狙われた相棒 (日之谷)
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プロローグ

某日、ダンジョン王国。

 

「「「サキュバスの労働環境の改善を!」」」 

 

今日もサキュバス達はデモ活動を行っていた。

 

「…あんな事をいくらしたところで無意味だというのになぜ分からないのかしら」

 

金髪の髪を靡かせながらデモ活動を行うサキュバス達を冷ややかに見る人物がいた。

 

彼女の名はサキュラ、サキュバスである。

 

「サキュラ様…」

 

彼女の背後から2人のサキュバスが現れる。

 

「貴方達…『希望』は見つかりそう?」

 

「それがまだ…引き続き調査は続けてます」

 

「そう…お願いね」

 

去っていくサキュバス達を見送るサキュラ、その目は決意の炎が燃えているかのように紅く輝く。

 

「絶対に見つけるわ、私達の為にも…‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん!ようやく着いた!」

 

「ユズ、人前ではしたないわよ」

 

サキュバス村の入り口でユズが大きく体を伸ばしながら言うユズにビアンカが陳言する。

 

「だって久しぶりの故郷なんだもん!楽しくなるよね、相棒!」

 

ユズは満点の笑顔を女騎士に向ける

 

「さあ、早く用事を済ませてゆっくり休みましょう」

 

「そうだね、2人とも行こう!」

 

3人がサキュバス村に来た理由、それはサキュバスカフェという新しい業務形態を築いたユズと女騎士。

そして、冒険家稼業に戻るまで常にトップランクであったビアンカ。

3人は今年、サキュバス養成学校の新入生達に講義をしてほしいという依頼が来たのでこうしてやって来たのだ。

 

「まだ時間に余裕はあるとはいえ遅刻はしたくないわ、早く向かいましょう」

 

ビアンカの号令のもと、3人はサキュバス養成学校へと向かった。

 

 

 

 

数時間後…

 

 

 

 

 

「ふぅ…疲れたねー」

 

「そうね、まさか質問があんなに止まらないとは思わなかったわ」

 

講義に出た3人、中々の光景だったのを覚えている。

 

「ドリームセラピーのコツは?」

「サキュバスとしての心構えは?」

「ニューチューバーって儲かりますか?」

「オススメの美容法は?」

「あの…サイン下さい!」

 

とまあ色々とありながらも何とか講義を終えて、今は養成学校近くのカフェでのんびりと寛いでいた。

 

そんな中、後ろの席にいた魔族達の話が女騎士の耳に入る。

 

「なあ最近、サキュバス達のデモが過激になってないか?」

 

「ああ、少し前から不当な扱いをしている店を荒らしたり、聞いた話じゃあ誘拐までしてるらしいぜ」

 

「マジかよ!何だってそんな事を?」

 

「まとめ役みたいなのがいてサキュバス達に指示してるんだと、ただ…」

 

「ただ?」

 

「誘拐された連中は生気を少し吸われただけですぐに解放されるんだとか」

 

「何だそれ?」

 

「さあな、ただ解放された奴らが言うには誰かを探しているらしいぜ」

 

「誰かって?」

 

「そこまでは知らん」

 

盗み聞きは良くないが聞いたところ、どうやらダンジョン王国で何か物騒な事が起きているらしい。

 

「なにをボーッとしてるのかしら」

 

ビアンカに声をかけられハッとする女騎士。どうも気になるので先程聞いた話を2人にする。

 

「うーん…ここには久しぶりに戻って来たし、私は知らないなぁ」

 

ユズに心当たりはなさそうだ。

 

「確かに、最近は一部のサキュバスが暴徒化して騒ぎを起こしていると聞いた事があるわ」

 

「そうなの!?」

 

「とはいえ、彼女達が騒ぎを起こすのはサキュバスに不当な労働をさせたり、賃金を碌に払わない悪徳な店ばかりだから万が一にも私達が巻き込まれるなんて事はないはずよ」

 

ビアンカの話に聞き入る2人。

 

「だからといって暴徒である以上、危険なのには変わりないわ貴方達も気をつけなさい」

 

「うん、分かった!」

 

 

談笑を終え、帰路に着く3人。

 

ビアンカは自分の屋敷へ、女騎士はユズの家に泊まるので、2人でユズの家に向かった。

 

帰り道、視線のようなものを感じ振り向く女騎士。

 

「どうしたの相棒?」

 

ユズが気づいていないあたり、見られているのは自分だけのようだ。

 

何でもないとユズに告げながらも先程カフェで聞いた話を思い出し、警戒しながらユズの家へと向かったのであった。



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STAGE1

お待たせしました第二話です。
甘々回です。


「さぁ入って入って!」

 

お邪魔しますの一言のあと、ユズの家に上がる女騎士。

 

2階建ての一軒家で一階はリビング、2階はおそらく私室だろう。

 

「いつもはお姉ちゃんが住んでるんだけど、今は旅行に行ってるからいないんだ」

 

よいしょとリュックを背負い直すユズ。

 

「とりあえず、荷物置きに私の部屋に行こう!」

 

案内されユズの部屋に入る。

部屋は女の子らしくクマやネコの人形などがあり、可愛らしい部屋をしているが、同時に目のやり場に困るような物が幾つかあり、それらはあえて視界に入れないよう女騎士は心がけた。

 

ユズと女騎士は荷物をまとめ、それらを部屋に置く。

ようやくひと段落ついたのか互いのお腹からぐぅと音がなる。

 

「あはは…そろそろご飯にしようか、私が作ってくるから相棒は待ってて」

 

自分も手伝おうとするがユズに休んでていいよと止められ、部屋で待つ事になった。

とはいえする事も無いのでユズの部屋に置いてあった雑誌を幾つか持ち出し、読書で時間を潰すことにした。

 

[大人気サキュバスのグラビア特集!(袋とじ付き)]

[最新キワどいコーデで異性同性を誘惑!]

[元気になるドリンクの作り方]

 

読んでいるうちに何だか落ち着かなくなってきたのかソワソワし始める。

これはいけないと深呼吸をして気持ちを落ち着かせる、その時ベッドの下に何か布みたいなのがあるのに気づく。

 

何だろうと思い、引っ張り上げると出てきたのはスケスケで服としての機能を果たしてないネグリジェだった。

こういったのは疎い女騎士は『おお…』と無意識に声が出てしまった。

 

(コンコン)

 

突然のノックに慌ててながらもネグリジェを元の場所に戻し本を読む体勢に戻る女騎士、わずか1秒と早技である。

 

「相棒、入るよ?」

 

エプロン姿で現れたユズ、妙に息の荒い女騎士を不思議に思う。

 

「どうしたの相棒?何か顔が赤いけど…」

 

何でもないと答える女騎士。

 

「あっ!そうだ、ご飯が出来たから呼びにきたんだった!」

 

思い出したのかポンと手を叩くユズ、その話を聞いて女騎士は雑誌を本棚に戻した後、一階へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃじゃーん!」

 

リビングに来てみるとテーブルの上にはこれでもかと豪勢に沢山の料理が並べられていた。

 

「お姉ちゃんが食材を残しといてくれたから助かったよ」

 

肉料理にサラダ、ほかほかのスープ、後は分からないがとにかく美味しそうな料理の数々が並んでいた。

美味しいそうだけど真っ先に思ったのは…これ、2人で食べ切れるかな?

