ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!? (ひいちゃ)
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転戦編
序章


 『俺』の意識が目覚め、この体の自我が書き換えられたその時、俺の頭に浮かんだのはこの一言だった。

 

―――ちょっと待って。なんで俺、Gガン世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?

 

 いや、まさにそうなのである。今俺はガンダムに乗って戦っているところだ。

 俺の乗るガンダムはビームセイバーを振るい、それを東方師匠こと、東方不敗・マスターアジアのクーロンガンダムが、なんとその拳で受け止めている。

 

 しかも、さすが東方師匠というべきか、クーロンガンダムは、その光の剣に斬られるどころか、むしろその剣を押している。

 やばい、このままでは押し切られてやられてしまう!

 

「とりゃっ!!」

 

 幸い、戦い方は「身体」が覚えてくれているらしい。その記憶が教えるままに、俺はクーロンガンダムを蹴り飛ばし、それと同時に後ろに飛びずさって距離を取る。

 

 にらみ合う俺のガンダムと、クーロンガンダム。俺はにらみ合っているその間に、今のこの現状を再確認することにした。

 

 今俺は、金髪碧眼の美少女になっている。胸のふくらみはあるが、それでも大きいとは言えない。言わば、発展途上の身体。記憶によれば、名前は『ジャンヌ・エスプレッソ』といい、ネオ・ノルウェーのガンダムファイターだそうだ。

 そしてこのガンダムは、登録番号『GF13-047NN』機体名『ガンダム・ピュセル』。ジャンヌの剣技を再現することを重視した機体とのこと。必殺技は『約定必勝・ウィニングセイバー』。

 

 この機体をもってガンダムファイト13回大会に参戦したジャンヌは、ここ新宿で東方師匠と相まみえ、ガンダムファイトを挑んだ、ということらしい。

 

 それにしてもまさかこんなことになるとは……確かに俺はGガンダムが好きで好きで、『超級!!』を読んでいるうちに線路に転落してお亡くなりになるほどのGガンダム好きの男子高校生だったけど、Gガンダムの世界に転生し、しかも女になり、さらには東方師匠と戦っているなんて。

 

 だが、こうして転生し、東方師匠と剣を交えることになったからには、やらなければならないことがある。それは、彼を止めること。

 

 地球の未来のこととか犠牲のこととかもあるが、一番の理由は、彼を止めなければ東方師匠は間違いなく死んでしまうからだ。

 

 ガンダムファイトで汚されていく地球を憂えていた師匠は、デビルガンダムを使って地球に住む人々の排除をもくろんだ。だが、それは、それをよしとしない弟子のドモン・カッシュとの対立を生み、最後に師匠は弟子との対決で死亡する。

 俺も、師匠の最期のシーンでは、滂沱のごとく涙を流したものだ。

 

 しかし、感動的なシーンであっても、やはり師匠が死ぬのは嫌だ。できるものなら彼には死んでほしくない。そのためには、師匠を止めるしかない。

 

 俺はそう決意を固め、ビームセイバーを構えた。

 その決意を感じ取ったのか、師匠も構えなおした。

 

『ほう……。先ほど前と気迫が違う。負けられぬという想いが感じ取れるようだ。よかろう。ならばわしも、それに応えてやるとしよう。来るがよい』

「行きます!」

 

 そして俺はビームセイバーを構えなおし、一気に師匠のクーロンガンダムに突進した!

 

「約定必勝! ウィニングセイバアアアァァァァ!!」

『必殺! クーロンフィンガアアアア!!』

 

 そして俺のガンダムピュセルのウィニングセイバーと、師匠の(ダークネスフィンガーに当たる技)クーロンフィンガーがぶつかりあった!

 

 さ、さすが師匠! そのパワーは俺なんかとは段違いだ。ふんばっても、気力を振り絞っても押し切られてやられてしまいそうだ。だが、この世界のためにも、師匠のためにも、ここでやられるわけには……!

 

 その時だ。

 

 俺の脳裏と意識に見えた景色と、聞こえてきた声があった。

 

* * * * *

 

 廃墟と化した町、濁った川、荒れ果てた森。天空に浮かぶコロニーたち。

 そしてその町にたたずむ東方不敗・マスターアジア。

 

 これは……前回のガンダムファイトの風景?

 

 その惨状を目の当たりにした師匠は声もなく慟哭する。

 声なき慟哭のはずなのに、その声は俺の意識に届いていた。

 

―――これは……この惨状は……ま、まさか……!

―――わしが、わし自らが、地球を破壊し、汚し、この惨状を招いていたというのか!

―――なんということだ! これは……ガンダムファイトの真の闇に気づかず正義気どりで拳を振るい続けたわしの罪!

―――おおおおおお!!

―――地球よ、自然よ、すまなんだ。わしが早くそれに気づいていればこんなことにはならなんだのに……!

―――許せ、海よ、山よ、湖よ、わしが愛しんでいた自然、地球よ! うおおおおおお!!

 

 聞いたことがある。

 優れた格闘家同士は、拳を通して己を語るものだと。

 ということは、これは師匠の心の叫び……!? 俺のGガンダム愛がそれを聞かせてくれたのか……?

 

* * * * *

 

 そして気が付くと、俺は再び師匠と必殺技をぶつけあっていた。

 

 だが俺は師匠の心の慟哭を感じ取ったと同時に気が付いたことがある。

 

 ここで師匠と拳をぶつけ合っている場合ではない。こんなことをしても、地球の汚染も、師匠の嘆きも、止めることはできないのだと。

 そのためにはやはり、師匠の言う通り、人類を地球から巣立たせるしかない。だが、そのために人々が犠牲になることは望まない。それに原作のままの人類排除を行っていたら、原作通りの結末を迎えてしまう。そうさせないためには―――。

 

 俺はビームセイバーを消すと、とっさに身をかわした。

 師匠のクーロンフィンガーが俺のピュセルガンダムの左肩に炸裂し、俺の左肩に激痛が走る。

 

「あがっ……!!」

『どうした、なぜ拳をひく? 戦いの途中で拳を退くなど、勝負を捨てた者のすることぞ』

 

 しかしその師匠の言葉に俺は臆せず、ガンダムピュセルを降りて返す。

 左肩の痛み……師匠の心の痛み……に耐えながら。

 

「いえ。ここで師匠と戦っても、世界を救うことも、師匠を救うこともかなわないと悟りましたから」

『なに?』

「ガンダムファイトが続いている限り、いえ、人類が地球で営みを続ける限り、地球は汚れ破壊され、師匠の嘆きや憂いは深まっていく……」

『!? おぬし……』

 

 その時、あたりを地震が襲う。そして、地を割って現れたのは……。

 

『デビルガンダム!? まさか、この娘の想いの強さにひかれて現れたのか!?』

「それを止めるためには、強大な力で、人類を無理やり巣立たせるしか……。キョウジではなく私が……」

 

 そして俺は、デビルガンダムに向けて歩き出す。

 デビルガンダムから飛び出した触手で、俺のファイトスーツが引き裂かれ、俺は一糸まとわぬ姿になったが、俺は迷わずデビルガンダムに向けて歩いていく。

 

 その様子を、師匠は息をのんで見守っている。

 

『まさかおぬし、キョウジ・カッシュの代わりになってデビルガンダムのコアになろうというのか!?』

「はい……。そうすることで、私の望む、私なりの人類排除が為せるなら……」

 

 そして俺は、デビルガンダムの前に立った。

 その胸装甲が開き、中から一人の男が排出される。Gガンダムの主人公ドモン・カッシュの兄、キョウジだ。そしてそれと同時に、デビルガンダムの中から触手が再び放たれ、俺の細い腕を、きゃしゃな体を、きれいでなめらかな肌をからめとっていく。

 そして俺は引き寄せられるように、デビルガンダムの中に取り込まれた。そして―――!!

 

* * * * *

 

「う、うぅ……?」

 

 キョウジ・カッシュはふと目を覚ました。見渡すと、そこは地球上の町、新宿の荒れ果てた風景。

 だが彼はすぐ、自分のおかれていた状況に違和感を抱いた。

 

「どういうことだ……? 私は、アルティメットガンダムと共に地球に降りたはず。そして暴走してデビルガンダムとなった機体に取り込まれてコアに……?」

 

 そこで見上げた彼は目を見開いた。そこにあったのは元アルティメットガンダムのデビルガンダム。だがその姿は、地球に墜落した時より大きく、強く、美しいものとなっていた。

 

「馬鹿な、もう第二形態に!? しかも、計算されていたものより美しいものになっているとは……!!」

 

 そう疑問の叫びをあげたカッシュに顔を向けたデビルガンダムは、一瞬彼を見つめると、そのまま地面へと潜っていった。

 

「なんということだ! 早くドモンたちと会い、対策をとらないと大変なことになる!」

 




* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

新しくデビルガンダムのコアとなったジャンヌ。その彼女が降り立ったのは、ネオ・アメリカの直轄地と、ネオ・メキシコの直轄地とのはざまにあるキャンプでした。
そこである兄妹と出会う彼女でしたが、実はその裏で、あの男が兄妹を狙っていたのです!

果たしてジャンヌは、兄妹を守り、目的を果たすことができるのでしょうか?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第1話、『兄妹を守り抜け! 復活の雇われファイター!!』に

Ready Go!!


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1st Fight『兄妹を守り抜け! 復活の雇われガンダムファイター!!』

 みなさん、お久しぶりです。ストーカーです。
 はて、師匠? 機関長? はは、なんのことやら……。

 さて、原作を見てこられた皆さんになら、必要ないとは思いますが、この作品でGガンダムに触れた方も多いはず。そこで、改めてここでガンダムファイトについて簡単におさらいさせていただきましょう。

 地球から宇宙に出た人類。彼らが築いたコロニー国家。
 その国家間の全面戦争を避けるため、主導権をガンダム同士の格闘大会で決める。
 これがガンダムファイトです。
 スポーツの皮をかぶった戦争、地球を犠牲にして行われる血を伴わない争い。
 人類はなんて戦争システムを作り出したものか。
 それが、これまで12回も続いてきました。

 ですが今回の13回大会は、これまでとも、そして我々が知る13回大会とも、どうも違うようです。

「はい……。そうすることで、私の望む、私なりの人類排除が為せるなら……」

 果たして彼女、TS転生者のガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソが、この大会、この世界にどのような波紋をもたらすのか?

 今回のカードは、元ネオ・イタリア代表、無所属のガンダムファイター『ミケロ・チャリオット』の『ネロスガンダム・スクラップ』。

 それでは今回のガンダムファイト、Ready Go!!



 ある一室。そこで数人の男が向かい合っている。

 一人の男が椅子に縛り付けられており、それを数人の男がにらみつけている状況だ。

 

 そして、一人の偉そうな、だが胡散臭そうな男が口を開いた。

 

「我々の招待を受けてもらって、感謝している。ミケロ・チャリオット君」

「何を言ってやがる、無理やり連れてきたくせしてよ。まぁ、あの臭い豚箱から出してくれたことには感謝するがな。それで、俺に何をさせたいんだ?」

「物分かりがよくて助かるよ。君には、この男を連行してきてもらいたい」

 

 そう言って男が出したのは、一枚の、兄妹が映った写真だ。

 それを見たミケロが、それを一瞥したところで、男のほうに向きなおって聞く。

 

「こいつは……ネオ・メキシコのチコ・ロドリゲスか? 奴さんは確か……」

「そうだ。ネオ・ジャパン代表のドモン・カッシュとの戦いで機体が大破、死亡したとされていて、我が国の政府の首脳もそう信じている。だが、我々情報部は、実はそれは虚偽の情報で、彼はひそかに逃げ延びていると突き止めたのだよ」

「へぇ……」

 

 ミケロがそう声をあげる。それに対し、男は表情を変えず、うなずいて答えた。

 

「奴が本当に死んだのならどうこうすることもなかったが、生きのびているなら話は別だ。敗戦して我が国に泥を塗ったばかりか、それまでガンダムファイトから逃げ続けていた奴を許すわけにはいかない。ただちに我が国に連れ戻して、その罪にふさわしい罰を受けさせなければならん、と、我々のオフィサーがおっしゃっていてね」

「それで俺に、奴を捕まえてきてほしい、と」

「そういうことだ。生死や手段は問わんが、その代わり、任務中に君に何が起こっても、我々……ネオ・メキシコは関知しない」

 

 この手の輩が言う常套句だな、とミケロは皮肉な笑みを浮かべて口を開いた。

 

「それで、捕まえたら何をくれるんだ? こんな危ないことをするんだ。ただ働きなんてごめんだぜ」

「わかっている。この任務が成功したら、ネオ・イタリア政府にかけあって、君の身の安全を保障すると同時に、それなりの報酬金も用意しよう」

「わかった。この俺の金の足にかけて、その依頼、クリアしてきてやるよ」

 

 そして部屋は再び闇に包まれた。

 

* * * * *

 

 俺……ジャンヌ・エスプレッソは、ネオ・アメリカの直轄地の南端にある小さな町に来ていた。

 俺と師匠……東方不敗・マスターアジアの目指す『地球からの人類排除』のための同志を求めてのことだ。『彼』はガンダムファイトのせいで良い目にあっていなかったし、賛同してくれるとは思うのだが、こればかりは実際に会ってみないとわからないな。

 

 さて、街のあちこちには、おいしそうな食べ物を売っている店がたくさん。思わずつばを飲み込んでしまう。

 デビルガンダム細胞で作られたこの体は、特に食事をとる必要はないが、それでも食欲は普通にあるのだ。

 

* * * * *

 

 ジャンヌが小さな町に立ち寄る数日前、彼女がデビルガンダムに取り込まれた直後。

 

 東方不敗・マスターアジアは目の前に立つデビルガンダムの強く、美しい姿に驚愕していた。

 

「おお……この姿は……! そうか! デビルガンダムのコアに真にふさわしいのは女性ということだったのか! これなら、これなら人類を排除し、地球に自然を取り戻すことも……」

「いいえ、すみませんが、師匠の望む人類排除は諦めてもらわなければなりません」

「ぬぅっ……!?」

 

 声とともに、背後から現れた気配に振り向いた彼が見たのは、先ほどデビルガンダムに取り込まれた少女と寸分違わぬ人物だった。

 

「おぬし、その姿は……そうか、DG(デビルガンダム)細胞でクローンを生み出したのか」

「はい。私の本体はデビルガンダムの体内でその制御に集中しています。私はその本体の代理として生み出された存在。といっても、自我や記憶は、本体と同じものですし、私の見聞きしたものは、本体にも伝わるようになってますが」

「なるほどな」

「はい。それで、ここからの人類排除……いえ、人類追放計画は、私の考える通りに変更させていただきます。あなたの思う通りの、人類を絶滅させての人類排除は、少なくともあなたにとっては悲劇しか生まないから」

 

 そのジャンヌの指摘に、マスターアジアは面白くなさそうに鼻を鳴らした。

 

「ふん。わかったようなことを言う」

「いえ、感じて、考えたことです。師匠の拳から、師匠の心の慟哭を感じたことから」

「なんだと……!?」

 

 マスターアジアを目をむいた。確かに一流の武闘家は、拳を交えることで相手に自分の想いを伝えることができる。

 だが、こんな愛弟子よりも若く、実力も自分より劣る娘が、その境地に達していようとは。もしかしたら、これは天が彼女に与えたもうたことか。そしたら彼女は、天がこの地球に与えた救いなのかもしれない。

 

「まさかおぬしもその境地にたどり着いているとはな。大した娘だ」

「いえ。私はただ、師匠も、この世界に生きる全ての人々も、そしてこの世界が大好きなだけです。その愛が奇跡を生んだだけですよ」

「そうか。して、わしの計画がダメならどうする気だ?」

 

 その彼の問いかけに、ジャンヌは視線をそらすことなく答えた。

 

「人類を地球から追い出すのには同意しますが、人類を抹殺するまでのことは必要ないと思います。人々を宇宙に追いやり、地球を閉ざせば……。デビルガンダムの力ならそれが可能なはずです」

「ふむ……よかろう。うぬの意見を受け入れよう。地球が青き姿を取り戻すなら、その過程にこだわるつもりはないからな」

「ありがとうございます」

 

 そして、話は現在に戻る。

 

* * * * *

 

 そして俺が店からフランクフルトを買い、食べながら歩いていると……。

 

「何をするんだ!」

「黙れ、不法移民者ごときが!」

 

 町の一角が、何かもめているようだ。その声に何か気になるものを感じ、行ってみると……。

 警官らしき男たちが、もう一人の男に暴行をふるっている。その暴行されている男は……なんてことだ、チコ・ロドリゲスじゃないか! ネオ・メキシコのガンダムファイター。今は死亡扱いで、ネオ・メキシコの追っ手から解放されたはずだ。

 とはいえ、放っておくことはできない。俺がここに来た目的は、彼と接触することだしな。

 俺は手元からあるものを取り出して、警官に向けて投げつけた。地面にぶつかると同時に白煙が噴出し、周辺を白く染め上げる。そして急いでその中に飛び込んだ。

 

「チコ・ロドリゲス、こっちです!」

「君は? どうして俺の名前を?」

「話はあとです。早く!」

 

 そして俺たちは白煙の中、逃げ出していったのだった。

 

* * * * *

 

「そうですか……。違法入国で、このネオ・アメリカ側に……」

「あぁ。妹の具合が悪化してきてな。こちらなら医療も充実していると思って、入国したんだ」

 

 警官らしき奴らから逃げ出した俺は、この町の片隅にあるぼろ小屋で、チコと会話をしていた。

 

 そういえば、チコの妹は、重病で余命が一年しかないという話だったな。それは兄であるチコとしては、心配だし助けたいと思うだろう。彼らが密入国したいと思っても、それを責めることはできまい。

 しかし、これは、彼を説得するのは諦めたほうがいいか……? いくら俺の考えに賛同してくれても、そんな余命いくばくもない妹を置いていくことはできないだろう。それを責めることも、無理やり来てもらうことも、俺にはできない。

 ……待てよ、チコの妹の病といえば……。

 

「ん、どうしたんだ?」

「いえ、なんでも……」

 

 と、そこで!

 突然扉がぶっ飛ばされた! こちらに飛んでくる扉を、俺は持っていた剣で真っ二つにして、二人に衝突するのを阻止した。

 

「へへへ、見つけたぜ、チコ・ロドリゲス……!」

 

 そして扉の向こうから聞こえてくる、聞き覚えのある声。

 その声の主は……!

 

「お前は……!」

「ミケロ・チャリオット! 元ネオ・イタリアのガンダムファイター!」

 

 そう。ネオ・イタリアの代表で、ドモンの最初の対戦相手だった男!

 あの戦いの後、ネオ・イタリア警察につかまっていたはずだが……。

 

「元ネオ・イタリアだったのは昔の話さ。今はただの雇われガンダムファイターだ。さて、ネオ・メキシコのお偉いさんがお怒りのようでな。俺と一緒にネオ・メキシコに帰ってもらうぜ。チコ・ロドリゲス」

「くそ、一体どこから、俺が生きていることがわかったんだ!?」

「チコ、ここは私に任せて、早く逃げてください!」

「す、すまない! 恩に着る!」

 

 俺はそう言うと、改めて剣を構えて、ミケロと対峙した。

 それを見て、奴はにやりと笑った。

 

「へぇ、小娘、お前もガンダムファイターだったのか。遊んでやりたいところだが、今は依頼のほうが優先なんでな!」

 

 そう言って、ミケロは俺を無視して、脱出しようとするチコに襲い掛かるが……。

 

「させないと言っています!」

 

 そのミケロの前に立ちはだかり、剣を横一文字になぐ。奴はそれをたやすくかわして距離をとった。

 この間に、チコと妹さんは逃げられたみたいだが、それでもミケロは余裕の笑みを崩しはしなかった。

 

「なかなかやるじゃねぇか。だが、追っ手が俺だけだと思ってねぇか?」

「……まさか!」

 

 ミケロの奴、邪魔が入った時のために、別の追っ手を用意していたのか! うかつだった!

 自分のうかつさを呪いながら、二人を追う準備をしようとする俺だが……。

 

「さっきの言葉を返してやるよ。させねぇと言わせてもらうぞ!」

「くっ……!」

 

* * * * *

 

 妹を抱きかかえ、町の裏路地を逃げていくチコ・ロドリゲス。

 仮の住処から大きく離れ、もう大丈夫だと、安心して息を吐く彼だが、それはまだ甘かった。

 

「!!」

 

 彼の前方から、ネオ・メキシコの軍服を着た男たちが近づいてきたのだ。

 

「チコ・ロドリゲスだな? ネオ・メキシコ情報部だ。我々と一緒に来てもらおうか」

「くっ……」

 

 男たちが一歩を踏み出し、チコは一歩後退した。そして、男たちが二歩目を踏み出したところで、チコは逃げようと後ろを振り向こうとするが、そこからも男たちが……!

 

「我々も手荒なことはしたくない。大人しく捕まったほうが身のためだ」

「くそ、こんなところで……!」

 

 と、そこに。

 

「待てい!!」

 

* * * * *

 

 ミケロをなんとかまいた俺は、チコたちの後を追っていた。無事だといいのだが……。

 必死に走る俺が、なんとかチコたちに追いつくと、そこには……。

 

「う、うぐ……」

「こ、これは……」

 

 地面にはいつくばっている、ネオ・メキシコの追っ手と思われる男たちと、妹さんを抱きかかえたままたたずんでいるチコと、その横のもう一人の男。その男は……。

 

「ドモン・カッシュ!」

 

 そう、Gガンダムの主人公で、尊敬する東方師匠の愛弟子であるドモン・カッシュだった。

 その彼は、俺をにらみつけて口を開いた。

 

「ふん、ウルベから、ミケロがこの町に潜伏して悪さを図っていると聞いていたから来てみれば、やはりか。……お前も、ミケロの一味か?」

「いえ、そんなことはありません。私はこのチコを守り、逃がしてあげたんです」

 

 俺は焦る心を落ち着けてそう答える。ガンダムファイターとして戦いを挑まれるならまだしも、こいつの仲間と思われるのは心外も心外だ。

 ドモンの厳しく鋭い視線を真っ向からとらえ続ける。やがて、それでわかってくれたのか、警戒を解いてくれた。

 

「そうか。疑って悪かった。だがその身のこなし、かなりの実力のあるファイターと見た! 俺とガンダムファイトを……」

 

 と、そこに!

 

 街の一角を割り、一機のMF(モビルファイター)が現れた! あれは……あちこち変わってはいるが、ミケロのネロスガンダム!?

 

『ちきしょう、役立たずどもが! それならこのネロスガンダム・スクラップでぶっ殺してやる! 生死は問われなかったからなぁ!』

「おのれ、ミケロめ! 往生際が悪い! レイン、シャイニングを……」

 

 シャイニング・ガンダムを呼ぼうとするドモン。しかし。

 

『ごめんなさい、ドモン! シャイニングは今、整備中で動かせないわ!』

「なんだと!? えーい、こんな時に……!」

 

 つまり、今回ドモンは出れないというわけか。それなら……。

 

「ドモンさん、ここは私に任せてください」

「何、いいのか?」

「はい」

 

 そう言ってほほ笑む。乗りかかった船だしな。

 そして俺は、ミケロのネロスガンダム・スクラップに向きなおる。そして。

 

「来て! ガンダムオルタセイバアアアァァ!!」

 

 その声とともに、天から光が降り注ぎ、そこから一機のガンダムが降りてくる。まるで天使……いや、堕天使のように。

 黒い翼を持ち、黒い鎧を身にまとう細身の姿。それはまさに、黒衣の女騎士のごとし。

 

 これが俺……ジャンヌ・エスプレッソの、ガンダム・ピュセルの新たな姿、ガンダム・オルタセイバーだ。

 それに乗り込むと、ファイティングスーツを苦悶の声を挙げながら着込み、戦闘態勢をとる。

 

「あなたはガンダムファイターではないけど、あえて言わせてもらうわ! ガンダムファイト!」

『レディー!』

「「ゴオオオォォォォ!!」」

 

 そして俺のオルタセイバーと、ミケロのネロスガンダムSC(スクラップ)とのガンダムファイトがはじまった!

 

 ネロスガンダムSC(スクラップ)のパンチとキックを組み合わせた見事なコンビネーションを、俺はオルタセイバーの運動性を活かしてかわしていく。そしてその隙をついて、ビームセイバーを振るおうとするが……。

 

 ガシィ!!

 

「なっ!?」

 

 ミケロの、まさに目にもとまらぬ蹴りで、そのビームセイバーを叩き落とされてしまった。俺はとっさに、右腰の予備のセイバーを抜いて、その場を飛びのく。

 こいつ……あの蹴りにさらに磨きをかけている!? 『男子三日会わざれば刮目してみよ』というが、それがこんな奴にも該当するとは!?

 

『どうだ驚いたか! こんなネロススクラップだがな! 足回りだけはさらに強化されてるんだよぉ!! 受けな! 必殺!! 銀幻の脚ぃ!!』

 

 ネロスガンダムSCは突進してくると、まさに銀色の幻と呼ぶにふさわしい、数百発の蹴りをオルタセイバーにはなってきた!

 俺は必死にそれを交わし続けるが、かわしきれずに一撃をもらってしまう! 追撃をもらう前に飛びのくことができたのは、まさに僥倖だ。

 

『なかなかやるじゃねぇか。ドモン・カッシュと戦った時を思い出して、身体が熱くなってくるぜぇ……!』

「あなたもね。ただの悪党と思っていたけど、やるじゃない。ならば私も技を見せてあげるわ。きなさい!」

『おもしれぇ!』

 

 構える俺のオルタセイバーに対し、ミケロのネロスガンダムSCは再び突進してきた。そして。

 

『とどめだ! 銀幻の脚ぃぃぃぃ!!』

 

 あの無数の蹴りを放ってきた! それに対し俺は……!

 

「流派東方不敗亜流! スプラッシュソードォォォォ!!」

『なっ!?』

 

 無数の突きを放ってそれに対抗した! 俺は本体がデビルガンダムのコアになったあと、東方師匠から流派・東方不敗を教わった。

 付け焼き刃的なものであったが、DG細胞による影響からか、半分ほどではあるが、その技をある程度体得することができた。その技を未完ながらも自分の技として昇華することも。

 

 この技、スプラッシュソードもその一つ。元はドモンがチボデーとの再戦で見せたゴッドシャドーだ。アレの応用で、無数の突きを放つようにしたのだ。

 

* * * * *

 

 そのガンダムオルタセイバーのスプラッシュソードを見たドモンは、真剣な表情を浮かべた。彼女の技が、自分の使う流派・東方不敗ととても似ているように感じたのだ。

 

「あの技……あの娘も、俺と同じく、師匠から流派・東方不敗を習ったのか……」

 

* * * * *

 

 はてしなく続く、俺が放つスプラッシュソードの無数の突きと、ミケロが放つ銀幻の脚の無数の蹴りの激突。

 俺の無数の突きは、無数の蹴りをことごとく迎撃し続けた。

 さすがに本人が足回りを強化したというだけのことはあり、スプラッシュソードをもってしても、迎撃し続けるので精いっぱいだ。だが、負けるわけにはいかない!

 俺は必死に、スプラッシュソードを放ち続けた。

 

 そしてついに! 俺のビームセイバーの突きが、ネロスガンダムSCの脚を貫き、砕いた!!

 

『ぎゃあああああ!』

「やりましたね……。自慢の脚をやられたら、あなたももうおしまいですね」

 

 そう言って俺は一歩を踏み出す。そこに。

 

『ま、待ってくれ。あんたも覚えてるだろ? ガンダムファイト国際条約第二条……!』

「えぇ、覚えていますよ。『敵のコクピットは狙ってはいけない』……でも、今のあなたはガンダムファイターではありません。ただの雇われファイターです。なら、別に第二条を適用する必要はありませんよね」

『ぐ……』

 

 さらに一歩を踏み出す。それでミケロも覚悟を決めたのか。

 

『や、やってやるぅぅぅぅ!! 俺も元はガンダムファイターだあああぁぁぁぁ!!』

 

 ミケロは右脚を破壊されたネロスガンダムSCを突進させてきた。そして、壊されて使い物にならない右脚で膝蹴りを放ってきた!

 

 そこに。

 

「ミケロ……あなたの、わずかに残っていたガンダムファイターの魂に敬意を表し、この技で応じます! 必殺!!」

 

 折りたたまれていた翼が展開し、ガンダムオルタセイバーがエメラルドグリーンに輝く!

 

「絶対勝利・エクスカリバーン!!」

 

 俺のオルタセイバーも突進! すれ違いざまに、ネロスガンダムSCを横一文字に一刀両断する。

 そして爆発!!

 ガンダムファイトは俺の勝利で幕を閉じた。

 

 実はこの時、俺はわざとコクピットを狙わなかった。心の中にわずかながらもガンダムファイターとしての魂が残っていた彼に感嘆した俺は、彼が生き残るか死ぬかを天に預けたのだ。もし天がミケロのガンダムファイターの魂に感じ入ったなら、彼は助かるかもしれない。天に見放された死んだとしたら、その時はその時。極悪人に天罰が落ちただけのことである。

 

* * * * *

 

「それではドモン。ジーナさんのことはよろしくお願いします」

「あぁ、わかった。任せてもらおう。ネオ・ジャパンのほうには既に連絡をしておいた」

 

 そう返事をするドモンに、レインが横やりを入れてくる。

 

「連絡したのはあなたじゃなくて私よ、ドモン」

「わ、わかっている! 無事に彼女をネオ・ジャパンコロニーに連れ帰り、最先端医療を施してもらえるようにする」

「ありがとう、ドモン・カッシュ。お前には二度も助けられた」

「気にするな。同じガンダムファイターとしてのよしみだ。妹さんが快方に向かった暁にはすぐに連絡する」

 

 そしてドモンとレインは、チコの妹、ジーナを乗せた救急車と共に去っていった。

 そう、『超級!』を読んで、ジーナの病はネオ・ジャパンの最先端医療で治せることを知っている俺は、ドモンに頼んで、ジーナをネオ・ジャパンに連れ帰って、治療をしてもらうようにお願いしたのだ。

 ドモンは、俺が東方師匠から流派・東方不敗を習った、いわば同門の身であることからその願いをすんなり聞いてくれた。本当にありがたいが、その俺が師匠と共に『地球からの人類追放』のために動いていることを思うと、少し申し訳ない気分である。

 

 さて、ドモンたちが去っていったところで、俺は改めて、チコのほうを振り返った。

 

「それで本当に、私たちに力を貸してくれるんですか? 四天王の一人になってくれると?」

「あぁ。地球に降りて過ごしてきてわかった。地球も汚され、傷ついていると。もしかしたら、ジーナの病状が急に悪化したのはそのせいもあるのかもしれない。いわばジーナは、そうした人類の汚染や破壊の犠牲者なのかもしれないと思った」

「……」

「正直、人類を宇宙に追放するというやり方には異を唱えたいところもあるが……だが、犠牲者を出すことなく、それを果たして、地球の環境をよくするというのであれば、ジーナを助けるため、ジーナのように汚染や破壊のために苦しむ人たちのため、俺がそれに力を貸すのを拒む理由はない」

「そうですか……ありがとうございます」

 

 そう言って俺は懐からカプセルを取り出した。

 

「それを俺に感染させるのか?」

「いえ。あなた本人に感染させるつもりはありませんよ」

「?」

 

 そして俺はカプセルを地面に置いた。そして祈る。

 

「目覚めて、そして進化して……!」

 

 すさまじい揺れ。そして地面から一機のモビルファイターが現れた。それは……。

 

「これは……俺のテキーラ!?」

「いえ、これはもう、テキーラガンダムではありません」

「なんと!?」

 

 俺たちの目の前で、テキーラガンダムはその姿を変えていく。

 その腕が、脚が、そして頭部、胴体が新たな姿へと変化していった。

 

 そして現れたのは、テキーラガンダムの面影を残しながら、その鋭さと力強さを増し、その一方、邪悪さを残したガンダム。

 そう。これが……。

 

「これがあなたのガンダム。テキーラガンダムが、DG細胞によって進化した機体。ガンダム・ヘルトライデントです」

「ガンダム・ヘルトライデント……」

「改めて、これからよろしくお願いします。デビルガンダム四天王ナンバー3、チコ・ロドリゲス」

「あぁ」

 

 そう言葉を交わし、握手を交わす俺たちの姿を、俺のガンダム・オルタセイバーと、チコの新たなガンダム、ガンダム・ヘルトライデントが見下ろしていた。

 




* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!
四天王最後の一人を探すのと並行し、ガンダムファイトの旅を続けるジャンヌは、オランダの地を訪れます。そこで彼女は、ガンダムファイトに挑みながらも、戦いを避ける奇妙なファイターと出会うのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガン世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第2話『変幻自在の逃走者! 変わり者ファイターに隠された心』

にReady Go!!

※次の更新は、5/8 12:00の予定です!


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2nd Fight『変幻自在の逃走者! 変わり者ファイターに隠された魂!!』

 皆さん、こんにちは。ストーカーです。
 そういえば、『プル似』最終回の正解をまだ発表していませんでしたね。この場を借りて発表させてもらいましょう。
 正解は、ガンダムZZ最終回『戦士、再び……』からです。後、重戦機エルガイムの最終回『ドリーマーズ・アゲン』も含んでおりました。
 見事正解した人はいましたでしょうか?
 
 さて、良ければ皆さんに、ガンダムファイトについて説明させていただきましょう。

 地球から宇宙に出た人類。彼らが築いたコロニー国家。
 その国家間の全面戦争を避けるため、主導権をガンダム同士の格闘大会で決める。
 これがガンダムファイトです。
 スポーツの皮をかぶった戦争、地球を犠牲にして行われる血を伴わない争い。
 人類はなんて戦争システムを作り出したものか。
 それが、これまで12回も続いてきました。

 ですが今回の13回大会は、これまでとも、そして我々が知る13回大会とも、どうも違うようです。

「ミケロ……あなたの、わずかに残っていたガンダムファイターの魂に敬意を表し、この技で応じます!」

 果たして彼女、TS転生者のガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソが、この大会、この世界にどのような波紋をもたらすのか?

 さて、今回のカードは、ネオ・オランダ代表、ルドガー・バーホーベンの『ネーデルガンダム』。

 それては今回のガンダムファイト、Ready Go!!



「ここが、オランダのキンデルダイクかー……」

 

 俺……ジャンヌ・エスプレッソは、周囲の絶景を見て、思わず素の口調に戻りながらつぶやいていた。

 今は、最後のデビルガンダム四天王の情報収集をチコに任せ、ガンダムファイトのため、ここオランダを訪れているところだ。俺も一応、ガンダムファイターだからな。

 

 それにしても、本当にこのキンデルダイクに並ぶ風車の群れは絶景だなぁ。本当に癒され、自分がデビルガンダム四天王であることすら忘れてしまう……いやいや忘れていてはダメだろ俺。

 

「ん?」

 

 と、そこで俺は違和感に気づいた。風車のうちの一体が、他の風車とほんの少し違うのだ。普通の人ではまず気づかないほどだが。俺がDG(デビルガンダム)細胞クローンだからこそだろうか。

 

 とはいえ、ずっと見ていても、特に変化はない。違和感は気のせいかな。

 そう思って、俺はきびすを返して、先に進もうとした。

 

 その時!

 

 ガシャガシャガシャ!

 

 なんということだ! その違和感を感じた風車が突然変形して、ガンダムになったじゃないか!

 そういえば……思い出した!

 原作でのネオ・オランダのガンダムはネーデルガンダム。風車に変形して予選をスルーして決勝まで進んだ奴だと。

 そのことを思い出した俺を横目に、ネーデルガンダムはそのビームサーベルを振り下ろしてきた! 俺のガンダムファイターとしての気に反応したのか!? それならば!

 俺はその攻撃をかわし、そして。

 

「来てええええ!! オルタセイバアアアァァァァ!!」

 

 くるりと一回転してガンダムオルタセイバーを呼び出した。

 そして乗り込み、ビームセイバーを抜き放つ。

 

「それじゃ行きます! ガンダムファイト、レディーゴオオオォォォ!!」

 

 そして、俺のガンダムオルタセイバーと、ネオ・オランダのネーデルガンダムとの戦いが始まった! しかし、その決着はあっけなくついた。

 

 ビームセイバーの一撃で、右肩の装甲がはぎとられると……。

 

「なっ!?」

 

 ネーデルガンダムは突然、煙幕を発したのだ。そして煙幕が晴れた時には、目の前には誰もいなかった。戦闘を避けるという、元々の戦略を思い出したのだろうか?

 だが、逃げられたのなら仕方ない。俺はビームセイバーをしまい、オルタセイバーから降りた。

 

* * * * *

 

 対戦相手のネーデルガンダムに逃げられてしまった俺は、仕方ないので、ネーデルを探しながら、オランダ観光を続行することにした。

 

 ガンダムファイトや人類の所業による汚染で荒れ果てている地球ではあるが、このオランダ地域は、それほど汚染されてはいないようだ。川を流れる水もとてもきれいだし、空気もとても清々しいし、緑も豊かだ。

 東方師匠がいたら、この美しさに感激していたかもしれない。もしかしたら、ネオ・オランダの代表が必死にファイトを避けているか、その影響だろうか。

 

 そんなことを考えながら歩いていたら、夕方になってしまった。どこか宿を探さないと。

 そして町に戻って歩いていると、ある宿屋が目に入った。それほど大きくないが、小ぎれいなのはもちろん、なぜか気になるものがあったのだ。

 

 そして入ってみると、カウンターには一人の男が。ぱっとしない、大人しそうな男性だが、俺にはわかった。筋骨たくましく、その気配は一流の格闘家だと感じさせる。

 もしや……?と思ったが、その疑問をとりあえず心の奥に押し込んで、部屋を取ることにした。微笑みを浮かべてカウンターへ向かう。

 

「いらっしゃい、お嬢さん。お泊りかい?」

「はい。どれくらいいるのかわかりませんけど、とりあえず一週間ほど」

 

 そう言って、ネオ・ノルウェーのガンダムファイト委員会からもらった資金の一部を出す。

 

「ありがとうございました。それでは、13番の部屋へどうぞ……っ」

 

 と、その時だ。突然その男が、右肩を押さえてうめいたではないか!

 

「どうかしましたか?」

「い、いえ、大丈夫です。仕事で痛めてしまったんですかね、ははは……」

 

 そう言って男は部屋の鍵を、俺に渡してきた。俺はそれを受け取って、あてがわれた部屋に上って行ったが、その中である疑問を深めていた。

 

 もしや彼が、ネオ・オランダのガンダムファイター……?

 

……

………

…………

 

 そして、真夜中。俺はある音で目が覚めた。ガンダムファイターである俺にはわかる。パンチやキックなどの演武をしている音だ。

 その音が気になって、窓を開けると……。

 

 いた。

 

 あの宿屋の主が、上半身裸で、パンチやキックを繰り出していた。やはり彼が、ネオ・オランダのファイターで間違いないようだ。

 その様子からは、燃える闘志を抱いているが、何かの理由で、それを抑え込んでいるみたいだ。何か事情があるのだろうか?

 

 やがて、宿屋のほうから一人の女性がやってきて、男に何かを会話する。男は不本意そうにうなずくと、服を着て宿屋に戻っていった。

 

 色々二人の関係や、ファイトを避ける理由について疑問は尽きないが、二人の様子から、それを聞くのは野暮だろう。俺は、そっと窓を閉じて、眠りについた。

 

* * * * *

 

 そして一週間が過ぎた。だが、ネーデルガンダムはあれから一度も姿を現さなかった。やはり、戦わずに予選をやり過ごす戦略なのか……?

 なら仕方ない。ここでのファイトは諦めよう。俺は旅の準備を整え、部屋を出ていった。

 

 降りるとカウンターには、あの男と、昨日のあの女性がいた。旦那と同じくらいに大人しいものの、どこか鋭さを感じさせる女性だ。年のころは、男より少し若いぐらい……20台後半だろうか?

 

「あぁ、お嬢ちゃん、チェックアウトかい? もうそんなに経ったか」

「はい、お世話になりました。オランダを出て、次の地域に行く予定です」

「そうか……」

 

 そこで男は何かを言おうとしたが、そこで女性が腕をつかんで引き留めようとする。そこで彼は、何かを飲み込むような表情を浮かべ、そして言った。

 

「いや……なんでもない。良い旅をしてくれよ」

「……ありがとうございます。それでは、次に会う時まで、お元気で」

 

 そして俺は、宿屋を出ていった。

 

 ……

 ………

 …………

 

 俺は再び、キンデルダイクの風車通りの前を通っていた。この町を出る前に、この景色をもう一度見たいと思ったからだ。いやー……本当に癒される。

 

 それにしても、四天王探しをしているチコからの連絡はまだ来ないな。まぁ、そう簡単に見つかるものでもないからな。実力者で、ガンダムファイトや今の社会に疑問を持っている者、という条件があるから。

 

 まぁ、気長にやるしかないな。最悪、師匠、俺、チコの三人で計画を進めるしかないかもしれないが。

 ……と、そう思っていると。

 

 殺気、いや闘志を感じた!

 俺が飛びずさると、そこにビームサーベルが振り下ろされる!

 

 後ろを振り向くと、そこにはあのネーデルガンダムが! そこから聞こえるのは聞き覚えのある声。

 

『やはり、君がガンダムファイターだったのだな。君がここを出る前に、一度ファイトを望みたい!』

「いいでしょう。私も、ファイトをすることなく出るところだったので、もやもやしていたところです!」

 

 そして、オルタセイバーを呼び出し、対峙する。

 だが、ファイトが始まろうとした、その時!

 

「待って! ルドガー! ルドガー・バーホーベン!!」

 

 あの女性が駆け付けてきたではないか!

 

「戦いをやめて、ルドガー! ネオ・オランダの委員会からの指示は、ファイトのスルーだったはずよ!」

『止めるな! 例え、君が委員会から派遣された監視役でも、このファイトの邪魔だけは……』

 

 しかし、その男……ルドガーの言葉に対し、女性は首を振った。

 

「違うの! 私はあなたに死んでほしくないのよ! あなたは、一年前のデビルガンダムとの戦いで、ファイトをするたびに寿命を削るような大けがを……」

「!!」

 

 それを聞いた俺は衝撃を受けた。まさか彼が、ルドガーがデビルガンダムの戦いの犠牲者だったとは。その時、俺は四天王ではなかったとはいえ、申し訳なさすぎる。どうしたら彼への償いになるのか……?

 その俺をよそに、二人の会話は続く。

 

『わかっていた……。俺も君の愛に気づいていた。君が俺の身を案じていたことも。だから今まで、闘志を押し殺して、極力ファイトしないように心がけてきた。だが、この熱く燃える思いを封じ込めることはできなかったのだ!』

「ルドガー……」

『許してくれ、アマリア……。闘志を抑えきれず、再びファイトに身を置き、戦いに身を置くこの俺を……!』

 

 そしてルドガーは、ビームサーベルを俺へと向ける。

 

『お嬢さん! 改めて君にファイトを申し込みたい! 受けてくれないか。この俺の闘志のために!』

 

 その申し込みを受けて、俺は少し迷う。受けて、寿命を縮ませるファイトをしていいものかどうか。

 ……いや、愚問だな。俺がガンダムファイターで、目の前に何を犠牲にしてでも、ファイトを望む者がいるなら、俺ができる償いは一つだ。

 

「わかりました、受けましょう。ただし、一つだけ条件があります」

『なんだ……?』

「この一戦で、その闘志を終わりにしてください。もちろん、あなたを満足させるだけのファイトができるように頑張ります。だから、これでもうガンダムファイトから手を引いてください。アマリアさんのためにも……」

『……』

 

 そして数秒の沈黙。

 

『わかった、恩に着る。ガンダムファイト!』

「レディー……ゴオオオォォォォ!!」

 

 かくして、俺とルドガーの、ルドガーにとって最後のガンダムファイトが始まった!

 

* * * * *

 

 ネーデルガンダムがビームサーベルを振り下ろす。それをガンダムオルタセイバーはひらりとかわし、ビームセイバーで切りかかる。ネーデルはそれを受け止めるも、オルタセイバーが左手で抜いたサブのビームセイバーで、そのビームサーベルを弾き飛ばされてしまう!

 

「はあっ!!」

 

 オルタセイバーは右手のビームセイバーで斬撃を放つも、なんとネーデルガンダムは胸の風車を取り外し、それでビームセイバーを受け止めた!

 

「行くぞ! ローテレンデ・リング!!」

 

 さらにその風車を回転され、逆にビームセイバーを弾き飛ばす! そして横なぎにその回転する風車をふるってきた!

 

「くっ!」

 

 それをまともに受ければ、機体を真っ二つにされかねない! オルタセイバーは後ろに飛びずさり、それをなんとかかわした。だが完全にかわしきることはできずに、腹部に傷を作ってしまう。

 

「なかなかやりますね……」

「君もな……。だが、これで終わりではないだろう? 俺の闘志は、まだまだ燃え尽きてはいないぞ!」

「もちろんです!」

 

 そこでジャンヌ、ルドガーの二人とも笑みを浮かべたのは、なんの偶然か? それとも、ガンダムファイターだからこそ、か。

 そして、ネーデルガンダムは風車を胸に戻した。そして再び構える。

 

「これを受け止めてみてもらおう! 必殺! ネーデルタイフーン!!」

 

 すると、その風車が高速回転をはじめ、大きな竜巻を生み出したではないか! その竜巻は、巨大な恐るべき風の竜と化し、ジャンヌのオルタセイバーに襲い掛かる!

 

「くっ……!」

 

 ジャンヌは必死にその風圧に耐えるが、ガンダムオルタセイバーは少しずつ、風の勢いに押され、後退していく。

 

 一方のルドガーも無事ではない。

 

「ぐはっ……! まだだ……俺は……まだやれるぞ……!」

 

 血を吐きながら、さらにネーデルタイフーンを放ち続ける。

 そのルドガーの生み出す竜巻に、ジャンヌは必死に耐えるが、それも限界が近づいてきた……。

 

「このままでは……何か打開策を……」

 

 と、そこで、ジャンヌは一つの、流派東方不敗の技を思い出した。

 

「あの技を応用すれば……でもできるの……? 失敗すれば、私はこの竜巻に飲み込まれる……」

 

 だが、そこで瞳に闘志をさらに宿らせる。

 

「ううん、結果がどうでもやらなければ! そうしないと、彼の闘志は満足しない!!」

 

 そして構えて、気合をこめる。その気合に合わせて、闘気が立ち上り、それはやがてガンダムオルタセイバーを取り巻く渦となる。

 

「いきます!」

 

 そして突進! ジャンヌの右回りの渦と、ルドガーが放つネーデルタイフーンの左回りの渦がぶつかりあう!!

 その渦同士は打ち消しあい、四散した。そこをジャンヌは見逃さない! そのままネーデルガンダムに突進する!!

 

「必殺! 絶対勝利・エクスカリバーン!!」

 

 そして一閃! ネーデルガンダムの頭部を斬り飛ばした!

 

* * * * *

 

 そして、例の宿屋の前。

 

「負けたよ、お嬢さん。まさか俺渾身のネーデル・タイフーンを打ち破るとはな」

「いえ、一か八かでした。あれが失敗していたら、私の負けでしたでしょうね」

 

 そう苦笑しながら、松葉づえをつくルドガーに言う俺。

 そう、本当に一か八かだった。もしあの技……ぷち超級覇王電影弾に失敗していれば、やられていたのは俺のほうだったろう。それに、もし成功していても、ルドガーのネーデル・タイフーンに打ち勝てなければ、やはり俺の負けだった。本当に賭けだったのだ。

 

 だが、その賭けに勝った代償はちょっときついものがある。その反動で、身体が悲鳴をあげているのだ。はっきり言ってすごい痛い。もしこの体がDG細胞で作られていなければ、良くて寝たきり、悪ければ命を落としていただろう。

 

 だけど、こんな代償が大きい賭けに挑もうと思えたのは、やはりルドガーの闘志のおかげかもしれない。

 

「ゆっくり養生して、身体を治してくださいね」

「あぁ、わかった。アマリアもいるしな。そして一つ決心したよ」

「?」

 

俺が首をかしげると、彼は晴れやかな笑みを浮かべて言った。

 

「身体を治して、そしてガンダムファイトのコーチになる。そして俺より、いや誰よりも強いガンダムファイターを育て上げてみせる。必ず、彼をガンダムファイトに優勝させてみせるよ」

「そうですか。素敵ですね」

 

 そう俺は複雑な笑みを浮かべて応えた。ガンダムファイトが地球に及ぼす影響を知る俺としては、複雑な心境だが、ガンダムファイトは地球上でしなければいけないということもあるまい。地球に影響が出ない形でやるのなら全然OKだ。それに、聞いていて、とても素敵な目標だと素直に思った。

 

「楽しみにしていますね。あなたの育てたガンダムファイターが大会に出る時を」

「あぁ」

 

 そして握手をかわし、俺はネオ・オランダを去って行った。

 その空は、ルドガーの心のように、青く晴れ渡っていた……。

 




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* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

アフリカの地を行くジャンヌは、そこであるファイターの襲撃を受けます。
そして、彼と和解したのもつかの間、そこで彼女は、ケニアエリアの自然を巡る陰謀に、彼とともに巻き込まれてしまうのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第3話『誇りを取り戻せ! 自然のために魂を売った(ガンダム)ファイター!』

にReady Go!!
次の更新は、5/11 12:00の予定です! お楽しみに!


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3rd Fight『誇りを取り戻せ! 自然のために魂を売った(ガンダム)ファイター!』

 皆さん、こんにちは、ストーカーです。
 今回はいつもの語りを始める前に、皆さんにおことわりしておかなければならないことがあります。

 今回、悪役にネオ・チャイナの者が出てきますが、政治的な意図はありません。
 それによって現実世界の中国を貶めたり、非難したりしようというつもりはありませんので、(生)暖かい目で見守っていただけるようよろしくお願い申し上げます。
 
 さて、では改めて、良ければ皆さんに、ガンダムファイトについて説明させていただきましょう。

 地球から宇宙に出た人類。彼らが築いたコロニー国家。
 その国家間の全面戦争を避けるため、主導権をガンダム同士の格闘大会で決める。
 これがガンダムファイトです。
 スポーツの皮をかぶった戦争、地球を犠牲にして行われる血を伴わない争い。
 人類はなんて戦争システムを作り出したものか。
 それが、これまで12回、45年も続いてきました。

 ですが今回の13回大会は、これまでとも、そして我々が知る13回大会とも、どうも違うようです。

「ううん、結果がどうでもやらなければ! そうしないと、彼の闘志は満足しない!!」

 果たして彼女、TS転生者のガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソが、この大会、この世界にどのような波紋をもたらすのか?

 今回のカードは、ネオ・ケニア代表、コンタ・ン・ドゥールの『ガンダム・ゼブラ』。

 それてはガンダムファイト、Ready Go!!



 俺……Gガンダムファンの高校生がTS転生した少女ガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソは、アフリカのケニア地域にやってきた。

 もちろん、ガンダムファイトのためだ。

 

 このケニア地域を統治するネオ・ケニアのガンダムファイター、コンタ・ン・ドゥールは野性味あふれるトリッキーなファイトを得意とするという。その情報に武者震いがとまらない。はっきり言うと、早く戦いたくて仕方ない。

 

 だがしかし。

 

『ガンダムファイト!』

『レディーゴー!!』

 

 残念だがそれは諦めなければならないようだ。既に先客がいる。

 全身に白黒のシマ模様がペイントされた独特なカラーリングのガンダム……おそらくあれがネオ・ケニアのガンダム・ゼブラだろう……と、中国のイメージを具現化したようなガンダム……ネオ・チャイナのドラゴン・ガンダムが対峙している。

 

 ガンダム・ゼブラが槍を怒涛のように繰り出すのを、ドラゴン・ガンダムは次々とかわしていく。さすがネオ・チャイナのサイ・サイシー。少林寺の再興を託され、後にシャッフル同盟の一人となるだけのことはあるな。

 

 だが。

 

「?」

 

 なぜだろう、俺はこのファイトに違和感を持った。俺がDG(デビルガンダム)細胞クローンだからなのか、それとも、Gガンダムを見ていたからなのかはわからないが。ドラゴンはともかく、ガンダム・ゼブラがどこか手を抜いているような感じがしたのだ。

 

 俺がそう思っているうちに戦いは進み……。

 

『これで終わりだぁ! ドラゴンクロー!!』

 

 ドラゴンガンダムの左腕が伸び、ドラゴンの頭に変形し、ガンダム・ゼブラの頭部に飛んでいく。

 そして噛みつくのだが、やはりそれにも違和感があった。どこか、かわしたり、払ったりといった抵抗をあまりしないままに、わざとすんなり噛みつかれるままに噛みつかれたという感じがしたのだ。

 

 そして、ドラゴンクローの牙がガンダム・ゼブラの頭部に突き刺さり、爆発。そして、煙が立ち上り、ガンダム・ゼブラはあおむけに倒れこんだ。

 

『この戦い、オイラの勝ちだ!』

 

 喝采が上がる。だがなぜだろう? やはりそのサイ・サイシーの声からは、あまり戦いに勝ったうれしさは感じられず、どこかこの戦いの違和感への戸惑いも感じられたのだ。

 

* * * * *

 

 さて、何か違和感や疑問の残ったファイトであったが、決着が着いてしまった以上は仕方ない。

 ガンダムファイト国際条約第一条、『頭部を破壊された選手は失格となる』。

 この条文の通り、頭部を破壊されて敗北したガンダム・ゼブラのコンタ・ン・ドゥールは失格、ガンダムファイトの予選からは脱落となる。もう、ガンダムファイトには出られない、ということだ。

 

 となれば、気持ちを切り替えなくてはな。また新しい相手を探しに、他の国に行くか……。

 

 と思いながら、俺がスラムを歩いていた時だ。

 

「!!」

 

 突然、気配を感じた。それと同時に、頭上から何か……猿のようなものが飛び掛かってきた!

 俺はそれをとっさに飛びずさってかわすと、腰からセイバーを抜いた。

 

「いきなり襲い掛かるとは、ケニアの猿は気が荒いようですね」

 

 だが、相手は猿ではなかった!

 

「ひどいなぁ、姉ちゃん。オイラは猿じゃないよ」

 

 聞いたような覚えがある声。特に前世でよく。

 そう。猿と思っていた襲撃者の正体は……。

 

「ネオ・チャイナのサイ・サイシー……」

「へへへ、オイラのことを知っててくれたのかい? 嬉しいね!」

 

 そりゃ、Gガンダムの主役、シャッフル同盟の一員だもの。知ってるに決まってる。

 襲撃者の正体は、ネオ・チャイナ代表、サイ・サイシーだった。

 

「なんで襲ってきたのですか? ファイトであれば喜んで受けて立ちますよ」

「いや、そういうわけではなくてさー……」

 

 と、そこでサイ・サイシーのおなかが鳴った。

 

* * * * *

 

「そうですか……やっぱり、あなたも感じていたんですね、あのファイトの違和感を」

「うん……もぐもぐ……そりゃわかるさ……むしゃむしゃ……というか、武道の心得がある者だったらみんな、あの違和感に気づいたと思うぜ」

 

 スラムにある食堂。そこで俺たちは、夕食を食べながら昼間のファイトの件について話し合っていた。

 それにしても、よく食べる。骨付き肉はもう50本目、ライスは30杯目だぞ。ネオ・チャイナのスタッフの皆さん、お疲れ様です。

 

「オイラの気のせいだったらいいんだけどさ。もし、実は八百長だったというのなら、それで勝つのは嫌だし、白黒はっきりしておきたいのさ」

「なるほど……気持ちはわかります」

「恵雲も瑞山に話して本国に問い合わせても、向こうからはだんまりばかりなんだよ。それでこれは何かあると思ってさ」

 

 なるほど。そういうわけか。それにしても。

 

「ですが、私を襲ったのには何かわけが?」

「あぁ、うん。それについて調べようと思ったんだけど、オイラは馬鹿だから、助けになる人がほしくてさ。姉ちゃんならいいかなと思って、腕試しをさせてもらった」

「なるほど……って、でも腕試しのためとはいえ、いきなり襲い掛かってくるのは感心しませんね。この件は、ネオ・チャイナの運営委員会に苦情を……」

 

 俺がそう言うと、サイ・サイシーは慌てだした。

 

「うわー、それは勘弁してくれよ! 参加資格を奪われるのはもちろん、恵雲や瑞山に怒られちまうよ!」

 

 参加資格よりあの二人に怒られるのが怖いのかい。その慌てふためく彼の様子を見て、苦笑が漏れ出る。

 

「冗談ですよ、それでは行きましょうか」

「おう! 行こうぜ!」

 

* * * * *

 

 そして、俺とサイ・サイシーは調査のためスラムを歩き回っていった。が、収穫はほとんどなかった。残念なり。

 そしてそんな中、街はずれにやってきたのだが、そこにあったのは、あまりにあまりといった光景だった。

 

「これは……ひどいですね……」

「うん。オイラもネオ・チャイナの人間だけど、これはどうかというのはわかるよ……」

 

 その一角に張り巡らされたフェンス。その中で作業に励む作業機械たち。その機械によって荒らされていく大地。

 

 そう。そこでは、ネオ・チャイナ系の企業が、開発作業を行っていたのだ。しかし、そのやり方があまりにひどすぎる。自然への影響などまるで考えず、無計画にただ地面を掘り、木々をなぎ倒していく。

 このGガンダム世界の地球汚染の一端をじかの目の当たりにして、思わず現実逃避しそうになる俺であった。……いやいや、現実逃避していてはダメだろ俺。俺はこのように荒らされていく地球を憂いて、デビルガンダム四天王になったんだから。

 

「聞く話では、MF(モビルファイター)の装甲素材の元になるディマリウムの鉱脈がこのケニア地域にあるとかで、うちの国の企業がネオ・ケニアと話し合いで、ここの地域の開発権を手に入れたんだってさ」

「それでこんな開発を……」

 

 ディマリウム。MFの装甲である『ガンダリウム合金スーパーセラミック複合材+レアメタルハイブリッド多層材』に使われている合金の一つの原料となる鉱石だ。重力や慣性制御の能力を持ち、さらに意志の力に反応するというとんでも特性まで持っている。

 そう、この世界のガンダムが変態機動ができたり、拳が泣いているのがわかったり、といったトンデモパワーは、この合金のおかげなのだ。

 そんなMFにとって重要な素材の鉱脈がここにあるとなれば、どんなことをしてでも開発権を得ようとするだろう。採掘して作り出した合金を自国のMFの強化のためにふんだんに使ってもよし、生産を独占し、他国に高く売りつけるのもよし、だ。

 

 とはいえ、こんな乱開発はよくないと思うが。

 

 そこに。

 

「Oh、とんでもないね。ネオ・チャイナの連中のやることは」

 

 これは前世で聞いた覚えのある声だ。その声がしたほうを見ると、そこには一人の男が。

 気のいい兄ちゃんといった感じの見た目の男。そう、その男は……。

 

「ネオ・アメリカ代表。チボデー・クロケット! 愛機はガンダム・マックスター!」

「へぇ、こんな土地にも俺の名前が知れ渡ってるなんて嬉しいねぇ。だがお嬢さん。俺に惚れてはいけないぜ。既に先約がいるんでな」

 

 いや、惚れるつもりなどないが。確かに彼にはチボデーギャルズという娘たちがいるし、俺は男だし、展開次第によっては、彼と敵対しなければならないんだ。『恋人たちの哀しい戦い』なんかやりたくもない。

 

 何はともあれ、俺たちは自己紹介をすることに。

 

「ネオ・ノルウェー代表のジャンヌ・エスプレッソです。よろしく」

「ネオ・チャイナのサイ・サイシーとはオイラのことさ。よろしく!」

「へぇ、こんな若くてかわいいのにガンダムファイターとはな。驚いたぜ」

「どういたしまして。それでチボデー、なんであなたはここに? あなたもネオ・ケニアのファイターとファイトするために?」

 

 俺がそう言うと、チボデーは首を横に振った。

 

「いや。このケニアAreaの開発権を巡って、ネオ・チャイナとネオ・ケニアとの間で、ガンダムファイトに絡んだ密約があると、ネオ・アメリカ(うち)の情報局がかぎつけてね。その調査員の護衛にやってきたってわけさ。こんなことはガンダム・ファイターの仕事じゃないと思うんだけどな。そんなことするよりはハンバーガーを食べていたい」

「えぇ、わかりますよ、その気持ち」

「わかってくれるかい! 話がわかりそうなお嬢さんで嬉しいぜ」

「オイラはハンバーガーより肉まんのほうが好きだけど、やっぱり気持ちはわかるぜ。それでチボデーの兄貴。収穫はあったのかい?」

 

 サイ・サイシーがそう尋ねると、チボデーはうなずいた。

 

「あぁ。今回のファイトについて不満を抱いていたネオ・ケニアのスタッフが密告をしたいと言ってきてね。今日の夜、そのスタッフと接触をすることになっている。もしよければ、二人もついてくるかい? Escoteするぜ」

 

 もちろん拒否する理由はなかった。

 

* * * * *

 

 そして俺たちは、ネオ・ケニアのスタッフとの待合い場所にやってきた。それにしても……。

 

「チボデー、そういえばネオ・アメリカの情報員は同行しないんですか?」

「あぁ、そいつにはちょっと他の用事があるんでな」

「なるほどね。でも遅いなー……」

 

 サイ・サイシーがそうつぶやいた直後!

 

「た、助けてーーー!!」

 

 女の声が響いた!

 

「今の声は!?」

「あっちのほうからだぜ、アネゴ! チボデーの兄貴!」

「OK! 行ってみよう!」

 

 そこに駆け出していくとそこには……!

 

「あ、あなたたちは……」

 

 制服らしき服を着こんだ女性が、腕から血を流して倒れていた。その後ろには、凶器を持った男たちが!

 

「そのUniform……。ネオ・ケニアか。もしかしてお嬢さんが?」

「はい……ネオ・ケニアのガンダム・ゼブラ整備スタッフの、ザワディといいます……。お願いです、ン・ドゥールを……」

「それ以上しゃべらないでもらおうか!」

 

 口封じをしようと、ザワディとかいう娘に、男たちが襲い掛かっていく!

 これは、助けないわけにはいかないな!

 

「今はこいつらをどうにかして、お嬢さんを守ることにしましょう! 行きますよ!」

「わかった!」

「OK!」

 

 そして、男たちのバトルを開始する俺たち。男たちは強かったが、それでも俺たちガンダムファイターほどではない。大した苦戦はせず、倒すことができた。

 

* * * * *

 

 男たちを撃退した俺たちは、ザワディさんの傷の治療をしながら、話を聞いてみることにした。

 

「それでお嬢さん、ン・ドゥールのことを言っていたが……」

「はい。実はン・ドゥールは、ネオ・ケニアとネオ・チャイナとの密約のために、イカサマファイトを強いられているんです」

「なんだって……!? それは……」

 

 俺がそう聞くと、ザワディさんは目を伏せて話し始めた。

 

「このケニアエリアで、ネオ・チャイナがディマリウム合金の採掘をしていることはご存じだと思います」

「あぁ」

「それについて、ネオ・ケニアとネオ・チャイナが密約を結んだんです。『今回のネオ・チャイナとネオ・ケニアのファイトでネオ・ケニアが負けてくれれば、採掘を中止する、と」

「なんだって……!? じゃやっぱり、オイラはその密約による八百長で勝ったっていうのか!?」

 

 やはり、あのファイトはできレースだったのか。だが、疑問はまだあった。

 それをチボデーが口にしてくれた。

 

「だが、開発はまだ続いてるみたいだぜ?」

「はい。そこがネオ・チャイナの狡猾なところで、その密約では『ネオ・チャイナ政府による採掘はしない』とあったんです。なので彼らは、採掘権をネオ・チャイナのダミー企業に譲り渡し、引き続き、開発を続けているんです。しかも……」

「しかも……?」

 

 と、そこで。

 

「ネオ・チャイナは俺を傭兵として雇った。そして戦っていれば、いずれ開発から手を引き、それどころか、このケニア地域の自然の回復にも手を貸してくれる、とな。俺は、このケニア地域の自然を守るため、奴らに心を売り渡したのだ」

「!!」

 

 その声に振り向くと、数人の男たちがやってくる。そのうちの一人は、毛皮をまとったひげ面の屈強そうな男だった。資料で見たことがある。おそらく彼が、ネオ・ケニアのガンダムファイター、コンタ・ン・ドゥールだろう。その後ろには、ネオ・チャイナの高官らしき男たちもついてきている。

 

「知ってはいけないことを知ってしまったアルね。ならば仕方ない。ここで三人とも死んでもらうアル。委員会には、三人はガンダムファイト中の事故で死んだと報告すれば済むことアルよ」

「そう簡単に行くかな? 俺たちがガンダムファイターだということを忘れてもらっちゃ困るぜ?」

 

 だがそのチボデーの言葉にも、高官は表情を変えなかった。

 

「心配ないアル。今頃、我が国の工作員が、お前たちのガンダムの機能をロックしているころアル。呼ぶことはできないアルよ」

「なんだと……卑怯な……!」

 

 それと同時に、地面が割れ、一機のガンダムが現れた。コンタ・ン・ドゥールのガンダム・ゼブラだ。それにコンタ・ン・ドゥールが乗り込む。

 

「さぁ、ン・ドゥール! 四人を踏みつぶしてしまえアル!」

「それはどうでしょう?」

「アル!?」

 

 確かにチボデーのマックスター、サイ・サイシーのドラゴンはそれで封じることができるだろう。だが!!

 

「来て! ガンダム・オルタセイバーーー!!」

 

 その俺の声とともに、天空から、俺の漆黒のガンダム、ガンダム・オルタセイバーが舞い降りてきた!

 そう、俺のオルタセイバーは、DG細胞によって強化された特別製! 機能ロックなど意味をもたない!

 俺はさっそくオルタセイバーに乗り込み、戦闘態勢をとる。

 

「えーい、ン・ドゥール! こうなったら、彼女のガンダムもやってしまえアル!」

「……」

 

 だが、ガンダム・ゼブラは動かない。ン・ドゥールも心の中で葛藤があるのだろう。

 高官はさらに怒鳴りつける。

 

「戦うアルよ! ケニアの自然がどうなってもいいアルか!?」

 

 本当に心が腐り果てた奴だ……!

 でも、その奴の言葉に、ついにン・ドゥールも構えをとった。その構えには、まだ迷いが見受けられるが。

 

「が、ガンダムファイトーーーー!!」

「レディー、ゴオオオオ!!」

 

* * * * *

 

 ガンダム・ゼブラはその槍を怒涛のように繰り出してくる。その速さは、この前のドラゴンガンダムとのファイトの時とはくらべものにならない! これが彼の本気ということか……?

 

 でも、やはりその槍筋には迷いがあるように見えた。

 

「誇りを取り戻してください、コンタ・ン・ドゥール! あんな奴らに飼われ続け、八百長を強いられて、あなたのガンダムファイターの誇りが泣いていないのですか!?」

「泣いてなど……いない!!」

 

 そう言いながら、ガンダム・ゼブラは槍を横凪ぎに払う。俺はそれをビームセイバーで受ける。激しい衝撃が襲う。

 

「もうこんなことはやめてください! こんなことで自然を守って、自然が喜ぶと思っているんですか!?」

「黙れ、お前に何がわかる!!」

 

 そう言うと、ガンダム・ゼブラは突進してきた。そして地面に槍を突き立てると、棒高跳びの要領で天高く飛び上がる! そして盾をかざして急降下!!

 

「はあっ!! ……なっ!?」

 

 ビームセイバーでその盾を切り払うが、その後ろにゼブラはいなかった。その盾のはるか上方にその姿が。

 彼は、盾を投げつけて、それをおとりとしたのだ。

 

 そして俺のオルタセイバーは蹴りを受けて吹き飛んだ。

 

「くっ……! ……?」

 

 だがその瞬間、俺は聞いた。ほんのかすかだが、泣き声を。自然を愛し、ガンダムファイターとしての誇りに満ちた自らの心を、その自然のためにネオ・チャイナに売り渡した悲しきガンダムファイターの心の嘆きを。

 

 やはり、彼の誇りは生きていた。自然のため、ネオ・チャイナに心を売っていながらも、その心は完全に死んではおらず、悲鳴をあげていたのだ。

 

 ならば俺ができることは一つ。彼を倒し、奴らから解放してやることのみ!

 

「仕方ありません。私があなたにできることはこれのみ! 来なさい!!」

 

 そして構えを取る。堕天使の翼に似た、オルタセイバーの背中のウィングが展開する。機体がオーラに包まれる。

 

「う、うおおおおお!!」

「必殺! 絶対勝利・エクスカリバーン!!」

 

 突っ込んでくるガンダム・ゼブラと、同じく突進するガンダム・オルタセイバーが激突! そして、すれ違う。

 そして数瞬の間。

 

「ぐ、ぐあああああ!!」

 

 勝ったのは俺のほうだった。俺のエクスカリバーンが、コンタ・ン・ドゥールの攻撃がさく裂するより早く、彼の機体の両腕を斬り落としていたのだ。

 

「私の……勝ちです」

 

 ネオ・チャイナの高官はうろたえているが、すぐに我に戻った。そして、ザワディに視線を向けた。まさか……!

 

「お、おのれ小娘……! こうなったら、ザワディとやらを人質にとって……!」

 

 だが、彼の目論見がかなうことはなかった。彼の目の前の地面に、ナイフが二本突き立てられる。

 

「な、なにアルか!?」

 

 そしてやってきたのは、ネオ・アメリカの職員らしき男性と、一人の若い女性。

 

「国際ガンダム・ファイト運営委員会、監査委員のローレン・ホワイトです。話は聞かせていただきました」

「な、ななな……アル」

「ガンダムファイト国際条約第8条『政治的思惑を持ったファイトの禁止』、第9条『ガンダムファイターを傭兵とすることの禁止』、第10条『ガンダムファイト以外で、ガンダムファイターへの危害を加えることの禁止』、第11条『ガンダムへの違法な操作の禁止』などの違反容疑で話を聞かせていただきたいと思います。ご同行願えますね?」

「……」

 

 彼女……ローレン・ホワイトさんの言葉に観念したのか、高官たちはうなだれて、彼女の引き連れてきた官憲たちに連れ去られていったのだった。どうやら、ネオ・アメリカの工作員が俺たちに同行しないのは、これが理由らしいな。

 

* * * * *

 

 そこに、通信が入ってきた。ガンダム・ゼブラのコンタ・ン・ドゥールからだ。

 

「見事だった……。さぁ、とどめを刺すがいい。ガンダムファイトで八百長で敗北し、しかもその魂も奴らに捧げてしまった俺は、もうガンダムファイターとして戦う資格はない……」

 

 力ない彼の言葉。だが。

 

「いいえ、そんなことはありませんよ?」

「なに?」

 

 疑問のまなざしを向けたン・ドゥールに答えたのはチボデーだった。

 

「ガンダムファイト国際条約・第12条『正当なる目的、手続きをもって行われなかったファイトは、これを無効とすることができる』」

 

 つまり、イカサマや八百長で行われたガンダムファイトは、その試合結果を無効にできる、ということだ。

 

「あのファイトについて委員会に申し立てれば、あの結果を無効として、またファイトに立てるだろうさ。ミス・ローレンという証人もいることだしな」

「オイラとしても、八百長で勝ったままなんて、きわめて不本意だからな! 改めて戦おうぜ! 正々堂々とさ!」

「チボデー・クロケット……。サイ・サイシー……」

 

 そして俺は、ガンダム・ゼブラに手を差し伸べた。それを受け取るかのようにガンダム・ゼブラは弱々しくも立ち上がったのだった。

 

* * * * *

 

 その後。

 今回の件は、ネオ・チャイナ政府の総意ではなく、あの高官の独断だったことがわかり、高官は国際警察に捕まって獄中の人となった。果たしてその通りなのか、ネオ・チャイナが高官を斬り捨てたかは、今となってはわからない。

 

 例の企業による採掘・開発計画も中止となり、企業は人知れず姿を消した。ダミー企業だったんだから当然だろう。また、今回の件についての謝罪として、ネオ・チャイナからネオ・ケニアへ多額の賠償金が支払われたそうだ。

 

 サイ・サイシー対コンタ・ン・ドゥールの試合についての申し立ては無事に通り、ン・ドゥールの敗北は無効となり、彼はまたガンダムファイターとして戦えることになったのだった。

 

 そうしたことがあった数日後、俺はケニア地域を旅立つことになった。

 

「姉貴、今回は世話になったね!」

 

 そう言って笑うサイ・サイシーに、俺も微笑んで答える。

 

「いえ、こちらこそ世話になりました。サイ・サイシー、チボデー・クロケット」

「あれぐらいどうってことないさ。それと、お嬢さんのファイトも見事だった。ぜひ今度、ファイトさせてもらいたいね」

「えぇ、こちらこそ喜んで」

 

 そして互いに手を握り合って、その場をわかれた。俺は、彼らと敵対することにならないようにという、叶いそうもない願いを抱きながら。

 




ファンアート募集中です!

