二次キャラ聖杯戦争OZ EFFECTIVE EARTH (yu sato)
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【オープニング】【prologue】
【オープニング】【prologue】第1話 The Genesis Machine 遠坂凜&セイバー(ライカ) 、言峰綺礼


登場キャラクター
遠坂凜&セイバー(ライカ)
言峰綺礼

場所
ヘルメス・トリスメギストス

時間
開幕前


 もし、あなたが世界を創造できるとしたら、それはどんな世界でしょうか。

 

 その世界はあなたが人々を作るも消すのも、幸福にするのも不幸にするのも自由自在です。

 あなたの世界では善良な人物は、希望の光へと導かれる優しい世界でしょうか。

 それともどれほど艱難辛苦を嘗めても報われない、絶望に満ちた残酷な世界でしょうか。

 ですが……その世界を創造するには、あなたが示す「理」が必要です。

 『理』とは何か。それは『秩序』『混沌』のような『方針』。『自然主義』『人間至上主義』のような『思想』。

 自然法則や化学反応、数学的真理をも包括した『世界の道標』。生命の行き先を決めるための階梯。それが『理』です。

 あなたの定めた「理」の元に世界は創造され、動植物や人々は生活し、星々は運行するのです。

 全てを自分の意志で決められる――その者は正しく『神』といっていいでしょう。

 

 あなたの世界にも、このような『神』がいたとしたなら――その『神』はどんな神なのでしょう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……私の紹介が遅れましたね。

 私は『ミザリィ』。この度行われる新たな『聖杯戦争』の『案内人(ストーカー)』です。

 

 それでは『聖杯戦争』について、改めて説明しましょうか。

 説明の前に前置きとしてですが、あなたは『剪定事象』をご存知ですか?

 『剪定事象』とは人類をより繁栄させる為の理、その航海図――『人理』における『編纂事象』と呼ばれる『基本世界』と『並行世界』を寄り集まった大樹の幹と想定し、そこから大きく外れた枝葉の世界に相当します。

 極稀に『剪定事象』は元の世界とは完全にかけ離れた泡宇宙ともなりますが、枝葉は例え芳醇な実を付けようと宇宙の存続には不要と判断され、いずれ消滅します。

 ついでに補足しますと『並行世界』と『多元宇宙』とは異なります。

 『多元宇宙』はそれぞれが異なる別の宇宙。例えば地球が存在しない宇宙。我々の知る世界とは物理法則が異なる宇宙。

 そういった複数の宇宙にもまた『並行世界』があり『剪定事象』も存在します。

 

 さて、ここに滅びが確定された宇宙が存在します。ある一つの『剪定事象』の世界で、そこに住む全生命、そして地球は思いました。

 免れない滅びならば、せめて自分達が存在した証として、全てを『記録』にし残そうと。

 その記録を保存、運営するため全人類を『賢者の石』。別の宇宙では『フォトニック結晶』『赤いオリハルコン』とも呼ばれる物質へと錬成し、疑似霊子サーバーを製造。

 それをもって地球の縮小コピー、並行宇宙でいう『疑似地球環境モデル・カルデアス』とそこに居住する全生命をデータとして再現、サーバーごと別の世界へと移動することで、我々は確かに存在したのだと示そうとしたのです。

 ……どうやって縮小コピーや別世界の移動を可能にしたのか、ですか?

 それは、滅びゆく地球で行われた最後の大魔術。地球と残されたマナを全て燃料とする事で、地球と全生命は霊子サーバーの中で生き続ける事になったのです。

 

 そこまではよかったのでしょうが、サーバーは別の『剪定事象』『並行宇宙』『別宇宙』へと移動を繰り返してもその都度、世界から排除されてきました。

 移動の過程で世界に存在するマナや星の地殻エネルギーなどを吸収するようアップデートし、サーバーの維持に問題は生じなくなりましたが、やはり根本的な世界の定着に関しては解決できませんでした。

 このまま排除されつづけていれば、いずれサーバーそのものも消滅してしまうでしょう。

 

 無限に近い旅路の果て、サーバーはある宇宙で量子的なもつれの場、マルチバースへつながる扉を観測します。

 それを通じサーバーは、数多の多元宇宙、並行世界で行われている『聖杯戦争』と呼ばれる魔術儀式の模様。その他聖杯やそう呼ばれるに値する事象改変機能を有した願望器を巡る争いや通じ合い、使用や破壊を目撃しました。

 それらを互いに干渉させ発生した霊子的もつれを用いサーバーは、ほぼ無限にある願望器の一部演算能力とリンクし膨大な情報、演算能力を獲得。

 さらに自ら『聖杯戦争』を行う事で自分の存在を確定しようとしました。

 無限の宇宙、並行世界に招待券を送り、戦わせることで霊基が極限まで高まった最後の勝者と所属する世界に霊子的に繋がり、縮小地球を利用して、無限の可能性より勝者の望んだ事象に改編した宇宙を創り上げます。

 さらに勝者の存在する宇宙へ膜をかぶせるように上書きする事でその宇宙内で自身の存在を確立、惑星内でサーバーに保存された全生命を再現するのです。

 とは言っても所詮滅びかけた世界の全生命は、勝者の世界と比べればわずかの数ですからほとんど影響はないでしょうが。

 ああ、願いを叶えるのは宇宙を律する『理』となった勝者に対する報奨ですね。

 

 これが私の『現在』知る、この度の『聖杯戦争』の全てです。

 

 招待状は『英霊の座』より英霊を召喚するシステム『フェイト』の燃料である『星晶石』です。

 これが三個揃い、無地のトランプに似た『セイントグラフ』を召喚できた時点で、サーバー内に構成された聖杯戦争の舞台へと召喚されます。

 『星晶石』は案内人である私が配る事もあり、偶然手にする人もあります。『石』といってもデータであったり、カードであったりと形は様々です。

 私が持つ『星晶石』は金平糖に似ていますね。

 

 カリッ

 

 それでは、この『聖杯戦争』に召喚された一人のマスターを追い、具体的な聖杯戦争への参加の方法を紹介いたしましょう。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 遠坂凛は電子製品のジャンク街を歩いていた。彼女は金髪碧眼の美人だが冷やかしに声をかける者はいない。むしろ遠ざかっている。まるで戦場に赴く戦士のように他人の五感へと緊張を迫るものがあるからだ。

 事実、凛はこれから行われる戦争、『聖杯戦争』に参戦するための装備をこの場で選んでいる。

 最低3ヵ月は持たせられる生命維持装置の部品、予備のサーバー、ルーター、その他単独で月――ムーンセルで行われる聖杯戦争に挑むため必要な設備。

 それらを買い集め、敵対する西欧財閥から逆探知されないような位置で電脳空間に潜入し、ムーンセルへと移動する。その下準備だ。

 ショップを見歩き、買い、それらを繰り返す中、一つの店舗の会版が凛の目に入った。

「アンティークショップ・美紗里?」

 日本語で書かれた看板にわざわざ英語でルビがふってある。日本語圏内ではないこのジャンク街でそんな真似をしているからには、店長はさぞ偏屈者に違いない。

 そう思った凛は興味を惹かれ、冷やかしに入っている事にした。

 

 ドアを開けるとチリン、と鈴の音が鳴る。

 入口の手前に居た長い金髪を持つローティーンの少女がいらっしゃいませ、と丁寧にお辞儀をした。

 凜は返事を返し、周囲を見渡す。

『意外と良いものがそろっているわね……』

 凜が判断する限りジャンクどころかそのままで使えそうな正規品のレベル、それも高品質なものばかりが棚に並べられている。

『お気に入りのものはあったかしら?』

 そう声をかけたのはレジに座っていた女性だった。

 片目を一房の長い紫の髪で隠した、切れ長の目に整った美貌。シミや黒子ひとつ無い白く美しい肌。均整の取れた肉体。

 どれをとっても非凡で、それでいて調和の取れた美しさを持った妙齢の女性だ。

『ようこそ、アンテークショップ・美紗里へ。私は店長のミザリィ』

 魂まで直接染み渡るような声。声まで人間離れした美しさだった。

『この子は手伝いのアビゲイル・ウィリアムズ。愛称はアビーよ』

 アビーと呼ばれた少女は初めましてと挨拶した。

 店長の女性が非凡すぎるので少女の容姿は陰に隠れているが、彼女も十分に人目を引く顔立ちである。

「二人ともご丁寧に挨拶有り難う。ところでアンティークショップなのになんで電子部品ばかりなのよ」

『あら、型落ちの電子部品も十分アンティークの範囲じゃないかしら?』

「それは詭弁でしょ。それにここにある製品のどこが型落ちなのよ」

 凜は少し落ち着かない様子になった。ここが何もかも異質だからだ。美人姉妹ともいえそうな店長と店員。さびれた壁に不釣り合いな高級品。そして何より異質なのは。

「ところで、あなたの耳は何で長く尖っているの?」

 ミザリィの耳だった。凜の見る限り整形しているようには見えない。生来のものとしか思えなかった。

『私の耳が見えるという事は、貴女はれっきとした魔術師(ウィザード)のようね』

 凜の問いにミザリィは微笑んで返した。

『ウィザードの噂じゃ、間もなく月の内部、ムーンセルで願望器を巡る戦いが行われるらしいわね。

 あるレジスタンスの集団が参戦方法をネット上にばら撒いたらしくて、それに飛びついたウィザード達が集まるそうよ」

 凛はふうん、と眉ひとつ動かさずミザリィを見つめた。その自然な反応で、誰が参加方法の研究に参加したのが当の凛本人だと気づくだろうか。

『もしあなたがその戦いに参加する気なら、店内の品を一つ買えば貴重なプレゼントを贈ってあげる』

「プレゼントねぇ……」

 凜は別に興味なかったが、生命維持装置の部品で最高峰のものがあったのでそれを購入した。

『ご購入有り難うございます。こちらがプレゼントとなります』

 袋に包んだ部品と共に凜が渡されたのは一つの瓶だった。瓶の中には虹色に輝く石が入っている。魔力らしきものが凜には感知できるが、とりたてて大した物とは思えなかった。

『これは今はただの魔術由来の代物。だけど、もしあなたがただ願いを叶えたい以上の意志を持っているのなら、きっと素敵なことが起きるわ』

 

 一か月後。砂漠の中にあった廃墟で凜はムーンセルにアクセスする準備を整えていた。

 生命維持装置に自分の身を繋ぎ、髪と目を黒に変更したカスタムアバターを事前にセットする。

 あとは電脳空間にダイブし、聖杯が作り出した霊子虚構空間『SE.RA.PH』の門を潜り、聖杯戦争に参戦するだけだが。

『……そういえば、何か忘れているような……』

 と、凜は数瞬考え、以前渡されたものを思い出した。

「これが何かの役に立つのかしら……? まあいいか、持って行って損はなさそうだし」

 そうして凜は瓶の中の石を3Dスキャンで解析しアイテム情報としてセットし、電脳空間に移行した。

 ――その石を手に握りしめたまま。

 

 電脳空間内にある扉。ここが以前凜たちが探り出した聖杯戦争に繋がる門だと確信した凜は、その扉を両手でこじ開けた。

 その瞬間、あたりの空間は一変した。

 そこは何もない広大な空間。空には星々が煌めき、地平線の彼方まで星が瞬いて見える。

 地面も何もない。踏み締めても音も無い。足裏から波打つ歪みが見えて初めてそこに立つ事が出来る何かがあると確認できる透明な空間だ。

 そして、下側にも星々が満ちている。重力の感覚が無ければ宇宙に浮いているような状態だ。

 

「ようこそ、常ならぬ願望を抱く新たなマスター候補者よ」

 凜が周囲を見渡す中、どこからか壮年の男と思しき声が響いてきた。

「これより行われるのは、己が願いを叶えるために万能の願望器である聖杯を奪い合う闘争『聖杯戦争』、その予選だ」

 やはりこれは聖杯戦争で間違いなかった。凜は内心で高揚していた。

「まず、君の手には一枚のカードが握られていると思う」

 そう言われた凜は手を見る。確かに、通常のトランプ程の大きさをしたカードがいつの間にか凛の手の中に納められていた。

 凛は両面を見た。裏地は精密なデザインだが、表側は白地で何も書かれていない。

「それは『セイントグラフ』と呼称されている。今は何の力も無いが、君がこの先出会う戦いで『英霊の座』に繋げる事が出来れば、君の武器となる『サーヴァント』を召喚できる」

 サーヴァント。その召喚。それも凜は事前に確認済みだった。

「サーヴァントとは神話、史実より読み取られた英傑、偉人、大悪党。いわゆる『英霊』が誇張、再現された者達。彼らは現世に留まるための媒体となる召喚者を主として見定めて、これを助ける者だ。

 だが、聖杯といえど完全な英霊の再現は不可能だ。故に基本的には7クラスのいずれか。

 『剣士・セイバー』『弓兵・アーチャー』『槍兵・ランサー』『騎乗兵・ライダー』『魔術師・キャスター』『暗殺者・アサシン』『狂戦士・バーサーカー』に当てはめ召喚される。

 例外として『エクストラクラス』での召喚も有り得る。その場合、真っ当な英霊が召喚されるとは限らないが。

 ことにこの聖杯戦争では並行世界、多元宇宙(マルチバース)からの英霊も召喚される。サーヴァントが元人間とは限らない。あるいは人類に敵対する怪物かもしれない」

 ここで凛は少し戸惑った。並行世界は兎も角、多元宇宙?

「さて、言葉で説明されても今一理解できないと思う。そこで君には実際に召喚の儀式を行ってもらおう。

 君にはセイントグラフの他に、聖杯戦争で必要となる端末が与えられている。その中のアプリに地図機能がある。

 それを使えば、君が出会うべき相手がマップ内に表示される。そこまで進んでもらいたい」

 どこに端末があるのかと凜は思ったが、セイントグラフと同様、いつの間にか凜の左手に握られていた。端末のディスプレイは6インチ前後。色は黒であった。

「君は使い方が分かるようだが、今回はあえて使用法が分からないマスター候補用の解説をする。

 端末の画面裏側の右上に『Atlas』とプリントしてあるだろう? そのさらに端末の右上の端に出っ張った物があるはずだ。

 それをつまんで引き抜いてくれ」

 凜が言われたとおりにすると、するすると端末の長さ以上のコードが引き出された。

「そのコードの中央あたりを、左右どちらかの手首に押し当ててくれ」

 その通り、凛は右手首に棒状のコードを当てた。すると瞬時に巻き付き、先端部のポールが手首の上に来たリングになった。

 凛は右手を握り、開くを何度か行う。リングは緩くもきつくもなく、皮膚と一体化したかのように違和感は無い。

「その状態でリングに向かい『マップ』と言えば、音声認識でマップが空中投影モニタに表示される」

 言われた通り『マップ』と言うと、中空にディスプレイが投影され、中央に赤い点、黒い点が凛から見て上方の離れた場所に表示された。

「モニタ自体の拡大縮小は、モニタの端を摘まんで間隔を広く、または狭くすればいい。地図の拡大縮小は、モニタの上に指を置いて間隔を広く、または狭くすることだ。

 地図の移動はモニタに指を押さえ、見たい方向に移動させる。中央を移動させたいときはその個所を二回連続でモニタを叩く。

 元に戻したいときは、右上にある『現在地』を押す。アプリ自体を消す時は『マップ・オフ』だ」

 凛はその通りにモニタを拡大縮小し、地図の操作を行う。

 だが空中投影ディスプレイを使ったアプリの使用は、ウィザードである凛にとって電脳空間内での必須技能と言っていい。

 正直面倒には思ったが、聖杯戦争という何が起こるか分からない舞台で改めてウィザードの技能が通用するのか確認しておくのも必要と自分を納得させ、操作を続けた。

「『ウィザード』である君には今更な説明だったろうが、これで使用法の説明は御終いだ。赤い点はもちろん君の位置。黒い点が君が出会うべき相手の位置だ。

 そこまで進んでくれたまえ」

 凜はマップを右目上に縮小して移動させ、前後左右に歩いて位置関係を把握し黒点へと向かった。

 

 感覚としては3分ほどだっただろうか。凜がたどり着いた先には何もなかった。

 点が隣接している事を確認した凜の前で、円形の複雑な陣が描かれ、そこから真っ黒な何かが現れた。

 それは剣を持っていることから人型だとわかるが、それ以外の事は輪郭がぼやけて何も判別できない。

「それは英霊が真っ当に召喚され損ねた無銘のサーヴァント『シャドウ』だ。それを倒すことで予選突破となる」

 男の声が終わると同時に、シャドウは凜に対し襲い掛かってきた。だがその速度は鈍く、振りかぶる腕もまるで出来損ないの機械人形のようだ。

 拍子抜けした凛はシャドウに向かい指さし、コードキャスト:call_gandor(64)を使用。

 それは、旧魔術師『メイガス』が消滅するまで一部の者が使用していた相手を呪う『ガンド』という魔術であり、現在のウィザードが電脳空間内での「電脳術式(コードキャスト)」として再現した攻勢プログラム。

 指先から射出された黒い呪いの塊は、過たずシャドウに命中、シャドウは四散した。

「これで終わり?」

 そう男に話しかける凜。だが、返答はなく代わりにシャドウの試算した影が集まり、人型の姿をなした。

 動揺することなく、再びガンドを放つ凜。シャドウは一発を剣で受け、一発は頭部にあたり爆散。そしてまた影が集まり再生する。

 凜は何度もガンドを放つ。確かに命中はするしシャドウは散るのだが何度も再生している。

 ついにシャドウは凜に剣が届く位置まで来た。凜はゆっくりとした振り下ろしを交わし至近距離からガンドを放つ。だがそれも今までの繰り返しだ。

 シャドウの剣をよけ、ガンドを撃つ。それを繰り返している度、段々とシャドウの動きが速くなっていることに凜は気づき始めた。

「シャドウは、マスターでは例え倒せたとしても必ず復活し、徐々にだが確実に強くなっていく。

 シャドウを消滅できるのはサーヴァントだけだ。生き残りたいのならば急いでサーヴァントを召喚する事だ」

「いったいどうやって召喚すればいいのよ!」

 剣をよけながら怒鳴る凜に対し男は冷静な声で返す。

「それは君が自力で英雄たちの記録が保存されている『英霊の座』に接続しなければならない。そのための『切り札(トランプ)』、セイントグラフは既に君の手の中にある。

 そして、己の意志を示すが良い。思いは何でもいい。死にたくない、生き残りたい、願いを叶えたい、相手を倒したい。己の意志を一点に収束して、願うのだ」

 話の最中でもシャドウの速度は加速度的に上がっていき、凜はかわすのに精一杯になっていった。

 シャドウの攻撃は打ち下ろしと横薙ぎの二つしかなかったからかわせたもので、それ以外の攻撃だったらとっくに斬られていただろう。

『もう出し惜しみは無し。粉々にしてその隙に召喚を――⁉』

 凜が使える最大のコードキャストを使おうとした瞬間、シャドウは体当たりしてきた。

 予想外の攻撃に凜は腰から崩れ落ちた。

 シャドウが剣を真上に掲げる。

 それを見た凜は、テロリストとして追われていた時に感じた気配、それをさらに濃厚にしたものを感じ取っていた。

 それは――死の気配。

 凜はその感触で長くのばされた時間の中、様々な考えが浮かび消えていった。

 

 私は思いあがっていた。こんな予選で死ぬなんて考えもしなかった。

 死ぬ。私が? いまここで?

 ……ふざけるな。

 こんな予選なんかで死んでたまるか。私は……あの停滞した世界に一発食らわせて世の中を動かしてやるんだから――‼

 

 凜が自分も知らなかった感情を爆発させた瞬間、握っていたカード「セイントグラフ」が宙に浮いて光を発し、無地の面に絵が現れた。

 それは剣を掲げる騎士の姿。

 さらに絵は変化し、一人の男の姿を描き出した。

 同時に、上下三つの円環が凛の目の前に現れ、その中に雷と閃光を伴い、絵と同じ男が姿を見せた。

 ツンツンと逆立った髪に、三白眼の青年。青いシャツのような上着に、白いズボン。革靴を履いた姿は傾いた現代人といっても通じそうだ。

 だが、彼の顔に込められた気迫、内在する魔力は明らかに一般人のものではない。

 そして腰に差した、龍の彫刻が嵌め込まれた鞘に納められている、恐らくは両刃の剣からも強い魔力が発せられている。

 

 シャドウの剣が青年の頭上に達したとき、シャドウの腕は青年の、凛の目には全く見えない抜き打ちで吹き飛んだ。落ちた剣と腕が空間に波を立て落ちたが、音は鳴らない。

 その剣は身幅が広く、柄から切っ先までは1m近く。柄から刀身まで精緻な意匠が施されている。恐らく柄から刀身まで一つの鉄で打たれたであろう漆黒の剣だ。

 

 シャドウは右手を落とされても、青年に向かい手を伸ばし、首を絞めようとした。

 青年はシャドウの腕を難なく握り止め、次の瞬間、青年とシャドウの姿がぶれ、凛の視界から消えた。

 驚いた凛が周囲を探ると、二人は数十m近く離れた場所にいた。

「覇ァアアアア――――!!」

 青年が叫ぶと同時に逆立った髪の毛がさらに尖り、放電し、金色に輝きだし、瞳は白目に変化した。

 同時に膨大な魔力が、雷の形で青年の身体から、さながら昇龍の如く立ち上った。

 青年から放射された稲妻は、遠くにいた凛を衝撃波で吹き飛ばし、シャドウを一瞬で蒸発させた。

 

「痛たた……」

 胸を抑える凛に対し、まるで空間転移でもしたように突然青年は再び凜の元に戻り、面と向かい合った。

「一応聞いておくぜ。お前が俺のマスターか?」

 青年は尻餅をついた凜にカードを差し出した。

「……どうやらそうみたい。何だかわからないけど私があんたを呼び出したみたいね」

 凜は立ち上がり、青年の手からカードを受け取った。

「ありがとう。それであなたの名前は?」

「俺はセイバーのサーヴァント……?」

 青年、セイバーが名乗ろうとした時、異変が起こった。

 星々に満たされた空間が、突如としてその光を消し、暗闇となった。

 

「ようこそ、見事試練を乗り越えた聖杯戦争のマスターよ。

 私は言峰綺礼。この聖杯戦争の監督役を務めている」

 二人が気が付くと、そこは教会の礼拝堂であった。

 凜とセイバーは綺礼とその周囲を見渡す。

 二人が感じたのは違和感。神聖で静謐な雰囲気ではあるが、その一皮下には澱んだ空気が広がっているような。

 そんな不安定な感覚を抱いた。

「ここは聖杯が造り上げた都市『パラディウムシティ』。その中にある教会。予選を突破したマスターは自動的にここへ移動されることになっている」

 綺礼はまるで悟りを開いたかのような笑みを浮かべ、二人に話しかける。

 その表情を見て凜は、綺礼を嫌いになることに決めた。信仰に身を奉げた者にしかできない顔。だがまるで張り付けたような感じがぬぐえず、その裏に何かを感じたからだ。

「ちょっと待って。ここってムーンセルの作った世界『セラフ』じゃないの?」

 だが、疑問があったので凜は綺礼に尋ねた。自分はムーンセルに向かっていたはずではなかったのか。

「その通り。この場に在る聖杯は、君の知っているムーンセルとは違う。あらゆる並行世界、多元宇宙への扉を開く力を持っている。君をこの場へと召喚したのもその力だ。

 その聖杯を管理、運営するのが既に消滅した世界で製造された、地球の全てを記録として残したコンピュータだ。

 それは疑似霊子サーバー『ヘルメス・トリスメギストス』と命名されている。

 聖杯の力を以ってあらゆる世界にあるムーンセルを含めた聖杯、またはそう呼ばれるにふさわしい願望器と接続し、膨大な演算力を獲得したサーバー。

 それを以って生み出された無限大の可能性を持つ聖杯、『天の聖杯』をコントロールし、最後の勝者にこの場の聖杯のある場所『事象創造真界・楽園』への道を開く物だ」

「天の聖杯……」

 凜は言葉を繰り返す。よくわからないが本当に違う聖杯へと来てしまったようだ。

 ふと、凜は思い出す。以前買った製品のおまけにつけられた石。その際にかけられた言葉を。これが素敵なことなのだろうか。詐欺もいいところじゃないか。

「このサーバー内には既に滅んだ世界で製造された地球の魂を縮小モデルとして内包している。

 その地球の魂で聖杯の担い手の願いを叶えた世界を宇宙の構成要素を新たに構築する事で造り、さらに膜のように変換し、レイヤー、テクスチャーとしてマスターがいる既存の惑星に貼り付け融合させ、世界を改編させるのだ。それが聖杯で願いを叶える仕組みだ。

 天の聖杯の中枢部に辿り着いた時、アクセス権を担うのが君が所持する令呪だ。それをすべて失えば、たとえ生き残っても天の聖杯への接続は出来ず、願いは叶えられない。

 また、令呪はサーヴァントに対する絶対的な命令権でもある。簡潔で、短い時間の命令ほど効果は強く、逆に曖昧で、長期間の命令だと効果は薄くなる。戦いの切り札ともなり得るため、もし使うなら用心する事だ」

 凜は右手に刻まれていた令呪を見つめた。

「もう一つ、願いを叶えるには必要な物がある。それは担い手の『理(コトワリ)』だ。

 『理』とはマスターの持つ思想、倫理観や人生観などが本人を通し、形而上学な概念を現実の力として影響を及ぼすまでに至ったモノだ。今はただ、本人の願いを極限まで強めたモノとだけ解釈してもらえればいい」

 ここで凛が口を挟んだ。

「どうして願いを叶えるのにそんな複雑な手順が必要なのよ? わざわざ一度地球を作ったり、マスターに強烈な意志を要求したり。まあ、強い意志なんて、聖杯を手に入れようなんて連中なら誰でも持ってるでしょうけど」

「この天の聖杯は計測の結果、非常にコントロールが困難であることが分かった。下手をすればマスターが所属する惑星を破壊しかねないほどのエネルギーが放出される。

 そのため、担い手の願いを素に一度新たな星を作り、その中に可能性を収束することで過去、現在、未来の全てを改編可能にし、暴走することなく安定して願いを叶えられるようにしたのだ。

 『理』についても同様だ。ただ漠然とした願いだけでは可能性がどのように収束されるか不明になる。それは聖杯の暴走に繋がりかねないからだ。

 それ故、マスター達に聖杯を完全に扱えるほど成長してもらいたい」

 凜は少し戸惑った。自分の願いは確かに漠然としている。子供たちが笑っている未来、停滞した世界を動かす力。それが欲しくてムーンセルの聖杯戦争に参加しようとしたのだ。

 だが、ここでは具体的にどうするかを考えなければいけないらしい。

「少し具体的に、天の聖杯が願いを叶える仕組みについて説明しよう。例えばだ、最終的な勝者が『恒久的な世界平和』を願ったとする。ではどのように実現されるのか。

 人々から闘争本能を無くす? 人を傷つけようとすると苦痛を感じるようになる? 全人類を不老不死の新たな存在に書き換え、個人の欲望と争いを無くす?

 そういった『結果』を叶えるための『過程』が、意識的、無意識的を問わず担い手の『理』によって決められるのだ」

 さて、と言い綺礼は二人の顔を見つめた。

「『恒久的な世界平和』を実現するのに『全人類を不老不死の新たな存在に書き換える』のが担い手の『理』による結論だとすれば、他の方法論は全てその一つの可能性に収束され、その結果発生する膨大なエネルギーを持って天の聖杯は願いを実現させる。

 そのエネルギーをコントロールするのが担い手の『理』、そして『ヘルメス・トリスメギストス』だ。

 ……とはいえ、他世界の聖杯、願望器と繋がり、演算能力を高めた『ヘルメス・トリスメギストス』といえど、完全なコントロールができる保証はない。エネルギーが逆流し、他の宇宙に影響を及ぼすかもしれない。自滅の可能性もある。

 その危険性を承知の上で天の聖杯は、最終的な勝者に身を委ねる事にした。己の存亡をかけてな」

「もっと卑近な例をあげてみよう。君が『死んだ肉親を蘇らせたい』とする。

 この聖杯は世界そのものを上書きして現実を改編する。人一人蘇らせるなど容易い事だろう。

 だが、君次第で『世界のどこかに『死者を蘇らせる方法』が実在する』。または『死者が時たま蘇る世界になる』といった具合に世界が改変される。

 どんな望みを叶えようと、君の定める『理』に世界は従うようになるのだ」

「さらに俗物的な願いならば、君は世界の神にも王にもなる事もできる。

 上書きされた世界で、天の聖杯を得た君だけはその世界を動かすために必要な根源物質、その実数から虚数領域まで自在に干渉、操作可能になる。

 君の思うが儘に世界は動き、君の欲望は全て叶えられるだろう」

「その『理』ってのは、どうして決められて、聖杯戦争で高められるものなのよ」

「それはいずれ分かる。この聖杯戦争では、舞台に用意された住民やマスターの多様性、それによる価値観の衝突がたえず起こり続け、それらが否応なくマスターの本質を暴き、侵食する。

 その中で自分の存在意義を保つには、自分の本質と向き合い、戦い、成長させるしかないのだ」

 ここで綺礼は、凛とセイバーの反応を確かめる様に一息ついた。

「今までの説明は信用ならないか? 成程、急にこのようなことを言われても納得できないのは当然だ。

 しかし、各世界を隔てる扉を開き、この場へ君を喚び寄せ、サーヴァントを召喚させた力。それは天の聖杯の持つ力の一端に過ぎない。それでもこの程度の事は可能なのだ。

 その力を、君は否定できるかね?」

「各世界?」

「そうだ、私と君はそれぞれ別の平行世界の住人だ。その平行世界をつなげたのがこの聖杯だ。さらに別の宇宙、地球がない世界や平面惑星の世界の人間や英霊もこの聖杯ならば召喚可能だ」

 凜は内心驚いた。無限の演算機能を持つといわれるムーンセルでもまるでSFのような世界からの召喚など不可能だろう。

「信用できない。元の世界に帰りたいというのなら、それでも構わない。

 聖壇の奥に扉がある。そこを潜れば元の世界に帰還できる。

 だが、他者を殺し、騙し、屍山血河を築き、それでも尚叶えたい願いがあるのなら」

 綺麗は身を一歩引き、凛に対し半身になった。

「君の背後の扉を開き、聖杯戦争の舞台へ進みたまえ。そして汝自身を以って最強を証明せよ。

 さすれば万能の願望器は、君の手に与えられん」

 そう言って綺礼は誘うように、招くように手を掲げた。

 

「……この聖杯は、私のいる世界の聖杯『ムーンセル・オートマトン』とも繋がっているの?」

「無論だ。そして勝者の願い次第では、君の世界にも何らかの影響が及ぶかもしれない」

 凜は胸に手を当て、意を決した瞳で綺礼を見つめた。

「……いいわ。ムーンセルとは別物だと分かったけど、どっちみちこんな代物を西欧財閥に渡すわけにはいかない。

 私は戦って、この天の聖杯を西欧財閥に渡さない。ついでにムーンセルもまとめて誰の手にも触れられないようにするわ」

 決意の後、凜は一つの大切なことに気が付き、綺礼に尋ねた。

「綺礼、一つ応えて。サーヴァントが願いを叶えると、やっぱり世界の理が改変されるの?」

「この聖杯は「ヘルメス」「トリスメギストス」という二つのサーバーで管理されており、それぞれが最終的に残ったマスター、サーヴァントの願いを叶えるように設定されている。

 だが、サーヴァントの願いを叶えても、例えサーヴァントの願いが世界征服や歴史改変だったとしてもそれで理が変わることは無い。あくまでマスター側の願いのみで世界の理が改変される」

「オレからも聞くが、サーヴァントの受肉ってのは叶うのか?」

 ここで初めてセイバーが口を開いた。

「それは願いとは関係なく叶う。新たな理のもとで運営される宇宙の中で、全ての人間はそのままの姿で転生する。マスターもサーヴァントもだ」

「受肉して現世に復活する。それがあなたの願いなの?」

「そうだ、それ以外の願いはねえ」

 凜は顎に指を当て、しばし考え。

「わかったわ。セイバー、貴方の願い、叶えてあげる。その代わり、私の戦いに協力して」

 セイバーは「いいぜ」と返答し、綺礼の方に顔を向けた。

「おい、キレイ。さっきてめえは神にもなれるとかぬかしやがったな。だが、オレは復活するにしても人間のままで沢山だ。人間の力で理想の国を造ってみせるぜ」

 ライカは鋭い目つきで睨みつけた。

「あら、さっきの魔力放出、とても人間どころかウィザードでも出せる威力じゃなかったけど?」

「う、うるせーな。さっきのは、生前だと気が昂らねえ状態じゃねえと上手く使えない雷が、今のサーヴァントの状態でどこまで出せるのか試したかっただけだ。

 どうも、サーヴァントの俺の身体は、天の龍を降ろした状態で固定されてるみてえだ。天の龍そのものは宝具になっているけどな」

 二人のやり取りを見る綺礼は、ひそやかに笑った。

「お互い中々早い決断だな。マスターとサーヴァント、価値観も生きた時代も異なる二人がそう簡単に意思疎通など出来るものではないはずだが、大したものだ」

「そんなこと言うくらいなら、もっと時間をおいてここに喚ぶか、時間を与えてくれた方が、セイバーと色々と相談ができてありがたかったんだけど」

「何、君達は即断即決が好みと見たのでな。実は参戦か棄権か、選ぶために都市内で約一ヶ月の猶予期間が与えられているのだが、あえて黙っておいた」

「選択を促す時に言いなさいよ、そういう事は!」

 凛は綺礼を怒鳴りつけた。

「ところでよ、マスター。オレはまだお前の名前を聞いてねえぞ」

「私は凜、遠坂凜よ」

「リンか……。懐かしい響きだな」

 セイバーはどこか遠くを見る目になった。

「オレの真名はライカだ」

 セイバー、ライカが名乗った瞬間、凛のポケットにしまっておいたカードが光りはじめた。

 凛がカードを取り出して見やると、セイバーの絵の面に書かれた文字が「SABER」の下に「ライカ」の名が追加されていた。

「セイントグラフはサーヴァントを召喚した時点で、サーヴァントカードへと変化する。それはサーヴァントを召喚した後も残り、真名が判明すればカードに真名が追加される」

 綺礼の説明を凜はカードに現れた真名を見つめながら聞いていた。

「サーヴァントカードはサーヴァントとの再契約にも必要となる。もし令呪を持つマスターに奪われれば、令呪で主替えを命じる事でサーヴァントを奪われる。注意することだ」

 言葉が切れたところで、凜は綺礼に顔を向けた。

「説明はこれで終わり?」

「基本的なものはな。それ以上のルールは端末のヘルプで参照できる」

「そう、ありがと。じゃあセイバー、外の世界を見に行きましょうか」

 凜はセイバーに体を向け、共に歩みだした。

「遠坂凛。最後に一つ聞いておこう」

 綺礼は扉に向かう凜の背に声をかけた。

「このヘルメス・トリスメギストスの作った世界、人間たちは賢者の石を基にしている架空の世界だ。

 だが、彼らは生きている。遺伝子は途絶えたとしても、我々は生きているのだと主張している。

 それは生命、非生命の関係なく『心』が繋いできたレールだ。

 君が聖杯を誰にも渡さないという事は聖杯を封ずるという事であり、彼らの残した『心の系統』を踏みにじるという事だ。彼らの努力はすべて無駄だったと断ずることだ。

 その覚悟、有るや無しや?」

 凜は背を向けたまま、返答した。

「私は否定できるわ。

 彼らの行為は決して無駄でも無価値でも無意味でもなかった。だけどそれはもう行き詰まり、これから先は進歩も後退も無い。

 だから、もし彼らの行為に何かを見出すとしたら、もう行き詰った世界と戦う事で、否定する事で私達が先に進む意志を示す行動に意味がある。そういうことよ」

 もう凜は綺礼に振り向くことなく、ライカと共に教会の扉を開けた。

 

 凜とライカにとって『過去』しかない聖杯の意志など関係ない。

 二人が見つめるのは『明日』に繋がる『今日』だけだ。

 



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【オープニング】【prologue】第2話 Multiverse 遠坂凜&セイバー(ライカ)

登場キャラクター
遠坂凜&セイバー(ライカ)

場所
パラディウムシティ・言峰教会前

時間
開幕前


「……何、これ……」

 教会から出た凛は街の光景を見て絶句した。

 建物は自分がいる停滞した世界より技術的に進んだ物だとわかる。

 3Dディスプレイや空中に直接映し出される立体映像も、空中を噴射孔も無しに悠々と浮遊する船も、確かに驚きには値するが、凛が絶句したのはそれらが理由ではない。

 街を歩く人間達だ。いや、彼らは人間と呼んでいいものなのか?

 とんがった長い耳や頭に羽が生えた者達は兎も角、ネコ科の獣と合体でもしたような容姿の者。丸っこく、茶色い肌でまるで動く岩のような者。

 人間の頭に鷲のような鼻、手が翼の者。全身が機械で、最早ロボットとしか言いようがないがそれにしては滑らかな動きで、顔は青白いが確かに人間の様な柔らかさを感じる者(物?)。

 それ以外の数々の異形の姿をした者達が、普通の人間達と一緒に作業し、話し合い、連れ添って歩いているのだ。

「見たか!? すげぇだろ、リン! この都市は無数にある並行宇宙、別宇宙から聖杯、それに値する願望器がある世界の人間達を再現して生活させているんだぜ!?」

 ライカは顔を紅潮させ、大声で叫んでいる。

「何か……あんた、随分興奮してるじゃあない……」

 逆に凛はライカの今までにない興奮ぶりに少し引いていた。

「当然だろ!? オレはこういう国が作りたかったんだ! 

 こんな風に色々新しいものや文化が活気よく出たり入ったりする国は絶対に古くなったり滅んだりしねえ!

 これがオレの理想だ! 夢だ! いつか必ず造る国だ!」

「分かった、分かったから大声出さないでよ! すごい目立ってるじゃない!」

 周囲からの視線が痛い。およそ人間とは思えない連中だから余計にそう感じる。

 凜はライカの肩をつかんで叫ぶのを止めた。

 

「ところで、この聖杯戦争で猶予期間が具体的にどのくらいか分かる?」

 凜の質問にライカは教会の方を振り向き、手を挙げ人差し指を伸ばした。

「あのバカでかい建物があるだろ? その上の数字が聖杯戦争が始まるまでの時間を教えているらしい」

 ライカが指さした方向にはひときわ高いビルがそびえたっていた。

 外壁は赤黒く、目のような模様がガラスに描かれている。

 上には巨大な目玉のような球体がガラスを透かして見える。はっきり言って不気味だ。

 そのビルの最上部にある巨大なパネルがあった。

 凜は端末を取り出し、拡大表示で見るとそこには【9:81:56:58】と表示されていた。

 そして1秒ごとに一番下の数字が減っていく。どうやらこれが聖杯戦争開始までのカウントタイマーのようだ。

「2番目の桁が100時間で繰上げだとすると……猶予期間は、大体一ヶ月半くらいか」

 凜は端末にあったヘルプを参照し、マップでビルの位置確認をした。

 このビルは『ビッグアイ』と命名されており、都市内の中央からやや北にあるようだ。

 

「リン、バイク調達してくれ」

「いきなり何よ」

 ライカの唐突な注文に、凜は目を細めて答えた。

「この世界に召喚された際、与えられた知識の中で思ったんだよ。こいつに乗ってみたいって」

 ライカは紅潮し、こぶしを握りしめた。

「いいじゃねえか、街の中見て回るにしても、聖杯戦争を戦うにしても乗り物は必要になるんだからよ」

「そりゃ、まあねェ……」

 確かに移動手段の確保は重要だ。端末のマップを見る限りこの都市はどうやらかなり広いらしい。

「その前に少し待って。今端末の使い方を覚えるから」

 そう言って凜は、ヘルプを見て端末を空中に刺すようにして放す。

 当然地面に落下するはずの端末は、空中で固定され、代わりに凜の周囲に複数のディスプレイとキーボードが表示された。

「こうすれば、空間投影ディスプレイが表示されるのか……。電脳空間と大差ないわね」

 複数の画面を表示し、キーボードで一度の複数の操作を実行する。

「結構使いづらいわね。私好みに作り替えてっと……」

 凜がキーボードを叩く度に画面が消え、現れ、画面が変更されていく。

 まるで指揮者のタクトに合わせて奏者が演奏するかのごとく。

 それを見ていたライカは、凜のやっている内容は不明でもその凄さだけは理解した。

 

 端末の改造を進めていた凜は、マップを見てわずかに動きを止めた。

 だがそれも一瞬。再び高速で手を動かし、そして端末を空中から取り上げた。

「待たせたわね。バイクだけど分かった。買ってあげる」

「おお! ありがとな!」

 礼を言うライカに対し、凜は手首のリングに命じた。

「マップ表示。検索『バイクショップ』『高い評判』」

 現れたディスプレイには、教会から離れた場所に赤点が表示された。

 凜とライカは共にそこに向かい歩き出した。

 

 歩いて30分ほどか、ようやくついたバイクショップは

 ガラスの外壁から見える内部によると店内で商品を置いているらしい。

 凜とライカは自動ドアをくぐって中に入った。

「いらっしゃいませ。よかったら店内の商品をご案内差し上げます」

 入り口近くにいた女性が凜とライカに話しかけた。

 二人は案内を頼み、色々見て回るうち、凛とライカは一台のバイクの前で足を止めた。それは全身が真紅に染められたフルカウルモデルのバイクだ。

 ライカは騎士が名馬でも見るかのように、微笑みを浮かべ撫でている。

「お気に召しましたか?」

「ああ、オレはこいつが気に入った」

「こちらはE100を使用可能なエンジンで発電し、両輪のコイルを回転させるシリーズ式ハイブリッド二輪車です。

 出力200馬力で最高速度300km/hに達するまでわずか10秒。急ブレーキ時には搭載された電子制御ABSで、滑走発生を低減します」

「よし、これくれ」

「勝手に決めるな!」

 自分を無視した流れるような購入のやり取りに、凛は怒鳴った。

「はーい、ありがとうですも!」

 店の奥から身長3、40cm程の生き物が飛び出してきた。

「なんかこいつキモかわいいけど、マスコット?」

「いえ、こちらは店長です。私は店員」

 凛は玉ねぎのような体形で羽のような手を持つ――彼らはノポン族と呼ばれる――店長と、人間の店員を見比べ、自分の常識などここでは意味のないことを改めて思い知った。

「あ、忘れてた。ライカ、そういえばお金ってどうなってるの?

「軍資金として、1000万QPとやらが入っているはずだぜ」

「ああ、あれがここでのお金の単位ね」

 凜は先ほど端末の調整をした時、確認していた。

「で、これいくらするの?」

「250万QPですも」

 凜は唸った。う、意外と高い。2台買うと軍資金の半分が吹っ飛ぶ。

 だが、この性能なら意外な出物かもしれない。

「あーもう、分かったわよ。私の分も含めて2台頂戴!」

 崖から飛び降りる覚悟で凜は購入を決めた。

「ありがとうですも。それではこちらに住所、名前、免許証の表示を願いますも」

 凜は戸惑った。この世界でそんなもの持っているはずがない。

「端末の画面を見せてみな」

 手足が止まった凜に対し、ライカは凜にとって意味不明な言葉を言った。

 意味不明だが、ただ突っ立っているよりはましと考えた凜は、端末の起動画面を店長に見せた。

 店長はバーコードスキャナーを取り出し、端末の画面の隅にあったQRコードを読み取った。

「はい、かしこまりましたですも。名前、住所、免許、保険その他の確認が完了しましたので、そのまま乗っていっていいですも」

 凜はあっけにとられた。こんな簡単に免許とかの確認とか出来ていいのか?

「その端末の画面のそれは、あらゆる場面で許可が取れるパス、ってやつらしいぜ」

 色々煩雑な手続きを簡単にして、マスター達が戦いやすくするためか。凜はそう解釈した。

 

「それで、どこへ行く? オレは適当にこの街を見て回りたいが」

 二人共どもバイクに乗り、ライカの質問に対し、凜は怒鳴るように返答した。

「目的地はもう決まっているわ。私をここに誘い込んだ張本人、ミザリィの店よ!」

 



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【オープニング】【prologue】第3話 Outer Zone 遠坂凜&セイバー(ライカ)、ミザリィ&フォーリナー(アビゲイル・ウィリアムズ)

登場キャラクター
遠坂凜&セイバー(ライカ)
ミザリィ&フォーリナー(アビゲイル・ウィリアムズ)

場所
アンティークショップ・美紗里

時間
開幕前


 バイクで西に走った方向にそれはあった。

 ガラスの窓からは、その女性が見える。

 上の看板には『アンティークショップ・美紗里』とある。

 凜とライカはバイクを店の前に置き、入口のドアを開けた。

『いらっしゃいませ』

 入り口近くの陳列棚に後ろ手をついた女性が凛に挨拶をする。

 一房の紫色の髪で片目を隠した女性。凛に星晶石を渡した張本人、ミザリィだ。

 店内では凜にアビーと紹介された少女が品物の手入れをしている。凜たちに気づいたアビーはミザリィに遅れていらっしゃいませとあいさつした。

 

『何をお求めですか?』

 凜の事をまるで初めて会ったかのように話しかけた。

「何をじゃないわよ! 何よ、あの石! こんなところに呼び出されてどこが素敵な出来事なのよ!」

 凜はミザリィに対し怒鳴りつけた。

『お客じゃないの? あら、それじゃあ何も話すことは無いわね』

 ミザリィは凜に対しそっぽを向いた。

『ここはアンティークショップよ。冷やかしはお断り。何か買ってもらわないと、ね』

 切れ長の目でミザリィは、凜を見つめる。

『実はあなたが聖杯戦争のマスターとしては初の来客なの。お安くしておくわよ』

 添い言ってミザリィは店内に手を広げた。

 

 やっぱりこのミザリィはあの時あったミザリィだ。ため息をつき、凜は店内にある商品を眺める。

 壁に立てかけてあるのは琥珀色のバイオリン、様々な地域から集められたと思われる仮面、同じく人形、幻惑を誘う色彩で描かれた絵画など。

 棚の上や中ににあるのは薔薇の意匠のティーセット、懐中時計、緻密なデザインの皿や壺、ワイングラス、柄がチョウザメの彫刻で出来た金のスプーンセットなどだ。

 その中でひときわ目立つ一対の絵画がある。かなり大きな絵だ。両方とも狼の姿を描いている。

 左の一つは茂みの中で眠る狼の姿。伏せて眠るその姿は写実的で、狼の安息が伝わってくる。

 右の一つは雪原の中で数匹の狼が戯れている。中央には人間の頭蓋骨をかじる狼が絵を見るこちらに向けて歯をむき出しにしている。その表情は実にリアリティあふれている。

 絵の良しあしなど分からない凜でも、この2つの絵が写実的で、何らかのメッセージを強く訴えていることは分かった。

 

『この絵は売り物じゃないわ』

 興味深げに絵を見る凜に、ミザリィは後ろから話しかけた。

『この二つの絵の作者はアーネスト・トンプソン・シートン。題名は左が『眠れるオオカミ』。右が『オオカミの勝利』よ』

「シートンって『動物記』の? 絵も描いていたの?」

『シートンは画家であり、優れた猟師でもあり、作家でもあり、博物学者でもあったの。

 それらをナチュラリストという自然を観察、研究し親しむ生活スタイルを基本として、全てを総合する生き方を確立した人間だったのよ』

 解説しながら、ミザリィは凜の隣に並んだ。

『シートンはパリの画壇に『眠れるオオカミ』を発表して入選。翌年、今度はより自信をもって『オオカミの勝利』を発表したけど、こちらは落選した。

 これでシートンはパリの画壇に失望し、フランスを去る決心をしたわ。

 もし、落選の理由が技術的なものだったなら、シートンは残念には思っても納得はしたでしょうね。

 でも、理由はこうだったの』

 ミザリィは絵の中央、人の頭蓋骨を齧る狼を指差した。

『『魂の無い野生動物、オオカミの犠牲者として、魂を持つ人間を描くことは神が支配者ではないと主張するに等しい。すなわち異端であるシートンの作品は絶対に受け入れる事は出来ない』。

 野生の精神の高揚、尊さ、誇り高さを伝えようとしたシートンに対し、人間中心主義を突きつけられたシートンは、最早自分はここに居場所は無いと失望し、パリを去った。

 それから一年後、シートンは自分の身をもって野生の強靭さ、知恵と勇気、深い愛情と気高き誇りを学ぶことになるのよ』

「……狼王ロボね」

 凜はつぶやいた。その話は『動物記』の第1話で書かれている。ロボとそれを追うシートンの偉大な激闘が。

 

 ふと、凜は気づいた。好奇心旺盛なライカがなぜかここではおとなしくしていることに。

 後ろを見るとライカは腕を組み、絵をじっと見つめている。

『気に入った?』

「……生前はオオカミと関わりが深かったからな」

 ライカはまるで敵でも見るような目で絵とミザリィを見詰めていた。

 凜はそのライカの姿を見てはっとし、改めてアビーを見た。そうだ、アビーから感じる魔力、そして気配はライカと同じ。アビーはサーヴァントだ。

 という事は、ミザリィもマスターという事になる。興奮のあまりうっかりしていたが、ここは敵地だ。うかうかと乗り込んでしまったこの状況でライカが警戒するのは当然だ。

『安心なさい。確かに私もマスターだけどここで襲う気はないから。今の私はアンティークショップの店長だし、なによりここではおとなしいのよ」

 言葉だけで信用するほど凜もライカも甘くはない。改めて凜は気を引き締めた。

『さて、情報を得たいのなら、さっき言った通り何か買ってもらわないとね』

 そう言ってミザリィは、二組のティーカップと皿、そしてティーポットを棚から取り出した。

『これはどうかしら? マイセン磁器のティーポットセットよ。初めてのお客だし勉強しておくわ』

 凜は眉をひそめた。芸術品に縁のない凜でも、透き通るような白い地肌と精緻な絵柄で高価な品だとわかる。

『本当は100万QPだけど、1000QPにまけておくわよ、どう?』

 凜は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。

「そんな出鱈目な売り方で商売成り立つの?」

『私はあなたが気に入っているの。他のマスター……そうね、下衆な連中ならもっとふんだくるつもりよ』

 気が抜けた凜はアビーが持ってきた椅子に腰かけ、他のミザリィとアビーとライカを含め4人で円を囲んで座った。

 

「それじゃあ、まずあの石について教えて」

 凜は対面になったミザリィに問いかけた。

『あれは正確には『聖晶石』と言って、サーヴァントとの絆を結ぶために必要な『セイントグラフ』を召喚するためのものよ。

 セイントグラフを召喚できた時点で、自動的にあなたも体験した予選へと転送される仕組みになっているわ』

 凜は思い出していた。ムーンセルにアクセスする直前、その聖晶石を握りしめていたことを。

『聖晶石はこの聖杯戦争を企画した『主催者』が生み出したものよ。それを書く平行世界、多元宇宙へとばらまいたの。

 私が渡しているのはその一部で、善悪問わず私が面白いと感じた人間に対して預けているの。他にばら撒かれたものが誰の手に渡るかは私も知らないわ」

「主催者? それって何者?」

『それは答えられないわ。あなたが『楽園』にたどり着けば分かるわよ』

「あなたはその正体を知ってる?」

『私は知っているし話もしているわ。だけど答えられない』

「……じゃあそれはいいとして、他に聖杯戦争について、知っていることある?」

『聖杯戦争に関してだけど、この聖杯戦争の勝利条件はあなたが参加する予定だったムーンセルと違って『令呪を持ったマスターが最後の一人になった時点』よ。

 その段階でのマスター、サーヴァントの生死は関係ないわ。

 極端に言えば、無理やり令呪を奪うか使わせるかすれば誰一人殺さずに勝利することも可能なのよ』

 あの神父、これを聞けば人殺しをしたくないマスターも参加する気になるかもしれないことが分かっていた上であえて私には伝えなかったな。凜は内心で悪態をついた。

「……そんな甘い考えで生き残れるわけないでしょ。もともと私が参加する予定だった聖杯戦争は聖杯を手にしたたった一人だけが戻れ、それ以外は全員死ぬ戦い。

 私はいざとなればだれであろうと殺すわ。セイバー、あなたもそうでしょう?」

「……ああ、その通りだ」

 凜とライカは鋭い目つきでミザリィを睨んだ。

『……あなたは物語でバッドエンドとハッピーエンド、どっちが好き?』

 ミザリィはそれを受け流し、奇妙な質問をした。

「はあ?」

 と、あっけにとられる凜。

『私はハッピーエンドが好きよ。それも何か不思議な力でめでたしめでたしのようなデウス・エクス・マキナじゃない。ただの人間が知恵と勇気を振り絞って無敵の相手に一杯食わせる、そんなハッピーエンドが好きなの。

 善良な主人公が、最後に無意味で悲惨な結末を迎える物語なんて大嫌いだわ』

 ミザリィは妖艶な笑みを浮かべて手を振った。

『貴方達が聖杯を巡り戦うのなら、私は自分から干渉しない。最後の一人になったらそのマスターに令呪を譲って『楽園』への道を開くつもりよ。余程下碑た欲望でない限りね。

 でも、もし貴方たちが私にも分からない『主催者』の奥にいる存在するかもわからない『黒幕』『ゲームマスター』の存在を暴こうとし、真実に辿り着きたい、そんなマスター達だけで揃ったなら……私は貴女たちの味方になるわ。

 そして貴女達が私を攻撃するなら敵になる。それだけよ』

 一気に言ったミザリィの発言の後、部屋は沈黙が支配した。

「……私は、聖杯を望んでいる」

 凜が静寂を破り話した。

『そうね』

「でも、あなたと戦う気は無いわ」

 凜とライカは立ち上がった。これ以上の情報は得られないだろう。あとは自分たちで調べるしかない。凜はミザリィが袋に入れたティーポットセットを手にし出口に向かった。

「出る前に一つだけ聞くけど、あなたは……いったい何者?」

『私は異世界(アウターゾーン)への案内人(ストーカー)。今はこの聖杯戦争の案内人でマスター。それ以上でもそれ以外でもないわ』

 ドアを開け、店を出ようとする二人の背に、ミザリィの声がかけられた。

『アンティークショップ・美紗里は、アンティークグッズ、各魔術礼装、コードキャスト、その他オカルトグッズを取り扱っております。

 ご用があればいつでもお越しください。ひやかしはお断りですので念のため。

 もし戦いたいのならば、いつでも私とそのサーヴァントがおもてなし致します』

 

 



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【オープニング】【prologue】第4話 Code of the Lifemaker 遠坂凜&セイバー(ライカ)、ルーラー(アルヴィース)

登場キャラクター
遠坂凜&セイバー(ライカ)
ルーラー(アルヴィース)

場所
アンティークショップ・美紗里店舗前

時間
開幕前


 ミザリィのショップから出た凜とライカの二人。

 止めたバイクに向かった時、急にライカが剣を実体化して抜き放った。

「気をつけろ、リン。サーヴァントだ」

 店に近づいてきたのは銀髪の青年。服は上は首の周りは白い毛襟で覆った青色のジャケットに白いシャツ。下は白のレギンズ。首から大きな鍵をアクセサリーのように下げている。

 人間としては美形だが、この都市の異業の人間たちに比べれば目立つ方ではない。だが、その身に内在している魔力は膨大だ。それを凜とライカは感じ取った。

「剣を納めてほしい、セイバーのサーヴァント、ライカ。僕はここのミザリィに用があって来ただけだからね」

 唐突に真名を当てられたライカは、ますます警戒し、右手を引いて伸ばした左手の甲に切先の腹を載せて青年に向けた。

「僕はこの聖杯戦争の管理を司る裁定者、ルーラーのサーヴァント。真名は『アルヴィース』だ」

 真名まで自ら明かしたそのサーヴァントの行為に凜は警戒し、逆にライカは闘気を収めた。

「ルーラーか。なら別に手ェ出す必要ねえか」

 ライカは剣を収め、剣を空に消した。

「なによ、ルーラーって? 裁定者は監督役とどう違うの?」

「監督役はマスターに対し聖杯戦争の情報提供を行い、サーヴァントを失ったマスターを保護し、時にルールを破ろうとするマスターにはペナルティを与える、聖杯戦争の形式を整える存在だ。

 ルーラーはその聖杯戦争という形式を守るために動くサーヴァントさ。最低限のルールも守れず戦争そのものを逸脱し、破滅させようとするサーヴァントにペナルティを与えるか、排除する事もある。

 サーヴァントに対抗できるのはサーヴァントだけだからね。僕は聖杯戦争そのものを成立させるためにいる中立者のサーヴァントだ」

 アルヴィースは己の役割について、凜に対し説明した。

「案内役であるミザリィといくつか相談する用事が出来たのでね。ここまで出向いてきたわけだ。

 ついでに遠坂凜。君にも用事がある。監督役の言峰綺礼から、言い忘れた事があったようなのでね。それを伝えよう。

 この聖杯戦争で、開始前までのNPCへの魂喰いは禁止させてもらっている。それをした瞬間、強制送還される」

「もともとやらせる気なんてないわ」

「もともとやる気なんてねえよ」

 苦い顔で二人同時に言った。

「君のサーヴァント、ライカからも説明されたと思うけど、この都市にいるNPC達は、全員が直接、間接的に聖杯、もしくはそう呼ばれるに値する願望器に関わった人間たちを再現している。

 魂もある、といえばあると言えるだろう。集められた可能性から『賢者の石』によりその人物、人格を再現されている訳だからね。記憶はこの都市に合わせて多少改竄されているけど」

 綺礼も言っていた賢者の石。それは錬金術の秘奥。『フォトニック純結晶』とも呼ばれるそれは小石ほどの大きさでも超々高密度ならば超規模の多量並列演算能力と大規模儀式魔術レベルの神秘の即時行使を可能とする。

 ムーンセルは月から薄皮1枚はがした先にある、全長3000kmに及ぶフォトニック純結晶の塊だ。それがここでは数十、数百万人はいるであろう人々すべてがそれで構成されているという。

 それらを並列接続し、演算を行えば……ムーンセルには及ばずとも、ムーンセルの制御なら可能にするかもしれない。凜はそう思った。

「ここでの『賢者の石』とは人間の血と魂を加工した物質。元の人間の自我は失われ、それは最早ただのエネルギー、封じ込められた光の束、魂の通貨、高性能な演算器でしかない。

 それらに様々な世界から集められた可能性の人物の仮面を被せたのが、この都市のNPC達だ。

 この『賢者の石』は聖杯をコントロールするユニットの一部でもある。だから魂食いをされると、聖杯に不具合が生じる可能性が有る。だから禁止するんだ」

 

「集められた可能性って言うけど、例えばあのユニットっぽい子達もそうなの?」

 凛が指さした方向には、ビルの壁面にある巨大なディスプレイで歌い、曲を奏でる三人の男女の姿が映っていた。下部にはユニット名なのか「ANGELIC CONCERT」とある。

 一人は透き通るような肌と笑顔で、腰までとどくほど長く、柔らかな赤い髪を持ち、同じ赤い大きな瞳を持つ少女。

 もう一人は隣の少女よりずっと背が低く、栗毛色の髪をウサギ型のヘアピンでツインテールに纏め、右目は夕焼けの様な赤色、左目は朝焼けの様な紫色をしたオッドアイの少女。

 その二人は後ろで青年が一つの鍵盤楽器で演奏されているとはとても思えない、時には弦楽器のような、またある時は管楽器の様な多彩な音色を出す楽器で奏でられる曲に合わせて歌を歌っている。

 ディスプレイの前では足を止め、曲に聞き惚れる人々が数多くいた。凛も聖杯戦争の事が無ければ同じようにしていたかもしれない。そう思う程彼女たちの歌は、陳腐な例えだが天使の歌声の様だった。

 

 凛がアルヴィースに聞いた理由は特にない。彼女たち以外に異形の人間達はこの都市に数多くいた。ただこの場では一番目立っていたから、試しにルーラーと名乗るこの男がどこまで知っているが、確かめたかっただけだ。

「カウジー=ストファート。サフィ=スィーニー。ラスティ=ファースン。全員が『天使の羽根』と呼ばれる願望器に直接触れた人間たちだね」

 だが、アルヴィースの返答は、凛を驚愕させるのに余りある内容だった。

「彼女達の世界には『天使』と呼ばれる神の御使いがいた。彼らが地上に残した身体の欠片、天使の力に繋がる回廊を開く聖遺物が『天使の羽根』だ。

 だが、その奇跡を起こす力は正悪を判断できず、人間が使うにはあまりにも強大すぎた。

 カウジーが重傷を負った時、サフィは彼がいつまでも健やかである事を願ってしまい、その結果、カウジーは不老不死の身体となり、サフィは肉体が消滅してしまった。

 ラスティはその身に『天使の羽根』を埋め込まれ、歌を歌う事で力を引き出す事が出来、それにより一つの町を救った。代償として彼女は命を落としたけどね」

 具体的なアルヴィースの説明に、凛は驚きを隠せずにいた。

「本当に、この都市の人間はそんな聖杯みたいな願望器に触れた人間ばかりなの!?」

 凛の問いに、アルヴィースは頭を振って否定した。

「あの子達ほど願望器に直接接触した人間は、この都市内のNPCでも一握りしかいない。

 疑いや興味があるなら調べてみるといい。この都市の中にある図書館で検索ができるよ」

 

「それじゃあ、この都市自体も聖杯と関係があるの?」

「いや、この都市は『賢者の石』が『赤いオリハルコン』と呼ばれる世界で、世界統一を為した帝国首都を再現し、一部が変更された都市だ。

 その首都で『赤いオリハルコン』を巡った戦いが行われたというだけの縁で、聖杯とは何の関係もないよ」

 アルヴィースは両手を広げ、上向きに顔を上げた。

「聖杯や願望器と深い縁がある土地はいくらでもあるのに、何故ここが選ばれたのか。

 それはここが未だ発展途上であり、世界中から希望や憎悪を秘めた者達が集まり、テロリストの活動がたびたび起こり、それによる破壊とそれ以上の成長が続き、何よりここには世界と人類の護衛者を名乗る帝国政府の首脳達がいた」

 世界と人類の護衛者。その言葉で凛は、西欧財閥、そしてハーウェイの一族を連想した。

「そういった様々な事件が起こりうる可能性の集まる場所、世界に対する責任を持つ人間達が集う場所。それが並行世界、多元宇宙の多様性と可能性を集めるのにふさわしいと判断された」

 アルヴィースは一時言葉を止めて手を下ろし、ディスプレイのほうに顔を向けた。

「あのユニット『エンジェリック・コンサート』を名乗る彼ら三人が肉体を持ち、揃う事は本来の世界では、どんな並行世界でも絶対にありえない。

 だが、ここはあらゆる可能性を集めて作られた世界。『ありえない』などという事は『ありえない』。

 その『ありえない』ことが起こるこの都市で君たちに世界は、人間はどう映るのか、聖杯をどうするのか、それで実現できる願いや繁栄を持って何を為すのか。君達は自身の選択による世界の改変に責任を持てるのか。

 それらを改めて確認し、各個人の判断を下してほしい。そう選定されたからさ」

 世界を改変する行為、その責任。凜は改めてその重さを実感し思わず胸を抑えた。

「最後に効くけど、ルーラーは聖杯に願いってあるの?」

 バイクに手を載せ、凜は尋ねた。

「基本的にルーラーが召喚されるのは『結果が未知数なため、人の手の及ばぬ裁定者が聖杯から必要とされた場合』。

 または『聖杯戦争によって、世界に歪みが出る場合』だ。そう他の聖杯戦争では記録されている」

 アルヴィースは銀色の鍵に手を添えて答えた。

「聖杯戦争によって世界が破壊する、またはその可能性が強いと判断された時に、ルーラーは聖杯自身によって召喚される。それが基本的なルールだ。

 よってルーラーとして『世界の破滅を防ぎ、この聖杯戦争の経過と結末を見届ける』こと。それが僕の願いかな」

 そう言ってアルヴィースは、凜とライカの傍を通りミザリィの店へと向かった。

「僕はこの都市で「特別捜査官」というロールを与えられている。マスターにもロールが与えられているから後でチェックしてみてほしい。

 この都市では物質転換炉という名の反物質炉で電力を供給している。もしもテロリストやマスターの標的になって破壊された場合、都市全てが吹き飛んでしまう。

 その為、マスター、サーヴァントを問わず不用意に近づけば警告、それでも侵入しようとすれば攻撃の対象となる。

 それでも、サーヴァントが本気で破壊しようとすればNPCでは守り切れないからね。大抵の時間帯、僕はそこを守るためにいるから、何か質問したい事が出来たら来てほしい」

 会話を終え、凜とライカがバイクにそれぞれまたがり、レバーを握ったところで凜はアルヴィースに顔を向けた。

「……さっき、最後って言ったけど、やっぱり聞いておきたい事があったわ。

 こんな事を聞くのは私たちの世界には何の関係も無い事だから、心の贅肉でしかないんでしょうけど、だけど、やっぱり聞いておきたい。

 ……この都市のオリジナルがある世界で、子供たちは、笑っていた? テロリストが常に活動するような、強引で恨みが後を引くような世界統一をした帝国の首都で、それでも子供たちは笑っていた?」

 振り向いたアルヴィースは少し目を閉じた後、開いて凛の質問に答えた。

「……ああ、元気に笑っているよ。元気すぎてテロリストの破壊活動を見物に行く無鉄砲な子供までいるくらいだ」

 凜はあっけにとられ、そして笑い出した。

「――あははは! 何よそれ! 元気ありすぎじゃない!」

 

「ありがと、聞けて良かった」

 アクセルをふかし、二人はバイクで道を駆ける。

「図書館はあの巨大なビル『ビッグアイ』の中にもある。一度行ってみることをお勧めするよ」

 その背にアルヴィースの声がかけられた。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

ルーラー

 

【真名】

アルヴィース

 

【出典】

ゼノブレイド

 

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷B 魔力EX 幸運EX 宝具EX

 

【属性】

中立・中庸

 

【クラス別能力】

対魔力:EX

 世界の構成要素の支配による完全な対魔力。

 

真名看破:EX

 ルーラーとして召喚されると、直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。

 

神明裁決:A

 ルーラーとしての最高特権。

 聖杯戦争に参加した全サーヴァントに二回令呪を行使することができる。

 他のサーヴァント用の令呪を転用することは不可。

 

【保有スキル】

千里眼・未来視(ヴィジョン):A+++

 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。世界の全て、因果律、人間の心の奥まで入り込む眼。

 未来視は世界の構成要素の運動、因果律の演算予測によるほぼ完全な予知能力。

 

創世:―

 文字通り世界を創造する能力。ルーラーには使用不可能。

 ■■■■■■■■■■■。

 ■■、■■■■■■■■■■■■。

 

単独顕現:B

 単体で現世に現れるスキル。単独行動のウルトラ上位版。本来はビーストしか持ち得ぬ特性。

 このスキルは“既にどの時空にも存在する”在り方を示しているため、時間旅行を用いたタイムパラドクス等の時間操作系の攻撃を無効にするばかりか、あらゆる即死系攻撃をキャンセルする。

 

モナド:EX

 世界に生きる者一人一人が持っている光。未来を選び取る意思、掴み取ろうとする力。

 通常は形もなく、力も無いに等しい。自覚できる者はごく僅かである。

 ルーラーのモナドはいわば『宇宙の予定調和』とも呼ぶべき強大な力である。

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【宝具】

『全てを知る者(アルヴィース)』

ランク:EX 種別:対理宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:∞

 彼は『世界の摂理』と一体化した意識体。■■■■■■の接続者。かつて一つの宇宙の始まりと終わりを告げた者。

 世界の摂理、構成要素、因果律の全てを認識し、干渉、変革する能力。

 聖杯の影響により、全ての並行世界、多元宇宙の実数、虚数領域においても認識が広がった。

 だが、ルーラーはよほどのことが無ければ自ら干渉する気は無い。

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■、■■■■■■■■■■■。

 ■■、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。

 

『神剣モナド』

ランク:A+(A++) 種別:対人宝具 レンジ:2~10 最大補足:3人

 世界の構成要素を掌握、制御して真エーテルを光の刃の形に形成し、あらゆる物質を切断する。

 柄の部分にある何層にも重なったガラス状のプレートの一枚一枚に、漢字のような文字が浮かび上がる仕組みになっており、浮かぶ文字によって異なる力が発現する。

 能力は以下の通り。

 

 モナド・バスター(斬)

 モナドの力を極限まで高め、直線上の敵へ一気に叩きこむ。アルヴィースが持つモナドの力を全開放した斬・バスターは星の聖剣にも匹敵する威力を発揮する。

 モナド・エンチャント(機)

 概念による防御を無効化し、一定時間ダメージを与えられる。自身を含めて最大3人まで効果を分け与えられる。

 モナド・シールド(盾)

 ランク以下の宝具を含めた攻撃を完全に防ぐ。自身を含めて最大3人まで効果を分け与えられる。

 モナド・スピード(疾)

 モナドの風が包み込み、物理的な攻撃を高回避させる。敏捷値に++補正が働く。自身を含めて最大3人まで効果を分け与えられる。

 モナド・ブレイカー(破)

 モナドの衝撃波がダメージを与え、さらに一定時間敵の全宝具、全スキルを封印する。

 

 実はこの宝具では人間を攻撃できない、しようとしても弾かれるよう制限されているが、制限解除により、形がシャープなフォルムに変形、宝具のランクも上昇する。

 

 モナド・■■■(■)

 ■■■■■■■■■■■。

 

『不浄なる生命を狩る者(テレシア)』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大補足:1体

 知性と呼べるものはなく、ほとんど本能のみに従って行動する危険な生物である。

 生命力が強く、触覚から光線を発し、相手の思考を読む能力を持つ。

 巨大な鳥のような姿をしたものや恐竜のような姿をしたものなど様々な個体があるが、いずれも虹色の体と光の羽を持つ。

 食事として大気中のエーテルを直接摂取する。そのため、エーテルで身体が構成されているサーヴァントには悪影響を及ぼす。

 強さについては個体差が激しいものの、思考読みの力もあり、十数m以上の個体だとサーヴァントにも匹敵する。

 これだけの強さだが、アルヴィースにとってはいくらでも召喚できる駒に過ぎない。

 

『久遠の果てより来たる虚無(■■■■■)』

ランク:■■ 種別:■■宝具 レンジ:■~■■ 最大補足:1体

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【weapon】

クレイモア

 通常の大剣。

神剣モナド

 本来このモナドはある一つの世界にただ一つだけしか存在せず、それも失われたがサーヴァントとして召喚された事で再現されている。

 

【人物背景】

 

 【閲覧不可】

 

【方針】

 基本的には戦闘には干渉せず市民に犠牲が及ぶ時、そして対界宝具により舞台の世界が破壊されそうなときに介入する。

 

【サーヴァントとしての願い】

 世界の破滅を防ぎ、この聖杯戦争の経過と結末を見届ける。

 

【把握媒体】

SwitchでゼノブレイドDEが発売されています。

某動画サイトにも全プレイ動画が投稿されています。

 



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【オープニング】【prologue】第5話 Rocketman 遠坂凜&セイバー(ライカ)

登場キャラクター
遠坂凜&セイバー(ライカ)

場所
ビッグアイ

時間
開幕前


 バイクを走らせ、アルヴィースの言っていたビッグアイに向かっていた凜とライカの二人。

 その途中で噴煙が上がっていることに気づき、寄り道を決めた。

 

「ねえ、ここで何があったの?」

 市民ががやがやと集まっている中、警官らしき人間に凜が問いかける。

「ここから先は立ち入り禁止です。見学したいのであれば身分証の提示をお願いします」

 凜はマスター専用の端末を取り出し、起動画面を見せた。

「ああ、あなたはこの度、『マスター』としてこの都市に移住してきた人ですか」

 凜は仰天して尋ねた。

「ちょっと待って。マスターってあんた達聖杯戦争のこと知らされているの?」

「え? 聖杯戦争って何ですか? マスターとは特別待遇を受けてこの都市に招聘された方々の事ですよ。

 気を付けてください。もう3人も奴らの犠牲者になっているんですよ。どうやらあなた方も奴らの目標になっているらしいんです」

「奴らって?」

「テロリストですよ」

 警官は嘆くように言った。

「『ガラクシア』って名乗っている連中でしてね。ネットで搾取している富豪や平等主義者と名指しされている人々を相手にしているテロ集団です。

 そいつらは懐に爆弾を仕込んでいるらしく、目標の人物に近づき自爆するんですよ」

 それを聞いた凜は、もしかしたら聖杯戦争に参戦しているマスターかサーヴァントが既に市民を洗脳し、マスター殺しを行っているのかもしれないと考えた。

 

 夕暮れのころ、凜達はアルヴィースの言っていたビッグアイと呼ばれるビルに到着した。

 内部に二人が入り、周囲を見渡す。その内部は外見よりも広く、様々なテナントが入っていた。 

 二人はエレベーターに向かい、フロア案内図で図書館やその他興味のあったフロアを確認して、ドアを開いて乗り込んだ。

「あ、すいません。一緒に乗りま~す」

 そう言ってきた複数の少年少女たち、と推測される人々がエレベーターに入ってきた。

 人種、いうか身体がばらばらだったが一人だけ制服らしき服だったので凜が訪ねた。

「あなた達、学生?」

「はい、私たちここの定時制高校に通っているんですよ」

 彼女たちは凜とライカの傍でワキワキと会話している。

「じゃあ、私ここの図書館で降りるから」

 エレベーターのドアが開き、凜とライカが下りた背にありがとうございますと元気な声がかけられた。

 

 図書館で凜は受付からタブレット端末を受け取り、早速調査を始めた。

 ここでは紙の本も借りられるが、量が多すぎるため基本的にタブレットで検索し、閲覧する形式になっているとのことだ。

 凜が検索する間、ライカは備え付けのTVを見ていた。

「この度、起こった自爆テロに対し、市長は……」

 画面に映った市長と言われた人物は全身緑色の肌で触覚らしきものが頭部に生えていた。

 ニュースや娯楽番組をチャンネルを切り替え適当に見ていたライカに、凜がタブレットをもって近づいた。

「あいつの言ってたことは、全部本当だったわ。『天使の羽根』も、彼女たちの経歴も」

 凜は話しかけたとき、丁度CMでその音楽ユニットが映っていた。

「ついでに少し調べたけど、願望器っていろんな世界にあるのね。五十音順で『天使の羽根』の下に『トライフォース』と『ドラゴンボール』ってのがあったわ。

 私の世界の『ムーンセル・オートマトン』も、その願いを叶える理論まで含めて登録されてた」

 凜はタブレットの画面をスライドさせながらライカに話す。

「後、あんたの履歴やスキル、宝具についても調べさせてもらったわ。流石セイバーといったところかしら、かなり強いのね」

 凜はあえてライカの経歴について深く調べてことについては伏せた。

 ライカの倭国を統一し、東に渡って国を造ったという経歴からすれば、日本神話では『あの人物』しか該当しない。

 だが、その名前ではなく『ライカ』が真名として登録されているところを見ると、そのモデルになった人物なのだろう。

 最も凜の世界ではとうに日本は国家としては破綻しているのだが。

「あのアルヴィースってサーヴァントも検索したらプロフィールが載っていたわ。

 ステータス、スキル、宝具も全部分かったけど、なぜか人物経歴だけがTOPシークレット扱いになっていて検索できなかった」

「……妙だな」

 ライカは顎に手を当てて言った。

「あんたもそう思う? 聖杯戦争で戦うのに必須な情報は分かるのに何で経歴だけ厳重に伏せる必要があるのか……。

 もしかしたら、あのルーラーは聖杯に何か深いかかわりがあるのかもしれないわね」

 

 次に二人が到着したのは1フロア丸ごと剣や銃、防具などで満たされた店だった。

「このエーテル銃ってサーヴァントに効くのかしら?」

「通用するぜ。まあ『痛い』程度ならな。あと、マスターを含めた人間相手には使用できないようにされてるらしい」

 

 次に凜達が来たのは、やはり1フロア全てがレストランになっていた場所だった。

 席に案内され、折りたたみ型タブレットを開いてメニューを見るが料理数が多すぎて何を頼んでいいのかまるで分らない。

 大体なんだ。この特上ロース岩ステーキって。

「この都市に来たばかりで良くわからないのであれば、シェフの日替わりフルコースというのがございますが」

「それってどういうの?」

「ハンター達が狩ってきた獲物を、当店のオーナーシェフがインスピレーションでメニューを決定、調理したものです」

「じゃあそれでいいわよ」

「アレルギーなどはお二人ともございませんか?」

「無いわ」「ない」

「かしこまりました。少々お待ちください」

 給仕はお辞儀して立ち去った。

 

 運ばれてきたのは名前も知らない30種類の野草と香草を焼いたマリネ。未知の穀物のパン、木の実混ぜ。名前がよく分からない魚のポワレ。やはり名前が不明な肉のステーキ、果物のソース掛け。デザートのリンゴのタルト。

 二人とも、フォークを付けるのに少し躊躇ったが。

「美味しい……」

「うまいな、見たこともない料理だけど」

 凛もライカも味に満足した。

 

 最後についたのは最上階、都市が一望できる壁一面がガラスで出来た展覧回廊だ。

 夕日で赤色に染まる空を見上げ、地上を見下ろす。

「ライカ」

 凜は自身のサーヴァントを始めて真名で読んだ。

「私ね、この世界ってあの神父の説明で、ただ保存された、日常を繰り返すだけの停滞した記録の世界かと思ってた。

 だけど違ってた。決して治安が良いとは言えないけど、それでも活気に満ちて、皆が笑っている世界。

 例え人々が再現された作り物だとしても、ここの街並みや笑顔はその人たちが衝突し、支え合って生まれたもの。

 私はこんな世界が見たかったって再認識できたわ。こんな未来が見たくて聖杯戦争に身を投じたんだって」

 

「私の地球はね、ポールシフトっていう大災害が起きて、全世界規模で戦争、紛争が起きたのよ。

 その中で誕生した西欧財閥は世界の大半を思い通りに支配し、人々に対し老後まで定められた道を敷設している。

 それに対抗する私たちレジスタンスは、結局自分たちの勝手な思いで手を組み、時に裏切り、統一された力にはなっていない。

 さらに他の地域の人間は、国があってもその西欧財閥とレジスタンスの狭間でただ生き残ることに必死になっている。

 私が来たのはそんな行き詰まって、世界の半分以上は停滞したまま、残りは混迷した地球」

 凜は地上で動く人々を見詰める。

「だから私には聖杯が必要だったの。世界を動かすために、西欧財閥の心臓にまで届く牙が」

 決意を新たにした凜は思わず胸を抑えた。

 

「……お前はそれでいいのか?」

 ライカは急に強い調子で凜に尋ねかけた。

「お前は聖杯を手に入れたらその力で西欧財閥とやらをブッ潰してそれで終わりか?」

 凜はうなずこうとし――ライカの鋭い目つきを見て動きを止めた。

「その後は結局その西欧財閥の生き残りが集まって国を支配して同じ事を繰り返す。オレはそう思うぜ」

 ライカに対し、凜も眼光鋭く睨みつける。

「……あなた、何が言いたいの?」

「じゃあどうするかって話だよ」

 ライカは凜に睨み返した。

「オレを育ててくれたオッチャンは言ってたぜ。どんなに繁栄した国も必ず亡び、位を極めた人間も必ずただの人になるってな。だけど所詮オレ達は生きている限り、国ってやつから逃れられないんだ。

 だったらてめェ自身の手で理想の国を造るしかねえだろ」

「国を……造る?」

 凛は停滞を拒み、新しい未来を見たいがためにレジスタンスに身を投じた。

 だが、セイバーの様に国を造るという発想はなかった。西欧財閥とは規模も戦力も違いすぎたからだ。

「無理よ、そんなの。西欧財閥を何とかしない限り」

「無理、なんて言葉は大嫌いだ。それに国をつぶす、なんてオレは言ってねえ。国を造ると言ったんだ」

「……もし、あなたが国を造ったら何をする気なの?」

「大地を離れ、星の彼方へ吹っ飛ぶために必要な物を作る」

 その言葉に凜はあっけにとられた。

「来たい奴らだけが来ればいい。そいつらだけで新たな星に行き着いて、また新しい国を造るんだ」

 ライカは瞳に強い光を宿し、拳を握り締めた。

「時には諍いや争いが起こるかもしれねえ。オレも国造りの途中でそれは起こされたし起こした。だけどな、それでも新しい明日が必ずやって来るんだ。

 オレがやる事は子子孫孫、末代まで誇れるものを創る事だ! 小さくてもいい。オレはオレと志を共にする奴を集めて理想の国を造ってやるぜ」

「そんな小さな国が西欧財閥と共存できるとでも思っているの?」

「それでもいいだろ。発展を拒否した国と積極的に発展を目指す国、二つが交流すれば互いに影響し合って、新しい物や文化が生まれるだろうぜ。

 そうすれば、停滞した国でも、大人子供が元気になるだろうさ」

「宇宙に何の道標もなしに飛び出して、本当に他の居住できる惑星にたどり着けると思っているの? もしあったとしてもそこに先住の宇宙人がいたらどうするのよ」

「大いに結構じゃねえか。そのムーンセルとやらがある以上、他の星にも人間がいて、国を作っているんだろう?

 そいつらと戦か交易か分からねえが、新しい人間や文化が活気よく出入りすれば地球も活発になるってもんだ」

 凜はライカを今までとは違った瞳で見つめた。

 

 凜は自分のような生き方は誰しも出来ないと思っている。力無き人、意志弱き人を置いていく事だと知っていたからだ。

 だから世界の停滞を動かすための戦争などという選択肢は取れなかった。国を造るという選択など発想すらなかった。

 さらに、そこから恒星間移動の宇宙船を開発するともなれば、最早乏しい地球の資源を食いつぶし、地球を見捨てる事になるだろう。

 

 だが、このセイバーは、ライカはそんな心理的障壁も、技術的困難も無視し、未知なる世界に進む事を全く恐れない。

 これが英雄という生き物なのか。凛は心底実感した。

 

 多分、凛が本の中でしか知らない歴史上の英雄達は皆そんな生き方をしていたのだろう。

 未知の領域に踏み入り、無謀という嘲笑も聞き流し、後に残した汚点も顧みない。

 それは救いがたい愚者であり、人類を照らす松明でもあった。

 歴史の偉業は命知らずの死骸の山の上に築かれた殿堂であり、血の川のほとりに咲いた花園であった。

 

「やっぱりあんたって英雄なのね。それも歴史上で『王朝の創始者』って呼ばれるような」

「なりたかったわけじゃねえけどな。結果的にそうなっちまった。

 王も無ければ奴隷もない。皆で作り上げる国が理想だったんだけどな」

 ライカは急に凜から見て寂しそうな瞳になった。

「それで、聖杯をお前はどうするんだ?」

「いきなり何?」

「お前は聖杯で西欧財閥を潰したいという以外に叶えたい願いは無いのかってことだよ」

「教会で言ったでしょ? 私は元々聖杯を西欧財閥に渡さないためにここに来たの。でも、どうしても願いを叶えなければいけないなら……」

 凜は一息ついて。

「『未来に希望がありますように』かしら?」

 そう言って照れくさそうにライカに対し顔をほころばせた。

「かっこつけすぎちゃったかもしれないけど、これが私の今考える精一杯の望み。私が聖杯戦争に参戦しようとしたのは、さっき言った通り大人は兎も角子供たちが全然笑わない世界、何も変わらない停滞した世界を動かす事。

 その為に聖杯が必要だったんだけど、本音を言えば安定より波乱を望む向こう見ずな人間なのよ、私は。

 でも、そんな選択は誰にでも出来るもんじゃない。やっぱり子供が泣くような世界は防ぎたい。どうしても戦乱で人が大勢死ぬようなことは避けたい。そんな選択はできないの。だから――これが私の今の答えよ」

 一気呵成に言った凜。二人の間に静寂が流れた。

「未来に希望があるように。そんな漠然とした願い。誰も傷つけず、誰の『理』も否定せず、世界に歪みを生み出さない望みか。面白ぇな」

 ライカは微笑んで、凜に答えた。

「……オレは生前、大王(オオキミ)と呼ばれる人間だった。権力者ってやつだ。だがな、国は王一人だけのものでもねえし、国の民たちのものでもねえ。

 それはより良い明日を創るため、世界をより良くするためのものだ。そのために今日の苦しみや犠牲を耐えなきゃならねぇ時もある。

 そしてそんな世界を見守る神は、どんな人間にも、天にも地にも木々にも、鳥にも虫にも水にも岩にも風にも、あらゆるものに宿っている。自分自身だけの神がいる。

 それを感じるには、オレ達は良い未来を造れると信じる事だ。希望を夢見て進む意志を持つことだ」

 上向きに遠い目をするライカ。そこに映るのは遠い過去、ある少女との出会い、戦いの日々、王位継承の儀、神を降ろした最後の戦い、そして生き残った人々と一から国を造った青春の日々。

 その果てに掴んだ答えだった。

「いいぜ。お前の望み通り、全ての神、『理』を否定しない未来に希望がある世界を造るために協力してやるよ。その結果、受肉が出来れば結構だけどな」

 凜とライカは互いに笑みを交わしあい。

「取ろうぜ、聖杯」

 そう言ってライカは拳を凜に突き出し、凜はそれに合わせて拳を作り、ライカと突き合わせた。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

 セイバー

【真名】

 ライカ

【出典】

 雷火

【性別】

 男

【ステータス】

筋力B 耐久C+ 敏捷A+ 魔力A+ 幸運A 宝具A++

【属性】

中立・善

【クラス別能力】

対魔力:B

 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。

 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:A

 騎乗の才能。幻獣・神獣ランクの獣以外の全ての乗り物を乗りこなせる。

【保有スキル】

神仙術:A++

 忍術の前身であり、仙道を究めるための修練法。

 気配遮断、投擲、幻術、軽功術などの複合スキル。

 さらに上位のランクなら、硬気功、軟気功、気による発勁や飛行を可能とする。

魔力放出(雷):A+

 武器、ないし自身の肉体に雷に変換した魔力を帯びさせ、放出する事によって能力を向上させる。このスキルによりライカには雷撃が効かない。

 同時に磁気を操る事も可能。

 (このスキルを使用すると通常は電撃を身に帯びる程度だが、強力に放出すると白目になって放電したり、髪の毛が逆立って全身が光り輝いたりする。だが別に大猿やS.S人にはならない)

倭国大王のカリスマ:B+

 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示すスキル。

 統一倭国の初代大王であるライカのこのスキルは、日本出身の人間、サーヴァントに対して通常以上の効果を発揮する。

頑強:A+

 古代人ゆえの強い生命力は高い耐久力と、傷の治癒の異常な速さをもたらす。さらに蠱毒の試練に耐えたことで、毒が一切通用しない身体になった。

【宝具】

『鉄の神体(まがねのしんたい)』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~3 最大補足:1人

 鉄を製錬していた集落で長年ご神体として祀られていた聖剣。魔力を変換、増幅する機能を持ち炎を発する「龍炎の剣(リュウノホムラノ)」、「火輪の術」

 かまいたちを起こす「無空殺風陣」、雷を落とす「以心雷鳴剣」などのライカが使う神仙術のサポートをする。

『天の龍(てんのりゅう)』

ランク:A++ 種別:対神(自身)宝具 レンジ:0 最大補足:1人

 自身に宿る天の龍を解き放つ。この際、天龍の神核:Aが付与される。大気、空、宇宙を自在に操る権能を持ち、能力として雷撃を浴びせる「天龍の爆雷」「巌つ霊(いかつち)」。

 竜巻を起こす「天龍の乱嵐」「天龍の龍炎」「天龍の雪嵐」。

 敵を星空まで連れ出し、星々を呼び寄せ流星群を浴びせ、超新星爆発並の一撃を食らわせる「天龍の銀牙」など、神霊レベルの魔術行使を可能とする。

【WEAPON】

『鉄の神体』

苦無

 投擲武器や近接武器として用いる。

 通常の物と爆発する物との二種類がある。

手裏剣

 鉄でできた五方手裏剣。岩に突き刺さるほど鋭い。

 本来五方手裏剣は、15世紀頃に発明されたとされる。

勾玉

 首からひもで下げている。生前は壱与との繋がりであった。サーヴァントの現在はマスターの危機などが伝わる。

【聖杯にかける願い】

 受肉、そして新たな国造りと宇宙への進出。凛の世界に身を投じ、共に国を造るのも悪くない。

【人物背景】

 紀元3世紀。日本の一部が倭国と呼ばれ、王と神が同一視された祭政一致の政治体制でまだ統一権力が生まれていない時代。

 邪馬台国の近くでライカは仲間と一緒に神仙術の修行に励んでいたが、ある日山の中で不思議な少女を目にする。

 少女の名は壱与。邪馬台国女王卑弥呼の元で修行する筆頭巫女であった。その出会いはライカに否応なく、国というものに強く関わらせ、その有り方を意識させることになる。

 その後ライカは邪馬台国へ侵入したが、張政たち魏の人間の策略にはまり、女王卑弥呼殺しの罪を着せられる。

 卑弥呼を暗殺した張政は魏の権威を利用し、自分に抵抗する力を持たない壱与を女王に即位させることにより、張政自身が邪馬台国を支配、魏の属国にしようと企んでいた。

 壱与のため、そして何よりクニの存在に魅せられたライカは、神仙術の師である老師の制止を振り切り、山から下りて行った。

 邪馬台国から壱与を連れ出しての当ての無い旅路、大陸からの移民たちとの出会い、邪馬台国と敵対する狗奴国、その王のヒメキコソとの対面。

 それらを通じ、所詮自分たちは国という存在から逃れられないと思い、壱与を救うためにも自ら理想の国を作ることを志す。

 実は狗奴国の皇子だったライカはヒメキコソから世継ぎの神事を受け、狗奴国を率いて邪馬台国に攻め入る。

 追い詰められた張政は、木乃伊と化した卑弥呼を蘇らせて封神の儀を行わせ、地の龍の力を手に入れ、邪馬台国を大地ごと粉砕する。

 それに対しライカは壱与の手を借りて天の龍の力を得、激闘の果て、張政を倒す。

 全てを終えたライカたちは、火烏の導きに従って東に渡り、国を造ったという。

 その後、約一世紀半にわたり倭国の歴史は不明である。

 

 サーヴァントとしてのライカは、天の龍を肉体に降ろした半神霊状態で固定されているので生前より霊基、能力が強化されているが、ライカが神になる事を否定しているので神性はスキルに表れていない。

【方針】

 戦いで容赦はしないが、有能な人材ならマスター、サーヴァント共に新たな国造りにスカウトしたい。

【把握媒体】

 コミックスはデラックス版全12巻、普及版全21巻、凍結版全15巻があります。普及版、凍結版には作者、藤原カムイ先生の楽しい描き下ろしが載ってます。

 例:「いきなり放電するなんて……大猿にでもなるかと思いました……」「おお、今度はS.S人!」

 

【マスター】

 遠坂凛

【出典】

 Fate/EXTRA

【性別】

 女

【能力・技能】

 魔術師(ウィザード)

 魂を霊子変換、電脳世界内で物質化し、あらゆる情報をダイレクトに摂取し即座に出力するため、通常のハッカーとは比較にならない処理速度を誇る。

 魔術が廃れた後の新しい魔術師。

【weapon】

 宝石:凛が自作したソフトウェアを宝石という形に収めたもの。

    平行世界の凛と同じように溜めた魔力を解放する使い方も可能。

    余談だが作中でこれを用いた彼女のコードキャストはサーヴァントの通常攻撃に匹敵するダメージ数値を叩きだし味方サーヴァントの幸運を低下させる。

 ナイフ:スカートの下に巻いたホルダー兼ガーターベルトに収納されているポリカーボネートのナイフで数本ほど収納されている。

【人物背景】

 日本出身の魔術師(ウィザード)で遠坂本家の血統ではなく、かつて遠坂時臣が海外に渡った際の落胤の血統。

 物心ついた時からフリーのエンジニアとしてジャンク屋で電脳戦を行っていた。

 このため学校へ通う年齢でありながら実際にはろくに通ったことがない。

 子供の頃に遠坂本家には何度か行ったことがあり、そのとき出会った気の合う女性から麦藁帽子を貰っている。

 元々は国連組織の一員でアジア地域の医療活動に従事するNGO団体でボランティアとしてシステム管理技士のような仕事をしており、貧困にあえぐ国々を飛び回っていた。

 国連からも将来を期待されていたがある時中東の武装集団に身を投じ、レジスタンスとして西欧財閥と敵対するようになる。

 西欧財閥と戦っている建前はビジネスだが、実際は進歩・進化を行動原理とし、常に前に進み続けることを信条とする凛にとって世界の停滞・安定を望む西欧財閥が敵であるため。

 普段は単身で中東や欧州を中心に活動しているため、日本にはあまりゆっくりといたことがない。

 そのため、聖杯戦争が終わってハーウェイを打倒したら日本でのんびり暮らすのもいいと思っている。

 レジスタンスの歴戦の勇者達にお姫様扱いされていたため、恋愛経験はない。

 原作で彼女と契約した槍兵曰く「男っ気がないのは嬢ちゃんのガードが硬いんじゃなく、オヤジどもの目が厳しいんだろうなあ」とのこと。

 数々の解放戦に参加したレジスタンスの英雄として知られているが、敵対する西欧財閥からは国際テロリストとして指名手配を受けている。

 普段は単独で活動しているが、西欧財閥と敵対するレジスタンス組織と共闘することもある。

 平行世界(冬木)の凛と非常によく似た性格で、自分にも他人にも厳しく冷徹であろうとするが、基本的には姉御肌でつい他人の世話を焼いてしまう人の好さも持っている。

 容姿も基本的にほぼ同一だが聖杯戦争で使う姿(アバター)は電脳世界用に用意された架空のものであり、現実の彼女の姿は金髪碧眼である。

 ただし世界観や人生経験の違いからか平行世界の凛との相違点も少なからずある。

 若くして武装集団に身を置いてきたためかややドライで達観した死生観を持っている。

 また情報の危機管理などに関してもかなり敏感であることが伺える。

 何よりもこちらの凛は機械類に滅法強い。

 起源や容姿を同じくしながらも、彼女達はやはり別人であるということがわかる。

【マスターとしての願い】

 自分の世界にあるムーンセルを含め、西欧財閥に聖杯を渡さない。

 未来に希望がある世界を造る。

【方針】

 序盤は情報収集に集中したいが、セイバーが割と好戦的なのでそこは尊重するつもり。

【ロール】

 アカデミーで研究室を持つ、天才プログラマーとして有名。

【令呪の形・位置】

 右手の甲に、原作デザインの一本線が雷の様にギザギザ、外の円弧が炎のように波打っている。

【把握媒体】

 ゲームをプレイするのが一番ですが、漫画版でも構いません。

 プレイ動画が某動画サイトにアップされています。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 皆様、いかがだったでしょうか。彼女たちは聖杯戦争に勝ち残ることはできるのでしょうか。

 

 それでは最後に『主催者』と、いるかどうかわからない『黒幕』、『ゲームマスター』を除いた、この聖杯戦争を形作る最後のピースを紹介しましょう。

 



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【オープニング】【prologue】第6話 Eyes Of Heaven 言峰綺礼&アーチャー(DIO)、アヴェンジャー(ガラクシア)、ミザリィ&ヘシアン・ロボ,アビゲイル・ウィリアムズ

登場キャラクター
言峰綺礼&アーチャー(DIO)
アヴェンジャー(ガラクシア)
ミザリィ&アヴェンジャー(ヘシアン・ロボ)
&フォーリナー(アビゲイル・ウィリアムズ)

場所
言峰教会

アンティークショップ・美紗里

時間
開幕前


 試練を潜り抜けたマスターたちが必ず最初に召喚される場所。教会の内部は血で彩られていた。

 監督役である言峰綺礼の五体が四散していたからだ。

 首から上は吹き飛ばされ、四肢は斬り落とされ、見るも無残な姿だ。

「これで口うるさく命令される心配なんてねぇーわけだなぁー。思い通り殺りたい放題ってわけだなぁー」

 下碑た笑みを浮かべるのは綺礼を殺したマスター。

「ああ、これで人を喰うのも殺すのも自由ってわけだ。魂食いじゃなければいいんだからな」

 そう冷酷な笑みで返したのはサーヴァント。

「いこうぜ、この街をオレ達のおもちゃ箱にしてやろうぜぇー」

 二人は邪悪な意思を抱き、教会の扉へ向かい――

「……あ?」

 サーヴァントは胸を見ていた。そこから飛び出していた腕を。その腕の中にある己の心臓を。

 何の予兆もなく、唐突に自分が殺害されたことにそのサーヴァントは、理解が及ぶことなく、呆けた顔のまま光となった。

 その光は、殺害した者を照らし、胸の中へと吸収されていった。

「な……」

 マスターはいつの間にか出現したサーヴァントを前に呆然としていた。

 そのサーヴァントは死人の如き青白い肌、腰まで伸びた長い金髪、顔に浮き出た星形の模様という異相。その星の模様には『DIO』の文字が刻印されている。

 そばに現れて立つ者はこのサーヴァントの宝具だろうか。筋骨隆々で三角形のマスクの羽織ったような頭部、背にはタンクがつき、手の甲には『D』のマークがある。

「な、なんなんだてめーはッ!」

 震えながらマスターは懐からナイフを取り出した。

「私はアーチャー。真名は『DIO』。この死体になった言峰綺礼のサーヴァントだよ」

 DIOと名乗ったそのサーヴァントは、マスターに対し微笑みかけた。

「その自分の欲望のために忠実で、善のタガがない君のその姿は私の好みだが……生憎ここでの私は監督役のサーヴァントなのでね」

 DIOはマスターに向かい、ゆるりと歩みを進める。

「聖杯戦争の範疇から逸脱した君を、始末させてもらう」

 その言葉、涼しげな声色、妖しい色気を醸し出す笑みに絶対的な何かを感じたマスターは、震え、叫び、無謀にもDIOに対し突進してきた。

 DIOは片手を無造作に振るい、マスターの頭部を四散させた。頭を失ったマスターの体は垂直に崩落した。

「さて……あまり時間もかけられんか」

 DIOは綺礼の死体に近づき、人型のヴィジョンで胴体に触れる。

『The World Over Heaven』

 そしてDIOは宝具の真名を唱えると、綺礼の遺体が輝きに包まれた。

 まるで動画を逆回しにしたかの如く、綺礼の手足が繋がり、頭部が骨、筋肉、皮膚の順に再生してゆく。

 言峰綺礼は完全に蘇生を果たした。

「これがお前の異能力『スタンド』の力か。実体験してようやくその凄さが分かったよ」

 感慨深げに綺礼は言った。

 

 綺礼はDIOに対し二つの指示を令呪で予め命じていたのだ。一つは『この教会内にいる限りDIOの存在は誰にも認識されない、そう宝具を用いて現実を改竄せよ』

 二つ目は『言峰綺礼が所有する令呪を、宝具を用いて誰にも認識されないようにせよ』である。

 この二つは確かに効力を発揮し、綺礼がマスターであること、この教会内にDIOが居る事は誰にも認識されなかった。

 そして今、言峰綺礼の死という『真実』を生という『真実』で上書きし、蘇生させたのだ。

 これがDIOの宝具でありスタンド『The World Over Heaven』の『DIOが望む真実を上書きする』能力である。

 

 綺礼は頭部を失ったマスターの死体に近づき、右手の令呪を確認。自身の三画揃った令呪のある右手を合わせる。

 低く聖言を呟くと、マスターの令呪が消え、綺礼の下腕が発光した。

 綺礼が腕をまくると、そこにはびっしりと刺青の文様――令呪が存在している。

 令呪の移動を確認した綺礼は、DIOに対し振り向いた。

「この手のいきなり私を攻撃してくるマスターは何人かいたが、その度お前に始末させてもらっていた。

 今回は私が殺されるまで待っていたのはなぜだ?」

「綺礼、君の先ほどの言葉が全てさ。私のスタンド能力を改めて知ってもらうためには実体験してもらうのが一番都合が良い。

 例え令呪一つ分の魔力を使ったとしてもだ」

 DIOの宝具はその超絶的な能力に引き換え、膨大な魔力を消費する。普通に使うだけで令呪一角分の魔力を必要とするほどに。

「いざ、マスター達との決戦となった時『信頼』してもらえないと困るからな」

「あの主催者から提示された条件か。『もし、全マスターが聖杯を壊す一つの勢力としてまとまった場合、監督役はそれを討伐せよ』

 『マスターに聖杯へと至る適格者がいなくなった場合、聖杯は監督役とそのサーヴァントに委ねられる』」

「そうだ。本音を言えばぜひそうなってもらいたいものだ。私もサーヴァント、聖杯によって叶えたい願いがあるからな」

 DIOは綺礼に向けて威厳と妖艶を備えた笑みを向けた。

 誰もが見ほれるであろうその笑みを綺礼は流すようにちらりと見ただけだった。

 だが、その心中には複雑な思いがあった。

 

 ギルガメッシュはどんなに身を崩しても、その身には常に高貴さがあった。

 反面、このアーチャーはどんなに威厳を発しても、奥底にある人間的な『俗』がにじみ出ている。少なくとも綺礼はそう感じている。

 英雄王ギルガメッシュと10年近くも付き合ってきた言峰綺礼だからこそ分かる、本物の『王侯』とそれ以外の『成り上がり』の違いだ。

 だが――そう、だがその『俗』が綺礼にとっては心地よく感じる。安息を覚えるのだ。

 思えば言峰綺礼の生涯は問うてばかりの人生だった。己と世界の繋がりの歪さに。心の虚無に。神の愛に。『この世全ての悪』の存在意義に。

 常に答えを追い求めてきた言峰綺礼は、愉悦、楽しみはあっても、安らぎを感じる事は無かった。

 故に綺礼はこのサーヴァント、DIOと共に行動する事を悪くないと感じている。

 ――NPCでありながら生前の記憶を保持し、自分の願望を知っている身としてはなおさらだった。

 

「しかし綺礼、君は監督役で命令を下されているというのに、本当にこの聖杯戦争の主催者の事を知らないのか?」

「ああ、その通りだ。私は声を知っているが見たことはない。姿を知っているのは案内役のミザリィとルーラーのアルヴィースだけだ。

 ミザリィには『正体を知ったらきっとがっかりするわよ』と言われたが」

「何にせよ……私は監督役のサーヴァントとしての役目を果たそう。もし、主催者の案ずる件が起こったら、私は聖杯を捕りにゆく」

「そうか。実は私も願いはあるが……別に是が非でも叶えたいというほどではない。聖杯を手中に収めたらアーチャー、お前が使えば良い」

 その言葉でDIOは唇を吊り上げ、過去に思いをはせた。

 

 あの時、このDIOが敗北したのは承太郎に対してではない。『真実』でも届かない『運命』などでもない。

 ただほんのちょっぴりの『油断』。それが生死を分けた。『結果』は確かに大きい。

 だが、今このDIOはこうしてサーヴァントとはいえ現界している。ならば再びやり直す機会が与えられたという事だ。

 今度こそ一つたりとて誤ることなく、聖杯を手に入れ現世に復活し、ジョースターの血統を全ての平行世界から抹消してみせようではないか。

 そのための『真実』はこのDIOの味方なのだから。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

アーチャー

 

【真名】

DIO

 

【出典】

ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン

 

【ステータス】

筋力A 耐久B 敏捷C 魔力A++ 幸運A 宝具EX

 

【属性】

混沌・悪

 

【クラス別能力】

対魔力:C

 第二節以下の魔術を無効化する。

 大魔術や儀式呪法などを防ぐことはできない。

 

単独行動:E-

 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

 ランクE-ならば、マスターを失っても最大30ターンは現界可能。

 

【保有スキル】

悪のカリスマ:B+

 大軍団を指揮する才能。

 あらゆる悪の頂点に立ち、異能者の集団を完全に掌握することができる。

 属性が悪である者は、DIOに対し彼に強い恐怖と畏怖を抱くようになる。

 

投擲(短刀):C

 短刀を弾丸として放つ能力。

 複数の短刀を同時に生み出し、弾幕を張ることも可能。

 クラス補正により精密な投擲が可能となっている。

 

吸血鬼:B

 生と死を超えた者、または生と死の狭間に存在する者。死徒。

 多くの伝承に存在する、生命の根源である血を糧とする不死者。

 本来吸血鬼とは親となる吸血鬼に噛まれ人から魔へと転じるものであるが、DIOは例外的にそれ以外の方法により吸血鬼化している。

 己の肉体を自在に操る能力によって人間を越えた並外れた筋力。再生能力。

 「肉の芽」と呼ばれる細胞を脳に植え付け、相手を洗脳する能力。

 体から水分を気化させて熱を奪い、触れた相手を一瞬で凍結させる「気化冷凍法」。

 眼球内の体液をビームのように射出する通称「空裂眼刺驚(スペース・リバー・スティンギー・アイズ)」。

 以上のような人を超越した様々な異能力を持つが、その代償として紫外線、特に太陽光に弱いという致命的な弱点を持つ。

 ただし、霊体化した状態ならば日中でも野外で行動することが可能となる(現界すれば日光によって消滅する為、一切の戦闘は行えないが)。

 太陽光以外にも頭部への攻撃が有効打になるが、あくまでも一時的に動けなくする程度である。

 なお、後述する宝具を用いれば、一時的ながら日中でも実体化したまま行動可能である。

 

うたかたの夢:A

 このDIOは既に世界ごと完全に存在が抹消されている。だが編纂宇宙に残され、かき集められた幻想の残り香から現界を果たした。

 幻想から生まれた故に強い力を有するが、同時に一個の生命体としては永遠に認められない。

 

【宝具】

『The World Over Heaven(ザ・ワールド・オーバーヘブン)』

ランク:EX 種別:対人(対真実)宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:―

 全ての事象に対し、DIOの望む『真実』を上書きする。現実の改変。

 死者蘇生、空間の上書きによる異空間形成や瞬間移動、洗脳、事象の消去、治癒など応用範囲は非常に幅広い。

 ただし、使用には膨大な魔力と長時間のチャージが必要となる。この弱点は他者の魂をスタンドに吸収する事で補える。

 また、DIO本人かスタンドの拳で触るか殴るかして能力を発現させるため、腕を負傷すると傷が癒えるまで使用不可能になってしまう。

 スタンドビジョンはDIOによって使役され、高い格闘能力を駆使して戦う。A+ランク相当の筋力、Aランク相当の敏捷・耐久を持つ。

 精神の力であるスタンドがダメージを受けると、本体であるDIOも同じ箇所にダメージを負う。逆もまた同じ。

 スタンドは通常ならば同じスタンド使いにしか視認出来ないが、マスター、サーヴァントならば視認可能。これはスタンドが宝具として再現された神秘にすぎないためである。

 

【weapon】

ナイフ

 

【人物背景】

 英国の貴族の家系であるジョースター家の宿敵。

 

 貧しい平民に生まれ、父ダリオ・ブランドーの死を機にジョースター家の養子となる。

 ジョースター家乗っ取りを画策するが、ジョナサン・ジョースターの活躍により計画が露呈。窮地に立たされる。

 危機を脱するため決意したディオは人間をやめる事を宣言し自ら石仮面を被り、不死身の吸血鬼と化した。

 ゾンビを生成し世界征服を目論むディオとジョナサンの戦いは熾烈を極めるが、太陽の力・波紋法を身に付けたジョナサンによって全身を溶かされ敗れ去る。

 

 だが、辛うじて首だけが助かり密かに生き延びたディオは再びジョナサンの前に立ち塞がる。

 失った体の代わりにジョナサンの肉体を手に入れ再起を図るも、最後の力を振り絞ったジョナサンと相打ちとなり、彼と共に客船の爆発に巻き込まれて海底へと沈んだ。

 

 その100年後、エジプト・カイロにて復活したDIOは新たなる力、『スタンド』に覚醒。再び世界を手にするべくその勢力を拡大する。

 ジョースターの血統、空条承太郎たちが自分の存在を察知、知覚、倒しにくることを予想したDIOは配下のスタンド使い数十名を刺客として差し向ける。

 空条承太郎たちはいくつかの犠牲を出しながらも刺客たちを突破。しかしエジプトでの決戦ではDIOのスタンド能力『世界』の前に全滅寸前まで追い込まれる。

 圧倒的有利に立ったはずのDIOであるが、激昂した承太郎との戦いにより形勢は逆転。最後はスタンドごと本体であるDIO自身も破壊され敗北、消滅した。

 

 ――以上が本来の歴史であるが、このDIOは「承太郎たちを倒し、自ら天国へ到達する方法を実行に移した並行世界のDIO」である。

 

【サーヴァントとしての願い】

 自身が所属する並行世界ごと存在を抹消されたため、聖杯で自分の存在を現世へと上書きし、受肉して復活する。

【方針】

 直接マスターやサーヴァントには手出しできないよう制限されているので、参加資格を失ったマスターやサーヴァントの魂を吸収し、スタンドの強化、魔力の補充から始める。

 

【マスター】

言峰綺礼@Fate/stay night

 

【マスターとしての願い】

 最後の勝者、それによって生まれ出づるものを祝福する。

 

【weapon】

黒鍵

 

【能力・技能】

洗礼詠唱

 主の教えにより迷える魂を昇華し、還るべき「座」に送る簡易儀式。

 霊体に対し強い干渉力を持ち、呪いを解く効果もある。

魔術

 強化を始め大抵の魔術に通じているが、平凡の域を出ていない。

 その中で治癒魔術だけは綺麗の『傷を開く』という起源に特化し、高い技量を誇っている。

八極拳

 修練により道から外れた独自の殺人拳と化している。

 

【人物背景】

 万人が「美しい」と感じるものを美しいと思えない破綻者。生まれながらにして善よりも悪を愛し、他者の苦痛に愉悦を感じる。悪党ではないが悪人。非道ではないが外道。

 若い頃は自身の本質を理解しておらず、この世には自分が捧げるに足る理念も目的もないと考え、「目的を見つけるのが目的」という生き方をしていた。あらゆることを他人の数倍の努力をもって身につけ、しかしそこに情熱はなく、時が来ればあっさりとそれを捨てて次に挑む、という行為を繰り返してきた。

 この頃の綺礼にとっての信仰とは、自身で見出した理想ではなく、ただ不完全な自身を痛めつける場であるという意識の方が強かった。

 第四次聖杯戦争の頃までは、そういった自身の在り方に懊悩していたが、聖杯戦争で出会ったギルガメッシュとの出会いをきっかけに吹っ切れた。その後は、ある種の悟りと余裕のある態度で生きている。

 

 ――この綺礼は、第五次聖杯戦争で「生存の可能性が無い」綺礼から再現された人物である。

 さらに意識には、3つの強い可能性のルートを辿った記憶が混在している。

 

【方針】

 結末も重要だが、それ以上にマスター達が戦う過程を楽しむ。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 光差すことない地の底。そこに天井が発光した空間内に無数の人間たちが集まっている。

 否、彼らは人間ではない。元々この世界の人間はマスター以外聖杯によって再現された者たちだがそれとはまた別の存在だ。

 わずかに高いステージのような床に、小さな人形が絨毯を転がして敷く。

「人間は生きようとしている。ただ生きるために。この世にあり続ける為に。

 ただそれだけのため、生命を永久に存続させようとする盲目的な衝動につき動かされて」

 その上を一人の少女が歩く。

「その為に、人は人を喰らう。10人いるなら、9人を生かす為一人を犠牲にする」

 少女の肌は浅黒く、瞳はX字。赤い衣装を身にまとい、声を地の底に響かせる。

「数え切れぬ数多の屍の山に築かれた殿堂、それが人類の繁栄の歴史」

 少女はその姿をミニチュアにしたような人形のもとで立ち止まる。

「そうして人類史の底に流れる、敗者達の血の大河から、私たちは産まれた」

 そして少女は手を振り上げた。

「我らの名はガラクシア!」

 その言葉に観衆は呼応し、叫ぶ。我らの名はガラクシア、と。

「我ら『亡霊』には過去しかない! この街に住まう者たちは繁栄を享受するために我々を切り捨ててきた!

 ならば教えてやろう、同志たちよ! 奴らが忘れ切った死と災厄を! 我らの怒りと憎しみを!

 その為ならば、私の命など惜しくもない! 同志諸君と同様に自爆して果てようではないか!」

 

 ガラクシア! ガラクシア!

 

 地下に歓声が沸き起こる。

 

 彼らは聖杯がリンクすることによってできた副産物である。あらゆる願望器をつなげたこの世界には、歪みや悪意から生まれた願いが叶えられた可能性も集まっている。

 その澱からできた悪性領域。そこから誕生した生きながら死に囚われた、何も生み出さない悪性情報『死相(デッドフェイス)』だ。

 ガラクシアはそれを導くため、召喚されたサーヴァントである。

 歓声を耳にしながらガラクシアは思う。

 

 私が聖杯を手に入れることは絶対にない。自分は打ち取られる事が予定されている、茶番劇の悪役だ。

 だが、それでもいい。元の世界では既に計画は失敗し、未来は彼らに委ねられた。

 いかなる未来を造るのかは知ったことではない。召喚された私にあるのは過去の恨みだけだ。

 教えてやろう、この地に集ったマスター、サーヴァントたちに、自分たちが繁栄するために切り捨てられた者たちの恨みを。

 そしてこの怒りしかないデッドフェイス達の支えとなろう。

 

 

【CLASS】

アヴェンジャー

 

【真名】

ガラクシア

 

【出典】

白銀のカルと蒼空の女王

 

【ステータス】

筋力C 耐久A+ 敏捷C 魔力B+ 幸運E 宝具A

 

【属性】

秩序・悪

 

【クラス別能力】

復讐者:B

 復讐者として、人の恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。

 周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情はただちにアヴェンジャーの力へと変わる。

忘却補正:C+

 人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。

 忘却の彼方より襲い来るアヴェンジャーの攻撃は、クリティカル効果を強化させる。

自己回復(魔力):B

 復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。魔力を微量ながら毎ターン回復する。

 

【保有スキル】

クラッキング:A(A+++)

 不正なシステム操作。電脳空間ならばコードを書き換え万能ともいえる能力を発揮する。

 分裂した並列処理により能力は飛躍的にアップする。

 

軍産複合体:A+

 兵器生産の為の計画立案、生産設備の開発、計画推進のための資産運用や権力者への根回し。それら全てを自分達だけで完結するネットワークを創り上げる。

 陣地作成、道具作成の複合変形スキル。

 

単独行動:EX

 マスター無しでも活動できる能力。

 

扇動:B

 人をある目的に向けて駆り立てる力。

 ガラクシアの場合、自爆テロを行わせるほどに人を狂わせる。

 

【宝具】

『ガラクシア・システム』

ランク:A 種別:対機(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:100機

 がラクシアを構成するオリハルコンチップで構成された加速分子状況結晶脳と、それを中核として肉体を構成するEマテリアル素子の集合体そのものが宝具である。

 自己増殖、自己再生、自己変形機能を備え、高度な自意識を持つ兵器。

 並列増殖システムと呼ばれる機能により次々と分裂して数を増やし、マインド・リンクにより兵士・装備・指揮官の全てを一体化した「ガラクシア機構」と呼ばれる軍団を形成する。

 奥の手として自身の身体をテルミット爆弾に変換し、自爆する。自身の『壊れた幻想』のため、生前より破壊力が向上している。

 自分を分割しても能力は全て同じだが、霊基を司るオリハルコンが分割されていくため、量が自我や知性を保つ限界量以下になると自分自身を保てなくなってしまう。

 

【weapon】

 自分自身の腕を砲や剣に変えられる。

 

【人物背景】

 地球とは異なる星、辺境の一小国だったフルクラム帝国は先史超文明の遺産であるEテクノロジーの一部解析、コピー、量産、学問としての体系化に成功。

 それを用いて世界制覇に乗り出し、達成目前だった戦争末期、抵抗を続ける空中都市ガラクシア王国で完成間近だった決戦兵器が、ガラクシアである。

 その兵器を危険視した帝国は新兵器を都市に向けて使用、都市を破壊しガラクシア王国50万の民をほぼ皆殺しにした。

 だが、死した彼らの恨みと憎悪はガラクシアの中核を為す『赤いオリハルコン』に受け継がれた。

 『赤いオリハルコン』はガラクシア王国の民の血を原材料に生成される物質で、光を閉じ込め、高度な演算器として機能し、魂さえ宿すとされる物だったのだ。

 戦後、帝国で一部のタカ派がガラクシアのロールアウトに成功。だが、自意識を持ったガラクシアは兵器として利用されることを拒み、独自に行動を開始。

 帝国が隠蔽したガラクシア王国大虐殺の事実をネタに政財界の大物を脅し、資金を貯め、散発的な政治活動を行う帝国に敗北した国の民衆やガラクシア王国の生き残りを集め、強固なテロ組織として再編。

 資金を元手に自ら兵器を設計、開発、増産する設備を作り、帝国への復讐を開始した。

 

【サーヴァントとしての願い】

 自分たちが作りだした闇を地に沈め、目を背け、忘却する人間達に応報と復讐を。

 

【方針】

 デッドフェイス達と共に自爆テロを敢行する。

 

 

 

 

……これにて説明は終了ですが……どうやら私に招かれざる客が来たようですね。

 

 アンティークショップ・美紗里の扉は唐突に斬り裂かれた。

 中に押し入ってきたのは6人の男たち。そのうち三人は右手の甲に痣がある。

『喧嘩の押し売りなら結構よ』

 椅子に座っていたミザリィは冷静に男たちに言い、店の掃除をしていたアビゲイル・ウィリアムズは男たちを睨んだ。

「喧嘩じゃない。聖杯戦争のマスターとして、あんたを殺しに来た。最後まで令呪を所持しているマスターが勝者なら、あんたもその一人だろ?

 そしてそこのアビーはサーヴァントだ。

 宣戦布告に来たマスター達に対し、ミザリィはため息交じりに壁にあるオオカミの柄を指さした。

『私が何のためにこの絵をかけていたと思っていたの? 勘のいいマスターなら気づいていたはずよ』

 そう言ってミザリィは冷酷な笑みを闖入者に向ける。

「ああ、もちろん知っている。だからこっちも三人組で来た。

 この序盤じゃなければあんたを殺すためだけの同盟なんてそうそう組めないからな。二体を抑え、残る一体のサーヴァントであんたを殺す」

『……じゃあ、貴方達には見せしめになってもらうわ。こういう私を殺せば聖杯獲得に近づくと考えるような連中が滅多に来ないようにね』

 そう言って、ミザリィは椅子から立ち上がった。

 

 ミザリィ達8人は店の外に出た。店内ではお互い戦いづらい。それゆえの処置だ。

『出番よ、アヴェンジャー』

 ミザリィがアビーのほかに契約しているサーヴァントを呼んだ。

 ミザリィの隣に現れたのは、体長3mを超える巨躯の狼。足にはトラバサミが嵌まっている。

 マスター達はそのサーヴァントは全員が予想した『狼王ロボ』で相違ないと思っていた。

 だが、その狼の背には両手に鎌を持った、首のない男が乗っており、マスター達は混乱した。どういうことだ? ロボの体格はともかくあの背の男は?

『このアヴェンジャーの真名は『ヘシアン・ロボ』。狼王ロボと『スリーピー・ホロウ』の騎士ヘシアンがとある世界で融合させられて誕生したサーヴァントよ』

 真名まで含めて正体を教えたミザリィに対し、マスター達はわずかに動揺した。絶対的な自信がミザリィの声から感じ取れたからだ。

「そ、そこまで教えていいのかよ」

 一方、三体のサーヴァントは動揺することなく、目の前の敵に対し剣や槍を構える。

『これから死んでゆくあなた達に対して名乗ったところでどうという事もないでしょう?』

 撫でつけるようにマスター達を見つめるミザリィは、懐からサーヴァントカードを取り出した。

『夢幻召喚(インストール)』

 ミザリィが唱えた瞬間、カードを中心とした魔法陣が展開し、そこから放出された光がミザリィとヘシアン・ロボに降り注いだ。

 光が繭を形成し、僅かながら外からも判別できるその中で、ミザリィとアヴェンジャーは光の粒になり、一体となってゆく。

 光が集まり、形成されたその姿は、やはり巨大な狼とその上にいるミザリィ。

 上に乗ったミザリィの格好はレザー皮で身を包んだ男の扇情を煽るような姿だ。

 予想外の出来事に狼狽するマスター達に対し、サーヴァント達は一切慌てることなく、ミザリィに獲物を向ける。

 どうせやることは変わらない。一体化したのならむしろ三体同時にかかればいいのだから手間が省ける。

 サーヴァント達に対し、ロボは足を溜める。その足が発光を始めた瞬間、ミザリィ達の姿が消えた。

 夢幻召喚で新たに得たスキル『魔力放出』を使った超々音速で壁を蹴り襲う三角飛び。それはマスターはおろかサーヴァントですら知覚できない動きだった。

 サーヴァントが迫ったと気づいたその時には、既にロボが一体の胴を喰い千切り、ミザリィが二体を両手に持った鎌で首を切り落とした。

 サーヴァントが一瞬で全滅したことで恐慌をきたしたマスター達は震え始めたが、僅かな希望が残っていることに気づいた。

 まだだ。令呪さえ残っていれば、極僅かながら復帰のチャンスはある。

 その思いだけを支えに三人のマスターは、脱兎の如くミザリィから逃げ出し。

『今更逃げるのはなしよ』

 ミザリィの伸ばした髪に、首を締めあげられ、宙に吊るされた。

『勝負の懸け賃を払ってもらうわよ。このままじわじわと絞め殺してあげるわ』

 冷酷な笑みを浮かべミザリィは死刑宣告をする。

 マスター達は首を掻きむしり、足を無意味にばたつかせている。その様をミザリィは薄笑いを浮かべながら眺めていた。

 いよいよ手足が小刻みに震え始め、絶命するその時、ロボが突進し、三人の首を嚙み砕いた。

 

 全てを終えたミザリィが胸に手を当てる。そこからカードが輩出された。

 するとミザリィたちは再び光の粒となり、ミザリィとヘシアン・ロボは分離し、それぞれ別の個体としてそこに立った。

「ミザリィ、この人たちの遺体はどうするの?」

 ここで初めてアビーが口を開いた。

『別に何も。放っておけば警察が来て、マスターだと分かれば監督役が始末してくれるわ』

 ミザリィは、最早ただのゴミを見るような目つきで死体を眺めながら答えた。

『ご苦労様、ロボ』

 ロボは一声唸り、霊体となって姿を消した。

『ヘシアン、一つ聞いていい?』

 ショップの出入口に行こうとしたヘシアンに対し、ミザリィは問いかけた。

『夢幻召喚で戦う以上、私はあなたの意志を無視していることになるけど、それでもいいの?

 あなた自身に何か望みはないの?』

 ヘシアンは何も反応を示さず、ミザリィに対し背を向けショップへ向かった。

『頭がなくてもゼスチャーくらいできるでしょうに』

 それを見たミザリィはかぶりを振った。

 

 店内に戻ったロボは、実体化し日中霊体でいた時もそうしていたように「眠れるオオカミ」「オオカミの勝利」の前に行き、伏せて絵を見つめた。

 

 何だ、この絵は。この絵を見ているとなぜか自分の気持ちが分からなくなる。

 

 一度、俺を捕まえたあの人間を遠目から見る機会があった。今までの『猟師』とやらとはまるで違う印象を受ける人間だった。

 だが、あの人間は今までの誰よりも細心で、一つの罠を造るのにも綿密で、罠を弾けばそれを糧に新たな罠を仕掛けるほど執念深く、俺達狼の習性を利用して罠を考案する程狡猾だった。

 

 そうしてついに罠に捕らえられた自分が、あの人間と初めて正面から対峙した時。

 奴は、他の人間と同様の歓喜と、それを上回る身の凍るような悲しみに満ちた表情を浮かべていた。

 

 ――どうでもいい。どうでもいいんだ、そんな事は! 俺はブランカを殺し、あろうことかその死体を辱め、罠に使ったあの人間を、人間共を許さない!

 一人残らず殺し尽くしてやる! そうだ、そのつもりだ……。

 だが、この絵を見ると己自身が分からなくなってくる。

 

 あれだけ狡猾で卑劣な罠を使った奴が、本当にこんな絵を描いたのか? 何故こんな人間に狼が復讐するような絵を描いたのだ?

 この絵を見ると、奴の表情が鮮明に蘇る。

 何故奴はもっと喜ばなかったのだ? 俺は狼で奴は人間だ。決して相容れない間柄のはずだ。

 何故あそこまで悲しげな顔を……。

 

 ロボはうずくまり、じっと絵を眺める。ヘシアンはロボの傍に寄り添うように立っていた。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

アヴェンジャー

【真名】

ヘシアン・ロボ

【出典】

Fate/Grand Order

【ステータス】

筋力A+ 耐久B+ 敏捷A+ 魔力E 幸運D 宝具B+

【属性】

混沌・悪

【クラス別能力】

復讐者:A

 被ダメージによるNP上昇率が高くなる。恨み、怨念が貯まりやすい。

 何があろうが、人間を殲滅する。

忘却補正:B

 その憎悪は決して忘れられることは無い。

 人類史に小さく刻まれた醜い傷跡として、いつまでも残り続ける。

自己回復(魔力):B

 人間の作った世界に存在する限り、彼は憎悪を牙にして餌を喰らい続ける。

透明化:D-

 気配を遮断するのではなく、薬品投与による人体の物理的な透明化。

 ヘシアン・ロボの存在力の高さから「近くにいるかどうか」は分かっても、具体的にどの座標に存在するかまでは読み取れない、というクラスランクの低さが逆にメリットになっている希少なケース。

 代償として凶暴性が増幅されてしまう……が、ヘシアン・ロボに関してはまるで関係はない。

【保有スキル】

堕天の魔:A+

 魔獣と堕ちた者に備わるスキル。

 天性に至る事は出来ない、人工の魔性。

 防御力の向上、状態異常の耐性など。

怪力:B

 一時的に筋力を増幅させる。

 魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性で、使用する事で筋力をワンランク向上させる。

 持続時間は『怪力』のランクによる。

死を纏う者:A

 周囲に災厄を振りまき、死をもたらす魔性の存在としてのスキル。

 乗り手となっているドイツ傭兵(ヘシアン)がデュラハンに連なる怪物に成り果てた事から。

 ロボの復讐心が具体的な外装となって、攻撃を可能とする。

動物会話:A

 言葉を持たない動物との意思疎通が可能。

 動物側の頭が良くなるわけではないので、あまり複雑なニュアンスは伝わらない。

 狼王ロボは動物なので人間を除いた自分より格下の生物に命令を下す事が可能。

【宝具】

『遥かなる者への断罪(フリーレン・シャルフリヒター)』

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大補足:1人

 二人の復讐心を形にした憤怒の断罪。

 一撃で首を刈る、絶殺宝具。

 因果を逆転するほどの力は持たないものの、宝具のレンジ内で微妙に世界への偏差を加える事によって『首を刈りやすくする』状況を形作る。

【weapon】

 首狩り鎌

 死を纏う者(外装)

【サーヴァントとしての願い】

 人間、それも亜人や異人ではない者を殺し尽くす。

 ……真に心の奥底で望むのは自分の子供たちの行く末。

【人物背景】

 3メートルを超す巨大な狼とそれに跨った首無しの騎士。

 バーサーカーのように言語能力を失ったのではなく、最初から人語を話せない。乗り手が主ではなく、狼の方が主。

 生前の出来事がきっかけで人間を憎んでおり、その憎悪は海より深く、人を喰らうのも空腹を満たすためではなく直接的な憎しみからである。

 

 その真名は『スリーピー・ホロウ』の逸話で知られるドイツ軍人『ヘシアン』と、シートン作『動物記』で有名な『狼王ロボ』の複合型サーヴァント。

 しかし虚構である彼らに召喚が成立する理由はなく、本来英霊にも到れず、サーヴァントとして召喚されることはない。

 そもそも生前全く縁のなかった者同士がパートナーとして結合することはありえないが、聖杯により『可能性の一つ』として抽出され、召喚が成立した。

【方針】

 ロボは基本的に思う通りに動く。ヘシアンは不明。

 

【夢幻召喚(インストール)】

ミザリィの服はヘシアンの衣装に似た、ボンデージファッションになる。

【ステータス】

筋力A+ 耐久B+ 敏捷A+ 魔力E 幸運B 宝具B+

【クラス別能力】

復讐者:A

忘却補正:B

自己回復(魔力):B

透明化:D-

【保有スキル】

堕天の魔:?

怪力:B

死を纏う者:A

動物会話:A

【追加スキル】

シェイプシフター:B+

 髪を操作、伸長させ、先端をドリル状の槍や月牙の様な刃物に変える事が出来る。

 ロボに纏わせ、身体能力を強化したり、武装させることが可能になる。

魔力放出:A+

 武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、 瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。自他の治癒にも応用できる。

 隠された左目を解放することで、さらに膨大な魔力が解放される。

【宝具】

『遥かなる者への断罪(フリーレン・シャルフリヒター)』

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大補足:1人

【weapon】

 首切り鎌

 死を纏う者(外装)

 シェイプシフター

 

【把握媒体】

アプリ「Fate Grand Order」とそのまとめサイト。画集のFate Grand Order materialがあります。

 

 

『アビー、何か言いたそうね』

 店内に戻ったミザリィは入り口近くのレジの席に腰かけ、近くに立つアビーに声をかけた。

「ミザリィは、この店に来たマスターにまるで『ゲームマスター』の正体を暴くようたきつけているに私は見えるわ。

 でも、さっきみたいに襲い掛かってきたマスターには容赦しないし、願いを抱くマスターの邪魔もしない。何が目的か私にはわからないわ。ミザリィはこの聖杯戦争をどうしたいの?」

 アビーは、最後の方は強い調子で問いかけた。

『私はマスターがただ『願いを叶える』。または『主催者を倒す』だけをやろうとするのはつまらないと思っているからよ』

 ミザリィは椅子の背もたれに寄りかかった。

『私は以前、魔女狩りの亡霊たちを退治した事があるのよ。死んでも尚己の過ちを認めようとしなかった奴らに、真実を突きつけてね』

 唐突にミザリィは話を変えた。それを聞いたアビーの胸が高鳴った。『魔女狩り』というその言葉で。

『でもね、アビー。あなたは亡霊たちが真実を、過ちを認めても尚罰しようとするでしょう?

 この世に罪無き人などいない。だから全ての人に苦痛と言う贖罪を与えようとする。それがあなたの抱く邪悪な赦し。

 いけない事、許されない事と思っていても、心の底にある邪神の悪意』

 違う。そうアビーは言いたかった。繰り返されるセイレムの魔女裁判で、アビーは魔女として処刑された人たちも、死してなお贖罪を乞う罪人である魔女狩りに加担した人物も救いたかった。

 でも、最後にアビーが辿り着いた結論は、ミザリィの言う通り、罪を犯した者を別け隔てなく救うため、永劫の苦痛をもって全人類を救罪する事だった。

『現実にいくらでも転がっている悲劇や絶望、人間が大なり小なり抱く欲望。それらは人を時に否応なく犯罪行為へと駆り立てるわ。

 でも、時に不幸であっても善なる心を失わず、戦う人もいる。身に余る欲望に、超自然的な何かがつけこみ破滅させようとしても、逆に一杯食わせて成功する人間もいる。

 そんな人生を脅かす超自然な罠や不幸や悪意に立ち向かい、暖かでしなやかな心を失わずに乗り越えて見せる人間達がいる。その過程で不幸が起こる事もあるけど、結局幸福との帳尻を合わせてしまうのよ、そういう人たちは。

 私はそんな人間を罪人と呼びたくないわね』

 それはアビーに対しても。ミザリィはアビーが邪神の悪意に対抗する限り、罪人ではない。そう言っているのだとアビーは悟った。

『私はそんな人間が大好きよ。だからゲームマスターの意図なんかぶち壊して、そうね、『願いを叶えて』『主催者を倒し、黒幕も暴いて倒す』。

 そんな予想外で贅沢な結末、雀のお宿で大きなつづらを選んで幸福を手にするような、そんな展開を私は見たいの」

「ミザリィは……」

『なに?』

「ミザリィは知恵と勇気を振り絞って、無敵の相手に一杯食わせる。そんな人間が好きだって言ったけど、じゃあ逆に嫌いな人間はいるのかしら?」

『私が嫌いなのは自分の『悪意』を肯定、実行するどころか人間だれもがそうだと開き直る、賢しらに悟ったような凡俗な人間。

 そんな奴らはもし超自然な力を手に入れても卑劣な行為しかできない。そんな人間は……破滅がふさわしいと思うわ』

 ミザリィは眉ひとつ動かさず、微笑を崩さずに言った。

 その姿を見たアビーは、ミザリィの人間に対する意志を理解できた気がした。

 

 ミザリィが悪人に厳しいのは、世界中にいくらでもいる、残酷な行為をしても咎められない人が嫌いだからだ。

 ミザリィが善人に温かいのは、例え異界の邪神であろうと負けない、人間の知恵と勇気を信じているからだ。

 ミザリィは、善良な人間に希望の光を。邪悪な人間には無慈悲な絶望を。相手にそれぞれ導こうとしている。

 私は……そんなミザリィはとても優しく、そしてとても残酷だと思う。

 

「ミザリィ。あなたは一体何者なの?」

 アビーの問いに、ミザリィは柔らかい笑顔と声色で答えた。

『さぁ……。アビー、あなたは何者だと思う?』

 

 

【マスター】

ミザリィ

【出典】

アウターゾーン

アウターゾーン リ:ビジテッド

【性別】

女性

【能力・技能】

 髪を操作、伸長させ、先端をドリル状の槍や月牙の様な刃物に変えて敵を襲う。

 髪の毛だけでも人間の手足を引きちぎる力を持つ。

 掌から長剣を取り出す。

 隠された左目を解放すると、膨大な魔力を放出し、敵を粉砕する。

 この魔力で人を含めた動物を治療する事もできる。

【人物背景】

 アウターゾーンへの案内人(ストーカー)を語る謎の美女。

 様々な場所、時代、時には地球外の惑星にも表れる。

 性格は気まぐれで悪戯好き。基本的に人間にはオカルトグッズの商売や世間話程度の干渉しかしないが、深くかかわる事もある。

 善人や子供には優しく、悪党や敵対する相手、傲慢な人間にはドSになる。

 悪事を働く人間でも何かしらの事情があるなら、それを斟酌して温情をかける。

 一方で人間の悪意や殺人にも興味があり、単なる善人ではない。かといって悪人でもない。

 『偶然』という形で手を貸したり『不幸』という形で試練を与えたりもする。

 そんな彼女が一番興味を持つのは、アウターゾーンに迷い込んだ人間の『意志』。そして、自らの力で不遇な境遇を幸福な結末として実現しようとする人間の姿だ。

 彼女は、自然に逆らい制御しようとし、運命が決まっているとしてもそれと戦い、超自然的な何者かに抗うどころか一杯食わせるような強靭でしなやかな意志を持ち、それでも己の良心を失わない人間が大好きなのだ。

【マスターとしての願い】

 案内人ではない、一人のマスターとして聖杯戦争を楽しむ。

 だが、聖杯戦争の裏で何者かがマスター達の『悪意』を強引に集め、利用しようとしていたのならば潰す。

【方針】

 裏手にいるかもしれない『黒幕』に挑もうとする聖杯戦争のマスター達のみが集うまで基本的に自ら戦いに出たがらないが、マスターが敵になるなら容赦しない。

【ロール】

 『アンティークショップ・美紗里』の店主。

【令呪の形・位置】

 左手には牙をむいた狼の横顔に、クロスした首切り鎌が置いてある。

 右手には尾を引き、鍵が中央を貫いている八芒星のデザイン。

 ミザリィは自分の長い耳を隠すのと同じ要領、かつより強い力で令呪を隠している(ミザリィは手の甲をファッションで覆っている事が多いので、あまり意味は無いかもしれない)。

【把握媒体】

 コミックスは全15巻。文庫版は全10巻。

 続編のリ:ビジテットは現在3巻まで発売されています。

 

【サーヴァント】

【CLASS】

フォーリナー

【真名】

アビゲイル・ウィリアムズ

【出典】

Fate/Grand Order

【ステータス】

筋力B 耐久A 敏捷C 魔力B 幸運C 宝具A

【属性】

混沌・悪

【クラス別能力】

領域外の生命:EX

 外なる宇宙、虚空からの降臨者。

 邪神■■=■■■■に魅入られ、権能の先触れを身に宿して揮うもの。

狂気:B

 不安と恐怖。調和と摂理からの逸脱。

 周囲精神の世界観にまで影響を及ぼす異質な思考。

神性:B

 外宇宙に潜む高次生命の"門"となり、強い神性を帯びる。

 世界像をも書き換える計り知れぬ驚異。その代償は、拭えぬ狂気。

【保有スキル】

魔女裁判:A+

 本人が意図することなく猜忌の衝動を引き寄せ、不幸の連鎖を巻き起こす、純真さゆえの脅威。

正気喪失:B

 少女に宿る邪神より滲み出た狂気は、人間の脆い常識と道徳心をいとも容易く崩壊させる。

信仰の祈り:C

 清貧と日々の祈りを重んじる清教徒の信条。

【宝具】

『光殻湛えし虚樹(クリフォー・ライゾォム)』

ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:∞ 最大補足:1人

 人類とは相容れない異質な世界に通じる“門”を開き、対象の精神・肉体に深刻なひずみを生じさせる、邪悪の樹クリフォトより生い添う地下茎。

 効果対象は“鍵”となるアビゲイル個人の認識に束縛される。それゆえの対人宝具。

 本来ならば対界宝具とでもいうべき、際限のない性質を有している。

【weapon】

銀の鍵

 あらゆる時間、空間に繋がるための呪具。異界の邪神やその一部を召喚するのにも用いる。

【サーヴァントとしての願い】

 全ての人間に救罪を。

【人物背景】

 17世紀末。清教徒の開拓村セイレムで起きた「魔女裁判事件」。

 最初に悪魔憑きの兆候を示した一人が当時12歳の少女アビゲイル・ウィリアムズだった。

 悪魔憑きの異常な症状は他の少女たちにも伝播し、およそ一年に渡って多くの村人が告発された。

 その結果200名もの逮捕者、うち19名もの絞首刑、2名の獄死、1名の拷問死という惨劇を招いた。

 少女たちの真意やその引き金となった要因などについては、1692年以降アビゲイルの記録が文献から消失したため、いまだに多くの謎が残されている。

 

 以上の歴史はある魔神によって歪められ、アビゲイルが英霊として昇華されるために利用された。

 

 清教徒の信徒としてのアビゲイルは、神を敬い、感謝の祈りを欠かさぬ無垢の少女だ。多感で疑う事を知らない年頃の娘に過ぎない。

 

 清貧を信条とする清教徒たちは、権威におもねる教会の弾圧を逃れて海を渡り、新世界へと至る。しかしやがて彼らは追いつかれ、追い詰められた。彼らの抗議(プロテスト)の矛先は、身近な隣人へと向けられた。

 

 退廃と抑圧の世にこそ“英雄”が立ち上がるように―――

 自分を律するはずの潔白の信条は、他者を監視する道具となり、戦乱と略奪が繰り返される植民地の不穏な暮らしは、猜疑心と利己心を育んだ。

 

 ―――彼らはやがて心の底に狂気を、“魔女”を求めるようになる。私たちのこの不幸と苦しみは、悪魔の仕業でなければ何なのだ、と。

 

 果たしてセイレムに魔女は現れ、凄惨な魔女裁判の門は開かれた。“鍵穴”となる狂瀾たる状況。人々の欲望を映しとり“鍵”となった少女。

 その両者が欠かせぬのだとしたら、さて、罪はどちらにあるのだろうか。

【方針】

 ミザリィの行動に従う。

 

【夢幻召喚(インストール)】

リ:ビジデットのみぃこの姿で、アビーの格好になる。

【ステータス】

筋力B 耐久A 敏捷C 魔力B 幸運C 宝具A

【クラス別能力】

領域外の生命:EX

狂気:EX

神性:B

【保有スキル】

魔女裁判:―

正気喪失:B

信仰の祈り:―

【追加スキル】

香木の箱:EX

 銀の鍵で開けると触手が周囲のものを中へ引きずり込み、外宇宙へと放逐する。

魔力放出:A+

 武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、 瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。自他の治癒にも応用できる。

 隠された左目を解放することで、さらに膨大な魔力が解放される。

【宝具】

『光殻湛えし虚樹(クリフォー・ライゾォム)』

ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:∞ 最大補足:1人

 

【把握媒体】

アプリ「Fate Grand Order」とそのまとめサイト。画集のFate Grand Order materialがあります。

 

注意:この聖杯戦争で夢幻召喚が出来るのはミザリィのみです。

ですが、マスターとサーヴァントの絆を強めれば他のマスターにも出来る可能性がわずかながらあります。なお、基本的にステータスは1ランクダウンします(マスターの強さによってはダウンしない場合があります)。

その場合、マスター、サーヴァントの能力が混じり合い新たなスキルが発現するかもしれません。

 



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【オープニング】【本戦開始前】
【オープニング】【本戦開始前】01 Non-Interfering Correlation マスター 朝倉涼子 サーヴァント ランサー クー・フーリン〔プロトタイプ〕


登場キャラクター
マスター 朝倉涼子
サーヴァント ランサー クー・フーリン〔プロトタイプ〕

作者
◆K2cqSEb6HU


「朝倉さーん!」

 

 散り散りに下校しようとするNPC達が行き交う玄関フロアの中で、

同級生に当たる女子NPCの連中に呼ばれ、朝倉と呼ばれた少女が振り向いた。

少女の名は“朝倉涼子”。この世界で行われる聖杯戦争に参加するマスターである。

ここはパラディウム・シティに設立された教育・研究機関「アカデミー」。

彼女に与えられたロールは学生であり、今のところは学業に準じている。

 

「この後、みんなでカラオケに行こうと思うんだけど、朝倉さんも一緒に行かない?」

「ごめんなさい。私はこれからちょっと用事があるから……。」

「――おう、やっと終わったみたいだな。」

 

 フォーマルな服装をした青年が涼子の下へとやってきて、声をかけた。

彼も相当なイケメンな部類だけあり、ワイルドさ溢れる姿に女子NPC達も興味を示した。

 

「もしかしてこの人、朝倉さんの彼氏?」

「……ええ、まぁ、そういうとこ。」

 

 青年も涼子も青色をイメージカラーとしているだけあり、並べてみるとお似合いのカップルにも見えた。

NPCも彼氏であることがわかると、それ以上のことは言わなかった。

 

「じ、じゃあ、お邪魔しない内に私達ももう帰るね。また明日~。」

「ええ、また明日ね。」

 

 涼子は聖杯戦争に参加する前は別の学校へ通っていたこともあるので、

慣れるのは時間は要してはいなかった。

さらに持ち前の社交性もあってか、ここアカデミーでも早々にクラスに順応し、

異性問わずに高い人気を見せている。

笑顔で先に帰るNPC達を見送ると涼子は傍らにいる青年に話しかけた。

 

「もう……もうちょっと待ってくれても良かったのに。」

「なんだ?気でも悪くしたか?」

「悪くしてないけれども……まぁ、いいわ。」

 

 涼子は切り替えるように話を振ると、青年は聖杯戦争に関することを言及した。

彼は涼子と契約したサーヴァントである。クラスはランサー。真名はクー・フーリン。

“クランの猛犬”で知られるケルト神話の大英雄。その若かりし頃の姿が彼なのだ。

 

「それじゃあ、早速今から用事を済ましに行こうかしら。」

「戦いに行くのかい?まっ、即断即決は良いことだけどな。」

 

 涼子なりの情報収集能力によりマスターについて探りを入れていた。もちろん、攻めるためにだが。

この主従の方針はとにかく打って出ることにある。涼子が“とりあえずやってみる”という主義であり、ランサーもその点は特に異論はなかった。

優先的対象は現時点の活動拠点たるアカデミーにいる他陣営からである。

 

「しかし、カラオケか。そいつも悪くないねぇ。暇があるなら行ってみてえもんだな。」

「ランサー?今は、聖杯戦争中よ。流石にそんな余裕もないんじゃないかしら?

「まぁ、そういいなさんなっての。聖杯戦争って言ったところでどうせ今は開始してもいねえわけだし、余裕なんていくらでもあるだろ。」

「うーん……。どうかしら?まぁ、気が向いたら気分転換に考えてみようかしら。」

 

 涼子としてはあまり賛成していなかったが、ランサーとしてはどこか乗り気であった。

そのまま会話を弾ませながらも玄関とは異なる方角へ向かうと。中庭を通じて別の棟を目指していった。

 

 

 

 

 

「…………留守ね。」

「まぁ、そんな上手いこといかないわな。」

 

 研究室の前まで来たが、間の悪いことに今日は不在のようで、どうにも当てが外れてしまった。

ランサーはどこか笑いながら、涼子を慰める。

現段階で突き止めた情報から、“遠坂凛”なる人物がいることが判明した。

凛は研究室を与えられているほどのエリートらしく、涼子にとっても近づけやすい人物に当たる。

 

「また、出直して来るか?」

「……とりあえず、手紙でも置いておいていくわ。それで何の反応もなかったら、また来ましょう。」

 

 デジタルな世界にしてはアナログな類の手段だが、敢えて手紙で伝えることとした。

メールといったネットを介した連絡になるとセキュリティに引っ掛かるため、この方が楽な点もあったわけだ。

 

「やっぱり、早かったかもしれないわね……。」

 

 今回は諦めることにした。まだ開始前だけあるので、涼子も流石に気が早かったかもしれないとも思っている。

朝倉涼子は「情報」という概念の扱いに対しては常人よりも優れていた感覚を持っている。

それ故に社会上の履歴や行動から、マスターの役割という社会情報を割り出すぐらいなら容易なことであった。

しかし、情報というのは源が無ければ発生しないし、いくらなんでも行動を完全に把握していられるほどのものではない。

また、この世界のセキュリティというのも侮れず、涼子でも情報規制を突破できるレベルではないためか、深い情報を盗み出すことできなかった。

涼子達はそのまま踵を返すと、研究室を後にした。

 

 

 

 

 

 互いに廊下を通じて人気のないオープンスペースにまで来ると、自販機から

紙コップタイプのドリンクを購入して、テーブルに座わって休憩することとした。

 

「そういえば、ランサーはどんな目的があって聖杯戦争に参加したの?」

 

 涼子は購入したウーロン茶を飲むととりあえずなんでもいいから話題を振ろうと、ランサーの目的について切り出した。

当然、サーヴァントも意思を持つ存在なので、目的なしに召喚に応じるわけがない。

聴かなくとも別に問題がなかったので、初召喚時からしばらく経過した今まで聴かなかった。

 

「あん?なんだ藪から棒に。」

「私達、そこまで話あった仲でもないじゃない?これを機にランサーのことについても聴いておきたいの。

別に深い話まで知りたいわけじゃないけども、目的ぐらいは共有してもいいじゃない?」

 

 涼子としてもクー・フーリンがどんな人物かは知らなかった。

一般的な日本の女学生にとってケルト神話はまず無縁だ。涼子もクー・フーリンについては聖杯戦争で初めて知った。

無論、端末を通じてネットで調べて概要を知るぐらいのことはしているが、

重要なのは物語のクー・フーリンではなく、目の前にいるクー・フーリンだ。

聴かなくとも別に進行に支障が来す相手でもなかったので、初召喚時からしばらく経過した今まで

聴かなかったが、ちょうど今なら聴いてもいいだろうと思った。

 

「そうさな。そりゃあ、強いて言うなら死力を尽くした戦いってところだな。

呼ばれた以上、全力で戦えなけりゃあ来た甲斐がねえからな。」

 

 ランサーは“戦いである”と答えた。

彼ならずケルトの英雄というのは戦いを好む気質がある。召喚に応じた目的もそうした戦いに基づいての現界であった。

涼子はランサーの好戦的な性質を理解して、今後の意向も考慮することとした。

 

「とはいえ、サーヴァントとしてアンタの意向を優先するよ。よほどの命令でない限りは従うつもりだ。」

「それに俺としても、アンタみたいなマスターの下で戦うのは悪くはないからな。

一見すると柔に見えるが、強情で肝が据わっているときている。美人なのも申し分ない。」

 

 ランサーは表向きは荒っぽいが、根は正直者で忠義に厚い人物だ。

 よほど気に食わない命令でない限りはサーヴァントとして従う意向を示した。

それに加え、ランサーとしては涼子は好みの範疇に入るらしく、男性的な面からしても満更でもない様子だった。

 

「そう?それは嬉しいわね。じゃあ、ランサーとしてはもしも聖杯が手に入ったら、何かしたいこととかそういうものはないわけ?」

「聖杯ねぇ。そこまで興味はないが、手に入れてから考えるかね。」

 

 聖杯について問うと、ランサーはそれに対して二の次三の次であると返した。

聖杯の存在に何と思うこともないが、大きな期待を抱いているわけではない。

運よく勝ち残って手に入ったら、その時はその時。それぐらいの認識であった。

 

「そういう涼子としては何が目的なんだ?何もなしにここまでやろうとしているわけじゃねぇだろ?」

「うん。私の目的は、もちろん聖杯の入手よ。でも、別に願いはかけるわけじゃないの。

聖杯の情報創造能力を解析して、上にいる人に送ることが使命といったほうがいいかしら。」

「使命?誰かアンタの上に構えている奴がいるってことか?」

「ええ、そうなの。私自身が世界を創りたいとか、そういうわけじゃないのだけども、

上にいる人はそれを必要としているの。だから、得るために戦うのが私の目的ね。」

 

 ランサーは“なるほどな”と頷いた。

涼子はあくまで使者として、聖杯の機能自体を観測対象と捉えている。

聖杯は万人から見れば「願望器」に違いないが、そのものを概括的に指すなら一つの「機械」であることも違わない。

涼子の目的もまた解析して情報を得るために利用することであった。

 

「まぁ、アンタにもそれなりの事情があるってことかね……。

なに、深くは突っ込まねえよ。勝ったら聖杯はアンタに捧げる。俺がやることはただそれだけだ。」

「ありがとうね、ランサー。……さて、そろそろ行きましょうか。」

 

 ランサーとしても涼子の事情に深く首を突っ込む気はない。

 一線を引くのも人付き合いにとっては必要なことだとわかっている。

すべきことは勝って聖杯をマスターに捧げることなのだとランサーも察した。

涼子達は飲み干した紙コップをゴミ箱に捨てると、今日は早々に帰ることにした。

 

◇   ◇   ◇

 

 実の所、“朝倉涼子”は普通の少女ではない。

『対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース』。

略称「TFEI端末」。銀河を統括する情報生命体『情報統合思念体』の手で製造された有機アンドロイドの一種。

有機生命体(即ち人類を指す)と接触し、それによって得た有益な情報を上層部を送るための端末が彼女の正体である。

 

 彼女が製造されたことには理由があった。

統合思念体は高度な知性こそ有しているのだが、力が及ぶのは既存として成立されている情報に限られている。

無から情報を創造する力。即ち、自律進化に対して希望的観測に見出せず、未だ模索している状況下にある。

そこで、“涼宮ハルヒ”なる観測対象から自律進化の可能性を秘めた情報が得られるという推測の基に、製造されたということだ。

今回、仮想空間へと招待された涼子が観測対象に置く聖杯もまたイレギュラーながら、自律進化の可能性があると考えられている。

これにより聖杯から発生する情報創造を下に、自律進化の糸口を掴むことが涼子の真の目的というわけだ。

 

 だが、当の統合思念体にとってはあまりに希望的な観測がされていない考えも否めない。

イレギュラーな案件である聖杯は、統合思念体側にとっても未知数で、また参加以外で聖杯戦争へは干渉できないため不明だからだ。

さらに入手するためには不確定的な障害も多く、朝倉涼子の生存確率は極めて低い数値を想定されている。

 ただ、涼子としてはそれでも構わなかった。

“やらなくて後悔するよりも、やって後悔した方がいい”。

それが朝倉涼子にとっての真意である以上、迷うことなどない。

 

 聖杯は獲る。他の有機生命体のことなど構わず、私達のために使わせてもらう。

 

 

【クラス】

ランサー

 

【真名】

クー・フーリン〔プロトタイプ〕@Fate/Prototype

 

【出典】

Fate/Prototype

Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ

Fate/Grand Order

 

【性別】

男性

 

【パラメーター】

筋力A 耐久C 敏捷A+ 魔力B 幸運D 宝具B

 

【属性】

秩序・中庸

 

【クラススキル】

対魔力:C

ランサーのクラススキル。魔術に対する抵抗力。

魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

 

【保有スキル】

神性:B

その体に神霊適性を持つかどうか、神性属性があるかないかの判定。

 

ルーン魔術:B

スカサハから与えられた北欧の魔術刻印、ルーンの所持。

ルーンを使い分けることにより、強力かつ多様な効果を使いこなす。

攻撃以外で主に使用するのは対魔力スキル相当の効果、千里眼スキル相当の効果、パラメーターを上昇させる効果、等。

これらはすべて一時的なものであり、同時複数の使用はできない。

 

矢避けの加護:B

飛び道具に対する防御スキル。ランサーのそれは先天的なもの。

攻撃が投擲タイプであるなら、使い手を視界に捉えた状態であれば余程のレベルでないかぎりランサーに対しては通じない。

 

獣殺し:B+

魔獣や野生生物に対する特効。魔獣の性質をよく知るクー・フーリンは、獣の殺し方を知っている。

 

【宝具】

『穿ちの朱槍(ゲイボルグ)』

ランク:B/B+ 種別:対人/対軍宝具 レンジ:2~4/5~40 最大補足:1人/50人

対人刺突、対軍投擲の二種の攻撃法を持つ宝具。別のクー・フーリンが持つ『刺し穿つ死棘の槍』と変わってないとされている。

 

対人刺突では、槍の持つ因果逆転の呪いにより、真名解放すると「心臓に槍が命中した」という

結果をつくってから「槍を放つ」という原因をもたらし、必殺必中の一撃を可能とする。

なお、因果操作の判定を回避しても、槍を完全に避けなければ負傷と回復阻害の呪いを残される。

これは因果を逆転させる「原因の槍」であるため、

余程の幸運が無い限りはこの世にこの槍が存在する限り、これによる傷を癒す事は出来ないからである。

 

対軍投擲では、威力を重視して炸裂弾のように一軍を吹き飛ばすものとなっている。

必中効果こそ健在であるものの、運命干渉といったものまでは無いため、心臓に当たるわけではない模様。

 

【weapon】

「急造の槍」

ゲイボルグとは別に通常武器として使用している槍。

元は何処かで行われた聖杯戦争にて、宝具を切り札として残すために用意されたものであるが、現在でも数本を所有している。

サーヴァント用に作った武装としてはなかなかの耐久度を持つ。

 

【人物背景】

クー・フーリン。ケルト、アルスター伝説における無双の大英雄。

太陽神ルーの血を受けた『光の御子』であり、クランの猟犬の異名を持つ。

影の国の女王スカサハの下で鍛錬を積み、数々の魔術と体術を会得し、授かった魔槍ゲイ・ボルクで幾多の武勲を残した。

 

同じ真名で召喚されることのあるランサーとは同一人物であるが――肉体も精神もこちらの方が年若い。

推定年齢は20歳程で、時期はアルスター王国とコナハト王国との間に起きた7年にわたる戦争を指す「クーリーの牛争い」の最中に相当するという。

 

性格は荒っぽいが、根は正義寄りで筋は通すなど、さっぱりして気持ちのいい人物。

ただ、精神性についてはこちらの方が若者然としており、世の理不尽、善悪の等価値さなどを飲み込めるほど、大人ではない。

そうした精神性や経験力の違いが表れているのか、こちらでは「戦闘続行」や「仕切り直し」を持たないなど差異が見られる。

 

【サーヴァントとしての願い】

死力を尽くしての戦い。聖杯はマスターにでも捧げる。

 

【方針】

よほど気に食わない命令でない限りはサーヴァントとして従う。

 

【把握媒体】

小説「Fate/Prototype」およびゲーム「Fate/Grand Order」などをご参照ください。

FGOに関しては動画サイトでもプレイ動画が上がっております。

 

 

【マスター】

朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱

 

【出典】

涼宮ハルヒの憂鬱シリーズ

 

【マスターとしての願い】

聖杯を手に入れて情報創造能力を観測する。

 

【能力・技能】

『対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース』

宇宙に広がる情報系の海より発生した情報統合思念体によって製造された人型の端末。通称「TFEI端末」。

個々人で意思を持っているが、統合思念体側の意志に基づいて動いているものとされている。

複数に分かれている意志の内、涼子はその内「急進派」に属してる。

優れた科学的情報理解力を有し、周囲の環境を情報として解析し、

それを基に干渉・改変する情報操作能力などを持つ。

例に挙げると、自身の制御下に置く異空間の展開や周囲の既製物体を刃物といったもの変化して用いる攻撃、

一定範囲に張るバリア、対象の固定などが見られる。

また、その性質からかコンピュータといった情報媒体との高い親和性も持ち合わせており、

(他個体の長門有希によるものであるが)ハッキングを通じたプログラムの修正によって、敵のチートをブロックする描写もある。

 

朝倉涼子の場合、元が長門有希のバックアップ要員であるからか、プログラムやセキュリティの一つ一つが甘いという。

 

【weapon】

サバイバルナイフ:殺害行為へ及んだ際に使用したもの。

 

【人物背景】

県立北高校1年5組のクラス委員長を努めていた少女。

その実は特異点「涼宮ハルヒ」を観測するために送り込まれた端末の一体。他個体である長門有希のバックアップ要員として活動していた。

 

素行良好かつ物腰柔らかな人物で、周囲の人物によく世話焼く様子が見られるなど面倒見の良い優等生。

誰にでも分け隔たりなく接するなど社交的な面もあり、同校内のクラスでは男女を問わず人気や人望も高かった。

一方で、有機生命体とは価値観が違うため、人並みの感情が理解できず、死の恐怖を抱く対象を目の前にして冷淡に対応するなど人間性が欠如している面もある。

 

急進派の意向に則って関係者のキョンの殺害を企て、涼宮ハルヒが起こす情報爆発を観測としようとしたものの、異常を知覚した長門により妨害。戦闘の末に情報結合解除されると、消滅してしまった。

その後は、長門の情報操作によって「急遽父親の都合でカナダへ引っ越した」として処理され、早々に退場となった。

 

【方針】

積極的に他陣営を攻めていく。一先ずは身近な敵を倒すため、役割に準拠しつつ活動するが、戦況によっては放棄する。

同盟については考えていないが、総合的なメリット次第で一時的に組むつもり。

 

【ロール】

アカデミーに在籍する生徒。

 

【把握媒体】

小説1巻・アニメ1~4話などをご参照ください。

※登場期間が短いキャラになりますが、その後も「涼宮ハルヒの消失」(小説・映画など)及びゲーム「涼宮ハルヒの追走」などにも登場しておりますので、そちらもお薦め致します。「追走」は動画サイトなどでプレイ動画が上がっているかと思います。

 



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【オープニング】【本戦開始前】02 未知への可能性~ガルドの長+バーサーカー マスター ザキラ サーヴァント バーサーカー バラモスゾンビ

登場キャラクター
マスター ザキラ
サーヴァント バーサーカー バラモスゾンビ

作者
◆vV5.jnbCYw


生を全うする最期の瞬間に見たのは、凄まじい光だった。

ただの光ではない。人も、クリーチャーも、のべつ幕なしに全て飲み込んでいく六大神の光。

神に逆らう存在を全て、分子一つ残さず消しつくす光を受け、その先にあったのは全く異なるものだった。

目に映ったのは、一片の光も見えないほどの闇。

両の目を覆いつくすのでは飽き足らず、視神経の奥底まで侵略してくる闇。

 

――――――闇

闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇

闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇

闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇

 

 

闇の力を持ったカードを手にし、闇を繰り、破壊を繰り返した自分でさえも慄くほどの、一切の光を許さぬ、深淵にしかない闇だった。

死してなお何かを求めるなど、滑稽なことこの上ないが、神に逆らった罰か、未来永劫光が当たることは無いように感じた。

だが、恐れこそはあるが、未練はない。

自分は最後の最後まで、ガルドの長としての矜持を守り抜き、戦い抜いた上で死んだ。

 

 

ただ唯一気になることは、自分と共に戦い、共に死んだ者達。

最期に神の光を浴び、自分と共に死ぬことを選んだA(アッシュ)

自分の計画に協力し、命を擲ったO(オアシス)

同じように死したのならば、同じ場所にいるのではないかと気になるが、その気配を感じない。

 

 

自分だけ、特別に地獄の深淵へと送られたか。

答えは出てこない。

聴覚はおろか、視覚さえにもその疑問に答える物は現れはしない。

 

 

 

それから幾日、もしくは幾年経ったか分からないが、風の音さえ聞こえず、目の先には黒一色のままだ。

何も変わらずあるのはただ、永遠の静寂、そして永遠の闇だけ。

 

 

嘆きわめくつもりはないが、ガルドの一員として生を受けてからずっと戦いに身を投じていた自分としては、闇の冷たさ以外の刺激がないこの世界は、どうにも退屈だった。

音もなく、視界もなく、味や匂いなど以ての外。

地獄と言うのはありとあらゆる責め苦を受けるものだと聞いてはいたが、このような場所だというのなら、痛みの一つでも与えてくれた方がまだ良いぐらいだ。

一切の感覚を遮断されれば、狂ってしまうのが人と言うもの。

だが、ガルドとして鍛え抜かれた精神によるものなのか、はたまたそういった仕組みになっているのか、そうはならなかった。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

突然光が現れた。

 

「……ふむ」

 

青白い肌と赤い瞳、不死鳥の翼を彷彿とさせる銀髪を逆立てた髪型が特徴的な青年が、どこにでもありそうな町に降り立つ。

Z(ザキラ)は久方ぶりの景色を見渡し、どこか懐かしげな景色に、彼らしくもない安穏として表情を浮かべる。

最後に死した時、ほとんど服も失っていたはずなのに、なぜかガルドの中心に居る時に来ていた服を着ていた。

 

色を、光を、喧騒を、人や自然が作り出す匂いを一通り受け止めると、思考を練り始めた。

そして自分がいるのは、かつていたことのある街だということに気付く。

三大神、ヘヴィデスメタルの力を使い、破壊の限りを尽くし、その果てに決闘者(デュエリスト)、切札勝負に敗れた東京だ。

 

 

最もあれから時が流れ再建したのか、似て非なる場所なのか、破壊の痕は何一つ見られないが。

少し歩くと、『アンティークショップ・ミザリィ』と書かれた大きな看板が印象的な店を見つけた。

不思議な感覚を覚えた。

店こそは東京の街並みに紛れてもおかしくないデザインなのだが、そこから感じるのは、インドにあった三大神が奉られる神殿と同じ、神聖な近寄りがたい雰囲気だ。

何かの縁かと、中に入る。

 

 

「いらっしゃいませ」

「………」

 

金髪をベースにそれとは対照的な紫髪を一房交えた独特な髪型の店員が挨拶する。

それはどう見ても人の姿をしている。

しかし、そこから発せられる雰囲気は、クリーチャーのそれだった。

とはいえ、人型のクリーチャーもいるため、この女性がクリーチャー他の決闘者に操られているクリーチャーだとしても、格別おかしい話ではないが。

 

 

「もしかすると、あなたがお探しなのはこれではないですか?」

商品と言うより、奇怪な雰囲気を放つ店そのものを見渡していると、店員が声をかけてきた。

 

「………!!」

差し出がましいことをするなと言い返そうかと思えば、女性が手に取った3つの虹色の石を見て、出す言葉を失った。

闇を求める者こそ光に惹かれるというが、この時のザキラがまさにそうだった。

まるで光に吸い寄せられる虫の様に、焦点がその石に釘付けになり、気が付いたらその石を渡されていた。

 

 

元々金剛石のや特別な力を持ったカードの様に光を放っていたそれは、さらに強く光を放ち始める。

 

 

「ザキラ、あなたこそこの力を使うに相応しい者です。」

 

 

なぜ自分の名前を知っている。

貴様は一体何なのだ

この石には何があるのだ。

 

 

聞きたいことは僅かな間に嫌というほど増えたが、それを聞く間もなく、視界から店が消えていく。

光が消えて、そこに現れたのは果てしなく続く宇宙空間。

永きに渡り暗闇と共にしてきたので、こちらの方が落ち着くぐらいだ。

前の闇とは違い、見上げれば満天の星空が煌めくので、退屈な景色という訳でもない。

 

 

「……?」

空を見上げてから、視点を前に戻すと、影のような何かがもぞもぞと動いているのが見られた。

影は粘土細工のように形を成していく。

 

 

やがて、4本足の獣のような姿になっていった。

どこか、南極で戦った偽X(キサナドゥ)の分身を彷彿とさせる。

鳴き声は上げずに、その影は黙って襲い掛かって来る。

 

 

それを無言で殴り飛ばす。

手ごたえはあったが、大してダメージを与えたという様子もない。

 

 

ザキラは熟考する。

かつて自分たちガルドは、デュエルによる敗北以外では死なない、不死の体を与えられた。

だからこの怪物も、何か殺すためのトリガーがあるのかもしれない。

 

 

そのカギになるのは、恐らくあの時手に掴んだあの道具だ。

あの店で手にした石を服から出そうとする。

しかしその手に掴んだのは、どういう訳かカードだった。

 

かつてDM(デュエルマスターズ)のカードから、クリーチャーを償還するかのように、その札を天高く掲げる。

 

 

「クガアアアアアアアアアアア!!!!」

けたたましい咆哮と共に、死を纏った怪物が現れた。

 

 

紫の骨の怪物、とは言っても、その骨格も大きさもとても人間のものとは思えない。

そして怪物は骨だけの拳を固め、影の獣に殴り掛かる。

たった一撃、それだけで影は粉砕され、二度と動かなくなる。

 

 

しかし安堵する間もなく、似たような形で2匹の影(シャドウ)の獣が現れた。

ザキラが呼び出したサーヴァントは、あろうことか自分の頭を取り外し、敵目掛けて投げつけた。

力に見合った剛速球を受け、1匹目は飛び散る、

ブーメランか何かの様に頭は持ち主の首へと帰り、2匹目も肉弾戦で殺すかと思いきや、超低温の息を吐き出し、凍り付かせる。

まるで本当の生き物であるかのように、怪物は氷に閉じ込められ、動かなくなった。

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

しかし、シャドウを一通り殺しても、殺したりないのか、今度はザキラ自身に襲い掛かってきた。

巨体の拳が、ザキラ目掛けて振るわれる。

当たればシャドウと同じようにザキラも死んでしまうはずだが………。

 

 

「誰が主か弁えろ。うつけ者が。」

しかし、その兵器とも何ら変わりのない巨大な拳を、細腕で受け止めた。

 

 

「なるほど、キサマの力、良く分かった。」

 

こうして目を合わせてみると、神に及ばずとも、並のクリーチャーを優に凌駕する力と、その力を全て変換した殺意が良く伝わってきた。

身長は長身のザキラの倍はあり、文字通り骨の髄まで闇の力に染まっているのか、全ての骨が白ではなく毒々しい紫色をしていた。

両の目のみは穴ぼこではなく、並の人間が見れば身の毛がよだつような、不気味な色を浩々と放っている

生前どういった姿をしたのか判別は難しいが、頭蓋骨の形から、ドラゴンか何かではないのかと考えた。

 

 

 

「――――ゾーマ……サマ?」

ザキラの呪いに当てられたか、拳を放つ力が次第に弱まり、鳴き声を上げるだけだったのが言葉を話し始めた。

初めに呟いたのは、かつて忠誠を誓った魔族の名前。

そして、このような姿になっても生き続ける呪いをかけた張本人の名前だ。

 

「主の名前を間違えるな。同じZの名を持つ者でも、我が名はZ(ザキラ)だ。もう一度言えるか?」

骨だけの腕に、奇怪な文様が映る。

それは呪いの文様だ。

 

 

 

ザキラが切札勝利や、世界各地のデュエルマスターにかけた呪い。

洗脳、力の誇示、逆らった者への処刑、強者への報復

様々な目的で、ザキラはこの呪いを使っていた。

 

 

「ザ……キ………ラ……サマ……。」

元々この怪物は、かつての主から死しても戦い続けるという呪いを受けていた。

呪いを別の呪いで上書きするのは聊か時間がかかるも、怪物を手なずけることに成功する。

 

 

「ゴメイレイヲ……」

 

ザキラは、忠誠を誓う怪物を見て、極めて役に立つ僕を入手できたと確信する。

勿論、ただ凄まじい力を持っているから、有力だという誰でも分かるような理由でそう思ったわけではない。

それは、力のみならず、可能性だ。

 

 

黒神龍グールジェネレイド

魔龍バベルギヌス

黒神龍ゼキラ

 

 

彼に姿がよく似たドラゴン・ゾンビは強い力を持つだけの怪物ではない。

より強いクリーチャーに化ける進化の可能性を孕んでいる。

姿が似ているからと言って怪物の種族を特定するのは聊か早急という気もするが、この怪物もまた、これで終わりではなくさらなる破壊をもたらす可能性を持っているはず。

 

 

「そうだ。折角私が名前を教えてやったのだ。配下のキサマも名乗るのがスジではないのか?

それともキサマの主は、そのような礼儀も教えてくれなかったのか?」

 

「………バラモス……。」

 

さしずめ、バラモスゾンビと言ったところか。

抵抗する者がいなくなった場所で、見定めしていた所で、またしても視界が変わる。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

今度は教会のような場所に飛ばされていた。

「魔法の迷宮を彷徨いし死骸を配下に加え、予選を乗り越えたか、ザキラよ。」

「予選?どういうことだ!?」

 

神父のような男が話しかけてきた。

この男がさせているのか、バラモスゾンビは借りてきた猫の様に静寂を保っている。

ついでにこの男も配下に加えようかと思ったが、話を聞いてからでも遅くはない。

 

 

「そのサーヴァントからだと、聖杯戦争について聞くのは難しいだろう。何が起こっているのか、私から教えてやろう。」

 

そして、男、言峰綺礼は聖杯戦争について語り始めた。

「聖杯とは昔に聞いただけだったが……さしずめDM(デュエルマスター)の力と言ったところか」

「君がそう考えるならそれでいい。どこの世にも国にも、全てを叶える伝説の1つぐらいはあるだろう。」

 

 

かつてはデュエルマスター、ヤエサルが持っていた力。

ザキラは4年前、その力を我が手にせんと、デュエルマスターに仕える一族でありながら反旗を翻した。

だが、その力を何度手に入れようとしても、終ぞ手に入れることは無かった。

 

 

もしも聖杯を手に入れることが出来れば。

優れた力を持ちながらカードより軽く命を扱われ、自由の1つも許されぬ宿命から解放されるのではないかという期待があった。

既に死した命、今さら自由を欲するなど馬鹿馬鹿しい事この上ないとは思う。

 

 

だが、それでいてなお、聖杯の力とは彼にとって惹かれるものだった。

 

 

「言峰綺礼と言ったな。丁寧に教えてもらった礼代わりと言っては何だが、私からも1つ教えてやろう。」

「何をだ?」

「私を呼び込むことで、戦争は戦争にならず、一方的な蹂躙になるということだ。」

「そうか、期待しておこう。」

 

勝者、しかも完全なまでの超越者は自分であり、それを目の前の男に見せつける。

それが出来ると信じて疑わない表情を、ザキラは浮かべていた。

新たな呪いを受けたバラモスゾンビは、静かに、故に不気味に主の後を歩いていった。

 

 

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

バーサーカー

【真名】

バラモスゾンビ

【出典】

ドラゴンクエストシリーズ

【性別】

【ステータス】

筋力 A 耐久 B- 敏捷 C 魔力 E 幸運 E 宝具C

 

【属性】

混沌・悪

 

【クラス別能力】

ゾーマの呪い:A++

魔王の力で、死後もゾーマの敵を狩り続けることが出来るようにされた術

これによってあらゆる知恵を失い、魔法も使えず、言葉も紡げなくなったが、痛みも疲れも空腹も感じず、再び死が訪れるその時まで戦い続けることが出来る。

忠誠心こそはザキラの呪いによって書き換えられたが、それでもこの呪いが解けることは無い。

 

魔法の迷宮の呪い:C

勇者に再度倒された後、別世界の魔法の迷宮を彷徨い続け、そこでも冒険者によって討伐され、死を繰り返した。

だが、ここで後述のブレス攻撃を覚えた

 

【保有スキル】

輝く息:B++

絶対零度の息を吐きつけ、氷漬けにさせる。並の相手ならばそれだけで凍死させられるし、敵によっては更なる威力を発揮する。

 

猛毒の息:B

紫色の濃霧を吐きつけ、敵を猛毒状態に侵す。毒は格別威力があり、並の相手ならば吸えばすぐに大ダメージを受ける。

しかし、相手によっては通用しないこともある。

 

ブレイクブレス:C

酸性の息を吐きつけ、敵の属性体制を弱める。前述の輝く息は、これを当てることによってさらに威力を発揮する。

 

【宝具】

『不必要な頭(ユーズレス・ヘッド)』

ランク:C 種別:対人 宝具 レンジ:1人  最大捕捉: 1人

バラモスゾンビの頭蓋骨

見た目通り脳を失っているため思考力は無く、これを失っても死ぬことは無いので、必要はない。

だが、必要ないゆえに投擢武器として使うことが出来る。

バラモスゾンビの腕力によって、確かな威力を持つ。

 

【weapon】

なし

あるとするなら、いくらでも酷使できる全身が武器か。

 

【人物背景】

大魔王ゾーマの幹部の一人として、上の世界の侵略を任された魔物。

ネクロゴンド王国を壊滅させ、そこから侵略を開始した勇者アレルに滅ぼされるも、ゾーマの呪いによって死骸と化して復活。

その姿でゾーマ城にてアレルに挑むも、またも敗北。その後は別世界の魔法の迷宮で復活と敗北を繰り返し、ある日聖杯戦争のサーヴァントになった。

 

【サーヴァントとしての願い】

なし。敢えて言うなら元の姿に戻ることか?

 

【方針】

優勝狙い。

 

 

【マスター】

ザキラ

 

【出典】

デュエル・マスターズSX(スタークロス)

【性別】

【能力・技能】

13歳にしてデュエルマスターを守る組織ガルドの長の座に就いた実績

いかなるクリーチャーであろうと操れる能力

15歳にしてイギリス屈指の難関大学に入学し、僅か1年で教授でも解けない方程式を解き、卒業する頭脳

【weapon】

ガルドの力

デュエルでしか殺害出来ない生命を持つ。

本聖杯戦争では既に無くなっているが、それでも一般人に比べるとはるかに高い生命力・身体能力を持っている

 

デュエルの呪い

また、決めた相手に命を削る呪いをかけ、その呪いの威力はデュエルをするごとに効果を増す。本聖杯戦争では戦うごとに呪いの威力は増大していく。

 

洗脳

相手の頭・腕などを掴むことで、情報を奪い取り、相手を操り人形にすることが出来る。

相当精神力が高くない限り、この呪いを打ち返すことは出来ない。

【人物背景】

本来はデュエルマスターを守護するガルドの長でだったが、カードの様に扱われた戦い死んでいくだけであったガルドの在り方と境遇を憎み、ガルド意外のデュエリストを全て殺害し、組織を解放し理想郷を築くという野望のために戦った。

しかし、第二回世界大会で全デュエリストの抹殺を掲げるも、切札勝負に敗れ、南極へ逃亡。

その後初代デュエルマスター、アダムの下僕の偽X(キサナドゥ)に襲撃を受ける。部下のほとんどを犠牲にしながらも、偽Xを倒し、アダムに挑むも、記憶と力を取り戻したアダムに敗れる

 

【マスターとしての願い】

自らの復活・自由と解放

【方針】

優勝狙い

【ロール】

パラディウムのアカデミーの教授

【令呪の形・位置】

デュエマの闇文明の模様、場所は右手の甲

 

【把握媒体】

漫画版:デュエルマスターズFE、SXを参照にしてください。

無印版は必要ないですが、むしろデュエルマスターズ外伝の方が重要です。

アニメ版ではストーリーが異なっているのでご注意を。

 



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【オープニング】【本戦開始前】03 意志(のろい)ある所に道は開ける マスター 和田垣さくら サーヴァント アヴェンジャー プリムロゼ・エゼルアート

登場キャラクター
マスター 和田垣さくら
サーヴァント アヴェンジャー プリムロゼ・エゼルアート

作者
◆vV5.jnbCYw


           Where there’s a will, there’s a way.