 

「あはは…相棒が家に来るから少し張り切っちゃった」

 

頬をかきながら照れるユズ。

料理の香りに釣られてか、再び女騎士のお腹が鳴る。

 

「冷める前に食べようか、ほら座って!」

 

ユズが椅子をひいてくれたのでそこに座る、ユズは向かい側に座った。

 

「それじゃあいただきます!」

 

ユズも女騎士は手を合わせる。

早速、スープを一口いただく。

 

「ど…どうかな?」

 

美味しい!スープはあっさりながらも確かなコクがあり何杯でも飲めてしまう。

 

ユズに美味しいよと伝える。

 

「良かった、相棒の口に合うか不安だったんだ」

 

安堵の表情を浮かべるユズ、

 

サラダはダンジョン王国で生えている野菜だろうか?独特の見た目だが食感は良く風味も良い。

肉料理はこれでもかと盛られたお肉、付け合わせソースがこってり感を打ち消し抜群の相性だ。今まで味わったことがないソースなので恐らくはユズの自家製だろう。

 

「相棒、美味しそうに食べるねー」

 

美味しそうではなく実際に美味しい、何だか体がぽかぽかしてきた。

 

…ぽかぽか?

 

「もしかして隠し味に気が付いた?実はどの料理にもサキュバス村特製のスパイスが入ってるんだ」

 

ユズが見せてきたのは『サキュバス村秘伝 気炎万丈!気分高揚スパイス』と書かれた瓶だった。

 

「相棒が元気になるように沢山入れといたから!」

 

ニコニコと笑顔なユズ、本人はこちらに喜んでほしいの一心で他意がないのは分かる。

…今日、夜眠れるかな。完食した女騎士は天井を見上げそう思った。

 

食器を洗い、お風呂など諸々を済ませた2人。

全部済ませた頃にはそろそろ寝ようかと思う時間、ここで問題が発生する。

 

「相棒が私のベッド使ってよ!」

 

ユズの部屋にはベッドが1つしかない、ユズはベッドを女騎士に譲ろうとするが、女騎士は自分はソファでいいからユズがベッドを使うべきだと主張する。

堂々巡りの譲り合い、行き着いた結論は…

 

「それじゃあ相棒、おやすみ〜」

 

仲良く半分ずつのスペースで寝るであった。

おやすみとユズに告げ、女騎士もユズも静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

いや寝れるわけがない、女騎士はバッチリと目が冴えていた。

夕食に出たスパイスの効果だろうか妙に体が熱っている。

というか全身が敏感になっており、シーツの擦れる感覚、すぐ隣から聞こえるユズの寝息と甘い香りに耳も鼻も反応してしまう。

同じ料理を食べていたはずなのに何故ユズは眠れるのか不思議に思う。

 

外の空気でも吸おうと考え、ユズを起こさないように静かに立ち上がり、寝巻き姿のまま家を出る。

 

深夜であろうとサキュバス村は明るく、賑わっていた。

ユズの家から大通りを真っ直ぐ行って戻ってくるだけなら迷う事もないので散歩を始める。

 

夕方頃に感じた視線はあれから感じず、気のせいだったのだろうか…そんな事を歩きながら考える女騎士。

 

「あの…」

 

何か声が聞こえた気がするので足を止めて周囲を見渡す。

 

「すいません…そこの人」

 

声がするのは路地裏の方からだ、深夜という事もあり恐る恐る進む、進んだ先ではサキュバスが1人倒れていた。

 

何事かと急いで駆け寄り、サキュバスを抱き起こす。

 

「すいません…もう何日も精気を手に入れられてなくて、少しでいいんです…いただけませんか?」

 

衰弱した様子の彼女を放っておくわけにはいかない、精気を譲ろうと手を差し伸べる。

 

「ありがとうございます、騎士様」

 

その言葉にゾクリと違和感を覚える、今の自分は寝巻き姿だ、何故彼女は自分の事を騎士と呼んだのだ?

そう思った時にはすでに遅く、背後から現れた数人のサキュバスが女騎士を押さえつける。

声を上げようとするが瞬く間のうちに口に猿ぐつわをされ、助けは呼べなくなった。

 

「事前の調査でお人好しだとは聞いていたけれどここまでとはね、こんな路地裏にサキュバスが1人いるなんておかしいと思わなかったの?」

 

先程倒れていたサキュバスが起き上がり、女騎士を見下ろす。

そして近づくと指先を女騎士の頭に触れさせる。

すると女騎士は途端に意識を失い動かなくなった。

 

「さあ今日はここまでにしましょう、アジトに帰るわよ」

 

「はい、サキュラ様」

 

女騎士はサキュバス達とともに闇夜に消えていった。

 



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STAGE2 side女騎士

第3話は女騎士視点とユズ視点の両方で進みます。
まずは女騎士編です。


「…い!おい!アンタ大丈夫か!?」

 

誰かの声が頭に響き、意識が少しずつと戻っていく女騎士、重い瞼を開くとデザートエルフの男がこちらを心配そうに見ていた。

 

「ようやく目を開けたか、立てるか?」

 

段々と意識がはっきりしてきたのでゆっくりと立ち上がる。

 

「大丈夫そうか、良かったな…と言いたいが俺たちの状況は何一つ良くないんだ、アンタもサキュバス達に連れてこられた口だろ?」

 

そうだ…倒れていたサキュバスを助けようとしたら捕まって急に意識を失ったのだった。

全てを思い出し、デザートエルフ問いかけに頷く。 

 

「ここの連中もみんなそうさ、抜け出そうにも一面真っ白い壁だけで窓ひとつありゃしない、唯一ある扉は押しても引いてもびくともしない」

 

女騎士が周囲を見るとイヌイット族に雪人族がいた。

 

「うう…可愛いサキュバスに誘われて着いてったら何でこんな事に」 

 

「出せー!俺はただサキュバスカフェに行きたかったから道を聞いただけだぞ!」

 

イヌイット族は落ち込み、雪人族は扉に向かって体当たりを繰り返していた。

 

「あいつはここに放り込まれてからずっとああやってんだ」

 

呆れるように雪人族を見るデザートエルフ、だがどんなに望みは薄いとはいえ自分もここから脱出しないければ。

 

「出せー!出しやがれー!ブヘッ!」

 

どうしようかと考えていると、突然扉が勢いよく開かられ突進していた雪人族は吹っ飛ばされる。

 

「あら?いま何かぶつかったかしら」

 

現れたのは数人のサキュバス、1番最後に入ってきたのは路地裏で倒れたふりをしていた赤目のサキュバスだ。

 

「おいお前ら!さっさと俺達を解放しろ!」

 

ドアにぶつかった衝撃でおでこを赤くした雪人族が赤目のサキュバスに詰め寄る。

 

「騒がしいわね、静かにしてくれないかしら」

 

赤目のサキュバスが目配せをすると他のサキュバス達が雪人族を囲み、縄で縛り上げる。

 

「貴方達も抵抗しなければ手荒なことをするつもりはないわ、理解したかしら?」

 

