寄生生命体X、終末世界に降り立つ (プリズ魔X)
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全ての生き物がご馳走

アラガミのオラクル細胞にもDNA、或いは類似しているものがあるという独自設定ありきでこのお話は成り立っています。そこら辺を理解して読んでくれると助かります。


ここは贖罪の街。

人類の敵であるアラガミが争い合い、ゴッドイーターと呼ばれる職業の者がそのアラガミを狩る。なんてことはないいつもの光景。だが、この日を境に終末世界の日常は崩れていく……

 

 

ぬちゃ……ぬちゃ……

 

贖罪の街の一角で黄色いゲル状の何かが蠢いていた。それの正体は寄生生命体『X』。寄生した対象のDNAを抜き取り殺害。姿と能力を完全コピーして分裂、増殖を繰り返していく恐ろしい生命体だ。心を持たないのでただ同族が増えることのみを考えるのもタチが悪い。

 

……のだが、このXには人間の精神が宿っていた。B.S.Lという研究施設の中でSA-Xとして擬態し、サムスと対峙したコアXのXの1部だった。その後サムスに吸収されることなくシップに乗り込みB.S.Lを脱出しようとしたが、シップのセキュリティに阻まれB.S.L諸共消し飛んだ……筈だった。何故かは分からないがこんなボロボロの街の中で目覚めたのだ。

 

(……何故だ。私はB.S.Lの自爆に巻き込まれて消し飛ばされたはず。……まぁいい。分からないものはしょうがないのだから、今は何かに寄生しなければ……何故かは分からないがSA-Xとしての記憶以外のDNAが全て消失している。早く寄生して自衛手段を得なければ。メトロイドのような生命体がいないなんて保証は無い)

 

SA-Xとしての経験が自衛手段の無いニュートラルのXは弱いと認識している。Xは意志伝達能力も高いため、1度同族を倒した天敵が見つかればすぐさま逃走できるし、それを活かして次に効率よく寄生できるようにできるのだ。

 

(……それにしても、建物が地球に似ているな。ここは別の星なのだろうか)

 

ふわふわと浮遊しながら飛び回るX。すると、二足歩行の奇っ怪な生物が群れを為して闊歩していた。

すぐさまXはその内の1匹に忍び寄り寄生。一瞬でDNAを抜き取り逃走した。事態に気がついた群れは最初こそ死体を齧っていたが、何故か途中で食べるのをやめた。

 

 

 

1度寄生したので試しにDNAを読み取り擬態してみる。

 

すると、Xにノイズがかかって次第にシルエットが定まり、オウガテイルとなった。

だが、これだけではまだ自衛手段が乏しいと考えたXはさらなる寄生先を求めて浮遊していった……

 

 

 

 

 

「……ふむ、中々霧散しないオウガテイルが見つかったのか。……DNAだけが抜き取られていて、コアもDNAを除き手付かず。これは……興味深いね。犯人は我々にどんな影響を及ぼすのかな?」

 

とある施設の一室で、メガネをかけた胡散臭そうな男がメガネをクイッと上げて奇妙な報告書を読んでいた……



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人類との邂逅

最近、神機使いの間でよからぬ噂が流行っていた。

 

なんでも、DNAだけが抜き取られているオウガテイルが第一部隊により発見、本来ならそのまま霧散する筈なのになかなか霧散しない死体が見つかったという噂だ。噂に尾ひれがついて新種の生物が生まれたなんて話もあるそうだ。

 

……その噂は本当のことなのだが、この世界の人類には『オラクル細胞にはオラクル細胞でのみ対処できる』という偏見とも言える常識があったため、皆新種のアラガミが生まれたと思っている。極東支部のペイラー・榊ですら新種のアラガミだと思っていると言えばどれほどアラガミが強大な存在と思われているか分かるだろう。

 

皆、不安になっていた。今まで確認されているどのアラガミにも類似しない存在。新種が目撃情報すら無いのも一層不気味さを際立たせていた……

 

 

 

 

そんな事も露知らず。XはコンゴウのDNAを抜き取り、試しに擬態していた。

 

(……ふむ、サイズが大きければ大きい程細胞がよく集まっていて強力な個体になる傾向があるのか。これからは大きい奴のDNAを抜き取ろう)

 

Xはその見た目とは裏腹に知能が高い。有益だと思えばすぐさまそれを狙う。

 

(しかし、最近体が大きくなっているな。……そろそろ分裂による増殖の頃合か)

 