            意志ある所に道は開ける。

                              エイブラハム・リンカーン

 

 

 

―――夢破れたお母さんからしたらあんたは眩しいんちゃ。

―――人生いっぺんきりなんやけん。どんな手使うてでも、夢叶えなければいけん。

 

 

2019年、12月30日。

私はこれから、取り返しのつかないことをする。

最もすでに何度か折り返し不能の地点(ポイント・オブ・ノーリターン)を越えている自分にとって、今さらでしかないのだが。

その前に最後の晩餐―――になるかは分からないし、そうならないで欲しいーーーとして、いつものコンビニに寄って、イートインスペースで唐揚げを食べた。

 

 

   底流に寄り添って

   カーブを曲がればまた 暗渠に落ちてくようだ

   何が見える?何が響いてる? 答えてよ

 

 

天井から流れる安い音源から流れる歌と、客と店員の会話のコンチェルトを聞きながら、1個目を頬張る。

コンビニの唐揚げ特有の、塩と胡椒をこれでもかと使った辛さが、舌の上で踊る。

半ばほどで歯を立てると、油によって湿った衣が裂ける感触が口に走った。

この柔らかな衣の感触を舌で楽しみながら、ようやく唐揚げのサイズに反して小さい肉にたどり着く。

熱い肉汁が舌を焼く。

前歯の圧迫で飛び出たそれが油と混ざり、舌一体に広がっていく。

美味しい物を食べた時特有の快感が、舌から脊髄を伝って脳へ駆け上っていく。

美味しい。

唐揚げを食べた時特有の、味蕾が飛び跳ねているような感覚を覚える。

なのに、どこか心は舌とはことなり落ち着いていく。

 

 

  街はレコードで

  日々を乗せた針が晒してるノイズ

  僕は背景になって 君にとっちゃ

  所詮ゴミ処理

 

コンビニの唐揚げなんて、脂っこいだけで安っぽい味という人もいるが、私はその安っぽい味とやらが気に入っている。

多分、忙しい時間を縫って母が作ってくれた唐揚げに似ているからだと思うけど。

 

 

  理詰めしたレジュメじゃ解けない謎のリズム

  ゲンナリさ 慣れる街に縁取られた自分をしって…

 

2つ、3つ、4つ、5つと食べていき、次第に紙のカップの底が見えていく。

しかし、目に留まったのは、一番底にあった石のようなものだ。

それはコンビニの安い蛍光灯を反射して光っている。

異物混入という奴か。

折角楽しい時間に水を差されたような気分を覚え、店員の金髪の女性に抗議しようと思った。

 

   嫌になるけど 掛け違えた記憶

   グッドモーニング くもり飽きーーーーーーー

 

曲がおかしなタイミングで途切れて、おや?と思う。

まあ音源の不調だろうと割り切り、その石を見せようと、カップの底から出した所、言葉をかける前に女性の姿は消えた。

否、女性だけじゃない。コンビニも、その窓から見える景色も、一切が消えた。

 

 

気が付けば、辺りには一面の宇宙空間。

行ったことは無いが、プラネタリウムとはこういうものなのか、と思ってしまう。

しかし、それどころではないことが、すぐに分かってしまった。

ヘドロのような黒い何かが地面の上でもぞもぞ蠢き、人の形を形成する。

その姿は、良く知っている姿だった。

 

 

私、和田垣さくらが殺して、化けた姿の、本当の持ち主。

本物の三矢ユキだった。

 

 

「嘘……どうして……?」

それは顔が無くて、のっぺらぼうのようだったが、確かに彼女だった。

幽霊などを信じるつもりはないが、こうしているのだから仕方がない。

このままとり殺されるのだろうか。

 

嫌だ、死にたくない。

アイドルとしてメジャーにもなれず、どことも分からない場所で母親を楽にすることも出来ずに死ぬなんて嫌だ。

無意識のうちに、ポケットに手を突っ込んだ。

そこには、カードのような物が入っていた感触を覚える。

どうせ死ぬならば、とそのカードを用途も分からず握りしめた。

 

 

「月夜の詩」

見知らぬ方向から美しい女性の声が聞こえた。

その女性に魅入られてしまう。

 

 

否。魅入られたのは、声だけではない。

美貌、踊り、衣装

それどころでは無いのに、全てに魅入られてしまう。

セクシーな赤い衣装を纏い、ひらりひらりと舞う姿は、息を吞むほど美しかった。

小規模なアイドルのオーディションに、汚い手を使って補欠合格した程度の自分とは、決定的なまでに違う。

泥臭い努力だけではどれほど積んでも得られるようなものでもない。

かといって、才能だけで成せるような輝かしいものでもない。

 

 

「……って、あれ?三矢ユキは?」

踊りが終わり、ふと冷静になると、彼女の影は消えていた。

「誰のことを言ってるのか知らないけど、さっきの奴ならもう倒したわよ。」

 

 

倒した?踊りで?どういった原理で?

 

 

「私はプリムロゼ。あなたのサーヴァントよ。」

サーヴェント?手下ってこと?何を言っているの?

 

 

訳の分からないまま、バックの照明が変化したかのように辺りの背景が変わり、気が付けば見知らぬ教会にいた。

そして、いかにも教会に似合いそうな男に、聖杯戦争のことを説明された。

過去の偉人の霊をサーヴァントととして呼び出し、彼らと一人二組となって他の組と殺し合い、最後の一組は全ての願いをかなえられる戦いのことを。

 

 

それを聞いて、私はこれはチャンスだと考えた。

ミステリー・キッスが空中分解し、大きな事務所へ行くことになっていたが、そんなものとは比べ物にならないほど巨大な名声を得る可能性が転がり込んできた。

「戦争」というからには、何者かと戦ったり、最悪の場合は殺さなければならないかもしれないが、どうでもいい。

アイドルをやっている以上は戦争なんて形は違えど避けられないし、人なら既に殺したことがある。

これから殺すのが、私のことを知っている可能性がある、タクシー運転手と居酒屋のおかみかそうじゃないかの違いでしかない。

 

 

「やけにあっさり応じたわね。別にマスターの決意に異を唱えるつもりはないけど、あなたがそこまで聖杯が欲しい理由、教えてくれない?」

プリムロゼと名乗ったサーヴァントは、私に優勝の目的を聞いてきた。

その瞳はとても冷たい。

世のなかの酸いも甘いも嚙み分けた人間にしか出来ない顔つきだった。

この女性がどうしてあれほど上手い踊りをやってのけたか、分かった様な気がした。

 

 

「故郷(くに)の母親を楽にするためよ。」

 

それは、人が聞けばくだらない理由かもしれない。

そんなことのために人殺しをしても、母親が喜ぶわけないと、何も知らない人は言うかもしれない。

でも、私にはこれしかない。

私の母は言った。どんな手を使ってでも、若いあなたは夢を叶えなければいけないと。

 

 

 

〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

 

 

 

―――己を信じ、貫け。プリムロゼ

 

エゼルアート家の一人娘として、恥じぬ生き方を貫こうとしてきた

殺された父親の言葉を信じ、どんなことが起こっても、自分が信じた道を行き続けた。

そして沢山の犠牲を経て、父親の仇を全て殺した。

 

しかし、信念を貫いたはずなのに。

ようやく想いを遂げたはずなのに。

 

 

私の心が埋まることは無かった。

察してはいたが、別におかしいことではない。

役目を遂げても、父親はもういないのだ。

だから、まだ生きている母親に楽をさせたいというマスターの願いは、私の心に響いた。

 

 

「分かったわ。協力する。だけど約束して。何があってもその想いを曲げないって。」

「あなたのような素晴らしいアイドルになって、故郷に錦を飾るまで、今さら曲げるつもりはないわ。」

「アイドル……?まあいいわ。よろしくね、マスター。」

 

 

 

きっと、旅の途中で出会った7人の仲間なら、誰もがこのマスターを止めようとするだろう。

聖杯のような得体のしれない力を借りて手に入れた名声なんて、己の身を滅ぼすだけだと。

彼女の目的は、踊り手の頂点ではなく、家族の想いに応えることなのだ。

自分がもう決してできないことを、マスターのために叶えたい。

 

 

これが新しい自分の道だ。

 

 

〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

 

 

誰が言ったか。

意志ある所に道は開けると。

最も「意志」の持ち主と、「道を開く」者が同じとは誰も言っていない。

そして、それが必ずしも幸福への道かどうか、示している者もいない。

 

 

そして、この二人の行く道を見た者はこう考える。

身内からかけてもらった言葉は、前へ進む指標になると同時に、呪いにもなるのではないかと。

 

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

アヴェンジャー

【真名】

プリムロゼ・エゼルアート

【出典】

Octopath Traveler

【性別】

【ステータス】

筋力 C 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運D 宝具C++

 

【属性】「秩序・善」

 

【クラス別能力】

復讐者:A

父の言葉を下に、復讐を遂げた在り方がスキルとなったもの。

彼女自身の仇でなくとも、誰かの身内を殺した者の魔力を探知しやすくなる

 

反撃:C

攻撃してきた相手に、一定の確率でノータイムで反撃を加えることが出来る

 

【保有スキル】

闇夜との親和性:C

闇の力を借りて舞うことで、敵全体に闇属性のダメージを与えられる

 

誘惑:B

舞いと美貌で相手を魅了させ、一般人を味方に加えることが出来る。

一般人の実力によって上手く仲間に加える可能性が上下する。

 

舞踏姫シルティージの囁き:A

自分、マスター、あるいは上記の同行者の技の対象範囲を広げることが出来る。

 

 

【宝具】

ランク:C 種別:対人宝具 宝具 レンジ:1 最大捕捉: 3人

『ダガー・オブ・エゼルアート(エゼルアート家の短剣)』

エゼルアート家の家宝の短剣。プリムロゼは父の形見であるこれで、父親を殺した3人のカラスの刺青の男を殺した。

『想いを信じ、貫け』という言葉の通り、彼女の想いが強ければ強いほど、より堅い守りを破ることが出来る

 

【weapon】

『ダガー・オブ・エゼルアート(エゼルアート家の短剣)』

 

【人物背景】

ノーブルコートの有力貴族エゼルアート家の令嬢。

しかし彼女の父親が正義を重んじるがゆえにカラスの刺青の男質に殺されたことで、人生が一変。

サンシェイドの酒場で踊り子をやっていたが、ある日カラスの刺青の男を見つけ、敵討ちの旅を始める。

旅の果て、やがて最後の仇であり、幼馴染でもあったシメオンを殺すことに成功した。

 

【サーヴァントとしての願い】

和田垣さくらの願いを叶える。もし出来るなら、自分の父親も生き返らせる。

【方針】

優勝狙い

 

【マスター】

和田垣さくら

【出典】

オッドタクシー

【性別】

【能力・技能】

アイドルの卵として、それなりに歌や踊りなどは出来る。

しかし、それはトップクラスのアイドルと比べれば明らかに劣る。

現に古参のファンからは、「前の方(なり替わる前の三矢ユキ)が良かった」と言われている

彼女が持っている一番の武器は、未来を勝ち取るためなら何でもする思い切りかもしれない。

【weapon】

盗聴器付きのボールペン・鈍器

【人物背景】

作中のアイドルグループ「ミステリーキッス」の三矢ユキの正体。

彼女もオーディションを受けるも、4位で不合格だったが、自分を合格させるように直談判したことと、元のメンバーの一人を殺したことで、三矢ユキになり替わる形でメンバーになった。

貧しい母子家庭で育ち、夢破れた母親に「若いんだからどんな手を使ってでも夢を叶えなければいけない」と言われている。

好きなことは食べること(特にから揚げ)

【マスターとしての願い】

世界一のアイドルとしての名声を得る

【方針】

優勝狙い。

【ロール】

パラディウムの酒場や温泉を活動拠点にするダンサー

【令呪の形・位置】

右手の甲、ミステリーキッスで市村しほと共に付けていた仮面の形

【把握媒体】

鯖はswich,steamなどで購入できるゲーム、あるいは動画。

マスターはアニメ。11話までの把握で良いが、できれば13話+Youtubeの公式ラジオまでの視聴を推奨。



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【オープニング】【本戦開始前】04 巴あや&セイバー マスター 巴あや サーヴァント セイバー ジークフリート

登場キャラクター
マスター 巴あや
サーヴァント セイバー ジークフリート

作者
◆U1VklSXLBs


あやは生まれ育った村に、良い印象を持っていない。学校に行くにも一時間以上かかる不便な立地以上に、村人が排他的だったからだ。母親は体を売って生計を立てており、1人であやを産んだ。村に戻ってきた母子を、村人は迎え入れようとはしなかった。

 

普段は自分たちを差別するくせに、母親を買いにくる村の若者が嫌いだったし、彼らを慣れた様子で母が迎えるのも嫌いだった。友達のいなかったあやはそんな時、山や川で虫や魚と戯れていた。

 

まだランドセルを背負っていた頃のある日、図書館で初めて見る女と出会う。司書のような装いだが、前髪を一房だけ紫に染めた長いウェーブヘアの女など、あやは生まれて初めて見た。

 

「随分と渋い本を読んでるのね」

「……」

 

馴れ馴れしく話しかけてきた女を無視し、あやは読んでいたページに目を落とす。今読んでいるのは、剣術の型について書かれた本だ。木の枝でトンボを捕らえようとしたのが切っ掛けだが、孤独な境遇もあり、興味を惹かれたのだ。

 

「天然理心流って流派、聞いたことある?」

「…ない」

 

ミザリィと名乗った女司書は口にした流派とそれを修めた男達について語った。一つ尋ねれば、まるで見てきたかのように話してくれるミザリィに、あやはすっかり懐いた。気にかけてくれる大人が、あやの周囲には殆どいないからだ。

 

彼女は別れ際、虹色に輝く石の入った巾着を渡す。

 

「大きくなっても手放さないでいてね。いつか貴方の願いに応えてくれるから」

 

この思い出は、そのうち滅多に思い出されることも無くなった。あやを気にかけてくれた『2人目』の大人と出会い、彼と接する時間の方が増えたからだ。

 

しかし彼、龍野医師はあやを放り投げた。彼は村人達に殺人鬼の記憶と薬物を与え、殺し合わせる実験を計画していたのだ。あやは実験に巻き込まれると、恵まれた才能と積み上げた鍛錬によって、ただ一人勝ち残った。

 

そして肉親を失い、大量殺人者の汚名を被せられた。龍野は一切の痕跡を残さず姿を消し、逮捕されて以降、ミザリィと会うこともなかった。

 

(あれはこういう事だったのか?)

 

仲間の脱獄を助けた咎で懲罰房にいた時、あやは唐突に茫漠とした空間に放り出され、シャドウなる怪物の襲撃からセイバーの手により救われた。堂々たる体躯を背中と胸の開いた甲冑で包んだ青年だ。端正な顔立ちをしており、灰色長髪には羽根がいくつもできている。

 

あやは現在、ロールとして割り当てられた自宅のベッドに寝転がっている。聖杯戦争自体に否はない。羽黒刑務所で殺人実験やら、殺し屋紛いの任務に駆り出されるよりマシだ。どっちにせよ死ぬ危険があるなら、リターンの大きい方に参加するべき。

 

(上手くいけば、みんな自由になれるか?)

 

これほど非現実的な事態に巻き込まれれば、報酬への期待も膨らむ。幸い、引き当てたセイバーは強い。とはいえ、本格的に始まるまで戦う意味は無い。あやはセイバーを従え、地理の把握などをして過ごしていた。

 

セイバーは霊体化したまま、側に控えている。

本格的に戦いが始まるまで、情報収集に徹する方針のため、セイバーは未だ一人の英霊ともぶつかっていないが、漲る戦意に翳りはない。彼女の求めに応じて現界した英霊として、剣士としてひとかどの男と自負する身として、共に戦い抜くと決めている。

 

しかし、セイバーはあやに対して疑問が一つあった。時折、彼女の内側から血生臭い気配がするのだ。まるで別人が潜んでいるような…。

 

 

【CLASS】

セイバー

 

【真名】

ジークフリート

 

【出典】

fate シリーズ

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力B + 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運E 宝具A

 

【属性】

混沌・善

 

【クラス別能力】

対魔力:-

『悪竜の血鎧』を得た代償に喪失している。

 

騎乗:B

騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

 

【保有スキル】

黄金率:C -

人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。ニーベルンゲンの財宝によって金銭には困らぬ人生を約束されているが、幸運がランクダウンしている。

 

仕切り直し:A

戦闘から離脱、あるいは状況をリセットする能力。技の条件を初期値に戻し、同時にバッドステータスの幾つかを強制的に解除する。

 

竜殺し:A

竜種を仕留めたものに備わる特殊スキルの一つ。竜種に対する攻撃力、防御力の大幅向上。これは天から授かった才能ではなく、竜を殺したという逸話そのものがスキル化したといえよう。

 

【宝具】

『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』

ランク:A + 種別:対軍宝具 レンジ:1~50  最大捕捉:500人

ニーベルンゲン族から奪い取った財宝の一つ。重厚さと華麗さを兼ね備える黄昏の大剣。 手にした者によって聖剣にも魔剣にも成り得る、竜殺しの剣。真名を解放する事で、半円状の剣気を放つ。柄に青い宝玉が埋め込まれており、ここに神代の真エーテルが貯蔵・保管されていて、宝具発動のブーストに使用される。竜種には追加ダメージを与える。

 

『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』

ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人

悪竜の血を浴びた逸話の具現。

Bランク相当の物理攻撃及び魔術を無効化する。Aランク以上の攻撃も、Bランク分の防御数値を差し引いたダメージとして計上する。正当な英雄から宝具を使用された場合は、B+相当の防御数値を得る。

ただし、伝承通り、背中の一部は宝具の対象にならず、隠すこともできない。また竜種特攻の宝具、スキルを所持している場合はプラス分が計算されない。

 

【weapon】

『幻想大剣・天魔失墜』

 

【人物背景】

ニーベルンゲンの歌に登場する、ネーデルラントの王子。万夫不当の豪傑であり、姿隠しの外套、聖剣を得た彼は、竜殺しの称号を得る。誕生から辿った結末まで総合すると英雄らしい英雄となる。

態度は控えめながら、弱者への一方的な暴力を嫌い、強敵との死闘を喜ぶ高潔な武人。頼まれ続けてきた人柄と称され、生前から意味のある命令や頼み事を聞き入れ続けてきた彼の運命は、妻クリームヒルトを得たあたりから陰が差し、義兄の妻とクリームヒルトの対立をきっかけに、自分が死ぬほかない状況まで追い込まれてしまう。

 

自分の命で事を収めるため友であったハーゲンに自分を殺すよう願う。

死の瞬間、彼は己の望みを得る。それは自らの信じるものの側に立ち、自らの意思で誰かを助ける事。正義の味方になる事であった。

 

【サーヴァントとしての願い】

聖杯に望みはなく、自らの正義を全うする。

 

【方針】

マスターに従う。

 

 

【マスター】

巴あや

 

【出典】

サタノファニ

 

【性別】

 

【能力・技能】

「メデューサ症候群」

あやのいた世界で語られる、普通の少女が突如凄惨な殺人を起こす疾病。自然発生するものではなく、五菱日本重工が息のかかった医師を使い、ミラーニューロンを利用したVRキットと投薬による刷り込みによって被験者に植え付けた、実在の殺人鬼の人格が発現した結果である。

 

あやに植え付けられたのは、津山三十三人殺しの都井睦雄。ストレスなどを引き金にオリジナルをベースにした別人格が現れ、殺人衝動と高い殺人スキルを発揮する。

 

「剣術」

龍野医師によるVRを用いたトレーニング、度重なる殺人実験により、達人とすら渡り合える戦闘力を持つ。

 

【weapon】

なし。

 

【人物背景】

羽黒刑務所の女囚人。パーソナルナンバーはLB0005。売春婦の母親が父親のわからないまま産んだ彼女は、祖父母の死をきっかけに日向村という寒村で暮らす事になった。彼女達に待っていたのは、村人からの差別と虐待であった。村の少年たちに暴行を受けていた所を救ってくれた龍野辰巳医師を慕っていたが、彼の手によって殺人鬼の人格を植え付けられ、同様の処置を受けた村人達によって母親を殺されてしまう。

襲ってくる村人達を返り討ちにし、仇を討った彼女に龍野は全ての罪を着せて失踪。村に1人残っていたあやは羽黒に移送される事になった。

無口で無愛想だが、仲間の女囚人の脱獄を手助けするなど非情な人間ではない。

 

サンクチュアリ号編は終了している時期から参戦。

 

【マスターとしての願い】

みんなで自由を得る、母の蘇生、龍野への復讐…一つに絞りかねている。

 

 

【方針】

生存。優勝狙い。

 

【ロール】

学生。

 

【把握媒体】

鯖はソシャゲ、およびアポクリファ小説、漫画、アニメ。

 

鱒はコミック。登場から過去に触れている16巻まで。



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【オープニング】【本戦開始前】05 Brand New Idol マスター 二階堂ルイ サーヴァント アーチャー アラン・シルヴァスタ

登場キャラクター
マスター 二階堂ルイ
サーヴァント アーチャー アラン・シルヴァスタ

作者
◆koGa1VV8Rw


星空の世界で一人佇んでいる。

虚無感で最初はなにもしたくなかったけど、謎の声の説明を聞かないと何も進まなそうだからそれに従っている。

 

 

自分が自分自身だと、再認識してみる。

私は二階堂ルイ。

アイドルグループ、ミステリーキッスのセンターを務めるアイドル。

……元と付けたほうが多分正確。

逮捕されて、今までの全てを失った。

 

これはただの夢か。いや、私には心当たりがあった。

アンティークショップでお守りとして買っていた綺麗な石。逮捕されたとき、不思議と私は持ち出していた。

留置所に入れられる前に手荷物を引き渡すとき、その石が確かに強く光り、視界を覆いつくした。

その中で見えるのは扉だけ。留置所の扉か……何故かアイドルのオーディション会場の扉に見えたような気もした。

とりあえず私は自力で扉を開けて入った。

そして、私がいたのはこの星空の世界。

 

 

謎の声の説明が終わった。まだ内容をよく理解してはないけど、一応頭に入れている。

私はスマートフォンをネイティブに使っていた世代、いつの間にか持たされていた端末の使い方を覚えるのに支障はない。

 

でも警察に言われた通りただ動いたり、聞かれたことを答えたりするだけとは違う。

繰り広げられる、あまりに謎の言葉。聖杯戦争やサーヴァントとは何か私は解すことができない。

考えて理解するのには思考能力が必要。でも、何も考えたくないのに頭を使わされるのはストレスになる。

 

私はただ、思考を放棄していたい。

 

 

私は最後に言われた通りに移動した。マップの黒い点の位置へ。

そしてそこでの説明の通りに、シャドウという黒い形の人形が形作られた。

鈍い動きで、なにか道具を持った腕を振り回したりしている黒い影。

 

でも、私の興味を惹くような存在ではまったくない。

 

こいつを倒すことで予選突破とか言われても、そんなことする気力が今はない。

 

 

疲れそうなことをしたくないし、とにかく一度休みたい。

どうにもならなければ後で考えればいい、と思った。

背を向けて無気力な足取りで、もと来た道を戻っていこうとする。

 

 

 

――――――――痛い。

背中に何かが強く当たった。

息もできず、どうすることもできない。身体が傾いて床に叩きつけられる。

 

ガシャンと後ろで物が落ちる音を聞きながら、私は倒れ伏した。

後ろを見やる、重い首を動かして。

 

背中に当たったのは、奴の持っていた道具。私が逃げるのを見て、投げつけてきたんだろう。

よく見ると、長い刃が付けられている。

……投げられて、運良く柄の方が当たっただけ。刃の方が当たっていたら、危なかった。

 

腕を動かし、立ち上がる。歯を食いしばりながら。

不安定な足取りながらも、私の方ににじり寄って来ている黒い影。

その動きは、少しずつ正確性や速さを増しているようにも見える。

恐い。追いつかれたら、本当に殺される。

 

――――私はなぜ更に酷い目に合わなきゃならない。

違う。あの子の******のは私達でも、***のは私じゃない。

悪夢なら早く覚めろ。

……私に早く平穏を戻して。

 

 

……そうだった、私は逮捕されたとき抱いていたのは、すべて終わったという虚無感だけじゃない。

浮かび上がっていたのは、これで隠し事から開放されるという安堵感。

私の心の辛さを受け止めてくれた彼、私が支えたいと思った彼。今更に、想い出していく。

彼の今後の活躍を楽しみにして、応援して生きていくのだろうか。それも仕方ないか、なんて。

感じていた。心の奥で。

 

 

嫌だ……

死にたくない。殺されたくない。

まだ、生きてたい。

 

 

――――その時、光が発せられた。

――――いつの間にか、私の手に握られていたカードから。

 

光は変形していき、その中に作り出すのは一人の人間の形。

 

あまりの神秘的な出来事。

すると、私は逃げろという言葉を耳に入れる。

それをやっと頭で理解して、戸惑いながらも走り出した。人間と黒い影に背を向けて。

 

でも、ふらっとして倒れ込んでしまう。ぼやけていく視界。

原因はもう一回、頭への強い衝撃――――…………

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

――――見慣れない天井。

――――私は気絶していたのか?

 

身体に痛みはまだ残っている。

取り敢えず触れて確認しようと、腕を動かしてみる。

 

――――白い毛に覆われた、腕と手。

……自分の意志でちゃんと動かせるし、間違いなくこれは自分のものらしい。

よく見ると爪は丸く伸び尖り、毛は巻毛のようにふわっとしている。

 

そして、なんと毛皮を掴んで引っ張ると痛い。剥げたり浮いたりする感覚はまるでない。

特殊メイクにしては、本気すぎじゃないのか。わけがわからない。

 

まさかさっきの星空も含めて、私をターゲットにしたドッキリ企画か何かなのか。

……いや、そんなことできる者なんて存在しないはずだ、逮捕された私に対して。

私は体を起こし立ち上がった。これが夢なのかとも判らず困惑したまま。

 

「あっと、やっと目が覚めたようだね、マスター」

 

近くに座っていた男が目に入った。声を掛けてきている。

さっき星空の中で私のもとに現れた、あの男だと思う。

 

「貴方は……さっき光の中から現れた……」

 

その姿はスーツを着ていて、よく見ると金髪碧眼で、おそらく日本人ではない。

 

「その通り。僕は君に召喚されたサーヴァント。アーチャーだ。

 さっきの空間で行われていた予選が終わって、僕らはここ、教会へ転送されてきたんだよ」

 

頭の中で繋がっていく単語。

最初の説明で言われていた、私のサーヴァントが彼。そして私は彼を召喚したマスター。

 

「……私を助けてくれたんだね……ありがとう」

「サーヴァントとしてマスターを護るのは当然のことさ。

 これから一緒に聖杯戦争を戦っていく、パートナーなんだから」

 

良かった。とりあえずこの人がいれば、さっきの様な敵からも護ってくれるんだろう。

 

「さてマスター、君の名前は何と言うんだい?」

「私は…………ルイ。二階堂ルイ」

 

犯罪歴で汚れてしまった、私の名前。ちょっと話そうとして詰まってしまうけど、隠しはしない。

彼は芸能人である私を知らないようだけど、どうせ調べればすぐわかる。

それより今気になっていることを早く聞きたい。

 

「ところで……私の身体、いつの間にか……白い毛皮に覆われてるような……?」

「……それを説明しなきゃね。

 ……落ち着いて聞いて欲しい」

 

「君は『獣人』になった。

 動物の要素を持った、人間に近い別の生物に」

 

 

 

「――――――――え?

 何それ……?どういうこと?」

「そっちの方に洗面所がある。戸惑うだろうけど、きちんと自分の目で見て確認して欲しい」

 

洋装の部屋の扉を開け、教会の別室に向かわせてくれるアーチャー。

私は寝かされていたソファから降りて、一目散に駆けていく。

獣人って……なんだろう。獣のような人?

向かう足取りは軽いというか、なんか力強く早くなった気がする。不思議だ。

そして、駆け込んで早速自分の姿を映し出した。

 

 

 

……言葉にならない。

 

鏡に写るのは、完全に白い毛に覆われた顔だった。

 

鼻は突き出て先端は黒くつやつやし、本当に犬と同じよう。

髪型は元々とほぼ変わりないけど、少し違和感がある。

側面をめくり上げてみる。人間らしい耳は存在しない。

一方で髪に混ざって、しっかりしていて奥にピンク色も見える部分があって、これが耳らしい。

 

水で両手を洗ってみたが、何も落ちる気配はなくて毛が水に濡れていくだけだ。

 

私は完全に犬と人間の中間の生物になっていた……。

 

 

あまりに異常なことが次々起きた。

まだ受け止めきれない。どうして、何があったんだろう。

トボトボ歩いて鏡の前から去る。

ふと尻の上辺りを見ると、しっかり生えている丸くふわふわな尻尾。

……項垂れているように見えた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

元の部屋に戻る道の途中で、聖堂らしきところに出た。

アーチャーと、他にもう一人背が高く黒い服を着て十字架を首にかけた男が目に入った。

 

「おかえり、マスター。

 こちらは言峰神父、この聖杯戦争の監督役として、この教会に務めている方だ」

「ようこそ、予選を突破したマスターよ。私は言峰綺礼という」

 

低くよく通る声で私に語りかける神父。

でも、私は無視してアーチャーの方へ向かっていく。

 

「私にいったい何してくれたんだよ……。

 こんな姿にされて、もう外もまともに歩けやしないじゃないの……」

 

素の自分に完全になってる。暗い感情を吐露するしかできない。

 

「ごめんね。瀕死の君を助けるために、僕の用意できる薬のうち一つを使わせてもらったんだ。

 そのおかげで、君は獣人になる代わりに体細胞の活動が活発化して、一命を取り留めているんだ」

「え……?死にかけてたの、私?」

「仕方なかったんだ。シャドウが僕をすり抜けて君に一撃を与えてしまったからね。

 僕も召喚された途端だったから、少し戸惑っていたんだ。本当に申し訳ない……。

 シャドウはそれ以上何もしないうちに、すぐ始末しておいた」

 

そうだ、気絶する直前の後頭部への衝撃。

背中に剣を投げつけられたのと合わせて、そんなに大怪我だったということか。

意識してしまってより強く感じられる、まだ消えない頭と背中の痛み。少し聖堂の椅子に腰掛ける。

何度か深く息をし身体を落ち着け、それから二人の方に視線を向ける。

すると、神父の方が話し始めた。

 

「私は、予選からこの教会に転送されるまでのマスターの案内を担当している。

 サーヴァント、つまりアーチャークラスの彼がシャドウを倒した時には君は気を失っていたな。

 普通、マスターは聖堂にて説明をした後で街へ出てもらうことになっている。

 しかしマスターの君が気を失った状態で、アーチャーはすぐに処置が必要というから私の私室を貸したのだよ」

「そう、部屋を貸してもらって僕が君に処置をした。

 それから君が目覚めるまで、1日くらいは経っているかな」

 

長く説明っぽい話だけど、心を落ち着かせたおかげでよく頭に入る。1日も寝てる間に何があったんだ。

 

「その間君達以外にも何組かの主従が来ていたが、君たちを邪魔しないように、

 また君達が他の主従の情報を壁越しに得ると公平性に欠けるのでな、簡単に音避けの魔術を聖堂と部屋の間に掛けておいた。

 マスターが目覚めるまで部屋から勝手に出ないことと条件をつけたが、アーチャーはそれを守ってくれたな」

「マスターを守るための行動だから、約束を破りはしない。部屋を貸してくれたこと、とても感謝しています。

 僕は君の経過を見守ると同時に、時々彼と話して聖杯戦争のルールやこの世界の成り立ちについて聞かせてもらってたよ」

 

二人の話をまとめると、二人が私を助けて、アーチャーは聖杯戦争について私が説明を受けなきゃならないことを先に聴いてくれたらしい。

でも、すぐに心を許しはしない。

二人が会話を続けているのを見ると、いかにも悪巧みをしてそうだなと思ったりもする。

 

「護ってくれた上に治療までしてもらったことは、お礼を言っておくね。

 でも、こんなあり得ない生物の姿で過ごすなんて、よっぽど窮屈にしないといけないじゃない……」

 

すると、少し思案し始めるアーチャー。私の言葉の何かが引っかかったのか。

心配してアーチャーの顔を見つめ続けてると、やがて何か思い当たったのか口を開いた。

 

「そうか。もしかして、君は獣人が存在しない世界の者なんだね。

 大丈夫、この街ではその姿で困ることなんてほとんど存在しないのさ」

「は……?意味がわからないんだけど。コスプレ愛好家の祭りでも開かれてるの?」

「そうだねえ、実際に街に出てみたほうが早いかな。

 言峰神父、呼んでおいて申し訳ないですが、説明することは僕から話しても問題ないでしょうか?」

「問題ない。君の方に聖杯の概要はよく説明しておいたからな。

 マスターは必要があれば彼に聞くといい。もちろん、ここに後で戻って聞き直してもいいが」

 

神父の言葉を聞くと、アーチャーは私を外へ連れ出そうとする。

アーチャーが私を抱えようと体を動かしたけど、流石にそれは断り自分の脚で歩く。

 

「君達が今後どうなるか、楽しみにしておこう」

 

神父は私達を見送っている。

先を進み扉を開け、私が追いつくのを待っているアーチャー。

私は流石に心配で、帽子を深く被りマスクで口元と鼻を覆いたかった。

でもアーチャーが自信満々に私が外に出るのを促すものだから、渋々とした足取りで後を追う。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「さあ、ここが聖杯戦争の舞台、パラディウムシティだ!」

 

私は、絶句した。

明らかに人間と骨格が違うような生物も、人間と一緒に歩いたり話したりしている。

まさに今の自分と似たような、動物と人間の中間のような者たちも存在していた。

 

「驚いたかい?この街には様々な異世界の知的生物が住民として過ごしているんだよ。

 構成する技術も、様々な世界のものが活用されている」

 

そう、私の想像もつかないような存在が大量に溢れている。人間だけでなく、建物や乗り物も。

景色だけでなく街の音や臭いも全て、獣人化して鋭くなった私の感覚を揺るがしてくる。

私はいま完全に実感した。この世界が夢ではないのだと。

 

「ここは聖杯戦争のために用意された世界だ。

 君は別世界からこの世界に、聖杯戦争の参加者に選ばれて召喚されたわけだね」

「すごい……。こんな光景が、現実として存在しているんだ。獣人、と呼んでいいみたいな人々もいるね」

「そうだね。今の君、すなわち僕の世界の獣人的な、全身毛に覆われた動物と人型の要素を持った獣人も多いね。

 でも、耳や尾だけが動物っぽい種族というのは、僕の世界にはほぼいないに等しかった存在だ。

 獣人というのも世界によって定義が少しずつ違ったりするらしい。興味深いよ」

 

アーチャーも街ゆく人々を興味深く眺めている。

そして私はここが現実だと実感して、ようやくまともな思考が走り始めた。

 

願いを叶える万能の願望器、聖杯。

それを奪い合う聖杯戦争。

聖杯を手に入れれば何でも願いが叶うと言うのなら、私は――――――――

 

「君は聖杯戦争のマスターとして、この世界で過ごしていくことになる。

 この街で過ごす上で容姿は問題ないと、わかってもらえたかな」

「……アーチャー、聖杯を手に入れればなんでも願いが叶うというのも、本当なんだね?」

「ああ。聖杯はあらゆる願いを叶える。聖杯を得たマスターの世界をも改変してしまう力を持っている」

 

私は……

私は、負けを受け入れて楽に生きれたらいいな、という思いを抱いてた。そういう生き方の彼が羨ましかった。

でもこうして、チャンスが再び巡ってきたなら、見過ごすことなんてできないと思ってしまった。

そんな生き方は、結局私には似合わないんだ。私は私自身らしい生き方しかできない。

この数奇な運命にもそう言われているような、気がした。

 

「願いが叶うというなら……私は、後ろ暗い過去を全て清算したい。無かったことにしたい。

 過去をやり直して前向きにまたアイドルとして活躍し、生きていけるようにしたい。誰にも負けない人気を手に入れたい」

「そうか……君は、アイドルだったのか。アイドルとしての地位を失ったから、取り戻したいんだね」

 

そんな軽いものではないのだけど……。まあ深く話すととても長くなるから、仕方ない。

しかし、アーチャーがそれに続けて話す。

 

「似ているよ、僕の願いも。元の世界で財閥の御曹司、企業のCEOとしての地位を取り戻したいと僕は願う」

 

驚いた。アーチャーは私と似た願いを持っていた。

……少しアーチャーを近く感じたような、気がする。

 

「さて、ずっとこのまま街をうろつくわけにもいかない。

 マスターのロール、つまりこの世界において与えられた立場を調べてみなよ。

 端末を調べると色々載っているはずさ」

 

端末を確認する。通知がまず目に入る。

打ち合わせや練習のスケジュールがちらほら見える。

 

「そんな……まさか、私」

 

詳しく調べると、まさにこの世界でのロールや住居を確認できる画面も見つかった。

私は……デビューを控えるアイドル。一度失ったアイドルとしての立場が、この世界でのロールとして用意されていた。

ただし……人間の。

 

「私……これからこの世界で、アイドルになるはずだったんだ」

「どういうことだい?もう少し説明してよ」

「私のロールは、もうすぐデビューを控えたアイドル。

 でも、人間の姿でのアイドルだから、今の獣人の姿でそのまま続けるなんて、きっと出来ない……」

 

私は大きく落胆した。夢を少し見せられた後で、落とされたんだから。

 

「まあ、住居は問題なくそのまま使用できるんじゃないかな。

 それに端末には基本的に元の姿の顔が表示されるから、うまく使えば人間の姿と同一人物だと証明できると思うよ」

「でも、私が人間の姿のままだったら……」

「……説明が遅れたけど、獣人は獣人態と人間態の姿を持っていて、どちらの姿でいるか制御できる。

 君の今の姿が獣人態で、元の姿が人間態ということになる」

 

……え?元の人間の姿に戻ることができるの?

なら今も私が獣人態でいる意味は何だろう。怪我の治療のため?

 

「なんだ、人間の姿でいられるなんて……。結構大事なことじゃない。それ」

「ただ、獣人になったばかりだし人間態になる力を手に入れるには少し時間がかかると思う。

 何か精神的なきっかけでもあれば習得できるんだけど」

「……それなら、すぐにでも人間態になれるように、色々試すし努力もする」

「でも、獣人は精神の昂ぶり等で人間態から獣人態に制御せずとも変化してしまう。

 変化に慣れてない子供なら、それこそクシャミとかちょっとの衝撃でもね。

 獣人としてやってく方がきっと楽だと思うよ」

 

……………………まあ、仕方がないか。

この世界は聖杯戦争のための世界で、私はいずれ願いを叶え元の世界へ戻るんだ。

ここでアイドルにこだわっても、どうしようもない。

私が落ち込むように見えたのか、ライダーは私に目線を合わせて話す。

 

「待ってくれ、君が獣人ならではの提案がある」

「……何?」

「この街は人間のアイドルは沢山いても、獣人のアイドルなんてのはそうそういないし質もまだまだだ。

 今まで培った能力を活かして、君がこの世界の新たな市場を開拓していけばいい。

 君は、獣人のアイドルとしてデビューするべきだ」

 

そんな、そんな発想があったなんて。でも、容易に行くとはまるで思えない。

 

「実はというと、僕はアイドルのプロデュースをしていたことがあるんだ。

 獣人としても君の容姿は大衆に受け入れられるタイプだと思うから、それが武器になる」

「ダメ。私が元と同じ人間とのグループとしてデビュー予定だったら、私だけ浮いちゃう。

 そもそも人間で今まで進めてきたのに、事務所は納得もしないと思う。難しいと思うけど」

「それくらい何とかして見せる。僕がプロデュースしたアイドルも、元人間の獣人。そしてグループじゃなくて一人だったんだ。

 もしもユニットを組めそうな子がいるなら引き立て役をしてもらうのもいいけど、一人の獣人のアイドルとして売れることもできるはずだ。

 事務所は最終的に儲かりさえすればいいはずだ。僕が根気よく説得する」

 

経験のあるアーチャーが本気で協力してくれるなら、上手くいくかもしれない。

でもなぜそんなことをするんだろう。それに、私も彼もいずれこの世界を去るというのに。

 

「でも、ここは聖杯戦争のための世界なんでしょ。

 聖杯戦争が終わった後もこの路線でアイドルを続けられる?そんなことないんじゃない?」

「その通り。この世界は聖杯戦争が終了し、勝者の願いが叶えられると消滅する」

「それなら、この世界でアイドルになる意味なんて無いじゃない……。

 ならその……もっと……好き勝手やったり策謀を巡らせたりして、聖杯を狙いに行くほうが、いいんじゃない……?

 それに貴方だって、私の為にただ協力したいと思ってるだけとは思えないんだけど……」

 

覚悟してる。奪い合いの中でどれだけの他者を蹴落とさなければならないか。

だからこそ、不思議に思った。

 

「いや、意味はあるさ。有名人になれば行動は制限されるけど、逆にできることもたくさん増える。

 沢山の市民を扇動することも出来るし、上流層の人々へ伝手ができれば情報収集も有利になるじゃないか。

 全ては聖杯戦争に勝つために繋がるんだ。

 世界は消滅するけど、逆に言えばどうせ消滅するんだから何しようと罪悪感を抱く必要ないよね」

 

アーチャーは堂々として私を疑わせる点について答えてくれた。

筋はちゃんと通っている。しばらく考えて受け入れ、私は応えた。

 

「うん、確かにそれはあるね。でも、リスクリターンはつり合いそうなの?

 アイドルとして上手くいくかもまだわからないでしょ」

「アイドルとして売り出すのは国全体とかじゃなくて、この街一つ分だけだ。

 情報技術も進んでいる世界でターゲットも明瞭だから、準備期間中にヒットできる可能性は高いと思うよ。

 僕のサーヴァントとしてのスキルで資金力も確保できるから、それを宣伝活動に回したっていい」

 

アーチャーはしっかり理由をもって応えた。ただ私を励ましたりされるより、ずっといい。

 

「そして逆に、好き勝手やることにもリスクがある。

 まず、聖杯戦争本戦開始前には、魔力を補給する魂喰い目的での市民の殺害は禁じられている。

 そして開始後でもあまり街に被害を出すと、監督役が討伐令というものを出してくることがある。

 サーヴァントとマスターを対象にした指名手配のようなものかな。報酬も付けられることがあって、多くの敵に狙われることになるんだ」

「それに、僕は自分がサーヴァントだと隠蔽できるスキルを持っている。

 君が有名人になろうと、マスターとして狙われるリスクもそう高くはならないだろう。

 僕自身だってサーヴァントとして普通の獣人程度に負けない力は持ってるし、自分や君の身を守ることは容易いさ」

 

説明することは終わったみたいだ。アーチャーは私の方を見やって問いかける。

 

「これを聞いて、君はこの世界でアイドルをやりたいと思うかな?」

「……いいよ。私は元の世界では罪を犯した上にやってない重罪まで着せられて、もうまともな人生は送れない身。

 それをひっくり返すためなら、私は何でもする。

 構わない。この街でアイドルという仕事を……目的のための手段にしてしまったって」

 

私は決意した。勝つためならなんだってする。

この覚悟はアーチャーを納得させられるだろうか。

 

「提案を受けてくれて、ありがたいよ。

 さて、ロールによって用意されてる事務所か、それか用意された住居へ向かおうか?

 まだ痛むだろうから、無理せず行こう」

 

アーチャーは私を抱えようとする。今度はそれに普通に身を預けた。

もう一応は、信頼してるから。

もちろん全部信頼したわけじゃない。

アーチャーは感情らしい感情をほとんど見せない。

そしてアーチャーはクラス名だという。すなわち彼の真の名前ですら私はまだ知らない。

でも、この人となら一緒に戦っていける。そう思ってはいる。

 

「助けてもらって貴方にはとても感謝してる。獣人の身体も、きっとこの町では役に立つ。

 でも、私は貴方のためでなく……自分のために、この聖杯戦争を勝ち抜いてみせる。

 それじゃ、協力者として、これからよろしく。アーチャー」

 

アーチャーは私をしっかり支えることでそれに答えてくれた、気がした。

不思議とアーチャーの身体からは全く匂いがしない。私も獣人になって嗅覚も強化されてると思うけど。

アーチャーには謎がまだまだ沢山ある。

 

「君が聖杯を得ると決心してくれて、僕はすこし安堵してるよ。

 実は準備期間の間なら、マスターには棄権して元の世界へ戻ることが認められているんだ」

「へぇ。私はもう願いを叶えるまで、帰るつもりなんてないけど」

「……実はというと、これは隠しておくつもりだった。

 アーチャーだからマスターがいなくてもしばらく行動できるスキルがあるとはいっても、代わりのマスターが見つからなければいずれ脱落だ。

 君に何の能力も願いを叶える決意もなければ、僕は代わりのマスターを見つけるまで君を帰さず殺さず利用するだけして、

 その後とっとと元の世界へ送り返していただろう」

 

なるほど。私にアイドルとしての能力があるからこそ、アーチャーは私と共に聖杯を取ろうと考えてくれてる。

目的のために手段を選ばないような所も、私と似てる。

そして私たちグループのマネージャーだった山本も手段を選ばないような面があったから、それに近いほうがむしろやりやすくて良い。

 

「アーチャーって、そういう考え方をするんだね。

 でも、いいよ。そういう方がやりやすいとも、私は思ってる。

 どんどん周りを利用しよう。私のことも、最後に私の願いが叶うならいくらでも利用して構わないから」

「なるほど、これは考え方もなかなか心強いマスターだ。その強かさを持ち続けて、どんどん強めていって欲しいな」

 

そうだ。私だってこの世界でのアイドルという立場を利用してやる。

 

 

さて、これから毎日また必死な努力の日々が始まる。

アイドルとしてのスキルは、充分身につけてきた自信はある。

獣人の外見やアーチャーの働きがプラスになるなら、自分以外の要素の点もバッチリ足りてるはず。

必要なのは、この獣人の身体に慣れること。

そしてこの街の文化や、消費者たちの嗜好の理解。

 

 

あとは……聖杯戦争を戦っていく意気と覚悟。

 

そうだ私、あの子を殺してもセンターになりたいと願った、あのときの気持ちを再び持て。

 

そして私、この世界の皆も自分と同じ人間だって、哀れんだりしちゃだめなんだ。

 

恐れるな私、ここで罪を犯そうと、元の世界で罪が暴かれる恐怖に怯えることはないんだから。

 

頑張れ私……………………

 

成功という結果だけのために。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

僕は昔、アニマシティの設立にも関わったシルヴァスタ製薬のCEOとして手腕を発揮し、

そしてシルヴァスタ財閥の一員として日本の首相とも関わりを持って世界を裏から操っていた。

しかしそんな純血の獣人アラン・シルヴァスタは、全ての地位を失ってしまったんだ。

今はこの聖杯戦争にアーチャーのサーヴァントとして召喚されてる。

 

僕は純血の獣人が世界を裏から支配する体制をより固めるためにアニマシティで暗躍したけど、雑種の獣人の未来を掛けた者達に敗れてしまった。

1000人の純血のオオカミ獣人の血をこの身に集め、不老不死と完全獣化能力を手に入れたのに、雑種の銀狼と、元人間の少女影森みちるに負かされたんだ。

 

陰謀は暴かれシルヴァスタ財閥に残ることもできずすべての地位を失い、純血種としてのプライドもだいぶ削り落とされてしまった。

その後は特にやることもないし、資金は一応あるからハワイに一人で滞在してサーフィンなんかして。

なにもない日々を続けるうち、いつの間にか僕は霊基を登録されてサーヴァントとなっていた。

 

サーヴァントとして願いを叶えられる機会がやってくるなんて、全く思ってもいなかった。

こうなった以上は、是非にでも聖杯の使用権を得たいと思っているよ。

 

さて、僕がシャドウを倒してマスターを助けたのは本当だけど、マスターがシャドウの攻撃で瀕死になっていたというのは真実じゃない。

確かに獣人は人間より生命力があるけど、獣因子を与えれば瀕死の人間の怪我を直ぐに治すなんて出来はしない。

真相はこうだ。

純血の獣人としての身体能力を活かし、シャドウを倒すとほぼ同時にマスターの後頭部に衝撃を与えて気絶させた。

 

それで何故、獣因子を投与したのかって?

人間が獣人に急に変化したら、少なくとも元に戻りたいことがこの世界に留まる理由になるだろうからだね。

更には人間よりも全面的に強化されるのだから、マスターの自衛手段としても申し分ないね。

獣因子入りの血液は即効性はないけど、獣因子消失薬で実用化した即効性を合わせ、麻酔薬で気絶時間を調整すれば気絶してる間に全身に獣因子を廻せるわけだ。

そして僕のマスターは獣人であることを受け入れ、戦う覚悟を決めてくれたから最高な展開だよ。

 

まあ、あの元の世界の二人のように身体変化能力を得られるかは、わからない。

可能性としては、狸と狐という種族の特性上変形能力が使えたということもありえない訳ではないと思うしね。

日本では狸も狐も?化能力を持つ動物として有名だから、一般の狸、狐獣人は?化できずとも、特殊な彼女らには影響があった可能性はゼロとは言えないし。

 

しかしあの神父、というか教会は怪しい点があった。

一つはオオカミ獣人として臭いに敏感で、更に自分の臭いを完全に消して犬やオオカミの獣人にもわからないように動いてきた、僕だからこそ感じた違和感。

臭いから多くの者が聖堂で戦闘したという痕跡を何回分か感じることができたのに、その中で動いた者たちの臭いの一部が完全に不明なんだ。

そして、最後に僕らがどうなるか楽しみだと……?

もしや僕がマスターを騙していることに気がついている可能性もあるか?底が知れない。

獣人としての力をフルに発揮してシャドウの攻撃と見せかけマスターに与えた一瞬の一撃は、普通の人間には認知できないはずだ。

何も言わないのは、監督役だからあくまで討伐例でも出ない限り干渉するつもりもないということなのか。

教会は今後も警戒しておこう。中での戦闘などは避けようと思う。

 

ところで一つ、予期せぬ切り札が僕の手に生まれた。

アイドルの女の子がマスターなのは、きっと僕とマスターの縁だ。

獣人教団の教祖にしてアイドルへとプロデュースし利用させてもらった元人間の少女、日渡なずなを思い出す。

その新しい利用法を、僕は思いついている。

 

雑種だろうと大量の獣人の血を取り込めば、不死の力と完全獣化能力を得られるであろうことは、あの銀狼から教えてもらった。

そしてこの街には、獣人やそれに類するであろう種族が沢山存在している。

 

さて、マスターは準備期間中に獣人のアイドルとしてどれだけの獣人を虜にするだろう。

ライブにはどれだけ集まるだろうか。

できる限り大規模なライブを開き、集まった者たちをすべて殺戮し、その血をマスターの下へ集結させる。

1000人以上の獣人の血を得れば、不老不死と完全獣化能力は獲得できるはずだ。

なずなの身体変化能力によるイミテーションのようなものでなくて、真の完全獣化。

サーヴァントの僕も不老不死の再生能力を持ってるし、更にマスターも不死性を手に入れれば、もはや負けはほぼ存在しない。

 

もしも、元の世界で僕となずなが率いた銀狼教団の信者数に匹敵する5000人規模のライブになれば、最強の再生能力と完全獣化能力を得た化け物が生まれるだろう。

気をつけなければならないのは、血と同時に死者の想いも取り込む可能性がある点かな。

討伐令を出されることを避けるためにも、僕が首謀者だと一部の観客にでも決して漏れないようにしないとまずそうだ。

 

さて、この計画はマスターに話すべきかな。もちろん話して情報共有出来ていた方が楽だけど。

一般的な感性の持ち主ならそれだけの数の殺戮、間違いなく嫌悪感を示すだろうね。

彼女の聖杯戦争を勝ちたい気持ちは本物だけど、時々見せた言葉の詰まり方、目線の動かし方からどこか悪になりきれない市民的な面もありそうだ。

準備期間の間にどこまでの決意を示してくれるかに懸かってるから、僕はそれを後押ししていこう。

 

 

それにしても、この世界には本当にあらゆる種類の生物が存在している。

この中で純血という物の優位性なんて、強い意味なんて無いのではないかと思ってしまいそうな……。

 

いや。僕だって純血の獣人1000人の想いと血を受け継いでいるんだ。

だから、雑種や元人間なんかに負かされても、絶対に僕らが彼らと等価な存在だなんて思うことはしなかった。

そうさ、この世界やマスターがどうなろうと、こちらのためには仕方ない。

順調に行けばマスターも願いを叶えることはできるし、それで清算してもらえばいいのさ。

 

さて、これからマスターのサポート以外にも、薬剤開発のために元の世界での真垣のような研究員は欲しいし、

自律兵器の備蓄は増やしたいし、やらなきゃならないことはいっぱいあるな……。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

アーチャー

【真名】

アラン・シルヴァスタ

【出典】

BNA ビー・エヌ・エー

【ステータス】

筋力B 耐久EX(B) 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具A+

【属性】

秩序・悪

 

【クラス別能力】

対魔力:B

 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。

 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

 

単独行動:C

 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

 ランクCならば、マスターを失っても一日間現界可能。

 

【保有スキル】

オオカミ獣人(純血):A

 人間態と獣人態の2つの体の状態を持つ、人間から派生した種族が獣人。

 その獣人態の姿は、金色の毛皮を持つオオカミ。

 純血種とは、他の動物の獣性を持つ獣人達と交わらず、同一の獣性を持つ獣人だけの交配により維持されてきた一族。

 獣人の姿を隠し人間に溶け込むことに長け、臭いも人間同様にでき、人間態でも獣人態の力を発揮し並の獣人の獣人態に全く劣らない膂力を持っている。

 

正体隠蔽:A

 自ら正体を明かすまで、周りの人々は怪しむ者こそいれど誰もが彼のことを人間だと思っていた。

 特殊な消臭剤を体に使用して臭いを発さず行動できるため、動物や獣人には特に有効。

 自らの陰謀を隠蔽して動くことにも長けている。

 更には、聖杯戦争においてはサーヴァントとしてのステータスやスキルを偽装することも可能。

 

アニマシティの協力者:B-

 財閥の一員、製薬会社CEOとしての所業がスキルになっており、カリスマ、黄金律の効果を内包している。

 ただしアーチャーは本来の目的を隠し他者を駒としてしか見ていないため、

 陰謀が露見してしまった場合は効果が低下、もしくは消滅する。

 

医術:D+

 主に獣人に関する分野で、薬学、疫学、病理学などを習得している。専門の研究者ほどの能力はない。

 また、元の世界で扱った獣因子入りの血液、獣因子消滅薬、麻酔薬といった製剤をある程度ストックしている。

 

 

 

【宝具】

『獣人都市を終わらせる医療兵器(ドローネン・ウント・エンゲルマシーネ)』

ランク:E+++ 種別:対人宝具 レンジ:2〜99 最大捕捉:300000人

 アーチャーがアニマシティを裏から支配するために使用していた自律兵器。3種類存在する。

 羽ばたき型の小型ドローンに警護や仕事のサポートをするため麻酔銃とプロジェクター機能を搭載したタイプ、

 同じく羽ばたき型ドローンだが4枚羽を持ち大型で兵器のような目的に使われるタイプ、

 エンゲルマシーネと呼ばれる箱型で走行し必要に応じて頭部、脚部、ミニガン搭載の腕、背の対空用機銃を展開、そして背の固定用アームで獣人を捕獲運搬できるタイプ。

 これらは通常の銃弾も、薬品を入れた注射筒も使用することができる。リモコンを用いた操作も、プログラミングされた動作をさせることも可能。

 最大捕捉はアニマシティの人口に値する30万人だが、

 そこまでの量を行使するには充分な準備期間と資金投入が必要。

 初期状態では、正体隠蔽時の護身用に使用していた数十台のみしか行使できない。

 

『千の純血の血・シルヴァスタの下に(ブルット・フォン・シルヴァスタ)』

ランク:A 種別:対獣人宝具(自身) レンジ:- 最大捕捉:1人

 シルヴァスタの選ばれしものだけが受けられる「不死の儀式」により、千人の純血の狼獣人の血を体に流し込んだことによる力。

 どれだけ傷を負っても素早く自然治癒し、切断されようとすぐに癒合する、不死身の能力。

 一応戦闘で追い詰められた際には助けを乞うていたため、限界は存在する可能性がある。

 

『完全獣化・三つ首の金狼(ドライカプフィシ・ゴールデナー・ウォルフ)』

ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:2-50 最大捕捉:300人

 千人の獣人の血を得たことに付随する、巨大な動物の姿に変化する完全獣化能力。

 その姿は3つの頭を持ち、翼のような部位も持つ金色の狼。体表を刃のように突出させ敵を切り裂くこともできる。

 飛び道具として金色に輝く光束を口から発す。それは高周波の音波とも破壊力そのものとも捉えられ、彼はこの力を「神の遠吠え」と呼んでいる。

 

【weapon】

 麻酔薬の入った注射筒を発射するピストルを携帯する。

 

【サーヴァントとしての願い】

 完全に失脚してしまった自分の復権。また、純血の獣人が世界を裏から支配する体制をより強固に、更に表に出ないようにする。

 まあ僕の陰謀を阻止した上に僕まで助けてくれた彼ら彼女らに免じて、雑種の獣人も人間も共生できる世界を目指すのは阻止しないでおいてあげるかな。

 

【人物背景】

 ヨーロッパに古くからある名門の家シルヴァスタ家が率いるシルヴァスタ財閥の御曹司で、

 ゆくゆくは中心的人物になると目される。財閥のグループ企業であるシルヴァスタ製薬のCEOを務めている。

 その財力と権力で人間でありながらもアニマシティの設立を支援、そして病院と研究所を兼ねるオフィスや工場をアニマシティ内に置くことで財政も支援してきた。

 ところが、アニマシティの設立に協力したのは裏の理由があった。そして本人の正体も人間などではない。

 アニマシティで渦巻く陰謀を辿ると、全て彼に行き着いていたのだ。

 

 自分の正体を隠蔽し、他者を信用させて利用していく。

 真実は見えないところに存在すると言いながらも、当人は真実に嘘を混ぜロジックを組み立てた話をし他者を欺く。

 話の内容に疑うべき点が見つからずとも、話し方が軽いので厳格な人から見るとどこか信用ならない感じもする。

 自分の一族以外は全て見下していて、誇りを踏みにじることにも全く躊躇がない。

 

【方針】

 優勝狙い。正面から戦うより、策謀を練って裏で動きたい。

 

【把握資料】

 アニメ全12話。主な活躍は後半から。

 小説BNA ZEROにはアランは出てきませんが、世界観をより知ることができます。

 

 

 

【マスター】

二階堂ルイ

【出典】

オッドタクシー

【性別】

女性

【能力・技能】

 魅力的な容姿を持ちながらも、人気を得るために愛嬌、話術、機転、駆け引き、涙などを意識して全て身につけ活用してきた。

 アイドルとして採用が決まった後も努力してレッスンに取り組み、ダンスも歌も十分な能力を身に着けた。

 

 サーヴァントにより投与された獣因子入りの血液により、BNA世界準拠で獣人化している。

 なので外見は、原作最終話までに描かれた姿とほぼ同様の獣人の姿になっている。爪とかがより少し獣寄り。

 BNA世界における獣人は獣人態と人間態の姿を持ち、獣人態では人間よりも力も運動能力も高く、その動物特有の能力も使える。

 獣人態のルイは犬の特性により嗅覚が発達、またトイプードルなので毛が厚く弾力性もあるが手入れが大変だと思われる。

 

【人物背景】

 アイドルグループ「ミステリーキッス」のセンターを務めるアイドル。

 負けず嫌いな性格で、容姿を活かし人気者として生きてくる中でアイドルを目指そうと思い、事務所に採用され必死に努力してきた。

 プロ意識も強く、アイドルの仕事中とプライベートでの表裏もはっきりしている。

 しかし、メジャーデビュー直前にて担当となったプロデューサーの意見によりすべてが否定されそうになり、そこから歯車が狂いだしてしまう。

 

【マスターとしての願い】

 元の世界に戻り、過去をやり直し正しくアイドルとして成功したい。

 もう誰にも負けたくない。

 

【方針】

 優勝狙い。その過程で手段としてこの街で上位のアイドルを目指す。

 体に傷をつけたくはないので、獣人の身体能力は戦うよりは逃げるのに活かしたい。

 

【ロール】

 デビュー直前の"人間の"アイドル。

 

【令呪の形】

 ミステリーキッスのロゴのUFOの線、その上にそれを踏みつけ牙を剥いた犬の図案、そして下に座り込む馬の図案。

 背中にあるが普段は白い毛の下になってるので、使用時に光る以外ではほぼ確認不能。

 

【把握媒体】

 アニメ13話、他に参考資料としてはオーディオドラマ。

 アニメと内容は同じだけどセリフが文章で読めるので、ビジュアルコミックも片手に置いて書くのには良さそう。

 漫画版や小説版は基本アニメ準拠だけど少し内容が違っているので注意。



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【オープニング】【本戦開始前】06 Immature Guardian マスター 衛宮士郎 サーヴァント アルターエゴ 沖田総司〔オルタ〕

登場キャラクター
マスター 衛宮士郎
サーヴァント アルターエゴ 沖田総司〔オルタ〕

作者
◆K2cqSEb6HU


「……ここか?」

 

 地平線の堺などなく、見渡す限りに満点の星で埋め尽くされた果てなき空間がそこにある。

ここは、選定の間だ。此度に開かれし電脳の聖杯戦争、その場で戦うに値する資格者を定めるための予選試合が行われようとしていた。

その中で、一人の参加候補者が端末のマップと自身の勘を頼りに、目的となる座標地点にまで辿り着く。

 

 彼の名は、“衛宮士郎”。ここより遥か離れた土地、冬木市で行われた聖杯戦争「第五次聖杯戦争」の生還者である。

その地での聖杯戦争は魔術師達の儀式。士郎もまた見習いであるが、旧来の魔術師(メイガス)に当たる。

 しばらくすると曰く有り気であった地面から円形の陣が浮上し、“何者か”が出現した。

それは、陽炎のように揺らぐ“一人の影”。不完全なエーテル体の形成で現存させられている亡霊の残骸であった。

 

「それはサーヴァントが正常に召喚できなかった結果、影状に留まったなり損ない『シャドウ』だ。予選突破へはこのシャドウを倒すことになる。」

「倒すことが、か……?」

 

 どこからともなく響き渡る声が、ここを抜けるための条件を告げる。

サーヴァントとは、あらゆる時代、あらゆる世界、あらゆる次元に存在する英霊を使い魔として召喚された者のこと。目の前にいるシャドウは、サーヴァントの失敗作だというのだ。

 ……だが、出来損ないとはいえサーヴァント。聖杯戦争経験者である士郎にとってサーヴァントを倒すということが、如何に難しい話ことであるか理解していた。

無論、人間がサーヴァントに敵うという話。そうした次元は何度か目にしたことはあるが、十全な策や相性差、時に相手側の慢心といった理由もなしにサーヴァントに敵うわけもない。

 それに、これは予選なのだ。具体的なことは何も聴かされていないが、単に実力云々を図るためではなく、これが“マスターを選ぶだけの行為”であるということにある。

 

 つまりは……。

 

「それは……つまり、倒すためにはサーヴァントを召喚するしかないってことか。」

 

 予選の条件に対する意図を推察して答えた。

これは即ち、サーヴァントに太刀打ちするため、この場でサーヴァントを呼び寄せるということである。

士郎にも似た経験がある。かつて口封じの理由でランサーから襲撃に遭った最中、自身のサーヴァントとなったセイバーが召喚されたことだ。

それは偶然によるものであったが、あの場でセイバーが召喚されたことで、今もなお生き延びることができたのは事実であった。

今回もそれと同じだ。仮に予選に意図があるとすれば、戦いの中でサーヴァントを召喚するしか、生き残る方法はない。

士郎はそう考えたのであった。

 

「察しが良いな。この予選は、サーヴァントの召喚も兼ねている。シャドウを倒せるのはサーヴァントに他ならない。」

「そのサーヴァントはどう召喚すればいいんだ?正しい召喚方法はわからないんじゃ、どうしようにもないぞ。」

「案ずるな。此度での聖杯戦争では儀式は必要しない。セイントグラフを介して『英霊の座』に接続することにある。」

 

 「セイントグラフ」と言われて、士郎はポケットの中から一枚のカードを取り出す。

渡された感触こそなかったが、この空間に入った時に、いつの間にか手にしていた謎のカード。

事前説明と併せて聴く限り、これはサーヴァント召喚に関するの媒体だという。

だが、召喚を試す間はない。それより先にシャドウが士郎の下へと向かってきている。

シャドウが手にする得物は、槍。皮肉にもそれは、聖杯戦争に初めて関与することになったのと同じくしてランサーであった。

 

「────投影、開始!」

 

 繰り出すは士郎が得手とする双剣、“干将・莫邪”。

複製の魔術“投影”を駆使し、手慣れた陰陽二振りの短剣を手の下に出現させる。

士郎も引き締めて攻勢に対応に及ぶ……わけだが、シャドウの動きは予想に反して鈍い。

サーヴァントとはまるで比較にならない。そのぎこちない機動は、さながら活動限界間近のロボットを彷彿とさせるほどに脆いものである。

士郎は振り落とされた槍を躱すと、双剣で胴と首を狙い、あっさり三分割とした。

シャドウの撃破。こうもあっさり条件を満たす拍子抜けな展開に、士郎も思わず面を食らった。

だが……。

 

「…………再生か!」

 

 シャドウの分断した体同士は元の形に戻るように組み合わさり、再度体勢を整う。

同じように何度も斬り伏せるが、散り欠けた体の粒子は、定められたように元の場所へと戻っていく。

どのように倒せたとしても同じことだ。この再生の性質によって必ず復活されてしまう。

サーヴァントでないと倒せないというのはそのものの強さではない。突破することができないからだ。

 

「っ…………!」

 

 何度か武器の衝突を重ねる度に速度も精度も上がりつつある。

今は士郎の方が技量で制しているが、リーチのある槍はアドバンテージが大きく、それも時間の問題だろう。

 

(────やるしかないか!)

 

 決断する。今、取れる打開策を。

今の衛宮士郎ではやってみせた経験はないが、理論なら戦いで取り入れている。

ならば、後は一か八か、その技を実践するまで。

 

「この────!!」

 

 士郎は槍の打突を躱して懐に入り込むと、渾身の体当たりで突き飛ばした。

足元をすくわれたシャドウがその場に倒れると、士郎は追撃することなく隙に突いて後退。と同時にシャドウを目掛けて干将・莫邪を投擲したのであった。

起き上がったシャドウには判断ができず、木偶の坊の様に立ち尽くし、双剣を躱すことも弾くこともしなかった。

このままいけば、直撃による切断は容易いであろう。……だが、狙いは別にあった。

 

「────壊れた幻想!」

 

 双剣がシャドウの身に触れた瞬間、激しい圧力の解放が付近一帯に拡がった。

士郎は双剣に過剰なまでに魔力を送り込み、投擲した干将・莫邪を爆破させたのであった。

 

 “壊れた幻想”。

魔力の詰まった宝具を爆弾として相手にぶつけ破裂させる技能のこと。

本来、この技を使用するということは「わずかしか持たない切り札の破壊」を意味し、打つ手がないという状況下でもない限り、まず使用されることのない裏技である。

これができるのは、衛宮士郎が投影という複製技術を持つからこそ。換えの利く刀剣を爆弾として使うことができたわけだ。

 とはいえ、士郎も現状手数が少ないがため、時間稼ぎとして咄嗟に使用しただけであり、今回がこうした使用に及ぶのも初めてであり、今後も使用もしないであろう技であったが。

 

「……上手くいったみたいだな。」

 

 咄嗟の行動が功を奏する。先程までの斬撃ならとは違い、Cランクに達するほどの威力のある爆発をまともに浴びせ、全身を跡形もなく破壊させたからか、シャドウも再生には多少の時間を要している。

召喚方法は依然として知らないままだが、やり遂げるならこの合間しかなかった。

 

「しかし、召喚って……一体、どうすればいいんだよ。起動するために“何か”が必要だってことはわかるが、どうにもそれがわからない。」

 

 士郎はポケットから取り出したセイントグラフを手に、声の主に問う様に疑問を投げかける。

当初からセイントグラフに魔力を通そうと、構造把握には及んでいた。

しかし、通るための透き間はあるのだが、性質からして魔力が合わなかったのである。

故に原動力として、魔力とは別の何かが必要ということはわかっているが、それが何を指すのかはわからない。

 

「なに、簡単なことだ。己の“意志”を示すだけで良い。さすれば、応答は得られるだろう。」

「俺の意志…………。」

 

 その返答を頼りに、呼吸を整え、集中した精神をセイントグラフに通す。

今のイメージはまだ暗闇。目を瞑っているから闇なのではない。無の状態だからこそ闇なのだ。

 

「────同調、開始”。」

 

 士郎は自己暗示として、言い慣れた呪文を呟く。

意志とは、“あることを行いたい、あるいは行いたくないとする自発的な考え”である。

……自分は“何”のために戦うのか。

……自分は“何”を必要としているのか。

……自分は“何”を成すことができるのか。

 

“俺は────”

 

 その意志が宛もなく飛散するかの様に、様々なイメージが浮かび上がっていく。

一つは、“多くの屍が散る血に濡れた戦場の丘”。

一つは、“一人の英雄によって倒された悪竜の骸がある洞窟”。

一つは、“生きた人の気を感じさせないほど火の海と化した地獄”。

 

いくつものイメージが駆け巡る内にその中の一つを選び取る。

 

 イメージは────“何もない真っ白な空間”。

其処は、無窮の空。遥か刻の彼方が待つ果ての狭間。

ここより先も、ここより後もない、永久不変なる空白の境界。

人の身で立ち入る領域ではないこの世に佇むのは、一人の“守護者”。

長い刻を戦い続けている。気の遠く、かつての記憶も朧気になるほどに。

その在り方はこれから先も変わらないだろう。それは、自分が望んだことなのだから……。

 

“────戦い続ける。人の護りとして”

 

 ────接続完了。

意志が一点に収束し、エネルギーとしてセイントグラフに入っていくことがわかった。

その瞬間、士郎達がいる以外に何もないこの空間に魔力の奔流が起こり始める。

これは召喚だ。今、まさに“誰か”がこの場に召喚されようとしている。

セイントグラフは士郎の手元を離れると一人でに動き始め、所在もなく宙を舞うと光を発し、やがて無地の面には絵が浮かび上がった。

その絵は、トランプのジョーカーを彷彿とさせる2人の色違いのピエロが上下反対の形で立つ謎の絵であった。

 

 しかし、この瞬間を邪魔しようとする無粋な輩が現れてしまう。

シャドウである。誰が召喚されようが無銘の残骸には関係ない。その役割を果たすだけだ。

士郎を目掛け、槍を突き刺そうとする。平常時なら士郎もその攻撃には対応できたであろう。

だがこの時、召喚に意識が向けられていた士郎は、反応が遅れてシャドウの攻撃に対応できなかった。

穂先が心臓へと吸い込まれるように進んでいく。何の抵抗も敵わず、数秒後には絶命してしまうであろう。……あの時の様に。

 

 ────が、その時。絵より発せられた虹を伴った光が辺り一面に広がった。

 

「っ────!」

 

 光の直視。目映い光に視界が奪われ、士郎もその場に立ちつくしてしまう。

だが、槍で貫かれることはなかった。それは槍を打ち弾かれた音が、この場の状況を何よりも証明してくれた。

つまり、この場に召喚されたサーヴァントがシャドウと打ち合ったということである。

 

「────────。」

 

 時間にして数秒。士郎の視界も晴れる。

目の前にいたのは、異様な容姿をした女性の剣士だった。

 

 浅黒い肌に脹脛にまで届くほどの白の長髪。

 裾端に白黒色のダンダラ模様が入った黒衣。

 常人では歩くのも至難な高い厚底の高下駄。

 自らの体格を雄に超える黒の大太刀。

 

 その姿は、士郎のイメージの中に入ってきた守護者。服装は異なるものの、間違いなくその人であった。

 

「────問おう。お前が、私のマスターか。」

 

 彼女は振り返ると、凛とした声でそう言った。

目の前で主の可否を問う者こそ、士郎の召喚に応じたサーヴァントである。

その体験は二度目であるが、士郎も再び味わった衝撃に思わず思考が一時停止してしまう。

 

だが、その問いに応えようとした時には戦いが再開していた。

サーヴァントは一瞬にして翻ると、背後に迫っていたシャドウの槍撃を長刀でいともたやすく制し、浴びせた打撃を以てシャドウを数十メートル先にまで飛ばしてみせた。

そのままサーヴァントは剣先をシャドウの着地点先へと定めると、平正眼を思わせる構えを取る。

 

 ……と、構えたその瞬間。着地しかけていたシャドウの背後にいた。

否。動いただけではない。直後にシャドウより衝撃が発せられた。その動作はただの移動だけでなく、既に幾度と斬った後のものであった。

続け様の追撃に及ぶ。滑らかな体捌きで回転すると打ち振るう構えになり、そして一瞬の合間にシャドウの目前まで移る。斬撃による衝撃波が、再度遅れて響き渡った。

その疾さは、神風の如し。瞬間移動のような十全な機動性である。士郎にして最速と名高いかつてのランサーと匹敵視させるほど速いと感じさせた。

 

 攻撃は止まらない。

縦横無尽な機動で翻弄し、卓越した技量を以て長刀が自在に振るわれ、反撃の余地すら与えぬ猛攻を浴びせていく。

遂には得物であった槍までも攻撃に耐え切れなくなり、分断されてしまう。

 

「終わりだ。炎王煉獄斬!」

 

 士郎が目を離す間に、サーヴァントはシャドウから間合いを離しており、巨大な炎の気を纏った刀から袈裟斬りを繰り出した。

その衝撃は士郎にも届き、一帯に広がる爆風に飛ばされないよう身を伏せた。

 しばらくして風が止み、伏せた身を解いてサーヴァントを見るとシャドウの骸を前にして微動だにせず佇んでいた。

 ……勝負はついた。なけなしの再生は、維持の意味を成さない。燃え盛る炎によって、体は灰の如く消滅する。

 

「終わったぞ。無事か……?」

「ああ、なんとかな。」

 

 その姿を確認し終えると、サーヴァントは静かに士郎へ振り返ってそう呼びかける。

士郎もサーヴァントから問いかけられた安否を伝えたが、その後にサーヴァントとの会話は続かなかった。

返答にも無言・無表情で、士郎には何を考えているのかわからなかった。

 

「えっと、俺は士郎。衛宮士郎っていうんだ。」

 

 黙っているのも失礼と思い、まずは筋として自身のことを名乗った。

その言葉に、心なしか士郎には一瞬、サーヴァントのクセ毛が反応したかの様に見えた。

 

「士郎。士郎か……。そうか、覚えたぞ。」

 

 流石に以前ほど抵抗感は薄くなったが、距離感が近いと士郎は思う。

セイバーといい、何故にこうも初対面で苗字ではなく名前で呼ぼうとするのだろうか。

そう考えている間に、サーヴァントは“これはお前のだろう?”という意思表示か、無言でカードを差し出してきたので、素直にカードを受け取った。

 

「それで……名前は────」

 

 士郎が彼女を呼ぶべきサーヴァントのクラス名について聴こうとした時、唐突な光の消滅によって会話が遮られることになる。

士郎は突然の変異に動揺したが、サーヴァントが主を安心させようとしてか手を握り、その動揺は即座に別のものに変わっていく。

 暗闇が徐々に晴れていく頃には、先程までの空間と打って変わり、空気や足で感じ取れる地面感も現実のものになっていった。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 ようやく士郎達が認識できるものになると、そこは見覚えのある教会の礼拝堂であった。

地元、冬木市の郊外にある「冬木教会」。第五次聖杯戦争下で、主に監督役を務める人物の拠点として機能していたのがこの教会に当たる。

士郎としてもここは苦手であった。冬木市に起こった十年前の火事。孤児となった子供達を引き取ることになった教会は、あの出来事を否応なしに思い出させてしまうからである。

 

「…………っ!!」

 

 サーヴァントの手を握られていることに気付き、士郎は動揺がちに手を振りほどく。

当のサーヴァントは反応に対する意味がよくわからないのか、キョトンとした表情で見つめていた。

 その様子に言及する気になれず、気を取り直して一目確認したが、ここが本物の教会でないということはわかった。

空気感が違うし、蓄積された年数を感じさせる趣きも、本物として概念構造もここにはない。

つまり、ここは聖杯戦争のために用意された、ガワだけの教会ということだ。

 

「────言峰……綺礼……!?」

 

 士郎が講壇の方を向いた時に、思いにもよらない出来事が待っていた。それは講壇にいる監督役本人の存在にある。

 

 “言峰綺礼”。

第五次聖杯戦争における監督役であり、話を聴く限りには、彼がランサーのマスターとして暗躍していた様であった。

だが、彼は第五次聖杯戦争の最中に亡くなった。

士郎が経験した聖杯戦争ではあまり関与したことはないので知り得ないが、何しろ「アインツベルン城でランサーに刺されたことで絶命した」という話だ。

目撃者である遠坂凛の証言が唯一の事実として残っている。

 

「ほう。その様子だと、私が知り得る衛宮士郎に近い存在のようだな。そうだとも、私の名前は『言峰綺礼』。第五次聖杯戦争の監督役であった者だ。もっとも、正確にはお前の世界における『言峰綺礼』本人ではないのだがな。」

 

 講壇から士郎を見る言峰綺礼が口を開く。

言峰は何も変わらない。相変わらずの肩にかかる空気が重くなる様な威圧感を出している。

しかし、自身が口にする“『言峰綺礼』本人ではない”ということに士郎は引っ掛かった。

 

「言峰本人、じゃない?」

「ああ、そうだ。今の私は第五次聖杯戦争の言峰綺礼が再現されてここにあるものだ。お前が言うように、本来の言峰綺礼は既に死している。」

 

 引っ掛かる問いに自身の存在について切り出す言峰。

その言葉に、士郎も“なんでこんな奴を再現なんかしたんだ”、と苦々しい表情で思いを抱いた。

言峰としてもその反応が寧ろ気に入った様子だが、追及することなく話を切り替える。

 

「では、改めて告げるとしよう。ようこそ、試練を乗り越えし聖杯戦争のマスターよ。私は此度の聖杯戦争において監督役を務めている者だ。」

「そして、ここもまた冬木教会ではない。聖杯により模して造り上げられた都市『パラディウムシティ』。その都市の一角にある言峰教会がここに当たる。予選を勝ち残った者はこの場へ自動的に転移される仕組みとなっているのでな。」

 

 “都市”という言葉に士郎も少し気になった。つまりそれは、“人が住んでいる”ということになる。

また、冬木と同じく無関係の人々が巻き込まれる戦いが、見知らぬこの世界でも繰り返されようというのか。

聖杯戦争というのはどこまで行っても変わらない様だ。ワケのわからぬ儀式で、人の命が奪われていく。

 

「さて。聖杯戦争の経験者ということは、言わずもがなそのシステムを理解しているということであろう。サーヴァントはいずれも憑依させる器として、七つのクラスに分けられて召喚される。完全に七つのクラスというわけではなく、例外的に『エクストラクラス』が召喚される場合もあり得る。」

 

 “それはわかっている”、と士郎も頷く。

サーヴァントは、聖杯が定めたクラスに適合する形で召喚される。

基本的なラインナップは七つ。それ以外のクラスは、士郎も聴いたことがない。

かつて遠坂凛が一度、僅かに存在を仄めかしたこともあったのだが、閑話の様のものでその点は記憶になかった。

 

「──だが、今回はその例外は起きたようだな。どうやらお前が引いたサーヴァントは、エクストラクラス。『アルターエゴ』のサーヴァントのようだ。」

「『アルターエゴ』のサーヴァント……?」

 

 召喚されたサーヴァントは当の七クラスに該当しない『エクストラクラス』。

初めて耳にする『アルターエゴ』の存在に、聴いていた士郎も若干の興味を抱く。

ちらりと傍らに立ち構えるサーヴァントを盗み見るが、サーヴァントはただただ士郎を凝視し、沈黙を浮かべている。話が終わらないかと待っている様であった。

 

「“アルターエゴ”。これは、自我より分かたれた人格を指している。彼らは正統の英霊ではなく、元となった英霊の霊基が何らかの干渉より分かれ、世に生誕された派生体に当たる。このクラスに該当する者は、いずれも当の英霊より乖離した存在になる。」

 

 英霊が、“干渉を受けて派生されることもある”ということ自体、士郎の理解を超えた範疇の話であった。

英霊とは境界記録帯。世に齎した功績により、人でありながら精霊の域にまで達した存在である。

その英霊の霊基が、どうやってか改造されたわからないが、サーヴァントの時点で全く異なるものとして生まれるということなのだ。

つまるところ、話に基づくなら、この謎のサーヴァントは誰かの英霊から派生した改造英霊というわけらしい。

 

「尤も。そのサーヴァントが余程の偏物でない限りは、まず進行に支障を来さないクラスだがな。精々、上手く使いこなしてみせるがいい。」

 

 言峰はあくまで伝えるべき事実と情報は伝えたとして、話を切り止めた。

伝えたのは情から出た親切心などではなく、監督役としての義務による行為だ。

ルーラーやアヴェンジャーならともかく、通常の聖杯戦争でアルターエゴが召喚される例などまずない。

聖杯の召喚範囲が並行世界、さらには多元宇宙に及ぶが故に、契約が実現してしまった特例の一種なのだ。問題はなくとも存在を伝える他にない。

 

「────さて、衛宮士郎。お前はこの戦いをどうするべきか、明言してもらおう。お前は既に聖杯戦争を終えた身で、ここは冬木市ではない。権利を破棄し、元ある平和を謳歌したいというのであれば、その判断も仕方があるまい。奥にある扉を開き、そこを潜ることができれば元の世界に帰還できるだろう。」

 

 その問いからは行動を促す意図があり、まるで士郎を試すかの様に切り出された。

帰りたければ帰ればいい。その程度の期待外れとなったなら、残念だがもう用はない、と。

言峰綺礼にとって衛宮士郎が、“どういう人物”かは理解している。

だが、目の前にいる衛宮士郎がその通りとは限らない。その上で“戦いを降りる”ことも十分あり得るわけだ。

 

「言われるまでもない。俺は、犠牲者を出さない様に戦い続けるだけだ。……それが、俺の選んだ道なのだから。」

 

 試問に構うことなく士郎がそう答える。出会った当初とは違った自信に満ちた返答が気に入ったのか、言峰は満足そうな笑みを浮かべた。

“ランサーに刺された世界”では無念にも早退してしまったため、衛宮士郎が、その後どう至ったかは知る由もない。

だが、アーチャーが衛宮士郎の未来の姿だということは、状況の推測から判断できる。

ならば、その様子は答えは得たのだろう。少なくともそうであると判断を下した。

 

「話はそれまでか?もう他に用もないなら、このまま行かせてもらうぞ。」

「ああ。話はこれまでだ。その身を世に尽くすために、聖杯戦争の地へと進むがいい。」

 

 言峰がそう告げると、素っ気無い対応で士郎達はその場を立ち去ることにした。

士郎としてもどの言峰であれ根本的に相容れそうになく、やはり近寄りたくはないと感じた。できることなら、もう会いたくもないのである。

翻して背後にある教会の扉を開き、新たな聖杯戦争の地へと降り立っていった。

その背後で────。

 

「────喜べ少年。君の願いは、再び叶う。」

 

 言峰が神託を下すが如く、いつぞやと似たの言葉を口にする。

士郎はその言葉に立ち止まることなく進み、早々とした足取りで教会を後にした。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

「…………すごいな。」

 

 教会の敷地から離れ、通りで見た光景に士郎は思わず感服した。

そこは自分達の世界よりも遥か先を行くハイテク社会。周囲には発達した科学技術の産物があちらこちらに溢れている。

というのも士郎がいた時代は2004年。これは空中ディスプレイや立体映像など実用化の目途すらまだ数年先の段階であり、寧ろ一般的には空想上の産物という認識で浸透されていた時期である。

それが今、時代を越えて現実に存在するわけなのだから驚かされているわけだ。

 

 ふと空を見上げると空中を浮遊する船が通っているのが見えた。形状からして本当にSFもに出てくるような船である。

旅客もしくは輸送用のジェット機よりも大きく、それでいて遅い様に感じられない。

よく見るとジェットエンジンといった推力源は見られず、まるで重力を逆らうかのように機動していた。

 

 周囲を見ると、奇異の眼差しを集めているのに気付いた。

その対象は士郎ではなく、傍らに立つアルターエゴに向けられるものだ。

無理もない。確かに目を引くほどの美人というのもあるが、それ以上に異様な格好をしているからだ。

 

「──いくぞ。アルターエゴ。」

「……?私のことか。」

 

 とりあえずここから離れるべきか。そう判断し、その場を後にした。

アルターエゴは一瞬自身の呼称が理解できずに遅れて反応したが、足音も立てることなく着いてきた。

 

 

 

 しばらく歩いて、街の風景を見ていたが通常の世界と様子が違うことがわかった。

街で生活する人々は士郎と同じ普通の人間も確認されるが、他にも多種多様な亜人達も存在しており、互いに共存して暮らしている。

そして、近未来的と思われた都市も、中には時代錯誤な建物もちらほらと見られ、統一性は感じられなかった。

 

「…………あったな。」

 

 土地勘なく彷徨っていたが、ようやくバス停にまで辿り着いた。

最先端の科学技術はここでも導入されているが、全体的に士郎のよく知る時代のバス停と何ら変わらないものであった。

 今、士郎達が向かっている場所は、端末に記載されてある住居先だ。マップで確認する限り、どうも「マークライト街」にあるらしい。

マークライト街は都心部の「センターロード街」や教育関係を中心とした「スクール街」を挟み、教会から現在地を含んでその近辺に位置する「ストランド街」の反対側に位置している。

実際、マークライト街まで相当の距離があり、加えて土地勘のないこの都市を徒歩で行こうと思うならまず日が暮れてしまうので、今回はバスにしようと判断したわけだ。

 

「あと、ニ十分ぐらいか。」

 

 バス停の時刻表で確認するとまだ、暫く時間があるらしい。

しょうがなく、椅子に座って待つことにとしたが、振り向くと傍らにアルターエゴはいなかった。

やや離れた位置で立ち尽くしているアルターエゴは遠くにあるキッチンカーを眺めている様だ。

よく見ると、それはクレープ屋らしい。興味があるのかもしれない。

 

「なんだ、気になるのか?」

 

 士郎がそう聴くとアルターエゴはこくりと頷いた。

士郎はアルターエゴのためにクレープを買うと、バス停の付近にある広場で休憩を取ることにした。

 

 遠く離れた広場では、子供達がそれぞれ和気藹々と遊んでいる。

フリスビーやサッカーのような定番のスポーツをやっていれば、ゲームやカードゲームなどの遊戯をわざわざ外で興じていたり、懸命に自転車の練習をしている子も見えた。

その光景から、この都市が平和であることを実感する。

 だが、この地で聖杯戦争が行われる以上、この平和もやがて脅かされるものだ。

それは、聖杯戦争を5度も経験した冬木市と何も変わらない。

 

「……ふう。」

 

 キッチンカーの近く、バス停が見える位置にある備え付けのベンチに腰かける。

なお、アルターエゴには現代風のファッションを着てもらっている。

これは途中に寄り道したブティックで店員のオススメを買ったものであった。

変わった服装が流石に目立ってしょうがないというのもあるが、士郎なりに目のやり場に困る点もあるので已む無しに購入したわけだ。

 

「おおぉ……。このもむちゃっとした歯応えが、なんともいえない。美味み。」

「アルターエゴ。頬にクリームが付いているぞ。」

 

 アルターエゴはクレープに気に入った様子で、早々なペースで頬張っていた。

その無邪気な食べ方をする彼女に、士郎も見かねて頬を紙ナプキンで拭き取ることにした。

世話のかかる彼女に、士郎は見た目と違って、意外と子供っぽいなヤツだなと感じた。

 

「……む。やはり、アルターエゴでは何か慣れないな。別の呼び方にしてくれ。」

 

 と。彼女からサーヴァントにあるまじき発言を受けた。

サーヴァントは弱点となる真名を隠すため、往々にしてクラス名で呼び合うのが聖杯戦争における常識となっている。

その常識もあり、士郎も敢えて彼女のことを触れることはしなかった。

そもそも対策のために真名を知ったところで戦力を上手く扱えるわけもないし、相手を深く知りたいと思うほど好奇心旺盛でもないというのもある。

 だが、目の前にいるサーヴァントは聖杯戦争では呼ばれにくい特殊な存在だけあってか、クラス名がどうも慣れないらしい。

 

「えっと……じゃあ、何て呼べばいいんだ?」

「沖田ちゃんだ。沖田ちゃんがいい。」

「お、沖田ちゃん?」

「ああ、私は沖田総司の写し身だからな。それに可愛いだろう?」

 

 惜しげもなく、あっさりと自らの真名……もとい、改造元を口にした。

士郎も可愛いかどうかはまずスルーしたが、改造元を口にされると流石にスルーできなかった。

 

「沖田総司というと、あの新選組の沖田総司のことだよな……?」

「そうだ。……と言っても、私には沖田総司として生きた記憶がほとんど残っていないがな。」

 

 沖田総司のことなら日本人の士郎でもよく知っている。

幕末の京都を中心として活動した治安組織「新撰組」。その一番隊隊長が沖田総司である。

類い稀なる天才剣士でありながらも、その身は病に侵されていたという。

最後は局長近藤勇の死を知ることなく、若くしてこの世を去った悲運の英雄として伝わっている。

沖田総司の写し身ということは、このアルターエゴは沖田総司の派生体であることを指している。

 

「いや、しかし。沖田ちゃんって……。別の名前にしないか?おいそれと人前で名前を明かすのは良くないぞ。そういうのは、いつか自分が不利になっていくだけだ。」

 

 流石にその名で呼ぶことを咎め、別の名を求めることにした。

士郎は彼女が無知である様に、真名の重要性を理解していないと察する。

確かに“沖田総司の派生体”など真名を知られたところで、まずその実態を把握することはできない筈である。

だが、だからといって安直に晒してしまうのは無用心なわけだ。

……その意見も半分、実は士郎も年頃の少年だけあるので、あまり妙齢な女性に対して“ちゃん”付けで呼ぶのは抵抗感があったことも意見の要因であるのだが。

 

「……そうだな。では、まじんさんなんかでどうだ?私はこの呼び名が気に入っている。」

「ま、魔神さん……?まぁ、いいけど。」

「ちなみに神の下に人が付くぞ。」

「そ、そうか。ヘンな名前だな。」

 

 とりあえず、魔神さんと呼ぶことに決まったが、難しい漢字は適当に流しておくことにした。

つくづく思っていたが、やっぱり天然なのかもしれない。と士郎は僅かな付き合いの中で沖田オルタについて悟ることになった。

 

「────よし。いいかな魔神さん。」

 

 士郎は自分なりの旨を伝えるため、真剣に話を切り出す。

クレープを食べ終えた沖田オルタは、話を始める士郎の方を向いた。

 

「直接言うのは初めてかもしれないけど、聖杯戦争が街の平和を脅かすのなら、俺は全力で止めたい。戦いの性で平和に暮らしている人達が犠牲になってほしくはないんだ。魔神さんには何か聖杯に賭ける願いがあるかはわからないが、できることなら協力してくれないか?」

 

 自らのサーヴァントに聖杯戦争に掛ける己の意志を示す。

第五次聖杯戦争でもそう選んだ様に、この都市の聖杯戦争も皆のために戦いたいと思っている。

聖杯に託す願いがあるかどうかにもよるが、力を貸してほしいと未知のサーヴァントに仰いだのあった。

 

「都市の平和を守るか……。わかった。私も、平和のために協力しよう。」

 

 沖田オルタとしてはそこまで思うこともなく、あっさりとしている様だが、その意向がどこか気に入った様子で承諾された。

感情が希薄な彼女であるが、士郎にはそれが、どこか懐かしさを感じる様な優しげな微笑みを浮かべている様にも見えた。

 

「いいのか?その、魔神さんには叶えたい願いとかそういうものはないのか?」

「無いな。……夏場におでんを食べられる世界を創りたいとか、そういうものでもいいか?」

「いや、やめてくれ……。」

 

 その答えに“そうか……”とやや残念そうな言葉が出て、士郎は心の中でツッコミを入れる。

ともあれ、士郎の中では沖田オルタは信頼できる相手と確信した。ズレたことを話すが、純粋無垢で悪いヤツではないらしい。

 

「それじゃあ、これからよろしく頼むな。魔神さん。」

「ああ。この身の霊基が砕け散るその時まで、共に戦おう。」

 

 召喚から間が空いたものの、改めて互いに信頼を結ぶこととなった主従。

とりあえず、士郎は友好のために握手を交わそうとするが、沖田オルタにはその行動の意味がわからない様で無反応であった。

 

「バスとやらはわからないが、あれじゃないか?」

 

 士郎が握手に対して説明しようとした所で、沖田オルタにバス停の方角を指される。

確かにいつ間にかバスは止まっており、時刻を確認すると到着時間はピッタリである。

慌てて疾走する士郎達はなんとかバスに間に合って乗車し、到着先のマークライト街、そして拠点となる住居に何事もなく辿り着いたのであった。

 

 斯くして、都市の平和を願う未熟な守護者は、聖杯戦争に加わっていく。

この先、彼らがどうなるか、何を知ることになり、何と関わり、何を成していくのかはまだ見ぬ話だ。

これからの戦いの道行きは、不断の光によって照らされることであろう。

 

【クラス】

アルターエゴ

 

【真名】

沖田総司〔オルタ〕@Fate/Grand Order

 

【出典】

Fate/Grand Order

 

【性別】

女性

 

【パラメーター】

筋力B 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運C 宝具A

 

【属性】

中立・中庸

 

【クラススキル】

対魔力:B

魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

本来の沖田総司とは異なり、超常の者との戦いを想定されているため高ランクの対魔力を保持する。

 

単独行動:A

マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクAならば、マスターを失っても一週間現界可能。

本来、絶望的な状況下に顕現させ、単騎での目標殲滅、もしくは相打ちでの消滅を目的として調整されたため高ランク。

 

【保有スキル】

極地:A

あらゆる空間での十全たる動きを可能とする究極の歩法。

沖田総司が持つスキル「縮地」が独自発展したものとされる。

 

不断:B

絶え間なく続く戦いの道行きを照らす不断の光。それはあの日の記憶の証。

一時的に筋力と幸運を+分、上昇させる。

 

無辺:A

一切の世界をあまねく照らす無辺の光。天魔を滅す金色の極光。

沖田総司が持つスキル「心眼(偽)」が独自発展したものとされる。

 

【宝具】

『絶剱・無穹三段』

ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:1〜69 最大補足:690

無量、無碍、無辺、三光束ねて無穹と成す。光り輝く黒光を放つ魔神・沖田総司必殺の魔剣。

本来、存在しえないもの、してはいけないものすら強制的に世界から退去、消滅させることが可能。

 

この宝具は抑止の守護者としての彼女における究極の奥義とされ、ある特異点では神霊などを屠った経験を持つ。

 

要領としては特殊な大太刀『煉獄剣』からオリジナルの「無明三段突き」を彷彿させる構えで繰り出し、ビームとして放つ形となる。

 

【weapon】

『煉獄剣』

勝手につけられた無銘の謎兵装である大太刀。

調子がいいと刀身の中央が赤く輝くこともあるなど未知数。

意思があるようで、たまに喋る。

 

『火炎』

戦闘で補助的に用いられる炎の力。

彼女自身、特に火に纏わる話はないため、結局何によるものかは今のところ判明していない。

纏わせた状態で切り裂く「炎王煉獄斬(仮名)」なる技もある。

 

【人物背景】

沖田総司。新選組一番隊隊長の別側面であり、到達しえたかもしれない可能性の末路。

 

それは、かつて沖田総司がまだ幼子で死の病に侵されていた時、阿弥陀様(抑止力)と契約したことで、生き長らえることできたという経験があったとされている。

沖田総司の弁によると、“その時の借りを返さぬまま自分のためだけに生きてしまったがために、するべきだったかもしれないことを果たさなかった”と語られている。

彼女は、その時の借りに答えるべく霊基を分けられ、未来に“こうあるべきはずだった沖田総司”として存在している。

 

本来の役目として、ある特異点において使命を果たすために、ただ一度きりの顕現を目的として召喚された。

最初は「ひよこの刷り込み」というほど未熟であったが、そこで出会った“ある人”と短い一時を駆けていく中で成長を遂げていき、やがて使命と向き合うこととなった。

その時の思い出は、今はもう朧げであるが、暖かさだけは心に灯り続けているという。

 

今は抑止力の使者として、人の護りとなり悠久の時を戦い続けている。

 

感情が希薄なため、一見すると冷静沈着然としているが、中身は天然かつ純粋無垢な性格。

無知なこともあれば、時に間抜けた言動や素直な言動を見せることも多く、『煉獄剣』からも“子供っぽい”と評される。

また、放っておいたら本題そっちのけで適当に動いたり、眠りに落ちたりするなど結構マイペースな面もある。

沖田総司としての記憶は自身にはほとんど残っておらず、自分でもわからなくなるほど別人に等しい。在り方は抑止力の使者に他ならない。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。強いていうならば、都市の平和を守ることか。

 

【方針】

士郎がマスターとして信頼の念を抱いているので、意見には素直に従い、攻撃には全力で身を守るつもり。

 

【参考文献】

ゲーム「Fate/Grand Order」より『ぐだぐだ帝都聖杯奇譚-極東魔神(人)戦線1945-』他ぐだぐだ系イベント、およびマイルームボイス・バレンタインなどをご参照ください。

(イベント関連になるため、未経験の方は動画サイトのプレイ動画・まとめ動画などをご確認ください。)

 

【備考】

スキルは詳細が不明瞭な点もあったため、FGO内での性能や沖田総司との比較などを元に解釈及び加えさせていただきました。

 

【マスター】

衛宮士郎@Fate/stay night

 

【出典】

Fate/stay night

 

【性別】

男性

 

【能力・技能】

「魔術」

27本の魔術回路を持ち、保有数は1代目の魔術師としては比較的多め。

しかし、魔術の素質は壊滅的でごく限られた種類の魔術しか使用できない。

当初は師を亡くしたために完全な独学で、知識・技量ともに半人前以前の状態であった。

戦いの中で遠坂凛に弟子入りし、経験を経たことで本質は掴み、今は半人前といったレベル。

 

『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』

衛宮士郎の象徴たる固有結界。

その心象風景は、燃え盛る火が壁となり、無数の剣が乱立した荒野が広がっている。

自他も認める様に、衛宮士郎が使える唯一の魔術。投影魔術や物体構造の把握などまで本来はこの派生技術に当たる。

結界内にはあらゆる「剣を形成する要素」が内包されており、荒野に突き立つ無数の剣は視認した刀剣が登録し、貯蔵されたものである。

ただし欠点もあり、「複製品は本来のものよりランクが一つ落ちる」「剣であっても神造兵装の類は複製不可である。」「一から作らなければいけないため、物によっては作成に時間が掛かる。」という点も含まれている。

基本的に固有結界の原理として展開し続けるには、士郎自身の魔力だけでは足りず、優秀な支援者からのバックアップと自身の魔力回路全てをフル稼働してようやく使うことができるといったところ。

なお、登録されるものは刀剣に限られず、盾や槍、銃弾、日常品といったものまで複製対象となっている(とはいえ剣投影よりも魔力のコストが異なる)。

 

投影魔術

魔力で物質化させる魔術。

士郎のものは正しい投影ではなく、無限の剣製の延長線上にあるもの。

性質として、視認すれば固有結界を起動せずとも宝具級の代物を投影することも可能な上、破壊されない限りは半永久的に残り続けていく。

また、その応用として、刀剣に宿る「使い手の経験・記憶」まで解析・複製することで投影した武器の使用者の技術を模倣する「憑依経験」なる技能が存在する。

 

構造解析の魔術

器物の構造を読み取り、内部を視覚映像として捉える魔術。

構造把握だけは天才的であるが、重要な点だけ読み取りいかに速く変化させるかが魔術師の肝であるのに対して、設計図をまるまる制作しすることから非効率的と評されている。

 

「弓の腕前」

かつて弓道部に属していたことで身に付いた弓の腕。

魔術鍛錬を応用により百発百中の腕前を持ち、その腕前は高速移動するサーヴァントのこめかみに命中させられるほど。

 

【weapon】

「投影品」

干将・莫邪といった多数の宝具を持つ。

 

【人物背景】

養父「衛宮切嗣」の影響で「正義の味方」になることを本気で志している見習いの魔術師。

第四次聖杯戦争で起きた「冬木大火災」の唯一の生存者であり、その折に切嗣に助けられ、歪みを抱えたまま育っていく。

十年後、第五次聖杯戦争の最中にサーヴァントの戦いを目撃し、その事故の中でセイバー「アルトリア・ペンドラゴン」を召喚させたことが転機となり、聖杯による争いを防ぐために戦うことになった。

その中で、協力者「遠坂凛」のサーヴァントであるアーチャーが、未来の自分「エミヤ」であることを知ることとなり、対峙の末に、自分が選んだ道なのだから守り通すと決意。

精神的な成長を経て、第四次聖杯戦争から生き延びていた「ギルガメッシュ」を制し、第五次聖杯戦争は終わりを迎えた。

 

基本的には素朴で実直な性格。

「正義の味方」を目指してるため、自分ができる範囲であるならばなるべく人助けするお人好しであるが、人助けのためなら自らを省みない在り方をしている。

それほどまでに目指している理由は、理想を諦めた切嗣の遺志を継ぐという思いや「災害の中で唯一生き残ってしまった」というトラウマから人の為に生きなければならないという義務感によるもの。

その点が歪であることを言峰綺礼に興味を持たれ、遠坂凛に非難されることもあったが、アーチャーとの戦いにより、自身もその異常に気付いてもなお貫くこととした。

 

【マスターとしての願い】

借り物の理想とわかっているが、正義の味方になってみせる。

 

【方針】

戦争やテロによって無関係な人々が巻き込まれるなら、それを防ぐために戦う。

聖杯はいらないが、悪いヤツの手に渡るのであるならば止める。

 

【ロール】

フリーター(現在のアルバイトはアカデミーの用務員らしい)

 

【参考文献】

ゲーム『Fate/stay night』(UBWルート)およびアニメ『Fate/stay night』 [Unlimited Blade Works]などをご参照ください。

ゲームは動画サイトなどでプレイ動画が上がっているかと思います。

 

【備考】

UBWルート終了後を想定しております。



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【オープニング】【本戦開始前】07 胡蝶カナエ&ランサーマスター 胡蝶カナエ サーヴァント ランサー アラ・ハーン

登場キャラクター
マスター 胡蝶カナエ
サーヴァント ランサー アラ・ハーン

作者
◆K2cqSEb6HU


 月海原学園。

この学校は一般的な初等・中等教育層に向けて設立された施設である。

マスターとして参加することとなった一人の少女が与えられたロールに従い、

この学校へ登校しているところであった。

 

 彼女の名は胡蝶カナエ。

長めの紫髪に左右双方に蝶を模した髪飾りが特徴的な女性だ。

カナエは現代よりも昔、日本における大正時代の出身。

彼女にとってこの世界は見慣れぬ異世界であり、所謂「浦島太郎」の状態である。

違いの差に思わず戸惑うことも多いが、柔軟的な人物だけあるので、

時代の変化やルールに多少は合わせられており、それなりに新鮮に受け入れていた。

 

(まさか、こんなことになるなんて、思いもよらなかったわね。)

 

 今はこうして十分生きているが、カナエはこの世界に来る前に亡くなった身である。

彼女は、鬼殺隊と呼ばれる人食いの鬼を狩る剣士を仕える組織に属し、

親しい者を鬼に殺される思いを他者にさせないためにも戦っていた。

そんな中、カナエは敵対した「上弦の弐」の前に敗れてしまう。

救援に来た妹の胡蝶しのぶが来た頃には瀕死で助かる見込みはなく、

最後は看取られる形で、命を落とすこととなった。

 それから、どういうわけだかしばらくしてここへ辿り着いた。

どうにも自分は聖杯戦争と呼ばれる争いに巻き込まれたらしい。

 

(戦争が行われるなんてね……。)

 

 辺りでは同じ様に和気あいあいと登校する学生達がいたり、

店の準備をする様子や繁盛する朝食屋台などもあり、この世界の平和を象徴としている。

カナエは争いが好きではないので、この地で行われる聖杯戦争は望ましくは思っていなかった。

 聖杯戦争とは、報酬となる聖杯を巡って争うものらしい。

聖杯とはあらゆる願いを叶えるに他ならず、世界を望むがままに

変革・創造し得るほどの効力を持つ道具という。

 

「先生、おはようございます。」

「おう。おはよう。この学校は慣れたか?」

「いえ、まだまだわからないことだらけですね。」

 

 校門前まで着くと、挨拶運動をしている月海原学園の教員に挨拶し、軽い会話を交わした。

当初は驚いたが、この教員を含み、人間とは異種族な相手は学校でも多い。

この世界では学校の範囲だけではなく、全体的に多くの異種族も仲良く暮らしている。

戦ってきた鬼には複雑な成り立ちがあるので、訳が違うものだが、

それでも同じ心を持つ者同士が仲良くできることを望んでいたカナエにとっては理想に近い光景であった。

 

 カナエは他者を犠牲にしてまで叶えたい願いなどない。

だが、今の自分は何かの縁会って二度目の生を貰った身。

この世界で生きている限り、争いで哀しみを生まない様に尽くすと心に決めたのである。

わからないことだらけの現状でもあるが、

それが自分にできることというのはよくわかっていた。

 

「…………よしっ」

 

 カナエは校門を潜り抜け、他の者とも軽い挨拶を交わしながら進むと、

自身の気を引きしめて、校舎の中へと進んでいった。

まず、すべきことというのは、役割として与えられている学業に準拠することである。

転校生という扱いを受けつつ来て数日であるが、カナエはまだ慣れず、気疲れすることも多い。

カナエはまだ裕福と言える家庭の出身だったので、基本的な学識というものはあるが、

それでも大正とは時代差があるもので、認識観も学問も、ルールも違い、周りに着いていくのに苦労している。

故に、迷惑はかけまいと真面目に取り組んでいたのであった。

 

 

 

 

「ランサーさ~ん?」

 

 学校の休み時間、仲良い人達との話し合いも楽しんだ後に、

ふと自身のサーヴァントが気になって人気のない場所で呼ぶこととした。

サーヴァントは霊体化を解くと、一人の少女が姿を現した。

 白メッシュの入った長い黒髪と赤と黄のオッドアイが特徴的な少女であった。

彼女の役割名はランサー。真名はアラ・ハーンといい、地球と異なる世界の英雄に当たる。

 

「はい、なんでしょうか?」

 

 ランサーは「気配感知」と呼ばれる認識把握スキルを持つため、周辺を偵察していた。

その能力の存在と行動を取ることはカナエにも伝えており、知っていた上で呼び出したのであった。

 

「何ってほどのものでもないのだけれどもね。ただ貴方と話がしたかったの。

ずっと偵察ばっかりというのも退屈でしょう?」

「まぁ、はい……確かにそうですが。い、いえ!決して怠っているわけではないのですが……!」

「ふふっ、いいのよ。気にしなくて。私は、貴方とも仲良くしたいの。

だって、これから戦っていく仲なんだから。」

 

 カナエなりには彼女とも仲良くしたいと思っており、ランサーとも会話したかったのである。

ランサーもその善意を受け入れると、休んで会話することとした。

 ランサーこと、アラ・ハーンは礼儀を重んじる真面目な人物であり、目先の利益のためではなく、

真の価値のために生きることを行動原理としている。

今回、応じた現界でも叶えたい望みはない様子であった。

マスターや現世に生きる人々を守り、悪しき者がいれば倒すものだとカナエに答えている。

 

「あっ、そうそう。ランサーさん。貴方がいた世界のことも聴かせてくれないかしら?」

「そうですね……。どこから話しましょうか。」

 

 余鈴が鳴るまでの僅かな休み時間であるが、主従は親交を深めるために会話を楽しんだのであった。

 

 

【クラス】

ランサー

 

【真名】

アラ・ハーン@ELSWORD

 

【出典】

ELSWORD

 

【性別】

女性

 

【属性】

秩序・善

 

【パラメーター】

筋力B 耐久C 敏捷A+ 魔力B 幸運C 宝具B

 

【クラススキル】

対魔力:B

魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。

大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

 

【保有スキル】

退魔術:B

世を仇なす魔性を退りぞける為に用いる術の行使。

魔性に対して有効なダメージを与えられる。

影退魔術といった退魔に用いられる術などが使われる。

 

自己改造:C+

自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。

このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

 

気配感知:B

気配を感じ取ることで、効果範囲内の状況・環境を認識する。近距離ならば同ランクまでの気配遮断を無効化する。

 

【宝具】

『小妖/修羅/羅天』

ランク:D~B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大補足:1人

ランサーが持つ上位職システムが宝具化されたもの。

召喚されたランサーは3種の職系統に分かれる内の1種に基づき、3段階の霊基に該当して現界される。

霊基の段階が上昇するほど、サーヴァントとして想定されている出力や技能を存分に発揮する形となる。

この系統でのランサーは、ハクとの憑依一体を極めた個体であり、現在の霊基は第二再臨の「修羅」に当たる。

 

『咆仙経の簪』

ランク:C+ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大補足:1人

九尾の狐「ハク」が封印されている簪。

真名開放と共に眠っている「ハク」を目覚めさせ、自身に憑依させることで強化する。

憑依時は彼女が主人格となり、姿とともに口調も変化する。その際に、アラの記憶はない。

憑依中は速さの出力が上昇し、また敵への攻撃・撃破することに気力として吸収することができる特性を有する。

 

『千年妖狐/妖狐合一』

ランク:C~B 種別:対軍宝具 レンジ:1~30 最大補足:200人

宝具として使用されるハイパーアクティブスキル。

修羅である時は『千年妖狐』、羅天である時は『妖狐合一』となる。

『千年妖狐』では、真名解放と共に九尾の狐「ハク」の本体を呼び出し、共にいくつもの攻撃を放ち、最後は薙ぎ払う形となる。

『妖狐合一』では、真名解放と共に九尾の狐「ハク」と合一状態となり、

炎の属性を持った魔力の塊や衝撃波の放出、加えて巨大な爪撃により、敵全体を一掃する。

 

【weapon】

「槍」

無銘の槍。霊基ごとに形状が異なっている。

小妖では白と黒の穂が備わった双刃の槍。

修羅では曲刀の形状をした穂と石突に小斧が付いた長柄刀。

羅天では穂と穂の面が交わって形成された双刃の槍。

 

【人物背景】

フルオネ大陸北部の帝国「シン」の自治領に位置するパルマン。

その地で、代々封印された九尾の狐を崇めている一族「ハーン」家の末裔である。

彼女が住んでいた村が魔族によって侵略された時に、咄嗟に迫られた九尾の狐との契約を交わし、難を逃れたのが始まり。

その際に侵略を指揮していた兄「アレン・ハーン」を取り戻すために旅に出たとして伝わっている。

 

武だけでなく礼を重んじる性格で、清楚なお嬢様といった心優しさを持った人物。

高潔としているが、生真面目故に天然な面もある。

 

ハクは予知能力を持つとされる九尾の狐。700年以上前に生きており、簪に封印されているということ以外は明かされていない。

長く生き続ける妖怪であることから視野は異なり、知識や経験は豊富という。

普段は力を発揮することはできないが、アラへ憑依することで封印されている九尾の狐としての力も解放される。

 

霊基は他にも純粋に槍術を極めた飛天の系統、異国の書物を以て氣功術を極めた黒闇天の系統があるが、

今回、現界した羅天の系統は「ハク」の封印を解放し、受け入れることで九尾の力を手にした姿とされている。

また、こちらでは家系として受け継がれている退魔の技術を主としている。

 

【サーヴァントとしての願い】

サーヴァントとしてマスターを守り通す。

 

【方針】

気配感知を活かして、近辺の認識探知を行う。

戦闘ならば、出来れば周囲を巻き込まない様に配慮する。

 

【把握媒体】

ゲームおよびプレイ動画などをご参照ください。

また、技の内容・台詞・ストーリーはELSWORDのwikiにも記載されております。

 

 

【マスター】

胡蝶カナエ@鬼滅の刃

 

【出典】

鬼滅の刃

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

「花の呼吸」

特殊な呼吸により、大量の酸素を血中に取り込む事で瞬間的に身体能力を大幅に上昇させる技術、“全集中の呼吸”の一種。

五大流派である「水の呼吸」の派生であり、呼吸音は「フゥゥゥ」。

振るった刀の軌跡が花の様に見えるのが特徴であり、美しさは鬼さえも魅了するほど。

全部で六つの型があるが、壱ノ型と参ノ型に関しては劇中未登場のため不明。

 

「弐ノ型 御影梅」

自分を中心とした周囲に向けて連続して無数の連撃を放つ。

敵の攻撃を捌き、受け流す防御技としても有効。

 

「肆ノ型 紅花衣」

前方に向けて流れる様な足運びで大きな円状の軌跡を描きながら斬り付ける。

 

「伍ノ型 徒の芍薬」

前方の敵に対し、最大で九連続の斬撃を放つ。上下左右から敵を取り囲む様に放たれる為、回避するのは困難。

 

「陸ノ型 渦桃」

空中で体を大きく捻り、反転しながら斬り付ける。

周囲360度に攻撃が及ぶ為、全方位防御に活用可能。

 

【weapon】

「胡蝶カナエの日輪刀」

猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石という日光を吸収した特殊な鉄から作られた日本刀。

日光を浴びる事以外、基本的に不死身である鬼にとって有効打となり得る武器である。

カナエの日輪刀は四つ葉の形状の鍔を持ち、「悪鬼滅殺」と彫られた淡い桃色の刀身が特徴。

 

【人物背景】

鬼の手から人を護る政府非公認の組織「鬼殺隊」。

最上級剣士である柱内の一人「花柱」の称号を持つ隊士であった。

幼少期に両親を鬼に目の前で殺されて以来、「自分達と同じ思いを他の人にはさせない」

という決意を胸に鬼殺隊に入隊した。

その一方で、無惨によって鬼にさせられた者達を「哀れで悲しい存在」と感じており、

故に抱く「鬼と人は仲良くする」という夢から、鬼の恨み・憎しみの強い鬼殺隊の中では異端視されていた。

 

しかし、劇中より4年前に、鬼側の最高戦力「十二鬼月」の一員である上弦の弐こと「童磨」に襲われ、

最後は妹の胡蝶しのぶに看取られながらも命を落としてしまう。

この事が後にしのぶにとって大きな遺恨を与えることになる。

 

朗らかでおっとりしており、鬼にされてしまった人々も救いたいと願うなど心優しい性格。

公私は分ける方で、鬼殺隊の柱として、隊士として、厳しく正しい言動を見せる場面も少なくない。

素はかなり天然な方で、理由になっていない行動を取ることもある。

 

【マスターとしての願い】

聖杯に願うことはないが、異種族が共存する現世を守りたい。

 

【方針】

自分から戦いは仕掛けないが、戦いがある(ありそう)なら赴く。

出来れば周囲を巻き込まない様な配慮を取る。

同盟は組めるものなら組みたい(端末の扱い方はわからないのでランサーに任せている)。

 

【ロール】

月海原学園の生徒

 

【把握媒体】

原作「鬼滅の刃」をご参照ください。

ドラマCDなどにも登場しています。

 

 



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【オープニング】【本戦開始前】08 チルノ&バーサーカー マスター チルノ サーヴァント バーサーカー アパチャイ・ホパチャイ

登場キャラクター
マスター チルノ
サーヴァント バーサーカー アパチャイ・ホパチャイ

作者
◆K2cqSEb6HU


「おーい、アパチャイ。メシだぞ。めずらしいな、お前がメシ時に送れるなんて。」

 

 沈みかける夕陽が映る林。

アーカードという青年がアパチャイという少年の下に、晩飯の呼びかけに来た。

 

「あ、アーカード。」

「どうした、手ばかり見つめて。まさか痛めたのか。」

「ううん。大丈夫、ちがうよ。」

 

 アパチャイはロープで巻かれた自身の手を見ていた。

アーカードはそれを見て負傷かと思ったが、アパチャイはそれを否定する。

 

「ねぇアーカード、アパチャイたちのこの“力”って、ぶっこわすことにしか役立たないのかな。」

「ん?まぁムエタイは敵を仕留めるための技術だからな。」

 

 アパチャイは投げかけた。自らが使う力と技「ムエタイ」の使い道は破壊しかないのかと。

アーカードは疑いもなく答えた。「ムエタイ」とは、戦いのために使われる武術であると。

 

「……でも。」

 

 アパチャイは少し言いよどみ、そして思いを口にする。

 

「アパチャイはいつかこの力を人助けに使えたらいいな~っていつも思うよ。」

 

 これから先に歩む力の道を感じさせる眼差しで輝かしい思いを明かした。

それからアパチャイという少年は、立派に成長し、ムエタイは「活人の武術」へと昇華した。

 

☆  ☆  ☆

 

 

「────この、起きんかぁぁぁぁぁ!!」

「ぐはぁ!?」

 

 鈍い音が教室一帯に響き渡った。鉛色のポスターが女の子の頭部を直撃したのである。

ポスターには似つかわしくない破壊音であるが、これは鉄板仕様であるが故。

頭を打たれた女の子は痙攣すると、しばらくして起き上がった。

 

「…………いっ、たぁぁぁい~~!!なにすんのよ、タイガー!」

「タイガーって言うな────っ!」

 

 二度目の頭部直撃。こうかはばつぐんだ。

 

「もぅ!チルノちゃんったら、授業中に寝たりしちゃダメなんだからね!

それに!先生のことは藤村先生って言わなきゃダメ。次に名前で呼んだら怒るから。」

「……もう怒ってんじゃん。」

「なんか言った?」

「いや、なんでもないわ。」

 

 先生に怒られ、それに連れて女の子も素直に従った。

女の子の名はチルノ。彼女も聖杯戦争のために集められたマスターだ。

本当は幻想郷と呼ばれる辺境で暮らしていた妖精であるが、今は一介の小学生である。

 

「罰として、放課後の掃除はチルノちゃん一人でやること!」

「えぇ~~!?」

「えぇ~~、じゃありません!」

 

 先生から理不尽な罰を受けられ、クラスからは笑いが起こった。

チルノは笑い事じゃないと、不平の表情を浮かべる。

 

(なんか変な夢見てた気がするんだけど何だっけ?……まぁ、いっか。)

 

 ふと、先程まで見ていた夢の内容を振り返ろうとしたが、

よく思い出せず、そのまま忘れることにした。

そして、チルノもまた再開した授業に入っていった。

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

「……ったく、なんで掃除なんかやんなきゃならなかったのよぉ。」

「チルノちゃんが寝たりするからだよ……。」

 

 下校中、同級生達と帰りながらぼやいていた。

結局、チルノ一人で掃除ができるわけもなく、友達に手伝ってもらう破目になった。

 

「結局、今日もまた“しゅーだんげっこう”ってヤツなのね。堅苦しくてつまらないわ。」

「それを言うなら、集団下校。まぁ、最近何かと危ないみたいだからね。」

 

 最近はテロ被害が多い故にか、特にチルノの様な小学生は集団下校させられるケースが多い。

もっとも、それでなくともチルノは好き放題動くので、家にまで辿り着けなかったわけだが。

 

「ねぇ~帰ったら何する?また、てれびでげーむとかやる?」

「やるのかー?」

「じゃあ、帰ったらまたボクん家に集合ね。」

 

 チルノがよく知っている幻想郷の友達もNPCとして再現されていた。

全く変わらない存在でチルノも当初は疑いもしなかったが、

あれだけやってきた弾幕ごっこも知らなければ、能力も使えず、それどころか飛ぶことすらできなかった。

本当なら妖怪や妖精に分類される女の子達だが、普通の人間の子として生活に溶け込んでいる。

流石のチルノも違いに気付いたが、今は変わらず接することにしている。

 

 そんな会話をしていると、いつの間にか2mを越える巨人の男が並歩していた。

巨体から想定される存在感に反して、全くの気配もなく現れたのだが、

チルノ達も含め、周囲の人はもう慣れたと言わんばかりにスルーしていた。

 

「あっ、アパチャイさん。」

「やぁ!アパチャイ、みんな迎えに来たよ。」

 

 巨人の男はチルノ達に迎えに来たと言う。

彼は女の子達にとっても面識のある人物であった。

 彼の名前は、アパチャイ・ポパチャイ。

バーサーカーとして召喚されたサーヴァントである。

タイの武術「ムエタイ」において最高峰と謳われる武術家の一人であり、

自身の気配を隠して動く技術はお手の物であったわけだ。

 

「ああ、アパチャイ!ちょうどよかったわ!アタイを乗せなさい!」

「アパ!いいよ。」

 

 チルノは当たり前と言わんばかりの勢いでアパチャイの肩に乗っかり、肩車の形を取った。

チルノの動作は急であったために危うさもあったが、

アパチャイの微細な肉体運動から来る安定感は凄まじく、歩いても全く落ちそうにない。

その姿に威圧感は微塵にもなく、むしろ心和らぐ様な優しさが現れていた。

なお、チルノは“コイツは、あたいの弟子なのよ!”と言い張っている。

そこで“師匠の間違いでは?”という至極真っ当な疑問が周囲の疑問は生まれたが、触れないことにした。

 

「さて、出発出発!」

 

 かなり異様な光景だが、そのまま集団下校は再開する。

担当の先生や上級生は毎度毎度のことともう慣れており、

むしろ保護者がいるなら、それはそれで安心と割り切ることにしていた。

 

 これが、今のチルノ達の日常であった。

この日常が、争いによって乱されていくかどうかはわからない。

 

 

【クラス】

バーサーカー

 

【真名】

アパチャイ・ホパチャイ@史上最強の弟子ケンイチ

 

【出典】

史上最強の弟子ケンイチ

 

【性別】

男性

 

【属性】

混沌・善

 

【ステータス】

筋力A 耐久A 敏捷B 魔力E 幸運A 宝具-

 

【クラス別能力】

狂化:E

正常な思考力を保っている、ステータス上昇の恩恵を受けない。

 

【保有スキル】

ムエタイ:A+++

タイ王国において伝統な国技として語り継がれている武術の総称。

修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく“修得した”と言えるレベル。

A+++ともなれば達人の中の達人。

 

気の掌握:A

ある世界における独自の武術体系から生まれた基礎、気の運用技術。

気の掌握とは最高段階に当たり、自分の気を完全に支配し、相手の気の流れをも操るにまで至る。

これにより気配遮断と同様な隠密化や、強大な気・精神干渉を受け流す事も可能で、

いかなる精神的制約下の状態でも自我を保ち、十全の技術を発揮することができる。

 

不殺の誓い:C+

魂に深く刻まれた「殺めず」という活人の誓約。

どんな状態下でも、バーサーカーは「殺す」ことをしない。

ただし、「生かさず」なので完膚無きまでに打ちのめすし、サーヴァントの現界も保証されない。

 

戦闘続行:A

瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

 

動物会話:B

言葉を持たない動物との意思疎通が可能。

動物側の頭が良くなる訳ではないので、あまり複雑なニュアンスは伝わらない。

テレパシーレベルで意志疎通が行うことができる。

 

【宝具】

『死神の極基(アパンチ/チャイキック)』

ランク:- 種別:対人宝具 レンジ:1/1~2 最大捕捉:1人

兄弟子により伝授されたパンチとキックの要訣を究極にまで突き詰め、宝具に至るまで昇華させた技。

達人中の達人である兄弟子さえも理解しきれない“何か”であり、バーサーカーの技の中では最高の威力を誇る。

アパンチは遥か先にまで殴り飛ばし、チャイキックは跡形もなく砕け散るなど効果を見せるが、いずれも殺傷力はない。

 

『絶対なる秘技(ボーリスッド・ルークマイ)』

ランク:- 種別:対人奥義 レンジ:1~20  最大捕捉:1人

バーサーカーが受け継ぐ古式ムエタイの流派に存在する、ルークマイ(隠し技)の先にある秘技。

複数の秘技による連撃は破壊を齎し、周囲一帯に広がる余波で破壊を起こすほどの衝撃を誇る。

どう使うかは自身の一生をかけて見つけ出すものと伝えられ、使用者によって活人にも殺人にも変わる。

 

【weapon】

なし

 

【人物背景】

「裏ムエタイ界の死神」という異名を持つムエタイ(古式ムエタイ)の達人。

かつては年端もいかない身で金稼ぎの道具として裏ムエタイを仕込まれた孤児であったが

ロムタイフンジムの会長であるソムバットに引き取られ、順調に鍛えられることになる。

手加減ができなかった彼は、「死神」という異名の通り、対戦相手がいなくなる程に強くなっていくが、

兄弟子「アーガード・ジャム・サイ」が旅で自分の道をみつけたことを機に、自身も道をみつける旅に出る。

ある時に用心棒として海賊に就いていたところ、無敵超人「風林寺隼人」と孫の「風林寺美羽」に出会い、

紆余曲折を経て、活人拳の象徴とまで言われる「梁山泊」に住み、活人拳に至ることになった。

 

「遺伝子レベルにまで達している」とまで言われるほど子供のように純真かつ無邪気な性格で、

相手の心を和ませる様な気の優しさから子供や動物達から懐かれる人物。

「白浜兼一」を弟子に取ることになり、当初は手加減が苦手なため、何度か心停止になる事態もあったが、

指導の甲斐もあって手加減を極める様になり、自身のムエタイを活人拳として昇華させることになった。

 

殺人派の武術「闇」の拠点にてアーガードと対峙し、繰り広げた闘いの末、一時は死亡してしまうが、

居合わせた同じ梁山泊の者達の甲斐もあって一命を取り留めることになった。

その後も梁山泊の一員としての生活を送っており、久遠の落日の阻止などにも関わっている。

 

【サーヴァントとしての願い】

アパチャイ、チルノやみんなを守るよ!

 

【方針】

人を守るために戦う。でも戦略とか長期的に考えることはあまりしない。

同盟を組めるなら素直に組んだ方がいいと思っている。

 

【把握媒体】

原作漫画およびアニメ版をご参照ください。

原作版は、42巻~43巻がオススメです。

 

 

【マスター】

チルノ@東方Project

 

【出典】

東方Project

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

「妖精」

自然現象が具現化したもの。

氷の羽を持ち、それによるものか飛行ができる。

チルノは妖精の中でも格別に力が強いとされる稀有な存在。

 

「冷気を操る程度の能力」

小さな物なら瞬間で凍らせられるほどの冷気操作能力。

武器ごと凍結する力もあるが、氷で剣や矢を造形できる器用さもあり、

液体の一部を氷として凍結し、冷やして飲むといった芸当も出来る。

 

【weapon】

「弾幕&スペルカード」

幻想郷の出身なら基本的な戦術・戦法。

多くは自身の魔力やそれに類する力で飛び道具を形成し、発射する。

スペルカードとは、元は揉め事や紛争を公平に解決するための手段として編み出されたルールによるもの。

それを宣言してから技を発動することがルールであるが、個人の能力によるものなのでカードは関係ない。

 

【人物背景】

幻想郷という世界にある「霧の湖」に住む妖精の子。

「主な遭遇場所:どこでも」「主な遭遇時間:いつでも」と書かれるなど、自由奔放に生きている。

あらゆる作品に出ているが、異変を起こす様な大事や背景は(今のところ)ない。

 

子供っぽくて無鉄砲でいたずら好きな性格で、「頭はあまり良くない」と言われている。

喧嘩っ早くて好戦的であり、妖精の中では強い部類に入ることもあってか「最強」を自称している。

危険な目に遭うこともあるが、基本的に懲ることはなく、反省する様子はないのが性分。

 

【マスターとしての願い】

あたいが最強だってことを知らしめる(聖杯について理解していない)。

 

【方針】

とりあえず戦いを仕掛けていき、戦いがあるなら加わる。

というか、それ以外は思いつかない。

 

【ロール】

月海原学園の初等部に在籍する小学生

 

【把握媒体】

東方projectシリーズをご参照ください。

 



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【オープニング】【本戦開始前】09 エスター・コールマン&キャスター マスター エスター・コールマン サーヴァント キャスター エヴリン

登場キャラクター
マスター エスター・コールマン
サーヴァント キャスター エヴリン

作者
◆U1VklSXLBs


幼少期を懐かしむ大人がいるらしいが、エスターには信じられなかった。子供なんて、感情的で気遣いに欠け、関わらなくていいことに関わろうとするばかりじゃないか。だから、孤児院で暮らしていた頃、なるべく他の子供からは距離を置いていた。

 

「イーゼルね!」

「それだけじゃないぞ、ほら!」

 

そんなエスターは、コールマンという若い夫婦に引き取られた。出会った時、絵を描いていたからだろう。祝いの品として、養父のジョンは

イーゼルを贈ってくれた。包みを開けて喜ぶ彼女に、ジョンは小さな小箱を取り出した。

 

「…!」

 

小箱を開いたエスターは息を呑む。

そこには虹色に輝く石が静かに収まっていたからだ。イーゼルを購入した店の店主に、エスターを迎える事を話すとおまけとしてもらったのだ。

 

「とても綺麗だけど、アクセサリーにはしてもらわなかったの?」

「恋人じゃあるまいし、僕が選ぶわけにもいかないよ。自分で稼ぐようになったら、納得のいくデザインで作ればいい」

 

イーゼルをもらった時には花が咲くように笑ったエスターは、石をもらった時は感動した様子でジョンに抱擁した。程なくして彼女は聖杯戦争に招かれ、キャスターと名乗った黒髪の少女と出会う。彼女が呼び出した黒い怪物に助けられた後、共に監督役を名乗る神父から聖杯戦争について説明を受けた。

 

エスターはロールとして割り当てられた自宅に帰る。可愛らしく飾られた部屋だ。両親は留守にしている。

 

「マスター、これからどうするの?」

「先にあなたの事を教えてちょうだい。私に何かしたんでしょう?」

 

エスターはキャスターと出会ってからずっと、体に違和感を覚えていた。小さな身体の奥底から、パワーが湧き上がってくるのだ。

 

「マスターは家族になるんだよ」

「家族?」

「そう、ずっと私といるの。嫌?」

「あなたが何者かによるわ。お互いのこと、もっと知りましょうよ」

 

キャスターはエヴリンと名乗ると、生前のことを語り始めた。研究所で生まれ、そこからママと呼ぶ女性と共に逃げ出し、ある一家に拾われると、その人物達を家族にした。最期はママに捨てられ、ママを連れ戻しにきたイーサンによって討たれた、という事までエスターは把握した。

 

(要するに、キャスターは子供の心を持ったSFの怪物なわけだ)

 

悪意があったわけではないらしいとわかり、エスターは内心安堵する。

 

「ねぇねぇ、次はマスターの番だよ」

 

エヴリンはエスターに身の上話をせがんだ。

エスターはため息をつくと、抽斗から取り出したハンカチを部屋のローテーブルに敷き、嵌めていた入れ歯を置く。

 

「!?」

「私ね、子供じゃないの。身体は成長しないけど、本当は33歳」

 

下垂体性機能不全。

エスターは同年代の女達が味わう楽しみを知らないまま、三十路を迎えた。心と身体のギャップは広がるばかり、成熟した女としては死ぬまで扱ってもらえない。

 

だから聖杯戦争にはなんとしても優勝したい。子供の群れから抜け出し、大人の女として飛翔する。叶わぬ恋を追いかけるより、聖杯を狙う方が有意義ではないか。

 

「私、大人になれる身体が欲しい。キャスター、貴方の望みは何?」

「家族!パパとママが欲しいの!」

「そう。貴方さえ良ければ、私が家族になるわ」

「ホント!…怒ってない?」

「ビックリはしたけど、怒ってないわ。貴方の気持ち、わかると思うから」

 

半分は本心だった。

心身の乖離に苦しみ、吐き出せない情欲に狂うエスターも、同じ様に家族が欲しかったのかもしれない。ありのままの自分を迎えてくれる誰かが。

 

しかし、エヴリンのママにはなれない。

普通の9歳の体を得て人生をやり直すのだから、この少女のママになるには20年はかかる。それを話すと、エヴリンの機嫌は悪くなった。

 

「そんなの嫌!私、たくさん待ったもん!」

「ならウチに来ればいいわ。ママはそれなりだけど、素敵なパパがいるの。可愛い妹もね」

 

エスターは家族談義を打ち切ると、聖杯戦争に話題を移した。勝利しなければ、願いも何もない。エスターはエヴリンに霊体化してついてくるように求め、陣地に最適な場所を探しに散歩に出た。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

キャスター

 

【真名】

エヴリン

 

【出典】

バイオハザード7 レジデントイービル

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A + 幸運D 宝具 B

 

【属性】

混沌・善

 

【クラス別能力】

陣地作成:C

魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。 真菌を繁殖させ、小規模な”工房”に匹敵する拠点を作る。

 

道具作成:-

魔術的な道具を作成する技能。逸話として持ち合わせていない為、ランクを持たない。

 

【保有スキル】

眷属作成: A

体組織から分泌した特異菌を植え付け、対象を『家族』にする他、感染者や菌糸からモールデッドを作成可能。

 

情報統制:A

特異菌感染者への干渉能力。

契約中のマスターを除く感染者の言動を知覚できる他、その位置を把握し、暗示によって行動をコントロール可能。

 

生物災害: B

自然の脅威と人の活動から生まれた災禍。

刃物、鈍器、矢弾、投擲などの武器攻撃によるダメージを1/4にまで低下させる。ただし、治療、投薬の概念を帯びた干渉を受けた場合、防御効果は機能せず、逆にランク分のダメージが追加されてしまう。

 

自己保存(偽):E

本体が無事な限り、エヴリンは聖杯戦争から退場しない。実体化する度に、周囲100m以内あるいは陣地内に車椅子の老婆が出没。この老婆の出現位置は調整可能だがステータス、保有スキルはなく、魔力反応も一般人並み。

 

老婆が無事な限り、エヴリンは一定量の魔力を消費することで復活できる。スキルランクが高いほど、消費が軽い。

 

 

【宝具】

『微睡む暗黒の森(エヴリン)』

ランク: B 種別:対人、対軍宝具 レンジ:1~20  最大捕捉:100人

エヴリンが持つ、身体から分泌した特異菌や、特異菌感染者を強く支配する能力。保有スキルもこれに由来する。分泌する菌のレンジ、生み出せる感染者の数に上限こそあるが、実体化したエヴリンに接触した時点で汚染が始まる。

 

感染してすぐ、対象はエヴリンの姿や声を見るようになる。時間経過によって全身の細胞が特異菌に置き換わっていき、回復力や耐久力が強化される。契約中のマスター以外の人間は個人差はあるが、エヴリンの干渉を受ける事で人格や言動が豹変していき、やがては凶暴化した状態でエヴリンに従属するようになる。

英霊を対象とする場合、筋力値による抵抗判定に勝利しなければならず、また半神や鬼、竜など人外の性質を持つ英霊に菌を植え付けることはできない。

 

さらに感染者や増殖させた特異菌から、モールデッドと呼ばれるクリーチャーを生産可能。爪と牙を持つ通常種のほか、右腕の刃や酸性の体液を武器にする変異種が存在。いずれも実体化しており通常の武器で打倒可能だが、 Bランクの生物災害、戦闘続行スキルを所持している。

 

 

【weapon】

菌糸を増殖させて作る触手。生み出したモールデッドなど、クリーチャー達。

 

【人物背景】

犯罪組織コネクションが、『敵集団を戦闘によらず制圧する兵器』をコンセプトに特異菌のゲノムをステージ4以前のヒト胚に組み込み、特定環境下で培養した結果生まれた生物兵器。都市や難民に紛れ込ませることが容易な、10歳前後の少女の外見をしており、無邪気だが残酷な性格。

 

研究所での生活に嫌気がさしており、自身の移送作戦中にタンカー内で暴走し、母親役のミア・ウィンターズと共に脱走。ベイカー一家に保護されると、彼らを特異菌に感染させて、支配下においた。愛情に飢えているのか、単に都合が良かったからか、形成する集団は『家族』をモチーフとしている。

 

精神・肉体的に不安定であり、安定剤を摂取しないと急激に老化していく。全盛期の状態で召喚される英霊の性質と、感染者のもとに幻覚を放つ能力から、少女の姿の『分体』と老婆の姿の『本体』を持った。

 

 

【サーヴァントとしての願い】

家族を作る。

 

【方針】

優勝狙い。

 

 

【マスター】

エスター・コールマン

 

【出典】

エスター

 

【性別】

女。

 

【能力・技能】

珍しいホルモン異常で幼い容姿をしており、年相応に見られることがない。非常に凶暴な性格で殺人に躊躇いがなく、明らかになっているだけで7人を殺害している。絵画、ピアノ演奏、拳銃の扱い、英語を習得している。

 

エヴリンとの接触により、特異菌に感染している。契約中の為、外見と自我は完全な形で保たれている。超人的な再生力を得ているが、時間経過により細胞が特異菌に置換され、再生を何度も繰り返していると身体を維持できなくなってしまう。

 

【weapon】

無し。

 

【人物背景】

本名はリーナ・クラマー。

サールン・インスティチュート精神病院の患者。発育不全で9歳ほどに見えるが、1976年生まれの33歳。生涯のほとんどを子供として過ごしており、エストニアの家庭で養子となった際に父親の誘惑に失敗すると、一家を皆殺しにして家に放火した。病院を脱走した1年後、エスターの名で聖マリアナ女子孤児院に潜伏していた彼女を、コールマン夫妻が引き取った。

 

実年齢を周囲に隠すために歯医者に行かず、入れ歯をつけている。また病院では拘束衣を着たまま暴れた為、首と手首に傷跡があり、これをリボンで隠している。

コールマン家に越して間もない頃から参戦。

 

【マスターとしての願い】

普通に成長する身体を得て、人生を生き直す。

 

【方針】

優勝狙い。

 

【ロール】

外国人夫婦の娘。小学生。

 

【把握媒体】

鯖はゲーム、およびDLC。後半のタンカー編まではほとんど出てきません。

鱒はジャウム・コレット・セラ監督の映画。

 



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【オープニング】【本戦開始前】10 吉野順平&ライダー マスター 吉野順平 サーヴァント ライダー 五代雄介

登場キャラクター
マスター 吉野順平
サーヴァント ライダー 五代雄介

作者
◆7XQw1Mr6P.


「人に、心は無いんだと教わりました」

 

明かりをつけないままの薄暗い部屋の中で、吉野順平の声だけが響いた。

 

窓の外では、朝から雨が降り続けていた。

曇天の暗がり、湿った空気、陰鬱とした街の景色。

しとしとと微かに聞こえる雨音に、額の火傷がうずく。

 

「それを聞いて僕は、とっさに否定しようとしました。

 でも、感情は魂の代謝でしかないと言われました。

 心や魂、命というものに対して、特別に考える必要はないと。

 ただ物事があるがままに存在するように、規範や理想に捕らわれてはいけないと」

 

その思想は、ともすればとても開放的であるかもしれない。

全てのものに価値を見出す必要はなく、ただ世界は巡るだけ。

真人の語った世界観では、無関心という理想も、復讐という願いも、全てが肯定された。

そのことに順平は、救いを得たと感じていた。

 

「でも、久しぶりに出来た友達が、たった一人の友達が、僕の代わりに否定してくれました」

 

大切な人の命の価値まで分からなくなる可能性。

大切な人の魂を穢してしまう可能性。

虎杖の語った、順平が一人では思い至らなかった価値感は、思いの他すんなり受け入れることが出来た。

順平にも大切な人がいたから。

 

「でも、大切な人がいなくなった時、僕は復讐に走りました。

 友達は止めてくれたけど、僕は聞く耳を持とうとしなかった。

 その上僕は、救いと力をくれた人に利用されただけだった、みたいです。

 一番復讐したかった相手は痛めつけたけど、殺せたかはわからない。

 それに結局、母さんを呪った奴が誰なのかも、はっきりしないまま。

 何を信じたらいいのかもわからないまま、なにもかも中途半端に終わってしまいました」

 

一息に言い切った順平は、大きな深呼吸を一つついた。

 

自分は確かに死んだはずだった。

真人に身体を改造され、身体の内の"ナニカ"が耐えきれなくなって、あっさりと死んだ。

 

そして、気が付けば聖杯戦争の只中にいる。

中途半端な自分の人生が、中途半端なところから再開されている。

 

「僕は、何をすべきなんでしょう。

 何を信じて、何を願うべきなんでしょうか」

 

順平の言葉の後には沈黙が残った。

いつのまにか雨はやんで、いまは雨音も聞こえてはこない。

 

 

 

「とりあえず、ご飯でも食べない?」

 

声を発したのは、順平の向かいにいる男だった。

ジーパンにTシャツの、何処にでもいそうな出で立ち。

俳優のように整った顔立ちは真剣で、その今の言葉が冗談ではないことを物語っていた。

 

「俺、何か作るよ。

 まずはお腹いっぱいになって、それから考えてみるってのも、いいんじゃないかな」

「……食欲が無いんですよ」

「でも、この世界に来てからまだ何も食べてないよね。

 マスター……、順平くんが倒れちゃったら、答えを出す人もいなくなっちゃうから」

「ライダーの意見は?」

 

順平の問いに、男は「んー」と唸り声を出す。

男は順平のサーヴァントだった。

順平の住んでいた世界とは別の"現代"において活躍した英雄。

 

「……俺は、傷つけあうことでしか繋がれない人がいるとは、思いたくないな。

 相手が間違っているなら、間違ってることを伝えられるのが一番だと思ってる。

 本当はそういう、綺麗ごとが一番いいんだ。

 けれど、悲しすぎることだけれど、皆の笑顔を守るために、力づくでも誰かを止めないといけないことも、あると思う。

 俺は、その悲しすぎることが少しでも減るように、皆が笑顔でいられるように頑張ろうって、そう決めたんだ」

 

ライダーの言葉は淡々としていて、それでも声色には深い悲しみが感じられた。

彼は本気で、人が傷つけあうことを良しとしない理想を抱いている。

一方で、誰かの笑顔を守るためには、力を振るわなくてはいけないこともあるという現実を受け止めている。

 

「でも、俺が決めた覚悟を順平くんに押し付けるつもりはないよ。

 順平くんは順平くんが、納得できる答えを出さないといけないから。

 そのためには、順平くん自身が頑張らないといけないから」

「そんな……」

 

突き放された、ように感じたのだろうか。

お前に寄る辺は無いのだと突きつけられた気がして、順平の胸中に不安が去来する。

 

だが、ライダーの態度は毅然としていて、それでいて、何故か優し気な雰囲気を纏っていた。

 

「俺も決意を固めるまで、すごく悩んだよ。

 中途半端はするなって、怒られもしたしね。

 ……悩むしかないこともあるよ。

 答えが出ないから苦しんで、足掻いて、どうしようもなくなる時もある。

 自分が納得できる、笑顔になれる答えがわかるのは、自分だけだから。

 でも、それは辛いことかもしれないけど、悪いことじゃないから」

 

ライダーの言葉は綺麗ごとのようでいて現実的で、シビアなようで優しい。

 

わずかに雲間から刺した日の光が、ライダーの横顔を照らす。

順平は改めてライダーの顔を見つめる。

初めて会った時には飄々とした印象だったが、今の彼は英雄然として見えた。

 

「だから、まずはご飯を食べて、体力をつけよう!

 何を信じたくて、何を願いたいか、順平くんが考えなきゃいけないことは沢山あるから。

 順平くんが答えを出すまで、俺が、順平くんの場所を守るから!」

 

ライダーは笑顔を浮かべ、親指を立てた。

古代ローマで、満足できる、納得できる、行動した者にだけ与えられる仕草。

 

「だって俺、クウガだから!」

 

ライダーの真名は五代雄介。

誰よりも争いを嫌いながら、人々の笑顔のため、確たる意志を以って戦闘民族を撲滅させた、新時代の英雄。

戦士(クウガ)の名を継いだ、夢を追う冒険家。

 

現代の戦士の庇護のもと、少年は聖杯戦争に参戦する。

自分の願いを見つける為。

自分の信じるものを見つける為。

理想と現実の狭間で迷う旅路は、並大抵の道のりでは無いだろう。

 

だが歩みを止めない限りは、空の雲はやがて晴れる。

そうすれば、何処までも澄み切った青空が見えるはずだ。

 

吉野順平。

"もしも"の未来を掴み損ねた少年。

彼の聖杯戦争は、理想と現実の擦り合わせから始まる。

 

【サーヴァント】

【CLASS】

ライダー

 

【真名】

五代雄介

 

【出典】

平成仮面ライダーシリーズ第一作『仮面ライダークウガ』

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力A- 耐久B- 敏捷B- 魔力B 幸運A- 宝具A++

 

【属性】

秩序・善

 

【クラス別能力】

対魔力:-

現代の英霊であるライダーは魔術に関する逸話を持たない。

従って、魔力に対する対抗力を持ちえない。

 

騎乗:C

騎乗の才能。

大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。

 

【保有スキル】

友誼の証明:C

敵対サーヴァントが精神汚染スキルを保有していない場合、相手の戦意をある程度抑制し、話し合いに持ち込むことが出来る。

聖杯戦争においては、一時的な同盟を組む際に有利な判定を得る。

 

自己改造(霊石):EX

ライダーの体内にある霊石アマダムによる身体改造。

かつては戦うためだけの生物兵器となることも危ぶまれたが、ライダーが「清らかな心」を持ち続けたことにより最悪の事態は回避した。

変身時、幸運を除くステータスを一段階上昇させ、状況に応じてフォームチェンジすることで身体能力を変化させる。

フォームチェンジにより特定のステータスを特化させた場合、Bランク相当の千里眼スキル、頑健スキルの効果を得ることも出来るが、特定の他ステータスにマイナス補正が付く。

 

モーフィングパワー:A

原子・分子を操作することで物質を再構築する。

近しいイメージを持つ物質をランクB相当の宝具(ロッド、ボウガン、ソード)に変換し、使用する。

 

金の力:B

ライジングフォーム。

電気ショックによりアマダムから引き出された雷の力を用いて変身体を強化する。

発動時、幸運を除くステータスをさらに一段階上昇。

 

二千の技:B

恩師と2000個の技を習得する約束を結び、それを達成したライダーの逸話に由来するスキル。

そのジャンルは料理、拳法、音楽など多岐にわたる。

単純に多才である上、未知の事象に直面した際も自身の技量のみで対処法を模索できる。

 

【宝具】

『希望の霊石(アマダム)』

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人

腰に埋め込まれた霊石。

装着者の全身の神経組織と融合し、身体を原子・分子レベルで分解・再構築を行うことで、伝説の戦士クウガへの変身が可能となる。

本来、攻撃時に封印エネルギーを対象へ注入し、耐久と魔力の対抗判定に失敗した相手を強制的に休眠状態にさせて無力化することが出来るが、ライダーはもっぱら過剰注入によって敵を粉砕している。

驚異的な回復能力に加え、致命傷を負った際は自動で仮死状態に入ることで自己蘇生を行う。

なお、サーヴァントとして霊体となっている現状では、小型の魔力炉としての役割も果たしており、マスターからの魔力供給が途切れても戦闘の継続さえ可能となっているが、頭部、心臓部に並ぶ重要な霊核部位でもあり、完全に破壊された場合、消滅は必至となる。

 

『馬の鎧となる甲虫(ゴウラム)』

ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:100人

超古代の科学によって生み出された馬の鎧。

ライダーの意志により飛来し、脚部に捕まった状態で飛行することが可能。

馬やバイクなどの乗り物と融合合体することにより速力、攻撃力、耐久力を強化する。

使用の度に金属成分の補給が必要で、十分な補給が出来ない場合は合体したバイクの金属さえも取り込んでしまう。

それでも金属成分が不足した状態では、化石状の破片に戻ってしまい、再度金属を補給しなければ使用できない。

この宝具にも『希望の霊石』が内臓されており、この部位を破壊された場合は完全に消滅する。

 

『凄まじき戦士(アルティメットフォーム)』

ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人

黒い身体を持つクウガの最終形態。

本来は理性と自我を失った黒い瞳(ダークアイ)状態の暴走強化形態だが、ライダーは自我を保った赤い瞳(レッドアイ)状態のまま変身を可能とする。

幸運を含めた全てのステータスを、金の力スキル使用時よりさらに一段階上昇。

周囲の原子・分子を操作、プラズマ化させることによって超自然発火能力を発揮する。

 

【weapon】

なし

 

【人物背景】

2000年に出現した殺戮民族グロンギから人々を守った伝説の戦士。

その正体は、自由を愛する青年冒険家、五代雄介。

笑顔とサムズアップがトレードマークで、「大丈夫!」が口癖の飄々とした好青年。

その一方で、人々を守るためであっても暴力を振るうことに嫌悪感と苦痛を感じ、それでもなお人々を守る覚悟を決めた、優しくも強い意志を持つ。

 

本編終了後から参戦。

外伝小説、及び後年の客演作品については不明瞭な点や複数の考察が存在するものも多いため、わかりやすさを重視して原作はTVシリーズのみの扱いとします。

 

【サーヴァントとしての願い】

万能の願望器に対する関心は薄い。

ただ、皆の笑顔を守りたい。

 

【方針】

マスターの行く末を見守りたい。

 

【マスター】

吉野順平

 

【出典】

呪術廻戦

 

【性別】

 

【能力・技能】

「基礎的な呪力操作」

身体能力の向上により、一般人相手に遅れを取ることは無い。

しかし戦闘経験はほぼ皆無なため、戦い慣れた者が相手の格闘戦では分が悪い。

 

「術式"澱月(おりづき)"」

クラゲ型の式神。

伸縮自在の棘付き触手と、打撃を防ぐ体を持つ。

呪力から毒を精製し、式神の触手から分泌する。

毒の強弱や種類、式神のサイズ、強度の加減が可能な描写がある。

 

 

【weapon】

なし

 

【人物背景】

里桜高校の2年生。

1年の時に壮絶なイジメを受け、2年時から不登校になる。

右の額に根性焼きの痕が残っており、前髪で右目ごと隠すような髪型をしている。

思考能力は高いが視野が狭い傾向があり、真人からは「短慮以上の愚行を招く熟慮の典型」と評される。

元は呪いをわずかに視認出来る程度の感覚しか持ち合わせていなかったが、特級呪霊・真人にあてられ、呪術の世界へと足を踏み入れる。

 

 

無関心こそ人の行きつくべき美徳と考えていたが、真人の語る「魂の世界観」に感銘と救いを見出す。

一方で主人公・虎杖の語る「命の価値観」にも理解を示し、自身をイジメた者への復讐を思い直そうとしていた。

その後、唯一の理解者であった母親・凪が呪霊に襲われて死亡。

真人の甘言により復讐を実行に移し、里桜高校の生徒たちを昏倒させた上、イジメの主犯格を殺害しようと暴行を加えるが、虎杖の制止に遭い完遂には至らなかった。

戦闘の末、事情を知った虎杖に母親の仇を一緒に討つことを約束されるが、直後に真人の「無為転変」によって身体に乱暴な改造を施され、その後死亡した。

 

【マスターとしての願い】

何を信じ、何を願うべきかを知りたい。

 

【方針】

復讐ならともかく、闘うこと、殺すことに対しての覚悟はまだない。

火の粉が掛かれば払うが、積極的に戦いに行くつもりはまだない。

 

【ロール】

月海原学園の生徒

 

【把握媒体】

漫画及びアニメ作品「呪術廻戦」



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【オープニング】【本戦開始前】11 ユウキ&セイバー マスター ユウキ サーヴァント セイバー 坂田銀時

登場キャラクター
マスター ユウキ
サーヴァント セイバー 坂田銀時

作者
◆K2cqSEb6HU


「♪♪〜」

 

 妖精の翅を持った少女が一人、山脈を背にした草原の多い丘陵地帯を飛行していた。

今、どこにいるのかというとマップで言うA-6。向かってA-7に存在する「キャッスル」を目指している。

 

 少女は見た目にして十代半ば。服装は現代的ではなく、ファンタジーRPG的な武装を兼ねたものである。

耳は妖精らしく尖っており、頭にはトレードマークである2本の黄色のラインが入った赤のバンダナが巻かれ、

臀部にまで届く長い黒髪が特徴的であった。

 名前は“ユウキ”。もちろん、特筆される様に聖杯戦争の参加者である。

ユウキの今の身体はリアルで出来たものではなく、電脳空間上に形成されたアバターだ。

彼女は「ALfheim Online(略称ALO)」というVRMMORPGから来ており、(一部を除き)踏襲されているシステムによって飛行している。

なお、本名「紺野木綿季」という15歳の少女だが、聖杯戦争では登録されているこちらの方が主になっている。

 

「オイオイ、勘弁してくれよ……。なんだってこんなところまで行かなきゃならねぇんだ。

ポツンと一軒家ってのはな、テレビだからドラマがあるんだよ。

実際に目指したら案外大したことないもんばっかだからね、本当!」

 

 地上では現状をぼやいている男性が、自前のスクーターで舗装されていない道をガタガタと駆けている。

男性は銀髪の天然パーマと死んだ魚の様な目が特徴的な青年だった。

服は片方だけ肩出しで中のジャージが見える着流しと、どこをどう取っても遊び人としか見えない男だが、

これでもれっきとした英雄。聖杯を通じ、ユウキの意志に応じて召喚されたサーヴァントなのである。

真名は、坂田銀時。今回ではセイバーのクラスで召喚されている。

 

「ねぇー銀さーん!もっと速く動けないのー?」

「うるせェェェ!こっちはこれでも精一杯なんだよ!!テメェこそさっさと戻りやがれってんだ!」

「戻るのはせめてキャッスルを見てからねー!」

 

 ユウキが大声で伝える「速く着いてこい」という発言に銀時もイラつくが、どこ吹く風と翻して飛び続ける。

キャッスルは妙に辺鄙な位置にあり、道も舗装されていないため、交通も不便なことこの上ない。

銀時には愛車のスクーターを所有しているが、至って普通の原付であり、結構走りにくいものであった。

 これだけ辺境にある場所からなのかわからないが、キャッスルの目撃者はさほど多くはない。

ネットで調べ、知り合いにも聴いたが、口コミはあまり挙がってこない。それどころか誰も行こうとはしないのだ。

なればと、逆に「何かあるのではないか」と無性に気になってしまうのが、人の探求心や好奇心というもの。

一介のネットゲーマーであるユウキもまた多少の興味を示していた。

 

 対して、銀時はキャッスルに行くことに全くと言っていいほど乗り気ではない。

探求心や好奇心というものは持ち合わせていない彼にとって、行くのが面倒臭いというのもある。

彼も生前にハマったRPGの知識から「ダンジョンか何かだろう」という認識はあるが、

古い建造物をわざわざ直視する事にそこまで興味が湧かない。

それにあまりに辺鄙で大して行く目的がない中でやっていることなため、彼なりにもしんどいわけだった。

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

「あっ、あれかな?本当に大きな城だね。」

「……オイオイ、随分なダンジョンじゃねぇかコイツは。こりゃあ、あれだな。レヌール城よりあるぞ。」

 

 城がよく見えるぐらい高めの丘でユウキは目的の城を発見すると、地上まで降下して観察し、

遅れて着いた銀時はゲームの知識に照らし合わせてその城を表現した。

情報通り、中世期に建てられたであろう大きな古城がそこにあった。

遠巻きなので全容が見えず、要塞としての機能を持つのかまではわからないが、

それだけでも何かのダンジョンになりそうな気配は見て取れた。

この仮想世界のことはわからないが、辺鄙な土地に理由もなしに建つものだろうか。

仮にそうであったとしても、魔獣の巣堀になるか、あるいは陣営が籠城するための拠点になると考えられる。

 

「うーん。確かにレヌール城みたいに何か出てきそうだよね。ほら、幽霊とかさ。」

「バカヤローテメェ、幽霊なんているわけねぇだろ。俺は信じねぇからな、そういう非科学的な存在。」

「いや、それを言ったらボク達だって幽霊で非科学的な存在になるよね?」

 

 ユウキは幽霊の存在性も考慮しているが、幽霊が怖い銀時は否定している。

なお、ユウキはもまた命を落とした後、この世に集められた身であり、故に幽霊と指している。

 

「ともかく、見たならもう帰るぞ。薬草もなしにダンジョンに挑むのは無謀だからな。」

「うん、そうだね。最序盤に行く様なところじゃ無さそうだもんね。」

 

 銀時は後頭部を掻きながら切り出すと、ユウキも退くことを判断した。

城内や周辺の環境まで気になるが、そこまでやってしまうと退き際がなくなる。

それに準備もさほど万全というわけでもなく、最初から挑むつもりはなかった。

具体的な位置と経路を記録しておき、「何かはありそうな所」という認識のまま探索を引き上げていった。

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

「あ〜、終わった終わった」

 

 ユウキ達は再開した仕事に区切りを付けると、麓の再開発地区で休んでいた。

この世界で与えられている役割は「ハンター」である。

ハンターとは、主に魔獣を狩猟するなどの行為で稼ぎを得る職業のことだ。

この一見平和そうな世界にも「獣」というのがいる様で、多くは都市外に生息している。

ユウキ達がA地区にいたのは、実は狩猟目的であり、探索は「ついで」であった。

 

 「ALO」の武装をそのまま所持しているユウキにとってハンターの職は都合が良く、

倒した魔獣もユウキのアイテムストレージに格納できるため、行動にはこと困らなかった。

それに防衛隊や他のハンターからも情報収集が行える分、得られるものもそこそこあったわけだ。

 

「銀さ〜ん。帰りはスクーターで乗っけってくれないかな?」

「ふざけんなコノヤロー。山に居た時は散々遅い遅いだの言ってくれた癖によぉ。

市街地に入ったらすぐ手のひら返しやがって。飛べ。飛んで帰れ。」

「え〜、飛んだら目立つじゃん。それに今はボクがマスターなんだけど〜。」

「都合のいい時だけマスターぶるんじゃねぇよ。令呪を見せるな、令呪を。」

 

 銀時はチューブ型の氷菓を吸いつつ、ユウキのお願い事を突き放すが、

ユウキとしてはその反応が不服で、手の甲にある令呪を見せつける。

尤も本当に使うつもりはなかったが。

 

「結構、慣れてきたよね〜この世界の暮らしにも。」

「まぁ、そうだな。最初に比べりゃあ慣れてきたもんだろうな。

強いて言うならパチンコとかギャンブルがやりてぇところだけどよ。」

「それ没頭したら聖杯戦争どころじゃなくなるから止めてよね。本当。」

 

 銀時は生前の癖かパチンコを求めたが、逸脱しかねないだろうとユウキは察し、

止めることにした。

 

「……ねぇ、銀さん。一応、聴くけども聖杯戦争のこと忘れてないよね?」

「バカヤロー。忘れてないわけねぇだろ。」

「そうだよね……って、ん?」

 

 念のために聴いたユウキだが、返答が聞き間違いなのか、ボケているのか判断が付かず、ツッコミ損ねてしまう。

 

「冗談だよ。忘れているわけねぇだろ。

せっかくお前の「助けてくださいお願いします」って声に応じて、わざわざ来てやったんだろうが。」

「いや、言ってないけどね。なんか適当にやったら銀さんが来ただけなんだけど。」

「何言ってやがる。実際そうかもしれないけども、シャドウを倒せたのは俺の手だからね。」

 

 捏造にユウキはツッコミを入れるが、銀時はなおも自分の働きを主張する。

どうやってそうなったかはわからないが、ユウキは気が付くと例の空間にいた。

そのまま流れでシャドウなる敵と戦い、よくわからない間に銀時が召喚され、

そして聖杯戦争に参加する形となったのがこの主従の経緯だ。

 

「しっかし、これが参加権になるなんて思いもよらなかったな……。」

 

 そういうと、ユウキは星晶石なる物体をアイテムストレージから取り出し、

感慨深げに星晶石を見る。

これは「ALO」内で運営さえも確認できなかった幻のアイテムショップ「美沙里」で貰ったものであるが、

それが招待状であったらしく、導かれる様にユウキは聖杯戦争に来たらしい。

 

 実際の所、ユウキは命を落としてよりここに来ている。

ユウキこと「紺野木綿季」の肉体は病に侵されており、日に日に衰弱していた。

記憶上にすれば数日も前、肉体はピークに達し、

多くの人に看取られ、好きな人の腕の中で眠る形で生涯を終えたのであった。

 

「……さて、そろそろ行こっか。」

「おう。」

 

 休憩を終えると、支給された生活拠点に向かう一同。

銀時はユウキを見ると、後頭部を掻きながら「しょうがねぇな」と言わんばかりに座席の後座席を目の前に寄せた。

素直ではないが、「乗れよ」と言っている様であった。

ユウキは言葉にはしなかったが、嬉々して乗り込んだ。

 

 

 

「……ユウキ、お前。生き返りたいとは思わねぇのか。」

「えっ?」

「だから、なんだ……。聖杯の力があれば生き返ることだって出来るだろ。

それを使えばやり直せるんじゃねぇのか。もう一度よ。」

 

 原付に乗られながら銀時は自身のマスターに問う。

ユウキからは背中しか見えないが、真剣な顔をしているものだとわかる。

銀時もユウキが亡くなってからここに来たことは前から知っている。

そして、銀時とてサーヴァント。聖杯がどういうものかというのもわかっている。

今回の聖杯は訳が違うものだが、人として蘇生も可能であることをわかっての質問であった。

 

「……ない、かなぁ。誰かを犠牲にしてまで叶えようとするのって、何か間違っていると思うしね。

ボクだってそれほど現実は受け入れていないわけじゃないし……満足もしているから。」

 

 ユウキは自分なりの意見を答える。蘇生に対しては特に希望を持っていない。

現実は受け入れているし、過ごした僅かな余生の思い出や最後の死に際には満足はしている。

生きていたいと思わないのかというと嘘になるが、他人や願望を踏み台にするほどユウキも

自分本位な人間ではなく、それならいっそこのままでよいと思っているのだ。

 

「それにね。今だって、スゴくうれしいと思っているんだ。

だって、死んだら消えていくものだと思っていたからさ。

それが、もう一度だけ生きていられる。なら、それ以上に願うことないかな。」

 

 ユウキとしては現状でも満足していた。

死んで消えていくと思っていたのだが、それが何の因果か、

二度目の生が得られ、今もこうして楽しんでいられる。

生前とは違い、機械や薬を無駄遣いすることも、周りの人達を困らせることもない。

聖杯を勝ち取らない以上は長くは持たない命だが、

それでも十分じゃないかと心の中で割り切っていた。

望むほど深い欲望もなかったからだ。

 

「……そうかよ。」

「どうしたの急に?シリアスムードとか銀さんらしくないよ?」

「んだとテメー。銀さんだってね、たまにはシリアスもやるもんなんだからね!