* 次回予告 *

 皆さん、お待ちかねぇ!!
 チコ・ロドリゲスからの報告で、デビルガンダム細胞におかされた男がいることを知ったジャンヌは、その調査のために、トルコ地域を訪れます。
 そこで彼女は、あの二人と再びまみえることになるのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第4話『DG細胞に引き裂かれた二人! ジャンヌ、救うために彼を撃て!』

にReady Go!!
次の更新は、5/14 12:00の予定です!


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4th Fight『DG細胞に引き裂かれた二人! ジャンヌ、救うために彼を撃て!』

 どうも、こんにちは。ストーカーです。

 良ければ皆さんに、ガンダムファイトについて説明させていただきましょう。

 地球から宇宙に出た人類。彼らが築いたコロニー国家。
 その国家間の全面戦争を避けるため、主導権をガンダム同士の格闘大会で決める。
 これがガンダムファイトです。
 スポーツの皮をかぶった戦争、地球を犠牲にして行われる血を伴わない争い。
 人類はなんて戦争システムを作り出したものか。
 それが、これまで12回も続いてきました。

 ですが今回の13回大会は、これまでとも、そして我々が知る13回大会とも、どうも違うようです。

「仕方ありません。私があなたにできることはこれのみ! 来なさい!!」

 果たして彼女、TS転生者のガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソが、この大会、この世界にどのような波紋をもたらすのか?

 今回のカードは、ネオ・トルコ代表セイット・ギュゼルのミナレットガンダム。

 それでは、ガンダムファイト! Ready Go!!



 俺……ジャンヌ・エスプレッソはトルコ地域のイスタンブールの町にやってきた。

 

 チコの話では、ここイスタンブールに、DG(デビルガンダム)細胞に関連する者がいるという。その情報を頼りにやってきたのだ。

 トルコでDG細胞絡みとすると……。

 

 そう考えを巡らせながら、イスタンブールの町に入ると……。

 

 そこは戦場だった。

 

 暴れまわっている一機のガンダムに、ネオ・トルコ軍のものらしき戦車が砲撃を加えている。そのガンダムは……。

 

 間違いない、ミナレットガンダムだ。

 

 ミナレットガンダムは、ネオ・トルコのガンダムで、ファイターは、Gガンダムのヒロイン、レインの元恋人セイット・ギュゼル。

 彼は以前、デビルガンダムが出現した時にその迎撃に参加し、戦うものの、その戦いでDG細胞に感染してしまう。

 

 DG細胞は高い感染力と、感染した宿主の破壊衝動を極大まで増幅してしまう効果があり、当然セイットもDG細胞により増幅された破壊衝動の赴くままに、こうして暴れまわるようになってしまった、というわけだ。

 

 そう俺が思い出している間にも、ミナレットガンダムは暴れまわっている。戦車を踏みつぶし、その(ミナレット)で切り裂き、建物を一刀両断していく。はっきり言って、思い出してる場合じゃないな。止めないと。

 

「来てぇ! ガンダムオルタセイバー!!」

 

 俺のガンダム、ガンダムオルタセイバーを呼び出して乗り込む。

 俺のきゃしゃな身体をファイトスーツが包むと同時に、モビルトレースシステムが俺の身体をチェックし、オールグリーンを知らせる。ファイト準備完了だ。

 

「これは正式なファイトではありませんが、言わせてもらいます! ガンダムファイト・レディーゴオオォォォ!!」

 

 俺はオルタセイバーのビームセイバーを抜くと、バーニアを吹かせて、ミナレットガンダムに突進していった。奴に対して、剣を振り下ろす。こちらに向きなおったミナレットガンダムは、その名前の元である剣、ミナレットでそれを受け止めた。

 

 ミナレットはすごいパワーで俺を押し返し、変幻自在な剣技を繰り出してきた! 読めない軌道の斬撃に苦労するが、なんとかそれを捌いていく。

 そうしていくうちに、ミナレットに隙ができた! 俺はそこを突いて一撃を加えようとビームセイバーを振るった!

 

 だがそこで、突然ミナレットガンダムは俺に対してタックルを仕掛けてきた! そのタックルのパワーに、俺のオルタセイバーは吹き飛ばされ、あおむけに倒れこんでしまう。

 しまった! こいつはレスリングも得意なんだった! 確か大学ではレスリング部に所属していたと、設定の本で読んだことがある。

 

 そして、ミナレットが逆に俺を攻撃しようとしたところで。

 

「こおおぉぉぉいっ! ガンダアアァァァムッッ!!」

 

 その場に居合わせたドモンがそう叫び、地面からシャイニングガンダムが現れた! そしてドモンが乗り込み、俺のオルタセイバーをかばうように立ちはだかる。

 

『今度は俺が相手だ! ガンダムファイト、レデイイィィィゴオオオォォウッッ!!』

 

 そして、ビームソードを抜いて、ミナレットに斬りかかる! シャイニングのビームソードと、ミナレットガンダムのミナレットがぶつかりあい、スパークを放つ。

 

『ぬああああっ、はああっ!!』

 

 そして、力を振り絞り、ミナレットガンダムの手から剣を弾き飛ばす!

 

『俺のこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶ!!』

 

 シャイニングガンダムの各部の装甲が開かれ、バトルモードに変形する。その右手が緑色に発光する。

 

『必殺! シャイニングッ! フィンガー!!』

 

 出た! ドモンの必殺技、シャイニングフィンガーだ! ドモンの、シャイニングの輝く右手がミナレットの頭部を握りつぶそうと迫る!

 だが、ミナレットもただでやられはしない。DG細胞によって生存本能も増幅されているのか、ミナレットはその右腕をもって頭部をかばったのだ。

 シャイニングフィンガーが右腕をつかみ、粉砕する! だがそれと同時に、ミナレットガンダムの左腕が伸び、弾き飛ばされたミナレットをつかみ、そのままシャイニングガンダムに斬りかかる!

 間一髪、シャイニングはそれを回避した。それと同時に、ミナレットガンダムは地面に潜って消えていったのだった。

 

* * * * *

 

 一方、レインは、デビルガンダムの調査のために、イスタンブールの町を歩いていた。

 

 だが、肝心のデビルガンダムについての手がかりは一切なし。

 

「はぁ……。はずれだったのかしら。あのガンダムはデビルガンダムと関係ありそうなのに……」

 

 と、そこでレインの耳に、聞き覚えのある声が届いた。

 

「う、うぐ……」

「こ、この声は、もしかして……」

 

 そして彼女が、声がする裏道に行くと、そこには……。

 

「セイット!」

「レイン、レインか……!?」

 

 そこには、レインと同じ大学に通った男友達、いや友達以上恋人未満と言ってもいい仲だったセイット・ギュゼルが座り込んでいた。

 

「セイット、あなたとこんなところで会うなんて……。それに、どうしてここに……」

「あぁ、俺は……」

 

 とセイットが言おうとしたところで。

 

「いたぞ、あそこだ!」

「国家反逆罪犯人だ! 逃がすな!」

 

 ネオ・トルコ警察の制服を着た男たちがやってきた! 彼らは二人を見つけると、一斉に銃をかまえた。

 

「話はあと! 逃げましょう!」

「あ、あぁ……」

 

 そして二人は、銃弾が飛び交う中を逃げ出した。

 

* * * * *

 

「ここまで逃げれば、もう大丈夫でしょう……」

「済まない、君まで巻き込んでしまって……」

 

 そう言って詫びるセイットに、レインは首を振った。

 だがそこでレインはあることに気が付いた。それは、セイットの首を覆う。

 

「これは……DG細胞!? セイット、どうしてこれに……?」

「見つかってしまったか……。一年前、デビルガンダムが落下してきたさいに、俺もその迎撃作戦に参加して、その時に……」

「そう……」

「だから、もう離れてくれ……。このままでは、俺はまたDG細胞に呑まれて、化け物になってしまう……」

 

 だが、それでもレインはまた首を振る。

 

「ううん。あなたは化け物じゃない。どんなことになっても、あなたはあなた、セイットのままよ」

「レイン……強くなったな」

「そうかしら……」

 

 そう言って、互いに微笑む。

 

「希望をもってセイット。ドモンに連絡して、ネオ・ジャパンに連れて行ってもらえば、きっとよくなるわ」

「ドモンとは、さっきミナレットガンダムと戦っていたガンダムに乗っていた者か?」

「えぇ。私の幼馴染で、パートナーよ」

「パートナー……」

 

 それを聞いたセイットの心の中にどす黒い感情が生まれた。それはDG細胞の力でどんどん強く大きくなり、それにあわせてDG細胞が再び活性化しはじめる!

 

「……いを……」

「セイット……?」

「俺の愛を、愛ヲオオオオオオオ!!」

「きゃああああああ!!」

 

* * * * *

 

「よし、これで大丈夫だろう」

「ありがとうございます……ドモン・カッシュ」

 

 一方、俺はミナレットガンダム戦で受けた傷の手当を、ドモンにしてもらっていた。まさか、原作の主人公直々に怪我の手当をしてもらえるとは、すごく感激だ。

 

 なお、俺がDG細胞クローンであるとばれる心配はない。俺の本体がデビルガンダムを制御している影響で、俺の本体がコアになった後のデビルガンダム由来のDG細胞は、感染力などの特性はそのままではあるものの、見かけは普通の細胞と変わらなくなっている。

 なのでちょっと見では、俺がクローンだと見破られることはないのだ。

 

「礼はいらん。同じ流派東方不敗を学んだ同門のよしみだからな」

「同門って……私は少し師匠から教えてもらってかじっただけですよ」

「謙遜はいらん。あれだけ身に着けていればたいしたものだ。並みのファイターでは、そもそもかじることさえ難しい流派だからな」

「はぁ……」

 

 そんなに人を選ぶ流派だったのか。それはきっと、もし俺がDG細胞クローンでなかったら、本当に少し実践することすら不可能だったかもしれない。この体に感謝だな。

 

「そういえば、師匠は元気だったか?」

「えぇ、相変わらずでした。厳しいところも、理想に燃えるところも」

 

 その理想と厳しさから、デビルガンダムによる人類排除に走ってしまったんだけどな。

 まぁ……俺も似たものどうしか。

 

「そういえばドモン、レインさんとは一緒じゃないんですか?」

「あぁ、彼女はこの町で、デビルガンダムについての情報を調べているところだ」

「そうですか……ん?」

 

 そこで俺は一つのことを思いついた。

 確か、俺の本体がコアになったことでわかったことだが、DG細胞にはある特性がある。それは人の負の感情……怒りや憎しみや嫉妬など……に反応して、それを増幅しつつ、さらにその感情エネルギーを糧として急成長を遂げるというものだ。

 なので、宿主が負の感情を抱いてしまうと、感情を増幅→糧として成長→成長した細胞がさらに感情を増幅→それを糧として成長……の無限ループに陥り、強大な怪物となってしまうのだ。もちろん、成長には限界があるから、無限とはいかないが。

 

 もし、セイットがレインと会っていて、さらにドモンのことを知って、嫉妬に取り付かれたりしたら……。

 

 その時だ。

 

『オレノアイヲキミハアアアアアアァァァァ!!』

 

* * * * *

 

 現れたのはミナレットガンダムだ。だが、前に戦った時より、さらに大きく、まがまがしくなっている。

 約2倍……いや、3倍ぐらい大きくなっているぞ。

 

 ……悪い予感が当たってしまったか……。

 

「どういうことなんだ、あれは!? さっきより大きくなっているぞ!」

「おそらく、ガンダムファイターの負の心を喰らって成長したんでしょう。DG細胞にはそんな特性がある……と、ある研究資料で読んだことがあります」

「なんだって!?」

 

 本当は、俺の本体がデビルガンダムのコアになったからなのだが、それは秘密だ。今はドモンに敵対心を持たれたくない。

 

 だが、そんな俺たちをよそに、ミナレットは前より激しく暴れながら、街を破壊し、こちらに進んでいく。

 

『アイヲ、アイヲオオオオオオオオ!!』

 

 おそらく、奴のターゲットは俺たち……いや、ドモンだろう。何はともあれ、このままにしていくわけにはいかない!

 

「行きましょう、ドモン!」

「おう、お前の力、頼りにさせてもらうぞ! あいつを倒し、止める!」

 

 そして。

 

「来てええぇぇぇ! オルタセイバアアアアアア!!」

「こおおぉぉぉいっっ! ガンダムアアアァァァムッッ!!(パチンッ)」

 

 俺とドモンはそれぞれ、ガンダムオルタセイバーとシャイニングガンダムを呼び出して、巨大ミナレットと対峙した。

 

 先手を取ったのは、巨大ミナレットガンダムだった。奴が振り下ろしたミナレットを、俺たちは左右に飛びずさってかわす。そしてドモンが、着地すると同時に、ビームソードを手に飛び掛かっていった。

 

「はあっ!!」

 

 一閃! そのビームソードは、巨大ミナレットの胸部装甲を切り裂いた! だが、そこからのぞいたのは……。

 

「れ、レイン!?」

 

 なんということだ! 巨大ミナレットガンダムの内部には、ドモンのパートナー、レイン・ミカムラが取り込まれていたのだ! おそらく、原作のデビルガンダムのように、生体ユニットとして組み込まれているんだろう。

 

「どういうことだ、なんでレインがあの中に!?」

「落ち着いてください、ドモンさん!」

「これが落ち着いていられるか! ……うおっ!!」

 

 動揺したドモンのシャイニングガンダムが、巨大ミナレットのタックルを喰らって吹き飛ばされた。奴は、さらにドモンにミナレットの一撃を加えようとするが……。

 

「させません! スプラッシュ・ソードォォォォ!!」

 

 無数の刺突を放ち、注意をこちらにひきつける。巨大ミナレットの斬撃を、俺はかろうじてかわした。そしてその間に、ドモンは態勢を立て直すことができた。

 

「済まなかった、ジャンヌ。だが、一体どういうわけなんだ……?」

「おそらく、ミナレットガンダムの生体ユニットとして使われているんでしょう。それで、ファイターの、レインさんへの悪感情をさらなる力にしていると思われます」

「……詳しいな」

 

 ぎくっ!? 怪しまれている!?

 

「そそそ、そんなことないですよ、読んだ資料から推測しただけですとも」

「そうか、まぁいい。だがどうする? これではレインを人質にされているようなもの……だっ!!」

 

 再び襲う、ミナレットの斬撃! 俺たちはそれをなんとかかわす。

 それからも、俺たちは、巨大ミナレットの攻撃を次々かわしていくが、ドモンが言う通り、レインを人質に取られているようなものなので、なかなか反撃に出ることができない。変なところを攻撃して、取り込まれているレインに後遺症が出たら大変だ。

 

 と、そこで、俺の脳裏に、Gガンダムの作中でドモンが聞いていた言葉が思い浮かんだ。

 ドモン曰く。

 

『格闘家の拳は、己の心を語るものだと、俺に教えてくれたのはこの東方不敗(ひと)だ!』

 

 それを使えば……いちかばちかだな。

 

「ドモンさん、一つ考えが浮かびました。かなり勇気がいることですが」

「なんだ!? レインを助け、こいつを倒すためだったら、なんでもするぞ!」

 

 再び攻撃が迫りくる! それをかわしながら続ける。

 

「あなたのレインさんへの気持ちを拳にこめて、奴の胸部装甲に一撃を喰らわせるんです!」

「な、なにぃ!?」

「ある人が言っていました。格闘家の拳は、自分の心を語るものだと。ならば、その気持ちを込めた拳を食らわせれば、装甲を通して中のレインさんにそれを伝えて、正気に戻し、脱出させることができるかもしれません!」

「そ、そんなこと言われても、心の準備がだなぁ!」

「そんなことを言ってる場合ですか! なんでもするって言ったじゃないですか!……きゃっ!!」

 

 俺のオルタセイバーは、巨大ミナレットガンダムの裏拳を喰らって吹き飛ばされた。一方のドモンはまだうじうじしてるし……。

 こうなったら、無理やりにでもことを運んでやらせるしかなさそうだ。

 

 俺はなんとか立ち上がると、巨大ミナレットガンダムに突撃していった!

 

「いいですね! 私が隙を作りますから、あなたの気持ちを込めた一撃を喰らわせてやってください!」

「あー、もう、わかった!」

 

 そして俺は斬撃やスプラッシュソードを放ちながら、巨大ミナレットガンダムの攻撃をかわし、牽制していった。

 そうしていくうちに、ついに巨大ミナレットにとって致命的な隙ができた!

 

「今です!」

「うおおおおお!!」

 

 そして。

 

「戻ってこいレイン! 俺にはお前が必要なんだっっ!!」

 

 拳がさく裂! どうだ……?

 

『レイン……レイイイィィィィン!! アイヲ、アイヲオオオオオオ!!』

 

 突然、巨大ミナレットが苦しみだし、胸部がまるで何かを吐き出すかのように蠢きだす。もう一撃だな。ならば!

 

「一点集中スプラッシュソードオオオォォォォ!!」

 

 無数の刺突を一点集中して胸部装甲に浴びせる。もちろん、中のレインまで串刺しにしないように。

 それが最後の一撃になったのか、胸部装甲がはじけ、中からレインが吐き出された! それをなんとか左手で受け止める。

 

「とどめです、ドモンさん!」

「うおおおぉぉぉぉっ! シャアアアイニングッ! フィンガアアアアア!!」

 

 そして、ドモンのシャイニング・フィンガーがさく裂し、巨大ミナレットの頭部が粉砕された。

 

* * * * *

 

「世話になったな、ジャンヌ・エスプレッソ」

「いえ、同門のよしみじゃないですか」

「ふふ、そうだな」

 

 戦いが終わった後、礼を言ってきたドモンに、俺はさっきのお返しみたいな感じで返した。

 ちなみに、ミナレットガンダムに乗っていたセイットは、無事救出され、救急車に収容されていった。そのそばには、レインがいたことは言うまでもない。

 

「レインさん、身体の具合はどうですか?」

「うん、特に問題はないみたい。助けてくれてありがとう」

「いえ、礼を言われるほどのことではありませんよ」

 

 そこでレインは、ドモンのほうを向いた。そして微笑んで。

 

「あなたも……ありがとう、ドモン。『お前が必要だ』と言われて、とても嬉しかったわ」

「か、勘違いするな。メカニックとして必要だという意味だ」

「もう、ドモンの馬鹿っ!」

 

 その様子を見て、俺は微笑んだ。

 もし救出が失敗していたら、こんな夫婦漫才も見ることができなかったかもしれないから。

 

「でも、本当に仲がいいんですね。うらやましいです」

「ふ、ふん。でも、本当に助かった、ありがとう。俺にできることがあれば、いつでも言ってくれ。なんでもしてやる」

「はい、その時はお願いします」

 

 そして俺は、ドモンたちと別れた。

 いつか、彼らとも戦うことになる運命を感じながら……。

 




ファンアート募集中!

* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!
ついに、デビルガンダム四天王の最後の一人になりうる者の発見を知ったジャンヌは、その者がいる、とある孤島へ向かいました。
ですがその者は、とんでもない存在だったのです!

果たしてジャンヌは、彼を四天王に招き入れることができるのでしょうか?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第5話『発見、最後の四天王! 孤島を守る人ならざる守護者』

にReady Go!!
次の更新は、5/17 12:00の予定です。こうご期待!


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5th Fight『発見、最後の四天王! 孤島を守る人ならざる守護者』

 皆さん、こんにちは。ストーカーです。
 今回はまたまた、皆さんにお詫びしておかねばならないことがあります。

 なんてことでしょう。なんと作者は、この話の元ネタになっている話を見たことがないというではありませんか!
 なので今回は、Wikiから得た情報を基にしていますが、かなり作者によって設定などが変えられている部分があります。
 読んだことがある方には、かなり違和感などを持たせてしまうことがあるかもしれませんが、生暖かく見守っていただければ幸いです。

 さて、それでは改めて……。

 良ければ皆さんに、ガンダムファイトについて説明させていただきましょう。

 地球から宇宙に出た人類。彼らが築いたコロニー国家。
 その国家間の全面戦争を避けるため、主導権をガンダム同士の格闘大会で決める。
 これがガンダムファイトです。
 スポーツの皮をかぶった戦争、地球を犠牲にして行われる血を伴わない争い。
 人類はなんて戦争システムを作り出したものか。
 それが、これまで12回、45年も続いてきました。

 ですが今回の13回大会は、これまでとも、そして我々が知る13回大会とも、どうも違うようです。

「そんなことを言ってる場合ですか! なんでもするって言ったじゃないですか!」

 果たして彼女、TS転生者のガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソが、この大会、この世界にどのような波紋をもたらすのか?

 今回のカードは、無所属のガンダムファイター? カンちゃんのジャンピングガンダム。

 それでは、ガンダムファイト! Ready Go!!



 俺……ジャンヌ・エスプレッソ……は、デビルガンダム四天王の仲間、チコ・ロドリゲスから、四天王最後の一人になりうる者を見つけたとの情報を受け、ある孤島に降り立っていた。

 

 それにしてもこの島、この風景……かすかに見覚えがあるぞ。でもどこでだろう……?

 俺、確かに前世ではGガンダム好きだったけど、主にアニメがメインで、外伝の漫画作品はあまり読んでないんだよなぁ。

 

 と、俺がそんなことを思いながら歩いていると……!

 

「!!」

 

 突然、頭上からMF(モビルファイター)が降下してきた! それと同時に俺に向かってパンチを振り下ろす! なんとか回避。

 

『ニンゲン、デテケ! ニンゲンミンナ、ジョナサンノカタキ!』

 

 そのMFから聞こえてくるたどたどしい声。『人間出てけ』とか、『人間みんな仇』と言ってるってことは、相手は人間ではないのか?

 俺がそう考えている間にも、そのMFはひたすら俺を攻撃し続けてくる。

 

 なら……仕方あるまい! 降りかかった火の粉は振り払うのみ!

 

「来てえええぇぇぇぇ! オルタセイバアアアァァァァ!!」

 

 すると、上空から俺のガンダム、ガンダム・オルタセイバーが舞い降りてくる。さっそくそれに乗り込み、モビルトレースシステムを起動させる。

 

「ファイトを挑まれたなら、受けるのみ! ガンダムファイト、レデイィィィゴオオォォォ!!」

 

 そして俺と、謎のガンダムファイターとのファイトが始まった!

 

 俺のオルタセイバーの突きを、謎のガンダムはしゃがんでかわすと……。

 

「きゃっ!?」

 

 伸びあがる勢いで、俺のオルタセイバーにアッパーを放ってきた! このパワー、動き……。

 

「ボクシングの腕は、チボデーと同等かもしれませんね……」

 

 それからも、謎のガンダムはストレートやフック、ジャブと色々なパンチを立て続けに放ってくる。その怒涛の連打は、奴のスタミナには限界がないのか、と思えるほどだ。

 

 そしてそのパンチの数々をかわしながら戦っていくうちに、思い出したことがあった。

 

 このガンダムはジャンピング・ガンダム、乗り込んでいるのは物言うカンガルー、カンちゃんだ。カンガルーでカンちゃんとは、なんとも安易なネーミングだが。

 

 とすれば、このカンちゃんは敵ではない。説得すれば……

 

 と思っていたところに。

 

「!?」

 

 突然、後ろから銃弾が飛んできた! ジャンピングはそれを軽々とかわすと、森の中へと引きかえしていくのだった。

 逃げられたか……。説得しようと思っていたのに……。

 

* * * * *

 

 そして俺は、この島の主、モッチー・オーガネの招待を受け、彼の館に案内されることになった。

 

 ……彼についても思い出した。

 実はこの島は、元々は彼のものではない。この島はもともと、ネオ・ドードーの科学者、ジョナサン博士のものだったが、彼を部下にしようとして失敗したこの男……モッチーが暗殺し、この島を奪い取った……ということだったはずだ。

 

 そんな彼がいけしゃあしゃあと俺の前で

 

「私はこの自然を多くの人々に見せたいのです!」

 

 と、おおっぴらな身振りで言うものだから、怒りも殺意も通り越して呆れてしまう。もっとも、東方不敗の師匠なら、秒で抹殺するだろうな。この島にやってきたのが俺だということを神に感謝したほうがいいぞ、モッチー。

 

 俺は半眼になりながら聞いた。

 

「それで、私に何をしてほしいんです?」

「おぉ、それは失礼しました。あなたも遭遇したあのMF。あれが私たちの建てたリゾート施設を破壊して、邪魔しているのです。なにとぞ、きゃつを退治してほしいのです」

「……」

 

 断るべきだろうか。それとも、今この場で、速攻で奴を倒すべきだろうか。

 いや、おそらくチコの言っていた四天王候補とは、あのカンちゃんのことだろう。彼ともう一度接触して話し合いたいところだが、向こうは俺を仇と思っている様子。

 ならば、拳を通して誤解を解き、和解するしかないかもしれない。(Gガンダム脳) そのためには、彼の依頼を利用するのも一つの手だろう。

 

「わかりました。どこまでやれるはわかりませんが、やってみます。でも、結果はどうなるかわかりませんよ?」

「おぉ、ありがとうございます! あなたなら、見事にあのにっくきガンダムを倒してくださると信じています! なにとぞ、この島に平和を!」

 

 そう言い終えた後に、彼の顔に一瞬浮かんだ、邪悪な笑みを俺は見逃さなかった。

 ……こいつ、俺とカンちゃんが戦って消耗したところを襲って、俺たち二人をまとめて倒す気だな。

 

* * * * *

 

 俺は、再び森の入り口へとやってきた。

 そしてさっそく。

 

「来てええぇぇぇぇ! オルタセイバアアアァァァァァ!!」

 

 ガンダムオルタセイバーを呼び出して乗り込む。

 そして森に近づいていくとさっそく。

 

『ニンゲンクルナ、ニンゲンデテケ! ジャナサンノカタキ!』

「私はあなた方の敵ではない……と言ってもわかってはもらえないんでしょうね。仕方ありません。それならば拳で伝えるのみ! 行きます! ガンダムファイト!!」

『レデイイィィィィ、ゴオオォォォォ!!』

 

 そして俺とカンちゃんとの二回戦が始まった! 先手を取ったカンちゃんのジャンピングガンダムが突っ込んできた。そして、パンチの間合いに入ると同時に、鋭いストレートパンチを放ってきた! 迅い!?

 

 俺はそれをなんとかかわすと、反撃の突きを放とうとしたところで……。

 

「きゃあーっ!!」

 

 後ろ向きになってしゃがんだジャンピングガンダムから、後ろ蹴りを喰らって吹き飛んでしまった。後ろ蹴りって、カンガルーかよ!……って、カンガルーか。

 

 そしてジャンピングガンダムは、俺のオルタセイバーの上に乗りマウントを取ると、顔面にパンチを乱打してくる。

 もうやりたい放題だ。だが、やられっぱなしでいるほど、こちらは甘くない。

 

「いい気にならないでください……よっ!!」

 

 巴投げの要領で、ジャンピングガンダムを投げ飛ばす。さすがカンガルーというべきか。カンちゃんは地面に叩きつけられることなく、うまく受け身を取り、態勢を立て直す。その間に、こちらも立ち上がった。

 

「今度はこちらの番です!」

 

 ジャンピングガンダムに突進し、突きや斬撃の連打を見舞う。驚くべきことに、カンちゃんはそのほとんどをさばいていった。

 

「なかなかやりますね。ですが!」

 

 俺は左手でビームセイバーを抜きはらうと、そのまま薙ぎ払いを放った! その一撃で、ジャンピングガンダムの左腕が斬り落とされた。

 

 そしてそれからも、俺たちは激しいバトルを繰り広げていった。そして1時間ぐらいしたころ。

 

 ……そろそろか。

 

 そう思ったのと同時、俺の背後に殺気を感じた!

 

「そこです!」

 

 俺は予備のビームセイバーを背後、殺気を感じたほうに投げつけた。

 

* * * * *

 

 俺たちが戦っていたのは、カンちゃんの住処である大きい森と、モッチーの邸宅とレジャー施設の近くにある小さな森に挟まれた草原。

 乱入者……モッチーの社長ガンダムは、その森の中に潜んでいたのだ。

 

『くそ、二人まとめて処分してやろうと思ったのに……なぜわかったのだ!?』

「それはわかりません。ですが一つ言えることがあります。それは……露見しない悪事はないということです!!」

 

 それでカンちゃんも俺が敵ではなく、むしろモッチーの敵だとわかってくれたのか、俺と並んで戦闘態勢をとる。

 

『おのれ! だが、この社長ガンダムに勝てると思うなよ!』

 

 そう言うと、社長ガンダムは、各部にあるミサイルランチャーをオープンし、ミサイルを乱射してきた!

 俺とカンちゃんは、それを必死にかわし続ける。

 

『はははは! どうだ、この社長ガンダムの力は! ガンダムファイトなど、犬畜生に任せておけばいい!』

 

 ある時はかわし、またある時は、ビームセイバーや手刀でミサイルを切り払っていく俺たち。そうしていくうちに、俺とカンちゃんの視線があった。そして考えを通じ合わせる。

 それも知らず、モッチーは、俺たちがミサイルに翻弄されているのに気をよくしたのか、さらに言い放つ。

 

『ふははは、馬鹿どもめ! わしは』

「金の力で世界を支配してやる、ですか?」

『金の力で世界を支配してやる! ……はぁっ!?』

「いきます!」

 

 俺はオルタセイバーを、社長ガンダムに突進させた。社長ガンダムは当然、こちらにミサイルを発射してくるも……。

 

「スプラッシュソード!!」

 

 スプラッシュソードの無数の刺突で、そのミサイルを次々と撃ち抜いていく。焦ったモッチーはさらに俺にミサイルを発射していく。

 だが、そうして俺に気を取られているのが命取りだ。

 

『ピョーンッ!!』

『なにぃ!?』

 

 社長ガンダムの上空から、いつの間にかジャンプしていたジャンピングガンダムが猛スピードで降下してきた! そしてその勢いを加えた打ち下ろしのブローを、社長ガンダムの頭上に叩き込んだ!

 地面にたたきつけられた社長ガンダムはなんとか立ち上がったが!

 

『ひ、ひいいいぃぃぃぃぃ!?』

「終わりです! 必殺! 絶対勝利・エクスカリバーン!!」

 

 ビームセイバーを一閃! 社長ガンダムを真っ二つに切り裂いた! そして爆発!!

 その爆発から、モッチーの乗った脱出ポッドが飛び出していくものの、それを許すほど彼は甘くない。

 

『シャチョー、デテケエエエェェェェ!!』

『うわあああああ!!』

 

 ジャンプして追撃したジャンピングガンダムの蹴りが炸裂!! 脱出ポッドは、サッカーボールのように遠くへ飛んでいったあと爆発したのだった。

 

* * * * *

 

 俺とカンちゃんの目の前で、彼のジャンピングガンダムが、DG(デビルガンダム)細胞により変化していく。

 そして生まれたのは、巨大な脚が特徴の暗い緑色のガンダム……ダークホッパーガンダムだ。

 

 それを見守る俺たちの周囲には、鳥に擬態したデスバーディが飛び回っている。彼らは一見すると普通の鳥にしか見えないが、島に悪意を持って近づくものを見つけると、元のデスバーディの姿に戻り、外敵を攻撃するようになっているのだ。

 

 モッチーから島を解放した俺は、この島をこれ以上悪意ある者たちに踏み込ませないように、デビルガンダムの力で島を隔離することにしたのだ。ドモンはデビルガンダムを敵としか思ってなかったが、このように使いようによっては役にたつ。

 

 変化が終わったところで、俺は改めて、カンちゃんに手を差し出す。

 

「それでは、これからよろしくお願いしますね、カンちゃん。地球を守るために」

『ウン、ヨロシク、アネキ!』

 

 その俺たち、そして二体のガンダムを、夕日が赤く照らし出していた……。

 




ファンアート、募集中です!
後、感想もくれると嬉しいです!

* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!!
新宿の街でマスターアジアと再会したジャンヌ。しかしそれは、陰で蠢く者の罠でした!
本物のマスターアジアと協力してこれを退けた彼女でしたが、なんと、その罠の毒牙は、マスターの愛弟子、ドモン・カッシュにまで忍び寄っていたではありませんか!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガン世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第7話『危険な師弟再会! 二人のマスターアジア』

にReady Go!!
次の更新は、5/20 12:00の予定です! ご期待ください!


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閑話1
【閑話】登場モビルファイター解説(5話まで)


次回からいよいよ新章ということで、ここまで登場したオリジナルのMF(モビルファイター)の簡単な説明を掲載しておきます。


〇GF13-047NN ガンダムピュセル

オリ主、ジャンヌ・エスプレッソが当初搭乗していたMF。駆動系が強化されており、彼女の剣技を完璧に再現することに特化している。その姿は、可憐な少女騎士のよう。

メイン武装はビームセイバー『カリバーン』。必殺技は、『約定勝利・ブライトカリバーン』。光のオーラをまとって突進し、そのオーラで強化されたカリバーンで敵を一刀両断する一撃必殺の技だ。

 

〇ガンダム・オルタセイバー

ガンダムピュセルが、DG(デビルガンダム)細胞で強化改装された姿。ピュセルが少女騎士なら、こちらは漆黒の鎧をまとい、堕天使の羽を背負った女騎士といった姿。

DG細胞により、ピュセルの弱点であったパワーが強化されている。

必殺技は、『絶対勝利・エクスカリバーン』。基本は『ブライトカリバーン』と同じだが、こちらはオーラが黒い不死鳥の姿をとる。

他にも、無数の刺突を放つ『スプラッシュソード』も使える。

 

〇ガンダム・ヘルトライデント

新生デビルガンダム四天王となったチコ・ロドリゲスの乗機。彼のかつての愛機、ガンダム・テキーラがDG細胞によって生まれ変わった姿。

そのフォルムは、テキーラよりさらに鋭利かつ邪悪なものになっている。その名のもととなっている三又の槍が特徴。その鋭い刺突で敵を撃ち貫く。

 

〇ダークホッパーガンダム

新生デビルガンダム四天王の一機。ファイターはモノ言うカンガルー『カンちゃん』。彼の愛機ジャンピングガンダムがDG細胞で(ry

その大型化した脚部が特徴。もちろんこの脚部は伊達ではなく、その脚から放たれる蹴りの威力は絶大。

 

〇ネロスガンダム・スクラップ

ネオ・メキシコの傭兵となったミケロ・チャリオットが乗るガンダム。かつての彼の愛機、ネロスガンダムを修理改修したものである。

外見はほとんど改修前と変わらないが、足回りは強化されており、さらに素早く強力な蹴りを繰り出せるようになった。

必殺技は、無数の蹴りを放つ『銀幻の脚』

 

※原作登場MF

〇ネーデルガンダム

第2話にて登場。原作で設定されていた必殺技『ネーデルタイフーン』のほかにも、武器としても使える胸の風車『ローテレンデ・リング』も持つ。

 

〇ガンダムゼブラ

第3話にて登場。野性味あふれるトリッキーな戦い方が特徴。

ジャンヌとのファイトでは、槍を棒高跳びのように使い、高く飛び上がり、上空から襲い掛かるという戦法も見せた。

 

〇ミナレットガンダム

第4話にて登場。原作通り、デビルガンダムとの交戦時にDG細胞に感染してしまっていた。DG細胞により増幅されたセイットのレインに対する愛憎を糧として巨大化してしまう。

 

〇社長ガンダム

第5話にて登場。ミサイルを多く持つが、相手があの二人だったので……。




さて、次回からはいよいよ新宿編に入ります!
東方師匠も再登場しますよ! どうぞお楽しみに!


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新宿編
6th Fight『危険な師弟再会! 二人のマスターアジア』


 皆さん、こんにちは、ストーカーです。

 さて……いよいよ、舞台は、原作では大きな転換期となる新宿に移ります。
 原作ではドモンはここで、さる驚くべき人物と再会し、さらに衝撃的な真実を知り、そしてその人物と決別することになりました。
 その末にどうなったかは、原作をご覧になられた皆様には、既にご存じのことでしょう。

 ですが! この話はそれだけには収まりません。

 ここから先の展開は、原作から大きく変わっていくこととなるのです。

「それはわかりません。ですが一つ言えることがあります。それは……露見しない悪事はないということです!!」

 果たしてジャンヌは、この世界での物語を、どのように変えていくことになるのでしょうか?

 今回のカードは、デビルガンダムの手下、ゾンビ兵の群れですが……どうもどこかおかしいようです。はてさて、どうなりますか。

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



 ネオ・ホンコンのある部屋。

 

 暗闇に包まれたその部屋で、ある男が通信を受けている。

 

「そうですか……わかりました。こちらでも困ったことが起きていましてね……。プランを変更する必要があるようです。はい……はい。了解しました。また連絡いたします」

 

 そして通信が切られる。

 

「まったく、あのお方には困ったものです。当初のプランから外れた行動をとるなど……。やはり、あのジャンヌとやらの娘の色香に惑わされたんでしょうかねぇ……。仕方ありません。ここはあのお方と当初のプランには見切りをつけて、次のプランにうつすとしましょうか……」

 

* * * * *

 

 荒れ果てた町……新宿に、俺……TS転生者ガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソは立っていた。

 東方師匠こと、東方不敗・マスターアジアに、「相談したいことがある」と言われて、ここに呼び出されたのだ。

 

 しかし……この荒れ果て方はひどい。確かに地球は、人類の過度の営みや、ガンダムファイトで傷ついているとはいえ、これはそれ以上だ。やはり、デスアーミーが暴れているんだろうか?

 だが、デスアーミーを統率していた師匠は、今回は無意味な破壊行為はしないようにしてくれているはずだし、そもそもほとんどのデスアーミーは、デビルガンダムのコアとなっている俺の本体の支配下にあるはずなのだが……。はぐれデスアーミーでもいるんだろうか?

 

 俺がそう思っていると、向こうから誰かがやってきた。あれは……。

 

「師匠!」

 

 そう、俺の協力者で、俺が尊敬する東方師匠その人だった。

 

「おぉ、ジャンヌか。無事に合流できて何よりだ」

「師匠こそ……いえ、師匠には無用な心配でしたね」

「こやつめ、言いおるわ。さて、この新宿は見たか?」

「はい。デスアーミーが暴れているようですが、一体何が……?」

 

 俺がそう聞くと、師匠はうなずいて、真剣な表情を浮かべて口を開いた。

 

「うむ、わしもそのことが気になって、お主が来るまで調査しておったのだ」

「そうですか……それで結果は?」

「うむ、原因はわからぬが、その手掛かりをつかむことができた」

「なんと!?」

 

 俺は思わず驚きの声をあげた。いや、師匠の実力ならそのぐらいできて不思議ではないんだけどさ。

 

「これから手がかりが示す場所に行こうと思う。お主も来るか?」

「はい!」

 

 そして俺は師匠とともに、その場所に向かっていった。

 だが俺は気づかなかった。歩き出す直前、その師匠に、師匠らしからぬ邪悪な笑みを浮かべていたのを……。

 

* * * * *

 

 そして、師匠に導かれてたどり着いたのは、東京地下の地下鉄線路の一角。

 

「師匠、ここに一体何が……?」

「くくく……気づかぬか? この愚か者が」

 

 師匠が邪悪な声色でそう言うと、俺たちの前後からゾンビ兵の群れが! いや、よく見ると、本物のゾンビ兵とは少し違うような。いや、そんなことを考えている場合ではない。

 師匠は巧みな身体さばきで俺から離れると、前方のゾンビ兵の群れの奥に着地したのだ。

 その身体からは邪悪な気配が……この気配はまさか……!?

 

DG(デビルガンダム)細胞により作られた……師匠の偽物!」

「くくく、その通りよ。まんまとだまされおって! 我が主の計画を狂わせる者、ここで果てるがよいわっ!!」

 

 師匠の偽物……偽マスターアジアがそう言うと、同時に偽ゾンビ兵たちが俺に襲い掛かってきた!

 

「このぐらいのゾンビ兵で私の命を狙うとは……。私の命の見積もりとしては甘すぎるということを見せなければいけませんね」

 

 俺はそう言い放つと、偽ゾンビ兵との戦いに突入した!

 

 そう不敵なことを言ったものの、戦い始めると、かなりきつい。やはり数が多いうえに、前後から挟み撃ちにしてくるのだ。

 こちらにとってかなり不利なのは言うまでもない。

 

「はあっ!!」

 

 剣で目前の偽ゾンビ兵を斬り捨てるが、その俺の後ろから……。

 

 ズバッ!!

 

「きゃあっ!!」

 

 別のゾンビ兵に背中を斬りつけられた! 痛みをこらえながら、その偽ゾンビ兵を一刀両断する。すると、向こうのほうから偽ゾンビ兵がマシンガンを乱射してきた!

 

「くっ……!」

 

 俺はそれを縦横無尽な動きでかわし続けるが、やはり長時間の連戦で消耗してきたせいか、交わしきれずに銃弾の一発を脚に受けてしまった!

 

「うぐっ!!」

 

 そして地面に転落してしまう。それを見て、にやっと邪悪な笑みを浮かべる偽マスターアジア。

 ここまでか……だが俺がやられても、また別のDG細胞クローンを生み出せば済むこと。そう俺が覚悟を決めていると……。

 

* * * * *

 

「行くぞ! 仮にもわしに技を教わった者なら、わしの弟子なら、見事よけてみせいっ!!」

「!?」

「!?」

 

 偽物がいる方向とは別方向から聞こえてくる、聞き覚えがある声。俺はその声に従い、力を振り絞り、激痛をこらえながら大きく跳躍した。

 そしてその次の瞬間!

 

「超級! 覇王! 電影ダアアァァァァァァンッッ!!」

 

 なんと、通路の奥から、師匠こと東方不敗・マスターアジアが超級覇王電影弾で突っ込んできた! ジャンプした俺と、とっさに身をかわした偽マスターアジアはなんとか逃れることができたが、他の偽ゾンビ兵は、その超級覇王電影弾に飲み込まれていく。そして。

 

「爆発!」

 

 師匠……本物の師匠がそう叫ぶと同時に、電影弾を受けた偽ゾンビ兵たちは、大爆発を起こして消滅していく。そして、この線路に展開していた偽ゾンビ兵は一体もいなくなっていた。

 その様子を見た偽マスターアジアは、師匠を見て憎々し気な表情を浮かべて憎しみの声をあげた。

 

「東方不敗……マスターアジアアアァァァァァ!!」

 

 だがその憎しみの声にも、師匠は動じずに、会心の笑みを浮かべるのみ。

 

「ふん。DG細胞の気配を感じたから来てみたが……まさかここで、わしの偽物が悪だくみをしていたとはな。まぁよい。かかってくるがよい。偽物の実力がどれほどのものか、見定めてやろう」

「オオオォォォォ!!」

 

 構えをとった師匠に襲い掛かる偽物。かくして、本物と偽物のバトルがはじまった。

 偽物はパンチや蹴りといった基本的な技はもちろん、流派東方不敗の技も駆使して師匠を攻めたてるが、師匠はそのことごとくを、涼しい顔をしてかわしていく。

 その実力は、本物の師匠に迫るものがあるが、それでも『迫る』というだけ。本物の実力には半歩、一歩どころか五歩ほど及ばないように見えた。その実力では、師匠を捉えるのは不可能だろう。その証拠に、師匠は不敵な笑みを浮かべたままだ。

 

「わしの物真似としてはなかなかやるようだが……技に魂がのっておらぬ! そんな技では、わしにかすり傷一つ負わせることもできぬわっ!!」

「グハアアアアァァァァッ!!」

 

 師匠の掌底が偽物をとらえ、奴は大きく吹き飛ばされた。師匠本人としては本気ではないようだが、それでも偽物に大ダメージを与えるには十分だったようだ。やはり偽物は偽物ということか。いや、師匠がすごすぎるのか。

 

「さて、偽物と遊ぶのも飽きてきたところだ。そろそろ、とどめを刺してやるとしようか」

 

 そう言って一歩を踏み出した師匠の右手が暗い光を放ち始める。それを見た偽マスターアジアは、恐怖にかられ、師匠に背を向けて逃げ出していった。むろん、それを逃す師匠ではない。

 

「相手に背を向けて逃げ出すとは! それでもわしの偽物かあああぁぁぁぁ!!」

 

 大きく地面をけって、逃走する偽物を追撃する東方不敗・マスターアジア。そして。

 

「必殺! ダークネス・フィンガアアアアア!!」

 

 師匠の必殺のダークネス・フィンガーが偽物の頭をわしづかみにした。そのエネルギーが偽物の身体を焼き尽くし、消滅させていく。

 

「ア、アアアアァァァァァ!!」

「消え去れい、この偽物……痴れ者がああぁぁぁぁ!!」

 

 そして哀れ、偽物は消滅して果てた。

 

* * * * *

 

 新宿の街の片隅に俺と本物の師匠は座り込んでいた。俺は今、背中と脚の傷を、師匠に手当してもらっているところだ。

 DG細胞の身体を持つ俺は、放っておいても自然に傷は治るが、やはり手当をしてもらったほうが回復が早いのは普通の人間と同じである。

 しかし、師匠本人に手当をしてもらえるとは……ファン冥利に尽きすぎるな。

 

「よし、これでいいであろう。後は、お主自身の自己再生能力でなんとかなろう」

「はい、ありがとうございます……」

 

 そして二人で、荒れ果てた新宿の街並みを見下ろす。

 

「まさか、わしの偽物がここで、悪事を働いておったとはな」

「そうですね……。もしかして師匠、あの偽物は……」

 

 俺がそう聞くと、師匠は苦々しい表情を浮かべて応えた。

 

「うむ。おそらく、ネオ・ホンコン首相、ウォン・ユンファの仕業であろう。あの小物め、お主との出会いをきっかけに、わしが自分の思い通りに動かなくなったのを見て、わしに見切りをつけ、偽物を生み出してそれを使って野望を果たす気になったと見える」

 

 ……やはりそうか。

 ウォン・ユンファ。師匠が今言った通り、ネオ・ホンコンの首相だ。そして、Gガンダムの物語の黒幕(の一人)でもある。

 原作では師匠と組んで、デビルガンダムの力を手に入れ、その力で世界を支配しようと企んだ。結局それは、師匠の暴走と、ドモンたちの奮闘によってくじかれたわけだが、本人はそれでもあきらめず、ウォルターガンダムに乗り込み、最後まであがく程の執念を見せた。

 まぁ、それでも最後はドモンのゴッドガンダムが騎乗していた風雲再起の蹴りを受けて果てたのだが。

 

 その彼はここでも同じことをしているらしい。

 

 ん、待てよ、ドモン?

 

「師匠、もしかしてウォンはドモンにも……」

「あり得るな、デビルガンダムを追うドモンは、あの小物にとっては自分の野望の邪魔もの。わしの偽物を使って抹殺しようとする可能性はあるだろう」

「急ぎましょう、ドモンがウォンの毒牙にかかる前に」

「そうじゃな、じゃがお主、傷のほうは大丈夫か?」

 

 そう気遣って聞く師匠に、俺はなんとか立ち上がりながら言った。

 

「はい。傷はかなり治りました。それにこうしている間にも、ドモンに毒牙が迫りつつあるんです」

「よし、それではさっそく出発するとしよう!」

「はい!」

 

* * * * *

 

 一方そのころ、時すでに遅く、ドモン・カッシュは師匠である東方不敗・マスターアジア……の偽物と接触していた。

 

 例の流派・東方不敗の演武を演じ終えた彼は、偽物の手を握り泣き崩れる。

 実はこの時、数度ほど演武の息が合わなかったのだが、師匠との再会に感激していたドモンは、それを気にもしていなかった。

 

「師匠……お会いしとうございましたあああああ!!」

「どうした、男子たる者、何を泣くことがある」

 

 そうして弟子……偽物のマスターアジアからしたら狩るべき相手……を見つめる偽マスターアジア。

 その表情に、一瞬邪悪な笑みが浮かんだのを、やはりドモンは知る由もなかった……。

 




ファンアート募集中! 感想もお待ちしています!

* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

偽物と知らず、偽マスターアジアと行動を共にするドモン!

そこで彼は、DG細胞に汚染された、ジョルジュ・ド・サンドと、アルゴ・ガルスキーの二人の襲撃を受けます。
窮地に陥った彼を救ったのは、意外な二人の姿でした。

その一方、地下の恐るべき工場を目撃したレインは、これまた意外な人物に命を救われます。

そしてそして! ドモンが衝撃の真実を知ったその時!

ここ新宿の街に、本物と偽物、二人のマスターアジアが並び立つのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガン世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第7話『ドモン対二大ガンダム! 新生シャッフル同盟見参!!』

に、Ready Go!!
それでは、5/23 12:00に、またお目にかかりましょう!


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7th Fight『ドモン対二大ガンダム! 新生シャッフル同盟見参!』

 皆さん、こんにちは、ストーカーです。

 さて……いよいよ、舞台は、原作では大きな転換期となる新宿に移りました。
 原作では、ドモンはここで、さる驚くべき人物と再会し、さらに衝撃的な真実を知り、そしてその人物と決別することになりました。
 その末にどうなったかは、原作をご覧になられた皆様には、既にご存じのことでしょう。

 ですが! この話はそれだけには収まりません。

 ここから先の展開は、原作から大きく変わっていくこととなるのです。

「このぐらいのゾンビ兵で私の命を狙うとは……。私の命の見積もりとしては甘すぎるということを見せなければいけませんね」

 果たしてジャンヌは、この世界での物語を、どのように変えていくことになるのでしょうか?

 今回のカードは、ネオ・フランス代表ジョルジュ・ド・サンドと、ネオ・ロシア代表アルゴ・ガルスキーですが、やはり何か違うようです。

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



 偽物の東方不敗・マスターアジアと再会を果たしたドモンは、彼に案内され、新宿の街を歩いていた。

 

「師匠、この先に何があるのですか?」

「うむ。わしもデビルガンダムの調査をしていてな」

「なんと!?」

 

 驚くドモンに、偽マスターアジアはうなずくと話を続けた。

 

「それで、この先の東京タワーに、その手掛かりがあることを突き止めたのだ」

「そうだったのですか、さすがは師匠です!」

「ふふふ、そう褒め殺すではない、こやつめ」

 

 そう仲良さそうに進んでいく二人だが、時折見せる偽マスターアジアのかすかに邪悪な笑みに、やはりドモンは気づくことはなかった。

 

 そしてそんな二人を遠くから見守る影が二つ。

 本物の東方不敗・マスターアジアと、TS転生者ガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソである。

 

「ドモンめ、偽物とは気づかず、あのように浮かれおって」

「ですが師匠……助けに行かなくてよろしいのですか?」

「かまわぬ。偽物に気づかずやられるようでは、キング・オブ・ハートは務まらぬわ。これも奴には良い試練よ。むろん、いざとなれば出ていくつもりではあるがな」

「厳しいのか弟子馬鹿なのかよくわかりません……」

 

 ジャンヌがそうぼそりとこぼすが、それを聞き逃さなかったマスター・アジアは、その彼女をきっとにらみつけた。

 

「何か言ったか?」

「い、いえ、なんでも……」

「まぁよい。むろん、すぐに出て行かないのには、別の理由もある。気になることがあるのだ」

「気になること?」

「うむ」

 

 一方、ドモンと偽マスターアジアは、東京タワーの前までやってきていた。

 そこで突然、偽マスターアジアの雰囲気が一変した。

 

 表情を引き締め、戦う構えを取る。

 

「師匠?」

「気をつけろ、ドモン。敵じゃ」

「敵!?」

 

 そして現れたのは……。

 

「アルゴ・ガルスキー! ジョルジュ・ド・サンド!」

 

 そう、かつてドモンが戦ったガンダムファイター、アルゴとジョルジュの二人だった。

 

「久しぶりだな、ドモン。だが再会したばかりでなんだが、お前はここに骨をうずめることになる!」

「あなたの首を、あのお方の御前に捧げてあげましょう!」

「な、何を言ってるんだ!?」

「「問答無用!!」」

 

 ドモンの言葉には耳も貸さず、アルゴとジョルジュはドモンに襲い掛かってきた!

 アルゴは巨大ながれきを抱え上げ、ドモンに投げつける。それをかわしたドモンだったが、そこにジョルジュが……!

 

「その美しい瞳、あのお方には、よい供物になりそうです!」

「!!」

 

 ドモンの目めがけて、目つぶしの突きを放ってきた! ドモンは背をそらせて、それをなんとかかわした。

 そんなドモンは、困惑から抜け出せずにいた。

 

「どうしてしまったんだ、ジョルジュ! お前は目つぶしなんて、卑怯な手を使う奴ではなかったはずだ! お前は騎士ではなかったのか!?」

「えぇ、騎士ですよ……。ただし、あのお方のね!」

 

 アルゴとジョルジュの、卑劣かつ激しい攻撃を、なんとかかわしていくドモン。それを、偽マスターアジアはほくそ笑みながら見つめていた。そこであることに気づく。

 

「む……どうやら、あそこにネズミが入り込んだようだな」

 

 そして彼は人知れず姿を消した。むろん、そのことにドモンに気づくことはなかった。

 

 アルゴとジョルジュの二人との戦いはまだ続く。ジョルジュの斬撃を刀で受け止めるドモン。だが、その後ろからアルゴが羽交い絞めにする!

 

「アルゴ!」

「ふふふ、さぁ、ジョルジュ! こいつを一刀両断してしまえ!」

「わかりました、さぁ、ドモン。いよいよ最期の時です!」

「やめろ、やめるんだ、二人とも! お前たちはこんな卑劣なことをする奴らではなかったはずだろう!?」

 

 そんなドモンの説得にも、やはり二人は耳を貸さない! ジョルジュは、偽マスターアジアが浮かべていたのと、同じような邪悪な笑みを浮かべて言い放った。

 

「そんな過去のことは忘れましたよ。さぁ、これでお別れです!」

 

 だがその時!

 

「Hey! ちょっと待ちな!」

「兄ちゃんたちをやらせはしないよ!」

 

 どこかで聞いたような声があたりに響く!

 そして廃墟のビルの屋上に現れたのは四人の人影。そしてそのうち二人は、ドモンも見覚えがある顔だった。

 

「チボデー・クロケット! サイ・サイシー!!」

 

* * * * *

 

 一方そのころ、レインは新宿の地下を探索していた。

 新宿にDG(デビルガンダム)細胞の反応を見つけた彼女は、ここの地下に、デビルガンダム関係の何かがあるとにらんで、潜入してきたのである。

 

 そしてその考えは正しかったようだ。

 向こうのほうから、ゾンビ兵が近づいてきた。そのゾンビ兵は、レインを見つけると、戦闘態勢をとって襲い掛かってきた!

 

 しかしレインも、それなりの心得はある。伊達にネオ・ジャパンチームのスタッフはやっていない。

 彼女は懐から銃を取り出すと、心を落ち着けながら狙いを定めて……撃つ!

 さすがに一発では倒せなかったが、さらに銃を発射! それでゾンビ兵を倒すことができた。そこでレインは一息つく。

 

「ふぅ……。ここにゾンビ兵がいるってことは、やはり……」

「そう、ここがわしの主、その野望の苗床よ」

「!?」

 

 声がしたほうを、ぎょっとしてレインが見ると、そこから一人の老人が複数のゾンビ兵と共にやってきた。

 それは……。

 

「やはりあなたが黒幕だったのね……? 東方不敗・マスターアジア!」

「くくく、その通りよ。知られたからには、例え女だろうが生かしておくわけにはいかん。我がしもべたちの餌食となるがよいわ」

「……っ」

 

 レインは一歩退き、偽マスターアジアのそばに控えるゾンビ兵が一歩踏み出した。その時。

 

「はあっ!!」

 

 空中から、覆面姿の男が急襲! レインを襲おうとしていたゾンビ兵を一蹴した!

 その男は、しゅたっとレインの前に着地した。

 

「大丈夫だったかな? お嬢さん」

「あ、あなたは……?」

「今はそんなことを聞いている状況ではなかろう? ここはわしに任せて、早く脱出するがよい」

「は、はい!」

 

 男に促され、レインは今来たほうに駆け出す。男の声、どこかで聞いた覚えがあるがどこだろう? 年を取った声だったが。

 

 一方、レインを逃がしてしまった偽マスターアジアは、憎々し気な視線で、男をにらみつける。

 

「おのれ、またわしらの邪魔をする気か。東方不敗・マスターアジアァ……!」

「無論よ。ことを成す過程で罪を犯したり、汚名を着るのは覚悟しているが、必要のない汚名や悪名を着るのは遠慮したいのでな」

「くっ……。アナザーゾンビ兵たちよ、このおいぼれを足止めしろ!」

 

 そう言うと、偽マスターアジアは、本物に背を向けて走り出した。その命を受けて、ゾンビ兵たちは一歩踏み出す。

 それを見て、本物のマスターアジアは、にやりと不敵な笑みを浮かべた。

 

「ふん……これだけの数でわしの足止めをしようとは、なめられたものだな」

 

* * * * *

 

 一方、新宿の地上。ドモンたち、その場にいる者たち全員が向けた視線の先。

 そこには、女性と男性、そしてチボデー・クロケット、サイ・サイシーの姿があった。

 

 そして、チボデーがバツが悪そうに、傍らの男性に聞く。

 

「な、なぁ。どうしてもあのポーズをしなくちゃいけないのか? 俺はものすごく恥ずかしいんだが……」

「何を言う。あれは我らの神聖なる儀式。やらなくてどうする」

「そうだぜチボデーの兄貴。それにオイラ、こういうの好きだけどな」

「そういうことです。いきますよ、クィーン・ザ・スペード、クラブ・オン・エース」

 

 そう言って、女性がビルから飛び降りた。もう一人の男性と、サイ・サイシーも後に続く。

 そしてチボデーも。

 

「あー、もう、わかったよ! こうなりゃヤケだ!」

 

 そして着地する。

 最初に着地した女性が名乗りを上げる。構えをとって。

 

「ブラック・ジョーカー!」

 

 次に男性も着地して、ポーズをとって名乗る。

 

「ジャック・イン・ダイヤ!」

 

 そしてサイ・サイシーも。

 

「クラブ・オン・エース!」

 

 最後にチボデー。

 

「クィーン・ザ・スペード!!」

 

 そして四人一緒にポーズをとる。

 

「「「「我ら、正しい戦いの守護者、シャッフル同盟!!」」」」

 

「「「……」」」

 

 その様子を、ドモン、ジョルジュ、アルゴは呆然として見ていた。

 その視線を感じたチボデー曰く。

 

「だ、だから俺はこんな恥ずかしいことしたくなかったんだよぉ……」

 

 そして沈黙。

 やがて、ドモンが我に返った。

 

「あ、あなた方は! 師匠から話は聞いています! シャッフル同盟! そして、チボデー、サイ・サイシー! お前たちがシャッフル同盟になっていたとは!」

「あぁ、久しぶりだな、ジャパニーズ・ボーイ! お前たちと別れてしばらくした後に彼らと会ってな。力と称号を譲り受けたのさ!」

「そういうこと! ここはオイラたちも手を貸すぜ!」

 

 そこで、アルゴとジョルジュも我に返る。

 

「おのれ、シャッフル同盟の横やりが入るとは!」

「ですが、私たちの邪魔はさせません! ゾンビ兵、現れなさい!」

 

 ジョルジュの号令と同時に、ドモン、チボデー、サイ・サイシー、ブラック・ジョーカー、ジャック・イン・ダイヤの5人を取り巻くようにゾンビ兵が現れた!

 

「どうやら、あの二人はDG細胞を植え付けられて洗脳されているようです。普通のDG細胞とは違うようですが」

 

 ブラック・ジョーカーの言葉に、得心したようにうなずき、続いて渋い顔をするドモン。

 

「やはり……しかし、彼らのような格闘家までがDG細胞で洗脳されるとは……」

「それだけDG細胞は危険だということです。ですが、詳しい話はあと。皆さん、彼らとゾンビ兵をお願いします。私とジャック・イン・ダイヤは、彼ら二人を正気に戻す術の準備をします」

「できるのですか!? そういうことが?」

「あぁ、任せてもらおう。お前たちはそれまでの間、持ちこたえてくれ」

「OK!」

「よーし、いくぞー!!」

 

 そして、ドモンとチボデー、サイ・サイシーは、アルゴたちとの戦闘に入った。

 ドモンが刀を振るって、数体のゾンビ兵を薙ぎ払う。

 チボデーはパンチの連打と銃を駆使して、多数のゾンビ兵たちと渡り合う。

 サイ・サイシーも少林寺拳法を駆使して、ゾンビ兵たちを倒していった。

 

 さすがに一流の格闘家であるドモンたち。彼らは数の差をものともせず、アルゴたちやゾンビ兵と互角の戦いを繰り広げていた。

 

 一方のシャッフル同盟の二人は、気を練り、術の準備を整えていく。

 

「よし、行きますよ、ジャック・イン・ダイヤ!」

「わかった!」

 

 そしてジャンプし、アルゴとジョルジュの二人の頭上に舞い上がる!

 

「シャッフル同盟!」

「奥義!」

「「シャッフル浄化拳ーーーー!!」」

 

 突き出した二人の手から閃光が放たれ、アルゴたちにあびせられる。それを見てドモンが言う。

 

「やったか!?」

 

 しかし。

 

「こんなものでは」

「俺たちはなんともなああああいっっっ!!」

 

 無情にも、その光はアルゴたちに何の影響も与えることはできなかった。反撃にとアルゴは、近くの巨大ながれきを抱え上げると、ブラック・ジョーカーたちに投げつける。

 術を放ったばかりでかわす態勢ができていなかった二人はその直撃を受けてしまう。

 

「ブラック・ジョーカー! ジャック・イン・ダイヤ!」

 

 ドモンが悲鳴をあげる。そこに。

 

「人の心配をしている場合ではありませんよ、ドモン!」

「くっ!」

 

 ジョルジュが剣の斬撃を放ってきた! ドモンはそれをなんとか刀で受け止める。

 

「あのお方の生み出した新しいDG細胞の前には、あなた方など敵ではありません。さぁドモン! あなたもあのお方のしもべとなるのです!」

「ぐぐぐ……誰が……!」

 

 そのころ、ブラック・ジョーカーとジャック・イン・ダイヤはなんとか立ち上がっていた。致命傷は避けられたとはいっても、やはりあれだけのがれきの直撃を受けたのだ。ダメージはかなりのものがあったようだ。

 

「大丈夫か、ブラック・ジョーカー?」

「えぇ。ですが、シャッフル浄化拳を耐えるとは……。新種のDG細胞、恐るべきパワーを秘めているようです……」

「このまま放っておくわけにはいかぬな……」

「はい。となれば残る方法はただ一つ、私たちの命を燃やし尽くし、秘奥義を撃つことのみ」

「うむ、新しい世代を救い、我らの全てを受け継がせることができるのならためらいはない! やろう!」

 

 そして二人ともうなずきあう。そして、自分の気どころか、命を燃やしていく。

 そしてそして! 再び二人ともジャンプし、アルゴとジョルジュの頭上に舞い上がる!

 

「ふん、また来たか!」

「私たちにはそんなものは効かないと、わかったはずです!」

 

 だが、それでも二人は動じない!

 

「なんの!」

「私たちの力、心、命、全てを燃やし尽くせば!」

「浄化できぬものはなし!」

 

 そして二人の身体がまばゆい光に包まれる! それを見たチボデーが、ゾンビ兵を倒しながら、思わず声をあげる。

 

「ミス! ミスター! ダメだ―!!」

 

 その制止の声を聴きながらも、二人はさらに構えをとる。

 

「新しきシャッフルの者たちよ!」

「我らの称号、力、そなたたちに託す!」

「シャッフル同盟、最終!」

「秘奥義!!」

「「シャッフル・フラッシュ!!」」

 

 二人から放たれた光は、先ほどより激しい輝きをもって、二人に降り注いだ! そして今度はさっきまでとは違った。

 

「ぐ、ぐおぉ……!」

「こ、これは……!」

 

 途端に苦しみだすアルゴとジョルジュ。その身体からDG細胞が消えていく。いやそれだけではない。二人の手の甲には何かのあざ……シャッフルの紋章が刻み付けられていく。

 

 一方のブラック・ジョーカーたちも無事では済まない。その身体はどんどん光に呑まれていく。

 

「私たちはもはやこれまでのようです……」

「新しいシャッフルの者たちよ。後はそなたたちに託す……。頼んだぞ、戦いの秩序を……」

 

 そして二人の身体は光にかき消されて消え去った。それと同時に、アルゴとジョルジュの二人も倒れこむ。その表情に、邪悪な気配は感じられない。

 

「ぶ、ブラック・ジョーカー……ジャック・イン・ダイヤ……」

 

 ドモンが呆然としながらつぶやく。

 だがそこに! その感傷を打ち砕く声が響いた。

 

* * * * *

 

「ドモン、大変よ!」

「レイン!? どうしたんだ!?」

 

 果たして、その声の主はレインだった。彼女は、全力でドモンのそばに駆け寄ると衝撃的な事実を口にした。

 

「やっぱり、ここの地下にはゾンビ兵の工場があったの!」

「なんだって、やはりか!?」

「えぇ、でもそれだけじゃなかったの! マスターアジアが……!」

「師匠が!? 師匠がどうしたんだ、レイン!?」

 

 その時!

 

「くくく……あのような馬の骨を救うために命を投げうつとはな。シャッフル同盟、やはり彼らは負け犬よ。あそこを抜けて正解だったわ!」

「!? この声は……師匠!?」

 

 そして現れたのは、二人のゾンビ兵を従えた東方不敗・マスターアジアだった。それは偽物であったが、それにドモンが気づくよしはない。

 

「師匠、なぜゾンビ兵たちとともに……まさか!?」

「くくく、そのまさかよ。わしはデビルガンダム様の忠実なるしもべ、東方不敗・マスターアジアよ!」

 

 そして彼の背後に、クーロンガンダムが現れる! だがそれは醜く変形をはじめ、原作のマスターガンダムよりさらに醜悪でまがまがしいガンダムへと姿を変えた!

 

「まさか、師匠がデビルガンダムの手下だったなんて……!」

「ドモンよ、お主と戦うはわしの本意ではない。わしと共にくるのだ。お主の兄、キョウジ・カッシュも一緒にいるぞ」

「師匠がデビルガンダムの……兄貴も一緒……」

 

 ドモンは衝撃のあまり、一時的に自我崩壊状態に陥り、偽マスターアジアの方に歩み寄っていく。

 

「だめよ、ドモン! マスターアジアのところに行ったら! 正気に戻って!」

「師匠も……兄貴も……」

 

 だが、レインの制止も聞かず、ドモンはさらに偽マスターアジアがいるところへ進んでいく。それを見て、偽マスターアジアがにやりと邪悪な笑みを浮かべる。

 

 だがそこに!

 

「待てい、ドモン! そのような偽物の甘言に惑わされるでない!!」

「!!」

 

 また新たな声。ドモンとレイン、いや彼らだけでなくチボデーとサイ・サイシーもその声のした方向を向くと、そこには二人の人影が。

 そう、それは……。

 

 クーロンガンダムの登頂部に立つ本物の東方不敗・マスターアジアと、ガンダムオルタセイバーの右肩に立つジャンヌの二人の姿だった!!

 




ファンアート、そして感想、募集中です!

* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

同行していた東方不敗が偽物とわかり、安堵したドモンですが、それもつかの間! さらなる衝撃の真実が伝えられます。
その真実に動揺するドモンに、本物の東方不敗は、ジャンヌとのファイトを持ち掛けるのです!

果たして彼の真意とはいかに!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第9話『試練の戦い! ドモン対ジャンヌ!!』

にReady Go!!
それでは、5/26 12:00にまたお目にかかりましょう!


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8th Fight『試練の対決! ドモン対ジャンヌ!!』

 皆さん、こんにちは、ストーカーです。

 さて……いよいよ、舞台は、原作では大きな転換期となる新宿に移りました。
 原作では、ドモンはここで、さる驚くべき人物と再会し、さらに衝撃的な真実を知り、そしてその人物と決別することになりました。
 その末にどうなったかは、原作をご覧になられた皆様には、既にご存じのことでしょう。

 ですが! この話はそれだけには収まりません。

 ここから先の展開は、原作から大きく変わっていくこととなるのです。

「厳しいのか弟子馬鹿なのかよくわかりません……」

 果たしてジャンヌは、この世界での物語を、どのように変えていくことになるのでしょうか?

 今回のカードは、なんとなんと! Gガンダムの主人公、ネオ・ジャパン代表、ドモン・カッシュのシャイニング・ガンダム。
 これは目が離せません!

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



 それぞれの機体の上に立つ、本物のマスターアジアとジャンヌ・エスプレッソ。

 マスター・アジアは、アルゴ・ガルスキーとジョルジュ・ド・サンドの倒れ伏している姿を見つめてふとつぶやいた。

 

「次代を担う若き者たちを救い、あとを託すためとはいえ、命を投げ捨て、わしより先に逝くとは……。この馬鹿者たちめ……」

 

 そうつぶやく彼の目に、ふと涙がにじむ。それは、マスター・アジアなりの、散っていった同胞たちへの手向けであった。

 それを悟ったジャンヌがそっと声をかける。

 

「師匠……」

「いや、なんでもない。それより今は……」

 

 声をかけられたマスター・アジアは涙を振り払うと、愛弟子と、その弟子をたぶらかそうとした偽物に鋭い視線を送る。

 一方、師匠の姿を見上げるドモンの表情には、やはり戸惑いが浮かんでいた。

 

「し、師匠!? 師匠が二人、一体これは……?」

「ドモンよ、そやつは偽物。悪者が自分の傀儡とするべく、新種のDG(デビルガンダム)細胞を使って生み出した存在よ!」

 

 偽物と指摘された、偽マスター・アジアも、負けじと言い返した。

 

「こ、こやつの言うことにだまされるなドモン! わしこそ本物。傀儡はそやつのほうじゃ!!」

 

 二人のマスター・アジアから「自分こそが本物」と主張され、ドモンはどちらが本物がわからず混乱していた。そこに、本物のマスター・アジアの声が飛ぶ!

 

「ドモンよ、いまだ本物と偽物の区別すらつかんか。修行が足りぬわ。はあっ!」

 

 そう叫ぶとマスター・アジアはクーロンガンダムから飛び降り、ドモンに向かって舞い降りていく。

 

「ならばこれならどうじゃ! 答えよドモン! 流派・東方不敗はっ!」

 

 その声を受けて、ドモンも我に返ってかまえる。

 

「王者の風よ!」

 

 そして拳をすさまじい速度で交わしあう。

 

「全新!」

「系裂!」

「「天破侠乱!!」」

 

 そして最後に、拳を激しくぶつけ合わせる。

 

「「見よ! 東方は紅く燃えている!!」」

 

 先ほどの偽物との演武とは違い、今の演武は見事に、何から何まで全てかみ合っていた。

 そして拳から伝わってくるものを感じ、ドモンは確信した。今、目の前に立ち、自分と拳をぶつけ合った師匠こそが本物だと。

 

「師匠! 師匠こそ、本物だと確信いたしましたあぁ……!」

「わかってくれたか。それでよいのだ」

 

 その二人の様子を見た偽マスターアジアは、憎々し気な視線を彼らに向けた。

 

「おのれ、もう少しでドモン・カッシュを始末できたものを……!」

 

 その視線を、本物のマスター・アジアは正面から受け止め、さらに不敵な笑みで応じる。視線には明らかな敵意をこめて。

 

「ふん、貴様のような偽物に好きにはさせぬわ。待っておれドモン。今、この偽物を葬ってくれよう」

 

 そしてマスター・アジアは、クーロンガンダムに乗り込むと、偽物に向けて飛び掛かっていった。一方の偽マスター・アジアも、自分の偽マスターガンダムに乗り込んだ。

 

* * * * *

 

 はい。ここまでの展開に置いて行かれた、ジャンヌ・エスプレッソですこんにちは。

 

 師匠こと東方不敗・マスターアジアが、ドモンに飛び掛かって演武をはじめたと思ったら、クーロンガンダムに乗り込み、偽師匠の乗ったマスターガンダムの偽物に飛び掛かっていった、という構図になっています。

 

 師匠の放つ突きや蹴りを、偽物はさばきながらも、自分からも攻撃を加えていく。

 先ほど師匠が倒した偽物のデータをフィードバックしたのか、偽物の動きは、前よりさらに鋭さを増していた。本物の師匠と互角のようにさえ見える。

 

 それを師匠も悟っているのか、面白そうな声色で問う。

 

「ほほう、前に戦った時よりも強さが増しておる。前回とは違うようだな」

「わしは、前の個体から貴様についてのデータを受け継いでおる。前のようにはいかぬわ!」

 

 そう言って、偽物はほくそ笑みながらさらに攻撃を続ける。しかし。

 

「だが、それだけでこのわしを超えられると思っているのか、たわけが!」

 

 次の瞬間、師匠のさらに鋭い突きが、偽物を捉えた! 偽物が衝撃と苦しさをミックスした苦悶の表情を浮かべている。

 

「ぐ、が……こ、これは……?」

「愚か者め! わしをデータなどというもので図ろうとすること自体が誤りよ!」

 

 今までのは、師匠にとってはセカンドギアに過ぎなかったらしい。さらに鋭さと速さを増した攻撃が、偽物を打ちのめしていく。最初はなんとかさばいていた偽物も、ついには防ぎきれなくなって、ほとんどの攻撃をその身に受けることになっていた。

 

 そしてついに、敗色を悟った偽物が機体から飛び降りた直後、師匠のクーロンガンダムの拳が、偽マスターガンダムを貫いた!

