終えたところだった。

 

「お帰り、学校はどんな感じだった?」

 

「ただいま、前より少し小さいかな...あと行きと帰りの道の変化が乏しい」

 

「そう...まぁそれはともかく明日から学校だからさっさと引っ越しの片付けをしてしまいましょう...って言ってもほぼ引っ越し業者さんがやってくれてて衣服を入れるだけなんだけどね」

 

「そーなのかー」

 

「そうなのよ。あ、自分の服は自分で入れてね。ちなみに今日のご飯は引っ越しうどんが余ったからうどんよ」

 

「そこはそばじゃないのね」

 

「なんか言った?」

 

「イエ!マリモ!」

 

 そう言って俺らは家に入り、片付けや明日の準備など諸々やって寝た。

 

 

 

 

翌日...

 

ひなと...ひなと...ひなと起きなさい!」

 

「...お姉ちゃん...?」

 

 肩を揺さぶられて俺は起き、ぼやけた視界で見えたものを俺は呟いた。

 

「はぁ~完全に寝ぼけているわね...」

 

 いつも起こしてくれている人とは違う声が聞こえ俺の意識ははっきりとしたものになった。

 

「あれ?お母さん?」

 

「...学校、遅刻するわよ。転校初日で遅刻とかだいぶ目をつけられるわよ」

 

「転校...あぁ...道理で...」

 

「ご飯できてるから早く下に降りてらっしゃい」

 

「はーい」

 

下に降りるとお母さんはスーツ姿で机の上には鍵と目玉焼きと食パンがあった。

 

「私もう行かないとだから、しっかりご飯を食べて家の鍵を閉めて言ってね」

 

「はーい。行ってらっしゃい」

 

「行ってきます」

 

 俺はお母さんが仕事に向かったのを確認し、急いでご飯を食べ、出されていた服を着てランドセルを背負い家を出た。もちろん鍵は閉めたよ。そして目の前にかすかに見える学校を目指し俺は歩き始めた。

 最初は俺しかいなかった小学生も学校に近づくほど多くなっていった。小さい村で同じ学校の人を認識しているからか、こいつ誰だ?という視線がちょくちょくあった。

 

(下駄箱に着いたはいいけど...靴をどこに置けばいいんだろう)

 

 俺は適当に三年生の場所において手提げバッグから上履きを取り出し、職員室に向かった。

 

「三年何とか組の上里ですが...三年生の先生いらっしゃいますか...?」

 

 ドアをノックしてから入って用件を伝えたが、どの先生もこちらを見るだけ見て何にも反応を示さなかった。

 

(はぁ、帰りたい)

 

「ん?君何でこんなところで立ってるの?」

 

 後ろから声を掛けられ見てみると、スーツを着た中年のおじさんが立っていた。

 

「えーっと...今日から転校することになっていたものなんですが...どこに行けばいいのかと思って、職員室に来たはいいけどそこからどうすればいいのかな~って思ってたからです」

 

「ずいぶん長ったらしくてわかりにくい説明をどうもありがとう。話は聞いてるよ、僕が担任だからさっさと教室に向かいましょう」

 

「あ、はい」

 

(なんだろう...俺今めっちゃ馬鹿にされなかった?)

 

 心に生まれたもやもやを無視して俺は先生の後ろを歩いた。

 

「いいですか?私が朝の会の途中で呼びますのでそしたら名前さえ言ってくれればいいです」

 

 教室に着いたのか、先生はドアに手をかけながら言った。

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

三分後...

 

「はいってきてー」

 

 ドアの向こうから声がかかったので、俺はドアを静かに開け黒板の前まで歩いた。視線が大量に向けられていた。珍しいものを見る目、興味がなさげな目、時計を見る目...

 

「上里ひなとです」

 

 俺が自己紹介しても先生はそこから話を進めようとしなかった。

 

「え、それだけ?」

 

 口を開いたかと思ったら出てきた言葉はそれだった。

 

「...香川から来ました。これからよろしくお願いします」

 

 心にも思っていないことを言いながら俺は頭を下げる。

 

「はい。というわけで転校性の紹介でした。上里さんは三号車の一番後ろの席ね」

 

 先生が指差した方向を見るとぽつんと一つ席があった。どうやら俺がこのクラスに入ったことにより偶数クラスが奇数クラスになったようである。体育の時心配だな...

 そこから先生は無駄に長くわかりにくい今日の動きを説明した後に職員室に帰っていった。

 先生が帰った後、俺に珍しいものを見る目をしていた人たちだけ集まってきた。

 

「ねーねー香川から来たんでしょー?うどんおいしいの?」

 

「うーんおいしいとは思うけど毎日食べてるとおいしくなくなるかな」

 

 あとは質問が思いつかなかったのでカットする。

 

 

 

 

 

 新学期で三時間しかなく、さっさと帰ろうとしていた時であった。突然世界が止まった。止まったというよりかはゆっくり動いてはいる。

 

(あれ、これは若葉とくみ手をしようとしたときにいつも発生する現象...)

 

 これが発生するということは体が戦闘モードに入ったということである。この状態で体を動かすと動かした分だけ世界も動くため、感覚で何が起きているのかを探る。

 

(は?)

 

 感覚で探って分かったことは階段から人が落ちてきているというのであった。俺は慌てて階段の方向を向き、受け止める姿勢を作る。

 

「うおっ⁉」

 

 向いた瞬間階段から落ちてきた人は目の前にいて、そのあとその人の重さが伝わってきた。しっかりその人を受け止められたことを確認してから階段の方を見ると慌てて逃げる人の姿が映った。

 

「ねぇ」

 

 俺が階段の方向を睨んでいると下の方から声がかかる。見ると受け止めた人が死んだ目と表情でこちらを見ていた。

 

「あ、ごめんなさい。降ろしますね」

 

 俺は足の方から降ろしていった。

 

「けがはないですか?」

 

 目の前の黒髪ロングの少女は何も言わずに階段を下りて行った。俺は黙ってその後姿を見ていた。

 

(まさかこんな早く会えるとは...)

 

 階段から落とされる人物なんてこの世界では俺の想像している人以外いないであろう。

 俺は今日得た収穫にウキウキしながら家に帰った。

 

「ただいまー」

 

 家に帰ってもお母さんはおらず、俺は部屋でダラダラ過ごすことにした。部屋に言ったはいいがすることはなく、俺はゴロンゴロンと部屋を何往復もしていた。

 

(あー暇だなー...)

 

 そんな感じで新しくなった天井を見ていると下の階から何やら電子音が聞こえてきた。

 下に行ってみると電話が鳴っていた。

 

「あれ、実家の番号じゃん」

 

 電話に表示されていた番号を見ると小学一年生くらいの時に宿題として覚えさせられた番号があった。セールスなどの知らない番号はともかく知っている番号なら取らない理由はないので俺は受話器を取った。

 

「はいもしもし」

 

『もしもし、お姉ちゃんですよ~』

 

「切るね」

 

『え⁉ちょっ!』

 

「冗談だよ」

 

『笑わないでください』

 

「はいはい。そんなことより何の用?」

 

『...私がひなとの高知へ引っ越すのを許可するときに出した約束を覚えていますか』

 

「なんかあったっけ?」

 

 普通に思い出せなかった。

 

『毎日電話をすることですよ』

 

「あー」

 

『あーって何ですか...昨日ひなとは私に電話をしてくれましたか?』

 

「してないです...」

 

 急に低音になるお姉ちゃんに対し俺は返事をすることしかできなかった。

 

『そうですね。してません。次こういうことがあったら私はひなとを無理やり連れだし監禁するか、若葉ちゃんを誘拐してそちらに行きますのでそういうことで...』

 

(あれ?じゃあ若葉に来てもらってここの連中をボコしてもらえばいいのでは...?いやさすがにやめておくか)

 

「あ、はい...で俺は今日の報告をすればよろしいのでしょうか...?」

 

『そうです。今日会ったことをすべて隠さずに行ってください』

 

「...まず、ちょっと寝坊して」

 

『寝坊⁉』

 

「お姉ちゃん、いちいち突っかかってたら日が暮れちゃうよ」

 

『そうですね...続けてください』

 

「えーっと、一人で朝ご飯を食べて、家の鍵を閉めてから学校に向かってー、職員室に行ったかと思ったら誰も反応してくれなかったでしょー、(中略)でー、帰るときに女の子が降ってきたから受け止めた」

 

『...』

 

「え、お姉ちゃん?」

 

 さっきまで相槌をしてくれていたのに急に無言になった。

 

『すいません。聞き取れませんでした。もう一回お願いできますか』

 

「女の子が降ってきたから受け止めた」

 

『どういう状況ですか⁉』

 

「俺が聞きたいよ!」

 

『そのあとはどうなったんですか?』

 

「えーっと、何にも言わずに去っていった!」

 

『なんて失礼な方なんでしょう...お礼も言わなかったんですか?』

 

「うん。そうだけど...でもしょうがないと思うよ。受け止め方がお姫様抱っこだもん」

 

『お姫様抱っこ...ずるい...しかも何にも言わないんなんて...もし私ならそのまま部屋まで連れて行ってもらってそのまま抱きしめて…」

 

「お姉ちゃん?おーい」

 

『っは⁉ごめんなさいひなと今日お姉ちゃんにはちょっとやることができたから今日はこの辺にしておきますね。明日も報告、忘れないでくださいね?』

 

 それだけ言ってお姉ちゃんは通話を切った。

 

「お姉ちゃんだって挨拶しないでどっか行ってんじゃん...」

 

 俺は受話器をまだ耳元で持ちながらつぶやいた。そして黙った自分の部屋に行き、布団の中で丸まった。

 

 

 

 

ひなと...ひなと!」

 

「ん~?お母さん...?」

 

「は~まさか一日で二回も起こすとは思わなかったわ...」

 

「なんかごめん」

 

「別に謝る必要はないわ、帰ってきても声が聞こえなかったから少し心配しただけよ。そう言えばひなたに電話しなくていいの?」

 

「向こうからかかってきたよ。報告したら報告しただけでそこから一方的に切られた」

 

「拗ねてるの?」

 

 お母さんが少しから買う様子で聞いてきたが無視する。

 

「ご飯ができたから一緒に食べましょ?今日もうどんよ」

 

「...」

 

 少しけだるい様子を出しながら俺は下に降りた。




めっちゃチョロインになりそう


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プロローグ6(リメイク)

 新学期というのは暇である。授業があればゆっくりと次の時間の準備をしていたら5分の時間はすぐつぶせるし、前まではお姉ちゃんか若葉さんがいたから休み時間に話したりして暇をつぶしていたが、転校してお姉ちゃんたちがいない以上俺は目の前のくそ教師の話を聞き流しながら田舎の景色を見るしかないのである。

 そうして俺が話を聞き逃しながら身体測定とかのお決まりのイベントをしていたらいつの間にか放課後になっていた。

 

「上里君」

 

 ランドセルを背負って帰ろうとしたところでクソ担任からお声がかかった。見るとその教師はごみの入ったごみ袋を持っており、これから雑用を任せられるんだろうなと思った。

 

「なんですか?」

 

「帰るんだったらついでに焼却炉にこのごみ袋を捨てに行ってくれないか?場所はわかるかい?」

 

「いいですよ。場所もわかります」

 

 周りにも生徒がいるのになんで俺なんだよと思いながら俺は返事をする。

 そうして俺は焼却炉へ向かった。重そうに見えたゴミ袋は以外と重くなく苦ではなかった。焼却炉につくと複数の人影がありこんなところに用があるやつが俺以外にもいるんだなと思い身をちょこっと出して覗いてみた。

 

「淫乱なんかに服なんてものは入らないのよ!」

 

「そうだそうだ!さっさと燃やしちまおーぜ」

 

 それは数人で個人をいじめている典型的ないじめだった。一つ違うことはいじめの度合いがやべーということである。そして虐められていた人物は言わずもがな昨日落ちてきた女の子だった。

 気づいたときにには俺は走り出していた。そして服をはぎ取ろろうとしていた女子に向かって思いっきりごみ袋をぶつけてやった。

 

「なんだこいつ⁉」

 

 急に現れた乱入者に周りが動揺している間に俺はいじめられていた女の子の手を取って走り出した。ごみ?知らねぇよ。焼却炉の前に捨てたから無問題だ。ちょうどよく焼却炉のところに裏門があったのでそこから小学校を出て逃げまわった。ちらっと後ろを見ているとゴミをぶつけなかった奴らが追いかけて来ていた。

 

「ごめんちょっと早くするよ」

 

 そう女の子に声をかけてから俺は走るスピードを上げた。そして走りながら何度も曲がり角を曲がり、適当な茂みの中に隠れた。

 しばらく息を殺していると追ってくるやつらの気配はなくなった。

 

「えっと、そのぉ...災難だったね」

 

 かける言葉はそれぐらいしかなかった。

 

「このまま帰るのも危険だろうし?冷凍でよければご馳走するけど家来る?」

 

 今日は4時間授業で給食がなくお母さんからお昼は冷凍のを食べてねと言われたことを思い返しながら言う。

 

「いい...私に気を使わないで...」

 

 少女はそれだけ言って去ろうとした。しかし

 

グゥ~

 

 腹が鳴る音が聞こえその行動はいったん中止された。因みに俺の音ではない。つまり...

 

「本当にいいの?うちの家近いよ?」

 

 誘い方がきもい気がするがまぁいいや

 

「...食べたらすぐ帰るわ」

 

 そう言って少女は近づいてきた。

 帰路での出来事はなくお互い無言のまま家に着いた。

 

「好きにくつろいでていいよ」

 

 俺はそう言いながら冷蔵庫をあさり、一袋で2人前の冷凍チャーハンを取り出した。そして準備を完了させてレンジにセットしたので少女を見てみると少女はテレビとその前にあるゲーム機をじっと見ていた。

 

「やりたいの?」

 

 俺はソファーに座りながら言った。

 

「違うわ...」

 

「そう...」

 

 そうして俺らは数分間黙って過ごしていた。

 

『ピーッ!ピーッ!』

 

 その数分間の沈黙は電子レンジの音によって終了した。チャーハンを2つのお皿に分け、レンゲを2つ用意してテレビの前の机にもっていった。

 

「どうぞ」

 

「ありがと...」

 

 俺らは食べている間も無言だった。でも目の前の少女はさっきまでは無表情だったが、少し柔らかい表情になっていた。その表情の変化が嬉しくて俺は少し体温が上がった。

 

「ご馳走様...それと...ありがとう...私は帰るわ」

 

「送ろうか?」

 

「必要ないわ」

 

「わかった」

 

 俺は玄関まで見送った。

 

「早くお母さん帰ってこないかなー」

 

 俺は少し柔らかくなった少女の表情を思い出しながらそうつぶやいた。

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 リビングでテレビを見ているとお母さんが帰ってきた。

 

「おかえり!突然で悪いんだけど料理を教えてくれない?」

 

「唐突ね。別にいいんだけどなんで料理を学びたいの?」

 

「えー...秘密」

 

 なぜか少し言うことが恥ずかしいと感じてしまったため俺は理由を言わなかった。

 

「言わないなら教えないわよ~」

 

 お母さんは少しからかうように言った。

 

「...作りたいと思う人ができたからだよ」

 

「ふふ...そう...先にキッチンに行ってなさいお母さんは少しやることがあるから」

 

 そう言われたので俺は先にキッチンに向かった。

 

 

 

 

母視点

 

 私はひなとがキッチンに向かったのを見てから電話の方に向かった。そして手慣れた手つきで電話をかけた。

 

『ひなと?』

 

 電話からの一声目はそれだった。

 

「残念だけど違うわ」

 

『お母さんでしたか。用件はなんですか?ひなとはいますか?』

 

 私とはあまり話したくないような様子だったので私は少し悲しくなった。

 

「今日は私が代わりに報告してあげよっと持ってね。時間がないから簡潔に言うわね。ひなとに気になる子ができたみたいよ」

 

 それだけ言って渡井は相手の反応を待たずに電話を切った。

 

 

 

 

ひなた視点

 

『ひなとに気になる子ができたみたいよ』

 

 お母さんはそれだけ言って電話を切った。私はそこからの記憶はなかった。次に記憶に残っているのは1週間後の若葉ちゃんが泣きながら「お願いだ戻ってくれ」と言ってきたところだった。お父さん曰くずっと私は植物人間みたいだったそうだ。

 

 

 

 

ひなと視点

 

 先に行ってと言ったのにすぐにキッチンに来たお母さんに対し

 

「何してたの?」

 

 と質問をした。

 

「あなたがひなたにしている報告をしてあげたのよ。今日からひなたが連絡をしてこない限り連絡はしないでいいわ」

 

「わかった。で、まずは何からやるの?」

 

「基礎的なことをやろうかと思うわ。包丁やそれぞれの調理器具の使い方とかね。早速だけど棚に入ってるものを取ってもらっていい?」

 

 そうして仕事から帰ってきたいそがしいはずの母親の料理教室が始まった。ごめんよお母さんいつか親孝行する。

 

 

 

 

 

 

次の日...

 

(さすが田舎...情報がはえー)

 

 そう思う俺の目の前の机には低レベルな暴言がびっしりとマイネームで書かれていた。周りをちらっと見てみるとにやにやとこちらを見ていた。

 

(面倒だしこのまま放置しておくか)

 

 俺はそう思いながらランドセルを机の横にかけて読書をした。そうして適当に授業後の五分休憩や授業を適当に過ごしていると今日も短縮授業だったからかすぐに放課後になった。今日はあの少女と話すことはなく、お姉ちゃんからの連絡もなく、イベントは単純にお母さんの料理教室だけだった。

 

 

 

 

それまた次の日...

 

 登校して自分の視点と同じぐらいのところにある下足入れに靴を入れて上履きを取ろうとしたところで俺は異変に気付いた。

 

(上履きがねぇ...)

 

 概ね昨日机を汚したのに反応が薄かったから上履きを隠せばなんか反応すると思ったのだろう。

 

(うーんこのまま普通に上履きを探して朝の会に遅れてあいつらにいい思いをさせるのは気が引けるな...しゃーない)

 

 普段俺はなぜ使える超能力的な何かを使わないように生活しているがそのエゴを上回るプライドが出てきたので使うことにした。目を閉じて意識を集中し、過去を振り返る。

 ...どうやら俺が帰った後に上履きを近くの清掃用ロッカーに入れたらしい。せっかく早く帰れるというのに...暇な奴もいるもんだ。過去を見た俺はさっそく上履きが隠されたところに向かって上履きを取り返し、すました顔で教室に向かった。

 

 

 

 

 そう言えば今日から六時間授業のため給食があり、その給食の後には昼休みがあった。特に遊ぶこともないし、図書室もしょぼかったため俺は人探しをすることにした。

 校内をさまようこと五分、お目当ての人物はすぐに見つかった。

 

「こんにちは」

 

「私にかかわらないで」

 

「あってすぐそれは少し悲しいな...」

 

「わからないの?私にかかわったらあなたもひどい目に合うのよ?」

 

「そんなことはどうでもいいよ。それよりもね!俺お母さんに料理を習い始めたんだ!まだまだうまくいかないと思うけど...これで今度は冷凍じゃなくて手づくりをごちそうできるよ!」

 

「あなたは馬鹿なのね...私にかかわっても...何にも帰ってこない...何なら...ひどい仕打ちが待っているはずなのに...」

 

「バカとは心外だなー。何なら君の勉強を教えるぐらいの頭脳だと俺は思ってるよ。まぁ一部は無理だろうけど...」

 

「そう...なら、これを解いて...」

 

 そう言って少女はポケットから鉛筆とメモ紙一枚を取り出し数式を書いて渡してきた。

 

「これは?」

 

「算数の授業で出たものよ...私は馬鹿にされるために難しい問題を出されるの...」

 

 俺ははぎ取ってきたり、突き落とすよりかはましだな...と感覚マヒを起こしていた。

 そうして数式を見ていると

 

(四分の七+九分の十一)÷三十六分の一

 

 と書かれていた。(ただし分数はしっかり分数)

 おれは6344とメモをしてから107と答えをかいた。

 

「どうしてわかるの?」

 

「あってましたか?」

 

「答えは知らないわ」

 

「そうですか...えっと何でわかるのでしたっけ?英才教育を受けてきたからです!」

 

「そう...じゃあなおさら私にかかわらないほうが良いわ...輝かしい学歴に傷がつくわよ」

 

「別に小学生の学歴とかくそほどどうでもいいです。なので関わりますね!どのみち話す人もういないんで!」

 

「嫌味かしら...?」

 

「違いますけど、そう思ったならすいません」

 

 そう言った瞬間昼休み終了五分前を告げるチャイムが鳴った。

 

「じゃ、また会おうね」

 

「やっぱり私はあなたと会いたくないわ...」

 

 最後まで拒絶されながら俺は教室へと向かった。

 

 

 

 

 そして授業が終わり放課後になった。さっさと帰るかと思いながら下足入れに行ったら靴がなくなっていた。おいおい懲りねぇな。俺はそんなこと尾を想いながら今朝みたく能力を使った。すると校庭の端の方に隠されているとわかった。

 

「どうしたの...」

 

「会いたくなかったんじゃないんですか?」

 

 後ろからかけられた声に俺はそう返す。

 

「困っていないならいいわ...」

 

「あ、ちょっと待って困ってる」

 

 自分の下足入れに向かった少女に対し俺は慌てて声をかけた。

 

「...どうしたの」

 

「靴を校庭の右手前の茂みに隠されたからとって来ていただけないでしょうか?」

 

「なんでそんなに詳しくわかっているのかは言及しないことにするわ...」

 

 そう言って少女は俺の靴を取りに行ってくれた。

 

「はい...持ってきたわよ...だいぶ汚れてるわね」

 

 少女は砂まみれのよく小学生男子が履いていそうな靴を俺の前に置いた。

 

「汚れていようが汚れていまいがそれが靴として機能するものなら今は全然いいよ。ありがと」

 

 俺はお母さんに汚れた理由をどう説明しようかと考えながら靴を履いた。

 

「持ってきたお礼としてはなんだけどゲームしに家来る?それがだめなら送ってくけど」

 

 相変わらず誘い方が気持ち悪いが無問題である。

 

「...ゲームってテレビでできるやつ?」

 

「この間家に来た時に見てたでしょ?ちょうど今日はお母さん遅いからまぁまぁ今の時間からでも遊べるんだよね」

 

「...あんまり関わりたくないから送ってもらうことにするわ」

 

「それ家を教えるってことになりますけど」

 

「...」

 

 少女は無言で去ろうとした。俺はついてくことにした。

 

「来ないで...ストーカー」

 

「うわひでぇ」

 

 なんだかんだ言って少女は俺がついてくることを拒んではいない様子であった。

 

 

 

 

帰路にて...

 

「よう、転校生に淫乱女」

 

 突然話しかけられ、前を向くと(ずっと少女を見ていた)この間ごみ袋をぶちまけたヤツと少し身長の高い男子がいた。

 

「あなたが淫乱女ですか?呼ばれてますよ?淫乱女さん」

 

 ごみをぶちまけたヤツに俺は言ってやった。

 

「違うわよ!お前の隣にいるやつだよ!」

 

 俺はちらっと隣の少女を見てからすぐに視点を戻した。

 

「まぁ転校生はともかく淫乱女は人違いだと思いますが...まぁいいです。用件はなんですか?」

 

 俺がそう聞くと男子は半歩前に出てきた。

 

「お前、隣の淫乱女に加担したうえ俺の妹にごみをぶちまけたんだって?」

 

 男子は睨みながら言った。

 

「いえ、あなたの妹ではありません。そこの淫乱女さんにごみをぶつけたんです」

 

 俺は男の隣にいる将来パパ活でもやっていそうな見た目の女子を指差した。

 

「てめぇ...もういい!お前の反応が反省していそうなら条件付きで許してやったんだがな」

 

 そう言いながら男子はカッターをポケットから取り出しカチカチと音を出しながら刃を出した。

 

「なんですかそれ?」

 

「カッターだよ...お前が反省していたなら隣の淫乱女をこれで切りつけるなら許してやろうと思ってたんだ」

 

「そうそう!私ってば優しいから?ごみをぶつけられてもその程度で許してあげようとしていたんだよ?」

 

(なんだこのごみ)

 

 少女は続ける。

 

「でもそっちは反省している様子はないし?その淫乱女に加担するようなゴミ出し?もうお兄ちゃんやっちゃっていいよ」

 

「言われなくてもそうするさ...こちとら大事な妹けなされてるんだ...殺しはしないが傷はおってもらうぜ。もうお前が淫乱女に加担したことは村中に知れ渡ってんだお前が傷つこうが誰も心配しないんだよ!」

 

(それは困った。お母さんに見つかったら香川に戻される)

 

「うおぉらぁ!」

 

 俺がそんなことを思っていたら先手必勝とばかりに男子は突っ込んできた。その瞬間周りがスローになった。

 

(適当に逃げるか)

 

 俺は素早くカッターを持っているほうの手首を思いっきり叩き、カッターを落とさせた。

 

「いって!」

 

 男子はそんな悲鳴をだしながら手首を押さえ悶絶した。

 

「よし逃げるぞ」

 

 俺は少女の手を取って走り出した。

 

「ごめんね。淫乱女さん♪」

 

 去り際に煽っといた。

 逃げるといっても俺は少女の家を知らないため俺は自分の家に向かうことにした。




いじめの描写ってムズイ


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プロローグ7(リメイク)

「結局俺の家に行くことになっちゃったね」

 

 俺は玄関で息切れを起こしている少女に向かってそう言った。

 

「無理やり連れて来れれたんだけど...」

 

「まぁまぁせっかく来たんだしあそぼ?」

 

「そうね...」

 

 少女は関わるなということを諦めたようだ。

 

「ねぇねぇ、何やる?W〇iやる?」

 

「そうね...私は持っていないから正直なんでもいいわ...」

 

「じゃ、桃〇やるか!」

 

 そして俺は某すごろくゲームをすることになった。

 

 

 

 

 最初はてこずっていた少女が次第に慣れてきて俺をいじめてくるようになった時だった。

 

「ねぇなんで私を助けてもデメリットしかないのに私を助けるの?」

 

 少女は俺に貧乏神を押し付けながら言った。

 

「いじめには少なからずともその人が虐められる原因があるんだよ」

 

「...」

 

 貧乏神を進化させながら俺は続ける。

 

「でも君にはそれがないじゃん。俺は何にも悪いことをしていない人がとばっちりでひどい目に合ってるのが嫌なんだ」

 

「だから私を助けるの...?」

 

 俺がボンビーな星に連れてかれる画面を見ながら少女は呟いた。

 

「そうだね...あ、あともう君しか話せる人がいないからね。仲良くなっておきたい」

 

「...さっきまで嫌われるような態度だったのに...」

 

「それはそれ、これはこれ」

 

 俺は借金を抱えながら頑張って進んだのにもかかわらず振り出しに戻されながら気楽そうに言った。

 

「そういえば...あなた名前は何て言うの...?あ、私は「知ってる」

 

 俺は少女が自己紹介をしようとしていたのを遮って少女の名前を言おうとした。しかし体に見合った精神が邪魔をして少し悪戯をしようと考えてしまった

 

群千景(ぐんせんけい)さんでしょ!」

 

 俺がそうふざけた瞬間周りがスローになった。見るとこちらをにらんだ千景(せんけい)さんが掴みかかってこようとしていた。

 俺はその攻撃を受けることにした。その瞬間遅くなった時間が急激に加速した。

 

「ぐえ」

 

 俺は押し倒され、首を絞められる。

 

「ご、めんって、こおり、ちかげさん...でしょ?」

 

 しかし少女の手は緩まなかった。

 

「もっと...砕けた感じがいい...」

 

「千景さん?」

 

 首の絞まる力が強くなった

 

「千景ちゃん!」

 

「もっと!」

 

(もっとっだと⁉これ以上何を言えと⁉)

 

 俺は適当に意識を落としそうな頭で出てきたものを言うことにした。

 

「ちー、ちゃん」

 

 俺がそういうと向こうは気に入ったのか首を絞めるのをやめて、ばつの悪そうな顔をした。

 

「少し...やりすぎたわ...」

 

「いいよ。これは百パ―俺が悪い」

 

「それにしても...あのカッターを防げるんだから私の攻撃も避けれたんじゃないの?」

 

 少女...ちーちゃんは俺にまたがるのをやめて聞いてきた。

 

「百パー悪いと思ったから避けなかったんだよ。あ、俺は上里ひなとね。好きなように呼んでいいよ」

 

「ひなと...ひなと君...」

 

 ちーちゃんは俺の名前を何度も繰り返した。君付けで呼ばれるのは子供同士ではなかったためなんか新鮮だ。

 そしてそこからは和気藹々と言うまでではなかったが仲良くゲームをした。ちなみに俺はぶっちぎりの最下位でちーちゃんはぶっちぎりで一位だ。

 

 

 

 

次の日...

 

 俺は登校してすぐに担任に呼び出されていた。会議室的なところに入ると手首に手刀を入れてやった男子がいた。

 

「とりあえず座れ」

 

 そう言われたので俺はふかふかでもないがまぁ学校の椅子にしてはましな椅子に座った。

 

「○○君昨日こいつにされたことを言ってみなさい」

 

「何もしていないのに思いっきり手首を叩かれました」

 

(は?)

 

「だそうだ...お前は何をやっているんだ!」

 

 俺のいる部屋に怒声が響き渡る。

 

「知らねぇよ。俺はカッターを持って襲ってきたやつに対して正当防衛をしたにすぎません。第一何もしていないというならば裁判所にでも警察にでも言えばいいじゃないですか。まぁ裁判所はこの村にはありませんから?ほかのところでやることになりそうですがね」

 

「お前ふざけてんじゃねえぞ...へらへらしてんじゃねぇ!」

 

 担任は机を思いっきり叩いた。そしてものに当たったことで少し落ち着いたのか

 

「ふん、とりあえずこのことは両親に伝えさせてもらうからな」

 

「どうぞお構いなく」

 

 俺は普段から暴力を振るやつではなく、なんかあっても我慢できるというところを親に見せてきた。そんな俺が人を殴ったと聞いたらまず何か裏があると思うだろうから、そこまでいたくないのだ。転校の危機はあるけどね。

 

「...謝れば親への連絡は許してやってもよかったあんだが、まぁいい。○○君も言いたいことがあったらいいぞ」

 

「よくお前教師にチクることができましたね。自分が状況的に不利だったと思わなかったんですか?仮にここの村では安全に過ごせていても結局裁判所はほかの市にあるから、状況が全然安全じゃないことに気づけなかったんですか?何なら今から裁判所や教育委員会なり行ってもいいんですけどね?」

 

「誰がお前が喋れと言ったんだ!もういい!出てけ!」

 

 そう言って教師は俺に掴みかかったが俺は避け、ドアから出ていった。

 

 そこからの授業は地獄の空気だったが俺にとっては別にどうでもよかった。

 そして帰りの会が終わった瞬間に俺は上の学年の教室へ向かった。するとちょうどちーちゃんが俯きながら教室から出てくるとこだった。

 

「ちーちゃん」

 

 俺が呼びかけるとちーちゃんは顔を上げ少しだけ優しい表所を見せた。

 

(村の連中はこの表所が見れないんだな...可哀そうに)

 

「ひなと君...」

 

「今日もゲームする?」

 

「そうね...することもないし行こうかしら」

 

 そして俺らは一緒に帰る。帰路で何かしらのイベントはなく平和だった。

 

「今日はこのゲームをしよっか」

 

 そして俺らは昨日のようにゲームをする。

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「あ、やべ」

 

 ちーちゃんとゲームをしている時にお母さんが帰ってきた。

 

「なにー?ひなと友達を連れてきたの?別にいいんだけど一言...」

 

 そう言いながらリビングのドアを開けちーちゃんを見たお母さんは停止した。

 

「あはは...ごめんそこの女の子...ちょっとひなとと話をしたいから上のひなとの部屋で待っててくれないかしら?」

 

「わかりました...」

 

 ちーちゃんはゲーム画面をポーズ画面にしてから部屋を出ていった。

 

「なに⁉あの子⁉」

 

 ちーちゃんが出ていったことを確認してからお母さんは興奮した様子で言った。

 

「...」

 

 俺はとりあえず無言でいることにした。

 

「まぁそんなことはどうでもいいわ。今日学校から連絡が来たわ。人を殴ったんだって?」

 

「手首だけどね」

 

「部位はどうでもいいわ。なんで殴ったの?」

 

「カッターを突き付けられたから」

 

「そう、カッターを...カッター⁉」

 

「それってあれじゃないわよね?たまにテレビでやってる、カード一枚引いてカッターとか言ってる人じゃないわよね?」

 

「だとしたら仮想の人物を突き立ててることになってるんだけど」

 

「そうよね...学校はカッターのことを知ってるの?」

 

「わかんない。多分知ってても俺を悪くするんだと思う」

 

「どうして⁉ただの正当防衛じゃない⁉」

 

 お母さんは意味が分からないという風に声を上げた。

 

「今、女の子いたじゃん?」

 

「いたけど何よ?」

 

「その子が村単位でいじめられててね...それを助けたら俺もいじめの対象になった。それで、それをやめてやる代わりにカッターでその子を傷つけろ的なことを言ってきから煽ったら斬りかかってきた」

 

「まって、情報が混雑してるわ...村単位のいじめ?何それその子の親は何をしているのよ⁉というか何をすればそんなことになるのよ⁉」

 

「聞いてみる?」

 

「その子が話してもいいなら聞きたいけど...」

 

 

 

 

「ということで話せる?」

 

 俺は自分の部屋にいたちーちゃんに母親と話したことについて話した。

 

「別にいいわ...この村にいる以上どうせわかるだろうし...」

 

 

 

 

「簡単に話しますと...お母さんが不倫したら私が淫乱女とののしられるようになりました」

 

「なによそれ⁉あなた関係ないじゃない!お父さんはそのことに関して何かをしてくれているの...?」

 

「いえ...あの人は子供が成長しないまま大人になったような存在で...家事も何にもしないでお酒ばかり飲んでます...」

 

「最低ね...村ごと訴えてやろうかしら?」

 

「お母さんそれをしたらちーちゃんがもっと住みずらくなる。俺らだってすぐに家が見つかるんじゃないんだから...」

 

「それもそうね...えっと...ちーちゃん?」

 

「千景です...」

 

「千景ちゃん...あなたが良ければここにいていいからね。私はあまり仕事でいられないことの方が多いけど、ここにはひなともいるし、料理もある程度覚えさせるから。

 

「ありがとうございます...」

 

 ちーちゃんは少しうれしそうだった。そこから俺とちーちゃんは毎日遊ぶようになった。毎日一緒にいて、お互いが一緒にいなかったときにいじめられていないか確認するようになった。学校で過ごしている時に結構虐められるようになり、席がなくなっていたり、靴が焼却炉で燃やされていたり、実力行使でこられたり、スープに虫を入れられたり様々だった。そして俺はその問題に対し、結構人に迷惑の行く形で解決をするため毎回保護者に電話が行った。お母さんは無視をしていた。

 日が過ぎるとともに、俺の料理スキルも上がっていき、いろいろ作れるようになった。そう言えば俺がちーちゃんになって初めての日から一週間後にお姉ちゃんから電話がかかってきた。

 

『もしもしひなと⁉気になる子ができたって本当ですか⁉』

 

「気になる子っていうか...守りたいと思える子かな...」

 

『な...』

 

「あ、今その子と遊んでるからまた明日ね。じゃーねー」

 

『え⁉ちょま...ブチ』

 

 今思えばちょっとかわいそうであった。でもお姉ちゃんにその子の置かれている状況を説明したら

 

『若葉ちゃんと一緒に乗り込みたいところですが遠すぎますね...でも状況はわかりました。その子を守ってあげてくださいね...そして私のことも忘れないでくださいね...』

 

 と言ってくれた。優しいお姉ちゃん大好き。

 

 

 

 

二〇一四年二月三日...

 

 俺とちーちゃんの関係は良好であり、村の連中とは最悪の関係を保ちつつある。いじめは大体エスカレートし、大体が暴力になってきた。この間なんてはさみでちーちゃんの髪を切ろうとしてきやがった。まぁ阻止してやったけどね!今日はそんなちーちゃんの誕生日である。前々から教えてもらったケーキの作り方が火を噴く時が来た。残念ながら?お母さんは仕事で帰れないらしい。

 

「というわけで今日はちーちゃんの誕生日なのでしっかりとお祝いをしたいと思います!」

 

「クリスマスのときもやってくれたのにいいの?」

 

「クリスマスと誕生日は別です!さぁ食べよ食べよ!唐揚げも作ったし、小さいケーキもあるし食事には困らないよ!別に残してもいいからね!」

 

「テンション高いわね...」

 

 ちーちゃんは少し引きながら言った。

 

「あ、クリスマスのときには用意できなかったけど今回はしっかりプレゼントを用意してきました!」

 

「別に...私はひなと君とずっとこうやって過ごせてればいいのよ...?」

 

「そんな遠慮しないで!受け取ってね!はい!ハッピーバースデー!」

 

 そう言って俺はプレゼントの入った箱を渡した。

 

「開けていいの?」

 

「もちろん!」

 

 するとちーちゃんはリボンを丁寧にほどいてから包装を丁寧にはがした。

 

「これ...」

 

 俺が渡したものは少なくとも小学生のおこ図解では買えないような値段のするヘッドフォンであった。

 

「ちーちゃん、家でゲームするときはヘッドフォンをしているって聞いたから毎日お手伝いをして買ってみました!...使ってくれたらうれしいな」

 

「もちろん使うわ...」

 

「ならよかった」

 

 それから俺らはたった二人の誕生会を楽しんだ。いつも通りゲームをしたが結果はいつも通り大敗だった。もうちょっとうまくなりたいものである。

 そして誕生会が終わり、俺は今日ちーちゃんの言っていたことを思い返す

 

『別に...私はひなと君とずっとこうやって過ごせてればいいのよ...?』

 

(ずっとか...)

 

 俺はこれから1.5年後に起こる災厄を想像する。

 

(ずっと暮らすためにはまずちーちゃんを村から話させないとな...)

 

 俺はそう思いながら電話をかける。

 

『もしもしひなと?今日は遅かったですね』

 

「うん...ちーちゃんの誕生日だったから」

 

『そうですか...それはめでたいですね。いじめは大丈夫ですか?』

 

「うん。逃げてるから...ねぇお姉ちゃん」

 

『なんですか?』

 

「ちーちゃんを俺みたいに上里家の養子にできたりしないかな?」

 

『それは何でですか?』

 

「いまはさ、いじめも逃げられるもので済んでいるんだ。でもそのうち逃げられないものになるかもしれない。だったら早いうちにちーちゃんを親から引きはがして、そっちに引っ越したほうが良いのかなって」

 

『決めるのは私ではありません...とりあえずお父さんに相談してみますね』

 

「ありがとう。じゃ、また明日」

 

『はい。また明日』

 

 

 

 

上里家にて...

 

「というわけで前々から話に上がっていた女の子を家で引き取れないかだそうです」

 

「そうか...まぁする分には別にいいのだがとりあえず家庭だったりの詳しい情報を本人たちから聞きたいな...」

 

「そうですか...」

 

(今からひなとに行ってもいいですが...ひなとが私に構ってくれなくなったのでしばらく黙って起きますか)

 

 そうしてひなたは自室へと戻った。




なんて抜け穴の在りそうな煽りなんだ...


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プロローグ8(リメイク)

 俺は四年生になった。しかしまだ春休み期間で正確にはまだ四年生ではない。そしていつものように俺とちーちゃんは家で一緒にいた。

 

「ふふふ...ひなと君はこれが弱いのね...いいことを知ったわ...」

 

「そんなの知らなくていいよ。...なんで止まるの?」

 

「さぁ?なんででしょうね?」

 

「お願いだから動かしてよ...怖いよ...」

 

「大丈夫そのうち慣れるわ...」

 

「...ホラー苦手なんだから慣れるとかないでしょ!お願いだからお化け引き寄せてないで逃げてよ!」

 

 俺とちーちゃんは家でゲームをしていた。でも今日はいつものような協力playのあるゲームや対戦ゲームではなく、一人play用のホラーゲームであった。ちなみに俺は前にお姉ちゃんとホラー映画を見た時に癖でもできたのかちーちゃんに抱き着いていた。

 

「毎日ホラーゲームをしようかしら...?」

 

 ちーちゃんは自分が優位に立ててるのがよかったのかものすごく意地の悪い顔をしている。

 

「意地悪、それをした瞬間俺は部屋にこもるぞ」

 

「じゃ、しょうがないわね...いい案だと思ったのだけれど...」

 

 こんなしょうもない会話をしていながらも俺らは年中無休で村単位のいじめを受けている。最初はお母さんに被害が出ることはなかったが次第に家は無視されたり物を売ってくれないようになった。まぁお母さんは仕事場から一番近いスーパーで買い物をしてくるから村の八百屋とかは使わないんだけどね!ざまぁ。勝手に利益を落としてろ。失礼、私怨が出た。って俺は誰に謝ってるんだ?まぁいい。最近では給食に虫が入っていることが当たり前になり、画鋲は当たり前のように上履きの中や靴の中に入ってるし、毎日放課後に追いかけっこをしている。担任がわざと長い話をしてちーちゃんを迎えに行けなかったときは焦ったがちーちゃんはちーちゃんなりに逃げることができたので被害は出なかった。そして俺はなんか難しい問題を毎日当てられるようになった。難しいといっても小学生から見ればの話だが...

 

「そろそろ昼だね...作るからホラゲ以外のゲームで遊んでて」

 

「そんなにホラゲを私とやりたいの?」

 

「違うから。単純に料理に集中したいだけだから」

 

「そう...」

 

 ちーちゃんは平日の夜と土日は俺の家でご飯を食べたり、過ごしたりしていて俺はちーちゃんの食べる料理を作っていた。ちーちゃんは俺の作る料理を食べると表情が柔らかくなるのでそれを見るのが俺の生きがいになっている。

 そうして俺らの日常は過ぎていく。

 

 

 

 

 季節は夏休みになった。

 

「うんやっぱり似合ってるわね!」

 

「えっと...その...ありがとうございます」

 

「いいのよ~私のおさがりだし。ほらひなとあなたも感想を言いなさい」

 

「え。え~っと、うん。似合ってるよ!」

 

 そう言う俺の目の前には髪型をお団子にし、黒い和服?浴衣?を着たちーちゃんがいた。

 

「はぁ~...もっと語彙を鍛えなさい。まぁいいわ。着替えたことだしさっさと出発しましょう」

 

 俺らは村外の祭りに行こうとしていた。ちなみに俺も着せられるかと思ったがそんなことはなく夏っぽい私服だった。

 

 

「お祭り...始めていくわ...」

 

「人が密集しているだけだよ」

 

「そんな悲しいことを言わない」

 

 お母さんは運転しながら突っ込みをした。

 そうしてしばらくすると村外の祭り会場に着いた。

 

「じゃ、私は車で待ってるから二人は楽しんできなさい。あ、これお小遣いよ。祭りに使いなさい」

 

「ありがと!」

 

「わたしにも...いいですか?」

 

「あたり前田のくらっかー!」

 

「???」

 

「お母さん死後はやめよ?」

 

「し、死後じゃないし(死語だし)...ほら!さっさと行った!」

 

 お母さんは手をシッシと振った。

 

 

「やっぱり...人...多いわね」

 

「そうだね。はぐれないように手で持つないどく?」

 

「うん」

 

 ちーちゃんは俺が手を出す前に手を握ってきた。

 

「何から行こうか?結構規模がでかい祭りだから屋台も一杯あるね」

 

「私は何でもいいけど...あれやってみたい」

 

 そう言ってちーちゃんは一つの屋台を指差した。

 

「射的か...なんかちょっとちーちゃんらしいかも」

 

「それどういう意味?」

 

「?いや悪い意味で言ったわけじゃないよ。単純に祭りでしか食べられないような食べ物があるところじゃなくてゲームのところに行くのがらしいなって」

 

 そうして俺らは射的の屋台の前に言った。

 

「お?やってくかい?」

 

 いかにも何かの屋台をやっていそうなガタイのいいおじちゃんが話しかけてきた。

 

「うん。って言ってもこの子がだけど」

 

「妹ちゃんかい?」

 

「いや俺ら兄妹じゃないですよ」

 

「そうか...仲良くな」

 

「はい」

 

「そろそろやりたい...」

 

「ごめんな嬢ちゃん。ほらこれ銃と弾ね。五つしかないからしっかり狙いな!」

 

 そうしてちーちゃんは射的をしたわけだが...

 

「一つも取れなかった...」

 

「...ほらこれやるから元気出せ」

 

「いいんですか?」

 

「こんなに屋台があると射的もいくつかあってだな。そっちの方が景品が豪華で客が流れちまってんだ。でそんな時に君らが来たからな。暇つぶしになったお礼だ」

 

「ありがとうございます」

 

「おう!祭り楽しめよ!」

 

 そうして俺とちーちゃんは射的のおじちゃんから小さいクマのぬいぐるみのキーホルダーをそれぞれもらい歩き出した。

 

「いやーいい人だったね」

 

「そうね...久しぶりにひなと君の親以外で温かい大人を見た気がするわ...」

 

「...そうだね」

 

 そして俺らは食べ物を食べたり、ヨーヨー釣りなどをして祭りを楽しんだ。そして残高がなくなってきたので帰ろうとしているところだ。

 

「来年もこんな風にお祭りに行きたいな...」

 

「ちーちゃんがポツリとその言葉をこぼした」

 

「そうだね...」

 

 来年そんなのんきな状況になっていないと知っている俺はそれしかいうことができなかった。

 

 

 

 

 その日の夜俺はいつものように電話をかけた。

 

「というわけでお祭りに行ってまいりました」

 

『ずるい!私も若葉ちゃんとひなとの間に入って手をつなぎたかった!あぁ若葉ちゃんの浴衣にひなとの浴衣...はぁ...どうして...どうして!若葉ちゃんは浴衣を着てくれないのでしょう⁉』

 

 いつものようにお姉ちゃんは暴走していた。

 

「そんなことよりお姉ちゃん」

 

『そんなことで終わらしたことについて問いただしたいところですが何ですか?』

 

「お父さんに相談したことまだ教えてくれないの?」

 

『すっかり忘れていました』

 

「おい...」

 

『おいとはなんですか⁉まぁいいです...とりあえず本人の気持ちと証拠とか実態とかそういうのが聞きたいらしいです』

 

「なるほど...話がまとまったら言うって言っといて」

 

『わかりました。...ねぇひなとたまにはお姉ちゃんに会いたいとは...』

 

「思ってるけど状況がそれどころじゃないんだよ...」

 

『会いたいんですね!そうなんですね⁉』

 

「はいはいそうですよ」

 

『それが聞けただけでも今日は十分です!それじゃおやすみなさい』

 

「おやすみ」

 

 そうして電話が切れた。

 

「実態と証拠か...今のでも十分な気もするけどもっとひどいのが欲しい気持ちもあるな...」

 

 俺はそう呟きながらベットに向かった。

 

 

 

 

 そうして時期は二回目のちーちゃんの誕生日になった。これが平和な時の最後の誕生会になるはずだった。

 

「まさか風邪をひいてしまうとはね...」

 

 ちーちゃんは風邪をひいてしまっていた。本当は俺の家で面倒を見たかったが、ちーちゃんが動けないかつずっといないのはさすがにやばそうなのでちーちゃんの家に行きそこで看病をしていた。

 

「ごめんなさい...準備してくれていたはずなのに...」

 

「いやいいよー。お母さんの弁当に詰め込むから。とりあえず冷えピタとプリンとアクエリとゼリー冷蔵庫に入れといといたから好きな時に食べてね」

 

「ありがと...」

 

「気にしないで。おかゆ作りたいからキッチン借りるね」

 

「うん...」

 

 俺は塩で味付けをしただけのシンプルなおかゆを作った。

 

「はい。食べれる?俺はお椀とレンゲを渡そうとした」

 

「食べさせて...」

 

「......いいよ」

 

 恥ずかしかったので少し迷ったが弱っていたため息を吹きかけ冷ましてからちーちゃんの口に入れる。

 

「おいし?」

 

「よくわかんないわ...」

 

「そっか...ねぇ、お父さんは今何してるの?」

 

 わかりきった質問を俺はした。

 

「...明らかに風邪っぽい私を見ても...何にもせずに仕事に行ったわ」

 

「...」

 

 俺は拳を握りしめるだけで何にも言わなかった。

 

 

 

 

 

「明日もまた来るね」

 

 しばらくちーちゃんを見てると外が真っ暗になってきたため俺はそう言って退出しようとした。

 

「行かないで...」

 

 ちーちゃんは俺の服を掴んでか細い声で言ってきた。

 

「わかった。ちょっと電話借りるね」

 

 俺はそう言って玄関ではなく電話のある方向に向かった。

 

『プルプルプル...』

 

 よくある呼び出し音が三回ほどなってから人の声が聞こえた。

 

『もしもし上里です』

 

「あ、お母さん?ひなとだけど」

 

『え?ひなと?どうしたの?』

 

 知らん電話番号から息子の声が聞こえてきたからかお母さんは驚いた声をしていた。

 

「今日ちーちゃんの家に泊まってくね」

 

『...わかったわ。いろいろ気を付けてね。ひなたには私から告げ口して(言って)おくわ』

 

「わかった。ありがとう。でも事情だけはきちんと説明してね」

 

『ちっ』

 

「お母さん?」

 

『しょうがないから事情も言っておいてあげるわ』

 

「ありがとう。それじゃそろそろちーちゃんのところに戻るね。バイバイ」

 

 俺はそう言って電話を切ってちーちゃんのところに向かおうとした。しかし突然世界がスローになった。感覚で何が起きたのかを探ると眼鏡をかけたちょとひょろい男が酒瓶を持ってこっちに襲い掛かってこようとしていた。

 なぜ急に襲ってくる?とかよりも俺はちーちゃんを放置したことにキレていたため、一瞬で男の間合いに入り思いっ切り腹パンしてやった。

 

「このガキィ...!」

 

 男はうずくまりながらも顔だけをあげてこちらを睨んだ。

 

「お前が千景になんかいろいろしてるやつか...迷惑なんだよ!お前が村の嫌がらせに対抗するしその仕返しが返り討ちされるからその八つ当たりというか仕返しが全部俺に来るんだよ!死ねぇ!」

 

 聞いててイラつくので俺は首に思いっきり手刀をして黙らせた。なんでこれで気絶するのかは知らん」

 

「大丈夫?あの人の声が聞こえたけど...」

 

 ちーちゃんは心配そうに俺の顔を見た。そんなちーちゃんい俺はニコッと笑って見せた。

 

「気のせいだよ。きっと熱で幻聴が聞こえてるんだよ」

 

「そう...」

 

 俺はちーちゃんの横にずっといた。このネタは父親に報告するのに使えるな、と思いながら...

 

 

 

 

 

 そしてちーちゃんの風邪が治った後俺はお父さんに電話をかけてこの二年間で体験したことをすべて話した。

 

『なるほど大体わかった。あとは任しておけ少し時間はかかるかもしれないがな』

 

「できれば今年の夏まででお願い」

 

『無茶言うね...まぁ頑張ってみるよ』

 

「ありがと」

 

 

 

 

 ひなとが父親に報告してから七月に入る前の間のどこか...

 

『ピンポーン』

 

 男は家のインターフォンが鳴ったのを聞いて静かに立ち上がりモニターを見た。

 

「誰だこいつ」

 

 いつもだったら村の連中が嫌がらせしに来るのだがその日は違った。スーツを着た男がそこには立っていた。男は出ることにした

 

「こんにちは」

 

 目の前の男は家の主がドアを開けた瞬間にあいさつをした。

 

「誰だお前は」

 

「挨拶が遅れました。私は上里ひなとの父親です。いつもひなとがお世話になっております」

 

「上里...あのガキのところか...ふざけんなよ!俺はてめぇの息子に殴られたんだぞ!」

 

 家の主は掴みかかる一歩手前のところまでキレた。

 

「はい存じております。ですので今日はその非礼を詫びるのと提案をしに来たのです」

 

「提案?」

 

「娘さんの親権を破棄してお金を手に入れませんか?」

 

 そう言って男は手に持っていたアタッシュケースを開き、大量の札束を見せた。

 

「ただお金を渡すだけではありません。貴方は群れでの暮らしに困っていると聞きました。ですので引っ越し費用や土地代そして家を建てる費用も払いましょう。ただ一人暮らしになるはずなのでそれに見合った広さにさせてもらいますがね...」

 

「俺は千景の親権を手放すだけでいいのか?」

 

「はい!こちらのいくつかの書類にサインするだけでいいです」

 

「サインするだけで子供は育てないで済むし、最悪の環境から抜け出せるし、家も手に入る...最高じゃないか!ぜひサインさせてもらおう」

 

 家の主は目の前の男の営業スマイルが一瞬崩れたのに気づかなかった。そして家の主はウキウキで複数の書類にサインをしてハンコを押した。

 

 

 

 

「あんなに子供に思い入れもない親がいるとはな...これでいいんだろひなと...」

 

 男は帰りの車の運転中にそうこぼした。

 

 そして男が家から帰ったとき

 

「その顔は成功したんですね」

 

 少し不機嫌そうな娘が話しかけた。

 

「あぁ姉が増えるぞ」

 

「な⁉私のお姉ちゃんとしての立場が!」

 

「...」

 

 目の前で娘が嘆いているのを見て少し笑いながら男はコーヒーを啜った。

 そして娘をしばらく観察してから男は息子に電話をかけた。

 

「成功したぞ」

 

『え⁉ほんと⁉』

 

 受話器から聞こえる息子の嬉しそうな声を聞き少しだけ男は気分がよくなった。

 

「あぁ。ただ野郎の家を建てたりとかにいろいろ時間がかかるからまだ終わりってわけでもないしすぐにうちの子になるっていうわけでもないがな。でも七月の末までには間に合うはずだ」

 

『ありがと』

 

「いや俺も実際会ってみてやって良かったと思ったから礼なんか言わんでもいい。いかん...そろそろひなたが変わりたそうに見てる視線に耐えられん変わるぞ」

 

 そう言って男はさっきからずっとにらんでくる娘に受話器を渡した

 

「もしもし...」

 

『お姉ちゃん...ずいぶんテンション低いね』

 

「そういうひなとは嬉しそうですね」

 

『うん!ずいぶんいい方向に事が進んできている気がするからね!』

 

「そうですか...お姉ちゃんはもういらないと...」

 

『そういうわけじゃないと思うんだけど...お姉ちゃんにもいいところはあるし、ちーちゃんにも別のところでいいところがあるんだよ?人は十人十色だからさ、別に新しいお姉ちゃんができたからってお姉ちゃんが用済みってわけじゃないからね?』

 

「だったらいいです。その子が完全にうちの子になったらまあ戻ってくるんですよね?」

 

『そうだね...お母さんには少し悪いけど』

 

「まぁお母さんだってしばらくしたら持出ってきますよ」

 

『そうだよね』

 

 そうしてしばらく姉弟は会話をした。




うーん法律的に不可能な気がする...まぁご都合主義です


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プロローグ9(リメイク)

投稿してから気付いた
こっちから投稿して最終的に1を最後に投稿したほうがよかったことを


 ちーちゃんの戸籍を上里家に移してしまおう作戦が決行され、残すはちーちゃんに伝えるだけとなった。(まぁ、書類とかがあるのだろうけれどそれはお父さんがやるので俺の作業ではない)

 ただ伝えるだけなのに俺はなかなか伝えられずにいた。

 理由は俺がちーちゃんの運命を変えたのだから運命を変えた分はしっかりと責任を取らなければならないというよくわからんエゴを持っており、その旨を一緒に伝えようとしていて恥ずかしくて言い出せないのである。要は告白的なものもしようと考えていてただ怖いから言わないだけだ。

 そんなことを悩んでいたらいつの間にか夏休みになっていた。その間、日常は変化しておらずただ身に降りかかる火の粉を払う生活をしていた。

 ちーちゃん曰く、ちーちゃんが風邪になった日からしばらくして父親の機嫌がよくなったそうだ。

 

「ねぇ...今日は何するの...?最近はもうやるゲームがなくなってきたわ...」

 

 ほぼ毎日ちーちゃんは俺の家に来てゲームをしている。結構前からマンネリ化の兆しはあったが夏休みに入ってすぐにそれが強く出てきた。

 

「そうだね...う~ん...」

 

 俺は財布を見て少し悩む。財布の中には八千円入っておりこれでゲームを買いに行けるか悩んでいるのである。

 

「ねぇ、ちーちゃん」

 

 考えがまとまった俺は話しかけた。

 

「何かしら」

 

「今日家でじっとしているのとめっちゃ歩くのどっちがいい?」

 

「...具体的にどこまで歩くの?」

 

「隣町」

 

「遠いわね...」

 

 ちなみに隣町はバスで三十分である。

 

「隣町まで行って何をするの?」

 

「新しいゲームを買いに行くのさ」

 

 俺は財布を見せながら言った。

 

「だったらバスで行けばいいんじゃないの...?」

 

「俺もそー思ったんだけどね?行き帰りのバスの料金が足りません」

 

「本当に歩くの?」

 

「新しいゲームをしたいのであれば...それにせっかくの夏休みなんだからちょっとは外に出ようよ!」

 

 そう言えば今回の夏休みが普通に過ごせる最後の夏休みということを思い出した俺はちょっと外に出たい気分になりちょっと声が大きくなった。

 

「まぁひなと君がそこまで言うのであれば...」

 

 ちーちゃんは少し外の日差しを見ながら言った。

 

「よし決まりだね!じゃ、早速行こう。早くいかなきゃ日が暮れちゃうよ」

 

 俺はそんなちーちゃんを無視しながら強引に事を進めた。どうせ数か月したらバリバリに体を動かさなければいけなくなるのだ。であるのならば、ちょっとは体を動かしておいたほうが良いだろう。

 ちーちゃんがお母さんからもらっていた日焼け止めを塗るのを待ってから俺らは水筒とショルダーバックを背負って出発した。

 

 

 

 

四時間後...

 

「やっと着いた...」

 

 ばてながら言っているちーちゃんの前にはおっきなデパートがあった。

 

「少し休憩していく?」

 

「いいえ...ゲームが買えなくなってしまうわ...」

 

 そんなちーちゃんの様子を見ながら俺は帰りはお母さんのところによってバス賃をもらうか一緒に帰るか...ということを考えていた。

 

「じゃあゲーム売り場は五階みたいだしさっそく行きますか」

 

 そう言って俺らはエレベーターに直行した。

 

 

 

 

 五階についてたくさんのゲームがある中、ちーちゃんの視点はすぐに止まった。

 

「どうかしたの?って、あぁ新型ゲーム機ね...」

 

 ちーちゃんの目線の先にはsw〇tchのトレーラー?的なものがあった。

 

「ただ発表されているだけでまだ予約もできないけど欲しいわね...」

 

「そうだね~お金貯めなきゃね」

 

 俺は発売が再来年のゲーム機を見ながら言った。ん?再来年?

 

「ねぇ、やっぱプレス〇買わん?」

 

 するとちーちゃんは少し呆れた目をしてきた。

 

「なんでよ...今一緒にお金をためるムードだっだじゃない...」

 

「ははは...なんとなく?」

 

 いやその時期になってる時にそれが発売されているかわからんし...そうは言えない俺は苦笑してごまかした。

 

「...それにしてもいいゲームがないわね...私たちはW〇iのが欲しいんだけどここにはその一つ先の機種のソフトしかないわね...」

 

 周りを見ると確かに俺らの欲しい機種のゲームはなさげだった。

 

「これなら中古屋に行った方がよかったかもね。安いからバスに乗れるかもしれないし...」

 

「それはいいわね...じゃあさっさと中古屋に向かいましょう...?」

 

 ちーちゃんはバスに乗れると聞いた瞬間目を輝かせながら足をエレベーターの方向へ向けた。

 

「おーちょい待て待て」

 

 俺はそんなちーちゃんの腕を引っ張って止めた。

 

「なによ...」

 

 ちーちゃんは止められたからか少し目を細めていった。

 

「いや俺中古屋の場所知らん」

 

「えぇ...」

 

 万事休すの一歩前である。

 

「とりあえず出口まではいきましょう...?何も策はないけれで歩いていれば何とかなるかもしれないわ...」

 

「ノープランすぎる...」

 

 まぁ他に策もないので俺らは下に降りることにした。いやマジで...なんで中古屋思いつかなかったんだろ...

 

 

 

 

 下に折れて出口に向かう途中

 

「ひなとじゃない!」

 

 そんな声が聞こえてきたので、二人でそちらの方を見ると、お母さんがいた。

 

「あれ⁉なんでいるの?仕事は?」

 

 俺は驚きながらも聞いた。

 

「あれ?言ってなかったっけ?私今日はやめに上がれるのよ?だからここに食材を買いに来たの。二人はデート?」

 

 母はあっけらかんとしていった。

 

「...............違います...そんなことよりひなと君のお母さん...その買い物が終わったらでいいので私たちを中古屋に連れてってもらえないですか...?」

 

「なんで中古屋?」

 

 今度は少し不思議がっていった。

 

「新しいゲームが買いたくてね...歩いてきたはいいんだけど、欲しいものがなくてね...中古屋ならあるかなーって」

 

「ちょっと待て、歩いてきたって言った⁉あんた女の子を歩かせたの?」

 

「...」

 

 お母さんの反応が思ったよりも怖く俺は視線をそらし黙りこくった。

 

「はぁ...ごめんなさいね...」

 

「いえ...ひなと君とだったら別に...歩きでもいいので...」

 

「そう言ってもらって何よりだわ。じゃ、お惣菜を買ってから中古屋さんに向かうとしますか」

 

 そうして俺らはお母さんのまぁまぁ長い買い物に付き合った。そーいえば俺は料理の作り方は教わったが、食材の選び方は教わっていないので聞こうかなと思ったが、面倒臭かったのでやめた。

 そして車で十分くらいのところの中古屋に向かった。

 

「意外とあるわね...」

 

 中古屋の中には五千円以内のゲームソフトが百本以上はあった。

 

「何にしようかしら...」

 

 悩むちーちゃんに俺はある提案をすることにした。

 

「俺ら普段ゲームばかりで外に出ないじゃん?」

 

「そうね」

 

 ちーちゃんは棚に置いてあるソフトを見ながら言った。

 

「だから体を動かすゲームにしない?」

 

「......」

 

「別にフツーのゲームでもいいんだけどね」

 

 ちーちゃんが少し嫌そうな顔をしたので俺はそう付け加えた。

 

「別に嫌というわけではないわ...」

 

「ほんとに?」

 

「えぇ...ただ体を動かすゲームにするとしてもどんな奴にしようと考えていただけよ...」

 

(ホントかなぁ...)

 

「まぁ体を動かすにしろ動かさないにしろ俺はちーちゃんの選んだゲームなら何でもいいから、好きなのを選んでね」

 

「そう...じゃ、ホラーにしようかしら」

 

「あ、それはちょっと遠慮願います...」

 

 結局ちーちゃんはWi〇スポーツを選び俺らはお母さんの車で帰還した。

 

 

 

 

 結局俺は告白をせずにただただいつも同じようにゲームをして過ごし何の変化を生まないまま運命の日になった。つまり七月三十日である。そしてその日も俺らはいつものように過ごしていた。しかしその日常もある時を境にして一旦終わりを迎えることになる。

 その日の夕方であった。たまたまゲームではなくテレビを見ていた俺らは、突如テレビからなった緊急地震速報に驚かされた。そして机の下に隠れた瞬間結構強めの地震が起きた。食器が揺れる音が聞こえ、寺日は今にでも倒れてきそうであった。二階の方では何かが倒れるような物音が聞こえた。

 

「結構強いな...震度五くらいかな?...大丈夫?」

 

 俺は地震の強さについて感想をつぶやきながらちーちゃんに声をかけた。

 

「ええ、大丈夫よ...それより何となくだけどここを離れたほうが良い気がする...」

 

「別に離れるのはいいけどどこに?」

 

「なんでかわからないけど神社に行った方がよい気がするの...」

 

「そうか...じゃ行こっか」

 

 水と少しの食糧などをバックに詰める作業を始めた。ここにバーテックスが来ないとはいえ今は夏。日は沈んだとは暑いし汗もかくだろう。

 

「ほらちーちゃんも携帯ゲーム機とか暇をつぶせるものを準備したら?」

 

「気楽ね...」

 

「気を紛らわすためにやってるんだよ」

 

 呆れながら言うちーちゃんに俺はひきっつた笑みで返した。これで日常からおさらばだから...

 

 

 

 そして俺らは戸締りをして、一応お母さんが帰ってくるかもしれないから置手紙をしてから神社に向かった。

 神社に向かいながら思う。人の願い、理想というものは簡単に壊れるものなのだと...もしかしたらこのまま偶にいじめっ子が絡んでくる日常が続くのかと思っていた、続いてほしかった俺の願いは簡単に崩壊した。

 ちーちゃんの手を引きながら神社までの道を歩き続ける...やがて俺らは管理者のいないのがよくわかるぼっろい神社にたどり着いた。

 

「よくこの地震で崩れなかったわね...」

 

「う~ん...でも間一髪で崩れてないみたいな感じがするしあんまり近づかないほうが良いかも」

 

「避難しに来た意味...」

 

「...レジャーシート持ってきたしあそこら辺に敷いて座ろ?」

 

 俺は神社が崩れてもかすかな埃ぐらいしかかからないであろう場所を指差した」

 

「わかったわ...」

 

 そうして俺らはレジャーシートを敷き、すぐ逃げられるように靴を履いたまま座りちーちゃんは携帯ゲーム機を、俺はラジオを起動した。

 

「ふむ...この地震全国で起きてるらしいね...」

 

「へぇ~そうなのね...この地震は日本大震災という名前にでもなるのかしら...?」

 

「さぁ?まぁでもそんな名前になりそうだね」

 

 実際にどうなるのかを忘れてしまった俺は適当に返事をした。

 

「ねぇ...ちーちゃん。言いたいことがあるんだ...」

 

 そういうと、俺の声のトーンがいつまでもなくんの戸籍を上里家に移してしまおう作戦が決行され、残すはちーちゃんに伝えるだけとなった。(まぁ、書類とかがあるのだろうけれどそれはお父さんがやるので俺の作業ではない)

 ただ伝えるだけなのに俺はなかなか伝えられずにいた。

 理由は俺がちーちゃんの運命を変えたのだから運命を変えた分はしっかりと責任を取らなければならないというよくわからんエゴを持っており、その旨を一緒に伝えようとしていて恥ずかしくて言い出せないのである。要は告白的なものもしようと考えていてただ怖いから言わないだけだ。

 そんなことを悩んでいたらいつの間にか夏休みになっていた。その間、日常は変化しておらずただ身に降りかかる火の粉を払う生活をしていた。

 ちーちゃん曰く、ちーちゃんが風邪になった日からしばらくして父親の機嫌がよくなったそうだ。

 

「ねぇ...今日は何するの...?最近はもうやるゲームがなくなってきたわ...」

 

 ほぼ毎日ちーちゃんは俺の家に来てゲームをしている。結構前からマンネリ化の兆しはあったが夏休みに入ってすぐにそれが強く出てきた。

 

「そうだね...う~ん...」

 

 俺は財布を見て少し悩む。財布の中には八千円入っておりこれでゲームを買いに行けるか悩んでいるのである。

 

「ねぇ、ちーちゃん」

 

 考えがまとまった俺は話しかけた。

 

「何かしら」

 

「今日家でじっとしているのとめっちゃ歩くのどっちがいい?」

 

「...具体的にどこまで歩くの?」

 

「隣町」

 

「遠いわね...」

 

 ちなみに隣町はバスで三十分である。

 

「隣町まで行って何をするの?」

 

「新しいゲームを買いに行くのさ」

 

 俺は財布を見せながら言った。

 

「だったらバスで行けばいいんじゃないの...?」

 

「俺もそー思ったんだけどね?行き帰りのバスの料金が足りません」

 

「本当に歩くの?」

 

「新しいゲームをしたいのであれば...それにせっかくの夏休みなんだからちょっとは外に出ようよ!」

 

 そう言えば今回の夏休みが普通に過ごせる最後の夏休みということを思い出した俺はちょっと外に出たい気分になりちょっと声が大きくなった。

 

「まぁひなと君がそこまで言うのであれば...」

 

 ちーちゃんは少し外の日差しを見ながら言った。

 

「よし決まりだね!じゃ、早速行こう。早くいかなきゃ日が暮れちゃうよ」

 

 俺はそんなちーちゃんを無視しながら強引に事を進めた。どうせ数か月したらバリバリに体を動かさなければいけなくなるのだ。であるのならば、ちょっとは体を動かしておいたほうが良いだろう。

 ちーちゃんがお母さんからもらっていた日焼け止めを塗るのを待ってから俺らは水筒とショルダーバックを背負って出発した。

 

 

 

 

四時間後...

 

「やっと着いた...」

 

 ばてながら言っているちーちゃんの前にはおっきなデパートがあった。

 

「少し休憩していく?」

 

「いいえ...ゲームが買えなくなってしまうわ...」

 

 そんなちーちゃんの様子を見ながら俺は帰りはお母さんのところによってバス賃をもらうか一緒に帰るか...ということを考えていた。

 

「じゃあゲーム売り場は五階みたいだしさっそく行きますか」

 

 そう言って俺らはエレベーターに直行した。

 

 

 

 

 五階についてたくさんのゲームがある中、ちーちゃんの視点はすぐに止まった。

 

「どうかしたの?って、あぁ新型ゲーム機ね...」

 

 ちーちゃんの目線の先にはsw〇tchのトレーラー?的なものがあった。

 

「ただ発表されているだけでまだ予約もできないけど欲しいわね...」

 

「そうだね~お金貯めなきゃね」

 

 俺は発売が再来年のゲーム機を見ながら言った。ん?再来年?

 

「ねぇ、やっぱプレス〇買わん?」

 

 するとちーちゃんは少し呆れた目をしてきた。

 

「なんでよ...今一緒にお金をためるムードだっだじゃない...」

 

「ははは...なんとなく?」

 

 いやその時期になってる時にそれが発売されているかわからんし...そうは言えない俺は苦笑してごまかした。

 

「...それにしてもいいゲームがないわね...私たちはW〇iのが欲しいんだけどここにはその一つ先の機種のソフトしかないわね...」

 

 周りを見ると確かに俺らの欲しい機種のゲームはなさげだった。

 

「これなら中古屋に行った方がよかったかもね。安いからバスに乗れるかもしれないし...」

 

「それはいいわね...じゃあさっさと中古屋に向かいましょう...?」

 

 ちーちゃんはバスに乗れると聞いた瞬間目を輝かせながら足をエレベーターの方向へ向けた。

 

「おーちょい待て待て」

 

 俺はそんなちーちゃんの腕を引っ張って止めた。

 

「なによ...」

 

 ちーちゃんは止められたからか少し目を細めていった。

 

「いや俺中古屋の場所知らん」

 

「えぇ...」

 

 万事休すの一歩前である。

 

「とりあえず出口まではいきましょう...?何も策はないけれで歩いていれば何とかなるかもしれないわ...」

 

「ノープランすぎる...」

 

 まぁ他に策もないので俺らは下に降りることにした。いやマジで...なんで中古屋思いつかなかったんだろ...

 

 

 

 

 下に折れて出口に向かう途中

 

「ひなとじゃない!」

 

 そんな声が聞こえてきたので、二人でそちらの方を見ると、お母さんがいた。

 

「あれ⁉なんでいるの?仕事は?」

 

 俺は驚きながらも聞いた。

 

「あれ?言ってなかったっけ?私今日はやめに上がれるのよ?だからここに食材を買いに来たの。二人はデート?」

 

 母はあっけらかんとしていった。

 

「...............違います...そんなことよりひなと君のお母さん...その買い物が終わったらでいいので私たちを中古屋に連れてってもらえないですか...?」

 

「なんで中古屋?」

 

 今度は少し不思議がっていった。

 

「新しいゲームが買いたくてね...歩いてきたはいいんだけど、欲しいものがなくてね...中古屋ならあるかなーって」

 

「ちょっと待て、歩いてきたって言った⁉あんた女の子を歩かせたの?」

 

「...」

 

 お母さんの反応が思ったよりも怖く俺は視線をそらし黙りこくった。

 

「はぁ...ごめんなさいね...」

 

「いえ...ひなと君とだったら別に...歩きでもいいので...」

 

「そう言ってもらって何よりだわ。じゃ、お惣菜を買ってから中古屋さんに向かうとしますか」

 

 そうして俺らはお母さんのまぁまぁ長い買い物に付き合った。そーいえば俺は料理の作り方は教わったが、食材の選び方は教わっていないので聞こうかなと思ったが、面倒臭かったのでやめた。

 そして車で十分くらいのところの中古屋に向かった。

 

「意外とあるわね...」

 

 中古屋の中には五千円以内のゲームソフトが百本以上はあった。

 

「何にしようかしら...」

 

 悩むちーちゃんに俺はある提案をすることにした。

 

「俺ら普段ゲームばかりで外に出ないじゃん?」

 

「そうね」

 

 ちーちゃんは棚に置いてあるソフトを見ながら言った。

 

「だから体を動かすゲームにしない?」

 

「......」

 

「別にフツーのゲームでもいいんだけどね」

 

 ちーちゃんが少し嫌そうな顔をしたので俺はそう付け加えた。

 

「別に嫌というわけではないわ...」

 

「ほんとに?」

 

「えぇ...ただ体を動かすゲームにするとしてもどんな奴にしようと考えていただけよ...」

 

(ホントかなぁ...)

 

「まぁ体を動かすにしろ動かさないにしろ俺はちーちゃんの選んだゲームなら何でもいいから、好きなのを選んでね」

 

「そう...じゃ、ホラーにしようかしら」

 

「あ、それはちょっと遠慮願います...」

 

 結局ちーちゃんはWi〇スポーツを選び俺らはお母さんの車で帰還した。

 

 

 

 

 結局俺は告白をせずにただただいつも同じようにゲームをして過ごし何の変化を生まないまま運命の日になった。つまり七月三十日である。そしてその日も俺らはいつものように過ごしていた。しかしその日常もある時を境にして一旦終わりを迎えることになる。

 その日の夕方であった。たまたまゲームではなくテレビを見ていた俺らは、突如テレビからなった緊急地震速報に驚かされた。そして机の下に隠れた瞬間結構強めの地震が起きた。食器が揺れる音が聞こえ、寺日は今にでも倒れてきそうであった。二階の方では何かが倒れるような物音が聞こえた。

 

「結構強いな...震度五くらいかな?...大丈夫?」

 

 俺は地震の強さについて感想をつぶやきながらちーちゃんに声をかけた。

 

「ええ、大丈夫よ...それより何となくだけどここを離れたほうが良い気がする...」

 

「別に離れるのはいいけどどこに?」

 

「なんでかわからないけど神社に行った方がよい気がするの...」

 

「そうか...じゃ行こっか」

 

 水と少しの食糧などをバックに詰める作業を始めた。ここにバーテックスが来ないとはいえ今は夏。日は沈んだとは暑いし汗もかくだろう。

 

「ほらちーちゃんも携帯ゲーム機とか暇をつぶせるものを準備したら?」

 

「気楽ね...」

 

「気を紛らわすためにやってるんだよ」

 

 呆れながら言うちーちゃんに俺はひきっつた笑みで返した。これで日常からおさらばだから...

 

 

 

 そして俺らは戸締りをして、一応お母さんが帰ってくるかもしれないから置手紙をしてから神社に向かった。

 神社に向かいながら思う。人の願い、理想というものは簡単に壊れるものなのだと...もしかしたらこのまま偶にいじめっ子が絡んでくる日常が続くのかと思っていた、続いてほしかった俺の願いは簡単に崩壊した。

 ちーちゃんの手を引きながら神社までの道を歩き続ける...やがて俺らは管理者のいないのがよくわかるぼっろい神社にたどり着いた。

 

「よくこの地震で崩れなかったわね...」

 

「う~ん...でも間一髪で崩れてないみたいな感じがするしあんまり近づかないほうが良いかも」

 

「避難しに来た意味...」

 

「...レジャーシート持ってきたしあそこら辺に敷いて座ろ?」

 

 俺は神社が崩れてもかすかな埃ぐらいしかかからないであろう場所を指差した」

 

「わかったわ...」

 

 そうして俺らはレジャーシートを敷き、すぐ逃げられるように靴を履いたまま座りちーちゃんは携帯ゲーム機を、俺はラジオを起動した。

 

「ふむ...この地震全国で起きてるらしいね...」

 

「へぇ~そうなのね...この地震は日本大震災という名前にでもなるのかしら...?」

 

「さぁ?まぁでもそんな名前になりそうだね」

 

 実際にどうなるのかを忘れてしまった俺は適当に返事をした。

 

「ねぇ...ちーちゃん。言いたいことがあるんだ...」

 

 そういうと、俺の声のトーンがいつになくまじめだったためゲームをスリープにしてこちらを向いた。

 

「先に謝っておくね...ちーちゃんに何にも相談せずに勝手に俺はちーちゃんの親権を俺の親に移して苗字を戸籍上?は上里にしちゃいました」

 

「え...あの人から離れられるの?」

 

「うん...でね、勝手に行動してもしかしたら楽しい思い出があった人とのつながりを無責任に切ってしまったんだよ...だからね、だから...!」

 

 声が震える。緊張しているのか、断れた時のことを想像しているのか...でも今この瞬間まだ若干平和な時に言っておきたかった。

 

「ちーちゃんのこの人生に責任を取らせてほしい!」

 

「え...それって...」

 

 その瞬間、今までで一番大きな地震が起こった。

 神社があり得ないほど揺れ、三秒ぐらいたってからぐしゃぐしゃに崩れ砂埃が舞った。さっきまで避難してくださいとしか言わなかったラジオは砂嵐を鳴らしている。しばらくじっとしてると揺れは次第に収まった。

 収まった瞬間何かを言おうとしていたちーちゃんは立ち上がり崩れた神社の方へ向かった行った。

 

「ちーちゃん?危ないよ...?」

 

 そうは思ったがなぜか強くは止められなかった。それどころか、俺も崩れた神社になぜか惹かれていった。ちーちゃんは崩れた神社の目の前まで着き、何かを拾った。

 

「何...?これ...?刃物...?」

 

「多分鎌とかのやつだと思うよ」

 

 独り言を言うちーちゃんに俺は『うわ出たよ...』みたいな顔をして返した。

 

「...神様へのお供え物かしら...?」

 

「多分保管されてただけだと思うよ」

 

「保管されてるにしては折れているわ...誰にも見向きもされずにここにいたのね...ずっと放置されて...錆びついて...存在に気づいてくれる人さえいない...まるで昔の私ね...」

 

「...」

 

「とりあえず持って帰ろう...放っておけない気がするの...」

 

「そうか...じゃ取り敢えずうちに置いとく?」

 

 俺はラジオなどを片付けながら聞いた。

 

「そうするわ...」

 

 ちーちゃんは錆びついた刃を抱えながら言った。

 

「...⁉」

 

 帰ろうとした瞬間、なぜか神社を思いっきり調べなければいけない気がしてきた。

 

「どうしたの...?」

 

 神社の方を振り返った俺にちーちゃんは不思議そうな顔をした。

 

「ほんのちょっとだけ待ってて」

 

「?わかった...」

 

 俺は崩れた神社に駆け寄って、瓦礫を少しだけどけた。

 

「これ...」

 

 どけたがれきの下に錆びついたディケイドライバーとライドブッカーがあった。手に取ってみてもきれいな状態には戻らなかったがとりあえず持って帰ろうと思った。大丈夫ここの警察はざるだ。

 

「何かあったの?」

 

「ん~?ただのおもちゃだったよ」

 

「そう...神社におもちゃね...」

 

 ちーちゃんはそうつぶやいただけで特に何にも思ってないっぽい気がした。神社におもちゃがあったことよりも目の前の刃物の方が気になるようである。それにしても俺は破壊者にでもなるのだろうか...?

 

 

 

 

 家に帰るとお母さんは帰ってきていて、最後の一番強い地震で倒れてきたテレビや、食器などを片していた。

 

「おかえり二人とも。無事でよかったわ...とりあえずガラスの破片があったりして危ないからちょっと二階にいてくれる?」

 

「手伝おうか?」

 

「いえ、大丈夫よ...休んでなさい」

 

 お母さんがそういうので二階の自分の部屋でちーちゃんと待機することにした。俺は部屋にあんまり物を置いてなかったのであんまり散らかっていなかった。

 

「ねぇ...さっきの神社でのことなんだけど...」

 

 ちーちゃんはベッドの上に座って言ってきた。それを言われた俺は少しだけ体温が上がった。俺がしばらく黙っているとちーちゃんはまた話し始めた。

 

「告白ってことでいいのかしら...」

 

「...うん...」

 

 か細い声で俺は返事をした。

 

「そう...」

 

 どこかしらちーちゃんのテンションが高い気がする。

 

「...あの...返事は...」

 

 俺がそういうとちょっと眼を鋭くしてちーちゃんは俺を見た。

 

「第一声で分かりなさいよ...全く...いいに決まってるでしょ...言わせないでよ...」

 

「ほんと⁉いいの⁉」

 

「...なんでいけないと少しでも思ったのかしらこの人」

 

 

 

 

大体1週間後...

 クラスのクズどもは最初は地震について話し合っていた。しかし、化け物が出たみたいなことは言っていなかったためまだテレビでも詳細は伝えられていないようだ...つまらない荒れた教室の掃除とつまらない5時間が終わり、ちーちゃんと家に帰るとお父さんがソファーに座って待っていた。ちーちゃんは誰こいつみたいな顔をしていた。

 

「やぁ、お帰り」

 

「お父さん...久しぶり...今日はどうしたの?」

 

「?その子が千景ちゃんかい?」

 

「そーだよ」

 

 質問を質問で返す人だなと思いながら俺は返す。

 

「その子の親権が4日前くらいに正式にうちのものになった。あと少し遅かったら少しやばかったかもしれなかったがな」

 

「それはどういうこと?」

 

「テレビが今頃説明してくれると思ったが壊れてるのか...」

 

 お父さんはバッキバキに割れてテレビを呆れた目で見ながら言った。

 

「うん。この間の地震で...」

 

「そうか、なら仕方がない。俺の口から説明しよう。あ、自己紹介が遅かったね。ひなとの父だ。そして今日から君のお父さんだ。どっちの意味でもいいぞ」

 

「さっさと説明しろ」

 

 お父さんが茶化し始めたので俺はさっさと説明を促した。完璧にちーちゃんを置いてく流れである。

 

「この村には来ていないようだが、昨日の地震の最後の大きな地震が収まった後空から化け物が降ってきた」

 

「化け物...?」

 

 ここまで無口だったちーちゃんはそこで第一声を発した。

 

「そうだ化け物だ、人間より大きく大きな口があり、飛ぶ。簡略に言えばそんな化け物だ。その化け物がこの四国以外を滅ぼしてしまったらしい」

 

「なんで四国は無事なんですか?」

 

「神樹とかいう神様の集合体が四国の周りに結界みたいなものを張ったらしい。で、中に入ったものは勇者とそのうち呼ばれる人たちが倒したらしい」

 

「らしいばっかだな」

 

 俺は半目で言った。

 

「しょうがないだろー?何もかも聞いた話だったんだから...それでこの間の地震で二人とも何か拾わなかったか?」

 

「...錆びた刃を拾いました」

 

 ちーちゃんは少し考える素振りをしていった。俺はそんなちーちゃんをチラ見してお父さんの方向を見た。

 

「俺は錆びたカメラみたいなのとよくわかんない長方形の固形を拾ったよ」

 

「...そうか」

 

 お父さんは頭を抱え唸るように呟いた。

 

「どうしたの?大丈夫?」

 

「あぁ...大丈夫だ。少し憂鬱になりそうなだけだ。お前たちが拾ったものはお前たちが勇者に選ばれたもしくはその資格があるということになってしまうんだ...」

 

「はぁ...」

 

 ちーちゃんは状況がよくわかっていないのか訳の分からない表情をしていた。

 

「本来ここには俺以外の『大社』という組織の人間が来るはずだった」

 

「大社?」

 

「そうだ。大地震が起き、化け物...大社曰く『バーテックス』が襲来してから表立った組織だ。俺はひなたが巫女の素質があるとか言われて組織に勧誘されたんだ。」

 

「ひなた?」

 

「俺のお姉ちゃん」

 

「お姉さんがいたのね...」

 

 ちーちゃんは目を丸くさせた。

 

「最初は断ろうとしていたが大社の連中が「あなたが断ろうが受け入れようがあなたの娘は使わせてもらう」と言ってきてなどうせひなたもいれさせられるならと入ったんだ。そしてその大社が崇拝している神様...『神樹』という神様の集合体...まぁ俺ら一般ピーポーからすれば壁を作った神だな。そいつが神託とかいう巫女にしか出さないもので『勇者』というバーテックスと戦う資格の持つ者の名前が新たに出てきた。それがお前らだと知ったときその勇者を交渉、もしくは誘拐する役にほかのやつが選ばれいていたんだが、まぁ変わってもらったんだ」

 

「情報が渋滞しているわ...」

 

 ちーちゃんは目をつぶって、眉間を押さえながら言った。

 

「要するになんか化け物が空から降ってきて、それに乗じて新たな組織が国を牛耳ろうとしていて、そんな組織が崇拝している神様が化け物への対抗策として勇者というものを選び、それにあんたらが選ばれた」

 

「それはわかりました...でも親権の件は何で遅かったらまずかったんですか?」

 

「実は神樹に選ばれた勇者の家族には膨大な補助が大社から出てな、あの親だったらその補助のためにドタキャンしてくるだろうなと」

 

「...なるほど」

 

 ちーちゃんは煩わしそうな顔をしながら納得した。

 

「で、勇者は一つにまとめるために香川の丸亀城に集められる。というわけで必要な荷物や、拾ったものを持ってこい。さっさと出発するぞ」

 

 お父さんは顎で指した。

 

「そんな急な...」

 

「すまんな。こっちもよくわからんやつに早急にと言われているんだ。本当にすまない」

 

「あの...ひなと君のお母さんに今までのお礼を言いたいんですけど...」

 

「...大丈夫だそのうち言える。なんたって家族だからな!」

 

「ごり押し...」

 

 お父さんが大きな声を出してごまかそうとしていたので俺は呟いた。

 

「うるさい...さっさと準備をしなさい」

 

 ちーちゃんは一回荷物を取りに家に帰った。俺はその間に荷造りをしているのだが、お父さんはどうやらお母さんに俺らを連れていく旨を伝えているらしく、なんかめっちゃ怒鳴られていた。

 スピーカモードでもないのにバカでかく聞こえるあの怒声...お父さんはずっとすいませんを連呼していた。

 

 

 

 

大体一時間後...

 

 ちーちゃんは荷造りに苦戦しているのか戻ってこなかった。そうしている間にすごい形相をしたお母さんが帰ってきていて、お父さんに正座をさせていた。ちなみに怒鳴ってる内容は、いきなりすぎるとか、気持ち考えろとか、私一人になっちゃうんだが、とかまぁそんな感じである。

 

「おかーさーんまぁまぁその辺にしといてあげなよ...お父さんだって会社の道具になっただけなんだから。...この場合は組織の、かな?」

 

「あんた...千景ちゃんがいないと結構な毒を吐くわね...機嫌悪いの?」

 

「悪くないし...それにしてもちーちゃん遅くない?」

 

「女の子の用意は時間がかかるのよ」

 

 お母さんは後方彼氏面見たく頷きながら言った。

 

「いやそれにしても遅すぎるだろう...なんか嫌な予感がする。ちょっと行ってみるとしよう」

 

 そう言いながらお父さんは正座から立とうとして足がしびれているのか膝から崩れ落ちた。

 

「しびれが治ってからな...」

 

 ぶっ倒れながらお父さんは付け足した。

 

 

 

 

十分後...

 

「わざわざ来るまで来る必要あったの?」

 

 ちーちゃんお家の前まで着た俺は車から降りながら運転手に聞いた。

 

「お母さん曰く女の子は荷造りが大変なんだろ?だったら最初から積み込めるようにと思ってな」

 

「そーなのかー(適当)」

 

「ちょっと離して!」

 

 俺が他愛のない会話をしていたら目の前の家から悲鳴が聞こえてきた。俺らは目を合わせてから家に突撃した。

 

 

 

 

 中に入るとちーちゃんが父親に両腕を掴まれていた。

 

「何してんの?」

 

 俺は呆れながら目の前の父親もどきに聞いた。

 

「やっぱりお前らが来たか!おいお前!」

 

 目の前の男は俺らを睨んでからお父さんの方を向いた。

 

「なんだ?」

 

「よくわからないがこの間の震災のせいでよくわからない状態になったあいつが帰ってくることになったんだ!どうにかしろ!」

 

「知らん」

 

 お父さんは淡々と拒否お言葉を口にした。

 

「なんだと⁉...だったらこいつは渡せないなぁ⁉」

 

 そう言いながら目の前の男はちーちゃんの腕を強く握り自分の方にさらに引き寄せた。

 

「っ!」

 

 ちーちゃんは顔をゆがめた。するとお父さんは目の前の男に歩みを寄せ始めた。

 

「あのな?もう契約は住んでいてその子はもう俺たちの家族なわけだ。赤の他人というわけではないが権利上からしたらそのようなやつがそんなこと言ってるんじゃねぇ!」

 

 そう言ってお父さんは顔面をぐーぱんした。

 

「え、ちょ⁉殴るの⁉」

 

 俺は倒れた男とお父さんを交互に見ながら聞いた。

 

「こうでもしないと黙らないだろ...それにお前の仇だ。殴られたんだろ?」

 

「死んでないし、殴られてもいないわ!殴られそうにはなったけど...まぁいいか。それよりちーちゃん、大丈夫だった?」

 

 もうちーちゃんの親が殴られたことがどうでもよくなった俺はちーちゃんの少し赤くなった手首を見た。

 

「えぇ少し痛いけど大丈夫よ...」

 

「そっか...でどうしてこうなったの?」

 

「それは...」

 

 

 

 

約五分前...

 

 千景は持ってくものを四十分くらいかけて吟味をしてそれをどうにかして詰め込もうとしていた。

 

「う~ん...これは入らないわね...一回帰ってひなと君たちに何とかしてもらおうかしら...」

 

 そんなことを呟いていると玄関の方から扉が開く音がした。

 

(あまりにも遅いからひなと君が様子を見に来たのかしら...?)

 

 そんなことを想いながら準備を再開する千景だったがきた人物は予想はできたはずなのに頭からすっぽりと抜けていた人物だった。

 

「お前何してるんだ?」

 

「⁉...あなたに関係ないわ」

 

 千景は肩をビクッと震わせてから冷たくそう返した。

 

「ふん...大方アイツらのところへにでも行くつもりなんだろうな」

 

「だったら何?別にいいでしょ?厄介者である私が消えるんだから...!」

 

 千景は男を睨みながら吐き捨てた。そんな娘の態度を見て男は頭をかいた。

 

「本当だったら喜ぶところだったが...そういうわけにもいかなくなった。あいつにさらに要求されるためだ...交渉材料になってもらうぞ!」

 

 そう言いながら男は千景のもとに駆け寄り手首をつかみ、乱暴に上にあげた。

 

「ちょっと!はなして!」

 

 千景は苦悶の表情を浮かべながら叫んだ。

 

 

 

 

「ということが起きたのよ...」

 

 ちーちゃんは手首をさすりながら事の顛末を話してくれた。

 

「まぁ...俺は契約外のことはなんもしないつもりだから勝手にやっててくれって感じだな。まぁあんたたちは勇者専用の施設で過ごすからこの父親が迫ってくることはほぼないだろう」

 

「そうですか...」

 

「まぁそんなことより今は荷物を何とかしなくちゃ。じゃじゃーん!お母さんが旅行用のバッグとただの段ボールをよこしてくれました!使っていいって」

 

「ありがとう...それよりひなと君のお母さん帰ってきたの?」

 

「うん!お父さんを怒りにはるばる帰ってきたよ」

 

「いや違うけどな」

 

 ちーちゃんは少し表情を緩くさせながら荷造りを再開させた。

 

 

 

 

「忘れ物はないか?もうここには戻ってこれないぞ?」

 

 エンジンをかけながら目線だけこっちに向けながらお父さんは後部座席に座っているちーちゃんに聞いた。

 

「はい...大丈夫です。バッグに入らない荷物も結局車に詰め込めばいいってなったので、荷造りする必要...なかったです」

 

「はは、そうか...ちなみにリストに書けば大社が生活に必要なものを買ってくれるらしいからバンバン頼め~?」

 

「俺はお父さんに頼もうかな」

 

「お前ひなたと同じ部屋にするぞ」

 

 俺が冗談を言ったらシャレにならないことが帰ってきた。

 

「え...マジでやめて...」

 

「切実だな」

 

「仲が悪いんですか?」

 

 俺があまりにも嫌がったためか、ちーちゃんは不思議そうに聞いた。

 

「いや逆だ。ひなたは俗にいうブラコンに値する。なんでこうなったんだろうな...」

 

「運転中なんだからこっち見ないで前見てよ」

 

「それにしてもひなとに彼女ができたなんて聞いたら千景ちゃん殺されるんじゃないか?」

 

「え...」

 

 ちーちゃんはわかりやすく青ざめていた。

 

「冗談って言いたいけどワンチャンやりかねん」

 

「え、俺冗談で言ってたんだけど...ひなたに言っとくか」

 

「...」

 

「おっと運転中につつこうとするな?」

 

 

 

 

「あらまぁ...なんでそんなすぐに変な空気になるのかしら?」

 

 お母さんは俺とお父さんが若干にらみ合ってるのを見てそんなことを言ってきた。

 

「そんなことよりひなと君のお母さん...」

 

 ジト目になっていたお母さんは目を戻しちーちゃんの背丈に合うように腰を下ろした。

 

「普通にお母さんでもいいわよ」

 

「えっと...」

 

「ふふ...冗談よ。慣れてきたらでいいわ。それで何かしら?」

 

 お母さんはちーちゃんがあたふたするのを見て笑ったようだ。

 

「えっと...今までありがとうございました...!またいつか会いに来ます...!」

 

「うん!そうしてちょうだい。この子偶にポンコツになるし、千景ちゃんにとってちょっと厄介になりそうな子もいると思うし、私もいつでも味方になれるわけでもないけど...とりあえず頑張れという応援の言葉だけは送っておくわ。この子のことたのんだわ」

 

「はい...」

 

「別れの言葉はなしか?」

 

「そのネタには乗らないわよ...」

 

 お母さんは再びジト目になった。

 

「釣れない奴め...まぁそれより荷物が積み終わったからさっそく出発するとしよう」

 

 お父さんは車に乗りエンジンをかけ始めた。

 

「あ、ちょっと待って!」

 

 俺は車に荷物を詰め込んでからお母さんの方に駆け寄った。

 

「お母さん!いつか...もしもお母さんがこの村の連中が嫌になったら車の免許を取るから家に戻って来てね!」

 

 本来は自分だけできて自分のことだけをするつもりだったのである。それなのに俺の面倒やさらにちーちゃんの面倒まで見てくれたのだ。そんなお母さんに何か恩返しをしたいと思ったが故の一言であった。

 

「ええ...わかったわ。ひなとは優しいわね...」

 

 お母さんは俺の頭をわしゃわしゃとした。

 

「じゃ、行ってくるね。またね」

 

 俺はそう言って今度は後部座席に乗り込んだ。

 

「たまには戻って来いよ...ひなたが会いたがっていた」

 

 お父さんは車の窓を開け出発する前の挨拶をした。

 

「あら?あなたは会いたくないの?」

 

 お母さんはからかうような顔をした。

 

「...」

 

 お父さんは無言で窓を閉めようとした。

 

「あちょっと!」

 

 お母さんが少し怒ったようにいい窓閉め行動をキャンセルさせた。

 

「最後に言うことがあるわ」

 

 お父さんは黙って聞くようだった。

 

「フルスピードで走るのが俺の人生だった、だからお前と俺は兄弟だった、お前も同じだったから。全く...これ車同士の時にやるものだと思うのだけれど。乗った私も私ね...私たちの子供泣かせたら許さないわよ?言いたいことは済んだわ。私が駄々をこねる前にさっさと行きなさい」

 

「ああ...」

 

 そうして車は香川に進み始めた。




いやながいわ!誰が九話まで行くと思うねん!というか九話分けてたら十話まで生きそうだったな⁉
ハイというわけで長い長いリメイクは終わりました。予定だとこの次の話は今まで読んできた物を凝縮してきたやつなんで二話ほどスキップしていただけると幸いです...
小説、ハーメルン初心者だった自分が書いた文章なのこれ?というあまりのも読みづらいものです。ぶっちゃけ黒歴史です。だって内容がないもん。まぁもし模様輩がいるのであれば成長してんだなーって思ってくださると幸いです。というかこれ自己満で新規が来るわけないんだよなー


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プロローグ

はいぷろろーぐです。早速設定無視と語彙力ナッシングのタグが仕事してますね...
ま、とりあえず暇つぶしにでもなれば幸いです
戦闘描写がまだないので仮面ライダーでないよ。tsもないよ。
ついでに主人公以外薄いしよくわかんねーよ(あとがきで捕捉するかもね)
お気に入り登録ありがとうございます!
少し設定変えました
まさかこんな早く登録してくれる人がいるとは


俺は平凡な人間である。家から近い小中高に通い平凡な日常を送ってきた。クラブ、部活動に入ったが才能がなくいつもそのクラブ、部活では

下のほうの実力であったつまり何をやっても凡人で終わるのだ。まぁそんな日常を繰り返してきた。だが日常が終わるのはあっけない。

俺は目の前でトラック(トラクターでは断じてない)にひかれそうになっていた妹をかばい死んだ。飛び出した瞬間あ、これ死んだと思った。

あとはご想像通り、トマトケチャップになっただけだ。薄れゆく意識の中で、あんまり関わってこなかった妹に最後関われてよかったな...とか、

来世は女に生まれてーとか思うのであった…

あれ死んだはずなのに意識があるぞ?とか思って目を覚ましたら病室だった。あ、死んだと思ってたら生きてたパターンかと思って周りを見てみたら周りの大人が気づいたらしく

こっちに近寄ってきた本人確認でもされるかと思ったら子供をあやすようなしぐさをしてきた。...こんな感じの展開ラノベで見たことあるぞ?って思った。でもそのラノベとは違うことがあった最初から5歳児ぐらいだったのだ。そう思った瞬間いろいろな出来事が脳内に入ってきた。

死んだ直後に神が出てきてチートたくさん寄越すから結城友奈は勇者であるの世界に行けと言われたこと。どっかの魔法少女のように交通事故で自分だけ生き残ったこと。そして親戚だった上里家に拾われたこと。

そして今西暦2009年ということ。これが本当にゆゆゆの世界ならあと6年もすれば化け物が来るらしい。やべぇ(語彙力崩壊)

来るって分かっていても対策のしようがないんだよなぁ...

ということでわが姉上里ひなたとその幼馴染乃木若葉と日常を過ごしながら来るべき時を待とうと思った。鍛錬?チートである程度の武術とか身体能力はついてるんですよまじでやることねぇ。

だがそんな日常にも変化が起きた。西暦2012年、母親が転勤で、高知の小さな村に行くことになったのだ。そこで俺はピンと来たね、郡千景いるんじゃね?と、一応俺はゆゆゆ世界に来たことで目標を決めている。それは四国の勇者を死なせないことだここで沖縄とか長野とか北海道に生まれてたらそこも救っていたが、そこを助けに行って四国の勇者が死んだら目も当てられないので流れに任せることにした。救難信号とか受信したら助けるつもりではある。ってゆうことで千景を親と村から引き離すために親についていくことにした。その際説得するするの大変だった。姉がものすごい勢いで反対してきたのだ。おいおいお前さんには若葉がいるじゃろ...って思った。

とりあえずお母さん独りぼっちかわいそうだからついていく!って言ったら母親が泣いて抱きしめてきた。俺困惑してたぜ!父親は姉に弟離れをさせてみたかったのか許可がもらえた。姉には毎日連絡すると言ったらしぶしぶ引き下がってくれた。よかった。このままついてくなんて言われたら若葉が京都(主人公(筆者)の勘違い。実際は島根)から四国に帰れなくなるとこだった。

突然だが転生してよかったと思った。顔面偏差値があがったからだ。これでいじめから助けたとしてもあまりにも不細工だったら引かれると思うし、まじで上がってよかった。

さて、転校初日のことを話そうではないか、空(上)から女の子が降ってきた!この時俺は思ったね「郡千景いるやん!」って。突然のことだったので小さな声で

 

あ...え、えっと...大丈夫ですか?

 

としか聞くことができなかった。

まぁ向こうは返事をしなかったが。とりあえず俺がクッションになったらしく無傷だったので良かった。そんな感じで転校は終わった。とりあえず千景を落としたやつ顔も見てないし声も聴いていないけど覚えておけよと思いながら俺は下校した。

二日目今度は焼却炉で千景の服が燃やされそうになっていたので燃やそうとしていたやつとかその周りにいたやつを殴っておいた。途中で強そうなやつらが出てきたが持ち前のチート(身体能力強化と戦闘のセンス)で、ボコしといた。いじめっ子殴るの楽しー。教師が来る予感がしたので焼却炉近くでぼーっと興味のなさそうに終始見ていた少女に服を着させ無理やり手を引っ張り逃げることにした。逃げてる途中で離してやほっといてなんて言葉が聞こえたが無視して家に連れ込んだ。

...そこまではよかったのだが話すことがねぇ。そんな感じのことを思ってたら向こうが話しかけてきた。曰くなぜ助けたの?らしい

その質問に対し俺は

 

「あんた郡千景さんですよね?親のせいでいじめられてる。おれは別にその人が悪いことしてるわけではないのに被害を受けてんのが気に入らないだけです」

 

なんか語彙力ないなと思いながら自分の思っていたことを告げた。一応先輩なので敬語を使った。とりあえず僕はあなたの味方です。ってことが伝わればいいやって思った。

ちなみに彼女は俺が名前を知っていたことに何の疑問も抱かなかった。村のやつが話したとでも思たのだろう。

なんか空気が重くなったのでゲームやらねっていってみたら食いついた。ゲーム下手なのでお手柔らかにって言ったのにボコされた。でも彼女が楽しそうにしていたので良かった。

そうしてしばらく彼女とゲームをした。当然楽しい時間は終わる。帰る時間になったとき彼女は悲しい顔をしていたのでいつでもきていいよと言ったらうれしそうに微笑んだ。その時俺はきれいだなって思った。一人でいたところをいじめっ子に襲われたらまずいので送ってくことにした無理やり連れてきたときより雰囲気が良かったので良かった。

無事送り返した後にいじめっ子に襲われた返り討ちにしたのは別の話...

それから毎日彼女は家に来るようになった。そして俺はゲームでぼこぼこにされた。ある程度一緒にいたら敬語を外して名前で呼んでと言ってきた。一応年上を名前で呼ぶのは

抵抗があったためちーちゃんと呼ぶことにした。それから結構なことが起きた。いじめっ子が襲ってきたのを返り討ちにしたりおれはちーちゃんの親がいかにくそかを証明する材料を集めていた。ちーちゃんを上里の養子にしてちーちゃんの村帰還イベントをスキップするためだ。まぁ結構ネタは集まったちーちゃんが熱出したときの対応とかその他諸々。

あとはちーちゃんに(お前も)上里に来(なら)ないか?と聞くだけだ。

たぶん俺はちーちゃんのことが好きならしい。最初は俺の目標のために助けていたが今となってはちーちゃんのために何もかもをやっていた。母親も仕事で忙しく、

あまり話せていなく人肌恋しかったんだと思う。そんな中ちーちゃんと一緒にいたらなんか好きになった。ま、かわいいし。これで養子になるの断られたら怖いなっていう感情があるせいでなかなか踏み出せないそんな中。時代は2015年7月30日になった。歴史の改変はなく予定通り地震は起きた。俺はちーちゃんとともに神社に避難した。

このままではイベントをスキップできなくなってしまう。そう思った俺は冷静にかつ心臓をバクバク鳴らしながら隣にいる少女に告げた。上里の人間にならないか?と

その少女は驚いた顔をして

 

「ぷ、プロポーズか何かかしら?」

 

と聞いてきた。俺は顔を少し赤くし、そんな感じと言って顔を縦に振ったら、少女、ちーちゃんは顔を少し赤くしてうれしそうにうなずいた。むっちゃうれしかった。ガッツポーズをしようとした瞬間大きな地震がきて神社が派手な音を出しながら崩れた。そしてちーちゃんはその崩れた神社に引き寄せられるように近づいた。そしてその瓦礫の山から刃物のようなものを手に取った。俺はその瞬間先ほどまでにあった幸福感的なものは感じておらず、日常が壊れていくんだなと思った。そして俺らはそのあと香川に召集された。その時俺は親を説得しちーちゃんを上里家の養子に入れることに成功したのであった。




なんかすげーわかりずらそー(想像力で何とかしてくれ)
一応学生なので投稿は不定期です(見る人いるんかな)
意見あるなら感想にドぞ(なるべく前向きの意見で頼むでなければ泣く())
質問も答えられる範囲なら答えます。(見方とか回答の仕方とかわからんけど)
補足
殴ったことに関して教師になんか言われたの?
言われたし親に伝わったけど普段おとなしくしたおかげでなんかあったんだなと思って親はなんも言わなかった。教師の説教は聞くふりだけはしといた。


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プロローグ2

プロローグ2デス
それぞれの視点のプロローグです。
まだ戦闘系のタグは仕事しませんそれ目当ての方はも少し待ってくれると助かります。
いつも通り設定無視 語彙力ナッシングが仕事してます。
お気に入り登録ありがとうございます。
感想もありがとうございます。
皆様の暇つぶしになれば幸いです。


視点ひなた

私には弟がいる。それも同い年の。ここまで聞くと双子か何かかな?って思うだろうが実際には違う。弟...ひなとは血のつながっていない姉弟だ。

ひなととの出会いは5歳ぐらいの時だったろうか?お父さんがおとなしめの男の子を連れて

「ひなた、弟ができたぞ」

と言ってきたのが初対面だったと思う。

ちょうど弟が欲しかったのでうれしかったし、可愛がろうと思った。

 

ひなとと過ごして三年ぐらいの月日が過ぎた。ひなとはとても静かだと思った。ただ比較的、精神年齢が幼いらしい。よく、おねーちゃんと言って近づいてくる。

かわいい

そしてたまに私より精神年齢が高くなったように何もかもを見透かしたような眼になるのだ。そこのギャップがわが弟ながらかっこいいなとも思う。とりあえず私の親友であり幼馴染の子...乃木若葉に似ているのだ。身の回りのことが雑だったりたまに天然になったり。そういう事があるので若葉ちゃんと同じように見守ろうと思った。

...それなのにひなとはお母さんが高知に転勤するときに

「一緒に行きたい」

といったのだ。私は焦った。このままではひなとを見守れなくなってしまう...かといって私もついていったら

若葉ちゃんを見守れなくなってしまう...ついでにお父さんの機嫌も悪くなってしまう。ということでひなとを引き留めようとした。そこに行くことのデメリットをありったけ出したのだが、すべて正論で返してきてもうネタがなくなったときにひなとが

「毎日連絡するから...ね?」

と言ってきたので引き下がることにした。行ったときの表情がかわいかったから引き下がった訳では断じてない。ひなとが転校して一年ぐらいたったときだろうかいつもの毎日連絡と時にひなとが

「姉ちゃん、俺好きな人ができた」

と言ってきたときは倒れそうになった。

私が計画していた【若葉ちゃんとひなとをくっつけさせ合法的に家族になり見守っていこう計画】にひびが入る音も聞こえた気がする。まぁそんな計画よりも大事なことはその女がひなとにふさわしいかどうかだ。そこから私はその女の情報をひなとから引き出すことに毎日通信を使った。わかったことはその女が自分にはあんまり関係ないことでいじめにあっているということ、両親がくそということ、その両親から解放するために上里家の養子に入れようしていること。その女...千景さんはいじめられたことで人を信用できなくなっているようだが、根はいい人っぽいしひなとを大事にしてくれそうだったのでひなとの手伝いをしようと思った。お父さんにひなとがやろうとしていることを説明したら

「その千景さんって人とひなとが直接自分から言ってきたらいいよ」

と言っていたので養子にするのは成功しそうだ。あとはひなとが行動を起こすだけなのだが、ひなとは

なかなか行動を起こせないらしい。肝心な時に動けない子だなと思った。そして私が修学旅行に行っているときに絶望が降ってくるのであった...

____________________________________________________________________________________________________

視点千景

始まりは私が階段から落とされたとこだった。その落下地点に彼はいた。彼にぶつかる瞬間に、

「空から女の子が」

という言葉が聞こえたが気のせいだろう。

ぶつかって状況確認が済んだであろう彼がなんか言ってきた気がするが声が小さかったためか何にも聞こえなかった。そもそも私に話しかけてくる人間なんていないだろうと思っていた。

突き飛ばされた次の日は服を燃やされそうになった。

あー今日は体育着で帰るかな...

と思っていた時に急に私も服を持っていた人が吹き飛ばされたのだった。正直もうあきらめていて何も感じていなかったからなんも見ていなかった。ただなんか周りが騒がしくなったな程度である気づいた時には自分の服が手元にあり逃げていくいじめっ子の姿が見えていた。

状況を確認するのに時間がかかっていた私は気づいたら手を引っ張られていた。手を引っ張られながら嗚呼最後に裏切られるタイプのいじめかと思った。正直それが一番心に来るのでネタが尽きるまで拒否反応を示した。彼はまるで聞こえていないかのように無視を続けた。そして目的地に着いたのかとを引っ張る力が弱くなった。少し周りを見たらまぁまぁ大きめの家があった。そして彼は私の手を引っ張り家に入った。もう訳が分かんなくなってきたので流れに任せることにした。これ以上傷ついても感じないし。

部屋に招かれたのだが彼は何にもしてこなかった。話しかけもしなかったので話題ないんだなって思った。かという私も話す話題はないんだけど...そう思っていると

一つ気になったことができたので聞いてみた。

「なんで私なんかを助けたの?」

「あんた郡千景さんですよね?親のせいでいじめられてる。おれは別にその人が悪いことしてるわけではないのに被害を受けてんのが気に入らないだけです。」

...少しわかりにくかったが、とりあえず敬うんだか敬わないんだかはっきりしてほしい。まぁいじめではなくこの人は善意があって助けたんだなって思った。

ちょっとの間があり彼は

「ゲームをしない?」

って聞いてきた。ゲームは好きだったのでやることにした。ゲームをやる際、彼が

「ゲーム下手なのでお手柔らかに」

と言ってきたが聞こえないふりをした。なんも聞かされてなく家に連れてこられたんだから紺ぐらいは許されるでしょ?

それからしばらく彼とゲームをした。結論彼はゲームが下手だった。少し物足りなかったけど、久しぶりに人とゲームができた楽しかった。楽しい時間を過ごしてしまうとこれから来る学校がさらにいやになってしまう。

帰らねばいけない時間になったとき彼は

「送ってくよと言ってきた」

ということで一緒に帰ることになった。帰っている途中にこの時間が永遠に続けばいいのにって思ってたら

「いつでもきていいよ」

って彼は言ってくれた。うれしかった。それと彼は

「可能な限り守ってあげる」

とも言ってくれた。

「けがをしてしまうからいいって言ったら」

「大丈夫僕最強だから」

って言ってきたなんかどうでもよくなってきたので流れに任せることにした。そしてそのまま流れに任してたらいつの間にか家についていた。家についてから思ったあ、彼の名前聞くの忘れたと。

 

それからいろいろなことがあった。まずいざというときのために携帯電話の番号を教えてもらったこと。名前を教えてもらったこと。いじめっ子たちが毎日のように来るが全部彼...ひなと君が撃退してくれたこと。ひなと君が『ちーちゃん』と私のことを呼んでくるようになったこと。風邪をひいたときにあの人に代わって看病してくれたこと。

そして毎日彼の家に行ってゲームをしたことだ。私に勝つために練習したのだろうか?少しうまくなっていた。...才能なしが凡人になった程度だが。

そんな感じの日常を過ごしていた時だった

いつも通りにひなと君とかえっている途中だった大きめの地震が起きたのだ。ひなと君が

「ここから家だと少し遠いからこのまま帰るよりから避難しよう」

と言ってきた。とりあえず近くに神社があったので流れでそこに避難した。神社についてしばらくたった時に彼が

「郡家...というかお父さんを捨ててうち...上里家に来ないか?」

と聞いてきた。突然のことだったので頭がパニックって

「ぷ、プロポーズか何かかしら?」

と聞いてしまったいつもであればそっちのほうが守りやすいからとかそういうかんじの理由が思いつくはずだった。何を思ったのか彼はその質問に対し首を縦に振ってこたえた。

さらにびっくりした。彼のことはいつも守ってくれて唯一私という人間を愛してくれる人だと思っている。なので答えはもう決まっていた。うれしかったんだと思う。

あの人を説得する方法とか、ひなと君の親御さんのこととか考えていなかった。私は

「喜んで」

と言ってプロポーズを受け入れたのであった。

まぁさすがにないと思うけど裏切らないよね?ひなと君?

そんなことを思ってたらバックグラウンドにあった神社が今来た大きな地震で崩れた。私は彼がプロポーズしてきたことがどうでもよくなるくらい意識がその崩れた神社の瓦礫のある一転に向いていた気づけばそこまで歩いていてその瓦礫をどけていたしばらくどけていたら刃物的なものが出てきた。私はそれを持っていなければならない感覚に襲われた。

 

そのあといろいろなことが起きた。なんでも勇者適正というものがひなと君と私にあるらしく香川に連れてこられたその際ひなと君が親御さん今ではお義父さんかな?に私のことを話したらしい。私の元親のところに行き金を積んだら簡単に私を受け渡した。こんな親から解放されてとてもうれしかった。

ただ今まで通りの日常を過ごせなくなってしまうのを感じた...

____________________________________________________________________________________________________

視点母親&父親

その子は引き取り先がいなかった。誰も引き取ろうとしなかったのだ。その子の家は親戚から嫌われていたからだ。

私たちはそこまで嫌っていなかったしひなたも弟を欲しがっていたので引き取ることにした。私たちはその子をもとから家族であったかのように接し続けた。

その子の名前はひなとといううちの娘と一文字差だが偶然である。

一つ誤算だったのがひなとが予想以上にひなとにぞっこんであったということだ。仲がいいということにして流れに任すことにした。

そんな中母親が転勤しなければならなくなった。それにひなとはついていくといった。その際にひなとは

「お母さん独りぼっちかわいそうだからついていく!」

といった。うれしかったが裏があるなと思った。ひなとは少し天然が入っててアホっぽいけど、目の奥は常に物事を冷静に見ているというのが両親の共通のひなとに対する印象だ。

そんな感じで思っていたからか邪魔してはいけないと思って、行くことに許可を出したのだ。ひなたに弟離れをさせてみたかったっていうのもある。

母親は自分の息子が人を殴ったと聞いたとき理由もなしに殴るはずがないと思ったので息子に聞くより自分で情報を集めようと思った。そしていじめから人を守ったということが分かったため、ノータッチで行くことにした。そして時は過ぎひなとたちが香川に召集さえるころ、一人の女の子を養子に入れたいとひなとに言われた。ひなたから聞いていたのでスムーズに事は進んだ。その子の親に交渉に行く際その女の子は金を積めばイケル的なことを言ってたのでやってみたらほんとに行けたので怒鳴ってやろうと思ったがこれで向こうがやめと言ってきたらめんどいので何にも言わなかった。こんな感じで家族が増えた。ちなみにひなとの恋愛に関しては好きにしろって感じ。

____________________________________________________________________________________________________

視点神

言霊大神は悩んでいた異世界の神から助けてくれと救難信号を受信したからだ。とりあえず転生させる人物を探してみることにした。

千里眼を起動させると妹をかばって死にそうな少年を見つけた。

「もうめんどいのでこいつでいいや」

って思った。そこから一方的にチート渡して説明して転生させた。

だがこのままいくとチートがあってもチートを使うための武器がなかったため、神樹と一緒に武器を作った。そうして自分の仕事を終え、いつものようにアニメ鑑賞をするのであった。




ちなみに言霊大神は文芸、芸術、芸能といったコンテンツの表現に顕れる神の御稜威らしいです。
次回から本編は入れるかな?
恋愛とかわかんねぇ


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第1話 勇者集合

初めての難産(アニメ見てた)ってやつです。
時間がかかった代わりにいつもよりほんの少し長めです。
いつも通りです
最後に仮面ライダー要素のタグが仕事するかも?
お気に入り登録ありがとうございます!
みなさもの暇つぶしにでもなればうれしいです!