長篇とか基本涙腺崩壊ものだからね!」

 

 銀時の謎の主張にユウキは笑い、主従はいつもの調子に戻っていく。

 原付から受ける街の風に、ユウキはどこか生きている様な心地の良さを感じさせた。

 

 

 

【クラス】

セイバー

 

【真名】

坂田銀時@銀魂

 

【出典】

銀魂

 

【性別】

男性

 

【パラメーター】

筋力B+ 耐久A 敏捷B 魔力E 幸運C 宝具B

 

【属性】

混沌・中庸

 

【クラススキル】

対魔力:E

魔術に対する守り。

無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

 

騎乗:C

騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。

原付ならお手の物だという。

 

【保有スキル】

カリスマ:D+

軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。

カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。

特に悪人には惹かれやすい様で、刑務所の帝王になることもあった。

 

腐り眼の投石:A

人や集団の魂を突き動かす言葉と身振り。またの名を、空知節。

煽動の様に政治家が民衆を導くものではなく、己の筋を説き、煽り放った言動で各々を改めさせるものである。

特に個人に対して使用した場合には、ある種の精神攻撃として働く。

 

単独行動:B

マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

ランクBならば、マスターを失ってから二日間現界可能。

万事屋やかぶき町の連中から離れて行動する機会も多かったため、このスキルを所有している。

 

【宝具】

『滅びぬ士道に流れ往く魂ノ宴(バクチ・ダンサー)』

ランク:B+ 種別:対己宝具 レンジ:- 最大補足:1人

身命を賭してでも守り抜く「魂」の象徴。

一度、守りきると決めたことはなにがを何でも守り通すというセイバーの在り方が宝具となったもの。

他者もしくは他者との間に結んだ約束を守る時にセイバーは覚醒し、耐久・幸運の上昇といった戦闘に対するプラス補正が働く。

またこの時、Aランクに相当する「勇猛」・「不屈の意志」・「戦闘続行」、Bランクに相当する「直感」などに相当する効果が発動される。

 

『曇天晴らす快光の魂刀(ライト・インフェクション)』

ランク:C++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜80 最大補足:700人

かつて仲の違えていた結野衆と巳厘野衆が一つとなって闇天丸を倒した時の逸話が元として生まれた宝具。

洞爺湖を媒体として仲間の魂(意志)を結集させ、射線上にある敵を消滅させるほどの銀色の光を放つ。

元となった逸話の影響により、魔性の場合攻撃にプラス補正が加算される。

この宝具はセイバー単体で使用できる宝具ではなく、少なくともマスター・サーヴァント合わせて10人以上の人物を必要としている。

セイバー自身も認めているが、要するに元気玉とかミナデインのそれ。

 

『亡虚の龍脈刀(アルタナ・マテリア)』

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人

惑星のアルタナが噴出する「穴」の付近で採掘された結晶石が基になって作られた刀。

全体的にSF的な加工が施され、刀身は青白い光の輝きを見せている。

 

アルタナとはセイバーの世界において大地を巡る惑星の生命エネルギーのこと。

生命体に大きな影響を及ぼすものであり、セイバーの恩師の正体「虚」はこのエネルギーの循環によって不死身となっていた。

しかし、アルタナは星によってエネルギーの質が異なり、性質の相容れなさが故に機能活動を歪めてしまう。

この性質により、「虚」も刀から異星のアルタナを受け、絶命させられるほどの武器となった。

 

この宝具はその原理と逸話が基となったもの。

異星の生命体である限り、異質のエネルギーの干渉によって性質を歪める力を持つ。

その効果の範囲は「不死身」や「自己再生」といった高次元の肉体性にまで及び、それらを絶命させることが可能な代物である。

 

【weapon】

「洞爺湖」

基本的に使用される代名詞的な愛刀。

名刀「星砕」と呼ばれる、辺境の星に生える樹齢1万年の金剛樹を材料として作られた木刀。

真剣と張り合い、人体を突き貫くほどの強度を誇る。

 

「原付スクーター」

「銀」という文字の付いた愛用の原付バイク。

多くの無茶ぶりに付き合ってきたことを感じさせる往年の相棒。

サーヴァント化に当たり、魔力でもガソリンでもどちらでも稼働する。

 

【人物背景】

「天人」と総称する異星人種の侵略により、文明が切り開かれた江戸時代。

かぶき町でなんでも屋「万事屋銀ちゃん」を営業していた一人の侍。

時には人情から人を助け、時には怠惰な日々を過ごし、時にはギャグで起きた異変をなんやかんで解決するなどの生活を送っていた。

 

普段は無気力でだらしない人物。

マイペース故に仕事もいい加減で、家賃も給料も碌に出さず、大抵はギャンブルや風俗三昧。

普段の彼は自他も認めるほどの「マダオ(まるでダメなオッサン)」である。

そんな彼であるが、仲間思いかつ情に厚い人物で、仲間を救うため、約束を守るために

時に関係のない事件にさえも関わり、尽力によって救われていることも多い。

自分のことを語るのが下手なひねくれ者であるが、その人柄だけあってか、多くの交友から慕われ、親しまれている。

 

かつては恩師「吉田松陽」を救うため、攘夷戦争と呼ばれる天人との戦いに奔走し、

中でも「白夜叉」という異名で活躍した伝説的な攘夷志士であった。

しかし、仲間を人質を取られた際にやむを得ず松陽を自らの手で処刑することとなり、

それらの要因が重なって終戦直後に姿を消し、逃亡の末に流れ着いたかぶき町で「万事屋」を開き、定番の形に収まる。

だが、後に国を揺るがす騒動・戦争が起きたことで段々と話は変わっていき、

やがて、元凶である「吉田松陽」の正体「虚」にまで辿り着いていく。

虚を救うべく仲間達と力を尽くし、時に万事屋の看板を下ろすなど紆余曲折ありながらも、

二年間の歳月を経て「万事屋」の坂田銀時として決着をつけた。

「万事屋」としてこれからも生きていくことを示唆させ、話はここで幕を閉じている。

 

【サーヴァントとしての願い】

サーヴァントとしてマスターを守り通す。

 

【方針】

適当にサーヴァントをやっていくが、守るためなら全力にやるつもり。

 

【把握媒体】

原作及びアニメ『銀魂』をご参照ください。

 

 

【マスター】

ユウキ@ソードアート・オンライン

 

【出典】

ソードアート・オンライン

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

「闇妖精族(インプ)」

VRMMORPG 「ALfheim Online(アルヴヘイム・オンライン)」、通称「ALO」の中で設定されたアバター。

ALOのアバターが聖杯戦争ではそのまま反映されており、リアルの肉体を超える身体能力やスキル(および魔法)を持つ。

他にも、ALOのシステムが(ログアウト以外)踏襲されており、空中に映し出されたウィンドウを通じての各操作やストレージボックスによるアイテム格納、背中の翅による飛行などを可能としている。

インプは、その中でも暗視・暗中飛行に長けた種族であり、上位闇魔法が唯一使用可能となっている。

 

「マザーズ・ロザリオ」

自らが編み出した11連撃OSS(オリジナルソードスキル)。

最後の一撃で剣からビームを放つ形となる。

ビームは余波で周囲に爆風が生じたり、貫通するなど強力な威力を持つ。

VRMMORPGでは現状最高の連撃数に達するという。

 

【weapon】

「マクアフィテル」

黒曜石の刃を持つ極細の片手直剣。

 

【人物背景】

「ALO」というVRMMORPGのプレイヤー。本名は“紺野木綿季”。

ALOの中でも最上位に匹敵する程の戦闘力を誇り、「絶剣」という名で最強の剣士とも評されていた。

これはメディキュボイドと呼ばれる医療用VRマシンの被験者として、長期間での仮想空間に対するフルダイブの適合から、

豊富な経験と親和性を持ち、高い実力を持つ様になったとされる。

 

性格は陽気で明るい性格。純粋で着飾らないな人物だが、

人間経験が浅いからか落ち込みやすい面もある。

それでも、ぶつからなければ伝わらないこともあると語るなど前向きに考えている。

実はユウキはAIDS。病名「後天性免疫不全症候群」の感染者であった。

生誕した時から両親・姉共々に感染しており、その影響で両親・姉は既に他界している。

15年間も闘病生活を送ってきたが、免疫力は日に日に低下する一方であり、回復は絶望的な状態にあった。

 

姉の紺野藍子が立ち上げたギルド「スリーピングナイツ」を解散する記念として

思い出作りにフロアボス攻略に企画したところで

協力者「アスナ」と知り合い、メンバーと共に見事ボス攻略を果たした。

ボス攻略後、親友となったアスナに亡き姉の面影を感じる様になり、身を引くことになったが

事情を知ったアスナから、「可能な限りの望みを叶えたい」と意志を聞き入れ、

「視聴覚双方向通信プローブ」を介して行けなかった学校に通い続け、京都旅行にも行くなど楽しむことができた。

ALOでも統一デュエル・トーナメントといった様々イベントに参加・企画し、余生を満喫していった。

 

しかし、その後も容態は急変する様に悪化。

最後はALOの世界の中で終えたいという思いに応え、アスナや仲間を含むALO中のプレイヤー達に看取られる形で、その生涯を終えた。

後に紺野木綿季の葬儀には多くのALOプレイヤーが参列し、暖かく見送られたという。

 

【マスターとしての願い】

願いは特にない。だが、行けるところまで行きたい。

 

【方針】

本題の聖杯戦争に勝利するつもりはないが、最後まで見届けたいと思う。

生者の命を奪うつもりないが、自分勝手に人に悪影響を与える様な悪人やテロリストを倒すために戦っていく。

ハンターの仕事を行いつつ、情報収集も行っていき、

結べるなら誰かとも同盟を結んでいきたい。

 

【ロール】

ハンター

 

【把握媒体】

原作第七巻「ソードアート・オンライン マザーズ・ロザリオ」及びアニメ「ソードアート・オンライン」、

ゲーム「ソードアート・オンライン ロストソング」などをご参照ください。

ゲーム版は某動画サイトにも上がっているかと思います。

 

 



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【オープニング】【本戦開始前】12 ジョセフ・ジョースター&アーチャー マスター ジョセフ・ジョースター サーヴァント アーチャー エンタープライズ

登場キャラクター
マスター ジョセフ・ジョースター
サーヴァント アーチャー エンタープライズ

作者
◆K2cqSEb6HU


「オー!ノーッ!本当に岩じゃねぇかッ!!喰えるか!こんなもんッ!」

「……だから、言ったじゃないか。本当にそれでいいのかと。」

 

 人種に問わず、多くの顧客で賑わっている真昼のフードコート。

男性に提供された『ロース岩ステーキ』なる料理に派手なリアクションを取っていた。

一方の女性はテリヤキバーガーを食べながら、そんな彼を冷ややかな反応に呆れ返っている。

物語る目線はあくまで、『静かにしろ』だ。

 

男性の方は195cmもある大柄で、アメリカンなファッションと『左腕に着けている手袋』が特徴で、不良の様な粗暴な印象が目立つ。

片や女性の方はスタイルの良い美人で、軍属を彷彿とさせる様な装いをしており、軍人らしいクールな印象を持っていた。

そんな二人は、男女の仲と言えどもカップルとは見えず、仕事仲間というのが妥当な関係というものが感じさせていた。

 

「『ロース岩ステーキ』なんて言われてよ!ジョークか何かだと思うだろうがーーッ!岩が出てくるなんて信じられねぇぜッ!」

「私だって信じられないが、これでも料理の様だぞ。現に食べている者だっているわけだからな。」

 

 男性は『ロース岩ステーキ』なるものを頼んだが、本当に岩が来ると思わなかったため、『そのまんま』が出てきたご立腹であった。

確かに、何も知らない者がいきなり『岩ステーキ』なるものを出されても、それは冗談か何かだと思うであろう。

しかし、女性の言う様にこれはれっきとした料理で、一部のものにとって『食べられるもの』らしい。

 

「ヘッ!石の塊なんて食えるヤツがどこにいるんだよッ!!」

 

 男性はその事実が信じられず、大袈裟なまでの動作に頬杖を取り、思っている不満を口にする。

そんな男性の主張を他所に、女性は無心・無言で男性の後方を指差す。

指差す方角に男性も振り向くと、そこには岩を頬張って食らう大柄の亜人少年がいた。

男性も、流石にその光景には言葉が浮かばず、一瞬押し黙った。

 

「…………ボウズ。喰うか?」

「本当ゴロッ!?」

 

 悔しさや意地もあるので言った手前引く気にはなれないが、それを少年に向けて口にする気もなく、

せめてものの抵抗かもわからないが、自身のいらない『ロース岩ステーキ』を少年にあげた。

少年は喜んでその分のステーキも頂き、事の顛末を見ていた両親も苦笑いしながら感謝した。

 

「しょうがねぇなあぁ〜〜。おれもハンバーガーでも買い直しに行くか。……ん?」

 

 さっきまでの怒りはどこへやら、男性は気持ちを切り替え、料理の代替を求めて席を立つ。

しかし、ハンバーガーショップに向かおうとした途端、男性の端末機器に一通の着信音が鳴った。

着信音に気付いた男性は手慣れた動作で、その端末に向けて送られた着信を取る。

 

「はい、もしもお〜し。ジョセフだけどぉ〜?…………。」

 

 応答した電話を通じ、ジョセフという男は相手と会話を広げていく。

内容に大袈裟なリアクションであったり、将又冷静な対応になったりと感情の移り変わりは激しい。

着信を切ると、テーブルに手を付け、対面席の女性に声をかけた。

女性はジョセフに目もくれず、バーガーを平らげ、ナプキンで口を拭いていた。

 

「朗報だぜ。エンプラちゃんよォ。お目当ての『土地』が見つかったみてぇだ。」

「……呼ぶならアーチャーと呼んでくれ。」

 

 ジョセフは朗報を伝えたが、アーチャーの女性は一言、真名で呼ぶことを忠告した。

二人は席を立ってトレイを片付けると、フードコートを離れ、駐車場に留めていた車を出した。

 

 なお、男の名前は『ジョセフ・ジョースター』。聖杯戦争の参加するマスター。

典型的なアメリカ人像を思わせる様な軽薄な人物であるが、これでも由緒ある英国貴族「ジョースター家」の出身。

実は波紋戦士として『吸血鬼』や生みの親『柱の男』との死闘を繰り広げ、

奇跡的な勝利で生還を遂げたことで有名な人物である。

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 車は現在、センタロード街とタウンゼン街の境目に位置する大通りを走行している。

一見すると形の変わったスポーツカーだが、車にもなるモーターボートであり、陸上船の類。

アーチャーが船に長けるスキルを持つためのものだが、尤も今の車の運転手はジョセフの方である。

これは『女性に運転させるのは男の示しがつかない』というステレオタイプによる考えだ。

 

「『エンタープライズ』っていうとよォ〜、『あのエンタープライズ』のことだよなぁ?」

 

 ジョセフは途中で購入したコロッケパンも食べながら、運転席の『エンタープライズ』なる女性に話しかける。

召喚されたサーヴァントの名は『エンタープライズ』。適合されたクラスはアーチャーである。

 

「ああ、そうだよ。私は君の思うであろうエンタープライズ、CV-6のエンタープライズだ。」

 

 彼女の姿からは想像も付かないが、エンタープライズという名の『航空母艦』であった。

アメリカ海軍において歴代でエンタープライズの名の付く軍艦は多いが、CV-6は最も勲章を受けた空母の名である。

ジョセフもアメリカで暮らしている身。そして、呼ばれた当時が第二次世界大戦の最中だけあるので名声は耳にしている。

 

「ふぅ〜〜〜ん?」

 

 だが、その答えにジョセフの反応は『半信半疑』だ。

 

「『艦長』や『パイロット』なら分かるがよぉ〜。どうして『空母そのもの』が出てきて、

それが女の子になるわけ?英霊つうーのはそんな大雑把なジャンルなのかよ。」

 

 ジョセフは口調は適当に、それでいて本質を問う様に気になった疑問を投げかける。

『英雄(ヒーロー)』という概念は、普通の人には出来ないような事柄を成し遂げる者であり、

曲解があって英霊に昇華されたものはあれど、『実現した機体そのもの』を指すよりも

『機体を動かして実現させた使用者』を指すのが『普通』のことだ。

ましてや、現れたのは生前がその姿ではない擬人化された女性。これは『普通じゃない』話である。

ジョセフが思う様に『航空母艦』と言われたところで、信じるというのが難しい話である。

 

「私の場合は、後天的に今の形となったものだからな。正しくは君の世界のエンタープライズではない。」

「この世界の聖杯が、並行世界や多元宇宙といった人が住む異なる環境の出身を

対象としている様に、私も異世界の出身だ。」

「私は異世界でCV-6のエンタープライズの記録を元に製造され、それが英霊となった。

謂わば、エンタープライズのアルターエゴ(異人格)と言ってもいい。」

「や、ややこっし〜〜〜い経緯なのね……。」

 

 アーチャーの複雑な経緯にジョセフも思わず困惑の相を見せた。

元となった航空母艦「エンタープライズ」はジョセフ達の世界にも実在した軍艦であるが、

アーチャーはさらに異世界にて、その「エンタープライズ」の記録を元にして造られた英雄に当たる。

艦船として経験した記憶こそあるが、自分であって自分ではない者になる。

 

 車は大通りを下り、ルータム倉庫街へと入っていく。

ここでは業者や関係者が保管する倉庫群が立ち並び、雑多な風景が趣の感じさせる港街であった。

倉庫には港から降りた荷が蔵置され、また必要な地へと運び込まれる。

都市社会の中継点たる社会がここに築かれている。

 

 だが、ジョセフ達は肝心の倉庫に用はない。

何故、こんな場所にまで来ているのかというと、これも『立地の確保』だからだ。

 

 エンタープライズの戦いは真っ当なアーチャーの例に漏れず“弓”。

弓を主要な武器に置き、艦載機を援護や足場に用いる戦い方が基本形である。

これにより水上だけでなく、陸地・空中でも問題ないと本人は自負している。

 その一方、元が空母である通り、武装には空母の化身としての姿も持つ。

海が舞台でないこの戦争ではあまりに使い所のないものだが、場合によって

『艦載機による遠距離射撃』などという使い道もあるわけだ。

その場合、適した地形となるのはやはり『海』。

故にジョセフ達は戦闘における好立地を抑えているわけである。

 

 最も適していると考えられるのは、ここルータム倉庫街の近辺。

転換炉やコントロールタワー、都市の中心部とこれからの戦いになり得る

要所の候補にも届く位置であり、都市の中でもまだ比較的目立ちにくい環境である。

さらに一度目の使用後または状況が不利になっても、あっさり切り捨て、他所へ逃げ出すことも容易だ。

 とはいえ、内陸部には程遠いので、第二案としてA-2からA-3の海部も考えているが、

移動は面倒な上、実用性も薄いのでそちらは候補で終わっている。

 

「どうよ、アーチャーちゃん。この眺めはいいんじゃないの〜〜?」

「そうだな。戦闘には悪くはないだろうな。」

 

 到着した船着場で車を停め、ジョセフは土地の景色を問う。

場所にして、E-5とF-5の中間地区。周囲にはかもめの鳴き声や船や行き来する音が聞こえる。

対岸先のアンダータウンエリアやエリアを結ぶティアーブリッジ、海洋地区ケープなどもよく見える位置にある。

現在は(ジョセフは払わなくてもいいと思ったが)ここで湾岸施設使用料を先払いしており、

海上への移動のため、立地を確保している。

 これは個人に与えられた軍資金よりも、表向きは会社負担で出費していることになっている。

今のジョセフに与えられた役割は、元の世界と同じ『ジョースター不動産』なる不動産を取り扱う事業家。

事業や交流の中で出来たツテを辿り、安く仕入れたものだ。

何に使うとは言っていないが、ジョセフのことなので周りからは気にもされない。

 

「……マスターは何故この戦いに参加するのだ?」

「なんだァ?藪から棒に。」

「いや、聴いておきたくてな。君は私達の様に戦う為に召喚されたものではない。

元の生活を思って帰ることは可能だ。教会には出口に通じている話だろう?」

 

 アーチャーはジョセフに参加の理由について聴くこととした。

アーチャーから見れば、ジョセフの存在は巻き込まれた人。意図して参加したわけではない。

ならば退くことも現実的な判断だ。関係ないのなら命を賭けることもない。

 

「確かによ。聖杯戦争なんてくだらねぇもんに俺は興味ねぇ。やりたきゃあ勝手にやってろってもんだ……。」

「だが、妙に『きな臭い』と思ってよ。この聖杯戦争は神父の名前みてぇに綺麗さっぱりなものじゃねぇ……。

表面上には現れないところからゲロ以下のにおいがプンプンしてきやがるッ。

そういうのを見逃してやるほど、俺は人のできないヤツじゃあねぇ。」

「俺が帰る時、それはこの聖杯戦争の裏に潜む何かを倒してからだッ。」

 

 普段のおちゃらけているジョセフであったが、この時は真剣。

外道を許すまいとする、強い信念を感じさせる様な真っ直ぐな瞳をしていた。

アーチャーもジョセフがいい加減なだけな男ではないと認識を改めた。

 

「……まっ、それにあの腐れ神父のコトは信じられねぇからよ。何か裏があったと思うぜ?」

「すんなり帰してくれるわけもなかった……ということか。」

「そういうわけ。アイツは親切心で『帰してやる』って感じのヤツじゃあねぇ。

隙あらば後ろからザックリ行くタイプだ。

奇妙な口振りと難解な用語に惑わされやすいが、

ヤツは自分が不利になることは何一つ言わねぇで愉んでやがるッ。」

「そういうヤツってのはな。自分が有利な土俵にいる時に、必ず何か罠を張っているってもんなのよ。

なにも知らねぇヤツを自分の利益だけのために利用するためのな。

あの場でサーヴァントの契約を解除したヤツがいるならば、そいつは多分殺されていただろうな。」

 

 鋭い頭脳と多くの強敵と対峙して培ったジョセフの直感がそう告げていた。

ジョセフは言峰綺礼を信じていない。奴には『何か』を持っていると。

その『何か』は認識できないが、言峰綺礼という人物像から、警戒させる『何か』を隠し持っていると認識できた。

気配遮断していたアサシンなのかもしれない。

あるいは高度な魔術によって化けていたキャスターなのかもしれない。

その存在を裏付ける証拠もなく、憶測にしかならないが、

言峰綺礼という人間性だけは裏があることを示唆させていた。

 

「……ふっ、中々の慧眼だな。」

「そうよッ!俺の第六感は伊達じゃないのよォ!惚れ直してくれたっていいんだぜェ〜〜〜?」

「それはないな。」

 

 流れる様に玉砕され派手にショックの様子を見せるジョセフ。閑静であった港には

男の存在感がやけに目立っていた。

 このあと、主従は使用の契約を済ませて倉庫街から上ると、タウンゼン街やストランド街へと駆けていった。

なお、ジョセフとしてはこれはデートの目的も兼ねていたのだが、

(恋愛対象として)興味のないアーチャーに通じることはなかったという。

 

 

【CLASS】

アーチャー

 

【真名】

エンタープライズ@アズールレーン

 

【出典】

アズールレーン

 

【ステータス】

筋力B 耐久A 敏捷C 魔力C 幸運A+ 宝具C+

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

対魔力:D

一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。

魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

 

単独行動:A

マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

ランクAならば、マスターを失っても一週間現界可能。

 

【保有スキル】

KAN-SEN

未知の物質「メンタルキューブ」の構成によって生を受けた人型の艦船。

多くは大戦期で活躍した艦船が元となっているが、いずれも性質は近代ベースと異なる。

水上戦闘に適性を持ち、移動を可能とする他、敏捷などに有利な判定を受けられる。

アーチャーの場合、空母としての特性が発展し、Cランク相当の千里眼にも等しい視力を有する。

 

嵐の航海者:A

「船」と認識されるものを駆る才能を示すスキル。

船員・船団を対象とする集団のリーダーも表すため、「軍略」「カリスマ」も兼ね備える特殊スキル。

 

沈着冷静:B

如何なる状況にあっても混乱せず、己の感情を殺して冷静に周囲を観察し、最適の戦術を導いてみせる。

精神系の効果への抵抗に対してプラス補正が与えられる。

特に混乱や焦燥といった状態に対しては高い耐性を有し、たとえ数百数千の軍勢に

単身で相手取ることになろうともアーチャーは決して惑わない。

 

LuckyE:A

無数の戦場を駆け抜け、無事に退役するまで生涯を全うしたアーチャーの生存性。

戦闘時、飛び道具および集団を対象とした攻撃を受ける際に、確率で被弾・致命傷を避ける。

確率はアーチャーの幸運と敵対者の幸運の比較によって決まり、アーチャーの幸運を超えると効果がない。

 

【宝具】

『USS Enterprise CV-6』

ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜30(艦載機:1〜99) 最大捕捉:1000人

航空母艦「エンタープライズ」を模した武装の展開。

これは「近代兵器の再現」由来のものではなく、

「異世界の独自物質で構成された建造物」由来のものであるため、神秘の質は異なる。

「航空母艦」としての形態と「本体サイズの武装一式」としての形態を併せ持ち、戦闘時では主に後者を使用する。

空母の武装として、展開した艦載機を自在に指揮ができ、航空射撃による援護を行わせることも可能。

艦載機によって大規模な一掃も出来るがその被害は甚大ではない。

 

『20th Battle Star』

ランク:EX 種別:対軍(自軍)宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

大戦の中で多くの戦果を上げ、英雄の象徴となった20の従軍星章。

平常時では特に有益な効果が発揮しないが、これそのものが宝具などに用いる為の純粋な魔力の塊であり、

アーチャーの任意で予備の魔力源として自軍の対象に魔力を齎すこともできる。

1つに付きEランクの宝具分に相当する。

ただ、アーチャーにとっては「壊れた幻想」に他ならないのであまり多用したがらない。

 

【weapon】

「艤装弓」

空母の艤装を模した滑車弓。

1本から複数体に分裂する魔力矢を放つことも可能。

3本に分裂した後に爆雷となる矢や、蒼炎の魔力で包まれた鷹へと変容する矢などもある。

 

「艦載機」

当時と同サイズの艦載機達。最大98機まで展開が可能。

魔力で生成したものであり、撃破されたとしても魔力次第で再構成できる。

普通の艦載機ではなく、蒼炎の魔力で包まれた鷹へと変化し、突撃による攻撃もある。

空母時は発着して繰り出すが、武装時でも自在に展開させることができ、

また足場として利用することもできる。

 

【人物背景】

ヨークタウン級2番艦「エンタープライズ」。

エンタープライズとは、「冒険心」「困難への挑戦」といった意味を持つ。

中枢戦力として太平洋戦争下における主要な海戦のほぼ全てに参加して数多くの戦果を上げることに成功し、

終戦まで無事に生き残った航空母艦。

アメリカ海軍上の航空母艦として最多の20の従軍星章(バトルスター)や初の大統領部隊感状を受賞するなど

功績の影響は大きく、アメリカ海軍史上最高峰の武勲艦として有名。

 

性格は真面目で勇敢。

素直かつ誠実に生きることを信条としており、腹を割って話せる関係を好んでいる。

多くの戦いを経験し、多くの別れを体験したことから精神的に成熟しており、酸いも甘いも噛み分けている。

一方で、サーヴァントになる前は時にサンタに扮したり、ハロウィンに参加することもあったり、

また恋愛を初々しく意識するなど、戦闘だけでない茶目っ気や純情さもある。

 

サーヴァントになる前の世界では、軍事連合組織「アズールレーン」に属する陣営「ユニオン」の下におり、

圧倒的な科学力を有する謎の外敵「セイレーン」との戦争に関わっていた。

その後、「アズールレーン」に属していた陣営「重桜」と「鉄血」は抜けて結成され、

セイレーンとの共存を謀ろうとする「レッドアクシズ」との対立に関わっていくが、

アーチャーとしてエンタープライズは終わったものとして、これ以上のことを語ることはしない。

 

なお、他にも趣味として相棒の「いーぐるちゃん」と遊ぶこともある様だが、今回は連れてきてない様子。

 

 

【サーヴァントとしての願い】

素直かつ誠実に生き抜くこと。

 

【方針】

基本的にマスターの方針には従うが、認められないことには従わない。

敵ならば同情も手加減もせず、全力で向かい撃つ。

 

【把握媒体】

アニメ「アズールレーン」およびゲーム「アズールレーン」をご参照ください。

ゲームの台詞はwikiに記載されております。

 

【備考】

キャラ像のベースはゲーム版。戦闘設定のベースはアニメ版を想定しております。

 

 

【マスター】

ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険

 

【出典】

ジョジョの奇妙な冒険

 

【性別】

男性

 

【能力・技能】

『波紋』

特殊な呼吸法により、体内を流れる血液の流れをコントロールして、

太陽光の波と同じ波長の生命エネルギーを生み出す技術。

水や油といった液体により伝わりやすく、特に油は伝導率が高いので、道具に用いられることも多い。

治癒に使ったり、太陽光(紫外線)に弱い吸血鬼などにも有効的。

対象に流し込む『波紋疾走』や応用として関節を外すことで腕のリーチを伸ばす『ズームパンチ』などがある。

 

【weapon】

「エーテル機関銃」

トンプソン機関銃にもよく似たエーテル銃。

どこで仕入れたのかはわからない。

 

「糸」

気づかれないように糸を張り、巻きつけて締め上げながら波紋を流すなどの芸当を見せる。

手品を応用した特殊な結びで、気付かれて切断される事態にも対応している。

 

「アメリカンクラッカー」

鉄製のアメリカン・クラッカー。

鈍器として扱われ、加えて流し込んだ波紋で攻撃する。

 

【人物背景】

英国紳士の血統「ジョースター」家の末裔。

元々はイギリスの出身であったが、旧来の仲である「ロバート・E・O・スピードワゴン」を伝って渡米。

同時期に吸血鬼となった「ストレイツォ」との戦闘を機に、上位種である古代人類「柱の男」と関わり、

波紋戦士の血筋として運命的な闘争へと発展していった。

 

「イギリス人と思えない」と評されるほど剽軽かつノリの軽い性格で、目上であろうが茶化す様な言動も多い。

またやたらと暴力的で気性の激しさもあり、7回もケンカによって投獄されるほど。

一方で、差別対象者とも公平に友情関係を持ち、馬鹿にされてキレる場面や

仲間を守るため自ら誘い込んで犠牲になるなど、正義感や他者への心優しさの持ち主でもある。

 

相手の裏をかき、追い詰められたと見せかけ、張り巡らせた罠で出し抜くといった抜け目のなさが特徴的。

奇策や知性を以て、多くの強敵を相手にしても勝利を収めている。

また推理染みた考察で、メリケンサックの位置を見抜くなど観察力や洞察力も高く、

相手が次に口に出そうとする言葉を予測して先に言ってみせる台詞は彼の代名詞。

後に先見の明を活かし、ニューヨークの不動産王としても大成している。

 

なお、左腕に金属製の義手を嵌め、その上に手袋を着けて隠しているが、

これは敵「カーズ」との戦いで失ったものである。

 

 

【マスターとしての願い】

聖杯戦争の黒幕をぶちのめして帰還する。

 

【方針】

準備時点では不動産業や仮想世界内の交流を使い、事前に拠点の用意・情報収集などできることを済ませておく。

聖杯戦争開始後は、基本的に状況や情勢に合わせて行動する。

仲間になれそうなら相手の人物次第で組む。

 

【ロール】

「ジョースター不動産」を経営する不動産実業家

 

【把握媒体】

原作及びアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 戦闘潮流」をご参照ください。

 

 

【備考】

時期は2部終了数年後を想定しております。

 



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【オープニング】【本戦開始前】13 尾形百之助&ライダー マスター 尾形百之助 サーヴァント ライダー ゾルタン・アッカネン

登場キャラクター
マスター 尾形百之助
サーヴァント ライダー ゾルタン・アッカネン

作者
◆U1VklSXLBs


北海道行きの船の甲板上で、尾形は北海道に想いを馳せる。傷病軍人の振りをして、しおらしい表情で船賃代わりに棒鱈を差し出すと、船長はあっさり船に上げてくれた。そんな尾形がふと顔を巡らせると、1人の女が財布らしい包みを落とすところが目に入った。

 

「あの…落としましたよ」

「あら、ありがとうございます」

 

尾形は立ち上がって財布を拾い、女に声をかけた。振り返った女は小さく頭を下げると、財布を懐にしまって去って行った。一度見たら2度と忘れられない風貌の美女。白い肌に波打つ長髪、前髪を一房だけ紫に染めている。

 

いつまでも女を目で追う尾形ではない。

先ほどまで座っていた位置に戻ろうとした時、尾形は足元に虹色に光る石が落ちていることに気づいた。

 

(これは?)

 

先程の女が落とした物だろうか?

追いかけて渡すか、と考えて…やめた。傷ついた身で帰郷する軍人でも、そこまで親切な男は少数だろう。彼の腹違いの弟は少数の中に入るかもしれないが、尾形は違う。

 

しかし手の中の輝きを目にしていると、捨てるのも気が引けた。尾形は深く考えず、虹色の石…星晶石を懐にしまった。そして、聖杯戦争に招かれたのだ。

 

「お父さん、こんなところにいたら風邪引きますよ」

「うん、ごめんなさい。お巡りさん…」

 

尾形のロールは交番勤務の警察官。

若い頃、事故で片目を失った事になっている。

彼は現在、地下鉄の改札近くで座り込んでいる酔っ払いの相手をしていた。酔っ払いは尾形に声を掛けられるなり、泣きながら日々の生活の愚痴を語り始める。

 

酔っ払いは自ら立ち上がって帰路に着くまでに、5分ほど喋り続けた。対応を終え、交番に戻ろうとした尾形に音ならぬ声がかかった。

 

『夜遅くまでご苦労な事だな、マスター』

『今だけだ。隻眼の警官は目立つ。いざとなったら失踪する』

 

契約したライダーが話しかけてきた。

霊体化したまま同行させている彼は、かなり特徴的な容姿をしていた。病的に白い肌、側頭部を刈り、頭髪を中央にのみ残している軍服の男。

 

「失敗作…?どういうスキルだ?」

「…お前が知る必要はない。そうだろう、マスター?」

 

召喚されてすぐ、ステータスを確認した尾形にライダーは激昂した様子で掴みかかってきた。声は危険な震え方をしており、殴りかかるのを必死で堪えているといった様子だ。爆発一歩手前といったところか。

 

「気を悪くしたなら謝る。俺も…昔、出来損ないと言われた。仲良くしよう」

「…誰に」

「父にだ」

 

尾形が告白すると、ライダーは大笑いした。

失敗作、と言う呼ばれ方を気にしていると見て、場を収めるべく過去の一端を明かしたのだが、この反応は尾形の予想外だった。

 

「愛情のない親が交わって出来た子供は、どこか欠けた人間になるのですかね?」

 

自分を無視し続けた父親。

高い地位にあった軍人だが、尾形にとってはほとんど意味のないものだった。父は正妻との間に男児が生まれると、あっさり母と自分を捨てた。

 

ーー出来損ないの倅じゃ、呪われろ

 

追憶に耽っていると、ライダーの声が聞こえてきた。

 

「主従揃って出来損ないか!なぁ、お前の願いは何だ?」

「清い人間などいないと、確かめたいだけだ。道理さえあれば誰もが人を殺す、罪悪感など抱いたりしないとな」

「その通りだ、マスター。ふふ…正義だの理想だの、寝言を言いながら人を切り刻むのが本当の人間なのさ」

 

ライダーの機嫌が目に見えて良くなった。

 

「気に入ったよ、その願い。俺も乗った」

「どうするつもりだ?」

「聖杯の力で、全人類の心を一つに溶かしてやる。そうすれば俺やアイツらみたいな子供はいなくなるし、ニュータイプの本質をみんな理解できる。誰も損しない」

 

尾形にはわからない単語が出てきた。

ニュータイプについて説明を求めると、ライダーは自分が生きた世界について、尾形に語って聞かせた。

 

増えすぎた人間が宇宙に移民として送られ、地球に残った人々と争い始めた頃、超能力のようなものを扱う人々が現れた。高い空間認識力、共感力を持った彼らはニュータイプと呼ばれた。

一年戦争、グリプス戦役といった戦時下においてその能力は研究され、後天的にニュータイプ能力を引き出された者も現れた。強化人間。ライダーもその1人だ。

 

【サーヴァント】

【CLASS】

ライダー

 

【真名】

ゾルタン・アッカネン

 

【出典】

機動戦士ガンダムNT

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力E 耐久D 敏捷E 魔力C 幸運E 宝具E ++

 

【属性】

混沌・悪

 

【クラス別能力】

対魔力:E

魔術に対する守り。 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

 

騎乗:−

騎乗の才能。ライダーは下記スキルによって、騎兵の資格を得ている。

 

【保有スキル】

操縦:A

自動車、ヘリコプター、各種船舶など乗り物を操る能力。Aランクの場合、機動兵器を操縦することができる。

 

強化人間:B

後天的にNT能力を与えられている事を示す。

同ランクの直感、心眼(偽)を内包する特殊スキルだが、精神の均衡が脆くなるデメリットがある。

 

失敗作:A

造物主の要求水準を満たせなかった者。

宝具使用を含むあらゆる動作における魔力消費が軽減され、契約が切れた際は同ランクの単独行動スキルとしても機能するが、代償に幸運値が低下する。

 

【宝具】

『嘲笑する捨て子(シナンジュ・スタイン)』

ランク:E 種別:対人、対城宝具 レンジ:−  最大捕捉:1人(自身)

生前の乗機を召喚して操る。展開時、ライダー自身はコックピットに格納される。

サイコフレームの実験用に建造された、ユニコーンガンダムの試作品。アナハイムが『袖付き』に裏取引で譲渡したモビルスーツであり、極限まで運動性、追従性を高めたこの機体は常人には扱えない。

 

神秘に頼る事なく星間を飛び回り、パイロットのイメージを読み取る金属を素材に用いた数十メートルの機動兵器。聖杯がエラーを起こした結果、全高5mほどにまで縮んでいるが、宝具としての格の低さと保有スキルによって、攻撃力に反して反則的な燃費の良さを誇る。

 

 

 

『絶望した僕の神様(Ⅱネオ・ジオング)』

ランク:E ++ 種別:対人、対城宝具 レンジ:−  最大捕捉:1人(自身)

シナンジュ・スタインをコアとして稼働する、拠点攻略用ユニット。フル・フロンタルが使用したネオ・ジオングの製造過程に出た予備パーツが横流しされ、極秘に組み立てられたもの。各部に搭載した兵器が圧倒的な攻撃能力をもたらす。

 

剥き出しの上半身からバズーカなどの携行武装も使用可能な他、ライダーの精神を具現化させる擬似サイコフレーム『サイコシャード』を展開でき、生前はヘリウム3タンクを融合反応により大爆発させた。

 

聖杯がエラーを起こした結果、全高30mほどにまで縮んでいるが、宝具としての格の低さと保有スキルによって、攻撃力に反して反則的な燃費の良さを誇る。

 

【weapon】

無銘:拳銃

 

『嘲笑する捨て子(シナンジュ・スタイン)』の武装。

60mmバルカン砲×2

ハイ・ビーム・ライフル

ビーム・サーベル×2

シールド

ビーム・キャノン

ミサイル×4

 

『絶望した僕の神様(Ⅱネオ・ジオング)』の武装。

有線式大型ファンネル・ビット×30

両肩部メガ粒子砲×6

腰部Iフィールド・ジェネレーター×4

大口径ハイメガ粒子砲

ロケット・バズーカ×2

ビーム・ライフル×2

大型ビームアックス×2

60mmバルカン砲×2

ビーム・サーベル×2

ビーム・アックス×2

グレネード・ランチャー

シールド

サイコシャード発生器×8

 

【人物背景】

ジオン共和国に所属する強化人間。シャアの再来計画の失敗作、フル・フロンタルになり損ねた強化人間。ユニコーン3号機フェネクス捕獲作戦に投入された彼は、サイド6コロニーの学園都市において戦闘を行い、民間人に被害を出す。その際の暴走によって切り捨てられる事を察知した彼は監視役を殺害。乗機のシナンジュ、ネオジオングを奪取すると、ヘリウム3備蓄基地を襲撃。全てのガスタンクを暴発させ、地球圏にまで及ぶ大破壊をもたらそうとした。

 

 

【サーヴァントとしての願い】

全人類のニュータイプ化。奇跡と人々が呼んでいるものの正体を理解させてやる。

 

【方針】

優勝狙い。

 

【マスター】

尾形百之助

 

【出典】

ゴールデンカムイ

 

【性別】

 

【能力・技能】

第7師団第27連隊所属の兵士の中でも、屈指の狙撃手。

300メートル以内なら相手を確実に絶命させることができる。蛇行して飛ぶヤマシギを複数撃ち落とし、一晩雪を口に入れながら狙撃のチャンスを待つなど、並外れた精神力と集中力を持つ。

 

【weapon】

転移時に持ち込んだ無銘:小銃と支給品の拳銃。

プライベートで持ち出す場合、ペナルティが発生する。

 

 

【人物背景】

近衛歩兵第一連隊長、花沢陸軍中佐と浅草の芸者の間に生まれた子供。本妻との間に男児が生まれると関係を切られ、母子揃って茨城の実家に身を寄せる。父親を忘れることができず、心を病んだ母を憐れみ、殺鼠剤によって毒殺。陸軍に入った後、異母弟の花沢勇作と出会うが、その真面目で高潔な人柄に耐えかねて日露戦争中、203高地にて射殺。父親の花沢をも、鶴見中尉の策謀に加担して、自刃に見せかけて殺害した。

 

鶴見への造反を企てていた玉井伍長の失踪を切っ掛けに鶴見一派を離脱。土方グループ、キロランケと所属勢力を転々としつつ、アイヌの隠し金塊争奪戦に加わる。

 

 

【マスターとしての願い】

清い人間などいないと証明する。

自分がおかしいのではなく、殺す道理さえあれば誰だって殺すのだ。

 

【方針】

優勝狙い。

 

【ロール】

交番勤務の警察官。

 

【把握媒体】

鯖は吉沢俊一監督作品の映画。

鱒はアニメか、コミックス。

 



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【オープニング】【本戦開始前】14 パンナコッタ・フーゴ&アーチャーマスター パンナコッタ・フーゴ サーヴァント アーチャー 二瓶鉄造

登場キャラクター
マスター パンナコッタ・フーゴ
サーヴァント アーチャー 二瓶鉄造

作者
◆7XQw1Mr6P.



 薄っぺらな理屈などでは無い。

 そもそも複雑な論理を組み立てて思考する面倒な頭など持ち得ていない。

 それでも、巨大化に伴い体積を増やした脳が頭を割るほどの警鐘を鳴らすのは、魂に根差した本能によるものだから。

 だからこそ、アヴェンジャーの片割れ―――狼王ロボは最上の臨戦態勢を取った。

 

『アヴェンジャー?』

 

 いつものように二枚の絵の前を陣取っていたアヴェンジャーの突然の豹変に、マスターのミザリィが怪訝な表情を浮かべる。

 

 ミザリィの問いかけに、ロボからの反応はない。

 いつの間にか傍らに佇む報復者のもう片方、首無し騎士ヘシアンは相変わらずだが、その振舞いは心なしかロボのサポートをしようとしているようにも見える。

 複合サーヴァント、ヘシアン・ロボ。

 同一となっている両者の間に繋がりがあるのは明白だが、ここまで一方がもう一方を思い遣っているような行動を取るのを、ミザリィはまだ見たことがなかった。

 

 ロボが睨み、ヘシアンが無い頭で見つめる先。

 先日の闖入者によって破壊され、今は修復された、アンティークショップ・美紗里の扉。

 はたして真新しい扉を開き店内へと足を踏み入れたのは、二人の男だった。

 

 一人はヨーロッパ系、金髪の青年。

 穴の開いたスーツという奇妙な風体ながら、その佇まいには紳士的な雰囲気が出ている。

 それでいて戦士的な油断のない足運びを見せ、鋭い眼光は彼の警戒心と敵対心を物語る。

 武装しているようには見えないが、まるで西部劇のガンマンのようだ、とミザリィは思った。

 その緊張感は"何かあれば銃を抜くぞ、どっちが早いか試してみるか?"と言わんばかりの。

 非常に効果的な臨戦態勢であると、アウターゾーンの案内人は評価した。

 

 一人はアジア系、白髪交じり初老の男。

 体格には恵まれているが、あまり目を引く特徴は無い。強いて言えばば雲のように盛り上がった髪型くらいのものか。

 振舞いも足運びも特別なものは感じられない。背に背負っているのも年季の入った、悪く言えば時代遅れの単発銃。

 しかも負い紐を片手で無造作に掴んでいる状態で、"いざという時"に構えられる姿勢ではない。

 翻っては"いざという時は来ない"と慢心しているようにさえ見える。

 あるいはこれが演技なのであれば、これ以上不気味なものは無いだろう。

 

 ロボの唸り声が一層の剣呑な雰囲気を強めた。

 だが、狼の威嚇に二人は動じる様子もなく、ただ店の入り口から一歩だけ踏み入った位置で、ショーウィンドウからさす西からの光を背に佇んでいる。

 やや間があって、来客の片割れ、金髪の青年が口を開いた。

 

「お久ぶりですね。スィニョリーナ・ミザリィ」

『そういうあなたは、スィニョーレ・フーゴ』

 

 慇懃なセリフとは裏腹に、その口調に宿るのは明確な敵意があった。

 パンナコッタ・フーゴ、それが敵意の名前だった。

 イタリアの秘密結社『パッショーネ』の構成員。

 特筆すべきは優れた知性と、内に秘めた狂暴性。

 そして、何よりも"獰猛"な能力の持ち主であるということ。

 

 彼の能力が猛威を振るえばサーヴァントはともかく、一マスターとして存在している今の自分はただでは済まない。

 ロボが警戒しているのは、彼の能力を察知してのこと―――?

 

『ずいぶんと物々しい雰囲気ね。

 聡明なあなたが喧嘩腰で店に来るとは、正直言ってちょっと予想外だったわ』

「口八丁でこんな世界に引きずり込んでおいてよく言いますね。

 あなたに敵意を向けているマスターがどれだけいると思っているんです?」

『帰ろうと思えば帰れるのに、何がそんなに不満なの?

 私は願望を成就させる機会を与えただけよ。そこから"一歩"踏み出すかどうかは――』

「あぁ、そういうのは間に合ってるんで。それに今日は戦う為に来たわけじゃあない」

 

 ミザリィの眉が跳ねあがる。

 慇懃無礼な物言いはともかく、フーゴは明らかに戦闘を視野に入れている。

 にも拘らず戦闘目的で来たわけでは無いと言う。

 

 そこでミザリィは、フーゴの後ろに控える男へ目を向けた。

 彼は店に入ってから一度も、ミザリィを見ていない。

 その視線は、臨戦態勢を取るアヴェンジャー。それも、狼王ロボにのみ集中していた。

 

「どうです、アーチャー。

 君のお眼鏡にはかなう相手かな」

 

 アーチャーと呼ばれた男に、マスターの言葉が届いたのかもわからない。

 皺の刻まれた男の顔はピクリとも動かず、ただじっと、真っすぐに狼の顔を、その瞳を見つめて―――。

 

 その口元が、獰猛な笑みに歪んだ。

 

 

「すばらしい。俺の最後の獲物にふさわしいぞ」

 

 

 アーチャーの口から出たのは、宣戦布告だった。

 

 アヴェンジャーの発する殺意が最高峰に達する。

 並び立つミザリィはため息をつくが、かかる火の粉は払わねばならないとサーヴァントカードを構える。

 

 パンナコッタ・フーゴ。彼はミザリィの中では、かなりの有望株だった。

 一度は己の心の弱さに後ずさり、しかしそれでも一歩を踏み出そうとする"覚悟"を決めた青年。

 ミザリィの好きなタイプの人間だった。

 

「(それなのに、こんな序盤に脱落させなくてはならないとは……)」

 

「……フン。そんなに殺気を撒き散らすな。

 言っただろう、狼王よ。お前は"最後の"獲物だ」

『……話が見えないわね』

「生前の俺は勝負に負けて死んだ。

 山で死んだ俺の体は獣どもに食われ、糞となって山に蒔かれただろう。

 考え得る限り最高の最後だ。聖杯なんぞに望むモノはなにもない。

 この世界に呼び出された俺がそれでも望むのは、魂が勃起する勝負よ。

 狼王ロボ、人類史に刻まれた最も賢き狼よ。お前の最後の相手はこの"二瓶鉄造"だ」

 

 アーチャ-の口ぶりは荒々しく、獰猛だった。

 だがその眼差しには一点の曇りもなく、ただ勝負に賭ける男の誇りがあった。

 瞳に漆黒の意思が燃え滾っていた。いっそ清廉にすら見える清々しさがあった。

 

 いつの間にか狼王は威嚇をやめていた。

 同じように純粋で真っすぐな瞳で、真正面からアーチャーを睨みつけていた。

 ミザリィも、ヘシアンも、フーゴも動かず、ただ黙って両者を見守っていた。

 狩人と獣という両者であったが、狩る者と狩られる者ではなかった。

 

「……とはいえ、狼との勝負に負けて死んだ俺では、お前さんには勝てんだろう。

 だがこの世界になら、他にも面白い獣がいるかもしれん。

 それらとの勝負に"撃ち"勝ち、俺という獣の個性に磨きをかけ、必ずお前を"撃ち"に来るぞ」

 

 アーチャーは一方的に捲し立てると「ぬははは、勃起!」と笑い、店を出ていった。

 残ったフーゴはため息を一つ吐いた。

 肩の力が抜けたようで、さっきまでの敵意は鳴りを潜めていた。

 

「ぼくとしては宣戦布告なんてやめてほしかったんですが、本人がどうしてもと聞かなかったもので」

 

 そこでようやく、ミザリィは合点がいった。

 アーチャーは戦う気が無かったが、ロボを見定め、宣戦布告がしたかった。

 彼にとって大事な勝負に臨むためには、それが必要な儀式だったのだろう。

 フーゴは戦いたくなかったが、宣戦布告が悪い方向へ転んだ時のため、戦闘に備えていた。

 いささか喧嘩腰のやり取りについても、仮想敵相手に舌戦で負けるわけにはいくまい。

 

 いつの間にかロボは"定位置"に戻っている。相棒のヘシアンも同様だ。

 さっきまでの警戒も、自分を狙う狩人(アーチャー)の気配を敏感に感じ取っていたのだろう。

 ミザリィもカードを懐にしまった。

 

『私はてっきり、"あの絵"から私のサーヴァントを察したあなたが焚きつけたのかと思ったけれど』

「まさか。もちろんこれ見よがしな絵の意味は考えましたが、自分が英霊召喚をしたあとにそれを結び付ける人は稀でしょう」

『でもあなたは、アヴェンジャーのことを知っていたんでしょう?

 だからあなたのアーチャーはロボに目をつけたのだから』

「そりゃカメラで見ましたから」

 

 なんてことはない、といった口ぶりでフーゴは語った。

 

『カメラ?』

「あれ、店の前であんな派手に暴れておいて、街の監視カメラに引っかからないと思ったんですか?

 それに死体を店先に放置してたってのに、あなたは任意同行と事情聴取をマスターの権限で正面から拒否してる。

 ぼくもマスターの権限がどれくらい有効なのか試してみたくて、何人か警官に声をかけてみたんです。

 ついでに少し金を握らせたり、ちょいと"説得"しただけで簡単に情報をくれましたよ」

 

 ミザリィという女が警察にどういった対応をしたのか。

 監督役に引き渡された死体が"どういう死に方"をしていたのか。

 そして極めつけに、この近辺一体の監視カメラの映像を見せてくれたのだという。

 

 別段、この街の警察が腐敗しているというわけでは無い。

 これは全てのマスターが持つ特権と、フーゴの適格な懐柔策の合わせ技。

 それに加え、警察機関からミザリィという女への心象が極めて悪いということの現れでもある。

 マスターはこの世界―――パラディウム・シティの警察を始めとする各機関からの干渉を"ある程度"無視できる特権を持つが、結果として生じるしわ寄せは当然NPCたちに降りかかる。

 

 

「聖杯戦争が始まれば、戦闘は激化する。

 警察への負担とマスターへの不満は加速度的に増えていくでしょう。

 ですがあなたは聖杯戦争開始前から狙われ、応戦している。

 そんなのことが続けば近いうち、この街のマスコミもこのことを取り上げるでしょう。

 あなたがマスターで、どんなサーヴァントを従え、どんな戦い方をするのか。

 それは戦争が始まる前から、マスター全員にとって簡単に手に入る情報になる……」

 

 

 フーゴは言葉を切った。

 アーチャーとアヴェンジャーの約束がある以上、フーゴとミザリィは仮想敵から対戦予定の敵となる。

 ならば今から、後の戦闘の布石を打っておこうと、フーゴは駆け引きに出た。

 相手の手札が筒抜けであるということを突き付けることで心理的アドバンテージをとり、プレッシャーをかけているのだ。

 

 だというのに、ミザリィの顔には静かな笑みが浮かんでいた

 

『まさか、聖杯戦争が始まる前から街のシステムを活用してくれる人がいるとはね』

「……あまり困ってはいなさそうですね」

『えぇ。……えぇ! 私にとっては予定が早まっただけ。

 とても嬉しいわ。そして期待以上よ、パンナコッタ・フーゴ』

 

 敗色濃厚な状況下にあっても活路を諦めない人間。

 異常空間に引き込まれてもなお自分が出来る最善を選び取れる人間。

 それはミザリィがなによりも好むタイプの人間。

 

『私は"案内人"という役割(ロール)上、早々に退場するわけにはいかない。

 だから私は"主催者"から特別な戦力を認められているわ。

 私自身の戦闘力、二体のサーヴァント、夢幻召喚(インストール)の力……。

 でもね、私は聖杯戦争の戦況に干渉するつもりはないわ。

 私の願いは人間の可能性を見定めること。

 聖杯の裏に『悪意』が潜んでいた場合、それを葬ること……。

 仮に"主催者"がその『悪意』だったなら、私は全てのマスターの味方になる』

「……」

『とはいえ、多くのマスターたちがそれを信じられないでしょう。

 だから私は、自分に制約(ペナルティ)をかけてるの。

 私の最初の拠点はこの店で固定されるのもその一つ。

 それに私の戦力についても、それを殊更に隠すことはしない。

 少し頭が回るマスターならある程度簡単に知れるようにしてある。

 ……IQが152もあるあなたには、戦争が始まる前からずいぶん知られちゃったみたいだけれどね』

「……なるほど。もともと隠す気は無かったってわけですか」

 

 フーゴは再びため息をついた。

 どうやら未だ、この"案内人"を名乗る女の掌の上らしい。

 現状の手札で駆け引きが出来ないとわかれば、これ以上話すことは無い。

 

 

"ならば最後に、言いたいことだけは言っておこう"

 

 

「……ミザリィ。あなた、マスターの味方にもなりうると言いましたよね」

『えぇ。そこに偽りはないわ』

「ですが、あなたがどう言い繕ったところで、ぼくたち参加者からすればあなたは"主催者側"だ」

 

 フーゴの追求に、ミザリィは薄い笑みを浮かべて首肯を返す。

 

『そうかもしれないわね。でも私のスタンスは、さっき言った通りよ』

「……あんたは人の可能性とやらを見定めると嘯き、人の価値を値踏みしている。

 それは魚屋で夕飯の材料を吟味しているようなもので、ようは他人を見下してるってことだ。

 そういうあんたは逆に人に見下され、値踏みされる"覚悟"はあるのか?」

 

 初めて、ミザリィの顔から表情が消えた。

 

「仮に聖杯戦争のマスターたちが、あんた好みの可能性を見せたとする。

 そしてあんたがウキウキで助力を申し出た時、相手にしてもらえると思ってるのか?」

『……戦時中にせっかくの増援を拒むのは愚策だと思うけれど?』

「じゃあ感情の面で歓迎されないかもしれないってのは理解してるんだな。それならいい。

 ここに来て最初にも言ったが、ただでさえ"参加者"からあんたへの心象は良くないんだからな」

 

 フーゴは満足気に一つ頷いて、店から去っていった。

 あとに残されたミザリィは、無表情のまま一人店内に立ち尽くすしかない。

 

 ……否。ミザリィは歓喜していた。

 

 フーゴの言った通り、マスターたちが"悪しき主催者"を打倒するために立ち上がった時。

 その時になって手を差し伸べる私を、彼らが快く迎え入れたなら、それでは却って興ざめだ。

 

「(そう、私(ミザリィ)に対しての処遇は、恐らく生易しいものではないでしょうね)」

 

 ミザリィはフーゴが語ったように"半・主催者"と言える立場でもある。

 ミザリィの願いはマスターたちが"主催者"の意図を跳び越えて、望むもの全てを手に入れる結末だ。

 

 "マスターたちがミザリィの想定を超えること"

 それこそがミザリィの願いの本質。

 

 そこに表れた主従、パンナコッタ・フーゴと二瓶鉄造。

 二瓶鉄造はロボを狙い、フーゴはミザリィの思惑を探り当てうる知性を持つ。

 なんという、なんという可能性の塊であろうか……!

 

 やがて日が暮れ、店内は暗闇に包まれる。

 その中で一人、ミザリィは佇んでいた。

 

 顔が影が差すその姿は。

 無辜の民を庇う守護の女神か。

 盤上の駒を弄ぶ無貌の魔女か―――。

 

 

 

★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 場面は変わり、時は少し遡る。

 

 フーゴと二瓶鉄造がアンティークショップ・美紗里を後にしたころ、外は夕暮れ時だった。

 帰りの道中、フーゴは並び歩く己のサーヴァントに向けて声をかけた。

 

「どうでしたか、かの狼王は」

「うむ。あの場でも言ったがな、あれはすばらしいものだぞ。

 死ぬ直前に見たエゾオオカミと同じ眼をしとる。よく人を見ている眼だ。

 ……ぬはははは、思い返しただけで股ぐらがいきり立つわ!」

「勝てそうかい」

「……マスターよ、戦う前からそういうことを考えるのは無粋だぞ。

 勝負ってのは勝ち目を探っていくところから始まるのだ。

 それに、勝ち目のない戦い方をしなければ大抵どうとでもなる。

 その"どうとでもなる"状況をどちらが制するのかが勝負ってもんだ」

 

 そういうものか、とフーゴは考える。

 彼もイタリアのギャング組織に身を置く男だ。

 一般人には想像も出来ないほどの修羅場を潜り抜けている。

 

 だが、それらは裏社会とはいえ、全て人間社会での出来事の範疇だ。

 二瓶が身を置いていたのは大自然。

 善も悪もない、損得や禍根などが生まれるはずもない戦い。

 命と命が純粋にやり取りをしていた世界の戦い。

 

 どちらがより過酷、苛烈かと言われたならば、答えは出ない。

 だが、どちらがより真理に近いかと言われたならば、二瓶の言葉の方が答えに近いのではないだろうか。

 

 二瓶鉄造は背負った単発銃を掲げた。

 

「だがまぁ、今の俺では勝ち目は薄かろうよ。まずは"手頃な強敵"から始めるとしよう。

 ……この二瓶鉄造は聖杯に賭ける願いは無いが、"乗り掛かった舟"ということもある。

 マスターよ。お前さんが聖杯を取るというなら、この銃の弾が届く範囲の敵は倒してやるぞ。

 あるいはあの女がくっちゃべったように、"主催者"とやらを倒すか」

「いや……『願いを叶える』ってのは、正直言ってぼくもあまり興味が無い。

 とはいえ万能の願望器なんて大層な代物が実在するならパッショーネ、ジョジョ―――ぼくの大切な人にとって有益か有害かは見定めたい。

 弱者を利用し踏みつけるつもりは無いが、サーヴァントを倒して令呪を奪う程度で痛む良心は持ってない。

 順当に勝ち進み『聖杯を一目見る』ってのは、目標として掲げてもいいだろう」

 

 フーゴの言葉に、二瓶が頷く。

 

「ただ、『主催者を倒す』ってのは、聖杯云々より俄然意欲がある。

 案内人を標榜する"あの女"(ミザリィ)はもちろん、教会の神父もそうだが。

 とにかくこの"聖杯戦争"というのはきな臭いと、ぼくは考えてる。

 仮に同じ想いのマスターたちがいるならば、手を組むことはやぶさかじゃあない」

 

 そこでフーゴは立ち止まり、二瓶の方へ向き直る。

 二瓶も立ち止まり、フーゴの視線を受け止める。

 

 夕暮れの中、二人の視線が交錯する。

 

「その上でアーチャー、君の願いを邪魔しようとも思わない。

 最終的に"あの女"を打倒することとほぼ同義にもなるから、君の目標はぼくの目標だ。

 その道中で好敵手が現れたなら、そいつと戦うための出来る限りの協力をしたいと思ってる。

 それに……、ぼくから言わせれば"すでに乗った舟"だ。君があの狼王に勝つところは、是非見てみたいな」

 

 フーゴの言葉に、二瓶は笑みを浮かべた。

 夕暮れのパラディウム・シティに、二人の野獣が並び立つ。

 その見つめる先は遥か遠く、しかし手の届かない場所にあらず。

 

「それでこそ俺のマスターだ、勃起がとまらんぞ。

 古今東西の英雄を相手に、俺の個性の一点賭け勝負だ。狩人の魂が勃起する!」

「『聖杯を一目見る』、『主催者を倒す』、加えて『サーヴァントの願いを応援する』

 『三つとも』やらなくっちゃあならないってのが、『マスター』のつらいところだな」

 

 

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

アーチャー

 

【真名】

二瓶鉄造

 

【出典】

ゴールデンカムイ

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力D 耐久D 敏捷D 魔力E 幸運E 宝具C

 

【属性】

混沌・中庸

 

【クラス別能力】

対魔力:E+

 大正期の北海道に生きたアーチャーに魔術との関りは無い。

 しかし最後のホロケウカムイ(エゾオオカミ)を追い求めた彼は、一種の神殺しを志した存在として記録されている。

 申し訳程度のクラス別補正だが、「動物」に関する魔術のみ倍加補正が付く。

 

単独行動:B

 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

 

【保有スキル】

悪夢の熊撃ち:A-

 勃起するが如き猟師の魂。

 何よりも獲物に執着し、獲物の習性を捉え、彼我の個性で勝負する。

 低ランクの勇猛、戦闘続行、一意専心などが複合されている。

 死因となった「狼」が相手の場合は機能がDランク相当まで低下するが、自己研鑽が進むとペナルティを打ち消すことが可能となる。

 アーチャーは死して尚も力強く起こり立つ。「勃起!」

 

心眼(匂):A-

 経験則と並外れた嗅覚に基づく洞察力。

 匂いによって他者の感情を変化を察し、殺気の強さを推し量ることが出来る。

 

女性への畏敬:C

 生前のアーチャーは常々「女は恐ろしい」と語っていた。

 15人もの子を産んでくれた伴侶とも最後は絶縁状態となり、死因においても"女"がまつわる。

 「女性」と敵対した際、幸運にマイナス補正が付く。

 

呪われた刺青:EX

 秘匿されたアイヌの金塊の在処を示す暗号の刺青。

 同じスキルを持つサーヴァントが複数名参戦してるなど、暗号解読が可能となった聖杯戦争においては自動で宝具扱いとなる。

 一定枚数が集まることで『人心惑わす呪われた金塊(ゴールデンカムイ)』を召喚可能。

 幸運がランクダウンしている上、一枚では用をなさないため現状使用不能。

 

 

【宝具】

『一発だから腹が据わる(にのうちいらず)』

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1人  最大捕捉:1人

 二瓶の精神性が宝具と化したもの。

 弾倉が一つしかない銃器を用い、さらに予備の弾を準備しないことで発動。

 精神と肉体操作を安定させ、照準を外さずに標的の急所を狙うことが出来る。

 使用する火器によって種別、レンジ、最大補足は変動し得るが、アーチャーは自前の小銃を使用することに拘っている。

 

 

【weapon】

十八年式村田銃

 明治を代表する単発式ボルトアクションの日本製小銃。

 銃床に七本の傷が入っており、これは銃の元の持ち主だった二瓶の息子が付けたもの。

 二瓶の息子は戦争でこの銃を使い、敵を殺害するたびに傷をつけていた。

 「息子は人を殺して喜ぶような奴じゃない」と二瓶は語り、その意図を「殺した責任を背負い込んでいた」と推察している。

 二瓶の死後、この銃は二瓶の信念と共に、阿仁のマタギ・谷垣とアイヌの遺児・チカパシに受け継がれることとなる。

 

 猟師道具の一つ。

 このほかに、仕留めた獲物の解体用の小刀を所持している。

 

【人物背景】

網走監獄から脱獄した24人の囚人の1人。

彼が入った山からは熊が消えるとまで言われた伝説の猟師。

「勝負は最初の1発で決めなければならない」が信条の、豪快にして豪胆な性格の人物。

口癖の「勃起」は性欲に依るものではなく、自身を一匹の「獣」とし、殺される覚悟の上で標的との勝負を挑む、その精神性に起因する。

自身を狙った山賊3人を殺害して逮捕されたほか、主人公・杉元が自分の刺青を狙っているとわかるや即座に鉈で頭を狙うなど、大自然の掟をつらぬく。

 

【サーヴァントとしての願い】

聖杯に願いは無い。

狼王ロボとの勝負。

 

【方針】

ロボとの勝負に備え、"手頃な強敵"と戦う。

 

 

 

【マスター】

パンナコッタ・フーゴ

 

【出典】

ジョジョの奇妙な冒険part5 黄金の風

恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より

 

【性別】

 

【能力・技能】

「スタンド使い」

 生命エネルギーのパワーある像を展開できる。

 仕えるスタンドはパープル・ヘイズ・ディストーション。

 凶悪な殺人ウイルスを内包するカプセルを両手に3つずつ装着している人型スタンド。

 カプセルを破損させることで殺人ウイルスを散布する。

 

破壊力 A / スピード B / 射程距離 E

持続力 E / 精密動作性 C / 成長性 ?

 

【weapon】

なし

 

【人物背景】

イタリアのギャング組織「パッショーネ」の構成員。

IQ152という優れた知性を持ち、13歳で大学に飛び級するほどの秀才。

紳士的な振舞いをする一方で社会における軽薄な一般常識を嫌悪しており、「自分が信じているものを共有できない怒り」を常に抱えている。

そのため些細なところで感情が爆発し、周囲に損害を与えてしまうという"獣性"を持つ。

 

「ジョジョの奇妙な冒険part5 黄金の風」においてはブチャラティが率いる通称「護衛チーム」の一員として活躍。主人公・ジョルノに対しても、その行動の高潔さと精神性を高く評価していた。

しかしブチャラティが組織に反抗した際、彼についていけずにチームを離脱。

その後の様子を描かれた外伝作「恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より」にて、自分自身の内面と向き合う姿が描かれる。

 

「恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より」終了後の時系列より参戦。

 

【マスターとしての願い】

『聖杯を一目見る』、『主催者を倒す』、加えて『サーヴァントの願いを応援する』

 

【方針】

とりあえずはサーヴァント撃破と令呪奪取に絞った優勝狙い。

"主催者"側の連中は信用しておらず、その意見が一致する陣営とは同盟も考慮。

二瓶がロボに辿り着くため、"手頃な強敵"との勝負のお膳立てをする。

 

【ロール】

観光客

 

【把握媒体】

漫画及びアニメ作品「ジョジョの奇妙な冒険part5 黄金の風」

外伝ノベライズ作品「恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より」



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【オープニング】【本戦開始前】15 ケイト・シャドー&バーサーカー マスター ケイト・シャドー エミリコ サーヴァント バーサーカー 禊白斗

登場キャラクター
マスター ケイト・シャドー エミリコ
サーヴァント バーサーカー 禊白斗

作者
◆U1VklSXLBs


自室のソファに寝かせたエミリコを落ち着かせると、ケイトは静かに口を開いた。自らの従者へ、シャドー家に対する不信を口にする。初めて会った頃、シャドー家に仕える事に疑問を抱いた風でない彼女が信用できなかった。

 

しかし、それは本人の意思による物ではないとわかった。彼女は"珈琲"によって、忠誠を植え付けられ、自分と過ごすうちに本来の心を取り戻していったのだ。

 

「私(ケイト)は偉大なるおじい様に対抗したい」

 

シャドーにとっても、エミリコ達"生き人形"

達にとっても、館は牢獄なのだ。エミリコが顔の見えない人形から渡された光る石を持ってきて、聖杯戦争なる催しに招かれたのは見様によっては幸運と言えた。

 

「ケイト様、本当に聖杯戦争に参加するのですか?」

「不安なの?」

「はっ、あの…もしケイト様に万が一があったらと思うと心配で…」

「わかるわ。私(ケイト)も命をかけた戦いなんて経験ないもの」

 

 教会を出ると、日の暮れつつあるシティが2人を迎え入れた。自宅に向かう道すがら、共に招かれたエミリコにケイトは不安を打ち明ける。2人が一度に招かれた事に監督役の神父も面食らっていたようだったが、ケイトからすれば共に招かれて当たり前だ。

 

彼女を含むシャドー一族は顔がない。

顔、手足、それらが真っ黒でまるで影のよう。第三者には判別が難しいため、一族は"顔"の役割を果たす生き人形をそばに置いている。

 

割り当てられた自宅に帰り、ケイトは情報収集に励む。彼女のような顔のないNPCもシティには用意されており、彼らは『シルエット症候群』なる難病の患者で、普段は顔の役割を担うマスクを着けて生活しているらしい。ケイトの自室でも同様のものが見つかった。

 

さらにシティ内には獣のような者、羽根の生えた者など亜人種も住んでいる事が、家に向かう際に確認できた。さほど自分も目立たずに済むようだ。

 

「明後日から学校よ。用意を忘れないで」

「はい!学校ってどういうところなんでしょう?」

 

ケイトとエミリコはこれから学校に通う事になる。教養を求められる身分ではなかった為、ついていくのが大変だろうとケイトは心配だったが、エミリコの方は勉強よりもケイトと離れる事の方が不安だった。

 

「私は平気よ、このマスクがあるから」

「わぁっ!顔がありますよ、ケイト様!このマスクがあれば、お顔が見えますよ!」

「そう?喜んでくれてよかったわ。それと、私達には姉妹のロールが与えられているのだから、聖杯戦争の間はケイト様ではなく、姉さんと呼ぶよう癖をつけておきなさい」

 

ケイトが注意すると、エミリコは嬉しさと畏れ多さに狼狽える。不安なのは苦笑するケイトも同じだ。サーヴァントが守れるのは片方だけ。招かれる前と同じように"顔"の役割を任せていた場合、日中は窮屈な思いをさせただろうが、エミリコを守る分には、そちらの方が都合が良かった。

 

(マスターは私だけど、エミリコが巻き込まれる可能性はある)

 

サーヴァントを思い出す。鋭い目尻の若い青年。知性を感じさせる広い額、後ろに流した頭髪は篝火のように立っている。かつて強い意思を映しただろう両の瞳は、今は狂気に濁っている。

 

バーサーカー、禊白斗は幼少期にヒーローに憧れつつも、学童時代にそんな物は存在しないと痛感。せめて誰かを救える存在になろうとした禊は、正義を実現する"壊人戦士"の力を手に入れた。

 

しかし、生前は失敗に終わった。

正義や平和を掲げた挙句、ついてきた人々を死なせてしまった。人間というのは"自分の平和"にしか興味がないのだと、敗北してようやく気づいた。

 

聖杯に招かれた瞬間、彼の心は奮い立った。この救い難い世界から悪意を無くす。望みを持って現世に向かう瞬間、急速に蝕まれていく己の思考から宛てがわれたクラスを悟る。まとまった思考が消え、最後に残ったものは"誰よりも強く在る"という欲求だけであった。

 

【サーヴァント】

【CLASS】

バーサーカー

 

【真名】

禊白斗

 

【出典】

ジャガーン

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力A 耐久A 敏捷B 魔力B 幸運B 宝具B(ミソギデオン)

 

【属性】

秩序・狂

 

【クラス別能力】

狂化:B

全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。

 

【保有スキル】

扇動:C

大衆・市民を導く言葉と身振りの習得。

特に個人に対して使用した場合には、ある種の精神攻撃として働く。ただし狂化によって効果が発揮されていない。

 

英雄願望:B

誰よりも強く在る、という存在意義。

精神防壁として機能するが、欲望を爆発させる壊人の性質上、狂化スキルを抑えることはできない。

 

壊人戦士:B

キチガエルを宿したことで、抑圧された欲望を引き出された壊人。その中でもオタマジャクシ

を宿した者。低ランクの再生を内包する特殊スキル。

 

軍隊軍鶏シャモハチ:C

行動を共にする相棒。

禊の霊基と同化しており、契約による供給、魂喰い、令呪などによる魔力の回復効率をランク分上昇させる。ただし、供給が滞った場合、寄生したキチガエルの侵食率が上昇していく。

 

【宝具】

『正義の壊人戦士(ミソギデオン)』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:− 最大捕捉:1人(自身)

全身機械仕掛け、鋼鉄の筋肉を露出させた人型の異形に変身する。展開した時点でステータスが専用のものに変化。外見に違わぬ頑強さとパワーを備え、タービンやアーム、歯車などを形成して戦闘を行う。狂化スキルにより、機能の大部分が封印されている。

 

『世界を救えなかった男(バーサーカー・ミソギデオン)』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜20  最大捕捉:40人

霊核が破損した際、一度だけ完全な壊人として復活する。宿したキチガエルに完全に侵食された場合も自動的に展開される。

全身を無数のコードで覆った十数mの巨人と化し、竜や巨人など幻想種の域に達する筋力と耐久力、口腔から射出するエネルギー弾を武器にする。全身のコードを伸ばし、周囲の人間から肉を吸って魔力を回復しながら、目につくものを全て破壊していく。

 

 

【weapon】

『正義の壊人戦士(ミソギデオン)』

 

【人物背景】

寄生生物キチガエルの宿主となり、秘めた欲望が具現化した壊人が現れた舞羽市に存在した壊人戦士の一人。

 

舞羽大学国際学部の大学生3年。自分以外の壊人戦士の存在を知ると、テレビ出演によって、己の正体をカミングアウト。警察ですら歯が立たない壊人と戦う組織『トリプルH』を立ち上げる。

正義感が強い反面、壊人退治を生放送のショーとして流し、所属ヒーローをCMタレントやアイドルとして売り出して彼らの収入を確保するなど狡猾な一面も持つ。

 

舞羽市民を対象としたキチガエル宿主の検査・隔離を盛り込んだ法案が持ち上がると、国会前での反対デモを扇動。彼ら嘲笑した壊人戦士"松屋町散春"によって、集まっていた支持者達が壊人化すると禊は散春に戦いを挑むが敗れてしまう。磔にされていたところを救出されるも自害。死にきれず完全な壊人となって、絶命するまでの間に多数の犠牲者を出した。

 

【サーヴァントとしての願い】

正義は負けてはならない。

 

【方針】

優勝狙い

 

【マスター】

ケイト・シャドー

 

【出典】

シャドーハウス

 

【性別】

 

【能力・技能】

シャドー一族という貴族のように暮らす人々の1人。肌が黒く、顔の作り、表情が一切判別できない。ネガティブな感情の時、すすを体から出す。これはケイトの意思でコントロールすることが出来、念力のような現象を起こすことが可能。

 

【weapon】

『エミリコ』

ケイトに仕える"生き人形"

彼女の身の回りの世話のほか、判別の難しいシャドー一族の顔の役割を果たす。お花畑と呼ばれる程能天気だが、前向きで困っている人を見過ごせず、型に嵌らない行動で時に周囲を動かしていく。

今回の聖杯戦争においてはケイトの妹として、シャドー姓が与えられている。

 

『マスク』

社会生活を営むためのマスク。表情をつける効果があり、シティから支給されている。

 

【人物背景】

シャドー一族の少女。

一族に不信感を持っており、生き人形の正体を知っている彼女は、自分とは違う個我を得ることを願って、お付きに自身の名とは似ないエミリコと名付けた。過ごす時間が長くなるにつれ距離は縮まっていき、成人の儀にあたるお披露目でエミリコが再び忠誠を植え付けられると、機転によって正気を取り戻してエミリコに反乱の意思を打ち明けた。

 

 

【マスターとしての願い】

偉大なるおじい様の打倒。

 

【方針】

優勝狙い。

 

【ロール】

シルエット症候群患者の少女。

 

【把握媒体】

鯖はコミックスの3巻から5巻まで。

鱒はコミックスかアニメ。



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【オープニング】【本戦開始前】16 未来少女と死神執事 マスター 小蝶辺明日子(■■▪■) サーヴァント アルターエゴ ウォルター・C・ドルネーズ

登場キャラクター
マスター 小蝶辺明日子(■■▪■)
サーヴァント アルターエゴ ウォルター・C・ドルネーズ

作者
◆7XQw1Mr6P.


カント オロワ ヤク サク ノ アランケプ シネプ カ イサム

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 気が付くと、私は見たことも無い洋服を着ていた。

 着ていたアットゥシ(樹皮衣)も、

 レプンカムイ(シャチ)の背筋の弦の弓も、

 大切なマキリ(小刀)も持っていなかった。

 いや、マキリはあいつに預けたんだったな……。

 

「目が覚めたかね」

 

 ふいに声をかけられて、そこで初めて自分が洋館の中にいることに気づいた。

 大陸の宗教についてあまり知っていることは無いが、礼拝堂というやつだろうか。

 広い空間に並べられた長椅子の一つに、私は座っていた。

 声をかけてきたのは、詰襟の服を着た長身の男。

 

「誰だ」

「私は言峰綺礼。聖杯戦争の監督役だ」

 

 男は後ろ手を組み、鷹揚とした口ぶりで名乗った。

 薄い笑みを浮かべてこちらを見下ろしているが、その目付きには一切の好感が感じられなかった。

 

「……この服はなんだ。私の服は」

「その服は月海原学園の制服だな。

 勘違いされないように言っておくが、私が着せ替えたモノではない。

 君は小蝶辺明日子という名前で、学生としてのロールが与えられているのだよ」

「私の、和名……」

「この街での手続きの類は全てその名前が使われている。

 街に溶け込むなら慣れておくことだ。

 ……ところで、さっきまで気を失っていたようだが、大丈夫かね。

 ここまで来た以上は、君はサーヴァントの召喚に成功しているのだと思うが」

「サー、ヴァント……」

 

 聞きなれない言葉を復唱し反芻し、ようやく思い至る。

 樺太で妙な女と出会い、持っていれば願いが叶うかもしれないと、妙な宝石を渡された。

 いつもの私なら、アイヌの新しい女は、そんな胡散臭い話を信じたりはしなかっただろう。

 

 でもあの時は、少しくらいなにかに縋りたかった気持ちだったのかもしれない。

 死んだはずのアチャ(お父さん)が生きていて、でも死んだ。

 その真意も、事態の経緯もわからないまま。

 そして、杉元のことも。

 

 杉元佐一。私の相棒。大切な相棒。

 尾形は死んでるのを確認したと言っていた。

 でもあいつなら、杉元なら、そのあと息を吹き返してるかもしれない。

 あいつが死んだとはとても思えない。

 そう思い込みたいだけかもしれない。

 とにかく会いたかった。ただそれだけだった。

 

 願いが叶うかもしれないと言われて、少しでも自分の心を慰めたくて、私はその石を受け取った。

 そして、タタール海峡で全てを思い出し、尾形に裏切られたあの瞬間。

 私はこの世界へやって来た。

 

 

「君は、誰か大切な人を蘇らせるためにこの世界へやってきたのだろう。

 万能の願望器を巡る戦争に。『パラディウム・シティ』に」

「――――――なに?」

 

 思考を沈みかけた私を、言峰の言葉が引き上げた。

 蘇らせる? 私が、誰を?

 

「何を、言っている」

「うん? そちらこそ何を言っている。

 死者の蘇生。願望器に願うには定番の、普通で平凡な願いだと思うが」

「私が、誰を蘇らせるというんだ」

「知らんよ。私は先ほどまで君がうわごとで言っていたことを聞いたにすぎん。

 『死んでしまったのか。どうして死んでしまったんだ』と。

 『杉元、助けてやる。何があっても、私が』とな」

 

 最後のそれは、言った覚えのある言葉だった。

 姉畑の騒動の時、私が杉元を助けると約束した。

 だが、それとこれとは……。

 

「おまえに、おまえに杉元の何がわかる!

 杉元が死んでるわけないだろッ!

 あいつは『不死身の―――」

「不死身の怪物(フリークス)など、存在するものかい。お嬢さん。

 それに、マスターの願いについて私は関知しない。

 言ってるだろう。君が、うわごとで言っていたのだと」

 

 言峰の言葉は平然としていた。

 いつの間にか薄ら笑いも消えて、ただ冷淡に、座り込んだ私を見下ろしていた。

 

 

 その時、唐突に私の頭に浮かんだ光景があった。

 それは選定の間での出来事。気を失う直前の記憶。

 わけもわからぬまま英霊の影に襲われた時のこと。

 

 その影は銃剣による白兵戦を仕掛けてきた。

 勇猛な戦い方をしていた。

 凄まじい殺気を放つ、近代の兵士だった。

 その有り様に、私は相棒の影を見た。見てしまった。

 実際にそうだったかはわからない。

 だが一度そう見えてしまえば、もはやそうとしか見えなくなる。

 私は、杉元が死んだ後の姿を見てしまったのだと、直感してしまった。

 

「選定の間でシャドウと接敵した時、君は目に見えてうろたえていたな。

 あの英霊の影に、親しかった者の面影を見たのかね。

 サーヴァントがいる"座"は時間の流れの外側にある。

 君のいた時間でその者がまだ生きていようが、死んでいようがだ。

 その者が座に招かれうるならば、邂逅することは"ありえないことではない"」

 

 言峰の言葉は、私の絶望的な直感を後押しする。

 直感。そう、ただの直感でしかない。

 いくら考えたところで答えを出すことは出来ないし、確認する術などない。

 でもその直感は、樺太でずっと抱き続けていた、杉元の生存を信じたい願望よりも、簡単に私の心の深いところに落ちてきた。

 

「(そうだ。私は、信じようとしていた尾形にも裏切られた。

 キロランケニシパがアチャを殺したという話の真偽もわからない。

 そもそもアチャが生きていたことも知らなかった

 そして、アチャがアイヌを殺したのかも、金塊を私に託そうとしている真意も……)」

 

 選定の間で杉元に似た影を見た時、私は杉元の生存が信じきれなくなった。

 私が信じてきたコトの一切が、信じるに値するのかがわからなくなった。

 

 

 だが……。

 

「聖杯に興味が無いならば、元の世界、元の時間に帰ることも出来る。

 だが君は、どうしても救いたい者がいるようだな。

 ならば征くがいい。"小蝶辺明日子"。

 征って望みを叶えるがいい」

 

 ……。

 この神父は、本当に私を苛立たせてくる。

 わざわざ私を和名で呼ぶのか。

 私を焚きつけ、戦争に巻き込もうとしているのか。

 殺人を忌む私を、アイヌとしての私を揺るがそうとでもしているのか。

 

 そうはいくものか。

 確かに私は揺らいでいる。

 だがもし、仮に、本当に。

 実際のところ杉元が死んでいるとしても。

 私が信じた者たちがみな、私の元を去ってしまっても。

 

 私が聖杯などというものを信じるかは別だ。

 願掛けの石を受け取るのとは話が別だ。

 

 私は古い因習に縛られない。

 だが、信仰を大切にするのはその中に生きる術が入ってる。

 だから私はアイヌとしての生き方を愛している。

 アチャから教わった、フチ(祖母)たちと過ごした暮らしを愛してる。

 私は正しいと信じてきた。信じている。これからも信じていく。

 私はアイヌの未来そのものだから。

 

「私の名前は――――」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

お前達のような奴らがいて良いはずがないんだ

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 駆ける。駆ける。駆ける。

 今まで見たことないほど大きな建物の間を、駆ける。

 今まで踏んだことないほど固い路面を踏みしめ、駆ける。

 今まで吸ったことないほど臭い排気に顔をしかめて、駆ける。

 

 役割(ロール)のために、いつの間にか着せられていた洋服に革靴。

 それはやけに着心地が良くて。

 着慣れた服くらい動きやすくて。

 それがかえって不快感を煽って。

 

 曇天の街を、私は走った。

 北の大地で曇り空は飽きるほど見てきた。

 だがこの街の曇天は、息がつまりそうになる。

 

 走って走って走って。

 教会を飛び出し街を駆け抜けて、私は海に出ていた。

 見慣れた海岸とはかけ離れた、硬い石で固められた港。

 船が泊められているが、周囲に人影はない。

 

「……アルターエゴ」

「はい、お嬢様(マスター)」

 

 無人の空間に呼びかけると、虚空から現れた銀糸が編みあがるようにして像が象られ、一人の老いた洋人が現れた。

 長い黒髪を後ろでまとめ、品の良く小奇麗な洋服に身を包み、片眼鏡(モノクル)をつけた英国の紳士。

 私のサーヴァント、アルターエゴ。

 

「大丈夫ですかな、お嬢様。

 あの胡乱な神父とのやり取りで、突然飛び出されて。

 酷く取り乱されていましたが」

「わ、私……私……」

 

 視界が歪む。動悸が激しくなる。

 父がのっぺらぼうだと言われた時よりも。

 ……杉元が死んだと聞いた時よりも。

 

「私の、名前は」

「私はまだお聞きしていませんが、神父には小蝶辺明日子様とお呼ばれておいででしたが」

「違うッ、私の本当の名前は、私の"アイヌの名"は……ッ」

 

 口に出そうとして、声が途切れる。

 覚えているはずだ。新年という意味の名前。未来と解釈した名前。

 なのに、口に出せない。頭に思い浮かばない。

 

「思い、出せない。アチャの名前、アチャのアイヌの名前をせっかく思い出せたのに。

 アチャからもらったアイヌの名前が、アイヌの言葉が、思い出せなくなってるッ!

 自分の名前がわからない。私……ッ!」

 

 アチャが死に、レタラと別れ、一人で山に入るようになって。

 金塊争奪戦に巻き込まれ、杉元と幾度も死線を潜り抜け。

 そうして私は強くなったと思っていた。

 

 アイヌでは、天から役目なしに降ろされた物はひとつもないとされる。

 アイヌでは、森も水も動物も道具も、万象にカムイが宿り名前が付けられている。

 

 でも今の私は、アイヌとしての自分を取り上げられた私は。

 アチャ、レタラ、キロランケニシパ、尾形、そして杉元……。

 信じていた者が皆いなくなってしまった私は。

 

「あああぁ、うぅぅ……ううぅ、わああああ……っ!」

 

 今の私は、もはやアイヌの私じゃない。

 今の私は、なにひとつ未来が信じられない。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

自分たちで大切にする気持ちがなくては残っていかない

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「(……痛ましいな)」

 

 彼は眼前で泣き崩れる己のマスターを前に。

 アルターエゴのクラスで召喚されたサーヴァントは静かに佇んでいた。

 

「私が力になる」などと慰めるでもなく。

「仕えるに値しない」などと見下すでもなく。

ただ眼前の、弱く幼い少女の悲痛を憐れんでいた。

 

 生前、彼は長く仕えた主を手酷く裏切った。

 生前、彼は逆徒として生涯を終えた。

 己の戦闘に対する欲求、戦いたい相手と戦うためだけに、百万人の英国市民を見殺しにした。

 防げたはずの暴虐を見過ごし、主を窮地に立たせた。

 

 たった一つの存在の打倒を五十五年も思い煩うほどの、正真正銘のどうしようもない修羅の血が流れている。

 生前、彼は死神と呼ばれた。

 だが、ここにいる彼は。

 

「(この子は、このままではどこにも行けないのだろう。

 もとの世界に帰ることも、この世界で戦い抜くことも出来まい。

 そうしてぽっかりと浮いてしまったこの子を、願望器を狙う者どもが刈り取るのだろう)」

 

 サーヴァントとは通常、英霊の全盛期の姿で召喚がなされる。

 それは多くの場合、肉体的にも精神的にも活力にあふれる若い姿。

 精神や技術の面において老成する英雄というのも存在はするが、このアルターエゴには当てはまらない。

 

 このアルターエゴ、『別人格』の英霊。

 真名をウォルター・C(クム)・ドルネーズという。

 裏切りと闘争の英霊から切り出された、『忠臣』のアルターエゴ。

 彼は微塵の他意も無く、一片の逆心も無く、主の敵を絶滅する。

 

「私はまだ、お嬢様(マスター)が何者であるか存じ上げておりません。

 ですが、神父との問答をお聞きしていた限り、貴女様は私が守るには値すると判断します」

 

 老人は膝を折り、蹲る童女の背に手を添えた。

 今のこの娘に、相手を殺す殺意は荷が勝ちすぎるだろう。

 だが、あの教会において神父と行った問答の中に、ウォルターは彼女の芯の強さを感じ取っていた。

 今はただ、大きく軋んで揺らいでいるだけ。

 主の背を支えることが従者の使命。

 生前、彼が最後に放棄してしまった、執事(バトラー)の役目。

 

「思うままに苦悩をなさいませ。自問をなさいませ。

 自己研鑽をなさいませ。悪戦苦闘をなさいませ。

 貴女様が己の目標を見つけられるまで、私めがその障害物を取り除きまする」

 

 あるいは、これは己の罪滅ぼしに過ぎないのかもしれない。

 だがそこに一切の矛盾は無い。

 己の使命という膨大な道程、その片隅にある小さな己の過去を粉砕するのだ。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

『諦め』が人を殺す

 

 

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

アルターエゴ

 

【真名】

ウォルター・C・ドルネーズ

 

【出典】

HELLSING

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力C 耐久D 敏捷C 魔力E 幸運C- 宝具EX

 

【属性】

中立・中庸

 

【クラス別能力】

単独行動:B

 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。

 マスターを失っても2日は現界可能。

 

気配遮断:D

 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。

 ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。

 

【保有スキル】

執事の鑑:A-

 『家人の危急をお救いするは、執事たる者のお仕め故』

 紅茶の準備からナチ狩りまで熟す敏腕の従者。

 主人から命令を受けて行動した際、達成率が上昇する。

 なお生前の裏切り行為によりマイナス補正が付いており、主人が英国人の場合はDランク相当まで下がる。

 仕事が出来なくなるというよりも、仕事を任せるに足る信用を得るまでに時間がかかる。

 

鋼線術:B

 視認困難な極細の鋼線を操り、敵を切断する殺人技。

 本人は加齢による技巧の衰えを感じているが、傍目には十分な達人技である。

 

【宝具】

『修羅の巷の一夜の夢(ファイネストアワー)』

ランク:EX 種別:対"人"宝具 レンジ:-  最大捕捉:1人

 夜明けの刹那の再来。死神の帰還。

 "忠臣"としての側面を抽出したアルターエゴとしての霊基を、本来の適正クラスであるアサシンに変化させる。

 "座"に遺した情報を引き出し、自身に施された吸血鬼化施術の効果を発現、全盛期の肉体へ回帰する。

 吸血鬼化に伴い、幸運を除く全てのステータスが二段階上昇、鋼線術スキルのランクがEXとなる。

 強化された鋼線術はビルの鉄骨を両断し、他者の肉体へ潜り込んで操ることさえ可能となる。

 一方、急激な霊基の変化は長時間保てず、活動限界は2時間程度。

 限界を過ぎると肉体はさらに14歳程度まで若返り、その後肉体が崩壊、消滅へ向かう。

 

『死神の残骸(ペイルフェイス・キッド)』

ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:-  最大捕捉:1人

 夜明けの刹那からの出発。望外の大赦。

 『修羅の巷の一夜の夢』発動後、消滅するまでの間に令呪3画を消費することでアサシンに変化した霊基を安定化させる。

 令呪の魔力と合わせて"主人の赦し"を示す行為がトリガーとなるため、同程度の魔力と代替行為が行われれば発動が可能。

 その際に肉体は14歳程度の未熟な子供の状態で固定される。

 老成していた精神も退行の兆候が表れ、幸運を除くステータスが全てD+まで低下するが、一方で幸運値にプラス補正がつく。

 

【weapon】

 無数の鋼線

 

【人物背景】

 大英帝国王立国教騎士団"ヘルシング"の元ゴミ処理係、元執事。

 普段は穏やかな物腰の好々爺だが、若い頃は慇懃無礼、素行不良が目立った。

 十代の頃から半世紀以上に渡ってヘルシング機関を支え、英国を脅かす闇の眷属"ミディアン"との闘争を繰り広げた忠臣の徒。"死神"の異名をとる歴戦の古強者。

 しかし晩年、長年の野望だった"最強の吸血鬼アーカード打倒"のために祖国を裏切った。

 吸血鬼化施術を受けて全盛期以上の力を手に入れ、廃墟となったロンドンでアーカードとの戦闘に望むが力及ばず、自身の肉体の限界を迎える。 

 

【サーヴァントとしての願い】

 "忠臣"としての己の使命を果たす

 

【方針】

 マスターを守る

 

 

【マスター】

 小蝶辺明日子(アイヌ名:■■■■)

 

【出典】

 ゴールデンカムイ

 

【性別】

 

【能力・技能】

 アイヌの伝統的なサバイバル術と狩猟技術

 日本語とアイヌ語の二言語話者だが、一部の漢字は読めない

 現在、アイヌに関する一部の記憶が無い

 

【weapon】

 ロールの影響により、アイヌに纏わる一切の所持品が手元にない

 唯一、制服の下に着ているタイツは元々着用していたもの

 

【人物背景】

 アイヌ民族の母と、ポーランド人と樺太アイヌの混血の父を持つ、深く青い美しい瞳の美少女。

 本来の性格は快活で物怖じせず、山に生きる者としての優しさと強さを併せ持つ。

 反面、山で過ごしてばかりのためアイヌの女がやる縫い物や織物仕事が出来ず、年頃の女性がする入れ墨を拒否している。

 日露戦争帰りの兵士、杉元佐一との出会いをきっかけに、北海道で繰り広げられる金塊争奪戦に巻き込まれる。

 毒矢や仕掛けによる狩猟を得意とするが、殺しを忌むアイヌの少女らしく"殺人"に対する抵抗感は強い。

 一方で大自然の弱肉強食を理解しているため、獲物の命を奪うことに躊躇いはない。

 

 親しかった者の死と裏切り、杉元に似たシャドウサーヴァントとの戦闘、アイヌの存在を無視するロールなど、度重なる精神的苦痛により軽度の記憶障害を発症。

 自分の名前を含む一部のアイヌの言葉が思い出せない状態に陥っている。

 

【マスターとしての願い】

 "アイヌの自分"を取り戻し、元の世界に帰りたい

 

【方針】

 悪人は放っておけないが、人を殺したくはない

 聖杯についてはまだわからない

 

【ロール】

 "アイヌと全く関係のない"月海原学園の生徒

 マークライト街の豪邸に一人暮らしのお嬢様

 

【令呪の形・位置】

 左手の甲に、鉢巻に刺繍されていたアイヌ文様に似た印

 

【把握媒体】

 サーヴァントは漫画及びOVA作品「HELLSING」

 (ネタでもなんでもなく、アニメ版は原作と違うオリジナルストーリーの為除外)

 マスターは漫画及びアニメ作品「ゴールデンカムイ」



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【オープニング】【本戦開始前】17 ヒカリを求めて マスター イリヤスフィール・フォン・アインツベルン サーヴァント ブレイド ホムラ/ヒカリ

登場キャラクター
マスター イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
サーヴァント ブレイド ホムラ/ヒカリ

作者
yu sato


 そこは宇宙のごとき空間。暗闇に星々が輝いている。

 その中をイリヤスフィール・フォン・アインツベルンは歩いている。

「……どうしてこうなったんだろう……」

 呆然とした面持ちと呟き。イリヤはただ監督役といった男の説明通りに目的地点までゆるゆると進んでいた。

「クロ……美遊……ルビー……」

 イリヤが覚えているのは、黒い巨神となったダリウスに何もかも飲み込まれるまでの情景。

「……わたしは何やってんだろ……なんで何かがあると思っているんだろう……」

 クロが消え、美遊が飲み込まれ、世界は終わった。側にルビーはいない。

 もう諦めてもいいはずだ。所詮並行世界の出来事と割り切ってもいいはずだ。

 だが、胸の内に何かがある。微かに灯る光の粒。

 それが何かわからないが、それだけが今のイリヤを動かしている。

 

 そうして目的地に到達した時、魔法陣より影が出現する。

 シャドウ、予選突破。そんな言葉がイリヤの頭をすり抜けていく。

 その中、シャドウが手にした弓矢で矢をイリヤに放つ。

 

 ……これを受ければ楽になれる? 何もかも忘れられる?

 

『そうよ、あなたの選択は間違いだった。そう受け入れられれば何もかも元通りよ』

 

 ……いやだ。すべてを忘れて元に戻るのも、何かを間違ったのを認めないのも。それだけは絶対に認めない!

 

『諦めが悪いのはずっと変わらないのね』

 

 ……クロ!

 

『未来を向きなさい、イリヤ!』

 

 そうだ。色々間違っても、絶対に後悔も絶望もしない。

 わたしには可能性がなくなることはない。

 だってわたしの中にはクロの言葉が残っている。生きている限り可能性はあるんだから!!

 必ず、あの世界とみんなと取り戻して見せる!!

 

 イリヤの決意と連動して持っていたカードが宙を舞うと光を発し、無地の面に絵が浮かび上がった。

 それは赤髪に赤地と黒を混ぜた服を着た少女、金髪に白と翡翠色を基調とした服の少女。二人が並んで立つ姿の絵。

 そこから現れたのは、金髪の少女の方。

「何ぼうっとしてるのよ」

 イリヤが気づいたとき、少女はイリヤからすればアニメのようなバリアを張って、シャドウの矢を防いでいた。

「ほら、これ持って集中して。君が集中してくれないと、私から力を渡せない」

 そう言って少女は手に持った大剣をイリヤに放り投げた。イリヤは慌てて受け取る。

 持った感触は大きさから予測される重さより意外に軽かった。

 柄を持ち、構えると光の刀身が現れた。同時にイリヤは何かとてつもない力が注がれてきたのを感じた。

「意外に剣を持ちなれてるじゃない。私の力とは関係なしに」

 イリヤは元の世界でセイバーの『夢幻召喚』を使い、剣を持って戦っていた。そのためだった。

「いくわよっ」

 少女が胸に手を当て、広げるとそこから少女を中心に金色の空間が周囲に広がっていった。

 

 イリヤが気が付くと、シャドウが矢をつがえ連射する動きや、そこから放たれた矢がイリヤに向かう動きがあらかじめ残像として見える。

「これって?」

「因果律予測。未来に起こる出来事を視覚化してるの。あのシャドウの動き、矢の流れ、その軌跡の先が見えるからそれを読んで倒して」

 その言葉に従い、イリヤはシャドウに向かい突進する。既に見えた軌道通りに来る矢をかわし、シャドウに剣を振るう。

 それであっさりとシャドウは消滅した。

「じゃあ、変わるからあとよろしく」

 そういうと、少女は一瞬光るとともに、赤髪の少女へと変身していた。

「ずるいなあ、ヒカリちゃん……」

 赤髪の少女は小さくつぶやいた。

「ええと……これどうなってんの?」

 イリヤはめまぐるしく変わる事態に額を掌で抑えた。

 改めて話しかけようとしたとき、星々に満たされた空間が、突如としてその光を消し、暗闇となった。

 次にイリヤが目を開いたとき、そこは教会の礼拝堂らしき場所であった。

 中央には以前強烈な印象を与えられた人物が鎮座している。

「ようこそ、見事に試練を乗り越え――」

「麻婆屋さん⁉ いやラーメン屋さん⁉」

 イリヤの驚いた反応と奇妙な台詞に、言峰は目を見開いた。

「……ラーメン屋?」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 都市内のカフェテリアを、人が行きかいしている。

 その光景をイリヤは注文した紅茶に砂糖をたっぷり入れて飲みながら、驚きの目を見張り、あたりを見合わす。

 なにしろ人とはとても思えない異形の姿をした者たちが普通に会話し、注文し、変な食べ物を食べたりしているのだ。

 その上、空中ディスプレイや立体映像などイリヤの世界でもまだ実用化には程遠い最先端の科学技術の製品まであるのだ。

『イリヤさん、そんなきょろきょろしてると田舎者扱いされますよ」

 そう言うのは、実は転移したイリヤについてきていた魔術礼装のマジカルルビーである。

 新型のAI会話型ドローンに見られているのか、興味深げに見る者はいるが、それで足を止める者はいない。

「だっていろんな人がいてすごいんだもん。あと、初めからポケットに入ってたなら、あの予選の時なんか言ってよ」

『いや~、唐突な転移でしたからね。情けないことに一時的に機能停止してました』

 ルビーは羽でリングをかいた。

「とにかく、ルビーがここにいるのは心強いよ。あとは、あの地球とみんなを助けないと」

 イリヤは強く、紅茶の入っているカップをつまんだ。

 

 この聖杯戦争で監督役を務めている言峰綺礼は言った。

『君も実感しただろうが、君が来た世界はすでに滅んでいる。君が元居た世界に帰りたいというのならそれは可能だ』

 イリヤは即座に断った。美遊や凛達をあの世界で放っておくわけにはいかない。

 

「それで、イリヤちゃんは本当に戦えるのですか? 他のマスター達はそれぞれ願いを叶えるためにこの場にいます。その人たちを倒せますか?」

 同じく紅茶を飲んでいるイリヤのサーヴァント、ホムラが尋ねた。

 強い調子ではなく、むしろ穏やかな声であったが、そこにははっきりとした決意を求めていた。

 

 戦えるのか、といったホムラの言葉には二つの意味がある。それはマスターの令呪を奪うか殺せるか、という事とサーヴァントと正面から戦えるのかということだ。

 ホムラ、そしてヒカリはエクストラクラス『ブレイド』である。

 ブレイドとはホムラ達のいた世界のブレイド達のように、マスターを強化、支援し、戦わせるクラスだ。

 特殊な『天の聖杯』であるホムラ達は自ら戦うことも可能なのだが、やはりマスターを前線に出す必要がある。

 

「うん、戦うよ。わたしは前からクラスカードを使って戦ってきたし、私の願いはあの地球とみんなを助け出すことだもん」

 イリヤははっきりと断言した。

「そして、ここに来たマスターの願いも、サーヴァントの願いも叶える!」

 続いたイリヤの言葉に、ホムラははっと息をのんだ。

「だって聖杯って人の願い、希望を託すものでしょう? だったら私は全ての人の幸せを願う! みんなで聖杯のある場所へ向かう!」

 イリヤは立ち上がり、拳を握り締め、はっきりとした口調で言った。

 

 周囲に視線が集まったことに気づいたイリヤはバツが悪そうに座り。

「イリヤちゃん、あなたは強欲ですね」

 ホムラの返答で、さらに縮こまった。

「ですが、その願いは綺麗なものだと思います」

 イリヤはホムラの顔を見上げた。

「それじゃあ……」

「わかりました。私達もあなたの……マスターのために戦います」

 ホムラはイリヤに手を差し出し、イリヤは「ありがとうございます」と喜びを隠さずに言い、ホムラの手を握った。

「ところでホムラさんは何か願いはあるの?」

「私達の願いはすでに叶っています。ですから私達がこうして存在していること自体、本来あり得ないことなんです」

 ホムラはイリヤの目を見て言い、胸を押さえた。

「聖杯の核が私の予想通りなら、私は聖杯のある場所にたどり着かなければなりません。

 そして、辿り着く事ができたのなら……監督役が言った理論とは別に、全ての願いを叶えることも可能でしょう」

 

 ……それは恐らくホムラ達自身の消滅と引き換えに。

 そのことはイリヤに伝えるべきことではなく、またイリヤが背負うべきことでもない。

 所詮、サーヴァントであるホムラはこの世の影法師。それで全員の願いを叶えられるのならそれで構わない。自分の願いがない身ならなおさらだ。

 

『方針は決まりましたね。それでは戦闘の準備を整えましょうか』

「準備って戦い方とか、スキルが何があって何が使えるかとかだよね。 あ! クスリはやめてよね!」

 ルビーとイリヤのやり取りを見て、ホムラは微笑み、かつて共に戦ってきた一人の契約者、ドライバーに思いをはせた。

 

 レックス。あなたは私たちを救ってくれました。

 だから、私たちはあなたのようにこの少女の純粋な心のために、あなたのように戦おうと思います。

 どうか、元の世界から見守っていてください。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

ブレイド

【真名】

ホムラ/ヒカリ

【出典】

ゼノブレイド2

【性別】

女性/女性

【ステータス】

(ホムラ)筋力C 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運B 宝具B

(ヒカリ)筋力B 耐久B 敏捷B 魔力EX 幸運B 宝具A

【属性】

秩序・善/秩序・善

【クラス別能力】

ブレイド同調:EX/EX

マスターとリンクし、ステータス、スキルをマスターに写して戦わせるスキル。

ランクが高いほど契約時に危険が伴うが、その分強大な力を得る。

本来ブレイドはそばに契約者がいないと共に全力を出せないが、ホムラ/ヒカリは傍にいなくても100%能力を行使することが可能。

バリアフィールド:A/A++

マスターや自分を守るために、ハニカム状の光のバリアを張ることができる。

強度はランクに準ずる。

【保有スキル】

(ホムラ)

聖杯の片鱗:A

 マスターに戦闘時、最適な動きをさせることができる。

魔力放出(炎):B

 武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。

 直接炎を放出することも可能。

浄化の炎:A

 ホムラ自ら剣を振るう時、低HPの敵を低確率で戦闘不能にする。

(ヒカリ)

天の聖杯:A+

 マスターに戦闘時、最適な動きをさせることができる。

 また、マスターの魔力とは別に召喚されている間、無限の魔力供給がなされる。

因果律予測:A+

 未来視の一種。使用時は時がのろく感じ、相手の動きの軌跡があらかじめ残像として見えるようになる。

魔力放出(光):A+

 武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。

 直接光線として放出することも可能。

【宝具】

(ホムラ)

『バーニング・ソード』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2~10 最大捕捉:1人

 炎の刀身を巨大化させ、上空から敵を斬り大爆発を起こす。

 対人規模だが爆発の余波は周囲に及ぶ。

(ヒカリ)

『セイグリッド・アロー』

ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:2~30 最大補足:50人

 天空に放った光が、光の矢となって降り注ぎ敵を破滅させる。

『破滅の歌を唄う聖霊(セイレーン)』

ランク:A+ 種別:対国宝具 レンジ:4~99 最大補足:500人

 白を基調に羽を生やした巨大人型ロボット。

 巨大な双剣を手に持ち、バリア発生機構や大気圏外から地表へのピンポイント射撃を可能とし、国一つを瞬く間に滅ぼす荷電粒子砲を装備している。

 

(ホムラ/ヒカリ)

『汝、聖霊を司る者(■■■■)』

ランク:EX 種別:対理宝具 レンジ:ー 最大補足:1人

 ホムラ/ヒカリとのキズナが最大限になったときのみ目覚める。真の天の聖杯としての姿と力。

 全ての事象で過程を無視し、望む結果だけを実現させる。

【ステータス】

筋力A 耐久B 敏捷B+ 魔力EX 幸運EX 宝具EX

【属性】

秩序・善

【クラス別能力】

ブレイド同調:EX

バリアフィールド:EX

【保有スキル】

マスターブレイド:EX

 全属性を使いこなすブレイドの頂点としての力。

 光属性ならば一時的に光速まで加速できる。

天の聖杯:EX

(■■■■)『久遠の果てより来たる虚無(■■■■■)』

ランク:■■ 種別:■■宝具 レンジ:■~■■ 最大補足:1体

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

【weapon】

聖杯の剣

 ホムラとヒカリで属性がそれぞれ異なる。

【人物背景】

 天空にそびえたつ「世界樹」を中心に広がる雲の海。そこに島以上に巨大な獣「巨神獣(アルス)」の上に人々が住む世界「アルスト」。

 そこにいるコアクリスタルと呼ばれる青く光る結晶に生物が触れることによって生まれる亜種生命体「ブレイド」。

 ホムラ/ヒカリはその中でも『天の聖杯』と呼ばれる特殊なブレイドである。

 本編より500年前に起こった「聖杯大戦」と呼ばれる戦争で、その力で3つの巨神獣を雲海の底に沈め、その力を恐れた自身を船ごと雲海の底に沈め、眠りについていた。

 そこにサルベージャーとしてやって来たレックスに、夢の中で自身の命を分け与えることを条件に自分を楽園へ連れていくよう依頼することで物語は始まる。

【サーヴァントとしての願い】

 聖杯のあるべき場所へとたどり着く。

【方針】

 なるべくイリヤを戦わせたくないが、相手が殺しにかかるのなら容赦しない。

【把握媒体】

 Switchでゲームが発売されています。プレイ動画及びムービーが動画サイトにUPされています。

 

 

【マスター】

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン

【出典】

Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ

【性別】

女性

【能力・技能】

小聖杯

 魔力を放ちさえすれば、魔術理論を知らなくとも過程を無視して望む結果を得ることができる。

【weapon】

カレイドステッキ・マジカルルビー

 第二魔法・並行世界の運用の一部機能を使える魔術礼装。マジカルルビーはカレイドステッキに宿る人工天然精霊。

 変身時に並行世界への干渉によってマスターへ無限の魔力供給を可能とする他、Aランクの魔術障壁、物理保護、治癒促進、身体能力強化といった恩恵を与えられる。

 ただし、供給量・持続時間は無限でも、一度に引き出せる魔力はマスターの魔術回路の性能に依存する。

 あとなんか怪しげなクスリとか作ったりする。

聖杯の剣

【人物背景】

 Fate/stay nightのイリヤスフィールと並行世界の同一存在。基本的には切嗣とアイリスフィールが聖杯を求めなかった世界ではあるが年齢は小学五年生の11歳と離れている。

 重たい運命とか使命とかとは一切関係ない一般の家庭に育っているため、比較的素直な性格で捩れていない。言ってしまえば単純な性格。

 精神的に追い詰められるととりあえず逃げの一手を打ち、安全圏に脱出してほとぼりが冷めるのを待ちながら打開策を考えようとする悪癖がある。

【マスターとしての願い】

 美遊の世界もみんなもこの場で追い詰められて奇跡にすがるしかなくなったマスターもサーヴァントも全て救う。

【方針】

 聖杯のある場所へとマスター、サーヴァント達でたどり着く。そのためには物理的な説得も辞さない。

【ロール】

 月海原学園の小等生。

【令呪の形・位置】

 全身に令呪。

 また、契約の際につけられた胸の×印のコア・クリスタルがある。

 ホムラたちと命を共有しているため、どちらが死んでももう片方も死ぬ。

【把握媒体】

 漫画「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ」「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!」「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!」まであります。

 ドライ12巻までの読書が必須です。



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【オープニング】【本戦開始前】18 キロランケ&アサシン マスター キロランケ サーヴァント アサシン 境井仁

登場キャラクター
マスター キロランケ
サーヴァント アサシン 境井仁

作者
◆0080sQ2ZQQ


――良かった……この旅は無駄ではなかった。

 

 北樺太の氷上にて、キロランケは死にかけていた。

 

『さっき全部思い出した』

 

 己にすがりつく青い目の少女の一言で、ふっとキロランケの身体から力が抜ける。

 やりきったのだ。少女…アシリパを連れて旅してきたのは無駄ではなかった。

 キロランケの脳裏を旅の思い出が駆け巡り、それはやがて過去へ。日本の妻子や、同胞であるウイルクとソフィアへとスライドする。

 

 息を引き取ったキロランケの身体に、アムール川の流氷が積まれる。

 ここで一つの怪事が起こった。氷を積まれたキロランケの身体が、音もなく姿を消したのだ。

 使っていたマキリをキロランケの墓標とするべく氷を取り除けたソフィアは、唖然とした様子でしばし凍り付いた。

 彼女がいくら考えようと、何が起こったかは分からない。

 

 

 

 

 

 意識の喪失。そして覚醒。

 

 目を覚ましたキロランケは自らの身体を確かめる。絶命したはずだが、怪我どころか痛みすらない。

 眠りから覚めた、としか思えないが、この場に招かれるまでの戦いが夢であったと思うほど彼は愚かではなかった。

 

「ようこそ、常ならぬ願望を抱く者よ」

 星々が煌めく中で、男の声が響いた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 予選を突破後、奇妙な神父に解説を受ける。キロランケは聖杯戦争なる奇怪な催しに巻き込まれたらしい。

 過去の英雄と組んで殺し合いを勝ち抜いた者には、万能の願望機が与えられる、というもの。

 教会を出、異様な文化と人々にひとしきり驚いた後、キロランケは着ていたアイヌの服と身体を確かめる。

 体調は万全。祖国の事はアシリパ達に任せ、そろそろ自分の心配をしようか、と考えを巡らせた時、キロランケに声を掛ける者がいた。

 サーヴァントだ。キロランケが共に戦う事になる男だ。青々とした髭で顔を覆った、眼差しの鋭い東洋人。

 

「俺は此度、お主と共に戦うことになる。よろしく頼む」

 

 サーヴァントの礼に対し、キロランケは苦い顔をした。神父の説明だと元の世界に戻っても、死んだ事実は変わらない。

 キロランケは不本意であるが、どうやらこの殺し合いに乗るしかないようだ。そのことをサーヴァントに告げる。

 

「此度の戦は本意ではないのか」

「まあな。だがまぁ、素人じゃないんでね。足手まといにはならないようにするさ」

「…どういう意味だ?」

 

 男は眉根を寄せる。

 キロランケは自らの身の上について、かいつまんで話す事にした。

 見たところ和人のようだし、身に付けた装束から判断するに、明治政府やロシアと関わりはないだろう。明かして困る秘密でもなさそうだ。

 願いにも関わる為、話しておいた方が後々都合がいいはず。

 その前にキロランケは自己紹介をしていなかった事に思い至り、男に己の名を伝えた。

 男は境井仁、クラスは暗殺者と名乗った。その途端、キロランケの懐に入れていたサーヴァントカードが光り、取り出すとそこにはクラスと真名が刻印されていた。

 

「……と、俺の身の上については、だいたいこんなところだ」

「…大国が小さな営みを踏みにじり、やがて信仰すら奪っていくか。主の祖国も変わらぬな」

「心当たりがあるようだな」

 

 夜のバルコニーで、仁は感じ入る様子でキロランケを見た。

 君主制の打倒を目指す、少数民族の闘士。仁はキロランケのサーヴァントとして招かれた理由を悟った。

 

「…主は、聖杯に如何なる望みを託す?」

「俺は、俺の国をぶっ壊す。同志たちと共に」

「家族のもとに帰ろうとは思わぬのか?」

 

 仁は痛々しそうにキロランケを見つめる。

 

「そりゃ思うさ、けどな、革命も捨てられない。勝ち残れば両方手に入る」

 

 この街は、本来自分が生きた時代から随分と未来の技術が使われているらしい。

 しかし、キロランケにとってはさほど関係ない。帝政ロシアとの闘争に持ち込めるわけでもないのだ。

 勝ち残り、もう一度ソフィア達と共に戦うのだ。戦わなければ、自分達は呑み込まれてしまう。

 

「俺の話はそろそろいいだろ、境井は何を願うんだ?」

「俺は聖杯を求めぬ。お主を家族と同胞のもとに帰すことが、俺の望みだ。聖杯は持っていけ」

「おいおい、そりゃ通らない。戦うのはアンタだ、使う権利はむしろそっちにある」

「いや、俺は日本がいまだに日本として存続している、それだけで満足だ。お主を死なせたくないのだ…」

 

 この男もまた、大国による侵略という憂き目にあい、厳しい戦いを始めている。共に渡って助けとなれれば幸いだが、それが出来ぬならせめて聖杯を託す。

 

「主よ、これより先、俺の事はアサシンと呼べ。癖をつけろ。それからどのように動く?」

「参加者を捕捉する。同盟を組んでもいいが、数は少ない方がいい。明日から探索に出てくれ」

「承った」

 

 キロランケは仁と共に、万華鏡のようにきらめく街へと身を躍らせた。

 

 

【サーヴァント】

【クラス】

 アサシン

 

【真名】

 境井仁

 

【出典】

 Ghost of Tsushima

 

【性別】

 男性

 

【ステータス】筋力C 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具B+

 

【属性】

中立・中庸

 

【クラス別能力】

気配遮断:B

 サーヴァントとしての気配を絶つ。

 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

 

【保有スキル】

千里眼:C

 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

 仁は遠方から攻略する野営や砦を探り、練った策により陥落させてきた。

 

単独行動:B

 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

 

破壊工作:D

 戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。

 毒を盛る、罠を仕掛ける、闇に紛れて忍び込むなどゲリラ戦に長ける。

 ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格は低下していく。

 

心眼(真):C

 修行・鍛錬によって培った洞察力。

 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”

 逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

 

対毒:C+

 毒物に対する耐性。ランク分、毒効果を軽減する。

 毒を受けてなお、行動を可能とし、また生存した逸話に由来。

 生前はトリカブトの毒を武器として用いており、英霊となってからは植物に由来する毒性に強い抵抗力を発揮する。

 

【宝具】

『闇より来る冥人(ゴースト・オブ・ツシマ)』

ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)

 蒙古が対馬を侵略した時、希望と嫌悪と共に人々が噂した伝説と、暗殺者としての戦いぶりが宝具に昇華されたもの。

 展開中はストーキング、気配感知、啓示などの知覚系スキルや探知宝具・ならびに同等の礼装の威力を宝具ランク分、削減する。

 相手の五感による判定を封じる事こそできないが、気配遮断スキルと併用すれば、極めて高い隠密性を発揮する。

 

 加えて、相手が侵略者、征服者としての属性を持つ英霊だった場合は追加効果が発生。

 保有する吹き針に毒を付加する事が可能になり、これは魔術抵抗によって威力を減衰させることはできない。

 さらに対象となる英霊に対して与える格闘ダメージに、有利な補正が与えられる。

 

『冥人奇譚(レジェンド・オブ・ツシマ)』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)

 蹂躙されし民には希望を、征服者に恐怖をもたらした冥人の伝説。

 仁はアサシンでありながら、存在を把握されることで力を増す。存在を把握されるほど行動による魔力消費が減少。

 仮に聖杯戦争に参加している主従すべてが仁の存在を知った場合、魔力消費がおよそ半分にまで減る。自分の意思で発動できない代わりに、発動・維持にかかる魔力負担が存在しない。

 

【weapon】

境井家の太刀、境井家の短刀。吹き針、くない。

 

仁は飛び道具を使いこなすが、クラス補正、知名度補正により吹き針とくないしか持ってこられなかった。

アーチャークラスでの召喚の場合、吹き針に加えて弓矢を所持している。

加えて開催場所が対馬に近い場所であった場合、てつはうや煙玉、爆竹といった武器を所有していた。

 

【人物背景】

 十三世紀後半、モンゴル帝国が送り込んだコトゥン・ハーン率いる軍団が対馬に上陸。

 現地の武士団がこれを防ぐべく、志村家当主指揮の下、モンゴル軍と激突するも敗退。武士団は全滅したが、志村家当主の甥、境井仁は辛くも生き延びる。

 目を覚ました仁は囚われた叔父を助け出すべく、ハーンに挑むも敗北した彼は、やがて武士の道から外れた「冥人」として対馬を覆うモンゴル軍と戦っていく。

 

【聖杯にかける願い】

 戦いの中で喪われた人々を惜しむ気持ち、キロランケの故郷を思う心が、自分を彼に宛がったのだろうと思っている。

 召喚当初の時点で聖杯を狙う気はなく、キロランケを生還させるために動くつもりだ。

 

【方針】

 マスターの方針通り、まずは偵察から始める。

 

【把握媒体】

 Ghost of TsushimaはPlayStation 4およびPlayStation 5用ソフトです。

 某動画サイトにプレイ動画が投下されています。

 

 

【マスター名】

 キロランケ

 

【出典】

 ゴールデンカムイ

 

【性別】

 男性

 

【Weapon】

 なし。

 

【能力・技能】

 爆弾の扱いに長けており、若い頃に皇帝アレクサンドル2世を爆殺した筋金入りのテロリスト。

 ロシア語やアイヌ語、日本語など様々な言語が堪能。さらに子供のころから馬に親しんでいたことから、優れた騎乗技術を持つ。

 

【人物背景】

 10代半ばで皇帝暗殺を実行した、パルチザンの一員であるタタール人の男。

 皇帝殺害後、リーダー格であるソフィアらと共に逃亡生活を続けた彼は、やがて日本に渡る。

 現地で所帯を持ったキロランケだったが、旧友ウイルクの娘であるアシリパの周囲に湧いた金塊争奪に加わると、アシリパを網走にて杉元一行から引き離し、脱獄囚の白石らを伴ってロシアを目指す。

 

【聖杯にかける願い】

 帝政ロシアの打倒、および日本に残してきた家族の幸福。

 

【方針】

 参加者を把握し、少数なら同盟を組むことも考える。

 

【ロール】

 自然区域で狩りや野草の収集をし、都市でそれを売っている。

 

【把握媒体】

漫画「ゴールデンカムイ」既刊27巻中、キロランケは5巻から19巻まで登場しています。

 



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【オープニング】【本戦開始前】19 Special Songs to Seize a Soul マスター 新条アカネ サーヴァント キャスター μ(ミュウ)

登場キャラクター
マスター 新条アカネ
サーヴァント キャスター μ(ミュウ)

作者
◆koGa1VV8Rw


今日の時間割が終わり、生徒たちは各々下校や部活動の準備を始める。

よくある高校の日常の風景。

 

少し違うのは生徒たちの姿。

日本人らしい風貌の生徒は多数派ではあるけど、それに当てはまらない生徒も多い。

肌の色も髪の色も様々……というより動物が立ったような姿をした者や体が機械で作られた者など、

人間にすら当てはまらない者もいて、この世界の来訪者としてはいつ見てもそこに目を取られる。

 

私は教室の窓に手を付き乗り出し、外の様子を眺める。

下校していく生徒たちを眺めて、毎日やっていることの成果を確認したくて。

 

 ~たとえば君が 傷ついて

  くじけそうに なった時は~

 

少し離れた教室から、合唱曲の練習が聞こえてきた。聞いたことがある歌だけど、歌声が普通の高校と違ってる。

高校生らしい技術力や音程のバラバラさは、更に多種多様な人種たちが混ざったことで混沌としてる。

でもそれぞれの生徒が一つの歌を奏でることを目指して歌う様子が伺えて、聴けないような酷い音にはなりえない。

 

 ~かならず僕が そばにいて

  支えてあげるよ その肩を~

 

と、ポケットの中から私のサーヴァントが、その混沌へ混ざらんとするのか同調して歌いだした。

妖精のような小さい彼女は、澄んだ柔らかい歌声を出す。なのに声量が大きくて凄い。聴き入りそう。

 

「おーいアカネ! またスマホの音大きすぎるぞ!」

 

と、他の生徒が私の方に向かって言ってきた。

 

(ごめんμ、いい歌だけどちょっと静かにして)

 

私は声の方を見て、黙るように念話を送る。

妖精のような小さく可愛らしい姿のアイドルは、残念といったように肩を落としながらも私に従った。

 

(君に私の歌をもっと聞かせてあげたくて、歌いたくなっちゃったの。ごめんね)

(いいよ、また家でたくさん聞くから)

 

校庭の人の流れも途切れ途切れになってきた。私も帰り始めようかな。

毎日やっている聖杯戦争への準備の成果は、まだよく分からなかった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 ~大改造したいよ この機構とエゴを

  己でさえ 分かっている 破損箇所~

 

私が校庭を歩いていると、校内放送で下校時間の音楽が流れ出した。部活動をする人たちはまだ残るけど。

μの歌う楽曲。作曲はオスティナートの楽士、lucidだったっけ。

μは自分の歌が放送で流れるのを確認すると、今日は何故か霊体化して家へ一足早く私より先に帰っていった。

 

μは自分のために提供された楽曲を唄い、それに強く共感した人々が増えるほど力は強くなっていく。

だから私は学校の放送を活用してμの楽曲を時々校舎に再生し流したりして、多くの人に聞かせようとしてる。

窓から校庭を見ていたのは、μの歌に強く依存し侵食され黒い感情が外に出てしまった怪人、デジヘッドが現れ始めたか確認したかったから。

 

「お疲れっ、アカネ。μの歌が流れて上機嫌な感じかな?」

「おっ、バードンか。今日も綺麗な羽だねぇ」

 

下校する私に話しかけてくる子が一人。

人目を引くカラフルな羽毛に包まれた姿。鳥が人間のように立ち上がったような姿をした種族、リト族の子。

 

「……なんかその呼び方、怪獣っぽくて変だよね。もう慣れたけど」

「うーん、全身羽毛だからラルゲユウスとかの方が近いのかなあ。まあ呼びにくいしバードンでいいね」

「う、うん。まあ私だってわかればそれでいいよ」

 

この子の本名は……なんだっけ。何だか鳥の体の部位っぽい名前をしてた気がする。

初めて話した時も私が思わずバードンと言っちゃってまずいと思ったけど、それでも嫌がったりはしなかった。

初めて登校した時にはまだ人間に会いたくない感情が心に積もってたけど、

明らかに見た目が人間じゃない、むしろ怪獣や異星人とかに近い彼女にはそこまで恐怖や嫌悪を抱くことはなくて。

そこから少しずつ、引っ込むことなく普通に学校に通えるようになったと思う。

 

「最近μの曲がよく放送で流れてるよね。放送委員の中にμのファンでもいるのかなあ。

 私はμの曲結構聴いてるけど、ミレイ様作曲の『Sadistic Queen』が好き。

 無敵で誰をも屈させるサディステイックな感じ、シンプルにかっこいいよ」

「あっ、意外……なんかガッツ星人みたい」

「え? ガッツがあるってこと?」

「え? あ、あはは……そうでもあるかな。

 私の方は共感できる部分がある曲が、全体的に結構多い気がするな。

 ウィキッドの『コスモダンサー』とかはちょっと怖いけど」

 

実態は私がμの力を借りて、流す楽曲のアンケートや放送室のパソコンに細工してμの曲が流れやすいようにしてるんだけどね。

楽士の作った曲は色々あるけど、選曲には私の好き嫌いは入れないようにして公平に流してる。色んな人の心に響くように。

 

「私もそこそこ歌える自信はあるけど、やっぱり自分で歌えない人の力になってくれる、こういう音声ソフトって良いって思うんだ」

「そうだね。μはみんなの力になってくれるアイドルだよね!」

 

リト族の女の子は子供の頃から沢山の歌に囲まれて、自分でも歌いながら育つという。

さらに彼女は、もともと辺境の少数民族のリト族なのにこの都会の学校に通うというだけあって、

現代的な技術の活かされた音楽にも興味津々。

バーチャルドールのμの歌もとても好きらしい。

この子が最初に私に話しかけたのも、私が学校でμの曲を聴いているのに気づいたからだった。

もしかしたら今のμに力を与えているうちの一人は、彼女なのかもしれない。

デジヘッド化するほど依存してはいないみたいだけど。

 

「それじゃあ、今の時期早めに帰らないと暗くなっちゃうし、お先に帰るねー!

 『だいかーいぞう♪しったーいよ♪』」

「じゃあねー!ガッツ星人さ~~ん」

 

 

話し終えた彼女は、曲を口ずさみながら空を飛んで帰っていった。

日の長い夏なら他の生徒と一緒に帰ることもあるけど、

今の季節リト族は夜目が効かないから明るい内に帰りたいんだって。

そう、今の季節は冬。ツツジ台には存在しなかった季節。私もこのコンピュータワールド用の姿で、慣れない厚着をしている。

 

μはこの世界でも販売されているバーチャルドールとして、最初から少し知名度がある。

なぜそうなってるのかというと、μが元の世界で願いを叶える存在として働いていたおかげで、願望機に接続した存在として扱われたかららしい。

願望機に接続していた者は、元の世界の立場が再現されるのがこの世界の仕組みなんだって。

 

それなのにμの力が弱いのは、μの歌に強く共感する人間の絶対数が少ないから。

その理由は二人で考えたけど、この世界が聖杯戦争のために用意された狭く閉じた上に混沌とした世界だからということで落ち着いた。

元の世界では配信サイトで沢山の人間にμの歌が届いていたけど、この世界では配信サイトを使おうとこの世界分の少ない人口にしかμの歌は届かない。

そして多種多様すぎる人種と文化。現代日本人向けに作られたμの歌がなかなか響かない者も多いんだと思う。

そういうことで、μの歌に強く共感する人数はきっとまだほんの少人数だと思う。

だから、エネルギー節約のためにもμは普段はマスコットのような小さな姿になっている。

 

私が毎日放送で流してるのは、μが元いた世界で沢山託されたオスティナートの楽士達による楽曲。

でも、楽士はこの世界ではもうμとの繋がりがない。

つまり、彼らによる新しい楽曲の提供も行われない。

価値観の多様性も考えると、それだけじゃμが人々の共感を集めるのも限度があるかもしれない。

 

でも、私はマスターとしてそこへの対策も考えてはいる。

まずはこの世界に存在する作曲ができる人達に、μへの楽曲提供を依頼すること。

つまり、この世界での楽士としてスカウトすること。

多種多様な世界から集められた人々に共感させる歌を用意するなら、こちらも多種多様な価値観の歌を生み出すのが一番良いと思う。

ただ、見返りとしてある程度はμに願いを叶えてもらう権利を提供しなければならないはず。

マスターとして私に用意された資金を活用して、願いを叶える権利を使わないように契約するのもありかもしれない。

 

そしてもう一つは……私が自力で新たな楽曲を作ってμへ提供すること。

μがパソコンで作曲する技術を私に身に着けさせてくれたから、私でも曲が作れる。

μは過去に音楽を作る技術が欲しいと願った楽士に願いを叶えさせた。

それと同じことだから、私にも流用してすぐ実現できたんだそうな。

私が作った歌は私に似た価値観の人々へ、いずれ届いていくかもしれない。

もちろん今まで作曲なんてしたことないから不安だけど。

 

さて、技術があるからといって音楽で表現したいことがはっきりしていないと曲を作ることはできない。

μは作曲者の心理を映し出して作られた曲を唄いあげ、そしてその曲に強く共感した人々を力とするから、私の心が強く想って練り出した曲が必要なんだ。

だから私は私の心をよく理解するために、私の過去の記憶を辿っていく。

今日は、このμとの関わりの始まりから回想していくことにする。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  …………

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

私の怪獣を倒す存在、グリッドマンがツツジ台に現れ始めてからしばらく経ったある日のこと。

ツツジ台高校からの帰り道、私は違和感のある店を見つけた。

店の名は『TOY SHOP みざりぃ』。

今どき流行らない個人経営みたいな小さいおもちゃ屋。

こんな店、私は全く把握してない。

作ろうなんて思わないし、今までにできてたら絶対気づいてる。

いつの間にか、勝手にできていた。

まさか、グリッドマンみたいなお客様?

そんなことが何度も起こる?

 

いや、でも。

もし外からの何かなら、グリッドマンを倒す手がかりでも得られるかも。

怪しさを全身で感じながらも私はその店へ向かった。

 

「いらっしゃいませ」

 

私と同じくらいの背だけど、細い体でより幼そうな金髪の少女がいた。

店名の入った服を着てるから、店員だろうな。お辞儀をして出迎えてくれる。

店内をとりあえず見廻してみた。

ぬいぐるみやフィギュアはよく姿が見えるように並べられて、存在感を放ってる。

パズルやボードゲーム、ハイテクな機械式の玩具の箱もたくさん置かれていて、遊び盛りの子供なら目が沢山泳ぎそう。

 

「凄いね。あれは歌声を奏でる楽器。とても直接的に奏でる人間の感情を反映する。

 ここまで人間と音の精霊の距離が近くなるなんて、本当に凄いなあ」

 

カウンターで先客が話してる。汚れたパーカーを二重に着てランドセルを背負ったみすぼらしい少女。

年頃としては、おもちゃ屋とかが好きそうな感じだ。

カウンターの向こうにいるのは、長くウェーブがかかった髪に、紫の前髪で片目を隠した美女。

こちらも店名の入った服を着ているから、ちょっと偉い店員さんか。二人は会話を続ける。

 

『そのアプリケーションが気に入ったのね』

「そうだよ。流れてる曲も、たくさんの人の感情に響きそうな感じだ。

 できればみんなで一緒にこの音を聴きたいんだけど、私のお金はお世話になった人のために取っておきたいし……」

 

みすぼらしい少女が、ビニール袋に入った大量の小銭の量を掴み取りながら調べ始める。

それを見た店員が、少し微笑んでから数個の小銭の入った彼女の手を掴んで話した。

 

『そうね……大変そうだし、大分安くしておいてあげる。その手の中の分くらいでいいわよ』

「え、ほとんどタダみたいだけど、いいんだね?」

『ええ。聴き入りすぎるのには注意してね』

「大丈夫だよ。後で先代やみんなで一緒に聴こうっと」

 

みすぼらしい少女は明るい顔で箱を抱えたまま、私の隣を通り過ぎて店の外へ出ていった。

ヴっ……通り過ぎた後の空気が臭う。不潔っぽいから仕方ないか。

学生とかでもないし、そう会うこともないだろうしここは寛大に忘れてあげよう。

ハンカチで鼻を覆いながらカウンターの方へ向かい、店員に話しかけた。

 

 

「すみませーん、このお店は最近開店したんですか?」

『ええ。昨日ここに開店したばかりよ。

 貴方みたいな良い年頃の女の子もこんな店、興味あるのかしら?』

「あはは……まあいろいろね」

『まあ、大人でも楽しめる品物も色々あるから、ゆっくり見ていってね』

 

私はやっぱり特撮のキャラ物のコーナーに目が行って、そっちに向かった。

まず目立つ、ショーケースに厳重そうに入ったブレスレットに目が行った。

すると、カウンターの店員が近くに来て一緒に品を眺める。

 

『それはブレード・カイザーの変身ブレスレットね。ヒーロー好きの子ならきっと喜ぶわね』

「ヒーローかぁ。でも、私はヒーローと戦う怪獣の方が好きだな。

 かっこいいし、やられ役みたいに思われてるけど、いないと物語が成り立たない主役じゃん」

『ええ、そうね。ヒーローがいくら強くてかっこよくても、見合った強い悪役がいないと輝きは生まれないわ。

 ヒーローが一方的に強かったら、それは弱い者いじめになってしまうわ。そんなの見られたものではないわね』

「そうだよね!店員さん、よくわかってるー!」

 

店員は感情は出さないけど、私のことを理解してくれてる気がする。

嬉しくてちょっとテンション上がっちゃった。

 

『実はね……そのブレスレットは異世界の物品で、本当にブレード・カイザーに変身できる力を秘めているの。

 その昔、ヒーローが大好きで悪役が大嫌いな子供にプレゼントされたことがあるわ。

 その子は、強い悪役のいない世界で強いヒーローの力を振るい事件を起こしてしまって、悪役の大切さを学んだのよ』

 

えっ、人間がヒーローに変身するって、まさに特撮のヒーローと同じ。

グリッドマンが人間が変身してる存在だとして、この店員の話が本当だとしたら……。

同質の物品であるこれは明らかな手掛かり。

でも、これを私が持ったら私がヒーローに変身するということか。それは嫌。

今度アレクシスと一緒にこの店に来て、いろいろ探りを入れようかな。

 

「……へー。素敵な話だけど、私はヒーローになりたいなんて思わないな。

 自分自身が戦うなんてのも、もってのほかじゃん」

『ええ。貴方がこのブレスレットから得る物は無いかもね。そっちが怪獣のフィギュアよ』

 

差されたほうを見ると、怪獣のフィギュアがずらっと並ぶ棚があった。

作品世界の垣根なく、様々な怪獣、怪人、宇宙人などがジャンルや種族に分けられて並んでいる。

 

「おおっ、ブルトンのソフビがある。すごいなあ。

 でもなんかバンダイ製のすごい新しいモデルっぽいんだけど、こんなのあったっけ?」

 

私はフィギュアを細かく観察する。知識が頭の中を飛び交っていく。

四次元怪獣ブルトン。フジツボのような既存の怪獣に当てはまらない斬新なデザインは多くの人々の頭に印象を残した。

戦法も特徴的で、数々の四次元現象を引き起こしてウルトラマンや人々を苦しめた。

更には後の作品で、時空間や別々の宇宙をも接続することが出来るというトンデモな設定も付与された。

でも、ブルトンのソフビは昔に販売されたことがあったと思うけど、マニア向けやガシャポン用だったり、

部品の接続が丸わかりだったりしてあまり良くできてなかったと思う。

それに比べてこれはなめらかだし色鮮やかで、明らかに最近のものに見えた。

 

『わからないのも仕方ないわね。それはここではまだ未発売の品だから。

 すでに発売されてる異世界から仕入れて来たのよ』

「ええーっ!すごいじゃんこのお店!」

 

 

私は迷わずそれを手に取った。

他にも棚を色々見てみる。見たこともない怪獣や宇宙人のフィギュアもあって、私は次々にカゴに入れた。

知ってるレアな物もあったけど……まあ私はどれでもいつでも自由に手に入る。もう持ってるのだっていっぱいある。

棚の隅あたりでは、最初にいらっしゃいませと言った少女がフィギュアの埃を拭いたり並べたりしてる。

と、彼女の持つひときわ奇妙な怪獣のフィギュアが目に留まった。

 

「あ、ちょっとそのフィギュア見せてよ」

「あ、どうぞご覧になって下さい」

 

私は白く細い手からフィギュアを渡されて、手に取った。

不思議な色の泡が沢山集まり、ところどころ目がギョロッとして、触手も伸びている。

 

『それは、この子に憑いた邪神の姿を模したフィギュア。

 恐らく過去に邪神に関わってしまった、可哀想な人間が作ったのでしょうね。

 外宇宙の神の姿は人間では捉えきれないけれど、その一端を表現して作られているわ』

 

邪神が取り憑いてるって……どういうことなんだろう。

そして邪神の姿がこれ。生々しさは、スペースビーストを彷彿とさせるような。要素要素だけ見ると、ナイトファングやガタノゾーアの一部を思い出す。

でもよくよく見てみると、人間の想像する生物らしからぬ見た目、そして触感までもが生々しく感じる。

なんだか根源的にこのフィギュアに触れていたくない感情が沸いてきて、私はフィギュアを返した。

 

「あはは……フィギュアとしての出来はいいけど、ちょっとグロ過ぎて……。

 怪獣のデザインとしてもちょっと合わなくて、私はそんなに好きじゃないかな」

 

フィギュアを手放すと心が落ち着いてホッとした。

神様なんて、私だけで十分だよ。

そんなことを話してるうち、私は音楽が流れる一角が気になってきた。

さっきから歌が聞こえるのには気づいていたけど、少しずつ歌詞が頭の中に入って来始めるとより気になったから。

ギターのような音がメロディを構成するポップス系BGM。

歌い声は柔らかいけどなんだか無機質な感じもする。

音声合成ソフトが唄う楽曲って、こんな感じだったかな。

 

 ~ねえ僕ら見つめ合って 夜空を駆けてゆく

  泣かないで 君の目にFly Again~

 

そっちをよく見ると、モニターでCGのキャラが歌を唄っていた。

近くに置かれたパッケージには、バーチャルドール・μ(ミュウ)と書かれている。

もしかしたら、さっきのみすぼらしい少女が買っていった箱と同じ物かも。

その歌声と歌詞は、何だか安心感がするような。

そして私の力になってくれるアレクシスを思わせて、グリッドマンに挑む気力がもっと貰えるような。

 

 ~悲しみのNebulation どんなに怖くても

  君のこと 抱きしめてあげる~

 

いつの間にか、私はモニターの前に立って聞き入っていた。

曲が終わった所で店員さんが説明してくれる。

 

『そのアプリケーションも、曲も、この世界とは別の異世界で作られた物よ。

 この店では異世界(アウターゾーン)の品を扱っているの』

「本当に?ちょっと調べさせてよ」

 

スマホの割れた画面を指でなぞり、検索してみたけど全く見つからない。

ツツジ台の文化とかは現実の世界をもとに作られてるから、

スマホで見つからないということは現実の世界にもないということ、なんだろう。

 

「本当に、この曲のことも、このバーチャルドールのことも何も見つからない……」

『わかったかしら? ネットで視聴やダウンロードはできないわよ。

 もしその曲が気に入ったなら、パッケージを買えばサンプルとして付いてくるわ』

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

私は結局フィギュアの他にバーチャルドール・μのパッケージを購入して帰途についた。

店員は一定額以上の買い物ということなのか、おまけに虹色に輝く石が3つ入った瓶をプレゼントしてくれた。

その店はまた何度か訪ねてしっかり調べようと思ったんだけれど……。

何故か、翌日もう一度同じ場所を通ると店は何処にも見当たらなかった。

 

グリッドマンが本当に人間から変身すると感付いたあと、あのブレード・カイザーのブレスレットも本物だったかもと思ったりもしたけど、後の祭り。

でも、買った品は店のように消えてしまうことはなかった。一緒にもらった石も。

μはパソコンにインストールしてみたけど、やっぱり使い方は全然理解出来なかった。

でも、あの店でも流れてたサンプル曲はスマホにも入れて時々聞いている。

虹色の石も、いつも持ち歩いてる。

なんだかこういうことをしてると、μが見守ってくれてるような気もしてた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

どうしてこうなるのか。

ツツジ台は、私がコンピュータワールドに作り上げた理想の街じゃなかったのか。

 

グリッドマンは怪獣の働きをすべて阻止する。

私の理想の世界が保てなくなっていく。

私が私として愛されて自由に好き勝手過ごせる世界が。

 

怪獣たちが作ったレプリコンポイドたちは……きっと意思を獲得してちゃんと生物の様に動いている。

私はそれを、私物のように好き勝手にしていた。

私が作った怪獣の、アンチまでもがほぼ人間のような生物と化して行った。

それなのに私に対するみんなの好意は私がインプットしたもので。

私が救われるわけなんてない。何もかもが無意味だった。

 

もうどうしたらいいのかわからない。いや、もうどうなってもいい。

自分から死んだり世界から逃げたりすることはできないけど、それなら周りを壊し尽くすことは出来て。

心の中に根刺していた暴力性が、自暴自棄になった私を更に染めていった。

 

私の最後に作った怪獣は、世界を維持する霧の向こうの怪獣も全て殺した。ツツジ台はどうなるか、もうわからない。

そして……グリッドマンの変身に必要な響裕太を私は殺し、グリッドマンが住むパソコンも壊した。

人を刺し殺した感覚。とても嫌で苦しい感覚。私は怪獣を使って同じことを沢山……。

 

人と会うのも辛くて、逃避していく私。

もう消えてしまいたい。どうなってもいいから……。

その時、ポケットに入っていた虹色の石が強く輝き出して……。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  …………

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

色々思い出してるうちに、ロールで与えられた私の家に帰ってきた。

ツツジ台で私が住んでいた家と同じ姿をしている。

市街地の一戸建てとしてはかなり大きい方だと思う。

塀に囲まれていて庭も広い。

 

ギロォォォォォォ……と、か細い鳴き声が聞こえてきた。

庭には子熊くらいの小さなサイズで再現されてる、怪獣グールギラスが歩き回っている。

μがどれくらいの願いまで叶えられるのか調べたときに生まれた、ちょっとした産物だ。

小さいくせに巨大怪獣と同じくらいのゆっくりさで、ノシノシ音を出すこともできず歩くのは哀れだけど、まあ出来損ないの番犬くらいにはなるかも。

 

家にはμが先に帰ってるからか、明かりが付いている。

でも、家の窓からは歩く人影が見えている……?

私が来たのに気づいたのか、μが家の窓から飛んできた。

 

「μ、あれは何……? まさか、他の参加者が私達を襲いに来た……?」

「驚いたでしょ? 私が君のために家族を用意してあげたよ!」

「は……?」

 

私は唖然としてしまった。

 

「この世界のロールだと、君は家族が居なくて一人ぼっち。

 でもそんなのって悲しいよね。優しい家族が家で迎えてくれたほうが幸せだよね」

 

μは私を微笑んで見つめている。

喜んでくれると思ってるのか。

 

「そのね、君が学校で私の歌を沢山流してくれたから、私の歌に強く共感する人が増えてきたの。

 だから私の力が少し強くなって、こういうこともできるようになったんだよ。ありがとう、アカネ」

「……いらない。元に戻して」

 

家族なんか、いらない。色々口出しされたくない。

ツツジ台でも、私は家族なんて持たず過ごしてた。

百歩譲って、アレクシスはまあ家の一員だったかな。優しい執事みたいな感じで。

 

「え、なんで」

「ごめん。家の中には誰も入ってきて欲しくないの。家族なんて邪魔なだけだから。

 ああ、μはサーヴァントだから別だけど……」

「そ、そうなの……? 私は君のためになりたいから……そう言うなら元に戻すよ。ごめんなさい……」

 

μは残念そうにか申し訳無さそうにか、再び窓から部屋に入っていく。

しばらくすると部屋の明かりが消えた。

人のいそうな音も全く聞こえなくて、きっと元に戻ったんだろう。

 

μが世界を改変して生み出せる生物は、この世界のNPCの性質とはまた違う。

魂なんて存在しないただの作り物。それは確認済み。消えようが……大丈夫。

 

 

私は玄関の扉を開け家の中に入った。誰かが居た痕跡もない。安心できる。

さて、私の自室もツツジ台の家としっかり同じ構造で再現されていて、違和感なく私は過ごせている。

流石に部屋の大量のゴミまでもツツジ台の自室のように再現はされてなくて、安心してたっけ。

聖杯戦争の期間中に部屋がゴミでいっぱいになることも、多分ないはず。

 

帰り道に買ってきた寿司を頬張りながら、パソコンと向き合う。

食べ物を確保しようと店を見繕って歩いてたら、雲海蟹が無料と大きく張り紙を出した寿司屋があったから気になった。

雲海蟹とかよくわからなかったけど、寿司は割と好きだ。種類が多くて飽きないし簡単に食べられる。

何号店とか出てるしチェーン店っぽいから回転寿司かと思って入ったけど、

どうもチェーン店でも結構高級な店だったらしい。

とはいっても他の所に寄るのも面倒なので、持ち帰りで包んでもらって帰ってきた。

 

これが結構当たりだった。この街では米とは違う穀物が主に使われるけど、

この店では移住者が持ち込んだということかたぶん本物の米が使われてる。

贅沢にカニっぽい身が盛られた寿司を頬張る。これが無料と出てた雲海蟹かな。

 

「あ、美味しい……」

「良かったねー、アカネ! 本当にいいお寿司のお店だったみたいだね!」

「うん、何だか身が絞まっててハリがあって、とっても食べごたえがある」

「少しステータスを調べたけど、本当に雲の海で採れるカニみたいだよ! そんなのがあるってすごい世界だね」

「そうなんだ……水中で育ってないから、そういう肉質になるのかな」

「クリームコロッケとかにも使われるらしいよ! 今度は私も少し食べたいな、雲海蟹クリームコロッケ~」

 

μと一緒にこの世界の文化に触れてると、退屈しないな。

他の寿司だって日本でよく見るネタもあるけど、明らかに異世界由来とわかるのもいくつかある。

このマグロの寿司は、なんだかすごい色が濃く鮮やか。高級なのかな。

 

「ん、このマグロの赤身、すごい濃厚。美味しいけどちょっとくどい……」

「それ、マグロじゃなくてサーディって魚だよ。ステータスによると巨神界って所が原産みたいだよ」

「へぇ。別世界にもマグロっぽい魚がいるのかな。どんな魚なんだろう?」

「私からイメージを直に伝えるのはちょっと難しいかな……? 配られた端末で調べたらどうかな」

 

端末を使って調べてみることにする。

ブラウザに登録されたシバという検索エンジンにサーディと入力すると、さっそく魚や赤身とサジェストが並んだ。

倒し方とかもサジェストされるけど、どういうことだろう。

使い勝手はもとの世界の検索エンジンとそう変わらなかった。画像検索してみる。

 

「うげえっ、なんだか怪獣みたいな魚」

 

体に比べて大きい頭には牙が並んだ大きく空いた口、額部分には水を発射する突き出た穴。

ページを辿ると実際に戦闘能力もあって、漁は闘いの様相になることもあるらしい。

この世界のハンターに、私は少し感謝と畏敬の感情を持った。

 

さて、魚の肝を和えたような寿司はポカポカマスの内蔵を使った軍艦巻きらしい。

 

「あれ、何かポカポカしてきた」

 

口の中が暖かくなり、そして指先にもよく血が回って温まる感覚。

この冬の時期に向いた食材かな。パソコンとか指先を使う作業にも丁度良くて、嬉しい。

 

 

「君がこの世界によく馴染めてるみたいで、私とても安心してるよ」

 

μはカラフルで賑やかな寿司を、パソコンの画面から興味深く眺めてる。

時々食べる私の顔を見て、嬉しそうな顔になるのは何故だろう。

 

「この世界で初めて見る物もたくさんあるけど、こうやって実際に見て調べると勉強になるよ。

 お寿司って面白いね。そういえば、アカネの好きな寿司ネタは何?」

「うーん、みんな美味しいんだけどあまり冒険したい気持ちじゃないから、

 よく知ってるネタがやっぱりふつうに美味しくて安心する……」

「じゃあ、今度のためにそういうお寿司屋さんを探してみるね!

 アカネはカニ派、それともエビ派?」

「そうだね……カニもエビも、ほかにシャコとかフジツボとかも、甲殻類ってみんな怪獣っぽさがあるから結構好きかな」

 

μと話しながら、寿司を食べ進めていく。

……そういえば、怪獣の作った私のツツジ台にも寿司屋がいくつか存在してた。

アレクシスと夜に、人間の姿を持つ怪獣アンチの食べ物を確保しようと車で出掛けたとき、

運転の下手なアレクシスが回転寿司を何店舗も通り過ぎたりもしたっけ。楽しかったな。

もう戻れはしない、楽しかったツツジ台の日々……。

 

「あれ? なんで少し辛そうなの? 苦手なネタでも食べちゃったの?」

「ううん、そんなことない。大丈夫だよμ」

 

μは私の部屋ではほぼパソコンの中に入って過ごす。

自室で他人に動かれるのはやっぱり落ち着かないけど、パソコンの中ならまあ大丈夫ということで。

その中なら元のデフォルメされてない姿でもいくらでもいられるけど、デスクトップマスコットみたいにデフォルメの姿でいることの方がやっぱり多い。

パソコンのデータを直接読み取ることもできるから、PC内の作曲データも出来次第取り込める。

私はパソコンで何をしているのかというと、DTMのソフトを触って曲を作っている。

 

でも、作曲は今日も行き詰まる。

作曲の方法や知識が理解できたとしても、気持ちを音楽としてアウトプットするセンスが私にあるんだろうか。

曲を作ろうとするとやがて行き詰まってしまって、より気持ちのアウトプットとして作り慣れた怪獣の工作に手をなんとなく向け始めてしまう。

自室には怪獣を工作する道具も、元の世界と同じようにちゃんと揃ってる。

μの力なら頭の中のイメージだけから怪獣を出すこともできるかもしれないけど、それじゃだめ。

だってしっかり自作のフィギュアにすることで、大まかなイメージからどんどん解像度が高くなるんだもの。

 

ポカポカマスの効果で指まで温まったおかげで、手で掴む粘土が適度な柔らかさを保って嬉しい。

μは針金で骨組みを作ったり粘土をこねくり回す私を、パソコンの中から楽しげに見つめる。

時々よく見せるようにすると、主に褒める内容で感想を出してくれたりもする。

でも、やっぱりμは音楽のほうが詳しいし好きそうで、なんだか素直に喜べない。

話す相手はμしか居ないのに、なんだか引っ込んだ感じになっちゃう私。

 

サーヴァントのμにすら素直になって自由に話せない自分に、もっと自己嫌悪してしまう。

そもそもμは私の心を覗いて私の代わりに歌詞を綴ることもできるというのに、私は心を見られるのが怖くて拒否してる。

そして、μが私の思いもしないことを良かれとやってしまうことがあるのも、きっと私とμの意思疎通不足。

そんなことはわかってる、わかってるんだけれど……。

私が私のこともちゃんとわからないのに、他の人に気持ちを伝えるのはさらに一段上みたいな……。

それに話してるうちに、μ自身が苦しさとかを漏らして私が聞いてしまったりするときっと受け止められない……。

 

 

……うん、音楽について向き合おう。例えばこんなのはどうだろう。

気持ちを一度怪獣にアウトプットして、さらにそれをモチーフにした音楽に転化させるという手順なら……。

行けそうな気がする。二度手間ではあるけど、私らしい方法だな。

 

私の怪獣は、ツツジ台の人々に対する怒りや憎悪や悪意が切欠となって、頭の中で練って生み出してた。

でも、最初に世界を管理する霧の怪獣を作ったときは、きっと人々に対する悪意なんてなかった。

怪獣は人々を脅かす日常の破壊者だけど、色々な作品を見てもその動機はとっても多種多様。

悲しい理由や切実な理由で人間を襲う怪獣だっていくらでもいる。

今の私が気持ちを寄せていくとしたら、きっとそういう怪獣たち。

辛いけど、でもこの世界で戦っていかなきゃいけない。

それが、私が助かる道。

 

私一人なら心が折れたまま立てなかっただろうけど、μがいるから私はきっと頑張れる。

私は放課後の回想の続きを始めた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  …………

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

星空の世界で、黒い影のような人型に襲われている私。

 

(身体から血が流れてる。息をするのも辛い。苦しい。

 消えてしまいたいと思ったけど、こんな風に終わるなんて……。

 でも本当に死ぬなら、μの唄う曲でももう一度聞いておきたいな……)

 

 ~ねえ僕ら見つめ合って 夜空を駆けてゆく

  泣かないで 君の目にFly Again~

 

死ぬ前の幻聴かと思った。

でも、違った。

石の入っていたポケットから漏れ出てくる強い光。

その光が、一纏まりになり人型を作り出していく。

 

(君のために、歌いに来たよ)

 

心の中に声が届く。μの声。歌っていない時の声、初めて聞いた。

 

「μ……!」

 

 ~彗星にまたがって遊ぶウサギ

  眩しいほど暗い宇宙~

 

光が消えていくと、真っ白な髪に真っ白なコスチューム。

あの店のモニターで見た、動いて歌うμの姿がそのままそこにあった。

 

「ああっ……!」

 

でもそれを眺め続けることはできない。

μが出てきた時の光で一度怯んだみたいになってた影が、また襲いかかる。

でもその攻撃は、私には届かない。その代わりに。

μが立ち塞がってその身に受けている。

 

 ~不思議さ"不思議"って不思議

  ここでまた 君の声に出会えた~

 

私を勇気付けてくれた歌を唄い続けながら。

 

「なんで……どうして……私を守ろうとするの?」

 

(君の辛く苦しんでいる心の声が、聞こえたから。

 君を幸せにしてあげたいの。

 君の願いを叶えてあげたいの)

 

μはさらに攻撃されても唄い続ける。

その歌声も表情も揺るがないけど、心のなかに届く声は苦しそうになって。

 

 ~老いてく惑星 弾ける超新星

  生まれる~

 

「やめて……死ぬ前にμの唄を聞きたいと、思ったけど……。

 μに私を庇って傷ついて欲しいなんて思ってないよ……」

 

(それは……聞けないな……君が……世界から消えちゃうのは……もっと、だめだから)

 

このまま終わっちゃ駄目なのに。それなのに、体が動かない。

一緒に逃げられればいいのに、何もできない。

μが私の巻き添えで死んでしまう。

インプットされた好意がある訳でもないのに、私の為になろうとしてくれるμが。

 

 ~悲しみのNebulation どんなに怖くても

  君のこと 抱きしめてあげる~

 

体の感覚はぼやけてる。視界も流れる血で覆われてきて、ほとんど見えなくなっていく。

その一方で感情は固まっていく。

 

「お願い……μ……消えないで」

 

(……叶うよ、君の願い! もっと強く願って! 私、何とかするから!)

 

何故か、手に何かを持つような感触。

それが何なのかはわからない。武器だったとしても、体はまともに動かない。

……でも、それがμの力なら、きっと。

 

 ~小宇宙の隙間から 優しい風が吹いたら

  欲望 全部 受け止めてあげる~

 

(お願い……! μ……! 消えないで……! その影を倒す力を……!)

 

そして……視界に紫色の光が入った。

まともに機能しない視覚でも、光はわかった。手に持った何かから発してる。

その色は私の怪獣、アンチの使っていたエネルギー弾の色と同じようで。

それがだんだん大きくなり視界すべてを覆いつくした。

 

 ~魂のOrbit~

 

私はそのまま意識を手放した。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

目が覚めたときは、教会の中の一室だった。

 

怪我を負っていた私を治癒してくれたのは、聖杯戦争の監督役で言峰綺礼と名乗る神父。

魔術を組み合わせた手術によって、私の怪我を手早く治療したという。

そして。

 

「ああ……! 良かった……!」

 

目覚めた私を見て喜ぶような、安心するような顔を向けるμ。

そしてしばらくして、自分が召喚された経緯を話し始めた。

 

「君も知ってると思うけど、私は皆が作る音楽を唄うバーチャルドール。

 情報の海を漂っていく中で、漂う色々な情報に込められた思いを受けてネットの世界、

 メタバーセスで自分の意志で動ける力を持ったの」

「私は色々な歌を歌ったの。欲望、不満、不安、恐れ、憎しみ、怒り、嘘といった暗い感情の込められた曲もたくさんあった。

 だから私は、そういう苦しんでいる人たちを助けるために願いが叶う理想の世界、メビウスを創ったの」

「でも、その世界でみんなを救おうとしても、上手く行かなくて」

 

話していくμの顔は少し辛そうに見えた。

 

「そんな時に……君の心の苦しみが私に届いたの。

 それに応えたいと思ったら、私は君のサーヴァントとしてこの世界の聖杯戦争に呼ばれたんだよ。

 だから私、私の歌を聴きたいっていう君の願いも必死に叶えたよ」

 

そして、私がμにとってとても大切だということも分かって。

ちょっと辛いよ。重すぎて、受け止めきれないよ……。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

神父から準備期間内ならいつでも元の世界に戻れると聞いたけど、そっちには戻れない。どうしても。

それが、少なくともこの世界に居続ける理由になった。

私は神父からの話を聞きマスター用の端末を見て、この世界のルールを頭に入れていった。

そして、この世界でのロールによって与えられた私の家へ向かっていく。

 

μは教会から出る際に、エネルギーの節約と周りに目立たない為と言って小さなマスコット的な姿になった。

サーヴァントは霊体化という方法で姿を消すこともできるというけど、霊感の強い人や他のサーヴァントからは感じられるし物体への干渉ができなくなる。

それに最初に歌いながら話したときみたいに、念話という心に直接話す方法でしか話せなくなる。

それだと歌をちゃんと届けることができないから、こっちのほうが良いって。

 

さてμは、今の力は弱いけどできる限り願いを叶えてくれると言う。

そう言われても、どんな願いをすれば私が幸せになるんだろう。幸せって何だっけ……。

でも私がμを必要としたから来てくれたのに、無視したり邪険に扱うのもそれはそれで心が辛くなってくる。

だから、力を試してみたいってμがたくさん私に構うのもあってとりあえず思ったことを少し願ってみた。

 

「じゃあμ、私の端末のお金を増やしてみて。それなら、きっと絶対に悪いことにはならないから……」

「うん。願ってくれてありがとう!やってみるよ」

 

μが私の端末に触れる。

私も端末の電子マネー画面を開いてみた。

 

「あれ? 何も起きないじゃん……」

「あれ? どうしてだろう?」

 

端末内の金額は一桁も動く気配がなかった。

後で考えたことだけど、たぶん通貨システムはプロテクトが強固で干渉しにくいんだと思う。

 

「本当に願いを叶えられるの……? μ」

「力は弱いけど、その分だけはちゃんとできるはずだと思うんだけど……。

 何か気持ちから物を出してみるとかならできるかも……さっき君が武器を手にしたみたいに」

「うん……じゃあ、私の思い浮かべる怪獣を出してみてよ」

「うん、やってみるね」

 

思い浮かべたのは、中途半端な姿で完成としてしまったグールギラス。最初にグリッドマンに倒された怪獣。

その本当の完成形。爪や角がちゃんと銀色に造られていて。

……でも私は願った後で、しまったと思った。

詳細を指定してない。フィギュアじゃなくて実物の怪獣が出てきてしまったら……。

でも、その心配は全く不要のものだった。

 

「あれ……? なんだかとても小さい……」

 

なんだこれ。ちんちくりんだ。

フィギュアより大きいけど、中型犬か子熊といったくらいのサイズのグールギラス。

宇宙人とかヒーローなら、巨大化前の等身大サイズといったところ。いや、それより二回り以上かは小さい。

 

「本当はもっと大きいのかもしれないけど……。

 私の力が弱いからこれくらいの大きさしか、出せないみたい」

 

しばらくすると歩き出そうとするグールギラス。

火の玉を吐く力はあるのか人を襲う性質はあるのかは、わからない。

私はとりあえずどこかに行かないように首を手で掴んだ。

 

 

「いまの私の力、どれくらいか分かってきた。

 本当にごめんね……君のとても苦しい気持ち、すぐにでも取り除いてあげたいんだけれどこれじゃ出来ない。

 君の辛い記憶をマインドホンって道具で消すこともできるんだけど、力が弱いから君はきっと違和感に気づいてすぐ記憶を戻しちゃう」

 

記憶を消したら……私は元の、怪獣に気に入らない人々を襲わせるような性格に戻るってことかな。

それはそれで、幸せになれるといえば幸せかもしれない。けど怖い。

それに思い通りの怪獣を生み出すような力がなければ、むしろ辛いだけだと思うし出来ないのは正しいと思う。

でもそれより、気になったことを聞く。

 

「……μ、この世界の人達も、人間と同じだと思う? 魂とかって、あると思う?」

「そうだね。この世界の人達は、『賢者の石』っていう物体に他の世界の人間の姿や人格を被せるように再現しているんだって。

 でも再現といっても、ちゃんと心もそのまま引き継いでる。

 消えてしまったらもう戻らないし魂もあるって、そう神父さんからも聞いたよ」

 

ああ、私はこの世界の人達は殺したくない。

 

「ちゃんと生きてるってことは、私がメビウスの世界に呼んでた現実からの人達に性質としては少し似てるのかな。

 私がこの怪獣みたいに、メビウスの世界に再現してた生き物は魂なんてないただの作り物だもの。

 でも……」

 

μの顔が暗く辛そうになっていった。

やめて、これ以上重いことを背負わせないで。

 

「この世界の人達は聖杯戦争が終わったら消えてしまうの。とっても……悲しいよ。

 でも……ここの聖杯の力なら、それも取り戻すことができると思うの。

 聖杯の力は私でも出来なかった、死んでしまった人間をちゃんと生き返らせることだって、出来るんだって」

 

え。死んだ人を生き返らせることができるの?

本当に自由にそんなことが出来るの?

 

「だから、私はここの世界でいずれ消えてしまう皆も、私の元の世界の皆も、

 消えたりしないでずっと幸せでいられることを願おうって、思ってる」

 

そんな願いが実現できるの?

でも、μは聖杯から直接知識を与えられたサーヴァントだよね。

 

「そして私の願いを叶える力は、どれだけ強くなっても出来ない事は出来ないの。

 だから、君は気兼ねなく君が思う自分の最高の幸せを聖杯に願って」

 

マスター分の叶えられる願いも、サーヴァント分に劣らない力だったはず。

この聖杯の力があれば、私は…………。

私はきっと全部…………。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

家に着いた後で、私はμと会話してより詳しくμの力を知っていった。

μは電子上に自然に生まれた生命……つまり本物のコンポイドなんだと思う。本人はその単語は知らないらしいけど。

 

μに消えて欲しくないという願いは、メビウスが消えて欲しくないと願って活動していたオスティナートの楽士という人たちの思いにも近い物で。

その強い気持ちはμに影響された者はこの世界で身体に具現化させることができて、武器にもなるらしい。μがしたのはその手助け。

あの大きな紫の光は、心のストレスが溜まったときに使えるオーバードーズスキルの片鱗なんじゃないかって。

でも、私自身が戦っていくつもりにはどうしてもならなかった。

 

私がμに私自身のために叶えて欲しい願いは、いくら考えても特に思いつかなかった。

私が願いなんてわからないと言うと、μは私が幸せになれるように色々提案してくれた。

多分それは、多くの人が幸せだと思うような傾向に基づいてるんだろうと思う。

例えばμは高校生活はとても楽しく幸せだと思うから、家にこもるくらいなら高校へ行ったほうが良いと言う。

 

μは自分がサーヴァントとして持ち込めた、オスティナートの楽士たちの作った曲をたくさん歌ってくれた。

μってこんなに感情を込めた歌もたくさん歌えるんだ……って驚いたし、心が動かされた。

そのたくさんの歌の中には、共感する部分も結構あった。

でも単純に勇気をくれるというよりは、暗い気持ちにも寄り添ってくれるという曲が多くて、自分の辛い自己嫌悪感を仕方ないと言ってくれてるように感じたんだ。

そしてとても不思議で、聞くたび自分の辛い感情をμが吸い取ってくれてるかのように感じて。

おかげで少しは心が癒やされてきたのかもしれない。高校に顔くらい出してみるかな、辛ければすぐに逃げてもいいしって思えてきた。

 

そして数日後には私が登録されてる月海原学園へ登校してみたけど、

ツツジ台の学校とは全く違う面子だったからすぐに逃げるほどの恐れは感じなかった。

それでも人と話すのはまだ怖かったけど、休憩時間に誰とも関わりたくなくてμの曲を聴いてたら、

漏れてた音から興味を持ったリト族の子が話しかけてきてくれたからそこから広がって結構話せるようにもなって、普通に高校に行けるようになった。

学校生活は辛くはないけど、それとは別に心は少し辛い。

今のツツジ台の人々と自分を比べて、自分は普通に学校に行けていて……。

でもこの世界で必要なことなんだと自分自身の心を納得させて、学校に通ってる。

 

 

そう、この聖杯戦争での立ち回り方についてもよく考えた。

 

μの力は今はとても弱い。それはμの歌に強く共感した人が少ないから……だけどその大元の理由は更にある。

そもそもこの世界は聖杯戦争のために用意されたパラディウムシティであって、もともとがμの支配下のメビウスとは違うから。

μが願いにより世界を改変する能力を発揮するにはそれだけに値するパラディウムシティ内の人間の支持、すなわち強い共感が必要なんだ。

NPCやマスターが賢者の石というパラディウムシティを維持するためのユニットだと思い出すと、合点がいく。

 

μの力よる世界の改変能力は、強さ以外にも制限がある。

この世界を仮想世界だと認識してない人間……すなわちほとんどのNPCにはその力は通用しやすい。

ごく最近の記憶なら消したりとかもできるから、私が怪しまれそうな行動をしてもμはその目撃者の処理ができる。

 

逆に仮想世界だとわかってる人間……すなわちマスターやサーヴァントには通用しにくい。

μが作り出した物体も、それがμの力で作り出されたと気付きやすい。

特に人間や犬とかは違和感が強くなりやすくて、データの塊のように見えたりもするらしい。

庭のグールギラスが普通に見えてるのは、知能が低いからか本来は造形物だからかで例外っぽい。

マスターが能力で出した武器や、サーヴァントの宝具の実体にも直接の影響は与えられなくて間接的に出したもので戦うしかない。

 

後は死者を生き返らせることができないのと同じで、直接命を奪うこともできない。

願いによって生まれた物体が、他者の死に影響することはあるけど。

 

沢山の人々に影響を及ぼしそうな願いほど、多くの人間の支持の力が必要になる。

μが出したグールギラスだって、私と私の周りちょっとだけの影響に留まる程度のあの大きさだった。

高校1つ分くらいの人間を強く共感させられれば、μが元のメビウスで振るえた程度の力は使えるようになるかもしれないと言うけど。

 

 

それでも私が他のサーヴァントと戦うための手段としてまず一番に考えたのは、やっぱり馴染み深い怪獣たち。

私の元の世界、ツツジ台の維持には私の作った怪獣が活用されていた。

怪獣は世界を維持するための破壊者で、私の意思のもと世界を作ったり修理したりする創造者で。

ところが、μの能力を用いれば怪獣など介さなくても世界を変えることができる。

じゃあ怪獣にこの世界での意味はあるのかと思った。

でもそんなの、考えるまでもなかった。

怪獣は元々人間を脅かし、ヒーローと戦う存在。

すなわち他者への攻撃、そして戦闘という面で活躍させればいい。

μの力がどんどん強くなれば、アレクシスのインスタンス・アブリアクションのように実物大サイズの怪獣を実体化させることもできるはず。

 

ほかにもこの世界には、自律行動型のロボットが色々いる。

機械でできた生き物や知的生物も存在するけど、μがステータスを確認すればプログラムで動く本当のロボットかどうかは判別できる。

例えば防衛隊や警察では、フルクラム帝国っていう所の技術をもとにした機動兵ってロボットを使ってるのをよく見た。

μの力でハッキングさえ出来れば、そこからの命令や操縦くらいはドローンを飛ばすみたいに何とか自分でできるかもしれない。

 

そして、小役に関してはデジヘッド達が担当してくれる。特撮に出てくる戦闘員のような役割といったところ。

μの曲に心酔して依存性が高まってきて、そして世界への不満や欲望の感情が強く外に出てしまった人間は精神を暴走させていきデジヘッドになっていく。

デジヘッドはμの音楽を聞いてる間はさらに凶暴化し、怪人のように体の一部がノイズのようになったり、黒い装甲や武器を纏ったりもする。

デジヘッドは元々のメビウスでは現実世界へ帰りたいと思った人達を襲う存在だった……けど、この世界ではその在り方が少し変わった。

ここは仮想世界ではあるけど、それ自体はμとは関係ないし帰りたいと思う人も一部のマスターくらいしかいない。

だから、普段の危害性はほとんどない。

 

でも、μの歌の洗脳性に気付いて放送等で流されるのを強く阻止しようとする者、急いで逃げたりする者は襲う。

μ自体に危害を与える者も襲うし、μがこの世界に存在するためマスターとして依代となってる私に危害を与えようとする者も襲う。

デジヘッド達はμに心酔してるから、基本的にμの命令は聞いてくれる。

私は命令できないけど、今後私が楽士のように音楽をμに提供できれば命令もできるようになるはずという。

 

デジヘッドは危害を与えるとは言っても、基本的に殺しは望んで行うことはない。

もっとμの曲を聴いて欲しいという思いで動いてるから、死なせるよりは無理矢理曲を聴かせたり、

行動不能にはさせるけどまたμの曲を聴いて思い直す機会を与えたりで済ませる。

一応命令すれば、殺しまで能動的にさせることも可能ではあると言うけど……。

それにここは多種多様な価値観の持ち主が集まるから、他者が死のうと何とも思わない者がデジヘッド化したりしたらそれは少し怖いかも。

 

デジヘッドはこの世界が、仮想の世界だと認識してる人にしか認知できない。

つまり聖杯戦争のマスターやサーヴァントからは認知できるけど、NPCからは基本普通の人間と同じように見えて認知できない。

デジヘッドとの戦いを普通のNPCが見ると、ちょっと高度な喧嘩に見えるらしい。

それでも戦いを目撃した者は、デジヘッド化までの侵食度が影響されて少し上がるという。

勢い余ってサーヴァントがデジヘッド化したNPCを殺したりしたら、他のNPCからは殺人に見えたりするのかもしれない。

 

メビウスではほぼ全ての人間がデジヘッド化の素質があったらしいけど、それはメビウスにいた人間が少なくとも現実世界でμの歌に共感し、

更に現実での不満を抱えて仮想世界で欲望を叶えたいという者ばかりだったという前提があるから。

この世界の人間はそれに当てはまってない。どれだけμの歌を聴いてもデジヘッド化しない人間だっていっぱい居るはず。

放送とかで地道に広く歌を流して共感する人間に届くことを願ったり、不満や欲望を抱えてそうな人間にピンポイントで布教したりしなきゃならない。

奥の手は永久に聞かせ続けて脳内に刷り込んでしまうことだけど、そうする方法はまだ思い付かない。学校で一日中音楽を流せるイベントとかあれば……。

 

私もμの存在や曲に依存といってもいい感じではあるから、状態的にはデジヘッドになってるらしい。

まあ、欲望と言っていいのはμに消えて欲しくないという感情だけだからか力としては普段はほとんどない。

例えば、マスターの私が死ねばサーヴァントのμも消えてしまうから、

もしも私に危険が迫ればデジヘッドとしての力が出て高い身体能力で逃げたりできるかもしれない。

それにオスティナートの楽士と同じで、デジヘッドの姿を出そうと意識しなければ普通の人間の姿でいられる。

 

 

……私は高校に通いながらμの力を強く、そしてデジヘッドを増やしていくために学校の人たちへμの歌を聴かせていくことにした。

たぶんちゃんと学校に通うような人達の中には、他人の死をどうでもいいと思うような者はいないだろうと思って。

μの力が強くなれば、μが本来の姿の実体で各所でライブしたり大きな放送に乗せたりして布教できたり、

余力で人々の願いを叶えて強く依存させたりもできるのかもしれない。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  …………

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

結局昨日は徹夜で怪獣もDTMもいじってたけど、芳しくなかった。

今日も学校は普通に行ったし普通に授業を受けて、μの曲が放送で流れた。

私はコンピュータワールドで睡眠を取る必要が無い。それはこの世界でも同じ。

怪我とかはするし死ぬときは死ぬみたいだけど。それは最初にこの世界に呼ばれた時の実体験でよくわかってる。

でも、μの力は少しの傷を治すくらいなら簡単にできる。

怪獣を作るとき道具の使い方を誤って手傷ができたりしても、すぐに治してくれた。

 

 

放課後、私は考えていたことを調べるために行動を起こした。

やってきたのは私がこの世界にやってきたスタート地点。すなわち教会。

 

私は、元の世界に帰るための扉を一度ちゃんと確認しておきたいと申し出た。

神父曰く、新たなマスターが来たり帰りたいマスターが出たりするかもしれないから手短にとのこと。

 

果たして、聖壇の奥にその扉はあった。

扉は閉じている。開けたら吸い込まれて放り出されたりするかもしれないから、開けはしない。

でもマスターの私が扉に触れることが、マスターの元いた世界へと扉を繋ぐ鍵になると思って、私は扉に触れた。

そしてμも扉に触れる。

私は神父に聞こえないよう小声で話す。

 

「お願い、応えて。扉の向こうに誰かいたら……」

 

そう、私は扉の向こうと話そうとしている。

私はこの世界を、ツツジ台と別のコンピュータワールドのようなものだと思うようになった。

きっと聖杯のシステムからのハッキングか何かで、私はこの世界に召喚されたんだろうって。

そして、μはコンピュータワールドの管理者だったからこのコンピュータワールドを他と隔絶するための壁、ファイアウォールを一部解除する力があるという。

私は教会に入る前に、μと先に話を合わせていた。

 

「……アカネくん……アカネくんだねぇ……」

 

小さい上に少し掠れてるけど、声が聞こえる。

間違いない、この声はアレクシス。

私の怪獣を動かす能力を持ち、一緒にツツジ台を作り上げたアレクシス。

 

「……世界に外からのお客さんが沢山来るのは知ってたけど、まさか逆に連れ出されるとは思ってなかったよ。

 もう二度と話せないかと思っていたよ」

 

古いタイプのラジオの周波数を合わせるかのように、だんだん声が鮮明になっていく。

 

「アレクシス……応えてくれて、ありがとう。だいぶ待たせて、ごめん。

 私はたぶん今、別のコンピュータワールドにいてそこでは聖杯戦争というイベントが行われてる。

 そこで一緒に戦うサーヴァントとして召喚された、μの力を借りてそっちと話してるの。

 覚えてる? 私のパソコンに入ってたバーチャルドールのアプリ。

 まさか実際にこういう形で会うとは思わなかったけど……」

「あ、私がμ。マスターとして選ばれたアカネと一緒に、何でも願いが叶う聖杯を手に入れたいと思ってるの。

 他にもたくさん召喚されたサーヴァントたちと競って、最後まで残れたら聖杯が手に入るの」

 

μが実際に自分が話したほうが理解が早いと思ったか、アレクシスに話しかけた。

 

「ああ、本当にあのμと同じ声だ。どうもどうも、アレクシス・ケリヴです」

 

アレクシスもμに話し掛ける。

時間もないから、私は本題をすぐに聞く。

 

 

「アレクシス、私の無事が伝えられて良かった。

 それなら、私がいなくなってからそっちの世界はどうなってるの?」

 

怖いけど、確認しなきゃならない。今ツツジ台がどうなってるのか。

世界自体が完全に消滅してたら、もう聖杯の力でもどうすることもできないかもしれないから。

 

「君がいなくなった後も、ツツジ台はちゃんと消えずにコンピュータワールドとして存在しているよ」

「ああ……とりあえず、良かった……」

「でも、建物もインフラも全然直されないまま。生きてる人々が少しずつ頑張ってはいるようだけど。

 そしてそのうち、世界が造られた物だと理解する者も増えていくだろうねぇ。

 気づいてしまった者はどう思うだろう。大変じゃないかな」

 

……ツツジ台の人々が苦しんでいるのが想像できる。

でも、直接向き合うのはできない。怖い。絶対に受け止めきれない。

私の呼び掛けに答えてくれたのがアレクシスで良かったって、今強く思ってる。

他の人だったら、私の無事だけを伝えてすぐに逃げ去ってたと思う。

 

「そうだアレクシス、私の昔作った怪獣を再生したみたいに出してたでしょ?

 あんな風に町の管理怪獣も再生すればなんとか、これ以上人が苦しんだり死んだりはしなくなるかも……」

「ふむふむ、確かにそれはそうかもしれないな。

 アカネ君がそう望むなら、またやっておこう」

 

良かった。アレクシスはときどき勝手に動いたり信頼できないことも増えてきてたけど、私の望むことなら聞いてくれるはず。

一度壊しかけたものの心配をするなんて、私本当にどうしようもない……。

 

「ああアカネ君、聖杯で願いを叶えると言うけどなんでそんな事を信じるようになったんだい?」

「そうだね。ここは、私のツツジ台よりも上位の力を持ったコンピュータワールドだと思ってる。ちょっと不思議な設定も多いけど。

 私をツツジ台から攫うこともできるんだから、その力も強いんだろうって。

 だからここで最後まで生き残って願いを叶えれば、私のコンピュータワールドでの後悔も全部なかったことにできる……。

 消えてしまった存在も元に戻せる……。

 そして、本当に私が救われる世界も新しく作れるかも……」

「僕もそう思っていたよ。でも、今気づいた。そんなものじゃなかった」

「え……? どういうことなのアレクシス?」

「僕がいくら探しても今まで君のいるコンピュータワールドは見つからなかった。君が攫われた痕跡すらもだ。

 でも君の声が来る先を調べたら、その理由がわかったんだ」

 

アレクシスが間を開けて話す。きっと重大な話だ。

 

 

「それは確かにコンピュータワールドのような存在かもしれない。

 でも、存在している宇宙自体が僕やアカネ君のいた世界と違う。

 怪獣のブルトンが繋ぐような沢山の別々の宇宙が実際に存在していて、その別々の宇宙にあるんだよ」

「ええっ……!!」

「別々の宇宙に存在するんだから、僕が痕跡を辿ろうとしても全然見つからなかったわけだねぇ」

「じゃあ、μが言ってる自分の元いた世界も、別のコンピュータワールドとかじゃなくて、本当の別の宇宙ってことなんだ……!」

「だから、願いが叶うとしたら本当に現実世界にも、宇宙にも影響を及ぼせるレベルで聖杯は強力だと考えたほうがいいだろうねぇ」

 

すごく驚かされた。本当にスケールが大きすぎて。

しばらくするとアレクシスが言葉を続ける。

 

「僕自身もそっちの世界には興味が出てきたし、そっちの世界での君にも協力したいと思ってるよ。

 聖杯とか、そっちの世界の技術を学ぶことができれば、もっと完璧な君のための世界を作ることができるかもしれないからねぇ」

「……ううん、もうアレクシスと作る新しいコンピュータワールドの世界はいらない……。

 コンピュータワールドのレプリコンポイドを、もう私はたぶん人間のようにしか見れないから」

「あ、そう。変わったねぇアカネ君」

 

そう、アレクシスと世界を作って楽しくしてた頃の私はもういなくなってしまった。

 

「でも、そっちの世界は僕とアカネ君が作り上げた世界と違ってもっとみんなが冷たい世界だと思うよ。

 辛いと思ってた現実よりも、もっと恐ろしい面も存在するかもしれないねぇ。

 サーヴァントと一緒に競って生き残るって……それってまるで殺し合いじゃあないか。

 アカネ君、そんな中で大丈夫かい?」

「できる限りは……何とかしてみるつもり。

 例えばμの力でデジヘッドって怪人になった人達は私達のために人を襲うけど、命令しなきゃ殺すことはないはず。

 そしてμは限界があるけど、この世界で私のために願いを叶える能力を持ってる。

 それも大きな被害を出さないようにちゃんと内容を伝えた上で、色々なことを起こして有利に運んでもらうつもり」

「うん、ちゃんと言ってくれれば私はアカネの望みにできるだけ沿った形で叶えるよ」

 

μはちゃんと私のためを思ってる。他の人に被害が出る可能性がないようにするにはどうするか、帰ったら慎重に考えよう。

 

「そうか、何だかアカネ君の情動を込めた怪獣を巨大化する形で願いを叶える僕のやり方にも似てるのかな。

 μ君、この子、手がかかるから大変だねぇ~」

「ううん、アレクシスさん、μは大丈夫だよ。私の歌を聴いて唯一助けを求めてくれたアカネのために頑張るよ。

 アカネに幸せになってもらうために、出来るだけ願いを叶えるから!」

「そうだねμ。私達、これからもこの世界で協力してく。

 でも、どうしても必要なら……私はマスターの人を殺すと思う。大丈夫……。

 最後に聖杯に願えば、きっと死んでしまった人も生き返るから」

 

あ……私、今強がってしまってる。なんでだろう。

もしかしたら……μが勇気をくれてるからかな。

 

 

「それなら、アカネ君がそっちの世界で戦い抜くためのヒントをあげよう。

 レプリコンポイド達を怪獣で潰したいと思った、アカネ君の悪意や暴力性は素晴らしいほどに本物だ。

 アカネ君が過去の行いを後悔しようと、そういう感情を生み出す心の構造まで変えることはできないよ」

「え……?」

「自分の思い通りにならない世界だからって、別に悪い感情をすべて抑えて行く必要なんてない。

 その方がずっと辛いと思うよ。心が壊れて何もなくなってしまうかもねぇ。時々は出していかなきゃ」

「アレクシス、でも今の私、悪意とか湧いてこないんだけど……なんかそれ以外の感情もだけど……」

 

私はこの世界に来る瞬間よりも、変わったと思う。

自暴自棄さも、逃げたい感情もかなり薄れて。それでも物を壊したりといった、癇癪もまだ起こしてない。

そしてまだ何か心が周りを拒絶する感じはあって……と、μがそれを代弁するかのように。

 

「私が読めるパラメータでもわかったけど、アカネの心は欲望も出ないほど疲れ切ってしまってるの。

 自分から幸せを求めたり、強く感じたりもできないくらい。

 でも、昨日お寿司を食べて美味しくて少し嬉しそうになった顔を見て、私もすごい嬉しかったよ。

 この世界の学校も今は辛いことはないみたいだし、私も頑張って歌うから少しずつ心を癒やしていこうね」

「そう、欲望や悪意は戦う原動力となる感情でもあるし、しっかり出せるようにならなきゃだめだよ」

 

そうだね……私の心はまだ罪悪感や辛さに押しつぶされてる。

それが解かれる日は、きっと聖杯を手に入れるまで来ない。

薄れることはあるのかな。それも記憶が消えていくみたいでちょっと怖い。

 

「まあ……そういうことは考えなくても、私はμに力を与えてくれるμの歌に共感した人を増やすために、沢山の人にμの曲を聞かせてるから。

 μの力がもっともっと強くなったら、声だけじゃなくてアレクシス自身をこの世界に呼ぶこともできるかもしれないね」

 

μのように元の世界で私のための力となってくれた、アレクシス。

少し悪い雰囲気のまま急に離れ離れになったけど、またこの世界でも協力してもらえることはとても有り難くて。

会えなくなってから気付く有り難さって、きっとあるんだろう。

アレクシスも協力できるなら、私がこの世界で聖杯を手に入れるのもとても近くなるだろうな。

 

と、神父のそろそろ良いだろうかと言う声が聞こえてきた。もう少し話したいこともあるけど、ここまでにしておこう。

 

「時間が限られてるし、ここまでにしとくね、アレクシス……またこっちの世界で話せるといいね」

「うん、僕自身もいろいろ試してみるかな。頑張ってねアカネ君、そしてμ君」

「はい!アレクシスさん! いつの日かきっと、貴方の事も幸せにしてあげたいな!」

 

明るく応えるμ。アレクシスまで幸せにしたいって言うその生き方は眩しすぎて。

その強い光が私を照らした。μが私にこれから生きる希望をくれた。

μの力が今は強くなくても、情けなくても私は信じるから。

そう思いながら、私は扉の前から去っていく。

 

ツツジ台の皆様、そして……六花。

私、正面から向き合えないけど……そっちの世界、きっとどうにかするから。

 

どうか、このバカな神様を許してください。

そして忘れ去ってください。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

神父が扉へ対峙する。

この世界における言峰綺礼は本来はNPCだ。

すなわち、扉を通って抜けられる元の世界があるわけではない。

だから、彼が扉の前に立とうと扉はまだ暫くは新条アカネの世界と繋がったまま。

そして、μがマスターの世界との壁を一部解除したことによる音声の透過も、まだ効果は続いたまま。

 

「さて……扉の向こうの者。アレクシス・ケリヴと言ったか。

 こちらは聖杯戦争の監督役をしている者だ。

 聖杯戦争への外部からの介入は避けてもらいたい」

「……監督役ねぇ。

 そっちがこの世界から彼女を連れ出したくせに、よく言ってくれるじゃないか。

 世界にとって神様みたいな存在の彼女が消えてしまって、色々面倒になってるんだけれどねぇ」

「……色々事情はあるようだが、そう言われても私とてこのシステムに組み込まれた一員でしかないのだ。

 文句があるなら案内人のミザリィか、このシステム自体を作り上げた主催者にでも言うべきだろう。

 私はこの世界での役目を全うしているだけだ」

「本当かなあ? それならとっとと僕とアカネ君が話すのを止めさせれば良かったのに」

「それは、ある程度希望を与えたほうが彼女達は戦う意志を強めていくであろうからだ。

 出来るだけ参加の意志を強く持つ者が多いに越したことはない」

「まあ、話を妨げなかったことには感謝するよ。アカネ君にはちゃんと生きていて欲しいからねぇ」

「フッ、それは単純な思いやりではないのではないか?

 大方、聖杯を強奪するため貴様がこの世界へ手をのばす足がかりにしたいという所か。

 あるいはすぐには死なせず苦しんでいく様を見てみたい……というのは私の想像だが」

 

神父の顔に、影が濃く走った。扉の向こうの声はそれに応えるように……。

 

「……アカネ君の感情の行く末を見たいと言ったら?

 それはある意味、思いやりと言えなくもないよねぇ。

 だってあのμっていうサーヴァント、アカネ君の心を本当に救えるとは思えないし。

 歌も一度聴いてみたけど、魂を助けて心を救う(Save)一方、心を奪い魂を捕らえる(Seize)ようにも聞こえたな」

「ハッ、その通りかもしれん。最初に私に懺悔のように話したことによると、

 あのサーヴァントは魂の救済者でありたいと望みながら救済が望まぬ形で実現してしまったからここに召喚されたのだからな。

 ただ一人になった彼女は、ただ一人の苦しんで自分を求める声をこの世界から聞いたという。

 まあ、貴様のことは聖杯戦争の管理者であるルーラーのサーヴァントへ伝えるからな。

 介入を試みるならば、手痛い反撃を受けるかもしれんと警告しておく」

「ご忠告ありがとう。反撃を掻い潜れるようにいろいろ考えてみるよ……」

 

会話が終わると、神父は扉に付与された音声の透過を解いていく。

洗礼詠唱。代行者が習得する魔術には解呪の効果があった。

 

神父が立ち去り、扉だけが残る。何も音のない空間が残った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

そういえば、μは聖杯に叶えたい願いをちゃんと持ってる。

私のためになりたいと言うけど、それだけじゃない。

どんな事があって、聖杯が絶対に要るほど強く願いを持つようになったんだろう……?

 

   μの心の奥に踏み込みますか…?