そう思ったXは体を分割、同胞である緑色のXを増やした。そして、全てのXに共有させる幾つかのルールを設けた。

 

(高知能である生物の人間は襲うな。襲えばサムス・アランのような者が我々を天敵と見なして殲滅してくる。そして人間に発見されるな。彼らは我々を利用しようとしてくる。以上のルールを守れば我々の繁栄は約束される可能性が高くなる。私は周辺の生物に擬態するから、別の環境の場所の生物のDNAを抜き取れ)

 

(了解。手始めに寒冷地の生物のDNAを抜き取りに向かう)

 

そう連絡して緑色のXはふよふよと浮遊して寒冷地である鎮魂の廃寺と呼ばれている場所へと向かった……

 

 

 

 

 

「……また、見つかったのですか。変死体が」

 

極東支部のとある一室でペイラー・榊とソーマ・シックザール、そして雨宮リンドウがコンゴウの変死体の報告書を読んでいた。

 

「アラガミに死体と呼べるものができるとは最初の頃は考えもしなかったよ。……それにしても、犯人は一体?今回はコンゴウ。最初はオウガテイルやコクーンメイデンなどの小型の死体だけだったから、アラガミのサイズとしては小型に分類される大きさだと思ったけど、今回発見されたのは中型のコンゴウ。だが、中型にもなれば隠れる場所は限定される。すぐに見つかるはずだ。目撃情報の位置はかなりバラついている。コクーンメイデンのようにその場を動けないという訳でもない……そしてどの個体も無傷。という事は……」

 

「DNAのみを吸い取って効率よく成長するアラガミ、かつ小型でも中型相手に戦える程オラクル細胞が集まっているアラガミ……そんな所か?」

 

ペイラー・榊達が議論を交わしていると、局長のヨハネス・フォン・シックザールが入室してきた。

 

「失礼する。博士、今度は鎮魂の廃寺で奇妙なクアドリガが目撃された」

 

「……なんだって?」



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奇妙なクアドリガ

「……ゴッドイーターを視認したら逃げ出したクアドリガか……そして追跡すると忽然と消えていたと。クアドリガのような巨体なら絶対にレーダー、目視のどちらかには引っかかる筈だ。……という事は、これはクアドリガに似た別のアラガミ?」

 

「いや、報告書を見る限りクアドリガそのものだったそうだ。……このクアドリガにはどんな思惑があるのだ?最近になってようやく新型神機の適合者が現れたというのに、また我々に」

 

ペイラー・榊とヨハネス・フォン・シックザールが思わぬイレギュラーに困惑する。

 

「じゃあ捜査範囲を鎮魂の廃寺にも広げよう。このクアドリガ、贖罪の街の事件と何か関わりがありそうな気がするんだ」

 

「ふむ。確かに異常行動や事件がこうも多発していると偶然として切り捨てるにはいささか無理があるな。私としてもこの件は重要視する。何か有効な手がかりを得られるかもしれない」

 

この後、神機使いの間に奇妙なクアドリガの話が支部長から伝えられて、似たような個体を見つけたら優先して報告せよとの指令が下った……

 

 

 

 

数日後、犯人である緑Xはクアドリガに擬態して、重量差を活かしてオウガテイルなどの小型のアラガミを叩き潰して表面からDNAを抜き取っていた。

 

(我が同胞は何をしているのだろうか。私はこの個体に擬態出来たから効率よく同胞を増やせそうだが、あまり同じ所で活動していても似たようなDNAばかり手に入る。そろそろ同胞と合流して情報交換するべきか?……む?)

 

緑Xが思考を巡らせていると、虎の顔のような風貌のヴァジュラがこちらを見ている。

しかし、その姿はボロボロで、まるでほうほうの体で逃げ出したような感じだ。

 

すると、人間と思わしき3人組が角から飛び出してくる。

 

「カノン!いい加減誤射するのをやめろよ!」

 

「俺たちがこのヴァジュラみたいになっちまってんじゃないか!」

 

「あなた達が射線に立つのが悪い!」

 

「「それは無い!」」

 

「……って、クアドリガがいるじゃない!レーダーに反応がある筈なのに、なんで!?」

 

3人組はそれぞれ戦闘狂っぽい女性(誤射姫)、熱血そうな男、冷静そうな男の組み合わせで、黄色Xに人間との接触を控えろと言われていたので緑Xはすぐさま方向転換。逃げの一手を打った。

 