「「…」」

 

女騎士を含む3人はただ黙ってこの光景を見ていた。

 

「それじゃあ早速だけど始めるわ、全員横に並びなさい」

 

沈黙を肯定と受け取ったのかこちらに指示をする赤目のサキュバス。

言われるがまま並び始める3人。

 

「サ…リーダー、この雪人族はどうします?」

 

やはり赤目のサキュバスはリーダーのようだ、リーダーと呼ばれるサキュバスは先程縛り上げた雪人族を見る、口を塞がれてはいるがもごもごと何かを言っていた

 

「騒がしいのは嫌いだし、こいつは1番最後にしましょう」

 

サキュバス達のリーダーと何やら端末を持ったサキュバスの2人はデザートエルフの前に立つ。

 

「お…俺たちに一体何をする気だ…」 

 

震えながらもデザートエルフは質問をする。

 

「大した事はしないわ、ただ精気を少し私に渡せば良いだけ」

 

「それだけか?」

 

「ええ、それだけよ」

 

そう言うとリーダーはデザートエルフの手を取り、精気を吸う。

 

「…変化無し」

 

端末を持ったサキュバスは呟く。

 

そのままイヌイット族が精気を吸われるが同じような結果なのかリーダーは落胆した表情を浮かべる。

そして女騎士の順番が来た。

 

「さあ手を出しなさい」

 

女騎士が両手を上げるとリーダーが握ってくる。

淡い光が放たれた後に少しだけくる倦怠感、精気を吸われたのが分かる。

 

「…‼︎まさか!?」

 

何故かは分からないがリーダーは慌てた様子を見せる。

 

「解析班、魔力量はどうなっている!?」 

 

「はっはい!これは…リーダー、こちらを…」

 

端末を持ったサキュバスがリーダーに画面を見せる。

 

「そう…精気の流れ込む感覚で分かったけど…遂にやったのね、ふふふ…あははは!」

 

大声で笑い出すリーダー、冷淡なイメージを持っていたので全員が固まる。

 

「ならもう他の奴は必要ないわ、連れて行きなさい」

 

「はっ!!」

 

サキュバス達は女騎士以外の3人に目隠しをして何処かへ連れて行こうとした。

女騎士は見過ごせず、丸腰にも関わらず止めに入る。

 

「安心なさい、ただ家に帰すだけよ。こんな時にも他人の心配だなんてさすがはガーディアンといったところかしら、でも貴方は自分の心配をした方が良いわよ?」 

 

そう言いながらリーダーと呼ばれるサキュバスはまるで宝物を見つけたかのようなキラキラした瞳で女騎士を見ながら顔を両手でそっと包み込んだのだった。

 

 



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STAGE2 sideユズ

お待たせしましたユズ編です。
お話も後半戦に突入しました。
あと2話で完結予定です。


ビアンカは毎日決まった時間にアフタヌーンティーを楽しむ。

最高級の茶葉に豪華なティーセット、そして隠し部屋の壁一面に飾られたユズの写真。

それを眺めながら飲む紅茶は格別だ。

 

養成学校時代の初々しさ残るユズ、ニューチューバー活動時の切り抜き、明らかな隠し撮りなど写真の種類は様々だ。

 

ビアンカは最近発売されたユズのチェキセットを眺める、当然ながら3セット買った。

 

「ふぅ…やはりティーブレイクはこれに限るわ、どんな高級スイーツもこれには勝てない」

 

『ビアンカー…』

 

「見れば見るほど凄いわ、まるで本人の声が聞こえるみたい」

 

『ビアンカー!!』

 

「ん?」

 

幻聴にしてはやたらはっきりと聞こえるユズの声に耳を澄ませる。

 

「ビアンカ、どこー!?」

 

今度ははっきりと聞こえた、ユズが今、屋敷にいる。

 

「えっ!!な…何故ユズがここに!?門番は何しているの?と…とりあえず落ち着きなさい私、スゥゥゥ…ハァァァー」

 

考えるのは後回しにして落ち着くビアンカ、隠し部屋からそっと出てユズの声がする玄関ホールへと向かう。

 

「アポも無しに何の用かしら?」

 

「ビアンカ‼︎」

 

冷静に出迎えようとしたビアンカだが無理だった、ユズはビアンカを見つけると走って抱きついてきたからだ。

 

「ユ…ユズ!?どうしたのよ⁉︎」

 

(何でユズが私に抱きついて?ああ良い香りがする…というかもう色々と柔らかい!)

 

そんな至福とも言える心地だったが、ビアンカの耳にユズの啜り泣く声が聞こえたのだ。

 

「ユズ、何かあったの?」

 

 

 

 

 

 

「騎士がいなくなった?」

 

「うん…」

 

ユズの話を纏めるとこうだ。

朝、起きたら隣にいたはずの女騎士がいなかった事に気づく、靴は無いが、荷物も甲冑もそのままだったので散歩でもしているのだと考え待っていたが帰ってこなかった。

心配になり今まで探し回っていたが見つからず、ビアンカのところに来ていないかこうして尋ねてきた。

 

「残念だけど、私のところにも騎士は来ていないわ」

 

「そう…なの…」

 

シュンとするユズ。

 

(ああああ!落ち込んでいるユズとかレア過ぎる!ここにカメラが無い事が非常に悔やまれるわ!)

 

「ビアンカ?」

 

「た…確かに心配ね、見つけられるかどうかは分からないけど探す当てはあるわ」

 

ビアンカの言葉にユズは顔を上げる。

 

「ホント?」

 

「可能性としてだけど闇雲に探すよりはマシなはずよ」

 

「ビアンカ…ありがとう!」

 

再びビアンカに抱きつくユズ。

 

「ちょっ!ちょっとユズ!」

 

「あっ、ごめんね」

 

「いえむしろもっと…とにかく準備をするからユズ、貴方はその間に」

 

「うん」

 

「家に戻って着替えてきなさい」

 

「あっ!」

 

余程焦っていたのか、ユズは寝巻き姿のままだったのだ。 

 

 

 

 

 

 

 

-1時間後-

 

「待たせたわね、ユズ」

 

ビアンカが研究服を着たメガネのサキュバスと共にユズの家にやってきた。

 

「ビアンカ、そちらの方は?」

 

「初めまして、ペギーと申します、お話は伺ってますので早速ですがこちらをどうぞ」

 

ペギーがケースからオレンジ色の液体が入ったポーションを取り出す。

 

「これは?」

 

「こちらは以前、サキュバス村にいらしたとある男性にスライムの調査を依頼した際に作った物です。そのお方は自身の感覚を鋭くする事で人や魔物の気配を追えるらしく、この話を聞いた時に私はこれをロードワークに役立てないかと考えまして世界中から身体を強化する特別な素材を特殊な分量で配合して…」

 

「ええと…」

 

熱弁するペギーに困惑するユズ。

 

「ペギー、悪いけれど効果だけ教えてもらえるからしら」

 

ビアンカがペギーのトークを止めに入る。

 

「これは失礼を、つまりこの薬を飲む事で一時的に感覚が鋭くなり本来は視認できない足跡や気配が見えるようになるのです!」

 