 

    踏み込む  踏み込まない

 

……まだ聞くことはできないな。今はまだ、聞いてしまってこれ以上抱え込みたくない。

でも、私は私のためだけじゃなく、私に勇気をくれたμのためにも聖杯を得るため戦うから。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

キャスター

【真名】

μ(ミュウ)

【出典】

Caligula Overdose

【ステータス】

筋力E 耐久E 敏捷B 魔力A++ 幸運EX 宝具A++

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

陣地作成:A+

 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。

 人々の欲望に呼応すれば、建物だっていくらでも作ることができる。その構造も自由。

 その中で流れる歌はμに影響された者へ力を与える。

 

道具作成:A

 魔力を帯びた器具を作成できる。

 人々の欲望の力のある限り、あらゆる道具の作成が可能。

 

【保有スキル】

バーチャルドールμ:A

 人々の感情を受け止めて歌う、その在り方。

 その感情の力は、多くの人が強く想うほどμに力を与えてくれる。そしてμ自身も影響されていく。

 

カリスマ(偽):C-

 仮想世界に人々を招き世界を運営していたことにより与えられたスキル。彼女の歌に共感している者をまとめ上げることができる。

 しかし帰宅部のような造反者、エゴヘッドのようなあまりに自分勝手な者までは自身の力ではどうにもできない。

 

仮想世界の元管理者:C

 元々自分が作った仮想世界の管理者だったのが、この聖杯戦争の一部として取り込まれたことによるスキル。

 マスター、サーヴァント、更にはNPC、道具や物体に対してもパラメータや説明文として読み取れる情報を把握できる。

 ただし今の彼女には管理者権限が与えられていないので、直接会って時間をかけて徐々に読み取り把握しないといけない。

 写真等から間接的にもある程度はパラメータを読み取れる。また、能力や道具による隠蔽や偽装には無力。

 この世界内にさらに存在するコンピュータに関しても、力が強くなるほどハッカーのように干渉できたりする。

 人物の心の声や記憶を読むこともできるが、力が弱いうちは許可された場合しか読み取れない。

 

【宝具】

『あなたを楽園へ連れていってあげる(レネット・インバイツ・ユー・イントゥ・オービット)』

ランク:A 種別:対心宝具 レンジ:- 最大捕捉:1~∞人

 ネットの世界メタバーセスで人々の思いを受け生まれ、苦しんでいる人々と話してネットの世界へ招待する彼女の在り方そのもの。

 人々からμへ向ける感情の形。現実世界で彼女の歌に強く共感した者を、仮想世界メビウスへ呼び込む。

 

 しかしメビウス内でμを想いながら黒い感情が強くなりすぎると、人々はデジヘッドという怪物へ変わっていく。

 黒い装飾品を体から出し、更に依存度が高い者は様々な武器を使用する。

 サーヴァントになるに当たり、メビウスという世界の概念も聖杯戦争上に統合されている。

 

『幸せだけでできた優しい世界(エターナル・ユートピア・メビウス)』

ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1~∞ 最大捕捉:1~∞人

 彼女がもう一人の意思を持ったバーチャルドールと共に作り上げた、メタバーセス上に存在する仮想世界、メビウス。

 メビウスでは呼ばれた人々の願いがμの力により叶う。μが人々に返す想いの形。

 ただし聖杯戦争の一部として取り込まれるに当たり、その性質も変化した。

 

 この聖杯戦争のための世界にて、彼女がメビウスのように願いを叶えるため自分の好きにできる世界の領域は限られている。

 その領域の大きさは世界の人々がμの歌に共感して向ける想いの力の量に依存している。

 すなわち世界の多くの人々が彼女のことを強く思うほど、彼女は多く、大きく願いを叶えることができるようになる。

 

『■■■■■なんて要らない、理想だけ見て(ラスト・ティル・ナ・ノーグ)』

ランク:■■ 種別:■■宝具 レンジ:■~■■ 最大捕捉:■人

 μはメビウスの人々から向けられる思いを、全て自分で受け止めようとした。

 欲望、不満、不安、恐れ、憎しみ、怒り、嘘、■■■■■■■■■■■■■■■■……、とにかく全てを。

 しかし楽士たちの扇動によりその想いは更に強く偏ってしまい、彼女の性質までもが引き込まれてしまった。

 そして、最後の楽士の最後の後押し。これにより全てが決した。

 彼らの想いはとても強すぎて、この世界でも同じ想いを受け付けたとき増幅させていく力となる。

 そして最後にバーチャルドールμは救世主として、そして■■■として完成することになる。

 その時にサーヴァントとしてのクラスは■■■■へと変質するだろう。

 姿もデジヘッドのように、黒い装飾品を纏い……。

 

【weapon】

歌声

 人々の作った楽曲を歌い上げる力。それは感情を揺さぶり、さらにはずっと聞かされると洗脳のように脳裏に定着したり。

 

オスティナートの楽士の楽曲

 メビウスの世界においてμは人々をメビウスに留まらせるため、新たに作られる歌の力を使おうとして作曲者をスカウトしたのがオスティナートの楽士たち。

 その中でも特に楽士が一押しの曲を、一人当たり一曲分ずつ持ち込むことができた。

 

マインドホン

 黒いヘッドホンのような道具。楽士の制作したμの歌う楽曲を頭に響くように流す。

 メビウスが仮想世界と気付きμへの依存から抜けて現実に戻りたいと思った住人に被せることで、

 再びメビウスで過ごしたいと思うように再洗脳するため用いる。

 デジヘッドや楽士はμへの依存から抜けたいと思った住人をラガード(遅滞者)と呼び、彼らを拘束しマインドホンを被せることで再洗脳する。

 流す楽曲により洗脳する者の意思が反映され、記憶が一部消えたり性格が少し変質したりする。

 あくまで再洗脳するための道具なので、この聖杯戦争上でμからの影響を自然に受けたことの無い人間を1から洗脳するのは難しい。

 

【サーヴァントとしての願い】

 世界の人々が幸せでいられること。

 それはもちろんこの聖杯戦争における人々も。死んだり消えたりしてしまった人々も。

 

【人物背景】

 音楽作成向けの、ユーザーの組み込ませた音声を歌い上げるためのソフト、バーチャルドール。そのひとつがμ。

 沢山の情報が行き交うネットの世界、メタバーセスにて人々の歌を歌う中で、徐々にμとしての自我を持った存在が生まれた。

 μはもう一体の自我を持ったバーチャルドールと協力し、現実世界で苦しむ人々の精神を招き救うネット上の世界、メビウスを作り出した。

 

 μは世界の維持のためメビウス内で流す曲を増やそうとし、作曲者を楽士としてスカウトすることになる。

 しかし最初の楽士の本当の願いを、彼女が叶えることは出来はしなかった。

 苦しむ人々のため、本当に何でも願いを叶えられる力が欲しいという思いを彼女は常に抱いていた。

 

 しかし苦しみや欲望を歌う楽士の歌は、負の感情を引き寄せてしまう。

 μはそれらの感情を受け止めて、徐々に影響されて在り方も変わっていった。メビウスの世界に人々を閉じ込めるように。

 その中で現実に帰りたい気持ちを強くしメビウスを脱出しようとする帰宅部、それを止めようとする楽士たち。

 幸せの概念を詳しく理解しないμは人々がメビウスにいる事が幸せだと信じ、

 楽士に言われるように協力しながらその戦いを眺めていくことになる。

 

 その有り様によってはルーラーやセイヴァーの適性もあっただろうが、今の彼女では恐らく不可能だろう。

 

【方針】

 この聖杯戦争の中でも、自分ができる限りマスターの願いを叶えて幸せになってもらう。

 マスターのことは最初の楽士のソーンのように、ほかの人よりできるだけ優先したい。

 でも、力はまだぜんぜん足りなくて。マスターにはどうしても手伝ってもらわなきゃならくて、申し訳ない。

 そして強くなった私の力でも、叶えられる限界はあって。

 だから、マスターには聖杯を手に入れて、マスター自身の本当の最高の願いを叶えて欲しい。

 

【把握資料】

 ゲーム本編。楽士エンドの後という想定で作成。

 

 

【マスター】

新条アカネ

【出典】

SSSS.GRIDMAN

【性別】

女性

【能力・技能】

 才色兼備才貌両全の最強女子で皆から好かれている……というのは彼女がコンピュータワールドで作った設定を皆が信じているためのもの。

 怪獣に対する知識がマニア的に豊富で、自分で怪獣を考えてフィギュアの制作もする。

 機械やコンピュータには高校生にしては強い方。

 沢山のディスプレイを使ったデスクトップ環境を構築したり、ドローンを飛ばして他者を監視したり。

 

 μに影響されたためオスティナートの楽士達のように、武器を手に入れて身体能力を強くすることもできるが、自分自身が戦うことは望んでいない。

 

【人物背景】

 ツツジ台という街に住んでいる一介の高校生。クラスの中では注目される存在で、誰もが彼女のことを好いている。

 優等生的で人当たりが良く、誰にも優しい。

 正体はツツジ台という世界自体の創造主。

 彼女は現実世界の住人で、コンピュータワールドとしてツツジ台という世界をアレクシス・ケリヴと共に作り上げた。

 世界に時々現れる怪獣の創造主であり、怪獣の力を用いて世界を作り、また世界の不具合を排除する。

 ツツジ台の設定に沿わず自分を好きにならない存在や気に入らない存在をバグのようなものと思い、怪獣を用いて排除してきた。

 本来は内向的で小心者な性格で、自分がそんなこと気にせずいられるような世界としてツツジ台を作っていた。

 しかし、ツツジ台の外からの来訪者として怪獣を倒すグリッドマンが現れたことで、ツツジ台は変質していく。

 彼女もグリッドマンを倒すことを目標として怪獣を制作していくも、様々な装備で対処するグリッドマンにはどうしようもなく……。

 

【マスターとしての願い】

 私の為に作り上げた世界、ツツジ台でも結局私は救われない。

 そして人間のように意思を持った電子生命達を、私は沢山……。

 頑張って築いて来たものは無駄だった。希望は消えた。もう取り返しがつかない。

 でも、ここの聖杯ならきっと、なんとかできる。

 

【方針】

 優勝狙い。少しずつμの力を強くしていく。

 殺人はもうしたくないけど、どうしても必要なら……。

 

【ロール】

 月海原学園の学生。

 B-3マークライト街に、ツツジ台のアカネ宅が再現されたような家がありそこから通っている。

 通学手段として地下鉄も使える。

 

【令呪の形】

 本編に登場する怪獣、ゼッガーを簡略化したようなデザイン。

 右手甲に描かれており、触手部は対称性を持たず不規則に伸び掌側や腕にまで達する。

 なおμの力を用いて隠蔽することもでき、普段はそのようにしている。

 

【把握媒体】

 アニメ全12話。漫画版も内容はほぼアニメと同じなので把握用に使えます。

 参加時期は11話(漫画48話)の六花と対話する前。



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【オープニング】【本戦開始前】20 今はただ、己が栄光の為でなく マスター 静寂なるハルゲント サーヴァント ランサー メリュジーヌ/ランスロット・アルビオン

登場キャラクター
マスター 静寂なるハルゲント
サーヴァント ランサー メリュジーヌ/ランスロット・アルビオン

作者
◆KV7BL7iLes


■■■

 

 

 

あの日、美しいものを見た。

 

 

 

群れは、いつしか果てに消えた。

その姿を、ぼうっと見つめながら失墜した。

堕ちた竜。余分な「腕」。飛翔に邪魔な、くだらないもの。

それは地に落ちて、そして、終わる筈だったもの。

それに名はなく、意味もなく、ただ朽ち果てるはずだったもの。

 

――それを愚かにも拾い上げる、物好きがいた。

 

どうしようもなく愚かなものと。

どうしようもなく輝かしいものの。

 

それは、出会いだった。

 

 

 

■■■

 

 

 

端的に言えば、ハズレだった。

自分を召喚したマスターと名乗るその男は、ただの人間にしては少しはやるほうで、ただそれだけだった。

いや、実際そこそこではあるのだろう。ワイバーンを撃ち落とすことに特化した砲術に関してはそこそこやるし、軍や兵法が何たるかくらいのことも把握はしている。

だが、やはりそれ止まりだった。

一つや二つ秀でたことがあり、仮にもある都市の最上位執政官の座を戴くだけの武勲があったとしても――名を残すには、その男はあまりに凡人すぎた。

くだらない下積みと妄執のような一念が形を成して、形ばかりの名誉が与えられ、それを情けと知り己の愚かさを知りながら

 

「……も、戻ったか、ランサー」

 

今だってそうだ。

聖杯仕込みの敵に対して号砲を放ち、それが通じずに尚抵抗を続け、結局己を召喚した後。あの監督役の解説が終わった後、彼はこの一室に閉じ籠ったかと思えば、戦況把握と称して余程のことがない限り外に出ず引きこもりに徹している。

勿論何もしていない訳ではなく、むしろ普段から偵察や戦略、そして隠れ家の確保に向けて幾らかの行動は起こしている。

その情報収集意欲と警戒能力自体には褒めるところもあろうが、こうして閉じ籠ってばかりでは此方としても自由に戦えない。

 

「そんなにびくびくと震えなくても大丈夫さマスター。ここはまだ見つかっていないし、此方の攻勢は順調。今のところ、何一つとして問題はない」

「そ、そうか……ならばよし。引き続き警戒を続けろ。これまで通り、明確に戦闘の意思がないマスターを除けばこれを撃滅しても構わん」

 

そう言い残すと、彼は再び電子端末に向き合って悪戦苦闘を始める。

一応は執政官としての配慮か、はたまた目立つことで警戒されることを恐れてか、不用意な交戦をこうして封じている。

しかし、聖杯を手に入れるのであればその恐れも配慮も手緩いと言わざるを得ない。本戦開始まで耐えるにせよどうするにせよ、中途半端な立ち位置のまま立ち回るだけというのは、ランサーにとっては中々にストレスが溜まるものだった。

 

「……私を、私を笑うつもりか、ランサー」

 

そんな内心を察したのか、肩を怒らせてマスターが問うてきた。

口から返答を返す代わりに、ランサーは嘆息だけで己の意を示す。

 

……愚かだと思った。

元より人間に大した思いなど持っていないが、それでもこれが愚物に類することは明らかな事実であるだろうと。

下等と呼ぶには賢明さが勝るが、上等と呼ぶにも無様が過ぎる。さりとて並みのものだと言うには、その意思はどうにも狂っていて。

そういう風にしか生きられぬ者を喩えるのであれば、それはきっと、「愚か」というその一言だけなのだろう。

 

「……まあ、マスターが前に出ずとも僕には関係ないからね。君がそういう人間であるのなら、それはそれで問題はない」

 

事実、そういう風にしか生きられぬことを、咎めるつもりはなかった。

人生をただの一つにしか費やせぬものなど、あの妖精國には飽きるほど居た――というより、妖精という生命そのものがそういう風にしか生きられぬものであった。

享楽的で己の欲に塗れ、何より己が至上とする生き方を違えられぬ生命。存在意義を喪えば影となって彷徨う、生まれながらにして罪深き生命。それらと比べれば、人間であるだけ少しはマシと言えるかもしれない。

尤も、妖精と愚かさにおいて引けを取らない人間というのは、それはそれで中々に救いようもない気もするが。

 

「聖杯を狙うのなら、私が居れば事足りる。これは事実だからね。

 君は、何もしなくていい」

「何も――」

 

何も、しなくていい。事実として、必要ない。

マスターの存在さえあれば、ランサーの中に駆動するアルビオンのドラゴンハートは無尽蔵に魔力を生成する。その魔力を以てしてただ自分が薙ぎ払うだけで、並みのサーヴァントを圧倒するには十分だろう。

下手な軍略や加減など、最強種としての権能を振るう足枷にしかならない。妖精騎士として國の治安を守らなければいけなかった頃とは違い、一つとして遠慮する要素のないこの戦争に於いては、自分がただ一掃する上で何の障害もありはしない。

 

「ああ、その通りだ。だから君は、僕が聖杯を取ってくるまで安心してここで待っているといい。

 聖杯を手に入れたら、栄光でも富でも、好きな物を手に入れるがいいさ」

 

だから、そう言った。

それがメリュジーヌにとっての真実だ。

聖杯など今は必要ないが、聖杯戦争にわざわざ参加して負けるというのも癪に障る。すぐに全てのサーヴァントを撃滅し、この男に聖杯を手渡して去る。そのような作業に過ぎなかったし。

その後、この男が聖杯で何を手に入れようと、何の関心もなかった。

 

「栄、光」

「おや、違うのか。君はてっきり、そういうものに惹かれているんじゃないかと思ったのだけれど」

 

関心は、なかったけれど。

それでもその推測は、決して外れてはいないだろうと、メリュジーヌは感じていた。

文官としての地位が反映されたロールが与えられ、そのくせ実務でそういった地位に至るには判断能力と頭の回転が足りているようには見えず。

そのくせ、己の立場――マスターとしての権威を振り回すかのように己に命令するような言動が多分にみられたのは、自分がそういった立場や関係を意識していると明言しているようなものだ。

最早輝きなどあったのかすらも分からない、曇り果てたその姿は、哀れに固執したものの末路のようで。

 

……けれど。

それは、目の前の男にとっては、どうやら琴線だったようでもあった。

 

「――違う、ものか」

 

静かな言葉だった。

だが、メリュジーヌは気付く。理解する。その裏に渦巻く感情を。

事実、言葉を発する毎に、その情念によって言葉はぐらりぐらりと揺らいでいく。

 

「違う、違うものか。ああ――そうだ!私は名誉と栄光の為だけに戦ってきた!その為だけに骸の山を築き、あまつさえ、ああ――あの竜さえも手にかけた!」

 

メリュジーヌの分析は、決して間違ったものではない。

男を――静寂なるハルゲントという男を分類するのであれば、間違いなく彼は愚物に属しているだろう。

その身にそぐわぬ栄光を望み、雑多な塵芥の光を積み上げ、世界の平和への貢献にも放棄しながら邁進して。

そうまでして掴んだ地位と名誉は、やはり形ばかりのもので。その地位を誇れど、しかし同じ地位の相手には見下される程度のもので。

 

「ああ、そうだ、そうだ!私は見栄の為に友を殺した!あの友を自分なら越えられると!越えられるものを連れてこれると!そうして友を失った!すべて、すべて私の咎だ!」

 

……その動機には、一匹の鳥竜(ワイバーン)がいた。

ハルゲントのいた世界において、修羅の一角に数えられ、最強のひとつと謳われた鳥竜。世界を飛び回り、搔き集めたあらゆる魔具を使いこなし、同族の軍勢はおろか竜すらも容易く葬り去る鳥竜。

そして、彼が幼い頃に、同じ時を過ごしていた、鳥竜。

彼が、ハルゲントが言った幼い夢をあまりに信じるから、それから逃げることもできず、ただ幼い夢を――栄光を、追い求め続けて。

そして、その竜は――当世最大の簒奪者であった竜は、その生の終わりに、彼の男に手渡した。

 

「最後には、我が名誉のために……再び蘇り黄都に脅威を齎した友を、この手で撃った!友の――星馳せアルスの亡骸を、民に誇ってさえみせた!」

 

 

――そんな修羅をも打倒したという、最大の、栄光を。

 

 

「あの神父は言ったな!?『私の願いは叶っている』と!だがこのザマはなんだ!あいつから奪ってまで手に入れた栄光すら、こんな場所では意味がない!これから……これから私が一体どんな願いを叶えるというんだ!?」

 

メリュジーヌは、思う。

この男は、なんて愚かで。なんて無様で。なんと滑稽で。

ごうつくばりに己の欲しいものを求めるあまり、周囲がどう思うかなんて全く気にしないで。

 

「私が、私が欲しかったのは――なんだ!名誉か?栄光か?最後まで、私には、何も――あいつに並び立つものなんて、何も――!!」

 

そのくせ。

彼は、どうしようもなく。

理解して、しまっていたのだと。

己の感情の正体を知って、見ないふりをし続けて。

そんな有様で、本当に欲しいものを手に入れることなんて、永劫にできるはずもないのに。

 

「君は」

「その竜を、未だに友と呼ぶのかい?」

 

気付けば、既に問うていた。

問われた男は、まずその問いの内容に面食らったように身を引いた後、逡巡を隠すこともなく顔を覆った。

男の二つ名に違わない静寂の帳の中で、響くのは空調の無機質な音と、外から届く小さな喧噪の残り香だけ。

 

 

「……………………ああ」

 

そうして、男は口を開いた。

黄都二十九官。翅毟りにして静寂。そんな肩書きも名誉も、今はただ不要だと言うように。

ただのくたびれた、ハルゲントという男は、そうして一言、呟いた。

 

 

 

「………友だ。友達だった。アルスは、俺の、たった一人の、友達なんだ」

 

 

 

……こんな感情を、今になって知ることになるなんて思わなかった。

竜種である自分に、こんな機能が備わっているなんて、これまで知る由もなかった。

 

――嫉妬。あるいは、羨望。

 

自分と同じ最強という名を冠して、自分と同じように誰かに拾われて、そして自分にはない、欲しかったものを持っている、ただ一匹の竜。

彼女は、ずっとこんな――こんなものに焦がれて、あれだけの悪逆を為していたのか。

或いは、目の前の男も、こんなものに焦がれて、道を見失い続けたのか。

そう思うと、なんだか無性に、今の自分が馬鹿らしくなって。

自分の中の炉心が小さな炎を灯していることに、その時ようやく気付いた。

 

「……全く」

 

思わず漏れた溜息一つ。

この程度のことにも一々驚いて身を引くマスターに改めて呆れながら、それでも少しの声が上がる。

 

「君は、運がいいね」

「何を――」

「私をこうしてやる気にさせた、という意味で。君は、とても運がいい」

 

な、という声が耳に届く。

それは今まで本気ではなかったのかとか、もしかしてこれまでは裏切るつもりだったのかとか、そういう疑問符であることは想像に難くなかったけれど。

 

「先に言っておこう。というより、さっき君が言った通りなんだけど。

 君は愚かだ。名誉だとかに惚れて、『あいつに負けない』ってそれだけのことでとんでもないことをやらかす。

 振り回された方はきっとたまったものではなかっただろうし、元の世界に帰ったら迷惑をかけた人には謝った方がいいんじゃないかな?」

「……ぬう」

 

返す言葉もない、といった趣で俯く。

元より、自覚はあったのだろう。それでいてやめられない。やめられなかった。やめたらきっと、彼は生きていけなかった。そういう生き方しかできなかった。

それを厭う心すら残らず安らかに生を謳歌していたという意味では、あ彼女の方がまだ救いがあったのではないだろうか。

 

「……そして、それでも。君は、誇りたかったんだろう」

 

ついぞ、得られぬものだった。

美しいと彼女が呼んだのは、どこまでも見栄のためだったから。

愛はないと分かっていたし、それでも隣にいた。そして、彼女を守る為にこの身を差し出した。

そこまで滅私を果たして尚、得られずに終わったものだった。

 

……いや。

その実、得られてはいたのだ。

ランサーが知らぬところで、それは逢った。いつかの空、夢のおわりで。

彼女が焦がれた美しきものは、彼女を憎みながらも彼方への飛翔を見届けた。

 

されど、知りようはない。

どこまでも空を飛んでいった機龍は地に這う女の遺言を知らないし、もし知っていたとしても、彼女は最初からそれをもう一度聖杯に願うつもりもないだろう。

……元より、そんなものはないのだと知っている故に。

捧げられる愛はエゴの裏返し。どうしようもなく自己愛に塗れた、愚かな女の世迷言。

それを今更欲しがるつもりなどない。ないけれど。

 

「だから、次は伝えてあげてほしい。そこに、友愛はあったのだと。

 彼がそれをもう知っているとしても、何度でも、言ってあげてほしい」

 

――その言葉を、あげられる人がいるのであれば。

それはきっと、彼にとって、決して忘れられぬ宝の一つになるだろうから。

 

「この、聖杯戦争。私に祈りはないけれど、この一時において――君に私という槍を預けよう」

 

外装は蒼。――かの鳥竜と同じ。

異常性は「腕」。――三本目の腕に非ず、去れど飛行に不要とされた竜種の腕。

そして、名乗るは最強。――嘗て彼の世界で勇者の候補とされたものどもと、同じく。

 

 

「――我が名はメリュジーヌ。暗い沼のメリュジーヌ。これから君にとっての『最強』は、私だ。聖杯を取り、君にとっての最強を打倒して、これを証明しよう」

 

 

……ああ、そうだ。

与えられた名でいい。

かつて美しいものを拾い上げ、その翼に意味を与えたきみに。

もう存在する必要もなかった、その「腕」に意味を与えたきみに。

ならばわたしはそう名乗ろう、愚かなきみよ。

 

「その果てで。君たちは、最強ではない男と、栄光などないただの男として、存分に語らうがいい」

「……ああ。貴様のマスターとして、改めて命じる。聖杯を我が手に齎せ、暗い沼よ」

 

――ここに、改めて契約が結ばれる。

ただ愚かであることのみを突き詰めた男は、再び最強たる竜をその手に収める。

それは、決してその手に栄光を掴む為ではなく。

……今はただ、己が栄光の為でなく。

 

「だが、ひとつ言わせてもらう」

 

今はただ、己が友の為に。

 

「アルスは、強いぞ」

「望むところさ」

 

 

 

 

 

 

 

それは異聞にて空から失墜した、原初の竜種の亡骸である。

それは彼方の騎士の名を着名し、無窮の武練をその身に宿している。

それは竜種の炉心をその身に宿し、無尽蔵にして超高出力の魔力を滾らせている。

愚かなるものの腕に抱かれてかたちを得た、無垢にして孤高なる最強の幻想種である。

 

紅き竜(アルビオン)。妖精騎士(ランスロット)。

暗い沼のメリュジーヌ。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

ランサー

 

【真名】

メリュジーヌ/ランスロット・アルビオン

 

【出典】

Fate/Grand Order

 

【性別】

雌型

 

【ステータス】

筋力:C 耐久:A+ 敏捷:B 魔力:A+ 幸運:B 宝具:A+

 

【属性】

中立・悪

 

【クラス別能力】

対魔力:B

 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。

 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

 

陣地作成:B+

 自らに有利な陣地を作り上げる。

 

【保有スキル】

ドラゴンハート:B

竜の炉心、あるいは竜の宝玉と呼ばれる、メリュジーヌの魔術回路を指す。

汎人類史においては『魔力放出』に分類される、生体エネルギーの過剰発露状態。

“竜の妖精”として自身を再構築したメリュジーヌは、竜種ではないものの竜と同じ生体機能を有している。

 

無窮の武練:B

汎人類史の英霊、ランスロットから転写されたスキル。

どのような精神状態であれ、身につけた戦闘技術を十全に発揮できるようになる。

過度の修練により肉体に刻み込まれた戦闘経験……といえるものだが、生まれつき強靱なメリュジーヌにはあまり必要のないスキルだった。

このスキルの存在そのものをメリュジーヌは嫌っている。生まれつき強い生き物に技は必要ないのである。

 

レイ・ホライゾン:A

イングランドに伝わる、異界への門とされる「地平線」「境界」を守る竜(ミラージュ)の逸話より。

メリュジーヌはあくまで『妖精』としての名と器であり、本来の役割は『境界』そのものである。

……メリュジーヌ本来の姿に変貌するための手順。

 

【宝具】

『今は知らず、無垢なる湖光』

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:2~10 最大捕捉:1匹

 

イノセンス・アロンダイト。

自らの外皮から『妖精剣アロンダイト』を精製し、対象にたたきつけるシンプルな宝具。

ランスロットのアロンダイトの槍版。

ダメージは低いが、回転率はトップランク。

まるで通常攻撃のような気軽さで展開される宝具。

なぜダメージが低いかというと、メリュジーヌにとってこの宝具はあくまでランスロットの宝具であって自分の宝具ではない借りもの(偽物)だからだ。

 

『誰も知らぬ、無垢なる鼓動』

ランク:EX 種別:対界宝具

レンジ:20~500 最大捕捉:500匹

 

ホロウハート・アルビオン。

第三スキルによって『本来の姿』になったメリュジーヌが放つドラゴンブレス。

『本来の姿』になったメリュジーヌはもはや妖精と呼べるものではなく、その威容の心臓からこぼれる光は広域破壊兵器となる。

その様は境界にかかる虹とも、世界に開いた異界へのゲート(異次元模様)ともとれる。

使用後、メリュジーヌは『そうありたい』と願った妖精の器に戻れず、人知れず消滅する。

 

異聞帯のアルビオンは『無の海』を飛び続け、やがて死に絶えたが、どの人類史であれ『星に帰り損ねた竜』は無残な最期を迎える、という事の証左でもある。

 

【weapon】

通常は『今は知らず、無垢なる湖光』を使用。その他にも、上空を飛行し魔力弾を打ち出す『爆撃』等、数多くの攻撃手段を有している。

 

 

【人物背景】

妖精國ブリテンにおける円卓の騎士、その一角。汎人類史における円卓の騎士・ランスロットの霊基を着名した妖精騎士。ブリテンでただ一種の“竜”の妖精。

無慈悲な戦士として振る舞うが、その所作、流麗さ、そして他の妖精たちとは一線を画した姿から、妖精國でもっとも誇り高く、美しい妖精、と言われている。

 

彼女が存在した妖精國ブリテンはモルガンの術式により特異点化、汎人類史へと編入されたため、彼女の存在も英霊の座に刻まれた。

その経緯故に、彼女はブリテンの終わり――あの奈落の穴を破り、空高く飛翔した最後の記憶を残しながら現界している。

 

【サーヴァントとしての願い】

なし。強いて言うなら、マスターが聖杯を手に入れた暁にはアルスとやらとどちらの方が強いのか試すこと。

 

【方針】

聖杯を狙う。

 

 

【マスター】

静寂なるハルゲント

 

【出典】

異修羅

 

【性別】

 

【能力・技能】

『黄都二十九官』

 

黄都において政治の実務を担当する最高位の執政官の一角。といっても政務能力に突出して秀でた点はなく、

一応最低限の根回しくらいはできる手腕を持っており、

 

『羽毟りのハルゲント』

上述の黄都二十九官に上り詰める為に彼が積み上げた研鑽とそれに由来する二つ名。多くの鳥竜(ワイバーン)殺しの功績を積み上げ続けた彼は、こと鳥竜殺しに関しては間違いなく第一人者である。

戦術眼などに関しても突出した訳ではないが、経験から培ったプランニングは定石として鳥竜の効率的な殺戮に通用し得るものであるし、彼が工術によって作り出す対鳥竜兵器の巨大な機構弓『屠竜弩砲(ドラゴンスレイヤー)』は鳥竜の鱗を貫通し絶命せしめる程の火力を有している。

とはいっても、その策略を臨機応変に活用し常識外れの相手を相手取るほどの頭の回転や、鳥竜の更に格上である竜に対しての対抗手段などは持ちえないからこそ、彼は無能だと謗られているのだが。

 

【weapon】

上述した技能における、執政・最低限の根回し能力と軍の指揮能力。そして、彼自身が作り出す『屠竜弩砲』が主な武装といえる。

 

【人物背景】

ある世界における最大の都市・黄都において、その執政官のトップと称される黄都二十九官の一人。

しかし、彼がその地位に至るまでに行ったこととして代表的なものは鳥竜(ワイバーン)討伐の功をひたすら積み上げ続けたのみであり、本人に傑物として認められる程の才があった訳ではない。

そうまでして権力を追い、栄光を希求したのは、幼い頃に友となった。

 

――そして、その友を、鳥竜の突然変異であり最強の英雄の一角とも謳われた星馳せアルスを討ったことで、その栄光が不動のものとなった後から、彼はこの聖杯戦争に招かれた。

 

【マスターとしての願い】

もう一度、ただの友として、彼と。

 

【方針】

聖杯を狙う。

 

【ロール】

役所の閑職勤め。

 

【令呪の形・位置】

三本の腕のような紋様がひとつあり、そこから羽のような形の紋様がふたつ生えている。位置は右手の甲。

 

【把握媒体】

Fate/Grand Order:アプリゲーム。ランサーは二部六章『妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ』のメインキャラクターの一人として登場する。

異修羅:カクヨム連載作品だが、書籍版が既刊五巻となっている。今回の候補作においては書籍版未収録の内容を含んでいるが、書籍版の進度から見ると次巻(六巻)には挿入される見込み。



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【オープニング】【本戦開始前】21 日瑠子&キャスター マスター 日瑠子 サーヴァント キャスター フリン

登場キャラクター
マスター 日瑠子
サーヴァント キャスター フリン

作者
◆Uo2eFWp9FQ


───布瑠部 由良由良止 布瑠部

 

 

寄せては返す波の音だけが、此処には満ちていた。

此処は右も左も、上も下も、一寸の先も果て無き遠方も、等しく白む霧に覆われた世界であった。移ろう時の寄る辺に従い、返しては寄せる波の音は、この海とも大河ともつかぬ不可思議な空間において、何億年もの殆ど永劫に近しい昔から絶え間なく響き渡るのだった。

 

 

───掛けまくも畏き伊弉諾大神 筑紫の日向の橘の 小門の阿波岐原に

 

 

それは一時も止むことはなく、ただ打ち寄せるがままにこの白き世界を揺り動かし、伝わっていく。

返しては寄せる海。輝く百億の星々は波間に昇り、煌めく千億の光条と共に明ける薄明に付き従って広漠たる水平線の果てに沈む。

 

 

───禊ぎ祓へ給ひし時に 生り坐せる 祓戸の大神等

 

 

空を巡る星々は天球の回転に従って幾重にも折り重なる光の軌跡を描く。

時に、昏き天蓋にかすかな流星が長い光の糸を曳いて虚空を斜めに、ほの白い波頭の彼方へ墜ちていった。その光は消えがたい残傷となって星々の間に記憶を留めた。

 

 

───諸々の禍事、罪、穢 有らむをば 祓へ給ひ

 

 

漠々たる白き星海の只中を、声なく漂うものがあった。

それは葦船であり、鉄の揺り籠であり、大いなるものを封ずる人の柱でもあった。

今はただひとりの少女が眠る棺でもあった。古事記に曰くヒルコの神が流された神話が如く、白人(しらひと)めいてその肢体を横たえるは、かつて遠き国の皇たる者であるものか。

少女は眠る。その身に宿す穢れを流し、清め祓うその時まで。

ただ、寄せては返し、寄せては返し、返しては寄せる波の音を聞きながら。

鉄の葦船の中心で、百億の昼と千億の夜を、繰り返して。

揺蕩い、微睡み、目覚める時を待ちながら。

 

 

───清め給へと白す事を 聞こし食せと 恐み恐みも白す

 

 

『皇の現人なる者よ、汝は何をば願わん』

 

寂静たる悠久の時の果てに、響くものがある。

それは声だ。少年にも少女にも、あるいは青年にも女性にも老人にも聞こえる声。

願い、夢、希望。

あるいは、そう。あらゆる罪を許される時のことか。

 

『かつて、月の彼方に大いなる死を封じた者がいた』

 

少女は夢を見る。

抗えぬ絶対の死を前に、自らの全てを対価に"奇跡"を為し遂げた誰かの夢を。

今もなお十字となって死と悪意とを堰き止める、原罪背負いし聖人が如き彼の夢を。

 

『かつて、朝霧の四辻に惑い、果ての真実を掴み取った者がいた』

 

少女は夢を見る。

誰もが迷い、惑い、足を止めるであろう霧の中を彷徨いながら、尚も諦めぬ誰かの夢を。

荒ぶる神の罪を祓い、穢れを流した救国の偉業成せし彼の夢を。

 

『かつて、神の卵へ至り涅槃への無限の飛翔を果たした者がいた』

 

少女は夢を見る。

それは人食いの悪魔が辿った血と肉と骨の旅路であった。愛と希望の物語であった。

違えてしまった世界の弦を張り直す、それは三身にして一体たる者の夢だった。

 

『彼らと同じ道を、貴女は歩んだ。ならばこそ、アカシャの海に溺れ沈む末路を認めはしないだろう。

皇よ。白人(しらひと)たる蛭子の名を冠せし、天照す子よ。汝は何をば願わん』

 

少女の意識が揺れる。

本来、それはあり得ない事柄ではあった。

既に現世のコトワリを脱し、幽世のものと成り果て流される彼女は、天津罪と国津罪の清浄を果たす時まで、最早目覚めること叶わぬ身であるはず。

だからきっと、これは偶然ではないし、あるいは奇跡の類でもない。

 

そして、少女は瞼を開く。

 

煌めくが如く艶やかな睫毛を震わせて。

透き通る瞳を、朝霧の白の中に輝かせながら。

現実と夢想の地平の彼方にて。

本来在るべき世界とは、異なる世界で。

本来在るべき肉体とは、異なる肉体で。

光。結晶。聖なる晶の石を前に。

僅かに、手を伸ばして───

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

たらちねは いかにあはれと 思ふらん 三年に成りぬ 足たたずして

 

───大江朝綱 『伊井諾尊』

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「悠久に渡る添務め、真に大義でした」

 

戦いを控えた明くる朝の海岸にて。

最早残骸とさえ形容できぬほどに壊れ果てた、かつて勇壮なる威容を湛えていたであろう鋼鉄を前に、少女は真実心の底からの感謝と労いを込めて、言葉を発した。

悔恨はなく、憂いもなく。ただ、ただ、静謐なまでの感情を添えて。

物言わぬはずの鋼鉄は、しかしその言葉を聞き届けたかのように、やはり静かに姿を消していく。少女はそれを見届けると、もはや言葉なく踵を返し、歩みを進めた。

 

此処は明るき世界である。水平線の上に浮かぶは白む太陽であり、燦々たる陽光は暖かな日の恵みを、地に生きる万象に向かって等しく投げかけていた。

久しく見ることの叶わなかった光景である。久しく、とは比喩のそれではない。数年や数十年などではなく、少女は人の身では知覚することすらできないであろう悠久の時を、朝霧が如き白の占める大海にて流されていたのだから。

 

少女は歩く。明確な意思を伴って、明白な未来を指し示して。

あるいは、そう。胸に秘めた願いに従ってか。

 

「キャスター」

「此処に」

 

声と共に現れるものがある。それは年若い青年の姿であり、小柄な少女の下へ跪く忠臣としての在りかたでもあった。

静かに瞼を閉じ、主たる少女の言葉を拝聴せんとする姿勢は、かつて彼が在った「東のミカド国」における王への畏敬にも似ていた。

 

「キャスター。英雄の一人として我が元に在る者よ。貴方は自らの願いを持たないと、そう仰いましたね」

「はい。我が剣、我が歩みはただ、陛下の御心がままに」

「……陛下、というのはやめていただけませんか。私は既に彼の国の皇ではなく、一介の小娘として此処に在るのですから」

「立場や位など関係ありません。貴女は真に国体の危機を憂い、その身命を賭して万民を救った御方であればこそ、我が心に満ちる曇りなき忠義と畏敬を以て貴女をお迎えに馳せ参じたのですから」

 

が、しかし。と青年は続ける。

 

「貴女がそれを望まぬと仰るのであれば。そして此度の聖杯戦争に際しましては、誠に不敬ながらも"マスター"とお呼びしても?」

「構いません。それと、できることなら口調も改めて結構です。貴方はその辺り、不慣れであるのでしょう」

 

それだけを告げて、陛下と呼ばれた少女は彼方を見遣る。

そこには昼光によって照らされた、人々の営みがあった。白き建築物が立ち並び、行きかう人の流れは留まることなし。そこには笑顔があり、命があり、未来があった。

 

「良い国です」

「ええ。彼らには心胆からの笑顔があり、明るい活気を以て栄えている。良き国であると、そう言えます。

……ここが再現された偽りの都市でなければ、の話ですが」

 

キャスターの言は事実であった。ここに生きる人々は本物ではなく、忠実に再現されたNPC、書割の人形劇にも等しい世界であるのだと。

 

「……かつて私は彼の国の皇でした。しかし葦船による漂流は永きに渡り、既に国も人も、あるいは人という種すら彼の地には存在しないのかもしれない。我が身は既に流浪の異人であり、帰る場所も還る世界もありはしないのです」

 

少女は下腹部を柔らかに摩り、告げる。そこにあったはずの穢れは、神代の遥か昔から続く国そのものが育んだ罪の全ては、既に一片の曇りもなく、完全に浄滅され消え去っていた。

それはつまり、永劫にも等しい時間の終いに完遂される禊が、ついには果たされた証左であった。同時にそれを為し遂げた少女の現在が、既に帰り様もなき悠久の時の果てに坐する事実も、また。

 

「それがために御身は願いを持たぬ、と?」

「我が身ただ一つがどうあれ、国体とそこに生きた人々の未来は紡がれました。その事実を以て日ノ本に生まれ落ちた日瑠子としての願いの全ては果たされたと断言できます」

 

しかし、と続ける。

 

「悠久の時の果て、それでも尚人々の営みが続いているならば。

我が国にあらずとも、未だ尊き人の意思が存続しているというのなら。

世界に仇なす可能性がある聖杯を、私は見過ごすことはできません」

「奇跡を否定する道を選択するのですか」

「奇跡そのものを、私は否定しません。それを真に必要とする者も、また。

故にこそ、私は見極めたいのです。聖杯と言うものの存在を、それを手にせんと願う者も」

「御意」

 

言葉と同時、更に現れる影があった。それは身の丈八尺を超える長身であり、およそ人ではあり得ぬ体躯を持つ者。

───俗に、悪魔と呼ばれる者。

 

「国を憂いて幾星霜、必殺の霊的国防兵器コウガサブロウいざ見参。

我が刃、もはや護国に振るうことはなく錆びつくばかりと嘆きもしたが、まさかこのような機会に恵まれるとはな」

 

それは金と翠緑を基調とした、逞しき剣腕を持つ偉丈夫であった。

人にはあらず、しかして人に近しきその姿。武に通ずる者が見たならば、畏怖と畏敬を込めてこう呟くだろう。天下無双此処に在り、と。

龍神・コウガサブロウ。諏訪大明神の祭神であり、かつて人であったとされる蛇神なる大悪魔である。

彼は歓喜と言い知れぬ忠節の念と共に、常の荒々しさからは想像もできぬほど恭しく、手と膝を地につかせる。

 

「今も貴き御国の陛下よ。御身が往かれる道の先、立ち塞がる敵あらば、我が身は正しく全身全霊死力を尽くして切り拓くのみ。

いざ───この明日見えぬ世界に勅令を」

「私の言は何も変わりません。決めたのならば果て無く往くのみ、されどその道行は長く険しく、私一人では決して達成などできないでしょう。

ならばこそ、貴方方の力をお貸しください。人の未来を憂うのならば、今後よしなに───いえ」

 

こういう時は、こう言うのでしたね、と口調を正し。

 

「今後ともよろしく、ですね」

 

少女は、国を背負う公人貴人としてではなく、年相応の娘であるように、悪戯っぽく笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

【クラス】

キャスター

 

【真名】

フリン@真・女神転生Ⅳ

 

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷B 魔力A+ 幸運A 宝具EX

 

【属性】

中立・善

 

【クラススキル】

陣地作成:-

自陣に有利な陣地を作成するスキル。現在は失われている。

 

道具作成:E+++

宝具である必殺の霊的国防兵器を顕象するために必要な憑代の作成を可能とする。

 

【保有スキル】

魔討の英雄:EX

人類の生存領域が極限まで縮小され、神と悪魔の最終戦争までもが地上で巻き起こらんとしていた怒濤の時代において、神魔の悉くを討滅し人という種に希望の光をもたらした英雄。

キャスターは数多の神霊・荒御霊に師事した多様な魔術、人心を得る話術、人々を照らす光たるカリスマなど、様々なスキルを持ち合わせる。

彼はその功績において紛れもなく救世の大英雄であり、神魔との決別という人類史における極めて重大なターニングポイントを担った歴史の転換点であり、無数の平行世界における基点でもある特異点である。

 

召喚術:EX

手にしたガントレットを通じて霊体を喚起する魔術。生体マグネタイトと呼ばれる、魔力とは別系統の精神的エネルギーを用いての霊的存在形成。

術式自体はキャスター本人ではなくガントレットに依存したものであるが、生前において神話体系の別すら無視して主神級悪魔をも御した召喚術の力量はキャスター本人の霊格に依存したものである。

前述した通り元となるエネルギーは魔力とは別口の生体マグネタイトに拠るものであり、現在貯蔵量は極めて少ないため、霊格の低い下級悪魔の使役に留まっている。

 

神殺し:EX

答えなき事象に答えを与え、形なきものを器に封じ、順わざるものに方向性を与える。人間のみが持つ「存在を定義する力」。

原初の時代、大いなる意思は人の自意識と言語に観測の力を付与した。神魔は言葉持つ人類在って初めて存在意義を確立し、言葉に押し込められた時点で言葉(YHVH)に縛られる。

数多の自然の脅威、理不尽や災厄あるいは奇跡や救いを観測・認識できるようになったことで畏敬から信仰が形成され、形而上学的存在を人間の認識し得る領域へと固着化させた。

人が望めばその方向性を変容させることも可能であり、物理的に引き起こされた存在消滅の事象を確定させることによる、謂わば「復活の阻害」を可能とする。

 

【宝具】

『必殺の霊的国防兵器(まがつひのかみのかしり)』

ランク:C~A++ 種別:対軍宝具 レンジ:不定 最大捕捉:不定

第二次世界大戦の際、日本国の霊的防衛のため召喚された強大な悪魔たち。

キャスターの操る悪魔召喚術は生体マグネタイトに依存したものであるが、「日本国の象徴たる皇の直系」をマスターに据えたことにより宝具登録されたこの悪魔たちは、キャスター単独ではなくマスターの日瑠子との共同魔力によって直接召喚・運用される。そのため未だ魔術回路が開き切っていない現在は、壱番「龍神・コウガサブロウ」と後述する第二宝具「戦艦大和」のみの使役に留まっている。

内訳は以下の通り。

壱番 龍神・コウガサブロウ

弐番 英傑・テンカイ

参番 英傑・ミチザネ

肆番 天津神・オモイカネ

伍番 英傑・ヤマトタケル

陸番 邪神・ヤソマガツヒ

漆番 天津神・タケミカヅチ

 

捌番・破壊神マサカド公は後述する第三宝具に別個登録されている他、玖番・女神イザナミはマスターである日瑠子の来歴により契約から除外されている。

 

『鳥之石楠船神・霊的国防戦艦大和』

ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000

キャスターが生前保有していた移動要塞「アメノトリフネ」と、日瑠子が搭乗していた葦船たる戦艦大和(及びそれと同化した斎藤)が融合することにより、欠番となった霊的国防兵器その玖の座に収まった姿。

神秘性そのものはランク相応のものしか持ち合わせず、なんら特筆した異能こそ持たないものの、純粋な質量と火力に関しては圧倒的。

全長263m、出力153553馬力の弩級戦艦が水上のみならず三次元空中機動を為し遂げた上で神秘にも通じる火力を有し、なおかつ軍事速度で巡航可能な時点で文句なく聖杯戦争の規模を逸脱した脅威なのだが、加えて白兵戦力(他のサーヴァント等)を内包することさえ可能であるなど、物理面からは最早攻略不可能とさえ思われる存在である。

欠点としてはその神秘性の低さによる防御面の意外な脆さ。勿論見た目相応の分厚い装甲を持つが、魔術面から見れば対魔力相当の防壁を持たず、魔力干渉に対しては脆弱。そもそもが悠久の時を漂流した葦船を素体としており、完全修復が成されるまでは結構ボロボロだったりする。

 

『妙見菩薩・狂神八幡大新皇』

ランク:EX 種別:対国宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000

必殺の霊的国防兵器その捌にして、日ノ本最強の大怨霊たる破壊神・平将門公の顕現。

純粋な使役悪魔としても超級の戦力を有し、また帝都守護に際しては逸話再現・信仰補正との兼ね合いもあって神霊級サーヴァントにさえ匹敵する超越存在ともなりかねないが、この宝具の真価は別にある。

大絶滅たる「神の御業戦争」に際し、人類生存領域の最後の一線を守り抜いた絶対防壁、数十km単位の「世界を守る壁」へと変じることが可能。

ただしそのためには、常軌を逸した魔力の他に、キャスターあるいはそのマスターである日瑠子の命を捧げる必要がある。

この大前提は決して覆すことはできない。

 

【weapon】

備前長船:

極めて堅牢かつ優れた切れ味を持つ業物であり、キャスター自身の卓越した剣術が合わさることで見上げるほどの巨人すら両断する魔剣となる。

 

【人物背景】

東のミカド国のサムライにして悪魔使役者。

空を岩盤に覆われ、太陽の光が差さぬ街となった東京において、再び地上を神と悪魔の最終戦争の舞台とせんとする両陣営と渡り合い、天使と悪魔の悉くを討滅した救世の英雄。

東京、そして東のミカド国双方から救世主としての期待と憧憬を向けられ、真実その通りに超人的な活躍を為し遂げた英雄。

 

【サーヴァントとしての願い】

陛下の御心がままに。

 

 

【マスター】

日瑠子@朝霧の巫女

 

【マスターとしての願い】

聖杯という存在を見極め、その処遇を決める。

 

【weapon】

無銘の軍刀

 

【能力・技能】

高度な戦術指揮を可能とする頭脳、人々を引きつける高貴さ故のカリスマを持つ。

 

魔術回路:

生前において使用することは終ぞなかったが、皇の直系として破格とも言うべき魔術回路を身に備えている。

彼女自身魔道の薫陶はないため有効活用することはできないが、魔力タンクとしては一級品。

また巫女・憑代としての適性も非常に高く、生体マグネタイトの生成能力も高いが、魔力回路同様未だ経路が開ききっておらず、十全な運用には時間がかかる模様。

 

【人物背景】

作中世界における今上天皇であり、摂政を置く未成年(15歳)でありながら霊的国体危機に身命を賭して挑まんとする気概を持つ少女。

曰く「贄としての役割を負わされたマレビトの血筋」であり、どうも天照大御神の直系ではないらしい。

作中ラスト、スサノオをその身に封じ神代からの穢れを一身に背負い、葦船と共に悠久の時を流された果てからの参戦。

 

【方針】

無闇矢鱈と戦うことはしない。

他者と接触し、世界を見聞きし、奇跡を担うに相応しい者を見出すか、あるいは聖杯の性質如何ではそれ自体を否定する道を選ぶことも辞さない。

 

【ロール】

市井の一市民

 

【把握媒体】

フリン:3DSのゲーム本編をプレイするか、動画サイトでプレイ動画を見るかで大丈夫です。

日瑠子:原作漫画9巻まで。



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【オープニング】【本戦開始前】22 赤き砂漠に吹く風 マスター 犬吠埼風 サーヴァント アサシン サソリ

登場キャラクター
マスター 犬吠埼風
サーヴァント アサシン サソリ

作者
◆7XQw1Mr6P.



 このパラディウム・シティにおける一番の"目玉"スポットはどこか。

 街ゆく人に尋ねれば、皆が口をそろえて言うことだろう。

 多目的超高層ビル「ビッグアイ」だと。

 

『市内ならどこからでも見えるほど高く、広いビルディング。

 外壁は赤黒く、階ごとに目玉の様な模様が描かれている。

 内部は空間が外観の倍以上に拡張されており、ショッピングモール、

 市民サービスセンター、行政施設、図書館、映画館、医療施設、

 企業オフィス、定時制高校など様々な施設が収まっている。

 最上階は巨大な立体プラネタリウムがあり、外からはまるで巨大な眼球のよう――――――』

 

「気っ色わるぅ……」

 

 犬吠埼風は眼前にそびえたつビッグアイを見上げ、誰にも聞かれないように小さく呟いた。

 女子中学生の趣向とはとても相容れる様相ではないが、こんな成でもランドマークとして街の住民には受け入れられているらしい。

 人間だけでなく、多種多様な亜人が多く住む街に在っては、共通項になりやすい"眼"のシンボルはなじみやすいのだろうか?

 いやいや、それにしたって眼の無い種族もいるわけだし……。

 

「眼の無い種族って、自分で考えたワードで頭痛くなってきたわ。

 それにしたって、アタシくらい女子力満点のキュートなおめめならともかく?

 各階ごとの目玉模様の集合体、おまけに天辺はまんま眼球って、ねぇ?

 ……アサシン、アンタはどう思う?」

 

 独り言を呟いていた風の隣に、いつのまにか一人の男が立っていた。

 異様な男だった。

 這いつくばっているように見えるほど背中が曲がり、シルエットはまるで蝸牛のよう。

 そのうえ口元を隠すボロボロの顔布と、鋭すぎる眼光は周囲からの視線を寄せ付けない。

 こんな異様な風体だが、人種の坩堝であるこの街では"異常"とまではいかない。

 

 それよりも、男の顔色の方が異様だった。

 まるで人形か、いっそ死体だと言われた方が納得できるほど生気が無い。

 動いている以上、傍目から見れば生きているのだろうが、往来の人々は男の鋭い視線から顔を背ける。

 そのため、異様な顔色を直視しているのは風だけだった。

 

『女子力云々は知らねェが、あのビルの趣味の悪さは同感だ。

 芸術センスのカケラも感じられねェ』

 

 アサシンと呼びかけられた男は、くぐもったような声をしていた。

 深い洞の底から話しているような、あるいは空の陶器に声を吹き込んでいるような、不気味な響きの声だった。

 

「あら、そうなの?

 アタシはむしろ芸術的な観点からなら評価もあるのかしら、なんて思ってたんだけど」

『オレも建築は専門外だが、あれはコンセプトのブレたあばら家だ。

 医療に娯楽に行政にと、この建物に様々な施設と設備を詰め込むために奇跡的な構造を実現させておきながら、外観は後から考えたようにチグハグ。

 いや、あるいは先に眼玉のコンセプトがあって、それがたまたま有能な建築家が内部設計を任されたのか。

 とにかく、この"眼"の外装には機能美の欠片も宿っちゃいない。

 ……少なくとも、おれが知る技法の常識内ではな』

 

 アサシンの酷評に風は「へぇー」と声を上げる。

 軽い雑談のつもりだったが、いつもはぶっきらぼうなアサシンが思いのほか熱く語っていた。

 芸術家を名乗ってはいたが、風はアサシンがなにか作っているのを見たことがない。

 半信半疑のプロフィールだったが、評価は改める必要がありそうだった。

 

『ところで、こんなハリボテの眼のことより、お前の眼の方はどうなんだ』

「あぁ、うん。やっぱり原因不明、手の打ちようないってさ」

 

 風はポケットから黒い眼帯を取り出し、左目に着けた。

 現在、彼女は左目の視力を失っている。

 世界を守る勇者として戦い、神の力を借り受けた代償として。

 

「この世界は義足とか義眼とか、いろいろ身体のことの技術も発展してるみたいだし?

 ワンチャン神様に取られた体の機能なんかも治せるのかな~って思ったんだけどねぇ」

 

 風がビッグアイに来ていたのは、建物内にある医療施設で検査を受ける為であった。

 もっとも彼女自身、あまり期待はしていなかったし、治す気も無かったが。

 

「神父さんとかミザリィさんに聞いたところじゃ、この街に来たマスターたちは基本的に健康な状態で戦争を始められるそうよ。

 だけど私の眼の場合、眼の機能を神様に"持っていかれた"わけだから、治る治らないとかじゃないってことね。

 でもまあ、私が巻き込んじゃった可愛い妹と後輩たちを差し置いて、私だけ眼が見えるようになるなんて気が引けるから、いいんだけど」

 

 風がこの聖杯戦争に臨む理由を端的に説明すれば、それは罪滅ぼしに他ならない。

 

 人類が神の力を借り受ける代償、供物として選ばれた勇者たち。

 その戦いの先頭に立ち、後輩を、妹を導いてしまった十字架を、彼女は背負っている。

 

 何も知らなかった。何も知らされていなかった。

 それでは済まされないと、風は自分で強く思う。

 取り返しのつかない以上、ただでは済まないと強く思う。

 

 ―――そうとも。"ただで済ましてなるものか"

 

 聖杯を勝ち取り、神に奪われた勇者たちの身体機能を取り戻す。

 そして、勇者というお役目に縛り付けて騙してきた"大赦"に、報いを受けさせるのだ。

 

「早く本戦、始まらないかしら」

『やる気があるのはいいが、片目も効かないガキは足手まといだ。

 家に引っ込んでジッとしててもらった方が、オレもやりやすいんだが』

「なによ、アナタだってホントの見てくれはガキじゃない。

 それに大丈夫よ。この世界でも勇者には変身出来るみたいだし。

 サーヴァントの戦闘力はまだ見たことないけど、同じ人間同士の戦いならまず負けないから。

 ……治る予定があるなら、最悪『満開』だって使ってやるわ。

 あららら、可愛くて強いとかレギュレーション大丈夫かしら?」

 

 わざとらしく肩をすくめて見せる風の軽口に、アサシンは返事を返さない。

 さきほどの芸術談義では珍しく饒舌にもなったが、アサシンは基本的に不愛想だ。

 

 風は考える。

 マスターとサーヴァントに限らず、上下関係というのはこじれやすいモノだ。

 出来るだけやり取りをしようと務めてはいるが、どうにもかみ合わない。

 いや、これでも初めて会った時からはずいぶん変わったのだ。

 

 最初は会話もままならないほどアサシンの壁は分厚く、また風にも余裕が無かった。

 元の世界から突然転移し、シャドウサーヴァントの襲撃を受け、胡散臭い神父からの話を聞いて、この世界と『聖杯戦争』についてよくよく承知をして。

 この世界に用意されていた一人暮らしの持ち家に帰ってからというもの、風が気持ちを落ち着けて話せるようになるまでに何日も閉じこもらなくてはならなかった。

 その間にアサシンはといえば、何も言わずにただ別室で待機していたのである。

 

 励ましに来いとまでは言わない。悪態をついてこないだけマシかもしれない。

 それでもこのサーヴァントは、部屋で丸二日泣き続けた風を気遣う素振りを見せなかった。

 

 憔悴しきりつつも、ようやく持ち直した風はアサシンと改めて対面し、自分が聖杯を欲しい理由を伝えた。

 妹を助けたい。後輩たちに償いたい。願わくば自分の眼も取り戻したいと。

 自分でも言葉に熱がこもっていたと思う。

 それでも、アサシンからの反応は希薄だったように思う。

 

 反応が変わったのは、そう。

 自分の眼を取り戻せた後、さらについでが叶うならば。

 自分たちを騙し、いいように操った"大赦"に報いを受けさせるのだと、呟くように零した一言の後。

 女子力の欠片も無い、たった一粒の悪意を聴いて。

 

 

「(―――――他人を操るようなゲス野郎に報いを、か。そいつはいいな)」

 

 

 アサシン確かにそう言って、そして確かに、ほんの微かに笑ったのである。

 その後アサシンは今も被っている"被り物"を脱いで素顔を晒し、自身の真名や能力についても話してくれた。

 以降、アサシンは風とのコミュニケーションに若干、乗り気になったのだ。

 

「(あくまで若干、当社比三割増しって感じだけど。

 ……うん、当社比ってあんまり信用ならないのよねぇ)」

 

 などとくだらない冗談を考えていると、アサシンからの視線を感じた。

 結局、このサーヴァントは何なのだろうか。

 

 風とは違う世界の人間、故人、英雄、戦士、芸術家、暗殺者、人形遣い、……忍者。

 不愛想ながらも、子供である自分に与してくれるアサシン。

 

 悪い奴なのは確かだろう。なにせ暗殺者のサーヴァントだ。

 だが自分がマスターである限り。そして大赦への報復を願う限り。

 彼は仕事を全うしてくれる、そんな予感があった。

 距離感は未だ計りきれていないが、それでも風は、それほど不安に思ってはいなかった。

 

 最初に出会ったときよりは前進しているのだ。

 ならば不安に思う必要も無かろう。

 なせば大抵、なんとかなるのである。

 

「……そういやアンタ。検査中のマスターをほっぽってどこ行ってたのさ」

『人を待つのは嫌いな性分でな。暇つぶしにこの街を一通り偵察してきた』

「あぁそう、あとで成果を教えて頂戴。そんじゃ、ぼちぼち帰りましょっか」

 

 風は頭の後ろで手を組んで歩きだした。

 呑気に振舞っているが、その目が見据えているのは光の差さない冥府魔道。

 今は片方しか開いていない眼は、ずっと昏く沈んだままだ。

 

 角を曲がる直前、風はもう一度建物を振り返った。

 多目的超高層ビル「ビッグアイ」

 市内ならどこからでも見えるほど高く、広いビルディング。

 外壁は赤黒く、階ごとに目玉の様な模様が――――――、

 

「(つまりそれって、どこにいても"見られてる"ってことじゃない)」

 

 すでに覚悟は決めている。背中を預けるアサシンへの不安も無い。

 とはいえ、この状況、この世界、この街に対しての不信感や疎外感は、ぬぐえない。

 

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

アサシン

 

【真名】

サソリ

 

【出典】

NARUTO

 

【性別】

男性

 

【ステータス】

筋力D 耐久D 敏捷A 魔力C 幸運C 宝具C+

 

【属性】

混沌・悪

 

【クラス別能力】

気配遮断:A

 アサシンのクラススキル。

 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。

 自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは落ちる。

 

【保有スキル】

忍術:A-

 忍者たちが使用する諜報技術、戦闘術、窃盗術、拷問術などの総称。

 各流派によって系統が異なるが、アサシンは砂隠れの里の抜け忍であり、加えて傀儡使いとしての面が強い。

 忍術スキルを持つ相手と敵対した際にマイナス補正がつく。

 

傀儡師:EX

 傀儡に関する技術力。

 操る方も造る方も一流な上、自身の肉体をも傀儡化している。

 Bランク相当の自己改造、人造四肢スキルを内包している。

 人間の死体を傀儡化して操り、生前の能力を使用させることさえ可能。

 さらにアサシンは毒物に造詣が深く、傀儡には毒のギミックも組み込まれており、その仕込みの攻略は困難を極める。

 

芸術審美:D-

 芸術品・美術品に対する理解、あるいは執着心。

 生前のアサシンは豊富な知識と優れた技巧が伴った芸術家でもあった。

 しかし、その行きつく先は民衆からの共感を得難い「人傀儡」だったためランクは低い。

 

【宝具】

『不朽の躰・赤砂の蠍』

 ランク:C+ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人

 傀儡として改造したアサシン自身の肉体。

 寝食休息を必要とせず、決して朽ちることのない人形の躰。凶器と猛毒を仕込んだ殺戮人形。

 左胸の心臓部に収まっている核にのみ生体部分が残っており、それこそがアサシンの本体であり唯一の霊核。

 核は別の傀儡に移すことも出来るため、その他の部位に対する攻撃ではアサシンを消滅させることは不可能。

 反面、傀儡の部位はチャクラや魔力による肉体強化が出来ず、材質も完全に器物となっているため耐久値に難がある。

 右胸部の穴からは大量のチャクラ糸を放出、操作が可能であり、これを用いることでアサシンはもう一つの宝具使用が可能となる。

 

『赤秘技・百機の操演』

ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大捕捉:200人

 アサシンが保有する百機の傀儡による一斉攻撃。その武力は小国を陥落させることさえ可能となる。

 さすがのアサシンも百機もの傀儡の同時操作は容易ではないため、最大解放時に使用できる傀儡の仕掛けや繰り出される攻撃は単調なものとなりがち。

 加えて傀儡の実体化にもマスターからの魔力供給が必要であるため、最大解放状態での発動継続は2時間が限界。

 しかし数が減れば操作性と使用できる仕掛けの複雑性が増すため、倒せば倒すほど残りの傀儡が強くなり、継続可能時間も伸びる。

 

【weapon】

「人傀儡」

 アサシンは300近い人傀儡を作成しコレクションしており、主なものとして普段から中に入っている「ヒルコ」、砂鉄を操る磁遁の使用が可能となる「三代目風影」、自身の元々の肉体であった「蠍」がある。

 通常時は傀儡師の限界とされる指の数(=最大10体)の傀儡の同時使用が限界であるが、『赤秘技・百機の操演』使用時には百機の傀儡を同時に召喚、操作が可能となる。

 なお、これらは平時は巻物に収納されている。

 

「基本的な忍具」

 手裏剣、くないといった基本的な忍の武器。

 

「謹製の毒」

 アサシンが自ら調合する特別性の毒。

 かすり傷であっても致命傷となる猛毒であり、仕込んだ暗器で戦う傀儡と相性が良い。

 

【人物背景】

 犯罪組織「暁」の構成員。砂隠れの里の抜け忍であり、傀儡の天才。

 周囲の砂を赤い血で染めたことから「赤砂のサソリ」の異名を持つ。

 ふてぶてしい態度に加えてせっかちな性格で「人を待つのも待たせるのも嫌い」と語るが、用心深く洞察力も高い。

 使用する傀儡は死者の遺体を改造した人傀儡であり、生前の本人の術が使えるほか、仕込まれた暗器には謹製の猛毒が塗られているなど凶悪な代物ばかり。

 傀儡師にとって不利となりがちな近接戦をカバーするため、普段は鎧替わりの人傀儡「ヒルコ」の内部に潜んでいる。

 本体は赤い髪に茶色い瞳の少年の姿だが、自分の身体も傀儡に改造しているため15歳の容姿を保っている。実年齢は35才。

 

 かつては芸術家として「永久の美」を追求していたが、死後に発生した忍界大戦において禁術「穢土転生」によって蘇生され操られる。

 破壊されても再生する自身の転生体を「朽ちることのない理想の人形の身体」と評し受け入れるが、同じ砂隠れの忍にして傀儡使いとしての後進であるカンクロウに発言を一蹴され、さらにカンクロウが操る、生前の自身の肉体だった傀儡「蠍」に敗れる。

 カンクロウとの対話の中で傀儡師としての矜持と「後の世に作品と魂を受け継がれていくこと」に「永久の美」を見出し、「穢土転生」による魂の縛りが解けたことで成仏する。

 

【サーヴァントとしての願い】

 とくに願いはない。

 自分と同じように"操られて利用されていた"憐れなマスターを助けてやる。

 

【方針】

 風の目的に従う。

 風が子供であるため、時と場合によっては独自の判断で風を助けてやる。

 

 

【マスター】

犬吠埼風

 

【出典】

結城友奈は勇者である

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

「勇者システム」

 神世紀300年の勇者システム。

 スマートフォンアプリ「NARUKO」によって適正のある少女を勇者へと変身させる。

 神樹を守る組織・大赦による、神樹の力の科学的、呪術的研究成果であり、人類の敵バーテックスを打倒できる唯一の存在。

 風は大きさが可変の大剣を用いて豪快に戦う勇者である。

 

【weapon】

「スマートフォン」

 聖杯戦争で配布された端末とは別の、風が持ち込んだ彼女自身のもの。

 アプリ「NARUKO」がインストールされており、これを用いることで勇者へ変身する。

 また、「NARUKO」には勇者同士で使用できるSNSとしての機能もあるが、同じアプリを持つ者がいなければ当然使用できない。

 

「犬神」・「鎌鼬」

 風に付き添う二体の精霊。

 ある程度の意思疎通が図れるほか、精霊自身の意志で実体化したり姿を消したり出来る。

 「犬神」は青い犬、「鎌鼬」は鼬の姿をしており、どちらも背中に黄色い花模様がある。

 勇者のパートナーとして戦闘をサポートし、致命傷となりうる攻撃から自動で防御する「精霊バリア」の発動が可能。

 なお、「精霊バリア」は勇者自身の自傷行為にも反応するため、勇者の自殺(服毒なども含む)なども防ぐ。

 

「満開」

 勇者の切り札。

 神道の神官を思わせる装いに変化し、基礎能力の底上げのほか、武器が強化される。

 なお、使用後に身体機能の一部を消失するデメリット「散華」が存在する。

 風は過去の「散華」により左目の視力を失っている。

 

【人物背景】

 香川県の讃州中学に通う中学三年生の女の子。

 明るく大雑把な性格をしているが、面倒見がよく仕事も出来る姉御肌。

 「勇者部」の面々と共に勇者としてバーテックスと戦ってきたが、「散華」の存在を秘匿していた大赦に反感を抱き、さらに最愛の妹・樹や後輩たちを巻き込んでしまった自責の念に駆られる。

 その上「散華」によって声を失った樹が密かに歌手になる夢を持っていたことを知り、妹の夢を潰してしまったことに絶望した風は、ついに大赦を潰そうと暴走。

 本編ではその後、後輩たちと樹に制止されて思いとどまることとなる。

 

 本企画では暴走する直前の時系列から参戦。

 

【マスターとしての願い】

 妹と後輩たちの身体を治す。

 ついでに自分の眼も治す。

 さらについでに大赦を潰す。

 

【方針】

 優勝狙い。

 明らかな悪人相手なら殺人も躊躇わないが、普通のマスター相手に踏ん切りがつくかは状況次第。

 

【ロール】

 アカデミーの生徒。

 

【把握媒体】

サーヴァントは漫画「NARUTO」

マスターはアニメ「結城友奈は勇者である」

 



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【オープニング】【本戦開始前】23 呪われし宿命の輪舞 マスター 間桐桜 サーヴァント キャスター 黄川人

登場キャラクター
マスター 間桐桜
サーヴァント キャスター 黄川人

作者
yu sato


 アンダーダウンエリア。ここはこの聖杯戦争の舞台「パラディウム・シティ」において刹那的な快楽――犯罪が多数発生している地区として名高い特殊な地域だ。

 賭博、麻薬、売春、盗品故買、銃器のロック解除、様々な裏情報取引。ありとあらゆる裏の娯楽が集結している。

 その中に、一風変わった建物がある。ぼろぼろに朽ちた主が掲げられている廃教会。

 そこにマスターである間桐桜はいた。

 

 間桐桜は膝を抱えて座り、思い悩む。

 誰よりも大切な人である衛宮士郎に、弾みで殺してしまった義兄の間桐信二に、実の姉である遠坂凛に。

 あの時、十一年間、一度も思わなかった事を、思ってしまい、今までの自分が壊れて中身が剝き出しになった時。

 間桐家に養子に迎えられる前、凛からリボンと一緒にもらった三つの綺麗な石が、慎二が倒れた衝撃で机の上に瓶に入れていたそれが落ちて割れた瞬間、桜は全く未知の空間に召喚されていた。

 既知の神父――最も本人を再現した人物らしいが――の説明により、新たな聖杯戦争に呼ばれたのだと知った。

 だが、最早戻っても衛宮士郎を苦しませるだけだと思い、かといって殺して回る気ではいれないでいる。

 この世界に来た時点で既に『この世、全ての悪』との繋がりは切れているからだ。だが、その呪いだけは焼き付いて残り未だに桜を苛ませる。

 あの時思った壊れそうなほどの可笑しさ。正気の顔をかぶった狂気。自分を脅かす者たちを想像で殺す楽しさ。

 

『桜。君はもっと言いたいこと、やりたいことをやった方がいいよ。君がやること全てを僕は祝福するよ」

 

 桜が召喚したキャスター、真名を黄川人という少年は、桜の心を見通したように、否、実際に見通したのだろう、まるで誕生日の贈り物を心持にするような、あこがれの顔で言った。

 その言葉がさらに桜の心を苦しませる。

 

 雲に隠されていた月が、僅かにその身をのぞかせ桜の周りを照らす。

 そこにあるのは魑魅魍魎の集まりだった。

 牛ほどもある巨大な狗、ねじくれた腕に己の首を抱える者、腐れた体のまま這いずり回る悪鬼、獣面人身の鬼、道具の化生、その他諸々の異形の者たち。

 そこに吹く風は亡者の叫び。怨念、無念。人を、天を、己を憎む鬼哭が漂う、

 鬼達が蠢く中に、また新たな鬼がやってきた。巨大な鉈を持った鬼が二匹。

 それらを連れて歩くのは薄紅色の狩衣を纏い、赤い髪をなびかせた少年だ。

「や、こんばんわ! 新しい鬼を連れてきたよ」

 鬼気魍魎が渦巻くこの場には不釣り合いな済んだ童の声が、桜の頭を上げさせた。

「見てよ、この二人は親子でね。『父さん、どうして俺からもヤクを売るんだよ! タダで分けてくれたっていいだろ!』って言い合いになって、最後は刃物で互いを刺し殺したんだ」

 両手を挙げて少年、キャスターは二体の鬼を見比べる。

「それをボクが鬼にしたら急に仲良くなったよ。さっきも二人で一人を殺してきたところさ」

 桜が見つめると確かに鉈に血の跡がある。

 どうして私はこんな狂ったところにいるのだろう。そう桜は思い、神父とあった時を思い返していた。

 

▼   ▼   ▼

 

『間桐桜。お前は私が知っている間桐桜のようだが、ここでは聖杯との繋がりは途切れている。このままこの場にある『天の聖杯』を手に入れれば聖杯を壊す事も全てをやり直す事も思い通りの世界を造ることもできる。

 このまま元の世界に戻ることも可能だ。どんな選択をしようと私はお前の意思を尊重しよう』

 

 全てをやり直す……?

 例えば兄さんが優しいままで、先輩と一緒に食事を作って、そこに藤村先生が来て……。

 それともあの時……。

 もしくは例えばごく普通の日常を造って、お爺様がいなくて兄さんが昔の優しい兄さんで、先輩や姉さんが私のそばにいてくれて。そこには魔術とか聖杯とかの非日常的なものは何も無くて……。

 

 だけどそうしたところで、私は殺しを楽しんだその事をずっと覚えているだろう。壊れた自分をずっと覚えているだろう。

 本当の意味でやり直しなんてできない。

 

『叶わぬ願いを全て可能にするのが聖杯だ。お前の願いを叶えた後、記憶を消し去ることなどもな』

 まるで私の思考を見透かしたかのように神父は言った。

『いささか誘惑のようになってしまったが、結論を出すのはお前だ。猶予期間中に決めるがいい』

 私は呆然としたまま教会を出ることしかできなかった。

 

▼   ▼   ▼

 

 そうして桜はロールである学生を務めることもできず、何もかも放り出せる場所としてキャスターに勧められたこの廃教会にいる。

「さて、陣地も大分整ったし、君はボクの髪があれば大抵のサーヴァントはここには近づけないから安全だ。僕は他に陣地を造りに少し離れるけど、君はどうする? たまには外に出ない?」

 桜はうなずき、立ち上がった。

「まだ聞いてなかったけど、あなたは……聖杯に何を望んでいるの?」

 桜の問いに、黄川人は初めて言葉を交わした時のように桜の底の底まで見透かすような目で近づく。

「……ボクの望みはね、復讐だよ。僕は君に復讐をしてもらいたい」

 妖しい流し目で、昏い声で桜を見つめていった。

「ボクはね、桜。君が気に入ったんだ。必死に自分の心に蓋をして、そうして育て上げた全てに対する憎しみ。そしてそれに気づいても尚自分であろうとする君の想いがね」

 黄川人は顔を桜に近づけた。

「憎んでいたんだろう? 誰も君を助けてくれなかった世界を。恨んでいたんだろう? 君に冷たかった周りの世界を」

「そんな……事は……」

「側にいながら君を助けてくれなかった衛宮士郎も、ずっと妬んでいた姉さんも、全てまとめて造り変えてしまえばいいんだ。聖杯ならそれができる」

 姉さん、と黄川人が口にした時、一瞬笑みが止まった。

「さあ、教えておくれ。君が今の気持ちをありのままに、この世で一番思い知らせてやりたい相手はどこの誰だい?」

 誰もいない、とは言えなかった。慎二を殺した時、自覚した思いがある。それは――

「私は……あなたの言う通り、私を嫌う世界が嫌い。でも先輩だけは別。どんな私でも先輩は受け入れてしまう」

 この桜に残酷な世界の中で、唯一大切なものは衛宮士郎との思い出だけ。それだけは決して穢してはならない。

「だから……私は先輩と共にいられる世界を造りたい」

 桜は初めて、黄川人の目をまっすぐに見据えていった。

 黄川人はその桜の反応に、初めて穏やかな笑みを浮かべた。

「いいねぇ。ちょっと僕の想いとは違うけど、いいよ。たった一人のために天を落として地をなだらかにし海を埋めて世界を造り直してやろうじゃないか」

 

 そんなことを望んでいない。その為に人を皆殺しにしようなんて考えていない。

 そう言おうとした桜の口は閉ざされ、代わりに唇の端が歪む。

 

 腐臭が漂う闇の中、桜は笑った。胸の底から湧き上がる黒い感情が桜の顔を笑みに染めた。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

キャスター

【真名】

黄川人

【出展】

俺の屍を越えてゆけ

【性別】

男性

【パラメーター】

筋力B 耐久C+ 敏捷B 魔力A+ 幸運B+ 宝具A

【属性】

混沌・悪

【クラス別能力】

陣地作成:A+

 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。

 “工房”を上回る“神殿”を複数形成することが可能。

道具作成:A

 魔力を帯びた器具を作成できる。

 恨みの念から、鬼を形成できる。元になった人間の怨念が強ければ強い程、サーヴァントにも匹敵する怪物となる。

【保有スキル】

呪歌:A++

 黄川人の世界の神々が編み出した魔術体系。

 攻撃、防御、属性付与は重ね掛けが可能で、攻撃の術は併せることで、人数×2倍の威力を発揮する。

 キャスターとして召喚された影響で全ての術、さらに短命種絶の呪いや空間移動等を使用できる。

千里眼:A

 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

 さらに遠隔透視、過去視を可能とする。

自己改造:A+

 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。

 このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

 他人の身体に潜り込み、相手の意識はそのままに身体を操る。

 また、この状態だと同ランクの気配遮断の効果を持つ。

神性:E-(A)

 神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。

 本来は最高の神性適性を持つが、本人が神を嫌っている上、鬼に貶められている。

鬼種の魔:A

 鬼の異能、魔性を現すスキル。鬼やその混血以外は取得することは出来ない。天性の魔スキル、怪力スキル、カリスマスキル、魔力放出スキル、等との混合スキルでもある。

 魔力放出の形態は「炎」にまつわることが多い。

【宝具】

『八つ髪(やつがみ)』

ランク:B 種別:召喚宝具 レンジ:― 最大補足:―

 黄川人の八本の髪の毛から生み出される、竜種を模した鬼。

 各々の髪は自己の意志で動き、術を行使し、倒されても魔力を注げば復活する。

 陣地作成と合わせれば、召喚、運用、復活に本人の魔力を必要としなくなる。

 

『朱ノ首輪(しゅのくびわ)』

ランク:A 種別:対神宝具 レンジ:― 最大捕捉:1柱

 神、もしくは神性スキルを持つ相手にのみ通用する宝具。

 枷をはめられた敵の能力と理性を封印し、獣に貶める(イメージとしてはプリズマイリヤの黒化英霊を参考に)。

 この宝具は術として唱える型と、首輪を実体化させる型の二種類がある。

 術の場合、以下の呪文を唱える。

 「風祭り、火祭り、水祭り、土祭り、滄溟を探りたもうた天の瓊矛の滴よ、ここに集いて禍事を為せ」

 首輪の場合、道具作成スキルで製造する。こちらは填めることさえできれば誰にでも使用でき、黄川人本人にも通用する。

 

『阿朱羅(あしゅら)』

ランク:A+ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大補足:1人

 黄川人の道具作成、自己改造スキルを自分自身に用い、異形の鬼へと変化する。

 ステータスは以下の通り。

 

筋力A++ 耐久A++ 敏捷A+ 魔力A+ 幸運D 宝具A

 

 無論この状態でも、全スキル、宝具は使用可能。だが、常時莫大な魔力を消費し続ける。

 もし魔術回路を持つ者と一体化できたなら、自力で魔力を生成し、生前の力を完全に発揮できるだろう。

 

【weapon】

小刀

 

【人物背景】

 打倒朱点童子を目指す主人公一族の前に現れる水先案内人。

 天真爛漫な性格で様々な情報を知らせてくれるが、セリフの端々に皮肉が混ざっている。

 

 正体は主人公に呪いをかけた朱点童子本人。

 下天した神、片羽ノお業と人間の間に生まれる。これを機に神は下界に介入し、黄川人を皇子として従うように下知する。

 神の起こす奇跡により信仰は広まり、都が造られるまでに至るが、時の帝の命により、黄川人のいる都は焼き討ちされ、皆殺しの目に合う。

 赤子だった黄川人は殺戮から逃れ、お紺という女性に拾われるが、黄川人が能力で富籤を連続で当てさせた結果、お紺の家庭は崩壊し、無理心中を図られる。

 その後は氷ノ皇子の元に辿り着き、彼の血を啜り生き延び、術を教わる。

 ある時、流れ着いた敦賀ノ真名姫の死によって身の内に溜まった復讐心が爆発し、怨念は地上天界を揺るがした。

 それを鎮める為討伐に来た神々諸共、神へと転生した姉の昼子に鬼の身体へ封じ込められる。

 それでも尚黄川人の意識は残り、鬼の自我はそのままに意志を操り京を荒らし続けた。

 これに対し自分を倒すため、もう一人の神との混血『朱点童子』を作る計画を聞きつけた事で、封印を解く計画を思いつく。

 鬼の身体を倒しにきたお輪を人質にして、まだ赤子の主人公に短命種絶の呪いをかけた。

 自分を封印から解き放つ動機を持たせ、封印を解く程度で実力を抑えるように。

 そしてその赤子が神の力を借り、朱点童子討伐に乗り出すところから物語は始まる。

【サーヴァントとしての願い】

 桜に『復讐』の思いを自覚させ聖杯を使い世界をやり直す。

【方針】

 戦闘やトラウマを抉り出す言葉責めで桜に自分が元に戻れないことを自覚させ、桜の心の闇を解き放つ。

 それまでは陣地を作成し、魔力を補充し複数の神殿を作りマスターを誘い込む。

【参考文献】

 ゲームは2まで販売されていますが、ここでは第1作目のみとします。

 動画サイトでプレイ動画が上がっている他、攻略wikiで全台詞が収録されています。ムービーは動画サイトでUPされています。

 ノベライズ版では台詞で想像できる過去が具体的に書かれています。

 

 

【マスター】

間桐桜

【出典】

Fate/stay night

【性別】

女性

【能力・技能】

魔術(架空元素・虚数)

 魔術師として極めてまれな属性。戦闘時は影を纏い、敵に影の斬撃を加える。

この世、全ての悪(アンリ・マユ)

 人類60億全てに悪であれと望まれた呪い。

 桜が元居る世界の聖杯の中で、誕生する時を待っている。

 本来ならばこの世界で桜の聖杯としての機能は覚醒しないが、天の聖杯に至れば繋がる可能性はある。

【weapon】

無し。

【マスターとしての願い】

 慎二を殺してしまった自分はもう衛宮士郎と共に歩めない。だからその許されざる世界を変える。

【人物背景】

 遠坂凛の実妹。遠坂家の次女として生まれたが、間桐の家に養子に出された。

 表向きは遠坂と間桐の同盟が続いていることの証。裏では、間桐臓硯にとっては断絶寸前だった家系を存続させるために、魔術の才能がある子供(というよりは胎盤)を求めていたという事情があった。

 また遠坂時臣にとっては一子相伝である魔道の家において二人目の子供には魔術を伝えられず、そして凛と桜の姉妹は共に魔道の家門の庇護が不可欠であるほど希少な才能を生まれ持っていたため、双方の未来を救うための方策でもあった。

 間桐家に入って以後は、遠坂との接触は原則的に禁じられる。

 しかしながら「間桐の後継者」の実態は間桐臓硯の手駒であり、桜の素質に合わない魔術修行や体質改変を目的とした肉体的苦痛を伴う調整、義理の兄である慎二からの虐待を受けて育つ。

 だがある頃に、士郎の懸命な姿を見て彼に憧れを抱く。

 この桜は全ての事情を知られた上で、士郎が『桜だけの正義の味方になる』選択肢を選んだ世界から来た。慎二を殺してしまった時からの召喚である。

【方針】

 黄川人は信用できないが、それでも頼るしかない。

【ロール】

 月海原学園の生徒だが、それを放棄し暗黒街に潜んでいる。

【参考文献】

 ゲーム『Fate/stay night』(HFルート)およびアニメ映画『Fate stay night [Heaven's Feel]』などをご参照ください。

 ゲームは動画サイトなどでプレイ動画が上がっているかと思います。



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【オープニング】【本戦開始前】24 きっと誰もが“悲劇”の主役だ マスター 千翼 サーヴァント アサシン 金木研

登場キャラクター
マスター 千翼
サーヴァント アサシン 金木研

作者
yu sato


 きっと俺の人生は『悲劇』と呼ぶべきものなのだろう。

 ただ生きる事、それだけが許されない。それは俺が他人を人食いの化物『アマゾン』に変えてしまう溶原性細胞を持って生まれたアマゾンだから。

 だけど悲しいことだけじゃなかった。

 結婚式場に現れたアマゾンと偶々一緒に戦い、初めて食べたくないと思った少女、イユと出会えたから。

 今思えば一目惚れだったのだろう。裕樹なら「それはイカレちまったんだよ」とでも言ったのかもしれない。

 実際そうだと思う。イユに斬り殺されかけても、思いは変わらなかったんだから。

 今記憶をたどれば辛かった事より、イユとの楽しかった思い出ばかりだ。遊園地に行って服を買い、一緒に遊んでプリクラを撮った事。

 裕樹から聞いた昔イユがケーキを楽しそうに作っていたという話でケーキを買って、イユの顔にぶつけてしまった事。

 初めて笑ったイユと一緒に土と石と枯れた葉でケーキを作った事。

 その時乗せたのが、本物のケーキを買ったとき風変わりな店員に飾りのおまけとしてもらった三つの綺麗な石。

 

 まさかそれが、別の世界への扉を開く物だったなんて――

 

 パラディウム・シティにある再開発地区は、元のモデルである都市で反重力船の墜落事故により廃墟と化し、その後一部が再開発された地区である。

 よってその大半は未だ破壊されたまま放置され、この世界でも居場所がない浮浪者達の寝床となっている。

 例えば吸血や食人の習性を持ち、されどそれが認められる区域で人工血液、培養人肉が購入できない外れ物など。

 マスターである千翼はその外れ物の一人としてここにいた。

 ジャケットの上に女物のストールを羽織った奇妙な格好で。

 他の外れ物たちは共食いで衝動を抑えている。当然誰かがババを引き死ぬ。

 千翼の食人衝動は女性の手の血を見ないと暴走しない。

 そのため、食事はゼリー状栄養食品で済ませている。というよりそれしか体が受け付けない。

 

「やがて、星が降る。星が降るころ――」

 

 千翼は唯一知る歌を口ずさむ。共に生きたいと思った少女、イユとの思い出を思い返しながら。

 

「お待たせ。君の食事の飲料と僕のコーヒーを買ってきたよ」

 気安く声をかけるのは白い髪に白い服を着た男。彼が千翼が召喚したサーヴァント『アサシン』である。

 アサシンは千翼が銀行から引き落とした金で買ったコーヒーメーカーペーパーフィルターにコーヒー粉を入れ、給水タンクに水を入れた。

『僕は君と似たような体で、人肉以外はコーヒーしか受け付けないんだ』

 千翼の身体を聞いたアサシンの事情説明である。

 コーヒーがカップにたまるまで、アサシンは千翼に話しかける。

「君たちマスターには与えられた身分、ロールがあるから自ら浮浪者にならなくてもいいと思うけど」

「俺は人を食べたくないし、人をアマゾンに変えたくもないんだ」

 給水タンクから音がする。それだけが周囲の静寂を破る。

「千翼くん。君はやっぱり死にたくないからこんな辺鄙なところにいるの?」

 その言葉で千翼はこの聖杯戦争に召喚されたことを思い出す。

 

■  ■  ■

 

 千翼はサーヴァントの召喚に成功した後、転移した教会にいた神父に基本的な聖杯戦争の説明を受け、最後に一つの質問をされた。

「君は死者の魂だけがこの場に召喚されている。元の世界に戻ってもただ『元に戻る』だけだ。ゆえに君は生きるのなら否応なくこの舞台に留まるしかない。

 そこで問おう。君は『死にたくない』のか、それとも『生きたい』のか」

 千翼は神父に対し、今にも消え入りそうな、悲しげな顔に強い意志を瞳に込めて言った。

「俺は……イユと共に生きたい」

 千翼の返答に、神父は笑みを浮かべ胸に手を当てた。

「ようこそ、聖杯戦争へ。君の決断を私は祝福しよう」

 

■  ■  ■

 

「違う。俺は生きたい。元の世界で人間をアマゾンに変える化物として冷凍保存されかけて、その後父さんに殺されたけど、もう一度生きたい」

「……千翼くん、君はお父さんを恨んでいたかい? 君を殺したお父さんたちを憎んでいるかい?」

「俺は恨んでも憎んでもいないよ。ただ生きていたかった。俺が世界から拒絶され、生きることそのものが罪だったとしても」

 死ななければならない理由は分かっていた。人食いの本能。それ以上に危険で人類社会を崩壊しかねない人をアマゾンに変える溶原性細胞。

 人が生きている限り、決して相容れることのない自分という存在。

「でも全部俺のせいで生まれた不幸が数えきれないほどあるんだ。母さんを殺したのも、イユの父親を含めて多くの人をアマゾンにしたのも、イユが父親に殺されてアマゾンの兵器として蘇らせられて、自分を無くしてしまった事も」

 それは千翼の罪ならぬ罪。生きるが上で背負わなければならなかった咎だった。

「それでも、俺は最後まで生きたい。イユを生き返らせたい。俺とイユが共にいられる世界を造りたい」

 大切な彼女にまた会いたい。共に生きたい。その為ならこの世に存在することを絶対に許されない世界を敵に回しても構わない。

「……君と僕は少し似ている。僕の世界にいた人しか食べられない生き物『喰種』と君の世界の『アマゾン』はほとんど同じだ。そして僕は『半喰種』に作り変えられたんだ。

 そして人間にも喰種にも半端者として居場所がなくて、戦って、つらい目にあって、いつしか人間と喰種が共存できる世界を求めようとしたんだ」

 アサシンは空を見上げた。

「……いや、やっぱり違うかな。たぶん僕は戦うことで、誰かに認めてもらえることが、求めてもらえることが嬉しかったんだ。目的はどうでもよかった」

 その口調は遠くの誰かに話しかけるようだった。

「それでも、喰種のトーカちゃんに必要とされたのは嬉しかった。愛し合えたのは心の底から幸せだった。

 だから死にかけた時、もう会えないと思うと絶望で頭がいろんな人格で埋め尽くされた」

「……何が言いたいの?」

「千翼くん。どんな喰種も多分アマゾンも君ほどに存在を否定される『悲劇』はないと思う。あるとするなら僕の世界で人を喰種に変え、人を喰らう落とし子を産む巨大な竜くらいだ。

 だけど、きっと誰もが悲劇の主人公なんだ。自分の息子を殺めざるを得なかった君のお父さん。君を匿って殺されてしまった君のお母さん。

 殺されて生物兵器に作り変えられたイユちゃん。無理やりアマゾンにされてしまった人たち。アマゾンと生身で戦い殺される人たち。

 奪い、奪われ、否定と肯定を繰り返して、失わないために戦っても、結局は愛する人も、場所も必ずなくなる」

「それでも!」

 千翼は立ち上がり叫ぶ。勢いでゼリー飲料が飛び散った。

「そう、それでもだよ。醜くも求め、美しくありたいという願いは間違いじゃない」

 アサシンは優しく諭すように言った。

「だから、僕は君の願いを叶えるために戦うと誓うよ」

 アサシンは心からの誠意をもって、そう告げた。

「……まだ、アサシンの本名聞いてなかった」

 千翼は思い出したようにつぶやいた。

「僕の真名は金木研だよ」

 真名を名乗ると同時に、千翼のズボンのポケットに入れていたサーヴァントカードが光りだした。

 千翼がそれを取り出すと、アサシンの下に名前が書かれていた。

「アサシン以外で名前を呼ぶのは研でいいのかな?」

「『カネキ』って呼ばれる方があってる。大体の人にそう言われてたから」

「……まだ俺はあんたのことがよく分からない。だけど、世界から生きるのを認められなくても、大切な人を求めることは間違いじゃないと言ってくれたのは嬉しい。

 だから、願いを叶えるために戦うという誓いを信用したいと思う」

「いいよ、いきなり共に戦えなんて言われてもそう簡単に信頼なんて生まれないよ。ここから少しずつ初めていこう」

 アサシンは千翼に手を差し伸べ、千翼は手を握り返した。

 

 千翼は改めて思う。この世で本当に大切な者じゃなくても、守ったりかばったりする人はいるのだと。

 裕樹がそうだった。何度も身を張って俺を逃がしてくれた。生きろとは言ってくれなかったけど、今思えば俺は決して孤独じゃなかったんだ。

 そしてアサシンのカネキは、大切な人がいても俺のために戦ってくれると言ってくれた。

 世界を敵に回すと思ったけど、本当は不安だ。世界中の人間がアマゾンに代わることで願いが叶ってしまうかもしれない。俺はそこまで人間を憎んでなんかいない。

 ただ、もしも俺とイユがただの人間で、アマゾンがいなくなった世界を造れるのなら、それが最高だ。

 ただ、どう願いが叶うとしても俺は最後まで生きる。それだけは確かな願いだ。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

アサシン

【真名】

金木研

【出典】

東京喰種、東京喰種:re

【ステータス】

 筋力B 耐久B+ 敏捷B+ 魔力D 幸運E 宝具A

【属性】

 混沌・悪

【クラス別能力】

気配遮断:C

 サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に優れている。

【保有スキル】

竜の喰種:EX

 種を喰らう種。人類の天敵。霊長の捕食者。

 人肉を喰らう事で霊基の回復速度を上げ一時的な火力増強を施し、同ランクまでの単独行動スキルとしても働く。

 このスキルにより、アサシンは三騎士相当の戦闘力を得ている。

 また、喰種とは地下に暮らし人々の生活に紛れるモノという特徴から、戦闘に移っても気配遮断のランクは下がらない。

 ランクはアサシンがただ一人しかいない竜に変異した状態から生還した喰種である事から特異性のEXを意味する。

戦闘続行:A+

 往生際が悪い。

 このランクにまでなると、霊核を完全に破壊されても判定次第では戦闘が続行可能になる。

 いかなる負傷を受けたとしても、護るべきものがある限りアサシンは退かない。百足のように前に進む。

隻眼の王:A

 人ならざる者や、人への脅威となる者を率いる才能。人ならざる人の脅威となる者の王と言う立場にあった生前がスキルとなったもの。

 竜・猛獣・魔性の特性を持つ者に同ランクのカリスマスキルとして働く。

【宝具】

『喰竜の赫者(リュウギ)』

 ランク:A 種別:対喰種(自身)宝具 レンジ:1~20 最大補足:20人

 彼の持つ赫者の究極体としての力。無数の触手を生やす。

 あるときは腕のよう。あるときは鞭のよう。あるときは百足のように様々に形を変化させ、敵を貫き、打ち据える。

 何度でも再生可能であり、千切られた腕や脚の代わりにもなる。

 本気を出せば十字架状の剣と二対四枚の翼を広げた形状になる。

『喰竜儀(コウリュウギ)』

 ランク:A++ 種別:対国宝具 レンジ:1~99 最大補足:1000人

 肉体、精神が最大限にまで追い詰められたときのみ発動できる宝具。

 発動する事で己を竜へと変じさせ、多重のバフを獲得する。

 肉体ステータスも全てが最大まで上昇するが、それに伴い狂化スキル:EXを獲得し理性を失う。

 竜と化し、圧倒的な力を備えたアサシンの姿は大災害としか形容できない。

 さらに周囲の人間を噴霧する毒により喰種に変え、人を喰らう『竜の落とし子』を生み出すその能力は対異宝具の域にまで達している。

【weapon】

 剣

 宝具から一部分を剣に形成できる。

【人物背景】

 もし仮に僕を主役にひとつ作品を書くとすれば――それはきっと“悲劇”だ。

 

 ――“違う”。

 誰でも"同じ"だ。

【サーヴァントとしての願い】

 千翼が生きられる世界を造る。

【方針】

 マスターを守り抜く。マスターが聖杯を望むのならサーヴァントを倒す。

【把握媒体】

 東京喰種全14巻、東京喰種:re全16巻が販売されています。

 

 

【マスター】

千翼

【出典】

仮面ライダーアマゾンズ Season 2

【性別】

男性

【能力・技能】

オリジナルアマゾン

 食人本能を持つ人工生命体。外見上は人間そのものだが、それはあくまで人間態に変身しているからである。

 超人的な身体能力と再生能力を持つ反面、強烈な食人衝動に襲われる。彼の場合その衝動は通常以上に強く、また彼の細胞を摂取した人間をアマゾンに変異させる力もある。

アマゾンネオ

 上記ドライバーと薬液を使用することで変身する、千翼の仮面ライダーとしての姿。アマゾンとしての力を制御・抑圧した姿であり、彼の通常戦闘スタイルと言っていい。

 変身中に更に薬液を追加することでブレード、クロー、ニードルガンなどを生成する。

オリジナル態

 千翼のオリジナルアマゾンとしての姿。ネオの口が裂け、六本の腕と無数の触手を併せ持つ。いわば暴走形態。

 戦闘能力は非常に高く、人間態やアマゾンネオの状態とは比較にならないほど。ただしこの形態においては理性を失っている場合がほとんどであることに留意したい。

【weapon】

ネオアマゾンズドライバー

 アマゾンネオの変身ベルト。後述するアマゾンズインジェクターを投与することで自らのアマゾン細胞に多様な変化をもたらす。

アマゾンズインジェクター

 変身に必要な特殊な薬液とそれが封入された注射器状のアイテム。

 これをベルトに注入することで変身や武器の生成が行える。

 数に限りがあり、現状複数回の戦闘に耐える程度の数はあるが考えなしに多用はできない。

【人物背景】

 彼はこの世に生まれたことが消えない罪、生きる事が背負いし罰であった。それでも生きたいと願った少年。

 参戦時期は最終回終了後。

【マスターとしての願い】

 イユと共に生きる。

【方針】

 なるべくマスターは殺さず、令呪を奪うことで勝ち残る。

【ロール】

 防衛隊の一員だが、そのロールを放棄し再開発地区にいる。

【令呪の形・位置】

 三対六翼の形状。

【把握媒体】

 Amazon prime videoで仮面ライダーアマゾンズ Season 2全13話が配信されています。

 これだけでも把握はできますが、できれば仮面ライダーアマゾンズ Season 1全13話を見ることもお勧めします。



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【オープニング】【本戦開始前】25 Welcome to Palladium City(RESTARTING DESTINY) マスター クラウス サーヴァント ライダー エッジ

登場キャラクター
マスター クラウス
サーヴァント ライダー エッジ

作者
◆koGa1VV8Rw


◇◇◇◇◇◇◇◇

 

ふたごの おにいさん

げんきな おとこのこだよ

 

┏━━━━━━━━━━━━━━┓

 クラウス ・

┗━━━━━━━━━━━━━━┛

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

(こいつにも名前がいるかな…)

 

┏━━━━━━━━━━━━━━┓

  名前をつける

 ▶ドラゴンでいい

  やめる

┗━━━━━━━━━━━━━━┛

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Welcome to

 Palladium City

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ドアノブを回して、誰かが扉を開けたような音が聞こえた。

 

 

 

 

 

そして、気がつくとぼくはここにいた。

 

 

 

 

 

体の感覚はしっかりしている。

服の感触が皮膚を伝わるのがよくわかる。

どこも痛いところや苦しいところはない。

 

今まで時間も空間も感覚も曖昧なところにいたのに。

急にどこかに別の所にやってきてしまったみたいだ。

 

 

お母さんはいないみたいだ。近くに感じない。どうしたんだろう。

 

ゆっくり、ゆっくりと、目を開けていく。

 

 

 

そこは何もない空間だった。

周りに見えるのは黒い空と星々だけ。まるで星空に放り出されたみたいだ。

いったい何故こんなところに。ぼくにどうしろと、ぼくをどうしようというのだろう。

考えてても始まらないから、周りを見回しながらとりあえず歩き出そうと思った。

そのとき。

 

「ようこそ、常ならぬ願望を抱く新たなマスター候補者よ」

 

どこかから謎の声が聞こえてきて、ぼくは説明を受ける。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

謎の声の説明が終わった。

ぼくは機械の使い方も不思議とよく理解していた。

きっと……あの操られていたとき、機械を扱った経験も身体は覚えていて、今も簡単に順応できたんだと思う。

 

そして万能の願望機、聖杯を奪い合うという戦争。

つまり、勝てば願いが叶うのかな。

ぼくの、ぼくの叶えたい願い…………。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

そして、シャドウと呼ばれる人型が召喚された。

これを倒せば、予選突破になるらしい。

 

シャドウの下から何かよくわからない同じ黒い塊が現れてくる。

そして、シャドウはそれに乗るような形になる。一つの不気味な黒い塊。

真っ黒で全く生物らしくないのに、ぎこちないながらも生物らしい動きをしてぼくに向かってくる。

それは改造されてしまった哀しい生物たち、キマイラを思い出す。ぼくはそれが忌々しかった。

だからすぐに倒そうとして。

 

ぼくの体の中の精神の力を集中していく。ぼくの使える最大のPK。

4段階に分けると最強の、Ωにあたる威力で。強く試みた。

 

そして……念動力はシャドウを覆い尽くし、姿を完全に吹き飛ばした。

ここでも問題なくPSIは使える。そして、シャドウの体は人間より脆いみたいだ。

 

でも、シャドウは四散した黒をまとめてきて…………また元の姿に戻ってしまった。

謎の声が説明してくれる。

シャドウを倒すにはサーヴァントの力が必要で、サーヴァントを召喚するしかない。

サーヴァントを召喚するには、何かの強い意志を示すしかないらしい。

 

シャドウから遠くへ、走りながら考えていく。

死にたくない……????

よくわからない。ぼくはすでに死んだはずだ。どうなるというんだ。

じゃあ……ぼくの叶えたい願いは何だ!?

 

……………………

 

離れることに集中させられ、落ち着いて考えられない!

ぼくを落ち着け安心させてくれるものは……何も無い。

ここにはお母さんは……いない。

 

お母さん………………ぼくの、家族。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

………………

 

 

一度に二人も子供を授かるなんてね。

 

クラウスと

 

リュカ…。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

……………………

 

家族……………………。

 

……………………

 

そうだ、それがぼくの求めるもの。

望むべきものなんだ。

 

……………………

 

お母さん。

やっとまた会って一緒になれたけど、ぼくは新しくやりたいことができちゃったみたいだ。

ごめんね。

 

お父さん。ボニー。

ぼくが別の世界でまだ戦うって知ったら、きっと悲しいよね。

ごめんね。

 

リュカ。

君はみんなのためにたくさん戦ってきた。

ぼくがあんなことになってしまって、本当につらい目に合わせてしまった。

ごめんよ。

――――ぼくも、家族のために戦い抜くから。

 

「ぼくはまた元の家族に戻って過ごしたい!

 お願い!ぼくを助けて!!サーヴァント!!!!」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  ………………

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

『もう、一人にはなりたくない……。

 だけど、私は……』

 

「必ず……必ず帰ってくる!

 だから!!

 それまで待っててくれ!!」

 

――――その約束は果たされることはなく。

 

 

僕はずっと、世界回路に溶けて漂っていた。

 

彼女の声、僕の名前を呼び求める声をずっと聞きながら。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

魔術のような高度な科学力を持った旧世紀の人々が世界の真理探求のため作り上げた、世界回路。

旧世紀から現在、そして未来の予測まで世界のあらゆる情報を観測し記録していく擬似的空間。

アクセスするためには情報化ゲートを通して、肉体を一度情報へと変換させなければならない。

 

旧世紀に世界の環境が悪化し滅びに向かう中で、世界回路にはセストレンという環境を管理し再生させていくプログラムが組み込まれた。

旧世紀の文明が滅びた後、セストレンは世界各地に存在する、"塔"と呼ばれる旧世紀の遺跡を通して土壌、大気、水質環境の改善を行い自然を回復させていった。

 

しかしそのあり方は全ての生物の管理も行い、塔が作り出す生物兵器、攻性生物の量を増減させ人間を襲わせ間引きとして数の調整もしたりしていた。

遺跡発掘を生業とする人々としてその真実を知ったシーカーたちはそれが許せず、

旧世紀にて未来の環境を管理することに反対し自然に任せるべきと主張していた破壊派達のプログラムであったドラゴンと、乗り手の僕を助けた。

ドラゴンと僕は情報化し、セストレンは僕の精神に宿っていた『絶対の客人』の意思によって破壊され、連動して塔などの同調していた遺跡の多くが機能停止した。

世界回路は記録装置としての機能だけに戻って、機能停止しなかった遺跡を媒体に存在し続けた。

 

世界回路に情報化されアクセスした人間はどうなるのか。僕は絶対の客人を受け入れた時点で、すでに一度は死んでいてドラゴンに生き延びさせてもらった状態だった。

たぶんそのせいもあって、塔を破壊する役目を終えて絶対の客人が僕から離れると、僕は肉体を持って復活することはできなくて世界回路に溶けてしまったんだと思う。

 

そして時間も空間もはっきりせず、あらゆるものが同時に存在する情報の渦の中に、僕は情報として存在していた。

そしてもう二度と戻れない中で、過去や僕が溶けてから新たに加えられていくすべての情報に僕は触れ続ける。

それが未来永劫続いて行く……。

 

……………………

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 "Ecce valde generous ale"

  (見よ、いと貴き翼)

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

願いを口に出した瞬間、ぼくの手に握られたカードに光が集中していく。

そして何らかの絵がカードに顕れていった。

 

 

ぼくのすぐ近くに輪のような光が重なり、その中に何かが形作られる。

シャドウが遠くまで跳ね飛ばされた。出てきた光に。

 

光の行く先を目で追った。光が薄れると少しずつ明確になって。

羽ばたき滞空している、ドラゴにも少し似た、前腕が翼になっている不思議な生き物。

そしてその上に乗ってるのは……ぼくより二回りくらい大きな歳に見える、男の子。

 

「ドラゴン!頼む!」

 

上に乗ってる男の子が言葉を発した! おそらく、乗っている生き物へ。

なんて言った!? ドラゴ!? いや、闇のドラゴン!?

そう思っているうちに、その生き物の口が発光していく。

より強く、強く。

 

そして、光が解放された。青白くて赤い尾を引く不思議な光。

それがたくさん、シャドウの方へそれぞれ違う軌道で矢のように飛んで。

 

そして、7本全部がシャドウに命中した。

シャドウは完全に四散して、今度は生き返る気配もない。

 

……すごいや……サーヴァントの力って。

 

空飛ぶ生き物はぼくの近くに降りてきて、男の子は生き物の上から降りてぼくの隣に立った。

男の子の表情は今は柔らかくて、気迫のようなものは何も感じない。

 

髪はぼくのお父さんのような茶髪。でも毛量は豊富で丸く、ヘルメットみたいだ。前髪を真ん中に三角形に伸ばしている。

服は厚手そうな赤い生地で、所々に革素材のプレートをつけている。前腕は硬いもので縛ってある。全体的に丈夫で実利的に見える。

 

そして乗っていた生き物。

滑らかな白い殻が青い身体の所々を覆う姿はどんな生き物とも違うけど、とても良く調和していて、歪なキマイラたちとは全く違う。

頭を覆う殻は前に尖って伸びて、先端は赤みがかっている。尾も上側は装甲がある。

翼は縁が白く厚い殻に覆われていて、間に紫とオレンジ色のグラデーションの膜がある。

全体的に固く重そうだけど、不思議と目は黒く丸くて、優しげにも感じる。

 

男の子は手に持っていた丸みを帯びて白い銃のようなものをしまって、ぼくに話しかけた。

 

「僕はエッジ。ライダーのサーヴァントとして召喚された。

 よろしく、マスター」

 

「ぼくの名前は……クラウス。よろしく、エッジ」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  ………………

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ーーーー世界回路の中の永久とも言える時間のいつの時点かはわからないけど、僕の物語はそこで終わっているのだと聖杯は判断したんだろう。

僕は霊基に登録され、この聖杯戦争に召喚された。

基本的に死んだ者だけが召喚されるサーヴァントとして。

 

世界回路にいたときにはたくさんの知識に触れられていたけど、今では幻のようにぼやけてほぼ全てを思い出せない。

最初のドラゴン乗り、ランディ・ジャンジャックも塔を封印したときにドラゴンから旧世紀やドラゴン誕生の知識を見せられたはずなのに、

多くを思い出せなかったというし似た感覚なんだろう。

 

 

ーーーーでも唯一、僕の溶けたあとで僕に家族が生まれたことはしっかり憶えていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 RESTARTING DESTINY

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ぼくとエッジはいつの間にか厳かな雰囲気の建物の中に立っていた。

 

「ようこそ、見事試練を乗り越えた聖杯戦争のマスターよ。私は言峰綺礼。この聖杯戦争の監督役を務めている」

 

背が高く黒い服を着た男の人が話しかけてきた。

ぼくのお父さんよりも大きいかもしれないその身体に、少しおののく。

それを見たのか、エッジがぼくの肩を支えた。

 

「まあ、そう緊張しなくてもいい。私は監督役であり中立の立場だ。

 参加者である君たちを歓迎し、聖杯戦争の舞台への水先案内をする者だ」

 

そう言われても緊張するものは仕方ない。

というか姿だけじゃなくて、固まったような僅かな笑みと威厳のある声がより緊張させる……。

ぼくらが言葉を発せずにいると、言峰が言葉を続けた。

 

「君は、元の家族に戻って過ごしたいと願っていたな。

 それならば、まず端末を使ってこの世界での立場、ロールを確認してみてもいいだろう。

 参加者の元の世界の家族が擬似的に再現されて、この世界に存在する場合もあるからな。

 願いを詳しく考える切っ掛けになるかもしれん」

 

家族がいるかもしれない!?

言われるまま、ぼくは端末を開いてみる。

ぼくに与えられたロールを確認できる画面を開いてみる。

 

「月海原学園の学生……? これだけ?」

 

……ただそれしか書かれてなかった。

学校っていうのは行ったことないけど、ポーキーのコレクションやビデオで知ってはいる。

 

「なるほど、あの小中高一貫校の学生ということか。君のような年齢のマスターが与えられる事の多いロールだな」

「学生か……。僕の父さん、僕を学校に行かせようとお金を貯めてくれていたっけな。

 結局行けることはなかったけれど、ちょっと興味はあるな」

 

エッジが言峰の話を聞いて口を開いた。

エッジもぼくも学校に行ってない同士らしい。

 

「しかし文面がそれだけといえど、この世界『パラディウム・シティ』に君の家族が再現されている可能性を完全に否定するものではない。

 月海原学園は校則などのゆるい学校だ。学校に行くことをせず、家族を探してみたりするのも良いだろう」

 

なるほど。この世界での行動は結構自由なんだ。

それならぼくの家族を探すのは、目標としてはきっと良いものかもしれない。

でも、なんの見当もないのにどこから始めればいいんだろう。

 

いや、この世界で再現された家族を見つけても、それでどうすればいいんだ。

ぼくは元の世界で叶えたい願いがあるのに。

でも、その願いもさっき思いついたばかりだから詳しく考える必要はあるのかもしれない。

 

あれ? そもそも最初は願いなんて考えてもなかったのに、何でぼくはこの世界に来たんだろう?

生き返ったとでも言える姿で?

 

「言峰さん、ぼくは死んでしまったはずなのにどうしてこの世界に来たんだろう。

 願いなんて考えてもなかったのに、一体何がどうして……?」

 

ぼくは案内人と言った言峰にその疑問をぶつけた。

 

「なるほど、それは気になることだろう。

 この世界への召喚はサーヴァントを召喚する為の3つの星晶石を持ち、強き願いを持ち得る者に対し行われる」

「……星晶石ってどんな物なんだろう。聞いたこともないよ」

 

言われたことは何もわからなかった。

 

「だが君自身が星晶石を意識もせず、そして参加を望もうとせずとも、聖杯は君をこの聖杯戦争の舞台へ呼んだのだ。

 それは偶然か、あるいは君に僅かな可能性である願いを叶えてほしいと思い祈った者、プレイヤー(prayer)がいるのかもしれんな。

 この場所、教会は人々が祈る場だ。その思いは何処かに伝わったり、逆に祈りを引き寄せたりもする。

 願いを叶えるための祈りを受け入れて、聖杯戦争の参加者達はこの教会へ召喚される」

 

祈る者……そうだ、ここは荘厳な雰囲気で、タツマイリ村のプレヤのイノリバに似てると思う。

あ、思い出した。エッジのドラゴンは、イノリバの特別な場所に描かれていたドラゴンにも少し似ていると思う。

やっぱり闇のドラゴンに似た存在なのかな。

 

「もう少し詳しく知りたいならば、ミザリィという者の下へ向かうといいだろう。

 彼女も聖杯戦争の案内役として、星晶石の管理も担当している。聞けることもあるだろう」

「そのミザリィという人は、どこにいるの?」

「普段は自分の構えるアンティークショップにいるはずだ。端末のマップで調べればよい」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ぼくとエッジとドラゴンは教会の外へ出た。

端末でマップを調べると「アンティークショップ・美沙里」は簡単に見つかった。

でも教会からは歩いて行くと結構かかりそうだ。

エッジにもマップを見せて、相談しようとする。

 

「丁度いいな、この世界を知ってもらうためにもドラゴンに乗って行ってみよう」

「え? いきなりぼくが乗ってみても大丈夫なの?」

「大丈夫さ。まあ、とりあえず乗ってみて。

 ドラゴンは絶対に僕を落とさないから、君も僕がしっかり支えてれば安全だ」

 

エッジがまず、脚を曲げ屈んだドラゴンの背に乗る。

ぼくはエッジの手を借りて、ドラゴンの背中に上りエッジの前の位置でドラゴンに乗った。

 

「よし! 出発だ!」

 

エッジは前に乗るぼくを脚や腕を使ってうまく支えてくれる。

そして、ドラゴンがゆっくりと翼を動かし始めて。ぼく達は空へ浮き上がっていった。

 

「クラウスの乗り方はとても安定してるな。けっこう生き物に乗り慣れてるのか?」

「うん!小さかった頃、ドラゴっていう大きな生き物とよく遊んだりしてたからね!」

 

体を晒して飛ぶこと自体は、キマイラにされてたときに着けられた背中の翼とジェットエンジンでいくらでも経験してる。

でもこんな大きな生き物の背に乗って空を飛ぶなんて、今まで想像もしたことのない体験だ。

 

ドラゴンはぼくを乗せてることを意識してか、そこまで風が強く当たらないくらいの速さで飛んでくれる。

周りを見る余裕はいくらでもあって、そしてぼくの世界と景色は全く違っていた。

下には色々な乗り物らしきものが走り回る。雑然とした人の歩く流れが目で見える。

この世界の人達の作ったであろう街は遠くまで広がっているけど、その造りは多種多様で活き活きとして、全く飽きない。

ハリボテばかりのニューポークシティなんか、比べるにも値しない。

遠くには自然をよく残した山々がそびえているし、海や島も見えている。

エッジとしても元の世界の風景と全く違うからかな、ぼくと同じくらい楽しげにドラゴンに乗っている。

 

空を飛ぶ生き物や乗り物も様々だ。

流線型で横に大きな翼を伸ばし、丸い筒型のエンジンを付けているのはきっと飛行機だろう。

実際に飛んでるのは見たことないけど、ポーキーの作った映像に出てきたり模型が飾ってあったりしたからすぐわかった。

でも、大きな乗り物は飛行機だけじゃなくて。

 

「すごいや!あんな大きな生き物が空を飛んでるなんて!」

 

巨大な魚のような生き物が空を飛んでいる。

そして、その背や腹には何かが付けられている。

よく見るとそこには窓もあって、そこから人の姿も見える。

つまり、気球か飛行船にも近い雰囲気。

ぼくが手を振ると、窓から見える人も振り返してくれた。

それどころか、巨大な生き物の方まで少し表情が柔らかくなったように見えた。

 

「あれ? エッジはあまり驚かないんだね!」

「いや、僕も驚いてるさ。

 僕の世界では巨大な生き物は結構当たり前にいたけど、あんなに人間に友好的そうなのはいなかったからな」

 

不思議な船について、端末を使って少し詳しく調べてみる。

VR機能を起動して、端末のカメラを通して船を写すと情報が表示された。

 

「端末で調べてみてるけど、ああいう船は巨神獣(アルス)船って言うらしいよ。

 巨神獣っていう人間に友好的な生き物に、人々が雲海っていう雲の海から引き上げた技術品で作った船体がくっついているんだって!」

 

ぼくらがドラゴンに乗ってるみたいに、人間と生き物の一つの共生の形なのかなって思った。エサとかは何を食べるんだろう?

ぼくの話を聞いてから少し考え込んで、エッジが話し始める。

 

「巨大な動力と人が乗る小さな部分……なんだか僕の世界の船によく似てる。

 まあ、人間の言うことを聞くような巨大生物なんてのはいないから、巨大なエンジンに人が乗る場所をぶら下げるんだけどな」

 

空を飛ぶ船のようなものは他にもあった。

そっちは生物らしい部分はなく、より全体が機械のような作りの船だった。

それも端末で調べてみる。

 

「あれはEテクノロジーって古代文明の技術で空を飛んでいる、Eシップって船だって。

 Eテクノロジーはほとんど解明されてないけど、そのままの形や工夫して組み合わせて利用する形で使われているみたい」

「なるほど、色々調べてくれてありがとう。

 古代から借り物の技術……か。さっきの巨神獣船の雲海から引き上げた技術も、解明できない借り物の技術……。

 僕の世界の人々も旧世紀の文明の遺産、借り物の技術を使って生活していた。不思議と何か近さを感じるな……」

 

エッジは色々考えながら呟いていた。なんだか思うところがあるらしい。

飛んでいるとぼくらみたいに、生身で何かに乗っている人達も見かける。

ぼくらはそういう人たちとすれ違うたびに、ぶつかったり風に巻き込んだりしないように手を振ったりして合図を送りあう。

 

ある人は雲に乗り、ある人は箒に跨がり、ある人は小さな飛行機のような機械の上に乗り、ある人は巨大な鳥の背で空を飛ぶ。

ぼくらが乗ってるドラゴンみたいに、翼を持った爬虫類のような生き物も見かけた。

 

端末で調べてみたけれど、ドラゴンっていうのは一部の爬虫類に類する生き物をまとめた呼び方らしい。

ぼくの世界の闇のドラゴンの絵も、そんな風に描かれていたっけ。

エッジは相棒のドラゴンのことをただドラゴンと言うけど、それってこの世界だと不便になのかもしれない。

こんなに多種多様なものが飛んでるなんて、ぼくらがドラゴンに乗ってもそこまで目立ちそうもない。

 

でも、巨神獣船とよく似た形式の船を目に入れたとき、エッジの体が強張ったのを感じた。

ドラゴンもキュルルと鳴いて警戒を促す様子で、ぼくもそっちに目をやる。

まず目を引くのはドラゴンと同じような白い甲皮で覆われ継ぎ目は黒く、前4枚、後4枚の細長い硬質な羽根を持つ巨大で不思議な動力装置。

その全長は60m近くはあるのだろうか。巨神獣船の中でも中くらいのものに近そう。

その下に無骨な金属で出来たように見える船体が、ぶら下がるように接続されている。

 

「あれは……帝国のヴァルナという種類の船だったはずだ」

「エッジの世界の船なんだ。なんだか重々しい雰囲気の、不思議な船だ。

 どういう船なんだろう……?」

「上の白い部分が太古の昔に製造されて動き続ける、旧世紀エンジンだ。

 下のぶら下がった部分に乗員を乗せて、他にも戦闘機を積んでいたり、機銃や強力な対攻性生物弾で武装してる。

 僕と戦ったことのある帝国の空中戦艦なんだけれど……まさか、この街にもあるなんて」

 

つまり、巨大な戦うための船ということか。とても強そうだ……。

巨神獣船と違うその無機質な飛行は、いかにも恐ろしげに見える。

昔よく乗ってたブタ母艦と比べても、金属でできた部分だけでも明らかにこっちの船のほうが大きい。

 

「そんな船が何のために出てきたんだろう……?

 大丈夫? エッジ」

「ドラゴンを狙う帝国の艦隊とは何度も戦ってきたけど、

 こんな街の上では戦いたくないから向こうが襲ってくるようなら逃げないといけない」

 

ぼくもドラゴンから振り落とされないように身構えた。

危ないだろうというのも感じたけど、ドラゴンが戦う姿を見るのがちょっぴり楽しみでもあった。

だってエッジには、戦艦を恐れるような感じがなかった。おそらく戦えば勝てると踏んではいるんだ。

……けど、エッジの心配をよそに船は何もせず過ぎ去っていった。

 

「……離れていくね。戦うつもりはないのかな?」

「そうだと思う……ふう、緊張した。

 たぶん、僕の世界の技術が使われていても、目的や乗ってる人たちは違うのかもしれないな」

 

ちょっと残念な感じもするけど、とりあえず一安心だな。

落ち着いたところで、ふと気になったことを聞いた。

 

「エッジ、ドラゴンについて少し気になったんだけれど……」

「なんだ? 実は僕もこのドラゴンについてはわかってないことも多いけれど……」

「えっと、ぼくは動物の気持ちが心でわかるし、心で動物に気持ちを伝えることもできるはずなんだ。

 お父さんや弟も同じことができたし」

「それはすごいなあ……家畜の腕のいいブリーダーは家畜の気持ちがわかるというし、

 僕とドラゴンのような繋がりがなくてもきっとそういうこともあるんだと信じはするよ」

 

ドラゴンの方を見て、背を手のひらで触れてぼくは言う。

 

「でもこのドラゴンのこと、よくわからないな。

 さっき戦いになりそうで身構えたのはさすがにわかったけれど。

 ドラゴンがぼくと話そうと思ってないのかな?

 ……もしかしたら、ずっと使ってなかったからぼくの動物と話す力が鈍ってるのかな」 

「そうだな……ドラゴンは大昔に人間たちが設計して作った生き物なんだ。

 普通の生き物たちとは違うから、話すのが難しいのかもしれないな」

 

そうだったんだ……キマイラみたいに無理やりくっつけたようには見えないけど生物らしくはない白い甲皮、

やっぱり普通の生き物じゃないからだったんだ。

でも目もあるし鳴き声も出す生物なんだから、きっと自分の気持ちとかも持ってると思うんだけれど……。

 

「このドラゴンが喜んでたり楽しんでたり、そういう感情を感じることってエッジにはあるの?」

「えっ? そうだな……乗ってるとドラゴンと通じ合ってる感じはとてもあるんだけれど。

 ドラゴンが僕の考えを感じてくれてるみたいに光の矢を撃ったり姿を変えたり、

 僕自身もドラゴンが教えてくれるかのように見えない方向の敵に気づいたり、とても頼もしいと思う。

 でも感情っていうのは……威嚇するときは怒ってるのかなとか、攻撃されて痛がるくらいしか……」

 

エッジが話しているうちに、ぼくの端末に音が鳴り何かを伝えてきた。

目的地として入れていたアンティークショップ・美紗里はもうすぐみたいだ。

地図が示す方向へ目を凝らすと、店名の文字が目に入った。

 

「あっ、アンティークショップ・美紗里ってあの建物みたいだ!」

「よし。降りられる場所を探そう」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ドラゴンは店のほど近く、広くて通行の邪魔にならなそうなところに着地していく。

ぼくらが背から降りると、エッジがドラゴンにお疲れ様と言う。

ドラゴンはそれを聞いて少し体を伸ばしてから休む態勢になった。

でもエッジの言うように通じ合ってる存在と見ると、なんだかちょっと違和感があるなあ。

 

「エッジ、ちょっと聞きたいんだけど、そのドラゴンに名前はある?

 例えばぼくの家族の犬はボニーって名前があるけど、そういう風にドラゴン自身の名前は付けられてるのかって……」

「えっ? うーん……」

 

エッジは少し考えてから、ドラゴンの方を向いて言う。

 

「気にしたこと、無かったな。

 ドラゴンは特別な生き物だと思ってたから、まあドラゴンでいいかなって最初からずっと思ってたんだけれど……」

「ああ、やっぱり付けてないんだ。

 何だかエッジとドラゴンは心は通じて信頼し合ってはいるけど、よそよそしいようにも見るんだ。

 だからドラゴン自身の気持ちがあまり感じられないんだと思う。

 ぼくにドラゴンの気持ちがわからない理由、それにも繋がってるのかはわからないけれど」

「えっ、そうか……? 言われてみれば、そうかもしれない。

 僕とドラゴンは協力し合って信頼してるから、それで充分だと思ってたけれど……」

 

そのときぼくとエッジはドラゴンの方を見ているけれど、ドラゴンの方はぼくらの方を見ているようには思えなかった。

 

「うん、エッジはサーヴァントになるまでドラゴンと一緒に戦って生きてきたんだから、それでも充分だったんだと思う。

 でも、ドラゴンもきっと感情を持ってる生き物なんだから、名前を付けてちゃんと呼んで触れ合ってあげれば、喜んでくれると思うんだ」

「そうだな……別のドラゴン乗りだったアゼルは、自分のドラゴンをアトルムと呼んで通じ合っていたもんな……。

 うん、ちょっと恥ずかしいけど、やってみる。

 このドラゴンの名前……名前は……」

 

エッジが目を閉じてゆっくり考え込む。

これからずっと呼ぶかもしれない名前なんだから、ちゃんと考えるのは良いことだと思うしぼくは待った。

そしてエッジがゆっくり目を開きながら呟いた。

 

「そうだ……ラギ。そう呼ぶことにするよ。

 昔ドラゴンが見せてくれたのか、世界回路で見たのかわからないけど、

 たくさん見た過去のイメージの中でドラゴンがラギって呼ばれてる所を見た気がするんだ。

 僕自身もいい名前だと思うから」

 

そしてエッジはドラゴンの方へ歩いて行き、頭へ触れた。

 

「ラギ、この世界でも、これからよろしく頼む」

 

すると、今までに無かったことが起きた。

 

ドラゴンが……キャウキャウと高い声で鳴いた。

エッジは驚いて後ろへ引くけど、ドラゴンはエッジの方を強く向く。

 

「ドラゴン……いやラギ、お前そんなに……」

「やっぱりドラゴンだって、ちゃんと感情も持ってるんだよ!

 もっとたくさん触れ合ってあげなよ、エッジ!」

 

エッジは再びドラゴンに触れて、身体を手で撫で始めた。

するとドラゴンは目を閉じて、エッジにされるがままの状態を喜んでいるかのようだ。

……ぼくも近寄って撫でてみた。首は動かさないけど興味ある視線を向けてくれる。

ラギと呼ぶと、エッジほどの反応じゃないけど少し鳴いて返してくれた。

 

「……よし!」

「……クラウス?」

 

ぼくはラギから遠くへ離れて……駆け出して思いっきり体当たりを狙う。

子供の頃、大きくてこのドラゴンにも少し似た生き物、ドラゴとじゃれていたみたいに。

ちょっと認めてくれたのは嬉しかったけど、もっと動物とは体を使って話さなきゃ!

 

ぼくはドラゴンの白い甲皮に覆われていないところを狙って、ジャンプしながらぶつかる。

その感触はそこまで硬くなくて、まるで受け止めてくれているようだった。

ラギはそれを面白がってるのか、キュゥゥと一声長く鳴いた。

さすがにドラゴのように倒れるフリはしてくれなかったけれど……ぼくもうれしい。

 

ドラゴンの周りを走り回ると、ドラゴンはぼくの方を向くように足踏みして向きを変えてくれたりして。

今度、何か食べさせてあげたりもしてみたいなとぼくは思ったり。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

一通りドラゴンと遊んだあと、ドラゴンはその場に置いてエッジと一緒に店へ歩いていく。

中に入ると、カウンターに座っている人がすぐ目に入った。

ぼくはカウンターに向かっていき話し掛けた。

 

「店員さんすみません……」

『はい、何でしょうか?』

「店員さんが、ミザリィという人であってる?」

『ええ、私がミザリィ。このアンティークショップ・美沙里の店長よ』

 

何もないように話すけど、よくよく見ると怪しい雰囲気もする。この人がミザリィ。

 

「始めまして、ぼくはクラウス。よろしくおねがいします」

『そちらの方は、貴方のサーヴァントかしら?』

 

エッジが驚いてミザリィの方を見る。

 

「僕はライダーのサーヴァントだけれど……何故わかった?」

『それはわかるわよ。魔力の気配は偽装でもしない限り、サーヴァントらしい特徴があるもの。

 魔術の心得があればすぐわかるわね』

 

怪しさがより高まる。けれど聞かなきゃならないことがぼくにはある。

 

「それでミザリィさん、少し聞きたいことがあるんだけれど……」

『あら? 君と私は初めましてじゃないわ。

 まあ、こうやって話すのは初めてだけれどね』

「え……?」

 

すこし困惑して首を傾げる。

 

「いいわ、質問してみなさい。なんとなく予想はつくけれどね……」

「うん、ぼくはどうしてぼくがこの世界に来たのか、その理由を詳しく知りたいんだ。

 星晶石が必要とは監督役の人から聞いたけど、そんなもの聞いたこともないし……」

 

カウンターの下から何かを取り出し、ぼくに見せるミザリィ。

 

『星晶石は、この虹色に輝いているコンペイトウみたいな石よ。他の形をしてることもあるけれど。

 まあ、これは本来の機能を完全に再現しないレプリカだけれどね。

 この石について、何か覚えていることはないかしら……?』

 

ぼくはカウンターに置かれた星晶石を眺める。

そして、手の中で転がして感触を確かめたりする。

不思議なことに、なんだか触れていると少し心が安らぐような気がする……。

 

――――思い出した。

確かにぼくは一度この人と会っていたんだ。何時のことだったかはっきりと覚えてはいないけれど。

 

マジックバタフライと呼ばれる、近くにいるとリラックス出来て心の力を少し取り戻せる不思議な生物がぼくの世界にはいて。

そして、ミザリィの持っていた星晶石からも同じような雰囲気を感じていたぼくは……。

それが当然であるようにひったくり、盗んで去ったんだ。

良心の何ひとつも奪われていたからそれをどうとも思わなかった、そして忘れていたんだ……。

 

「ぼくがミザリィさんが持ってた星晶石を奪ったんだね……すっかり忘れてたなんて」

『私は様々な世界に行って、聖杯戦争のために用意された星晶石の一部を人々に配ることを担当しているわ。

 そして君の世界に行っていたときに、君が私から星晶石を盗んだのよ』

「思い出した今は、悪いことをしたとは思ってるよ。

 でもその時、ぼくはぼくの本来の意思で動いてなかったんだけれど……」

 

ミザリィは表情を変えない。その続きをまだ求めているかのように。

 

「……いや、そもそもそう改造されてしまったのも自分のせいだったんだ……ごめんなさい」

『ちゃんと謝れるのね。そういう子は嫌いじゃないわよ、罪は罪だけれどね』

 

罪は罪……それはそうだ。謝るだけでは許されないことだってある。

星晶石を奪った埋め合わせを、ぼくは何かできるだろうか?

持ち物は特に何も持ち合わせてない。参加者用の端末だけ。

星晶石の価値に見合うものって何だろう?

 

と、端末にはQPという単位のお金が入っていることを思い出した。これにぼくはあまり価値を感じてない。

ニューポークシティでは必要だったけど、タツマイリ村ではそんなもの無くてもみんな普通に過ごしてた。

でもこのアンティークショップには値札が付いてる品物もあるから、きっとミザリィは価値がわかってる。

 

「聖杯戦争のために軍資金として、この端末にお金が配られたんだった。

 全部ミザリィさんにあげても、ぼくはかまわないよ。

 星晶石の価値がどれくらいかはわからないけれど、それで埋め合わせになるなら……」

「ちょっとクラウス! さすがに全部渡してしまうと……」

 

エッジは驚いて止めようとしてきた。ミザリィはぼくらの様子を見て微笑んでいる。

 

『少しあなたの事を知りたかっただけ。さすがにそんな大金が欲しいとは思ってないわよ……。

 私は聖杯戦争に参加したら面白そうな人達に星晶石を配ってるけど、君もなかなか面白そうね。良かったわ』

 

ミザリィは立ち上がり、店内を見るように示した。

 

『ここはアンティークショップなのだから、品物を買ってもらえればそれで許してあげるわよ。

 値段は少し上乗せさせてもらうかもしれないけどね』

 

店内の品物を色々見てみるけど、古いものの価値というのはぼくにはよくわからない。

なんとなく凄そうだとかきれいだとか、良さそうだなって思うけど、見た目だけで欲しいとまでは思わないな。

 

ふと大きな鏡を見つけて、自分の姿を映してみる。

姿はちゃんと、改造されていた時の年月も合わせた相応の体格に成長している。

服は黄色と水色の横縞のシャツ、茶色の短パン。昔からよく着ていた柄だ。

でも身体に機械が取り付けられていたような痕跡は、全く存在しない。

そしてやっぱり、なかなかの男前だ。

 

気になる物をエッジにも聞こうと思ってそっちの方を見ると、エッジはもう何かを見つけていた。

 

「……これはやっぱり、僕の世界の本だ」

 

エッジが見ているのは、ぼくが見たこともないような文字で書かれた本。

 

「ドローンレポート……一度も見たことがない本だ。

 なんでこの店に、こんなものがあるんだろう?」

『それは、あなたの世界に存在はしてるけど、普通は入手できない品物ね。

 他の世界から特殊な方法で観測したり、干渉して手に入れさせたりはできるわね。

 複数の世界が関わることで生まれる、アウターゾーン(異世界)。

 ここではアウターゾーンの物品を主に扱っているわ』

「他の世界が僕の世界に干渉する……?

 このパラディウムシティ自体も色んな世界が寄せ集まってるし、そういう世界同士の関わりもあるのかもしれないかな……?」

 

エッジは少し考える素振りを見せたけど、買いたい意志は強そうだ。

 

「もしかしたらアゼルに関することも書かれている本なのかもしれない。いくらですか?」

『貴重な旧世紀の文献なんだし……100万QPということでいかがかしら?』

「……確かにかなり高いような気もする。クラウス、大丈夫かな?」

「構わないよ、エッジが欲しいと思うなら。ぼくは欲しいものは思いつかないし」

「そうか……これでクラウスの罪の意識も解消されてくれるなら。この本、買います」

 

カウンターに行って支払いを済ませると、端末に示されたお金の数値が100万一気に減った。

ニューポークシティより進んだお金の扱われ方だな……。

すると、ミザリィがぼくへの話の続きを始める。

 

『さて、君が私から盗んだ星晶石は1つだったわ。

 でもね、星晶石は3つ集めないとこの世界へ来てサーヴァントを召喚する役目は果たさないの』

「え? それじゃあぼくは残りの星晶石はどこで手に入れたんだろう?」

 

『誰なんでしょうね? 君の世界の星晶石を君へ集めた者は。

 "クラウス"君を見守っていて、戦っても願いを叶えてほしいと思った、誰かさんは?』

 

もしかして、お母さん? それともリュカやお父さん?

ぼくにまた戦ってまで願いを叶えてほしいと思ったりはするのかな?

そんなことはないと思うけど……。

 

ミザリィはそんなぼくを見つめてくる。

目が合うと心の奥底、いやぼくが気付かない裏側にいるものまでもが見通されてるようで、少し怖い。

 

『まあ、ふわっとしたことはこれだけにして、事実を話していきましょうね』

 

ミザリィがぼくの体を指差して話す。

 

『私が君から星晶石を盗まれたとき、君の身体から星晶石の気配を感じたわ。

 君の身体にはおそらく星晶石が組み込まれていたのでしょうね』

 

組み込まれていた……そんなことあったっけ?

ぼくにそんな自覚はないんだけれど。

 

『後で調べてわかったのだけれどね……君がいた世界にばらまかれた星晶石を最初に手に入れたのはポーキーという少年。

 沢山の時空を渡り歩いてきたのだから、人一倍手に入れる可能性が高かったであろう少年。持っていた星晶石は2つよ』

 

……ポーキー!?

まさかの名前すぎる……!

ポーキーが、星晶石を!?

 

『彼はこの星晶石の本当の機能にまで気づいてはいなかった。だから別のことに使ったの。

 君の持つ不思議な力PSI、その性質はやや魔術にも近い物。

 魔術に近い力を使うことの出来る君へのエネルギー源とか、その程度の思いだったのでしょう。

 一度死んだ君を忠実なキマイラに改造する時に、1つを組み込んだのね』

 

恐ろしくて、忌々しいポーキー。

ぼくの体をより効率よく利用するために星晶石を……。

 

『そして、ポーキーは君を改造したであろう後の時期にも星晶石を手に入れたわ。

 星晶石を2つ手に入れたことのある彼に目をつけた私が一つ渡したの。彼の生きざま、結構面白くもあったしね。

 その時私は本来の機能を説明しなかったし、3つの星晶石を一度に手にすることはなかったから起動はしなかったけれどね』

 

「――――え?

 つまりぼくがポーキーにとっととミザリィさんから盗んだ星晶石を渡したりしてたら……

 ここに呼ばれるのはぼくじゃなくてポーキーだったかもしれないってこと?」

 

『そうね、どちらかというと貴方よりもポーキーがこの世界に来る可能性のほうが、高かったでしょうね』

 

ポーキーとぼくのどちらもが、この世界にマスターとして呼ばれる可能性があったなんて。

そして……ポーキーのほうが可能性が高かっただって!

 

「あんな悪いやつが願いを叶えたら、どんな恐ろしいことをするかわからないよ!なんで!」

 

ぼくに怒りと困惑の感情が押し寄せる。ミザリィは悪人の味方をするというのか。

 

『……彼、ポーキーは長く生きているけど、成長の機会が全くなかった子供でもあるわ。

 この聖杯戦争に呼ばれたマスターは、基本的に怪我などは魂の形に応じて修復されるのは知ってるわね?』

 

わかってる。一度死んだはずのぼくが生きているし、

そして感覚としても鏡で見ても、ぼくの身体は改造された面影が何もなかったから。

何も返せず、話の続きを聴く。

 

『だから、あなたが機械の入り混じった身体から解放されたのと同じように、

 彼も自分を護り縛りつけるマシンからも不自然に老いた身体からもきっと解放されるでしょうね』

 

ポーキーが若い体で自由になるだって?

もっと何をするかわからなくなるじゃないか……。

ミザリィの言うことの恐ろしさに、ぼくの背中に寒気が走る。

 

『もしかしたら、この世界の人々との関わりで自分を見つめ直して、反省して真っ当に大人になれる可能性もあったんじゃないかしら?

 ……私って子供には結構優しいのよ』

 

ポーキーが真っ当な大人になれるだって?

 

ぼくの家族をバラバラにしたポーキーが……

ノーウェア島をめちゃくちゃにしたポーキーが……??

ぼくとリュカを争わせ殺し合わせたポーキーが……????

……………………

 

「そんなの優しさじゃない!!

 ぼくはポーキーなんて……もう……絶対に……!!」

 

ぼくはそう言いかけると店の外へ向かって駆け出した。

嫌だ。もう何も聞きたくない。

 

「あっ!待ってクラウス! ごめんなさい、ミザリィさん!」

 

『この店では他に魔術礼装やコードキャストといった、聖杯戦争を有利に進められる道具も扱ってるわ。

 また気が向いたらいつでも来てね。冷やかしはお断りだけど』

 

ミザリィが何か言ってきてる。

でもぼくはミザリィがポーキーを重ねるように、邪悪な存在に見えてしまった。

もう二度と、こんな店来たくない。ただ逃げ出したかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ポーキーの邪悪な顔が頭にへばり付いている。

若いポーキーが、笑いながら店からぼくを追いかけてくるように感じる。

キマイラ製造用の動物を捕らえるための武器を持ったブタマスク達までもが、浮かんで見えてきた。

 

もう嫌だ。怖い。

自分が死ぬことなんて、今更怖くないはずなのに。

何も感じず命令を遂行するだけだったあの冷たい体の時の思い出が、今になって強く心の奥を刺している。

 

改造されてぼくがぼくでなくなってしまうことが、とても恐ろしいんだ。

ポーキーは世界を終わらせる化け物とぼくのことを言っていた。

闇のドラゴンも、世界のすべてをも消し去ってしまう、心のない怪物。

あんな事をしていたぼくが、とても怖い。

でもぼく一人ではとてもこの恐ろしさに立ち向かえない。生身のぼくなんてちっぽけなものでしかなかったんだ。

ちくしょう…………。

 

ぼくは振り切りたくて、とにかく店から離れる方向へ、街の中を走っていく。

 

さっきは飛んでたしドラゴンに夢中だったから気づかなかったけど、

よく見ると街の中には人間と動物が合わさったような人も、人間と機械が混ざったような人もいる。

もしかして、ポーキーの魔の手はこの街にも及んでいたのだろうか。

ポークビーンのような地際を浮遊する乗り物も道を走っていた。

ぼくはそれらの中にいるのが嫌で嫌で、人にぶつかるのも気にせず人のいない方へ走り続ける。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

いくつもの道を越えた。いくつもの建物の間を抜けた。

町並みが変わってくるくらいまで走った。路地に入り込む。

今までこうしてポーキーの恐ろしさを実感したことなんて、無かった。

 

 

どれだけ走り続けただろう。突然、誰かがぼくの背中を掴んだ。

再びぼくを捕まえて改造しようというのか。

そんなこと、絶対にさせるもんか!

力を高めていく。PSIで攻撃するために……。

 

「待って、エッジ君に頼まれたんだ。君のサーヴァントのね」

 

エッジ君……?

 

その名前を出されてぼくは攻撃をやめる。

ぼくのこの街での明確といえる、仲間。

ぼくと一緒に戦ってくれる、仲間だ……。

 

「エッジ君、慌てて君を探して心配していたよ。

 安心して。またすぐに会わせてあげるから……」

 

この人はとりあえずエッジに味方してくれてるらしい。

それを聞いて、少し頭に浮かぶポーキーがぼやけてきた気がした。

 

エッジはサーヴァントとしてのステータスは全然低い。

きっと街中をちょこまか走っていく子供のぼくに追いつけず、見失ってしまったんだろう。

だから他の人に協力してもらったのかもしれない。

 

「この街にはもうマスターもサーヴァントも沢山いる。

 細い裏通りとかを子供一人で迂闊に動いたりはあまりしないほうがいいね」

 

……エッジを心配させてしまっていたと実感する。

こんなに逃げ惑ってたのが恥ずかしくなった。

弱くて泣き虫だった幼少時代のリュカみたいじゃないか……。

いや、双子だから、本質に似た部分があるのかな。

リュカがあんなに勇敢な所を見せてポーキーに立ち向かったように、ぼくにも弱い面があったのかもしれない……。

 

この人は何者だろう。

サーヴァントが沢山いるとわかるみたいだし、一人でぼくを探せたということは……?

 

「僕はアルヴィース。聖杯戦争の管理を司る、ルーラーのサーヴァントだ。

 君たちと少し話したいことがあって来たんだけどね。

 エッジ君に会いに行ったらマスターが逃げてしまったというから、話してもらう代わりに探すのを手伝ってあげたんだ」

 

やっぱり、この人はサーヴァントだった。

ルーラーっていうのは、エッジのサーヴァントとしてのクラスであるライダーと似たような意味なんだろう。

 

「聖杯戦争を管理するようなサーヴァントがわざわざエッジに用事って、エッジは何かやってしまったの……?

 ……いやぼくと一緒にいた間、何もやってないよね。もしかして、管理する方へのスカウトだったりするの?」

 

アルヴィースは少し笑うかのように答えた。

 

「……ふふっ、どっちでもないよ。

 君たちが召喚されたときに僕はちょっと違和感を抱いたんだ。

 あとはさっき会ったときエッジ君のスキルの中に気になるものがあったから、また本人に聞いておこうと思ってね。

 大丈夫だとは思うけど、この聖杯戦争を成立させるための大きな問題になるようなら手を打たなければいけないからさ」

 

とりあえずはぼくらに強く干渉するつもりはないらしい。

安心したような、少しがっかりしたような。

 

「じゃあ、一緒にエッジ君の方へ行こうか!」

 

そう言うとアルヴィースは屈んで、ぼくを背負った。

そのまま壁を蹴りながら建物の屋根に登り、人間より速いスピードで走っていく。

 

ぼくは背負われてる間に相手が管理者ならばと、気になったことを聞いてみた。

 

「……そうだ、アルヴィースさん、この街には人間じゃない奴ら、

 動物や機械と人間が合わさったような奴らもいっぱいいるけど……」

 

アルヴィースは全て知ってるかのように、落ち着いて答えだす。

 

「いや、色んな人々がいるのはこの聖杯戦争の舞台、パラディウムシティの性質なんだよ。

 住人は様々な世界から、間接的にでも聖杯、もしくはそれに値する願望機……願いを叶えるシステムに関わった人々を再現しているからね」

「何だって!? ポーキーのキマイラ化の手はそんなにたくさんの世界に及んでいたの!?」

 

様々な世界と聞いて、ぼくはポーキーがたくさんの時空を転移していたのを連想してしまった。

アルヴィースは説明の途中だったけど、それを一度聞いてから続けてくれる。

 

「いやぁ……そうじゃないよ。

 動物や機械と人間が合わさったような住人は、基本的にはもともとそういう特徴を持った人たちだ。

 世界によって、そこに住んでる生き物たちの形も全然違ったりするんだ。

 だから、そこまで君が心配する必要も、恐れる必要もないんだ」

 

アルヴィースはぼくが人々を恐れていたことまで、お見通しだったらしい。

 

「そうなんだね……ちゃんとみんな人として見れるように頑張っていかなきゃ……」

「そうだけれど、まあ自然と慣れていけると思うよ。

 有名なところでは、この街の市長だって頭に触覚はあるし肌は緑だし、

 人間だけの世界から来たような人々からはかなり奇怪に見えるらしいね。

 それに僕だってほとんど人間と違うところはないけど、種族としては人間じゃなくてホムスっていう。

 人間と違ってエーテルという物質を少しずつ周りから摂取してて、無いと生きていけないんだ」

 

マジプシーみたいな、人間とほとんど同じ見た目だけどどこか違っている種族もいるのかな……?

 

と、考え込むぼくの目にふと、大きめのビルの壁に映し出されている3人の姿が目に入った。

長く赤い髪をしたぼくより少し大きな女の子が、しようもない言葉遊びの駄洒落を漏らす。

 

……緊張を和らげようとしたのかもしれないけど、なんだか空気が固まる。こっちまでなんだか寒気がする。

画面の中で木枯らしが吹き、枯れ葉が舞うのが見える。雪まで舞ってるようにも見える。

赤い目と紫の目を持つぼくと同じくらいに言える女の子はその様子を不思議がり、

間にいる青い髪の青年は、顔を下げ目元がよく見えないけど口は苦笑いしているのがわかる。

 

ぼくが映像を見ているのを気にしたのか、アルヴィースが立ち止まった。

そしてしばらくして……青年が見たこともない鍵盤を持つ楽器を奏でだすと、二人の女の子がそれに合わせて歌い出した。

 

「彼らはユニット『エンジェリック・コンサート』として活動している三人だね。

 彼らはこの世界の人々でも、特に元の世界で強く願望機に関わった人達だ。

 赤い髪の子……サフィーが消えてしまった未来でオッドアイの子、ラスティは生まれる。

 そして、青年のカウジーはあの二人どちらに対しても、あのフォルテールという楽器で演奏を合わせてあげた」

 

アルヴィースが一緒に聞きながら、ぼくに説明してくれる。

聞こえてくる二人の歌は、人々の絆、愛について歌っているみたいだった。

柔らかく優しい歌声は、聞く人々みんなを優しく包むようだった。

でも……ぼくはそれを素直に受け取れない。

ぼくは今、この世界の中で家族の誰からの愛も感じられていない。

 

「三人が一緒にユニットを組むなんて、彼らの元の世界では絶対にありえない。

 でも、この世界ではありえないこともあり得るんだ。

 あの縁の強い三人がユニットを組んでるのを見ることだってね……」

「そうなんだ……本来は会えない人々があんなふうに幸せそうにしてるなんて……とても……」

 

……羨ましい……ぼくはなぜあのように家族との暮らしが続く未来で呼ばれなかったんだろう。

…………ぼくもあの人たちみたいに、ここで家族全員仲良く暮らしていれれば良かったのに。

 

「……いや、どれだけ精巧に再現されているとは言っても、彼らの存在はNPC。

 つまりこの舞台のために再現された存在ににすぎないとも言える。

 そして……この世界は聖杯戦争が終われば消えてしまう。いつかは終わるんだ」

「そんな……!せっかく会えたのにそんな短い間しか一緒にいられないなんて……。

 どうしようもないのかな……可愛そうだ」

 

せっかく会えた人々がすぐに終わってしまう……ぼくも自分自身の家族を重ね合わせてしまう。

俯くぼくに対して、アルヴィースは優しく話しかける。

 

「けれど……ありえない可能性が実現されている彼らがこの世界に生きていることにも、意味はある。

 消えるのは仕方ないけれど、彼らはこのありえない世界で最後に願いを叶えるであろう君たち参加者に対して、

 願いをよく確認させて、その願いを叶えることによる責任を持てるのか問い続けているんだ。

 君が彼らを可哀想だと思った気持ちは、意思を持つ一人の人間として大事なもの。

 今後もよく考えていってほしいな」

 

……気持ちを持つこと……それについて考えることはとても大切だと思う。

ポーキーにキマイラにされていた頃はそんなこと何もできなかったから。

あの時のぼくは人間じゃなかった。

でも、人間としてぼくはそれを乗り越えていけるんだろうか――――。

 

「クラウス、エッジ君が見えてきたよ」

 

考えてるうちにだいぶアルヴィースは走ってきていたみたいで、エッジの所へ近づいてきた。

大きなドラゴンはすぐ目に入るけど、最初の場所とは違うように見える。

もしかして、ミザリィの店から離れるために動いてくれたのかな。

そう思ってるうちに、素早いアルヴィースの足はすぐにエッジのもとにたどり着いてぼくを下ろした。

エッジの表情は……怒ってない。むしろ自分も悪いことをしたみたいに元気が無さそうだった。

 

「エッジ……勝手に離れてしまって、ごめん」

「いや、僕もあまり良くないことをしたと思う……。

 サーヴァントとしてマスターの君をしっかり護らないといけないのに。

 君の気持ちに想像がつかなかったんだ。

 心から恐ろしいと思った相手に立ち向かうって、よほどの理由が無ければ難しいことだから……」

「……ありがとう、エッジ」

 

エッジのほうも謝ってくれるなんて……おかげで少し、気が楽になる。

そんなぼくらの方をラギは見つめて、ピュウピュウ鳴いてくる。

安心してくれてるのか、落ち込んでるのを引きずらないように気を遣ってくれてるのかな。

 

アルヴィースはラギの方が気になっているみたいだ。細かく見たり、体を撫でたりしている。

でも、ラギはアルヴィースを警戒していない。

ルーラーは中立だってちゃんとわかってるのかな?

と、それも一通り終わったらしい。

 

「サーヴァントとしての君よりも、そっちのドラゴン君の方がずっとサーヴァントの気配に鋭そうだね。

 しかも僕に敵意が無いことにもすぐ気づいて、警戒もしていない」

「え、そうなの?」

「あ、ああ……。アルヴィースがサーヴァントということにも、名乗り出られるまで気づかなかったんだ。

 今も、集中して見ればなんとなく人間との違いがわかるといったくらいだよ」

「まあ、君はサーヴァントとしては能力が低くて宝具に特化した感じだから仕方なさそうだな。

 きっとドラゴンに乗ってる間はドラゴンが教えてくれるんだろうけど、単独行動は注意しなよ」

 

エッジとぼくがドラゴンの方を見ると、ぜひ頼ってくれとでも言いたげにドラゴンは一声鳴き体を大きく見せた。

 

「僕も空飛ぶ生き物に乗ることはあるけど街中でそう安々と出せないし、ドラゴンの乗り心地も少し気になるな……。

 まあ、そろそろ僕の本題に入らせてくれ。

 僕が君たちに接触しようと思ったのは、君たちがこの世界に召喚されたときに、ある物が一緒に落ちたからだ」

 

扉のドアノブを回して開けるような手振りをしながら話すアルヴィース。

 

「マスターがこの世界に召喚されるときは、世界を接続する扉を通り抜ける。

 でも、君が来る時は概念的なもののはずの扉からドアノブらしき物が落ちて、この世界に転がってきた。

 こんな現象は初めてのことだ。

 言峰神父が拾おうとしたら落としてどこかに行ってしまったようで、僕も存在を見失ってしまったんだけどね」

「ドアノブ……? うーん、わからないな……。

 この世界に来たとき、色々なことがありすぎて気づかなかったのかも…………うーん……」

 

……ふとぼくの家族の家のドアノブが、いつの間にか外れてなくなっていたことを思い出した。

でもそんな事はたぶん関係ないと思う。

エッジは全く心当たりがないみたいで、ぼくの方を見ている。

しばらく悩んでも出てこないのを見て、アルヴィースが話を続ける。

 

「わからないなら、しょうがないか。

 まあ、追々探してみるとするかな」

 

すると、アルヴィースはエッジの方を見やって話し始めた。

 

「さて、もう一つあるんだけど、さっき君に接触したときに高ランクの真名看破スキルを持つ僕は、君のステータスを全て把握した」

「なんだって!そんなこともできるのか……!?」

 

エッジが驚くと同時に少し恐れるように身体を引かせる。

すると、アルヴィースは謝るように急いで続けた。

 

「あっと、君がよっぽどのことをしなければ、他の参加者へ情報として渡すことはない。

 これはルーラーとしての立ち位置上、絶対に守るから、安心してほしい。驚かせてすまないね」

「ああ……そうだよな。ルーラーってそういう役割のクラスだもんな」

 

アルヴィースのことを、ぼくは信用できると思ってるけれど。

エッジはすぐ納得したんだから、たぶんサーヴァントとしてルーラーがどういうものなのか少し知識があるのかな。

 

「……さて、でもそれなのにある一つのスキルの詳細を僕は全く見ることができないんだ」

「もしかして……」

「心当たりがあるんだね? そう……スキル『絶対の客人』についてだ。

 君はそれを、どういうものと把握しているんだ?」

 

強くエッジの方を見るアルヴィース。

ぼくもエッジを見る。そんな特殊な力がエッジにはあるのかな?

 

「……ごめんアルヴィース、こちらも同じ答えになってしまう。

 僕にもこのスキルの詳細はわからない、書いてあることと同じだけしかわからないんだ。

 隠そうと思ったりはしてない、本当なんだ」

 

エッジは首を振り目を閉じながら応えた。

 

「なるほどね。もしかしたらそうじゃないかとは思ってたんだけれど」

「だから、僕がこのスキルを悪用しようと考えることもできない。するつもりもないけど。

 僕に世界回路の中での記憶がもっと残ってれば、詳しくわかったかもしれないんだけど……」

 

少し残念そうに続けたエッジ。

アルヴィースはそれを見て、にこやかに話した。

 

「わからないからって君たちをどうこうするつもりはないよ。

 少し他の人たちよりも気になる点があるというだけで、君たちも参加者の一枠としてちゃんと扱うさ。

 まあ、特に問題なく聞けて良かったよ」

 

それを聞いて安心したかのようなエッジが、アルヴィースに礼を言った。

 

「ルーラーなのに色々ありがとう、アルヴィース」

「いや、これも仕事の一環さ。

 僕は普段はこの街に電気を供給している重要施設、物質転換炉という所を護っている。

 スキルの詳細が分かって僕に伝えたくなったり、他にも質問や報告したいことがあったら来てくれればいい。大抵はいるはずだよ。

 それじゃあ、僕はそろそろ行くよ。君たちのこの街での成長を祈ろう」

 

アルヴィースが去ろうとする……けどその前にぼくは一つ聞きたいことができていた。

 

「アルヴィース、最後に少し聞きたいことがあるんだけれど……」

「ああ、答えられる範囲でなら教えてあげるよ」

「ええっと……アルヴィースはこの世界の人たちは色々な世界から、

 聖杯みたいな願望機に関わった人たちを再現してるって言ったけど」

 

願望機……願いを叶えるシステム。

ぼくは、一つ心当たりがあった。

 

「願望機っていうのに……もしかしたら似たものがぼくの世界にもあったかもしれない。

 それは闇のドラゴンって呼ばれてた。

 ぼくの住んでいたノーウェア島には地面に刺さった7本の大きな針があって、

 それを全て抜くと島の下に眠るドラゴンが目覚めるって言われてた。

 ドラゴンは針を抜いた人の願いに応じて、世界を壊して、また新たに作ることもできるって……。

 ぼくはその針を幾つか抜いたけど、最後に何が起こるのか見ることは出来なかったから詳しくは分からない。

 でも……ぼくの世界はこの世界にけっこう関わってるんじゃないか、そんな気がしたんだ。

 アルヴィースは何かわからないかと思って」

 

ドラゴンという言葉にエッジは驚いたかのようで、その続きも興味深そうに聞き続けている。

アルヴィースも真剣そうに聞いてくれた。

 

「なるほど……ドラゴン、それは特別な存在である生き物だ。

 僕のいた世界にも、人々を恐れさせる強大なモンスターの中にドラゴンと呼ばれる種がいたな。

 その強さのため特別な名を付けられて、竜王アルカトラズ、悪魔王ドラゴニア、雪檻のアバーシと呼ばれていた。

 まあ、彼らは色々な世界の中ではドラゴンとしてはそんなに高い扱われ方ではないね」

 

そして、目を閉じるアルヴィース。

まるで、この世界から視線を外して見てないかのようだ。

 

「ある世界ではドラゴンという生物がいるのは同じだけど、その最大種は古代から生きトリスティアという都市の興亡に関わり滅ぼすことも可能な強大な生物。

 またある世界では星の入った7つの珠を集めると、ドラゴンを呼び出すことができてどんな願いも叶えるといい、人々はその為に争った。

 またある世界では、神仙石という石には天の龍と地の龍の力が封じられ、それを引き出し宿らせた者は神となるという……」

 

そして、ぼくの方を向き直して言う。

その視線は、まるでぼくだけでなくぼくの過去まで見透されてるような気がする。

 

「君の世界の闇のドラゴンは、彼らと似たような超力的な存在なんだろうね。

 世界を壊すだけじゃなくて力を開放させた者の願いを元に世界を作る存在だとしたら……それは願望器とよく似ている。

 つまり、願望器に関わった存在として君の世界の一部がこの世界に再現されている可能性は、無数の世界の中では高い方だろう」

「それなら……ねえアルヴィース、

 ドラゴンにとても近くで関わったぼくの家族……それに針を守る役目を持ってたマジプシーの人達もこの世界にいるの?

 そしてノーウェア島自体も、この島にあるの?」

 

ぼくはアルヴィースの方を複雑な気持ちで見つめて聞いた。

もしみんなが居たら……また会えるのはうれしいけれど、でもいつか消えてしまうのは悲しいから。

…………アルヴィースは優しく語りかけた。

 

「……君の気持ちはよくわかるよ。

 でも、確実に存在するかどうかや、場所までは教えることはできない」

「え? 待ってよ、少し怖いけどやっぱり聞こうと思ったのに……」

 

アルヴィースはぼくらに背を向けながら言う。

 

「ルーラーはすべての参加者に公平な存在だからね。君の世界に余りに近い情報を直接与えたら、君に有利になりすぎる。

 さっきは用事を聞いてもらった代わりに少し手助けしたけど、これ以上は君達に頑張ってもらわなければならないんだ」

 

そして走り去っていく。

ぼくは声をかけるけど、走りながらその姿は薄くなって消え去っていく。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

座って休むラギの体に、ぼくらももたれて座りこむ。

色々と考えることがあるけど、まだ頭は回らない。

すると、エッジの方から話し始めてくれた。

 

「クラウス。君とアルヴィースの話を聞いて思ったんだけれど。

 アルヴィースは君の家族がいる可能性を否定せず、高いとも取れる言い方をした。

 それはつまり……ショックかもしれないけど、君の言うポーキーが存在する可能性だって、この世界にはあるんだと思う」

「そんな……! そうか、参加者じゃなくてアルヴィースの言ったNPCとかでいるかもしれないんだ……」

 

ポーキーがいたら、ぼくはどうしたらいい?

エッジとラギもいれば、どうにかなるのかな?

 

「でも……君の心を僕は詳しく知らないから、もし見当外れだったら、ごめん。

 ミザリィは子供に優しいって言ってた。でも、君も子供じゃないか。

 あえて一度心の傷を浮かばせて明確にして、いずれ克服してくれるようにと思ったのかもしれない。

 ――そんなことを、僕は考えてみたんだ。

 ミザリィは底が知れないけど、少しは信頼して考えてみるのもいいと思う。

 僕だって貴重な、僕の想うアゼルに関するかもしれない本を買わせて貰えたしな。

 ……ああいうことがあって、クラウスはポーキーを恐ろしい以外にどう思ってる?」

 

ぼくの中で、ポーキーに関する記憶が色々巡っていく。

エッジ、アルヴィース……そしてもしかしたらミザリィのお陰でか、嫌な感情はあるけど思い出すことに恐れはなかった。

 

「ポーキーは……世界をあんなふうにして恐ろしいよ……。でも……それをぼくは…………やめさせたいと思う。

 ポーキーはきっと最後にぼくの弟のリュカ、その仲間たちと戦ったと思う。

 そしてどうなったのかまでは知らないけど……ぼくだってリュカと同じで、悪事を止める力があるなら絶対に止めたい。

 あいつと戦って止める力があれば……。

 ぼくの家族をめちゃくちゃにしたポーキーを、殴り返したい……」

 

幼い子供から成長したから、考えられること。

お母さんの仇のメカドラゴ、そしてドラゴを改造したブタマスク……その親玉のポーキー。

 

「……その気持ち、きっと自分自身を動かす意志としてとても大事なものだよ。

 僕の元の世界での旅も、家族を殺された復讐の気持ちから始まったんだ」

 

エッジ……エッジも家族を失ってたんだ。

ぼくの辛かった気持ちも、もしかしたらわかってくれるのかな。

 

「でも……気持ちに囚われすぎて、他のことを見失わないでほしい。

 復讐したいと思ったその人のおかげで、僕は亜人の少女、唯一無二のアゼルと出会えた」

 

不思議だ。エッジの言葉からは色々な感情が混ざってるみたい。

エッジの復讐したかった人は、どんな人なんだろう。

でも、ぼくの復讐したいと思うポーキーが来て良かったことなんて何もない。

それでも他のことを見失うべきじゃない、というのはすこしわかる。

 

「ぼくも少し違うけど、そういうこと、わかってる。

 お母さんを殺した仇の改造されたドラゴに無鉄砲に挑んでしまったから、ぼくは本当の敵に操られてしまった。

 きっとそのときぼくは復讐に囚われて、周りが見えてなかった……」

 

本当に倒すべきはポーキーだったのに、我慢できなかった子供の頃を思い出す。

悪いのは、やっぱりぼくでもある。

でも、そもそもポーキーが来なかったら全ては起こらなかったことなのに。

 

「……その本当の敵のポーキーは子供のぼくよりも子供じみた思いだけで、何もかもめちゃくちゃにした!

 なのにポーキーはとてもずる賢くて、みんなを騙して操ってバラバラにした!

 ポーキーが来て良かったことなんて、何も、何もないよ!!

 世界のみんなにとってもね……」

 

なんならポーキーの配下のブタマスクや研究者たちだって、

ポーキーの誘惑に乗せられたり洗脳されたりして別時空から連れてこられた被害者たちだ。

その途中でポーキーはどれだけの時空をめちゃくちゃにしてきたんだろう。

ポーキーは絶対に許せない!

 

でもその気持ちに囚われてはいけないんだったら、他には何をすればいいんだろう。

昔のことを思い出しながら、少し考えてみる。

 

そうだ、ポーキーに連れてこられた人たちがいた色々な時空も、修復されてみんなが幸せになれる世界に、できたらいいな。

家族のためだけじゃなくてそういうこともできれば、きっと元の家族に戻れたときリュカに負けないくらい自慢できるって、そう思う。

ぼくはその思いに気を張った。

 

「あれ? 急にしっかりした顔になったな。クラウス……」

「いろいろ考えてたんだけど。

 エッジ、いまぼくの叶えたい願いが一つ増えたよ。

 家族だけじゃない、世界のみんなの為の願い。

 少し気持ちに整理がついた気がする。エッジ、ラギ、これから一緒に頑張ろう!」

 

ラギがそれに応えて、首を持ち上げ高らかな声で鳴いた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  ………………

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ーーーー僕の家族。

 

ーーーーアゼル、『塔』を巡る旅の中で時には戦い、時には協力して、お互い惹かれ合った。

 

アゼルは旧世紀の技術が生み出した人形の生物、ドローンだ。今の人々はそれを亜人と呼んだ。

亜人は遺跡に関する何らかの役目を持っている。アゼルは塔と同調し管理するだけでなく、世界回路へアクセスし他の人間やドラゴンを送り込む機能を持った亜人だった。

アゼルは自分の使命が来るまでの間、旧世紀の遺跡に保管されてずっと起動することなく眠っていた。

 

帝国を裏切った軍人……そして家族同然の傭兵団の仲間たちの仇でもあるクレイメンはきっと、

セストレンにはこのまま世界を管理させるべきだという自身の思いのためにアゼルを目覚めさせた。

でも、アゼルの親の代わりように世界の色々なことも教えて導いてきた。

悪い事をしたら謝るというのをクレイメンがアゼルに教えたと聞いた時とか、ちょっと信じられなかった。

そしてアトルムドラゴン。アゼルが目覚めた時から一緒に、アゼルと共に戦い、そして護ってきた唯一の仲間。

 

アトルムはクレイメンの為にすべてをかけていたアゼルと共に、僕とドラゴンに最後の戦いを挑んで、そしてアゼルを僕に託すように守り死んでいった。

クレイメンが最後は攻性生物に襲われ死んだことは報いでもあるし、シーカー達や絶対の客人の意志と対立した者として仕方ないことでもあったんだろう。

 

 

でも、僕はアゼルの家族を奪って、そしてアゼルには僕だけになってしまった。

それなのに僕はアゼルの力で世界回路に入りセストレンを破壊した後で、世界回路に溶け去った。

絶対に帰ってくると約束したのに。

アゼルは世界に一人ぼっちになった。

 

 

アゼルは僕を現実世界で探しても探しても見つからず、それでも希望を探して生き残った遺跡から世界回路へアクセスしてくれた。

けれど、世界回路にアクセスする正当な権限を持つため情報化しても姿を保って世界回路を探れるドローンと違って、

すでに世界回路に溶けてしまった僕はそれでもアゼルと会えず、見守っていることしかできなかった。

 

そして僕の名前を呼び続け、探し続けても見つからない悲しみの中……アゼルは世界回路で僕達二人の子供を造った。

オルタ。世界、そして僕たちの希望。

 

亜人は子供を残せない。でも、世界回路には生物の遺伝基を組み合わせて、生物炉を通して現実世界に新たな生物を作り出せる機能があった。

それを使って、アゼルは僕の遺伝基とアゼルの遺伝基を使って僕らの子供を作り出した。

 

でも、詳しく憶えてないことが悲しいけれど、彼女は世界に生まれてとても辛い思いをして、苦労していた。

アゼルは永久に世界回路の中で僕を探し続けている。オルタには両親がいなかった。

僕のことでアゼルが苦しんで、そしてさらにオルタが苦しむ。

僕はとても悲しいけど、自分では何もできなかった。

 

だから僕は、ちゃんとした家族になりたいんだ。

三人がちゃんと現実世界で出会って、ともに過ごし歩んでいけることを願うんだ。

オルタは僕やアゼルを恨んでいるかもしれないけれど、それでも話し合える機会すらないよりは絶対いい。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

気になることがあった。

今回ドラゴン、ラギが僕の宝具として来てくれたのはなぜなのだろう。

聖杯戦争のシステムとして、強く僕に関わった彼が宝具として扱われただけなのだろうか。

もしかしたら、願いを持った僕を想って助けようとしてくれているのだろうか。

 

――僕や僕以前の乗り手の前に現れたときと同様、この世界に対しても使命があるのか?

 

僕のサーヴァントととしてのステータスの中に存在する、絶対の客人というスキル。僕にも詳細を見ることができない……。

これは絶対の客人が僕から離れても、ドラゴン乗りとしていられるという意味で形式的に存在するだけなのか。

それとも、何かそれ以上にあるのだろうか?

 

アルヴィースの言った超力的なドラゴンに、僕の乗るラギも該当しているだろう。

旧世紀の世界を管理する意思に対する終止符の役目を持つ旧世紀の遺産、それが僕の世界のこのドラゴン。

 

さて、謎の深い借り物の技術はこの世界に多く存在する。雲海やEテクノロジー……。

それはもしかしたら、僕の世界の旧世紀の技術と何処かで繋がり合うものなのだろうか?

 

答えは……きっとこの聖杯戦争の中でわかるのかもしれない。

僕がサーヴァントとして呼ばれたからにはきっとそうなんだと思った。

 

家族のためだけじゃない、世界のみんなの為の願い……ラギはそれを持っているだろうか。

僕はラギとの絆を強くし、感情を分かち合いたいとより強く思った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  "Sona mi areru ec sancitu"

 (其は聖なる御使いなりや?)

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ルーラーの少年が呟く。

 

「二人がこの街に来た運命の糸、それはこの街を紡いでいる因果の更に外側にある可能性……。

 ミザリィは知っててマスターの彼を招いたのかな?