香川に帰ってきた時にまず初めに起きたことは姉に抱きしめられたことだった。

 

「ひなとっ!」

 

と言って3年ぶりぐらいにあった我が姉は俺に向けてダイビングしてきた。しっかり受け止めたあと

 

「ひなた、ただいま」

 

俺が言った瞬間俺を抱きしめる力が強くなった。

 

「んん〜?ひなた?お姉ちゃん呼びはどうなったんですか〜?私と離れてる間にもう私はお姉ちゃんでは無いと?どうなんですかひ〜な〜と〜?」

 

そう言ってひなたは抱きしめる力を強くしてきた。あっやばい、腕からなっちゃいけない音がした気がする。そして抱きしめる時間と比例するようにちーちゃんから殺気が出てる気がする。

 

「痛い!痛いよ!お姉ちゃん!一応同い年だしもう高学年だから名前呼びでいいかなって思っただけだから!ずっと永遠にお姉ちゃん呼びにするから!もう腕折れちゃうから!もう離してくれると嬉しいな!?」

 

と慌てて言うと満足したのかひなた、もといお姉ちゃんは、離してくれた。そばにいた若葉さんは苦笑いしながら

 

「えっと...まぁ久しぶり...あぁえっと...災難だったな?」

 

と言ってきたので

 

「久しぶりです若葉さん。ほんとですよ。腕が現在進行形で痺れてますよ...」

 

と返した。ちーちゃんがわけがわからないよ!って感じでこっちを見ていたので

 

「この黒髪が俺の姉のひなたで、その隣にいるのが姉の親友で俺の幼馴染みの乃木若葉」

 

って感じで適当に人物紹介しといた。

 

すると姉はちーちゃんに近づき、手を取りすっごいにっこりとした顔で

 

「今紹介してもらった通り私が、ひなとの 姉 のひなたです。よろしくお願いしますね? 千景さん?」

 

すごく凄みのある顔だった... うん...怖ぇ...そんなことを思ってたら、ちーちゃんが姉に自己紹介をしていた

 

「えっと私はひなと君とお付き合いさせていただている郡千景です...えっとよろしくお願いします...」

 

と震えた声で言っていた。そーいえば付き合ってたなって思ったゴタゴタがありすぎて頭から抜け落ちていた。それにしても今思い返してみたらよくわからん告白だったなって思った。そんなことを思っているうちに若葉がちーちゃんへの自己紹介を終わらせていた。内緒話でひなたのことを教えてるらしい...

 

「あいつブラコンなんだ気をつけろ」

 

的な会話だと思う。多分

とりあえず勇者たちが集まる教室に行くことにしたそこで顔合わせをするらしい。

とりあえず教室に来たが集合時間までまだあるし、ちーちゃんがゲームしてたので隣で見ることにした。そーしたら小柄の女子と少し大人しめな少女が話しかけてきた

 

「よォ。勇者だよな!私は土居珠子!タマっち先輩って呼んでくれていいぞ!よろしくな!」

 

「タマっち先輩...1人は同学年だし1人は私たちより年上だよ...タマっち先輩がすいません...私の名前は伊予島杏です。よろしくお願いします。

 

「あ、えっとー...俺の名前は上里ひなと...です...えっと...まぁよろしく。えっと...土居さんに、伊予島さん。」

 

「土居さんじゃなくて珠子って呼んでくれ!これから命を懸けて一緒に戦うんだから名前で呼んでくれ!」

 

「えっと...わかりました珠子さん」

 

「さん付けか〜。まぁいっか!よろしくひなと!」

 

久しぶりに初対面の人と話したので前世のスキルコミ障が発動してしまった...まぁどうせすぐ慣れてくだろ。そしてちーちゃんが何も言わなくて無言が続いたので俺は

 

「ほらちーちゃんも」

 

と言って催促した。そしたらちーちゃんは少しめんどそうな顔をしながら

 

「郡千景...よろしく...」

 

とだけ言ってゲームを続けた。これ以上話を続けられないと思ったのか珠子さんと伊予島さんは自分達に会釈をして自分の席に行って、2人で音楽を聴き始めた。そして俺はちーちゃんのゲームを見るのを再開した。

 

 

 

 

 

数日後...

 

突然ドアは開いた

 

「おはようございまーす!奈良県から来ました高嶋友奈14歳!よろしく勇者でーす!」

 

oh......なんというか元気だなと思った。みんないきなりすぎて固まってるし...そんなこと思ってたら赤毛の少女...高嶋さんは

 

「え、あれ?部屋間違っちゃったかな?」

 

と焦っていた。すると状況把握が済んだ珠子さんが

 

「おーあなたが高嶋さんだな!」

 

「はい」

 

「ゆうなっちだな~」

 

「はいゆうなっちで~す」

 

って感じの会話をしながら二人は手を振りあってると

 

「タマっち先輩 初対面の人をそんな風に呼ぶのよくないよ~」

 

と伊予島さんが言った。そーすると球子さんは

 

「これから命を懸ける秘密の最強チームを結成するのにそんなよそよそしいのじゃダメだろ~」

 

「うん私は何て呼ばれようと大丈夫だよ!」

 

「ほらな~よろしく頼むぞ友奈!」

 

「もう呼び捨て⁉」

 

「あはは よろしくね!」

 

「おう!」

 

「はい」

 

「友奈は奈良から来たのか~球と杏は愛媛!」

 

「あそこの二人はーえっと...」

 

「確か資料にはひなとさん達が高知からですね」

 

実際には香川なんだがまぁいいか

 

「そうなんだ~」

 

「あ、四国以外って初めてかな~」

 

って感じの会話をしてる途中でちーちゃんが

 

「少し騒がしいわね...」

 

と言っていたので

 

「そーだねぇ...まぁでも明るい女の子ってあんな感じでしょ。まだましな部類だと思うよ(前世の経験)」

 

と返しといたすると球子さんがこっちを向いて

 

「おーい千景たちも自己紹介しタマへ」

 

と言ってきたので自己紹介しようと思ってたら

 

「ふん」

 

と言ってちーちゃんが無視をしたため機会がなくなった。でもさすがはコミュ力お化け気にせず話しかけてきた

 

「私は「知ってる」」

 

「襲われた避難所でたくさんの人を救った…それを何度も...ニュースで有名の人よね?」

 

「えぇみんなから勇者って呼ばれてるんですよね」

 

「お~有名人~」

 

「えへへ」

 

「もう私たちよりもずっと戦うのが上手なんですよね~よろしくお願いしますね~」

 

「はは、いやぁスポーツ得意だったし~ほら、私元気有り余ってるから」

 

スポーツという言葉を聞いた瞬間ちーちゃんはゲームをやめて高嶋さんたちのほうを見た。せっかくいいとこだったのにぃ

 

「スポーツ?遊びじゃないんだけれど?責任の重さわかってない」

 

「友奈だってそんなこと思ってないって~千景は暗いなぁ。友奈気にするな千景はずっとあんなだ。多分ひなとが手を焼いてる」

 

「うんよろしくねえーっとーえーっと確かー...あ、グンちゃん!」

 

聞いた瞬間やっぱりかってかんじで噴出してしまった。ちーちゃんににらまれた。

 

「あ、あのねぇ私の苗字は...!」

 

言おうとした瞬間教室のドアが開いた。まぁ開けたのここにいない勇者と巫女だろうから俺は気にしてなかったけど。

 

「やっとみんな揃ったか...まぁとりあえず自己紹介をする前に現状どのくらいの身体能力があるのか大社が知りたいそうだというわけで武道場に行くぞ」

 

ところ変わって武道場…

展開は高嶋さんが投げ飛ばされるとこから始まる...

 

「っ」

 

「若葉のやつ豪快だなぁ」

 

「まだ大社の人来てないのに...慣らしにしては激しくない...?」

 

ちなみにみんな柔道服に着替えている。まぁそんなことはどーでもよく、二人は組合をしながら話していた。器用だねぇ

 

「高嶋友奈...天の逆手の力を宿したというお前の才能は聞いている...」

 

「えっとー、どうも!」

 

「期待に応えてくれることを願いたいが」

 

「うわ!」

 

若葉さんのよくわからん技が決まった。受け身とれないと柔道って痛いよねー。高嶋さんは当然のようにとれてたけど。

 

「もちろん頑張るよ!」

 

といって若葉さんに突っ込んでいったが

 

「うわ!」

 

また投げ飛ばされてしまった

 

「すごいよ若葉ちゃん一本も取れないや~」

 

「今お前は十回死んだ。あの化け物は手心なんて加えてくれないぞ。私たちの戦いは過酷の物になる。軽はずみの気持ちならすぐに出てってほしい」

 

とか言ってるがここで戦力落として何になるんです若葉さん...とか思ってると隣にいたちーちゃんが

 

「復讐...わかるけど」

 

と独り言をこぼした

 

「背負ってる...私だって...ここに来るまでにたくさんの人をね助けられなかった...神の力を拳に宿したとか言われてもね私は無力だ...たくさんの人に助けてもらって今ここにいるここに来た!」

 

そういうと高嶋さんは空手の組み手をする感じの構えをした

 

「こっちのほうが得意なんだ。全部背負う...ヒーローだから!」

 

「ヒーロー?」

 

「正義のヒーローはね、絶対くじけないしあきらめない、かっこいいんだよ!」

 

すると若葉さんも同じような構えをして

 

「かっこいい...それはテレビや漫画の話だ。」

 

「だろうね!」

 

とか言いながら高嶋さんが攻撃を始めた。連続でパンチやキックをした高嶋さんの攻撃を若葉さんが受け流しカウンターをしたことで高嶋さんがバックステップで距離を取った

 

「かっこいいにあこがれちゃ...そんな勇者がいいんだと思うんだけどダメ⁉」

 

といって高嶋さんは攻撃を続けた高嶋さんが距離を詰め、若葉さんが距離を話したところを高嶋さんが飛びながら距離を詰め回転蹴りをした。ガードを選択した若葉さんは少しよろめいた

そのすきを高嶋さんが見逃すはずもなく一気に距離を詰め若葉さんに渾身の正拳突きをお見舞いした、そうして互いが見つめ合って数秒した後どっちも地面に膝をついた。高嶋さんがかぶさって見えなかったがあの時に若葉さんもカウンターをしたらしい

 

「え...えぇ?」

 

球「どっちが勝ったんだ⁉」

 

「相打ち...」

 

痛みが和らいだのか両者は顔を上げ

 

「覚悟って痛いんだよ?」

 

と高嶋さんが痛みがすると子に手を当て言った。そうすると若葉さんも自分が殴られたと子に手を当て何か納得した様子で

 

「わかった...よろしく頼む友奈...」

 

とさわやかな笑顔で言った

 

「うぅ~やったー!!!」

 

と万歳しながら言った。そして立つと

 

「よぉ~し特訓だ!」

 

といった。そしたら若葉さんも笑いながら立った。お姉ちゃんは安心した顔で

 

「若葉ちゃん...」

 

とつぶやいた

 

「なんだか不思議な人ですね友奈さんって...」

 

「タマの目に狂いはなかったな!さっすがタマ...」

 

「若葉さんー、友奈さーん二人とも仲良くしてくださーい」

 

ていってたらこっちをにらんで

 

「何見てるんだそっちも組み手をするんだ」

 

と言ってきた

 

「若葉は手厳しいぜ」

 

「高嶋さん...」

 

とちーちゃんはキラキラした目で見ていた。あんま話していないはずでそこまで若葉さんに憎悪はないはずなんだけど...やっぱ性格的に無理なのかな?

 

「ほら次はひなとお前だ。お前がどんなに強いか見てやろう」

 

と言ってきた

 

「いいですけど何をやるんです?」

 

「今のを見てなかったのか?柔道だが?」

 

「お前...じゃねぇ...若葉さん俺を何だと思ってるんです?男ですよ?お と こ。異性を気にして試合になりませんよ...」

 

「むぅそうか...なら剣道でどうだ?」

 

「剣道なら大丈夫です」

 

「よし剣道するぞ。ついてこい」

 

と言って先に行ってしまった。みんなは放置してここで試合でもやってるのかなと思ったら見に来るらしい。

 

ところ変わって剣道場…

 

「そーいえばひなとって武道やってなかったよな?」

 

「嗚呼...そうですね」

 

といった瞬間ちーちゃんが

 

「え?」

 

って言っていたような気がするが気のせいだろう

 

「手加減してやろうか?」

 

と言ってきたので鼻で笑いながら

 

「冗談!ボコしてやりますよ!」

 

といった

 

「ほう...ひなとは私が居合をやっていたことを知っていたと思っていたのだが...」

 

「えぇよく知ってますよ?それを踏まえていっているのですがわかりません?」

 

ちょっと楽しくなってきたのであおってみた

 

「ひなた...お前の弟ボコしてもいいよな?」

 

「ほどほどにお願いします若葉ちゃん...」

 

お姉ちゃんがそういった瞬間木刀が飛んできたそれをキャッチすると

 

「実力があるからあおってんだよな?では寸止めぐらいできるよな?」

 

と言ってきた。なるほ防具を付けずにやるらしい。そしてあわよくば俺を殴ろうとしているらしい...なので俺は

 

「えぇ俺はできますけど若葉さんはできるんですかぁ~?す ん ど め?」

 

さらにあおっといた。あおった瞬間若葉さんが突撃してきた。俺は冷静に受け止めると若葉さんは連続で打ってきたのですべてを防御する。そしたら若葉さんが

 

「どうした攻めないのか?あおっといて攻めに転じる余裕がないのか?」

 

と言ってきたが無視した。俺は今武器を落とさせることに集中しているのだ。何回か防御を繰り返してるうちに自分が優位に立ててると思って慢心したのかチャンスが生まれた。俺はチャンスを見逃さず思いっきり若葉さんの木刀をたたき吹き飛ばして若葉さんに木刀を突き立て

 

「おれの...勝ちですね」

 

といった。若葉さんは悔しそうな顔をして

 

「あぁ、そうだな。まいった」

 

と言った

 

「ひなと君すごい強いんだね」

 

と言ってきたのでまぁいろいろあってねと答えておいた。お姉ちゃんがあれ?こんなに私の弟って強かったっけ?って感じの顔をしていたがスルーしておこう

 

とりあえずつかれた。

 

あとはみんなが戦っただけなのでカットする。

 

時刻は変わり実力検査終了後...

 

「四国のソウルフードってうどんだよね?私食べてみたいなー」

 

といったのが始まりだった。若葉は嬉しそうに

 

「そうか!ならおすすめの店がある。親睦を深める意味もかねてみんなで行こう」

 

といった。正直俺は微妙な気分だった。だって俺そこまでうどん好きじゃないもん...ただ、お姉ちゃんが行くよね?って目で見てくるし俺が行かないとちーちゃんもいかなそうだったので行くことにした。

 

「ここだ。今や香川でも少なくなってきた、本物の純手打ち店だぞ。」

 

店内に入って注文を決めるとき

 

「香川のうどんを食べたことのないやつの注文は私のおすすめを頼むが...ひなたにひなとは何がいい?」

 

「私はとろろうどんを」

 

「俺はそばで」

 

そういった瞬間、場の空気が凍った

 

「なんか今幻聴が聞こえた気がしたんだが...そばだと...?ひなと...それでもお前は香川人か⁉ひなた!どうなっている⁉弟の教育が成ってないぞ!」

 

と切れ気味に言ってきた。そもそも俺前世埼玉人なんよ。うどんの生産量2位、そばの生産量2位の長野と香川に喧嘩売っている県なんだよ。そして俺はそばのほうが好きなんだよ。どちらかというとね?

 

「若葉ちゃん...さすがに趣味を押し付けるのはどうかと...」

 

「ひなた...今日ひなとがうどんを食わなかったら今後敵とみなす...考えて発言しろ」

 

といったするとお姉ちゃんは涙目になりながらこっちを向き

 

「お願いしますひなと。お姉ちゃんのために今日はうどんを食べてくれませんか?」

 

と言ってきたのでしょうがないなと思い今日はうどんを食べることにした。

 

うどんを待ってる間に高嶋さんが

 

「そーいえばひなちゃんとひなと君って姉弟なんだね」

 

と言ってきたするとひなたが

 

「そうです!私のかわいい、そして自慢の弟です!」

 

と言って抱き着いてきたので

 

「苦しい、お姉ちゃん...やめて」

 

といっといた。やめてくれなかったけど。

 

「えぇ!見ての通り仲良しです!最近は私ではない方と仲良しのようですが...」

 

そういってひなたはちーちゃんのほうを見た。すると伊予島さんが食いつき

 

「そーいえば二人は姉弟でもないのに最初から仲良しですね?」

 

と言ってきたのでちーちゃんに話してもいいか?って感じの視線を送ったら

 

「もう終わったことだからいい」

 

と言ってきた。意外だったてっきり伏せるならいいよと言ってくるのかと思ったからだ

 

「実はかくかくしかじかで」

 

と上里家秘伝の技を使って説明した。少し空気が重くなったがみんなは

 

「大変でしたね」とか

 

「タマたちはそんなことしないからな?というかほんとに小学生か?そいつら」とか

 

「そんな人たちもいるんだね...ひどい...」とか

 

「改めてこれからよろしく」

 

という感じの会話をしたのだったちーちゃんの表情が少し明るくなった気がする。

 

「で、二人はお付き合いしてるんですよね⁉」

 

と、めんどくさいことを興奮して言ってきた。

 

「ええそうよ」

 

とちーちゃん

 

「あとでお話聞かせてください」と言ってきたのは語るまでもない。

 

そうしてるうちにうどんが来た

みんながうどんを食べた瞬間県外組が時間が止まったように硬直してそのあとすぐに感想を言い始めるのであった。俺はあぁ香川のうどんだなーとか思いながらなんも言わずにうどんを食べるのであった。

 

そこからずいぶん千景はみんなに心を開くようになった。原作に比べて随分早かったが俺が助けていじめの被害を最小限に抑えたことで、人を信じる抵抗が原作より薄くなったらしい。まぁ幸せそうで何よりだ。

 

時はクリスマス

みんなでクリスマス会を開くことになった。原作とは違いちーちゃんはクリスマスパーティの知識を持っていたのでちーちゃんが誤解せずに済んだ。

クリスマスパーティーで高嶋さんはずっとちーちゃんのそばにいて話していた

 

「ぐんちゃんってゲーム好きなの?」

 

「うん...これだけが、私の特技...」

 

「そっか。じゃあ、ぐんちゃんがやってるゲーム、私も買おうっと。一緒に遊んだりできるのかな?」

 

「それなら...おすすめのゲーム...協力プレーもできるいつもひなと君とやってるやつ、あげるわ。それで一緒に遊べるから...」

 

「え、もらっちゃうのは悪いよ!」

 

「いいの...今日はクリスマスでしょう...?クリスマスは、プレゼントをあげるものだってひなと君に聞いたことあるから」

 

「じゃあ私も、何かぐんちゃんにプレゼントあげるね!」

 

ちーちゃんは照れたように微笑んで

 

「うん...ありがとう。あと私の名前ぐんじゃなくて、郡...」

 

「あれ、そうだったの⁉」

 

「でもそう呼んでいいよ」

 

「わかった!ありがとう!ぐんちゃん!」

 

そんな感じでクリスマスパーティーを満喫した

 

7・30から2年たった2年も過ごしていたら呼び方も変わってくる。

伊予島さん→杏

球子さん→球子

若葉さん→若葉

高嶋さん→友奈

って感じだ。

そして今日は大社から招集があった。なんでも俺たちの勇者システムが完成したらしい。

 

「これが皆様の勇者システムです。大体皆様一緒ですが上里様だけ違いますね。ほかの皆様は武器から力を引き出しているのですが、上里様には武器がございません。そこで神樹様が武器を作ってくださいました。それをわたくし共が科学の力で改良した所存でございます。ということでここで変身してもらいてすとをしてもらいたいのです。あ、不具合が起きたとき一番対処しにくいのが上里様ですので、上里様は最後でお願いします」

 

「わかりましたでは私から」

 

と言って若葉は勇者システムを起動した。強い光を発したあと目に見えたのは桔梗をイメージとした青い勇者服を身にまとった若葉だった。

 

「おー成功ですね。ではほかの皆様もどうぞ」

 

という感じで次々にみんなが変身していった

 

「さて最後ですね...それでは上里様どうぞ」

 

俺は勇者システムを起動したのだが

 

「あれ何にも変わっていじゃん」

 

「いや何か手に持ってるぞ」

 

「神樹様曰くそれの使い方は上里様なら理解ができるとおしゃっていました。」

 

確かに球子の言う通り俺は何にも変わっていなかった。ある一部分を除いて...そう...ディケイドライバーを持っていたのだ。ノリで腰につけで見たら勝手にベルトが出てきた。すげぇ。カードが入っている奴から一枚目を取り出してみたらサザンカの花が印刷されたカードが出てきたので自然に手が動いて左右にある取っ手を左右にひきカードを入れた

 

『BRAVERIDE』

 

カードを入れた瞬間そんな音がベルトから聞こえてきた。そして取っ手をもとに戻した

 

『サザンカ!』

 

そうやって俺は変身した。変身した瞬間さっきまで目の前にいた大社の職員がおっきくなった気がする。ついでに髪も伸びた気がする。というか嫌な予感がする。

 

「えっとひなと?」

 

どこか遠慮がちな声のお姉ちゃんが話しかけてきた

 

「どうしたの?お姉ちゃ...なんか声変わってね?」

 

それを言ってから自分の体の変化に真摯に向き合ってみる

なんか下のほうのさほど大きくならないものが消えた気がする

なんか男では出ないものが出てる気がする

なんか髪長くなってね?

というかなぜかスカートはいてんだけどまぁスパッツっぽいものはいてるからミニスカでも気にしないけど

視線低くなってね?球子とおんなじぐらいなんだけど...

...そーゆーことですねわかりたくありません

確かに女になりたいと死ぬ瞬間に言ったよ...でもそれは記憶とか諸々消して女になりたいって意味だよ!男の心のまま女になっても違和感感じまくりなんだよ!

まぁいい...よくないけど...とりあえず現実と向かい合おう

 

「だれか鏡持ってる奴いない?」

 

「あ、私持ってます」

 

と言ってお姉ちゃんが鏡を貸してくれた

 

「ありがとう」

 

そういった後鏡を見てみたらそこに写ってたのは見知らぬ美少女だった...

 




ディケイドの変身の仕方を文にするのムズイ
ブレイブライドォとかダサいと思った?なんか違うなとか思った?俺もだ!でも仮面ライドォだともっと違うんよ...
いつもよりぐんちゃんの心を許すタイミングがずっと早いです。村の描写書きたくないんでね!
戦闘描写もむずい
これバーテックスと戦うときしっかり書けるかなぁ
明日も投稿できるといいなぁ...


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第2話 勇者通信

はいいつも通りです。
お気に入り登録ありがとうございます!
今回も皆様の暇つぶしになれば幸いです。
あ、今回からR15になります。なってるはずです。


前回のあらすじ...

俺は、勇者上里ひなと。仲間の勇者とともに勇者システムの試験をしに行ったとき胡散臭い男から勇者システムを受け取り起動したら

体が女になり、身長が縮んでいた

あらすじ終わり!

 

「どういうことですか!」

 

気づけば大社の職員につかみかかつていた。まぁ身長が縮んでいたため胸ぐらは掴めず第3ボタンぐらいを掴んだんだが...

 

「神樹様の力を上手く引き出すのは男の体では少し難しく女にする必要があると神託で下ったそうです」

 

「これ戻れるんですよね?」

 

「変身を解除したら戻るのではないでしょうか?」

 

解除と言っても返信した時にベルト消えたんだけど...

 

「ん?」

 

解除しようと思ったら急にベルトがでてきた左右についてる取っ手を引っ張って返信を解除した。俺は学ラン来て変身したのだが、返信を解除したらブレザーを着ていた。

ご丁寧に制服を変えてきたらしい

 

「戻らないじゃないですか!」

 

再び掴みかかった

 

「恐らく神樹様の力を受けすぎたようですね」

 

と冷静に言ってきた。何すました顔してんねん...

 

「もう一つ電王ベルトなるものがあるようですが、危険ですのでよほどのことがない限り使わないでください」

 

電王ベルトあるのか...ワクワクしてきた。だが性転換するのには納得していないがなぁ!

 

友奈「ねぇひなと君があんなに取り乱してるの珍しくない?」

 

「そうですね...今はひなと君ではなくひなとちゃんですけど...突然ですけどロリってよくありません?」

 

「失せなさい。ロリコン。ひなとちゃんに何かしたら許さないわよ」

 

みんなこそこそ話している。聞こえてるんだが?

 

「あのちーちゃん...守るのか、煽るのかどっちかにしてくれません?」

 

「なーひなと!タマの横に来てくれ!早く!」

 

「いやだよ!絶対身長そっちより低いもん」

 

「とりあえず女になった以上服を買わなければなりません。そういうことを含めて身体測定をしましょう」

 

とりあえずお姉ちゃんが冷静でいてくれて助かった。まぁたくさんカメラで撮ってきてるがもう慣れた。

 

身体測定結果...球子より身長が低いことが分かった。

 

「タマのほうが身長が大きいのはうれしいのだが...これはなんだ!これは!」

 

と言い俺の胸を揉んできた...字面ひでぇな...

 

「ひっ!」

 

反射的に腹をけってしまった

 

「うごぉ」

 

むっちゃ苦しそうにうずくまっている。やっちまったぜ☆

 

「あ、すまん反射的に蹴ってしまった。大丈夫か?」

 

という問いに球子は答えず

 

「っく、タマとしたことが...登頂は失敗だ!」

 

と訳はわかるがわからん(日本語ってムズイ)ことを言っていた

 

「土居さん?何私の弟...もとい妹の胸揉んでるんですか?」

 

「お姉ちゃん...あってるのに訂正すな」

 

「そこに山があったからだ!くそぉタマよりちっこいくせして立派なものを持ちおって...くそぉ!」

 

「よくわかりませんが後でお仕置きですね☆」

 

と言ってお姉ちゃんはニコッと笑った。球子は震えていた。

 

「取り敢えずサイズもわかったことですし服を買いに行きましょうか」

 

「あ、待ってくれ、ひなた。ひなとが女になったことで身体能力にどのような影響が出たのか知りたいというわけでまず武道場に行って模擬戦をしたいのだがよいか?」

 

「えぇいいですよ。最悪本人の意思を無視して私好みの服を買ってくればいいので」

 

これを聞いた瞬間、秒で終わらそうと思った。

 

ところ変わって武道場…

俺は今若葉と打ち合いをしている身長が知事んだことにより上から打つのが難しくなりうまく力が入らない。向こうは上から打てるのでガードするのがしんどい。さすがにガードしてばっかだとそろそろ剣を落としそうと思い下がってよけた。すると若葉は薙ぎ払うように剣を振った。これはギリ避けれるな。いつもの感覚でやったのがまずかった。若葉の木刀が思いっきり俺のいつもより出っ張ってる胸に当たった。

 

「痛ッ!」

 

当たった瞬間痛みのあまりうずくまった。あぁ涙出そう。すると若葉が慌てた様子で近づき

 

「大丈夫か⁉すまんてっきり避けると思って寸止めを忘れていた」

 

「大...丈夫...だ」

 

何とか顔を上げて言った。

 

杏「これは身体能力的にはどうなんでしょうか?」

 

友奈「うーん...多分筋力とかはさほど変わっていないと思うけど...背が低くなったせいで上から押しつぶされるようになった感じ?あと表面積が大きくなったから、攻撃に当たりやすくなった感じ?でも身長が低くなったたんだから表面積は変わらないのかな?」

 

「まぁ、身体能力の確かめはこのぐらいにして、どうです?ひなと?痛みは引きました?」

 

「うん少しは収まった。」

 

「よかったです。では服を買いに行きましょうか」

 

俺疲れたんだが...あと部屋に言って泣きたいんだが?痛み?引いてないよ!くそいてぇ

 

「ちょっと部屋に行って休憩したいかなー」

 

「そうですか...では私の趣味を適当に買ってきますね。ミニスカとか、キャミソールとか」

 

「喜んでついていきます!お姉ちゃん!」

 

さすがにそれはやめてほしい

 

「ほかの皆さんは先に帰ってきていいですよ?多分結構長くなりますので」

 

その発言にみんなは

 

「水臭いですよひなたさん。もちろん私たちもついていきますよ」

 

って感じのセリフを言ってきた。この瞬間俺の着せ替え人形化が確定した瞬間だった。

 

着せ替え人形化が終わった後何とかしてして露出の少ない服を買ってもらえた。

 

ちなみに女体化が解けるまで変身しなかったら一か月したら解けた。解けた後みんなが残念そうな顔をしていた。解せぬ...

 

7・30から3年がたった。今は勇者通信するとこだ

 

『...諏訪より白鳥です。勇者通信を始めます』

 

「香川より乃木だ。よろしくお願いする。」

 

「白鳥さん、そちらの状況はどうだ?」

 

『芳しくはありませんね。もっとも、そんなことを言えば三年前のあの日から状況が芳しかったこと一度もありません』

 

「...違いない」

 

相変わらず重い話だなと思った。中学生がするような話じゃない

 

『今は現状維持ができるだけ...ザー...でしょう』

 

「すまない、通信にノイズが入ったようだ」

 

『ああ、現状維持ができるだけでも御の字だといったのです。通信のノイズ、最近多くなっていますね』

 

「そうだな...」

 

『この通信もいつまで続けられるか...』

 

「もう私たちには勇者システムがある...そっちの救助も行けると思うが」

 

『いえ…その間に四国に攻めてきたら目もくれませんし、私たちはここを離れたくないのでいいです。』

 

「そうですか...ところで白鳥さん。そろそろ決着をつけようじゃないか...」

 

『ええ、私もそう思っていたところです。今日こそは雌雄を決めましょう...』

 

『「うどんとそば、どちらが優れているか、を!」』

 

正直俺はこれに巻き込まれるために出席をさせられている...

 

「もちろん、うどんのほうが優れているに決まっている。比べるまでもない」

 

『ええ、比べるまでもなく、そばのほうが優れているのは明らかです』

 

「...何を愚かな。貴様は香川のうどんを食ったことがあるか?あの玄妙な歯ごたえ、輝かんばかりの純白さ、毎日三食食べても飽きない奥深い旨み...そばなど及びもつかん」

 

いや飽きるよ?毎日食わされてたせいで苦手になったんだからね?

 

『フフフ、あなたこそ長野のそばを食べたことがあるのですか乃木さん?気品あふれる香り、程よい細さとのど越しの良さ、麵とつゆの絶妙の交わり...うどんよりはるかな高みにあります』

 

うどんよりそばのほうが好きではあるがそこの領域に俺はいない。行きたくもない。推しの争いほどみじめなものはない。いろいろあってみんないいてやつだ。

 

『まぁ香川のうどんを食べておきながらそばが好きなひなとさんがいるのでそばのほうが優れてるのは明らかですけどね!』

 

「ぐぬぬ...今に見てろ...!必ずひなとをうどん好きにして見せる!」

 

そういった瞬間学校のチャイムが鳴った。ちなみに今は夏休みであるがチャイムは鳴る

 

「時間切れか。ひなと!うどんを食べに行くぞ!」

 

若葉よ...それをするたびにどんどん俺はうどんが嫌いになるぞ。

 

『ひなとさん。うどんに負けないでくださいね!』

 

「努力はする」

 

「しなくていい!そんな努力!」

 

『とりあえず明日から新学期が始まりますから、通信は放課後の時間にしといたほうがいいですね。』

 

「うむ、そうしよう。では、また明日も諏訪の無事と健闘を祈る」

 

『四国の無事と健闘を祈ります』

 

通信が終わった後俺はうどん屋に引きずられながら行った

 

翌日。

新学期が始まった。まぁみんな毎日登校してたから特に新学期だーとかいう感情は薄いと思うけど。

 

その新学期に俺は寝坊してしまった。いつもは寝坊したらひなたが起こしに来るのだが、今日は来なかった。急いで着替えこーゆー時用のサプリを食べ、走った。

 

どうやら急いだ甲斐があって間に合った。よかったーって思いながらドアを開けたら見えてきたのは友奈が足を上げているとこだった。彼女はスカートをはいてるため当然中の下着が見える。

俺は急いでドアを閉めたね。そうして反対側のドアから入って友奈のほうに行き、

 

「すいませんでしたー---!」

 

と謝った。すると友奈は顔を赤くし、

 

「不可抗力だから仕方ないよ~」

 

と言った。向こうが許していても隣にいる人は許していなくごみを見るような目でこっちを見ていた。不可抗力なのにそんな目で見ないでよちーちゃん...

 

午前に映像を見たがここではカットする

 

映像を見た後は戦闘訓練だ。お姉ちゃんがカメラを持ってきて

 

「若葉ちゃんを取っておいてくださいと」

 

と言ってきたが丁重にお断りしといた。

 

午前の授業が終わり昼休みになった

 

みんなで食堂に行った。

 

各自セルフサービス形式で食事をトレーに取っていくみんなうどんなのに俺はラーメンである。

みんなが

 

「うどん食え」

 

と言ってくるが無視する。若葉がすごい顔で見てくる。こわぁ...

 

「訓練の後のご飯はおいしい!」

 

友奈がそういってうどんをすする。

 

「こら、あんずっ。行儀が悪いぞ」

 

読書をしながら食べている杏から球子が本を取り上げた。よく本持ちながら飯食えるな…

 

「ああ!いま、いいところだったのに...」

 

杏が悲しげな声を上げる。

 

「ダメだ、食べ終わってからな」

 

「はーい...」

 

杏は諦めてうどんを食べ始める。

ここだけ見ると球子が姉で、杏が妹に見えるな...普段逆なのに

 

「...にしてもさー、毎日毎日訓練訓練って、なんでタマたちがこんなことをしないといけないんだろーな」

 

「バーテックスに対抗できるのは勇者だけですからね...」

 

「そりゃ分かってるよ、ひなた。でもさ、普通の女子中学生って言ってら、友達と遊びに行ったり、それこそ恋...とかしちゃったりさ。そういう生活をしてるもんじゃん」

 

「確かに。俺だって夏休みだったら、一日中だらだらしたかったなー」

 

「球子に、ひなと今は有事だ、自由が制限されるのは仕方ない」

 

「若葉、わかっているが飯の時ぐらい自由に愚痴らせてくれ」

 

「そうか...」

 

場が沈黙する

 

球子はわがままで不平を言ってるわけではなく不安なだけなので愚痴ではないんだが...そんなことは置いといて

 

時は放課後の放送室…

 

若葉と俺は放送室にいた。

 

全然通信がつながらなかったが、日が落ち、窓の外は暗くなってきた頃、やっと回線が繋がった。

 

『すいません...ザー...さん。少々こちら...ごたついておりまして』

 

通信にノイズが多い。回線が安定していないようだ。

 

「いや構わない。なにかあったのか?」

 

『本日午後、バーテックスとの交戦がありました』

 

「...被害は?」

 

『問題ありません...ザー...敵は撃退。人的被害は無しです』

 

「そうか...」

 

長野と白鳥さんが無事そうで若葉は安心している様子だ

 

『四国の状況はどうですか?』

 

「変わりない。こちらはバーテックスの侵攻もなく、訓練と学習の一日だった」

 

『そう...ザー...安心しました』

 

そしていつものように自分のふるさと自慢になったのでカットする

 

日々は変わりなく過ぎた。

 

諏訪とのノイズ交じりの通信も毎日行われた。

 

だが諏訪からの定期連絡は次第に時間が不安定になり、一日中つながらない日も増えてきた。繋がってもノイズが大きく、聞き取りずらい。

 

そして数週間が過ぎた頃、諏訪の異常は決定的になった。

 

『ごめんなさい、通信の...ザー...悪くて...ザー...』

 

今日は特に通信のノイズは激しい。そして白鳥さんの口調のはほんのわずかだが...疲労の色が見えた。

 

「どうした?何かあったのか」

 

『...いえちょっとしつこいバーテックスを退治してやっただけ...ザー...ックス襲来の影響で通信機が壊れて...ザー...しばらく通信はできなくなりそう...ザー...そちらも大変だと思いますが頑張って...ザー...なんとかなるものです。私も無理なお役目かと思いましたが...ザーー...予定より二年も長く続けられて...ザーー-...』

 

「白鳥さん⁉聞こえているか⁉」長い長いノイズが続いた後…

 

『...乃木さん、後はよろしくお願いします』

 

その言葉を最後に、通信は途絶えた…

終始無言だった俺は本当の戦いが始まる...そう思った。

 

俺は若葉と丸亀城本丸に来ていて、そこから海を見つめていた。水平線の向こうに日が沈む。

 

「若葉ちゃんにひなと、ここにいたんですね」

 

ひなたが少し駆け足でこっちに来る

 

「探しましたよ。もう遅いのに帰ってきてないと聞いて...白鳥さんと通信していたんですか?」

 

「...諏訪からの連絡が途絶えた。何度もこちらから発信し直してみたが、もう回線自体が使えなくなっていた...」

 

ひなたは言葉を失った。

 

「長野地方は終わってしまったんですね」

 

若葉はただ静かにうなずいた。そうした瞬間俺はとてつもない寒気に襲われた。

 

「来る」

 

気づいたらそんな言葉を発していた...そう発した直後若葉と俺のスマホが耳障りな警報音を鳴らし始めた。

 

その瞬間何もかもが停止した、海の波、船、セミの鳴き声、宙を舞う木の葉...

 

若葉はすぐにスマホを取り出す。画面には

 

『樹海化警報』という文字が大きく表示されていた

「来たか...バーテックス...!」

 

「あぁそうらしいな」

 

目の前の風景が急激に作り変えられていく。若葉が日本刀を抜き

 

「人類を守る御役目、諏訪より確かに受け継いだ。われら四国勇者が、この丸亀城にて迎え撃つ‼」

 




後半ほぼ原作...
次回は戦闘描写ですね!かける気しないが頑張る!


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第3話 初陣

はいいつもの通りです。
問題の戦闘描写です。
原作無視がかなり来てます(主に友好関係)
お気に入り登録ありがとうございます!励みになります!


樹海化が完璧に終わった後俺たちは勇者システムを起動させた。

 

『BRAVERIDE サザンカ!』

 

「相変われず女に変わるのどうにかならないかなぁ」

 

「諦めろそれがお前の宿命だ」

 

「へいへい」

 

あれから大社は少し俺の要望を聞いてくれて生足だったのがタイツになった。あとはどこかの黒のいきってる人の服装みたいに黒のローブを羽織っており、下は黒のミニスカで少し短めの黒のブーツを履いている。

 

「若葉ちゃーん、ひなとくーん!」

 

声のほうを振り向くと友奈と千景がそれぞれの武器を持ち、駆けて来ていた。

 

「はぁ、はぁ...急に時間が止まっちゃって、周りはでっかい蔦みたいのが出てきてぐわーっとなるし、びっくりしちゃったよ!地図のおかげで、みんなの居場所がわかってよかった...!というか若葉ちゃん達もう変身してる⁉」

 

「常時戦場。刀をいつも持参しているのも、すぐ戦えるようにするためだからな」

 

「そもそも俺は武器無いからすぐ変身できるしな」

 

「そういう真面目と責任の強さ、若葉ちゃんらしいね...私も見習わないと!ひなと君はいつも通りだね!」

 

「うん?女に変わったのにどこがいつも通りなんだ?」

 

「女になるとこでしょ...それより高嶋さんは...今のままでいいと思う...」

 

ちーちゃんは独り言のようにつぶやいた後周囲を見渡しながら

 

「それにしても...これが樹海化ね...」

 

樹海化...初めて体験したがすごいな...ほんとに異世界みたいだ...

 

「こんな大きな植物見たことないよ。これも神樹様が起こしたんだよね...?」

 

「ああ。樹海化は神樹による人類守護の緊急手段だ」

 

そんな感じで若葉が説明してると

 

「おお~いっ!みんなー!」

 

大きな声とともに球子が走ってくる。その後ろには球子に手を引かれる杏もいた

 

「悪い、遅くなった!」

 

球子たちも自分たちの武器を持っている

 

「全員、揃ったな。これが私たちの初陣だ。我々の手でバーテックスどもを打ち倒す」

 

「それはいいんだけど...伊予島さんは戦えるの?さっきから震えてるし...戦えないんだったら襲われないように気を付けてね?」

 

おー最初から仲いいってスゲー。あんま喧嘩にならなさそう

 

「あ、えっと...はい...気を付けます」

 

「杏、怖いのはわかるが、私たちが戦わなければ人類が滅びる可能性だってあるんだ。ピンチになったら戦ってくれよ?」

 

「わ、わかりました」

 

杏の瞳に涙が浮かぶ。泣く場面か?まぁ自分だけ役立たずな雰囲気だされたら泣くか...

 

「とりあえずみんなお話もいいけどバーテックス来てるから変身しよ?」

 

「そうだね」

 

みたいな感じで肯定する

 

「みんなで勇者になーる!」

 

それぞれが姿を変える中、杏だけは変化が起こらなかった。

 

「まぁしょうがないね、まぁ気にすんな。言ってはなんだがここで変身できるほうが異常だったりする。普通の女子中学生は怖いと思って動けないのが普通だ。だからきにすんな」

 

とフォローを入れておく。みんな俺のほうを見て何か言いたそうだったが無視した

 

「ご、ごめんなさい...」

 

「気にすんなっての!タマたちだけで全部倒してくるから」

 

「...うん...」

 

杏は悲しげにうなずく。マップで敵がどのくらいいるか確かめてみる。ふむ五十体ぐらいといったところか...こっちに向けて一直線に攻めて来てるな...

 

そう確認した瞬間

 

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ‼

 

と叫びながら若葉がとつっていた。さやから抜き放たれた白刃の一閃がどんどんバーッてクスを倒していく

 

勇者たちよ‼私に続け‼

 

そう言って若葉は単騎でとつってく

 

「若葉のやつ...すっごい...」

 

「それじゃ、私も行くよ!」

 

と言って友奈はバーテックスのいるほうへ向かって跳躍する。球子は怯えてる杏のほうを向き

 

「あんずはここにいろあいつら全部倒して戻ってくるから!」

 

そう言って飛び出した。俺も杏のほうを向き、

 

「それじゃ、くれぐれも気を付けてな」

 

そう言って俺も飛び出した。飛んでる途中だカードブックを開き、剣がプリントされたカードを取り出し、ディケイドドライバーにセットし、使った

 

『ATTACKRIDE SLASH!』

 

そういう機械音声が聞こえた瞬間、目の前に生太刀が出てきた。それをキャッチし鞘から抜き、突っ込んできたバーテックスを切り裂いた。それにしてもフツーの剣が出ると思ったら、生太刀が出てきたのでびっくりした。まぁそんなかんじで俺は突っ込んできたバーテックスに切りかかるのだった

 

そんな感じで自分の周りのバーテックスをあらかた倒して周りを見てみたら、杏が戦っていた

 

よかった...戦えたんだな

 

と思っていたらひとりだけ動いていない勇者がいたのでそっちのほうに向かって跳躍した。

 

う...うぅ...

 

と彼女は震えていた

 

「ちーちゃん!」

 

「ひなと...くん?」

 

「大丈夫、ちーちゃん?」

 

「ご、ごめん...なさい...戦うの、怖くなって...」

 

「ちーちゃん...俺さっき言ったよね?怖いと思って動けないのがフツーだって」

 

そう言って俺は手を出した

 

「俺がそばにいるから...大丈夫」

 

「ひなと...くん」

 

「ねぇ...あなたは私を愛してくれる?私という人間を」

 

その問いに対し俺はすぐ答えた

 

「もちろんさ、というか俺だけではなく勇者のみんなが勇者の郡千景という人間を見たりしてるんじゃなくて、郡千景という人間そのものを見てるよ」

 

「そう...」

 

ちーちゃんは嬉しそうにほほ笑んだ

 

ちーちゃんが俺の手を取った

 

そのとき、

 

「ぐんちゃん!」

 

とこえがした。友奈がこっちに飛んできたらしい

 

「大丈夫?ぐんちゃん?」

 

「えぇ...もう大丈夫よ...高嶋さん」

 

「そっか!じゃ私は先に行ってるね!」

 

と言って飛んでった。

 

「ほらちーちゃん俺らも行こう。」

 

俺らは飛んだ。数百メートルくらい。飛んでる途中でバーテックスが一体飛んできたので

 

「見ててねちーちゃん」

 

と言って俺は

 

『ATTACKRIDE BLOW!』

 

ディケイドドライバーを起動し天の逆手を装備した。

 

俺らは戦える。抗うことをやめない限り、俺らは負けない!

 

と言って俺はバーテックスを粉砕・玉砕・大喝采した。しかし直後別個体がこっちに向けて突撃してきた。

 

「ちーちゃんにもできるはず!自分を信じて!」

 

(ひなと君や高嶋さん達がこの世界にいる限り...私は戦える!)

 

ちーちゃんは大鎌を振りかぶる。目の前に来ていたバーテックスが真っ二つになった。

 

「で...できた...」

 

その瞬間カードブックから三枚のカードが飛び出てきた。

一枚は彼岸花がプリントされたカード

一枚は彼岸花と白いローブを被ったものが七人いる絵がプリントされたカード

一枚は茎まで黄色い彼岸花が印刷されたカード

 

俺はそれをカードブックに戻しちーちゃんのほうを向いて

 

「いいね!その調子!」

 

と言った。だがバーテックスは前方から次々と突撃してくる。

 

「ちーちゃんつぎ行くよ!」

 

『BRAVERIDE 彼岸花!』

 

そう言って俺は新しい能力を使った。視点が少し高くなり、胸が少し控えめになり、服装が彼岸花をイメージしたものに変わり、髪型が少し変わる。簡略に言うとちーちゃんになった!

 

「うん...!...ん⁉なんで私がもう一人いるの?」

 

「そーゆー能力っぽい。それよりちーちゃん来てるよ?」

 

「え...っ‼」

 

ちーちゃんは少し焦った様子で勢いよく鎌を振った。

 

「というわけでしばらく姿借りるね」

 

「えっと...うん...変なことしないんだったら全然いいわよ」

 

と言ったある程度倒した後

 

「若葉のやつ一人であんな量やってんのか...大変だなぁ」

 

とつぶやいたらちーちゃんは若葉のほうを見て、

 

「よくあんな量対応できるわね...」

 

と言っていた。バーテックスの数が五分の一を切ったころバーテックスが集まり始めて進化を始めていた。シンプルに

 

きもっ

 

って思った。そうして融合したバーテックスたちは、巨大な棒状の一個体となった。

 

バーテックスが融合している間俺たちは、

 

「なんでぐんちゃんが二人いるの⁉ぐんちゃんは忍者だったの⁉」

 

というのに対しちーちゃんが

 

「違うわ高嶋さん...この私はひなと君よ能力で私になれるらしいわ」

 

「へーすごいね!」

 

的な会話をしていた。ちーちゃんは雑魚処理に向いているがもう雑魚はいないので会話の途中で解除しといた。

 

「なんだ、あいつ...?」

 

と、球子は首をかしげる。授業で習っていたが実物を見るのは初めてだ

 

「まずは私が...!」

 

と、いい杏がクロスボウで攻撃した。

すると、棒状のバーテックスはいたみたいなものを作り出し、杏の矢を反射させた。

 

「危ねえっ!」

 

球子が自分の武器を盾状に変化させ、杏を守った。

 

「あ、ありがとう、たまっち先輩」

 

「タマが杏を助けるのは当たり前だから気にするな!しかしあれは反射板ってわけか...」

 

飛び道具の攻撃ではきつそうだなと思っていたら、拳一つで敵に突っ込んでいく少女の姿があった。

 

勇者パーーンチっ‼

 

友奈は自分の拳を反射板にたたきつける。だが反射板は全く傷つく気配がない。

 

「一回で効かないなら...十回、百回、千回だってたたき続ければいい!」

 

俺は友奈のほうへ跳躍し、

 

「友奈!俺も手伝う!」

 

と言った

 

「うん!ありがとう!あ、さっきはぐんちゃんを励ましてくれてありがとう!」

 

「当然のことをしただけだかな気にするな」

 

一連の会話が終わった瞬間カードブックから四枚のカードが出てきた

一枚は山桜がプリントされているカード

一枚は山桜左目に眼帯を付けた緑色の竜がプリントされたカードをセットした

一枚はすべてが黄色い山桜のカード

一枚はぼやけていてよくわからない

 

俺は山桜と左目に眼帯を付けた緑色の竜がプリントされたカードを使った

 

『FINAL FORMRIDE や、や、や、山桜!』

 

なんかごろ悪くね?って思った

 

「友奈ちょっとくすぐったいぞ」

 

そう言って俺は友奈の背後に立った。そして背中をタッチした

 

「え?それどーゆーこtひゃ!」

 

別にやましいことをしたわけでは断じてない。タッチした瞬間友奈の目と背中によくわからんものが出てきた。

 

続いて俺はすべてが黄色い山桜のカードを取り出し使った。

 

『FINAL ATTACKRIDE や、や、や、山桜!』

 

「友奈...一緒に行くぞ!」

 

「え、あ、うん!」

 

そういう会話をし、俺らは上に飛んだ

 

「「ダブル~千回ぃぃ...連続!勇者~パーーンチ!」」

 

そうして俺らは無事倒すことができたのだが、ちょうど五百回目で粉砕したのだが、止めることができず、五百回何もないとこを叩いてみんなを呆れさせたのは別の話である。

 

叩き終わった後周りを見渡してみると若葉がちょうどバーテックスを食べているとこだった

 

「...まずいな、食えたもんじゃない」

 

そりゃそーですわ...若葉が食べたバータックスが最後のバーテックスだった。

 

球子と杏は引きつった顔をしながら

 

「タマ、これから若葉をあんまり怒らせないようにするよ...」

 

「う、うん...それがいいと思う」

 

樹海化が戻って場所は丸亀城…

 

「若葉ちゃん!変なものを食べちゃダメでしょう!」

 

若葉は正座をさせられ、お姉ちゃんに説教させられていた。

 

「だが...」

 

「だがじゃありません!」

 

「奴らは昔、私の友達を喰らったんだ。だからその仕返しをだな...何事にも報いをというのが...」

 

「おなかを壊したらどうするんですか!」

 

「う...むぅ...」

 

若葉が論破させられていた

 

そのお様子を見ていたほかの勇者たちが

 

「鬼のように強かった若葉さんが...」

 

と杏が独り言を言い、球子は腕を組みながら、

 

「一番怖いのは、ひなただったか...」

 

とつぶやいた。同意である香川に帰ってきたとき、お姉ちゃんのカメラを見てみたら自分の写真と若葉の写真が大量にあり怖くなり自分の写真だけを消そうと思ったのだが全消去をしてしまった時があった。いつの間にか後ろにお姉ちゃんがいて俺は五時間にも及ぶ説教を受けた。バックアップあったらしいのにそこまでする必要ある?

 

その夜俺は若葉とそばを食いに来ていた。近くにはテレビがあり今日の戦闘と、諏訪との通信記録が公表されていた。諏訪との通信が途絶えたことは当たり前のように伝えられていなかったが...

 

「...白鳥さん、やはりそばよりもうどんのほうがおいしいと思うぞ。私には...そばは少し塩辛い」

 

そうつぶやく若葉を俺はそばをすすりながら黙ってみてるのであった。

 

翌日の昼休み…

 

食堂でみんなで食堂で食事を取っていた...ちなみに俺以外は当たり前のようにうどん、俺は今日はカレーである。...甘口の。みんなで食べていると球子が言い出した

 

「なあ若葉。みんなで話し合ったんだが」

 

「なんだ?」

 

若葉が怪訝そうな顔をした。

 

「やっぱり、お前がリーダーやってるのが一番いいと思う。今までは大社に言われてたから若葉がリーダーってなってたけど、今回の戦いではっきりわかったよ」

 

「...どうしたんだ、急に」

 

「いやさ、この前の戦いの時。お前が先頭になって戦ってくれたから、タマたちも戦うことができた。そうでなかったら、誰かが大怪我してたか...死んでたかもしれない」

 

ちなみに先の戦いでは若葉は三分の一のバーテックスを倒していた。それがなかったら動けなかった杏やちーちゃんが危険だったかもしれない。

 

球子の言葉に杏も乗っかった

 

「私も若葉さんがリーダーやるのがいいと思います!」

 

「うんうん。若葉ちゃんって、いかにもリーダーって雰囲気あるしね」

 

「反論はないわ...あなたえげつないほど倒してたし...ほかのみんなも賛成してるようだし」

 

ちーちゃんはボソボソと言った

 

「俺は自分がリーダーじゃなければなんでもいいぞ」

 

「お前だけ適当だな...」

 

若葉は全員を見つめ

 

「ありがとう...」

 

今まで自分がリーダーであっていいのか不安だったらしい

 

「よかったですね、若葉ちゃん。とりあえずみんなで記念写真しませんか?初勝利の」

 

そう言って満面の笑顔でカメラを取り出した

 

「今日は初勝利記念、そして若葉ちゃんのリーダー着任記念日ということで...ふふふ、私の若葉ちゃんとひなと秘蔵画像コレクションが増えます」

 

「ひなた!お前まだそんな収集などしていたのか!いつか絶対消してやるからな!」

 

「若葉、無駄だ。一回消したことあるがバックアップを取っていた」

 

「なん...だと...」

 

「懐かしいですね~私が後ろにいる中そんなことしていたので、すぐ正座をさせ怒りましたね...ほんとは一時間で終わらすつもりだったのにひなとが全然聞かなかったからヒートアップしてしまいまして...次第にひなとが泣き始めて、それが撮れたので最終的に十時間のところを五時間で終わらしてあげたやつですね」

 

「言うなよ!お姉ちゃん!」

 

「へー泣いたのか~?ひなと~?」

 

「うるさい球子、お前もお姉ちゃんの説教を味わってみたらわかる」

 

「それにしても秘蔵画像コレクション?なんだそれ?」

 

「おもしろそう!ひなちゃん、私にも見せて!」

 

「「興味を持つな!」」

 

「私も見たいです!」

 

「...乃木さんのはどうでもいいとして、ひなと君のは少し見たいわね...」

 

食堂の中でわいわい騒ぐみんなの姿を、ひなたは写真に収めるのだった。




ちなみに何でこんな仲いいのかと言いますと...チートの中にみんなを仲良くさせる程度の能力的なものを無意識に発動してるからですね
ちなみに今更ですがチートは変身してなくても使えるため、魔法なんかも変身しなくても使えますし勇者端末なくてもディケイドドライバー出せたりします。ただ使いこなせないだけです。
語呂悪いのは仕方ないので我慢するかなんか意見ください()


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第4話 雑な戦闘

はいいつも通りです
ぐんちゃんの村帰るイベントがスキップされたためいつもより短いです。
tsしてもtsっぽい感じの描写がないんよなー
今回も皆様の暇つぶしになれば幸いです。
感想、お気に入り登録ありがとうございます!


初陣勝利数日後俺はちーちゃんの部屋でゲームをしていた。最初は対戦ゲームをしていたが全部ぼろ負けし、目に光がなくなりそうになったところでちーちゃんが気を使ってくれて今は協力プレー可能のゲームをしている。ゲームをしながら初陣が勝利に終わったことを思い出す。

 

数日前…

初陣が勝利に終わったあと、バーテックスに対抗する『勇者』の存在は大々的に報道された。大社はマスメディアの取材を受け入れ、むしろ勇者の存在をアピールすることで、四国の人々を安心させる方針を採ったのだ。

 

人類はバーテックスに勝てる、勇者が人々を守ってくれる

 

と。テレビ 新聞 ネット 週刊誌などで、連日のように6人の勇者が実名付きで流れた。もっとも、男子一人で後は女子、しかも男子のほうもなぜか女子とかいうなんか混乱と反感を受けそうだったので俺の名前はお姉ちゃんの名前である。

勇者たちがすべて年端も行かぬ少女であること(一人は男だが)も話題になり、四国中の子供から大人まで、誰もが勇者という存在に注目していた。

曰く、国家の秘密兵器

曰く、人類の希望。

曰く、最後にして最強の盾。

 

「この雑誌と新聞、若葉ちゃんのインタビュー載ってるよー」

 

昼食時に友奈が大量の雑誌と新聞を持ってきた。

 

どの記事にも若葉が大きく報じられている。

 

「すごい騒ぎになっていますねぇ...」

 

杏は雑誌を手に取りながら言った。お姉ちゃんは新聞を見ながら眉間に皺を寄せた。

 

「むむむ、いけませんね。この写真では若葉ちゃんとひなとの魅力が表現できていません。次回からは各社に私が選んだベストショットを...!」

 

「「するな!絶対にするな!」」

 

「それはフリですか、若葉ちゃんにひなと?それにしても私は何もしてないのに弟の功績が私の功績になるのはなんか複雑ですね...」

 

「しょうがないだろ...女子しかいない集団に男子がいるのはいろいろまずいんだから...それにしても取材の時に女口調にしないといけないのはほんとにめんどいな...」

 

俺を女として公表したかった大社が取材の前の日に女口調を叩きこんできて大変だった。それが終わってみんなでご飯の時に口調を戻すのを忘れて、なんだこいつみたいな目をしてきたり笑ってきたのは別の話である。

 

「というか、どれもこれも勝手なこと書いてるよなー。タマたちは兵器でも希望でも盾でもない、人間だってのにさ」

 

そうしてしばらくの間、ある種の祭りのような『勇者お披露目』騒ぎが続き、俺たちは順番に休暇がとることが許可された。勇者システムが使用できるか否かは精神状態にも左右され消耗しきった状態では力が発揮できないらしい。だから休養を取る必要があったんですね。特に友奈は精霊の力を身に宿して戦うということをしたため、その影響を検査するために入院する必要があった。まぁカードを使って身に宿したから負担は俺に来るんだけど...

 

そんな感じの回想をしていたら、俺の最初にあった10の残機が0になっていた...ちなみにやっているのはマ〇オである。

 

「ひなと君...ゲーム下手なのはもう知ってるけど、もう少し頑張ってくれない?」

 

「うっ...ごめん...」

 

そのままその日はちーちゃんと一緒にゲームをしていた。俺?何回も死にまくってたらちーちゃんの特訓が始まって少しうまくなったと思ったらあんま変わってなくてちーちゃんに頭を抱えられた人だけど?もうちょっと頑張ろう...そーしよう...

 

そして数日たったある日、バーテックスの二度目の侵攻が起こる。

 

「前よりはるかに多いな...」

 

「ええそうね...って高嶋さん⁉病院にいたんじゃ...?」

 

いつの間にかいた友奈が気まずそうに笑いながら

 

「あはは...時間が止まってるから抜け出してきちゃった。みんなが戦ってるのに、私だけお休みなんてできないよ!」

 

「まぁ大丈夫そうならいいだろ。とりあえず来るぞ」

 

俺らは跳躍しバーテックスの一群の中に入りどんどん倒していく

 

しばらくしてバーテックスの融合が始まった。相変わらずキモイ...

 

「少しやばそうだな...」

 

そうつぶやき俺は彼岸花と七人岬なるものがプリントされたカードを取り出し使った

 

『FINAL FORMRIDE ひ、ひ、ひ、彼岸花!』

 

語呂が悪いのはご愛敬だ。

 

「ちょっとくすぐったいぞ」

 

と言って千景の後ろに回り背中をタッチした

 

「ん?ひゃ!」

 

何度も言うが別にやましいことをしたわけではない。千景はいつの間にか7人に増えており白いローブを着ていた。

 

融合して新たな形態となったバーテックスは元の姿の口部分だけを残して巨大化したような形をしていた。

 

「デカくなっただけ...か?」

 

「どうなんだろ...?」

 

タマと杏が警戒しながら会話をしていたら進化体が動き出した。口から無数の矢が飛び出し球子たちに降り注いだ。慌てて球子は旋刃盤を盾状にし、自分と杏を矢から守る。

進化体は攻撃が通じなかったからか友奈へ狙いを定めた。

 

「わわわ!」

 

友奈も無数の矢から慌てて逃げる

 

「これじゃ近づけないよー!」

 

確かに近づけない...近づこうとしたらあっという間に体が穴だらけになるだろう...

次に進化体は千景に狙いを移した。無数の矢がちーちゃんを襲い

ちーちゃんの体は無残に射抜かれた

 

ぐんちゃああ―ーーーーーーーーーーん‼

 

友奈の叫びが響いた。しかし友奈は信じがたい光景を見たような顔をした。

 

めった刺しになったはずのちーちゃんが別の場所から進化体に特攻していったからだ。それどころかちーちゃんが一人ではなく七人いたからだ。

 

「今度は七人⁉やっぱりぐんちゃんは忍者だった⁉」

 

「違うぞ友奈。あれがちーちゃんの精霊だ」

 

「ほえー...すっごい」

 

七人いたちーちゃんは一斉にバーテックスを襲いそのバーテックスは砕け散って消滅した。

 

そして、総勢百体を超えるバーテックスはすべて掃討され、勇者二度目の出陣となる戦いは終わった。敵の過半数を倒したのは今回も若葉だった

 

数日後俺はちーちゃんとゲームの特訓をしていた。遊んでる途中で客が来たらしいくチャイムが鳴った。ゲームをポーズボタンを押し停止した。

 

「ぐんちゃーん!」

 

来客は友奈らしい。ちーちゃんは友奈を部屋に通した

 

「あ、ひなと君も来てたんだね」

 

「ああ、ちーちゃんにゲームを教わってたところだ」

 

「へー、うまくなったの?」

 

「それがひなと君全然うまくならないのよ...まぁそんなことより高嶋さん...病院は...?」

 

「今日やっと退院できたんだ。入院してる間、ほんとに退屈だったぁ!あと、樹海化してる時に病院抜け出してきたこと、しっかりバレてた...。それがなかったら、もっと早く退院できてたんだけど...」

 

友奈は肩を落としてため息をついた

 

「ところでそのゲームの特訓に私も参加していいかな?」

 

「ええもちろんところで高嶋さんはなんのゲームをよくやっているの?」

 

友奈は腕を組みながら考えるようにして

 

「モン〇ンかな...」

 

「そう、いま私たちはスマ〇ラをしてたんだけどやったことある?」

 

「聞いたことはあるけど、やったことはないかなー」

 

「なるほどね、まだひなと君のほうが強い段階ね...大丈夫高嶋さんならひなと君以上にうまくなれるはずだわ」

 

「うぐ...あんま反論できない」

 

「あはは、とりあえず頑張るね!」

 

数時間後…

 

「負けた...」

 

友奈は両手を上にあげ

 

「やったー!」

 

と喜んだ。

 

「まさかここまでひなと君にゲームの才能がないとは...」

 

「うるさい...」

 

「えっと...なんかごめんね?」

 

「高嶋さん...それもうあおりよ...」 

 

「嘘⁉ごめんね!そんなつもりなくて」

 

「はは、わかってるよ...」

 

項垂れながらそういった。それにしても髪邪魔だなー。切っても変身の時に戻されるしなー...かといって結ぶのもめんどいしなー...まぁ放置でいっか!

 

「ねぇ次は協力プレーできるゲームやろうよ」

 

「え...でも俺足引っ張るからいいよ...」

 

「大丈夫よ私がフォローするから...縛りプレーなら慣れてるわ」

 

とからかうようにこっちを見て言った。

 

「じゃあ、やろうかな...」

 

そうしてしばらくゲームをした。まぁ俺は足を引っ張りまくるんですけどね!




解説という名の補足かと思いきやただの蛇足
本来ならぐんちゃんが勇者としてなら愛されるから、勇者として頑張って愛されたいと思ってるシーンですが、主人公や友奈たちが郡千景という人間を愛しているとわかっているのでのんきにゲームしてます。
それにしても周りの作品を見たときに自分の語彙力の低さが目に見えてくるね!まぁよそはよそうちはうちってやつですけど...


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第5話 狂ったやつら

はいいつも通りです。
お気に入り登録ありがとうございます!


授業間の休み時間。

球子と杏は、イヤホンをお互いの片耳ずつにかけてスマホから一緒に音楽を聴いていた。

 

「...どーよ、この曲は?」

 

イヤホンをつけたまま、球子は杏子に尋ねた。今は球子がお気に入りの曲を流しているところらしい...

 

「良い曲だけど、私はもっと静かなラブソングがいいかなぁ。こんなのとか」

 

杏が自分のスマホを取り出し、イヤホンに接続して曲を流し始める。

 

「...む~...悪かない。悪かないが...もっとこう、勢いとノリが欲しいというか...やっぱ音楽はパンクロックだろっ」

 

「そんなことないよ、音楽はバラード、そしてラブソングが一番じゃないかな」

 

「いやいや、青春の叫び、情熱の発露!パンクロックだっ!」

 

「染み入る曲調、心揺さぶる恋!ラブソング!」

 

二人が言い争ってると、チャイムが鳴り響く。同時に教師が教室に入ってきた。

 

「う、授業か」

 

杏と球子は慌ててイヤホンとスマホを仕舞い、それぞれ自分の席に向かう。その前に球子は杏子に耳打ちをしていた。耳打ちだったので話の内容は聞けなかった。それにしても最近の若者はすごいなさっきの会話全部とは言わないけど何言ってんのかほとんどわかんなかった!

 

「タマちゃんとアンちゃんって、ほんとに仲良しさんだね」

 

昼休み、食堂でうどんを食べながら、友奈が微笑ましげにそう言った。今日も昼食は一緒だ。俺は除くが...ちなみに俺が今日食っているのはかつ丼だ。女体化したことで胃袋ちっさくななってんだよなー...ちょっと量が多い食えっかな?

 

「タマたち、ほとんど姉妹みたいなもんだしなっ!」

 

杏を抱きしめながら言う球子

 

だが、球子のほうが杏よりも小柄なため、抱きしめているというより、抱き着いているように見える。

 

「えへへ」

 

抱き着かれている杏も決して迷惑そうではない。

 

「というかタマたち、もう一緒に暮らしてもいいくらいだ」

 

そういう球子に、杏はからかうように返す。

 

「うーん...でも、もしタマっち先輩先輩と暮らすなら、色々大変そう。部屋の中に自転車とかキャンプ道具とか、よくわからないもの置いてあるからまずはそれを片付けてもらわないと」

 

「あ、あれはただの自転車じゃないぞ、ロードバイクだ。錆びたりしないよう、部屋の中に置いとくんだよ。それにキャンプ道具だって、そのうち使うからっ!...勇者になってからなかなかできないけど」

 

球子はアウトドアが好きなのか休みはよく出かけている。宿泊するようなことをしたいらしいが大社が許可してくれないらしい...

 

「だいたい、それを言うならあんずの部屋だって相当だぞ?本棚も机の上もベッドの枕元にも、部屋中が本だらけじゃんかよー。しかも恋愛小説、恋愛小説、恋愛小説、恋愛小説...そればっかりだっ!部屋に行くたびに増えてるし」

 

「それがいいんだよー。本に囲まれてると幸せな気分なの」

 

うっとりした顔でいう杏

 

俺も本が好きだが、そこまでの領域にいないし行く予定もない。

 

あんずは無類の読書好きで、ラノベしか本を読んでいない俺に恋愛小説をおしt...おすすめしてくる。今の話を聞く限り、本の数は日に日に増えていってるらしい。

 

「タマには理解できねぇ」

 

呆れたように球子はつぶやいた。

 

「二人とも...お互いの部屋のこと、よく知ってるのね...」

 

早々に昼食を食べ終わり、携帯ゲーム機に向かっていたちーちゃんが、画面から顔を上げて言う。ちなみに画面から目を離していても、操作する指は休みなく動いている。どうなってんだ...

ちーちゃんの言葉に球子は

 

「当然!」

 

と頷いて、

 

「タマと杏は部屋が隣同士だし、よく部屋に入り浸ってるからなっ!」

 

俺たちが通う学校は全寮制だ。校舎である丸亀城の敷地内に寄宿舎があり、勇者六人と巫女であるお姉ちゃんはそこで暮らしている。ちなみに男子と女子で分けられていないため、俺はいつも部屋に引きこもっている。

 

「それなら若葉ちゃんもしょっちゅう私の部屋に来ますよ。ひなとも偶に来ますね」

 

どこか得意げに、胸を張って言うお姉ちゃん。こういう時張る胸があるやつがいると例のネタができなくて困る()

 

「若葉ちゃんは私の部屋に来ると、困り顔で相談事を持ちかけてきたり、膝枕で耳掃除して欲しいとねだってきたりしますね」

 

ひ、ひなた!

 

慌ててお姉ちゃんの口をふさごうとするが若葉だが俺が防ぐ。それを見たお姉ちゃんが

 

「ちなみにひなとはまだ女性ものの服を一人で着れないので、私お部屋で着させたりしてますね、ちなみに下着もです。」

 

お、お姉ちゃん⁉

 

慌ててお姉ちゃんの口を防ごうとするが若葉によって防がれてしまう。

 

「ちょ!若葉!離せ!ha☆na☆se☆」

 

「何事にも報いをが私のポリシーだ!」

 

と言い争ってるとちーちゃんが

 

「へーひなと君ってひなたさんに服着せてもらってるんだ~しかも下着まで~...今度は私が着させてあげようか?」

 

と笑いながら言ってきた

 

「い、いえいいです...」

 

「あら、そう...残念ね...」

 

俺がちょっと冷や汗をかいていると杏が

 

「それにしても膝枕ですか...いつもの若葉さんとイメージが違います...」

 

と言って意外そうな視線を若葉に向ける。友奈はきょんとして、

 

「若葉ちゃんって、もしかして甘えん坊さん?」

 

「私の前限定で、です」

 

むふん、と鼻息荒く言うお姉ちゃん。

 

「そういえば、若葉さんはいつも自然とひなたさんの隣に座りますよね。今もですし」

 

杏がそういうと、さらに若葉の顔が赤くなる。

 

「だ、だがひなただって毎晩特に用事がなくても、私の部屋に来るじゃないか。きっと寂しいからだろう⁉」

 

「いえ、私の場合は、若葉ちゃんが明日の準備ができているかなどを、確認に行っているんです。若葉ちゃんは毎日、課題や予習復習などを完璧にしているんですが、使った後に教科書をカバンに入れ忘れたり、時々うっかりしてますから。もちろん、そんな時はこっそり鞄の中に教科書、ノートなどを戻しておきます」

 

「え...そんなことをしていたのか⁉」

 

若葉は気づいていなかったらしい。

 

「ちなみにひなとの部屋にも行っています。ひなとは課題はやるのですが、予習復習と明日の準備をしないんですよねー...あと部屋の片付けも。ですので私が行って、明日の準備や部屋の片づけを促したり強制的にやらしたりしているんですよ。」

 

「なんだかひなちゃんって若葉ちゃんとひなと君のお母さんみたい」

 

「当然です、若葉ちゃんとひなとは私が育てましたから。ついでにひなとが言い間違えてお母さんって呼んできたことがありましたし」

 

関したように言う友奈に、ひなたはにっこり笑って答える。

 

「も、もうこの話は終わりだ!終わり!」

 

「そうだ!そうだ!」

 

若葉と俺は顔を赤くしたまま、無理やり話を断ち切った

 

バーテックスとの戦いがない時の勇者たちには、平和な日常があった。

しかし

いざ戦いが始まれば、彼女らは人類を守る盾となり矛となる。

バーテックスの四国への侵攻が再び起こったのは、その日の午後のことだった。

 

巨大な植物に覆われた丸亀城の城郭に、武器を装備した俺たちは立っていた。壁のある方向から、バーテックスの群れが近づいてきてるのが、小さく見える。

俺はスマホのマップを見て、侵入してきた数を確認した。今回は100体強といったところか。いつもと同じか...と思ったがいつもより違う点が一つあった。一体だけ違う動きをしているマークがあったのだ。ほかのバーテックスよりも圧倒的にスピードが速い。群れから突出して、こっちに来ている。気になってそっちのほうへ目を向けたら細い足で二足歩行して突進してきている何かが見えた。

 

「へ...変態さん⁉」

 

謎のバーテックスの不気味な動きに、友奈は顔を引きつらせる。

 

「進化体か」

 

若葉は眉間にしわを寄せ、二足歩行を見ていた。

これまでとは違い最初から進化体できたらしい。

 

「...あれは食えんな」

 

「いや、食べられるかどうかとか考えないでください!」

 

ぼそりとつぶやいた若葉に、杏は速攻で突っ込みを入れる。

 

「お姉ちゃんにまだ若葉はバーテックスを食おうとしているっていうぞ」

 

と追い打ちをしておいた。

 

うっ...やめてくれ...

 

と渋い顔をしながら若葉は言った。

 

その時球子が意味深な笑みを浮かべた。

 

「ふっふっふ...」

 

「どうしたのタマちゃん?」

 

「ついに狂ったか?」

 

怪訝そうな友奈、少し馬鹿にしたような俺に、球子は得意げに答える

 

「今回は秘密兵器を持ってきたのだ。タマだけに、うどんタマだあああっ!どうだひなと!これでも狂ってるといえるか⁉」

 

そう言って球子が掲げたものは、『最高級!打ち立て!』と書かれた袋に入ったうどん玉だった。俺は無表情で

 

バリバリ狂ってんじゃん

 

と独り言をこぼした

 

「それを...どうするつもり...?」

 

訝しむちーちゃんに、球子は二足歩行バーテックスをピシッと指さして言う。

 

「大社の人が言うには、バーテックスには知性があるんだろ?そしてあの、人の下半身みたいな姿...奴はもしかしたら人間に近いのかもしれないっ!」

 

「そっか!だったら、うどんに反応して隙ができるかも!」

 

「その通りだ、友奈!この最高級讃岐うどんをまえにして、人なら冷静でいられないっ!てやあああ、文字通り食らえ~~~っ!」

 

俺はもうなんも言わんぞ...

球子は大きく腕を振りかぶり、突進していく進化体バーテックスに向かって、袋入りのうどん球を投げた。うどん球は狙い通り、進化体の進行方向上に落ちる

しかし

二足歩行バーテックスは、うどんに目もくれず、速度を緩めることさえなく、通り過ぎていった。

 

「「「「「!!!!?」」」」

 

「そりゃそーなるわ」

 

うどんバカたちに戦慄が走る。

 

うどんに...何の反応も示さないだと...⁉

 

若葉は驚愕と怒りで手が震えている。...そこまでのことか?これ

 

「釜揚げじゃなかったからかよっ⁉」

 

「ううん、タマちゃん...釜揚げじゃなかったとしても...最高級うどんを無視するなんて...!!」

 

友奈が悲しみに顔を俯けながら、絞り出すような声で叫ぶ。球子も、杏も、ちーちゃんも、おんなじ思いだったのだろう。そして多分だけど、アホ達はその時はっきりと確信する。バーテックスには人間性など欠片もない。奴らは人とはあまりにもかけ離れた存在だ。分かり合うことなどきっとできないと。

 

「いや、うどんが嫌いだったっていう可能性は出てこないの...?...じゃなくて!あいつ口ないんだから食えるわけないだろ!」

 

と俺は突っ込んだ。

 

「...あとで絶対に回収してやるからな」

 

球子はそうつぶやき、投げたうどん玉を見た。袋に入れていたおかげで、まだ中身は無事のようだ。勇者たちは皆、怒りと悲しみを抱えて、武器を構える。

 

「最高級うどんの仇!あいつはタマが倒す!」

 

まず珠子が二足歩行バーテックスに向かって突っ込んでいった。

 

「てやああああ!」

 

球子が旋刃盤を投げる。しかし二足歩行はあっさりそれを避けた。

 

「くっ!」

 

二度、三度と旋刃盤を投げるが、すべて避けられてしまう。

 

「当たらない!なんだよこいつ、すばしっこすぎるっ」

 

「タマっち先輩!援護するよ!」

 

杏がクロスボウを連射した。二足歩行はその矢をやはり簡単に避けた。

 

「俺も手伝う!」

 

『ATTACKRIDE BLAST!』

 

直後目の前にP2020(拳銃みたいなもん)が出てくる。え~どうせなら当たらないけどウィングマン(威力の高い当たりにくい拳銃みたいなもん?)寄越せよ~と思ったが、出てきたものは仕方ない。俺はそれをキャッチし、二足歩行に向けて撃った。まぁ避けられたけど...

すると二足歩行は杏に向けて飛び膝蹴りのような姿勢で突撃しようとする。

 

『ATTACKRIDE SHIELD!』

 

目の前に旋刃盤が出てきたので手に取る。

 

「杏に触れるなぁっ!」

 

と二足歩行と杏の間に球子が入ったので俺はさらにそれの間に入った。二足歩行の攻撃を盾で受けた瞬間手がものすごいしびれた。しばらくは使えなさそうだ...

 

「ひなと君⁉」

 

「大丈夫だ...ただ腕がしびれて動かないからしばらく攻撃には参加できそうにない...」

 

ちなみにこんな会話をしてる時に二足歩行は神樹の方向に一直線に走っていた。

 

「あの進化体、神樹様を狙ってる!」

 

と杏は言って。考える素振りをする。何かひらめいたのか杏は顔を上げ、

 

「タマっち先輩!旋刃盤を力いっぱい投げて!大丈夫...タマっち先輩の武器、あいつに当たるから!」

 

何かの確信に満ちた口調で、杏が言う。

 

「...りょーかい!」

 

そう言って球子は旋刃盤を全力で投げた

 

「てやああああっ!」「ここだーっ!」

 

同時に杏はクロスボウを打った。旋刃盤と金色の矢が二足歩行に迫るが、二足歩行は回避してしまった。

しかし杏が狙ったものは二足歩行ではなく、球子の旋刃盤のつながっているワイヤーだ。ワイヤーを歪められたため旋刃盤は軌道を変え、再び二足歩行に襲い掛かった。

 

「タマっち先輩、旋刃盤を盾状に!」

 

「ー分かった」

 

盾状にすることで攻撃範囲を増加したことで二足歩行はよけきれず直撃を喰らう。腕が治った俺はすべてが黄色のサザンカの花がプリントされてるカードを使う。

 

『FINAL ATTACKRIDE サ、サ、サ、サザンカ!』

 

ちなみに俺のFINAL ATTACKRIDEは持ってる武器によって変わる

俺は二足歩行の動きが止まった瞬間P2020を撃ったP2020からレールガン並みの威力のものが発射される。致命傷を与えるだけで倒せなかったので、球子たちが追撃をし、進化体バーテックスは奇妙な鳴き声とともに消滅した。俺たちが進化体を倒している間に、他のバーテックスは全滅していた。勇者側の被害は特になかった。かすり傷ぐらい?

 

翌日、球子と杏は一緒に最高級うどんを食べさせ合いっこしていた。なんでもコンビネーションで攻撃を当てたかららしい。

 

「こんなうまいうどんにも興味を示さないなんて、バーテックスに知性があるってのはうそなんじゃないかな...というか杏わざわざ食べさせ合いっこさせなくてもいいんじゃないか?」

 

「いやだった?」

 

「そうでもないけど...」

 

そんな二人の姿を、他のみんなは微笑ましげに見ていた。




ひなと君はタマっち達の出会いを聞いてないのでカットです。
のわゆにいいとこ全部つぶしてる気がするけど気のせいだろ...そうであってほしい


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第6話 温泉ですよ~

はいいつも通りです。
お気に入り登録ありがとうございます!

今回は難産(寝不足)でした。
今回はキャラ崩壊が激しいです。ご注意くださいませ


俺は温泉旅館にいる。そして一人部屋にいて机に置いてある饅頭を大社がやってる虚偽のニュースを見ながら食べている。ちなみに他の皆は今大浴場にいる...はず。と思ってたらみんなが帰ってきた。

 

「ふぅ、さっぱりしたー」

 

と友奈。

 

「あれ?ひなとは入らないのか?貸し切りだから男風呂に行っても変な目で見られないぞ?」

 

と球子が言ってきたので俺は寝っ転がりながら

 

「いーの、いーの。俺勇者に変身するときに起きる洗浄効果でいつも体きれいにしてるから...あと自分の体見たくないし...」

 

と言った。

 

「へー。そうなんですね...あれ?勇者機能をテストした後は確か変身を禁止させられていたはずなのですが、どうやって洗ってたんですか?自分で洗ってたわけではないですよね?自分で洗ってたら今お風呂に入ることに抵抗ないはずですもんね」

 

といたいことをついてくる杏。

 

「え...えっとー...まぁ...色々だ!」

 

と言って、ごまかそうとしたのだが、

 

「ひなと...もう言ってしまったらどうです?」

 

と退路を塞いでくるお姉ちゃん。

 

「そーだぞひなと。隠し事はなしだ!」

 

と言わなきゃいけない状況を作り出す球子。

 

「しょうがないなぁ」

 

と言って体を起き上がらせる。

 

「えっと、まず俺は自分の体を見たくない。かといって体を洗わないのはいろいろとよくない。ではどうすればいい?自分は目をつぶって他人に体を洗ってもらうことだ。っていうわけで小さいころだけど一緒に入ってたということでお姉ちゃんに洗ってもらってました...」

 

無言が続く。すると球子が

 

「ほんとにお嬢さまみたいだな!」

 

と煽ってきたので

 

球子...今回はそういわれても仕方ないけど、次言ったら殴るよ?

 

と言ってディケイドドライバーを出す。すると球子は

 

「すいませんでした」

 

と謝ってきた。すると若葉が

 

「いくら家族とはいえ、一緒に入るのはまずくないか?」

 

と、当然に思うことを聞いてきた。

 

「そうですか?まぁ利害の一致というわけです。ひなとは自分の体が見たくないけど体は洗いたい。私はひなとを洗ってる時に出てくるくすぐったげな声が聞きたい&弟の裸を見たい()という利点もあります」

 

お姉ちゃんがちょっと気色の悪いことを言ってきた。

 

「警察呼んだほうが良いかしら...?」

 

とちーちゃん

 

「でもせかっくの温泉なんだしひなちゃんに洗ってもらって一緒に入ってきたら?」

 

ととんでもないことを言い出す友奈

 

「いいですね」「いやだよ」

 

と真反対の意見を出す俺たち。

 

「いや、何が悲しくて中学生にまでなってお姉ちゃんとはいらなければならないんだ...俺はお姉ちゃんの裸も見たくないぞ...しかも俺を洗ってた時の服装水着だし...そんな都合よく水着なんて「ありますよ」...え?」

 

と俺の話を遮って水着を見せてくるお姉ちゃん、ちなみにスク水だ。

 

「こんなこともあろうかと持ってきたんですよ!」

 

と胸を張って言ってくる。

 

絶句する俺。すると友奈が

 

「わぁ~良かったね!ひなと君!」

 

「もうお前煽ってきてるよな?」

 

「ソンナコトナイヨ」

 

棒読みになる友奈。それを見て杏が

 

「まぁ温泉にはリラックス効果もあることですし、勇者システムは精神状態が安定していることが大事ですし、入ってきては?」

 

と援護射撃をする。

 

「変なことされないようにね」

 

とちーちゃんは入る前提で話を進めてきた。止めてくれてもいいんだよ?

 

「幸い飯までまだ時間がある。姉弟水入らずで入ってこい」

 

と若葉。球子は、さっさと行け。みたいな顔をしている。

 

「では、行ってきますね!」

 

と俺を引っ張りながら言うお姉ちゃん。

 

「ちょっと待って!俺着替え持ってきてないんだけど⁉」

 

と慌てて言うと

 

「大丈夫ですそれも持ってきています」

 

と逃げ道をつぶしてくるお姉ちゃん。俺は反論する材料がなくなったのでせめてもの反抗として引きずられるままでいるのであった。

水着で入ることに許可が出ないと思ってたのだが、勇者の力はすごいらしく、簡単に了承された。

ちなみに今はお姉ちゃんが水着に着替えるのを待っている途中だ。

 

「もう入ってきて大丈夫ですよ」

 

と水着姿でいうお姉ちゃん。俺はしぶしぶ女湯と書かれた暖簾を潜り抜けるのであった。ちなみに女湯なのはお姉ちゃんがいるからだ。念のためね?脱衣場にて、お姉ちゃんが

 

「さぁ早く脱いでください。それとも1人じゃ脱げないですか?お姉ちゃんが脱がしてあげましょうか?」

 

と急かしてきた。

 

「ねぇ、俺の水着ないの?」

 

と聞いてみるが

 

「いや、体を洗うのですから、あっても着ないでください?そもそもひなとが水着要らないって言ったんですよ?分かったら早く脱いでくだい」

 

「アッハイ」

 

やむおえず俺は脱ぎ始めた。着るのは難しいが脱ぐのは簡単だなと思った。これがエントロピーのなんちゃらってやつか()。

脱ぐときにお姉ちゃんがまじまじと見てきて怖いのだが...

下着だけになった時、俺は椅子に座りあとはお姉ちゃんに任して目をつぶった。

全部脱ぎ終わったあとにお姉ちゃんに手を引かれ多分だけど体洗うとこに連れてかれた。

 

「ではまず髪を洗います。ここに椅子があるのでゆっくり腰を下ろしてください。」

 

言われた通りにする。するとシャワーの音が聞こえてきた。お湯が出るのを待ってるらしい。お湯になったのかシャワーがかかってきた。久しぶりのお湯だなぁと思っているとお姉ちゃんは優しい手つきで髪を洗ってく。ちょっと気持ちい。

頭が洗い終わったらしくお姉ちゃんが耳元で

 

「頭洗い終わったので、立ってください。」

 

と言ってきた。別に耳元じゃなくていいだろうに...

立つと

 

「じゃあ洗いますよー」

 

と、また耳元で言ってきた。

因みに俺は結構なくすぐったがりである。他人に軽く触られたぐらいで声が出るくらいの。つまりどういうことかというと

 

ひっ

 

お姉ちゃんが泡をつけてくるたびに悲鳴が出るということだ。

 

「相変わらずひなとはくすぐったがりですね~。でも少し我慢してくださいねー」

 

そう言って背中を洗ってくる、そして足に行き、前に行き胸を洗っていくのだが...このままいくとR18になりそうなのでカットじゃ

胸だけ執拗に洗われたことだけ言っていこう。

体が洗い終わって出ようかなーと思っているとお姉ちゃんが

 

「せかっくですし湯船に入りましょう?大丈夫です色つきのお風呂なので目を開けられますよ」

 

と言ってきて引っ張ってくる。出口の場所がわからないのでされるがままだ。

 

「段差あるので注意してくださいね。」

 

と言いながら引っ張ってくる。無事湯船に入ることができ目を開けてみたのだが、色つきの風呂ではなかった。なんとなく予想がついてたのですぐに上を向く。

 

「お姉ちゃん」

 

「はい。お姉ちゃんですよ」

 

「さすがに嘘はよくないんじゃない?さっきからだ洗うときに必要以上に体触ってきたのは体預けてるから仕方ないとはいえ」

 

「こうでもしないとひなとは湯船につからないでしょう?あと勇者はメンタル回復が必要ですからね。たまにはリフレッシュしないと」

 

「ゲームあるからいい」

 

「勝てなかったり、上手くいかないものでリフレッシュできるのですか?」

 

「っ...そ、それは...」

 

「まぁ今日ぐらいはゆっくり浸かってください」

 

「わかったよ」

 

上を向いていたため表情なんかはわからなかったが、休ませたい気持ちは伝わったので、素直に従っておく

 

しばらくして

 

「お姉ちゃん、出たい」

 

「はい。わかりました。じゃ引っ張りますね」

 

と言って脱衣所まで連れてかれる。そして体を拭いてもらい、下着、浴衣の着方もわからないので、着せてもらう。

 

「わが弟ながら浴衣が似合いますね~」

 

と言っていつの間にか手にしていたカメラで写真を撮り始めるお姉ちゃん。いつものことなので無視して部屋に戻る。

 

戻ると球子が

 

「お、ひなとにひなた。ちょうどよかったな今さっき飯が来たところだ」

 

と言ってきた。

 

自分の席に着くと隣に座ってたちーちゃんが

 

「浴衣似合ってるわ」

 

と言ってきた。

 

「ありがと」

 

礼は言ったが別にうれしいわけではない。とまぁそんな感じで飯を食い始める。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、満腹ー」

 

夕食を食べた後、球子はゴロリと畳の床に寝そべった。

 

「食べてすぐ寝ると牛になるよ、タマっち先輩」

 

「それが狙いだっ!タマは牛のようにでかく強くなるんだ、宇和島の闘牛のように!」

 

宇和島って闘牛いるんだ。って思ってると杏が

 

「そういう牛にはなれないと思う」

 

とツッコミをしたが、杏は全く聞いていない様子だ。

 

「ご飯、すごく豪華だったね。値段を想像すると怖いけど」

 

友奈の言う通り、旅館が用意した食事は、俺らが食べたこともないような珍味や高級食材を惜しげなく使っていたらしい。よくわからなかったけど()

何か思うところがあるのか、ひなたは思案顔を浮かべる。

 

「やはり、勇者への特別待遇なのでしょうね...。丸亀城にも、四国各地から『勇者様へ』と様々のものが贈られてきています。食べ物もですし、高級工芸品なども...」

 

食べ物はともかく工芸品を贈られてきてもな...

 

「そうだな。はじめは何かの宣伝目的の贈答品かと思ってたが...違う」

 

「というか、温泉旅館が完全貸し切りってのも、破格の待遇だしな」

 

球子の言葉に、杏が困ったような笑顔を見せる。

 

「こんなすごい扱いされると、なんだかえらい政治家さんか、有名芸能人みたい」

 

「むしろ当然の待遇だわ...私たちは政治家や芸能人なんかには、到底できないことを...やっているのだから」

 

ちーちゃんは淡々としている。

 

「さて、温泉も入ったし、ご飯も食べたし...でも、寝るにはまだ早いな。ゲームでもやるか」

 

寝転がっていた球子が起き上がる。

 

「ゲームですか...こんなこともあろうかと、将棋盤を持ってきました」

 

ひなたがバックから、玩具ショップに売ってある持ち込みタイプの小型将棋を取り出す。

 

「ヒナちゃん、渋いね!私は王道だけど、トランプ持ってきたよ」

 

友奈がバックから取り出したのは、トランプの束だ。

 

「ゲームなら...そこにあるわ...」

 

そう言ってちーちゃんは部屋に置かれたテレビのほうを指差す。テレビ台の下に、ゲームソフトと最新の据え置きゲームハードが仕舞われていた。

 

「他にも、人狼だったら紙とペンとスマホアプリがあればできますね」

 

という杏

 

「よし、だったら全部やるっ!そしてタマが全部勝つっ!」

 

となんか言ってたので

 

「そういってると勝てないぞー」

 

と言っといた

 

案の定球子は全部勝てなかった。

正確に言えば、勝っていたのはちーちゃんだけだった。ちーちゃん無双だった。

テレビゲームをはじめ、将棋、トランプ、人狼...あらゆるゲームで、誰もちーちゃんに敵わない。

 

「ぐんちゃん、すごい!」

 

ちーちゃんを尊敬の目で見つめる友奈。

 

「相変わらずなことで...」

 

と半分呆れ半分尊敬の俺。ちーちゃんは無表情だが、ほんの少しだけ、嬉しそうに口元が緩んでた。

一方、ちーちゃんに負けまくった、敗北者じゃけ―な、杏と球子は自信を喪失し、部屋の隅で体育座りをしている。

しかし、その状況にもやがて変化が起きた。

ゲームをあまりやらない若葉は、はじめは勝負の駆け引きに慣れず戸惑ってばかりいたが、次第にコツをつかみ、ちーちゃんと互角に戦うようになっていた。

今はトランプのスピードで勝負をしているとこだが、若葉とちーちゃんの頂上決戦である。ちなみにそれ以外は全く勝負にならなかった。またもや、敗北者じゃけ―な、杏と球子は自信を喪失し、部屋の隅で体育座りをしている。

三回勝負で現在どちらも一勝一敗。

若葉とちーちゃんが対峙する。

 

「ちーちゃんガンバー」

 

というとちーちゃんは

 

「...負けない、絶対...」

 

と小さくつぶやいた。すると若葉は

 

「私への応援はないのか⁉」

 

と言った。そうして勝負が始まる。二人の手が動き、目にも留まらぬ速さで次々に札を出していく。

わずかに若葉の札の方が早く減っている。この勝負、若葉の勝利...

 

「うひゃああぁ⁉」

 

突然奇声を上げ、若葉は手に持っていた手札をばらまいた。

お姉ちゃんが若葉の耳の後ろから甘噛みしていた。

 

「な、何をする、ひなたぁ⁉」

 

若葉がひなとに抗議している間に、ちーちゃんは札を出し終わってしまった。

 

「勝者、ぐんちゃん!」

 

友奈がちーちゃんの手を上げる。

 

お姉ちゃんは若葉を叱るように、

 

「ダメですよ、若葉ちゃん。ゲームなんだから、そんな顔しないで、もっと楽しんでやらないと」

 

「だ、だからと言って...く、くすぐったいだろう...!」

 

若葉は顔を赤くしながら、ひなたを警戒して身構える。

 

「若葉ちゃんの弱点はすべて把握済みですからね」

 

「何、若葉の弱点だとっ?」

 

「まさか若葉さん、くすぐったがりなんですか⁉」

 

体育座りしていた球子と杏が、突如、目を光らせて立ち上がる。今こそ復讐のチャンスだとばかりに。

 

「行くぞ、杏っ!同時攻撃だっ!」

 

「まかせて!」

 

球子と杏が左右から若葉に組み付き、脇をくすぐり始める。

 

「思いっきりくすぐってやれっ!」

 

「うん!こちょこちょ...」

 

「...」

 

若葉は平然としていた。

 

「...思いっきりくすっぐってやれっ!」

 

「...うん!こちょこちょ...」

 

「...」

 

若葉はやはり平然としていた。

 

「「あれぇ⁉」」

 

全くくすぐりが効かず、球子と杏が目を丸くする。

 

「ふ、ふ、ふ、...」

 

若葉は球子と杏を見下ろす。その笑顔は笑顔だった。最も、眉は逆立っていたが...

球子は杏は顔を引きつらせる。直ちに、今すぐ、可及的速やかに、若葉のそばから身げねば危険だ。しかし若葉から出た言葉は予想外なものだった。

 

「本当にくすがったがりなのは、そこにいるひなとだ。今私にやったことをひなとにやったら特別に許してやろう」

 

と悪い笑みをしていった。と言った瞬間二人の視線がこっちに来た。俺はちーちゃんのかげに隠れた。だがちーちゃんは

 

「ほら行ってきなさい」

 

と言ってきて二人に突き出してきた。うそでしょ...

 

「ひなとすまんな...」

 

「同学年、男性とはいえ、ロリをくすぐる...なんか興奮してきました~」

 

杏が危険なことを言ってきてるよ~

 

「「覚悟!」」

 

と言って球子と杏が左右から俺に組み付き、脇をくすぐり始める。

 

「ちょっ、や、やめっ、アハハ、ちょ、マジでや、...やめて...し、しん...じゃ...う...」

 

しばらくしてくすぐりが終わる。

 

はぁ、はぁ...もう...無理...

 

とつぶやいて俺の意識は落ちるのであった




なんか俺が書くとキャラが変態になる気がする()
ちょっと原作の六話が長く、分けることにしました。


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第7話 亀裂

はいいつも通りです(名前じゃないよ?)
今回は原作6話の続きのため少し短いです。
お気に入り登録ありがとうございます!皆様の暇つぶしになれば幸いです



目を覚ますと、杏、珠子、若葉が正座してお姉ちゃんの説教を受けているとこだった。

 

「杏さん!珠子さん!やりすぎです!若葉ちゃんに言われた事と言っても気絶するまでやることないでしょう!?」

 

それを言われ杏が顔を俯かせながら言い訳を言う

 

「す、すいません!まさか1分くすぐった程度で気絶するなんて思いもしなくて...」

言い訳は結構です!それに...謝るならひなとに謝ってください。...でもまぁくすぐられてる様子を撮れたのでおふたりの説教は、これぐらいにしといてあげましょう。ですがまだ正座をしていてください」

 

「「そんなぁ〜」」

 

と二人は悲鳴をあげる。というかお姉ちゃんしれっと撮ってる発言してんじゃねぇ...

 

「さぁ次は若葉ちゃんです」

 

そう、お姉ちゃんが言うと若葉はビクッと震える。

 

「まず、なぜひなとがくすぐったがりなのを知っていながら、しかも珠子さんたちに教えてくすぐらせたのでしょうか?」

 

「い、いやぁなんかひなとが千景しか応援しないから、ちょっとイタズラしてやろーって思って...」

 

「ひなとは千景さんの彼ピッピなのですから応援するのは当然でしょう!?それにイタズラにしては度が過ぎてると思うのですが...?」

 

「うっ...」

 

若葉は気まずそうに下を向く。彼ピッピって...

突如

 

ひゃううぅ!

 

と若葉が悲鳴を出した。

 

お姉ちゃんが耳に息をふきかけたらしい。

そして耳元で

 

「確か乃木の生き様は、何事にも報いでしたよねぇ?」

 

そう言ってお姉ちゃんはまた耳に息をふきかけた。

 

ひゃう!?そ、そうだが…」

 

それを聞いてお姉ちゃんはニコッと笑みを浮かべ、

 

「私は乃木ではありませんが、今回はそれを使わさせていただきますね?」

 

「な、何をするんだ...?」

 

「それはもう杏さん達がひなとにしてきたことですよ〜。って言っても流石に気絶するまではやりませんが…気絶する瞬間まで若葉ちゃんの耳を虐めてあげますね?」

 

「ひっ!ま、待てひなた!私が悪かった。悪かったから許してくれ!」

 

「問答無用です♡」

 

そう言って若葉への拷m...もとい報いが始まる。

急に頭に、優しい感触が来る。

そーいえば枕にしては柔らかいなーって思って上を見るとちーちゃんがいた。

...なるほど俺はちーちゃんに膝枕されていたらしい。

 

「あ...ひなと君起きた...?」

 

「え、あ、うん。ごめんすぐ起きるね」

 

と言って起きようとしたが、ちーちゃんに押さえつけられる。

 

「いいから、しばらくこうしてましょ?それに私が伊予島さん達に突き出してしまったからこうなっちゃったのかな...て思ってたりするから...それのお詫びみたいな感じかしら?」

 

「そんなのいいよ...あ、でも俺がいる時だけホラゲするのやめてくれたらもっといいかな?」

 

「無理な相談ね」

 

と会話してると

 

「ヒューラブラブだね!」

 

と友奈の冷やかしが入る。

 

「うるさい...」

 

と返すと

 

「わぁ〜ひなとくん顔真っ赤!」

 

とカウンター?された。

恥ずいので黙ってる。ずっと撫でられてると眠くなってしまう...

 

「ひなと君...眠いの...?」

 

...うん...

 

「そう...ならこのまま寝ていいわよ...」

 

その声を聞いて俺は再び意識を手放す。

 

 

目を覚ますと、俺は布団の中にいて、若葉は、窓の前に立って、夜に沈む町を見下ろしていた。

俺は体を起こす。その音を聞いて若葉がこっちを向いた。

 

「ひなと...起こしてしまったか?」

 

と言ってきたので、

 

「いや全然?」

 

そう言って俺は窓際に置かれた椅子に腰かける。

街の向こうには、夜闇に沈んで黒く染った海が拡がっていたので、

 

「海...見てたの?」

 

と聞いた。その質問に若葉は頷きながら言った

 

「ああ。習慣なんだ。丸亀城でも海を見ていた。3年前の日のことを忘れないように、そして壁の向こうの世界を忘れないようにな...」

 

「なぁ、なんかお姉ちゃんからなんか言われた?」

 

「わかるか?」

 

「何となく」

 

まぁほんとは原作読んでるからわかるだけだけど...

 

「ひなたは、『遠くのばかりじゃなくて、もっと近くを...自分の周りのことを見てあげた方がいいのかもしれません』と言っていた。これの意味がお前にはわかるか?」

 

「わかるが...お姉ちゃんに自分で気づかないと意味ないって言われなかったか?」

 

そういうと、若葉は少し驚いたような表情をし、

 

「さすが姉弟だな...そんなこともわかるんだな」

 

「まぁなー」

 

本当は以下同文

 

「まぁお姉ちゃんの言ってたことをしっかりと考えるんだな。俺は座ったまま寝るわ。布団にいる方がなんか色々やばいだろうし...」

 

と言って、椅子の上で丸まる。すると若葉は苦笑しながら

 

「別にそんなことは無いだろうが...まぁそうしたければそうしとけ。それではおやすみ」

 

「ああ。おやすみ」

 

そう言って俺はまた意識を手放す。

 

お姉ちゃんが若葉に言った言葉の意味を若葉は、間もなく知ることになった。

 

 

 

 

樹海にて...

 

「...多すぎる」

 

と、隣にいる若葉がスマホに表示されたマップを見ながら、険しい表情を浮かべた。

ちなみにこの襲撃は、丸亀城に帰ってから半月ほどした頃だ。

マップを見ながら

 

やべぇ多い

 

と思う。

 

「今までの10倍...?ううん、もっといるかも」

 

友奈も敵を示す印で埋め尽くされたマップを見ながら呟いた。その声は、少し緊張気味だ。

 

「私が先頭に立つ」

 

そう言って若葉は地面を蹴り、敵軍に向かって跳躍した。

 

「待ってください、若葉さ―」

 

杏が制止の声を上げるが、既に若葉は動き出していた。

丸亀城から1人だけ突出してきた若葉を、バーテックスたちが取り囲んでいく。

 

若葉が一人飛び込んでいったあと、バーテックスの動きに異常があることに気づいた。

 

「どういうことだよっ!?あいつら、タマたちの方へ来ないぞ!」

 

珠子の言葉通り、バーテックスは若葉を取り囲んだまま、こちらの方へ全く近づいてこない。

 

杏は若葉を取り囲んでいく無数の敵たちを見ながら、

 

「バーテックスは、まず若葉さんを潰す気です...!

 

と叫んだ。

俺達も状況をただ見てるだけではない。すぐに若葉をへしはけ助けに向かおうとするが、それより先に、敵に次の動きが起きた。

若葉を取り囲んでいたバーテックスの一部が別行動を始め、神樹の方向へ向かい始めた。

 

「厄介ね...」

 

ちーちゃんは状況を見ながら苛立つように呟いた。

一部と言ったが、侵入してきた数が多すぎるので、普段全員で立ち向かうような数だ。若葉を助けに行くことよりも、神樹を守ることを優先せざるを得ない。

だが俺は神樹に対してそこまでの思いは無いため若葉の方に行く気満々である。

 

「なぁみんな...ここ任しても大丈夫か?」

 

と聞く。するとみんなから大丈夫とかえってきたので、俺は若葉の方に跳躍する。

バーテックスが若葉の腕を喰らおうとしていたので、

 

「若葉ぁ!」

 

と言って、俺は若葉を蹴って庇う。直後俺の右腕に激痛が走る。

 

ぐっ!

 

普段は盾なので防ぐため、痛みになれていなかった。その隙をバーテックスにつかれ、バーテックスの突撃を受ける

 

うあっ!

 

俺は吹っ飛ばされ、樹海の植物のく気にたたきつけられる。そしてすぐさま、大量のバーテックスが群がってくる。俺は痛みがある右腕を無理やり動かし1枚のカードを取りだし使う。

 

『ATTACKRIDE 七人ミサキ!』

 

その瞬間俺は分裂する。そして群がってきたバーテックスをぶん殴って粉砕する。すると若葉がこっちへ来て、

 

なぜ...ここに来た!?

 

と怒鳴ってきたそれに対し俺も少し怒気を混ぜて

 

馬鹿か!突っ込みすぎなんだよ!

 

と叫ぶ。そう話してる間に俺達はバーテックスに囲まれていた。七人ミサキを使ったのに対処しきれないとは...

俺と若葉は背を合わせて立つ

 

「ひなと...必ず生き残れよ」

 

「そっちこそな」

 

そう言って俺達は周囲の無数のバーテックスへ武器を振るう

 

 

 

 

体感時間で6時間ぐらいだろうか?そんな長い戦いの末俺達はかろうじて、バーテックスの撃退に成功する。だがずっと七人ミサキを使っていたせいか、戦いが終わったあと俺は意識を手放すのであった...

 

 

 

 

ひなとが病院へ運ばれたあと

若葉の頬に千景の平手打ちが入った。

 

「乃木さん...どうしてあなた、あんな勝手なことを、したの...!?」

 

若葉は千景の攻めを無言で受ける。

 

「あなたが1人だけで勝手に戦おうとするから...ひなと君が...!」

 

珠子と杏は何も言わず若葉たちを見守っていた。友奈は1人アワアワしてたが...

 

「自分勝手に特攻して...ひなと君を巻き込んで...!せめて神樹の精霊の力を使って戦えば、ひなと君の負担は減ったのに...あなたはひなと君に精霊の力を使わせただけで自分は使わなかった...!」

 

千景の言葉は真実で、だから若葉は何も言い返せない。

若葉は思う。

すべて...私の判断ミスと思い上がりだ...と。

自分一人で戦ってるかのような突出と、怒りに任せた暴走とも言える行動。それがひなとに危険を巻き込む結果になってしまった。

精霊の力を使わなかったのは、あの戦い方は消耗が激しく、長期戦に向かないからだ。しかしその判断も、やはり『敵を一体でも多く倒す』ことしかかんがえていなかった。精霊の力を使っていれば、ひなたの負担を減らす戦い方もあったかもしれない。

 

「あなたは...周りが何も見えていない...!自分が、勇者のリーダーだってこと...もっと自覚すべきよ...!!」

 

勇者の先頭に立つ人間としてふさわしいのか

かつて自分に向けたといが、再び若葉の心に浮かぶ。

冬の空は冷たく重く、勇者たちの頭上を覆っていた。




今回主人公意識を手放しすぎじゃね?
ま、いっか(思考放棄)
プロローグ以外で第三者視点的なものを使ってしまった
次回は主人公入院してるので第三者視点が多いかもしれません...


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第8話 戦う理由

更新ペース落ちたぁ
あ、諸々含めていつも通りです。
今回いつもより長いです。
ほぼ原作ぅ...


若葉視点...?

目を開けると、視界に白い天井が広がっていた。

わかばは一瞬自分がどこにいるのかわからなくなった。

周囲を見渡し、「ああ、ここは病院だった」と思い出す。

 

「目を覚ましましたか、若葉ちゃん」

 

わかばが横たわっているベットの隣に、ひなたが座っていた。

過去最大規模のバーテックス侵攻の後、勇者たちは治療と身体検査のため入院することとなった。若葉を含めて全員が戦いで傷を負ってたし、勇者の力を長時間使った影響を調べる必要があったからだ。

若葉の体にそこまで目立った外傷はなかったが、筋肉や間接の各所が炎症を起こし、一部に疲労骨折も起こっていたため、しばらく運動は控えなければならないといわれた。

中学生も言う年齢では、肉体は大人ほど出来上がっていないのだ。神樹の力で強化しているとはいえ、体の酷使は本来良いことではない。

若葉はベッドから身を起こす。

 

「何か食べますか?」

 

ひなたは『勇者様へのお見舞い』として市民から送られた果物の中から、リンゴを手に取り、ナイフで皮を剥いていく。櫛形に切られたリンゴに爪楊枝を挿して、若葉に差し出した。

リンゴを2、3個食べさせてもらった後、若葉はベッドから下りる。

 

「ひなとの様子を見に行かないと」

 

「...そうですね」

 

僅かためらうような間があって、ひなたは頷いた。

歩こうとするとふらつく若葉の肩を、ひなたが支える。

一歩進むごとに、若葉は身体の内側が痛んだ

 

ひなたの肩を借りて、若葉は特別治療医療室の前にやってきた。

杏と珠子もそこにいた。珠子は廊下に置かれた長椅子に腰かけ、うなだれている。杏はそんな珠子の横に座り、どうすればいいのか迷うように視線を彷徨わせていた。

 

「あ、若葉さん」

 

杏はわかばがやってきたことに気づき、声をかける。

 

「ひなと様子は...どうだ?」

 

重い口調の若葉の問いに、杏は若葉の目を見て答える。

 

「身体には右腕が傷ついてるくらいで他はなんともないようです...ただ、精霊の使いすぎか、まだ意識が戻らりません。」

 

「そうか...」

 

ガラス窓越しに、治療室の中でベッドに横たわるひなとの姿が見える。右腕に包帯をつけており、反対の腕に点滴が刺されている。

 

「それにしてもただ目を覚まさないくらいでなぜ特別治療室なんでしょう...?」

 

ひなたが不思議そうに言う。

いつも騒がしい珠子も今は何も言えないでいる。

治療室の前に残された4人は、みんな何を話せばいいのか迷うように言葉に詰まっていた。

無言の時間がどれほど過ぎただろうか。

点滴スタンドを押しながら、友奈と千景が姿を現した。

千景は口をつぐんだまま若葉の横を通り過ぎ、ガラス窓の向こうのひなとの姿を見る。そして悔しげに唇をかみ締めた。友奈はそんな千景と若葉を不安そうな目で見ている。

 

「どうして...こんなことに...」

 

自分の無力さを嘆くように。

この世界を呪うように。

千景はつぶやいた。

そして若葉に視線を向ける。泣いているのか、寝不足なのか、千景の目は赤くなっていた。

 

「これが...あなたの引き起こした結果よ...」

 

若葉は無言で千景の責めを受ける。ひなとがここまで意識が戻らない責任を、若葉も自覚していた。

 

「何故こんなことになったのか...あなたは分かっているの...?」

 

「分かっている。私の突出と無策が全ての原因だ...」

 

暴走とも言える単独行動。それがこの結果をもたらした。

 

違う...!

 

千景は絞り出すように叫んだ。

 

「やっぱりあなたは分かっていない...!一番の問題は、戦う理由なのよ...!」

 

「戦う、理由...?」

 

彼女の言葉の意味が、若葉には分からない。

 

あなたはいつも、バーテックスへの復讐のためだけに戦っている...!だから...怒りで我を忘れてしまう...!自分が周りの人間を危険に晒しても、気づきさえしない!!

 

「.....」

 

千景の言葉が病院の廊下に響き渡る。

珠子にもその声は聞こえているだろうが、何も言わず俯いたままだった。彼女も今は、若葉を擁護することは出来ないのだろう。

 

「あなたに...私たちのリーダーとしての資格なんて、ない...!あなたが戦うことで、ひなと君は傷ついた...きっとこれからも、同じことが起こる!だったら...もうー」

 

言い過ぎです!

 

千景の声を止めたのは杏だった。

 

「若葉さんは、今までずっと先頭に立って戦ってきたんですよ。そのやり方が強引でも...全てを否定するのは間違っています」

 

「...っ!」

 

千景が杏のそばに歩いていこうとすると

 

友奈さん!?

 

と、突然ひなたの叫び声があがる。

友奈が倒れそうになっていたのだ。慌ててひなたは駆け寄って支える。

 

あはは...ごめんヒナちゃん...もう大丈夫...

 

そんなことがあってか皆頭が冷えたのかそれから誰も話すことなく、それぞれ自分の病室に戻っていった。

千景と友奈だけが特別治療室の前に残っていた。

 

「乃木さん...あなたがこのまま変わらなければ...もう私は、あなたと一緒に戦うことは出来ない...」

 

ひなとの姿を見つめながら、千景は若葉にそう告げた。

そんな千景を友奈は心配そうな顔で見ていた。

 

就寝時間が過ぎても若葉は寝ることができず、ずっと病室の天井を見つめていた。

昼間、千景に言われた言葉が、何度も何度も頭をよぎる。

 

(復讐のためだけに戦っている、か)

 

敵に報いを与えること

 

それが若葉の行動原理だった。殺され、苦しめられた人々の怒りと悲しみをバーテックスに返す。その一心で己を塗りつぶし、戦場にたっていたのだ。

それを否定されては...一体これから、どうやって戦っていけばいいのか。

分からない。

今の若葉は、足元さえおぼつかない子供のようなものだった。自分の立ち位置が見えなくなり、どこへ向かえばいいのかもわからず、ただその場に立ち尽くしている。

 

翌日、検査と治療が終わった若葉たちは、退院することになった。

ただ友奈は退院できなかった。昨日倒れかけたから、検査が続くことになったのだ。

勇者としての訓練はまだ出来ないが、日常生活に支障はない。

しかし未だにひなとは意識を取り戻していなかった。そして若葉は、自分の心のうちにある迷いをどうすればいいのか、答えを出せずにいた。

珠子、杏、千景も退院して学校に戻ったが、以前とは空気が違っていた。休み時間や昼食時間、誰もが言葉が少ない。いつも、うどん食えという相手がいないことに寂しさを感じる。

もしこの場に友奈がいれば、彼女がみんなの中を取り持ち、この重い空気を消してくれていただろう。しかしここに友奈はいない。本来であれば、この空気を変える役目はリーダーである若葉がやるべきだろうが、彼女はそんなことが出来るほど器用ではなかった。

 

その夜、若葉はひなたの部屋を訪れた。

不安を握りしめるように、枕を抱えて。

部屋のドアを開けると、ひなたが忙しなくバックに服やノートなどを詰め込んでいた。

 

「何をやっているんだ、ひなた?」

 

「ああ、若葉ちゃん、いらっしゃい。今、ちょっと荷物をまとめているんです。」

 

「...?なんでそんなことをしている?」

 

ひなたは荷物を詰め終わったバッグのファスナーを閉めながら、答える。

 

「明日、この寮を出ます」

 

え!?な、何があったんだ!?

 

若葉は動揺して枕を握りしめる。なぜひなたが寮を出て行くのか?まさか『勇者付き添いの巫女』という立場が変わってしまったのか?いや、そもそも巫女の本来の役割は勇者の付き添いではないのだから、今までずっとひなたがこの学校にいたのがおかしかったのではないか?だとしたら、ひなたは本来の巫女の御役目に戻るだけでありー

ぐるぐると若葉の思考が回っていると、ひなたは安心させるようにクスリと笑う。

 

「若葉ちゃん、動揺しすぎです。別にずっとこの寮からいなくなるわけじゃないですよ。ほんの少しの間だけです。大社の本部に呼び出されてしまって」

 

若葉はホッとしてため息をついた。

 

「そ、そうか...。しかし、いったいなぜ突然?」

 

大社からの呼び出しなど、滅多にあるものでは無い。若葉たちの学校に大社の職員が出入りしているのだから、たいていの用事は、彼らを通じてやり取りすればいいからだ。

ひなたの表情が少し曇る。

 

「理由は聞かせて貰えませんでした。ですが、年が明けてから色々ありましたからね...前回のバーテックスの襲撃は今までとは比べ物にならないほど大規模でしたし、重傷者も出てしまいましたから...」

 

バーテックスの四国への侵攻が始まってから数ヶ月ー今、何かが大きく動こうとしているのかもしれない。バーテックス側も、人間側も...

 

「ところで、若葉ちゃんは何か用事でもあったんですか?こんな夜中に...ひなとだったら怖い夢見たーとか寝れないから来るとかの時間ですけど...」

 

「あ、う、そうだな...」

 

わかばは言い出しづらそうに口ごもる。

幼なじみのその姿を見て、ひなたはベットに腰かけ、ポンポンと自分の膝を叩いた。

 

若葉はひなたに膝枕してもらいながら、ぽつぽつと話し始める。

千景に言われたこと。

自分がこれからどう戦えばいいのか分からなくなったこと。

今までの自分が間違っていたのかという迷いー

話してるうちに、若葉の目に涙が浮かんだ。幼い頃から、若葉が他人に涙を見せることはまったくなかった。しかし、ひなたに対してだけは別だ。彼女の前だけは、若葉は身も心も無防備になる。

 

「私はどうすればいいんだろうか...?」

 

「...」

 

ひなたは若葉の問いに、答えることが出来ずにいた。

若葉はいつだって、迷った時にはひなたに頼ってきた。ひなたは、いつもそれに応えてきた。

世界を守る勇者という重責を負う若葉に対しーそして幼い時からずっと一緒に過ごしてきた一番の親友に対し、できる限りの事はしてあげたいと思う。自分だけは素直に頼ってきてくれる若葉を、愛しいと思う。

しかし、今ここで若葉に答えを教えることが、本当に正しいのだろうか?

若葉が抱える問題点と、その解決法を、ひなたが言葉で教えることは出来る。そして飲み込みの早い若葉は、すぐに状況を改善できるだろう。

ーその方法は本当に正しいのだろうか?