 

 その様子を見て、ドモンも安堵と感動の表情を浮かべていた。

 

「さすが師匠です! 見たか偽物! 師匠がデビルガンダムの手先になどなるはずがない!」

「……」

 

 それを聞いた師匠から返ってきたのは、重い沈黙。俺にはその理由がよくわかった。

 師匠も、俺も、地球再生のためとはいえ、デビルガンダムを利用するという、ドモンとは相いれない立場にいる。そしてそれは同時に、ドモンの師匠への信頼を裏切ることでもあるのだ。そのことに、師匠は心の痛みを感じているのだろう。

 

 一方の偽物は、遠くのビルの屋上まで駆け上ると、号令をかけた!

 

「おのれ、かくなる上は……現れよ、オルタ・デスアーミー!!」

 

* * * * *

 

「おのれ、かくなる上は……現れよ、オルタ・デスアーミー!!」

 

 その偽物の言葉と同時に、地面から多数の、俺たちの支配下にいる奴らとは、違う形状のデスアーミーの大群が現れた!

 その数は、先ほど、新宿の地下で師匠が超級覇王電影弾で薙ぎ払ったゾンビ兵の数より、さらに多い。

 

 俺はあわてて、師匠のもとに合流した。

 

「師匠、いかがなさいます? 超級覇王電影弾を使っても薙ぎ払える数ではないと思いますが……」

 

 すると通信スクリーンに映った師匠は、苦渋に満ちた表情を浮かべた。彼がこんな表情を浮かべるのも珍しい。

 それが、彼がこれからしようとしていることについて、どれだけ痛恨事かということを物語っていた。

 

「仕方あるまい。わしらもアレを出して迎え撃つとしよう。どうせ、いずれは馬鹿弟子にも知られることになるのだ」

「師匠……」

 

 そして師匠は、ドモンへとすまなさそうに声をかけた。

 

「すまぬ、ドモン……」

「師匠……?」

 

 そして。

 

「いでよ、デスアーミー、いやデスセラフ軍団!」

 

 師匠のその号令とともに、天空からデスアーミー改めデスセラフの軍団が舞い降りてきた。

 みな、デスアーミーを基に、俺の本体が手を加えたものだ。ゾンビ兵を必要とせず、俺か俺の本体、あるいは師匠の命令のみに従って動く。自ら人に害をなすことはないが、俺たちが指示すれば、躊躇なく人に害をなす存在。

 

「こ、これはデスアーミー……! まさか……!」

「デスセラフたちよ、あの偽物のデスアーミーをせん滅するのだ!」

 

 師匠の号令一下、デスセラフたちは、目の前のオルタ・デスアーミーに向けて攻撃を開始した。各所で激しい戦闘が繰り広げられる。

 それを見つめながら、師匠は横眼で生弟子を見た。

 

「信頼を裏切ってすまぬ、ドモン。これが全てよ」

「師匠……そんな……」

 

 衝撃を受けるドモンの視線を受け止めながら、師匠は話を続ける。

 

「だが一つだけ言っておきたい。わしもジャンヌも、デビルガンダムを利用しようとしていることは確かだが、そこには邪心も私利私欲もない。わしらが成し遂げねばならぬこと、わしらの志のためじゃ。今のお主には信じられぬことかもしれぬがな」

「……」

「じゃが、あの偽物の背後にいるものは違う。きゃつめは、どこかから入手したDG細胞を使い、それを改変したものを使って、その力で世界を支配しようとしている。あの偽物はその手先よ」

「師匠……教えてください、師匠たちがデビルガンダムを利用してまで成し遂げなければならないこととは……その志とはなんなのです!?」

 

 そのドモンの問いには、俺が答えることにした。

 

「それは教えることはできません……」

「ジャンヌ・エスプレッソ……なぜだ!?」

「今のあなたには教えても、理解することができないでしょう。今のあなたには、それだけの心も力も、まだ身についていないのです。その状態で教えても、その後には悲劇が待つだけ……。それを許すわけにはいかないのです」

「……だが、それでも……!」

 

 と、そこで師匠が一歩踏み出して、再び口を開いた。 

 

「どうしても知りたいか? ならば……ジャンヌと戦ってみせよ」

「「!?」」

 

* * * * *

 

 突然、師匠が指示した、俺とドモンとの決闘。それには思わず、俺も驚きを禁じ得なかった。

 

「今一度言う。ドモン、ジャンヌと戦ってみせい。それでわしがお主に明かしても大丈夫と思えば、すべてを教えてやろう」

「し、師匠?」

 

 そう聞き返す俺に、師匠はにやりと会心の笑みを浮かべた。

 

「お主にも、成し遂げたい願いがあるのであろう? ならばドモンと戦ってみせよ。そうすればその願いへの道が見えてくるであろう」

「師匠……」

 

 俺はそう茫然と師匠を見つめていた。だが、師匠の言葉からは嘘偽りは感じられなかった。師匠には、俺では見えていなかったものが見えているかもしれない。俺が求める未来に続く道が。

 

 ならば、それを断る理由はない。

 

「……わかりました!」

 

 力強く答え、戦闘態勢をとる。そして、一方のドモンも。

 

「こおおおぉぉぉいっ! ガンダアアアァァァァムッッ!」

 

 指を鳴らし、シャイニング・ガンダムを呼び出す。

 

 そして二人とも構えを取る。

 

「行くぞ、ジャンヌ・エスプレッソ! 師匠の真意を知るために、お前を倒す!!」

「受けて立ちます、ドモン・カッシュ! 私の望む未来のために!!」

 

 そして互いに一歩を力強く踏み出す。

 

「ガンダムファイトッ!」

「レディィィィゴオォォォォ!!」

 

 そして、俺とドモンとのガンダムファイトが始まった。俺のオルタセイバーの突きを、ドモンのシャイニング・ガンダムがかわして、蹴りを放つ。俺はその蹴りをバク転して回避。横一文字に斬撃を放った。

 それをかわしたドモンは、両手にビームソードを持ち、斬りかかってきた! 俺はそれを、同じく二刀流に構えたビームセイバーでさばいていく。

 

「なかなかやりますね……。さすがはキング・オブ・ハート」

「お前もな」

「では、次はこちらから行きます! スプラッシュ・ソード!!」

 

 俺はスプラッシュ・ソードの無数の突きを放った。それに対してドモンは……。

 

「どれが本物の剣かわからん。ならば、全てさばききるのみ! 必殺、シャイニング・シャドー!!」

 

 なんと何体ものシャイニングに分身し、無数の突きを全て、その分身でさばいていった!

 そうして激闘を繰り広げる俺とドモンを、師匠はただ静かに見つめているのみ。

 

 そして。

 

「今度はこちらの番だ! 必殺! シャイニング・フィンガアアアァァ!!」

「必殺! 絶対勝利・エクスカリバーン!!」

 

 そして、ドモンのシャイニング・フィンガ―と、俺のエクスカリバーンが激しくぶつかりあった!

 

 数瞬かもしれない、だが一時間か、もしかしたら一日かもしれない。そんな短くも長い時間。

 それだけの間、二人の技がぶつかり合い、火花を散らしていく。

 

 だが、それは突然、終わりを迎えた。

 ドモンが突然、技を解き、拳を降ろしたのだ。

 

「ドモン、なぜ拳をひいたのですか?」

「わからん……だが見えたんだ。死にゆく師匠を、俺が抱きかかえ、看取る姿を。そして感じた。今、お前たちと戦うべきではない、と」

 

 あぁ……どうやら、俺の剣から、悲劇の可能性を感じ取ったらしい。もしかしたら師匠が俺たちにファイトを命じたのは、このためだったのかもしれない。その証拠に、師匠は腕を組んだまま、満足そうな笑みを浮かべている。

 

 そして師匠が口を開いた。

 

「うむ。見事……とはいえんが、一応及第点はあげられるであろう。それでも、お主に全てを明かすことはできんがな」

「師匠……」

 

 だがその時!

 

 突然、地面が揺れて割れ、奥底から何かが現れた!!

 




ファンアート、そして感想、募集中です!

* 次回予告 *

 皆さん、お待ちかねぇ!

 ジャンヌとドモンのファイトの決着が着いたのもつかの間、偽物のマスター・アジアの手により、あの悪魔が現れます!
 それを迎え撃つ、東方不敗マスター・アジアの一党と、ドモンたち新生シャッフル同盟の連合軍!

 しかし、ドモンの迷いと、悪魔の恐るべきパワーに、彼はピンチに陥ります。

 そこに、謎の覆面の男が現れ、ドモンに助太刀するのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第9話『出現! アナザーデビルガンダム』

にReady Go!!
それではみなさん、5/29 12:00にまたお会いいたしましょう!


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9th Fight『出現! アナザーデビルガンダム!!』

 皆さん、こんにちは、ストーカーです。

 さて……いよいよ、舞台は、原作では大きな転換期となる新宿に移りました。
 原作では、ドモンはここで、さる驚くべき人物と再会し、さらに衝撃的な真実を知り、そしてその人物と決別することになりました。
 その末にどうなったかは、原作をご覧になられた皆様には、既にご存じのことでしょう。

 ですが! この話はそれだけには収まりません。

 ここから先の展開は、原作から大きく変わっていくこととなるのです。

「受けて立ちます、ドモン・カッシュ! 私の望む未来のために!!」

 果たしてジャンヌは、この世界での物語を、どのように変えていくことになるのでしょうか?

 今回のカードは、なんと、Gガンダムのラスボス、デビルガンダムですが、やはり我々の知るものと違うような?
 今回も目が離せそうにありません!

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



 俺とドモンがともに、拳を退いて戦いをやめたその時!

 

 突然、地響きと共に地面があれ、何かが現れた!

 

「な、なんだ!?」

「あ、あれは!?」

「むぅ……!」

 

 そこに現れたのは、ガンダムだが、まがまがしい姿。デビルガンダムより、さらにまがまがしい感じがする。

 そしてその頭部に立っているのは……。

 

「ふふふ、これがあれば、お前らなど虫と同じよ!」

「偽マスターアジア!」

 

 そして、偽マスターアジアはデビルガンダムもどきの頭部から飛び降りると、たちまちその胸部からの触手に絡みつかれ、内部に取り込まれていった。

 

『さぁ、見よ! 降臨の時を!』

 

 そのデビルガンダムもどきに、偽マスターアジアのデスアーミー……デスアーミー・オルタたちが群がり、その肉体となっていく。デビルガンダムもどきはどんどん大きくなり、ついにはギアナ高地での第二段階ぐらいの大きさにまでなった!

 

『ふふふふ、これぞ、あのお方がフェイクDG(デビルガンダム)細胞を使って生み出したデビルガンダム! 名付けて、アナザーデビルガンダムよ!! さぁ、このアナザーデビルガンダムの力の前に、怯えながらくたばるがいい!!』

 

 だが、その偽マスターアジアの言葉にも、師匠は動じない。さすがだ。

 

「ふん、黒幕の奴から借りただけの力を見せつけておいて、何を偉そうに」

「『虎の威を借る狐』という言葉の意味を知らないと見えますね!」

『ふふふ、口だけは達者だな。だが、五人だけでは何もできまい!!』

 

 そう勝ち誇ったように偽マスターアジアが言う。だがその時!

 

「五人だけではありませんよ!!」

 

* * * * *

 

 ビルの上に立っている二人の影。それを見たドモンが叫ぶ。

 

「ジョルジュ・ド・サンド! アルゴ・ガルスキー!!」

 

 そう、手の甲にシャッフルの紋章を浮かべた、ジョルジュとアルゴの姿だった。

 

「心配をおかけしましたね、ドモン・カッシュ。私、ジャック・イン・ダイヤことジョルジュ・ド・サンドと」

「俺、ブラック・ジョーカーの紋章と力を継承したアルゴ・ガルスキーも助太刀させてもらうぞ!!」

 

 さらに! 援軍は続いた。

 

「待たせたな、ジャンヌ、東方不敗マスターアジア!」

「アネキ、オマタセ! ブジダッタカ?」

 

 反対側のビルにも二人……というか、一人と一匹。

 

「チコ・ロドリゲス! カンちゃん!!」

「うむ、修行とDG細胞の制御の訓練が終わったのでな。急いで駆け付けてきたぞ!」

「アネキ、テツダウ! マカセトケ!」

 

 そう、我がデビルガンダム四天王の残り二人の姿だった。

 

「よし、我らの力を結集させて、このアナザーデビルガンダムとやらを倒すぞ! いでよ、デスセラフ軍団!!」

 

 そして師匠の号令で、俺たちの背後にデスセラフ軍団が現れた。

 しかし、その軍団の姿を見て、ドモンは複雑な表情を浮かべている。

 

「いくぞ、ドモン! 用意はいいか?」

「は、はい!」

「かかれぇ!!」

 

 そして俺たちは、アナザーデビルガンダムに襲い掛かっていった!

 

* * * * *

 

「ギガンティック・マグナームッ!!」

 

 チボデーのガンダムマックスターが、銃を発射する。発射された銃弾は、光線となってアナザーデビルガンダムに突き刺さり、爆発を起こした。

 

「グラビトン・ハンマアアァァァァ!!」

 

 アルゴのボルトガンダムの投げつけたグラビトン・ハンマーがアナザーデビルガンダムに炸裂した。

 

 しかし、アナザーデビルガンダムも負けてはいない。全身からビームを発射し、爪を振り下ろして、反撃を返してくる。

 

 その爪の一撃が、サイ・サイシーのドラゴンガンダムに炸裂して、吹き飛ばした!

 

「うわぁ!!」

「ダイジョウブカ、チビ!? ユダンハキンモツ!」

 

 その吹き飛ばされたドラゴンガンダムを、カンちゃんのダークホッパーガンダムが受け止めた。

 

「あ、ありがとよ、助かったぜ……。でも、オイラはチビじゃなくて、サイ・サイシーだからな!」

「ワカッタ、チビ!」

「だからチビじゃねえって! うおっ!!」

 

 そこに、アナザーデビルガンダムのビームが発射され、二機は左右に散開して、それをかわした。

 

 その後も、俺たちの猛攻は続く。

 

「いきなさい、ローゼス・ビット!」

「ガトリング・デススピアー!!」

 

 ジョルジュのガンダムローズから放たれたローゼス・ビットが、アナザーデビルガンダムを取り囲み、四方八方からビームを浴びせ、チコのガンダム・ヘルトライデントの無数の突きが、アナザーデビルガンダムを襲う。

 

「スプラッシュ・ソード!!」

「十二王方牌大車併!!」

 

 俺のスプラッシュ・ソードと、師匠の十二王方牌大車併が同時に炸裂。奴にダメージを与える。

 

 もちろん、デスセラフたちも、こん棒やビームライフルで、アナザーデビルガンダムに応戦する。

 

 だが、そんな中、ドモンのシャイニング・ガンダムだけ、ちょっと動きが悪い。何か、戸惑いがあるようだ。やはり、宿敵であるデビルガンダムのしもべであるデスアーミー(正しくはデスセラフだが)たちと共に戦っていること、そして俺と師匠がデビルガンダム側であることに、迷いがあるのだろうか。

 

「ドモン、しっかりしてください! あなたにも思うところはあるでしょうが、今は目の前の脅威であるアナザーデビルガンダムを止めることだけを考えましょう!」

「わ、わかっている! くっ……!」

 

 俺の言葉に、ドモンはそう応えて応戦を再開するが、やはり動きに精彩がない。それほど、彼の迷いは深いのだろう。

 そこに!

 

「危ない、ドモン、よけよ!」

「え? うわあ!!」

「ドモン!!」

 

 迷いを抱えて戦うドモンのシャイニングガンダムに、アナザーデビルガンダムの拳の一撃が直撃し、彼は大きく吹き飛ばされた。

 そこに、アナザーデビルガンダムの放った触手が迫る!

 

「ドモン!!」

「!!」

 

 その時!

 

 ズバッ!!

 

 何者かのガンダムが割り込んできて、その触手を断ち切った。それを見た俺は思わずつぶやく。

 

「え? あれは……」

 




感想、ファンアート募集中です!
あと、テテテの続編である『テテテUC(ユニコーン)』を書いてくださる方も募集してます!

* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

ピンチのドモンを救った男、彼は一体何者なのか?

そして、彼の加勢で、再び勢いを取り返した連合軍は、再びアナザーデビルガンダムに猛攻を浴びせます!
その末についに、悪魔に最期の時が訪れるのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第10話『新たなる戦いへの別れ! アナザーデビルガンダム最期の日』

にReady Go!!
それでは、6/1 12:00にまたお会いいたしましょう!


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10th Fight『新たなる戦いへの別れ! アナザーデビルガンダム最期の日!!』

皆さん、こんにちは、ストーカーです。

 さて……いよいよ、舞台は、原作では大きな転換期となる新宿に移りました。
 原作では、ドモンはここで、さる驚くべき人物と再会し、さらに衝撃的な真実を知り、そしてその人物と決別することになりました。
 その末にどうなったかは、原作をご覧になられた皆様には、既にご存じのことでしょう。

 ですが! この話はそれだけには収まりません。

 ここから先の展開は、原作から大きく変わっていくこととなるのです。

「ドモン、しっかりしてください! あなたにも思うところはあるでしょうが、今は目の前の脅威であるアナザーデビルガンダムを止めることだけを考えましょう!」

 果たしてジャンヌは、この世界での物語を、どのように変えていくことになるのでしょうか?

 今回のカードは、黒幕と偽マスターアジアが生み出したまがいもののデビルガンダム、アナザーデビルガンダム。
 今回も目が離せそうにありません!

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!




 ドモンを襲う触手を断ち切ったもの。

 それは二本の刀を持った、忍者のような雰囲気のガンダムだった。

 

「え、あれは……?」

 

 俺はそれを見て呆然とつぶやいた。そのガンダムのことを知らなかったわけではない。

 だが、その正体が原作通りだとすれば、あのガンダムとそのファイターが存在しているはずがないのだ。

 

 登録番号GF13-021NG、ガンダムシュピーゲル。ネオドイツのファイター、シュバルツ・ブルーダーのガンダムだ。

 だが、実際にはドモンの兄、キョウジがDG(デビルガンダム)細胞で作りだしたクローンが、本物に成り代わっている。ドモンの支援のために。彼はその後も、色々とドモンのために助けになり、最期にはオリジナルもろともデビルガンダムとともに散るという結末を迎えた。

 

 だが、この世界では違う。

 俺の本体は、キョウジになり代わってデビルガンダムのコアになった。制御権を俺の本体に奪われたキョウジは排出され、デビルガンダムの呪縛から解放されたはずだ。だから、彼がDG細胞を使ってシュバルツを生み出すことはできず、ゆえにシュバルツが存在するはずはないのだ。

 

 なのになぜ? まさか本物のシュバルツ? だとしたら、ドモンたちを助ける理由がないんだよなぁ。うーむわからん。

 

 そんな俺の疑問をよそに、シュピーゲルは立ち上がると、その後も迫りくる触手を断ち切り続ける。その太刀筋は本当に見事だった。いったい何者なんだ?

 

 そしてシュピーゲルはドモンのシャイニングガンダムに目を向けて言った。

 

「ドモン、何をためらっている!?」

 

 うわ、声までキョウジ兄さんだよこの人! 本当に何者なんだ!?

 

「う、うるさい、あんたに言われる筋合いはない!」

「馬鹿者! そのようなことで、あのアナザーデビルガンダムを倒せるか!」

「うっ……」

 

 シュバルツ(仮)に一喝され、絶句するドモン。まるで兄に叱られてしゅんとしている弟のようだ。本当に何者だよシュバルツ(仮)!?

 

「あのアナザーデビルガンダムは直近の脅威! あれを野放しにしておけば、さらに被害が増していくだろう。ドモン、お前はデビルガンダム憎しの心に囚われ、アナザーの被害を見過ごすのか!?」

「そ、それは……」

「ならば私たちのすることは、あのアナザーを止めるために、彼らを利用……いや、彼らの、アナザーを脅威と感じ、止めようとしている心を信じ、共に戦い、あれを破壊することではないのか!? どうだドモン!!」

「う、そ、その通りだ……わかった……!」

 

 おぉ、あのドモンを説き伏せた! さすが、あの声と口調は説得力があるなぁ。なおこうしている間にも、アナザーデビルガンダムは俺たちへの攻撃の手を緩めることなく、絶賛交戦中であります。

 むろん、俺のほうにも触手やビーム、生体ミサイルが飛んできて、それを交わしたり迎撃したり、断ち切ったりしている。

 

 あのー……そろそろ、説教をやめて、戦いを再開してほしいのですが。

 

「よし、いくぞドモン! 全力を尽くして、あの化け物を止めるのだ!」

「おう!!」

 

* * * * *

 

そして、シュバルツ(仮)のガンダム・シュピーゲルも加勢し、俺たちはアナザーデビルガンダムに対して反撃を開始した。

 

「たあーっ!!」

 

 俺のオルタセイバーのビームセイバーが、その身体を切り裂き。

 

「ドラゴンファイヤー!!」

 

 サイ・サイシーのドラゴンガンダムの火炎放射・ドラゴンファイヤーが、奴を焼く。

 

「サイクロン・パーンチッッ!!」

「ガトリング・デススピアー!!」

 

 チボデーのガンダム・マックスターのサイクロンパンチが生んだ竜巻が、アナザーの身体を切り刻み、チコのガトリング・デススピアーが貫く。

 

「はあっ!!」

「アナザー、デテケ!」

 

 ジョルジュのガンダム・ローズのビームサーベルが一閃し、カンちゃんのダークホッパーガンダムの蹴りが炸裂する!

 

「グラビトン・ハンマアアアアア!!」

 

 アルゴのボルト・ガンダムのグラビトン・ハンマーが、アナザーの顔面に叩きつけられる!

 

「シュツルム・ウント・ドランクウウウゥゥゥゥ!!」

「おおおぉぉぉぉ!!」

 

 シュバルツのガンダム・シュピーゲルがシュツルム・ウント・ドランクと、ドモンのシャイニングのビームソードが、アナザーを切り刻んでいく。

 

 シュバルツがドモンを立ち直らせたことで、流れは再びこちらに傾いてきた。アナザーデビルガンダムもこちらに応戦してくるが、みんな鮮やかな動きでそれをかわし、さらに攻撃を加えていく。

 

 そして。

 

「必殺! 絶対勝利! エクスカリバーンッッ!!」

 

 俺の絶対勝利・エクスカリバーンがさく裂! アナザーはその攻撃に耐えかねたのか、ついにその胸部装甲を開いた! その中の、偽物マスターアジアが無防備になる! そして!

 

「砕け散れい、偽物よっ! ダークネス・フィンガアアアアアア!!」

「グアアアアアア!!」

 

 師匠のダークネス・フィンガーが炸裂し、そのエネルギーで偽物は跡形もなく消滅した。それで制御を失い、アナザーは崩れ落ちながらも、苦しそうに暴れまわる。

 

「今じゃ、ドモン!」

「はい!」

 

 そしてドモンのシャイニング・ガンダムがデビルガンダムのまがいものに突撃していく。そして。

 

「俺のこの手が光ってうなる! お前を倒せと輝き叫ぶっ! うおおおお!!」

 

 シャイニングはスーパーモードに変形し、ビームソードを抜いて構える!

 

「必殺! シャイニングフィンガーソオオオォォォォドッ! メン、メン、メーーーーンッッ!!」

 

 その斬撃が決まった! アナザーはいくつかのパーツに切断され、そして爆発して果てた。

 

 悪しき者によって生み出されたまがいものの悪魔は、ついに倒されることになったのである。

 

* * * * *

 

「シュバルツとやら、よく我が弟子を立ち直らせてくれた。それと、まがい物を葬ることに手を貸してくれたことにも礼を言うぞ」

「……あの場は、アナザーを倒すことが重要だったから、手を貸したまでだ。デビルガンダムが脅威で、倒すべきという私の考えと立場が変わったわけではない」

「シュバルツ……」

 

 戦いを終え、俺たちはそう言葉を交わしていた。だが、ドモンたちと同様、シュバルツとも相容れることはできなさそうだ。今はあくまでアナザーという脅威があったから一時的に手を組んだだけで、互いに戦うことあれど、和解することはよほどのことがない限り、ないということだろう。それを考えると、俺はちょっと寂しさを感じた。

 

 ん、そうだ。

 

「あの……シュバルツ」

「なんだ?」

「その覆面をとっていただけませんか?」

 

 覆面を取って、その正体がなんなのか確かめなければ。

 だがやはり、それを言われたシュバルツは、それまでの態度がどこかにいったかのように慌てふためいた。

 

「こ、これは忍びの命! とることなどできぬ! これを失うことは、私の命を失うも同じ、さ、さらばだ!!」

「……」

 

 そしてシュバルツは、脱兎のごとく去っていった。逃げたな……。

 

 まぁ、仕方ない。

 

「それでは師匠、いきましょうか」

「うむ……さらばだ、ドモンよ」

「師匠!」

 

 ドモンに呼び止められ、師匠の脚がとまった。そして振り向くことなく口を開いた。

 

「そうであった。約束であったな。わしらの真意の片鱗でも伝えておかねば。わしらがデビルガンダムを使うは、ただ地球のことを憂いてのことよ。今のお主には、これ以上のことを教えるわけにはいかぬがな」

「師匠……それは一体……?」

「ドモン。知りたければ心と力をさらに鍛えてください。師匠の想い、考えを感じ取り、理解できるほどに。そうなれば、おのずから答えがわかることでしょう」

「ジャンヌ……」

 

 そこで、師匠がやっとドモンのほうを振り向いた。

 

「その通りじゃ、ドモンよ。強くなれ。全てを知り、答えを導くことができるほどにな。さらばじゃ」

「師匠……!」

 

 そして俺たちは、今度こそ、振り返ることなく新宿を後にしたのだった。

 




感想、そしてファンアート、絶賛募集中です!
それと、テテテの続編『テテテUC(ユニコーン)』を書いてくれる方も募集しています。書いてみたいと思う方は、メッセをくださいませ!

* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

ドモンたちは、さらに力を高めるべく、ギアナ高地に向かいました。ですが、そこにはジャンヌたち、デビルガンダム四天王の三人も来ていたのです!

そしてジャンヌは、カンちゃんのダークホッパーガンダムを、修行中のチボデーに差し向けます。

果たして、ボクシングも蹴り技も使いこなすこの難敵に、チボデーは打ち勝つことができるのでしょうか?
そして、ジャンヌの思惑はいかに?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第11話『編み出せ! 新必殺技豪熱マシンガンパンチ!!』

にReady Go!!
それではみなさん、6/4 12:00に、またお会いいたしましょう!!


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ギアナ高地編
11th Fight『編み出せ! 新必殺技豪熱マシンガンパンチ!!』



 こんにちは、ストーカーです。

 さて、ドモンはアナザー・デビルガンダムを倒したものの、結局、師匠とジャンヌの二人の真意を聞けぬまま、彼らと別れることになってしまいました。

 かつてのライバルたちとの再会、二人の旧シャッフル同盟との別れ、そして、師匠であるマスター・アジアへの複雑な思い。
 果たしてそれらは、彼をどのような道へと導いていくのでしょう?

 そして、謎のガンダムファイター、シュバルツ・ブルーダーとそのガンダム、ガンダム・シュピーゲル。

「ならば私たちのすることは、あのアナザーを止めるために、彼らを利用……いや、彼らの、アナザーを脅威と感じ、止めようとしている心を信じ、共に戦い、あれを破壊することではないのか!? どうだドモン!!」

 ジャンヌ曰く、『この世界には存在しないはずの』彼の正体とは何か?

 そして、ジャンヌはそれらにどのように干渉していき、どのような道を開いていくのか?

 今回のカードは、ネオ・アメリカ代表、チボデー・クロケットの『ガンダム・マックスター』対、新生デビルガンダム四天王、カンちゃんの『ダークホッパーガンダム』。

 それではガンダムファイト、Ready Go!!



 いずこかへ飛び立っていく、五機のシャッフル同盟たちのガンダム。

 

 俺……ジャンヌ・エスプレッソと、師匠こと東方不敗マスター・アジアは、それを遠くから眺めていた。

 

「ドモンたちは、ギアナ高地に飛び立っていきましたか……」

「うむ、かの地は、わしとドモンが過去、修行に励んだ地。奴らにとっても、よい修行になるであろう」

 

 そう、彼らが向かったのはギアナ高地。ジャングルに覆われた秘境の地。彼らはそこで、さらなる力を身に着けるべく修行に挑むのだろう。

 

 ……となれば、俺としてもやるべきことがある。彼らを導き、高め、俺の目指す結末を迎えるためにも。

 

「それでは、私とチコ、カンちゃんも向かうことにします。ギアナ高地へ」

 

 その俺の言葉に、師匠は顔をわずかに曇らせ、前方を向いたまま口を開いた。

 

「そうか。だが気をつけよ。わしの見立てでは、お主の身体は……」

 

 さすが師匠、感づいていたのか。その眼力に内心恐れ入りながら、俺は苦笑して返した。

 

「大丈夫ですよ、師匠。少なくとも師匠よりは問題ありません」

「こやつめ、言いおるわ。……無理はするでないぞ」

「はい。私の望む結末を迎えるまでは、倒れる気はありませんから」

 

 そして俺、チコ、カンちゃんの新生デビルガンダム四天王の三人もまた、ギアナ高地へ飛び立っていった。

 

* * * * *

 

ギアナ高地、その一角。

 

「はぁっ! とりゃっ! ぬおあああっ!!」

 

 そこでは、ネオ・アメリカ代表のガンダムファイター、チボデー・クロケットが激しいトレーニングに励んでいた。

 

 彼が拳を振るうたびに、汗が朝露のように弾け、空を切るたびに、空気が切り裂かれる。

 

 だが、そのような激しく鋭い動きを繰り出しても、チボデーに満足は訪れなかった。

 

 ――まだだ、まだ足りない!

 

 チボデーは必死に技を繰り出し、トレーニングを続ける。

 

 そこに。

 

「はい、チボデー。タオルとドリンクよ」

 

 彼のスタッフ、『チボデー・ギャルズ』の一人、キャスが、チボデーにタオルとドリンクを手渡す。

 それを受け取ったチボデーは、それでタオルで軽く汗をふくと、荒っぽくドリンクを飲みほした。

 

「ふぅ、一息ついた。サンキュー」

「チボデー、もっと休憩したら? どう考えてもハードワークすぎるわ」

 

 そのキャスの言葉にうなずきながらも、チボデーはトレーニングを再開する。そして身体を動かしながら言った。

 

「……勝てないんだ」

「え?」

 

 答えるチボデーの表情には、苦渋がにじみ出ていた。

 

「アナザー戦で俺は見た。カンちゃんとかいうあのファイターの動きと技を。あいつには、今の俺では絶対に勝てない」

「……」

「どのような思惑であれ、あいつらがデビルガンダムを擁している以上、あいつとも戦う時が来るだろう。だから! 今より強くなって、カンちゃんに負けないようにならなければならないんだ!」

「チボデー……」

 

 どう声をかければいいかわからず、ただ彼の名をつぶやくことしかできないキャス。

 そこに!

 

「オレヲヨンダカ!?」

「!?」

 

* * * * *

 

 チボデーとキャスが見上げたがけの上、そこには一機のガンダムが仁王立ちしていた。

 

 見間違えるわけがない。カンちゃんのダークホッパーガンダムである。

 

「お前は……カンちゃん!? なぜここに!?」

「理由ハワカラナイケド、じゃんぬノ頼ミ! オマエ、ブチノメス!!」

 

 そして崖を飛びあがって、チボデーに襲い掛かる!

 

「キャス、離れていろ! 巻き込まれるぞ!」

「う、うん、チボデー、気を付けてね!」

 

 チボデーはうなずくと、自分のガンダム、ガンダム・マックスターを呼び出す。そして乗り込み……。

 

「それでは行くぞ! カンガルー野郎! ガンダムファイトッ!」

「レディィィィゴオオォォォォ!!」

 

 そして、チボデーのガンダム・マックスターと、カンちゃんのダークホッパーガンダムのファイトがはじまった!

 

 先手を取ったのはチボデーだ。フック、ジャブ、そしてストレート。様々なパンチを次々に繰り出す。だが、野生の勘なのか、カンちゃんはそのパンチを次々とかわしていく。

 そして、チボデーの攻めの間隙を突き、ダークホッパーのリバーブローがマックスターに突き刺さった!

 

「がはっ……!」

 

 そこから形勢逆転! カンちゃんがチボデーに様々なパンチを浴びせる。リバーブローが効いているのか、それともカンちゃんの強さか、チボデーはそれらを防ぐのが精いっぱいだ。しかも、ガードしきれず、数発ほどもらってしまう。

 

「くっ……調子に乗るなぁ!!」

 

 チボデーも負けてはいない。飛んできたストレートをかわし、クロスカウンターで反撃! それでダークホッパーが後ろずさったのを合図に、チボデーが逆襲に出る! パンチの連打を繰り出し、カンちゃんはそれをよけていく。

 

「くらえぇ!!」

 

 マックスターが強烈なフックを放った! しかし、ダークホッパーはそれをしゃがんでかわすと、後ろ向きになり……。

 

「なに……? うわあっ!!」

 

 チボデーは、カンちゃんの強烈なカンガルーキックで吹き飛ばされた!

 

* * * * *

 

 ファイトは、カンちゃん有利に進んでいた。

 

 カンちゃんの、蹴りを交えた怒涛の攻めに、チボデーは徐々に防戦一方に追い込まれていく。

 

 蹴りも使うカンちゃんは、ボクサーであるチボデーにとって強敵であった。

 

 こちらの攻撃の間隙をぬい蹴り攻撃の一発。

 パンチの連打に紛れ込んでの蹴り。

 こちらの攻撃をかわしてのカウンターキック。

 

 まさに変幻自在というべきカンちゃんの攻撃に、チボデーは翻弄されていた。

 そもそも、パンチのみというボクシングのステージで戦ってきた彼だ。ガンダムファイトでいくらか他の技にも慣れてきたとはいえ、やはり蹴り技も使う敵との相性は悪いと言わざるを得ない。

 

 そして、再びカンちゃんの蹴りが、チボデーに炸裂! マックスターは再び吹き飛ばされた。

 

「ちぼでー、マダマダ! ソロソロ、トドメ!」

 

 気合と勝つ気十分のカンちゃんとは違い、一方のチボデーは、相性の悪い相手と、それよりなによりも、カンちゃんの天賦の才の前に、弱音が湧き出ることを禁じ得なかった。

 

「やはりだめなのか……? 俺ではこいつに勝てないのか……?」

 

 彼の心がくじけかけたその時!

 

「チボデー、頑張って!」

「あなたはチャンプよ! 負けるはずがないわ! 自信をもって!」

「立って、チボデー!」

「チボデー、勝ってー!!」

 

 チボデーギャルズの応援だ。それを耳にしたチボデーは、身体と心に力が満ちてくるのを感じた。そして思う。

 

(そうだ! 俺には彼女たちがいる! 彼女たちの声援が、気持ちが、俺に力を与えてくれる! 彼女たちがいてくれる限りは、俺は無敵のチャンプでいられるんだ!)

 

「ちぼでー、クタバレ! ダークホッパー・ヘルクラ……」

「うおおおおお! 喰らえ、必殺! 豪熱・マシンガンパアアアアンチッ!!」

「カンッ!?」

 

 飛び掛かったダークホッパーに、チボデーの新必殺技・豪熱マシンガンパンチが襲い掛かる! 一発一発に炎をまとったそのパンチは、無数放たれ、ダークホッパーガンダムに襲い掛かる!

 その威力の前に、ダークホッパーのガードは意味をなさず、次々とそのボディにヒットしていく。今や、追い詰められるのはカンちゃんのほうになった。

 

 そして。

 

「吹き飛べぇ! フィニーッシュ!!」

「ピョーンッッ!!」

 

 炎に包まれたアッパーでフィニッシュ! ダークホッパーは自分が立っていた崖の上へと吹き飛ばされていった。

 

 しばしの沈黙。だが今やチボデーの身体は、新たなる力、新必殺技を身に着けた喜びと、難敵であったカンちゃんを倒した歓喜に包まれていた。

 

 そして彼は、拳を振り上げて叫ぶ。

 

「アイ・アム・チャンピオーンッッ!!」

 

* * * * *

 

 カンちゃんが吹き飛ばされた崖の上。

 

 俺と、中破したダークホッパーから降りてきたカンちゃんは、そこから、歓喜に沸くチボデーチームを見下ろしていた。

 その様子を見て、思わず微笑みが浮かんでしまう。

 

「アネキ、ヒドイメニアッタ……」

「ふふ、お疲れ様でした、カンちゃん。こんな役をやらせてごめんなさいね」

「キニスルナ、アネキ。アネキノ役ニタテタラ、カンチャン、ウレシイ。カンチャン、ヤクニタテタカ?」

 

 そのカンちゃんの質問に、俺は微笑んだまま振り向いて答えた。

 

「えぇ。これでチボデーはさらに強くなりました。十分役に立てましたよ」

「ソレハヨカッタ。カンチャンモ、ツヨクナッタアイツトタタカウノ、タノシミ」

 

 そう、これが俺がギアナ高地に赴いた狙い。彼らに干渉して、さらに強くして力を身に着けてもらう。

 彼らの影響を受けて、ドモンがさらに力と心を磨き上げれば、きっと師匠と俺の考えを理解してくれるはず。そうなれば、きっと師弟和解の道も開けるだろう。

 

 その一歩を築くことができたのは本当によかった。

 

 そう思いながら、俺はチボデーギャルズに抱き着かれるチボデーを見守っていた。

 




感想、そしてファンアート、絶賛募集中です!
それと、テテテの続編『テテテUC(ユニコーン)』を書いてくれる方も募集しています。書いてみたいと思う方は、メッセをくださいませ!

* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!
 
フェイクデビルガンダム細胞に取り付かれたせいで、デビルガンダムへの恐怖に囚われたジョルジュ!
そんな彼を立ち直らせようと、彼の執事のレイモンドはあの手この手で頑張ります。

ですがその時! 新生デビルガンダム四天王の一人、チコ・ロドリゲスが、さらなる恐怖を携えて襲い掛かるのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第12話『恐怖から抜け出せ! 勇気のローゼスハリケーン!!』

にReady Go!!
それではみなさん! 6/7 12:00にまたお会いいたしましょう!


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12th Fight『恐怖から抜け出せ! 勇気のローゼスハリケーン!!』

 どうもこんにちは、ストーカーです。

 さて、アナザーデビルガンダムを倒すことに成功したドモン・カッシュたちシャッフル同盟は、ここ、かつてドモンがその師、東方不敗・マスターアジアのもとで修業に励んだ地、ギアナ高地に再び降り立ちます。
 師匠とジャンヌの真意を知るため。そして、デビルガンダムを止めるため、さらなる力を得るために。

 果たしてうまくいくのでしょうか? そして、ドモンたちを追って、このギアナ高地に降り立ったジャンヌたち、新生デビルガンダム四天王の暗躍の結果は?

(そうだ! 俺には彼女たちがいる! 彼女たちの声援が、気持ちが、俺に力を与えてくれる! 彼女たちがいてくれる限りは、俺は無敵のチャンプでいられるんだ!)

 今回のカードは、ネオ・フランス代表、ジョルジュ・ド・サンドのガンダムローズ対、新生デビルガンダム四天王、チコ・ロドリゲスのガンダム・ヘルトライデント。

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



「ふん、はっ! とりゃあ!!」

 

 ギアナ高地の密林の中、ビームセイバーを振るうガンダム・ローズ。だが、その動きには、どこか精彩が欠けていた。

 それを取り戻そうと、必死にビームセイバーを振るうも、戻ってくることはなかった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 ガンダム・ローズのコクピットで息を切らすジョルジュ。

 そこに、執事のレイモンドからの通信が入る。

 

『ジョルジュ様、ドローンの用意ができました』

「わかった。さっそく出してくれ」

『かしこまりました』

 

 レイモンドの返事と同時に、ガンダム・ローズの周辺に三機のドローンMS(モビルスーツ)が現れた。現れたそれは、すぐに戦闘態勢をとる。

 

 だがそれより速く、ジョルジュがドローンの一機に襲い掛かる! そしてそのドローンを一刀両断する!

 もう一機のドローンが銃を撃つ。ガンダム・ローズはその攻撃を身をひるがえして華麗にかわすと、その頭部にビームセイバーを突き刺す! だがそれと同時に、もう一機のドローンが、ガンダム・ローズの背中にビームを直撃させた!

 

「!」

 

 そして、ガンダム・ローズが振りむいた直後!

 

「!?」

 

 ジョルジュの表情が一瞬、恐怖に硬直する! 彼の目には、フェイクDG(デビルガンダム)細胞を感染させようと、彼に迫るアナザー・デビルガンダムの姿が映っていた。

 

「あ……あ……」

『じ、ジョルジュ様!?』

 

 レイモンドの声も、今のジョルジュには届かない。ジョルジュの中で、恐怖が膨れ上がっていく。そして、それが極限に達した瞬間!

 

「うわあああああ!!」

 

 ガンダム・ローズは、それまでの華麗な動きが嘘のように、荒々しくドローンに襲い掛かった! その剣の動きは、まるで彼の目に敵が映っていない、否、彼の周囲が敵であるかのように乱暴で、まるで騎士ではなく狂戦士のよう。

 

 ドローンMSは的確に模擬弾のビームを発射する。ガンダム・ローズはその直撃を受け、時には吹き飛ばされながらも、それでもひたすら前進し、これまた荒々しい動きで、ドローンMSを破壊した。

 

「はぁ……はぁ……」

『ジョルジュ様……』

 

 執事に心配そうな声をかけられながら、ジョルジュはただ、コクピットで恐怖に満ちた荒々しい呼吸を発していた……。

 

* * * * *

 

 その修行の様子を厳しい目で見つめる二人のガンダム・ファイター。言うまでもなく、俺、ジャンヌ・エスプレッソと、チコ・ロドリゲスの二人である。

 

「やっぱり、ジョルジュはあの恐怖から脱し切れていないようだな……」

 

 そう苦々しい声をかけるチコに、俺は表情を曇らせたままうなずいた。

 

「えぇ。残念ながら、今の彼では、さらなる力を得ることは難しいでしょうね……」

 

 本当はこの修行で、彼に新技・ローゼスハリケーンを会得してもらいたいのだが……。彼に刻まれた恐怖は、かなり深いようだ。

 

「これは荒療治するしかありませんね。チコ、カンちゃんに続いて、嫌な役回りをさせてすみませんが、お願いできますか?」

「あぁ、気にしないでくれ。アナザーとの戦いで見た、彼の技はどれも華麗だった。それを取り戻してもらい、さらに力を得てもらうためなら、こんな貧乏くじも悪くない」

 

 そして、チコはその場を離れて行った。俺の背後で、彼の愛機であるガンダム・ヘルトライデントが立ち上がる機械音が聞こえた。

 

* * * * *

 

「ふぅぅ……はぁっ!! ……ダメだ……」

 

 大木に突き刺さったままの刀を握ったままのドモンに、シュバルツのげきが飛ぶ。

 

「甘いぞ、ドモン! そのようなことでは、真のスーパーモードを起動させることはできん! 明鏡止水の心だ。雑念を捨てろ。大木を一刀両断することだけを考えるのだ!」

「わ、わかっている!」

 

 そして、再び刀を構え……そして一閃! しかし、刀はやはり大木の1/3ぐらいの位置で止まってしまった。

 そこに。

 

「ドモン! お客さんよ!」

「あ、あぁ、わかった。修行は一時休憩ってことでいいよな、シュバルツ?」

 

 そう聞いてくるドモンに、シュバルツは真剣な表情のままうなずく。

 

「うむ、仕方あるまい。休憩もたまには必要だ。だが、休憩が済んだら再び修行だ!」

 

 そしてシュバルツは、どこかへと飛び去って行った。その動きは、まさに忍者がごとし。

 

* * * * *

 

「恐怖に?」

 

 そう心配そうに声をかけるレインに、レイモンドはうなずいて口を開いた。そう、ドモンへの来客はジョルジュ・ド・サンドの執事、レイモンドだったのだ。

 

「はい。フェイクDG細胞を植え付けられてからというものの、ジョルジュ様は、デビルガンダムへの恐怖にとりつかれてしまいまして……」

「そうか……。旧シャッフル同盟の二人の力で、フェイクDG細胞は既に除去されたが、それによって植え付けられた恐怖は容易に拭い去ることはできないということか……」

「おそらく、そうだろうと思います。今のジョルジュ様は、何かの拍子にデビルガンダムに対する恐怖を呼び起こされてしまい、目の前のドローンMSすらデビルガンダムに見えてしまう、というありさまで……」

「むぅ……」

 

 さらに、このジョルジュの乱心をネオ・フランスの委員会も問題視していて、一部では、選考をやり直そうかという声も上がってきているらしい。

 

「ふむ……だが、これはジョルジュの心の問題だからな。俺たちではなんとも……」

「ちょっと、ドモン……」

 

 ドモンをたしなめようとするレイン。そこに。

 

「いや、ドモンの言う通りだ」

「!?」

 

 ドモン、レイン、レイモンドが上を向くと、そこには、そばに立っている木の枝に足を引っかけて逆立ちでぶら下がるシュバルツの姿があった。

 

「心の問題は、己が乗り越えていくしかないこと。手助けはすれど、最終的には乗り越えるのは自分なのだ」

「はぁ……」

 

 シュバルツの意見はともかく、その登場の仕方に、呆然として返事を返すことしかできないレインであった。

 

* * * * *

 

 そして、ドモンたちのアドバイスを基に、レイモンドは、ジョルジュが立ち直るために色々と手を尽くした。

 まずは座禅。

 

「……」

「そう、その調子ですぞ、ジョルジュ様! 心を静めるのです!」

「……っ」

 

 そして数分後。

 

「う、うわあああああ!!」

「じ、ジョルジュ様!」

 

 座禅を組んで心を無にしたジョルジュの脳裏に、デビルガンダムが現れて失敗。

 

「おや、もういいのですか、ジョルジュ様……?」

「あ、あぁ……すまない……」

 

 おいしいものを作って差し上げるも、そんな状態では、ジョルジュの食欲が戻ってくることもなく、失敗。

 

「で、デビルガンダムが、デビルガンダムがあああ!?」

「ジョルジュ様!?」

 

 滝行をさせてみるも、今度は岩肌がデビルガンダムに見えてしまい、失敗。

 

 ジョルジュの、デビルガンダムへの恐怖は、そう簡単にぬぐえそうもなかった。

 

* * * * *

 

 前にレイモンドが、ドモンのところに相談に赴いてから数日後。

 

 この日も、レイモンドは再び、ドモンに助言を受けに赴いていた。

 

 ジョルジュが恐怖に囚われているのは相変わらずで、それどころか、今の彼の戦いからは、優雅さが完全に失われていた。ただ恐怖におびえ、それを振りほどき、逃れるためだけの戦い。

 

 その様子を見かねたのか、ネオ・フランスの委員会内部では、今一度、ジョルジュと、もう一人の候補であったミラボーとの間で、ファイトを行わせ、選考をやり直したほうがいいのではないか、という意見が大勢になっていた。

 

 このままでは、ジョルジュはネオ・フランス代表の座をはく奪されてしまうかもしれない。それは、騎士であることを心掛けてきたジョルジュにとっては、死より辛いことだろう。

 だがレイモンドは、いまだにジョルジュを立ち直らせる方法を見いだせずにいた。

 

 そこまで考えて、彼がため息を吐いたその時だ。

 

 彼の目に、戦闘の煙が立ち上っているように見えた。それは見間違えるはずがない。ジョルジュのいる、ネオ・フランスのキャンプからだ。

 

「ジョルジュ様!!」

 

* * * * *

 

 ネオ・フランスのキャンプでは、ジョルジュのガンダム・ローズと、強襲を仕掛けてきたチコ・ロドリゲスのガンダム・ヘルトライデントとのファイトが繰り広げられていた。だが。

 

「はぁはぁ……」

『どうした? あの鮮やかな技は、今日はお休みか?』

「う、うわあああぁぁぁ!!」

 

 ガンダム・ローズはビームセイバーで斬りかかる。だが、その攻撃は大振りかつ乱雑で、チコにとってはそれをかわすことは造作もなかった。

 

『そんな攻撃で、この新生デビルガンダム四天王、チコ・ロドリゲスを倒せると思ったか? 甘くみられたものだな』

「はぁ……はぁ……で、デビルガンダム……」

『……どうやら、デビルガンダムへの恐怖から立ち直れていないようだな。なら、その恐怖に、さらに華を添えてやろう!』

 

 チコがそう言うと、ガンダム・ヘルトライデントが変化をはじめた! よりマッシブに、そしてより凶悪に。

 

「あ……あ……」

『どうだ、お気に召してもらえたか?』

 

 恐怖に表情が凍り付くジョルジュ。目の前のガンダム・ヘルトライデントは、DG細胞の変化能力で、大きさは通常のMF(モビルファイター)の2倍ぐらいでありながらも、デビルガンダムに酷似した姿へとなっていたのだ。

 

 その姿に、ジョルジュの心の中の恐怖が呼び起こされてしまい、彼は身動きがとれなくなってしまう。

 変化したヘルトライデントが一歩を踏み出す。それを見てとったジョルジュは慌ててビームセイバーを構える。それは、ファイターとしての本能のようなものであった。

 

『いくぞ!』

 

 ヘルトライデントが、そのトライデントを自在に操り攻撃してくる。ジョルジュはそれを防ごうとするものの、恐怖で身体が硬直してしまい、満足に防ぐことができない。

 

『その程度か、失望したぞ! ガトリング・デススピアー!!』

 

 ヘルトライデントの無数の突き、ガトリング・デススピアーがさく裂! ジョルジュのガンダム・ローズは吹き飛ばされてしまう。

 

「うぐっ……!」

『俺が戦うまでもなかったな。だが一度戦った者への手向けだ。この俺の最強の大技でとどめを刺してやろう』

 

 そしてチコが槍を構えたその時!

 

『お待ちください!』

 

* * * * *

 

「レイモンド!」

 

 そう、ガンダム・ローズの目前には、ジョルジュの執事、レイモンドが乗るMS、『バトラーベンスンマム』が立ちはだかっていた。

 

『どうしても、ジョルジュ様を倒すというのであれば、不詳、このレイモンド・ビショップが、先にお相手いたします』

『ほう……?』

 

 決意をみなぎらせて立ちはだかるレイモンドを、ジョルジュが止めようとする。

 

「ま、待て、レイモンド! お前には無理だ!」

『ご心配なく、ジョルジュ様。このレイモンド、あなたに剣を教えた身。ただでやられはしません』

『面白い。どこまでやれるか、見せてもらうとしようか!!』

 

 そして、チコのガンダム・ヘルトライデントは、バトラーベンスンマムに襲い掛かった!

 そして槍を一閃! だが、バトラーベンスンマムはそれをひらりとかわし、逆に、ビームソードの一撃を見舞う! チコはそれをビームトライデントで受け止めた。そして離れて槍を横凪ぎ! だが、バトラーベンスンマムはそれを華麗に跳躍してかわし、ヘルトライデントの背後に降り立ち、ビームソードで一閃! ヘルトライデントはそれを紙一重でかわす。

 

 それからも、ガンダム・ヘルトライデントと、互角の戦いを繰り広げるレイモンド。主のために必死になって戦うその姿は、ジョルジュの心の中に何かを湧き出させた。

 

 しかし、レイモンドはやはり高齢である。いまだ青年であるチコと比べれば、体力はどうしても劣る。

 体力が尽きてくれば、当然動きも鈍る。

 

『はぁっ!』

『うわあ!!』

 

 ガンダム・ヘルトライデントの狙いすました突き! レイモンドはかわそうとするものの、かわしきれず、左腕を破壊されてしまう!

 

 続いて、ビームトライデントの横凪ぎ! かろうじてかわしたものの、頭部を半壊させられてしまう!

 

 それでも、まだレイモンドの闘志は尽きることはない。渾身のビームセイバーでの斬撃! だが、チコはそれを槍で受け止め、バトラーベンスンマムの脚部に蹴りを放つ! その鋭く、激しいキックに、バトラーベンスンマムの右脚は破壊! 左足も半壊してしまい、擱座してしまう。

 

『俺をここまで追い詰めたのはお前がはじめてだ。ほめてやるぞ』

『はぁ……はぁ……』

「もういいレイモンド! やめてくれ!」

 

 それでもレイモンドは、ガンダム・ローズの前から退こうとしなかった。そして主に言う。

 

『ジョルジュ様……このレイモンド、貴方様にお仕えできて、幸せでありました』

「レイモンド!」

『別れは済んだか? では……これでとどめだ!』

 

 そしてチコは、目前のバトラーベンスンマムに狙いを定め、槍を構える。

 

 それを見つめるジョルジュは、自分に対して自問自答する。

 

(ジョルジュ……お前はこのままでいいのか? 恐怖に縛られ、忠実な執事をこのまま死なせても。それが騎士なのか? お前はそんな男だったのか?)

 

『さらばだ、古い戦士よ。ガトリング・デススピアー!!』

 

 そして再び、擱座したMSに、無数の突き……ガトリング・デススピアーを放つ!

 そこに!

 

 カカカカカカッ!!

 

『!?』

 

 大破したバトラーベンスンマムの前に、ガンダム・ローズが躍り出て、その刺突を全て、ビームセイバーでさばききったのだ。

 

『おぉ……ジョルジュ様……!』

「ありがとう、レイモンド。私を守ろうと戦ってくれたお前の勇気が、私に勇気を与え、恐怖を振り払ってくれた」

 

 そして、ビームセイバーを一閃! ヘルトライデントはそれは後方に飛んで交わすが、交わしきることができずに、脚部装甲に一筋の傷を作られてしまう。その傷も、DG細胞の自己修復能力により、すぐに消えたが。

 

『勇気と華麗さを取り戻したようだな。そうでなくては』

「我が執事をあそこまでもてなしてくれた礼、私の新技で返させてもらいましょう」

 

 そう言って、ジョルジュは身構える。今ならできそうな気がする。編み出したはいいものの、今まではどうしても使うことができなかったあの技。今の自分なら発動させることができる。その確信があった。

 そして、ガンダム・ローズのマントから、薔薇型の無線攻撃端末……ローゼス・ビットが射出され、前方に展開する。

 

 それを見て、チコが笑みを浮かべる。

 

『ほう……面白い。ならば俺も、改めて必殺の大技で迎え撃たせてもらおう』

「のぞむところです……いざ!」

 

 そしてにらみあうガンダム・ヘルトライデントと、ガンダム・ローズ。

 

 そして。

 

『ヘル・バニシング・トルネード!!』

 

 ヘルトライデントが槍を大きく横凪ぎ! それによって大きな竜巻が生まれ、ガンダム・ローズへと向かっていく!

 そしてガンダム・ローズは……!

 

「ローゼス・ハリケーンッッ!!」

 

 前方に展開したローゼス・ビットたちが一斉に、竜巻ごと、ヘルトライデントを取り巻く。そして高速回転しながら、ビームを発射! 敵をビームの竜巻に閉じ込めた!!

 

『こ、これは……!? うおおおおお!?』

「フィナーレ!!」

 

 そのジョルジュの掛け声とともに爆発!!

 

「できた……私の新技……。勇気が私に、技を放つ力を与えてくれた……なに!?」

 

 目をむくジョルジュ。そこには、半壊状態のヘルトライデントが膝をついていた。そのボディから、DG細胞のパーツが剥がれ落ちていき、そこには元の姿のガンダム・ヘルトライデントの姿があった。

 

『見事だったぞ、ジョルジュ・ド・サンド。機体の上に、デビルガンダムの姿を模した増加装甲をまとっていなければ、撃破されていた……。それでも、大ダメージだったがな……』

 

 そしてなんとか立ち上がる。チコの言うとおり、ヘルトライデントはあちこちボロボロになっていた。

 

『また相まみえよう。その時まで、さらに強くなっていろよ!』

 

 そしてヘルトライデントは、彼方に飛び去って行った。ジョルジュはそれを見送って一息つくと、ビームセイバーをしまうと、ガンダム・ローズを降り、バトラーベンスンマムに駆け寄っていった。

 

* * * * *

 

 その戦いの様子を、俺……ジャンヌ・エスプレッソは、崖の上から見守っていた。

 

「どうやら彼も、新しい力に目覚めたようですね。もしかしたら私は、師匠と同じかそれ以上の、名伯楽なのかも……。……っ」

 

 と、そこで立ち眩みがして俺はよろけそうになった。そして、それを支えてくれる姿があったのに気づく。

 

「カンちゃん……ありがとうございます……」

「ダイジョウブカ、アネキ?」

「えぇ。ここまでの連戦の疲れが出てきただけですから……。少し休むことにします」

「ソウカ、ソレナラ……」

 

 そう言うと、カンちゃんは、なんと俺をお姫様抱っこしたではないか! こ、これは元男の身からすると恥ずかしすぎるぞ!

 

「ち、ちょっと、カンちゃんっ……」

「遠慮スルナ、フカフカ布団トハイカナイガ、おれノ腕ノ中デ、ヤスンデイロ」

「は、はい、ありがとうございます……」

 

 そして俺は、カンちゃんにお姫様抱っこされたまま、眼下にたたずむガンダム・ローズを見守っていた……。

 




感想、そしてファンアート、絶賛募集中です!
それと、テテテの続編『テテテUC(ユニコーン)』を書いてくれる方も募集しています。書いてみたいと思う方は、メッセをくださいませ!

* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

ギアナ高地で、激しいファイトを繰り広げるアルゴとサイ・サイシー!
そのファイトを仕組んだジャンヌは、配下のデスセラフの群れを差し向けてきたではありませんか!
果たして二人の運命やいかに!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第13話『中ロ激突! サイ・サイシー対アルゴ!!』

にReady Go!!
それではみなさん。6/10 12:00にまたお会いいたしましょう!


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13th Fight『中ロ激突! サイ・サイシー対アルゴ!!』

 どうもこんにちは、ストーカーです。

 さて、アナザーデビルガンダムを倒すことに成功したドモン・カッシュたちシャッフル同盟は、ここ、かつてドモンがその師、東方不敗・マスターアジアのもとで修業に励んだ地、ギアナ高地に再び降り立ちます。
 師匠とジャンヌの真意を知るため。そして、デビルガンダムを止めるため、さらなる力を得るために。

 果たしてうまくいくのでしょうか? そして、ドモンたちを追って、このギアナ高地に降り立ったジャンヌたち、新生デビルガンダム四天王の暗躍の結果は?

「我が執事をあそこまでもてなしてくれた礼、私の新技で返させてもらいましょう」

 今回のカードは、なんと! ネオ・チャイナ代表サイ・サイシーのドラゴンガンダム対、ネオ・ロシア代表アルゴ・ガルスキーのボルトガンダムという夢のカードです!

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



 夜の闇の中、最低限の警備を残し、ひっそりと眠りについているネオ・ロシアのキャンプ。

 崖の上から俺……TS転生者ガンダムファイター、ネオ・ノルウェー代表、そして新生デビルガンダム四天王ナンバー2こと、ジャンヌ・エスプレッソは見下ろしていた。

 

「さて……それではそろそろ行きましょうか」

 

 俺はそうつぶやくと、愛機であるガンダム・オルタセイバーに乗り込んだ。それと同時に機体が変形をはじめる。DG(デビルガンダム)細胞の効果だ。

 

 後頭部の一部が細長く伸び、弁髪のようになる。両手が変形し、竜のアギトに似た形になる。

 

 カラーリングも、緑を基調としたものに変化していく。

 

「……よし」

 

 俺のオルタセイバーは、DG細胞による擬態効果により、ネオ・チャイナのドラゴンガンダムに酷似した姿に変化した。よく見ると違うところは多いが、夜襲をしかけるのだから、これぐらいで十分だろう。

 

「それではいきますか」

 

* * * * *

 

 その夜、ネオ・ロシアのキャンプは、混乱と喧騒に包まれた。

 

 崖の上から、モビルファイターらしき機体が飛び降りてきたのだ! 無人のトレーラーを踏みつぶしたそれを見た、ネオ・ロシアスタッフは驚愕する。それは……。

 

「ね、ネオ・チャイナのドラゴンガンダム!?」

「ど、どうしてここに!?」

 

 そう戸惑いの声をあげるスタッフの声をよそに、ドラゴンガンダムらしき機体は、その左腕を仮設の倉庫へと向ける。中にいるスタッフたちが全員出ていくのを確認すると、その左腕の竜のアギトから火炎を発射! 倉庫を焼き尽くす。

 

「これ以上好きにはさせん、ネオ・チャイナめ!」

 

 その声とともに、別の倉庫から、ネオ・ロシアのMS(モビルスーツ)が発進していく。そして、ドラゴンガンダムらしき機体を三機で取り囲む。

 だが、三機が戦闘態勢をとる前に、侵入者はフェイロンフラッグらしき武器を構え、突進していく。そして、その先に発振したビームサーベルで、ネオ・ロシア機の一機を一刀両断! パイロットが脱出した直後、機体は爆散した。

 

 横に回った一機が銃を撃とうとするも、ドラゴンもどきは右腕を伸ばし、竜のアギトでその機体の頭部をわしづかみにした。そしてその機体を振り回すと、もう一機に投げつけた。

 

 そして、武器をかまえて一歩踏み出す。慌てて、パイロットが脱出したところで、その二機を一刀両断!

 

 爆散したのを見届けると、ドラゴンガンダムらしき機体は、天高く跳躍して飛びさっていったのだった。

 

* * * * *

 

 その数時間後、ネオ・チャイナのキャンプでも、同じような事件があった。ボルトガンダムに酷似した機体が、キャンプを襲撃したのだ。

 

 だが、それらの事件には不可解なところがあった。いずれも事件でも、死傷者は一人も出ていないのだ。

 襲撃者は、コクピットを外して攻撃したり、スタッフが脱出したのを見届けてから、施設を攻撃するなど、極力死傷者が出ないように動いていたのだ。

 とはいえ、施設自体が受けた被害は甚大であり、それはネオ・ロシアとネオ・チャイナの両者に疑心暗鬼を植え付けるに十分であった。

 

* * * * *

 

 その翌日。ネオ・チャイナのキャンプは喧噪に包まれていた。

 

 ネオ・ロシアチームを仕切る女傑、ナスターシャ・ザビコフが、ネオ・チャイナチームの恵雲に問い詰める。

 

「あの姿はどう見てもドラゴン・ガンダムだった! 言い逃れはできんぞ! 私たちのキャンプを襲撃したのは、ネオ・チャイナだろう!」

 

 一方の恵雲、瑞山も負けてはいない。逆に反論し、問い返す。

 

「知らんものは知らん! サイ・サイシーのアリバイは完璧だ! こちらこそ、キャンプをボルト・ガンダムらしい機体に襲われたのだ! 襲撃してきたのはそなたたちであろう! 被害者は我らのほうだ!」

「なんだと!?」

 

 口論を続ける両チームのスタッフ。口論は徐々に冷静さを失い、ヒートアップしていった。このままでは、西暦時代から続いていたネオ・ロシアとネオ・チャイナの蜜月も終わりを迎えてしまうかもしれない。それほどに口論の場は、怒りの炎に包まれていた。

 

 一方、その口論をつまらなさそうにながめるサイ・サイシーと、目を閉じたままその傍らに座り込むアルゴ・ガルスキー。ファイターである彼らには、国家間の色々は関係ないし、興味もない。何より、お互いは、相手がそんなことをする人物ではないとわかっているのだ。

 

 やがて、サイ・サイシーが口を開いた。

 

「つまんないことしてんなよ。白黒つけたいんなら、俺たちファイターには、ぴったりの方法があるだろ?」

 

 その言葉に、ナスターシャと恵雲、瑞山が、そろって言葉の主のほうを向いた。

 

* * * * *

 

「それじゃいくぜ。アルゴの兄貴、準備はいいかい?」

「おう。言うまでもない」

 

 ネオ・チャイナキャンプの付近、そこでサイ・サイシーのドラゴン・ガンダムと、アルゴのボルト・ガンダムが対峙していた。全ては、このガンダムファイトで白黒決着をつけよう、という話になったのだ。

 

 互いに身構える二機。そして。

 

「よーし、それじゃあ! ガンダムファイトっ!」

「レディーゴーー!!」

 

 互いの掛け声が戦いの合図! かくしてファイトははじまった!

 

 先手をとったボルト・ガンダムがタックルを仕掛けてきた! それに対し、サイ・サイシーは前方に構えたビーム・フラッグを地面に突き立て……。

 

「そーれっ!」

 

 棒高跳びの要領で高く跳躍!

 フラッグをかまえ、空中からボルトに襲い掛かる!

 

「甘いぞ!!」

 

 それに対して、アルゴはパンチで迎撃! 重量級のパンチを放つ! それに対し、サイ・サイシーはフラッグを前方に構え、旗で自らをかばうようにした!

 

「それで俺のパンチを防げると……なに!?」

 

 パンチがフラッグを突き破った! ……しかし、その向こうにドラゴン・ガンダムの姿はない! そこにあったのは、落ちていくフラッグの柄だけであった。

 そして背後から――!

 

「もらったぜ兄貴! ……ってうわっ!?」

 

 ボルトの背後からドラゴンクローを伸ばして放ったドラゴンガンダムだが、そのクローをアルゴにつかまれてしまう。

 

「この俺を甘くみるな!!」

 

 そして、そのクローをつかんだまま、ドラゴンを一本背負いし、地面にたたきつける!

 

「ぐぅっ……!」

 

 衝撃に顔を歪ませるサイ・サイシー。しかしすぐに立ち上がり、飛びのいて距離を取る。

 

* * * * *

 

 そのボルト・ガンダムとドラゴン・ガンダムの戦いを、俺……ジャンヌ・エスプレッソは崖の上から眺めていた。

 二機ともどんどん動きが鋭く、力強くなってくる。そればかりではない。二機から感じるオーラも、パワーを増している気がする。

 

 この調子なら、あともう一押しで、新たな力を覚醒させてくれるだろう。

 

 俺は音なき指笛を吹いた。

 

* * * * *

 

 激しいファイトを繰り広げる、アルゴとサイ・サイシー。

 そこで彼らは何かに気づいたようだ。

 

「な、なんだ!?」

「あ、あれは!?」

 

 それは、天空から舞い降りてくる、ドラゴン・ガンダムや、ボルト・ガンダムを模した、デスセラフの群れだった。

 

「なるほどな……。襲撃事件の裏にはジャンヌがいたってことか」

「オイラたちはあの姉ちゃんに一杯食わされたってことだね」

 

 そう会話を交わしている間にも、デスセラフたちは舞い降り、ドラゴンとボルトを取り囲む。

 だがそれでは、二人の不敵さは変わらなかった。

 

「それじゃ、アネキにそのお返しをしなくちゃな! こいつらを全滅させることでさ!」

「あぁ。これだけの数で、俺たちを倒せると見くびってるのを後悔させてやらないとな!」

 

 そして二機は、デスセラフたちとの攻撃に突入した!

 

* * * * *

 

「うぉりゃあ!!」

 

 アルゴが、組んだ両手をデスセラフに叩きつけて、叩き潰す。だが、その背後から別のデスセラフ(ドラゴン)が襲い掛かり、ドラゴンクロウから炎を放つ。

 

「うおお! なめるなああぁぁぁ!!」

 

 だが、アルゴはそれにたじろぐことなく、その機体を焼かれながら突っ込み、その拳をデスセラフに叩きつける!

 

「ちっ、まだまだぁ!」

 

 ボルトを模したデスセラフのタックルで吹き飛ばされたドラゴンが、負けじと立ち上がり、そのデスセラフの頭部をドラゴンクロウを伸ばしてわしづかみにし、そのまま振り回して放り投げる。

 

 やはり二機の強さでも、数の暴力の前には分が悪いようだ。それでも、彼らの闘志は衰えることを知らない。いや、そればかりか、どんどん技の威力も、動きの鋭さも上がっていく。

 

 そして……!

 

「うおおぉぉぉぉ!!」

 

 ボルトガンダムが金色に輝くと、その拳を一機のデスセラフに叩きつけた! その衝撃で、数機のデスセラフが一気に吹き飛ばされる。

 

 その様子を見て、ナスターシャは唸った。

 

「おぉ、これは……! 今までアルゴのパワーが足りなくて発動できなかった、ボルト・ガンダムの『パイレーツモード』!! この大量のデスセラフとの戦い、その窮地が彼に、このモードを発動させる力を開眼させたのか! よくやったぞ、アルゴ!!」

 

 その様子を見て、サイ・サイシーもにやりと笑った。機体には大小さまざまな損傷が刻み付けられていたが、負けるとは想像できないような威風堂々としたたたずまいで。

 

「へへ、やるじぇねぇか、兄貴! オイラもそれにつられて……」

 

 ドラゴンガンダムもまた、金色に輝いていた。

 

「なっちまったぜ!!」

 

 ドラゴンガンダムが回転しながら両腕のドラゴンクローから炎を発射する。その炎は周囲のデスセラフたちをことごとく、焼き払っていった。

 

 そして、焼き尽くされたデスセラフたちが倒れる中、かっこよくポーズをとる金色のドラゴン・ガンダムを見て、恵雲と瑞山の二人も、感激したように声をあげた。

 

「おぉ……!」

「あれは!」

「ドラゴン・ガンダムに内蔵された秘密のモード、フェニックスモード!」

「この激しい戦いが、彼にフェニックスモードを発動させる力を目覚めさせたのか!!」

「「見事じゃ、サイ・サイシー!!」」

 

 そして新たなる力を得た二機は、そのパワーで次々と周囲のデスセラフたちを蹴散らしていく。

 長きにわたる決着の末、キャンプを襲撃したデスセラフたちは一機残らず破壊されたのだった。

 

 その戦いを見届けたナスターシャ、恵雲、瑞山の三人はそれぞれ似たようなことを口に出していた。

 

「今のアルゴになら使いこなせることができるかもしれんな。ガンダム・ボルトクラッシュを」

 

「力に目覚めたサイ・サイシーになら任せることができよう」

「我らが決勝のために用意した、ガンダム・ダブルドラゴンを」

 

* * * * *

 

 そして戦いの後、お互いへの疑いは解け、話し合いも無事にまとまった。

 もっとも、今回の襲撃自体、第三勢力であるジャンヌの仕業だったので、話し合いも何もないのだが。

 

 そして、ファイターの二人、サイ・サイシーとアルゴも、拳をぶつけあって、お互いの健闘を称えあっていた。

 

「見事な戦いだったぜ、アルゴの兄貴!」

「お前もな、サイ・サイシー。ネオ・チャイナの代表にふさわしいファイトだった」

 

 そして二人同時ににやりと笑う。

 

「今度、ジャンヌの姉貴に会ったら、お礼しとかないとな!」

「あぁ。俺たちが新たに得たこのパワーでな!!」

 

 そう笑いあう二人の背後に立つ、二機のガンダムを、夕日が優しく照らし出していた。

 

* * * * *

 

 そんな様子を、俺……ジャンヌはずっと眺めていた。彼らも新しい力に目覚めてくれたみたいだ。後はドモンか……。

 

 ドモンは、いまだ明鏡止水には目覚めていないが、どうなることやら……。

 

 と、向こうから何かが飛んできた。よく見ると、それは小鳥……いや、小鳥を模した、DG細胞で作られた通信用ドローンだ。師匠……東方不敗・マスターアジアと俺との連絡用に作り出したものである。

 

 そのドローンは、俺の腕に止まると、師匠の声で話し始めた。

 

「ジャンヌよ、馬鹿弟子たちの修行のほうはどうじゃ? もう一週間ほどで決勝大会がはじまる。早く計略を終わらせ、戻ってくるがよい。待っているぞ」

 

 そう言い終えると、ドローンは炎に包まれ、燃え尽きた。

 

 あと一週間か……。これは、のんびりと覚醒を待っていても、いや、普通に策を施しても、間に合わないかもしれない。多少、手荒な手段をとるしかないか……。

 

 俺はそれまで緩んでいた表情を厳しく引き締めた。

 




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それと、テテテの続編『テテテUC(ユニコーン)』を書いてくれる方も募集しています。書いてみたいと思う方は、メッセをくださいませ!