「て事はこれを飲めば…」

 

「騎士様を見つける事も出来るやもしれません。それに私も騎士様にはお世話になりまして、協力は惜しむつもりはありません、使用にあたり騎士様が身につけていたものとかありません?」

 

「相棒が身に付けてる物…これとかどうかな」

 

ユズは女騎士の兜を部屋から持ってくる。

 

「それで構わないでしょう、ではこちらを」

 

ユズはペギーからポーションを受けとった。

 

「気になってたけど、2人はどういった関係なの?」

 

「ええ、私はスライム以外にもサキュバスの事を色々と調べてまして、ビアンカさんはそのスポンサーです」

 

「そうなんだ」

 

「研究のついでにビアンカさんから気配を相手に察知されにくくなるポーションを作って欲しいと言われてまして…」

 

「コホン!騎士が心配だし、話はそのくらいにしましょう」

 

ビアンカがわざとらしく大きな咳払いをし、ユズはポーションを飲む。

 

「どうでしょうか」

 

ユズの視界にはさっきまで見えていなかった女騎士の足跡がはっきりと見えていた。

 

「こっち!」

 

そのまま外に飛び出し走り出すユズ、着いたのは家から少し進んだ先の路地裏だ。

 

「ここで相棒の足跡が無くなってる…」

 

ユズは更に目を凝らす、今度は微かではモヤのようなものが見えてきた、それは路地裏の更に奥に続いていた。

 

「ここって…」

 

モヤを追って辿り着いたのは廃ビルだった、入り口には[私有地につき立入厳禁]と書かれた看板がある。

 

「ちょっとユズ!どこまで行くのよ!」

 

後ろからはビアンカとペギーが追いついてきた

 

「むむ…いかにもな場所ですね、ユズさんここに騎士様が?」

 

ユズは頷く。

 

「誰か出てくるわ!」

 

3人は物陰に隠れる。

出てきたのは2人組のサキュバスだ。

 

「ねえ、例の連れてきた奴いたじゃない?」

 

「あのヘラヘラした顔の女の事?」

 

「そうそう、リーダーはやたら気に入ってるみたいだけど本当に役立つの?」

 

「それは…私達には分からないわ、何か準備は進めているようだけど」

 

「リーダーからの連絡待ちね、とりあえず巡回に行きましょう」

 

そのまま2人はユズ達に気づかずどこかへと歩き出した。

 

「今の話…」

 

「やっぱり相棒はここにいるんだ!」

 

「相手の規模が分からないのが不安ですね、ここは一度戻って調査をするのが手かと…」

 

ペギーが2人に提案をする。

 

「こうしている間にも相棒が危ない目にあってるかもしれない…私は行く!」

 

「ちょっとユズ‼︎」

「ユズさん!」

 

ユズは(タルタロス)を担ぐとビアンカとペギーの静止も聞かず、廃ビルへと走り出した。



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STAGE3

お待たせしました。
胃腸炎でダウンしてた事と、イラストも描き始めた事でペース落ちてました。
次回で最終回です。


廃ビルの中へと踏み込んだユズ、中は人の気配も無かった。

 

(誰もいない?)

 

見張りが何人かいるかと思っていたので拍子抜けである。

女騎士の気配を追おうとしたが、薬の効果が切れたらしく見えなくなってしまった。

ひとまずエレベーターのボタンを押してみるが反応は無い、カードキーを読み込ませる端末がありそれが無いと稼働しないみたいだ。

 

(階段で行くしかないみたいね…)

 

ユズは気配を殺しながら階段を上がっていく。

3階へと向かう踊り場にたどり着くと、上から話し声が聞こえて来た。

 

「魔力ポーションの備蓄はどうだ?」

 

「あまり残ってないわね」

 

どうやらここにいるサキュバスが話をしているようだ。

 

「ここも大所帯になってきたからな、追加購入が必要だとサキュラ様に相談してみるか」

 

「そうしましょう」

 

話し声と共に足音は遠ざかっていく。

 

(サキュラって誰?今の会話だとここのまとめ役みたいだけど、その人に聞けば相棒の場所も分かるかな…)

 

「こんにちは!」

 

「!!」

 

突如背後から声をかけられ驚くユズ、上階を気にするあまり下階に意識を向けていなかった。

 

(見つかった!)

 

ユズが振り向くとそこには1人のサキュバスがいた。

 

「巡回の戻りですか?」

 

内心焦るユズ、だが相手のサキュバスはユズの事を仲間だと勘違いしているようだ。

 

「見ない顔ね、新入りさん?」

 

「え?ええそう…です」

 

「「…」」

 

ユズはひとまず話を合わせる事したが会話が続かない。

 

「そうだ!魔力ポーション!」

 

「えっ?」

 

ユズは先ほどの会話を思い出し、怪しまれる前に話を切り出す。

 

「魔力ポーションの備蓄が無くなりそうだからサキュラ…様に報告しないといけないんです」

 

「あら、だったら急がないとですね、引き止めてすいません」

 

サキュバスは頭を下げると、ユズの前を通り過ぎようとする。

 

「まっ待って下さい!」 

 

「はい?」

 

「サキュラ様は今どこにいるか分かります?」

 

「ええと…今の時間だと、執務室にいるんじゃないかしら」

 

困った、執務室と言われたところでこのビルの何処にあるかなんて分からない。 

 

「あら、もしかして場所を忘れちゃったの?」

 

「そう、そうなんです」

 

「しょうがないわね、案内してあげるから着いてきて」

 

 

執務室へと向かう2人。

 

「あの…」

 

「キリエでいいわ貴方の名前は?」

 

「ユ…ユーリです、キリエさんはここは長いんですか?」

 

「そうね、ここに来て2年くらいかしら」

 

着いていくキリエの背中の羽をよく見ると、古傷だらけで穴まで開いていた。

 

「この羽の傷が気になるの?」

 

「あっ…いえ、その…」

 

「大丈夫よ、まあ昔色々あってね、ここにはそんな事情を抱えた娘が沢山いるの、サキュラ様は良い人よ、私達みたいな力のないサキュバスに手を差し伸べてこうして住まわせてくれてるの」

 

「あの…」

 

「着いたわ、ここが執務室よ」

 

もう少し話を聞こうとしたが、目的地に到着してしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

コンコン

 

 

 

「サキュラ様、キリエです、少しよろしいでしょうか?」

 

「キリエ?いいわ、入りなさい」

 

キリエがドアを開け、2人は執務室へと入っていった。

そこには書類を眺めている深紅の瞳のサキュバスがいた。

 

「失礼します、こちらの新入りから報告したいことがあると…」

 

「新入り?」

 

サキュラはユズを見ると、一瞬だけ驚いた表情を見せるがすぐに微笑みへと変わる。

 

「ありがとうキリエ、私も新入りちゃんに用があったのよ」

 

「そうだったんですか?」

 

「ええ、2人きりで話をしたいから席を外してもらえるかしら?」

 

「は…はい」

 

キリエは部屋から出て行くのを確認したサキュラはユズを見る。

 

「さて…何の用かしら、ユズさん?」

 

「私の事を知ってるんだね」

 