表面的に問題をなくすことはできたとしても、若葉の内面はきっと変わらない。ひなた以外の誰も気づいていない、若葉の精神的脆さは消えないままだ。それはいずれ、若葉の命を危険に晒すことになるかもしれない。

 

「...」

 

若葉はひなたの言葉を待つ。

だか、ひなたは若葉に、答えを与えることはなかった。

 

「今、若葉ちゃんが抱える問題は、自分で答えを探して、自分で乗り越えるしかありません」

 

「え...」

 

若葉は耳を疑った。ひなたの言葉はー口調こそ優しかったが、若葉を突き放すものだ。

ひなたはハンカチで幼なじみの涙を拭う。

 

「ほら、もう泣かないでください。泣き顔、撮っちゃいますよ」

 

スマホを取り出して、若葉に向ける。

 

「...勝手に取ればいいだろう」

 

不貞腐れるように言う若葉

ひなたはスマホのカメラのシャッターボタンを押した。

 

「本当に撮った...」

 

若葉はひなたにジト目を向ける。

 

「明日から、少しの間ですが、若葉ちゃんに会えませんからね。若葉ちゃん分の補充が必要なんです」

 

ひなたはスマホに写った若葉の写真を見る。

この泣き顔が、大社から戻ってきた時には、前向きな顔になっていますようにー

そう願う。

 

「若葉ちゃんならきっと、今抱えている問題を自分で乗り越えることができます...私は、そう信じています」

 

 

 

 

翌日早朝、まだ日も昇らない薄明のうちに、ひなたは大社の使者に連れられて寮を出た。出発の時間は誰にも教えていなかったため、ひなたを見送るものはいなかった。

彼女は途中、何度も丸亀城の方を振り返った。

若葉のことも、険悪な空気になったままの勇者たちを残していくのも、不安だった。

しかし、大社管理下に置かれている巫女のひなたに、招集を拒否する権利はない。

後ろ髪引かれる思いでひなたは寮を去る。

そんな彼女の姿を、たまたま朝早く目を覚ました杏が、寮の窓から見下ろしていた。

 

「ひなたさん...」

 

遠目にだが、ひなたの表情は見える。若葉を含めた今の勇者たちの状態を考えれば、ひなたが抱えている不安が何なのか、杏にも想像はできた。

 

 

 

 

その日、学校が始まっても若葉はずっと沈みこんでいた。授業中も休み時間も、席から一歩も動かず、俯いたまま動かない。まるで陰キャのようだ。しかも時々、ものすごい深いため息をつく。

 

「はぁぁぁ〜...」

 

昼休みはいつも全員で一緒に食堂へ行くことになっているが、珠子が何度若葉に呼びかけても返事がない。

 

「屍かっ!」

 

と珠子がツッコミを入れるも、若葉は気づきもせずにスルーしてしまった。

 

「ダメだありゃ。完全に魂が抜けてやがる」

 

「...仕方ないよ。ひなと君の件があって、今はひなたさんもいないんだから...」

 

「しっかし、あのままにしておくのも、なぁ...」

 

楽天家の珠子も、今の若葉はさすがに放っておけないようだった。

 

 

 

 

結局、若葉は放課後まで誰とも話すことなく、ずっと俯いて過ごしていた。

 

(私はひなたにも愛想をつかされてしまったのだろうか...)

 

今朝、若葉が目を覚ました時、ひなたはもう寮からいなくなっていた。既に大社本部へと行ってしまったらしい。見送りさえできなかった。

どうしてひなたは、出発する時間を教えてくれなかったのだろう。今までの彼女であれば、少なくとも若葉だけには、時間を教えてくれたはずだ。昨夜のこともあり、若葉はひなたに拒絶されてしまったように感じていた。

 

(仕方ないか...私は勇者のリーダーでありながら、ほかの勇者を助けるどころか、危険に晒してしまったのだ。しかもひなたがとても愛している弟をだ。もはや市中引き回し、鞭打ち、磔、獄門...どんな処罰でも受けようフフフ...)

 

そんなことまで考えてしまっていた時、杏が若葉の机の前に立った。

 

「若葉さん」

 

「...なんだ?」

 

かおをあげ、覇気のない表情で杏を見る若葉。

 

「ちょっと出かけましょう!」

 

 

 

 

杏に引っ張られるようにして、若葉は学校から町へ出た。

丸亀城周辺は古くから城下町として栄え、現在でも市街地として多くの人が生活している。バーテックスが出現した3年前以降、四国の外から移住してきた人も多い。

(急に外に連れ出して、どういうつもりだ...?)

杏の意図が分からないまま、若葉は歩く。

そして杏は、ある民家の前で立ち止まった。

 

「ーこの家の住む大学生のお姉さんは、3年前、広島の大学に通っていました。バーテックスが現れた日...四国に避難することは出来ましたが、天空恐怖症候群を発症。ご家族も本人もずっと苦しんでいました。でも、勇者がバーテックスに勝ったというニュースを聞いた日から、少しずつ心が安定して症状が改善しているそうです」

 

若葉は杏の意図が掴めないまま、その言葉を聞いていた。

杏は再び歩き出し、また別の家の前で立ち止まる。

 

「この家のご家族は、ずーっと昔から丸亀市で暮らし、地元に強い愛情を持っています。もし勇者が四国を守ってくれていなかったら、大切な故郷を失ってしまったていただろうと言っていたそうです」

 

そしてまた歩き出し、今度はあるアパートの前で立ち止まった。

 

「ここに住んでいるのは、ほとんどが本州や九州から移り住んできた方たちです。四国外から避難してきた人の多くは、バーテックスのせいでご家族を亡くし、仕事も家も失って生きる気力を失っていました。自殺しようとする人もたくさんいました。でも、勇者の戦う姿を見て、前向きさを取り戻していっているそうです」

 

四国に住む人々は、全て三年前の悲劇を経験している。そして間接的にしろ直接的にしろ、四国を守る勇者のお陰で、今を生き長らえているのだ。

 

「私、時々町の中を散歩したりするんです。そしたら、町の人がどんな暮らしをしているか、声が聞こえてきて。私が勇者だって気づいて、話しかけてきてくれる人もいます」

 

「そうなのか...」

 

若葉は町に出ることがほとんどない。丸亀城と寮だけで生活は完結するし、若葉は勇者の中でも特に市民から顔を知られているから、外出は極力避けるよう言われていた。

杏は歩きながら、しばしば立ち止まっては、町で暮らす人々の生活を語る。

途中、ベビーカーを押して歩く女性と出会った。

彼女は若葉の顔を見て立ち止まり、驚いた表情を浮かべる。

 

「あの...もしかして、乃木若葉様ですか?」

 

若葉が戸惑いながら頷くと、ベビーカーの女性は頭を下げ、

 

「ありがとうございます」

 

と告げた。心からそう言っていることが伝わってくる口調だった。

 

「私は、...三年前、島根の神社に乃木様と共に避難していたものです。」

 

彼女とその夫は、若葉が島根から四国へ避難者を連れて戻った時に同行していたのだという。

若葉のお陰で命を救われたのだ。

そして3年が過ぎた今、若葉が救った二つの命から、また新たな命が生まれた。

 

「この子には『若葉』と名づけました。勇者様の名前にちなんで...。本当にありがとうございました。やっと...直にお礼を言うことができました」

 

若葉は赤ん坊を抱かせてもらった。

生命の温かさと重さを感じる。

女性は目に涙を浮かべながら、何度も感謝の言葉を口にした。

そして女性が去った後、杏は若葉に告げる。

 

「これが、若葉さんが守っているものです」

 

「私が...守っているもの」

 

杏の言葉を、若葉は呆然と繰り返す。

何かがー

何かが、若葉の心の中で変わっていくような気がした。

(そうか…)

若葉は瞼を閉じる。

バーテックス襲来の日の光景は、今でも鮮明に思い出せる。脳裏に焼き付いている。

目の前で食われていく人々。

変わり果てた姿になったクラスメイト。

動く化け物たちの姿。

荒廃した国土。

その記憶は長い時間が経っても、悪夢のように若葉の体に染み付いている。

(...あの日の記憶に、ずっと囚われていた…)

トラウマだったのだ。

3年前の惨劇は、幼かった若葉の心に、深い傷を与えた。

どんなに気丈に振舞っても、化け物たちを一掃できるほど強くなっても、その傷は残り続けていた。

傷は若葉に、死者の復讐を求め続けた。

バーテックスを前にして怒りに我を忘れてしまうのも、復讐にこだわりすぎるのも、その傷が深く深く残っているから。

(だが...もう、乗り越えなければ)

 

いつまでも過去に囚われては行けない。若葉は今、多くの人々の生命を背負っている。

死者のためでなく、生者のために戦わなければわならない。

いなくなった者ではなく、側にいる者に目を向けなければならない。

 

ー遠くばかりじゃなくて、もっと近くを...自分の周りの人のことを見てあげた方がいいのかも知れません。

 

あの夜ひなたが言っていた言葉の意味が、ようやく若葉にも分かった。

 

「だから、ひなたは私を突き放したのだな...」

 

自分が抱えている弱さには、自分で気づかなければ意味が無い。ひなたは若葉を思いやるからこそ、何も言わなかったのだ。

杏は頷いて、微笑んだ。

 

「寮を出て行く時のひなたさんを、たまたま見かけたんです。すごく心配そうな顔をしていました。きっと若葉さんのことを気にかけていたんだと思います。だから、私何とかしないとって思って」

 

「ありがとう...。杏、お前は...良い奴だな」

 

「どういたしまして。私、勇者としては少し頼りないですけど、仲間ですから!」

 

杏は胸を張って言う。

 

「...頼りないなんてことは無い。杏の射撃の精密さは誰もが認めるところだし、長距離からの援護に助けられることも多い。それに、前のバーテックスと戦いの時には、杏の機転があったからこそ勝利できたんだ」

 

「う...若葉さんに褒められると、すごく照れます…」

 

そんなふうに若葉と杏が並んで歩きながら話していると、突然二人の間からにょっきりと珠子が顔を出す。

 

「二人だけで何楽しそうにしてるんだよー、タマも混ぜろよー」

 

「タマっち先輩?なんでここに?」

 

杏が驚いていると、珠子は唇を尖らせる。

 

「あんずと若葉が深刻そうな顔して学校を出て行ったから、心配して後を追って来たんだ。もしかしたら、喧嘩でもするんじゃないかって。そしたら、喧嘩どころか、なんか二人で楽しそうに話してるしっ!」

 

「...すまない、心配させてしまったようだ」

 

「べ、別に謝って欲しいわけじゃねーけどさっ!」

 

むしろ謝られてきまりが悪いのか、珠子はそっぽを向く。

 

「珠子は私たちのことを心配してくれたのだな…。珠子は勢いのある戦い方でみんなの士気を高めている上に、そんなふうにほかの仲間の気配りもできる。お前は、本当に掛け替えのない仲間だ」

 

「はぁ!?な、なんだよっ、急にっ!褒め殺してなにか企んでやがるのかって!?た、タマはそんな心理的駆け引きに騙されたりはしないんだからなっ!」

 

珠子は顔を赤くして、若葉に向かって謎の拳法っぽい構えを取る。

 

「いやー、タマっち先輩はすぐに騙されそう...」

 

と小声でつぶやく杏。

 

「...何か言ったか?あんず」

 

「いえいえ、何も」

 

「いや、絶対に言ったっ!すごく失礼なこと言った気がするっ!」

 

言い争う二人を見ながら、若葉は思う。

自分の傍らには、頼りになる、温かい仲間がいるのだと。

この仲間たちがいれば、きっと過去の傷にも打ち克つことができる。

 

「珠子、杏」

 

若葉は共に戦う仲間である二人に、頭を下げた。

 

「お前達が側にいてくれれば、もう私は自分の弱さに負けて暴走などしない。だから...まだ一緒に戦ってくれるか」

 

若葉の言葉に、珠子と杏は頷く。

 

「もちろんです、若葉さんはリーダーですから!」

 

「当然!タマにまかせタマえっ!」

 

 

 

 

その夜。

若葉は千景の部屋で、彼女と正座して向き合っていた。

 

「...」

 

「...」

 

二人とも無言で、時間が過ぎていく。

やがて―

 

「すまなかった、千景」

 

若葉は深く頭を下げた。

 

「私は思い上がっていたのだと思う。自分だけで戦っているつもりになっていた。一人だけでバーテックスを倒すのに充分だと思っていた。過去に囚われていたせいで、周りの者に目を向けることもできず、怒りに我を忘れることもあった。これはー私の心の弱さが招いたことだ」

 

「...」

 

千景は若葉の言葉を、無言で聞き続けていた。

若葉は顔を上げ、千景の目を真剣に見つめる。

 

「これからは、一人で戦っているなどと思い上がったりはしない。死者よりも生きる者を想って戦う...。だから、これからも私と共に戦ってほしい」

 

千景はしばらく沈黙してーやがて、ゆっくりと口を開いた。

 

「...あなたが何を言っても、意味なんてないわ...。言葉では...あなたが本当に変わることが出来るのかどうか...分からないもの...」

 

「...」

 

「だから...行動で示して。私は...それを側で見ていてあげるわ」

 

「...!それは、つまり―」

 

千景も若葉と共にまだ戦ってくれるということだ。

 

「私も...少し言い過ぎたかもしれないから...」

 

千景は気恥しそうに若葉から目をそらし、そう言った。

 

 

 

 

友奈が退院し、ひなとが目を覚まし、一般病棟の個室に移されたのは、その翌日の事だった。

目を開けると見慣れない天井が見えた。

(え〜っと俺何してたんだっけ...?)

そう思いながら、記憶を探る。

(あー確か七人ミサキ使いすぎて倒れたんだっけ...ということはここは病院か...)

状況確認が終わったあとぼーっとしてたら、病室のドアが開く。そちらの方を見てみると、ちーちゃんがいた。その瞬間、ちょっとしたイタズラを思いついたので実行してみた。

 

「こんにちは。あたくし、今目が覚めまして、ほんのすこし記憶が曖昧なんでございます。そういう訳でして、貴方様がだれなのか聞いてもいいかしら?」

 

そう言った瞬間ちーちゃんが抱きついてきた。抱きつきながら泣いていたので、

 

「ま、待って!ごめん!冗談だから!ほんとごめん!まさかそんな反応するとは思わなくて...」

 

それを言ってる途中で、ちーちゃんは離れこっちを睨んできた。ちーちゃんが腕を上げたかと思うと。

 

(  '-' )ノ)`-' )ぺしっと頬を叩いてきた。そして泣きながら睨んできて

 

「二度とそんな冗談言わないで」

 

と言ってきたので、真面目な顔をして

 

「わかりました。ほんとすいませんでした」

 

と言って謝罪をした。するとちーちゃんが

 

「私...今日高嶋さんが退院して...そっちの方見てくるから...もう行くね...」

 

と言ってきた。友奈は、とっくのとうに退院していると思ってた俺は驚きながら

 

「え!?あいつ退院してなかったの!?」

 

と言う。正直、友奈いるからギスギスしないだろう!って安心しきってたのに...

 

「えぇ...少し倒れてたりしたから検査してたらしいわ...」

 

「なるほど」

 

空気に耐えられなかったか...

 

「まぁ...私はもう行くね...また来るわ」

 

「あ、うんバイバイ」

 

そう言って俺は手を振る。

 

次に来たのは、若葉だった。

 

俺は若葉の方を見ながら、

 

「お、次は若葉か。てっきりお姉ちゃんが来ると思ってたぜ」

 

と言うと、若葉は苦笑いしながら

 

「ひなたの方が良かったか?」

 

と言った。

 

「いや、別にぃ〜。それにしても顔つき変わったな。なんかあった?」

 

「ああ、頼もしい仲間たちが私の行くべき道を示してくれたよ...」

 

そう若葉が言ったので俺は安心しながら、

 

「そうか...それは良かった...」

 

と言った。

 

「さて、ひなとは病み上がりだから、あんまり長居するのはいけないな。そろそろお暇しよう」

 

と若葉が帰ろうとしてたので、俺は若葉の裾を引っ張り、

 

「待って、まだ面会時間はあるだろ?暇だから俺の話し相手になって。そして面白いこと話して」

 

そして俺たちは面会時間が来るまで、お姉ちゃんの愚痴を言ったり、世間話をした。




主人公の意識がある限りこんな形(ほぼ原作)になることはないと思います...多分


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第9話 ひと時の日常

はいいつも通りです
今回かなり短めです(一瞬で矛盾が生じているが気にするな!)
原作の9話を書こうとすると絶対遅れると思い、原作8話までにしました。


俺が目覚めてから、2、3日たった頃病室のドアが勢いよく開き、お姉ちゃんが抱きついてきた。

 

「ひなと!目を覚まして良かったです」

 

「あはは...心配させてごめんお姉ちゃん...そろそろ離してくれてもオーケーよ?」

 

困惑気味で俺が言うと、お姉ちゃんは抱きついたまま、

 

「ダメです。ひなとニウムが足りません。もう少しこのままでいさせてください」

 

とどこかのにゃがつきそうなアニメの主人公の母親のようなことを言ってきた。

 

「ひなとニウムって...まぁいいか気が済むまでやっててどうぞ」

 

「はい。気が済むまでこうしてます。あ、そうそうひなと、まもなくバーテックスの総攻撃が起こります。四国へ侵入するバーテックスの数は、前回よりも遥かに多くなると思います」

 

「ちょい待て、抱きながら話す内容じゃない」

 

お姉ちゃんがとっても重要そうなことを抱きながら、しかも明るい感じで軽々しく言ってきたのでそうツッコミした。

 

「ふふ...そうですね...おっと、もうこんな時間ですね...まだまだ積もる話もあるところですが、帰りますね」

 

そう言ってお姉ちゃんは抱きつくのを辞め、帰りの準備をする。

 

「うん...じゃあね」

 

俺はそう言いながら、お姉ちゃんが帰っていくまで手を振っているのであった。

 

 

 

 

数日後

医者が明日あたりに退院出来るという話を聞いたあと、病室でぼーっとしてると突然若葉が入ってきて

 

「なにかして欲しいことないか?」

 

と言ってきた。

 

「なんかやらかしの?」

 

と俺が聞くと、若葉は少し怒った表情をしながら

 

「どうしてそうなるんだ!?」

 

とツッコミを入れていた

 

「いや、大規模な戦闘が起こるから、リーダーとしてみんなと話しておこうと思ってだな?杏とは作戦について話し、珠子とは食事に行き、千景とはゲームをして、友奈には耳かきをしてもらったんだ。」

 

「ふむ...して欲しいことってなんでもいいの?」

 

「ああ、犯罪じゃなければなんでもいいぞ」

 

「じゃぁお姉ちゃんのカメラのデータ全部消してきてよ」

 

と俺が淡々と言うと、若葉は顔を真っ青にしながら、

 

「お前は私に死ねと!?」

 

と言った

 

「え〜何でもしてくれるんじゃないの〜」

 

「何でもするといったが、それは無理だ!」

 

「しょうがないなぁ。じゃぁこれからも皆と仲良くしてね」

 

「え、そんなのでいいのか?」

 

「いいの。そんなので」

 

「そうか...わかったこれまで以上に皆と仲良くしよう」

 

と張り切った様子で言う若葉に俺は

 

「別に常態でいいんだけどなぁ」

 

という独り言をこぼすのであった。




いや、ほんとに短いな...
そーいえば主人公の勇者服について全く触れてなかった気がするけどまぁいいか!


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第10話 連携のある戦い

はいいつも通りです。
なんでゴールデンウィーク...いや黄金週間なのに普段より忙しいんですかねぇ?
今回は丸々戦闘です。
主人公影薄くない?まぁエアロ
お気に入り登録ありがとうございます!


星を埋め尽くす無数の星々。

星の数は、かつて誰も見た事がないほど多い。

星々のいくつかは重なり合い、より輝きをましていく。

それらは流星のように堕ちて。

大地を蝕み、壊していく―

―それが、お姉ちゃんが神樹から受けた神託のすべて。

意味するものはバーテックスの総攻撃。

 

予言された侵攻が起こったのは、神託から半年も立たない頃だった。

 

樹海化によって一変した風景を見下ろしながら、俺たちは丸亀城の城郭に立っていた。変身した瞬間、ベルトのライドブッカーからいきなり4枚のカードが飛び出してきた。

 

1枚は桔梗の花がプリントされている

1枚は桔梗の花と鎧を着た何かがプリントされている

1枚は全てが黄色の桔梗の花がプリントされている

1枚はぼやけていてよく分からない

 

えぇ、いきなりかよ〜俺なんかしたっけ?まぁいいか。

瀬戸内海の向こうから、バーテックスの群れが迫ってくるのが見える。

 

「比喩ではなく、『無数』ということだな...」

 

険しい表情で若葉がつぶやいた。

俺は前回よりも激しい戦いになるな、ちょっとくすぐったいぞ何回言う羽目になるんだろう...と思った。

そんなくだらないことを考えながら若葉の方を見ると友奈が若葉の顔を、指でつついていた。

 

「若葉ちゃん、眉間に皺が寄っているよ!そんな怖い顔しなくても大丈夫。私たちは絶対勝てるから」

 

「そうだな...」

 

「そうだ、みんなであれやろうよ!」

 

「アレ?」

 

友奈言葉に、珠子が首を傾げた。

 

「みんなで肩を組んで丸くなって、『行くぞー!』ってやる奴!」

 

「円陣ですね。そういえば、勇者になる前の学校では、球技大会なんかでやっているチームがありました」

 

「...いいかもしれないな」

 

若葉、友奈、珠子、杏が肩を組んで円陣になった。ちーちゃんは少し戸惑いながら円陣の中に入った。俺がずっと棒立ちになってるのを友奈がみて

 

「どうしたのひなとくん?やらないの?」

 

と聞いてきたので

 

「いや、男である俺が入っていいのか?」

 

と言った。

 

「そんなくだらないこと言ってないでさっさと入りなさい...」

 

とちーちゃんが呆れた様子で言ってきたので

 

「へいへい」

 

と言いながらちーちゃんの隣に入る。

するとリーダーである若葉が声を上げた。

 

「四国以外にも人類が生き残っている可能性ー希望は見つかった。希望がある以上、私たちは負けるわけにはいかない。この戦いも、必ず四国を守り抜くぞ!ファイト、」

 

「「「「「「オーッ!!」」」」」」

 

 

 

 

今回の総攻撃にあたり、事前に杏から聞かされていた作戦は陣形を使うのとの事だった。まぁ簡単に言えば。休憩しながら戦うってことだな。

後、切り札はなるべく使うなと言われた。俺はしつこく言われた。10回くらい言われた。

 

「丸亀城の正面には私が立つ 」

 

円陣を組んだ後、そういったのは若葉だった。

 

「正面はバーテックスの群れの中心だから、きっと一番大変だよ…いいの?」

 

心配そうな友奈に、若葉は凛とした口調で言い切った。

 

「だからこそ、私がやらねばならない

 

「...なぜ?より多くのバーテックスを...仕留めたいから...?」

 

そう言いながらちーちゃんは若葉をじっと見つめた。

若葉はそんなちーちゃんの視線に、薄く笑って返した。

 

「違う。リーダーとしての責務ーそして何よりも、この四国の人々を守るためだ」

 

その答えにみんな安心した様子だ。

 

「分かったよ。そんじゃ、正面は頼むぜ、リーダー!」

 

「無理はしないでね、若葉ちゃん!」

 

珠子と友奈が若葉の肩を叩く。

 

「ま、程々にガンバ」

 

俺は軽い口調で若葉に言った

 

「では、正面は若葉さん、東側は友奈さん、西側はタマっち先輩。千景さんとひなと君は一時待機。始めましょう!」

 

指揮官役も兼ねる杏の声と同時に、少女たちはそれぞれ自分の配置に向かって跳躍した。

 

 

 

 

正面と左右からバーテックスに立ち向かう。こうしておけば、前回の戦いのように誰か一人がバーテックスの集団に取り囲まれる、という事態は起こりにくくなる...らしい。

 

「アンちゃん!ひなとくん!ごめん、3匹そっちに行ったよ!」

 

友奈の声が響く

 

「オケ」

 

「任せてくだい」

 

俺は今回はG7を杏はクロスボウを構え、友奈が打ち漏らしたバーテックスに矢と弾丸を放つ。

俺は一時待機だが、一人が動けなくなった時に動く切り札的な立ち位置で、通常時は遠距離攻撃を使えることから、杏の手伝いをしている。

まぁ杏の戦況を見て何とかするのは手伝えないが...

 

「タマっち先輩、地面スレスレの下方から迫る一群がいます!旋刃盤なら届く距離です!」

 

「りょーかいっ!任せタマえ!」

 

「友奈さん、やや突出しすぎています!少しだけ後ろに下がってください!」

 

「分かった!」

 

状況を見つつ、杏は時々前線の三人へ指示を出していた。

すげーよくわかるな全くわからん...

チートに全知全能があるはずなのに使いこなせない俺はそんなことを思っていた。暇なのでちーちゃんの方に行った。

 

「やぁちーちゃん。緊張してる?」

 

「そんなことないわ...それより伊予島さんの手伝いしなくていいの?」

 

「大丈夫でしょ杏なら。というか全くわからん...ゲームみたいに簡単に出来ればいいのになぁ」

 

「もしもゲームだとしてひなと君が指揮官の場合...私たちはすぐに全滅するわね...」

 

「うるせー」

 

そんな会話をしてると

 

「千景さんたち!仲良いのはいいですけど戦場ですよ!」

 

と杏のお叱りが入った。

 

「「すいません...」」

 

俺たちは、肩を落としながら謝るのであった...

 

 

 

 

半時間ほど経過した頃だろうか。

初めに動きが鈍り始めたのは、バーテックスの群れの真正面で戦っていた若葉だった。恐らく杏以外であれば気づかないほど、ほんのわずかな鈍り方だったが、彼女はそれを見逃さなかった。

 

「若葉さん!交代です、撤退してください!」

 

そう杏が呼びかけると、若葉は刀を振るいながら、

 

「まだ戦えー」

 

る。と言おうとしたか知らんが、少し考え直したのか

 

「分かった!千景、交代してくれ!」

 

と、叫んだ。

 

「じゃぁ行ってくるわね」

 

「うん行ってら」

 

そう言って手を振るとちーちゃんは市役所の屋上に向けて移動した。

しばらくすると若葉がこっちに来た。

 

「お、おつかれ〜」

 

若葉の方に手を振りながら声をかけた。

 

「いやぁあのまま交代しぶってたら殴りに言ってたとこだったぜ...」

 

と言ったら若葉は苦笑いしながら

 

「ハハ、千景にも同じこと言われたよ」

 

といった。

 

 

 

 

ちーちゃんは前線へ出る前、俺らに

 

「できるだけ高嶋さんを援護してあげて」

 

と言ってきた。友奈は武器が拳であるため、1匹を倒すためにも間近で格闘する必要があり、本来は集団戦に向いていないのだ。友奈の力だけに頼っていては、防御網が崩れる可能性がある。

俺らは城郭から動くことは出来ないが、持っいる武器が遠距離武器なので、友奈を遠くから援護できる。

だから基本的に杏は、前線を抜け出てきたバーテックスの処理、俺は友奈の援護射撃をやっている。

友奈に背後から食いつこうとしていたバーテックスの一体を、俺の弾丸が貫いた。それにしてもG7使いやすい。どっかのP2020とかとは違う

 

「ありがとー!」

 

拳を振るって目の前のバーテックスを倒しながら、友奈が叫ぶ。

援護射撃をしながら俺は杏に

 

「手が空いてたら珠子の方も援護してやってくれ」

 

と言った。すると杏は

 

「もちろんです!」

 

と元気よく答えた。

 

 

 

 

樹海化が始まってから、体感時間で3時間ほどたった。

交代で休みながら戦い、俺たちはほぼ無傷でバーテックスを圧倒し続けていた。杏すげ〜

まぁこのまま優勢が続くとは1ミリも思ってないけどね。だって向こう全力出してねーもん。

やがて、敵の動きに変化が起きた。バーテックスたちが1箇所に集まり、融合していく。何度でも言おう。キモイ

 

「注意してください!進化体を形成し始めました!」

 

と、隣にいる杏が叫ぶ。

バーテックスもやっと本気を出してきたか...

出来上がった進化体バーテックスは、巨大な蛇のような姿をしていた。

今前線に出ている勇者は、若葉、友奈、ちーちゃん。

まず蛇型は若葉の方に襲いかかった。

若葉は蛇型の突進を最小限の動きで避け、同時に切りかかる。

蛇型が真っ二つに切断された。

勝った!第3部[完]!

そう思ったのもつかの間、切られた蛇は2体の別個の蛇になっていた。

さらに若葉が切ると蛇は三体になった。

迂闊に攻撃出来なくなった若葉は通常個体を倒しながら後退していた。

この蛇は全身を一度に損傷させなければ倒せないのだろうなー

だけど、誰もそんな高威力な武器を持っていない...

 

「よし...タマの出番だなっ!」

 

休憩中だった珠子が立ち上がるそして蛇型を相手にしている若葉へ叫んだ。

 

「若葉ァ!切り札を使うぞ!!」

 

「!?待て、珠子!それならー」

 

「いいや、待たない。それなら自分が使うとか言うのも無しっ!タマにはタマにも活躍させろっ!」

 

そう言って珠子は目を閉じ、精霊の力を引っ張り出す。不味ったなぁ珠子のカードないぞ...まぁ珠子だしなんとかなるだろ...

そんなことを思っているうちに珠子は精霊を引き出した。

珠子が引き出してきたものは―輪入道。

地〇少女とかに出てくるやつだ。

直後、珠子の旋刃盤の形状が変化していく。

 

「え!?ちょっとタマっち先輩、それ大きすぎない!?」

 

「でかっ!あれ珠子の何倍だよ...」

 

旋刃盤は珠子の身長の何倍もの大きさに巨大化していた。

 

「それじゃ投げられないんじゃ...」

 

「いいや、投げるっ!根性で投げるっ!見てろ、あ〜ん〜ず〜〜〜っ!」

 

なるほど。勇者、根性、ベストマッチ!って感じか

旋刃盤を両手で掴み、まるでハンマー投げのようにグルグルと珠子は回転する。回りながら旋刃盤のワイヤーを伸ばしていき、次第に回転半径を大きくしていく。

 

「うううおおおおおお〜〜〜りゃああ!!」

 

充分に遠心力がついたところで、旋刃盤はワイヤーから外れて飛んでいってしまった。

 

「ちょっ!?ええっ、ワイヤー千切れて飛んでっちゃったよ!?」

 

「フゥ...大丈夫だ、これがあの武器の使い方なんだ」

 

今の旋刃盤はワイヤーを使わなくても操作できるらしく、物理法則を無視しながら、蛇型に突っ込んでいく。しかも旋刃盤の刃は炎に包まれていた。そして蛇型は旋刃盤によって焼き尽くされた。

 

「...っ!」

 

焼き尽くしてしばらくバーテックスを焼き尽くしていたら、突然崩れ落ちるように珠子が地面に膝をつけた。

 

「タマっち先輩!?」

 

「珠子!?」

 

杏が駆け寄って体を支えた。俺は珠子の真正面に立ち顔色を見た。

よくわからんが悪そうだ...

 

「だ、大丈夫...ちょっとクラっときただけだ」

 

「でも...!」

 

「珠子...少し休め...こういう時のために俺がここにいるんだ」

 

そう言って俺は立ち上がる

 

「杏...ここ任せても大丈夫か?」

 

「問題ありません。どうぞ行ってきてください」

 

「分かった。行ってくる」

 

そう言って俺は跳躍する。バーテックスを見てみると、残っているバーテックスが全部集まって融合していっていた。若葉が近くにいたのでそっちの方に行った。

 

「どうだ?なんか攻略法見つけられたか?」

 

「おぉぅひなといつの間にそんなところに。まぁそんなことはどうでもいいか、えっと攻略法だったか?見えたぞ。こいつの身体には、まだ脆い部分がいくつかある!やつの身体が完成する前にそれを叩けば、倒せるかもしれない!」

 

と若葉は叫んだ。だがその脆い部分にはバーテックスが集まっており簡単に近ずけそうでは無い。

 

そんなことを思ってると、珠子が旋刃盤に乗りながらバーテックスに向かって飛行していた。

あいつ...休んでろって言ったのに...

と思ったが、現状それしか突破口が見つからないので黙っておく。

俺たちは珠子の旋刃盤に乗り込んだ。

 

旋刃盤の上に集まった俺たちに珠子は笑みを浮かべながら、

 

「よし、じゃみんなで行くかっ!」

 

形成途中の巨体バーテックスは、下腹部から砲弾のようなものを次々に放ち、勇者たちの接近を妨げようとしてきた。

珠子は輪入道を上手く操縦し、それらをすべて回避していく。

 

「珠子は前方正面!杏は右上二時の方向!友奈は下方五時の方向!千景は左斜め後方!私は上方を叩く!ひなとは全員のサポート!」

 

と若葉が叫ぶ。全員のサポートって...ちょっとキツない?まぁ頑張るか...

 

「行くぞ!」

 

若葉の合図に珠子以外が旋刃盤から跳躍し、珠子は旋刃盤に乗ったまま、それぞれ融合体の脆弱な箇所へ突っ込んでいく。俺は適当に樹海の根っこに着地する。

しかしー

バーテックスも弱点を狙われることは予想していたのか、脆弱部を守るように通常個体が集まり、勇者たちを取り囲もうとしていた。

それを見て俺はすぐに若葉の方に跳躍した。

 

「おい若葉」

 

「なんだ?」

 

焦った様子で若葉は聞く。俺はその間にライドブッカーからカードを取り出し使った。

 

『FINAL FORMRIDE き、き、き、桔梗』

 

「突然だがちょっとくすぐったいぞ」

 

そう言って俺は若葉の背中をタッチする。

その瞬間若葉の首にマフラーが出現した。

すると若葉は不思議そうに首をかしげ

 

「なんだ?パワーアップしたことはわかったが、何がくすぐったいんだ?」

 

と聞いてきた。そうだったこの人耳以外聞かないんだった...

 

「いや、忘れてくれ」

 

「え、あ、そうか...えっと...もう行っていいか?」

 

「あぁもういいぞ」

 

微妙な雰囲気になったが若葉に力が宿ったので問題なしだ。

 

「おおおおおお!!」

 

若葉は近くを飛んでいる通常個体バーテックスの一体を蹴り、さらに跳躍した先でまた別の通常個体を蹴って飛ぶ。それを繰り返し、本来は空を飛ぶことが出来ない勇者が空中を凄まじい速さで移動していた。

若葉の精霊は義経。人間離れした体術を持つ武人らしい。

そうして凄まじい速度を手に入れた若葉は空中を自在に飛びまわり、ほかの勇者たちを取り囲んでいた通常バーテックスを次々に斬っていった。

 

「サンキュー若葉、これで行ける!」

 

「撃ち抜けます!」

 

「今度こそ―勇者パァンチ!」

 

「もう、邪魔は...ない」

 

妨害する通常個体を若葉が倒している間に、四人の勇者たちは巨体の脆弱部を次々に攻撃していき...そのすべてを破壊した。俺?俺は若葉の取り逃しを撃ってただけ。

 

 

 

 

形成途中の綻びを抉られた進化体バーテックスは、巨体を崩壊させ、奇妙な悲鳴をあげながら消滅していく。

 

 

 

 

精霊を俺を通して使った場合の疲労などは俺に来るため、俺はぶっ倒れた。

 

 

 

 

俺は目を覚ますと、丸亀城のてっぺんにいた。

え、勇者装束は消えてるから落ちたら死ぬやつやん...そう思った瞬間すごく怖くなってきた。早く変身して城の中に入ればいいものの、疲れていたせいか立つ気力すら出なかった。そうして怯えながらぼーっとしていると

 

「やっと...見つけた」

 

という声がしたので、顔をあげると勇者装束を着たちーちゃんがいた。

俺は寝ながら手を振った。

 

「ちーちゃん...俺今立てないから中まで運んでくんね?」

 

そういうとちーちゃんは呆れたように

 

「わかったわ...」

 

と言って、お姫様抱っこをしてくる

 

「ねぇなんでお姫様抱っこ?」

 

「こっちの方が運びやすいから...文句言ったらこのまま落とすわよ...?」

 

「アッハイ」

 

そう言って丸亀城の中に入る。入ったけど下ろしてくれない

 

「えっと下ろしてくれてもいいよ?」

 

と困惑気味で俺が言うと

 

「動けないんだからこのままの方がいいでしょ?」

 

とちーちゃん。えぇ〜っと思ってると

 

「あ、いたぞっ!...ってえ...?」

 

「良かった元気そう...仲良しですね」

 

「あらひなと遂にお嬢様道を極めることにしたんですか?」

 

「ひなた辞めてやれ...」

 

「あはは...ひなとくん!私たち、勝ったんだよ!」

 

振り返ると少しからかいながら駆け寄ってくる仲間たちの姿があった。




ちなみにチートの中にマイナス思考を極力無くすと言うものがあるので、ちょっとくすぐったいぞしてもデメリットは疲労だけだったりします。
まぁそれが満開になると...?


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第11話 遠征

はいいつも通りです。(投稿スピードは除く)
語彙力と投稿スピードは香川へ行きました。
いいなー俺も行きたい
お気に入り登録ありがとうございます!


俺たちは今、瀬戸大橋記念公園に立っている。

ちなみにお姉ちゃんもいる。俺たち勇者は戦う際の変身姿。お姉ちゃんは巫女服を着ている。それぞれ大きめのリュックを背負っており、その中には食料、キャンプ用具、着替え、医療品、水質地質調査のサンプル採取器具などが入っている。

 

「にしてもさ、四国の外に出るのって何年ぶりだろ」

 

珠子の口調と表情からは、遠足に出かける子供のように、楽しげな雰囲気がにじみ出ている。

 

「私、バーテックスが出てきた時に本州から移ってきたから、三年半ぶりくらいだよ!」

 

「あんまり遠出とかしなかったので、私は四国を出るの初めてです」

 

「私も...そうね...」

 

「タマは四年ぶりくらいだな〜。家族で広島言った時以来だ」

 

みんなでワイワイと話している。

これから俺たちは、結界の外へ調査遠征に出かけることになっていた。

四国から出発し、諏訪や人類生存の可能性が見出された北方を目指す。ヘリや船を使った移送は、バーテックスを引き寄せるかもしれないので、移動手段は徒歩のみだ。

バイクか、電車出してもいいかな?

しかし勇者たちは問題ないのだ。飛べばいいし。だが、お姉ちゃんの身体能力は普通の人と変わらない。というかあんま運動してなかった気がするから普通の人より悪いかもしれん...そういうこともあって、ほかの勇者たちが彼女を背負って移動することになっていた。

まぁ家族だし俺がやろうかなぁ...

 

「すみません、皆さん」

 

申し訳なさそうに言うひなたに、友奈は明るく答える。

 

「気にすることないよ、いつもヒナちゃんには、私たちができない巫女のお仕事やって貰ってるんだから!」

 

「ありがとうございます、友奈さん」

 

友奈の言葉に、ひなたは微笑む。

 

「じゃ俺がお姉ちゃん背負うよ」「では、私がひなたを背負おう」

 

俺と若葉の声が重なる。

 

「いやいや若葉。家族の面倒ごとは家族が引き受けると相場が決まってるんだ。ということで任してくれ」

 

「いやいやひなとよ。いくら家族とはいえ異性ではないか。ここは同性である私に任してくれ」

 

「ふっ...若葉。俺は今一応女だぞ?それに一緒に風呂まで入ったんだから今更異性もくそもないだろ?」

 

「くっ...だ、だがひなたは人並みに重いはずだ。ひなたより身長の低いお前の場合潰れてしまうだろう?」

 

「確かにお姉ちゃんが人並みに重いことは認めるが、そこは勇者のパワーがあるから問題ないだろう?」

 

そうやって言い合っていると。

 

「さっきから聞いてみれば...私のことを重い重いと好き放題言ってくれますね〜?若葉ちゃんにひなと?」

 

お姉ちゃんがそれはそれはドスの効いた声でこちらに声をかけてきた。

 

「違うんだ!ひなたこれは私がひなたを背負うためにひなとでは無理だと言いたくてだな...」

 

「俺は若葉の言ったことを肯定しただけだ...」

 

「ちょっ、ひなと!?」

 

「どっちもどっちです!全く...でもまぁせっかくですし、若葉ちゃんに背負って貰うとしましょう...」

 

それを聞いた若葉は嬉しそうにこっちを見ながら、

 

「という訳で私が背負わせてもらうぞ」

 

と言ってきた。

 

「へいへい、俺はお姉ちゃんと若葉の荷物でも持つかねぇ」

 

俺がお姉ちゃんと若葉の荷物を持つと

 

若葉がスッとひなたを抱き抱えた。

 

「では、行くか」

 

「「「「「...」」」」」

 

ごく自然にひなたをお姫様抱っこした若葉に、他の勇者たちは一瞬呆気に取られる。

 

「お姫様抱っこ...」

 

「なんか、見てるこっちが照れるっ!」

 

杏と球子は頬を赤くした。

 

「...?何かおかしいか?」

 

周りの反応の意味がわからなかったのか、若葉は怪訝そうな顔を浮かべた。

 

「いや、別に街中じゃないし、おかしくはないと思うぞ。俺もそうしようと思ったし」

 

「まぁ...あなたがおかしいと思わないなら、いいんじゃないかしら...ひなと君は軽々しくお姫様抱っこしちゃだめよ?」

 

「お姫様と王子様みたいだね!」

 

やや呆れた表情のちーちゃんと、感心したように目を輝かせる友奈。うーん...お姉ちゃんに女性を運ぶときはおんぶかお姫様抱っこにしなさいって言われたから問題はないと思うんだけどな...

お姉ちゃんは照れたような笑みを浮かべ、若葉はやはりきょんとしていた。

 

「よーし!それじゃあ勇者、しゅっぱ~つ!」

 

友奈の掛け声を合図に、俺たちは記念公園から跳躍した。

瀬戸大橋を通って本州へと向かう。

移動しながら俺は暇だったのでバーテックス総攻撃の日から今まで起こったことを思い出してみる

 

 

 

 

二月に起こった大侵攻の後、巫女の信託により、四国の平穏はしばし保たれると告げられた。前回の総攻撃で、バーテックス側も戦力の大半を失ってしまったのだろうというのが、大社の推測らしい。

敵の攻撃が沈静化している今なら、勇者たちが四国を離れることも可能となる。そこで大社は、四国外の地域を調査できないかと検討を始めた。北方の大地と南西の諸島で人類生存の可能性が見つかったことも、理由としては大きい。

調査任務を行うにあたり、瀬戸内海にある結界外の小島で実験が行われ、いくつかの事実が判明した。

まず第一に、勇者の力は結界外でも使える。

第二に結界外の大気は十分に清浄である。結界外はバーテックスが持つ毒素やウイルスにより汚染されている、といううわさが一部で流れていたが、それは完全に誤りだったようだ。むしろバーテックス出現前よりも大気の状態は良くなていたらしい。

第三に、神の力を織り交ぜた通信により、四国から離れていても四国内と連絡を取り合うことは可能である。これはかつて、四国と諏訪の間で行っていた通信技術の応用らしい。

これらの実験結果によって、勇者たちが結界外へ出て調査を行うことは可能である、と大社は判断した。

また、もしもの時のために、神樹から信託を受け取れる存在として、巫女のお姉ちゃんも同行することが決まる。

俺たちの任務は、四国外の環境状態の調査、および人が生き残っている地域がないかを調べることだ。生存者を探す地域は、諏訪、北方の大地、そして各地の都市。また、各地で水質や地質調査のためのサンプルも採取せねばならず、やることは多い。

 

 

 

 

俺たちは大橋を渡り、瀬戸内海を越えていく。

任務とはいえ、バーテックスの活動が沈静化していることと、前回の戦いの勝利もあって、みんなの気分は明るい。

 

「タマちゃんのアウトドアグッズがあって良かったね!」

 

「ふふん、火の起こし方、米の炊き方、なんでも任せタマえ!」

 

友奈の言葉に、球子が得意げに答える。

遠征中、野営地を確保したり、食事を用意するのも、彼女たちだけで行わなければならない。球子はアウトドアが趣味のため、野外生活に関する知識が豊富だ。遠征に必要な道具は、すべて球子が用意してくれた。

 

「まさか、タマっち先輩のアウトドア趣味が役に立つ日が来るなんて...」

 

「人生は...思いもよらないものね...」

 

「人生について考えるほどかっ!タマをバカにしているだろーっ!」

 

にぎやかに話しながら進む球子、杏、友奈、ちーちゃん。

一方、若葉は抱えているお姉ちゃんを気づかう。

 

「怖くないか、ひなた?」

 

勇者が跳躍して移動する速度は、車以上だ。俺たちはすでに慣れてしまっているが、お姉ちゃんにとってはずっとジェットコースターに乗っている気分だろう。

しかし、お姉ちゃんは若葉の問いに首を振る。

 

「いいえ。だって若葉ちゃんが私を落としたりするはずがありませんから。そうでしょう?」

 

「...当たり前だ」

 

若葉は力強く答えた。

 

「でもひなとはからかって落とすかもしれませんねー」

 

「そんなわけないだろ」

 

なんかお姉ちゃんが意味不明なことを言ってきたのでぶっきらぼうに答える。

 

ちょっとすねちゃいましたか...

 

お姉ちゃんがなんか言った気がするが、風に流されたせいかよく聞こえなかった。

 

 

 

 

瀬戸大橋終端に来るとみんなの明るい気分が消えた。

倉敷市臨海部の工業地帯が、もはや原形をとどめていないほど破壊されているのだ。

化学物質による大規模な爆発が起こったのか、建造物の多くは内側から吹っ飛ばされている。形を残している建物も、熱によって変形した跡が見られた。

俺体は無残な姿をさらす工場群の中に降り立った。

 

「ひどいな、これ...」

 

球子が周囲を見渡しながら、険しい表情を浮かべた。

人間が築き上げてきたものなど、バーテックスにとってはすべて蹂躙の対象でしかなかったのだろうか。

お姉ちゃんは若葉の腕から降り、デジカメで工業地帯の様子を撮影する。

 

「念のために...生き残りがいないか周辺を探そう」

 

重い口調で若葉が言った。

それから俺たちは歩き回ったり、跳躍しながら人の気配を探す。

知っていたけど結局、人を見つけることはできなかった。

バーテックスの姿を見つけることもできなかったから、大社の予想も当たっているのかもしれない。

みんな重い表情を浮かべていた。だが、足を止めている時間はない。

 

「行こう。先はまだ長い」

 

若葉は再びお姉ちゃんを抱きかかえる。

その後俺たちは予定のルート通り、東方へ移動を始めた。

 

 

 

 

岡山県を通り過ぎて兵庫県に入り、神戸にたどり着いた。

俺たちはかろうじて形を残しているビルの屋上に降り立った。そこから神戸の全景を見てみたが、何もかもが破壊されていた。これが元都会か...

 

「今度は二手に分かれて調査するか」

 

若葉が提案する。

 

「「「「「「「グーとパーで別れましょ!」ほい!」」」」」」

 

今の子ってほいまでいうのか...別れましょ!で終わるのかと思った...

結果は、若葉、お姉ちゃん、ちーちゃん、のグループと俺、友奈、球子、杏というグループ分けになった。三時間後に神戸港のフェリー乗り場近くに集合することを決め、それぞれ別方向へ向かった。

 

 

 

 

俺たちは廃墟と化した街並みを歩きながら生存者の気配を探す。

 

「やっぱり生き残ってる人はいませんね...」

 

と杏が言うと

 

「わかんないよ!まだ奇跡的に生き残ってる人がいるかもしれないよ!」

 

と友奈が励ますように言う。

 

「奇跡的にって言ってる時点でほぼいないようなもんだぞ...」

 

「そーゆ―ことは言わないもんだぞ」

 

「...?あれバーテックスですね。あ、こっちに来ます!」

 

杏が叫び会話が一時的に終了する。

 

 

 

 

三時間後、俺たち三人は、待ち合わせのフェリー乗り場にやってきた。

若葉たちは先についていたらしく俺たちに向かって軽く手を振っていた。

 

「私たちのほうでは、生存者は見つけられませんでした。若葉さん達のほうは、どうでした?」

 

重い口調で尋ねる杏に、若葉は首を横に振る。

 

「こちらも同じだ。それに、今でもバーテックスがうろついているとなると、このあたりに人が残っているとは考えにくいな...」

 

若葉は枯れ果てた神戸を見つめた。

他の皆も、同じように街並みを見つめながら、押し黙る。

やがて、沈黙を破ったのは球子だった。暗い雰囲気を消そうとするように、明るい口調で言う。

 

「日も暮れてきたし、そろそろ野宿する場所を決めないとなっ!」

 

すると杏も同じように明るく振る舞う。

 

「そうですね!お腹も空きましたし!」

 

若葉は周囲を見渡しながら言う。

 

「無事に残っている建物があればいいが...」

 

「うーん、どれもボロボロで、今にも崩れそう...」

 

友奈も同じように周りを見るが、ちょうどいい建物は見当たらない。

そこで声を上げたのは球子だった。

 

「いや待ちタマえっ!野営するなら、きれいな水があるところでないとだめだ。タマたち、そんなにたくさん水を持ってきているわけじゃないからさ」

 

球子が腕を組んで、思案しながら言う。

 

「あと、焚火をするために木の枝を集めやすいところがいい。ご飯を作るにも火が必要だしなっ!となると...」

 

 

 

 

「キャンプだなっ!」

 

球子が先頭になり、俺たちは六甲山近くのキャンプ場跡にやって来ていた。既に日は落ち、あたりは暗くなっている。

 

「というか、タマっち先輩がキャンプしたかっただけなのでは...?」

 

と杏がジト目を向けた。

 

「そ、そんなことはないぞっ!ほら、ここだったら水も確保しやすいしっ!焚火のための木枝だってある!」

 

キャンプ場の近くには川が流れている。山中だから木枝も簡単に集まるだろう。

俺たちはキャンプ場を探索した。使える道具が残っていないか確認するためだ。探しているとお姉ちゃんが倉庫の中でテントを発見した。

 

「やった!これでもッとキャンプ感が強まるぞっ!」

 

球子は目を輝かせながら言う。

 

「やっぱり、球子さんはキャンプがしたかっただけなのでは...」

 

「そそそそんなことはないぞ、ひなたっ!ほら、雰囲気って重要だろっ!」

 

「まぁまぁお姉ちゃん、その辺にしたいてあげなよ。球子がキャンプしたかったとかそういうのどーでもいいでしょ。結局アウトドアは球子に任したほうが安パイですし。それに久々のキャンプだからワクワクしてきた」

 

「そーだろーそーだろー」

 

 

 

 

 

俺たちは協力してテントを張り、木枝を集めて焚火を起こした。

夕飯は鍋を使ってお湯を沸かし、四国から持ってきたうどんを茹でる。こんな夜中にうどんかよ()

 

「タマ、大活躍だなっ!」

 

鍋を焚火にかけながら、球子が嬉しそうに言う。

テントを張るにしても、焚火するにしても、簡単にように見えて、ちょっとした知識がないと難しい。球子のアドバイスがなければ、どちらもできなかっただろう。

 

「タマっち先輩が、本当に先輩っぽく見えます...」

 

「それな」

 

「それはど~いう意味だ、杏、ひなと?普段から先輩っぽいだろっ!」

 

「いたた!頭をグリグリしないでください!」

 

「いやなんで俺まで⁉俺の場合同学年から見た感想だから普通に誉め言葉なんだが⁉」

 

うどんをおいしく茹でるためには水が重要らしい...うどんバカ(若葉)が言っていた。ちなみに近くの川の水は十分にきれいな水だったらしい。

焚火を囲み、茹で上がったうどんを七人で食べる。

 

「うん、おいしい!みんなで食べるうどんは、やっぱり格別だね!」

 

一口食べて、明るく友奈が言う。

 

「そうだな。今日はずいぶんひどい光景ばかり見せられたが...こうしてみんなと一緒にうどんを食べていると、心が安らぐ」

 

「若葉ちゃん、しんみりし過ぎです」

 

「そうですよ」

 

お姉ちゃんと杏が苦笑しながらも、優しく言う。

 

「まだ一日目だっ!明日は大阪に行って、そのあとはもっと遠くまで行くんだから、きっと無事な地域だってあるっ!」

球子の言葉に若葉はうなずく。

ちーちゃんはうどんを食べながら、無言で夜空を見上げていた。俺は無心でうどんを食べていた。

 

 

 

 

 

夕飯を食べると、みんな(俺以外)で川に入って汗を流すことにした。

 

「覗くなよひなと」

 

と球子が言ってきたので

 

「お前のその貧相な体見るなら自分の体見るわ」

 

と煽っといた。

 

「んだとぉ?」

 

そう言って球子は俺を押し倒してきた。俺はよそ見をしながら会話をしていたため、球子を避けることができなかった。そして俺はそのまま押し倒される。

 

「タマより胸がでかいからって調子に乗りやがって...その胸揉ませてもらうぞ!前はけられたが、今は手足がふさがれている!防げるものなら防いでみタマえ」

 

「え、ちょまっ!ひっ!やっ!ほんとに待って!変な声出るしなんかおかしな気持ちになるから!」

 

そういうが球子はやめようとしてこない。ほんとにおかしくなりそうになった時に球子が胸から手を離した。そして球子が俺からどいたので体が軽くなった。

起き上がって周りを見てみるとお姉ちゃんが球子を殴ったのか、見事な正拳突き姿勢で止まっていた。

 

「何するんだひなた⁉」

 

球子が殴られたであろう頬を抑えながら叫んだ。

 

「何をするんだ、じゃありません!何人の弟押し倒して変な気持ちにしているんですか!次やったらもっと強めになりますよ!」

 

「いやひなたさん...その次は私にやらせてくれないかしら...?」

 

「いいですよ。むしろ大歓迎です。私はそこまで力が強くありませんからね」

 

「待って!勇者の力で殴られたら死んじゃう!」

 

「待ってと言って待たなかった人は誰かしら...?」

 

「ひぃっ!」

 

球子は悲鳴を上げ震えた。そういう俺はというと、無意識で女の子が胸触られた姿勢(胸を抱える)をしていた。

 

「ひなともひなとですよ。いくら興味がないからって人の体型をいじっちゃだめですよ」

 

「はいすいませんでした」

 

そう言ってその姿勢のまま頭を下げる。

 

「わかればよろしい。では私たちは入ってきますね。見張りよろしくお願いします」

 

そう言ってお姉ちゃんたちは川へ向かっていった。

俺はみんなが川に入ったのを音で判断し実験を始める。

 

「闇よりいでて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え」

 

俺はバーテックスだけを通さない帳を下した。初めてだったがチートってスゲー。なんかできた。

 

 

 

 

水浴びを終えた後は、テントの中で睡眠をとる。明日も朝から長距離を移動するのだから、休憩は十分に取っておかなければならない。

いくら帳を張ったとはいえなんかの間違いがあって入ってくる可能性があるので、交代で二人は起きて、見張りをすることになった。ちなみに説明がめんどいのでみんなに帳の説明はしてないです。

 

 

 

 

結局バーテックスは来なかったで6時くらいに俺らは大阪に向かった。

 

「そういえば、大阪の梅田駅あたりには、すっぞい広い地下街があるみたいですよ。そこだったら雨風の心配もないし、シェルターみたいにして避難している人がいるかもしれません」

 

杏の言葉に若葉は頷いた。

 

「そうだな...地下ならば、出入り口を塞いだらバーテックスも侵入できないだろう。地上より安全かもしれない。そこに行ってみるか」

 

 

 

 

大阪駅と梅田駅は地下街でつながっている。そしてこの二つの駅には数多くの鉄道が通っており、そのせいで地下街は複雑な構造を持っていた。

阪急神戸線の線路を辿り、梅田駅に到着した。相変わらずのひどい光景だった。

 

あああぁぁああ⁉

 

突然、杏が絶叫を上げた。

バーテックスの出現かと、全員が身構えた。

 

「どうしたんだ、あんず?」

 

球子が杏に声をかけると、彼女は青ざめたまま、高架下の一角を指差した。かつては数多くの店が並んでいたのだろうが、今はすべて壊されている。

 

「こ...このあたりはですね、確か大阪で有名な古書店街だったんです!ひどいです!ものすごく貴重な本が...世界に一冊しかない本だってあるかもしれないのに!」

 

体を震わせながら、涙目でいう杏。

 

「なんだよ、びっくりした。本くらい別にいいじゃんか」

 

「タマっち先輩はわかっていません!本は人類の結晶なんですよ!むうぅ、バーテックス、許すまじ...!」

 

憤慨する杏を、友奈が

 

「大丈夫だよ、きっと貴重な本は四国に運び込まれてるよ!」

 

となだめていた。珍しい光景だな~と思った。

駅周辺もやはり無残に破壊されていたが、地下道へ入る階段は残っていた。

階段には瓦礫の他に、どこかの店で使われていたであろう棚やテーブルなどが錯乱している。おそらくバリケードが作られていた跡だ。しかしそのバリケードも、破壊されてしまったのだろう。

 

「...」

 

その光景にみんなは表情を曇らせていた。みんなバリケードを破壊したのはバーテックスだろうかとか考えているんだろうなと思った。前世の記憶を掘り起こしてみると確か狂人が破壊したんだっけ...

そんなことを思っていると、若葉が階段に向かって足を踏み出していた。

 

 

 

 

地下は冷たい空気と静寂が支配していた。既に電気も通っていないため、出入り口から少し奥へ進むと、もう暗闇だ。持ってきた懐中電灯であたりを照らす。

地下街は地下に比べれば元の状態を保っているが、階段やエレベーターなどが壊れていたり、床や壁には亀裂が走っていたりと、やはりバーテックスの襲撃を受けた跡が見えた。

出入り口近くに設置されていた地下街の地図をスマホで撮影し、その地図を見ながら歩いていく。

 

誰かいないかー---ッ⁉

 

通路を歩きながら、時々若葉はそうやって呼びかけるが、エコー以外に返ってくるものはない。

 

「人がいた痕跡はあるのですけどね...」

 

お姉ちゃんが地下街に設置されたごみ箱を見ながらつぶやく。確かにゴミ箱の中には、空になった缶詰やペットボトルや弁当の箱などが詰み込まれており、入りきれない分は周辺の床に散らばっていてかつてはここで食事が行われていて、人がいたのは明らかだった。

 

「歩いていると、各所で防火用シャッターが降りていたり、バリケードが作られていたりする。侵入してきたバーテックスに、必死で抵抗したのだろう。しかしシャッターもバリケードも、今は破壊されていた。

半時間ほど地下街を歩いていると円形の広場のような場所に出た。

 

「な...なんだよ、これ⁉」

 

球子が驚いた声を上げる。

広場の中央には、噴水のような設備があるが、当然ながら水はもう噴き出していない。

そしてその周辺に白骨が大量に積み上げていた。

杏が悲鳴を上げた。

お姉ちゃんは驚いて力が抜けたのか、その場に座り込んでしまった。

俺は骨があるのは知っていたが、実際に見るとかなりショッキングな光景だったので、思考放棄を起こしていた。

 

「...ひどい...地上は、ボロボロになって、地下も、こんな...」

 

ちーちゃんは呻くような声でつぶやいた。

若葉は噴水へと近づいた。放置された大量の骨は雪みたいに見えた。

いったい何人分の骨なのだろうか...

数十だろうか?それとも百以上?思考放棄から回復した俺はそんなことを思った。

そして若葉は遂に床に落ちている一冊のノートに気づいてしまった。

内容を知っている俺は見たくないなと思った。

先にノートを見ていた若葉の手が震えていた。




はい呪術廻旋(漢字あってる?)要素が出てきましたが、もう出ないと思います(かも、多分、きっと)
原作の上巻が終わったので、ちょっと休憩します(最短一週間、最大一か月?)


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第12話 勇気のバトン

はいいつも通りです。
休息は終わりだ。
お気に入り登録ありがとうございます!
さぁ筆者の設定が色々ほころびを生むところにきたぜ


そして若葉は日記を読み終わったのか、日記を閉じた。

若葉の手は震えていた。

他の皆も若葉の周りに集まり、その日記をのぞき込んでいた。悲しみ、怯え、怒り、不安...様々な感情が表情に浮かんでいた。俺は読んでいるふりをした。もう内容知っているしね

 

「若葉ちゃん...」

 

心配するように、お姉ちゃんは若葉の顔を覗き込んだ。

 

「...大丈夫だ、ひなた」

 

若葉は首を横に振り、お姉ちゃんを安心させるように言った。

若葉は日記帳を、死体が積みあがった噴水の前にそっと置いた。そして静かに手を合した。

因みに簡潔に日記の内容を説明すると閉鎖空間と恐怖により人がおかしくなっている様子が書かれている。ただそれだけ

 

若葉がぶつぶつ呟きながら死体のほうを見ていると通路の向こうの暗闇から重いものがぶつかり合う音、何かがこすれ合うような音が聞こえ始めた。

 

「バーテックスか...⁉」

 

「まぁこの状況化だったらそれしかありえないよな」

 

若葉は刀の柄を強く握りしめていた。化け物ども(バーテックス)への怒りが沸き上がっているのだろう。

しかし前までの若葉だったら冷静さを欠いて突っ込んでいただろうが、今の若葉は冷静さを失っていなかった。

 

「...この地下街に、もう生き残りはいない。早々に脱出するぞ!ひなたは私のそばを離れるな!」

 

そう若葉は指示を出しながら刀を抜いた。俺たちも武器を構えた。

構えた瞬間、地下通路の奥から、巨体の白い化け物(バーテックス)たちが姿を現した。

若葉が先頭に立ってバーテックスを倒しながら、地上を目指す。地下街の構造図が頭の中に入っているのか、まったく迷うことなく若葉は進んでいく。少し方向音痴の俺にはできない所業だ。

ふとちーちゃんのほうを見てみると、不安そうな顔をしていた。

 

「ちーちゃん、大丈夫?ものすごく不安そうだけど...」

 

「四国も醜い争いをするようになるのかしら...?」

 

「...ここの出来事は勇者がいなかったから起きたことだ...だから俺たちがいる限り、大丈夫だ」

 

「そ、そうね...」

 

 

 

 

地下街から出て、襲ってきたバーテックスを蹴散らしながら、一通り大阪の街を見て回った。

まぁ当然ながら生存者なんていなかったわけだが...

俺らは跳躍して次の目的地へ向かった。移動の際の会話は普段の彼女らから比べるとありえないくらい少なく、出発の時の明るさはもうなかった...

ちなみに次は名古屋です。(セントレア空港があるね。行ったこともないし詳しくもないけど)

もう「次こそは」ということを誰も発しなかった。

 

 

 

 

やがて俺たちは、名古屋駅の前に立つ大型ビルの屋上に降りた。周辺を一望できる。変身解除した瞬間足が竦んで立てなくなりますが...

そこから見る景色は今までのものと変わらないと思っていた...

 

「おいおい...なんだ、あれ?」

 

球子が顔をしかめながら、駅の方向を指差した。

そちらのほうを見てみると、駅周辺とその向こう側の地域全体が、無数の巨大な卵状のものに覆われていた。精子と卵子どこ行った...

卵は生理的嫌悪感を催すほどの不気味な光景であった。

俺は怖いもの見たさで強化された五感で卵の様子を見てみた。卵の殻の中で何かが蠢いているのが分かった。

それはまるでGが大量に群がっているように思え、俺は杏と同時に崩れ落ちていた。

 

「...う、ぅ...」

 

「お、おえぇ~...うぅ...最悪の気分...今朝食べたうどん出てきそう...」

 

「大丈夫かっ、あんず⁉」

 

「大丈夫⁉ひなと君!」

 

慌てて球子が杏を支え、ちーちゃんが俺を支えてくれる。

 

「だ...大丈夫...。ちょっと、びっくりしちゃって...」

 

「う...きもび悪い...」

 

そう言いながら、杏の顔は真っ青になり目には涙が浮かんでいる。ちなみに俺は顔を真っ青にし、手で口を押さえている。

 

「...私たちの四国も...いつかこんなふうに...」

 

震える声で杏がつぶやいた。

 

「そんなこと、タマが絶対にさせないっ!」

 

杏の不安を断ち切るように、球子が強く言い切った。球子は引き続き吠えるように叫ぶ。

 

「そのためにタマたち勇者がいるんだっ!こんなふうに、させてタマるかっ!人間が...わけわからない化け物なんかに、負けてタマるかっ!」

 

球子の声を聞いて少しだけ元気づけられたのか、杏は弱々しい微笑を浮かべる。俺はちーちゃんにいい子いい子されてたので元気が出ていた。

 

「そう、ですよね...私たちが頑張らないと...」

 

「ちーちゃん、ありがと。おかげで気分少しだけよくなった」

 

杏は涙をぬぐい、自分の力で立つ。俺も自分の力で立つ。少しふらっとしたけど...

突然お姉ちゃんの声が響き渡る。

 

「皆さん!まずいです、囲まれています...!」

 

ビルの屋上から周囲を見渡してみる。所々にバーテックスが浮かんでいるのが見えた。バーテックスはどこからともなく次々に現れ、すさまじい勢いで数を増していく。おい、大社の数が減少してる理論どこ行った...もともと信じてないけど...

 

「...タマは今、腹が立ってんだ...」

 

球子は鋭い目でバーテックスを睨む。

 

「この世界は、お前たちなんかには奪わせないっ!そのためなら、どんなことだってやってやるっ!」

 

「球子、待て―」

 

若葉が止めようとしていたがもう遅い。既に球子は切り札を発動させていた。遠くの四国の地に立つ神樹にアクセスし、精霊『輪入道』を呼び出した。

次の瞬間、巨大化する旋刃盤。球子は全身を使ってその巨大な武器をバーテックスに向かって投げた。何度見ても根性ってスゲーと思う。

 

「いっけえええええええっ‼」

 

どっかの高校生の小学生が言ってそうな掛け声とともに投げられ、空中を滑走する巨大旋刃盤は、周囲の刃をチェーンソーのように回転させながら、ビルを取り囲む化け物どもに襲い掛かる。開店する刃は炎を纏い、バーテックスたちを凄まじい勢いで轢殺、焼却していく。

空中の敵を殲滅した後、地面を覆っている卵状のものへと、旋刃盤は襲いかかった。

輪入道の力を宿した巨大旋刃盤は、不気味な卵群を焼き尽くしていく。見てて爽快な気分になった。

 

「球子、軽々しく切り札を使うな!」

 

「悪い、若葉。ついカッとなった...まぁ後悔はしてないけど」

 

「あのきしょいの破壊してくれてサンキュー。よくやった」

 

「ひなと?今持ち上げてはだめですよ?」

 

バーテックスと地面を覆っていた卵をすべて焼却した後、自分のところへ戻した旋刃盤へ球子は飛び乗った。

 

「どうせならこれに乗って名古屋を見て回らないか。空から探したほうが手っ取り早いだろ」

 

「...ああ」

 

そうして俺らは巨大化した旋刃盤に乗った。

 

 

 

 

―そしてやっぱり名古屋でも生存者は見つからなかった。卵状のもので覆われた地域には、生存者はいないだろうという結論になり捜索は短時間で終わった。

駅前のビルに戻ると、体力がきれたのか、球子の旋刃盤のサイズが戻った

 

「あー、やっぱりきついなぁ、切り札使うのって」

 

屋上に座り込んで、球子はため息をついた。

 

「もう使わないようにしてくれ。ほんとにどうな影響があるかしれないのだから」

 

「わかってるって」

 

若葉の言葉に、球子は苦笑しながら答えた。そしてなんかあったのか、黙り込み考え込むように旋刃盤を見つめた。

 

「...」

 

「どうかしたの、タマっち先輩?」

 

杏が心配して声をかけた。

球子は首をかしげながら

 

「いや、若葉や友奈、千景が使った時は全然疲れている感じじゃなかったのになんでタマだけ疲れているのかなって思っただけだ」

 

といった。

 

「あぁ、それは俺を経由させて切り札を使っているからだな。カードがある人のみこれができるんだ。だから申し訳ないがカードがまだない杏と球子は俺を経由して切り札を使わせることができない」

 

「メリットって何なんですか?」

 

と杏が聞いてきた。

 

「疲労とか、もしデメリットがあった場合それを肩代わりできることだな」

 

「「「「「え...」」」」」

 

「別に俺は大丈夫だから気にするな」

 

「そ、そうか...」

 

「さぁ、さっさと行くぞ。諏訪はあっちだよな」

 

みんなが不満ありげな顔をしていたので、無理やり会話を終了させ跳躍しようとする。

 

「ひなと、待ってください!」

 

「何?お姉ちゃん?別に俺がいいって言ってるから、疲労どんとこいだから大丈夫だからね?」

 

「違いますよ...そっちは諏訪と逆方向ですよ」

 

「ぷっ!」

 

そうお姉ちゃんが言った瞬間、ちーちゃんが吹いた。他の皆もほほえま~って感じで俺を見ている

 

「ちょ!笑うな!」

 

俺はそう言いながら今度こそ諏訪の方向を向く。

名古屋から中央自動車道を辿り、東南へ進んでいく。

名古屋、長野、東京を結ぶ長距離道は、バーテックスによりボロボロになっていた。

道路上にはやはりバーテックスによって押しつぶされた車の残骸が無数に残されていた。

俺は長野が近づくにつれ、足が重くなっていた。若葉なんかはまだ期待などがあるようだが、俺に関しては結末をもう知っている。実際にあったことはないが、若葉の付き添いで一応言葉は交わしていたため友達程度には思っていた。知っている人の場所のためどうなっているかわかる自分からしてはどうしても足が重くなるもんである。

 

 

 

 

 

諏訪湖の周辺に四つの社を持っているらしい諏訪大社。かつてはその四社が要となって結界が形成され、人類の生存地域が守られていたらしい。バーテックスからの侵攻が激しくなり、結界はだんだん縮小され、去年連絡が途絶えたときの無事な地域は諏訪湖東南部のみだった。

俺らは諏訪湖にたどり着き、諏訪大社の上部本宮を目指す。

途中見える長野の街並みも、やはりほかの地域のように崩壊していた。もうそこに、人類を守っていた結界は存在しない。ワンちゃんなんかの奇跡が起きて変わると思っていたが、一瞬でその希望が消え去っていく。

そして上部本宮へと到着した。

しかし―

そこに社と呼べるようなものはなかった。

神社にあるようなものすべてが木材や石の残骸に変わっていた。

ここは他の地域よりオーバーキルをされている。そんなに人間の味方をしている神が嫌いなのだろうか、神の力で抵抗していたところはなかったことにするかのように、あらゆるものが破壊されていた。

 

「く...っ!」

 

言葉にならない呻きが、若葉の喉から漏れた。

結界は消え、バーテックスから蹂躙を受け...そんなところに人が生きているはずがない。そんなことはわかっているはずなのに、若葉は顔を上げ言った

 

「探そう...生き残りがいないかを」

 

 

 

 

俺たちは手分けし、上社本宮を中心に捜索を続けた。

 

日が暮れ、空が赤くなってきた頃―

 

上社本宮から近い守屋山ふもとの辺りで、畑が見つかった。

 

あらゆるものが破壊された中、かすかに残っていた人がいたという痕跡。雑草に覆われ、よく見ないとわからなかったがそれはしっかり人が耕した畑だった。

 

 

 

「あれ...?」

 

 

 

突然友奈が声を出し、畑のわきの地面を見た。つられてみてみると何かがわずかに突き出ているのが見える。そして友奈はその見ていたあたりに行き地面を手で掘り出した

 

他の皆も無言で続く中俺はライドブッカーからカードを取り出し、使用する。

 

 

 

『ATTACKRIDE SHOVEL』

 

 

 

その瞬間、目の前にがっこうぐらしとかで見るようなシャベルがいつものように出てきたので、空中でキャッチする。

 

 

 

「どいて。あとは俺がやる」

 

 

 

俺はシャベルで地面を掘っていく。

 

やがて埋まっていたものが姿を現した。それは人の身長ほどの大きさがある、木製の箱だった。

 

 

 

「誰かが残したのか...?」

 

 

 

若葉はそう言いながら、箱のふたを開けた。

 

出てきたものは―一本の鍬。そして折りたたまれた一枚の手紙だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めまして

いえ、もしかしたらこれを読んでいるのは乃木さんやひなとさんかもしれませんから、初めましてというのは変ですね。

いえいえ、実際に乃木さん達にあったことはありませんから、やっぱり「初めまして」でしょうか。

ごめんなさい、どういう書き出しをすればいいか迷って、どうでもいいことを長々と書いてしまいました。

もしこの手紙を見つけた方が乃木さんでなければ、どうぞこの手紙を、四国の勇者である乃木若葉さんか上里ひなとさんに渡していただければと思います。

さて、バーテックスが現れた日から、すでに三年ほどになります。何とか諏訪を守ってきましたが、結界も次第に縮小し、本当に切迫した状況になってきました。本来なら、勇者である私が弱気なことを言うべきではないと思いますが、諏訪はもう長くはもたないでしょう。

けれど諏訪が終わっても、まだ乃木さんの四国は残っています。

世界はボロボロになってしまったけれど、過去の歴史話ひもとくに、人間はこれまでどんな戦争、自然災害に見舞われても、再興していきました。

だから、今は大変な時期でも、諦めなければきっと大丈夫なはずです。乃木若葉さんに上里ひなとさん。まだ会ったことのない、私の大切な友達。ひなとさんについては香川でそばを食べてくれている、香川にとって大切な人。

こんな時代でも、あなた達に出会えたことを、とてもうれしく思います。

どうか...どうか、あなた達がバーテックスとの戦いの中でも、無事でありますように。

この世界が、あなた達のもとで、ちゃんと守られていきますように。

最後まで人類を守り続けるのが、たとえ私ではなっかたとしても。それでも誰かが、乃木さんのような勇者が、世界を守り続けてくれるのであればいい。そこに繋げる役目を、私は果たします。

最後に。

この天災を乗り切った後、大地を耕して蘇らせる時に、この鍬を使っていただければ幸いです。私も一緒になって、耕しているという気持ちになれますから。ついでにひなとさんを香川のそばの大使に勝手ながら選ばせてもらいます。私の夢は農業王なのですが、ひなとさんにはそば王になっていただければ幸いです。三百年後らへんに香川がそば県になっていればすごくうれしいです。というわけで頑張ってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前世に聞いた勇気のバトンを思い出した。一番最後のお願いは聞けそうにないな...俺の隣にはうどん魔王と、その四天王やら五天王がいるし、三百年後には新しいうどん女子力大魔王が生まれているからな。

 

 

 

「...っ」

 

 

 

若葉を見ると目には涙が浮かんでおり、手紙を握る力がこもりすぎているのか紙がぐしゃぐしゃになっていた。ふと俺は思う。なぜ若葉はこんな気持ちになっているのに、俺は何にも感じていないんだろうと。いや感じているは感じているはずなのだが、なんか他人事のように思えてしまう。こうなることが分かっていたのに何もしなかったからだろうか。それとも精霊の使い過ぎで精神、感情が死んでしまったのだろうか...

 

 

 

「ひなと...」

 

 

 

お姉ちゃんが俺を見てハンカチを取り出し、目の辺りに押し付けてきた。そこで俺は、泣いていたことに気づく、単純に無理難題と放心で泣いていることに気づかなかったらしい。はぁなんで何もしなかったんだろうな...上から目線で勝手に目標決めてバカみたいだ...俺なんt

 

マイナス思考になっている時にチートが発動し、マイナス思考が消えていき、何にも考えられなくなり、また箱だけを見る状況になった

 

 

 

「ここも...同じ...全部、壊されて...!」

 

 

 

「ううん、全部じゃない...」

 

 

 

友奈は首を横に振る。そして手紙と一緒の木箱に収められていた鍬を、小さな子供を抱くように優しく持ち上げた。

 

 

 

「これが残っていた。白鳥さんから引き継いだバトンだね、きっと...」

 

 

 

友奈はその鍬を若葉へと差し出す。

 

両手でしっかり握って、若葉はそれを受け取った。

 

祝え!異なる場所で生まれ、同じ時代を生きた勇者たちが白鳥歌野の勇気のバトン()を継ぎ、新たな決意がみなぎり、今ここでつながった瞬間である!

そんなどうでもいいけどどうでもよくないことを思っていると、ちーちゃんが

 

「さっきから黙っているけど大丈夫?」

 

と聞いてきた。俺は声を絞り出し

 

...大丈夫だよ...

 

と言った。その瞬間ちーちゃんが抱きしめてきて

 

「嘘ね、大丈夫だったらそんな絶望した顔しないでしょ。多分自分が何にもできなかったとでも思っているのかもしれないけど。そもそもこんなに離れているのに何とかするということ自体無理なのよ。だから自分を責めちゃだめよ。確かにつらいかもしれないけど、後悔したり、責めるのはすべてが終わった後でも遅くないと思うわ」

 

と頭をなでながら言う。

それを聞くなり、俺は心が軽くなった。

 

そうだまずは四国の勇者が死なないようにするのが先だ...

 

俺は抱き着いたちーちゃんを優しく突き放し

 

「ありがと」

 

と言った。ちょっとこっぱずしくて顔は見れなかったが

 

 

 

 

その後、大社への報告用として本宮境内を調べていたお姉ちゃんが、破壊された社殿の後から小さな布袋をいくつか見つけて持ってきた。

 

「何かの種...でしょうか?」

 

それぞれの袋を見ると、種類の違う細かな粒が入っていた。

杏が眉間に指を当て、思い出すように考えながら

 

「...多分これ、そばの種だと思います。ひなと君に育ててほしいのでしょうか...?こっちの袋は大根、こっちはキュウリかな?今の季節に植えられるものもありますね」

 

畑、種、鍬がここにある誰かが言い出すこともなく、俺たちは遺された畑を耕し始めた。

既に日は落ち、月明かりの下で俺たちは向き合う。みんなで雑草を抜き、交代で白鳥さんの鍬を使って土を鋤き返した。

なれない作業だったが不満を言うものはいない。

夜が明ける頃には、畑の一部を耕し終えることができた。

柔らかくなった土に種を撒く。

バーテックスが蔓延るこの地で、植えられた種が育つ可能性は低いだろう。それでも、白鳥が遺したものを、少しでも元の形に戻したかったのだ。

 

「この鍬と残った種は四国に持ち帰ろう」

 

朝日の中で畑の光景を見ていると、若葉が寂しげにそう言った。

その後、長距離の移動と農作業で疲れた俺たちは畑のそばで少しだけ眠った。

目を覚ましたら次は東京だな~そう思いながら。

だが調査遠征はここで中止となった。

休息から目を覚ましたお姉ちゃんが険しい状況で告げた。

 

―四国が再び危機にさらされている、と




さーてノープランですが頑張っていこう。
2,000文字やり直すのって意外とメンタル来ますね(番外編でもやりましたがこの学ばない奴はまたしでかしましたよ)


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第13話 レクリエイション

休憩は終わりのはずだったんですけどねぇ...
あ、いつも通りですはい...
忙しくなるから休憩って言ったのにさらに忙しい週がまだあったとは...



『勇者様と巫女様による調査の結果、諏訪地方の無事が確認されました。現在大社は、諏訪の避難民へ物資を輸送する方法などを検討しています。また、諏訪以外の地域でも人類が生存している可能性が高いとみられ―』

 

 俺たちは食堂で、テーブルに置かれた携帯テレビから流れるニュースを聞いていた。

 第1回壁外調査(調査遠征)から四国へ帰還して、今日で3日目。今は昼食時間でみんなはうどん、俺はそばを食べていた今日で3日目のそばである。若葉も遠征から帰ってから俺がそばを食べても何も言わなくなった。

 この3日間、テレビや新聞などの情報機関は、調査遠征によってもたらされた『よい報告』を流し続けている。やっぱり人は同じことをするらしい...戦時中の日本みたいだ。

 

「相変わらず嘘ばっかだ。せっかくのうどんが不味くなる」

 

 不機嫌そうに言いながら、球子がテーブルに箸を置いた。

 

「人々の士気を下げないために、情報を操作する...戦争とかではよくあることですけど...」

 

 杏が暗い口調でつぶやく。

 歴史上、フェイクニュースを流して無理やり明るい空気を作ったところって、大体最終的に負けるんだよなぁ...

 

「みんな、うd...麺伸びちゃうよ、ニュースばかり見てたら!よ~し、伸びるくらいだったら、私がタマちゃんの肉うどん食べる!」

 

 友奈が球子のどんぶりに箸を伸ばし、素早く一口食べてしまった。

 

「あっ!友奈っ、お前~!肉まで食べやがったなっ!」

 

「残すくらいだったら、食べてあげたほうが良いかなって」

 

「ちゃんと食べるつもりだったんだっ!こうなったら、友奈のうどんのキツネいただくっ!」

 

「ああー!1枚しか入ってないのにー!」

 

 うどんをめぐって争いを繰り広げる友奈と球子。

 

「もう、タマっち先輩、子供みたいに喧嘩しないでください」

 

「むぅ...」

 

 杏に叱られ、球子はおとなしくなる。

 

「友奈さんもお行儀悪いですよ」

 

「はぁい」

 

一方、友奈もお姉ちゃんに注意され、恥ずかしそうに返事をする。

 

「...ひなと君さっきから箸進んでないけどなんかあったの...?」

 

 球子たちの争いを無言で見ているとちーちゃんが心配した様子で聞いてきた。

 

「いや、さすがに飽きてきた。俺がうどんを苦手になった理由が5日連続でうどんが出てきたことだからこのままいくとそばもうどんの二の舞になりそう...」

 

「そう...」

 

「ついでにお腹いっぱいになってきたかも...残そうかなぁ...」

 

「なんですって⁉」

 

 そう俺がギブアップしようとしたら、隣にいたお姉ちゃんが声を上げた。

 

「残しちゃだめですよひなと!ほらお姉ちゃんが食べさせてあげますから。ほら、あーん」

 

 そういって俺から箸をぶんどり、そばをすくい押し付けてくる。

 

「え...いやぁ...いいよ...お腹いっぱいだし...」

 

 そう言って俺は拒むが、

 

「聞こえなかったんですか?ひなと...あーんって言ったんですよ?」

 

 そう言ってすごい笑顔になるお姉ちゃん。怖い...しょうがないので口を開けると箸を突っ込まれ、すごい量のそばが口に入ってくる。

 

「んぐ...」

 

 口をハムスターのように膨らませながら、必死にそばをかむ。するとお姉ちゃんは頬に手を当て懐かしむように

 

「いやぁ懐かしいですねー...昔ひなとはピーマンは少し嫌な顔をしながら食べるのですが、ゴーヤ、パプリカは絶対に箸をつけないで残そうとしていたので、今みたいに無理やり食べさせたものです。そして食べた後の目に涙浮かべて必死に食べているのはほんとにかわいかったですねー」

 

 俺は今、口の中がそばでいっぱいなので反論できなかった。なので軽くお姉ちゃんをポカポカ殴っといた。若葉のほうを見てみるとこっちを見て苦笑していた。なんだよ、そんなにこの顔おかしいかよ...

 友奈はみんなを見回し、明るい口調で言う

 

「あのさ!大社の人たちが流しているニュースは、今は噓だけど、私たちが本当にすればいいんだよ。バーテックスを全部やっつけて、世界を取り戻して!」

 

「ああ、友奈の言う通りだ」

 

 若葉は頷き、携帯テレビの電源を消した。

 

「...ごちそうさま...」

 

 ちーちゃんは食べ終わったどんぶりの横に箸を置いて俺を見てくる。早く食い終われという目だ。

 

「あ、そういやタマ用事あるんだった」

 

 球子がテーブルを立った

 

「あんず、午後の授業、欠席するって先生に言っておいてくれっ!」

 

「え?うん、いいけど...」

 

「さぼりじゃないからなっ」

 

 急いで食器を片付け、球子は食堂から出ていった。

 

 

 

 

 放課後―俺はちーちゃんと訓練場で勇者用の武器を使って模擬戦をしたり素振りをしていた。

 前までは重そうに慣れない手つきで鎌を振っていたが、今では軽々と振っている。

 

「ぐんちゃーん!」

 

 突然明るい声がしたのでそちらのほうを見てみると、訓練場の出入り口から駆けてくる友奈の姿があった。

 友奈は俺たちの前に来て、ちょっと不満そうに言う。

 

「自主練するんだったら呼んでくれれば良かったのに。一人より二人、二人より三人でやったほうが練習になるよ!」

 

 そのまま流れで俺たちは模擬戦をする。最初は一対一対一だったが、俺が澄ましたかおで全部避けていたのでいつの間にか一対二になっていた。きりのいいところになったので一休みする。

 

「四国に戻ってから、ぐんちゃん達偶に自主練してるよね」

 

 ペットボトルの水を飲みながら友奈はこちらを見て言った。

 

「いつ襲撃があるか...わからないから...」

 

「う~ん、そうだよね。ヒナちゃんの神託によれば、危険が迫ってるらしいけど、具体的にいつなのかはわからないって言ってたよね...」

 

「私は...早く戦いたい...早く、バーテックスどもが、来ればいいのに...」

 

 ちーちゃんがポツリとつぶやいた。

 

「ぐんちゃん?」

 

 不穏なちーちゃんの口調に心配したのか、友奈はちーちゃんを見つめる。

 

「私は...早くひなと君との日常を取り戻したい...だからバーテックスを全滅させたい」

 

「...」

 

「四国の外があんなふうになっているとしたら...いずれここもそうなってしまうかもしれない...だから少しは強くなっておかないと...」

 

「そう...じゃ、頑張らないとね!」

 

 友奈が笑顔でいう。

 

「そうだな」

 

 俺もつられてちーちゃんのほうを向いた。

 

 

 

 

 

 ちーちゃんとの自主練が終わった後、俺はお姉ちゃんといた。今から若葉の部屋に行くところだ。...俺、用ないんだけどね...若葉の部屋の前に来たらお姉ちゃんが

 

「恐れく若葉ちゃんは考え事をしています。ですので、抜き足差し足で、こっそりと入りましょう」

 

 と合鍵を見せながら言ってきたので俺は黙ってうなずいた。そしてお姉ちゃんは静かにカギを開け、つま先で歩き音を出さないようにしていたので俺も続く。そして考え事をしている若葉の後ろを歩きながら、ベットに腰掛ける。すると突然若葉が、

 

「遊び...レクリエーション...いいかもしれない」

 

 とつぶやいた。すると隣で同じくベットに腰掛けていたお姉ちゃんが反応した。

 

「レクリエーションですか。何をするんですか?」

 

「ひ、ひなた⁉そ、それにひなとまで!なぜ⁉いつの間に⁉どうやって入ってきた⁉」

 

「考えことをしていたようでしたので、邪魔にならないように、こっそり入ってきました。抜き足、差し足で。合鍵も若葉ちゃんから渡されていましたし。

 

「俺はお姉ちゃんの配慮という名の悪ふざけに付き合っただけだ」

 

「止めろよ...心臓に悪いから、普通に入って来てくれ...」

 

「細かいことはともかく。どうしたんですか、若葉ちゃん。考え込んで、急にレクリエイションがどうとか言って」

 

「『細かいこと』で流された...。ひなとはわかると思うが、今、私たちの間に、少し良くない空気が流れている。ひなたも気づいているだろう?」

 

「...ええ、そうですね」

 

 お姉ちゃんがニコニコとしていた表情を真剣な表情にし、頷いた。

 

「だから、何かみんなで遊んで、気分転換でもしたらいいんじゃないかと思ったんだ」

 

「「...!」」

 

 俺とお姉ちゃんは驚き目を丸くした。

 

「な...なんだ?二人して...なぜ驚く?」

 

「いえ、若葉ちゃんから、そんな考えが出てきたことが、意外で...」

 

「そうそう。若葉=バカ真面目。遊び?何それおいしいのって感じの人種かと思ってたから...」

 

「...そうかもしれないけど言いすぎじゃないか...?」

 

「やっぱり、若葉ちゃんは変わりましたね。とてもいい変化だと思います。ひなとはほんとに変わらないですね。少し大人になったらどうです?」

 

「あー!聞こえない聞こえないー!ところで若葉!レクリエーションって言っても何をやるんだ?」

 

「ああ、みんなで盛り上がれるし、同時に訓練になることを思いついたぞ」

 

 

 

 

 若葉曰く、レクリエーションの内容は、勇者たち全員によるバトルロイヤル形式の模擬戦だった。戦場は、丸亀城の敷地全体。最後まで生き残った者は、優勝の特典としてほかのメンバーに自由な命令を下すことができる。敗者たちはその命令に必ず従わなければならない。

 

「レクリエーションと言いつつ、模擬戦なのが若葉ちゃんらしいです」

 

 とお姉ちゃんは苦笑した。

 

「ほんとそれな。まぁただの訓練じゃないだけ幾分もましだけどね」

 

「そして、切り札以外だったら何をしてもいいというルールだ。武器も本物の勇者専用武器を使う」

 

 そう言いながら若葉は愛刀を握りしめた。

 

「いいねぇ」 「だめですよ」

 

 俺とお姉ちゃんの声が重なる

 

「けがをしたらどうするんですか」

 

「だがそうでないと緊張感が...」

 

「そうだよ、それだといつもの模擬戦と変わらないよ」

 

「駄目です」

 

「「え~」」

 

「え~、じゃありません。駄目です」

 

「「はい...」」

 

 お姉ちゃんが真顔で言ってきた。怖い。

 後日学校に聞いてみたところ、訓練になるということで許可が下りた。武器はしっかり模擬戦用だ。ついでに変身もできないため、俺の武器は固定になる。変身出来たら武器変えられんのになぁ...俺は適当に剣を選んどいた。

 

 

 

 

 翌日午後...デュエル開始―!

 

 適当にぶらぶら歩いて丸亀城の二の丸に着くと、友奈と若葉が戦ってるところに鉢合わせした。よし、逃げるか。そう思って抜き足差し足でその場から離れようとしていたのだが、その瞬間友奈がこちら側に吹っ飛ばされ俺にダイレクトアタックしてきた。そのまま俺は友奈のクッションに強制的になり、友奈の尻に敷かれる(変な意味じゃないぞ)

 

「なんだひなといたのか」

 

 そう言いながら若葉は追撃しようとしてくる。

 

「まって若葉ちゃんこのひなとくんあげるから、体勢整える時間頂戴」

 

友奈は俺を尻で踏みながら言った。

 

 「...え?」

 

「残念だったな。どっちも倒させてもらう」

 

 そう言って若葉はダッシュでこちらに来て俺らにとどめを刺そうとしてきた。

 

「させない...っ!」

 

 突然そこら辺の草むらから所々に葉っぱが付いたちーちゃんが出てきて若葉の攻撃を防ぎ、さらに追撃をした。まぁ避けられてたけど...

 

「サンキューちーちゃん」

 

「ありがとう、ぐんちゃん。助かったよ」

 

「うん...気にしないで...」

 

「仕切り直しだな」

 

 友奈が吹っ飛ばされる前に、弾き飛ばしていた木刀を鞘に納めながら若葉が言った。ちなみにさっきまでの若葉は鞘で戦っていた。

 

「でも、三対一よ...あなたに勝ち目は...ないわ...ついでにひなと君いるし」

 

「いいや、四対一だ」

 

 そう言いながら球子も二の丸に姿を現した。

 

「...なぁ...仮に、仮にだ。もし私が倒せたとして残った戦力でそこにいるひなとを倒せるのか?私は最低でも一人は持っていくぞ?ここは一時休戦してそこにいるひなとを倒さないか?」

 

「...確かに無理だな。よし!タマは若葉の意見に乗っかるぞ」

 

「うーん。私も若葉ちゃんよりひなと君のほうが殴るのに抵抗がなくなるから、若葉ちゃんの意見に乗っかろうかな...」

 

 そう言いながら二人は若葉のほうに足を進める

 

「え?」

 

 ...やべぇ。そんなことを思いながらちーちゃんのほうを向くと

 

「ごめんなさいね」

 

 そう言いながらちーちゃんも若葉のほうに足を進める。そこから先は蹂躙という蹂躙だった。まぁそこまでのことではなかったけど...まず若葉か、友奈の攻撃が来る。頑張ってその攻撃を避けても、クールタイムなしで、残った人の攻撃が来る。それの繰り返しだった。気づけば俺は壁際に追い込まれており武器は弾き飛ばされていた。攻撃を避けて続けていた俺の体力はもうなく、壁を背もたれにしてペタンと座り込んでしまった。そして友奈が指をぽきぽき鳴らしながらこちらに近づいてくる。怖い

 

「さ~て、顔面と腹どっちにパンチしようかな~?」

 

 そう言いながらにやにやとした表情でこちらに近づいてくる。怖い、怖いが目は絶対にそらしていけないと思い目はそらさないでおいた。疲れか恐怖か知らんが足はめっちゃ震えている。そうして友奈は目の前に立ち、拳を振り上げた。やられる。そう思うと目をそらさないなんてことはできず、衝撃に備え目をつぶった。だが思った衝撃は来なかった。代わりに頭にコテンって感じのパンチはされたが。俺は不思議に思い目を開けると、友奈に頭をなでられた。???と思っていると頭をなでながら友奈は言う。

 

「本気で殴ると思った?さすがにそんなひどいことはしないよ。ちょっとからかっただけ。でも今の見てるとヒナちゃんやぐんちゃんがひなと君のことかわい、かわいって言ってるのもわかる気がするな...だって目をそらしたくなかったんだろうけど、ずっと涙目だったよ?本気で殴ろうなんて気力なくなっちゃったよ~」

 

「さ~てひなとは倒したし、後は若葉だな!」

 

 そういって球子たちは若葉のほうを見て武器を構えた。...まぁここからは原作通りです...最初にちーちゃんがとつって若葉に切られ、それのせいで動きが止まった友奈が切られ、球子逃亡。そして球子がおとりになり杏が若葉の刀を落とす。そして若葉が敗北を認め球子が裏切られる。そして勝利の権利として、杏はほかの勇者たちに命令を下せることになった。

 

 

 

 

 杏からの命令で教室にいろとのことで、俺は教室で待っていたのだが、急に扉があいたかと思ったら結構でかめのカメラを持ったお姉ちゃんと、学ラン姿の友奈、若葉いつも通りのちーちゃん、なんかメガホンっぽいものを持っている杏、そして...え、誰?なんかタイプではないがすっげー美少女(語彙力崩壊)が入ってきた。...あ、この方球子か。全員がそろったことを確認した杏は

 

「全員揃いましたね。では全員廊下に移動してください」

 

 と言った。そして球子が壁に行き、若葉が球子の目の前に立ち、友奈は扉の前に立った。

 

「では始めてください」

 

 そう杏が言った瞬間若葉が急に壁ドンを始めた。あ~こんなシーンあったなぁ。そう思いながらもよくわからん寸劇は進んでいく。

 

「私のものになれよ、球子...」

 

「わ、若葉君...そんなこと言われても、たまには他に好きな人が...」

 

「待ちなよ、若葉君!球子さんが嫌がっている!」

 

「あ、高嶋君...って、なんじゃこりゃあああっ!」

 

「カット、カットぉっ!ダメだよー、タマっち先輩!ちゃんとセリフ通りに行ってくれないと!」

 

 そう言えばコーユー感じの場面最近どっかで見たことあるな...なんだったけ...あ、思い出した。この間杏に押し付け...すすめられた小説に出てきた気がする。読んでみたら意外と面白く、二週ぐらいした作品だ。

 

「こんな恥ずかしいセリフ言えるかっ!というか、なんでタマが『内気でおとなしい少女』の役なんだよっ!」

 

「このヒロイン、背が低くて貧乳っていう設定だから。タマっち先輩に合うかなって」

 

「タマがちびだって言いたいのかぁっ!」

 

 こいつ貧乳のところ見事にスルーしたな...

 

「というか、私は男装までさせられているのだが...」

 

「私も...なんだか男子の制服って、変な感じ」

 

「再現度を高めるために当然です!」

 

「と、とにかくっ!あんずの言う通りにしたぞっ!もうこれで終わり...いいか?」

 

 球子が顔を赤くしながら叫んだ。若葉はぐったりしていた。

 

「面白かったけど、やっぱり、ちょっと恥ずかしいよね」

 

 友奈も少し照れた様子でいう。

 

「まぁ少し再現度に不満はありますが、次に期待ってことで良しとしましょう。さて、次は」

 

杏の目が俺らのほうに向く。ビクッと体を震わせる俺ら。

 

「私も、あんな恥ずかしいことを...?...ぜ、絶対に...お断りよ...!」

 

「お、俺演技できないからね?」

 

「普段外でお嬢さま演じてる人が何言っているんですか...それに千景さん相手はひなと君ですよ?」

 

「何やっているのひなと君早く着替えるわよ」

 

 杏の言葉を聞いて早口でいうちーちゃん。さっきまで震えていた人はどこに言ってんだか...そうして俺らは着替えて先ほど球子や若葉がいた配置についた。

 

「ちなみになんていえばいいんだ?」

 

 俺は杏に尋ねた。

 

「さっきのタマっち先輩と同じことをしてくれればいいです」

 

「え...このままひなと君の名前のままで行くと字面的にはBLになるんだけど...いいの?」

 

「あーまぁいいでしょう」

 

「わかったわ」

 

 そうして学ラン姿のちーちゃんは壁を背もたれにして、立っている俺の前に立った。なんか少しに合ってないな。おとこっぽさないからな...ちーちゃん。ライダー風の衣装だったら似合いそうだけど...

 

 そう思っていると、ちーちゃんが手を少し引いて勢いよく前に突き出した。

 

 ドン!

 

そう壁の音がした。ちーちゃんの顔は目の前にあり、なんかこうドキドキした。心臓がうるさい。...やばい足が震えてきた。そんな俺の体の変化を無視しちーちゃんは俺の耳元まで体を持っていき囁く。

 

「私のものになれよ、ひなと...」

 

 その瞬間、頭が真っ白になった。あ、あれなんて言えばいいんだっけ...というかさっき少しに合っていないとか言ったけど、前言撤回むっちゃかっこいい。なんか言わなきゃ。そう思ったが口をパクパクさせるだけで声が出ない。あれ視界がぐらぐらしてきた。これ以上ちーちゃんを直視してはいけない。そう思い目をそらすが。すぐ強制的にちーちゃんを見ることになっていた。

 

「どこ見てんのよ」

 

 そう言ってちーちゃんは『あごくい』と呼ばれるようなものをして、目を合させられていた。その瞬間()の足に力が入らなくなっていて床にペタンと座り込んでしまった。

 

「カット、カットぉっ!だ、大丈夫ですか!?ひなと君!」

 

 杏がなんか言っているがあまり聞き取れない。大丈夫。そう言おうとしたが、その瞬間()の視界が少し高くなった。()()()にお姫様抱っこされていたのだ。

 

「大丈夫?」

 

 やはり耳元で()()()がささやいてくる

 

「あ!千景さん!今そんなことしたら...!」

 

 そんな杏の声を最後に()の意識は落ちていくのであった。

 

 

 

 

 ちなみに俺の意識が落ちている間に、ちーちゃんに卒業証書が渡されていた。...俺が渡したかったなぁ。

 




次の話は運命の瞬間ですね...楽しみ。
早くゆゆゆという日常を描きたいですねーわすゆ?何それおいしいの?


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第14話 俺、参上!

この辺に前回(書くの)楽しみとか言った割にゲーム優先した野郎がいるらしいっすよ...
はいいつも通りです。また忙しくなりそうで発狂しそうです...
感想、お気に入り登録ありがとうございます!


筆者『この本(電子)によれば2015年普通の転生者上里ひなと。彼には男でありながら勇者になることができ、勇者の皆と日常を過ごす未来が待っていた。それを天から阻止しに来るバーテックス。しかし上里ひなとは(間接的に)女になることを選び、バーテックスを倒す。そして、ディケイドドライバーが壊れ、大社から使用を禁止されていたの電王ベルトを使用する羽目になるのだった。おっと先まで読みすぎましたか...』

 

 

 

 

 レクリエイションから数日たったある日、教室で球子と杏が花見をしないかと聞いてきた。

 

「楽しそう!やろう、やろう!」

 

「ええ、いいですね。丸亀城にいて、お花見をしないという選択肢はありえません」

 

 まず友奈とお姉ちゃんが反応した。そのあと、若葉がつられるように

 

「いい息抜きになるだろうし、悪くないな」

 

 と頷いた。

 

「私も...お花見やったことそこまでないからやりたい...」

 

「そっか...で、ひなとくんはどうなの?」

 

 と友奈が聞いてきた。

 

「俺もお花見やりたいかな。というかこの空気で反対意見が出せるわけないだろ」

 

「よーし、じゃあ次のバーテックスとの戦いが終わったら、祝勝会を兼ねたお花見だーっ!俄然、やる気が出てきたぞっ!」

 

 そういって球子は元気よく手を振り上げた。まぁ祝勝会って言っても必ず勝たなければいけないんですけどね...

 

「早くお花見、できたらいいなぁ...」

 

 杏が教室の窓から、丸亀城の敷地に咲く桜の樹を眺めながらそうつぶやいた。

 

 

 

 

 その日の夕方。ちーちゃんと一緒にゲームをしている途中に俺らのスマホから凄まじい音量で、樹海化の警報音が鳴り響いた。

 

 

 

 

『BRAVERIDE サザンカ!』

 

 そうして俺は変身し、すでに変身している若葉たちの隣に立ち、植物組織に覆われた四国の地に立ち、壁の外から押し寄せるバーテックスたちの姿を見た。

 

「なんだよ、今までにない事態事態とか言っていた割には、大した事なさそうだな」

 

 球子は拍子抜けしたように肩をすくめた。確かに前回より数は少ない。だが今回は『アイツ』がいるからな...これまで以上に気を引き締めなければならないし、これまで以上に球子と杏を見なければ...

 

「油断するなよ、球子。何事も大丈夫だと確信したときの方が、失敗は起こりやすい」

 

「はいはい、若葉は真面目だな」

 

「いや今回はほんとに注意したほうが良い。ほんとに嫌な予感がする」

 

「ひなとまで...まぁそこまで言うんだったらいつも以上に気を引き締めるか」

 

 球子は顔を引き締め旋刃盤を持った。

 友奈は手甲を握り、ちーちゃんは大鎌を構えた。それぞれが臨戦態勢に入っていたので、俺も武器を出そうとしてライドブッカーに手を伸ばしたところで杏が声を上げた。

 

「あの!皆さん、聞いてください!」

 

 俺たちの視線が杏に集まる。

 

「どうしたの...?」

 

 ちーちゃんが訝しげな視線を向けた。その質問に杏は真剣な顔をして答えた。

 

「今回は切り札を使うことはなしにしましょう」

 

「それは...なぜ...?」

 

 ちーちゃんは納得いかないように杏を見た。

 

 

「元々大社からも、精霊の力を使うのはできるだけ控えるように言われていましたし...もしかしたら、本当に危険かもしれませんから」

 

「...わかったわ。でも状況が危うくなったら使っていいわよね?」

 

「...まぁ、はい...あ、ひなとさんも自分に疲労が行くからってバンバン使わせないでくださいよ」

 

「わかってる」

 

「それより、もう敵が来るぞっ!」

 

 球子の言葉で、俺たちは大挙するバーテックスに向かい合った。

 

 

 

 

 俺はバーテックスを屠りながら周りの状況を見ている。余裕そうだなと思われるかもしれないが転〇ラでいう大賢者的なものを使いながらやっている。ちなみにこれを使うのにかなり集中力が必要なので全然余裕ではない。

 ちなみに戦況は杏と球子は二人で一緒に行動し、バーテックスの大群に立ち向かっていっている。杏が精密な射撃で敵を射抜き、球子が旋刃盤で敵を切り裂いている。若葉はいつも通りバーテックスを駆逐している。友奈も少し余裕そう。ちーちゃんは涼しげな顔でバーテックスをぶっ殺している。バーテックスの通常個体ならもう慣れたらしく、全く危なげがない。進化体が出てくれば危なくなると思うが、融合を始めようとしていたら俺と杏の集中砲火を浴びせ、進化体を形成する時間を与えないので今のところ進化体が出てくる心配はない。しかしそれがものすごい量になれば別だ。百体以上のバーテックスが集まり始めた。

 遠くで声が聞こえた。

 

「仕方ないなっ、切る札を使うぞ!」

 

「待って!私がやるから!」

 

 その瞬間遠くにいる杏の姿が変わる。杏が雪女郎を身に宿したのだ。

 

「タマっち先輩は手を出さないで、あいつらは私が倒す...!」

 

 そう言って杏がクロスボウを上空に向かって掲げた。そこからいつもであれば矢が飛び出すはずなのだが、飛び出してきたのは大量の白い粒子だった。その瞬間吹雪が出現した。容赦のないごく低温と猛吹雪が、樹海化した丸亀全体を襲った。

 

「さっ、さむいぃぃぃっ!」

 

 吹雪の中で球子の叫びが響いた。

 

「アンちゃーん⁉何この吹雪~~⁉」

 

「完全に視界が遮られている!敵味方の位置もわからない!」

 

「寒い...わ...」

 

「...」

 

 備考として俺は寒がりである。なので声を出さずにただ震えているだけである。視界のすべてを白く染める吹雪の中で、仲間たちの声が響く。

 

「皆さん、危険ですから動かないでください!敵は全部私が片付けますから!」

 

 冷気はバーテックスを容赦なく凍り付かせた。この勇者服がなかったらっ数秒と持たずに死んでいたんだろうな...そんなことを思いながら俺は体を震わした。数分もの間、猛吹雪が続いた後、やっと吹雪が収まっていった。晴れた視界の中で、ほぼすべてのバーテックスが氷漬けになっていた。氷漬けになったバーテックス達は、次々に地面に落下し粉々に砕けていった。残ったバーテックスはわずかだ。

 

「おお、すごいな...あんず」

 

「まだ寒気が...」

 

 その攻撃の凄まじさに、球子が呆然としながらつぶやいた。俺はバーテックスなど見ず、己に残っている寒気と戦っている。

 

「やったね、アンちゃーん!もう敵、少ししか残ってないよ!」

 

 友奈が残ったバーテックスを倒していく。若葉とちーちゃんもそれぞれ武器を振るい、残る敵の掃討戦に入っていた。俺は友奈たちが数体倒してから寒気から回復し、ホットドリンク持ってくるべきだった...とかくそどうでもいいことを思いながら武器を取り出し掃討戦に参加した。

 

「だが、切り札は使うなと杏が言っていたのに、よかったのか⁉」

 

 若葉は刀を振るいながら、杏の方に呼びかけた。

 

「あ、そうだぞ、あんず!お前が危険だってったのに...」

 

 球子も杏を心配し、叱るように言った。

 

「えっと、大丈夫、きっと...。私、今までの戦いでまだ一度も精霊の力を使ってなかったから。ほかの人が使うより、安全だよ」

 

「その理論だと俺を経由しなければ友奈たちも使っていいことになるぞ」

 

「まぁいい!説教は後だ!今は残ったバーテックスを―」

 

 そう球子が言っているのを聞きながら瀬戸内海のほうを向いたとき、壁の向こうに、異様なものが見えた。よく見ると大量のバーテックスがいた。ただいつもと変わったことは一つ。その大群の中に『ヤツ』がいることだ。

 

「...まずいぞ、あれ...」

 

 いつも楽観的思考を持ち合わせている球子でさえ、その進化体を見て青ざめていた。もう...やばい、オーラ?覇気?そんな類のものをヤツは持っていた。他の皆も奴を警戒し、攻撃を仕掛けるかしないか迷っている。

 

「なんていうか...大きなエビ...?」

 

「むしろ、サソリに近いと思うわ...高嶋さん...」

 

 不気味な液体を茶蔵した腹部と、サソリの尾を思わせる器官と巨大な針を持つ化け物。のちの世代で蠍座なり、スコーピオンなり、くそサソリとか、勇者キラーとか呼ばれるやつである。...あれ?ネタバレしてるくね?まぁいいか。

 

「私が行きます!攻撃力は私が一番高いはずです!」

 

「俺も手伝う」

 

「わかりました」

 

 そう言って雪女郎の力を纏った杏が地面をけってサソリ型バーテックスの方へ跳躍すると同時に俺はカードを使う。

 

『ATTACKRIDE BLAST!』

 

 その瞬間目の前にクレーバー(クッソ威力の高いスナイパー)が出現する。やば...勝った。そして俺はスコープを見て標準を合わせる。標準を合わせながら俺は大賢者的なものを使い千里眼を起動し杏を見る。脳の中で視界以外の映像が出てきて、脳の処理が追い付かなくて吐きそうになるが気合で我慢する。

 

凍れ!

 

 クロスボウから凄まじい冷気と吹雪が、巨大バーテックスに向けて射出されるのを見て、クレーバーを撃つ。

 

「狙撃」

 

 かの有名なスキルを使いながら。勝ったな風呂食ってくる。そう思いながら目をつぶって千里眼ででサソリを見てみる。

 

「なん...だと...」

 

 奴の周りにいた通常個体は跡形もなく消えているが、肝心のサソリが無傷だった。

 

「そんな...っ!」

 

 杏の顔にも驚愕が浮かんだ。次の瞬間、サソリの尾が杏に襲い掛かった。

 

「わっ⁉」

 

杏は間一髪でよけ、後ろへ跳躍して敵から距離を取った。

 

 

 

 

 そんな感じでサソリの相手をしている間にほかの通常個体は、次々に融合していった。球子、若葉、ちーちゃん、友奈、そして遠くからサソリを狙撃していた俺にサソリほどではないが巨大化したバーテックスが襲いかかってきた。

 

「くっ...!」

 

「まずいよ、若葉ちゃん!これだけいっぺんに進化体が出てきたら...!」

 

「ちっ...」

 

 俺は舌打ちをしながらちーちゃんの方に向かい

 

「ちょっとくすぐったいぞ」

 

 一声かけてからカードを使う。

 

「待ってください!ひなと君!」

 

 杏が何か言ってくるが無視をする。

 

『FINAL FORMRIDE ひ、ひ、ひ、彼岸花!』

 

 その瞬間ちーちゃんの勇者装束が変化し、七か所同時にちーちゃんの姿が出現する。そして次は友奈のところに行き同じことをし、最後に若葉のところに行きやはり同じことをした。そして若葉は義経、友奈は一目連を宿した姿になった。そして俺はクレーバーを捨て、カードを使い武器を剣にする。今回はデンガッシャーが出てきた。戦いってのはなぁノリのいい方が勝つんだよ!あ、やばいそんなこと言ってたら球子が杏をかばってサソリの攻撃がかすった。そして早くそっちに行きたいけど進化体が邪魔すぎて行けない。周りを見てみるが全員進化体の対処で動けそうではない。そして気づけば球子たちは、サソリの攻撃を受けて精霊状態が解除されている。

 

「ねぇ!こいつらほっといて向こういっていいか⁉」

 

 俺は叫んで聞く

 

「行けるものなら早くいってくれ!こっちはこっちで何とかする!」

 

 そう若葉が返した。行ったな言質はとったぞ!

 

「じゃ、行ってくる!」

 

 そう言って俺はライドブッカーから数枚のカードを取り出す。

 

『ATTACKRIDE CLOCK UP!』

 

『ATTACKRIDE 義経!』

 

 その瞬間周りの景色がスローモーションになる。そうして音速になった俺はバーテックスの隙間を通り抜け、通り抜けるときにバーテックスを蹴ってさらに加速し球子たちの方へ急ぐ。見てみると球子の楯は亀裂だらけで次の攻撃が来れば砕ける前だった。そしてサソリは攻撃モーションに入っている。間に合え!そんなことを思いながら俺は取り出した中で最後のカードを使った。

 

『ATTACKRIDE INVISIBLE』

 

 因みにINVISIBLEはそこまでワープできないので少し近づく必要があった。

 ワープした瞬間クロックアップが解除されるそして今にもサソリの攻撃を盾で防ごうとしている球子と杏を背中でタックルする。

 

 バキィ!

 

 あ、あぶな...もう少し遅かったら脇腹に直撃していた...、それにしてもなんか嫌な音聞こえたな...

 因みにタックルした後の着地は考えていない。つまりどういうことかというとそのまま地面にダイブするってことですね!まぁ勇者になってるし大丈夫でしょ。そんなことを思いながら地面にぶつかる。

 

 ぐしゃっ

 

 「っ!痛っ!」

 

 気づけば制服に戻っていてスカートから出ている足に大きな擦りむいた傷ができていた。そして俺の腹には粉々になったディケイドドライバー...恐らくカードを使ったばかりだったから、ベルトが消えていなかったのだろう。そこをあのサソリが壊したということだ。そして目の前には巨大なバーテックス。なるほどこれが詰みか。

 

「ひなと何でここに⁉」

 

 傷だらけの球子が聞いてくる。

 

「説明は後だ!杏、動けるよな?どんなに遅くてもいい!動けるなら球子背負って逃げろ。あれは俺が頑張って何とかする!」

 

「で、でも!今のひなと君勇者じゃないですよ⁉」

 

 心配そうに言ってくる杏に俺は少し微笑んで答える。

 

「大丈夫...秘策がある。だから早く!」

 

 まぁ何にも考えてないけど

 

「わ、わかりました!死なないだくださいね!」

 

 さっきまで死ぬ運命を背負っていたやつが何言ってんだか...さてどうするか...もう俺は変身できない...何かないか?いや、そういえばあれがあった。閃いた俺はスマホを取り出しもう一回勇者に変身しようとする。いつもと違うことは、出そうとしているベルトが違うということだ。そうして俺は電王ベルトを取り出す。そして遠心力を利用してベルトをつけ、赤いボタンを押す。

 

『♬~』

 

 前世で目覚ましの音にするくらい好きだった音が鳴り響く。そして俺はパスではなくスマホをパスの代わりにしてベルトにかざす。

 

『オーガフォーム』

 

 その瞬間俺の中に何かが入ってきた。

 

 

 

 

~精神世界~

 

気づけばよくわからんところにいた。周りは真っ暗で光なんてないはずなのに自分や周りが暗いっということがわかる。そして目の前に酒瓶を持った鬼がいる。

 

『よう!俺を呼んだのはお前か?』

 突然話しかけてきた。

 

「たぶん?」

 

『なんだぁ?はっきりしない返事だな。というか俺は神樹から高嶋とかいう少女に呼び出されるはずなんだが...まぁお前のほうが頑丈そうだし、心も申し分ない。呼び出された以上お前に力を貸すとするか...』

 

 なんかこっちを置いてったまま進むな。

 

『あ、そうだこれは言っておくか...お前の望みを言えどんな望みもかなえてやろう。お前が払う代償はたった一つ...体を貸せ。まぁ望みっていうか力を貸す、だけどな。ほれなんで俺の力を貸してほしいか言ってみろ』

 

「それは...」

 

 なんて言おうか...簡潔にまとまらないな...

 

『ちなみに言えなかった場合貴様は死ぬぞ。今は絶賛サソリがこっちに攻撃を仕掛けてるからな。このまま答えないと変身に失敗してそのまま貫かれて死ぬな』

 

「...」

 

 やばぁ

 

「えっと...俺の力だけじゃどうしようもない敵と遭遇したんだ!俺の力が足りないっていうか、使いこなせていないからみんなを守るっていうか日常を守りたいっていうか、このままだと悲惨な運命しかたどらないから何とかしたいっていうか...」

 

 俺が言いたいことだけを言って言葉をまとめないでいると目の前に鬼は少し笑いながら

 

『もういい必死なのは伝わった。半端な気持ちで俺の力を使うとろくなことにならないからなお前の気持ちが知りたかったんだ。よし力を貸そう!ただし戦闘の間少しだけ体借りるぞ』

 

「ああ、わかった。ありがとう。ええっと...」

 

 こいつの名前なんだ?と思ってると目の前の鬼は察したのか

 

『俺の名前は酒呑童子だ。よろしく』

 

 と自己紹介してきたので俺も返す

 

「あ、俺は上里ひなとです」

 

『そうか...ひなとか...よろしくな、ひなと。では早速仕事に取り掛かるとしますか』

 

 酒呑童子がそういった瞬間目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

~樹海~

 

 酒呑童子が入ってきた後に空中にいろいろなパーツが浮かび上がった。大きい桜の花びらの髪留め、着脱可能の角、めっちゃ大きい手甲、そして赤と白を基準とした服。まぁ簡単に言えば友奈酒呑童子の姿なりきりセットだ。そしてサソリが空気を読まず突き刺そうとしてくるが、空中に浮かんだ手甲がはじき返す。そして浮いていたパーツが俺にくっついてくる。角がつけられ、真ん中が開いている桜の花びら(1輪)がくっつき勝手にストレートからポニーテールになっていく。そして服がくっつき、黒だった俺の服が、赤と白を媒体としたものになっていく。最後にめっちゃ大きな手甲がくっついた。ちなみに髪の色とか体型なんかは全く変わっていない。そして体が動かない。考えることだけできるみたいで、後は酒呑童子がやるらしい。

 

『おう!あとはまかしとけ!』

 

 どうやら心は読まれるらしい...まぁいいか

 

『俺、参上!ってな』

 

 あーはいはい。

 

 そんなどうでもいいことを思っているとサソリが攻撃してくる。俺(酒呑童子)は必要最低限の動きで避け、跳躍し、サソリの顔面を思いっきり殴った。顔面にひびが割れ、元の状態がわからないくらいひどい顔面になった。

 

『さてめんどいしさっさと終わらすか』

 

 酒呑童子がそういった瞬間、今まだなかった電王ベルトが出現し右手の手甲が消えてスマホを持っている。そしてスマホをベルトにかざした。

 

『フルチャージ』

 

 そう音がなくなった瞬間、酒呑童子はスマホを投げた。

 

 あー!俺のスマホ!