* 次回予告 *

みなさんお待ちかねぇ!

ガンダムファイトの決勝大会が目前に迫りました!
しかし、未だ修行を完了できないドモン!

そのドモン、そして他の四人の元に、デスセラフの軍団が襲い掛かります!
そしてジャンヌは、この包囲網を突破し、自分の元に駆け付けるようにと迫るのです!

果たして、ドモンたちはこの包囲網を突破することができるのでしょうか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』 

第14話『決勝目前! 迫るジャンヌ包囲陣!!』

にReady Go!!

それではみなさん。6/13 12:00に、またお会いいたしましょう!


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14th Fight『決勝目前! 迫るジャンヌ包囲陣!!』

 どうもこんにちは、ストーカーです。

 さて、アナザーデビルガンダムを倒すことに成功したドモン・カッシュたちシャッフル同盟は、ここ、かつてドモンがその師、東方不敗・マスターアジアのもとで修業に励んだ地、ギアナ高地に再び降り立ちます。
 師匠とジャンヌの真意を知るため。そして、デビルガンダムを止めるため、さらなる力を得るために。

 果たしてうまくいくのでしょうか? そして、ドモンたちを追って、このギアナ高地に降り立ったジャンヌたち、新生デビルガンダム四天王の暗躍の結果は?

「へへ、やるじぇねぇか、兄貴! オイラもそれにつられて……」
「なっちまったぜ!!」

 今回のカードは、シャッフル同盟対、ジャンヌ率いるデスセラフ軍団の第一ラウンド。

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



 ネオ・ホンコン。

 

 そこのに住む少年、ホイは今日も川辺で水をくんでいた。いつもと変わらぬ日常。だが!

 

「うわ、な、なんだ!?」

 

 突然の地震にうろたえるホイ。そして彼の目に映ったものは……。

 

 モビルホースにけん引された戦車に乗った、巨大な翼が特徴のガンダム。その名は……。

 

「す、すげぇ! ゼウスガンダム、ゼウスガンダムだ!」

 

 目撃したホイが目を輝かせる。

 彼の言う通り、そのガンダムは、ネオ・ギリシャ代表・マーキロット・クロノスの駆る、登録番号GF13-002NGR、ゼウスガンダムであった。

 

 やってきたのは、それだけではない。

 

 次に現れたのは、海を進む、人形を思わせるガンダム……。

 

「ね、ネオ・デンマーク代表、マーメイドガンダム!!」

 

 さらにその後も、ネオ・ネパール代表、マンダラ・ガンダム。ネオ・イングランド代表、ジョンブルガンダムと、次々と強豪たちのガンダムがネオ・ホンコンに到着する。

 

 その中の一機、ネオ・マカオ代表として参戦した、クーロンガンダムに乗る東方不敗・マスターアジアは、遠くギアナ高地へと目を向けてつぶやいた。

 

(待っておるぞ、ジャンヌ、我が新生デビルガンダム四天王、そしてドモンよ……。さらに大きくなったお主らが駆け付ける時を)

 

 彼がそうつぶやく間も、次々とネオ・ホンコンに駆け付ける、予選を勝ち抜いた強豪たち。

 

 そう、第13回ガンダムファイト・決勝大会がいよいよ目前に迫っていたのだ。

 

* * * * *

 

「ふぅ、ドラゴンガンダムの調整も終わったし、オイラの修行も万事OK。後はネオ・ホンコンに向かうだけだな!」

 

 ギアナ高地にあるネオ・チャイナの臨時キャンプ。その片隅にあるハンモックで、寝っ転がりながらそうお気楽に言うサイ・サイシーは、横に来ていた恵雲、瑞山に頭をこづかれる。

 

「馬鹿者! 調整をしたのは我らとスタッフだ!」

「それに、フェニックスモードを発動させる力は手に入れたが、使いこなせるまでには至っておらぬであろう。修行は全然万端ではないわ!」

「「何より、最後まで油断は禁物! 決勝会場に到着するまで、いや優勝するまで油断は禁物! そんなことでは、少林寺を継ぐなど、夢のまた夢じゃ!!」」

「わ、わかってるって。でも、もうするべきことも終わったんだし、これ以上何か起こるなんて……」

 

 サイ・サイシーがそう反論したところで、周囲が薄暗くなる。

 曇ってきたのか? ……いや違う。空から何かが大量に降りてきたのだ。

 

「な、なんだぁ!?」

「ぬぅ……!」

「あ、あれは!?」

 

 彼らが見たもの、それは、堕天使の黒い翼を背に持つデスセラフたちの群れだった。

 そして群れの奥にいるのは、新生デビルガンダム四天王、チコ・ロドリゲスのガンダム・ヘルトライデント!

 

 チコに率いられたデスセラフたちは、空中からビームを発射して、あたりを焼き尽くしていく。

 彼が制しているためか、近くに人がいない施設を狙って攻撃しているおかげで、犠牲者は出ていないが、それでもあたりはたちまち炎に包まれた。

 

「じ、ジャンヌの姉ちゃんの差し金か!?」

「そんなことより、このままではやられる。ネオ・ジャパンのキャンプに合流するぞ!」

「サイ・サイシー、ドラゴンガンダムに乗り込めい! わしらもキャリアーに乗って撤退する!」

「わ、わかった!」

 

 そしてなんとかドラゴン・ガンダムとキャリアーに乗り込んだサイ・サイシーたちは、大急ぎでキャンプから撤退した。

 

* * * * *

 

 一方、ネオ・ロシアのキャンプにも、デスセラフ軍団の襲撃があった。

 そちらの群れを指揮するのは、カンちゃんのダークホッパーガンダムである。

 

「おのれ……! カンガルーごときにいいようにさせるな! 迎撃せよ!」

 

 ナスターシャの号令一下、ネオ・ロシアの量産型MS、オブイェークトが出撃し、デスセラフたちに攻撃を開始するが、やはり多勢に無勢……。

 

「ち、ちくしょう、吹雪にも耐えるロシア魂がこんなところで……うわあー!!」

 

 オブイェークトの一機がデスセラフのビームに貫かれて沈黙する。幸いにも、動力炉はやられなかったので爆散せず、擱座しただけだったが。また一方では、別のオブイェークトが、敵のビームサーベルによって両断された。その残骸から、パイロットが命からがら脱出する。

 

「ナスターシャ、撤退だ。このままでは全滅するぞ」

「わ、わかっている……。後退、戦略的後退だ!!」

 

 アルゴに言われて、ナスターシャがスタッフたちに撤退を指示する。

 さすがはネオ・ロシアのスタッフ。あわただしくもテキパキと撤退準備を済ませて撤退を開始する。

 

 だが、ボルト・ガンダムとキャリアーがキャンプを後にする中……。

 

「!!」

 

 爆発によって崩れ落ちたガレキが、ナスターシャたちスタッフが乗るキャリアーに落下してきた。

 

 ガシィ!!

 

「アルゴ!」

 

 間一髪、アルゴのボルト・ガンダムが身を挺してガレキからキャリアーをかばった。

 パワーと耐久性が自慢のボルト・ガンダム。この程度の衝撃にはびくともしない。

 

「いいから早く行け。言いたいことはあとで聞く」

「わ、わかった! 感謝するぞ!」

 

 そして撤退していくネオ・ロシアの一団。

 

 それを見下ろしながら、カンちゃんは確認するようにつぶやいた。

 

「コレデOK。イヨイヨ、シアゲ」

 

* * * * *

 

 そして、ネオ・ジャパンのキャンプ。いまだドモンがシュバルツに導かれて修行に励むこの地には、今、シャッフル同盟の四人と、その関係者が集まっていた。

 

 そう、デスセラフ軍団の襲撃を受けたネオ・アメリカ、ネオ・ロシア、ネオ・フランス、ネオ・チャイナのファイターとそのスタッフたちは、みんなここに集まってきたのだ。

 

 テントの中、テーブルを囲んで話し合う中、シュバルツが不審そうに唸って曰く。

 

「だが、解せぬ。なぜ奴らは、ネオ・ジャパンのキャンプには手を出さないのだ?」

 

 ネオ・チャイナの恵雲、瑞山も頭をひねりながら言う。

 

「それに、奴らの攻撃は容赦がなかったが、不思議なことに人間には手を出すことはなかった。其れも不思議ですな」

「まぁ、先の襲撃の時にも、ジャンヌ殿は人死にが出ないように立ちまわってはいましたが……」

 

 続いてナスターシャが眉をひそめて言う。

 

「何よりも、奴らの攻撃は我らを追い込もうとしているようだった。そう、まるでこのネオ・ジャパンキャンプに、我らを集めるように……」

 

 そしてみんなで顔を見合わせて唸る。

 ちょうどその時、ネオ・アメリカのスタッフの一人、チボデーギャルズのジャネットが飛び込んできた!

 

「大変よ、みんな! あれを見て!」

 

 その言葉に、全員がテントの外に出ると、そこにあったのは……。

 

* * * * *

 

「こ、これは……!」

 

 彼が見たのは、陸も空も、キャンプの周囲を埋め尽くすデスセラフの群れ。

 そう、ネオ・ジャパンのキャンプは、デスセラフによって完全包囲されていたのだ。

 

 一同が驚愕する中、上空に立体映像が映し出される。そこに映し出されたのは、金髪碧眼の少女……ジャンヌ・エスプレッソの姿だった。

 

 それを見て、ドモンが叫ぶ。

 

「ジャンヌ・エスプレッソ!!」

 

「ドモン・カッシュ、そしてシャッフル同盟。ついに最後の試練の時が来ました。決勝大会の会場にたどり着きたいなら、この包囲網を突破し、私の元までたどり着いてみせてください。そして私を倒すことができれば、デスセラフたちを撤退させましょう。もしそれができなければ……ここでデスセラフたちにやられるだけです」

 

 そしてジャンヌの立体映像は消えた。

 

「これがトレーニングのラストステージってわけかい! 面白れぇ、やってやるぜ!」

 

 チボデーが面白そうに言って、ガンダム・マックスターに乗り込み、いの一番に包囲網に突っ込んでいく。

 

「オイラだって負けねぇよ! ジャンヌのアネキに一泡吹かせてやらないとな!」

 

 同じく、サイ・サイシーもドラゴン・ガンダムで出撃していく。

 

「あれだけの数で、この私を止められるとはなめられたものですね」

 

 不敵な笑みを浮かべて、ジョルジュがガンダム・ローズで出陣する。

 

「……ふん」

 

 ただ鼻を鳴らしただけで、アルゴが黙したままで、ボルト・ガンダムで出撃した。

 

 そして。

 

「よし俺も行くぞ!」

「待て!」

 

 ドモンも出撃しようとするが、それはシュバルツに止められる。

 

「なぜ止める、シュバルツ!?」

「お前はまだ明鏡止水に目覚めていない。そんな状態で出て行っても、やられるだけだ!」

「くっ、だが……!」

 

 苦渋の表情を見せるドモンを後目に、残りの四機はデスセラフとの戦いを開始した。

 

* * * * *

 

 俺……ジャンヌ・エスプレッソは、高台の上から、シャッフル同盟が包囲網を突破しようとするのを眺めていた。

 

 ある地点では、ガンダム・マックスターの豪熱マシンガンパンチで、その前方のデスセラフたちが破壊されていくのが見え、また別の地点では、ドラゴン・ガンダムの炎で、円形にデスセラフたちが薙ぎ払われていた。

 また別の地点では、ビームセイバーとローゼス・ビットを使った変幻自在の攻撃で、ガンダム・ローズが次々にデスセラフを翻弄、撃破していき、さらに別の地点では、ボルト・ガンダムのグラビトン・ハンマーでドラゴン・ガンダムのように円形にデスセラフたちが薙ぎ払われていくのが見えた。

 

 しかし、やはり多勢に無勢。どの機体も、包囲網の突破に四苦八苦しているようだ。

 

 そんな中、ドモンのシャイニング・ガンダムはその戦列に参加していない。どうやら彼は、いまだにシュバルツのもとで明鏡止水の修行をしているのだろう。

 

 だが、シュバルツには悪いが、俺はこのまま、のんべんだらりと修行をさせておくつもりはない。もう決勝までの残り時間は少ないのだ。

 少々強引にでも、ドモンには明鏡止水に覚醒してもらわなければならない。

 

 俺は音なき指笛で、配下のデスセラフたちに指示を出した。

 

* * * * *

 

「くっ……!」

「雑念が混じっているぞドモン! そんなことでは明鏡止水には遠いと教えたはずだ! 余計なことを考えるな! 木を切ることだけを考えるのだ!」

「わかっている! だが、みんなが必死に戦っているのに、平然としていられるか!」

 

 シュバルツに反発しながら、明鏡止水の修行に励むドモン。そこにレインが駆け付けてきて言った。

 

「大変よ、ドモン、あれを見て!」

「なに? ……あれは!?」

 

 遠くに現れたのは、邪悪で美しい、巨大な姿だった。

 ドモンが見間違えるはずがない。あれは……。

 

「デビルガンダム! ……くそっ!」

「どこへ行く、ドモン!」

「黙れ! デビルガンダムが現れたというのに、じっとしていられるか! あれを倒すのは俺に与えられた任務なんだ!!」

 

 そう言ってドモンは、シャイニング・ガンダムに乗り込んでいく。それを見送り、シュバルツは苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべた。

 

「ドモンの奴……!」

 

 そして自身も、愛機であるガンダム・シュピーゲルに乗り込んでいく。

 

* * * * *

 

「キョウジィ……! デビルガンダム……!」

 

 ドモンのシャイニング・ガンダムは、スーパーモードを発動し、デビルガンダムをめがけて一直線。進路上のデスセラフたちを一蹴しながら突き進んでいた。

 その分、機体にはかなりの負担がかかっているが、デビルガンダムを倒すことに囚われたドモンはそれを意に介した様子もなかった。

 

 デビルガンダムまでかなり接近してきたその時。

 

 デビルガンダムが動きを見せた。まるでドモンを挑発し、あざ笑うような動きを。

 それを見て、ドモンは完全に頭に血が上ってしまった!

 

「キョウジ! キョウジ! キョウジイイィィィ!!」

 

 そして、機体のバーニアを全開にして、その目前までジャンプ!

 

「俺のこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶっ! うおおおおおっ! 必殺! シャイニング・フィンガー・ソオオォォォ……!」

 

 だがその時、それを制止する声があった。

 

「馬鹿者、ドモン! よくそれを見ろ!」

「え……なっ!?」

 

* * * * *

 

 デビルガンダムに斬りかかろうとしたドモンのシャイニング・ガンダムが驚きに動きを止める。

 

 そう、それは実はデビルガンダムではない。

 

 俺が支配下のデスセラフたちに命じて、集合してそっくりに擬態させた偽物なのだ。それを見抜けず、あのような無謀な突撃を行うとは……やはり彼は、まだ明鏡止水には至っていないということだろう。

 

 デビルガンダムを構成していたデスセラフたちが一斉にビームを発射。シャイニングはそれをかわしきれず、ビームの雨を浴びて吹き飛ばされた。さらに、巨腕の一撃を受けて中破してしまう。

 もっとも、あそこでシュバルツが制止してなければ、今よりさらに強烈な攻撃を受けて、大破していたかもしれないが。

 

 俺はドモンに少し失望しながら、ガンダム・オルタセイバーをシャイニングに突進させた。

 

「あなたには少しがっかりしましたよ、ドモン! それでもキング・オブ・ハートですか!」

「!!」

 

 そして俺がビームセイバーを一閃させようとしたとき!

 

「!?」

 

 目の前から、そのシャイニングの姿が消えた。後ろを振り向くと、デビルガンダムの頭の上に、シャイニングを抱きかかえたシュバルツのシュピーゲルの姿があった。

 

「まだドモンを、お前たちに倒させるわけにはいかん!」

 

 そして、ネオ・ジャパンのキャンプの方向に飛び去って行った。俺はそれを追撃しようかと思ったがやめた。

 

「……っ。無理はいけませんね」

 

 また身体の不調を感じたからだ。少しではあるが、前に感じた不調より重くなっている気がする。

 焦る必要はない。包囲網は重厚で、シャッフル同盟たちはそれを突破することができずにいる。ならば一日ほど決着を待っても問題はないだろう。そのぐらいなら決勝に遅れることもあるまい。

 

 明日だ。明日にはわかる。彼らの力が、俺たちの理想に対抗する力があるのかどうかが。

 




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* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!!

空も地も、全てを埋め尽くした、ジャンヌ率いるデスセラフの大軍団! もはやギアナ高地からは脱出不可能!
それに対し、今ここに、シャッフル同盟による必死の突破作戦が開始されるのです。

そのさなか、機能不全を起こしたシャイニング・ガンダムが、ジャンヌの目前で膝をついたその時!
ドモンはついに、あの力に目覚めるのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第15話『目覚める明鏡止水! ジャンヌ包囲網突破作戦!!』

にReady Go!!
それではみなさん。また6/16 12:00にお会いいたしましょう!


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15th Fight『目覚める明鏡止水! ジャンヌ包囲網突破作戦!!』


 どうもこんにちは、ストーカーです。

 さて、アナザーデビルガンダムを倒すことに成功したドモン・カッシュたちシャッフル同盟は、ここ、かつてドモンがその師、東方不敗・マスターアジアのもとで修業に励んだ地、ギアナ高地に再び降り立ちます。
 師匠とジャンヌの真意を知るため。そして、デビルガンダムを止めるため、さらなる力を得るために。

 果たしてうまくいくのでしょうか? そして、ドモンたちを追って、このギアナ高地に降り立ったジャンヌたち、新生デビルガンダム四天王の暗躍の結果は?

「あなたには少しがっかりしましたよ、ドモン! それでもキング・オブ・ハートですか!」

 今回のカードは、シャッフル同盟対、ジャンヌ率いるデスアーミー軍団、その第二ラウンドです。
 果たして、ドモンたちの命運やいかに?



 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



 デスセラフたちが集まって擬態した偽デビルガンダムの攻撃で中破し、吹き飛ばされるシャイニングガンダム。そこに、ジャンヌのガンダム・オルタセイバーが追い打ちをかけようとする!

 

「ちょっとがっかりしましたよ、ドモン! それでもキング・オブ・ハートですか!!」

 

 しかし、そう言ってジャンヌが、ビームセイバーを振り下ろそうとしたその刹那、シュバルツのガンダム・シュピーゲルが、オルタセイバーの眼前からシャイニングを救いだした!

 

「ドモンをお前たちに倒させるわけにはいかん! みんな、ここは一時退却だ! 作戦を立て直すぞ!」

 

 そして、シャイニング・ガンダムを抱えたまま、ネオ・ジャパンのキャンプに撤退していった。彼の指示を受け、残る四機のガンダムも、キャンプに引き上げていく。

 

 ジャンヌはそれを追おうとするも……。

 

「……っ。無理はいけませんね」

 

 そうつぶやいて、膝をつく。そしてそのまま、シャッフル同盟が撤退していくのを見送るのだった。

 

* * * * *

 

「くそう……!」

 

 ネオ・ジャパンのキャンプ。そこでドモンが、くやしさのあまり、地面に拳を叩きつける。

 その彼に、シュバルツが冷徹に声をかける。

 

「だから言っただろう、ドモン。明鏡止水に目覚めていないお前では、ただやられるだけだ、と」

 

 そう厳しい言葉をかけるものの、その瞳には、彼を心配する気持ちが宿っていた。

 くやしさをにじませるドモンを見守るシュバルツ。そこに、レインがやってくる。

 

「お待たせ、ドモン」

「レインか……。シャイニングの修理はどうだ?」

 

 そう聞くドモンに、レインは肩をすくめて答える。

 

「応急処置は終わったわ。でも、あくまで応急処置ね。今までのスーパーモードの乱用に加えて、さっきの中破で、もうボロボロ。応急処置『しか』できない状態だったわ。一応戦えるようにはしたけど、いつ機能不全を起こして動けなくなるかわからない状態ね。ドモンがあまり無茶をしすぎるから」

「むぅ……!」

 

 言い返したいが、機体を酷使しまくり、おまけに自分の不注意からシャイニングを中破させてしまったのは、完全に彼の責任だったため、ドモンにはグゥの音も出なかった。もっとも、それで言い返そうにも、シュバルツににらまれて制止されただろうが。

 

「だが、動かせるようになっただけでも幸いだ。それでは作戦会議を開くとしようか」

 

* * * * *

 

ネオ・ジャパンのテントには、シュバルツ、ドモン、レインのほか、ネオ・アメリカからチボデー、ネオ・チャイナから恵雲、瑞山、ネオ・ロシアからナスターシャ、ネオ・フランスからジョルジュが集まっていた。

 

「シャイニングは動くようになったかい! それはよかった」

 

 と明るく言うチボデー。それに、ジョルジュもうなずく。

 

「えぇ。やはりガンダムが一機あるかないかでは、戦力も、戦略の幅も変わってきますから」

 

 そこで、恵雲、瑞山が唸りながら言う。

 

「しかし、事態は先ほどと変わっておりませぬ。四方八方をデビルガンダムの手下どもに囲まれている状態」

「しかも、応急処置が済んだシャイニング・ガンダムも、いつ止まるかわからない状態ですからな。あまり戦わせるわけにもいきますまい」

 

 それに、シュバルツが腕を組んだままうなずいて曰く。

 

「その通りだ。突破口を開き、さらにドモンの修行が終わるまで、それを維持する必要がある。それができなければ、待つのは全滅のみだ」

 

 その言葉に、みんなが腕を組んでうなる。そこに、ナスターシャが不敵な笑みを浮かべて言った。

 

「何、戦略目的がはっきりしていれば、作戦の建てようはある。重要なのは、『ジャンヌの元へ通じる道を開くこと』と、『その道を維持すること』なのだろう?」

「うむ」

 

 シュバルツの肯定を聞き、ナスターシャは棒鞭をびしっと鳴らした。

 

「よし、ならばガンダムを二手に分けよう。『道を作る』隊と、『その道を維持する』隊の二つだ」

「なるほど、前者の隊が敵陣を突破して道を作り……」

「後者の隊が、その道がふさがれないように維持する、ということですな?」

「そうだ」

 

 恵雲、瑞山の質問に、ナスターシャはうなずいた。そこでさらに棒鞭を鳴らす。

 

「それを続けていき、ドモンの修行が終わったところで、一気にその道を通り、さらにその前方を切り開いて突破する。これしかあるまい」

「なるほど。それで、どう分けるんだい?」

 

 チボデーの質問に、ナスターシャはうなずき、チボデー、ジョルジュ、そして背後にいるサイ・サイシーとアルゴを見渡した。

 

「まず、攻撃力のあるサイ・サイシーとアルゴに道を作る隊をやってほしい」

「うむ」

「わかった、腕がなるぜ!」

 

 アルゴとサイ・サイシーの返事にうなずくと、今度は再びチボデーに目を向ける。

 

「遠距離攻撃が可能であるチボデーとジョルジュは、道を維持するチームだ。シュバルツには、作戦には参加せず、ドモンの指導をお願いしたい」

「OK! 任せな!」

「最善を尽くしましょう」

「わかった」

 

 作戦は決まった。ナスターシャはうなずくと、表情を引き締め、棒鞭を大きく鳴らした。

 

「作戦決行は明日の朝とする。各員の健闘に期待する!」

 

* * * * *

 

 ギアナ高地の大きな高台。そこで俺……ジャンヌ・エスプレッソは休んでいた。

 

 身体から力が抜けていくのを感じる。それと同時に、身体のあちこちがあげる悲鳴も。

 原因はわかっている。それは―――。

 

「大丈夫か、ジャンヌ? かなりつらそうに見えるが」

 

 そこに、四天王の一人、チコとカンちゃんがやってきた。俺は起き上がり、表情に憂いが浮かぶのを抑えきれないまま答えた。

 

「えぇ……。やはり、これまでのファイトで、無理をしすぎたのが響いているみたいですね……」

 

 そう、原因。それは、ガンダムファイトの連続、さらにその中で、流派東方不敗の技、そのアレンジを何度も放っていたことだ。

 ある漫画に出てくる剣術と同じように、流派東方不敗の技も、そう簡単に使えるものではない。本来は、かなり長く地味な修行を積んだうえで、しっかりと学んで、やっと使いこなせるものなのだ。

 いくらDG(デビルガンダム)細胞による身体とはいえ、そんな技を下地なしでやれば、身体に小さなダメージを与え続けていくことは目に見えていた。この体なので、ある程度はダメージを抑えたり、ある程度回復させることはできるが、それでも限界が見えてきてしまった。今はまだその限界は遠いが……。

 

 見えてしまったことには変わりない。

 

「そうか……。ならば明日は、あまり無理をしないほうがいい」

「ありがとうございます。明日は、ドモンがたどり着いた時の相手に専念することにします」

「あぁ、それがいい」

「アネキ、オレタチニデキルコトハアルカ? アネキノタメ、ガンバル」

「ありがとうございます。それでは、突破を図るシャッフル同盟たちの相手をお願いできますか?」

 

 俺の頼みに、チコとカンちゃんの二人ともうなずいた。原作ではありえなかった、ありがたい、頼りになる四天王たちだと改めて思う。

 

「任せておけ。お前の出番などなくしてやろう」

「マカセロ、アネキ!」

 

 そう快くかけあってくれたチコたちに、俺は微笑みを向けた。

 

 そして、夜が明ける……。

 

* * * * *

 

 そして翌朝。ネオ・ジャパンのキャンプには、既にスタンバイを終えたガンダム・マックスター、ドラゴン・ガンダム、ガンダム・ローズ、そしてボルト・ガンダムが勢ぞろいして並んでいた。

 

 それぞれの機体に乗り込んでいるシャッフル同盟のファイターたちに、ナスターシャが檄を飛ばす。

 

「いいか! 我らが無事に明日を勝ち取れるか、それともここで果てるかは、諸君らの力にかかっている! 油断せず全力を尽くして、無事作戦をやり遂げてほしい! 諸君らの奮闘に期待する!」

「OK!」

「へへ、わかってるって。任せなよ!」

「最善を尽くしましょう。この薔薇にかけて」

「わかった」

 

 そして、背後のドモンとシュバルツにも目を向ける。

 

「いいか、お前たちは無事に明鏡止水に開眼するのが任務だ。彼らの奮闘を無にしないためにも必ず開眼しろ」

「わかっている」

「任せてもらおう」

 

 そして棒鞭を鳴らして号令をかける!

 

「よし、作戦開始!」

 

* * * * *

 

 ナスターシャの号令一下、4機のガンダムたちは包囲網に向かっていった。

 

「グラビトン・ハンマアアァァァ!!」

 

 ボルト・ガンダムの放ったグラビトン・ハンマーが、戦闘開始の狼煙だ。遠心力で周囲のデスセラフたちをなぎ倒し、さらに前方に投げつける。遠心力で威力を増したハンマーは、その射線上にいるデスセラフたちを次々と粉砕していった。

 さらに、そのボルト・ガンダムの前に、ドラゴン・ガンダムが躍り出る。

 

「みんな焼けてしまいなっ! ドラゴン・ファイヤー!!」

 

 腕が竜のアギトの形に変形。そこから放たれるドラゴン・ファイアーで、前方のデスセラフたちをさらに焼き尽くす。

 

 デスセラフたちは、二機のガンダムの背後に回り込み、退路を断って包囲しようとするも……。

 

「そうはさせねぇよ、ほらほら!!」

「行きなさい、ローゼス・ビット!!」

 

 ガンダム・マックスターのギガンティック・マグナムの乱れうちと、上空からのローゼス・ビットの攻撃で、たちまち撃破されていく。

 

 一方のドモンも……。

 

「……」

「よし、いい具合だ、ドモン! 心を澄ませるのだ! 明鏡止水の境地に至るまで」

 

 外の喧噪とは裏腹にドモンの心は静かだった。その心はどんどん澄んでいき、明鏡止水へと近づいていく。

 

 作戦は万事うまくいくかと思われた。

 

 だが!

 

* * * * *

 

「ピョーンッ!!」

「なに!? うわっ!!」

 

 上空から強襲してきた何者かの蹴りで、マックスターが蹴り飛ばされた!

 なんとか態勢を立て直したガンダム・マックスターの前に立ちはだかったもの、それは……。

 

「カンガルー野郎!」

「イクゾ、チボデー! 第二回戦! オマエモ作戦モブチノメス!!」

 

 そう、カンちゃんの操る、ダークホッパーガンダムだった!

 

 そして、突破口を開いていく、ボルト・ガンダムとドラゴン・ガンダムの前にも……!!

 

「む、よけろ、サイ・サイシー!」

「え……うわっと!?」

 

 アルゴの警告を受け、サイ・サイシーがとっさに飛びのいた後に、無数の槍の刺突が突き刺さっていった。

 

「お前は、新生デビルガンダム四天王、チコ・ロドリゲス!」

「ジャンヌの頼みなんでな。彼女のためにも、この作戦、ぶち壊させてもらう!」

 

 チコのガンダム・ヘルトライデントが二機の前に着地し、トライデントを構える。

 

 突破組、維持組、両方でデビルガンダム四天王の攻撃を受け、バトルがはじまる。

 しかし、それによって戦力バランスは崩れてしまった!

 

「くらえ、ガトリング・デススピアー!!」

 

 チコがガトリング・デススピアーを放つ! アルゴはその攻撃にひるむことなく……。

 

「そのような攻撃で、このボルト・ガンダムを貫けると思うか……ぐわぁっ!!」

 

 ヘルトライデントにタックルをしかけようとしたところに、デスセラフの攻撃を受けてよろめいてしまう!

 

「アルゴの兄貴! うわぁ!!」

 

 それを援護しようとしたサイ・サイシーも、別のデスセラフのビームを受けて、吹き飛ばされてしまった。

 

 また別の場所では……。

 

「ソレ、ソレ! キック、キック!」

「くっ、このぉ!」

「チボデー! お助けします!」

 

 ダークホッパーガンダムの蹴りの連打に苦しめられるチボデーに助太刀しようとするジョルジュ。しかし。

 

「うわぁ!」

「ジョルジュ!」

 

 その隙を突かれ、別のデスセラフのビームを喰らって吹き飛ばされる。そこに。

 

「ヨソミヲシテイルヒマハナイゾ!」

「うおお!!」

 

 吹き飛ばされたジョルジュに気を取られた隙を突かれ、チボデーもカンちゃんの蹴りを受けてしまった!

 

 四天王の介入で苦戦を強いられ、突破口がふさがりつつあるのを見て、ナスターシャは危機を感じ、次の指令をくだした!

 

「いかん、このままでは突破口がふさがれるばかりか、先行したボルトとドラゴンが孤立してしまうぞ! 我々もオブイェークトに乗って加勢するのだ!」

「おう!」

「任されよ!」

「かしこまりました!」

『わかったわ!』

「はい!」

 

 ナスターシャの号令一下、恵雲、瑞山、レイモンド、チボデーギャルズ、そしてレインがうなずき、ネオ・ロシアの量産型MS(モビルスーツ)、オブイェークトに乗り込んでいく。

 

 その気配を感じ、一瞬ドモンの表情が動くが……。

 

「ならんぞ、ドモン! この作戦は、お前が明鏡止水に至るかどうかがカギだ。ここは彼らを信じるのだ!」

「……っ」

 

* * * * *

 

 ガンダムたちは大苦戦の中にいた。その中、ジョルジュはデスセラフをサーベルで切り裂く。だが、その背後から別のデスセラフが!

 

「!!」

 

 そこで間一髪、そのデスセラフは別の方向からのビームで撃破される。

 

「皆さん!」

「我々も加勢する。なんとしても、この突破口を守り切るのだ!」

「わかりました!」

 

 そしてナスターシャたちスタッフも加勢して奮闘する。だが、やはり多勢に無勢なうえに、デスセラフと量産型MSでは性能差がありすぎる。

 

「きゃあ!」

 

 チボデーギャルズのキャスの乗ったオブイェークトがデスセラフのビームで左腕を破壊されてしまう!

 

「キャス殿! うわぁ!!」

 

 声をかけたレイモンドの機体も、別のデスセラフの攻撃で吹き飛ばされた。

 

 そして、レインも。

 

「ドモンが明鏡止水に至るまで、なんとしても……きゃっ!」

 

 デスセラフのビームで、レインのオブイェークトは頭部を破壊された!

 

「ドモーンッッ!!」

 

* * * * *

 

 レインの心の叫びが届いたのか、突然、ドモンは目を見開いた。そして立ち上がる。

 

「何をする、ドモン! まだ明鏡止水には至ってないぞ!」

「レインやみんなの叫びが聞こえたんだ! みんなが窮地に陥っているのに、俺だけがこんなところで修業してはいられん! みんなを見殺しにしなきゃ得られない明鏡止水なら、ないほうがましだ!」

 

 そう言って、シャイニングに走っていく。シュバルツは、それを渋い顔をして見送っていたが、やがて苦笑を浮かべた。

 

「ドモンの奴め……。だが今回の暴走は、デビルガンダムを倒すという彼の勝手な執着ではなく、仲間を助けるためというより前向きなもの。悪いものではない」

 

 そして表情を引き締める。

 

「ならば私のすることは、せめて彼を助けてやることのみ。この戦いの中で、彼が明鏡止水に至ることを祈ろう」

 

 そう言うと、シュバルツは、自らの愛機、ガンダム・シュピーゲルに走っていった。

 

* * * * *

 

 レインのオブイェークトは頭部を失いながらも奮戦していた。だがそのうち、デスセラフの攻撃を受け、右腕と左足を破壊され擱座してしまう。

 

「きゃっ……! ……!!」

 

 そのオブイェークトに、デスセラフがビームライフルの狙いを定める。サブカメラのスクリーンに映るその様子に、レインが恐怖に震えた、その時!

 

「レイーンッッ!!」

 

 ドモンのシャイニングが突撃してきて、そのデスセラフを一刀両断した!

 

「ドモン! 修行のほうはいいの!?」

「まだだ! だが、みんなを見捨てるわけにはいかん!」

「もう……ドモンの馬鹿……」

「馬鹿で結構!!」

 

 そう言い残すと、ドモンは包囲陣のほうへと突進していった。

 それをレインは涙目で見送っていた。

 

* * * * *

 

 道を阻むデスセラフたちを斬り捨てていくシャイニング・ガンダム。だがそこに、飛行型デスセラフが上空から不意打ちをしてきた!

 

「!!」

「させん!」

 

 襲い掛かろうとした一瞬、デスセラフはずんばらりと両断された。その向こうに浮遊するシュピーゲル。

 

「シュバルツ!」

「お前の横と背後は、私に任せておけ! お前はひたすらに前に進むのだ!」

「おう! 恩に着るぞ!」

 

 そしてさらに突進していく。そして。

 

「超級! 覇王! 電影だあああぁぁぁぁんっっ!!」

 

 流派・東方不敗の奥義の一つ、超級覇王電影弾で一気に前方の敵機を薙ぎ払いながら、ひたすら前方に突進していく。

 

 スクリーンの各所にエラー表示が映るが、ドモンの目には映らない。ただひたすら前に、ジャンヌの元に―――!!

 

* * * * *

 

「……来ましたか」

 

 ドモンのシャイニング・ガンダムがデスセラフたちを薙ぎ払いつつ、俺……ジャンヌがいるここまでただ一直線に突き進んでくる。

 俺はそれを直立したまま眺め、待ち受けていた。

 

 そしてついに、彼は俺の眼前までたどり着いたのだ!

 

「……来ましたか、ドモン・カッシュ」

『おう。約束は守ってもらうぞ、ジャンヌ・エスプレッソ。俺がお前に勝ったら、道を開けてもらう!』

「いいでしょう。構えなさい、ドモン」

 

 そう言って俺は、ビームセイバーを抜いて構える。

 それに呼応して、ドモンのシャイニングも構えようとするが……!

 

『……!?』

「……」

 

 突然、膝を突き、両手をついて、いわゆるOTLの形に崩れ落ちたのだ。

 俺はただ、無言のまま、それを見つめ続ける。

 

『くそ、どうした!? 動け、シャイニング……っ!』

「……」

 

 どうやら、先の戦いで大ダメージを負ったうえ、ここまで来るのに無理をさせたせいで、ついに機能不全を起こしたのだろう。

 ……やむを得ない。

 

「あなたは所詮、ここまでが限界の人でしたか。残念です」

『……!』

「ですが、悔やむことはありません。あなたの散華も、私たちの理想、計画の糧となるのですから」

 

 俺はただ冷徹に、ビームセイバーを振り上げる。振り下ろす先はただ一つ。シャイニング・ガンダム。その肩口から袈裟斬りに一直線。ドモンのいるコクピットごと両断する。

 

 冷ややかな声で宣告する。

 

「……散りなさい」

 

 そして俺はビームセイバーを振り下ろした。

 

 その時だ。

 

 なんと、シャイニング・ガンダムは流れるような動きで、そのビームセイバーをかわしたのだ。そして、またも流れる動きで、俺の背後に回り込む。

 

「この動きは……」

 

 そう、この動き、これができる境地はまさに……。

 

 明鏡止水―――。

 





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それと、テテテの続編『テテテUC(ユニコーン)』を書いてくれる方も募集しています。書いてみたいと思う方は、メッセをくださいませ!

* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!
ついに明鏡止水の境地を会得したドモン!
彼はシャイニング・ガンダムのスーパーモードを発動させ、ジャンヌと再びファイトを開始します。

その中で、ジャンヌと東方不敗の真意を知った彼は、果たしてどんな決断を下すのでしょうか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第16話『運命の対決再び! ドモンの選択!!』

にReady Go!!

それではみなさん。また6/19 12:00にお会いいたしましょう!


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16th Fight『運命の対決再び! ドモンの選択!!』

 どうもこんにちは、ストーカーです。

 さて、アナザーデビルガンダムを倒すことに成功したドモン・カッシュたちシャッフル同盟は、ここ、かつてドモンがその師、東方不敗・マスターアジアのもとで修業に励んだ地、ギアナ高地に再び降り立ちます。
 師匠とジャンヌの真意を知るため。そして、デビルガンダムを止めるため、さらなる力を得るために。

 果たしてうまくいくのでしょうか? そして、ドモンたちを追って、このギアナ高地に降り立ったジャンヌたち、新生デビルガンダム四天王の暗躍の結果は?

『あなたは所詮、ここまでが限界の人でしたか。残念です』

 今回のカードは、ついにです。再びのカード、ドモン・カッシュのシャイニング・ガンダム対ジャンヌ・エスプレッソのガンダム・オルタセイバー。
 皆さん、果たしてどのようなファイトが繰り広げられるか、どのような結末を迎えるか、刮目して見るとしましょう。



『あなたは所詮、ここまでが限界の人でしたか。残念です』

 

 ジャンヌがそう言うと、彼女が乗るガンダム・オルタセイバーはビームセイバーを振り上げた。

 そして、感情を押し殺した、冷たい声で言い放つ。

 

『ですが、悔やむことはありません。あなたの散華も、私たちの理想、計画の糧となるのですから』

 

 その声、その口調にドモンは悟る。彼女は自分を見限り、抹殺するつもりだ、と。

 そして自分のシャイニング・ガンダムは、ここまでの無理が祟り、機能不全を起こし、一歩も動けない状態。彼女の刃をかわすか防ぐ術はない。

 目の前に待ち受ける死を受け入れるしか、彼の選択はなかったかに思われた。

 

『……散りなさい』

 

 彼女の剣が振り下ろされる。

 目の前に迫る死。その死の前に、ドモンの心は今までになく透き通り、無となっていく。何も聞こえず、全てが止まって見える。

 シャイニングの機能が、彼の変化に反応して再起動する音が鳴っていたが、それすらもドモンの耳に届くことはなかった。

 

 そして。

 

 振り下ろされたジャンヌの剣。それはシャイニング・ガンダムを切り裂くことはなかった。ドモンが流れるような動きで、それを回避したからである。

 

「この動きは……」

 

 ジャンヌがそうつぶやく。

 

 さらにシャイニングは流れる動きで、ガンダム・オルタセイバーに迫り、次の瞬間には、オルタセイバーの手からビームセイバーが落ちていた。ドモンの一撃が、ジャンヌが攻撃されたと認識する間もなく、彼女の手からビームセイバーを弾き飛ばしていたのだ。

 

 そして、シャイニングは彼女の背後で止まった。ジャンヌもそちらに向きなおる。

 

* * * * *

 

 シャイニングのコクピットで、ドモンは自らの変化に驚いていた。

 

 荒々しいファイトしかできない自分。そんな自分がこんな戦いができるとは。

 だが、この動き、この境地。それが何か、今の自分にはわかる。これこそ、自分が身に着けるべきだったもの――。

 

「これが……明鏡止水……」

 

 そうつぶやくドモンに、ジャンヌからの通信が届く。

 

『まさか、あそこで明鏡止水に覚醒するとは……私はあなたを見くびっていたようですね』

「ジャンヌ……」

 

 そこでジャンヌは表情を引き締めた。その顔から熱き闘志が感じられる。

 

『では改めてファイトをはじめましょう。手加減はしません』

「……おう!」

 

 そして二機とも動き出す。初手は、ジャンヌが得意とする技……。

 

『スプラッシュソード!!』

 

 無数の突きがシャイニング・ガンダムを襲う! だが、明鏡止水に目覚めたドモンには、その剣を見切るなど造作もない。流れるような動きで、その突きをことごとくかわしていく。

 

『!!』

 

 ジャンヌが気が付いた時には、目の前にシャイニングの拳が迫っていた! 彼のパンチが放たれたことにさえ、気が付いていなかったのだ。

 慌ててそれをなんとかかわす。だが交わしきることはできず、頭部のアンテナの先が折られてしまった。

 

『それなら、これはどうです!?』

 

 その状態からビームセイバーの横凪ぎを放つ! シャイニングはそれも流れるようにかわすが、その瞬間、ジャンヌは剣を持ち替え、横凪ぎから突きへと派生させた!

 

「!!」

 

 さすがにこれにはドモンもとっさに反応できず、なんとか明鏡止水の動きで回避するが、胸部装甲に一筋の傷ができてしまった。

 

* * * * *

 

 その後も、バトルは続いた。

 

 俺……ジャンヌが鮮やかな剣さばきで攻めるも、ドモンがそれを流れるようにかわす。

 

 ドモンの烈火のように激しい攻めを、俺が剣を自由自在に操って防ぐ。

 

 俺の突きを紙一重でかわし、ドモンがその懐に飛び込んで背負い投げを決める。倒れた俺に追撃しようと、上空から襲い掛かったドモンを、俺は上空へのスプラッシュ・ソードで迎撃。

 

 そして激突!

 

 ドモンが着地した時。

 

「……っ」

 

 俺の左肩に激痛が走る。オルタセイバーの左肩が今の攻撃で破損した。一方のドモンも……。

 

『ぐぅっ……』

 

 同じく膝をつく。シャイニングの右肩の肩当てにはひびが入っていた。

 

 だが、戦いはまだ終わらない。

 

 シャイニングは、立ち上がると、こちらに向けて突進してきた!

 

『必殺! シャイニング・フィンガアアァァァァ!!』

「スプラッシュソードオオォォォォ!!」

 

 お互いの必殺技がぶつかり合った! そして閃光が走る。

 

* * * * *

 

 次に気が付いた時、俺とドモンは一糸まとわぬまま、白い空間にいた。今の技のぶつかり合いで、交感が発生したのか。

 

 その白い空間の中で、俺たちは原作での出来事を垣間見る。

 

「デビルガンダムを地球にやさしいガンダムに作り替える」と戯言を言うウォンを、師匠が一喝する。

 

『笑わせるな! 優しいという言葉を勘違いしているのではないか、この政治屋め! よいか、わしの目的はな。この地球人類の抹殺なのだぞっ!!』

 

 その師匠の真意に、原作のドモンも、そしてこちら側のドモンも絶句している。

 そして、原作ドモンの怒りに、師匠はさらに言葉を返す。

 

『わからぬか? 地球を汚す人類そのものがいなければ、自然は自ずから蘇る! そして最強の力を持ったデビルガンダムがいれば、もう誰も地球に降りられなくなる。それがいい、それが一番だ! そのためならば、人類など滅びてしまえ!!』

 

「師匠がこんなことを……!」

 

 震える声でそうつぶやくこちら側のドモンに、俺は諭すように返す。

 

「いいえ。師匠がこんな狂人じみた考えを持たなければならないほど、ガンダムファイトと人類の営みによる自然の破壊は進んでいた、ということです。この結論に至ったことに一番絶望していたのは、誰よりも彼だったでしょう……」

「……」

 

 そして次に浮かんだのは、二人の最後のぶつかり合いのシーン。

 

『東方不敗! あんたは間違っている!』

『なにぃ!?』

『なぜならあんたが抹殺しようとしている人類もまた自然の中から生まれたもの。いわば自然の一部!』

『……っ』

『それを抹殺して、何が地球の、自然の再生だ! そう、共に生きる人類を抹殺しての理想郷など、愚の骨頂!』

 

 そして、師匠とドモン、二人の石破天驚拳がぶつかりあった。そしてシーンは、最後の別れのシーンに変わる。

 

『なぁ、ドモン……お前には教えられたよ……。人類もまた自然の一部、それを抹殺するも、地球を破壊するも同じ。わしはまた、同じ過ちを繰り返すところであった……』

『師匠……!』

 

 俺とこちら側のドモンも、その光景を静かに見守っている。

 

『なぁ、ドモンよ……。お前と新宿で出会わなければ、お前がガンダムファイターになどならなければ、こんなことにはならなんだのに……!』

 

 そして再び、視界が白く染め上げられる。

 

* * * * *

 

 気が付くと、俺たちはお互いの機体のコクピットにいた。

 

『ジャンヌ、それならお前たちも、あの時間軸の師匠と同じように……!?』

「いいえ。私たちはそれとは少し違う道を歩んでいます。師匠、そして私も人類の抹殺までは考えていません。人類を生かしたまま宇宙に追いやり、デビルガンダムの力で地球を閉ざし、自然の再生を促す。それが私たちの目的」

『なんと!?』

 

 会話を交わしながらも、俺たちの力、ぶつかり合いは緩むことはない。

 

「あなたも見たはずです。ガンダムファイトと人類の環境破壊により各地が荒れ果てていくのを。人類が地球にいては、やがて地球は、自然は、人類に食い荒らされていくのは必定。人類は地球を出て、地球自らの手に地球を返すべきなのです。私たちはそれを強制的に行っているだけ」

『ジャンヌ……』

「ドモン、あなたはそれでも私たちに敵対するのですか? いまだに人類の地球破壊を見逃すのですか? はあっ!!」

 

 そして、お互いのぶつかりあったパワーがはじけ、俺たちは互いに大きく飛びのいた。

 

 そこから少しの沈黙。そして。

 

『ああ! 俺はそれでもあんたたちを認めることはできん!』

「!?」

 

 直立したまま、ドモンは続ける。

 

『あんたの言うこともわかる。確かに人類はこれまでずっと地球を傷つけてきた。あんたや師匠がそれを憂う気持ちもわかる。だが! 人類を抹殺することと、人類を無理やり追い出すことの、どこが違うんだ!』

「……」

『向こう側の俺は言っていた。『人類を抹殺しての理想郷など愚の骨頂』と。ならば、人類を追い出しても同じこと! 人類を排除しての理想郷作りなど愚の骨頂以外の何物でもない!』

「……」

『どうすればいいかはまだわからない。だが、少なくともあんたたちのやろうとしていることは短絡的で誤った道であることは確かだ! 他にも、地球を救う道はあるはず!』

「……ふふ」

 

 思わず笑みが漏れ出てしまう。ドモンがこの時点でここまで成長するとは。しかも、こちら側のドモンは、向こう側とは違い、これまでのこと、そして俺たちの憂いも理解したうえで、それでも違うと断じてきたのだ。彼は、俺が思っていたよりも大きく成長していた。

 

「見事です。よくぞそこまで答えを導き出しました。ですが、こちらにも譲れないものがあります。これ以上は議論しても詮無いことでしょう」

『最後はこの拳で、ということか……いいだろう』

 

 そしてお互いに再び構える。

 

* * * * *

 

 崖の上、そこで俺のガンダム・オルタセイバーと、ドモンのシャイニング・ガンダムは向かい合い、気を高めあっていた。

 

 この戦いは、ただのぶつかり合いではない。互いの想いを、考えを、意思をぶつけ合う戦いだ。手抜きは許されない。

 

 俺の身体が熱い気で満たされてゆく。それは向こうも同じようだ。シャイニングからも激しくも静かな気を感じる。

 

 そして。

 

「必殺! 絶対勝利・エクスカリバーンッ!!」

『必殺! シャイニングフィンガーソード・夢幻剣っっ!!』

 

 そしてお互いの剣技がぶつかりあう。すれ違う二機。

 そして二機とも同時に膝をついた。

 

「相打ちだと言いたいところですが……私の負けですね」

『ジャンヌ……』

 

 そう、俺のガンダム・オルタセイバーは首を斬り落とされていた。ガンダムファイトのルールに従っても、それ抜きでも、俺の負けなのは一目瞭然だろう。

 だが、デビルガンダム細胞で強化された俺のガンダムは、それぐらいの損傷でも問題ない。すぐに細胞の再生が始まり、新たな頭部が形成される。

 

「約束です。デスセラフたちを撤退させましょう」

 

 そして俺は、音無き指笛を吹いた。

 

* * * * *

 

 自分たちが戦っていたデスセラフたちが撤退していく。その様を、恵雲、瑞山の二人は互いに背中を向けあいながら見ていた。

 

「おぉ……」

「デスセラフたちが撤退していく……」

 

 それは、シャッフル同盟の四人も。

 

「奴らが撤退していく……」

「ということは、アニキが勝ったんだな! やったなアニキ!」

「やれやれ、なんとか助かりましたね」

「うむ……」

 

 デスセラフ軍団が引き上げた後の空は、美しい青に彩られていた。

 

* * * * *

 

「あなたたちの勝ちです。さぁ、行きなさい、決勝の会場へ」

『あぁ』

「ですが、勘違いしないように。あなたたちの理の一部を認めただけです。全てを認めたわけではありません。私たちはこれからも活動を続けます」

『ジャンヌ……』

「地球が人類の営みとファイトで破壊されるか、それとも私たちによって閉ざされるか、別の道が開けるか、それはこれからのあなたたち次第です。せいぜい励むことですね」

『……』

「さぁ、行ってください。決勝で会いましょう」

『……あぁ!』

 

 そしてシャイニングは、仲間たちの元へ飛び立っていった。それを俺は、静かな目で見守り続けていた。

 




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* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

ついに始まるガンダムファイト決勝大会!
意気揚々と緒戦に挑むドモンですが、そこで彼は思いもよらぬ危機に見舞われるのです!
その一方、大会にはあの男も姿を現したではありませんか!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第17話『決勝開幕! 緊急事態ゴッドフィンガー発動せず!?』

にReady Go!!

それではみなさん。6/22 12:00にまたお会いいたしましょう!


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決勝編
17th Fight『決勝開幕! 緊急事態ゴッドフィンガー発動せず!?』


 さて、みなさん。ガンダムファイト13回大会がはじまって、はや11ヶ月が経過しました。
 地球各地でのサバイバル戦、サバイバルイレブンを生き残ったファイターたちによる決勝大会が、いよいよ始まろうとしています。

 その会場となるのが、このネオ・ホンコンです。

 果たしてこれから、どのような熱いファイトが行われるのでしょうか?

「見事です。よくぞそこまで答えを導き出しました。ですが、こちらにも譲れないものがあります。これ以上は議論しても詮無いことでしょう」

 それではガンダムファイト、Ready Go!!



 俺……ジャンヌ・エスプレッソと、師匠こと、東方不敗・マスターアジアは、ここネオ・ホンコンの地に立っていた。

 これからここで、ガンダムファイト13回大会、決勝大会が行われるのである。

 

 決勝大会では、ある程度、前回優勝国の意向が反映されることになっている。

 現に原作でも、決勝大会はルール変更などの、ウォンのさまざまな策略が展開されていた。きっと現世でも、ウォンは色々な手を使ってくるだろう。俺たち新生デビルガンダム四天王やシャッフル同盟を叩き潰すために。

 

 だが、そのことに恐れはない。来るなら来いだ。どんな陰謀が来ても、それを叩き潰すのみ。

 

 俺がそう決意を固めたところに。

 

「師匠!」

 

 聞き覚えのある声。俺と師匠が振り向くとそこには……。

 

「おぉ、ドモン。無事にたどり着けたようだな」

「はい!」

 

 ドモン他、シャッフル同盟の面々がいた。みな、その表情には覇気がみなぎっている。

 

「アネゴ、ギアナ高地ではやってくれたね! 決勝でその借り、一杯返してやるからね! 覚悟しときなよ!」

「……」

 

 サイ・サイシーが挑戦的な表情でそう言ってきて、アルゴも不敵な笑みを浮かべてうなずいてくる。

 

「確かこの大会には、あのカンガルー野郎も出るんだろ?」

「えぇ。二人とも、仮名を用いて、個人資格でエントリーすると言ってました。ちなみに私は従来通り、ネオ・ノルウェー代表、師匠はネオ・マカオ代表として参加します」

「うむ。ウォンのネズミめが、なぜかわしのネオ・ホンコン代表での決勝参加は許さんとほざきおってな」

 

 それを聞き、チボデーが嬉しそうな表情を浮かべる。その横では、ジョルジュも微笑みを浮かべている。

 

「そうかい。そいつは、またやりあう時が楽しみだぜ!」

「えぇ。私もです」

 

 そこで気が付いた。ドモンと師匠が真剣なまなざしで見つめあっている。そして、師匠が口を開いた。

 

「ふむ、ドモン。お主、自分の道を見つけ出せたようだな」

「はい。師匠やジャンヌが何を憂い、何を考えているのかも。ですが俺には、師匠たちの道が正しいものだとは思えません。俺は必ず戦いの中で、その答えを見つけ、そして師匠やジャンヌを止めてみせます」

「そうか。ならば見事、止めてみせい。お主の成長、お主の道、答え、この決勝大会の中で、しかと見せてもらうとしようぞ」

「はい……!」

 

 と、そこで、開会セレモニーが始まった。

 

* * * * *

 

 壇上に立つ、サングラスをかけたいかにも怪しそうな男。彼がネオ・ホンコン首相にして、この話の黒幕、ウォンである。下の名前など知らん。知りたくもない。

 

 そのウォンは胡散臭い笑顔を浮かべたまま、「この決勝大会を輝かしいものにしたいと思う」などと白々しいことを言う。よく言うよ。原作でさんざん俺ルールぶちかましたくせに。原作でお前がやらかした色々なこと、忘れてないぞ。

 

 だが、驚きはそこからだった。なんと彼はそこで、「ではここで、我がネオ・ホンコン代表の特別シード選手を紹介しましょう」とのたまったのだ!

 

 あれ? どういうことだ? だって、偽物の師匠は倒したんだぞ、二度も。まさか三体目も作ったのか? 「だって私は三人目だもの」ってやつか?

 

 その通りだった。ウォンに紹介されて壇上に上がったのは、まさに俺の隣にいる人そのものだった!

 

「わしがネオ・ホンコン代表、東方不敗・マスターアジアである! 参加する者どもよ! 見事わしを倒し、ガンダム・ザ・ガンダムの称号をつかんでみせよ! できるものならな! ふはははは!!」

 

 しかも、そんな、師匠が言いそうででも言いそうにない台詞まで言う始末。やめてくれ、師匠に風評被害が出たらどうするんだ。

 

 そしてやはり、師匠は偽物を見て、不敵に笑みを浮かべている。しかしよく見ると、その額に青筋が浮かんでいた。

 

「ふふふ、あの小物め。面白い余興を用意してくれておるわ。よかろう。最下層から這い上がるのもまた面白い……ドモン!」

「は、はい!」

 

 急に呼ばれて驚いた様子のドモンに、師匠はその表情のまま続ける。

 

「わしはあの偽物を倒し、一足先に頂きにて待っておる。お主も負けずに、頂きにたどり着くがいい。その時を信じて待っておるぞ」

「はいっ!」

 

 そう力強くうなずくドモンを見て、師匠は満足そうにうなずく。だがその一瞬、師匠の表情が一瞬憂いを浮かべていたのが、少し気になった……。

 

* * * * *

 

 そしていよいよ、試合が始まった!

 

 ドモンの緒戦の相手は、ネオ・モンゴル代表のキル・カーン。MF (モビルファイター)はテムジン・ガンダム。

 

 国内予選を苦戦することなく勝ち進んで、サバイバル・イレブンも快勝を繰り返して決勝に進出したという剛の者だが、やはりドモンと比べると、格の差を感じる。しかも今回、ドモンは決勝用のガンダム、ゴッド・ガンダムに乗っての出場だ。苦戦する要素はどこにもないと俺には思われた。

 

 だが、師匠は相変わらず、厳しい表情をリングへと向け続けている。何か不安要素があるのだろうか?

 

 そして試合が始まった。

 

 俺の予想通り、ドモンは明鏡止水の動きをもって、キルの攻撃を流れるようにさばき続け、逆に激しい攻めを彼のテムジン・ガンダムに繰り出している。

 

 やはり、彼の勝利は間違いないように思えた。だが……!

 

* * * * *

 

「よし、これで決めるぞ!」

 

 そう叫び、ドモンはかつての愛機、シャイニング・ガンダムの必殺技、シャイニング・フィンガーの態勢を取った。

 

「俺のこの手が真っ赤に燃える! 勝利をつかめと、轟き叫ぶ!!」

 

 彼のボイスコマンドに反応し、ゴッドガンダムの制御システムがゴッド・フィンガーの発動プログラムを起動させようとする。

 

「喰らえ! ひぃぃぃぃさつ! ゴオオッド!!」

 

 そして技を放とうとしたその時! コクピットをエラーのアラーム音が包んだ!

 

「な!?」

 

 そして全天周モニターに表示される、『ERROR』の文字。

 そう、何かの理由で、ゴッド・フィンガーが発動しなかったのだ!

 

 その事態に、動揺を隠せないドモン。

 その隙を、キルが見逃すはずがなかった!

 

 彼の刀が、ドモンに迫る―――!!

 




ファンアート、そして『テテテUC(ユニコーン)』を執筆してくださる方、熱烈募集中です!

* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

ゴッドフィンガーが発動しないという異常事態に見舞われたドモン! 果たして彼は、必殺技を封じられた状態で、勝利をつかむことができるのでしょうか!?

そして、アルゴ・ガルスキーの相手は、因縁深い相手でした。その相手を前に、アルゴは謎の行動に出るのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』
第18話『前進のケジメ! 沈黙のボルトクラッシュ!!』

にReady Go!!
それではみなさん。6/25 12:00に、またお会いいたしましょう!


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18th Fight『前進のためのケジメ! 沈黙のボルトクラッシュ』

 さて皆さん。いよいよ、第13回ガンダムファイト決勝大会が始まりました。
 その緒戦で、ドモンはいきなり、新必殺技である爆熱ゴッドフィンガーを撃てなくなるというトラブルに見舞われました。果たして彼は、その状況の中、勝利をつかむことができるのでしょうか? そしてその原因とは?

 そしてその次の試合で、アルゴ・ガルスキーのガンダム・ボルトクラッシュと戦うのは、ネオ・カナダ代表、アンドリュー・グラハムのランバーガンダムです。
 彼も、アルゴと同じパワーファイターなのですが、それ以外にも彼と因縁がある様子。はてさて、どうなりますことか。

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



「な!?」

 

 エラー音が鳴り響くコクピットの中で、ドモンは戸惑っていた。

 彼が発動させようとしていた新必殺技・爆熱ゴッドフィンガーは発動することができなかったのだ。この異常事態に、ドモンは混乱していた。明鏡止水の境地を忘れてしまうほどに。

 

 どうにか、その戸惑いを振り切って我に返ったその時!!

 

「!!」

 

 目の前に、テムジンガンダムの刀の刃が迫っていた! そして!!

 

「うわぁ!!」

 

 とっさのことで明鏡止水の境地でかわすことができず、彼はその刃の直撃を受けてしまった! とっさに後ろにスウェーバックしたことで、一刀両断されることは避けられたが、吹き飛ばされ、腹部に損傷を受けてしまう!

 

* * * * *

 

 一体、どうしたというのだろうか? 俺……ジャンヌ・エスプレッソも、目の前の状況に戸惑いを禁じ得なかった。

 

 ドモンが優位に戦っていた相手に、必殺技でとどめを刺そうとした。

 だが、なぜかそこで、その必殺技が発動せずに、逆に敵の反撃を許してしまったのだ。

 

 そこから逆転。ドモンは、対戦相手であるテムジン・ガンダムの攻撃の前に防戦一方となっている。やはり、必殺技が発動しなかったのが、ショックだったのだろうか。

 

 そしてその様子を見て、師匠……東方不敗・マスターアジアは、厳しい表情を浮かべている。師匠はこの事態が起こることを予期していたのだろうか?

 

 師匠はただ、厳しい視線を弟子に向け続けている。

 俺にはそれが、師匠がドモンに向けた、無言の激励のような気がした。

 

* * * * *

 

 テムジン・ガンダムのファイター、ネオ・モンゴル代表のキル・ハーンの猛攻に、それを防ぐのが精いっぱいのドモン。彼の頭は、必殺技であるゴッド・フィンガーが発動しなかったことの衝撃で混乱していた。とても明鏡止水の境地に至れる状態ではない。

 

 そして、テムジン・ガンダムの一撃がまたゴッド・ガンダムにヒット! 彼はまた吹き飛ばされてしまう。

 

 その時。彼は見た。

 師匠、東方不敗・マスターアジアが自分に厳しい視線に向けているのを。それがドモンに、戦う気迫と、冷静さと、そして自分が為すべきことを教えてくれた。

 

 彼には聞こえたのだ。視線に秘められた、師匠の声が。

 声は言った。

 

『目の前の些事に囚われるな! それで負けるなど、流派・東方不敗の面汚しよ! お前も我が流派の者なら、惑わされず、自分の目指すもの、勝利をしっかりと見据えよ!』

 

 と。

 

 そしてドモンはあえて、テムジン・ガンダムの攻撃を受ける。スウェーバックしながら受けたので、ダメージはほとんどない。その吹き飛ばされる間に、呼吸を整え、再び明鏡止水の境地に至る。

 地面に叩きつけられたゴッド・ガンダムは再び軽やかに立ち上がり、二本のビーム・ソードを構えた。その様子から、先ほどまでのような動揺はまるで感じられない。

 

 その様子に、ハーンも感じ取ったようだ。改めて刀を構えなおし、ゴッド・ガンダムと対峙する。

 

 だが、ゴッド・ガンダムの放つ静かな気迫は、容赦なくハーンに襲い掛かる。まるで、気迫の拳に握りつぶされるかのようだ。

 それに耐え切れず……。

 

『うおおおおおお!!』

 

 テムジン・ガンダムは猛烈な勢いで突進してきた。しかしそれでも、ドモンは揺らぐことはなかった。そして。

 

「うおおおお! 必殺、爆熱ゴッド・スラッシュ!!」

 

 そして突っ込んでいく! 両手のビーム・ソードがさらに太く、長くなる。そして一閃!! 見事、テムジン・ガンダムの頭部を切断した!

 膝をつくテムジン・ガンダム。レフェリーが試合終了を宣言し、ドモンの勝利が確定した。

 

 会場を包み込む歓声。その中で東方不敗・マスターアジアは相変わらず、厳しい表情を浮かべていた。

 

* * * * *

 

「ドモン、どうしたの!? ヒヤヒヤしたのよ!」

 

 ゴッド・ガンダムを降りたドモンに、レインがそう声をかけた。それに鋭い目を向けてドモンがいらだちを隠しきれない大声で返す。

 

「それはこっちの台詞だ! 俺は明鏡止水の境地に達していたのに、ゴッド・フィンガーがエラーで発動しなかったぞ! システム調整か何かにミスがあったんじゃないのか!?」

「本当!? でもそんなはずはないわ。試合前のチェックでは、制御システムに問題はなかったのよ」

 

 と、そこに。

 

「その通りだ、ドモン。エラーログを見なければ詳しいことはわからんが、発動しなかった原因はガンダムのせいではない」

 

 その声とともにやってきたのは、ドモンの師である東方不敗・マスターアジアと、彼の二番弟子のような存在のジャンヌの二人だった。

 

「お嬢さん。聞いておきたいのだが、その制御システムは、ファイターの明鏡止水があるレベルに達しないと、技を発動できないようになっているのではないかな?」

「は、はい。明鏡止水なのかはわかりませんが、ファイターの心の動揺を検知すると、セーフティが働いて発動しないように……」

「なるほどな」

 

 そして、再びドモンに目を向ける。

 

「ドモン、ギアナ高地で明鏡止水に至ったのは見事だとほめてやるが、その明鏡止水はまだまだ不完全ということだ」

「でも師匠、ギアナ高地でのドモンの動きは、本当に流れる水のようで、静かで間違いなく明鏡止水という感じでしたが……」

 

 そう異を唱えるジャンヌに、師匠はうなずいて続ける。

 

「うむ。だが、それでも心にかすかな迷いがあれば、それは心という水面に少しだが波紋を生じてしまう。それをシステムが感知してエラーを起こしたのであろう。ドモン。お主、心の中にわずかながら迷いがあるのではないか?」

「……はい」

 

 マスターアジアの質問に、ドモンは素直に認めた。師匠との修行時代から、心技体の問題に対しては言い訳せず素直に認めるように、厳しくしつけられていた。嘘をついついてしまい、吹き飛ばされてしまったことは数知れない。

 

「やはりな。察するに、わしらの行いや理想が誤りだとわかっているが、ならばどうするかという答えが出ていないということであろう」

「……はい、おっしゃる通りです」

 

 そのドモンの答えに、腕を組んで考え込むマスターアジア。そして少しして、腕を解き、厳しくも優しい視線を弟子に向けた。

 

「わかっておろう? その答えを出すのは最後には自分じゃ。これまでの戦いを思い返し、これからの戦いを見て、自分なりに答えを導き出すがよい。そして答えを見いだせた時こそ、お主は真なる明鏡止水に至れるであろう」

「師匠……はい」

「先にも言ったが、わしは一足先にあの偽物を打ち倒し、頂で待っておる。答えはお主がわしの元までたどり着いた時に聞かせてもらう。その時が来るのを信じているぞ」

 

 そこまで言ったところで、再び会場を喧噪が包んだ。次の試合が始まったのだ。

 

* * * * *

 

『アルゴ、ボルトクラッシュの調子はどうだ?』

 

 モニターに映るネオ・ロシアチームのチーフ、ナスターシャの問いに、アルゴ・ガルスキーは不敵な笑みを浮かべて応える。

 

「あぁ。制御システムと動力システムも、すべて絶好調だ。むろん俺もな」

『そうか。お前の決勝大会での緒戦の相手は、ネオ・カナダ代表だそうだ。くれぐれも油断するなよ』

「わかってる。このパワーで蹴散らしてきてやろう。ガンダム・ボルトクラッシュ、出るぞ!」

 

 彼の気合の入った声に応じて、乗機であるガンダム・ボルトクラッシュのシステムが起動していく。メイン動力システムであるビクトル・エンジンが発動し、ボルトクラッシュはゆっくりと立ち上がった。そして、力強く、リングに向かっていく。

 

* * * * *

 

 そして対峙する、アルゴのガンダム・ボルトクラッシュと、対戦相手であるネオ・カナダのガンダム。

 それらを前に、レフェリーがコールする。

 

「赤コーナー! ネオ・ロシア代表アルゴ・ガルスキー! 搭乗するのはガンダム・ボルトクラッシュ!!」

 

 会場を喧噪が包む。その中、アルゴのボルトクラッシュはただたたずむだけである。だが、その姿はとても雄々しく、力強い。

 

「青コーナー! ネオ・カナダ代表アンドリュー・グラハム! 乗機はランバーガンダム!」

 

 再び会場に喧噪がとどろく中、アルゴの眉がかすかに動いた。対戦相手の『グラハム』という名前に引っかかりがあったのだ。どこでだろうか……?

 

「それではガンダムファイト、レディーゴー!!」

 

 その彼のかすかな戸惑いを無視するかのように、レフェリーの試合開始の声が響き、アルゴは気持ちを切り替え、前方の敵を見据えた。

 ランバーガンダムが強烈なショルダータックルを仕掛けてくる! だがボルトクラッシュはそれをがっしりと受け止めた。そのタックルの勢いに、少し後ずさってしまったが、その態勢がみじんを揺らぐことはない。

 

「こいつ……!」

 

 だが、アルゴはその攻撃に、相手のすさまじい闘志を感じ取っていた。並みの相手のタックルとは違う。それは重く、激しい。まるで、巨大な岩に何度も襲い掛かり、必ずや砕こうと荒れ狂う波のように。

 

「うおおおおお!!」

 

 むろん、アルゴとて、このままやられるつもりはない。ボルトクラッシュの二機のビクトル・エンジンをフル稼働。そのパワーで、ランバーガンダムを抱え上げた。そして地面に叩きつける!

 そして、その地面に倒れ伏したランバーガンダムに襲い掛かるが、そのランバーガンダムの蹴りを喰らい、態勢を崩してしまう。そこに、立ち上がったランバーガンダムが襲い掛かり、がっしりと組み合う。

 

 そこに、そのランバーガンダムから通信が入る。

 

『この時を待っていたぞ、アルゴ・ガルスキー! 例えお前が忘れても、俺は忘れはせんぞ! 俺の大切な人を奪ったお前のことはな!!』

「なに!?」

『俺はアンドリュー・グラハム! お前と手下どもに殺された、ノーマ・グラハムの夫だ!!』

「な……!?」

 

 絶句するアルゴ。彼も思い出したのだ。彼が死なせてしまった、ある女性のことを。

 それは故意ではなく事故であったが、それはアンドリューには関係のないことだろう。アルゴと仲間たちに、最愛の人の命を奪われたのは確かなのだから。

 

「うおっ!?」

 

 動揺するアルゴのボルトクラッシュに、ランバーガンダムがタックル! ボルトクラッシュを押し倒してしまう! マウントを取ったランバーガンダムが、マウントパンチを食らわせるが、その拳をボルトクラッシュが受け止め、さらにその腕を取り、形勢逆転! マウントパンチを浴びせようとするが、膝蹴りを喰らい、吹き飛ばされる。

 

 その後も激闘を繰り広げるアルゴのボルトクラッシュと、アンドリューのランバーガンダム。

 自分を仇と狙う相手を前に動揺するアルゴと、妻の復讐も猛るアンドリュー。二人の実力差は互角になり、バトルはどちらが勝つかわからないご激戦となっていた。

 

 だが、そこで異変が起こった。突然ボルトクラッシュが戦闘態勢を解いたのだ。そのボルトクラッシュに、ランバーガンダムの攻撃がヒットする。

 

* * * * *

 

 戦いをやめ、ただランバーガンダムの攻撃を受けるためになったボルトクラッシュに、ナスターシャは驚きと危惧を感じていた。

 アルゴとアンドリューの会話は、ネオ・ロシアスタッフの本部にも届いている。まさかアルゴは……?

 

 ナスターシャは急いで、ボルトクラッシュのアルゴに通信を入れた。

 

「何をしているアルゴ! まさかお前、わざとアンドリューの妻の仇としてやられるつもりか!?」

 

 だが、アルゴの答えは意外なものだった。

 

『馬鹿なことを言うな!』

「!?」

 

 アルゴは、アンドリューの攻撃を受けながら続けた。

 

『俺は、勝ち続け、仲間たちを釈放してもらわなければならん。ここで負けるつもりはない。だが、そのためにも、俺なりのケジメとして、彼の怒りと憎しみを全て受け止めなければならんのだ。そうしなければ、俺は前に進み、勝ち続けることはできん。俺はそんな不器用な男なのだ』

「アルゴ……」

『心配するな。ちゃんと、奴の怒りを受け止め切ってから勝ってやる。黙ってみていろ』

「だ、誰が心配してなど!」

 

 そうムキになって言い返すナスターシャだが、その頬が赤く染まることを隠すことはできなかった。

 ナスターシャはキュンとなってしまったのだ。前に進むために、自分がやったことに対してのケジメをつけようとするアルゴの男らしさに。

 

 そのナスターシャの目の前で、ランバーガンダムは背中にマウントされた斧を抜いて構えた。

 

「妻の仇だ! サウザント・アークスッ!!」

 

 ランバーガンダムの手から放たれた斧は変幻自在な軌道を描いて飛ぶ。そしてその速さから残像が生まれ、無数の斧がボルトクラッシュに迫る!