「!? もしかしてあのアラガミ、支部長の言っていた奇妙なクアドリガじゃないか?とりあえずこのアラガミ倒して逃げられる前にアイツを追いかけるぞ!カノン!その為にも誤射するなよ!?」

 

「了解!」

 

「だから私の射線に立つあなた達が悪いの!」

 

「「同じ事を言わせるな!」」

 

 

しかし、ヴァジュラが予想以上の粘りを見せたため追跡は断念。奇妙なクアドリガはまた行方知れずとなった……

 



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恐ろしき寄生生命体、X

私は今、ある程度のDNAを吸収したので常に擬態、DNAを合成してキメラとなっている。

背中には猿のような生物から生えている空気砲二門、大型の狗のような生物のマント、その下に空飛ぶ目玉が持っていた毒性のガスを貯蔵するタンクを構成。

尻尾は4本それぞれ違うものを生やし、四肢は戻ってきた緑Xから回収した戦車のような生物のキャタピラを採用。外殻は全てその生物の頑強な物に置き換えている。

つまり全身が硬く、ほとんどの攻撃を受け付けない。

 

そして今、Xの集合体である我々コアXは寒冷地にいる。緑Xから話は聞いていたが、この星には人類が存在しており、我々が擬態している生物と似たような生物を一体化させて武器としているようだ。

 

この周辺で襲いかかる生物は全て蹂躙した。既にDNAを回収してある死体には興味が無い。放っておけば霧散するのだし放置している。

 

私達が闊歩していると、2人の人間が現れた。話からして緑Xが遭遇した個体とは別のようだ。

 

勿論逃げの一手。司令塔である私は人間と関わるとロクな事がない事をSA-Xの時に経験している。

 

2人の人間が何やら叫んでいるが知ったこっちゃない。……少し鈍重だな。そこら辺は機動力のある生物のDNAを抜き取るべきか。

 

 

 

 

 

 

 

「クソっ!逃げられた……」

 

「なんだよあれ……クアドリガにヴァジュラのマント、コンゴウの空気砲、オウガテイルやヴァジュラテイルの堕天種も含めた尻尾……こんなアラガミ見た事ねぇ」

 

「……局長達に報告だ。多分、例のクアドリガが進化したな。だが鎮魂の廃寺に居るはずのない個体の部位もあったような……?」

 

「……今まで出会った中で最悪のアラガミかもな。撤退するぞ!」

 

リンドウとソーマは異形のアラガミの事を報告する為にヘリを要請。アナグラに帰還した……

 

 

 

 

 

局長室、ペイラー・榊とヨハネス・フォン・シックザールはリンドウ達が出した異形のアラガミの報告書を読んでいた。

 

「奇妙なクアドリガの次は様々なアラガミの部位を纏ったクアドリガ、か……しかも行動が一致している。同一個体と考えるべきだろう。……もしや、奴は特異点?」

 

「同時に贖罪の街での変死体の報告が無くなった。時系列が被っているから同一個体とは考えられない。……もしや、アラガミ同士で合体している?」

 

「それか片方が一方的に乗っ取っている。そう考えるべきだろうね。よし、引き続き彼らとの接触を試みよう。特異点に関してはどちらも必要だろう?ここは協力だ」

 

「……いいだろう」

 

常識が全てを狂わせる。彼等は異形のアラガミの真の正体を知らない。Xの存在が知られていない今、どうやって彼等を捕獲するのだろうか。それは、誰にも分からない……



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真の邂逅

このお話以降の整合性をとるために、第3話に登場したプリティヴィ・マータをヴァジュラに変更しました。矛盾があったらしっかり修正しよう。これ、作者の戒めね。


とある湾岸地帯にて、3人の神機使いが集まっていた。

 

そのうちの2人はそれぞれ青いフードを被った男がブレードを、赤い髪が特徴的なキザっぽい男が大砲のような銃器を持っており、ひと目で神機使いだとわかる。

 

やや遅れて、身の丈ほどのシンプルな銃器を持ったルーキーと思わしき3人目の神機使いが2人と合流する。赤い髪の男が3人目の神機使いに近寄り、自己紹介を始める。

 

「あぁ、君が例の新人クンかい?噂は聞いてるよ。僕はエリック。エリック・デア=フォーゲルヴァイデ。君もせいぜい僕を見習って、人類の為に華麗に戦ってくれたまえよ」

 

この終末世界では少し気の抜けたような光景だが、それを打ち壊すように不穏な灰色の影が3人目にエリックと名乗った赤い髪の男に向かって飛んで来る。

 

「! エリック、上だ!」

 

「へ? うわぁぁぁ!!!」

 

灰色の影の正体、オウガテイルによって体を押さえつけられて、エリックの頭をオウガテイルがその(アギト)で噛み砕こうとした瞬間……!