 

『大丈夫だ。戦いが終わった瞬間ポケットに戻ってくる...はず』

 

 おい!

 

 そして右手の手甲がいつの間にか戻っていた。

 

『さ~ていくぜ~!俺の必殺、勇者バージョン!オーガパンチ!』

 

そう言った瞬間いつの間にかサソリの前に行きサソリの顔面を殴っていた。そしてサソリは塵一つ残さず消え失せた。

 

 そして樹海化が解ける...




さぁここからは手元にあるのわゆのげ巻が少し役に立たなくなってくるぞ!
諸事情であと2週間でわすゆを終わらせなければだいぶやばい状況になるのだが...まぁなんか行ける気がする!


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第15話 二人の欠員

はいいつも通りです(何がいつも通りなんだったけ)
ゆゆゆいのイベント見て心にいろいろ刺さりました。(だからなんだ。周回やる。)
感想、お気に入り登録ありがとうございます!


 樹海化が終わって元な世界に戻ったときに酒呑童子は電王ベルトを外し体の所有権を返してくれた。

 

『ふぅ疲れた。じゃ俺は一回寝るわ。強大な力を使った後だから体調管理をしっかりな』

 

(あ、はいわかりました。この度はありがとうございました)

 

『敬語じゃなくてもいいんだけどなぁ』

 

 そう酒呑童子がつぶやいているのを聞きつつ周りを見渡してみる。すると横たわった球子とその横で球子を呼び続けている杏の姿があった

 

「球子!」

 

 そう叫びながら俺は駆け寄る。球子のところに着くと球子は少し目を開け

 

「あ、ひなと...さっきは杏とタマを...守ってくれてありがとな...」

 

 かすれた声でそうつぶやく球子

 

「そんなことは当然のことだ!それより大丈夫なのか?いや大丈夫じゃないから横になっているんだろうけど」

 

「さっきのあのサソリの攻撃を防いでいる時の衝撃で大体の骨がやられた...多分内臓もやってる。あとアイツの毒を喰らった。それは杏もだけど...タマは少し眠い死なないだろうが...少し寝させてく...れ...」

 

 そう言って球子は目を閉じ気を失った。

 

「タマっち先輩⁉タマっち先輩⁉」

 

 杏は自分が食らった毒なの気にせずに、大社の役員が球子を運ぶまでずっと呼び掛けていた。

 

 

 

 

 そして俺らはその日に精密検査を受けていた。若葉、ちーちゃん、友奈は夜に解放されたらしい。球子は傷が治るまで入院、杏も同様。そして俺は電王ベルトを使ったおかげであと1日検査だ。入院中に検査が終わったであろうちーちゃんと友奈が来た。

 

「ヤッホー。おみまいにきたよ!」

 

 と元気そうに入ってくる友奈。

 

「パット見大丈夫そうね...」

 

 こっちの心配をしながら入ってくるちーちゃん。少し会話をした後友奈はタマちゃん達見てくるね~といってちーちゃんを置いて先に行ってしまった。すると最初を除き今まで無言だったちーちゃんが話しかけてくる。

 

「ねぇ...私たちってもしかしなくとも死んじゃうのかな...」

 

 と弱々しく言うちーちゃん。

 

「そんなことはないよ...」

 

「どうしてそんなことが言えるの...?今回の戦いだって、土居さんと伊予島さんは死にそうだったじゃない!」

 

「結果的に死ななかったじゃないか。どんなことがあろうと俺が守るから」

 

「だとしてもよ!今回のあのサソリは中身が空洞だった!あれがほんとの意味で完成体になったら...」

 

「それでも...わた...俺が守るよ」

 

「ねぇ今一人称私になりかけてなかった?」

 

「あぁ、これ?これは医者曰く、俺ってずっと女になってて男に戻ってなかったじゃん?」

 

「ええそうね」

 

「だからねからだっていうか、脳が自分は女だってことだと思い込んで口調が意識してないと女になるんだよ...あと大社にお嬢さま言葉を強制されたことがその女化?に拍車をかけているらしい...まぁ男に戻れればすぐ戻るはずだから気にしないでおいて」

 

「そう...大変ね...それよりさっきの言葉信じていいのよね...?完成体になっても何とかなるっていうやつ」

 

「(何とかまで言ってないけど)もちろん。俺がウソついたことあった?」

 

「結構あるわよ。私のセーブデータ間違えて消したときとか、いじめられなかった?って聞いたときとか」

 

「ナンノコトカワカラナイナー」

 

「まぁいいわ信用しているわね...ひなと君」

 

 そう言ってちーちゃんは球子のところへ行った。

 

あー暇だなー

 

 そんなことを思っていると急に病室のドアが開き、お姉ちゃんが入ってきた。

 

「大丈夫ですか⁉ひなと⁉」

 

「あー。うん大丈夫、精神が少しおかしくなっただけ」

 

「あぁ、女化ですか...早く男に戻れば問題ないですが、戻るのに1か月はかかりますし、そもそもその間にバーテックスが攻めてくるので戻れませんね...しょうがないですね...このまま女になったらいいのでは?」

 

「お姉ちゃん...」

 

「あ、待って嘘です。冗談ですからそんな悲しげな声出さないでください」

 

 

 

 ~翌日~

 

 退院した俺はすぐに珠子たちの病室に行った。

 

「おーいお見舞いに来たぞー」

 

「あ、ひなと君。退院出来たんですね」

 

「よう!ひなと!元気そうだな!」

 

「そっちは元気なさそうだな...」

 

  ベットに横たわったまま、珠子は顔だけこちらに向けてきた。

 

「そりゃそうだろ。だって服に隠れて見えないだろうけど包帯ぐるぐるまきで動けないんだぞ。タマは動いてないと死んでしまうんだ!」

 

「マグロかお前は」

 

「私は毒が治るまで退院できないそうです...タマっち先輩は体の骨という骨にヒビが入ってたり、内臓がぐしゃぐしゃになっているのでさらに退院に時間がかかりそうです」

 

「なんでお前そんなに喋れるんだよ...普通痛みで喋れないだろ」

 

「そこは勇者のパワーで何とかしているんだ」

 

「さいですか」

 

「あ、ひなとさん。改めてお礼を言わせてください。先の戦いでひなとさんがタックルしてこなかったら多分私たち死んでいました。まぁそのタックルのせいで骨にヒビが入ったりしましたが...」

 

「それは...すまない」

 

「いえいえ、死ぬよりマシです。本当にありがとうございました」

 

「タマからも礼を言うぞ!ありがとな!」

 

「おん。あ、そういえばさっき売店でお菓子買ってきたんだ。食うか?」

 

「食べるー!あ、タマ腕動かせないんだった。ひなとー食べさせてくれタマへ。アーン」

 

「しゃーねーな」

 

  俺はコ〇ラのマ〇チを開けて1個取り出し、珠子の口に放り込む。

 

「ん〜。久しぶりに食べる甘いものは上手いな!」

 

「あ、あの〜ひなと君。う、後ろ...」

 

 そう遠慮がちに杏が言ってきたので後ろをむくと、満面の笑みのちーちゃんがいた。満面の笑みなんだがなんだろう...目が笑っていない。

 なんだろうなんか悪いことしたかな...

 

 そんなことを思いながら今やった行動を思い出してみる

 

 挨拶する→お菓子あげる→アーンする=恋人同士でやる=浮気?

 

 あ...

 

土居さんとひなと君、随分と仲良いわねー。ひなと君が退院すると聞いてむかえにきたのに...病室行ってみればいないし、探したのよ?

 

 目はハイライトグッバイ、その他は笑っているちーちゃんがこちらに近づいてくる

 

「いやぁこれは...ね?ほ、ほら珠子を見て見てくださいよ。どうやっても食べられないじゃん?可哀想でしょ?」

 

「確かに可哀想ね...じゃぁ、あとは私が食べさせるわ。どいて」

 

 そう言ってちーちゃんは俺の手からお菓子をぶんどって珠子の方に近づく。

 

「待って、千景は嫌だひなとがいい。千景怖い!」

 

「な...!生意気言うわね病人のくせに...ほら口開きなさい!」

 

  そう言い争いながらちーちゃんはお菓子を珠子の口に押し付けていた。俺はちーちゃんの手を取り、お菓子をとりあげ珠子とちーちゃんの口にお菓子を放り込んだ。

 

「ほら、病院なんだから騒がない。あ、杏もいる?」

 

「ではお言葉に甘えて」

 

 俺は杏にチョコを丸ごと渡す。渡した際に杏は少し不満そうな顔をしていた。なんだ...チョコ嫌いだったのかな?

 そうして食べながら面会終了時間になるまで喋り、ちーちゃんと一緒に寮に帰るのであった。

 

 

 

 

~自室にて~

 

『ひなと、酒飲もうぜ!』

 

 心の中で酒呑童子が話しかけてきた。

 

(嫌だよ。なんで未成年に酒飲ませようとしてんだ)

 

『未成年?お前未成年じゃないだろ。俺がまだ暴れていた頃はお前みたいな歳でも普通に酒、飲んでたぞ?』

 

(それは平安だろ?今は平成だぞ?)

 

『むぅ...人間はコロコロ成人年齢が変わってめんどいのー...それにしてもさっきのやつが修羅場、というやつか?』

 

(多分...?)

 

『お前も大変だなぁ。あ、今から体貸せ』

 

(え、明日学校なんだけど...?)

 

『俺は知らん。いいから貸せ』

 

(しょうがないなぁ...何するの?)

 

『杏というか少女がお前に押し付けている恋愛小説を読むのだ。人間の感情っていうのは見ていて面白いものなんだぜ?特に愛とかっていうのは見ていて1番面白い』

 

(なんかイメージと違うな...まぁそういうことならそこの本棚にあるから適当なもの選んで読んだら?)

 

『サンキュ。じゃ、体借りるぜ』

 

酒呑童子がそう言った瞬間俺は意識を手放すのであった。

 

 

 

 

~翌日~

 

...て...い...起きてください!

 

「ん〜あと5分...」

 

「何言ってるんですか!あと7分以内に教室行かないと遅刻ですよ!」

 

...ええぇ〜!

 

 お姉ちゃんに起こされて、俺は飛び起きた。

 押してお姉ちゃんに手伝われながら着替えたり、荷物の準備をしたり、パンを突っ込まれたりした。ここまでで教室まであと4分である。ここまで早いのはお姉ちゃんが手伝ってくれたからだ。

 そして俺らは部屋から飛び出てダッシュする。1分も経たずにお姉ちゃんがばてたのでお姫様抱っこをして駆け出す。

 そしてギリチャイムがなる前に教室が入ることが出来た。入ってくるなり、若葉がこちらに来て話しかけてきた。

 

よう...ひなと...朝から姉妹共々仲がよさげでいいことだな...

 

「ひぃっ」

 

なに?最近ハイライトグッバイするのはやってるの?

 

 話しかけてきた若葉は目に光を宿してなかった。めっちゃ怖い。ついでにさっきからこっちを見ているちーちゃんの目にも光がない。

 

「まぁ後で詳しく聞くとしよう...ほれさっさと席につけ」

 

 そう言われ俺はちーちゃんの隣の席に、お姉ちゃんは若葉の隣の席に座った。...隣の人の視線がすごく痛いです。

 ちーちゃんの視線を受け流し、ついでに先生の話も聞き流しながら俺は心の中にいる酒呑童子に話しかけた。

 

(おい何時に寝たんだ?)

 

『起こされてから30分前だな。俺はもう寝たいのでしばらくは話しかけないでくれ。ではさらばだー』

 

(え⁉ちょ!おい!少しの講義ぐらいさせろ!もっと早く寝ろ!お姉ちゃんにばれたら干されるの俺なんだぞ!)

 

 そう心の中で抗議したが、酒呑童子の反応はなく、強大な眠気に襲われ、俺は意識を手放した。

 

 

 

 

~昼休み~

 

...と...ん...き...て。ひなと君起きて...!」

 

 俺はちーちゃんに起こされた。

 

あれ、朝から午前の授業の記憶がないぞ...

 

 そう思いながら周りを見渡すとすごい形相の若葉、満面の笑みのお姉ちゃん、呆れたような顔をしたちーちゃん、そして苦笑いしている友奈の姿があった。

 

おはようひなと...ずいぶん眠れたようで何よりだ。で、なんで授業の間ずっと寝ていたのか聞かせてもらおうか?

 

「そもそもひなとはいつ寝たんですか?」

 

「起こされてから30分前ぐらいです...」

 

「へぇ~...何してたんです?」

 

「小説読んでました...」

 

私言いましたよね...どんなに遅くても2時前には寝ろと...

 

「はい...」

 

「まぁ今回が初めてですので私はもういいです。あとは若葉ちゃんに任せます」

 

「いや私もひなとがひなたに怒られているのを見て言いたいことがなくなったからもういい。だが今日はうどんを食べてもらおうかな...」

 

「はいわかりました...」

 

「よし!ひなとくんの説教も終わったことだしみんなで食堂に行こ!」

 

 

 

 

~食堂~

 

 若葉の命令通りにするためにミニのうどんの食券を買おうとしたら、若葉が横入りをしてきて勝手に俺のを選んでいた。しかも大盛り...寝起きで食欲のない俺は心の中にいる酒吞童子に話しかけた。

 

(おい酒呑童子。うどん食べない?)

 

『うどん...?なんだそれ』

 

(麺)

 

『いやそれだけじゃわからん...』

 

(え、じゃぁ、うどんは、小麦粉を練って長く切った、ある程度の幅と太さを持つ日本の麺、またはその料理である。饂飩とも書く。細い物などは「冷麦」「素麺」と分けて称することが一般的ではあるが、乾麺に関して太さによる規定がある以外は厳密な規定はない。細い麺であっても「稲庭うどん」の例も存在し、厚みの薄い麺も基準を満たせば、乾麺については「きしめん、ひもかわ」も含まれる。(ウィキより)これでいい?)

 

『もうよくわからんが食うとするか』

 

(サンキュー)

 

 酒呑童子との会話が終わるころには、大盛りのうどんは目の前にあり、みんなでいただきますする直前だった。

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

 この瞬間に酒呑童子に変わる。そして酒吞童子は麺を啜った。

 

「うま」

 

 酒吞童子は反射的にそうつぶやいた。

 

「お前誰だよ」「ひなと君じゃないわね」「ええひなとじゃないですね」「...(うどん食ってる)」

 

ばれるの早くないですかね...そしていつの間にか酒呑童子はうどんを食べ終わっていた。

 

『うまかったわ。じゃ体返すぜ』

 

 そう酒呑童子が言った瞬間、体が動かせるようになった。

 

「「あ、戻った(りましたね)」」

 

「おいひなと今の誰だ?」

 

 すごい剣幕で若葉が聞いてくる。俺はそんな若葉から目をそらしながら話した。

 

「いやぁ...俺この間すっごい力使ったじゃないですか」

 

「ああ、そうだな」

 

「あれって実は、酒呑童子という精霊を下してまして...憑りつかれたままなんですよ...」

 

「酒呑童子⁉」

 

 突然友奈が声を上げた。

 

「それって私が下す予定の精霊...しかも大社の人からものすごく使わないようにって言われてた精霊...」

 

「ええ⁉それ大丈夫なの...?」

 

 ちーちゃんが心配そうに言った。

 

「まぁ大丈夫だよ。しいて言うならたまに体を貸さなきゃいけないことかな...」

 

「もしかして今日小説読んで寝坊したのって...」

 

「うん。酒呑童子が読んでたからだね」

 

「うーん...まぁ現状は大丈夫そうだし、様子見だな」

 

「そうですね...一応大社にも聞いてみます」

 

 

 

 

~しばらく時間がたったころ~

 しばらくバーテックスの襲来もなく、表面上は穏やかに日々が過ぎていく。球子と杏はまだ退院できないなかなか毒の解析などがうまくいっていないし、解毒できているのかも怪しいらしい。そもそも球子が完治するのは当分先だ。

 いつの間にか桜の花はすべて散ってしまった。

 

花見したかったな...

 

 そんな中俺らは大社から一つの任務が言い渡された。それは瀬戸内海上で形成されつつある進化体バーテックスを討て、というものだった。

 

 

 

 

~瀬戸大橋~

 

「ひなと...お前は酒呑童子を下す以外の変身をしろ」

 

 突然先頭を歩いていた若葉がこちらを振り向きそう告げてきた。

 

「いや...俺その場合変身できないんですけど...」

 

「ふむ、じゃ、見学してろ」

 

「ええぇ~...まぁみんながピンチになったり俺が死にそうになったら変身するね」

 

「ああ、それでいい」

 

 そして俺以外の皆が変身し、瀬戸大橋の上へ跳躍する。...俺?当然ただの人間にそんな跳躍力はないので、ちーちゃんにおぶられながら瀬戸大橋の上に行った。

 

「こういう任務って珍しいね。今まで四国に入ってきた敵を倒せってだけだったのに」

 

 そう友奈が怪訝そうに言った。

 

「そうだな。大社の方針が変わったのか...」

 

 ちなみに進化体バーテックスが形成されている場所は瀬戸大橋付近の壁の外と聞いていたが、壁の方を見ても何もいない。そう思いながら瀬戸大橋を渡って進んでいき、壁の外へ出た。

 その瞬間いようなものが映った。まだ未完成だが後にレオバーテックスと呼ばれるようになるサソリ以上のサイズの巨大バーテックスだ。

 若葉たちは巨大バーテックスを見た後に何度も結界の中を行ったり来たりしていた。そして若葉は眉をひそめながらつぶやいた

 

「隠されているのか」

 

 そう言ってずっと固まっている若葉にちーちゃんは言った

 

「...今は結界のことよりも、まずあのバーテックスを...殺すことが優先よ...」

 

 そう言った後若葉たちは迷わず精霊を使った。

 

だ、大丈夫だよね...?さすがに一回きりでおかしくはならないよね...?

 

 なるべく若葉たちの負担が減るようにするため、俺も変身しようとしたが

 

「待て!お前話聞いていなかったのか⁉ここは私たちに任せろ」

 

「だけど...」

 

あれを通常の精霊で対処するのは危険すぎる

 

 そう思い、反発しようとするが

 

「乃木さんの言う通りよ...ひなと君はここで待ってて...」

 

「私たちがばびゅーんって倒してきちゃうから!」

 

「............................................................................................................わかった」

 

 3人に強く止められ、俺はしぶしぶ引き下がった。そして俺が言って少しすると若葉たちは巨大バーテックスに向けて跳躍した。

 

『いいのか?多分あの子らあいつに傷一つつけられないぜ?』

 

(少しピンチになってから変身するよ)

 

『そうか...後俺、空とぶの少し苦手だから知り合い呼んどいたわ。今回は青いボタンを押せ』

 

「りょ」

 

若葉たちの方を見るとちょうどバーテックスが巨大火球を放って6人のちーちゃんが焼けているところだった。そしてその火球を避けるためだったのか若葉たちはこちらの方に着地した。

 

「なぁ若葉...」

 

「...なんだ」

 

 若葉は察したような声色で返してくる。

 

「変身するね?答えは聞いてない」

 

 おれはそう言い電王ベルトを装着し青いボタンを押す。

 

『♬~』

 

 電王ベルトから待機音が流れる。

 そうして俺はスマホをベルトにかざした。

 

『バードフォーム』

 

 その瞬間俺に何かが入ってきて空中にパーツが浮かぶ。黒と赤が混じった背丈ほどの羽、くちばしとそのくちばしの左右に葉っぱがつけられた首飾り、白い着物、、刀、そしてTの形をしたよくわからん髪留め。簡単に言うと若葉大天狗の姿なりきりセットだ。

 そうしてその空中に浮かんだパーツが俺にくっついてきた。髪型が勝手にポニーになり、服が白い着物になり首飾りがつけられ、羽がつけられ、刀を握る。

 

『失敬、ひなと殿酒呑童子の紹介で体につかせてもらうことになった大天狗だよろしく頼む』

 

(え、あっ、よろしくお願いします)

 

『変に正さなくても酒呑童子と同じように話してもらって構わん。そんなことよりアイツの相手をすればいいんだな?』

 

(ああ。よろしく頼む。後俺も殿をつけなくていい)

 

俺がそういった瞬間背後にある羽が動き、すごいスピードで飛行した。飛んでる途中で通常体が突進してきたが、近づいた瞬間風圧で消えて言った。

 

『いかん...寝起きで力が出ない。すまぬひなと』

 

 その瞬間、スピードがものすごく落ちた。その落ちたすきを巨大バーテックスが見逃すわけなく、俺は突進され元居たところまで吹っ飛ばされた。唯一救いだったのが、大天狗が受け身を取ってくれたということだ。そのおかげで突進されたときと、大橋に突っ込んだ時のダメージはなかった。ただものすごい衝撃とGがかかり、その影響で俺は意識を手放した。




因みに精霊(イマジン枠)は基本的に色で選んでます。
登場人物が増えていく...(震え声)


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第16話 不穏な影

二週間うんぬんかんぬんと言ったな。あれは嘘じゃないけど嘘だ。
最初の問題はは解決したが新たな問題が出てきた。
あ、いつも通りです
お気に入り登録ありがとうございます。


 目を開ける。白い天井が見える。うんたまに見る天井だ。次に壁を見る時刻は大社からの任務に行った5時間後くらいを示していた。

 

『面目ない...もうちょっと早く起きておくべきだった...』

 

 急に脳内から声が響く。俺の寝ぼけた頭は数秒間考え、その声が大天狗の声だと理解した。

 

(まぁ、しゃーない。そんな日もあるさ)

 

 寝ぼけた頭で適当にフォローしながら、

 

なんで吹っ飛ばされて地面に突っ込んだのに傷一つないんだろう...

 

 と思ってると酒呑童子が答えてくれた。

 

『それは俺がバリアを張ったからだな。なんでも防げるぞ。まぁバリアを張るためにはずっと見てないといけないし、衝撃は防げないし、力を使っている間はバリアを張れないけどな。まぁ、今回は大天狗の力を使っていたから俺がバリアを張れたというわけだな』

 

 ふむ。俺が大天狗が受け身を取ったと思ったものは酒呑童子がバリアを張ったことによる錯覚だったらしい。

 突然ドアが開き、若葉、ちーちゃん、お姉ちゃん、友奈が入ってくる。

 

「ようひなとー。なんでお前あんなに吹っ飛ばされてたのに無傷なんだよ...しかも、もう起きてるし...」

 

「まぁ元気なのには越したことはないですよ」

 

「防御力を極振りにしているのかしら...?」

 

「キョクフリってなに?ぐんちゃん」

 

「それはね高嶋さん―」

 

 

 

 

 そんな感じで面会時間終了までみんなと話した。ちなみに翌日になったら、もう問題はないらしく、退院ができることになった。そしてバーテックスが攻めてきたのもその日だった。

 

 

 

 

 ~樹海~

 

『ふぅ今日は早めに起きたから活躍できるぞひなと!汚名挽回させてくれ!』

 

(わかった。期待してるぞ)

 

『じゃ、俺は脳内で本読みながらバリアでもはるかな』

 

 そう脳内会話を楽しみながら変身しようとすると若葉に止められた。

 

「まてひなと。その変身は危険なんだろう?幸い今回は数が少ない。私たちで何とかできるはずだ」

 

「気遣ってくれるのはうれしいが、若葉、おまえはこんなに化け物がいる中、生身でいろと?」

 

「...それもそうだな...止めて悪い」

 

「ああ、心配してくれてありがとね」

 

 そう言いながらベルトをつけ、青いボタンを押す。

 

『♬~』

 

 そしてその音を堪能しながら、俺はスマホをかざした。

 

『バードフォーム』

 

 その瞬間、若葉大天狗の姿なりきりセットが宙に浮き、くっついてきた。

 そして戦いが始まる。最初こそ数は少なかったが、援軍が大量に何回も来たため、大天狗でも処理が追い付かない時があったりした。気づけばみんなはそれぞれ、精霊の力を使っていた。そして、最後にちょっと大きい進化体が出てきたので、フルチャージで倒した。

 

『せっかくだし我が憑く予定だった少女の技名を使わせてもらうとするか...』

 

 そして大天狗は進化体を正面にし、居合の構えをした。

 

『一閃緋那汰!』

 

 そう少し大きな声を出しながら、進化体の方に飛びながら刀を振った。

 その進化体が最後だったのか樹海化が解ける。俺の体が動かせるようになるのを感じる。その瞬間俺は脱力し床にペタンと座り込んでしまう。周りを見ると他の皆もつかれているのがうかがえる。

 その日から樹海化が頻繁に起こるようになった。毎回数がえげつないほど来るのでみんな必ず精霊を使っている。

 

 

 

 

 ~数週間後~

 

 そしてその日もいつものように樹海化が発生した。

 

だが今回はなんか違う気がする...なんかサソリの時と同じ匂いが...

 

 そんなことを思いながらバーテックス側を見てみると敵はでかいのが一体と、数百体のバーテックスがいるだけだった。だがやっぱりあのでかいのはやばいそんな気がする。というかアイツおとめ座かな?爆弾出しまくってくるやつ。

 

「なぁみんな、あのでかいのは俺がやる。なんかやんなきゃ悲惨なことになる気がする。だから周りのやつを倒してくれないか?」

 

「あのでかいのを...一人でやるの...?」

 

「うん」

 

「だめだよ!せめて一人ぐらい一緒にやっても」

 

「あれがサソリと同じ強さかもしれないといったら?ダメージ与えられるの?」

 

「そ、それは...」

 

「では私たちが通常個体をすべて倒したら援助しても構わないか?」

 

「まぁそれなら...」

 

「よし!友奈!千景!さっさと倒して私たちでもなんとかできることをこいつに証明するぞ!」

 

「あなたに言われなくてもそれくらいやるわ...」

 

「よ~し!頑張ってこ~!」

 

 そう言いながらちーちゃん達は通常個体に向けて跳躍する。

 

『なぁひなと確かあれは爆弾を飛ばしてくるんだよな?』

 

 酒呑童子が聞いてくる。

 

(ああ、そうだね。少しのホーミングもしてくるかな?)

 

『じゃ、俺よりも飛べるほうが良いな。チラッ』

 

 たぶん俺の精神世界で大天狗を見てるであろう酒呑童子がそんなことを言った。

 

『ふむわかった。では今回は我があれの相手をすることにしよう』

 

 そんなことを言いながら大天狗は俺の体に入り、変身をした。そしてすごい速度で完成体に向けて飛行する。途中こちらの接近に気づいた完成体が爆弾を飛ばしてきた。

 

『むっ...』

 

 回避をしようとして、左に進路を取ったのだが爆弾はぴったりついてきた。なんなら距離が縮まっている。それから大天狗は急降下したりして爆弾から距離を広げようとするが縮まる一方だ。

 そしてついに

 

バァン!

 

 俺らは爆弾にあたってしまった。最も、酒呑童子がバリアを張っているので衝撃だけが来るだけで体自体は無傷であるが。そんなことを思いながら完成体を見ると次々に爆弾を生成し、こちらに飛ばしてくる。

 

『避けれないなら切るまで...』

 

 そう言って居合の構えを取る大天狗。一発目は斬れたがすぐに2発目が来るため、斬ったすきを狙われ爆弾が直撃する。最も、以下略。

 

『大天狗!変われ!俺なら手数も多いし拳の威力も、申し分ないはずだ!』

 

『承知した!』

 

『オーガフォーム』

 

 

 そう言った瞬間、酒呑童子が入ってきて勝手にモードが変わる。そして変わった瞬間目の前まで来ていた爆弾を殴ろうとする

 

『なっ!』

 

 しかし爆弾は酒呑童子の拳を避け、後ろに回り込んできた。慌てて裏回し蹴りで対応しようとするが、間に合わず直撃。少しノックバック(前方)したすきを突かれどんどん爆弾が直撃していく。

 

(ぐっ...!)

 

やばいいろいろきつい...

 

 そう思っていると脳内に聞きなじまない重々しい声が聞こえた。

 

『バカ息子め...不甲斐ない戦いをしおって...変われ...!』

 

 そうよくわからんやつがそんなことを言った瞬間新しい精霊が入ってくる感覚がした。そして体が勝手に動き、電王ベルトが出現し黄色いボタンを押した。

 

『♬︎〜』

 

たまに思い出せなくなる待機音が鳴り響く。そして俺の手は勝手に動き、スマホをベルトにかざした。

 

『スネークフォーム』

 

 その瞬間宙に、黄色の金糸梅の形をした髪留めが二つ、何かの骨みたいなのを鎧にした服、前が開いているロングスカート後ろの髪を止めるリボンの形をした骨っぽいもの、そして水の竜のオーラを宿した剣が出現した。簡単に言うと、UR白鳥歌野なりきりセットだ。そしてそれはくっつき、髪が昔(平安)の日本の女性がやっていたようなものになり、服が変わった。

 

(今度は誰~?)

 

『わしは八岐大蛇...酒呑童子の父じゃ』

 

(八岐大蛇?URの白鳥歌野って個人的に建御名方神(タケミナカタ)がついているっていうイメージなんだけど...)

 

『同じ水神だし、近く(長野)に住んでるからご近所パワーで力を借りてきたのじゃ)』

 

(へ、へー)

 

『バカ息子が世話になっているのでな、お礼がしたいと思ってずっと見ておったのじゃ。そしたらあのバカめ、不甲斐ない戦いをしおって...』

 

(あの~、その話はあとでじっくり聞きますんで、きてます...)

 

『ん?ああ、確かに爆弾が来ておるな』

 

 そうのんきに言いながら剣を構える八岐大蛇。ずっと持ち手にかみついていた竜が移動し、刀身の方にやってきたかと思ったら、八体に分裂した。その瞬間それぞれの首が伸び、爆弾に食らいついていく。

 

『今度はこっちの番じゃな』

 

 爆弾を難なく対処した大蛇はそう言い、完成体の方へ跳躍し、宙に浮きながらさっきのように剣を構えた。そしてさっきと同じように、竜が飛び出し、完成体に食らいついていく。そしてだいぶ小さくなったところでいつものようにベルトにスマホをかざした。

 

『フルチャージ』

 

『必殺 蛇龍刃』

 

 そうつぶやきながら大蛇は小さくなった完成型を真っ二つにした。真っ二つにした際、切断面を水の竜が食いつき完成系は跡形もなく消滅した。

 俺が完成体を倒したタイミングで若葉たちも通常体を倒し終えたらしく、樹海化が解けた。そして樹海化が終わった後はいつも病院へ行っているため、いつものようにみんなで病院へ行った。

 

 

 

 

~診察後~

 みんなの診察が終え、それぞれどうだったか話し合った。まぁみんな精霊を使うなと言われただけだが

 

「あいつらは...わかってないのよ...。なんのために、こんな、体をぼろぼろにしてまで、切り札を使っていると思ってるの...全部少しでも被害を減らすためなのに...」

 

 ちなみに長い時間樹海化が続いたり、バーテックスの攻撃を受けて樹海が傷つくと災害という形で現実世界に影響を及ぼすようになっている。なので短期戦を強いられるが、攻めえてくる数が多いためなかなかうまくいかない。

 ちーちゃんは俯いて、苛立たしげに言う。

 

「だったら、切り札なんて使わないでやるわ...そしたら、どれだけの犠牲が出るか、身をもって知ることになる...。四国の人たちも、大社の人間も...安全な場所で勝手なことを言うだけ...!だいたい―」

 

「千景、もう言うな」

 

 若葉がちーちゃんの言葉を遮った。周りを見ればお姉ちゃんが悲しげな顔をしていた。ちーちゃんの「安全な場所」が刺さったのだろう。だが、お姉ちゃんは優しくちーちゃんの手を握った。

 

「いいんです。全部吐き出してください。悲しい思いも、苛立つ気持ちも...。それで千景さんの気が楽になるなら、私がいくらでも受け止めますから...」

 

 ちーちゃんは言葉に詰まったように無言になったが、数秒したらお姉ちゃんの手を握りながら口を開いた。

 

「ごめんなさい。私どうかしてたわ...少し不安になって...部屋で休んでるわ...」

 

 そう言って病院の出口は向かった。

 

「あ、待ってぐんちゃん」

 

 友奈が慌ててついていく。それを見ながら俺は言う。

 

「じゃ、俺もあっち行くわ」

 

 そう言って小走りでちーちゃんの方へ向かった。追いつくと友奈とちーちゃんは話していた。

 

「なんかつらいことがあったらいつでも言っていいからね!」

 

「ありがとう...高嶋さん...」

 

「俺もなんかあったら聞くからな」

 

「ひなとくんは聞くだけで何にも言わないよね~」

 

「そ、そんなことはないだろ」

 

「いいやあるよ!ねぇ?ぐんちゃん?」

 

「まぁいつもではないけど...」

 

「ほらぁ」

 

 そう言う感じで会話しながら俺らは帰路を辿った。

 

 

 

 

~自室にて~

 

 (あのぉ...そろそろ黙っていただけないでしょうか...?)

 

 俺は心なのかで酒呑童子と大蛇に言った。

 

『こればかりは無理だぜ...ひなと...何で親父がいるんだよ!』

 

『お前が不甲斐ない戦いをしたからいるのだろう?わしが入ったおかげで勝てたではないか』

 

『いや、あそこから俺は逆転するし!』

 

 そう!この二人戦いが終わってからずっとこの調子で口論をしているのだ!しかもシリアスなシーンでもお構いなくに。そして、そのけんかを止めてくれるかと思った大天狗はというと...

 

『...』

 

 ずっと瞑想をしておりこちらの叫び声などは聞こえていない様子。

 

うるせぇ...

 

 そんなことを思いつつ、俺は杏から借りた本を読むのであった...

 

 

 

~数日後~

 

 俺たちはお姉ちゃんに集合をかけられていた。

 

「休日中にすいません。皆さんに集まってもらったのは大社からの連絡があったからです」

 

「何かあったのか?」

 

 若葉が首をかしげながら言った。

 

「切り札を使うことの影響について、わかったことが...」

 

 お姉ちゃんの話は精霊を使った時の影響に関してだった。ちなみに前にも召集されたことがある。前判明したことは物理的影響で、人体の限界以上の力を使うことによって、筋肉、骨格、内臓がダメージを受け、破壊されていくこと。これは俺のディケイドドライバーが破壊されてから出てきた事象だ。球子たちのはそこまで負担がかかっていなかったらしく、見つけることができなかったそうだ。ちなみになぜディケイドドライバーが破壊されてからというと、俺を通して精霊を使った場合、ディケイドドライバーが勝手に変化させる人の体の状態を変化に耐えられるようにしてから変化させているからだ。そして今回見つかったのは呪術的な影響の方らしい

 

「人のみに精霊をどす―人ならざるものと触れ合う。その時、人間の体には『よくないもの』が溜まります。古来から瘴気とか穢れと呼ばれるものです」

 

 大社の人間は神職が多い。そのため瘴気などの知識は持っていたが、頭が固いため数値で表せないものは真剣に受け止められないため今まで調査してこなかったらしい。

 

「でも、杏さんのおかげで、大社もそこに目を向け始めたんです」

 

「杏のおかげ?」

 

「はい。杏さんはずっと以前から、周りの勇者たちを観測して、精霊を使った影響や危険性をノートにまとめていたんです。そのノートを入院してから完成させて、大社に提出したそうです。そのノートを見て、大社も本格的に呪術的な影響を調べ始めて...」

 

「そういえば杏は、入院前の戦いでも、切り札を使うのは危険だと言っていたな...」

 

「その影響というものは...何なの?」

 

 ちーちゃんが聞いた。

 

「不安感、不信感、攻撃性の増加。自制心の低下。マイナス思考や破滅的な思考への傾倒...いろいろ難しい言葉で報告されていましたが、結局は心が不安定になって、危ない行動をとりやすくなるということです」

 

「なるほど!」

 

 一部始終キョトンとしていた友奈が最後の説明で分かったのか明るく声を発した。

 

「でも不思議ね...私たちは最近ひなとくんを通して精霊を使わなくなって心が不安定になっている。それに対しひなと君は結構最初の方から私たちに精霊を使わせていた。そしてその穢れはひなと君に行く...それなのにひなと君は全く心の不安定さを感じない...ひなと君は言ってはなんだけどそこまでメンタル強くないはずよ?」

 

「ええそうですね...姉の私からもそこまでひなとのメンタルは強くないことは認めます」

 

「この人たちひでぇ...事実だけどさ...」

 

「あはは...」

 

 友奈が苦笑いしながらそっと肩に手を置いた。

 

「これは杏さんからの予想ですが、おそらくひなとは穢れなどが溜まりにくい体質なのかもしれない。でなければ酒呑童子、大天狗、八岐大蛇、この三体を常に体にいれているのに何も起こらないということに説明がつかない。だそうです」

 

「なるほど...」

 

『まぁほんとは倒された後にエンマの下で反省をさせられてよくないものがなくなっただけなんだけどな』

 

 と心の中で酒呑童子がツッコミを入れたが今はみんながいるのでスルーする。

 

「話はこれで終わりです。お休みの中集まっていただきありがとうございました」

 

「じゃ、俺は杏たちの見舞いでも行ってくるわ」

 

「あ、私も行くわ」

 

「どうだ友奈。この後一緒に鍛錬でもしないか?」

 

「いいよ~」

 

「では私はカメラの準備でも...」

 

「撮ろうとするな」

 

 

 

 

~病院~

 

 俺は横を歩くちーちゃんに聞く

 

「そこの売店(コンビニ)よっていい?」

 

「いいわよ...私もなんか買いたいし」

 

 そうして俺たちは球子たちにあげるお菓子を買った。そして病室前につきドアを開けた。

 

「おーす。元気してるかー?」

 

「おー!ひなと!待ってたぞ!」

 

「お前が待ってたのはお菓子だろ...ほれ」

 

「タマはまだ腕動かせないんだけど...」

 

「あーじゃ後でな。それかちーちゃんに食べさせてもらえ。ちょっと今日は杏に話したいことがある」

 

「?何ですか?」

 

 不思議そうに杏が言った。

 

「いや精霊とかについて大社に調べさせるようにしてくれてありがとうって感じの礼を言いたくて」

 

「いいですよ~そんなこと。お安い御用です。何なら私も調べたかったんですけどね...」

 

「そうか...あと借りた本読んだぞ」

 

「え!ほんとですか⁉何読んだんですか?」

 

「えっと―」

 

 俺は杏と本の会話をした。会話に夢中になっていたせいでちーちゃんが少し黒いオーラを纏っているのに気づくことができなかった...

 

 

 

 

~千景視点~

 

 目の前でひなと君が伊予島さんとイチャイチャしている。

 いやわかっている。ただの趣味の会話というのは。それでも私の中でもやもやが広がっていく。

 

『いいの?彼、取られてしまうかもよ?』

 

(伊予島さんはとらないわ)

 

 突然心の中で声がして少し驚いたが、冷静に答える。

 

『ええ、伊予島さんはとらないかもしれないわね。ただ土居さんはどうかしら?土居さんはひなと君に食べさせてもらうことに結構な幸福感を味わっているようだけど?土居さんだけじゃないわひなたさんもとるかもしれないわよ?ブラコンは何しでかすかわからないし、ひなと君もシスコンの兆しはあるしね』

 

(あれは、単なる家族愛よ。恋愛には発展しないわ)

 

『どうしてそんなこと言えるのかしら?ひなと君言っていたじゃない?義理の姉だって。ひなと君とひなたさんは結婚できるのよ?』

 

(...だとしても、よ)

 

『そう、たいした自信ね...それに高嶋さんだって奪う可能性だってあるんじゃない?』

 

(高嶋さんが?一番ないと思うんだけど...)

 

『そうかしら?結構ひなと君の前では高嶋さんはいつもと違う雰囲気を出していると思うんだけど?まぁそれはまあいいわ。一番危険なのは乃木さんね...』

 

(乃木さん?なんで?乃木さんは一番ひなと君に対して異性と思ってない感があるんだけど)

 

『ええ。確かにまだその気持ちはないようね。でも万が一その気持ちを持ってしまったら...ひなたさんが動いて乃木さんとひなと君をくっつけようとするはずよ。あの二人がくっついたら乃木さんもひなたさんの家族になるからねぇ』

 

(...)

 

 私は心の意見に反論できないでいた。

 

『乃木さんは敵よ...このままだと乃木さんもひなと君の魅力に気づいちゃうかもね?まぁ天然同士だからなんやかんやでくっつかないと思うけど...

 

 最後の方は聞こえなかったが、心の声により私の皆に対する不信感は増加した。ひなと君と伊予島さんはまだ話を(イチャイチャ)している。




ああ、ノープランって怖


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第17話 闇落ちですか、そうですか

ああ、タグが多すぎてタグが増やせない。
ヤンデレ、駄文注意です。なにこれ。そうなる気がします。
そのほかはいつも通りです。


 六月某日午後六時。俺は自室のテレビを見ていた。俺は普段テレビを見ない。見る暇はないし(スマホを見たり、ゲームをしているから)バーテックスのことに関しては見なくてもわかるからだ。

 それなのになぜ見てるかって?

 それは、若葉が出るからだ。なんか話すらしいしね。何話すか気になる。

 そう思っていると誰もいない天守閣に一人の刀を持った少女が現れる。

 若葉である。

 ただ若葉は刀の柄を両手に据えて地面に突き立てるだけで何もしない。

 しばらくそうしていると若葉はやがて口を開いた。

 

「7・30天災の悲劇から、後一月半ほどで四年になろうとしています。私たちはあの日、多くのものを奪われました。人命、国土、自由に見上げることのできる空。あの日、空から出現した人類の天敵たちは、あまりにも強大でした。ですが、私たちは決して無抵抗で終わりませんでした。力は弱くとも、人間には智慧と勇気という、他の何者も持たない武器が―(中略)―そして今、敵もまた自らの力を強化し、再び人類は苦境に立たされています。勇者 土居珠子と伊予島杏は、戦いで怪我を負い今は戦えない状況になってしまいました。しかし!我々はまだ敗北していない!必ずや、奪われたものを取り返すことはできる!大社と私たちは対策を講じています。まもなく戦況を覆す方法が見つかるでしょう!思い出してください!私たち人間の本来の在り方を日本という国土を踏みしめ、天敵におびえることなく、友人や家族や恋人と日々を過ごす!それが私たちが贈っていた日常です!本来あるべき人間の生き方です!私たちは閉じた折の中で飼われる化け物どもの餌ではない!私たち勇者はこれまでも、これからも天敵と戦い続けます!しかし、それは特別なことでしょうか⁉いいえ、私はそう思わない!私たちは知っています―もし我が子が天敵に襲われそうになったら、親は身を挺して子を守り、戦おうとするだろうことを!私は知っています―もし四国の外から助けを求める友人がいれば、自らを危険に晒してでも助けに行く人がいるだろうことを!私は知っています―天空恐怖症候群で屋外を恐れる人が、もし家の前で交通事故に合いそうな子供を見た時、恐怖をはねのけて助けに行くだろうことを!私は知っています―非常に危険な、瀬戸内海で壁の外を監視する任務に、自ら志願して挑む自衛隊員や警官がいることを!私たち一人一人が皆、天敵に立ち向かう勇気を持つ勇者です!四国の人々すべてが勇者であれば、化け物などに負けはしない!」

 

 そしてテレビの中から、拍手と歓声が上がった。

 若葉は刀を抜き、天に向かって突き上げる。

 

「敵に立ち向かう勇気を!仲間を助ける勇気を!悲しみを受け入れる勇気を!痛みを忘れない勇気を!戦い続ける勇気を!何度でも言いましょう、私たちは檻の中で飼われる化け物どもの餌ではない!我々一人一人が勇者であり、侵略者からすべてを奪い返す未来のために!...そして私は、私の友人たちを奪った者たちを、絶対に許しはしない。化け物ども―この報いは必ず受けさせよう」

 

 そう言って若葉の演説は続く。若葉には申し訳ないが飽きてしまったため、テレビの電源を切り読書をする。

 

『別に切らなくてもほかのチャンネルに回せばいいのでは?』

 

 そう大天狗が聞いてくる。俺はその問いに読書をしながら答えた。

 

(なにいってんだ、勇者の演説だぞ?どのチャンネルにしても若葉が映るよ。ただでさえ最近は勇者のことしかやってないって聞くし...)

 

『それにしてもさっきの娘、あれを全部覚えていたのか?それにまだ話すこともあるように思えた。すごいな』

 

 と大蛇がつぶやく。

 

(まぁあいつ記憶力いいし、内容、演出は大社が考えてるからな)

 

『なるほど。で、ひなとよ、一緒に酒―』

 

(飲まないから)

 

『ちぇ。バカ息子と飲むか...』

 

『え⁉今ひなとの脳内のぞき込んで本読んでるんだけど⁉』

 

『関係ない。来い!』

 

『あんまりだぁ~』

 

 

 

 

~演説が終わった後~

 

 若葉が部屋に来ていた。お姉ちゃんと来るかと思ったらお姉ちゃんは巫女同士で何かあるらしく来れなかったそうだ。

 

「ようひなと私の演説、どうだっただろうか?」

 

「あ~...す、すまん途中までは聞いていたが...そのぉ~飽きちゃって...そこまで聞いてないです...」

 

「なっ...!」

 

 すると若葉は俯き、声色を下げながら言う

 

「食堂行くぞ...今日は絶対うどんを食べてもらう」

 

「なぜそうなる⁉」

 

「八つ当たりだ。あんなに頑張って覚えて、堂々と発表したのに飽きたって...」

 

「八つ当たりなのは認めるのか...まぁいいよ(どうせ酒呑童子が食べるし)」

 

「言質取ったぞ。お前、精霊を宿して食ってたらゴーヤ突っ込むからな?」

 

「え...」

 

 そうして俺は若葉に引っ張られる形で食堂に連れてかれた。

 

 

 

 

~食堂~

 

 俺の目の前にはゴーヤと、大盛りのうどん。若葉の前には並みのきつねうどんがある。

 

「いただきます」「...いただきます」

 

 どっちの声が若葉で、どっちの声が俺かは一目瞭然であろう。

 そして若葉はガツガツ、俺はちゅるちゅるとうどんを食べる。

 

~数分後~

 

 俺の前には四分の一ほど減ったうどん、若葉の前には空っぽのどんぶりがあった。そして俺の腹は満腹で体というか本能がもう無理と叫んでいた。だが残してしまうとその場で若葉に処されるか、お姉ちゃんに伝わって十二時間コースの説教に入って足が死ぬ。だが俺はもう食えない。なので俺は後で怒られるだろうが自分のどんぶりを持ち上げ、隣にある空っぽのどんぶりにすべて移した。

 

「お前...!」

 

若葉から冷ややかな視線が飛んでくるが俺は知らぬふりをして言う。

 

「もうそれは若葉のどんぶりに入っているからそれは若葉のだ!異論は認めない!」

 

「はぁ~...まぁ少し足りてなかったからいいが。あ、ひなたには報告しておくからなついでにゴーヤも突っ込む」

 

「え⁉」

 

 俺がそう驚いている間に若葉はペロッとうどんを完食していた。そして口の中にゴーヤを突っ込まれ、吐き出さないように押さえつけられる。俺は口の下に広がる苦みなどで目から出汁を出すのであった。

 

 

 

 

~千景視点~

 

 それは私が食堂を通りかかったときだった。少し声がしてみたのでこっそりのぞいてみると乃木さんとひなと君がご飯を食べていた。

 

(乃木さんはいつも通りきつねうどんね...ひなと君は...え⁉うどん⁉しかも大盛り...)

 

 だがひなと君の食の進みが遅いことを見て一つの仮説が思いつく。

 

(あ、これ乃木さんに食べさせられているやつね...私が食べてあげようかしら?)

 

 そう言って一歩踏み出そうとしたときに衝撃的な光景が繰り広げられる。ひなと君が自分のどんぶりに入っていたものをすべて乃木さんのどんぶりに移したのだ。

 

(え、これ間接キスじゃ...)

 

 そう思うとあの時見たくまた私の心にもやもやが出てくる

 

『乃木さんとひなと君ずいぶんと仲いいわね~』

 

(...)

 

『乃木さん、ひなと君の行動笑って許しているわね~』

 

(...さい)

 

『?』

 

(うるさいって言ってるのよ!いちいち報告しなくても見ればわかるわよ!そうね!付き合って四年ぐらいになる私よりもよっぽどみんなのほうが恋人っぽいことしてるわよ!あの日(閑話)に少し恋人っぽいことしたけど!私まだ間接キスすらしたことないのよ!)

 

一緒の布団で寝たくせにキスはまだとか何なの子の子たち...

 

(なんか言った⁉)

 

『イエナニモ。ただ少し積極的になったら?』

 

(何をどうすればいいのよ...)

 

『そうね~私だったら怪我をさせて監禁して私抜きじゃ生きられないようにするわね』

 

(バカなの?ひなたさんに殺されるわよ)

 

『ふん...あ、乃木さんがひなと君の食べ残し食べてる~』

 

(だからいちいち報告するなと言っているでしょう⁉もういい帰る)

 

『...』

 

 そうして私は少しイライラしながら自室へ戻った。

 

 

 

 

 

 

~数日後~

 

 私とひなと君はは球子たちの見舞いに行っていた。

 

「ウイーっすまた来たぞ~」

 

「あ、ひなと!今日は何買ってきたんだ?」

 

「タマっち先輩...」

 

「完璧に財布にされてるぜ」

 

「...」

 

『ここのところひなと君、ずっと見舞いに来ているわねー。もしかして二人のこと好きなんじゃない?あ、それか私のこと好きじゃないのかもねー』

 

(...)

 

 そうなのかもしれない。前一緒のベットに寝たときも朝起きたらいなかったし、前ほど関わりは薄くなったし、乃木さんや、伊予島さん土居さんともいい感じだし...ひなたさんは...まぁあれは無視するとして

 

『高嶋さんは?』

 

 高嶋さんはないわ。絶対に

 

『大した信頼ね。でも他に人がそんなんだったらやっぱり取られちゃんじゃない?ほら現にひなと君二人にあーんしているし。ひなと君もまんざらじゃなさそうよ?まぁ少し苦笑いだけど

 

 そう心の中の何かが言った瞬間に前を見ているとひなとくんが土居さんにあーんしながら伊予島さんとイチャイチャ(会話)していた。確かに取られるのかもしれない...それは嫌。何とかする方法はないのかしら。

 

『方法ならあるわよ。みんなを殺すか、ひなと君を殺して自分も死ねばずっと一緒にいられるわよ』

 

(いい方法ね)

 

 少女の魂は既に穢れに取り込まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

~数日後~

~ひなと視点~

 

 樹海化警報が鳴り、俺たちは勇者に変身した。今日は新しい試みをしようと思って精霊をつけずに変身してみた。変身してみて思ったことは、服装はディケイドドライバーを使っていた時と変わんない服装になっていたので落ち着く。あと、デンガッシャーのパーツが腰辺りについていて興奮する。ただ少しパワーダウンしているみたいでいつもみたいにうまく動かない。

 

『俺らがついていなくて大丈夫か?』

 

(大丈夫だ。一人でできるかも見てみたいしね。...ちなみにバリアは張れるんだよね?)

 

『少し性能は落ちるけどな。俺らが憑くときに出てくる服だったり武器にバリアを張りやすくする効果がついているんだ。今回はそれはないからあまりバリアは過信しないようにな?あとついでに親父は酒飲んでて、天狗は瞑想して寝てるから今回使えるのは俺だけだ。注意しろ』

 

(ああ、わかった)

 

 

「今回は少ないね~」

 

「増援が来るかもしれない。少なくても油断しないようにな」

 

 そう若葉たちが会話しているのを聞きつつ、ちーちゃんの方を見た。

 

なんか雰囲気いつもと違うような気がするんだよな...

 

 気になったので友奈に近づき背伸びをしながら友奈の耳元に話しかける。

 

「なぁゆうな、ちーちゃん少しおかしくないか?」

 

「確かに少し変わったね。でも私が少し遠回しに聞いてもなんでもないみたいな感じだったから大丈夫だとは思うけど」

 

「そうか」

 

 そう友奈と話していると若葉が剣を上にあげ

 

「勇者たちよ、私に続け!」

 

 と叫んだ。その声に釣られるようにみんなが跳躍した。

 飛びながらバーテックスの位置を確認し、そこに向かう。が、急に背中に衝撃が来た

 

「ひゃ!」

 

 体の体質だか何だかで突発的に出る声が女になる俺は、女みたいな悲鳴を出しつつ地面に直撃した。

 

うぅ...何が起こったの?

 

『あの千景って子がお前に攻撃したんだよ』

 

(ええ⁉)

 

周りを見渡すとちーちゃんがこちらのほうに歩いてきていた。

 

「完全に取ったと思ったのに...ひなと君バリア張れるのね」

 

「ちーちゃん...何してんの...?」

 

 少し震えた声で俺は聞く。

 

「私ね、ひなと君とずっと、いつまでも一緒にいたいの」

 

う、うん。俺でよかったらいつまでもいるけど...

 

そう言いたかったが、ちーちゃんの気迫みたいなものがすごく口を開くだけで終わった。

 

「それでね...私思いついたのよ..................ひなと君を殺して私もいっしょに死ねば死後の世界でずっと一緒にいられるなって」

 

 そう言って俺に攻撃を仕掛けてくるちーちゃん。スペックの落ちた俺の装備では避けることができず、大鎌に当たる。

 

「ぐっ...」

 

 俺はノックバックして少し動けなくなる。そのすきを突かれ何回も攻撃してくる。そしてそれにすべて当たる。そして吹っ飛ばされて樹海の根っこにめり込む

 

『おいひなと変われ!』

 

(変わって何するんだ?今は二人が使い物にならないからバリアが張れなくなるだろ)

 

『あ?バリアを張る必要ないだろ。そのまま攻撃するんだよ』

 

(だったら答えはノーだ。お前の攻撃だとちーちゃんが死んじゃう)

 

『...勝手にしろ。死んでも俺は知らん』

 

「千景...?何してるんだ!」

 

「ぐんちゃん!それはバーテックスじゃなくてひなと君だよ!」

 

 俺らの異変に気付いたのか二人が近づいてくる。

 

「じゃま...しないで...!」

 

 そう静かに言いながらちーちゃんは精霊を自分の身に宿した。

 そして七つに増えたちーちゃんのうち六人は三人ずつに分かれ若葉、友奈のところにそして最後の一人は俺のところに来た。

 

さっきボコしたからってなめすぎじゃないですかね...まぁ攻撃できないのは確かだけど。

 若葉たちは味方に攻撃されたことで少し対応が遅れ、反撃せず逃げるようにちーちゃんと距離を取った。そしてちーちゃんは俺に攻撃をしてくる。

 

パリン!

 

 何回も攻撃され遂に酒呑童子が張っていたバリアが砕けた。

 

「あ...」

 

 その瞬間ちーちゃんが満面の笑みを見せた。

 

「ずいぶん耐えられたみたいだけど...もう限界のようね...じゃ、死んで」

 

 そういって勢いよく大鎌を振り下ろした。俺は目をつぶる。だが思ったような衝撃は思っていた通り来ず、目を開いてみる。するとそこには制服姿で戸惑っているちーちゃんの姿があった。

 

「どう、して...⁉変身ができない...勇者に、なれない...‼」

 

 そう言いながらちーちゃんはスマホを連打した。ちーちゃんが一般ピーポーになった瞬間であった。

 つまりどういうことかというと、バーテックスの餌になったということだ。

 バーテックスが大量にこちらに向かってくる。赤いボタンを押すが、反応しない。ちょっと怒っているというか機嫌が悪いらしい。慌ててデンガッシャーを組み立て剣にする。そして両手で握りまとわりついてくるバーテックスを斬る。だが処理が追い付かず、ちーちゃんが食われそうになっていた。俺はちーちゃんの方に飛び込み、樹海の根の間に入るそして空中で体の向きを回転し、地面側が俺の方に行くようにする。

 瞬間地面にぶつかり、息ができなくなる。

 

「うっ...!」

 

 痛みに悶えながら抱いているちーちゃんを優しく横に寝かせる。

 

「どうして...?どうして、私を...守るの...?」

 

「あはっそんな感じのセリフあって二日目ぐらいに言われた気がする」

 

「茶化さないで...答えて...」

 

「あのさちーちゃん。す、好きな人を...守るって当然のことだと思わない?」

 

 俺は最初はちーちゃんの目を見ながら言ったが、途中から目を合わせることが困難になり少し目をそらしたり目を合わせたりするのを繰り返しながら答えた。

 

「あはは...私は馬鹿ね」

 

 突然笑い出したと思ったら自虐を始めたぞこの人(俺の好きな人)...

 

「私ねひなと君がどっか行っちゃうんじゃないかと思って、だからこんなことしたのずっとに一緒にいられると思い込んでいたことを。今思えば私は精霊に飲み込まれていたのね」

 

「わざわざ結婚できるようになったらすぐできるようにお父さん言っている奴が手放すわけないだろ?」

 

 寝そべったちーちゃんを起こして抱き寄せながら俺は言った。

 

「私それ初耳なんだけど?」

 

「当たり前じゃん。だって言ってないもん」

 

「私ほんとに何してたのかしら...」

 

 呆れるようにちーちゃんはそうつぶやいた。

 俺は抱き寄せている時にちーちゃんの中にいるであろう精霊に話しかけた

 

(おいちーちゃんの中に七人岬以外の精霊いるだろ。出てこい)

 

『あーバレちゃった』

 

(お前が誰かは知らんがちーちゃんから出て行け。頼む。大切な人なんだ)

 

『なんで私が体を手放さなければならないのかしら?』

 

(じゃ、俺の中に入っていいから)

 

『えー私あなたを殺すために頑張ってきたんだけど?』

 

(...え?なんで?)

 

『それはもちろん...百合の間に挟まる男を殺すためよ!

 

(マジですいません!俺が悪かったのは認めます!すいませんでしたー!)

 

『まぁあなたがその姿の限り許すわ。何ならいつもあなた受け身だし、あなたの体を使っていつも攻めてくる人たちを逆に攻め返すのもありね...』

 

(あ、それは俺の友人関係にかかわるのでやめていただけるとありがたいです)

 

『答えは聞いていないわ』

 

 そうちーちゃんに入っている精霊がいうと、こちらに入ってくるのを感じた。

 

『よろしく。上里ひなと。私の名前は玉藻の前...あなたが女でいるうちは仲良くしましょ?』

 

 そう玉藻の前が言った瞬間

 

『おいひなと!俺がバリア修復するために少し目をそらしたすきになんてもの入れてんだ!』

 

 なんと、さっき酒呑童子が反応しなったのは機嫌が悪くなったからではなく、バリアを修復していたかららしい。

 そんな新発見をしていると、若葉たちがバーテックスを全部倒したのか樹海化が解けた。

 

「ひなと!千景!」

 

 樹海化が解けた瞬間、若葉が近寄ってくる。

 

「大丈夫?怪我していない?」

 

 友奈も近づいてきて聞いてきた。

 

「おれは...(背中めっちゃ痛いけど)まぁ大丈夫。そして先に言っておくけど今回の件全くちーちゃん悪くないから。全部精霊の影響だから。もともとちーちゃんそこまでメンタル強くないからこうなったの。そして俺が殺されそうになったからか、神樹が勝手にちーちゃんの力を剝奪した」

 

「それじゃ、ぐんちゃんは...」

 

「変身できないわ...」

 

「それでね、ちーちゃんは悪くないから巫女たちに頼んで神樹に力を返してもらえるように頼んでもらいたいんだけど...うまくいくと思う?」

 

「私に聞くな」

 

「それもそうだね。あと樹海化で変身が解けるってすごく危ないことだと思うから、大社の人に頼んで勝手に変身が解けないようにする機能をつけてもらいたいんだけど、どう思う?」

 

「だから私に聞くな。だが確かにその機能はつけてもらいたいな」

 

 樹海であったシリアス?な空気などないようにお俺らはワイワイとにぎやかな会話を続けた。




あ、匂わせはしてますがハーレムにはしません。
...今のところね
少し休みます。
決してパワプロ買ったからやりたいっていうわけじゃないよ???
質問あったら気軽にどうぞ(俺が答えられたらの話だけど。英語を質問されてもポンコツな答えしか返ってこないよ())


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第18話 思い出はいつもメモリーの中に

はいいつも通りです。
今回休んだわりに分量少ないです。
お気に入り登録ありがとうございます


 ちーちゃんの勇者の資格剥奪が剥奪されてから数日がすぎたある日、俺は大社から呼び出しをくらっていた。

 尚、樹海化が終わった後、ちーちゃんの勇者資格剝奪は普通に大社にばれて今ちーちゃんは自室での生活を強制させられています。ちーちゃんは悪くないって何回も言ったんだけどな~。あいつら(大社)ぶっ飛ばしたろうかな。

 

「今回ひなと様に来ていただいたのは郡千景についてです」

 

 呼び捨て...あっ、ふーん(察し)

 

「ねぇ...ちーちゃんのこと、呼び捨てにするの、やめてくれる?今までぺこぺこしていたくせに勇者の資格剥奪させられたら急に呼び捨て?今までみんなのため(正確に言えば仲間のためだと思うけど)に戦ってきた人のことなんだと思っているの?」

 

 俺は少し...いやかなり声のトーンを低くしていった。すると目の前の大社の職員は少し怯えながら

 

「す、すいません!今回来ていただいたのは郡千景様のことに関してでございます」

 

 と言い直した。俺は無言でさっさと話しを続けろ。みたいな感じの視線を送った。

 

「今回郡様が起こした事象に大社は、郡千景様は神樹様に見放された。っと判断しました。よってそんな勇者がいたとなってしまえば国民の勇者への不信が増えてしまいます。よって郡様の存在、郡千景様がいたという記憶をひなと様の勇者の力で消していただけないでしょうか?最近ひなと様は玉藻の前の力を授かったと聞きます。玉藻の前は妖術の扱いにたけていると聞きます。玉藻の前の力を使えば記憶や存在を消すなんてちょちょいのちょいですよね⁉」

 

「はぁ~」

 

 俺は心底どうでもよさげに勇者システムを起動し、手に電王ベルトを出現させ、装着する。そして何のボタンも押さないままスマホをかざし変身する。変身した後大社の職員の顔を見てみると、やってくれるのか!みたいな感じの少なくともマイナスの感情を感じさせない笑みを浮かべていた。つまり普通に笑顔だったということだ。その笑顔を見ながら俺も笑顔になり、腰についてるデンガッシャーを組み立て槍にして大社の職員の眉間にぎり当たらないところを突いた。大社の職員は心底驚いたような顔をしていた。俺は笑顔を保ちながら言う。

 

お前人の話聞いてた?よく俺のさっきの第一声を聞いてその話し出せたね。お前人の心ある?国語、いや現国か?の評価1に等しい成績持ってるだろ」

 

「い、いえ国語はいつも五でしたけど...」

 

「あっそ。まぁ君の評価なんて今はどうでもいいけどね。...一つ...いいことを教えてあげるよ。俺の力はね、神樹よりの力っていうよりは天の神よりの力なんだよ。だから...俺が人を殺そうとしてそれを神樹が止めようとしても止められないの。この意味わかる?」←スキル全知全能(レベル1)発動

 

「い、いえ。よくわかりませんね...」

 

「お前ほんとに国語の評価5なの?お前らがちーちゃんを歴史から消す云々の話を聞いた時点で俺はぶち切れに等しい状況になっているの。それを少しでも笑顔とか明るくなりそうなことをやってとどめてんの。今俺は君を処したいの。...今から言うことをよく聞け。まず郡千景の歴史から消す云々の話を今からすぐに取り消せ。そして神樹にちーちゃんに力をまた貸してもらえるように巫女を通して説得させて。最後に神樹が勝手に勇者の変身を解くみたいなことができないようにして。できなければ...上層部を大体御命頂戴って感じにするから...わかった?

 

 そう言いながら俺は殺気を職員に向ける。すると職員はものすごく青ざめた顔をしながら

 

「わ、わかりました!」

 

 と言って駆け足で去っていった。

 

少し強引すぎただろうか?まぁいいか

 

 そう思いながら俺は大社にいる元々会おうと思っていた人物の元へ向かった。その会いたかった人物は大社の食堂でくつろいでいた。

 

「よう、ひなと。遅かったな」

 

「ああ、少し大社の職員(組織のごみ)足を止められてね。で、今回のことをお父さんはどう思っているの?」

 

「ん?あぁ千景ちゃんのことか。私は一応彼女の現父親だからか情報が止められていてな、考察できるほどの情報がないのだよ」

 

「そうじゃない。ちーちゃんのことをどうしようと思っているか、って聞いているんだ」

 

「...一応私の娘だ。大災害が起きてから娘になったから全く話せていないが。それでも私の子だ。それに昔のこともある。守ってはあげたいと思っているよ。最悪大社に捨てられようとしても、家にいるお母さんに預けるよ。俺はここから離れられないからな。それにひなたから聞く限り、大社が碌にアフターケアをしないからこのようになった感じだしな」

 

「というかお父さんが大社の会議に参加してそういうケアとかもできるような組織にできないの?」

 

「なんか俺会議に参加させてもらえないんだよねー。乃木君は参加させてもらえているのに...」

 

「...なんで一人の巫女と二人の勇者(どちらも拾い子だけど)を出している家系が会議に省かれるんだよ」

 

「そんな偉大な家計だから大社から一歩距離を置かれているのかもしれないな」

 

「そうですか。まぁ守りたい的なことを聞けて良かったよ。じゃ、俺は帰るわ」

 

「え⁉ちょ、ちょっと待てひなと。結構久しぶりに会ったんだ。なんか食べに行かないか⁉」

 

「...うどん以外ならいいぞ」

 

 そうして俺は久しぶりに会ったお父さんに連れられラーメンをおごってもらったのでした。帰ったら俺と飯を食べようと思っていたちーちゃんがお腹を空かせ少し不機嫌な姿を俺に見せてきました。すまぬ。ちなみに数日後になんやかんやあって勇者の力がちーちゃんに返ってきました。やったね!

 

 

 

 

~数日後~

 

 な、な、なんと、今日はこの間まで包帯ぐるぐる巻きだった球子たちが退院しました。

 

「タマ、完全復活!」「パーフェクト杏です...」

 

 って感じの元気な(杏はやらせ感満点の)姿を見せてくれました。

 

「早くない?もうちょっとかかるって聞かされていたんだけど?」

 

「あ、あれはタマの嘘だ。みんなを驚かせたかったから」

 

「はぁ、まいいや。おかえり」

 

「はいただいまです」

 

「二人ともおかえりー!お帰りのハグー!」

 

 そう言いながら友奈は二人に飛びついた。

 

『む?百合のにおいがするわね...』

 

(うわ出たな)

 

『百合あるところに(玉藻の前)ありよ!覚えておきなさい!ほら分かったらあなたも彼女さんかお姉さんに抱き着きなさいよ。女であるときは許すから』

 

(なぜそうなる)

 

 そんな感じの会話を脳内でしていると、お姉ちゃんが

 

「では球子さんと杏さんの回復祝いに、1枚写真を―あれ?」

 

 そう言いながらスマホで写真を撮ろうとして、首を傾げた。

 

「...あ、メモリーカードの容量がいっぱいになっているみたいです」

 

 

 

 

 お姉ちゃんはザラザラとものすごい量のメモリーカードを机の上に置いた。それを見て俺と若葉はあきれの目、ちーちゃんと杏は苦笑、球子は絶句した。

 

「すごい量!」

 

 友奈が驚いて目を丸くした。若葉が呆れた目を継続させながら言う。

 

「これ、全部写真が入っているのか...?」

 

「はい。赤ちゃんの頃の若葉ちゃん・ひなとから、全部入っていますよ!」

 

 自慢げに言うお姉ちゃん。

 

「赤ちゃんって、そもそも赤ん坊の時お姉ちゃんと出会ってないし...どうやって...」

 

「ご両親の遺品整理をしたときに見つけたアルバムの中にひなとの赤ちゃんの頃があったのでそれをすべてデータ化しといたからです。いや~小さいひなともかわいいですね~」

 

「あ、遺品の中に俺の写真あったのね」

 

 メモリーカードの5分の2程は、年月と『若葉ちゃん』、もう5分の2は年月と『ひなと』という名前が小さな文字で書かれていた。だが、ほかの5分の1ほどは年月だけしか書かれていない。それらのカードは、2015以降のものしかないようだった。

 

「私の名前や、ひなとの名前が書かれていないやつはなんなんだ?」

 

 若葉が複数ある年月だけしか書かれていないメモリーカードの1枚を手に取りながら言った。

 

「そちらに入っているのは、私たちみんなを撮った写真です」

 

 そう言ってお姉ちゃんはカードをスマホに差し込んで、中の写真を一つ一つ見ていった。

 

「あ!これ...私たちが初めて丸亀城に来た時の写真ね...懐かしい...」

 

 ちーちゃんがスマホに表示された写真を見て、微笑みながら言った。その写真を見てみると、丸亀城の教室にいる7人の姿。俺は一番端っこのちーちゃんの隣にいる。このころはみんな小学生だ。

 

あーなんか俺、気まずそうな顔してんなぁ

 

 そんなことを思ったが、よく見たらみんな困惑が表情に浮かんでいた。お姉ちゃんがスマホの画面をスワイプした。

 次に表示されたのは、その日にみんなでうどん屋に行った時の写真だった。今度はみんな笑顔だ。俺は少しぎこちないけど...

 

「あの日話してくれた千景の過去は何というか、少し重かったな」

 

 若葉が少し苦笑いしながら言った。球子は頷きながら言う。

 

「ほんとにそうだよなぁ。ひなといなかったらもっと尖ってたってことだろ?」

 

「ええ、そうね...ひなと君と仲良くなってからは学校が少し楽しくなったわね...」

 

「ぐんちゃん。今は楽しい?」

 

「もちろん...勇者としてのお役目がうざったいけど...小学校より1,000,000倍もましよ」

 

「それならよかった!それにしてもまたみんなであのうどん屋行きたいね」

 

「そうですね、近々また、あの時の店に行ってみますか」

 

「む...しかし今の私たちが行ったら、騒ぎになってしまうのではないか?」

 

「確かに、勇者は良くも悪くも有名になりすぎましたしねぇ」

 

 杏が考え込むように言った。

 

「だったら変装して行くとか!私、サングラス掛けて行くよ!」

 

「友奈さん、サングラスではバレます。そうですね、私が髪形をいつもと違うようにセットして、服装もかわいいのを選んで...ふふ、今までは若葉ちゃんとひなとでしか、こういうことは考えませんでしたが、皆さん素材がいいのでイジりがいありそうです...」

 

((((((ひなた((さん))(お姉ちゃん)(ひなちゃん)が悪人みたいな顔してる..))))))

 

 お姉ちゃん以外が顔をひきつらせた。

 その後、またスマホの画面をスワイプして次々に写真を表示させていった。たった7人しかいない学校だから、普通の小学校や中学校のように、運動会や文化祭といった大イベントはない。それでも、お姉ちゃんが撮ってきた写真には、俺たちのとても大事な『日常』が切り取られていた。

 

「あー!ひなたさんこんなのもとっていたんですか⁉」

 

 突然杏がスマホの画面を見て発狂した。気になってみてみるとスマホの画面に、眠っている杏をおぶって歩いている球子の写真が表示されていた。

 

「これって...何だったかしら...?」

 

「アンちゃん行方不明事件だね」

 

 

 

 

 これは四国にバーテックスが攻め込むようになるずいぶん前のことである。ある日、杏が寮の帰宅時間になっても帰ってこないことがあった。勇者の行方不明はまずい!ということになり、学校の教師と若葉たちで、町中を探し回った。球子は、杏が誘拐されたのではないかと、ひどく取り乱していた。結局夜になるまで見つからず、球子が公園のベンチで眠っているところを発見し、捜索は終了した。そして球子が眠った杏を背負いながらみんなで寮への帰路を辿る。寮へ帰る途中に杏が目を覚まし、

 

「あれ...?ここは...?」

 

 とつぶやいた。

 

「丸亀城。寮へ帰っているところだ」

 

 若葉がそう答えたが、杏は寝ぼけた目で怪訝そうな顔をした。

 

「え...?ああ、本を読んでたら、眠ってしまって...」

 

「その本を読んでいたんですか?」

 

 そう言い、お姉ちゃんは今も杏が手に持っている文庫本に目を向ける。杏は眠ったままでも、ずっとその本を手放さなかった。杏が普段読んでいる恋愛小説とは違い、その本はやや大人っぽさのある本だった。

 

「はい...ネヴィル・シュートの『渚にて』...滅びていく世界の中で、終わりの時までずっとずっと、普段通りの生活を続けていく人たちの話です。読んでいたらすごく、悲しくなって...読むのを、やめられなくて...」

 

 まだ眠いのか、杏はそれだけ言うと目を閉じてしまった。

 

「私たちは...大丈夫だよね...?ずっと...」

 

 寝言なのか、そうでないのかわからない口調で、杏はそう言った。

 

「大丈夫に決まってる!タマたちの世界は滅びたりなんかしない。だから終わりの時なんて、そんなものはないんだ。タマに任せタマえ、世界と杏を守って見せるからなっ!」

 

 球子がそういうと、杏は穏やかな寝息を立て始めた。結局そのまま、球子が杏を寮の部屋まで運んでいった。

 

 

 

 

「いいこと希望が持てることが見つかるとは限らないが、それでも、そう努めることには楽しみがある...」

 

 写真を見ながら、若葉はそうつぶやいた。

 

「それって...ああ!そういえば若葉さんに貸しましたね!」

 

「ああ、『渚にて』の主人公が言っていた言葉だ」

 

 俺も若葉の後に借りて読んでみた。その小説は、世界が滅びてしまう悲しい物語。けれど最後の最後まで、人々は普段通りの仕事を続け、子育てや家事をして、家族や恋人と日常を過ごす―。世界が滅亡の危機を迎えていなければ、きっと平凡すぎるほど平凡で、幸せな物語。

 

...俺も、普通の日常を過ごしたかったな...

 

「...次の写真、見よう!」

 

 そして出てきたのは出てきたのは二人の黒髪の少女が楽しげにショッピングモールを歩いている姿。

 

「これ撮ってたのかよぉ」

 

「懐かしいわね...」

 

「確か、ひなとが初めて変身して私たちがひなとを着せ替え人形にした次の日ですね。たまたまその日に千景さんと出かける予定があったんでしたっけ?」

 

「えぇ、そうね」

 

「確かみんなでこそこそついていったんだよねー!」

 

「そうですね~。ひなと君も千景さんもそれはそれは楽しそうでしたよね~」

 

 杏が思い出す素振りをしながら言った。

 

『なにそれ⁉詳しく聞かせなさい!』

 

っく!こんな話してたから奴が湧いたぞ。

 

『さっきから話だけはずっと聞いていたわよ。それよりも何があったかさっさと聞かせなさい!』

 

「そー言えばその日何しようとしてなんだっけ?」

 

「えっと...たしか...」

 

『『『『『『♬~』』』』』』

 

 ちーちゃんが思い出そうとしたところで時が止まり、時が止まった中でも動ける人のスマホが鳴り響く。

 

「この話はまたあとでね...」

 

「そうだな」

 

そう言ってみんなで丸亀城の天守閣に行って樹海化するのを待つ。

 

『ひなと』

 

(何?)

 

『今回は私にやらせなさい。私は今百合営業の話を妨げられてものすごく機嫌が悪いの』

 

(別に俺男だから百合営業していたわけじゃないけどね)

 

『あなたも星屑のようになりたいの?』

 

オレハオンナダカラユリエイギョウデスネ(俺は女だから百合営業ですね)

 

『よろしい』

 

 一連の会話をしている途中に樹海化が始まったので、俺らは勇者システムを起動し、それぞれ変身していく。俺は2段階認証的なものの影響でボタンを押しても変身できないため、みんなが変身し終わった後でも電王ベルトを持っているだけだったりする。みんながはよ変身しろみたいな目で見てきたので急いでベルトを装着して、紫のボタンを押す。

 

『♬~』

 

 正直玉藻の前のイメージに合わない音楽が鳴り響く。少し音楽を聴いてから俺はスマホをベルトにかざした。

 

『フォックスフォーム』

 

 ベルトがそういった瞬間、空中に十二単・キツネの耳・九つの尾が出現し、俺にくっついた。

 

『あとは任せなさい。ぶっ殺してくるわ』

 

「ひなと君大丈夫?十二単って重いらしいけど...」

 

「『勇者の力で何とかしているから大丈夫よ』」

 

「そう...」

 

「な、なぁひなと...しっぽ触っていいか?」

 

「タマっち先輩ナイス!私も触りたいです」

 

「『いいわよ』」

 

 そう玉藻の前が言ってしまうと、全員がしっぽだったり耳にを触ってきた。くすぐったい。

 一通り触った後で、若葉が咳ばらいをし、

 

「それでは勇者たちよ、私に続け!」

 

 と言いながら敵軍にとつっていった。まぁ今回はそこまで数がいないからとつっても大丈夫やな。

 

 若葉がとつった瞬間みんなも敵に向かって跳躍した。

 

『百合の邪魔をしたその罪...万死に値する。私の妖術によって消滅しなさい!』

 

 そういって玉藻の前は気をためるようなポーズを取り、火を作り出した。

 

『紅蓮地獄!』

 

 そう言いながらものすごい量...火力かな?を敵に向かって打ち出した。

 

「「「「「アッツ⁉」」」」」

 

 前線にいた五人に熱気が伝わったのか皆が悲鳴を上げた。この妖術で大体の星屑が消滅した。

 あとはイージーゲームだ。ただ単純に残った星屑を殲滅しただけだ。

 

 そして樹海化が解け、教室に戻ってまた写真を見るのかと思ったら、戦闘で疲れているらしく、そのままお開きになった。つまり百合営業は起こらなかったのである。

 

チクショウー‼

 




少し解説
ひなとを転生させたのは言霊大神(ことだまのおおかみ)です。
でこの言霊大神がなんだかというと主祭神:天照大御神(あまてらすおおみかみ) 相殿神:素戔嗚命(すさのをのみこと)
この鎮座される二柱の御祭神を総称して言霊大神といいます。
筆者は敵は天の神は天照大御神だと思っているので敵の力を使っているとひなとが言ったわけです。
で、ひなとの体を作ったのもアマテラス、力の元もアマテラス、神樹はそれを転生した世界で使いやすいようにしているわけなので、異次元の格上の神の力は少しいじれる程度で使えなくするってことができないのです。ちなみにこれはゆゆゆの世界の天の神にも同じことが言えます。つまり力を放棄しろ。とか言いたいけど言えないってことですね。

玉藻の前の紅蓮地獄はフルチャージではなく常時使える技です。

全知全能レベルは5段階ぐらいまであります。4か、5ぐらいだったら大社の職員を口論でボコせます。(まぁ作者に論破する能力がないので一生出てこないでしょうが...)


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第19話 自己紹介

今回珍しく長いです。

そのほかはいつも通りです(多分?)

お気に入り登録ありがとうございます


「はぁ、ふぅ...。どう?タマちゃん達、そろそろ体力戻ってきた?」

 

「おう!タマはばっちりだ!」

 

「私は、まだ少し...」

 

「そっか!まぁでもここからさらに頑張れば戻ってくるよ!」

 

 俺たちは丸亀城の敷地内のランニングを終え、本丸城郭で一息ついていた。入院期間がものすごく長かった球子たちの体力はやはり落ちていたが、この一か月で大体は戻せたらしい。

 

「ほら、みんなひなたが作った特製スポーツドリンクだ。熱中症にならないようにな」

 

 そう言って若葉はみんなにスポドリが入ったペットボトルを配った。今は夏真っ盛り。俺らは、少しランニングしただけで汗だくになり、体操服も素肌にぴいたり張り付いてしまっている。そのため目のやり場に困り、俺はずっと空を見ていた。雲すこ。周囲の木々からは、騒がしいほどのセミの声が響いている。俺は空にある入道雲を見ながら、お姉ちゃん特製のスポドリを飲んだ。甘みと軽い酸味が口の中に広がった。

 

「そういえば皆さん聞きました?」

 

「...なにを...?」

 

「結界強化の話です」

 

「ああ...今大社が進めている計画か」

 

 七月下旬、間もなくバーテックスの襲来が起こるという神託が下った。だが、いまだに壁の外で融合を続ける超巨大バーテックスへの対処法は見つかっていない。規格外の化け物はこちらの戦力を見ながら、緩やかに成長を続けている。

 また、壁の外には、その超巨大バーテックス以外にも、大型バーテックスの存在が確認させられていた。以前のサソリ型と同サイズ級のものが数体、出現しているのだ。最後、玉藻の前の力を初めて使ったあの日から、バーテックスは四国内へ侵攻していない。それは壁の外で、大型バーテックスたちの成長を待ち続けているためなのだろう。神樹の神託によれば、敵は間もなく完全に戦闘準備を終え、四国に一斉侵攻を仕掛けてくるという。大社はそれら大型バーテックスへの対抗手段を、いまだ見いだせていない。俺がやつを叩く前に吹っ飛ばされたから、大社はそこまで俺を信頼していないのだ。何ならこの間脅したしね。

 で、次の総攻撃さえ乗り切れば、敵の進行を食い止める対策を二つ用意できると、大社は言った。ほんとかなぁ~。

 その対策の一つが、以前から計画されていた結界の強化である。なんでも勇者や巫女の血をかき集め、神樹にささげることみよって、神樹が強化されるらしい。

 俺は飲み終わったペットボトルのキャップを締め自分の隣に置きながら言う。

 

「今度は視界の遮蔽だけじゃなくて、しっかり結界を強化するらしいね...」

 

「ええ...たしか今もよくわからない儀式をして準備してるらしいわね」

 

「そうですね...あと数か月で完成するそうです...」

 

「そういえば...『もう一つの対策』って何なんだろうな...」

 

 球子が不思議そうに言った。大社が行う二つの対策のうち『もう一つ』については、お姉ちゃんを含む全員が知らされていない。

 

「...とにかく、次の戦いに勝てば、対策が全部そろうんだよね!そしたら、バーテックスはもう来なくなる。平和になる!」

 

 友奈が明るい声でそう言った。

 

「そうだな」

 

 若葉がそう言うのを聞きながら、俺は変わらず遠くの空にある、白く大きな入道雲を見ていた。

 

 

 

 

 俺らは変わらず『日常』を過ごす。次の戦いに備えて、格闘と基礎体力の訓練を受け、十分な休養と栄養を取って過ごすという『日常』を...

 そういえばこの間俺たちの勇者システムがアップデートされた。神樹が勇者システムを解除しようとしても解除できないようになったのだ。

 

 

 

 

 肉体的訓練を終えた後俺らは教室に行った。そこで俺らを待っていたのはお姉ちゃんだった。

 

「ではでは皆さん、今日のお勉強を始めましょう~!」

 

 それぞれいつも座っている机の上には、様々な本が積まれている。日に焼けた古書や、古い勇者御忌が書かれていそうな本(和綴じ本)よくわかんない折り畳まれた紙の書籍(帖装本)など...すべて神話や神事にかかわる文献だ。

 全部お姉ちゃんが用意したものだ。

 

「う、勉強は嫌だー!」

 

 球子が叫んでいるのを横目に俺はお姉ちゃんに話しかける。

 

「ねぇ、俺のだけやけに多くない?」

 

「そりゃあそうですよ。だってひなとは酒呑童子、大天狗、八岐大蛇、玉藻の前、一目連、義経、七人岬、輪入道、雪女郎といったほかの人が使える精霊を使えるんですからその分それぞれの精霊の知識をつけておかないといけないのですから」

 

「うぅ...」

 

 ちらっと周りを見てみる。ちーちゃんと杏はもう読み始めている。友奈、球子は本を持ちながら寝そうになっている。若葉は渋い顔をしながら本を見ている。

 俺は本を読むことは嫌じゃない。何なら意外と好きだ。だから最初の方は楽しかったのだが、最近お姉ちゃんが持ってくるのは書かれている文字は読みづらく、文章も古語。なので『読書』と言うよりも、『解読』と言ったほうが正しい形になってしまうのだ。

 

(先生今日もお願いします)

 

『任せろ』

 

 正直普通の中学生(高校生)では古語を読めないのだ。そこではるか昔から生きている?精霊たちに音読をしてもらうのだ。

 

『ほらバカ息子のむぞぉ』

 

『おい!やめろ!酒瓶を持って近づくな!たまには親父もひなとの手伝いをしろ!』

 

『やはり百合は最高...』

 

 ...使えないのが約二名ほどいるが...

 

『ではいくぞ』

 

(あ、はい)

 

 

 

 

 みんなが一通り本を読み終えた後に友奈がみんなに言った。

 

「ねぇ、明日みんなでお出かけしない?」

 

「いいな!それ!タマも勉強してリフレッシュしたいと思っていたところだ!」

 

「タマっち先輩さっきずっと寝てたでしょ...ほら部屋に戻ったら一緒に読んであげるから一緒に勉強するよ?あ、わたしももちろんオッケーです」

 

「うぅ...」

 

「私も明日補鍛錬も休みだし、構わない」

 

「はい、私も」

 

「まぁみんなが行くなら俺も行くぜ」

 

「...日本人の象徴ね、ひなと君。...熱いのはそこまで好きではないけれど私も行くわ」

 

 ちなみに今は夏休みで授業はない。よって今やることは鍛錬ぐらいしかないのだ。宿題?何それおいしいの?

 

「じゃあ、決まりだね!」

 

 こうして俺らは明日みんなで出かけることになった。

 

 お姉ちゃんはにこにこしながら言う

 

「つまり、みんなでデートですね。ひなと良かったですね。ハーレムですよ」

 

「やめてくれ」

 

『む、百合のにおい』

 

 

 

 

~夜~

 俺はお姉ちゃんの部屋に来ていた。

 

「珍しいですね。ひなとが自らの意思で私の部屋に来るのは。耳かきしてあげましょうか?」

 

「じゃ、あとで...それよりもお姉ちゃん!」

 

「はいなんでしょう」

 

「明日の服とか髪どうしたらいいと思う⁉」

 

 そう言うとお姉ちゃんは俺の方に来て手をおでこにあてた。

 

「ふむ熱はないようですね...急にどうしたんですか?」

 

「いや、お姉ちゃんがデートとか言うから服装とか意識したほうが良いかなーって」

 

 嘘である

 本当はこの男玉藻の前に

 

『デートなんだからものすごく女の子っぽい格好で行くのよねぇ?ねぇ⁉』

 

 と脅されたから姉に相談しに行ったのである。

 

「なるほど...だったらカギを開けておいてください。明日の朝に突撃して整えてあげますので」

 

「わかった...ありがとう」

 

「えぇ。ではおやすみなさい」

 

「あ、うん。おやすみ」

 

 

 

 

~翌日~

 

 「おはようございまーす」

 

 宣言通りお姉ちゃんは俺の部屋に突撃してきた。

 

「ん~...おはよぉ~」

 

 伸びをして少し眠たそうにして俺はお姉ちゃんにあいさつした

 

「では髪をいじりますのでそのまま動かないで来ださいね」

 

「...うん」

 

 結構時間がたった後。

 

「できましたよ」

 

 そうお姉ちゃん後言ったので目を開けてみると一部が編み込まれた髪型をした自分が鏡に映った。なんかザ・お嬢様って感じ~。

 

「服はどうしましょうか?」

 

 俺が鏡を見て

 

お姉ちゃんすげ~

 

 と思っている間に、お姉ちゃんは俺のクローゼットを開け服を選んでいた。そして納得のいくものが見つかったのか。一着服を出して俺に見せつけニコニコしながら

 

「これで行きましょう!」

 

 と言った。その服とは真っ白なワンピースだった。肩までしか袖がなく、よくお嬢さまか清楚系が来ているイメージがある。

 

「え、それ?そんな清楚なの俺には似合わないような気が...」

 

「ひなとが似合わないともかく、世間のイメージ的にはひなとは『お嬢さま』なんだからこれ着たほうが良いと思いますよ?」

 

「...本音は?」

 

「こういう服を着たひなとを見てみたい!」

 

「変わらないね...お姉ちゃんは。でもまぁいつもお世話になっているし、そのぉ...着ても...いいよ?」

 

 パシャ

 

 突如シャッター音が鳴り響く。

 

「ひなとのテレ顔頂きました~」

 

「お姉ちゃん?」

 

「てへっ」

 

「やっぱ違うの着ようかな...」

 

 真面目に検討する俺だったが、結局着る服が思いつかないし、髪型とあっている服がなかったためお姉ちゃんが出してきた服を着るのだった。

 

 

 

 

 昨日話し合って寮の玄関とか部屋の前からみんなで行くよりも、外で集合したいという感じになった。まぁ一緒に行きたい人は一緒に行っていいよって感じにもなったので、俺はお姉ちゃんとちーちゃんと行くことにした。

 ちーちゃんは寮の玄関で待っていた。いつもの格好だ。

 

「あ、ちーちゃん。お待たせ―」「こんにちわ千景さん。お待たせしてすいません」

 

「こんにちわ、ひなたさんに、ひなとk...」

 

 俺を見て急に硬直するちーちゃん

 

「?どうしたの?」

 

 俺は首を傾げた。お姉ちゃんは俺の頬をつつきながらどや顔でいう。

 

「どうです~?千景さん?うちの弟美しいと思いません?」

 

「...ええ...豪華絢爛、八面玲瓏、面向不背、綾羅錦繡...そんな言葉は今のひなと君のためにあると思う程にきれいね」

 

「?ありがとう?」

 

 言葉の意味が分からない俺はとりあえずほめていることは分かったので礼を言う。お姉ちゃんは相変わらずどや顔を続けていた。

 

 

 

 

 俺たちは集合場所の丸亀城大手一の門前にいる。誰もいないため、全員を待つことになる。

 

「変ですね、待ち合わせでしたら、若葉ちゃんはいつも時間十分前を厳守なのに...」

 

「確かに...珍しいこともあるもんだね...」

 

 そんなことを言っていると、球子と杏が姿を現した。

 

「おーい!ひなと達―!」

 

「あ、球子さん」

 

「後ろに伊予島さんもいるわね...」

 

「こんにちはー。待ちました?」

 

「いや、全然。何なら今来たとこ」

 

「そうですか...ならよかったです」

 

「にしても今日のひなとはなんか気合入ってんなぁ。なんかタマより女の子っぽくないか?」

 

 球子が少し苦笑いしながら言った。

 

「まぁ、私が全て整えましたからね!」

 

 またお姉ちゃんがどや顔を発揮した。

 

 そんな感じに会話を繰り広げていると、若葉が姿を現した。

 

「すまない、待たせてしまった!」

 

「あ、若葉ちゃん。大丈夫ですよ、まだ集合時間ですから...って、なんですか、その格好」

 

 若葉はサングラスと大きなマスクをつけ、野球帽をかぶり、ジャージを着て、刀を携えていた。はっきり言おう。どうしてそうなった...

 

「変装だ。あまり勇者が町中を歩き回っていると、目立ってしまうからな。精一杯目立たない、私だとわかりにくい服装を選んでみたぞ。しかし刀だけは手放せなくてな、有事のために」

 

「...若葉ちゃん...」

 

「乃木さん...それじゃあ結構目立つし、刀を持っている時点で乃木さんだとわかるわ...」

 

「ほら!やっぱりタマたちも変装をするべきだったんだ!」

 

「タマっち先輩は少し黙ってて」

 

 球子以外が若葉をジト目や、呆れた目で見ていると、続いて友奈が現れた。

 

「みんな早いね!」

 

「あ、友奈さん...って、なんですか、それ」

 

 友奈はお面をつけていた。祭りの縁日で売られているような、特撮ヒーロー番組のお面だった。だからどうして(ry

 

「変装だよ!町の人たちに勇者だってわからないように!

 

「...高嶋さん...さすがにそれは...」

 

「あ、ぐんちゃんも欲しい?全員分持ってきたよ!」

 

 そう言って友奈はどこからかお面を取り出した。え?ほんとにどこから取り出した?

 

 お姉ちゃんは若葉と友奈の肩に手を置いて、言った。

 

「二人とも...『デート』にその格好は却下です。ひなとを見てください。あの子は昨日私がデートだといったせいで意識し、服装を私に相談してきたのんですよ?お二人も少しは見習ってください」

 

「お姉ちゃんやめて。普通にハズイ」

 

 

 

 

 そのまま流れでお姉ちゃんが若葉と友奈の服装をコーディネイトし直して、出かけることにした。ただし若葉は、

 

「有事のために!有事のために!」

 

 と言って刀を手放そうとしなかったため、相変わらず刀を持っているが。

 

 丸亀城の敷地内から出て、人通りがある場所を歩てみたが、通行人は若葉たちを気に留めるものの、それで騒ぎ立てたりはしない。

 

「いいですか?若葉ちゃんに友奈さん。皆さんは確かに有名人ですが、悪いことをしているわけではないんですから。堂々としていればいいんです」

 

「うぐぅ...」

 

「お姉ちゃん。ちーちゃんに大ダメージが入りましたー」

 

「いいですか千景さん。確かに千景さんは、私の弟を殺そうという大罪を犯しました。しかしそれはあくまでも精霊のせいですし、何なら報道はされていません。千景さんも変わらず堂々としてください」

 

「わかったわ...ありがとう...」

 

「いえいえ、お気になさらず」

 

「ところで友奈ー。みんなで出かけようとか言っていたけど、どこか行きたいところとか、目的地でもあるのかー?」

 

「ううん、そういうのは別にないけど...みんなで街の中散歩できたらいいなって。ダメかな?」

 

 友奈の言葉に、みんながほほ笑む。

 

「いや、いいと思うぞ。たまにはそういうのも」

 

「私も...全然大丈夫よ...」

 

「確かにあんまり散歩してないからこういうのもいいかもな!」

 

「あ、散歩するなら本屋にもよりたいんですがいいですか?」

 

「あ、俺も少しよりたいかも」

 

「いいよ」×5

 

「目的なんてあってもなくても、友達ですから、一緒にいられるだけで楽しいですからね」

 

 

 

 

 丸亀城から近くの本屋によってから、丸亀駅の方へ向かうことにした。大手一の門から大通りを通って、その大通りにある本屋に少し見てから、市役所を通り過ぎる。そのあたりで、商店街に入った。

 商店街は人通りが多く、賑わっている。4年前、本州や九州から四国へ人々が避難してきたため、四国の人口は以前よりも増加した。そのため商店街や駅前などは、普段から多くの人々の姿が見られる。

 商店街の中には、いたるところにお祭りのポスターが貼られていた。8月下旬に行われる『まるがめ婆娑羅(ばさら)まつり』のポスターだ。

 

「もう祭りの時期ですね」

 

「ええ、今年も盛大に行われるそうです」

 

 まるがめ婆娑羅祭りは、5月に行われる丸亀お城まつりと双璧をなす、市内最大の祭りだ。花火大会も行われ、市外からも多くの人々が訪れる。

 

「でも、婆娑羅祭りの『婆娑羅』って何だろうね?ゲーム?」

 

 通名がポスターを見ながら、怪訝そうに言う。

 

「高嶋さん。それは日本の戦国時代を舞台とした、三人称視点3Dの一騎当千型スタイリッシュ英雄 (HERO) アクションゲームね」

 

「なんかよくわからんがすごそうだな...えっと、確か江戸時代の丸亀藩主、京極氏に由来するそうだ。京極氏の祖先である佐々木道挙が、『婆娑羅大名』と呼ばれていたとか。婆娑羅は、派手さや粋さを表す言葉で、『伊達』と似たような意味だな」

 

「おお、若葉は物知りだな~」

 

「昔からこのあたりに住んでいるからな。地元の歴史だ」

 

「すいませーん。俺子供の時から住んでますけど、何一つ地元のこと知らないんですけどー」

 

「ひなと、それは言ってはいけないお約束です。それに何ならひなとは5歳くらいからここに来て最初からいるわけではないですし、何なら途中で高知に行きましたからそこまで長く住んでませんよ?」

 

 商店街の雑貨屋に通りかかり、そこで売られている団扇に友奈が目を止めた。

 

「あ、手作り団扇だ!」

 

「暑いしちょうどいいわね...」

 

「そうですね。みんなで買いませんか?」

 

 杏がそういったのに対し俺らは

 

「さんせーい」×6

 

 ちなみに丸亀氏は団扇の生産量日本一で、熟練の職人が作る団扇は、一つのブランドになっている。

 みんなで団扇を買い、再び商店街を歩いていく。

 

「むむ、こうして団扇を持って歩いていると、何かが足りない気がします...」

 

 お姉ちゃんは眉間にしわを寄せ、考え込む。

 

 若葉と俺は同時に何かを悟ったような顔になる。

 

「そうです!団扇と夏が揃ったら、浴衣です。皆さん浴衣を買っていきましょう、今から着替えていきましょう!」

 

「い、いや、祭りでもないのに浴衣を着るのは変だろう」

 

「そうだよ、みんなは買っても着るかもしれないけど、俺は買って今日着たとしたらそれ以降着ないよ?そしてもう着替えたくない」

 

「私も...」

 

「タマだって動きづらそうだしいやだ...」

 

「私も買うこと自体はいいですけど、今着替えるのはちょっと...」

 

「みんなもこう言っているし...また今度にしようよ」

 

 お姉ちゃんが勢いで浴衣を着せようとしてくるのに対し、俺らも勢いでカウンターをする。仲間がいてよかった...俺と若葉だけじゃ押し返せなくて着せられていた...

 

「仕方ありませんね...じゃあお祭りの時には、皆さんに一番似合う浴衣を、私が選びます。ああ、お祭りの日が待ち遠しいです」

 

 お姉ちゃんは心底楽しみそうに言った。

 その後、商店街を歩いて、うどん(俺はそば)を食べて。丸亀駅を通り過ぎて、海の方へ向かった。丸亀駅の辺りから海へ向かう道は、丸亀街道と呼ばれる通りの一部だ。街道は丸亀港から、香川で最も有名な神社・金比羅宮まで続いている。江戸時代、本州から渡ってきて金比羅宮を参詣する人たちの通り道だったのが、この丸亀街道である。

 

「金比羅宮かぁ...そういえば私、小さい時はよく神社に言っていたんだ」

 

「神社に?珍しいな」

 

「うん。金比羅宮みたいな、大きなのじゃないけど」

 

 道を歩きながら、友奈が話す。

 

「そういえば、友奈さんが丸亀に来る前の話は、あまり聞いたことがないですね」

 

「そういえばそうですね...千景さんは何か聞いたことないんですか?」

 

「私も...高嶋さんの昔の話はそこまで聞かないわね...」

 

「友奈はいつも自分よりも他人を優先して、話の聞き手に回ることばかりだからな。究極の聞き上手というやつだ。それができる人間はなかなかいない」

 

「気遣い屋さんだからなー、友奈は。でもそれってすごいことだな。だから、あまり人を好まない千景にも好かれているんだろうなー」

 

「土居さん...一言余計よ...でも確かに高嶋さんの気づかいはすごいわね...」

 

「...ありがとう...でも...」

 

 友奈は言いかけていた言葉を途中で飲み込み、それ以上は何も言わなかった。

 俺らが海に着いた時には、日が傾き始めていた。空気が茜色に染まっていき、港に停泊しているフェリーの姿がどこか哀しげ見える。マ〇オオ〇ッセイでもそうだが、夕暮れの海というものはどこか寂しげでもあるし、美しいなと思わせてくるものである。

 友奈はそんな夕暮れの海を見ながら、話し始めた。

 

「本当はね、そんなに褒められることじゃないんだ」

 

 友奈の言葉に、俺以外は怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「よく、みんなのことを気にかけてるとか、気遣い屋って言われるけど...褒められたことじゃないよ。ただ...嫌なんだ、気まずくなったり、誰かと言い争ったりするのが...つらいから。だから、相手の話を聞くばっかりで...全然、自分を出せなくて。でも―」

 

 いつも明るく、人のことを優先し、たまに俺のことをからかってくる、勇者たちの和を取り持つムードメーカーだった少女―高嶋友奈は、夕日を背にして俺らの方を振り返った。その表情は少し寂しげで。

 

「タマちゃん、杏ちゃんが死にそうになった時に...自分のことが話せないままになったときのことを考えて、なんだか悲しくなって...次が最後の戦いになるんでしょ?だから、私や...みんながもし死んじゃった時に、もっと自分のこと話しとけばよかった...ってことになりたくないなって...今更、思ったんだ...」

 

「友奈...」

 

「だから、みんなには...知っていてほしいんだ。私のこと」

 

 みんなは友奈を見つめ、優しい顔で頷く。

 

「もちろんよ...高嶋さん...」

 

「ああ、話してくれ。お前のことを」

 

「はい、私ももっと友奈さんのこと知りたいです」

 

「タマも、もちろん聞きたいぞ」

 

「ええ、私も」

 

「...存分に話せばいいんじゃないか...?」

 

 少しぶっきらぼうになってしまった...まぁいいか。

 

「...ありがとう」

 

 友奈は微笑んで、まるで自己紹介するように、少し緊張しているように、語り始める。

 

「私は勇者、高嶋友奈。奈良県出身。誕生日は1月11日。血液型はA型だって。趣味は...武道なのかな。あと、おいしいものを食べるのも好き。勇者になる前...小さい頃は、よく自然の中で遊んだよ。それと家の近くの神社に行って、ボランティアで掃除を手伝ったり、境内で遊んだりしてた。神社の境内ってね、かくれんぼにピッタリなんだ。隠れる場所がいっぱいあって。でも、入ったらいけないことに入って、神主さんから怒られたりもしたっけ」

 

 友奈は懐かしむように、取り留めもなく、友奈は自分のことを話し続ける。

 友奈の語る言葉を、俺らは静かに聞いていた。

 

「だから私にとって、神社とか神主さんってすごく身近で...そのせいで、大社の雰囲気とか、そういうのをみんなより自然に受け入れられてるのかも」

 

「友奈さんは小さいころから神社っ子で、昔はもっとやんちゃだったんですね」

 

「やんちゃ...うん、ちょっとだけ、そうかも」

 

 友奈は少しだけ照れたような顔をした

 

「そういえば、精霊のデメリットを調べている時に本で読んだことなのですが、清浄、穢れ、神威、神秘など、そういった目に見えないものは、接触によって人の身に蓄積されるそうです。文化人類学で『感染呪術』とも呼ばれる、一度すれ違ったものは離れた後も影響し合うという法則があります。その法則は、接触によって目に見えない何かが人の身に蓄積されるからこそ成り立つそうです。友奈さんが天の逆手の力が使えることや、ひなと君に取られましたが本来は酒呑童子の力を使えるのも、友奈さんが幼いころから神社の空気に触れ続けていたことが関係するのかもしれませんね...」

 

「杏...タマには何を言っているのはさっぱりだぞ...」

 

「私も少しわからないかな...でも一つ言えることは...タマちゃんみたいにアウトドアが得意だったり、杏ちゃんみたいに頭がよかったりってわけじゃないし、すっごく普通だった。だから勇者になったときは、『どうして私なんだろう?』って驚いたし、戦うのも怖かった。でも...家族とか友達を失うのは、もっと怖かった。私、本当はね、怖いから戦っているんだ...臆病者なんだ...だから...『勇者』って言葉に憧れるのかも」

 

 友奈は、ちょっとだけ苦笑気味に言った。

 

 

 

 

 それから、友奈はほかにもたくさんのことを語った。幼稚園や小学校時代の出来事、当時の友達のこと、家族のこと...ひとしきり語り終えた後、友奈はほう、と一息ついた。

 

「なんだかこんなにたくさん話したの、生まれて初めてかも」

 

 ちーちゃんが微笑みながら自分の両手で友奈の両手を握って言う。

 

「おかげで高嶋さんのことがよくわかったわ」

 

「タマもだ」「私もです」

 

「私はうれしいぞ、友奈がこんなに自分のことを話してくれて」

 

「ええ友奈さんのことが、今までよりも分かった気がします。...では、お返しに、私がひなとや、若葉ちゃんのことを教えてあげます」

 

「「え、ひなた(お姉ちゃん)のことではなくて、私(俺)の⁉」」

 

 お姉ちゃんは当然のように、

 

「はい。まず若葉ちゃんから。若葉ちゃんの小さい頃はですね、とにかくまじめで頑張り屋さんでしたね。真面目すぎて、周囲からちょっと怯えられるくらいですね。でもそんな自分に悩んだりする姿も、かわいかったです。で、次にひなとですね。ひなとはご存じの通り、最初は私の弟ではなかったんです。若葉ちゃんを見て男の子の面倒も見てみたいなーって思っていた頃に両親がなくなって、引き取られたひなとが来ました。この時私は思いましたね。この子は神が私に下さったに違いないと。まぁひなとのほうが誕生日が早かったら私が妹になるので上から言えなくなりますが、幸いなことにひなとの誕生日は10月14日、私は10月4日でしたのでそんな心配はありませんでしたね。とりあえずの第一印象は...とにかくしゃべりませんでしたね。なんかのロボットじゃないのだろうか...と思うほどしゃべりませんでしたね。必要最低限の挨拶しかしませんでした。極めつけは、私より精神年齢が高いと思わせるほど、物事を冷静に判断していました。私、この子の世話できないな...と思いましたね。ですがある雷雨の夜のことでした。私たちは小さかったからか同じ部屋で寝ていました。で、寝ようとしていたのですが、雷がうるさすぎて寝れなかったんです。ひなともそうなのかなーって思って見てみたら布団の中で丸まって震えてましたね。私の布団に入りますか?ってきいたときにだまって入ってきたときに私は思いましたね。これは私が面倒を見れる人物だと。そこから私はひなとの弱点を探すことにしました。まぁ一緒に散歩しただけですけどね。散歩したらちょこちょこと私の後をついてくるんですよ。それがもう可愛かったですね。で、散歩したら結構弱点が見つかりまして...まず虫が無理ですね、犬は見てる分では大丈夫ですが吠えられるとだめですね、後高いともダメですねあと結構ありますがまずはこのくらいですね。で、あと...」

 

「長いわ!あとほぼ俺のことだし!それに俺はそこまでしゃべっていないわけではなかったわ!そんなに話すなら俺から自分のことを話すわ!」

 

「でもひなとより私の方がひなとのこと話せますよ?」

 

「いや、お姉ちゃんでも知らないことが一つだけあるから」

 

「ほう?言ってみてくださいよ」

 

「...俺実は...転生者っていうか、前世の記憶を持っているっていうか...まぁそんな感じの人間なんだ」

 

 そう俺が言った瞬間、体感で夏とは思えない冷たい風が俺らの空間に吹いた。ついでに俺の心臓がうるさいほどなっていた。




ページをめくる→なるほど今回は友奈の自己紹介か→お、挿絵これでこの章終わりかな→まだ続くか...→四国、バーテックス云々→なるほどここで終わりか→若葉のセリフ→???→戦闘シーン→いやなげぇ。終わんねーよ

的な感じでいつもは章の終わりを合わせていますが、今回は途中で切っています。


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第20話 深まる絆、知らされる未来過去

最初に言っておく特にいうことはない

嘘です少しはあります。
とりあえずいつも通りはここら辺に置いときますね。

今回、主人公がかなり口を滑らせます。それも物語の根本的なところまで。若葉たちがそれを知っているのが嫌だなって思う方はバックしたほうが良いかもしれません...

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「はは、ひなとー、ひなたを見返したいのはわかるが、嘘をつくのはさすがにあれなんじゃないかー?」

 

 俺の転生者宣言を冗談だと思った球子はそう軽い感じで言ってきた。

 

「嘘じゃないよ」

 

 そう言いながら俺は周りを見る。するといい感じのカフェがあったので俺はそこを指しながら言う。

 

「少しのどが渇いたな。奢るからあそこ行こうぜ」

 

 

 

 

~店内~

 

「好きなもの頼んでいいいぞ」

 

「じゃあ...このコーヒーフラペチーノとショートケーキ」(1,400円)

 

「私は、モモフラペチーノとビターチョコケーキ」(1,500円)

 

「じゃあ私はー、コーヒーエイドストロベリーとチーズケーキ!」(1,300円)

 

「では私は抹茶フラペチーノとほうじ茶ケーキを」(1,700円)

 

「タマは、オレンジコーヒートニックってやつと丸ごとミカンのロールケーキ」(2,300円)

 

「もうタマっち先輩、みかんってだけで選んでない?あ、私もそれで」(2,300円)

 

「ちょっと待て‼」

 

 俺は慌てて財布の中身を確認し、諭吉様が数枚いるのを確認し、息をついた。

 

「ふぅ、オケ。大丈夫...え、あ、俺?俺はコーヒーで」(300円)

 

 っち。こいつらバカすこ頼んできやがる...

 

 しばらくすると飲み物とケーキが来たので俺は話し出した。

 

「さっき言った俺が転生者っていうのは嘘じゃない...ほんとだ。俺は死んでから神様のところに行って、この世界に転生させられた」

 

「「「「「「...」」」」」」

 

 静寂な空間が広がったが、俺は気にせず会話を続ける。

 

「少し前世の話をしよう...興味ないと思うけど...俺の前世の名前は高橋祐樹。生まれたのは西暦の2005年10月14日。いまの誕生日と一緒だな。その日は鉄道記念日らしいが俺は小さい頃は鉄道に興味を持っていなかったそうだ。ちなみに住んでいたところは埼玉の東京に近いところだ」

 

「待て」

 

「なんだ若葉。食い足りないのか?やめてくれよもう俺の財布はピンチを迎えているんだぞ?」

 

「そうじゃない。貴様、その前世云々の話が本当だったらお前は埼玉生まれなんだろ?」

 

「ああ、そうだな」

 

「埼玉は香川に次ぐうどん消費量二位のところ...それなのになぜうどんが嫌いなんだ!」

 

「三日連続で夜にうどんが出てから嫌い、というか苦手になった。あと何なら俺のおじいちゃん長野の人だから...」

 

「おのれ長野...!」

 

「...話を戻すぞー。えっと昔の俺のことだったか。俺はね...とにかく才能っていうか何にもなかったね。何をやっても凡人で終わるかそれよりもひどいもので終わる。それなのに何で今はこんなに運動神経がいいと思う?」

 

「...転生物のよくあるパターンの...チート的なものをもらったから...?」

 

「ちーちゃん大正解。そう、俺は死んだときにチートをもらっていた。それも結構な数のチートをもらったよ。ほとんど使いこなしていないし使ってないけど...ちなみに俺の死因は交通事故で死んだのは西暦の2022年とか23年ね」

 

「ちょっと待ってください」

 

「なんだ杏。お前も足りないのか?」

 

「本当にたのみますよ?今は西暦2019年のはずです...それなのに22年なんて...」

 

「だから言ったでしょ?転生者だって。俺は2015年にバーテックスが襲ってこない世界の人間なのさ...というか俺の前世の生まれた年が2005年の時点で疑問は出てこなかったの?」

 

「あ、確かに」

 

「それにしてもそんな世界があるんだね...」

 

「俺が前世の記憶を思い出したのは...両親が死んで入院していた頃だ...俺は過去のことを思い出しながらこの先どうやって暮らそうって思ったところで」

 

「うちに引き取られた...」

 

「そうだ。そこで俺は前世も含め初の姉ができたんだが...まぁテンション上がったよな。昔から欲しかったし...」

 

「なー。今までの話を聞く限り、ひなとが前世の記憶を持って生まれたっていうのは分かったんだが、だったら何で雷なんかで震えていたんだ?死んだのが22年だったら、高校生だろー?」

 

「あー、球子それ聞いちゃう?まぁ俺だって雷なったときはなんだ雷かって思いましたよ。でもね思いのほか近くに落ちたときにね、当時小さかった体には雷の音はものすごく大きく感じたのよ、ついでに少し揺れたし...まぁだから怖くなって震えていました。あ、あんたら、3.11って言ってわかるか?」

 

「えっと東日本大震災ですよね?」

 

「そうだ。俺はさっきも言った通り、埼玉過ごしでね、もろにそれを前世で体験しているのよ、だから揺れることにかなりの恐怖心を持っていてね...まぁそれでお姉ちゃんは布団に入るって言ってくれたから入ったわけですよ...なんかそこからお姉ちゃんが散歩に行こうって言いだし始めたね。まぁさっきも言った通り俺は人生初の姉を手に入れてテンション上がってたから、精神年齢なんて無視して、お姉ちゃーんって言ってちょこちょこついていってたね、まぁ道がわからないっていうのもあるんだけど...あー、精神年齢と言えば俺の精神年齢はほんと子供のままだなって思うよ。いつまでたっても精神的には年下の姉に頼りっぱなしだし、ほんとに子供がそのまま大人になるような人間だなってつくづく思うよ...やだなぁ...ちーちゃんの父親みたいな感じって...」

 

「...」

 

「で、上里家でお世話になって、3年ぐらいした時だったかな?母親が突然高知に転勤することになった。その時は母親だけが行く予定だったんだけど、高地だしもしかしたらちーちゃんに会えるかなー思って、ちーちゃんが住んでいる村っていう確証がなかったのに母親についていくことにしたんだ」

 

「まって...なんで会う前から私のこと...知っているの?」

 

「ん?あ...う~ん...まぁ別にこれは言っていいか...うん...知ってたよ。何ならちーちゃんだけじゃなくてここにいる存在や、この世界にバーテックスが攻めてくることも知ってたよ...」

 

「なん...だと...!」

 

「さっき俺は『2015年にバーテックスが襲ってこない世界の人間』って言ったね?あれ少し嘘。実を言えば...君達いや、この世界かな?は俺の世界からしたら数ある物語のうちの物語の一つに過ぎないんだよ。で、俺はその物語りを読んだり見たりしていた。だから、お姉ちゃんが若葉ガチ勢になることも知っていたし、ちーちゃんが親のせいで村のやつらにいじめられていたのも知ってたし、バーテックスが攻めてくるのも知っていた。まぁもしかしたら攻めてこないで楽に過ごせるかなーって思ってたんだけどね。現実は甘くなかったよ...唯一の誤算はお姉ちゃんのやばいものが若葉だけじゃなくて俺にも向いたことかな...」

 

「私たちが物語の中の人間...ひなた君はその...私たちの物語を読んでいたんですよね?ということはこの先どんな敵が現れてどうなっているかもわかるってことですか?」

 

「そうだよ。聞きたい?でも後でね。まずはしゃべらして。今思えば俺を転生させた神様が運命をいじくってたのかな?俺の家はお父さんが用意したものなんだけど...借りるところをお父さんがミスっててね...転勤するところの街の家ではなく、隣の村だったんだ。しかも普通に仕事先から離れているとこ。で、俺は町の学校まではいけないからその村の学校に通うことにしたんだ。転校当初の俺はもしちーちゃんがいても転校初日には会えないだろうなーって思ってたんだけど、空から女の子が降ってきた時点でビンゴ!って思ったね。そこからちーちゃんをいじめから庇う日常が始まったわけですよ。そしたらいじめの半分くらいが俺に向かうようになってね...まぁ机に落書きされたり上履きに画びょうが仕込んであったり...そのまま殴り込まれたこともあったな...チートで返り討ちにしてやったけどそっから3年くらいしたころだっけかな?まぁ歴史は変わらないってことでバーテックスが攻めてきたよね。まぁ俺がみんなに合うまでの話はこのくらいかな?あ、自分が最初から知られていたのがきもくてこの人とは過ごせそうにないって思ったら遠慮なく絶交していいから...でも、次がほんとに最後だから...そこまでは仲良くしてくれると嬉しいかな...あ、質問あったらどうぞ―」

 

 そう言った俺はのどが渇いたので、頼んだコーヒーを飲んだ。

 

「この先の私たちはどうなるんでしょうか?」

 

「というと?」

 

「最後の戦いが終わった後...日本は...世界は取り戻せるのでしょうか?」

 

「...ひとつ面白くないけど面白い話をしてあげるよ...この世界っていうかこの時間っていうか西暦時代っていうのはスピンオフ...つまり番外編なんだ。この物語の本編は300年後に勇者になる『結城友奈』ってこの物語なんだ」

 

「300年後...?」

 

「そう。300年後。つまりこの戦いに勝っても世界はおろか、日本も取り戻せないよ。ただ約300年の停戦に入るだけさ」

 

「そんな...じゃ私たちが戦う意味って...」

 

「あるよ。今ある戦闘結果や精霊のデータが300年後の勇者システムに進化をもたらす。そして300年後に人類は天の神から領土を取り戻すことに成功する。まぁ神樹も死ぬけど」

 

「そうか...300年後に私たちは勝ったんだな...」

 

「ああ、しっかり歌野から渡された勇気のバトンはつながってゴールを迎えることができたのさ」

 

「な、なぁ!未来のタマってどんな感じになっているんだ⁉ナイスバディになっているか⁉」

 

「........................原作で...勇者は...若葉以外...死んだよ...」

 

「...え?嘘だろ?ひなと?こんな時に冗談はやめてくれよ...」

 

「嘘じゃないよ...球子と杏はあのサソリに殺され、ちーちゃんは精霊によって穢れが溜まって、若葉を殺そうとして勇者システムが解除され、最終的に生身のまま若葉をかばって死亡、大社はちーちゃんの存在を無かったことにした。そして友奈は...次の戦いで死ぬ...」

 

「...!」

 

「まぁそうならないようにいつも通り俺が頑張るんですけどね」

 

「「「「「「...」」」」」」

 

「あれ質問終わり?」

 

「はい。話してくれてありがとうございました...」

 

「そんな...ひなとが精神的に私より年上...?」

 

「お姉ちゃん?驚くとこそこなの?」

 

「私が...大社によって存在が消される...?」

 

「それに関しては俺が防いだから大丈夫。ちなみにちーちゃんの勇者システム解除は300年後に多大な功績を残してるよ...あと300年後に残すバトンは大体2つ...」

 

「なんなの?その2つは?」

 

「友奈因子と、千景(ちかげ)って書いて千景殿(せんけいでん)

 

「なんだーそれ?」

 

「友奈因子は原作で友奈が死んだときに友奈は神樹に取り込まれるんだけどそのときに生まれてくる子に友奈因子が入って友奈そっくりの子ができるんだよ...ちなみにさっきポロッと出した名前の結城友奈って子も友奈因子が入っているよ。だから友奈因子がないと物語が成立しないんだ。まぁ結界強化の時の血とかで代用はできると思う。で、千景殿が必要な理由は、千景殿っていうのはね、千景砲(せんけいほう)またの名を千景砲(ちかげキャノン)を打つために必要なんだよ。その千景砲は天の神にダメージを与え、倒すのに必要な傷を作ることができる」

 

「名前はすごく嫌だけど...重要な役割を持っているのね...」

 

「そう?俺この名前好きだけどなー」

 

「そう...」

 

「千景殿はこの戦いの後大社を牛耳るお姉ちゃんに何とかしてもらうとして」

 

「牛耳る...?」

 

「あ、やべまたやっちまったよ...いい加減学べ、俺。未来に起こることは極力話したくないんだけどな...この戦いが終わり敵が停戦しようって言ってきたところで巫女がクーデターだか何だかを起こして大者を支配するんだ。で、そのクーデターだか何だかのリーダーが...」

 

「ひなたか...」

 

「そそ。ちなみにちーちゃんを歴史から消すことをを実行に移したのもお姉ちゃん。で、そのお姉ちゃんが子孫にゴールドタワーを千景殿っていう名前にさせることで未来で千景殿が生まれるのです」

 

「...」

 

「千景さん...なんというか...すいません...」

 

「何でひなたさんが謝るのよ...やったのは違う世界というか原作のひなたさんでしょ?それに...個々の私の存在は消えてないから大丈夫よ...」

 

「...今度こそ話は終わりかな?まぁさっきも言う通り、俺は年齢詐欺をしていたようなもんだ...そんな俺と一緒にいたくなかったら軽蔑したり、悪口を言ったり、絶交しても全然俺は気にしないから遠慮なくどうぞ...ただ次の戦いが最後だから...ほんとにそこまでは仲良くしてほしい...」

 

「...確かに最初から私のことを知っていたというのは少しあれだけど...私はひなと君に救われたから...そんなこと絶対にしないわ」

 

「私も同じです。大切な弟ですからね」

 

「タマもだ。タマだってこの命救われているんだ。そんな恩人にあだで返すことはしない!」

 

「私もたまっち先輩と同意見です!ひなと君がいないと小説のこと話す相手がいなくなりますし」

 

「私だってそうだよ!ひなと君の知っている物語では今ここにいない人がいるらしいけど...ここではそんなことがない!だから...みんなでハッピーエンドを迎えたいじゃん!」

 

「...ひなと...話してくれてありがとうな...おかげでお前のことがよくわかった...変わらずこれからも私の友人、仲間でいてくれ。だが...お前が勝手に高知に行き3年ぐらいおまえの分の盗撮が私のところに回ってきて、いつもひなた口からお前の話しか出てこなかったことは許さんからな!」

 

「そうか...みんなありがとう」

 

「ふー話がきれいにまとまったところでひなと、もうちょっと頼んでいいか?」

 

「そのまとまったのが台無しだよ...あとやめてね?俺を破産させるきかな?ただでさえ10,000超えてるんだから...」

 

「そうです!ひなとが本当に精神年齢が私たちより超えているか見るためにみんなで問題を出しませんか?」

 

「え?やめてよ?ただでさえ俺は馬鹿なんだから」

 

「よく言うわよ...小学校の時先生の嫌がらせで中学生の問題出されても解いてたくせに...」

 

「いや俺高校生だから...さすがに中学の問題は解けるから...!」

 

「では高校レベルの英語の問題を出しましょう!」

 

「あ、やめてください。俺英語無理。大体赤点間際」

 

「では問題ですひなと君。これが物語ということはおそらく推しがいるはずです。その推しは誰ですか?」

 

「...結城友奈さんです...」

 

 そう俺が言った瞬間右から蹴りが左からわき腹をつねられる。ちなみに俺の左に座っているのがちーちゃん、右がお姉ちゃんだ。

 

「ねぇ?その結城友奈って子はどんな子なの?」

 

「細かいところは違うけど...性格とか容姿は友奈にそっくりだよ」

 

「...そう...ひなと君は高嶋さんみたいな子が好きなのね...」

 

「うーん...まぁアニメの話だしなぁ...リアルと二次元のストライクゾーンを一緒にしてはいけないような気もするけど...俺はリアルで大切な人がいるから別に推しが友奈族であろうとちーちゃんを捨てるってことはないよ」

 

「そう...ならいいんだけど...」

 

「...そろそろみんな食べ終わったことだし帰らないか?ひなと、ごちそうさまだ」

 

「「「「「ご馳走様です」」」」」

 

「...いつかこの借りは返す...」

 

 そうして俺の財布にいる諭吉の人数が一人減った。

 帰路には夕暮れの中、並んで歩く7人の長い影。それぞれが思う。ひなとが言っていた未来にならないように...ここから一人もかけることがないように―歩く中7人の子供たちはそう願う。

 

 

 

 

そしてそれから間もなくバーテックスが四国へ襲来するのだが...その前に少しくらい日常を味わってもいいよね?