 

 そして斧が次々と、ボルトクラッシュに炸裂! 屈強な機体が爆炎に包まれた!

 

「アルゴー!!」

 

* * * * *

 

「はぁ……はぁ……やったか……?」

 

 荒い息をつきながら、爆炎を見つめるアンドリュー。妻の仇を討てたのだろうか?

 彼はこのファイトに、そして今の攻撃に全身全霊をかけてきた。彼は、この時のために全てを捧げてきたのだ。

 

 だが。

 

『お前の怒りと憎しみ、無念、全て受け止めた。良い一撃だった』

「!?」

 

 その声に、驚愕の表情を浮かべるアンドリュー。まさか、そんなはずは……!?

 その彼の前にボルトクラッシュが、爆炎の中から現れた。その身体は黄金に輝いている。ボルトクラッシュのパイレーツモードと、ツインビクトルエンジンのフルパワーを合わせた最強のモード、ゴールデン・パイレーツ・モードである。

 

『だが俺はそれでも、勝ち進み、前に進まなければならんのだ!!』

 

 そしてボルトクラッシュは構え、その拳を大地に叩き込んだ!

 

『炸裂! ガイアクラッシャー!!』

 

 ゴールデン・パイレーツ・モードのエネルギーを拳を通して、リングに、そして大地へと叩きつける。すると、突然あたりが大きく揺れ始め、リングが大きく盛り上がり、そして裂け、ランバーガンダムを天高く跳ね上げた!

 そしてそのまま落下したランバーガンダムは、剣先のように鋭くそそり立つ岩塊が生えた地面へと叩きつけられた!!

 

「ぐあああああ!!」

 

 そのダメージで、アンドリューは絶叫をあげ、ランバーガンダムは機能を停止した。レフェリーが、アルゴの勝利を宣言する。

 それを聞き届けたボルトクラッシュは、各所からスパークを出しながら膝をついた。ガイアクラッシャーは、ボルトクラッシュの機体にもかなりの負荷をかけるもろ刃の剣でもあるのだ。

 

 そのコクピットでアルゴは荒い息をつきながら、ランバーガンダムを見やる。

 

「お前の怒り、憎しみ、俺に感じた全てのもの、全て、お前の攻撃の痛みとともに、この胸に刻み付けて進もう。それが、お前とお前の妻への償いになるかどうかはわからんが、それが今の俺にできる精いっぱいのことだ」

 

 そして再びガンダム・ボルトクラッシュは立ち上がる。その姿は、試合前によりはるかに雄々しかった。

 

 その様子を、ドモンはただ見上げ続けている。

 




ファンアート、そして『テテテUC(ユニコーン)』を執筆してくださる方、熱烈募集中です!

* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

いよいよジャンヌの緒戦がやってきました! その彼女の相手は、彼女との因縁の深いあの相手でした。
戦いをはじめる彼女ですが、その彼女に突然の不調が!!

果たして彼女は勝利をつかむことができるのでしょうか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第19話『苦戦の初陣! 帰ってきたミケロ!』

にReady Go!!

それではみなさん。6/28 12:00にまたお会いいたしましょう!


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19th Fight『苦戦の初陣! 帰ってきたミケロ!』

 こんにちは、ストーカーです。

 さてさて、いよいよ決勝大会がはじまりました。
 好試合の連続に、会場では熱狂がおさまりません。

 ですがその裏で、自然の破壊が進んでいるのが、なんともまぁ……。

『俺は、勝ち続け、仲間たちを釈放してもらわなければならん。ここで負けるつもりはない。だが、そのためにも、俺なりのケジメとして、彼の怒りと憎しみを全て受け止めなければならんのだ。そうしなければ、俺は前に進み、勝ち続けることはできん。俺はそんな不器用な男なのだ』

 さて、いよいよ我らがジャンヌの初陣です。果たしてどのようなファイトを見せるのか?
 彼女の緒戦の相手はなんと、あのミケロ・チャリオット! そのガンダムは……まだ内緒。彼女のファイトに期待しましょう。

 それでは、ガンダムファイト! Ready Go!!



 俺……ジャンヌ・エスプレッソは、青コーナーのバンカーにて、ガンダム・オルタセイバーに乗り込み、試合の準備をしていた。

 

 その足元では、ネオ・ノルウェーのスタッフが、出撃のための準備をしてくれている。もっとも、俺のオルタセイバーはDG(デビルガンダム)細胞によって強化された機体のため、メンテナンスはその自己修復機能で自動的にやってくれるのだが……。だがまぁ、それでも人手によるメンテナンスも加わると、さらに万全になるのでありがたいのだが。

 なお、スタッフには、損傷したガンダム・ピュセルを現地改修したと話してある。さすがに、DG細胞によって強化されたとは言えないからな。

 

「……っ」

 

 準備をしている最中、軽いめまいが俺を襲った。幸いにも、試合に影響を与えるようなひどいものではなかったが。

 だけど……。

 

「少しずつ限界が近づいているのかもしれませんね……」

 

 DG細胞によって作られたこの体に刻まれた、これまでの戦いでの小さな傷。それに身体が悲鳴をあげているのかもしれない。

 せめて、ことを成すまでもってほしいのだが……。

 

 俺はそっと、自分の胸を撫でた。

 

「一緒に頑張りましょうね、私の身体」

 

 そこで、レフェリーによるコールが為された。俺は、スタッフが周囲から退避したのを見届けると、オルタセイバーを起動させ、リングへ一歩を踏み出した。

 

* * * * *

 

 リングに出た俺は驚いた。俺の対戦相手は……ところどころ違うが、ミケロ・チャリオットのネロス・ガンダムじゃないか! というか彼は、ウォンの手下になって、とうにヘブンズソードに乗ってると思っていたのだが。

 

「ミケロ、あなたも決勝大会に出ていたのですね」

「あぁ。幸いにも、ネオ・メキシコの市民権を取れたんでな。チコ・ロドリゲスの代わりにネオ・メキシコのファイターになったのさ! 今度こそお前をぶち倒してみせるぜ。このガンダム・ルチャリブレでな!」

「それは楽しみです。でも、私もただでは負けませんよ」

 

 二人同時に笑みを浮かべる。

 そして、レフェリーの試合開始のコール。

 

「「ガンダムファイト・レディーゴオオオォォォォ!!」」

 

* * * * *

 

 そして試合が始まった!

 

 先手は俺がとらせてもらう! 俺のガンダム・オルタセイバーがビームセイバーを横凪ぎにふるった! だが、ミケロのルチャリブレはそれを軽やかなステップでかわした。そして反撃でキックを返してきた。迅い!?

 

 かわせないと思った俺は、ビームセイバーでその蹴りを受け止めた! かなりの衝撃が伝わり、思わず吹き飛ばされそうになる。足回りだけでなく、そのパワーも強化されているようだ。

 

「くっ……!」

 

 俺は後方に飛んで、その衝撃を逃がすようにした。そして態勢を立て直す。しかし、ルチャリブレは逃さず、俺に突進してきた! 俺は立ち上がると、ビームセイバーの斬撃を、カウンターでルチャリブレの顔面目掛けてはなった!

 それをよけようと、ミケロが態勢を崩したところで。

 

「お返しです、スプラッシュソード!」

 

 スプラッシュソードで追撃! だがなんと、ルチャリブレは、あの銀幻の脚でそれを迎撃した!

 俺のビームセイバーと、ミケロの蹴りが激しく何度もぶつかり合う!

 

 そして、二機が交差! 二機同時に膝をつく。

 でも、まだまだ終わらない! 俺は縦横無尽にビームセイバーを振るい、ミケロのルチャリブレを攻撃する! しかし、ミケロも負けてはいない。ルチャリブレの拳や蹴りで、それをさばいていく。

 

 それからも続く激しいバトル。俺のビームセイバーと、ミケロの蹴りと拳が激しくぶつかりあう。

 そのファイトに、周囲からは歓声が聞こえてくる。

 

 そして。俺のビームセイバーの突きが、ルチャリブレの頭部をかすめ、ミケロの蹴りがオルタセイバーの左肩をかすめた! そして、またも同時に飛びのく。

 

 わあああああああ!!

 

 周囲から湧き上がる、熱狂に満ちた歓声を聞き、俺は思わず笑みを浮かべる。それはミケロも同じだろう。

 その彼から通信が入る。

 

『楽しいなぁ……。メキシコでお前とやりあった時を思い出すぜ』

「奇遇ですね、私もです」

『さぁ、ここからは本気でいくぜ!』

「のぞむところです!」

 

 そして、ミケロのルチャリブレは勢いよく突進してくる! 俺も、闘争本能の赴くままに、突進する。しかし!

 

「……!?」

 

 突然、激しいめまいが俺を襲った!

 

* * * * *

 

「……!?」

 

 突如、激しいめまいが俺を襲った! そして態勢を崩したところに、ミケロの蹴りがさく裂! 俺は吹き飛ばされてしまった。

 

「くっ……」

 

 ふらふらしつつもなんとか態勢を立て直すが、めまいは続いたまま。ミケロは一瞬、戸惑った動きを見せたが、すぐに立ち上がった俺に襲い掛かった!

 そして激しい蹴りを浴びせてくる!

 

「……っ」

「オラオラ、どうしたどうしたぁ!!」

 

 そう言いながら襲い来るミケロの蹴り。まさに銀幻の脚というにふさわしい無数の蹴りが俺を襲う。俺はそれをガードして防ぐのが精いっぱいだ。その激しさに、ついに俺のガードが弾かれてしまう!

 

「オラァ!!」

 

 そこに強烈な一撃を喰らい、またも吹き飛ばされる。だが、その時。

 

「……!」

 

 俺の心に響いてくるものがあった。それは……蹴りに秘められた彼の、俺への失望、そして檄……?

 また立ち上がった俺に、またもミケロは俺に猛攻を仕掛けてきた! その一発一発は重く、激しく、そして熱い。

 

『どうしたどうした!? まさか、これで終わりなんてことはないよなぁ!?』

「……っ」

『俺はあんたを超えようと思って、ここまで頑張って、力と技を磨き上げてきたんだ。そんな俺の歩みを、想いを、こんな下らない試合で終わらせてくれるわけはないよなぁ!?』

「ミケロ……」

 

 彼が、俺を目標して、ここまで力と技を高め続けてきたとは……。これは確かに、こんな無様な姿を見せるわけにはいかないな!

 俺はガードしながら大きく深呼吸をして、気合を入れなおす。気をみなぎらせると、それに全身のDG細胞が反応し、先ほどまでの不調はどんどん和らいでいく。これで、また寿命がいくらか縮んでしまったかしれないが、そうなったとしても悔いはない。

 

「心配をおかけしましたね、ミケロ。もう大丈夫です」

『心配なんかしちゃいねぇよ。万全なお前をぶちのめさなきゃ、俺の気がすまねぇってだけだ」

 

 そして拳を交えあいながら、互いに微笑む。そして両者とも大きくバックステップして距離をとった。

 

* * * * *

 

 互いに対峙したまま、構えを取り、気を高めあう俺とミケロ。

 俺のために、ファイターとして自分を高め続けてきたミケロのためというわけではないが、ここで手を抜くことはできない!

 

 一分とも一時間とも、一日とも感じられる時間が過ぎて、そして!

 

『行くぜえええぇぇぇ!!』

 

 オーラをまとったミケロのルチャリブレが突っ込んできた! それに対して俺は……。

 

「行きます!! はあああぁぁぁぁ!!」

 

 全身に稲妻の竜巻をまとい、同じく突撃した! 以前、ネオ・オランダのネーデル・ガンダムとの対決で使ったぷち超級覇王電影弾だ。いや、これはもうそんな名前ではない。

 

 互いに回避もせず、相手に向かってぶつかっていく。そして。

 

『喰らええええぇぇぇ! 必殺、黄金の脚アルティモオオォォォ!!』

 

 オーラに身を包んだルチャリブレの金色を越えた金色の蹴りと。

 

「流派・東方不敗亜流、リントーネード・ブラストオオォォォォ!!」

 

 ぷち超級覇王電影弾改め、リントーネード・ブラストがぶつかりあう!! その激しい衝撃に、全身が悲鳴をあげ、思わず膝が折れそうになるが、気合を入れて耐え続ける。

 

 そして激しいぶつかり合いの末、ついに俺のリントーネード・ブラストが打ち勝ち、ルチャリブレが大きくのけぞった! これを逃す俺ではない!

 

「必殺、絶対勝利、エクスカリバーンっっ!!」

 

 エクスカリバーンの一撃で、ルチャリブレの頭部を切断し、俺はなんとか勝利を得たのだった。

 

* * * * *

 

 戦いを終えたミケロは会場を立ち去った。会場では、勝者であるジャンヌのファイトを褒めたたえる声がとどろいている。そんな場に水を差す彼ではなかった。そもそも、裏社会に生き、傭兵まで堕ちた自分が、あのような輝かしい場にいられ、あんな素晴らしいファイトができただけでも奇跡なのだ。

 

 そう、今の彼は、そんな奇跡を得られることができた充実感と幸福感でいっぱいだった。裏社会から足を洗って、格闘技の世界に生きるのも悪くないと思えていた。

 

 だが。

 そんな彼だからなのか。背後から迫る、彼を狙う気配に気づくことはなかった……。

 




ファンアート、そして『テテテUC』を書いてくれる方、熱烈募集中です!

* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

マーメイドガンダムとの対決を前に、ある時は浮かれ、またある時は沈む、不安定なサイ・サイシー。
なぜなら彼は、セシルという少女と恋に落ち、その恋と少林寺再興との間で揺れていたのです。

果たしてこの苦悩の末、彼はどのような結論を出すのでしょうか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第20話『勝利か恋か! 迷いのサイ・サイシー!!』

にReady Go!!
それではみなさん。7/1 12:00にまたお会いいたしましょう!


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20th Fight『恋か勝利か!? 迷いのサイ・サイシー』

 こんにちは、ストーカーです。

 さてさて、いよいよ決勝大会がはじまりました。
 好試合の連続に、会場では熱狂がおさまりません。

 因縁の相手、ミケロ・チャリオットとの対決に挑むジャンヌ!

「一緒に頑張りましょうね、私の身体」

 ですが、突然の身体の不調に苦しめられ、大苦戦!
 それでもなんとか、気合を入れて勝利をつかむことができました。

 さて、今回はどのようなファイトが見られるのでしょうか?

 今回のカードは、ネオ・チャイナ代表サイ・サイシーのドラゴンガンダム対ネオ・デンマーク代表ハンス・ホルガーのマーメイドガンダム。

 それではガンダムファイト、Ready Go!!



 あの不調もどうにか回復し、とりあえずは元の健康体に戻った俺は、リハビリというわけではないが、ウォン一味のたくらみを探る意味もこめて、ネオ・ホンコンの市街地を歩いていた。

 

 ガンダムファイト決勝大会が開かれているとあって、街はどこもにぎわい、活気に満ち溢れている。ネオ・ホンコン自体が輝いているかのようだ。その一方で、ガンダムファイトの弊害や、人類の営みで、他の地域が荒れ果て、傷ついているのだが。

 

 それに、このネオ・ホンコン自体も、やはりガンダムファイトでところどころ荒れ果て、そこに貧しい人々がスラムを作って住んでいる。その貧しさが、傷つき、荒れ果てていく地球を表しているかのようだ。

 しかも、そんな中でも、ウォンは地球圏をわが物にする陰謀を企てている。人類の営みやガンダムファイトによる荒廃もさることながら、奴の陰謀で地球が傷つくことは許してはならない! 俺がそう決意を新たにしていると……。

 

「ん?」

 

 向こうの交差点を、二人の若者が歩いていくのが見えた。あれは……ネオ・チャイナのサイ・サイシーじゃないか? ということはもう一人は、セシルって女の子だろう。これからデートだろうか。

 

 本当に若くてうらやましい。いや、俺も若いんだが、やっぱり中身は男だし、それに俺には、地球を救い、師匠の悲劇を回避するという俺的使命がある。恋はまだまだ後でいい。最悪、恋がないまま人生終わってもかまわない。

 

 さて、そうして暖かく見守っている俺だが、やはり一抹の不安を感じずにはいられなかった。確か原作では、恋か勝負かに迷って……。

 

 見てみると、いっけん楽しそうにしていながらも、やはり時折迷いを感じさせる陰りのある表情を浮かべていた。これはやはり……。

 

 師匠に相談してみるか。

 

* * * * *

 

 そしてある日、サイ・サイシーサイドから俺たちに依頼が来た。「互いの立場抜きで、練習試合を頼みたい」とのことだ。当然、断る理由もないので、引き受けることにした。考えてることもあるし。

 

 ということで、さっそく行ってみることにした。

 

「おー、待ってたぜ、アネキ! ……あれ、マスター・アジアのおっちゃん?」

「うむ。ジャンヌからの頼みでな。今回はわしが、お主の相手をすることになった」

 

 そう、今回、思うところあって、師匠にサイ・サイシーの稽古の相手をお願いしたのだ。それを知って、彼の付き人、恵雲、瑞山は感慨深い様子。

 

「おぉ……」

「武術の極みともいうべき、流派・東方不敗……」

「その創始者である東方不敗・マスターアジアに稽古をつけてもらえるとは……」

「なんたる武道家の誉れ!」

「きっと、サイ・サイシーも、得るものが多いであろう!」

「「ぜひお願いいたす!」」

 

 その二人の言葉に、師匠が大きくうなずく。

 

「よかろう。では、さっそくはじめるとしようか」

 

 そう言うと、師匠はサイ・サイシーに向かい合って構えた。一方のサイ・サイシーも構えをとる。そして。

 

「いくぞぉ!」

「おう!」

 

* * * * *

 

 かくして、師匠とサイ・サイシーの稽古試合が始まった。

 

「せやっ!」

 

 師匠の突きを、ジャンプでかわし、さらにその拳に飛び乗り、それを踏み台にしてさらにジャンプ! そして空中から急襲! 師匠は迎撃しようとするも、次の瞬間にはサイ・サイシーの姿は既に宙から消えていた。そして次の瞬間には。

 

「ここだいっ!」

 

 なんと、師匠の足元に現れていた。そして足払いを放つ! だがさすが師匠。その足払いをかわして蹴りを放つ! と思いきや、すかさず続けて後方に肘打ちを放った!

 

「うわっと!?」

「その程度で、わしを翻弄できると思っておるのか、たわけめ!」

 

 それは見事に、師匠の背後に現れていたサイ・サイシーにヒット! ガードしたものの、サイ・サイシーは大きく吹き飛ばされた。

 

 それからも、師匠とサイ・サイシーのバトルは続いた。正面からながらも激しい攻めを繰り出す師匠に対し、サイ・サイシーは硬軟使い分けるトリッキーな戦いで迎え撃つ。

 だが、観戦して思ったのだが、どうもサイ・サイシーの動きに精彩がないような気がする。彼のトリッキーな動きは見事ながら、どこか雑な感じがしたのだ。表情も、いつもの闊達とした様子は、少し鳴りを潜め、迷いがあるような顔をしている。

 それを師匠も感じたのだろう。彼の蹴りを受け止め、はねのけると、くるりと背を向けた。

 

「お、おっちゃん?」

「ここまでだ。正直、がっかりしたぞ。少林寺がこの程度だとはな」

 

 その言葉に、恵雲と瑞山の二人が立ち上がる。

 

「なんと!?」

「我らの少林寺を『この程度』と言われるか?」

 

 

 場はたちまち、一触即発の雰囲気に包まれた。

 

* * * * *

 

 師匠……東方不敗・マスターアジアに、怒りを隠さずにぶつけてくる、サイ・サイシーの付き人、恵雲と瑞山。だが師匠はそれを受け止めながらも、面白くなさそうに鼻を鳴らして口を開いた。

 

「その通りよ。はっきり言ってやろうか? こんな腑抜けたガキを、再興のための跡継ぎに頂くとは、かの少林寺も落ちたものよ」

「なんと!?」

「その発言、許さぬ!」

 

 二人が戦いの構えをとる。おいおい、まさか師匠とやりあう気か?

 だが、師匠はそれでも動じることはなかった。その瞳に宿るのは、憂いと怒り。もしかして師匠は……?

 

「ならばどうする気だ?」

「無論!」

「我らが力をもってして、その発言を改めさせてもらいまする!」

「ふん、うぬらとやっても面白くはないが……まぁよい。降りかかってきた火の粉は払うのみ。かかってくるがよいわ」

「「いざ!」」

 

 かくして、師匠と恵雲、瑞山との一対二のバトルがはじまった。だが、その力の差は歴然。二人の攻撃を軽くいなし、それに倍する反撃を返す。まさに大人と子供だ。

 

 恵雲の突きを軽く左手で受け止め、動きがとまったところで鋭い突きを飛ばして吹き飛ばす。その背後から瑞山が飛び蹴りで襲い掛かるが、師匠は持っていた布を飛ばして、彼の脚にからめとって態勢を崩し、さらに引き寄せて、カウンターでパンチを放って吹き飛ばす。

 

 もうやりたい放題の師匠だが、良く見ると、確かに吹き飛び方はすごいが、師匠はあえて、相手を傷つけない打ち方をしていた。あの打ち方であれば、多少怪我こそすれど、命に関わるようなことはないだろう。

 

* * * * *

 

 そして戦うこと数時間。地面には師匠に完膚なきまでに叩きのめされた恵雲と瑞山の二人が倒れ伏していた。

 彼らを見下ろしながら、師匠はいかにも悪役というような悪い笑顔で言い放った。

 

「所詮、この程度か。少林寺など、我が流派の足元にも及ばぬわ」

「ぐぬぬ……その言葉、取り消されよ……」

「取り消すも何も、これが真実よ。女と再興の二つで迷う小童を再興の旗頭に戴いてる時点で、少林寺は終わっておるのだ」

 

 そして、邪悪な目つきでサイ・サイシーをにらみつける。それにしてもこの師匠、ノリノリである。

 

「再興のために進むもよし、再興を捨てて女に走ることも、武道家としては許せぬが、選んだ選択ならばそれもよし。だが、どちらも選ぶことができず、迷える小童など、ただの坊主も同然。こんなガキを好きになるなど、どんな女かは知らぬが、よほど愚かな女であろうな」

「……! 今の言葉……取り消しやがれええぇぇぇ!!」

 

 師匠の言葉に激昂したサイ・サイシーが師匠に飛び掛かり、飛び蹴りを放った! 師匠はそれを軽く腕で防御するが、かすかにその顔がゆがむ。

 

「むぅ、少しは魂が入ったか。お主に気合を入れさせるとは、その娘、ただのアバズレではないようだな。だが、道に迷っている限り、結局は同じこと。つかみとれることは何一つない」

「うるせぇ! 俺は欲張りなんでな! 少林寺の再興もセシルとの恋も、どちらもつかんでみせる!!」

「なに? ふふふ……はっはっはっ!!」

 

 そのサイ・サイシーの答えを聞いた師匠は戦う構えを解き、大声をあげて愉快そうに笑った。その様子からは、先ほどまでの邪悪さは感じられない。いつも通りの師匠だ。

 

「選ぶことなく、両方ともつかみ取るとな。痛快な道を選んだものよ。だがその顔つき、それなら問題はなかろう。お主のその挑戦がどのような結果になるか、高みの見物とさせてもらうぞ」

「へっ、言いやがれ。今度戦う時には、恵雲と瑞山をいたぶってくれた借り、一杯返させてもらうからな!」

「ふふ、楽しみに待っていよう」

 

 そう言って、師匠は俺と合流し、去っていった。

 

* * * * *

 

 そして、サイ・サイシーの緒戦がやってきた。相手は原作通りのネオ・デンマークのマーメイドガンダム。

 

 決勝用の新型、ガンダム・ダブルドラゴンを駆るサイ・サイシーの動きは、稽古試合までにあった迷いは感じられず、どんな刃物よりも鋭利な鋭さと激しさが感じられた。やはり、師匠との戦いで答えを導いたのが大きいのだろう。

 

 だが、それでもやはりマーメイドガンダムは強敵。そのサイ・サイシーの実力をもってしても、苦戦は免れ得なかった。

 

『ちっ、なかなかやるじゃねぇか……。このままじゃやばいな……。なら、一か八か、勝負といくか!』

 

 そう叫ぶと、ガンダム・ダブルドラゴンは高く飛び上がった! 全身が、蝶の形を形作る。もしや……?

 

 それを見て、恵雲と瑞山の二人が立ち上がる。血相を変えて。

 

「その技は……!」

「いかん!」

「その技は、少林寺の秘伝、真・流星胡蝶剣!」

「我が少林寺に伝わる奥義にして、使った者の命を奪うという非情なる技!」

「「いかんぞ、サイ・サイシー! その技だけは!!」」

 

 やはりか……。だが、サイ・サイシーは、勝気に答える。

 

『心配すんな! 俺は欲張りな男だからな! 優勝して再興をつかみ取り、セシルとの恋もつかむまで、死んだりしやしねぇよ!』

「「サイ・サイシー!!」」

『まぁ、黙ってみてな。いくぜ!!』

 

 そしてダブルドラゴンは、炎を超え、光の蝶へと変化した!

 

『喰らえ! 極・流星胡蝶剣ーーーーーーーーー!!』

 

 ガンダム・ダブルドラゴンが変化した閃光の蝶は周辺に展開した炎の蝶たちとともに、怒涛の勢いでマーメイドガンダムに向かって突進していく!

 そして激突!! リングは爆炎に包まれた!!

 

* * * * *

 

 あの戦いの後。俺と師匠はネオ・ホンコンの街角を歩いている最中、サイ・サイシーとセシルの二人が談笑しているところを目撃した。

 あ、サイ・サイシーが調子のいいことを言ってるところに、恵雲と瑞山の二人がやってきて、彼の頭をこづいた。

 

 その様子を見て、師匠が微笑む。

 

「まさか、本当に両方ともつかみ取るとはの。大した男よ」

「そうですね。でもそれも、師匠のおかげだと思います。本当にありがとうございました。そして、憎まれ役を任せてしまってすみません」

「謝る必要はない。道に迷う武道家を導くのも、我ら流派・東方不敗の者の役目。それに、悪役を演じるのも面白かったしな」

 

 ん? ということはもしかして、原作の新宿編からギアナ編で師匠が小物の悪役をやってたのも、もしかしてノリノリ……?

 俺の脳裏にそんな疑問が浮かんだところで、師匠はキッと鋭く俺をにらみつけてきた。どうやら見抜かれたらしい。

 

「ジャンヌ、お主、失礼なことを考えておらぬか?」

「い、いえいえ、そんなことはありません」

「ふん、まぁよい」

 

 そんな言葉を交わしながら、俺はネオ・チャイナの三人とセシルの様子を暖かく見守っていた―――。

 




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* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!!

ネオ・アメリカ、チボデー・クロケットの戦いが近づいてきました!
ですが、彼に逆恨みしたネオ・チャイナ高官が、あのモッチー・オオガネと手を組み、彼に陰謀を仕掛けてきたではありませんか!
果たしてチボデーは彼らの陰謀を打ち砕き、勝利をつかむことができるのでしょうか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第21話『社長の大逆襲! 危うしガンダム・マックスリボルバー!!』

にReady Go!!

それではみなさん。7/4 12:00にまたお会いいたしましょう!


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21th Fight『社長の大逆襲! 危うしガンダム・マックスリボルバー!!』

 こんにちは、ストーカーです。

 さてさて、いよいよ決勝大会がはじまりました。
 好試合の連続に、会場では熱狂がおさまりません。

 セシルと恋に落ちてしまい、恋か少林寺の再興かで迷っていたネオ・チャイナのサイ・サイシーでしたが……。

「俺は欲張りな男だからな! 優勝して再興をつかみ取り、セシルとの恋もつかむまで、死んだりしやしねぇよ!」

 東方不敗・マスターアジアの喝で迷いを振り切り、奥義、真・流星胡蝶拳を超える技、極・流星胡蝶拳に目覚め、勝利を収めることができました。

 さて、今回はどのようなファイトが見られるのでしょうか?

 今回のカードは、ネオ・アメリカ代表チボデー・クロケットのガンダム・マックスリボルバー対、なんとあのオーガネ・モッチーの社長ガンダムMk-Ⅱ(マークツー)! 果たしてどんなファイトになるのでしょうか!?

 それではガンダムファイト、Ready Go!!



 ネオ・ホンコンのスラム街のその片隅。そこに、みずぼらしい男がさまよっていた。その姿を見た者は、誰もこの男がかつては世界有数の大富豪だとは思うまい。

 

「おのれ……おのれ、ジャンヌ・エスプレッソ。あの娘がいなければ、わしがこんなことになることもなかったのに……!」

 

 男の名はモッチー・オーガネ。先述の通り、世界有数の大富豪で、とある島を、以前の持ち主を暗殺して手に入れ、リゾート地にしていた男だ。だが、TS転生者ガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソと、リゾート開発を阻止していたカンちゃんを共倒れさせようと陰謀を巡らせていたのが運のつき。一人と一匹の逆襲を受け、今ではこんな姿に。大金持ちから大貧民へ大転落である。

 自業自得ではあるが、そんなことは当人は考えない。彼の頭の中は、自分をこんな境遇に陥れた、ジャンヌへの復讐心でいっぱいであった。

 

 そのモッチー・オーガネの向こう側から、一人の怪しそうな中国人がやってきた。

 

「お前サンも、ジャンヌ・エスプレッソに恨みがあるアルか? 実は私も、彼女とチボデー・クロケットに恨みがあるアルよ。よかったら、手を貸してやってもいいアルよ?」

 

* * * * *

 

 中国人のアジトで、たらふく食事をごちそうになったモッチーは一息ついた。

 

「ありがとう。こんなおいしいごはんを食べたのは久しぶりだ。しかし、まさかネオ・チャイナの高官のあなたが、マフィアのボスになっていたとは……リ・エイケツ氏」

「いやいや、ただの乞食からここまで這い上がるのは大変だったアルよ。ジャンヌ・エスプレッソとチボデー・クロケットがいなければ、私がネオ・チャイナ政府から切り捨てられて、あんな苦労をすることもなかったのにアル!」

 

 そう吐き捨てて、元ネオ・チャイナ高官ことリ・エイケツは飲んでいたビールのジョッキをテーブルに叩きつけた。その衝撃で、皿は大きく揺れる。

 

 彼が言う通り、リ・エイケツは、ネオ・ケニア担当の高官だった。その任務は、ネオ・チャイナとネオ・ケニアの密約を成功させ、ネオ・ケニアのディマリウム鉱石採掘の利権を確保すること。彼の策謀によってその任務は八割ほど達成できていた。さらに、ネオ・ケニアのコンタ・ン・ドゥールを傭兵にすることもできていたのである。この任務の成功、そして自らの栄達は目前まで迫っていたのだ。

 

 それがあの一件で一気に崩れた。チボデーとジャンヌに陰謀を暴かれ、さらにこんな時のために傭兵にしていたコンタ・ン・ドゥールを倒され、挙句の果てには、ガンダムファイト監査委員会に、これまでの策謀で行ってきた不正を突き止められた。

 彼は、ネオ・チャイナ政府が圧力をかけて、この事件をもみ消すことを期待したが、逆にネオ・チャイナ政府は彼を切り捨て、エイケツは哀れ投獄されることになってしまったのである。

 

 その後は、語るも涙、聞くも涙の物語。色々手を尽くして脱獄し、ネオ・ホンコンに流れ着き、一人のごろつきからその才覚を活かしてそこそこの規模のマフィアのボスにまで成り上がることができたのだった。

 

 だが、そこまでに成り上がってもなお、リ・エイケツの心には、自分を一時はごろつきの身に叩き落したジャンヌとチボデーに対する憎しみに満ちていたのである。自業自得だろうというツッコミは、彼の心には届くことはなかった。

 

「さて。モッチー氏はMS(モビルスーツ)操縦の心得があると聞いたアル。そこで、モッチー氏さえよければ、ガンダムファイトへの参加の権利と、そのためのMF(モビルファイター)を用意してもいいアルよ。それで勝ち進み、あの小娘をぶちのめせばいいアル」

「おぉ、本当か! それでそちらからの条件は?」

「物分かりがよくて助かるアル。こちらからの条件は、モッチー氏の緒戦にて、対戦相手のチボデー・クロケットをぶちのめすことアル。もちろん、そのためのサポートもするアルし、ネオ・ホンコンとのパイプを活かして、チボデーと対戦できるようにカードを組むアルよ」

「わかった! あなたの仇敵であるチボデー・クロケット、そしてわしのにっくき相手であるジャンヌ、二人ともぶち倒してやろうではないか!」

 

 こうして、まさかのこの二人のコラボ……もとい結託がなされたのであった!

 

* * * * *

 

 俺……ジャンヌ・エスプレッソは、ネオ・ホンコンのスラム街を歩いていた。この大会の裏で、ウォンが企てているかもしれない陰謀を探るためだ。

 

 だが、まだ企ててはいないのか、手がかりは得られなかった。

 そして、その日の調査を終えた俺が帰途についていると……?

 

「ん、あれは……?」

 

 複数の黒服の男に囲まれている、一人のファイターらしき男……あれは、チボデーじゃないか?

 何かただ事ではないものを感じた俺は、黒服たちに気づかれないように、そっちの方に接近していった。

 

* * * * *

 

「Hey! あんたら、どいつからの差し金だい? 俺へのサインだったら、事務所を通してくれないと困るぜ」

「問答無用!」

 

 チボデーの軽口にこたえることなく、黒服たちは彼に襲い掛かった!

 男たちは、ある者は鎖鎌で。またある者はナイフで。またある者は徒手空拳でチボデーに襲い掛かるが、やはりチボデーのほうが上手であった。

 

 鎖鎌をはねのけ、その隙に懐に飛び込み、パンチを叩きこむ! ナイフで襲い掛かってきた男をかわし、膝蹴りをみぞおちに叩き込む。中国拳法をガードし、隙をついてパンチで吹き飛ばす!

 

 十数人もいた男たちは、一人、また一人と数を減らし、残り数人となっていた。その一人が、物陰で銃を抜く。

 

「ちきしょう……。だが奴も、銃による不意打ちには……」

 

 そうつぶやく彼は、背後から近づく少女騎士に気づくことはなかった。

 

* * * * *

 

「とりゃっ!!」

「うがぁ!!」

 

 チボデー渾身のストレートがさく裂し、男が倒れこむ。そしてそれより遅れて、別の人が倒れる音が響く。

 

 彼が音の方を向くと、ちょうどジャンヌが銃を持った男を倒したところだった。

 

「さすがですね、チボデー・クロケット。あれだけの数の敵を倒すなんて。私の助けはいらなかったかもしれませんね」

 

 ジャンヌにそう言われて、チボデーは表情を緩めて返した。

 

「いや、そんなことはないさ。そいつには気づかなかったからな。本当に助かった」

「ならよかったです」

 

 そう言われて、ジャンヌも微笑む。そこに。

 

「くくく……。そう微笑んでいられるのも今のうちだ」

 

 ジャンヌに打ち倒された黒服が、そう苦しそうに言葉を紡いだ。それにチボデーがいぶかし気な視線を向ける。

 

「なんだと?」

「お前『たち』を襲ったのが俺たちだけだと思うか? 今頃は他の奴らが……ぐふ」

 

 そう言い残して、黒服は血を吐いて気を失った。その言葉を聞いたチボデーの表情がたちまち変わる。

 

「まさか、ギャルズたちにもこいつらの仲間が!? なんてこった!」

「急ぎましょう、チボデー!」

「おう!」

 

 そして、ネオ・アメリカのハンガーへと、二人は走っていった。

 

* * * * *

 

 チボデーと俺……ジャンヌの二人がハンガーにたどり着くと、黒服の言ったとおりであった。

 

 チボデーの乗る決勝用の新型、ガンダム・マックスリボルバーは無事だったが、コンピュータ室は荒らされ、チボデー・ギャルズの五人が倒れ伏している。

 

「これは……おい、しっかりしろ!」

「大丈夫です。当身で気絶させられているだけのようですね」

 

 ギャルズの一人、ジャネットを抱き起して声をかけるチボデー。一方の俺は、キャスに駆け寄り、様子を見ていた。

 

 そうしているうちに、ジャネットが目を覚ましたようだ。

 

「あ、チボデー……」

「よかった。いったいどうしたんだ!?」

「黒服が……怪しい黒服の男たちがここに侵入してきて……あっ!」

 

 そこでジャネットは重大なことを思い出したように飛び起きた。

 

「おい、無理しちゃダメだ。どうしたんだよ?」

「あの男たち……あの男たちが、PWシステムのシステムディスクを奪っていったの! システムのインストール前だったから、早く取り返さないと」

「なんだって……!?」

 

 そのジャネットの言葉を聞いた、チボデーの目が大きく見開かれる。よほど重大なことのようだ。聞いてみることにする。

 

「PWシステム?」

「えぇ……。マックスリボルバーのスーパーモード、『ロッキーモード』を起動させるためのシステムなの」

「マックスリボルバーの装甲をパージし、さらにジェネレーターをフル出力稼働させて、通常の数倍のパワーとスピードを発揮させるマックスリボルバーの切り札だ。あれがないと決勝はきついことになる……」

 

 確か、原作『超級!』でのマックスリボルバーの強化モードは『減量モード』だったが、それをさらにパワーアップした感じか。そんなすごいモードを用意していたとは。いや、今はそんなことを言ってる場合ではないな。

 

「早く取り返しに行かなくちゃな……!」

「待って。チボデーは、マックスリボルバーの調整があるでしょ? チボデーの試合まで残り一日。取り返しに行って、調整して……では間に合わないわ」

「だが……」

 

 苦渋の表情を浮かべるチボデーに、ジャネットが口を開く。その近くには、残りのギャルズも集まってきていた。

 

「私たちがディスクを取り返しに行くわ。黒服の一人に、かろうじて発信機をつけることはできたから。チボデーは調整に専念して」

「しかし、お前たちをそんな危険な目にあわせるわけには……」

 

 うーん、ここは俺の出番のようだな。

 

「それでは、私も、彼女たちと一緒に行きます。そうすれば、取り返せる可能性も高くなるでしょう」

「ジャンヌ……いいのか?」

「えぇ」

 

 ここまでかかわった以上、見過ごすわけにはいかないしな。

 

* * * * *

 

 そして俺とチボデー・ギャルズがやってきたのは、スラム街のさらに片隅にある廃ビルだった。ここが、奴らのアジトらしい。

 

 入口には二人の守衛がいたが、俺が気づかれずに忍び寄って無力化した。そんな俺を見て、ギャルズの一人、シャリーが声をかけてきた。

 

「さすがね。あの二人、結構強そうだったのに、いとも簡単に……」

「ありがとうございます。これでもファイターですから……」

 

 ファイターだからって、隠密に優れてるわけでもないんだがな。俺が優れてるのは、ファイターとしての技術以上に、この体がDG(デビルガンダム)細胞でできていることも大きいのかもしれない。多分。

 

 そして俺たちは薄暗い通路を進んでいく。そこに!

 

「ねぇねぇ、このボタン、なんだろう?」

 

 バニーが壁にあるボタンに気が付いたようだ。いかにも怪しい……。

 これは押してはいけないと、ボタンのまとっている空気がそう警告しているような気がするぞ。それに気が付いたのか。

 

「ちょっと、バニー、余計なことはしないほうが……」

「ぽちっとな」

 

 キャスが止めることなく、バニーはそのボタンを押してしまった! すると。

 

 ガッシャーン!!

 

 やっぱりというべきか、突然上から鉄格子が落ちてきて、バニーとキャスの二人を閉じ込めてしまった!

 なんというパターンな……。というか、どうして廃ビルにこんなものが仕掛けてあるんだよ。

 

「もう! だから余計なことはするな、と言ったのに!」

「ご、ごめんなさい……」

 

 俺たちは二人の閉じ込められた檻に駆け寄るも、それとほぼ同時にジリリリリとアラームが鳴り響いた!

 檻そのものはとても頑丈そうで重そうで、動かすことはできなさそうだ。

 

 さらに悪いことに、出口のほうから男たちがやってきた! どうするべきか……。

 

 そこで、キャスが懐から拳銃を取り出して構えた。

 

「ここは私たちが食い止めるわ。だから、三人は先に行って!」

「でも……」

 

 ためらうジャネットに、キャスが続ける。

 

「大丈夫。そう簡単にやられはしないわ。このミッションは、ディスクを取り戻すことが大切。さぁ!」

「わ、わかったわ!」

 

 そして俺たちは鉄格子の中から黒服たちに応戦する二人を残して先に進んだ。

 

* * * * *

 

 そしてさらに進むと……。勘というべきか、足元に違和感を感じた。すぐさま警告する。

 

「いけない、離れて!」

「え?」

 

 ガコンッ!!

 突然、足元に落とし穴が開いた。俺はなんとか飛びのけたが、俺の隣を歩いていたジャネットがその餌食となってしまった。

 すぐに駆け寄る。穴はそれほど深くはなさそうだが、簡単に這い上がれるほど浅くもないようだ。だから、どうして廃ビルにこんなものがあるんだよ。

 

「私のことは気にしないで! シャリーとジャンヌさんは先に進んで!」

「ジャネット……」

「大丈夫! 必ず這い上がって追いかけるから!」

 

 あの、ジャネット、それは死亡フラグ……。それはともかく、しばらく見つめあうシャリーとジャネット。そして。

 

「わかったわ! 必ず、ディスクを取り戻して、チボデーに勝利を与えてみせるわ! ジャネット、かなり追いついてきてね!」

「えぇ!」

 

 そして俺たちは、落とし穴に堕ちたジャネットを残して、さらに先に進んでいった。

 

* * * * *

 

 そしてなんとか奥までたどり着いた俺とジャネットだが、そこはまさに窮地だった!

 奥にあるホールには、あの男と、たくさんの黒服たちが待ち構えていたのだ。

 

「まさかあなたがディスク強奪の黒幕だったとは……。元ネオ・チャイナ高官!」

「その通りアルよ。よくここまで来たアルな。でも、それもこれで終わりアル。さすがにこの数、お前たちでは勝てないアルね」

「くっ……」

 

 周囲から、銃を構える音が鳴り響く。

 

「私も、お前には恨みがあるアルからね。モッチーにはすまんが、ここで恨みを晴らさせてもらうアルよ」

 

 だがその時!

 

「ふふふ……だが、そううまくいくかな?」

「アル!?」

 

 その声とともに、ホールの一部が爆発し、黒服たちの一部が吹き飛ばされた。

 

「ななな……アル。ど、どこアルか!?」

「ここよ。この盲目の、中国の恥さらしめが!」

「!?」

 

 声がしたほうを見ると、なんと、天井近くに張られた鉄骨の上。そこに声の主が立っていた。それは……!

 

「師匠!」

「東方不敗・マスターアジア……。どうして……?」

「わしも、ジャンヌと同じく、ウォンの陰謀を探っていたのでな。その過程で、まさかこのような小物の陰謀に出会うとは思わなんだぞ。そうだ。鉄格子に囚われた娘たちや、落とし穴に堕ちた娘は既に助けておいたから安心するがよい」

「ありがとうございます……師匠」

 

 俺がそう礼を述べると、師匠はうなずくと、元高官に鋭い目を向けた。

 

「さて、この小物どもを叩き潰す前に……はあっ!!」

「アルッ!?」

 

 師匠の手から布の帯が放たれると、それはたちまち高官の胸元に忍ばされていたディスクに巻き付き、するりと奪い取った! 師匠はそれを手に取ると、それをシャリーに投げ渡した。

 

「さぁ、これで後顧の憂いはないな。ジャンヌ、この場はわしに任せ、お嬢さんとともにチボデーとやらのところへ駆けつけるがよい」

「わかりました!」

「あ、ありがとうございます!」

 

 そして俺は、シャリーをガードしながら、ホールを後にした。師匠が暴れまわる音を聞きながら。

 

* * * * *

 

 さて、一方そのころ。チボデーとモッチー・オーガネのファイトははじまっていた!

 

 試合の内容は電磁バリアー金網デスマッチ。リングを取り囲む、あらゆるものを防ぐバリアーに囲まれた中で行われるデスマッチだ。

 そのファイトで、チボデーのガンダム・マックスリボルバーは苦戦の中にいた。

 

「ほらほら、どうしたどうした! アメリカンドリームを叶えた男が情けないものだなぁ!!」

「くっ……好き勝手いいやがって!」

 

 いくら暴れても、リングの外への被害がないのをいいことに、モッチーの社長ガンダムMk-Ⅱは、全身のビームやミサイルを乱れうちしてくるのだ。ロッキーモードが発動できないマックスリボルバーはそれをかわしたり、防いだりするのが精いっぱいで、とても攻撃する余裕はない。

 

 そうしているうちに、ミサイルの一発がマックスリボルバーの胸部に直撃! 吹き飛ばされてしまう。

 

「うわぁー!!」

「どうだ、思い知ったかわしの恨みを! はっはっはっ!!」

「くそぅ……」

 

 その苦戦の様子を、汗を流しながら見つめているネオ・アメリカスタッフ一同。その彼らがいるスタッフルームに、五人の女性たちが飛び込んできた!

 

「ディスクを取り返してきたわ! インストールをはじめるわよ!」

 

* * * * *

 

「所詮、ガンダムファイトとは……!」

 

 モッチーが勝利を確信して、仁王立ちして演説をぶちまけている中、チボデーはかろうじて立ち上がった。そこに通信が入る! 待ち望んでいた通信が!

 

『チボデー、大丈夫!?』

「おぉ、シャリー! みんな! 無事だったか!」

『えぇ! ディスクを取り返してきたわ! これからマックスリボルバーのシステムにインストールする!』

「よっしゃ、任せたぜ!」

 

 そしてそれと同時に。

 

「さぁて、これでとどめだ! あの娘を倒す前の前祝いだ! ただの鉄クズとなるがいい!」

 

 そして、全身からビームやミサイルを展開! マックスリボルバーに一斉射撃(フルファイア)を放つ! たちまち、バリアーで囲まれたリング内は爆炎に包まれる!

 

「はははは! どうだファイターども! 所詮ガンダムファイターなど……」

「ガンダムファイターが……なんだって?」

「はい!?」

 

 社長ガンダムMk-Ⅱがその声に振り向くと、そこには装甲をパージし、全身を金色に輝かせたマックスリボルバーが立っていた! PWシステムのインストール、そして、ロッキーモードの起動は間一髪間に合ったのだ。

 

「これが起動できたら、もうお前など敵じゃねぇ! 今まで好き勝手やって、好き勝手に俺たちファイターを侮辱した罪、償ってもらうぜ!」

「お、おのれー!!」

 

 社長ガンダムMk-Ⅱはビームやミサイルで応戦するが、マックスリボルバーはそれを目にも留まらぬ機動でかわしつつ、モッチーに迫る!

 

「おーらららららっ!!」

「はうっへぶっごふぁうごっぐふっ!!」

 

 そして、社長ガンダムMk-Ⅱの目前まで迫ると、これまた目にもとまらぬ速さで、パンチを繰り出す。フック、ジャブ、アッパー、そしてストレート。無数のありとあらゆるパンチが、社長ガンダムMk-Ⅱに襲い掛かる!

 

 そして社長ガンダムMk-Ⅱは吹き飛ばされ、電磁ロープに叩きつけられた! それに迫るマックスリボルバーはさらにその金色のオーラを増していた! それがチボデーの怒りを如実に表していた。

 

「さぁ、とどめだ……覚悟はいいか?」

「ひ、ひぃぃぃ、許してくれええぇぇぇ!」

 

 そのモッチーは命乞いをするが、それで許してくれるようなチボデーではない。

 

「地獄の悪魔に頼むんだなああああ!!」

 

 そして、社長ガンダムMk-Ⅱに猛突進!

 

「必殺! 豪熱、マシンガンパアアアアンチッッッ!!」

 

 チボデーの豪熱・マシンガンパンチが炸裂!! 先ほどの連打をも超えるパンチが社長ガンダムMk-Ⅱを破壊していく。

 

「フィニイイイィィィィッシュッッ!!」

 

 そしてとどめのアッパーで、社長ガンダムMk-Ⅱは中のモッチーごと高く打ち上げられた! そして、天井の電磁バリアーに激突! スパークが機体を駆け巡り、哀れ、社長ガンダムMk-Ⅱはモッチーごと大爆発、砕け散って果てたのだった。

 

* * * * *

 

 ファイトの後。

 

「世話になったな、ジャンヌ・エスプレッソ。敵同士の立場であるアンタに助けられるとは複雑な気分だが」

 

 俺は、チボデーからそう礼を言われていた。なんかこそばゆいな。

 

「いえ、いいんですよ。それに、ギャルズの皆さんを助けてくれたのは師匠ですし。何より、地球を想う気持ちそのものは私たちもあなたたちも同じです」

「そうだな。でも言わせてくれ。本当にありがとう。この借りは必ず返させてもらうぜ」

「はい、その時はよろしくお願いします」

 

 そうして今回の一件は一件落着したのだった。しかし、まさかあのネオ・チャイナの高官とモッチーが裏で手を組んでいたとは。まぁでも、高官は再び獄中の人となったし、モッチーはあの大爆発で果てた。もうこんなことはないだろう。

 

 そのことに、ささやかな安堵を感じつつ、俺はネオ・アメリカのハンガーを後にしたのだった。

 




ファンアート、そして、『テテテUC』を書いてくださる方、募集中です!

* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

次なるファイトは、ウォンによって仕組まれた、新生デビルガンダム四天王の、チコ・ロドリゲスとカンちゃんのファイトでした。ですが、それを受け入れてしまうのはファイターのサガというものなのでしょうか。

そしてはじまるファイト。果たして勝利をつかむのはどちらなのでしょう? そしてそこに現れた乱入者とは!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第22話『四天王激突! ヘルトライデント対ダークホッパー!!』

にReady Go!!

それではみなさん。7/7 12:00にまたお会いいたしましょう!


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22th Fight『四天王激突! ヘルトライデント対ダークホッパー!!』

 こんにちは、ストーカーです。

 さてさて、いよいよ決勝大会がはじまりました。
 好試合の連続に、会場では熱狂がおさまりません。

 自分に恨みを持つネオ・チャイナの元高官、リ・エイケツの罠にはまったチボデー・クロケットでしたが、チボデーギャルズとジャンヌ・エスプレッソの活躍でなんとかこれを切り抜け、対決したモッチー・オーガネの社長ガンダムMk-Ⅱ(マークツー)を倒し、勝利をつかむことができました。

「地獄の悪魔に頼むんだなああぁぁぁ!!」

 さて。今回のカードはなんと、新生デビルガンダム四天王同士の対決! 共に個人資格で参加のチコ・ロドリゲス対カンちゃん。

 それでは、ガンダムファイト! Ready Go!!



「ガトリング・デススピアアアアァァァァ!!」

 

 チコ・ロドリゲスのガンダム・ヘルトライデントが繰り出す必殺技、ガトリング・デススピアーを受けて、対戦相手のガンダムは一瞬にして、ただのスクラップと化してしまった。

 

「試合終了! 勝者は個人資格での出場ホアキン・ムニスのガンダム・ヘルトライデント!!」

 

 わああああああああ!!

 

 会場を熱狂の声が包み込む。偽名を使い、個人資格で出場していたチコ・ロドリゲスは、その実力で、順調に勝ち星を挙げていた。

 

 そしてもう一匹も……。

 

「ピョーンッ!!」

「ぐはあぁっ!!」

 

 カンちゃんのダークホッパーガンダムの蹴りが炸裂!! 相手は遠く吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 

「ノックアウト! ノックアウトです! ガルーちゃんのダークホッパーガンダムの勝利です!」

 

 わあああああ!!

 

 ガルーちゃんという偽名を名乗っているカンちゃんも、チコに負けず勝ち星を重ねていく。

 

 なお一人と一匹とも、DG(デビルガンダム)細胞によるチートは受けていない。それは俺……ジャンヌ・エスプレッソも確認済みだし、参加手続き時のメディカルチェックでも問題は確認されなかった。

 

 どちらも、純粋な実力で勝利を重ねてきたのだ。

 

* * * * *

 

 勝ち星に順調に重ねていくホアキン(チコ)とガルーちゃん(カンちゃん)を、快くない目で見ている者がいた。

 

 ネオ・ホンコン首相、ウォン・ユンファである。

 

 情報部からの知らせで、二人は、ジャンヌとマスター・アジアの仲間だということを突き留めている。そんな彼らが快勝を重ねていることは、この男には不快極まりなかったのである。

 

「これはよくありませんねぇ……。いっそ、彼らがデビルガンダムの手先であることをばらしてしまいましょうか? いえ、それは面白くありませんね。それなら……」

 

* * * * *

 

 そして、一週間後に控えた次のファイトのカードが発表された。それを見て、俺は目を剥いて驚愕してしまう。

 なぜなら、カードが発表される立体映像掲示板にはこう書かれていたからだ。

 

『ホアキン・ムニス(個人資格・ガンダム・ヘルトライデント)vsガルーちゃん(個人資格・ダークホッパーガンダム)』

 

 なんと、我が新生デビルガンダム四天王の二人が対決することになってしまったのだ! いつかはあるかと思っていたのに、こんなに早く。

 

 これは十中八九、ウォンの仕業だろう。カードを決める権限を持つのは彼しかいないからな。

 野望の邪魔をしてきた俺たちへの当てつけか。それとも、俺たち四天王の仲を引き裂こうという意図か、あるいは……そのファイトの中で、四天王のうち一人でもいなくなればいいという腹積もりか。

 

 俺がそんなことを考えている横で、チコもカンちゃんも、不敵な笑みを浮かべている。

 

「カンちゃんとファイトか。彼とは戦ってみたいと思っていたんだ……面白い」

「アァ。カンチャンモオ前と戦ウノ、楽シミ」

「二人とも、仲間と戦うのに抵抗は感じないんですか? 相手を倒す……最悪の場合死なせることになるかもしれないのに」

 

 俺がそう戸惑いながら聞くと、二人(一人と一匹)とも、愚問とでも言いたげにうなずいた。

 

「あぁ。そのことにためらいを感じないといえばウソになるが、これまで共に戦ってきた相手と拳を交えるのが楽しみでないと言っても嘘になる。なぜなら俺たちは……」

「ガンダムファイターダカラナ!」

 

 そして二人とも、俺に向けて拳を突き出してきた。本当に二人とも馬鹿……格闘馬鹿だ。その馬鹿さがまばゆくて、涙がにじんでくる。なぜなら俺も、その馬鹿の一人だから。

 

 だから俺には二人のファイトを止めることはできない。俺にできることは、二人が無駄に命を失うことがないよう、できることをするだけ。そして、二人が悔いのないファイトができることを祈ることだけだ。

 

* * * * *

 

 そしてファイトの日がやってきた!

 

 リングには、既にホアキン・ムニスことチコのガンダム・ヘルトライデントと、ガルーちゃんことカンちゃんのダークホッパーガンダムがスタンバイして向かいあっている。二機とも、気合に満ち満ちていて、いつでもはじめられる、という感じだ。

 

 その様子を、俺は不安を胸に秘めながら見守っていた。このまま、何も起こらずファイトが終わればいいのだが……。

 

 そして、試合が始まる。

 

『よし、行くぞ! ガンダムファイトッ!』

『レデイィィィィゴオオオォォォォ!!』

 

 先手を取ったのはチコだ。突進し、鋭いトライデントの一撃をカンちゃんに放つ! カンちゃんのダークホッパーはそれをかわすとチコのヘルトライデントに強烈なカウンターパンチを放った!

 

 しかし、チコも伊達で四天王を名乗ってはいない。かろうじてそのパンチをかわし、ダークホッパーと激突! その機体を蹴るようにして、後方へ飛びずさった。

 

 わあああああああ!!

 

 その一瞬の攻防に、観客席の観客たちが沸く。

 

『楽シイナ、チコ!』

『あぁ。まさか俺たちがこんな観客を沸かせるファイトをさせてもらえるとは思っていなかった。これもジャンヌのおかげだな!』

『オレモ、じゃんぬニハ大感謝。サァ、続キイクゾ!』

『おう!』

 

 カンちゃんのパンチと蹴りのラッシュが、チコのヘルトライデントを襲う! チコはそれをトライデントで巧みに受けとめ、さばいていった。そして隙をつき、ダークホッパーに突進! カンちゃんはそれを紙一重でかわし、二機は再び密着に近い間合いまで近づいた。そこで!

 

『!!』

 

 何かに気づいたチコのヘルトライデントがとっさに後方にとびずさった。よく見ると、そのV字アンテナの端が折れている。何があったんだ?

 

 よく見ると、ダークホッパーガンダムの腹の部分からちょこんと、小さなカンガルー型のMF(モビルファイター)が顔を出していた。それの不意打ちをかわしたんだろう。確か、ダークホッパーの元になったジャンピングには、そんな奥の手があったと聞いたことがある。

 

『ヤルナ、チコ。カンチャンノ奥ノ手ヲカワストハ!』

『正直、驚いたし、少し危なかったけどな。だがこんなに早く終わったら、お前に申し訳ないだろう?』

『ダナ!』

 

* * * * *

 

 それからも二人のファイトは続いた。

 チコのガンダム・ヘルトライデントが放つ突きを、カンちゃんのダークホッパーが軽やかなステップでかわしながら反撃を放ち、カンちゃんのダークホッパーガンダムのラッシュを、チコが槍を自在を動きながらさばき、防いでいき、ラッシュがとまったところで反撃を返す。

 

 そのたびに観客から歓声が上がる。

 

 そして。

 

『イクゾ、チコ! カンチャンのトッテオキ!』

『おう! 俺も奥の手を出してやろう!』

 

 構えを取り、にらみ合う二機。そして、カンちゃんが先に動いた。

 

『ダークホッパー・ヘルクラッシャー!!』

 

 炎をまとったダークホッパーガンダムが、炎の矢となって、ヘルトライデントに突撃する!

 

『ヘル・バニシング・トルネード!!』

 

 チコのヘルトライデントが槍を一閃! 巨大な竜巻が生まれ、それはダークホッパーに突撃する!

 

 そして炎の矢と竜巻が激突!! だが、ダークホッパーガンダムはあえて技を解除、そのまま竜巻に呑まれた!

 しかしカンちゃんは試合を捨てたわけではなかった! その渦の回転を利用して、天高く飛び上がったのだ!!

 

『ウオオオオォォォォ!!』

『ハアアアアァァァ!!』

 

 上空からヘルトライデントに襲い掛かるダークホッパーと、そのダークホッパーを迎撃しようとするヘルトライデント。

 二機の攻撃が交差した!

 

 一瞬の沈黙。膝をついたのは、ダークホッパーガンダムだった。見ると、その頭部がヘルトライデントの三又槍の一撃で大きくえぐられている。

 

『見事ダ、チコ。カンチャンノマケ』

『……』

 

 そして湧き上がる拍手、レフェリーが上がり、勝ち名乗りをしようとしたところで……。

 爆発が起こり、ダークホッパーが吹き飛ばされた!

 

* * * * *

 

 ファイトが終わったところで、カンちゃんのダークホッパーガンダムが爆発に巻き込まれて吹き飛ばされた。

 

 よく見ると、スタジアムの上空にガンダムらしき機体が!

 

「あ、あれはいったい……?」

 

 それはGガンダムファンの俺でさえ知らないガンダムだった。師匠のマスターガンダムのように、黒いマントのような装甲をまとっているが、その形状はマスターガンダムより鋭利で、まるで、ガンダムWに出てきたデスサイズヘル(EW版)のアクティブクロークのような感じ。

 

 そして。俺でさえ知らないといったが、一つだけ見覚えがあった。それは奴の頭部。それは、ドモンのゴッドガンダムに酷似していたのだ。ただし、そのカラーは白系ではなく漆黒であったが。

 

 突然の乱入者に、観客たちは息をのみ、沈黙したまま見守っている。その中、謎のガンダムは装甲を開き、いかにも漆黒の翼をもった漆黒のゴッドガンダムのような姿をもって、ダークホッパーに襲い掛かった!

 

『滅べ……。必滅、カオシック・フィンガー……!!』

 

 謎のガンダムは、闇よりもさらに深き黒く輝く掌による一撃でもって、倒れ伏したままのダークホッパーにとどめを刺そうとした!

 

 ガシッ!!

 

 だが、それはなされなかった。ダークホッパーガンダムの前に、チコのガンダム・ヘルトライデントが割って入り、黒ゴッドガンダムの必滅カオシック・フィンガーを槍で受け止めたからだ。

 

『誰の差し金かは知らんが、同胞を倒させはしない!』

『……どうしようがかまわん。ここでお前たち二人を滅ぼすことができれば手間が省けるというもの』

『なんだと!? ……なっ!?』

 

 チコの驚いたような声。なんと、カオシック・フィンガーを受け止めていた槍の柄が、そのエネルギーの前に溶けて行ったのだ。

 槍が折れると同時に、カオシック・フィンガーの光は消えた。だがそこで黒ゴッドはすかさず蹴りを放ち、ヘルトライデントを吹き飛ばした!

 

『うぐっ!!』

『さぁ……滅べ……!』

 

 奴の手が再び黒き光を放ちだした! 今度こそとどめを刺す気だ! あのカオシック・フィンガーで。

 俺はいてもたまらず、ネオ・ノルウェーのハンガーに走り出そうとした。その時!

 

『待てっ!』

『栄光ある戦いの場に、しかも戦いを終えた奴らを始末しようと乱入してくるなんて、味な真似をしてくれるじゃないか!』

『そのような卑劣な真似、許すわけにはいきません! どうしてもというなら、正しき戦いの守護者、シャッフル同盟の一員である私たちがお相手いたしましょう』

 

 ドモンのゴッドガンダムとチボデーのガンダム・マックスリボルバー、そしてジョルジュの乗る新型・ガンダムヴェルサイユがリングの外に立っていた。

 三機と、黒ゴッドがにらみあい続ける。

 

 そして。

 

『シャッフル同盟が三機……これはこちらが不利か……。命拾いしたな』

 

 黒ゴッドのファイターはそう言うと、そのマント状の装甲を閉じ、漆黒の光の矢となって飛び去っていったのだった。

 

 しかし、奴は一体何者なんだ……? 声はボイスチェンジャーで変えられていたが、どことなくドモンに似ていた感じがするが……。

 

* * * * *

 

「カンちゃん、具合のほうはどうですか?」

「カンチャンノ体ハ、チコトノ戦イノだめーじ以外、ナントモナイ。デモ、だーくほっぱーノホウハ、アノがんだむノ攻撃デカナリノだめーじ受ケタ。シバラクハ戦エナイ」

「そうか……。でも、お前の体にもしものことがなくてよかった」

「本当ですね、ありがとうございます。ドモン、チボデー、ジョルジュ」

 

 戦いの後の、個人参加枠用のハンガー。そこで、俺、チコ、カンちゃんの三人は、ドモン、チボデー、ジョルジュの三人と言葉をかわしていた。

 俺に頭を下げられたチボデーが明るく笑って返した。

 

「いいってことよ。お嬢ちゃんには、ギャルズを助けてもらった借りがあるしな!」

「えぇ。それに、卑劣なことをする輩を放っておくわけにはいきませんから」

「その通りだ。そのような奴らを成敗し、戦いの秩序を守るのが俺たちシャッフル同盟の務め。礼には及ばん」

 

 と、そこに師匠こと、東方不敗・マスターアジアがハンガーに入ってきた。

 

「あ、師匠。どうでしたか?」

「探ってみたが、手がかりは見つからずしまいであったわ。謎の黒きガンダム……厄介な難敵が現れたものよ」

「そうですか……」

「じゃが一つだけ言えることがある。あやつは、明らかに、我ら新生デビルガンダム四天王の抹殺を狙っておった。つまりは……」

「ウォンの仕業、ということですね」

 

 俺の答えに、師匠は真剣な顔でうなずいた。

 

「その通りだ。奴の差し金という確証はないがな」

「ウォンも、俺たちの排除に本気になってきたってことか……」

「これからの戦いは厳しいものになるかもしれませんね。でも、私たちはやるべきことをやるだけです」

 

 俺がそう言ったところで、チボデーがにっと笑って返した。

 

「その意気だ! お前たちにあっけなくやられてもらったら困るぜ。お前たちを倒すのは、俺たちシャッフル同盟なんだからな!」

「えぇ。正当なる戦いをもって、私たちの理想が、あなたたちの理想より上ということを思い知らせてあげましょう!」

「ふふ、私たちも負けませんよ」

 

 そう笑顔で言葉を交わしながら、俺はこれから訪れるであろう、さらなる激しい戦いの予感が全身を駆け巡るのを感じていた。

 




感想、ファンアート募集中! それと、『テテテUC』を書いてくださる方も募集しています!

* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

ドモンに新たなるライバル出現!その名はアレンビー・ビアズリー!
無敵の戦士として育てられた彼女は、ネオ・スウェーデンの悪しき企みにより、命を削って戦うバーサーカーとなり、ドモンに襲い掛かります!

果たしてドモンの運命は!? そしてジャンヌは、彼女を救うことができるのでしょうか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第22話『暗い謀略! 危険なアレンビー!』

にReady Go!!

それではみなさん。7/10 12:00に、またお会いいたしましょう!


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23th Fight『暗い謀略! 危険なアレンビー!』

 こんにちは、ストーカーです。

 さてさて、いよいよ決勝大会がはじまりました。
 好試合の連続に、会場では熱狂がおさまりません。

 ウォンのたくらみにより対決することになってしまった、新生デビルガンダム四天王のチコとカンちゃん。
 ファイトはチコが勝利を収めましたが……。

『滅べ……。必滅、カオシック・フィンガー……!!』

 謎の黒きガンダムの襲撃により、チコも窮地に陥ります。そのピンチは、シャッフル同盟の登場により乗り切ることができたのでした。

 謎が謎を呼ぶ決勝大会。果たして、謎の黒きガンダムの正体は何なのでしょうか?
 
 さて、今回のカードは、ネオ・ジャパン代表、原作主人公のドモン・カッシュ対、ネオ・スウェーデン代表、アレンビー・ピアズリーのノーベルガンダム。

 それではガンダムファイト、Ready Go!!



「やはり、手がかりはつかめませんでしたか……」

 

 ネオ・ホンコンに片隅にある場末の酒場。そこで俺……ジャンヌ・エスプレッソたち新生デビルガンダム四天王と、ドモンたちシャッフル同盟は、師匠こと東方不敗・マスターアジアから、その後の調査の説明を受けてみた。

 

「うむ。色々探ってみたが、あの黒いガンダムと、ウォンの奴めのつながりを示す手がかりを見つけることはできなかった。あの小物め、こういうところはこざかしい」

 

 師匠はそう忌々しい口調で吐き捨てた。でも俺も同じ気持ちだ。

 もしつながりがわかれば、もっとウォンや黒いガンダムへの対処の選択肢もあっただろうに。

 

「とりあえず今のところは、黒いガンダムに警戒をするしかないということですね。気を付けましょう、チコ、カンちゃん」

 

 俺の言葉に、チコと、乗機であるダークホッパー・ガンダムの中破で決勝リーグから脱落したカンちゃんがうなずく。

 

「あぁ、もちろんだ」

「任セテオケ。シッカリト、目ヲミハラセル」

 

「ドモン、うぬらも気をつけろ。うぬらシャッフル同盟は、ウォンからすれば目障りな存在。黒いガンダムがお前たちに襲い掛からないという保証はないぞ」

「はい」

 

 ドモンはそう力強くうなずくも、何か声のどこかにかすかな弱さを感じた。そしてそれは、師匠も同じようだ。

 

「ドモン。お主、まだ答えを見つけられていないようだな?」

「はい……。情けない話ですが」

 

 ドモンが、まるで叱られた子供のようにそう答えると、師匠は苦笑を浮かべて言った。

 

「それでよい。答えとはそのようなもの。そう簡単に答えを見出すことができれば、誰も苦労などせん。とことんまで悩むのだ。悩み、苦しみ、あがき、そして見出したものこそ、お主にとっては真実で大切なものとなる」

「はい……」

 

 そこで師匠は、ふと再び苦笑をもらした。

 

「ふふ、今や袂を分かちあい敵となったわしが、お主に説教するのもおかしな話だがな」

「そんなことはありません。例え敵味方に別れても、師匠は師匠です」

「ふ……ありがとうよ」

 

 そんなドモンと師匠の様子には、何か敵味方を超えた、いや、親子の絆すらも超えた何かを感じた。

 これが本当の絆という奴かな。とてもうらやましい。そう思った。

 

* * * * *

 

 その次の日、俺はドモンに頼まれて、組手をしていた。

 

 デビルガンダムの側の俺たちと、そのデビルガンダムと敵対する側のドモンたち。その俺たちが協力しあっていいのかと思ったが、

アナザー・デビルガンダムを作り出した黒幕と、謎の黒いガンダムという共通の敵が現れた現在、敵対しあってもいられない、ということだろう。

 今は協力しあうが、雌雄を決する時が来たら、その時はそれまでの縁は抜きにして全力で戦う。それでいいのかもしれない。

 

 さて、俺とドモンは、ひとしきり組手を行ったが、やはり彼の拳にはわずかとは言えないほどの迷いが感じられた。

 

「ドモン、やはり迷いがあるのですね?」

「やっぱり感じたか。あぁ、こればかりはどうにもならん。ゴッドスラッシュでも倒せないような強敵と相まみえる前に、迷いを打ち消し、完全な明鏡止水を会得したいんだが……くそっ」

「焦ってもどうにもなりませんよドモン。ここは……」

 

 と、そこで。

 

「一緒にゲーセンで弾けようよ!」

「そうそう、一緒にゲーセンで弾けるのが一番……え!?」

 

 どこかで聞いたような凛々しくも透き通るような声。その声に俺とドモンが振り向くと、そこには、水色の髪をした、ハイティーンとおぼしき少女がいた。もちろん、俺は彼女のことを良く知っている。

 

「えぇと、あんたは……」

「ネオ・スウェーデン代表、アレンビー・ピアズリー!!」

「そうだよ! 良く知ってるね!」

「……よく知ってるな」

 

 ぎくぅっ!!

 ドモンにいぶかし気な視線を送られ、俺は思わず慌ててしまう。

 

「い、いえ、ネオ・ノルウェーとネオ・スウェーデンは隣同士ですし、グリペンも好きですし」

 

 いかん、自分でも何を言ってるかわからなくなってきた。

 

「しかし、ネオ・スウェーデンといえば、俺の次の対戦相手じゃないか。そのお前がなぜここに?」

「うん。だから、その相手がどんな人なのかと気になってさ。こうして来てみたってわけ。あとそれと、本番前の前哨戦も兼ねて……ってね」

「手合わせか……いいだろう」

 

 なんか意気投合したっぽい。ドモンとアレンビーは連れ立って、ゲーセンへと歩いていく。その後に俺も続いた。

 

* * * * *

 

「たああぁぁぁぁぁ!」

「うおおぉぉぉぉ!」

 

 ドモンとアレンビーの叫びとともに、ゲームスクリーン上の二人のキャラが突進する。そして激突!

 

『YOU WIN!!』

 

 画面に表示される結果を表す文字。倒れ伏したのはドモンのキャラだった。

 そしてそれと同時に画面がブラックアウトし、筐体から白煙が噴き出す。二人のあまりの動きに、マシンがオーバーヒートを起こしたのだ。

 

「むぅ……これは……」

「……逃げよっか?」

「……待ちなさい、二人とも」

 

 逃げ出そうとする二人の肩を、俺は『がっしりと』つかんだ。それでいいのか、ネオ・ジャパン代表とネオ・スウェーデン代表。

 

* * * * *

 

「大変な目にあったー」

「自業自得でしょうが。少しは反省してください」

 

 夕方。ゲーセンの店員さんに絞られた俺たちは、公園で休憩していた。(なお、弁償代は、それぞれの国の委員会に頼んで出してもらった)

 そこで俺にたしなめられたアレンビーが、バツが悪そうに笑う。

 

「えへへ……でも、こんなに遊んだのは久しぶりだよ! 本当にありがとうね!」

「いや、こっちもいい気晴らしになった」

「右に同じくです」

「いやいや、礼を言わなきゃいけないのは私のほうだよ! 二人のおかげで、明日ははじめて、心から楽しんでファイトを楽しめると思う」

 

 その彼女からは、出会った時に感じられた、やさぐれていた感じはなくなっていた。

 そういえばそうだった。彼女は幼いころから軍の施設に引き取られ、ファイターとしての英才教育を受けていたのだった。しかし、軍の栄光のための道具として扱われているのが嫌で、そのせいでやさぐれていたんだった。でも、原作と同じように俺たちとの触れ合いでそれが解消できてよかった。

 

「それならよかった。明日はお互い、悔いが残らないように頑張ろう」

「うん!」

 

 そしてがっちり握手を交わして俺たちは別れた。

 

 そして試合の日がやってくる!