 

『GAAAAAAAAAAAAA!!』

 

人型のシルエットをした何かが身体に積もっていた土を吹き飛ばしながら地中から強襲。その鋼の如き剛腕でオウガテイルをボールのように吹き飛ばし、そのまま神速の如き疾さで距離を詰め、暴れて抵抗するオウガテイルを何本もある翼のような腕で掴み、力任せに引きちぎり、剥き出しとなったコアを鷲掴みにして握り潰した。

 

「あれは……シユウなのか!?」

 

青いフードを被った男の表情が驚愕に染まる。

シユウ。腕を組んだ大男の様な姿をしている中型に分類されるアラガミであり、その特徴的な一対の翼腕の圧倒的な硬度で神機使いを苦しめるのだが……そのシユウに酷似しているアラガミを見た者はそれを異形と評するだろう。

 

本来なら一対だけの翼腕と呼べる部位は何対もあり、サイズも生えている位置もバラバラ。まるで比較的脆弱な本体を守るように鎧の如く本体を覆っている。その姿はまるで大量の手に覆われている人間。

だが、この異形のシユウはそれだけでは飽き足らず、オウガテイルを掴んで引きちぎった翼腕は3対に増えていて、絶対に1度掴んだ獲物を逃さない構造となっている。

 

「構えろ! どうやらコイツ、最近目撃されている特異なアラガミだ!」

 

青いフードを被った男の号令により、3人はそれぞれのを得物を構える。

 

だが、件のアラガミは一向に襲ってこない。それどころか、ただ立っているだけで、まるでこちらの動きを伺うようにしている。

 

『……』

 

やがて異形のアラガミはこちらへ向けていた視線を空へと向け、3対の翼腕を羽ばたかせて無理矢理その巨体を浮遊させ、飛び去ってしまった……

追いかけようとする3人だが、羽ばたきにより発された圧倒的な風圧に邪魔をされ、見失ってしまう。

 


 

ペイラー・榊のラボにて、青いフードの男、ソーマ・シックザール、赤髪のエリック(上だ!)、そしてルーキー神機使いの少女、神崎(かんざき) 優奈(ゆうな)がペイラー・榊と、隣にいる支部局長のヨハネス・フォン・シックザールに件のアラガミについて報告していた。

 

「今度は我々を助けたアラガミ…か……以前からシユウは人、それも格闘家を真似たような動きをする時があるが、この異形のシユウ……そうだね、この翼腕の多さからとりあえずセンジュと名付けよう。センジュの動きは獣のような荒々しさが中心だね……これもイレギュラーと見ていいだろう。だが、硬度の高い翼腕で全身を覆っている……これは明らかに君達ゴッドイーターが狙っている弱点部位を守っていることになるから戦闘能力を捨てずに進化した可能性も……となると、人類の用心棒のような立ち位置としての進化……?」

 

「博士、考察はそこまでにしておこう。……しかも今回は地面に擬態して潜伏していたのだろう? そしてアラガミとしての反応も全く無かった……偶然かどうかは別として、今回の個体は我々を襲わなかったが、敵対する通常のアラガミが同じ性質を持ったらあまりにも危険すぎる。すぐさまコアを回収して解析にかけるべきだ」

 

「しかし……もう少し観察するべきだと僕は思うけどね……? 興味深い対象だし、上手くすれば共生関係を築けるかもしれない。そこで敵対的に動くのはいささか早急過ぎると思うんだ」

 

報告に来た3人を置いてけぼりにして議論を交わす2人だったが、センジュの目的は一体……

 

 

 

 

 

 

 

 

(……人類への共存アプローチに成功。共生関係による繁栄の有効性の実験を続ける)

 

その3対の翼腕で羽ばたきながらセンジュの正体である黄色Xは新たに分裂させた緑Xにキメラ・アラガミXの活動を任せ、自らは人型に近いシユウのDNAをシユウの堕天種と融合させて今までにない方向でのアプローチを始めていた……



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荒々しく、そして冷酷な神喰らい

センジュとの初遭遇から数日後、目に見えて特異なアラガミが増えた。

 