「当然よ、何せ貴方は有名人、養成学校を首席で卒業後、サキュバスとしての道ではなく、冒険家としての道を選んだってね」

 

笑顔のまま話を続けるサキュラ、ユズはそんなサキュラに一歩近づく。

 

「…相棒はどこ」

 

「何のことかしら」

 

「とぼけないで!ここにいる事は分かっているんだから!」

 

ユズは今まで出したこともないような大声を出し、サキュラを睨む。

 

両者は目を合わせたまま動かない。

 

「ふぅん…確信はあるんだ、まあここを突き止めた時点でバレているようなものか…ならやる事は決まってるわね」

 

椅子から立ち上がるサキュラ、ユズは剣を構え身構える。

 

「話し合いましょう」

 

 

 

 

 

 

 

応接用のシンプルなテーブルにお菓子と入れ立ての紅茶が置かれる。

 

サキュラは紅茶を一口飲むが、ユズはソファに座ったままテーブルの上の物には手をつけない。

 

「あら飲まないの?せっかく淹れたのに、安心なさい、毒なんて入ってないわ」

 

「貴方こそ護衛も無しに私と2人きりでいいの?私が貴方を襲って相棒の居場所を言わせるとか考えてないの?」

 

「それはあるけど、私に何かしたら貴方の相棒ちゃんに何かあるかもしれないわよ?そう考えたら困るのはそっちだと思うけど?」

 

「くっ…」

 

サキュラの言葉にユズは無意識に拳を強く握りしめていた。

 

「意地悪はここまでにしてお話といきましょうか、私達の仲間にならない?」

 

「えっ?」

 

突然の言葉に固まるユズ、だがすぐに気を取り直す。

 

「ふざけないで、なるわけないでしょ」

 

「ふざけてなんかないわ、本気よ」

 

カップをテーブルに置き、ニッコリとこちらに微笑むサキュラ。 

 

「なら相棒ちゃんに会わせてあげる、その方が話も早そうだし」

 

(何?なんなの一体?)

サキュラの行動にユズは疑問しか浮かばない。

 

「それにしても、貴方よく彼女を見つけられたわね、羨ましいわ」

 

サキュラの後を着いていくユズ、サキュラはエレベーター横の端末にカードキーを読み込ませる。

そのままエレベーターへと乗る2人、どうやら地下へと向かっているらしい。

 

「まあ、貴方が手放したく無い気持ちも分かるわ、何たって彼女は夢魔からしたらどんなお宝だって霞む希望そのものなのだから」

 

「希望?」

 

サキュラの言葉の意味を聞こうとしたとき、エレベーターが止まる。

扉が開き、先へ進むと武装したサキュバスや研究服を身に包んだサキュバス、そして大量の機械が設置されていた。

 

「さあこっちへ来なさい、相棒ちゃんに会わせてあげる」

 

ついていくと、巨大な魔法陣の中で鎖に繋がれていた女騎士を見つけた。

 

「相棒!」

 

ユズは駆け寄ろうとするが、武装したサキュバス達が立ち塞がる。

 

「どいて!」

 

「何をするつもりかしら?」

 

「そんなの、相棒を助けるに決まってるでしょ!」

 

「助けるなんてまさか、本当は独り占めしようと考えているのでしょう?」

 

「貴方さっきから何を言ってるの!相棒の事を宝だとか希望だとか、全然分からない!!」

 

先程から訳の分からない事を言うサキュラにユズは力の限り叫ぶ、ユズの言葉を聞いてサキュラは固まっていた。

 

「まさか本当に知らないというの?彼女が私達にもたらす力を?出会ったのも偶然で、一緒にいたのも奪われないためではなく仲間だから?」

 

ぶつぶつと呟くサキュラ、途端に大声で笑い始めた。

 

「アハハハッ!私たちが必死になって探していた存在をそんな簡単に手に入れるなんて!成程ね、話が合わないと思っていたらそういう事!分からないなら彼女の力について話してあげるわ」

 

「相棒の力?」

 

「その前に…私達サキュバスが生きていく為には人々からの精気が必要だというのは貴方でも分かるわよね?そして精気はその生物が持つ生命力によって生成されるもの、ゆえに生命力の高いものは必然とその純度も高くなるの」

 

魔法陣の近くを歩きながら説明を続けるサキュラ。

 

「強い生命力を持つ者は精気として吸収するサキュバスに力を授ける、貴方の相棒ちゃん…ガーディアンは見事その力を持っていたという事よ」

 

話の途中でエレベーター開く音がする。

 

「サキュラ様、御用ですか…ってユーリちゃん?」

 

やって来たのは先程案内をしていたキリエ、ユズがこの場にいる事に驚いているようだ。

 

「キリエ、その娘の事は良いからこっちへ来なさい」

 

キリエは女騎士が拘束されている魔法陣に気づく。

 

「サキュラ様!?これは一体?」

 

キリエは女騎士を見て驚く、どうやら地下の存在は知っていてもこの状況は知らないようだ。

 

「キリエ、彼女から精気を奪いなさい」

 

「えっ…でも」

 

「いいから」

 

ユズは咄嗟に動こうとしたが、警備のサキュバスがユズを囲み、剣を突きつける。

 

「邪魔されると困るの、黙って見てなさい」

 

キリエは女騎士に近づき、両手に力を込める。

強い光が女騎士から放出され、それがキリエへに取り込まれる。

 

「さあ、どうかしら?」

 

キリエは自分の体を見回す。

 

「…!羽が!羽が治ってます!」

 

先程までボロボロになっていた羽は嘘のように傷ひとつ無くなっていた。

 

「何が起きたか分からないって顔をしているわね、キリエの羽を見たでしょ?彼女はね、サキュバスとしての力は弱く、ドリームセラピーとしても、野良サキュバスみたいに戦う力も無かったの、それゆえ悪徳な店で碌な休みもないまま働かされてたの」

 

サキュラはキリエの過去について語り始める。

 

「キリエはね、同じ様に良いように使われ弱った後輩の子を庇い、そこのオーナーから鞭を打たれ、ボロボロになっていたところを私達が保護したのよ、結局…私達では店から救う事しか出来なかったけど…」

 

サキュラはユズの方へと体を向ける。

 

「本来なら治せない傷まで治療し、サキュバスとして持つべきだった力も与えてくれる、ガーディアンはね、ただ利用されるだけだった彼女達にとっての希望なのよ!これで分かったかしら?貴方にガーディアンを返すわけにはいかないの」

 

ユズはサキュラの心からの言葉に耳を傾けていた。

 

「貴方達の事情は分かったわ、でも相棒を誘拐して人生を奪う事は見過ごせない」

 

「ふうん…」

 

「こんな事をしなくてももっと他に方法があるはず、だから…」

 

ユズが言い切る前にナイフが飛んでくる。

咄嗟に剣で弾く。

 

「他に方法?貴方らしい言葉ね、今まで何の苦労も無く、幸せな生活を送っていた平和ボケそのものの模範解答ね」

 

サキュラは持っていたナイフを両手に持ち、構える。

 

「自分が悪い事をしている自覚くらいあるわ…でもね、ようやく手に入れた私達の希望、奪われてたまるものですか!」

 

周りにいた他のサキュバス達もユズに斬りかかろうとした。

 

「待ちなさい、私一人で相手するわ」

 

サキュラが皆を止める。

 

「しかし…」

 

「良いから」

 

「はっ!」

 

武装していたサキュバス達はユズから離れる。

 

「一人でいいの?」

 

「ええ、貴方は私の手で倒すと決めたわ、それより精気はサキュバスの力の源と言ったわよね?」

 

「それがどうしたの?」

 

「つまり…」

 

サキュラは魔法陣に触れると精気を吸収する。

女騎士の苦しそうな声がユズの耳に入る。

 

「相棒!」

 

声を上げるユズ、いつの間にか視界からサキュラが消えていた。同時に背後から尋常ではない殺意が迫る。

 

ガギィン!