 

* * * * *

 

 そしてその翌日。ネオ・ジャパン代表ドモン・カッシュと、ネオ・スウェーデン代表アレンビー・ピアズリーのファイトの日。

 

 リングの上で、ドモンのゴッド・ガンダムと、アレンビーのノーベル・ガンダムは向かい合っていた。

 

『それじゃ行くよ、ドモン! 今日は正々堂々ファイトしようね!』

『おう、もちろんだ! ガンダムファイトッッ!』

『『レデイィィィィ・ゴオオオォォォォ!!』』

 

 かくして二人のファイトがはじまった!

 

 先手をとったのはドモン! ノーベルガンダムに対して、怒涛の突きの連打を放つ! しかし、アレンビーはそれを華麗でしなやかな攻撃でかわし続ける!

 

『はあっ!!』

『たぁーっ!』

 

 そして、最後の強烈な突きを、ノーベルガンダムは華麗に跳躍してかわし……

 

『えいっ!』

 

 フラフープのようなビームリングを放った!

 

『そのような見え透いた攻撃に当たると……ぐあっ!!』

 

 ゴッド・ガンダムはそれを簡単にかわすが、背後から戻ってきたビームリングに気づくのが遅れ、直撃を受けてしまう! それで態勢が崩れたゴッド・ガンダムに追撃しようと、アレンビーが突進するが……。

 

『甘いぞっ!』

『きゃっ!』

 

 態勢を崩した中で放ったゴッドのキックが、ノーベル・ガンダムに直撃! 吹き飛ばされてしまう。

 

 そして両者、態勢を立て直して仕切り直し。再び激突をはじめる。

 

 猛攻撃を仕掛けるドモンに対して、『蝶のように舞い、蜂のように刺す』という例えのように、華麗にかわしながら反撃をかわすアレンビー。二人の実力はまさに伯仲していた。

 

 そして二人の拳が激突! そのパワーの反動に二体のガンダムが大きくよろめく。だが、そのよろめきはノーベルのほうが大きく、損傷も彼女の機体のほうが大きいようだ。

 

 それでも、アレンビーは心底楽しそうに微笑んでドモンに言葉を投げかける。

 

『楽しいね、ドモン!』

『あぁ!』

 

 楽しそうな二人の雰囲気。だが、それを快く思わないものがいた。ほかならぬ、ネオ・スウェーデンの上層部である。

 

* * * * *

 

「やはり男と女……。このままではアレンビーの負けは確実だ! アレを発動しろ!」

 

 ネオ・スウェーデンのホルベイン少将は、試合の内容を見て、危機感からくる焦りから、部下のベルイマン博士にそう命じた。だが、ベルイマンはそれが何かわかっているからか、すぐさま反論する。

 

「いけません、少将! バーサーカーシステムは、ファイターへの負担が……」

 

 だが、ホルベインは聞く耳持たず、銃を抜いて、ベルイマンに突き付けた。

 

「いいからやれ。それとも、ここで死ぬか?」

 

 そう脅されては反抗することもできず、博士はついにそのシステム……バーサーカーシステムのスイッチをいれた……!

 

* * * * *

 

 そのとたん、アレンビーの動きが豹変した!

 

 それまでの優雅な動きはどこへやら。まるで野獣のような動きでもって、ドモンのゴッド・ガンダムに襲い掛かる!

 その豹変ぶりに、ドモンも戸惑いを隠せない。

 

「ど、どうしてしまったんだ、アレンビー!? うおっ!?」

 

 アレンビーの強力なパンチがゴッド・ガンダムを襲う! なんとかドモンはそれをかわすが、そこからの後ろ蹴りを受けて、吹き飛ばされてしまう!

 

「本当にどうしてしまったんだ……? あれはまるで野獣だ……!」

 

 戸惑いながらも、ドモンは未完成の明鏡止水を発動し、アレンビーの攻撃をなんとか防ぎ続ける。だが、その攻撃の激しさに、明鏡止水を発動していても、攻撃の隙を見出すことはできそうになかった。

 

「ドモオオォォォォンッッ!」

「ぐあっ!!」

 

 そこに、再び、アレンビーの蹴りが炸裂! ゴッド・ガンダムの機体が大きくよろめいた。

 

* * * * *

 

 一方、ネオ・スウェーデンのスタッフルーム。バーサーカーシステムをもってしても、いまだ倒すことのできないこの戦況に、ホルベインは博士に再び命じた。

 

「おのれ……バーサーカーシステムの出力をあげろ!」

「し、しかし、これ以上の出力アップは……」

「いいからやれ! その脳天に鉛の弾を……」

 

 そう言って、博士の頭に銃を突きつけるホルベイン。そこに。

 

「いいえ、鉛の弾を受けるのはあなたのほうです」

「なんだと!?」

 

 さすがはネオ・スウェーデンの軍人。声がすると同時に、声がしたほう……ドアに向けて銃を発射する。だが、そこには誰もいない。

 そしてその次の瞬間には、博士を気絶させた謎の人影が、少将の背後にとりつき、彼を羽交い絞めにしていた。

 

「バーサーカーシステム、そんな非道なシステムを使うなんて、見過ごすことはできませんね」

「わ、私を殺す気か……。頼む、助けてくれ……」

「その言葉、博士とアレンビーに言うんでしたね。おさらばです」

 

 ……。

 

 そして、少将を暗殺した人影……俺ことジャンヌは、あの博士の記憶を書き換えるため、DG(デビルガンダム)細胞を植え付けた後、バーサーカーシステムのスイッチを切ると、さらにそのコンソールに手を突いた。そして数秒。

 

「……これでよし」

 

 コンソールには、『ERROR! SYSTEM IS EMERGENCY STOP』の文字が映し出されている。DG細胞をシステムに感染させ、その力でシステムを書き換え、二度とシステムを発動できないようにしたのだ。これでアレンビーも、システムの呪縛から解放されるだろう。

 

 さて、それではとんずらするとしましょうか。

 

* * * * *

 

 ノーベル・ガンダムが一瞬動きを止めた。そして、元の可憐に舞うスタイルの構えに戻った。

 アレンビーが元に戻ったということは、ドモンの目にも明らかにわかった。

 

『はぁはぁ……。心配かけてごめんね。もう元に戻ったから』

『心配などしてはいない。無理やり戦わされているお前に勝っても、嬉しくないだけだ』

『えへへ……ありがとう。それじゃ、続きをやろう!』

『おう!』

 

 そして再び、ドモンのゴッド・ガンダムと、アレンビーのノーベル・ガンダムのファイトが始まった。

 ドモンの激しい攻めに対して、アレンビーはそれを可憐にかわしながら反撃を返す。一見激しい戦いだが、先ほどまでと違い、どちらも戦いを心から楽しんでいるように見えた。

 

 そして、ビームリボンを構えたノーベル・ガンダムと、ビームソードを構えたゴッド・ガンダムが激突! そしてすれ違う。両者とも膝をついた。

 

『なかなかやるな。だが、まだまだだ!』

『そうだね。……でもごめん、私、もう限界……』

 

 アレンビーがそう言うと、ノーベル・ガンダムは、両手をついて崩れ落ちた。

 

『お、おい、アレンビー……?』

『もっと戦っていたかったけど、さっきのシステムのせいで、もう体が悲鳴をあげてて、これ以上は無理なの……。ドモンとこれ以上ファイトできないのは悔しいけど……』

 

 ノーベル・ガンダムから降参シグナルが発信され、レフェリーがアレンビーの敗北を宣言して、ファイトは終わった。

 

* * * * *

 

 そして戦いの後。

 

 ドモンとレインは、担架に乗せられたアレンビーを見守っていた。

 

「具合はどうだった?」

「うん。途中で何等かの原因でシステムがとまったおかげもあって、再起不能の一歩手前で助かったみたい……。数日ゆっくり休めば、またファイトに戻れるって」

「そうか……それはよかった」

 

 そこでアレンビーは拳を突き出した。

 

「待っててね、ドモン。必ず体を治して、またファイトに戻ってくるから。そしたらまた、一緒にファイトしようね」

「あぁ、約束だ」

 

 そして、突き出された拳に、拳をつき合わせる。そしてアレンビーは救急車に運ばれていった。

 

「アレンビーさん、元気になるといいわね……」

「……」

「ドモン?」

「……」

 

 そこでレインがドモンのほっぺたを引っ張った。

 

「な、なにをするんだレイン!?」

「なんでもない。ドモンの馬鹿!」

 

 そしてふくれて去っていくレインを、ドモンはちょっと情けなく追いかけるのであった。

 




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* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

さぁ、ジョルジュの戦いの時が近づいてきました! しかし、本来の相手とは別に、ジョルジュ打倒を志すファイターが一人!
それは、元ネオ・イングランド代表、ジョンブルガンダムのチャップマンでした。

彼はジョルジュの相手を闇討ちし、ジョルジュの主君たるマリアルイゼ姫を誘拐してまで、ジョルジュにファイトを迫るのです!
果たして、ジョルジュは、優勝したこともあるこの最強の紳士を倒すことができるのでしょうか? そして、汚い手を使ってまで、ジョルジュとのファイトを求めるチャップマンの真意とは?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第24話『騎士対紳士! チャップマン最後の挑戦!』

にReady Go!!

それではみなさん。7/13 12:00に、またお会いいたしましょう!


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24th Fight『騎士対紳士! チャップマン最後の挑戦』

 こんにちは、ストーカーです。

 さてさて、いよいよ決勝大会がはじまりました。
 好試合の連続に、会場では熱狂がおさまりません。

 ドモンの次の相手は、街中で出会った少女、ネオ・スウェーデン代表のアレンビー・ビアスリーでした。
 街中で意気投合した彼女と、充実したファイトを行うドモンでしたが、そのさなか、アレンビーは心ならず、上層部によってバーサーカーにされてしまいます。

 勝利に目のくらんだ上層部によって、命の危機にさらされようとしていた彼女でしたが、ジャンヌによってそれは未然に防がれ、彼女はファイターとしての生命を失わずに済んだのでした。

 さて、今回のカードは、ネオ・フランス代表ジョルジュ・ド・サンド対ネオ・イングランド代表のジェントル・チャップマン。

 因縁の英仏対決。勝利はどちらにもたらされるのでしょうか?

 それではガンダムファイト、Ready Go!!



「はぁはぁ……」

 

 荒い息を突きながら、そのガンダムファイターは、敵のガンダムとにらみ合っていた。その彼の名は、ラセツ・ダガッツ。ネオシンガポール代表のガンダムファイターである。

 彼は今、窮地にあった。周囲は霧に包まれ、どこから撃ってくるかわからない攻撃に苦しめられていたのだ。ラセツは決して弱いファイターではなく、むしろ強豪に分類されるファイターである。だが、その彼をしても、この謎の敵への打開策は見いだせずにいた。

 

 また周囲から銃弾が放たれる! ラセツはそれをファイターならではの勘で、なんとか回避する。

 

 しかし、例えかわすことができても、敵の位置をつかんで反撃することができなくてはどうにもならない。

 

「くそっ、なんで俺様がこんな目に……!」

 

 こんなはずではなかったのだ。彼はただ、小生意気そうな参加者をちょいと痛めつけようと、獲物を探していただけだったのだ。それが今は、自分が獲物になってしまっている。

 

 その時!

 

「ぐわぁ!」

 

 ラセツの左腕に激痛が走る。銃弾の一撃が、ラセツのガンダム、アシュラガンダムの左腕の一本を撃ち貫いたのだ! さらに銃音。右腕の一本を砕かれた。

 

 だがその一瞬、霧が晴れ、敵の位置が明らかになった。ラセツは決して雑魚ではない。人格に問題はあるが、それでも腕は確かなのだ。その彼の勘が告げた。敵に勝つには今しかない、と。

 

 彼のアシュラガンダムは大地を蹴り、高く跳躍した。そして、銃弾をかわし、時には右腕、左腕を破壊されながらも、なんとか敵のガンダムの目前に降り立った。

 

「ぐへへ、よくもやって……なっ!? ぐわあ!!」

 

 だが、それすらも、敵ガンダムの予測のうちだったらしい。その瞬間を狙って別方向から銃弾が放たれ、アシュラガンダムの残りの腕と右脚が破壊され、擱座してしまう。

 

 そして雲が晴れ、月明かりのもとに敵ガンダムの姿があらわになる。

 

「お、お前は……ぐああああああ!!」

 

* * * * *

 

「ジョルジュの対戦相手が、謎の敵の襲撃を受けて棄権か……。なんかおっかないねぇ」

 

 ある日のカフェテラス。そこで俺……TS転生者ガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソと、ドモン・カッシュ、チボデー・クロケット、ジョルジュ・ド・サンドは集まって、ティータイムを過ごしていた。

 そんな中、チボデーが新聞を読みながら言っているのは、昨日起こった事件。ジョルジュの次の対戦相手、ネオ・シンガポール代表のラセツが、謎の敵の襲撃を受けて重傷を負い、棄権したというニュースのことだ。

 

 そのことで、ふとある懸念を抱いた俺は、それをジョルジュに聞いてみることにした。

 

「ジョルジュは大丈夫だったのですか? ネオ・フランスに容疑がかけられそうな気が……」

 

 そう聞くと、ジョルジュは苦笑しながら答えてくれた。

 

「えぇ。私のアリバイの裏は取れましたし、疑いはすぐに晴れました。ですが……」

「ですが、なんだい?」

 

 チボデーの問いかけに、ジョルジュは真顔で答えた。

 

「ラセツが気になる証言をしたらしいんです。『霧』と『紳士なガンダム』と」

「……」

「……」

 

 ジョルジュの言葉に、俺とドモンが二人そろって顔をしかめた。その証言から、ある相手のことが思い浮かんだからだ。

 

「まさか、ネオ・イングランドのジェントル・チャップマンか? だが彼は、俺とのファイトに敗れ、そして果てたはずだが……」

 

 その通りだ。ネオ・イングランド代表のチャップマンは、サバイバル11の中でドモンと戦い、敗れ、最後は力尽き、妻であるマノンに看取られて亡くなったはずだ。原作ではそうだったが、ドモンの話からすると、こちらでも同じ顛末だったらしい。

 

 だが……。

 

「でも、もしかしたら……」

「なんです?」

「もしかしたら彼は、ウォンにフェイクDG(デビルガンダム)細胞を植え付けられて蘇ったのかもしれません」

 

 そう、原作において、一度は果てた彼だったが、ウォンにDG細胞を植え付けられ、グランドガンダムのファイターとなって再登場してきたのだ。もしかしたら、それと同じようなことがこちらでも起こっているのかもしれない。

 

「それでも、ラセツを狙う理由まではわかりませんが……」

「あれ以来、同じ事件が起こってないってことは、通り魔的な犯行ではなさそうだしなぁ……」

 

 そしてまた四人で唸る。そこに。

 

「ただいま戻ったぞ」

 

 俺たち新生デビルガンダム四天王の、師匠こと東方不敗マスター・アジア、チコ・ロドリゲス、そしてカンちゃんの三人が戻ってきた。

 

「お帰りなさい、師匠。いかがでしたか?」

「うむ。色々探ってみたが、やはり今回の通り魔事件と、ウォンの奴とをつなぐ手がかりは見つけることはできなんだ」

「そうですか……」

 

 再び考え込む、俺とチボデー、ドモン、ジョルジュ。だがそこで。

 

「じゃが、狙われているのがジョルジュの対戦相手だということで、一つだけ目星がついていることはある」

「それは?」

 

 ジョルジュの質問に答えたのは、チコとカンちゃんだ。

 

「あぁ。奴はジョルジュと戦う予定の相手を消している……つまり、お前との戦いに持ち込むのが目的ではないか、という推論が浮かんだ」

「トハイッテモ、ネラワレタノガラセツダケダカラ、ナントモイエナイガナ」

「なるほど……もし、それが当たっているとしたら……」

 

 ジョルジュの言葉に、師匠がうなずいて返した。

 

「うむ。お主の周囲にも何かアクションを起こす可能性がある。くれぐれも気を付けよ」

 

 そしてその夜、実際にそれは起ったのだ!

 

* * * * *

 

「もう! ジョルジュ、どうしてですの! どうして一緒にいてはいけないんですの!?」

「だから言ってるではありませんか。私は狙われているので、危険なのです」

 

 その翌日、トレーニングに励むジョルジュは、犬のように噛みついてくる姫、マリアルイゼの苦情に苦慮していた。

 チコ・ロドリゲスの推測が必要なら、チャップマンの目標は自分である。ならばその自分のそばにいれば、守るべき主君であるマリアルイゼにも害が及んでしまう。なので遠ざけようとしているのだが……。

 

「大丈夫ですわ。危険なんて、私の愛の前には……」

「いいかげんにしてください、マリアルイゼ様! ふざけている場合ではないのです!」

 

 そこまで言って、ジョルジュははっとなった。主君であるマリアルイゼが涙を浮かべている。

 

「私の愛を、おふざけというなんて……。ひどいわ、ジョルジュの馬鹿ーーーー!!」

 

 そして走り去ってしまう。

 

「マリアルイゼ様……」

 

 呆然とつぶやくジョルジュ。そこに。

 

「いかん、いかんぞ、ジョルジュ・ド・サンド!」

「!?」

 

 どこかで聞いたような声。彼が声をしたほうに目を向けるとそこには……。

 

 城の頂に直立したシュバルツがいた。驚きに絶句するジョルジュをよそに、シュバルツは彼を叱責する。

 

「娘の心は、何ごときにも代えがたき宝! それを『おふざけ』と切り捨てるなど、騎士としてあるまじき行い!」

「そ、それは……」

「それに、お前の護るべき主君を遠ざけて、それで主君が襲われたらどうするつもりだ! 『お前の周囲にもアクションを起こす可能性がある』という、マスター・アジアの警告を忘れたか!」

「!!」

 

 そこに。

 

「きゃーーーー!!」

 

 マリアルイゼの悲鳴が響いた。

 

「マリアルイゼ様!」

「ぬぅ、いかん。やはり私が危惧した通りになったか!」

 

 ジョルジュとシュバルツは、声のした方向に急いで走る。

 そして駆け付けた彼らが見たものは……。

 

* * * * *

 

「えーい、放しなさい、この無礼者!」

「マリアルイゼ様!」

 

 一機のガンダムに、ジョルジュの護るべき存在、マリアルイゼ姫が握られ、捕まっている、という様であった。そのガンダムは、話にも出てきた……。

 

「ジョンブル・ガンダム! チャップマン、あなたがそんな狼藉を行うとは!」

「なんとでも言うがいい。今この私の手に、お前の護るべき姫が捕まっていることを忘れるな!」

「くっ……」

 

 そして、ジョンブル・ガンダムに乗り込んだチャップマンが続ける。

 

『ジョルジュ・ド・サンド。お前に、非公式のファイトを申し込む! 今日の夜10時に、フェイクロンドン・タウンに来るのだ! もし来なかったり、変なことをしたら、この姫の命はない!』

「なんですって……? くっ……!」

 

 チャップマンがそう言ったところで、ジョンブル・ガンダムから霧が放出された。霧はたちまち辺りに満ち、白く染める。

 そして気が付いたころには、ジョンブル・ガンダムの姿はここにはなかった。

 

「なんてことだ……」

「マリアルイゼ姫が捕まった以上、彼の誘いに乗るしかあるまい。我々も、姫の身に危機が及ばぬよう手を尽くそう」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

 ジョルジュはそう礼を言ってうなずくと……。

 

「来なさい、ガンダム・ベルサイユ!!」

 

* * * * *

 

 そして、新型であるガンダム・ベルサイユに乗り込んだジョルジュは、チャップマンとのファイトに挑むため、霧に包まれたフェイク・ロンドンタウンへとやってきた。

 

「やってきましたよ! 姿を現しなさい、チャップマン!」

 

 ジョルジュの叫びにこたえるかのように、霧の奥から一機のガンダムが現れた。ジョンブル・ガンダムだ。

 

「よく来たな、ジョルジュ・ド・サンド。決着、今ここで果たさん!」

「望むところです。あなたを倒し、姫を返していただきます。行きますよ! ガンダムファイトッ!」

「「レデイイィィィィ・ゴオオオォォォ!!」」

 

 かくして、騎士と紳士のガンダムファイトが始まった!

 

 ジョンブル・ガンダムは、ガンダム・ベルサイユのビームセイバーの斬撃をかわしながら後退し、銃撃を放つ。ジョルジュはそれをかわすと、ローゼス・ビットを射出した。

 

 ローゼス・ビットから変幻自在の攻撃を放つジョルジュ。そのビームの一発が、ジョンブル・ガンダムの左腕を破壊した。

 だが!

 

「なっ!?」

 

 破壊された左腕から細胞のようなものがあふれ出し、その左腕を再構成したのだ。

 それは間違いない……。

 

「それは、DG細胞……いえ、フェイクDG細胞!」

「その通り。私はこの身に、フェイクDG細胞を宿して復活したのだ!」

 

 そう言うと、チャップマンは、不意打ち気味に、ライフルから散弾を放った! とっさにジョルジュはマント上のシールドでそれを防ぐ。

 

「なぜです、なぜあなたほどの方が、フェイクDG細胞に!? ドモン・カッシュとのファイトに満足して果てたのではないのですか!?」

「あぁ、満足した。だが、それでも一つの悔いがあったのだ。それは、我が祖国ネオ・イングランドと、ネオ・フランスとの決着!」

「なんですって!?」

 

 ジョンブル・ガンダムは縦横無尽に飛び回りながら、ビームを浴びせていく。その狙いはとても的確で、ジョルジュを持ってしても、反撃の隙を与えないほどだ。

 

「ネオ・イングランドを代表する紳士として、この決着を果たすまでは死んでも死に切れん! だから私は、あえてフェイクDG細胞を受け入れて復活したのだ! 黒幕どもの傀儡になってまで!」

「そこまでして決着をつけようとする覚悟……感服しました。しかし、私もマリアルイゼ様の騎士。負けるつもりはありません!」

「よくぞ言った、ネオ・フランスの騎士よ!」

 

 そう叫びながら戦いを続けるチャップマンに通信が入る。彼の妻、マノンからだ。

 

『チャップマン、なぜドローンを使わないの!? あれを使えば……』

「黙れマノン! これは我がネオ・イングランドとネオ・フランスとの由緒ある対決! あくまで一対一。他の介入は許さん!」

『チャップマン……』

 

 そしてチャップマンは、さらに縦横無尽に動き回りながらライフルを撃ち続ける。その攻撃に、ジョルジュは防戦一方だ。

 

「このままでは……。そうだ!」

 

 ガンダム・ベルサイユはそこで立ち止まり、回避をやめた。そしてチャップマンも決着をつけるべく、さらに動きを速めた。

 

「いくぞ、ジョルジュ・ド・サンド! 必殺、ミラージュ・レインボー・ショット!!」

 

 なんとその動きの速さに、ガンダム・ベルサイユの前方に無数のジョンブル・ガンダムの残像が現れた! それらが一斉に、敵に対してビームを放つ!

 

 そして一方のジョルジュも……!

 

「護りなさい、ローゼス・リフレクター・ビット!」

 

 マント状のシールドから、花びらが鏡となったローゼス・ビットを何十機も射出し、ベルサイユの前面に展開する!

 そのビットたちに、ジョンブルのビームが直撃した!

 

* * * * *

 

「勝ったわね、いくら反射能力を持ったビットでも、チャップマンの必殺技は防ぎきれないはず。これであの人の戦いも……」

 

 そう安心したようにつぶやくマノンだが、彼女の傍らのマリアルイゼは、崩れ落ちることも泣くこともなく、気丈に窓の外を見つめ続けている。

 

「哀しくないの? あなたの騎士が倒れたのに」

 

 そう聞くマノンに、マリアルイゼは、前方を見据えたまま、気丈に答える。

 

「はい。私の知っているジョルジュは、決して負けるような人ではないと信じていますから」

「どこまでも信じてるのね。でも、あれだけのビームを喰らえば……えっ!?」

 

 マノンは目をむいた。視線の先には、無傷のガンダム・ベルサイユと、主を守り切ったリフレクター・ローゼス・ビットたちがあったのだ。

 

* * * * *

 

「私の最強の技を耐えるか……さすがだ」

「いえ、一か八かでしたよ。もしマリアルイゼ様を助けるための戦いでなければ、私の負けだったでしょうね」

「そうか……さすがはネオ・フランスの騎士だ……」

「それではこちらの番です。この私の技、受けていただきましょう!」

 

 彼の声とともに、無数のビットたちがジョンブル・ガンダムの周囲を取り巻く。

 

* * * * *

 

「チャップマン……!」

 

 チャップマンの敗北を感じ取ったマノンは、マリアルイゼを羽交い絞めにして、懐から銃を抜こうとした。彼女を人質にして、ジョルジュを負けさせようというのか。だが。

 

「っ!」

 

 銃を抜いたところで、どこかから飛んできた手裏剣が、彼女の手からその銃を弾き飛ばした。

 

「どうにか間に合ったな」

「えぇ、よかったです」

 

 部屋の天井からシュバルツとジャンヌが飛び降りてきた。彼らが、マリアルイゼが人質にされるのを阻止したのは想像に難くない。

 

「これで終わりね……ふふふ……。……っ」

 

 そこで、シュバルツたちが止める間もなく、マノンは何かをかみ砕いた。途端に彼女は、口から血を吐いて倒れこむ。

 

「これは……毒を飲んで自決したのか……」

「なぜ……?」

 

 死にゆくマノンを見守るシュバルツたちに、彼女は、解放されたような笑みを浮かべて言った。

 

「決めていたの……。あの人が勝つためなら何でもする。そして、勝っても負けても、私はチャップマンと共に散るって……」

 

 そしてこと切れた。シュバルツはそっと、彼女の瞼を閉じてやる。それが彼なりの、夫への愛に生きた女への手向けであった。

 

* * * * *

 

「ローゼスハリケーン!」

 

 ジョルジュの号令とともに、ローゼス・ビットたちがビームを放ちながら、ジョンブル・ガンダムの周囲を回り始める。

 その光の檻の中、チャップマンは何かに気づいた。それは愛する妻の散華。

 

「マノン……そうか……」

 

 そしてつきものが落ちたかのように、安らかな表情で目を閉じた。そして。

 

「フィナーレ!!」

 

 ジョルジュの叫びとともに、ジョンブル・ガンダムは爆炎に包まれた。ボロボロになったジョンブル・ガンダムは力尽きたかのように、崩れ落ちていく。

 

 そのジョンブルから通信が届く。

 

「見事だ……さぁ、とどめをさすがいい。ネオ・フランスとの決着がついた今、思い残すことはない……」

「チャップマン……わかりました」

 

 だが、ジョンブル・ガンダムにとどめを刺そうと、ガンダム・ベルサイユが前に一歩踏み出したその時!

 

「!!」

「!?」

 

 ジョンブルの様子が一変した。まるでもがき苦しむかのような動きを見せ、身体のあちこちが怪しく蠢く。

 

「こ、これは……!?」

「うおおおお!!」

 

 苦しむチャップマンに、目の前の惨状に戸惑うジョルジュ。そこに投げかけられた声があった。

 

「……お前の願いはかなえてやった。次は、我らの番だ」

「!? 謎の黒いガンダム!!」

 

 そう、以前のファイトで、会場を襲撃したあの黒いガンダムだった。

 

「あなた方が、チャップマンを蘇らせた黒幕だったのですね!」

「……お前に答えてやる義理はない。さぁ、今こそ目覚めよ、グランドガンダム……!」

 

 その黒いガンダムの言葉に、あわててジョンブルのほうを振り返るジョルジュ。その彼の目の前で、ジョンブルガンダムは蠢き、まがまがしく変形している。

 

「ぐおおおお! 頼む、ジョルジュ、早く介錯を……! 私は醜い異形の姿になってまで生きたくはない……!」

「チャップマン……はい!」

 

 そして、ジョルジュは、チャップマンの願いをかなえるべく、改めてビームセイバーを構えてとどめを刺そうとするも……。

 

「させないと言っている……!」

 

 その背後から、黒いガンダムが襲撃! ビームソードの一撃を放つ。ジョルジュは間一髪、振り向きざまにその斬撃を受け止めることができた。だが、その一瞬が致命的な一瞬となった!

 

「ぐああああああ!!」

「チャップマン!」

 

 ジョンブル・ガンダムは巨大な醜い姿に変形を完了していた。四足獣を思わせる姿に、その巨体に似合うほどの四門の巨大な主砲。背中に生える、長大で鋭い二本の牙。それはまさに、神話に出てくる巨獣、ベヒーモスがごとし。

 

 ジョンブル・ガンダムは新たな姿、グランド・ガンダムとなっていた。

 

* * * * *

 

 俺……ジャンヌたちが、マリアルイゼ姫を連れてビルを出ると、そこでは状況が急転していた!

 ジョンブル・ガンダムがグランド・ガンダムに変形し、ジョルジュのガンダム・ベルサイユと対峙していたのだ! 俺たちは、マリアルイゼを追って来ていたレイモンドにマリアルイゼ姫を託すと、自分たちのガンダムを呼び出した。

 

 そしてその間にも、戦いは続いている。

 

「ううう……ウガアアアアア!!」

「ぐわぁ!!」

 

 グランド・ガンダムは動揺しているジョルジュのガンダム・ベルサイユに猛突撃! 敵を吹き飛ばした!

 

「ぐっ……!」

 

 さらに、その巨大な脚でベルサイユを踏みつぶそうとする。ジョルジュはかろうじてそれを回避、上空から反撃しようとした。だが!

 

「!!」

 

 背中の巨大な角、グランド・ホーンが勢いよく伸びだし、ベルサイユを襲う! ガンダム・ベルサイユは角をシールドで防ごうとするが、グランド・ホーンはそのシールドを簡単に貫き、ベルサイユの左胸を貫いた!

 

「ぐああああ!!」

「ジョルジュー!!」

 

 建物の外で悲鳴をあげるマリアルイゼ。その悲鳴を意に介せず、グランド・ガンダムはジョルジュにとどめを刺そうとする!

 そこに、シュバルツのガンダム・シュピーゲルと、俺のガンダム・オルタセイバーが背後から襲い掛かる!

 

 それを察知したチャップマンは、こちらへと振り返り、俺たちに砲門を向けた。

 そして射出されたのは、電撃に包まれた二本のアーム! それは二機を捉え、ビルへと叩きつけた!

 

「ぐぅっ……!」

「ううっ……!」

 

 補助アームとはいえ、そのパワーはかなりのもの。ちょっとやそっとでは振り払えそうにない。さらに電撃が俺たちを苦しめる。

 

 二機の動きを封じ、あらためてガンダム・ベルサイユにとどめを刺そうとするグランド・ガンダム。だがその時、グランドの動きが変わった! まるで何かに苦しむかのように悶え始めたのだ。

 まだ、チャップマンの意識が残っているのだろうか。

 

 それを見ていた黒ゴッドが忌々しく言う。

 

「まだチャップマンの洗脳が十分ではないのか……。ここはいったん引き上げるとするか……。命拾いしたな。それと、ドモン・カッシュに伝えておけ。必ずお前の首をいただくとな」

 

 そう言って黒ゴッドは飛び去り、グランドも地面に潜って姿を消した。

 

 俺たちはその様子をただ見守るだけだった……。

 




ファンアートと感想、募集中! テテテUCを書いてくださる方も絶賛募集しています!

* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!
ハイパーモードを発動させるべく、自分の道の答えを探し求めるドモンは、暗殺者の襲撃を受けます。そして、ある老人の元で暮らすことになった彼は、その老人の姿勢から、探し求めていた答えの萌芽を発見します!

ドモンはついに明鏡止水に完全開眼! 今彼の右手が熱く燃え、轟き叫ぶのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第25話『見えた光明! 発動ゴッドフィンガー!!』

にReady Go!!

それではみなさん。7/16 12:00に、またお会いいたしましょう!


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25th Fight『ついに見出した光明! 発動ゴッドフィンガー!!』

 こんにちは、ストーカーです。

 さてさて、いよいよ決勝大会がはじまりました。
 好試合の連続に、会場では熱狂がおさまりません。

 さて、ジョルジュ・ド・サンドとのファイトのために、彼をつけ狙う漢がありました。彼の名は、ネオ・イングランド代表、ジェントル・チャップマン。彼はフェイクDG(デビルガンダム)細胞に侵されてまでして、彼とのファイトを叶えました。
 戦いはジョルジュの勝利に終わったのですが、そこにあの黒いガンダムが襲来! 彼の手により、哀れチャップマンは彼らのしもべ、獅王争覇・グランドガンダムになってしまったのです。

「ぐおおおお! 頼む、ジョルジュ、早く介錯を……! 私は醜い異形の姿になってまで生きたくはない……!」

 さて。今回のカードは、ドモンのゴッド・ガンダム対、ネオ・ネパール代表キラル・メキレルのマンダラガンダム。

 それでは! ガンダムファイト、Ready Go!!



「くそっ、こんな闇夜の中では……!」

 

 ネオ・ホンコンの貧民街。周囲を暗闇が包むその場所で、ドモンは窮地に立たされていた。

 ウォンの陰謀の調査のためにここを訪れた彼は、突然謎の暗殺者の襲撃を受けたのだ。

 

 さすがのドモンでも、暗闇の中では満足に戦うことはできない。いくらキング・オブ・ハート、流派・東方不敗の使い手といえど、闇夜に紛れての暗殺者相手では、かわすのが精いっぱいであった。

 

「どこだ! 出てこい。姿を現せ!」

「ふふふ……。私は暗殺者。それはできぬ。ドモン・カッシュ、貴殿が首、ここでもらい受ける」

 

 その声とともに、再び斬撃が放たれる! それをまた間一髪でかわし、放たれた方向に、反撃の斬撃を放つ。しかし、そこに手ごたえは全くなかった。

 

 そしてドモンの背後に暗殺者の気配が! 彼はそれに気が付いていない! そこに。

 

「はぁっ!」

「うおっ!」

 

何者かが、暗殺者を撃退したようだ。

 

「その声は……シュバルツ!」

「うむ。今のお前では、彼には勝てない。ここは逃げろ! そして、心眼を会得するのだ!」

「しかし、敵に後ろを見せるなど……!」

 

 ためらいを見せるドモンを、シュバルツが一喝する。

 

「馬鹿者! 勝てぬ相手に無理に挑むのを、勇気とはいわん! 勝つ術を得るために、一時的に負けを受け入れることこそ、真実の勇気! 武闘家……いや男なら身に着けねばならないものだ! それをわからぬとは、兄として情けないぞ! ……はっ」

「え、兄……?」

「な、なんでもない! とにかく、ドモン、ここは私に任せて退くのだ! 心眼を会得すれば負けることはない!」

「わ、わかった! 恩に着るぞ!」

 

 そしてドモンは、剣戟の音を背後に聞きながら、その場を走り去ったのであった。

 

* * * * *

 

 暗殺者からの襲撃からなんとか逃れたドモンは、背後を振り返った。剣戟の音は、もう聞こえない。

 

「シュバルツ、大丈夫だろうか……? 彼の助力を無駄にしないためにも、なんとか心眼を会得しなくては……」

 

 先ほどシュバルツがこぼした「兄」という言葉は、既にドモンの頭からは抜け落ちていた。だが彼をボケと馬鹿にすることはできまい。忘れるくらいに必死に逃れてきたのだ。

 

 そこに、声をかける者があった。

 

「おや、こんなところでどうなさった?」

 

 背後からかけられた声に驚くドモン。彼は思わず刀を抜き、背後の人影に突き付けた。

 

「気づかれずに俺の背後に現れるとは! お前が俺を狙っていた暗殺者か!?」

「ひゃあ! な、なにをなさる!? わしはただの老人じゃぞい!」

 

 見ると、そこにはみずぼらしい姿の老人が。その姿は、とても暗殺者に過ぎない。それを確認したドモンは、刀を納めると頭を下げた。

 

「そ、そうか。すまない。命を狙われていたので、誤解してしまった……」

「い、いや、いいんじゃよ。そういう事情があるなら仕方ない。ところでお前さん、こんなところまで来てしまったが、大丈夫かのう?」

「こんなところ?」

 

 と、そこで周囲を見ると、そこは迷宮のように入り組んだ貧民街の奥。どこに行けば帰れるか、どころか、自分はどこから来たかもわからない。

 

 とたんに、ドモンの顔が曇る。

 

「こ、これは……。俺は今、どこにいるんだ……? 帰るには……」

「やっぱり迷子になってしまったようじゃのう。どうじゃ? 帰り道がわかるか迎えが来るまで、わしの家に泊まっては?」

「いいのか?」

「はい。たいしたおもてなしはできませんが」

 

 老人がそう言ったところで、ドモンは頭を下げた。

 

「ありがとう。それではありがたくお世話にならせてもらう」

 

* * * * *

 

 そしてドモンは、老人……ハンの家で夜を過ごした。

 翌日、ドモンは目を閉じ、座禅を組んで過ごした。言うまでもなく、暗殺者対策となる心眼の修行のためである。

 だが、かすかな物音を聞くことができるほどまでにはなったものの、なかなかそれ以上には進まなかった。早く会得しなければならないという焦りと、やはり『答え』が見いだせないことへの焦りのせいである。

 

 おまけに、迎えもなかなか来ないうえに、周囲を探索しても、戻る道が全然わからない。自分は方向音痴ではないはずなのだが……。

 

 そして数日が経ち、次の自分の試合まであと二日、という時。

 探索から帰ってきたドモンは、ハンが鉢に植えられた弱々しい草花の世話をしているところを目撃した。

 

「ハン、どうして草花の世話なんかを? 汚れ、傷ついた今の地球の環境ではすぐに……」

 

 枯れてしまうのでは……と言おうとしたドモンの言葉がわかっていたかのように、ハンは諭すように口を開いた。

 

「そうかもしれん。だが、やらなければ可能性は0じゃよ。それに、やっていることは無駄ではない。どんな小さな、無駄と思えることでも続ければ、必ずそれは花を咲かせることになる。何粒も落ちた雨粒が、やがては岩を砕くようにな」

 

 その言葉は、ドモンに感銘を与えた。そして『答え』を見出すきっかけをも。

 

(……そうか!)

 

 『答え』を見出したドモンの修行は。それまでの遅滞が嘘のように進み、翌日にはついにドモンは。

 

「はぁっ……! できた……!」

 

 ついに、心眼に開眼したのであった。

 

「ほほう、見事なものじゃ」

「ハンのおかげです。ありがとうございます」

 

 そう言って頭を下げるドモン。そこにシュバルツが迎えに来てくれた。

 

* * * * *

 

 そしてついに、ドモンのファイトの日がやってきた!

 

 今回のファイトは特別ルール、防弾・防ビームガラスケース内で行われるガラスケース・デスマッチである。

 

 対峙するドモンのゴッド・ガンダムと、対戦相手である、ネオ・ネパール代表、キラル・メキレルのマンダラ・ガンダム。

 そして、レフェリーが試合開始のコールを叫ぶ!

 

「ガンダムファイト・レディーゴー!!」

 

 とたんにリングの周囲は暗闇に包まれた。リングの各所から流れ出した黒煙がケース内を満たしたのだ。

 

「ぬぅ……これは!? ウォンめ、どうしても俺を負けさせるつもりか!」

「ふふふ……これはありがたいことだ……」

 

 暗闇の中、周囲を見回すゴッド・ガンダムの後ろから、マンダラ・ガンダムが迫る!

 そして斬撃! ゴッド・ガンダムはなんとかそれをビーム・ソードで受け止める。

 

「この剣さばき……もしやお前が!」

「いかにも。あの時仕留め損ねたが、今度こそ貴殿の首、このキラルがもらい受ける!」

 

 あの時、ドモンを襲ったのは、この対戦相手、キラルだったのだ! そのキラルのマンダラ・ガンダムはドモンの斬撃をかわすと、再び暗闇の中に溶け込み、姿と気配を消した。

 

「あの時と同じように仕留めに来る気か……。だが、あの時と同じだと思うなよ!」

 

 そう言うと、ドモンは目を閉じて、動きを止めた。明鏡止水の境地に至り、彼の心眼が研ぎ澄まされる。

 そして!

 

「そこだ!」

「!?」

 

 ドモンの斬撃が、暗闇の中迫っていたマンダラ・ガンダムを捉えた! キラルはなんとかそれを持っていた仕込みビームサーベルで受け止める。

 

「なかなかやるな。だが、そんなにわか仕込みの心眼で、私をいつまでもとらえ続けられると思わぬことだ」

「お前こそ、あの時と同じ手が、俺に何度も通じると思うな!」

「ほざけ!」

 

 そして再び、マンダラ・ガンダムが闇に溶け込み、姿を消した。そして闇の中を変幻自在に動き回る。だが、心眼を得た今のドモンには、その動きはお見通しだった。

 

「同じ手が通じると思うなと言ったはずだ!」

「ぬぅ!」

 

 再び、ドモンの斬撃が正確にマンダラ・ガンダムを捉えた。なんとかかわすが、マンダラ・ガンダムの腹部に一筋の傷が刻まれた。

 

 それからも暗闇でのファイトは続いた。暗闇の中ながら、ドモンはまるで暗闇などないかのように、キラルと互角の戦いを繰り広げる。そして、そのファイトはキラルの心境にも変化をもたらしていた。彼はその胸の中に熱いものがたぎるのを感じていたのだ。

 

「ふふふ……はーはっはっはっ!」

「?」

 

 暗闇の中、キラルは愉快そうな笑いをあげ、マンダラ・ガンダムの腕から光弾を放ち、ガラスケースの一部を砕き割った。そこから黒煙が流れ出し、暗闇はたちまち晴れる。

 

「なぜ?」

「ドモン・カッシュ、貴殿の戦いは見事であった。貴殿の戦いはこの暗殺者の心を熱くしてしまった! ファイトがこんなに楽しいものだとはな!」

 

 そしてキラルのマンダラ・ガンダムは仕込みビームサーベルを構えた。そこから感じられるのは、殺気ではなく闘気。

 

「ここからは正々堂々の戦い! いざ、勝負!」

 

 そのキラルの気概を感じたドモンも返す。

 

「おう!」

 

* * * * *

 

 暗闇が晴れたリングで、激しいバトルを繰り広げるドモンとキラル。ドモンの拳をキラルが仕込みビームサーベルで受け止め、キラルの反撃を、ドモンが明鏡止水の動きでかわす。

 

「はあっ!」

「ぬおおぉぉぉっ!」

 

 二人の技が炸裂し、その衝突のエネルギーでゴッド・ガンダムとマンダラ・ガンダムが弾き飛ばされる。なんとか着地し、再び激突。

 

「こいつ……強い!」

 

 キラルの攻撃を受け止めたドモンが唸る。彼の言う通り、キラルは強かった。その強さは、先ほどまでの暗殺に徹していた時とは段違いである。元から強かったのか、ドモンのファイトに触発された結果なのかはわからない。だがそれは、今は大した問題ではないだろう。

 

 マンダラ・ガンダムが無数の仕込みビーム・サーベルの突きを放つ! それをなんとかかわすドモンだが、ゴッド・ガンダムの側頭部に一筋の傷が刻まれた。

 

「この強さ……今まで俺が戦ったファイターたち以上かもしれん……!」

「その言葉、そのまま貴殿に返すぞ、ドモン・カッシュ。私の攻撃をここまでかわしたのは貴殿がはじめてだ。だが、これで終わりにさせてもらう!」

 

 一度離れたマンダラ・ガンダムが構える。その背後からオーラが立ち上り、マンダラを形成する。必殺技で決める気なのだろう。それを感じ取ったドモンもまたこたえる。

 

「奥義で決着をつける気か。ならば俺も、奥義で応えさせてもらおう! ぬあああ……!」

 

 唸り声とともに、ドモンも心を静かに、そして鋭くさせる。彼の心は深く沈み、明鏡止水へと近づいていく。そして。

 

『HyperMode is Booted』

 

 電子音声とともに、その機体が金色に輝く。胸のカバーが開き、背中の羽が展開する。

 『答え』のきっかけを得たドモンは、ついに真の明鏡止水に到達し、ゴッドガンダムのハイパーモードを起動させることに成功したのだ!

 

 気迫をみなぎらせて対峙する二人。そして。

 

「いくぞぉ! キラル殺法・地獄曼陀羅!!」

 

 マンダラ・ガンダムの背後の炎の曼陀羅から無数の炎弾が放たれる!

 そしてドモンも、必殺の技を放つ!

 

「俺のこの手が真っ赤に燃える! 勝利をつかめと、轟き叫ぶ!」

 

 ドモンのボイスコマンドに反応して、ゴッド・ガンダムの精神エネルギー変換ジェネレーターがフル稼働し、ドモンの無尽蔵に湧き出る闘志をエネルギーに変換していく。そのエネルギーは右拳に注がれ、拳が真っ赤に染まった。

 

「うおおおお! 爆熱!」

 

 そしてゴッド・ガンダムが突進! マンダラ・ガンダムの地獄曼陀羅の炎弾をはじきながら、キラルに迫る! そして!

 

「ゴオオオッド! フィンガアアアアア!!」

 

 ゴッド・ガンダムの赤熱する貫き手がマンダラ・ガンダムの腹部に突き刺さる! ドモンはそのままマンダラ・ガンダムを貫いた腕を抱え上げ、そして叫ぶ。

 

「ヒイイイット・エンドッ!!」

 

 その叫びと同時、拳にチャージされたエネルギーが炸裂し、大爆発! マンダラ・ガンダムをその爆炎に包み込んだっ!! その爆炎で、リングを覆っていたガラスケースが砕け散った! 防弾、防ビーム処理が施されたガラスケースを、である。

 

 その後に残ったのは、雄々しく直立するゴッド・ガンダムと大破したマンダラ・ガンダムのみであった。

 

「ぐふ……見事であった、ドモン・カッシュ……」

 

 そう褒めたたえ、キラルは意識を失った。それを見届けたドモンに、レフェリーが彼の勝利をコールする。

 

* * * * *

 

 勝利をおさめ、ゴッド・ガンダムから降りたドモンを、彼の師匠である東方不敗・マスターアジアが出迎えた。

 

「見事であったぞドモン。お主、答えを見いだせたようだな」

 

 そのマスターアジアに、ドモンは苦笑して首を振った。

 

「いいえ。答えまではまだ……。ですが、そのきっかけはつかめたような気がします」

「そうか。だが、その顔。それには一切の迷いがないように見受けられる。見事じゃ。お主が答えを見つけ、我が前に立ちはだかる時が楽しみよ」

「ありがとうございます。その時のために、精進を続けます」

 

 そう言葉を交わす師弟を、雄々しく立つゴッド・ガンダムが見下ろしていた―――。

 

* * * * *

 

 一方そのころ。ネオ・ジャパンコロニー。

 

 仮面をつけた軍人……ウルベ・イシカワ大尉が、ミカムラ博士からの報告を受けていた。

 

「ドモン・カッシュは、ついに明鏡止水に開眼し、三戦目に勝ち抜いたか。順調なようだな」

「えぇ。この分でいけば、我がネオ・ジャパンに覇権がもたらされるのも夢ではないでしょう」

「そうなれば、シュウジ・クロス以来の快挙だな。かの人は今はどこにいるのか定かではないが……」

 

 そこに、ネオ・ジャパンの軍人が入ってきた。

 

「大尉、秘密調査員からの報告が入りました。こちらです」

「うむ」

 

 軍人から手渡されたレポートに目を通すウルベ。その口元がかすかに歪む。

 

「よし。ではさっそくそちらに向かおう。シャトルの準備をしてくれ」

「はっ」

「本当に行かれるのですか?」

 

 ウルベにそう声をかけるミカムラ博士。ウルベは博士に顔を向けてこたえた。

 

「あぁ。この目で確かめておきたいのだよ。それに、報告が正しければ、仕上げをしてしまいたい」

「仕上げ?」

 

 博士はそう聞き返すが、ウルベはそれ以上話すことはないとばかりに、正面へと顔を向けた。

 その胸はかすかにふくらんでいた。

 




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* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

いよいよ師匠こと、東方不敗・マスターアジアの緒戦がはじまりました!

相手はネオ・ポルトガル代表のロマニオ・モニーニ。ピエロの衣装をまとい、マスター・アジアの流派・東方不敗の技を完全に模倣する彼は、マスター・アジアの心まで読む力を見せつけます。

この難敵に対し、マスター・アジアはついに! ドモンにもまだ伝えていなかった、流派・東方不敗の究極奥義を見せるのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第26話『奥義炸裂! 石破り天驚す拳!!』

にReady Go!!

それではみなさん! 7/19 12:00にまたお会いいたしましょう!


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26th Fight『奥義炸裂! 石破り天驚す拳!!』

 こんにちは、ストーカーです。

 さてさて、いよいよ決勝大会がはじまりました。
 好試合の連続に、会場では熱狂がおさまりません。

 暗殺者に襲われたドモンは、しばしの間、貧民街の老人の家にお世話になります。
 そこで、暗殺者に対抗する術である心眼の開眼に挑むドモンは、その老人、ハンとのやりとりの末、ついに『答え』のきっかけを得ることに成功します!

「そうかもしれん。だが、やらなければ可能性は0じゃよ。それに、やっていることは無駄ではない。どんな小さな、無駄と思えることでも続ければ、必ずそれは花を咲かせることになる。何粒も落ちた雨粒が、やがては岩を砕くようにな」

 そして『答え』のきっかけを得たドモンは、ついに真の明鏡止水に到達! 以前は発動させることができなかった必殺技、『爆熱ゴッドフィンガーを発動させ、勝利を収めたのです!

 さて、今回のカードもまたまた魅力です。東方不敗・マスターアジアの『ヤマトガンダム』に対するは、ネオ・ポルトガル代表、ロマニオ・モニーニのジェスター・ガンダム。

 それではガンダムファイト、Ready Go!!



 師匠こと、東方不敗マスター・アジアのファイトの日が近づいてきた。

 

 そんなある日、師匠と俺は、あるサーカスを訪れていた。もちろん師匠は変装して。

 

 師匠の相手であるネオ・ポルトガル代表ロマニオ・モニーニはピエロをやっているというので、彼が働いているこのサーカスに偵察に来た、というわけだ。

 

 サーカスは、かなりの人が詰めかけている。よほどの人気なのだろうか。

 

 席につくと、さっそくサーカスがはじまった。まずは空中ブランコ。それで男女が華麗に宙を舞った後は、猛獣を自在に扱う猛獣ショー。どれを見ても、見事なショーだ。これは、人気が出るのもわかるな。

 

 そして最後に、ロマニオらしきピエロが現れた。彼の芸もなかなかのものだ。玉乗りやパントマイムを華麗にこなしていく。

 

 だが! そこで彼は驚くべきことをした!

 

 なんと、激しくパンチを連打したのである。あれは……流派・東方不敗の演武? そして、最後に拳をつき合わせるところまでも完全に再現。

 

 それを皮切りに、彼は次々と流派・東方不敗の技を鮮やかに演舞していく。

 

 そこで俺は気が付いた。師匠の顔色が明らかに変わったことに。不快を通り越して、怒りに差し掛かっているかのような色。

 

 そんな師匠に気が付いているのかいないのか、一通りの演武を終えたロマニオは挑発するように言い放ったのだ!

 

「皆さん! 私は数日後、かの流派・東方不敗の使い手の一人だというシュウジ・クロス(ネオ・マカオ代表としてエントリーするにあたり、この偽名で登録していたのだ)とファイトを行います。しかし、彼の技など私にとっては簡単に模倣できるもの! 見ていてください。私は次のファイトで、彼の技を見事に模倣し、そしてシュウジ・クロスに完勝してみせましょう!」

 

 そこで拍手が沸き上がる。多分、ファンへのリップサービスもあるのだろうが、その話し方にはあきらかな挑発の意思と悪意に満ちていた。こいつは完全に師匠をなめてやがる。

 

 ここにドモンがいなくて本当によかった。あれだけ師匠を慕っている彼のことだ。この現場に居合わせたら、まず間違いなく飛び掛かっていってただろうからな。

 

 そこでふと感じる、横からの気配……いや殺気。殺気を感じるほうを見ていると、師匠が笑顔で、ロマニオのほうをむいている。しかし俺は見逃さなかった。その顔に青筋が浮かんでいるのを。これが漫画なら、背後に炎が浮かんでいそうだ。

 

「し、師匠、怒りはわかりますが、落ち着いてください……」

「何を言う。わしは怒っておらぬぞ。なかなか楽しいショーではないか」

 

 そうすごみのある笑顔を浮かべている師匠の手元から、くるみが砕ける音が聞こえた。

 

* * * * *

 

 そしてファイトの日がやってきた!

 

 リングには既に、師匠のヤマトガンダム(に偽装したマスターガンダム)と、ロマニオのジェスター・ガンダムが対峙している。

 

 師匠があたかも闘志どころか殺気満々なのに対し、ロマニオは余裕があるかのように、茶化すような態度をとっている。

 

「話は聞いたぞ。わしの使う流派・東方不敗をコケにしてくれたそうじゃな」

「コケにしたわけではありませんよ。本当のことです」

「ほう……」

 

 それからさらににらみ合う。いや、にらみつけているのはむしろ、師匠のほうだが。

 

「おや? 今、『こやつ、五体バラバラにしても飽き足らぬ』と思いませんでしたかな?」

「なっ……!」

 

 驚きの声をあげたのは師匠ではなく俺だ。まさかこいつ、相手の心を読むことができるのか!?

 これはもしかしたら難敵かもしれない……。

 

 だが師匠はそれを面白いと思ったのか、その殺気がいくらか和らいだ感じがした。

 

「ほう、こやつ……」

「『面白い。どれだけ芸を見せてくれるか』」

「見せてもらうとしようぞ」

 

 そしてまた沈黙。

 

「くくくくく……」

「ふふふ……」

 

にらみあったまま、笑みを浮かべる師匠とロマニオ。怖い、怖すぎるよ。

 

 それから数秒後。レフェリーが試合の開始を宣言する。

 二人が一歩を踏み出すのはまったく同時だった。

 

「ガンダムファイトォォ!」

「レディ~ゴ~!」

 

* * * * *

 

 先手を取ったのは師匠のほうだ。鋭い拳や蹴りを連続で次々と放つ。

 だが、ジェスター・ガンダムはそれを見事にかわしていく。師匠の技を模倣できるだけあって、拳筋も熟知してるのか。

 

 そして師匠の蹴りを後方にとんでかわすと。さっそく師匠の技を繰り出してきた!

 

「まずはこれからでございます。十二王方牌大車併~!」

 

 ジェスター・ガンダムから12体の、エネルギーでできた小さなジェスターが放たれて、師匠のヤマトガンダムに襲い掛かった!

 さすが師匠、それらを巧みに防ぎ、はねのけていくが、それでもそのうちの一体が師匠に蹴りを直撃させた!

 

「うおっ……!」

 

 それで師匠が体勢を崩したところで、残り11体も蹴りを命中させ、ヤマトガンダムは吹き飛ばされた!

 

「うおぉ~!」

「そ~れ、帰山笑紅塵~!」

 

 しかも、ご丁寧に帰山笑紅塵まで使ってきた。もしかしたらこいつの模倣の腕はすごいのかもしれない。

 吹き飛ばされた師匠はなんとか着地したが、ロマニオの攻めは止まらない!

 

「次は酔舞・再現江湖 デッドリーウェイブでござ~い!」

「うぬっ……!」

「どうなさいました? もしかしたら、『こいつ、必ず地獄の底に落としてくれるわ!』と思っているのですか?」

「……」

 

 そう言いながら、デッドリーウェイブの連打を放つロマニオ。そして、一気に突き抜けた。

 

「爆発でございます!」

「うおお!!」

 

 爆発に吹き飛ばされる師匠。こいつ……かなり強い!? だが。

 

「いかがですかな? 所詮、流派・東方不敗などこの程度のもの……」

「ふふふ……おめでたい奴じゃな」

「なんですと……? ……っ」

 

 師匠の言葉とともに、ジェスター・ガンダムの頭部の一部が砕けた!

 

* * * * *

 

 ダメージを受けて、少しよろめくロマニオに、師匠は堂々に直立したまま言い放つ。

 

「お主は今、『こいつ、必ず地獄の底に落としてくれるわ』とわしの心を読んだようなことをほざいたな。それは間違いよ。わしは今、喜び、充実しておるのだ。このような奴と戦い、打ち負かすことができる喜びにな! お主の読心術などその程度よ」

「な、なんですと……?」

「お主はあくまで、相手を煽り、読みやすい状況下に持ち込むことで、『この状況なら相手はこう考えているはず』と、相手が考えることを予想しているにすぎぬ。そのようなこと、そのへんの小童でもできるわ」

「わ……」

「『私の読心術を、模倣の術を馬鹿にするのですか?』か?」

「なっ……!」

 

 今度は師匠がお返しとばかりに、ロマニオの考えを読み返した。それと同時に、それまでの立場が逆転した。余裕綽綽の師匠に対し、逆にロマニオが余裕をなくしつつあるように見える。

 

 

「そして、心を読んだ相手をさらに技の模倣で追い込み、最後に余裕を失った相手を狩る。じゃがそのような手、このわしには通じぬわ!! 技をまねることができたくらいで、わしに勝とうと思うことが誤り! そしてわしの技はそう簡単に真似ることができるものではないわ!」

「だ、黙りなさい!」

「まだわからぬようじゃな。ならば、お主がどれだけわしの技をまねることができるか、見せてもらうとしようぞ」

 

 そして再びファイトがはじまった! 同じ流派の技の応酬。技の持ち主である師匠に対し、ロマニオも負けじと流派・東方不敗の技の模倣で対抗する。

 それはまさに、師匠とドモンの組手を見ているかのようだ。こいつがここまで同じ技、しかも模倣で師匠に食いつけるとはさすがだ。意外でもある。

 

 しかし、それは突然終わりを告げた! 突然、ジェスター・ガンダムが崩れ落ちたのだ!

 

「う、うぐ……こ、これは……?」

「言ったであろう。わしの技は、そう簡単に真似られるものではないと。流派・東方不敗の技はいずれも、流派の基礎を学び、技を放つことのできる身体を築いて、初めて使いこなせるもの。それをせずいきなり模倣に走れば、そうなるは必定よ」

 

 まさに師匠の言う通り。とある漫画に出てきた剣術と同じように、流派・東方不敗の技は、ちゃんと基礎を築いてはじめて使いこなすことができるもの。そう簡単に使いこなせるものではないのだ。DG(デビルガンダム)細胞の身体を持つ俺でさえ、使うたびに少しずつ寿命を削っている有様なのだから。

 

* * * * *

 

「ドモン!」

「は、はい!?」

 

 と、そこで突然、師匠がドモンに声をかけた。

 

「お前がネオ・ジャパンに戻ったあの日、わしは時間不足で、お主に奥義を授けることができなんだ。今、ここでその奥義を見せてやろう。しっかと刮目して見るがよい!」

「は、はいっ!」

 

 奥義……? もしかしてあれか!?

 

「ぬおおぉぉ……!」

 

 うなりを上げて気を練る師匠。その機体が金色に輝く。これは……やはりあれだ!

 

「しかと見よ! 流派東方不敗が最終奥義っっ!!」

 

 石を破り……。

 

「さぁいくぞ、ロマニオとやら。覚悟はいいか?」

「あ、あわ……」

 

 天をも驚かすと言われる拳……!

 

「石破天驚けええぇぇぇぇんんっっ!!」

 

 師匠の叫びとともに放たれた拳から、巨大な光の塊が放たれた!! それは弾……いや砲弾に等しい!

 原作では、生身でもMF(モビルファイター)に乗っていても撃てるなど、その原理は不明だったが、どうやらこの世界においては、ジェネレーターにより気から変換されたエネルギーが周囲の荷電粒子を励起させて巨大なビームの弾丸を生成させるらしい。いや、そんな原理はどうでもいい!

 

 これで燃えないGガンダムファンなどいるはずがない! そんな細かいことは関係なく、師匠が天驚拳を撃つのを垣間見れるだけで十分ではないのか。

 

 そしてその気の砲弾はそのままロマニオのジェスター・ガンダムに飛んでいき、そして爆発!!

 

 その爆炎がやんだあと、ジェスター・ガンダムはただのガラクタと化していた。

 

「本当ならば機体ごと消滅させてやってもよかったが……。そこまでしたら会場も灰になってしまうからの。運がよかったな、ロマニオとやら」

 

 そう言い放つ、師匠のヤマトガンダムは、とても雄大に見えた。あぁ、やはりこの世界に転生してきてよかったかもしれない!

 




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* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

大会は進み、いよいよ、上位の者たちによる決勝バトルロイヤルが始まろうとしています!
しかしそこでなんと! 緊急事態が発生してしまいます! 果たして、第13回ガンダムファイト決勝大会はどうなってしまうのでしょうか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第27話『決勝大会中断!? 襲撃アナザー五人衆!』

にReady Go!!

それではみなさん。7/22 12:00に、またお会いいたしましょう!


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27th Fight『大会中断!? 襲来アナザー五人衆!』

 こんにちは、ストーカーです。

 さてさて、いよいよ決勝大会がはじまりました。
 好試合の連続に、会場では熱狂がおさまりません。

 さて、緒戦を迎えた東方不敗・マスターアジアの相手は、技の模倣に長けたネオ・ポルトガル代表、ロマニオ・モニーニでした。彼の技の模倣と読心に苦しめられたマスターアジアでしたが……。

「ふふふ……おめでたい奴じゃな」

「そして、心を読んだ相手をさらに技の模倣で追い込み、最後に余裕を失った相手を狩る。じゃがそのような手、このわしには通じぬわ!! 技をまねることができたくらいで、わしに勝とうと思うことが誤り! そしてわしの技はそう簡単に真似ることができるものではないわ!」

 最後には地力に勝るマスターアジアが、奥義、石破天驚拳をもって勝利を得たのでした。

 さて、今回のガンダムファイトですが……なんとここで、物語は大きな転機を迎えます!
 一体何が起こるのか、刮目することにしましょう!

 それではガンダムファイト、Ready Go!!



 ネオ・ホンコンの中心部に存在するスタジアム。今ここには、12体のガンダムたちが並んでいた。

 

 新生デビルガンダム四天王からは俺……ジャンヌ・エスプレッソと師匠こと東方不敗・マスターアジア、そしてホアキン・ムニスと偽名を名乗っているチコ・ロドリゲス。そして、シャッフル同盟からはドモンたち五人全員。後は、ネオ・ギリシア代表、ゼウスガンダムを駆るマーキロット・クロノス、ネオ・スペイン代表、マタドールガンダムのカルロス・アンダルシアなど四人。

 

 いずれも、サバイバルイレブン、そして決勝大会をここまで勝ち抜いてきた猛者たちだ。

 

 その彼らを前に、主催者であるネオ・ホンコン首相のウォンがこれから行われるバトルの説明をはじめる。なお彼はこの場にはおらず、スタジアムに建設されたビルの中から放送をしているようだ。俺たちの攻撃を警戒しているのだろうか?

 

 さて、バトルの内容は、原作とは少し違っているようだった。

 

 ランタオ島の火山の頂上に設営されたリングに、ネオ・ホンコン代表のシード選手、(偽)東方不敗・マスターアジアが待っている。障害やライバルたちを突破し、一番早く彼の元へたどり着き、倒した者が優勝となる。なお、(偽)マスターアジアが、参加者12人全員を叩きのめした場合は、ネオ・ホンコンの優勝となる、とのことだ。

 

 俺たちは(偽)マスター・アジアただ一人を倒せばいいのに対し、向こうは俺たち12人全員を倒さなければいけないなんて、なんか俺たちに有利すぎて、ルールがウォンらしくないな。ここまで好き勝手してきて良心がとがめたのか、それとも(偽)師匠の強さに自信があるのか。

 

 それはともかく、開始の合図を前に、どのガンダムファイターたちも、やる気十分という様子だ。緊張感がスタジアムに満ちているが感じられる。これはもう、開始の合図を出す直前に、誰かフライングしそうだ。

 

 そして、ウォンの声が響く。

 

『それでは、決勝最終バトルロイヤルレースをはじめましょう。用意……』

 

 そして、彼が『スタート!』と言おうとしたまさにその時!

 

 彼のいるであろうビルが爆破されたーーーーーー!?

 

* * * * *

 

 バトルロイヤルレースが幕を開けようとした瞬間、ウォンをはじめとした運営陣がいるであろうビルが爆破された!?

 

 その突然の事態に、観客はもちろん、参加者のファイターたちも戸惑いを隠しきれない。むろん、それは俺も例外ではないが。

 

 そこに、どこかから声がとどろいた!

 

『くっくっくっ、ガンダムファイトか。面白くもない茶番を考え出したものよ』

 

 まず聞こえたのは、(偽)マスターアジアの声。

 

『所詮、ガンダムファイトなど、戦争を競技などという衣にくるんだだけのものぉ!!』

 

 荒々しくも雄々しい声は、チャップマンの声だ。

 

『ヒャーハハハァ!!』

 

 その笑い声を聴いて、俺は衝撃を受けた。これは……ミケロの声じゃないか!

 

 そして最後に響いたのは、あの黒ガンダムのファイターの声。

 

『戦いたければ、ガンダムファイトなどという戯言ではなく、行えばいいのだ。互いに血を流しあい、奪い奪われる本当の戦い、争いをな……。その場は、我々が作り出してやろう』

 

 そしてスタジアムに降り立った五機のガンダムたち。

 

『ひゃーはははっ! 天剣絶刀・ガンダムヘブンズソードォ!!』

 

 猛禽類をほうふつとさせるような、大きな翼をもったガンダム、ガンダムヘブンズソード。

 

『獅王争覇ぁ! グランドガンダムウゥゥゥ!!』

 

 フェイク・ロンドンタウンで遭遇した、ベヒーモスのような巨獣を思わせる巨大で獰猛なガンダム、グランドガンダム。

 

『ヘルマスターガンダムとは、わしのことぞっ!』

 

 偽マスターアジアが乗る、マスターガンダム……いや、それより鋭利で邪悪な姿をもったヘルマスターガンダム。

 

『……漆黒覇魔、デモンガンダム』

 

 チコを襲い、チャップマンを化け物に変えた黒きガンダム。デモンガンダムというらしい。

 

『そして、笑倣江湖ウォルターガンダム!』

 

 そしてウォルターガンダムも現れた。その声はボイスチェンジャーで変えられているようだが、男性の声っぽい。どうやら、乗っているのはアレンビーではないようだ。

 

 そしてデモンガンダムのファイターが宣告する。

 

『ガンダムファイトなどという茶番は終わりだ。そんな舞台など叩き壊し、本当の戦いの場をこの世界に現出させてやる。我々、『アナザー五人衆』がな……!』

 

 そして、アナザー五人衆と名乗った五機のガンダムたちは、デモンガンダムの宣告と同時に暴れ始め、コロシアムのことごとくを破壊していく。罪もない人々が逃げまどい、がれきの餌食となっていく。

 

* * * * *

 

 アナザー五人衆と名乗る奴らによって、たちまちコロシアムは修羅場と化した。いや、彼らの破壊活動はコロシアムだけでなくネオ・ホンコンの市街地にまで及び、今やネオ・ホンコンは戦火に包まれた地獄と化した。

 

 しかし……どういうことだ? 彼らがウォンのいたビルを破壊したということは、黒いガンダム……いやデモンガンダムは、ウォンと関係ないのか? 偽マスターアジアも、実はウォンに操られていたわけではないのか?

 謎は深まるが、今はそれどころではないな。

 

 そう考えなおした俺に、ドモンからの通信が入る。

 

『ジャンヌ、ネオ・ジャパンのカラト委員長から通信があった。彼や五大国の委員会が中心となって、観客や人々を、このネオ・ホンコンから避難させるそうだ。その手助けと奴らの迎撃のため、お前たち新生デビルガンダム四天王の力を借りたい』

 

 答えは決まっている。

 

「わかりました。今や、デビルガンダムをどうこうするって問題ではなくなっていますからね。今はこれまでの立場を忘れ、協力することにしましょう。師匠たちもいいですか?」

「無論よ。人々を苦しめるはわしの本意にあらず。喜んで力を貸そう」

「了解した」

「マカセトケ、ダークホッパーハタタカエナイガ、避難誘導スルグライハデキル」

 

 本当に頼りになる四天王たちだ。とてもありがたい。

 

「よし、それでは二手に分けよう。わしとジャンヌ、ドモン、チボデー、ジョルジュは五人衆とやらを迎撃するぞ」

 

 師匠の提案にドモンが返す。

 

「わかりました。それでは、チコとカンちゃん、アルゴ、サイ・サイシーは避難誘導を支援ですね」

「うむ。それではかかれぇ!」

 

* * * * *

 

 破壊活動を続けるアナザー五人衆たちのガンダムに、俺たちは飛び掛かった!

 

 まず真っ先に攻撃を仕掛けたのはドモンだ。その右手を真っ赤にして、五人衆たちに突撃していく!

 

「それ以上の狼藉は許さん! 爆熱! ゴオオオォォォッド・フィンガアアァァァァ!!」

 

 そして放たれる、ドモンのゴッド・フィンガー。それを、黒のガンダム、デモンガンダムが同じく拳で受け止める。ウォルターとヘブンズソードは、この場はデモンガンダムたちに任せる、ということなのか、市街地のほうに飛び去って行った。

 

 ドモンのゴッド・フィンガーと、デモンのカオシック・フィンガー。二つの技のエネルギーがぶつかりあう!

 

『待っていたぞ、ドモン・カッシュ。お前と戦うこの時をな』

『なんだと!? お前は一体何者だ!?』

『お前に答えてやる義理はない。うおおぉぉぉぉ!!』

 

 デモンの拳の黒い光がさらに輝きを増す!

 しかし、ドモンも負けてはいない!

 

『ならば腕ずくでも聞き出すのみ! うおおぉぉぉぉ!!』

 

 ゴッド・ガンダムの拳も輝きを増していく。

 

 そして一方では、師匠のヤマトガンダム(に偽装したマスターガンダム)と、偽師匠のヘルマスターガンダムが激しいバトルを繰り広げている。

 

『ほぉ、この前とはさらに強さを増しておる。また新たなデータを組み入れたらしいな』

『むろんよ! わしには、決勝大会開始時点での、貴様のデータが反映されている! 今度こそ、貴様を倒し、わしが本物の東方不敗・マスターアジアになってくれるわっ!』

『ふ……面白い。だが、そう簡単に成り代われると思うな、たわけがっ!』

 

 そして一方の俺は、チボデー、ジョルジュとグランド・ガンダムと戦っていた。

 

「スプラッシュ・ソードッ!」

『ローゼス・ハリケーン!!』

『マシンガン・パーンチッッ!!』

 

 三人の技が同時に、グランド・ガンダムに炸裂! 奴に少なくはないダメージを与えたようだが、それでもその進撃は止まらない。獅王争覇の名は伊達ではないということか。

 

『くそ、なんてタフな奴だ!』

『ですが、ここで止めなければ大変なことになりますよ!』

「そうですね。奴がとまるまで攻撃しましょう!」

 

 戦いはまだ終わらない。

 

* * * * *

 

 一方、ネオ・ホンコンの市街地では、サイ・サイシーのガンダム・ダブルドラゴン、アルゴのガンダム・ボルトクラッシュ、そしてチコのガンダム・ヘルトライデントとカンちゃんのダークホッパー・ガンダムが、人々の避難誘導を行っていた。

 

『ほらほら、気を付けて避難するんだぜ!』

『うん、ありがとう、サイ・サイシー! 頑張ってね!』

 

 避難中の子供に声をかけられ、思わず鼻の下をこするサイ・サイシー。その一方では、ガレキに潰されそうになっていた老女を、アルゴがボルトクラッシュでかばって助けていた。

 

「あ、ありがとうございます……」

『……気を付けて避難しろよ。……ふ、海賊の俺が、人助けをするとはな。悪くはない』

 

 また別の場所では、応急処置されたダークホッパーに乗ったカンちゃんが、小さい子供たちを守りながら避難誘導していた。

 

 そこに!

 

『あ、あれは……!』

『ウォルターガンダムと、ガンダム・ヘブンズソード!』

 

 声をあげるチコとサイ・サイシー。そう、スタジアムのほうから、ウォルターとヘブンズソードの二機が襲来してきたのだ!

 

 ヘブンズソードがその翼でビルを両断し、そのガレキが人々に襲い掛かる! 逃げ惑う人々を、ボルトクラッシュが身を挺してかばった。

 

『奴ら……罪もない人々を巻き添えにする気か!』

『サイ・サイシー、カンちゃん。奴らは俺とチコが防ぐ。お前たちは、そのまま避難誘導を続けてくれ』

『わかった! 二人とも、気を付けてくれよな!』

『オレノダークホッパーハマダタタカエナイ。スマン。ソノブン、避難誘導ヲガンバル。マカセロ!』

 

 二人の声を受けて、チコのガンダム・ヘルトライデント、アルゴのガンダム・ボルトクラッシュが、ウォルターとヘブンズソードに相対する!