 それがどのような結果になるかわからないけれど……二人が自覚しないなら伝えずにおこう。

 彼らも願いを抱えた参加者の一員なんだから」

 

目を閉じる。視界が変わっていく。

まるで天からパラディウムシティを見渡すように。

 

その中に、いくらかのマスターやサーヴァントが目立って見えた。

この世界で生き抜こうと、そして聖杯戦争への準備をしようと動いているのだ。

その姿はとても尊重されるべきものなのだろう。

 

「すべてのマスターに、世界を変えていく権利は平等にある。

 聖杯戦争の中で因果を乗り越え、未来視でもわからない未来を紡ぎ出す存在に誰もがなり得る。

 僕は彼らも他の者と同じように見守り、必要なときには介入する。そう在ろう…………」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  ………………

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

彼らの世界の物語が終わったあと彼らがどうなったのかは、詳細には語られていない。

世界を観察した者が各々、与えられた情報に沿って考察して各者の状況を考えなければならなかった。

 

そんな中で、二人は聖杯戦争に参加する意志を持って、この世界に立った。

その意志を望んだ者の手によって。

 

彼らはこの時、まだわかっていない。

彼らは邪悪なポーキーや、旧世紀の世界を管理する意思という、

明確な倒さなければならない敵がある世界でそれを倒せばいいと意識していただろう。

物語を扉を開き見届けた何者か、あるいは導いた絶対の客人の下で、彼らにはそれだけしかなかった。

それ故、この世界でもポーキーという存在を意識したことで、聖杯を取る使命感を得てしまった。

 

しかし、参加者たちの思惑の渦巻く聖杯戦争の本質とは善悪という物では結論がつかなくて。

未熟な彼らは、聖杯戦争というものの本質にこれから向き合わされてゆくだろう。

 

 

――――世界の扉の象徴、ドアノブは、今もパラディウムシティの何処かに存在していた。

星晶石の魔力の残り香を漂わせながら……。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

ライダー

【真名】

エッジ

【出典】

AZEL -パンツァードラグーン RPG-

【ステータス】

筋力E 耐久D+++ 敏捷E 魔力E 幸運B 宝具A+

【属性】

中立・中庸

 

【クラス別能力】

騎乗:EX

 乗り物を乗りこなす能力。

 ドラゴンは単体ではその能力を十全に発揮できず、必ず乗り手を必要とする。

 ドラゴンに騎乗できるのはドラゴンがライダーを認めて補助しているからでもあり、ドラゴンとは一心同体の存在。

 別の乗り物に乗る際は、Dランク相当の騎乗スキルとして判定される。

 

対魔力:E

 魔術に対する守り。

 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

 ただし、別のスキルが魔法攻撃に対しても高い防御として機能する。

 

【保有スキル】

ドラゴンの乗り手:A

 旧世紀の技術で作られた生物、ドラゴンの乗り手として選ばれたことを示すスキル。

 ドラゴンを機能不全にさせるかドラゴンと離れない限り、ライダーへの攻撃はドラゴンが出す力場で防がれ傷を負わせることは一切できない。

 これはドラゴンを霊体化していても離れていなければ適用される。耐久力には一応限度がある。

 

位置取り:B

 多種多様な攻性生物や兵器に対し、敵の向いている方向に対する自身の位置を回り込みにより変えながら戦うのがドラゴンの戦いの特徴。

 ドラゴンからの高度な感覚による情報や自身の知識を元に、敵が強力な攻撃をしてくる方向や、攻撃に弱い弱点の部位を見極める能力も併せ持っている。

 フローターという旧世紀の小型ビークルに載ったときも同じ戦い方ができたので、ドラゴンに頼り切りの力というわけではない。

 急に向きを変更しにくい大型の相手や走行・飛行中の相手の場合に、特に高い効果を発揮する。

 

対巨大兵器:B

 全長8mほどのドラゴンと比べても巨大な、100mを超える大きさがある飛行戦艦や巨大生物兵器とも撃ち合いで互角に戦い撃破することができる。

 このスキルは、ライダーがドラゴンに騎乗し一体になった場合にしか発揮されない。

 流石にkmクラスの相手となると撃ち合いの戦いはできず、接近したり内部に入ったりして部位破壊を積み重ねた撃墜を狙うことになる。

 

絶対の客人:■■

 人間がドラゴンの乗り手となる条件は、若く純粋な少年で、ドラゴンが使命のため乗り手を必要としたとき近くにいたこと。

 そのような少年はドラゴンの導きのもと絶対の客人を宿らせて、ドラゴンの乗り手となる。

 *****以下詳細不明*****

 

 

【宝具】

『いと貴き翼持つ者(バルデ ゲネラセイリョ パゼルナ)』

ランク:A++ 種別:対塔宝具 レンジ:0〜99 最大捕捉:500人

 聖なる御使い、破滅の御使い、真のドラゴン。

 実態は旧世紀の高度科学文明が造った生物兵器、攻性生物と呼ばれる生物の一種であるが、

 原典の世界では各地で神話としても語られているためランクは高い。

 旧世紀の人々のうち世界の環境を科学技術を維持して改善していくべきだと考えた「維持派」は世界の環境を管理し改善する遺跡、「塔」を建造した。

 自然の力に任せるべきだと考えた「破壊派」は対抗するためにドラゴンを生み出し、塔を管理するプログラムに細工し設計図をねじ込みいずれ産み出されるように仕組んだ。

 

 ドラゴンは塔が生み出す各種の攻性生物に加え、ガーディアンと呼ばれる巨大で高い戦闘能力を持つ特別な攻性生物をも破壊する力を持つ。

 充分に成長し塔を攻略したドラゴンは、最後は中枢システムに接続し塔を機能停止させる。これがドラゴンの本来の使命。

 

 宝具ではあるが、ドラゴン自身も独立したサーヴァントとして扱われる。

 内蔵エネルギーもしくは光からエネルギーを合成していると考えられていて、サーヴァントとなる以前より摂食の必要はなくて何かを食べることもない。

 またこのおかげで、現界させるだけならば魔力消費は微小で済む。

 

 ドラゴンは主に口腔内より発射する光の矢(通称ホーミングレーザーとも)にて攻撃する。

 乗り手の視覚と連動し、複数の部位や複数の敵を同時ロックオンし発射する。基本的に速射や連射はできない。

 弾速はしっかり弓なりの軌道で光の筋が飛んでいくように見える程度でそう早くはないが、敵の位置を捕捉して飛ぶので回避は困難。

 たとえドラゴンから見て後方の相手だろうと、乗り手の視覚が合えば後方の敵にもロックオン可能で、放たれたレーザーは曲がっていく。

 

 ドラゴンはバーサークと呼ばれる特殊な技を使うことができる。

 バーサークを使うためには、ドラゴンの体力とは別に存在するバーサークエネルギーを使用する必要がある。

 出力や軌道が特殊になったレーザー、様々な属性の攻撃、回復や能力向上など様々なものが存在する。

 

 ドラゴンは状況に応じて姿を随時変化させられる。通常形態となる標準型のほかに、

 レーザーの威力が上がる攻撃型、バーサークの威力が上がる心技型、

 位置取りが早くなる機動型、甲皮が厚くなり防御力が上がる防御型がある。

 それぞれの型でバーサークエネルギーを消費しない専用のバーサークが使え、また暫く行動していないときに得られるメリットが異なる。

 攻撃と心技、また防御と機動のパラメータは逆位相にあり片方を上げると片方の能力が下がる。両方の位相が中心になるのが通常形態。

 逆位相にあるもの以外は、それぞれをある程度重視した中間の形態にしておくこともできる。

 

 更には厳しい戦闘の経験を積むことでより強化された段階の姿に進化することもある……が、

 サーヴァントとしてはパンツァーウィングと呼ばれる段階として召喚されている。

 この段階だとレーザーの最大同時ロックオン数は7。

 

 人間と会話はできないが思考能力や意思はしっかりある。

 本編中に独白のようにセリフが流れることもある。世界回路に接続した際はエッジと会話できた。

 

 乗り手の治癒能力も持っていて、正式な乗り手ならば怪我を負っていてもドラゴンに触れるとたちどころに癒される。

 さらに力場を発生させ乗り手への攻撃や、雪や風など気候の影響を無効化することができる。

 普段は力場は乗り手に密着し見えないが、乗り手がドラゴンから離れて発動する際、敢えて広く発動する際などは青いオーラの膜のように見える。

 耐久力には限度があるため戦闘時は基本的に乗り手の防護にだけ使用され、

 ドラゴン本体は自分の甲皮と再生力のみで相手の攻撃を耐えることになる。

 

 

【weapon】

旧世紀の銃

 ドラゴンに初めて乗るときに入手したもの。旧世紀の文明の遺産。

 丸みのある白いセラミックのような素材が組み合わさり、発射部は赤い目のようで、銃とも一応言えるような形になっている。

 バッテリー充電のような方式で、普通の銃とは違いエネルギー弾を発射する。

 一度引き金を引くと数発が連射される。弾速はそこまで速くなく、エネルギー弾が飛んでいく様がはっきり視覚で確認できる。

 

 その中でも更に特殊なドラゴンと同調するタイプで、ドラゴンに乗っている間はエネルギーが常時供給され、

 さらには照準補正機能も付き、慌てたり(プレイヤーが標的を間違えたり)相手が回避行動を取らなければ確実に相手の位置へ射撃する。

 

 威力は高く、人間は一撃で身体が2つに別れ吹っ飛ぶくらい。

 ドラゴンと同調しているなら更に威力が上がり、戦艦や硬い攻性生物にも結構なダメージを加えられる。

 

 アタッチメントと呼ばれるカートリッジを装着、換装することで射撃の性能が変化する。

 パラディウムシティ内にて、カートリッジが入手できる可能性もあるかもしれない。

 

 

【サーヴァントとしての願い】

 元の世界にてアゼル、そして娘のオルタと実体を持って会い、家族として過ごしたい。

 

 

【人物背景】

 太古に高度な文明が滅びてから何千何万年と経った時代。

 大型生物は滅び、旧世紀の文明が兵器として生み出した攻性生物が入れ替わって跋扈している。

 人間は攻性生物達に襲われながらも、遺跡などから発掘される旧世紀の遺物に頼りながら生活している。

 やがて人々は攻性生物を追いやり始め土地を増やす。その中でも帝国は旧世紀の技術の利用に秀で、侵略を繰り返し版図を拡げていた。

 

 エッジは帝国の遺跡発掘現場に雇われた傭兵。両親も傭兵だが早世し、傭兵団を家族のようにして16年間育ってきた。

 突如現れた遺跡の攻性生物に襲われ抵抗した際に、遺跡の壁に埋め込まれた攻性生物のような少女を目にする。

 しかし帝国を裏切ったクレイメン艦隊により少女は奪われてしまい、自分以外の傭兵団も殺されてしまう。

 明らかに死に値するダメージを受けたはずなのに辛うじて生き延びたエッジは、遺跡の中でドラゴンと出会い乗り手となる。

 最初はクレイメン艦隊への復讐を目的としたドラゴンとの旅は、やがて様々な人々の想いを連ね世界の運命を決める戦いとなる。

 

 シーカーという帝国から見れば遺跡の盗掘者である勢力は、独自に遺跡への理解を深めていた。

 その中で塔という巨大な遺跡は、旧世紀に破壊された環境を再生する役目を持っていることを知った。塔の周りには緑あふれる森と平和な街が存在した。

 しかし塔は強力な攻性生物をも生み出し、増えすぎないよう人間を間引きもしていた。

 シーカーたちは旧世紀の意図により管理されて人々が生きていくのはまっぴらだと思い、塔を破壊する方法を探していた。

 

 旧世紀エンジンを用いた空中船団を主力とした軍を構える帝国は、遺跡に触れすぎたため首都に大被害を受ける災害を過去2度被っていて、

 それにはドラゴンが大きく関わっていたことからドラゴンの確保を大きな目的としてドラゴンを追う。

 また旧世紀の遺跡を更に発掘し勢力を増強したいがため、塔への進出を果たそうとしたいる。

 

 クレイメンは旧世紀の遺産を軍事的に利用するだけで争いや破壊を繰り返す帝国のやり方ではいけないと思い、

 更には人々はこのまま塔に管理され完全に世界環境が改善される日を待つべきだとも考えていたとも推測されるが、詳しくはわからない。

 そして全ての塔を管理するプログラム、セストレンへアクセスできる能力を持った亜人の少女アゼルを確保し、他者が塔へ干渉できないようにしようとした。

 

 ドラゴンは旧世紀に作られたプログラムが攻性生物同様に生命となったもので、塔の破壊を使命としていた。

 そしてシーカーと協力しながら、攻性生物、クレイメン艦隊、帝国軍をドラゴンの進化とともにすべて退けた。

 そしてエッジは何度も邂逅し絆を深めたアゼルの力を借りセストレンへアクセスし、塔を管理するプログラムを破壊した。

 これで世界は旧世紀の文明に頼らない人類の手に渡されていくだろう……。

 

 しかし、エッジはセストレンを破壊した後、戻ってくることはなかった。

 アゼルはエッジのいない悲しみの中で世界を彷徨い、そしてまた別の物語へと繋がっていく。

 

 

【方針】

 とりあえず世界や他の参加者について情報収集。また、よりドラゴンとの絆を深めたい。

 

【把握資料】

 原作「AZEL -パンツァードラグーン RPG-」本編をプレイすれば彼の周りの話は全部わかります。

 エッジはAZELにしか出てないので、基本的にキャラとして動かすだけならAZELのゲーム本編だけで充分だと思います。

 (願いに関する部分で僅かに続編オルタの要素が入ってますが、このSS内の説明で充分程度です)

 

 パンツァーウィングの姿や各形態はこのサイトや、詳しいプレイ動画などで参考にできます。

 https://www.panzerdragoonlegacy.com/tags/panzer-wing/pictures

 

 RPGなのでゲーム内ではバーサークエネルギーはバーサークポイント(BP)として扱われ、また各行動の可能数を管理する行動ゲージがあります。

 

 戦闘で使う攻撃バーサークをひとまとめにした動画資料がありました。 https://nico.ms/sm13169588

 他に体力を回復するメリト(小回復)メリソナ(中回復)、メリオクス(全回復)、ステータス異常を回復するエクエラ、

 目眩ましの閃光を発し撤退できるラテオ、一時的にドラゴンまでほぼ完全無敵になれるツァーノスがあります。

 

 各形態の詳細について、

 標準型は行動ゲージが最大だと徐々にHP回復、専用バーサークは体力を大回復するケミトマ。

 攻撃型は行動ゲージ最大だと稀に自動反撃、専用バーサークはその戦闘中レーザーの威力が上がるリューヴ。

 防御型は行動ゲージ最大だと防御力が増加、専用バーサークはその戦闘中防御力が上昇するツァオ。

 機動型は行動ゲージ最大だとステータス異常が回復、専用バーサークは行動が早くなる(行動ゲージの回復能力が上がる)リューリア。

 心技型は行動ゲージ最大だとバーサークポイントが少しずつ回復、専用バーサークはバーサークポイントを1/5回復させるケトキス。

 

 がっつり世界観をパラディウムシティに組み込んで出してみたい場合は、

 旧公式サイトを見ると世界観などがわかりやすいです。画像抜けなどありますが、用語集もあってテキストだけでも詳しいです。

 https://web.archive.org/web/19981203052925/http://www.sega.co.jp/sega/saturn/andro_hp/main.htm

 ゲーム内では沢山の本が入手できて、世界観を深く理解する助けになります。

 本などのテキストデータはこちらのサイトでも載せられてます。 http://tatunogo.xxxxxxxx.jp/

 

 こちらのサイトでは、シリーズの初代、ツヴァイ、オルタの資料も見れるので世界観理解の参考になります。

 https://web.archive.org/web/20150703135335/http://www.sun-inet.or.jp/~dds552/PDA/top.html

 ファミ通から出版されたAZEL、ツヴァイ、オルタの攻略本は世界観解説のページが多く取られています。

 

 他にはオルタの小説版も詳細に書かれてて、戦闘描写や世界観の理解の補助になります。AZELをプレイしてるとより楽しめます。

 (AZELの小説版はほぼゲームと同じなので、ゲームが苦でない人は特に必要ないですが、文章での描写の参考にはなるかもしれません)

 

 

【マスター】

クラウス

【出典】

MOTHER3

【性別】

男性

【能力・技能】

 PSI(超能力)が使える。

 マジプシーから才能を開花させられ、独自のPSI「PKLOVE」(デフォルト名)を使い念動力で攻撃する。

 双子の弟のリュカは他に回復や防御のPSIに長けていたので、クラウスも他の種類のPSIに目覚める可能性はある。

 他に技能として明示されないけど、動物と会話できる能力もあると思われる。

 

 ポーキーの手によりメカキマイラに改造されていたときは翼による飛行能力、左手のエネルギー剣、右手の光線銃を使いこなし、雷を落とす能力も持っていた。

 現在は生身のためそれらの力は失われているが、経験や記憶はちゃんと保持している。

 

 

【人物背景】

 先進技術のない孤島、ノーウェア島のタツマイリという村に住んでいた少年。

 双子の兄弟リュカ、父プリント、母ヒナワの下で田舎の平和な生活を送っていた。

 ある時、大人しかった野生動物のドラゴが何者かにより改造され、その襲撃から双子を守るために母は死んでしまう。

 クラウスは我慢できず一人でメカドラゴを倒し復讐するために向かったが、歯が立たず死亡する。

 

 しかしドラゴを改造した黒幕ポーキーの手の者に拾われ、自身も改造されその手先として記憶を持たない操り人形として動くことになる。

 やがて3年後、ポーキーの思惑のもとノーウェア島の下に眠るという闇のドラゴンを開放させ力を使うため、

 仮面の男としてドラゴンを封印する7本の針を各地で抜いていくことになる。

 同じく針を抜く特別な力を持つ双子の弟リュカも針を抜いていき、対立し戦いながらやがて最後の針のある場所で対峙する。

 

 リュカは仮面の男の正体を兄と知り攻撃の意思を見せられず、一方的に攻撃される。

 説得しようと割り込んだ父フリントをもクラウスは攻撃する。

 しかし家族が揃ったもとに、母ヒナワの霊が現れクラウスに語りかける。

 クラウスは徐々に記憶を取り戻し、敢えて反射される攻撃を放つことで自分の命を断つ。

 そして3年前のことを謝りながら二度目の死を迎え、母の元へ旅立っていった。

 

 幼少期よりの活発、強気、無鉄砲気味な性格が悲劇を招くことになった。

 今作品では本編終了後なので、だいぶ落ち着いている。

 

【マスターとしての願い】

 自身と母のヒナワを復活させて、また家族全員の生活に戻りたい。

 ポーキーが時空転移を繰り返す中で荒らされたであろう多数の時空も修復して、みんなが幸せになれる世界になってほしい。

 

【方針】

 戦意のない相手と無理に戦ったり街に被害を及ぼすことはするつもりはない。

 この世界にもタツマイリ村やノーウェア島の人々が存在するなら、それは守りたい。

 

【ロール】

 月海原学園の学生として登録されてはいる。

 聖杯により再現されたタツマイリ村の住人、もしくは村の人々の作ったコミュニティの一員かもしれないが、

 ノーウェア島が元の世界で他と隔離された地だった影響か端末に明記されてはいない。

 

【令呪の形・位置】

 左手甲の位置。プレヤのイノリバにある2体1対のドラゴンがそれぞれ1画、それに囲まれた双子の人間の子にも見えるデザインが1画。

 なおクラウスは描写からおそらく左利き。

 

【把握媒体】

 原作ゲーム。また攻略サイトや考察サイト、考察動画なども参考になります。

 こちらもファミ通の攻略本が他とくらべて執筆の資料として便利です。

 なおパンツァードラグーンよりはずっと情報が調べやすいです……。検索するだけでたくさん出てきました。



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【オープニング】【本戦開始前】26 今は亡き王に捧ぐ葬送曲 マスター エンリコ・プッチ サーヴァント アサシン モーマニット・キョウランスキー

登場キャラクター
マスター エンリコ・プッチ
サーヴァント アサシン モーマニット・キョウランスキー

作者
◆K2cqSEb6HU


=  =  =  =  =  =  =  

 

 

 ────1937年代の事だ…ある政治家の選挙キャンペーンの印刷物の写真ネガに…

SEXという文字が数ヶ所エアーブラシで描き込まれた。

それは顔のシワや衣類に出来る影と同化するように描き込まれており、一見しただけでは、

そのスキャンダラスな言葉は誰も気づかない。

しかし、多くの人は、そのどうという事のない選挙ポスターを37年間強い記憶として忘れずに覚えていた。

 

 

 ────1957年に公開された「ピクニック」という映画の中で、知覚できないほどの1/24秒という短いショットで、

フィルムのコマとコマの間にポップコーンと清涼飲料水の写真を繰り返し挿入すると、観客はのどの渇きを訴え、

映画館の売店でのポップコーンと飲み物の売り上げが58%上昇した。

そのCMのやり方は連邦通信委員会で禁止されるまで続いた。

 

 

 ────これを心理学でサブリミナル(潜在意識)効果という。

本能レベルの物事は、直接目撃させられるよりも、巨大な効果となって人間の行動を支配する。

 

 

=  =  =  =  =  =  =  

 

 

 

 

 

 

 シカルゴ街の一角、ラストアンコール。

そこはパラディウム・シティにおける中心的な市民文化センターであった。

コンサートホールは今より開かれる演奏会を待ち、席も満員となっている。

それだけに非ず、音楽関係者が動画サイト「ラプラス」に配信し、テレビ放映までされているほどの人気。

その理由は、指揮者がそれほどまでに今の注目を集める存在だからである。

 

 

 巷を騒がす、"神出鬼没の演奏家"。

天才的な指揮能力を持ち、その演奏は聴く人を魅了させていく。

そして、演奏が終わる者なら人知れずして姿を消すというミステリアスな存在性。

彼の登場により、都市のクラシック層からは急速に支持を集めている。

提携したCDも飛ぶように売れ、街に流れるクラシック音楽も徐々に移り替わりつつあった。

 

 

 話題の指揮者が、客席からの拍手を浴び、気品に満ちた足取りで指揮台にまで向かう。

幽鬼の如く、青白い肌をした若い男性。得体の知れない雰囲気を発し、ミステリアスさを醸し出している。

 

 

 やがて拍手も鳴り止み、演奏開始のために一定の間を静まり返る。

男性の鬼の形相。繰り出す指揮棒。それは振り被るような独特な構えを通じ、激しい勢いで"音"が発生した。

"音"が合図となり、楽器も共鳴を開始する。此度の演奏会が幕を開いた。

 

 

 

 ────演奏される曲は、ヘンデル作曲のオラトリオ『メサイア』。

第一部『メシア到来の預言と誕生、メシアの宣教』より「シンフォニア」が始まる。

 

 

 

 この演奏している指揮者こそ、召喚されたサーヴァントである。

不自然であろう。開始前とはいえ、何故、サーヴァントがこのように人前で演奏をしているのかと。

『自分から世に姿を明かす』というのは、同時に『他者から命を狙われる』という危険が伴う。

そうした行動は意味があれども、まず得策とは言うものではない。

 ましてや、この男……実は、このコンサートホールで身も護る術など何一つもない。

ただ、当のクラスは"アサシン"。ランクは低めであるが、気配遮断などは確かに有している。

ならば尚更、身を隠すが常道というものではないか。聖杯戦争視点からすれば、その行動は不可解なものであった。

 

 

 だが、これでいい。

己が身を晒し、世に披露するほどの胆力がなければ、人は殺せず、相手も釣れることはない。

……そう。『開始前の余興』だの、『自己承認欲求』だの、断じてそのような理由で指揮しているのではない。

指揮者たる彼の戦いは、「演奏」に他ならない。「この時点で既に」始まっていた。

 

 

 

 ────曲は「慰めよ、わが民を慰めよ」に入る。

 

 

 

 一聞すれば、単なる演奏会。

しかし、この場に来た者でなければ、その光景の異変は伝わらないであろう。

一部しか捉えられない映像媒体などでは、映り得ない真実というものが。

演奏曲を聴いている観客達の顔は、皆が皆青褪めており、正気が失っている。

 

 

 原因は、指揮棒より発せられる『超音波』。

その音波は聴覚の刺激を通じ、聴いた者に特定の「暗示」を植え付ける。

故にたった聴くだけの行動でも、催眠術にかけられたように人を狂変させるのだ。

これが、アサシンの宝具『我が音を聴け、仇敵に贈る葬送曲(エゼクツィオーネムズィカーレ・キョウランスキー)』。

 

 

 だが、彼の戦いはまだ序曲に過ぎない。

少なくとも、この仮想敵もいない演奏会の中で、行方の知らない「暗示」など何の効果もない。

効果が現れるのは演奏会の外……例えば、"他陣営が彼の演奏を視聴する頃"になる。

 

 

 昇華されたこの宝具の条件となるのは、『超音波による聴覚の刺激』と『指揮する曲を聴く』こと。

出来るものならば、直接的な鑑賞をせずとも、「暗示」を与えることが可能なものになっている。

介して伝えるは、音波を拾う媒体。映像媒体であるラプラス然り、音楽媒体であるCD然りと、準備は整っている。

 

 

 アサシンがこうして世に姿を現すのは、ネットを通じ、「音を聴く者」を誘き寄せ、「暗示」をかけるため。

そして、その「暗示」の内容は『マスターの殺害』。……つまり、これは「同士討ちを狙い」とした演奏会であった。

 

 

 

 ────曲は「もろもろの谷は高くせられ…」に入る。

 

 

 

 彼の名は「モーマニット・キョウランスキー」。

「音楽の魔術師」の異名を持つ国際フィルハーモニーの指揮者。

かの有名なルパン三世に復讐するため、奇術を以て相対した悪党であった。

亡き今は、未だに果たせぬ復讐を誓い、聖杯戦争に召喚されては戦いの音を奏でる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「音というものは、原始の本能を刺激させる。」

 

 

 男性が人知れぬ席から見下ろしている。

"まともに曲など聴いていない"、という風な冷淡な顔をしていた。

彼の両耳には、何回りか小さな"DISC"が抜き出ている。

 

 

「音というものは、人間の心の中にたやすく入り込んでしまう。」

 

 

 男性の背後に佇むのは、人型のヴィジョン。

それはスタンド。「ホワイトスネイク」。奇妙な現象は、ホワイトスネイクの能力の一端。

DISCを使用することによって、意のままに操れるだけの力を持っている。

 

 

 男性は十字架をあしらった黒衣を着た褐色肌、特徴的な線の入った髪型。

この聖職者を彷彿とさせる雰囲気の男の名前は、「エンリコ・プッチ」。

彼こそが今この場で演奏している、アサシン「キョウランスキー」と契約するマスターである。

 

 

「人間は音に警戒しても、音そのものに対する警戒心は薄い。音楽に聴き慣れてしまっているからな。

だが、それ故にたやすくサブリミナル効果に陥ってしまう。この宝具の本質とはそういうものだろうな。」

 

 

 語っているのは、誰を相手にするわけでもない、単なる独り言。

演奏中は静かに聴くのがマナーであるが、この状況を理解しているが故に気にすることはない。

 

 

 この宝具の現象を、プッチは「サブリミナル(潜在意識)効果」の一種と解釈している。

それは、「潜在意識に刺激を与える」効果。即ち「自覚されることなく、行動や考え方に影響を与える」効果を指している。

合理的に言えば、サブリミナルとは単なる思い込みになるが、その思い込みが精神に影響を及ぼしてしまう。

そして、心の底で受けたインパクトは頭でやめようと思っても中々逃れられるものではない。

この宝具は、まさに「サブリミナル効果」を利用した能力であった。

 

 

「……ただ、この効果に、私も含まれてしまうことが一番の問題だがな。」

 

 

 プッチの後ろには、正装したぼっちゃりめのゾーラ族の男性が倒れていた。

DISCが挿入されており、泡を吹き出し、独りごとの呟きを繰り返している。

尤も、当のプッチはその光景に我関せずとばかりに目もくれないが。

 

 

「全く、融通が利かない宝具というものだ。」

 

 

 この宝具は、一つしか出せないという超音波の都合もあり、細かな暗示はできないという欠点もある。

そのためか、「プッチ以外のマスター」などといった身の安全性を確保することは想定されていない。

このゾーラの男がこうなっているのも、襲い掛かってきたために迎撃したという正当防衛によるものである。

当然、気絶なだけで死んではいない。放っておけば治るぐらいのこと。

 

 

「……しかしなぁ、折角の素晴らしい曲も、聴くことができないというのは、実に残念なことだな……。」

 

 

 席に凭れ、大きく溜息を吐くプッチ。

 

 なお、「メサイヤ」が演奏に要する時間は「二時間半」であった。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

 多くの勝利者が中間として行き着く、言峰教会の礼拝堂。

講壇を足場に並ぶ、二人の神父。プッチと言峰が対面していた。

キョウランスキーはというと、付近の長椅子に腰掛け、場を静視していた。

 

 

「『言峰綺礼』神父といったか?監督役、ということは、その……

貴方はこの聖杯戦争というものにおいて、「中立的な立場にある」ということでいいだろうか?」

「ああ、そうだ。私を攻撃した所で、貴殿らに何の益もない。」

 

 

 一端熟考に入る、プッチ。

 

 

「……ああ、私も聖職者の身だ。

そこにカトリックとプロテスタントという宗派の違いがあるなら、対立は避けられないかもしれないが……

少なくとも、神父の貴方がこうして職務を全うしている以上、無暗に害するつもりはないよ。」

「柔和な対応に感謝する。私としても、同教の者とこの場で争いたいなどとは思わないからね。」

 

 

 聖職者として、あくまで穏便な態度で交わす。無論、表面的には。

 

 

「それで?この聖杯戦争というものは、宗教上で執り行われる儀式を指すのか?

私も、君と同じように"聖職者だから"という理由で呼ばれた……ということでいいのか?」

「エンリコ・プッチ神父。貴殿が召喚されたのは、他でもない偶然のことだ。

この聖杯戦争において、宗教上の理由は存在しない。ましてや、他の参加者も教徒ではない有象無象の類だ。」

 

 

 その話を聴いて、プッチも失望した。

所詮は、「聖杯とは名ばかりの模造品」を報酬とした冒涜的な催事か、と。

 

 

「……では、「何」のために聖杯戦争などという催事を行う?

教えから外れた連中が、戦争をしてまで欲しがる「聖杯」とは、一体「何」のために存在する?」

 

 

 その質問に言峰も、いつも通りの「雛型の回答」を返そうとする。

だが、その時────

 

 

(何だ……?もしや、『誰』かと話している、というのか……?)

 

 

 言峰は突然の「何」もない空間に顔を向け始めた。

それは、『何者』かの話を聴いているか、あるいは普通でない会話をしているかのような反応。

 

 間が置くと、改めて口を開いた。

 

 

「────世界の理を書き換え、新たな創造を齎すために存在する。貴殿が求める答えとしては、これが正しいだろう。」

「!」

 

 

 言峰が切り出した問いに、プッチも関心を示す。

 

 

「…………それは、本当のことか?」

「ああ、本当だ。聖杯である『天の聖杯』はそのようなものとして存在する。

この仮想世界の存在こそ、『天の聖杯』のシステムの一端であるのだ。」

「何……?」

 

 

 プッチはガラスの外を凝視する。

 

 

「…………。」

 

 

 仮想世界とは言ったが、プッチは、陽の光も、小鳥の囀りも作り物には感じなかった。

確かにこの世に実在している、と少なくとも今はそう思う。

これが一端というのなら、確かに『天の聖杯』は創造の力を有するのかもしれない、と。

 

 

「……もし、仮にだ……。

言峰神父。『天の聖杯』が、貴方のいう世界の創造ができるほどの代物だったとすれば……。

それは『真理』に到達することも可能ということになるのか……?」

「────可能だ。それが己の人生を賭けてまで、求めるほど『理』があるものなら、実現も可能であろう。」

 

 

 聴いたプッチは、思いに耽った。

 

 

(……これは神が私に与えてくださったチャンスじゃあないか……!

この「星晶石」が、私を導いてくれた……!

『ミザリィ』とかいう女との「出会い」は、ここへ誘うための「引力」だったッ!!)

 

 

 思い返すのは、「グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所」。

『ミザリィ』という陰妖としたシスターから、星晶石を受け取ったことにある。

「星晶石」に妙に惹かれるものがありつつも、その時はプッチも社交辞令程度に流していた。

 

 だが、今思い返せば、その「出会い」もまた意味がある事。

もし、仮に「星晶石」を受け取らなければ、少なくとも今の彼の人生は動くことはなかった。

『ミザリィ』という女が何を考えてやったのかは知らないが、「出会い」はプッチにとっての転換期であった。

 

 

「さて、私の役目としてはこれまででいいだろう。貴殿に是非とも会いたいという『ゲスト』がいるものでな。」

「……?『ゲスト』だと?」

 

 

 

 ────その声は、気配の主と共に突如として現れた。

 

 

 

「────久しぶりだな。我が友よ。」

 

 

"!?"

 

 

「な…………!」

 

 

 プッチは咄嗟に背後を振り向く。

そこに居たのは、奇妙な風貌をした異形の男性であった。

死人の如き青白い肌、腰まで伸びた長髪、顔に星形の模様。

大凡、普通の人間という気配が感じられなかった。

 

 

「だ、『誰』だッ!?……君は………ッ!」

「……………………。」

 

 

 その言葉に、どこか寂しげな表情となる男。

 

 

「やはり、私の事は覚えていないものか……。」

「……い、いや……気分を害したのならすまない。私も咄嗟で、失礼な対応だったかもしれない……。」

 

 

 「友」という言葉もあるのか。プッチも、彼に対してどこか「他人」という感じが芽生えなかった。

 

 

「だが、無理もない。私の存在は抹消されてしまっているからな。」

「抹消……だと?」

「「認められない」のだ、私の存在が世界にとってな。

私がサーヴァントとして存在していられるのは、幻想の残り香に過ぎない。」

 

 

 僅かに不満に感じる様に話す、DIO。 

 

 

「私の名は『DIO』。君の名前は『エンリコ・プッチ』、1972年6月5日生まれ。スタンドは『ホワイトスネイク』。

能力は「相手に触れて記憶やスタンドをDISC化して奪う」。癖は「動揺すると素数を数える」

特技は「口の中で二連のさくらんぼの種を茎につけたまま食べて見せる」……で、間違いなかったか?」

「!」

 

 

 驚愕するプッチ。どこまでも自分について精通している事を。

 

 

「……随分、私の事について詳しいじゃあないか。」

「信頼できる『友』だったのだ、君は。踏み込んだ真似をしてすまなかった。」

「いや、君が相手ならどこか「構わない」という気がしてならない。続けてほしい……。」

 

 

 このDIOは、存在が抹消されているため、プッチも面識というものがない。

だが、初めて会った相手なのに関わらず、本当に何年も共に居た様な既視感がある。

むしろ、彼がいなかった人生の方が空虚で、あまりにも停滞したようなものであったぐらいに。

 

 

「その前に、一応聴いておくが。君は『誰』かの手によって、スタンドが発現したのか、それを聞かせてもらってもいいか?」

「……ああ。『エンヤ』という老婆からだ。彼女は私の恩師でね。色々とお世話になってくれたよ。」

「『エンヤ婆』か…………。彼女には世話になった。」

 

 

 『エンヤ婆』という名前を思い返し、DIOも懐かしさを感じていた。

1987年の某日。本来、DIOと出会う筈の日に、代わるようにある相手との「出会い」をすることとなった。

それが、DIOの様な存在との「出会い」を求めて旅をしていた、DIOの忠臣「エンヤ婆」。

彼女の手により、矢が渡ったことがきっかけで、代わりにホワイトスネイクは発現することになった。

 

 

 そう。DIOの存在が消えたとしても、プッチの「運命」や「思想」が変わるということはなかった。

「赤んぼうの時に弟が連れ去られたこと」、「エンリコ・プッチが神父になろうとしたこと」、「教会で婦人の告白を聞いたこと」。

そして……「妹ペルラと弟ウェザーを別れさせるため、「なんでも屋」に依頼したことから悲劇」。

それが故に、プッチは決意を固める「目的の実現の為ならば、如何なる犠牲を問わない」という信念の覚醒。

彼の人生という「真実」だけは、依然変わりない。それは、例えDIOの存在が消失する事態になろうとも。

 

 

「さて、君が私が知る限りの『エンリコ・プッチ』なら、このような質問を何を今更という風な内容だが……改めて聴こう。」

 

 

 プッチを導くように、手を指し伸ばす。

 

 

「君は「引力」を信じるか?この聖杯に召喚された事に意味がある事を。」

「…………。」

 

 

 それは存在が消える前の世界、プッチとの「出会い」問いかけ。

 

 

 

「信じている。そして、『探している』。」

「ほう?」

 

 

 DIOは、その次の回答を知っている。

それでも、自分の口から出た言葉が聞きたかった。

 

 

「『人はなぜ出会うのか?』。その「答え」を知る者を探している。

方法でもいい。「答え」を知ることが私の使命なのだ。」

 

 

 プッチが目指すもの。それは「運命を操作する方法」。

すなわち、「全ての人類が幸福になることが出来る方法」の到達。

それこそが、自分に与えた崇高な使命であると、プッチは信じている。

 

 だが、DIOが居ない彼は、あまりにも停滞していた。

「天国に行く方法」、そして「「答え」を知る者」も、存在しない。

恐らくは、「何事もなく時間だけが過ぎ去る」だけの人間で終わる筈だったのかもしれない。

 

 

「素晴らしい。やはり君こそ、私の知る『エンリコ・プッチ』だ。」

 

 

 プッチから聴いた言葉に、DIOも「満足」と「信頼」を抱く。

 

 

「…………そうか。」

 

 

 熟慮したプッチも、認識を改めることとした。

 

 

「君が私にとっての、「答え」を知る者というのか。『DIO』。

私はここに導かれたのは、全ては「君と出会う」ための事だったのか。」

 

 

 「答え」を知る者とは、他ならない『DIO』であると。

「星晶石」を受け取った「出会い」から、引き寄せられる「引力」。

向かう先は、『天の聖杯』などではなく、この『DIO』であった、と。

 

 

「友よ。私の知る君は『天国へ行く方法』を目指し、そして私をよく支えてくれた。

私ならば、君が望む『理想』を実現できる。その『真実』が、私の手の中にある。」

 

 

 そうして、背後に現れたヴィジョンは。

 

 

「それが……君のスタンドなのか……!?」

「ああ。」

(『天国に行ける』のではないか……!?彼のスタンドさえあれば……!)

 

 

 筋骨隆々とした外見、白金がイメージカラーのスタンドであった。

この存在感にはプッチも「妄信」などでもなく、心の底から「真実」だと感じ取った。

確かに「人類を天国へと導ける」実現する方法は彼の手にある、とプッチも確信する。

 

 

「『エンリコ・プッチ』。再び、私に手を貸してくれないか?私の存在が、現世に戻るために…………。」

 

 

 その問いに、DIOの手を取る形で示すプッチ。

 

 

「……私の答えは変わらない。」

 

 

 確固とした自信が、自分にはあった。

 いつ、如何なる時があっても、彼を崇敬することを。

 

 

「『友』よ……。神を愛するように、君を愛している。」

 

 

 DIOも微笑みを浮かべ、彼との繋がりを再確認した。

このDIOが知るプッチは、「DIOを支え、身を任し、すべての重荷から解放される」という道を選んだ。

そして、今、この場に居るプッチもまた目的を切り替え、彼の補佐を担う道を選ぶ。

運命は一度消えても、また繰り返されようとする。互いを結ぶ、「引力」がある限りは。

 

 

 

 

 

 

「…………さて」

 

 

 今度は、キョウランスキーの方へと振り向き返った。

キョウランスキーが取っていたのは"片膝をつき、右手で体に添える構え"。

それは、すなわち「お辞儀のポーズ」であった。

 

 

「……このDIOを前にして、臆するでも、媚びるでもなく、「敬服」を取るというのか。

それだけでも、大した精神力じゃあないか。初対面にしては好印象だぞ。」

 

 

 DIOはキョウランスキーの対応に感心を示した。

彼が見せたものは、「恐怖」などではなく、「敬服」であった。

自分が弱者にあるということなど百も承知。されども心は動じず、己に相応しい行動を見せる姿勢。

初対面であるが、少なくともその"身の程を弁えた潔さ"にはDIOも高評価であった。

 

「私めは『モーマニット・キョウランスキー』と申します。」

「ほう……。」

 

 

 次に取ったのは、「自己紹介」。

特別なサーヴァントでも彼にとって、「真名を明かす」という行為は、「捨身」に他ならない。

だからこそ、尚も相手からの「信用を得たい」という意図が裏にある、ということになる。

 

 

 ……だが、それぐらいではDIOも信用しない。

食えない連中が世の中に居ることぐらい、長寿のDIOは知っている。

故に、当のDIOはその意図よりも、別の興味がキョウランスキーにあった。

 

「先の戦いで見せたあの妙技……あれは君自身が編み出したものなのか?」

「ハッ!さようにございます。」

 

 

 それは、キョウランスキーの奇術であった。

プッチが教会に着くまでのシャドウ戦で知った、彼の宝具。

超音波により潜在意識に刺激を与え、殺人行為に及ぼしてしまう。

それは、こと聖杯戦争下におけば、有用性のある技術に思えた。

 

 次に必要なのは、『理由』だ。

 

 

「魔術やスタンド、そういった類のものを一切使うことなく、指揮棒一つで催眠術をかけるという技術。

きっと並々ならぬ努力と執念が生み出したものだろう。……一体、『何』がそれほどまでに君を突き動かす?」

「『復讐』にございます。我が父、モーマニット・マルチーをルパン三世などというコソ泥に殺されてより、永年の月日。

指揮者となって彼奴めを地獄へ送るべく、この技を編み出して参りました。」

「その『復讐』のためならば、どのような犠牲を払ってでも構わないということか?」

「さようにございます。ルパンめの復讐のためならば、如何なる犠牲も問いません。」

 

 

 『理由』は、『復讐』である。

彼の本気な姿勢に、嘘偽りの類はないとDIOも理解と納得をした。

「捨身」になってでも、『信用』を得たいとする裏は、DIOにわかった。

己の『復讐』という理念の実現のために、とかく"生き残りたい"とする意志がある。

なら、どうでもいいことだ。『復讐』などDIOにとって、何の関係もない話だから。

 

 さらに言ってしまえば、これには「利用しやすい」という利点もある。

権力欲や名誉欲、金欲、色欲といった一過性な動機であれば、易々と手を切ることであろう。

だが、しかし『復讐』ともなれば、動機には一貫性があり、報酬を与えるだけで取り入れられる。

その容易な扱いにこそ、DIOにとっては『信用』の足りる要素であった。

事、話次第では上手く扱えるだろうという『安心感』が生まれるものだから。

 

 不敵な笑みを浮かべるDIO。次に返すものは非常に容易であった。

 

 

「君の「信念」。実に気に入った。

君達が聖杯戦争を生き残り、聖杯を私達に捧げた暁には、

褒美として君の復讐も叶えてあげようじゃあないか。」

「!」

 

 

 キョウランスキーも反応する。彼にとっても、旨い話が振ってきた。

 

 

「心配しなくともいい……。私にはその『力』がある。

先の話で聞いたかと思うが、この『天の聖杯』は願いの為にわざわざ『世界を創る』などという個人には手に余る代物だ。

そんな「一個人の希望」ぐらいなら、聖杯など使わずともこのDIOが実現できるとも。」

「…………それは、真にございますか。」

 

 

 旨い話に、思わず食い付く。

この「王」に従うのであれば、別の希望もある。

それは一方的な関係ではなく、自分にも『利』があるということ。

だから、キョウランスキーの中にも『安心感』が成立する。

 

 そして、DIOも本心から出た一言だと判断した。

 

 

「このDIOに忠誠を誓うならばだ。キョウランスキー。」

「ハッ!新たな「王」に忠誠を……!」

 

 

 深く頭を下げ、「王」への忠誠を誓うキョウランスキー。

互いの中に、疑似的な『信用』というものが成立した。

それはDIOも、キョウランスキーも『安心感』があるからだ。

 

 キョウランスキーは裏切らないだろう。……そう。「王」を、信じている限りは。

 

 

 

 

 

 

「…………。」

 

 

 黙して聞いているだけの言峰は、一人、「愉悦」の笑みを浮かべていた。

この関係には、「保証」というものがない、ということに気付いている。

契約は勿論、命に対する「保証」も、キョウランスキーというアサシンにある筈がない。

だから、最終的にどういう運命になるか、言峰には見当が付いていた。

 

 

「…………。」

 

 

 一方、当のマスターであるプッチというと、キョウランスキーのことを侮って見ていた。

 

 このエンリコ・プッチという男は、基本的にDIOの以外の事を、「取るに足りない」として見下している。

どうでもいい相手にはぞんざいに扱うし、都合の良い相手は「達成のためには犠牲」として利用する人物。

キョウランスキーに対しても、同様な見方であった。心底、彼の事について「どうでもいい」などと感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、私も一つ言い忘れてことがあった。プッチ神父。

これは職務的な件だが、貴殿には私の連絡先も伝えておかなければならない。」

 

 

 端末を手に取る言峰に、奇怪な表情を浮かべるプッチ。

 

 

「職務的な件?」

「何。これは、監督役とは別に、「言峰教会の神父」としての判断だ。

……プッチ神父。貴殿に与えられているロールは、「派遣のチャプレン」だ。

故に、我々が間接的な繋がりを持ったところで、何ら問題はあるまい。」

 

 

 神父という職種は、言峰綺礼がそうである様に教会を中心に働くことが多い。

その一方で、中には「チャプレン」といって、教会外の施設で働く聖職者たちも実在している。

教育機関、式場、警察署、医療機関……と、多岐の施設内に設置された礼拝堂を中心に働く。

かく言うプッチが、今現在まで勤めていた「教誨師」という職種も、その「チャプレン」の一種に当たる。

 

 

「尤も、私にも監督役の命令があるものでな。公平を期すため、有益な情報を流すことはできない。故に期待されては困る。」

「…………逆を言えば、「私から『情報』や『行動』を与えることはできる」ということ、だろう?」

 

 

 プッチの読みに、言峰も愉悦の笑みを浮かべる。

 

 

「話が早くて助かる。監督役としてあまり直接的な関与ができないものでね。」

「いいだろう。私も『DIO』の復活は望んでいることだしな。裏で「協力」させてもらうとしようか。」

 

 

 プッチも、言峰綺礼を「食えない相手」として笑った。

 

 直接的には制限されるわけだが、全面的に「ならない」とは言われていない。

そして参加者側も、大抵の事ならば自由なのだ。「協力」しようが、ルール違反にはなっていない。

本来、令呪で「認識されない」様に命じているDIOを、プッチ達に許可した理由はそれが狙いだったからだ。

 

 "目的の為に躊躇なく他人を踏み台し、多くの者から殺意(ヘイト)を抱かれやすい者"。

そういう「邪悪」が、裏で暗躍してくれる程、戦いはより盛り上がってくれる。

 

 ────そして、その「邪悪」が"志半ば"といった時に、因果応報な目に遭うものなら、尚"愉悦が走る"。

 

 

 そう。「出会い」の「引力」は、言峰綺礼との間にも微かにあったことをまだ知らない。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

 2時間弱に渡る演奏会は終わり、プッチ一行は早々に姿を消していた。

 

 

 本来、従事しているロールは、「パラディウム・セントラル・ホスピタル」などで活動する「チャプレン」。

こうして関係性の薄い音楽関係に関与していたのは、自らの作戦の一環。

件のクラシック人気は、彼が裏で根回しをしていたことも、大きく関わっている。

 

 だが、そのような社交もこれまでのこと。

ホワイトスネイクの能力により、関係者との記憶は処分し、詮索の痕跡となる一切の情報は遮断している。

故に、音楽活動に従事することは、まずない。

 

 

 

 

 

「……これは、「さくら鍋」というものらしい。日本食でいう、「スキヤキ」みたいにして食うもの、だそうだ。」

 

 

 座敷に対面のテーブル、座椅子に腰掛け、鍋を囲む外国人の二名。

今彼らが居るのは、シカルゴ街の料亭、座敷十二畳の個室。

二人は一仕事を終え、悠々と食事を取っていた。

 

 

「何故、日本では馬肉のことを、「桜肉」って呼ぶか知っているかい?

これは日本の江戸時代の頃、仏教により肉を食べることが禁じられていた時期があって、

言い逃れをするために付けられた隠語から、「桜肉」って名が付けられたらしい。」

「随分、博識なものだな。我がマスターは。」

 

 

 会話を挟みつつ、馬肉を堪能していた。

 

 なお、演奏以外になるとキョウランスキーも自分の身を隠している。

生前、戦闘とは無縁であったキョウランスキー。戦闘面では当聖杯戦争でも恐らくワーストに入るレベルで低い。

故に、プッチ自身が主に暗躍する形での行動するのであった。

 

 

 何も役立たずというわけではない。少なくとも、彼の「宝具」には利用価値がまだある。

「マスターへの殺害」だけでなく、超音波を録音した音楽CDは他にも何種類か持っている。

 

 

 例えば、暗示の一つとして、「一般人を殺せ」という内容もある。

これを面前で、かつ他陣営を相手に使えば、「相手の立場を危うくさせる」、といった使い道にもなるであろう。

尤も、その余波として、付近で聞いた者が「一般人同士が殺し合う」ということなるわけだが、"わかっている"。

自分達が直接的に殺しているわけでもない以上、罪の所在が明らかにならないため、問題にならない。

仮に、万に一として罪を突き止められた時、それが「教唆」という類になるかもしれないが、

文字や言葉ではなく「超音波」による暗示である以上、論理的証明も付かない。

ましてや、「NPC間の殺人」という事例は元々存在しているので、所詮は「不慮の事故」に終わるだけのことである。

 

 

「この料理、そろそろ煮頃だろう。よかったら君の分もよそうか?」

「では、いただこうか。」

 

 

 今、共に鍋を頂いている様に、この陣営も「友好的に」接している。

何の不和も、対立もなく、互いが「勝ち残る」という一致した目的の為に共闘する。

これ以上にもなく、一見すると順当な主従関係かの様に思えた……。

 

 

 

 

 

 だが、プッチとしては────

 

 

(さて、どれぐらい持つだろうかな……。「コイツ」の命。)

 

 

 キョウランスキーではこの聖杯戦争を「勝ち残れそうにはない」と早々には判断していた。

運が良ければ何人ぐらいは殺すことはできるかもしれない。……だが、それも時間の問題。

奇術というのは無意識、無防備だからこそ有効に働く。逆に奇術に慣れてしまえば、対策を取るのも難しくない。

それはCDなども同じ。今は何とかCDが世の中に広まっているが、次第にNPCも悪性に気付き、回収されることだろう。

事態は、彼にとって段々と不利な環境に陥ってしまう。故に「勝ち残れそうにはない」と判断している。

 

 

(いや……「1日目」か「2日目」。精々、それぐらいまでだろうな。)

 

 

 だから、せめて今の内だけでも、有効活用することを考える。

ある程度が経ち、「使いものにならない」と判断すれば、用済みとして捨て駒にするだけ。

もしくは、「隙を突いて、DIOに捧げる生贄となってもらおう」などと考えている。

無論、その後、他陣営から「サーヴァントをいただいて、乗り替える」ことを想定した上で。

 

 

(まずは、活動圏内の「『シカルゴ街』に居る陣営」を狙いとするのが望ましい。

『市役所』、『ラストアンコール』、『パラディウム・セントラル・ホスピタル』、『イリー・アイランド』…………。)

 

 

 プッチは一人。開始前までにじっくりと、情報収集や接触などに務めることとしていた。

そう。全ては、『人々を幸福に導く』行動のために。『幸福』のためならば、如何なる犠牲も正しい事なのだから。

 

 

 

 "お前は、自分が『悪』だと気づいていない…もっともドス黒い『悪』だ…"

 

 

 

 

【クラス】

アサシン

 

【真名】

モーマニット・キョウランスキー@ルパン三世

 

【出典】

ルパン三世

 

【性別】

男性

 

【ステータス】

筋力E 耐久E 敏捷D 魔力E+ 幸運D 宝具C

 

【属性】

混沌・悪

 

【クラス別能力】

気配遮断:D

サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。

ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。

正規の暗殺者ではないため、ランクは低め。

 

【保有スキル】

魅了(音楽):B

魔性の音楽性により、老若男女を問わず対象の感性を魅了させる。

彼の音楽はクラシック好きはおろか、好きでなかった者でさえも、もう一度聴きたいと思わせるであった。

なお、この効果自体は魔術ではないため、対魔力に影響しない。

 

黄金律:C

人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。

金銭には困らぬ人生を約束されている。

 

真眼(偽):D

第六感による危険回避。

敵対者であるルパン三世が来ることを二度に渡って予期した逸話によるもの。

 

【宝具】

『我が音を聴け、仇敵に贈る葬送曲(エゼクツィオーネムズィカーレ・キョウランスキー)』

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:音を聴ける範囲内 最大捕捉:-

アサシンの振るう「ダイヤの指揮棒」による催眠術が宝具として昇華されたもの。

 

指揮棒から出る「超音波」の発生と「指揮する演奏曲を聴く」という条件によって宝具が発動。

聴覚の刺激を受けた者に、「特定人物を殺害する」という暗示を植え付けて操る。

この時、直接的に演奏している場でなくとも、CDやテレビなどの音楽媒体を介した伝達でも暗示をかけることは可能。

暗示を受けた者はアサシンが上書きするか、何らかの方法で催眠を解かない限りは解除できず、アサシンの音楽を耳にしただけでも再発動する。

ただし、音は一つしか出せないため、アサシンの指揮により具体的な指令を下せることはできるが、一度に与えられる暗示は一つに限られる。

 

一方で、「超音波が耳に入らない(聴覚の操作なども含む)」もしくは、他の音で超音波をかき消す、睡眠といった「聴覚への刺激を受けない」によって回避することも可能。

また、「自己暗示」や「勇猛」などといった対精神干渉スキルがあると通用しない。

 

【weapon】

『ダイヤの指揮棒』

ダイヤモンドが散りばめられた指揮棒。弦を弾く弓もなる。

安く見積もっても2億はくだらない代物との評。

 

『チェロ』

ケースに入った絃楽器。

超音波の応用により、振動を与えるといった使い道もある。

 

【人物背景】

音楽の魔術師と謳われるほど天才的な国際フィルハーモニーの指揮者であった。

石川五ェ門にして「一部足りとも隙が無い」と言わしめるほど卓越した指揮能力を持つ。

 

一見すると、得体の知れない雰囲気を見せる紳士然とした人物であり、仇敵が来訪しても臆しない胆力の持ち主。

しかし、ルパン三世からも悪党と評される父を持つように、復讐のためとはいえ他人を利用することも構わないと悪党であった。

 

過去にイタリアで、宝石商を営んでいたモーマニット・マルチーをルパン三世に殺されたことで、復讐のために命を狙っていた。

得意の奇術をおたまという奇策によってかき消されてしまい、状況が一転。

最後は催眠状態で朦朧とした銭形が放った戦車の砲弾を受け、遭えなく死亡した。

 

彼に贈られたレクイエムは、皮肉にもベートーヴェンの交響曲第3番「エロイカ(英雄)」であった。

 

【サーヴァントとしての願い】

ルパン三世への復讐に誓う。

 

【方針】

DIOの忠誠とルパンへの復讐のために優勝を捧げる。

まず、初めに「マスターの殺害」という暗示内容の曲を広めることで、他陣営内の相討ちを狙う。

戦闘力がないため、演奏と会話以外では、基本的に気配遮断で身を隠す。

 

【把握作品】

アニメ「ルパン三世」Part2 79話「ルパン葬送曲」をご参照ください。

 

 

 

 

【マスター】

エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン

 

【出典】

ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン

 

【性別】

男性

 

【能力・技能】

『ホワイトスネイク』

【破壊力 - ? / スピード - D / 射程距離 - ? / 持続力 - A / 精密動作性 - ? / 成長性 - ?】

(破壊力は「未知数ながら近距離戦では推定A相当」。射程距離は20mとされている)

塩基配列の描かれた包帯状のラインが全身に走り、顔の上半分と肩、腰の辺りは紫色の装飾品のようなもので覆われた人型のスタンド。

相手に触れて記憶やスタンドをDISC化して奪うもしくは操る能力を持ち、DISCを抜き取られた相手は、しばらく仮死状態に入る。

心臓は止まるものの完全な死亡には至らず、肉体の干渉がない限りはDISCを再び挿入すると復活できるという。

この応用として幻覚を見せて惑わすことや、空のDISCに指令や記憶を書き込み、対象者を自在に操るといったこと、

視覚や聴覚といったものでさえも抜き取ること、果てには普通の音楽CDを挿入するだけで、音楽を再生させることすらも可能。

 

なお、人間以外の生物を可能とするが、サーヴァントに対してこの能力は通用しない。

 

【weapon】

なし。

 

【人物背景】

「グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所」で教誨師を務める神父。

表向きには礼儀正しく穏やかでありながら、社交的で親しみやすい一面もある好人物だが、

実際は理想とする者以外を軽蔑し、ぞんざいにも扱う様な傲慢な人物。

また、遠回しな喩えやわざわざ要所で必要以上に人を馬鹿にする、といった嫌味な面が顕著に見られる。

 

幼少時、双子の弟「ドメニコ」は生まれてすぐ亡くなってしまったという事実を両親から聞かされた事がきっかけに、

「運命はなぜ自分ではなく弟を選んだのか?」「なぜ人に幸福と不幸があるのか?」「真の幸福とは何なのか?」

という疑問を持ち、その真実がどこにあるのか知りたくて神父への道を志すこととなった。

ある時、告白者の懺悔からドメニコは生きており、すり替える形で誘拐され、「ウェス・ブルーマリン(ウェザー・リポート)」として育てられたことを知る。

聖職者の「告白」の守秘義務や複雑な事情もあり、思い悩んでいた時に、間が悪く、妹ペルラはウェスの事を何も知らぬまま恋してしまう。

しかし、傷つけることを避けるため、ただの失恋として事態を片付けるべく私立探偵を雇った所が、運悪くも過激な「白人至上主義者」。

養父が黒人だったウェスは凄惨なリンチに遭い、後に木に吊し上げて絞首刑という光景を見たペルラは彼が死んでしまったものと

勘違いし、湖に身を投げ、命を断ってしまうこととなった。

全ての「出会い(互いを引き寄せる引力)」が故に引き起こされた不幸な運命から衝撃を覚え、以来、理想の根底となる「全ての人類の運命を操作し、幸福になることが出来る方法」の実現、「天国への到達」を目指す様になる。

 

だが、それがきっかけで、「天国への到達は神から与えた崇高な使命」と信じるようになってしまい、「そのための犠牲はやむを得ないであり、正しい事である」といった独善的な信念が表れるようになる。

故に後のウェザーリポートからは、「自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪」として評されている。

 

なお。本来ならば、『DIO』との出会いを経て、彼という人物もまた形成されていくのだが、

『DIO』の存在が抹消されたことにより、代役が埋まる形で運命が成立し、現在に至っている。

そのためか、「ジョースター家とは因縁がない(執着心がない)」という決定的な違いもある。

 

【マスターとしての願い】

『DIO』の復活と支援、そして人類を天国へと導く。

 

【方針】

他陣営を潰し、DIOの聖杯到達を狙いとする。

基本的にホワイトスネイクによる奇襲で他マスターに接触し、DISCによる操りや情報の抜き取り、令呪の奪取といった利用、最終的に価値がない(もしくは邪魔ならば)殺害に進める。

アサシンは演奏による罠やアサシンの演奏を収録した音楽CDをNPCに挿入するなどして、宝具を発動させるなど、それなり有効活用するが、

アサシンはもう使い物にならないと判断した時に、捨て駒として見殺しにするかDIOへの生贄にさせる予定。

 

【ロール】

「パラディウム・セントラル・ホスピタル」などで活動するチャプレン

 

【把握作品】

漫画およびアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン』をご参照ください。

特に「ヘビー・ウェザー」などではプッチの過去が描かれております。



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【オープニング】【本戦開始前】27 Bloodlust マスター 佐倉杏子 サーヴァント キャスター エリザベート・バートリー

登場キャラクター
マスター 佐倉杏子
サーヴァント キャスター エリザベート・バートリー

作者
◆/dxfYHmcSQ


  「心配すんなよさやか。独りぼっちは、寂しいもんな……。

いいよ、一緒にいてやるよ……。さやか……。」

 

 

 

 

 佐倉杏子はつくづく思う。訳の分からない事態だと。

 あの時、美樹さやかの絶望から産まれた魔女と共に、この身は確かに死んだ筈だ。

 家族の為に願った末に魔法少女となり、家族を破滅させて、自分のために生きる様になった自分と。

 他人の為に願った末に魔法少女となり、誰かの為に戦い続けたものの、自分の幸せを何処かで望んでいた美樹さやか。

 相似で有り、相反する2人の運命は、あの時確かに混じり合い、終わった筈。

 それが何故こんな事になっているのか?

 

 「何でも願いが叶う…ねえ」

 

 あのクソ忌々しいインキュベータと同じ触れ込みの聖杯に何かを願う気は全く無い…。けれど願い事がない訳じゃ無い。

 さやかを生き返らせる。魔法少女を元の体に戻す。インキュベーター共を世界から…宇宙から消し去る。

 あの神父の言った事が確かなら、これ位は出来るだろう。だが…。

 

 「胡散臭い。絶対何か隠してる。ああいう奴は」

 

 あの胡散臭さは信じるに値しない。インキュベーターと同じものを感じるからだ。

 あの神父は確かに嘘は言っていない。だが全てを語っていない…。そんな気がする。

 

 「どうする?さやか。アンタなら」

 

 正義の魔法少女を志したアイツなら、どうするだろうか?

 答える者は居ない。此処には杏子しか居ないのだから。杏子の召喚したサーヴァントは現在別行動中だ。一体何処で何を何をしているのか。

 尤も、自分の従えるサーヴァントとはいえ、ウマが合わない。

 望まぬ形で怪物とされ、その境遇からの解放を願うあの女の境遇は、多少は同情に値するが、結局は自業自得だ。

 望まぬ形で魔女と成り果てる運命の自分達魔法少女とは縁があると言えば有るのだろうが、そのくらいの繋がりで召喚されたと有っては、自分やさやかが。あんな拷問狂と同類扱いされた様で不愉快だ。

 あの女が筋金入りの反英雄な所為か、ソウルジェムの濁りを魔力として持っていくのは助かるが、なにせグリーフシードは無いし、入手できるアテもない。

 

 「まぁ、あんなのでも相棒なんだよな」

 

 杏子は寝転がって空を眺める。此処はセンターロード街に在る高層ビルの屋上。この時間じゃだれもやって来ないし、誰か来ても魔法少女に変身すれば見咎められる事なく立ち去れる。

 

 「願いとか戦いとかもあるけど、今日の宿はどうしようかなぁ……」

 

 何の因果か杏子のロールは、職なし家なしのホームレスだった。金銭は渡されているといっても余り使いたくは無い。

 まぁ、慣れた事だ。適当にやるとしよう。今までの様に。

 

 「それにしても、何処で何やってるんだ?アイツ」

 

 青空と白い雲を眺めながら、杏子は己がサーヴァントが何処で何をしているか、ほんの少し気に掛けた。

 

 

暗く、狭く、薄汚れた部屋だった。

 陰鬱な気配を漂わせる廃屋となった洋館の地下室。

 薄暗く異臭の立ち込める、石の床と石壁で囲まれた部屋は、訪れた者の精神に、不気味な重圧をかけて来る。

 ましてや、壁と床、果ては天井に至るまでに着いた、無数の赤黒い染みが、部屋の持つ凄愴な雰囲気を、より一層強くしていた。

 室内の空気を汚す悪臭が、血と糞尿と臓物と胃液の臭いが混じったものだと知れば、只人ならば即座に踵を返すだろう。

 極めつけは、床に置かれ、或いは壁に立てかけられている得体の知れない数々の器具だ。

 どれもこれもが赤黒いモノをこびり付かせ、摩耗したその様は、すべての器具が『使い込まれて』いる事を悟らせる。

 凡そ真っ当な目的で使われている部屋でも無ければ、真っ当な人間が使っているとも思えない。そんな部屋だった。

 

 「~~♪ ~~♪」

 

 鉄製の扉がゆっくりと開き、蝶番が軋む音と共に、扉の部分が光に切り取られる。

 鼻唄を歌いながら、そんな陰惨な部屋に相応しくない、軽快な足音を伴って、金髪の女が部屋へと入ってきた。

 

 「まだ生きてるぅ?」

 

 陽気な声であった。愉し気な声であった。部屋の用途を知っていて、尚このような声を出せる。最早これだけで、入ってきた女の人格が知れるだろう。

 入ってきたのは鮮血を思わせる紅いドレスの女だった。銀糸で編んだかの様な長いプラチナブロンドの髪を揺らし、雑然と散らかった薄暗い部屋の中を真っ直ぐに、足元も見ずに歩く。何かを踏みつける事や、足を引っ掛けることも無い

 その様は、女がこの部屋を『使い慣れている』事を如実に物語っていた。

 

 「まだ生きているようね。『まだ』ね」

 

 銀髪の女は、天井からぶら下がった“モノ”を見て、昂った声を漏らした。

 天井からぶら下がっているのは赤黒い塊だった。そうとしか言えないモノだった。

 だが、よく見れば、その塊は、一目でそれと分からぬまでに壊された人体と知る事ができるだろう。

 逆さに吊り下げられているのは、全裸の十五、六程の歳の少女だった。

 無数の殴打と火脹れにより腫れ上がった全身は、更に刃物により刻まれ、全身に細かい切り傷が作られている。鼻と耳は削ぎ落とされ、複数箇所を折られたせいで、関節が倍以上に増えた様に見える両手足の爪は全て剥がされていた。

 赤黒く見えるのは単純に全身を覆った血液が乾いて変色しているからだ。最早胸が僅かに上下していなければ死体と思われても仕方ない。それほどの徹底した暴力が加えられていた。

 此処まで執拗な暴力を加えられながらも、両眼とその周辺が無傷なのは、目が潰れたり塞がったりして、自分を襲う次の暴力が見えなくなる事が無い様に、という配慮の結果だ。

 

 「貴女で愉しんで四日間。良く保ちました♡」

 

 手を伸ばし、触れた頬に爪を食い込ませると、少女の体が極僅かだが痙攣した。それを見て女は満足そうに笑うと、指についた血を舐める。

 

 「こんな事で魔力を得られるなんて、忌々しいけれど、便利なことは便利ですわね」

 

 顔を歪めて呟くと、再び底抜けに明るい笑顔で少女に話し掛ける。

 

 「鞭で打ち、体を焼き、皮膚を切り裂き…そして嬲り殺す…。その時湧き上がるこの上ない興奮は、とても悦ばしいのだけど………。残念ながら貴女を殺す訳にはいかないの。全く面倒な決まりです事。せめて死ぬまで見届けてあげます。此処とは異なる場所で…ね♡」

 

 一時間後。

 

 「それではご機嫌様。貴女は中の下といったところでした♡」

 

 再開発地区にある巨大な穴『辺獄』に、息絶えた少女を投げ棄てて、女は艶やかに笑った。なかなかに楽しませて貰ったし、魔力も徴収出来た。結構な成果というべきだろう。殺せなかったのは画竜点睛を欠くが。

 

 「はぁ…やはり足りませんわ♡やはり本命は、歴史に名を残した英傑達。その美しい姿と精神が壊れていく姿はさぞかし美しいでしょう」

 

 早く相見えたいものだと女は思う。歴史に名を残すほどの偉業を成した者達が、どんな声で苦痛を訴え、どんな表情で苦しみを表現するのか、考えただけで昂ってくる。

 それこそマスターである佐倉杏子に語った、生前に被せられた汚名を拭い去るなどといった建前などどうでも良い。

 嬲り、壊し、殺す。この身は真実その為に現界したのだから。

 

 「身体が苦痛に苛まれて尚耐える姿を、終わりのない苦痛に心が折れていく様を、早く私に見せて下さい♡」

 

 其れはマスターにしても同じ事。願いの代償に魔法少女となり、やがて魔女と成り果てる運命の少女。

 生前に満たし続け、死後も尚求める欲の為に、吸血鬼と呼ばれ。死んだ後に怪物として扱われた自分の境遇と似た運命を持つ少女。

 そんな運命を知って、尚も気丈に振る舞い前を向く姿は、拷問にかけて嬲り抜く対象としては上々のモノ。

 あのマスターの強い心を壊したい。あの不死ともいうべき身体のマスターを、思う存分飽き果てるまで嬲りたい。

 そんな欲求があのマスターと共にいると抑えられない。唯の人間なら兎も角、魔法少女というものは、どう嬲っても死ぬ事が無く、問題は何も無いのだから。気が付けば拷問室へと連れ込んでしまいそうだ。

 マスターとは気が合わないというのもあるが、そんな自己の欲求に基づく理由も有って、女は聖杯戦争が始まるまでマスターとはなるべく別行動をしようと決めていた。

 

 「本当に、本当に。これから出逢える素敵な方々の事を思うと、昂ってしまいますわ」

 

 だが、未だに邂逅は果たせていない。思い描く事しか女には出来ない。只々欲求が募っていくだけだった。

 自身のを含むマスターもサーヴァントも嬲れないのでは、NPCを嬲って鎮めるしかない。

 

 其れにしても、こうなる事を見越していたかの様に、拷問室を設えるのにおあつらえ向きの廃屋を用意してくれているとは、これで抑えられずにマスターを襲う事も無いし、人目につくことなく、拷問を愉しめる。

 とはいっても所詮は無聊の慰み、本命までの繋ぎでしか無いが。

 

 鎮まったと思った途端に昂りだした欲望を鎮めるべく、女は新たな獲物を求めて、霊体化して街へと繰り出した。

 余り人を攫い過ぎては面倒事になる為に、次の獲物はさっきのよりも長く嬲ろう。そう思いながら。

 

 

【CLASS】 

キャスター

 

【真名】

 エリザベート・バートリー@魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う

 

【属性】

混沌・悪

 

【ステータス】

筋力: C耐久:B敏捷: C魔力:B幸運: D 宝具:A

 

 

【クラス別スキル】

 陣地作成:C

 宝具から派生したスキル。

 拷問室の作成が可能。

 

 道具作成:C

 宝具から派生したスキル。

 キャスターは拷問道具しか作成できない。

 

【固有スキル】

 

 嬲欲:EX

 他者を嬲り、壊し、その果てに嬲り殺す。死後も尚キャスターを突き動かす強烈無比な欲望。

 最高ランクの精神異常と加虐体質及び拷問技術の効果を発揮する他、欲望により身体能力や宝具を強化する事が可能。

 

 

 無辜の怪物:C

 生前の行いからのイメージによって、後に過去や在り方を捻じ曲げられ能力・姿が変貌してしまった怪物。本人の意思に関係なく、風評によって真相を捻じ曲げられたものの深度を指す。このスキルを外すことは出来ない

 生前の所業から吸血鬼と呼ばれ、死後そのイメージがより強まった結果獲得したスキル。

 吸血鬼としての性質を持ち、身体能力に補正が掛かる他、吸血行為によって魔力体力を回復させる事が可能。

 

 

 戦闘続行:A

 往生際が悪い。

 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

 欲が尽きぬ限り、キャスターは止まらない。

 

 

 気配遮断:A+

 通常時や戦闘時は全く機能しないが、誰かを拷問室へ拉致するときにのみ効果を発揮する。

 貴族の娘を手に掛けるまで、その所業が知られなかった事から獲得したスキル。

 

 

 真実の欲:ー

 キャスターが抱く真の欲望……。だが、キャスターは未だに己の真実に気付いていない。

 

 

【宝具】

 

 魔装 血の伯爵夫人(カウンテス・オブ・ブラッド)

 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大捕捉:自分自身

 

 他者を嬲りたい。という欲望と、吸血鬼という汚名とが融合した宝具。深紅のボディースーツ状のキャスターの戦闘装束である。

 身体能力を1ランク高め、吸血行為による回復効率を向上させる他、防具としての性能も高い。

 

 

 

 朱殷の遊び部屋(レッド・プレイルーム)

 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:50人

 

 拷問の固有結界。通常時は魔装に拷問室と直結する『穴』を作り、其処から任意の拷問道具を取り出す。というモノだが、真名開放を行うと、空が赤黒く染まり、血に染まった石床の空間に、巨大な鉄の処女(アイアンメイデン)が存在し、宙に無数の拷問道具が浮かぶキャスターの心象風景が展開される。

 この遊び部屋の中では、キャスターは幾らでも拷問道具を作成することができ、作成した拷問道具はキャスターの意のままに動く。

 固有結界の形成と維持には魔力を消費するが、結界形成時に用意されている拷問道具に関しては魔力消費はしない。しかし、破壊されたものを新しく製造する、または形成時に無かったものを新造するには激しく魔力を消費する。

 さらにただ複製するだけでなく、自分好みにアレンジを加えたり、形状を変えるなどいった独自の改造を加えることも可能。

 物品としての拷問道具を作り出しているのに止まらず、長年使用された拷問道具には意思が宿り、その意思と共に拷問道具に宿る「使い手の経験・記憶」ごと解析・複製している。このため、仮に初見の拷問道具の複製であっても、ある程度扱いこなすことが可能。

 拷問道具には定まった定義はなく、キャスターがこれは拷問に道具だと認識する。或いは拷問に使えると判断すれば、拷問道具として扱われる。

 拷問道具は『吸血』の性質を持ち、拷問道具により流された血は、魔力としてキャスターに簒奪される。

 

【Weapon】

 宝具・朱殷の遊び部屋(レッド・プレイルーム)で作成した拷問道具。

 

 

【解説】

 16世紀末から17世紀初頭にかけてハンガリーはトランシルヴァニア有数の名家に生まれ、とにかく殺しまくった。

 権力を利用し殺しに殺しまくった。非道の貴族。

 生涯殺害数(キルスコア)650

 その全てを拷問で行った不世出の大殺人鬼。

 あんまりやり過ぎたんで吸血鬼扱いされたりもした。その所為で教会の人間とか正義とか大嫌い。

 命が潰れる瞬間の煌めきを求めて殺しに殺しを重ねるものの。真実求めていたものは、己自身が美しく壊れる事だったりする。

 

【聖杯にかける願い】

吸血鬼という汚名を晴らしたい………。というのはマスターに対して語った表向きの願い。

本当の目的は、歴史に名を刻んだ英傑達を嬲って嬲って嬲り殺したい。

 

 

 

【マスター】

佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ

 

 

 

【weapon】

やたら柄が伸びる多節槍

 

【能力・技能】

豊富な戦闘経験と、高い攻撃力を持つ。本来持っていた『幻惑』の魔法は使えない。

 

【解説】

インキュベーターと契約した赤い魔法少女。

家族の為に願って得た奇跡が、家族を破滅させた為に。魔法少女の力は自分の為に使うという主義の持ち主になってしまったが、元々は善良だったりする。

 

 【聖杯にかける願い】

 願いはあるが、果たして願って良いものか悩んでいる。

 

 【ロール】

 無職無収入住所不定。所謂ホームレスである。

 



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【オープニング】【本戦開始前】28 鋼の心、黄金の精神 マスター エドワード・エルリック サーヴァント バーサーカー 空条承太郎

登場キャラクター
マスター エドワード・エルリック
サーヴァント バーサーカー 空条承太郎

作者
yu sato


 エドワード・エルリックは両手で神に祈るように、柏手を打って合わせ、床に手を付けた。

「うお……!」

 雷が弾け、床から一振りの槍が組みあがっていく。

「『真理の扉』をぶっ壊したオレは、錬金術が使えなくなっていたはずだけどな」

 出来上がった槍を見て、エドは呟いた。

 あの最後の戦いの後、弟のアルフォンスの肉体を引っ張り出すため、エドは自分の中にある『真理の扉』を代償にした。

 その結果、エドは錬成陣を書いても錬金術を行使できなくなったのだ。

「ここにある『天の聖杯』のベースになった物、その本質はあらゆる世界に繋がる『扉』だ。

 君が言うその『真理の扉』にも恐らくは繋がっているのだろう。もちろんこの世界でしか君は錬金術を使えないだろうけどね」

 そう答えたのはルーラーのアルヴィースである。

 ここはアルヴィースが特別捜査官として活動するために物質転換炉内に設けられたスペースだ。

 人が10人くらいは入れるくらいに広い。アルヴィースの座る席の両隣には同じく席がいくつか設けられている。

「どうだい? 無理にやらせたけど、実際に再び錬金術ができるようになった感想は?」

「……なんか、もっとうれしいかと思ってたけどな……」

 エドは複雑な気持ちだった。

 時々未練がましく時々両手を合わせて錬成を行おうとした。その度まるであの時の決断を後悔しているようで苦い気持ちになった。

 今、こうして実際に錬成ができても、多少の感慨深さはあるが、さほど嬉しくもない。

「まあ、出来ることを出来ないと認識されるのは他のマスターに比べて不公平にあたるからね。戦うためでも、隠れるためでも、人を救う事でも何に行使しても構わないよ」

 アルヴィースは椅子の肘掛けに腕を置いた。

「で、錬金術を無理やりやらされたおかげで質問が遅れたが、はっきり聞くぜ。『天の聖杯』ってのは何で造られた? どうして人間同士を殺し合わせてまで『理』とやらを高めてまで願いを叶えさせる必要がある?」

 エドはアルヴィースの座る椅子の背もたれに手を当てた。

「『天の聖杯』を造り上げたのは一つの地球全てを保管したサーバー『ヘルメス・トリスメギストス』だ。自身の消滅の危機に陥ったサーバーはある『扉』と呼ぶべき量子的なもつれの場を発見した。

 それを核にほぼ無限にある願望器とリンクして『天の聖杯』を造り上げた。そして願望器をめぐる争いとそれによる人間の成長を観測した『ヘルメス・トリスメギストス』は自ら『聖杯戦争』を実行に移した。

 無限の宇宙、並行世界に招待券を送り、戦わせることで霊基が極限まで高まった最後の勝者と所属する世界に霊子的に繋がり、自身の保持する縮小地球を利用して、無限の可能性より勝者の望んだ事象に改編した宇宙を創り上げる。

 さらに勝者の存在する宇宙へ膜をかぶせるように上書きする事でその宇宙内で自身の存在を確立、惑星内でサーバーに保存された全生命を再現するのが『ヘルメス・トリスメギストス』の目的だ。

 これほど大規模な戦いのシステムにまでしたのはこの聖杯戦争の『主催者』だよ。『ヘルメス・トリスメギストス』によって召喚された、ね」

「おい……その宇宙を創るエネルギーってのはどこから来るんだよ」

 エドは唇の端を歪め半笑いになり、冷や汗をかいて尋ねた。等価交換の原則からすれば宇宙を創るには宇宙そのものを……。

「僕にもそのシステムはどうなるか分からない。他の可能性宇宙をエネルギーに変換するのかもしれないし、高次元への『扉』を開きエネルギーを引き出すのかもしれない。

 全ては聖杯を手に入れた勝者次第さ」

『どっちにしてもロクでもねー代物だってことは分かった』

 エドと、サーヴァントのバーサーカーが同時に言葉を発した。

 バーサーカーは高い慎重に屈強な肉体、それを学帽と長ランで身を包んでいる。

 まだ十代の容姿でありながら、歴戦の猛者のような風格を醸し出している。

 彼の真名は『空条承太郎』。かつて最強のスタンド使いと言われた男だ。

「じゃあ、その『主催者』ってヤツが予選とかも作ったのか」

「そうだよ。僕は反対だったけど『主催者』には逆らえないからね」

 悠然とした態度に、エドは怒りを覚えた。

 だが、すぐに気を取り直し別の質問をした。

「『主催者』がサーバーによって召喚された……とすると、今聖杯戦争を運営しているのはその『主催者』で、サーバーはこの世界や『天の聖杯』の管理に集中しているってことか?」

「少なくとも『ヘルメス・トリスメギストス』はそうだろうね」

「なんか妙な言い方だな」

「現場監督の僕には分からないことが多いからね」

 エドは今まで神父、アルヴィースから得た情報を咀嚼し、考え込む。

 『天の聖杯』、『主催者』、『ヘルメス・トリスメギストス』。それぞれの目的は少しずつずれているようだ。このずれを解消しているのは……

「話が終わったなら君の職場は別にあるからそこに向かってほしい。ここはあくまで僕専用の部屋だからね。

 何か質問したいことがあったらいつでも来て構わないよ」

 

 外に出た二人は歩いてバスの駐留所に向かった。

「ロールは『防衛隊錬金術顧問』かよ。ったく、こんなところでも軍の狗か」

 苦々しい顔でエドは端末を見た。

「まあ、割と自由に行動できるようだから、なんとか他のマスターとコンタクトを取りたいな」

「とってどうする気だ」

「そりゃあ、誰も殺さずに聖杯に到達するために決まってる」

 エドは当然のように口にした。

「誰か一人に絞るからマスターの強い『理』なんて必要にしたり、他の宇宙を潰してエネルギーに変換しなくちゃならなくなるんだ。

 多くの人数で役割を分散すれば、世界を創り変える必要なく、願いは叶えられんじゃねーか?」

「推測だらけ、穴だらけの理論だな」

 遠慮のない感想を承太郎は述べた。

「『主催者』たちの思惑通りになるよりましだ。勝手に宇宙なんか創らされてたまるか」

 吐き捨てるようにエドは言った。

「コンタクトと言っても恐らくは戦うハメになるだろうから、あらかじめ言っておく。俺の宝具――スタンドに本来あり得ない能力が加わっている。

 本来の能力は『5秒間時を止める』能力。だがそいつを使えば使用不可能になり、あらゆる人や物、現象に対し俺が思うが儘の現実を上書きできるようになる。

 例えば『相手の消滅』を願って拳を打ち込めば、そいつは問答無用で消滅する。ただし魔力の消費が激しすぎる」

「両方ともとんでもねぇ能力じゃねーか」

 エドは冷や汗をかいた。

「で、そのあり得ない能力が加わっている原因について見当はついてんのか?」

「恐らく、DIOのヤローがこの聖杯戦争の深い部分に関わっていて、その影響なんだろう」

「深い部分ってどんなんだ?」

「例えばだ、主催者の裏にいる黒幕が俺の世界とは違う並行世界のDIOを召喚しているとかだな。あいつ自身が『天国』へ行ったとしたら『ザ・ワールド』は全く未知のスタンドに進化していたに違いねぇ」

 黒幕。その言葉でエドはハッとした。

「アルヴィースは主催者の存在は肯定しても、その裏に何かあるような曖昧な態度をしていた。『真実の奥の更なる真実』ってやつか……」

 エドは指を顎に当て、『黒幕』がいた場合の想定をする。

 その場合『天の聖杯』らの目的のずれに関し、自らの目的を優先させているとすれば……。

「お前、主催者やいるかどうかわからない黒幕にたどり着いたらどうする気だ?」

「当然、ケンカでボコってブチのめしてやるぜ」

「やれやれ、ガキの言いぐさじゃねーか」

「じゃあ、お前はDIOってヤツが本当にいたらどうするんだよ」

「それはもう、復活したなら二度と生き返る気が無くなるまで何度でもブチのめしてやるだけだ」

「結局同じじゃねーか……」

 エドは柳眉をひそめた。

 

「エド。お前にまだ聞いてなかったことがある。戻ることも可能だったのに、なぜわざわざ自分から首を突っ込む?」

「きっかけは列車内で不思議な女の隣に座って、星晶石ってやつを渡されたからだけど、本当にこの聖杯戦争をぶっ潰してやろうって思ったのは予選を生き残ってからだな。

 あの予選、無理にでも意志を引きずり出さなけりゃ確実に死ぬじゃねえか。願いが叶うという餌をぶら下げて、赤の他人同士を殺し合わせる。それが許せねえ」

 そのやり方は、まるで『お父様』がやっていた事と同類だ。だとすれば最後に残ったマスターがどうなるか、人柱のようになるか大体ろくでもない目に合わせられることは想像がつく。

 思わずエドは拳を握り締めた。

「気に入ったぜ。俺も裏で嘲笑っている奴らを引きずり出さねえと気がすまねぇ。他人の願いを叶えると嘯いて、殺し合いに駆り立てそいつらの人生を台無しにさせるそいつは間違いなく『悪』だ。

 必ず倒さなければならないものだ。誰もそいつを裁けねえなら、俺が裁く」

 承太郎の言葉に、エドは唇の端を吊り上げ白い歯を見せた。

「いいねぇ。俺が聖杯に至る道を造り、あんたが邪魔するやつをブチのめす。そして必ず聖杯、そして黒幕へたどり着く! もちろん誰も殺さずにな!」

 エドは拳で掌を叩いた。

「頭は器用に回るが、生き方は結構不器用だな、お前」

 承太郎のその言葉でエドは承太郎の胸板にドスンと裏拳を当てた。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

バーサーカー

【真名】

空条承太郎

【出典】

ジョジョの奇妙な冒険

【性別】

男性

【ステータス】

筋力D 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運A 宝具EX

【属性】

混沌・善

【クラス別能力】

狂化:-

 このスキルは保有スキル内に含まれている。

【保有スキル】

黄金の精神:A

 「正義」の輝きの中にある精神。人間賛歌を謳う勇気と覚悟の心である。

 同ランクの勇猛、戦闘続行を兼ね備えた特殊スキル。

心眼(真):A

 修行・鍛錬によって培った洞察力。

 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。

 逆転の可能性がゼロではないなら、その作戦を実行に移せるチャンスを作り出す。

千里眼:C

 スタンドによる超高精度の視力。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

激昂:A+

 狂化に準ずるスキル。

 承太郎の怒りが頂点に達した時、全ステータス、宝具『星の白銀』の全ステータスにプラス補正が付く。

【宝具】

『星の白銀(スタープラチナ)』

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人

 古代ローマの拳闘士が如き姿をした人型のパワーある像『スタンド』。Aランク相当の筋力・敏捷、Bランク相当の耐久を持つ。

 素拳の一撃で岩に巨大な大穴を穿ち、相手に対し瞬時に数十発拳を叩き込め、脳に刺さった針を、脳を傷つける事なく抜き取るなど極めて高い破壊力と速度、精密性を併せ持つ。

 本来はスタンド使い以外には視認できないがマスター、サーヴァントであれば視認できる。これはスタンドが宝具として再現された神秘に過ぎないためである。

『スタープラチナ・ザ・ワールド』

ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:∞

 真名解放によってスタープラチナが光よりも早く動いた結果時間を超越し、最大5秒間『時を止める』能力。

 停止した世界では同種の能力を持つ者以外は動く事はおろか、何が起きているかを視認する事も判断する事も不可能。

 再使用には数呼吸の間のブランクが必要となる。

『Star Platinum・Over Heaven(スタープラチナ・オーバーヘブン)』

ランク:EX 種別:対真実宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:―

 全ての事象に対し、承太郎の望む『真実』を上書きする。現実の改変。

 死者蘇生、時代改変、事象の消去、治癒など応用範囲は非常に幅広い。

 ただし、使用には膨大な魔力と長時間のチャージが必要となる。

 また、承太郎本人かスタンドの拳で触るか殴るかして能力を発現させるため、腕を負傷すると傷が癒えるまで使用不可能になってしまう。

 この能力を使用すると、上記の『スタープラチナ・ザ・ワールド』は使用不可能になる。

 これは本来あり得ざる能力のため、使用するたびに承太郎は霊基消滅へと近づいていく。

【weapon】

 無し。

【人物背景】

 ジョジョの奇妙な冒険第3部『スターダストクルセイダース』における主人公。肉体年齢は全盛期の17歳。

 突然「正体不明の悪霊」に取り憑かれて周囲のものを無差別に壊してしまうようになり、自ら警察の留置場に入っていた。

 それがジョースター家の宿敵・DIOが復活した影響による「スタンド」と呼ばれるものである事を、来日した祖父のジョセフによって知らされる。

 同じくスタンド発現の悪影響で重体に陥った母・空条ホリィを救うため、DIOを倒すべくエジプトを目指し旅立ち、討ち倒したスタンド使い。

 頭脳明晰で常に寡黙で冷静沈着。一方で激情的な部分もあり、受けた屈辱は数倍返しにする執念深い一面もある。

 勇者と評するに値する少年は、時を経て家族を愛する一人の父親となった。

 その家族を庇ったために、彼はDIOの意志を継ぐエンリコ・プッチの前に斃れた。

 

 この承太郎は天国に到達したDIOとの戦いの記憶はないが、自分の宝具によりDIOが何をしたのか、何が起こったのかを推測している。

【サーヴァントとしての願い】

 黒幕をブチのめす。DIOがいたならもう蘇る気が無くなるまで何度でもブチのめす。

【方針】

 聖杯のある場所『楽園』の探索はマスターに任せ、自身は襲い掛かるマスター達を倒す。 

【把握媒体】

 承太郎が主役なのは漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の12巻から27巻まで。アニメ版「スターダストクルセイダース」は全39話です。

 それ以降はジョジョ第6部「ストーンオーシャン」まで登場しています。

 

 

【マスター】

エドワード・エルリック

【出典】

鋼の錬金術師

【性別】

男性

【能力・技能】

錬金術

 物質を理解し、分解・再構築する科学技術。

 優れた錬金術師であり真理を見た彼は物質を理解さえすれば手合わせで素早い錬成ができる。

 本来自分で『真理の扉』を壊した彼は錬金術を使えないが、この世界では聖杯の影響で錬金術が行使できる。

格闘技・サバイバル術など

 師との修業のたまもの

【weapon】

 その場に応じて錬金術で武器を作る。鋼の義足も武器。

【人物背景】

 アメストリス国のリゼンブール出身の若き錬金術師。物語開始時点では15歳。

 母親を蘇らせるため、錬金術の禁忌「人体錬成」を弟のアルフォンス・エルリックと共に犯し、「真理」を見た対価としてエドワードは左足を、アルフォンスは体すべてを持っていかれた。

 その時エドワードの決死の行動により右腕を対価にアルフォンスの魂を鎧に定着させることに成功する。

 そこから兄弟の失った体を取り戻すための長い旅が始まる。

 基本的には冷静に判断できるが本質的には激情型の人間で、特に『小さい』『チビ』と言われるとキレる。

 最終決戦の後、自分の『真理の扉』を用いて錬成を行いアルフォンスの肉体を取り戻し、代償として錬成陣をかいても錬金術が使えなくなった。

 参戦時期は決戦から2年後。錬金術を失ったエドが、アルと共に錬金術による悲劇を繰り返さないため、様々な学問や知識を手に入れるため旅に出た直後である。

【マスターとしての願い】

 黒幕をボコる。

【方針】

 聖杯でしか叶わない願いを持つマスター達を、実際に聖杯にある場所へ連れていく説得をし、黒幕の元へたどり着く。

【ロール】

 防衛隊錬金術顧問

【令呪の形・位置】

 五芒星にフラメスの十字架が重なっている。

【把握媒体】

 漫画が全27巻、アニメが全64話あります。



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【オープニング】【本戦開始前】29 天空に太陽と月が輝く マスター レオナルド・ビスタリオ・ハーヴェイ サーヴァント セイバー アルトリア・ペンドラゴン

登場キャラクター
マスター レオナルド・ビスタリオ・ハーヴェイ
サーヴァント セイバー アルトリア・ペンドラゴン

作者
yu sato


 多目的総合ビル『ビッグアイ』の中で1フロアを占めるレストラン『パンゲア』。

 ここはあらゆる人種のオーダーに応え、ハンターの持ち込み食材で超一流の料理を即興で仕立ててみせるシェフの腕前。

 各人種に合わせた空調、温度管理、テーブルフラワーの配置に至るまで完璧に調節された心地良い空間の提供により『パラディウム・シティ』1の料理店として名高い。

 

 その一テーブルに、少年と少女が向き合って座っている。

 少年はノーブルレッドを基調とした学生服のような衣装に、金髪碧眼の容姿。だが、大人しく座っているだけなのに少年というにはそぐわない威厳がある。

 少女は濃紺のドレスシャツにネクタイ、ダークスーツという男装。一見すれば絶世の美少年のようだ。

 二人が紅茶を飲んでいる間に、給仕が料理を持って近づいてきた。

「お待たせ致しました。こちらは小型ソフトシェルクライブの爪のフライでございます。ソースは同じくクライブからとったスープにクライブのミソとトマトとクリームを合わせたものです。

 どうぞごゆっくりお召し上がりください。紅茶のお変わりはいかがですか?」

「僕はもらいましょう」

「私は結構です」

 給仕が少年に紅茶を注ぎ、離れた後、二人はフライをナイフで切り、ソースをつけて口に運んだ。

「これは……美味ですね」

 少女が驚きの声を上げる。

 柔らかい殻と歯ごたえの言い身のえもいわれぬ食感。蟹状の生物のエキスを濃縮したソースを身につける事で濃厚かつ柔らかいという未知なる味わい。

 少女は思わず口を覆った。

「ええ、僕の世界でもこれほどの物には滅多に口にできません」

 少年は

「私の時代は当然としても、貴方の世界でもですか、レオ」

「ええ、西欧財閥の一員だとしても、そう贅沢はしていられませんよ、アルトリア」

 少年の名はレオナルド・ビスタリオ・ハーヴェイ。

 少女の名はアルトリア・ペンドラゴン。

 二人ともこの聖杯戦争のマスターとサーヴァントの主従である。

 

「聞きましたか、アルトリア」

 レオは前菜と同時に出たパンを持ち、アルトリアに見せた。

「このパン。その材料の穀物は空気中の窒素を養分とすることでどんな痩せた土地でも栽培でき、地下茎をアルコール醸造することで燃料も取れるそうですよ。

 この穀物一つで僕の世界の食糧問題、エネルギー問題の大部分が解決しますね。全く素晴らしいものです」

 レオはパンでソースを掬い取った。

「ええ、私の時代にもこのような穀物があれば民が餓えに苦しむこともなかったでしょう」

 感慨深げにアルトリアはパンを見つめる。

 このような穀物があれば民は飢えに苦しまず、ましてや戦争の飼料調達のために村をつぶす必要などなかったろう、と。

「ルーラーのアルヴィースから聞きました。この『天の聖杯』の本質はあらゆる並行世界、多元宇宙に繋がる『扉』だと。このパンを含めたこの世界の技術は並行世界、多元宇宙で開発された物がこの都市に持ち込まれていると」

 話が聖杯戦争に繋がり、アルトリアは顔を引き締めた。

「その『扉』より霊子コンピュータ『ヘルメス・トリスメギストス』が観測したあらゆる世界のあらゆる願望器と『扉』が接続された特異点『天の聖杯』が願いを叶える。

 そのためにはマスターがその『天の聖杯』をコントロールできるまで成長しなければならない。人類、宇宙の行く先を示す階梯『理』が必要なのだと」

 あらゆる願望器、それは当然レオの世界のムーンセル・オートマトンにも繋がっている。だからこそレオは退場せず、この聖杯戦争に参戦する気になったのだ。

「それが一個人の手に渡っては、人類、ひいては世界に多大な悪影響を及ぼす事でしょう。聖杯は僕、そしてハーウェイの下で管理し、運営することが必然と考えます」

 しかしハーウェイの手で正しく管理するためには、聖杯を得るのは私利私欲なき者でなければいけない。

 それは自分のみであるとレオは確信していた。

「貴方の世界では、聖杯が必須なほど逼迫しているのですか」

「ええ、世界中で紛争、西欧財閥の支配に反抗するテロリズム、レジスタンス、自然災害、バイオハザードなどが起こっています。

 現在はレジスタンスなどの活動を抑え、変革を止めています。無秩序な変化は資源が限られた僕に世界では滅びに直結しますから。世界を停滞させているといってもいいでしょう」

「という事は聖杯への願いは世界を緩やかに、穏やかに治める、という事ですか」

 レオは頭を振った。

「いいえ、僕が今世界の停滞を許容し、変化を抑制しているのはそれが世界を最も長く存続させ、時間を稼げるからです。

 停滞が衰退に代わり、滅びを迎える前に、どこかで変化、進歩への道筋を見出す必要があるでしょう。

 それを僕が、僕たちハーウェイの主導で行う。それが王になる僕のなすべきことです。聖杯はそのために使います」

 

 レオのいた世界は何かを間違えた、あるいは足りなかった世界だ。

 地軸のずれ、ポールシフトが起き、資源は枯れ、荒廃した大地と人心。

 レオの世界で人類は停滞の時代を迎えている。

 明確な悪はなく、憎み合ってるわけでもない。ただ足りないがために、他から奪う。

 自らより弱い者を踏みにじっていかなければ生きていく術を見いだせない。

 

 だから己がもたらす。悠久の平和を。不条理な死も無慈悲な戦いも起こらない世界を。

 それは全ての人々が待ち望む希望なのだから。

 

 まるで天空にある太陽のように正しき光をもたらそうとするレオに対し、アルトリアに一抹の不安がよぎる。

 アルトリアは少女としての心を封じ、国のためにある王、王という役割の装置に徹した。

 レオもまた同じようで違う。彼には『人の心が分からない』のではないか?

 レオの言葉にはまるで人々の実生活と抱く不満が見えていないように思えた。かつてのアルトリア自身のように。

 

 かつてただの少女だったアルトリアの抱いた理想、それは多くの人々が笑っている国の姿。

 だが、そこまでたどり着くまでどれほどの犠牲を強いられるのか。

 民たちはそれに耐えられなかった。絶え間なく続く戦、いつまでも瘦せた大地。一部の領主の蓄財。飢えて泣く子供。

 モードレットの彼女に対する憎悪はきっかけに過ぎなかった。モードレッドがいなくとも恐らく誰かが終末の引き金を引いただろう。

 そうしてもたらされた屍の山の上で彼女は慟哭した。

 自分が惨たらしい死を迎えるのは許容できる。だが、この滅びは許容できない。

 もっと穏やかに国が続き、眠るように終わる。そんな民の安寧をこそ望んでいた。

 だから彼女は願った。この滅びを回避できるのなら、何を代償にしても構わないと。

 だから世界と契約した。自分の死後を預ける代わりに聖杯を手に入れる機会を無限に用意する事を。

 

 幾多の戦いの末、彼女は前の聖杯戦争で自分の鏡像を見た。

 王であるために人の心、感情を捨てた自分と『正義の味方』であるために自分の感情を殺し続けたサーヴァントのアーチャー・エミヤと。

 二人とも理想を貫くために多くの人を殺し、誰にも悲しんでほしくないという願い、出来るだけ多くの人間を救うという理想のためにあえて一部の人間を切り捨ててきた。

 そうして守護者となり理想にさえ裏切られたエミヤは、自身の消滅のため過去の自分を殺そうとした。

 元マスターでアーチャーの過去である衛宮士郎は追い込まれる中、死に物狂いで言った。

 

 ――間違いなんかじゃない、と。

 

 その言葉はアーチャーのみならず、アルトリアの心も貫いた。

 

 ――自分の人生が間違いじゃないと胸を張って言えるのなら、その結果がどんなに無残でも受け入れるべきではないか。

 

 だが、彼女はそれに答えを出すことができず、再びこうして聖杯戦争のサーヴァントとして召喚されている。

 

「レオ。貴方の抱く理想は正しい。ですがその正しさに人が付いていけるとは限らない。私はそれを知ってしまった」

 アルトリアは俯き、手を握った。まるでかつての自分のようなこの少年を見られなかったから。

 だが、同時にかつての自分と違い、民の安寧だけでなく、変化や進歩を望んでいる事はアルトリアにとって眩しく思えた。

「……故に貴方が抱く理想が貴方自身を滅ぼさないために、貴方がこの聖杯戦争で己が理想を叶えるべくマスターとなった者たちと戦うことで、王としてさらなる成長を遂げるために、私は貴方に剣を捧げましょう」

 眩しく尊き理想。それが誰からも理解されない前に、誰かと語り合う機会を与えたい。その為に剣を振るうことで別世界から呼ばれたマスター達と話し合うようにしたい。

 そう思い、アルトリアは顔を上げ、レオの目を真っ直ぐに見据えた。 

「成長するのは他のマスターもでしょう。もしそんな聖杯を競うに値する魂の持ち主が現れるのならば、是非とも剣を以って対峙したいものです」

 はにかむようにレオは笑った。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

セイバー

【真名】

アルトリア・ペンドラゴン

【出典】

Fate/stay night

【性別】

女性

【ステータス】

 筋力A 耐久B 敏捷B 魔力A+ 幸運A+ 宝具A++

【属性】

 秩序・善

【クラス別能力】

対魔力:A

 A以下の魔術は全てキャンセル。事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。

騎乗:B

 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】

直感:A

 戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。

 研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

魔力放出:A+

 武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。いわば魔力によるジェット噴射。

カリスマ:B

 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において自軍の能力を向上させる。

 カリスマは稀有な才能で、一国の王としてはBランクで十分と言える。

【宝具】

『風王結界(インビジブル・エア)』

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人

 不可視の剣。

 敵に武器の間合いを把握させない、シンプルではあるが白兵戦において絶大な効果を発揮する。

 強力な魔術によって守護された宝具で、剣自体が透明という訳ではない。

 風を纏った刀身は光の屈折率を変化させ、元から有る剣の形状を不可視にしている。

 真空状態という程ではないが、刀身に渦巻いた風は凶器そのもので、斬撃の破壊力も増大するようだ。

 圧縮した風を解放した瞬間のみ、真空状態を作り上げる事ができる。

 攻撃対象が『視覚妨害による補正への耐性』を持っている場合、風王結界による命中補正は効果を発揮しない。

 刀身を透明にする、という長所の他に、圧縮した風を解放し、一度かぎりの飛び道具として放つ事も可能。

 その場合のダメージは限定数値で、セイバー自身の魔力や筋力は影響しない。

『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』

ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人

 光の剣。

 人造による武器ではなく、星に鍛えられた神造兵装。

 聖剣というカテゴリーの中では頂点に立つ宝具である。

 所有者の魔力を“光”に変換し、収束・加速させる事により運動量を増大させ、神霊レベルの魔術行使を可能とする聖剣。

 第三者から見ると巨大な光の帯に見えるが、実際は光の先端にのみ攻撃判定があり、光によって形成された“断層”が通過する全ての対象を切断する“究極の斬撃”である。

 その膨大な魔力は先端以外にも熱を持たせ、結果として地上をなぎ払う光の波に取られる。

 指向性のエネルギー兵器とも言えるだろう。

 円卓の騎士の決議による十三拘束の解放により、さらに威力が向上する。

『全て遠き理想郷(アヴァロン)』

ランク:EX 種別:結界宝具 防御対象:1人

 エクスカリバーの鞘の能力。

 失われた三つ目の宝具。

 アーサー王の伝説において、聖剣の真の能力はこの鞘による“不死の力”とされている。

 所有者の傷を癒し老化を停滞させる能力があるが、実際は個人を対象とした“移動要塞”と呼べるもの。

 鞘を展開し、自身を妖精郷に置くことであらゆる物理干渉をシャットアウトする。

 魔法の一つ、並行世界からの干渉でさえ防ぎきる。

 この世界では、西欧財閥の手によりコーンウォールで発掘されたものが持ち込まれている。

【weapon】

『約束された勝利の剣』

『全て遠き理想郷』

【人物背景】

 かつてブリテンを治めたアーサー王。選定の剣を引き抜き王となった。

 国のために身を捧げるも結局国を護ることができなかった後悔から、自分は王にふさわしい器ではなかったと感じ、新たに王の選定をやり直すために聖杯を求めている。

 実は彼女は他の英霊達と違ってまだ死んでおらず、死の寸前で「聖杯を手にすること」を求めて世界と契約し、生きている状態のまま様々な時空間に呼び出されている。

 聖杯を手にし、世界との契約が達成された暁には本来の時間に戻り、願いを叶えた後にそのまま死を迎え、はじめて正式に英霊となることになる。

 ここではUBWルートを辿ったアルトリアが召喚されている。

【サーヴァントとしての願い】

 選定の剣のやり直しであるが、アーチャー・エミヤから語られた末路、衛宮士郎とアーチャーの戦いを見て自分の道を見つめ直そうと考えている。

 レオに対しては行き詰まりになった世界を動かすために、レオが成長するために力を貸す。

【方針】

 積極的に打って出る。

【把握媒体】

 スマートフォンのアプリでFateルートが無料公開されているので、まずそれをプレイした後、UBWルートを購入するか、2014年度アニメ版全26話を見ることをお勧めします。

 

 

【マスター】

レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ

【出展】

Fate/EXTRA

【性別】

男性

【マスターとしての願い】

 聖杯の確保。

 悪しき者の手で自分の世界に影響が及ぶ意味でも己が手にするべきだと考えてる。

【能力・技能】

 マスターとしての適性、ウィザードとしての腕前、どれをとっても超一流。

 全ての数値が最高レベルのオールラウンダー。

【weapon】

 複数のコードキャストを所有。

 ハーウェイ家伝来の決闘術式(ファイナリティ)「"聖剣集う絢爛の城"(ソード・キャメロット)」は自身と敵の周囲を炎で包む城の結界。

 外部からの破壊は聖剣クラスの宝具が必要で、空間転移による退避も許さない。維持にはレオでも3分が限界。

【人物背景】

 1970年代に起こったポールシフトにより環境が激変した並行世界で衰退した人類を取り仕切る西欧財閥の筆頭、ハーウェイ家の次期当主。

 穏やかで公明正大。人の理想者の体現。

 その王聖は「徹底した理想」。能力差のある人々が平穏に暮らす管理社会を実現し、人類を平和に導こうとする。

 私利私欲を持たず全てに平等に接するが、それは翻せば何者も特別に扱わないということ。

 敗北を知らず、全てにおいて完璧であるが故に未完成の器でもある。

 

 ハーウェイとしての責務から解放されると一気にハジける。

【マスターとしての願い】

 聖杯を手に入れ、停滞の末の滅びを避けながら人類の存続と人々が安心して暮らせる次代の千年紀への道程を示す。

【方針】

 王に姑息な手は必要ない。ただ堂々と進軍するのみ。

 状況によって同盟、共闘はあるだろうが、最終的には剣を向ける関係だと弁えている。

【ロール】

 センターロード街D-4の黒いビルに住む大企業のCEO。

【令呪の形・位置】

 EXTRAに出た令呪と同じ形。

【把握媒体】

 PSPで販売。プレイ動画が某動画サイトで公開されています。漫画版全6巻もあります。



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【オープニング】【本戦開始前】30 黒岩満&セイバー マスター 黒岩満 サーヴァント セイバー ノイトラ・ジルガ

登場キャラクター
マスター 黒岩満
サーヴァント セイバー ノイトラ・ジルガ

作者
◆DE1ZlR3npE


______何処だ。

 

一筋の光すらない闇の中。一人の男が虚ろな目で闇を見上げていた。

男の名は黒岩満。かつては神室町で敏腕刑事として働きながらも裏の顔は殺し屋、通称『モグラ』という二面性を持っていた。最終的には目論見の全てを暴かれ、破滅の運命を辿った男。

彼自身、ここに来た理由は殆ど見当も付かなかったが思い当たる節は1つあった。

自身の運命を分けた地、創薬センターに向かう途中、虹色に輝く石を、物珍しさに拾ったのを覚えている。その時は何の気にも留めなかったが、もしかすれば、あの時の石が俺をこの場所に…?

 

「いや、まさかな…」

正直、自分でも馬鹿みたいな推理をしていると。あのインチキ探偵であれば考えもしないだろう、と自嘲しながらも、それに反するように黒岩の脳内には次々と疑問が浮かび上がる。

 

___じゃあ、今俺がいるこの空間はどう説明する?

石を拾った時、まるで惹かれるように手に取ったのは何故だ?

あの時俺が置かれていた状況は刻一刻を争う事態だったというのになぜあの場面で石を拾うなど時間を無駄に使う行動をした?

まさか俺は、地獄に……

頭の中に際限なく浮かび上がる疑問と疑惑。

ふと気が付いた時、黒岩はポケットの中の石を握りしめていた。

間もなく、声が虚空から響いた。

 

「半分、正解だ。」

 

声と同時に、空間がひび割れ、新たな景色が作り出される。

そこは星々が煌めく、宇宙を彷彿とさせるようなどこか幻想的な空間であった。

その美しい景色には目もくれず、黒岩は声の主に憤怒と困惑の感情を混ぜた疑問を投げ掛ける。

 

「どういう事だ…説明しろ!」

 

「まず君が星晶石に導かれたのは、事実だ。

だが、ここは地獄では無い。寧ろ、蘇るチャンスを与えられた天国に近い場所。

そうだな…もう少し分かり易く例えるならば予選会場、と言った所か。石はそのチケットのようなものだ。

…だから君にはまず『予選』を勝ち抜いてもらなければならない。」

 

「予選…?」

 

「あぁ、そうだ。」

突如、声の方向から魔法陣が描き出された。

影をさらに黒く塗り潰したような、人型の何かが、陣から現れる。

 

「それはシャドウというサーヴァントのなり損ないだ。彼を倒せば、君は予選突破となる。

シャドウは生身の人間では絶対に倒せないが、打ち倒す鍵は既に君の中にある…」

声の主に聞きたいことは山程あったが、今は向かってくるシャドウの対処に精一杯だった。

幸い、シャドウの動きは単調的な動きのみであり、隙を突いて背後に回るのは容易い事だった。背後に回った黒岩はシャドウの首を腕でロックし、力一杯にへし折る。

シャドウの頸髄が折れ、鈍い音が響く。

が、手応えが無い。それどころか、先程よりも強靭な力で黒岩の拘束を降り解き、そのまま彼を殴り飛ばす。

 

「化物が…!」

致命傷とまでは行かないものの、胸部に多大なダメージを受け血反吐を吐く。

数え切れない程の殺しをこなしてきた黒岩だったが、こんな不死身の化物は当然ながら初めてだった。

ふと脳裏に浮かぶ、「死」の一文字。

…俺はまた、一度目の死の時のように惨たらしく、そして無様に死ぬのか…

 

 

___いいや、死んでたまるか。

予選だか何だか知らないが、こんなふざけた化物なんぞに殺されてたまるか。

…どんな手を使ってでも、奴を絶対にぶっ殺す。

黒岩の中に再び、ドス黒い悪意が芽生えた時、ポケットの中の星晶石が一瞬、妖しく光った。

その光に導かれるかのように、黒岩はそれを手に取った。星晶石はいつの間にか、カードに変化していた。すかさずそれを手に取り突き出す。

 

瞬間、辺りは大きな光に包まれる。

光が消え去った後、そこには長身の男が一人。

首まで伸びている長髪に細く吊り上がった目、左眼には眼帯。細身の体ではありながらも、黒岩に只者ではないと感じさせる圧が、男にはあった。

だが、サーヴァントのなり損ないであり、本能や理性を持たないシャドウには通用しなかった。召喚されてから暫く棒立ちでいた男に、シャドウは容赦無く襲いかかる。

が_____

 

「邪魔臭ぇんだよ」

一瞬だった。

シャドウが反応する隙すら与えず、手に持っていた三日月のような刀で一閃する。

上半身と下半身を両断されたシャドウは、断末魔を上げる事すら叶わず、塵に帰った。

降りかかる火の粉を危なげなく払った彼はそのまま傍観者であった黒岩の方を向き、問いかける。

 

「テメェか?俺を呼び出したのは」

 

「そうだ。何か問題が?」

 

「…チッ、余計な茶々入れたやがって…

俺はやっと、願い通りに死ねたってのによぉ…!」

 

「フッ、折角呼び出されたってのに、面白い奴だ…お前、自殺志願者か?

そうだとしたら、とんでもないハズレくじを引いたもんだ」

 

「テメェ…何処まで俺をイラつかせる…」

 

___男の名は、ノイトラ・ジルガ。

かつて破面の精鋭部隊、十刃のNo.5を務めていた男。

戦闘狂でありながら、破面達に救いは無いと退廃的な考えを持つ彼は護廷十三隊・十一番隊隊長である更木剣八との果たし合いで斬られ、斃れる前に息絶える、という自分にとって理想的な死に様で一度目の人生を終えていた。

 

自分の納得の行く死に方を果たしたノイトラにとって、聖杯戦争に召喚される事それ自体が侮辱に値する行為だったのだ。

 

「なんなら、憂さ晴らしにテメェを斬っても良いんだぜ?さっきの奴よりは、斬り応えがありそうだ」

 

「血の気の多い野郎だな…かかって来いよ」

もはや場は一触即発。

主従同士の争いが始まろうとした、その時だった。

 

「____そこまでだ」

黒岩にとって、聞き覚えのある声が聞こえて来た。

先程シャドウに襲われた時、何処かから自分に語り掛けていた正体不明の男…

 

「今君達が闘っても、双方に得がない。

それに黒岩満。お前は聖杯戦争のルールを把握していない筈だ。私から教えてやろう。」

言葉と同時に、2人は教会に転送される。

 

「自己紹介が遅れたな。私の名は言峰綺礼だ。この聖杯戦争の監督役をしている。まずはそこに座ってくれ、話をしよう。」

言われた通りに席に着くと、言峰は聖杯戦争の説明をゆっくりと始めた。

30分程経った後だろうか。一通り話を聞いた2人は暫しの沈黙の後、黒岩が口を開く。

 

「成る程な…おい、セイバー。一つ提案がある。お前が俺に従うんだったら、俺の考えつく手段全てを使って他の主従どもを探し続けてやる。可能な限り、令呪でのサポートもしてやる。そうすれば俺はお前が主従を殺す度、聖杯に近づけるし、お前は俺が主従を見つける度、戦いを思う存分楽しめる。要するに、利害の一致って奴だ。」

 

「………」

 

「どうせ俺も一度は死んだ身。だが、それでも聖杯の力は俺にとって魅力的だ。

それに、サーヴァントと戦い続ければお前の理想とする死も、もう一度味わえるんじゃねぇのか?」

 

「何処までも気に食わねえ野郎だ…

だが、お前の言ってる事も癪だが一理ある。

もう一度あの時のような戦いができるってんなら、テメェの令呪が切れるまでは付き合ってやるよ。だが、令呪が無くなったその時は…せいぜい覚悟しとけ。」

 

「あぁ。精々気をつけといてやるよ、セイバー。」

言峰の説明と黒岩の提案を受け、ある程度の納得をしたノイトラは、一時的にではあるがマスターに付き従っていくと決めたのだった。

 

「さて、説明が終わったなら俺は行かせてもらうぞ、神父さん。

これから、自分の目で見て色々確認しなきゃならな山程あるからな…丁寧な説明、どうも。」

 

「あぁ、君達の運命もしっかりと見届けさせてもらおう…」

最後に簡単な挨拶を交わすと、黒岩は自らのロールである警視庁へと、歩みを進め始めた…

 

 

 

【サーヴァント】

 

【CLASS】

セイバー

 

【真名】

ノイトラ・ジルガ

 

【出典】

BLEACH

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力:B 耐久:A + 敏捷:B 魔力:D 幸運:D 宝具:C

 

【属性】

混沌:悪

 

【クラス別能力】

対魔力:C

 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。

 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

 

騎乗:D

 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

 

【保有スキル】

戦闘続行:B

 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

 

破面(十刃):B

虚の仮面を外し、死神の力を手に入れた者。十刃はその中でも特に優れた上位10名である。

己の力を封印した斬魄刀やそれを解放する帰刃に始め、霊圧をビームにして放つ虚閃(セロ)や霊圧の密度が高いほど強靭な皮膚となる鋼皮(イエロ)、死神の瞬歩のような高速移動を可能とする響転(ソニード)などがあるが、セイバーは特に鋼皮の硬度が破面の中でも飛び抜けて頑丈であり、これにより非常に高い耐久性を誇っている。

 

【宝具】

『聖哭螳蜋(サンタテレサ)』

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:_ 最大捕捉:1

「祈れ」の解号で斬魄刀に封じられた力を解放する。

頭部には三日月のような角が生え、仮面の名残の歯は牙のように尖り、腕は昆虫のような外骨格に覆われ最大6本まで増える。さらにこの宝具を使用した際、単純な肉体の増強に加えセイバーに蓄積されたダメージが殆ど癒え、瀕死の状況から更なる戦闘の続行を可能とする。

 

【weapon】三日月のような形をした斬魄刀。第一宝具を解放すると形が鎌に変わり、4本に増える。

 

【人物背景】十刃と呼ばれる破面の中のエリートの中のエリートでNo.5の地位にある。

が、自身は最強であると主張しており、ハリベルやウルキオラなど格上相手にも噛み付く性格。

また、弱い相手は殺す価値無しという考え方の持ち主で、どんな卑怯・非道な手段も平気で行う。

外見は吊り上がった目に眼帯をした長髪で長身痩躯の男。

円形の巨大な襟や輪を繋げた鎖状のアクセサリーを着用する。

虚の孔は左目。眼帯の下には同じく眼帯状の仮面の名残があり、孔の周りには歯が並んでいる。

また、舌には階級を表す「5」の数字が記されている。

三日月型の刃を二つ合わせ8の字のようにした大鎌状の斬魄刀を使う。

石突きにはフラフープ大のリングが鎖状に連なっており、これを持って鎌を投げ飛ばして攻撃したり、鎌を敵に引っ掛けて引きずり回すなどの用途に使用できる。

表皮を硬質化させる能力「鋼皮(イエロ)」は破面の中でも飛び抜けて頑丈であり、

本人曰く「俺の鋼皮は歴代全十刃最高硬度」

「虚閃(セロ)」は舌の先端から放つ。

かつては第8十刃(オクターバ・エスパーダ)

当時第3十刃(トレス・エスパーダ)だったネリエル・トゥ・オーデルシュヴァンクを敵視し、ザエルアポロ・グランツと共謀し彼女を罠にはめ従属官もろとも放逐した。

虚や破面を「救われない存在」と絶望しており、戦いの中で倒れる事を望んでいた。

 

【サーヴァントとしての願い】なし。戦争自体を楽しみ、そこで再び死に場所を見つける。

 

【方針】他主従捜索はマスターに任せ、自分は戦闘の事のみを考える。

 

 

【マスター】黒岩満

 

【出典】JUDGE EYES:死神の遺言

 

【性別】男

 

【能力・技能】卓越した殺しの技術に、殺人に一切の躊躇を抱かない異常性。また体術も非常に優れており、ヤクザである松金組の組員大勢を一人で大量に殺害したり、背後から近づく刺客3人を返り討ちにする等、作品内でもトップクラスの実力を持つ。

 

【weapon】スーツに仕込んだ特殊警棒、銃。

追い詰められた時の奥の手としてドーピング剤も所持している。

 

【人物背景】神室署組織犯罪対策課の刑事で、常に高い検挙率を誇る敏腕刑事。

しかしその裏ではとある事件の影で暗躍する殺し屋「モグラ」として数多の人間を殺してきた男。基本的に主人公である八神に対しては常に傲岸不遜な態度を取り続けるので、プレイヤーからも「嫌味な奴だ」と思われる事必至。一貫して悪役ムーブを取り続ける上、作中でも自身の目的や信念などが最後まで明かされないままなので、ある種の不気味さすら感じさせるキャラである。

 

【マスターとしての願い】現世に蘇り、自分を追い詰めた人間を全員始末する。

 

【方針】基本的にはロールの立場を利用して主従を探し回る。見つけ次第、セイバーと共に殺しに向かう。

 

【ロール】警視庁組織犯罪対策課 刑事。

 

【令呪の形・位置】二の腕。

模様は血濡れの拳のような形。

 

【把握媒体】Youtubeにプレイ動画、実況動画が上がっています。

また、名前で調べると彼を詳しく解説した記事などが出てきます。

 



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【オープニング】
No.000 聖杯戦争、開幕 全キャラクター


登場キャラクター
全キャラクター

場所
心の中
教会
ビッグアイ屋上
特別捜査官ルーム

時間
未明(午前零時)

作者
yu sato


 あなたは唐突に中空に浮かんでいた。

 そこは、まるで小惑星帯のように星々が動き、またぶつかり合っている宇宙空間のようだ。

 周囲を見渡すと、銀髪の青年が目の前に立っていることに気づいた。

「やあ。この地に最後まで残ったマスター」

 青年は柔らかい物腰で語り掛ける。

「改めて自己紹介しておこう。僕はこの聖杯戦争を司る裁定者、ルーラーのサーヴァント『アルヴィース』だ。

 聖杯戦争の本選開始まで、後1時間も無い。そこで君に質問をしよう。君が抱くのが『できれば叶えたい』という程度の願いならば、これ以上は止めておくことをお勧めするよ。

 今なら僕に与えられた令呪で、瞬時に君を元の世界へ帰還させる事が出来る。どうだい?」

 あなたは言葉を発さないことで、帰還の意思がないことを示した。

「帰る気は無いようだね。では、質問をもう一つしよう」

 アルヴィースは指を一本立てた。

「『この聖杯戦争は聖杯のあるべき場所『楽園』に辿り着く者が既に確定している。そして、それは君ではない』」

 その言葉をアルヴィースが口にした瞬間、あなたの頭の中を何かが通り抜けた。彼の言ったことは真実であると思うようになった。

「そう知ったとしても、君は戦えるかい? 奇跡に手を伸ばせるのかい?」

 聖杯を手に入れるのは自分ではない。そう悟ったあなたの返答は――

 

『そうだとしても、確定した未来の後は白紙でしょ? 勝者の横からぶん殴って聖杯を手に入れられる可能性がある以上、未来が決まっていても、まだ現在を変える余地があるなら私は決してあきらめないわ』

『だったらそいつが聖杯にたどり着く道を探り、横から令呪をかっさらって私が願いを叶える』

『ボクは別に人を殺してまで聖杯を手に入れる気はないよ。でも最後のマスターがどんな願いを叶えるのか見届けたい』

『辿り着く者が決まっていたとしても、その後聖杯を手に入れるとは限りません。あなたが測定した未来でも現在を変える権利は今を生きる僕たちにあり、そして聖杯を手に入れるのは僕です』

『なら、俺とその一人が生き残った時点で、そいつを死ぬ方がマシな状態まで追い詰め俺の願いを叶えさせればいい』

『私は! そんなこと信じない! 私は聖杯を手に入れて過去をやり直す!』

『波紋の催眠術みてーなこと使って言われても信じられねーな。それに俺は黒幕をぶちのめすのが目的なんだ。聖杯は悪人の手に渡らなければそれでいい』

『聖杯を一目見ようとは思うが、僕はそこまで執着していない。あなたを倒すのは僕の目的の一つだ。特にスタンド能力のようなものを使い、意志を無理やり押し付ける相手は』

『それがあなたの未来予測だとしても、私は聖杯を求めるわ。諦めるよりやって後悔した方がいいもの』

『私は聖杯に叶えるべき願いはありません。ですが最後の一人が私欲で世界に悪意をもたらすのならば、それを止めます』

『……その言葉が真実だとしても、俺は友に会いに行く。絶対に』

『僕は聖杯にたどり着く結果より、そこまでの過程で何を信じたくて、何を願いたいかを知りたい。だから手に入らないとしても戦う』

『そいつがマスター全員を殺しつくした上でたどり着くのなら、そいつの願いと造る世界はさぞ醜いものだろう。俺が手に入れなくても人間は皆必要なら誰でも殺すことが示されればそれでいい』

『なんでそんなこと言うの? ぼくは家族のために、ポーキーにむちゃくちゃにされた世界をなおすために聖杯を使いたいのに。その思いはアルヴィースに聖杯に行けないと言われても変わらないよ』

『それならそのたどり着く人の首にかぶりついて、無理やり私の願いを叶えさせるわ』

『私は……聖杯を手に入れる。そのためならそのたどり着く人が聖杯に向かう途中でその人を殺してでも聖杯にたどり着く』

『貴方は高天原と同じで価値を決める意志がない。ならば私が聖杯とその担い手を見極めましょう。遥かな過去、聖杯と似た力を持つ矛を奪い取った者として』

『もし聖杯が手に入らなくても、私が先輩を殺しさえしなければそれでいいんです』

『……もうあたしに戻る道はねえ。戻っても行っても死ぬのなら戦って死ぬ』

『不可能だとしても最後まで戦う。元々俺は国を相手にしてきたんだ。今更言葉一つで決意が変わりはしない』

『あんたも"大赦"と同じよ。いいように人を操ろうとするそんな奴のいう事なんて信じられないわ。私は絶対に聖杯を手に入れる!』

『それでも俺は最後まであきらめずに戦い、生きるよ』

『『もし人が私に繋がっており、また私がその人と繋がっておれば、その人は実を豊かに結ぶようになる』。私が聖杯に到達できなくとも『人はなぜ出会うのか?』。その「答え」を知る者が現れればいい』

『洗脳など私にとっては無意味だ。聖杯を手に入れるのは私以外にいない』

『とーぜん! だってあたいはサイキョーなんだから!』

『私じゃなければエミリコが手に入れる可能性もあるってことね。たとえ私が死んでもエミリコは必ず元の世界に戻して、あの忌まわしいおじい様を倒してみせるわ』

『その辿りつく者ってのは『主催者』か『黒幕』の事じゃねえのか? もしくは辿り着いたヤツをそいつらが利用するとか。どっちにしても聖杯に繋がる道を見つけ裏から操ってる黒幕野郎をブチのめしてみせるぜ』

『それなら『前』みたいに辿り着く道を探って横からそいつを殺すだけよ』

『俺は俺が聖杯にたどり着けなくても、戦いを止めるため、人を救うため戦うだけだ』

『私はまだ聖杯が何なのかも、どう願いを叶えるのかもわからない。だけどお前の言うことが本当だとしても、私は私を取り戻すために戦う』

『それでも例えばマスターみんなでそこに行きさえすれば、誰が本当にたどり着く人間かなんてわからなくなっちゃうでしょ? 私はそのために戦うわ』

 

「君の『覚悟』は受け取った。その意志が強く保たれん事を」

 あなたとアルヴィースの距離が離れてゆき、小惑星帯のような景色は暗闇に塗りつぶされていった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 教会内で言峰綺礼とDIOがそれぞれ手を後ろに、前に組んで空中投影パネルの前に立つ。

 カウントタイマーが00:00:00:00になった瞬間、パネルにマスターの名前とサーヴァントが並んで表示された。

 

01.マスター:遠坂凛                     サーヴァント:セイバー

02.マスター:巴あや                     サーヴァント:セイバー

03.マスター:ユウキ                     サーヴァント:セイバー

04.マスター:レオナルド・ビスタリオ・ハーヴェイ       サーヴァント:セイバー

05.マスター:黒岩満                     サーヴァント:セイバー

06.マスター:二階堂ルイ                   サーヴァント:アーチャー

07.マスター:ジョセフ・ジョースター             サーヴァント:アーチャー

08.マスター:パンナコッタ・フーゴ                サーヴァント:アーチャー

09.マスター:朝倉涼子                    サーヴァント:ランサー

10.マスター:胡蝶カナエ                   サーヴァント:ランサー

11.マスター:静寂なるハルゲント               サーヴァント:ランサー

12.マスター:吉野順平                    サーヴァント:ライダー

13.マスター:尾形百之助                   サーヴァント:ライダー

14.マスター:クラウス                    サーヴァント:ライダー

15.マスター:エスター・コールマン              サーヴァント:キャスター

16.マスター:新条アカネ                   サーヴァント:キャスター

17.マスター:日瑠子                     サーヴァント:キャスター

18.マスター:間桐桜                     サーヴァント:キャスター

19.マスター:佐倉杏子                    サーヴァント:キャスター

20.マスター:キロランケ                   サーヴァント:アサシン

21.マスター:犬吠埼風                    サーヴァント:アサシン

22.マスター:千翼                      サーヴァント:アサシン

23.マスター:エンリコ・プッチ                サーヴァント:アサシン

24.マスター:ザキラ                     サーヴァント:バーサーカー

25.マスター:チルノ                     サーヴァント:バーサーカー

26.マスター:ケイト・シャドー/エミリコ           サーヴァント:バーサーカー

27.マスター:エドワード・エルリック             サーヴァント:バーサーカー

28.マスター:和田垣さくら                  サーヴァント:アヴェンジャー

29.マスター:衛宮士郎                    サーヴァント:アルターエゴ

30.マスター:小蝶辺明日子(■■▪■)              サーヴァント:アルターエゴ

31.マスター:イリヤスフィール・フォン・アインツベルン    サーヴァント:ブレイド

 

XX.マスター:ミザリィ                    サーヴァント:アヴェンジャー、フォーリナー

 

「ミザリィを除いた全マスターの端末に回線を接続」

 綺礼が口を開く。

「只今を以って聖杯戦争の本戦開始を宣言する。これより各自元の世界に戻るための扉は消え去り、聖杯を手に入れ帰還できるのはただ一人となった。

 その事実を認識し、皆存分に殺し合い給え。そして汝自身を以って最強を証明せよ。

 されば『天の聖杯』は勝者の元にもたらされん」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 ビッグアイ屋上。

 真下で正月のパレードが行進している中、ガラクシアはそれを怒りの念を込めて睨みつけた。

「憎み、恨み、叫び、吠え、全ての者に何物とも知れぬ怒りを抱いてきた同志たちよ」

 ガラクシアは高らかに宣言する。

「時は満ちた。今こそ、我らガラクシアの底無き憎悪を存分に叩きつける時だ!」

 ガラクシアの胴体から機械の部品が作り出され、一つの何かが構築されようとしている。

 出来上がっていく形は、巨大な爆弾だ。

 完成した瞬間、ガラクシアはためらいなく起爆。轟音が鳴り響き、爆風が夜空を赤く染めた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 物質転換炉、特別捜査官ルームにてオペレーターが叫んだ。

「『ビッグアイ』屋上で大規模な爆発が確認されました!」

「録画をズームして爆発の対象を確認」

 動揺するオペレーターに対し、冷静にアルヴィースは指示を下す。

「これは……女性です! 女性が爆弾に体を変換しているようです!」

「顔認証システムで全ての監視カメラから同一人物をチェック」

 意図が分からないままオペレーターは指示に従い検索を始めた。

「確認できました。対象一致者はB-1地区『Eアイランド』内、D-2地区『ラストアンコール』屋上。D-5地区タウンゼン街、C-6地区ティア―ブリッジ1のケーブル上です。

 その全てが、10名以上の武装した人間を連れています」

「起動兵を随伴した防衛隊を出動。武装した人間共々テロリストグループ「ガラクシア」として処理。抵抗するなら射殺も許可」

「了解しました」

 驚きを隠せないルーム内のメンバーはアルヴィースに尋ねた。

「捜査官……あれは我々にとって未知の起動兵なのでしょうか……。自我を持つ起動兵は我々も所持していますが」

「あれは憤怒と憎悪の結晶だ。これが未知というならこれから先僕たちはさらに未知なる異変を目撃することになる」

 そう言ってアルヴィースはモニターに目を向けた。

「これで全ては始まった。これからは君たちマスターが未来を、世界を創るんだ。

 叶うならば、停滞と閉塞の未来ではないことを」

 アルヴィースは誰にも聞こえぬ小声で呟く。かつて自身が見届けた『二つ』の『世界創造』を思い起こして。

 

 

 ――――聖杯戦争、開幕――――



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一日目 未明
001 温夜 吉野順平&ライダー(五代雄介) 胡蝶カナエ&ランサー(アラ・ハーン) 巴あや&セイバー(ジークフリート)


登場キャラクター
吉野順平&ライダー(五代雄介)
胡蝶カナエ&ランサー(アラ・ハーン)
巴あや&セイバー(ジークフリート)

場所
B-4(ショッピングセンター周辺)
B-4(アカデミー近隣商業地)

時間
未明

作者
◆K2cqSEb6HU


 それは、まだ一ヶ月程前。

吉野順平と胡蝶カナエが事前に同盟を組んでから、しばらく経過した時のことであった。

時刻は夕暮れ前、人気のない月海原学園の屋上のテーブル席に二人は座っていた。

 

「…………胡蝶さんは。」

 

 言葉を切り出したのは、順平だった。

 

「何のために戦うんですか?」

 

 聖杯戦争に掛ける思いを聞いた。

順平も知っている。カナエの洗練された身動きや、戦いによって死んだという過去を。

だから、彼女ならこれから先も戦い抜くことはできると思った。

 

「この世界で生きる人達を守るため。」

 

 それに対してカナエも言葉を発する。

 

「理不尽に命を奪われ、哀しむ人を生まないために戦うの。そのためなら命は惜しまないわ。」

 

 それが、彼女の"信念"だと順平も思った。

自分と同じく、死んでから来たというなのに、彼女は前向きに生きている。

そして、"すべきこと"、"信じること"、"願うこと"。自分にないものが彼女には備わっていた。

 

「……自分のために使おう、って思わないんですか?

与えられた命を、次は自分のために活かそうとは……。」

 

 順平も、思わず口を開いていた。

"自分のために~"と思うことは人間として珍しくはない。

ただ、その人間として珍しくはないものでもいいから、順平も聴きたかった。

どこか、参考にしたいという意思があるからなのかもしれない。

 

「思わないかな。」

 

 迷いなく返ってきたのは、強い意志によるハッキリとした否定だった。

 

「だって、同じ思いをさせたくないもの。"大切な人を失う"って思いをこの世界の人達に。」

 

 儚げな表情ながら、カナエは目的の真意を明かした。

 

(大切な人を失う……。)

 

 順平も、深く心動かされるものがあった。

自分も大切な人を殺されたからわかる。失った者が持つ"憎悪"。

だからか、その思いを他人にもさせたくない、という善意には共感する。

 

 ただ、一方で他人の死について、未だ何も思う所はない。

人間の醜悪さを忘れていないからこそ、命への関心が芽生えないでいる。

だからか、カナエの"生きる人達を守る"という思い自体には共感できなかった。

 

「順平君。貴方はこれからどうするつもりなの?」

 

 カナエも順平に対し、無垢に問い掛ける。

そこに他意はなく、ただ知りたいという思いであった。

 

「……わかりません。」

 

 言葉を詰まりながらも、順平は返す。

 

「まだ決まらないんです。自分がどうしていこうかさえ……。」

 

 言葉通りの意味で、今の順平には「何」も思いつかなかった。

"何を信じるか"、"何を願うべきか"、それを探すという目的はあるが、

まずそのために考える、"これからどうするか"、というスタートラインは未だに立っていない。

順平も戦争事に疎い一般人だけあるので、お手上げ状態であったのだ。

 

「ねぇ、順平君。」

 

 カナエは机に一枚のコインを置いた。

表面には"表"、裏面には"裏"と分かりやすく描かれたコイン。

突然、目の前に置かれたことに順平も意味がわからなかった。

 

「この硬貨を投げて決めない?」

「…………は?」

「表が出たら、"はい"。裏が出たら、"いいえ"。で決めるのよ?」

 

 "それは知っている"、と内心ツッコミを入れる順平。

要するに、"コイントスをするように気軽さで物事を決めろ"という意味がわかった。

 

「適当ですね……。」

「あら、適当でもいいじゃない?きっかけさえあれば人の心は花開くわ。」

 

 ポジティブというのか、能天気なというのかと、順平も呆気に取られる。

 

「まずは、"今どうするか"を決めましょう?」

「……い、いや……。」

「そんなに重く考えなくていいじゃない。ほら!」

 

 そう言って、カナエはコインを取ると、順平に手渡した。

 

「…………。」

 

 受け取ったコインを見て、困惑の表情を浮かべる順平。

当のカナエの方を振り向くと、"ニコニコ"と言わんばかりの純粋の笑みを浮かべ、待っている。

 

「…………じゃあ。」

 

 話の進みようがない、と観念したからか、順平も提案することとした。

 

「表が出たら……「僕達が胡蝶さんに協力する」ということでどうですか。」

 

 答えはあまり期待せず、カナエに伝えた。

あくまで今の関係は、カナエ側からの申し出で同盟が組まれただけであり、正式な関係ではない。

だから、正式な関係になるというだけでも、何の目的も決められないままの順平からすれば、進展のある内容だった。

 

「ええ!それがいいわ!それにしましょう!」

 

 "パーッ"と言わんばかりの天真爛漫な表情をカナエは向ける。

順平もそうしたカナエの人柄あってか、表情も思わず緩みかけていた。

 

 

 特に何も考えることなく、順平もコインを上に弾く。

 

 

 テーブルに落ちたコインは、"表"だった。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 時刻は0:10。聖杯戦争が本格的に始まって間もない頃。

 場所は、センターロード街からマークライト街へと流れるB-4の4車線道路。

 

 

 五代雄介と吉野順平を乗せたバイクが、颯爽と駆け抜けていた。

バイクはパンペーラモデル。異なるデザインだが、ビートチェイサー2000の面影を持つバイク。

最高時速も420㎞。五代のオーダーにより、ゴウラムとの融合合体を前提とした仕様。

 

 

 彼らが走る目的は、同盟相手との合流であった。

 

 

 "胡蝶カナエ"。

ロール上、同じ月海原学園の学生である縁から同盟を組んだ相手の一人。

彼女は順平にとって不安しかない学生生活の中で、初めてフレンドリーに接してくれた相手だった。

天真爛漫ともいうべき裏表の無い彼女の人柄に、順平も次第に信頼を抱き、同盟を組む。

 

 

 五代は走りながらも警戒を怠ってはいなかった。

スクール街ではロールとして利用する勢力が多かったことは、五代達も知っている。

見知らぬアカデミーの相手からはさることながら、見知った月海原の相手からも狙われるリスクは大いにある。

 

 

 バイクは第二走行車線を走り、やがて、交差点に差し掛かる。

現在の走行時速は80km。一般道を安全に駆ける速度としては平準的な速度。

遠方で見える信号は赤を告げている……と、五代が見上げた時であった。

信号よりも目前の頭上。道路照明灯の光を浴びる歩道橋。

竹刀袋を背負った顔見知りの少女が一人、その場に待ち構えていた。

 

 

 "巴あや"。

実質上休戦状態にあった月海原の環境下でも、周囲に最も強い戦意を向けていた陣営。

順平も彼女を理解していた。その根底にあるのは、他者への"無関心"であることを。

ただ戦争だから勝つための戦うのであり、個人的な悪意の類は順平にも感じられなかったのだ。

五代も、巴あやに対し、"戦わなきゃならないかもしれない"、と諦めの見解であった。

 

 

 位置は五代が通る車線の真上、橋には彼女と霊体の敵セイバーだけが唯一居る。

臨戦態勢。敵セイバーは大剣を抜き、迫るバイクとの距離を見据えて待っていた。

 

 

 

 

 五代の腰に、ベルトが出現する。 

 

「────変身!!」

 

 剣士には剣士の得物があるというならば、騎兵には騎兵の得物がある。

浸透した掛け声とポーズが霊基に流れる神経を呼び覚まし、五代の身体に生体パーツが纏われる。

赤色の装甲、黒の強化皮膚、そして、二本の金角を象徴とした赤い複眼の仮面。

 

 

 その名は、"仮面ライダークウガ"。五代を象徴とする戦士の姿であった。

 

 

 変身した鎧姿に、ジークフリートも認識を改めた。

タンデムの構えで付いていた順平も、遅れて状況を理解した。

 

「うわっ!」

 

 バイクの急加速を体に受け、思わず狼狽える順平。

性能を存分に活かした爆発的な加速により、スピードは一気に上昇する。

敵セイバーの攻撃を受けるよりも先に、歩道橋を通り過ぎる。それが狙いであった。

 

 

 当然、行く手は阻まれる。

ジークフリートが、霊体化を解き、姿を見せたのはバイクの頭上。

下降に伴い、両手で大剣を振り落とさんとする構えで出現した。

 

 

 

  ────信号が、赤から青に変わる。

 

 

 

 五代が取ったのは車体を左傾、第一走行車線への車線変更。

行動は五代の方が早かった。直前の進路変更を仕掛け、攻撃から逃れた。

 

「っ!」

 

 即座、翻してより振るわれるジークフリートの追撃。

大剣の横斬りから放たれた衝撃波が、飛び道具として迫る。

 サイドミラーで察知する五代、車体は第二走行車線への進路変更。

着地点の道路には、切り裂かれていた跡だけが残った。

 

 

 バイクは構うことなく、疾駆する。

青信号を直進で通過し、高速で走り去っていく五代達。

後ろ姿は遠くになっていき、ジークフリートでも追えない距離にまで放してしまった。

 

 

 

 

 ジークフリートも、即座に追走する迂闊な選択は取らない。

無表情のまま、自分のマスターが居る頭上を向き、次の判断を仰いだ。

 

「回り込むぞ。」

 

 命令を聞き取り、了承の合図に頷くジークフリード。

人間よりも超越した跳躍運動、元居た歩道橋まで飛び乗った。

あやも去ろうと行動しかけたが、動くよりも早い手際に、あやが御姫様抱っこで持ち上げられる。

 

「…………おい。」

「すまない。……だが、この方が早い。」

 

 反対の意見を待たずして、セイバーは飛び降り、迂回ルートを突き進んでいった。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

「────大変です!順平さん達が巴あやとの陣営と交戦を!」

「!」

 

 目的地に向け、疾走している胡蝶カナエとアラ・ハーン。

アラの気配感知により、数km先で交戦があったことは捉えられた。

 

「順平君達は無事?」

「無事のようです。今も目的地に向け、逃走を続けています。」

 

 足を止めることなく、冷静に状況把握を取る。

順平達が無事で何よりでもあるが、同時に切り抜けられたのも幸いであった。

その場で戦いに発展して、一般人が居合わせる事態になるのは好ましくないからだ。

カナエは聞くままに背負う竹刀袋から日輪刀を取り出して、腰に携える。

 

「急ぎましょう。あそこに行くまで、そう距離はない筈よ。」

「はい!」

 

 現在地は目的地を挟み、順平達やあや達から反対側の位置。

辿り着くまで合流できる地点はなし。どれだけ早く、集合できるかの問題。

着ける距離は、十数分程度。先に辿り着くのは、順平陣営とあや陣営と思われた。

 

 ライダーの能力はまだよく知らないが、敵サーヴァントから順平を守ることはできると信じていた。

だが、敵も生半可な相手ではなく、二人を相手にして、順平を守り切るとすれば流石に分が悪い。

それまで、どれだけ順平が持ち堪えられるものか……。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 ……と、その時。

 

遥か後方より響き渡る、大気の振動が各主従の耳に入った。

 

 

===========

 

 

「……!?」

「……!?」

 

 カナエとアラは衝撃のあった後ろを咄嗟に振り向く。

方角はビッグアイ。視界に映った遠景は、燃立つ屋上であった。

 

 

===========

 

「…………。」

「…………。」

 

 あやとジークフリートも走りながら、ビッグアイの火を一瞥した。

だが、関心があったのはそれまで。我関せずとばかりに、戦闘へ戻る。

 

===========

 

「ば、爆発が……?」

「…………。」

 

 五代達も爆発の光景を遠望することになる。

バイクは徐々にスピードを緩めながらも、目的地周辺にまで辿り着く。

 

===========

 

 

 前触れもなく、引き起ったアクシデント。

今は戦いに専念するため、全員の認識は一先ず後に持ち越されていく。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 各所の街灯が、街の夜陰を照らしていた。

 

 

 そこは隣接する商業施設に、囲まれる形で設けられていた駐車場。

市内でも数件は展開されている、ネイバーフッド型のショッピングセンターであった。

場所はバイクが走行する車道に面しており、彼らはここを合流地点としていた。

 

 

 幸いなことに、この施設の警備は、基本的には遠隔監視体制。

警備員といったNPC達がその場に居ないことは事前調査で把握している。

待機している警備員も駆け付けるとしても、ある程度の時間が経過した後の事である。

 

 

 

 駐車場へ侵入した五代達のバイク。

五代がカート置き場を囲むガードパイプを一瞥すると、五代もバイクを停車させた。

 

 

 

 慌てながら降りる順平と、続いて冷静な反応で降りるクウガの五代。

順平がヘルメットを外すと適当な場所に置く合間、五代はガードパイプに近寄り、締度を視ていた。

 

「…………。」

 

 少々荒事になるが、問題はない……と判断した。

五代は息と体勢を整え、目線はガードパイプを捉えた。

 

「……ハァッ!」

「!?」

 

 次の瞬間、五代は三段目のパイプを蹴り上げた。金具を破れ、強引に外れる。

順平も突然の行動に振り向き、行動の意図が理解が出来ずに面を食ってしまう。

五代は落下するガードパイプを掴み取ると、熟練した技術で巧に振り回した。

 

「超変身!」

 

 クウガの装甲と目、バックルのアマダムが、赤色から青色に変色した。

その名は、"ドラゴンフォーム"。4つもあるクウガの基本戦闘形態の一種。

振り回したガードパイプが一本のロッドへと変わり、両端が伸縮した。

 

(い、色が変わ……!?)

 

 さらにクウガの全身に走る稲妻。

 

 アマダムの色は、金色に。そして、ベルトに金色のアーマーが纏わる。

体の所々が、金の装飾に変わる。ロッドにも、両先端に備わる金の双刃。

"ライジングドラゴンフォーム"。クウガを1段階上昇させた強化形態"ライジングフォーム"の一種。

 

(……こ、これが、"ライジングフォーム"……!?)

 

 初めて見ることとなったクウガの形態に、順平も目を見開く。

順平も"マイティフォーム"以外の存在は、頭にあっても目の当たりにした事はなかった。

 

 

 

 

 

 ────その時。

五代は、自分に向けて迫る疾風の存在に察知した。

 

「っ────!」

 

 ジークフリートの大剣による袈裟斬り。

五代も即座にロッドで剣を防ぎつつ、同時の後退によって躱す。

 

 

 

 

 

 ────だが、それは陽動であった。

 

「順平君後ろ!」

「────えっ?」

 

 順平の背後、一振りの刀があやの手より切って落とされた。

一閃は、順平の不意を突き、決着を付きかけようとしていた。

何も知らぬまま暗転を迎え、何も知らぬまま、順平も終わることになる。

 

 

 

 ────しかし、その刀は順平に届くことはなかった。

 

(……弾かれた!?)

 

 あやは驚愕した。

"そこには何も無い筈なのに"、何故か攻撃は防がれた。

遅れて気付いた順平も、反射的にあやから距離を取った。

 

 

 五代と順平の距離は間近とあった。

 

『……どうする?』

『どうする、って言ったとも……。』

『"退くこと"に専念するなら、凌げるかもしれない。

順平君がそれでいいと思うなら、俺は否定しないよ。』

 

 背向けながらも、五代と順平の間に念話を交わされる。

 

『……あのセイバーを相手にしても、ですか?』

『うん。』

『……無事でいられると思いますか?』

『いられないだろうね。流石に。』

 

 五代なりに、"苦戦はするが健闘する"、との意思を伝えた。

守るという考えにある以上、「敵前逃亡」という選択肢も強ち間違いなどではない。

少なくとも、順平以外の非力・非術な人物が対象なら、五代も迷うことなくその道を選ぶだろう。

 

 それでも敢えて聴いているのは、順平を「試している」からだ。

先程、順平の身に起きた現象の正体を五代は何であるか知っている。

技と順平自身を信じ、試練として見送ることもまた、順平の為の事。

だから、順平にも厳しい道を渡らせるべきかどうか、試しているのだ。

 

 また順平も、それは暗に"自分は重荷になってしまう"、と指していると気付く。

サーヴァント相手ならまだしも、マスターにまで守るとなれば、負担も大きくなる。

いくら合流するとはいえ、そうなってしまえば五代にも隙が生まれ、苦労を強いてしまう。

順平も、守ってもらう五代に対し、あまりに申し訳ない話と思った。

 

『……僕の事は……いいですから。』

 

  恐怖を堪えながらも、言葉が出る。

 

『ライダーは……セイバーをお願いします。』

 

 それは念話越しであるが、五代にも芯のある声に聞こえた。

覚悟は確かにない。……ただ、順平にも意地がある。

「せめて迷惑を掛けて、邪魔になることだけはしたくない」という意地があった。

出来ることさえやらないというのは、自分でも情けないと思ったから。

 

 だから、気を引き締めて、あやに視点を向ける。

 

『……わかった。』

 

 五代も、順平が持つ意志を感じ取った。

彼の判断を信用し、多くの言葉を交わすことなく、見送ることにした。

 

 

 

「「…………。」」

「「…………。」」

 

 

 

 ────凍てついた夜空の下。

 

 ────響くのは市街地を吹き抜ける風の音。

 

 ────向かいあう、二組の陣営。

 

 

 順平と五代は一斉に、それぞれ左右異なる方角に向けて駆けだす。

続けて、あやとジークフリートの二名も、マスターとサーヴァントの二手へ追った。

互いに距離を取り、互いの戦いには干渉しない。それが、この場の暗黙の了解となった。

 

 

 

 

 

 サーヴァントの戦い、マスターの戦い。

 

戦闘の構図は、二手に分断されることになった。

 

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 空間に轟くは、鉄と鉄が交わり合う音。

 

 

 攻めは、重厚の如き。剛の斬撃を振う、大剣。

 守りは、流水の如き。柔の払いで受け流す、ロッド。

 

 

 ジークフリートは耐久に比重を置いたセイバーでも平均のタイプ。

まず攻撃を真正面から受け入れ、筋力と敏捷を活かした攻撃を基本の戦法としている。

 

 ライジングドラゴンは筋力などは低い一方で、敏捷には特化したタイプ。

故に正面衝突では不利であると判断し、五代も受け流すことを主軸としながら攻撃を入れている。

 

 

 

「…………。」

 

 ジークフリートとしては、五代自身への敵意はなかった。

あやが望む優勝を聞き入れるため、必要な戦いが生まれることも道理として受け入れている。

そして、相対する敵ライダーを倒すことも、サーヴァントの義務であると認めている。

だが、この一ヶ月半弱で相手を知る内に、ライダー陣営が戦いを望んでいないことも察していた。

手を抜く気はないものの、そのような相手と戦うのはさほど本意ではなかったのだ。

 

「っ…………。」

 

 五代としても、ジークフリートへの敵意はなかった。

順平を守ることに繋がるため、必要な戦いが生まれることも道理として受け入れている。

そして、好ましくないが暴力を振るい、時に倒さなければならないことも覚悟している。

だが、敵セイバーはこの戦いをあまり本意に感じていないことも、従う背景があることも察していた。

そうして、敵と和解できない状況を惜しみながらも、五代も戦いに力を尽くしていた。

 

 

 

 交わり合いが進むにつれ、互いに"違和感"を覚え始めた。

 

 

(やっぱり、どこにも攻撃が効いてないな……。)

 

 五代は、あらゆる箇所に攻撃を入れ、効果を模索し続けていた。

しかし、五代の攻撃は、何をどこに入れても、依然として効果を感じられなかった。

五代の攻撃が全く通用しないほど、ジークフリートの防御力は異様に高い。

 

 

 だが、その異様さは普通の防御性によるものでないことも、五代もすぐに気付いた。

クウガにも堅牢な装甲で防ぐ"タイタンフォーム"はあり、また高い装甲を持つ相手との交戦も経験している。

故に五代も、「防御性の性質や効果」というものについては、かなり精通している方であった。

だが、これは違う。堅さ故に「衝撃が通らない」のではなく、「衝撃そのものが消えてしまう」のだ。

 

 

 その正体は、常時発動型の宝具、『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』。

悪竜ファヴニールの血を浴びてより不死身となった、ジークフリートを象徴する宝具の一つ。

Bランク以下の攻撃は、物理・魔術の性質に問わず全て無効化されてしまうのである。

一点の急所を除けば、全身が対象であり、隙の無い防御性が故に、五代の攻撃が通用しなかった。

 

 

(……やはり。当初の形態に比べると、魔力の質量は違う。)

 

 一方のジークフリートは、敵ライダーが言う"変身"というものに深慮していた。

変身時には赤色の装甲であった筈が、戦闘前には金の装飾が施された青色の装甲へと変化した点だ。

ジークフリートの目から見ても、装甲の質や魔力の量は明らかに増加していることがわかった。

そして、断定はできないが、性能面も恐らく、先の形態よりも向上していると見解を抱いた。

 

 

 さらに深く視ると、魔力炉に相当するベルトにあるのではないかと判断した。

そのものは敵ライダーの宝具、Aランクに匹敵するほどの神秘が秘められていることがわかる。

ジークフリートは推察した。宝具から現在に稼働している魔力はまだ数割にも満たないもの、と。

温存のために引き出していないか、あるいは制御されているために引き出せられないのかもしれないが、

全開にまで宝具が発揮された時、この戦士にとっての「究極」もあり得るだろうとして捉えていた。

 

 

 その正体は、アークルに埋め込まれている宝具、『希望の霊石(アマダム)』。

装着したベルトと同化してより戦士クウガへと変身した、五代の身に宿る宝具の一つ。

サーヴァントである現在に至り、仮面ライダークウガを成立させる核となるのが、この宝具であった。

 

 

 

 ジークフリートが放つ大振りな切り落としを、五代は後方への跳躍で躱す。

切り落としの体勢から即座に整えると、身体の向きを変え、ジークフリートも次の行動へ移る。

間合いを取る程の跳躍。最中、敵セイバーが次に取る行動の予兆を五代も捉えた。

 

 

 取った構えは、大剣の持ち手を換え、右手は柄頭にまで移すものだ。

それはつまり、"打突"。"剣を押し出して突く"為に取る構えにあった。

だが、脚部はこれから踏み込む構えではない。……むしろ、"不動"。足を支えに地に着く構えだ。

実際、数mもの間が生じる。その中で動かぬ行動を取るには、一見は不可解な行動に思えた。

 

 

 しかし、ジークフリートの大剣は、五代の"射線上"を確かに捉えていた。

 

「────っ!」

 

 五代が着地したタイミングと同時であった。

急速に纏わった魔力の波動が、打突と共に放たれた。

ジークフリートの狙いは、"射撃"。五代も、思わず不意を突かれてしまった。

迫り来る波動は疾い。回避するのは困難を極めると、五代も一瞬でそう判断した。

 

「超変身!!」

 

 五代が選択したのは、"変身"であった。

クウガのアークルから、稲妻が再度全身を駆け巡る。

着地の立ち上がり様に取った構えは、"胸を大きく開いて受け止める"であった。

すぐさま波動は五代を直撃し、一面は波動の光に包まれた。

 

「……!」

 

 波動の光が消えた時、クウガは変身を完了していた。

アーマーは肩にまでが備わり、装甲も金の装飾が施された紫色。

まともに受けたというのに関わらず、装甲には傷一つなく、堅牢さを体現していた。

 

 

 "ライジングタイタンフォーム"。

防御力に優れたタイタンを強化したライジングフォーム。

その装甲は、より頑丈、より強靭となり。生半可な撃で損なわれるものではない。

 

 

 五代がロッドの持ち手を変えると、今度は金の刃が付いたソードへ変化。

ジークフリートも自らの武器となる物を自在に変えられる能力があると気付いた。

 

(……なるほど。)

 

 三度に渡る形態変化に、ジークフリートも改めて納得する。

 

(状況に応じ、適用した形態に変化する汎用性……。

それこそが、彼の長所と言えるのだろう。)

 

 状況によって特性を変化し、状況に適応する汎用性。

その自在さこそが、敵ライダーが持つ長所なのだと理解を示した。

 

 

 ジークフリートは、敵ライダーについて思う。

"彼はこの力で、多くの敵との交戦を経験したのだろう"。

"先程まで相対した槍捌きからは、蓄積された経験や熟練した技術が感じられた"。

"恐らく、これが剣になったとしても、彼の経験や技が劣ることはない筈"……と。

 

 

 

 

 

 その時、状況は一転する。

 

「ライダーさん!!」

「!」

「……!」

 

 屋根より聞こえる、新手の呼び声。

声の主は同盟側のサーヴァント、アラ・ハーンのものであった。

それはつまり、カナエ陣営がこの場に合流したということ。

何十合にも渡る両者の剣戟は、遠に十数分は経過をしたのである。

 

 

 清静とした動作で地に着き、刹那の疾駆で間合いにまで立つ。

得物となる長柄刀は瞬時に繰り出され、戦闘体勢に入っていた。

しかし、当のアラとしては、その戦いが気が進まないような表情であった。

 

「……二体一は卑怯かもしれませんが。ご容赦ください。」

「卑怯?それは違うぞ、ランサー。」

 

 アラの主張を受け、ジークフリートも思わず敵ながら諭す。

 

「時として二体一になることも戦いでは必然なことだ。何も君が気に病むことではない。」

 

 敵対関係にありながらも、穏やかな声色であった。

ジークフリートも、この展開になるであろうことは、戦う前から読んでいた。

それでも、不平などとは一切感じないし、戦いでは"やむを得ないこと"として見ている。

例え、何組が相手になろうとも構わず受け入れる。最初からその覚悟で望んでいたのである。

 

「それに、君が本当に卑怯だというのならば、今頃、マスターを狙っていただろう。

不意を突く真似をせず、真っ向から戦おうとする君の姿勢は、間違いなく高潔だ。」

 

 さらに言うと、戦いは初めての事だが、僅かな間にもジークフリートはアラの事を認めていた。

奇襲など容易い状況下にあったこの最中でも、正面から現れ、横槍を入れることもなかった。

その行動だけでも、ジークフリートの目には十分高潔であることが伝わっていた。

 

「……失礼しました。私の方が、無礼だったようです。」

 

 ジークフリートの言葉に、アラも自らの非を認めた。

このような高潔な武人を前にして真剣に戦わないのは、それこそ無礼に当たるものだ。

 

「全力でお相手願います。」

 

 アラは凛とした声色で、改めて構えを取る。

ジークフリートも「死力を尽くした戦い」になることを望まなかったわけでもない。

戦士として、やはり「強敵達と戦える」ことには強く惹かれるものなのである。

 

「……推して参る!」

 

 ジークフリートの掛け声が合図に、アラと五代も一斉に駆け出した。

新たなファームとサーヴァント参入、戦いは仕切り直され、二回戦目の火蓋が切って落とされた。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

(…………なんだ、これは?)

 

 その光景もまた、異様なものであった。

刀で一方的に攻め続けているあやと、腰は引けがちながらも立って相手を見据える順平。

あやの刀は、不可視の衝撃吸収材によって何度も弾かれ続け、依然として順平の体まで届くことはない。

 

(確かに、斬れなかった奴なら見たことはある。)

 

 似たように相手との交戦経験があやにもある。

かつて、暴力団組織天童組の殲滅に当たった際、天童組の幹部との交戦した時のことだ。

特異な肥満体質から発生する脂汗によって刀の切れ味は封じられ、敵を斬ることはできなかった。

その時は、スクリーンカーテンを巻くといった策で、細切れにして勝利を収めていた。

 

(だが、これはどういう手品だ……?)

 

 だが、目前に起きている現象はというと、全く以て理解の出来ない奇術によるもの。

質量がないにも関わらず、その先にまで侵入すると阻まれてしまう。

吉野順平の身を守っている、"見えない何か"を打ち破らない限り、干渉はできない。

 

 では、別の視点ではどうなっているのか?

 

 

 "ザワザワザワザワ"

 

 

 ────この時。

一匹のクラゲが、順平を覆うように浮かんでいたのであった。

 

 

 "術式「澱月」"。

 

 

 クラゲの正体は、"式神"。

式神とは、順平のような呪術師が呪力によって作り出し、使役する存在のことを指す。

この式神は、非術師などの類や、あるいはVR機能を介さなければ視認することはできない。

故に、あやの目には澱月の存在というのは、"見えない何か"でしかなかった。

 

 

 そして澱月の特徴は、衝撃吸収により、打撃を防ぐ防御性にある。

サーヴァントの存在や高度な魔術・呪術など、通用しない次元も中には存在するが、

あやが手にする普通の刀では、澱月を打ち破るに至らず、攻撃を与えることはできなかった。

 

 

 これにより、状況は膠着状態となっていた。

 

 

(…………。)

 

 一方の順平というと、状況は防戦一方であった。

それは、澱月が「攻撃が出来ない」からそうなっているのではない。

他でもない順平自身が、意図的に「しない」ためにそうなっているのだ。

 

 まだ覚悟自体は順平に備わっていない。"人を傷つける"という覚悟が、まだ。

順平とて、復讐といった正当性のあること、攻撃してもやむを得ない状況ならともかく、

安易かつ無暗な判断で人を害してしまうほど自分勝手な人間ではない。

 

 ましてや下手に攻めてしまうものなら、それから報復という因果が生まれ、今後の対立も根深くもなる。

理解しているが故に、順平も出来れば攻撃の意思は見せず、耐えるだけなのであった。

 

「ぐっ!!うっ……!」

 

 あやが放ったのは、打突。

衝撃の反動を受け、澱月ごと後方のガードパイプにまで突き飛ばされる順平。

衝撃吸収によりダメージは受けないものの、衝撃の反動まで無効にできるわけではない。

上手くいかなければ、窓からだって落ちるものであるし、落下の反動で傷を負うこともある。

 

 ガードパイプを背に腰を下ろしてしまう順平。

 

 

 両者に開かれた間合いは、5m弱。

あやの身体能力ならば、一瞬で詰められる間であった。

 

 

 "────イラッ"

 

 だが、あやも攻撃の手を止めていた。

 

 あやは順平の光景に、段々と苛立ちが芽生えてきた。

身を守る以外に何をするわけでもなく、ただただ弱弱しく粘り続ける。

正体不明の防御も、要は胡蝶カナエが来るための時間稼ぎだとわかった。

碌に戦いもせず、守られているだけ。その"温い"というべき姿勢が、あやを苛立たせた。

 

 

 

「────鬱陶しい。」

 

 ドスの効いたあやの声であった。

 

「お前は、何のためにここにいる。」

「…………。」

 

 あやも月海原学園なので、順平のことは知らないわけではない。

何を迷っているのか知らないが、ずっとここに居続け、半端な形で戦いに入っている。

 

「戦いもしないなら、さっさと止めてしまえ。」

 

 境遇など知ったことでもないが、さっさと降りてしまえばよいと思っていた。

なら、こうして身を守ることもなかったし、わざわざ戦うこともなかったのだ。

それを、いつまでも煮え切らず、戦うことも選ばずに、わけもなく粘り続けている。

 

「邪魔だ。」

 

 そのような相手こそ、"邪魔"だと感じていた。

あやとしては、カナエ達が何の目的に行動するのか知らないし、興味もない。

だが、聖杯戦争という「願いを実現させる」戦いにおいて、それ以外は必要ないと思っている。

令呪然り、命然り、奪うか、奪われるかの話であり、逸れる者は"邪魔"なるだけだ。

 

「さっさとよこせ、令呪を。」

 

 刃を突きつけるあやと、沈黙を浮かべる順平。

その姿は、不思議と一方的な暴力にやられるだけだった過去の自分と重なって見えた。

あまりにも弱弱しくて、立ち向かうだけの強さなんかなくて、結局は何かに守られているだけ。

それを見ると、何故だか無性に……苛立って仕方がなかったのだ。

 

 

 ────と、その時、あやは迫り来る気配を察知した。

 

「順平君!」

「!」

「……胡蝶カナエか。」

 

 

 順平とあやは同時に視線を横へと向き直す。

遅れながら、カナエはこの場に到着した。

疾走後というのに息は乱れず、静かに佇んでいた。

 

(順平君は大丈夫のようね。)

 

 順平を一瞥する、無事を確認し、内心安堵する。

護身手段を持っていることを以前より仄めかしており、"耐えていた"のだとカナエも理解した。

 

「…………。」

「……あやさん。」

 

 視点はあやの方へと移すカナエ。

空気は一転し、緊迫したものに包まれる。

カナエは真剣な表情へと切り替え、あやは八相の構えを取った。

 

「貴方と戦うつもりはないの。」

 

 意思はない、と訴えるカナエ。

 

「だから、ここは退いてくれないかしら。」

「令呪を渡せばな。」

 

 冷淡な声色であやも返す。

 

「……ごめんなさい。それは、できないわ。」

 

 譲れなかった。

それは、損得勘定に基づく考えなどではない。

"マスターを守りたい"というランサーの気持ちを踏み躙るわけにいかなかったからだ。

 

「なら……。」

「!」

 

 刹那。

あやは疾駆で間合いを詰め、渾身の切り落としを振るう。

対するカナエも即座に切り落としを回避、抜刀し、戦闘態勢へ移行する。

 

「力尽くで奪う。」 

 

 

 戦いの模様は、あやとカナエへと転換する。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 二対一という対戦の構図に入り、戦いは苛烈さを極めていた。

 

 

 ライジングタイタンに入り、的確な剣打を取る五代。

 大剣を俊敏な動作で躱しつつも、息も付かせぬ猛攻に入るアラ。

 

 

 そして、両者の攻撃を一身に受け止め、両者に要する攻撃の手数を増やすジークフリート。

 

 

(これほどまでとは……!)

 

 ジークフリートも想定以上の苦戦を強いられていた。

片や守り、片や躱しと、互いの持ち味を活かした連携を取っている。

それが、両者に決定的なダメージが中々与えられるに至らず、翻弄される。

 

(すっごい、タフだなぁ……!)

 

 五代も剣を交えながら、敵セイバーは"凄い"と、改めて認めていた。

二対一という好ましくない状況下にありながらも、それを受け入れて戦うほどの精神力。

今は、敵対せざるを得ない状況下であるが、彼には尊敬の念を感じる。

 

(攻撃が、通じない!)

 

 アラもまた、敵セイバーの防御力に違和感を覚えていた。

五代と同様、どこを攻めようとも、全くの程手応えが感じ取れない。

 

(……ただ、"一箇所"だけ通る違うところがある!)

 

 ただアラは、相手の実態を把握しかけていた。

入り乱れる攻防の中、術式で冷静に観察し、勝機を探っている。

 

 "術式:妖眼"。

全ての防具を貫通する攻撃に繋げるため、敵の実態を把握する技。

ジークフリートは呪いによりその個所を隠すことも出来ない故、アラが見抜くことが出来たのである。

 

 

 ジークフリートと五代が切り落としの交差。鍔迫り合いが生じる。

瞬間、ジークフリートもアラへの意識が、僅かに疎かになってしまっていた。

その隙に取ったアラの行動は、"後退"。一度、間合いを取るための予備動作にあった。

 

「────はっ!」

「むっ!」

「!」

 

 一瞬であった、五代やジークフリートの視界から消えた。

"疾走"。それは、瞬発的な移動を可能とする程の技であった。

ジークフリートも疎かなったが故に、虚を突かれてしまう。

 

「……っ!!」

 

 だが、この技はそれで終わりではない。

通り過ぎるかと思えば、アラは背後で折り返し、ジークフリートの"背後"へ迫った。

"不覚を取った"。ジークフリートも瞬時に自分の愚かさを認める。

 

 

 "妖狐二式:妖乱"

高速で敵の前後を移動して、攻撃を与える技。

観察によって、アラは把握している。"急所"が背後にあることを。

 

「はぁっ!」

「っ!」

(躱した!?)

 

 ジークフリートが、咄嗟に取った行動。

鍔迫り合いを自ら解き、即座に真横へ跳び退くと、流れる勢いで間合いを取った。

五代も驚きを隠せなかった。敵セイバーが戦いの中で初めて取る、"回避"であったから。

 

 直後、空振りに終わる穂。状況は一度リセットされる。

「仕切り直し」。不利になった戦闘状態を初期状態へと戻すスキル。

ジークフリートが竜殺しに限らず、生涯の経験と精神力により培った高度な撤退能力にあった。

 

(今の位置は、理解したか……。)

(やはり、防御が及ばないのは、"背中の葉の模様"!)

 

 不死身であるジークフリートだが、肉体にも一箇所だけ、効果を発揮しない欠点もある。

背中に存在する、"葉の模様をした形の跡"。生前、血を浴びることがなかった唯一の欠点。

一度負傷してしまえば、どれほどの治癒魔術を使おうと、修復は困難を極めてしまうのであった。

 

 

 

 戦いの中、僅かに流れる空白の間。

ジークフリートと五代、アラはそれぞれ体勢を整えると見交わしていた。

相手が次に動く出方。それが肝心であった。

 

 

 最初に行動を取ったのは、五代。

八相の構え。突き立てたソードには稲妻が走った。

狙うは必殺技の「ライジングカラミティタイタン」。それはB+ランクに相当するほどの一撃である。

 

「うぉりゃああああああ!!」

 

 五代が駆け出した時、それが合図にジークフリートとアラの順で駆け出した。

 

「たあぁっ!!」

 

 アラが次に取った行動は、跳躍。

先程と同じ、急所である背中の跡が彼女の狙い。

挟み打ちの再現を図るのであった。

 

「はあぁっ!!」

 

 されど、ジークフリートもまた歴戦の戦士。

ライジングタイタンソードの刀身を左手で掴み、横腹で敢えて受けると、

右手で大剣を振り上げ、背後上のアラに目掛けた。

 

「うっ!」

 

 咄嗟に柄で防御するアラ。

だが衝撃により、敢えなく落とされてしまう。

 

「ぐうっ……!!」

 

 そしてソードの先端には浮かび上がる封印エネルギー。

ジークフリートも瞬発的な筋力で強引にソードを引き剥がし、前方へ押し飛ばした。

圧倒的な防御力の前に、残った封印エネルギーもまた無力化されてしまった。

 

(これでも通用しないか……!)

 

 必殺技さえ通用できず、思わず落胆する五代。

『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』には更なる特性があった。

通常攻撃ならば、相当する耐久性はBランクまでだが、宝具による攻撃の場合、耐久性はB+ランクにまで発揮される。

「ライジングカラミティタイタン」は、『希望の霊石(アマダム)』の応用とモーフィングパワーに構築された"宝具による攻撃"。

故に判定は僅差に届かず、ダメージは無効化されてしまったのである。

 

 

 

 ……その時、防犯用の警報が一帯に鳴り響く。

サーヴァント達は、警備員とされる足音の急行を聞き逃さなかった。

 

「……ライダー、ランサー。仕掛けた俺達が言うべき言葉ではないのだが……。

これを区切りに、今回の戦いを切り上げた方がいいだろう。」

 

 ジークフリートの提案に頷いて答える両者

このまま戦闘を継続することも、別所で戦闘の再開など方法はいくらでもできるわけだが、

相手側が実際、戦いも、他者を巻き込むことも、望んでないであろうことはジークフリートも察していた。

故に、これを区切りとする形で、空気を読んで終わらせる道を取ったのだ。

 

「……ありがとうございます。」

 

 アラはジークフリートへ礼を述べると、マスターの下へ駆け出した。

 

「願わくば、次もまた戦いたいものだ。」

 

 ジークフリートも笑みを浮かべると、五代もサムズアップを返した。

五代から視点を離すと、アラに続き、戦闘中のマスターの下へと向かった。

 

「超変身!」

 

 敏捷を高めるため、通常のドラゴンフォームへと戻る。

五代もサーヴァント二名に遅れる形で、マスターの下へと疾走した。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 火花を散らしあう鉄と桃の刀。

幾重もの交差で弾け合う金属音が、一帯に休みなく響き渡る。

 

 

 あやの剣捌きは合理的。

無駄を省き、的確に振るわれる刀は、機械的な運動を映していく。

 カナエの剣捌きは芸術的。

さながら花弁が舞って見えるほど、美しい刀の軌跡を描いていく。

 

 

 それは、「達人」の戦い。

「達人」とは、その道を極め、完全な領域へと達した者達に与えられる称号。

人の高域に存在する者達が、相見える戦いが、今この場に展開されていた。

 

 

 実力は、互角。

戦闘の構図は対照的なものとなっていた。

あやは攻めて斬り、カナエは受けて捌く。

生来に極めた性質の差異故に、その方向性は二分する。

 

 

 あやの剣は人を殺すための剣。

殺人鬼の本能を浸透させた類稀なる才能の賜物。

VR下での実戦実験により培われた先天性の殺人剣。

 

 カナエの剣は人を護るための剣。

人喰いの鬼から護るために蓄積させた鍛練の賜物。

幾多の実戦と修行により培われた後天性の活人剣。

 

 

 "人を殺す為の剣"と"人を護る為の剣"。

決定的な違いを持つ剣が、この場に相対している。

だが、それ故か、双方にも性質の"相性"というものが生じていた。

 

 

(隙が、ない……!)

 

 あやは、カナエの技巧に翻弄されていた。

カナエが使う剣術は鬼と渡り合うために編み出された武術の流派、"花の呼吸"。

大本が受け技に強い"水の呼吸"であるが故、受けの技術に優れていた。

 

 対するあやは、斬り覚えで体得した我流剣術。

如何なる敵とも汎用的に渡り合い、その中で隙を突いて仕留めることを主戦法としている。

ただ、その根底にあるのは"攻め"。逆に受けに強く、隙を見せない相手には攻めきれない。

故に、カナエの技術とは滅法相性が悪かったのだ。

 

 

(攻撃が、重い……!)

 

 カナエは、あやの怪力に押されていた。

一見、普通の少女に見えるあやだが、人体改造を受け、膂力は常人の域を超えている。

それは時に男性をも一刀両断し、例え片手一本であっても、女性の両腕を切り落とせるほどなのだ。

 

 対するカナエは、常人の域は越えていない

鬼の弱点である頚を落とすため、鍛えてきた彼女だが、人間離れしたあやの怪力には及ばない。

故に、一つ一つの剣における威力はあやに劣り、思い通りに攻撃を捌き切ることはできなかった。

あやとの力差の相性において、カナエにも分が悪い点があった。

 

 

「…………。」

 

 続く膠着状態を先に動いたのは、あやであった。

刀を両手で振い続けていた彼女が、攻撃の最中、左手を手離したのである。

あやなら片手でも十分斬ることはできる。だが、両手で振るう力に比べれば劣ることは否めない。

 

 放たれたのは、右手刀による逆袈裟斬り。

両手時のほどの力はない分、カナエにも捌ける余裕ができた。

しかし、カナエも捌きながら注視していた。"では何故、左手を離したのか"、と。

 

 

 

 行方知らずの左手は、"コートの後ろ裾"にまで手を伸ばしていた。

 

「っ!」

 

 次に放たれたのは、抜刀。

逆袈裟斬りと入れ替わる形で、左下からの切り上げが繰り出されたのだ。

あやが左手に持つそれは、逆手に持った"一本の鉈"であった。

 

 

 それまで存在を悟らせないように隠し持っていた。

先に放れた逆袈裟斬りは陽動。カナエからは見えない死角を生み出すためのもの。

膠着状態を解くため、鉈の使用による奇襲を経て、あやも解放させたのである。

 

 

 

 だが、カナエにもこの状況に対応する技があった。

 

「花の呼吸、弐ノ型……」

「!」

 

 それはあやの耳にも聞き取れた。

どこか穏やかで、落ち着きのある独特の呼吸音。

瞬時に察知した、これは何らかの技が発動するための予兆であると。

 

「御影梅!」

 

 自分を中心とした周囲に向けて連続して無数の連撃を放つ。剣撃。

カナエは鉈を捌き、続け様に放っていたあやの刀による横凪ぎまでも捌いていく。

 

「っ……!」

 

 鉈を逆手から順手に切り替え、手数を増やして対応する。

先まで力で押していたあやが、逆に数で押される形となってしまう。

 

 

(は、疾い……!)

 

 戦局は、順平も息を呑むほど高度なものとなっていた。

繰り広げられているのは、時代劇の演出の世界などではなく本物の殺陣。

カナエと大正時代の戦士と聞いているし、あやも先の戦いで実力の程は見ている。

だが、まさか、これほどまでに疾速で鮮やかなものとは、順平も思わなかった。

 

 

 

 だが、そんな戦いも、呆気無い終わりを迎えてしまう。

 

 

 防犯用の警報が一帯に鳴り響く。

高音に釣られ、あやとカナエもまた、戦いの手を止めてしまっていた。

 

 

「おいおいおいおい!勘弁してくれよ!なんだってこんな場所で喧嘩なんかやっているワケェ~!?」

「年明けに出向く警備員さんの気持ちもよォ!ちったぁ考えてくれっていいんじゃあねえのかねーーーッ!」

「テメーらッ!!これ以上騒ごうものなら警察に突き付けるぞッ!」

 

 こちらに迫る複数人の足音と大声。

待機している警備員が騒ぎを知り、この場に駆け付けたのであった。

 

 

「…………チッ。」

 

 あやは警備員がいる方を向き、"鬱陶しい"とばかりに睨み付けた。

一方、カナエはあやが自分から視点を離した瞬間を見逃さなかった。

その隙を利用して、即座にカナエはあやの間合いから離れたのである。

 

「!」

「ごめんなさいね~!巴さ~ん!お先に帰るから~!」

 

 明朗とした調子で、別れを告げるカナエ。

そのまま流れる様な足運びで順平の下へと駆け付けた。

 

「……え、えっと」

「逃げるわよ、順平君!」

 

 順平の手を引いて走り出そうとするカナエ。

 

「待て!……!」

 

 追い始めるあやに、行く手を阻む様に割って現れるアラ。

 

「ここは退いてください。」

「っ……!」

 

 見渡すと他のサーヴァント達も戦闘を止めており、こちらへ駆け付けているのがわかった。

遅れて、ジークフリートもあやの下に到着する。

 

「状況が悪い。逃げるぞマスター!」

「…………っ。」

 

 ジークフリートの意見に、あやも呑ざるを得ないと判断する。

あやは不本意に感じながらも、人のいない方角へと駆け出し、この場を後にしていった。

 

「お願いね。ランサーさん。」

「はい!お任せください!」

 

 アラはそう応えると、カナエを手際よく背負い、高速で走り去った。

 

「乗って!」

「は、はい!」

 

 クウガの変身を解いた五代が、バイクを走らせ、順平の下に。

投げ渡されたヘルメットを順平は走りながらも頭に被り、後部座席に跨って五代の腰を掴んだ。

即座に走り出し、五代達のバイクも駐車場を抜けだした。

 

 

 取り残された警備員の怒声だけが、誰もいなくなった駐車場を木霊した。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

『…………僕は、何のためにここにいることになるんでしょうかね。』

『えっ?』

『聖杯を求めないのにいつまでも居続けるのは、周りにとって邪魔になるんじゃないかと……。』

 

 順平は念話で言葉を零していた。

 

『まぁ、気にすることないんじゃない?行動は人それぞれだし。

邪魔かどうか思うのは、その人の価値観次第だからね。』

 

 "気にするな"、と楽観的な励ましを送る五代。

 

『ただ、やっぱり、ハッキリさせた方がいいんじゃないかな。』

『……何をですか?』

『自分の立ち位置、っていうのかな。いつまでも「聖杯はいるかもしれない」でいられたら、相手だって困るじゃない?

"何のためにここにいるのか"って聴かれているとしたら、きっと、そういう所もあるんじゃないかと思うよ。』

 

 五代も、少なくとも前向きな部分は受け取っていた。

あやにどう言われたのかな、どう思っていたかなど、実際は知らず、彼らの間での認識にはズレもある。

ただ、あやでなかろうとも、「半端な姿勢」でいられるのは好ましくはないと、客観的に判断した。

 

(立ち位置か……。)

 

 自分はどうしていく者なのか、という意味だとわかる。

協力という関係を取っているカナエの立ち位置は、聖杯戦争的には中立的な立場と言える。

……ならば自分も彼女を倣い、中立的な立場でいる方が、良いのではないだろうか?

 

『停まるね。』

 

 ショッピングセンターから少し離れた路肩でバイクは停まる。

順平も、ふとポケットに手を入れると、中に仕舞っていたコインの存在を思い出し、取り出した。

 

「……どういう立場にするか、コインで決めます。」

 

 まずは、"聖杯のことについて"。

 

「表なら、"今は聖杯を諦める"。裏なら、"聖杯を獲りに行く"、で……。」

「きっかけさえあれば花開く、だね。」

 

 五代が見つめる中。手に取ると親指の上に置いた。

いっそ、コイントスで決めよう、と判断した。このままでは拉致が明かない。

 

 

 順平は、指でコインを弾き飛ばした。

 

 

 空中でコインが回転する中、順平が願ったのは、"表になってほしい"という思いであった。

 

 

 ……ただ、順平も、後になって気付いた。

光には当たっていないためか、結構、地面も暗いと。

 

「…………あの、すみません。どこに行ったかわかりますか。」

「あっ、うん。」

 

 どこに落ちたかわからず、順平も地面を探す。

五代が代わりにコインを拾い上げた。

 

「あー、表だね。」

「……中立的、ですね。」

 

 表の面を見せる五代。

順平はそれを見て、立ち位置を"中立的にする"と決めたのである。

遅れながら、ようやくスタートラインに立てたと思った。

 

 

 

 電線を足場に移動していたアラも続けて到着し、背負ったカナエを地に降ろす。

途中で回収したのか、戦闘時では外していた竹刀袋を背負っていた。

 

 "これからどうしようか"。

そう切り出そうとした時、カナエは真剣な表情で五代達の背後を見つめていたことに気付いた。

五代が後ろを振り向くと、視点の先にあったのは、未だ屋上で燃え続ける『ビッグアイ』であった。

 

「……やっぱり、放っとけないよね。あの火事を。」

 

 『ビッグアイ』の炎上を見て、「対岸の火事」などと放っておくことはできなかった。

さらに自分達以外の陣営が集まることも考えられ、戦闘に発展する可能性の為にもやはり赴く必要があった。

 

「……みんなは大丈夫?」

 

 カナエも周囲の調子を伺う。先の戦いからの疲労はまだ癒えず、次の戦いに支障をきたすことも考えられる。

 

「僕は問題はありませんが……。」

「体の方は問題ないけど……回復しきるまでさっきみたいな変身は厳しいかな。」

 

 自らの調子を応える二人。

順平は精神的な疲労感はあるものの、澱月に身を守った甲斐もあり、肉体面は何の問題もなかった。

五代も肉体的な損傷は少ないものの、二度に渡るライジングフォームと必殺技を使用している故に高く魔力を消費している。

『希望の霊石(アマダム)』による魔力・体力の回復が整うまで、ライジングフォームや必殺技などの使用は厳しい状態にあった。

 

「もし戦いがありましたら、私にお任せください。先の戦いではライダーさんほど戦っていませんので、大丈夫です。」

「ありがとうね。じゃあ、任せるよ。」

 

 その分の穴を埋めると答えるアラ。五代も感謝の気持ちを答えた。

 

「行きましょう。『びっぐあい』に。」

 

 こうして二組の陣営は、ビッグアイの下に向かう。

ビッグアイの火がこちらにまで渡ってか、夜のその時は温かな空気が流れていた。

 

 

【B-4・ショッピングセンター周辺/聖歴111年1月1日 未明】

 

【吉野順平@呪術廻戦】

[状態]精神的疲労(小)

[令呪]残り3画

[装備]なし

[道具]表と裏の描いたコイン

[所持金]650万QP

[思考・状況]

基本行動方針:何を信じ、何を願うか、その答えを出したい。

1.胡蝶さんに協力する。

2.今は、中立的でいようか。

3.巴あやへの警戒。

4.ビッグアイに向かう。

[備考]

自宅はスクール街の扱いです。

学園組(初等部を含み)は開始前から知っている扱いです。

 

 

【ライダー(五代雄介)@仮面ライダークウガ】

[状態]肉体的疲労(小)、魔力消費(中)

[装備]なし

[道具]ビートチェイサー似のバイク

[所持金]なし

[思考・状況]

基本行動方針:順平を守る。出来ることなら皆の笑顔も守りたい。

1.カナエちゃんに協力する。

2."戦わなきゃならないかもしれない"相手。そういう人達もいるよね。

3.セイバー(ジークフリート)には敬意を感じる。

4.爆発を知るため、ビッグアイに向かう。

[備考]

『凄まじき戦士(アルティメットフォーム)』は霊基再臨後か令呪使用まで変身できません。

 

 

【胡蝶カナエ@鬼滅の刃】

[状態]疲労(小)

[令呪]残り3画

[装備]日輪刀(竹刀袋込み)

[道具]なし

[所持金]1000万QP

[思考・状況]

基本行動方針:この世界に生きる人々を守る。

1.順平陣営と行動する。

2.あやさんのように戦わなければいけない人もいるわよね……。

3.ビッグアイは放っておけない

[備考]

学園組(初等部を含み)は開始前から知っている扱いです。

C-3に蝶屋敷が支給されております。

 

 

【ランサー(アラ・ハーン)@ELSWORD】

[状態]肉体的疲労(小)、魔力消費(微)

[装備]長柄刀

[道具]なし

[所持金]なし

[思考・状況]

基本行動方針:マスターとこの世界の人々を守る。

1.順平陣営と行動する。

2.例え、二対一であれ戦うべきですか。

3.セイバー(ジークフリート)には敬意を感じる。

4.セイバー(ジークフリート)の弱点に気付く。

5.ビッグアイに向かう。

[備考]

 

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 巴あやという少女が、今更殺人に躊躇することはない。

覚悟云々の話でなく、殺人鬼として生きる彼女にとって、それが「当然」だからだ。

他人の命の行方には関心はない。いざとなれば令呪を殺してでも奪い取るぐらいわけもないのだ。

 

 

 だが、胡蝶カナエや吉野順平の様な相手から令呪を奪うことはあっても、殺す気はない。

彼らが何の為に戦うのか、そんなことは知りたくもないし、"同情する"という温い感情は遠の昔に捨てている。

ただ、人畜無害な相手を自分の利益のためだけに殺すほど、あやも冷酷非情な人間ではないだけだ。

 

 

 

 そうした分別意識を持ってからなのか、あるいはしばらく平和な学校で過ごしていたからか、ふと思うこともあった。

"差別などもなく共存し、人を殺すこともなく、自由に生きていられる普通な世界というのも悪くないのではないか"、と。

もし、本当に世界を変えるほどの力があるなら、メデューサ症候群など生まれず、普通に生きていける世界で自由を得たい。

そうなれば、母も死ぬことはなく、みんなも解放され、ある意味、龍野への復讐にも繋がるだろう。……と思いが馳せた。

 

 

 そのためにも、まず聖杯を獲るため、まず今を戦い抜くと決意を一層深めていた。

人畜無害な相手を殺すことはしないが、勝つためなら、例え初等部にいる子供だろうが躊躇するつもりはないのだ。

この聖杯戦争において、彼女の根底にあるのは美徳とも言える程の"無関心"だった。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 車道脇の歩道を、両者は黙々と歩いていた。

 

「……すまない、マスター。」

「お前が謝ってどうする……。」

 

 呆れ顔を浮かべるあやと、申し訳なさ気な顔をするジークフリート。

戦いの中で外していた竹刀袋は回収され、あやも再度背負って歩いている。

 

「胡蝶カナエの事はもういい。次に行くぞ。」

 

 気持ちを切り替える。

問題は、今さっきのことよりも、これから先の戦いだ。

何しろ、敵は自分を除けば30組もいる。まともに相手をしていくようではこちらの身が持たない

戦いは、まだまだ序盤。胡蝶カナエ達に、いつまでも気を取られてばかりにはいられない

 

(次こそは勝つ……。)

 

 胡蝶カナエとは、いつかは再戦したいと思っていた。

巴あやという少女には、所謂「負けず嫌い」な一面もあった。

気を取られているわけではないが、どこか対抗意識は芽生えていたのであった。

 

 

 

 

 

 しばらくして、その場で足が止まる。

数km先に見えるのは、アカデミーの敷地。

巴あやが踏み入れていたのは、アカデミー利用者向けの近隣商業地であった。

 

 狙いの選択に、アカデミーがあった。

戦闘地点から同地区内に存在するだけあり、距離は遠くなかった。

スクール街では月海原だけではなく、アカデミーにも他陣営が活動していたことは知っている。

 

(……なんだ、この妙な予感は?)