 

「ぐっ…!」

 

大剣で防ぐが、とても短剣とは思えない凄まじく重い一撃が全身に伝わる。

 

サキュラは防御で体勢を崩したユズの懐に蹴りを入れる。

 

「ガハッ…‼︎」

 

そのままの勢いでユズは壁に叩きつけられる。

意識が飛びそうになるが何とか耐え、立ち上がりサキュラの方へと走る。

 

サキュラはこちらを見据えたまま動かず、ユズからの攻撃を左手に持ったナイフで軽々と受け止めた。

 

「そんな!?」

 

「質の高い精気はサキュバスの力にも直結する、つまり吸収していればこうして身体能力を向上させるって訳、貴方にも覚えはない?」

 

確かにサキュラの言う通り、女騎士から精気を貰った日は体の調子が良かったがそういう事なのかと今になって分かった。

 

「ぐっ…でも私は!」

 

力を込めるが、サキュラはびくともしない。

 

「もういいわ、死になさい」

 

サキュラの刃がユズの首へと迫る。

しかしユズに刃は届く事なく、何処からもなく飛んできた氷塊に弾かれた。

 

「何者!?」

 

サキュラが見たのは深く被った帽子にサングラスとマスクの変装をした謎の人物だった。

 

「…本当に誰?」

 

「はぁぁ!」

 

謎の人物は持っていた大剣を地面に突き刺す、瞬く間に凍てつく寒さが周囲に広がる

 

「さささ寒い!」

「足元が凍って動けない!」

 

サキュバス達はあまりの寒さに狼狽し始める、その瞬間を逃さず謎の人物はユズの手を握り出口へと向かう。

 

「逃さない!」

 

サキュラは2人のところへ向かうが突如、警告音が鳴り響く

 

「ガーディアンのバイタル低下…やはり戦闘時の消耗は激しくなるのね、彼女に死なれては困る…いいわ見逃してあげる、どうせガーディアンは私達の手の中なのだから」

 

 

 

 

 

 

 

謎の人物はユズの手を引きながら非常用の階段を登る

 

「ね…ねぇビアンカ」

 

「!?」

 

バレると思ってなかったのか驚くビアンカ、ひとまず変装を解く。

 

「どうして私が地下にいるって分かったの?」

 

「ペギーに頼ったのよ」

 

あの後、なかなか戻らないユズを心配したビアンカもビルへと乗り込んだ。

その際にペギーから貰った気配を可視化する薬を使ったところ、地下に続いていたので非常口から地下に向かい、ユズが苦戦していたところに出くわした。

 

「ビアンカ…相棒が…」

 

「詳しい話は後で聞くわ、今は逃げましょう」

 

「でも…」

 

「よく見なさい、今の貴方ではガーディアンを救えないわ」

 

ビアンカから見て今のユズは満身創痍だ、そんな状態で戻ってもむざむざ死にに行かせるのと変わらない。

 

「安心して、必ず私達でガーディアンは助ける、その為には貴方もいないと駄目、分かってくれる?」

 

ビアンカは真っ直ぐとユズを見る。

 

「うん…」

 

「ひとまず私の屋敷に戻るわ、ペギーもそこで待ってる」

 

(待ってて相棒、必ず戻ってくるから!)

 

確かな決意のもと、ユズとビアンカはビルを後にした。



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Last Stage

最終回です。初の長編、見事に書き切りました!
感想は長編書ける人、凄いなと痛感です…
これにてユズが主人公の小さな冒険譚は終わりです。


「あれから1週間、助けは来ないわね」

 

サキュラは拘束されている女騎士に話しかける。

 

「何よその目…まさか本当に助けが来るとまだ思っているの?」

 

女騎士は何も言わないがただ瞳は光があり、諦めなど一切考えてない事が分かる。

 

「まあいいわ、この後も貴方の力を必要としてる子がいるのだから大人しくしてなさ…」

 

「サキュラ様、大変です、異常事態が発生しました!」

 

武装したサキュバスが2人の前に現れる。

 

「[[rb:ユズ > あの子]]が来たの?」

 

「いえ、そういうわけでは…とにかく外を見て下さい!」

 

地下から地上へと戻り、外の様子を見るサキュラ。

 

「な…何よこれ!?」

 

「「「サキュバスの労働環境の改善を!!」」」 

「「「待遇の改善を!!」」」

 

大勢のサキュバス達が建物を取り囲むようにデモ活動を行っていたのだった。

 

「お前たち!何をしている!」

 

武装したサキュバスの1人がデモを警備している男に怒鳴る。

 

「見て分からないか?デモ活動だ、ここでは珍しくはないだろう」

 

「ここでする必要はないはずだ、他へ行け!」

 

「いや、ここでのデモの許可は出ている」

 

「隊長!」

 

隊長と呼ばれる人物が現れると、サキュバス達に書類を見せる。書類には[ダンジョン王国 活動許可書]と書かれてあった。

 

「この通り申請が行われ、今日1日はこの場所でデモを行う許可が出ている。もし妨害をするようであれば警護担当の我々も黙ってるわけにはいかない」

 

 

 

 

 

「許可がおりてるですって?」

 

「確かに言ってました、恐らく書類は本物かと」

 

 

許可が下りているとなると迂闊にこうなると手が出せなくなる。そもそも自分達はサキュバスの保護と改善の為に動いている、妨害など出来るわけがなかった。

 

「サキュラ様!!」

 

「今度は何?」

 

「屋上からスライムが!」

 

屋上へ向かうと、大量のラヴァスライムが溢れていた。

 

「何故ここにスライムが…」

 

「分かりません!急に空から大量に降ってきまして」

 

「ちょっと!通れないんだけど!」

「いやぁ!ベタベタする!」

 

スライム達は襲ってくるわけではないが、ヌメヌメベタベタなスライム達により屋上の警備達は狼狽していた。

 

「すぐに階下の人員を屋上に回しなさい!」

 

サキュラの持っていた通信端末から連絡が入る。

 

「たっ大変です!研究施設に侵入者が!」

 

「侵入者…規模は?」

 

「侵入者は赤髪のサキュバスが1名、手当たり次第に設備を凍らせて…うわぁぁ!!」

 

「返事をしなさい!」

 

「…」

 

端末からは返事は無い。

 

「くっ…やってくれたわね、ユズ!!!」

 

サキュラは怒りからか、持っていた端末を強く握りしめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡る事数日前、ビアンカ邸