 

『ヒャーハハハァ!!』

『くっ……!』

 

 しかし、飛行能力を持つ二機の前に、チコとアルゴは苦戦を強いられる。

 ウォルター・ガンダムとガンダム・ヘブンズソードは空中を自在に舞い、急降下して襲い掛かり、それから急上昇して攻撃をかわしていく。

 空中の相手では、こちらのハンマーや槍は届かず、固定武装であるマシンキャノンでは威力不足である。

 

 そうしているうちに。

 

『しまった!』

 

 隙を突き、ヘブンズソードが、サイ・サイシーとカンちゃんが避難誘導をしているほうに飛んでいった!

 

『このままでは犠牲者が……!』

『そうだ、アルゴ。ボルトクラッシュのパワーで、俺のヘルトライデントを放り投げてくれ』

『なんだと!?』

『ヘルトライデントの推力と、ボルトクラッシュのパワーなら、奴に追いつけるはずだ。頼む!』

 

 同じファイター同士。それ以上は余計な言葉はいらない。少しの間見つめあい、視線で会話する二人。

 

『……わかった!』

『よし、いくぞ!』

 

 ヘルトライデントがボルトクラッシュの手の上に飛び乗った。それと同時に、ボルトクラッシュのボディが金色に光輝く。ボルトクラッシュのゴールデン・パイレーツ・モードの発動だ!

 

『いくぞ、チコ・ロドリゲス!』

『おう、やってくれ!』

『うおおおおおお!!』

 

 ボルトクラッシュが砲丸投げの要領で、ヘルトライデントを放り投げる! ゴールデン・パイレーツ・モードの超パワーで吹き飛んでいったヘル・トライデントは、さらにバーニアのフルパワーでさらに加速し、今にも人々に襲い掛かろうとしているヘブンズソードに突撃していった。

 

『くらえ、空中ガトリング・デススピアー!!』

『うおおおおお!!』

 

 その無数の突きを喰らったヘブンズソードは中破し、暴走したかのように明後日の方向に飛び去って行った。

 それを見て、ウォルターのパイロットが独り言を言う。

 

『今回はここまでですか。我々五人衆のいいパフォーマンスにはなりましたかね……引き上げましょう』

 

 そしてウォルターから、音にならない口笛が放たれた。

 

* * * * *

 

 引き上げの合図でも出たのだろうか。奴らは撤退をはじめた。ヘルマスターはファイトを切り上げると、まるで軽業師のようにガレキやビルの上を飛び移りながら逃げ出し、グランドガンダムも地面に潜って撤退した。

 

 そして黒いガンダム、デモンガンダム。

 

『いいところだというのに、奴め……。命拾いしたな、ドモン・カッシュ』

『ま、待て!』

 

 ドモンが止めるのも聞かず、デモンガンダムは翼のような装甲を閉じ、光の矢となって離脱していった。

 

「なんとか撃退できましたね……いえ、逃げてくれたといったほうがいいのでしょうか……?」

 

 そうつぶやく俺に、師匠が自嘲するように笑っていわく。

 

『そうじゃな。だがこれで、さらに凶状が増えてしまったか。これで一生、『マスターアジア』の名は名乗れぬな』

「いいじゃないですか。名前を変えれば。いっそ、ハイパーアジアとかグレートアジアとか」

 

 そこに、ドモンからも声がかけられた。

 

『それに、師匠がやったわけではありません。何より、俺にとって師匠は師匠です』

『だいたい、名前が他人がつけるものだぜ。それにとやかく言ったってはじまらないだろ?』

『ははは……こやつらめ』

 

 しかし……運営陣はこの襲撃で、ほとんど死んでしまったし、スタジアムも廃墟になってしまったし、ガンダムファイトはこれからどうなるのだろうか……?

 

 だがこの後、世界は大きな混沌の渦に飲み込まれることを、俺たちは知らされることになるのだった!

 

 それを告げる予兆のように、空は赤く染まっていた。

 




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* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

アナザー五人衆の出現により、世界はまさに、カオス戦争再発の一歩手前の緊張感!
新生デビルガンダム四天王とシャッフル同盟の連合軍は、五人衆の暗躍を粉砕し、カオス戦争勃発を防ぐため、行動を開始します。

そのさなか、中破させられたヘブンズソードはイタリアの町に墜落。
その影響で記憶を失ったミケロ・チャリオット。彼はフェイクDG細胞による破壊衝動と、記憶に残るかつての子分たちの記憶で揺れ動きます! 果たしてどうなるミケロ!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第28話『絆無情に! 襲撃ヘブンズソード』

にReady Go!!

それではみなさん! 7/25 12:00にまたお会いいたしましょう!


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再び世界転戦編
28th Fight『絆無情に。襲来ヘブンズソード』


 どうも、こんにちは。ストーカーでございます。

 さてさて、大変なことになってしまいました。
 『アナザー五人衆』と名乗るガンダムたちの襲撃で、ガンダムファイト第13回大会は中断! 世界は不穏な空気に包まれてしまいました。
 果たしてこれからどうなってしまうのでしょうか?

 さて、今回の相手は、ミケロ・チャリオットの天剣絶刀・ガンダムヘブンズソード。

 それでは! ガンダムファイト、Ready Go!!



 ネオ・ロシアの輸送機ゴルビー。その会議室で、俺たちは次々へと入ってくる情報に顔をしかめていた。

 

「地球上の各地、特にきな臭い地域で、奴らが暴れまわっているみたいですね。これはやはり……」

 

 俺……ジャンヌ・エスプレッソの問いに、師匠……東方不敗・マスターアジアがしかめっ面のまま答える。

 

「うむ。それによって各国の緊張を高めるのが狙いであろうな」

 

 その言葉に、チボデーがショックに染まった顔でいう。

 

「おいおい、待ってくれよ。もしそれがエスカレートしたら……」

「えぇ。コロニー国家間で戦争が起こりかねません。そうなれば、カオス戦争の再来……」

 

 ジョルジュ・ド・サンドの言葉に、ネオ・ロシアのガンダムファイト委員会のナスターシャが棒鞭をびしっと鳴らして言う。

 

「うむ。ネオ・ジャパン、ネオ・アメリカ、ネオ・フランス、ネオ・ロシア、ネオ・チャイナの五大国の間では、五人衆の仕業はそれぞれの国の仕業ではないこと、戦争は起こさないことを確認しているが、影響下にある国同士が戦争をはじめたら、それも果たしてどうなるか……」

 

 そして、ネオ・ロシア代表のアルゴ・ガルスキーが目をつぶり、腕を組んだままで言う。

 

「それに、中には、五人衆の所業を利用して、自国が有利になる策謀を進めようとしている国もあると聞く。緊張が高まり、そんな国が増えて行けば、世界は混沌を深め、カオス戦争の危険性はどんどん高まっていくだろう」

「でしょうね……おそらくはそれが奴らの狙い……。師匠……」

 

 俺、そしてチコ、カンちゃんが目を向けると、師匠は神妙な顔をしてうなずいた。

 

「うむ。カオス戦争が再発することになれば、地球環境はさらに悪化することになってしまう。最悪、地球が死ぬようなことになりかねん。アナザー五人衆。奴らの暗躍は、なんとしても阻止せねばなるまい」

「はい……!」

 

 師匠の言葉に、ドモンも同意してうなずく。

 とそこに、会議室にサイ・サイシーが駆け込んできた!

 

「みんな、大変だぜ! 前の戦いで中破したガンダムヘブンズソードが、ローマに向かってるってよ!」

「ぬぅ! ナスターシャ殿!」

「うむ、追撃するぞ! ゴルビーをローマに向けろ!」

 

 そして俺たちを乗せたゴルビーは、ローマへと進路をとり、全速力で飛んでいくのだった!

 

* * * * *

 

 そのころ、イタリア半島沖。そこに、ローマへ向けて一直線に飛んでいくガンダム――ガンダムヘブンズソードの姿があった。

 

「ウオオォォォォ……! シャッフル……シテンノゥ……!!」

 

 自分に大ダメージを与えたシャッフル同盟と、新生デビルガンダム四天王への呪詛を口にしながら空を切り裂くように進むヘブンズソードの前に、ネオ・イタリア空軍の戦闘機が現れた。

 

 その戦闘機たちからミサイルが放たれる! それを目にしたヘブンズソードのミケロの闘争本能が燃え上がり、それがDG(デビルガンダム)細胞によりさらに増幅される!

 

「ウオオオォォォォ!!」

 

 ヘブンズソードは、中破した状態ながらも、高機動をもってそのミサイルを回避し振り切ると、戦闘機の一機に向けて突撃! その翼の一閃でその戦闘機を一刀両断した! さらに別の方向から飛んできたバルカン砲をかわし、それを撃ってきた戦闘機へと迫る。そして!

 

「ヒャーハハハァッ!!」

 

 脚の爪で戦闘機をわしづかみにすると、それを握りつぶそうとする。そのパワーの前に、最新の合金で作られたボディにひびがはいっていく。

 

「ヒャハアアァァァァ!!」

『う、うわああああ!!』

 

 あわれ、その戦闘機はスクラップになった。

 

* * * * *

 

 俺たちを乗せたゴルビーは、イタリア半島沖。ちょうど、ヘブンズソードがネオ・イタリア空軍を相手に大暴れしている現場に到着した!

 

 すぐさま、ブッドキャリアーに乗ったゴッドガンダムと、ネオ・ロシアのSFS《サブフライトシステム》、レニーンに乗った俺のガンダムオルタセイバーの発進準備がはじまる。

 

『よし、発進準備OKだ。いいか、SFSに乗っての空中戦は難しい。気をつけろ』

「わかりました。いきますよ、ドモン」

『あぁ。ガンダムファイトではないが、あえて言わせてもらう。ガンダムファイト!』

「レディィィィゴオオォォォォ!!」

 

 そして俺とドモンは、ゴルビーから発進していった。

 

 そして数分飛び続け、俺たちはヘブンズソードを視界にとらえた!

 

『行くぞ、ミケロ・チャリオット! はあぁぁぁ!』

『ドモォォォォン!!』

 

 ドモンのゴッドガンダムがブッドキャリアーから跳躍し、ヘブンズソードに切りかかる。だが、その斬撃はかわされ、ゴッドは再びキャリアーに着地した。そして、ドモンの攻撃をかわしたヘブンズソードに、俺のオルタセイバーがマシンキャノンを浴びせる!

 

 マシンキャノンの弾は、フェイクDG細胞を分析した得られた結果を反映した特別製だ。ヘブンズソードなどのフェイクDG細胞製MF(モビルファイター)、アナザー五人衆には少なくない効果がある。少なくとも、通常のMFにマシンキャノンを浴びせたぐらいの効果は。

 

 案の定、マシンキャノンを受けたヘブンズソードはフェイクDG細胞の破片をばらまきながら苦しそうな動きをした。だが、それでも、ヘブンズソードは臆することなく、こちらに突進してきた。やはり、闘争本能が、フェイクDG細胞によって増幅されているのか。

 

『ヒャーハハハァ!』

「くっ……!」

 

 ヘブンズソードの突進をかろうじてかわす。何しろ、SFSに乗っての戦闘は、回避をSFSに頼らざるを得ないから、地上戦と同じようにはいかない。今回も本当にギリギリだった。

 

 そしてそこに、ドモンのゴッドガンダムがマシンキャノンを浴びせる!

 

『ドモン、ドモオォォォン!! グアアアアア!!』

 

 そこでヘブンズソードは制御を失ったのか、周辺を飛び回ったあげく、ローマへと墜落していった。

 急ぎ、俺たちもその後を追う。

 

* * * * *

 

 そして、今の戦いでさらにダメージを負ったガンダムヘブンズソードは、ローマの郊外に墜落していた。機体の外に放り出されたミケロは頭を振りながら、よろよろと立ち上がる。その様子に、先ほどまでの狂気は感じられない。

 

「うぅ……ここは……? 俺は一体いつの間にここに……?」

 

 と、そこに人影がやってくる。大柄で、長髪の男。それはミケロもよく知る人物だった。

 

「ミケロの兄貴! 戻ってきていたんですか!?」

「お前……アンドレか!?」

「えぇ、そうです! もう、ミケロの兄貴。凱旋したんだったら言ってくれたらいいのに!」

「凱旋? なんのことだ?」

「何を言ってるんです。見ましたよ、あのネオ・ノルウェーのファイターとのファイト! とても血沸き肉踊りました!」

「??」

「それはともかく、官憲が来る前にここを離れましょう」

「お、おう……」

 

 そして二人で、その場を離れていく。その中、ミケロは懐かしさを感じながら、何か大切なことを忘れているような気がした。思い出さなければならない、だが思い出してはいけない。そんな気がするのだが……。

 

* * * * *

 

 ミケロを追ってローマの地にやってきた俺とドモンはびっくりした。

 奴は、それまでのことが嘘のように、ギャングをしているじゃないか!

 

「墜落のショックで、記憶を失っているんでしょうか……?」

「かもしれん。だが、悪事をあまりしていないところを見ると、お前とのファイトの影響がまだ少しはあるのかもしれんが」

 

 このまま彼が、五人衆としての記憶を失ったままでいてくれれば、こちらとしてはありがたいところだ。だが……。

 

「でもそうすると、私たちはあまり彼には接触しないほうがいいですね」

「そうだな。俺たちが接触したら、それをきっかけに、奴が再び五人衆に戻ってしまうかもしれん。接触を避けて、遠くから見守っていたほうがいいだろう」

 

 そして俺たちは、ローマの場安の宿屋に部屋を取り、そこを拠点に、彼の様子を探ることにした。

 

* * * * *

 

 ミケロのアジト。そこで、彼の子分の一人、小柄で、紫色の髪型が特徴のレテが、ミケロに話しかけていた。

 

「親分、本当に恐喝はしないんですかい?」

「くどいぞレテ。俺はもう悪事はあまりやりたくねぇんだよ」

 

 そう言うミケロ。アンドレもレテをたしなめる。

 

「親分がそう言ってるんだ。お前ももう、悪事からは卒業しろ」

「本当に親分、どうしたんですか? ドモン・カッシュとファイトしてから、すっかり変わっちまって……」

「ドモン・カッシュ? 誰だそいつは?」

「レテ! これ以上、親分を混乱させるのはやめろ!」

「へいへい、わかったよ! 俺はもう好きにやらせてもらうぜ!」

 

 レテはそう言って部屋を出て行こうとしたところで……。

 

「ぐはぁ!!」

 

 何者かに吹き飛ばされた!

 

「な、何者だ!?」

「見つけたぞ、ミケロ・チャリオット……」

 

* * * * *

 

 ローマに宿を取って数日。このまま何も起きず過ぎ去ってほしいと思っていたが、その希望はかなわず、事態が動き始めた! 謎の男が、ミケロがアジトにしているビルに入っていったのだ。

 

 その男は、漆黒のマントをドモンがしているようにまとい、仮面を身に着け、その表情や素顔は知れない。奴は、ビルの前にいたミケロの手下二人をたやすく蹴散らすと、そのままビルの中に入っていった。

 その時、男が使った技に嫌な予感を覚えた俺は、ドモンへと顔を向けた。

 

「ドモン、もしかして今の奴は……!」

「あぁ。もしかしたら、デモンガンダムのファイターかもしれん! 急ぐぞ!」

「はい!」

 

 そして俺たちは、大急ぎで宿屋の部屋を出た。

 

* * * * *

 

 そしてアジトにたどり着くと……やはり思った通りだった。

 あの男が、ミケロと対峙していたのだ。

 

「な、なんだお前は!? レテをこんな目にあわせて、ただで済むと……!」

 

 だが、ミケロの激昂にも男は動じることなく、冷たい声で言い放った。

 

「今のお前には、この男はもはや関係のないものだ」

「なんだと!? もう許さねぇ、お前など俺のガンダムで……。ガンダム……! 俺の……ガンダムは……」

 

 俺たちが部屋に飛び込んだのはその時だ。いけない! ミケロの記憶が戻ってしまう! そうなれば、彼は再び五人衆になってしまう!

 

「いけません、ミケロ! 思い出しては!」

「お、お前たちは……。俺はお前たちと……いや、俺とお前たちとは初対面……うぅ……」

「……お前たちか。だが、俺の邪魔はさせん。お前はこいつらと遊んでいろ」

 

 黒マントの男がそういうと、レテと言われた小さな男がゆらりと立ち上がった。その表情からは生気が消えうせ、目はうつろになっている。フェイクDG細胞を植え付けられて、ゾンビになっているのか!?

 

 そしてゾンビにされたレテは、俊敏な動きで俺たちに襲い掛かってきた! 俺たちが彼とファイトを繰り広げる中、黒マントの男はさらに一歩、ミケロへと踏み出す。

 

「さぁ、思い出せ。お前はガンダムファイターだった。お前のガンダムはなんだった……?」

 

 ミケロはまるで催眠術にかけられたようにつぶやきはじめる。記憶が呼び起こされようとしているのか!?

 

「俺のガンダムは……ネロスガンダム……いや……ネロスガンダムスクラップ……いや、それでもない……」

「ミケロ、何もない! 思い出すことは何もないんです!」

「くそ、このゾンビ、なかなか手ごわいぞ。このままでは!」

 

 ミケロの表情がどんどん変わっていく。やばい!

 

「俺のガンダムは……ネロスガンダム……いや、違う……俺のガンダムは……俺は……」

「兄貴!?」

「ミケロ!」

「さぁ、思い出せ……」

 

 そしてついに! ミケロの表情が、狂気に満ちたものに変わってしまった!!

 

「そうだぁぁぁぁ! ひゃはははぁ!! 俺様はミケロ・チャリオット! アナザー五人衆様だああぁぁぁ!!」

 

 その叫びとともに、ビルの外に、ヘブンズソードとデモンガンダムが現れた! ミケロと黒マントの男は、窓から飛び降り、それぞれの機体に乗り込んでいく。

 

 そして、ヘブンズソードのカメラアイが邪悪な色に光る。まさか!?

 

「奴は、このビルを叩き壊すつもりです! 早く脱出しましょう! そこのあなたも急いで!」

「わかった!」

「わ、わかった……!」

 

 そして俺たちが部屋を出るのと同時に、部屋はヘブンズソードの爪で叩き壊された!

 

* * * * *

 

 廃ビルから脱出した俺たち。彼が記憶を取り戻してしまったのなら仕方ない。これ以上の奴らの暴虐を阻止しなくては!

 

「来てええぇぇぇぇ! オルタセイバアアァァァァ!!」

「こおおぉぉぉい! ガンダアアァァァァムッッ!!(パチンッ!)」

 

 俺たちは、自分たちのガンダムに乗り込み、デモンガンダム、ヘブンズソードの二体と対峙した。

 

「いくぞ! ガンダムファイトッ!」

「レディーゴー……!」

 

 そのドモンと黒マントの男……デモンガンダムのファイターの叫びとともに、奴らとの戦いははじまった!

 

 ドモンはデモンガンダムに飛び掛かっていく。

 

「ぬあああぁぁぁっ、はぁっ!」

 

 ドモンのゴッドガンダムが振るったビームソードを、デモンガンダムはその拳で受け止める。それでお互いの動きがとまった直後。

 

「うおっ!?」

 

 デモンガンダムの胸部からマシンキャノンから放たれ、ゴッド・ガンダムが吹き飛ばされた!

 

「ドモン!」

「ヨソミヲシテイル暇はナイゼエェェェェ!!」

 

 ドモンのほうに目を向けた俺に、ミケロのヘブンズソードが襲い掛かる! 俺は奴の爪の一撃をかわし、ビームセイバーを振るうも、ヘブンズソードは空に舞い上がり、それを軽くかわしてしまった。

 

 俺のオルタセイバーが両肩のマシンキャノンをかわすも、奴はそれを軽くかわすと、こちらに突っ込んできて体当たり! 吹き飛ばされてしまう。

 

「くぅっ……!」

 

 そして奴がさらに攻撃を加えようと突っ込もうとしたところに。

 

「兄貴!」

 

 ミケロの子分だった大柄の男が、オルタセイバーとヘブンズソードの間に立ちはだかった! なんて無茶な!

 

「もうやめてくれよ兄貴! 一体どうしてしまったんだよ!?」

『……』

 

 子分の男は、ヘブンズソードの恐ろしい姿を前にしても、臆せず説得を続ける。その様子に、ヘブンズソードも俺も動きを止める。

 

「思いだしてくれよ。数年前、兄貴と、主従の契りを交わした時のことを!」

『……』

 

 必死に訴える子分。そして彼は、懐からバンダナを取り出して、さらに説得する。

 

「ほら、見てみれよこれを。あの時これを主従の証だといってくれたじゃねぇか! 頼む、これを見て元に戻ってくれ!」

『……』

 

 そしてまたしばし見つめあう。だが、それを哀しい結果に終わった。

 

『ギャハアアアアア!!』

「ぎゃああああ!!」

 

 ヘブンズソードは、爪を振り下ろし、子分を踏みつぶしてしまったのだ! フェイクDG細胞による洗脳は、絆よりも強いものなのか。

 

「ミケロ・チャリオット! あなたにはもう、絆や情というものはなくなってしまったのですか!?」

 

 俺は激昂し、ビームセイバーで切りかかるが、ヘブンズソードは再び上空へと飛び上がってかわす。

 しかし、そこで俺は見た。

 

 ヘブンズソードの目からオイルが流れ出していくのを。それはフェイクDG細胞に操られ、本意ならずかつての子分を殺めた彼の血の涙だったのかもしれない。

 その涙を流したヘブンズソードが、そのまま上空から俺のオルタセイバーに襲い掛かろうとしてきた、その時!

 

 ビームが放たれ、ヘブンズソードに直撃した! それでも倒すには至らなかったが。

 

 見ると、やっとゴルビーがローマに到着してくれるところだった。

 それを見て、デモンが忌々し気に言う。

 

『増援が来たか……。今回はここまでのようだな……。命拾いしたな、ドモン・カッシュ』

 

 そう吐き捨てると、デモンガンダムは、ガンダムヘブンズソードの背に飛び乗り、飛び去って行った。

 その姿を見送りながら、俺は改めて思う。

 

 人を支配し、悪へと駆り立てるフェイクDG細胞、そんなものは決して許してはならない!

 

 俺は改めて、五人衆の打倒を心に誓うのだった。

 




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* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

中東の某国へと支援物資を運ぶ輸送部隊が消滅! それは、中東に混沌をもたらそうとする、グランドガンダムの仕業でした。
この事態に新生デビルガンダム四天王とシャッフル同盟の連合軍は、輸送部隊を守る作戦を発動します!

果たして彼らは、グランドガンダムの蹂躙から、人々の希望を守り切ることができるのでしょうか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第29話『進撃グランド・ガンダム! 物資輸送隊を守れ!』

にReady Go!!

それではみなさん。7/28 12:00にまたお会いいたしましょう!


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29th Fight『進撃グランド・ガンダム! 物資輸送隊を守れ!』

 どうも、こんにちは。ストーカーでございます。

 さてさて、大変なことになってしまいました。
 『アナザー五人衆』と名乗るガンダムたちの襲撃で、ガンダムファイト第13回大会は中断! 世界はたちまち不穏な空気に包まれることに。

 この先、世界はどうなるのでしょうか? もしや、またカオス戦争がはじまってしまうのでしょうか?

 古巣であるローマに墜落したガンダム・ヘブンズソードのファイター、ミケロ・チャリオットは決勝参加から先の記憶を失い、元のギャングとして時を過ごしていました。
 ですがそこに、あのデモンガンダムのファイターが襲来!

「なんだと!? もう許さねぇ、お前など俺のガンダムで……。ガンダム……! 俺の……ガンダムは……」
「さぁ、思い出せ。お前はガンダムファイターだった。お前のガンダムはなんだった……?」

 彼の手により、ミケロは記憶を取り戻し、五人衆へと戻ってしまったのです!

「そうだぁぁぁぁ! ひゃはははぁ!! 俺様はミケロ・チャリオット! アナザー五人衆様だああぁぁぁ!!」

 さてさて、今回のカードは、アナザー五人衆、獅王争覇グランド・ガンダム。ファイターは、ジェントル・チャップマン。

 それでは! ガンダムファイト、Ready Go!!



 砂漠の中、ネオ・クウェートの直轄地である、オールド・クウェート(地球上にある直轄地は、オールド・〇〇と呼ばれているのである)に向かうトラックとMS(モビルスーツ)の群れ。

 

 今、オールド・クウェートは、人類の営みとガンダムファイトによる地球環境の悪化と、アナザー五人衆の破壊活動により、食料不足にあった。この輸送部隊による援助物資の輸送がなければ、人々は餓えに襲われることになるだろう。

 

 それを知っている彼らは、なんとしてもこの物資をオールド・クウェートに届けようと使命感に燃えていた。しかしそれは、無情にも打ち砕かれる。

 

 彼らの眼前に、何者かが現れたのだ。

 

「な、なんだあれは?」

「き、巨大なMSだ!!」

「もしや、世界各地で暴れまわっている、アナザー五人衆とかいう……?」

 

 隊員たちが話している間に、その巨大な陰はビームを放ち、物資を積んだトラックを爆破してしまった!

 

「と、トラックが!」

「迎撃だ! ただちに迎撃しろ!」

「了解!」

 

 隊長の指令一過、ネオ・クウェートの量産型MS、サバッハが輸送隊の前面に展開し、敵にマシンガンを浴びせる。しかし、その攻撃は相手に大したダメージを与えるができず、巨影はさらに前進を続ける。

 そして再びビームを発射! サバッハの一機が撃ち抜かれて爆散し、それに巻き込まれた数機も擱座してしまう。

 

「ひるむな、反撃しろ!」

「う、うわぁー!!」

 

 だが、輸送部隊の奮闘もむなしく、護衛のサバッハたちは次々と敵の巨大MSに破壊されていき……

 ついに輸送部隊は壊滅した……。

 

* * * * *

 

 そんな事件を起こったのを受け、俺たち新生デビルガンダム四天王と、ドモンたちシャッフル同盟を乗せた、輸送機『ゴルビー』は、その襲撃があったというルートに向かっていた。

 このままにしては、オールド・クウェートの人々が苦しむということで、ネオ・ロシア政府を通して、俺たちに護衛支援の依頼が来たのだ。

 

 ブリッジから、ナスターシャ女史が通信で指示を送ってくる。

 

『まもなく、問題のルートだ。準備はいいか?』

「はい。いつでもOKです」

 

 ナスターシャに俺……ジャンヌ・エスプレッソはそう返答を送る。

 続いてチボデーも返答を送ってきた。

 

『俺のマックスリボルバーもいつでもいいぜ。しかし、輸送隊を潰すとは、ひどいことしやがるぜ。人道支援の物資を積んでたんだろ?』

『そうだ』

 

 ナスターシャはそう短く答えるが、その口調と声色に、義憤が強くにじみ出ていた。

 

『輸送隊を襲えば、この事件をきっかけに、ネオ・クウェートと周辺諸国の関係が悪化しますし、さらにはその周辺諸国間の間でも不信が広まり、深まっていきますからね。それが狙いでしょう』

 

 ジョルジュの考察に、アルゴも同意する。

 

『うむ。中東は、昔も今も不安定できな臭い匂いに満ちた地域だからな。カオス戦争の引き金とするにはぴったりだろう』

 

 そして最後に、ナスターシャ女史が〆た。

 

『その通りだ。そしてそんなことを許すわけにはいかない。諸君らの奮闘に期待する』

「はい!」

 

* * * * *

 

 そして到着すると、既にネオ・クウェートの護衛部隊が、巨大なMSと戦っていた。もうはじまっていたのか!

 ……が……。

 

 サイ・サイシーが言う。

 

『なぁ、あれはどう見てもグランド・ガンダムじゃないんじゃないか?』

『確かにそうですね。細かいところどころか、全てが違っているように見えます』

 

 そこで、アルゴが何かがわかったように言った。

 

『むぅ、あれはネオ・イスラエルの拠点攻略用大型MS、『グレート・メルカバー』のようだ。大きく改造を加えてあるようだが』

 

 ということは……。

 

 

「なるほど、つまり今回の件、真犯人はネオ・イスラエルだったんですね」

 

 確かこの前、アルゴが『五人衆の所業を利用して、策謀を巡らせる国もあらわれる』と言ってたが、これもその一つか。

 

『そのようじゃな。さしづめ、この補給隊を潰して、オールド・クウェートを困窮させ、ネオ・クウェートとの交渉を有利にしようというところじゃろう』

 

 師匠……東方不敗・マスターアジアの考察に、ジョルジュも同意する。

 

『ありそうですね。ニュースでも、ネオ・イスラエルとネオ・クウェートの間には、色々な係争があると聞きますから』

「でも、どんなわけがあろうと、こんなことを許すわけにはいきません!」

 

 俺が怒りに燃えてそう言うと、ナスターシャが棒鞭をびしっと鳴らして言った!

 

『その通りだ! 各機出撃、あの不埒者を叩き、輸送隊を守るのだ!』

「はい!」

『おう!!』

 

 そしてゴルビーから、パラシュートを装着したガンダムたちが降下した!

 

* * * * *

 

 俺たちが輸送隊の前面に着陸すると、さすがにネオ・イスラエルの大型MSはうろたえたようだ。何しろ、戦闘のプロであるガンダムファイターたちがやってきたのだから。

 

 着陸した俺たちに、ナスターシャからの指示が届く。

 

『確認したところ、あの機体にネオ・イスラエルのマークはない。どうやら非正規部隊、使い捨ての奴らのようだ。どうせ潰しても、ネオ・イスラエルは黙殺するだろう。安心して、存分に暴れてこい!』

『OK、任せな!』

『腕が鳴るぜ!』

 

 そう言って、突進していくチボデーとサイ・サイシーを筆頭に、俺たちは『グレート・メルカバー』に襲い掛かった!

 

 フライヤー・シールドⅡに乗ったガンダム・マックスリボルバーが、グレート・メルカバーからの機銃を問題なくかわし、ギガンティック・マグナムで攻撃する。

 

『そーれっ!』

 

 サイ・サイシーのガンダム・ダブルドラゴンは飛び上がると、両腕の竜の顎から炎を放射して浴びせた。

 

『輸送隊には一撃たりとも、当てさせはしませんよ!』

 

 グレート・メルカバーからのミサイルやロケット弾は、ジョルジュのガンダム・ベルサイユがローゼス・ビットのオールレンジ攻撃で防ぎ……。

 

『グラビトン・メガハンマアアァァァァ!!』

『ガトリング・デススピアアアァァァ!!』

 

 アルゴのガンダム・ボルトクラッシュのグラビトン・メガハンマーと、チコのガンダム・ヘルトライデントのガトリング・デススピア―が、巨大MSに炸裂する!

 

 もちろん俺も。

 

「不埒な真似、許しはしませんよ! スプラッシュ・ソードッ!!」

 

 俺たち連合チームの猛攻を受けるネオ・イスラエルのグレート・メルカバー。さすがに無勢に多勢、しかも俺たちガンダムファイター相手では分が悪いと思ったのか、後退をはじめた。だがしかし!

 

 ドグオオォォォォォ!?

 

 どこかからビームが放たれると、それはグレート・メルカバーを貫き、爆散させた。

 ネオ・イスラエルの証拠隠滅!? いや、違う……。これは……!

 

『グオオオォォォォ!!』

 

 そして響く咆哮。これは、間違いない!

 

『おいおい、こいつぁ……』

『本当に来るとは思いませんでしたね……』

 

 戦慄に彩られた、チボデーとジョルジュの声。

 そして現れたのは……。

 

 ベヒーモスを思わせる巨体。四門の巨大な砲門。

 

 そう、獅王争覇グランド・ガンダムが現れたのだ!

 

* * * * *

 

『グオオォォォ! 潰す、潰すぅ……! シャッフル同盟も四天王も、輸送部隊もみんな潰すぅぅぅぅぅ!!』

 

 そう咆哮を放つグランド・ガンダムに、俺たちは戦慄に身体を貫かれながらも身構える。

 

「いいですか、皆さん! 輸送隊を壊滅させるわけにはいきません! 猛攻を仕掛けて、奴の注意をこちらにひきつけましょう!」

『わかった!』

 

 俺がそう声をかけると、ドモンをはじめてとして、みんなから返事がかえってきた。そして、俺を先駆けとして、みんながグランド・ガンダムに突進していく。

 

『喰らいな! ギガンティック・マグナムスペシャル!!』

 

 対フェイクDG(デビルガンダム)細胞弾を装てんした、ガンダム・マックスリボルバーのギガンティック・マグナムスペシャルが火を噴いた! それにより、グランド・ガンダムの装甲が砕かれ、飛び散る。

 

『マシィィィン・キャノンッ!!』

 

 ゴッド・ガンダムのマシンキャノンから放たれた対フェイクDG細胞弾が、グランドガンダムに浴びせられる。

 

『はあっ!』

「えぇいっ!!」

 

 俺のオルタセイバーと、ジョルジュのベルサイユのビーム剣が鮮やかな軌跡を描き、グランド・ガンダムを切り裂く!

 

『酔舞・再現江湖デッドリーウェイブッ!! ……爆発!!』

 

 師匠のデッドリーウェイブが炸裂! グランドが爆炎に包まれる。

 

 サイ・サイシー、アルゴ、ジョルジュ、チコも、おのれの技でグランド・ガンダムに猛攻を加える。

 しかしそれでも、グランド・ガンダムの脚を止めるには至らない。

 

『くそっ、まだ止まらないのかっ……!』

「さすが、あの巨体だけのことはありますね。ですが、こちらに注意をひきつけ、輸送隊がこのエリアを離脱する時間は稼げています。今はとにかく猛攻を浴びせるしか……」

 

 そう、俺とドモンが言葉を交わしたその時!

 

『ウオオオォォォォォォ!!』

 

 グランド・ガンダムが、山をも揺るがすほどの咆哮を放った! その咆哮は衝撃波となって、奴の周囲で攻撃していた俺たちに襲い掛かる!

 

「くぅっ……!」

 

 そしてその衝撃波の直撃を受けた俺たちは吹き飛ばされ、砂漠に倒れ伏してしまう! その俺たちを一瞥すると、グランド・ガンダムは悠々と輸送隊を追おうとする。いけない、このままでは輸送隊が……!

 

「皆さん、大丈夫ですか……?」

『あぁ、俺たち自身はなんとか大丈夫だ。だが、今の衝撃で、制御システムが異常をきたしてしまって、動けん……っ! 師匠はどうですか?』

『わしも同じよ。いくらわしが無事でも、機体がいかれてはな……!』

 

 俺と師匠、チコの機体はDG細胞で強化されているが、それでも制御系は、通常のMF(モビルファイター)と同じである。奴の咆哮でダメージを受けてしまうのは、他のみんなと変わりないのである。

 

 機体の復旧に必死になる俺たち。そうしているうちに、グランド・ガンダムは輸送隊に迫り、俺たちがなんとか立ち上がった時には、もう奴は輸送隊を、あと数歩でその巨砲の射程に収めるってところまで進んでいた!

 いけない! 今からではもう間に合わない!

 

 だが、奴が射程に収めようと一歩を踏み出したその時!

 

『グオォ!?』

 

 突然、グランド・ガンダムが砂に沈んだ!? そしてその機体が、爆発に包まれる!

 そこにとどろく声。

 

『ゲルマン忍法、砂塵爆裂の術!! ……どうにか間に合ったようだな』

 

 どこが聞いたような声が響いた。俺たちがその声のほうを向くと。

 

『シュバルツ!!』

 

 ドモンの声。そう、太陽を背に、シュバルツのガンダム・シュピーゲルが腕を組んで直立していたのだ。彼が罠を張っていてくれたのか! 助かった!

 

 だが、グランド・ガンダムは諦めず、砲門をシュピーゲルに向ける。しかし。

 

『させん!!』

『甘いわっ!!』

 

 シュピーゲルと、一足先に立ち直り、グランド・ガンダムに向かっていた師匠のマスターガンダム(偽装の必要がなくなったので、元の姿に戻しているのだ)が、その一閃で、四門の砲門を一刀両断した!

 そうしているうちに、俺たちも二人に追いつき、さらに輸送隊も無事にこのエリアを抜けることができた。

 

『ぐごおぉ……! 許さぬぅ……! いつか、必ずうぅぅ……! グガアアァァァ……!』

 

 それで作戦の失敗と、自らの不利を悟ったグランド・ガンダムはそのまま砂の中に沈んでいった。すぐさま、ゴルビーのナスターシャから通信が入る。

 

『奴と思われるエネルギー反応は、オールド・クウェートとは逆の方向に向かっていった。どうやら撤退したようだな。ご苦労だった』

 

 なんとか守り切ったか、よかった……。だけど、シュバルツがいなければどうなっていたか……。

 改めて、アナザー五人衆の強大さを思い知った俺たちは、再び護衛任務を再開するべく、輸送部隊のほうへと向かっていったのだった。その強大さへの戦慄と、それでも燃える闘志を胸に秘めながら。

 




ファンアートや感想、募集中です! それと、テテテUCを書いてくださる方も募集しています!

* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

アナザーデビルガンダムを復活させようとする偽マスター・アジアを阻止するべく、新宿に急行する一行。しかしそれは、偽マスター・アジアの罠でした!

彼の仕掛けた奇門遁甲の陣から、彼らが抜けだしたその時! あのデモンガンダムの謎が姿を見せるのです!!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第30話『牙をむく奇門遁甲の陣! 黒いガンダムの謎!』

にReady Go!!

それではみなさん! 7/31 12:00にまたお会いいたしましょう!


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30th Fight『牙をむく奇門遁甲の陣! デモンガンダムの謎!』

 どうも、こんにちは。ストーカーでございます。

 さてさて、大変なことになってしまいました。
 『アナザー五人衆』と名乗るガンダムたちの襲撃で、ガンダムファイト第13回大会は中断! 世界はたちまち不穏な空気に包まれてしまいました。

 この先、世界はどうなるのでしょうか? もしや、またカオス戦争がはじまってしまうのでしょうか?

 輸送隊を護衛することになった、新生デビルガンダム四天王とシャッフル同盟の連合軍。彼らの目の前に現れたのは、獅王争覇・グランドガンダムでした。

『おいおい、こいつぁ……』
『グオオォォォ! 潰す、潰すぅ……! シャッフル同盟も四天王も、輸送部隊もみんな潰すぅぅぅぅぅ!!』

 そのパワーの前に叩きのめされ、あわや輸送部隊壊滅!……かと思われましたが。

『ゲルマン忍法、砂塵爆裂の術!! ……どうにか間に合ったようだな』

 駆け付けてきたシュバルツの働きにより、どうにかグランドガンダムを撃退! 輸送部隊を守り切ることができたのでした。

 ですが、五人衆の蠢動はまだまだ続くのです。

 今回のカードは、偽マスター・アジアのヘルマスターガンダム。そして、謎のファイターの漆黒覇魔、デモンガンダム。

 それでは! ガンダムファイト、Ready Go!!



「何!? 新宿に、偽物の師匠が!?」

 

 輸送機ゴルビーの会議室で、ドモンがナスターシャ女史にそう聞いていた。

 

「あぁ。新宿に、ヘルマスターガンダムがあらわれた。新宿にいる、ネオ・ロシア工作員からの情報だ」

 

 そういうと彼女は、モニタをつけた。そこでは、ネオ・ジャパンのオールド・ジャパン防衛隊のMS(モビルスーツ)と戦っている、ヘルマスターガンダムの姿が映しだされている。

 

 流派東方不敗の技を鮮やかに使いこなす偽マスター・アジアは、たちまち防衛隊を撃滅してしまった。

 

「しかし、なぜ奴は新宿に……まさか!?」

 

 ドモンが衝撃を顔に浮かべて、師匠……東方不敗・マスターアジアのほうを向くと、師匠はうなずいて目を開いた。

 

「うむ。もしかしたら奴は、アナザーデビルガンダムの残骸を見つけ出し、復活させる気なのかもしれぬ」

「そんなのとんでもないぜ! すぐに新宿に向かわなきゃ!」

 

 と、サイ・サイシーが言ったとき、突然、振動が会議室を襲った!

 

「な、なに!?」

「何者かの襲撃か!?」

 

 俺たちは急いで、ブリッジへと向かった。

 

* * * * *

 

 ブリッジに到着すると、そこではネオ・ロシアのスタッフたちや恵雲たちが戸惑った顔を浮かべていた。

 

「どうしたのだ?」

「は、はい。それが、ガンダムシュピーゲルが現れて、あれを機体に……」

 

 スタッフの一人が、機外カメラの映像をモニターに映し出した。そこにあったのは……。

 

「きょ、巨大な矢文……?」

 

 レインが、呆然とそう言った。彼女の言った通り、ゴルビーの機体側面に、MSサイズの矢文が突き刺さっていたのだ。

 

「機体へのダメージは?」

「はい。それほど深く刺さらなかったので、外部装甲の破損ぐらいで済みました」

「シュバルツ、いったいどういうつもりだ!?」

 

 ドモンがそう問いただすと、モニターにシュバルツの姿が現れて、こう返事してきた。

 

「お前たちが新宿に行くというのでな。注意を与えに来ただけだ」

「だからって、ゴルビーにアロー・レターを突き刺すか?」

 

 チボデーがそう呆れながら返す。俺も同じ気持ちだ。風車の弥〇かよ。それとも、かげ〇うのお銀か? ここは水戸〇門の世界じゃないんだぞ、ドモンの兄疑惑があるネオ・ドイツのガンダムファイター。

 と、そこで、モニターに何か地図のようなものが映し出された。これは……新宿の地図か? その地図のいくつかの地点にマークがつけられているが。

 それを見て、ジョルジュが質問する。

 

「これはなんでしょうか?」

「このポイントに、奴らが何か変な建造物を作っているらしい。何かあるのかもしれん。気を付けることだ」

 

 シュバルツの助言にアルゴがうなずいた。そして。

 

「協力感謝する。しかし、お前は一体何者なのだ? 俺たちとの信頼をさらに深いものにするため、ゴルビーにやってきて、その覆面を取るべきではないかと思うのだが」

 

 至極もっともです。しかしそれに、シュバルツは、それまでの渋い態度が消えうせたように慌てふためいた。

 

「そ、それはできぬ! まだ私の正体を明かすべき時ではないのだ! さ、さらばっ!!」

 

 そしてガンダムシュピーゲルは風に乗って姿を消した。逃げたな……。

 一同は少し呆然としていたが、ナスターシャが一足先に気が付いて言葉を発した。

 

「何はともあれ、シュバルツからの助言は頭にとどめておくように。それでは改めて新宿へ向かうぞ!」

「了解!」

 

 そこで俺は、師匠が腕を組んで考えているのに気が付いた。何かあるのだろうか?

 

「師匠、どうしたんですか?」

「うむ、あの建造物の配置、どこかで見覚えがあると思ってな……。なんだったか、むむぅ……」

 

* * * * *

 

 そしてゴルビーは新宿上空までやってきた。

 俺のガンダムオルタセイバー、ドモンのゴッドガンダムをはじめとした8機のガンダムが、パラシュートで新宿へと降下する。

 

「なんか、以前アナザーデビルガンダムで戦った時とは、さらに変わってきていますね……」

『そうだな。何か、おどろおどろしさが増しているというか……』

 

 俺の言葉に、ドモンがそう返してくれる。さらにサイ・サイシーも。

 

『ぶるる、オイラ、もうオールド・エジプトであったようなものはもう嫌だよ……』

 

 そういえばサイ・サイシーは原作では、ネオ・エジプトで、ファラオガンダムⅣ世にひどい目にあわされてきたんだったか。主にホラーな方向で。もしかしてトラウマになったのか?

 

 だが、そんなことを言っている場合ではないようだ。ジョルジュがあることに気づいて注意を促してきた。

 

『皆さん、気を付けてください。計器がどうも怪しい動きをしています』

『俺のマックスリボルバーもだぜ。嫌な予感がするな……』

「罠が仕掛けられているのかもしれません。気を付けて進みましょう」

 

 そして新宿を進むと……。

 

『ふははは、待っていたぞ、愚か者どもよ!』

「!!」

 

 周辺に響く声。声のしたほうを見上げると、そこには東京タワーの頂上に直立した……。

 

「偽東方不敗・マスターアジア!!」

 

 そう、偽マスター・アジアの乗るヘルマスターガンダムが待ち構えていたのだ!

 

『罠にかかりによくぞ参った。存分に貴様らをもてなしてやろう。わしの秘術でな!』

『秘術だと!? 何するつもりだ!?』

 

 チボデーがそう言ったとたん、視界がぐにゃりと歪み、頭がかすみがかかったようになる。

 そして、俺は一瞬、気を失った。

 

* * * * *

 

 そして俺が気が付くと……。

 

「なっ!?」

 

 おどろおどろしい姿をしたデスアーミー……いや、デスアーミーオルタたち6機が乱闘をしているところだった。ど、どういうことだ!?

 

 しかし、戸惑っている暇はないようだ。そのうちの一機がこちらを見つけ、攻撃してきたのだ!

 

「仕方ありませんね。まずはこいつを排除しなくては……!」

 

 そしてビームセイバーを抜いて斬りかかるも……。

 

「なっ!?」

 

 再び俺は、驚きの声をあげた。そのデスアーミーオルタは鋭い動きで、そのビームセイバーの斬撃をさばいたのだ!

 こいつ……強い!?

 

 そして、俺とそいつは激しいファイトを繰り広げた。しかし、その敵の強さは破格で、防ぎ続けるのが精いっぱいだ。

 

 だがそこで変化が起こった。そのデスアーミーオルタが何かに気が付いたようなのだ。

 そいつは構えをとり……あの構えは、流派・東方不敗の?

 

 そして一歩を踏み出した!

 

「かああああぁぁぁぁつ!!」

 

 俺の一瞬の隙を突き、奴の掌底が俺のオルタセイバーを直撃した!! しまった……!?

 

「……?」

 

 しかし、不思議なことに、俺の機体には傷一つなかった。当身だったのか? そして目の前にいたのは……。

 

「し、師匠?」

『ふむ、ようやく正気に戻ったか』

 

 そう、師匠のマスターガンダムだったのだ。ということは今のは……幻術?

 見ると、戦っているのも、デスアーミーオルタではなく、ドモンたちのガンダムだった。

 

『詳しい話はあとじゃ。まずはこいつらを正気に戻さなくてはな』

 

 そして師匠は、残りの6人にカツを入れ、正気に戻したのだった。十二王方牌大車併で。

 

* * * * *

 

『やれやれ、助かったぜ……』

 

とチボデー。

 

『奴の術にまんまとはまってしまうとは……不覚です』

『気にすることはない。わしもかかってしまったのだからな』

 

 しょぼんとするドモンに、師匠がそう声をかける。

 それにしても……。

 

「それにしても、この空間は一体なんなんでしょうか? 明らかに普通の空間とは違うようですが……」

『うむ。おそらくは、奴の術によって作り出された、結界のようなものであろう。みな、ここからは気合を入れて進めよ。少しでも気を緩めれば、さっきみたいに幻術に囚われることになるぞ』

『OK! わかったぜ……! ……』

 

 そう言っておきながら、さっそく幻術にかかって、こっちに襲い掛かりそうになったサイ・サイシーのガンダムダブルドラゴンを、師匠が酔舞・再現江湖デッドリーウェイブで吹き飛ばした。

 

 そして進むわけだが……。

 

『Oh My God……。一体出口はどこだよ……。それに、奴の姿も見えねぇじゃねぇか……』

 

 チボデーが愚痴るのも無理はない。出口あるいは偽師匠の姿を求めて進んでいるのだが、まるで迷宮を進んでいるようで、なかなかそこまでたどり着けないでいるのだ。

 さすがにこの状況を、ジョルジュも危惧しているようだ。

 

『いけませんね……。これが続けば、また気持ちに隙ができてしまうかもしれません。そうなれば、奴の術中にはまることに……』

『むぅ……』

 

 ジョルジュの指摘を受けて、師匠がうなる。

 

 その時、俺はあることに思い出した。師匠に聞いてみることにする。

 

「師匠、もしかしたら、シュバルツが教えてくれたあの情報は、この結界に関係しているのではないでしょうか?」

『あの建造物の配置……? 配置……結界……そうか!』

『何かわかったのですか、師匠!?』

 

 聞いてきたドモンに、師匠はうなずいて答えた。合点が言った様子で。

 

『うむ。これは奇門遁甲の陣よ! やっと思い出したわ』

『キモントンコウ?』

 

 チボデーの疑問には俺が答えた。

 

「はい。中国に古来から伝わる、占いの一種です」

『それを応用して結界を作るのが、『奇門遁甲の陣』じゃ。わしも使えるが、それをここまで再現するとは、さすがわしの偽物よ』

『マスター・アジアのおっちゃん。感心している場合じゃないぜ。どうすればいいんだ?』

 

 サイ・サイシーに突っ込まれ、師匠は咳払いをして返した。

 

『うむ。奴は奇門遁甲に従った配置に要石を置くことで、この結界を生み出しているのであろう。それを破壊すれば、結界を解除することができるはずじゃ』

『だが、その要石はどこに……? あっ! あのシュバルツからの情報か!』

 

 アルゴの言葉に、師匠は力強くうなずいた。

 

『うむ、あの配置は、まさにその奇門遁甲の配置よ。答えは既に知っていたわけじゃな』

「それでは、さっそくそこに行ってみましょう」

 

* * * * *

 

 そして、改めて、あの地図データを呼び出して、それをもとに進んでいると……あった!

 

『やっと見つけたぞ、あれが要石だな!』

 

 ドモンが叫ぶ。確かにそこには、不気味な形をした、水晶のようなものでできた柱があった。

 

『あれを全て壊せば、結界とやらを解けるわけだな! 楽勝だぜ!』

『いえ、楽勝とはいかないようですよ。要だけあって、守護者がいるようです』

 

 ジョルジュの言う通りだ。その柱の前には、テムジンガンダムを模したデスアーミーオルタが立ちはだかっていた。

 

『あれを倒さないと、柱は破壊できないようだな。それじゃ、派手にやってしまおうぜ!』

 

 サイ・サイシーの言葉をきっかけに、俺たちと守護者とのファイトがはじまった!

 

 とはいえ……一対八でかかれば楽勝……とはいかなかったが。

 

 サイ・サイシーのガンダムダブルドラゴンがデスアーミーオルタに飛び掛かった途端、ダブルドラゴンと奴の周囲をバリアが包み込み、他の機体はその中に入ることができなくなったからだ。

 

 どうやら、一対一でないといけないらしい。

 

 とはいえ、結果はサイ・サイシーの勝利。ガンダムダブルドラゴンが極・流星胡蝶剣でデスアーミーオルタを撃破し、それとともに柱も砕け散ったのだった。

 

* * * * *

 

『むむぅ! あの陣を抜け出すとは!!』

 

 そして今。俺たちは、偽マスター・アジアのヘルマスターガンダムの前に立っていた。

 あの後も難なく、俺たちは残りの柱とその守護者を打ち倒し、結界を解除することに成功したのだ。

 

『ふん、あのような術にそう簡単に引っかかると思っておるのか、たわけめ!』

「最初はちゃっかりと引っかかって、同士討ちしていませんでしたか?」

『余計なことは言わんでいい。さて……これまでの借り、一気に返させてもらうぞ、偽物よ!』

 

 そう言うと、師匠は構えをとった。それに応じて、偽マスター・アジアも構える。

 

『ならばこの手でお前たちを仕留めるまで! いでよ、デスアーミーオルタ軍団!』

 

 奴の号令とともに、周囲に多数のデスアーミー・オルタが出現した。俺たちを取り囲むとすぐに戦闘態勢をとる。

 

『皆、この偽物はわし自らが相手をする。お前たちはその小物どもの掃除を頼んだぞ』

「はい!」

『わかりました。師匠こそお気をつけて!』

『うむ。ではいくぞ! ガンダムファイトッ!』

『レデイィィィィ!』

『『ゴオオオォォォォッ!!』』

 

 そしてファイトがはじまった!

 

* * * * *

 

 激戦である。師匠は偽物と一対一のファイト、そして俺たちは沸いてきた多数のデスアーミーオルタと大立ち回りを繰り広げていた。

 

 ドモンが超級覇王電影弾でデスアーミーオルタたちを薙ぎ払っていく。

 

 チコが槍の乱れ突きで、次々と敵を鉄クズへと変えていき、チボデーがロッキー・モードを発動させ、目にもとまらぬ動きで、デスアーミーオルタを葬っていく。

 

 サイ・サイシーがダブルドラゴンの両腕の顎からの炎でデスアーミー・オルタたちを焼き払い、ジョルジュはローゼス・ビットのオールレンジ攻撃で敵を撃ち抜いていった。

 

 そしてアルゴは、敵からの攻撃をものともせず、ギガグラビトン・ハンマーでデスアーミーオルタたちを薙ぎ払っていく。

 

 もちろん俺も。

 

「スプラッシュ・ソード!!」

 

 スプラッシュ・ソードで次々と、デスアーミーオルタたちを貫いていった。

 

 一方の師匠と偽物は激しいバトルを繰り広げていた。決勝開始前時点のデータを反映させているだけあって、師匠と互角の勝負を繰り広げている。すごい。

 

 師匠の無数の突きを、偽物のヘルマスターが見事にさばいていく。

 偽物のアッパーと、師匠の打ち下ろしのパンチがぶつかりあう。

 お互い、打ち合い、さばきあう。

 

 そして、二人の飛び蹴りが交錯した。

 

 だがそこで、突然師匠のマスターガンダムがふらついた。いけない! もしかして、あの病か!?

 そしてその隙を偽マスター・アジアは見逃さなかった!

 

『勝機なり! 受けよ、我が奥義を! ぬああぁぁぁぁぁ!!』

 

 構えを取ったヘルマスターガンダムが金色に輝いていく。まさか!?

 それに気づいた師匠も、また構え、マスターガンダムが金色に染まっていく。そして。

 

『流派・東方不敗が!』

『最終奥義!』

『『石破天驚拳ーーーーー!!』』

 

 マスターとヘルマスター、二体のガンダムが同時に、石破天驚拳を放った! まさか、偽マスター・アジアもあの奥義を撃てるなんて!

 二つの石破天驚拳はぶつかりあい、エネルギーを周囲にまき散らしていく。そのエネルギーに、巻き込まれたデスアーミーオルタたちが塵へと変わっていき、俺たちはこらえながらそのぶつかりあいの結末を見届けることしかできなかった。

 というか、少しでも気を抜けば、俺たちも、この膨大なエネルギーの前に塵になってしまいそうだ。

 

『ほう……わしのこの奥義まで撃てるとはな……ゴホッゴホッ』

 

 そう言いながらせき込む師匠に、偽物がほくそ笑みながら言う。

 

『その通りよ! 言ったはずだ。わしには、お主のデータが使われているとな! 貴様のような半病人など、我が拳で消し去ってくれるわっ!!』

 

 だがそこで、師匠がにやりと笑った。

 

『我が拳で、わしを消し去るだと……たわけがっ!!』

 

 師匠のマスターガンダムの輝きがさらに増した! それにあわせて、師匠の天驚拳が勢いを増し、偽物のそれを圧倒していく!

 

『うおぉ……こ、これは……!?』

『馬鹿め、わしは決勝大会、さらにこれまでの戦いと、さらに死地をくぐってきておる。ただデータを移植されただけのお主とは違うわっ!!』

 

 そしてついに、均衡が崩れた! 二人分の天驚拳がまとめて、偽物のほうに向かっていく。勝ったっ!

 

 しかし。

 

 そこに、何者かのエネルギー波が放たれ、二人分の天驚拳のエネルギー弾を四散させてしまった。それによる衝撃が辺りを襲う!

 そこに響く、どこかで聞いた声。

 

『情けないぞ、偽マスター・アジア。それでも、我らアナザー五人衆か』

『で、デモンガンダム様!!』

 

* * * * *

 

『情けないぞ、偽マスター・アジア。それでも、我らアナザー五人衆か』

『で、デモンガンダム様!!』

 

 サンシャインビルの頂上に、黒いガンダム……デモンガンダムが直立していた。

 

『お、お待ちください。今のは……』

『言い訳はいい。貴様が必ずというのでやらせてみたが、この体たらくか』

 

 でもなんか、偽物とはいえ、師匠がこんなヘコヘコしてるのは奇妙な感覚。

 

『まぁいい。引き上げるぞ』

『は、ははぁ……』

 

 そして引き上げようとする二機。そこに。

 

『待て、逃がさんっ!』

「ドモン!」

 

 ドモンのゴッドガンダムが撤退しようとするデモンガンダムに飛び掛かっていく!

 

『爆熱! ゴオオォォッドッ! フィンガアアアァァァァァ!!』

 

 不意だったため、デモンガンダムはカオシック・フィンガーで迎え撃つことができなかった。

 かろうじてかわすが、ゴッド・フィンガーがデモンガンダムの頭部をかすめ、その一部が小さく爆発を起こす。

 

『やってくれたな……』

 

 それと同時に、デモンガンダムから俺たちに通信が届く。その画像を見て、俺たちは驚愕した!

 砕けた仮面。そこからのぞいたデモンガンダムのファイターの目は……。

 

 ドモンのそれと瓜二つだったからだ!

 ドモンのそれと瓜二つだったからだ!

 ドモンのそれと瓜二つだったからだ!

 

 大切なことなので三回言いました。

 

『お、お前は一体!?』

『何度も言わせるな。お前たちに答えてやる義理はない……!』

 

 そう吐き捨てると、デモンガンダムはゴッドガンダムを蹴り飛ばして吹き飛ばした。そして。

 

『今一度言おう。ドモン・カッシュ。必ずお前の首をもらい受ける。その時まで、せいぜい腕を磨いていろ』

 

 そして二機は、呆然とする俺たちを残し、光となって飛び去っていた。

 

『あいつは……一体……?』

 

 誰もいない新宿に、ドモンの困惑した声が風に紛れて流れて行った。

 

* * * * *

 

 一方そのころ。ネオ・ジャパンコロニーに、一件のメールが届いた。

 

 メールの送り主は……。

 

『コウゾウ・ミカムラ』。

 

 レイン・ミカムラの父親である……。

 




なお今回、ミカムラ博士に名前をつけさせていただきました。もちろん、本作品オリジナルですw

さてさて、ファンアートと感想、募集中です! それと、テテテUCを書いてくださるか方も募集しています!

* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

オールド・ウクライナにガンダムヘブンズソードが襲来しました! その目的は、豊かな穀倉地帯!
それを守ろうとジャンヌたちが奮闘する中、意外なあの人物が、助太刀に現れるのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第31話『穀倉地帯最終防衛線! ヘブンズソード迎撃作戦』

にReady Go!!

それではみなさん。8/3 12:00に、またお会いいたしましょう!


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31th Fight『穀倉地帯絶対防衛線! ヘブンズソード迎撃作戦!!』

 どうも、こんにちは。ストーカーでございます。

 さてさて、大変なことになってしまいました。
 『アナザー五人衆』と名乗るガンダムたちの襲撃で、ガンダムファイト第13回大会は中断! 世界はたちまち不穏な空気に包まれてしまいました。

 この先、世界はどうなるのでしょうか? もしや、またカオス戦争がはじまってしまうのでしょうか?

 新宿に向かったゴルビー一行は、偽マスター・アジアの罠にはまってしまいます。
 あわや同士討ちの危機に見舞われた彼らですが、シュバルツの助けと、東方不敗マスター・アジアの力により、それを切り抜けることができたのです。
 しかし、切り抜けたのもつかの間! デモンガンダムのファイターの顔(の一部)がドモンに酷似していることが明らかになります!

 果たしてデモンガンダムのファイターの正体は!? 謎が謎を呼び、ドモンたちの戦いはまだ続きます。

 さて、今回のカードは、ミケロ・チャリオットの天剣絶刀・ガンダムヘブンズソード。

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



 ネオ・ジャパンコロニーの一室。室温が氷点下に設定されたこの部屋で、兵士数人とある男が、何者かが封印されたカプセルの前に立っている。

 

 男はカラト。ネオ・ジャパンの軍総司令官であり、政府副首相、そして、ネオ・ジャパンのガンダムファイト委員会委員長である。

 

 そのカラト委員長がカプセルのテンキーを操作すると、ぷしゅーと音を出して、カプセルの蓋が開いていった。中から白い冷気があふれ出る。

 そして封印されていた男が、ゆっくりと目を開いた。

 

「私は……カラト委員長……」

「おぉ、目が覚めたか、カッシュ博士。告発により、あなたの冤罪が明らかとなった。あなたと、そしてあなたの息子たちに苦しい思いをさせてきて済まなかった。お詫びを申し上げる」

 

 そう謝罪するカラト委員長に、カッシュ博士と呼ばれた男……ドモン・カッシュの父親、ライゾウ・カッシュ博士が首を振って、穏やかに言葉を紡ぐ。

 

「謝ることはありません。私も、そしてあなた方ネオ・ジャパン政府も、あの男に踊らされていただけなのですから。それより、例の事件があれからどうなったのかを教えていただけませんか? 時と場合によっては、収束のため、私自ら地球に降りなくてはなりません」

「もちろんだ。今、地球では大変なことになっていてな……」

 

* * * * *

 

 そのころ、俺……ジャンヌ・エスプレッソたちを乗せたゴルビーは一路、オールド・ウクライナを目指していた。

 

 ヘブンズソードも、そのオールド・ウクライナを目指して飛行しているという観測結果を得たからだ。しかも、奴一機だけではなく、数十機のデスアーミーオルタを引き連れているという。

 

 オールド・ウクライナには一大穀倉地帯がある。これを焼き払うのが狙いだろう、とナスターシャ女史が推測した。師匠こと東方不敗・マスターアジアも、その推測に同意しておられた。

 これを許せば、世界は食料不足に襲われ、その少なくなった食料を巡って世界がさらに混迷してしまうのは避けられないだろう。

 

 それを防ぐため、俺たちはオールド・ウクライナを目指しているのだ。

 

 そして、いよいよオールド・ウクライナに到着!

 

「皆、間もなくオールド・ウクライナだ。降下準備をはじめてくれ」

「はい!」

 

 だが師匠はなぜか、腕を組んだまま動かない。

 

「師匠?」

「すまぬが、わしはここで一時離脱させてもらう」

「な、なぜですか!?」

 

 ドモンがそう問いただすと、師匠は彼のほうに真摯なまなざしを向けて口を開いた。

 

「お前に、拳を通して託したいものがあるのだ。そのために、身体を癒し、準備を整えておきたい」

「師匠……」

「だが、そこで奴らの襲撃を受けたら……」

 

 師匠の言葉に、チボデーが懸念を述べた。それは俺も考えていたことだ。俺たちとは別行動になったところで、五人衆の襲撃を受けて、やられたり、最悪、奴らに洗脳されたら洒落にならない。いつもの師匠なら大丈夫だと思うが、ゲホゲホ言ってたからな……。万が一の可能性はある。

 

 誰か護衛に着けるべきだが……。

 

 と、そこで。

 

「心配はいらん。話は聞かせてもらった」

「!?」

 

 俺たちがいる会議室に、どこかで聞いたような声が聞こえた。

 周囲を見回していると……いた。物陰に腕を組んで立っているシュバルツが。お前は山〇んか。

 

「私に団体行動は難しいからな。責任をもって、マスター・アジアを護衛させてもらう」

 

 確かにシュバルツがいれば、問題はないだろうな。彼なら裏切ることもないだろうし。

 

「わかりました、それではお任せします。いいですよね、ドモン?」

「あぁ、シュバルツがついていてくれるなら心配ない。よろしく頼んだ」

「あぁ、任せてもらおう。それでは!」

 

 そしてシュバルツは、またしても風に紛れてこの場から消えた。……師匠もろとも。

 

* * * * *

 

 そして、俺たちはゴルビーからパラシュート降下した。そして、それから時を経ずして敵影が視界に入ってくる。

 

 観測通り、ガンダムヘブンズソードと、彼の指揮下の数十機のデスアーミーオルタたちだ。

 奴らも俺たちに気が付いたらしい。まず、デスアーミーオルタたちが背中の翼を切り離し、パラシュート降下してくる。

 

『やっこさん、来やがったぜ!』

「えぇ。師匠がいなくて不安ではありますが、頑張りましょう!」

『おう!』

 

 そして戦いが始まった! 奴らに一機たりとも、ここを突破させるわけにはいかない!

 

『超級! 覇王! 電影弾ーーーー!!』

 

 ドモンが超級覇王電影弾で、多数の敵を薙ぎ払っていく。

 

『サイクロン・パーンチ! バーニング・パーンチ!! うりゃうりゃうりゃ!!』

 

 チボデーのガンダムマックスリボルバーがサイクロンパンチやバーニングパンチを連発し、デスアーミーオルタたちを吹き飛ばしていく。

 

『うりゃあ!!』

 

 サイ・サイシーのガンダムダブルドラゴンは極・流星胡蝶剣で絨毯爆撃を行って撃滅していく。

 

 他、アルゴ、ジョルジュ、チコもおのおのの技で、デスアーミーオルタたちを倒していった。

 

 もちろん俺も。

 

「いきますよ! リントーネード・ブラストオオォォォ!!」

 

 ガンダムオルタセイバーを稲妻の竜巻と化して、デスアーミーオルタたちに突撃! 多くを薙ぎ払っていった。

 

 そこに。

 

『ヒャーハハハァッ!!』

 

 戦っている俺たちの上空をヘブンズソードが通り過ぎた! いけない、この防衛線を突破させるわけには!

 俺はオルタセイバーを大きく跳躍させ、奴に追撃し、後方からマシンキャノンを浴びせた!

 

『ジャンヌウウゥゥゥゥ!!』

 

 今の攻撃で、まずは俺を仕留めるべきと判断したのだろう。奴は上空から、着地した俺に襲い掛かった!

 俺はビームセイバーを抜き、奴を迎え撃とうとした、ところで……!

 

「!! くぅ……!」

 

 突然、胸を鋭い痛みが襲った! さっきのリントーネード・ブラストの反動か!? あまりの痛みに応戦することはおろか、立ち止まることもかなわない。

 

 その俺に、ヘブンズソードが襲い掛かる。その時!

 

* * * * *

 

 『リントーネード・ブラスト』を放った反動による苦痛で動けない俺に、ヘブンズソードがとどめを刺そうと上空から襲い掛かったその時!

 数本の矢がどこからか飛来して、ガンダムヘブンズソードを襲った!

 

『イイトコロヲオオオォォォォ!!』

 

 そう叫び、ヘブンズソードは矢を回避して、一時上空へと退避した。光の矢はそのまま、俺の周囲に突き刺さって消え去る。

 

「……?」

 

 俺が涙で視界がにじむ中、矢が飛んできたほうを見ると、そこにはネオ・ジャパンのマーキングがされたシャトルと、そのシャトルを護衛するように滞空している、シャイニングに似たガンダムが。

 あれは……もしかしてライジング?

 

 シャトルとガンダムはさらに降下してくる。やはり思った通りだ。降りてきたのはまさにライジングガンダム。

 シャイニングガンダムの試作機として開発されたガンダムで、対デビルガンダム用に開発された機体とのこと。武装はビームナギナタとビームボウのみと、そこらへんのガンダムと変わりないが、デビルガンダム用と称するからには特別な機能がついているのだろうか?

 

 だけど、あれには誰が乗ってるんだ? 原作でのファイターだったレインは今、ゴルビーに乗っているんだが。

 

 そんな俺の疑問をよそに、ライジングは次々と、デスアーミーオルタをビーム・ボウで撃ち抜きながら降下してくる。

 そしてライジングは、着陸すると名乗りを上げた。

 

『待たせたな、若者たち! おっさん仮面、ただいま参上したぞ!』

 

 ……。

 

 あのー、その声で俺とドモンには正体もろばれなのですが、おっさん仮面さん。

 

 それはともかく、おっさん仮面のライジングの加勢で、俺たちはさらに勢いを盛り返し敵に猛攻を加えていく。もちろんそのころには俺もだいぶ回復し、戦列に参加。デスアーミーオルタを切り払い、ヘブンズソードにマシンキャノンを浴びせていく。

 

 やがて、デスアーミーオルタもあと数機となり、形勢が不利と判断したヘブンズソードは、それ以上の戦いを断念し、残ったデスアーミーオルタとともに引き上げていくのだった。

 

 と、そこでライジングが膝をついた。

 もしかして、どこか怪我をしたのか!? ……と思ったら。

 

『いたた……やはり病み上がりで無茶したのがいけなかったのか、くたくただし身体中が痛いな。やはり、おっさん仮面でも、無理はダメだな』

 

 ……。

 

* * * * *

 

 さて、シャトルも無事着陸し、中の人たちとおっさん仮面(仮)たちも、俺たちと合流した。

 

 シャトルの乗員のトップは、なんと! ネオ・ジャパンのガンダムファイト委員長、カラト委員長だった。そしてその横に立っているのは……。

 

「……」

 

 入院用のパジャマを着て、白衣を羽織った仮面をつけた胡散臭いおっさん……おっさん仮面。

 

「あの、カラト委員長たちがこちらにきた理由はともかく、なんでそんな仮面をつけているのですか、ライゾウ・カッシュ博士」

「何を言ってるんだ? 私はおっさん仮面だよ。はっはっはっ」

「いや、素直に正体を明かしてくれ父さん。その声で丸わかりなんだから」

 

 実の息子にそう言われて、おっさん仮面は観念したように、仮面に手をかけた。

 

「むぅ……。もう少し謎の男でいたかったのだが」

「いや、その声でばれてるんですって。特にドモンには」

 

 思わずそうツッこんでしまう。

 何はともあれ、おっさん仮面は渋々、仮面を外した。そこから現れた顔は……やはり、ドモンの父親、ライゾウ・カッシュ博士だった。

 

「やっぱり父さんじゃないか。でも、冷凍刑が解かれたんだな? よかった……」

「あぁ。ミカムラ博士からの告発メールで、私の冤罪が明らかになってね」

「お父様が!?」

 

 レインが驚きの声をあげる。

 

 カッシュ博士が語ってくれたところによると、ミカムラ博士の端末から、カラト委員長のもとにメールが届き、アルティメットガンダム強奪は、ウルベとミカムラ博士が仕組んだこと、ウルベがデビルガンダムを何かの目的のために悪用しようとしていることが明かされたという。

 

 当然、それを聞いてレインは衝撃を受ける。

 

「そんな……お父様が……」

 

 そう言ってくずおれるレイン。ここはフォローしてやらないとな。最終形態のコアになられたら大変だし、何より知人が悲しむところはあまり見たくない。

 

「そうふさぎこまないで。お父様は命をかけて、全てを明かして、カッシュ博士の無実を証明してくれたんです。それで彼の罪は許されたと思います。そして、それをあなたが気に掛けすぎることもないと思います」

「ジャンヌ……ありがとう……」

 

 そこでドモンが口を開いた。

 

「それで、ウルベとミカムラのおじさんの行方はわからないのか?」

「うむ。地球に降りたところまではわかっているのだが、そこから消息がぱったりと途絶えてしまったのだ」

 

 それを聞いたアルゴが、俺に顔を向ける。

 

「もしそれが本当だとしたら、奴がアナザーと接触するのはもちろん、本物のデビルガンダムと接触したら大変なことになる。ジャンヌ、お前のほうで、デビルガンダムの現在位置は把握できないのか?」

 

 申し訳ないのだが……。俺は首を振ってこたえた。

 

「ごめんなさい……。さすがにそこまでは把握できません……」

 

 確かに、『ジャンヌ・エスプレッソ』のDG(デビルガンダム)細胞クローンである俺は、本体と精神的にリンクしている。しかしそれはあくまで、互いの見聞きしたものが相手に伝わる、というレベルでしかないのだ。位置や状態がわかる、という便利なものではない。

 それに、俺としても気にかかることがある。そのリンクも最近、不安定になってきているのだ。俺からのリンクを、本体が拒絶して、閉じこもっていることが時々あるような……。

 

「ですが、アルゴが言う通り、ウルベとデビルガンダムの接触は阻止しなければなりません。一刻も早く、二人を見つけなければ」

「わかった。では、ネオ・ジャパンの軍と情報部とで、二人を探すことにしよう。お願いできますかな、カラト委員長」

「了解した。さっそく指示を出しておこう。さて、わしらが地球に降りてきたのは、実はもう一つ理由があるのだ。それについて、君たちの助力を頼みたい」

「なにか?」

 

 ナスターシャ女史がそう尋ねると、カラト委員長は重大なことを口にした!