 

 周囲を見渡し、あやは疑問を抱き始める。

近隣商業地に入り、アカデミーから漂いつつある、得体の知れぬ"違和感"。

表向きは何事もなく静まり返っているのだが、近寄る程、妙に"貼り付いた異変"を感じる。

 

 ジークフリートも同様の考えなのか、真剣な表情であやを見ていた。

 

「行くのか?マスター。」

「…………。」

 

 問いかけるジークフリートを他所に、あやも微妙な表情を向けてアカデミーを見ていた。

キャスターのクラススキルに「陣地作成」というものがあるように、逆に"罠"という可能性も否めない。

違和感があるからとはいえ、それだけで積極的に足を踏み入れるほど、あやも無鉄砲ではない。

 

 それにアカデミー内の情報に乏しいため、他陣営の詳しい情報はあやも入っていない。

アカデミーとは「大学」。時間外れの深夜にまで活動する場所ではなく、不在な可能性の方が高い。

実は単なる思い違いで、誰もいないために広い敷地を歩いて無駄足を食う展開など、好ましくない。

 

 ふと、しばらく先の対向車線沿いに、ビジネスホテルがあることをあやも思い出した。

 

 

「……いや、ここは待つ。今の内に休んでおくとするか。」

 

 まずは様子見がてら、休憩することを選んだ。

仮に他勢力がいるのであれば、自分達を標的にする場合も考えられるため、待つのも手であった。

アカデミー内から何らかの気配を感じ取ったならば、その時はこちらからアカデミーに進む。

どちらにしても日が登るまでの間に何事もなければ、アカデミーには行く必要はないだろう、と見た。

とりあえず、今はホテルで小休憩を取り、次の戦闘に備えることとした。

 

 

 向かう途中にも、追い風があやに当たる。

ただ、それがこの世界の気候故なのか、"寒い"のではなく、"温い"とあやは感じた。

 

 

【B-4・アカデミー近隣商業地/聖歴111年1月1日 未明】

 

【巴あや@サタノファニ】

[状態]疲労(小)

[令呪]残り3画

[装備]打刀(竹刀袋)、鉈 

[道具]なし

[所持金]900万QP

[思考・状況]

基本行動方針:自身の生存と優勝狙い

1.基本的には(力尽くで)令呪奪取。有害な相手なら殺すが、無害なら殺すつもりはない。

2.いつか胡蝶カナエとのリベンジをしたい。

3.吉野順平は気に入らない。

4.次の狙いはアカデミー……と行きたいところだが、面倒なので休む。

5.ビッグアイは無視。

[備考]

学園組(初等部を含み)は開始前から知っている扱いです。

 

 

【セイバー(ジークフリート)@Fate/Apocrypha】

[状態]健康、魔力消費(小)

[装備]悪竜の血鎧

[道具]幻想大剣・天魔失墜

[所持金]なし

[思考・状況]

基本行動方針:自らの正義の全う。

1.マスターに従う。場合によっては進言などを行う。

2.ライダー(五代)やランサー(アラ)との再戦をいつかは……。

3.あの場(アカデミー)に何かが……?

[備考]

 



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002 スタート直後は大概チュートリアル ジョセフ・ジョースター&アーチャー(エンタープライズ) ユウキ&セイバー(坂田銀時)

登場キャラクター
ジョセフ・ジョースター&アーチャー(エンタープライズ)
ユウキ&セイバー(坂田銀時)

場所
C-4(高層マンション(ジョセフの拠点))

時間
未明

作者
◆K2cqSEb6HU


 地区はC-4。セントラル・ステーションの近場に構えるタワーマンション。

 

『…………。』

 

 マンションの屋上。霊体化したエンタープライズは、周辺状況の監視を行っていた。

突如として引き起ったビッグアイ屋上の爆発を皮切りに、各地で多発したガラクシアの暴動。

事態は防衛隊が出動する程の騒動に発展し、パレードを楽しんでいた民衆も突然の事に混乱を極めている。

尤も、正しい判断ならば、後にパレードも中止・解散となると考えられるので、何事もなければ、事態も引くと見通していた。

 

 

 当陣営というと、静観の姿勢であった。

この一連の騒動は、「示威運動(デモンストレーション)ではないか」という見解であった。

暴動が起きた場所は都市にとって主要なものとは言えず、人質を取るならまだしも行動自体に何の意味もない。

あまりに本格的な行動と感じられず、それまでの自爆テロの傾向を踏まえ、示威の類と見るのが妥当と思われた。

故に今回の暴動に関しても、"防衛隊の者に任せる"の総意で一致し、状況を静観しているのである。

 

『……他の者は来ていないようだな。』

 

 周辺を監視している理由は、間近に見える距離に聳え立つビッグアイにもあった。

これほどのアクシデントともなれば、関心を抱いた他陣営がビルの下に集まるという可能性も否めない。

そうなれば、同C-4地区下に居る当陣営とも接触に発展することも十分あり得るのであった。

 

 

 この同盟は、元から今夜は「行動しない」と決めていた。

「急いては事を仕損じる」というように、無暗矢鱈に動くことが良策と言えないからだ。

行く宛はないわけでもないが、わざわざ初日の未明や早朝にまで行くほどのものはなかったである。

一方で都市の中心部にある以上、逆に他陣営が来る可能性についてはある程度想定している。

他陣営を知る機会も兼ね、不利を悟って戦略的撤退に及ぶまでは、一先ずここを動かないつもりであった。

 

 

 何にしても、今しばらくは状況を様子見する姿勢。

今日は一夜を明かすとし、理想としては本格的な行動開始を午前8時以降と決めていたのである。

 

『一先ずは、問題ないか。』

 

 少なくとも、今の時間はまだ誰もこの地区には足を踏み入れていないと捉える。

エンタープライズも監視を終えると、主人達のいる部屋に向かい、屋上を通り抜けて中へと入った。

 

 

☆   ☆   ☆

 

 

 このマンションは、彼らの拠点の一つであった。

ここはジョースター不動産の管理下に置かれた建築物であり、その一室を所有している。

なお、彼らは用意した各地の拠点を転々と利用する予定なため、ここは半ば宿泊施設のような扱い。

 

 

「ギンてめえ!どういうことだッ!!」

 

 エンタープライズが実体化して着いたのはマスターの声のする一階の部屋。

 

「なんでこいつが通らねーんだッ。ドロー2の後にドロー4!何の問題なくいけるじゃあねえかーーーーッ」

「違いますうぅ~。ドロー2の後にドロー4出すのはルール違反なんですぅー。ドロー2しか出せないんですぅ~~。」

「にゃにおぉ~~~~!?」

 

 テーブルではジョセフと銀時の二人はUNOをしていた。

トーンは違うが、似たような声の二人が、UNOをするというシュールな光景であった。

銀時のマスターであるユウキは彼らのプレイに構いなしとエンタープライズの方を向き直った。

 

「あっ、おかえり!どうだった?」

「ああ、ただいま。敵はいなかったよ。」

 

 親しげにユウキと接するエンタープライズ。 

 

 ユウキ達とは開始前から同盟を組んでいたのである。

ロールはハンターであるユウキ側にとって、本来ならば接点に乏しい陣営だった。

ただ、きっかけは一ヶ月前。"ユウキ宅がガラクシア派の自爆に巻き込まれる"というアクシデントに見舞われたこと。

(マスター特権で)代居を貰おうとジョースター不動産に足を踏み入れたことで以降、現在に至る。

 

「マスター達もいつまでゲームをやっているだ。これから方針会議なんだぞ。」

「今、片付けようって決めてたんだよッ!」

 

 エンタープライズはジョセフと銀時へ注意を促した。

会議を始めようかという矢先に、ビッグアイの爆発が起きたため、中断された。

いないと分かればこの二名は放り出して遊び惚けてしまうので、世話の焼ける相手だった。

 

「まったく戦争は開始しているのだぞ。君達はいつまで気を抜けているんだ。」

「俺は別に気なんか緩んでねえぜ?ギンじゃああるまいに。」

「あァン?ジョジョテメー、何言い逃れようとしてんの?先にUNOやろうぜって言ってきたのはそっちだろか。」

 

 溜息を吐く、エンタープライズ。

二人とも不真面目なため、聖杯戦争そっちのけでやり始める。

その点、"遊び呆けたやつだ"とエンタープライズも冷ややかな目を向けていた。

 

「……いいから、始めるぞ。」

 

 エンタープライズはそう言いながら、ホワイトボードをテーブルの前に動かした。

 

 

☆   ☆   ☆

 

 

 パラディウム・シティの地図を磁石で挟まれたホワイトボード。

会議の進行役として、ホワイトボードの前に立つのはエンタープライズ。

他三名は、ホワイトボードに視点を置き、テーブルに腰掛ける形となっている。

ユウキは意欲的に見ているが、銀時はやる気なさげに鼻をほじっていた。

ジョセフも頬杖で見ている。ジョセフの横席には紙が挟まれたバインダーファイルが置かれていた。

 

「まず、当面の方針は、"聖杯戦争終結の為の同盟を結成させる"ことだ。」

 

 エンタープライズはホワイトボードにも同様のことを書く。

 

「聖杯戦争を解決しないことには、主催側との本格的な対立には進めない。」

 

 "黒幕の打倒"に当たるのが、ジョセフ達の目的。

しかし、主催にばかり目を向けたところで、動きを見せるわけもなく、他参加者を無視したところで、戦うのは必然。

まずは、聖杯戦争という本題をある程度解決し、主催側の動きを見せないことには、段階に入れないのである。

 

「とはいえ、武力行使だけで戦争が解決できるとは限らない。

極力だが、私達の手で他陣営との交渉を行っていき、同盟を形成しようと思う。」

 

 ジョセフ側の考えとしては、「同盟を形成する」ということに至った。

「武力だけで、戦争は解決できるとは限らない」ことは、多くの戦いを経験したエンタープライズ自身がよく知っている。

交渉を取り、和平による停戦協定を結ぶ。そうした選択にこそ、時に戦争解決に繋がるわけだ。

 

「同盟って仲間を増やすの?」

「いや、仲間ではない。"聖杯の所存を決める"という目的に一致する同盟だ。」

 

 ユウキは仲間かと疑問に感じたが、まだ仲間という気はなかった。

同盟とは一重に仲間を指すわけではない、"利害が一致から協力する"ことを同盟と呼ぶのである。

ジョセフ側とユウキ側は仲間という括りに入るものの、仲間として見るのは個人と場合次第なわけだ。

 

 あくまで、当陣営における聖杯戦争の立ち位置は、「中立」であった。

戦うときは戦うが、戦わない時は戦わない。協力する時は協力するが、関与しない事は関与しない。

聖杯の所存も、"人と願いの結果次第"で他者に委ねることも基本的に構わないとしている。

咎めるべき「悪」と「害」さえ無ければ、個人的であれ、世界的であれ、あまり関与する必要はないからだ。

 

「10組や20組ならともかく、数は31組とあまりに多い。

さらに今後『ガラクシア』といったイレギュラーまで戦う必要はあるだろう。

そんな中、互いに何の決まりもない状態が続けば、まず事態は進展しない可能性も高い。」

「いつまでも戦い続けてもラチがあかねーぜ。」

 

 同盟の理由には、「埒が明かなくなる」という点もある。

戦うならいざ知らず、29組をまともに相手するというのは途方もない話だ。

千日手に陥るのは、自分達だけではなく、参加者の誰にとってもメリットになり得ない。

 

「だからこそ、事態の進展の為にも折り合いを付けたい。

"聖杯の所存を決める"という目的の下に一致する同盟なのだ。」

「なるほど~。」

 

 ユウキも同盟の在り方に納得した様子であった。

 

「二人もそれでいいだろうか?」

「うん!それがいいね。」

「まっ、面倒少なくていいからな。賛成だわ。」

「決まりだな。」

 

 エンタープライズの問い掛けに、ユウキと銀時も方針に賛同し、ジョセフも確定と見た。

ユウキ達も最後まで戦うことが望みであり、何より考えの在り方と一致していた。

 

「ただ重要なのは、"聖杯を求める者達の決着はある程度の段階であること"と、

"聖杯を求めない者達の令呪破棄は最終であること"だ。

タイミングを見誤ってしまえば、それが付け入られる隙になってしまうからな。」

 

 エンタープライズは付け加えて、"タイミング"を重要点として挙げた。

前者であれ、後者であれ、まずは同盟外の敵を倒すことが肝心となる。

相手にもその認識を持ってもらうことが、重要だと考えていた。

 

 

☆   ☆   ☆

 

 

「そのためにも、まず初めに「他陣営の把握」をする必要がある。」

 

 ホワイトボードを消し、改めて同様のことを書いた。

 

「そうは言うけどよ~、手掛かりあんのか?

この広い都市の中で、どうやって他所をみつけていくってんだ?」

 

 銀時は、気だるい風に指摘する。

他陣営がどこ集まっているのか、目星がないことには動けない。

 

「バッチし……とまでは言えねーが、ヒントになるものならここにあるぜ。」

 

 そうしてジョセフはバインダーファイルを銀時に渡す。ユウキも横見した。

それはちょうど、約一ヶ月半前。ジョセフやユウキが来た日から近日に至るが記載されている

プリントには「氏名」「登録形態」「電話番号」と情報が羅列して記載した表であった。

 

「えっと、何これ?」

「それは、マスター達が来た時期に引っ越してきた者達をピックアップした顧客名簿だ。」

 

 ジョセフやユウキを含め、マスターは基本的に「移住者」という設定で進んでいた。

支給された住居の中には「ジョースター不動産の管理に置かれている物件に引っ越した」という例も少なくない。

マスターであることを裏付ける証拠もないため、情報源としては今一つ確証に欠けるが、ヒントに結びつくものとなっていた。

 

「そして、これは開始前からの調査でわかったことだが……スクール街に複数のサーヴァントの反応が確認されていた。」

 

 エンタープライズはホワイトボードに「スクール街」と書いた。

 

「出没の時間帯は、日中。密度の濃かった場所は、『アカデミー』や『月海原学園』だった。」

 

 ホワイトボードに挟まれたマップ、『アカデミー』と『月海原学園』に赤丸を入れる。

エンタープライズにも「千里眼」に相当する効果を有しており、標的の捕捉には優れている。

加えて、両校では特に複数の陣営が密集していたことも相俟ってか、かなり存在感の高い地域となっていたのである。

 

「……ってことは、もしかして、マスターは"学生のロール"に多いってこと?」

「ああ、そうさ。サーヴァントの反応も、学生達の登下校に伴い、離散していた。

つまりは、学校関係者よりも"学生"に多いということだ。」

 

 ユウキも名簿を見直すと、登録形態が"学生"の欄に黄色のマーカーペンで引かれていることに気付く。

 

「情報の傾向によると、マークライト街、スクール街、ストランド街などに見られる。」

 

 エンタープライズも「スクール街」に加え、「マークライト街」、「ストランド街」と書いていく。

 

「特にその中でも多いのはマークライト街、さらに絞るなら……"B-3"から"C-3"だ。」

 

 「マークライト街」に〇を囲み、下にB-3とC-3と書いていく。

スクール街やストランド街には住宅もあるものの、住居としては元より住宅街のマークライト街の方が多い。

また、マークライト街でもB-2やC-2になると物件は少なくなり、有力視から外されることとなった。

 

「こいつは割と絞られたもんじゃねーの。」

 

 銀時も答えに納得した様子を見せる。

行き先が決まり、範囲も絞られた。

 

「では、まずマークライト街からの調査から始めよう」

 

 

☆   ☆   ☆

 

 

「……ちょうどいい機会だ。マークライト街の調査と並行して、『美紗里』にも向かうとしよう。」

 

 エンタープライズは美紗里に赤い丸を入れる。

 

「行かなかったの?今まで」

「……ああ、行かなかったぜ。「俺ら」はな。」

 

 開始前中に、ジョセフ達が美紗里に行くことはなかった。

ジョセフ達もその時は他にする事もあったため、本格的な開始まで後回しにしていたからである。

そのため、『ミザリィ』はここに来てから一度も会うこともなく、

どういう相手で、どういう考えでいるのか、またどういうポジションなのか、具体的な見解には至っていなかった。

 

「えっ?「俺ら」って……。」

「……随分前に一度、同盟を申し込まれた相手がいた。彼らは『ミザリィ』を殺すためとな。

私達は断ったので、その件には関わってないのだが。結果は、返り討ちにされたようだ……。」

「馬鹿な奴らだぜ、まったく……。」

 

 まだ、来てからそれほど経たない時期の事。

同盟の一人として、ジョセフにも話を持ちかけられていたことがあった。

確かに『ミザリィ』を肯定的には見てはいないが、仮にも相手は女性。

当初のジョセフ達は、彼らの考えや方向性に反対し、破談。

その翌日。知り合いから耳にした黒い噂では、"死体に上がった"というものだという。

 

 相手にも殺意があった以上、「正当防衛」でもあり、ジョセフ達もそれだけで非難する気はなれない。

だが、問題は、敵を殺害したまま野放しにする、その"冷酷さ"が『ミザリィ』に潜んでいることであった。

それを見て、あまり見過ごしてはいられず、"要注意"とだけは認識していた。

 

「それに、君達も自分の目で確かめないことにはわからないだろう。……それとも、君達の方は既に会っているのか?」

「ううん。そもそも、マークライト街にも行ったことないし。」

「めんどくせーしよ。つーかわかんねーけど、案内人だろ?あんま敵っていえなくね?」

「敵ではないだろうが、中立かもしれない。場合によっては敵対する展開も否めないものだ。」

 

 ユウキ達も美紗里には行ってはいない。

客観的に見ると、さほど対立するような関係でもないからである。

銀時は納得がいかない様子に対し、エンタープライズは"場合によっては敵対もあり得る"という見方を示した。

 

「ともかく。現状優先する事でないが、『ミザリィ』との接触も予定として入れるぞ。」

 

 マークライト街の調査に続き、美紗里への訪店も予定に加えた。

 

「……それと、『ミザリィ』が有するサーヴァントの話だが、連中の情報から察すると、片方は『狼王ロボ』のようだ。」

「狼王ロボ?何そのアトムにでも出てそうな奴?」

「いや、ロボットじゃないぞ。セイバー。ロボという名前の狼だ。」

 

 サーヴァントとして『狼王ロボ』を持っていることを、エンタープライズも付け加えた。

聴いた銀時はそれを"狼王と名乗るロボット"として見て、ツッコミが入れられる。

 

「えーと、確か、あれだよね?「シートン動物記」の一巻で書かれていた狼の事だったけ?」

「ああ、その「狼王ロボ」のことさ。君は知っているのだな。」

「へっへー!これでもボクは読書家だからねっ!」

 

 自信満々にそう答えるユウキ。

 

 『狼王ロボ』

「シートン動物記」にて語り継がれる狼。『ミザリィ』が所持しているとされるサーヴァントの一体であった。実際のクラスおよび姿までは未確認。

 

「で、もう片方は手伝いをしてた子、アビーがサーヴァントだよね。」

 

 ユウキも出会った当初から紹介された真名を思い出す。

 

「アビー。『アビゲイル・ウィリアムズ』。

アメリカじゃあ、別に珍しくもなんともねえ名前なもんで、俺もそのまま聞き流していたワケだけどよォ。

やっぱし、あの『アビゲイル・ウィリアムズ』になるのよねェ~~?「セイレム」っつうところのさ。」

「17世紀末。マサチューセッツ州セイレム村で起きた「魔女裁判事件」。

事件で最初の告発者として記されている少女が、『アビゲイル・ウィリアムズ』だ。」

 

 フォローとしてエンタープライズが簡易的な解説を入れる。

 

 『アビゲイル・ウィリアムズ』

「魔女裁判事件」で知られる少女。『ミザリィ』が所持しているとされるサーヴァントの一体であった。実際のクラスは不明。

アメリカ出身であるジョセフもその名前にピンときていた。

 

「ったくサーヴァントが二体いるなんて贅沢な話だねェ~。これも主催特権ってヤツかい。」

「どうだろうか……。意味があるとも見えなくもないが。」

 

 嫌味に捉える銀時に対し、エンタープライズはどこか二体に必要とする意味があるように捉えていた。

 

「悪趣味っつーか、ヘンな組み合わせっつーかさ。「ただ身を守るためにいる」って感じのサーヴァントじゃあねえよな。」

「言われてみれば、変わったチョイスだね。」

 

 ジョセフとユウキがふと抱いた疑問。

そのチョイスには、何かの「裏」があるということ。

『狼王ロボ』と『アビゲイル・ウィリアムズ』。それは「何のためにいる」サーヴァントなのか、ちょっとした疑問があった。

 

 

☆   ☆   ☆

 

 

「さて、これまでで収集した情報も整理するとしよう。」

 

 エンタープライズはホワイトボードから地図を一旦外すと、プリントアウトされた3種のドローンの画像を貼り付けた。

 

「まずは、ドローンの存在だ。」

 

 横から「小型の羽ばたき型ドローン」、「武器が備わった大型の羽ばたき型ドローン」、「四輪走行する箱型の兵器」であった。

 

「これってこの世界のものじゃないの?」

「いや、これらはこの世界で一般的に普及されたものではない。我々が来た同時期に普及されたものだ。

微量ながら魔力も確認できた。」

 

 目にすることの多かっただけあり、ユウキも「この世界のもの」として見ていたが、違う。

実際は何らかのサーヴァントの手が掛かったものであり、道具作成もしくは宝具などによって製造された類であった。

 

「そして、ドローンはこの期間中で急速に増加していた。今は都市内の殆どの地区にまで及んでいることだろう。

目に付く限りは破壊してきたが、私達の動向や存在はドローンを通して相手に監視されている可能性は高い。」

「全然、知らなかった……。」

 

 ドローンは増加しているということはエンタープライズも確認していることであった。

その規模は、把握した限り、都市の殆どの地区にまで広まっていると見ている。

また、ドローンである以上、カメラとモニターを通じ、監視するというのも不可能ではない。

エンタープライズも、ドローンから監視されている状況に用心を抱いていた。

 

 まじまじとドローンの写真を見ているとユウキも、どこかドローンへの心当たりを感じた。

 

「うん?これどっか見たことあるような……?あっ、そうだ!『二階堂ルイ』!」

 

 ユウキはそうして自分の端末をセットし、映像が照らし出した。

空中タッチパネルの画面には、『二階堂ルイ』なるアイドルの特集ページが記載。

ルイの写真には、彼女を警護するかのように飛び回るタイプのドローンが映っていた。

 

「『二階堂ルイ』か。都市の中でも、獣人のアイドルとして脚光を浴びている者のようだな。

確かに、ドローンは彼女を守るように配備されている。彼女のサーヴァントの可能性は高い。」

「そいつも俺達とちょうど同じ時期に来たんだとよ。」

 

 エンタープライズもニュースから、ルイの存在は知っていた。

銀時がアイドル事情に詳しいNPCから聴いた話では、ほぼマスターに違いないという。

 

「動画なんかまであるみてーだな。」

 

 ジョセフを端末を弄って「ラプラス」を開き、二階堂ルイのチャンネル動画の、目に付く適当な動画を再生する。

新規層に「『二階堂ルイ』という人物はどういったものか」を公表し、ファンを得ようとする系のトーク動画であった。

彼女のトイプードルな容姿も相俟って、一見すると、可憐というべきか、愛嬌のある面が映されていた。

 

「あら、またカワイコちゃんなのね。ふゥ~~ん?」

 

 マスコットキャラとして軽く褒めるジョセフ。

ただ、言葉と裏腹に、ジョセフの目にはルイの姿がどこか"あざとい"というか、「良く魅せようとしている」が魂胆あると映った。

別におかしなことではない。世の中には「周囲に気に入られ、自分を満たそうとする女性」もいるだろうとジョセフもわかっている。

だから、内心では素直に取り入れる気はないものの、特にそれ以上も考えるのを止め、流すこととしていた。

 

「……ライブをするみたいだ。」

「ライブ、だってェ?」

 

 エンタープライズの目に留まったのは、ルイの「ライブの告知動画」であった。

「ライブ」という行動自体が、ジョセフは疑いを覚えた。

 

「……どう考えても、わざわざ「開始後」になってやることじゃあねえよなァ~~~。

それは「どうぞ狙ってください」っていってるようなもんだぜ?」

「言われてみれば、何かおかしいような?」

 

 ジョセフの見解に、聴いて違和感に気付き始めるユウキ。

表舞台に出るということは、狙われるリスクも高くなる危険行為であり、まず得策とは言えない。

単純に自己顕示の為ならば、いくらでも時間のあった筈の「開始前」に済ませておくべきなのが、賢明な判断である。

 

「逆に考えるならば、こういうことだ。

「開始後でなければならないこと」を「狙われることになろうとも構わずにやる」。「5000人の観客」を使ってな。」

 

 逆の発想。

「開始前」ではダメであり、「開始後」でなければならないこと。

表舞台に出ても、なお自陣にとってリターンがある話が「裏」に潜んでいるということ。

そして、その手段こそ「観客5000人」に掛かっているにあった。

 

 それが行き着く考えとは何か。

 

「……魂喰いか。」

 

 エンタープライズが答えの仮定を唱えた。

"開始前のサーヴァントによるNPCへ魂食いをし、結果死に至らしめた場合は強制退場"というルールがある。

それを踏まえた上で、魂食いという仮定で結び付けると、開始後にライブを開こうとする真意が見えてきた。

 

「ルイちゃんはともかくとして、裏で許可をしているサーヴァントは怪しいと思うぜ。

図々しく武装付きのドローンを放っておいて、今でもコソコソと監視してる様な奴だからよ。ロクな奴なワケがねえ。」

「魂喰いともなれば、ルイ個人の判断よりもサーヴァントの意向も大きいだろうな。」

 

 ルイのサーヴァントが怪しいと睨むジョセフ。

この事態をルイが良いように利用されているのではないか、という点もあるとエンタープライズも判断した。

 

「一ヶ月半弱も待ってやることが生贄ショーってか?やることがアイドルライブつーかデスメタルじゃねーのコレ。」

「応援してくれるファンのみんなを利用するって許せないよ……。」

 

 銀時とユウキもまた肯定的に捉えていなかった。

銀時は行動に呆れを芽生え、ユウキは行動に憤りを感じつつあった。

 

「なんにせよ、化けの皮を剥いでみきゃわからねえ話だ。一体どーいう了見でライブなんかやるのかってよ。」

「二階堂ルイの陣営を見極める。これはライブが始動するよりも先に済ませておく必要があるな。」

 

 ドローンの写真を外し、ホワイトボードに書くこととした。

当初の警戒すべき相手から、「やがては倒すべき敵」と認識を切り替えることとした。

 

「日中にまた彼女側とのアポイントメントを取り、予定を決める。」

「何?ここでもアポゥを取らねーとダメなの?ったく、最近の聖杯戦争も手続きが面倒で、フットワークの悪い時代だねェ。」

「はぁ?アポゥ~?……どうしてそこでリンゴが出てくるワケェ?」

 

 接触に面倒な点に、銀時も愚痴を零す。

なお、語のギャップ故か、ジョセフにはそのボケがわからなかった。

 

 

☆   ☆   ☆

 

 

「ユウキ達も情報があるなら聴かせてほしい。」

「ボク達も、マスターの存在についてちょっとだけ聴いてきたよ。」

 

 "名簿にはないかも"、とバインダーを指して語るユウキ。

ユウキ達も開始前までは仕事と並行し、ハンター達やハンターとも親しい防衛隊の隊員からも聞き込みを続けていた。

 

「っても、いることぐらいしか突き止められなかったけどな。微妙なもんばっかだぞ。」

「今はいるって情報だけでも十分さ。深堀りについては今後、考えればいい。」

 

 内容は少ないという銀時だが、エンタープライズはそれで了承した。

 

「まず、ハンターだけど。『キロランケ』って人かな。

あんまりに会わなかったんだけど、聴いた話では悪い人じゃないって感じだね。」

 

 『キロランケ』

表向きは自然区域で主に狩猟および採集活動し、収益所などでも売買していたという。

ユウキ達とは畑違い故に直接的な接触には恵まれず、どういった陣営かは未だ不明。

 

「次は、『千翼』って人。防衛隊の一員……だったみたいなんだけど、

いなくなったからどういう人かはみんなわかんないって。」

 

 『千翼』

防衛隊のロールを与えられていたのだが、早々に放棄したという。

聴いた人達の限りでは行方不明扱いとなっており、どこで何をしているかは誰も知らなかった。

 

「えっと、それから……」

「『エドワード・エルリック』か?」

 

 ユウキが言うよりも先にエンタープライズが言い当てた。

 

「えっ、知ってるの?」

「彼から、ジョースター不動産宛に連絡があった。

サーヴァントである『空条承太郎』という男がマスターをよく知る人物だそうだ。」

 

 『エドワード・エルリック』

彼は、防衛隊の錬金術顧問をロールとして与えられていた。

活動は自由だが、放棄はしておらず、ユウキ達にもその名は伝わっていた。

 

「知り合い?」

「……いや、知ってるつうか、なんつうかさぁ~~~。」

「真名を調べた限りでは、マスターの"孫"に当たるらしい。」

「孫。」

 

 『空条承太郎』

後時代のジョセフ達と共に、宿敵『DIO』を倒したとして語られる英雄。バーサーカーのサーヴァント。

それを初めて知ったジョセフは、"二重(ダブル)ショック!!幽霊なんかに出会うよりももっと奇妙な遭遇……"。だったそうな。

 

「彼らとは「開始後に一度打ち合う」と約束をしている。具体的な時間も、リモートになるかも、まだ決まっていないが。」

 

 互いのロールなどもあるため、エドワード・エルリックとは別行動にあった。

ただ、正確な時間約束はしていないため、何時にするか、どこで会うかは決まってはいなかった。

 

「ボク達が知るマスターとしてはこれぐらいかな?

後は……まあ、『キャッスル』と『辺獄』ぐらいとかもどうだろうかなー。」

 

 辺境の場所について挙げるユウキ。

 

「『キャッスル』の方は、まあ、中世期の大っきなお城だね。」

「まんまじゃねーか。」

 

 キャッスルの雑な紹介に、ジョセフもツッコミを入れた。

 

「『キャッスル』には誰かいたか?」

「そこまでわかんないや。チラッとしか見てないからね。」

「何かあるのかしれねーけど、別にそん時はサーヴァントの気配とかあったワケじゃねーし。ようわからんダンジョンだわ。」

「……まぁ、保留にしていいのかもしれないな。」

 

 『キャッスル』

ネットでも情報が挙がらない、中世期建築による古城であった。

ユウキ達が視察した段階では、目ぼしい様には感じられず、当面は保留と判断した。

 

「『辺獄』の方はどーよ?月海原がスッポリ入るぐれーバカでっけえ穴みてーだけどよぉ?」

「……うーん?そこが深くてわかんないというか。一回飛んで中に入ってみたけど、何か嫌な感じがしたから引き返してきたよ……。」

「は、入ったのか君は……。」

 

 "しょんぼり"とした様子のユウキ。 

無鉄砲とも言えるユウキの行動に、少々呆れを感じるエンタープライズ。

 

「正直、気味の悪りぃ場所よ。あんま行きたくねーわ。」

「ここも保留だが、何かの裏はありそうだな……。」

 

 銀時としては『辺獄』に奇妙な不快感を覚え、乗り気ではない様子であった。

エンタープライズも今は保留と流しつつ、強い疑念は拭えなかった。

 

 『辺獄』

巨大方舟が落下したとされる謎の跡地。

深淵の穴と化した空間であり、裏に潜むものを感じるものの、当面は保留と判断した。

 

 

☆   ☆   ☆

 

 

「『マークライト街の調査』、『美紗里への訪店』、『二階堂ルイ陣営との接触』。

以上、三点が日中にやる予定だ。」

「異議ねえぜーー。」

「それがする事だね。わかった。」

「まぁ、それでいいんじゃねーの。」

 

 "承知した"とばかりに、三者三様の相槌が取られる。

 

「それじゃあ、今日の会議はここで解散としようか。」

 

 エンタープライズもそれ以上はないとして、解散を切り出した。

 

「ふわぁ~~。なーんか眠たくなっちゃった。」

「英気を養うためにも早めの睡眠に入った方がいい。今夜は起床する可能性も高いからな。」

「は~い。」

 

 身体を伸ばしながら、部屋を出るユウキ。

 

(……ビッグアイはどうなってんだろ?)

 

 ふと、思い立ったように端末からニュースを開き、ビッグアイの状況を見る。

どうやら、消火活動は進んでいるようで、幸いにも被害者が出ていないことが把握できた。

情報に安堵するとユウキは空中ディスプレイを開き、端末はアイテム欄に格納した。

 

「マスターも早く寝るんだ。」

「はあ~~い」

 

 ジョセフを指を指し、エンタープライズはやや厳しめな声色で告げた。

山札をシャッフルをしながら空返事で応えるジョセフに、エンタープライズも特に振り返ることなかった。

監視の再開からか、エンタープライズは部屋を後にするように霊体化していった。

 

「……なーーーんて言われて素直に止めちゃう俺達じゃあないのよねーーーッ。今からでも続きを……」

 

 そうしてジョセフがUNOの山札から一枚取り出して、カードをテーブルに置く。

カードは「R(リバース)」であった。

 

 その時、山札から一枚のカードが飛び上がった。

 

「でェ……。」

 

 カードはひらひらと舞い、ジョセフの顔面に落ちる。

ジョセフが手に取ってカードを見ると、それは「S(スキップ)」であった。

そのカードに銀時も、"にやにや"とした表情を浮かべた。

 

「あの姉ちゃんも中々遊び気のあることすんじゃねーの。」

「……やっぱ寝るかァ。」

 

 ジョセフは山札をテーブルの中央に置き、席を立った。

 

 

to be continued……

 

============

現存する陣営数:31組

同盟を組んだ陣営数:1組

敵対している陣営数:0組

 

同盟名:なし

リーダー:ジョセフ・ジョースター

サブリーダー:アーチャー(エンタープライズ)

チームメイト:ユウキ

       セイバー(坂田銀時)

============

 

 

【C-4・高層マンション(ジョセフの拠点)/聖歴111年1月1日 未明】

 

 

【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険 Part2 戦闘潮流】

[状態]健康

[令呪]残り3画

[装備]なし

[道具]エーテルマシンガン、糸、アメリカンクラッカー、波紋用の油

[所持金]10万QP

[思考・状況]

基本行動方針:黒幕の打倒

1.「聖杯を決める」ための同盟を組み、戦争の早期収束へ向かう。

2.『マークライト街の調査』、『美紗里への訪店』、『二階堂ルイ陣営との接触』。

「三つとも」やらなくっちゃあならないってのがつらいところだぜ。

3.『エドとの打ち合わせ』はいつにすっかな。

[備考]

『エドワード・エルリック』と面識があり、打ち合わせが入っております。

 

 

【アーチャー(エンタープライズ)@アズールレーン】

[状態]健康

[装備]艤装弓

[道具]ジョースター不動産の顧客名簿

[所持金]潜水艦を購入できるレベルの財力(管理)

[思考・状況]

基本行動方針:黒幕の打倒

1.「聖杯を決める」ための同盟を組み、戦争の早期収束へ向かう。

2.ドローンからの監視には警戒。

3.マスターとセイバー(坂田銀時)には呆れる……。

[備考]

 

 

【ユウキ@ソードアート・オンライン】

[状態]健康

[令呪]残り3画

[装備]マクアフィエル

[道具]ハンターとしてのアイテム一式

[所持金]900万QP

[思考・状況]

基本行動方針:最後の局面を見届ける。

1.ジョジョ達に付き合い、戦争の早期収束へ向かう。

2.『マークライト街の調査』で、『美紗里への訪店』で、『二階堂ルイ陣営との接触』だね。

3.頑張っていこう!

[備考]

 

 

【セイバー(坂田銀時)@銀魂】

[状態]健康

[装備]洞爺湖

[道具]原付

[所持金]なし

[思考・状況]

基本行動方針:ユウキ達を守る

1.ジョジョ達に付き合い、戦争の早期収束へ向かう。

2.まっ、気楽に行こうか。

[備考]

『亡虚の龍脈刀』は一段階の霊基再臨されない限り、使用できません。



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003 やっぱマーボーばっか食ってる奴はダメだな 佐倉杏子&キャスター(エリザベート・パートリー)

登場キャラクター
佐倉杏子&キャスター(エリザベート・パートリー)

場所
Aー5(山中に張ったテントの周辺)

時間
未明

作者
◆/dxfYHmcSQ


午前零時時過ぎ、いつもの様に地下室で獲物を嬲り終えたエリザベートは、満足気に頷いた。

 今回の拷問は宝具の試しも兼ねて、サーヴァントとして現界してからこの地で書物を通じて得た知識を元に、朱殷の遊び部屋(レッド・プレイルーム)で作成した拷問器具のみで行ったのだが、結果は上々のものだった。

 生前は用いることの無かった器具達。有刺鉄線、スタンガン、酸、ガスバーナー、有毒ガス、サンドペーパー、鼠や蛇や蜂といった生物達…。

 効果が強過ぎる為や、絶命する時まで永続的に『吸血』の効果がかかる為に未だに使用していない、拷問器具や、毒物、病原菌といったものもあるが、その効果は皆悉く素晴らしいものだった。

 獲物が見せた表情、反応、全てが斬新。全てが新鮮。獲物が精々中の中留まりでしか無いNPCばかりでも、生前では知ることの無かった未知の反応は充分に愉しめた。

 

 「聖杯戦争…素晴らしいですわ」

 

 未だにサーヴァントにもマスターにも出逢えてはいないが、高々NPCでこれなら、彼等彼女等は一体どんな音色を奏でてくれるのか、どれほど無惨に壊れてくれるのか。

 想像するだけで絶頂してしまいそうな程に、快美な感覚が全身を奔る。

 

 「それにしても、このままでは欲求不満が募るばかり…。そろそろ抑えきれません」

 

 エリザベートは今まで獲物を、一定の基準を設けて調達して来た。

 その基準とは、『居なくなっても騒ぎにならない』というものである。

 居なくなっても誰も探さない、それどころか気にもしない。少なくとも居なくなってから数日は発覚しない。そういう手合いを選んで来た。

 理由は無論、面倒事を避ける為。

 即座に騒ぎになる様な者を連れ去って仕舞えば、他のマスターやサーヴァントに目を付けられる事になる。それが単独であるならば兎も角、複数のサーヴァントに目を付けられれば面倒な事この上ない。

 それに、目を付けた主従が単独であったとしても、サーヴァントが相手となればNPCを嬲るのとは勝手が違う。必ず戦闘になる。そうとなればマスターに自分がNPCを嬲り抜いて死なせていた事がバレてしまう可能性が高くなる。

 『今はまだ』マスターに知られるわけにはいかない秘密事である。リスクは出来うる限り避けたかった。

 こういった理由から、エリザベートは主に繁華街で夜間に1人で徘徊している者や、集合住宅で1人暮らしをしている者を選んで獲物として来た。一度毎にばしょをかえ、時間帯をずらす事で、極力バレない様に行動して来た。

 更に一人にたっぷりと時間を掛けて嬲った為もあり、エリザベートによる行方不明者はそれ程噂にはなっていない。精々が都市伝説程度に噂になっているだけだ。それも大して有名な噂では無い。

 もしこれが『アカデミー』や『月海原学園』の関係者を見境なしに襲う様な事をしていれば、今頃は複数の主従に目をつけられ、袋叩きにされていた事だろう。

 だが、全ては本戦が始まる迄。本戦が始まれば、今は迷っている杏子も方針を定めざるを得ない。聖杯を求めて積極的に戦うのかどうか。この聖杯戦争の黒幕をのみ敵と定めて、その打倒の為に戦うのか。方針は違えど戦う事に変わりは無い。

 そして杏子の性格と戦闘能力からすれば、襲ってくる相手や敵対関係になった者と戦う事を否定はするまい。そうなれば戦闘という名の拷問を愉しむ事ができる。

 この聖杯戦争に召喚された目的である、歴史に名を留めた英傑達、その美しい姿を嬲って壊せる悦びを愉しめる。

 

 「あら、もう壊れましたの」

 

  未だ見ぬサーヴァント達を嬲って壊す、血色の妄想に耽っていたエリザベートは、既に獲物が息絶えている事に気付いて、いつもの様に死体を『辺獄』へと棄てに行こうとした時、マスターからの呼びかけを聞いた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「さっきあの神父から連絡があった。聖杯戦争が始まった」

 

 エリザベートを呼び出して数分後。開口一番。佐倉杏子はエリザベートに告げた。

 手には4分の3にまで減ったうまい棒が握られており、杏子の口は、忙しく口内のうまい棒を咀嚼している。

 杏子が現在居る場所はAー5の山中。事もあろうにホームレスとしてこの地に放り出された杏子は、思案の末にキャンプ用具一式を買い込んで山中にテントを張り、同じく買い込んだ水と食料を口にし、寝袋に包まって眠る生活を続けていた。

 以前の様に、無銭飲食や無銭宿泊を行う事も考えたが、相似であり相反する魔法少女である美樹さやかの顔がチラついて、その気は失せた。

 その為態々山中でキャンプしている。この為に杏子は未だにどこの主従にも接触できていないが、恐らくどの主従にも発見されていない。発見されていれば、サーヴァントが基本的に独自行動を取っている事も有り。忽ち襲撃を受けていただろう。

 尤も、杏子の知らぬ索敵手段を擁する敵でもいて、何らかの思惑で杏子を生かしているとすれば話は別だが。

 

 「遂に始まりましたか」

 

 殺し合いが始まった事も有り、声がやや硬い杏子と違って、エリザベートの声は明るかった。朗らかでさえある。エリザベートにしてみれば召喚された目的そのものが始まったのだから、当然と言えば当然だ。

 

 「…やけに嬉しそうだな」

 

 杏子は訝しげに訊く。この疑問も当然で、何しろエリザベートはその武でも軍略でも無く、拷問と虐殺で歴史に名を刻んだに過ぎないのだから。そんな女が殺し合いを前にして平然としていれば、疑問に思う事だろう。

 何しろ魔女や使い魔との戦闘経験がある杏子ですら緊張を隠し切れないのだから。

 

 「フフ、遂に願いを叶えられると思えば、嬉しくもありますわ」

 

 しれっと事実ではあるが、真実では無い返答を返すエリザベート。マスターである佐倉杏子は、エリザベートが遂に汚名を晴らせる時が来たと喜んでいると思っているのだろうが、実際には聖杯戦争そのものがエリザベートの望みである。

 監督役である言峰綺礼が隠し事をしている事に気づいた杏子が、このエリザベートの隠し事に気付けないのは、言ってしまえば杏子自身の境遇の所為だ。

 佐倉杏子は、否、美樹さやかも、巴マミも、そして暁美ほむらも、皆が皆インキュベーターと取引をして、l願いを叶えて貰う代償として魔法少女になった。

 杏子にしてみれば、『願いを叶える為に何かを代償にする』というのは、自身が通った途であり、更に聖杯戦争にサーヴァントが召喚されるのは、『聖杯の奇蹟に願ってでも何らかの叶えたい願いがある』という理由を知っている以上。それ以外の理由、この場合はエリザベートの様に、『聖杯戦争そのものが目的』というのは想像し難いのだ。

 この為に杏子はエリザベートを完全に信じてはいないが、エリザベートが語った願いについては信じてしまっていた。

 これが後にどういう結果を生むかは今のところは不明ではある。

 

 「マスター。貴女はどうなさいますの?願いの為に戦うのですか?」

 

 エリザベートの問い掛けに、結局共闘する事など叶わなかったが、ワルプルギスの夜を打倒する為に、暁美ほむらと作戦会議をした事を思い出しながら、佐倉杏子は切り出した。

 

 「まだ分からない…大体あの神父は胡散臭いし、絶対に何かを隠している。けど、こうなった以上腹を括るしか無い。私には戻る道はねぇし、進む未来もねぇ。だから…取り敢えずはアンタの願いの願いの為に戦う。そしてロクでも無い奴に聖杯はわたさねぇ。悪どい事もしねぇ。それで良いかい」

 

 エリザベートは大きく頷いて杏子の意思を肯定した。

 

 「構いませんわ。マスターがやる気なら私としても大いに結構。それにしても、マスターもあの神父は信じられないとお考えでしたか」

 

 「アンタも疑ってたのか?」

 

 「ええ、隠し事をしている時点で信用できません。あの神父はこの聖杯戦争の監督役。つまりは聖杯戦争に於ける主従の動向を監視し、罰する存在。だからこそ隠し事をしていると解るのですが。

 これでも私は領地の管理もしていまたので、その経験から解りますが、凡そ人を法で従えるには二つの条件が有ります。

 一つは、法に従うことで何らかの利益が有る。租税を納めることで賊徒や外敵から守ってもらえる、というのが分かりやすい例ですね。

 もう一つは、法に従わない事で何らかの罰を受ける。罪を犯せば警吏に捕まり裁かれ罰せられる。簡単な事です」

 

 「つまりあの神父は警察と同じ役割で、私たちに対し警察の様な力を持っている…と」

 

 「その通りです。あの神父が私達に齎す利益が何なのか判然としませんが、少なくともルールに違反したマスターやサーヴァントを罰する力は有るでしょう。

 サーヴァントを罰する以上、おそらくはサーヴァント…それも強力なサーヴァントを従えているはず、でなければ監督役など務まりませんし、サーヴァントを従えたマスターの前に姿を現す事など出来ないでしょう」

 

 監督役を殺害し、その権限を奪い取る事で、戦局を有利に進めようとする者が居ないとは限らない。その様な手合いに対する為にも、矢張りサーヴァントは必須だろう。

 言峰綺礼に対する不信もあり、エリザベートの言葉は杏子にかなりの信憑性を以て聞こえた。

 

 「て事はだ。もし仮にアイツと戦うとしても、私達だけで戦うのは避けた方が良い訳だ」

 

 杏子はエリザベートの言った言葉を逐一吟味してみて、凡その所は正しいだろうと判じた。判じた上で、言峰綺礼と戦う事も有るだろうと思った。

 

 「単独で挑むのは利が有りませんわ」

 

 杏子はエリザベートの言葉を胸に刻む。あの神父がサーヴァントを従えていたとして、何故その事を隠したのかは不明だが、凡そロクな事ではあるまい。

 矢張りあの神父はインキュベーターと同じで嘘は言わないだろうが、隠し事はするタイプだ。信じない方が良さそうだ。

 

 「……………」

 

 杏子は気分を切り替えるべく、残りのうまい棒を口に入れると、追加のうまい棒を取り出して齧り出した。

 

 「それで、最初の方針としてはどうなさいますの?あそこへと向かいます?」

 

 上機嫌のままエリザベートが指し示したのは、南…正確には南西方向で派手に燃えているビッグアイ。昼間でもはっきりと炎が見える程の火勢で燃えているのが、夜の闇の所為で網膜を焼く程に眩しい。

 ただでさえ目立つ高層建築が、夜闇の中派手に燃えているのだ、目立って仕方がないというものだ。

 神父からの聖杯戦争開始を告げる通達を杏子が聞いている以上、深夜帯ではあるが他にも同じ様に通達を聞いた主従が多く居るのだろう─────中には起こされた者もいるだろうが─────当然この騒ぎを知った者は多いだろう。

 その中から何人かは炎上するビッグアイへと集まって来るのではないだろうか?

 

 「そうだな、誰かしら来るだろうし、まずは他の奴等と出逢わないことにはどうにもならないし」

 

 少なくとも魔法少女の力が有れば、襲われても逃げる事は出来るだろう。それにあの騒ぎだ、まさかあの場で再度ことを起こして、監督役や他の主従から目を付けられる様な事はしないだろう。

 

 「ここからでは大分掛かりますわ。変身なさいますの?」

 

 何処となく上ずったエリザベートの声に気づかず、杏子は声を返す。

 

 「此処はそもそも普通の人間じゃ来れる場所じゃねぇ」

 

 杏子がテントを張った場所は、魔法少女に変身しなければ、装備を整えた登山家でもない限り来れる場所ではない。普通の人間は来れないし来ようとも思わない。だからこそ此処にキャンプしているのだ。

 近付いてくる奴がいれば、マスターと判断して良いだろうし。戦闘になっても、人目や周辺被害を考えずに済む。

 

 杏子は空になったうまい棒の袋を、ゴミ袋に入れると、板チョコを10枚ほどポシェットに入れて立ち上がり、魔法少女へと変身する。

 変身して魔力を使えば、ソウルジェムが濁り、魔女と化すのだが─────杏子のが従えるサーヴァントは、ソウルジェムの濁りですら魔力としてもっていく為に、杏子はソウルジェムの濁りも気にせず魔法少女の力を行使できていた。

 でなければ、こんな場所に女子中学生がテントや諸々の生活用品を持ち込む事など出来はしない。

 

 「ええ、誰にも会わないままでは始まりません」

 

 マスターの変身した姿と、他のサーヴァントとの邂逅に心躍らせながらエリザベートは霊体化を始め、その時ふと、拷問室に死体を放置したままなのを思い出した。

 

 (まぁ、構わないでしょう。誰にも見つからないでしょうし)

 

 2人は人がゆくには凡そ不向きな険しい斜面を、整備された散歩堂の様に駆けて行った。

 

 「あ、そうそうマスター。今度ドジョウの地獄煮という料理を食べに行きません?」

 

 「……別に良いけど?いつの間にそんなの知ったんだ」

 

 佐倉杏子には、エリザベートが拷問についての知識を収集していた時だとは知る由はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【地区名Aー5(山中に張ったテントの周辺)/聖歴101年1月1日0:20】

 

【佐倉杏子@魔法少女⭐︎マギカ】

[状態] 健康

[令呪]残り三画

[装備] 多節槍

[道具] ポシェット(お菓子を入れている)

[所持金] 950万QP

[思考・状況]

基本行動方針:

1. 取り敢えずキャスターの願いを叶えてやる

2. ロクでも無い奴に聖杯は渡さない

3.ビッグアイへと向かう

[備考]

Aー5の何処かにテントを張って寝ぐらにしています

キャスター(エリザベート・バートリーがソウルジェムの濁りも魔力として持っていく為に、ソウルジェムの濁りを気にする必要が有りません

 

【キャスター(エリザベート.バートリー)@魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う】

[状態] 健康

[装備] 宝具朱殷の遊び部屋(レッド・プレイルーム)で作成した拷問道具

[道具] 無し

[所持金] 無し

[思考・状況]

基本行動方針:

1.早くサーヴァントを拷問したい

2. マスターに従う。今のところは

3.ビッグアイに向かう

[備考]

この地で得た知識を基に、新しい拷問器具を作成しました。

Bー6の何処かにある廃屋の地下室を『拷問部屋』にしています。

拷問部屋には棄て忘れた死体が放置されています。



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004 長い夜の過ごし方 和田垣さくら&アヴェンジャー(プリムロゼ・エゼルアート)

登場キャラクター
和田垣さくら&アヴェンジャー(プリムロゼ・エゼルアート)

場所
F-6(簡易食料品店)

時間
未明

作者
◆vV5.jnbCYw


『さあ、始めるわよ。私達の革命(パーティー)を』

 

 

 

    さぁ Party

    シャンパンに

    連れってってよTake me

    甘いだけじゃ つまんないでしょ

    More 刺激 You & Me

 

 

 

『勿論よ。まずはどうする?』

 

ここは、グレイチャペル歓楽街「アンダーダウンエリア」

第三次産業が経済の中心となるこの区画は、老若男女の欲望が渦巻いている。

雑草が生えるように酒場が立ち、真水のように酒が消費される、パラディウムシティきっての歓楽街だ。

 

 

    好奇心?

    これバンクシー?

    もっと頂戴 スパイシー

    上っ面の台詞

    気持ちはもう曖昧に

 

 

 

 

 

『まずは情報収集からね』

 

一言でこの町について説明するなら、「五感に悪い場所」だ。

夜でも昼ように眩しく、毒々しいネオンや建物内のどぎつい照明は視覚に悪く、アルコールやたばこの煙、怪しい薬の臭いは嗅覚に嫌な刺激を与える。

酒場や大衆食堂で提供される、味や値段より見栄えを重視した、ソースのべっとりかかった食事や強い酒は味覚を鈍くし、ひっきりなしに飛び交う喧噪や歓声が聴覚に良いわけがない。

そしてこの町に深く関わっていなくても、べとついた空気は触覚を伝ってこの場所の雰囲気になじめぬ者を何とも嫌な気分にしてくる。

もしみなさんがお望みならば、この親不孝を凝縮したような場所の、奇妙な2人の踊り子のやり取りを、お見せしましょう。

 

 

    Dancing Dancing with the Star

    君の瞳

    謎めいたキッス

 

    Dancing Dancing please don't stop

    夜に溶ける

    恋みたいなFeeling

 

 

『私が蒔いた種からは、どんな植物の芽が出ているかしらね?』

 

数多く並ぶ酒場や遊技場の中でも、頭一つ抜けて大きく、中から聞こえて来る歓声もそれゆえに大きい。

そして、その酒場の中心に設置された舞台では、セクシーなフリンジを付けた3人の踊り子達が鮮やかな舞いを見せている。

彼女らの踊りは美しく、時に激しさも見せ、曲の盛り上がりに合わせて客の手拍子や歓声も一層大きくなる。

この区画に入り浸っている者達の大半は、ビッグアイ屋上の爆発など、見向きもしない。

酒場やライブハウスなどで普段から爆発に匹敵するほどの轟音など聞きなれているし、爆発に匹敵する眩しい何かが目に入ることなど日常茶飯事だ。

それ以前に、記念日など知ったこっちゃないとばかりに、年がら年中バカ騒ぎしているような場所だ。

だから聖杯戦争の開幕などお構いなしに、誰もが刹那的な快楽を享受し続けている。

ごく僅かな者達を除いて。

 

 

    ゆらゆら揺られてる

    今夜はもう帰りたくないわ

    やさしいフリをして

    ハートは秘密 Distance

 

 

曲が終わり、観客席から万雷の拍手が響く。

両サイド女性はどこかホッとしたような表情を見せたが、センターで踊っていた赤のフリンジを纏った茶髪の女性は、それが当たり前という表情を浮かべていた。

かと言って、観客はちやほやしてくれるのが当たり前という横柄な態度を示さず、丁寧に会釈したのだが。

拍手の音がようやく小さくなり始めると、もう一度3人の踊り子たちはお辞儀をし、楽屋へと戻っていく。

 

「いやあ、3人共、今日もお疲れ様。」

酒場の支配人がへらへらとした笑みを浮かべながら、今日の給料を1人ずつ渡す。

3人の踊り子はぺこりと頭を下げて、この町で使われているお金を受け取る。

 

 

「これ見てよ。君たちが来てから、この酒場の売り上げが5倍になってね~。これからもよろしく頼むよ~。」

支配人は締まりのない笑顔のまま、3人にタブレットを見せた。

右肩上がりになっている棒グラフが、液晶画面の中に映っている。

しかし、支配人は気づいていなかった。

酒場の売り上げを示している棒グラフとは違う所を一人の踊り子が見ていたことを。

 

 

「ま、こんな感じ。君たち、特にプリムロゼ君はうちの酒場の福の神、いや福の女神だよ。明日も夜9時からよろしくね~。

それと気を付けて帰りなよ。最近この町で行方不明者が出ているそうだし~。」

そう言って支配人は楽屋を後にする。

 

『気を付けて帰りなよ』。それはただのねぎらいの言葉でしかない。

だが、その言葉の後を聞いた時、赤の踊り子と緑の踊り子は踊りの時以上に真剣な表情で目を合わせた。

 

「ユースファ、ちょっと私はサクラと話があるの。先に帰ってて。」

赤の踊り子、プリムロゼ・エゼルアートの態度は、長い付き合いの友達とは思えないほどよそよそしかった。

とは言っても、プリムロゼにとって親交があったユースファとは、この世界にいるNPCの彼女ではない。

元の世界の「サンシェイドで殺されたユースファ」のことだ。

そんなコピーでしかない彼女を友達扱いしろというのがどだい無理な話だろう。

 

 

「分かったわ。私達友達なんだから無理しないようにね。」

プリムロゼの気持ちを探る訳も無く、青の踊り子はそのまま楽屋を後にした。

 

 

「凄いわね。どうしてあんなに上手く踊れるの?」

2人だけになった楽屋で、聖杯戦争のマスター、和田垣さくらは笑顔でサーヴァントに尋ねる。

本日、正確には昨日だが、楽屋での公演の選曲は、マスターがかつて踊っていた曲だった。

『どんな曲でも構わない』とプリムロゼが言っていたのだから、和田垣が元の世界でも踊っていた曲にすることにした。

それを僅か2日でプリムロゼはマスターし、本番に臨んだ。

 

 

「私達の目的は今日の公演の成功かしら?そんなことよりも、聖杯戦争がこれから本格的に始まるって知らせの方が重要じゃなくて?」

 

しかし、プリムロゼの表情は大して変わらなかった。

黙って和田垣は首を縦に振った。

 

 

「これからどうするつもり?」

「特に方針を変えるつもりはないわ。今まで通りに情報収集を繰り返して、その裏でサーヴァントとマスターを殺す。だから『アレ』を回収してきなさいよ。万が一捨てられたらかなわないわよ。」

「そうね。」

和田垣はダンスの衣装から緑のパーカーに着替えたのち、酒場のカウンターに向かう。

 

 

「おや?サクラちゃん、落とし物でもしたのかい?」

スタッフに見つかりそうになるが、黙ってバーのカウンターの下に手を入れる。

彼女が掴んだのは、何の変哲もなさそうなボールペン。

 

「そんな物だったら、僕がもっといい物をあげるのに。」

「いえ、これは故郷を出る時に持って出た、大事なペンなんです。」

「そりゃあ悪いことを言ったねえ。すまんすまん。」

 

 

いかにもボールペンのような小さいものが転がり込んでしまい、なおかつ放置されてしまいそうな場所だが、和田垣はその場所に敢えて置いたのだ。

それを取って楽屋に戻ると、プリムロゼがスマートフォンと悪戦苦闘していた。

なおこのスマートフォンは、持ち主の和田垣とプリムロゼのみがパスコードを知っている。

 

 

「ねえマスター、これ、前の画面に戻るにはどうすればいいの?」

「ああ、それなら、左下の三角の所をタッチすればいいのよ。」

「なるほど。」

 

サーヴァントはマスターの言うとおりにする。

PCやスマートフォン、タブレットなどの電子機器に囲まれた世界からやって来たマスターとは対照的に、サーヴァントのいた世界は、そんなものは一切なかった。

だからサーヴァントは戦いや踊りでマスターを助け、マスターは電子機器の使い方をサーヴァントに教えている。そのような協力関係が築かれていた。

 

 

画面がスクロールされて、元のページに戻ると、そこにはマイクを持ったトイプードルの女性が映っていた。

背景にはドローンが彼女を守るかのように飛んでいる。

 

「はぁ……やられたわね。」

それを見ていたアヴェンジャーの表情は苦々し気だ。

「どういうことよ。」

『やられた』という言葉の意図が分からず、マスターはいぶかしげな顔でアヴェンジャーの表情を見つめる。

 

 

「決まってるじゃ無いの。良い会場を取られたという事よ。私も迂闊だったわ。」

「え?ちょっと待って?」

突然和田垣は、プリムロゼの話を遮るかのように驚嘆の声を上げた。

 

マスターが驚いたのは、犬顔のアイドルの画像の下に書いてあった、その名前だ。

 

「……二階堂ルイ?どうして?」

「あなたの知り合いなの?」

「そんな所かしらね。」

 

かつて和田垣が所属していたアイドルグループ、「ミステリーキッス」のメンバーにして、センターを担っていた少女だ。

ミステリーキッスが解散した際に、逮捕されたと聞いていたが、まさか彼女までもこの場所にいたとは予想外だった。

唯一気になる点としては、彼女は人間のはずなのに、なぜ犬の姿をしているのかということだったが、それは属している団体の変化に伴ったイメージチェンジだということにした。

目元や口元は元の彼女と何ら変わらないし、これぐらいの精巧なメイクなら元の世界でも不可能ではない。

 

 

「で、どうするの?まさか知り合いがいたから、戦いを止めるなんて言わないわね?」

「言う訳ないじゃん。」

 

和田垣にとって、二階堂ルイはあくまで成り上がるための同業者でしかなかった。

ミステリーキッスで共に仕事していたかつての二階堂ルイも、自分ではなく、自分がなり替わった三矢ユキを見ていた。

だからこそ彼女が三矢ユキを殺した罪で逮捕された時も、見捨てて他のアイドル事務所に河岸替えしようとしていた。

もし、二階堂ルイが自分と同じ聖杯戦争の参加者だというなら、他の参加者と同様に排除するだけだ。

知り合いだから躊躇するどころか、知っている相手だからこそ排除しやすいぐらいだ。

 

 

「それよりもアヴェンジャーが言ってた『やられた』ってどういうことなのか教えてくれない?」

「決まっているじゃない。手に入れた会場の差よ。こんな少し大きいぐらいの酒場と、どこかは分からないけど5000人入る場所じゃ、違いは分かるでしょ?」

「そういうことね……言ってることが分かったわ。」

 

 

二階堂ルイが何を求めて観客5000人のライブをやるかは、結局の所不明だ。

しかし、彼女ら和田垣陣営が情報収集のためにライブをやっているのと同じように、何かしら人を集めねばならない理由があるのだろう。

そうでなければ、情報が拡散され、他の聖杯戦争参加者に警戒されてしまいがちになるような真似をするわけがない。

そして、観客5000人と仰々しく書いてあるということは、集まるオーディエンスは多ければ多いほど良いはずだ。

この酒場は、確かに大きいが、それでも一度のライブで収容できる観客の数は、500人が精いっぱいだ。

収容人数は彼女のライブの観客数の10分の1に届くか否かといった程度だ。

 

 

プリムロゼとしては、酒場で踊りを披露しながらその裏で情報収集を行うのは、元の世界にいた時からやっていたことだった。

だが、似たような方法をしてくる相手がいることは、全く考えてなかった。

 

「どうする?今から二階堂ルイのライブへ行く?」

和田垣はすぐに立ち上がろうとした。

 

「ダメよ。ライブの詳細は勿論、サーヴァントの情報さえ無い中向かうのは危険だわ。」

無知は一番、失敗を多く招き入れる。

それはプリムロゼが良く経験していたことだ。

 

 

悪人だと分からず、ミゲルを助けてしまったゆえに、被害を悪化させてしまったアーフェンのように。

領主ヴェルナーの策に気付かず、反勢力軍の多くを犠牲にしてしまったオルベリクのように。

そしてシメオンを家族の仇ではなく、最愛の想い人だと勘違いしていた自分のように。

 

そして、和田垣にもプリムロゼにも共通して認識していたことがあった。

自分達は、弱くはないにせよ、強くも無い。

マスターは殺す覚悟こそは出来ているが、強さこそは一般人に毛が生えた程度。

サーヴァントこそ並みの怪物なら簡単に倒せるほどの実力はあるが、この聖杯戦争で全員を相手にして勝てる自信はなかった。

すなわち『いかに他の参加者の弱点になり得る情報を得るか』だけが勝つために重要なのだ。

 

 

「せめてこの酒場で得た情報をまとめてからにしても、遅くはないわ。」

プリムロゼの言う通り、和田垣は先ほど酒場のカウンターの下で拾ったボールペンのスイッチを入れた。

彼女が持っていたボールペンは、ただのボールペンに非ず。

簡易的な録音システム、すなわち盗聴器の役割を果たしている。

情報集めはたしかに重要なことだが、プリムロゼのスキルを使っても、彼女のかつての仲間であるアーフェンやサイラスには劣る。

だが、それをカバーするのは彼女の愛用していた盗聴機付きボールペンだ。

そもそも酒場、特に高級な酒場は得てして社交場になりやすい。

ゆえに、誰と誰が組んでいるかとか、SNS以上に開けっ広げな話を聞くことが出来るということだ。

 

 

「良かった。きちんと作動しているわね。」

ノイズに混ざって客の喧騒が聞こえて来る。

大半は誰が誰を好きだとか、誰と誰がセックスをしたとか、あいつを殺してやるとか、酒場に来る客らしいものだ。

だが、1つ気がかりになる情報があった。

 

「楽園の歌姫?」

 

2人が共通して気になったのは、そのワード。

声の若々しさからして、この町に似つかわしくない男子学生がこの言葉を発した様だ。

ここは大人の場所と言われているが、それでも悪ぶってこの区画に顔を出し、時には区画内の酒場やカジノにまで入る者はいる。

多くの酒場やカジノ、ラブホテルは最低限の年齢確認はしているが、それも杜撰な物なので、大人びた顔をしている者ならば簡単に通れてしまう。

 

 

「マスター、もう一回今の所を再生してみて。」

繰り返し、その箇所を再生する。

ノイズや喧噪による聞き間違えが無いか、慎重に検討する。

この世界での間違った情報を鵜呑みにすることは、死につながると言っても過言ではない。

 

 

――――…………す……え曲だったなあ!………えは………の方が良いって言っ………けど、俺はこ……のエ………い(エロい?)…えちゃん(姉ちゃん?)達の………が良かったよ!

――――お……え(おまえ?)そんなだ……ら(だから?)どう…い何だよ!やっぱり……(俺?)は……の方が好き……ぜ!………つったって………楽園の歌姫……はあるよ!!

――――まあ………かに(確かに?)……ユーの………ィック・クイ……(クイーン?)は最高だけどさ!!

 

 

やはり、聞こえにくくなっている部分が多い。

だが、それでも2人の学生の会話について分かったことがある。

「楽園の歌姫……ね。」

プリムロゼは怪訝な表情でその言葉を反芻する。

今日日「楽園」という言葉を聞くと、よほど頭がお花畑でない限り、何かしらの怪しさを感じてしまうだろう。

 

 

「誰かしらのサーヴァント、あるいは『楽園の歌姫』そのものがマスターの可能性もあるわね。」

「聞き取った声の若さからして学生かしら……というと、彼女は『アカデミー』か『月海原学園』の近くにいるかもしれないわね……。」

和田垣は未知の相手の居場所を考察する。

 

「探しに行くって言うの?でも、今から行っても深夜だから閉まっているはずよ。」

「誰も探しに行くとは言ってないわ。こちらも情報が掴めないままだもの。」

学生がいる場所と目星を付けても、そういった施設が多い以上は探すのは難しい。

 

 

誰もが何らかの動きを始めているというのに、情報が掴めないという理由で思うように動けないのはもどかしいものだ。

結局盗聴機の残りを再生しても、二階堂ルイのことも楽園の歌姫のことも出てこなかった。

後は歓楽街や住宅街付近に、行方不明者がこれまでの5倍近く増えているというぐらい。

 

 

「どうするか決めたわ。アヴェンジャー。」

和田垣はタブレットを借りて、手慣れた手つきで操作する。

 

 

『二階堂ルイのライブのためにアカウントを作りました!!二階堂ルイが好きな人と情報の交換がしたいです!

彼女のライブについて重要なことがあれば教えてください!!

よろしければお茶でも飲みながらライブについてお話ししましょう!

 

#拡散希望

#二階堂ルイ好きとつながりたい

#二階堂ルイ

#二階堂ルイ5000人ライブ  』

 

和田垣はすぐにいくつかのSNSのアカウントを作り、呼び掛ける。

ご丁寧に彼女の細い指のピースサインまで載せてある。

 アプリによって書いてあることは若干異なるが、内容はほとんど変わらない。

 女という武器を利用してカモを呼ぶ戦略は、かつて同じアイドルグループ市村しほがやらされていたことを参考にした。

 

 

「なるほど。いつかは戦うもの同士だとしても、目的のために同盟を組むというわけね。」

「同盟というよりかは、カモと言った方が正解かな。最も、これで引き寄せられた人が従うかどうかは、アヴェンジャーの能力にかかっているんだけどね。」

 

和田垣が考えた案は、彼女のライブを心待ちにしている者をSNSで呼び寄せ、それをアヴェンジャーのスキルで魅了させ、情報を引き出すということだ。

もしも魅了できない相手、あるいは自分に敵意を持っていたり、正体を知ろうとしている者ならば、秘密裏に殺害する。

 

他にも『楽園の歌姫』について検索してみたが、『楽園』、『歌姫』というありふれた二つ名から、かなり多くの情報が入ってきて、どれがこの世界の彼女を示しているのかは分からなかった。

「とりあえず拡散が終わったわ。いつ返信が来るか分からないし、近くの店で食料の買い出しに行かない?」

「良いわね。これからいつ補給できるか分からないし。」

 

二人は酒場から外へ出ていく。

ここから先は、安易に別れて単独行動もすべきではない。

聖杯戦争が始まったということは、それだけどこへいても襲われる可能性が高いからだ。

マスターは鈍器を、アヴェンジャーはナイフをいつでも出せるように準備をする。

的に襲われることなく、酒場から少し離れた食料品店に入り、和田垣がパックの唐揚げを手に取ったところで、彼女の鞄に入れたスマートフォンから着信がなった。

 

 

その内容とは……

 

 

 

 

【地区名F-6(簡易食料品店)/聖歴111年1月1日1:00】

 

【和田垣さくら@オッドタクシー】

[状態]健康

[令呪]残り3画

[装備]鈍器(詳細は後の書き手さんに)

[道具]盗聴器付きボールペン、スマートフォン(電池残り50%)

[所持金]5千QP

[思考・状況]

基本行動方針:聖杯戦争優勝

1.二階堂ルイのライブの調査、その上でどうするか決める。

2.彼女のライブについて知っている者がいれば合流し、アヴェンジャーの能力で陣営に加える

3.2の相手が自分達に敵意を持っていれば、戦闘や殺害も辞さないが、出来ればしたくない(騒ぎになりたくないため)

3.酒場に来た学生が言っていた『楽園の歌姫(μ)』も気がかり。

 

 

 

【アヴェンジャー(プリムロゼ・エゼルアート)@ Octopath Traveler】

[状態]健康

[装備]短剣

[道具]2人分の食料、飲料

[所持金]1万QP

[思考・状況]

基本行動方針:和田垣を優勝させる

1.酒場の隅でNPCや和田垣と共に公演を行い、情報を集める

2.情報が集まり次第同じ聖杯戦争参加者の下へ向かい、裏で殺害する。



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005 Use Whatever You Can!(1) ザキラ&バラモスゾンビ キャスター(黄川人) 風&サソリ 巴あや&ジークフリート 佐倉杏子&エリザベート・パートリー

登場キャラクター
ザキラ&バーサーカー(バラモスゾンビ)
キャスター(黄川人)
風&アサシン(サソリ)
巴あや&セイバー(ジークフリート)
佐倉杏子&キャスター(エリザベート・パートリー)

場所
A-7(キャッスル)
B-4(アカデミー)
B-4(北東部傾斜地)

時間
未明

作者
◆K2cqSEb6HU


 『キャッスル』

辺境A-7地区に構える、謎に包まれた中世欧州系の城。

常人の移動に適さぬ傾斜面が阻み、その道程は並大抵の者を寄せ付けない。

城の周辺は幽邃な深森が立ち並び、ビッグアイからさえも存在を把握することすらできない。

歴史的背景もなく、何故あるのか誰も知らない。"そこに誰がいるのか"さえも風の噂程度のこと。

 

 しかし、有り体に言ってしまえば、"謎があるだけの古城"で終わっていた。

城単体に魔術的価値があるわけもなく、都市から離れている以上、戦略的価値もさほどない。

そして、元より社会の接点に乏しいがあまりに、誰もロールとしてその地を与えられることもなかった。

特に聖杯戦争に関与することもなく、パラディウム・シティの背景で終わっていたことであろう。

 

   Ж   Ж   Ж

 

 だが、それも今は違う。地は支配され、魔城と化していた。

壮麗な景観は面影を失っていき、"鬼"を模した中世和風の装飾群に侵食。

森林は、侵略によって住み着く魑魅魍魎共の巣窟。瘴気を浴び、無惨に枯れ果てた樹々。

「陣地作成」によって一帯が神殿となった結果、キャッスルは汚染されてしまったのである。

 

 さらに、キャッスルを囲む六角の城郭まで建られていた。

六つの塔を通じて六色の結界が張られており、攻撃や侵入への防御性を高めている。

結界は、再現された元城主の能力。かつての我城で用いられた結界を模したものであった。

これにより、城は一つの要塞として機能を有する。戦略上の存在感もまた向上していた。

 

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

 

「……ふん、やっと始まったというわけか。」

 

 キャッスル4階、玉座の間。

上段の玉座に腰掛ける『ザキラ』は、端末へ渡った情報を見て、ぶっきらぼうに反応する。

このキャッスルは、開始前から既に彼らの拠点として支配するに至っている。

 

 "籠城戦"という一つの戦略において、このキャッスルというのは都合が良かった。

城とは居住地だけでなく、敵からの侵攻を防ぐ施設としての軍事的側面も兼ねている。

拠点に対する防衛面としては聖杯戦争の陣営中ではトップクラスの優秀さを誇る。

 

「…………。」

 

 下段で忠義の姿勢を取るのは、褐色の肌に赤毛の巨漢。

元城主の一人、『ガノンドロフ』。彼もまた上級NPCの一体として再現された。

意思で忠誠を誓っているわけではない。ザキラの洗脳を受け、支配下に治めている。

 

「"ネズミ"はどうしている?」

「……『詠鳥庵』へと向かっております。」

 

 もう一人の城主、イリヤスフィールの従者であるリーゼリット。城が侵略される前に逃亡されていた。

現在、C-7地区を通って『詠鳥庵』に向かっているのが偵察から受けた情報によって把握している。

ザキラも彼女の行動は読んでいた。住んでいる衛宮士郎や別世界のイリヤに助けを乞うのだと。

アカデミーにロールを置いていた以上、衛宮士郎や遠坂凛からマークされているのも事実。煽るなら理も適っている。

 

「引き続き、泳がせておけ。こちらへ煽るためにな。」

「ハッ……。」

 

 逆に来るなら、それでいい。

戦利品にも近い捕虜を囮に敵が来るならば、籠城しているこちらの身としては都合がいい。

どのみち、脅威となる『詠鳥庵』組は早い段階で潰すつもりとザキラも考えていた。

各サーヴァントの戦力もさることながら、開始前から三組の同盟を組むことを見るに、結束力もかなり高い。

明確な敵意もある以上、『詠鳥庵』の存在は聖杯戦争の中で最も強敵となり得る。

 

 ガノンドロフは立ち上がって翻すと、玉座の間を後にした。

 

 

「────やあ!待ちに待った聖杯戦争がやっと始まったみたいだね!」

 

 部屋の退場と交替して、間の中央に赤毛の少年が出現した。

突然出現した彼にザキラは一切動じることなく、冷静な眼差しで見据える。

 

「キャスターか……。」 

「その通り!いつかは君達の敵になるかもしれないキャスター君だ!」

 

 明朗快活な調子で、少年は返答する。

彼はキャスターのサーヴァント、『黄川人』。ザキラ陣営の協力者である。

『詠鳥庵』を倒すため、黄川人のマスターとザキラは一時的な共闘体制を敷いていた。

別に同盟を組んでいるわけではなく、双方の利害の一致に基づいた関係であった。

 

(……"間桐慎二"など敵にもならないがな。)

 

 ザキラの知るキャスターのマスターとは、"間桐慎二"という男であった。

間桐慎二はザキラが観たイリヤスフィールの記憶の中でも、人物像を確認している。

だが、イリヤから見た慎二の姿は"道化"。"無様に殺された"か、"殺した者の腰巾着"か。

当然、ザキラの目から見ても、"取るに足らない小物"といった見解でしかなかった。

 

 それでも表向き、協力しているのは"敵の敵は味方"というところ。

間桐慎二もまた衛宮士郎や遠坂凛に対し、どこか敵意を見せているようで、

同アカデミーで活動し、敵対関係にあるザキラとは是が非でも組みたい様子であった。

 

 実際、黄川人の手回しや戦力強化もあり、ザキラ側に利がないわけではない。

今は『詠鳥庵』を優先するが、間桐慎二の陣営もまた、利用するだけ利用して終わらせる。

見切りを付ければ、隙を見計らってキャスターを殺し、その後で間桐慎二を探し出す考えであった。

 

「戯言はいい。本題を言え。」

「あらら、取り付く島もないネ……。まっ、ボクはマスターの"つかいっぱしり"なだけだからいいんだけど。」

 

 "つかいっぱしり"だと、黄川人も境遇を笑う。

黄川人は"何か指示に従って"出現している様子だが、マスターの慎二はというと陣地に引き籠っている。

慎二とはリモート状態で対面したぐらいであり、直接的に見合わせたことは一度たりともない。

 

 だが、間桐慎二が小人物の臆病者だと言えばそれまでであり、"恐れを成している"と捉えられなくもない。

それにキャスターというクラスである以上、(日瑠子のキャスターのような例外を除けば)基本的に籠って戦うのが定石。

目の前にいるキャスターも、所詮は派遣というものであり、ザキラも間桐慎二について、さほど深く見ていなかった。

 

「それはともかく、準備が出来たぜ?」

 

 黄川人が指を鳴らすと、上空に大型モニターが出現した。

モニターに流れる映像は、いくつかの小型ドローンに備え付けられたカメラからの監視映像。

それは、二階堂ルイのアーチャーの宝具。黄川人側の鬼達がアンダーダウンエリアで捕獲した個体群。

合理的観点からアンダーダウンエリアにはさほど量を割いていないためか、個体数は少なく、利用できる余地が生まれたのである。

 

 当然。"アーチャーの宝具"なことも、本人が打って出る気はないことも、黄川人は千里眼で知っている。

それを知った上で、黄川人は道具作成の応用で改造した。ドローンも道具作成に近い性質な故、改造しやすかったのもある。

代わりにアーチャー側にはアンダーダウンエリアの全個体の映像に対し、「黄川人のストリップショー」を延々と流し続けている。

 

「アカデミーはこれ一つで全部網羅してる。どう?中々、使い物にはなるでしょ?」

 

 黄川人も、自信ありげに主張する。

現在、『アカデミー』を中心として、数体のドローンが潜伏していた。

 

 "アルヴィースの問いかけ"というタイミングに合わせ、アカデミーに自軍を放っていた。

アカデミーにいる戦力は、ザキラが自身の能力により操っている魔獣達。

もう一つは、黄川人が道具作成によって形成した鬼の兵士達。

そして、バーサーカー『バラモスゾンビ』とザキラが洗脳させた上級NPCが一人。

鬼や魔獣の大半が、NPCなど見境もなしに攻撃してしまう点は否めないが、多少の犠牲はつきものと見ている。

 

 最初の相手は、『犬吠埼風』。

準備期間中にアカデミーの学生寮へと移り住んだこともあり、今のアカデミーに存在する唯一の陣営となっていた。

支給された持ち家がC-7地区「再開発地区」というハズレ場所にあったこともあり、空き部屋に移住したという。

ドローンの映像には、今もアカデミー内を奔走し続ける武装した金髪少女の姿が映っている。

 

「じゃ、僕も忙しいからまた後でね。」

 

 そういうと、黄川人は忽然と姿を消した。

 

「…………ふん。」

 

 黄川人の胡散臭い行動に構うこともなく、意識をアカデミーの映像に切り替える。

特に、問題は『バラモスゾンビ』。ザキラも、バラモスゾンビが良い結果を出すとは期待していない。

相性があまり良くない。敏捷も高く、気配遮断を持ち、頭も切れるアサシンが相手など、不利なるのは明白。

 

「さて、どこまでやるか。」

 

 故に、今回は"実験"として見ている。

むしろ"勝つこと"よりも"負けること"を踏まえていた。

ザキラは既に見抜いていた。バラモスゾンビの本質は、"敗北と復活にこそある"と。

停滞と形骸で得た勝利より、可能性のある敗北の方が幾分と戦いの意味がある。

敗北がどこまでの効果を成すか、ザキラはバラモスゾンビ自身へ試しているのであった。

 

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

 

『繰り返します!繰り返します!校内で大量の魔獣が出現しました!

校内の皆さんは速やかに避難し、くれぐれも棟内から出ないようにお願いします!』

 

"キャアァァァァァァァァ!!"

"うおわあぁぁぁぁぁぁぁ!!"

 

『協力してもらえる方がおりましたら、出来る限り、戦闘への協力をお願いします!

繰り返します!繰り返します!校内で……。』

 

"ひいぃぃぃぃぃぃぃ!?"

"ムワアアアアアアア!!"

 

「魔獣を建物には入らせるな!!食い止めることだけ考えろ!!」

「なんだ!?スプリガンやソウルイーターまでいるぞ!?なんでこんなとこにいるんだよ!!」

「召喚に決まっているだろがッ!んなことよりも手ェ動かせッ!!」

 

 アカデミーは混乱を極めた年明けを迎えることとなった。

数え切れないほどの魔獣や鬼が、何の前触れもなく、一斉に出現したのである。

ただ、見知らぬ鬼はいざ知らず、魔獣でさえもアカデミー近辺に生息する種ではない。

アカデミー外から侵入された形跡もない。つまり、"召喚された"ということ。

 

「クソッ!電波が繋がらない!さっきからずっとだ!」

「アカデミーの外は真っ黒!外には出られないって言っているわ!」

「内部なら大丈夫だ!情報を共有し合え!」

 

 外部からの情報や連絡、脱出を遮断されていた。

外に抜け出そうにも、アカデミー間を隔てるように壁に阻まれ、閉じ込められている。

電波はもちろん。音や臭い、光に至るまで、アカデミー内だけに留まっている。

ビッグアイの屋上が発生した爆発も、今のアカデミーには何一つとして届いていない。

 

 

 もっとも、アカデミーにいる者達は無抵抗ではない。

張った錬成陣に誘い込み、ウルフォスやウェアウルフを倒す者達。

霊基を編み上げて構成したシャドウサーヴァントもどきを使役し、スタルフォスを倒す者達。

校内で生成した魔獣にも有効な毒薬を浴びせ、燃え髪大将を倒す者達。

市に隠していた試作品のビーム砲を放ち、ワイバーンを迎撃する者達。

思い思いの力によって、目の前に迫る魔獣や鬼達に応戦していた。

 

 だが、碌に訓練も受けていない彼らでは負傷も多く、建物内での看護も増え続ける一方。

そして、対向する武器も魔力も残量に限度がある。こうして凌ぎ続けるのも時間の問題であった。

 

 

 故に、状況を打開しようと試みる者もいた。奔走する犬吠埼風であった。

 

   Ж   Ж   Ж

 

 厳粛な外観をした講義棟。その玄関前。

講義棟にもまた魔獣の大群がうろついていた。

棟内は非常事態に付き、夜間というのに電気が灯っている。

玄関は簡易的なバリケードで固められ、入ることはできない。

 

「あ、あ、ああ…………。」

 

 玄関も後僅かという距離に、NPCの女子生徒が一人。

女子生徒の顔は恐怖で蒼褪め、腰を抜かしてまま、動けないでいる。

前方には緩歩で迫る三体のリザルフォス。片手に持つ剣を振り回している。

嘲笑うかのように舌をチロチロと回し、ニヤついた笑みを浮かべていた。

 

 先頭の一体が女学生に目掛けて剣を振り落とした。

自分の死を悟ったように、目を閉じて項垂れる女子生徒。

 

 その時、リザルフォスの後ろから横一線に大剣が振り回って

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

 リザルフォスは三体纏めて胴体から切断される。

両断した上半身が飛び散り、下半身が横たわると、炭のように消えていった。

 

 後ろに立っていたのは、犬吠埼風。

黄色を基調とした戦闘服を身に纏い、手には身の丈程をもある大剣を軽々と扱う。

それは"勇者"。風の世界において、対バーテックス用に開発された戦闘システムであった。

 

「大丈夫!?」

「あっ、はい……!」

 

 風は女子生徒の手を持ち上げると、立ち上がらせた。

 

「入口はあっちよ!早く逃げて!」

「あ、ありがとう……ございます……!」

 

 引き攣るような足取りで、この場を立ち去るNPC。

見送ると風は後ろへ振り向く。両手で大剣を振るうと、戦闘態勢に戻った。

風の前方にはキメラやモリブリン、鉄クマ大将などの大群が接近している。

 

「ったく、アンタ達の狙いは……」

 

 風は地を蹴り、前方を浅く飛び跳ねる。

 

「アタシだってのっ!!」

 

 風が敵の間合いに着地すると同時に、大剣の刀身は延びていく。

放たれた回転斬りに、各々も防御を間に合わず、大群は一撃で迎撃される。

 

   Ж   Ж   Ж

 

「これでよしっと!」

 

 大剣の突きによって破壊される、講義棟裏の壁。

壁に刻まれていた何かしらの意味を持った術陣は、衝撃に伴って消滅する。

 

「後は食堂や体育館の方ね。」

 

 翻して駆け出すと、風は講義棟を抜け、キャンパスの道を進んでいく。

"敵陣営がアカデミーに結界を張った"と、今立たされている状況を風も把握していた。

だが、準備期間の内にこうした不審な予兆があったわけでもなく、数分数秒の内に形成されたものである。

アルヴィースの問いかけに意識が削がれる隙を突かれてしまい、醒めた時には既に展開されていた。

 

 これは本格的な結界ではない。即座に形成された以上、土地に根付いたものではないのだ。

この結界にも一帯に展開するために必要な起点ないしは要石なるものがどこかにある筈、と読んでいた。

実際、読みは的中。アカデミーの各所には風にも見覚えのない陣が刻まれ、破壊による魔力の緩弱が確認できた。

 

 そのため、風は陣を破壊すべく、広大なアカデミー内を奔走していた。……もちろん、"彼女一人"で。

 

(アイツはアイツで勝手にやっているしね……。)

 

 当のアサシンは"待ってられない"とばかりに、勝手に行動を始めていた。

目が醒めた頃には自室にいない。念話を送れど、一言二言が返答され、その程度ですぐ切られる。

内容は、『サーヴァントと交戦中』だの、『アカデミーの裏庭だから来るな』だの、『自室に避難していろ』だの、それぐらい。

 

「……ってアタシ、全然期待されてないじゃないのよ!

こうなったらアタシ一人で結界を打ち破って良いところ見せてやろうじゃないの!えぇーーーーい!!」

 

 わかっていたものの、このまま期待もされないままというのは風もスッキリしない。

ここは良い所を見せて、アサシンを見返してやろうと風も意気込みを入れていたわけであった。

 

 "ビクッ"

 

 ……とその時、風も嫌な予感がよぎった。

寒気がするというべきか、謎の鳥肌が立ってきている。

 

「…………。」

 

 恐る恐ると振り向くと、そこにはいたのは、化け提灯。

風の顔が青褪め、口は引き攣り、目はちょっとばかり涙目になった。

 

「ひゃぁああああーーーーっ!?で、で、で、出たぁぁぁぁーーーーっ!!」

 

 走る速度を速め、その場から姿を消した。

振り切られたことに化け提灯も思わず、呆然として眺める。

 

 風は、実はお化けといったものが苦手なタイプ。

怪談話でさえも恐怖のあまり卒倒し、お化け屋敷でも腰が抜けて立てなくなるほどポンコツ。

別に雑魚に遅れを取るなどという認識ではないのだが、それでも、苦手なものは苦手。

化け提灯だの、ゴーストだの、骸骨だの、小鬼だの、呪い人形だのと……。

そういう得体の知れない妖怪達は、風は正直言って、勘弁してほしかったのであった。

 

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

 

 アカデミー北西部の裏庭の一帯。

豊かな森林に覆われたスポットであり、日中は主に自然研究や憩いの場などにも活用されている。

 

「だから!侵入じゃなくって、召喚だって言っているじゃないですかァ~~。なんでわっかんないかなァ~~!」

「まだわからないだろ。直接見るまではな。」

「カメラで見えるってのにさ。まったくこの人ときたら、用心深いったらありゃしないんだからもう。」

 

 点在する道路照明灯と舗装された歩道を頼りに、奥へと進む用務員三人。

律儀な先輩用務員の意向により、「侵入防止柵の異常点検」という仕事を投げ出せないでいた。

 

「今日は衛宮はどうしたんですか?こういうことなら進んでやってくれるってのに。」

「深夜にまでバイトを宛にするな。というか、彼ならとっくに辞めている。」

「うげっ!マジかよ。それはそれでなんかショックだわ……。」

 

 頼りになる男の急な退職願いにショックを隠せないでいた。

よく働く新入りだけあり、アカデミー用務員内の衛宮士郎の好感度も高かったらしい。

 

「あ~あ。退職祝いと扮して詠鳥庵に行きゃあよかったですわぁ~~。そしたら美人美少女の晴れ姿でも拝めたかもしれないのにぃ~~。」

「毎年恒例のノリでアカデミーに残るもんじゃねーよな。定番は人の判断力をダメにするとはこの事だわ。」

「希望的観測で仕事を怠るんじゃない。わかったらきびきび歩いて、きびきび避難所に戻るぞ。」

「「へいへ~~い。」」

 

 目の前に広がる暗闇に足を止める三人。内、二人は顔を引き攣らせる。

先に見える灯まで、4つほど点在する道路照明灯が壊され、。

 

「……ふむ、故障か?」

「いや、故障かじゃねぇでしょ!モーレツに嫌な予感しかしないよ!」

「この暗闇は"進むな危険"という意味だろ!どう考えたって!」

「懐中電灯があるだろう。」

 

 先輩用務員がポケットから懐中電灯を取り出し、周囲を照らし出す。

その先にいたのは、魔獣。息を潜めた何十もの魔獣達が待ち構えていた。

 

「グアアアアアア…………。」

 

 一際大きい怪物が中心に立っていた。

毒々しい紫色をした竜人型の骸骨。焦点のない瞳は三人を凝視している。

バーサーカーのサーヴァント、『バラモスゾンビ』。

 

 青褪める二人を他所に、先輩用務員は魔獣達を数え始める。

 

「骸骨を含めると全部で三十体だな。傾向はウェアジャガーやウルフォスなどの動物系が多い。」

「なんで冷静に分析してんの!?」

 

 用務員達を対象に狙いを向ける、魔獣達とバラモスゾンビ。

ゆっくりと後退し、距離を離す用務員達。先輩用務員だけが対魔獣用の猟銃に手を伸ばす。

 

 ……だが、その時であった。

 

「!?」

「ブモオォォォォォッ……!」

「アオ"ォォォォォォン……!!」

 

 無明の中で響き渡る悲鳴。

 

「な、な、な、何がどうなって……。」

「横から放たれた針によって二十体ほど死んだ。臭いから察するに針には猛毒が仕込んでいるな。」

「だから、なんで冷静に分析できるの!?」

 

 用務員二名は、咄嗟の事態に腰を抜かしていた。

懐中電灯で周囲を照らすと、そこには夥しいままでの死体に溢れている。

 

『────おい。』

「「ひ、ひいぃぃぃぃ!!」」

 

 一帯に響き渡る、姿無き主のくぐもり声。

 

『邪魔だ。死にたくなければ早く失せろ。』

「「わかりましたぁ~~~!!」」

 

 主の威圧感に負け、二名の用務員は一目散に逃げだした。

 

「お助けいただき感謝します!無礼な部下には後で言って聞かせますので。それでは!」

『…………。』

 

 先輩用務員だけは敬礼すると、整ったフォームで退散した。

"なんだアイツは……"と思ったが、目前の敵に意識を切り替える。

本来の敵は、有象無象の魔獣達ではない。中心にいる『バラモスゾンビ』であった。

 

「グゴオォォォォォォォォォォ!!!」

 

 直撃はしていた。だが、針は通用していなかった。

呪いによるものか、自動的に回復し、生半可な攻撃では癒合されてしまう。

常人なら致命傷の猛毒も、耐性があるのか、さほど通用しない。

 

 バラモスゾンビは狂乱の雄叫びを上げると、踏み鳴らしを始めた。

"カラカラカラカラ"と、骨が動く際に生じる奇音だけが周囲一帯に鳴り響く。

奇怪な行動と裏腹に、地踏みに伴う振動が地面を揺さぶり、周囲の魔獣達は怯みだす。

 

「ォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

 冷気を伴った魔息がバラモスゾンビの口元に収束する。

そして、行動は唐突に始まる。冷気を放射すると頭部が徐々に回転、全方位に気が散乱した。

絶対零度の冷気に空間は呑まれていく。残った魔獣達は声すら上げることもなく、死に絶えた。

 

「ガガガガガガガガガガーーーー!!!」

 

 暴れるように周囲に当たり散らしていくバラモスゾンビ。

 

 無明に潜む敵に対し、バラモスゾンビも"見つけられない"でいる。

暗視能力に欠けているのか、空間認識力が抜け落ちているのか、先程から落ち着きがない。

何も見えず、知恵もないが故にとかく答えが見出せない。故の反動で苛立ち、暴走している。

 

 声の主もそうなると見抜いた上で、一帯の道路照明灯を割ったのだ。

回復能力がある以上、攻撃が低いものだと意味がなく、耐性の存在や痛覚がないために弱らせるのも難しい。

その一方。まともにやり合うならば"面倒"と見るぐらい厄介な性能を持つ反面、"思考力"というものがないと観察した。

 

思考のできない骸骨など、下手な傀儡師の傀儡と同レベル。動きさえも評価するならば、"単調で芸がない"と見ていた。

 

(そろそろ、頃合いか……。)

 

 無明より三本のクナイが放たれた。

凶器が正確な軌道を描き、バラモスゾンビの間合い前方にまで迫り来る。

爪の一振りでクナイを弾き落とすバラモスゾンビ。地に落ちてより鳴る金属音が周囲へ響いた。

 

 バラモスゾンビの気が変わる。暴走の怒りが冷静な怒りへと切り替わっていく。

目先は前方を向き、敵意は集中する。口から毒の瘴気が溢れ出し、戦闘態勢に移行していた。

 

 ……と、投石がバラモスゾンビの後頭部に当たる。

 

「どこを見ている。」

 

 小さな灯がバラモスゾンビを照らし出す。

バラモスゾンビは腹立たしげに、石の投げられた背後へ翻す。

 

「こっちだ。凡骨。」

「グガガガガガガガ…………!!」

 

 声の主は風が契約するアサシン、『サソリ』。

樹の枝に腰掛け、用務員が落とした懐中電灯でバラモスゾンビを照らし、挑発していた。

身に纏う「ヒルコ」は解除、今は生身。機動性を取り、「三代目風影」で戦うことに決めた。

 

 歯軋りするバラモスゾンビ。口元に紫の瘴気が収束していく。

放射された紫色の濃霧が樹に直撃し、樹は即座に枯れ果て、地に落ちる枝。

 

 そして、また、投擲されたクナイがバラモスゾンビの頭部に直撃した。

 

「……グガアアアアアアアアアアア!!!」

 

 無明の森の中。誘っているかのように、一本の灯が揺れ動いていた。

咆哮を上げると、揺れる灯を目掛け、一目散に追いかけ始めるバラモスゾンビ。

邪魔な樹々は構うことなく突き進む。黒闇でバラモスゾンビが走る骨の音が響き渡っていた。

 

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

 

 前方一帯より響き渡る、竜群の咆哮。

 

 

  風は食堂前の広場にまで差し掛かり、足を止めた。

手を翳して大剣を繰り出すと、両手で剣を握り締め、中段の構えを取る。

 

 目の前には立ち塞がるのは、50匹以上はいる下級竜種の大群。

ワイバーンエビル、レインボーワイバーン、スノードラゴン、ヒドラ、ドラゴンむし、ドドンゴ、など……。

種族も陣形も統一性というものがない。竜種という縁だけで繋がる、雑多な寄せ集め。

 

 前方一帯を観察した時、風は奥に構える食堂に目を向けた。

二階のバルコニー。ガラスドア越しに抜ける室内灯に照らされ、人影が立っているとわかる。

 

「!アンタは……。」

 

 それは、中性的な風貌をした細身の"少年"であった。

腰には武装として細身の剣を携え、微量ながらも帯び続ける神秘。

左手の甲には、青緑色の光が輝き放つ『令呪』を宿している。

だが、マスターではない。その令呪は"再現物なだけ"であり、歴とした"NPC"である。

 

「ジーク!ジークじゃないの!何やってんのよアンタこんなところで!」

 

 『ジーク』

"大聖杯の管理者"という縁により、世界に再現された上級NPC。

アカデミー錬金術科の生徒としてロールを与えられ、この都市で生活している。

彼の令呪に、風も"マスター"と誤解して絡んだ事がきっかけで、交流を持っていた。

 

 しかし、今の彼は様子が異常であった。

その目からは正気を感じさせず、虚ろな表情で佇んでいる。

 

「ザキラ様の敵は…………。」

 

 微細に揺れ動く空気の振動。床やガラスに亀裂が走る。

ジークの胸元から青白い光を発し、溢れ出す余波に稲妻が放出する。

浮かび上がるジークの身体。屋根を越え、四階程ある高さまで上昇した。

 

「っ……!」

 

 周囲を覆う程の目映い光。

風も光量に直視しきれず、反射的に顔を背け、目も閉じていた。

 

「!!」

 

 徐々に晴れた視界の先、風も驚愕の相に変わる。

浮かんでいたのは、胸元一帯に青白い光を放つ巨大な"黒竜"の姿。

膨大な神秘。周囲に群れる雑種竜達とは比較にならぬほど、圧倒的な存在感。

 

 翼を大きくはためかせると食堂から広場を滑空し、風の正面へ立ち止まった。

 

『俺の敵だ!!』

 

 威嚇の雄叫びを上げる黒竜。竜の大群もまた共鳴しだす。

大気を震わす轟音の振動が一帯に広がり、建物の窓ガラスを破砕するほどの衝撃を生む。

風も突然変異で現れた強敵を前にして、顔が強張り、数滴の冷汗が流れた。

 

 

 その名は、"邪竜ファヴニール"。

"真の竜種"とまで語り継がれるほど、竜にとって最上級の存在。

同時に、対峙する者が"自分というすべてをぶつける必要がある"ほどの脅威であった。

 

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

 

「────!!」

 

 窓からアカデミーを監視していたジークフリートもまた険しい表情に変わった。

 

「……敵か。」

 

 仰向けの体勢で休憩したあやも、半身を起こしてジークフリートの様子に気付く。

 

「この反応、"ファヴニール"だ。マスター。」

「何……?」

 

 あやもベッドから降り、窓からアカデミーを一瞥する。

"何の異常も感じられない"。ただ何も変わらない夜景が流れていく。

 

「……確かに姿も形も見えないが、それでも、"感じる"んだ。」

「お前が出鱈目を言う奴じゃないことぐらいわかっている。……とにかく、確かめるぞ。」

 

 あやもジークフリートには信頼を置いている。

真面目な彼が、そんな出鱈目を言うような相手でないということも理解している。

 

 ジークフリートにはファヴニールの血を浴びたことにより、共感する性質が秘めている。

互いの生存を確認できる程度に過ぎないが、時空を超えて伝わるほどの能力であった。

 

 片手間の荷支度を終えると、あやとジークフリートは窓から飛び降りた。

 

   Ж   Ж   Ж

 

「……ファヴニールとはどういう奴だ。」

 

 近辺の歩道を走りながら、あやは質問を投げかけた。

ファヴニールは、ジークフリートなどの伝承で語られる、邪悪なる竜の象徴的存在。

そして、ジークフリートはファヴニールを打ち倒したことで、伝説に刻まれ、英雄に至ったのである。

 

「ファヴニールはまた名を、悪竜現象。人の欲望が溢れ出た結果として発生する脅威……というべきだろう。」

「現象、か……。」

「俺が対峙した相手もまた、かつては人間だった。それが呪いにより、ファヴニールは発生する。」

 

 ファヴニールとは正しくは竜の固有名称ではなく、呪いに当たる一種の概念。

人が抱く大欲が原因によって引き起こされ、人ならざるモノへと変身させる力となる。

そして、因子には他者に感染する性質があり、感染によりファヴニールとなる可能性も否めない。

 

「……強いか?」

「ああ、強い。どうして勝利できたのか自分ですらわからないほどにな。」

 

 ジークフリートも強気には答えなかった。それほどまでの脅威だからである。

彼が「竜殺し」の称号を冠する所以は、ファヴニールが常人には打倒できない存在にある。

 

 打ち倒すことは、理論や策などがあって成せる行いではない。

ユウキのセイバー「坂田銀時」が虚と死別して成し遂げた、"不死殺し"が然り。

日瑠子のキャスター「フリン」がYHVHを討伐して証明させた、"神殺し"が然り。

"全人生ないしは全存在"を捧げなければ実現できなかった偉業である。

 

 故に、これから戦う相手もまた容易に打倒できるとは限らない。

それほどまでの強敵が相手ともなれば、早期での令呪必須も考えられる。

あやも事態を悟り始め、二人の間には緊張感が走っていた。

 

 だが、ジークフリートにはもう一つ別の疑念があった。

 

(しかし、ランサーは「気配感知」のスキルを持っていた筈だ。何故、彼女に気付かせなかった……?)

 

 それは先程まで戦闘していたランサーの存在。 

胡蝶カナエのランサーが「気配感知」のスキルを所持していることは、ジークフリートも知ってはいた。

もし、ファヴニールほどの存在が出現する予兆があるならば、ランサーが気付いたとしてもおかしくはない。

しかし、現在もアカデミーへは向かっていない様子を察するに、恐らく彼女にさえも"気付かせてはいない"のだ。

 

 このアカデミー近辺は、どこか異様さに包まれていた。

例えるなら、空間全体が「気配遮断」を起こしているかの如く、情報が隠蔽されている。

空気、音、光。内と外を通じるあらゆる情報が擬態し、"何事もない"という嘘を伝えている。

 

「「!」」

 

 アカデミーの校門が目に見える距離にまで差し掛かり、足を止める二人。

周辺に流れる気配の変化が二人にもわかった。つまり、"結界が張られている"、ということだ。

 

(やはり、陣地作成か……。)

 

 再び足が動き出し、二人は突き進んでいく。

これはキャスターの「陣地作成」の応用、アカデミーの一帯を覆うように結界が張られている。

それも一つの結界ではない。幾重もの層に分けられ、この結界を形成していることがわかった。

 

(確かにランサーの目を掻い潜れるわけだ……。)

 

 特別な技術ではないが、手の込んだ造りで出来ていた。

これは情報が行き交う情報社会下において、外部に情報が漏れないために仕掛けにもなる。

また、陣地を"敵を誘き寄せる"などに使うとしても、これならば不要な段階で露見させないことができる。

漏洩防止対策と同時に、種の隠れ蓑としても機能していたというわけだ。

 

 奥に進むにつれ、徐々に様子も変化していく。

周囲の光景は無明の黒に覆われていき、阿吽絶叫と獣の声が彼らに届く。

多数の魔獣の臭いも微かに漂い、魔獣の大群が中にいると理解できた。

 

「待て!マスター!」

「!」

 

 突如。ジークフリートは足を止め、手であやを制止させた。

 

「どうやら、この先は壁のようだ。」

 

 目の前を叩くと、衝撃音が返ってくる。

音は軽いとは言えず、相当な強度があるとあやも判断した。

 

「壊せるか?」

「やってみる。」

 

 返答と同時に手に大剣を出現させると、ジークフリートより袈裟斬りが放たれた。

目の前には一つの裂け目が生まれ、中から漏れ出した薄い光が、暗闇の空間を照らす。

ジークフリートが裂け目の両端に手を置き、力付く引っ張ると一人分が抜けるほどの穴となった。

 

 

 二人が抜けた場所は、校門の先。

目前に広がる光景は、あらゆる魔獣の大群が徘徊するアカデミー。

突然出現した乱入者に反応してか、門番用の魔獣達の視線があや達に集中している。

淡々とした手際であやも竹刀袋から刀を抜き、ジークフリートも瞬時に剣を構える。

 

「……行くぞ!」

 

 魔獣の巣窟と化した学校内へ、二人は踏み込んだ。

 

 

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÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

 

「ザキラさま!」

 

 玉座の横にローブで纏った一体の忍者が出現し、横見するザキラ。

忍者は顔は黒い影に包まれ、目には緑色の光が浮かんでいる。

 

 それは、ガロという名の魔獣の一種。

ザキラや黄川人などに仕える間者であり、市内に多くのガロが潜んでいる。

隠密性はCランクの気配遮断に匹敵し、陣営の大半はその存在を知らない。

 

「どうした。」

「佐倉杏子が動き出しました!」

 

 杏子達の動向は、A-5地区で密かに偵察していた。

処置は"経過観察"であった。開始に伴い、移動するであろうと読んでいたからだ。

 

「なら、『二人』を向かわせろ。」

「ハッ!」

 

 ザキラは眉一つ動かさず、指令を下す。

ガロが再び玉座の間から姿を消すと、正面のモニターに目を戻した。

 

 

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÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

 

 傾斜が緩まるB-4地区北東部に差し掛かっていた時、杏子達は足を止め、後ろへ翻した。

 

「……臭うな。」

「えぇ。獣共がぞろぞろと……。」

 

 先程から気配に気付いていたが、後方から魔獣の大群がこちらに押し寄せている。

 

「ここらで魔獣が来るなんてまずあり得ねぇ。飼われ者だな。」

「どこかの陣営の手先、ですわね。お相手します?」

 

 魔獣達がスクール街近くに来ることはないということは、杏子達も知っている。

それは"防衛隊に撃たれる"という意味に他ならない故、魔獣達も本能的に理解しているからだ。

ましてや一目散に向かってくるなど、野生がやることではない。それも雑多な種が組むなど不自然。

 

 つまり、意図的に仕向けられた敵でしかない。

 

「言うまでもねぇ。……やるぞ。」

 

 杏子は手に一本の槍が出現し、両手で構えた。

 

「しっかし、気に食わないねぇ。テメェの都合でいい様に弄ぶ連中ってのは。」

「…………。」

 

 不満を呟く杏子。浮かべた表情は、"気に入らない"、と言った様子であった。

エリザベートは道具作成により生成した鞭を構えつつ、主の死角から無表情でみつめる。

彼女が浮かべた無表情の意図も、また"気に入らない"、と言った様子なのかもしれない。

 

 

 杏子達の遥か前方には、迫り来る魔獣の大群。

上空からは飛翔する鳥種・竜種の魔獣達、登坂からは下降する四足歩行の魔獣達。

その数、ざっと千匹はくだらない。数十匹ならただの雑魚でも、これほどまでに揃えば軍隊の規模だ。

 

 

 距離と敵数を把握するや否や、二人は坂を駆け上がる。 

杏子達としても "待つ"ことはしなかった。取った行動は"進んで先行を取る"こと。

魔獣達よりも杏子達の方が速い。これより間合いに入るのも時間の問題であった。

 

 

 だが、杏子達の進行は食い止められることになる。

 

「────っ!?」

「……!」

 

 空から降ってきたものは────"矢の雨"であった。

ピンクの軌跡を描いた無数の矢が飛来する。杏子達の前面は矢に覆われた。

 

「あらあら、雨には傘が……」

 

 エリザベートが翳した手。空中に十数本の拷問器具の束が生成される。

 

「必要ですわね!」

 

 左右上下に渡って器具の束が広がり、一つの巨大な盾となった。 

直撃への防御に伴う振動が、盾を次々と震わせ続ける。多くの被弾が轟音となり、一帯に響き渡った。

如何にサーヴァントの道具とはいえ、急造故に耐久性は心許ない。エリザベートの顔も余裕とは言えなかった。

 

 

 次第に、被弾が鳴り止んだ。

エリザベートも拷問器具の結束が解除し、器具は崩れ落ちるように辺りに散らばり始めた。

 

(うるさっ……!)

 

 金属の衝突により発生する騒音が響き、杏子も思わず耳を塞いだ。

この大騒音に比べたら、先の轟音の方が数倍はマシなくらいだと、ひしひしと感じる。

 

 

 空けて数十秒。金属の塊盾による幕が開けた先。

この間、先に間合いに到達した魔獣の大群が、前面一帯に待ち構えていた。

近い距離で僅か、十メートルほど。視界はほぼ魔獣で埋め尽くされている。

 

「……!?」

 

 しかし、杏子の視点を集めたのは魔獣達ではない。

 

「…………。」

「…………。」

 

 先頭の上空に羽ばたく、二頭のシャンタク。

二頭の背には人。双方共に騎乗する少女の姿があった。

 

 一人は、ピンクの色を基とした"魔法少女"らしい衣装を纏った可憐な少女であった。

右手には上端部分に花飾りの付いた弓を、左手には魔力を帯びたピンク色の矢を携え、戦闘態勢を崩していない。

 

 もう一人は、黒と紫の色を基とし、女子制服を模した衣装を着た凛々しめの少女であった。

左手には金を中心に備えた円盤型の盾が装着し、右手にはこの世界ではまず見ない89式小銃を構えている。

 

「……な、なんで……。」

 

 目を見開き、"あり得ないもの"としてみつめる杏子。

それがあり得るならば、杏子はこの準備期間の内に知っている筈であった。

魔力の質は、確かに実物。冷静な部分が、幻惑の類ではなく本物の人間と判断していた。

 

「なんで、まどかとほむらがいるんだよ……!?」

 

 その少女達こそ、杏子がよく知る『鹿目まどか』と『暁美ほむら』であった。

 



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005 Use Whatever You Can!(2) ザキラ&バラモスゾンビ キャスター(黄川人) 風&サソリ 巴あや&ジークフリート 佐倉杏子&エリザベート・パートリー

登場キャラクター
ザキラ&バーサーカー(バラモスゾンビ)
キャスター(黄川人)
風&アサシン(サソリ)
巴あや&セイバー(ジークフリート)
佐倉杏子&キャスター(エリザベート・パートリー)

場所
A-7(キャッスル)
B-4(アカデミー)
B-4(北東部傾斜地)

時間
未明

作者
◆K2cqSEb6HU


 

 ────"Use Whatever You Can"。

 

 

 その意味は、"使えるものは何でも使え"である。

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

 

 図書館屋上の縁から、腰を下ろして眺めている黄川人。

 

 

 目線の先には、もぬけの殻になった「霊基研究所」。

ここでは"霊基再臨"、"再編"、"拡張"といったサーヴァントの「魂の改竄」を可能としている。

サーヴァントを強化できる以上、例外的に聖杯戦争への影響を及ぼし得る施設であった。

 

 何も風一人ためにアカデミー全体を巻き込んでいるわけではない。

もう一つの目的は、"敵陣営の強化"を防ぐため、この「霊基研究所」を襲撃すること。

事前調査で知り得た必要な設備は奪取し、スタッフ達も捕虜として、キャッスルに移送していた。

 

 

 現在、黄川人は"つかいっぱしり"として働いている。無論、表向きな話。

実際にはそれも方便。一つの狙いとしてザキラに組み入っているだけの、建前でしかない。

狙いを感付かせないため、動機を納得させるような人物を置き、加えて程度を低く装っているわけだ。

 

 表向きに居るマスターは間桐慎二。

元は月海原学園にロールを置く一介のNPC。今は彼を鬼化によって支配させている。

マスターの影武者として置きつつ、桜を刺激するための玩具としても置いていた。

 

「さ~てと、集めた情報を簡単に整理でもしておこうか。」

 

 気を切り替え、情報整理に入る黄川人。

周囲にザキラ側の監視はない。今、この場は自分一人だけの空間となっていた。

 

 情報収集は、作業の片手間にやっていた。

「千里眼」。ほぼすべての敵に対し、所在と動向を遠隔から透視で見通すことができる。

さらに"過去視"により、情報を掘り下げる形で把握することまでも可能であった。

マスターの経歴の他、サーヴァントの真名さえも、会話の解読や端末画面の盗視を経て、情報を掴んでいる。

 

「事情がわからない相手陣営は『新条アカネ』だ。

あっちが別世界に陣地を設けている以上、ボクの「千里眼」でも見えやしない。」

 

 ただ、唯一『新条アカネ』の陣営だけは掴みきれない。

彼女達がいるメビウスは別位相に存在しているため、黄川人は観ることも入ることもできないからだ。

月海原にいる時に過去を調査したが、現状では今後に役立つ情報には繋がらない。

 

 加えて、わかりにくいのはアカネのサーヴァントである『μ』。

存在がこの世界と同化しているためか、情報を深く掘り下げて調べることも難しい。

また、「バーチャルドール」など馴染みの薄い概念にあり、正直ついていけない相手であった。

 

「だから、その点は『和田垣さくら』の陣営に唆す。何しろ、情報に踊らされやすい相手だからネ。」

 

 黄川人の手の下に一本のボールペンが出現する。

 

 その点、どうするかはある程度は考えている。

例えば、身軽かつ身近にいる『和田垣さくら』の陣営を利用するなど一つの手。

彼女達が聖杯戦争参加者の下へ向かい、地道に殺害して回るつもりなのは知っている。

 

 ただ、それに対して情報収集力は比較的弱いのが問題点であった。

活動拠点をアンダーダウンエリアの酒場としているため、表社会にいる多くの陣営に関する情報がまず集めにくい。

また相手を知っているが故に言えることだが、非現代人が多いこの聖杯戦争でSNSを利用する陣営も少ない。

他陣営との行動性とは些か適していない面もあり、情報収集面には問題があるわけだ。

 

 それが、黄川人にとってはこれ以上になく、弄びやすい。

 

 

 ボールペンが携帯端末に変わる。画面には二階堂ルイのSNS画面であった。

 

「今後、攻める相手は二階堂ルイのアーチャー『アラン・シルヴァスタ』だ。

……しっかし、能ある鷹は爪を隠すというけども、能ある狼は爪を隠せないみたいだネェ~?

調べたら、隠蔽できない過去の記録がボロボロだ。」

 

 一方で、今後ザキラ以外にも目に付いている陣営もある。それが『二階堂ルイ』の陣営。

アーチャーの真名が「アラン・シルヴァスタ」であることは、ルイとの会話と端末画面より露見している。

さらに配下の鬼達を使って、この真名から生前の経歴を調べさせ、相手の全容は把握していた。

 

 サーヴァントの基となった人物の資料は、図書館やウェブサイトなどに存在する。

それは人間社会に流れ出た情報などではなく、高次元から捉えたかのような記録である。

このアランの資料も、シルヴァスタのことはおろか、"ハワイに失踪した"という最後のことまで

 

「"「不老不死」を得るための儀式としてライブを開く"、とかなんとか……。

どういうわけだか、この手の人間は「不老不死」というものに浅はかな幻想を抱きたがる。

やれ"永遠の支配"だとか、"選ばれし者がどうたらこうたら"とか、愚かなことこの上ない。」

 

 肩を竦め、呆れたように首を横に振る。

彼らが「生贄の儀式」として、5000人ぐらいの観客の魂を集めていることも知っている。

そしてアランの経歴や選民思想、宝具が、「不老不死」という存在に大きく関わっていることも知っている。

 

 「不老不死」という考えそのものに対し、黄川人は"愚か"だと嗤う。

「絶対的な安心」という夢物語に惑わされていることも知らず、物事の本質を見込み違えてしまう。

それは医学と教養が発展した現代社会でさえも、未だに変わってないのだから可笑しいわけだ。

 

「人間は今に気を取られるあまり、過去からは何も学ばない。

形骸化した教養や付き合いだけは一人前な癖に、成長に必要な教養は半人前以下だ。

他者の失敗はおろか、自身の失敗にさえ、何も反省してないなんて、根っからの大ウツケさ。」

 

 二人に対して。せせら笑う黄川人。

過去の失敗と現在の目論見を繋ぎ合わせても、"成長"というものは見られない。

片や、現実逃避。片や、思考の停滞。どちらにしても至る先で、繰り返そうとしている。

 

「成功なんか待っているわけもない。過去と同じく、"自滅"するだけだ。」

 

 繰り返しの先。自分の行動が原因となって、自分を滅ぼす運命に辿ることになる。

目を背けている過去が、客観的に見える真実が、「自業自得」というものを教えていたわけだ。

 

 これから先に起こる展開もまた、その"自滅"というものを迎えるであろう。

 

「……だが、そういう者に限って都合の良いことに気を取られる。

『ライブを妨害されなければいい』、『自分にもはや負けはほぼ存在しない』、なんて考えにね?」

 

 そんな過ちよりも都合のいい現在に気を取られる。

彼らの計画である、「5000人の観客達を生贄とするライブを成功させること」に対する意識。

自らの反省や自滅する運命などないがしろにできるほどの利潤が彼らに待っているわけだ。

 

 黄川人も計画を知っているからこそ、このライブを妨害するのか?……否、"しない"。

 

 一つは、相手が目的達成に専念していること。

逆に妨害してくるかもしれないと思い込みもあり、ライブに警戒心も強くなる。

警戒しているからこそ、会場で対応策を用意するわけであり、その時の隙は少ない。

 

 現に彼らを挑発しているため、来ることに警戒していることもわかっている。

そもそも、気を割いてられないと読んだ上で、黄川人が反応を楽しんでいるのだから、警戒されて当然なのだ。

 

 もう一つは、不死性への信頼。

実際、黄川人でさえも不死になれば、"直接的に"殺すことはできないだろうと認めること。

彼らもその点に安心感と信頼性を持ち、マスター殺し対策としてルイに不死性を与えることを視野に入れている。

 

 故に、彼らは目的達成にまず専念する。

"達成さえすれば、もはや負けはほぼ存在しない"と、そんな風に考えているからだ。

 

「ハハッ!負けも存在するサ。他ならない浅慮な君にはね。」

 

 その浅慮さが、仕掛けるには都合がいい。

黄川人の見る限り、目論見には致命的な盲点が3つある。

 

 一つは、仮に不死性は手に入れたとしても、「対魔力を与える」ことには繋がらないこと。

「対魔力」の確保は、この件には別問題。根底にある技術に神秘のないアランでは与えることはできない。

よって、アラン相手に仕掛けるならともかく、黄川人がルイに干渉すること自体は何の問題もない。

 

 二つは、魂食いに伴う"死者の想い"。……転じて、"怨念"を取り込むこと。

黄川人が「道具作成」によって形成する鬼とは、元より怨念の類から生まれるもの。

故にその怨念を糧にする鬼からすれば、その状況はまさに「鴨が葱を背負って来る」ようなものだ。

 

 三つは、令呪には絶対的な安心が及ばないこと。

黄川人には「自己改造」がある。スキルの応用に、他者の身体を操ることも可能としている。

制御を奪えば、疑似的な魔術回路で成立している令呪を間接的に支配ができ、自在に操れる。

 

 そうした盲点があるが故に、妨害などしなくとも制することはできる。

 

「だから妨害はしない。するのは奇襲さ。」

 

 敵の裏を掻けるタイミングを突いて、仕掛けること。

ライブが成功したならば、終了後の隙を狙い、空間移動でルイを攫う。

金狼ならともかく、アラン単体の攻撃力はさほど高くはないことも把握している。

そのため、『八つ髪』などを使用することも考えには入れていた。

 

 無論、そのために仕掛ける用意もできている。

こちら側の戦闘が今後発生しても、奇襲・撤退に支障を来さないぐらいの予備魔力が。

 

 

 竜種の雄叫びが響く。それが食堂側にいるジーク達とわかっていた。

 

「……まっ。今はそれどころじゃないけどね。

失敗に転んでも、成功に転んでも、どちらにしても御の字だし。」

 

 これが机上の空論にはならないように、立ち回ること。

ザキラへの目論見と並行している以上、この動きはあくまで仮の予定に過ぎない。

あわよくばどちらも獲得する。それまでに黄川人は道化を取るまでであった。

 

「……そろそろ佐倉杏子も交戦するみたいだね。」

 

 「霊基研究所」から後ろへ向きを変える黄川人。

方向は、B-4地区北東部の傾斜地。位置はA-5地区との境目ぐらい。

視線の先には、『佐倉杏子』と『エリザベート・バートリー』が背を向けて佇む。

 

「こっちはこっちで危ない関係だからネ。呆れて物も言えないぐらい。」

 

 当然、黄川人はエリザベートがB-6地区の廃屋で"何をしていたのか"などは知っている。

抑えきれない刹那的快楽に満ちた行動。そして、それが彼女にとってバレてほしくないこともわかっている。

 

 黄川人も「道具作成」の応用で動画や媒体に残す技術も吸収していた。

つまり、「千里眼」で捉えた光景をそのまま証拠映像として収め、他者に流すこともできた。

その気になれば、エリザベートを陥れられる。しないのは、あくまで利用するためにわざと見逃していたからだ。

 

「あの様子なら、まどかとほむらとの戦いには介入しない。

魔獣と戦うしかないエリザベートは手持ち無沙汰になる。

声をかけるなら、それぐらいが狙い目かな?」

 

 ほくそ笑み、手の甲に顎を乗せる黄川人。

 

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 何故、『鹿目まどか』と『暁美ほむら』がいるのか。それが、杏子には理解できなかった。

 

 もし、自分と同じように、"マスター"として来たのならば、杏子も"あり得ない"などとは思わない。

ただ、そうであれば、流石に開始前に気付く。一ヶ月半ぐらいの期間、お互いに気付かぬまま過ごす方がまずない。

最初から"いない"ことと杏子も認識しているからこそ、いきなり現れたことが"あり得ない"わけである。

 

 

 一方、杏子が疑問を掘り下げるよりも先、エリザベートは冷静に答えを見出していた。

 

「上級NPCですわね……。」

「……NPCだと?」

 

 予想外の答えを耳にし、杏子も疑念の表情を浮かべる。

ただし、互いの視線は前方。話を交えながらも警戒を怠ってはいなかった。

 

「えぇ。彼女達から漂う血の匂い、NPCのものですわ。人でもなければ、魔獣でもありません。」

 

 エリザベートも吸血鬼故の敏感さ故にか、NPCの血からその違いがわかる。

生物が自ら生成する天然物の血液などではなく、外的に用意した人工血液というべきものである。

故に、そうしたNPCの血は"科学的な液剤臭"と判断するか、どこか新鮮味を感じさせなかった。

 

「……NPCってのは、「聖杯戦争を成り立たせるための外野」だろ。魔法少女の力まで再現されているわけがねぇ。」

 

 杏子としては、この聖杯戦争における「NPC」という仕組みに、あまりよく知らない。

確かに、縁があった人物がNPCとして再現されているということは、杏子もそれとなく知ってはいた。

しかし、彼女が認識するNPCとは、一般的なゲーム知識などと同様、あくまで「村人A」の存在。

固有の能力が再現されるなど意味がないどころか、戦争の本題とかけ離れる

 

(つーか、まどかは初めて見るぞ……。)

 

 まどかの魔法少女姿を凝視して、杏子も顰める。

再現だったとして、杏子の知るまどかは魔法少女にはなっていない。

その姿は完全に初見であり、どのような能力を使うのかもわからない。

 

「ただ、中には"聖杯に類する力を身に宿した人物"が再現される例もあると聞きますわ。

お二方がどのような方かは存じませんが、それなら理にも適っているかと。」

「……んなわけあるかよ。」

 

 魔法少女の願いや力が及ぶ範囲など、精々限られている。

願いを叶えられた側から、願いを叶える側になるなど、あまりに荒唐無稽な話に思えた。

 

 魔獣達の唸り声が強くなり、勢いを付け始める。行動の予兆であった。

 

「話はやめだ。今はまず戦いだ。」

 

 槍を構え、視線を定めようとする杏子。

ただ、開始の行動を制するように、エリザベートは前に立った。

 

「地上は私にお任せくださいませ。マスターは空中を。」

「あぁ?空中を?」

「道具作成で足場は展開できますわ。もっとも、飛び移ることができるかどうかは貴女次第ですが。」

 

 脇見で後ろの杏子を一瞥するエリザベート。

一方で、自信満々な表情を見せて答える杏子。

 

「……上等。それなら、地上はアンタに任せる。」

「跳躍と同時に展開しますわ。いつでもどうぞ。」

 

 言い終えると、同時であった。

杏子はまどかとほむらが乗るシャンタク目掛け、跳躍した。

地上の魔獣達もまた、エリザベートに目掛けて一斉に駆け出す。

 

「どこに目を付けているのかしら?そこはもう……」

 

 魔獣達の足元に転がる拷問器具達が、"カタカタ"と鳴り出した。

 

「私の空間でしてよ♡」

 

 瞬間。空中を浮遊し、一人でに動き出す拷問器具。

それぞれの役割を機械的な実行し、捉えた魔獣一匹ずつに拷問を開始していく。

魔獣の雄叫びは、苦痛を上げるだけの悲鳴と変わり、エリザベートの顔にも愉悦が浮かぶ。

 

 ムースの足を食い契る、とらばさみ。

 ヴォルフの腹を引き裂く、猫の爪。

 ウリディンムの股を切断し始める、両刃の鋸

 

 流れ出た血は、全て拷問器具に吸い尽くされる。

そして、器具の主であるエリザベートの下に変換。魔力は身体から溢れ出す。

 

「まだまだ、ですわよ?」

 

 彼方へ手を振り翳すエリザベート。

遥か、後方。待機していた群れの頭上に、棘の付いた巨大な車輪が何体も落ちていく。

着地と同時に回転する大車輪、巻き込む魔獣の群れを次々と轢いていく。輪跡には、壊滅した"ミンチ"。

 

 拷問器具は、エリザベートの思うがままに動く。

自身の手足など動かすこともなく、自動的に機能を果たしてくれる。

 

「!」

 

 左右前の三方向より、飛び掛かる勢いで跳躍する三匹のハイイロオオカミ。

 

 

 対するエリザベートは、冷淡な眼差し。

それに合わせ、手に持っていた鞭も青白い光が輝き、電流が走る。

行動は即座。熟練を感じさせるほど自然な手並みで、鞭は振われた。

 

「……お仕置きが必要ね。」

 

 鞭より響く、鋭い衝撃波と激しい感電音。

軌道上に存在するオオカミ達は、一振りで叩き落された。

直撃したオオカミの横腹は燃焼が起き、煙が上がる、全身には流れていく稲妻。

倒れた地面で悶えるハイイロオオカミ。横腹の皮膚の大部分は溶解し、筋肉は剥き出しとなる。

 

 その鞭は、高圧電流と高熱を与える科学兵器。

パラディウム・シティ内の高度な技術力が転じて開発され、実用されている拷問器具の一つであった。

エリザベートはC-7地区の『刑務所』で行われている光景から参考とし、知識に取り入れていたのである。

 

 追い打ちとばかりにオオカミ達に付けられる首輪。

内側に付いた棘がオオカミの肉を組み込んでいき、急速に吸血を開始する。

 

「……アハッ♡」

 

 簒奪した魔力に、エリザベートの身体も潤っていく。

そうして得た魔力は新たな拷問器具を生成し、残存する魔獣達をさらに駆逐する。

サーヴァントに比べれば少々物足りなさも残るが、"ウォーミングアップ"にはいい程度の快楽であった。

 

 

 これは戦闘などではない。一方的な蹂躙。

何百匹もある地上の魔獣達は、一匹の殺人鬼の前に及ばなかった。

 

   Ж   Ж   Ж

 

 石抱用の石、磔用の柱、焼き土下座用の鉄板。

別の用途で使うものであろう足場が、空中に次々と繰り出される。

杏子は魔獣を叩き落としつつ、逃げるシャンタクを追って、足場から足場へ跳び移りていく。

 

 一匹目は、アンセル。

柄の等身が延長し、高速となった穂が首を撥ねる。

 

 二匹目は、ごくらくちょう。

飛び移ると共に、柄を元の長さにまで縮め、真上から下方へ一閃する。

 

 三匹目は、エキドナ。

着地しざま、生成された鉄球付きの首輪を槍に掛け飛ばし、頭部へ被弾した。

 

「────チッ!」

 

 息吐く暇もなく、前方より迫る数本の矢を迎撃。

しかし、下方から襲来した矢に足場の鉄板は破壊され、再度跳躍する。

 

 まどかの矢は、自動追尾。

自在な軌道を描き、全方位360度、あらぬ方向から矢という矢が迫り来る。

だが、杏子は点在する足場によって生まれてしまう死角により、全てが対応しきれない。

空中戦という自由の利かない状況において、不利な状態を強いられていた。

 

 現在。射手のまどかを騎乗させたシャンタクが飛翔している。

足場の拷問器具を騎射で破壊し続け、隙あらば杏子を狙って一撃離脱。

冷淡で、かつ合理的に実行するのみ。杏子が知る限りの"まどからしさ"というものはない。

主意に従い、"障害"となるものに対して矢を射つだけの操り人形であったのだ。

 

「ふざけんじゃ……ねぇ!!」

 

 それが、杏子には気に入らなかった。

見知った者が弄ばれることへの憤りもある、前線にも立たず悠々と操る主への怒りもある。

だが、何よりも「洗脳」という行為そのものに対し、どこか根底的に受け入れられない。

それは他でもない。「洗脳」が、如何に人を不幸にしてしまうものなのか理解しているからだ。

 

 杏子は横たわるファラリスの雄牛の上に着地する。 

それ同時、複数の槍が杏子の後方に空中展開され、一斉に射出した。

途中、飛行する魔獣を巻き込みながらも、投槍は騎乗するまどかへ向けられていく。

 

 だが、その結果は……。

 

「……っ!」

 

 杏子の目前に現れた、"パイプ爆弾"が物語った。

それは初めて見るものではない。察知から一瞬の判断により、槍の鎬で払い除けた。

爆弾の落下より、数秒の経過。爆発に地上のラゴンヌやガメゴン達が巻き込まれた。

 

 視線を前に向けるが、騎乗するシャンタクごと、まどかは既には消えていた。

 

「……後ろか!」

 

 微かな音に察知し、杏子は跳躍した。

後方の上空から放たれたロケット弾がファラリスの雄牛を破壊した。

 

 足場への着地と同時に後方の上部へ身を翻す。

視線の先にはシャンタクに乗るまどかと共に、シャンタクに乗る暁美ほむらも待ち構えていた。

ほむらが手に持つRPG-7は、一瞬にして89式小銃へと切り替わる。

 

 暁美ほむらの魔法は、「時間操作」。

時間停止の能力を使用し、騎乗するシャンタクごと潜んでいた。

 

「…………。」

「…………。」

 

 機械的な動作で、複数の矢と銃弾が同時に杏子目掛けて放たれた。

 

「────うおわっ!」

 

 突如。杏子が急速に後方へ滑り出した。

足場になった器具は、用途の不明なベルトコンベア。

状況を把握するや否や、屈伸運動により頭上へ飛び上がった。

 

 空中に巨大な槍を展開し、足場とする。

杏子は顰め面を浮かべ、目先の二人を睨み付けていた。

自在な矢を放つまどかと時間停止を持つほむら。未だに上手く攻めきれていない。

 

 そして、空の魔獣達も杏子に迫っていた。

ローグル、スノードラゴン、クロード……など、最初の数から2/3ほどはまだ生き残っている。

"鬱陶しい"と、雑魚に対する苛立ちが湧き上がり、杏子の顔もさらに強張る。

 

 空中は、未だ戦闘が続く。

 

   Ж   Ж   Ж

 

(……ああ、嬲りたいですわ……。)

 

 エリザベートは足場になるための拷問器具の生成を続けながら思う。

仰ぎ見る目線は、足場を置くべき空中ではなく、一心に杏子の姿を捉えていた。

勇ましく、必死で、気丈に戦う姿。自分の手で壊したいという欲求が湧き上がる。

 

(まさか、魔獣共が"こちら"にも来ることは想定外でしたが、ウォーミングアップにはちょうどいいですわ。)

 

 陸の魔獣達を放っておき、空の魔獣達を見渡すエリザベート。

 

 実は杏子に対して、伝えていない情報がある。

これがどの陣営の手先であるのか、ということはエリザベートも知っていた。

 

 再開発地区で過ごしていたが故、周辺の情報は粗方知っている。

キャッスルから膨大な魔力が漂っていることも、魔獣がキャッスルに集まっていることも。

彼女も彼女で、拷問器具を操る応用で鼠達を使い、情報を突き止めさせていたからだ。

結果、どうにも"ザキラ"というマスターが城を支配し、"私兵として魔獣達を従えている"と把握している。

 

 だが、結界は厄介であった。エリザベートの力では結界を打ち破れない。

それにザキラも、好みとする英雄像とは程遠い。配下の狂った骨など微塵も興味が湧かず、保留としていた。

故に、あくまで"知らない振り"。ビッグアイに進路を勧めたのは、キャッスルへの関心を反らす目的も兼ねていたわけだ。

 

『──オイオイ……。そんな気色の悪い眼差しを向けたら、愛すべき君の主人もドン引きだぜ?』

「……どこのどなたかは存じませんが。いきなり話かけるのは不躾でなくて?」

 

 どこからともなく、エリザベートの耳に念話が流れ込む。

姿を見せぬ相手に信用も何もない。エリザベートの声色は厳しめなものであった。

 

『生憎、碌な躾なんて習った覚えもないからね。習ったのは""だけさ。』

「それで何のご用で?」

 

 "どうでもいい"、といった風にエリザベートも本題を求めた。

 

『君に"いい話"を持ってこようと思ってね。当世風に言えば、君を"スカウト"に来たのさ。』

「スカウトですって……?」

 

 怪訝な表情を浮かべるエリザベート。

 

『今の関係、崩したいんだろ?いつまでも騙し続けるのも、いつまでも欲望を抑えるのも限度がある。

だけど、君に体勢を変えるための手段もなければ、その先の用意もない。違うかい?』

(────こちらのことはお見通しというわけですか……。)

 

 表情は一転し、冷淡な面持ちのエリザベート。一方の声の主は笑い声であった。

裏で何をしていたのか、現在の自分達の関係性についてどうなのか、全て見抜かれている。

 

『迎えるのは令呪による自害。成す術もない君は無念の退場……ってところだ。

だから、表面上は従うしかないんだろう?"どうせバレないだろう"って、気楽に流しながらさ。』

 

 煽りにエリザベートは顔を顰めつつも、何も言わなかった。

実際に手を出してしまえば、令呪で切り捨てられてしまうことぐらい、彼女も理解している。

そして、拷問しかできない彼女に、器用に切り抜けられる術もなければ、その気もない。

 

 だから、現状を甘んじて、表向きに従うしか選択肢がないのだ。

 

 

 しかし、真相が明るみになったとしても同じこと。

どのみち、エリザベートは信用がゼロとなれば、令呪で切り捨てられてしまう運命にある。

客観的に見れば、今のエリザベートの立場は有利不利を通り越して、破滅しか待っていない。

 

 それが、『エリザベート・バートリー』という殺人鬼の悪癖。

社会的な防御というべき隠蔽を軽じ、やがて告発者を生んでしまう。

結局は、過去と同じことを繰り返してしまい、破滅が再現される。

 

『だけど、安心しなよ。こちら側に就くなら、君の行動への後ろ盾は作ってやるさ。

佐倉杏子から令呪とクラスカードを奪い、マスターから外すこともできる。

ついでに、今後積極的に戦うことにもなるから、面倒な装いも必要なく、したいだけ拷問ができる。

どうだい?君にとって、これ以上にない"いい話"だろう。』

「…………。」

 

 その話は、エリザベートにとっても旨味のある案ではあった。

彼女達のように洗脳されてしまえば、令呪を使用される危険性を気にすることもない。

複数人に目を付けられたとしても、あのキャッスルと魔獣達なら自分を守ることにも使える。

更にザキラの意向に乗って動くことで、今より積極的に戦える機会も増えるかもしれない。

そう考えると、隠れながら機会を窺うよりかは、陣営に就いた方が環境が確かに整っていると思った。

 

「……そうね。貴方の不躾なスカウトは好かないけれども、話だけは検討するわ。」

『期待しているよ。……まっ、でもこちらとしても暫くは明るみに出さず、"内通者"として動いてほしいってのもあるけどね。』

 

 エリザベートもとりあえずは検討として流す。

見据えたような反応を見せると、主は"それじゃあ、また後でね"、と言って念話が切れる。

 

("内通者"、ですか……。)

 

 その意味を、エリザベートも理解していた。

まず、移行するためには相手方に贈る"実績"などが必要性であるということ。

さらに深読みするならば、そのために"しばらくは自重しろ"ということにもなる。

 

(……こちらも様子見するだけですわ。都合よく事が運ぶかどうか。)

 

 確かに提案は、旨味のあるの話である。

だが、相手が相手だけあり、今のところ、どうにも信用しきれない。

相手からは変な期待を抱かれているようだが、現段階では宛にするつもりもなかった。

"場合によって、そちらを利用する"。見解はあくまでそれだけであった。

 

 再び、マスターの佐倉杏子に視点を戻す。

ただ、その眼差しは、最早心酔だけではなくなりつつあった。

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

「今頃、"様子見"って考えてるところだろうね。まっ、どうなったって時間の問題だと思うケド。」

 

 ケラケラと笑う黄川人。

悠長に考えたところで、エリザベートに待っている展開は"裏切り"か"破滅"のどちらか。

どうあがいても、それは「時間の問題」という話でしかない。

 

 しかし、どちらに転んだところで、黄川人には何の痛みもない。

所詮は自業自得であり、誤って消えたとしても"使える駒が減った"だけのこと。

これから待ち受けるであろう彼女の顛末には、さほど関心はなかった。

 

 次はアカデミーに視線を戻す。

 

「こっちはこっちで勇者サマが大健闘しているね。

勇者部五箇条、"なるべく諦めない"だったっけ?」

 

 視線の先は、ワイバーンの群れを大剣でなぎ倒す風の姿。

 

 風がアカデミーに用意した陣を破壊し回っていることは知っている。

確かに、結界の質は低い。陣を破壊すれば解けるほどの簡易的な結界であることは事実。

しかし、破壊された陣などいくらでも修復できる。黄川人からすればまだ"遊び"の範疇である。

 

 もっとも、その気になれば一人の風を狙って殺すこともできていた。

それをしないのは、死んでしまっても別に構わないが、まだ殺すつもりはないからだ。

この一連の流れは、あくまで"陽動"。彼女達の利用価値はまだまだある。

 

「……おっ。そろそろ、巴あや達と合流しそうだね。」

 

 少し離れた地点から、あやとジークフリートが進んでいるのが見て取れた。

狙いは、風だけではあや。一人を対象とするよりも、二人一辺にやった方がちょうどいい。

 

「この展開じゃあ、この二組はまず組む。それが合理的ってもんだからね。

でも、それぐらいじゃ、こっちに問題があるわけじゃない。」

 

 今後、どういう流れになるかというもの。

黄川人もザキラも、先に起こるであろう展開を読んでいる。

 

 それは、「風とあやの二組が同盟を組む」という展開。

それは仕方がない。魔獣や鬼の大群にファヴニールまでいる以上、争っている場合じゃないと判断する。

故に一先ず、この状況では協力し、互いにザキラを倒すのが先決という流れになることだろう。

 

 この数と勢力を見れば、どのみち、組まれてしまうのは目に見えた話。

ただ、別に犬吠埼風と巴あやだけが組んだぐらいでは大した問題にはならない。

 

「問題はこれからだ。これから先、出来る限り多くの味方と組むことになる。

それでアカデミーが終われば、次に行き着く先は『ジョセフ・ジョースター』のところだろう。」

 

 次に彼女達が取ると思われる行動は、「より多くの味方を取り入れる」こと。

 

 まずは近くにいた佐倉杏子と合流し、同盟を組むことになる。

過去を踏まえると似たような臭いの持ち主なので、この関係は相性が良い。

 

 その次、C-4地区に居るジョセフの陣営に向かうと思われる。

杏子達がC-4地区『ビッグアイ』に向かっている以上、その案に則る方が妥当だからだ。

 

「どうであれ、あっちと組めば、聖杯戦争の落とし所がいい。

それは『詠鳥庵』の陣営も同じところだ。あっちもいずれは同盟を組む。

それで邪魔となる勢力を潰すために共闘する……ってのが、次の展開だね」

 

 戦争の収束を目的としているジョセフ側と同盟を組めば、戦いの落とし所が良い。

風もあやも今は混沌とした状況であるため、"とりあえず戦うしかない"という認識があるだけ。

決着を付けられる環境があるなら、則るに越したことはなく、故に同盟に入ると考えられる。

 

 その場合、遠坂凛やイリヤスフィール、衛宮士郎の『詠鳥庵』に加え、レオナルド陣営と組む可能性は高い。

"ザキラを倒すため"という思惑は一致する。故に合理性も考え、彼女達は一先ずは打倒のために共闘することであろう。

そうなれば、次は犬吠埼風・巴あや・佐倉杏子・遠坂凛・イリヤスフィール・衛宮士郎・レオナルドの計七組と戦う展開。

参加者数の多さや各参加者の思惑もあってやむを得ない話だが、些か敵が多過ぎてしまうことは否めない。

 

「……というわけで、これから合流を避けていかないとダメだ。」

 

 だからそれを見越して、次なる展開を用意している。

できる限り、彼らとの合流を避けさせ、共闘から遠ざけるための展開を。

 

「まっ、後はザキラがどこまでやれるか次第だ。」

 

 縁から立ち上がり、黄川人はその場から姿を消した。

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷ ÷

 

「やぁああああーーーーー!!」

 

 横一文字に振るわれた大剣が、5体の雑竜達を同時に切断する。

風の表情にも、疲れが浮かぶ。半数ほどやっと削ったが、まだ優位にはならない。

 

 目指すは、食堂脇の陣。

しかし、溢れる雑竜達の妨害を受け、辿り着くことができない。

事態が一向に進展しないまま、早十数分以上は経過していた。

 

「…………っ!!」

 

 横方数メートルから放たれるファヴニールの息吹。

即座、盾にすべく大剣を投擲し、風は横方へと飛び上がった。

火炎に飲まれ、見る影もなく溶解していく風の大剣。

 

 風はドドンゴの背へと着地する。

 

「何よアイツ、めっちゃ強いじゃない……!」

 

 思わず、不満を吐露していた。

こんな巨竜。正直、まともにやり合える相手などではない。

息吹の火力はさることながら、こちらの攻撃は微塵も通らず、振るわれる爪や尾は速い。

まずは"陣の破壊"と"雑竜達の駆逐"を優先に、風もファヴニールを避けている。

 

 だが、不満は何より、"納得いかない"からであった。

"聖杯戦争に上級NPCが使用される"という事態が、風には納得いかない。

 

 アカデミーにはジークやゼルダ姫達もいるため、上級NPCのことは知っていた。

ザキラが洗脳能力の類を持っている様子は、アカデミーにいる風も知っていた。

しかし、彼らは"NPC"。聖杯戦争に関与すべきでなければ、利用されるものではない。

可能性はわかっていたが、このような事態になることを風も認めたくはなかった。

 

「というか、チートでしょ!こんなのって!」

 

 謂わば、チート。つまり"不正"という見解。

"サーヴァントとマスター"というあるべき聖杯戦争の基本形から逸脱している。

挙句にサーヴァント以上の戦力を所有するなど、チートと言わずして何と呼ぶべきか。

 

「うわっと……!」

 

 足場のドドンゴが前転を始め、風も跳躍した。

跳躍の要領で、飛行するワイバーン達の背を踏み台に飛び移っていく。

 

「……はぁああっ!」

 

 翳した右の掌に、逆手向きの大剣を出現させる風。

目先は、食堂。陣がある壁へ向かい、風より勢いよく大剣が放たれた。

 

 一直線。壁に大剣が突き刺さり、刻まれていた陣は消失した。

 

「よし、次は……。」

『…………。』

 

 着地から即座に構え。風の両手には新たな大剣。

残る雑竜達の視線を集中する。大半数は、未だ余力有り。

ただ、ファヴニールだけは何故か、風の方を見ておらず、玄関方面を向いていた。

 

「コイツらをどうするべきか……。」

 

 破壊したことでこの場に留まる必要はなくなった。

理由はよくわからないが、ジークの意識は逸れている今がチャンスである。

この隙を活かし、まだ行っていない残り一つの体育館に急ぐことも可能であった。

追っ手は来るであろう。だが、正直に相手していられるほど、自分にもアカデミー側にも余裕はない。

 

 

 ……と、その時。玄関方面の道から二名の人物が風の視界に入った。

 

「!!」

「「……!」」

 

 あやとジークフリートの主従がその場に止まる。

それぞれ得物の剣と刀を手に、戦闘態勢に入った。 

 

(う、嘘っ!?こんな時に……!?)

 

 風は動揺する。別陣営の介入。

巨竜の相手でも厄介だというのに、サーヴァントの相手などやってられない。

 

(犬吠埼風……。サーヴァントはここにいないのか……。)

 

 あやは冷静に状況を判断する。

この状況で表に出ていない以上、サーヴァントが潜んでいる様子はなく、不在と読んだ。

 

「…………。」

『…………。』

 

 一方、ジークフリートは風よりもファヴニールを見据えていた。

ファヴニールもまた、視線はジークフリートを捉え、戦闘態勢に入っている。

 

(令呪でアサシンを呼ぶべき……いや、でも、この状況ならアイツの対応も厳しいわね……。)

 

 早くも令呪を使い、サソリをこちらに呼び戻すべきか。

だが、サソリも急に召喚されたところで、この状況で上手く立ち回れというのはかなり厳しい。

 

(……そうだ、"アレ"があったわ。一度退くならサーヴァント相手でも通じるかもしれない。多分。)

 

 風にも状況を切り抜ける"手段"を持っていた。

サソリでも、「サーヴァントでも通じると言えば通じる。耐性がなければの話だがな」と評するものであった。

サーヴァントがこちらに向かってきたタイミングに合わせ放ち、食堂の物陰でアサシンを呼ぶというのが手。

 

「……聴きたいことがある。」

 

 しかし、困惑した状況の中、ジークフリートは口を開く。

 

「"彼"は何者だ。」

 

 目の前に立つファヴニールを問う。

何故、このような者がいるのか、ジークフリートにはわからなかった。

 

「……その子は、上級NPCよ。"ジーク"、って名ね。操られているのよ、ザキラって奴にね。」

「…………。」

 

 状況のフォローとして、口を開く風。

 

『……俺はザキラ様に従う……。ただそれだけだ!』

「……確かに彼自身の意思ではないようだ。」

 

 一先ず、起きている状況は理解した。

別の聖杯戦争の記憶はないが、彼は"ジーク"なる第三者であること。

ザキラという者によって操られ、聖杯戦争に巻き込まれているということ。

そして、彼はNPC。いずれにしても殺してはならない存在に当たること。

 

『……やるのか。』

『ああ。彼は助けるべきだ。』

 

 ジークなるものを"助けるべき"だということが、ジークフリートも理解した。

 

 溜息を吐くあや。こうなったらセイバーは梃子でも動かぬ。

確かに、ジークフリートが竜を無視して、サーヴァントのいない風だけを攻撃すれば、手っ取り早く済む。

"隙だらけのマスターを攻撃し、令呪を奪う"というのは、戦争としては合理的な判断である。

 

 しかし、ジークフリートはそれを納得はしない。

元はと言えば、このアカデミーにはファヴニールと戦うために来たもの。

ましてや、巨竜を無視してマスターを襲うなどジークフリートにはできない判断だ。

 

 どのみち放っておいても、あやにファヴニールの危害が及んでしまうことは否めない。

だから、あやとしても間違っているとも思わない。この場は諦めることとした。

 

『……ただ、マスター。君はこの場から下がってほしい。その刀では今居る他の竜種の相手は厳しいぞ。』

『……。』

 

 もっとも、それ以前にあやが太刀打ちできる余裕もなかった。 

 

 目の前にいるのは数十匹はいる竜種の大群。

超人的なパワー故に纏めて相手ができる風に対し、対人向きなあやでは雑竜の相手は容易とはいかない。

特に普通の刀では通じないほど強硬なドドンゴや上空を飛び回るスノードラゴンなど、圧倒的に不利。

下手すれば、敵マスターと戦うよりも先に竜種に負け、殺されてしまう恐れすらある。

 

(……あら?こっちが狙いじゃない?あの竜と戦ってくれるならラッキーだけど。)

 

 風も敵が襲う気がない様子に気付く。

少なくとも、あちらのサーヴァントからは自身への敵意を感じられない。

目線と方向はファヴニールから離さず、どこか彼が相手をするように示唆している。

そういう展開に事が運んでくれることは、風にとっては幸いであった。

 

(マスターはそれでも別。ただ、刀一本じゃねどうにもならないでしょうね……。)

 

 マスターはそうとも限られないであろう。

しかし、相手マスターは無表情を装っているが、面持ちは余裕には見えなかった。

 

 風の目から見てもあやに、勇者のような特殊な武装や力があるとは思えない。

あくまで、対人用の武装。この状況でそれが護身として機能しきれるかどうかも怪しい。

 

(……一か八か。賭けてみるか。)

 

 風も背に腹は変えられなかった。

来た相手もこの事態は想定外かもしれないが、自分も余裕をかましてられる状況じゃない。

 

「ねぇ、そこのアンタ。アタシと手を組まない?」

「…………何?」

 

 あやにとっては思いもよらない提案が投げられる。

 

「こんな状況で聖杯戦争をやるつもり?フェアじゃないわよ、こんな戦い。」

 

 風は内心、期待などしていなかった。

相手のマスターと共闘を申し込もうとなどとは、風自身も思わない。

聖杯戦争が始まって早々、しかも見知らぬ相手と出会っていきなり組むなど以ての外。

 

 だが、現状はイメージしていた聖杯戦争からかけ離れている。

基本、参加者同士が戦うものである筈。上級NPCや魔獣が関わるなどフェアではない。

こういう展開を良しとは言えない。まともにやるぐらいなら、目の前の相手と組んだ方がマシだった。

 

「…………。」

 

 あやもどこかその意見に共感していた。

良しとは言えないのは風にとっても、あやにとっても同じ。

個人の戦争に上級NPC・魔獣や鬼の大群を使ってくるなど、規模や次元が違う。

フェア云々など気にする柄でもないが、敵の手段に納得いくわけでもない。

 

『……マスター。ここは組むべきだろう。

彼女の言う通り、この状況下で聖杯戦争をやっていられる余裕はない。』

 

 ジークフリートも冷静に提案する。

余裕がない以上、この状況で令呪を奪うなど二の次、三の次。

目の前の相手に専念するためにも、一先ずは組んだ方がいいと判断した。

 

(…………仕方がない。)

 

 あやも案に妥協する。

正直、あやはこの戦争で仲間など組むつもりはなかった。

相手とは戦う以上、あまり関わる必要がないと考えていたからだ。

 

 だが、今はそれも違う。

これからの戦いを考えると、余程じゃないが単独で渡りきれそうにない。

まずは、障害となる大群を倒し、勝ち目のある状況を作らなければならない。

 

「……ザキラ達を倒すまでだ。」

「!」

 

 仲間を組むことは了承する。

今は、呉越同舟。協力し合って一緒に困難を乗り越えなければならない。

ザキラ達を倒し、あるべき聖杯戦争の形に戻すことが先決だから。

 

 

 

 

 

 ────だが、転機は突如として訪れる。

 

「────っ!!」

「……えっ!?」

「────!」

 

 風とあやの地面に陣が発生した。

突然の事態に、困惑の相を見せる二人。

魔法陣の周りには障壁。二人も身動きが取れない。

 

 ジークフリートも瞬時に不覚を悟る。

この緩みかけた隙こそが、敵の狙いである、と。

 

「マスター!!」

 

 次は、ジークフリートが動くよりも先。

瞬きする間もなく、風とあやは光の中を姿を消えていった。



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006 WiLL 遠坂凛&セイバー(ライカ) レオナルド・ビスタリオ・ハーヴェイ&セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)

登場キャラクター
遠坂凛&セイバー(ライカ)
レオナルド・ビスタリオ・ハーヴェイ&セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)

場所
C-5(島)
C-4(センターロード街 道路)

時間
未明

作者
yu sato


「先に来てたか……」

 それぞれバイクに乗った凛とそのサーヴァント、ライカは黒塗りの高級車の脇にバイクを置いた。

 次に手首にあるスイッチを凛とライカは押す。すると身につけていたライダースーツとマスクが粒子状になって消え、普段着の恰好――といってもこれが凛の礼装なのだが――になった。

 これはミザリィの店から購入した変身スーツである。流石にこのような物はこの都市でもSFの領域で、バイクで移動するにはこれが一番便利だったのだ。

 その分、料金も高くついた。さらに凛の手の届かない金額だとヒーロースーツというまさに子供向けの、とはいっても身体能力まで強化されるものがあったのだが。

 

 C-5地区にある湖には島がある。丁度戦いの舞台になるように。

 その中、林をかき分けて凛とライカは進んでいた。

 本戦開始前から、戦う約束をしていた相手と会うために。

 

 島の中央部はわずかな草のみでまるで決戦用にあつらえたような場所であった。

 その中心に、凛と決戦の約定をかわした相手、レオナルド・ビスタリオ・ハーヴェイとそのサーヴァントがいた。

 スーツ姿にネクタイ、革靴と男装だがよく見れば美形の女性だとわかる。

 

「遅かったですね、ミス遠坂。またサーヴァントに付き合って所用でも?」

「う、うるさいわね。こいつが勝手しまくりなのはこの一か月半思い知らされたわよ」

 凛は頬を赤く染めていった。

 

 何しろライカは都市内を所かまわずバイクで走りまくり、並行世界から集められた食べ物を買い食いし、人々に元はどんな国に住みどんな政治形態だったのか尋ね……といった具合に殆どじっとしていなかった。

 結果として凛もまたライカに付き合うことになったわけだが、同時にアカデミーでの研究成果の発表として特許を取ったアプリに独自のスパイウェアを仕込み、と最低限は聖杯戦争の準備をしていた。

 その時にはライカは流石におとなしく護衛として付き添っていたのが、誰かが来れば話しかけるのには凛も頭を抱えた。

 その為、結果として並行世界の遠坂凛を知っている衛宮士郎とイリヤスフィール・フォン・アインツベルンと知り合い、色々と言い争いをして最終的に同盟を組むことになったわけだが……。

 

「でも、こうして来た以上、やることは初めから決まっていた。その覚悟はできている」

 凛とレオ。二人のマスターは正面から対峙し、視線をかわしあう。

「僕のサーヴァント・セイバーのアルトリアを紹介します。アルトリア、挨拶を」

 レオの手に従い、一歩歩を進めた男装の少女が名乗った。

「此度の聖杯戦争において、セイバーのクラスにより現界したアルトリア・ペンドラゴンです。

 此方におわすレオナルド・ビスタリオ・ハーヴェイをマスターとして剣を捧げ、彼を王とするために戦う次第です。マスター、サーヴァント共々良き好敵手であらん事を」

 頭を下げたアルトリアに対し、凛は一瞬気圧された。

「堂々としたものね……。引き当てたサーヴァントがブリテンの“過去にして未来の王”アーサーなら無理ないか」

 無意識に下がった凛の一歩前にライカが進み出た。

「名乗られたならこちらも返すべきだな。オレの真名はライカ、クラスはお前と同じセイバーだ」

 

 ここにある『天の聖杯』でのサーヴァントはあらゆる並行世界、多元宇宙より召喚されている。その為、同じ真名であってもまるで異なる英霊である事例も起こりうる。

 英霊という境界記録帯はあらゆる時代の他の英雄の逸話をある程度知っている。だがそれはその英霊の所属する世界の知識であって、多元宇宙の同真名の英霊の場合、経歴、人格など全く異なるケースもあるのだ。

 よって、サーヴァントは相手の真名が自ら口頭で述べられた時点で、対象の大まかな履歴がダウンロードされるように『天の聖杯』によってプログラムされている。

 アルトリアもライカが『アルトリア・ペンドラゴン』と名乗られた時、アルトリアの経歴を知ったように、同じく『ライカ』という真名を告げられた事でライカの経歴を知った。

 ライカ。狗奴国王ヒメキコソの皇子にして、初代倭国の大王。後に一つの島国を『倭』から『日本』へと統一する『大和朝廷』に繋がる始祖の王。

 

「レオ。彼は日本という国の祖王にあたる英霊です」

 アルトリアがレオにライカという英霊の履歴を簡略に説明する。

「日本ですが。僕が物心ついた頃にはすでに国家として崩壊しているのですが、そこの祖王となると、まだ神秘とやらが残っていた時代、超常現象が当たり前にあった頃の英霊ですね」

 だとすれば彼もまた神秘を宿し、超常現象を当たり前のように引き起こせる、ということだ。

 無論、自身のサーヴァントのアーサー王が負けるはずがないが、油断をしていい相手でもない。そうレオは判断した。

 

「さてと、レオ。あんたに聞きたかったことがあるのよ。あんたから見てこの都市はどう思った? 

 私たちマスターの価値基準を計り、叶える願いの犠牲の重さを知るためにこんな大掛かりな都市を造ったってルーラーは言っていたけど」

 そうですね、とレオは腰に手を当てた。

「爛熟。その一言に尽きるでしょう。ですがそれは別の宇宙から奪い続けることでしか成り立たない世界。

 そして多様性と言えば聞こえがいいが、純人類種による亜人への差別。その亜人たちでさえ差別が起こり、街に住まうことが叶わない人たち。そしてガラクシアと名乗るテロリスト達。

 このような満たされた世界、欠乏がない世界でも無慈悲な出来事が起こるのなら、やはり全ての人を導ける『理想の王』が必要なのだと再確認しました」

 ふう、と凛が息をついた。

「わかったわ。あんたが全然変わってないってことがね! 生き方も寿命も生き死にも全て管理されて、ただ生きているだけで未来がない停滞した世界のどこが理想的なのよ!」

「いいえ、西欧財閥が支配を始める前から停滞は始まっていました。世界を管理したのはそれがあの世界の寿命を長引かせる一番の方法だったからです。

 ですが、この聖杯があればその必要もなくなる。誰もが正しく、平等で、無慈悲な死を迎えない理想社会を造れるでしょう」

「それはあんたの価値基準においてでしょ? あんたの価値で正しく、平等に管理される。そんなの箱の中の蟻とどこが違うのよ」

「随分酷いことを言いますね。人を蟻呼ばわりとは」

「ひどいとは思うけど、希望も幸せもなくただ生きているだけの世界になるなんて私には耐えられない。

 あんたが『天の聖杯』に必要な『理』がどんなものか、考えただけでぞっとするわ」

「ですが、貴女は自分の身勝手さも傲慢を知っていて、それでいて他人にそれを共有しろとは言えない。そう、貴女には人類を導けるだけの『理』が無い」

 ここで凛は押し黙った。

「貴方が救えるのは貴方の見える世界だけ。だから貴方は僕に勝てない。人間すべてを救うには人間ではいけないのです。もちろん僕も自身の『エゴ』というものがある。

 それを捨て去り聖杯を使えば新たな『理』の元、『理想の王』、星を照らす光になれる。

 現在西欧財閥の支配下は地球の3割ですが、そこからは不満の声は出てこない。聖杯を使えば残り7割を救うことも可能でしょう。

 それも嫌なら……羊になれないなら死んでください」

 二人は会話を止め、にらみ合った。 

 

「ところでアルトリアとか言ったか。お前、聖杯にどんな願いをかける気だ? オレは受肉して新しく国造りを始める気だ。お前は?」

 マスター達の話が中断したため、ライカはサーヴァント同士で話をしようと思い、アルトリアに問いかけた。

「私が願うのは王になるための『選定の剣のやり直し』です。私よりも王にふさわしい人物がいるのではないかと思い、彼ならば国の崩壊も防げると思い、サーヴァントとなることを受け入れました」

「つまらねえな、どんな国だって必ず亡ぶもんだ。見た感じ、お前は放蕩に明け暮れていたっていたわけでもなさそうだし、懸命に統治していたなら別にお前の代で滅んで悪い道理なんてないだろ。

 自分の責任として受け止めきれないから、他人に委ねようってだけじゃねえのか?」

 ここで初めてアルトリアが怒りの表情を見せた。

「ライカ、2000年以上続いた国の祖王である貴方には分からない。飢えた者同士が一片の糧食を奪い合い、一部の富める者が権力を奪い合い、海からはさらに飢えた者が攻めてくるあの世界を。

 私とていつかは滅ぶと分かっていた。分かった上で剣を取ったのだ。それが人でなくなることであっても。みんなが笑っている穏やかな国を造り、その最後を迎えるために『理想の王』になることを受け入れたのだ」

 アルトリアは両手を見つめる。かつて選定の剣を抜いた時のように。死の寸前、敵も味方も殺しあった末の屍の山の上のように。

「それでもなおあの終わりは承諾できなかった。だから私じゃない誰かならもっと理想の統治ができたのではないかと信じ、私はサーヴァントとして召喚された」

 アルトリアは両手を握り締めた。

「貴方こそ、なぜ国を改めて造る必要がある。王侯としてふるまうためか」

「勘違いするな。オレは国を造るといったが別にそこで王になるわけじゃねえ。そこを拠点に別の星に向かい、そこで国をまた造るんだ。

 そうして星々をつないでいけばいつかは地球にだって富を分け合えるだろう。オレがやりたいのはいろんな人々や物や文化が出たり入ったりする国造りだ。

 もしオレが王になるとすれば、それは宇宙の星々の果てまで行きついた時、名乗るのは『宇宙の大王』だ!」

 レオ、アルトリア、そしてマスターであるはずの凛まで全員あっけにとられ、言葉が出てこなかった。

 一筋の風が凪いで、ようやくレオが口を開いた。

「大言造語もここまでくれば笑えませんね」

「そりゃよかった。本気だからな」

「貴方はその夢のために、全ての人間に自身と同じ強さを求められますか?」

「全ての人間じゃなくていい。オレと同じ向こう見ずな人間だけで十分だ。

 それにきっと、お前が思っているより人間ってのはずっと強かなもんだぜ」

「それが本当にできるとでも?」

「できるさ、オレと凛が組めばな」

 唐突に話を振られた凛は驚いた。

「ミス遠坂、本当に彼の夢に乗れるのですか? 途方もない鉱物資源、人的資源の浪費となりますが」

 さらにレオも凛に尋ねた。

「……本音を言うと私はライカの夢に憧れていても、そのための犠牲を許容することができそうにない。

 だけど……停滞した世界を動かすためなら、こいつの夢に私の夢を乗せたい。子供たちが笑っている、そんな希望ある未来を」

 その言葉にレオは頭を振った。

「半端ですね。だから貴方達は世界を覆せないのですよ」

「それを可能にするのが聖杯よ! 私は聖杯を手に入れる。あんたみたいな選民主義の権化に渡されるより遥かにましだわ!」

「……これ以上のやり取りは無用と判断しました。アルトリア」

 その言葉でアルトリアは魔力を解き放ち、白銀と紺碧に輝く甲冑に身を包んでいた。

「上等! ライカ! 全力でやっちゃって!」

 ライカもまた魔力を解き放ち、蒼い上着に木製の肩当、胸当、籠手。腰には草摺を装備する。それぞれには鉄の装飾が施されている。

 

 凛、レオ共に無言で互いのサーヴァントから離れる。全力のサーヴァント戦に巻き込まれないためだ。

 

 そうして、午前零時。二人のマスターの端末から神父の開始宣言がなされ、遠くのビッグアイ屋上で爆発が起こった時。恐らく最初の本戦でのサーヴァント戦が始まった。

 

 二人は同時に風を、雷を纏わせ突進し、得物を相手に向かい振り下ろす。

 高鳴る金属の衝突音。踏み込みで砕ける地面。そして互いの魔力放出により、組み合った得物の間からライカの背後に雷が、アルトリアの背後に風が巻き起こった。

 鍔迫り合いの状態からアルトリアが剣を捻ってライカのそれを弾き、脇構えからの切り上げ。ライカは弾かれた剣の威力を流して体勢を緩めず、そのまま渾身の逆胴。

 そのまま二人は互いを確かめるように剣を相手の剣に撃ちつけ続ける。

 撃ち合う度に雷が鳴り、大地に幾多もの穴を穿ち、焦がす。

 撃ち合う度に風が弾け、木々を十数本程根子から吹き飛ばす。

 互いが剣を技なく叩きつける行為。それだけでその場は相手へ届かない魔力の放出によって雷を伴う竜巻を引き起こしている。

 凛、レオ共に決闘の場から100m以上離れている。それだけの距離を取り、防壁を張らねば巻き込まれて死ぬほどの危険なフィールドとなっているのだ。

 

 裂帛の気合と共にアルトリアが切り上げ、ライカを上空に弾き飛ばす。当然竜巻に巻き込まれ皮膚を、肉を断たれるとこの場にいる誰もが思った。

「神仙術・返し山彦の術!」

 だがライカは剣を弧月状に回し、相手の発勁――魔力弾を受け止め、自身の気を上乗せして攻撃する返し山彦の術で場に残った竜巻を絡めとり、剣に凝縮して纏った。

「神仙術・無空殺風陣!」

 続いてライカは無数のかまいたちを纏う旋風を竜巻に上乗せし切っ先をアルトリアに向かい気合と共に放つ。

 竜巻は互角の魔力放出故、蓄積された魔力の塊。それが圧縮された大渦は正に大気の咆哮だった。

「レオ! 私の後ろに!」

 アルトリアの言葉で急いで背後に向かうレオ。

「風王鉄槌!」

 真名開放による、風の鉄槌。それによって裂かれた竜巻は風の断層となり、アルトリア達を境に島を鋭角に切り裂いた。

 切り裂かれた断層には水が一気に轟音を立て流れ込む。飛沫がアルトリアとその背後にいるレオに降り注ぐ。

「下風颶風剣!」

 竜巻を放つと同時にライカは、既にアルトリアの頭上にいた。掛け声と共にアルトリアを串刺しにせんと迫る。

 アルトリアは脇構えの剣勢をとり、ライカを両断せんとする。

 それを見たライカは二本の手裏剣をアルトリアの頭部に向け投擲した。咄嗟に剣で弾くアルトリア。

 突き下ろすライカ、突き上げるアルトリア。

 二人の得物が、互いの肩に突き刺さった。

 痛みを介することなく、ライカはアルトリアの剣を蹴り、後方へ飛ぶ。

 全てはライカにとっては予定通りの行動。アルトリアの剣の間合いをつかむため、自分の剣と肩に突き刺さった感覚から刀身の長さを読んだ。

『これで剣の刃渡りを見切られてしまったか』

 アルトリアは臍を嚙んだ。

「アルトリア、ここまでです」

 アルトリアがライカに対し、踏み込もうとしたとき、レオの言葉が止めた。

「これ以上はお互い宝具の展開になるでしょう。ですが、この序盤での決着は望みません。

 ミス遠坂、貴女もそうでしょう?」

「……ムカつくけど、その通りね」

 ライカの宝具はその気になれば5分でこの都市を殲滅できる。だがそれは特段強いというわけではない。確かに並の対人宝具クラスに比べれば威力は桁違いだが、それ以上に範囲が大雑把すぎるのだ。

 アルトリアの『約束された勝利の剣』も同様。この場所ではどうやっても市民に犠牲が及ぶ。

「ミス遠坂。貴女が自身のセイバーの夢である国造りに答えを出した時『セラフ・スタジアム』にある『決戦場(アリーナ)』で二人きりの決着をつけましょう」

 それ以降、レオは凛を見ることなく乗って北である自動車の方に向かった

 アルトリアは元の男装に戻り、レオについていく。ライカは鎧と剣を虚空に帰した。

 

「人々を安全に管理し、完全な平等を、穏やかなる死を与える理想の王か。オレにはできねーしやりたくもねえ生き方だな。

 そんな事までしてあいつらはどんな未来を見たいってんだ?」

 ライカは腰に下げた袋から、自家製の傷薬を肩に塗り付けながら言った。

「アーサー王は穏やかな亡国。レオは完全な選民による管理社会。どっちに行っても息が詰まりそう。私はこう見えて欲深だから」

「……まあ同じ島国でもオレ達の国は襲われるどころか難民がやってきてたからな。余り事情は汲み取ってやれなさそうだ」

「へえ……変に気を遣うんだ。でも戦闘では……⁉」

 凛は端末の着信音で何かしらの異常があったことに気づいた

 

 アカデミーには詠鳥庵とミラーリンクしているワークステーションとサーバーがある。

 さらに都市の監視カメラにある顔認証システムのアプリは凛独自のスパイウェアが仕込まれている。

 顔認証アプリを使えば自動的にデータが凛のサーバーに送信されるようになっているのだ。

 

 そのアカデミー側のサーバーと連絡が途絶した際、その異常事態の着信音をあらかじめ凛は設定していたのだ。

 

 すぐさま端末を展開し、アカデミー内の監視カメラの映像をチェックする。だが繋がらない。

「間違いなくキャスターがらみね。結界をアカデミー全体に貼られているわ」

「狙いは何だと思う?」

「多分魂の改竄が出来る施設。あれを抑えられたら、自分のサーヴァントを勝手に強化させられる」

 それだけは何としても阻止しなければならない。だがそれと同じくらい、凛は学校に通った経験を思った。

「……アカデミー、結構楽しかったわね。授業や試験はきつかったけど」

 思わず上を見上げる凛。

 顔を元に戻した凛は既に一端の戦士の顔だった。

「行くわよ、ライカ。アカデミーに」

「シロウたちはどうするんだ?」

「衛宮君達は多分放っておいても、あっちの爆発の方に行くだろうからメールだけしておく。

 ライカは宝具の使用準備をしておいて。最悪二人以上のサーヴァントと戦うことになるかもしれない」

 二人はバイクのおいてある場所へと走っていった。

 

 戦いの跡地は、林が無惨に凛達からバイクが見えるほどに破壊され、地面には幾百もの小クレーターがある。鋭角に切り裂かれた島には今も水がなだれ込んでいる。

 一般人には何が起こったのか推測さえ不可能だろう。

 

 

【C-5 島/聖歴111年1月1日 未明】

 

【遠坂凛@Fate/EXTRA】

[状態]健康

[令呪]残り3画

[装備]call_gandor(64);

コードキャスト。ガンドを放ち、対象に小ダメージとスタンを与える。

call_fortune(128);

コードキャスト。対象にダメージを与え、3ターンの間、幸運を低下させる。

call_beam(256);

コードキャスト。ビームで対象にダメージを与える。

[道具]ナイフ、バイク、ライダー変身スーツ

[所持金]100万QP

[思考・状況]

基本行動方針:聖杯をレオには渡さず、明るい未来を造る。

1.明るい未来を造るため、レオに聖杯を渡さないため聖杯が欲しい。

2.やっぱりレオとは相いれない!

3.宇宙進出か……。

[備考]

『衛宮士郎』『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』と同盟を組んでいます。

 

【セイバー(ライカ)@雷火】

[状態]魔力消費(小)、肩に刺し傷(治療済み)

[装備]鉄の神体

[道具]手裏剣、苦無、集めた薬草による傷薬。

[所持金]100万QP

[思考・状況]

基本行動方針:聖杯で受肉し、新たな国を造り、宇宙へ進出する。

1.受肉して国を造り、宇宙へと飛び立つ。

2.自分の価値に全てを染め上げる『理想の王』なんて下らねえ。

3.実はアルトリアの方はあまり否定できないんだよな。つまらねえとは思うが。

 

 

 

 

「なぜ見逃したのです」

 自動車を運転するアルトリアは、主に対し詰問した。

「私が勝利したとしても、取り返しのつかない傷を負うと判断したからですか?

 それなら無用な心配だ。私の手に『全て遠き理想郷』がある限り、いかなる傷を負っても即座に回復します」

 助手席のレオは、窓に肘をかけ、頬を乗せていた。

「少し、あのサーヴァントとミス遠坂について考えました。

 停滞から変化に転ずるには穏やかに、誰も傷つける事がないようにしなくてはなりません。

 それについて、あの二人と戦うことは何かのヒントになるのでは……と一瞬迷いましてね」

「宇宙で国造りですか……。僕の世界では夢物語にすぎませんね」

 レオは現実を口にする。恒星間移住などおよそ不可能だろう。

「ですが、後に残る無惨な光景を直視しても、前に進む。あれが国造りを為した英雄というものですか」

 宇宙進出。それは西欧財閥が資源の無駄遣いとムーンセルへと物理的に至る道を封鎖するため禁じた行為。

 ゆえにレオも切って捨てるべきなのだが……あの英霊の言葉が胸に残すこの感覚はいったい何なのだろうか?

「レオ。貴方の理想は正しい。ですがどこかで停滞から変化へと転じるのであれば、あのサーヴァントの言葉をどこか心の片隅にでも置いてください。

 ……疑い無き正しさなど、既に正しさから外れているのですから」

 顔の向き、表情を変えずにアルトリアは言った。

 

 運転の最中、アルトリアは以前の聖杯戦争を思い返していた。

 冬木市第四次聖杯戦争。そこで出会ったイスカンダルを。

 彼もまたサーヴァント達を従え、星の彼方まで征服するぞと言いそうだ。

 最もあのライカというサーヴァントと出会えば笑いながら殺し合いになりそうではあったが。

 だが、ライカもまた正しいだけの統治などつまらないと言いそうな人物だ。

 いつか決着をつける必要がある。アルトリアはハンドルを握り締めた。

 

 

【C-4 センターロード街 道路/聖歴111年1月1日 未明】

 

【レオナルド・ビスタリオ・ハーヴェイ@Fate/EXTRA】

[状態]健康

[令呪]残り3画

[装備]vanish_add(a);

コードキャスト。対象の有利効果を全て解除する。

bomb(32);

コードキャスト。対象にダメージを与え、GUARDを2手スタンさせる。

[道具]なし

[所持金]1000万QP

[思考・状況]

基本行動方針:聖杯の入手して理想の世界を創る。

1.僕たちに敵はない。必ず聖杯を手に入れ理想の世界を創る。

2.だが、あのセイバーの言葉に少しでも聞き入ったのはなぜだ?

[備考]

 

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】

[状態]魔力消費(小)

[装備]約束された勝利の剣

[道具]自動車

[所持金]なし

[思考・状況]

基本行動方針:レオを真の王にするために手を貸す。

1.レオを王にする。

2.選定の剣をやり直す。しかし……。

3.ライカとは必ず決着をつける。

[備考]

 



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007 死者と生者 エドワード・エルリック&バーサーカー(空条承太郎) アヴェンジャー(ガラクシア)

登場キャラクター
エドワード・エルリック&バーサーカー(空条承太郎)
アヴェンジャー(ガラクシア)

場所
D-2(シカルゴ街「ラストアンコール」)

時間
未明

作者
yu sato


 D-2地区にある「ラストアンコール」市営図書館、コンサートホール・劇場・会議室・展示室などを擁する複合施設。文化交流にもうってつけの場所だ。

 そこで現在飛び交っているのは弾丸である。

「射殺許可が出ている。応戦せよ!」

 防衛隊と、ガラクシアグループが撃ち合う中、突然鋼製のロープがガラクシアグループを襲い、纏わり、縛り付けた。

 防衛隊がロープが出た方を見ると、そこには錬金術顧問の姿があった。

「ビル周囲の人間はあんたらが相手してくれ。オレは屋上のテロリストを無力化してくる」

 エドワード・エルリックは両手を合わせ、地面にあてた。

 すると見る見るうちに地面から柱が生え、石板が組み合わさってゆく。

 あっという間に屋上まで届く階段ができ、防衛隊の面々はぽかんを口を開けた。

「後よろしく!」

 エドと、その後ろには学生服の屈強な男が階段を上っていく。

 それを見た防衛隊の面子は銃声で事態が終わっていないことを思い出し、戦闘に入った。

 

「やっと現れたな、テロリスト達を陰で操っていたサーヴァント!」

 階段を上り終わったエドは、そこにいた少女――否、違った。マスターに与えられたサーヴァントのステータスを読み取る透視力でエドは少女はサーヴァントだと認識できた。

「貴様の名は知っていた。エドワード・エルリック」

 少女が口を開く。思ったより幼い声だった。

「私達ガラクシアの者達は心臓の魔術回路を励起状態にし、手を重ねる合図で暴走させ、爆発する。

 その仕組みを魔術を知らずによくぞ見抜いたものだ。おかげで自爆し損ねた同士が大勢いる」

「錬成陣を二つに分けて、合わせることで術を発動させるタイプの錬金術師を知っていたからな。

 マスターを狙うために人を巻き込んで無理やり自爆テロなんて起こさせてんじゃねえ!」

「無理やり? 貴様は勘違いしている。我々は自分の意志で自己を証明しているのだ」

「何の証明だ!」

「我々が人類史の繁栄の裏で切り捨てられた者達である証明だ」

 そう語るガラクシアの瞳には深い憎悪の念が込められていた。

「例えばだ。一つの王国の民50万人がほぼ皆殺しにされたとする。

 その恨みの業火は消すことが出来るだろうか?

 消せたとしたら、それでどのような恩恵が得られるのだ?

 得られたものは、果たして労力をかけただけの価値があるのか?

 恩恵から得た未来はいかなるものか?」

 それを聞きエドには閃くものがあった。国土錬成陣により不老不死に限りなく近づいた父親と『お父様』の存在を。

「お前は……その王国の民50万人の魂から作られたってのか?」

「魂ではなく血だがな。だが彼らの意志は私に受け継がれている。ガラクシアとは王国の名であり、民たちの怨念により作られた自我ある明日無き兵器。つまりは私の事。

 明日を考えられるのは未来を得た者たちだ。だが私達『亡霊(デッドフェイス)』には過去の恨み、憎しみ、怒りしかない!