 

「さて、ユズさんの怪我の具合も良くなってきたところで作戦会議といきましょうか」

 

ペギーがどこからか持ってきたホワイトボードに地図やら写真を貼り付けていく。

 

「やはりと言いますか、警備は相当強化されています」

 

「空からの侵入は出来ないの?」

 

ユズの質問にペギーは首を横に振る。

 

「ドローンを飛ばしてみましたが、相当な数の警備がいます。たとえ強行したところで、別の警備が集まって瞬く間に制圧されてしまうかと…」

 

「戦力をいくつかに分散出来ればいいのだけれど、戦えるのが私とユズの2人だけとなると難しいわね…」

 

3人は色々と考えるが良い作戦が浮かばない、どう考えても人員が足りていないのだ。

 

コンコン

 

「入りなさい」

 

「ビアンカさま、少しよろしいでしょうか?」

 

扉がノックされ、使用人が3人の前に現れる。

 

「先ほどご友人のジョイ様がお見えになられまして、お会いしたいと承りました」

 

「ジョイが来てるの?良いわ、通しなさい」

 

「かしこまりました」

 

しばらくすると、ジョイがやってきた。

彼女は養成学校卒業後、村の案内役を務めている。

 

「やっほービアンカ!帰ってきたなら連絡をくれてもいいのに…ってあれ?ユズもいる!」

 

「ジョイ、久しぶり…」

 

「元気がなさそうね、何かあったの?」

 

「ええと…」

 

 

「私が話すわ」

 

ビアンカはジョイに今までの出来事を話し始めた。

 

 

 

 

 

「何それ!てことは今も捕まったままなの?」

 

ユズの話を聞いて憤慨するジョイ。

 

「人員を分散させる事なら多分できるわよ?その為にはビアンカ、貴方の力が必要になるけど」

 

「どういうことかしら?」

 

「つまりね…ごにょごにょ…」

 

「なるほど!確かにそれならいけるかも!」

 

ジョイの言葉にユズが頷く。

 

「では私の研究も役に立つかと…」

「その後は私達の出番ね」

「うん!行けそう!」

 

4人は作戦に向けて動き始めた。

 

 

 

ジョイの作戦、それはサキュバスが行っているデモ活動、それを相手のアジトの前で行う事だった。それも大規模で。

 

顔の広い彼女が声をかけた事、またサキュバスカフェで多くのサキュバスを救ったユズ達のお願いにより、多くの仲間を得られた。

時間のかかる申請はビアンカがコネを使い、最速で許可をおろすことが出来た。

 

第2段階として、視線を階下に注目させる事により僅かだが屋上の警備が疎かになる。

近づきやすくなった事で今度はペギーが研究していたラヴァスライム達を袋一杯に詰め込んでペギーとジョイの2人が上空から落とす。

羽の生えているサキュバスだからこそ出来る作戦だろう。

 

屋上のスライムの群れ、地上のデモ、ある程度の人員を割かなければならなくなる。

 

第3段階に、ビアンカがデモに乗じてビルに侵入、赤いウィッグを被り、地下で手当たり次第に暴れる。

 

戦力の多くがビアンカに向かうので、後はユズが単身で女騎士を救出するといった作戦だ、捜索はペギーの開発した薬で行う。

 

「侵入者は地下だ!」

「屋上じゃないのか?」

「それはスライムだ!」

「今入ってきた話だと2人組がスライムと一緒に屋上で暴れていると…」

「どっちにしろ人手が足りない!」

「デモが邪魔で外にいた人員が戻れないだと!?」

 

案の定、建物内は混乱を極めていた。

それこそ、変装したユズとすれ違っても気づかないほどに。

 

(よし、みんな上手くやってくれてるみたいね、私も早く相棒を見つけないと)

 

ユズは単身、地下を走り出した。

 

気配を辿ると女騎士の気配を強く感じる扉の前にたどり着く。

 

(うん分かる、ここに相棒がいる)

 

扉を開けると何もない広間だった。そして部屋の中央では女騎士が倒れていた。

 

「相棒!!」

 

ユズは真っ先に女騎士のもとへ駆け寄り、抱き上げる。

弱っているが呼吸は安定していた。

 

「良かった…」

 

安堵の表情を浮かべるユズ、ユズの声に反応したのか女騎士が目を開けた。

 

「相棒!助けに来たよ!」

 

憔悴している女騎士は虚な瞳でユズを見つめていると、残った力でユズを突き飛ばす、それと同時に飛んできたナイフがユズの髪を掠めた。

 

「あら外してしまったわね…相棒ちゃんを置くことで寄ってきた貴方を仕留める予定だったのだけれど、弱った体を動かして助けるなんて…貴方、相当に大切に思われているのね」

 

「サキュラ…」

 

「大人数によるビル前のデモ活動、屋上でのスライム、建物内でも侵入者の対応で手が回らない中、混乱に状して貴方が救出を行う、見事としか言えないわ、いったいどんな手を使ったのかしら?」

 

「仲間達が協力してくれたのよ」

 

「仲間が…そう、本当に恵まれているのね貴方。でもこっちも譲れないの、ならするべき事は分かるわよね?」

 

「うん、でも少し待って」

 

ユズは女騎士を抱き上げると壁際にそっと座らせる

 

「これでよし。相棒、もう少しの辛抱だから待ってて」

 

ユズは女騎士から離れると剣を構え身構えた、サキュラも両手でナイフを持ち、構える。

 

「私は負けるわけにはいかないわ!誰にも助けを求める事が出来ず、ただ虐げられる者たちの為にも!」

 

サキュラはユズの前から消えると、一瞬で背後へと移動し、ナイフを振り下ろす。

ユズは攻撃を大剣で全て受けるのではなく衝撃を逃がすようにいなしながら防ぐ。

それにより体勢が崩れないので二手の回し蹴りを躱す事が出来た。

 

「あら、やるわね」

 

「同じ手は2度も食らわないよ!」

 

「なら…これはどうかしら?」

 

サキュラはあらぬ方向にナイフを何本か投げる、するとユズの真横と背後から同時にナイフが現れ飛んできた。

 

「はあっ!」

 

その場で回転をし、飛んできたナイフを大剣で薙ぎ払う。

サキュラは上空から現れ、再びナイフを投げるが、予想していたユズはそれも躱す。

 

「さっきまでの威勢はどうしたの!守ってばかりではなく堂々と戦いなさい!」

 

「そっちこそ、最初の攻撃以降、飛び道具ばかりで近づいてこないじゃない」

 

「くっ…」

 

ユズは突入前の作戦会議を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テレポーテーション?」

 

「ええ、ユズさんの話を聞く限りだとサキュラはテレポーテーションを使えるのでしょう」

 

ペギーはそう結論付けた。

 

「空間魔法だなんてそんな高等魔法を使えるサキュバス聞いたことないわ?」

 

「ジョイさん、いないのではなく使えないのです」

 

「どういう事?」

 

ジョイは頭に疑問符が浮かぶ。

 

「空間魔法とはその名前の通り、ある地点からある地点までの空間に穴を開けることで距離を短縮する、ワームホールとも言いますね。当然、空間を操るわけですから消費する魔力は大きいものです。精気から魔力を得て生きている我々サキュバスとは相性が良いとは言えません」