というわけでこの後は日常会ですので、戦闘は少し後です。
そろそろ題名考えるか...


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第21話 ひと時の日常(赤、青)

あー更新に時間がかかりすぎてるんじゃ...
まぁコロナのワクチン打ってたり、マイクラやったりウマ娘やっていたんで許してくだせぇ(あ、原神もやらなきゃ)

今回は予告通りの日常会でございます。一応いつも通りのはず...

お気に入り登録、誤字報告ありがとうございます!


 

(突然だが提案していいか?)

 

 部屋の中でくつろいでいた俺は、体の中に住み着いている精霊たちに聞いた。

 

『いいぜ』

 

『そもそも断る権利もありませんがね』

 

『わしは酒を飲みながらぼちぼち聞くぞ』

 

『勝手にしなさい』

 

 適当に了承が取れたところで俺は話し始める。

 

(この後の最後の戦いが終わった後四国以外は天の神によって火の海に変わる。その際人類は数人の巫女をいけにえに天の神に交渉をする。その際勇者の機能を捨てさせられる。たぶん俺のチートとかベルトは消えないだろうけど、もともと神樹の力の君たちは俺から引きずり放されることになるんだと思う。だからさ、思い出作りしたいし恩返しのためにしてほしいんだよ。だからそれぞれ一日ずつ俺の体を好きに使って思い出でも作ってくれ、っていうのを提案する)

 

 俺が話し終わった後、精霊たちはしばしの沈黙の後話し始めた。

 

『俺たちはうれしいけど...本当にいいのか?一部やばいことになりそうなんだが』

 

『好きに使っていいとは本当に好きに使っていいのか?』

 

(ああ、ほんとに好きに使ってくれ)

 

『酒もいいのか⁉』

 

(お姉ちゃんとかを説得できるなら)

 

『みんなにくっついてイチャイチャしていいの⁉』

 

(みんなからきもがられないかつちーちゃんにぶっ殺されない範囲なら)

 

『最高だな!』『最高ね!』

 

『ああ、二人が本気に...ひなと本当に大丈夫だったのか?』

 

(大丈夫だ、問題ない。それにみんなには少しでも楽しい思いをしてほしいしね)

 

『そういうことなら遠慮なく使わせてもらうぜ!さてだらから使う?』

 

『私が!』『わしが!』

 

 精霊たちが誰が先に使うか話し合っているのを聞きながら俺は通話アプリを開き、みんながいるグループに

 

精霊に俺の体を好きに使わせてあげることにしたから、何があっても俺は止められないので対処、対応よろしく!

 

 と送り付けた。するとすぐに反応があった。がとりあえず無視した。

 

(どう?使う順番決まった?)

 

『ああ、俺から使わせてもらうぜ』

 

『二番は我が』

 

『三番はわしじゃ』

 

『最後は...私ね...』

 

(おっけー。じゃ明日の零時から使えるようにしておくから勝手に入って使って。なんでも好きなことはしていいけど、さすがに食事はとっておいてね?)

 

『わかったぜ』

 

 そう酒呑童子が言うのを聞きながら、俺は通知でいっぱいになったグループの対応をするのであった...

 

 

 

 

酒吞童子の場合

 

 朝十時、俺は二十四時間しかない自由時間のうちの十時間を睡眠に使い、少しもったいないなと思いながらある人物の元へ向かった。

 その人物がいる扉の前に行きノックする。すると中から足音と

 

「はーい」

 

 って感じの声が聞こえた数秒後に扉が開く。

 

「あ、ひなと君...今は精霊酒呑童子さんでしたっけ?」

 

「ああ、そうだ」

 

「で、その酒呑童子さんが何の用ですか?」

 

「いや、本貸してほしいなーって思って」

 

「はい...?」

 

 目の前の少女、伊予島杏は心底驚いた、なんでこいつがそんなこと言ってんだみたいな顔をした。

 

「えっと確認なんですけど酒呑童子さんって女の子を誘拐して生のまま食べたり、悪の限りを尽くしたあの酒呑童子ですよね?」

 

「そうだけど何か?」

 

「本読むんですね...」

 

「ああ、お前がひなとに貸す本は特に好きだぞ」

 

「ってことは恋愛小説が好きなんですか⁉」

 

「ああ、そうだが...え、なんか驚かれるようなことしたか?」

 

「いえ、私が思っていたイメージと違うなって...精霊がみんなこんな感じだったのならひなと君が闇落ちしなかったのも納得です...」

 

「いや、俺らみたいなものすごく悪いことした妖怪は閻魔のもとへ行き裁かれるんだ。だからこんなにも恋愛小説というすばらしいものに出会えたのだ。あとひなとの体だったということもでかいな。あんなに神の力が染まった体でなければ閻魔が施した浄化の力も薄れて神樹が記憶している暴れん坊の俺が強く出てしまうからな」

 

「恋愛小説の話もしたいですけど、そっちの話もすごく気になります!...でもひなと君ができればやりたいことをやらしてほしいって言ってたんですよね...まぁとりあえず入ってください」

 

「お邪魔します...おー、話には聞いていたがほんとに本まみれだな...本棚は買わないのか?」

 

 俺は本のタワーを見渡しながら言った。すると杏は少し呆れながら

 

「ここの本全部入るような数の本棚を買ったら私の住む場所がなくなりますよ...」

 

 と言った

 

「そ、そうか」

 

「で、酒呑童子さんはどんな本を読みたいんですか?」

 

「前は〇〇という本を読んだからそれとは違う感じの本を読みたいかな...」

 

「〇〇ですか...幼馴染が負けヒロインじゃない、ライバルのいない純愛の世界ですね...ではこのスクールデイズというのはどうでしょう?原作はオーバーフローというアダルトゲームなので、純愛とはかけ離れた恋愛をしてますよ?」

 

「そうか...なら読んでみるか...」

 

 杏がものすごく悪い顔をしていたが俺は気にせず表紙をめくるのであった...

 

 

 

 

数時間後...

 

「おめぇなんてもの見させてんじゃー!でも貸してくれてありがとう!」

 

「あ、読み終わりましたー?感想あります?」

 

「誠氏ね」

 

「はは...やっぱみんなそうなりますか」

 

「なんだあれモテ期にしてはモテすぎだろ...」

 

「さ、心がけがされたところで、純愛の小説の感想でも言い合って癒されましょ?」

 

「あ、はい」

 

 

 

 

 

 

またまた数時間後...

 

「そろそろみんなで夕飯を食べる時間ですね...酒呑童子さんもどうです?」

 

「俺も腹が減ったからな...相席していいなら行こう」

 

「もちろん相席していいですよ」

 

 

 

 

食堂...

 

「お、杏たち来たなー。杏たちで最後だぞ」

 

「やぁ、今は酒呑童子だったか?貴殿も知っているだろうが、香川のうどんは至高だ。なのでここではうどんを食べるといい」

 

 俺たちが食堂に入って食券を買おうとしたところで、勇者たちのリーダーが話しかけてきた。

 

「流れるような宣伝に感服するよ、さすがはひなとの中でうどんバカだったり、うどん大名だったり、うどん武士と言われているだけはあるな」

 

「何⁉ひなとはそんなことを言っていたのか...褒めてもうどんしか出ないのにな...」

 

 と考え込むような姿になる若葉に俺はあきれながら突っ込む

 

「褒めてねえよ、呆れてるんだよ...さて何のうどんにするか...」

 

「それではこの釜バターうどんはどうだろうか?ムッチムチの麺にからむ濃厚な卵がものすごく相性がよく、おいしいぞ」

 

「ではそれにするか」

 

 

 

 

数分後...

 

「それにしてもお前はやっぱり少しだけ波長が俺と似ているな...」

 

「え?私?」

 

「そうだ、俺も一応奈良生まれだからな、後もともとお前の体に入る予定もあったからかな...」

 

「へー私と一緒なんですね、そういえば酒呑童子さんは子供のころどんなことしていたんですか?」

 

「え?それ聞くの?というかたくさん読み物を読んできたお前の方が詳しいんじゃないか?」

 

「それでも聞いてみたいなーって」

 

「はぁ、まぁいいけど...後悔するなよ?」

 

 

 

 

 俺は白毫寺っていうところの住職のもとに生まれた子供だった。そこでその時代の人が過ごしているような普通の生活をしていた。

 そんな平凡の生活をしていたある日、俺は近くの山で死体を見つけた。俺は好奇心でその死体から肉をはぎ取り、獣肉だと言って寺にいる連中に食べさせたんだよ。そのあとも死体のの肉を持って帰っては住職どもに食べさせてた。やがて山の死体が亡くなった。だから俺は生きている人間を襲って殺し肉を奪った。知ってるか?死体からはぎ取った肉より、生きてる人間から剝ぎ取った肉のほうがうまいんだぜ。

 で、俺が頻繁に肉を持ってくるもんだから、怪しがった住職が後を追ってきて俺が人を殺して肉を持って帰ってたことがばれた。

 住職は俺を追い出し、俺は山で一人サバイバルすることを強いられた。そして生きている人間を襲っているうちに牙や角が生えて鬼になったっというわけだ

 

 

 

 

「「「「「「...」」」」」」

 

 俺が話し終えた瞬間場が静寂にに包まれた。

 

「おー、空気が重い重い。...一応言っておくが話せって言ったのはお前だからな?」

 

「...ごめんなさい...思ったより子供の時が残酷で反応できなかった...」

 

「そうか...まぁこういう時はジュースか酒でも飲もうぜ!ひなとの金だが奢るぜ!」

 

「酒は飲んじゃだめですよ!」

 

「おー、怖い怖い。さすがひなとから少し苦手意識されているだけはあるな」

 

「なんですって...」

 

「おー、冗談だからそんな世界の終りのような顔をするな。だが酒のことは諦めたほうが良い...なんせこの数日後に俺の親父...八岐大蛇がこの体を使うからな。親父は平気で酒を飲むぞ。せめて致死量のアルコールを飲まないように見張っててくれ」

 

「くっ...わかりました」

 

「お酒ってそんなにおいしいのかな?」

 

「私はあんな飲み物...朽ちればいいとおっもうわ...」

 

「まぁお前はそうだろうな...だが大人になって飲んでみるといいあれはうまいというより人生が楽になるぞ」

 

「薬物の説明をするみたいな言い方はやめろ!」

 

「さて、話すこともなくなったし俺は本でも読むかね...」

 

「あ、じゃあ私も行きますね」

 

 

 

 

酒呑童子が去った後

 

「結局ジュース奢ってもらえなかったなー」

 

「あはは、さすがにひなと君前すごい金額奢ってたしさすがに...ね?」

 

「また行きたいですね...ひなとのちょっと待っての顔もとり忘れましたし」

 

「やめてやれ」

 

 

 

 

大天狗の場合...

 

 酒呑童子がひなとの体を使ってから一日経過した。よって次は我の番だ。

 我は事前にある人物を呼び出し、先に武道場に来ていた。勇者の力を使っても傷一つつかない頭のおかしい武道場に。まぁ実際はひなとが神とやらに貰ったチートというものでこの空間をいじくって傷をつかないようにしただけらしいが。最も勇者の力を使って特訓しようとしてもヤツ(ひなた)が止めるため一度もこの道場の耐久性が輝いたことは一度もないのだが...と思っていると我の客人が来たな。

 

「遅れてすまない」

 

「大丈夫だそこまで待っていない」

 

 現れたのは本来の我の使用者と、その幼馴染だ。

 

「それでこんなところまで来て何をするおつもりなのですか?」

 

「言わなくてもわかるだろう?ここは武道場。つまり我の力を使える素質のあるものがどのくらいの実力を持っているのか確かめるためだ。要はただ戦いましょ?と言っているだけだ」

 

「そういいうことなら喜んでやるぞ。私も精霊がどのような剣技を披露するのか気になるからな。この木刀でいいか?」

 

 そう言って若葉は木刀を手にした。

 

「いや戦いは勇者機能を使ってやろう。まぁ精霊は使わずに己の剣技のみでやろうではないか。木刀では途中で折れてしまうし、何よりそなたがついてこれないだろうからな、もちろん我の十八番でもある神通力は使わないし空も飛ばないぞ」

 

「いいだろう」「だめですよ」

 

 まぁやはりこうなるよな...

 

「勇者の力を使って模擬戦をするなんて危険すぎます。だめです」

 

「いや、しかしひなた確かひなとがこの空間は(死ぬような攻撃なら)絶対に寸止めになるって言っていたではないか。だから大丈夫のはずだぞ?」

 

「いいえ、それでもです。万が一というのもあります」

 

「だがひなとは精霊の言うことはなるべく止めないでくれって言っていたではないか」

 

「............はぁ、しょうがないですね。一回だけですよ?」

 

「恩に着る」

 

 我は頑なに譲ろうとしなかった少女が譲ってくれたので礼を言った。

 

「では早速やるか」

 

 我がベルトを取りだし若葉に向けて言った。すると若葉はスマホを取り出し

 

「ああ」

 

 そう言って頷いた。

 

『♬~~~バードフォーム』『キュイーン』

 

 そうして我と若葉の姿が変わる。目の前の少女が青色の勇者服になったのを確認し我は剣を抜いた。

 

「ではいくぞ?」

 

「ちょっと待ってくれ。ひなた、そこにいては危ない確かひなとが観戦席的なものを作っていたはずだ。そこに行ってくれ。というか連れてく」

 

「はいわかりました」

 

「...というわけだ少し待っててくれ」

 

「...承知した」

 

 我がそういった瞬間若葉はひなたを抱え観戦席があるであろう場所に向かって跳躍した。

 

数分後...

 

「待たせたな」

 

「まぁ大丈夫だ長い時を生きているからな一瞬みたいなものだ」

 

「そうか、ならよかった。では早速」

 

 そう言いながら若葉は生太刀を抜いた。

 

 そして両者剣を抜いたのに見つめ合っているだけの空間が出来上がった。最も間合いを図るために数ミリずつ動いているのだが。

 そうしてじりじり動いているうちにその静寂な空間は動き出した。大天狗が地面を思いっきりけって若葉に急接近しながら刀を横に振った。若葉は冷静な様子で刀を盾に構え、持ち手と峰の二か所を持って、ガードした。

 そのまま力比べになったが、若葉がバックステップをしその力比べは終わりを迎えた。そのバックステップの着地と同時に若葉が大天狗に向かって突進し連続で剣を振った。大天狗は涼しげな顔で大体を避け、避けれないものだけを剣で防いでいた。そして五十回くらい若葉が剣を振ったところで大天狗が下から上に剣を振り若葉の腕を上げ胴体をがら空きにし、そのがら空きのボディに蹴りを入れた。若葉の体は吹っ飛び壁にぶつかり、なぜか知らないが煙に包まれる。そして大天狗はその煙があるところに突っ込みとどめを刺そうとする。しかし大天狗が煙の中に入った瞬間煙が真っ二つに切り裂かれ大天狗が横に吹っ飛ぶ。その煙の中にいるのは目をつむり、居合の構えをしている若葉である。

 

「っぐ...やるな...」

 

「あれを防いだか...」

 

 若葉は悔しそうな声色で言った。

 

「少し嫌な予感がしたんでね、神経を超集中していてよかった。突然だがそなたは居合が得意なのだよな?」

 

「ああ、そうだが」

 

「では、我がそなたに切りかかる。それをそなたが切られるより早く抜刀し斬ることができたらそなたの勝ちってことでどうだ?」

 

「いいだろう」

 

 そう言った瞬間若葉はしゃがんで目をつむり、居合の構えをする。大天狗は刀の鯉口をきって完全に刀の刃を下に向け、手を刀の柄の先端である兜金に乗せ、そのまま手を滑らせて鍔近くに置きながら両膝を寄せて低くし、頭も低く下げた。そして重力にさ変わらず前にこけそうんあったところで思いっきり踏み込み若葉に切りかかる。若葉の間合いに入ったところで若葉が真一文字に一閃をする。が大天狗は体を傾けぎりぎり回避する。あと一瞬でも遅ければ当たっていたのか、服が少し切れる。そして避けた姿勢のまま若葉の腹あたりを斬った...かと思いきやそれ以上剣が入らないのか大天狗は急停止をした。

 

「ふぅ...勝負ありだな」

 

「ああ、よい鍛錬となった。ありがとう」

 

「礼を言うならこちらだ。わがままに付き合ってもらったからな」

 

「若葉ちゃん!」

 

 声のした方を見てみるとひなたが駆け寄って来ていた。

 

「あ、ひな「大丈夫ですか若葉ちゃん?怪我は⁉怪我はありませんか⁉」...大丈夫だから少し離してくれひなた」

 

「ああ、すいません」

 

 そう言いながら若葉に抱き着くのをやめたヤツは少し離れ、こちらを睨みながら言う

 

「これで勇者の機能を使った模擬戦はやめてくださいね?いくら死なないとはいえ打撲などはすると思うので」

 

「大丈夫だ。もう満足した」

 

「そうか...私の剣技で満足できたなら何よりだ。私もまだ未熟なところがあるからな」

 

「いや、そなたの剣技はほぼできているぞ。逆に言えばこれ以上成長できないということだが...」

 

「これが私の限界なのか...」

 

「まぁ努力だけでの意味だがな。つまり、感情とかでは無限に強くなれるということだ。怒り、悲しみ、喜び、他者を守りたいという気持ち、そういったもので人は強くなれる。だからまぁ、頑張れ」

 

「なんか最後適当だな...」

 

「別にいいではないか適当で。人生たまには適当のほうが良いことがあるぞ。それより我は腹が減った。食堂に行こうではないか」

 

 

 

 

食堂...

 

 

 

 

「あ、若葉ちゃん達!なかなか来ないからそろそろ呼び出そうかなって思ってた頃だよ」

 

 食堂に入ってくるなり友奈がこちらに手を振ってくる。

 

「確か今ひなと君の体に入っているのは...大天狗だったかしら?」

 

「そうだ。短い間だがよろしく頼む」

 

「さぁ大天狗よ、私がおすすめのうどんを教えてやろう」

 

「いや、申し訳ないが我はそばを食べさせてもらう」

 

「なんだと...?」

 

 我がそばを食うといった瞬間に若葉は星屑を簡単に殺せるほどの殺気を放った。

 

え?何この人こわ...

 

「一つ...聞いてもいいだろうか?」

 

「ああ、好きにするがよい」

 

 若葉の殺気に脅えているように見せないよう頑張って取り繕う。

 

「なぜそばを選んだのだ?」

 

 若葉はてきとうな答えを出したら殺す!みたいな感じの波動を出しながら言った。

 

「まぁ、ひなとが食べていたからだな。日本人というのは集団圧力に負ける存在だと我は思っている。ある物語の著者が言っていたように、日本人というのはめだかのように周りに合わせることしかできない、そう思っている。それなのにひなとは周りに合わせずそばを食べ続ける。だから周りに合わせようとさせないそばがどのようなものか気になってだな」

 

「なるほど...ひなとは明日うどん屋に連れていくか」

 

「ひなとがこの間言っていた。なんでここの人物というのはこう食べ物に執着しているんだ。麺類皆兄弟でいいだろ。だから脂肪がつきやすい体質なんだよ、と」

 

 そう我がありもしないことを言った瞬間あたりの空気が急激に冷えた。おー冷房が必要ないな。

 

へー、ひなとはそんなことを言っていたのかー

 

これは後で説教が必要でしょうか?

 

そうね...あとでゲームでぼこぼこのフルボッコにして心をぎったんぎったんにする必要がありそうね...

 

私は現実の空手でやろうかな

 

いくら、うどんが好きではないにしろ、私たちの体質に結び付けるのは本当にどうにかしていますね」

 

そうだ、今度ひなとにこの間奢ってもらったミカンのやつをもう一度奢ってもらおう。そうしよう」

 

あーひなと、かわいそうに安らかに眠れ

 

 そんなことを思っていると、勝手に右手が動き頬を思いっきりつねった

 

ひらいひらい(いたいいたい)ひゃめろひなほ(やめろひなと)ふぁるかったふぁるかったよ(悪かった悪かったよ)ひっかりていふぇいするから(しっかり訂正するから)ひっかいはらにてくれ(一回放してくれ)!」

 

 そう言うとひなとは体の操作権を譲ってくれた。

 

「あー、ものすごい怖いオーラを出しているとこ悪いが、さっき言った言葉は麺類皆兄弟以外は全部真っ赤な嘘だ。ひなとはそんなこと言ってないから、その黒いオーラを沈めてくれると本当に助かります」

 

 だが黒いオーラは鎮まることはなく

 

「ということはさっきの言葉は大天狗...お前が思っていたことなのか?」

 

「え、あっ...そ、そうですね...」

 

「そうかそうかつまりおまえはそんなやつだったんだな...飯を食べ終わった後、覚えておけよ?

 

 地獄のような食事が終わった後、我は勇者全員にリンチにされるのであった。ほんとは返り討ちにできたよ?でもここで返り討ちにするとさらに怒りそうだったから、リンチされただけだよ?ほんとだよ?




とりあえず長くなりそうだったので二人で一回終わりです
さてさてできれば夏休み期間でのわゆ終わらしたかったけどなんか無理そうですね...


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第22話 ひと時の日常(黄、紫)

だいぶ遅くなりました
決してバスターズをやっていたわけではないです...
少しメタいかも?
後はいつも通りです


八岐大蛇の場合...

 

 儂は起きてすぐに食堂に向かっていた。無論酒を飲むためである。まぁ学生食堂に酒はないだろうが、なんか部屋で一人で飲むのもあれだし、どうせ勇者たちが儂が飲みすぎないように見張りに来るだろうからな。

 ん?語尾で使っていたじゃとかはどこへ行ったのかだって?あれは息子に爺臭いぞと言われた瞬間にやめると決めたから今は使っていないだけだ。

 さて食堂に着いたぞ。さてさてまず食堂で働いている人たちに今日俺が酒を飲んでいたことを認知させない洗脳をして、それから異空間からコップを取り出して、後は勇者たちを待つか...

 

一時間後...

 

 遅い...遅い!いくらなんでも遅すぎじゃないか?ひなとからできればみんなのいる前で飲んでほしいかな...飲みすぎてたら止めてくれると思うし...って言ってたから待ってるのに遅い、遅いぞ!

 そんなことを思っていると食堂にいつものメンバーが入ってきた。

 

「悪い待ったか?みんなで鍛錬していたりシャワー浴びてたから遅くなった。すまん」

 

「まぁそういうことなら、まぁいいだろう...さて飲むか」

 

「っ...」

 

「うわひなたがものすごい顔をしているぞ」

 

「やめろ球子!こういう時のひなたに対して口出しとかコメントをしてはいけない!八つ当たりされるぞ!」

 

「そうだよタマっち先輩!触らぬ神...いや巫女にたたりなしだよ!」

 

「まぁひなたさん、ひなと君がもう貸してしまったのだから...今日はもう我慢しましょ?」

 

「...ええ、わかっています、わかっていますとも!でも、でも!ひなとの体で未成年飲酒というか、犯罪を起こしているのがなんか嫌なんです!未成年飲酒というのは子供がやることなんですよ!」

 

「そりゃそうだよ、ひなちゃん...あれ?でもひなと君の精神年齢自体は三十くらいだし、精霊は平安だから子供ではない?うーん...まぁいいか!」

 

 少女たちの会話を聞きながら儂はまず最初に何を飲もうか考える。まぁ最初はよくコマーシャルで見る缶の麦酒でいいか...ただ容量はものすごい大容量にしておこう。そう思いながら亜空間から麦酒と二百ミリリットルくらい入る三十個セットの紙コップを用意して、カシュという音を出しながら缶を開け、コップに注いだ。泡がコップからあふれそうになるのを見ながら儂は唾液を飲み込む。

 ちょっと周りを見てみる→おー少女たちがひいとる。まぁいいか。わしは気にせず飲むとしよう...

 そう思いながら儂は一気飲みをする。どうせ最初だしこの一杯くらいはよゆーで飲めるだろう...

 そう思っていた時期が儂にもありました

 

「うっ...」

 

 突如力が入らなくなるというか頭がほわほわしてきた。

 

「大丈夫ですか⁉」

 

 引いていたが、さすがにイッキして心配になったのか心配そうな顔をしたひなたがこちらを見た

 

「だい...じょうぶだ...おいおいこれアルコール度数1%だぞ...さすがにお酒弱すぎじゃないか?もう酔いやがったぞこの体...なんか興ざめした酔いがさめてから体を使わせてもらうとしよう...」

 

 そういって儂が体を返そうとすると

 

「ちょっと待ってください!このお酒どうすればいいんですか?」

 

「ん?ああ、それはやる。残さずしっかり飲めよ」

 

「待ってください!私たち未成年ですし飲めません!というか捨てていいですか?」

 

「残念ながら捨てられないぞそれ。ひなとがこの亜空間から食べ物を取り出した場合捨てられないようにしているからな。あとワシらしか飲めないような設定にしているし、この体に全部飲ませようとしたら...死ぬぞ」

 

「くっ...」

 

「じゃーな。あとは頑張れ」

 

 そうして儂は体を返した

 

 

 

 

「これどうするんだ?タマたちで全部飲めと...?」

 

「さすがにそれはなんか嫌だね」

 

「ん、あぁ?」

 

「あ、ひなと君...気が戻ったのね」

 

ん?んんん...んん?あれ~なんかちーちゃんが二重だ~おもしろ~い

 

「あ、ダメですねこれ完全に酔っていますね」

 

「はぁ~取り敢えずこれは後でどうにかするとして今はひなとの様子を見るか...」

 

うー☆ちーちゃん~

 

「え、ちょっ⁉ひなとくん⁉」

 

「わ~お、だいたーん」

 

 酔っぱらったひなとはよくわからん感じでダルがらみをしていた!そのダルがらみの一環として

 

「写真でも撮っておきますか...ひなとが自分から抱きに行くことなんてめったにないですしね」

 

 千景を抱いていた(卑猥な意味じゃないぞ!)

 

「お酒も少しはいいことがあるものね...」

 

うへへ~ちーちゃんいい匂い~

 

「録音もしといたらどうだー?ひなたー」

 

「タマっち先輩さすがにそれはやめておいた方が...自面だけ見るとかなりやばいし...」

 

「私も飲んでみようかな...」

 

「ええ⁉高嶋さん、さすがにそれはやめておいた方が...」

 

「でも結局私たちが飲まなきゃいけないんでしょ?」

 

「確かにそうだが...」

 

「だったら私が先陣を切るよ!それで飲めそうだったら私が全部飲んじゃうね」

 

 そう言って友奈はコップを取り出しビールを注ぎ、一気に飲んだ。

 

「ああ!友奈さん一気はまずいですって!」

 

うへへ~ぐんちゃん~

 

「ああ、友奈さんも一杯で酔ってしまいました」

 

「というか千景大丈夫か?ものすごく顔が赤いが」

 

「若葉ちゃん、そっとしといてあげてください」

 

ぐんちゃん~大好き~

 

ん~俺も~

 

「こんなの正気の状態でいられないわ!もう飲んでやる...」

 

 そういって千景も紙コップを取り出し、酒を注ぎ、一気に飲んだ。

 

「だから一気は(ry」

 

「杏、さすがにしつこいぞー」

 

「あれ...なんともないわね...今は酔いたい気分なのに...」

 

「どうやら千景さんはお酒が飲める人らしいですね...まぁこのまま千景さんに飲ませてもいいですが...まぁさすがにここまで来たら全員で堕ちたほうがよさそうですね...そういうことで私も飲むとしますか...」

 

「え⁉ひなた?」

 

「なんです?若葉ちゃん。確かに自分から飲みに行ってますが、このまま仲間に飲ませないで自分だけ罪を犯さないなんて少しひどいとは思いませんか?」

 

「確かにそうだな...いやしかし...」

 

 若葉が渋っている中ひなたは飲んでいない人のカップを取り出し、ビールを注いでいく。

 

「あ、ひなたさん私の分もお願いできるかしら?」

 

「ええ、わかりました。まだ全然量がありますしね。ありがたいです」

 

 そうして酔っぱらっている人たち以外にコップがいきわたった

 

「じゃみんなで一斉に飲みましょう。それじゃ乾杯」

 

「「「...乾杯」」」」「乾杯」

 

 そうして杏と若葉以外は一気する。その結果

 

「私は意外といけますね」

 

「うえぇーまずっ。タマはもういいや」

 

 そしてちびちび飲んでいた若葉と杏はというと...

 

「私も意外といけますね...」

 

「私はいけなくもないが...なんか嫌だな...」

 

 若葉は渋い顔をしながら言った。

 

「あれ?乃木さんは飲めないのかしら?お酒、一緒に飲み比べしようと思ってたのだけれど...そう、飲めないのなら仕方ないわね...ああ、ざんねんね...乃木さんが飲めればできたのだけれど乃木さんが飲めればできたのんだけど

 

「なぜ二回も言った?だが、その挑発、乗った!ひなたお酒を注いでくれ!」

 

「ん?ああ、はいお酒ですね。わかりましたすぐ次ぎますね」

 

ちーちゃ~ん、わかばとしょうぶするの~?

 

「そうよ...今の乃木さんならボコせる気がするしね」

 

そうなんだ~ぐんちゃん頑張れ~わかばちゃんなんてぼっこぼっこにしちゃえ~

 

「ゆ、ゆうな?わ、私に味方はいないのか...」

 

「いいえ、若葉ちゃん。私が味方ですよ」

 

「味方が少なそうなので私も応援します」

 

「ひなた、杏...ありがとう...」

 

「若葉ちゃんったら...お酒を飲んだら泣きやすくなる体質なのでしょうか?こんなことで涙が出てますよ?」

 

「ひなと君...こしょこしょ...」

 

ん?りょーかーい。おねえちゃん

 

「なんですか?ひなと?」

 

だいすきだよー!

 

 そう言いながらひなとはだいぶした。誰に向かってだって?いわなくてもわかるだろ?()

 

「ああ、こら!ひなと君、抱き着くまではやれって言ってないでしょ?」

 

えへへ~ごめんね~おねえちゃんもしゅきだから~

 

 抱き着きながら千景の方を向きひなとは言った

 

「ぐはっ」

 

「あーひなたさん!だ、大丈夫ですか⁉は、鼻血が出てますよ⁉」

 

「致命傷なので大丈夫です」

 

「駄目じゃないですか⁉ほらティッシュ、ティッシュ」

 

「ありがとうございます杏さん。とりあえず飲み比べを開始しますか...」

 

 

 

 

数分後...

 

「...これはどっちが勝ちなんでしょうか?」

 

「めんどくさいのでドローでいいでしょう」

 

「そうですね」

 

 そう言う二人の少女の前には

 

ひなた~

 

 酔っぱらってダルがらみしてくる英雄と、

 

「zzz」

 

 寝ているゲーマーの姿があった...

 

「というかみんな寝ちゃいましたね...」

 

「そうですね...とりあえず頑張って皆さんをそれぞれの部屋に運びますか」

 

「そうですね...とりあえず私はタマっち先輩から運びます」

 

「では私はひなとを...若葉ちゃん、ここでおとなしくしていてくださいね?」

 

いやだ~、ひなとなんかにかまってないで私をかまってくれ~

 

「キャラ崩壊してますよ、若葉ちゃん...ほらあとでかまってあげますからここでおとなしくしていてくださいね」

 

う~、耳かきも~

 

「はいはいわかりました。それじゃ行きましょうか」

 

「はい。こっちは準備完了です」

 

 そう言って杏とひなたはそれぞれの運ぶ対象をおんぶする

 

 

 

 

 このままひなとは一日眠っていたため、八岐大蛇はビールを飲んだだけで一日体験を終えたのであった...

 

「別にいいし、お酒悪い体を見抜けなかった儂が悪いし...」

 

「親父...今日は一緒に飲むか...?」

 

「ああ、そうさせてもらうよ」

 

 

 

 

翌日...

 

「ひなと君鍛錬の時間よ。ほら一緒に行きましょ?」

 

「...」

 

「...ひなと君...?」

 

「...ごめんちーちゃん...今日はさぼる...」

 

「え、ちょっ、な、なんでよ...⁉」

 

「ちーちゃん昨日のこと覚えてないの...?」

 

「昨日...?何かあったかしら...?」

 

 クッソこの人酔った時の記憶が残らないタイプだった!

 

「とりあえず、今日は誰とも顔を合わせたくない...明日はきっと行くから...ね?」

 

「明日は一緒にお出かけするんでしょう?まぁひなと君じゃなくて精霊とだけど...」

 

「はは、そうだったね...とりあえず昨日のことはお姉ちゃんが教えてくれるはずだから...あんま聞いてほしくないけど...」

 

「まぁ、わかったわ...」

 

 そしてその後友奈のところに行ったがひなととだいぶ同じような理由で鍛錬を休むことを伝えられるちーちゃんなのであった...ついでにお姉ちゃんはいつものように若葉のところに行ったが同じように断られたそう...

 そしてその後昨日の様子をビデオに残していたお姉ちゃんがちーちゃんにそのビデオを見せ、悶絶&赤面をさせたそうだ...

 

 

 

 

 

玉藻の前の場合...

 

 私こと百合厨...いえ、玉藻の前は今日出かける人物の部屋の前に来ていた...そして多分起きているであろう時刻になったためドアをノックした...

 

「もしも~し。起きてます~?」

 

「起きてるわよ...少し準備するから待ってなさい」

 

「はいはい」

 

 そうしてしばらく待っているといつもの私服を着た美少女が出てきた。

 

「やぁ、おはようちーちゃん!今日もかわいいね!」

 

「その手の言葉はひなと君の体を借りている精霊にじゃなくてひなと君自身から聞きたかったわね...」

 

 少しうんざりとしながら受け答えする少女。その少女の態度に私は気にせずに会話を続ける。

 

「まぁまぁ、このガキもいつも同じこと思ってるから...そんな不服そうな顔しなくてもよろしくてよ」

 

「ひなと君をガキとか言わないで...!」

 

「実際ガキみたいなもんだろう?百合の間に挟まるし、生きてる年数の割には精神年齢幼いし、後百合の間に挟まるし」

 

「結局二種類しか言ってないわよ...で、今日は何をするのかしら?」

 

「デート?」

 

「早急にお断りしたいわね」

 

「まーまーそんなこと言わないでーほら!今日は服も買う予定だからちーちゃんの選んだ服なら何でも着るし買うよ?」

 

「本当?あとちーちゃんって呼び方やめて...!あれはひなと君しか呼ぶのを許していないわ...」

 

「わかったわ千景ちゃん」

 

「千景ちゃん...なんかなめられている感じがしてものすごく嫌なのだけれど...しょうがないわねそれで我慢するわ...とりあえずショッピングモールに行きましょうか」

 

「そうね」

 

 そうして出発する勇者と精霊。この時精霊はつけてきている五人の影に気づいていたが、面白そうなので放置することをここに決めた。

 ちなみに今日ひなとは絶対に体を取り戻すことができない。なぜなら玉藻の前に前世を含めるすべての黒歴史を脳内で流され、精神がどっかに行ったからだ。

 

 

 

 

 

イネス...

 

「まずこの夏にみんなで海行こうっていう話をしていたから水着を買いましょう」

 

「わかったわ。嫌がらせで少しきわどいものにしてあげましょう」

 

「いいわね...めっちゃ胸を強調するビキニにしましょう」

 

「ありね!それじゃこれとかどうかしら?」

 

 そうして玉藻の前が選んだものとは黒の横乳と下乳が明らかにはみ出るであろう水着だった!

 

「ふふふ...ひなと君が半べそ又は泣きながら着るのが目に浮かぶわ...」

 

「この子相当いい性格しているわね...あ、ラッシュガードはわざと買わないでおきましょう」

 

「あなたもだいぶいい性格しているわよ?」

 

 

 

 

一方尾行組...

 

「な、なあひなた本当についてきてよかったのだろうか?」

 

「いいに決まっているでしょう⁉なんせ精霊が暴走しないか見張らなければならないですし...何より弟のデートですからね!」

 

「後半が欲望を忠実に物語ってますね...でも確かにお二人のデートとなれば見張りたくなりますね!」

 

「ならないぞ、杏ー」

 

「というかひなちゃんあれ大丈夫なの?だいぶ、そのぉあれな水着選んでるけど...」

 

「いいんです!ひなとが半べそ又は泣きながら着るのが目に浮かびます...!」

 

「ひなと用のラッシュガード買っといてやるか...ひなたアイツの女の時の上のサイズは?」

 

「Lでも買っておいてあげてください」

 

「Lってでかくないか?」

 

「ひなとの場合出るものが出てますしでかいことに越したことはありません...それにもしでかくても萌え袖みたいなものが見れますしね...」

 

「やっぱり後半(ry」

 

「そうか...じゃぁこの黒のやつでいいか...よし買ってくる」

 

「あ、若葉ちゃんそれ私が払いますよ。家族のやつを親友に買わせるわけにはいきません」

 

「いや、日頃の感謝という意味で買わせてくれ...ひなとには大分お世話になっているからな...」

 

「そうだなー、ひなとがいなければ今頃球たちはいないからなー」

 

「ええ、そうですね...若葉さんそれ私にも払わせてもらえません?」

 

「そうだなタマと杏と若葉で割り勘にしようぜ」

 

「私も払うよ?」

 

「いやここはタマたちに払わせてくれ」

 

「そうですね、友奈さんには悪いですが違うときに日頃のお礼をしてみてはいかがでしょう?」

 

「例えば?」

 

「そうですねぇ...あ、友奈さんがマッサージをしてみてはどうでしょう?」

 

「あ、するときは言ってくださいね?ビデオを持ってきますので」

 

「マッサージか...いいね!今度部屋に突撃してみるよ!」

 

「あれおかしいな?ひなとがなるべくはずかしい目を合わないようにこれ買おうとしているのにあまり状況が変わっていないぞ...」

 

 

 

 

水着購入後...

 

 

 

 

 私たちは服屋に来ていた。

 

「ひなと君って極端に女の子っぽい私服少ないよのね...結局ひなたさんは慈悲で男でも着てそうな服を選んだしスカートも制服以外そこまでないしね」

 

「あのお姉さんに慈悲という言葉があったのね...」

 

「まぁそういうわけで今回はひなと君のかわいい服を買おうと思うわ...こういうのはひなたさんが選んだほうがいいのだけれど...まぁいいか」

 

「どんな服でも私はバッチ来いよ!」

 

 まぁこの服屋、大体水着と同じようなことがあったので割愛する。とりあえずフリルやらなんやらそんな感じの女の子っぽいのを大社経費で買ったということは言っておこう。

 

 

 

 

場面は変わって昼になり飯屋...

 

「きつねうどんふたつで...」

 

「はいわかりました。少々お待ちください」

 

 私はイネスだったかしら?そんな感じの名前のデパートの中にあったうどん屋に来ているわ。それにしてもここの人たちは本当にうどんが好きねー。

 

「一つ...聞きたいことがあるんだけど...」

 

「何かしら?」

 

「私が勇者システムを剥奪された原因の精霊って...あなたよね?」

 

「あ、わかるのね...」

 

「ええ...雰囲気が少し似ていたからね...」

 

「...それで、今そんなことを確かめていったいどうするつもり?」

 

「気になるのよ...なんでひなと君を殺させようとしたか...」

 

「ああ、あれね。それを説明するために私の生い立ちを説明しないとかしら?」

 

「それがひなと君を殺させようとしたことにつながるなら何でもいいわ...」

 

「そう、ならそこでこそこそしている人たちも呼び出すとしますか」

 

 そう言って私は少しだけ離れた席に座っている女子のグループを見るのであった...

 

 

 

 

「...予想はしていたけどやっぱりつけて来ていたのね...」

 

 合流した勇者たちを呆れた目で千景ちゃんは見ていた。

 

「まぁ精霊を見張っていただけですけどね。ちなみにいつごろから気付いていたのですか?」

 

 真顔で言うひなた。

 

「いつも何も最初からよ?千景ちゃんの部屋に来たあたり」

 

「本当に最初ですね...」

 

 杏が頬をかきながら言った。

 

「ま、店員さんに席をくっつけてもらったことだし、早速語るとしますか...もう注文はしたの?」

 

「うん、みんなで同じうどんを頼んだよ!」

 

「そう...まぁ今回は大社の経費で落とすから今ならトッピング追加していいわよ?」

 

「本当か⁉」

 

 球子が身を乗り出す。

 

 そして少女たちはトッピングを頼み始めた。

 

 

 

 

頼み終わった後...

 

「さぁ頼み終わった後だしさっそく話すとしますか、まぁ話すといってもすごく簡単によ?私は平安の時にたくさんの男をたぶらかしたわ...まぁそうやって遊んでいるうちにね男の方が勝手に地位や金を恵んできたのよ...私はただ遊んでただけなのにね...で、私の中にいる悪魔がささやきかけてきたんだ。偉い人の愛される人になって、その人を病死させたりして遺産をもらおうって。恵んでもらってからがめつくなった私はすぐその案に乗ったわ...急に病気に苦しんだのを不思議に思ったその偉い人の家来だか身内が陰陽師を連れてきて、結局その陰陽師に私が玉藻の前だってばれて逃げた先で殺されてしまったのよ...で、その死んだ後の私は閻魔様のもとに行ってねものすごく反省させられたのよ。その時私は思ったわ...男がだめなら女にすればいいじゃないと!」

 

「「「「「「..................」」」」」」

 

「幸い私はどっちもいける口だったからね!あと昔の場合、女にそこまでの権利はなかったから遊んでも権利やら金が来ることも少ないと思ってさらに本気になっちゃってね、そのまま自分のエゴだか何だかを押し付けるために私は百合厨になったわ...だから許せなかったの平然と百合の間に挟まる男上里ひなとを...!」

 

「「「「「「...............」」」」」」

 

「まぁここまでは半分本音半分建前よ」

 

「建前...?」

 

 杏が不思議そうに首をかしげる。

 

「そう建前。突然だけどあなた達ってパラレルワールドって信じるかしら?」

 

「パラレルワールドってなんだー?」

 

「簡単に言えば平行世界のことですね」

 

「そうね、まぁとりあえずこの世界だけどこの世界じゃないみたいな感じよ」

 

「余計わけわからないよ...」

 

「まぁパラレルワールドに関しては理解しなくていいわ」

 

「で、そのパラレルワールドが何なのよ...」

 

「パラレルワールドが一つの木みたいな感じで考えるとしたら、この世界は葉っぱなのよ。で当然植物にはというか生物には種があるじゃない?」

 

「そうだな」

 

「その種が本来のあなた達が歩むべき物語なのよ。この世界は、この葉っぱは上里ひなとがいたという世界なのよ。まぁここまではこの間ひなとが同じようなことを言っていたと思うけど...ここからが本題よ。その種の中の物語にね、すべての勇者が集まる物語があるの」

 

「すべての勇者...?」

 

「そう時空も関係なしにね。でその子たちがちょうど五年くらい過ごしたあたりかしら?少女たちは神樹にお願いしたわ...確かみんなの記憶や戦闘経験を維持したまま歴史を最初からやり直してほしいだったかしら?神樹は結構人間好きだからね、それを実行しようと思ったわ...でやろうとしたところで重大なことに気づくの」

 

「何に気づいたんだ?」

 

「そのまま戻しても結局バッドエンドなのよ」

 

「「「「「「⁉」」」」」」

 

「イレギュラーがいない限りあの結末というか歴史はハッピーエンドにつながる...それを変えようとしたらバッドエンドになる。例えば仲間の温かさを知った郡千景が反逆みたいなことを起こさなかった場合、三百年後に起こる世界を壊そうとしたものに対して神樹が変身を解除してしまう...その結果バッドエンドにはならないかもしれないけど、ハッピーエンドにはならない...だから神樹はあなた達を知っている異世界の者をいろんなところから集めたわその世界にいる神に頼み込んだこともあったわね。その影響でこの物語(世界)パラレルワールド(物語)は大量にあるのよ...まぁ話を戻すけど私があなたにとりついてひなとを殺させようとしたのは、ハッピーエンドにするためね...私たちは葉っぱのことは知らないけど種でどうなるかは知っている。だからこの先どうなるかもわかるし、結局バーテックスがどうなるのかもわかる。でも、過去をより良くしようとするとどうして未来でほころびが生まれる。ここで善戦したとしましょう...バーテックスは進化するわ。未来では手がつけられないほど強くなってるかもしれない。だから結構あなたたち全員が生き残っているのって危険な状況なのよ?まぁ神樹も限界があるから死んでしまった人もいるのだけれど...」

 

「「「「「「...............」」」」」」

 

「ま、私が話せるのはここら辺までね。あとはひなとにでも聞きなさい少し早いけど私は体を返すわ...それじゃね、千景ちゃん今日は楽しかったわ。ありがとね」

 

 そうして体はひなとに帰ってきた。しかし今の話を聞いて整理するもの、考え込むもの、そもそも話がよくわからなくてポカーンとしているもので分けられていたため、ひなとに質問が飛ぶことはなく、運び込まれたうどんを食べ、みんなで帰るのであった...




これは夏休み期間に終わりませんね...
だってこの後にキャラごとの日常考えてたし...
まぁですので戦闘回(元の路線に戻る)はかなり先ですね


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第23話 ひと時の日常(桔梗)

いつもと同じです
思ったより長くなってしまいました...


 その日若葉は俺にとてつもないことを言ってきた

 

「なぁふたりでひなたの部屋に入って一緒に写真を消しに行かないか?SDとかもろもろ」

 

「お前は何を言ってるんだ?」

 

 え?いや、本当に何言ってんのこいつ。お姉ちゃんの部屋に侵入して写真消しに行くとか...怖ァ...

 

「自殺したいなら勝手にしてくれ。俺を巻き込むな」

 

「いつも私らはひなたにやられてばかりだろ?だから2人で進撃なり革命なり反逆でもしようと思ったんだ。頼む!1人じゃ勇気が出てこないんだ!最悪見付かっても責任は私が取るから!」

 

「バーテックスに立ち向かう勇気はあっても、幼馴染みに反撃する勇気は出てこないんだな...でも、いいよ。一緒に怒られようじゃないか」

 

「協力してくれるのはありがたいが、なぜ見つかる前提なんだ!?」

 

 だって標的がお姉ちゃんだもん、しょうがないね。

 

 

 

 

お姉ちゃんの部屋...

 

 そんなこんなで我々は今お姉ちゃんの部屋に来ており色々漁っております。心臓をバクバクさせながら俺はPCのデータを漁って都合の悪い写真を消しており、若葉はアルバムを見つけては中身を見てそれをバッグに入れています。

 

『これ犯罪じゃね?』

 

『大丈夫だひなと肖像権侵害、盗撮も立派な犯罪だ』

 

 と、みんなの英雄が言っていたので俺はそれを盾にして良心が傷つきながらも楽しみながら写真を消しております。

 

 

 

 

数十分後...

 

 粗方pcのデータを消して紙の方の写真を回収したところである

 

「なぁ、若葉。俺すごい嫌な予感がするんだけど」

 

「そうか?私はいつもの仕返しが出来ていい気分だ!ひなたにいつも振り回されてばかりだが、今日だけは振り回している気分だ!」

 

「誰を引っ張り回してるですって?若葉ちゃん」

 

「それはもちろんひなたを...」

 

 その瞬間俺らのいた空間はとても冷たい空気になった。そして俺らは恐る恐る第三者の声のした方を見た。

 

「ひ、ひなた...買い物に行っているのではなかったのか...?」

 

「おやおや、おやおやおやおやおやおやおやおやおや。人の部屋をあさっていたのに開幕出てくる言葉がそれですか...

 

 お姉ちゃんはものすごい笑顔で話し続ける。それはそれとしてここにボン卿出現させたの誰だよ()

 

「買い物ですか?それは中断しました。一人でしたしね。若葉ちゃんとひなとのスマホにつけているGPSが同じところにいて、私の部屋らしきところにいたので怪しいと思い帰ってきました。まぁ六割り勘です。」

 

 俺らはお姉ちゃんの笑顔から出てくる怒気だか、覇気だかに必死に耐えてお姉ちゃんの顔を見ながら話を聞く。

 

ひなと?私の写真を消したのこれで二回目ですよね?前の説教では足りませんでしたか?それとも本当に学習できない子なんでしょうか?

 

「うっ...」

 

 や、やめてくれ...今回俺が百悪いけどその口撃はマジで効く。やばい泣きたくなってきた...

 

「ま、待てひなた!こ、今回は私が誑かしたんだ!ひなとの分の罰も私が受けるから!今回はひなとを見逃してくれないだろうか...?」

 

 震える声でもしっかりと自分の意見を伝える若葉。なんだか若葉がまぶしぃ...

 

「いい友情ですね。感動的ですね。だが無意味です。どっちにも私の趣味全k......ん”ん”...結構重めの罰を与えます」

 

「「はい...」」

 

 俺たちはいつの間にか正座をし、肩を落としながら返事をする。

 

「で、二人ともなんか私に言うことないんですか?」

 

「すいま「まて!ひなた、今回私たちはそこまで悪くないと思うぞ!盗撮も肖像権侵害も悪いと思う!だから確かに私たちも悪い、だが私たちは謝らない!」「若葉の...バカヤロー‼

 

 おい!馬鹿野郎、やりやがった!恐る恐るお姉ちゃんを見てみる。あ、終わった...お姉ちゃんは目だけ笑って顔は笑っておらず(それはさっきまでそうだったが)なんか紫のオーラを出しており、ゴゴゴゴゴゴゴって感じのが周りに出てきそうな雰囲気をしていた。バーテックスと戦うよりよっぽど怖いです。本当に...

 

バカバカバカバカ~

 

 俺は涙目になりながら若葉をポコポコ叩く、若葉は体を震わせ、戦意喪失している...(ブロリーと対峙しているベジータのみたいな感じ?)

 

「それではそろそろやってもらう罰を発表するとしますか...若葉ちゃんは右手を、ひなとは左手を出してください」

 

 そう鬼...もといお姉ちゃんが言ってきたので俺らは素直に言われた手を出す。

 

ガチャ

 

 出した瞬間出したての方からそんな感じの音がすると同時に少しだけ手が重くなった。手を見てみると手錠がかかっており、俺の左手と若葉の右手が繋がっていた。

 

「え、ちょっお姉ちゃん?」

 

 困惑する俺にお姉ちゃんは告げる。

 

「これからひなと達には手錠をかけたまま三日間くらいひなとか、若葉ちゃんの部屋で暮らしてもらいます。部屋からは出ないでください。勇者の力は使ってもいいですが、手錠を壊したら...わかっていますよね?」

 

 俺は首をぶんぶんと縦に振る。

 

「あ、その間私は一切サポートしないので、頑張ってくださいね。千景さんには私から言っておきますので、余計な心配はしなくて結構ですよ。それでは部屋を移動しますよ。ほら立ってください」

 

 

 

 

俺の部屋...

 

「じゃ、後は頑張ってください」

 

 そう言ってお姉ちゃんは部屋から去っていった。俺はそれを見届けてから、隣で息をしてるのか怪しいほど静かになった英雄という名のバカ野郎に話しかけた。

 

「ほらほら俺と生活するのは嫌だろうけどそろそろ元気出せって...」

 

「別にお前と暮らすこと自体は何をいまさらと思っているから別にいいのだが...それよりすまない...約束を守れなくて済まない...」

 

「いいよ...別に。どうせ失敗すると思ってたし...あとしっかり庇おうとはしてくれたしね。だからまぁ...あんま気にするな」

 

「そうか...それにしてもひなたがあんなに怒るとは...」

 

「誰だって勝手に侵入されて、大切な写真消されて、謝りもしなかったら激怒するよ...」

 

「まぁ消してはいないんだがな...」

 

「未遂でもあんまり変わらないよ」

 

「うっ...」

 

「とりあえずもう昼なんだしご飯作ろ?ほらキッチン行くんだから立って」

 

「ああ、わかった」

 

 そうして二人だキッチンに行く

 

「そばでいいか?」

 

「うどんがいい」

 

「「...」」

 

議論開始!

 

「いやいや若葉さんよ、やっぱさっきのことに関しては許せないかなー、ほら若葉が素直に過てたらこうはならなかったかもしれないし?ここは誠意を込めてそばを食うべきなんじゃありませんか?」

 

 そう言って俺は左手をそばの麵があるほうにもっていく。

 

「いやいやひなとよ、さっき許したと言っていたではないか!ほらここは私を慰めるためにうどんを食う必要があると思うのだが?」

 

 そう言って若葉は右手でうどんの麺があるほうに手を伸ばす。若葉の方が力が強く、うどんの方に手が近づくとともに肩に痛みが走った。

 

いた⁉

 

「え...?」

 

 もともと背が低くなった俺に麵が入っている棚は届かないのだ。若葉がうどんを取ろうとしても、俺の左手は届かないのでうどんを取ろうとすると無理やり俺が上に引っ張られ痛みが生じる、当然である。

 

「痛~」

 

 俺が痛みが生じた肩をさすっていると若葉が申し訳なさげに口を開く。

 

「すまん...」

 

「ん、いいよ...背が低くてごめんね...うどん...食べようか...」

 

 軽く自己嫌悪に陥りながらそう返答する

 

「いや、そばを食べよう。なんだか今日はそばを食べたい気分なんだ」

 

「さいですか」

 

 そうして俺らは頑張って二人で調理をした。

 

「なぁこれでどうやって食べるんだ?俺は右手が開いているからいいけど...」

 

「別にこのまま食べればいいのでは?なにひなとの手が少し近くに来るだけだろ?」

 

「それもそうだな...触れないようにしてくれよ?」

 

 

 

 

そしてしばらくしてからのこと...

 

 俺らはテレビを見たり一緒にゲームをして時間をつぶしていた。ゲームの結果?対戦物なら全部俺の負けだよ、なんか文句あっか?

 

「明日の鍛錬どうしよう...」

 

「まぁ、こんな時くらい休んだら?」

 

「それもそうだな...」

 

 

 

 

それからしばらくして...

 

 なんか若葉がやけにそわそわしているのでどうしたのか聞いてみた

 

「なんだお前そんなにそわそわして、どうしたんだ?」

 

「...トイレに行きたいんだ...」

 

「なんだトイレか...行って来いよ」

 

お前こんな状況でどうやって行けっていうんだ!

 

「あ...」

 

「まぁいい!もう限界だ行くぞ!」

 

 そう若葉は言って俺は引きずられながらトイレに行く。

 

 

 

 

トイレにて...

 

「ドアの方を向き、目をつむって耳も塞げ!」

 

 トイレに入るなり若葉はそう言った。

 

「別に言われなくてもやるけどお前どうやって脱ぐんだ?あとトイレットペーパーここ右に設置してあるけど、どうやってちぎるんだ?」

 

「根性で何とかするから早く向こう向け!」

 

 ほんとに根性で何とかしたらしい...

 

 

 

 

またまたしばらくして...

 

 夜になって夕食でまたもめて食い終わった後、若葉が質問してきた。

 

「なぁこれどうやって風呂に入るんだ?」

 

「?入らないぞ、精霊の魔法使って体と衣服をきれいにするから着替えの必要もないぞ」

 

「そうか...いやでもさすがに制服のまま寝るのはちょっと...」

 

「じゃ、適当にいつも来ているパジャマに着替える魔法も使ってやるよ」

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

ベッドにて...

 

「...こっち向くなよ」

 

「この状態でそっちむくなはいろいろと無理があると思うぞ...」

 

「仰向けで寝ればいいだろ」

 

「その場合お前壁側だけどいいの?」

 

「別に壁があろうと手錠でつながっているからあまり変わらん」

 

「そうか...あ、俺ちょっと寝相悪いから起きたときそっち向いていたらごめんね」

 

「そうなった場合反射的にたたくかもな...」

 

「ひでぇ...お休み...」

 

「ああ、お休み」

 

 

 

 

夜中にて...

 

「...な...!ひな...!ひなと!

 

「ん...どうしたの?若葉...」

 

「どうしたも何も汗びっしょりで、うなされていて、おまけに涙まで流してたんだぞ⁉なんかあったのかと思って...」

 

「ああ...なるほど...ものすごく嫌な夢を見たんだ...聞きたい?」

 

「...眠れそうにないから聞いとく」

 

「そうか...まぁものすごく簡単に言うと、みんなが死んで自分だけなぜか死ななくて、バーテックスにずっとぼこぼこにされて、死なないからずっとぼこぼこにされて、神樹のところまでサッカーボールみたいに飛ばされながら何回も何回も痛めつけられて最終的に神樹のところにたどり着かれて、バーテックスが四国に入ってきてそれでも死ねない俺は住民が食われる様子を見せられながらまた痛めつけて...この夢いつも見るんだけどいつも最後が思い出せないんだよね...なんかこの夢見すぎて慣れた...でもやっぱりこれを見た後は怖いな...」

 

 すると若葉は俺の頭に手を当てた

 

「そうか...まぁ多分大丈夫だろう...夢の通りにはならない。根拠はないがみんないるから大丈夫だろう。寝るまで見ているから、子守歌でも歌おうか?」

 

「子守歌はさすがにいいです...」

 

「そうか...」

 

 

 

 

数分後...

 

「ひなと、もう寝たか?」

 

「...」

 

「寝たか...それにしても私たちが死ぬ夢か...さすがに杞憂だと思うが何回も見るが少し引っかかるな...まぁいいか。それにしてもこいつ意外とかわいいな。夢で涙流すとか初めて見たぞ...それほど私たちが大事なのか、バーテックスが怖かったのか...まぁこの戦いが終わるまで生きていような」

 

 そう言って若葉は隣で寝ている人の頭をなで意識を落とすのであった...

 

 

 

 

翌日...

 

「ん、ん~...ん⁉ひ、ひなと⁉なんでいるんだ⁉この変態!」

 

「ぐはっ」

 

 こいつ朝っぱらから腹パンしてきやがった...いてぇ

 

「...うぅ...わ、若葉...昨日のこと...忘れたの...?」

 

「昨日...?あ!す、すまん!大丈夫か⁉」

 

「少し痛いけど、まぁ大丈夫...」

 

「そうかならよかった...えっと、そのぉ起きたばっかで悪いが...」

 

「ん?ああ...お花摘みか」

 

「お花摘み...?」

 

「どうしたんだ?早くいくぞ」

 

「え、ああ、少しぼーっとしていただけだ、気にするな...」

 

 

 

 

 

 大体昨日と同じなので割愛

 

 

 

 

夜中にて...

 

「...また夜中に起きてしまった...」

 

 そうつぶやいた私は隣にいる一緒に寝ている人を見た。

 

「...今日はうなされているわけでもなく、普通に幸せそうだな...」

 

 隣にいる少女はとても幸せそうな顔をしており、だれが見ても安眠をしていると感じさせるほど穏やかな雰囲気だ。

 

「にしてもこいつの顔本当にきれいというか整っているな...ひなたがきれいという言葉が似合うのならば、ひなとは赤ちゃんとか小さな子とか見て出てくる愛おしいとか可愛らしいという言葉が似合うな...精神年齢も私たちみたいな仲のいいひとの前になると途端に低くなるからな...会ったばかりのひなとは今のひなとが出てこないほどクールというか不愛想だったからな...」

 

 ロリと言われているのと大体一緒である...

 

「もしひなとが最初からこんな女子だったのならひなたと仲のいい姉妹になったのだろうな...で、ひなたの監視がない間に男子のおもちゃになったりもするのだろうか...自分で考えてなんだがだんだん腹が立ってきたぞ...そういえばひなとの女体化の原因は神の力を受けすぎたのが原因だったな...確か大社の人が精霊を使いすぎるなど、力を酷使しすぎたりすると戻れなくなる可能性があると言っていたとひなとが言っていたな...まぁおそらく大丈夫らしいが...でももしそうなったら私がひなたとともに守るのもありだな...あんまり警戒心なさそうだし...いやだがしかし千景がいるからなぁ...後ろから切られそうだ...ずいぶん長い独り言になってしまったな...もう眠くなった寝るとするか」

 

 そうして私は瞼を閉じた

 

 

 

 

翌日、朝食中にて...

 

「そういえばひなと」

 

「ん?なんだ?」

 

「昨日たまたま起きてひなとの方を見たのだが、ものすごく幸せそうな顔をしていてな、よい夢を見たのではないか?よかったらその夢の内容を教えてもらえないかと思って」

 

 するとひなとは顔を真っ赤にした。

 

「え⁉ゆ、夢の内容⁉え~と~そのぉ~」

 

 少し焦った感じにひなとは頬をかいた。

 

「あ、言いたくなければいいぞ」

 

「じゃあ、秘密で...いつか話すね」

 

「そうか、楽しみに待っているよ」

 

 

 

 

 

 

昼食を食べた後のこと...

 

トントン

 

 突然俺らのいる部屋のドアが叩かれた。

 

「開いてるので入っていいですよー」

 

 そう俺がドアに向けて言うと、ガチャという音がしてドアが開きお姉ちゃんが入ってきた。

 

「どうです?二人とも今の生活を満喫していますか?」

 

「可もなく不可もなくだな。別に気持ち悪くはないのだが風呂には入りたいな」

 

「俺もそんな感じかなー。食事に気を使わないといけないのが少しだけめんどくさいかな...」

 

 するとお姉ちゃんは納得した感じで頷き話し始めた。

 

「そうですかそうですか...あ、今日はみんなでゲームしない?と友奈さんが言ったのでお誘いに来ました。やります?手錠はそのままですけど」

 

 

「「行く」」

 

 俺と若葉が同時に答える。部屋は意外と広いがずっと同じところにいるとストレスがたまるからね、久しぶりに外に出たいのである。

 

「では移動しますよ。食堂のテレビを貸してもらえるそうなのでそこに行きますよ」

 

 

 

 

食堂...

 

 食堂に入った瞬間ちーちゃんが駆け寄ってきた

 

「ひなと君!」

 

「やぁちーちゃん久しぶりー」

 

 俺のところに来るなりいろんな角度から俺を見てくる首筋を見られたりスカートめくって太もも見ようとしてきたり。まぁスカートめくって云々は途中でやめさせたが

 

「変なことはされていないようね...」

 

「千景は私を何だと思っているんだ...」

 

 安堵したように息をついたちーちゃんに呆れた様子で若葉はちーちゃんに突っ込む。

 

 そうしてゲーム大会が始まった。パーティー用のゲームをいくつもやった。当たり前のように最下位争いは俺と杏のみで行い、一位になるのは大体ちーちゃんで偶にお姉ちゃんや友奈、若葉がちーちゃんを負かす。

 球子?あいつはいつも中くらいだよ。

 そうしてゲームをしている間に夕食の時間になった。

 

「さて食券買いに行くぞ...」

 

「あ、若葉、ちょっと待って!」

 

 俺がコントローラーを置いてもないのに若葉歩き出したので思わず左手を引っ張ってしまった。

 

「え、ちょっ⁉」

 

 突然よくわからん方向から力が入ってしまったため若葉はバランスを崩してしまいこちらに倒れてきた

 

「かはっ」

 

 若葉が俺の上にのしかかってきた衝撃で一瞬息が詰まった。一つ救いだったことはよくあるセクハライベントの倒れたときに胸を揉まれるが発動しなかったことだ。

 

「大丈夫か?」

 

 若葉が立ち上がりながら聞いてきた

 

「ああ、大丈夫」

 

 そう言った瞬間若葉が思いっきりの力で俺を引っ張った」

 

「え、ちょっ⁉」

 

 さっき若葉が挙げた悲鳴と同じ悲鳴を俺が出したと思ったら、若葉の腕の中にいた。

 

「おっとすまん、少し力が強すぎたな...大丈夫か?」

 

「え...あ、う、うん...」

 

 答えたのになかなか解放されないぞ...そろそろ放してくれないとはずか死にそうなんですけど...

 

「乃木さん...?いつまでそうしているのかしら...?さっさと放したら...?」

 

 ちーちゃんが少しどすのきいた声で言うと...若葉は自分がどんな状況にいるかやっとわかったらしく、

 

「え?あ、ああ!すまない」

 

 と言って俺を解放してくれた。といっても、結局手錠でつながっているから解放されたといっても離れられるわけじゃないけど...

 というかまだ心臓がどきどき動いているよ...うわ、お姉ちゃんがにやにやしている...絶対顔が赤いな、俺。

 そのあと普通に食券を買いに行った。で、手錠をかけた手を見られ続けながら夕食を食べ、そのままお開きになった。

 

 

 

 

ベッドにて...

 

 寝っ転がって、明かりを消して、寝る雰囲気になったところで俺は若葉に話しかけた。

 

「なぁ若葉一つ寝る前に話をしたいんだがいいか?」

 

「ああ、いいぞ。そこまで眠くないからな。で、何を聞かせてくれるんだ?」

 

「今日見た夢の話」

 

「え、してくれるのか?秘密って言っていたのに...」

 

「うん。話したい気分になったから」

 

「そうか...では聞かせてくれ」

 

「じゃあ行くよ?大雑把に夢の内容を言うとね、次の侵攻が終わってみんなで大人になったときにみんな一緒に暮らしていたってかんじの夢だった。俺以外は働いていてね、子供も俺らとおんなじ人数いて、俺だけ働いていないから、俺が家事とか子供の世話を見ていたんだ...後俺女だったな...とりあえずそこには暖かな日常があって、なんかいいなーって思わせてくれるいつも見ている夢とは違ういい夢だったよ...」

 

「なるほど...私たちが一緒に暮らす...か、確かに幸せそうな夢だいろいろな問題も起こりそうだが...」

 

「確かに人数が人数だしね...でね、家事とか全部俺がやっているんだけどなんかガタが来たのかぶっ倒れてね、みんなに家事を任せてたんだけど若葉だけ何にもさせてなかったね。これで終わりお休み!」

 

 そう言って俺は若葉に背を向けて目を閉じた。

 

「え、ちょっ、どういうことだひなと⁉どうして私だけ任せてもらえなかったんだ!おい答えろ!...無視か、ではこうするまでだな」

 

 そう言って若葉は手錠でつながれているほうの手を俺のお腹にあて引き寄せ、足を絡ませて逃げられないようにしてきた。

 

「答えないとずっとこのままだぞ」

 

「いや別に答える必要ないし...何なら夢だからわからないし...ほら分かんないって答えだしたんだから放して」

 

「いや納得しないからこのままだ。むしろ強くしてやる」

 

 そう言って本当に抱く力を強める若葉。俺はもうどうでもよくなって瞼を閉じるのであった...

 

 

 

 

朝...

 

 さすがに起きてまで若葉に抱き枕にされていなかった俺は音を出さないように若葉の方を向いた。

 

「にしてもやっぱりこいつ美少女だよなー。まぁ若葉に限らずみんな美少女だけど...やっぱ俺、ここにいちいのかなー...それにみんなと一緒に暮らす夢を見ることですら本当はおこがましいことなのではないだろうか...やっぱり次の戦いが終わったら距離を少しだけ遠ざけようかな...本当に今更だけど百合の間には挟まらないほうが良いかもだし、何より次に生まれてくる勇者に変なDNAが入って勇者になれないってなったら嫌だしな...」

 

「別にお前が距離を開ける必要はないと思うぞ...」

 

「⁉わ、若葉!お、起きてたの?ちなみに今の独り言どこから聞いてたの...?」

 

「にしてもからだな...」

 

「...忘れろ。頼むから」

 

 俺が懇願すると若葉はにやにやしながら

 

「断る」

 

 と断言しやがった。

 

「それに百合の間に入る云々だが今のお前は女だしな、大丈夫だろう。変なDNAが入るだが別にこの世界ではそんな遺伝子が入ったということにしておけば大丈夫だろう。だからお前が離れる必要なんてこれっぽっちもないんだ。だから安心してそんなことはもう考えるな」

 

「そうか...そうだね...わざわざ原作通りに進む必要なんてないよね...俺は俺という人生を原作関係なしに生きるとするよ。ありがとう若葉」

 

「どういたしまして」

 

 

 

 

数時間後...

 

 お姉ちゃんが部屋に来て手錠を取ってくれた。

 

「もうこんなことはしませんね?」

 

「「はい。二度としません」」

 

 俺らは正座をしながら答える。するとお姉ちゃんはにこにこと笑いながら、

 

「ならこれ以上の言及はしません。私はこれから忙しいので退散しますね。ではでは~」

 

 

 

 

 

ひなたの部屋...

 

 私は手錠から超小型録音機を取り出し三日間分の録音を飛ばし飛ばしで聞いていた。

 

「ひなとと若葉ちゃんは一応幼馴染のくせして関係が薄いんですよね~少し関係があったとしても私がいないと二人は話したりもしませんからね...今回がいい機会になるといいんですが...それにしてもひなとの夢...少し気になりますね...何回も同じ夢を見る...しかも悪夢...いやな予感がします...それにお姉ちゃんに相談しないなんて...まぁそれは置いといて、問題はもう一つの夢ですね...私たちが将来同居している...これはほぼ結婚しているといっても過言ではありませんね...若葉ちゃんとひなとをくっつけてどっちの家族にもなっちゃおう計画を実行するために頭の片隅には残しておきましょう...」

 

 少女は録音を聞きながらそうつぶやくのであった...




あー長すぎ!
他のキャラ絶対こんなに長くならないよー!
あーもーどーしよ..ほかのキャラなんにも思いつかねぇ
っていう訳で次回は遅れそうです...


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第24話 ひと時の日常(山桜)

今回は体感R17.999です...
お気に入り登録ありがとうございます
結構今回は人お選ぶんで苦手な方は即ブラウザバック推奨です。
ネタバレをするとマッサージです...


 俺がその日を思い出しては毎回顔が真っ赤になるような日にした少女はその日突然部屋に訪問してきた。

 

トントン ガチャ

 

「ひなとくん、いるー?」

 

 俺が本を読んでいると突然友奈がノックをしといて返事を待たずに部屋に入ってきた。

 

「友奈」

 

「なに?」

 

 俺が少し呆れたような目をしてもあまり気にしてなさそうにいつもの明るい感じで反応する友奈

 

「ノックしたんだから返事は待とうな?」

 

「あ、ごめんごめん。いつもぐんちゃんが返事も待たずに入ってるって言ってたからいいのかと思ったよ」

 

 えへへ~みたいな動作をする友奈に俺はあきれた様子を変えないまま言う。

 

「親しき中にも礼儀ありだぞ」

 

「うん、これからは気を付けるよ」

 

「ならよし!で、今日は何しに来たの?ちーちゃんはなんか買い物に行ってるらしいからてっきりそれについていってるのかと思ったよ...」

 

「あー、出かけるなら私もついていきたいって言ったんだけど...朝早いからいいわ...って、だからちょうど暇だったしひなと君にマッサージしてあげようかなって!」

 

「へー、朝早くないと買えないものねー...あ、マッサージは遠慮しておくよ」

 

「なんで?」

 

 友奈が少しだけ明るい雰囲気を落としながら聞いてくる。

 

「いや俺別に凝ってるとかじゃないし...」

 

「それはかっらだが慣れちゃっただけだよ...ひなと君の体は疲れてるよーって言ってるよ?」

 

「だとしてもいいよ...そんなことよりゲームしない??」

 

 そう言ってコントローラーを持って聞くと友奈はいつもの明るい雰囲気とかではなく少し闇落ちしてそうな雰囲気を出しながら俺の肩をつかんで言う。

 

「ねぇどうして⁉なんでダメなの⁉私マッサージ上手いよ⁉多分...ヒナちゃんとかよりもうまいと思うよ⁉もしかして...ひなとくんって私のこと嫌いだったりするの...?」

 

「いや違うから...というかお姉ちゃんにマッサージしてもらったことないから...というかヤンデレ化だか闇落ちしないでくれ...えっと、多分友奈にマッサージしてもらうと物凄い恥ずかしいことになるから嫌なだけです...」

 

 そう言うと友奈は闇落ちオーラからいつものオーラに変えた。

 

「なんだーそういうことかー。なら大丈夫!この空間には私とひなとくんしかいないから、もしひなとくんが恥ずかしいことになっても黙っててあげるよ!」

 

 ニコニコと言う友奈。

 

「いや俺は友奈にも見てもらいたk「ん?」ワーマッサージタノシミダナー」

 

「やった!じゃあ早速やろうかまずは肩とか首だね!私がベッドの上に座るからひなとくんは床に座って」

 

 そう言って友奈が動き出したので俺も動く。

 

「じゃあやるよ」

 

 そう言って友奈は俺の肩に手を当てマッサージを始めた。まず初めの突きで肩のよくわからんツボを友奈はついた。

 

ひゃん♡っ!ちっ!ょ♡゛っ…っ!と…っ待っ!て♡っスト♡ッ♡!プ!

 

 最初に言っておこう。これはあくまでもマッサージです。ですので全く卑猥なことをしていないです。いいですね?え?これ喘ぎ声ジェネレーターやんって?君のような勘のいい読者は嫌いだよ...別に喘ぎ声だろうと、卑猥なことをしていない事実は変わらないのだよ...バンされないといいな...ああ!お客様困ります!その情報提供のボタンから手を放してください!でなければここは穏便に暴力でと言う展開になってしまいます!...あほくさ、本編戻るか...

 

 俺がなんかいろいろやべー声を出すと友奈は一応止めてくれた。

 

「え~まだ少ししかやってないよ?全身やるんだからまだまだ道は長いよ?」

 

「全身...?」

 

 俺は現実から目を背けそうになった。

 

「ほら続きやるよー」

 

「え、待っていやほんとにぃ゛っー♡!ダメ…だっ♡て゛!!♡!やぁ゛っ♡゛

 

 俺の言葉など聞こえないように友奈はマッサージ(ここ重要)を続ける。俺の喘ぎ声もどきを聞いて楽しそうにマッサージをする。そうして友奈が肩と首のマッサージを終える。

 

はぁ…♡はぁ…♡もういいよ...友奈。ありがとう...だいぶ楽になった」

 

「え?何を言っているの?さっきも言った通り全身のマッサージをやるんだよ?ほら次は肩甲骨とかやるから、早くベッドの上に来てうつ伏せになって?」

 

 そう言って友奈はベッドをポンポンと叩く。

 

「もう無理だよ...」

 

 そう言って()が動かないでいると友奈はため息をついて、私を持ち上げ無理やりベッドの上にもっていきうつ伏せにし私の上に友奈が乗りマッサージを再開する。

 

もぉうぅ゛っい゛いっっ♡っ!てぇ゛言ってえ゛るっ!の♡に!誰♡っか…こ!のぉ人っ止っめぇ゛って!ー♡!

 

 友奈は上から下にマッサージをする。そしてなぜか私の体は下に行くほど敏感と言うかなんというか、うん、みたいな感じになっていき腰辺りのマッサージを始めた途端足がピンっとなり今までで一番でかい声の喘ぎ声が出る。

 

あ♡゛あ゛ああ…あ…゛ああぁ゛あ…あぁ゛あ…!゛

 

 元々マッサージが始まってから力が入らなくなっていた私の体にさらに力が入らなくなった。口はだらしなく開き、よだれが垂れていて、目はうつろになっている。

 

「うん!気持ちよさそうで何より!じゃあ次は足だね!」

 

 なんやこいつサイコパスか?そんなことを思っているとまたすぐに快楽が襲ってくる。

 

足♡つぅ゛ぅ♡うぼおおおっ!っ゛てぇ…♡…痛♡♡♡゛♡いいっ!は…ずぅううぅなあぁの゛に゛ぃ♡゛っ!!……♡゛どお…゛……゛う…っし…゛!てぇ゛!こんっなん…゛♡゛ん゛に゛゛な………゛る♡゛゛っのぉ゛♡♡っ⁉゛

 

「うーん...私がうまいからかな?」

 

ち…く゛っし…ょ♡゛うう!゛゛否定゛で…きぃ!ない♡!...上っ手♡゛っい゛を通゛゛!り゛゛!越…っ!し♡♡゛゛って♡♡変……♡゛態っ!だ…ぁ…よ゛♡っー゛…

 

「変態じゃないよ~。えい!」

 

あっあぁ♡!あぁ…!あ゛あぁ…っ!あ゛あ♡っああ……あ♡あ…!あ!あ!あ…っああ゛あ♡゛あぁ♡♡あ…あ♡…っあ…゛あ!あ…っあ゛あ゛あ゛っ!ああぁ゛゛っあ゛゛♡゛あ♡…゛あぁああ゛

 

「わ~すごい声...そんなに気持ちいい?私のマッサージ」

 

「もうやめて...ほんとにいろいろ危ないから...」

 

「何回も言うけどやめないよー。最後までやり通すって決めたから!次は太ももね」

 

「へ?太もも...?待って膝から上ほんとにやめてぇぇ゛゛っぇ…ぇ゛…♡っ!ぇっぇ♡゛!ぇぇ♡゛!

 

 畜生この人遂にいくよも言わなくなったよ...

 

「うーん...少し他のところよりも手ごたえがないな...もうちょっと強くするね!」

 

「へ…っ?待゛っっって゛!゛゛♡゛!ほ゛!ん♡…と♡♡ぉっに…ぃい゛っこ゛゛っ!れっ以♡っ!上…゛!は゛ぁっ!死…゛っ!ん♡んじっ!ゃ゛♡っうう…♡゛!!゛♡♡゛!

 

「大丈夫、大丈夫!死んでも私のマッサージで生き返れるから!」

 

マ……゛ッサ!ー…ジ…゛に♡ぃ゛っそん♡…な゛!効゛…゛っ果゛…はな゛゛っ!いぃ!よ…!!゛

 

 顔を赤くし、羞恥で涙が出てだらしない顔をしていてもツッコミはなぜか勝手に口から出てきた。

 

「あはは♪細かいことは気にしない気にしない~」

 

 そう言って友奈は太もものマッサージを続け、一番効くであろうツボをついた瞬間俺は頭が真っ白になった。そしてその瞬間部屋のドアが開いた。 

 

あ゛っ!ああぁあ!ああ♡゛あ…゛あぁあっ!ああああ!あ゛あ゛゛!あ♡!あ♡ぁ!あ゛あぁっあ゛っ!ああ゛っあ゛ああ…゛っ!ああああぁあ!あっあ゛あっあっあ゛…゛っあ♡っあっあ゛ぁ゛ああっあぁあ゛…!あっ!あぁ゛あ゛っあ゛ああっ゛っ!

 

「ひなと君ゲーム買ってきたわよ...いっしょに......え?」

 

 

 

 

千景視点...

 

 私は今日発売のいろいろなゲームが混ざったお得なセットを買いに行っていた。そのゲームセットには格闘ゲームやレースゲームなどの対戦系があるのはもちろん育成ゲームやのほほんとしたゲームもある。かなりお得なので朝から並ばないと買えないので、朝起きるのがしんどかった。そうして無事買うことができてひなと君とやろうと思って、私は勝手にドアを開け部屋に入った。部屋に入った瞬間見えたものと聞こえたものは

 

あ゛っ!ああぁあ!ああ♡゛あ…゛あぁあっ!ああああ!あ゛あ゛゛!あ♡!あ♡ぁ!あ゛あぁっあ゛っ!ああ゛っあ゛ああ…゛っ!ああああぁあ!あっあ゛あっあっあ゛…゛っあ♡っあっあ゛ぁ゛ああっあぁあ゛…!あっ!あぁ゛あ゛っあ゛ああっ゛っ!

 

 と言うひなと君の声と、ひなと君の足の上に乗っている高嶋さんの姿だった。え...何これ寝とられ?え...(困惑)

 

「...高嶋さん...?えっと...何をやっているのかしら...?」

 

「あ、ぐんちゃん!お帰り!えっとね...ひなと君にマッサージやっているの!あ、まだ太ももたりなさそうだから続けるね!」

 

え…♡⁉も♡っう……゛十っ分…゛っだ…♡゛っっっ゛ってっあ♡゛あ♡゛っあ゛お!願♡゛っいっ!ちぃっー♡ち♡♡ゃん!♡♡!助゛け♡て゛!…゛゛こっの……っ人゛止♡め゛゛てっ!゛♡!も゛う…♡っい…い゛やああっ!♡

 

 そんな喘ぎ声を出しながら助けを求めるひなと君の期待に応えるべく私は高嶋さんに話しかけた。

 

「高嶋さん...多分そろそろひなと君が限界だと思うからやめたほうが良いんじゃない...?」

 

「そう?まだまだ大丈夫だと思うけどなー...あ!もしかしてぐんちゃん()マッサージしてほしいの?」

 

 そんな地獄のような提案に私は即答した。

 

「いえ、まだまだひなと君凝ってそうね...やっぱりそのまま続けたほうが良いと思うわ...」

 

「ちーちゃん⁉」

 

 ごめんなさい...ひなと君...さすがにあなたのその姿を見たら自分の保身を優先させてもらうわ...

 

「確かに少しだけ雑に名ちゃったんだよね...もう一回最初からやろうっと♪」

 

 そう言って方の方をマッサージし始める高嶋さん...それとついでにあえぐひなと君。

 

も゛!うう゛っ!ほ!ん!とっ♡にいっ死゛んっ゛じ!ゃっううぅっっって!!最゛゛゛初っかぁぁら゛っ!は♡無゛゛!理♡゛っー!!

 

 そうして一時間ぐらいでマッサージは終わった。終わった後にそこに合ったものは満足げな顔をした高嶋さんと、枕に顔を埋め、耳を真っ赤にして静かに呼吸をしているひなと君の姿だった...恐らく幕名の中にある顔は涙を流しているかレイプ目をしているのだろう...真面目にあの時見捨てたのを公開しながら、私は高嶋さんに話しかける。

 

「高嶋さん...」

 

「何ぐんちゃん?」

 

「やっぱり少しやりすぎだと思うわ...終盤はもう声が出てなかったけどものすごく嫌がってたし...やっぱり嫌がっているならばやめたほうが良いと思うわ...」

 

 これ以上犠牲者が出ないようにするために私は高嶋さんにくぎを刺した。

 

「そっか...そうだよね...ごめんぐんちゃん...私ひなと君に謝るためにひなと君が起きるまでここに残ってるね...」

 

「私に謝る理由はよくわからないけど、わかってくれてよかったわ。じゃあ...私は部屋に戻っているわね」

 

「うん...またね...」

 

 しょんぼりとした感じの高嶋さんを置いて私は部屋から出た。さてこの音声とひなたさんが撮ってきた写真と交換しに行こうかしら...

 

 

 

 

ひなと視点...

 

 俺は友奈のアンコールマッサージによって意識が吹っ飛んでいたらしい...起きたら夜になっていて、しょんぼりとした友奈がベッド近くに座っていた。

 

「あ...起きたの...?」

 

「うん...どうしたの元気ないけど...」

 

 俺が心配になって聞くと友奈が少し目をそらして話し始める。

 

「いや、今更思い返していると無理やりだったし...ひなと君にひどいことしたなって...本当にごめんね...」

 

「なんだそんなことか...」

 

 俺がそういうと頭を落としていた友奈が勢いよくあげた

 

「そんなことってなに⁉私結構後悔しているんだけど」

 

 ちょっと怒った感じの友奈に俺は少しだけ笑って返す。

 

「いや確かに強引で恥ずかしい思いしたけど...一応善意しかなかったと思うし、それに体が軽いしね!」

 

 そう言って俺は肩をグルングルンとまわした。

 

「まぁでも次からはもっと軽めにしてほしいかな...俺が声を抑えられるレベルのやつ」

 

「うん...!わかった!...でもひなと君敏感すぎるんだよなー...結構弱めだったよ?」

 

「うそ⁉」

 

「ほんとほんと」

 

 そんな感じの会話をしながら眠くなるまで一緒にいた...




来るなら来い!もう保存してるから修正したのをすぐ出してやる!
ところで君(友奈)誰じゃ...
と言うかやっぱこのくらいの長さがベストやな(個人的に)

因みに主人公の感じやすさは他人に少しでも触られるとびくってくる感じです...(腕は除く)


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第25話 ひと時の日常(彼岸花)

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
ゆゆゆいがサ終しちゃうよー-------------------------------------------------!
そんな中書いておりました...



「へぇ...そんなことがあったのね...」

 

 俺は友奈のマッサージを受けた翌日、ちーちゃんの部屋に来て若葉と何があったかなど、まぁ世間話をしていた。

 

「それにしても乃木さんは何でひなたさんに見つかるって分からなかったのかしら...?」

 

 半分呆れ、半分素朴な疑問と言う感じでちーちゃんが言った。

 

「まぁ少し抜けているところがあるからね...」

 

「そう...」

 

 お互い無言になり、何も会話が生まれない空間が少し続いたので俺はこの空間をぶっ壊すべく、ちーちゃんに話しかけた。

 

「そー言えばなんで俺を呼び出したの?ただただ世間話をさせるためじゃないでしょ?」

 

「私は別にそれだけでもいいんだけど...そうね...確かに世間話をするためにここに呼んだんじゃないわ...今日は昨日買った様々なゲームをひなと君と一緒にやろうと思って呼んだわ。ついでにひなと君のゲームの腕が少しでも上げる特訓もするわ。本当は昨日やるつもりだったんだけど...ひなと君伸びてたからね...」

 

「うぅ...」

 

 俺は昨日のことを思い出し顔が真っ赤になった(はず)。

 

「ちなみにあれ動画で残っているわよ」

 

「へぇ...............はぁ⁉え...!ちょ⁉な、な、な、何やってるんすか⁉」

 

 俺はちーちゃんの肩をつかみぶんぶんと揺らす。しかしちーちゃんは落ち着いたまま会話を続ける。

 

「ちなみにひなたさんとの交渉の材料に使用したわ...」

 

「おわった.....................」

 

 私はちーちゃんを揺らすのをやめ、放心状態になった。

 

「まぁひなたさん云々は冗談だけど...っておーいひなと君?聞いてるの?おーい...」

 

 ちーちゃんが目の前で手を振っているが、なんかもうよくわかんないや...

 

「うーん...だめね...完全に意識をどっかにやっているわ...ここは荒治療でもしようかしら...」

 

そう言ってちーちゃんは自分の机に行き、引き出しをゴソゴソと漁った。そして私の前になにか四角い物を出てきた。

 

「これがなんなのかわかるかしら?」

 

「...」

 

それが私には何なのか分からないし、答える気力もなかった。

 

「はぁ...ダメね...これは...」

 

そう言ってちーちゃんは四角いやつのボタンを押した。

 

『い…♡…っや…ぁ♡ぁ♡っ もぉぉっう♡や!め♡ってっ♡っっ…』

 

その機会から鳴った恥ずかしい音により俺の思考は急激に加速した。

 

や、やめろ〜!

 

俺はそう叫んでボイスレコーダー?を奪いに行った。しかし

 

「フフ...これが取れるかしら...?」

 

そう言ってちーちゃんはレコーダーを持った手を上にあげた。背の低い俺ではとても取れそうにない高さだ。

 

「うぅ...ず、ずるい...」

 

こうやってやり取りしている間にもちーちゃんの手に握られたレコーダーからは俺の恥ずかしい音声が流れており、なんか情けなくなって少しだけ涙が流れてきた。

 

「え、ちょ!?な、泣かないでひなと君...ほ、ほら...消したから...ね?」

 

俺が泣いたからか、ちーちゃんは慌ててレコーダーのデータを消した画面を見せてきた。それにしても泣くことで物事を通すって...

 

「はぁ...」

 

 なんだか情けなくてため息が出た。

 

「なぜ消したのにため息つくのよ...」

 

「あー、気にしないで...少し精神年齢が下がっただけだから...早くゲームやろ...」

 

「そうね...」

 

 そう言ってちーちゃんはビニールの中からス〇ッチのカセット数本と、W〇iUのカセット数本を出した。

 

「何からやる?とりあえず対戦系からやりましょうか...今日はひなと君の強化期間だから...」

 

「俺はほのぼのとしたものがやりたいんだけど...ちーちゃんと協力できるやつ...」

 

 俺が俯きながら言うとちーちゃんは呆れながら言った。

 

「さっきも言ったでしょう?今日はひなと君のゲームの腕を何とかしてあげる日だって...今日私に勝てなかったら明日もやるしこの部屋から出さないし出ないわよ...」

 

「え、それって俺が勝てなかったらここで俺がお泊りするってこと?」

 

「そういうことになるわね。乃木さんとも寝たんだし私とも寝れるわよね?」

 

 ちーちゃんがすごい圧で言ってきた。

 

「ま、まぁできるけど...ご飯は...?」

 

「安心して...ここにたくさんのカップ麺があるわ...」

 

「カップ麺かよ、しかもうどんしかない...」

 

 そう言って俺が見た先に合ったものは大量のうどんのカップ麺であった...

 

「...さすがに自炊しない?」

 

 俺が少々呆れながら聞くとちーちゃんは細目になりながら、

 

「材料がないわ...」

 

 と言った。

 

「...そうですか」

 

 俺は諦めてそう発言した。そもそもちーちゃんはいっつもカップ麺で済ましてるから、こういう結末になるのは必然だったのだ...

 

 

 

 

 そうして俺の特訓が始まった。まずはポ○モン(以下モンスター)で、相手の動きを読む練習らしい...

 ちーちゃんはメ○グロス、俺はエース○ーン...ふふ、勝ったな。このままダイマ○クス(以下ダイマ)してダイバ○ン打てば行けるな...そうしてコントローラーをいじって技を選択する。

 

「わかりやすいわね...」

 

 ちーちゃんが俺の顔を見ながら少し呆れた顔をして何かを呟いた。

そうしてお互い行動を始める。俺のモンスターが先に動き、ダイマする。そしてちーちゃんのモンスターもダイマした。そして俺の効果バツングの技をギリギリ受けきった。

 

「え...」

 

「ギリギリそのモンスターの攻撃を耐えられるように調整されている個体よ...そして効果抜群の技を受けたから...」

 

『 ♫〜』

 

 相手のモンスターがアイテムを使った音が聞こえ、攻撃力なのが上がった。

 

「あ、やべ」

 

 そこからはただ俺のモンスターがボコされるだけだった。まずダイマしていたモンスターが返しの技で一発で倒され、後はそのモンスターより遅いモンスターしか持ってきていなかったのでそのままボコされた。

 

「安易に効果抜群の技を打たないことね...」

 

 

 

 

二戦目...

 

 こちらのモンスターはまたちーちゃんに効果抜群をつけるモンスター...しかし今の俺は学習したのだ!効果抜群の技ではなく半減の技を使って様子見をするのだ。またちーちゃんが呆れたような顔をしたが気のせいだろう...

 

行動開始

 

 俺のモンスターが攻撃した。しかし半減の技を選んだため、八分の一は入ったか入らなかったかぐらいの火力だった。

 

「バカね...このモンスターはそのモンスターの効果抜群の技をどうやっても受けきれないわよ...」

 

 そうしてちーちゃんのモンスターは素早さが入れ替わる空間を作り出す技を使った。その次のターンは攻撃を二分の一にする壁を張ってきたせいで効果抜群の技を打っても倒すことができなかった。そのあとは自爆技を打たれ、その次に出てきた、素早さがものすごく遅いが、攻撃力がものすごく高いモンスターを出され全員倒された。

 

「しっかり考えてから技を放ちなさい」

 

 

 

 

三戦目...

 

 ちーちゃんのモンスターは耐久がないモンスター、こちらはバランス型で同じ技しか出せなくなるが攻撃力が高くなるアイテムを持たせているモンスター...効果抜群の技を打っても耐えないだろう...そう思い俺はコマンドを選択した。またちーちゃんが呆れたような顔をした。

 

行動開始

 

 さぁさぁ、いざ尋常に勝負!...と思ったのだがちーちゃんのモンスターが手持ちに戻っていった。そうして出てきたのは勝らが出す技を無効化してくるモンスターを出してきた。そして向こうのモンスターの固有能力が発動し、俺のモンスターが引けなくなった。そこから先はちーちゃんのモンスターがバフをかけまくって、その能力上昇を受け継いだモンスターによって無双された。

 

「相手の手持ちを見て行動しなさい」

 

 

 

 

 そこから何回もやったが、ちーちゃんはこちらの動きを完璧に呼んでいるのか、それとも俺がものすごく下手なのか、その両方なのか一体もちーちゃんのモンスターを倒すことができなかった...

 

「違うゲームやりましょうか...」

 

 飽きたのか、俺に気を使っているのか、そんなことを言ってきたのでお言葉に甘えて違うゲームをやることにした。

 

 

 

 

 続いてやりますは格闘ゲーム(座標式)でございます...

 

「まぁコンボはこんなものかしらね...」

 

 俺はちーちゃんから、立ち回りとコンボを教えてもらった。コンボはまぁ一応入るまでになった。立ち回りはよくわからなかったが、まぁ一ストぐらい落とせるだろ!

 

『レディ...ゴー!』

 

 試合が始まったとともに俺はコンボを決めるためにちーちゃんのキャラに突進してつかもうとする。しかしちーちゃんのキャラがその場回避して反転つかみをしてきた。ちーちゃんのキャラは下投げしてから、二回空中上攻撃をして着地し、飛んで五回空中攻撃をして俺のキャラを浮かしてから、上必殺技を使って画面外に吹っ飛ばされた。

 

「はぇ...?」

 

 俺は一瞬の間に起きたことに驚き、ぽかんとしていたが、まぁこのくらい想定内だ(多分)。無敵時間を利用してちーちゃんにつかみかかるが、上手く回避されさっきと同じようなことをされる。ここから先はループだった。格闘ゲームには俺の学習能力がないらしく、何回も同じような展開になった。そして数戦後にまたちーちゃんに

 

「違うゲームやりましょうか...」

 

 と言われるのであった...

 

 

 

 

 そこからはどのゲームも同じことが起こった。すごろくのパーティゲームでも妨害され目的地に付けなかったし、レースゲームでも俺が先頭で走っていてもアイテムなどで巻き返されたり、スポーツ系のゲームはほんの少し希望が見えたがだいたいボコボコにされ、反射神経ゲーは勝てると思ったがパターンを全部把握してるのか全く勝てなかったし、FPSではちーちゃんは千束になったため、弾が1発も当たらず反撃を受け撃沈していった。

 

 そうしてゲームでボコされている間に夕食の時間となった。夕食はもちろんカップうどんだ。ちーちゃんも俺も無心でカップうどんを食べる。そうして食べ終わり、シャワーを浴びた後ちーちゃんがある提案をしてきた。

 

「もう対戦ゲームというジャンルにこだわるのはやめましょう...ほらひなと君の好きなカー〇ィよ。これでひなと君が1pをやってもある程度ゲームはうまくなると思うわ...あくまでもアクション系が少しできるようになる程度だと思うけど」

 

 そう言ってちーちゃんはW〇iのカセットを見せてきた。

 

「こ、これは...!」

 

 俺がパッケージを見て驚くとちーちゃんは困惑して言う。

 

「え、ど、どうしたの?」

 

「名作中の名作じゃないか!やった!これできるの⁉いつかやりたいと思ってたんだ!前世で少しやったぐらいで自分のは持ってないんだよねー。中古は近くには売ってなかったし」

 

 俺が興奮した様子を見せると、ちーちゃんは少し引きながら

 

「そう...ならよかったわ」

 

 とだけ言ってカセットをゲーム機の中に入れた。

 最初のムービーを見ながらちーちゃんは言う。

 

「私このシリーズやるの初めてなのよね...」

 

「え?そうなの?」

 

「ええ、こういう人とやるようなゲームは避けてきたから...」

 

 反応のしづらい言葉に対し俺は

 

「そ、そうか」

 

 と返すことしかできなかった...

 

 

 

 

 そうしてとりあえずストーリーをクリアしてボスラッシュを出す作業が始まった。早くクリアしたいちーちゃんに対し慎重派の俺。たびたび先に行きすぎすぎて戻されるちーちゃんは少しだけテンションが低かったです...

 

 

 

 

 

 ところ変わって1pが操作する大砲ステージ、俺はものすごい回数奈落に突っ込み何回もゲームオーバーになりました。ちーちゃんにすっごい呆れられました。

 

 

 

 

 そしてなんやかんやあってボスのドラゴンまでたどり着きました。ちーちゃんのハンマーによって瞬殺されました。...俺の練習とは?そんな目でちーちゃんを見るとちーちゃんは画面を見ながら

 

「たかがノーマルのボスだったら練習にならないでしょう?このゲームは神格闘王なるものが難しいと聞いたことがあるわ...そこまではただの休憩よ...」

 

「さいですか」

 

「それにしてもこの卵なんか裏切って来てるわね...そのcシャドウにタダ働きさせるとは...ただじゃ置かないわ...!」

 

「sea車道?海の車道?なんかきれいそうだね」

 

「違うわ、ひなと君...そんなこと言ってる暇があったらさっさと手を動かしなさい...いつの間にかアクションがシューティングになってるわ...」

 

「あ、ほんとだ」

 

 そんな間抜けなことを言っていると壁に圧死させられ、さっきのドラゴン戦からやり直しになり、またまたちーちゃんに呆れられた。

 

 

 

 

 そしてところ変わって神格闘王、毎回ラスボスまで行けるのだが毎回そこで負ける

 

「...もう眠いし本気を出してさっさと寝ましょう」

 

 ちーちゃんが眠たげに言った。

 

「任せた」

 

 俺も眠いので素直にやってもらおうと思った。そこから先はただの蹂躙だった。ただ俺は草のコピー能力を使い、Aを押しているだけで敵は死んでいった。

 

「ふぅ~終わった...このボスラッシュは結構やりがいがあったわ...ストーリーは初心者向けね...」

 

 ちーちゃんが少し疲れた様子で言った。

 

「終わりましたか?」

 

 絶対にこの部屋では聞かないであろう声が聞こえた瞬間俺らは固まった。そして同時に声の下方向を見ると、少し笑ったお姉ちゃんがベッドに座っていた。

 

「ひ、ひなたさん...?どうしてここにいるのかしら...?」

 

「いえ、夕食の時に姿を現さなかったのでいったいどうしたものかと思って見に来ただけですよ?あと少し驚かせたかったというのもありますけどね」

 

「へ、へぇ~」

 

 俺は少し、いやかなり引きながら返事をしたが、よくよく考えてみるとお姉ちゃんなので別に引くほどのものではないと思い返した。

 

「まぁ元気そうなので帰りますね。そろそろ十二時ですので早く寝てくださいね。あ、そうそう。一緒に寝るのは別にいいですが不純なことはしないでくださいね?」

 

 そう言ってお姉ちゃんはすたすたとかえっていった。俺らは少しの間無言になり、やがて顔を見合わせ、

 

「寝るか」「寝ましょうか」

 

 と言って俺はソファに、ちーちゃんはベッドに向かった。向かっている途中でちーちゃんに服を引っ張られた。

 

「なんで普通に一緒に寝ようとしないのよ...乃木さんとも寝たんだから私とも寝れるでしょう...?」

 

 若葉のことを出されると何にも反論ができなくなるので、黙ってちーちゃんと同じベッドに入った。

 

 

 

 

 ベッドに入って数分何も会話が起きない空間が続き、ちーちゃん寝たのかなーって思っ待てたら突然話しかけてきた。

 

「ひなと君って...みんなのこと...好き?」

 

「(別に異性でという訳でわないが)好きだよ」

 

「...乃木さんも?」

 

「?なんで若葉だけに限定するのか分からないけど、まぁ好きだよ」

 

「そう...やっぱりそうなのね...」

 

 ちーちゃんはそれからしばし無言になった。そしてまた喋りだした。

 

「そろそろひなと君に自分が誰のものなのか教えこまなきゃと思っていたのだけど...今日がその時なのかもしれないわね...」

 

 そう言った瞬間ちーちゃんは俺の上に乗っかってきて、服に手を伸ばしてきた。

 

「おーちょちょちょいまてまてまてまて!なぜそうなる!?」

 

 慌てて伸ばしてきた手を掴んで止める。

 

「なぜそうなる...?そんなの...ひなと君が周りをよく見てないからそんな言葉が出てくるのよ...!仲間だから確かに他の人を見なきゃ行けないのもわかるわ...でも!好きの感情ぐらい...私だけに向けてよ!...ひなたさんはまぁ別にいいけど...」

 

少し涙目でちーちゃんは懇願した。

 

「おれ、なんか他の人が(異性として)好きって発言したっけ?」

 

「数分前に言ってたじゃない!」

 

 ちーちゃんがいつにも見ない感じで怒鳴る。俺は焦って考えた。

 

 まって、数分前だと...?俺なんて言ったっけ?えーと...ああ!あのちーちゃんの質問か!あれ異性として見てない発言なんだけど!?確かに少し前に見た夢でみんなと同棲してたっちゃぁしてたけど!それとこれは別やん!やべー急いで訂正しないと!(この間わずか一刹那)

 

「まって!ちーちゃんは勘違いしてるよ!」

 

「勘違い...?嘘よ!」

 

「嘘じゃない!」

 

「本当に?」

 

「嘘じゃないもん!ほんとだもん!あれは別に仲間として好きなだけで異性として好きなわけじゃない」

 

「そう...」

 

 そう反応してちーちゃんは俺をつかもうとしていた手の力を抜き、元いたところに戻った。

 

「早とちりしてごめんなさい...でも...!最近ひなと君皆と言い感じだから...」

 

 そうちーちゃんに言われ、最近の俺を思い出してみる。三日間若葉と同じ部屋にいて、友奈にあえぎ声もどきを出させられる、後たまに皆と雑談する...確かにちーちゃんが疑ってしまうのも無理がないかもしれない...

 

「うーん...なんかごめん」

 

「いえ、いいの...よくわかったから」

 

「そう、それは良かった。まぁ、えっと、改めてお休み」

 

「ええ、おやすみなさい...」

 

 そうして俺らは睡魔に身をゆだねた。

 

 

 

 

 翌日、起きたところでちーちゃんに

 

「ひなと君の修業は諦めるわ...」

 

 と言われ自分のゲームの才能のなさに絶望しながら泊まり込みの修業は幕を閉じたのであった...




ゆゆゆいのストーリーを保存したいため投稿がかなり遅くなります。【今も最初のころから比べたらかなり遅いですが...(最初と言えばあの駄文(全部駄文やんって意見はさておき)をさっさとリメイクしたいですね...)】


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第26話 ひと時の日常(ストック)

ゆゆゆい家庭用ゲーム機移植だってよ!ストーリーを保存する必要がなくなったよ!

そしてだいぶ投稿期間開いてるな!あ、いつも通りです。いつもどおりがどういう定義だったかはもう忘れた!


 はぁ...なんか最近一日が濃いぞ...?なんかそれぞれの勇者たちと関わっているし、お泊まりイベントは多いし、なんか同じようなことばかりだけど濃いぞ?

 そんなことを思い今日は一日中部屋にこもって読書でもして自分の世界に入り、人とあまり関わらないようにしようと何故か思ってみたものの、読む本がない!同じ本を読むのもいいが、沢山読みすぎてさすがに飽きてきているので却下。しょうがないさっきまでの予定を破棄して杏のところにでも行って本を借りるか...

 とひとりで会議をしながら俺は杏の部屋に向かっています。

 そうして目的の部屋の前に着いた俺は適当にノックを2回して部屋の主を呼ぶ。

 

「杏ー?いるー?本借りに来たんだけどー」

 

 俺がドアに話しかけると中から少し音がして目の前のドアが開く。

 

「こんにちは、ひなと君。えっと、その本を貸すについてなんですけど、もう私のおすすめの作品は紹介しきってまして...もう貸す本がないんです...」

 

「え、まじ?」

 

 突然のカミングアウトに呆然とする俺。さて借りる本もないし何しようと思ったところで杏が提案してきた。

 

「えっと、そのー、私も読む本がなくてですね、よ、よろしければい、一緒に本屋さんに行って読みたい本とか紹介したい本を探しに行きませんか?」

 

「いいけど、なんでそんなオドオドしてるんだ?」

 

「気にしないでください...」

 

 なぜ少女がこんなにもオドオドしているかと言うと、時は数分前に遡る...

 

 

 

 

「あ〜私もこんな恋してみたいなぁ...」

 

 そう呟きながら私は読んでいた恋愛小説を閉じながら自分が恋をしている様子をうかべる。男性の関係があまりない私が、男性と恋しているところを妄想すると自然に男性がひなと君になってしまい、ひなと君と私がイチャイチャしているのを妄想してしまう。

 

「ダメダメ!ひなと君には千景さんがいるんだから...」

 

 私は頭をブンブンと降って妄想をかき消した。しかし1度妄想したものがすぐ消えることはなく、すぐに思い返してしまった。

 

「でもいいなぁ...ひなと君って前世の記憶もあるからか少し大人っぽ...くわないか、でも頭も...普通くらいか、でも強いし、たまにクールだし、顔だって悪くないし、何よりタマっち先輩と私を助けてくれたし...はぁこれが幼なじみ補正ってやつなのかなぁ」

 

 上半身を机の上に乗せ、まぶたを閉じながら私はそんなことを呟いた。

 

「今からひなと君が来てなにかを一緒にする展開にならないかなぁ」

 

 そう私が絶対に起きないだろうなと思いながらも呟いていると、突然部屋のドアが叩かれ、声が聞こえた。

 

「杏ー?いるー?本借りに来たんだけどー」

 

 ありもしないと思っていたことが起こってしまった...そう考えながら私は慌ててドアを開けに向かう。ドアに向かう最中に積み重なった本に足の小指が当たり本の塔が崩れ小指に追撃が入って悶絶しそうになるがひなと君を待たせまいと思い根性でドアに向かった。ドアを開け、まっさきに言うことは挨拶だ。

 

「こんにちは、ひなと君」

 

 そうやって挨拶をしている間に私は思考をめぐらせる。いかにしてひなと君と出かける理由を作るか、そしてなんの本をおすすめするかを

 

「えっと」

 

 こんな感じに時間を稼ぎながらも考える。

 

「その本を貸すについてなんですけど、もう私のおすすめの作品は紹介しきってまして...もう貸す本がないんです...」

 

 嘘はついていない。紹介したい本はありはするけど、さっきまで私が読んでいた本でまだ読み終わっていないのだ。だから大丈夫嘘はついていない。

 

「えっと、そのー、私も読む本がなくてですね、よ、よろしければい、一緒に本屋さんに行って読みたい本とか紹介したい本を探しに行きませんか?」

 

 読む本がないはあながち嘘ではない。今読んでいる本が読み終わったら本当に読む本がないのだ。なので嘘はついていない...というより...

 

(あぁ...誘ってしまった...ど、どうしようこれってデートだよね??デートでいいんだよね?と言うか千景さんとかひなたさんに殺されそう...まぁ向こうは友達とか仲間としか思っていないだろうから大丈夫だよね...)

 

「いいけどいいけど、なんでそんなオドオドしてるんだ?」

 

 私は淡々と話しをしているつもりだったけどそうでもなかったらしい...

 

「気にしないでください...」

 

 私はそう返すことしかできなかった。

 

 

 

 

 そう言うわけで俺らはここいらで一番大きな本屋に向かっております。

 

「そー言えば球子とはこーゆーやり取りしないの?」

 

 俺は少し気になったので質問した。すると隣を歩いている少女が呆れた顔をした。

 

「ひなと君...わかってて言ってない?」

 

「言ってから気付いたわ。そもそもあいつが読む本っていうのは漫画だろうから紹介しても読んでくれないか...」

 

 俺がそう分析らしきものをしていってみたが、違うらしく杏は首を振りながら

 

「いや読んではくれたんですよ...でもタマっち先輩ってば内容がよくわかんなかったらしく『なんでこのヒロインは手が重なったくらいでドキドキしているんだ?』って言ってきたんですよ...もう信じられない...!」

 

 と少しだけ怒りとあきれが混じった感情を出しながら言った。

 

「そ、そうか...」

 

 続きものの本十巻くらいまで読んでからやっと恋愛小説を読んでいたと理解できるレベルの俺はそう反応をすることしかできなかった。

 

 

 

 本屋に着いた瞬間、今までとなりを歩いていた杏が俺よりも数歩前に行き、くるっとターンをして俺の方を向いた。

 

「さぁ、ひなと君。最初に言った通り、本の勧め合いをしましょう。ひなと君は自分が面白いと思った本を進めてくれればいいんですからね?変に気を使って私に合わせなくていいですから!それじゃ三十分後とかに会いましょう!」

 

 そういって杏は駆け足で本屋に入っていった。そして俺はゆっくりと本屋の入り口に向かった。

 中に入った瞬間冷気が来て涼しいと思った。やっぱ夏にこういう涼しいところに行くのはいいね。さて、杏にお勧めする本を選ばなければならないのだが...

 

(マジでどうしよう)

 

 俺が読んで面白かった本なんて俺つえー系とかとか恋愛のレの字もない物語とかそれこそ転生とかしか読まないのだ恋愛系は杏が勧めてきたのしか読んでいないから自分が勧められるようなものがないぞ...俺が読んでいて杏が読んでいなさそうな恋愛小説なんて角〇つばさ〇庫ぐらいしかないぞ...

 

(ほんとにどうしよ)

 

 

 

 

(勧め合いを提案したけど何の本にすればいいんだろう...)

 

 私は恋愛小説が並べられている本棚を見ながら悩む。えっと、ひなと君の好みは確か純愛だったはず...前ものすっごいどろっどろの小説を渡したらいつもよりものすごく返すのに時間かかってたし、渋い顔していたからね...あ、あとヤンデレも好きだったっけ?前にその系統の本を貸したときにものすごいスピードで返ってきて、ものすごい満足そうな顔だったし...でもそれっぽい本ってあんまりないんだよね...あったとしても内容がぐちゃぐちゃだったり、ヤンデレがヤンデレをしていなかったり結構ドロドロになったりする。

 

(今回はヤンデレとか無視してよくある純愛をお勧めしようかな...それにしてもひなと君はどんな本を私に勧めてくるんだろう...?気を使わないでって言ってもひなと君は恋愛小説を選んできそう...まぁそうなっても私は別にいいんだけど、いいんだけど...やっぱりひなと君が普段何を読んでいるか知りたいな...)

 

 

 

 

(あああああああああああああああああああああああ!マジでどうしよう!!ほんとに何を勧めればいいかわからない!!!yabe------!あともう少しで三十分後の時間になってしまう...)

 

 悩みすぎて本の周りをうろうろする不審者になっていた頃突然脳内に声が響く

 

『別に自分が面白いと思う物語を勧めればいいと思うだけど...』

 

 普段勇者たちと一緒にいると黙っている玉藻の前が珍しく言葉を漏らした。

 

『見ていられなくなってね...まぁ別にあなたが面白いと思う...なんだっけ?転生物だっけ?をお勧めしても向こうは引かないと思うわよ...あなたが子供っぽいことは重々承知だろうし...』

 

(そ、そうなの?ならいいか...)

 

はぁ...ほんとは口を出したくなかったのだけれど...