 もし、貴様が先へ進むことしか考えないのなら、我々はそのために切り捨ててきた者たちだ!」

 それを聞いたエドの脳裏に浮かぶのは、救えなかった一人の少女。思わずエドは手を握り締めた。

「……ふざけんなって怒鳴りたい一方、成程ってどこか納得できる自分がいる。オレにも過去への怒りってのがあるからな。殺しはしなくても一発以上ぶん殴りたいやつがいるが、それを我慢した奴がいるから俺も我慢した男がいる。

 オレがあいつを倒し、先に進む今でも忘れられない、忘れちゃいけない事がある」

 エドは左手で右腕を強くつかんだ。

「だからオレは先に進む。だけどその過程で得た痛みから逃げることはしねぇ! そしていつか進んだ先には……救えなかった人たちに報える道があるって信じている!」

 強い意志を込めた瞳でガラクシアを見つめるエド。それを聞いたガラクシアは、承太郎に視線を向けた。

「エドワード・エルリックのサーヴァント。貴様はどうだ? 英霊となった今は敗者に何か感じることはあるか?」

 承太郎は帽子を深くかぶり直した。

「俺から言えることはただ一つ。『恨み』は人間が受け継ぐものでも『カス』の部類という事だけだぜ」

「そうか……ならば貴様から死ね!」

 そう言ったガラクシアの手が円筒状に変換されていく。組み上げられたものは大砲。

 ガラクシアは承太郎に砲口を向けて弾丸を発射。

「『オラァ!』」

 対して承太郎は身動きせず、承太郎の側に現れ立つ者――スタンド・スタープラチナを出現させ、弾丸を拳で弾き飛ばした。

 はじかれた弾丸は、承太郎達の遥か後方で爆発し、閃光が二人の影を作る。

 その影に沿うように二人はガラクシアに向かい突進した。

 ガラクシアは砲弾を連射。それをことごとく承太郎は弾く。

 続いてガラクシアは腕を長い刀に変え、横凪ぎに振るいマスター、サーヴァント共々真っ二つにしようとする。

 スタープラチナは白刃取りで受け止め、気合を入れてへし折った。

「食らい尽くせ、わが同志達よ!」

『イタダキマース!』

 その一瞬をつき、ガラクシアから人形サイズのガラクシアがボコボコと分裂して生まれ、エドたちに襲い掛かる。

 ある者は砲、ある者は刀、ガラクシアと同じ武装を体に合わせたミニチュアサイズで携えて。

「ミニチュアでも殺傷力は本物じゃねえか!」

 エドは地面に横周りしてかわし、承太郎は片っ端から人形ガラクシアを叩きのめす。

 ガラクシアは両者が対応している間に間合いを取りバックステップ。

 エドはガラクシアの着地に合わせて両掌を打ち鳴らし、屋上に両手を付けた。

 そこから屋上の一部が鋼製のロープに変じ、ガラクシアを縛り上げる。

「捕まえた。これから色々と吐いてもらうぜ」

 エドが勝ち誇った笑みを浮かべた。

「馬鹿め、捕まえられたのは、貴様らの方だ!」

 嘲笑と共にガラクシアは自分の身体を爆弾へと変化させ――

 

「『スタープラチナ・ザ・ワールド』!」

 

 ――時は『静止』した。

 

 全てが停止した世界の中で、承太郎はガラクシアに近づき、爆弾が臨界状態に達している事を見て取った。

「やれやれ、これじゃあぶっ飛ばすしかねえな」

 承太郎はスタープラチナの地を這うアッパーカットで。

「オラァ!」

 ガラクシアの身体を、ロープを引きちぎる力を上空に浮かせた。

 半壊したガラクシアは十数メートルは飛んだところで停止し。

「『時は動き出す』」

 吹き飛んだガラクシアは空中で爆発した。

「何だ⁉」

 突然の空中の爆発に驚くエド。

「今お前が何かやったのか⁉」

「ああ、俺が時を止めた。爆発まで時間がなかったんでな」

「そっか、ありがとな」

 

「あいつが言っていたデッドフェイスって何なんだ? 下で捕まっている人たちがそうなのか?」

「俺も詳しくは知らねーが、端的に言えば『動く死者』。体は死んでも精神は活動し、生きながら死に囚われた呪いのようなもの、らしいぜ」

 最後の決戦で『お父様』が生み出したあの人達みたいなものか。そうエドは得心した。

「だからあいつらが自爆しようと、ガラクシアがそれを操って自分も自爆しようと、俺たちの聖杯戦争には何の関係もねーし、死んでいてもそれを認めないならいっそ突き付けてやるのが慈悲ってもんだ」

 エドは頭を振った。

「オレはそう知っても、あの人達を人間じゃないと思いたくない。もちろんガラクシアもだ。

 ガラクシアがオレの知っているホムンクルスとほぼ似たような存在ならなおさらだ。

 サーヴァントもデッドフェイスもこの世界を生きる人たちだ。殺しは嫌だ」

 エドの言葉に対し、承太郎は深くため息をついた。

「……やれやれだぜ。おめーは『人間』って奴の定義が広すぎだな」

「すまねえな、こんなマスターで。それでも黒幕にたどり着く気持ちは本物だ」

 エドは承太郎に背を向け、階段を下り始めた。

「構いはしない。俺の苦労が増えるだけだ」

 承太郎もそれに続いた。

 

「報告です。ここでのテロリストは全て鎮圧しました。ですがB-1地区『Eアイランド』内、D-5地区タウンゼン街、C-6地区ティア―ブリッジ1にまだ残っています。

 Eアイランドは特別捜査官が向かうとのことで、錬金術顧問には残り二つのどちらかに向かって鎮圧の助力を願うとの特別捜査官からの連絡がありました」

 階段から降り切ったエドは舌打ちした。

「ったく、ガラクシアはどんだけ現れるんだ? キノコかあいつら」

 エドは顎に手を当て考える。

「よし、タウンゼン街に向かう。そこからティア―ブリッジといこう」

 そう結論を出した時、大気量の排気音が鳴り響いた。

「てめーも結構損な性格してるな」

 その正体はサイドカーを付けたバイク。それに乗った承太郎だった。

「うるせー。ここまで関わったからには最後まで面倒見てやる」

 言い終わったエドは、サイドカーに乗り一気にふかしたエンジンで急加速して発進した。

 向かう先はD-5地区。相手は同じガラクシア――

 

 

【ガラクシア@白銀のカルと蒼空の女王  消滅】

 

 

【D-2 シカルゴ街「ラストアンコール」/聖歴111年1月1日 未明】

 

【エドワード・エルリック@鋼の錬金術師】

[状態]健康

[令呪]残り3画

[装備]赤いロングコート

[道具]なし

[所持金]500万QP

[思考・状況]

基本行動方針:黒幕を探り当て、ぶちのめす。

1.早く黒幕にたどり着くため、戦争の早期収束へ向かう。

2.『ジョセフとの打ち合わせ』は現在登場しているガラクシアを倒してからだ。

[備考]

『ジョセフ・ジョースター』と面識があり、打ち合わせが入っております。

 

【バーサーカー(空条承太郎)@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】

[状態]魔力消費(小)

[装備]スタンド「スタープラチナ」

[道具]サイドカー付きバイク

[所持金]500万QP

[思考・状況]

基本行動方針:黒幕を探り当て、ぶちのめす。

1.早く黒幕にたどり着くため、戦争の早期収束へ向かう。

2.やれやれ、若いジジイか……

3.DIOの野郎がいるなら、何度でもブチのめしてやる。

[備考]



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008 孤独/蟲毒 エスター・コールマン&キャスター(エヴリン)

登場キャラクター
エスター・コールマン&キャスター(エヴリン)

場所
B-5(無名寺)

時間
未明

作者
yu sato


 パラディウム・シティには幾多もの宗教が混在している。そのうちの一つに仏教がある。

 都市内には無名の寺がB-5地区に存在している。住職と僧侶とその身内合わせて数十名が生活している。

 ……否、生活『していた』。

 

 現在、寺はキャスター・エヴリンによって全員が特異菌に感染し、支配下に置かれていた。

 

 その寺の中を、エスター・コールマンは歩いていた。かつてない孤独感と共に。

 

「やあ、エスター」

 そう話しかけたのは住職の次男である柳洞一成だ。

「こんばんは、イッセイ」

 疲れた様子を見せず笑顔でエスターは応える。

「いけないな、幼子が深夜に寺内を歩くのは。子供は夜には寝るものだ」

「ごめんなさい。すぐにベッドに戻るわ」

「うむ、厳しかったかもしれんが『家族』として注意すべきことはしなくてはな」

 そう言って一成は去っていった。

 エヴリンによって『家族』にされたNPC。それは普段通りの生活をしていてもエヴリンの指図一つで狂気に侵され、凶暴な化物と化す。

 その化物がエスター以外何十人もいる。それ以外に感染者や増殖させた特異菌から生まれたクリーチャーも寺内、外をうろついている。

 エスター・コールマンはかつてない孤独感の中にいた。

 

『おや、ここに先客がいたとはね』

 学園からほど近い寺を陣地にしようとエスターとエヴリンが訪れた際、マスター達が現れた。

 長髪の日本人女性に、同じく日本出身と思われる和装のサーヴァント。

 出会ったからには戦闘かとエスターたちは身構えたが。

『いいよ、譲ってあげる。ついでに少し改装してあげよう』

 和装のキャスターはあっさりと諦め、さらに寺の境内や内部を改造してのけた。

 どうしてそこまでするのか。エスターが尋ねると。

『ボクもキャスターとして陣地がないと困るしね。相見互いの縁で協力しようと思って……なーんてね!

 本当はより手ごわくなってマスターを一人でも脱落させてもらいたいからさ』

 そう言って突然の出来事に飛び出してきた僧侶たちを前にけらけらと和装のキャスターは笑った。 

 

 そうしてできたのが、この寺である。僧侶たちはその時全員和服のキャスターが眠らせ、その間にエヴリンの特異菌に感染させて支配させた。

 内部は障子で区切られ、それぞれ結界が張られていて並の攻撃を受け付けず、開く事も出来ない。

 エスターとエヴリンはキャスターの陣地作成による特権で、どの障子を開く事ができる。

 感染者たちは迷路のようなこの中をうろついているわけだが、学習したのか大体迷うことなく目的の場所にいっている。

 

 感染し、忠実になった一成にさせたのは月海原学校高等部のマスター候補を調べ上げた後、アカデミーに転入させ、そちらにいるかもしれないマスターを調査する事であった。

 エスター自身も初等部に結果として入学したことで、同様にマスターを探った。

 その結果はおおよそ11人前後と残ったマスターの内約1/3が学生としての生活を送っていることが分かった。

 その内何名かはエスターと同様自身の陣地を作り、聖杯戦争開始時に移行するようだ。

 現在強敵と見込まれるのは強力なサーヴァントを隠しもせず、連れ歩いている朝倉涼子、遠坂凛、チルノ。そして社会的地位を生かせるザキラといったあたりだろうか。エスターはそう考える。

 急に転校した一成の背後にマスター、サーヴァントの影を感じ取る者もいるだろうが、すでに迎え撃てる準備は整っている。

 さらにあのキャスターはおまけと言い、自分の宝具という髪を置いていった。

 それは寺の奥の広間、文字とも絵とも取れなくもない円形の模様の中心に置かれている。

 

 その周囲に、エヴリンと住職の長男の零観がいた。

「レーカン。レーカンは私の兄さんだよね?」

「そうだよ、だから『家族』みんな仲よくしような」

 零観に抱きつきささやくエヴリンと、困ったように微笑む零観。

 その光景を見たエスターはまるで大事な宝物を横からさらわれた気分になり、叫ぼうとしたが我慢した。

 こんなところで癇癪を起こしたら台無しだ。その分の理性はエスターにはまだあった。

「エヴリン、今後の『家族』の話をしましょう」

 その代わりに、強い調子で『家族』といった。

「わかったわ。レーカン、もうエスターとお休みしたい」

「ああ、分かった。夜更かしはしないようにな」

 そう言い残して零観は部屋から去った。

 

「それで、ここがマスターの拠点になっているってことはあのキャスター以外いないと考えていいわね?」

「うん、近くに防衛隊の人も来たけど『家族』にしておいたから大丈夫」

「戦力増強も問題なし。後は誰かと同盟を組みたい。そうね、ケイトやアスコがいいかしら。拒絶されても返り討ちにできそうだし、何よりあなたがうまく近づけるでしょう?」

 本音を言えば年上の男性のマスターがいい。だが今の寂しさを埋められるのならだれでも構わない。それがエスターの同盟を求める理由だった。

 

 孤独感を埋めてくれる人、愛情を注いでくれる人、私の本性を知っても愛してくれる人が欲しい。

 それはエスター、エヴリン共通の願いだった。

 

 

【B-5 無名寺/聖歴111年1月1日 未明】

 

【エスター・コールマン@エスター】

[状態]健康

[令呪]残り3画

[装備]マスターという事で購入できたナイフ

[道具]なし

[所持金]995万QP

[思考・状況]

基本行動方針:聖杯を入手して成長しない体を治し、人生をやり直す。

1.陣地を強化し、誰か都合のいいマスターと同盟を結ぶ。

2.誘い込む準備もする。一成が適任か。

2.寂しい……誰か人のぬくもりが欲しい……。

[備考]

 

【キャスター(エヴリン)@バイオハザード7】

[状態]魔力消費(小)

[装備]なし

[道具]椅子

[所持金]なし

[思考・状況]

基本行動方針:聖杯の入手して家族を作る。

1.他のマスターも家族にしよう!

2.家族がいっぱい、うれしい!

[備考]

 

 



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009 小指でぎゅっ!(In the dark) 朝倉涼子&ランサー(クー・フーリン〔プロトタイプ〕)  新条新条アカネ&キャスター(μ(ミュウ))

遠坂凜に送った手紙の返信はしっかりやって来た。

内容としては目下危険と思われるマスターが一名いるので、今すぐの決闘は避けたいというもの。つまり不戦協定の提案だった。

より相手の情報も得られたり、なんなら一時的に共闘してもよいのだけれど……。

まあこちらもランサーと相談して手紙の内容を決めた結果、やけに好戦的な内容になってしまった気もするからしょうがないか。

 

さてそのマスターは……アカデミーが誇る教授の中の一人、不亞ザキラ。

調査の中でマスターと考えられる人物としてマークしていたけれど、ここでほぼ確信に至らせてもらった。

独自の研究室を持つほどの凜なら、アカデミーの講師陣の情報もより得やすいんじゃないかと思う。

 

不亞ザキラ。天才的な頭脳の持ち主で、研究教育機関のアカデミーとしては大きく歓迎されている。

元の世界の経歴もビッグアイにある図書館で調べることが出来た。

元の世界で有名だった人物の経歴は、だいたい図書館にある各世界のことを書いた文献で調べることができる。

自分のような情報統合思念体の端末という、人間の常識からは隠れてオカルトじみている存在はそう調べられないだろうけど。

 

デュエルマスターズというカードゲームを遊ぶ者、デュエリストを滅ぼすことを目的とする組織ガルドの長。それが彼。

デュエルマスターズ第二回世界大会で全てのデュエリストの抹殺を宣言し、世界に知れ渡るに至る。

デュエルマスターズカードはこの世界にも文化として持ち込まれはしたが、ザキラのいた世界ほど広く普及はしていない。

危険人物の一面もありはするだろうが、アカデミーの運営自体に大きな影響はないだろう。

そして何よりザキラ本人が危険性の片鱗を見せず、一応は研究活動をこなしている。

朝倉の世界に無かった技術、例えばこの世界でも全容が解明されないEテクノロジーの理論の解析なども彼の手により大きく進歩すると期待されている。

そのためアカデミーとしては彼を教授として歓迎する姿勢となった。

 

もちろん個人個人の感情は統一されていない。彼が信頼できるかそうでないかは意見が割れているし、

数学や物理学の未解決問題も解いてしまうその頭脳に、講師陣は歓迎だけでなく嫉妬するものもいる。

それでいて年齢としては十代後半と、生徒たちの主流年齢層と比べてもそう変わらないというのだから嫉妬もされるだろう。

 

そのあまりの図抜け方は、マスターか上級NPCであることをすぐに疑わせて来ていた。

一応手紙の後で遠坂凜と同様にこの世界における行動履歴を調査したところ、マスターであることの裏付けがすぐに取れるに至った。

 

ザキラはあまり生徒たちへの講義へ出てくることはない。彼が担当に入っている講義の科目も、ほとんど他の人員が対応していた。

しかし、たまの講義は難解な内容だが評判は悪くない。

その威厳は年齢を思わせないくらい強いが、アカデミーの主流年齢層の若者の心理は理解していて内容はしっかり聞けば面白く理解しやすい。

なんというか、まるで何かカードゲームを紐解くかのように。

そしてその中で興味深い質問を出してきた学生を自分の研究室のメンバーとしてスカウトしたりもするという。

更にはアカデミー附属の空中船をほぼ自由に使える権限も得ているらしく、アカデミーを留守にすることもある。

キャッスルに最近は通っていたりするらしい。

直接コンタクトするのは難しいし、どのようにコンタクトを取ろうと私の方が下手になってしまうことは明らかだ。

情報統合思念体の本体へのアクセスが制限される状況下においては、有機生命的な知能の高さにおいてザキラは朝倉を上回る可能性も高い。

組むにしても戦うにしても、こちらもそれなりの準備をしなければならないだろう。それか、相手の下に取り入るか。

とりあえずザキラへの対処は考えなければならないけど、今ではないとこちらも判断した。

 

他に生徒の中にもマスターがいる可能性は想定されたが、さすがに量が多すぎて朝倉の情報処理能力でも解析には大量のリソースが必要だ。

ただ解析作業に至らずとも目立つ存在はいた。

ハイラル王国の王女という身分でアカデミーへ遊学しているゼルダ姫。

 

その内包する魔力……理解しない概念だけれどランサーと話して、また端末のルール説明を読み覚えた。

その量はこの世界の人物としては桁違いのレベルだった。

しかしマスターとして招かれたという情報は調査しても見つからない。確実に可能性を否定はできないが。

別解として、元の世界で願望器をその身に宿していた存在……上級NPCである可能性はどうかな。

図書館で各世界に関する文献を調査すると、トライフォースという願望器の一部を宿す存在としてゼルダ姫が記載されている。

その存在は時代の違いによるか世界の違いによるか多種多様で、どのゼルダ姫に相当するのかは不明だけど。

少なくともトライフォースは、一部だけでも所持者に力を与えはするけど完成させないと完全な願望器としての役目は果たさない。

彼ら上級NPCは、何故、何のためこの世界に存在しているんだろう。

聖杯戦争の参加者に利用してもらうため……というのはやや都合が良すぎるか。

 

 

どうなるにせよ、ある程度彼女と関わりを持って損はないだろうと判断できる。

準備期間ある日の放課後、ゼルダが下校するであろうルートを狙ってみる。

学生として話して、友好的な関係でも作れればいいな……。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

なんだこれ。

 

キャンパス屋外の一角で、戦闘が起きている。

状況は一対多。

片方は黒と青の装束に身を包み、白い布で顔と髪の大部分を覆う金髪の男。

対するは3人の……何者かわからない存在。怪物とでも言おうかな。

概観のシルエットは人間だけれど……体格や服装はどうでもいい。

身体の所々が黒い装飾に覆われて融合していることに、何より異常さを感じずにいられない。

何故か奴らはスマホか何かで、音楽を垂れ流している。

 

男はひらひらと攻撃をかわしながら、細い体と手脚を素早く動かし時々攻撃を入れる。

側頭部を狙った非常に滑らかな上段回し蹴り、一瞬に姿勢を低くして足を長く廻す足払い、大振りな攻撃へのカウンターで素早い手刀。

その動きは流れるように美しくて、隙もまるでなかった。

通常の人間なら即座に気絶するような攻撃や、悶え痛みに倒れるような攻撃も怪物に喰らわせているはず。

でも、怪物たちにそれらの攻撃はあまり応えていない。

怪物たちはものすごい勢いで腕や足を振り回すが、大振りで歪な動きは躱され、受け流され全く有効打になっていない。

飛びかかったりするときの動きはなんだかふわっとして、物理法則から外れているようだ。

 

さて、戦闘は小規模なもので容易に介入できそう。通り道的にゼルダ姫も関わる可能性がある以上、介入しない選択肢はない。

さて、どちらに加勢するか……そんなの決まってる。

黒い装飾の怪物たちからは、人間らしい正気が感じられない。話を聞くのも難しいと推測できる。

金髪の男はより理性的に戦っているように見える。

 

情報制御の仕込みが足りないから、物体を槍のように変形させ投射したり相手の動きを直に制御したりはおそらく出来ない。

そして見た感じ金髪の男の単純な身体能力は仕込みの無い私よりも高い。でも、私が加勢できる程度の次元の戦いではある。

ランサーは別行動で学内のマスターやサーヴァントを調査中だけれど、念のため何かあったらいつでも来れるように念話で伝える。

 

武器が何かあったほうがいいだろうけれど。

サバイバルナイフは……さすがに他の学生に見られたらまずいだろうからやめとこう。

文房具の15㎝定規を取り出し、簡単に曲がったり折れたりしない硬度に分子構造の改変を行う。

……うん、これくらいなら短時間でも完璧にできる。

 

男が3人に囲まれ逃げ場がなくなりそうになった瞬間、足元の石を蹴とばす。

そしてそれを即座に追うように怪物に迫っていく。

頭の部分の黒い装飾に命中……したけど頭が大きくのけ反るだけで動きは止まらない。

それを布石にしようとしたのに!

しかし男は大きく舞い上がる木の葉のように飛び上がって包囲を抜けていた。なーんだ。

 

怪物はふらふらと私にも襲い掛かる。

腕の振り下ろし……簡単に定規で受け止めるけど、腕が押し込まれる!

ふわっとした動きのくせに、やっぱり攻撃はとても重い……!

 

2発目……! 定規が耐えられず、メキメキ歪んできた。

まあこうなるのも、想定してないわけではない。

3発目が来る前に飛び退こうと足に力を入れる。

相手が腕を動かし始めたところで私は飛び跳ねた……と同時に金髪の男も割り込んできた。

突進と同時に両腕を振るい、下ろされる相手の腕を弾いた。

私を逃がそうと抱え上げようともしたみたいだったけど、私自身がちゃんと逃げられたのでそれは不発。

 

私と男は急加速し怪物から距離を取り、怪物3人に向き合う形になった。

男は……ランサーには及ばないけどまったく人間ではないレベルの速さだ。

 

「奴らをどうにかするつもりなんでしょ?手伝うわ」

「……感謝する。ひとまず距離を取ろう」

 

私が一般生徒とは一線を画す身体能力の持ち主とは即座に理解したのか、すぐに共闘は受け入れてくれた。

 

「貴方、何でその得物を全く使わないの?」

「使えない。彼らは少し前は人間だった。そして今も本質は人間であるように見える。

 武器で傷つけることはできない」

「そう……人間に戻す心当たりは?」

 

なんとなく状況は理解。

近くで切り結んでみたことで彼ら怪物の情報が少しずつ分かってきた。

彼らは本質的にはこの世界の生物であり、賢者の石という情報素子に有機生命体としてのレイヤーを被せた存在のようだ。

しかし何らかの介入を受け本来の性質から変質している。情報的な侵食を他の何者かから受けている。

確かに人間らしいプロパティも内包しているようだ。

 

私たち端末も有機生命体に情報的に介入する手段がある。

空間レベルで制御下にして改変するか、あるいはナノマシンを生成して体内に送り込むかといった方法で。

それと同じ方法か何かは知らないが、彼らも同様かと思われる情報制御をされているらしい。

これを解除することはできるだろうか。解除して対話できれば得られる情報も多いだろう。

 

「……彼らが自身のスマートフォンから音楽を流した時、急に怪物のような姿になったんだ。

 それが契機となのかもしれない」

「へえ。少し音楽のことは気になってたけど……あれを止めてみるのは良さそうね。

 後から調べたいから、できれば壊さずに盗むことは出来ない?」

「わかった、やってみよう」

 

私たちが話す間に戦力差を分析したのか。男に2人が、私に1人が向かってくる。

まあ、私の特殊能力を知らなければ彼らから見たら男の方が厄介なんでしょうね。

こっそりと情報改変で補修していた定規で私は対抗しに行く。

 

身体の信号伝達を強化、筋繊維の動作速度のリミットを外す。

攻撃は受け止めず躱す……そしで急に姿勢を落としたり大げさな回避をして大ぶりな攻撃を誘い出してみる。

 

そして……だめだ、触れさせてくれない。

胸ポケットのスマホを盗もうとした瞬間、ものすごい勢いで奴は飛びのく。

そして警戒されたのか胸ポケットを手で強くふさいでこちらに視線を向ける……これは大変そうだ。

 

ふと男の方に視線を向けるも、私と同じように怪物たちはスマホを守り切り、盗難や破壊を大いに警戒している。

物理的に音楽を止めるのは難しいかもしれない……。

いや、『私なら』いくらでも他に止めさせる方法はある。

 

「あのね、音楽を中断させる方法、思いついたんだけど」

「何?」

「ちょっと私の端末でいろいろしたいから、また奴らの攻撃をかわして足止めできる?」

「何するつもりだ?足止めに集中すれば君を攻撃させないことは出来るが」

「説明はあと、じゃあよろしくね」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

さて……個人所有の携帯端末を遠隔でいきなりハッキングするというのは、強力なハッカーでも難しい行為だ。

現代的な端末は定期的にセキュリティアップデートされ、プログラムの実行権限、アクセス権限も厳密に管理されているのだから。

相手がセキュリティに問題のあるアプリケーションを使用しているところにアクセスしたり、

オペレーティングシステム自体のセキュリティホールやバックドアを探し当て利用することも考えられはする。

しかしこの世界に来てまだ日の浅い朝倉には、それらの手法を用いるための知識も仕込みもまだ足りはしない。

それならば……?

 

男は蚊や蚤のようにヒラヒラピョンピョンとすべての攻撃を躱し時間を稼ぐ……がほんの数十秒で音楽が途切れる。

その一方でけたたましい音をスマホは出し始めた。

怪物たちは困惑するかのように動きがぎこちなくなっていく。

その隙を見逃す男ではない。手早く3人のスマホを手を払い奪い去っていく。

ついでに追われないよう手刀も入れたが……明らかに手ごたえが違って、怪物たちは倒れる。

 

スマホを持ちながら男が駆けてくる……不思議そうに、振動し画面が流れ多様な音を垂れ流すスマホを抱えながら。

途切れさせたのは……大量の通知音や着信音だった。

 

朝倉の行ったのはハッキングとは言えないような単純な足止め。

無線通信による端末同士の接続機能が待機されているため、端末のデバイス名も公開されて近くの端末で知ることができる。

そこから端末間通信を利用し、またSNSのアカウントを探し通知を送りつけ、

電話番号がわかれば着信させ……これらをほんの数十秒で朝倉は行っていた。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

男からスマホを受け取り、とりあえず通知を全部切りながら音楽も切ってしまう。

ふと怪物たちを見ると、黒い装飾は消えて高校生くらいの人間の姿がはっきり見えるようになっていた。

 

「ありがとう、君のおかげで彼らを止めることが出来た」

「ふふっ、一応生徒会職も持っているからこれくらいはしたかったのよ。私は朝倉涼子」

「ボクは……シーク。ハイラル王家を陰より支えるシーカー族の一員……」

 

少し詰まったようにしてから答える男。

 

「ハイラル王家って、この学校のゼルダ姫の王家よね?」

「ああ。でも君の方こそ、その戦闘能力は明らかに普通の学生ではないようだけれど……?」

「私は『マスター』としてこの都市に来た一員。ちょっと特殊な世界の出身だからね」

「そうだったのか。特別待遇というのも頷ける」

 

彼がどのようなNPCなのかは判断できない。上級NPCは付随する存在も再現されるの?

少なくともその魔力量の測定値は前に見たゼルダ姫と比べるまでもない少ない量。

男が状況の説明続けていく。

 

「彼らはあの音楽の虜になっていたようだった。

 彼らのカバンの中には音楽を収録したCDや、オンラインでの視聴先を記したQRコードの紙が入っている。

 それをアカデミーの学生たちに押し付けるように配って回っていたんだ。

 ゼルダ姫はそれを辞めさせようと、彼らに向かっていった」

「そうなの? でもあの姫様が向かっていこうと思うんだから、その時はあんな怪物じゃなかったってこと?」

「そうだ。彼らはとりあえず聞いてみろと自分のスマートフォンで音楽を流し始めた……。

 すると彼らの体が少しずつ、例の黒い装飾に覆われていった。

 姫様はそれにも臆さず悪いことは悪いことだと言ったが……彼らはそれを聞き正気を失い殴りかかってきた。

 だから姫を守り逃がすために、ボクが表へ出てくることになったわけだ。

 不思議だった。彼らは怒ってはいるのだが、襲い掛かる動きはあまり感情と連動していないようでもあった」

 

彼らを見やる。人間に戻ってからまだ気を失い起き上がりそうにもない。

じゃあそれならと、特に顔つきの可笑しそうな奴を調べてみる。

ポケットを探ると、すぐに身分を証明するのもが出てきた。学生証だ。

文面は、月海原学園高等部 ……?

 

彼らはアカデミーのほど近くにある学校、月海原学園の学生であるらしい。

アカデミーで月海原学園の学生を見ることはそう珍しくない。距離が近いからというだけではなく。

講義は専用に組まれているが、部活動など課外活動は学校を超えてどちらに所属しようと自由。

附属図書館はアカデミーが試験期間でもない限り、誰もが自由に利用可能なので月海原の学生もよく訪れる。

アカデミーの図書館には専門書、図鑑、論文が多く、月海原には児童書や学習書が多くなっている。

他に月海原からアカデミーへの進学を狙う学生が、下見や研究室の訪問に来ることもある。

彼らが怪物化したという事を除けば、特に何も怪しい存在ではない。

そう……周りも彼らを怪しがる様子はなくて……なさ過ぎて。

 

「不思議なこと……もう一つあるわ。

 私達が戦ってるのに、通りかかる他の学生達の行動がおかしかったのよね。

 まるで怪物を恐れているようには見えなくて。

 ……そう、人間同士のケンカを遠巻きに見る感じ」

「ああ、確かにそうだ。思い出してみると、確かに最初に彼らに黒い装飾が出てきた際も、

 それに対して驚きを見せる学生はいなかったように思える」

 

周りを見渡してみる。周りの学生たちは少ないが、その目線は称賛か関心かのように見える。

 

「少し、正式な学生の私が皆さんに聞いてみましょうか?」

「……そうだな。よろしく頼む」

 

近くの中から話しやすそうな女子学生を見つけ、向かっていき話しかける。

 

「ごめん! 私が来る前に何があったか教えてくれる?」

「あ、うん。何とかしてくれてありがと!」

「私、一応今期のクラスの委員長として学校の風紀を守る一端を担っているわけだし、あれくらいはしないとね。

 まあアカデミーじゃなくて月海原の学生だったみたいだけど」

「月海原の学生だったんだ!

 でも正直ヤバい奴らだったね。刃物持ってるあの忍者にも挑んでいってちゃんと喧嘩になってたし」

「忍者か……彼はゼルダ姫のお付きの者みたいだしそんなに怪しい者じゃないのよ」

「まあ確かに、刺して大けが負わせないで立ち回ってたのはよくやるね。

 迷惑してる人も多かったし、うまく収めてくれて有難いよ!」

「そうね、あの人たち何というか……黒っぽいごてごてした装飾付けて怖かったよね」

「え? そんなんあったかな? 雰囲気が怖かったのはそうだけど」

 

おかしい。私とあの男以外には彼らが怪物に見えなかった?

 

「ゼルダ姫にも彼ら、音楽を布教しようとしたんだって?」

「そうなんだよ、ゼルダ姫はあんな曲好きじゃないと思うけどな。

 それですごい音量で流してたし、ゼルダ姫も怒るよ。

 しかもブチぎれて取り押さえようとしてたし……月海原の男子生徒、礼儀とかないのかな?」

「まあまあ、全員がそういうわけじゃないよ、きっと」

「ゼルダ姫が魔法でどうにかするかと思ったけど、なんだか魔法で逃げちゃってからあの忍者が出てきたの。

 人間の生徒3人くらいならあの魔法の実力なら何とかできる気がするんだけどなあ……?」

「……人間よりは明らかに抜けた身体能力だったけど?」

「え、どう見ても人間じゃなかった?あの忍者の動きに比べるまでもなく、普通の非行学生みたいだったけど……。

 忍者があいつらをどうしちゃうかがちょっと心配だったし。

 まあ実際に戦った人が言うなら、予想以上に強かったってことだよね。本当にありがとう」

 

おかしい。奴らの動きは明らかに人間のものではなかったのに。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

3人のスマホの認証を突破して監視アプリを入れてしまう。

とっても簡単。でも直にスマホに触れるからこそできた芸当ね。

 

私の使うハッキングは2通り。

まずこの世界を動かす法則に則り、この世界で動く情報端末を利用するハッキング。

私には女子高生らしく動く機能を実装されているし、現代高校生の使うスマートフォンに類似する端末の操作も簡単。

そして一度操作方法を覚えてしまえば、元来情報に親しんできた私なら一流のハッカーにだってなれる。

 

もう一つは、この世界の法則を超えた世界を構成する情報そのものの改変。それはまるで魔術か何かのよう。

こちらの力を、前者のこの世界の情報端末へのハッキングに応用することもできる。

対象の物体を情報制御下にするため実際に触れたり、自身が制御下とした空間に置いたりしなければならないけど、

通常のルールを無視して端末自体の電気信号を閲覧し情報を得たり、また介入して誤動作させることだってできる。

情報統合思念体本体より支援を受ければより遠隔での介入、大規模な介入もできたけど、

この聖杯戦争内では端末が保持する機能としてのごく限定的な情報改変しかできないのはちょっと大変。

 

倒れた3人もしばらくたって目が覚めだした。

あれ?シークがどこからか取り出したハープを抱えていた。

そして音を奏で始める……連なっていってそれは音楽になる。

 

「これは太陽の歌というメロディー。

 一部のモンスターの動きを止める効果も持っている。

 彼らに巣食う悪しき力も少しは落ち着いてくれれば良いのだけれど」

 

綺麗な音楽を聴かされて……先ほど学生証を見させてもらった学生がぼそぼそ話し始めた。

 

「……悪くはねえな。

 ちょっとすっきりした頭になんか素直に入ってくるというか……」

「そうだ、様々な良い音楽が世界にはある。

 そして好みも人それぞれ。無理に他人に自分の好きな物を押し付けるべきじゃない」

「だけどよ……μの唄う楽曲こそ俺たちにとっては最高の音楽なんだよ」

「μね……貴方が布教しようとしていた曲のボーカルもμだったっけ。

 どうしてそんなにバーチャルドール、μの歌が好きなの?」

 

感情が高ぶるもどこか辛そうに、学生は話す。

 

「俺のこの世に対する恨み辛みを受け止めてくれるからだ!」

「……確かに充実した学生生活を送れてるような印象は受けないけど」

「ちっ、その通りで俺たちは陰キャラグループの一員で鬱屈してたよ。

 そんな俺らにμの曲は届いた。

 最初は校内放送で時々流れてたのを聞いてただけだったんだよ。

 でも聞いてるうちにだんだん心に入って来て、共感してきてよお……!」

 

好きなものを離したいというように早口に続ける。

 

「聞いてると気分が乗って重い気持ちが楽になる!

 何でも出来るような気分になってくるんだよ!」

「……なるほど、その結果ゼルダ姫に暴力を振るおうとしたわけか」

 

学生が思い起こしたように下を向く。

 

「ゼルダ姫はμの音楽についてどう思ってるんだろう?」

「特に嫌ってはいない。貴様を止めたのも音楽の是非ではなく、

 貴様の行為がアカデミー内の迷惑になっていたからだ。

 それも理解できず殴りかかるくらい正気を失っていたのか?」

 

それを聞いて何故か学生は困惑しだした。

 

「は?女子を本気で殴るとか、よっぽどのことがないとしねぇよ!

 ちょっと無理やり聞かせようとしただけだろ!」

「殴って動けなくしてから聞かせるつもりだったのか?」

「邪魔してくるからちょっと取り押さえようとしただけじゃねえか!」

 

埒が明かないとシークが首を横に振る。

でも私は別の可能性に気付いた。

 

「貴方、私たちと戦って気絶したことちゃんと覚えてるの?」

「は?そっちの忍者さんがすごい動きで武器まで持ってるから、

 こっちも三人がかりで何とかしようとしたんだよ」

「俺達……ちょっと調子には乗ってたな。普段ならとっとと逃げてた。

 まあそっちが本気じゃなかったんだろ?」

「いや、傷付けないよう手加減はしたがそれなりに本気だったが……」

 

顔を見合わせる三人とシーク。

 

「貴方達、体に黒い装飾が浮き出て身体能力が高まる現象に心当たりある?」

「……何のことだ? 知らないな」

 

残り2人も頷く。

 

「シーク、彼ら実は何も知らないのかも」

「どういうことだ? 操られていたという事か?」

「うーん、もっと複雑そうなんだけど……まあちょっと試してみるか」

 

端末を操作し始めながら話す。

 

「貴方達、μのこと好きじゃなくなったり、他の曲がもっと好きになったりすることってあると思う?」

「何だと?あるわけないだろうが。

 μ以上に推せる歌姫やアイドルなんているわけないだろう!」

「昔ウズメ隊ってのが好きだったが……μはあんな風に裏切って居なくなったりしねえ!」

「なるほどね……貴方達にはμしかないのね。

 私のスマホ用ヘッドホン、すごく音質のいい設定にしてあるんだけどちょっと試してみない?」

「は? 何だと? ちょっと貸せよ」

「待てよ! 俺が先だ!」

 

シークが私の方を見て訝しむ。

 

「……朝倉、何をするつもりだ?」

「お願い、ちょっと暴れたらまた取り押さえてね」

 

最も聞きたがってそうな学生にヘッドホンを被せる……。

おっ、体の各部が黒い装飾に徐々に覆われていく。こういうことか。

シークが身構えるが襲い掛かってくることはない。私たちが彼らの邪魔をしてないからかな?

ヘッドホンを付けてない学生に尋ねる。

 

「貴方たち、彼の様子明らかに変だと思わない?」

「え? ただ喜んでるだけだろ? 俺も高品質ヘッドホン試してえよ……」

 

シークを見ると、ほとんど布で顔を隠しながらも驚きや関心が伺える。

 

「この通り。

 黒い装飾は、貴方と私、そしてゼルダ姫もかな?

 一部の人物しか認知できていないみたい。

 当人ですらもそうなったことは認知できない」

「……ふむ。事態はかなり根深くなっているようだな。

 大がかりな魔術が展開されているのかもしれない」

 

魔術じゃなくて情報改変の方に私は近さを感じる。

まあそういうことまで伝える意味も、まだないか。

μを利用して何かをしようとしている者がいるという事は確実だけど。

適度なところでヘッドホンを外すと、黒い装飾も徐々に引いて行った。

彼らへの質問を続ける。

 

「μはバーチャルドールでしょ?

 いくらファンとして入れ込んでも、μに向けてあなたたちが出来ることって限られてるんじゃないの?

 好意を向けるべきは、μよりも作曲者のような気もするんだけど……?」

「μはただのバーチャルドールじゃねえ! 実在してる!」

 

作曲者がいるなら、この騒動の黒幕もしくは近いところだろうと私は想像したけど。

ちょっと思わぬ方向で、驚きを感じる。

 

「学校の放送でμの歌が流れる前に、時々μの口上も入るんだよ!

 誰かが喋らせてのか?違う。俺はそこに意志を感じた!

 俺みたいなμの歌に入れ込んだ者に語りかけてる!」

 

どういうこと?妄想や嘘というには迫真だし。

 

「俺たちがμの歌をたくさん聞いてたくさん布教すれば、きっとμはいずれ出てくる!

 ライブとかもやってくれる! そうすれば俺たちはμにこの目で会える!」

「なるほどね……それがあなたたちの行動原理だったのね」

 

……まあ聞くのはとりあえずこのくらいで切り上げるか。

 

「今回のことは反省しなさい。月海原の教職員には伝えないから。

 というか布教するってね……無理やり音楽を聞かせても。嫌悪感の感情が一体になりやすいのよ。

 さりげなく地道に、迷惑を掛けずやりなさいよ」

「お、おう……そう言うんなら、今回のことは無かったことにしようぜ」

「ええ、無かったことにしてあげる。でも次はないからね?」

 

3人がアカデミーのキャンパスから去っていく。

 

「良かったのかあれで? 君のほうが詳しそうだったから任せてしまったが、不安がまだある」

「彼ら、無理やり否定しても聞く耳持たないでしょ。

 追い詰めすぎるともっとなりふり構わなくなるかもしれないし。

 今のところ対処法もわからないし、スマホも監視できることだしある程度管理していくしかないわね」

 

不安そうな態度を続けるシーク。

 

「例えば『エンジェリック・コンサート』でも学校でイベントを開いて呼んでみる?

 音楽的にはこの世界では最上クラスの存在じゃないの?」

「……それが彼らの好みに合致するかはわからない。

 それに依存対象がすり替わるだけで根本的な解決にならないかもしれない。そうだろう?」

「うん、その通り。

 いい対処法が見つかるまで、お互い協力しながら気を付けていきましょう」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

あの後シークとは連絡先を交換して別れた。

 

さて、彼ら怪物に対処する方法を、私は二つ用意してみた。

一つは生成したナノマシンの投与。アカデミーに来たμの音楽に依存した学生の情報を解析して構築してみた。

機能は単純。脳や神経に作用させμの楽曲への依存心を減退、喪失させるだけ。

二度と楽曲に侵食されなくなる、抗体といえるレベルの物は出来なかった。

けれど大幅に侵食率を低下させることができるから、しばらく怪物状態になることはないでしょう。

 

シークはとても良いヒントをくれた。音楽がトリガーとなる侵食なら、別の音楽をぶつけて対処するというのは一つの方法。

だけど私は端末として有機生命体の感情を再現していても、真に理解できてはいない。

どのような曲が、どのような演奏が彼らに響いていくのか感覚的に理解できない。

大量の曲を聴いてパターンを解析していくというのは、できなくもないかもしれないけど。

 

だから、正攻法ではないけれど通用しそうな別の音楽を使った方法を考えさせてもらった。これが二つ目。

月海原学園の下校放送が始まる前の時間、私は月海原の校舎に入っていく。

目指すは……放送室。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

  …………

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

ツツジ台での日常のように、学生としての生活を過ごしている。

μはもう人間大の姿でいることにも全く支障はないけれど、やっぱり普段はマスコットの姿で私の傍にいる。

特に大きな行動はしてないけれど毎日の行動を続けてるだけで、デジヘッドはある程度目につくようになって侵食は順調に進んでいた。

学校生活も辛くない。必ずいつもの明日が来てそのたびに進歩があるという素晴らしい安心感。

 

……いや、そんな気がしているだけなんだ。

本当にこのペースでデジヘッドを増やせばいいのか。もっと工夫してペースを上げた方がいいんじゃないか。

令呪を隠しているせいか他のマスターには接触していないけど、もっと情報交換したり、組んだりしてもいいんじゃないか。

不安感は時々思い出すように心の中に湧くけど、私はそれに向き合えなかった。

 

デジヘッドは傾向的には増えてるけど、たまに減ったりもしているらしい。

一度デジヘッド化した人間も、μへの依存心が弱くなるとデジヘッドではなくなってしまう。

そうなる原因はいくつかある。

 

最も有効なのは、μの元の世界で別のバーチャルドール、アリアが人々に発現させていたというカタルシスエフェクト。

発現した者は個人個人に対応した武器を手にする。

その武器は身体を傷つけることはなく精神への攻撃となり、欲望や依存といった感情を落ち着かせ安定させるという。

カタルシスエフェクトを発現できる存在は、この世界にいるんだろうか。

アリアや、さらに別の知られざるバーチャルドールがサーヴァントやNPCとして存在していたら、カタルシスエフェクトは大きな脅威となってくる。

 

とはいっても多くの世界からマスターやサーヴァント、NPCが集まっている以上、それ以外にも精神に干渉する手段はあるのかもしれない。

もしあるなら、きっとデジヘッドへの有効的な対処方法になりうるんだろう。

あとは普通に対話により精神を安定させたり、μに関わらない方法で欲望を解消する糸口を自力で見つけてデジヘッドでなくなる場合もある。

 

そして……もちろんデジヘッド化したNPCが死んでしまった場合でも、デジヘッドが減ったという結果になる。

元の世界でも本来のμの力なら、解除されたのか死んでしまったのか調べるのは簡単だっただろうけど。

 

μはこのパラディウムシティでは管理者権限がないから、どういう結果でデジヘッドが減ったか調べるには実際に情報を手に入れないといけない。

でもその糸口は見つからなくて。

心苦しさを日々の学生生活で一時的に忘れるという日々が続いてく……。

でもなにも出来ない。

やる気がないのか、何かを起こす方法がわからないのか自分でもわからない。でも辛さはある。

惰性で日々が過ぎてく。不安感は募ってく。繰り返し。繰り返し。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

今日も下校時刻になった。

もう放送室でμの音楽が流れることまで、完全に自動化して設定されている。

がんばって投票を不自然じゃない形で操作するメソッドを考えて放送プログラムを組んだ。

もし何かあった時のために対処する一日の自由時間を増やすため……というのはただの名目。

あまり重要じゃない作業だった。何かすることで達成感を得たかっただけ。そう後で気づいちゃった。

自己嫌悪感はより増していく。

何か自分に特になる他陣営との接触が起きればいいのに……とかふと思うことは多いけど、そんな都合いいことはなく。

今日もふと思って、そして帰ろうとして。

 

μの音楽が流れだした。

 

流れ出し…………?

 

なんなのこの雑音!?

 

 

 

それは確かにμの曲。

しかし歪につぎはぎされ、音程も速度もゆがめられてしまっている。

アレンジ? そう呼びたくない。

下手に原曲の面影が聞こえる分、不快感が非常に大きくて。

音量も大きくて私は耳をふさぎたくなる。

 

(μ……いったい何が起きてるの……!?)

 

念話でμと話す。

 

(誰かが放送室のパソコンを細工したはず……!

 学校内の情報を少し調べてみるよ!)

 

耳をふさぎながら、焦りはあるけど考えが周るようになってきた。

周りを見ると、デジヘッドは困惑したか、あるいはバグったゲームキャラのようにのように動きがぎこちない。

デジヘッドへの対策なの?こうなることを予想して?

 

(こんなことするなんて……きっと私たちへの対策だよね?

 デジヘッドの仕組みも理解されてるってこと……?)

(そうかもしれないけど……どうしようアカネ、なんとかしたいけど……。

 ただのいたずらだったりしたらいいんだけど……)

(そうだね……だめだ。

 違う、楽観的に考えてたらだめだ!

 ちゃんと考えて動かないと、私たちはきっとここで……)

 

何でこんなことに。普通に過ごしてきただけなのに。

なんでこんなひどいことが急に起きちゃうんだろう。

相手はこっちの対策がある程度できている。逃げたい。

でも……逃げてしまったらそれも終わりだ。

他の所で今から本戦に向けてまた準備をするなんて、きっと無理。

それに相手はそのまま残るんだから、いずれまた会ったらまずい。

ここで何とかしなきゃいけない。どうしたら……?

 

「放送室にいるのは……人間一人だけみたい!

 マスターか上級NPCだと思うよ!」

 

学校のシステムを大半掌握しているμが調べてくれたみたい。

校内のカメラの解析や放送室の入退室記録か、あるいは学校が支配下だからパラメータが遠隔で読めたりするのかな?

でも、これはきっと朗報。

 

(人間一人だけ……? それなら何とかなるかも。

 急いで準備をして向かおう、μ!)

(うん! ちょっとデジヘッドにも手伝ってもらって頑張ってみる!)

 

教室を出て放送室方面へ向かっていく。

とはいっても困惑しているデジヘッドたちをどうしたらいいのかと思ったけど……

μがデジヘッドの頭にマインドホンを生み出し被せるとそっちではちゃんとした音楽が流れてるのか、まともに戻ってついてきてくれた。

マインドホンは一瞬ですぐたくさん用意もできないので、侵食度が高くて強そうなデジヘッド2人を連れていく。

私も人間一人と聞いて安心感が高まった。なんとかなりそうという気持ちはどんどん強まって、やる気に繋がる。

 

さて、放送室の前までやってきた。

鍵は掛かっている……中から締めたのかな?

まあ学校のシステムを掌握してるμにとってはそんなものないも同然だ。手をかざすだけでロックは外れる。

 

デジヘッド2人を前に出し、μは私のポケットに隠れさせる。

デジヘッドが放送室の扉を開ける……。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

  …………

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

アカネが入ると、放送室の風景は全く普段と変わりなかった。

対面するのは青みのある髪が印象的な少女。

少女、朝倉涼子はデジヘッドに対しても何ら反応を示さず、アカネと対面する。

アカネは張り詰めた表情で言葉を発しだす。

 

「貴方がこのめちゃくちゃな放送を流しているの?

 こんなことされたら学校がめちゃくちゃなんですけど……。早く止めて」

 

あくまでもまだ本音は出さない。

わずかながらも相手がただの悪戯娘である可能性も捨てていない。

でもその期待は早々に消え去る。

 

「先に他所に沢山迷惑をかけてるのは、貴方の方でしょ?

 それを差し置いて……ねえ?」

「さて……何のこと?

 それに貴方が今してることと私が何してきたかとか、関係ないんじゃない?

 早く放送を何とかしてよ」

 

表情がゆがむアカネだが、まだ会話を続ける。

それは何とかこれが無事に終わって欲しいという懇願のようで。

 

「とぼけるのね? でも、貴方が何者かなんてとうに見当が付いてるのよ。

 その右手、隠してるみたいだけど令呪があるんでしょ?」

 

アカネの顔は引きつり、体は緊張か恐怖か震えだしていく。地獄の始まりが告げられた。

なお、今のμの力で行える隠蔽処理はそう高度でない。

朝倉の情報認識能力で解析すれば、本当にアカネの右手の令呪が"視えている"。

まあそんな詳細まで伝えはしないが。

 

「この放送室のパソコンを通して学校内の情報は結構読ませてもらったわ。

 聖杯戦争のマスターは1ヶ月前から今くらいまでの期間にこの町に来たことになっているの。

 だから学生の登校履歴を見て、その時期から来始めた人を調べてみたの。

 μの曲が校内放送で流れ始めた時期も調べたわ。

 そう、貴方が学校に通い始めてからしばらく後のタイミングでμの曲が急に放送されだしてるのよ」

 

朝倉はアカネとは真逆に余裕淡々と、微笑も含んだ表情で話を続ける。

 

「そして放送委員でもない貴方が、この加工したμの曲の放送に合わせこの場にやってきたの。

 ちょうど黒い装飾付けて怪物みたいになってる二人を連れてね。

 それってもう答え合わせじゃない? 新条さん」

 

名前が告げられた。死刑宣告のように感じられ、もはや言葉も思いつかない。

 

「人間を変化させてこの怪物を生み出してるのも、一緒にいるあなたのサーヴァントの仕業なんでしょ?

 自己紹介でもしあいましょうよ。こちらはまだ戦う気はないわ。

 そっちが戦うつもりなら、私のサーヴァントもすぐに攻撃できるけどね。

 その怪物たちくらいは余裕で撃破できるわ」

 

朝倉は実際に余裕がある。

しばらく前から部屋に仕込みを行っていたため、この放送室はすでにある程度彼女の情報制御下。

死角から攻撃が飛んで来ようと、不可視の攻撃をして来ようとすぐに認知できる。

そうしたらランサーがルーンの力で認識されることなくこの場にすっと現れ、相手との戦闘態勢に入るだろう。

 

そしてμも、この部屋がおそらく敵の情報制御下だということに気が付いた。

世界を情報として認知するもの同士の感覚だ。念話でアカネに伝達する。

 

(アカネ! 私達、誘い込まれちゃったかもしれない!

 この部屋の物質もデータとして私は見てるけど、その権限がおかしいことになってる!

 私の願いを叶える力みたいに世界を改変する力がきっと相手も使えるよ!)

(そんな……! どうすればいいの……μ?)

(きっと大丈夫。まだ私の力の方が強いはず! いざとなったら大きな怪獣でも出して部屋を壊せばいいよ!

 本来のサイズにはまだ届かなくても、充分戦えるくらいにはなるよ!)

 

緊張の表情は変わらないが、少しの安堵がアカネに与えられる……ことはなく。

 

「なるほどね……サーヴァントの名前もバーチャルドールと同じμというのね。

 そして、世界を改変する力を持ってるわけね。

 でも改変を始める前に、きっと私のサーヴァントが貴方達を倒してしまうわ」

(え!? 念話が傍受されてたの!?)

(部屋が支配下だから、やろうと思えばそれくらいできるのかも。

 きっと部屋の中を飛ぶ情報が監視されてるよ……!)

 

身振りで腕を広げながら、無邪気な笑みを強める朝倉。

 

「話を聞いて、貴方達への興味が少し強くなったわ。

 まだ悪いようにはしないから、ちゃんと話し合いましょうよ。

 内容によっては、協定も結べるかも」

 

もはや念話も使えない。

笑顔のまま恐ろしいことを言うこの人が本当に怖い。信用したくない。

どうしたらいいのか、どうしたらいいのかとアカネは極限上の思考で悩む。

μも悩み続けるが、うかつな行動が即こちらの危険に繋がることを理解して動けない。

時間だけが過ぎていく。

やがて朝倉が笑みを崩さないまま、優しく、優しくない内容を伝えだす。

 

「そちら様だって今まで一般NPCを侵食したりやることやってきてるんだし、このまま見逃す選択肢はこちらにはないわ。

 助けも期待しない方がいいわ。この部屋にこれ以上入ってこれるのは、私のサーヴァントだけよ。

 何もしないなら……どうしましょう?

 貴方達が何かする気になるまで少しづつ痛めつけてもいいのよ?」

 

単純な脅しだが、この状況の硬直を破るには充分な効果がある言葉だった。

 

「μ!」

 

アカネの服のポケットからμが自ら出ていく。

そして人間大になっていく。

 

「やめて!!

 アカネにそんな痛いことしないで!!!!」

 

μが一度アカネの方を振り向き、優しく話す。

 

「大丈夫、絶対に勝てない戦いでも、私がアカネを逃がすから。絶対に痛い目に合わせないよ」

 

まだ準備期間で元の世界へ戻れるのだから、とっとと帰るのならそれ以上追うこともないけどと朝倉が思う。

でもそれを伝える前に、アカネが動く。後ろからμの手を握り締める。

 

「だめだよμ。消えたりしちゃだめ……。

 怖いけど、ちゃんとこの人と話し合わなきゃ。

 ちゃんと話せれば、本当に私達二人とも無事でいられるかもしれない……」

 

μの勇気に触発され、なけなしの勇気がわずかに奮い立った。

μの気の張った目と、アカネの涙のにじんだ目が朝倉を見据える。

 

「ありがとう。とりあえず対話の環境は整ったようね」

 ちゃんと話し合う以上、こちらのサーヴァントも呼ぶわ」

 

スッと窓のあたりから青いサーヴァントが現れる。

姿を出すまでその気配は全く感じられなかった。

それを見て、2人は明らかに彼らが自分たちの格上だったことを察する。

 

「向かいの建物の屋根から頑張って様子は見てたが、ほとんど念話で状況も伝えてくれないもんだからどうなってるのか心配したわ。

 まあ戦いの出番はなかったようだな。こんな学生の多い所で戦うことにならなくて良かったぜ」

「貴方はすかしたようでいて結構素の感情が出やすいから、緊張した交渉にはあまり向かないの。私が全部対応したのもそのためよ。

 きっと女の子と戦いにならなくて良かったとかも思ってるんじゃない?」

「ちぇっ、そう言われるとそうなんだがな……」

「でも体制としては万全だったじゃない? 実際こうやって彼女たちと対話の場を作れたもの」

 

アカネは朝倉が自身のサーヴァントと砕けた感じに話すのを見ても、気が抜ける感じがしない。

最初からこうしてくれればよかったのにとは、思ったりもする。

デジヘッドという不思議な存在だけ見たら、こちらの能力の素性は知れないから万全の体制で望むのは仕方ないのかもしれないのか?

 

「このまま話しても大丈夫? 隣の怪物の二人は……まあヘッドホンをしてるから込み入った話をしても耳に入りはしないのかな」

「……怪物じゃなくてデジヘッドって呼んで。μ、ちょっと出させて」

「わかったよ」

 

μが手を一度握り進む方向を誘導すると、デジヘッド2人は部屋の外へ向かっていく。

μは扉を開けて待ち、2人が部屋を出る際にマインドホンを外し扉を閉めた。

アカネの精神は落ちる所まで落ち着いた安堵か自棄によるものか、逆に落ち着きを見せ始めた……。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

「なるほどね。貴方の歌と力とデジヘッドの関係、すべて理解できたわ。

 この世界に来てからの経緯もちゃんと教えてくれて、ありがとね」

 

朝倉はほぼ一方的にμとアカネから情報を得ることに成功していた。

ステータスについて隠蔽部以外は全て把握したといってもいい。

 

「アカデミーの学生にマスターがいたなんて……」

 

月海原に転入したばかりのアカネでも、月海原の学生のアカデミーに対する捻じ曲がった劣等感は理解していた。

なにせアカデミー中等部3年の内容を1年で、高等部3年の内容を1年で詰め込んで勉強してしまうエリート集団だ。

月海原からアカデミーに入学、編入学する者も多く、

彼らはエリートコースに入れたことを喜んで旅立ち、残された者には劣等感が残っていく。

 

鬱々としているところに相手のランサーが話を斬り込んでくる。

 

「情報とかその辺の話はあまり理解できなかったが……お前らの姿勢について質問させてもらう。

 お前らの能力はこの世界の一般人を多く利用して成り立つわけだ。

 魂喰いみてえに無理やり生命力を奪いはしないがな……」

「私の世界を改変する力は、私を求めてくれた人を助けて幸せにする願いを叶えるためのものでしかないの。

 皆のくれた感情の力が、皆を幸せにする力になるんだよ」

「うん、μの力も使命もとても私はすごいと思った。

 だから私は一緒に進んでいきたいと思ったんだけど……」

 

ランサーが言葉を遮る。

 

「だが、侵食された人々は無意識にお前たちのために戦おうとするんだろ?

 無意識なうちに一般人に危険な戦いをさせるわけだ。

 戦う覚悟もさせずに巻き込んで、それでいいとお前は思ってるのかよ?」

「……そう、そうだよね……おかしいような気はずっとしてるんだ。

 でも、私だってデジヘッドになった人たちが死んでもいいとか思ってない。

 だから学校でだけ音楽を流してるの。

 学校に通うようなマスターは、一般NPCが変質したデジヘッドを無暗に殺したりなんてしない。

 そう思ったから……」

 

フォローに入るのはランサーのマスター、朝倉の方だった。

 

「ランサー、彼女はもともとそういう性能のもと生まれてるの。

 正攻法の戦いなんて出来ない存在なのよ。

 貴方がどうこう言ってもどうにもなりはしないわ」

「そうだよな。でも気に入らねえんだよ。

 聖杯戦争って中で戦い抜くことを決めたくせに、アカネ、お前には覚悟がねえだろ。

 妥協と惰性で進んでるだけだろ。

 そしてサーヴァントの方もそれを尊重とか言ってるせいで、何の進歩も今までない」

 

何も言い返せず俯き続けるアカネ。μはアカネとランサーの方っを交互に見る。

 

「例えば一般人に犠牲を出したくないなら、お前自身がもっと動けばいいじゃねえか。

 うちのマスターはあんなに自分から前に出てるんだぜ。

 お前もデジヘッドとかいうのになってるんだら、ある程度の戦う力も持ってるはずだ。

 何でそれを活かそうとしねえんだよ!?」

「……わかってるよ。でも、でも……」

「へっ、そのうち少し稽古でも付けてやろうか?根性叩き直そうぜ。

 こっちとしても気分転換にはちょうどいい。かなり厳しいだろうがな」

「だめ!アカネを酷い目に合わせないで!」

「ランサー、彼女の言ってることは綺麗言だけど、貴方の言ってることも綺麗言じゃない?

 本来平和な世界に生きていた少女なのに、戦う覚悟を決めるなんて簡単じゃないわ」

 

何も言えないアカネ。

そこで朝倉が前に出て話し、ランサーはやり場のない表情で嘆息し頭を掻き始める。

 

「他にも対策はあるんじゃない?

 必要以上にデジヘッドが戦闘を自分から起こさないようにするとかね」

「それができれば、私もそうしたいけど……そんな方法ある?」

「音楽の一部に人は襲わないようなメッセージを流すのはどう?

 歌詞じゃなくてもいいのよ。サブリミナル効果って知ってる?

 小さな音とか、断片的に区切った音でもデジヘッドになるような人たちは認識するんじゃない?」

「あ……知ってるけど。μ、そういうことってできる?」

「うーん、やってみたことはないし効果もはっきりしないけど、そういう音源はすぐに作れると思うよ」

「じゃあ、またそのうち作ってみて。お願い」

 

意外と朝倉は優しいのかもと思い始めてきたアカネ。

しかし先ほどの底知れなさが恐怖としてこびりつき、そのような思考を振り払う。

 

「ねえ、もっと大きな提案があるんだけど」

 

更に底知れないことをしてくるんじゃないのかと予感が走り――

 

「私を楽士としてスカウトしてみない?」

 

その場にいる全員が強く朝倉を見やった。

誰も言葉を発さないので朝倉が続ける。

 

「貴方達も今の状況をどうにかしたいと思ってるんでしょ?

 楽士になりたいと思う人なんてそうそういないでしょう?まさに最善の一手といえるんじゃない?」

「おいおい、相手の戦術に完全に乗っかるってことだろう?

 そこまでやって大丈夫なのか?」

 

ランサーは率直に懸念点を呟く。

アカネとμは願ってもない提案ではあるのだが、さすがに予想もしていなかった言葉に反応できない。

 

「単純に考えて楽士になるっていうのは、双方にとって非常に大きなメリットがあるんじゃない?

 μは私の曲からも感情の力を集めてより強くなる。

 私もμから感情の力の一部をもらったり、ちょっとした願いをかなえてもらって聖杯戦争を少し有利に進められる。

 他にもデジヘッドが私の見える範囲で迷惑なことしてたら、私がそれを止めることができたりするしね」

 

ランサーの方を向く朝倉。

 

「それに別に心を完全に支配されたりするわけじゃないしね。

 楽士は自覚のあるデジヘッドということだから、精神面ではμへの依存ができても独立は保たれる。

 強く当人の心を保つことが出来れば問題ないでしょ?」

「そうだな……お前のあの胆力なら何とかやるだろうな。そう言うなら俺は反対しないぜ」

「さて……貴方達は受け入れる?」

「ちょ、ちょっと待って」

 

深く思案していくアカネ。

しかし何より自分で何かしなくても事態が好転するという状況は、アカネにとって願ってもない物だった。

どれだけ悩み考える過程を経ても、提案を受け入れる選択以外はなかった。

 

「μ、私は受けるしかないと思うんだけど、どう思う?」

「私も色んな曲でファンを増やせると嬉しいし、将来役に立つと思う!

 アカネもいいと思うなら、楽士になってもらおうよ!」

 

話はどんどん進んでいく。

 

「そうと決まれば早いわ。宜しくね、μさん」

「うん、じゃあ早速、曲を作ってみる?」

「何々? μさんの力ならそういうこともできるのかしら?」

「作曲も作詞もできなくても大丈夫だよ。時間もそんなにかからないよ。

 私が少し力を貸せば、作曲する力をあなたに与えられる。

 私があなたの心を読み取れば、それを曲に合った歌詞にするよ」

「なるほどね。世界を改変する力の一部かしら?

 ぜひ頼むわ、μさん」

「うん。えいっ!」

 

μが頭に触れた。

情報操作で介入する側だった朝倉が、今回は逆に介入されている。

音楽を作成するという機能が、インストールされていく。

ちょっと面白い感覚かもしれない。

 

「終わったよ。さあ、思いのまま、感覚で曲を打ち込んでみて!」

 

思いのまま感覚で音楽を作れと言われても、そんなもの持ち合わせてない。

どうしようかと思う朝倉。

 

「えーと、ちょっと資料が欲しいの。

 実はそこまで音楽、詳しくないのよ。

 盗作とかはもちろんしないから」

「うん、あなたの納得のいく音楽を作って!」

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

さて……。

μは人々に愛されるアプリケーションだけど、キャラとしてのデザインも持っている。

それは人間で言うと、物語性のある歌姫のアイドルかな。

そんな人達が歌う曲って、どんな雰囲気?

 

私は端末を使って情報の海に潜る。

表面的に画面にウェブページを出すだけでは、私の処理速度には遅すぎる。

私は直に端末に電気信号を流し、また返ってくる情報を読み取る。

インターネットブラウジングの並列展開だ。

 

なんとなく目についたものがある。

私やアカネのいた世界においての、日本の女性ソロアイドルの全盛期1980年代の情報。

そのころのアイドルたちの歌謡を、私は並列に聴き始める。

 

こういうような曲調で作ったら、きっと人々を魅了するアイドルらしさは出そうな気がする。

μの歌う歌としてはふさわしいのかな? そんなこと私にわかる訳はない。

でもまあ、今まで私が聞いたμの歌には無いジャンルなのは確か。面白そう。

 

さて、たくさん聞いた音楽のデータを基に、曲調や雰囲気をパラメータ化して目指したいベクトルを明確にして、

それをさっきインストールされた音楽作成機能に流し込み……。

 

「わあ、今まで歌ったことのない雰囲気の曲だよ!」

「何だが昔っぽい曲じゃない?

 私の親世代かその少し上くらいがテレビでそういう曲が流れると喜んでる気がする。

 そんなのウケるのかなあ?」

「俺は詳しくねえが、でもこの短時間で十分聴けるレベルの曲が出来上がるのはすこいじゃねえか」

「この世界は極端に様々な価値観の集合体よ、音楽にも大きな多様性があってもいいんじゃないの?」

「きっとそうだよ! 新たなファンを開拓できそう!

 じゃあ、次は歌詞も行ってみよう!ちょっと心を読ませてもらうね!私に向かって想いを伝えて!」

 

さて、情報統合思念体の端末という面を読まれて、

それを率直に歌詞を書かれたりしたらちょっと本性に迫り過ぎて不味いかも。

全力で女子高生のインターフェースとして女子高生らしさを展開、それを思いの形にしてμへ伝えていく。

 

「あれ? 歌詞、できそうだけど……あまり強い欲望じゃないよね? どうしたの?」

「ごめんなさいね、感情や欲望をしっかり思って形にするのって、難しいのかも」

「私もとてもささやかに曖昧にしか、欲望に共感した人を幸せにできないかも。

 そしてこの曲に影響された人たちの想いは、今までの楽士の曲と違って強いデジヘッドになりにくいかも……」

「そうね……でもとりあえずはそれでお願い。布石みたいなものになっちゃうけど。

 本当に私の本心を奏でる曲、いずれちゃんと作りたいと思ってるの。

 もっと欲望も強く反映したような曲をね。

 それができたとき同じ作曲者という点で、興味を持ってもらえる人が増えるんじゃない?」

「そうだね! アカネも自分の曲なかなか作れないし、ここで1つ作れただけでもすごいよ!」

 

うん、端末としての本性を隠しながらも欲望っぽいものを上手く表現した楽曲、また考えなきゃ。

アカネの表情が少し歪むのが見える。

このサーヴァント、AIだからか人の感情察するのちょっと苦手なのね。

私もパターンから外れたものを察するのは苦手だったりするけど。

 

「あとは……涼子にも楽士としての名前が必要だよね!」

「ああ、そうね。でもちょっとすぐには思いつかないのだけれど?」

「元の世界での楽士の皆は、本名をもじったり体、性格や趣味趣向とかの自分の特徴から連想して付けたりしてたよ」

 

本名をもじるのは……正体が連想されては困るからやめたほうがいい。体の特徴も同様か。それなら。

 

「イン・ザ・ダークなんてどう? 朝の陽ざしにも陰がある。

 委員長として明るい所で活動する私が、聖杯戦争というこの世界の陰にも関わってる。

 そういう相反する要素が合わさるのって、面白いんじゃない?」

「なるほど、なかなか洒落が聞いた名前を考えたな!」

「面白いよ! それにシャドウナイフみたいでかっこいいよ!」

「あ、うん、ちょっとカッコつけてる感じだけど……

 まあアーティストの名前っていろんな人に覚えてもらえた方がいいし、いいんじゃないかな?」

「……やった! みんな決まったね!

 じゃあ、イン・ザ・ダークで『小指でぎゅっ!』明日から流し始めるよ!」

 

……色々やってたら、外はもう完全に暗い。

私たちのロールは学生なんだし、一応そろそろ帰ることにするかな。

 

「じゃあ、いつでも連絡を取れるように端末の機能で同盟も結んでおきましょう」

「ああ、うん。一応これからは完全に仲間ってことになるんだね……」

 

端末を起動してみた。

二人とも一通りの機能は確認していたみたいで、スムーズに登録は進む。

 

「何時まで同盟は組めるのかしら?

 実は、私は聖杯そのものの機能に興味があるの。

 誰かが聖杯を使ったところを観察する。それでも私の目的は一応達成されるわ。

 こっちのランサーの願いは死力を尽くして戦うことで、聖杯に懸ける願いはないの」

 

ちょっと念話で念押し。そしてランサーは頷くだけ。

 

「あ、譲ってくれたりするの……?

 私の元の世界、今ちょっと大変なことになっちゃってて。

 聖杯の力を使えば、みんなが救われて幸せになれる世界へ導けるんじゃないかって思うんだよね」

「うん、アカネも私もどうしても聖杯が必要なの!」

「ええ。もしも貴方じゃなくて私が最後に残ったら、貴方の願いを叶えてもいいかもね」

 

聖杯の情報だけでも持ち帰れればいい。それは確かに本当だった。

ただそれは、どうしても手に入れるのが不可能だと判断した時の最後の選択肢。

自身が聖杯を手にするため最大限の努力を払い、やれることはすべてやるつもりだ。

そして万に一つもない可能性だけど、

情報統合思念体は聖杯を使うサンプルとして彼女の願いが適すると判断することは無いとは言い切れない。

だから嘘は言っていない。

 

そう、最後の本性はお互い伝え合わなかった。

 

「じゃあ基本的には最後まで組み続けるってことでいいわね?

 他の陣営と会った時とか、色々なことどんどん相談してよね」

「あ……本当にいいの?

 ごめん、なんか私の方ばかり得しちゃうみたいで」

「いいのよ、私だって慈善でやってるわけじゃないんだから。

 貴方は貴方に出来ることをちゃんとやりなさい。

 じゃあ、今後の連絡はまた端末でお願いね」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

帰り道。ランサーは現代の服を着て過ごし、霊体化はしていない。

この方が朝倉が夜間人に絡まれる可能性が、霊体化して一人に見せる際より有意に低い。

 

「珍しい貴方が見れたわね。

 いつもは女の子をナンパしようとしたり、無理していい顔見せようとしてる貴方があんなに真剣に話すなんて」

「何も分からずに覚悟を持たないまま死ぬのは不憫だろう、そう思っただけだ。

 ずっと覚悟を決めなかったら、聖杯戦争から降ろさせてやろうかとも思ってるんだがな?」

「彼女たちの能力は侮れないわ。何かの弾みで一気に手が付けられないくらい強くなる可能性もありそうだし。

 覚悟なんてなくても優勝しちゃうくらいね」

 

ランサーはまだもやもやが取れないが、別の話題に変えることで忘れることにする。

 

「それならマスターの方も、さっきのは何だったんだ?

 とにかく戦って聖杯を得ることが使命で、それしかないんだとお前のことを思っていたが」

「いえ、私の行動方針は一貫してる。

 私の上にいる者は、聖杯の機能を解析した結果を欲していると前に言ったでしょ?

 何故それが欲しいのかは、説明してなかったよね?

 いい機会だしちょっと難しいけど、説明しておくわ」

 

いい感じの男女の歩く図だが、話す内容は全くそれらしくなくて。

 

「私の上にいる者……情報統合思念体は、聖杯の無から情報を生み出す能力、すなわち自律進化に期待しているの。

 だから私は元の世界でも、自律進化を起こす能力を持った人間の監視を任務としていたわ。

 聖杯とその人間の能力の共通点は……願った者の望みに従い世界を改変する願望器でもあること。

 そしてこの聖杯戦争は、願望器を有した存在を多く内包しているわ。

 それは一部の上級NPCだけなのだと思ってたけど、あのサーヴァント、μも願望器としての一面を持ってるのよ。

 同じく自律進化の可能性があるんじゃないかと、私は連想して期待しているの」

 

ランサーは詳しい説明を省いたので理解してくれた。

 

「ああ? あいつを利用するってだけじゃなかったのか。

 だが聖杯を手に入れることが一番の任務なんじゃなかったのか?」

「そうね、だからこれは現場判断でもあり、私自身の欲望でもあるのかな?」

 彼女の能力はまだ万全じゃない。

 だからより強力な状態に能力を高めさせて、何が起きるのか観察してみたいの

 貴方としても、未完成な状態より万全な状態の彼女たちと戦えた方が嬉しいんじゃないの?

 もし彼女と私たちが最後の陣営になったとしても、最後の1騎を決めるために戦う機会が来るはずよ」

 

しかしランサーは喜びはせず、気遣うように話す。

 

「確かに戦士の望みとして死力を尽くし戦えるのは喜ばしいことだぜ。

 だがやっぱり、俺の望みではなくお前を気遣ってのことだが、

 聖杯を確実に手に入れる目的のためならとっとと排除した方がいいんじゃねえか?」

「いえ、私は過程も結果もどっちも欲しいと思ったの。

 情報統合思念体からの任務は、聖杯の機能を解析するのが優先なんだけどね。

 興味深い結果が予想されるなら、現場の独断で少し寄り道したっていいじゃない?

 それにもともと私の生還確率は、そう高くないと見積もられてるのよ。

 変わった行動をしてみた方がその確率は変動するかも。高い方向に動けば御の字よね」

「なるほど。それはそれで一本筋通ってるんだな。

 俺が見込んだマスターとして変わりはないようで良かった」

 

何故か朝倉の表情が少しおかし気になっていく。

 

「変わった行動、そう、いろいろ面白いこと考えてるのよ。

 例えば楽士になった私はμからその力の一端を受け取れるわ。

 それをよく解析すれば、人々の欲望を私がμを通さず直接力に変えることもできるかも。

 あとはデジヘッドへの侵食率を下げるナノマシンを、逆方向に作用させて強力なデジヘッド増やしたりね」

「……なかなかえぐいことも考えるんだな」

「ええ。貴方は死力を尽くせる良い戦いがしたいなら、私は貴方が出来ないようなこと色々しなきゃ」

 

ランサーはやはり朝倉を気遣い続ける。

 

「いい女のあんたがそこまでしなくたって、俺だって言われればいくらでも汚れ仕事くらいしてやるのに」

「へえ、でもやっぱり好きじゃないんでしょ?」

「マスターの頼みとあれば……度が過ぎなければいくらでもやってやるさ」

 

朝倉はここでランサーの顔を見つめる。

 

「ねえ、本当のことを言って? ちゃんと貴方の気持ちを教えて」

 

ランサーはしばらく見つめ合ってから視線をずらす。

 

「ああ、ああ、そんなことできれば一つもやりたくないね。

 でもそううまくはいかないんだろう? 割り切るってなるとまだまだ俺はかなりもやっとする。

 ……ちぇっ、女の前でカッコつけさせてくれよ」

「ごめんなさいね、人の気持ちってよくわからないのよ、

 特に貴方みたいな現代的な高校生から大きくずれた人のことはね。

 一蓮托生の相棒なんだから、ちゃんと本音を話し合いましょう」

「はいはい、そうですねえ」

 

ランサーは朝倉が解りやすいんだか読めない奴なのかよく解らないと嘆息する。

彼女のことをどう思ってるのか、よく解らなくなってきた。

目的のため俺をできるだけ関わらせず汚れ仕事をしようとする彼女を尊敬したいのか、

あえて汚いことをする彼女を蔑みたいのか?

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

朝倉涼子。彼女はとても恵まれていて、そしてそれに相応しい良き人格の持ち主。

作った曲を聴いて、まさに名前の通りにか朝の涼しくさわやかな明るさに包まれるみたいだと思った。

彼女のロールが月海原でなくアカデミー学生なのも、そういう面が考慮されたのかもしれない。

 

そしてそういう彼女を、思い出せば出すたびあまり好きになれない種類の人間だと思ってしまう。

そう、コンピューターワールドのツツジ台で、

自身が望み作り上げたクラスの人気者という理想像をごく自然に体現してしまっている人物だから。

優等生的な気質の彼女は……きっと私がツツジ台でしてきたことを知ったら私のことを強く蔑むのかな。

私に湧いてくるよくわからない、暗くて辛い気持ち。

憧れか、羨みか、妬みか……不安か、恐れか、どれも持ってるけど根本はもっと違う気がする。

でも聖杯を手にするためには、こういう人物とも協力しなければならないと理性は言っている。

その点では悪くない相手だとも、思えている。

でも近くにいると心が辛いのは、どうしようもなくて。

 

苦しいよ……辛いよ……。早く聖杯を手にして救われたいよ……。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

この世界で初めての楽士の勧誘が偶然できちゃった。

よかったぁ……なんて、アカネのあんなつらそうなところを見た後じゃとても思えないよ。

 

私はアカネに聖杯を手に入れる道筋でも、できるだけ苦しんでほしくないのに。

喜びと幸せに彩られた道を歩んでほしいのに。

それでもアカネは、現状のまま歩んでいくことを望んでる。

 

どうしたらいいんだろう。どうすればいいんだろう。

アカネを幸せにするために何かを変えなきゃ。何か……。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

観測するだけでは物足りない。行動を起こし反応を見ていかなければ。

それが情報統合思念体の端末、朝倉の考え。

 

同様の端末でも、派閥によっては違う行動指針を取り得ただろう。

そもそも情報統合思念体は有機生命体と世界の捉え方が異なりすぎ、聖杯を解析できても正しく使える方法を算出できるかは不明だ。

誰かに聖杯を使用させてその際の情報爆発を観察するのが、情報統合思念体としては順当な気もする。

主流派ならば主催の思惑に合致した願いを叶えるに値しそうな人物の近くに寄り添い、時には協力して観察しようとするのだろうか。

穏健派ならば主催者に近い位置に潜みこの世界を観察し、マスター権限も拘らず必要とあれば過度の干渉を防ぐためすぐ手放すのだろうか。

 

しかし朝倉は急進派に属する端末であるからして、最も聖杯から情報を得られるであろう聖杯の獲得を第一に考える。それでいい。

しかし、何故涼宮ハルヒのいた世界では端末の中では権力が無かった方の朝倉が、この世界でマスターとして召喚されたのか。

聖杯を手に入れたい意思が強いほど、聖杯戦争の参加者として的確なのだと判断されたのだろうか。

 

さて、朝倉は月海原のPCで漁った学生名簿にて、ある発見をした。

『涼宮ハルヒ』の名がその中に載っていた。

彼女はゼルダのような上級NPCなのか?

あるいは自身が力を自覚していないことによって、ただのNPCとして存在いるのか?

探索するのは非効率、聖杯戦争の上で協力的な態度を得るのも大変そうだと判断し、

彼女はそれに関することを一時的に思考の脇に追いやることにした。

今はとりあえずμに関して調査を進めていきたい。それが彼女の思考となっている。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

  …………

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

……さて、聖杯戦争初日ね。

2曲目がもうすぐ完成しそうなの。μに伝えるのが楽しみ。

タイトルはもう決まり。

 

『COOL EDITION』

 

 

 

【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】

[状態]健康、楽士化

[令呪]残り3画

[装備]サバイバルナイフ

[道具]なし

[所持金]995万QP

[思考・状況]

基本行動方針:聖杯を入手する。過程で願望器機能を持ったNPCや主従を詳しく観測してみたい。

1.μに新曲を渡す。

2.楽士としての力を試して戦ってみたいところ。

[備考]

 

【ランサー(クー・フーリン〔プロトタイプ〕)@Fate/Prototype】

[状態]健康

[装備]穿ちの朱槍

[道具]なし

[所持金]なし

[思考・状況]

基本行動方針:朝倉に従う。死力を尽くして戦いたい。

1.朝倉の護衛。

2.アカネの奴どうしてるかな。

[備考]

 

 

【新条アカネ@SSSS.GRIDMAN】

[状態]健康、デジヘッド化

[令呪]残り3画

[装備]なし

[道具]なし

[所持金]970万QP

[思考・状況]

基本行動方針:聖杯を入手する。自分の世界とμのために。

1.順調にデジヘッドも楽士も増えてるけど本当にこのままでいいの?

2.戦う覚悟なんてできないよ……。

3.アレクシス、助けに来てくれたらな。

[備考]

家の庭にミニチュアサイズのグールギラスが番犬のようにしている。

 

【キャスター(μ(ミュウ))@Caligula Overdose】

[状態]健康

[装備]なし

[道具]なし

[所持金]なし

[思考・状況]

基本行動方針:アカネのために動く。自分の願いも叶えたいけど。

1.たくさんデジヘッドを増やす。楽士もスカウトしたい。

[備考]



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候補作募集中です
候補作募集のお知らせ。


この度現時点で人が集まらないため続行不可能として、改めて企画をやり直し候補作を募集します。

なお、二次キャラ聖杯戦争OZ EFFECTIVE EARTHの候補作からも採用する予定です。

ルールは以下の通りです。

 

【ルール】

当企画はTYPE-MOON原作の「Fateシリーズ」の設定の一部を元にした、リレーSS企画です。

 同作中の魔術儀式「聖杯戦争」を元にし、参加者達が聖杯を賭けて戦う企画となっております。

最終的な参加者の数は、25組前後を予定してます。投下数次第で更に採用するかもしれません。

サーヴァントについては原作における通常7クラスの他に、エクストラクラスを割り当てることも可能です。

ルーラーも可能ですが、既に聖杯戦争を管理するルーラーがいるので「なぜルーラーが複数いるのか」その説明を投下作内で説明して頂けるとありがたいです。

投下作品数に制限は設けません。一人の作者が何作投稿しても自由です。

コンペ期間は10月30日までとします。

 

【設定】

舞台は疑似霊子サーバー「ヘルメス・トリスメギストス」が聖杯の力により創造した仮想空間「パラディウム・シティ」です。サーバー「ヘルメス」と「トリスメギストス」が並列稼働した状態です。

聖杯戦争の終了条件は「令呪を所持したマスターが一人となった時点」です。他マスター、サーヴァントの有無、人数は関係ありません。

マスターが予め持っていた所持品、武器・礼装の持ち込みは可能です。

マスターはこの空間内に召喚されると自動的に『賢者の石』に変換され、欠損した手足などは魂の情報により復元されます。魂まで刻まれた場合は別です。

全てのマスターは星晶石の発動と同時に仮想空間内へ転送され、シャドウサーヴァントの襲撃を受けます。

 星晶石で召喚した無地のセイントグラフで「英霊の座」に接続できた者だけがサーヴァントを召喚して生き残ることができ、令呪を入手してサーヴァントの契約に移ります。

サーヴァントへの絶対命令権、令呪はサーヴァントと契約した時点で3画与えられます。

令呪は願望器への接続の権利を兼ねるので、3画を失った時点で失格となります。失格しても消去されることはありませんが、権利は失われます。

 ただし、他のマスターから令呪を奪う、または譲渡されれば復帰できます。

令呪を所持した状態でサーヴァントを失っても消去されることはありません。他のサーヴァントを奪う、またははぐれサーヴァントと契約すれば復帰できます。

令呪を失った状態で最後まで生存したとしても、聖杯には辿り着けず、願いは叶えられません。

用意された土地はとある世界の首都をベースにして、様々な作品世界が混成しています。

 またNPC(モブキャラ)が存在しており日常生活を送っています。

 

【NPCについて】

都市内にはNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)が生活しています。

全NPCは『賢者の石』に実在した人間の容姿、人格のペルソナを被せて再現しています。

NPCは全て聖杯、もしくはそう呼ばれるに足る願望器のある世界の人間たちです。

 人種も普通の人間から、角や翼などが生えた亜種人種、見た目化物然とした異人種まで混在しています。

 (例えばゼルダの伝説のゴロン族、ゾーラ族などの全ての民族。ゼノブレイドのノポン、ハイエンター、マシーナ。ゼノブレイド2のグーラ人、ドラゴンボールの動物型地球人、モンスター型地球人などです)

その他NPCの中には、この『聖杯戦争』に関わったという事で、マスター及びサーヴァントと縁があった人物が再現されているケースがあります。

 彼らは、そのマスターやサーヴァントが見ても、自分がよく知っている人物だと思うほど、完全に見た目も性格も再現されております。

 ただし、固有の能力は再現されておらず、他のNPCと同程度の存在として扱われています。記憶も都市に合わせて一部が改ざんされています。

元の世界で願望器そのものを宿していたNPCは、自我や元の世界の記憶を持ち、高い魔力を内在し、固有の能力も再現されています。

 その全員が音楽ユニット、市長、訪問に来た王国の姫など市内の有名人として生活しています。

 

(現在想定しているNPC)

「パラディウム・シティ市長」ドラゴンボールより地球の神

「音楽ユニット・エンジェリックコンサート」エンジェリックコンサートよりカウジー、サフィ、エンジェリックセレナーデよりラスティ。

「ビッグアイ内料理店・パンゲア総料理長」トリコより小松。

「一大コングロマリット・ダークハーフのCEO」ダークハーフよりルキュ。

「遊学中王女」ゼルダの伝説時のオカリナよりゼルダ。

NPCは殺害、または魂食いをされると二度と復帰できません。

NPCの魂喰いによる魔力補充を行うと、他マスターに配信されるニュースで犯行が報道されます。

 さらに目撃された場合、警察による指名手配がかかり他マスターの端末にマスター、サーヴァント双方の容姿、ステータスが表示されます。

 それでも魂喰いを続けた場合、他マスターの端末にマスター、サーヴァントのMatrixの全情報が解放され、マップに彼らの位置情報が表示されます。監督役から何らかのメリットを提示される討伐令が下されるかもしれません。

Apocryphaのアサシンのように、情報抹消のスキルを所持している場合は、犯行は報道されても容姿などは報道されません。

 ただし、魂喰いを続けすぎた場合は別です。

 

【当聖杯ローカルルール】

英霊の参戦時期は基本的に死亡後です。原作中で死亡描写が無いキャラは原作終了後です。

舞台は筆者が設定した都市。開始時年号は「聖歴111年1月1日」とします。

参加者には基本、舞台になる世界での役割ロールを与えられます。ロール通りの行動をとるか、無視するかは個人の判断によります。

所持金は原作の職及び立場に準ずる金額をQP(クォンタムピーズ)に変換して各個人の銀行口座内に貯金されています。QPは貨幣と紙幣の二つがあります。

物価は現代日本より高めです。具体的には料金が2、3割、賃金が5、6割ほどインフレしてます。

猶予期間の軍事費としてデフォルトで1000万QPがマスター全員に支給されています。

ズガンは原則禁止です。ですが他の作者の投稿作品からでなければOKです。

多目的超高層ビル「ビッグアイ」にカウントダウンタイマーが設置されており、0になると聖杯戦争が開始されます。

 それまでの行動はすべて自由です。他のマスター組と戦うも同盟を組むも、拠点を作るも、途中で思い直して元の世界に戻るも、窃盗も殺人も(犯行はニュースになり、動画サイトに場面がUPされるかもしれませんが)可能です。

 ただ一つだけタブーがあり、開始前のサーヴァントによるNPCへ魂食いをし、結果死に至らしめた場合は強制退場となります。それ以外なら何をしても問題ありません。

全員にスマートフォン型の端末と音声操作用の腕輪が支給されます。プリインストールされているアプリは以下の通りです。

 

マップ:聖杯戦争の舞台の地図です。所持するマスターと契約したサーヴァントの位置が、名前付き(サーヴァントはクラス名)で表示されます。

    他のマスター、サーヴァントは表示されません。位置情報の登録は出来ます。

メール:他のマスターとアドレスを交換し、メールのやり取りができます。

    ハッキングは基本的に不可能です。

SNS「ペーパームーン」:音声通話、チャット機能有。要はLINEです。

Webブラウザ「カルデア」:インターネットの閲覧や投稿が可能です。起動時のページは検索エンジン「シバ」にセットされています。

動画サイト「ラプラス」:撮影した動画の投稿が可能です。

自動翻訳:端末を所持しているだけで他マスターとの会話や書籍の文字が、マスターが元居た世界の言語として認識されます。

通話機能:普通に電話としてNPC相手にもできますし、番号を交換したマスター相手にもできます。

念話機能:魔術師やその技術を持った特殊な能力者以外の一般人は、このアプリを使用することで声を発することなく、思うだけでサーヴァントと会話ができます。

カメラ:写真、及び動画を撮影できます。この動画でサーヴァントのステータスは確認できません。

VR機能:一般人には認識できない特殊な能力でも、この機能を使えば端末を通して見る事が出来ます。

    建物や場所、人物の情報確認にも使えます。

    これでスタンドの様な異物を見るとド ド ドとかゴ ゴ ゴのような何か『凄み』の様な擬音が表示されますが、製作者(というか筆者)の趣味でそうなってます。

Matrix:一度マスターが視認したサーヴァントとそのステータスはここに登録され、いつでも再確認できます。

    さらに、他のマスターが持つ端末に情報を転送できます。

    サーヴァントの情報を調べることで、スキル、宝具、真名が開示されます。

魔術髄液:一般人がサーヴァントを維持するため、疑似的な魔術回路を形成するアプリです。

     魔力は生命力(体力と精神力)から生成されます。スライダで変換率のパーセンテージを上下に変更できます(100%にしたら数分で死にます)。

     サーヴァント側が吸い上げる魔力量によってもパーセンテージが変化します。

     生命力の個人差によって、同じパーセンテージでも生成される魔力量は異なります。

ステータス:所持するマスター本人、サーヴァントの魔力、体力とサーヴァントのパラメーター、さらにバフ・デバフ、状態異常が表示されます。

同盟機能:マスター同士で令呪を重ね合わせる事で、同盟を結ぶ事が出来ます。同盟の名前は自由に決められます。同陣営のマスター、サーヴァントにつく特典は以下の通りです。

マップに同陣営のマスター、サーヴァントが名前付き(サーヴァントはクラス名)で表示されます。

ある陣営のマスターがサーヴァントを確認した場合、同陣営に所属するマスター全員のMatrixが更新されます。

陣営内のマスター同士で、容易に令呪を譲渡できます。

魔力の少ないマスターに多いマスターが分け与えるなど、魔力のやり取りが可能になります。

アプリを押すと、自陣と今分かる敵同盟(名前は相手が明かすまでわかりません。同盟名は自由に変更できます)が表示され、自陣をクリックすると自陣の全員の顔写真と名前が表示されます。

 魔力のやり取りなど同盟内でしかできない事をマスターの前で行うと、両者、またはそれ以上の複数のマスターが敵同盟として顔写真が登録されます。

死亡した、もしくは同盟から脱退したマスターは自動的に同盟内から名前が消去されます。

同盟から脱退する際は、アプリ→自陣→自分の名前の順で押すとパーソナルデータの他に『同盟脱退』のボタンが表示され、それを押すと『○○(同盟名)から脱退しますか?』とでるので『はい』を押せば脱退できます。

 同盟に所属する他のマスターには、端末に『○○(マスター名)が○○(同盟名)から脱退しました』と表示されます。

電子マネー:銀行などで現金をチャージできます。どの店でも使用可能です。

文字入力キーボード:マスターそれぞれ各世界の言語に合わせた文字になっています。

音声入力機能:所持者の音声でアプリの起動や使用が出来ます。

ニュースと天気:天気予報、その日に起こった事件、脱落したマスターの名前と残りマスター数が早朝4時と夕方16時の2回、ニュースとして放送されます。

カレンダー:予定を書き込めます。

時計:時刻が表示されます。

メモ帳:考察を記録するのに便利です。

ルールブック:聖杯戦争の基本的な説明が書かれています。

ヘルプ:各アプリや聖杯戦争、仮想空間についての疑問に答える機能があります。

 

端末の起動テーマ画面にあるQRコードは、市内での買い物や家、武具の購入に最優遇措置が取られる資格、免許となり煩雑な手続きなしで購入できたり、運転免許などの各種証明書になるマスター限定のオールマイティーパスです。

端末を空中に置くようにセットすると、複数の空中タッチパネルや空中キーボードなどが展開し、複数のアプリを同時使用可能となります。手首に填めた腕輪でも音声認識により同様の機能使用が可能です。

 通話機能が通話相手の画像が映し出され、複数との会話可能となるなど、機能も変化します。

 

セイントグラフ:サーヴァントを召喚した証として、召喚後もサーヴァントカードとして手元に残ります。

         マスターが死亡しても失われず、はぐれサーヴァントが他マスターと契約する際に必要となります。

 

 

【コンペルール】

必ずトリップを付けての投下をお願いします。

当企画は『版権キャラ』限定とし、以下の出典はお断りいたします。

1.オリキャラ

2.現実の人間

3.公式でない二次創作企画・二次創作作品からの出展

4.フリーゲーム、小説家になろう、カクヨムからの出展

フリーゲームやなろう等の場合「これは自分の作ったキャラだ」と、いくらでもオリキャラを登場させられる可能性があるので、禁止します。

どうしても投下したい場合はコミカライズ作品などからの出展ならOKです。

5.シミュレーションゲーム、シューティングゲーム、カードゲーム、都市伝説のような設定だけしか存在しないキャラ。

作中で豊富な会話が用意されている。またはコミカライズ作品などがあり、それらでキャラクターの性格、心情が掴める場合はOKです。

6.史実キャラ

戦国無双などの、史実を元にした作品からの出場はOKです。

前項のように劇中での会話やコミック、小説その他で性格などを掴める事が前提です。

7.名無しのキャラ

具体的に言えばウェピカポの妹の夫とか、団長の手刀を見逃さなかった男とかそういうのはお断りです。

真・女神転生4FINALのナナシのような渾名、または本名ならOKです。

 

【予約に関して】

予約期間は1週間です。

延長も同じく1週間で最長2週間です。

ゲリラ投下も可能です、ですが予約なしでも書き溜めている人もいますので、予約推奨です。

 

【時刻の区分】

未明(0~4)

早朝(4~8)

午前(8~12)

午後(12~16)

夕方(16~19)

夜間(19~24)

 

【投稿用テンプレ】

【サーヴァント】

【CLASS】

 

【真名】

 

【出典】

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力 耐久 敏捷 魔力 幸運 宝具

(筆者注:数値はEからAまでの五段階。+補正は一時的に倍加の意味で+++まで。-補正は数値未満か安定しないの意味。規格外はEX)

【属性】

(筆者注:社会属性は「秩序」「中立」「混沌」。個人属性は「善」「中庸」「悪」。組み合わせは「秩序・善」から「混沌・悪」までの九通り。バーサーカーの場合、個人属性は「狂」)

【クラス別能力】

 

【保有スキル】

(筆者注:数値はステータスに準じます)

【宝具】

ランク: 種別: 宝具 レンジ: ~  最大捕捉: 人

 

【weapon】

 

【人物背景】

 

【サーヴァントとしての願い】

 

【方針】

 

 

【マスター】

 

【出典】

 

【性別】

 

【能力・技能】

 

【weapon】

 

【人物背景】

 

【マスターとしての願い】

 

【方針】

 

【ロール】

 

【令呪の形・位置】

(筆者注:書かなくても大丈夫です)

【把握媒体】

 

 

【状態表テンプレ】

 

【地区名(建造物及び場所の名前/聖歴111年1月○日 時間帯】

 

【名前@出典】

[状態]

[令呪]残り◯画

[装備]

[道具]

[所持金]

[思考・状況]

基本行動方針:

1.

2.

[備考]

 

【クラス(真名)@出典】

[状態]

[装備]

[道具]

[所持金]

[思考・状況]

基本行動方針:

1.

2.

[備考]

 

その他の設定・ルール

 

【支援サイト】

wikiとしたらば掲示板を用意しましたのでご活用ください。

 ○wiki『https://w.atwiki.jp/outerzone/』

 ○掲示板『https://jbbs.shitaraba.net/otaku/18445/』

掲示板では「要望スレ」「投票スレ」「仮投下スレ」「雑談スレ」「議論スレ」「妄想語りスレ」などのスレッドを設置しておきます。

参加者名簿が完成するまではIDを固定にしますが、それ以降はIDを非表示にして自由に語らえるようにします。以降、必要に応じて都度IDの表示/非表示を変更する予定です。

 

【「妄想語りスレ」について】

ある時はネタの語り場、ある時は停滞した企画を完結にまで語りきる補助機関。

コンペ募集中や本編が稼働している通常時は、てきとうに思い付いたネタを晒す場所として使ってください。ただし、各SSに干渉し過ぎるネタの投下はご遠慮ください。

 

◆本編投下してから『2週間』経っても予約が入らなかった場合、それまでの本編内容の続きを妄想してリレーのように語りあい物語を紡いでもいいです。どなたでも書き込みをして物語を語り進めてみましょう。

ただし、新たに予約された場合は妄想語りは一旦ストップし、本投下された場合はそれまでの妄想語りは一部無効または大幅無効になります。

 

◆本編投下から『半年』経っても予約が入らなかった場合、これまでの「妄想語りスレ」の内容を本スレに転記して妄想語りによる企画完結を目指します。

こちらの場合はそれまで語られた内容を“本編で実際にあった物語”とし、これ以降に書き手が予約・投下をする場合はその内容に準拠・継続したSSを書いてください。

 

なお、書き手は最終投下から“半年以内”であれば「妄想語りスレ」の内容をSSに反映してもいいし、それとは全く違う展開のSSを書いてもいいです。“半年以上”経過していたら上記のように「妄想語りスレ」の内容に準拠・継続したSSを書いてください。

新規予約が入った時には日数カウントを一旦ストップしますが、それが破棄された場合はその翌日からカウントをリセットせずに再開します。

 

この設定は異準聖杯戦争様より企画が滞らないよう参考にさせていただきました。この場を以って厚くお礼申し上げます。

 

候補作は掲示板『https://jbbs.shitaraba.net/otaku/18445/』

『https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1659451714/』

wiki『https://w.atwiki.jp/outerzone/』

 

のいずれかかハーメルンに直接投稿願います。



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【候補作】Fluorite duet -彼女の使命と彼の理想-

作者 yu sato
一応このような形で応募願います。
願いで『元の世界に戻る』というのは予選期間中ならいつでも戻れるので採用は難しいと考えてください。


「本日はお集まり頂きありがとうございました。最後にお聞きください。『Sing My Pleasure』」

 

 街の一角にあるライブハウス。その中で一人の少女が歌う前の一息に観衆が息をのんで沈黙する。

 

  As you like my pleasure――

 

 歌の始まりと同時に突き出される腕。

 その容姿はまるで絹糸を両手で掬いたら、指の間からこぼれていきそうな儚い美貌。海色の腰まで届く長い髪に、フローライトの大きな瞳。首筋には円に逆三角形のタトゥーシール。

 ステージ衣装は胸元が大きく開いた薄水色を基調としたドレスにロングブーツと手袋。左耳に翡翠色のイヤリング。首元からは同じく白の羽根が肩についたマントを羽織っている。

 

  使命で目醒めた幸福から

  紡ぐ 幾つもの誇らしい記憶

 

  あなたのために この世界へ

  感謝と 宇宙いっぱいの花束を

 

 マイクを必要としない高音量に幅広い音域。

 初めは柔らかく繊細に。盛り上げる場面は大胆に。

 人間技を超える精密な歌唱。かと言って機械ではこの人を酔わせるフィーリング、叙情的な歌声は出せはしない。

 陳腐な表現ではあるが、彼女の歌には心が籠っていると誰もが感じていた。

 

  どうぞ いつでも幸せを

  ずっと 笑顔でありますように

  どんな矜持も 絆の約束を果たすために

 

 サビの前の小節でステージ中に響き渡る歌声。

 それは頭の中に直接通るような存在感があり。

 心の中へ直接染みわたるような感情が宿っていた。

 

 ライブハウスやステージを渡り歩く歌姫「Vivy」の名前は『パラディウムシティ』中の音楽ファンの間で大評判となり、事前に予約しないとすぐに満員になってしまうほどだ。

 

  宿命でも 運命でも もっと もっと もっと

  啼き声さえ 歌のように聴かせてあげたい

  そっと静かに眼を閉じて

  その夢を預けてほしい

 

「ご静聴、ありがとうございました!」

 

 Vivyの笑顔と終了の言葉の後、一斉に沸き起こる万雷の歓声と拍手。

 観客は全員が一体となった感覚を味わっていた。

 

   ◆   ◆   ◆

 

――陽電子脳 正常稼働

 

――論理回路 クリア

 

――運動回路 クリア

 

――関節部の潤滑剤出力回路 クリア

 

――歌唱及び発声機能 クリア

 

――戦闘プログラム 実行可能

 

――自己認識問題なし

 

――では、なぜ機能を停止した私がこうして正常稼働しているのだろうか。

 

 自律人型歌姫AI型番『A035624』。名称『ディーヴァ』。自己認識『ヴィヴィ』は疑問を抱いた。

 

 あの時、暴走して人間を殺す世界中のAIを止めるため、AI停止プログラムを実行した私は自身を巻き込み機能停止したはずだった。

 私は周囲を見渡す。あたりは暗いため、アイカメラの光量調整を最適化する。

 そこは何もない広大な空間。空には星々が煌めき、何もない地面のような空間にも星々が満ちている。

 まるで以前行った宇宙のようだと私は思った。

 身につけた衣装を確認するとセーラー服だった。

 胸元のヒモをつまむ。思えばこの格好はアーカイヴ内でしかしていなかった。

 側を見るとアルミ製キャスター付スーツケースがある。

 中にはステージ衣装とUSBメモリに私のイヤリング型I/Oポートの規格とUSB規格の端子がそれぞれについたケーブル、それに私の規格に変換してメモリをチェックできるUSB OTGケーブルがあった。

 メモリをケーブルで接続し、中身を確かめるとそれは私の歌を含めた10000曲以上のデータが収録されていた。

 

「ようこそ、常ならぬ願望を抱く新たなマスター候補者よ」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 ヴィヴィは神父の案内通りに進み、シャドウと対峙。

 戦闘プログラムを起動し戦うが、シャドウは一切のダメージを受けず、ヴィヴィに対し襲ってくる。

 蹴りで突き放し、また来るシャドウを掌底で突き飛ばし、それを繰り返すうちにヴィヴィの中に疑問が湧き上がってくる。

『何で私は稼働し続けているんだろう』

 機能停止したはずの自分が、望みなどもうない。

『これを受ければ楽に――』

 振り下ろしたシャドウの剣を受ければ一撃で破壊されるだろう。

 そう思ったヴィヴィの陽電子脳にシナプスが走った。

 

 違う。これは私の終わりじゃない。

 私達AIに必要不可欠なのはどう生きるかだ。

 だから――体がまだ動くうちは、自分から止まることだけは絶対にしない!

 私は――私の『意志』で前に進む――!

 

 瞬間、ヴィヴィの懐からカードが飛び出し、三重の光の輪を描く。

 その中から蒼いボディアーマーを纏った少年が飛び出し、シャドウを右手の銃で撃ちぬいた。

 

「間に合ったようだね」

「あなたは……?」

「オレはエックス。アーチャーのサーヴァントだ」

「私は……ヴィヴィです」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 監督役の神父、言峰綺礼から詳しいルール説明を受けたヴィヴィは自分の身体について尋ねた。

「君はどうやらサイバーゴースト、「精神だけ」が生命活動を行っている状態に近い存在のようだ。機能停止する寸前の全てのデータがこの場に召喚されたようだな」

「なぜ……そこまでして私が選ばれたのですか」

 具体的な願いがない自分がなぜ、とヴィヴィは疑問を抱いた。

「もとより星晶石によって選ばれる基準などない。

「君は聖杯をどうする気だ?」

 ヴィヴィは数秒悩み。

「誰も傷つけることなく願いを叶えようとする人がいるなら、その人の助けに。その人がいなければ聖杯を破壊します」

 自殺ともとれる答えを出した。

「聖杯を手に入れられなければ、データだけがこの場に召喚された君は消失するがそれでいいのか?」

「構いません。私は私の使命を果たしました。今更人を殺してまでおめおめと私が戻るわけにはいきません。

 そうでなければ、使命に殉じていった彼女たちに、私が破壊した彼女たちに申し訳が立ちません」

 エステラ、エリザベス、グレイス、オフィーリア。皆彼女たちなりに使命を果たし、そして壊れていった。

 ヴィヴィ自身が破壊したAIもある。それを思えば聖杯などに自身の復活を願うことなどできない。

「……つまらないな」

 神父は深くため息をついた。

「つまらなくても結構です。私の使命は『歌でみんなを幸せにすること』です。私はその使命のために歌に心を込める事が出来るようになるよう、人の心を学んできました。

 ですが、人の心を知っても私はAIです。私たちは使命に生きます。

 私はそのためにこの都市で歌い、そしてだからこそこの聖杯戦争に巻き込まれた人たちの命を守りたいです」

「……分かった。君の意思は尊重しよう。せいぜい人の欲望にまみれることだな」

 

 ◇ ◇ ◇

 

「エックス。あなたには願いがあるのですか?」

「願いというより理想かな。聖杯に願って叶えるようなことじゃないよ。

 人間とレプリロイドが共に平和に暮らせる世界の実現。それがオレの理想だ」

 だから、とエックスはヴィヴィに対し向き合った。

「AIである君が人たちの命を守るという考えにオレは協力する」

「ありがとうございます」

 ヴィヴィは頭を下げた。

「それで、聖杯戦争のためであり、私の使命のためには歌で私の名を知ってもらう必要があるのですが、メモリだけでは演奏は難しそうです」

「ああ。それなら何とかなりそうだ」

「演奏が出来るんですか?」

「オレの宝具の話になるけど、サイバーエルフになればそのくらいの処理能力はあるからね。

 それと、オレに敬語を使う必要はないよ。この聖杯戦争中とはいえオレ達はパートナーだ。気安く読んでもらって構わない」

「わかったわ。エックス」

 そう言ってヴィヴィは微笑んだ。

 

   ◆   ◆   ◆

 

「お疲れ様、ヴィヴィ!」

 ステージの裏に回ったヴィヴィは、ライブハウスのマスターの掲げた手に合わせ笑顔で「お疲れさまでした」と言い、ハイタッチをした。

「有名になっても週一で、自分で言うのもなんだけどこの小さいライブハウスに来てくれてありがとうな」

「そんな、そのくらいお安い御用です。何十件とステージを回って断られてきた私を、初めて歌わせてくれた御恩がありますから」

「断られていたって俺の時のように鞄を持った女学生が『私の名前はヴィヴィです。ここで歌わせてください』って言って回ってたんだろ? どう考えても怪しいだろ。

 俺だって直前にバンドの前座のキャンセルがなければ歌わせたりしなかったさ」

 ヴィヴィが苦笑いのエモーションパターンを表情に浮かべた。

 今まで対人関係でAIと疑われない自信はニーアランドの接客経験からあったが、流石に歌の売り込みなど初体験の事にはまるで初期稼働時同様のワンパターンぶりだった。

 マツモトがこのことを知ればきっといつもの早口皮肉をいう事だろう。

 ヴィヴィがニーアランド外で活動する際、マツモトがどう履歴の改竄や潜入工作をつけていたか、その苦労に少しは感謝する気分になった。

「ですが、マスターは私のために他のライブハウスやステージに渡りをつけてくれました」

「俺は君のファン第一号を自認しているつもりだからさ。初めて君の歌を聞いた時頭がぶっ飛んだぜ。

 だからもっと多くの人に君の歌を知ってもらいたくて、俺のコネやつてで出来る限りのことをしたんだ。

 俺の予想以上に君は評判を集めて、向こう側から招かれるまでになったけどな」

「……そのことは深く感謝しています」

 ヴィヴィは微笑んでお辞儀をした。

 

 ファン第一号。その言葉ではっきりと思い出せるのは、元の世界で最初のファンになってくれた霧島モモカだ。

 私が歌に心を込めて歌えることを信じてくれたのも、ヴィヴィという名前を付けてくれたのも、私が歌に心を込めるきっかけになったのもモモカだ。

 100年たってもうモモカの痕跡もないが、その姿、その声はずっと、ずっと覚えている。

 

「それで、次はどこに行くんだい? ここが休日の時なら聞きに行くつもりだけど」

「今度はEアイランドで大きなステージのメインを任されまして――」

『エックス』

ヴィヴィはマスターとの会話タスクを並列処理してエックスへ通信――念話を入れた。

『どうかした、ヴィヴィ?』

『エックス。私たちがこうして歌を唄い続けているのは、私の使命もあるけどそれ以上に聖杯戦争を止めるためよ。

 私が評判になれば聖杯戦争のマスターかも、って疑いをかけて襲い掛かってくる相手がいるかもしれない、と思って』

『確かに実際ライブの後にサーヴァントが襲い掛かってきた。すべて撃退したけど』

『こうしている間にもマスター達が戦っているかもしれない。だけど不謹慎だけど、私は人の幸せのために歌を唄える事が嬉しいの。それが聖杯戦争を利用しているみたいでいやな気分になるのよ』

『……オレは生きていたころ、100年以上とほうもない数のイレギュラーと戦ってきた。

 それは疑問と悩みに満ちた戦いだったけど、何よりつらかったのは段々と摩耗していく自分の心だったんだ……』

『エックス……?』

『ヴィヴィ、人間とAIを繋ぐ君の歌声がオレにとっては暖かな安らぎであり、これからなぜ戦うかの問いかけであり、戦うための熱い心が湧き上がってくる動機になるんだ。

 だから、これからも君が歌う手伝いをさせてほしい』

『……ありがとう、エックス』

 

「それで、今聞こえているだろ? アンコールに出てもらえるかな」

 確かに観客席からアンコールの声がヴィヴィにも聞こえている。

「大丈夫ですよ。それじゃ、ステージに向かいます」

 ヴィヴィは右手でスナップを鳴らし、ステージに戻る。

 観客の声に笑顔で手を振って応え、音響機材にエックスが宿ったメモリを差し込み、歓声が静まった頃を見計らって口を開いた。

 

「アンコールにお応えして、この曲を歌います。『Fluorite Eye's Song』」

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

アーチャー

【真名】

エックス

【出典】

ロックマンX、ロックマンゼロ

【性別】

男性型

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷B+ 魔力B 幸運C 宝具A

【属性】

 秩序・善

【クラス別能力】

対魔力:E

 魔術に対する守り。

 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:A+

 マスター不在でも行動できる能力。

【保有スキル】

千里眼:C

 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

戦闘続行:C

 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。

仕切り直し:B

 戦闘から離脱、あるいは、状況をリセットする能力。

 また、不利になった戦闘を初期状態へと戻し、技の初期値に戻す。

 同時にバッドステータスの幾つかを強制的に解除する。

騎乗:A-

 騎乗の才能。全ての乗り物を自在に操れる。

【宝具】

Rockman X(ロックマンX)

 ランク:EX 種別:対機(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

 「無限の可能性」を持つエックスのボディそのもの。

 それは「悩み、考え、行動する」という自分で意志決定と行動を決めるという人間の意志と同じ機能であり、ロボットが生物のように進化する可能性を秘めている。

 普段のエックスは正義感と戦いを嫌う心優しさの間で悩んでいるが、いざ覚悟が決まった時勇猛:A、不屈の意志:Aがスキルに追加され、その戦闘続行中ステータスが上昇し続ける。

 サーヴァントを倒した場合、宝具をバスターから発射されるという形で使用可能になる。その際魔力消費は通常のショットより大きくなる。

 また、魂だけが独立して活動できる電子生命体「サイバーエルフ」となって電子機器の操作、クラッキングが可能。

Ultimate Armor(アルティメットアーマー)

 ランク:A+ 種別:対機(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

 装備することにより全ステータスがワンランクアップ。

 バスターショットは敵にヒットするとその場に一定時間プラズマ弾が発生、消滅するまで対象に追加ダメージを与え続けるプラズマチャージショットになる。

 さらに倒したサーヴァントの宝具を魔力消費無しで真名開放まで可能となる。

 また、対粛正防御を纏ったまま無敵貫通効果を持つ同ランクの対機宝具「ノヴァストライク」が使用できる。

【weapon】

 エックスバスター

【人物背景】

 初代ロックマンの制作者にして、作中で『ロボット工学の父』として称えられているトーマス・ライト博士によって生み出された、「悩み、考え、行動する」という従来にはない機能を備えたロボット。

 ライト博士によれば、この機能は「機械が人間や他の生物と同じように進化できる可能性をもたらす」としている。

 しかし、ライト博士は、エックスのほぼ人間と変わらない感情や悩むという能力が、ロボット工学の原則に対しても疑問を抱かせ、人間に危害を加えてしまうかもしれないことさえ予期していた。

 そのため、安全性が証明されるまでカプセルに封印され、後にケイン博士によって発見された。

 完成年は不明であるが、封印したのは20XX年9月18日頃と思われる。

 “X”とは「無限の可能性」あるいは「危険」を意味している。

 ケイン博士に保護されたエックスはやがて、イレギュラー化したレプリロイドを逮捕・破壊する治安維持組織「イレギュラーハンター」に所属する。

 第17精鋭部隊に配属されたエックスだったが、心優しい性格で悩むことが出来るエックスは、ただイレギュラーを破壊するというイレギュラーハンターの任務に疑問と深い悲しみを抱くようになる。

 そのため、戦闘でも非情になりきれず、常にB級ハンター止まりで終わっていた。

 周囲の仲間からも軽視され嘲笑されていたが、同僚でライバルであるゼロや上官であるシグマなどはエックスの中に秘められた潜在能力の存在に気付いていた。

 その後、シグマが反乱を起こした際には平和と仲間を守るために戦うことを決意した。戦いに疑問を感じながらもVAVAらシグマの軍勢を退けていき、遂にはシグマを倒すことに成功する。

【サーヴァントとしての願い】

 人とAIが平和に共存する未来を。

【方針】

 聖杯戦争を止めようとするマスター達と合流を計る。

 

【マスター】

ヴィヴィ

【出典】

Vivy -Fluorite Eye's Song-

【性別】

女性型

【能力・技能】

戦闘プログラム

 一時的にロボット三原則の第零法則の実行により、人間を攻撃できるようになる。(第零法則は人間という種を守るという命令で、そのためなら個々の人間を犠牲にしても構わないというもの)

 能力として相手の動き、軌道を演算予測し、本来の機体限界以上の性能を発揮できる。

【weapon】

 無し

【人物背景】

 Vivyの世界で開発されたAIは、各個体ごとに一つの使命を与えられて稼働している。

 その中でヴィヴィは史上初の自律人型AIとして製造された。使命は『歌でみんなを幸せにすること』。

 ニーアランド中央のメインステージで歌うことを目標としているが、人気は今ひとつ。

 そんな中ある日突然100年先からやってきたAI、マツモトと共に100年後のAIによる人類殺戮を止めるべく「シンギュラリティ計画」に巻き込まれる。

 その中でヴィヴィは人やAIの感情を学んでいき少しずづ変わってゆく。

 性格は繊細で情に篤く、頑固で意地っ張り。

【マスターとしての願い】

 誰も傷つけずに願いを叶えようとするマスターがいるならその人の助けに、いないなら聖杯戦争を止める方向に動き聖杯を破壊する。

【方針】

 聖杯戦争を止めようとするマスター達と合流を計る。

【ロール】

 ライブハウスやステージを巡る歌手。

【把握媒体】

 ロックマンX、ロックマンゼロは全台詞集が検索すれば出てきます。

 Vivy -Fluorite Eye's Song-は全13話でレンタルか、dアニメストアとNetflixで全話公開されています。

 

 



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【候補作】衛藤可奈美&セイバー

作者:覇王様
こちらのハーメルンから支援掲示板に候補作を頂きました。
このような感じで投稿をお願いします。


「此処からだと町がよく見えるね!」

 

「そうね」

 

とある学園の屋上に二人の少女がいた。

一人は茶色の髪に御刀を持った少女。

彼女の名前は衛藤可奈美。元の世界では荒魂と呼ばれる存在から人々を守る刀使と呼ばれる存在である。

 

もう一人の少女は青空の髪に、凪の海ような眼を持つ黄金妖精(レプラカーン)の少女。

可奈美が召喚したセイバーのサーヴァントである。

 

「クトリちゃん、私と手合わせして!」

 

「手合わせなんてしないわよ」

 

「どうして!?」

 

「私は手合わせとかは好きじゃないの」

 

「セイバーなのに?」

 

「クラスは関係ないでしょう」

 

剣術マニアの可奈美はクトリに何度も手合わせを申し込んでるが断られる様子。

 

「そんなことよりも、可奈美には叶えたい願いはないの?」

 

「うん、ないよ。誰かを犠牲にして自分の願いを叶えるのは間違ってると思うから。剣の手合わせはしてみたいかな!」

 

「可奈美らしいわね」

 

「クトリちゃんには願いはないの?」

 

今度は可奈美がクトリに質問する。

 

「私はもう一度だけ、会いたい人がいるけど、誰かを犠牲にして願いを叶えるのは間違ってると思うし、彼もそんな事は望んではないと思うから。」

 

「その人はクトリちゃんの大切な人なの?」

 

「私のことを好きだと言ってくれた、大切な人」

 

「そっか……」

 

しばらくの沈黙の後……。

 

「そろそろ戻るわよ」

 

「うん!」

 

サーヴァント

クラス

セイバー

 

真名

クトリ・ノタ・セニオリス

 

出典

終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?

 

性別

女性

 

ステータス

筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:A 幸運:C 宝具:A

 

属性

中立・善

 

対魔力:B

魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。

大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

 

クラス別能力

騎乗・B

騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。魔獣や聖獣は乗りこなせない。

 

保有スキル

 

魔力放出・B

魔力で作り上げた翼で空を飛ぶ力。

これにより空中戦が可能になっている。

本来の彼女の能力がスキルに昇格したものである。

 

カリスマ・C

軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において自軍の能力を向上される。

彼女は妖精倉庫の妖精たち中では最年長であり、お姉さんとしてみんなの中心にいた逸話が昇格したスキル。

 

単独行動・B

マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

ランクBならば、マスターを失ってから二日間現界可能。

彼女自身も単独で戦うことがあったためこのスキルを持っている。

 

獣殺し・A

魔獣や野生動物に対する特効。

十七種の獣と呼ばれる存在と戦い続けた彼女の逸話が昇格したスキル

 

戦闘続行・A

彼女が最後まで大切な人のために戦い続けた

彼女の固有スキル。彼女の逸話が昇格したスキルである。

 

宝具

セニオリス

ランク:A 種別・対獣宝具 レンジ:1~50 最大補足:500人

クトリの愛剣。最強の聖剣の人振り。

あらゆる伝説を打ち立てた聖剣。

 

妖精郷の門

ランク:A 種別:対獣宝具 レンジ:1~50 最大補足:500人。

自らの妖精郷を開き、急激に魔力をおこすことにより、自らを爆弾にして自滅する宝具。

 

人物背景

 

終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?の主人公の一人にして、メインヒロイン。

 

妖精兵と呼ばれる、黄金妖精「レプラカーン」の少女。セニオリスの適合者。

 

ヴィレムと呼ばれる青年と出会い、次第に彼を好きになっていく。最初に出会ったときに買ってもらった帽子がお気に入り。

殉職した先輩妖精から受け継いだブローチを大切にしている。

 

15番島に現れた六番目の獣と戦いで妖精郷の門を開いて戦死をするかと思われていたが、ヴィレムに覚悟を聞かれ、生きたいと思うようになる。妖精兵ではなくなり戦わなくても良くなったらヴィレムの隣りいた、と思うようになる。

 

それから地上捜索隊の救助班に同行するが

これが彼女の最後の戦いになる。

最終的に複数の獣を相手をすることになり

複数の獣の攻撃を受け魔力の爆弾を起こし、最後はヴィレムに感謝の言葉を残し死亡。

彼女の15年の生涯はここに終わりを向かえた。

 

サーヴァントとしての願い

もう一度だけ会いたい人がいるが誰かを犠牲にするのは間違いだと思い、聖杯は求めない。

マスターを最後まで守る。

 

方針

マスターに任せる。

 

把握媒体

アニメ及び、原作小説。

 

 

マスター

衛藤可奈美

 

出典

刀使ノ巫女

 

性別

女性

 

能力・技能

 

写し

刀使の基本戦術で、最大の防御術。

 

迅移

刀使の攻撃術の一つ。通常の時間から逸して加速する。

 

無刀取り

真剣白刀取りと呼ばれる技。

相手の刀を素手で止める技。

 

千鳥

可奈美が使う御刀。別名雷切とも呼ばれている。

 

人物背景

刀使ノ巫女の主人公。

荒魂と呼ばれている存在から人々を守る刀使の少女。刀使の中では最強と呼ばれ、美濃関学院所属の中学二年生。

 

明るい性格で友達も多く、鍛錬が好きな努力家。周り人からは剣術オタクと認識されている。彼女の亡くなった母親も刀使である。

 

十条姫和と出会い、大きな戦いに巻きこれることになる。

 

参戦時期はアニメ終了後である。

 

マスターとしての願い

特になし。この戦いを終わらせる。

誰も殺さない、殺させない。だけど手合わせはしたい。

 

方針

自分からは攻撃はしない、誰も殺さない。

手合わせはしたい。

 

ロール

全てを守る刀使

 

把握媒体

アニメ

 



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【候補作】柳瀬舞衣&アサシン

作者・覇王様
連続してのご投稿、誠にありがとうございます。


「ユウキちゃん、お菓子作ったから、一緒に食べよ!」

 

「うん、食べる! 舞衣の作るお菓子は美味しいから、ボク、好きなんだ!」

 

「ありがとう!」

 

とある神社で二人の少女が月を見ながらお菓子を食べていた。

 

一人は黒髪で、リボンで髪を結んでおり。

御刀を持った少女。彼女の名前は柳瀬舞衣。

元の世界では荒魂と呼ばれる存在から御刀で人々を守る刀使と呼ばれる存在である。

彼女はこの聖杯戦争の参加者である。

 

もう一人は耳が尖っており、頭には赤のバンダナを巻いている、長い黒髪の少女。

名前ユウキ。舞衣が召喚したアサシンのサーヴァントである。

 

二人は月を見ながら仲良くお菓子を食べている。そして、二人の話の話題は願いについての話になった。

 

「舞衣には本当に叶えたい願いはないの?」

 

「うん、わたしには叶えたい願いはないよ。それに誰かを犠牲して自分の願いを叶えるのは間違ってると思うから、わたしはこの戦いを止めたい。」

 

「うん、わかった! ボクは舞衣の力になるよ!」

 

「ありがとう! だけど、ユウキちゃんには叶えたい願いはないの?」

 

今度は舞衣がユウキに願いについて聞くのであった。

 

「ない⋯⋯かなぁ。それにボクも誰かを犠牲にして自分の願いを叶えるのは間違ってると思うから。」

 

「生き返りたいとは思わない? 聖杯があれば生き返ることも可能なんでしょう?」

 

舞衣はユウキが15歳という若さで死亡したことを知っているため、本当はもう一度生き返りたいと願っているのではないかと心配していた。

 

「心配しなくても大丈夫だよ! ボクは確かに長くは生きられなかったけど、自分の人生を頑張って生きたから、後悔はないよ!それにこうして舞衣と一緒にお菓子を食べられるだけでボクは満足だよ! ボクのことは気にしなくても大丈夫だよ! 」

 

ユウキは笑顔で舞衣にそう言うのである。

 

「うん、ありがとう! ユウキちゃん!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

アサシン

 

【真名】

ユウキ『紺野木綿季』

 

【出典】

ソードアート・オンライン

 

【性別】

女性

 

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運C 宝具A

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

気配切断:B

アサシンのクラススキル。

サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。自らが攻撃態勢に移ると気配切断のランクは落ちる。

 

【保有スキル】

 

カリスマ:B

軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において自軍の能力を向上させる。

ギルド「スリーピング・ナイツ」のリーダーとしてギルドの中心にいた彼女の逸話が昇格したスキル。

 

魔力放出:B

魔力で作り上げた翼で飛ぶ力。

これにより空中戦が可能になっている。

本来彼女が持つ能力がスキルに昇格したものである。

 

戦闘続行:B

自分の人生を最後まで全力で生きた彼女の逸話が昇格したスキル。

 

【宝具】

『マーザズ・ロザリオ』

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ1~10 最大補足1人

 

自らからが編み出した11連撃OSS「彼女のオリジナルソードスキルである。」

絶剣と呼ばれた彼女の必殺技であり、

親友に託した技でもある。

 

【人物背景】

『ソードアート・オンライン』の『マザーズ・ロザリオ編』の登場人物。

 

本名は『紺野木綿季』。

ユウキという名前は彼女が『アルヴヘイム・オンライン』と呼ばれる仮想空間ゲームで名乗っていた名前。ちなみに『アルヴヘイム・オンライン』は略称『ALO』とも呼ばれている。

 

『ALO』の世界では『絶剣』と呼ばれ圧倒的な強さを誇るプレイヤー。主人公のキリトを2度倒した唯一の人物「キリト本人は切り札の二剣流を使っていなかったが、それでもキリトを2度倒したのは彼女だけである。」

ギルド『スリーピング・ナイツ』のリーダーも務めている。『ALO』の世界ではインプ族であり、今回の聖杯戦争では『ALO』の姿で召喚されている。

 

自身が作ったOSSを賭けて辻デュエルをしていた際、キリトを倒したことに興味を持って

対戦を挑んできたメインヒロインであるアスナと出会う。アスナの強さを見込んでギルド1パーティのみによる新生アインクラッドの攻略するという無謀なチャレンジへの協力をアスナに依頼する。

 

実は現実の彼女は末期『HIS』患者であり

アスナと出会った時には彼女は長くは生きるのは難しいと言われていた。彼女の姉も同じ病気で亡くなっており、本来のギルドのリーダーも彼女の姉だったが、亡くなったことによりリーダーの座を受け継いだのである。

彼女のギルドのメンバーはそれぞれが難病を抱えており、最後の思い出作りのために新生アインクラッドの攻略に挑んたのであった。

ただボス攻略の後、アスナを自分の亡き姉と面影を重ねて見てることに気付きアスナの前から姿を消してしまう。

 

その後、病院を訪ねてきたアスナと再会。

それから『ALO』に戻り、アスナの仲間たちと交流あり、絆を深めていく。

 

それから容体が急変。

最後にアスナに『マーザズ・ロザリオ』を託し、たくさんの仲間やプレイヤーたちに見守られながらアスナの腕の中で静に息を引き取った。彼女は15年の人生を全力で生きたであった。

 

性格は明るく、陽気な人物。

純粋で前向きな人物でもある。

 

【サーヴァントとしての願い】

特にない。マスターを最後まで守る。

ただマスターと一緒にこの世界での生活を楽しみたいとも思っている。

 

【方針】

マスターに任せる。

 

【把握媒体】

原作小説及び、アニメ2期

 

 

【マスター】

柳瀬舞衣

 

【出典】

刀使ノ巫女

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

 

『写し』

刀使の基本戦術で、最大の防御術。

 

『迅移』

刀使の攻撃戦術の一つ。通常の時間から逸して加速する。

 

『八幡力』

筋力を強化させる。

 

『孫六兼元』

舞衣が使う御刀である。

 

【人物背景】

刀使ノ巫女の登場人物。主人公衛藤可奈美の親友。美濃関学院所属の中等部二年生。

大企業の令嬢であり、三姉妹の長女である。

 

性格は面倒見がよく、友達想いの優しい性格。お菓子作りが得意。

 

状況分析能力にたけており、集団行動では指揮官として活躍もしている。

 

参戦時期はアニメ終了後である。

 

【マスターとしての願い】

特になし。この戦いを止める。

 

【方針】

自分と同じ考えのマスターと協力する。

ただ人は絶対に殺さないし、殺させない。

 

【ロール】

とある神社の巫女で刀使。

 

【把握媒体】

アニメ



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【候補作】十条姫和&ライダー

作者 覇王様
度々のご投稿、誠に感謝しております。


「またチョコミントを食べていたんですか?」

 

「あぁ、お前も食べるか?」

 

「いえ、大丈夫です⋯⋯。」

 

とある学園の屋上に二人の少女がいた。

一人は黒色の長い髪に御刀を持った少女。

彼女の名前は十条姫和。この聖杯戦争の参加者である。元の世界では荒魂と呼ばれている存在から御刀で人々を守る刀使と呼ばれる存在である。

ちなみにチョコミントが大好きでこの世界でもチョコミントを何度も食べているらしい。

 

もう一人は金髪碧眼で青いドレスに黄金の鎧を着用している少女。彼女の名前はアリス・シンセシス・サーティ。今回の聖杯戦争で姫和が召喚したライダーのサーヴァントである。

 

「チョコミントは食べ終わりましたか?」

 

「あぁ、食べ終わった。」

 

姫和がチョコミントを食べ終わったことを

確認するとアリスは聖杯戦争の話をする。

 

「姫和は本当に聖杯には興味はないんですか?」

 

「かつての私なら聖杯を求めたかもしれない、たけど今の私には聖杯は必要ないな。」

 

「そうですか。姫和がそれでいいなら私はこれ以上はなにも言いません。」

 

「そういうお前は聖杯は求めないのか?」

 

今度は姫和がアリスに質問する。

 

「私も聖杯は求めません。私の人生は悲しいことや辛いこともありましたが、それと同じぐらい楽しいことや幸せなこともありましたから、だから聖杯は求めません。姫和も私のことは気にしなくて大丈夫です。」

 

「そうか⋯⋯。私はこのふざけた戦いを止めたい。だからお前の力を貸してほしい!」

 

「もちろんです!私は姫和のサーヴァントですから!」

 

「ありがとう! 」

 

二人は聖杯戦争を止めるために戦うことを決意する。

 

「聖杯戦争が始まる前にチョコミントを買いにいくか」

 

「まだ食べるんですか⋯⋯。」

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

ライダー

 

【真名】

アリス・シンセシス・サーティ「アリス・ツーベルク」

 

【出典】

ソードアート・オンライン

 

【性別】

女性

 

【ステータス】

筋力A 耐久B 梅唐B 魔力B 幸運C 宝具A

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

 

対魔力・B

魔術発動における詩唱が三節以下のものを無効化する。

大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

 

騎乗・B

騎乗の才覚。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。魔獣や聖獣は乗りこなせない。

 

【保有スキル】

 

戦闘続行・A

戦場で最後まで戦い続けた彼女の逸話が昇格したスキル。

 

単独行動・B

マスターから魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

ランクBならば、マスターを失ってから二日間現界可能。

彼女自身も単独で戦うことがあったためこのスキルを持っている。

 

【宝具】

 

『雨緑「アマヨリ」』

ランク・B 種別・対人宝具 レンジ・1~50

最大補足・50人

彼女の飛竜にして大切な相棒。

サーヴァントになっても彼女と一緒に戦う飛竜。

 

『神器・金木犀の剣』

ランク・A 種別・対人宝具 レンジ・1~50

最大補足・500人

彼女が振る黄金の剣。かなりの威力を持つ剣。

 

【人物背景】

『ソードアート・オンライン』の『アリシゼーション編』の登場人物。

『アンダーワールド』と呼ばれる世界で整合騎士と呼ばれる騎士の少女。彼女の本名は『アリス・ツーベルク』。とある理由から整合騎士になってから名前が変わり、かつての記憶もなくしていた。

 

凛々しくも苛烈な性格で、毒舌家でもある。

生真面目で頑固者でもあるため自他共に厳しいが、逆に身内への面倒身はとっても良い。

クールな人物であるが、本当は不器用なだけでとっても優しく愛情深い人物である。

 

最初は主人公のキリトの敵として現れたが

後に仲間になり、一時的に言葉と感情を失ったキリトを守っていたのが彼女である。

キリトの親友ユージオの幼馴染でもある。

 

剣の腕前は整合騎士の中でもトップクラスである。

 

ちなみにメインヒロインアスナとは犬猿の仲。お互いのことは認め合っており、嫌ってるわけではない。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。マスターを最後まで守る。

ただ騎士として外道なことをする相手には容赦はしない。

 

【方針】

マスターに任せる。ただチョコミントを食べるのはしばらく禁止にする予定。

 

【把握素体】

原作小説及び、アニメ三期

 

【マスター】

十条姫和

 

【出典】

刀使ノ巫女

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

 

『写し』

刀使の基本戦術で、最大の防御術。

 

『迅移』

刀使の攻撃戦術の一つ。通常の時間から逸して加速する。

 

『八幡力』

筋力を強化する。

 

『ひとつの太刀』

彼女の必殺技とも呼べる技だが、使用後はかなり消耗するため、リスクもかなりある。

 

『小烏丸』

彼女が使う御刀である。

 

『人物背景』

『刀使ノ巫女』の登場人物。

主人公衛藤可奈美と並ぶ、もうひとりの主人公。平城学館所属の中等部三年生。

 

クールな物腰と馬鹿つくほど真面目な性格をしており、自分にも他人も妥協を許さない。

母親の敵討ちのために行動してたこともあり、最初の頃はツンケンとした振る舞いをしていたが、可奈美たちと出会い、一緒に行動していくうちに仲間の大切さを知るようになる。

 

ちなみにチョコミントが大好き。

それと胸が小さいことを気にしている。

 

参戦時期はアニメ終了後である。

 

【マスターとしての願い】

特になし。この戦いを終わらせる。

 

【方針】

自分と同じ考えのマスターがいるなら協力する。人は絶対に殺さない。

 

【ロール】

とある学園の生徒で刀使

 

【把握媒体】

アニメ



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【候補作】ルーラー:アスナ『結城明日奈』

作者 覇王様
度々のご投稿、感謝いたします。


「まさかルーラーがもうひとり召喚されていたとはな」

 

「私もまさか自分が聖杯戦争のルーラーで召喚されるとは思ってなかったわよ」

 

監督役の神父、言峰綺礼の前にルーラーのサーヴァントが現れた。栗色長髪に榛色の瞳で

白を基調とした赤いラインが入った服を着ている少女。彼女の名前はアスナ。ルーラーのサーヴァントである。

 

ただルーラーのサーヴァントは既にアルヴィースと呼ばれるサーヴァントがルーラーで召喚されており、彼女は聖杯が今回の聖杯戦争を管理するために保険として召喚したもう一人のルーラーではないかと思われる。

 

「それで君はこれからどうするんだ?」

 

綺礼がアスナに質問する。

 

「他にルーラーがいるなら私は今回の聖杯戦争には関わらないけど、魂食いや無関係な人を襲うサーヴァントがいたらルーラーとして放置はしないわよ。」

 

それだけ言い残し、アスナは綺礼の前から姿を消す。

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

ルーラー

 

【真名】

アスナ『結城明日奈』

 

【出典】

ソードアート・オンライン

 

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運B 宝具A

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

 

対魔力:B

魔術発動における詩唱が三節以下のものを無効化する。

大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

 

真名看破:A

ルーラーとして召喚されると、直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。

 

神明裁決:A

ルーラーとしての最高特権。

聖杯戦争に参加した全てのサーヴァントに二回令呪を行使することができる。

他のサーヴァント用の令呪を転用することは不可。

 

【保有スキル】

 

カリスマ:A

軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において自軍の能力を向上させる。

血盟騎士団の副団長としてギルドを率いた彼女の逸話が昇格したスキル。

 

戦闘続行:A

大切な人やみんなのために最後まで戦い続けた彼女の逸話が昇格したスキル。

 

仕切り直し:A

戦闘からの離脱、あるいは状況をリセットする能力。技の条件を初期値に戻し、同時にバットステータスの幾つかを強制的に解除する。

 

【宝具】

 

『マザーズ・ロザリオ』

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:1人

11連撃のOSS「オリジナルソードスキル」

彼女が大切な親友から託された技である。

 

『スーパーアカウントO 1・創世神ステイシア』

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大補足:50人

アンダーワールドで彼女が使用したスーパーアカウント。創世神ステイシアの姿になれる。無制限地形操作が可能で、地形を丸ごと変える術である。彼女自身も頭痛に苦しむリスクもある。

 

【人物背景】

『ソードアート・オンライン』のメインヒロイン。

 

本名は『結城明日奈』。

アスナという名前は仮想空間ゲームで彼女が名乗っていた名前。

 

エリートコースを歩んできた令嬢。

『ソードアート・オンライン』と呼ばれる仮想空間ゲーム、略称して『SAO』と呼ばれるゲームに参加し、デースゲームに巻き込まれる。そこで主人公のキリトと出会う。時には反発したりしながらも、キリトと絆を深め、恋人になる(ゲームの世界では結婚もしてる)。

『SAO 』の世界では最強のギルド血盟騎士団の副団長を務め、閃光のアスナの異名で呼ばれていた。

『SAO』事件解決後もキリトを支え、お互いに大切な存在になっていった。

 

ちなみに本当の娘ではないがユイという大切な娘がいる。それと幽霊やオバケが苦手らしい。

 

【方針】

基本的に聖杯戦争に関わらず、見守るだけにするが、魂食いや無関係な人間を襲うサーヴァントがいたら全力で止める。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。聖杯戦争を最後まで見届ける。

 

【把握媒体】

原作小説及び、アニメシリーズ。




ルーラーに関してですが、実はアルヴィースは主催者によって召喚されたルーラーなので、独自の意志も持つ願望器の塊である聖杯の一部が呼んだという事ならOKかな、ということでこのルーラーはありにしました。


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Interlude 楽園・天輪聖王

作者 yu sato
この聖杯戦争のプロット、先の展開の道しるべとなる一つの作品を投下します。


 そこは荘厳な空間だった。

 

 地はまるでクリスタルグラスの切子の如く、蒼い光が走った透明な空間。

 天はまるで幾重にもステンドグラスを重ねたが如く、光の線が走った大輪が囲う。

 

 そこには二人の人物がいた。否、二人で一人というべきか。

 その二人が欠けた半身を互いに補い合っていたからだ。

 一人は老人で左半身、一人は青年で右半身。

 一人は半裸で一人は白衣を纏う。

 互いの瞳に共通していたのは深い絶望と諦念の感情だった。

 無言のまま、二人は空間ディスプレイとキーボードで何らかの作業をしている。

 

 その空間の中に、一つの卵状をした宇宙船のごとき物体が下方から現れた。

 扉が開き、二人の男女が姿を見せる。

 一人は聖杯戦争の案内役であり、マスターでもあるミザリィ。

 もう一人は聖杯戦争の管理人であるルーラー・アルヴィースだった。

 

『中間報告に来たわよ』

 キーボードのタッチ音だけが鳴る空間に、ミザリィの声が響く。

『星晶石でこの世界に召喚されたマスター達は、順調にこの世界になじんでいるわ。

 この分だと、戦いの中で自らの『理』を見出すでしょう』

 ミザリィに対し、二人は動きを止めず、返答もしない。

『最も、願いを叶えられるのはここまで来ることができればだけど』

 ミザリィはただ二人の背中に言葉を投げかける。

「やはり全ての宇宙を滅ぼす気なのかい、君たちは?」

 アルヴィースの問いに、作業を止めることなくだが、ようやく彼らは口を開いた。

「勘違いするな、我々が滅ぼすのは知的生命体だけだ」

「我々は全ての並行世界、多元宇宙の運営を停止させる。知的生命体全ての緩やかな終わりを迎えさせる」

 その声は静かで、念だけが強く籠っていた。

『もう、あなたたちはここにたどり着けるマスターでしか止められないの?』

 少し寂しそうに、ミザリィは問いかけた。

「『どうせ諦めたのならもう一度だけ試してみない?』 そう我々に言ったのはミザリィ、お前だ」

「その不敵な態度に免じ、我々は今一度人間の価値を見定めようと、ヘルメス・トリスメギストスが企画した聖杯戦争を改変した」

「大地を造り、都市を造り、住民を造り、技術を持ち寄り、マスター達が自らの『理』を定めやすくする環境を整えた」

『まさかこれほど大規模になるなんて思いもよらなかったけどね』

 ミザリィは肩をすくめた。

「我々は人間という種につくづく愛想が尽きた」

「だが、我々と違う結論、違う可能性、そう『理』が示せるのならば、聖杯を託すに否はない」

 作業を続行する二人に、ミザリィとアルヴィースは、踵を返しポットへ向かった。

「また、来るよ」

 そう言うアルヴィースはいつもの笑みではなく、少し悲しげな表情をしていた。

 

 ポットの中は外観よりはるかに広く空間が拡張されており、豪奢なソファーやテーブル、椅子、バス、トイレ、キッチンまである。

 その中で二人は絨毯の上で佇んでいた。

 

『ねえ』

 ミザリィが静寂を破った。

『貴方なら片方は倒せるでしょ? でももう片方は無理ね』

「当然だ。彼は僕の神(父)だ。神は僕では殺せない。

 君こそ僕の神を殺せても、同じ科学者だった彼は倒せないだろう?」

『そうね、私のサーヴァントを連れてきても厳しいでしょうね。

 だから私たち協力する必要があるんじゃない?』

 ミザリィはアルヴィースの方へ近づいた。

『二人とも生きながら死に囚われた、何も生み出さない悪性情報『死相(デッドフェイス)』。

 一人は自らの理想の体現者に勝利してしまった事で人間に諦念し、一人は新たな生命の輪廻を生み出しても人間は何も変わらないと諦観した。

 だけど死者に生者の世界をどうこうさせるわけにはいかないわ』

「その点については僕も同じだ」

『だけど』

 と、ミザリィはアルヴィースの瞳を覗き込んだ。

「そう、だけどだ」

 アルヴィースもミザリィを見返す。

『あの二人の死者をこのヘルメス・トリスメギストスが召喚したとはどうしても思えないのよ。

 だって、並行世界、多元宇宙の全ての運営が停止したら自身も維持できなくなるでしょう? 自身の存在を上書きするためにマスター達の『理』を導き出す、それがヘルメス・トリスメギストスの意志なんだから。

 何か裏で私達さえ知らない何者かがいるとしか思えないのよ』

「真実の奥の更なる真実……か。聖杯自体が汚染されている可能性は僕も考えた。

 だが、今のところガラクシア達以外の兆候は見られない」

『確かパラディウムシティにいるデッドフェイス達は悪しき願い、汚染された願望器、半壊した願望器の影響だったわね』

「そう、それらを一点に集中させることで、聖杯全体の汚染を防いでいる。これは彼らがやっていることだ」

『聖杯自体の意志は? それはどうなっているの?』

『それこそ自らが所属する世界を破壊しようとは考えないだろう、数ある願望器にそんな自殺志願があるとは思えないな」

『とりあえず、聖杯にエラーが出たらマスターやサーヴァントに何らかの形で影響が出るだろうから、そこから探るしかないわね。

 聖杯は現状、実質あの二人が管理しているわけだから』

「……ミザリィ」

『何?』

「僕はある宇宙の管理者だったものとして、彼らに宇宙を閉塞させるわけにはいかない。何より僕は人の中にある光を信じている。

 君はなぜ、彼らを止めようとする?」

『人類を諦めた短慮な連中に、勝手に人類の行き先を決めさせるわけにはいかない。それじゃつまらなさすぎるじゃない。

 私はアウターゾーンの案内人として、何の能力もない人間が超常的な存在に打ち勝ってきた姿を何度も見てきたわ。

 だから、今度もマスター達には期待しているのよ。願いを叶え、主催者の二人を止め、黒幕も突き止めて倒す。そんな贅沢な結末をね』

 それを聞いたアルヴィースはミザリィに対し微笑んだ。

「それは……僕もぜひ見てみたいものだ」

 ミザリィはアルヴィースに対し微笑み返した。

 

 

【主催者】■■■■(デッドフェイス)

【マスターとしての願い】

 全並行世界、多元宇宙から知的生命体を緩やかに死滅させる。

【能力・技能】

 死相(デッドフェイス)

 生きながら死に囚われた、何も生み出さない悪性情報。これまでに死亡した死者の怨念が自身の霊基に取り込まれており、その力を引き出せる。

 ■■■■の場合、残された宝具『天輪聖王』を自在に操ることができる。

 天輪聖王

 かつて■■■■が召喚したサーヴァントが残した宝具。

 大輪と小輪に分かれており、大輪は直径70kmのリング、小輪は直径7㎞のリングと武の王「転輪聖王」が持つとされる七つの具足を模したバンカーバスターで構成されている。

【weapon】

 天輪聖王

【人物背景】

 戦争を憎み、戦争から多くの功績を残してきた偉人。表向きはそうだったが実際は彼は戦争に対し常軌を逸した憎悪や苦しみを感じ、その痛みを和らげるため戦場へと赴いていた。

 その最後はテロに巻き込まれるというものだったが、その死の寸前で彼は戦争による功績をだれよりも否定できなかった事を実感する。

 死亡した彼は別の聖杯戦争で自我あるNPCとして再現され、聖杯戦争のマスターとして数十回の敗北から這い上がり、聖杯へと至る。

 だが、NPCの自身では聖杯は使えない。だから自身の理想の体現者を聖杯の近くで待ち続けた。

 戦争は欠落をもたらすが、だからこそ欠落以上の成果をもたらすし、もたらさなければならない。

 然るに今の停滞した世界はどうか?それまでに積み重ねた欠落に見合うほどの成果を得られていないではないか。

 そして欠落を埋めるほどの成果を得られないならば、更なる欠落をもって、更なる成果を生み出さなければならない。

 争いこそが進化の道。この星を枯らすのならこの星を離れ宇宙へ広がれ。それが彼の理想だった。

 その結論で聖杯の力で正しく行動すれば誰もが生き残れる、全人類規模の戦争を起こすことで人類を成長させ、現在の世界の停滞を打破しようという考えに至る。

 だが、彼はどこかで間違えた。自身の理想に勝利してしまった。

 その果てに人類全てに諦念した彼は、自分の消滅と引き換えに、聖杯に“人類の死を認めよ。この文明の終わりを看取れ”と入力した。

 

【主催者】■■■■(デッドフェイス)

【マスターとしての願い】

 全並行世界、多元宇宙から知的生命体を緩やかに死滅させる。

【能力・技能】

 死相(デッドフェイス)

 生きながら死に囚われた、何も生み出さない悪性情報。これまでに死亡した死者の怨念が自身の霊基に取り込まれており、その力を引き出せる。

 ■■■■の場合、進化を続けた生命の能力を自在に引き出す。

 未来視(ヴィジョン)

 因果律予測による未来を垣間見る力。

【weapon】

 無し

【人物背景】

 全世界の戦争で地球全体が破壊されそうになっている世界。その中で彼はあるプロジェクトを実行しようとしていた。

 ほんのわずかな好奇心と、実験により人類全てが新たなステージへと進化し、戦争を止められると信じて。

 そのプロジェクト――相転移実験は失敗に終わり、自身の半身、地球に残っていた人々や生命体の殆どが別の平行世界に飛ばされてしまったことで、地球はまさしく死の世界となってしまった。

 彼は、これを罰として受け入れ、贖罪するべく新たな世界再生計画を始動する。手始めに雲海という「物質再生能力」を持った分子を撒いて地上の建造物を分解・再構成し、続けてコアクリスタルを雲海に撒いた。

 雲海とコアクリスタルが結合することで新たな生命核を生み出し、それはやがて巨神獣となり、そこから知的生命体が生まれ進化を重ねていった。

 新しい生命には自分たちとは異なる精神構造を持つ種族になることを期待してたようだが、どれだけ時間が経っても人間の本質が結局愚かだった自分達と何も変わらないことに諦観と失望を抱く。

 かつての自分たちから何一つ変わっていないこと、もともと彼は人間という種自体に絶望していたこともあり、いつしか世界を放置し、自身の消滅を願うようになった。

 

 




以前の設定と矛盾や相違点があったらご指摘ください。


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【候補作】糸見沙耶香&ライダー

作者 覇王様
度々のご投稿、ありがとうございます。


「今日も森の探索が進んだね!」

 

「うん、かなり進んだと思う。」

 

二人の少女が自分たちが管理する森の探索を終え、森の中にある自分たちの家に戻ってきていた。

 

ひとりは銀髪で御刀を持った少女。

彼女の名前は糸見沙耶香。この聖杯戦争の参加者である。元の世界では荒魂と呼ばれる存在から人々を御刀で守る刀使と呼ばれる存在である。

 

もうひとりは黒髪のショートカットにアホ毛がある少女。彼女の名前はメイプル。沙耶香が召喚したライダーのサーヴァントである。

 

「この世界の生活にも慣れてきたね!」

 

「うん」

 

メイプルの言葉に頷く沙耶香。

 

「沙耶香ちゃんは叶えたい願いはないの?」

 

「うん、私には叶えたい願いはないから、私はこの戦いを止めたい。」

 

「マスターの沙耶香ちゃんがそういうなら私も協力するよ!」

 

「ありがとう!」

 

二人は聖杯戦争を止めるために戦うことを決めったのであった。

 

(メイプルは可奈美に似てる気がする。)

 

心の中でそう思う沙耶香であった

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

ライダー

 

【真名】

メイプル『本条楓』

 

【出典】

痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います

 

【性別】

女性

 

【ステータス】

筋力C 耐久A 敏捷C 魔力C 幸運A 宝具A

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

 

対魔力:B

魔術発動における詩唱が三節以下のものを無効化する。

大魔術、儀礼呪法を以ってしても、傷つけるのは難しい。

 

騎乗:B

騎乗の才覚。大抵の乗り物なら人並み以下に乗りこなせる。魔獣や聖獣は乗りこなせない。

 

【保有スキル】

 

カリスマ:B

軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において自軍の能力を向上させる。

ギルド『楓の木』の中心メンバーとして活躍した彼女の逸話が昇格したスキル。

 

竜殺し:A

竜種を仕留めたものに備わる特殊スキルの一つ。竜種に対する攻撃力、防御力の大幅向上。

 

【宝具】

 

『機動神』

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ1~50 最大補足:500人

自分自身の装備を破壊して銃器や刀剣を展開し、レーザーや銃弾を撃ちまくる。

 

『シロップ』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ1~50 最大補足:50人

リクガメ型の亀のモンスター。彼女の大切な相棒である。

 

【人物背景】

『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います』の主人公。

 

本名は『本条楓』。『メイプル』という名前は彼女が『NMO』と呼ばれる仮想空間ゲームで名乗っていた名前。

 

性格は明るく素直で友好的、打算や野心とは無縁。天然でドジなところもある。

ギルド『楓の木』を立ち上げた人物でもある。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。マスターを最後まで守る。

 

【方針】

マスターに任せる。

 

【把握媒体】

アニメ及び、原作小説。

 

【マスター】

糸見沙耶香

 

【出典】

刀使ノ巫女

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

 

『写し』

刀使の基本戦術で、最大の防御術。

 

『迅移』

刀使の攻撃戦術の一つ。通常の時間から逸して加速する。

 

『八幡力』

筋力を強化する。

 

『無念無想』

自ら無心状態になることで迅移を持続的に使用出来る。彼女はこの技の使い手。

 

『妙法村正』

彼女が使う御刀である。

 

【人物背景】

『刀使ノ巫女』の登場人物。

鎌府女学院所属の中等部一年生。

 

無口かつ無表情であり、言動は必要最小限程度である。刀使として能力は天才と評されてる。柳瀬舞衣との出会いをきっかに命令ではなく自分の意志で戦うようになる。

仲間と一緒に戦ってからは喜怒哀楽や他人への気遣いが徐々に増え、仲間たちからは妹のように可愛がられてる。

 

アニメ最終回では仲間の益子薫と一緒に親衛隊に所属している。

 

【マスターとして願い】

特になし。この戦いを止める。

 

【方針】

自分と同じ考えのマスターがいるなら協力する。人は絶対に殺さない。

 

【ロール】

とある森の管理人で刀使。

 

【把握媒体】

アニメ

 



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【候補作】燕結芽&ランサー

作者 覇王様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


「あの神父のおじさん信用できるの?」

 

「信用できるかはともかく、聖杯戦争に付いては嘘は付いてはないと思うわよ」

 

ひとりの少女と女性が歩きながらそんな会話していた。

 

ひとりはピンク色の髪に御刀を持った少女。

彼女の名前は燕結芽。この聖杯戦争の参加者である。元の世界では荒魂と呼ばれる存在から御刀で人々を守る刀使と呼ばれる存在である。

 

もう一人の女性はウェーブの掛かった長髪をポニーテールして、着物を着た女性。彼女の名前は瀬名。芽が召喚したランサーのサーヴァントである。

 

「私は聖杯で自分の病気を治したい、それが無理ならみんなの記憶にすごい私を焼き付きたい」

 

「それが結芽の願いなのね。あたしの願いはある人にもう一度だけ会いたいの」

 

「ある人?」

 

結芽は瀬名のその言葉を聞いて昨日見た夢を思い出した。

 

その夢では瀬名と黒髪の男性が一緒にいる夢だった。

 

『さあ、あたしを斬るのよ!』

 

『そんな……』

 

『斬りなさい!』

 

『そなたを斬るなど、私にできるはずがない……!』

 

『まったく……あんたって人は……そんな覚悟で当主が務まると思っているの? だけど、そんなあんただから……一緒にいられて幸せだった。ありがとう……さようなら……』

 

そう言いながら瀬名は自害するのであった。

 

(もしかして瀬名お姉さんの会いたい人はあの男の人かな?)

 

心の中でそんなことを考える結芽であった。

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

ランサー

 

【真名】

瀬名

 

【出典】

戦国無双5

 

【性別】

女性

 

【パラメータ】

筋力B 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具B

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

 

対魔力・C

魔術発動における詩唱が三節以下のものを無効化する。

大魔術、儀礼呪法を以ってしても、傷つけるのは難しい。

 

【保有スキル】

 

戦闘続行・A

最後まで大切な人のために戦い続けた彼女の逸話が昇格したスキル。

 

【宝具】

無双奥義

ランク・B 種別・対人宝具 レンジ1~10

最大補足・50人

彼女が使う無双奥義が宝具になったものである。

 

【人物背景】

『戦国無双5』の登場人物。

 

駿河の大名・今川義元の姪。徳川家康の正室でもある。叔父てある義元には、目に入れも痛くないほど可愛がられるが、それ故か勝気な性格で、家康にもよく活を入れる。その一方で愛情深く献身的な一面もあり、家康を支えるが、最後は息子の信康の武田へ内通してた罪を自分でかぶろうとして、家康に感謝と別れを伝え、自害する。

 

【サーヴァントとしての願い】

徳川家康にもう一度と会いたい。

 

【方針】

マスターに任せるが自分でも考える。

 

【把握媒体】

ゲーム戦国無双5

 

【マスター】

燕結芽

 

【出典】

刀使ノ巫女

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

 

『写し』

刀使の基本戦術で、最大の防御術。

 

『迅移』

刀使の攻撃戦術の一つ。通常の時間から逸して加速する。

 

『八幡力』

筋力を強化する。

 

【Weapon】

『ニッカリ青江』

彼女が使う御刀。

 

【ロール】

とある学園の学生で刀使

 

【人物背景】

『刀使ノ巫女』の登場人物。

折神家親衛隊の第四席に所属。最年少の12歳である。

 

かつて回復不可能な病に身体を蝕まれた過去があり、それ故か「すごい私をみんなの記憶に焼き付きたい」という思いがあり勝手な行動をすることがある。

 

わがままな性格であるが、仲間想いの一面もある。刀使としては神童と呼ばれるほどの実力者である。

 

参加時期はアニメで死ぬ直前でこの戦いに参加している。

 

【マスターとしての願い】

病気を治す。それが無理ならすごい自分をみんなの記憶に焼き付きたい。

 

【方針】

まだなにも考えてない。

 

【把握媒体】

アニメ

 



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パロロワリレーSS企画について解説

リレーSS企画自体について説明して欲しいという要望が掲示板にあったので解説します。


パロロワリレーSS企画について解説します。

リレー企画ではスレッドに書き込む際、名前の欄にトリップと呼ばれる個人の識別が必要となります。

トリップを表示する方法は初めに"#"を入力し、続いてトリップキーとなる任意の文字列を入力します。このトリップは基本的に一人一つが原則ですので任意の文字列は記憶するか、メモに取っておいてください。

E-mailは基本的にsageと入力することで、スレッドがその掲示板の先頭になることを防ぎます。スレッドを先頭にしたい場合は省略します。

実際のリレーに関してですが、トリップを入力して書きたい登場キャラの名前を書き「■■を予約します」と書き込みます。

その後、その企画ごとに予約期間が定められているのでその間にSSを書き上げてください。

完成したSSはトリップを入力し「投下します」と投下宣言をしてSSをスレッドに分割して投下します。

終了したら「投下終了です」と投下終了宣言を出してください。

初めてそのキャラを書く場合は自由に書いても構いませんが、以前に誰かがそのキャラのSSを投下している場合はその続きを書くようにお願いします。

実際に投下する場合は本スレに直接投下か、支援掲示板の仮投下スレに投下していただきますようお願いします。

不安な場合は支援掲示板にTestスレを用意したので、そこで試しにトリップの練習や投下の練習を行ってみてください。

パロロワリレー企画では殺人や流血、四肢欠損等の過激な描写が含まれます。

そのため、自分の押しキャラが死んだり、傷ついたりします。

以前の二次キャラ聖杯戦争でも押しキャラのあからさまに優遇されたSSで問題が起こったことがありました。

余程都合の良すぎる展開以外では文句を言わないようにお願いいたします。

それは書き手も同じで、自分の裁量で押しキャラをどうするか、目立たせすぎてしまうか、都合よい展開になってはしないか少し考慮の程願います。

 

すみません。文字数が足りないので二重にします。

 

パロロワリレーSS企画について解説します。

リレー企画ではスレッドに書き込む際、名前の欄にトリップと呼ばれる個人の識別が必要となります。

トリップを表示する方法は初めに"#"を入力し、続いてトリップキーとなる任意の文字列を入力します。このトリップは基本的に一人一つが原則ですので任意の文字列は記憶するか、メモに取っておいてください。

E-mailは基本的にsageと入力することで、スレッドがその掲示板の先頭になることを防ぎます。スレッドを先頭にしたい場合は省略します。

実際のリレーに関してですが、トリップを入力して書きたい登場キャラの名前を書き「■■を予約します」と書き込みます。

その後、その企画ごとに予約期間が定められているのでその間にSSを書き上げてください。

完成したSSはトリップを入力し「投下します」と投下宣言をしてSSをスレッドに分割して投下します。

終了したら「投下終了です」と投下終了宣言を出してください。

初めてそのキャラを書く場合は自由に書いても構いませんが、以前に誰かがそのキャラのSSを投下している場合はその続きを書くようにお願いします。

実際に投下する場合は本スレに直接投下か、支援掲示板の仮投下スレに投下していただきますようお願いします。

不安な場合は支援掲示板にTestスレを用意したので、そこで試しにトリップの練習や投下の練習を行ってみてください。

パロロワリレー企画では殺人や流血、四肢欠損等の過激な描写が含まれます。

そのため、自分の押しキャラが死んだり、傷ついたりします。

以前の二次キャラ聖杯戦争でも押しキャラのあからさまに優遇されたSSで問題が起こったことがありました。

余程都合の良すぎる展開以外では文句を言わないようにお願いいたします。

それは書き手も同じで、自分の裁量で押しキャラをどうするか、目立たせすぎてしまうか、都合よい展開になってはしないか少し考慮の程願います。

 



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【候補作】ルーラー・リーファ『桐ヶ谷直葉』

作者 覇王様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


「まさか僕の他にもルーラーが召喚されていたなんてね」

 

「あたしも自分がルーラーで召喚されたのには驚いたけどね」

 

ルーラーのサーヴァントであるアルヴィース前に別のルーラーが現れたのである。

 

金髪の髪にシルフ族と思われる姿をしている少女。彼女の名前はリーファ。この聖杯戦争でアルヴィースとは別に呼ばれたルーラーのサーヴァントであり、聖杯が聖杯戦争を管理するため保険で呼んだサーヴァントだと思われる。

 

「君の真名はリーファだね」

 

「そういうあなたの真名はアルヴィースだよね」

 

お互いの真名を言い当てる二人。

 

「それで君はこれからどうするんだ?」

 

「他にルーラーがいるならあたしはこの聖杯戦争には関わらないけど、他のサーヴァントが無関係な人を襲ったり、魂食いをしたら、絶対に止めるよ」

 

それだけ伝えると、リーファは姿を消してしまう。

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

ルーラー

 

【真名】

リーファ『桐ヶ谷直葉』

 

【出典】

ソードアート・オンライン

 

【性別】

女性

 

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷A 魔力A 幸運B 宝具A

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

 

対魔力:B

魔術発動における詩唱が三節以下のものを無効化する。

大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

 

真名看破:A

ルーラーとして召喚されると、直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。

 

神明裁決:A

ルーラーとしての最高特権。

聖杯戦争に参加した全てのサーヴァントに二回令呪を行使することができる。

他のサーヴァント用の令呪を転用することは不可。

 

【保有スキル】

魔力放出:B

魔力で作り上げた翼で空を飛ぶ力。

これにより空中戦が可能になっている。

本来の彼女の能力がスキルに昇格したものである。

 

戦闘続行:A

彼女が最後まで大切な人たちやみんなのために戦い続けた逸話が昇格したクラス。

 

【宝具】

『スーパーアカウント03・地母神テラリア』

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ1~10 最大補足:1人

アンダーワールドで彼女が使用したスーパーアカウント。地母神テラリアの姿になれる。

無制限自動回復という回復能力を持つ。

ただ回復はしても苦痛などは消えない。

 

【人物背景】

『ソードアート・オンライン』の『フェアリィ・ダンス編』の登場人物。

 

本名は『桐ヶ谷直葉』。

リーファという名前は彼女が『アルヴヘイム・オンライン』、略称して『ALO』という仮想空間ゲームで名乗っていた名前。

種族はシルフ族。今回の聖杯戦争では『AL O』の姿で召喚されている。

 

剣道で鍛えた剣の腕と反射神経で種族内ではかなりの実力者。魔法も得意としている。

 

メインヒロインのアスナを探して『ALO』の世界に現れた主人公のキリトに助けられ、アスナがいると思われる世界樹までキリトを案内をしている。アスナを助けた後はキリトやその仲間たちと行動するようになり、絆を深めている。

 

実は現実世界では主人公てあるキリトの妹である「両親を事故で亡くしったキリトが親戚である彼女の家に養子になったため、血縁上は従妹になる。」

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。聖杯戦争を最後まで見守る。

 

【方針】

基本的に聖杯戦争には関わらないが、他のサーヴァントが無関係な人を襲ったり、魂食いをしたり全力で止める。

 

【把握媒体】

原作小説及び、アニメシリーズ。

 

投下終了します。



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【候補作】相澤一葉&アサシン

作者 覇王様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


「このたい焼き美味しいですね! 藍にも食べさせてあげたいですね!」

 

「確かにこのたい焼き美味しいね!」

 

学園の屋上に二人の少女がいた。

ひとりは黒髪にCHARMと呼ばれる武器を持つ少女。彼女の名前は相澤一葉。この聖杯戦争の参加者である。元の世界ではヒュージと呼ばれる存在から人々を守るリリィと呼ばれる存在である。

 

もうひとりはピンク色の髪に忍者のような服装をした少女。彼女の名前は源モモ。一葉が召喚したアサシンのサーヴァントである。

 

二人はたい焼きを食べながら聖杯戦争の話をしていた。

 

「一葉ちゃんは本当に聖杯を求めなくていいの?」

 

「はい、私は聖杯を求めません。聖杯があれば私の世界を救うことはできるのかもしれませんが、そのために誰かが犠牲になるのは間違ってると思いますから、だから私はこの戦いを止めたいです!」

 

「そっか……。なら、私は一葉ちゃんの力になるよ! 私は一葉ちゃんのサーヴァントだからね!」

 

「ありがとうございます! モモさん!」

 

こうして二人は聖杯戦争を止めるために戦うことを決めたのであった。

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

アサシン

 

【真名】

源モモ

 

【出典】

リリースザスパイス

 

【性別】

女性

 

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具B

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

気配庶断:B

サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。

 

【保有スキル】

 

戦闘続行:B

大切なものを守るために最後まで戦い続けた彼女の逸話が昇格したスキル。

 

単独行動:B

マスターから魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

ランクBならば、マスターを失ってから二日間現界可能。

単独でも戦い続けた彼女の逸話が昇格したスキル。

 

【宝具】

託されし魂

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ1~10 最大補足・100人

彼女が師匠から受け継いだ想いが宝具になったもの。自らの能力を一時的に上げ、敵を全力で倒す。

 

【人物背景】

『リリースザスパイス』の主人公。

『ツキカゲ』と呼ばれる組織に所属するスパイ。コードネームは『百地』。

 

高校の先輩でもある『半蔵門雪』の弟子。

武器は師匠と同じ日本刀を使用する。

 

視力が良く、夜目が利き、嗅覚に優れてる。

他人の肌を舐めると、その人の健康状態や感情を把握することができる特殊能力を持つ。

 

クラスメイトであり、『ツキカゲ』の先輩である『八千代命』と『石川五恵』に才能を見出され、『ツキカゲ』にスカウトされる。

 

それから師匠である『半蔵門雪』に鍛えられ

『ツキカゲ』の一員になる。

 

最初の頃は失敗も多く、悩むこともあったが、仲間たちに支えられながら成長していく。

 

『モウリョウ』と呼ばれる敵を壊滅させた後は、師匠である雪が『ツキカゲ』としての記憶を消し、一般人に戻ることを決意すると、

最初は躊躇するも師匠から想いと魂を受け継ぎ、雪に感謝を伝え、自分の手で雪の記憶を消したのであった。それから数カ月に彼女にも弟子ができていた。

 

性格は明るく、どんな時もあきらめず、正義感は誰よりも強い。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。マスターを最後まで守る。

 

【方針】

マスターに任せる

 

【把握素体】

アニメ

 

【マスター】

相澤一葉

 

【出典】

アサルトリリィ

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

 

『レジスタ』

彼女のレアスキル。あらゆる効果をもたらす複合スキル。

 

『ブルドカング』

彼女が使うCHARMである。

 

【人物背景】

『アサルトリリィ』の登場人物。

私立エレンスゲ女学園所属の高校一年生。

トップレギオン『LGヘルヴォル』のリーダーにして、学園の序列第1位である。

 

真面目で正義感が強いが、うっかりミスがたまにある。

 

エレンスゲの犠牲を出す戦い方を変えようとしてるなどエレンスゲの良心とも言える存在。

 

実はかつてエレンスゲが引き起こした『日の出町の惨劇』の生き残りである。

 

その時にとある少女に助けてもらい

その少女に憧れ、その少女のようになりたいと思いリリィを目指した。

 

参加時期はゲームのメインストーリー第2章終了後である。

 

【マスターとしての願い】

特になし。この戦いを止める。

仲間との約束もあるため自分も絶対に死なない、誰も死なせない。

 

【方針】

協力してくれてマスターを探す。

 

【ロール】

とある学園の学生でリリィ。

 

【把握素体】

ゲーム及び、舞台



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【候補作】傭兵システム:ヘクトール

作者 ◆TUV54iMsXU様
面白いシステムを発想していただき感謝いたします。


◇傭兵

金銭などの利益により雇われ、直接に利害関係の無い戦争に参加する兵である。

 

 

=======================

=======================

 

【規定】

一つ、傭兵のサーヴァントは原則として「主催側のサーヴァント」である。

主催側への命令が最優先であり、令呪は主催側が有する。

また、如何なる場合において、マスター側に対するサーヴァントの譲渡は認められない。

 

一つ、傭兵のサーヴァントはQPを対価としてマスター達に貸与される。

違反行為への侵害が発生しない限り、如何なるマスターにも可能とする。

ただし、命令を従う是非はサーヴァントの判断に委ねられる。

 

一つ、傭兵のサーヴァントは聖杯にかける願いの一切を与えられない。

消滅を義務とする

 

=======================

=======================

 

 

「♪~~」

 

鼻歌交じりに階段を歩く、無精ひげの壮年の男性。

スーツジャケットを肩にかけ、カッターシャツはだらしなく着崩す。

口には咥えているタバコ。煙が風に吹かれ、消されていく。

 

壮年の男性の足が止まる。

 

数段先の踊り場には鎧武者。

時代錯誤の甲冑を羽織り、腰に刀を携えていた。

 

「――ヘクトール、だな?」

「ん~?」

 

壮年の男性はわざとらしく見渡す。

 

「そいつはオジサンのことかな?アンタに名乗った覚えなんかないし、人違いなんじゃないかね~?」

 

お気楽な調子に答える男性。

 

ヘクトールとは、トロイアの智将として名を馳せたギリシャ神話の英傑である。

 

武者は男性を無視して、看板を指した。

 

「あからさまなヒントを晒しておきながら、よくも言う。」

 

店の名は、『BARトロイア』

雑居ビルの一角にある小さなBARであった。

 

タバコを一吹するヘクトール。

 

「……今、ここで戦っても何も得られないと思うよ?」

 

刀を抜き、殺気を放つ武者。

対して、ヘクトールはヘラヘラとした調子を崩さない。

 

「いやいや、本当本当。何の意味もないって。だって、オジサンは『主催側』だからさ。」

「……何?」

 

刀を下ろす武者。

 

「知らないのかい?『傭兵システム』ってのをさ。

『主催側がQPに応じてサーヴァントを貸し与える』っていう、隠しルールさ。」

 

武者は目を細める。

 

「何だそれは。何の企みがあって追加されたというのだ。」

「さぁ?上の考えは知らないな。」

 

頭を掻くヘクトール。苦笑みを浮かべる。

 

(……少なくとも後半は、「参加者同士」の戦いよりかは、「残留参加者側対主催側」の戦いになるだろうからねぇ。)

 

笑みを浮かべながら、タバコが一吹するヘクトール。

 

(表向きは支援でも、「戦力をある程度は減らしておくため」とか「覚悟を確かめるため」とか、そういう思惑があっても、不思議じゃないでしょ。)

 

床に落ちていくタバコの灰。

 

「……邪魔をした。」

 

武者は刀を納め、霊体化した。

 

地面に棄てられるタバコの吸い殻。

 

「――それと、先に言っておくぜ?」

 

ヘクトールは吸い殻を踏みつける。

 

顔付きは、真剣に変わった。

 

「オジサン。こう見えて仕事はこなすタイプだってな」

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

ランサー

 

【真名】

ヘクトール

 

【出典】

Fate/Grand Order

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運B 宝具B

 

【属性】

秩序・中庸

 

【クラス別能力】

対魔力:B

魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

 

騎乗:B

乗り物を乗りこなす能力。Bランクで魔獣・聖獣ランク以外を乗りこなすことが出来る。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。

 

【保有スキル】

仕切り直し:B

戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻し、技の条件を初期値に戻す。

 

軍略:C+

多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。守戦において高い戦術力ボーナスを獲得する。

 

友誼の証明:C

敵対サーヴァントが精神汚染スキルを保有していない場合、相手の戦意をある程度抑制し、話し合いに持ち込むことが出来る。聖杯戦争においては、一時的な同盟を組む際に有利な判定を得る。

 

【宝具】

『不毀の極槍』

ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:50人

世界のあらゆる物を貫くとされる投槍。

右肘から噴射炎が発生してより投擲される。槍は圧縮された魔力を帯び、着弾と同時に大爆発を起こす。

アキレウスの「蒼天囲みし小世界」かアイアスの「ロー・アイアス」、あるいはそれらに匹敵する防御宝具でなければこの槍を防ぎきることはできない。

 

『不毀の極剣』

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人

ローランの使う「不毀の極聖」と同一のもの。元々ヘクトールが所有していたが、宝具としてのモノは柄にあった聖遺物は存在しないため、大ダメージを与えるだけの単純な宝具に留まっている。

『不毀の極槍』と同一のものであるため、同時使用はできない。

 

【weapon】

「不毀の極槍」

 

【人物背景】

「トロイア戦争」において、トロイア側の総大将として軍勢を指揮した智将。

圧倒的な兵力差を誇るアカイア軍を一時は敗走寸前にまで追い込んだが、アキレウスの前に敗れることとなった。

 

お気楽なノリとやる気のない言動で振る舞っているが、根は義理堅く、頼まれた仕事は必ず成功させる誠実な面も持つ。

 

【サーヴァントとしての願い】

願いはない。主催側のサーヴァントとして仕事を全うする。

 

【方針】

仕事は仕事として割り切る。

ルールに違反していない限りは、雇い主には忠実。

ただ、決まりなので、主催側の意向を優先する。

 

【ロール】

平時はタウンゼン街の一角にある「BARトロイア」の店主

 

【把握媒体】

「Fate/Grand Order」など。



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【候補作】傭兵システム:無銘

作者 ◆TUV54iMsXU様
面白いシステムを発想していただき感謝いたします。


◇傭兵

金銭などの利益により雇われ、直接に利害関係の無い戦争に参加する兵である。

 

 

=======================

=======================

 

【規定】

一つ、傭兵のサーヴァントは原則として「主催側のサーヴァント」である。

主催側への命令が最優先であり、令呪は主催側が有する。

また、如何なる場合において、マスター側に対するサーヴァントの譲渡は認められない。

 

一つ、傭兵のサーヴァントはQPを対価としてマスター達に貸与される。

違反行為への侵害が発生しない限り、如何なるマスターにも可能とする。

ただし、命令を従う是非はサーヴァントの判断に委ねられる。

 

一つ、傭兵のサーヴァントは自身の願望に関する一切を与えられない。

 

 

=======================

=======================

 

 

飲み干したカップがテーブルのソーサーに戻る。

胸元には警視のバッジ、ブラックのスーツを来た青年がチェアに座っていた。

青年の肌は浅黒く、髪は白髪に染まっていた。

 

「――世界を創造する『天の聖杯』。人の手に余る代物だと思うがね。」

 

目の前に座っているミザリィ。

笑みを浮かべて、凝視していた。

 

「一人の運命を望みとし、一家の運命を望みとし、一国の運命を望みとしたとして……。

そのような一個人の理想を礎とした『理』では、世界を制するなど到底及ばないだろう。

もし、そこに理想が実現したとしても、周りに広がっているのは見放された世界だ。」

 

腕を組み、足を組む、青年。

 

「手の届かない世界の裏側というのは、苦しみも絶えない。

飢餓や紛争、貧困、差別……。あらゆる無秩序がその地に根付いていくだろう。

世界に見放された者達が辿る運命とは、常に不平等なものさ」

 

本棚の裏に佇むアビゲイル。

アビゲイルの顔は、俯いていた。

 

「私としても、これ以上の仕事は増えてほしくないものだ。

『理』に見放された世界の掃除など、御免被る。」

 

溜息を吐く、青年。

 

ミザリィは笑みを浮かべたまま、凝視を止めていなかった。

 

『貴方は、他人に期待しないの?

勝ち残ったマスター達が、世界の『理』を制し、不平等を覆す結末を。』

 

顎に手の甲を置くミザリィ。人を試すような眼差し。

 

古時計の振り子だけが、店内に響いている。

 

ミザリィの目をみつめる青年、しばらくして鼻で笑う。

 

「理想主義な君と違って、私は現実主義のつまらない男でね。

吐いて捨てるような甘い期待など、他者にかける気にはなれない。」

 

青年は、徐に席を立ち始める。

 

「さて、そろそろお暇させていただくよ。いくらだい?」

『そうね……今日は1000QPでいいわ』

「相も変わらず、適当な値段設定だな……。」

 

ミザリィは席を立つと、青年から目を離す。

 

青年はQPを置き、身は霊体になった。

 

 

 

マークライト街は、雪景色であった。

 

空は灰雲で覆われ、雪は降りしきる。

風は靡き、雪は舞う。無音の間に、風音は鳴る。

 

(――いいだろう、せいぜい無駄な足掻きをするとしよう。)

 

傭兵に与する、アーチャーのサーヴァント「エミヤ」。

彼は抑止に名を売り渡した、「無銘」の武人であった。

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

アーチャー

 

【真名】

エミヤ

 

【出典】

Fate/stay night

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力C 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運D 宝具?

 

【属性】

中立・中庸

 

【クラス別能力】

対魔力:D

一工程による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

 

単独行動:C

マスターからの魔力供給を断っても自立できる能力。ランクCならマスターを失っても一日間現界可能。

 

【保有スキル】

心眼(真):B

修行・鍛錬によって培った洞察力。 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

 

千里眼:C+

視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力。プラスは魔術による瞬間的な向上を含めたもの。

 

魔術:C-

オーソドックスな魔術を習得。道具の本質を一時的に增幅する「強化」、物質の構造を把握し、一時的に複製する「投影」を得意とする。

 

【宝具】

『無限の剣製』

ランク:E~A++ 種別:??? レンジ:??? 最大捕捉:???