 

「確かに、私のような力のある者でない限り、すぐに魔力が枯渇して生きてはいけないはずよ」

 

ペギーに賛同するようにビアンカが頷くが、すぐに質問をする。

 

「でもサキュラは使えていたのよね?それも連続発動して」

 

「それは騎士様の生気を吸収したからだと思われます、ですよねユズさん?」

 

「うん、精気を吸収してから使ってきたかな、もし始めから1回でも使えていたのなら、何も知らない私を背後から襲っていたはずだから」

 

「騎士様の力で彼女は短期決戦をしてくるはずです、ユズさん、なぜ騎士様が高い生命力…もとい強力な精気を持っているかは調べなければ分からないでしょう。ともあれ魔力とは有限ではありません、相手の魔力が尽きるその時までは防御に徹する、それが唯一の戦法でしょう」

 

ペギーはとある箱を取り出し、ユズに渡す。

 

「それともし騎士様に触れる事が出来たのであればこれを使ってください、急ごしらえですが役に立つはずです」

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…この!!」

 

サキュラはユズに攻撃を行うが、防御に徹しているので決定打は与えられていない、それどころか徐々に攻撃の勢いが落ち、瞬間移動の頻度も減っていた。

サキュラは女騎士の方へと瞬間移動をした。

 

「残念ね、魔力が尽きれば私に攻撃できると考えていたんでしょうけど、彼女がいる限り私は負けないの、さあもう一度精気をーーー」

 

ピッ…ピッ…ピッ…

 

「な…何の音?」

 

サキュラが音のする方を見ると、掴んでいた女騎士の体に小さな機械がついていた

 

ブシュ―――――――!!!

 

機械は音と共に煙が発生した。

 

「…っ!!!ごほっごほっ!!これは毒ガス!?」

 

まともに吸ってしまったサキュラは女騎士から手を離し、せき込み始める。

 

「はあああああ!」

 

その一瞬の隙を逃さなかったユズは距離を詰め、大剣を振り下ろす。

 

「きゃああああ!」

 

確かな一撃はサキュラの体を大きく切り付けた。

 

 

 

 

 

「私の勝ちね、貴方の事だからきっと相棒に近づくと思ってた」

 

「ぐっ…まさか…彼女に近づいたら毒ガスが出る装置を付けていたなんて…私も貴方が彼女もろとも私の事を倒そうとするなんて思わなかったわ」

 

「あれは毒ガスなんかじゃないわ…少なくとも相棒にとっては」

 

「なるほど…聖水ね…確かにそれなら私にしか害はないわ…ね」

 

ユズは女騎士を助け起こす。

 

「相棒、動ける?」

 

頷く女騎士、自力で立てるくらいには回復していた。

 

「「「サキュラ様!」」」

 

手下のサキュバスが駆け寄ってきた、ユズは大剣を構える。

 

 

「大丈夫よ、その子達は武装解除させてるから戦えないわ」

 

「ビアンカ!、それにみんな!」

 

ビアンカを始め、ジョイとペギーも現れる。

 

手下のサキュバス達はサキュラの周りに集まる

 

「みんな…ごめん…貴方達を守るって約束…果たせなさそう」

 

「そんな!サキュラ様がいたから今の私達がいるんです。貴方がいなかったら悪徳のドリームセラピーで一生働かされるか、そのまま野垂れ死ぬしかなかったんです」

 

「家族や友人が酷い目に遭わされても見て見ぬふりをしていた連中とは違かった!貴方は私たちに手を差し伸べてくれました、お願いです…死なないで!」

 

涙を流し、サキュラに縋り付くサキュバス達。

女騎士はユズに何かを告げる。

 

「相棒…分かったよ」

 

ユズは女騎士の胸に手を当てると少しだけ精気を貰いサキュラに近づく。

 

「何よ…とどめでも刺しにきた訳…」

 

「貴方のことは許せない、でも貴方のおかげで救えた人たちもいる。それに目の前で困ってい人を放っとくのは私の目指す冒険者じゃないわ」

 

「ふん、貴方も相棒ちゃんに似てお人好しね…」

 

「そうね、でもそこが相棒の良いところだから」

 

ユズはサキュラの体に触れると精気を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう…緊張していた」

 

「ほらほら、キリエさん落ち着いて!スマイルスマイル!」

 

「はいっ!」

 

「みんな、準備は良い?それじゃあ…せーの」

 

「「「いらっしゃいませ!サキュバスカフェ浮遊城店へようこそ!」」」

 

あれから数週間が経った、回復したサキュラはその場で組織の解散を宣言。

サキュバス達は女騎士達の手配でみな、浮遊城へとやってきた。

 

ユズとビアンカは浮遊城の空きスペースを利用して、サキュバス達の社会復帰に向けての施設や、治療施設、そして新たなる働き口として前々から予定していたサキュバスカフェの2号店を建設した。

 

ジョイは村の案内役を続けており、身寄りのないサキュバス達を見つけては浮遊城の事を教えている。

 

ペギーはダンジョン王国の研究があらかた片付いたのか、今は浮遊城にいる。何でも女騎士の精気とサキュバスの適合に興味を持ち協力を求めているが、女騎士には断られている。

 

サキュラは治療後、即座に降伏。

ユズ達にみんなを託し、彼女らが困らないようにこれまでの誘拐や破壊活動などの悪事は全て1人でやった事だと告げ、ダンジョン王国の憲兵に出頭した。

彼女のもとには毎日のようにサキュバス達が面会に来ておりキリエ曰く、今までのような張り詰めた表情は無くなったとの事。

 

 

 

 

 

 

サキュバスカフェ浮遊城の初日営業を終えた夜。

空中庭園

 

「相棒、ここにいたんだ」

 

ベンチで座っていると、スーツ姿のユズがジュースを2缶持ってやって来た。

 

「はいどうぞ」

 

女騎士はユズからジュースを受け取ると、ユズは隣に座る。

 

「2号店、初日の営業は大成功!みんな頑張ってくれたよ!」

 

「それとね、お店の子が言ってたんだけど、最近はダンジョン王国の方でもサキュバスの労働環境を改善してくれる動きになってるんだって」

 

ユズはジュースを一口飲むと再び話し始める。

 

「あのさ相棒…前に相棒を助けようとしたときに私、逃げちゃったじゃない、あの時は助けられなくてごめん…」

 

震えるユズの手に女騎士はそっと自分の手を添える。

 

『ユズならどんな事があっても絶対に助けに来てくれるって信じてた、あの後だって、みんなと一緒に私を助けに来てくれてとても嬉しかった、助けてくれてありがとう』

 

女騎士の言葉を聞いたユズは暫くすると照れたのか頬をかく。

 

「そっか、うん、そっか、ならどういたしましてだね!」

 

「それじゃあ今度も相棒の危機ならどこにいたって駆けつける!何たって私は君の相棒なんだから!あっ…もちろん危ない事にならないようにはするから心配しないで!」

 

いつも通りの明るいユズの笑顔を見て、ヘラヘラと笑顔を返す女騎士であった。



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