 

(なんか言った?)

 

『なんでもないわ...さっさと選びなさい』

 

 そう玉藻の前に言われるがまま俺は本を選んだ。

 

 

 

 

 

 そして約束の時間となった!各自おすすめする本を持って集合し、座れる場所に移った。

 

「まずは私から本を紹介させていただきますね!」

 

何やら桜の木と男女が表紙に描かれている本を持った杏が言った。そうして本の紹介が始まる。

 

「えっとこの物語は小さいころからずっと一緒でお互いが相手を異性としてみてないないところから始まっていまして…」

 

 

 

 

「…というわけです!」

 

 ものすごく長かったが、わかりやすかった説明が終わった。

 

「次はひなと君の番ですよ?」

 

「ん、俺が紹介する本は」

 

 そう言いながら俺は杏に本を見せる。すると杏は少しだけ驚いた表情をしたがすぐに元の表情に戻った。

 

「まぁよくある転生物の本だな。この物語はほかの転生物のように主人公が強くない。ほかの仲間たちと自分たちの弱いところを支えながら冒険する物語で…」

 

 

 

 

「…って感じかな...」

 

 俺が説明を終えると杏は少しだけ不貞腐れたような顔をしながら

 

「...精霊になんか言われましたか?」

 

 と聞いてきた。

 

「...全く本が決まらなかったので助言だけ聞きました...」

 

「...私はひなと君が自分自身だけで選んだ本を紹介してほしかったんですけど、まぁいいか...一応自分で選んだそうですし...少し読んでみますね!」

 

 そう言って杏が席を立ちレジに向かおうとしたので

 

「あ、ちょっと待って。買うんだったら俺が買うから...いつも借りてるお礼みたいなもんだよ」

 

 と言って呼び止めた。

 

「えぇ...いいですよ、お礼なんて樹海の中とかでもらっているようなもんですし」

 

「いいから、いいから。樹海の中で助け合うなんて当然ですし...気にしないでおとなしく奢られて?ね?」

 

 そう言うと杏は観念した様子で本を差し出した。

 

「じゃ、これは買ってもらいます...ただし!この本は私がひなと君にプレゼントしますね!」

 

 そう言って杏はさっけおれに紹介した本を見せて駆け足でレジに向かっていった。

 

「え、っちょ⁉...まぁいいか」

 

 止めようと思ったが別にいいかと思い俺は歩いてレジに向かった。

 

 

 

 

 

 

 お互い買った本を交換し、本屋を出た。出た瞬間熱気を感じ、もうちょっと本屋にいたかったなと思った。

 

「あ、杏ちゃんにひなとくん!」

 

 出て数秒後に知り合いの声が聞こえたのでそちらの方を見るとちーちゃんと友奈がいた。なんかやばい雰囲気をただよらせているように感じるのは気のせいだろうか...?

 

「ひなと君...」

 

 ちーちゃんが少しいつもより低い声で話しかけてくる。

 

「今日は部屋でゆっくりしているんじゃなかったの?それを聞いてたから今日は高嶋さんと一緒に遊ぶゲームを探しに行ってたんだけど...?」

 

「あ...」

 

 その瞬間俺は思い出した。朝早く(九時)からちーちゃんが来て

 

「一緒にゲームしない」

 

 と言ってきて、寝起きの俺は

 

「今日は部屋でゆっくりしたいからいい」

 

 と言ったことに。さっきまで暑いと思っていたが急に寒くなってきたぞ...

 

「あー...えっと部屋でゆっくりするのに本を読んでいたんだけど読む本がなくなってだな...まぁかくかくしかじかだ」

 

「そう...まぁそれならギリギリ許すわ...じゃ、私たちはこれから行くところがあるから...」

 

 そう言ってちーちゃんは寮からやや反対方面に歩き始めた。ちーちゃんについてくと思われた友奈は俺の方に来て耳元で

 

「ぐんちゃんを放っておいたらいつかとっちゃうよ?」

 

 と寝とる宣言をして駆け足でちーちゃんの方に向かっていった。俺は何も考えないことにした。

 

「帰るか...」

 

 考えることを放棄した俺はそのまま脳死でその発言をし寮へと足を向けた。

 

「あ、ちょっと待ってください!」

 

 脳死だったので杏と一緒に来ていたことを忘れていた。

 

「あ、すまんすまん。なんかこの一瞬でいろいろありすぎて人と来たことをすっかり忘れてたぜ」

 

「そういえばさっき友奈さんに何か言われてから変な顔をしていましたけど何かあったんですか?」

 

「いや特に何もなかったよ。と言うかそんな変な顔していたの?」

 

「はい。いつもは~なんか無邪気で世間のことを何も知らなそうな可愛らしい顔をしているのに~さっきは大人の世界を知ったロリみたいな顔をしていましたよ?」

 

 なんか上機嫌そうに言う杏。

 

「結局ロリじゃねーか」

 

 俺は少し不貞腐れた雰囲気を出しながら言った。

 

「あ、前から気になってたんですけどどうしてひなと君は本を好きになったんですか?前世から本を読んでたからですか?私の場合は入院生活で本を読むしかやることがなかったからですけど...」

 

「そうだね...前世で本を読んでいたのがでかいかな...前世の親がね電子図書のサービス?に登録してくれたんだ。まぁ児童文庫と図鑑しか見れなかったけど...で、ゲームが一日一時間だった俺は勉強以外やることがなくてね~勉強はしたくないからずっと本を読んでたんだー。それが俺が本を読むようになった理由かな。中学の時にスマホもらえていなかったし、学校で話すような友達もいなかったから休み時間に図書室のライトノベル借りてずっ読んでてね~本は中学時代の味方だったわ~。おかげで学年で一番本を借りてたわ。いやー懐かしー」

 

 俺は思い出に浸りながら語った。

 

「今回は友達と話せる中学時代でよかったですね」

 

「急に毒吐くね...まぁ確かに話せてよかったよ。まぁ欲を言えば男子とも話したかったけどね...」

 

「しょうがないですよ本来、勇者は無垢な少女しかなれないですから」

 

「それもそうだな...ん?」

 

「どうしました?」

 

「いや俺この人生の中で男子としゃべったこと数回しかなくね?って思って」

 

「私みたいに入院していたならわかりますけど...学校に通っていたひなと君ならそんなことはないと思いますけど」

 

 不思議がる杏。

 

「いや、堅物の若葉とずっと一緒にいるお姉ちゃんと一緒にいたから男子が近寄ってこなくて話せなかった記憶がある。で、三年生くらいに高知に引っ越したんだけどあのくそどもとは話そうと思わなかったから...うん全く話してねーや。まぁいいけど。そこそこ楽しかったし」

 

「いいんですね...あ、もう寮ですね」

 

 話している間に俺らは寮についていた。

 

「この本ありがとうございました。部屋に戻ってゆっくり読みますね」

 

 そう言って杏は本の入ったビニール袋を顔の高さまで持ってきた。

 

「こちらこそありがとう。じっくり読むとするよ」

 

 そうして別れの挨拶をして俺らはそれぞれ自分の部屋に向かった。

 

 

 

 

 ちなみに杏のおすすめしてくれた本はめっちゃくちゃ面白かった。今二週目を読んでいるところである。杏も俺のおすすめした本面白いと思ってくれているといいけど...

 

 

 

 

「ひなと君が紹介してくれた本、恋愛とは少しだけ離れていて私の好きなジャンルと異なるけど...面白いな...」

 

 私はたまにはこういうジャンルも読んでみるもんだなと思いながら本を読んだ。




あと二人で本編はいれる...日常書きたかったからこれ書き始めたけど今度は戦闘場面をかきたくなってきた...


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第27話 ひと時の日常(姫百合)

あぁ...ゆゆゆいが終わってしまった。
こうして公式からの供給は予定では芙蓉友奈は語部とあとゆゆゆいのcs版のみとなった。ならばどうする?しれたことよ...クオリティが低かったとしても自給自足をすればいいのだ!
という訳でいつもどうりの文章力です。投稿期間の長さは知りません。


 ある日俺と球子は大社に呼び出されていた。

 

「呼び出しってなんだろうなータマたち怒られるのかなー?」

 

「いやそれはないだろう。怒られるのであればこんななんか豪華そうな部屋に案内されてお菓子なんて出されないだろうし...それか俺は何もやってないけど球子がなんかやらかしたとかか?」

 

「タマは何にも悪いことをしていないぞー」

 

「じゃ―もう知らん!」

 

 呼び出されはしたがすぐに何かあるとかではなくなんか豪華な部屋に案内されて待ちぼうけを喰らっていた。暇だなと思おって球子を見るとちょうど目の前のお菓子に手を出しているところだった。ジト目で見ていると、球子は少したじろぎながら

 

「なんだよ...別にいいだろ?タマたちは何にも悪いことをしていないんだから」

 

「何にも言ってないだろ...」

 

 そうして球子がお菓子の包装を破いてお菓子を口に含みそうになったところでドアが開いて大社の役員が入ってきた。

 

「うまーい!」

 

「おい球子大社の人来たぞ...ってなんだお父さんかよ」

 

 大社の役員が入ってきたかと思えばただのお父さんであった。

 

「やぁひなと久しぶり...それに土居様もお初にお目にかかります。ひなとの父親です。ひなとがいつもお世話になっています」

 

 お父さんが球子にあいさつをするが、球子はお菓子に夢中でお父さんが入ってきたことにも気づいていないようだ。

 

「ふふ...元気な子だな」

 

 お父さんは挨拶が無視されて少し悲しそうにそう言った。

 

「あー、おーい球子さーん?大社の人来てますよー」

 

 俺は球子の肩を揺さぶりながら球子を現実に引き戻す。

 

「え?あ、ほんとだ。こんちわー」

 

 球子は食べかすが口についたままお父さんの方を向き挨拶をした。するとお父さんは会釈をしてから本題に入った。

 

「今日お二人に来てもらったのは依然壊れた武器の修復が終わりましたゆえに来ていただきました」

 

「え、あのベルト直ったの?めっちゃ粉々になってたのに?」

 

 俺が少し驚きながら尋ねる。

 

「はい。適当に神樹様の前に置いておいたら勝手に直ってました」

 

「えぇ...」

 

「直し方はともあれ直って良かった。タマはこの間ひなとがキツネみたいになっていた戦いの時楯が直ってなかったからその破片で戦う羽目になってたんだ...まぁひなとが炎ぶっぱしてたから戦わなくてよかったけどな!」

 

「と言うわけで武器をお持ちしたのでそれを受け取ったら今日はもう帰ってもらっても構いません」

 

 そうお父さんが言うと別の大社の人が何やら神聖っぽい感じの雰囲気をただよらせた箱を二つ持って部屋に入ってきた。そしてそのまま俺と球子の前に箱を置いて、会釈をして出ていった。

 

「開けて確認してみてください」

 

 箱を開けてみると新品同然のディケイドライバーが入っていた。球子の方を見てみると同様に新品の輝きを持った旋刃盤が入っていた。

 

「すっごいピカピカだな」

 

 確かに手に持ってみるとものすごく輝いて見えた。

 

「そうでしょう?大社の職員が何日もかけて磨きましたので。あ、そうそう神託によると性能も少しだけ上がっているそうです」

 

「へぇ~。えっともう俺の用は済んだんだよな?」

 

「はい」

 

「よし。球子帰ろうぜ」

 

 そう言って俺は席を立って出口に向かおうとする。お父さんも見送りをするためなのかついてきた。

 

「あ、ちょっと待ってくれ!」

 

 俺はその球子の言葉が俺に向けられているものかと思って振り返ってみたがどうやら違うらしい。球子はお父さんの方向を向いていた。

 

「はいなんでしょう?」

 

「なぁ前に宿泊を兼ねたキャンプはだめって言ってたけどまだ駄目なのか?」

 

 そう球子がこちらに歩いてきながら言った。するとお父さんは少し悩むそぶりを見せながら

 

「さすがに一人でキャンプされるのはおそらくダメだと思われます...」

 

 と言った。

 

「一人がだめなら二人ならいいのか⁉ならそこのひなとと行くから!なぁいいだろ⁉」

 

「え」

 

 球子が交渉材料に俺を使ってきやがった。するとお父さんがは少し慌てながら

 

「え、こいつ連れてくの?この子虫ダメだよ?料理はたぶんできると思うけど...」

 

「虫が嫌いなことぐらい一緒にいるんだからわかる!この間なんか少し上を飛ぶセミにビビってたからな。だがそれでもだキャンプに行けるのであればなんでもいい!杏は一緒に行ってくれないしな」

 

「まぁそれでいいのであれば大丈夫だと思いますが...あ、本人の了承も一応取ってくださいね?とれたのであればうまくごまかしておきますので」

 

 そうお父さんが言うと球子は今度はこっちを向いた。

 

「と言うわけだ。タマと一緒にキャンプ行こうぜ!杏と前本屋に出かけたんだし、若葉とも一緒に寝たんだからいいだろー?」

 

 球子が親の前でそんなことを言ってくる。

 

「え、お前色んな女の子に手を出してるんだな」

 

 そうからかうように横やりを入れてくるお父さん。

 

「ちょっとお父さんは少し黙っててくれ」

 

「え、この大社の人ひなとのお父さんなのか⁉」

 

 球子は驚く素振りをしてお父さんの方向を向く。

 

「あった時すぐ言ってたけどね...」

 

 俺は呆れながらそうつぶやいた。

 

「なぁ!お父さんからも言ってくれよ!タマと一緒にキャンプに言ってやれって!」

 

「はは...」

 

 お父さんは苦笑いをした!しかし何も変わらなかった!

 

「はぁ...しょうがないな...行ってやるよキャンプ。何するかいまいちよくわからないけど...」

 

 俺は少し、居づらい空気ななったところで折れた。

 

「やったー!それじゃさっそく準備をしに行こう!材料だったりその他諸々!」

 

 そう言って今にでも出口へ駆けだしそうな球子。俺は呆れながら

 

「はいはい」

 

 と返事をしながらお父さんの方を向いて

 

「じゃ、またな」

 

 といって出口の方へ向かった。

 

「手、出すんじゃないぞ」

 

 お父さんがボソッとなんか言った気がするが俺を置いてった球子を追いかけなくてはいけないため聞き返している余裕はなかった。

 

 

 

 結局その日に行くということはならずに翌日、キャンプ用品を買うために俺と球子はイネスに来ていた。

 

「俺は全くと言っていいほど野外での活動をしない。虫とか嫌いだしな。なので全くキャンプに何が必要なのかわからなかったのだが、行くということになったので調べてきたぞ!とりあえずいっぱい必要なのはわかった」

 

 俺はどや顔をしながら言った。

 

「へぇ~調べてきたのか!ひなとのことだから球に全部任せるんじゃないかと思ってたぞ。で、まずは何を買うんだ?」

 

「そうだな...と言うかキャンプって何をするんだ?」

 

「う~ん別にピクニックぽいことでもキャンプになるからなぁ別にカップ麺とかを食べるキャンプにしてもいいんだがそれはそれで地味だからな...サバイバルっぽいことをしよう!」

 

「...と言うと?」

 

「食材はあまり持って行かずに、行こうとしているキャンプ場がつりオッケー、山菜採取してオッケーのところだからなるべくそこで自給自足をするんだ。と言うわけでコンロとか皿とかコップとかも必要だな」

 

 球子は早口でいろいろ説明をしだした。

 

「ちょっと待て俺魚とかさばけないぞ...」

 

「ん?そうなのか?ま、何とかなるだろ!」

 

 おいふざけんな。そんな言葉がのどから出かけたが何とか出さずに飲み込んだ。もういいや勉強してさばけるようになろう...

 

「じゃまず魚とか焼くためのコンロを買いに行くか」

 

「おう!じゃ、こっちだな」

 

 無理な時は肉を買って来よう...そう思いながら俺らはキャンプ用品を揃えていった。

 

 

 

 

 訓練のない日俺らは山にあるキャンプ場に来ていた。と言ってもまだ歩いている途中でキャンプ場にはついていないが...

 

「う~あっつー。球子ーまだつかないのかー?」

 

「あともう少しだから頑張れー。それにしてもひなと、荷物を持っているというより荷物に持たれているみたいだな」

 

 今の俺は虫刺されなどをいろいろ考慮して暑いのにもかかわらず長袖長ズボンで着ており、なんやかんやあって大荷物になってしまいパンパンになってしまったよく山登りしているような人が背負っているリュックを背負っている。ちなみにリュックの大きさは俺と同じ身長ぐらいだ。球子も同じようなリュックを背負っているのだがすいすいと山を登っている。元気だね~。

 

 

 

 

 なんやかんやあってキャンプ場についた。そして受付をしてテントを立てる場所を決めてテントを立てる作業に入った。

 

「それにしても球子のテントでかいな...こりゃ俺にテント買わなくていいといっただけはある」

 

 そう俺はテントを買おうと思った時に球子にタマのテントでかいから買わなくていいぞと言われていたのだ。

 

「ふぅ設置完了!それじゃ球は釣りに行ってくるから色々準備をしといてくれ。タマがつらないとご飯がないからなちょっと頑張ってくる」

 

 そう言って借りてきた釣竿を持って川に行こうとする球子

 

「あ、ちょっと待ってくれ」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「結構ネット見て勉強したけどやっぱり俺に魚をさばくのは無理だし、何なら調理法が丸焼きしか思いつかない!なので悪いが色々材料を持ってきてしまった。サバイバルっぽくできなくて済まない...」

 

 そう言うと球子は少し余裕そうな笑みをした。

 

「なんだそんなことか、大丈夫だ。そもそもキャンプ初心者のひなとにサバイバルっぽいキャンプをさせるのは少し酷だと思ってたしな。じゃ、今度こそ行ってくる」

 

「行ってらっしゃい」

 

 球子は返事をせずにただただ釣竿を高く上げて返事をした。

 

「さて球子がつりに行ったことだし、俺も色々準備をするとしますか...」

 

 そう言って俺はパンパンのリュックからいろいろな調味料や食材コンロ、包丁、まな板などの料理で作るものを出した。ちなみに時刻は結構遅めに出発したおかげで四時半くらいになっていた。すべては寝坊したり大きな荷物を持つことで歩くスピードが遅くなった俺の原因です...

 

「キャンプと言えばカレーだよな...どっかのポケ〇ンもそんなことを言っていた気がする。ま、作るのはフツーのやつですが...」

 

 そんなことをつぶやきながら俺は鍋に水を入れ、火にかける。火にかけている間に野菜を切ったり、他の料理の準備をしたりしてなんやかんやあっていろいろな料理が完成した!途中で球子が魚いなかったって言った時は驚いたがまぁそれはそれでよし!

 

「なんかバーベキューみたいだな」

 

 球子は俺の作った料理を見てそうつぶやいた。目の前の料理は焼きトウモロコシだったり、ステーキ肉だったり、カレーだったりとキャンプでよく見かける飯が多くあった。まぁ野外で食べるものなんだからBBQと同じような感じでいいだろと思った結果だが...

 

「それにしてもひなとがうどんを持ってくるとは驚きだ...」

 

「まぁ食いたいだろうと思ったからね」

 

 そう俺はうどんを持ってきたのである!まぁキャンプ飯って調べてたまたまうどんがあったからなのだが...

 そのあと球子はおいしそうに俺の作った飯を食べ、食器を洗い、ごみの処理などをして備え付きのお風呂に入った(俺は一瞬だけ変身して体を浄化してすぐ着替えた)。そしていざ寝袋を置こうと思ったところで事件は起こった。

 

「あああ!」

 

 球子が突然大声をあげた。

 

「どうした?」

 

 球子はいっつもどうでもいいことで大声をあげるので今回もそれかと思い特に気にする様子をせずに事情だけ聴く。

 

「ね、寝袋...忘れた...」

 

「...は?」

 

 突然の忘れた発言に呆然とする俺。呆然としても仕方がないと思う。なぜなら球子は一応キャンプ経験者のはずだそんなことはしないだろうと思っていたからだ。

 

「忘れてしまったものはしょうがない...俺は寝袋使わずに寝るから俺のを使いなよ」

 

 そう言って俺は寝袋を球子に差し出すが、球子は受け取らずに首を振る。

 

「夏の山の寒暖差をなめちゃだめだ。結構寒くなる」

 

「じゃあどうするんだよ...」

 

「な、なぁタマが忘れたのにこんなことを言うのもあれだけどこの寝袋やけにでかいし一緒に寝ないか?」

 

 いろいろあって断ることのできない俺は

 

「球子がいいなら...」

 

 それだけ言って寝る準備をした。

 

「この山意外と標高高いから寝袋とかで防寒しないと風邪をひいちゃうんだ」

 

 そう言いながら球子も寝る準備をした。

 

 

 

 

 

 

 二人で仰向けだとぎりぎり入らなかったのでやむ負えず向き合いながら寝ている。

 

「やっぱ一緒の寝袋となると狭いな」

 

「でかいといっても横じゃなくて縦だしな、と言うか何でこんな大きいの買ったんだ?今のひなとならある一部分だけ大人サイズとはいえ子供用の寝袋で足りると思うんだが...」

 

「いや、だって男に戻ったときにもキャンプに行くかもしれないじゃん。その場合大きいのを買ってきた方がもう一個買わなくて済むでしょ?」

 

「そういえばひなと男子だったな」

 

 球子は思い出したかのようにそういった。

 

「...ひどくない?」

 

「だってしょうがないだろー?初陣の時からずっとひなとは女だったんっだから。それに今のひなとにはこれがあるしな!」

 

 そう言って球子はやむ負えず押し付けてつぶれている胸を揉みだした。ある程度揉んだ後に球子は不思議そうな顔をした。

 

「...抵抗しないのか?いつもだったら揉んだ瞬間に蹴りを入れてきたじゃん」

 

「なんか最近色々なことがあったおかげで胸を揉まれてもくすぐったいなーって思うだけで不快には思わなくなってきたんだ。あ、もちろん知人だったらの話だよ?」

 

「そうか!じゃあ思う存分登頂できるな!」

 

 そう言って真剣に俺の胸を揉んでくる球子。

 

 

 

 

 

 しばらくして

 

(...やばい変な気持ちになってきた)

 

 無抵抗で胸を揉まれ続けた俺はなんかいろいろやばい事態を起こしそうな気持になっていた。

 

「な、なぁ球子。さすがにそろそろ揉むのやめない?」

 

 球子やめる気配を見せずに言う。

 

「なんでやめなきゃいけないんだ?さっき不快には思わなくなってきたって言ってたじゃないか!だからタマは今まで登頂したくてもできなかった山を堪能するまで登頂をやめない!」

 

「えぇ...」

 

「...?なぁひなとさっきより山の山頂が高くなってぐはぁ!...何するんだ!」

 

 球子が言わなくていいことを言った瞬間俺は思いっきり膝で腹をけってやった。

 

「うるさい!言わなくてもいいことを言うからこうなるんだ!ほらさっさと寝るぞ!」

 

 そう言って俺は無理やり体の向きを変えた。

 

 

 

 

 寝るぞと言いながらも体が興奮しているからかなかなか寝付けない俺は目をつむるだけでなかなか寝れずにいた。

 

「なぁひなと、起きてるか?」

 

 てっきり蹴った後でも後ろから揉んでくると思っていたが揉んでこなかった球子が話かかけてきた。

 

「起きてるよ」

 

「そうか...なぁタマらしくないことを今から言うけどいいか?」

 

 いつものテンションとは一回り二回りと低いテンションでいう球子。

 

「いいよ」

 

 何かあると思った俺は短い返事を返した。

 

「タマってホントは一番役に立ってないんじゃないか?一番いらない勇者なんじゃないか?」

 

「突然ネガティブなことを言うな。なんでそう思ったんだ?」

 

「若葉はみんなをまとめるリーダー、友奈はみんなが喧嘩をしたときにつなぎとめる人、千景は誰よりも平和な日常を取り返すために奮闘していて、杏は作戦を考える、そしてひなとは最強の勇者...タマが一番特徴がなくて役に立っていないんじゃないかと思って」

 

「...そんなことはないと思うけどなー。球子はみんなを守る盾とかそういうのじゃないのか?」

 

「みんなを守る?杏一人を守ることもできなかったのに?」

 

「守れているじゃないか一番最初から。確かに最後はだめだったかもしれないけど...そもそも盾と言うという武器かもわからないものを使ってるんだから特徴ができないのも当然なんだし、そもそもあんな小さな盾なんかでおっきな奴らの攻撃を防げると思っているほうがおかしいんだよ。あれは受け流すためにあるようんもんだろ。それに一人でも勇者が書けていたら今のような全員が揃った状況ではなかったかもしれないだろ?」

 

「ひなとならなんとかできただろうし、そもそもタマたちは最初に死ぬんだろ」

 

(すべてを否定で返してくるなこいつ)

 

「そもそも何とかするとかいうが俺はここが知っている世界じゃなかったら勇者になっていなかったぞ。誰が好き好んであんなシュミの悪いキショイ化け物と戦おうと思うんだ。そう思う時点で最強なんだろうが何だろうが勇者として全員に負けてるんだよ。そもそも俺は恐怖と言う感情を勇者の力で無理やり勇気にして戦っている。もしこの力がなかったら俺は樹海の中で一歩も動けていないか逃げているだろうよ。その時点で球子は俺より優れている。自分の力とみんな...それか杏か?のために力を出そうとしていて、自分の力で恐怖を克服している。その時点で立派な勇者だろ。特徴とか役に立ってるとか関係なしでな」

 

「...わりーひなと、何言ってんかよくわかんない」

 

「なんでわかんないんだよ。俺結構熱く語ったぜ?」

 

「あぁ、熱意はしっかりつと伝わった!なんか元気が出てきた!ありがとな」

 

「ならよかったけど...」

 

 そうして俺らは自然に眠りについた。

 

 

 

 

 朝、太陽が昇るより早く起きてしまった俺は球子を起こさないように寝袋から出て山の山頂を目指していた。日の出が見れるかなと思ったからである。

 俺が山頂に着いた瞬間にさっきまで暗かったわまりが明るくなった。海の方を見ると壁の方から太陽が出てきており、海を輝かせ、俺に一日の始まりを告げてきた。なんか知らないがきれいだと思った。

 

「だが壁が邪魔だな」

 

 瀬戸内海を分ける神樹の壁、海と山の自然だけを見るはずだったのに壁に邪魔されて俺は自然とそうこぼしていた。海に植物の壁があるのがなんか違うなと思ったのである。

 

「あれが消え去るのは三百年後か...俺が生きている間には海を見るたびにの植物が目に映るんだろうな...海は水しかないからきれいだというのに」

 

 そんな個人の考えを披露しながら俺は寝袋に戻り朝食の準備を開始した。

 

 

 

 

 そうして俺らは朝食を食べて、朝食を食べて少し山で体を動かしてからチェックアウトをして丸亀城に帰ったのであった。




球子の口調って個人的に難しいイメージです。
自分は全くと言っていいほどキャンプの知識がないので少しおかしくてもあまり気にしないでいただけるとありがたいです。


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第28話 ひと時の日常(巫女)

題名がひねりもないですね!
それにしても久々の一週間もあけない更新ですよ!(ドヤ!)その分クオリティがあれかもしれませんが...
感想等ありがとうございます!めっちゃやる気出ます。クオリティは上がりません。多分限界です。
それでは、いつも通りでやっていきましょう...
ひと時の日常はこれでラスト...



 球子とのキャンプが終わった次の日に俺はお姉ちゃんの部屋に来ていた。泊まりということを告げたらキャンプで起きたことを報告するようにと言われていたためである。

 

「...ということがありました」

 

 なぜ姉にこんな報告をしなければならないんだということを思いつつキャンプでしたことを報告した。無論同じ寝袋で寝たいということは言わないでおいた。めんどくなりそうだったしね。

 

「そうですか...楽しかったようで何よりです。...ところで何か言ってないことがあるんじゃないですか?」

 

「?特にないけど...」

 

「そうですか。ひなとは相変わらずわかりやすいですねー鎌をかけただけなのにその【特にないけど】で嘘を言ってるのが丸わかりですよ?」

 

「...」

 

 俺は観念して起きたことを全て報告した。

 

「...」

 

 全てを報告したあとのお姉ちゃんは黙ってなにか考え込むような仕草をしていた。そして、

 

またですか!

 

 と大きな声を出した。

 

「1体何人の女の子と寝れば気が済むんですか!ひなとが今女とはいえ間違いが起こる可能性もあるんですよ!実際!球子さんとの出来事なんて間違いの1歩手前じゃないですか!とりあえず球子さんは後で吊るすとします。まぁそれはそれとしてひなとが最近皆さんと遊んでいるというのは聞きました。それで勇者の皆さんとは遊び切ったので次は私の番ですよね!何します〜?あ、久しぶりに一緒に寝ます?」

 

「え?俺お姉ちゃんとはなんにもする気無かったけど」

 

 お姉ちゃんは鳩が豆鉄砲食らったような顔をしながら

 

「え...?」

 

と呟いた。

 

「え?なんにもしないんですか?」

 

「うん」

 

「わ、私な、なにかしました?さっき説教まがいのことをしたから怒ってるんですか?それとも若葉ちゃんと一緒に手錠をつけさせたからですか?」

 

「別にそれはあんまり関係ないけど...お姉ちゃんとは1番長く一緒にいるから別に今更思い出作りしなくてもいいかなって思ったからだよ」

 

「なんでそんなことを言うんですか!というか千景さんと私って一緒にいた期間だいたい一緒ですよ?」

 

「学校とかで一緒と家で一緒って違う気がしない?」

 

「違くないです!全然違くありません!私だってひなとと遊びたいんですよ!ねぇお願いですから一緒に遊びましょうよ〜」

 

 お姉ちゃんが少し涙ぐんだところで俺は日頃の仕返しを辞めた。

 

「わかった!わかったから泣きかけないで...と言っても何するの?」

 

 俺がそう言うとお姉ちゃんはさっきまでの涙が嘘だったかのように満面の笑みを見せた。(嘘泣きでは無いと思う)

 

「そうですね〜幼少期の頃は一緒に寝てませんし、久しぶりに一緒に寝るということも...いやそれは皆さんと一緒になってつまんないですし、と言うかなぜ思いで作りをしているんですか?」

 

「え、だって俺次の戦いで死ぬかもしれないしだったら楽しい思いで作っておきたいなって思って」

 

「死ぬ⁉何故⁉」

 

 お姉ちゃんは心底驚いた様子だった。

 

「いや何でそんな驚いてるのさ、そもそも神相手に人間が戦ってるんだから死人の一人や二人は出るだろうに」

 

「え、いや、でも、だって!ひなとが死んでしまったらそれこそ勇者の敗北と等しい感じになってしまいますし」

 

「俺の力を過信しすぎだよ。俺は自分の力の使い方をあまり知らないから...確かに他の皆よりかは強いとは自負しているけど、5人の力と比べらえるとどうかと思うよ?」

 

「確かに私たちはひなとに力を過信しすぎているかもしれないですけど...いつもひなとは死ぬ様子を見せていませんから、何かあったんですか?...あ、そういえば若葉ちゃんと寝たときに悪夢が~とか言ってましたね。すっかり忘れてました。」

 

「ちょっと待て、なんでそのことを知っている?姉よ」

 

姉?

 

「ひっ!す、すいません...なんでそのことを知っていらっしゃるのでしょうか?お姉さま?」

 

 俺の方が有利かと思った空気は俺がお姉ちゃんではなく姉と言ったことで逆転された。中学生が出していい圧じゃないって...

 

「そんなのは簡単です。盗聴したからです!」

 

 お姉ちゃんは自らの行動を誇るかの様に胸を張った。俺は突っ込むことをあきらめた。さっきの圧を出されては困るからだ。怖いし。

 

「ひなとは心配性ですね~ひなとに巫女の適性があるかどうかは知りませんが巫女ではない人の予知夢的なものは大体当たらないと思いますのでそんな心配をせずにどしんと構えてればいいんです。で?何をするんですか?」

 

 そして話は戻った。

 

「特にやることがないんだよな~」

 

「ポッキーゲームします?」

 

「しない」

 

「コスプレ大会します?」

 

「市内」

 

「一緒に本でも読みます?」

 

「竹刀」

 

「若葉ちゃんを追跡」

 

「歯内」

 

「なんですかもう!さっきからしない市内竹刀歯内と!変換ミスにもほどがありますよ⁉」

 

 お姉ちゃんは腕をぶんぶんと上下に振った。

 

「何言ってるの?お姉ちゃん?ポッキーゲームをやったところで俺はすぐにかみ砕くし、コスプレ大会なんてもってのほか、本は一緒に呼んでどうなるの?それでお姉ちゃんは満足するの?若葉を追跡はやめよ?ね?」

 

 俺は出された案を理由を出して拒否する。何も考えていないわけではないのだ。

 

「すぐにかみ砕かれてもいいですから一回だけ、一回だけやりましょう?」

 

 そう言ってお姉ちゃんは何もない空間からポッキーを出した。

 

「はいひなと咥えてといてください」

 

 そうしてお姉ちゃんはポッキーの箱を開けて袋を出しその中から一本を差し出してきた。

 

「はいはい」

 

 俺はそのポッキーを受け取り持ち手の方を咥えた。すると加えた1秒後くらいにはお姉ちゃんは俺の咥えたポッキーを手べ始めていた。

 

(顔近!そして食い始めるの早いなおい。こうしてみるとお姉ちゃん顔はきれいだし可愛いしスタイルもほんとに中学生かって思うくらいすごいんだけどたまに奇行に走るからなー...ってそんなこと考えている暇はなかった!はやくかみくd)

 

ん~!

 

 私がかみ砕こうと思った時にはもうお姉ちゃんの顔はもうすぐそこに来ており口の中には舌が入ってきて私の咥えていた持ち手の部分もなくなっていた。離れようとするがお姉ちゃんが頭御押さえつけてきたので逃げられず、私は無抵抗のまま口の中を蹂躙された。お姉ちゃんは私の呼吸が限界になったときにようやく解放してくれた。お互いの口を銀色の糸がつないでおり、今起こったことをいやと言うほど理解させられる。

 

「なんだ、かみ砕かなかったじゃないですか...期待してたんですか?」

 

 お姉ちゃんはからかうような顔をしていってくる。

 

「...出てって」

 

「?」

 

「出てってって言ってるの!お姉ちゃんなんか嫌い!」

 

 私は恥ずかしかったのでついお姉ちゃんを遠ざけてしまった。無理やり追い出した瞬間に自らの行動を思い返し思ってもいないことを言ってしまったと気づいたが、今更引き返せるわけがなく、私は顔を真っ赤にして少しだけ涙を浮かべながらベットにこもった。

 

 

 

 

 

ひなた視点

 

『お姉ちゃんなんか嫌い!お姉ちゃんなんか嫌い!お姉ちゃんなんか嫌い!

 

 さっきひなとに言われたことを脳が勝手にリピートしてくる。

 

(すぐにかみ砕かなかったからてっきりやっていいのかと思いましたが駄目だったようですね...こういう時は早めに謝っておくことが吉でしょうか?)

 

 そう思った私はドアに近づき部屋の主に呼びかける。

 

「ひなと、謝りますので顔を出していただけないでしょうか?もうこんなことはしないので」

 

 そう私が呼びかけたがひなとは反応しない。

 

(あぁ、ついに嫌われてしまいましたか...はぁ~この先もひなとに嫌われたままだった場合どうなってしまうのでしょう...私のことを無視してくるのでしょうか?私はずっとひなとと一緒にいたいのですが...疎俺にしても今思ってはいけないことだと分かってはいるのですが、キスしたときのひなと可愛かったな~、あと私を追い出すときの羞恥に染まったときの顔とか......でも仲直りしないとその愛しくて可愛らしく偶に凛々しくなる顔も見れなくなってしまうんですよね...早急に仲直りしなくては)

 

 そう思った私は昼食の時間になったので皆さん集まっている食堂へと向かった。当然のことのようにひなとは来なかった。

 

 

 

 

食堂にて...

 

「あれひなただけなのかー?てっきりひなとも一緒にいると思ってたんだが」

 

 食堂に入ったときにさっきまでつるそうとしていた相手が話しかけてきた。周りを見ると皆さん既に集まっているらしく、球子さんと同じ疑問を抱いているような顔をしていた。

 

「それが...」

 

 

 

 

「「「「「ひなと(((君)))と喧嘩した~⁉」

 

 私は単刀直入にひなとと喧嘩したとだけを伝えた。

 

「それで...喧嘩の原因は?」

 

 一瞬だけいつにもなく大きな声を出した千景さんが、すぐに冷静になり原因を聞いてきた。

 

「ひなととポッキーゲームをしていて...」「ちょっと待ってください!」

 

「なんですか?杏さん」

 

「あのひなと君がポッキーゲームをやることを了承したんですか⁉」

 

「はい。一回だけですが...話を戻しますね。それでひなとはすぐポッキーをかみ砕いてゲームを終わらすけどいい?と言ってきていいよと私が言い、ゲームが始まったわけですが、ひなとが考え事をしていたのがすぐにかみ砕かなかったんですよね...だからそのままゲームを侵攻していたら成り行きでひなとが咥えていた棒も拝借したらひなとが怒ってしまって部屋をお出されてしまったのです...」

 

「...なぁひなた。違ったら済まないのだが、何か隠しているのではないか?」

 

 長年付き合っているからか若葉ちゃんが私が何か言ってないことに気づいてしまった。

 

「そうなの?ヒナちゃん?」

 

 私は観念して話すことにした。

 

「さすがですね若葉ちゃん...」

 

「と言うことは...?」

 

 千景さんがこちらを怪しむように見てくる。

 

「ええ、若葉ちゃんの言うように私は言っていないことが一つあります。それは...

 

「それは?」

 

「ひなとの咥えていた棒を拝借するときについでに濃厚なキスもしちゃいました」

 

「ひなちゃんが悪いね」「そうね...」「ですね」「だな」「ひなた...さすがにそれは...擁護できないな...」

 

「皆さん揃って見捨てないでください!」

 

 私は思わず叫んでしまった。

 

 すると千景さんがため息をしながら

 

「...一回だけ...一回だけよ?仲直りに協力してあげるわ」

 

 と言った。

 

「いいんですか?」

 

「私だってひなたさんに助けられたところもあるし...ひなと君との時間も奪っているしね...」

 

「確かに姉弟は仲良くなきゃね!」

 

 友奈さんも協力してくれるらしい

 

「ありがとうございます!...でも、ひなとは部屋から出ようとしませんし...どうすればいいのでしょう」

 

 千景さんは考える素振りをした。そして結論が出たのか顔を上げた。

 

「ひなと君が出てこないのって呼びかけるのがひなたさんだからじゃないかしら?だったら私が呼びかけてみたら出てくるかもしれないわね...まぁ騙したみたいな感じがしてひなと君が起こるかもしれないけど」

 

「謝れればなんでもいいです!たぶんゆるしてくれると思いますので」

 

「その自信はどこから出てくるんだ...」

 

 球子さんが突っ込んできたが私は無視する。なぜならひなとが許してくることにとてつもない自信を持っているからだ!

 

 

 

 

ひなと視点...

 

『ずいぶんいい光景を見させてもらったわ。ご馳走様』

 

「別にお前に見せたいためにかみ砕かなかったわけじゃないし...」

 

『だとしても反応速度が遅かったんじゃないか?』

 

「だって顔近くて緊張したんだも~ん」

 

『...儂は別にいいと思うが、仮にも男なのであればその語尾をやめたほうが良いと思うぞ』

 

『仕方がないだろう...普段なら頑張って男口調にすることができるが、今は突発的なことが起きて口調を維持できないのだから』

 

 ベットですねていた俺を精霊たちが茶化してくる。...いや元気づけているのかな?

 

『そんなわけないでしょ?私は濃厚な百合が見れて満足よ。それに血縁同士でのキッス...最高ね』

 

「俺とお姉ちゃん血縁同士ではないけどね...それにしてもおなか減ったなー」

 

 そうつぶやきながら時計を見ると13時を表示していた。

 

『食堂に言ったらどうだ?』

 

「無理お姉ちゃんいる。今会いずらい」

 

『なら儂が行ってやろう!ひなとが合うわけでもないし、腹も膨れるぞ!』

 

「却下。部屋から出たくありません。俺の体の中でお酒でも飲んでおとなしくしていてください」

 

『釣れないやつじゃの...』

 

(しょうがない...カップラーメンだかうどんだかそばを食べるとしよう)

 

 そう思って俺が台所へ向かおうとするとドアがノックされた。

 

「ひなと君...いる?」

 

 てっきりお姉ちゃんが来たかと思ったら来たのはちーちゃんだった。俺はすぐにドアの方に行ってドアを開ける。

 

「よかった...出てきた」

 

 そう言ったちーちゃんの後ろには今は会いたくないお姉ちゃんがいた。

 

(うわ...気まず...)

 

「えっとー、そのー、ひなとに言いたいことがあってここに来させていただきました...今すぐにとは言いません...前みたいに仲良くしませんか?」

 

 別に俺はいきなりキスされて最初は少し怒ってたけど今考えたらそこまで嫌なことはされていないのだ。ファーストキスを奪われたぐらいである。あともう少しシチュエーション...とは思ったが...とにかく悪いのは後々考えれば別に嫌なことをされたわけではないのに、ひと時の感情を優先させて追い出してしまった俺なのである。なのに...なのに向こうから謝られてしまった...しかも二回も。こういう時は自分から謝っておきたい俺はなぜか

 

「なんかヤダ...」

 

 と言って扉を閉めてしまった。それをした瞬間やってしまったと思った。仲直りできるチャンスを二回も失ってしまったのだ...そう思った俺は昼飯も食べずにベッドインしてふて寝した。

 

 

 

 

ひなた視点

 

「なんかヤダ」

 

 そう目の前で拒絶され、ドアは勢いよくしまった。

 

「あ......あ...ああぁ」

 

「えっと...その...逆効果になってしまったようでなんか...ごめんなさい...」

 

 千景さんが申し訳なさそうに過ってくる。

 

「いいんです...いいんですよ...ここから先は私自身で解決します...協力していただきありがとうございました」

 

 私がこの世界に絶望したような顔でそう言うと千景さんは少したじろぎながら

 

「そう...がんばって...」

 

 と言って自分の部屋の方へ向かった。

 

「一回寝ましょう...」

 

 そう私は呟き、自分の部屋へと向かった。

 

(はは、本格的にひなとは私のことを嫌ってしまったようです...喧嘩はしたことはなかったから、謝れば許してくれるは机上の空論でしたけど...あんなふうに拒絶をされるとは思いもしていませんでした...)

 

 

 

 

ひなと視点...

 

 ふて寝から目覚めて時計を見るともう十九時を表示していた。

 

(俺から謝ろうとしていたからあそこでお姉ちゃんを突き放したんだ...そろそろ気まずいとかいう感情を無視して、お姉ちゃんのところへ向かわないと...)

 

 そう心の中で決心し、俺は重い腰を上げお姉ちゃんの部屋へと向かった。

 

 

 

 

ひなたの部屋の前...

 

 お姉ちゃんの部屋に着いた俺は心呼吸をしてから一度落ち着き、足を震わせながらノックをした。

 

「お姉ちゃん...いる...?」

 

 そう震えた声で部屋の主に問いかけると、ゆっくりと扉が開き少し目の周りを赤くしたお姉ちゃんが出てきた。

 

「どうぞ...」

 

 そう一言だけ発し、お姉ちゃんは俺を部屋の中に案内した。

 お姉ちゃんがベットに腰掛けた瞬間に俺はお姉ちゃんに向かって土下座をした。

 

「ごめんなさい!二回も謝りに来てくれたのにあんなに突き放して!本当にごめんなさい!」

 

 思いっきり頭を下げたせいで床にごっつんこしてものすごく痛かったが、気にせずに俺は謝罪の言葉を口にした。

 

「なんでひなとが謝るんですか...悪いのは無理やりキスした私でしょうに...それに頭大丈夫ですか?」

 

 お姉ちゃんは苦笑しながらそう言った。

 

「いや、別にあれされてめっちゃ恥ずかしかったけど別に他の人に見られていたわけじゃないし、ファーストキスだったシチュエーションとも思ったけどそこまで嫌っていうわけでもないし...とりあえずいやでもないし突き放した俺の方が悪いかなーって...」

 

 お姉ちゃんは苦笑いのままだったが

 

「そうですか...そうですか...!」

 

 とうれしそうにつぶやいた。お姉ちゃんは立ち上がり棚の中をガサゴソとあさり、一本の棒を取り出し床に正座した。

 

「じゃあ仲直りの証として耳かきをしてあげます。ほら、こっちに来てください」

 

 そう言ってお姉ちゃんは自分の膝をポンポンとしてきたので俺はお姉ちゃんの方へ行きお姉ちゃんの膝を枕にして床に寝そべる。するとすぐに耳かきが始まり、その心地よさから一気に眠気が襲ってきた。

 

 

 

 

ひなた視点...

 

 私はさっき仲直りしたばかりのひなとを耳かきしながら独り言をつぶやく。

 

「私は喧嘩をして少しうれしかったですよ?私たちは全くと言っていいほど喧嘩をしてきませんでしたから...こんなに口をきかないという感じの喧嘩ができて姉弟っぽいことができてよかったなと思いました。もうやりたくはないですけどね...」

 

(相変わらず耳かきをするとすぐに寝る弟ですね)

 

 私はそんなこと思いながら、耳かきを終わらせ、ひなとを持ち上げなが自分のベッドに寝かせ、電気を消して私もベッドに入った。そして

人生で何度目かもわからないひなととの濃厚なキスをして

 私も眠りについた。




ワンパターンになると思ってはいますが結局一緒に寝ましたね!
ひなた様やばいの巻きでした...
そういえば最近ゆゆゆ二期をまた見始めたのですが、なんか見ているうちに元々書く気のなかったしおすみの章も書きたくなってきましたね...アニメ一期が書き終わった後の話になりそうですが...
次回から日常ではなくなります...やっと進める


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第29話 最後の戦いpart1

さって久しぶりの戦闘回です...
いつも通りかな...?
まどマギのネタバレ?があるのでもし見ようとしている方は注意です。
主観になったり三人称になったりいろいろごっちゃです...読みづらかったり、描写がわかりづらかったらすいません...


 俺らが日常を満喫している間にバーテックスが四国へ襲来し、最後の戦いが始まった。

 樹海に覆われた四国の地で、戦う勇者はたった二人ではなく、六人。そう六人なのだ。

 

(イレギュラーが起こらない限り奉火災や長野での犠牲を除いた犠牲は起こらずに戦いを終わらせることができる...)

 

 そう思いながら俺は丸亀城本丸城郭に立ちながら遠くの壁の方から迫ってくるバーテックスの大群を見た。

 無限にいるんじゃないかと思わせる通常個体の中にひときわ巨大なバーテックスの姿が複数あった。

 

「大型バーテックスは七体ですね...」

 

「瀬戸大橋の近くで見た、あのすっごくでかいのはいないんだね」

 

「そうね...完成していないのかしら...」

 

 四国に侵入してきた七体の大型バーテックスは、以前のサソリ型と同程度の大きさの個体だ。

 

「だが、それはそれで好都合だ。先に大型七体を倒し、敵の戦力を削ぐ。そうしておけば、後であの超巨大バーテックスが現れても、全員で対応できる」

 

「で、誰がどいつを倒すんだ?」

 

 球子がそういった瞬間目線が一気に俺に集中した。

 

「え、俺が指示するの?」

 

「そうですよ...だってひなと君敵の情報知っているじゃないですか」

 

「えー...じゃ、あのなんか長い体を持つバーテックス!」

 

 そう言って俺はアリエス・バーテックス(牡羊座)を指した。

 

「あいつは斬っても分裂して確か司令塔みたいなやつがいるやつだから全体攻撃の杏が行くのがいいんじゃない?で次、四本の角を持ってるやつ!」

 

 カプリコーン(山羊座)(ここからバーテックスを省略します)を指した。

 

「あれは地震を起こしてくるやつだからだれが相手してもよし!次、下半身を膨らませているやつ!」

 

 チュートリアルもといヴァルゴ(乙女座)を指した

 

「あれが結果的に友奈を殺めたヤツ!でも三百年後だとチュートリアル!単体で相手をするんだったら誰でもいい!」

 

「きっぱり言わなくてもいいじゃん...」

 

 友奈が肩を落としたが樹海への腐食が始まっているため気にしている暇はない。

 

「次!あのクラゲみたいなやつ!あれは地面に潜るから引っ張り出せるのがいいかな?友奈とか無理やり引っ張れそう。次!あのへんな棒を従えている奴」

 

 俺はピスケス(魚座)を指した後に、キャンサー(蟹座)を指した。

 

「あれは固い盾を出してくる!俺は使わなかったけど確か玉藻の前って腐食系の技を使えるはずだからちーちゃんが行ったらいいと思う」

 

「次!なんか水を宙に浮かしている奴!」

 

 アクエリアス(水瓶座)を指した。

 

「感電させるか蒸発でもさせればいいんじゃない?知らんけど」

 

「えぇ...もっと詳しくできないんですか?」

 

「こちとら十四だか五年前の記憶を必死こいて思い出してるんだ。ここまで覚えているだけでもすごいと思ってくれ!次でっかい口の下に顔があるやつ!」

 

 サジタリウス(射手座)を指した。

 

「あれ強力かつうぜぇ遠距離攻撃してくるやつ!見ててイラつくから俺が相手をする!あと四つの角があるやつも」

 

「私情が出てるわよ...」

 

「と言うか大丈夫なのか...?私が二体やってもいいんだぞ?」

 

「私情抜きにしたらお前が一番死んじゃまずい人物だから!死なないだろうけど...俺が切り札を使っても一番影響が出ないから俺が頑張るただそれだけ」

 

「とりあえず各自ひなと君に言われた敵を倒せばokだね。じゃあ、始めよっか」

 

 これが最後の戦。全員一切の出し惜しみはしないししたら負ける。俺以外が目を閉じ、体の内側に意識を集中ゐている間に俺は電王ベルを装着し、黄色いボタンを押す。

 

『♬~』

 

 キンタローって感じの待機音が鳴り響く。ほんの少しその音を堪能してからベルトにスマホをかざした。

 

『スネークフォーム』

 

 その瞬間宙に、黄色の金糸梅の形をした髪留めが二つ、何かの骨みたいなのを鎧にした服、前が開いているロングスカート後ろの髪を止めるリボンの形をした骨っぽいもの、そして水の竜のオーラを宿した刃こぼれした剣が出現した。簡単に言うと、UR白鳥歌野なりきりセットだ。そしてそれはくっつき、髪が昔(平安)の日本の女性がやっていたようなものになり、服が変わった。

 俺が姿を変えたと同時に少女たちは神樹の持つ概念的記録にアクセスし、精霊の力を引き出した。

 

来い―酒呑童子!

 

降りよ―大天狗!

 

来なさい...玉藻の前!

 

来て―風神!

 

雷神!

 

 そう少女たちが言った瞬間俺の中にいた精霊は八岐大蛇以外いなくなった。そして各自姿が変わる。

 友奈は大きい桜の花びらの髪留めでいつものように髪をポニーテールにし、着脱可能かどうかは知らないが角をカチューシャのように装着し、めっちゃ大きい手甲を装備した姿になった。

 若葉は黒と赤が混じった背丈ほどの羽が生え、くちばしとそのくちばしの左右に葉っぱがつけられた首飾りをし、Tの形をしたよくわからん髪留めで友奈とはまた違うポニーテールっぽい髪形にし、服が白い着物になった。

 ちーちゃんは服が十二単になり、九本のキツネのようねしっぽが生え、頭にはやはりキツネのような耳が生えていた。

 杏は髪がオレンジ色になり、二本の水色の角を生やし、よく風神雷神の絵で見る白い袋を後ろに浮かしており、雪女郎を宿したときの勇者服の緑色バージョンとなっておりタイツが消え、右足だけ黒い長い靴下をつけていて靴が下駄になっていた。

 球子は髪が白になり、一本の水色の角を生やし、これまたよく例の絵で見る太鼓を後ろに浮かしており、火車を宿したときの勇者服の白バージョンとなってタイツだか何だかが消え左足に白い長い靴下をつけ、これまた同じように靴が下駄になっていた。

 

 比類なき力の権化、魔縁の王、白面金毛九尾の狐、観音の護法神、洪水の化身。人の身に余る力を宿した者たちは人の世を滅ぼさんとする天敵たちを見据えた。

 まずは通常個体のバーテックスの群れが、先遣隊のように丸亀城へ到着する。しかしすでに通常個体程度では、一年間その身を削りながら戦い、鍛錬を続けた勇者たちの敵ではない。

 友奈が拳を振るい、若葉が刀を一閃し、千景が妖術を使い、杏と球子は連携をしてバーテックスをまとめて倒し、ひなとは若葉と同じように水を支配する竜神のオーラのついた刀を振りすぱすぱと切っていった。

 そしてある程度通常個体を倒した後に各自自分が倒すバーテックスのもとへ向かった。

 

 

 

 

友奈視点...

 

 友奈は地中へ潜った大型バーテックスを追っていた。

 

(ひなと君は私なら引っ張り出せるとか言ってたけどどうしよう...)

 

 大型バーテックスは刻一刻と神樹へ近づいていくが、全く地面に出てこない。

 

「うう、出てこなきゃやっつけられない...!このままじゃ、神樹が...」

 

(バーテックスによって神樹が壊されちゃったら...四国が滅んじゃう!)

 

「こうなったら...最後の手段!」

 

(ここらへんかな!)

 

 友奈はバーテックスが潜伏して移動しているあたりの地面を、拳で殴りつけた。その一撃で大地が揺れ、地にクレーターができるが、敵はいまだに浮上しなかった。

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 

 友奈は百裂肉球がごとくすさまじいスピードと威力で、地面をたたき続ける。無数の地鳴りが続き台地が抉れていき、やがて潜伏するバーテックスの体の一部が見えた。

 

 友奈の拳がついに地中のバーテックスに直撃し、体の一部が粉砕される。だが、なおバーテックスは地中を進み続けようとする。

 

こっのおおおおおおおおおおおっ!

 

 友奈は大型バーテックスのひれのような部分を掴み、力ずくで自面から引きずり出した。

 

(ひなとくんが私なら引っ張り出せるって言ってたのが理解できたよ!)

 

 そう友奈は思いながらやっと地上に全身をさらした大型バーテックスに、友奈はとどめの一撃を喰らわせた。

 

 

 

 

 

 

若葉視点...

 

 若葉は、友奈の方へ行こうとしていた膨らんだ下腹部を持つバーテックスの相手をしていた。

 

(私に友奈を殺めたバーテックスを当てるとは...もしかしてひなとは試しているのか?私がまた復讐心だけで戦おうとしているのか...それを見るためだけにやってるのだろうか...?しかしあのバーテックス...前ひなとが精霊を使いながらも苦戦していたバーッてクスなのでは...?誰でもいいとは言っていたが、自分が苦戦した相手を誰でもいいとかいうはずもない...と言うことは私はひなとに信頼されている...?だとしたら...少しうれしいな...)

 

 そう若葉は思いながら目の前の憎むべき敵を冷静に見つめる。するとバーテックスの下半身が膨らみ始めたので若葉は容赦なくバーテックスを斬りつけ下半身を消し去った。敵は白い帯を振るって若葉を吹き飛ばそうとしたが、冷静に最低限の動きで避けた若葉の一閃によって奇妙な声をあげながら粉々になって消滅した。

 

「なんでひなとはこいつに苦戦していたんだ...?」

 

 若葉はそう呟きながら、近くにいる通常個体の殲滅を始めた。

 

 

 

 

千景視点...

 

 千景は、同じく友奈の方へ行こうとしていた浮遊する棒を従えたバーテックスの相手をしていた。

 

(さて、盾みたいのが出るとひなと君は言っていたけど全く出てこないわね...とりあえず攻撃してみようかしら...)

 

 そう千景は思いながら掌で標準を合わせ火の玉を何発も放った。その瞬間棒から反射板が発生し、火の玉がそのまま千景の方へ返ってきた。

 

「っ!」

 

 千景は慌てて避けその反射板を観察する。

 

(傷跡どころか焼けた後まで残っていないわね...これは確かに溶かしたりした方が楽そうね...)

 

 千景は少し手のひらに力を込め一つの巨大な石を用意する。それは玉藻の前自身が変化したもの。生き物を殺す石と伝えられ、毒を発する石...

 

(本当は...この石に物を溶かす力はないのでしょうけど...毒と言うのは捉えようによっては物を溶かすものとかがあるから...いけるはずよね...?)

 

 千景は腕を頭の後ろにやり、思いっきりバーテックスに向けて振り下ろした。その瞬間巨大な石は、バーテックスに向けて放出された。

 バーテックスは火の玉を防いだ時と同じように反射板を展開したが、今度は反射をすることはできず盾なんて元々なかったかのように一瞬でボロボロと崩れていき、すぐに本体にたどり着き、石は盾と同じようにその体を崩壊させた。

 

「意外と楽勝だったわね...」

 

 そう呟きながら千景は出した石をそのまま通常個体の方へ持っていき、バーテックスを腐らせていった。

 

 

 

 

杏視点...

 

 杏は友奈たちとは真反対の方向にいた体に節を持つ大型バーテックスの相手をしていた。

 

(斬っても、とひなと君は言ってたけど私の攻撃、斬撃特性じゃないんだよね...とりあえず敵を一か所に集めようかな)

 

 杏は集中して風神の力を引き出し、一本の矢を大型バーテックスに向け、ボウガンから発射する。その矢が大型バーテックスに当たった瞬間そのバーテックス中心にすごい風が起こり、大型バーテックスがその場から動けなくなり、周りにいた通常バーテックスが大型の近くに集められていった。

 

(吹雪とは風があるからある事象のはずだからいけるよね?)

 

 そう思いながら杏はまたボウガンを大型バーテックスに向けてはなった。その瞬間大型バーテックスに向かって吹いていた風が急激に冷たくなり真っ白になった。通常個体が凍り、粉々に砕ける。そして次第に大型バーテックスも凍っていき、やがて全身が凍って分裂できないほどに粉々に砕かれた。ちなみに杏は吹雪を発生させたときに自分の周りに風のバリアを張っていたので特に自分に被害が加わるということはなかった。

 

(ここら辺の敵を倒すことはできたかな...?)

 

 

 

 

球子視点...

 

 球子は杏が戦っているバーテックスと同じ方向にいた二つの水泡を従えたバーテックスと相まみえていた。

 

「これ雷効くのかー?めっちゃ水固そうだけど...水のくせに」

 

 球子がそうつぶやいていると大型バーテックスは大きな水玉を球子に向けて飛ばしてくる。

 

「あっぶな!あれに飲まれたら終わりだな...ん~どうしようか?...悩んでいるのはタマらしくないな!とりあえずぶっ放して効かなかったらその時考えよう!」

 

 球子は手を天の方へかざす。そうして勢いよく下へ振ると、そのバーテックスの上から黒と紫の混ざった雷が落ち、バーテックスを包み込んだ。そして雷の当たったバーテックスは炭となって消えた。

 

「うわー...」

 

 球子は自分の出した雷を若干引いていた。

 

 

 

 

ひなと視点...

 

 俺は地震を起こしてくるやつと遠距離攻撃をしてくるやつを相手にしていた。今回俺の体を動かしているのは体に入っている八岐大蛇ではなく俺自身で動かしている。こうすることで物凄く性能は落ちるが通常バーテックスの攻撃くらいなら一回だけ防げるバリアを張ることができるのだ。主に受け身ようだ。

 

「さて...最後の一仕事と行きますかな...!」

 

 まずは四つの角を持っているバーテックスが一本ずつ角を伸ばしてきて俺を突き刺そうとして来たので、俺は八体いる竜のうち四体を剣の柄から召喚して、竜に角を食べさせ、角と本体をつないでいる縄みたいなものをかみちぎらせ、攻撃ができないようにさせる。ちなみに召喚した竜の操作は八岐大蛇にやってもらっている。そしては本体だけになったバーテックスにとどめを刺そうとしてところ大量の矢が飛んできたので慌てて避ける。避けたところに向けて、遠距離攻撃をしてきたバーテックスがぶっとい矢を発射しようとしていたので俺は八つの竜の力を一つにした竜を召喚し、ハイドロポンプのような水のビームを放たせる。竜がビームを放った瞬間バーテックスも矢を発射するが、矢は一瞬にして水の流れの方向へ飛んでいきバーテックスはすさまじい水圧によって消滅した。俺はバーッてクスが消滅したのを確認してから水のビームを放たせたまま竜の向きをさっきまで四つの角を持っていたバーテックスに向け、同じく消滅させた。

 

 

 

 

 大型バーテックスを倒すことができたので一回集合することになった。

 

「ひとまず大きいバーテックスは倒すことができましたね」

 

「そうだね!ねぇひなとくん、もう大きいバーテックスは出てこないの?」

 

「うーん...出ないはずだけど...少しだけ本編と違うところがあったから...もしかしたら出てくるかも」

 

「何が違ったんだ?」

 

「バーテックスが最初に出てくる数が違った。本来は最初に出てくるバーテックスは六体で後から俺が対処した遠距離型が来るはずだったんだ...でも最初から出てきた...なんか嫌な予感がする」

 

「いやな予感...?例えばどんnッ⁉」

 

 ちーちゃんが嫌な予感がどんな予感なのか聞こうとしたところで樹海の空気が変わり、全員に悪寒が走った。

 いつもバーテックスが出てくる方向の壁を見てみるとレオ・クラスターよりいろいろ混ざっているレオバーテックスが現れた。

 

「なんだよ⁉あれ⁉」

 

 球子が俺と出てきた巨大なバーテックスを交互に見ながら言ってくる。俺は球子に質問に答えることはできずただただ茫然としていた。

 

「嘘だろ...あれがこの時代に生まれてきちゃダメだろ...」

 

 御霊が入っていたとしたら負け確のこの状況。ただただ俺は絶望することしかできなかった。

 

「あの超巨大バーテックスが成長したものですね...」

 

 杏が少しだけ焦りながら冷静に敵を分析しようとする。

 

「ひなと!しっかりしろ!全員いて、通常個体もそれなりにいるがかなり少なくなってきている!冷静していれば対処できるはずだ!だから冷静になって少しでも敵の情報を落としてくれ...」

 

 俺は若葉に肩をぶんぶんと揺らされて少しだけ冷静になった。

 

(あんなにごっちゃごっちゃになっているのに御霊まで用意されているわけないよな...)

 

「今から話すことは憶測だ。だから少しだけ実際と違うかもしれない...」

 

「それでもいいわ...とりあえず...早く作戦会議を済ませましょう...いつもより...樹海の浸食が早いわ...!」

 

「そうだね...多分あのバーテックスは前壁の外にいた個体が他のバーテックスと合体した姿だと思う。変な棒従えてるし、水も従えてるし、サソリみたいな尻尾もあるし、変な帯、それにでっかい口、六本の角、文鎮みたいなものがあるところを見るに...大体のバーテックスの能力は使えると思う...」

 

「つまり一応見覚えのある技が飛んでくるってことですよね?」

 

「そうなるな」

 

「では、避けながら敵の動きを見るということもできるか?」

 

「そんな簡単なことじゃないと思いますが、時間がありません...そうするしかないでしょう」

 

「では各自散開!何かわかったら大声で叫べ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 しかし散開しようとしたところでいつの間にか前進してきていたバーテックスのサソリのしっぽが俺らを薙ぎ払おうとする。俺らが慌てて上空へ逃げるが杏と球子だけ少しだけ遅れてしまう。

 

ゴーン!

 

 球子たちが浮かぼうとしたところで、バーテックスが思わず耳を塞いでしまうような大きくて不快な音を出した。これによって球子たちはしっぽの薙ぎ払いを回避することができずに吹っ飛ばされる。そしてバーテックスからいくつものの爆弾が生成され球子たちの方向にすべて飛んでいく。

 

(くっ!とりあえずあのバーテックスの一番上にあるベルをどうにかしないと...)

 

 俺は全身を守っているバリアを耳だけにして音を遮断させる。そして剣をロープのように伸ばし、ベルをぐるぐる巻きにして圧迫して粉々にした。だがそれは身動きの取れない球子たちに爆弾が直撃するのと同時だった。そして直撃してすぐにサソリのしっぽが爆弾が爆発して出た煙のある場所を突き刺した。

 

 そして煙が晴れたところを見ると...とても悲惨な状況だった。音によって身動きが取れない状況でも杏を守ろうとしたであろう球子が杏の上にうつ伏せで乗っかっていて、球子の背中から樹海の根の色と赤が混ざったものが見えた。

 

「う...そ...でしょ...」

 

 俺は犠牲が出てしまったという状況を見せられ何もすることができなかった。

 

ああああああああああっ‼

 

 絶望を含んだ叫びをあげながら、千景は七人岬と玉藻の前を同時に使いながらバーテックスに向かって斬りかかりに行こうとした。だが

 

「避けて!ぐんちゃん!」

 

 大型バーテックスから大量の矢が千景に襲いいかかった。千景は避けようとバーテックスから距離を取ろうとするが七体すべてに大量の矢があたってしまい七人岬が解け、矢が刺さりながら墜落していく。そしてとどめと言わんばかりにぶっとい矢が突き刺さり千景と樹海の蔓を突きさした。

 

うあああああああああああああああっ‼

 

 友奈の叫び声が樹海中に届く。そして跳躍し、一瞬の間にバーテックスの真ん前にたどり着き、一撃を喰らわせる。バーテックスが急いで展開した反射板はは砕かれる。

 

「やった攻撃はきkがぼっ⁉」

 

 友奈が少しだけ安堵したとき、友奈は巨大な水泡の中に囚われた。そしてすぐに巨大な水の中に四つの角か突き刺され、小刻みに振動し始める。角の振動によって水が凄まじい速さでかき混ぜられ、脱出しずらくさせられる。そして水泡の中に大量の爆弾が入れられすべてが一斉に爆発する。この間僅かニ、三秒である。友奈は少しだけ焦げた状態になり、脱力したように両手がぶら下げり、重力に沿って落ちていく。そして文鎮が友奈を追撃させる。そして友奈はものすごいスピードで吹っ飛び神樹の前まで飛んでいった。

 

友奈あああああああああああああ⁉ああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼

 

 

 若葉の絶叫が聞こえてきたところで俺は我に返った。そして思考を加速して俺は考える。

 

(俺のせいなのだろうか...俺が中途半端に歴史を変えたからこうなったのか?)

 

 思考を加速した状態でで若葉の方を見る。若葉はバーテックスに考えなしに突撃しておりバーテックスは尻尾で若葉を貫通させようとしていた。若葉は怒りに支配されていてバーテックスが貫通しようとしていることには気づいていないようである。

 

(もうこうなってしまってはやることは一つだけか...歴史が元と同じようへ行くようにしないとね)

 

 そうして俺は若葉の方へ跳躍し、俺の勇者としての力を若葉に移しながら若葉を突き飛ばす。杏と球子をかばった時のようにベルトが壊れるということは起こらずしっかりわき腹が貫通される。

 そうして俺らは樹海の根の間に入る。

 

 落ちて少しだけ離れたが、すぐに若葉が駆け寄ってくる。

 

ひなと!

 

「...結局最後...はこうなるん...だね...」

 

バカしゃべるな!

 

 若葉の目から涙がこぼれ俺の頬に落ちる。

 

頼むよ...私を独りにしないでくれ...

 

「お姉ちゃん...がい...るでしょ...?」

 

 だんだん俺は寒いなと感じるようになった。

 

いる!確かにいるが...!そうじゃないんだ!

 

 もう俺には若葉がなんて言っているのかわからなかった。

 

「おれ...の...ゆう...しゃと...しての...力...たくし...た...あと...お姉...ちゃんも...頑張れよ...乃木若葉は...勇者なんだから...英雄なん...だから...」

 

 そして俺は意識を落とした。

 

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼

 

 そして残された少女は託された力をフルで発揮させ、フルスピードで敵のもとへ向かっていった。敵にしか目が向いていなかったため、力を託してきた者の左腕にさっきまでなかった砂時計が内蔵された盾があることに気づけなかった。

 

ガシャ

 

 そしてその盾はひとりでに回った。そして力尽きたはずの勇者は時間を遡る...

 

 

 

 

おまけ

 

 若葉はフルスピードでバーテックスに向かいながら大天狗の本来の力の炎を身に宿した。そして若葉はそのままバーテックスの方へ突撃して突き刺そうとする。若葉に気づいたバーテックスはしっぽで若葉を突き刺そうとする。しかし、若葉の様々な感情のこもった剣は尻尾なんかでは止まらない。若葉の剣は尻尾をさけるチーズを真っ二つにするように簡単に真っ二つにしてバーテックスへの突撃をやめない。若葉のスピードは衰えることなくやがてバーテックスの真ん前へとたどり着いた

 

一閃緋那兎!(ひなと)

 

 若葉は後ろで倒れている勇者が「そんな恥ずかしい技名ヤメロー!」みたいなことを言いながらどつきに来ることを期待しながら叫び、バーテックスを真っ二つにし、消滅させる。しかしそんなものは来ないし、戦いは終わらない。若葉を中心として発生した熱と炎は、際限なく大きく強くなっていた。

 

その炎は樹海化した世界全体を覆いつくさんかとしているようだった...

 

 その熱の中で、残された通常バーテックスたちは、次々に焼き尽くされていく。

 炎の熱は若葉自身をも傷つけていた。勇者装束は焼け落ち、皮膚はやけどで爛れていく。

 やがて若葉は通常バーテックスを己から発せられる炎で全滅させた。

 

ひなと、見ていたか?守り切ることができたぞ...

 

 返事が返ってこないことを承知で若葉はひなとが倒れたところまで行って報告しようと思った。しかし

 

(なぜだ⁉なぜいない⁉)

 

 ひなとが倒れていたところには血だまりしかなく、ひなとの倒れている姿はなかった。

 

(なぜだ!どうして⁉まさか私の炎がひなとを燃やしてしまったのか?それともまさかバーテックスが...)

 

 若葉は考え込んでいるうちに地に倒れ伏し、再び目を覚ました時、そこは病院の一室だった。勇者としてのお役目が始まってから、すっかり見慣れてしまった白い部屋。

 そして若葉が寝ているベットの横には、ひなたが座っていた。若葉が目を覚ましたことに気づくと、目に涙を浮かべて抱き着いてきた。

 

「若葉ちゃん!よかった...目を覚ましたんですね...!」

 

「ひなた...」

 

「侵攻してきたバーテックスは...みんなの活躍で、すべて撃退されました。四国は守られたんです。でも若葉ちゃんは、ずっと目を覚まさなくて...もう一週間も、眠ったままで...」

 

「そんなに...経ったのか...。痛っ!」

 

「あ、ごめんなさい!」

 

 ひなたは慌てて若葉から離れた。若葉はバーテックスとの戦闘で体中に傷を負ったため、強く抱きしめられると痛むのだ。

 若葉の体は音速を超えるスピードで飛んだ時に体が耐えることができなかったためできた複数個所の骨折、内臓の損傷、そして能力よってできた火傷を含む全身の創傷...どれも勇者として神樹の加護に守られていなければ、命を落としていたほどの重傷だった。

 

「大丈夫だ...それより...ひなとは見つかったか?」

 

「...っ」

 

 ひなとの名前を聞き、ひなたの体が強張り、顔は絶望を現していた

 

「...そうか...」

 

 若葉はひなたの様子を見てすべてを察してしまった。

 

「ひなとは...見つかりませんでした。そして友奈さんも...」

 

「友奈...も...?...ひなとの言った通り皆、死んでしまったか...私以外...皆...もう、勇者は、誰も生きていないのか...」

 

 友奈。いつも明るく、周りを気遣い、どれほど彼女に助けられたかわからない。

 球子。騒がしくて、いつも張り合ってきて、どれほど彼女に元気づけられたかわからない。

 杏。大人しくて戦いに向かない性格なのに、いつも頑張ってきた。前向きな姿が眩しかった。

 千景。たまに喧嘩をし、たまに冷たい態度を取られたりもした。だが、若葉は一番この世界を日常に戻そうとしていたり、人間らしい彼女のことが嫌いではなかった。

 ひなと。一応幼馴染だった。ひなとがいなくなってからひなたが少しやばくなってどうしてくれるんだと思ったし、戻ってきたと思ったらちょっとだけひなた争奪戦が始まるしで、若葉にとってのトラブルメーカーだったし、最後もとんでもないトラブルを持ってきたが戦いのときはその身を削り助けになってくれた。

 けれど...もう...今はすべて、失われてしまった・

 

「うぅ...っ、うううう...っ!」

 

 若葉の口から呻くような声が漏れた。

 

 

 

 

 若葉は長期間の入院と治療を余儀なくされた。

 ひなたは毎日、若葉のお見舞いに訪れた。

 若葉のベッドの横で、見舞い品としてもらったリンゴの皮を剝きながら、ひなたは話す。

 

「失ったものは大きかったですが...でも、みんなのお陰で、四国の防衛は成功しました。結界は強化できて、通常個体のバーテックス程度では、通れないほどの堅牢さになったそうです」

 

「そうか...よかった...」

 

「この国を、神樹の根に守られた国...『根之堅州國』と呼称しようという話が、大社の中で出ているそうですよ」

 

「...うん...」

 

 ひなたの話を聞きながら若葉は生返事を返す。すべての言葉が自分をすり抜けていくように感じた。

 そんな若葉を、ひなたは必要以上に励ますでもなく、ただ彼女の傍に居続けた。

 ひなたはそっと若葉の手に触れる。若葉の身体中に、痛々しい火傷の痕が残っている。

 

「こんなに、無茶したんですね」

 

「...ひなとが私を庇ったり、力を貸してくれたからだ...」

 

 現代の皮膚移植技術や整形医療を駆使しても、この火傷の痕をすべて完全に治すことはできないらしい。だがそれでよかったと若葉は思う。何も残らないのは、この戦いそのものが消えてしまうようで、むしろ悲しい。

 

「...」

 

 ひなたの目は若葉を見つめている。しかしその瞳には感情が入っていなかった。目の前の若葉を見ているようで、何も見ていない...意識がこの場にないような瞳。

 

 

 

 

 結界の強化が成功したお陰なのか、大社が言っていた通り、その後バーテックスが四国に侵入してくることはなかった。

 戦うことなく治療に専念できたお陰で、若葉は順調に回復していった。

 季節が変わっていく。

 時間は流れていく。

 やがて若葉は退院し、また学校に通えるようになった。だがたった二人しかいないこの教室は、既に存在意識を失っているように見える。

 

 そしてある日、若葉は大社から勇者としての任務を指示された。勇者としてのお役目は、随分と久しぶりだ。

 大社曰く、結界の外のバーテックスに常時と異なる動きがみられる、と。侵攻ではなく、何らかの未知の事象が起ころうとしているらしい。それを調査してほしいという指示だった。

 今、若葉とひなたは、瀬戸内海の壁の上に立っている。若葉は勇者装束を纏い、刀を携え、何かあったときにひなたを守れるようにしている。

 今、結界の視界を遮る力により、壁の向こうには何の変哲もない平和な光景が広がっている。

 

「行くぞ、ひなた。ひどい光景だからきっと見るのがつらいと思うが...」

 

「大丈夫です。覚悟はできてますから」

 

 若葉とひなたは、ともに壁の外側へ足を踏み出す。壁上のある位置を越えたところで、急激に視界に映る光景が変わった。

 壁の周辺には、無数の通常個体バーテックスがいた。それらはまとまって大群となり、結界に立つ激して中に入ろうとしているようだが、すべて弾かれている。

 だが若葉にはそんなことはどうでもよかった。

 

「なっ!う、嘘、だ」

 

 そう言った若葉の視線の先には瀬戸大橋があり、大橋の近くには、合体はしていないが倒したはずの超巨大バーテックスがいたのだ。超巨大バーテックスをよく見れば、通常個体による融合は行われておらず既に完成していた。

 そして超巨大バーテックスだけではなく、あちこちに形成途中の大型個体の姿が見えた。過去に倒した大型とそっくり同じ姿をしたものも、再び出現していた。

 

「なんという...ことだ...」

 

 若葉の口から、絶望のつぶやきが漏れた。

 

(もしあの完成したバーテックスが合体するのであれば皆が死んだバーテックスが復活するということか...?)

 

 勇者たちがあれほど傷を負いながら、命を犠牲にしてまで倒した大型バーテックス達。だが、奴らは何体も、何度でも、無限に発生し続けるのだ。

 しかも再出現した大型個体たちは、以前と同じではない。過去に倒した大型個体は、体内が空洞だったのに対し、今形成途中のものは、体内の内側で何かが光っていた。

 

―!

―!

―!

 

 突如、おぞましい音が、超巨大バーテックスから響き始めた。同時にその巨体が輝く

 

「なんだ...⁉」

 

 世界に不快な音が響き続ける。超巨大バーテックスの輝きに呼応するように、他のバーテックス達も光り始めた。

 海の向こう側からは鼓動のような音が聞こえ、大気が震え、海が荒れる。それはやがて強くなっていった。

 若葉は嫌な予感がして、ひなたを抱え神樹の結界に入った。

 

 

 

 

 しばらく時間がたった後、若葉とひなたはためらいながら結界の外に出た。

 

「...!」

 

 若葉とひなたは目をむいた。そこに広がっていたのは、以前と全く異なり、大地は溶岩のようなものに包まれ、時々炎の柱が大地から噴き上がる。そして台地にも空中にも無数の通常個体バーテックスが蠢いている。しかしなぜか大型は消滅していた。

 ひとまずいえることは、以前の地球の姿はどこにもなかったのである。

 

「世界が...壊された...?」

 

「いえ...破壊なんてものじゃありません。これは、世界の理そのものが書き替えられたんです...人類の再起の可能性を...徹底的につぶしているんですね...」

 

 もう世界に残っているのは、結界に守られた四国だけだった。

 

 

 

 

 いろいろあって『大社』が『大赦』となってしばらくしたある日...

 

 ひなたが丸亀城の教室に行くと、まだ若葉は登校していなかった。いつもなら若葉が先に来て、黒板のチョークの準備をしたり、花瓶の水を変えたりしているのだが。

 ひなたは自分の席に座り、教室の中をぐるりと見回してみた。

 この教室に通っているのは、すでにひなたと若葉だけになってしまった。しかし机は以前と同じまま、七つ残してある。

 七人で一クラス。

 たとえ命を落としても、みんなクラスメイトだ。

 

『今日は若葉が来ていないぞっ!タマ、一番乗りだーっ!』

 

『残念、タマっち先輩...ひなたさんの方が先だよ』

 

『がーんっ!』

 

『大丈夫だよ、タマちゃん。明日があるよ!』

 

『と言うかお姉ちゃんが若葉といない...だと...⁉』

 

『そんなにひなたさんは四六時中乃木さんの傍に...いるわね...』

 

 そんな声が、今でも聞こえてきそうではないか。

 ひなたはぼうっとしながら、朝の教室で一人、過ごしていた。

 やがて時間は十分、十五分...と過ぎていく。

 

「...おかしい...」

 

 もうすぐホームルームが始まる時間だというのに、若葉が来ない。こんなことは小学生のころから一度もなかった。

 そう言えば朝の食堂でも姿はなかった。若葉とは昨夜「おやすみなさい」と言って別れてから、一度も彼女に会っていない。最後にあってから十時間以上はたっていて何が起こっても不思議ではないほどの時間であった。ひなたの頭の中にはありとあらゆる不測の事態が思い浮かんでいた。

 

 人は簡単に死ぬ。あんなに死なないと思っていた弟が死んだように

 

「...!」

 

 ひなたは椅子を弾き飛ばすような勢いで立ち上がり、教室の出入り口へ駆けだした。

 

(いやだいやだいやだっ!若葉ちゃんまでいなくなるなんて...!)

 

 なぜ昨夜、若葉と別れてしまったのか。手錠でもしてでもずっと一緒にいればよかった。

 友奈が、千景が、球子が、杏が、そしてひなとが命を落とした。たった一日で四人も死んだ。

 若葉までいなくなったら...一人だけになってしまう。

 そんなことになったら、もう生きていける自信がない。

 

「若葉ちゃ―」

 

「うわ!」

 

 ひなたが教室のドアを開けた瞬間、目の前に若葉が立っていた。ちょうどドアを開けようとして所だったのか、若葉はかなり驚いていた。

 

「どうしたんだ、ひなた?真っ青だぞ」

 

「わ...若葉、ちゃん...」

 

「すまん、色々あって遅くまで起きていてな。おかげで寝坊した。それより何かあったのか?」

 

「う、ううう...うああああああああああああああああっ‼」

 

 ひなたは若葉に縋り付いて泣き出した。

 

「お、おい、ひなた?まいったな...ひなとに託されてからあまり悲しい思いはさせたくなかったのだが...いや、人は悲しくなくても泣くものだな...どうしたんだ?」

 

「だって、だって...!若葉ちゃんが来なくて...ひっく、うう...若葉ちゃんまで...いなくなっちゃったかって...うああああああああああああああああ‼」

 

「ひなた...」

 

 泣きじゃくるひなたの姿を、若葉は驚いて見つめる。

 ひなたは今まで気丈に振る舞わっていた。みんなが死んでも一人で悲嘆することはあっても、決して人前で沈み込んでいる様子を見せなかった。戦うことができなかった自分はせめて強く振る舞うことで回りを落ち込ませないようにしたのだ。

 だから、若葉も周りの大人たちも...上里ひなたはどんなことがあっても落ち着いている、大人びた少女であると思っていた。

 けれどそんなわけがない。

 今まで過ごしてきた仲間が死んで、家族も死んだ。こんなに友達が一日で死んでいった...

 どんなに大切なものでも簡単になくなってしまう。

 ひなたは些細なことにさえ怯えるようになってしまった。もっと友達が死なない保証なんてないから...

 そんな不安などが爆発して、今の彼女は子供のように泣いていた。

 

「うう、ひっく...ううう...」

 

「...すまない。心配させてしまったな」

 

 若葉はひなたの頭を彼女が泣き止むまで優しくなでていた。

 

 

 

 

「ねぇ、若葉ちゃん。前に私がひなとが言っていたように大社のトップになるといった話を覚えていますか?」

 

「あぁ、覚えている」

 

「その時にひなとが死んだときに今までひなとが抑えてきた千景さんを勇者としての痕跡をなくそうとしている人たちの声が強くなってきているという話も覚えていますよね?」

 

「話を聞いたときにかなりイラついたのを覚えている」

 

「はい。そして組織を切ろ森する人間は、心を鬼にしなければならない時があります―たとえ大切なことでも、記録から抹消しなければなりません」

 

 ひなたは自分に言い聞かせるように言う。

 

「...つまり千景を歴史的に消すのか...」

 

「ひ。彼女の記録は...消します。彼女を擁護すると、大赦内での立ち回りに支障が出ますから...そしてそうすることによって球子さん達と一緒に葬式ができなくなります...遺体は遺族のもとへと行きますが、千景さんの親権は今上里家が持っています...」

 

「それでは消す意味がないのでは?」

 

「言ったでしょう?心を鬼にすると...上里家は親権を放棄します...しかし安心してください。大社の中に千景さんを慕っている巫女がいますのでその人に千景さんは任せます」

 

「...政治家のようなことを言うんだな」

 

「ごめんなさい...こうするしか...ないんです...千景さんの名前は予定通り例の塔で残します」

 

「あぁ...バトンをつながないとな...」

 

 

 

 

 西暦時代の終幕。

 バーテックスとの戦いは一時終焉し、しかし勇者と巫女たちの戦いは続いていく...




さておまけの方が内容が濃いのなに?でも最後雑かつ省略してるんだよなー...
残されたもの全然悲しそうじゃないじゃんっていうツッコミはなしね...
色々書きたいことがあったプラスノリで書いた作中での夢のせいでサクサク終わらせるはずのラストがループてきなものになってしまいましたとさ...
ちなみにキボ〇ノ〇ボミだったり、大〇冠聞きながら書きました()


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第30話 最後の戦いpart2

少し適当なところがあるかも、それを含めてのいつも通りです...
感想ありがとうございます!


「おーいひなと―...?おいひなと!」

 

 俺は誰かに肩を揺さぶられたおかげで意識を覚醒させた。

 

「んあっ?なに⁉」

 

「話聞いてたかー?誰があれを倒すんだって話だ」

 

 そう言って球子がさした方には七体の大型バーテックスがいた。

 

(あれ俺さっき死んだのに時が戻ってね?まぁ時が戻るわけないし...さっきのは夢だったのか...?でも夢にしてはなんだかリアリティがすごかったような...)

 

「ひなと君、大丈夫ですか?またぼーっとしてますけど」

 

 杏が心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。

 

「ん、ごめん。最後の戦いってことで少し気が抜けてたかも...」

 

「本当に大丈夫なのか...気持ちはわからなくもないが...最後だからこそしっかり集中だしろ」

 

 若葉が少し厳しい口調で注意してきた。

 

「わりー。であれの対処の仕方だったな?」

 

「ええ...そうよ...」

 

前回と同じ説明なのでカット...

 

 

 

 

 俺は地震を起こしてくるやつと遠距離攻撃をしてくるやつを相手にしながら考え事をする。

 

(もうよく覚えていないけど、この大型バーテックス達をとした後になんかやばいのが出てくるんだよな...)

 

 俺は夢のことを思い出そうとしたが、バーテックスと対峙しているせいであまり余裕がないのと思い出そうとしてももやがかかってなかなか思い出せずにいた。

 考えている途中で四つの角を持っているバーテックスが一本ずつ角を伸ばしてきて俺を突き刺そうとして来たので、一本ずつしっかり避けてからそれぞれをつないでいるロープを剣で斬る。

 そして攻撃手段のなくなった隙だらけのバーテックスの方へ飛び、とどめを刺そうとする。飛んでいる途中、つい夢のことについて考えてしまい周りを確認しないまま斬りかかってしまった。そして斬りかかる時にふと射手座の方向を見ると細かい矢を大量に打ってきた直後であった。

 

(え、やばっ!死んだ...)

 

 俺が死を確信した瞬間だった。

 

「危ない!」

 

 その声が聞こえた直後、俺の周りにバリアが発生しており大量の矢は弾かれていた。

 

「ほらひなと君!早く斬ってください!」

 

 俺はその指示を聞き我に返る。

 

(そうだ...俺こいつを切ろうとしてたんだ)

 

 そう思いだし、山羊座を縦に真っ二つにした後すぐに射手座を横に真っ二つにした。

 

「ほんとに大丈夫なんですか?」

 

 杏に礼を言おうとしたところで、俺は杏にそう聞かれる。

 

「ほんとにごめん...少し考え事をしてた」

 

「気を付けてくださいね?あれ、万能じゃないので」

 

「うん...」

 

 

 

 

取り敢えず大型バーテックスはすべて倒すことができたので集まることになった。

 

 大型バーテックスを倒すことができたので一回集合することになった。

 

「ひとまず大きいバーテックスは倒すことができましたね」

 

「そうだね!ねぇひなとくん、もう大きいバーテックスは出てこないの?」

 

「わからない...」

 

「わからない...?」

 

 ちーちゃんが怪訝そうに聞き返してくる。

 

「うん...本当は出てこないはずなんだよ?でも...でもね?心...いや、本能かな?がのもすごくもやもやして危険信号を出しまくっているんだ。このままじゃだめだとか、ものすごいやばいのが出るって感じで」

 

「もしかしてひなと君の考え事って...」

 

「うん...そのもやもやについて考えてた」

 

(夢で起きたことなのに...あまり関係のないことなのに...)

 

 俺はそんなこと思いながらもこれから起こることが夢の通りに行きませんようにと願った。もし起きてしまったら...俺は絶望して動けないだろうと思ったからだ。

 だが、現実は願っただけで簡単に事が解決したり不安なことが取り除かれるようなことにはならない。

 突然樹海の空気が変わり、全員に悪寒が走った。

 いつもバーテックスが出てくる方向の壁を見てみるとレオ・クラスターよりいろいろ混ざっているレオバーテックスが現れた。

 

「なんだよ⁉あれ...おいひなと...?」

 

 球子が俺とレオを交互に見ながら言ってくるが、俺はその球子の質問について考えている暇はなかった。

 

(なんで!どうして!やっぱりあれは夢じゃなかった!どうしよう...!勝てるビジョンが出てこない...なんでこうなるの?この前までは多少のいざこざはあれどうまくいってきたのに...やっぱり俺のせいなの?俺が存在するからもっと悲惨なことが起こるの?あ、ダメだ...怖くて足も動かないや...そもそも結構ビビりな俺が頑張ったほうだよ...しかもそのビビりは能力で無理やりなくしただけだし本当に恐怖を克服したわけじゃないんだ...あぁ怖いな...このまま何もできずにみんな殺されていくのかな...はははははははははははははははははははh・・・)

 

 俺がそう思っていると急に俺の体が宙に浮いた。でも俺はそのことにもどうでもいいという感情が湧いていた。やる気とかその他諸々がなくなったのである。

 

 

 

 

 

その他の勇者視点...

 

「なんだよ⁉あれ...おいひなと...?」

 

 本当は『あれ』の部分も叫ぼうとしたが、ひなとの顔があまりにも絶望の色に染まっていたので球子は思わず叫ぶのをやめて声をかけた。

 球子が肩を揺さぶっても、千景が頬をつねっても、友奈が軽いマッサージを肩にやっても、杏が色々なところを突っついても、若葉が鞘で軽く頭を殴ってもひなとの顔は変わらず、体も微動だにしなかった。

 

「戦意を喪失してしまっている...?」

 

 若葉が驚きながらそうつぶやく。今までひなとは日常生活では格好怖がりなものの樹海となればたちまちその怖がりがなくなっていたので今更⁉と驚いてしまったのだ。

 

「っ‼皆さん避けてください!」

 

 ひなとを見つつ超大型バーテックスを見ていた杏が叫んだ。それを聞いた勇者たちは反射的に上へ飛んだ。いち早く気づいた杏はひなとを抱えながら飛んだ。

 

「一回樹海の根の間に入れ!」

 

 若葉がそう指示をし、それぞれが根の間に入り合流する。

 

「とりあえずここら辺に置いておきましょう」

 

 そう言って杏は根がちょうど背もたれになるようにひなとを置いた。

 

「それにしても...ひなと君がここまで...絶望に浸る相手って...どれだけやばいのかしら...」

 

 千景はひなとを少し心配したような顔で言う。

 

「もすごく注意をして戦わなくちゃね...」

 

 そう友奈が言った瞬間

 

ゴーン!

 

 樹海中にこの世のものとは思えないほどの思わず耳を塞いでしまうような音が鳴り響いた。

 

(まずい!奴らもしかしてこうやって私たちが動けない間に神樹の方へ行こうとしているのか)

 

 若葉はそう考え何とかできそうな杏に声をかけようとしたが。そもそも耳を塞いでいて自分の声が聞こえないだろうということに気づき、声をかけるのではなく目で『何とかできるか?』的なことを聞く。杏は若葉の言ってきたことを察し、跳躍する。そして耳を塞ぐのをやめてボウガンを持つ。そして嫌な音に耐えながら、矢を音の発信源であるバーテックスの頂点にある鐘の方へ放った。すると鐘の周りだけ空気がない真空状態になり、音は鳴りやんだ。

 

「やった!成功した...」

 

 杏はそう安堵したが、そう呟いた一秒後には彼女の姿はそこにはなかった。

 

あんずうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううっ‼

 

 彼女は鳴りやまった瞬間バーテックスから鞭のようにとんできた尻尾に弾き飛ばされ、樹海にたたきつけられ、さらに追撃のしっぽのプレスでその命が断たれてしまったのだ。

 

「くっそー---------------!」

 

 球子は怒りながら跳躍する。

 

「土居さん⁉待ちなさい!」

 

 千景は今バーテックスに突撃しても死ぬだけだと思い、球子を止めようとする。しかし止めることはできず球子はバーテックスの真正面に行き手を上にあげる。

 球子が雷を放つのとバーテックスが斜め上に大量の矢を放つのは同じタイミングであった。

 

「嘘だ...」

 

 球子が出した雷はバーテックスよりも上に合った金属の矢にすべて吸われてしまった。そしてその矢は勢いを落とさぬまま球子の方へ落ちていく。今の球子なら余裕で避けられていただろう。しかし

 

ゴーン!

 

 最悪の状況で杏が放った矢の効果時間が切れていまい、周りが真空じゃなくなったベルが再びなり始めたのだ。

 思わず球子は耳を塞いでしまい動けなくなる。

 

(あぁ...結局タマはなんもできずに死んでいくんだな...)

 

 球子は矢を避けることをあきらめ、目を瞑る。しかし自分の体にやってきたのは刺さってくる矢の衝撃ではなく、人にタックルされたような感触だった。驚いて目を開けると目の前には千景がいてすぐ近くには矢があった。球子に当たるはずの矢は球子をタックルした千景にすべて当たり、千景は根の方へ落ちてった。

 

(ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼タマが諦めたせいで...!一人で突撃したせいで!...ああああ‼)

 

 球子がそう思っていると、突然自分の体が抱きしめられるような感覚になり樹海の根の方へ向かっていこうとしていた。抱き着いてきた相手を見ると死んでないわよ...とか言ってきそうな顔をした千景であった。

 千景がなぜ耳を塞がなくても動けるかと言うと、一時的に指定した体の期間が使えなくなる代わりに身体能力が大幅にアップする妖術を使っい、聴力を失ったからだ。

 千景は球子を抱えながら若葉たちがいるところへ向かおうとする。しかし、バーッてクスが突然回り始め、それによってできた竜巻に吸い込まれそうになり、なかなか前に出ることができなかった。

 

(っ⁉)

 

 千景がバーテックスを見ると、バーテックスはただ回っているだけじゃないらしく、文鎮みたいなものを振り回しながら回っていた。千景はあれがぶつかったときのことを考え、ぞっとしながら七人岬を使用し、七人の力で竜巻を抜け出そうとする。しかし、七人の力を使っても竜巻を抜け出せず文鎮が球子を含めた全員に当たり、千景たちは吹っ飛ばされ、若葉たちの周辺にたたきつけられた。文鎮に当たったときからもう二人は瀕死の状態になっていて、樹海に激突したときに完全に意識を失っていた。二人分の血が大きな血だまりを作っていて、残された勇者に生存を諦めさせた。

 

「「っ―――――――――――――――――――!」」

 

 バーテックスが大きな音を出しているせいで回りには聞こえないが、残された勇者はバーテックスへの怒りと自分を鼓舞させるために叫ぶ。大きく不快な音が出ていて、耳を塞いでいたが根性で耳を防ぐのをやめ、二人でバーテックスの方へ跳躍する。

 バーテックスは相変わらず回っていたが、若葉は自分の翼をはばたかせ、竜巻に巻き込まれないところまで行った。そして竜巻の中心にいるバーテックスに上から攻撃し忌まわしいベルを壊そうとした。しかし、バーテックスの反応の方が早かった。バーテックスは若葉が突っ込んでくるのを確認するなり反射板を発生させ、若葉の攻撃を防いだ。そして自転のついでに尻尾でカウンターをするが、若葉はひらりと避けた。そして友奈も若葉と同じように上から来て、若葉の攻撃を防いだ反射板を攻撃し粉砕した。若葉は友奈が反射板を破壊したのを見て、再度ベルを攻撃した。もともと脆かったのか、ベルは簡単に粉々になった。

 体の一部分を破壊されたバーッてクスはひるんだのか回転をやめ、若葉たちを引き離そうとまた尻尾を振った。若葉たちはその尻尾を後ろに飛んで避けた。そしてすぐにバーテックスから矢が大量に飛んできて二人は引き離された。

 

「―――――。っ⁉」

 

 若葉は友奈に呼びかけようとしたが、自分の声が聞こえないことに気づく。至近距離で大きな音をずっと聞いていたせいで耳が聞こえなくなっていたのだ。友奈の方を見ると友奈も同じような感じなのか、少しおろおろとしていた。

 そしておろおろしている間に、バーテックスは巨大な太陽を作り出し神樹に打ち込もうとしていた。

 二人はバーテックスを止めようとするが、一足遅く太陽を神樹に向けて発射した。友奈はバーテックスを止めるのをやめ、太陽を破壊しようとし、若葉はバ-テックスを止めようとしていた勢いのままばーてkkじゅすに切りかかり、六本ある角のうち一本を切り落とした。そして友奈の方を見ると

 

ドーン!

 

 友奈が防いでいた太陽が爆発していた。バーテックスは最初から神樹を狙っていなかったのだ。神樹を狙えば一人は止めに入るだろうと考えたバーテックスが、飛距離は出ないが一定時間たてば爆発する太陽を出し、止めた友奈を爆殺させたのだ。

 友奈は黒い煙を体から出しながら樹海へ落ちていった。

 それを見て若葉は怒りに力を任せバーテックスについていた角をすべて切り落とし、次は本体を切ろうとしたところでバーテックスは尻尾で若葉を薙ぎ払おうとした。若葉は避けることができず刀で受け止めたが吹っ飛ばされる。吹っ飛んだ先をバーテックスの白い帯のようなものが攻撃し、また若葉を樹海に向けて振っとばした。そして吹っ飛んでいる若葉に対し空中で爆弾で追撃をした。すべての爆弾に当たった若葉はすさまじい勢いで樹海の根にぶつかり根を貫通させて、ひなとの近くに墜落した。ダメージはすべて刀で軽減できたもののもう瀕死であった。

 

 

 

 

ひなと視点...

 

(なんか静かになったな...さっきまで不快な音なり、叫び声なり、爆発音がしてたなりしていたのに...)

 

 俺はそう思いながら意識を覚醒させ、現実を見る

 

(なんだよ...これ...)

 

 そうして俺の目に映ったものとは、杏が血を出して根にめり込んでいたり球子とちーちゃんが血だまりを作りながら倒れているところだったり、友奈?が黒焦げになって横たわっているという何とも悲惨な光景だった。

 

(これが俺が恐怖に負けた代償か...)

 

ドン!

 

 俺がそんなことを思っていると頭上から急にそんな音がして若葉が落ちてきた。

 

「うお!びっくりしたっ!...え...若葉...?」

 

 落ちてきた若葉は傷だらけになっており、もう死にそうであった。

 

「ひ...なと...やっと目を...覚ましたか...戦ってもいないのに...戦意喪失...するな...なぁ...もう遅いかも...しれないが...お前ならなんとか...できるんじゃ...ないか...?頼む...このまま全滅なんて...私は御免だ...やりたいと...思っていたことがあるんだ...この世界を...壊させたく...ないんだ...私たちの抵抗が...無駄になってしまうようで...そんなのは...嫌なんだ...だから...生きてくれ...この世界を守ってくれ...そして...みんなのことを...死ぬまで覚えていてくれ...信じて...いるぞ...」

 

 若葉はそんなことを言って意識を落とした。呼吸はしておらず、俺にさらなる絶望を与えるには充分であった。

 

(あぁ...お、俺のせいだ...序盤は絶望だが必ずハッピーエンドが訪れる世界がバットエンド路線に傾けさせてしまった...これじゃ...未来が...)

 

 俺は何にもしていないのに涙があふれていた。

 

(ごめん若葉...俺には無理だよ...だって仲間が...大切な人が死んでいるのに怒りじゃなくて恐怖心の方が強く出ているんだもん...ほんとにごめんね...何でこんなに悲惨になるんだろう...こうなるなら最初から言ってくれよ...俺の行動によってまだハッピーエンドになる物語がバットエンドになるのであれば...俺は最初から勇者になんてならずに、最初のバーテックスの侵攻で死んだのに!...いや...やっぱり違うな...俺が勇者になったのはゆゆゆいをやって、幸せな空間、時間を見て本編もこうなればいいなって思っていたからだ...そして可能なら救える範囲ですくってその幸せをリアルで目の前で見るためだ!今はもう無理かもしれない...でもなんか知らないけど俺は過去に戻ることができた!きっと今回も戻れるんだと思う。だったら!今戦って敵の行動パターンを見て、倒し方を見つけないと!)

 

 そう心の中で決意し俺は立ち上がった。

 

(でもまだ恐怖心の方が勝ってるな...立ってもめっちゃ足震えてるし...どうしよ...何か別の感情があれば恐怖を打ち負かせそうな気がするんだけど)

 

 そう思い俺は周りを見渡す。仲間の死体が見える。

 

(そうだよ...怒りだよ。なんで俺は仲間が死んでいるのにこんなに平然としてるんだよ...もしかして慣れちゃったのかな...はぁ...なんか自分に対してイラついてきた)

 

ちーちゃん。前世を含めて初めて付き合った人。最初は警戒されてあんまり仲が良くなかったっけ...

球子。なんか胸を触ってきたことしかない気がする...

杏。杏の貸してくれた本、どれも面白かったな...

友奈。ちーちゃんのことが好きなのかたまに睨んできたよな...たまにからかってくるし最後には寝取る宣言してきたし...人って結構変わるもんだな...変えたの俺だけど

若葉。俺が転生してからの初めての友達。俺よりもしっかりしてたけどたまに抜けてたな

 

 だけどもういない。俺とバーテックスのせいでみんな死んでしまった。

 

(それなのに俺は...ただただ震えていただけである)

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」

 

 ただただ自分が憎い。勝てないバーテックスが攻めてきたからって恐怖が出てきて動けなくなってしまいにはやる気がなくなって、救えたかもしれない命を捨てて...そんな思いをすべて叫び声にした。

 すると空中にディケイドライバーが出てきて勝手に装着され勝手にバックルが引っ張られた状態になった。そしてライドブッカーから一枚のカードが出てきて勝手にディケイドライバーにセットされる

 

『FORMRIDE...』

 

 それは戦えば戦うほど強くなるという特性と優れた戦闘センスを持つ種族

 ディケイドライバーのバックルが勝手にしまった。

 

『サイヤ人』

 

 神に作られた体...それは体の構造を色々変えられるようになる。ひなとが女になれるのも、仲間の姿になれるのも体が千差万別に変化ができるからだ。出なければ骨格が変わっているのに余裕なかおはできない。

 体が千差万別に変化ができる...すなわち種族も変えられるということだ。

 

 急に俺の尾てい骨あたりが熱くなり新しい神経が作られる感覚がした。そして体が丈夫になり、髪がポニーテールになり、体が戦いを求めているのか目の前のバーテックスを見た時の恐怖心がなくなった。

 少し体に思いっきり力を入れてみる。すると髪が金髪に、目が緑色になり、力があふれ出てきた。つまりスーパーサイヤ人になったということである。俺は拳を握り自分の力を確認してから上空へ飛び、バーテックスの真正面を陣取った。

 

「今まだの恨みも込めてじわじわとなぶり殺しにしてくれる...」

 

 そう呟きながらバーテックスに向けて指を指した後に、俺は金色のオーラを纏いながらバーテックスに向けて突撃をし一瞬で背後に回り込み、尻尾を引きちぎりその辺に投げ捨てた。そして両端についている文鎮みたいなものを拳で殴り、粉々にする。文鎮を破壊したところでバーテックスの下の方から爆弾がたくさん発射され、俺の方へ向かってくる。俺は冷静に手から気弾を出し、すべてを爆発させる。そして爆弾が出なくなったところですぐに近づき、爆弾が出てきたところを吹き飛ばす。すぐに上に行き水がついているところを吹き飛ばした。

 一通り部位破壊をしたところで俺はバーテックスから距離を取りボロボロになったバーテックスを見る。

 

「ざまぁねぇぜ...」

 

 そう思いながら俺は拳に気を集める。

 

「これで終わりにしてやる...」

 

 俺はバーテックスの中心に向けて超加速し、貯めた気を一気に放出しようとした。しかし、あともう少しと言うところでスーパーサイヤ人が解けただのサイヤ人になり、体に力が入らなくなる。

 

「なっ⁉」

 

 なれない変身形態に、その強化フォーム...体力の消耗が激しいのは明らかであった。しかし、おれはサイヤ人になったことで好戦的になり残虐性が少しだけでき、そのことに気づかず、すぐ本体を攻撃していたら終わったのに、部位を破壊するなどの戦闘時間を延ばすという無駄なことをしたのだのだ。こうして俺はまた戦犯になった。

 バーテックスは俺を白い帯で巻き付け何回も地面にたたきつけた。

 

「あぐぅ!ひぐぅ!あが!ごほっ!・・・」

 

 サイヤ人となってしぶとさが上がったのか何回たたきつけられても物凄い苦痛が来るだけで死ななかった。そしてバーテックスは俺を叩きつけながら神樹の方へ移動していき、やがて神樹の前に着いた。

 この時の俺は体のあらゆるところから血が出ており、手足はあり得ない方向へと曲がっていた。

 神樹の前に着いたバーテックスは今まで地面にたたきつけていた俺を神樹の方へ叩きつけるようになり、神樹にひびが入っていった。やがて神樹全体にひびが入り、神樹は砕けた。

 そして樹海化が解けていく。バーテックスは神樹が消滅したのを確認すると俺を丸亀城方向に投げ飛ばした。

 

 

 

 

ひなた視点...

 

 ひなたはいつもの朝の鍛錬を見るためにグラウンドに来ていた。すると突然大きな地震が起きた。

 

「すごい揺れですね...」

 

 そう独り言をつぶやいていると

 

ずさぁ

 

 突然近くに何かが飛んできてグランドを数十メートル移動した。

 

「な、なんですか⁉...え...?うそ...ですよね...」

 

 その飛んできたのは赤い液体が大量についていた。そしてその飛んできたものが本能で自分の弟と言うことにも気づいてしまった。

 

「うぅ...ひなとぉ...」

 

 ひなたは自分の服やいたるところが血で汚れるのを気にせずに抱きしめ、泣きながら呼びかける。

 

「お、ねえ...ちゃん...?ご、ごめんね...?守れなかった...」

 

「いいんです...いいんですよ...もしかしたらこうなる運命だったのかもしれません...」

 

 そう言ってると四国中にサイレンが鳴った。少し耳をすませば悲鳴のようなのも聞こえる。

 

「結局ひなとが言っていたことがほんとになっちゃいましたね...こんなことならもっとすごいことをして...もっとみんなといろんなことをしとけばよかった...」

 

 二人で抱き合っているとやがて爆弾のようなものが飛んできて二人を吹っ飛ばした。

 

 

 

 

 薄れゆく意識でひなとは思う。

 

(若葉と寝るまでは見ていた夢はこのことを示唆していたんだな...少し違ったけど...つぎがあるとしたらもう何も怖くないから...うまくやりたいな...)

 

 そう思っているひなとは痛めつけられて神経が機能していなかったからか左腕に砂時計の内蔵された盾があることに気づかなかった。

 

ガシャ

 

 そして盾はひとりでに回った。そして再び勇者は時間を遡る...




ひなと君戦犯回です。
何やってんだこいつ
次回で終わるといいね


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第31話 最後の戦いpartクライマックス

勝手にハーメルンがpc用の方のになってて混乱したエフさんですどうぞよろしく。
ポンコツなのがいつも通りであるということを確認して成長しないなーと思う。
長くうざったらしいループも今回で最後です。やったね!


「おーいひなと...?おいひなと!」

 

 俺は球子に揺さぶられて意識を覚醒させた俺が見たものは心配そうに見てくる仲間たちの姿だった。生きている姿を見て俺の視界はぼやけた。

 

「えっ⁉タマもしかしてなんか悪いこと言ったか⁉」

 

 球子がそういいながら慌てふためいた。俺は突然泣き出したやべーやつだと思われるので泣き止むのに必死になっていたので特に反応しなかった。

 

「可哀そうに...土居さんとついでに乃木さんに何かされたのね...」

 

 ちーちゃんが近寄ってきて俺を抱きしめ、頭をなでてくる。

 

「おい千景!球子はともかく私は何もやってないぞ!」

 

「タマっち先輩さいてー」

 

「杏⁉タマは何にもやってないぞ⁉」

 

「冗談だよ。それにしてもひなと君、大丈夫ですか?なんかありました?」

 

(やっべ、泣いてる理由どうしよう...死に戻りしてるって言ってもなー...まぁ一回言ってみるか)

 

「えーっと...俺はs」

 

 死に戻りしててみんなが俺のせいで死んでそれをやり直せるということと単純に生きている姿を見てうれしくて泣いてました。と言おうとしたが突然紫色の手が出てきて心臓を鷲頭かもうとする感覚があった。

 

(こんなとこまで再現しなくていいんですけど...)

 

 そう思いながら俺は変わりの言い訳を考える。

 

「えーと...最後の戦いだからもしかしたら死んじゃうかもって思って貯めてたアニメを一気見しようとしていたのに見れなくて泣いてました」

 

「...ひなとくん嘘下手だね」

 

「...」

 

 みんなから何言ってんだこいつみたいな視線が届くのを感じる。俺はちーちゃんに抱きしめられたままなので実際はどうかわかんないけど...

 

「でも...言いたくないなら...べつにいいわ...それよりまずはあいつらよ...手短にたのむわ...」

 

 ちーちゃんは抱きしめるのをやめ、俺の両肩を持ち、俺をくるっと半回転させた。七体の大型バーテックスが見えた。

 

「あれ遠距離、俺、あれ水で閉じ込めてくる、球子、あれ爆弾発射してくる、若葉、あれ丈夫な盾持ってる、ちーちゃん、あれ地震起こす、俺、あれ分裂する、杏、あれ潜る、友奈、終わり」

 

「ものすごく簡潔ですね...」

 

「簡潔と言われたので...」

 

「さりげなく自分の数を多くしていたが、大丈夫なのか?さっきまで泣いていたやつに任せるのは少し不安なんだが?」

 

「そう思うなら...乃木さんが自分のを早く倒して...手伝いに行けばいいんじゃない...?」

 

「それもそうか...」

 

「あと今はいないけど前見た超大型バーテックスも原作で出てきたから出てくると思う」

 

 死に戻りの情報も原作に起きたことにしてしまえば大丈夫らしい。ごめんなさい原作様...

 

「そうか...では各自自分のを倒したらまだ倒していない人のところに行くなりして集まるとしよう...散開!」

 

 そうして各自大型バーテックスを倒していく。俺は射手座と山羊座の攻撃を避けながらどうやって超大型を倒そうかと考えていた。

 考えているうちにバーテックスを倒した勇者たちが集まっていて俺が相手をしていたバーテックスを倒していた。

 

「ひなとくん大丈夫?なんか考え事してたみたいだけど」

 

 友奈が心配そうにのぞき込んでくる。

 

「ん?あぁ、大丈夫だよ。少しこの後出てくるバーテックスの倒し方を考えていただけ」

 

「原作に倒した描写は書いていなかったんですか?」

 

「うーん...それが、若葉が対面して終わってるんだよね...なんやかんやあって倒したって感じになってて...」

 

 嘘は言っていない。実際アニメの方ではそんな感じだったし。

 

「そうなんですね...」

 

 そんなことを話していると空気が重くなり正座がてんこ盛りなレオが現れた。

 

(大丈夫...もう怖くない...何なら殺意とやる気と決意がみなぎってきた)

 

 俺は自分の拳を自分の手のひらに打ち付け自分を鼓舞する。

 

「手短にあいつの情報を言うぞ」

 

 そういうとみんなはレオを警戒しながら俺を見た。

 

「おそらくほとんどすべての能力が使える。まず尻尾の薙ぎ払いが来てから上のベルが鳴る。音自体は俺が何とかするけど長くはもたないとは思うからなるはやでベルを何とかしてくれ。あとは知らん。各自で判断して」

 

 俺が若干杏を見ながら言っているとバーテックスがしっぽで薙ぎ払ってくる。全員が飛んで避けたのを確認してから俺は能力を使う。

 

(どっかの作品で味方のダメージをこっちに流す技があったはずだし行けるだろ)

 

 そんな感じで俺はイメージをする。そのすぐ後に

 

ゴーン!!!!!!!!

 

 壮大な嫌な音が俺の耳に入ってきた。

 

あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!

 

 耳を塞ぎ、唸り声だか、悲鳴を上げる。しかし他の人が耳を塞いでいないので耳を塞いでも全く音が弱まる様子がなかった。

 

(あぁ!耳が!耳がぁ‼イタイイタイ・・・)

 

 

 

 

その他視点...

 

 ひなとが言った通りバーテックスは薙ぎ払いをしてきたので全員で避けた後のことであった。

 

あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!

 

 突然ひなとが苦しそうな声を上げた。両手で耳を押さえ、目を瞑って痛みに耐えているようであった。若葉が何かに気づいた様子で杏の方へ呼びかけるが声が聞こえていないのか反応がなかった。しかしそのあとすぐに杏が若葉の方を見て何を言おうとしていたのかを察した。

 杏は矢に精霊の力をためてベルの方へ発射した。いつも通りベルの周りが真空になった。

 音が止まったのでひなとの喚きも止まった。杏がほっとしていると、杏は何かに前から抱きしめられすごい勢いで地面の方へ向かっていた。杏がその直後に見たものは大型のしっぽであった。何かが地面の方へ向かわせていなかったら自分は今頃生きていなかっただろうということに気づきぞっとする。抱きしめた相手を見てみるとひなとであった。普段ならちっちゃい体を堪能していたところだが彼女にそれができる余裕はなかった。

 

 

 

 

ひなと視点...

 

 目を瞑っていたので誰が何をしていたかよくわからなかったが、不快な音が消えたので慌てて前を見てみると尻尾が動いていて杏をひっぱたこうとしていた。俺は慌てて杏の方へいき、抱きしめてすぐに地面の方へ加速した。すぐとに尻尾が薙ぎ払われた時にできた風圧が背中が襲った。

 

(あっぶねぇ)

 

『おい!すぐに横に飛べ!』

 

 大蛇の声を聞き俺はすぐに横に飛んだ。すると後ろで地面に何かが大量に刺さる音が聞こえた。ずっと横に飛んでいるがいまだに地面に刺さっている音が聞こえぞっとする。だが次第に音が止まった。杏を降ろしてからバーテックスを見てみると若葉たちがバーテックスの周りにいてベルや反射板が破壊されていた。

 

「ふぅ...難所は一旦終わったかな?じゃ、行ってくる。援護よろしく」

 

 そう言って飛び立とうとした瞬間、突風が発生し体が引っ張られる。俺は慌てて地面に剣を突き刺し踏ん張る。

 

「杏大丈夫⁉」

 

 そう言いながら杏を見ると杏は自信から風を出して風の流れを中和しているらしく余裕の表情だった。

 

「大丈夫です...あのバーテックスが回って疑似的な竜巻を起こしている...?」

 

 バーテックスの方を見るとバーテックスは文鎮を振り回しながら回っていた。若葉と友奈はバーテックスの真上にいたおかげで風の影響はないが、少し離れたところで見ていた球子とちーちゃんは風の影響を受け内側に引っ張られていた。

 

「危ない!」

 

 杏がそう叫んだ瞬間竜巻を引き起こしている文鎮が二人に前から当たり吹っ飛ばされる。

 

「がっほ...」

 

 その瞬間俺の前に衝撃が加わり内臓と骨がぐちゃぐちゃになる感覚がした。口からは血を吹き出し地面が赤く汚れた。

 そしてそのすぐ後に俺の背中に衝撃が加わった。背骨にひびが入る感覚が二回して立っていられなくなり、剣を手放してしまいそうになった。

 

「ひなと君⁉」

 

 杏が慌てて駆け寄り俺を支えた。杏に支えられたときに多少痛みが生じたが、どこを触られてもいたいし、慌てて離されて地面にぶつかるのも嫌なので我慢する。そうしている間にバーテックは回転をやめ吹っ飛ばされたちーちゃん達の方を向いていた。そしてちーちゃん達に向けて大量の矢を発射した。ちーちゃん達は痛みはなくても元々あるはずだった痛みによる疲労、脱力はあるらしく立つことができない様子であった。

 しかしその矢はちーちゃん達に当たることはなかった。急いでちーちゃん達の方へ向かっていた友奈が巨大な拳を自分の前でクロスにして防いだためであった。しかし完璧に防ぐことができなかったのか、俺の顔や腕、太ももなどに擦り傷ができた。

 

「傷が増えてる...?まさか⁉」

 

 何かを杏が察したところでバーテックスは細かい矢の発射をやめ、ぶっとい矢を発射しようとしていた。

 

「ひなと君今すぐ解除してください!死んじゃいますよ!」

 

 杏はバーテックスの方を見ずにそんなことを言うが解除したところで死人が増えると判断した俺は解除をしなかった。

 そしてバーテックスはぶっとい矢を発射した。友奈が右の拳で矢を砕こうと試みるが、砕けるのはそのでっかい手甲と彼女の右腕であった。しかし手甲は砕けても彼女の腕は変わりがいるので

 

あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!