オウガテイルと連携しながら戦うヴァジュラ、ザイゴートを囮役として狩りを行うサリエル、群れとなって移動するクアドリガ、4匹で巧みなチームプレイをするコンゴウ(強化版ピルグリム)……そのどれもが神機使いどころか民間人を襲わない、人間を見つけると逃げる、そしてアラガミとしての反応を示さないという特異な共通点があった。

アラガミの高い身体能力や五感で偵察や尾行も直ぐに振り切られ、まともに特異なアラガミ達の情報が集まらないのも不安要素として神機使い達に危機感を充満させていた。

 

 

 

 

 

ペイラー・榊のラボにて、2人のルーキーゴッドイーター、神崎 優奈と藤木 コウタがペイラー・榊の臨時講習を受けていた。

 

「さて、今日のお題は『人を襲わないアラガミ』だ。この前のお話で今までのアラガミは、『人類の敵』 『絶対の捕食者』 『世界を破壊するもの』……こう評されるものと話したし、実際そういうアラガミが全体を占めていた。だけど最近になってイレギュラーが発生してね……その中でも極めて異常と言えるのがセンジュだ。その特異性は実際に遭遇した神崎君がよく分かるんじゃないかな?」

 

「はい!まるで私達を助けるかのように戦っていて、ダークヒーローにも見えました!それにですね! 私達が戦闘態勢をとったときも「「ストップ! それ以上は脱線する」」……あの、まだまだ話したい事がいっぱいあるんですけど……」

 

ペイラー・榊の問いかけに神崎はちょっとヤバめな感じで答える。

流石に話が脱線しすぎると判断した2人が止めたが、神崎はやや不満そうだ。

 

「ごめんね? 君の話も興味深いけど、「え?」今は人を襲わないアラガミの講義なんだ。空いてる時間になら幾らでも話していいから後で……ね?」

 

そう言ってペイラー・榊は人差し指を口元に当てて静かにするようにと神崎に求める。

神崎は頭を搔きながらごめんなさいと言い、ペイラー・榊はよろしい、と言いながらモニターを指し示す。

 

「人を襲わないアラガミと通常のアラガミ、これを見分けるのは実に簡単なんだ。それはレーダーに反応するかしないか」

 

「え? そんなアラガミがいるんですか? というかこの前の話でレーダーはアラガミ特有のエネルギーを探知してるって……」

 

コウタの疑問も尤もである。

何せ彼は神崎と違い、Xが擬態したアラガミとは1度も遭遇していない。

最近増殖スピードが加速したとはいえ、それでも総数は圧倒的に本物のアラガミが占めているのだ。

 

「うん。君の疑問も尤もだね。でも、あまりにも情報が少なすぎるんだ。だけど、特異なアラガミの中でも共通点は2つある。いかなる時も人間との接触を最優先で回避する、レーダーに探知されない。……ここで何か違和感や疑問が浮かばないかい?」

 

ペイラー・榊の目が極限まで細まる事で、ただでさえ胡散臭さ抜群の雰囲気がさらに酷くなる。

そこにコウタが思った事を口に出してみる。

 

「えっと、話を聞いた限りじゃまるで誰かから命令されてるみたいに感じました……アラガミにしては高い知性を感じられるような気がします」

 

「そう、特異なアラガミの奇妙な部分として、あまりにも綺麗に統率されているんだ。不気味なくらいにね……僕はその統率を行っているアラガミが存在しているんじゃないかと睨んでいる」

 

「もしかして、その統率を行っているアラガミって……!」

 

神崎の目がぱあっと見開かれて瞳の輝きが際立つ。

 

「そう。僕はその統率を行っているアラガミはセンジュなんじゃないか? ……そう思っている。センジュは特異なアラガミの中でも特に知性を高く感じられるからね。リーダー格、或いはブレーンと考えるのが自然だ」

 

「つまり、センジュさんへの動き次第ではこの特異なアラガミの動きも変わるかもしれない……?」

 

「そうかもしれないね。だから僕は経過観察にとどめるべきと考えている。 ……さて、今日の講義はこれにておしまいだ」

 

特異なアラガミの正体にひとつずつパズルのピースを嵌めるように近づいていくが、彼らが答えに辿り着くことはあるのだろうか……




さて、ここからは読者の方々のオリジナル擬態アラガミを募集します。とりあえず現状はバーストまでに登場したアラガミだけ使うならOKです。それさえ満たせば堕天だろうが接触禁忌種だろうが素材に使って大丈夫!


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