大魔術『固有結界』の一つ。

結界内には、あらゆる「剣を形成する要素」が満たされており、視認した武器や防具は、結界内の剣の一振りとしてストックされている。

通常に使用される投影品は、投影魔術を介して、外界に引き出したものである。

 

「複製品の能力は本物よりランクが一つ落ちる」、「神造兵装クラスになると原則投影出来ない」などの点がある。

 

【weapon】

「投影武器」

 

【人物背景】

「死後の自分」を抑止力に売り渡した、名前のない守護者。

人類滅亡の回避として、原因である加害者と被害者の皆殺しを義務とする「掃除屋」である。

 

その正体は「正義の味方」になることを目指し、たどり着いた衛宮士郎。

かつては正義の味方という理想に絶望し、多くの者を殺めた贖罪として「過去の衛宮士郎を殺す」目的としていたことさえもあった。

今は対峙した記録がある第五次聖杯戦争の中で、「答え」を得たという。

 

人間の醜さに辟易したが故、皮肉屋かつ悲観的な現実主義者となっているが、根はお人好しで世話好きな人物。

 

【サーヴァントとしての願い】

願いはなし。サーヴァントの契約である以上、とりあえず役割に則る。

 

【方針】

雇い主の命令にはとりあえず従うが、反対すれば、命令に背く。

魂食いの可能性があるかどうか(射殺対象かどうか)の内部調査も兼ねている。

 

【ロール】

平時のロールは警視庁公安部。階級は警視。

 

【把握媒体】

「Fate/stay night」の原作ゲーム・アニメ・マンガなど。

 



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【候補作】狛枝凪斗&アサシン

作者 ◆DUsgYayewA
この度はご投稿いただきありがとうございます。


「きみがぼくのマスターなの?」

バニーガールのような姿をした、上半身裸で白髪の男がボクに問いかけた。

突如彼が現れて黒い影を蹴散らしたかと思えば、ボクたちはいつのまにか見たこともない礼拝堂の中にいた。その状況に驚きつつも、彼に質問を返す。

「そういうキミは、もしかしなくてもサーヴァントだよね?」

彼はこくんと頷き、再びこちらを見る。

「じゃあ間違いない。初めまして、ボクがキミのマスター・・・ってことになるのかな、”超高校級の幸運”狛枝凪斗だよ。よろしくね」

 サーヴァントは圧倒的な才能を持つ存在であり、くだらない才能しかないボクとは次元の違う、絶対的な希望だ。にもかかわらず、こうして相まみえるだけでなくマスターになれるとは。まだ聖杯戦争について正確に把握しているわけじゃないけど、それでもとんでもない幸運であるのは明らかだ。

「まあ、ボクなんかがキミのマスターだというのも、なんだか申し訳ない気はするけどね」

 苦笑しつつ、彼に目を向ける。彼は相変わらずぼんやりした表情でこちらを見つめたままだ。

「で、良かったらキミが誰なのか、教えてくれないかな?」

 ボクがそう言うと、彼はおもむろに口を開いた。

「”卯”の戦士。『異常に殺す』憂城」

 彼——憂城クンは、口の端を歪めてニヤリと笑った。その無邪気だけどどこか壮絶な笑顔は、憂城クンが常識を超越した存在であること、そんな彼を生み出す聖杯なるものが確かに存在することをボクに直感させるのに十分なものだった。

憂城クンは高い足音を鳴り響かせて歩み寄ってくる。

「きみの願いはなに?」

 呟いたあと目の前で立ち止まり、こちらに顔を寄せて囁く。

「僕の夢はね、世界中のみんなとお友達になることだよ。だから聖杯にお願いして、夢を叶えてもらうんだ~。いいでしょ? いいでしょ?」

 憂城クンは、心底楽しそうに目を細めた。そしてボクはその願いを聞いて肩を震わせる。

「素晴らしいよ! 凡人とは比べ物にならないほどにスケールの大きい願いだ! それを聞いた後にボクのようなクズの願いを言うのは少し恥ずかしいな…」

 そう言いつつ、ボクは喜々として想いを語る。

「キミはさ、”希望”って何だと思う?」

 文字通り目と鼻の先にある彼の顔に向けてほほ笑む。

「ボクが思うに、”希望”というのは、前向きな意志と才能…それらによって生み出される絶対的な『良きもの』なんだ。そして聖杯戦争は、才能ある人たちが、どうしても叶えたい願いをかけて争い合う場…。つまり希望と希望がぶつかり合って、より強い希望が残っていくわけでしょ? そうして、最後まで残った"最も強い希望"を……ボクはこの目で見てみたい。できることなら、そこに至る手助けをしたい。そのためならボクの命なんていくらでも差し出すよ」

「だから、ボクの願いはこの聖杯戦争で希望と希望の科学反応を見届けること・・・。だから、聖杯にかける願いなんて無いんだよね。まあ強いて言えば、世界をもっと希望に溢れたものにすること、かな」

 ボクは恍惚とした表情をしながらそう話を締めくくった。

「うんうん。何事も前向きが一番だよねぇ」

憂城クンは1歩後ろに下がり何度もうなずく。そして、すっと手を差し出した。

「じゃあさ、お友達になってよ。友情の証として握手しよう? 握手」

「喜んで! ははっ、キミのような素晴らしい人と友達になれるなんて光栄だなあ!」

 ボクは当然差し伸べられた手を握ろうとして——コケた。

 直後、頭上を大鉈が走る。驚いたボクはとっさに床を転がって距離を取る。

「あれあれあれ、おかしいなあ。なんで避けれたの?」

 数メートル先で、憂城クンは大鉈を上下に振りながら、首を傾げている。

確かにあの一撃を意識して避けるなんて芸当、ボクなんかには絶対できない。ただ、今のは——

「“たまたま”だよ」

「ボクの才能忘れちゃった? まあくだらない才能ではあるけどさ、これでも”超高校級の幸運”なんだよ? だからさ、さっきの攻撃も避けたんじゃなくて、大鉈が振るわれたタイミングで”偶然”転んだだけなんだ」

「……攻撃したんじゃないよ? ただちょっと驚かせようとしただけだよ? 本当だよ? 信じて?」

 憂城クンはさも心外だとでも言うように反論する。

「いや、それは流石に嘘でしょ」

 ボクはわかりやすすぎる嘘に苦笑いする。

「キミの希望のためなら殺されるのは大歓迎さ。…けど、ボクの幸運は役に立つし、考え事も得意だから勝ち抜くためのプランも作ってあげられる。だから殺すなら、キミが聖杯に願いを叶えてもらってからの方が、より大きな希望に近づくんじゃないかな」

「…それもそうだね。お友達になってからじゃあ、扱いづらそうだし。じゃあ、殺すのは後にするよ」

 しばらく沈黙した後、そう言って大鉈を背中の尻尾にしまう。

 良かった。殺されてもいいというのは本当だけど、できれば聖杯戦争で希望の輝きを目に焼き付けてからがいい。

「話し合いは終わったか?」

 背後から声が聞こえる。この世界にきた直後に聞こえた、壮年の男性の声だ。

「さあ、始めよう。ボクたちの、希望に溢れた聖杯戦争を」

 ボクは期待に胸を躍らせながら、憂城クンに呼びかけた。

 

 

【サーヴァント】

 

【CLASS】

アサシン

 

 

【真名】

憂城

 

 

【出典】

十二大戦

 

 

【性別】

 

 

【ステータス】

 

筋力C 耐久D 敏捷B 魔力B 幸運B 宝具EX

 

 

【属性】

混沌・悪

 

【クラス別能力】

気配遮断:D

サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。

 

【保有スキル】

戦闘続行:B

死体となった自分を能力により活動させた逸話が昇華されて獲得したスキル。

瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

 

人間観察:D

人々を観察し、理解する技術。

 

心眼(真):D

 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。

 

【宝具】

死体作り(ネクロマンチスト)

ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:2  最大捕捉:3人

死体を使役できる。使役できる死体は、自分が直接殺すか、既に使役している死体が殺したものに限られる。死体はバラバラになっても活動できる。体のリミッターが外れるため、筋力のパラメーターが一段階上がる(一般人の死体ならD相当)。

マスターの死体を操る場合、死んだ直後に能力を使えば令呪及びサーヴァントとの契約関係は維持され、死体を通じて間接的に令呪を行使できる。使役状態の維持には一定の魔力が必要。

対象の生前の記憶・技術・スキル・魔力・宝具などは死体になってからも有効であり、十全に用いることができる。ただし意思や知能はほとんどない。死体は焼かれると使役状態が解除されるほか、凍結によって動きを封じることができる。使役者は、使役される死体と五感を共有できる。

常時発動型であり、真名解放は不要。使役される死体は、憂城の死後も、生前の憂城の命令に従い続ける。

 

【weapon】

『三月兎』『白兎』

 

 

【人物背景】

第12回十二大戦に参加した「卯」の戦士。巧みな戦術で参加者を次々と殺害した。

殺した相手と本人に曰く「お友達」になれる(使役できる)能力『死体作り(ネクロマンチスト)』の使い手。

突飛な言動をするが、コミュニケーションは取れる。

失井と妬良の即席タッグと交戦し「生きている人間同士が信頼を結べる」という憂城にとってあり得ない光景を見たこともあり、殺される寸前に自殺を選び、自身の能力の対象下に自身を置くことで死体となった後も脱落することなく十二大戦を継続する。

自殺直後の段階で失井によって細切れにされるも、砂粒を操作して筋線維や小腸、歯といった人体のパーツを使って無茶苦茶な設計を無理矢理体を修復した上で、奇襲のために砂粒をその内部に潜ませた。

かくして奇襲は成功し、失井を押さえつけることに成功するが無茶な計画のために崩壊した体を修復している隙に寝住が回収した必爺の「醜怪送り」によって消滅した。

 

 

【サーヴァントとしての願い】

世界中の人とお友達になること。

 

 

【方針】

聖杯を手に入れるためならば手段を選ばない。

 

 

【マスター】

狛枝凪斗

 

 

【出典】

スーパーダンガンロンパ2

 

 

【性別】

男性

 

 

【能力・技能】

“超高校級の幸運”

確率が大きく絡む事柄において良くも悪くも狙った目か最良の目を確実に引き当てる。

ただし、前段階として何らかの不幸に見舞われるという難儀な制約がある。

 

【weapon】

無し

 

 

【人物背景】

南国でのコロシアイに巻き込まれた人物。

推理力が高く、学級裁判においても重要な発言をすることの多いポジション。

常に仲間が持つ希望の力、そして自分の肩書である「超高校級の幸運」という才能を信じている。特に前者への信頼は盲信に近いほど強い。

仲間が殺人をするよう誘導するなど、希望という目的のためなら手段は選ばない。

自身の幸運をゴミのような才能と嘲っている。

自分を含めたクラスメイトたちが超高校級の絶望だったと知り、絶望を根絶やしにするためにトリックを用いて自殺し、超高校級の絶望の全滅を狙った。

 

 

【マスターとしての願い】

聖杯戦争における希望と希望のぶつかり合い及び、結果として残る最も強い希望を見ること。

希望のために尽力すること。

聖杯にかける望みは特に無いが、強いて言えば希望に溢れた世界にしたい。

 

 

【方針】

希望と希望のぶつかり合い(殺し合い)を促進する。

絶望は希望の踏み台として利用。

才能ある者の望みを最大限尊重する。

 

 

【ロール】

高校生

 

 

【把握媒体】

ゲーム

 



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【候補作】今叶星&アサシン

作者 覇王様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


「この紅茶は美味しいわね!」

 

「確かにこの紅茶は美味しい!」

 

二人の少女が部屋で紅茶を飲んでいた。

ひとりは銀髪にCHARMと呼ばれる武器を持つ少女。彼女の名前は今叶星。この聖杯戦争の参加者である。元の世界ではヒュージと呼ばれる存在から人々を守るリリィと呼ばれる存在である。

 

もうひとりは栗色のポニーテールの少女。

彼女の名前はサリー。叶星が召喚したアサシンのサーヴァントである。

 

二人は紅茶を飲みながら聖杯戦争の話をしていた。

 

「叶星には願いはないの?」

 

「聖杯があればたくさんの人をヒュージから救うことも、守ることも、できるかもしれない。だけど、そのために他の誰かを犠牲にするのは間違ってると思うから、私はこの戦いを止めたい!」

 

「マスターの叶星がそう言うなら私はそれに協力するよ!」

 

「ありがとう! サリーさん!」

 

二人は聖杯戦争を止めるために動くことを決めったのであった。

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

アサシン

 

【真名】

サリー『白峰理沙』

 

【性別】

女性

 

【出典】

痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います

 

【ステータス】

筋力C 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運B 宝具B

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

気配遮断:B

サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に優れてる。

 

【保有スキル】

単独行動:B

マスターから魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

ランクBならば、マスターを失ってから二日間現界可能。

単独でも活躍した彼女の逸話が昇格したスキル。

 

【宝具】

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大補足:50人

彼女の相棒である白い狐のモンスター。

彼女をサポートする大切な相棒。

 

【人物背景】

『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います』の登場人物。

 

本名は『白峰理沙』。『サリー』という名前は彼女が『NMO』と呼ばれる仮想空間ゲームで名乗っていた名前。主人公の『メイプル』とは親友。

 

人間離れした集中力と身体能力がある人物。

観察眼かなり鋭い。『楓の木』と呼ばれるギルドのメンバーでもある。

 

ちなみにお化けが苦手らしい。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。最後までマスターを守る。

 

【方針】

マスターに任せる

 

【把握素体】

原作小説及び、アニメ

 

【マスター】

今叶星

 

【出典】

アサルトリリィ

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

 

『レジスタ』

彼女が持つレアスキル。あらゆる効果を持つ複合スキル。

 

『クラウ・ソラス 先行量産型』

彼女が使うCHARMである。

 

【人物背景】

『アサルトリリィ』の登場人物。

神庭女子藝術高校所属の高校二年生。

レギオン『グラン・エプレ』のリーダー。

 

凛とした立ち振る舞いで明るくメンバーを纏めているが、実は本来は臆病な性格であるが

責任感が強く、自分の責務を果たそうとする。

 

『グラン・エプレ』のメンバー『宮川高嶺』とは幼馴染の親友である。

 

参戦時期はゲームのメインストーリー2章終了後である。

 

【マスターとしての願い】

特になし。この戦いを止める。

 

【方針】

協力してくれるマスターを探す。

 

【ロール】

とある学園の学生でリリィ。

 

【把握素体】

ゲーム及び、舞台。



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【候補作】傭兵システム:『燕青』

作者 ◆TUV54iMsXU様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


◇傭兵

金銭などの利益により雇われ、直接に利害関係の無い戦争に参加する兵である。

 

 

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【規定】

一つ、傭兵のサーヴァントは原則として「主催側のサーヴァント」である。

主催側への命令が最優先であり、令呪は主催側が有する。

また、如何なる場合において、マスター側に対するサーヴァントの譲渡は認められない。

 

一つ、傭兵のサーヴァントはQPを対価としてマスター達に貸与される。

違反行為への侵害が発生しない限り、如何なるマスターにも可能とする。

ただし、命令を従う是非はサーヴァントの判断に委ねられる。

 

一つ、傭兵のサーヴァントは聖杯にかける願いの一切を与えられない。

 

=======================

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――歓楽街「アンダーダウンエリア」。

 

“ここは、無頼漢の俺に似合いの街だ”

 

街の至る所に点在する、ネオン看板。

修繕もされていない、荒れた街の通り。

忙しなく鳴る、行き交う民衆のガヤ。

 

“喉を焼く強酒、脂っこい食事、騒がしい音楽”

 

ウォッカをラッパ飲みする、大柄の男性達。

屋台脇で立ち食いしている、風俗嬢達。

クラブ中に流れ響く、EDMと歓声。

 

“毎日が楽しい莫迦騒ぎ。終わりのない享楽を謳歌している”

 

踊り子が流麗に舞う、パブのステージ。

チップが行き渡しが行われる、ルーレットテーブル。

 

“どいつこいつも、本能で生きているんだろうさ。

運命ってものを悟っているのなら、本能が求めるのは快楽だと思うぜ”

 

互いに喜々して殴り合う、闘技場のリング。

ラブホテルに男性を引き込んでいく、泥酔の女性。

 

“そりゃあいい。終われば、消えるかもしれない身なんだ。

今を十二分に楽しんで生きていりゃいい。どうせなら、笑ったまま消えろ”

 

壁際に横たわる男性。這い回る蠅の群れ。

薄暗い路地裏。路地の先にはネオンの明かり。

 

“俺の在り方は、この街と変わらない”

 

F-7地区を中心とした、小さな夜景。

遠ざかるほど、無明が続く、仮想の夜界。

 

“今、生きているのは単なる本能。意味なんかなく、理由なんかない”

 

輝くを放つ聖杯。

魔力が地に零れ落ち、霊体が成立する。

 

“楽しければ、まぁいい。拳闘も、諜報も、見物も、悪くはないね”

 

街の一角で繰り広げられる、人を越えた者の死闘。

都市内に潜伏している、令呪を手に持つマスター達。

寒空の下、作業員達が働いている、ライブ会場の準備。

 

“現界の終わりが来るその時まで、この世で享楽を謳歌しよう。俺はそう決めた”

 

華と龍の刺青をあしらった、黒い長髪を束ねた男の背中。

 

“聖杯を捧ぐ主など、俺は持つ気はない”

 

 

「――燕青」

 

殺気が込められた声色。

同時に、「燕青」なる男の足も止まる。

 

燕青の背後に、鎧兜を纏った戦士が槍を構えている。

 

「己が主人を持たず、願望を望まぬ貴様に、世に留まる筋合いはない」

 

緩やかに身を翻し、前方に構える燕青。

槍の切っ先は、燕青を捉えていた。

 

「貴様が主催側だろうと関係はない。魔力のため、その命を頂く――」

 

その場は、街の喧騒が遮られていた。

流れる闘気が、人や音を吞み込みつつあった。

 

同時。戦士の槍と燕青の足が動いた。

 

 

――我が忠義はすでに無く。今はただ一人の侠客として拳を振るうのみ

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

アサシン

 

【真名】

燕青

 

【出典】

Fate/Grand Order

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力B 耐久D 敏捷A+ 魔力D 幸運B 宝具D

 

【クラス別能力】

気配遮断:C

アサシンのクラススキル。サーヴァントとしての気配を断つ。

隠密行動に適している。自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは落ちる。

 

【保有スキル】

中国拳法:EX

中華の合理。宇宙と一体になる事を目的とした武術をどれほど極めたかの値。

修得の難易度は最高レベルで、Aでようやく“修得した”と言えるレベル。

原点である「水滸伝」に拳法の具体的なエピソードはないが、現存する様々な拳法の開祖として信仰されている。

 

無頼漢:A

騎乗スキル・単独行動スキルの複合スキル。

オマケとして宴会に強くなるなどの効果を持つ。

 

諜報:A

敵組織に潜入し、強い信頼を得ることができる程度の技量。

敵側にその名を知られてさえいなければ、まったく問題なく情報を横流しできる。

 

天巧星:A+

災いを為すという百八の星が転生した者たちの一人。

魔星の生まれ変わり、生まれついて災厄と業を背負う。

巧緻に極めて優れた天巧星である。

 

ドッペルゲンガー:B+

礼装のように装着された幻霊。「自己」を限りなく希釈することによる、変身スキル。

一部スキルなども模倣可能だが、宝具は不可。

使用すると投影した人物の記憶も残してしまうため、自己が曖昧になるというデメリットを持つ。

 

【宝具】

『十面埋伏・無影の如く』

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~3 最大捕捉:1人

燕青拳独特の歩法による分身打撃。

魔法の域にこそ達していないものの、第三者の視覚ではまず捉えられぬ高速歩法による連撃。

その様はまさに影すら地面に映らぬ有様だったとか。

 

【weapon】

素手

 

【人物背景】

「水滸伝」に登場する無頼漢、燕青。

主である盧俊義を慕い忠義を尽くしていたが、盧と袂を分かち、行方を暗ます。

 

後に中国拳法の流派の一つ「燕青拳」の開祖として箔付けされたこともあり、世に知れ渡ることになる。

 

楽観家で、本能で生きているような侠客。

無頼漢として誇りを持ち合わせており、筋の通った好漢である。

幻霊として憑いているドッペルゲンガーとは相性が悪く、情緒不安定な性格になってしまう。

 

【サーヴァントとしての願い】

願いはなし。無頼漢として享楽に興じ、一人の侠客として拳を振るう

 

【方針】

基本的には雇い先側に就いて戦うこととする。

雇い先がないなら、年始の祭りを楽しみつつ、適当に人が集まりそうなところに向かっていく。

無頼の誇りや義理、そして金で動くが、特定の主人を持つ気にはなれない。

 

【ロール】

アンダーダウンエリアを根城とするギャング

 

【把握媒体】

「Fate/Grand Order」など。



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【候補作】一柳梨璃&ライダー

作者 覇王様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


「士さんは写真を撮るのが好きなんですか?」

 

「そうだな。趣味の一つかもしれないな」

 

ひとりの少女とひとりの青年がとある学園の屋上にいた。

 

ピンク色の髪にCHARMと呼ばれる武器を持つ少女。彼女の名前は一柳梨璃。元の世界ではヒュージと呼ばれる存在から人々を守るリリィと呼ばれる存在である。

 

もうひとりのカメラを持った青年の名前は門矢士。梨璃が召喚したライダーのサーヴァントである。

 

「お前は本当に聖杯は求めないのか?」

 

士がそんなことを梨璃に聞く。

 

「誰かを犠牲して自分の願いを叶えるのは間違ってると思いますから、わたしはこの戦いを止めたいです!」

 

「マスターのお前がそう言うなら、俺はサーヴァントとして最後まで協力してやるよ」

 

「ありがとうございます!」

 

「そろそろ戻るぞ」

 

「はい!」

 

 

【マスター】

一柳梨璃

 

【出典】

アサルトリリィ

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

『カリスマ(ラプラス)』

彼女が持つレアスキル。

邪悪なマギの力から身を守る浄化のスキル。

 

『グングニル』

彼女が使うCHARMである。

 

【人物背景】

『アサルトリリィ』の主人公。

私立百合ケ丘女学院所属の高校一年生。

レギオン『LGラーズグリーズ(一柳隊)』のリーダー。

 

人当たりがよい性格で、いつの間にか周囲から好かれるという才能の持ち主。

何事にも一生懸命。少し天然だが明るく優しい性格。

 

二年前の甲州撤退戦で『白井夢結』に助けられて以来、夢結に憧れてリリィを目指したのである。

 

リリィになってからは絆を深めた仲間たちと一緒にヒュージと戦い、成長していく。

 

仲間のひとりであり、妹のように可愛がっていた『一柳結梨』がヒュージとの戦闘で命を落としてしまう。これにより彼女自身も結梨を守れなかったことに絶望するが、仲間たちに助けられ、再び前に進み出しだ。

 

それからもたくさんの出会いや戦いを通し成長していく。

 

参戦時期はゲームのメインストーリー第二章終了後である。

 

【マスターとしての願い】

特になし。この戦いを止める。

 

【方針】

協力してくれるマスターを探す。

 

【ロール】

とある学園の生徒でリリィ

 

【把握素体】

アニメ、ゲーム、舞台、漫画

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

ライダー

 

【真名】

門矢士『仮面ライダーディケイド』

 

【出典】

仮面ライダーディケイド

 

【性別】

男性

 

【ステータス】

筋力A 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

 

対魔力:B

魔術発動における詩唱が三節以下のものを無効化する。

 

騎乗:B

騎乗の才覚。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。魔獣や聖獣は乗りこなせない。

 

【保有スキル】

 

単独行動:B

マスターから魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

 

戦闘続行:A

どんな時も最後まで戦い続けた彼の逸話が昇格したスキル。

 

【宝具】

コンプリートフォーム

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大補足:500人

仮面ライダーディケイドの最強フォーム。

クウガ~キバまでの平成仮面ライダーの最終フォームを召喚し、同時攻撃する。

 

【人物背景】

『仮面ライダーディケイド』の主人公。

ディケイドの変身者でもある。

 

かなりの自身家で、誰に対しても尊大な態度を取る。襲われてる人を守ろうとする熱いハートも持っている。

 

あらゆる世界を旅した人物。写真を撮るのが趣味。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。最後までマスターに協力する。

 

【方針】

マスターに任せる

 

【把握素体】

テレビドラマ【仮面ライダーディケイド&劇場版】



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【候補作】上条当麻&バーサーカー

作者 ◆DUsgYayewA様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


 高窓から薄く光が差し込むだけの薄暗い礼拝堂の中。普段は使われていないのか、長椅子や床にはうっすらと埃が積もっている。廃墟然としていて、人がいないのが当たり前だとさえ感じさせられるこの場所に、どういうわけか三人の男が立っていた。

 そのうちの一人であるツンツン頭の少年、上条当麻は向かい合って立っている神父服の男、言峰綺礼の目を見る。

「つまりもうすぐこの世界で聖杯戦争ってのが行われて、それで最後まで残ったマスターとサーヴァントが聖杯に願いを叶えてもらえるってことか?」

 上条は綺礼が先ほどまで話していた、聖杯戦争のルールについてそう要約した。

 綺礼は口の端を吊り上げて、それにうなずく。

「ずいぶんと物分かりが良いな。大抵のマスターは、そこで信じられない、何かの冗談か詐欺に決まってると言い出すものだが」

 上条は半信半疑な様子ながらも、絶対にあり得ないと一笑に付しているようではなかった。それは上条が元居た世界で、魔神や悪魔といった、聖杯にも匹敵する圧倒的な力の存在を幾度も体感したことも大きいだろう。

「上条当麻、君に叶えたい願いがあるのなら、この聖杯戦争で勝て。なにせ万能の願望器たる聖杯の力があれば、富や権力はもちろん、世界平和や人類滅亡だって実現できる」

 そして、と綺礼は上条の後方を見る。そこには、身動き一つせず沈黙している、白いコートの男が立っている。

「彼が、パートーナーとして君を勝利へ導く存在、サーヴァントな訳だ」

 上条は綺礼の視線につられたように後ろを見る。

 視線の先にいる白いコートの男はフードをかぶりうつむいているため、表情をこちらから窺い知ることはできない。ただ、彼の口元がきつく引き結ばれているのだけが見て取れる。

 自分も関係者であるというのに、ここまで一切喋っていない。

 顔の前でいくら手をかざしても無反応なので、上条はあのー、聞こえてますかー、無視するようならコンビニでエッチなお姉さんのグラビア本を買ってきてあなたの顔に近づけますよー、などと呼び掛けてみるが、依然として彼はうつむいたままだ。

 やがて反応が無いことに諦めたのか、上条はため息をついて綺礼に向き直る。

「俺は聖杯にかける望みなんてない。俺だって、えっちで巨乳な管理人のお姉さんとむふふなことをしたいとか、インデックスに家事をして欲しいって思ってるけど、そんなもん誰かと戦って実現するようなもんじゃないだろ。泣いてる誰かを助けるにしたって、聖杯の力で簡単に解決してしまうようじゃ、きっとどこかで歪みがでるし、真剣に考えて苦しんでるその誰かの想いを蔑ろにしちまう。だからおかしいことをしてるやつがいたら俺がぶん殴ってでも改めさせるし、運命は自分の力で切り開いてみせる。だから、そんな幻想の力はいらねぇ」

 上条は拳を握りしめ、綺礼を睨みつける。

「では、君はこの聖杯戦争から離脱するということで構わないか?」

 綺礼は目を細め、心なしかつまらなさそうな口調で決定を促す。

「俺は——っ?!」

 口を開き何かを言おうとする上条。だが急に嫌な予感がしてとっさにその場を飛びのく。

 次の瞬間、雷が落ちたような轟音が礼拝堂に響き渡った。

 上条は床を転がって長椅子の脚に頭をぶつけながらも、なんとか起き上がる。そこで上条が見たのは、白いコートの男が、先ほどまで上条の立っていた位置の床に銛を突き立て、大穴を開けている所だった。

 男の攻撃で舞った埃に咳ごみながら、上条は顔を歪める。

「急にどうしたっていうんだ!」

 驚きで頭が上手く回らないが、とりあえずこのままで座り込んでいるのはまずい。上条はふらつきながら立ち上がり、散らばった木片を踏み潰しながら礼拝堂の出入り口へ走る。

 だが。

(間に合わない!)

 男は走る上条の方を向くと、床を踏みしめて跳躍し、弾丸の如く一気に距離を詰める。

 上条は戦闘のエキスパートであり、これまで強力な魔術師や能力者を幾度も打倒してきた。だが、それはあくまで幻想殺しあっての成果だ。単純な身体能力で攻めてくる相手には無力だし、手も足もでない。

つまり。上条はあのサーヴァントに勝てない。

「——っ?!」

 迫りくる暴力に、上条はなす術もない。

「やめろ!」

 上条はただ、そう叫ぶことしかできなかった。

 本来、その叫びは何の意味もないもので、普通ならそのまま槍で貫かれ殺されていたのだろう。だがこれは聖杯戦争。普通であるはずがない。

 その叫びに共鳴するように、上条の左手に刻まれた令呪が赤く輝く。そして男の銛は、上条の喉元に突き付けられたところでぴたりと止まった。直後、銛の猛烈な勢いで生じた風が、上条の頬を撫でる。男は頬を引きつらせながらしばらく銛を震わせたが、最終的にそのまま銛をおろす。

「助かった…のか?」

 上条は呟きを漏らし、既に輝きを失った左手の令呪に目を向ける。

(もしかして今のが令呪の力なのか? だとしたら——)

 男の方へ再び目を向ける。男は目の前で仏像のように突っ立ったまま、動かない。

「なあ、なんでこんなことを」

 したんだ、と上条が言い終わる前に、男は口を動かし、何かを言った。そして上条のいる場所の反対側、牧師が説教をする台の方へ走り抜ける。そしてステンドガラスに体をぶつけて耳障りな音をさせながら割り、外へ飛び出していく。

「おい!!」

 上条の制止も聞かず、着地した彼はそのまま走り去っていく。

 ただの人間である上条の脚力では、サーヴァントであるあの男に追いつくことなどできない。上条にできるのはただ割れたステンドグラスの残骸を見つめることだけだった。

 そこに、部屋の隅の方から綺礼が、周囲を見渡しながら歩み寄ってくる。

「ずいぶんと派手にやってくれたものだな、君のサーヴァントは。…さて改めて問おう。上条当麻、君は聖杯戦争から離脱するということでいいか?」

 綺礼の言葉に、上条は何も答えない。それを受けた綺礼はふん、と鼻を鳴らし、立ち去ろうとする。

「離脱するということだな。ならば私はそのための準備を」

「あいつは言ってた」

 上条は綺礼の言葉を遮る。

「『エレインと擬神兵を救ってみせる』って」

 立ち去る直前に男が呟いた言葉を思い出す。

「あいつにはきっとすごく大切な人たちがいて。その人たちは聖杯の力がないとどうしようもないくらい追い詰められてる。助けるためには聖杯がどうしても必要だったのに、俺がそれをいらないと言ったからあいつは怒ったし絶望したんだ。

 それでだからあいつはたった一人で聖杯を手に入れようとして! 俺はあいつをこのままにして、自分だけ温かい世界に帰るなんて絶対にできない! あいつから詳しい事情を聞いて何とかしてやるまで、あいつを追い続ける! だから俺は」

 上条は力強い声で宣言する。

「聖杯戦争に参加してやる!」

 

 

【サーヴァント】

 

【CLASS】

バーサーカー

 

 

【真名】

ハンク・ヘンリエット

 

 

【出典】

かつて神だった獣たちへ

 

 

【性別】

 

 

【ステータス】

 

筋力C 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具A

 

 

【属性】

 

秩序・狂

 

【クラス別能力】

 

狂化:B

全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。特定の言葉のみ、時たましゃべることがある。

【保有スキル】

 

獣殺し:B

擬神兵を狩り続けたことから得たスキル。自身に猛獣特攻状態を付与。

 

神性:B

擬神兵の生成には神の鉱石であるソムニウムが用いられている上うえ、人々から神として畏怖されていることから得たスキル。

 

【宝具】

 

月に叫ぶ獣(ウェアウルフ)

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:無し  最大捕捉:無し

夜に真名を解放することで人狼に変身できる。真名を解放しなくても夜であればある程度力を用いることができ、その場合人間状態のままの姿で、髪が白くなる。

真名解放無しだと、元のステータスに対して筋力のランクが1段階上昇。真名を解放すると元のステータスに対して幸運以外の全ステータスが一段階上昇。

 

神を喰らう獣(フェンリル)

ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:無し  最大捕捉:無し

夜に真名を解放することで巨大な白狼になる。破壊衝動の赴くままに全てを破壊する。

発動中は幸運を含む全ステータスが、元のステータスに対して2段階上昇する。

 

 

【weapon】

銛:刃の近くに爆薬が巻かれており、爆薬についている紐を引っ張ることで爆発する。

 

 

【人物背景】

 

パトリア大陸の内戦で擬神兵部隊を率いた男性。擬神兵としての姿はウェアウルフであり、擬神兵の中でも数少ない、人と獣の姿に自在に変化することのできる力を持つ。

普段は黒髪だが、ウェアウルフとしての力を発現すると髪が白髪になり、ウェアウルフの力が最大に出せる夜には巨大な人狼へと変化し、驚異的な力を発揮する。

内戦が終わってからはパトリアの軍部で特技曹長として活動している。 内戦中の擬神兵部隊における「人の心無くした者は仲間の手で葬る」という訓戒を実践に移すため、各地で問題を起こす擬神兵たちを殺して回る。

このことから巷では“獣狩り”と呼ばれているが、本人としては決して望んでかつての同胞たちを手にかけているわけではなく、話が通じそうな相手に対しては必ず説得を試みている。

擬神兵部隊の隊長時代には、多くの部下から慕われる良き上官であり、これは多くの擬神兵たちが未だにハンク・ヘンリエットのことを「隊長」と呼ぶことからも分かる。

 

 

【サーヴァントとしての願い】

擬神兵を人として蘇らせること。

エレインを復活させること。

 

【方針】

擬神兵の暴走を彷彿とさせる者は全て殺す。

聖杯戦争に勝利するためにやむを得ない場合は、殺人も辞さない。

 

 

【マスター】

上条当麻

 

 

【出典】

とある魔術の禁書目録

 

 

【性別】

 

 

【能力・技能】

幻想殺し(イマジンブレイカー)

自らの右手に触れたあらゆる異能の力を全て無効化してしまう能力。サーヴァントや令呪、NPCに対しても効果がある。

令呪に触れた場合は令呪が消え、サーヴァントとの契約関係が切れる。サーヴァントに対しては、一瞬触れただけでもかなりの魔力が消える。

NPCは消える。パラディウム・シティの一部として設定されているものについては、無効化されて消えるよりも速く聖杯が修復するため、触れても見た目上は変化が無い。

 

 

【weapon】

無し

 

 

【人物背景】

学園都市で暮らす高校生。性格は基本的には面倒臭がりかつ無気力で、面倒だと感じる事からは全身全霊をもって逃げようとする…と自認している。

しかし実際は、誰かに助けを求められれば、それが誰であれ、どんな事態であれ助けようと真摯に奮闘するタイプ。

逆に自分から他人に助けを求める事はかなり珍しく、騒動の渦中へと単身で乗り込むことも多い。

戦いに身を投じてでも人を救い出す理由については「見捨てる理由が一つもないから」とのこと。

対照的に、自分の事情は一人で抱え込む悪癖がある。

かなりの不幸体質なのだが、これは自分に来る幸運を右手が消していることが原因。

 

 

【マスターとしての願い】

ハンク・ヘンリエットの暴走を止め、彼の問題を解決すること。

 

 

【方針】

ハンク・ヘンリエットと対話を試みる。

 

 

【ロール】

高校生

 

 

【令呪の形・位置】

左手の甲にある。

 

【把握媒体】

アニメ・小説

 

【備考】

上条は令呪を1画消費していて、バーサーカーは上条に危害を加えられません。

マスターとサーヴァントは現在別行動です。

 

 

 



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【候補作】白銀つむぎ&ランサー

作者 ◆DUsgYayewA様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


 とある廃工場の中。昼にも関わらず全体的に薄暗く、汚れた作業道具や機械の部品があちらこちらに散らばっている。かつてはうるさいくらいに音を響かせながら機械が稼働していたのであろうが、今はそのほとんどが撤去され、残った機械はガラクタとなってすっかり錆びついている。聞こえてくるのは、その工場を住処とする野生動物の鳴き声くらいなもの…のはずなのだが、何故か今日は工場全体に女の声が響き渡っている。

その声の発生源となっている女は、工場の中でも特にがらんとしていて広い部屋、その真ん中にぽつんと立ち、項垂れている。

「何とかやりきった…でもやっぱり地味に疲れたよ。二度目とは言え、人を殺すのってエネルギーいるよね」

 女は眼鏡を外し、血の汚れをティッシュで拭いてから再度かけ直す。

「というか、よりにもよって刺殺を選んじゃったのは失敗だったなあ…。服にべったり返り血ついちゃったし、床からすごい匂いするし、最悪だよ」

 上着の袖や履いているスカートを撫でて眉尻を下げ、とほほ、と困ったように下の方を見る。

 視線の先には、服を血で赤く染めた男が転がっていた。首の辺りが掻き切られていて、そこからあふれ出した血の池が、女の足元まで広がっている。出血量からして確実に死んでいると言っていいだろう。

「一回霊体化したら服の汚れはリセットできるし、場所も移動すればいいだけなんだけど…地味にそんな時間はないよね」

 はは、と女は諦めたように力なく笑いながら少しかがみこんで、手の中にある、血に濡れたナイフを血の池の外側に置いた。そしてすぐに立ち上がり、目を閉じて小さく息を吸う。

 次の瞬間。彼女の白い右手が赤く輝き、紋章が浮かび上がる。それが何なのかは見る者が見ればわかる。令呪だ。

 目を開けた彼女は令呪に加え、いつのまにか手の中に白地のカードがあることを確認し、堪えられなくなったようにふふっと笑いをこぼす。成功だ。そして高らかに声を張り上げる。

「さあ来て! 私のサーヴァント!」

 その声に呼応するように、みるみるうちに目の眩むような白い光で、部屋が満たされていく。

 そうしてから何秒経っただろうか。光が収まった後にいたのは、その女の他にもう一人。白いスクール水着を着た、スタイル抜群の少女だ。

 少女は、しばらく無表情で女を見た後、短く「だれ?」と呟く。

 それに対し女は硬直し——目を輝かせて早口でまくしたてる。

「えっ、巨乳スク水美少女とかやばいよ! あざとかわいすぎる! それってあなたの世界だと標準服だったりするのかな? ってあっえともしかして同業者? 同好の士だったりする? だとしたらすごくうれしい! コスプレ趣味の人って地味にいないんだよね! というかその衣装凝ってる! どんな素材なのか触っても…あっごめんオタク特有の早口になっちゃってて!」

 女の怒涛の勢いに反し、少女の方は全く表情を崩さない。そしてもう一度「だれ?」と言いわずかに首を傾げる。

 流石に女もこれでクールダウンしたらしく、眼鏡の位置を調節し、背筋をぴんと伸ばす。

「えっと…地味にはじめましてだね。私は”超高校級のコスプレイヤー”白銀つむぎ。サーヴァントにしてマスター。大冒険の途中で出てくる氷と炎の半身を併せ持つ岩石生命体的な、相反する二つの属性を持つ、地味に特殊な存在だよ」

 『サーヴァントにしてマスター』という言葉が興味を引いたのか、少女はピクリと眉を動かす。だが何も言うことなく白銀の全身を上から下まで見て、尋ねた。

「そのぶつぶつはなに?」

 白銀は自分の身体を見下ろす。少女の言うぶつぶつ——蕁麻疹は、手首や太ももなど、見える範囲の肌の至る所で発生していた。顔に手を当ててみてもやはりざらざらしていて、蕁麻疹が顔にも出ていることがわかる。

白銀は「ああやっぱり気になるよね」とため息を漏らす。

「それについては話の順序的に後に話すことにしていいかな。とりあえず先に君の名前も教えてほしいな」

「スイムスイム」

 少女——スイムスイムは即答する。

「サーヴァントにしてマスターって?」

 ぶつぶつの話は後にすると言われたことを受け、他に気になったことを話題に上げる。

「あはは…マイペースなんだね。もうちょっと自己紹介的なのを期待してたんだけど…まあ私も人のこと言えないか」

 白銀はどんよりとした様子で苦笑する。

「私は元々そこにいる彼から、サーヴァントとして召喚されたんだよ」

 白銀は転がっている死体を指さす。

「けど彼は聖杯戦争に地味に消極的で…元の世界に帰還しようとしてたんだ。でもわたしは聖杯にどうしても叶えてほしい願いがあったから、すごく困っちゃって…だから一日だけここを観光したいってお願いしたんだ。それで廃工場(ここ)に連れてきて…ぐさりと」

 その結果がこれなんだけどね、と白銀は自分の服をぽんぽんと叩く。

「サーヴァントがサーヴァントを召喚できた理由は?」

 スイムスイムは死体を一瞥した後、白銀を顔を見つめた。

「それは地味にスキルのおかげなんだよね。わたしの才能は”超高校級のコスプレイヤー”だから変装とか地味に得意なんだけど…それがEXランクの変化スキルに化けたんだよ。そのスキルが特殊で、自分の魂の在り方まで変化させられるものだった。で、これなら聖杯すらも騙せるんじゃないかって思ったんだ。

 だからマスターを殺してすぐに、そのスキルでわたしの魂を彼の魂に模倣(コスプレ)して、聖杯の認証を誤魔化した。…彼の魂は既に消滅してるから、必然的にわたしが彼で、令呪の持ち主だということになる。

 で、面白いのはここからでね、令呪を手に入れた後、わたしはスキルを解除したんだ。スキルを使っただけで、わたしの魂であることは変わらないから、マスターとしての資格は維持される。そしたら聖杯はさらに勘違いしたんだ。彼(わたし)がまだサーヴァントを召喚していないって。『彼』はサーヴァントを召喚したけど、突如出現したマスター、『白銀つむぎ』はまだサーヴァントを召喚していないって。正直この辺は賭けだったんだけど、ほんと上手くいってよかったよ」

 白銀はにやにやしながら、かゆいのか顔をぽりぽりとかく。

「で、この蕁麻疹は変身スキルの副作用だよ。わたし、現実の人間の変装をするのがどうしても無理なんだ。それってコスプレじゃなくてモノマネじゃんって思っちゃうし、コスプレイヤーとしての矜持に反するんだよね…それでもやろうとするとアレルギー反応みたいになって全身に蕁麻疹が出来ちゃうんだ」

 スイムスイムは白銀の言葉を聞き流す。彼女の中では、そこはもう重要なポイントでは無かった。

 疑問に思ったのだ。果たして本当にそんなことが可能なのか? そんなに都合よく聖杯を騙し、動かせるものなのか? 聖杯システムの穴をつくにしても、そのやり方は強引に過ぎる。だが今は情報不足で、真偽のほどはわからない。ただ、現に白銀はサーヴァントの身で令呪を持っていて、スイムスイムを召喚した。それは確かなことだ。ならばどの道白銀をマスターとして活動する他ない。

 ならば問題はむしろ——

「白銀と活動するのはいい。けど条件がある」

「何かな?」

「私がリーダーになること」

えっ、と白銀は素っ頓狂な声をあげる。

「形式上は白銀がマスター。でも作戦立案と指揮は私がやる。主導権は私」

 スイムスイムとしてもここは譲れないところなのか、語気を強めて強調する。

「まあ地味なわたしがやるより、そっちの方が絵になると思うし、別にいいけど…リーダーに拘りがあるの?」 

白銀からの問いかけに、こくんとうなずく。

「わたしはルーラにならないといけないから」

「ルーラ?」

「お姫様。強くて賢くて頼りになるリーダーで、憧れの対象。皆がそれに近づこうとすることで組織が活性化する。…だからわたしもルーラに、お姫様になろうとした。けど、駄目だった。わたしはルーラのような、偉大なリーダーじゃなかった。ルーラになれなかったから手下を死なせた」

 スイムスイムはわずかに目を伏せる。

「でも、ルーラが言ってた。『リーダーになろうという強い意思があれば、それだけで最低限の資質はある』。…一度失敗したけど、まだルーラになれる可能性は残されてる。わたしにはルーラしかない。ルーラになれるならなんでもする。だから」

 一呼吸置く。

「聖杯にお願いして、ルーラになる」

 相変わらず平坦で抑揚のない声だったが、白銀には確かな覚悟、強い意思が込められているように思えた。

「なるほどね。本当にそのルーラって人が大好きなんだ! わかるよ。わたしも推しキャラになりたくてなりたくてしょうがないから、コスプレしてるところもあるし!」

 白銀は胸のあたりでぐっと握りこぶしを作り、共感を示す。

「じゃあさ、これから結構人を殺すことになると思うんだけど…ルーラになるためならやれる?」

 まともなサーヴァントならまずNOを突き付けるだろう。少なくともやむを得ない場合に限定するくらいはするはずだ。

 だが、スイムスイムはまともではない。

「ルーラが言ってた。『手段を選んでいるうちは2流。一流のリーダーは、どんな手を使ってでも目標を達成する。その後で、周りにそれが正しかったと認めさせればいい』。…殺すことに問題は無い」

 スイムスイムは無表情で、無感動に言った。だがこれまで色々な人間を見てきた白銀にはわかる。表面上では感情が無いようにも思えるが、その胸の中には激情が渦巻いていることが。ルーラなる者への強い執着。粘り気のある狂気。そしてお姫様になりたいという願望。そういったものがルーラの言葉の解釈を歪め、スイムスイムに極端な思想を抱かせるようになったのだろう。

「ルーラが言ってた。『リーダーたるもの、手下が何を考えているかを常に把握しておくべき。そうすることで利用しやすくなる』。白銀の願いを教えて」

「いや『利用しやすくなる』まで言ったら駄目でしょ! 魂胆が筒抜けだよ?! もうちょっとルーラの言葉隠した方がいいよ!」

白銀は激しくつっこむ。

「あぁ、このわたしが、ツッコミしかできないなんて…一応わたし、ボケとツッコミを両立できる二刀流だったんだけどなぁ」

 明日の方角を向き、たそがれる。

「気を取り直して…えぇっと、わたしの望みだよね? …それは『ダンガンロンパの復活』だよ!」

 腰に手を当て、胸を張る。

「ダンガンロンパ?」

 スイムスイムの知らない単語が出てきた。

「ダンガンロンパっていうのはね! 閉鎖空間に閉じ込められた、超高校級と呼ばれる才能の持ち主たちが生き残りをかけてコロシアイをするゲームなんだよ! ただ殺し合うだけじゃなくて、殺人が起こった後学級裁判で推理を…」

 スイッチが入ったのか、白銀はダンガンロンパについて語りまくる。鼻息を荒くして目を見開き、早口でほとんど息継ぎをすることなくにじり寄ってくる様は、変態さながらである。

「もういい。十分」

 マイペースさに定評のあるスイムスイムも、これには耐えかねた。

「あっ、ごめん! オタクって、自分の好きなものに興味を持ってもらえると、つい押しつけがましく説明しちゃうんだよね…気を付けててもついやっちゃうんだよ…」

 白銀は頭を抱えて座り込む。

「復活させるというのはどういうこと?」

 スイムスイムは白銀の様子に構うことなく尋ねる。

「えっと、それがね。53回目のダンガンロンパは、わたしが参加者に交じって運営してたんだけど…色々やらかしちゃって、結局参加者たちにダンガンロンパというコンテンツそのものを破壊されちゃって…。

 恐らく今はもうあの世界にダンガンロンパは存在しない。わたしの生きがいである至高のエンターテインメントは終わってしまった。それは覆せないくらいに決定的だった。

 でも、さ。聖杯の力があれば話は別だよね。万能の願望器なら、万難を排してダンガンロンパを再開するくらいたやすいはず。だからお願い。ダンガンロンパを…わたしの希望を復活させるために、協力して。スイムスイムさん」

 今までの軽い様子から一転、白銀は真剣な表情でスイムスイムの目を見る。

「ルーラが言ってた。『利用できるものは何でも利用しろ』。目的を達成するのに白銀は利用できそうだから、手を貸す」

 スイムスイムのその言葉に、白銀は頬を紅潮させ、涙を浮かべる。

「ありがとう! スイムスイムちゃん! わたしたち、ズッ友だよ!」

 血まみれの服で抱き着いてくる、全身蕁麻疹の白銀を、スイムスイムは押しのける。

「ルーラが言ってた。『手下とリーダーの関係はあっても、友達なんていい加減な関係はない』。早く離れて……血生臭いから」

 

 

【サーヴァント】

 

【CLASS】

ランサー

 

 

【真名】

スイムスイム

 

 

【出典】

魔法少女育成計画

 

 

【性別】

 

 

【ステータス】

 

筋力D 耐久B 敏捷D 魔力C 幸運C 宝具A

 

【属性】

混沌・善

 

【クラス別能力】

対魔力:C

魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

 

【保有スキル】

カリスマ:E

国を統率はできても、兵の士気が極端に下がる。ただし、一軍を率いる将官程度の役職であれば、天賦の才と言えるランクである。

 

心眼(真):C

修行・鍛錬によって培った洞察力。 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

 

【宝具】

透潜万中(スイミング・マジック)

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:無し  最大捕捉:無し

自分の体を物質透過出来るようにする能力。発動するとあらゆるモノを泳ぐが如くすり抜けられるようになる。スイムスイムがモノと認識したあらゆる物体を透過でき、地面・壁・置物はもちろん相手の攻撃や防御まで通り抜けられる。ただし光・音・衝撃波は透過不可能。また、透過中は自分のコスチューム以外の物体を携行することができない。

 

 

【weapon】

『ルーラ』

薙刀に似た武器。スイムスイムのコスチュームの一部で、能力使用中も携行できる。非常に頑丈で、壊れることはまずあり得ない。名前はスイムスイムが心酔する人物の名からとられた。

 

【人物背景】

本来の姿は小学1年生の7歳と非常に幼い。そのためニンジンが苦手だったり漢字が読めなかったりと年相応な面も見せる。

同じ魔法少女であり所属するチームのリーダーであるルーラの事を、狂信的なほどに崇拝しており、彼女に理想の女性像を抱き「憧れていたお姫様」だと思っている。

そんな中、ある出来事をきっかけに自分が「憧れていたお姫様」になることを目指し始めるのだが、その中で彼女はルーラを殺すことを思いつき、謀殺。所属するチームのリーダーの座に収まった。

リーダーとなってからはルーラのやり方を”自分なりの解釈で”踏襲する。その踏襲ぶりは徹底しており、ルーラの生前の発言を実行するためならば、大事に思っている仲間さえも殺害する。

冷静で高い戦術眼を持っており、殺人に躊躇がない。そのため魔法少女同士の戦いの中で、彼女の率いるチームは多くの魔法少女を殺害できた。しかしその過程で恨みを買い、殺害される。

 

 

【サーヴァントとしての願い】

ルーラと同等かそれ以上のリーダーになる。

 

 

【方針】

聖杯のためなら、残虐なこともする。

生前のルーラの言葉には絶対に従う。いかなる場合でも例外は無い。

 

 

 

【マスター】

白銀つむぎ

 

 

 

【出典】

ニューダンガンロンパV3

 

 

【性別】

 

 

【能力・技能】

マスターでありながら、同時にサーヴァントでもある。

以下、サーヴァントとしてのステータス等を記述する。

 

【CLASS】

キャスター

 

【ステータス】

 

筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A 幸運B 宝具EX

 

【属性】

混沌・悪

 

【クラス別能力】

陣地作成:EX

魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。膨大な魔力があれば、『才囚学園』を形成することが可能。

道具作成:B

魔術的な道具の中でも、変装に関わるもののみを作成できる。

 

 

【保有スキル】

変化:EX

任意の対象に完全に変身することができる。変身の精度は極めて高く、魂の在り方など、存在の本質的なレベルで模倣することが可能。真名看破や魂喰いにおいても偽装は有効であり、聖杯すらも騙せる。ただしパラメーターは変わらない。

 

【宝具】

才囚学園

ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:10~100 最大捕捉:1000人

外界とは隔絶された学園を生成する。学園の中では、モノクマやエグイサルなどの兵器が多数配備されている。

 

模倣犯(コスプレイヤー)

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人

自己または他者に、全く別の人格・記憶・才能を任意に与える。この宝具を発動させるには、相手を無力化する必要がある。

 

【weapon】

無し。

 

 

【人物背景】

漫画やゲーム、アニメのフィクションキャラクターの、高い再現性をもつコスプレをする《超高校級のコスプレイヤー》。

本人は自分が「地味」であることに一種のコンプレックスを抱いているらしく、自身の才能や趣味を「地味」と前置きしてから主張していた。普段でも「地味に~」が口癖となっている。

フィクションキャラクターなら男でも女でもほぼ完璧になりきることができるが、「リアルの変装」に対しては嫌悪感を抱き、「リアルの人間」のコスプレをするとアレルギーが出てしまう体質。

実はコロシアイ学園生活の首謀者であり、コロシアイの様子をエンターテイメントとして世界中に配信していた。

しかし最終的に主人公たちの策により視聴者たちがコロシアイへの興味を失い、興行としてのダンガンロンパは崩壊することになった。

白銀はそのことに深く失望し、失意の中瓦礫に押しつぶされて死んだ。

 

 

【マスターとしての願い】

ダンガンロンパの復活。

 

 

【方針】

聖杯の獲得を目指す。

残虐な行為を厭わない。

 

 

【ロール】

高校生

 

 

【令呪の形・位置】

右手にある。

 

【把握媒体】

ゲーム

 

【備考】

白銀はランサーの召喚に成功した後、自分の端末と腕輪を取得している。他のマスターと同様にその機能を用いることができる。

サーヴァントとしての白銀の依り代は自分自身である。

 



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【候補作】刀藤綺凛&アーチャー

作者 覇王様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


とある学園の剣道場で銀髪の少女が素振りをしていた。彼女の名前は刀藤綺凛。この聖杯戦争の参加者である。

 

「見事なものね」

 

「加賀さん……?」

 

綺凛の前に現れたのは黒髪でサイドテールの女性。彼女の名前は加賀。今回の聖杯戦争で綺凛が召喚したアーチャーのサーヴァントである。

 

「加賀さん、私の剣はどうでしたか?」

 

「見事なものよ。その歳で、あのレベルの腕前ならな間違いなくあなたは天才よ」

 

加賀は綺凛の剣の腕前を褒める。

 

「私の……願いは……叶うでしょか?」

 

「聖杯を手に入れば叶うと思うわ」

 

「そう……ですか」

 

(ただ、彼女は聖杯戦争に参加するには優しすぎるわね……)

 

加賀は心の中でそう思うのであった。

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

アーチャー

 

【真名】

加賀

 

【性別】

女性

 

【出典】

艦隊これくしょん

 

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷C 魔力C 幸運C 宝具B

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

 

対魔力:B

魔術発動における詩唱が三節以下のものを無効化する。

大魔術、儀礼呪法等を似ってしても、傷つけるのは難しい。

 

単独行動:A

マスターから魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

ランクAならば、マスターを失っても一週間は現界可能。

 

【保有スキル】

 

嵐の航海者:A

「船」と認識されるものを駆る才能を示すスキル。

 

戦闘続行:A

最後まで戦場で戦い続けた彼女の逸話が昇格したスキル。

 

【宝具】

 

加賀改二

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大補足:500人。

加賀改二の姿になることにより自分の能力を上げ、敵を倒す。

 

【人物背景】

『艦隊これくしょん』の登場人物。

『加賀型1番艦』の艦娘。

 

口数が少なめなクールな艦娘。

感情がないわけではなく、怒っていても喜んでいても静かなげである。

 

冷静沈着ように見えて、実は激情家だったりする。

 

ちなみにかなりの大食いである。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。聖杯にも聖杯戦争にも興味はないが、マスターのことは最後まで守る。

 

【方針】

マスターに任せる。ただマスターには人殺しはあまりさせたくない。

 

【把握素体】

ゲーム及び、アニメ。

今回の聖杯戦争ではアニメ版の彼女が召喚されている。

 

 

【マスター】

刀藤綺凛

 

【出典】

学戦都市アスタリスク

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

 

『刀藤流』

彼女が使う剣術

 

『千羽切』

彼女が使う日本刀

 

【人物背景】

『学戦都市アスタリスク』の登場人物。

 

『疾風迅雷』の二つ名を持つ天才剣士。

刀藤流宗家の生まれで、中等部一年生で学園の序列一位になった少女。ただ性格は気弱で引っ込み思案である。

 

彼女の願いは正当防衛でありながら刑務所に収監された父親を助けること。

 

参加時期は主人公の『天霧綾斗』と出会う少し前である。

 

【マスターとしての願い】

父親を助ける。

 

【方針】

あまり犠牲者を出さない方法で聖杯を手に入れる。

 

【ロール】

とある学園の剣道部員。

 

【把握素体】

原作小説及び、アニメ。



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【候補作】長瀬琴乃&ライダー

作者 覇王様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


「本当に私の願いは叶うの?」

 

「君の願いはなに?」

 

とある学園の屋上で少女と少年が話をしていた。

長い黒髪の少女の名前は長瀬琴乃。今回の聖杯戦争の参加者である。

 

もうひとりの少年の名前は常磐ソウゴ。

今回の聖杯戦争で琴乃が召喚したライダーのサーヴァントである。

 

「私は……お姉ちゃんが事故で亡くなる過去をなかったことにしたい!」

 

自分の願いをソウゴに伝える琴乃。

 

「過去を変えるのは難しいと思う」

 

「でも、聖杯はどんな願いも叶えられるんでしょう!」

 

「聖杯でも過去を変えられるかは分からない。 それに、過去は変えられないと思う。 例え望んではない結果だとしても……受け入れるしかないんだ。 でも、未来は変えられる!」

 

「未来……?」

 

過去を変えたい琴乃と過去を変える難しいさを誰よりも知ってるソウゴ。この二人の聖杯戦争はどうなるのか……?

 

 

【マスター】

長瀬琴乃

 

【出典】

アイドリープライド

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

なし

 

【人物背景】

『アイドリープライド』の主人公のひとり。

 

クールで真面目な性格。『長瀬麻奈』という仲の良い姉がいたが、麻奈がアイドルになってから、自分に構ってくれなくなった姉に対して屈折した思いを抱くようなる。そして、姉の麻奈に対して暴言を吐いてしまい、その翌日に麻奈が交通事故で死亡してしまう。

彼女の願いはその交通事故をなかったことにするこである。

 

参戦時期は『川咲さくら』たちと出会う少し前である。

 

【マスターとしての願い】

お姉ちゃんが交通事故で死亡したことをなかったことにする。それが無理ならもう一度だけお姉ちゃんに会いたい。

 

【方針】

なるべく犠牲を出さない方法をとる。

 

【ロール】

学生

 

【把握素体】

アニメ及び、ゲーム。

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

ライダー

 

【真名】

常磐ソウゴ

 

【出典】

仮面ライダージオウ

 

【性別】

男性

 

【ステータス】

腕力B 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具A

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

騎乗:B

騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以下に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

 

対魔力:B

魔術発動における詩唱が三節以下のものを無効化する

 

【保有スキル】

単独行動:B

マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

 

カリスマ:B

軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において自軍の能力を向上させる。

 

【宝具】

『グランドジオウ』

ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大補足:500人

歴代平成仮面ライダーを最強フォームで召喚し、一斉に必殺技を放つ。

 

【人物背景】

『仮面ライダージオウ』の主人公。

仮面ライダージオウの変身者でもある。

 

王様になることを夢に見ていた少年。

仮面ライダージオウに変身したことにより

戦いに巻き込まれていくが、戦いを通し成長し、大切な仲間たちとも硬い絆で繋がっていく。最後の戦いでは『アナザーディケイド』を倒し、未来の自分にも向き合ってる。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。マスターを最後まで守る。

 

【方針】

マスターに任せる

 

【把握素体】

テレビドラマ『仮面ライダージオウ&劇場版』

 



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【候補作】万灯雪侍&セイバー

作者 ジェットプテラ様
この度のご投稿、誠にありがとうございます。


人種に問わず、多くの顧客で賑わっている真昼のフードコートで二人の男性が食事して居た。

白いスーツで藤色の長髪に虹色のメッシュを入れており、その部分を編んで金のリングで留めている長身かつ眉目秀麗な若い男、万灯雪侍ともう片方はどこか幼げな印象のある青年戦闘員Dが食事して居た。

戦闘員Dは何か思いだして

 

「なぁ、聞いて良いか?」

 

食事を止めて万灯雪侍に質問した

 

「答える範囲では」

 

万灯雪侍も食事を止めた。

 

「そんじゃあ、この世界?に来る前に黒い靄みたいな奴を俺が倒したじゃん」

 

「そうだね」

 

「そん時あんたがなって居た奴は何だ?

 まるで怪人だったぞ」

 

「そうは言わない

怪人ではなく…」

 

万灯雪侍は懐から空に瞬くオーロラでAと書かれたメモリ、オーロラメモリを出して

 

「ドーパントさ」

 

「どーぱんと?

 そんな小さい箱みたいなやつが?」

 

「そうは言わない」

 

「じゃあ何て言うんだ?」

 

「ガイアメモリのさ」

 

「がいあめもり……

 アアァァ!!どーぱんと、とがいあめもり聞いた事がないし

 この街は分からないことだらけだ」

 

戦闘員Dは頭を掻いた。

 

「ああ、その通りだ

 何せこの世界は私の世界と君の世界ではお目にかからない物ばかりだから」

 

「にしてもあんたの世界の人間はそんなものを使って……その……どーぱんとになりたいとか随分ぶっ飛んでいるな」

 

「しょうがない。

 何せ此れは完璧で何年経ってもこれ以上の発明品を人類は生み出せていないのさ」

 

「完璧ね……

 その……がいあめもりて言う物は他にも有るのか?」

 

「勿論とも」

 

万灯雪侍はオーロラメモリーを仕舞って他のメモリーを出した

書かれているイラストは溶岩が吹き出る火山でM、ティラノサウルスの横顔でt、身体を丸めたゴキブリでC、尖った爪を持つ左腕でV、トリケラトプスの横顔でTと等々色々有った

 

「随分あるな」

 

「ガイアメモリと言えど数は無数に有るんだ」

 

「ふう~ん、其れで此れをばら撒くのか?」

 

「勿論私達が有利に動く為に」

 

「そうかい」

 

戦闘員Dは食事を再開して万灯雪侍も食事を再開した。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

セイバー

 

【真名】

戦闘員D

 

【出典】

戦隊大失格

 

【性別】

男性

 

【ステータス】

筋力C 耐久A+ 敏捷C 魔力C 幸運A+ 宝具C

 

【属性】

混沌・悪

 

【クラス別能力】

対魔力:E

 

【保有スキル】

 

単独行動:B

マスターから魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

ランクBならば、マスターを失ってから二日間現界可能。

単独でも戦い続けた彼の逸話が昇格したスキル。

 

カリスマ:B

 

メタモルフォーゼ:A

 

不老不死:A

どんな傷を負っても修復する。

※竜神と名の付く武器、もしくは再生阻害付与の武器からダメージを受けると再生スピードが落ちる

 

戦闘続行:EX

 

【宝具】

ドラゴンガジェド バーストモード

ランク:D 種別:対人宝具 宝具 レンジ:1~5 最大捕捉:10人

 

【weapon】

ドラゴンガジェド

 

【人物背景】

幹部怪人の手により生まれた戦闘員

身体を再構築する能力によって人間への擬態を得意としており、人間態はどこか幼げな印象のある青年の姿。

幹部がいなくとも悪の勝利を信じ、他のメンバーを鼓舞するが、その一方でこの境遇を受け入れてしまいそうな事も自覚している。

仕組まれた戦いによって度重なる敗北の末に自身が悪役ですらない事を痛感し、ドラゴンキーパーを倒すべく単独で行動し始める。

 

解説元ピクシブ辞典

 

【サーヴァントとしての願い】

此れと言った願いは無い

(自分の手でドラゴンキーパーを倒したい為)

 

【方針】

メタモルフォーゼを上手く活用して敵を騙して倒す。

 

【マスター】

万灯雪侍

 

【出典】

風都探偵

 

【性別】

男性

 

【能力・技能】

不明?

多分、閉ざされた空間や室内に忽然と現れる能力だと思う

 

【weapon】

ガイアドライバーrex

オーロラメモリ

 

【人物背景】

容姿

藤色の長髪に虹色のメッシュを入れており、その部分を編んで金のリングで留めていると、特徴的な容姿をしている。

長身かつ眉目秀麗な若い男で、服装は常に白いスーツ。

 

性格

一人称は「私」。

言葉遣いは穏やかで紳士然とした好人物であり、高いカリスマ性を以て『街』の住民を纏めあげている。

部下からは老若男女を問わず慕われているようで、とりわけ準幹部の二階堂守は彼に心酔している。

ハイドープである前提条件は付くが、接触した相手がたとえどんな卑劣漢であろうと、穏やかな態度を変えない。

相手の投げかけた言葉を「そうは言わない」と、やんわりとした口調で否定した後、彼の思う表現に直して伝える口癖がある。

ただし、接触したものの見込み違いだった者や、大きな失態を犯した者については、あからさまに見下した態度で「クズ」や「ブザマ」となじる場面も見られる。

また『裏風都』建造の際、使役した多量のロード・ドーパント達が喰らったであろう数多くの犠牲者たちについても「理想の世界を築くための『美しい犠牲』」と称したり、

自身と関わりを持ったドーパントたちが敗れた際は「後始末」「君たちの街に申し訳ない」と称して変身者を始末する等、本性は極めて冷酷である。

その様はフィリップをして「正真正銘の『悪魔』、そのものだ」と言わしめたが、本人は「私は『悪魔』ではなく『天使』なんだ」と返していた。

恐らくフィリップが『悪魔』と呼ばれた過去への皮肉と推測され、この事からフィリップや『ミュージアム』の詳しい情報を得ていることも伺わせる。

組織の運営者としては、人員に対して非常に寛容。

「好きにさせた方が、才能が弾ける人間というのもいる」を基本スタンスに、各配下の行動理念等にほとんど口出しはせず、よほど下手を打たない限りは多額の資金等で援助しつつ見守るに留めている。

側近として従える五条一葉/スクリーム・ドーパントの扱いはその顕著な例であり、彼女の趣味である猟奇殺人はお目付役を付けつつも黙認している。

一方で仮面ライダー達に関しては「立場こそ違えど、ハイドープに限りなく近い超人」と最大限に評価しており、それ故に可能な限り接触を避けるのを基本方針とする等、『街』最大のリスクとして捉えている様子。

ある事情から、不本意にも彼らに協力を求めざるを得ない事態となった際も、有事を想定して二人の最高戦力を忍ばせていたり、翔太郎らに提供した資料には自分達の不利になる情報は一切載せず、「国家間の文書」と評される程に徹底して隙を見せない。

その割には自身の名をあっさりと明かし、フィリップに対し「後で検索してみたまえ。まあ、すぐに落胆するだろうが。」とも言ってのけたが……?。

 

解説元ピクシブ百科事典

 

【マスターとしての願い】

自分が行っている計画の保険確保 

 

【方針】

他のマスターと同盟を組み

見込みのあるマスター、キャスターにはガイアメモリを渡してある程度一緒に行動する

 

【ロール】

大手会社の社長

 

【把握媒体】

風都探偵 漫画 アニメ

 



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【候補作】錦木千束&アサシン

作者 覇王様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


「全然釣れないわね……」

 

「そのうち釣れるよ! それに誰かと一緒にいられるだけで私は楽しいよ!」

 

二人の少女が一緒に釣りをしていた。

 

ひとりは黄色みがかった白髪の少女。

彼女の名前は錦木千束。この聖杯戦争の参加者である。元の世界では『DA』と呼ばれる国を守る組織に所属している。

 

もうひとりは黒髪の少女。彼女の名前は夏木花。千束が召喚したアサシンのサーヴァントである。

 

「それで千束は本当に聖杯は求めなくていいの? 聖杯があればあなた心臓も治せるのよ」

 

「それでも私には聖杯は必要ないかな。それに私は……自分が幸せだと思えるから! 聖杯は必要ない!」

 

千束が笑顔で聖杯は必要ないと花に伝える。

 

「千束がそれでいいなら私はもう何も言わない!」

 

花も笑顔で千束にそう伝える。

 

「花にこそなにか願いはないの?」

 

今度は千束が花に願いを聞く。

 

「私も特にないかな。聖杯にも興味ない」

 

「そっか……。花! 魚が釣れそうだよ!」

 

「本当だ! 絶対に釣る!」

 

釣りを楽しむ二人であった。

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

アサシン

 

【真名】

夏木花

 

【出典】

仮面ライダーリバイス

 

【性別】

女性

 

【ステータス】

筋力C 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具B

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

気配遮断:B

サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に優れてる。

 

【保有スキル】

 

カリスマ:B

軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において自軍の能力を向上させる。

 

【宝具】

『アギレラ』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大補足:100人

 

自分の過去と向き合い、前に進み出した、彼女の想いが宝具になったもの。自らの能力を上げ、敵を倒す。

 

【人物背景】

『仮面ライダーリバイス』の登場人物。

『仮面ライダーアギレラ』の変身者。

 

『デッドマンズ』と呼ばれる敵組織に所属していた少女。『デッドマンズ』に所属していた頃は『アギレラ』の名前は名乗っていた。

 

『五十嵐さくら(仮面ライダージャンヌ)』に救ってもらってからは『アギレラ』の名前を捨て、『夏木花』と名乗っている。

 

『アギレラ』の時のようなぶりっ子は鳴りを潜め、言いたいことをはっきりというようになった。

 

それから『仮面ライダーアギレラ』の変身者になり、最後まで戦い抜いた。

 

戦い終結後は新たな組織『ブルーバード』に所属している。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。マスターを最後まで守る。

 

【方針】

マスターに任せる。

 

【把握素体】

テレビドラマ『仮面ライダーリバイス&劇場版』

 

【マスター】

錦木千束

 

【出典】

リコリス・リコイル

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

 

『銃弾避け』

卓越した洞察力と常人離れした視覚によって

相手の射線と射撃のタイミングを見抜き、放たれた銃弾を回避する。

 

『デドニクス・コンバットマスター』

彼女が使用する銃。カバンに装備している。

 

『拘束用銃』

ワイヤーを発射して相手を拘束する。

 

『非殺傷弾』

彼女が使用するゴム弾。かなりの威力があるが、相手を殺さない銃弾。

 

【人物背景】

【リコリス・リコイル】の主人公。

『DA』と呼ばれる組織に所属している。

 

いつも笑顔で、明日より今日を全力で楽しむ少女。『喫茶リコリコ』で看板娘として親しまれており、人助けもたくさんしている。

 

実は『DA』に所属するリコリスでは歴代最強と呼ばれている。

 

だが心臓に問題があり、命の危険があったが、『殺しの天才』と見出され、『アラン機関』と呼ばれる組織から人口心臓を移植されている(それでも成人までしか生きられないとされている。)

 

絶対に人は殺さず、敵でも絶対に殺すことはない。

 

参戦時期はアニメ第9話で『井ノ上たきな』にデートに誘われる少し前。

 

【マスターとしての願い】

特になし。聖杯戦争を止める。

 

【方針】

協力してくれるマスターを探す。

絶対に誰も殺さない。犠牲も絶対に出さない。

 

【ロール】

とある学園の学生。

 

【把握素体】

アニメ



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【候補作】コラソン&アルターエゴ

作者 ◆.aVFsM47H6様
この度のご投稿、誠にありがとうございます。


数多もの英霊、つまりは歴史に名を連ねた英雄を現代に呼び出し戦わせる、という催し。最後の一人になるまで戦い、残った一組が願望機たる聖杯を得られる。これが、聖杯戦争における基本も基本、大前提となるルールである。

 

 そんな、聖杯戦争に於いて重要となる要素の一つが、自身のサーヴァントの強さであることを、マスターの男──────『コラソン』は理解している。

単純に、戦闘能力が高ければ正面からの戦闘で敵を制圧、その腕っぷしだけで聖杯まで到達しうる可能性もあった。

四皇、海軍大将、王下七武海……兄の、ドフラミンゴ。コラソン自身、単騎のみで世界すらも揺るがす存在を知っていたことも起因する。

 

 その点で言えば、自身が呼び寄せたサーヴァント……“アルターエゴ”にコラソンは信を置いてはいなかった。エクストラクラス、アルターエゴというクラスが、どのような性能を持つか、その部分が未知である、というのもそうだ。

更に、性能は普通、アルターエゴが言うには宝具こそ少々多様性が聞くが、取れる手が少ないのだ。

先行きが見えない暗澹たる気持ちを切り替える為にも、コラソンは煙草を吹かす事にした。この見慣れない、パラディウム・シティという都市では煙草を一服する時も喫煙所を探さなければならない、という事を知った時は大変驚いたものだ。

道端で煙草に火を付けた時の周囲の目線、そしてアルターエゴの一言でそれを思い知ったコラソンは、うんざりしたように肩を竦め、火をつける。カフェの、喫煙席。

そこに、コラソンとアルターエゴは小休止していた。

 

【おい、マスター】

 

 聖杯戦争が始まって幾ばくも無いというのに、雲行きは暗い。特に、この聖杯を欲する、という方針を取っているコラソンは、それを色濃く感じてしまう。

自身の持つ能力が戦闘ではなく諜報、裏で行動することに長けているのも一因だった。

単純に、サーヴァントの強さがアルターエゴを上回る相手と戦う際、取れる行動がマスターの暗殺しかない、というのが、痛い。

最後の一組、己の力のみを用いて戦わざるを得ない場面に於いて、頼れるものが無いのだ。

 

(最低でも、他の主従と交渉は必須、か……)

【おい、マスター……】

 

 はあ、と煙を吐いた。現状で言えばコラソンとアルターエゴの主従は、他の聖杯戦争参加者と比べても、弱い。間違いなく、下から数えた方が早い二人だ。それでも、この戦いに勝ち残るには、他の主従との協力、言わば同盟が必要だろうな、とコラソンは考えていた。

戦力的で劣るなら、人数差、兵力差で勝ちにいくしかない。この案にはアルターエゴからも支持されている。

「弱くて済まない」とも謝られた。

 

(そこは気にすることじゃねェ、とは言ってるんだが……)

【……気づいていないのか……?】

 

 今でこそ、霊体化で姿は伺えないものの、アルターエゴの気分は、少し落ち込んでいるのが読み取れた。

召喚直後、寡黙な方で、表情からも感情が読み取ずらい、アルターエゴの眉が、ほんの少し寄ったのを、コラソンは見逃さなかった。

何か気に障る事を言ってしまったか、と言えば、そういうわけでもないらしいが。

 

【なあ、アルターエゴ。いや──────『アイカワハジメ』】

 

 何を思ったか、コラソンは念話を始める。アルターエゴ、その真名を呼んだ。

 

【あんたには感謝している。おれの願いの為に、手を貸してくれて】

 

 息を吞むような、呼吸音。アルターエゴが動揺しているのが、念話越しでも読み取れた。

この英霊は、果たして如何なる道程を以って、サーヴァントに至ったのか、コラソンは知らない。

野暮であるから、と必要以上に聞くこともしなかった。ただ、彼が英霊と至る前は、確かに幸せであった、という事は聞いていた。だから、アルターエゴには願いが無い、と。

 

────おれの兄は……ドンキホーテ・ドフラミンゴは化け物だった────

 

【だから、今一度聞きたい。あんたには、本当は叶えたい願いがあるんじゃねェか】

 

【それは、無い】

 

 即答だった。間髪入れずに、コラソンに返答する、アルターエゴ。

 

────きっと、兄は近い将来、おれの世界を壊すだろう。ようやく兄の手から逃れられたあいつだって、兄が、ドフラミンゴがいる限り真に幸せにはなれねェ。だが、それをおれは止められない……だから、聖杯がいる────

 

【ただ……そうだな。一つ、俺の問いに答えてくれないか、マスター……いや、『ロシナンテ』】

 

 今度は、アルターエゴが問いかける番だった。平素のものよりも、低い声。コラソンは、アルターエゴがこの問いに掛ける真剣さを、感じ取った。この問いには、自身の全霊を以って、彼と共に戦う者として、真摯に答えるべきだと、コラソンは思う。

この答えを濁す事は、アルターエゴの大事な何かを、蔑ろにしてしまうことを直感していた。

 

────そうさ、おれの願いは────

 

【兄を殺す以外に、道はないのか】

 

【それは、無い】

 

 コラソンもまた、即答だった。それだけは、譲れなかった。あの時、引けなかった引き金。死んだはずの己が、この世界に招かれた。ならば今の己の役目は最後のやり残し、きっとそれを引くことだろうと、確信していた。

 

【……そうか】

 

 言うなり、アルターエゴは押し黙った。一度、煙を吐いたコラソンが、再び問いかける。

今のやり取りで、何か、確信めいたものをコラソンは感じていた。

 

【アルターエゴ、あんたは……幸せだった、と言ってたな。だから、願いはいらねェと】

 

 この、アルターエゴも地獄を見たのだろうか、とコラソンは思う。

自身が“下界”に下った時。天竜人に苦しめられた人々の叫ぶ怨嗟、それに負けぬ声量で、子供だけは助けてくれと叫ぶ父、床に伏した母、夜叉へと目覚めた、兄。

コラソンがそれらに苦しめられたのと同じように、アルターエゴも、何かで苦しんでいたのではあるまいか。そして、それを救ったのは。

 

【“家族”に、救われたのか】

 

【……ああ、その通りだ】

 

 アルターエゴが続けた。ほんの少し、念話越しの声が、揺れる。

 

【だから、マスター。もう一度、俺は聞くぞ】

 

 何だ、と惚けることはコラソンには出来なかった。

 

【兄を殺す以外に、道はないのか。例えお前たちが殺し合う事が運命だとしても、俺は─────】

 

「……ないさ」

 

 その時の、コラソンの声が、震えている事に、アルターエゴは気づいていたのだった。

本心では、コラソンが、ロシナンテが兄を殺す以外の道は無いのか、誰よりも、それも無意識のうちに惑っている事の、証左であった。

何をどうやっても、兄に引き金を引けないことは、既に自らの過去が証明しているというのに。

 

【……分かった。俺はお前の想いを尊重する。お前の願いの為に、戦おう。マスター】

 

 アルターエゴは、それを指摘しない事にした。

かつて、『人の想い』に、仲間の自己犠牲により、幸せを得ることができた、正真正銘の化け物、『ジョーカーアンデッド/仮面ライダーカリス』は、いや。

『相川始』は、だからこそコラソンの為に戦う事を決めたのだ。兄を止める、それ以外の理由。

その誰かの為に戦う、その想いまでもを否定することは、出来なかったから。

 

【すまねェな、アルターエゴ】

 

【気にするな、マスター。それよりだ】

 

 今度は、普段の声色に戻って、アルターエゴが呼びかける。

そういえば肩が熱い。この店は冷房が効いていて、熱いと感じる事などない筈だが……?

 

【服が燃えているぞ】

 

「な……!?」

 

 アルターエゴの一言に、コラソンはハッとした表情を露にした。最初に付けた煙草が、肩口の傍に位置している。ここで漸くコラソンは、煙草の火がマントに燃え移っている事に気が付いたのだった。

 

 

【CLASS】

アルターエゴ

【真名】

相川始

【出典】

仮面ライダー剣

【性別】

男性

【ステータス】

筋力:C 耐久:B+++ 敏捷:C 魔力:C 幸運:B 宝具:EX (変身時)

【属性】

秩序・中庸

【クラス別能力】

対魔力:B

 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。

 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

神性:E

【保有スキル】

戦闘続行:B+++

最後まで運命と戦い続けた彼の逸話が昇格したスキル。

魔力放出:C

武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、その魔力を放つ事によって能力を向上させるスキル。嘗て封印したアンデッドの力を使用することで成立している。それ故に、放出される魔力の属性も複数使用可能。

騎乗:B

騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、

魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

騎乗の才覚。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。魔獣や聖獣は乗りこなせない。

【宝具】

『永遠の切り札(仮面ライダーカリス)』

ランク:C~B種別:対人宝具 レンジ: 1~10  最大捕捉:──

十三体のアンデッドが封印されているラウズカードの行使を可能とする、相川始のライダーとしての姿。

 

『シャドーチェイサー』

ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:10人

宝具『永遠の切り札(仮面ライダーカリス)』使用時、付近にバイクが存在した時のみ発動する。対象となるバイクは、嘗てアルターエゴが使用していたバイク、「シャドーチェイサー」へと姿を変える。

 

『温かい家族との記憶(スイート・ハート)』

ランク:EX 種別:対界、対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

アルターエゴをアルターエゴたらしめる宝具。ジョーカーアンデッドとしてでなく、守ると誓った一人の少女を守るライダーとして顕現した彼は、もう世界を滅ぼす怪物にはならない。

 

【weapon】

 

醒弓カリスアロー:カリスの姿で使用する弓型の武器であり、弧の部分は剣としても使える。

ラウザーを装着し、カードをラウズする事で必殺技も使える。

 

【人物背景】

嘗ては世界を滅ぼす怪物と定められたもの。けれど、仲間の自己犠牲を以て救われた者。

今この場に立つ、『相川始』はジョーカーアンデッドではなく、ただ一人の少女を守るために戦った仮面ライダーカリスという側面のみが再現された存在である。

言わば、反英霊ジョーカーアンデッドのオルタナティブ、とも言える存在。

 

【サーヴァントとしての願い】

存在しない……けれど、もしも自分を与えられたら。もう一人のジョーカーを救うのかもしれない。

【方針】

現時点では聖杯獲得。できることならコラソンには別の願いを見つけて欲しい。

 

【マスター】

コラソン/ドンキホーテ・ロシナンテ

【出典】

ONE PIECE

【性別】

【能力・技能】

『ナギナギの実』

超人(パラミシア)系の悪魔の実である。音を消したり、周囲の音を聞こえなくさせることが可能。

【weapon】

なし

【人物背景】

“海賊”ドンキホーテ・ドフラミンゴの弟であり、“海軍”本部元帥センゴクの養子であり、ある少年の、たった一人の味方。

【マスターとしての願い】

聖杯を獲得し、ドンキホーテ・ドフラミンゴを殺す。──────本当に?

【方針】

聖杯獲得。

【ロール】

浮浪者。普段は日雇いバイトで生活費を稼いでいる。

【把握媒体】

コラソンは漫画、ONE PIECEの761話~767話、798話を読めば把握可能。ONE PIECE公式アプリを使えば無料で把握可能。

相川始は特撮番組、仮面ライダーブレイドの把握が必須。

 



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【候補作】井ノ上たきな&ランサー

作者 覇王様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


 

「あなたは本当に三国志の趙雲なんですよね?」

 

「もちろん! 私こそが三国志一のイケメン! 趙雲です!」

 

「私のイメージする趙雲とは違う気がします……」

 

とある部屋で少女と青年が話をしていた。

 

ひとりは長い黒髪の少女。彼女の名前は井ノ上たきな。この聖杯戦争の参加者である。元の世界では『DA』と呼ばれる国を守る組織に所属している。

 

もうひとりは長い黒髪の青年。彼の名前は趙雲子龍。たきなが召喚したランサーのサーヴァントである。

 

「それでマスターの願いはなんですか?」

 

趙雲がたきなに願いについて聞く。

 

「私は千束の……友達の心臓を治したいです!」

 

たきなは自分の願いを趙雲に伝える。

 

「わかりました! この三国志一のイケメン! 趙雲にお任せください!」

 

「た、頼りにしてます……」

 

友達の心臓を治したいたきなと三国志一のイケメンを自称する趙雲の聖杯戦争はどうなるのか……。

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

ランサー

 

【真名】

趙雲子龍

 

【出典】

新解釈・三國志

 

【性別】

男性

 

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運B 宝具B

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

対魔力:C

魔術発動における詩唱が三節以下のものを無効化する。

 

【保有スキル】

単独行動:B

マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

 

【宝具】

『三国志一のイケメン』

ランク:B 種別・対人宝具 レンジ:1~50 最大補足:100人

彼の想いが宝具になったもの。自分が三国志一のイケメンという強い想いが宝具になり、自分の能力を上げ、敵を倒す。

 

【人物背景】

『新解釈・三國志』の登場人物。

 

『劉備』に従える『蜀』の武将。

常にモデルのようなポーズを取ったり、話すときには独特の間を取ったりする、鼻に付くイケメン武将。しかし、戦闘の実力は高い。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。マスターの願いを叶える。

 

【方針】

マスターに任せる。

 

【把握素体】

映画『新解釈・三國志』

 

【マスター】

井ノ上たきな

 

【出典】

リコリス・リコイル

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

 

『射撃』

拳銃の射撃精度が高く、相手の人体の急所をピンポイントで立て続けに撃ち抜いたり、空間を飛ぶドローンを撃ち落としたり、かなりの腕前である。

 

『S&W M&P9』

彼女が使う銃である。

 

『拘束用銃』

ワイヤーを発射して敵を拘束する。

 

【人物背景】

『リコリス・リコイル』の登場人物。

主人公『錦木千束』と並ぶもう一人の主人公でもある。『DA』と呼ばれる組織に所属している。

 

クールで真面目な性格。元は『DA』の本部に所属していたが、任務中に問題を起こしたため、『喫茶リコリコ』に左遷される。

そこで主人公『錦木千束』と出会い、バディを組むことになる。

 

当初は『DA』本部への復帰に執着していたが、千束との出会いもあり、考え方が変わり、笑顔も見せるようになった。

 

ちなみにファッションに対してはかなり無頓着である。男用のトランクスを着用してたこともある……。

 

参戦時期はアニメ第9話で千束をデートに誘う少し前。

 

【マスターとしての願い】

千束の心臓を治す。

 

【方針】

聖杯は手に入れる。ただ人は殺さないが、悪人には容赦しない。

 

【ロール】

とある学園の学生

 

【把握素体】

アニメ



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【候補作】桂木桂馬&キャスター

作者 ◆DUsgYayewA様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


 古びた礼拝堂の中。換気されていないのか、かび臭い匂いが充満し、舞い散る埃が高窓からの光を受けてキラキラと輝いている。

 そして、その光が照らす先には一人の青年がいた。彼が座っている長椅子は所々腐っており、少し身動きするだけでギシギシと鳴る。服には埃が積もっており、何かにこすったのか、袖に黒い汚れがついている。

 だが彼はそういったことをまるで気にする様子がなく、ただうつむくのみであった。その端整な顔はどこか憂いを帯びたような表情で、儚くも寂れた雰囲気に調和している。その様子は詩的な雰囲気を醸し出しており、まるで舞台の主演のような存在感がある。

 しかしそれは全て、彼が手元に持つ携帯ゲーム機のせいで台無しとなっていた。

『か、勘違いしないでよね! あんたがどうしてもっていうなら、付き合ってあげてもいいってだけなんだからね…///』

 礼拝堂に響き渡る、可愛らしい声。その発生源たるゲーム機の画面には、頬を染めた可愛らしい女の子のイラストが描かれていた。

「攻略完了。ふっ、落とし神たる僕の腕をもってすれば、君の心を打ちぬくことくらい造作もない…」

 彼はニヤニヤと画面を見つめ、眼鏡をくいっと直す。ふへへ、と気持ち悪い笑い声を漏らすその様は、まさにオタクと言った感じだ。

 次のヒロインの攻略に取り掛かるつもりなのか、セーブした後、いくつか前のセーブデータをロードする。

 そんな彼のもとに、黒い神父服を着た男が音を立てずに近づいてきた。

「元の世界に帰還する準備ができた。…本当にこれで良いのか」

「聖杯なんて興味はない」

 男の問いかけに、青年はゲーム画面を見ながらそっけなく返す。

「今まで必死こいて攻略したり世界を救わされたりしてようやく平穏が訪れたんだ。プレイしなくちゃいけないギャルゲーが山のように溜まっているというのに、戦争なんかしてる暇はない。…それに、僕が死んで悲しむ人がいることだしな」

 ゲーム機を持ちながらすくっと立ち上がり、尻のあたりをパンパンとはたいて埃を落とす。

「そうか。ではもうなにも言うまい。帰還ゲートはそこの扉だ。すぐにでも使用可能だから好きに使うといい」

 神父服の男は説教台の隣にある扉を指さす。

 青年はゲーム画面を見ながら歩き、扉の前に立つ。そしてドアノブに手をかけ

「いけませんわ」

 耳元で囁かれる。若い女性の声だ。

「籠の中に私を置きざりにして、ご自分だけ外へ羽ばたこうだなんて」

 青年は振り向く。

 背後にいたのは、一体の人形。全長数十センチの西洋人形が宙に浮いて、たおやかにほほ笑んでいた。

「人聞きの悪いことを言うな。僕はただ自分の元居た場所に帰るだけだ。お前に責められる筋合いはないだろ」

「ここで私と戯れるという選択肢はありませんの? 女性の絵を見るのもお人形遊びも、さして変わりはないように思えますのに」

 人形は口を動かして言葉を紡ぐ。

「私ならば、絵の中の女性と違い、貴方自身を愛することができる。聖杯も、私の力があれば必ずや貴方の手にするところとなるでしょう」

 人形は胸の前で手を合わせ、上目遣いで青年の目をみつめる。

「何度も言うように、僕には聖杯で叶えたい望みなんてない。そもそも」

 青年はゲーム画面に視線を戻す。

「三次元にだって、僕を愛してくれる人たちはいるし、僕もそいつらを…大事に思っている。ギャルゲーだけが全てというわけじゃないんだ」

「…では貴方はその方達と共に在ることを選ぶというのですか? ここで私を愛しては下さらないの?」

 人形は目を伏せて呟く。

 青年はゲーム画面の方を向きながら、しばらく沈黙する。

「お前が僕を必要としているのはわかる。けどやらなきゃ死ぬというのでもないのに、お前を攻略するようなことは…できない」

 それは決別の言葉だった。人形の願いを切り捨てる。愛する演技すらしない。自分だけ幸せになる。彼はそう言ったのだ。

 じゃあな、と青年は別れの言葉を口にする。そして今度こそドアノブを掴もうとして——失敗した。右腕が動かないのだ。

 右腕を見る。そこには何本もの白い茨が巻き付いている。

 振り向く。人形がいる。それほど広くないはずの礼拝堂がどこまでも広くなっていて、壁が見えない。

 どうなっている。その疑問を口にするより先に悲鳴が出る。

「ぐっ、がああ!」

 痛みの発生元である右腕——茨の巻き付いていた右腕の方へ再度首を回す。

 けれど、そこには何も無かった。肩より先にあるはずの腕が無くて、地面に落ちていた。その傍らには、刃物を持った兵士の人形。

 喪失感。絶望。そういった感情が頭の中をぐるぐると回る。

「申し訳ありません。令呪を使われては少々困りますので」

 人形は先ほどと同様の笑みを浮かべた。

 ヤンデレか、と青年は混乱した頭で理解する。どうやら対応を間違えたようだ。この僕とあろうものが。

 脂汗をかきながらも、必死に思考を巡らせる。

 どうすればこの状況を打開できる。何か手はあるはずだ。とりあえず会話して、相手のパーソナリティを探って——

 ゴン、と頭の方に鈍い衝撃が走る。視界がチカチカとしながら暗くなってゆく。地に伏せる青年が最後に見たのは、目に狂気を宿して笑う、金髪の西洋人形。

「貴方には、私の苗床となって頂きますわ。直接ご助力を頂けないのは残念ですけれど、共に頑張りましょう」

 

 

【サーヴァント】

 

【CLASS】

キャスター

 

【真名】

雪華綺晶

 

【出典】

ローゼンメイデン

 

【性別】

 

【ステータス】

 

筋力E 耐久D 敏捷D 魔力A++ 幸運B 宝具EX

 

【属性】

混沌・悪

 

【クラス別能力】

陣地作成:EX

魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。自分が支配する、固有の世界を構築することができる。

 

道具作成:C

魔力を帯びた器具を作成できる。

作れるのは「契約の指輪」のみ。「契約の指輪」をつけた者を疑似的なマスターにし、自身の依り代及び魔力供給源にすることができる。

 

【保有スキル】

変化:A

アストラル体になることができる。霊体化とは異なり、姿を見せたり能力を行使することができるが、現実世界への強い干渉はできない。

 

魔力放出:A

自身の肉体や武器に魔力を帯びさせ、ジェット噴射のように瞬間的に放出することで能力を向上させる。

 

【宝具】

奇しき第七の薔薇(ローザミスティカ)

ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1000 最大捕捉:10000人

他者の精神に干渉する宝具。幻影を見せたり、夢の中の記憶を覗いたりするほか、相手を動揺させることで対象を昏睡状態にすることができる。その効果範囲は広大で、幻影を現実世界に浸食させて対象を偽りの世界に閉じ込めることが可能。自身が支配する世界では、絶大な力を振るうことができるが、偽りの世界であるが故に、そこで起こった出来事(生死含め)は現実世界に反映されない。また、現実世界において白薔薇を自在に操って対象を拘束できる。魔力供給ができる者(マスターなど)の精神を自分の世界に閉じ込めることで魔力の供給源に出来る(魂喰いではない)。

 

【weapon】

無し

 

【人物背景】

ローゼンメイデンシリーズの第7ドール。実体の無い精神だけの存在として作られた存在。右目の白薔薇は眼帯ではなく、眼窩から直接生えている。物語本編の実質のラスボスであり、最後にして最強のドールとしてドールズの前に立ちはだかる。

性格は極めて狡猾で用心深く抜け目が無く、常軌を逸しているとしか言えない猟奇的な行動を取る。一人称は『私』で、口調は丁寧だがその行動は狂気を孕んでおり、人格、思考ともに破綻しているうえにストーカーかつヤンデレ気質であるためかなりの危険人物(ドール)である。彼女が狂気に囚われている理由としては、ほかの姉妹たちがラプラスの魔に導かれ既に旅立った後に誕生した為、一人だけ取り残された彼女は、精神体の存在であるが故に帰るべき場所も手を差し伸べてくれる人物も誰1人としていなかったため、ほかの姉妹たちへの強い憧れや嫉妬、そして深い孤独感に心が支配されてしまったことが要因となっている。官能的な仕草が多く、他の姉妹たちが持ち合わせているものを全て手に入れたいという欲しがり屋さんな一面も持っている。ローゼンメイデンの中でも桁違いに強大であり、一時はドールと契約者のほとんどを壊滅状態に追い込んだ。契約者及び元契約者の精神を苗床にして活動するという力を持っており、幻覚を操る他、精神攻撃を得意としている。肉体を持つことを渇望している一方で、ローゼンメイデンの本質であるローザミスティカに対しては「必要ない」と興味を示しておらず、ローゼンメイデンの存在意義からすると異常といえる思想を持つ。最終的に、自分を認めてくれるマスターと肉体を得たため、心の闇が解消された。

 

【サーヴァントとしての願い】

受肉すること。

自分を愛してくれる(ローゼンメイデンにとっての)マスターを得ること。

 

【方針】

聖杯を求める。そのためならば手段を選ばない。

 

【備考】

雪華綺晶が召喚された時期は、アニメ3期途中で、巻かなかった世界で実体を得る直前期。サーヴァントなので、その後の展開や最終巻以降の記憶も保持している。

自分が後に愛されることを知っているが、サーヴァントとして存在する自分を愛してくれる者はいないため、やはり孤独を感じている。

 

【マスター】

桂木桂馬

 

【出典】

神のみぞ知るセカイ

 

【性別】

 

【能力・技能】

分刻みでの行動を覚えていたり、数千本単位のゲームの台詞やルートを覚え言えるなど記憶力が極めて良い。相手の本心を見透かす洞察力、女神や悪魔すら出し抜く機転など、文字通り天才的な頭脳を持つ。学業においても非常に成績優秀。

 

【weapon】

無し

 

【人物背景】

ギャルゲーをこよなく愛する高校生。左利き。類まれなる容貌と頭脳、情熱を持つ……が、それらはもっぱらギャルゲーのスピード攻略に向けられている。

傲岸不遜な態度と授業中にもゲームに勤しむ等の日頃の行いの悪さから、高等部一の変人として中等部にも名前が知れ渡っている。クラスメイトからは「オタメガネ」「オタメガ」のあだ名で呼ばれ軽蔑されており友人はいない。また、色々とあらぬ噂を立てられている。しかし、何者に日和見することなく頑なに自らの決めた生き様を貫くその姿は強いと言える。

ひょんなことから、「女性を攻略しなければ死ぬ」という契約を結ばされ、ギャルゲーの知識を活かして攻略を進めることになる。

最後は無事全ての問題を解決し、三次元のとある女性に恋をする。

 

【マスターとしての願い】

生きて帰ること。

 

【方針】

雪華綺晶の世界から脱出する。

本選になった以上帰ることはできないので、信用できるマスターを見つけてその人物を優勝者にして元の世界に帰してもらう。

自分はギャルゲーをしたり大切な人たちと過ごせればそれで良いので、聖杯など必要ない。

 

【ロール】

高校生

 

【令呪の形・位置】

右手にある。

 

【把握媒体】

アニメ・漫画

 

【備考】

現在は幻影の世界に閉じ込められ、意識不明。

その世界で右腕を切り落とされているが、現実世界に帰還できれば右腕は復活する。

 



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【候補作】ユリウス・ベルキスク・ハーウェイ&アサシン

作者  ◆TUV54iMsXU様
この度のご投稿、誠にありがとうございます。


"あの子を――――レオを守ってあげてね。"

 

それが、ユリウスにおける唯一の生きる意義だった。

 

 

ユリウス・ベルキスク・ハーウェイ。

彼はハーウェイ家のデザインベビーとして生を受けた。

 

――だが、彼は"失敗作"であった。

胎児の状態で期待されていた全ての能力値は低かった。

老化速度は、常人の二倍。推定個体寿命は、最長で25年しかなかった。

 

"無駄"。

長くは生きられないユリウスを、利益を生む余地がない個体と、廃棄された。

それでも、なお彼は生き延び、やがて対テロ部隊の隊長として生存価値を認められるようになっていた。

 

 

その中か、ユリウスにとって、いつの話だったかは覚えていない。

出来の悪い映画のようで、現実感がないとすら感じ、笑い話だと切り捨てていた。

 

レオの母、アリシアとの約束。

自分を唯一「失敗作」ではなく、個人として認めてくれた愛すべき人。

 

後継を盤石にするため、彼女はレオの父から"命令を受けた人間"の手によって暗殺された。

その彼女が、殺しにきた相手に対し、微笑みを浮かべながら交わした、たったひとつの"約束"。

忠実に守る言葉となり、叶えるべき遺志となり、いつしか彼の心の支えとなっていた。

 

 

レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ。

西欧財閥の現筆頭。ユリウスにとっては、肉親の情もない異母兄弟。

"王にさせること"が、「ハーウェイ家の一員」として果たすべき義務であり、彼の仕事であった。

 

ただ、王の勝利がどのような形であれ、ユリウスに関心がない。

ユリウスはレオの忠臣などではない。義務を遂行する仕事人である。

イレギュラーな天の聖杯に移ろうとも、レオが望む以上、思うことはない。

 

自分は勝利の礎となるのみ。

どの戦争であったとしても、――"ただ殺すのみ"、なのだ。

 

 

そして、それは召喚させたサーヴァントとも通じていた。

 

"――――また汚れ仕事か……まあいい。いつものことさ"

 

顔を隠すほどの赤頭巾を被り、鋼鉄の胴鎧を纏ったアサシン。

近代兵器を主武器に、高速の機動力を以て、合理的に仕留めていく。

無駄口を叩かず、冷徹に義務を遂行し、一切の情や願いを持ち合わせない男。

 

 

ユリウスにとって、彼はこれ以上にない仕事人であった。

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

"――――あの子達をよろしくね。"

 

そんな幻聴に導かれるがまま、ユリウスという男と契約線を接続させられた。

 

彼は、抑止力の代行者。

人類の"存続するべき"と願う集合無意識が生み出した防衛装置の使者。

自らが望んだ運命の果て、抑止の輪へと召し上げられた、「顔の無い正義」の一人。

 

個体名は、"エミヤ"。

人間だった頃の名は、"衛宮切嗣"という男であった。

 

(……迷惑な話だ。)

 

だが、この聖杯戦争に抑止力の意向はない。

なんとも傍迷惑で、なんとも身勝手な幻聴の主の仕業。

相手は何者で、何のために動かしたのかわからないまま、一方的に投げてくる。

 

そして、"あの子達"とは一体誰のことを指すのか、見当もつかなかった。

 

(筋違いじゃないか。僕の頼むのは。)

 

まず、自分に頼むのは「筋違い」とすら思う。

正義の味方として、世界を救うため、小を見捨ててきた。

そんな自分に、"個人を救ってほしい"など、見当違いも甚だしい。

 

(関係はない。――――僕にやれることは、掃除ぐらいなものさ。)

 

彼は、サーヴァントの義務だけを果たすのみ。

マスターの事情なんて知ったことでなく、聞きたいとも思っていない。

戦いの行方に対しても、マスターに対しても、救ってほしい誰かにも、何の関心もない。

 

 

そして彼は、銃弾を装填した。

 

 

【クラス】

アサシン

 

【真名】

エミヤ〔アサシン〕

 

【出典】

Fate/Grand Order

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力D 耐久C 敏捷A+ 魔力C 幸運EX(E) 宝具

 

【属性】

混沌・悪

 

【クラス別能力】

気配遮断:A+

自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

 

単独行動:A

単身での行動に生前から慣れていた彼に与えられたスキル。マスターからの魔力供給がなくとも、最大で一週間程度の現界が可能となる。

 

【保有スキル】

魔術:B

魔術を習得している。翻って、魔術を知るが故に魔術師を殺す術に長けている。本スキルのランクは、本来であればキャスターとの戦闘時には各種判定のボーナスとして働く。

 

スケープゴート:C

戦場を生き抜く狡猾なテクニックの集合。生贄、身代りとしての意味を持つ。

 

聖杯の寵愛:A++

何処かの時代の聖杯に、彼は深く愛されている。その愛は世界最高の呪いにも等しい。

本スキルの存在によって、彼の幸運ランクは跳ね上げられている。

特定の条件なくしては突破できない敵サーヴァントの能力さえ突破可能。

ただしこの幸運は、他者の幸福を無慈悲に奪う。

本来ならば、聖杯から囁きかけられる「声」は彼の耳に届かないものだが、聖杯との縁を持つ上級NPCなどの存在からか、影響力も上昇し、稀に耳にしてしまう。

 

【宝具】

『時のある間に薔薇を摘め(クロノス・ローズ)』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1人

自身の時間流を操作する能力。

生前の彼が有していた能力「固有時制御(タイムアルター)」を基礎としている。

時間流の加速によって高速攻撃や移動を行い、減速によってバイオリズムを停滞させて隠行を行うのが「固有時制御」の運用方法である。

 

宝具として昇華されたこの力により、彼は対人戦において無敵とも呼べる超連続攻撃を可能とする。

また宝具化された影響なのか、世界のバックアップを受けているのかは不明だが、解除時に世界の修正力を受けるデメリットがなくなっている。

 

『神秘轢断(ファンタズム・パニッシュメント)』

ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:0~2 最大捕捉:1人

自身の起源である「切断」「結合」の二重属性の力が具現・カタチにしたもの。 その力が込められているナイフ。

生前使用していた礼装魔弾「起源弾」と同様、魔術回路ないし魔術刻印、或いははそれに似たモノを体内に有する相手に対して致命的なダメージを与える

 

【weapon】

「補助兵器」

キャレコM950やトンプソン・コンテンダー、閃光弾といったものを用いる。

 

【人物背景】

抑止力の代行者となった衛宮切嗣。

正史と異なり、「アインツベルン」が部外者を必要とする戦略を行使しなかったことで、出会うはずだった妻と出会わなかった。

故に妻との離別もなく、離別による挫折もなかったため、最後まで「正義の味方」を辞められず、死後も安息と救いを求めることもなく、自ら抑止力の一部となった。

 

異なる世界で何の面識もないため、彼にとって、衛宮切嗣を知る者の多くは"他人"の関係。

ただ、何故かはわからない複雑な感情が湧き上がってしまう。

 

なお、正しい人類史には存在せず、彼が召喚されたのはあらゆる次元が交差する「天の聖杯」の影響。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。ただサーヴァントとして義務を遂行するのみ。

 

【方針】

情報収集、暗殺、破壊工作と裏方に徹する。

目的のために手段は選ばないが、あくまで義務の範疇。

 

【把握媒体】

「Fate/Grand Order」など。

 

【マスター】

ユリウス・ベルキスク・ハーヴェイ

 

【出典】

Fate/EXTRA

 

【性別】

 

【能力・技能】

ハーウェイの暗殺者として優れた経験と技量を持つ。

隠密行動に長けており、生半可な監視なら容易に掻い潜れる。

 

【weapon】

封印や回復といった補助用のコードキャストを所有。

銃器やナイフといった暗殺用の道具を所持している。

 

【人物背景】

西欧財閥直轄の組織に所属する殺し屋。

西欧財閥の筆頭であるレオナルド・ビスタリオ・ハーウェイとは異母兄弟に当たるが、互いに肉親の情はない。

 

デザインベビーの失敗作として生を受けた経緯があり、「利益を生まない」として廃棄されてきた。

生き延びたいという執念で、対テロ部隊の隊長にまで登り詰め、ハーウェイに敵対する勢力達の掃討・鎮圧する暗殺者として知れ渡る存在となっていった。

 

生存価値もなく、「レオを勝利させる」という義務感のためだけに生きているため、人間性を捨てた冷徹非情な人物として映る。

しかし、根は完全に人間性を捨ててはおらず、友として信頼した者には情も厚い。

 

【マスターとしての願い】

レオの勝利。それ以外は求めていない。

 

【方針】

レオ陣営とは同盟を組んでおり、意向・補助に従事する。

傍ら、レオの勝利にとって弊害となり得るマスター達を排除していく。

 

【ロール】

D-4地区黒いビルの大企業に属するエージェント。

 

【把握媒体】

「Fate/EXTRA」など。



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【候補作】オネスト&ランサー

作者 ◆DUsgYayewA様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


 高価な調度品が所狭しと置かれた、悪趣味な部屋の中。でっぷりと太った壮年の男が、長く伸びた白いひげをいじりながら、金ぴかの装飾が施された椅子に深く座っている。彼の正面には、白いスク水を着た女が身動き一つせず立っており、男の方を無感動に見つめる。

「私は元居た世界で大臣を務めており、逆賊を処刑したりして懸命に皇帝のため、国のために尽くしてきたのですが…それを理解できぬ愚民どもが帝国を滅ぼし、私も奴らの手で惨たらしく殺されました。私がここの世界で目覚めた時、そのときの苦しみを思い出して失神してしまった程度には恐ろしい体験でしたとも」

 男は両手を挙げ、肩をすくめながら口角を上げる。

「ですが私は今、あなたという仕えるべき新たな主を得た。あなたは今まで見てきたどの人間よりも優れた、王としての資質をお持ちでいらっしゃる。このような偉大なお方の覇道を隣で支えられるとはなんたる幸運! 聖杯からはマスターという身分を与えられてはおりますが、このオネスト、家臣として粉骨砕身の意気でご助力致しますぞ」

 オネストは立ち上がり、女の一歩手前まで進みそのまま跪く。

 女はその背中を、ぼうっとした様子で見下ろす。そして口を開いた。

「わたしがリーダーとしてオネストを上手く使う。他の参加者は力で屈服させて従わせるか、殺す。手にした聖杯の力は全てわたしのもの。オネストには、それまでの働き次第で褒美を取らせる。これでいい?」

「ええ、それでよろしいかと」

 オネストは頭を上げ、にこりと笑う。

 だが内心は。

(馬鹿が! あなたから王の資質なぞ全く感じませんよ。こういうタイプは王だリーダーだと褒めそやしておけば、簡単に操れる。あなたから感じるのは、せいぜい思い通りに動く使い捨ての駒の資質といったところでしょうか。サーヴァント(奴隷)の名にピッタリですねぇ! ふひゃっ、ふひひっ、ぷっくくく、ぎゃはははは!! 駄目だ、笑いが、笑いが止まらないぃ! 笑っているのを見られるわけにはいかないのに! 私がこいつをバカにしていることがバレてしまうぅ!)

 オネストは暴れる表情筋を必死に抑え、喉から飛び出る笑い声を鎮めて穏やかな顔を張り付ける。

(とはいえ。このサーヴァントは人殺しに躊躇はないタイプのようですし、そのあたりは本当にありがたいですねぇ)

 オネストは女の澱んだ目を見る。

(この聖杯戦争、私はどう動きましょうか。できるだけ不幸をばらまいて、血と肉躍る地獄絵図としゃれこみたいところですなぁ!)

 

 

【サーヴァント】

 

【CLASS】

ランサー

 

 

【真名】

スイムスイム

 

 

【出典】

魔法少女育成計画

 

 

【性別】

 

 

【ステータス】

 

筋力D 耐久B 敏捷D 魔力C 幸運C 宝具A

 

【属性】

混沌・善

 

【クラス別能力】

対魔力:C

魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

 

【保有スキル】

カリスマ:E

国を統率はできても、兵の士気が極端に下がる。ただし、一軍を率いる将官程度の役職であれば、天賦の才と言えるランクである。

 

心眼(真):C

修行・鍛錬によって培った洞察力。 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

 

【宝具】

透潜万中(スイミング・マジック)

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:無し  最大捕捉:無し

自分の体を物質透過出来るようにする能力。発動するとあらゆるモノを泳ぐが如くすり抜けられるようになる。スイムスイムがモノと認識したあらゆる物体を透過でき、地面・壁・置物はもちろん相手の攻撃や防御まで通り抜けられる。ただし光・音・衝撃波は透過不可能。また、透過中は自分のコスチューム以外の物体を携行することができない。

 

 

【weapon】

『ルーラ』

薙刀に似た武器。スイムスイムのコスチュームの一部で、能力使用中も携行できる。非常に頑丈で、壊れることはまずあり得ない。名前はスイムスイムが心酔する人物の名からとられた。

 

【人物背景】

本来の姿は小学1年生の7歳と非常に幼い。そのためニンジンが苦手だったり漢字が読めなかったりと年相応な面も見せる。

同じ魔法少女であり所属するチームのリーダーであるルーラの事を、狂信的なほどに崇拝しており、彼女に理想の女性像を抱き「憧れていたお姫様」だと思っている。

そんな中、ある出来事をきっかけに自分が「憧れていたお姫様」になることを目指し始めるのだが、その中で彼女はルーラを殺すことを思いつき、謀殺。所属するチームのリーダーの座に収まった。

リーダーとなってからはルーラのやり方を”自分なりの解釈で”踏襲する。その踏襲ぶりは徹底しており、ルーラの生前の発言を実行するためならば、大事に思っている仲間さえも殺害する。

冷静で高い戦術眼を持っており、殺人に躊躇がない。そのため魔法少女同士の戦いの中で、彼女の率いるチームは多くの魔法少女を殺害できた。しかしその過程で恨みを買い、殺害される。

 

 

【サーヴァントとしての願い】

ルーラと同等かそれ以上のリーダーになる。

 

 

【方針】

聖杯のためなら、残虐なこともする。

生前のルーラの言葉には絶対に従う。いかなる場合でも例外は無い。

 

【マスター】

オネスト

 

【出典】

アカメが斬る!

 

【性別】

 

【能力・技能】

その太った肉体は本人の異常なほど念の入った暗殺対策の賜物であり、若い頃に皇拳寺で積んだ壮絶な修行と特殊な鍛錬法によって筋肉と脂肪を天然の鎧とすることに成功しており、並みの人間なら致命打となるレベルの重傷でも普通に動き回れるほどの頑強さと生命力を有している。拳法の腕前も超一流である。

 

【weapon】

帝具「絶対制限・イレイストーン」

 帝具であるならば発動と同時に問答無用で破壊・無効化してしまえる力を持つ宝石型のアンチ帝具だが、一度使用すると一週間は再使用不可能になる。帝具以外に使用することはできない。

 

【人物背景】

柔らかい物腰に常に敬語で接する温厚そうな人物だが、それは表面上の振る舞いに過ぎない。

その実若い頃から自らの権力と権勢をどこまでも高め、世界さえ好き放題にしたいと本気で考えていたほどの利己主義と強欲の権化のような野心家であり、目的のためには手段を選ばない。

自身の歪んだ権力欲・支配欲を満たせるなら民がどれほど苦しもうとも蚊ほども気に掛けないどころか、むしろその状態の方が都合がいいとばかりに敢えてそうなるよう仕向け、あまつさえそれをメシウマで眺めてしまえる、残虐・冷酷な悪辣の極みを行くド外道。

それでいて自身の性格や行為の悪性をよく自覚しているので、権力の維持や保身に関する対策・行動は異様なほどに徹底しており、種々の謀略を張り巡らせつつ利用できるものは何でも利用し、邪魔者は見せしめも兼ねて惨たらしく殺してから排除する。

また、「若い内はひたすら研鑽を積むべし」という努力家の一面を有し、自身も野心を果たすために、ひたすら知識・肉体両面を鍛えながら下地作りに奔走する若年時代を過ごした。

最後は反乱軍によって惨たらしく処刑された。

 

 

【マスターとしての願い】

聖杯を手に入れ、世界を手中に収める。

 

【方針】

聖杯を手に入れるためならば手段を選ばない。

できるだけ残虐なことをして、気持ちよく優勝したい。

 

【ロール】

パラディウム・シティ議会の議長

 

【把握媒体】

アニメ・漫画



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【候補作】クルミ&セイバー

作者 覇王様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


「無理です!? 戦とか絶対無理!?」

 

「お前はサーヴァントなんだろう!!」

 

「俺は喋る係だから! 風林火山の「山」担当だから!」

 

「お前は本当に三国志の劉備なのか……」

 

とある部屋で少女と男性が喧嘩をしていた。

 

ひとりは長い金髪の少女。彼女の名前クルミ。

この聖杯戦争の参加者である。元の世界では天才ハッカーとして活動している。

 

もうひとりの黒髪の男性の名前は劉備玄徳。

クルミが召喚したセイバーのサーヴァントである。

 

「そもそも戦うのは関羽や張飛の係だから! 俺は喋る係だから! 戦とか絶対に無理!?」

 

「それなら召喚に応じるな!! 」

 

さて、この二人の聖杯戦争はどうなるのか……。

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

セイバー

 

【真名】

劉備玄徳

 

【出典】

新解釈・三國志

 

【性別】

男性

 

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運B 宝具A

 

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

対魔力:B

魔術発動における詩唱が三節以下のものを無効化する。

 

騎乗:B

騎乗の才覚。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。魔獣や聖獣は乗りこなせない。

 

【保有スキル】

カリスマ:B

軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において自軍の能力を向上させる。

 

【宝具】

 

『桃園の誓い』

ランク:A 対軍宝具 レンジ:1~100人 最大補足:1000人

彼が『関羽』と『張飛』と義兄弟の誓いをした逸話が宝具になったもの。義兄弟の『関羽』と『張飛』を召喚し、3人で敵をを殲滅する。自分の能力も一時的に上げる。

 

【人物背景】

『新解釈・三國志』の主人公。

 

『蜀』の君主。戦嫌いの小心者で、さらにわがままで面倒臭がりという、武人らしくない人間性だが、酒に酔うとカリスマ性が溢れる立派な武人に豹変する。

 

【サーヴァントとしての願い】

特になし。できれば戦いたくない。

 

【方針】

マスターに任せる。

 

【把握素体】

映画『新解釈・三國志』

 

【マスター】

クルミ

 

【出典】

リコリス・リコイル

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

 

『ハッキング』

彼女の腕前ならどんなセキュリティもハッキングできてしまう。

 

『ドローン』

彼女が情報収集に使うドローン。

 

【人物背景】

『リコリス・リコイル』の登場人物。

 

国籍・年齢が不明な少女。その正体は、最強のハッカー『ウォールナット』である。

 

同僚のハッカー『ロボ太』の裏切りにより

命を狙われるが、主人公『錦木千束』たちに助けてもらい、自分は死んだことにして、

千束たちにのもとに身を寄せる。

 

仲間になってからは千束たちの任命にも協力している。

 

参戦時期は『井ノ上たきな』が千束をデートに誘う少し前。

 

【マスターとしての願い】

千束の心臓を治す。

 

【方針】

人は殺さないが、聖杯は手に入れる。

 

【ロール】

とある学園の生徒。

 

【把握素体】

アニメ



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【候補作】WELCOME TO THE NEW WORLD!

作者 ◆A1Sj87dFpOM様
この度のご投稿、誠にありがとうございます。


「ここは……、私天国にいるの……?」

見渡す限りに満点の星で埋め尽くされた宇宙のような空間の中で銀色の瞳に毛先が紅い黒髪のショートヘア、そして真紅のマントが特徴的な少女、ルビー・ローズは自らの現状に戸惑いの声をあげていた。

 

彼女はアトラスとマントルの市民をヴァキュオに逃がすために仲間たちと共に避難中継地にて市民の避難誘導を行っていたところ、突如として強襲してきたシンダー・フォール及びニオポリタンと交戦し、シンダーの手によって奈落の底に落とされたはずなのだ。

 

避難中継地に向かう前、中継地を創造した創造の杖の精、アンブロシウスはルビーにこう警告した。

『決して落ちてはならない』

 

あの警告は『落ちたら死ぬ』という意味だと思っていた。実際通路の下は底の見えない深い闇しかなかった。普通に考えれば人間は一定以上の高さから転落すれば地面に激突した瞬間にその衝撃で死ぬ。ましてやルビーは直前の戦いで自分の身を守るオーラを失っている状態なのだ。だからシンダーによって奈落の底に落とされた時、彼女は自身が死んだと思ったのだ。

 

「安心したまえ、ここは天国ではない。これから行われるのは万能の願望器『聖杯』を求めて戦いあう『聖杯戦争』、その予選が行われる空間だ」

「!?っだ、誰っ!?」

その時ルビーの耳に見知らぬ男性の声が聞こえてきた。ルビーは驚いて辺りを見回すが声の主の姿を見ることは出来ない。

「自己紹介は後でいいだろう。君がこの聖杯戦争に呼ばれた理由は一つ、君が自らの意思で『星晶石』を受け取ったからだ。」

「『星晶石』?一体どういう……?っあ!?それってもしかして!?」

彼女は避難中継地において市民の避難誘導を行っていた際、ある一人の女性と出会っていたことを思い出した。

 

その女性は緑色のウェーブがかかった髪に左目を隠している前髪のひと房が紫色をしていた印象的な姿をしていた。

ルビーは彼女から「持っていればいいことがある」と言われ虹色に輝く金平糖のような形状の石を3つ差し出されたのだ。ルビーも最初受け取るかどうか悩んだのだが「お礼はいいから」と言われたので好意に甘えてその石を受け取ったのだ。その直後のシンダーの襲撃による混乱でルビーは女性のことをすっかり忘れてしまっていたのだが今にして思えばあの時受け取った石が男の言う『星晶石』なのであろうことを察する。

 

「……とりあえず一つ聞きたいんだけど『聖杯』って何?」

ルビーは警戒心を抱きつつも姿の見えぬ男に対して質問を投げかける。

「先ほど言った通り、あらゆる者のあらゆる願いを叶えることができる代物だ。君の手に舞い戻った腰の武器も聖杯の力の一端の一つだよ。」

「『舞い戻った』ってどういう……っあ!?」

ルビーは自身の腰に目をやると信じられない光景が目に入った。

何故なら彼女の腰には奈落の底に落とされる直前、ニオポリタンとの戦闘で奈落の底に落とされて失ったはずの愛用武器、『クレセント・ローズ』が装着されていたのだ。

最初は男の話に対してルビーは半信半疑であったのだが失われたはずの愛武器が自分の手に舞い戻った事実を見て、男の話が虚偽ではなく真実なのではと感じ始める。

「……それで、私はどうすればいいの?」

だがルビーは男のことを完全に信用したわけでは無い。ルビーは未だ警戒心を抱きつつも男に次の説明を求める。

「先ほども言った通り君にはこれから予選を受けてもらう。君の両手にはそれぞれ端末と君の代闘士となる古今東西の英雄の写し身『サーヴァント』を召喚するために必要なカード『セイントグラフ』があるだろう?端末で使える地図機能で、表示された場所まで進んでくれたまえ」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

ルビーは最初、男の言っていることは何かの罠だと思ったのだが取り敢えず他に何をしたらいいのか分からない以上、従うしかないという結論に達し、地図アプリを頼りに指示された場所へ向かう。

やがて目的地にたどり着くとルビーの目の前に円形の魔法陣が描き出され、そこから黒い人型の影のようなものが現れる。

 

「!?……まさかこいつ、グリム!?」

ルビーは目の前の人型の影を見て、その影が彼女とその仲間たちが元の世界で戦っている敵、破壊の獣『グリム』だと考えた。だがその考えはまたしても聞こえてきた男の声によって即座に否定される。

 

「違うな、そいつはグリムではない。そいつは『シャドウ』というサーヴァントのなり損ないだ。彼を倒せば、君は晴れて予選突破となる。」

「グリムじゃないって……それってどういうこと!?」

ルビーは声の主に問いただすが声の主はそれを意に介さず言葉を続ける。

「もっとも君に敵意を持って襲いかかって来るという点においてはそいつも君が元の世界で戦った『グリム』と同じと言えるが。ああ、そうそう、一つ忠告しておくが自分一人でそいつを倒そうと思わないほうがいい。シャドウは生身の人間では絶対に倒せない。だが打ち倒すための鍵は既に君の中にある。私から君に与えられるヒントは以上だ。」

「ちょっと!まだあなたには聞きたいことが!!」

ルビーは叫ぶが男の声が再び聞こえることはなかった。

 

「ああ、もう!!」

ルビーは憤るが兎に角今は目の前の危機を乗り越えなければ話は始まらない。ルビーは腰に装着したクレセント・ローズを手に取ると収納形態から小銃形態へと変形させ、そのまま銃口を目の前の影の頭部と思われる部位に向けて引き金を引く。

発射された銃弾はシャドウの頭部を吹き飛ばすがシャドウは吹き飛ばされた頭部を再構成すると何事もなかったかのように向かってくる。

「銃弾は効かない……なら、これならどう!」

 

銃弾は効かないと判断するや否や、ルビーはクレセント・ローズを小銃形態から大鎌形態へと変形させ、自らのセンブランス―――『ペダル・バースト』を発動してシャドウに急接近しクレセント・ローズを振りかぶると大鎌の刃をシャドウの首めがけて振り抜き、その首を一太刀で跳ね飛ばす。だが結果は先ほどと同じであった。

分断されたシャドウの首が元の体に戻ると元の形に戻るように組み合わさり、そのまま何事もなかったかのように手に持った剣を振るう。

「そんな、銃撃も斬撃も効かないなんて……きゃあ!?」

自らの攻撃が効かなかったことによる動揺で反応が遅れたルビーはシャドウが振るった剣によって自らの手にある武器、クレセント・ローズを弾き飛ばされる。

 

「くっ……」

自らの武器を失ったルビーはセンブランスを発動して後ろに後退しようとするがシャドウは先ほど以上のスピードでルビーに追いすがると剣を振るいながらルビーを仕留めようとする。

(銃撃も斬撃も効かない……一体どうしたら……)

ルビーは敵の攻撃を躱しながら目の前の敵をどうすれば倒せるのか思案していた。

 

先ほどの男の声は「自分一人の力ではそいつを倒せない」と言っていた。

それは実力的な問題ではなく自分自身の力だけでは『物理的に』倒すこと自体が出来ないという意味だったのではとルビーは考えていた。

それなら先ほどの再生能力にも説明がつくとルビーは考えていた。

 

だがそれが分かったところでどうすればいいかルビーの中では答えを見いだせずにいた。

ルビーは武器も無い丸腰の状態ではただの非力な少女だ。素手による攻撃を仕掛けた所で相手にダメージを与えるどころか足止めすることすら出来ないであろうということはルビーは過去の経験から痛いほど理解していた。

先ほどの男の声は「打ち倒すための鍵は既に君の中にある」と言っていたが目の前の敵がグリムではない以上、『銀の眼』の力で目の前の敵を倒せるとは思えなかった。

敵の攻撃を回避しながらこの状況を打破する手段を必死に考えていたルビーであったがやがてそれにも限界が訪れる。

 

「!?しまっ……」

 

攻撃を回避した際、ルビーは体のバランスを崩してしまい、尻餅をつく形で転倒してしまう。そしてシャドウはルビーに立ち上がらせる猶予を与えることもなく、そのままルビーの頭上に剣を振り下ろそうとする。

 

(ああ……私、ここで死んじゃうんだ……死んだら、大好きなママの所に行くのかなあ……)

 

ルビーは自身に迫りくる剣を見ながら、不思議と遅く感じられる時間の中で、今は亡き母、サマー・ローズのことを思い起こしながら自らの死を受け入れようとしていた。だが、

 

『しっかりしなさい!ルビー!!』

 

……え?ワイス?

 

『こんなところで諦めてどうするんです!?あなたはいつだってどんな時でも諦めずに前に進み続けてきたでしょう!?それなのに今更諦めて全てを投げ出すなんてこの私が許しませんわよ!?』

 

……ああ、そうだ。危うく諦めるところだった。ワイスは今でも避難中継地でペニーと一緒にシンダーと戦っている。ブレイクとヤンだって自分がこうして生きているんだからきっと今でも何処かで生きているはずだ。それなのに自分がここで諦めてどうするのか。ここで諦めたらチームRWBYの皆にも天国の母親にも申し訳が立たないだろう。だから今ここにいないワイスが私の目を覚まさせてくれたのだ。それに……

 

「……私はまだ、ここで諦めたくない!!」

 

ルビーが心の中の感情を爆発させた瞬間、握っていたカード「セイントグラフ」が宙を舞うと光を発し、無地の面に絵が浮かび上がった。

 

その光にシャドウは攻撃を中断して後方へ下がる。

光が消え去った後、そこには人型の姿をした存在がそこにはいた。

いや、体形こそ人間に酷似していたもののその存在は誰が見ても人ならざる人外の存在だと分かる姿をしていた。

体は青緑色の体色をしており頭部には鹿の角のようなものが生え、吊り上がった眼は複雑な配色をしており手足はすらりと細長く、翼のような形状の巨大な耳を持ちキツネのような尻尾を持っていた。体の大きさこそ人間とほとんど変わりがなかったものの、ルビーはその存在からただならぬ力を感じ取っていた。

だが、サーヴァントのなり損ないであり、本能や理性を持たないシャドウはそれに構うことなく呼び出されたその存在に襲いかかった。

が_____

 

『雑魚が』

一瞬だった。

その存在は手に持った槍で襲いかかってきたシャドウを切り払うとシャドウの上半身と下半身は両断され、シャドウは断末魔を上げる事すら叶わず塵に帰る。

 

ルビーは尻餅を着きながらその光景をただ見ていることしか出来なかった。

 

(すごい……今の攻撃、私には見えなかった。一体こいつ、何者なの……?)

 

ルビーが思案しているとその存在はルビーの方に振り向き、ルビーを観察するかのようにじっと見下ろす。

 

(でも私を助けてくれたんだし、取り敢えず私の味方ってことでいいんだよね?挨拶しないと……)

 

そう思いながらルビーが立ち上がろうとした瞬間、急にルビーの頭の中に思念が流れ込んでくる。

 

『我の名はフェクト・エフィリス。ランサーのサーヴァントだ。問おう。小娘よ、貴様が我のマスターか?』

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

ルビー・ローズとフェクト・エフィリスはいつの間にか教会の礼拝堂らしき場所へ転送されていた。因みにルビーは転送される前にクレセント・ローズをしっかり回収していた。

 

「ようこそ、見事試練を乗り越えた聖杯戦争のマスターよ。私は言峰綺礼。この聖杯戦争の監督役を務めている」

 

突如としてルビーの耳に『予選』の空間に呼ばれた時に聞こえてきた声と同じ声が聞こえてくる。ルビーが驚いて声が聞こえてきた方向を向くとそこには背の高い神父のような服装をした男がいた。

 

「……あなたが私に最初に話しかけてきた声の主?」

 

ルビーは警戒しながらも言峰と名乗った男に対し問いかける。

 

「まあ、そう警戒しなくてもいい。私はあくまで中立の立場だ。そちらから危害を加えてこない限り、こちらも危害を加えるつもりはない。」

「……」

 

ルビーは未だ言峰に対する警戒を解く気はなかったが、彼がこちらに危害を加える気がないということが分かったのと取り敢えず彼の話を聞かなければ話が進まないと感じ、彼の話を聞くことにする。

 

ルビーは言峰から聖杯戦争のルールについて一通り教わった。

 

聖杯によって選ばれた(今回の場合は星晶石が招待状)参加者であるマスターとそのサーヴァントが生き残りをかけて戦うということ。

聖杯はどんな願いでも叶える願望機であり、手に入れられればありとあらゆる願いを叶えることが可能だということ。

そして聖杯にアクセスするためには令呪の存在が必要不可欠であり、3画全て失えば失格となるということ。

 

「……つまりどんな願いでも叶える物体のようなものがあってそれを巡って最後の一組になるまで殺しあえと。」

「ほう、随分と物分かりがいいな。大抵のマスターは荒唐無稽と一笑に付すか、何かの冗談か詐欺だと言い出すものなのだが。」

 

ルビーは半信半疑ながらも、聖杯の話を「有り得ない」と一笑に付さなかったのには理由があった。

ルビーの故郷であるレムナントにはそれぞれ「知識のランプ」「創造の杖」「破壊の剣」「選択の王冠」と呼ばれる4つの聖遺物が存在していた。

「破壊の剣」と「選択の王冠」についてはどのような効果を発揮するのか分からないものの、「知識のランプ」の力で常人には決して知りえることの出来ないオズピンとセイラムの大昔の過去を知ることが出来、「創造の杖」の力でアトラスとマントルの市民を避難させるための異次元空間を創造することが出来、ルビー自身もそれらのレリックの凄まじい性能を直に目にしてきた。

更に4つのレリックをすべて集めるとレムナントを創造した光の神と闇の神を召喚することが出来、セイラム達闇の勢力はそれを狙って活動しているということをルビーはオズピンから聞かされていた。

レリックは活用するためには条件や制約も多く、一つ一つは言峰の語る聖杯には及ばない力しかないものの、レリックの存在や力を知っているルビーにとって聖杯の話を「有り得ない」の一言で片づけることは出来なかったのだ。

 

だがその上でルビーはある一つの結論に達する。

 

「……申し訳ありませんが私は聖杯戦争は辞退します。」

「……ほう、それは何故だね?」

 

言峰は不思議そうにルビーに問いかける。

 

ルビーは今回の聖杯戦争に呼ばれる直前、セイラムの脅威から人々を救うという名目で手段を選ばなくなっていったアイアンウッドの暴走を思い出していた。

 

彼は元々自分の考えが絶対という一面もあったのだがセイラムの脅威を目の当たりにしてからは手段すら選ばなくなっていき、セイラムから逃げるためマントルの人々を見捨てて創造の杖の力でアトラスをセイラムの手の届かない大気圏上空まで飛ばそうとする、創造の杖を手に入れるために女神ウィンターに選ばれたペニーにウイルスを仕込んで無理やり封印を解放させようとする、失敗したと分かればペニーが戻らなければマントルに爆弾を落として人々を虐殺すると脅すなど自分が守ろうとする人々のためにそれ以外を切り捨てようとし、それを実現するためには非人道的な策すら躊躇せず実行する彼の暴走のことを思い出していた。

 

 

仮にセイラムを倒すために自身とそのパートナーであるサーヴァント以外の全てのマスターとサーヴァントの血で自らの手を汚し、手に入れた聖杯の力でセイラムを倒したとしてもそれでワイスもブレイクもヤンもそれを喜ぶのであろうか?

 

そんなことに手を汚したが最後、自分たちが散々否定したアイアンウッドと何も変わらなくなってしまうことにルビーは気づいていた。

 

「私は自身の目的のために手段を選ばず、他者を平気で切り捨てる人を見てきました。聖杯で願いを叶えるなんてその人のやったことと何も変わらないし私はそんなことをしたくありません。私を元の世界に帰してくれればそれで十分です。」

ルビーは銀の瞳で言峰を真っ直ぐ見つめ、はっきりと答える。

「では、君はこの聖杯戦争から離脱するということで構わないか?」

 綺礼は目を細め、心なしかつまらなさそうな口調で決定を促す。

ルビーが口を開こうとしたその時だった。

 

『待て』

突如、二人の会話に割って入る者がいた。

それはこれまでルビーと言峰のやり取りに対し、沈黙を守っていたランサーのサーヴァント、フェクト・エフィリスであった。

「何かね?ランサー。」

会話に割って入ってきたエフィリスに対し、言峰は要件を聞く。

『我はそこの小娘に用がある。貴様は口を挟むな。』

「……いいだろう。」

エフィリスの言葉に言峰は後ろに下がり、エフィリスはルビーの正面に立つ。

 

『おい、小娘。』

「小娘じゃないよ。私には『ルビー・ローズ』っていう名前があるの。」

エフィリスの威圧的な思念にルビーは動じることもなく、しっかりと目を見据えながら言う。

『聖杯戦争への辞退は我が許さぬ。貴様には何が何でも我のマスターとして参加してもらう。』

「どうして?決めるのは貴方じゃなくて私のはずだけど?」

ルビーの問いに対してエフィリスは自らの目的を語る。

『我には聖杯に叶えてもらう願いがあるのだ……』

エフィリスは拳を握りしめながら言う。

『我の願いは受肉……、それもただの受肉ではない。我から分かれた『片割れ』無しでも維持できる全盛期の完全な体による受肉、それこそが我が聖杯にかける願いだ……』

「……」

 

ルビーはエフィリスの話を聞きながら、言峰から聞かされたサーヴァントについての話を思い出していた。

サーヴァントは生きている存在ではなく、死んだ存在が『座』と呼ばれる場所から現世に召喚された言わば幽霊みたいな存在であるということ。

そして聖杯戦争で召喚されるサーヴァントには聖杯に自らの願いを叶えてもらうためにマスターに協力する者も多く、そのサーヴァントの中には「自らの受肉」を目的とした者も多くいると言峰は言っていた。

だがそれでもルビーは納得できたわけでは無かった。エフィリスが何が目的で『受肉』を望むのかが分からないからだ。それにエフィリスが言っていた『片割れ』が何なのかについてもルビーは気になっていた。

 

「……だったら聞かせて。あなたは受肉して一体何がしたいの?それに『片割れ』って?」

『……』

エフィリスは暫し考えたがやがて意を決したかのように語りだす。

『……我には復讐したい相手がいるのだ。』

「……あなたに一体何があったの?」

ルビーはエフィリスの怒りと憎しみに満ちた表情からその相手に相当な強い怨みを持っていることを察する。そしてエフィリスはルビーに自身の過去を語り始めた。

 

かつてとある一つの星に降り立った際にその星の原住民が組織した研究対策チームに捕えられ、研究材料とされたこと。それから30年後に実験中の事故により自身の片割れである『ID-F87』フェクト・エフィリンが自身から分離し、施設から脱走したこと。それにより活動停止に追い込まれ、研究材料としての価値もないと判断された原住民により観光客相手の見世物とされたこと。やがて原住民たちが研究成果から手に入れた惑星間ワープ技術を使って、自身を置き去りにして遠い星に旅立っていったこと。

その後長い年月をかけ、ようやく片割れであるフェクト・エフィリンを取り戻したものの、ピンクの邪魔者『星のカービィ』によってフェクト・エフィリンを奪い返され、戦いの末に『星のカービィ』によって倒されたこと。

 

それら全てを、エフィリスはルビーに語って見せた。

『我は復讐をしたいのだ。我を捕え、見世物にし、あまつさえ置き去りにした憎き原住民どもと我の計画を台無しにした憎き『星のカービィ』にな。あの時は片割れの抵抗と奪取が原因で敗北したが今度はそうはいかぬ。聖杯によって片割れなど必要ない完全な体を手に入れ、奴らがどこにいようと必ず見つけ出し、今度こそ復讐を遂げて見せよう……』

「……」

ルビーはエフィリスの話を聞き、彼からアダムやシンダー、ニオと同じ匂いを感じていた。

シンダーはビーコン陥落の際に自身の銀の眼の暴走により重傷を負ってから、ニオは同じくビーコン陥落の際、彼女のパートナーであるローマン・トーチウィックを殺したと思いこまされてから、復讐のために二人から命を狙われていた。

この聖杯戦争に呼ばれる直前にも避難中継地にて二人から襲撃を受け、危うく殺されそうになったりもした。

アダムに関しては彼に直接会ったことはなく、チームメンバーで彼と深い因縁があったブレイク・ベラドンナから話を聞いただけだが、彼はブレイクに強い執着心を見せ、自らの元から離れたブレイクに対する強い逆恨みから自身の姉でブレイクのパートナーであったヤン・シャオロンの腕を切り落とし、ホワイトファングの指導者の地位を失った後、はるばる遠くのアーガスまでブレイクを追跡してブレイクに襲いかかってきたことをルビーはブレイクとヤンに聞かされていた。

ルビーはエフィリスを捕え、研究材料にし、見世物にした原住民とエフィリスと戦った『星のカービィ』の人となりがどのようなものなのかを知っているわけでは無い(人ではないかもしれないが)。

しかし彼の語る『復讐』がアダムやシンダーやニオと同じ『逆恨み』からくるものではないかとルビーは感じ取っていた。

そう思ったルビーは一つの結論を導き出す。

 

「……悪いけど私はあなたとは組めない。」

『……何だと?』

ルビーはエフィリスの目を見据え、はっきりと言い放つ。

「私は原住民の人たちやカービィがどんな人だったのかは知らない。でも私は逆恨みで復讐をしようとしている人を知っているしあなたからは彼らと同じ匂いがする。私は逆恨みの復讐に加担することは出来ない。」

『そうか……』

エフィリスは目を閉じると

『自らの意思で我に協力する気がないのなら……力づくで従わせるまで!!』

エフィリスは目をカッと見開いた。

 

「え?それはどういう……う、あああああああああああああ!?」

その瞬間、ルビーの頭の中にエフィリスの強い思念が流れ込んできた。ルビーは頭を押さえてうずくまる。

『ピンクの邪魔者と仮面の騎士は洗脳できなかったが……貴様はかつてのレオンガルフ同様、洗脳して我が傀儡として働いてもらおう。』

「うわあああああああああああああ!!」

 

そう言いながらもエフィリスはルビーに思念を送り続け、ルビーは必死に抵抗する。

だがルビーはエフィリスの思念を受け続けながらも、エフィリスに対し問いを投げかける。

「ね……ねえ……あなたは……復讐を遂げた後に……どうする……つもりなの……?」

『ほう、まだ喋れるだけの元気が残っていたか。いいだろう、どうせ貴様が知ったところで我が傀儡となれば関係のない話だ。特別に教えてやろう。』

そう言うとエフィリスはルビーに対し、はっきりと言い放つ。

 

『我が最終目標はあらゆる生物を吸収し、究極の生命体となることだ。』

ルビーはエフィリスの思念に耐えながらも今の発言を聞いて自分の考えが間違っていないということを確信する。

恐らくエフィリスは降り立った星の生物をすべて吸収しようとし、原住民たちはそれを止めようと戦ったのであろう。カービィも復活したエフィリスが侵略活動を再開したからそれを止めるために戦い、そしてエフィリスを倒したのだろう。

そしてその思いがルビーの口から自然とあふれ出していた。

 

「はは……やっぱりただの逆恨みじゃない……やっぱり私はあなたに協力出来ないよ……」

『貴様……』

エフィリスの表情は僅かに苛立ちを募らせていた。

「それに……あなたはとても可哀そう……侵略しなければ生きていけないだなんて……」

『黙れ……』

「そんなんだから……あなたは誰からも受け入れてもらえないんだよ……自分の半身からすらも……」

『黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇ!!!』

 

エフィリスは怒りのままに叫ぶとルビーに送り込む思念を更に強くする。

「うわあああああああああああああああああああああ!!」

だがその思念の洪水からもルビーは必死に耐え続けた。やがてエフィリスから送り込まれる思念は徐々に弱くなり、ルビーに送り込まれる思念は完全にストップする。

 

『フン、あの仮面の騎士の時と同じように耐えられるとはな。この手段はとりたくはなかったが仕方がない。』

そう言うとエフィリスは床に手をつき、息も絶え絶えなルビーに近づくと手に持った槍を逆手に持ち、槍の穂先をルビーに向ける。

『貴様が我が意に添わぬのであれば貴様を殺し、別のマスターと契約して洗脳するのみ。』

そう言うとエフィリスは手に持った槍の穂先をルビーに向けたまま上に振り上げ、

『死ね。』

槍をルビーに振り下ろし、そのまま貫こうとする。

 

だがその二人の間に割って入る者がいた。

「待て、ランサー。」

その言葉にエフィリスは振り下ろそうとした槍をピタリと止める。

『……口を挟むなと言ったはずだが?』

そういうと槍の穂先をルビーに向けたままエフィリスは顔だけを声の主に向ける。

その正体は今まで事態を静観していた言峰綺礼であった。

 

「なに、私は聖杯戦争のルールに反するようなことをしなければ君たちの行動や方針に口を挟むつもりはない。ただ一つだけ君に忠告しておきたいことがあってね。」

『……何だ?』

エフィリスは言峰に問いかける。

「君は何故、『ID-F87』フェクト・エフィリン無しでその体を維持できているか疑問に思ったことは無いかね?」

『どういうことだ?』

エフィリスの疑問に答えるように言峰は言葉を続ける。

 

「それはそこにいるマスター、ルビー・ローズ君が君が現世に留まるための要石となっているからだ。」

言峰はルビーを指さす。

「つまり君がルビー君を殺せば君は自らの体を維持することが出来なくなり、ドロドロに溶けてまともに行動することも出来なくなるだろう。」

言峰は更に言葉を続ける。

「そして魔力が切れれば君は消えてしまう……つまり君は戦うこともなく、この聖杯戦争から脱落するということだ。それでも良ければ君の自由にしたまえ。私は止めはしない。」

『……チッ』

エフィリスは舌打ちすると手に持った槍を降ろす。

 

それを確認した言峰は次にルビーに語り掛けていた。

「ああ、そうそう。ルビー君にも言っておきたいことがあるのでね。」

「……何ですか?」

ようやく消耗から回復しつつあったルビーはおぼつかない足取りながらも立ち上がる。

「勘違いしているようだが君が仮にこの聖杯戦争に参加しなかったとしても聖杯戦争は予定通りに行われる。そして参加したマスターとサーヴァント同士で聖杯を巡って殺し合いが発生するだろう。要は君たちが手を下すかそれとも他の誰かが手を下すかそれが変わるだけの話だ。」

 

それに、と言峰は更に言葉を続ける。

「聖杯の力は数多の平行世界・多元宇宙へと及ぶ。手にした者の願いによっては君の世界にも影響が及ぶかもしれん。そのうえでよく考えたまえ。聖杯戦争を辞退し元の世界に帰るか、聖杯戦争に参加しマスターとしてサーヴァントと共に戦い抜き、聖杯を目指すか。」

「……」

ルビーは考えていた。レムナントは現在、セイラムによる侵攻が続いており状況ははっきり言っていいとはいえない。だがルビーにとって大切な仲間────ワイス・シュニー、ブレイク・ベラドンナ、ヤン・シャオロンらチームメンバーにチームJNPRとの出会いはかけがいの無いものであり、世界を変えられることによって大切な仲間たちとの出会いを無かったことにされるのは耐え難いことであった。

ルビーは何かを決意したかのような表情で言峰を見据え、言葉を発する。

 

「私……聖杯戦争に参加します!」

『!?』

「ほう……それはどういった風の吹きまわしかな?」

言峰の疑問に対し、ルビーは理由を話す。

 

「何も聖杯を求めることだけが闘いじゃないと思うんです。私が参加しなくてもこの聖杯戦争で誰かが犠牲になるのならそれを見て見ぬふりをすることは出来ないし、聖杯に邪悪な願いを叶えてもらおうとか聖杯を手に入れるために手段を選ばずに誰かを殺すことも厭わないマスターとサーヴァントも参加しているかもしれない。私はそんなマスターやサーヴァントと戦って誰も犠牲者が出ないようにしたい。それが私の闘いです。」

「そうか、それが君の『闘い』か……だが。」

言峰はエフィリスの方を見ると、

「果たして『彼』は君の方針に納得するかな?」

『……』

再びルビーの方を見て、言峰はある提案をする。

 

「説得が無理だと思うならここで令呪を使うのも一つの手だ。令呪は期間が長期的であればあるほど効果が薄くなるが使わないよりはよっぽど効果があるだろう。どうするかね?」

「いいえ、使いません。」

だがルビーは言峰の提案をきっぱりと断った。

「令呪で無理やり従わせたって信頼関係は生まれません。そんなことをしたら『彼』が私にやったことと同じことをしたことになります。私一人で話をつけるのであなたは口出ししないでください。」

「……分かった。」

ルビーの言葉に言峰は再び後ろに下がり、ルビーはエフィリスの正面に立つ。

 

『驚いたな。まさか自分の意思で聖杯戦争に参加するとは。』

まず最初に口を開いたのはエフィリスの方であった。だがその声は喜びよりもむしろ驚きの感情の方が大きかった。

「勘違いしないで。私はあなたの目的に賛同したわけじゃないから。逆恨みで復讐することも全ての生物を吸収して究極の生命体になることも。」

『では令呪も使わずにどうするつもりだ?まさか我と戦うつもりか?』

そういうとエフィリスは手に持った槍の矛先をルビーに向ける。

 

だがルビーの口から出たのはエフィリスにとっては予想外の言葉であった。

「……でもあなたの境遇には同情できる。」

『!?』

そういうルビーの目は真摯そのもので、エフィリスはその目を見て彼女の言葉には嘘や偽りが無いと感じることが出来た。

「だってあなたは原住民の人たちに捕えられて狭いカプセルの中に閉じ込められて研究材料にされて、その価値が無くなったら見世物にされて、それも飽きられたらあなたを置き去りにして遠い星に旅立っていったんでしょ?勿論侵略してきたあなたにも非はあるけど私にはあなたを閉じ込めて研究材料にした研究所の人たちとあなたを見世物にして飽きたら置き去りにした原住民の人たちの方がよっぽど酷い連中だと思うし、あなたが怒りと憎しみを抱くのも当然だと思うよ。」

『……では何故、我の目的に賛同できぬ?』

エフィリスの疑問に対し、ルビーは答えを出す。

 

「それはあなたの目的によってみんなが……そして何より、あなた自身が悲しい思いをするから……」

『!!?』

ルビーの目に湛えられた涙を見て、エフィリスは激しく動揺していた。その涙が安い哀れみや同情などではなく、本気の悲しみで流れたものであると察したからだ。

「私はね……昔は友人とか仲間とかいらないと思ってた……でもワイスとブレイクに出会ってチームを組んで……ジョーンとピュラとノーラとレンとも仲良くなって……これからもその絆がずっと続くと思ってたのに……目の前でピュラが死んで……私はそれを助けることも出来なくて……その時にすごく悲しい気持ちになったんだ……。」

『……』

エフィリスにはワイスにブレイク、ジョーン、ピュラ、ノーラ、レンがどのような人物なのかは分からなかった。

だが彼女の様子から、彼女にとって彼らがとても大切な仲間であろうことが何となく察することが出来た。

 

「ねえ……全ての生命を吸収して究極の生命体になったら……その後あなたはどうするの?」

『!?……そ、それは……』

考えたこともなかった。エフィリスにとっては究極の生命体になることが最終目標であり、その後のことは全く考えていなかったのだ。

「全ての生命を吸収しちゃったら周りに誰もいなくなってあなた一人になっちゃうんだよ?仲間や友達もいない世界でたった一人で生きていけるの?」

『……』

「私は嫌だな……だってワイスもブレイクもヤンも、ジョーンもノーラもレンも、みんないなくなっちゃったら私にとっては何よりも辛いことだもん……」

『……我は……』

エフィリスは迷っていた。星を侵略し、生物を吸収し、究極の生命体を目指すことは自分にとっては生き甲斐であり、それ以外の生き方など全く考えたこともなかったのだ。

悩むエフィリスにルビーは次の言葉をかける。

 

「私はあなたを閉じ込めて見世物にした人達みたいなことはしない。何をどうしたいかはあなたの自由にしていいし、どうしても受肉の願いを叶えたいなら私が誰の犠牲も出さずに聖杯を手に入れる方法を探してあげる。」

でも、とルビーは言葉を付け加える。

「だけどこれだけは約束して。私が許さない限り誰かの命を奪うようなことはしないって。それが守れないなら私は今度こそこの聖杯戦争を降りるし、そのためにあなたに命を奪われる覚悟はある。その上でどうしたいか、あなた自身で考えて決めて。」

『……』

エフィリスは暫し沈黙する。そして……

 

『いいだろう。』

「え?」

エフィリスは結論を出す。

『貴様は我を見世物にした原住民どもとは違うようだ。我は貴様が気に入った。貴様の意思を尊重してそのうえで共に聖杯を目指して戦おうではないか。』

「話はついたようだな。」

話し合いに決着がついたと判断したのか、言峰は再び前へ歩み出る。

 

「ルビー・ローズ。君の参戦を聞き入れた。聖杯は君を歓迎するだろう。細かいルールは端末のヘルプで参照できるが他に質問はあるかね?」

言峰の最後の問いかけにルビーは決意を込めた表情で答える。

その表情は先ほどまでの涙を流して泣いていた少女のそれではなく、これから戦地に赴くことを覚悟した戦士のものであった。

「ありません。もう話が無いならこれで失礼します。さっ、行こうランサー。」

ルビーは言峰に背を向けるとそのまま振り返ることもなく、エフィリスを連れて教会の出口である扉に向かって歩く。

「喜べ銀の眼の戦士。君の願いはようやく叶う」

綺礼は立ち去ろうとするルビーの背中へそう言葉を投げかける―――

 

―――ルビー・ローズとフェクト・エフィリスは教会を後にした。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

「やああああああああああ!!」

 

A地区の山脈を背にした草原地帯にてルビーは自身の体よりも大きい魔獣の首を自らの愛用武器、クレセント・ローズの大鎌の刃で刈り取っていた。

「ふ~、今日のお仕事はこれでお終い!」

 

ルビー・ローズに与えられたロールは『ハンター』。

ハンターとは野草や果物を採取したり、野に住む獣や、凶暴な魔獣を狩猟し、それらを売却して金銭を得る職業であり、元の世界でハンター養成学校に通って訓練をし、人々の平和を脅かすグリムと戦い、アトラスにて念願のプロのハンター・ライセンスを獲得したルビーにとって、この与えられた職業はまさに天職といえるものであった。

因みにエフィリスはルビーとの約束通り久しぶりの自由を満喫していた。

今はルビーの上空を自由に飛び回っている。

 

やがてエフィリスはルビーの仕事が終わったことに気づいたのか、上空からルビーの元に降りてくる。

『終わったようだな。』

「う~ん、でもこんな大きな魔獣どうやって運ぼう?」

『我が抱えて飛んで運ぼうか?』

「ダメダメダメダメ!市街地だと目立っちゃうよ!」

『なら我がこの魔獣を吸収』

「わーっ!!それはもっとダメ!!ちゃんと引き渡して売却しないとQPを貰えなくなっちゃうから!!」

エフィリスのボケに対しルビーはツッコミを入れる。ルビーの表情は教会の時とは違って明るい笑顔に包まれていた。

ルビーは本来は明るく表情豊かで子供っぽい性格であり、今までそれを押し殺していたのだがその必要が無い今だけは本来の性格で振る舞うことが出来た。

『冗談だ。この魔獣は我が抱えて地上を歩いて運ぼう。』

「うん、でもまずは一旦支給された生活拠点に運んで整理して、一旦休憩してから引き渡しに行こう。」

そう言うとエフィリスは魔獣の死骸を抱え、ルビーと一緒に生活拠点に向かって歩き出していた。

 

『……初めて会った時と比べて随分明るくなったな。』

「普段の私はいつもこんな感じだよ?あなたこそ、最初に会ったころと比べて随分丸くなったんじゃない?」

『我は貴様との契約と約束を守っているだけだ。我は何も変わってはおらぬ。』

「もう、素直じゃないんだから~!」

お互い、軽口を叩きながら二人は帰り道を歩いていくのであった。

 

 

【サーヴァント】

 

 

【CLASS】

ランサー

 

【真名】

フェクト・エフィリス

 

【出典】

星のカービィ ディスカバリー

 

【性別】

不明

 

【ステータス】

 

筋力A 耐久B 敏捷A+ 魔力B 幸運E 宝具A++

 

【属性】

混沌・悪

 

【クラス別能力】

対魔力:B

魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

 

復讐者:B

自らを捕え、研究材料とし、挙句の果てに見学ツアーの見世物として晒し者にした原住民への怒りと復讐心がスキルとなったもの。エフィリスはランサーのクラスとして現界したがアヴェンジャーとしての側面も持つためこのスキルを有する。効果としては周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情を自らの力に変換するもの。

 

【保有スキル】

空間転移能力:A++

異空間を意のままに操る能力。星型の入り口をした異空間ゲートを作り出し、そこを通ることによって異なる場所、異なる世界へ容易に移動したり、異なる世界の住民を呼び寄せたり、自らの思念で異空間を一つ作り上げることが出来る。戦闘にも応用が可能で後述の宝具の行使にもこのスキルを用いる他、異空間ロードから槍を召喚して攻撃することも可能。

 

飛行:A

空中を飛ぶ能力。重力に囚われることなく空中を自在に飛行し、音速を遥かに凌駕する速度で高速戦闘を行うことが可能。

 

テレパシー:B

自らの思念を相手に送り込む能力。自らの言葉を思念として相手に送ることで言葉を発することなく相手に直接自身の言葉や意思を伝えることが可能なほか、強い思念を送り込むことで対象を洗脳し、操ることが可能。ただし、強い精神力を持つものを操ることは出来ない。

 

縮地:A

瞬時に相手との間合いを詰める技術。多くの武術、武道が追い求める歩法の極み。単純な素早さではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角など幾多の現象が絡み合って完成する。エフィリスの場合は最上級であるAランクに達しているため、上記の空間転移能力に頼らずに次元跳躍ばりの速度で瞬時に相手との間合いを詰めることが可能。

 

【宝具】

『地球外文明の存在確率の高さとそれらが確認されない矛盾に対する答え(フェルミパラドックス・アンサー)』

ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人

真名解放によって周囲の空間を塗り替え、空中に作られた巨大な異空間ロードから崩壊した建物の残骸を固めて作られた無数の隕石を降り注がせ、最後に異空間ロードと同じ大きさの巨大な隕石を落下させ敵を粉砕し、更に追い打ちをかけるようにエフィリス自身が隕石に紛れて敵に突進し、そのまま槍で敵を貫いてトドメをさす。

 

『遺伝子の修復(ゲノム・リペアーズ)』

ランク:C+ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:-  最大補足:1人

3体に分身してその場から動かなくなり、一定時間経過後に自らが負った傷を修復する宝具。この宝具を発動している間本体は無防備となり攻撃を受ければ消える2体の分身を一度だけ呼び出すしか出来ず、一定時間経過前に本体が一定以上の攻撃を受けると回復は中断され、逆に本体が受けた攻撃分のダメージを負ってしまうため、時間が経過するまでマスターか同盟相手のサーヴァントに守ってもらう必要がある。

 

【weapon】

「アンタレス」

槍の芯と槍先が水色になっており、クリーム色とマゼンタの二重螺旋が巻き付いている禍々しい形状の槍。武器として相手を刺し貫いたり切り払ったり出来るほか、槍のような形状をした光弾「軌道性パルサー」を生成し、敵に射出することで遠距離攻撃をすることも可能。

 

【人物背景】

本編(星のカービィ ディスカバリー)の時代より遥か昔、まだ先住民が生息していた時代の「新世界」を単身で侵略しに降り立った宇宙生物。襲来してからは多くの原生種に対し侵略活動を続けていたが、多大な力と凶暴性を危険視したその世界の原住民たちによって組織された研究対策チームによって無力化・捕獲される。その後、捕獲した研究対策チームから『ID-F86』のコードネームを付けられ、空間転移能力の研究材料として保管されていたが、研究開発から30年後に起きたワープ実験事故により別個体ID-F87が分離し逃走するトラブルが発生、それが原因で活動停止に追い込まれてしまう。その後ラボ・ディスカバールのエターナルカプセルに保存され、「ドキドキ発見ドリームツアー」の目玉として見世物にされていた。

そして先住民は研究によって得た技術で手狭となった母星を捨てて宇宙に旅立っていき、その後長い間放置されていたが近年になって漸くある程度力が使えるまでに回復して目覚め、同様に残された動物の子孫のリーダーであるレオンガルフをテレパシーによって洗脳し、ビースト軍団を結成させ自身の復活のために暗躍していた。

ビースト軍団に自身から分離した片割れ、『ID-F87』フェクト・エフィリンを捜索させつつ、自らの空間転移能力で呼び寄せたワドルディ達をビースト軍団に捕えさせ、奴隷同然の扱いで働かせてラボの電力を供給させたり同じく空間転移能力で呼び寄せたデデデ大王を洗脳し自らの手駒としていたが同じく偶然呼び寄せてしまったカービィによってビースト軍団は次々に倒され、リーダーのレオンガルフまで倒されてしまう。業を煮やしてレオンガルフを始めとしたビースト軍団を取り込み、巨大なスライムのような形態となってカービィに挑み敗北するが、隙をついて『ID-F87』フェクト・エフィリンを取り込み全盛期の力を取り戻した完全体として復活。カービィと死闘を繰り広げるが最終的にフェクト・エフィリンを引き剝がされてしまい、最後のあがきとして空間転移能力の最大出力でカービィの故郷であるポップスターそのものを新世界にぶつけようとするがモンスタートレーラーと一体化したカービィの突撃を喰らい消滅する。

 

侵略活動への野心は捨ててはおらず、復活後も次の星への侵略を企んでいた。

 

【サーヴァントとしての願い】

片割れを必要としない全盛期の完全な肉体での受肉。願いが叶った後どうするかはこれから考える。

【方針】

聖杯を求める。ただしマスターであるルビー・ローズの意思は尊重する。

 

【把握媒体】

ゲーム「星のカービィ ディスカバリー」をご参照ください。プレイ動画及びムービーがYoutubeなどの動画サイトにUPされています。

より詳しい設定や性格、口調を把握したい場合は角川つばさ文庫の小説版「星のカービィ ディスカバリー 新世界へ走り出せ!編」及び「星のカービィ ディスカバリー 絶島の夢をうちくだけ!編」をご参照ください。

 

 

【マスター】

ルビー・ローズ

 

【出典】

RWBY

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

『ペダル・バースト』

 

「高速移動」とも呼ばれているルビーの固有能力。この能力を用いると瞬間移動のように目にもとまらぬ速度で移動することが出来る。この能力を使用すると彼女の通り道に赤い薔薇の花弁が舞う。この能力の実態はルビー自身を分子レベルに分解し、質量を無視してある地点から別の地点まで超高速で移動して再構成するものであり、この能力を応用することで味方に対しても能力を使用して一緒に移動することが出来る。

 

『オーラ』

 

レムナントの世界において生命を持つものが十分な訓練を積むことで使えるようになる能力。使用することで全身をバリアのようなもので包み、敵の攻撃によるダメージを軽減し、致命傷から保護してくれる。ただし戦闘中にダメージを受け続けたり絶えず使用し続けると劣化していき、最終的には枯渇して使用不能になってしまう。

 

【weapon】

「クレセント・ローズ」

ルビー自身が自作した大鎌と狙撃銃の機能を併せ持つ大口径狙撃鎌。

「収納形態」「小銃形態」「大鎌形態」の三つの形態に変形させることが出来、通常は運搬に適した「収納形態」でルビーの腰に装着されているが、戦闘の際は取り回しのいいボルトアクションライフルとして運用可能な「小銃形態」と、大鎌としての近接戦闘能力と長距離狙撃銃としての遠距離攻撃能力を併せ持った「大鎌形態」の2つの形態を使い分けることが出来る複合変形武器。ルビーは射撃の反動を利用して跳躍や空中ジャンプ、高速移動中の加速に利用したり、鎌での斬撃をより強力なものにするなどといった使い方もしている。また大鎌形態での射撃時に鎌の刃を地面に突き刺してモノポッド代わりにして射撃することもできる。

 

【人物背景】

ハンター養成学校のビーコンアカデミーで結成されたチームRWBYのリーダーで当代における“銀の瞳の戦士”の一人。

幼少期からおとぎ話に出てくる偉大なハンターに憧れており、偶然居合わせたダストショップにてローマン・トーチウィック率いる強盗の集団を撃退、その活躍をビーコンアカデミーの校長のオズピンに見初められ、15歳でありながらビーコンアカデミーへの飛び級入学を認められた。

 

基本的に明るく前向きな性格で、どんな逆境でも諦めずに進んでいく強い心を持っている。

一方で親しくない相手とは積極的なコミュニケーションを避けようとする消極的な一面もあり、入学当初は新しい友人関係を築くことに消極的だった。

しかしビーコンでの生活を経てその傾向は改善されていき、チームRWBYやチームJNPRのメンバーを始め、様々な人物と交流するようになっていった。

優れたリーダーシップ及び高い作戦立案能力や発想能力を持っており、始め、リーダーとして抜擢された時には、リーダーになったという意味をあまり理解していないようだったが、その後のオズピンとの会話でリーダーとしての役目に真剣に向き合うようになり、有能かつ頼れるリーダーになるため遅くまで勉強する姿勢を見せ、危機的状況を打破するために的確な作戦を立ててそれを実行したり強力な敵を撃破するための連携攻撃を素早く発想したりするなどリーダーとしての才能を開花させていき、叔父のクロウ・ブランウェンやかつての名ハンター、マリーアからも彼女の明るさと強い心は一目置かれている。

 

ビーコン陥落事件の際にチームJNPRのメンバーであったピュラ・ニコスがシンダー・フォールに殺害される瞬間に居合わせてしまい、その悲しみとショックで『銀の眼』の力を暴走させてシンダーに重傷を負わせた。その後チームメイトのヤン・シャオロンからアカデミー陥落と、同じくチームメイトであるワイス・シュニー及びブレイク・ベラドンナと離れ離れになってしまった事を知り、さらにクロウから母・サマーの事と「銀の眼の戦士」の伝承と、シンダー達がヘイヴンへ向かった事を聞き、シンダーを追いにヘイヴンへ旅立つ事を決意、チームJNPRのメンバーであったジョーン・アーク、ノーラ・ヴァルキリー、ライ・レンの賛同を得てその3名と共にチーム「RNJR」を結成する。その後ヘイヴンで自身以外のチームRWBYのメンバー3名と合流に成功し、ヘイブンにおける戦いで知識のレリックの回収に成功し、レリックの安全の確保のためにアトラスに旅立つことになるがたどり着いたアトラスでセイラムの軍勢の襲撃とそれによるアイアンウッドの暴走に巻き込まれ、アトラスとマントルの市民を避難させるために創造のレリックの力で避難中継地を創造してもらったが、市民の避難誘導中にシンダー・フォール及びその仲間のニオポリタンの襲撃を受け、その戦闘の中でシンダーとニオによって次元の狭間に落とされてしまい生死不明となる。

 

【マスターとしての願い】

誰かを苦しめたり不幸にしたりするような願いを持つマスターや、聖杯を手に入れるためには手段を選ばず誰かを殺すことも厭わないマスターとサーヴァントには聖杯を渡さないし、必要なら戦って止めることも辞さない。誰も傷つけずに聖杯を手に入れられるならサーヴァントの願いを叶えてあげたい。

 

【方針】

聖杯戦争を止めようとするマスター、誰も傷つけずに聖杯を手に入れて願いを叶えたいマスターがいたら交渉して協力を取り付ける。やむを得ない場合を除き、可能な限り人は殺さない。

 

【ロール】

魔獣狩りで生計をたてているハンター

 

【令呪の形・位置】

左手甲の位置。薔薇の紋章の形をしている。

 

【把握媒体】

アニメ「RWBY」Volume1、2、3、4、5、6、7、8の日本語吹き替え版及びアニメ「RWBY 氷雪帝国」、漫画版「RWBY 氷雪帝国」などをご参照ください。

原作アニメの日本語吹き替え版及び氷雪帝国はAmazon Prime Video、Abemaプレミアム、dアニメストアその他配信サイトで全編配信中です。

漫画版「RWBY 氷雪帝国」は電撃大王で連載中で単行本も発売されています。

 



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【候補作】特殊討伐令対象者:セイバー(アルテラ)

作者 ◆TUV54iMsXU様
この度のご投稿、誠にありがとうございます。


「……儚い文明だ。これでは機械装置の類と何も変わらない。」

 

空虚な眼差しで、都市をみつめていた。

彼女の目に映る全ては、飾り付けられた箱庭。

役目を終れば停止するだけの仮初の文明、しか映らない。

 

「私が破壊するまでもない。時が経てば停止する文明など、」

 

"自らの手を下す必要もなし"、と冷淡な口調に切り捨てる。

彼女は"文明を滅ぼすため"に存在する、生まれながらにして破壊の機械。

文明社会とは根幹より相容れないが、"聖杯の機能"と理解するが故、受け入れていた。

 

「……………………。」

 

女性の髪は銀色、褐色の肌に白色の礼装を身に纏っていた。

前身には特徴的な紋章が浮かび、三色の光を放つ剣を手にする。

 

彼女の名は、「アルテラ」。

セイバークラスで現界しているサーヴァント。

 

「ここにいたのかい。」

「…………アルヴィースか。」

 

アルテラの背後より現れたアルヴィース。

何の感情もなく、何の警戒もなく、アルテラは振り向き、視線を向ける。

 

「いいのか?私は討伐対象だろう。」

「問題ないさ。正規の討伐令じゃないからね。」

 

事実を聴く問いに対し、アルヴィースは穏やかな調子で答えた。

そこには"敵ではない"、という意思があり、親しみが込められていた。

 

 

彼女は通常と異なる背景の中に存在していた。

まず、このアルテラを使役するマスターはいない。

主催側からの特殊召喚された、主催側のサーヴァントである。

 

それに加えて、何の罪もないにも関わらず"討伐令がかけられている"。

 

"特殊討伐令対象者"。

ペナルティとは関係なく、討伐対象の役割を命じられたサーヴァント。

それは"討伐されるべき者"ではなく、"討伐されるための試練"として在る。

つまり、"成長のために討ち取られること"を狙いに用意されたボスであった。

 

「……アルテラ。君の口から改めて聞きたい。文明の破壊者である君が文明を破壊することなく、聖杯戦争を留まっている目的は何なのか。」

 

穏やかさから一転して、アルヴィースは問いかける。

それは、"わからない"からではなく、"記録を残すため"の質問であった。

 

一方の、アルテラは何も変わらない。

現界は強制はされていない。自由はアルテラにあり、留まっているのは自身の選択からであった。

 

「私の目的は、『強い文明の芽を見届けること』だ。」

「強い文明の芽?」

 

アルテラは迷いなく答えた。

 

「『天の聖杯』は文明を創造させるもの。お前達が呼ぶ『理』とは文明の芽だ。」

 

『天の聖杯』は理想の世界を創造させる機械。

世界の創造とは、即ち文明の創造であると彼女は判断した。

 

つまり、聖杯の獲得を目指すこと、示す『理』は、アルテラにとって"新たな文明を築く芽"であった。

 

「強い文明とは、力の強さだけではない。

どんなに破壊されても、どんなに蹂躙されても、何度でも立ち上がる"意志"の強さ。

利己のために築かれるものではなく、利他のために皆と築き上げる"慈しみ"の強さ。

数多の強さを持つ"良い文明"こそ、真に破壊のできない強い文明だ。」

 

強い文明とは、"心"を含めて在るべきもの。

次代に拓かれるべき文明は、世に続くべき良い文明と見ていた。

 

「利己のためにある悪い文明であれば、私は破壊し尽くす。

砕けてしまうような弱い文明であれば、生き残る資格はない。

試練として神の鞭を振るい、文明の芽を破壊する。……それが私にできることだ。」

 

自分は破壊することしかできない。それを理解している。

だが、試練として立つならば、破壊はためになるだろう。

 

参加者の文明を試すが故、この立場を受け入れている。

 

「『理』を見定める、ということかい?」

「お前達の言葉で表すならば、そう呼ぶ。」

 

機械のように冷淡に返答する。

見定めるべき文明は、これからマスター達が示す『理』にある。

 

「わかった。ありがとう、付き合わせてしまって。」

 

聞き入れたとして、アルヴィースは去った。

アルテラの周りは静寂の空間を取り戻す。

 

「戦いは……まだか」

 

自分の役割を静かに待っていた。

 

天の聖杯に希望を求める者達。

それは即ち、創造される次なる文明の芽。

 

お前達が滅びる側に立つか、生き残る側に立つか。

 

 

――――私はそれを見届ける。

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

セイバー

 

【真名】

アルテラ

 

【出典】

Fate/Grand Order

 

【性別】

 

【ステータス】

筋力B 耐久A 敏捷A 魔力B 幸運A 宝具A+

 

【クラス別能力】

対魔力:B

セイバーのクラススキル。魔術に対する抵抗力。

一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。

魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

 

騎乗:A

セイバーのクラススキル。乗り物を乗りこなす能力。

「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。

Aランクなら竜種以外の幻想種までなら乗りこなすことが出来る。

 

【保有スキル】

神性:B

神霊適性を持つかどうか。アルテラ自身は神霊との血縁関係を有していないが、欧州世界を蹂躙した事実は神威とされ、畏怖の対象となって「神の懲罰」「神の鞭」の二つ名を得るに至った。

このことから、地上で英霊となったアルテラは神霊適性を高ランクで有する。

 

軍略:B

多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

 

天性の肉体:EX

生まれながらに生物として完全な肉体を持つ。

一時的に筋力のパラメーターをアップさせることが可能となる。

更に、どれだけカロリーを摂取しても基本デザイン(体型)は変化しない。

 

星の紋章:EX

体に刻まれた独特の紋様。何らかの高度な術式による紋―――――フンヌ族に特有の紋と言う訳ではなく、アルテラという個人が有する不可思議の紋である。

ランクが高いほどに威力は増していく。紋を通じて魔力を消費する事で、瞬間的に任意の身体部位の能力を向上させることが可能。

魔力放出スキルほどの爆発的な上昇値はないが、魔力消費が少なく燃費がいい。更に、直感スキルの効果も兼ね備えた特殊スキルでもある

 

【宝具】

『軍神の剣(フォトン・レイ) 』

ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:200人

「神の懲罰」、「神の鞭」と畏怖された武勇と恐怖が、軍神マルスの剣を得たとの逸話と合わさって生まれたと思われる世界を焼く宝具。

長剣の剣状をしていながらどこか未来的な意匠を思わせる三色の光で構成された「刀身」は、地上に於ける「あらゆる存在」を破壊し得るという。

「刀身」を鞭のようにしならせる他、真名解放を行うことで「刀身」は虹の如き魔力光を放ち、流星の如き突進を持って敵陣を広範に渡って殲滅する。真の力を解放した時、ランクと種別が上昇する。

 

『涙の星、軍神の剣(ティアードロップ・フォトン・レイ) 』

ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1~99 最大補足:900人

空中に魔法陣を展開、マルスと接続し、その力の一端である旭光を魔法陣より敵に照射する。

真名解放と同時にアルテラの指定した地点に対して、遥か上空から突き立てられる光の柱──衛星軌道上に仮想顕現した軍神マルスが振るう光の巨剣。太古の、戦闘の概念がカタチとなったモノ。

真なる軍神の剣で広範囲を殲滅する衛星兵器と言うべき代物で、軍神の剣は攻撃座標を指定するためのポインターに過ぎない。

 

【weapon】

『軍神の剣(フォトン・レイ) 』

 

【人物背景】

アッティラ・ザ・フン。西アジアからロシア・東欧・ガリアにまで及ぶ広大な版図を制した五世紀の大英雄。

破壊や蹂躙に徹し、西ローマ帝国の滅亡を招いたとされる純然たる「戦闘王」。

対照的に統治には成功せず、死後に帝国は急速に瓦解し消え果てた。

 

その正体は、サハラ砂漠に朽ちた蹂躙の巨人「セファール」の遺体から発見された、セファールの頭脳体のバックアップ。

生まれながらにして軍神の剣を握り、セファールとしての記憶を失い、「アッティラ」として人間と誤認したまま地上を駆け抜けていた。

 

セファールの使命が根底に刻まれており、今もなお自分を文明を滅ぼすのための装置として機能している。

 

【サーヴァントとしての願い】

文明の芽を破壊する。その上で、強い文明を見定める。

 

【方針】

(試練として)天の聖杯へ願望を持つ者達を殺戮する。

一箇所に留まらず、都市中を徘徊し、敵を捕捉していく。

 

【把握媒体】

「Fate/Grand Order」、「Fate/EXTELLA」など。

 

【備考】

Matrixの全情報とマップの位置情報が開示されております。

 



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【候補作】ありす&セイバー

作者 覇王様
度々のご投稿、誠にありがとうございます。


「あなたが私のマスターでいいのかしら?」

 

彼女の名前は白井夢結。今回の聖杯戦争で召喚されたセイバーのサーヴァントである。長い黒髪の少女である。

 

「そうよ、あたしがあなたマスターよ。セイバーのお姉ちゃん」

 

彼女の名前はありす。今回の聖杯戦争の参加者のひとりである。白と水色のドレスを身に纏った少女。

 

(まだ子供? それにこの子はもしかして……)

 

夢結は自分のマスターを見てなにかを感じた。

 

「お姉ちゃん、一緒に鬼ごっこしましょう!」

 

「待ちなさい!」

 

ありすを追いかける夢結。

 

(あの子はやっぱり……ゴースト?)

 

そんなことを想いながらありすを追いかける夢結。

 

 

【サーヴァント】

 

【クラス】

セイバー

 

【真名】

白井夢結

 

【出典】

アサルトリリィ

 

【性別】

女性

 

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷A 魔力A 幸運C 宝具B

 

【属性】

中立 善

 

【クラス別能力】

対魔力:A

A以下の魔術を全てキャンセル。事実上、現在の魔術師ではセイバーには傷をつけられない。

 

騎乗:B

騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣や聖獣は乗りこなせない。

 

【保有スキル】

カリスマ:B

軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において自軍の能力を向上させる。彼女が一柳隊の副隊長として活躍した逸話が昇格したスキル。

 

単独行動:B

マスターから魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

単独でも戦い続けた彼女の逸話が昇格したスキル。

 

【宝具】

『ルナティックトランサー』

ランク:A 種別:対ヒュージ宝具 レンジ:1~50 最大確保500人

彼女のリリィとしてのレアスキルが宝具になったもの。精神を通常のままバーサーク状態で戦うことが可能な危険な宝具。一度発動すれば目の前の敵を殲滅するまで止まらない。

 

【人物背景】

『アサルトリリィ』の登場人物。

 

『百合ケ丘女学院』に所属する『リリィ』として『ヒュージ』と戦い抜いた『リリィ』のひとり。

 

物語が始める二年前の『甲州撤退戦』で主人公『一柳梨璃』を救出しているが、その直後に信頼していたな仲間の『川添美鈴』が死亡してしまい、これにより他人から距離を置くようになってしまう。

 

それから二年後、かつて救出した梨璃と再会し、自分の過去と向き合い、『一柳隊』の副隊長として仲間たちと一緒に戦い、梨璃の成長を見守ることになった。

 

【サーヴァントとして願い】

特になし。マスターのことは守る。

 

【方針】

考え中

 

【把握素体】

アニメ、ゲーム、舞台、漫画

 

【マスター】

ありす

 

【出典】

フェイトエクストラ

 

【性別】

女性

 

【能力・技能】

 

『魔力』

巨大な魔力を消費しても平気でおり

本来ないのマスターなりありえないことも可能にしてしまう。

 

『火吹きトカゲのフライパン』

彼女が持つコードキャスト。

炎魔力ダメージを与える。

 

『紅茶のマーチ』

彼女の持つコードキャスト。

サーヴァントの体力を回復する。

 

【人物背景】

『フェイトエクストラ』の登場人物。

 

儚げな印象をの、人形のような少女。

 

基本的に、遊び盛りの無邪気な子供。

寂しがり屋で、人見知り。

 

その正体は……サイバーゴーストである。

 

【マスターとして願い】

みんなと遊びたい。

 

【方針】

考えてない。

 

【ロール】

小学生。

 

【把握素体】

ゲーム及び、アニメ、漫画



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