 

 俺の右腕が粉々に砕けいたるところから血が流れる。そして友奈が止められなかった矢はそのまま進みちーちゃんと球子を貫いた。

 

「あ、あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ⁉

 

 二人に刺さった矢は消滅し、俺の体に二つの穴を作り出し俺はいろんなところから血を流し、死んだ。

 

 

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 

 そうして俺は繰り返す。何回も、何回も...しかし繰り返した中で怒るのは毎回俺がボコされるか、庇って死ぬかの二択であり、世界は誰かを犠牲にしてでも倒した未来を見せたくない様子だった。無論俺は一緒に戦った仲間を犠牲にしてまでこの戦いを終わらせたいと思っているわけではない。ないのだが...一回は成功例が欲しいものである。ただ言えることは一つ。俺の記憶のすべてがみんなの頭の中に入ったら...一つの戦いでもいいから彼女たちの頭の中に入れば説明の時間が省けてすぐにとつってボコせそうであるということだ。でもそれを俺の口から言うことはできない。口が開かないのである。ただでかいバーテックスが来るということと三回目ぐらいに言ったことしか言えなかった。

 一応この世界はご都合主義の世界だったはずだ。なぜか勇者にならなくても勇者としての能力が使えるし、カードがなくてもなんかほかの作品の能力が使えるし、なぜか俺だけに勇者になったときの洗浄効果があるし、トイレにもいかなくてもいい。何なら女の子の日もない。かれこれ半年以上女でいるのに来ない。そんな感じの世界であったはずだ。だからこそ俺は苦戦すると思っていなかった。なぜかバーテックスが本気を出してきたのである。本気かどうかは知らんけど。

 

 

 

 

 俺がいつものようにループしてボコされて死にそうになっている時であった。

 

『なぜ...そこまで頑張るんじゃ?言ってしまえばなんじゃが、仲間を見捨てればすぐに勝てるであろう?そして羅この辛い戦いを終わらせることができたはずじゃ』

 

 大蛇が久しぶりに話しかけてきた。

 

(お前のその口調久しぶりに聞いたわ...最初にあったときのキャラ作りの時だけじゃなかったんだな...と言うかもっと早くから話しかけてくれてもよかったんじゃない?)

 

『それはお前があまりにも情けなくなっていたからじゃろ...あと口調に関しては初心忘れるべからずって言葉があるじゃろ?...そんなことはどうでもいい。最初の質問の答えはまだか?』

 

(まずもう俺は目の前で仲間が死ぬことも嫌だし、俺より先に死んでほしくないんだ。身勝手な話、先に死なれるとまた恐怖が出てきて立てなくなるかもしれない。それほど俺は仲間の死がトラウマになってんだよ。あともう一つだけ...前見た悪夢が本当になったんだ...だったら、そのあとに見た吉夢も本当にしなきゃね!あの吉夢はみんなが楽しそうにしている幸せな空間だったから!)

 

『そうか...』

 

 そうして俺は何度目かもわからない死をまた体験する...

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 

「おーいひなと...?おいひなと!」

 

「はいはいひなとですよ」

 

 球子に揺らされながら俺は手慣れた返事をした。

 

「何このタマが少し馬鹿にされている感...」

 

『ひなと』

 

 いつもは話しかけてこない酒呑童子が話しかけてきた。

 

『親父に記憶を共有してもらって今の状況を理解したぜ!』

 

『ひなとが犠牲を出したくないということがよくわかった!』

 

 今度は大天狗が話してきた。

 

『今までひなとが倒してきたバーテックスのパワーを儂が吸収してループするたびに持ち越してきたおかげで』

 

『多少の無理と強化アイテムを生成することができたわ』

 

 そう玉藻の前が言った瞬間その強化アイテムがどんなものかが頭に入ってきた。

 

『さぁおぬしの願いを叶えに行くぞ...多少の無理も通してもらって最後に思いっきりでもないが好きなことをさせてもらったんじゃからこのぐらいはしてやるわい』

 

 そうして決意がみなぎったところで俺は変身をしようとしたが

 

「ひなと君、変身より先にまず敵の説明をしてください...」

 

 杏が止めてきた。それに対し俺はニヤッと笑いながら返す。

 

「説明よりもいい方法があるんだよ」

 

 そう言って俺は電王ベルトを解除しディケイドライバーを装着する。そしてバックルを引っ張ってから一枚のカードを取り出して差し込む。

 

『BRAVERIDE...』

 

 俺は両手でさっき引っ張ったバックルを戻す。

 

『サザンカ!』

 

 そうして制服が変わる。黒いTシャツ、黒い少しだけ短いスカート、露出する予定だった足にはタイツ、シャツの上に銀色のチェストガード、靴が黒いブーツ、黒いローブ(フードはない)を着た姿になった。

 

「久しぶりに見た気がするわね...」

 

 ちーちゃんが感想を言っているのを聞き流しながら俺はさっき頭に浮かんできた強化アイテムを出した。

 それはケータッチであった。しかし従来の物とは違くて、十あるはずの仮面ライダーのマークは六つの花になっていた。もはや携帯の画面ではない。

 そして俺はその六つの花を押さずにディケイドライバーの白いところだけを外してケータッチをそこに装着した。

 

大天狗!玉藻の前!酒呑童子!風神!雷神!

 

 ケータッチからそんな声が鳴り、それぞれの勇者の前に自分が強化した後のでかいカードが出てくる。

 

「え、ちょっナニコレ―⁉」

 

 友奈がなんかびっくりしているが俺は気にせず、ケータッチの次の動作を待った。

 

『FINALBRAVERIDE...サザンカ!』

 

 みんなの姿が精霊を降ろした後の姿になり、俺の姿も変わった。

 今まで黒だったものはすべて白に変わった。つまり、髪も目も服も何もかも白に変わったのだ。そしてローブの裏にあった赤、白、ピンクの三輪のサザンカが背中の真ん中に出てきた。さらに髪の毛には前髪に山桜のヘアピン、左に彼岸花の髪飾り、右に桔梗の髪飾り、ストックと姫百合が混じった髪留めがロングの上に小さなポニーを結んだ。いそがしい頭である。

 そして目には見えないが変化はもう一つあった。

 

「うぅ...なによ...この記憶...」

 

「タマたちが死んでる...」

 

「それなにになぜかまた戦っている...?」

 

「でも最後の方はひなと君しか死んでいない」

 

「これって...!」

 

「詳しいことは言えないけど、まぁそういうことだ。説明は必要ないだろ?」

 

「そうだけど...やっぱり後で答え合わせはさせてもらうわね...」

 

「できればね」

 

 ちーちゃん達に起こった変化とは...俺と精霊が持っている、この戦いの身の記憶であった。これならどんなことが起きるかわかって対処がしやすい。そして

 

(なんであんたらまだいるん?)

 

 なぜだか知らんが酒呑童子たちは俺の体から離れていなかった。

 

『あの変身は周りの仲間をその強化形態を使えるような丈夫さにしてからその形態にさせるという効果があるわ』

 

『だから俺らがいなくてもその形態にさせることができるんだぜ』

 

『これによって...』

 

『最終フォームになることができるのじゃ』

 

(まとめてしゃべれよ。と言うか新フォーム出たばっかなんですけど⁉)

 

『そんなの中間フォームよ。あ、そうそう風神と雷神は自我がないからこれによる形態変化をしても意味がないよのねー一応抜いといたけど...そんなことよりほらさっさとあれを使いなさい』

 

(いやこっちの方が本当は中間フォームだからね?)

 

「どうしたの...ひなと君?いかないの?」

 

「俺にはまだ一回変身が遺されている...」

 

「そう...」

 

 ちーちゃんがもうそれでいいじゃんみたいな感じで見てくるが外野がうるさいんでさっさと変身することにする。

 

『さっき言った多少の無茶っていうのはベルトを二重で使うことができるって意味よ』

 

(了解)

 

 そう言って俺はディケイドライバーがあった場所に電王ベルトを巻いた。ベルトが使うとき以外消える仕組みでよかった...

 俺は少し力を込めて赤い携帯を出現させる。そう、ケイタロスである。そしてそれを開き、一番下の四つのボタンを押す。

 

『ピ、ポ、パ、ㇶ゜テテーン、鬼、鳥、蛇、狐...』

 

(..............................なんも起こんねぇじゃん!ちょっとお前ら今の気持ち言ってみろ)

 

『恋愛小説』

『飯』

『酒』

『濃厚な百合』

 

 ダメだこれ...

 

『でも』

『とりあえず』

『そのために』

『やるべきことは...』

 

『『『『アイツら倒して人間を守ることだよな(だ)(じゃ)(よね)!』』』』

 

『♬~』

 

(最高かよ、お前ら)

 

 勝ちを確信するような音楽が鳴り響いた。そして俺はケータロスの横にある出っ張りを押した

 

クライマックスフォーム

 

 服と髪が大蛇がついたときと同じようになり、周りに黒い翼と九本の尻尾と二本の角が出てきた。そしてそれらはくっつき、ついでにケータロスがベルトにつき、てんこ盛りが完成した。

 

「よし!俺らは最初から最後まで、クライマックスだぜ!

 

 そう言いながら俺はいつも倒しているバーテックスのところまで行き、手に毎度使っている刃こぼれだらけの剣を出し、目の前にいた山羊を瞬殺してそのあとに玉藻の前の魔法をノールックで射手座の方へ発射しこちらも瞬殺する。

 俺が変身しているころにはもう敵を倒しに向かっていたのか振り向いたら全員いた。

 

「...びっくりさせんなよ」

 

「あはは...ごめんね?それにしてもまた姿が変わってるね。一個前の方が私は好きだったな...」

 

 友奈が少しだけ寂しそうに言った。

 

「一瞬しか見せてないでしょうに...」

 

「確かに友奈の言う通り一個前の方が球もよかったと思うぞ!」

 

「だから一瞬しか...まぁいっか」

 

「勇者たちよ、集中だ...これで最後にするぞ」

 

 若葉の言葉で全員察したのかいつになく真剣な顔をして頷いた。そして空気は変わり、巨大なバーテックスが出てきた。

 俺はディケイドライバーを出現させ、一枚のカードを取り出し、右にあるもともとディケイドライバーについていたやつに差し込み、それを真横から押した

 

『FINALATTACKRIDE...ALLB,B,BRAVE』

 

 その瞬間友奈と杏と若葉がバーテックスに向かって突撃をした。まず若葉が薙ぎ払いをしていた尻尾を真っ二つにちょん切り、その間に杏が鐘の方に矢を発射させ音を遮断し、超速度で飛んでいた友奈がそのベルを粉々に砕いた。そしてちーちゃん達は若葉がしっぽを切ったあたりから動き出していて、まずちーちゃんの攻撃でいつも矢を出しているところが溶け、次に球子の黒い稲妻によって水の部分が消滅し、友奈が爆弾が出ていたところを吹き飛ばし、若葉が六本ある角をすべて切り落とし、杏が文鎮をつないでいる紐を貫き、落とした。俺はそれを見て電王ベルトを出しケイタロスの決定ボタン的なものを押す

 

『♬~』

 

 この世の終わりのような音(誉め言葉)が流れ、戦いのクライマックスを告げている気がした。

 

『さぁひなと、とどめだ』

 

『こういう時はかっこいい必殺技を言うものだと聞いている』

 

『この子にそんなことを考えることができるかしら?』

 

『大丈夫じゃ。ひなとならきっとかっこいい必殺技を思いつけるぞ』

 

(ハードル上げんな)

 

 そう思いながら俺は考える。敵はめっちゃくっついてほとんどすべての技が使える...俺もそんなことができる。で俺は最高の仲間がいる。

 

(時間もかけたくないしこれでいいだろ)

 

 俺は必殺技を思いつき、スマホをかざす

 

『charge and up』

 

愛シキ仲間ヲ想ウ勇者ノワザ・瞬旋裂キ散ラス無慚ノ一閃!

 

 そう叫んだ俺はさっきまでバーテックスの正面にいたのに刀を出して背後にいた。そして俺は刀を鞘にしまいながら一言呟く

 

ひなた...

 

チンッ!

 

 俺が完全に刀を鞘にしまった瞬間、バーテックスは真っ二つに分かれそこから細々な傷が増え、その細々な傷が燃えたり凍ったりして最後には謎の打撃がバーテックスを粉々にし、その破片が樹海中にいた星屑に当たり、バーテックスは全滅した。長いわ!とかパクリじゃねーか!って声が聞こえたが無視する。

 それを確認した瞬間俺の体にみんなの疲労プラス四体の精霊を一気に使用した疲労が襲ってきて俺は意識を落とした...




後はエピローグ的なもんををかいて、序盤のくそ文を書き直すプラス細かく書いて、IF書いてのわゆ編は終わりかな?


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第32話 ひと時で仮初の平和

この小説が神様転生だとのわゆが大体終わるまで気づかなかったエフさんです。いつも通りのポンコツです。今回のポンコツは続け書こうと思ってたら新規で書いてたことです。


「ん~...」

 

(見慣れた天井だ...)

 

 俺がバーテックスとの戦いから目を覚ました時、まず見えたものは見慣れたくなかった病院の天井であった。

 

(あ~良かった...戦いは終わったんだな...)

 

 そう思い俺の視界はぼやけた。

 

「ひなと⁉どこか痛いところでもあったのですか⁉と言うか目が覚めたんですね...!よかった...」

 

「あ、お姉ちゃん...」

 

 一番最後に見た記憶が一緒に吹き飛ばされて死んでいる姿の人が横に座っていた。生きている姿をみて俺は涙の量を増やした。

 

「え!ちょっ⁉やっぱりひなともなくんですね...」

 

「?ぐす...俺も?」

 

「そうですよ!ひなとよりも皆さんの方が早く退院しましてね。あ、皆さんは検査で一日だけ入院してたんですけど、私に合った瞬間みんな泣いちゃったんですよ!若葉ちゃんなんてギャン泣きで...まぁそのおかげで他の人は泣き止んだんですけどね...今思えば撮っとけばよかったです...それでひなとは何で泣いてたんですか?」

 

「お姉ちゃんに合えたのが...ぐす、嬉しくて...」

 

 そう言った瞬間お姉ちゃんは俺に抱き着いてきた。

 

「そうですか...相変わらずかわいいですね...大丈夫ですよ...私はずっと一緒にいますから」

 

 しばらく無言のまま抱かれているとドアがゆっくり開いた。

 

「...!ひなと君...!目を覚ましたのね...!よかった...」

 

「あ、ちーちゃん...うん。今さっきね」

 

 お姉ちゃんと抱き合うのをやめ、ちーちゃんの顔を見て話す。

 

「そう...ひなと君三日も寝てたのよ?」

 

「あ、結構短かったね」

 

 俺の体に傷はなくただの疲労で倒れただけなので、それにしては長いような気もするがまぁよし!

 

「あ、そー言えば他の皆は?」

 

「花を買いに行っているわ...ひなたさんはここから一歩も動かないような勢いだったし...私も早く...会いたかったから行ってないけど...」

 

「そっかー...」

 

「?どうかしたんですか?」

 

「いやどうせならみんな揃った時に目を覚ましたかったなーって...」

 

「あら?浮気かしら...?気持ちはわからなくないけど...」

 

「?樹海の中でなんかあったんですか?いつもの千景さんなら気持ちはわからなくないなんて言わないと思いますが...」

 

「あ...ひなたさんには話していなかったわね...実はかくかくしかじかで...」

 

「えっ⁉ひなと死んだんですか⁉私も⁉と言うかみんなも⁉」

 

「うん...何回も...やり直して、やっとうまくいったんだ」

 

 俺が例の手が出てこないか確かめるためにゆっくり言うが大丈夫らしい。

 

「まぁ...そんなことだから...全員が揃っているか確かめたい気持ちもわかるわ...」

 

「そうですか...大変でしたね」

 

 そう言ってお姉ちゃんは頭をなでてくる。

 

「...姉弟だからと言うことで今まで無視していたけど...()()ひなと君にくっつきすぎじゃないかしら?ひなたさんには乃木さんがいるじゃない...」

 

 そう言って反対側で俺の頭をなで始めるちーちゃん。

 

「あら?あらあらあらあら、いつから千景さんのものになったんですか?ひなとは()()物ですよ?それに、千景さんには友奈さんがいるじゃないですか」

 

「...いつかは弟離れが必要だとおもうわ...ひなたさん?ちょうど今がその時だと思わない?」

 

(いたいいたい!この人たち頭を強くなですぎだろ...!めっちゃ痛いしめっちゃ頭が揺れているんですが⁉)

 

「...」

 

「...」

 

 静寂な空気が続く中そこに新たな音が追加された。そうドアを開ける音である。

 

「遅くなった...ひなと起きたのか!」

 

「え⁉ひなと君目を覚ましたんですか?」

 

「と言うかすごい状況だね...」

 

「タマも混ぜろー!」

 

 そう言って球は駆け寄ってきた。そして頭をなでるのではなく胸をなでてきた。お前またかよ。どんだけ俺のおっぱい好きなんだよ。

 

「球子さん?時と場合を考えてください?」

 

「そうよ土居さん」

 

「タマっち先輩さいて―...と言うかひなとくんが寝ている時も起きないかなーとか言って触ってなかったっけ?」

 

「さすがにこれは...」

 

「たまちゃん?相手の気持ちも考えないと...ね?」

 

 ものすごく空気の悪くなる病室...その空気に対し俺は

 

「お、俺は別に...いいよ...」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

 俺以外の全員が素っ頓狂な声をあげる。

 

「だからいいよっていったんだよ...好きなだけ...触ればいいじゃん...」

 

「ひなと...前まで嫌がっていたのにいいんですか?と言うか最近球子さんに甘くありませんか?」

 

 お姉ちゃんが不思議そうに聞いてくる。

 

「そう?別にこのくらいならもう何でもいいかな...元気でいる姿を見せてくれれば俺は何でもいいんだー。だから...別にこのくらいのサービスもしてやらんこともない」

 

 そう言って俺は現在進行形で胸を揉んでいる球子の後頭部を抱え、顔面を胸に押し付ける。

 

「フゴフゴ⁉」

 

 いきなりでびっくりしたのか球子が少し暴れたが、次第におとなしくなっていった。

 

「それに...この嫌な空気になるくらいなら...この程度に犠牲でこの空気が収まるなら...それにみんなが仲良くないと俺が戦ってた意味が七十パー位無駄になっちゃうから...」

 

「そっか...そうだよね...ごめんねひなとくん。わたしひなとくんが触られてるのを見てなんかぐんちゃんがひなとくん以外の人、特に若葉ちゃんとかと一緒にいるときと同じ感じになっちゃって、空気が悪いとか特に気にしてなかった...」

 

「た、高嶋さん...」

 

 ちーちゃんが複雑な顔をしながら少しうれしそうにつぶやく。これもうどっちが浮気してるかわかんねぇな()

 

「おほん...さて話を真面目にしますので皆さんしっかりと聞いてくださいね。球子さんももうそれ、やめてください?皆さんのおかげで四国の防衛は成功しました。よって明日結界の強化の作業に入るそうです。なので明日皆さんは血を抜かれる準備をしといてください」

 

「う、私注射苦手かも」

 

「友奈さんとひなとくんが一番血を抜かれなきゃならないんですよね...」

 

「俺起きたばかりなんだけど...」

 

「大丈夫です!きっと何とかなります!ならなかったとしても私がつきっきりで看病しますので安心してください!」

 

「あ、ひなた。そこはタマたちもやるからつっききりにならなくてもいい。タマ達に任せタマえ」

 

「そうですよひなたさん!自分一人で何とかしようとしないでください!」

 

「いえいえお構いなく...」

 

「「「「「「「...」」」」」」」

 

 この後女たちはずっとにらみ合っていた。俺は怖くなって寝たふりをした。

 

 

 

 

翌日...

 

 俺らは少し大きめの病室に来ていた。

 

「と言うわけで規定の量よりとりすぎてしまった場合はこのランプが鳴りますので取った後でもしっかり動けるはずです」

 

 と目の前にいる前に俺にちーちゃんについての歴史をなくせとか言ってきた大社のやつが言ってきた。

 

(あいつ医者の資格持ってたのかよ...と言うか物凄く嫌な予感がするな)

 

 そう思いつつ、みんなが血を抜かれている様子を見張っていたが特に問題がなく、ちーちゃんもほかの人も抜かれる量は変わらなかった。何なら必要量の多い友奈の方が吸われていたぐらいだ。

 

「次はひなとの番ですよ」

 

 目を見ると若葉が注射した後に張られる絆創膏を張っているところだった。

 

「次...どうぞ」

 

『BRAVERIDE 山桜!』

 

 大社のごみ...いや、もしかしたら改心したかもしれないから職員でいいか...が呼びかけたので俺は友奈の姿になってから席に着く。そして消毒だか、ただただ濡れているのかは知らんが濡れている布で左腕のひじの内側を拭かれる。そして管のついた針を俺の腕にさしてきた。赤い液体が管を通して血をためるところに入っていくのを一瞬見てから俺は張りとは真逆の方向を見た。その方向にはお姉ちゃんたちがいて俺がそっちを見た瞬間少しだけ微笑んだ。勇者になった俺の再生能力はすごいらしく、三十分採血されても何ともなかった。ちなみに勇者の状態なのに針が刺さったのはご都合的なあれである。

 

 

 

 

そのまた一時間三十分後...

 

「はぁ...はぁ...」

 

(や、やばい...そろそろきついかも)

 

 視界が暗く染まったり色が見えなくなったりと、なんかくらくらした。

 

(頭痛がいたい...)

 

「あの、すいません。そろそろひなと君やばそうなんですけど...まだ続けるんですか?」

 

「ん?だってまだランプついてないですよね?」

 

「それは規定量を超えたときに出るものであってとっている人のが危険な状況になったときを知らせるものではないですよ」

 

「あ~...伊予島様は勇者の力を低く見ているんですねー。大丈夫ですよこのくらい」

 

「あなたが過信しすぎているんですよ?いいから早く終わらしてください」

 

「いいんですか?まだ規定量に達していないですが?もしかしたら結界の強化が失敗してしまうかもしれませんよ?」

 

「そもそも規定量なんてありませんよね?確か人一人分の血液が必要と言っていましたがもうその分はとれているはずです。そしてそれで救えなかった場合、私は...いえ私たちは仲間を失ってまでこの世界を救いたいとは思いません」

 

「あ~そ~ですか...」

 

 そう言って大社のごみは針を乱暴に抜いた。その瞬間俺は限界を迎えたのかその瞬間俺の変身は解けいつもの姿になり、椅子から落ちそうになる。

 

「うおっ⁉あっぶな!」

 

 球子がすぐに駆け寄ってきて椅子から落ちることはなかったが自力で立てるほどの気力はなかった。

 

「おい!絆創膏は⁉」

 

「そんな小さな傷勇者ならいらないでしょう?資源は大切にしないと...それでは部屋で安静にしていてくださいね。もう帰って大丈夫ですよ」

 

「はぁ...?この状況で...帰らせるの...?」

 

「当然ですよ。たかが貧血で病院の一室があけられるはずないじゃないですか」

 

「いい加減にしてください!それが世界を救った人に対する態度ですか⁉」

 

「それを支えたのは私たちでしょう?と言うかあなたこそあまり勇者の役に立っていないのでは?そもそも世界を救ったといいますが、反逆者もいるしまだ救ってないですよね?」

 

「っ!」

 

「ぐんちゃん、気にしなくていいよ」

 

「...早く帰るぞ」

 

「若葉さん⁉いいんですか⁉」

 

「いいんだ。こんなやつがいるところにひなとは任しておけない」

 

「それもそうですけど...」

 

 若葉はこちらの方に来て俺を抱きかかえた。

 

「わ...かば...」

 

「大丈夫だぞ...ひなと...」

 

 その言葉を聞いた瞬間俺は意識を落とした。

 

 

 

 

「あの医者もどき...私が大社を牛耳ったら覚えておくんですね...」

 

「ひなちゃんがめっちゃ怒ってる...当然だけど...」

 

「とりあえず今日から...レバーかしら...?」

 

「レバーもいいですがバランスの良い食事も大事ですね...あと手料理なのもいいかもしれません...じゃぁ私が作りますね」

 

「杏料理できたのか?まぁできるとかできないとか関係ないなタマも手伝うからな!」

 

「その次は私が作りますね。若葉ちゃんも一緒に作りますか?」

 

「ああ、そうすることにしよう」

 

「ぐんちゃん一緒に作ろ?」

 

「いいわよ...高嶋さん...」

 

 

 

 

 俺がきづいたときにはもう部屋の中にいてベッドの中だった。

 

(体がめっちゃ重い)

 

『なぁひなと』

 

(なんだ?)

 

『俺らもうお別れじゃねーか』

 

(そうですね)

 

『分けれる前にあの医者殴ってきてよいか?』

 

(俺を人殺しにするな?)

 

『その位勇者の力なら許されるじゃろ』

 

(だとしてもね?俺はなるべく穏便に事を勧めたいんだよ...もう勇者とも認識されたくないんだ。なんか日常が欲しい...)

 

『それが百合まみれの日常ならもっと素敵ね...』

 

(黙れや...)

 

ガチャ

 

 精霊たちと話していると突然ドアが開き料理を持った杏が出てきた。

 

「あ、ひなと君起きたんですね」

 

「タマたちが作った飯だ!残さず食えよ?」

 

 料理を見てみると様々な野菜、少し大きめのレバー、大盛りのご飯、そしてキノコの入ったみそ汁?があった。

 

「あの...大変申し上げにくいのですが、寝起きと言うか起きたばかりで体がだるく食欲が...」

 

「大丈夫です!ゆっくり食べればいいんです!ほら食べさせてあげますから何から食べたいか言ってください」

 

「え、いやいいよ。自分で食べれるよ?」

 

「まぁ念のためだ!タマに任せタマえ!」

 

「え~...じゃ野菜」

 

「野菜ですね...はいあーん」

 

 杏はフォークで野菜を突き刺し俺に向けてきた。

 

 

 

 

 なんやかんやあって何とか完食することができた。そしてローテーションしているらしく、杏たちの次はちーちゃんと友奈が来て、その次はお姉ちゃんと若葉が来た。全部俺から食べるということはなかった。

 

 

 

 

三日後...

 

 俺らは瀬戸内海の壁の上に立っていた。大社曰く、結界の外のバーテックスに常時と異なる動きがみられるから調査してこいとのこと。侵攻ではなく、何らかの未知の事象が起ころうとしているらしい。

 以前、壁の外の超巨大バーテックスの調査任務があったとき、お姉ちゃんは俺たちの足手まといになるからと言って同行しなかったが、お姉ちゃんが”外の世界も見ておきたい”といったので一緒に行くことになった。

 俺の目の前には神樹の作った偽物の景色が見えている。

 

「行くぞ、ひなた。ひどい光景だから、きっと見るのがつらいと思うが...」

 

「大丈夫です。覚悟はできていますから...それにものすごく大きなバーテックスは倒したのでしょう?そんなことよりひなとの方が心配です」

 

 そう言いながらお姉ちゃんは俺の方を見る。俺の体調は完全に回復していない。それのせいで壁に飛び乗るとき周りより跳躍力が足りなく壁に激突してしまったりしてしまった。

 

「うん...多分...大丈夫」

 

「ひなと君...無理しなくていいわ...やばくなったら肩...貸すからいつでも言ってね...」

 

「あ、うん...ありがと...」

 

 そうして俺らは壁の外側へ足を踏み出す。壁上のある位置を越えたところで視界に映る光景が変わった。前、超巨大バーテックスがいたところを見るとそこには大橋があるだけだった。

 

「あ...あれ...」

 

 杏が絶望したようなかすれた声を出しながら上空を指差した。みんなが上を見上げるとはるか上空に超巨大バーテックスがいるのが見えた。

 

「え...何かいるんですか?」

 

 勇者の視力でやっと見えるところにいるので見ることのできないお姉ちゃんは不思議そうに聞いてくる。

 

「あー、ちょっと待ってね」

 

 俺はお姉ちゃんの目の前に魔方陣を作ってお姉ちゃんに魔法をかけた。そして俺は再び超巨大バーテックスを見た。

 

「???左目だけ変なのが見えます...」

 

「あれ?片目だけなの?両目にかけるつもりだったのに...えっとね...今お姉ちゃんにかけた魔法は俺の見ているものをお姉ちゃんにも見えるようにするって魔法。原理は知らん」

 

 超巨大バーテックスは中身が詰まっているのか透明ではなかった。でも御霊は入ってなさそうだった。

 

「あんなに...苦労して倒したのに...バーテックスは無限に発生し続けるというの...?」

 

―!

 

―!

 

―!

 

 突如、おぞましい音が上空にいる超巨大バーテックスから響き始めた。前聞いた不快な音よりかは大きくないし不快でもないが、それでも不快で人類が出せないような音だった。同時に上にいるバーテックスが妖しく輝いた。規則性がなく、次々と色を変えながら明滅を繰り返していた。

 

「おー⁉なんだなんだ⁉」

 

「うおっ⁉」

 

 急なめまいとともに立っていることが難しいほどの振動が襲ってきて俺は壁から落ちそうになった。

 

「ひなと君⁉」

 

 近くにいたちーちゃんが慌てて支えてくれたので落ちることはなかった。お姉ちゃんは大丈夫かなと思って見てみると若葉につかまっていた。

 

 しばらく不協和音と不気味な明滅を見聞きしていると上空がいきなり明るくくなった。超巨大バーテックスが第二の太陽になったのだ。第二の太陽は少し大きくなった後、ゆっくりと落下を始めた。

 

「...さっさと結界に入るぞ...」

 

「え...見なくていいんですか?」

 

「見て何になるんだ...ただ太陽が落ちてきて破壊されている様子を見ていろと?」

 

「いやそうじゃなくて...止めないんですか」

 

「杏...お前俺を何だと思ってるんだ...止められるわけなかろう...ものすごく頑張ればなんか行けそうな気もするけど今の状態なら無理、絶対無理」

 

 俺がそういうと全員結界の中に入った。

 

「なんだったんだろう...さっきの...」

 

 友奈は青ざめながらつぶやいた。と言うかみんな顔色が悪かった。

 

「わからないわ...でも今は...出ないほうが良いと思うわ...」

 

「...」

 

 みんな力が抜けてしまい結界の上で膝をついたり、体育座りをしたりした。

 

 

 

 

しばらく時間がたった後...

 

「そろそろ出ても大丈夫でしょうか...」

 

「わからないですが、出ないことには状況は変わらないでしょう...それにひなとも余裕そうですしね」

 

「体調の方は最悪だけどね」

 

「帰ったらまた寝かせるわ...」

 

「うん!そしてまたお料理作ってあげるね!」

 

「あ、お構いなく...」

 

 

 

 

 他愛もな会話を少しだけしてから全員でためらいながら結界の外に出た。

 

「...‼」

 

 そこに広がっているのは、以前と全く異なる世界だった。天地が赤く不気味に脈打ちていて以前の地球の姿は、もう跡形も残っていなかった。

 

「世界が...壊された...?」

 

「いえ...破壊なんてものじゃありませんこれは、世界の理そのものが書き替えられたんです...!」

 

 すでにこの世界には、人類が遺してきたものが存在しなかった。人類が暮らしていた民家も、大都市のビルも、白鳥さんが守ってきたところも、俺の両親が俺を育てたであろうところも...

 すべて失われてしまったのだ。まぁ時が止まっているだけだから生き残りはぎりぎりいるかもしれないけど...

 

「人類の再起の可能性を...徹底的につぶしているんですね...」

 

「そんなことあって、いいのかよ...」

 

「あ...私の生まれた場所...まだ...形だけは...あったのに...」

 

「高嶋さん...」

 

 ちーちゃんが友奈を抱きしめて背中をさすっている。

 

「ひなと君...」

 

「なに?」

 

「このこともわかっていたんですか?」

 

「まぁね」

 

「...そうですか」

 

「く...そ...」

 

 若葉は歯を食いしばりながら壁を叩いた。

 すべてを知ってながら黙っていた俺は目をそらした。

 

「ひなと」

 

「なんだ」

 

「これが...この世界は...!本当に三百年後に復刻できるのか...?」

 

「できるよ...それは間違いない」

 

「そうか...」

 

 若葉はそれだけ言って結界の中に入った。

 

 

 

 

 丸亀時に戻ってきた後、お姉ちゃんと一緒に大社に結界の外で起こった出来事を報告した。

 世界が書き替えられたのと同時刻にほかの巫女たちも神託を受けており、大社も事態を把握していた。

 結界の強化が間に合ったお陰で、何とか四国は崩壊を免れたらしい。と言うかあれで結界を守るの成功したんだな。

 

 

 

 

 結界外の調査任務を終えた後、みんなはこれまで以上に鍛錬に打ち込むようになった。俺の言った最後の戦いと言う言葉を忘れているようであった。無駄だとわかっていても一応俺も参加しといた。

 俺らが鍛錬をしている間に大社は大型バーテックスに名前を付けた。便利ではあるがのんきな奴らである。

 

 

 

それは鍛錬を続けていたある日のことであった...

 

 いつものように夕方になるまで訓練して疲労で足や腕が動かなくなってきた頃、お姉ちゃんが姿を現した。

 

「今日も訓練しているんですね」

 

「ああ。いつバーテックスが来るかわからないからな...」

 

「せめて...諏訪...それが無理なら奈良までは...取り戻さないと...」

 

「ぐんちゃん...私はもう大丈夫だよ」

 

「だとしても少しは反逆しないといけないだろ?」

 

「...」

 

 杏が俺を見てくるが俺は気にせずにお姉ちゃんを見た。

 お姉ちゃんがみんなを見つめる。その瞳には、どこか感情の読めない冷たさがあり、俺は身震いした。

 

「...少し話があります。皆さんはもう、戦う必要はなくなりました」

 

「...そんなことはない!」

 

「そうですよ!まだいろいろやることが...」

 

 他の皆も何かを言おうとしていたが、お姉ちゃんはそれを遮るように淡々と言葉を続ける。

 

「今は結界で持ちこたえていても、神樹様の力が尽きた時、私たちは炎の海に飲まれ、すべてが終わります。もはや人類の根絶は完了したといえます。そう...ここまで絶望的だからこそ...活路があったのです」

 

「どういうこと...?」

 

 ちーちゃんの疑問に答えることなく、お姉ちゃんちゃんは感情を消した声で語り続ける。

 

「大社は祭りを行ったのです。壁の外で...そして、天に話し、願ったのです。今後、この力でないことを条件に、侵攻を赦してもらいたい、と」

 

「話...?そんなことができるの」

 

「神代の時、それで許されたという前例があります。...この葦原中国は、命のまにまに既に献らむ。(略)...かつて土地神の王が、天の神にそう誓ったことがあります。自らの住処から出ないことを代償に、その地を不可侵にして赦してほしい、と。今私たちはその模倣をしたのです。地に棲まうものたち...つまり我々の根絶こそが、おそらく敵の目的。それがほぼ成就している今、このタイミングだからこそ、可能だったんです。私たち巫女は神託を受け取るもの。神の声を聞き得るもの。その巫女たちにこちらの話を届けてもらいました...天に」

 

「...どうやったんですか...?」

 

「...炎の海の中へ」

 

「「「「「...⁉」」」」」

 

「六人の巫女が、選ばれました」

 

「まさか、生贄にしたというのか...⁉」

 

「若葉ちゃん達が絶対に反対するだろうから、こうして終わった後に私が話しているんです」

 

 無感情に、淡々と、ひなたは言葉を続ける。

 

「ひなと...お前このことも知っていたのか...?」

 

「うん...」

 

 そう言った瞬間若葉は俺の胸ぐらをつかみ持ち上げ右手で殴りかかろうとした。が、やろうとしたところで止まり俺を地面に放した。

 

「いいの?」

 

「...殴ってももう意味はないからな...それに私はお前を殴りたくはない」

 

 俺は若葉の悲しそうな背中を見て思わずつぶやく。

 

俺が生贄になったほうがよかったかな...俺一人で済むだろうし...

 

 そうつぶやいた瞬間若葉が一瞬で反転し右手で俺の顔を殴った。殴りたくないって言ったやん...

 

二度と嘘でもそんなことを言うな!わかったな?」

 

「うん...」

 

 俺は殴られたところをさすりながら返事をした。周りの目は冷たかった。

 

「話を戻しますね...本来は私も生贄に選ばれるはずでした」

 

「な...っ⁉」

 

「でもうまく立ち回って、人選から外れることができました。死ぬのは嫌ですし。ずるいんです、私は」

 

 お姉ちゃんはそう言って、薄い笑みを浮かべた。

 普段俺を優しく時には厳しく見てくる目ではなかった。でもそれは作っているものであるというのは若葉より長い付き合いではないがわかってしまった。

 

「...俺のせいだよね?俺が時間を戻れるから...発動条件はわからないけど...それで俺が戻って変わったり、戻りすぎてうまくいったものがなくなるのを防いだんだよね...?」

 

「それもありますが...皆が目覚めて私を見た時に涙を流しているのを見て、私が死んだら大社にカチコミし、暴れるかもとも思ったんです。それじゃ私も死に切れませんしね...それに皆さんにもう戦わせるわけにはいきませんし...敵も強くなりすぎていますから...。今までは、勇者が頑張ってきました。だから今度は巫女が頑張ったんです。儀式が終わった後...神託が来ました。この地から出ずに、上里ひなと以外の勇者の力を放棄し、上里ひなとが結界外で力を使わなければもう攻められることはない、と」

 

「力を...放棄...」

 

「人が神の力を使うことは禁忌...と言うことでしょう。彼らからすれば。なぜひなとが大丈夫なのかは知らないですが」

 

「くっ...!」

 

 みんなは何も言えない様子だった。ほかに方法はなかったのだから。自分たちに人々を守る力がない以上、何も言う資格はない。

 

「ううう...うううううぅ、うああああああああああああああああああああああっ‼」

 

 若葉が膝から崩折れ、叫び...泣いた。他の皆もなき方は違えど目から雫が出ていることは確かだった。

 

「ひなとは泣かないんですね...」

 

「俺になく資格はないよ...だって俺は最初からあきらめて戦ってたんだもん...三百年後があるだからここでバーテックスを完全に倒す必要はない、土地を取り戻す必要もないって。俺はみんなが生きてればいいとしか思っていなかった。努力だって俺はしていない...だから俺には...」

 

「そうですか...」

 

「そういうお姉ちゃんは泣かないの?」

 

「私は戦っていませんから...私も泣く資格はありません...」

 

「...同じだね」

 

「そうですね...」

 

『ひなと...』

 

『我らはもうおぬしの傍にはいられん...もともと我らはひなとの力ではなく神樹の力だからな...』

 

『本当は奉火災が終わった後にすぐ離れる予定じゃったが』

 

『少しだけ猶予が与えられたのよね』

 

『と言うわけだ...短い間だったがお前との生活...主に小説だが、楽しかったぜ』

 

(おい)

 

『もう少し酒が飲めるようになっておくのじゃよ』

 

『我らは離れるが神樹から見守っている』

 

『だからずっと女の姿でいなさい...私の百合のためにね...』

 

『じゃあな』

 

 そうして俺の体は軽くなった。

 

(最後まで私欲まみれのやつらだったな...あ、大天狗は違ったか...あれがまとめてくれればもっと良かったのにな...ありがとうぐらいは伝えたかったな)

 

 

 

 

 

 

 みんなは長時間泣き続けた。

 俺とお姉ちゃんはそんなみんなをずっと見ていた。

 日が落ちて、夜になって。

 みんなの涙と声は枯れ果てた。

 そしていつの間にか夜は明け、部屋の窓から朝日が差し始めていた。

 俺らは丸亀城本丸に立っていた。

 朝焼けと、人々の住む町、その向こうには瀬戸内海があった。

 みんなの顔には絶望も悲哀もなかった。

 

「私たちは多くのものを失った...」

 

「そうね...だけど...ここにいた人たちの命は守ることはできたわ...そして日常も...」

 

「そうですね...でも、まだ戦いは終わっていません」

 

「そうだな!」

 

「...でも今の状況ってどんな感じだっけ?」

 

「敵は神だな、天の神。...目的は人間を滅ぼすこと...理由は知らん。ゆゆゆの永久の謎だ。ただ言えることは人が神の力を使うのを嫌っているだとか、人間が神に近づいたからとか言われてるな。知らんがな。じゃ、なんで人に学習能力を与えたんですかね...」

 

「ひなと、論点がずれています。そして味方も神様です。こちらは地の神ですね。それが集まったのが、神樹様...」

 

「四年前...運命の七月。天変地異が起こった時、天の神と土地の神は戦っていた。そして土地神は敗北した...結果勝者である天の神がバーテックスを降らせた。土地神たちは力を合わせて神樹となり、人に神の力を与えた。なんかひなとは生まれてきたときから持っていたらしいが、そこは考えないものとする」

 

「うん!だんだんわかってきたよ。そのバーテックスに対抗できるのが...私たち勇者だよね?」

 

「そうだな!それでタマたちはバーテックスと戦ってたけど、向こうが無理やり突破してきたんだよな!善戦はしてたのに...」

 

「多分私たちが善戦をしたから向こうが焦ってこんなことをしてきたんだと思います...圧倒的劣勢ですね...でも、他地方の人たちや巫女の人たちの犠牲を経て...私たちは命をつなぎました」

 

「でも...これは一時的なものに過ぎないわ...一度は完膚なきまでに叩きのめされたとしても...力を蓄え...いつかはそいつを倒す...ゲームでもよくある展開だわ...歴史にしてもね...今の私たちでは火力とかいろいろなものが足りない...だから勝てる力をつけなくてはいけないわ...」

 

「ええ。私もこう見えて怒ってますから。絶対に挽回しましょう。神樹様が消えれば四国は消えるとはいえ、三百年後には勝てているんです。その間に勝つための対抗策を見つけ出すんです」

 

「そうだな」

 

「問題は、この流れだとひなと以外勇者システムを放棄しなければならない、ということ...そしてひなとのはひなとしか操れないし、いじることもできないということ」

 

「そうなると表立って研究はできなくなりますね...ばれないように細く長く根気よくやっていくしかないのかもしれません...」

 

「そのためには...恭順が必要か...」

 

 若葉が悔しそうにつぶやいた。

 

「そう...だね...」

 

「そうなるとタマたちは何をすればいいんだ?」

 

 タマはお姉ちゃんの方を向いて聞いた。ここからはお姉ちゃんが何とかすると思っているのだろう。

 

「まずは大社の名前を大赦に改めます、赦されたものとしての自覚を表しましょう。そして慎ましく人と生きていくことを示しましょう」

 

「大赦...屈辱的な名称だ。だが、だからこそ忘れないでいられる。敗れたことの絶望を。土地や様々なものを奪われた悲痛を」

 

「はい。そして名前を変えることの最大の目的は、それを口実に組織改革をすることです。今のままでは、あまりに組織としてお粗末すぎます。大事な勇者を大切に使えない人がたくさんいますしね。もっと、秘密をしっかり隠せるような組織を作り上げる必要があります」

 

「う~、なんか難しい話してる?」

 

「大丈夫ですよ、友奈さん。これは私や安芸さん、花本さん...残った巫女たちの仕事ですので。神託を受ける立場として、上手く立ち回って見せましょう。私は、ずるい女ですから」

 

「...だったら私たちの役割は民心の安定ですね...人が生きていく希望だったりなんかになればいいですね。その裏で、私たちは力を蓄える...やることは多いですね。まずは勇者システムの基礎戦闘能力を向上させなければなりませんね。神樹の根が守る世界ならなんとかなりそうです。それでひなと君、三百年後の勇者システムはどんな感じなんですか?」

 

「最終アップデートの一個前だったら...まず死なないでしょ、心臓が止まってても生きるよ」

 

「は...?」

 

「で、俺らが倒してきたやつを基準にして考えると星屑と変わんないだろうね」

 

「はい?」

 

「俺らが最後に倒したやつも精霊の力を身に宿さずに倒せると思う」

 

「...先は長そうですね...でも時間をかければ人間の学習能力で敵を倒すまでにシステムを進化できるのは証明されましたし、世界の理を戻す術だって分かるはずです、こちらには未来人と神様がいますしね」

 

「俺未来人じゃないけどね」

 

「どちらかというとー、預言者?」

 

「転生者だ」

 

「...今は和睦する...だが、必ず...」

 

「タマたち人類が、必ず人々の日常を取り戻す!」

 

「怖いのは...長い間にこの意識が薄れていくことね...まぁ今を生きている私たちが...生きていない時を心配するのも...無駄な気もするけど...」

 

「やれるだけのことはやっておこうよ!未来になんか残したりとか!」

 

子孫とかしか思いつかねー

 

「子孫ですか...」

 

 

 

 

 そうして若葉を中心として勇者は英雄として人類の先頭に立つ。

 バーテックスの侵攻は止み、人類は平和の時を迎えた。

 

 

 

 

神世紀元年...

 生き残ることを赦された人類は、大社を大赦と変更し、年号も神樹を中心とした神世紀へと改めた。

 

 

 

 

神世紀七十二年...

 俺は死んだので分からないが、歴史的にはバーテックスの襲来を実体験した最後の生き残りが老衰で死亡。

 

 

 

 

神世紀百年...

 平和の時代は百年を迎える。神世紀以降、バーテックスの侵攻は皆無。バーテックスや勇者、天空恐怖症候群などと言う言葉は現実感を失い、歴史上の用語としてのみ人々に語られるようになる。

 ただ独特な習慣は続いていた。生まれたときに特定の行動...例えば逆手を打ったりした女子には、大赦から壁を強化するにあたって一番重要な人物、英雄・高嶋友奈のあやかり、『友奈』と言う名前が贈られる。天の神に対するささやかな反骨なのだろう。

 また大赦は新たなる百年を記念し、人々の精神的安寧を守るためにも、バーテックスの驚異をあらゆる記録から削除。危険度の高いウイルスによって四国外は壊滅したという説を流布し、定着させていく。

 しかし。

 人類でさえほとんどのものが知らぬ秘密裏に、勇者システムの研究は続いていた。

 長い年月の後、それが大きな意味を持つことになる。

希望は、未来に託された...




後は外伝と番外編を書いてのわゆは終わる予定です。多分?


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第33話外伝①

①とは書きましたが、正直これで終わりなきもします。と言うかなんか思いつかない限り終わりです。
あ、ハッピーニューイヤー。
文字数が四倍くらいですが俺の文章力はいつも通りです。


 花本美香。ミカではなく、よしか。

 でも私は友達から正しい名前で呼ばれたことがほとんどない。

 幼稚園時代、他の園児たちは私のことを「ミカ」と呼んだ。保育士が私の名前を勘違いしてみかと呼んでおり、それが他の園児たちに広がってしまったのだ。両親は私の名前が間違われていることに気づき、よしかだと訂正したが、園児たちにはすでにミカと言う呼び方が定着していた。彼女たちは悪気がなく、私のことをミカと呼び続けた。

 小学校に入っても、私はミカと呼ばれ続けた。幼稚園時代の知り合いは、引き続き私をミカと呼び、それが周囲に広がっていった。また、小学校になれば漢字を読めるものも増えてくるが、私の美香と言う名前は、普通に読めばよしかではなくミカだった。

 だから私はミカと呼ばれ続けた。

 悲観的な気分になった。私はこれから先も、ずっと他人に本当の名前を呼んでもらえないのだろうか。

 名前を呼ばれない。些末なことかもしれないけれど、私自身の存在がなくなってしまう気がして、ひどく悲しかった。

 

 

 

 

 しかし二〇一五年七月三〇日、私は彼女たちに会った。

 日本全国にバーテックスが現れたその夜、私は自分でも理解のできない衝動に動かされ自転車で家を飛び出した。今思えば、あれも神樹の神託の一つだったのかもしれない。私体がいた地域は偶然にもバーテックスは出現しておらず、危険なく移動することができた。時々強い地震が起きて足止めされることもあったが、私は何かに導かれるように自転車を走らせ続けた。

 たどり着いたのは、管理をする者がいなくなり、荒れ放題になった小さな神社の社。私の家も神社だからわかるが、このように管理者のいない神社は全国的に少ない。

 社は地震のせいで倒壊していた。そして壊れた社の前に、錆びた刃物のようなものを持った少女と、それを見て少し険しい顔をしている少年がいた。どちらも私と同じ年齢くらいであろうか。

 黒髪の少女は月明かりの下に立っていて、その光景は現実離れして見えた。整った容姿でありながら、手に持っていた錆びた刃物が、幼い女の子と言う存在に対してアンバランスだったからだろうか。

 けれど...その姿は美しかった。

 私は言葉を失った。目の前にいる女の子が現実の存在ではなく、神か天使のように思え、声を発した瞬間に消えてしまいそうな気がした。体が緊張してうまく呼吸ができない。

 私が呆然としていると近くにいた少年が話しかけてきた。

 

「はなもとよしか...さん......えっと...呼吸止まって少し顔色悪そうですけど...大丈夫ですか...?」

 

 どうして私の名前が分かったのだろう?この人は目の前にいる神様の眷属なのであろうか。そうに違いない!人は神などの前に立った時、その存在に畏怖して平静ではいられなくなるという。だからこんなに緊張するし、心臓がどきどきするし、呼吸もうまくできなくなるのだ。私がそんなことを思っていると目の前の神も私の方を見た。

 

「はなもと...よしか、さん...?よしか、みか、よしよし、みよし...どう読むのが正しいのかしら...?私は...よしかだと思ったけど...」

 

 私は神に話しかけられた歓喜に声を震わせながら、やっと答えた。

 

「よ、よしかです!私は花本美香です!」

 

「そう...わたしも...美香が一番いいと思うわ...。ありふれた名前じゃないし...奇をてらいすぎてもいないから...」

 

 初対面で本当の名前を呼んでもらえたのは、生まれて初めてだろう。

 しかも神様みたいな人とその眷属みたいな人に!

 たったそれだけのことで、今までクラスメイトの誰にも正しい名前を呼んでもらえなかったことが、すべて帳消しになったように思えた。

 報われた。私は報われたのだ。

 

「か...神様!それにその眷属の人!どうして私の本当の名前が分かったんですか⁉」

 

「「...は?神(眷属)?」...と言うか俺無視されてんのかと思ったわ」

 

 彼女とその近くにいた男は怪訝そうな顔で見合わせた後、私の自転車を同時に指差した。前輪のカバーに、持ち主...つまり私の名前が書かれていた。

 

「それ...あなたの名前でしょう?」

 

 名前を当てられたとは神通力ではなかったようだ。でも眷属の方は自転車を見てなかったような気もした。それでもよしかと読むことができたのは、やはり奇跡の御業だろう。

 

「どうして、名前の読み方が分かったんですか?」

 

「私は...よく自分の名前を間違えられるの...。だから他人の名前はできるだけ...間違えないようにしている。いくつかのパターンを考えて...あなたに聞いて、正しい名前が分かったわ...花本美香さん」

 

「俺は、前ふざけて名前を間違えたらいろんな形でボコボコにされたからな...それ以降は間違えないようにしてる...ちなみに勘」

 

 

 

 

 私があの夜に会った神秘的な少女は郡千景と言う名前で、その付き添いの少年は上里ひなとと言う名前だった。二人は神様でも眷属でもなかったが、勇者と言う特別な力を持つ人間だった。

 勇者である彼女たちは大社と呼ばれる組織に保護された。そして私は、勇者・郡千景、上里ひなとを見出した巫女と言う立場になった。

 私の家は小さな神社だから、巫女としての仕事にやり方を親から教わったことはある。しかし大社の言う巫女とは、神社で舞を舞ったりする巫女ではなかった。神の声、すなわち神託を聞く女性のことだという。

 私が郡千景様と上里ひなた様を見出すことができたのは、巫女としての力のお陰だったらしい。

 その後私は、巫女として大社に入るように要請された。だが父は私が大社に入るかどうかを、私自身に選ばせてくれた。もし大社に入ることが嫌ならば断わっても構わない、と言ってくれた。

 

「入るわ。大社に」

 

 わずかの迷いもなかった。大社に入れば郡様達に少しでも近づくことができるからだ。

 

 

 

 

 けれど、巫女は大社内の施設で暮らし、勇者様は丸亀城で暮らすことになっていた。普段の生活の中で、巫女と勇者様の間に接点はなかった。

 ただし、巫女として勇者様たちをサポートするため、六人の勇者様のプロフィールや生い立ちなどを教えてもらうことができた。特に私は郡様と上里様の巫女と言う立場だから、彼女たちに関して大社が持つ情報はすべて知らさせてもらえた。

 郡様が生まれてきた環境は、吐き気を催すほどひどいものであった。

 父親は子供がそのまま大人になったしまったようなくずで、家族を蔑ろにした。母親は不倫し、娘を捨てた。そんな家庭の状況を知った周囲の大人たちは、郡様を蔑み、嘲笑し、忌み嫌った。学校ではひどいいじめを受け、心身ともに虐げられた。

 地獄だ。

 しかしそんな地獄にも一本の糸が現れた。ひなと様である。彼は五歳の時に両親を事故で亡くし、上里家に引き取られた。そしてそこからニ、三年たった時に母親が転勤で高知に引っ越すことになり、その時にひなた様もついていき郡様の村に引っ越してきた。そしてそこから郡様をかばい、一緒にいじめられることになったという。まぁほぼ返り討ちにしたそうだが...とにかく、ひなと様は眷属ではなく神様とともに地獄を一緒に過ごす守護神的な人だったのだ。そんな人を軽くスルーしてしまったと気づいたときに私は少しだけめまいがした。ちなみにひなと様には義理の姉がいるらしく私と同じ巫女らしい。そして郡様の親権はクズではなく上里家が今持っているそうだ。

 今までの人生が苦痛に塗られていた分、これからの郡様はひなと様と苦痛に耐える生活ではなく、幸せな生活を送る生活にならなければならない。彼女たちは勇者と言う選ばれた存在になったのだから、これからは過去の不幸を補うほどの、幸福になる権利はあるはずだ。

 これから郡様たちは、勇者として栄光に満ちた道を歩まれるのだろう。私はその手助けをしたい。

 けれど私は、その後郡様達に合わないまま...三年以上も過ぎてしまった。

 

 

 

 

「上里ちゃんが受けた神託の四国の危機ってまだ来ないわね」

 

 食堂で夕食を食べながら、私は安芸先輩は話していた。安芸先輩とは私より一つ上の巫女で、勇者・土居珠子、伊予島杏を見出した人だ。

 今は二〇一九年の四月、もう桜が満開になっている季節だ。上里さんがまもなく四国に危機が訪れるという神託を受けてから、しばらく時間が経ってしまった。その間、バーテックス襲来は一度も起こっていない。

 

「JKのあたしとしては、いつ危機が来るのかって不安だわ。やっぱりJKだから、色々なことを考えないといけないしjk」

 

 安芸先輩の語尾が変になっていた。ついでに最後のはめんどくさそうな感じだ。

 

「jkと言いたいだけでしょう、安芸先輩は...」

 

「だって環境は変わらないし、周りにいる人たちも同じだし、ぜんぜんそつぎょうしたってかんじがしないのよぉ!せめて女子高校生だけってことだけでも強調させて!」

 

 四月になったため、私たちの学年は一つ上がった。私は中学三年生になり、安芸先輩は高校一年生だ。

 しかし高校生になったからと言って、何かが変わるわけではない。同じ授業を受けて、巫女として修業をするだけだ。教室は変わらないし、生活する宿舎も変わらないし、新しい巫女が入ってくることもないから周囲の人間も変わらない。

 

「そういえばさ、花本ちゃんのお父さんって、大社の神官なんだっけ?」

 

「ええ、そうですよ」

 

 私の家は小さな神社で、父はそこの宮司をやっていた。大社は神職で構成された組織だから、私が巫女として大赦に入るように求められた時に父にも声がかかったのだ。

 

「結構重要な役職だったりする?なんたって勇者の巫女の父親だし」

 

「いえ、全く要職ではないです。大社の神官なんて向いていないんですよ、父には」

 

「うわ、お父さんに対しても花本ちゃんは毒舌だね」

 

「父自身が向いていないと言っていたんです。父は神職としては優れた人です。だからこそ、大社には合わないんです...どうして私の父のことを聞くんですか?」

 

「いやー、もし花本ちゃんのお父さんが偉い人だったら、あたしが知らない情報も知っているんじゃないかと思って。上里ちゃんの神託のことで、四国に何か危険な兆候があるのとかさ」

 

「だったら、上里本人に聞いてみればいい」

 

 突然、背後から声を掛けられ、私たちは振り返る。

 たまたま通りかかったのか、今日も白衣の烏丸先生が立っていた。

 

「上里が明日、大社に来るらしいからな。新しい神託があったのか、何かバーテックスとの戦いに変化があったのか聞いてみたらどうだ?特にバーテックスとの戦いに関して言えば、樹海化のせいで、勇者にしかわからないことも多い。勇者の近くにいる上里だけが持っている情報もあるだろう」

 

「明日上里ちゃん来るんだ」

 

 安芸先輩の声が明るくなる。上里様は、安芸先輩はもちろん巫女の皆から好かれているので、彼女訪問を楽しみにしているものは多い。

 しかし安芸先輩とは対照的に、烏丸先生の表情は少し険しかった。

 

「今回の上里の訪問は、あまり喜べることじゃないかもしれないぞ。よくない報告があるらしい」

 

 

 

 

 翌日の朝、上里様が大社に到着した。まずは大社の大人たちに勇者様の現状報告と相談を行い、何かを話しているようだった。

 夕方になり、やっと彼女は解放された。

 烏丸先生が言っていた喜べることじゃないかもしれないという言葉が気になり、私と安芸先輩は上里さんの部屋に行ってみた。

 

「いらっしゃいませ、安芸さんに花本さんも」

 

 上里様が笑顔で出迎えてくれる。

 

「上里ちゃんも大変だよね、朝早くに丸亀城からここまでやって来て、すぐに何時間もぶっ通しで会議ってさ」

 

 安芸先輩は部屋に入ってくるなり、上里様の許可もとらずにベットに腰掛ける。しかし上里様はそれを咎めることもなく、穏やかな笑顔のままだ。

 

「ふふ、確かに大変です。ですが、正確に勇者の皆さんのことを大社に伝えておかなければ、いざと言うときに問題が起こるかもしれませんから。少しでも勇者の皆さんたちの助けになるなら、私一人の苦労なんて大したことではありません」

 

 そう言いながら上里様は私に座布団を出してくれた。

 

「花本さんも座ってください。お茶でも入れましょう」

 

 上里様は部屋から出ていき、急須とポットと湯呑を持って戻ってきた。

 

「上里様、そんなに気を使わないでください...」

 

「いえいえ。花本さんも座っていてください。よい香川茶が出に入りましたから、おみあげに持ってきたんです」

 

 上里さんは急須でお茶を三人分入れる。

 振る舞いと言い、雰囲気と言い、彼女合大人びているし、できた人間だと思う。さすが、守護神の姉だ。どこかの誰かさんとは大違いだ...と思いながら、私は安芸先輩を見る。

 

「ん?」

 

 安芸先輩は私の視線に気づき、

 

「何かね、花本ちゃん。jk真鈴の大人びた魅力に目を奪われたのかな?」

 

「いえ、まったく」

 

「奪われたって言いなさいよーっ⁉」

 

 そんな私と安芸先輩のやり取りを、上里様は微笑ましげに見ている。上里様と接していると、やっぱり私は彼女を嫌いになることはできないと思った。

 

 

 

 

 三年半以上前、巫女になることを承諾した私は、大社にやってきた。郡様達と一緒にいられないことは不満だったが、一般人と勇者様たちとの距離を考えれば、まだ私の方が郡様に近いといえる。

 私の他にも巫女は何人もいて、そのん下でも上里様は特別な存在感を放っていた。小学生とは思えない落ち着きと聡明さで、すぐに巫女たちの中心になってしまった。私が本当の名前で呼んでもらえない脇役だとしたら、彼女は間違いなく主人公だ。

 

 大赦に巫女たちが揃った後、神官が

 

「この中の誰か一人に、勇者たちと共に生活するお目付け役になってもらいます」

 

 と告げた。

 

 お目付け役は巫女として能力が高いもの...上里様、安芸先輩、私、烏丸先生の誰かが適任だという。

 烏丸先生は

 

「面倒だ。ほかの誰かがやってくれ」

 

 と即答で断り、安芸先輩はどうしようかと迷っているようだった。

 その場で手を挙げたのは、私と上里様だ。

 

 

 

 

 

 上里様は勇者の乃木様と家族のように仲が良いし、後で分かったことだがひなと様の姉だから、そばで彼女たちを支えてあげたかったのだろう。私は私で、少しでも郡様の近くにいたかった。

 数日後、結局上里様がお目付け役に決まった。巫女としての能力は上里さんの方が高かったし、精神面でも彼女の方が安定していると判断されたらしい。

 私は悔しかった。郡様達に近づくチャンスが失われたのだ。

 そんなこともあり、始め私は上里様のことを嫌っていた。劣等感を抱いていたともいえる。

 しかし、今では上里様がお目付け役に決まって良かったと思う。大社に来るたびに巫女たちの問題を自分を犠牲にしてでも解決していくのだ。上里様はすごい人だと思った。いつの間にか私は彼女のことを嫌うどころかひなと様の姉と言うこともあり尊敬していた。

 

 

 

 

 

 

 

「烏丸先生が言ってたんだけど、何かあんまりよくない報告があるんだって?」

 

 みかんをお茶漬けに、上里様が入れてくれたお茶を飲みながら、安芸先輩が尋ねた。みかんは安芸先輩の愛媛の実家から送られてきたものだ。

 上里様はためらいがちに答える。

 

「そうですね...今日私が大社に来たのも、その報告のためでした」

 

「何かあったのですか?もしかしてこの前、上里様に神託があった四国の危機のことでしょうか?」

 

「いえ。...先日の結界外遠征の後から、勇者たちの様子に少し異変が見られるんです」

 

「異変?」

 

 私は聞き返し、安芸先輩も上里様に目をむける。

 

「はい。球子さんは原因不明の不調を訴えています。不調と言っても、何か体に変な感じがある...という曖昧なもので、はっきりとした症状が出たわけではありません...医者の検査でも体は健康だということでした」

 

「...球子が...」

 

 安芸先輩は考え込み、黙り込む。

 

「他の勇者たちはどうなの?郡様とひなと様は」

 

「球子さんと同じ症状を訴えている人はいませんが...千景さんは精神的に弱っているようです」

 

「精神的に...って?」

 

「口数が少なり、険しい表情を浮かべていることが多くなりました。現状に不安を抱いているのかもしれません。...きっと結界外の遠征で、四国の外を見てしまったからだと思います...」

 

「あたしは...結界外の話を聞いただけでもものすごくショックだった...実際に見た勇者の皆はもっと絶望的だっただろうね...郡ちゃんや球子さん達の不調は、その時のショックが原因かもしれないわね...」

 

 安芸先輩の言葉に、上里様はためらうような間をおいて、頷いた

 

「それもあると思います...ただ、ひなとがこんなことを言っていました。俺は現状、球子と杏以外の精霊の疲労や、もしデメリットがあったときにデメリットを肩代わりできると」

 

「なんであの子たちのはできないの?」

 

「カードがないそうです...でもひなとはこれまで多摩湖産以外の勇者の精霊を肩代わりしましたが球子さんの症状は出ませんでした...でももしかしたら球子さんのは精霊のデメリットと言う可能性もあります」

 

「そっか...」

 

 三人の間に沈黙が落ちる。

 勇者たちのためにないかできることはないだろうか。私はお目付け役と言う立場になれなかったが、それでも郡様達のためにできることは何でもしたい。

 大社は戦争に関しては素人だ。戦場に出る者たちのメンタル面のサポートは、十分にできていない可能性がある。私も戦争に関して素人なのは同じだが、大社の大人たちよりも勇者様に年齢が近い分、彼女たちに寄り添うことができるはずだ。何かできることがあるはずだ。

 

「勇者たちの精神的な落ち込みが不調の原因なら...何か気晴らしになることができればいいのでしょうか?」

 

 私が言うと、ひなた様は少し表情を和らげた。

 

「そうですね、結局はそれが一番いいのかもしれません。先日も、若葉ちゃんの提案でレクリエーションとして勇者全員で模擬戦を行ったのですが、皆さん楽しんでいたようですから」

 

 上里様が言うには、乃木様も勇者様たちの間に流れるくらい空気を払拭するため、全員でレクリエーションをしようと思いついたらしい。そしてそのレクリエーションとは、バトルロワイヤル形式の模擬戦だったとか。

 

「レクリエーションがバトルロワイヤルって...うーん、乃木ちゃんならではって思い付きだね。それ、結局優勝したのは乃木ちゃんかひなと君じゃない?戦わせたらそこらへんが一番強いでしょ?」

 

「いえ、勝ったのは杏さんでした。彼女の作戦勝ちです。ちなみにひなとは四対一でリンチにされてました」

 

「えぇ、あの子が?どんな作戦、使ったのよ...そしてひなと君地味にかわいそうね...」

 

 安芸先輩が意外そうな声をあげる。

 伊予島杏様は争うことが得意な人ではないから、戦力としては勇者様の中でやや劣るほうだ。その代わり、勇者様全体の指揮を取ったり、作戦行動を立案したりなど、参謀としてやや大きな功績をあげてきた。

 

「杏さんがどんな策を使ったのかは秘密です」

 

 上里様は微笑み、なぜか答えずに話題を変えた。

 

「でも花本さんの言う通り、気晴らしをすることが一番かもしれませんね。遊びでも何でもいいんです。そうすることで、少しでも悪い雰囲気が紛れれば...」

 

 

 

 

 上里様はその後まもなく丸亀城に帰っていった。今回は大社に泊まっていかないらしい。勇者様たちの精神状態に変調が見られるため、丸亀城から離れている時間を極力減らそうと思っているのだろう。

 上里さんが帰った後、私と安芸先輩で、さっきの勇者たちの気晴らしについて具体的に何ができるのか話し合った。

 

「お花見とかどう?」

 

 と安芸先輩が提案する。

 

「なるほど珍しく良いことを言いましたね。私はてっきりまた麻雀をしようとか言いだすのかと思いましたよ」

 

「花本ちゃん、あたしを麻雀狂かなんかだと思ってない⁉」

 

 思ってます。

 

「ともかく、確かに丸亀城は桜の名所です。一般市民が立ち入りできた頃には、お花見客も多かったと聞きます」

 

 私は高知出身だが、かつては毎年四月になるとTVなどで丸亀城の桜の様子が特集されていた。だから絶好のお花見スポットであることは知っている。

 

「そうだ!勇者と巫女たち全員で合同お花見会を開くのよ!」

 

 安芸先輩は名案だとばかりに言った。私たちは烏丸先生に許可などの問題を押し付けた。

 

 

 

 

 翌日は日曜日。

 日曜は、授業も巫女の修業もない休日になっている。

 けれど私はいつもと同じ時間に起きた。安芸先輩に死ぬほど気は進まないが料理を教わるためだ。

 安芸先輩に料理を教わっている時に郡様達の話題が出た。

 

「そういえば花本ちゃんって、郡ちゃんとひなと君とはよく会ってるの?」

 

 料理の手順を見守りながら、安芸先輩が尋ねる。

 

「バーテックスが出現したときには、お会いしました」

 

「その後は?」

 

「...一度も会っていません」

 

「そっか...どうして会わないの?花本ちゃん、郡ちゃんとひなと君のこと大好きなのに」

 

「安芸先輩、前々から思っていますが、私の郡様達に対する感情を好きと言うより、最大限の敬愛です。巫女が勇者を敬愛するのは当然でしょう?それに、お二人はお付き合いしてると言ってお過言ではありませんから」

 

「それはともかくさ、なんで会わないの?」

 

 勇者と巫女は暮らしている場所こそ離れているが、全く会えないわけではない。大社の許可が下りれば、連休などにお互いの予定を合わせて会うこともできる。実際、安芸先輩は一年に一回くらいは土居様、伊予島様とあっているらしい。

 けれど私は、バーテックスが初めて現れた日以降、一度も郡様に会っていない。最初は勇者様たちのい目付け役になってでも傍にいようと思っていたのに。

 

(どうしてだろう...)

 

 自分でもよくわからない。

 

「私は郡様達の連絡先を知りませんから、予定を合わせることができないですし...」

 

「上里ちゃんから頼めば、間を取り合ってくれるんじゃない?」

 

 安芸先輩の言う通りだ。さっき言ったことは後付けの言い訳だ。

 本当は...

 

「...勇気が、出なかったからかも」

 

「勇気?」

 

「はい...」

 

 私は俯いた。料理をしていた手が止まる。

 

「...私は郡様とひなと様を見出した巫女と言うことになっていますが、上里様と乃木様のように昔からの知り合いと言うわけではありません。バーテックスが現れた日に初めて会って、ほんの少しだけ話をしただけなんです。ひなと様に関してはいないかのように扱っていましたし...私にとって郡様やひなと様は特別でも、きっと郡様達にとって私はどこにでもいる記憶にも残らない程度の人間です...。そう思い知らされるのが...怖かったのかもしれません...」

 

「...」

 

「私は上里様のように巫女の力が強いわけでも、人間性が優れているわけでもない凡庸な人間です。あってしまったら、嫌われるかもしれないですし...」

 

 勇者様のお目付け役になろうと手を挙げた時、私は自分が巫女として特別になったのだと思いあがっていた。興奮状態で冷静に物事を見ていなかった。しかしお目付け役の選考に落とされ、自分は結局凡庸な人間なのだと改めて突き付けられた。

 そしたら...もう、会う勇気がなくなってしまった。

 いつ郡様達に会っても話題に困らないように、上里様から郡様達の様々な話を聞いて、郡様がやっているのと同じゲームをプレーしたりもしていたけど...その知識が役立つことはなさそうだとうすうす思いながら、それでも情報収集を続けていた。

 安芸先輩は私の背中をとんっと叩いた。そして笑顔で言う、

 

「だったら、これから会うようにすればいいじゃない。このお花見をきっかけにしてさ。大丈夫よ、これでおいしい料理を作っていけば、きっと仲良くなれるって。人間はおいしいものをくれる人には好感を抱くものよ」

 

「そうでしょうか...でも胃袋を掴むのはひなと様がやっていたような...」

 

「大丈夫!ひなと君もかつお料理はさすがに作れないわ!多分!私が保証するわ!」

 

 安芸先輩は何の確証もないことを、自信たっぷりに肯定する。けれど、その言葉は私に、ほんの少しだけ前向きな気持ちと、勇気を与えてくれた。

 

 

 

 

 その夜私を含める多数の巫女が神託を受けた。バーテックスが襲ってくる感じのやつであった。

 

 

 

 

 数日後の夜、私と安芸先輩は烏丸先生の部屋に呼び出された。

 

「今日の午後に、勇者と巫女の合同お花見会の許可が下りたよ」

 

 烏丸先生は不思議なほど淡々とそう言った。

 

「本当ですか⁉」

 

 安芸先輩が嬉々として身を乗り出す。

 

「ああ。ちょうど勇者側からも花見をやりたいという意見が出たそうでな、それが決め手になった。伊予島と土居が、丸亀城は桜の名所だから花見をしたいと言い出したらしい」

 

「球子と杏ちゃんか!お花見と言うあたしと同じ考えにたどり着くとは、やっぱりあたしたち、通じ合ってるわね」

 

 お花見が決定となったようなので、安芸先輩は嬉しそうだ。

 烏丸先生は無表情に淡々と言葉を続ける。

 

「だが、ついさっき花見は中止に変更された」

 

「え⁉なんで⁉」

 

 安芸先輩が訊き返す。

 

 私は嫌な予感がした。先生の口調も表情も何もかもがおかしい気が...

 先生は言葉を続ける、

 

「今日の夕刻、バーテックスと勇者たちの交戦があった」

 

 勇者たちの戦いは勇者様にしか認識できない。

 

「襲来したバーテックスの数は、前回の丸亀城の戦いよりも少なかった」

 

 巫女たちもその戦いを知ることはできない。

 

「だが、過去に出現例のない、大型で力を持ったバーテックスが出現した」

 

 私たちの知らないところで戦いは始まり、知らないうちに終わる。

 

「勇者たちは最善を尽くしたが、敵は強力で」

 

 だから...

 

「土居珠子と伊予島杏が瀕死の状況だ」

 

 私たちは勇者様が死んだことにさえ...

 

「死んではいないんですね」

 

「花本ちゃん⁉なんてことを言うの⁉」

 

「ああ。上里ひなとが最高位の精霊を使ったからな」

 

 どちらにしろ勇者様がどんな状況になっていることさえ気づけない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 球子たちが入院して数日後、あたしこと安芸真鈴は大社にお見舞いに行く許可をもらい球子たちの病室の目に来ていた。

 病室のドアを開けると、二つの隣り合わせのベッドにあの子たちが包帯ぐるぐる巻きの状態で寝ていた。そしてその近くには、背はちっちゃいくせに大きい女子が座っていた。

 その少女は私の方を見て

 

「安芸...真鈴さん...だっけ?」

 

 と聞いてきた。

 

「うん...」

 

「...俺は邪魔だろうからお暇したほうが良いかな?」

 

 そう言いながらその少女席を立とうとした。

 

「いや、いい。何ならいてほしいわ」

 

「そうか」

 

 そこから向こうは会話を続ける気が見えなかったのであたしは球子たちの方へ行き、持っていたみかんの入ったバスケットをそれぞれの近くにおいて、少女...上里ひなとの隣に座った。

 

「球子たちは、本来なら元気な姿を見せられないほどのけがを負っている」

 

 座った瞬間、ひなと君が語りだしたのであたしは黙って聞いていた。

 

「でもなぜか俺が初めて見舞いに行ったときに元気な姿を見せて、まるで怪我なんてなかったかのように笑顔を見せていた」

 

 あたしはそれを聞いて少し安心した。

 

「でも、その代わり活動時間が赤ちゃんのようになった。体を回復させるためか、元気でいられる時間を増やすためかは知らないが、一日に三時間ほどしか起きていない。あとは寝ている」

 

「それって大丈夫なの?」

 

「わからない。でもまぁ大丈夫なんだろ」

 

「そんなてきとうな...」

 

「わからないものはわからないんだから仕方がないだろ...だが謝りはする。護れなくてすまない」

 

 ひなと君はこちらを向き深々と頭を下げてきた。

 

「なんでひなと君が謝るのよ...ひなと君がいなかったらもっとひどいことになっていたんでしょう?」

 

「それは...わからない」

 

「...まぁ命が助かっていればいいのよ!でも...お花見はしたかったなぁ」

 

「巫女でもお花見する話が出てたのか」

 

「?いやあんたたち勇者と巫女で一緒にするやつよ」

 

「え、何それ聞いてない」

 

「まぁ中止になったから気にしないでいいわ」

 

「と言うか巫女と勇者だけだったら男子一人だけなんだけど...」

 

「よくよく考えたらそうね。まぁそうなったらハーレムになっていいじゃない!」

 

「よくねぇ...」

 

 そんなことを話しながらあたしはひなと君の顔より少し下の方を見ていた。でかい...上里ちゃんよりでかいのではないだろうか?男のくせにずるい。

 

「安芸さん?」

 

「なにかしら?」

 

「俺の顔はそこについていないんですが...」

 

「...」

 

「ん...ん~」

 

 私が無言を貫いているとベッドの方向から声が聞こえた。球子が目を覚ましたのである。

 

「ん...?おお!真鈴!ひっさしぶりだな!」

 

「うん!球子も無事そうではないけど元気そうでよかった!はいこれ!愛媛のミカン!」

 

「サンキュー!」

 

 球子は自分で何かを食べるということができなかったため、あたしがミカンを剥いて食べさせてあげた。球子はそれはおいしそうに他食べてくれたので持ってきたこちらもうれしくなった。

 しかし、今日は杏ちゃんが起きることはなかった。いつもは球子と大体同じタイミングで起きるそうなのだが、起きなかった。

 面会時間が終わるまであたしは球子たちと一緒にいて、終わったらひなと君と一緒に病院を出た。

 

「そういえば毎日お見舞いに来ているの?」

 

「ああ。俺がもうちょっと早く来ていればなかった怪我だからな」

 

「...そう。でもひなと君のお陰であの子たちが助かったのも事実よ。だからあたしにできることなら何でも言ってほしいわ!」

 

「だったら...お姉ちゃんが困っていたらなるべく協力してほしい。お姉ちゃんがやろうと思ったことに対して味方でいてほしい。ただそれだけ」

 

「わかったわ!これまで以上に上里ちゃんのサポートをしていくわ!」

 

 今日は結局杏ちゃんとは話せなかった。だから私はまたお見舞いに行こうと思った。大社か許可が出ないかもしれないがそれでも何とかして来ようと思った。

 

 

 

 

 数週間後、ある日教室に入ると、黒板に

 

私は休む。自習で。

 

 と書かれていた。あたしは近く似た年少の巫女に尋ねる。

 

「烏丸先生、なんで休んでるの?」

 

「大社の人たちみんなで、会議をしているみたいです...」

 

「何かあったの?」

 

「私たちもよくわからないんですけど」

 

 彼女は一瞬隣にいる花本ちゃんをちらっと見てからためらうように口をつぐんだ後、

 

「郡千景様が上里ひなと様を殺そうとしたらしいんです」

 

「は?」

 

 突然花本ちゃんがこちらを向き声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「郡千景様が上里ひなと様を殺そうとしたらしいんです」

 

「は?」

 

 意味不明の文が聞こえた瞬間私は思わず声を出してしまった。

 

「どういうこと...?郡様がひなと様を...?」

 

「私は本当によくわからないんです」

 

 目の前の巫女が少し怖がりながらそんなことを言う

 

「花本ちゃん、怖がらせたらダメだよ」

 

「...そうですね、ごめんなさい」

 

(どういうことなんだろう...とりあえず烏丸先生か上里様に聞くしかないわね)

 

 そしてその日に烏丸先生は帰ってきて、私を部屋に呼び出した。

 

「ほれ、花本。何か私に質問があるんじゃないか?」

 

「すべてです。知っていることをすべて教えてください」

 

「それは質問になっていないが、まぁいいだろう。まず郡が上里を殺そうとしたことだが、事実だ」

 

「そんな...」

 

「だがこれは精霊のせいとされている」

 

「...」

 

「だが、郡千景を勇者としてみないという考え方もできてきている。神樹から見放されたからな」

 

「どうしてそうなるのよ!」

 

 それを聞いた瞬間、頭に血が上った。ほとんど反射的に、私は烏丸先生に掴みかかっていた。しかし私は彼女に腕を取られ、関節を極められて壁に押し付けられていた。関節を極められていることと、壁に圧迫されているせいで動けない。

 

「うぅっ...!」

 

 烏丸先生は護身術でもやっていたのだろうか。武術のたしなみがある人間の動きだ。

 

「ついでに、郡の心をおかしくした精霊、玉藻の前を上里が取り込んだ。大社の一部はその妖術のエキスパートの玉藻の前の力を使い郡が最初からいなかったことにできるのではとも考えている」

 

「今まで命を懸けて戦っていた勇者の失敗一つに対しての行動がそれかぁ⁉」

 

「落ち着け。やるかやらないかを決めるのは上里だ。どうせやらないだろう」

 

 烏丸先生がそう言ったのでは私は少し冷静になったが、大社に対しての怒りはずっと残ったままだった。

 

 

 

 

 数日後、また私は烏丸先生に呼び出された。

 

「まだ決まってもいないのに上里に郡をいなかったことにしてほしいと言って輩がいた」

 

「...それで?」

 

 私は怒りをこらえてただただそう言った。

 

「結果を先に言うと、そいつは怯えて会議に出席した」

 

「つまり?」

 

「上里が変身して脅したらしい。今後そういうことを言ったら上層部を皆殺しにしてやるから覚悟しろとのことだそうだ。私からすれば面白そうだからぜひともそうしてくれとも思うがな」

 

「...とりあえず郡様の件はひとまず解決したということでしょうか?」

 

「そうだな。そのうち郡にも勇者システムが返ってくるそうだ」

 

「よかった...」

 

 やっぱりひなと様は郡様の守護神様だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二〇一九年、秋

 

 私は大社の会議室で、神官たちにある報告を行っていた。

 

「...以上が、私が結界外の外で見てきた光景です」

 

 昨日、私は若葉ちゃん達とともの結界の外に出て、世界の様子をこの目で確かめてきた。

 夏の戦いで若葉ちゃん達が倒した大型バーテックスが、一体だけ全く同じものが生まれておりバーテックスはいくら倒しても無限に再生するのだという絶望的な事実が判明した。

 けれど、一番大きな報告は、結界外の世界そのものが、作り変えられてしまったことだ。

 それまでの結界外の世界は、バーテックスが蔓延って荒廃したとはいえ、あくまで私たちが生きてきた日本と言う国土に違いはなかった。

 しかし私と若葉ちゃん達が結界外に出た、まさにその瞬間、言葉では言い表し難い現象が起こった。幻だったのか現自治に起こったことなのかわからないが太陽が落ちてきて大地を飲み込み、大地は溶岩に包まれ、地獄のような状態に変わってしまったのだ。時間は昼なのに、空は夜のように暗く、太陽も青空もどこにも見えない。そこに存在していたのはもはや私たちが生きていた世界とは全く違う、異界だった。

 私は自分が結界外で目にしたことをすべて、神官たちに話した。

 

「神々は攻撃の手を緩めるつもりはない...ということでしょうな」

 

 年老いた神官の一人が、私の報告を聞いた後、重々しくそう言った。

 

「しかし、結界は強化されたから」

 

「いやそれもいつまで持つかわからんでしょう」

 

「勇者は前回の戦いで何回も死んだらしい。万が一強化された結界を通れるバーテックスが現れたら今度もうまくいくとは限らんでしょう」

 

「新たな勇者が発見されたという報告はないのか」

 

 神官たちはざわざわと無秩序に話すが、追い詰められた現状を打開する両案は出てこなかった。

 やがて、神官の一人が苦渋を滲ませた声で言う、

 

「やはり...奉火災を執り行うしかないのでは...」

 

 その言葉によって、誰もが黙ってしまった。

 

「犠牲の重さを理解して言っているのでしょうね?」

 

 会議に参加していた烏丸先生が、奉火災と言う単語を出した神官に鋭い視線を向けた。

 奉火災。

 大社の最終手段として、前から検討されていた儀式だ。天の神と、その尖兵たるバーテックスに対抗する手段ではなく、完全な降伏宣言。

 六人の巫女を犠牲にし、赦しを乞う言葉を天に届ける。人類は敗北を認め、これ以上の攻撃をやめてもらおうという儀式だ。

 

「奉火災によって天に赦しを乞う...それ自体は賛成です。降伏して人々を守れるなら、これ以上の戦いをしないで済むなら、屈辱的でも敗北を宣言して赦しを乞うべきです。ですが...」

 

 問題は六人の巫女が犠牲にならなければならない...と言うことだ。

 

「上里様...あなたのご判断次第です」

 

 神官たちは私を見つめ、頭を垂れた。

 私は何も答えられなかった。

 

 

 

 

 丸亀城へ帰った後、私は奉火災を行うべきか否か、悩み続けていた。

 教室の窓から城郭を見ると、みんなが懸命に訓練している姿が見えた。

 結界の外を見に行った後から、みんなは今まで以上に激しい鍛錬を自分たちに課すようになった。本来のひなとの話ならもう若葉ちゃんが戦うはずはないからもう休んでもいいはずなのに。彼女たちは自分自身を痛めつけているかのように見える。諏訪を犠牲にしたのにもかかわらず自分たちは領地を取り戻すことができず逆にもっとひどい状況にしてしまったから...

 ひなとの記憶の中で私が死んだときみんなは泣いてくれた。今私が死んでしまったらもっとひどいことになってしまうのではないか?壊れてしまうのではないか?そうなったらひなとの言う私が大社を牛耳るという話はどこへ行くのだろう?

 

「...みんなの心を守るために...私は死ぬわけにはいきません...」

 

 私は外に出て若葉ちゃん達の傍に行った。

 

「あまり無茶しちぃけませんよ」

 

「ああ、わかっている。だが、他の土地が書き換えられてしまったからな。白鳥さんが命を懸けてくれたんだ。私たちも命を懸けなければ」

 

 若葉ちゃん達は世界を書き換えられて焦っているのか、ひなとの前に言ったことを忘れているようだった。

 天の神の戦力は圧倒的だし、前回の戦いだってたくさん死んだらしい。肉体は復活するとしても、心は復活しないだろう。このままみんなを死なせながら戦わせるわけにはいかない。みんなほもう十分に命をかけて戦った。もう休ませるべきだろう。

 みんなを休ませるには...生かすには、戦いを終わらせなければならない。

私は...

 

 

 

 

「奉火災を行いましょう」

 

 翌日、私は大社へ行き、会議室で神官たちにそう提言した。

 神官たちの視線が私に集中している。

 

「犠牲となる巫女の筆頭は上里様と安芸様と花本様になりますが、よろしいのですね?」

 

 と老神官が尋ねる。

 

「安芸さんと花本さんに関しては、彼女たちの意見を尊重してください。私が犠牲になることは受け入れます」

 

 神官たちは私に頭を下げる。

 

「承知しました。それでは上里様以外に天の神へささげる巫女の選別をはじめ...」

 

「その必要はありません」

 

 神官の言葉を遮る声と同時に、巫女たちが扉を開けて会議室に入ってきた。

 巫女たちの先頭に立っているのは大和田さんだ。彼女は一枚の紙を老神官の前に置いた。

 

「私たち巫女全員で話し合い、奉火災の犠牲となるものを選びました。皆、了承しています」

 

 大和田さんが提出して神には六人の巫女の名前が載っていた。

 

「え...」

 

 私は戸惑う。彼女たちは奉火災のことを知っていた?いつの間に?

 そのうえ紙に書かれた六人の中には、私の名前も安芸さんの名前も花本さんの名前もなかった。

 神官の一人が反発する、

 

「これでは駄目だ。少なくとも上里様の犠牲は必要だ!上里様を残せば、天の神に服従心を疑われるかもしれない。古来、神は人の心を疑い、試すもの。服従すると決めたのならば、我々は全力で服従の意を示さなければならない!」

 

「上里様を犠牲にするというなら」

 

 大和田さんの目には強い意志がこもっていた。

 

「我々巫女は、誰一人として奉火災の犠牲になることを了承しません。そうなれば奉火災を行うこと自体、不可能です」

 

 大和田さんについてきた巫女全員が、頑なな表情で神官たちを見つめていた。

 

「それができるのであれば」

 

 一人の神官が声をあげる。

 

「上里ひなとただ一人を犠牲にするということでもいいのでは?」

 

「どういうことですか?奉火災は六人の巫女が必要なのでしょう?」

 

 私は思わず聞いた。ここで怒りの感情が出なかったのは私に奉火災の生贄にならせようとしていると思ったからだ。

 

「上里ひなとには勇者の資格もありながら覡だか何だかの適性もあります。ここで思い出してほしいのは上里ひなとはこっちの最高戦力で、一番とまではいきませんが天の神に一番反抗しているといってもいい人物ともいえますし、彼自身で言っていましたが、彼は天の神の力を使っているそうです。ですので、自分の力を使っている敵を差し出し、その人物が覡の才もあり、一番強いとなったら服従の意を示せますし、ここの巫女の言うことも聞かなくていいですよ?」

 

 絶句した。巫女たちが優勢かと思われたこの場はいつの間にか神官側がペースを握っていた。そのとんでもないことを言ってきた神官を見てみるとこの間ひなとの血を抜きまくった神官であった。神官たちはもうそれでいいのではと言う雰囲気になっていた。

 

(まずいまずいまずい・・・何とかしなくては...私はみんながもう戦わないために奉火災をしようと思ったのにこのままでは若葉ちゃん達の戦う相手が神の下僕ではなく人になってしまう...)

 

 私が何か反論を出そうとしたところで声が上がる。

 

「仮に」

 

 烏丸先生であった。

 

「上里ひなとを奉火災に出すとしよう。それで失敗した場合、誰がここを守るんだ?」

 

「この間勇者たちは何回もやり直したらしい。次回もそれで行けるはずだ」

 

「六人ですら苦戦した戦いを五人でやれと?御冗談を...それにそのやり直しは誰がやったというのですか?」

 

「それはもちろん神樹様であろう」

 

「...なるほど。だが、私は違うと思いますがね」

 

「じゃあ誰がやったと?」

 

「上里ひなとですよ。今回天の神は世界を書き換えました。そしてそれほどの力があるのならば世界を都合の良い形に変えられることができるでしょう。例えば...勇者が死ななかった世界...とか」

 

「じゃぁ、なんだね、君は上里ひなとが天の神の力を使っているから上里ひなとがやり直しをやっているとでも言いたいのかね」

 

「この答えを言わなくても結論はもう出ているでしょう?」

 

「だったらどうするというんだ⁉」

 

 神官はキレながら机をたたいた。

 

「だから答えは出ているではないですか。あなた達は先ほど巫女は六人いなければならないという法則と上里ひなたを出すという意見をを崩しました。ということは別に巫女は上里ひなたでなくてもいいということになります。それならば奉火災に出ることを志願する巫女が出ればいいでしょう?」

 

「そうです。上里さんを除いた奉火災でも、失敗するとは限らないでしょう。その可能性にかけることです」

 

 大和田さんは二人の大人の会話に割り込みそう言った。

 

 

 

 

 会議は終わり、奉火災は神に名前を書かれた巫女を犠牲にして執り行うと決まった。

 私はとにかく困惑していた。奉火災に名乗りを上げた巫女は、大和田さん、巽さん、史紀さん、真鍋さん、千葉さん、香西さんの六人。みんな私と仲の良い人ばかりだ。

 

「...やっぱり人選を考え直しましょう。私が犠牲になれば、少なくとも一人は犠牲になる人が減る」

 

「これでいいんですよ、ひなたお姉様。この六人が犠牲になるのが一番いいんです」

 

 そう言いながら、巽さんは穏やかに微笑んでいる。

 

「どうして...」

 

「犠牲者となることを了承した六人の巫女は、私含めて、みんな自分から立候補したんです。私たち六人は、身寄りのないものばかりですから、死んでも悲しむ人は少ないです」

 

 犠牲となる六人は全員、バーテックスによって家族を失った人か、四国外からたった一人逃げ延びた人だった。

 けれど...

 言葉が出に私に、大和田さんは少し困ったように言う。

 

「巽ちゃんは一番年下だからね、私もこんな子が犠牲になるべきじゃないと思うんだけど」

 

「だったら...私が...」

 

 私の言葉を巽さんが遮る、

 

「ひなたお姉様は生きていてください。私は顔も知らない大勢の人々のために死ねるほど、人間ができていません。でも、ひなたお姉様のためだと思えば...私が死ぬのはお姉様を生かすためだと思えば、奉火災に挑む勇気が出ます。だからお姉様は生きていてください」

 

 こんな悲しい決断の仕方は...ないでしょう。

 大和田さんが私の肩を叩いて、冗談っぽい口調で言う。

 

「それにさ、上里さんを犠牲にしたなんて言ったら、勇者の皆さん大激怒間違いなしじゃない!大社の人間は皆殺しだー、なんて言い出しかねないよ。実際上里君は言い出しているわけだし...勇者の皆には特に乃木さんと上里君には上里さんが必要だから」

 

 最後の彼女の声は震えていた。

 

「あたしは...」

 

 何にも言葉を言えず俯いていた安芸さんが、ポツリと声を漏らす。

 本来なら彼女も巫女適性の高さから、奉火災の犠牲になるはずだった。

 

「安芸さんも生きてないとだめだよ、花本さんもね。あんたたちがいなくなっても土居さんや伊予島さん、郡さんに上里君...この子ほんとに地雷ね...が上里さんの時の乃木ちゃんみたいになっちゃうだろうから」

 

「でも私は郡様達と別に...」

 

「それでもだよ。郡さんも、勇者はこの世界のために戦ってくれた。そんな勇者のことを語り継げる人は、一人でも多く残さないといけないんだよ。...上里ちゃん死ぬ前にお願いがあるんだけど...」

 

「なんですか?」

 

「上里君に合わせてくれないかな?言っておきたいことがあるんだ」

 

「わかりました...すぐに呼び出します」

 

 そうして私は携帯を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が一人部屋でごろごろしていた頃、携帯が突然鳴り響いた。みると、お姉ちゃんからの着信であった。

 

「はいもしもし」

 

『ひなと、今すぐ来てください』

 

 それだけ言ってお姉ちゃんは電話を切った。

 なんだよ...

 と思いながら俺は変身し、お姉ちゃんのところに行きたいという念を出しながら瞬間移動をした。

 

 

 

 

 瞬間移動をしたところにはお姉ちゃんの他に安芸さんや、花本さん、その他多数の巫女たちがいた。みんな俺のことを見てきて怖い。

 

「ああ。ひなと来ましたか」

 

「うん。すぐ来いって言ったからすぐ来たけど...ってここ土足ダメじゃん。やべー...玄関はどちら?この靴を置いてから話すでも大丈夫?」

 

 俺は地面を見てそう聞いた。

 

「大和田さん、大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫だよ...」

 

「だそうです。ちなみに玄関はそこをまがってずっと歩いていればつきます」

 

「ん」

 

 それを聞き俺は宙に浮き、玄関に向かった。そして玄関に靴を置いてから変身を解除して、ダッシュで戻った。戻ってきたら花本さんが雑巾で俺のいたところを拭いていた。

 

「ごめん...ありがとう」

 

「い、いえ!これくらい大丈夫です!」

 

 そう言いながら安芸さんの少し後ろに行ってしまった。何かしてしまったのだろうか...

 

「大和田さん。とりあえずひなとにすべて説明していいでしょうか?」

 

「いいよー」

 

 お姉ちゃんは後ろにいる巫女、大和田さんと少しだけ話してから再びこちらを向いた。

 

「ひなとは奉火災をしたほうが良いと思いますか?」

 

「...それを何でおれに聞くの?」

 

「だって、それは...」

 

 お姉ちゃんが何か言う前に俺な少しわかってしまった。

 

「ん、あ、なるほど。いいよ」

 

「?何がいいんですか?」

 

 お姉ちゃんが本当に何を言っているかわからない顔をする。

 

「え?奉火災に俺を生贄にするんじゃないの?」

 

「は?」

 

 大和田さんがそんな反応をするが気にしないことにする。

 

「え、だってそうでしょ?俺に聞くてことはそういうことなんじゃないの?まだ生贄決まってないんじゃないの?そう思ったからそう言ったんだけど...俺はたぶん一人で生贄にされても多分大丈夫だよ?」

 

ドンッ

 

 俺が言い切った瞬間俺の頬に衝撃が加わった。お姉ちゃんが俺を殴ったのである。

 

「少しは話を聞いてください」

 

「...話を聞いてほしくて殴るは違くね?」

 

「...」

 

「...」

 

「あーもう!なんでこんなところで剣かをしているんですか!お姉様も、ひなと様もこんなことをするために来たわけじゃないでしょう?」

 

 誰かは知らないが周りと比べると小柄な子が仲裁してくれた。

 

「そうだね。で、なんで呼んだの?」

 

「話をするためです。と言うわけで続きを話させてもらいますね」

 

 お姉ちゃんはこちらの返事を待たないまま話し始めた。

 

「奉火災の生贄に関してはもう決まりました。ここにいる巫女の方々です。そしてこの方たちは私の命の恩人のようなものなんです。なんせ...私の代わりに...生贄になってくれるんですから...」

 

 お姉ちゃんの声はどんどんか細くなっていった。

 

「そして一応ひなとも奉火災に選ばれるリストの中に入っていました。でも何とかしてやめてもらいました。私が嫌だというのもありますし、何よりひなとが死んでやり直し的なものが発動したら面倒ですから...」

 

「...なるほど」

 

「ちなみに勝手に生贄にされそうになってましたよ」

 

 お姉ちゃんは淡々と言った。

 

「やっぱこの組織くそだわ」

 

「ひなと、一応その組織の本部的なところですよ」

 

「そうでした」

 

 俺は周りを見渡したがいるのは巫女だけであった。と言うか俺の制服とお姉ちゃんの制服だけ異装みたいで目立つな...

 

「それで、今回は大和田さん達がひなとと話したいといってきたので呼びました」

 

「え、俺と?話すことあるの?」

 

 そう言いながら大和田さんを見ると大和田さんは前に出てきた。

 

「やっと本題に入れるよ。ほんと、姉弟喧嘩をしたときにはどうしようかと思ったよ」

 

「すまない」

 

「いやべつにいいよ。じゃ、本題ね。私たちは、上里さんに生きてほしいから奉火災の生贄に志願したの。だから君をかばった理由...と言うか庇ったのは私たちでもない気がするけど...理由は、上里さんを自殺に追い込みたくないからだよ」

 

「君たち六人じゃお姉ちゃんが自殺しないとでも?」

 

 俺は少し意地悪かもしれない質問をした。

 

「うん」

 

 即答だった。

 

「だって家族と友達じゃ大きさが違うでしょ?」

 

「そうか」

 

「そうだよ。...話を戻すね。で、私たちは上里さんに幸せになってほしいのです。で、上里さんは勇者の人...特に君と若葉ちゃんを愛しているわけですよ。だから、さ?上里さんとお付き合いなり結婚だったりして上里さんを幸せにしてね?それができれば私たちは安心して生贄になれる」

 

「は?なにをいって」

 

「花本ちゃん今は一回黙ってよ?」

 

「え、結婚?お付き合い?俺ら姉弟だよ?」

 

「血はつながっていないでしょ?」

 

「なんで知って...ってお姉ちゃんが言ったのか」

 

「けっこ周知の事実だよ?」

 

「...でも無理だよ...お付き合いとかは...」

 

「...じゃあ幸せにはできるの?」

 

「それもなんとも...」

 

 俺は少したじろぎながら言う。

 

「大和田さんこれ以上はもう」

 

「上里さんはだまってて」

 

「えー、おねーちゃんも一応当事者のような...」

 

 俺は少しだけ反論したが、当然ながらスルーされた。

 

「なんでお付き合いできないの?上里さんもかなりかわいいよ?」

 

「えっ...!」

 

「いやそうなんだけど」

 

「~!」

 

「もうやめて上里ちゃんのライフは...ゼロではないわね」

 

「おれちーちゃん...郡千景と付き合ってるし」

 

「~!」

 

「あ、今度は花本ちゃんが...」

 

「だったら勇者の皆と付き合えばいいじゃない!そしたらみんな幸せになれるじゃん」

 

「あほか!ちーちゃんに殺されるわ!」

 

「だとしても上里さんは幸せになれる!私たちはただそれを望んでいる!だからそれだけをしてくれればいい」

 

「ひでぇ、自己完結しやがった」

 

 そのあと巫女たちは全員俺に向けて一礼した。

 

 

 

 

 数日後、おそらく俺に呪詛を放ってきやがった人たちは死んだ。そしてお姉ちゃんから奉火災が行われたことをみんなで聞いた。

 そしてお姉ちゃんはこれからは神樹がうんぬんかんぬんと言う嘘をついて大社を乗っ取った。お姉ちゃんは改革を軌道に乗せるまで大社を離れることができず、丸亀城に戻ってくることはなかった。

 俺は勇者としての存在をお姉ちゃんに取られていたため、若葉たちが勇者としての公務があったとしても参加ることができず。俺はただただ暇な時間を送っていた。あまりにも暇だったため俺はお姉ちゃんの手伝いと言うか雑用をしていた。

 

「あー暇だよー」

 

「そんなこと言ってるより早く手を動かしてください」

 

「はーい」

 

「ひなと様...その作業は私がやりましょうか?」

 

「花本さん?ひなとを甘やかさないでください」

 

「そうだよ~花本ちゃん。ひなと君を甘やかしたらひなと君は女にされて恥ずかしい格好をさせられちゃうんだから」

 

「あのひなと様は至高でした。郡様に渡したらものすごく喜んでくれました」

 

「おーいおいおい?何渡してるの?」

 

「すいません...ひなと様より郡様の方が優先度が高いのですので...」

 

「はい皆さん、手を動かしてください」

 

「「「はい」」」

 

 俺らはお姉ちゃんの圧によって雑談を中止した。

 

 

 

 

 新世紀となって二度目の春。

 俺たちは丸亀城の桜の木々の下を歩いていた。

 空中を舞い散る花びらの先に、彼女たちが立っている。

 隣にいるお姉ちゃんは微笑みながら声をかけた。

 

「皆さん背が伸びましたか?若葉ちゃんは顔つきも大人びて、もともとかっこよかったのが、もっとかっこよくなりましたね」

 

「ふふ、ありがとう」

 

「なーなータマは?」

 

「球子さんは...背が少し高くなりましたね」

 

「それだけかよ!」

 

「...ひなと君も少しだけ身長が伸びたわね」

 

「そう⁉」

 

「...ものすごく喜んでますね...」

 

「と言うかひなと君はずっと女の子なんだね」

 

 少し身長が上がって斜めのポニーテールが普通のポニーテールになった友奈が言ってきた。

 

「...ひなとが仕事をさぼるから強制的に変身させて着せ替え人形にしていたんです」

 

「えー、ひなとの女になっている期間が一か月だから...お前一か月以内にさぼったのか!ひなたが忙しいというのに...」

 

「だっていっつも同じような作業なんだもん...」

 

「だってじゃないわよ...」

 

「戻ってきたということは、もう終わったってことですよね?」

 

「はい」

 

 お姉ちゃんは頷いた。

 

「完全にすべての改革が終わったわけではありませんが、もう反対派に妨げられる心配のない段階まで進みました。これでしばらくは、大赦を人々に寄り添った組織にできると思います。でも組織である以上、長いときを流れた後には、いつかまた腐敗するでしょうか...」

 

「それは...その時代を生きる人たちに任せるしかないわね...」

 

「でも心配はないよ!きっと未来にもいい心を持った人が生まれていい方向に戻してくれるよ!」

 

「そう信じましょう」

 

「あ、私たちはまたこれから丸亀城で暮らします」

 

「そうか!おかえり!ひなたにひなと!」

 

「ああ。ただいま」

 

 

 

 

そこから一年後

 

 俺が変わらずお姉ちゃんのところで雑用をしていた時であった。ちなみに俺はもうさぼらなくなったので男に戻っている。なんか女でいるときも成長は止まっていないらしく、なんか伸びていた。

 

「ひなと様ひなと様」

 

 花本さんが話しかけてきた。

 

「なに?」

 

「もうすぐひなと様も結婚ができる年です。ですので郡様と結婚なさる際は、ぜひ私の神社をご利用ください。ひなと様価格にいたしますので...」

 

「あらあら何を言っているんです?ひなと様はひなた様と結婚なさるんですよ?」

 

「そちらこそ何を言っているのかしら?ひなと様は最初に郡様とお付き合いしておられたのよ?」

 

 ものすごくにらみ合う巫女の二人。俺の周りだけ空気が重くなったので安芸さんに助けを求めたが当然のようにスルーされた。

 

「どうだ上里?ここは間を取って高嶋にしたらどうだ?」

 

 巫女が争っていると、烏丸さんが火に油を注いできた。前までは興味のなさそうに見るだけだったのだが、ふざけて横手さんと呼んだら毎回油を注いでくるようになりやがったのだ。

 

「結婚って...俺にはまだ早いですよ...」

 

「そうでしょうか?世間や大社はひなと様のことを知りませんから...最近になって勇者のお見合いの話が多く出ているようですよ?」

 

「へー」

 

「へーって何ですか...郡様がとられるのかもしれないんですよ?そんなことはないと思いますけど」

 

「まぁ、別に悪い人につかまらなくて両者が幸せだと思える人なんだったら俺はとられてもいいと思っているけど...所詮俺は小学校の時に助けただけだし...」

 

「はぁ~」

 

 花本さんはため息をつき自分の席に戻っていった。

 

「ひなと様はひなと様のことをどう思っているんですか?」

 

「かわいいお姉ちゃん」

 

 お姉ちゃんからとても幸せなオーラがあふれ出したが無視する。

 

「だったら結婚すればいいじゃないですか」

 

「それとこれは話が別だ」

 

「そうですか...」

 

「じゃあさ、あの子たち引き取ってあげてよ。この間お見合いの話が増えてうんざりしてるって愚痴られたのよ」

 

 今までスルーしていた安芸さんが急に会話に入ってきた。

 

「えー、二人引き取っちゃったら全員と結婚しなくちゃいけないじゃん」

 

「やはりそれがお前にとって一番安牌だと思うぞ。唯一の男だしな」

 

 そう烏丸さんが言った瞬間俺は変身してすぐに解除した。

 

「ふん」

 

「とりあえずこれで結婚の話は先延ばしですね」

 

「ひなと、ふざけてないで仕事をしてください」

 

「うわ、ひでぇ」

 

 なぜか俺だけとばっちりを喰らってしまった。さっきまで機嫌よかったやん。

 

「と言うかそういうお姉ちゃんこそさっきから考えるばかりで何にもやっていないように見えるんだけど...」

 

 さっきからお姉ちゃんはパソコンの画面を睨むだけで、何にもしていないのだ。

 

「いえ、どうしたら大赦が一般人と勇者全員プラス私が結婚することに対しての納得のいく理由を考えているんです」

 

「え、神託でよくね?」

 

 俺がそういうと部屋は静まり返った。そして一刹那の後に

 

「それだー!」

 

 俺を結婚させようとしていたやつらの声がハモッた。そして俺はそのあと

 

(余計なことを言うんじゃなかった...)

 

 と後悔するのであった。

 

 

 

 

 翌日、俺たちはお姉ちゃんに召集をかけられていた。まぁ招集をかけられたのは巫女たちの職場だからいつも言っている俺に関してはただただ出勤をしたようなものだった。

 そして全員集まったかと思ったらお姉ちゃっは突然話し出した。

 

「大赦は最強の勇者を作るために血をまとめることにしました」

 

「...どういうことだ?」

 

 若葉はきいた。

 

「つまりここにいる人で結婚するということですね」

 

「...つまりみんなひなと君と結婚するということですか?」

 

「認めないわ!」

 

 お姉ちゃんが返事を出す前にちーちゃんが声を上げた。

 

「...ひなとはどうですか?」

 

「俺は...」

 

 少し言いかけてから、俺は周りを見る。巫女も、勇者も、そしてちーちゃんも期待を込めた目で俺を見てくる。俺は勝手ながら責任を押し付けることにした。

 

「俺はみんなが納得できればそれでいい。だから...ちーちゃんを説得できるのであればなんでもいいよ」

 

俺ってくずだなー

 

 そう思いながら俺は黙った。

 

「私は...認めるつもりはないわ」

 

「そうです!郡様!」

 

「花本さん。少し黙っていてください?」

 

 お姉ちゃんが花本さんを無表情で見る。だがその目には黙れという念が込められていて、俺は身震いした。しかし花本さんが怖気付くことはなかった。

 

「第一、最強の勇者を作るにあたっての血を合わせるところまでは理解するわ。でも、なぜ巫女である上里様までその中に入ろうとしているかしら?」

 

「一応巫女の素質も入れていた方が便利でしょう?」

 

「...それでも勇者に巫女の素質は入らないと思うけど?」

 

「いいんですか?花本さん、ここでそんなことを言って...ここにいる子たちは皆私の味方ですよ?」

 

 そうお姉ちゃんが言った後、花本さんは周りを見渡した。みんな花本さんやちーちゃんのことを睨んでいる。

 

「まさか、このためにここを選んだのかしら?」

 

「さぁ?」

 

 花本さんはそれ以上何も言わなかった。ちーちゃんに任せるつもりらしい。

 悩んでいるちーちゃんにお姉ちゃんは提案した。

 

「ふむ...そんなにひなとを独り占めしたいのであればこうしましょう。大赦はこの間何とは言いませんが生える薬なるものと埋まる薬なるものを開発しました。人口を増加させるためですね。増加が見込めるかどうかはよくわかりませんが、まぁ止める暇もなく作ってしまったので有効活用させてもらうとしましょう」

 

 一気に話が生々しくなった...。正直聞きたくないが、俺はお姉ちゃんの話を黙って聞いた。

 

「...話を戻しましょう。ひなとが貫くのを千景さんにするという条件ではどうでしょう?」

 

「...つまり?」

 

「私たちは先ほど言った薬を使い、ひなとを貫くってことですね♪ひなとが貫くのは残念ながら千景さんだけです」

 

「ちょっと待って!」

 

 姉がとんでもないことを言ったので俺は会話を一回止めた。

 

「なんですか?」

 

「そうなると俺は六人産むことになるんですが...?」

 

「そうなりますね」

 

 淡々という姉。俺は少し悲しくなってきた。

 

「確かに体は大きくなってきたけど六人はさすがに死んじゃう...」

 

「大丈夫です♪勇者ならなんとかなります」

 

「...」

 

 俺はなんか正論かましてくれよって感じの目で回りを見るがみんな明後日の方向を見やがった。でもこれを俺が了承しないと話が進まないので俺は自分の気持ちを押し殺し

 

「はぁ~、もうそれでいいよ...」

 

 とだけ言った。するとちーちゃんも

 

「...なんかもうそれでよくなってきたわ...ひなと君が可哀そうすぎて...」

 

 ちーちゃんがそういうとお姉ちゃんは手を叩き、

 

「じゃぁ決まりですね!大赦には適当な理由をつけて説得しておきますし、家も物凄く広いのを用意しておきますからそれまで待っていてくださいね」

 

 とだけ言って、席を外した。ものすごく気まずい空気が流れた。

 

「郡様...よかったのですか?それにひなと様も...」

 

 そんな空気を破ったのは花本さんだった。

 

「いいのよ...いいようにされている気もするけどね...」

 

「...死んだらどうしよう...と言うか今更だけど貫くいうなし...」

 

「良かったじゃない!球子に杏ちゃん!お見合いの話がなくなるわよ!」

 

「お!そういえばそうだな!ひなととも一緒にいられるし杏とも一緒にいられるし!案外幸せかもな!」

 

「そうだね、タマっち先輩!」

 

 球子と杏は手を取り合って喜んでいるようであった。

 

「そうか...結婚するのか...みんなと...」

 

 若葉はよくこの場を理解していないようであった。そりゃそうだ。俺だって理解していない。わかるのは俺に死の危機ができたことだ。

 

「高嶋」

 

「あ、烏丸さん」

 

「よかったな、郡ともひなととも一緒にいられるぞ」

 

「...」

 

「お、顔が赤くなってるw」

 

 友奈が烏丸にとびかかっていたが烏丸は大げさに避け、俺のところまで逃げ、俺を盾にしやがった。

 

「ひなとくんどいて!」

 

「無茶言うな。盾にされてるんだからどけるわけないだろ...横...烏丸さんも友奈をからかわないでください」

 

 俺がそういった瞬間俺の脇腹に衝撃が加わった。烏丸がつついたのである。

 

「お前がからかうのをやめろ」

 

 

 

 

 

 そして俺らは全員で家族になったのであった。そこでの生活の話はまた別の話...




一応乃木若葉編完なのでなんか質問やツッコミあったらドぞ...
そう言えば奉火祭の字が奉火災になていましたが、厄災みたいなもんだしエアロ。
...これほんとに完結したんかな?なんかしまりわるぅ


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第34話外伝②

そう言えばエピローグをかいていないのでまだまだこの物語は続きそうです。
どうもいつも行ったことを実行しないエフさんです。
文章力はいつも通りです、内容のハチャメチャというかなんというかもいつも通りです。


 前回のあらすじ...

 

 俺上里ひなとは結婚いたします。終わり!

 

 

 

 

 ということで結婚したのだが...とりあえず世間には神託で相手が決まってその人と結婚したとだけ言って俺の顔だったり名前は出さないらしい。

 結婚するということで若葉と杏と球子の親にあいさつしに行ったわけだが、まぁ三人の父親から殴られましたよね。大切な娘が盗られるかと思ったらそいつは重婚するんだから...特に若葉の父親は俺のことを昔から知っているわけだから何度も殴られといた。途中で若葉が止めようとしていたけど俺がいいと言って俺はサンドバックになった。どの親も俺を殴ったらまぁ大社が言うなら仕方がないという風になり赦してくれた。

 そして今はお父さんのところであいさつをしようとしているところである。

 

「というわけで俺はお姉ちゃんとちーちゃんと勇者の皆と結婚します」

 

「お、おう...何個か質問していいか?というかする。お前その頬の絆創膏どうした?」

 

 そう言ってお父さんは俺の頬を指差したので俺は少し撫でた。

 

「これは杏と球子と若葉のお父さんに殴られたんだよ」

 

「お前今女だよな?」

 

「?そうだね」

 

「しかも、その娘さんをお前が傷つけるわけじゃないし逆にお前が傷つけられる側だよな?あ、千景ちゃんは違うか」

 

「私はどっちもね...」

 

「ほんとに何で殴られたんだ?どちらかというと俺がみんなを殴る役じゃないのか?」

 

「俺が男だからじゃない?あと殴らないでね?」

 

 俺がそういうとお父さんは眉間に手を当てた。

 

「殴らねーよ...その後が怖い...あれひなとってもう結婚できる年だったか?」

 

「お父さん、女の子は十六歳で結婚できますよ?」

 

「いやでもひなとは戸籍上は男...」

 

「ん?」

 

 もうお父さんよりお姉ちゃんの方が偉いらしい。

 

「何でもないです...俺からはあんたらの結婚に関して何にも言うことはない。もともと血が繋がっていないしな」

 

「血が繋がっていようが繋がっていなかろうが関係ないですよ」

 

「...?」

 

 お父さんは怪訝の面持ちをした。

 

「大赦は今回勇者の血をまとめるということをしようとしています。つまり、生まれてきた子供同士もくっつけさせるということです」

 

「法律を変えるのか」

 

「今の私の...いえ私たちの権利なら余裕です。ただそうすると早い段階で血のまとまった子孫が完成するでしょう。そうするとその子孫と結婚したものが権力を持つことになってしまいます。ですので、途中で双子なり二人目を生ませトップの座だったりまぁまぁえらい役職にさせその記録を排除させます。あとは隠れながら大赦の汚くない血を入れてひそやかに暮らさせます。そう言った重大のことをわかっているのを別れさせた子孫と巫女だけにしとけば少なくとも権利を求めている人にレ〇プされたりすることはなくなるでしょう...まぁ巫女が権利を求めるようになったら色々終わってしまいますがその時は諦めましょう」

 

「ずいぶん倫理のぶっ飛んだことだな...だが俺は何にも言わん。もう好きにしろ」

 

「はい。幸せになりますね」

 

「あ、まだいうことあったわ。千景ちゃんはいいのか?俺は君をあの父親から引きはがした。それはつまり君の面倒だったり夢だったり将来について俺が責任を持つことになる。君はひなとと二人っきりで生活したいんじゃないか?」

 

「...そうしたいとも思ってはいたけど...私にはみんなを止められないし...別にこの生活も案外いいものになるんじゃないかとも思っているから...」

 

「君が納得しているなら今度こそ俺は何にも言うことはないよ」

 

「じゃあね。タマに会いに来るよ」

 

 俺は手を振ってから丸亀城に歩き始めた。

 

「さて、全員の親御さんへの挨拶が終わりましたね」

 

「なんかすまないな私のお父さんが...」

 

 若葉が申し訳なさそうに言った。

 

「全然大丈夫だよ。俺らの今やろうとしているほうがおかしいから」

 

「それにしても友奈さんの挨拶はどうしましょうか?あ、烏丸さん...でしたっけ?に殴ってもらいますか?」

 

 杏が少し笑いながら言ってきた。

 

「なんで殴られることをちょっと笑いながら言ってくるんだよ...怖いよ...」

 

「まぁ誰が殴るとかそもそも殴らないとかは高嶋さんが決めればいいんじゃないかしら?」

 

「そうだな」

 

 みんなの視線が友奈に集中した。

 

「え、私が決めるの?う~ん別に誰かにひなと君を殴ってほしいとか私がひなと君を殴りたいとかの願望はないから...あ、ひなと君がいつか私の言うことを何でも聞いてくれるっていうのはどう?」

 

 友奈が少しいたずらっ子みたいな顔をしながら言った。

 

「それでいいなら...」

 

「いいのか⁉友奈のやつ結構えぐいことを思いついた顔していたぞ⁉」

 

 球子が驚いたように言ってきた。

 

「いや別に...俺にはそんなやばそうなことを言ってきそうな顔には見えなかったけど」

 

「さて!友奈さんとの挨拶も終わったことだし後は家を用意するだけですね!早急に作らせる予定ですがとりあえず設計図だったりいろいろ作る必要がありますからねあと半年はかかりそうです」

 

「あ、だったら私は道場が欲しい。実家にあったからな」

 

「私もわかちゃんの意見に賛成!たまには体を動かしたいよね!」

 

「私は書庫が欲しいです...この世にあるすべての本が入る書庫...」

 

「ゲーム部屋...それと物凄い大きいコンピュータとインターネットが入る部屋...」

 

「タマはキャンプ用品だったり自転車を整備する部屋!」

 

「皆さん欲望たっぷりですね...」

 

 みんなが欲しい部屋を言う中お姉ちゃんは少し呆れたような顔をした。

 

「まずみんなで入れる分のお風呂がいりますね...まず私たちの人数が七人、千景さんがひなとの子供を産むとしてもう一人、ひなとには六人産んでもらう予定なので六人、計十四人が入る大浴場が欲しいですね」

 

「え、一緒に入るの⁉」

 

「何をいまさら、どうせいつかはみんなの裸を見るんですから慣れておきましょう♪」

 

「それにしてもひなとの産む人数...大丈夫なのか?ひなとが死んだりしないか?」

 

「別に別々に産んでもいいですがその分それぞれのするときが遅れますよ?そんなの我慢できますか?」

 

「ひなと頑張れ!」

 

 さっきまで擁護してくれていた若葉は一瞬にしてお姉ちゃん側へと移った。それにしても話が生々しい...

 

「さて話を戻しますね。でみんなで一緒に寝れるベッドを作ってもらってそれが入る部屋、キッチンに、トイレは複数個あったほうが良いですね...あとリビングは広い方がいいですね。あ、子供部屋も必要ですね...まぁ帰ってからゆっくりと考えるとしましょう」

 

 

 

 

 

 

 そうしてそこから時間をかけて俺らは自分たちの住む家の設計図的なものを作り上げた。そしてそれを業者が直し、工事に入った時のことであった。

 

「ひなとは明日からここで仕事をしなくていいですよ」

 

 お姉ちゃんは急にそんなことを言ってきた。

 

「え...?どういうこと...?俺もういらない子...?」

 

「ひなと様がそんなわけありませんので自分を卑下しないでください」

 

 花本さんがフォローをしてくれたが、俺にはお姉ちゃんの言ったことが意味不明すぎて聞き流していた。

 

「若葉ちゃん達は勇者の身分を利用していろいろなことをしています。私は大赦のトップとしていろいろやることがあります。ここまではわかりますか?」

 

「うん、大丈夫まだ理解できる」

 

「高嶋みたいなことを言い出すやつだな」

 

「烏丸先生今ひなと君たちは取り込み中だから私たちは引っ込んでましょう」

 

「では誰が家事をすると思いますか?」

 

「...おれ?」

 

「そうです。ひなとしかいません。しかしひなとはそこまで家事のできるほうではありません。料理はできるんですけどね」

 

「そうだね」

 

「そこでこれからひなとには私の手伝いではなく、高知にいるお母さんの所へ行って花嫁修行を受けて来てもらいたいのです。あ、花を打つのがめんどいので以降は嫁修行です♪」

 

「何言ってんの...?...嫁修行と言ったってお母さんにも仕事が...」

 

「いるときに教わってください。あとネットを見たりで...まぁそういうわけですのでもうここには来なくていいですよ。ちなみにお母さんにはもう言っておきました」

 

「...はい」

 

 なんか追い出されてる気分になって俺は少し落ち込みながら返事をした。

 

「ひなた様少し言い方ってものが...」

 

「花本さんこれ以上何かを言わないでください。私だって本当は嫌なんです」

 

 お姉ちゃんたちが何か話しているが俺は何にも聞いていなかった。

 

「まぁドンマイと言ったところだな。お前も気を落とさずに嫁修行をしといたほうが良いだろう。これで全く使い物にならなかったら本当に追い出される可能性があるぞ」

 

 肩に手を当てられ励ましてくれるかと思ったら最悪の未来を烏丸はさんは言ってきた。

 

「はい頑張ります...」

 

 俺はそう呟きながら高知に行く荷物をまとめるためにとぼとぼと丸亀城に帰っていった。

 

 

 

 

翌日...

 俺は誰とも話さずに朝一でバスに乗り高知に来ていた。

 

「久しぶりだなー」

 

 自然豊かな光景を見て自然とそうこぼした。

 

「誰も俺のことを覚えていないというのが救いだな...今更戻ってくるのはいろいろしんどい...」

 

 そう独り言をつぶやきつつ少し気になることがあったので俺はちーちゃんのもと家に行くことにした。

 

「さて、あのくそ野郎はお父さんが金を渡してその金で引っ越していると思うからもういないとは思うけどどうなっているのやら...」

 

 そして視界に映った家には大量の紙が貼ってあった。紙を見ると死ね、無能、クズ、税金泥棒などと様々なことが書かれていた。ここの住民はちーちゃんのことをかくことでは飽き足らなかったのかみんなの悪口も書かれていた。もはや悪口を書き込む掲示板である。

 

「相変わらず救いようのねぇやつらだな...」

 

 そう呟きつつ、もう見るのでさえも嫌だったので俺は自分の家へと歩き出した。そして家の前につきインターフォンを鳴らした。

 

『ピンポーン』

 

 よくなる電子音の後に女性の声が聞こえた。

 

『はーい。え、だれ?』

 

 俺は泣きそうになった。というか視界の一部がぼやけていたので泣いた。

 

『え、なんでいきなり泣き出すのよ...あ、もしかしてひなと?』

 

 やっと思い出してもらったがもう遅い。俺はもうギャン泣き状態だ。

 

 

 

 

 

 

「ごめんってお母さんがひなとの女の時の状態をあまり見てなかったから...ね?もう泣き止んで?」

 

えっぐ...ひっぐ...

 

「はぁ~こりゃもう駄目ね...それにしても少し縮んでいるわね...ふむ...」

 

 泣いていると急に呼吸がしづらくなった。そして頭をなでる感触があった。

 

「ひなたから少しだけ聞いたわ。いろいろあってひなとを覚えている人はもう少ないってことを...それなのにひなとだってわからなくてごめんなさいね...」

 

(なんだろう...お姉ちゃんにやってもらうよりかはまた別の安心感が...)

 

 俺は睡魔に襲われ抵抗空しく意識を落とした。

 

 

 

 

目が覚めるとキッチンの方から物音といい匂いがしていた。

 

「あれ?俺寝ちゃって...」

 

「あ、起きた?待っててね、今お母さんが久しぶりの手料理を作ってあげてるから」

 

「ありがと...ちなみに何を作ってるの?」

 

「うどんよ♪」

 

 お母さんはそれはもうすごいどや顔で言ってきた。

 

「さいですか」

 

 俺は結構うんざりした顔をしていたと思う。

 なんだかんだしているとうどんが目の前に運ばれてきたので俺は「いただきます」とだけ言って食べ始めた。

 

「うまい...」

 

 一口食べて自然にこぼれた感想はそれだった。もともと香川の麺がうまいのは知っていたが出汁というか汁がものすごくそれを助長しているというかなんというかとりあえずうまかった。そして俺に食レポの才もないこともわかった。

 

「でしょ!まぁひなとはまず家事をどうにかするよりうどんを作れるようにしたほうが良いわ。勇者の皆はうどんが好きなんでしょう?特に若葉ちゃんは」

 

「そうだね」

 

「なら!どれだけ家事ができていてもうどんが作れなければ評価はダダ下がりになるわ。...勇者の皆がひなとをそんな評価するとは思わないけど、それはそれとしてまずはうどんを作れるようになりましょう。香川県の嫁さんはうどんを作れなければ嫁ではないわ!(偏見です)私の秘伝のレシピと一般的なレシピをざっと...百種類くらいを教えてあげるわ!」

 

「多くない⁉」

 

 想像を絶する数が出てきて俺は思わず大きな声を出した。

 

「ふふん♪今日から毎日うどんね♪」

 

「またうどんが嫌いになっちゃうよ...」

 

 これから毎日うどんが出ることを想像し俺はげんなりした。

 

 

 

 

 

 

「あ、ひなとちょっとこっち来てくれない?」

 

 お母さんは俺がうどんを食い終わると手招きをした。椅子から立ちお母さんの前に行くとお母さんは急に俺のスカートをたくし上げパンツの中に手を入れてきた。

 

「ひっ⁉は...?え...?」

 

「あ、本当にいろいろとないわね...どれどれこっちは」

 

 そう言いながら今度は俺の来ている服を上にあげ下着を露呈させた。

 

「パッドじゃなかったのね...私より大きいんじゃないかしら」

 

 お母さんは少し感心したようにつぶやいた。...ちなみにお母さんの胸のサイズは大体お姉ちゃんと同じである。

 自分が今何をされたのか理解するのはお母さんが露呈させた胸を揉み始めた時であった。

 

ママのバカ!エッチ!変態!

 

 俺は顔を真っ赤にしながら胸を揉んできた手を叩き、ドアを勢いよく閉め自分の部屋に向かいベッドにダイブした。部屋が妙にきれいだったがそれについて今考えると今されたことへの怒りが消えてしまうような気がしたので考えないことにした。

 

 

 

 

「ひなたからひなとは突発的なことが起きると口調や行動が女子になるとは聞いていたけど、まさかママと呼んでくるとはね...いいわぁ、最高!」

 

 自分の()が聞いたらだいぶ怒りそうなことをつぶやきながら二児の母親はニヤッと笑った。

 

 

 

 

 俺が布団の中にこもり、頬を膨らませ機嫌が悪そうにしていた時だった。

 

ひなと~?さっきはママが悪かったわ~。謝るから出ておいで~

 

 ドアの方からノックする音がしてから、なんか癪に障る声色でお母さんが呼びかけてきた。

 

「...」

 

あら~?ひなと~出てこないの~?だったらママにも考えがあるわ~?

 

 イラつく声でお母さんは続ける。

 

「今からひなたに、電話をかけて帰ってくるなり部屋に引きこもって私の言うことも聞かずに嫁修行をする気がないみたいよって言いに行くわよ」

 

 俺はそれを聞いた瞬間部屋から出た。

 

「お母さんそれずるい」

 

「ママでいいのよ♪」

 

「とりあえずお姉ちゃんは誰の血が濃いのかよくわかったよ」

 

「そういえばひなと唐突なんだけど」

 

 お母さんは上機嫌だった顔を少しだけ直し言った。

 

「何?」

 

「あんた風呂はどうしてるの?」

 

 俺は少しだけ目線をそらした

 

「え...偶にお姉ちゃんとは言って体を洗ってもらってそれ以外は勇者の変身するときの効果と勇者の力で洗ってる...」

 

「(*´Д`)」

 

 ため息をつかれた...

 

「あのねぇ?あなたは母親になるわけでしょ?」

 

 お母さんは呆れた顔をして言ってくる。

 

「父親です」

 

「口答えをするんじゃありません!どっちでも同じよ!」

 

「はい」

 

(なんか怖いよぉ...)

 

「いい⁉あなたが子供を産んだ時、いったい誰が子供たちを洗うの⁉...仮にほかの人があなたの子供を洗ったとしましょう。でも子供は親を見て育つわ。それなのに母親...親であるあなたが魔法で洗ったりひなたに洗ってもらってちゃどうするのよ?子供が自分で洗わなくなったり、お風呂に入らなくなるわよ⁉わかる⁉」

 

「はい...」

 

 俺はいつの間にか正座をしていて少し頭を下げながら返事をした。

 

「よろしい!じゃあ今日から毎日一緒にお風呂に入るわよ!」

 

「え...?ヤダよ、変態と一緒なんて何されるか...ごめんなさい謝りますのでその視線と顔しないでください」

 

 お母さんは悪魔と鬼を足して二乗をしたような顔をしていた

 

 

 

 

 

 それから一か月半俺は家事を教わることはなく、自分の体の洗い方とうどんの作り方と服の着方を学んだ。そして俺はまたうどんが嫌いになることを代償にうどんの作り方をマスターした。

 そのあとの嫁修行はお母さんが仕事から帰っている時に洗濯物の畳み方、掃除の手順ややり方、料理の応用的な技術、その他諸々を教えてもらいお母さんが仕事に行っている間に実践するといったものであった。

 

 

 

 

 そして俺が嫁修行に行って半年がたった時であった。

 

『ジリジリジリ!』

 

 家の固定電話から黒電話を想像する音が鳴ったので俺は受話器を取った。

 

「はい上里です」

 

『あ、もしもしひなと?なんだか声がさらに女の子らしくなりましたね...』

 

「え、まじ?」

 

 嫁修行しているうちに精神がさらに女寄りになってしまったのかもしれない...

 

『まぁ、私たちはひなとがどんな声になろうが全然大丈夫ですけどね』

 

「そう...で、用件は?」

 

『あ、そうでした。別に私はひなとの変化を確認するために電話をしたんじゃなかったんでした。えっとー、家が完成してみんなで同棲する準備ができたので帰ってきていいですよ?』

 

「え、もうできたの?意外と早いね...」

 

「そうですかね?私にはよくわかりませんが」

 

「いや俺もわかんないけどね?」

 

「そうですか...とりあえず早く会いたいので早急に戻ってきてくださいね」

 

「はーい、バイバーイ」

 

 俺はそう言って受話器を戻した。

 早急に帰ってこいと言われたがさすがにお母さんに顔を合わせておきたくて俺は仕事から帰ってくるのを待ってから行くことにした。

 

 

 

 

十時間後...

 

「ただいまー」

 

「おかえりー」

 

 お母さんが帰ってきたのは、俺が暇だからと思ってやっていた家事がすべて終わった時のことであった。

 

「風呂も洗っといたし、ご飯も作っておいたし、洗濯物も畳んでおいたよ」

 

「あ、ありがと...ってこれは嫁修行をしているなら当然のことよ」

 

 感謝してくれたと思ったら当然だといわれ俺の心は少しもやっとした。

 

(でも...この当然って思われるのが日常になるのか...でもそれは俺の仕事だからしょうがないか)

 

「お母さん」

 

 俺は自分の荷物を置き、風呂に直行しようとしていたお母さんの裾を引っ張った。

 

「何かしら?」

 

「お姉ちゃんから連絡があってもう家ができたらしい。だから明日俺は香川に帰るよ。あとお風呂は洗っただけで沸かしていない」

 

「え、風呂沸かしてないの⁉」

 

「...ごめん」

 

 なんかお母さんがすごくがっかりとした声を出したので俺は自然と謝罪の言葉を口にした。

 

「あ、いや、洗ってくれただけでうれしいからそこはいいのよ。それにしても明日行くのね...孫、待ってるわ!」

 

「...」

 

 俺は少し目をそらした。

 

「あれ⁉なんでそんな不貞腐れたような顔してるのよ⁉もしかして明日送ってもらいたかったの?」

 

「違う!」

 

 思ったよりおっきな声が出て、その声に自分が驚きそこから言葉が続かなかった。

 

「違うなら何なの?」

 

 微妙な静寂を破ったのはお母さんだった。というか破ってくれないと困る。

 

「いやなんか...もうちょっと俺のことを見てくれても...いやそうじゃなくって...」

 

 俺がもじもじしながら言うとお母さんはお姉ちゃんみたいな顔をした。いや似てるから終始お姉ちゃんみたいな顔はしていた。

 

「何々~?十八年経ってようやく母親に甘えたいって感情が出てきたの~?」

 

「違うし!ちょっと寂しいって思っただけだし!」

 

「そう...それにしてもいいわ~私が嫁修行の間に仕草が女の子っぽくなるように教えてたんだけどそれも実って...今の表情と仕草ならみんなをいちころね!」

 

 お母さんは自分ナイス!と言わんばかりに親指を立てた。

 

「な⁉そんなんことしてたの⁉別に一殺させる必要ないし!」

 

「ほう、じゃぁ、じわじわと尊さを植え付けてそのうち爆発させるつもりね!なんて恐ろしい子...!」

 

「ちがーうっ!」

 

 俺は両手を上にあげ叫んだ。

 

 

 

 

翌日...

 

「本当にバス停まで行かなくていいの?」

 

「うん!ここまででいいよ」

 

 前来たより少し重くなったリュックを背負い靴を履きながら俺は答える。そして俺はドアを開けた。ドアを開けた先は木々は緑と黄いろが混ざった色になっており、田んぼには輝く黄金の稲穂が生えていた。

 

「行ってきます」

 

 俺は玄関から一歩踏み出し、くるんと半回転した。

 

「あ、玄関まででいいよ。少し肌寒いし」

 

 見るとお母さんは靴を履こうとしていた。

 

「玄関からちょっと出たとこくらいまでは見送りさせてちょうだい」

 

「はーい。じゃあ改めて、行ってきます!」

 

「行ってらっしゃい」

 

 俺はバス停に向かって歩き出す。しかし、十歩くらい歩いたところで忘れ物を思い出し引き返した。

 

「どうしたの?」

 

 俺が見えなくなるまでは見送っておこうと思っていたであろうお母さんが聞いてきた。

 

「ちょっと忘れ物」

 

 そう言いながら俺はお母さんに向かって背伸びをする。

 

ありがと

 

 俺はお母さんに耳打ちをしてそのあとにニコッと笑った。なぜそういう行動をとったかというと体がそうさせたのである。

 

「じゃあね!」

 

 そう言って俺は手を振り今度こそ歩き始めた。

 

 

 

 

「...はっ!思考が停止してたわ!」

 

 そうして気が付いたのはひなとが結構遠いところにいるときだった。

 

「あの子、初っ端から押し倒されないかしら...」

 

 時々振り返っては手を振ってくる娘を見ながらその母親は呟いた。




最近キャラを暴走させるのがこの小説のやることになってる気がする。


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第35話 外伝③

だいぶ遅れましたエフさんです。
いつも通りです。
別にウマ娘とか、カービィとか、スプラとか、ドッカンとかやってないよ。


「ありがとうございましたー」

 

 俺はバスの運転手にそう言いながらス〇カをICなんちゃらにタッチする。

 なぜ関東でもないのにスイ〇なのかは疑問にしてはいけない。

 

「さてこの先にあるのが俺の新しい家...」

 

 俺は真新しい道路を目で追いながら言う。目で追った先には山があり、『この先所有地、立ち入り禁止』という看板があった。

 

(...え、俺これ上るの?)

 

 家は山の中に隠されているのか見えないがなんとなく道のりが長そうなのはわかった。

 俺はリュックの位置を正しながら坂を上り始めた。

 

 

 

 

 

 

30分後...

 

「はぁ...はぁ...しんどい...」

 

 汗をぬぐいながら、目の前の少し緩やかな坂を見る。歩いて分かったことだが坂は一直線にあるのではなくいろは坂のようにくねくねと曲がっているため歩く距離が長くなり、その分体力を消耗させた。

 

 

 

 

 

 

そのまた10分後...

 

「はぁ............はぁ...............」

 

(肩が痛い...足が痛い...もう無理かも...)

 

 視界はぼやけて立つ力もなくなりそうな時だった。

 

「驚いた!ひなとジャン!」

 

 聞こえてきた声は約半年ぶりに聞く声で、とても元気な声だった。

 

「球子...?」

 

「おう!正真正銘のタマだぞっ!」

 

 マウンテンバイクに乗った球子は漕ぐのをやめ降りてからどや顔をした。

 

「元気だね...はは...ついたらお姉ちゃんに道のりが長いわ!...って文句言ってやろうかな...」

 

「ん?この道そんなに長いか...?」

 

「え、長くない?俺なんて40分くらい歩いてるけど全く着く気配がないんだけど...」

 

「40分⁉こりゃタマげた。杏だって重い本を持ちながら15分で着くぞ...ひなただって...いやあれは車だったな...そうだ!タマが荷物持ってやるよ!」

 

「え?いいの?でも...」

 

「いいのいいの。タマに任せタマへ!」

 

 久しぶりに聞いたその言葉に俺は笑いながら荷物を渡した。

 

「...?ひなと、体調悪かったりするか?」

 

 荷物を怪訝な顔で見ながら球子は言う。

 

「いや全然?しいて言うなら疲れたかな」

 

「そうか、まぁ元気なら別にいいか!」

 

 

 

 

しばらく歩いて...

 

「ひなと、この自転車乗らないか?」

 

「え、なんで?」

 

「いや急に走りたいって思ったんだ!」

 

「...じゃ乗るか。荷物持つよ」

 

 俺はリュックにを受け取ろうと手を伸ばした。

 

「いやタマはリュックをしょいながら走りたいんだ!」

 

 球子は自転車を押し付けて走り出した。

 

「え⁉ちょ待てよ」

 

 左足を左のペダルにおいて、右足で2回地面をけって助走しながら俺は自転車にまたがった。思ったより椅子が高かったせいで少しふらついたが少し漕ぐと安定してきた。

 

「はぁ...はぁ...」

 

 立ちこぎで何とか追いつこうとするが球子との距離はなかなか縮まらなかった。そして坂道だったからかすぐ体力は尽きてしまいいつの間にか座って漕いでおり、球子は歩きながら待っていた。

 

「これ...ケーブルカーか...バイクを...下に置かない...?」

 

「タマたちには必要ないからな...っともうすぐ着くぞ!頑張れ!」

 

 そう球子は言ってきたので俺は再び立ちこぎをし始めた。

 

 

 

 

数分後...

 

 今まで木で囲まれていたのに急に開けた場所が現れた。そしてその開けたところには山にふさわしくない豪邸が存在し俺は唖然とした。

 

「でか⁉え、なんでこんなにでかいのに山の外からは見えないの⁉」

 

「タマに言われても知らん!だが、おそらくひなたや杏が何とかしたんだろ!自転車はあそこにおいて早く入ろう!」

 

 球子が指差したところにはちょっとでかめのガレージがあり、入ってみると自転車だったりバイクが置かれていた。

 

「ガレージと家って繋がってるんだけどせっかくだし玄関から入ろうな!」

 

 そうして俺らはわざわざガレージから出て玄関へ向かった。

 

「改めてみるとほんとにでかいことがわかるな...」

 

 目の前には5メートルほどの両開きドアがあった。両手で片方のドアの取っ手を持ち引っ張った。ドアは見て目に反して意外と軽く、容易に開けることができた。

 

「タマなら両方の扉を思いっきり開けてかっこよく入るのにな!」

 

「いいんだよ」

 

 そう言いながら家の中を見てみると、豪華ホテルのようなオシャンティな内装ではなく、広い靴を置くところや、靴を入れるところ、大きい広間にその中央にある踊り場で左右に分かれる階段、階段の両端にある2つのドアに、左右に一つずつドアがあった。

 

「はぇ~なんもないけどでけー」

 

「ひなたが言うにここは廊下的な場所らしいからな!特に何かを置くということはないらしい!」

 

「へぇ~」

 

「あ、タマっち先輩!おかえり~」

 

 上の方で声が聞こえてきたので見ると、杏が右の2階の通路から身を乗り出して手を振っていた。

 

「お~杏~ただいま~」

 

(相変わらず仲がいいな)

 

「ん?そこにいるのはもしかしてひなと君ですか⁉」

 

「ん、久しぶり~」

 

 俺は小さく手を振った。

 

「昨日来るのかと思って楽しみにしてたんですけど何かあったんですか?」

 

 杏はこちらに向かいながら言った。

 

「いや~、連絡が来た時にお母さんがいなくてね~お別れの挨拶だけでもしないとと思ってこっちにこれなかったんだ」

 

「そうだったんですね...とりあえず荷物を置きましょう!ひなと君の部屋は左の手前ですよ。ちなみにカギはないので入るときは注意してくださいね」

 

「わかったー。...そー言えば他の皆は?」

 

「千景さんはゲーム機などを買いに行きました。ひなたさんと若葉さんは夕飯をよりよくするために買い出し、友奈さんは散歩か道場にいると思いますよ」

 

「友奈の立ち位置本来は若葉の物じゃね」

 

「う~んたまには体を動かしたいのかもしれません...あ、前の寮に残していったひなと君の荷物は私たちが勝手に持ち出して部屋に運んでおきました」

 

「ありがと」

 

「いえいえ、さぁタマっち先輩!ものすごくおっきくなった書庫を見に行こう!」

 

「えー!タマは森を探検したいのに~!」

 

 杏は球子を引っ張って2階に上がり正面右のドアに入っていった。

 

 

 

 

 2階に上がり、左のそれなりに広い廊下の左(玄関側)の一番手前の部屋に入る。

 

(意外と広い...)

 

 目の前には大きい窓に、その左に前に使っていた勉強机とその椅子、右には前よりもでかいベッド、間左にはタンスと長方形の鏡、右の真ん中には前に使っていたテレビ、そして部屋に真ん中には座布団と小さな机があった。

 荷物を置き、窓(両開きのドアだった)を開け、テラスだかベランダにいくと大きな庭と山が見えた木に阻まれて町の様子を見ることはできなかった。

 庭と自然を堪能してから俺は書斎を見に行くことにした。

 

 

 

 

 さっき杏が球子を引っ張って入ったドアを開けると、そこには館を移動しそうなくらいの広さの書斎があった。

 

「あ、ひなと君来たんですね」

 

 部屋を移動するたびに何かしらのイベントが起こる...ギャルゲーかな?

 

「どのくらい広いか気になったのと、ここしか知ってるところがなかったからね」

 

「そうですか。ここはすごいですよ!私が所有していた本があることはもちろん、DVDやゲームのカセットもあるんですよ!」

 

「書斎ってなんだっけ...」

 

「まぁあまりにも広いのでこんな使い方もありですね」

 

「確かに結構広いというか書斎の半分も埋まってないんじゃない?」

 

「それはおいおい増やしていくんですよ」

 

 杏は目をキラキラと光らせながら言った。

 

「なぁもういいだろ~!タマは早く山に行きたい!」

 

「はいはい、じゃ行こうか」

 

「わ~い!ひなとも行くか⁉」

 

「俺は...玄関まででいいかな」

 

「えぇ!なんで⁉」

 

「まだ家の探検が終わっていないから」

 

「そうか...それならしょうがないな!じゃ、玄関まで一緒に行こう!」

 

 

 

 

そして玄関の前までに来た。

 

 球子たちと一緒に玄関まで着た瞬間であった。

 

「ただいま~」

 

 片方のドアを開け友奈が入ってきた。

 

「おかえり」

 

「あれ⁉ひなと君がいる⁉」

 

「さっき来たんですよ」

 

「そうなんだ」

 

「友奈はどこにいたんだ」

 

「私は適当にそこら辺を散歩してたよ、ぐんちゃんも誘ったんだけどちょっと忙しいみたいで一人だった」

 

「いいな~タマたちはこれからなんだ!あ、ひなとは家にいるけどな!」

 

「そうなの?じゃ、せっかく道場もできたんだし久しぶりに私と組み手をしてよ!」

 

「え...」

 

「いいでしょ?ひなと君強いんだし」

 

「......まぁいいよ」

 

「ひなと...?」

 

「どうしたのタマっち先輩?なんか急に元気なくなったけど」

 

「杏、山は一回中止だ。友奈ひなととの組手ってタマたちも見ていいか?」

 

「全然いいよー。私は先に行って着替えてるね」

 

 それだけ言って友奈は靴を脱いで右のドアへ入っていった。

 

「ひなと大丈夫なのか?」

 

 球子は杏に気づかれないように俺に言った。

 

「大丈夫ではないけど、自分が今どんな状態なのか確認しておきたいから」

 

「ひなとが乗り気ならタマは止めないが...」

 

「二人とも何を話してるの?友奈さんをかなり待たせちゃうよ」

 

「今行く」

 

 俺は球子の会話を強制的に終わらして杏の方に駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 ドアを開けてから少し廊下を歩き、屋敷から道場への渡り廊下を歩いて入ると道着姿の友奈がいた。

 

「意外と遅かったね」

 

「ここに来るまでにの部屋が何の部屋か説明しながら来ましたから」

 

「そっか!そういえばひなと君って道着持ってたっけ?」

 

「それがなくしちゃって...俺はジャージでやるよ」

 

「そっか!中で待ってるね!」

 

「私たちも中で待って居よう?」

 

「そうだな!」

 

 三人が中に入ったのを確認してから俺は服を脱ぎジャージを着た。

 

(それにしても何か武道をやる乗って久しぶりだな...)

 

 ここ数年俺はお姉ちゃんの手伝いだったり嫁修行をしていたため全く動いていなかった。

 

 

 

 

 中に入ると友奈は軽くジャンプなどをしてアップを行っていた。

 

「お、きたね。じゃあ早速やろうか!いやぁひなと君と組み手なんて久しぶりでドキドキするね!全力を出せる感じがして!」

 

 そう言いながら友奈は構えたので俺間無言で構えた。

 

「...」

 

 俺が仕掛けなく無言の時間が続いたので、友奈はしびれを切らして一歩踏み込んだ。目の目に友奈が出現した。

 俺は腹あたりを突かれると思い、腹の前で腕をクロスにした。しかし、思った通りにのところに攻撃は来ず、気づいたときにはわき腹に強い衝撃が加わっていた。友奈に蹴られたのである。

 

「え...?」

 

 友奈は攻撃が通ると思っていなかったからかそうつぶやいた。俺はそのつぶやきを聞いた瞬間、思いっきり吹っ飛んだ。そして思いっきり道場の壁にぶつかった。

 

「かはっ」

 

 息が止まる、そして俺は地球の重力に従って五十センチほど落下した。

 

「ひなと君⁉」

 

 その場にいた全員が俺に駆け寄ってきた。

 

「やっぱり...」

 

「タマちゃんやっぱりって何⁉」

 

「ひなと、ここに来るときに対して重くないものを重そうにしていたし、ものすごくつかれてたんだ。だから結構弱くなっているのかなって思ってたんだ」

 

「どうしてひなと君を止めなかったの⁉」

 

「ひなとが自分の体がどのくらいなのか知りたいって自分で言っていたからだ」

 

「はは...思ったより弱くなってたわ...」

 

「ひなと君...とりあえず寝室まで運ぶね...あとごめん」

 

「気にしないで...俺がやりたくてやったことだから」

 

 俺がそういうと友奈は俺を抱きかかえた。

 

「いっ⁉」

 

 友奈が持ったところが俺がちょうど背中を壁にぶつけたところで触られたところに激痛が走り、思わず声を出した。

 

「ご、ごめんね⁉ちょっと我慢してね?」

 

 友奈が歩くたびに俺の背中に衝撃が走り、激痛が起こる。あまりの痛さで俺は涙を出しながら気絶した。

 

 

 

 

 

 目が覚めるて初めに見た景色は俺が先ほど荷物を置いた部屋の天井だった。体を動かそうと思っても痛みが発生するだけで体は動かなかったので、首だけを動かして周りを確認した。

 確認すると友奈がすっごく絶望した表情で隣に座っていた。

 

「友...奈?」

 

 普段は見せないそんな表情に俺は少し困惑した。

 

「あ、ひなと君、起きた...?」

 

 俺が起きたことを確認した瞬間友奈は静かに涙をぽろぽろと流した。

 

「どうしたの?そんなに涙を流して...」

 

「ぐすっ。えっとね、あのあと部屋に運び終わってすぐにぐんちゃん達が帰ってきてなんやかんやあって調べたんだけど肋骨と背骨が折れちゃったらしくてもうひなと君は普通の生活が...できないんだって」

 

 それを言い終わった友奈はずっと俺に泣きながら謝ってきた。

 

「友奈、ちょっとスマホを取ってくんない?」

 

「スマホ...?うん、わかった」

 

 友奈は俺のバックを数分あさって机の上にあったスマホを持ってきた。

 

「机にあるなら先に行ってよ...」

 

 そう文句を言いながら渡してくる。

 

「はは、ごめん俺もどこにあるかわかんなかった」

 

 俺はそう言いながら勇者システムを起動する。俺はいつの間にか腰に巻き付いていたディケイドライバーの左にあるライドブッカーからカードを取り出しセットする。

 

『BRAVERIDE...サザンカ!』

 

 そうして俺は変身した。変身した瞬間体が回復し、起き上がれるようになった。

 

「俺は勇者機能がある限りすぐに復活するから俺の体は気にしないでいいからね」

 

「そうなんだ...よかったぁ。でももう二度とひなと君と組み手はしないや」

 

「相手にならないからね...そう言えばみんなは?」

 

「下にいるよ。みんな優しいから本当はひなと君の傍にいたいんだけど私を一人にさせてくれたんだ」

 

「へ~じゃ元気になりましたし顔でも合わせに行きますか」

 

 俺は変身を解いてベッドから降りた。そしてドアに向かったのだが

 

「ちょっと待って!」

 

 友奈に肩を掴まれ無理やり止められた。

 

「駄目だよひなと君転んだら危ないよ!運んでってあげる」

 

「いやだから俺の体は変身さえすればすぐ回復するから大丈夫だって」

 

「駄目だよ!体は大切にしないと!それにもう私はひなと君が傷ついているところを見たくないんだ」

 

 そう言って友奈は無理やりお姫様抱っこをしてきた。

 

「ちょやめろっ!俺は大丈夫だから!」

 

駄目だよ、暴れちゃ...ね?

 

「ひっ...!」

 

 普段友奈から出ないような声色に驚き、友奈の方を表情をうかがってみたら見事なまでの真顔とハイライトグッバイだった。

 

(最後の戦いでの俺の大量の死と自分で俺を殺してしまったかもしれない今回のことでトラウマができてそれが変な方向にねじれたのかな...)

 

 俺は運ばれながらそんな考察をしていた。

 

 

 

 

 そうしてみんなのいるリビングに着いた。

 

「ひなと起きたんですね」

 

「うん」

 

「...あのお姉ちゃんと俺の状態について話すのは構わないんだけどさっさと降ろしてくれない?」

 

「降ろす...?おろしたところでひなと君は立てないでしょ...」

 

 ちーちゃんが怪訝な顔をしながら言う。友奈はそんなちーちゃんの顔を見ながら俺を静かに降ろした。

 

「え、立てるようになったのか⁉」

 

 友奈以外は目ん玉が飛び出るくらい驚いていた。

 

「なんでみんな勇者システムのこと忘れてるんですかね...」

 

 俺は少しだけ呆れながら言った。

 

「あ、確かにひなと君だけには勇者システムが残っていましたね」

 

「ひなたと買いに行ったロボット掃除機が無駄になってしまったな...」

 

「そんなことはありませんよ若葉ちゃん。最初私たちはひなとの身体能力は落ちていない前提でひなとに家事を任せようと考えていましたからね。さすがに普通の身体能力の人一人にこの屋敷の大きさの掃除+αは厳しすぎます。まぁこんなことは今はどうでもよくて、とりあえずご飯を食べましょう。私たちは明日から仕事ですからね早く寝ないといけません。ひなと食材は冷蔵庫にすべて入れておきました。料理、期待してますね」

 

「うん」

 

「ちょっと待って」

 

 リビングと隣接しているキッチンに向かおうとしたところで友奈に無理やり止められた。この展開どっかで見たな...

 

「料理ってことは包丁を使うってことだよね」

 

「そりゃ...もちろん」

 

「駄目だよひなと君そんな危ないことしちゃ」

 

「危ないって...料理には絶対刃物は使うし...」

 

「というか料理もそうだけどひなと君は外に出ちゃだめだよ?だって危ないし...あ、これが前に言っていたなんでも一つ言うことを聞くでどぉ?」

 

 おい誰か来い止めろという目で見るが誰も反応を示さなかった。どうやら俺が寝ている間も友奈はこんな調子だったらしい。

 

「誰かが隣にいたらいいでしょ?というか料理とかは俺の仕事なんだから邪魔しないでくれよ。いやなんだよ俺だけなんもしてないのに生活しているのが。だからね?頼むよ。家事ぐらいさせて?」

 

 俺が真剣に言ったからか友奈はついてくるだけだった。

 

 俺が料理をしている間友奈は常に俺のことを見ていた。お母さんのところに行っている間は料理をしている時は常にお母さんに見られていたのであんま関係ない。

 

「友奈」

 

「何?」

 

「これ運んでくれない?」

 

 完成したものをお盆に置きながら俺は言った。

 

「いいよ~」

 

 友奈が運んでいるのを見ながら俺は人数分の箸を持ってみんなの座っているところへ向かった。

 

「ひなと...お前...」

 

「うそ...でしょ...」

 

 若葉とちーちゃんがそんなことをつぶやき、他の面々(友奈を除く)はこれまた驚いた顔をして俺を見た。

 

「うどんじゃん」

 

「どうしたんですか?熱でもあるんですか?」

 

「もしかして友奈さんと組み手したときに頭がおかしくなったんですか⁉」

 

 そんな反応をする人たちを見て俺は

 

(二度と作ってやんねー)

 

 と思い。少し拗ねた。ちなみにうどんは好評だった。タマに作ってやろうと思った。




次もかなり遅れるんだろうな...


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第36話 外伝④

リメイクを投稿してめっちゃ誤字報告来てたことに礼を言おうと急いで書いたつもりがめっちゃ遅くなっていました...なんででしょうね。
ゆゆゆいの予約が始まってますが俺にはお金がありません...


 俺が入籍して結構な時間が経った!まだ全員は成人になってはいないが結構な時間が経った。俺は相変わらず女のままである。なぜかって?7人分の食事、洗濯、ばっかでかい屋敷の掃除...これをするのに身体能力の低くなった女の体ではすることが困難なため毎日勇者の姿で仕事をしているからである。女の仕事は家事と昔では聞いていたので仕事という表現は間違えではない...はず。あれ?俺、女じゃ無くね?

 お姉ちゃんは四国のトップのため朝から仕事に向かい、他の皆は勇者としてバーテックスが襲来する前の天皇様みたいなことをしている。つまり象徴として各地へ訪問している。ただなんやかんやあってもみんな毎日夜には家に帰ってくる。朝とお昼のお弁当や夕食を作らなければいけないため俺は毎日忙しい。

 ただ最近お姉ちゃんは家に帰ってきても夜ご飯を食べないでさっさと寝てしまう。忙しいのはわかるがさすがに作ったので食べてほしい...これは面倒臭い嫁なのだろうか?いや夫か。

 

「今日もひなたは食べなかったな」

 

「うん...まずいのかな...」

 

 俺はラップのかかったお皿を見つめる。

 

「ひなと君のお料理はおいしいよ!」

 

「ならいいんだけど...今日もこれ、明日のお弁当に入れてもいい?」

 

「ああ、問題ない。そう言えば明日はひなたは早く帰ってくるらしいぞ」

 

「本当⁉じゃ、明日はお姉ちゃんの好きなものにしようかな~」

 

 俺はお姉ちゃんが好きなものについて考えた。

 

「一瞬でご機嫌になったね、ひなと君」

 

「あいつはみんなが揃ってると大抵機嫌がいいからな。ひなたがいなくてちょっと機嫌が悪くなっていたが少し安心だ」

 

「ね~お姉ちゃんの好きなものってなんだっけ?」

 

「うどんだな」

 

「だね!」

 

「それは俺以外の好きなものでしょ~...そうじゃなくて、お姉ちゃんが固有で好きなものだよ」

 

「あ~なんだろうね~」

 

「そもそも好きなものがうどんで固まってるからそういう話もしないしな...あ」

 

「なんか思いついた?」

 

「そういえばひなとがどっか行った後の小学生の時にタコ飯がおいしかったとか言っていたな」

 

「ひなちゃんが好きなものはタコなんだね」

 

「そー言えばマ...お母さんにレシピ教わったなー」

 

「お前何でも作れるな...」

 

「お母さんにめっちゃくちゃ仕込まれたからね」

 

「その結果が身体能力の低下か...」

 

 若葉は目に見えてわかるぐらい肩を落とした。

 

「でも私はそれでよかったなって思うよ。ひなと君が危ないことしなくなるし。それに組手ならタマちゃんや私が付き合ってるでしょ?」

 

「いやそうなんだが、ひなとの方が強かったからな...」

 

「勇者で相手してやろうか?」

 

「...ひなたや杏が起こるからやめておく」

 

「今一瞬悩んだでしょ?ちなみに私も勇者でも普通の姿でも反対するからね?本当は包丁ですら持たせたくないんだから...あとお風呂もおぼれるかもしれないしあと...」

 

「過保護すぎ...それに包丁は料理ができなくなるので...それにしてもタコか...さばき方はわかるけどやったことないな」

 

「私はしたことはあるが...そもそもタコ自体苦手だな」

 

「え⁉さすがに嫌いって分かってて出すのもあれだしやめようかな...」

 

「あ、違うんだ。味は好きだぞ?見た目というか動いているのを見るのが嫌いなんだ」

 

「そっかじゃあ大丈夫だね。とりあえずタコを買ってこないとな...どんなのがいいんだろ?」

 

「新鮮なものがいいって聞くね」

 

「明日はひなた以外休みだし活きがいいものを球子に買ってきてもらうか」

 

「そこは若ちゃんじゃないんだ...」

 

「私はまぁ苦手ではあるが、ひなたに何かしていたいと思ってたからな私もさばくのを手伝おうかと」

 

「なるほど。じゃあ私たちもタコ以外のことを手伝うよ!」

 

「え?本当?」

 

「うん!何でも言って!」

 

「じゃあ洗濯とお風呂掃除!書庫の掃除は杏に任せるとして、ゲーム部屋はちーちゃんでしょ、タコは球子だから、友奈は道場の掃除をそれが終わったら廊下とそれぞれを部屋を...

 

「...ちなみにひなと君いつもそれやってるの?」

 

「?うん...そうだけど。あれ⁉」

 

「え、どうしたの⁉」

 

「明日アンタラ休みなの⁉」

 

「そうだが...」

 

「お姉ちゃんの残り物どうしよ⁉」

 

「明日のひなちゃんのお弁当でいいんじゃない」

 

「それもそっか...明日のやることも決まったし、明日も朝早いし早くお風呂に入って寝よ...」

 

「今ぐんちゃんと杏ちゃんが入ってるよ」

 

「待つか」

 

「じゃ、私とは入ろ!」

 

 友奈が後ろから手をまわして抱き着いてきた。

 

「断る」

 

「えーなんでー」

 

「まぁ友奈、いじめるのもその辺にしておけ。ちなみに何で嫌なんだ?」

 

「え、恥ずかしいじゃん」

 

「あ、お前が恥ずかしいのね。てっきり自分が男で友奈が女だからかとでもいうのかと思った」

 

「え、じゃあ私ひなと君の体見ないよ⁉ほら一緒に入ると時間短縮になるよ⁉」

 

「...俺があータラの体を見るのがなんか恥ずかしいの」

 

「なんだそんなことか、友奈そいつを捕まえろ」

 

「はーい」

 

 元気よく返事をして友奈は俺をお姫様抱っこし始めた。

 

「ちょっと!何すんだ!おーろーせー!」

 

「ほら暴れない、危ないよ?」

 

「あのなひなと...一緒に暮らしているのだからそのうちお互いの裸なんて見る機会は絶対にあるだ今に内に耐性をつけておいたほうが良いと思うぞ」

 

 そのまま俺は浴場に運ばれていった。浴場行く途中ですれ違ったちーちゃんの冷ややかな目がものすごく痛かったし、入ったら入ったらで途中で球子がとつってきたりしてお風呂なのに物凄くつかれた。

 

 

 

 

 

翌日...

 

 俺は3時半に起きて、お姉ちゃんの朝食とお弁当を作っていた。お姉ちゃんは最近朝食をしっかりとしたものを作っても食べなくなったので持ち歩けるおにぎりをいくつか作った。いつもの癖で3時に起きたが、今日はお姉ちゃん以外は休みなのでこんなに早く起きる必要なかったなーと思いながら俺はあくびをした。

 4時になりお姉ちゃんがいつもの出勤をするときの服装でリビングに来た。

 

「おはようございますひなと」

 

「おはよー、これ朝ご飯ね。出勤しながら食べてもいいし、今食べても全然いいよ。お弁当は今包むからちょっと待ってね」

 

「いつもありがとうございます」

 

 お姉ちゃんは受け取ったお弁当とおにぎりをカバンの中に入れ、玄関の方へ歩き始めた。

 

「ねーおねーちゃん、若葉から聞いたんだけど今日って早く帰ってくるの?」

 

「ええ、今日の予定がしっかりと進行したらですけど...」

 

「そっか!じゃ、気を付けてね」

 

「はい、行ってきます」

 

「行ってらっしゃい」

 

 俺は玄関のドアが静かに絞まるのをじっと見っていた。

 

「さて、いつもだったらみんなのお弁当を作ってる最中なんだけど今日はどうしようかなー」

 

 そう呟いてるとちーちゃんが自室からエントランスに歩いてきた。

 

「あら、私が誘っても一緒にお風呂に入らないくせに高嶋さんや乃木さんそれにひなたさんとならお風呂に入るひなと君じゃない、おはよう」

 

「おはよう...俺は一応抵抗してたけどね」

 

「どうだか」

 

「今日は早いね...」

 

「そうね...ちょっと早く目覚めちゃったのよ」

 

「そうなんだ...朝ごはん食べる?」

 

「さすがに早いわ...私はトイレに行こうとして部屋を出て物音がしたからこっちに来たところで二度寝するつもりだったのよ?」

 

「そっか...じゃお休み」

 

「お休み...ってひなと君は二度寝しないの?」

 

「今二度寝しちゃったらきっとお昼まで起きないし、そーなっちゃったらせっかく整えてきた生活リズムが崩壊しちゃうよ...」

 

「そう...」

 

 ちーちゃんは自室の方へと戻っていった。

 

 

 

 

 久しぶりに起動するソシャゲの復帰イベントなどをリビングしていると時刻は5時半になった。

 

「おはよう、早いな」

 

「あ、若葉おはよーそっちこそ修練着?なんか着て修行でもするの?」

 

「ああ、誰かさんみたいに身体能力が落ちてはたまらないからな。友奈と球子を誘って久しぶりに組み手をするんだ」

 

「そっか...じゃあさご飯作って持ってくね。おにぎりでいい?」

 

「ああ、助かる」

 

 俺は若葉が道場に向かうのを見てから台所へ向かった。そして4人分のおにぎりを作って水筒にお味噌汁を入れて、ワンちゃん道場にいる間にちーちゃんや杏が起きてくるかもしれないのでメモ書きを残してから道場に向かった。

 

 

 

 

 道場に着くと球子と友奈はジャージで若葉だけが修練着みたいなものを着ていた。そして球子は見学しており、今は友奈と若葉が実戦形式の組み手をしているようだった。

 

「おはよう、球子」

 

「おはようひなと」

 

「始めたばっか?」

 

「ああ、始めたばっかだグーパーで一緒になったほうが先に組み手をするていう風に決めていてんだけど見事にタマは分かれてしまったよ」

 

「そっか...ちなみにお腹空いてる...って聞こうとしたけど今から運動するのにご飯食べるのはまずいか」

 

「そーだなお腹は空いたがご飯は運動した後だな!」

 

「ねぇ昨日言ったこと覚えてる?」

 

「ん?昨日タマが風呂でひなとをくすぐってた時に言っていたことか?すまんくすぐることに集中していて聞いていなかった」

 

「えぇ...じゃあもう一回言うよ?かくかくしかじかで...」

 

「なるほどひなたの好物を作るために活きのいいタコが必要だと...釣ってくるのか?」

 

「いや釣ってくるのは無理でしょう...普通に生きてるのを買ってきて」

 

「いるかなぁ...まぁタマに任せタマえ!」

 

 そう言って球子は成長しない胸を張った。

 

「ふぅ...次はタマちゃんだよー」

 

「ん?おう!」

 

 元気よく返事をしながら球子は立ちあがり、友奈と入れ替わった。

 

「おつかれ、はいこれタオルとお茶」

 

 俺はタオルを水筒(味噌汁じゃないぞ)の上に乗っけて差し出した。

 

「ありがと」

 

 友奈は若葉たちの組み手を見ながら水筒を一気飲みした。

 

「俺もたまには運動しようかな...」

 

「危険な運動はだめだよ?」

 

「う~んでも今の若葉なら俺の剣なんて軽く流すだろうし、組手なら大丈夫じゃない?最も、若葉にとってはただのじゃれ合いに付き合う大人みたいになるとおもうよ?」

 

「そうかな~?」

 

「そうだよ、だからあれが終わったらちょっと俺の運動にでも付き合ってもらおうかな。でも、友奈や球子には見てほしくないかも...めっちゃひどいことになってるだろうし」

 

「若葉ちゃんが呆れてひなと君をぼっこぼこにするかもしれないから見てないと」

 

「...」

 

 しばらく見ていると球子が転んで組手は終わった。

 

「ふぅ...さて、朝食をいただくか」

 

 俺はこっちに来た球子と若葉にタオルを渡した。

 

「ねぇ若葉お疲れのところ悪いんだけどさ、ちょっと俺の運動に付き合ってくれない?」

 

「ん?まぁ付き合うのはいいが、何をするんだ?」

 

「どーせ俺は足元にも及ばないだろうから受け流すだけでいいんだけど、たまには剣を振り回してみようかなーって」

 

「振り回すってお前...」

 

 若葉は呆れた顔で俺を見た。

 

「いやだって俺もう剣の使い方とかわからないし...」

 

「まぁいいぞ、付き合おう」

 

「若葉ちゃん。ほんと怪我はさせちゃだめだよ?私も怒るし、ひなちゃんとぐんちゃんが暴走しちゃうから...」

 

「ああ、わかってる」

 

 俺は木刀が入ってる壺みたいなものから一本木刀を取り出し、道場の真ん中に行った。

 

「木刀ってこんなに重かったっけ」

 

 俺は木刀を片手で持つことができず、両手を震わせながら持っていった。

 

「私は剣を使わないで避けるということをしよう。そっちの方が見ていて安心だろ友奈?」

 

「うんそうだね...」

 

「ほら早くかかってこい。私は早く朝食が食べたい」

 

「うぁらぁ」

 

 俺は全速力(俺基準)で走り出し力任せに若葉に切りかかった。若葉は最低限の動きで避け、俺は木剣の遠心力によって転びそうになった。

 体制を整えたところで若葉の顔を見ると憐れなものを見るような目をしていた。

 

「うっ...やぁー!」

 

 視線に一瞬ひるみながらも俺は斬りかかってはよろけるを何度も繰り返した。

 

「...もう運動は済んだか?」

 

「はぁ...はぁ...ま、まだ...まだ舞える...」

 

 俺は最後の力を振り絞って若葉に切りかかった。しかし若葉は片手で剣を掴み、一度左に振ってから右に強く振られ俺は木刀を手放し思いっきり右に倒れた。

 

「あ、まずい」

 

 そう若葉が呟いたのも束の間、すぐに友奈がとんできた。

 

「若葉ちゃん何してるの!普通に取り上げればよかったじゃん!」

 

「すまない...」

 

「俺が頼んだことだから責めないで...」

 

「でもその傷ひなたや千景に見られたらやばそうだな」

 

『BRAVERIDE サザンカ!』

 

 俺は一瞬だけ変身してすぐに解除した。そしたらあら不思議、さっきまで頬や肘、膝にあった擦り傷とそこから発せられる痛みは消えていた。

 

「そんなことをしていると一生タマにちょっかい掛けられるぞー?」

 

「でもこうでもしないと毎日家事出来ないし...まぁもう別にちょっかい掛けられても別にって感じだから。さ、傷の問題も解決したことだし早くご飯食べよ」

 

「...あぁそうだな」

 

 

 

 

「ご馳走様でした」

 

「お粗末様でした」

 

 俺はおにぎりを包んでいたラップやお味噌汁の入っていたお椀、箸をみんなから回収しバケットの中に入れた。

 

「俺はちーちゃんと杏がそろそろ起きてくるだろうから戻るけど皆はどうする?」

 

「私たちはもうちょっと運動していく」

 

「そっか」

 

「じゃあまた後で」

 

 

 

 

 リビングに行くと案の定二人は起きていて、杏は本をちーちゃんはイヤホンを刺してゲームをしていた。

 

「おはよう杏、朝ご飯ってもう食べたりした?」

 

「...」

 

「杏~?おーい!」

 

「...」

 

 杏はどんなに呼びかけても本に集中しているのか反応を示さなかった。

 

「お~い!」

 

 しょうがないので俺はかとを揺らすという強硬手段に入った。

 

「あ、ひなと君おはよう。どうかした?」

 

「朝ご飯もう食べた?」

 

「あ、降りてきたはいいけどまだですね。私よりも早くいましたが多分ちかげさんもです」

 

「そっか、じゃ今すぐ用意するね。って言っても今日はご飯とお味噌汁しかないけど...」

 

「朝はそのくらいがちょうどいいです」

 

「そーなのかー」

 

 俺は二人分のお茶碗とお椀と箸を用意し注いだり注いだりしてそれぞれの前にもっていった。

 

「ん?あ、いたの...ありがとう」

 

 ちーちゃんからの反応はこんなんであった。ちょっとひどくね?

 

「これ食べ終わったら洗わなくていいから水にだけはつけといてね」

 

「あわただしくしてどうかしたんですか?」

 

「今日はお姉ちゃんの好物?のタコ飯作るから早めに家事をしとかなきゃならないんだ」

 

「それだったら私たちも手伝いますよ?」

 

「う~ん昨日はその予定だったんだけど、やっぱせっかくの休みだからゆっくり休んでて」

 

「そう...ですか...」

 

 

 

 

『BRAVERIDE サザンカ!』

 

「さ~て...仕事にとりかかるとしますか!」

 

 俺はまず洗濯物を干すことにした。しかし洗濯機は上で洗濯物を干す用のベランダは2階である。バカでかい屋敷なのにもかかわらず2階まで行かなければならない。しかも7人分なので変身していない状態の俺だったら少ない量の洗濯物を何往復もしてやっと全部が干せるようになるのである。こんなことをしていては日が暮れてしまう!ということで干すものを2階のベランダに転送します。そして2階にワープします。そして念力やそんな感じので物干しざおを展開しつつ洗濯物を干します。ハイ洗濯物を干すの終わり!

 次はバカでかい屋敷の掃除。別に時を止めたり時間をゆっくりしてやってもいいが、めっちゃ疲れるので律儀にやります

 

『ATTACKRIDE 七人ミサキ!』

 

 精霊を使って。と言っても掃除機は一台しかないので他の6人はお風呂掃除したり窓を拭いたり水拭きをしたり壁を掃除したりキッチンを掃除したりと分別している。だだっ広く一直線の廊下だけはロボット掃除機に任している。俺は廊下以外の場所を掃除機掛けしている。

 

「あ、若葉。運動は終わったの?」

 

「それさっきも聞かれたぞ」

 

「あはは...」

 

「そんなことより私たちは掃除しなくていいのか?」

 

「それはさっき会った俺に聞かなかったんだ」

 

「ああ、なんか忙しそうだったからな」

 

「俺は忙しそうじゃないと...」

 

「いやだって勝手に私の部屋に入り掃除をするのはいいんだが、ベッドの下見てたし...暇だろ?というか何をしていた?」

 

「いや、ワンちゃん若葉だし何か隠してたりしないかなーって...」

 

「隠すわけないだろ⁉...そういうのはひなたのを見ておけ。本当に手伝わなくていいのか?」

 

「うん!せっかくの休みだしね。あ、でも料理は手伝ってね。生きてるタコはなんか怖いし」

 

「ああ、了解した」

 

 

 

 

 しかし7人岬と勇者の身体能力をもってしてもだだっ広い屋敷を丁寧に掃除しようとしているせいで昼食前に一回が終わるかなくらいまでしか掃除をすることができなかった。ちなみに今は7人岬と変身を解除して料理を食卓に並べようとしているところである。料理を全部並べたところでどたどたと足音が聞こえてきた。

 

「大変!ひなと君が目の前で消えちゃった!」

 

 そう言ってドアを思いっきり開けたのは手錠を片手に持った友奈であった。

 

「あれ?ひなと君いるじゃん...さっき私の目の前にいてお話していたのに...」

 

「高嶋さんが話していたのは分身だったのね...まぁ7人岬に本物も偽物もないんだけど」

 

「というか話してたって言ったけど、ひなと君って呼びかけてなんでもないを繰り返すめっちゃめんどくさいムーブしてただけじゃん。で、その手錠は?」

 

 俺が持っているものに対し尋ねると友奈は手を後ろの方に隠した。

 

「えへへ」

 

「...笑ってごまかす気か。一応、ひなと君が何人もいるなら一匹くらい捕まえてもいいよねって言う呟きも聞こえてたからね?」

 

「うっ...」

 

 友奈はバツの悪そうに目線をそらした。

 

「まぁ別に何でもいいけどー...ほら並べ終わったしみんなで食べよう」

 

 そうして俺らは昼食を食べ始めた。

 

「ご馳走様。じゃあ俺は再び仕事にとりかかりますので食器だけ水につけといてね」

 

「あ、ちょっと待ってくれ」

 

「ん?どした?」

 

「なぁこのままひなとだけが家事をやっていたら料理を作るのが間に合わなくなってしまうだろ?だからやはり私たちも手伝うぞ」

 

「私たち...?」

 

「なんだ千景?ひなとだけにやらせるつもりか?」

 

「いや、別に嫌というわけではないわ...ただ勝手に決めつけられたのが癪に触っただけよ」

 

「まぁなんにせよ手伝ってくれるのはありがたいけど...じゃあ自分の部屋掃除して。球子はお願いしていたものをよろしく」

 

「おう!タマに任せたまえ!」

 

「それでは私たちの負担が少なくないですか?」

 

「各自の掃除が終わったらどうせ俺は7人岬を使ってるだろうから近くにいるやつに聞いて。じゃ、よろしく!」

 

 そうして俺は7人岬を起動してから、布団を干す作業に入った。

 

 

 

 

 12人でやる掃除はやはりいつもより早くに終わり3時半くらいに俺らは大体のことを終わらせていた。

 

「にしてもひなと君いつもこんなことやってるの?」

 

「まぁそうだね」

 

「これ大晦日らへんの大掃除がいらなくなるレベルよ...?」

 

「だとしても私はきっちりやるつもりだがな」

 

「若葉さんタマっち先輩みたいに張り合わないでください」

 

「あとは球子のタコ待ちだね」

 

 俺は珍しくこの時間にお菓子を食べた。

 

「...ほんとにタコさばけるの?」

 

「大丈夫...なはず」

 

「私もいるから大丈夫...なはずだ」

 

「若葉ちゃん珍しく歯切れが悪いね」

 

「まぁともかく私たちは野菜とかそこらへんややればいいんですね?」

 

「うんよろしく」

 

 そうして雑談していると壺を持った球子が帰ってきた。

 

「いや~ほんとは予約が必要だったけど、勇者様だからって理由でちょっと安くして売ってくれた!あのおっちゃん優しかったなー。はいひなと欲しがっていたものだぞ!」

 

「ありがとう...重い」

 

 俺は球子から壺を受け取った瞬間落としそうになっていた。すぐに球子が俺から取り返したので落とすことはなかった。

 

「タマが台所まで持って行っといてやる」

 

 そう言って球子は軽々と壺を持ち台所へ向かっていった。

 

「さてそろそろ始めるか」

 

「ああ!」

 

 

 

 

 そうして俺と若葉の目の前には俎板の鯉ならぬタコがいた。そして球子は後ろで後方彼氏面をしていた。

 

「ごめんな...」

 

 俺は左手でタコを掴み、右手に持っているピッグで脳みそを刺し神経締めをしようとした。

 

「ひっ!」

 

 刺した瞬間タコは暴れ始め8本あるうちの半分を左手に絡ませてきた。タコの足はぬめりがありそれはそれは気持ちが悪く、そこから動くことによって更なる不快感が出てきた。

 

「いやぁぁぁぁぁ!ちょ!わかば!わかばー!」

 

 俺は暴れるタコを腕ごと若葉の前にもっていった。

「ちょバカ!こっちに来るな!きゃぁ!」

 

 暴れるタコは余った足を若葉の腕に絡ました

 

「「球子!なんとかして!」」

 

 

 

 

「なんだか楽しそうですね~」

 

 ひなと達の悲鳴が聞こえてくる中、杏は暢気に言った。

 

「大丈夫かなぁ...若葉ちゃんから聞かないような声が出てるけど」

 

「大丈夫よ高嶋さん。ひなたさんに渡せるように録音はきちんとしているわ...」

 

「ぐんちゃん、しー!それ聞かれたらひなと君が包丁持って走ってくるよ?」

 

「ええ、そうね。今はこの悲鳴を楽しむとしましょう...」

 

 

 

 

 なんだかんだ球子がさばく前までのことをやってくれた。

 

「もう2度と生きたタコは触らない」

 

「ああ、そうだな」

 

 俺らは友奈とちーちゃんに膝枕されながら言った。なぜ膝枕かって?それは耳かきされるときの姿勢でお互いがリラックスできる姿勢だからである。

 

「なんで私が乃木さんの膝枕をするのよ...」

 

「変わる?」

 

「いえいいわ...たまには弱ってる乃木さんを見るのもいいと思うし...」

 

 若葉はさっきのトラウマが蘇り、聞こえていないようだった。

 

「まったく、タコだって生き物なんだからやるところは最後までやらなくちゃダメだろ!」

 

「はい...すいません」

 

「謝るのはタコにだぞ...もう生きていないけど謝っておけよ。あと残すなよ」

 

「はい...」

 

 俺らは立ち直った後に二人でタコをさばき後は炊飯器が仕事をし終えるところまで終わらした。

 

「さてお姉ちゃんが帰ってくるまで何する?」

 

「ゲームでもします?」

 

「しかし、5人でできるゲームなんてあったか?」

 

「スマ〇ラなら8人まで行けるわ...土居さんコントローラー持ってきてくれる?ゲーム部屋にあるから...」

 

「なんでタマなんだ...」

 

「じゃあ俺も行くよ」

 

「じゃあ私も!」

 

「高嶋さんもひなと君も行くの...?じゃあ...」

 

「千景?そんなにいらないだろ?」

 

「ぐ...そうね...」

 

 そうして俺らはお姉ちゃんが帰って車でゲームをして時間をつぶした。ちなみに俺が最後まで生き残ることは一回もなかった。

 

 

 

 

「お姉ちゃん帰ってこないなー...」

 

 お姉ちゃんが早く帰ってこれるときは7時には帰ってこれるはずなんだが時刻は既に8時を越していた。

 

「...まぁひなたさんも国のトップだからいそがしいのでしょう。そのうち帰ってくるわ...」

 

「だといいけど...」

 

 

 

 

 

三十分後...

 

『BRAVERIDE サザンカ!』

 

「どうしたの?」

 

「いや迎えに行こうと思って...」

 

 俺はお姉ちゃんがどこにいるのかを探った。そして...

 

「はぁ...もう食べるか」

 

「あんなに待っていたのにか?」

 

「うん、今日お姉ちゃん帰ってきたらいつもと同じようにご飯食べないし」

 

「なんでわかるんで...そう言えばひなと君の勇者としての性能って破格ですもんね。未来視とかそこらへんはできますよね」

 

「うんそういうこと...さぁ食べよ食べよ」

 

 俺は炊飯器へと向かった。

 

 

 

 

「いただきます」

 

 そうして俺らご飯を食べ始めた。みんなはおいしいと言っていくれたが俺の心は少しざわついていた。

 夕食が終わり、みんながお風呂などを済ませそれぞれの部屋に行ったぐらいの時にお姉ちゃんが帰ってきた。リビングにいた俺は玄関へと向かった。

 

「おかえりお姉ちゃん。遅かったね...ゆっくり休んでね」

 

 俺はただただそう言ってお姉ちゃんの顔を碌に見ずにリビングへと戻った。

 

 

 

 

「ひなと...怒ってますよね...さすがに言い訳の一つくらいは聞いてくれると思っていましたが...はぁ」

 

 ひなたは自分の部屋でベットに倒れこみ嘆いた。

 

「ひなた、入ってもいいか?」

 

 ノックと共に聞こえたのは幼馴染兼、親友兼、家族の声だった。

 

「大丈夫ですよ」

 

「だいぶ疲れてかれてるようだな。今日は何があった?」

 

「会議の途中でしょうもないことを言ってきた輩に議題を増やされました。その対処に時間がかかったという感じですね」

 

「そうか。ご飯、食べないのか?」

 

「食べたいですよ!ひなとの手料理...今日は皆さんが作ってくれたんでしたね。出来立てを食べたかったです...でも明日も早いですのでシャワーだけ浴びて寝ないと体がもたないんです。すいません。弱音を吐いてしまいました...若葉ちゃん達の方がよっぽどつらい目に会っているのに...」

 

「そんなことはない...今ひなたがいるからこの国は、いや今の国はともかく今後の勇者たちがよりよく戦えるようになるのだろう」

 

「だといいんですが...」

 

「私はもう寝ることにするよ。ひなたほどではないが朝早いんでな。お休み」

 

「ええ、おやすみなさい」

 

 

 

 

翌朝...

 

 朝食の準備をしているとおどおどした様子でお姉ちゃんがリビングに入ってきた。

 

「おはよー」

 

「え、あ、おはようございます...」

 

 しばしの無言が続いた後

 

「怒ってないんですか?」

 

 恐る恐ると言った感じでお姉ちゃんは聞いてきた。

 

「ん?いや確かに帰れないなら帰れないって言ってほしかったけどさ、今俺がみんなみたいにいろんなところに回らなくていいのはお姉ちゃんのお陰でもあるからさ...怒るのは違うかなって。はいこれ昨日のやつね。昨日のタコ飯は生きていたタコを使ったけどもう二度とつかわないからね。そう言った意味では新鮮なものを食べてほしかったな」

 

「ありがとうございます。何かあったんですか?」

 

「ん~内緒。知りたかったらちーちゃんにでも聞いてみて。教えてくれるかはわかんないけど...ほらもう時間だよ?いったいった」

 

「え、もうそんな時間ですか。今日帰ったら千景さんの部屋に行ってみます。じゃ、行ってきます」

 

「うん行ってらっしゃい」

 

 そうして俺はいつも通りの日常を過ごす。

 その夜ちーちゃんにちょっと怒られながらも音声データを聞かせてもらったお姉ちゃんが自分がその場に居合わせなかったことをひどく後悔したとかしてないとか...




本当は違うことをかきたかったのにいきなり始めるのはなぁと思って茶番を入れたら茶番だけになりました。
あと1話だけ書いたらゆゆゆ編に行くつもりです。行けるといいなぁ...


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第37話 外伝⑤

待ってw外伝2から話数間違ってんだけどwだれか言ってよ()
ハイ有言実行で遅れました。忙しいとはいえ遅れすぎなんだよなぁ...何回も最終話詐欺をしている気がしますが今回も詐欺です。してない?気のせいだったかな...(作者確認中)うん!してるわ!一向に終わる気配がないね!今回も余計なことを書いたせいで最終話に行けません。
イラスト集?楽しみ。ゆゆゆいは買えん。


 その日は大赦に呼び出されていた。大赦と言っても今お姉ちゃんが実質支配している方ではなく、地下で細々と勇者システムについて研究している方の大赦である。政治に関係しない人たちなのでまだ俺のことを覚えてられる人たちだ。

 

「それで、どうかしたんですか?」

 

 急に電話がかかってきて『なるはやで来てくれ』と言われたので勇者に変身してワープした俺はそう言った。職員は急に現れた俺に大層驚いているようだ。

 

「...なるべく早くとは言いましたが、電話を切った瞬間にいらっしゃるとは。少しお待ちくださいお茶お出します」

 

「いえお構いなく。自分こう見えて忙しいんです。用件を早く聞いておきたいのです」

 

「そ、そうですか。で、では単刀直入に...あなたの勇者システムを一週間ほどお借りしたい」

 

「...調査をするのであるのならば、死んだ後でもよいのでは?」

 

 システムを家事で使っていて、手放したくないので俺は質問した。

 

「できることなら我々もそうしたいのですが、調査の結果ひなと様が見つけた勇者システムの...なんでしたっけ...あ、バックルでしたかな?は、本来あの神社にあるものではなかったのです」

 

「そんなことまでわかるんですね。あとベルトって呼んでもらった方が自分的にもわかりやすくありがたいです。で?」

 

「恐らく、例の天災の時にバーテックスとともに出現したものだと我々は考えています。つまり、もしかしたらひなと様が死んでしまった時にベルトも消えてしまう可能性があります。ですので今使えるうちに調査をしておきたいのです。もちろん終わったら返しますよ?」

 

「...一週間ですね。わかりました。でも一日待ってください」

 

「わかりました。では明日の昼までには届けてくださるとうれしいです」

 

「わかりました」

 

 そう返事をして俺は瞬間移動で屋敷に戻った。

 

 

 

 

「まずくね?」

 

 勇者システムの崩壊=家事の崩壊である。

 

「待って、ほんとにやばいぞ。この脆弱な体じゃ洗濯物を干して畳んでで一日が終わっちゃう...家事どころじゃないよ」

 

 俺は対策を念じるため屋敷を歩き回った。そうして一つの案が出てきた。

 

「試してみるか...」

 

 そうして俺は墨を持って図書館へと向かった。

 

「昔アニメでキレイを保つ呪文があった気がする。どのくらいまで持つかはわかんないけど...一週間は持ってくれるよね?」

 

 そんな魔法があるなら最初から使えという話だが、使ったらやることがなくなるし使えなくなったらなんやかんやで困るはずだからである。

 

「ふぅ...」

 

 俺は魔法をかけ終わっって一息ついた後に墨汁のふたを開けた。これで本が汚れたら一日中杏の言いなりになるか、ビンタの数発を覚悟しよう。俺は成功していることを祈りながらカーペットに一滴たらした。しかしカーペットの一部に墨はついておらず濡れている様子もなかった。どうやら成功したようである。今更ではあるがなぜエントランスの絨毯でやらなかったは不明である。

 

「よし後はこれを家中に使えば一週間は耐えられるね!」 

 

 そうして俺は家中に魔法を使った。だいぶ時間がかかったため夜ご飯を作ることができずみんなに謝りながら出前で済ませた。みんなは久しぶりの外食だ!と少しうれしそうにしていたため少し複雑だった。

 

 

 

 

翌朝...

 

 みんなを送った後に俺はリュックに水筒や、お財布などを入れたりして外出の準備をした。そして勇者の姿で、できるとこまでの家事をしてから大赦に瞬間移動をした。

 

「...おお!ひなと様、いらっしゃらないかと思いましたよ」

 

 現在時刻は十二時ちょっと前。職員がそう思うのも無理はない。

 

「では預からせていただきます」

 

 大赦がそう言って何か箱を持ってきたので俺はディケイドライバーと電王ベルト、そしてゼロノスベルトを箱に入れた。

 

「ありがとうございます!では私たちはより一層研究に力を入れます!今日入れて六日で調査を終わらすので七日目にとりに来てください。では!」

 

「ちょっと待ってください!出口はどこですか?」

 

「え、で、出口?瞬間移動を使えばいいじゃないですか?ひなと様は生身でも勇者の力が多少使えると伺っていますが...」

 

「最近使えなくなったんです...」

 

「そうでしたか...あそこにエレベーターがありますのでそこから出てください」

 

 そうして俺は職員が指した鉄の扉に向かった。

 

 

 

 

 長いエレベータから出て、玄関から出た先は森であった。俺はこれから歩いて森から出なければいけないらしい...

 

「確かまっすぐ進めばいいんだよな...」

 

 俺は昨日ネットでここいらを調べたことを思い出した。

 歩いてから三十分もしないうちに俺は足に痛みを感じていた。森の中はどうやって研究室を作ったんだと思うくらいに何も整備されておらず足に疲労が行きやすかった。そしてこの体がなまりすぎているということもある。俺は歩いても歩いても森の外の気配を感じずにいた。今何時だろうと思いスマホを見ると充電を忘れていたおかげでバッテリーを示す色は赤になっており、山の中ということもあり圏外であった。

 

(まずいな...S〇icaスマホに連携してあって充電が切れたら使えない...まぁお財布にあるお金を使えばいいんだけど)

 

 しかしこのまま山にずっといて終電を乗り過ごす羽目になってしまえばタクシーを使うことになり、さすがに運賃が高くなりつつあるタクシーの料金を払えるほどのお金は持ち合わせていなかった。家にとりに帰るから待ってほしいといえばいいかと思うが、屋敷までの坂は立ち入り禁止なのでタクシーは入れず取りに行けないのだ。そうこう考えながら歩いていたため、俺は足元がお留守になっていた。俺は派手に転び色々なところがじんじんと痛み出した。

 

(あ、やばい友奈がやばい状況になる)

 

 両ひざにできた傷を見てそう思った。以前みんなで山を歩くということをしたのだが、木の枝に引っ搔かれて少し傷ができたときに友奈が真顔で

 

「ひなと君は外に出ちゃだめだね...」

 

 と言ってきたことがあった。俺はそれ以降ちょっと怪我押したらすぐに勇者になって直すということをしていたのだがそれはもうすることができない。俺は少しだけ憂鬱になった。

 夕方になっても俺は森を抜けることができなかった。よほど大赦は山奥に研究室を作ったらしい。携帯はいつの間にか充電切れになっていた。なんか知らんが屋敷に引っ越してから充電の減りが早いのだ。正確な時間はわからないが、腹時計的にそろそろみんなが帰ってくる時間であろう。あ、お姉ちゃんはまだ帰ってこないか。

 

(今日帰れるのかな...)

 

 サラリーマンがお酒を飲む時間帯にようやく俺は山を出ることができた。服は土まみれ、髪はボソボソ(しかも所々に葉っぱがついている)であった。足がじんじんと痛み、一歩一歩が確実に俺の精神と体にダメージを与えてくる中俺は若干足を引きずりながら歩いていた。駅までの道はまだ長い。俺は本当に終電までに駅に着くことができるのだろうか...?ネガティブなことを考えていると頭がくらくらしてきたような気がした。

 

(あれ?これマジで気のせいじゃなくてくらくらしてね?)

 

 そう気づいたころには俺は倒れていた。

 

 

 

 

屋敷にて...

 

「ただいまー...あら皆さんお揃いでどうかしました?」

 

 ひなたが帰ってきた瞬間いつもはひなとだけなのが今日はひなと以外が出迎えてきたのだ。

 

「ひなとくんがいない...」

 

「落ち着け友奈。大丈夫だきっとお義母さんのところに行っているのだろう。ひなた、何か聞いていないか?」

 

「?今日は大赦に呼び出されたといっていましたが...それ以外は聞いていませんね」

 

「大赦ということはひなたさんはあっていないの...?」

 

「ええ...どうかしたんですか?」

 

「ひなと君がいなくなってしまったんです」

 

「え...?」

 

「どうせちょっと出かけただけだと思うんだけどなー、友奈があまりにも探しに行こう探しに行こう言うもんだからみんなで止めてたんだー」

 

「そうなんですね...ふむ、では呼び出した職員にちょっと聞いてみるとしましょう」

 

「誰だかわかるの⁉ひなとくんを連れだしたやつ!」

 

「呼び出したよ...高嶋さんは少し落ち着きましょ?大丈夫よ...」

 

「わかるに関しては、ひなとは家に電話がかかってきたと言っていたので履歴を確認しており返せばいいでしょう。早く行きますよ」

 

 そして一行は履歴を確認して折り返しの電話をした。

 

「もしもし?上里ですが、ひなとを呼び出した職員の方はいますか?」

 

『呼び出した職員は急いでやらねばならないことがあるといって研究室に閉じこもってしまいましたが、呼び出した場所ではあります』

 

「そうですか...ひなとはいますか?」

 

『え?十二時前に来てすぐにお帰りになりましたが...』

 

「そうですか...ちなみに何の用件で呼び出したのですか?」

 

『あぁ、なんでもひなと様の勇者システムを調べたいらしく、一週間だけ貸してもらうために呼び出したそうです。今日ひなと様が勇者システムをその職員に預けていたのを見ていましたので間違いないと思います』

 

「「「「「「は?」」」」」」

 

「あ!ちょっと待て友奈!探しに行くなら私たちも探すから!最後まで一応話を聞こう!」

 

「...確認しますが、ひなとは今勇者システムを持っていないんですね?」

 

『そうなりますね...』

 

「わかりました、後で呼び出した職員に事情を聴きたいのでその職員が出てきたら連絡をください。それでは失礼します」

 

 ひなたが受話器を置いた瞬間場は静寂に包まれた。

 

「勇者システムを研究するところってかなり山奥でしたよね?」

 

「そうですね...天の神に見つからないように私が選びました」

 

「ってことはひなとくんはその山奥をあんなにひどくなった体で歩いているってことだよね?」

 

「そう...なるわね...」

 

「死んだな」

 

「あ、ちょ!高嶋さん殴りたい気持ちはわかるけどダメよ!後で、殴りましょう。ね?ほら今はひなと君を探すことが一番でしょ?」

 

「そういえばひなとのスマホにGPS仕込んでいたと思いますがそれでわかんないんですか?」

 

「それが山のせいで圏外で痕跡がわからなくて、仮に山から出てももう充電が切れているだろうから...」

 

「なぁ杏、あの二人なんかやばいことを言っていないか?」

 

「タマっち先輩、見ちゃダメ。ひなたさんでも十分だったのに友奈さんまで加わるんだらもうひなと君に人権はないといっても過言じゃないね」

 

「千景はあの輪に入らないのか?」

 

「私を何だと思っているのよ...私はひなと君がどこへ行こうが自由だと思っているから...」

 

 とりあえず探しに行こうということで屋敷の中は空になった。

 

 

 

 

 目が覚めると全くもって知らない天井であった。

 

「あれ?ここは...」

 

「気づいた?」

 

 そこにいたのは髪色は薄い緑色で前髪の左側になんか隙間があり、両端には細い触手(髪の毛の話だぞ)が胸の方が伸びており、髪を一本にまとめて降ろしている金色の目をした俺と同じくらいの女性だった。

 

「...あなたが倒れた後に薄汚い笑い方をした男性が介抱しようとしていたから同情で助けてあげたの」

 

「えっと...ありがとうございます...」

 

 反射的に礼を言ったがそのあとの会話が思いつくわけもなく、無言が続いた。今何時だろうかと思い、スマホを見ようとしたが充電がなく見ることができなかった。周りをきょろきょろしていると電子の時計があり、一時と表示していた。

 

(こんな時間にもなって帰ってきてなかったらものすごく通知が来ているんだろうな...)

 

「あの、「ものすごく服汚れてたし髪もなんか葉っぱついていたりしたけど何をしていたの?」

 

 俺が何にも発しなかったからか向こうは質問をしてきた。

 

「あ、えっと...ちょっと冒険してました」

 

「冒険...結果倒れてひどい目に会おうとしていたんだから目も当てられないね。で?なんか言いかけてなかった?」

 

 最初のあのが聞こえていたのであろう、聞き返してくれた。

 

「助けてもらったのに図々しいのですがコンセントと充電器を貸していただけないでしょうか...!」

 

「そんな泣きそうな顔にならなくても...ほら」

 

 そう言って女性はコードを引っ張って来てくれた。充電してしばらくしているとホーム画面が映りだした。

 

「ひっ...」

 

 開いた瞬間に百件以上のいろいろな不在着信が来ていた。

 

「迎えは来そう?」

 

「正直呼びたくないです...」

 

「それはこっちが困るんだけど」

 

「そうですよね...はぁ...」

 

「何かあったの?」

 

「自分、巫女みたいな立場でして」

 

 そう俺が言うと目の前の女性は渋い顔をした。

 

「ちょっといなくなったらまずい人なんですよ...帰るのが怖いなぁ」

 

「そう...」

 

 そこから俺と女性の会話は続かなかった。早くどっかいかないかなというオーラを浴びながら誰に連絡をしたら一番被害が小さめにすむのだろうということだけを考えていた。よくよく考えればこんなところに勇者を呼び出すわけにもいくまい。早急に帰らなければ...いやしかしもう電車はないだろうし電車に乗れたとしてそこからバスで行くようなところだ、絶対にバスはもうないし、何ならあの坂を上りきる自信もない。まぁ途中まで歩いて誰かに連絡すればいいか...そう思考を巡らせていると

 

『ピンポーン』

 

 とインターフォンが鳴った。

 

「...こんな時間に誰だろう」

 

 女性は少し怪訝な顔をしながら玄関へと向かっていった。

 

「え⁉ゆうちゃん⁉なんでここに⁉」

 

 女性は深夜に出してはいけないような声量を出した。

 

「え、茉莉さん⁉」

 

 どうやら二人は知り合いらしい...

 

 

 

 

 リビングに移動した後、二人は四国にいてからの話をしていた。

 

「ゆうちゃん、やっぱりボクはゆうちゃんは勇者になるべきじゃなかったって思ってるよ。巫女たちが生贄になるちょっと前まで自然災害がひどくて勇者は批判されていたし、結局巫女たちが死んでこの地が安全になるなら最初からそれをやれって意見も出てる。勇者たちはまだ誰も死んでいないんだからまだ戦えっていう人もいるけどね...だったとしても、もう勇者としてのお役目は終わりで後は普通に余生を過ごしていいはずなのに、テレビに出たり、四国中を回ったりして毎日大忙し...しまいには結婚したって聞いたけど神樹が指定した相手で同性婚でしかも多妻...報われないよ。こんなの頑張った人が過ごす普通の生活じゃない」

 

 最後らへんの当事者である俺は黙って話を聞いていた。

 

「隣にいるのがその婚約者なんだけどね」

 

「は⁉」

 

「でも私は幸せだよ?ひなと君だって勇者として戦ってきた仲間だし、何なら私たちは自分たちで選んだから!みんなひなと君のことが大好きだよ!」

 

「ちょっと待って、色々追い付かない。そもそも勇者はこの人じゃなくて上里様でしょ?確かに少しだけ似ているけど...というかひなと君?」

 

「あ、すいません。言い忘れていましたが俺、男なんですよ...神樹のせいで女になってるんですけど」

 

「男が介抱しているのをそのまま見過ごしてもよかったんだね」

 

 友奈の日常を壊した一因だからか目線と口調がきつくなっていた。

 

「茉莉さん、それどういうこと?」

 

「この子道端で倒れてね、チャラそうな人にお持ち帰りされそうになってたの」

 

 横手さんがそう言った瞬間友奈の顔から笑みが消えた。

 

「やっぱりひなと君はずっとお屋敷の中にいなきゃだめだよ。少なくとも女の子のうちは」

 

 低い声で淡々と言われて、俺は身震いをした。

 

「まぁそっちのことは後でにしてもらうとして...それでも納得いかない。勇者なのは上里様でしょ?ここら辺の人に聞いてもみんな同じことを言うと思う」

 

「...俺が民衆の記憶を改ざんしたからな」

 

「勇者の力ってそんなこともできるの?じゃぁ!ゆうちゃんが勇者という民衆の記憶も消して、ゆうちゃんに普通の生活をさせてあげてよ!それが夫のやることでしょ⁉テレビに出ているのは勇者様たちと上里様だけ...あなたは何をしているの?自堕落な生活かな?ハーレム生活?どちらにしろあなたが働いていないのは確かなはず。だったらいっそ勇者の記憶だけ民衆から消して、勇者たちで普通の生活をすればいいじゃん!」

 

「みんなやりたくてやっている、それをやめさせるのはどうかと思う。そもそも消したんじゃない、書き換えてんだ。お姉ちゃんが大赦内で動きやすくなるように」

 

「それはあなたが勝手に言ってることでしょう?」

 

「そっちが言っていることは勝手なことではないのか...お姉...ひなたがこの国のトップに君臨し、それをサポートして未来の勇者につなげるためにみんな頑張ってるんだ。だから自分の価値観を押し付けることはやめてくれ」

 

「........................ごめんなさい。そもそもボクに勇者たちに対してとやかく言う権利はもうないんだったよ」

 

「ひなと君は確かに外で仕事はしていないけど、おっきいお屋敷を一人で掃除して、私たちの洗濯物を一人で干して畳んで、私たちの弁当を朝早くに作って、夕飯も作って...すごいんだよ」

 

「そう...なんだ...非礼のわびと言ってはなんだけど今日はもう遅いから泊ってていいよ」

 

「いいの?」

 

「うん。だってその子、僕とさっきまで口論していたのに寝ちゃったし」

 

「あ、ほんとだ。じゃ、お言葉に甘えて」

 

 

 

 

翌朝...

 

「知らない天井だ」

 

 呟きながら俺は身を起こす。時計は六時を表示していて、だいぶ寝てしまったらしい。そして状況確認が終わった後に隣の部屋で寝ているかもしれない横手さんの方へと向かった。

 

「すいません横手さん」

 

 俺が寝ているのにもかかわらず声をかけると、横手さんは眠そうに唸り声をあげた。

 

「少し冷蔵庫の中身を使わせていただきますね」

 

「いいですよぉ~」

 

 寝ぼけている人に了承を得て、俺はキッチンへと向かった。

 冷蔵庫の中を見て俺は味噌汁と白飯と目玉焼きを作ることに決めた。幸い冷凍されたご飯があるため炊く必要はなさそうだった。とりあえず起きてくるまで味噌汁を作って待つことにした。

 

 

 

 

 起きてきたのは友奈が七時で、横手さんが八時であった。

 

「おはようございます。簡単ではありますが朝食を作っておいたのでどうぞ。使った分は今から買ってくる予定なのでご安心を。必要でしたら食材も買いますが、何か希望はありますか?止めてもらったお礼です」

 

「いいよ...そこまでしなくて。とりあえずご飯、頂くね」

 

 そうして横手さんは黙々と食べ始めた。

 

「ご馳走様」

 

「お粗末様でした。ほんとに食材買い足さなくていいんですか?卵切れてまいましたけど」

 

「いいの...昨日言ったことのお詫びで止まってもらったのに、朝ご飯を作ってもらってお使いに行ってもらっちゃね?」

 

「そうならいいんですが」

 

 

 

 

 

「お邪魔しました」

 

「また来るね!茉莉さん!今度は久美子さんもつれて!」

 

「う、うん...」

 

 横手さんは微妙な顔をしていた。

 

 

 

 

 友奈が呼んだのか、出てすぐにお姉ちゃんがよく乗ってる車が駐車してあった。俺らは車の中に入りシートベルトを着けた。シートベルトを着けると車はすぐに発進した。

 

「ごめんねー、朝早くに」

 

「いえ、ひなとがいるんじゃ帰るのにものすごい時間がかかりそうでしたし、それに送ったらすぐに仕事に行く予定だったので...そういえばひなと勇者システムを大赦に預けたんですよね?どうしてだれにも相談してくれなかったんですか?一人じゃ帰れなくなることくらいわかったでしょう?」

 

 お姉ちゃんは少し怒っているようだった。

 

「ごめん...でもみんな忙しそうだったし、迷惑かけないほうがいいかなって」

 

「忙しいのは確かにそうですけど、迷惑なんて誰も思いませんよ。五日預けるというのを聞いたので皆さん一日ずつ休んでひなとの手伝い兼見守りをしてくれるそうです。五日間はみんなを頼ってください。受け取る日は大赦の人間に車を出させるので安心してください。友奈さんの休みは勝手に取らせていただきました。今日です。お願いしますね」

 

「うん分かった!」

 

 一通りの話がすんだのか車内は静かになった。

 

(『みんなひなと君のことが大好きだよ!』か...)

 

 俺は昨日友奈が言ったことを思い返す。本当にそうなのだろうか?お姉ちゃんやちーちゃんは違うかもしれないが言ってしまえばひとめぼれな気がする。ひとめぼれじゃなくてもみんなは勇者の俺を見て好きになったはずだ。多分おそらくメイビー。今の弱い俺を好きなやつはいるのだろうか...?まったくとは言わないが、俺のことは別人として見られていてもおかしくわないのではないだろうか?若葉なんかは俺を見て残念そうな顔をしている気がする。

 こんなことを思っても仕方がない。弱くなってしまったものはしょうがないのだ。みんなが俺のことを好きでなくなってしまったのなら、俺は甘んじて受け入れ、みんなが嫌な思いをしないように家事だけはちゃんとしよう。でも気になるから若葉と二人っきりになったらちょっと聞いてみよう。

 

 

 

 

 

 俺たちはお姉ちゃんに屋敷の目の前まで送ってもらった。屋敷に入ってみるとがらんとしており、俺たち以外は仕事に行っているようだった。

 

「まずは何をするの?」

 

「昨日かけた魔法がしっかりと働いていたら掃除はしなくていいはずだから洗濯物を干そうかな。そろそろ洗濯機が仕事を終わらせてるころだろうし」

 

「わかった!」

 

 

 

 

一時間半後...

 

「ゼェ...はぁ...げっほ...」

 

「...大丈夫?」

 

 洗濯物がこんなにも重いとは思わなかった。一階に洗濯機があり、干す場所は二階のベランダ...つまり洗濯物を干すためには二階まで運ばなければならない。しかもめちゃんこ遠い。馬鹿でかい屋敷の対角線なのだ。

 籠が小さく、三つに分けたが俺が一つを運んでいる間に友奈は二つを運び終え、干すところまで終わらせていた。途中から友奈が持つよと言ってきたが、さすがに一個も運ばないのはあれなので拒否した。

 

「いつもはどうしているの?」

 

「...洗濯籠ごと瞬間移動してる。いやはやこれから五日間みんながいると思うと本当によかったよ...きっと洗濯物を干すだけで一日が終わる」

 

「次は何をするの?もうひなと君は休憩してていいよ」

 

「疲れているとはいえこれは俺の仕事だからさぼるわけにはいかないよ...次は風呂掃除だね」

 

 うちの風呂は広い。大浴場くらい広い。なぜそんなに大きくしようと考えたのだろう...この腐りきった体では終わらないことぐらいわかるはずなのにどうして俺は魔法の適用外にしてしまったのだろう...?

 そんなことを考えている間に俺らは大浴場に移動した。

 

「私が湯舟?を洗うからひなと君は床でも掃除してて。あ、転んだら危ないからやっぱ見学してて」

 

「ヤダ」

 

 俺はすぐに否定しモップを持った。友奈は膨れっ面を見せた後に掃除に取り掛かった。

 いつもは七人岬を使って掃除をしているせいで逆に暇になり、鏡をきれいにしたり天井や壁も洗っているのだが、勇者の能力がない今それをするには大変な時間がかかるし、飛べないので壁も天井も掃除をすることはできない。

 しゃべりながら掃除をしているとちょうど昼前に掃除が終わった。案の城坤畔には友奈も床掃除をしていた。

 

「ふぅ想定より早く終わった...お昼作るけど何か食べたいものある?」

 

「うどん!」

 

「...わかった」

 

 自分で言うのもなんだがここはひなと君が作るものだったらなんでもいいよというものではなかろうか?そう思いながら小麦粉から作って魔法で保存していたものでうどんを作り始めた。

 

「お待たせ」

 

「全然待ってないよ?」

 

「...作ってる間ずっと俺の後ろにいたじゃん」

 

「あれは早くしてって意味じゃないよ」

 

「さいで」

 

 自分で作ったからか店よりもおいし...くはないか。うどん生産量二位の家庭で作られたうどんよりかはおいしいうどんであった。

 

「ご馳走様!次は何をするの?」

 

「ん?今日はもうやることないし...ゲームでもピクニックでも友奈がやりたいことがあるなら付き合うくらいかな」

 

「私特にやりたいことないよ?」

 

「えぇ...じゃ俺昼寝するけど」

 

「じゃあ私もお昼寝するね。ほらベッド行こ?」

 

「え゛」

 

 こうして俺は友奈の抱き枕になった。力が強いのか俺の体がもろいのかその両方か、ちょっと苦しかった。

 

 

 

 

 翌日はちーちゃんであった。相変わらず俺の洗濯物を運ぶスピードは遅く、ちょっと哀れなものを見る目をされた気がするが運んでいたものを奪ってそそくさとベランダに向かっていったため気のせいだろう。

 息を挙げながらベランダに向かうと半分くらい洗濯物を干し終わっていた。残った半分の三分の一くらい干したら干し終わっていたので前日と同じように風呂掃除をしたら昼の時間となった。

 

「何が食べたい?」

 

「うどん...」

 

「...うい」

 

 昨日と同じように俺はうどんを作くった。

 

 

 

 

「昨日高嶋さんと寝たらしいわね...」

 

「昼寝しただけね?その言い方やめて」

 

「結局寝たことに変わりはないじゃない...でも経緯も聞いているわ...私はゲームがしたい」

 

「んわかった。じゃあゲーム部屋に移動だね」

 

 ゲーム部屋とは名の通りゲームをする部屋である。据え置き機すべてが置かれており、その他ゲームをするうえで快適になるものすべてが置かれている。

 久しぶりのゲームであったが、やることは昔と変わらず俺がボコされて飽きたちーちゃんが協力ゲーを持ってくる流れだった。

 

 

 

 

 

 翌日は杏であった。杏は洗濯籠を二つ持ちながら俺の歩くスピードに付き合ってくれた。心配そうに見てくるのでなんだか居た堪れない気持ちになったがさすがに仕事をしないは嫌なので頑張った。杏が歩幅を合わせてくれたのもあって、干すのに時間はかかったが。風呂掃除を終えた時間は結局昼前だった。

 

「何が食べたい?」

 

「ヘルシーなうどんが食べたいです」

 

「...へるしーナウドン?わかった...」

 

 俺はそうしようと思いながらキッチンへと向かった。

 

(テキトーに具を少なくしてサラダを作ればいいよね)

 

 俺はゆゆゆいでの杏の料理を思い返しうどんを作った。某煮干しもヘルシーということでわかめも乗せていたのでわかめも入れた。

 

「はい、サラダわかめうどん」

 

 おれはゆゆゆいでよく見た?サラダうどんとわかめうどんを合体させたうどんを出した。作ってる途中にめっちゃゆゆゆいがやりたくて仕方のない気持ちになってしまった。

 

「そういえばひなと君は家事が終わった後なら皆さんのやりたいことに付き合ってくれるんですよね?」

 

「うん、常識の範囲内でね?」

 

「そんなことはわかってます。私、ひなと君とお出かけしたいです?」

 

「今から?」

 

「はい、三十分でも構わないので...今のひなと君を見ると昔の私を思い出すんです。病弱だった時の...多分まだひなと君のほうが動けてると思いますけど、でもやることがいっぱいであまり外に私用で行けてないだろうひなと君にちょっとは出かけてほしいなって思って」

 

「わかった!すぐにいこう?」

 

 杏があまりにも真剣に言うもんだから俺はすぐに了承した。

 

「あ、待ってください。メガネを取りに行くので」

 

「あ...そうだったね」

 

 みんなが有名人になってしまったばかりにあまり自由に外に出られなくなってしまったので、よくアニメなどで見る認識疎外の魔法がついたメガネを全員に渡しているのだ。

 それから俺らは町へと出た。杏の読みたい小説を買ったり食器を買ったりどうせ出かけないけど服を買ったり、食材以外の買い物はなかなか楽しかった。だが足の限界のほうが先に来て後半は少しつらかった。でも楽しかったのでよし!

 

 

 

 

 翌日は球子だった。

 

「タマが洗濯物を全部持っていくからひなとは干していてくれ!」

 

 と言われたので今日俺が息を切らすことはなかった。明日は運ぶ。結局俺の干すのが遅いため球子が手伝ってくれた。俺が運ぶという過程がなかったためか、風呂掃除が終わった時間がいつもよりも早かった。

 

「家事が終わったらタマのやりたいことを聞いてくれるんだろ⁉」

 

「当たり前の流れになってるね...まぁそうなんだけど」

 

「タマな、バーベキューしたいんだ!河原で!でもここから河原は遠いし、今のひなとには行かせられない...でも外でご飯は食べたいから庭でピクニックがしたい!」

 

「わかった。じゃあサンドイッチ作るね」

 

「うどんもな!」

 

「...うん」

 

 ピクニックにうどんとは...と思いながら俺は調理をした。まぁいいか

 その日はポカポカとした気温、日差しで絶好のピクニック日和であった。

 

「いい天気ですねぇ...おばあさん」

 

「だ~れがおばあさんだ!タマはまだぴちぴちだぞ!」

 

「確かに子供みたいだね」

 

「身長はタマのほうが勝っているぞ!」

 

「ふん」

 

「あぁ!鼻で笑ったなぁ!」

 

「ふふ、ごめんって。あまりにもいい天気だったから定番のセリフを言いたくって...」

 

「確かにいい天気だけど」

 

「勇者システムが帰ってきてみんなの休みが取れたらバーベキューしようね」

 

「タマ達休みを取らなきゃいけないのか...とれるかなぁ...いや取る!絶対に!」

 

「まぁお姉ちゃんが少し怪しいけどね」

 

 俺は少し悲しげに言った。

 

「この間のは...まぁしょうがない!ひなただって次は大丈夫のはずだ!」

 

 こんな感じに俺たちはご飯をゆっくりと食べ世間話や日向ぼっこをしたりして過ごした。

 

 

 

 

 翌日は若葉であった。

 

 せっかくなんで家事に取り掛かる前に質問をしてみることにした。

 

「ねぇ若葉」

 

「なんだ?」

 

「俺のこと好き?」

 

「...何を言うかと思えば面倒くさいやつみたいなことを...好きでなければ結婚などしていない」

 

「お姉ちゃんに言われたからじゃないの?」

 

「違う」

 

「そう...で、今の俺は好き?」

 

「...くだらないことを言わないでさっさと仕事に取り掛かるぞ」

 

 若葉は答えてくれなかった。

 俺は悲しくなりつつも洗濯籠を運ぶ作業を開始した。たかが一個に両腕を使って顔を赤くしながら運ぶ。若葉はこちらを見向きもせずにすたすたと歩いて行った。俺は悔しくなった。それもそうだろう?いくら弱くなったのに慣れかけているとはいえ成長して再開した時には力は俺のほうが上で俺が二個運ぶということができたはずなのだ。対等に話せるはずなのだ...なのに若葉からの視線は厳しい...俺は少しでも追いつけるように無理やり力を振り絞った。

 

 

 

 

「遅かったな」

 

 ベランダにつくとドアの近くの段差に若葉が洗濯物のかごを置いて座っていた。

 

「はぁ...はぁ......ごめん」

 

 俺は咳き込みつつ洗濯物を干した。先に干すぐらいしてもいいじゃんと思ったが、俺が一つのかごに入っている洗濯物を干す半分以下の時間で自分の持ってきた分を干し終えていたのでなんも文句は言えなかった。

 そしていつも通り風呂掃除へと移行した。

 

「さっき言っていた今のひなとが好きかということだが」

 

 黙々と掃除をしていると若葉から声がかかった。

 

「正直に言うとそこまで好きじゃないな」

 

「...そう、だよね」

 

 わかりきっていた。正直顔を見れば何となく若葉に関してはわかる。明らかに行為を抱いている人物に見せるような顔ばっかを弱くなってからずっと見せてきていたから。

 

「私は今のような精神が体に引っ張られているとはいえ自信が全くなく自分を卑屈にみていたりしているひなとを好きになったわけではないからな」

 

「...弱くなったからじゃないの?」

 

「まぁそれは少し残念だが、どちらかというと性格面でほぼ別人になってしまったというところだな」

 

「別人...か」

 

(俺もともと自分を卑下に見るようなタイプなんだけど...もしかして勇者の時に自分を無理やり鼓舞していた時の自分を若葉は好きになったのだろうか...)

 

「でも頑張ろうとしているときのお前は好きだぞ、やっぱだめだ、みたいに諦めたりして落ち込んでいるだけのお前はやはり嫌いだ」

 

「...」

 

(そうか...やり直しをしまくってた時の俺に若葉はときめいたのか...)

 

 ときめくという言葉はどうなんだと思いつつも俺は掃除をした。

 

 

 

 

「ご飯は...うどんですよね」

 

「ああ」

 

 俺はいつも通りうどんを作った。

 

「体力をつけよう!」

 

 うどんを食べ終わった若葉からそのような言葉が出てきた。

 

「体力?」

 

 俺は食器を洗いながら聞き返す。

 

「そうだ、今お前は体力が落ちているから自信を無くしてしまっている、または弱い体につられて精神も弱くなっている!」

 

「だから体力をつけようと?」

 

「そうだ!よしその食器洗い終わったら道場へ行くぞ!水筒も作ってくれ」

 

「え、あ、うん。わかった」

 

 若干嫌な予感を感じつつ俺は急いで食器を洗うのだった。

 

 

 

 

「よしまずはストレッチだ!」

 

 久しぶりジャージを着た俺に対し、来たな、などの掛け声などもなく急に言ってきた。ストレッチといってもただの準備運動だった。+αでラジオ体操をしただけなのにかなり息が上がってしまった。

 

「よし次はスクワットだ。しっかり深くやれよ」

 

 そういうと若葉はスクワッドを始めた。

 

「私が五十回やって十回できてなかったらプラスでもう十回やってもらうからな」

 

 そんなことを言うので俺は急いでやり始めた。

 

「いぃっ...ちぃ」

 

「なんでそんな卑猥な声を出しながらやるんだ?」

 

 出しているつもりはなかったが無効にはそう聞こえていたらしい。

 

「すまない、悪かった。『出したくて出しているんじゃないもん』みたいな顔をしないでくれ」

 

 三回くらいまではスムーズにできていたのだが、四回目からはものすごく時間がかかってしまった。そして...

 

「五十回終わったが...おまえ...まだ六回しかできていないのか...」

 

「もう動かない...」

 

 そういう俺の足は小刻みに震えており、腰を下ろそうものならそのまましりもちをつきそうであった。

 

「動かせ」

 

 若葉はスパルタであった。無理やり腰を沈めさせられ、そこから放置をするという所業に走ったのだ。

 

「尻をついたらカウントしないからな」

 

 そういわれ俺は休憩をすることができずにいた。三回に一回はカウントされず、十五回目くらいで俺は涙目になっていた。

 

「あぁ...あしがぁ...!」

 

 二十回終わらした俺は地面に寝そべり悶えていた。

 

「次はジョグでいいからここの周り(校庭くらいある)を二周走れ。しかしあまりにも遅いとあれなので私が二十周走るまでに二周していなかったらその度に一周+な」

 

「まだ、立てないんだけど!」

 

 そういうと若葉は俺を無理やり立たせた。くそ!こいつ弱い人の立場を理解してねぇ!

 

「何を弱気になっている。お前は暇なときにこれを一人でするんだぞ?」

 

 そういうと若葉は走り始めてしまったので、おれは重たい足を無理やり動かし走った。しかしそれは傍から見るとただの歩きであった。俺はどんどんと周回遅れとなり結局俺の走る数はどんどんと増えていったのだ

 そして俺の足は本当に限界を迎え...

 

「え...」

 

 まったく力の入らなくなった俺は前に倒れた。その際に足を強くぶつけたがもう感覚すら残っておらず痛くなかった。

 

「おい大丈夫か?」

 

 若葉が駆け寄ってきたので力を振り絞って顔を上げるとほんの少しだけ心配したような若葉の顔があった。

 

「しょうがない...今日はこのくらいにしておこう」

 

 そういうと若葉は俺を子供のように抱っこした。

 

「これやだ...」

 

 そういうと若葉は少しめんどそうな雰囲気を醸し出した後に、お姫様抱っこをした。おんぶがいいという意味だったのだがまぁいいか。

 てっきりリビングにでも運ぶのかと思ったが、若葉が運んだ先はなんと浴場であった。

 

「なんで風呂...?」

 

「よく自分を見てみろ汗びっしょりだぞ」

 

 運動している最中に熱くなったので脱いだジャージの下にあった体育着を見てみるとびっしょりになっていて透けていた。

 

「...」

 

「言っておくが洗濯しているところにお前の下着があったからな?今更だぞ」

 

「別にいいよ...もう何度もこういう場面あったし...なんで一緒に入るの?」

 

「風呂の中で寝られても困るからだ。脱げないなら脱がすが?」

 

 いつまでもたって動こうとしない俺に向かって若葉は言ってきた。正直動けなさそうだったので脱がしてもらうことにした。

 浴室に入り、若葉に体を洗われて湯船につかったと思ったら俺はパジャマを着てベッドにいた。

 

「あれ何でベッド...」

 

 そばにいた若葉が本から目を離し顔を上げた。

 

「気が付いたか、お前湯船につかったと思ったらそのまま寝始めたんだ。しょうがないからある程度浸からせてから体をふいて服を着させてここまで運んできたんだ。ドライヤーでも起きないから多少驚いた」

 

「ありがとう...あ、夕飯!」

 

 時刻を見るともう夕飯を作り終えている時間だったので俺は声を上げた。

 

「大丈夫だ、友奈たちがやってくれている。そろそろできているころだろう」

 

「そう...ならいいけど」

 

 そういって俺は立とうとするが足が全く動かなかった。

 

「どうした早くいくぞ?」

 

 若葉はドアを開け、不思議そうにこちらを見つめていた。

 

「...運んで」

 

 俺は抱っこのポーズをした。

 

 

 

 

「若葉さん...友奈さんみたいなことするんですね」

 

 リビングについて最初の一言は杏のそれだった。

 

「珍しいわね...ひなと君とくっついているなんて」

 

 みんなちーちゃんと同じ思考なのか驚いた顔をしていた。

 

「仕方なくだ」

 

「だったら私がひなと君を見てたのに!」

 

「それもそうだな」

 

 友奈が冗談半分で言った言葉に若葉は冷静に返した。

 ご飯を食べて自室に行くころには足は回復していたので帰りは誰かに運ばれずに済んだ。

 

 

 

 

 

翌朝...

 

(やばい立てない...)

 

 お姉ちゃんの朝食やみんなのお弁当を作ろうとして起きようとしたのだが筋肉痛でなかなか立てずにいた。

 立つのに苦戦していると、『トントン』というドアを軽くノックする音が聞こえた。

 

「ひなと?起きてますか」

 

 ノックしてきたのはお姉ちゃんであった。

 

「うん起きてる。...ちょっと手伝ってくれない?」

 

 そういうとお姉ちゃんはドアを静かに開け部屋に入ってきた。

 

「上半身だけ起こして何をするんですか?」

 

「筋肉痛で立てないの」

 

「あぁそういうことでしたか」

 

 納得したようにつぶやくとお姉ちゃんは俺の両足をベッドの外からだして両手を差し出してきた。俺が両手をそれぞれ握ると強く引っ張られ無理やり立たせられた。

 

「っつぅ!」

 

 立った瞬間ものすごい痛みが足を襲い、俺はお姉ちゃんの方に倒れこむような形で抱き着いた。

 

「あらあら、かわいそうに...リビングに行くときに階段がありますけど大丈夫なんですか?」

 

 お姉ちゃんは俺の背中をやさしくさすりながら言う。

 

「無理」

 

「しかし降りないことには何も始まらないですからね...私が支えるのでゆっくりでいいから降りていきましょう?」

 

「でもそんなことしてたらお姉ちゃん仕事に行けないし」

 

「大丈夫です!今日は少しぐらい遅れても大丈夫なんです!何なら最近は安定してきたのでこれから数年は多少遅れても大丈夫ですし、育休もとれるようになります。ということなので早くいきましょう」

 

 階段を下りている時間は一分が一時間に感じるほど長く苦痛であった。

 お姉ちゃんが少し楽しそうに階段を下りていたのが少しイラついたが無事に降りれたのもお姉ちゃんのおかげなので俺が少しジト目するだけで終わった。

 筋肉痛の痛みに何とか耐えながらお弁当を作り、みんなを見送った後しばらく日向ぼっこをしていると大赦らしき車が敷地の中に入ってきた。というか効果が作用していたら俺らが許して人物しか入れないようになっているので消去法で大赦の人である。

 

「先日は大変ご迷惑をおかけしました!」

 

 最初の一言はそれプラス土下座であった。

 

「気にしないでください。言わなかった俺が悪いので」

 

「そういっていただきありがたいです...ささ、さっそく車にお乗りください」

 

 そういうと後部座席のドアが開いた。

 

「あ、持ってきたわけではないんですね」

 

「はい、さすがにお天道様がこんなにも出ているところで出すわけにも持ち運ぶわけにもいきません。あれはひなと様が持つことだけを許されていて本来は我々は持つこと見ることを許されていませんから...」

 

「なるほど」

 

 適当に相槌を打って俺は車に乗った。シートベルトを締めると車は発進し、森への道を辿るのであった...




途中で終わらすことによって次回余計なことを書かないようにする俺による俺のためのテクニック...
ほんとに次回は最終回のはずです...(のわゆのね)


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第38話 外伝⑥

なんか短めになりました。どうもエフさんです。もう特にいうことはないです。最近ドッカンと原神とスタレに嵌りました。いつかゆゆゆいが買えるといいのですが...
あ、いつも通り下ネタがあります(初の注意...いつもあったのに)


「あのすいません」

 

 車で研究所に言っている途中で俺は気になることがあったので、助手席にいる人に声をかけた。

 

「なんでしょう?」

 

 その人は振り返らずにバックミラー?でこちらを見ながら聞き返した。

 

「もしかして山を歩いたりするのかなと思いまして」

 

「いえ、歩きませんよ」

 

「え、でもこの車が自分の歩いてきたところを通れるとは思えないんですが...」

 

 俺がこの間何時間もかけて歩いてきたところはバイクだったらかろうじて通れそうなくらい狭く、今乗っている普通車が通れそうな道ではなかったのだ。

 

「ひなと様が歩いて行ったのはおそらく研究所を出て目の前の道ですね。一週間に一回ほどしか使われていませんが車用の道が研究所を出た反対方向にあるんですよ」

 

「へぇ...そうなんですか」

 

 その道を仕えていたら少しは早く下山できていたのだろうかと考えた。しかし考えてもあんまり変わらないだろうという結論になり、俺は景色を見るだけにした。

 

 

 

 

 しばらくするとつい一週間前に俺を散々苦しめてくれた山が見えてきた。

 

「あまり整備されていないおかげで大変揺れますのでご注意ください」

 

 山に入る瞬間に助手席にいる人がそう忠告してきた。その忠告を聞いた数秒後に車は大きく揺れ始めた。上下左右、東南西北、古今東西()に激しく揺れ、前に倒れこむのをシートベルトが止めてくれたかと思ったら、次の瞬間にはヘッドレストに大きくぶつかり小さなたんこぶを作った。また、軽く浮遊感を味わったり窓に思いっきり頭をぶつけてこれまたたんこぶを作ったりした。そして何より酔った。

 

 

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 その職員の質問に俺は深呼吸で答えた。車が研究所の入り口についてからというもの俺はすぐに車から出て、服が汚れるのを気にせずに寝っ転がって空を見つめ深呼吸をしていた。ただでさえ他人の車でにおいがあれだったしジェットコースターかよってくらい揺れたのだ、吐かなかったことをほめて欲しい。俺は職員が声をかけてくるのを無視して気分がすぐれるまで空を見つめ深呼吸をしていた。お空は雲一つなくきれいであった。この研究室ふつーに天の神に見れれてそうなんだけどな...入り口は天にちょっと近い場所にあっても研究しているところはものすごい地下にあるのだろうか?

 俺が気分がよくなり研究所の中に入れるような状態になったのは車から降りてから三十分ほどのことであった。長い長いエレベーターに乗りついたのは山の中とは思えないほど設備が整えられたところであった。

 

「遅かったですね」

 

「すいません...体調を崩してしまって」

 

 苦言は俺ではなく連れてきた職員に向けられていたのだが完全に俺が悪かったので代わりに答えた。

 

「そうですか...確かに車はかなり揺れますからね。もっと早く着くと思って勇者システムをここにおいて待ったので少々退屈でした。研究しなければならないことがたくさんあったので遅れそうなら連絡をくれてもよかったんですよ?」

 

 目の前の職員は俺の背後にいる職員に対しニコッと笑って見せた。

 

「すいません...」

 

 職員は縮こまって謝罪の言葉を述べた。

 

「まぁいいです。これがひなと様からお預かりした勇者システムです」

 

 職員は左手で三方っぽいもの置かれたベルトを指した。

 

「ひなと様のお体が弱っていると聞いて私共が勝手に更新させていただきました」

 

「はぁ...何をしたんですか?」

 

「ひなと様の勇者システムの強みとして異常なまでの自己回復能力があります。それを利用してひなと様が死にそうになった時に強制に変身させ回復させるという機能をつけさせていただきました」

 

「ほえ~...」

 

 どう反応していいかわからなかったので俺は適当に相槌を打った。

 

「次に研究してわかったことです」

 

 職員は改まり、こちらを真剣に見つめてきた。

 

「あ、研究結果いうんですね」

 

「ひなと様にあまり関係なさそうだったら言わなかったのですが、ひなと様にしかできないようなことが多かったので報告させていただきます」

 

「...?というと?」

 

 ピンとこんな~な俺は首をかしげながら聞き返した。

 

「ひなと様がこの機能があればいいな、これといえばこの機能だよな、などと思うと勇者システムが反応しその機能を追加するということです。もっとわかりやすく言うと何でもできるということです」

 

「そうですか...」

 

 だったらもうちょっと最後の戦いを楽に終わらしてくれよと思う。いやそれよりもこの弱った体を戻してくれ。

 

「ということでひなと様にお願いしたいことがあります」

 

「...なんでしょう?」

 

「遠い未来おそらくこの端末を扱えるものが現れるでしょう...そのための重婚ですから。その時のためにひなと様には最大限この端末を強くしていただきたいのです。本来勇者システムを変えるためには巫女が神樹様に祈ったりしていたのですがひなと様にはその必要がございません。ですので存分に『ぼくがかんがえたさいきょーのゆうしゃ』を実現してください」

 

「は、はぁ...」

 

 俺は困惑しつつ、変身して屋敷に帰るのであった。

 久しぶりに軽くなった体をかみしめつつ変身を解いて先ほどの大赦職員の言葉を思い出す。

 

「『ぼくがかんがえたさいきょーのゆうしゃ』か...」

 

 結論から言うとそんなものを作るのは不可能である。現状が最強だから...俺が望めばその機能が追加されているのならばもうその時点で最強だろう。そしてその状態にもかかわらず大赦職員が最強でないというのなら原因は俺の意識にある。どこかで俺がこれはさすがに無理だと...そう思うことでリミッターをかけているのだろう。

 

「だけどいいことを聞いたな」

 

 俺が望んだことが叶うのならば俺が不便だと思うことを解決できるようになるはずだ。そう例えば俺が女になるこの現象とかね...!

 

「いや待て、俺が女じゃなくなったら誰が子供産むんだってことになるな...よし!女になる期間を一か月から一週間にしよう!」

 

 この時なぜ三日とかにしなかったのか、おそらく意識的に神に許されないとでも思ったのだろう。

 

「あとさすがに花がカードに描かれているんじゃなくて顔が映っている感じにしたいよね~」

 

 なぜさっきからしゃべっているかというと思っているより言葉に出したほうが実現されやすいと思ったからである。

 

「ついでに花の名前を読み上げるんじゃなくて普通に名前にしてほしいなー」

 

 それを発している俺のテンションは神龍に美容のことをお願いするブルマのようにさぞ叶えてもらえるのが当たり前と思っているような軽い口調だった。

 とりあえずぱっと思いつくような願いはこのくらいか...そう思いながら家事をしようとベルトを取り出す。

 

「変わっているだと...⁉」

 

 神様によるアップデートは光の速さで終わったようで、取り出したカードには仏頂面の俺の顔が写っていた。

 

「仕事早すぎだろ...まぁいいか」

 

 困惑しながら頭を掻き片手でサイドハンドルを引っ張りバックルを回転させる。そしてあらかじめ取り出しておいた『ブレイブライドひなと』を取り出しライドリーダーに装填した。

 

『BRAVERIDE...』

 

『ひなと!』


そうして勇者は女になりながらものほほんと余生を過ごした...わけがなかった。体の状態が勇者の姉以外二十で止まった。最年少の勇者が二十歳になった瞬間、勇者はほぼ性奴隷になって死にそうになり、六人の子供を一気に孕んだ。そして死にそうになって六人産んだかと思ったら今度は育児、家事、性奴隷の生活を両立しなくてはいけなくなりまた死にそうになった。そしてあっけなく五十で息を引き取った。


 

「いやぁお疲れ様~ある程度救えたようで何より」

 

「久しぶりにその姿を見たぞ」

 

 そうつぶやく俺の前にはアクア...まぁ実際にはアクアではないのだがとりあえず俺を転生させた張本人がいた。気づけば俺の体は転生前のものとなっていた。

 

「ハーレムとはいえ悲惨な人生だったね」

 

「結構楽しかったよ?」

 

「うわメス堕ちかよ...そんな睨まないでくれ...でも実際メス堕ちしてたじゃん」

 

「そういう時は謝罪だけでいいんだぞ」

 

「あなたには二つの道がある」

 

「無視かよ」

 

 少し図星を突かれて反論したのに無視された俺は肩をすくめた。

 

「輪廻転生の輪に入るか、またみんなと会えるように魂を神樹に捧げるかだ」

 

「魂を捧げよう」

 

「すぐ答えたねぇ」

 

「当たり前だ。きっとみんな捧げるだろうし...俺だけ捧げなかったってわかった時の来世が怖い」

 

「全員で何回も回されたことが相当トラウマになっているようで」

 

「だって俺大赦が死にそうになった時に勇者に変身するっていう神アプデ実装してなかったら死んでたんだよ...?」

 

「わかったから少し涙声になるのはやめた前」

 

 恐怖とトラウマで震えている俺に対し目の前の神は少々慌てたように言った。

 

「それで魂捧げるというのならば前に来なさい」

 

 玉座っぽいのに座り足を組んだアクアが手招きをした。俺はおとなしく従いとぼとぼとアクアの前へ移動した。アクアは頭に手を置き一言呟いた。

 

「ごめんね」

 

 その瞬間俺の意識はなくなっていた。




のわゆ編終わり。


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