 

「近々、オールド・イングランドのロンドンで、コロニー国家の代表団が集まり、コロニー国家平和会議が行われることになった。君たちには、ロンドンまでのわしらの護衛と、ロンドンの防衛をお願いしたいのだ」

 




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* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

『コロニー国家平和会議』を守るため、オールド・イングランドのロンドンに向かった一行!

ですがそこに、案の定、グランドガンダムが進撃してきたではありませんか!

果たしてロンドンの運命は!? そしてチャップマンは狂気のまま、ロンドンを蹂躙し、イギリス女王を殺してしまうのでしょうか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第32話、『危うしロンドン! 獅王争覇、女王を潰すか!?』

にReady Go!!

それではみなさん、8/6 12:00に、またお会いいたしましょう!


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32th Fight『危うしロンドン!獅王争覇、女王を潰すか?』

 どうも、こんにちは。ストーカーでございます。

 さてさて、大変なことになってしまいました。
 『アナザー五人衆』と名乗るガンダムたちの襲撃で、ガンダムファイト第13回大会は中断! 世界はたちまち不穏な空気に包まれてしまいました。

 この先、世界はどうなるのでしょうか? もしや、またカオス戦争がはじまってしまうのでしょうか?

 オールド・ウクライナの穀倉地帯を襲い、世界を食糧不足に陥れようとするヘブンズソードを阻止するため、ゴルビー一行はオールド・ウクライナに急行しました。
 そこでヘブンズソード率いる軍団と激闘を行うのですが、そこでジャンヌが窮地に陥ります!

『待たせたな、若者たち! おっさん仮面、ただいま参上したぞ!』

 その時! なんと、ネオ・ジャパンで凍結刑にされていたドモンの父、ライゾウ・カッシュ博士がライジングガンダムで参戦! 彼の働きで、一行は穀倉地帯を守ることができたのでした。

 ですが、まだまだ五人衆との戦いは続くのです。

 今回のカードは、ジェントル・チャップマンの獅王争覇・グランドガンダム。

 それでは! ガンダムファイト、Ready Go!!



 俺たち……俺、ジャンヌ・エスプレッソとチコ・ロドリゲス、カンちゃんの新生デビルガンダム四天王、ドモン、チボデー、ジョルジュ、サイ・サイシー、アルゴのシャッフル同盟……を乗せたゴルビーは、途中ヘブンズソードやウォルターの襲撃を受けたりしながらも、どうにかオールド・イングランドのロンドンに到着することができた。

 

 だが、それもつかの間! 機内に警報が鳴り響くことになる!

 

『グランドガンダム接近! グランドガンダム接近! 各ガンダムは、ただちに出撃準備に入れ! 繰り返す! ……』

 

 ナスターシャ女史の放送とともに、ハンガーが慌ただしくなりだした。

 

「ちっ、コーヒーブレイクもなしでファイトかよ! 忙しいったらありゃしないぜ!」

「まったくです。ティータイムを楽しむ暇ぐらいほしいものですね」

 

 そう愚痴りながら、チボデーとジョルジュが、それぞれのガンダムに走っていく。

 

「……」

 

 アルゴは無言でガンダムボルトクラッシュに乗り込み、機体を起動させる。

 

 そんな中、ふと見ると、ドモンの父親、ライゾウ・カッシュ博士も乗り込む準備を進めていた。おいおい。

 

「あの……もしかして、ライジングに乗り込むつもりなんですか?」

「というか父さん、ファイトなんてできるのか?」

 

 俺とドモンがそう尋ねるも、カッシュ博士は平然と、準備をしながら答えた。

 

「心配はいらん。これでも若いころは、ボクシングや空手で慣らしてきたからな。さすがにこの年だと正面きってのファイトは無理だが、後方からビームボウで援護するぐらいならできる」

「それだと、カッシュ博士のライジングに敵を近づけないように気を付けないといけませんね、ドモン」

「あぁ、もちろんだ」

 

 と、そこで博士がぽつりと。

 

「でも、あのラバースーツを着こむのはとても大変なんだよなぁ……なんとかならんものか」

「……」

「……」

 

 ならどうしてライジングに乗り込む。アルティメットガンダムの開発者。

 

* * * * *

 

 そして俺たちがゴルビーから発進すると、ちょうど敵の大群が向かってくるところだった。

 

 まるでイナゴのように押し寄せるデスアーミーオルタ。その後方にグランドガンダムの巨大な影が見える。

 

『よし、ではさっそく、先制攻撃を仕掛けるとしようか』

 

 カッシュ博士の声。博士のライジングはビームボウを空に向けてかまえる。そして、ビームボウにビームの矢が発生する。

 

光雨掃滅(こううそうめつ)、ライジング・シャワー!!』

 

 ライジングガンダムが上空に光の矢を撃つ。すると、その上空から無数の光の矢が降り注ぎ、デスアーミーオルタを次々と貫いていった。すげぇ! 確かこんな技、原作にはなかったぞ。

 

『まだまだいくぞ。ライジング・シャワー!!』

 

 ライジング・シャワーの二射目が放たれた。再び多くのデスアーミーオルタが空から降り注ぐ光の矢の餌食となった。

 

 それにしても、この博士、ノリノリである。

 

 二射のライジング・シャワーで敵は数を減らしたが、それでもまだまだ多くの数が接近してくる。そして、俺たちとの格闘戦が始まった!

 

『ジャンヌ、お前はオールド・ウクライナの件がある。あまり大技を放たず、無理はしないようにするんだ!』

「はい、わかってます、ドモン!」

 

 そうドモンに返しながら、接近してくるデスアーミーオルタを斬り捨てる。一方のドモンも、ビームソードで敵を一刀両断した。

 

 カッシュ博士は後方から味方を援護したり、俺たちを突破した奴を撃ち抜いたりしてくれている。他のメンバーも奮闘しているようだ。

 

『ガトリング・デススピア―!!』

 

 チコのヘルトライデントの、ガトリング・デススピア―が炸裂! その前方に迫っていた数機のデスアーミーオルタがスクラップと化した。

 

『でかいのをぶちかますぞ。離れていろ!』

『ちょ、ちょっと待ってくれよ、アルゴの兄貴!』

 

 アルゴのガンダムボルトクラッシュが黄金色に輝きはじめた。ゴールド・パイレーツモードを発動させたのだ。そして。

 

『炸裂! ガイアクラッシャアアアアァァァ!!』

『ま、待ってって、うわああああ』

 

 ボルトクラッシュが大地に拳を叩きこむ! すると地面が大きく割れて、多くのデスアーミーオルタを吹き飛ばした! なお、サイ・サイシーのダブルドラゴンは、その地面に足を取られて倒れこんでしまった。そこに、別のデスアーミーオルタが襲い掛かるが……。

 

『そう簡単にやられるかよっ! ダブル・ドラゴンファイヤー!!』

 

 それをトリッキーな動きでかわし、両腕の竜の顎から炎を発して撃破した。

 

『次から次へとキリがないね! マシンガン・パーンチッ!!』

『いきなさい、ローゼス・ビットたち!』

 

 ガンダムマックスリボルバーの豪熱マシンガンパンチが、多くのデスアーミーオルタたちを吹き飛ばし、ジョルジュは、敵のビームをローゼス・リフレクター・ビットで防ぎながら、ローゼス・ビットで敵を撃滅していく。

 

 そんな風に激闘を繰り広げる中、ジョルジュはあることに気が付いた!

 

* * * * *

 

 一息ついたジョルジュが見たもの、それはグランドガンダムが、自分たちの脇を突破して、中心部へと突進するところだった。

 しかもその先にあるのは……!

 

『いけません、あれは……バッキンガム宮殿!』

 

 そう、ネオ・イングランドの女王陛下がいるバッキンガム宮殿だった! ネオ・イングランドの首相や政府はネオ・イングランドコロニーにいるのだが、女王はあえてオールド・イングランドにいるのだ。

 

 何はともあれ、それに気づいたジョルジュは。

 

『すみません、みなさん。前線は頼みます!』

 

 そう言うと、ガンダムヴェルサイユを突撃するグランドガンダムに向けた。

 

『グオオオオオ!!』

 

 そして、グランドガンダムが宮殿に迫ろうというところで!

 

 ガシッ!!

 

 ガンダムヴェルサイユがグランドガンダムを押しとどめた!

 

 グランドガンダムはそのパワーを武器に、ガンダムヴェルサイユを跳ね飛ばし、宮殿を踏みつぶそうとする! だが。

 

『はああああぁぁぁぁ!!』

 

 ジョルジュは力を振り絞り、ガンダムヴェルサイユのジェネレータをフル出力にして、そうはさせじと押しとどめ続ける! 押しとどめながら、ジョルジュはグランドガンダムのチャップマンを説得する。

 

『正気に戻ってください、チャップマン! ネオ・イングランド女王は、あなたたちにとって大切な存在のはずです! それを、あなた自身の手で踏みつぶそうというのですか!?』

『グオオオオオ!!』

 

 しかしチャップマンは、説得が耳に届いていないかのように、さらに前進しようとする。ヴェルサイユが少しずつ後退し始めた。

 

『ぐ、このままでは……!』

『ジョルジュくん、もう少し持ちこたえてくれ!』

『カッシュ博士?』

 

 そう、カッシュ博士のライジングガンダムも追いついてきたのだ。

 

『いくぞ、ライジングに秘められた、対デビルガンダムの秘策! 浄化聖光(じょうかせいこう)フラッシング・アロー!!』

 

 ライジングがビームボウを放つ! それらはグランドガンダムにではなく、その周囲に、まるで取り囲むように突き刺さった! そして、その光の矢に囲まれた空間が清らかな光に包まれる!

 

『う、うぅ……わ、私は……』

『……?』

 

 グランドガンダムが動きを止めた。聞こえてくる声は、いくらか正気を取り戻したかのように聞こえた。

 

『わ、私はなんということをしようと……。……! う、ぐあああああ! 私は、ぐおおおぉぉぉ……!』

 

 そこで再びグランドガンダムが暴れ始めた! だがそれは、暴れるというより、まるで苦しんでいるかのようだ。

 そしてひとしきり暴れると、グランドガンダムは地面に潜り、姿を消した。

 

 他のデスアーミーオルタたちを全滅させたジャンヌが駆け付けてきたのは、ちょうどその時である。

 

* * * * *

 

 戦いが終わり、みんなが帰還したゴルビーのMFハンガー。

 

「ジョルジュ、優男なのにやるじゃないか! あの巨大な奴を正面から受け止めるなんてよ!」

「あの時は、無我夢中でしたから……」

 

 謙遜したように言うジョルジュに、サイ・サイシーも賞賛の言葉を贈る。

 

「それでもたいしたもんだぜ! それに、あのグランドを苦しめたあの攻撃もな!」

「うむ。あれはおそらく、ライジングに積まれた、対デビルガンダム用の切り札と見たが?」

 

 そう聞いてくるアルゴに、カッシュ博士はうなずいて説明をはじめた。

 

「うむ。あれは特殊な電磁場を浴びせることで、DG(デビル)細胞の支配力を弱めるというものだ。あれを使うと、洗脳が弱まり、ファイターの正気を一時的にだが取り戻すことができる」

「すごいじゃないか。それがあれば、他の五人衆やアナザー、そしてデビルにも……」

 

 ドモンがそう感心したかのように言うと、カッシュ博士は険しい顔をして首を振った。

 

「いや。フェイクDG細胞で洗脳された者には有効だが、自らの意志でアナザーの手下になった者には残念ながら有効ではない。それに、有効範囲が決められているから、グランドぐらいの大きさならまだいいが、あまりに大きくなりすぎるとこれまた効果はない。何より、奴らも次回からは対策を講じてくるだろう」

「最後の……しかも、無効になる可能性がある切り札ってところか」

「うむ」

「これからの戦い、一筋縄にはいかないかもしれませんね……」

「そうだな……」

 

 俺が目を向けた空は、この次の戦いの激しさを予言するかのように、どこまでも赤く染まっていた。

 




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* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

いよいよロンドンにて、『コロニー国家平和会議』がはじまりました! これが潰されれば、カオス戦争勃発待ったなし!
ですがそこに、アナザー五人衆が総力戦を仕掛けてきました!

果たしてジャンヌたちは、彼らを退け、会議を守ることができるのでしょうかっ!? いよいよ大詰めです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第33話『総力戦! 狙われたコロニー国家平和会議』

にReady Go!!

それではみなさん、8/9 12:00に、またお会いいたしましょう!


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33th Fight『総力戦! 狙われたコロニー国家平和会議!』

 どうも、こんにちは。ストーカーでございます。

 さてさて、大変なことになってしまいました。
 『アナザー五人衆』と名乗るガンダムたちの襲撃で、ガンダムファイト第13回大会は中断! 世界はたちまち不穏な空気に包まれてしまいました。

 この先、世界はどうなるのでしょうか? もしや、またカオス戦争がはじまってしまうのでしょうか?

 ロンドンに到着した一行。そこに案の定、グランドガンダム率いる軍団が襲来します。
 戦いの末、あわやバッキンガム宮殿が、女王もろともグランドガンダムに押しつぶされようとしましたが、ジョルジュの奮闘とカッシュ博士の策によって、なんとか守り切ることができたのでした。

 ですが、五人衆とのファイトはこれで終わりではないのです。

 今回のカードは、アナザー五人衆。まさに一大決戦。結末はいかに?

 それでは! ガンダムファイト、Ready Go!!



 グランドガンダムとの激闘があった翌日。

 ついに、オールド・イングランドはロンドンの迎賓館で、コロニー国家平和会議が開催された!

 

 各コロニー国家の代表がここに集まり、カオス戦争を回避する手立てを話し合うのだ。

 

 これがうまくいけば、少なくともカオス戦争が起こることはないだろう。なのだが……。

 

「平和会議、開始そうそううまく言っていないようだな」

 

 ロンドン上空に滞空しているゴルビーの会議室で、チボデーがドリンクを飲みながらそう話を振ってきた。それに、腕を組んだままうなずいて、アルゴが言う。

 

「うむ。戦争回避の枠組みを作るうえでの主導権をどの国が握るか、はもちろん、関係がよくない国同士が、国境近くで起こった事件を、五人衆ではなく相手の仕業だと糾弾しあっていることもあるそうだ」

「カラト委員長が議長役をしているが、かなり調停に難航している、って父さんが言ってたな」

 

 ドモンの言葉に、サイ・サイシーが呆れたように言った。

 

「世界がカオス戦争の戦火に包まれるかどうかの瀬戸際だというのに内輪もめなんて、なーに考えてるんだよ、お偉いさんたちは」

 

 サイ・サイシーの愚痴に、チコがなだめるように言う。

 

「会議なんてそんなものだ。目指すものは同じだが、それぞれが求めるものは国によって違うからな。もっとも、俺もサイ・サイシーと同じ意見だが」 

 

 そう言うチコの口調は苦々しい。ガンダム・ファイトに振り回された経緯があるからか、上層部の愚かさに辟易しているのだろうか。

 

 そこに。

 

『ガンダムファイターたちへ! 五人衆が来訪した! ヘブンズソードが北から、グランドが南から、ヘルマスターが西から、そしてデモンガンダムが東から襲来してきている! ただちに迎撃態勢をとれ!』

 

 ナスターシャ女史からの放送が、敵の襲来を教えてくれた。

 

「……来ましたか。行きましょう、みなさん!」

「あぁ。俺はデモンガンダムを迎え撃つ。レイン、お前はこれがはじめてのファイトだが、大丈夫か?」

「えぇ。会議のオブザーバーをしているライゾウおじさまの分まで戦ってみせるわ!」

 

 そう、レインは今回、カッシュ博士の代わりに、ライジングに乗って戦うことになったのだ。そして二人はハンガーに走っていった。

 続いては、チボデー。

 

「それじゃ俺は、ヘブンズソードを迎え撃つぜ。残りの奴らは任せた!」

「オイラも行くよ! 空を飛ぶあいつには、オイラのトリッキーな技が相性いいだろうしな!」

 

 チボデーとサイ・サイシーもハンガーへ。

 

「ならば俺は、グランドを迎え撃とう。あのパワーを抑え込むには、ボルトクラッシュのパワーが必要だろう」

「私もグランドガンダムを迎え撃ちます。私も、やりあえるほどの馬鹿力があるとわかりましたからね。いざという時には役に立つでしょう。残ったヘルマスターガンダムは、ジャンヌとチコに任せてもいいですか?」

 

 ジョルジュの言葉に、俺とチコもうなずく。

 

「はい。私では、師匠と同じ実力を持つ偽物を倒すには力不足かもしれませんが、持ちこたえることぐらいはできます」

「あぁ」

「よし、では行こう!」

 

 そして俺たちも、ハンガーへと走っていった。

 

* * * * *

 

 かくして、ロンドン上空を飛行中のゴルビーから、まずはフライヤーシールドⅡに乗ったマックスリボルバーと、ネオ・ロシアのSFS(サブフライトシステム)、レニーンに乗ったサイ・サイシーのガンダムダブルドラゴンが発進する。

 それから俺たちのガンダムがパラシュート降下し、南、西、東へと散っていった。

 

 決戦がはじまる!!

 

* * * * *

 

「見えたぜ、チボデーの兄貴! あの鳥野郎を先頭に、たくさん来やがる!」

「よし、それじゃお出迎えするとするぜ!」

「よっしゃ!」

 

 そして二機は、北の空から接近してくるヘブンズソード率いる飛行型デスアーミーオルタの軍団に突撃していった。

 

「いきなりいかせてもらうぜ! 豪熱! マシンガン・パーンチっ!!」

 

 マックスリボルバーから、炎に包まれた多くの拳が放たれ、前方のデスアーミーオルタを撃ち抜いていく。そうして切り開かれた先に、ガンダムダブルドラゴンが躍り込む!

 

「そーれっ!」

 

 ドラゴンクロウで、一機の頭部を握りつぶし、

 

「はあっ!」

 

 ビームスピアで薙ぎ払い、

 

「とりゃあぁ!!」

 

 火炎放射で円形に焼き払う!

 

「へへん、どんなもんだい!」

 

 と自信満々に言ったのもつかの間、別のデスアーミーオルタが放ったビームで、乗っていたレニーンを撃墜されてしまう!

 

「うわっと!!」

 

 だが、それでサイ・サイシーを仕留めたと思ったのは甘かった。ダブルドラゴンは、レニーンから飛びのいた数瞬後には変形し、炎の胴体をもった巨大な龍となった! そして、そのデスアーミーオルタを含めた多数の敵機に、炎を浴びせて焼き払った!

 

「調子に乗るからだ! まだ油断するには早いぞ」

「へへ、まだまだこれからだぜ、兄貴!」

 

 そう言葉をかわすところに。

 

「ガンダムゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 ガンダムヘブンズソードが突っ込んできた! 二機はあわててその突撃をかわす。変形して飛行することができるダブルドラゴンに対し、マックスリボルバーはフライヤーシールドⅡを失ってしまったら、後は短時間の滞空しかできない。失うわけにはいかなかった。

 

 マックスリボルバーは、再び突っ込んできたヘブンズソードをジャンプしてかわす。そして、再びフライヤーシールドⅡに着地したところで。

 

「対フェイクDG(デビルガンダム)細胞弾を喰らいな! 遠慮はいらんぜ!」

 

 ギガンティックマグナムで、対フェイクDG細胞弾を放つ。ヘブンズソードはそれを華麗な動きでかわすが、その後方のデスアーミーオルタがそのかわした弾を喰らって爆散した。

 そしてヘブンズソードは、今度はシールドに乗ったマックスリボルバーからは死角となる真下から突撃を仕掛ける! そこに。

 

「させねぇよ!」

 

 サイ・サイシーの炎の龍が突進! 途中でMF(モビルファイター)形態に変形し、そして突進した勢いのまま、ビームスピアを振るった!

 

「オノレエェェェェ!!」

 

 ビームスピアはかわされたが、ヘブンズソードは必殺の一瞬を逃してしまい、この場を一時離脱した。

 

「サンキューな、チビ!」

「へへん、兄貴のほうこそ、安心するのはまだ早かったみたいだな!」

「言ってろ!」

 

 そして、再び戦闘を再開する。

 

* * * * *

 

 一方、ロンドンの南側。

 

「オオオォォォォォォ!!」

 

 そこでは、グランドガンダムが、その巨体とパワーを武器に、ネオ・イングランド軍の攻撃をものともせずに前進していた。目指すは言うまでもな、迎賓館。平和会議の会場である。

 ただ一機だけだが、ネオ・イングランド軍には太刀打ちできないようであった。

 

 そこに、ガンダムヴェルサイユとガンダムボルトクラッシュが駆け付ける。

 

「よし、行くぞ! ジョルジュ、援護を頼むぞ!」

「えぇ、かしこまりました」

「うおおぉぉぉぉ!!」

 

 ボルトクラッシュは突進すると、グランドガンダムの巨体に拳を叩きこんだ! そのパワーに、装甲の一部が砕け散るが、すぐに修復されてしまう。

 

 そして、ボルトクラッシュとグランドガンダムが激突! ボルトクラッシュの巨体が大きく後退する。だがそれでも、アルゴはひるまない!

 

「うおおおおおお!!」

 

 ボルトクラッシュのツインビクトルエンジンをフル稼働。ゴールデン・パイレーツ・モードを発動し、そのパワーでグランドガンダムを受け止める!

 

「いきなさい、ローゼス・ビットたち!」

 

 そこに、ガンダムヴェルサイユがローゼス・ビットを展開! ビットを前面に集結させて一斉砲火! 巨大なビームがグランドに直撃した!

 

「ウオオオォォォォ!!」

 

 だがそれでも、グランドガンダムはびくともしない! グランドはボルトクラッシュがしがみついたまま跳躍して着地! その衝撃で地面が大きく跳ね上がり、ボルトクラッシュを跳ね上げた! そして、地面に叩きつけられる。

 

「ぐぅ……! まさか、ガイアクラッシャーのような攻撃まで使ってくるとは……。この化け物め……!」

 

 そのボルトクラッシュに、グランドガンダムが踏みつぶそうと迫る!

 

「させませんよ! ローゼス・ハリケーン!」

 

 そこにガンダムヴェルサイユがローゼス・ビットをグランドの周囲に展開し、ローゼス・ハリケーンを放つ!

 

「フィナーレ!!」

 

 そして爆発!! グランドガンダムはかなりの損害を受けたが、それでも戦意を失うことはなかった。

 

「くそ、なんてタフな奴だ!」

 

 だが、それでもボルトクラッシュが立ち上がり、態勢を立て直すまでの時間稼ぎにはなったらしい。アルゴは立ち上がり、構えを取り直した。

 

* * * * *

 

 そして、こちらはロンドンの西側。

 

 俺……ジャンヌ・エスプレッソと、チコ・ロドリゲスは今まさに、ヘルマスターガンダムが率いる、デスアーミーオルタ軍団を迎え撃とうとしていた!

 

「私は一気に大将首を狙ってみます。チコ、雑魚の処理と援護をお願いしていいですか?」

「あぁ。戦えないカンちゃんの分まで戦い、見事援護を果たしてやろう。一機たりとも、お前に攻撃はさせない」

「ありがとうございます。いざ!」

 

 そして俺たちは、前進してくる敵の軍団に突進していった!

 

「スプラッシュソード!!」

 

 俺が突進しながら、スプラッシュソードで敵を撃破していき、その後方でチコが、

 

「ガトリング・デススピアー!!」

 

 ガトリング・デススピアーで俺に迫る敵を撃破していく。

 

「よし、ジャンヌ、飛べ!」

「はい!」

 

 チコの言葉に従い、俺はオルタセイバーを高く跳躍させた。そして!

 

「ヘル・バニシング・トルネード!!」

 

 チコのガンダムヘルトライデントが槍を大きく凪ぎ、竜巻を作り出す!

 それは進路上にある敵機を次々とスクラップへと変えていき、師匠の偽物までの道を切り開いた!

 

 その中を俺たちは駆ける。

 

「むぅぅ、きおったか!」

「偽マスター・アジア! 師匠の名を散々騙ったことの使用料、ここで全額払ってもらいますよ!」

「ほざけ!」

 

 そう吠えるとともに、偽物のヘルマスターガンダムが、俺に拳の連打を放ってきた! やはりその攻撃は、本物の師匠と同じく鋭い。

 

「ふははは! どうだ! 貴様は本物には勝てぬだろう。ならばそれと同等の力を持つわしにも勝てぬということだ!」

「やってみなければわかりませんよ! それに!」

「お前と戦っているのはジャンヌだけじゃない!」

 

 俺がビームセイバーで斬撃を放つのを、偽物がかわす。そして反撃を返そうとしたところに、チコがビーム・トライデントで突きを放った!

 

* * * * *

 

 そして、ロンドンの東側。そこでは、ドモンのゴッドガンダムと、謎のファイターのデモンガンダムが対峙していた。

 

「覚悟してもらうぞ、ドモン・カッシュ。今度こそお前の首をいただく」

「そうはいかん! お前を倒し、正体を見せてもらう!」

 

 二機が同時に力強く一歩を踏み出した音が戦いのゴングだ。

 

 ゴッドガンダムがビームソードの居合抜きを放つ! それをデモンは跳躍してかわし、上空から蹴りを見舞う。

 だが、ドモンはそれを明鏡止水の動きでかわし、着地したデモンガンダムに猛攻を加えた。

 

「ぬぅ!?」

 

 だが、今度はドモンが驚く番だった。彼の明鏡止水の境地から放つ、激しくそれでいて隙のない攻撃を、デモンガンダムはことごとくかわし、さばき、弾いていくのだ。

 そしてデモンガンダムが反撃に転じる。それにドモンは再び驚愕した。

 

「こいつの攻撃の筋……俺の攻撃に酷似している!?」

 

 デモンガンダムの攻撃の動き。それは、驚くほどドモンのそれに似ていたのだ。その攻撃をかわしていくドモン。

 そこに、後方からビーム・アローが放たれ、デモンガンダムはそれを飛びのいてかわした。

 

「邪魔をするか。ならば……」

 

 デモンガンダムは再び跳躍し、矢を放った相手……レインのライジングガンダムに飛び掛かった!

 

「きゃあ!」

「レイン!」

 

 デモンガンダムの飛び蹴りを、ドモンのゴッドガンダムはレインをかばい、身を挺して受けた。

 

「ぐぅっ!!」

「ドモン、大丈夫!?」

「あぁ。レインこそ、気をつけろ!」

 

 そして二機で再び構える。だが、それでもデモンは動じなかった。

 

「なかなかやるな。だが、ここにきているのは、俺たち四人だけだと思うか?」

「なに!?」

「ど、ドモン、あれ!」

「なに……な!?」

 

 ドモンはまた驚くことになる。彼らの頭上を、五人衆の最後の一機、ウォルターガンダムが飛び去って行ったのだ。

 

「くそ、こいつらは囮だったのか! レイン、奴を追ってくれ!」

「わ、わかったわ!」

「行かせると思うか……!」

 

 ウォルターを追撃しようとするレインを、背後から攻撃して阻止しようとするデモンガンダムだが……。

 

「はあっ!」

「ぬぅっ!!」

 

 ドモンのゴッドの攻撃により、それを阻止され、吹き飛ばされる。

 

「それはこっちの台詞だ! 行かせはしないぞ!」

「おのれ……」

 

 そして二機は、再び向かい合い、構えあった。

 

* * * * *

 

 ウォルターガンダムは、迎賓館の近くまで到達した。

 ネオ・イギリス軍のMS部隊の対空砲火を苦も無くかわしながら、ビームを撃つ。それによって、数機のMSが撃破された。

 

 その爆発の音は、当然、迎賓館にも聞こえてくる。

 

 中は突然、騒然となった。当然逃げようとする者もいる。

 

「こ、ここは危険だ! 逃げよう!!」

 

 そう言って立ち上がろうとするある国の代表を、カッシュ博士が制する。

 

「お待ちいただきたい! 今外では、ガンダムたちが敵を食い止めるため、奮闘している。彼らは若いながらも、この会議を守り、平和を取り戻すために戦っているのです。しかしあなた方はそれにも関わらず、自分の利権に縛られ、会議を紛糾させているだけ。あまつさえ、敵襲におびえ、逃げようとする始末。それでいいのですか!? あなたたちはガンダムたちに恥ずかしくはないのですか!?」

「う……」

「むぅ……」

 

 カッシュ博士はさらに続ける。

 

「私たちができることは、この会議を成功させ、彼らに報いることだけのはず! それもせず、ただ逃げようとするのは、彼らを裏切ることに他ならないのです!!」

 

 その言葉に打たれた各国代表たちは、再び席についた。

 

「う、うむ、その通りだ……」

「彼らに報いるためにも、この会議を成功させなければ……」

 

* * * * *

 

 ウォルターガンダムのファイターはほくそ笑んでいた。

 

 ほとんどのネオ・イングランドのMSは排除した。これで、もう障害はない。ここから迎賓館を破壊し、会議を吹き飛ばすことなど、造作もない。HBの鉛筆をべきっとへし折るより簡単なことである。

 

「ふふふ、これで終わりですよ……」

 

 そう言って、彼がビームを発射しようとしたところで……。

 

「うおっ!?」

 

 背後からビームの矢が飛来し、ウォルターの左の触手を撃ち抜かれた!

 彼が向き直ると……。

 

「そうはさせないわよ!」

 

 ライジングガンダムがビームボウを構えてこちらに接近してくるところだった!

 

「忌々しいですね! ならば、あなたから先に葬ってあげましょう!」

「その声……ネオ・ホンコンのウォン!?」

 

 レインが驚いている隙に、ウォルターはライジングに体当たりして、吹き飛ばした!

 そして、地面に叩きつけられるライジングの正面に再び滞空する。

 

「さぁ、これでとどめですよ!」

「くっ、こんなところで、やられるもんですか……!」

 

 ウォルターが突進してくる!

 

「あなたのような人は……」

 

 目前に迫ってきた!

 

「女の脚に蹴られて吹き飛ばされなさいっ!!」

 

 そのウォルターに、レインは鋭い蹴りを放つ!

 

「うおぉ~~! お、おのれええぇぇぇぇ!!」

 

 それで吹き飛ばされたウォルターは、これ以上はヤバイと判断したのか、そのまま逃げ去っていくのだった。

 それを見て、他の五人衆も撤退していく。

 

* * * * *

 

 そして、戦いが終わった後。

 

「喜んでくれ。お前たちのおかげで、会議はまとまったよ。これで、カオス戦争の危機はひとまず去った」

「そうか! それはよかった」

 

 カラト委員長の説明に、ドモンがそう喜びの声をあげた。

 俺たちの奮闘が、平和の礎になったのならば、本当に本望だ。

 

「だが、喜んでばかりもいられん。五人衆は引き続き、破壊活動を続けるだろうし、デビルガンダム、そしてウルベの足取りもつかめない」

「まだ、ウルベの行方はつかめないのかい?」

 

 カッシュ博士の懸念を聞き、チボデーがカラト委員長に尋ねる。それに、委員長は申し訳ないような顔をしてこたえた。

 

「うむ。まだつかめない。軍や情報部が血眼になって探しているのだが……」

「そうですか……」

 

 一刻も早く、ウルベを見つけ出してほしい。彼がデビルガンダムを見つけてしまえば、とんでもないことになる。そんな予感がしたからだ。

 

 そこに。

 

 ズズゥン……。

 

「な、なんだ!?」

「て、敵襲かよ!?」

 

 アルゴとサイ・サイシーがそう声をあげる。

 ゴルビーを大きな揺れが襲ったからだ。

 

 そしてブリッジに上がるが……それは杞憂のようだった。

 シュバルツから、巨大矢文が届いたのだ。何度も言っているが、この世界は水〇黄門の世界じゃないんだぞ。

 

 それはともかく。文の内容は……。

 

 ドモンに託す準備ができたから、ネオ・ホンコンのランタオ島に来てほしい、というものだった。

 




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* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

ランタオ島にやってきた一同を待っていたのは、ドモンと東方不敗マスター・アジア。師弟同士の、憎しみも怒りもない、汚れ無きファイトでした。
互いの信念がぶつかりあい、火花が飛び散る中、マスター・アジアはドモンに、自らのシャッフル同盟としての力と、自らの奥義を託すのです!

果たしてドモンはそれらを受け取り、真のキング・オブ・ハートとなることができるのでしょうか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第34話、『真なる伝承! マスター魂の天驚拳!!』

にReady Go!! 次回から一気に疾風怒濤の展開が待ち受けていますよ!

それではみなさん、8/12 12:00にまたお会いいたしましょう!


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34th Fight『真なる伝承! マスター魂の天驚拳!!』

 どうも、こんにちは。ストーカーでございます。

 さてさて、大変なことになってしまいました。
 『アナザー五人衆』と名乗るガンダムたちの襲撃で、ガンダムファイト第13回大会は中断! 世界はたちまち不穏な空気に包まれてしまいました。

 この先、世界はどうなるのでしょうか? もしや、またカオス戦争がはじまってしまうのでしょうか?

 ロンドンにて、ついに『コロニー国家平和会議』が開催されました! しかし、それと同時にアナザー五人衆も総力戦を仕掛けてきたのです!

「偽マスター・アジア! 師匠の名を散々騙ったことの使用料、ここで全額払ってもらいますよ!」

 その攻撃の激しさに、会議は瓦解の危機に瀕しますが……

「お待ちいただきたい! 今外では、ガンダムたちが敵を食い止めるため、奮闘している。彼らは若いながらも、この会議を守り、平和を取り戻すために戦っているのです。しかしあなた方はそれにも関わらず、自分の利権に縛られ、会議を紛糾させているだけ。あまつさえ、敵襲におびえ、逃げようとする始末。それでいいのですか!? あなたたちはガンダムたちに恥ずかしくはないのですか!?」

 ジャンヌたち連合軍の奮闘によってそれは免れ、会議は成功。
 世界はかろうじて、カオス戦争再来の危機から免れたのです。

 ですが、五人衆との戦いはまだ終わりません。

 さて、今回のカードは、ドモン・カッシュのゴッドガンダム対東方不敗マスター・アジアのマスターガンダムの一騎打ち。

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



 俺たち新生デビルガンダム四天王と、ドモンたちシャッフル同盟を乗せたネオ・ロシアの輸送機ゴルビーは、拍子抜けするほどあっさり、ネオ・ホンコンのランタオ島に到着した。

 

 五人衆の襲撃があるかと思ったが、奴らも先の戦いで消耗した戦力を立て直しを図っているのか、襲ってくることはなかったようだ。

 

 そして輸送機を降りた俺たちは、ガンダムに乗ったまま、ランタオ島の火山の頂上を目指した。おそらく師匠は、そこで待っている。

 

 果たして、その通りだった。

 

 頂上に作られた、本来は第13回大会のバトルロイヤル・レースのゴールとなるはずだったリング。

 師匠とシュバルツはそこで、それぞれの機体に乗って待っていた。

 

『……来たか、待っておったぞ』

『師匠! 身体の具合はいいのですか?』

 

 ドモンの問いに、師匠は無論というようにうなずいた。

 

『うむ。万全ではないが、それでも、お主と一戦交えるぐらいなら問題はない。……構えよ、ドモン。戦いを通して託そう。わしの中の、真のキング・オブ・ハートとしての力と、わしの奥義、石破天驚拳を』

『はい!』

『そして、この戦いで聞かせてもらう。お主が至った答えを。その答えが理にかなったものであり、そしてお主がわしに勝った時は……わかっておるな、ジャンヌ』

 

 そう言って、師匠は俺……ジャンヌ・エスプレッソに目を向けた。その目から、師匠の言いたいことを読み取った俺は、それに同意してうなずく。

 

「はい。その時には、ドモンたちの理を受け入れ、人類追放計画を中断させます。そして、デビルガンダムを再び封印しましょう」

『うむ』

『師匠……!』

 

 師匠が再びうなずく。

 俺が人類追放計画を推し進める動機の一つは、師匠とドモンの破滅的、悲劇的な対立をなくすことだ。それは既に叶っている。そのうえで、ドモンたちの理が、俺たちの計画以上に、地球の保全、復活に適したものなら、俺たちの計画に固執する理由は何一つない。

 

『それでは行くぞ、ドモン! 流派・東方不敗はぁ!!』

『王者の風よっ!』

 

 そして、ドモンのゴッドガンダムと、師匠のマスターガンダムが、激しく拳を打ち合わせる。

 

『全新!』

『系列!』

『『天破侠乱!!』』

 

 そして、今一度打ち合わせた拳が、激しい火花を発した!!

 

『『見よ! 東方は赤く燃えているうぅぅぅぅ!!』』

 

 そして再び構えなおす師弟のガンダム。

 

『ガンダムファイトォ!』

『レディーゴオオォォォォ!!』

 

* * * * *

 

 二機のガンダムが激しく拳と蹴りを交差させる。

 師匠とドモンが、突きを、蹴りを放ち、攻撃を防ぎ、かわす。

 

 そして、二人の飛び蹴りが交差した! それだけでリングが崩壊した!

 

『すごい戦いだ……』

 

 そうチコが言う。チボデーがそれにうなずいて口を開く。

 

『あぁ。この戦いのレベルは、もはや俺たちが入れるレベルじゃない……』

『でも、不思議だぜ。二人の拳からは怒りも憎しみも感じないぜ』

 

 サイ・サイシーの言葉に、俺もうなずく。

 

「えぇ、これが本当のガンダムファイトなのかもしれませんね」

 

 戦いはまだ続く。

 

 ドモンの猛攻! ゴッドガンダムが放つすさまじい突きの連打を、師匠のマスターガンダムがさばきつづける。

 そこに蹴り! マスターガンダムは吹き飛ばされたが、蹴りが決まった瞬間、師匠は後ろに飛んで勢いを殺したので、それほどダメージはひどくないようだ。

 

『なんの、まだまだぁ! 十二王方牌大車併!!』

 

 マスターガンダムから、気で作られた十二機のマスターガンダムが放たれ、ゴッドガンダムに同時に飛び蹴りを放った!

 

『ぐわあぁ!!』

 

 そして地面に叩きつけられる。

 

『帰山笑紅塵!! さぁ、立ち上がるがよいドモンよ。お主はまだまだやられる男ではなかろう?』

『はい……!』

『うむ。これぐらいで倒れていては、キング・オブ・ハートの名が泣こうぞ。行くぞ!』

 

 そして師匠のマスターガンダムが、超級覇王電影弾の構えを取った。それに対し、ドモンも同じく超級覇王電影弾の構えをとる。

 二機のガンダムがオーラに包まれた。

 

『行くぞぉ! 超級!』

『覇王!』

『『電影弾ーーーー!!』』

 

 そして二機は同時に、光の竜巻の弾丸となって突撃! ぶつかりあう!!

 その様子を見て、ジョルジュが言う。

 

『聞こえますか?』

 

 アルゴがこたえる。

 

『あぁ』

「互いの想いが響きあい、共鳴しあう拳の響き……」

 

 そして、竜巻が消えて、後には拳をぶつけあう二機のガンダムの姿があった。

 

『むぅ。ドモン、それがお主の答えか』

『はい。過激な方法をとるのではなく、一人ひとりが自分ができる限りのことで、地球を救う行動をとる。確かに一人ひとりのできることは小さいかもしれません。ですが、人々みんなが少しずつでも、それを続ければ、それは大きく、強い力となりえます! そうなれば地球を救うことも可能なはず!!』

 

 そして二機のガンダムが離れ、間合いをとりあった。

 

『よし。お主の答え、確かに受け取った。ではこれが最後の試練じゃ。構えい、ドモン。見事天驚拳で、わしの天驚拳を破ってみせよ!』

 

 そして師匠のマスターガンダムが奥義、石破天驚拳の構えをとった!

 

* * * * *

 

 師匠のマスターガンダムが、天驚拳の構えをとった。その機体が金色のオーラを帯びていく。

 

『構えい、ドモン。お主も、我が流派を学び、大会でわしの天驚拳を見て、自らもこれを放てるようになっているであろう? 見事、天驚拳を放ち、わしの天驚拳に打ち勝ち、勝利と、キング・オブ・ハートの真の力をつかみとるがよい』

『……はい!』

 

 そしてドモンも構える。やはりその機体も、黄金に光輝いていく。

 

『いくぞぉ!』

 

 師匠が吠える。それに対してドモンも応える。

 

『応! 流派!』

『東方不敗がぁ!』

『最終!』

『奥義!』

 

 二人の輝きはどんどん増していき、ついにはランタオ島全体が金色の光に包まれた!

 そして!!

 

『『石破天驚拳ーーーーーー!!』』

 

 叫びと共に、二人の機体から巨大という言葉では生ぬるいビームの塊が放たれた! そして激突!!

 その衝撃で、周辺の大木がなぎ倒され、岩が吹き飛ばされていく!

 

「チボデー!」

 

 チボデーギャルズから避難するように声がかけられるが、チボデーも、そして俺たちもここから逃げ出すつもりはない。

 なぜなら!

 

『俺たちはここを動かねえ!』

 

 アルゴが続ける。

 

『最後まで見届ける!』

 

 俺が言う。

 

『なぜならこれは!』

 

 最後にジョルジュが叫ぶ。

 

『私たち、いえ、地球に関わる者たち全てが見届けるべきものだから!!』

 

 技同士の打ち合いは、やはり、流派の熟達者で、天驚拳についても十分に使いこなせる師匠に対して、今使ったばかりのドモンは分が悪いようだ。少しずつ後ずさっていく。

 そのドモンに、師匠の檄が届く。

 

『どうした、そこまでか? お主の力など、そこまでのものにすぎぬか!? それでもわしの弟子か、キング・オブ・ハートかぁ!!』

 

 師匠が力をこめ、さらに押していく。

 

『足を踏ん張り、腰を入れぬか! そんなことでは、わしを超え、地球を救うことなど、夢のまた夢ぞ! この馬鹿弟子がぁ!!』

 

 ついに、ドモンのゴッドガンダムが膝をついた! 万事休すか!?

 

『何をしておる!? 自ら膝をつくなど、勝負を捨てたもののすることぞぉ!!』

 

 ついに師匠の天驚拳がドモンのゴッドガンダムに……!

 

 しかし。

 

 よく見ると。

 

 天驚拳はドモンを撃破しようとしたのではなかった。原作の時と同じように、ゴッドガンダムを下から持ち上げ、立たせようとしていたのだ。

 本当に師匠馬鹿な人だ……。知らずのうちに、俺の目から一筋、涙が流れた。

 

『さぁ、立て! 立ってみせぇい!!』

『……はい! 師匠の檄、しかと受け取りました! 今こそ全力を振り絞り、師匠を超えてみせます! はああぁぁぁ!!』

 

 そして再び立ち上がったドモンが気合を入れなおし、天驚拳で、師匠のそれを逆に押し返していく。そして。

 

『はあああぁぁぁぁ!!』

『ぬおおおぉぉぉぉ!!』

 

 そして爆発! あたりは爆炎に包まれた!!

 

* * * * *

 

 爆炎がおさまった。その後には、拳を突き出したままのゴッドガンダムとマスターガンダムが構えをとったままでいる。

 

 やがて、マスターガンダムが膝をついた。それと同時に、背中のウィングバインダーが砕け散る。

 

『見事じゃ……今こそ、お前は本物のキング・オブ・ハートぞ……』

 

 そして自らの手をかざす師匠。その手にはキング・オブ・ハートの紋章が光り輝いている。その紋章はさらに強く輝いたかと思うと、静かに消えていった。ドモンに完全に受け継がれたのだろうか。

 

 安堵が辺りを包む。しかし!

 

『ごふっ!!』

 

 師匠が突然、口を押え吐血した!! もしかして、ついに師匠の身体に限界が!?

 

『師匠!』

 

 駆け寄るドモンに、師匠は苦笑しながら返した。その苦笑に無念さをにじませて。

 

『わしもこれで限界か……。もう少し先を……お主が大成する様を、地球がその緑を取り戻す姿を見届けたかったが……それも許されぬか……。無念じゃ……』

『師匠……! どうかしっかりしてください……!』

 

 だが、その二人を引き裂くような声が、戦慄と衝撃とともにとどろいた!

 

『ふん……茶番にしては上出来だったぞ。マスター・アジア、ドモン・カッシュ!』

『弱ったじじいを殺すなど、羽虫を潰すよりも簡単なこと! 今こそ、おいぼれを倒し、わしが真のマスター・アジアとなってくれるわ!』

『みんな切り裂いてやるぜえぇぇぇ!!』

『今度こそ、お前たち全てを蹂躙してくれるうううぅぅぅぅ!!』

『さぁ、いよいよ最後の時ですよ!』

 

 夕日をバックに、アナザー五人衆が現れたのだ!!

 




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* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!
マスター・アジアの病臥したその時を狙い現れた、アナザー五人衆!
さらに強化された五人衆のパワーに、連合軍は大苦戦!

あわや、その毒牙がマスター・アジアにかかろうとしたその時!
ついにシュバルツの正体が明らかとなるのです!!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第35話『シュバルツの正体! ついに訪れた再会!!』

にReady Go!!

それではみなさん、また8/15 12:00に、またお会いいたしましょう!


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35th Fight『シュバルツの正体! ついに訪れた再会!!』

 どうも、こんにちは。ストーカーでございます。

 さてさて、大変なことになってしまいました。
 『アナザー五人衆』と名乗るガンダムたちの襲撃で、ガンダムファイト第13回大会は中断! 世界はたちまち不穏な空気に包まれてしまいました。

 この先、世界はどうなるのでしょうか?

 13回大会の決勝、サバイバルレースの会場となるはずだったランタオ島にやってきたドモン・カッシュ。
 彼はそこで待っていた東方不敗・マスターアジアに対し、真のキング・オブ・ハートとしての力と自らの奥義、そして人類排除計画を賭けた勝負を挑みます。

『そして、この戦いで聞かせてもらう。お主が至った答えを。その答えが理にかなったものであり、そしてお主がわしに勝った時は……」

 憎しみも怒りもない、ただ武闘家としての透き通った戦いの末、ついにドモンは師匠を打ち倒すことに成功します。

『足を踏ん張り、腰を入れぬか! そんなことでは、わしを超え、地球を救うことなど、夢のまた夢ぞ! この馬鹿弟子がぁ!!』

『さぁ、立て! 立ってみせぇい!!』
『……はい! 師匠の檄、しかと受け取りました! 今こそ全力を振り絞り、師匠を超えてみせます! はああぁぁぁ!!』

 ですがそこに! あのアナザー五人衆が現れたのです!

『ふん……茶番にしては上出来だったぞ。マスター・アジア、ドモン・カッシュ!』

 さて、今回のカードは、そのアナザー五人衆。果たして戦いの結果は?

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



『ふん……茶番にしては上出来だったぞ。マスター・アジア、ドモン・カッシュ!』

『弱ったじじいを殺すなど、羽虫を潰すよりも簡単なこと! 今こそ、おいぼれを倒し、わしが真のマスター・アジアとなってくれるわ!』

『みんな切り裂いてやるぜえぇぇぇ!!』

『今度こそ、お前たち全てを蹂躙してくれるうううぅぅぅぅ!!』

『さぁ、いよいよ最後の時ですよ!』

 

 ドモンと師匠……東方不敗・マスターアジアの対決が終わったのもつかの間、師匠が吐血して倒れたそのタイミングを合わせたように、アナザー五人衆が現れた! もしや、この時を狙っていたのか!?

 

『ここをお前たちの死地にしてやろう。はあっ!!』

 

 デモンガンダムが構えると、その手から光弾が放たれ、周辺を焼き尽くし始めた! それを合図に、五人衆のガンダムたちが襲い掛かってきた!

 

 偽東方不敗マスター・アジアは、デモンガンダムとともに、ドモンのゴッドガンダムと激しい戦いを繰り広げ、チャップマンのグランドガンダムは、前方にあるものを踏みつぶしガレキにしながらこちらに迫る!

 

 ミケロのヘブンズソードは、以前よりもさらに素早い動きで宙を舞いながら、その羽と爪で全てを切り裂き、引き裂き、ウォルターガンダムはビームで周囲のものを吹き飛ばす。

 

 その暴威、パワーは、前に戦った時以上だ!

 

『くそっ、奴らめ……!』

『みんな、今は態勢を立て直すことと、マスター・アジアを安全なところに連れて行くのが先だ! 奴らを迎え撃ちながら後退するのだ!』

 

 シュバルツの言葉に、サイ・サイシーが愚痴をぶつける。

 

『こんなとんでもない奴ら相手に、無茶ぶりしてくれるよ! でも、わかったよ!』

 

 そして撤退しながら、奴らに応戦するが、奴らがパワーアップしたのと、それとみんなが師匠の昏倒で動揺しているのか、かなり苦戦しているようだ。

 

 その戦いの中、チボデーが言う。

 

『なんて強さだ。このままでは、ゴルビーまでもたないぜ!』

 

 そこに現れたのは……。

 

『私に任せてもらおう!』

『父さん!』

 

 そう、ライジングガンダムに乗った、ライゾウ・カッシュ博士だ!

 

『いくぞ。光雨掃滅(こううそうめつ)、ライジング・シャワー!!』

 

 カッシュ博士のライジング・シャワーが、五人衆に降り注ぎ、その脚を止めた!

 

『もう一発いくぞ、ライジング・シャワー!!』

 

 さらにライジング・シャワーが炸裂! みんなが撤退する時間をさらに稼ぐ! そして。

 

『これでおしまいだ! 浄化聖光(じょうかせいこう)フラッシング・アロー!!』

 

 フラッシング・アローを放つ! さすがに既に対策をしてあるのか、彼らは少しの間ひるんだぐらいだったが、それでも、なんとか俺たちはゴルビーの近くまで戻ることができたのだった。

 

 しかし! これでなんとかなった……と思うのは、まだ早かった!

 

* * * * *

 

 撤退中の俺たち。カッシュ博士の援護のおかげもあり、もう少しでゴルビーにたどり着ける!というところで。

 

『逃がさん、ドモン・カッシュ!』

『デモンガンダム!!』

 

 上空からデモンガンダムが急襲してきた!

 

「邪魔はさせません! スプラッシュ・ソード!!」

『女は引っ込んでいろ!』

「きゃあっ!!」

 

 スプラッシュソードで迎撃するも、なんとデモンガンダムは、そのスプラッシュソードの刺突を蹴りではねのけ、そのまま俺のガンダム・オルタセイバーにキックを炸裂させた! その威力に、俺は吹き飛ばされてしまう!

 

『今度こそ、お前の首をもらう! カオシック・フィンガー!!』

『ゴッド・フィンガー!!』

 

 いつぞやのように、カオシック・フィンガーとゴッド・フィンガーがぶつかりあう! 激しいスパークが周囲を白く染めた。

 

『お前は何者だ! なぜ、そこまで俺をつけ狙う!』

『ふ……いいだろう。今日でお前は俺にやられるのだからな!』

 

 そう言うと、俺たちの機体のスクリーンに、奴の顔が映し出された! それを見て、俺たちは愕然とする。なぜならその顔は……。

 

『こ、この顔は……俺!?』

『その通りだ。俺は、シャドウ・ドモン。お前の細胞とDG細胞とを掛け合わせて生まれたクローンに、お前の中の邪心をコピーして生まれた存在だ』

『俺の中の邪心だと!?』

 

 そうドモンに聞き返されたシャドウ・ドモンの目が赤く光る。

 

『そうだ。お前は感じていたのではないか? お前とは違い、あらゆることに長けた兄、キョウジ・カッシュに対する嫉妬を?』

『ち、違う、そんなことは……!』

 

 その言葉が、ドモンに動揺をもたらしたのか、ゴッド・フィンガーの光が弱まり、デモンガンダムがさらにゴッドガンダムを押す。

 

『思っていたのではないのか、兄なんていなければいいと』

『そ、そんなことはないっ……!』

 

 ドモンのゴッドガンダムが、ついに膝をついてしまう。それが、ドモンの心が折れかけていることの証だった。

 

『さぁ、俺に首をとられるがいい。お前の全てを喰らった時、俺はお前に成り代わり、ドモン・カッシュとなるのだ!』

 

 万事休す……その時!

 

* * * * *

 

 ドモンが今まさに敗れようとした、その時!

 

『折れるな、ドモン! そんな偽物の言葉に屈してはならん!』

 

 シュバルツの声があたりに響いた! みんなが声がしたほうを向くと、そこには……。

 ゴルビーの機体の上に乗り、腕を組んで直立するガンダムシュピーゲルの姿があった!

 

『シュバルツ!』

『ふん、何をたわごとを』

 

 だが、シャドウの言葉に、シュバルツは動ぜず、彼を厳しく断じた!

 

『黙れ! 誰の心にも邪心はあるもの! それは変えることはできん! ある偉大な漫画家が言っていた。『誰だって叩けばほこりは出る』と!! だがそれに引きずられるだけが人間ではない! その邪心を受け入れつつも抑え、善き生を貫くことができる心の力があるのだ、それが人! 人の偉大さなのだ!』

 

 そして目を閉じ、くわっと開いた!!

 

『そして私は……ドモンを、弟を、お前が持ち、騙る邪心に負けるような男に、育てた覚えはないっっ!!』

 

 まるで、集中線が入っていそうな形相で言い放つ。

 おおおおおお!! なんてすばらしい演説! 俺は思わず、心の中で拍手をしてしまった。とりあえず、育てたのはシュバルツじゃなくて両親だろう、というツッコミはわきに置いておこう。

 

 少しの沈黙。そこで、ドモンがおそるおそる口を開いた。

 

『え、お、弟……? シュバルツ、今、俺のことを弟と……?』

『はっ!!』

『そういえば、キラルに襲われた時も、確か自分のことを兄と……?』

 

 またそこで沈黙。まぁ、原作を見ていた俺からすると、シュバルツの正体がキョウジ(正確にはそのクローンだが)というのは、周知の事実ではあるのだが。とはいえ、この世界のキョウジは、シュバルツを生み出すことはできないはずなんだがなぁ。

 

 と、そこで俺たちのスクリーンに映し出されたシュバルツが、覆面に手をかけた!

 

『えぇい、仕方あるまい! 今ここで正体を明かしてやろう!』

 

 そして、覆面を取った。その素顔は……!

 

『に、兄さん……!?』

 

 そう、キョウジでした。俺にはわかっていた……けど、どういうことだ? キョウジのクローンとしてのシュバルツは存在しえないはずなんだが。

 そしてドモンはやはり、シュバルツの正体が、カッシュ博士の証言により誤解が解けたとはいえ、それまで憎み、追っていたキョウジだったことに、ショックを隠し切れない様子だった。その証拠に、今にもシャドウのカオシックフィンガーが、ゴッドを捉えようとしている。

 

『ど、どういうことだ……!? 兄さんはデビルガンダムのコアになっていたはず……!?』

「……ごめんなさい、ドモン。それは過去の話。今、デビルガンダムのコアになっているのは私……正確には私の本体なんです」

『なんと!?』

「細かいことは後にして……」

『うむ。とりあえず、弟から離れてもらおうか、偽物よっ!!』

 

 俺のスプラッシュ・ソードと、シュバルツのクナイ攻撃が同時に放たれた! それを受け、デモンが一時ドモンから離れる。

 

* * * * *

 

 デモンがゴッドガンダムから離れたところで、他の五人衆が追い付いてきた。せっかくここまで撤退してきたのに、これはきついな……。

 

 だが、シュピーゲルのシュバルツ……いや、キョウジは、不敵に言った。

 

『いくぞ、ドモン。私たち兄弟の力のパワーは、こいつらには負けぬということを見せてやるのだ!』

『はい!』

 

 そして、二人が気を高めあい、その機体が黄金に染まる。その気のパワーに、五人衆はたじろぎ、手を出せずにいる。

 

『俺のこの手が真っ赤に燃える!』

『兄弟の絆示せと!』

『轟き叫ぶっ!!』

『『ぬおおおおぉぉぉぉ!!』』

 

 そして二機がともに、ゴッドフィンガーの態勢をとった! 二機の輝きはもう最高潮にまで達している!!

 

『爆裂!』

『カッシュ!』

『『兄弟拳ーーーーーーーー!!』』

 

 

 そして、二機から石破天驚拳に匹敵するほどの気の塊が放たれた!!

 

『そのようなもので私は砕けぬうぅぅぅぅぅ!!』

 

 そして、そのカッシュ兄弟拳から、他の五人衆を守ろうと、グランドガンダムが立ちはだかる! そして直撃!!

 激しい爆炎が辺りを襲う!!

 

 さすがグランドガンダムと言うべきか。大破させたものの、倒すまでには至らなかったようだ。しかし、グランドを大破まで追い込むとは、なんという威力!!

 

 その威力に、五人衆はみな、戦慄している。

 

『な、なんという威力。おのれぇ……!』

『ここはひきあげるぞ。次に相まみえた時こそ、必ずお前の全てをもらい受けるぞ、ドモン・カッシュ』

 

 そして五人衆はひき上げて言った。

 

* * * * *

 

 五人衆をかろうじて退けた俺たちは、ゴルビーのメディカルルームにいた。片隅のメディカルカプセルの中には、師匠がコールドスリープされている。

 

「一体どういうことなんだ? 教えてくれ」

 

 ドモンの問いに、キョウジと俺は一緒にうなずく。

 

「はい。先ほども話した通り、今、デビルガンダムのコアになっているのは、私の本体です。私の本体は、師匠の推し進める人類絶滅計画を、追放計画にシフトし、それを遂行するために、キョウジさんに成り代わり、デビルガンダムのコアとなりました。私は、その私の本体が、DG(デビルガンダム)細胞で生み出したクローン。彼女の分身のような存在です」

 

 そして、俺の後を継いで、キョウジが口を開く。

 

「うむ。そして私はデビルガンダムから排出され、ジャンヌを新たなコアに戴いたデビルはその場から消えたわけだが、それでも私には、そのデビルガンダムから分離したDG細胞がいくらか残って付着していた。それは私に侵食し、DG細胞の怪物に作り変えようとした。だがそれは私にとって、千載一遇の機会でもあったのだ」

「も、もしかして……!?」

 

 俺は思わず、そう言葉をこぼしてしまう。そして彼の語ったことは、俺の思っていた通りだった。

 

「私は意志の力で、そのDG細胞たちを制御し返し、支配し返した。そればかりではなく、意志の力をもって、DG細胞を、アルティメット細胞に昇華し、さらにこの身体をアルティメット細胞のそれにしたのだ」

「な、なんだってーーーーーー!?」

 

 俺がそう叫んでしまうのを、誰も責められまい。それはまさに、スパ〇ボTにおいて、師匠がやったこと。それをキョウジがやってしまうなんて、誰が想像できようか。

 

「そして力と技を得た私は、ドモンの力となるべく、覆面をかぶり、シュバルツ・ブルーダーと名乗ったのだ」

「そうだったのか……済まない、兄さん。あなたを憎んでしまって……」

「気にするな、ドモン。悪いのはウルベだ。それに、そのおかげで、こうして成長したお前と再会できたのだからな。たくましくなったお前と会えてうれしいぞ、弟よ」

 

 そしてしばし見つめあう二人。

 

「兄さん!」

「ドモン!」

「兄さん!」

「ドモン!」

「兄さん!」

「ドモン!」

 

 と、そこに!

 

「い、いかん!」

 

 師匠の様子を見ていたカッシュ博士が声をあげた。な、なにかあったのか!?

 

「どうかしたのか、父さん!?」

「マスター・アジアの生体レベルが低下していく。このままでは死んでしまうぞ!」

 

 なんだってーーーーーー!?

 




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* 次回予告 *

今にも、命が燃え尽きようとする東方不敗・マスターアジア! しかもそこに、五人衆が再び襲い掛かります!
この危機に、キョウジ・カッシュは一つの秘策を提示します。

果たして、その秘策はうまくいくのでしょうか!?
そして、ドモンたちは五人衆を倒すことができるのか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第36話『師匠復活! 決戦デスメギドガンダム』

にReady Go!!

それではみなさん。8/18 12:00にまたお会いいたしましょう!


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最終章
36th Fight 『師匠復活! 決戦デスメギドガンダム』


 どうもこんにちは、ストーカーです。
 さて、この話も、いよいよ終局を迎えつつあります。

 果たして、ジャンヌの進む道がどこにいきつくのか、しかと見届けることといたしましょう。

 さて、マスター・アジアの昏倒と、それと時を同じくした五人衆の襲撃で、ピンチに陥ったジャンヌたち!
 その時、シュバルツが自らの正体を明かしました! 彼の正体はキョウジ・カッシュ! ドモン・カッシュの兄だったのです。

『そして私は……ドモンを、弟を、お前が持ち、騙る邪心に負けるような男に、育てた覚えはないっっ!!』

 彼とドモンの協力技により、一矢を報い、五人衆を撃退することに成功したのでした。

 さて、今回の相手も、アナザー五人衆。ですが、さらに今回は何かあるようですよ。

 それでは、ガンダムファイト! Ready Go!!



 兄弟再会という感動的な場に、切羽詰まったライゾウ・カッシュ博士の声が響く。

 

「マスター・アジアの生体レベルが低下していく。このままでは死んでしまうぞ!」

 

 な、なんだってーーーー!?

 感動的な空気は一変。メディカルルームは緊迫した空気に包まれてしまった! 全員で、師匠……東方不敗・マスターアジアが眠るメディカルカプセルに駆け寄る。

 

「やはり、患っていた病が重いのだろう。それが、先ほどのドモンとのファイトで……」

「そんな……。なんとかならないのか、父さん!?」

 

 そう訴えかけるように問うドモンに、カッシュ博士は沈痛な表情で首を振る。

 

「この病状では、どうしようもない。このまま果てるのを見届けることしか……」

 

 そんな……! せっかく、師匠と弟子の破滅的な対立フラグを回避できたと思ったのに!

 俺だけではなく、周囲の全員が、絶望と悲痛に打ちひしがれてきたその時。

 

「いや、まだ方法はある」

 

 シュバルツ……いや、キョウジが立ち上がってそう告げた。

 そのキョウジに、チボデーが問う。

 

「どんな方法なんだ!? 何をすれば!?」

「うむ……ジャンヌ、お前の力……正確に言えば、お前の細胞が必要だ」

「!?」

 

 キョウジの言葉で、彼が何を言おうか察した俺は、衝撃を受けた。

 俺の細胞……DG(デビルガンダム)細胞が必要、ということは、考えられることは一つしかない。だが……。

 

「キョウジさん、まさか、あの方法を……?」

 

 俺が震える声でそう聴くと、キョウジはこくりとうなずいた。やはりか……。

 

「何をするんだ、兄さん!?」

「ジャンヌのDG細胞を、マスター・アジアに感染させるのだ。もし、彼の生命力、そして心の光のエネルギーが十分なら、それがそのDG細胞をアルティメット細胞に変質させ、彼は助かるかもしれん。俺がアルティメット細胞の身体を得た時のようにな」

「そ、それじゃあ……」

 

 希望に目を輝かせてサイ・サイシーがつぶやくと、キョウジはそこで、厳しい目を師匠に向けた。そして。

 

「だが……もし失敗すれば、マスター・アジアはDG細胞の暴走を受け、DG細胞の化け物になってしまうかもしれん」

「なんだって!? だ、だがそれなら、あんたのアルティメット細胞をそのまま移植すれば……」

 

 チボデーがそう聞くが、キョウジは首を振って答えた。

 

「いや、それはできん。アルティメット細胞の放つ光の生命力は強大だ。私のアルティメット細胞を直接移植したりすれば、彼の身体の細胞がアルティメット細胞の光の生命力に負けてしまい、マスター・アジアの身体がはじけ飛んでしまう危険性がある。彼の心の光と生命力で、少しずつDG細胞をアルティメット細胞に昇華させ、慣らしていきながら身体の細胞を変化させていく必要があるのだ」

「……」

 

 再び訪れる沈黙。そこに。

 

「やろう、兄さん! 俺たちにはわかっているはずだ。生か死か、師匠がどちらの道を選ぶのか!」

「うむ、それではジャンヌ、頼む」

「……わかりました」

 

 そして俺は手首を切り、そこから滴る血液を、師匠の口に少し注ぎ込んだ。俺の手首の傷は、すぐにふさがるから問題ない。

 

「これでOKです。後は、師匠の生命力と、心の光に賭けるだけ……」

 

 そう俺が告げた直後!

 

 ズズゥン……!

 

「な、なんだ!?」

 

 そう言って周囲を見回すアルゴ。そこに、ナスターシャが入ってきた。

 

「大変だ! 五人衆が再び接近しているぞ!」

「くそ、こんな時に! みんな、出撃するぞ!」

 

 この場を、カッシュ博士とキョウジに任せてハンガーに走っていこうとする俺たち。だが、そこで俺はふとあることに気が付いて脚を止めた。

 その俺に、アルゴが聞いてくる。

 

「どうしたのだ?」

「いえ。突然、デビルガンダムの本体とのリンクが完全に切断されたんです。一体何が……。でも、今はこちらのほうが大切ですよね」

 

 俺は嫌な予感を感じながらも、ハンガーへと走っていった。

 

* * * * *

 

 俺たちがガンダムに乗って、ゴルビーから出撃すると、ちょうど五人衆がビームを撃ちながら接近してくるところだった!

 

「行くぞ……。言った通り、今度こそドモン・カッシュの全てをいただき、俺がドモンになる……!」

 

 デモンガンダムを駆るシャドウ・ドモンがそう言いながら先頭を行く。

 

「シャドウ様、それはいいですが、東方不敗・マスターアジアの首を討つのは私めに!」

「ふん……好きにしろ」

 

 偽マスター・アジアはやはり、師匠を討つのに固執しているようだ。しかし、この卑屈な様子。偽物とはいえ、こんな小物な師匠は見たくなかったぜ……。

 

「潰すぅぅぅ! 全て踏みつぶすぅぅぅぅぅ!!」

「ヒャーハハハァッ!!」

 

 そう吠えながら、チャップマンのグランドと、ミケロのヘブンズソードが突っ込んでくる。

 

 そしてその後方には、ウォンの乗る(レインが教えてくれた)ウォルターガンダムが。

 

「さぁ、これであなた方の最期です。あなた方が消えれば、世界を再びカオス戦争の渦に叩き込むなどたやすいこと! そして戦乱と陰謀の果てに、私のネオ・ホンコンが世界を手中に収めるのです!!」

 

 ウォンがそんな野望と策略を練っていたとは……! ということは、やはり偽マスター・アジアと、シャドウ・ドモンを生み出したのは、奴で間違いないだろう。だが!!

 

「そうはいきませんよ! カオス戦争の再来など、させません!」

「おう! 行くぞ、みんな!」

 

 ドモンの掛け声に、みんなが応じる。

 そして俺たちは、五人衆との決戦に突入した!

 

* * * * *

 

「うおおおお! 爆裂ゴッド・スラッシュ!!」

「腐食カオス・スラッシュ……!」

 

 ドモンのゴッドガンダムのゴッド・スラッシュと、シャドウのデモンガンダムの放つカオス・スラッシュが激しくぷつかりあう!!

 

「うおおぉぉぉぉ!!」

「ぬああぁぁ……!!」

 

 さらに、ゴッドガンダムの無数の蹴りと、デモンガンダムの無数の蹴りが激突する。その威力ゆえの衝撃に、周囲の地面が砕け、石や岩を吹き飛ばす!

 

「つぶす、つぶすうぅぅぅぅぅぅ!!」

「ぬおあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ただ前進と、あらゆるものを踏みつぶそうとするグランドを、アルゴのガンダム・ボルトクラッシュが受け止め、押し返そうとする!

 

「切り裂いてやるぜえぇぇぇぇぇ!!」

「そうはいかねぇぞ、鳥野郎!」

 

 チボデーのマックスリボルバーを斬り裂こうとするミケロのガンダム・ヘブンズソードと、フライヤーシールドⅡに乗ったマックスリボルバーが、激しい空中戦を繰り広げる。ヘブンズソードの爪をかわしたチボデーが、ギガンティック・マグナムで銃撃を浴びせる!

 

「あなた方のような優男とガキが、私に勝てると思っているのですか!?」

「へん! お前のようなひょろひょろに言われたくねぇな!」

「私たちの熱い魂は、あなたには負けないことを教えてあげましょう!」

 

 宙を自在に舞い、空中から襲ってくるウォルターガンダムに、サイ・サイシーのガンダム・ダブルドラゴンと、ジョルジュのガンダム・ベルサイユが立ち向かう!

 

 サイ・サイシーがダブルドラゴンを龍形態に変形させて空中戦を行い、それをジョルジュがローゼス・ビットで援護する。

 

 そして俺とチコも。

 

「ふん、貴様らのような小娘どもに、わしが負けるとでも思っているのか!」

「その油断が命取りだぞ!」

「えぇ。本物の師匠なら、そんな油断はしないでしょう。それがあなたが偽物という証です!」

「ほざけ!」

 

 偽マスター・アジアの乗る、ヘルマスターガンダムに挑んでいた。ヘルマスターの放つ拳を、ビームセイバーでさばき、その隙をチコがヘルトライデントのビーム・トライデントで突く!

 

 俺たちは激しいバトルを繰り広げていた。

 

* * * * *

 

 激しいバトルを展開する俺たち。しかし、やはり五人衆たちのパワーは、あれからさらに強化されたのか、恐るべきものだった!

 

「くぅっ……!」

 

 突然、俺の胸を激しい痛みが襲った! その痛みに膝をつき、うずくまってしまう! これまでの戦いや技による負荷に、身体が悲鳴をあげているのか。もう、俺に残された時間は少ないのかもしれない……!

 そしてその隙を、偽マスター・アジアが見逃すわけがなかった!

 

「勝機あり!」

 

 ヘルマスターガンダムが、俺に向かって突進すると、強烈な蹴りを見舞った! それに、俺のオルタセイバーは吹き飛ばされてしまう!

 

「ジャンヌ!」

「油断が命取りと言ったのは、お前だったろうが!!」

 

 さらに、チコのヘルトライデントをも、強烈な拳で吹き飛ばした!

 

 アルゴのボルトクラッシュは、ビルの前まで追い詰められ、グランドガンダムと巨大な岩との間でつぶされようとしていた!

 

「潰す、潰すぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「くそ、この化け物め……!」

 

 ウォルターガンダムのビームの乱れうちが、ヴェルサイユとダブルドラゴンを襲う! その直撃を受け、龍形態のダブルドラゴンは撃墜され、MF(モビルファイター)形態に戻ると、地に叩きつけられた!

 

「ぐぅ! ちくしょう!」

「このままでは……!」

 

 さらにそのウォルターのビームの流れ弾が、フライヤーシールドⅡに乗ったマックスリボルバーに命中! マックスリボルバーはシールドから弾き飛ばされてしまう! 落下しているところにヘブンズソードが襲い掛かり、チボデーはその体当たりを受けた!

 

「ヒャーハハハァ!!」

「ぐわぁ!!」

 

 そしてドモンも……!

 

「ぐぅぅぅ……!」

「さぁ、今こそ、俺がお前を喰らう時だ……!」

 

 シャドウとつばぜり合いを演じているが、かなり不利。今にも、その凶刃に、ゴッドガンダムが切り裂かれようとしていた!

 

 だがその時!

 

* * * * *

 

 俺たちが苦戦から敗北に転げ落ちようとしていたその時!

 

 笑い声が聞こえた!

 

「わーはっはっはっ! 待たせたな、皆の者!」

 

 声がしたほうを見ると、そこには……!

 

「師匠……!」

「師匠……!」

 

 俺とドモンが声をあげる。そう、そこには……ゴルビーの上に乗って腕を組み、直立した、金色に輝くマスターガンダムの姿があった!! 処置が成功したのか!

 そのマスターガンダムは、俺たちを見るとうなずき、そしてヘルマスターガンダムへと目を向けた。

 

「おのれぇ……。死にぞこないがぁ……!」

 

 そう呪詛の声をあげる偽マスターアジアに、師匠は不敵に言い放つ。

 

「ふん。小物めが。わしがこうして復活した以上、そう簡単にお主らの好きにはさせぬわ」

 

 そこに、ウォルターのウォンが声をあげる。

 

「おのれ、東方不敗・マスターアジア。まだ私たちの邪魔をするというのですか」

「ふん。やはり貴様らは小物よな。わしはもう、そのような名ではない。今のわしは……」

 

 瞠目する師匠。そして目を見開いて言い放つ!!

 

「東西南北中央不敗・スーパーアジアよっっ!!」

 

 その名乗りに、五人衆が驚愕する。

 

「東!?」

 

 と偽マスター・アジア。

 

「西!?」

 

 とウォン。

 

「南!?」

 

 とミケロ。

 

「北!?」

 

 とチャップマン

 

「中央不敗だと!?」

 

 とシャドウが驚きの声をあげる。

 

 それを見下ろす師匠の姿は堂々としていた。もう、そのバックに『東西南北中央不敗・スーパーアジア』と文字が描かれているかのようだ。

 

「本当に、この師匠は……。でも、うまくいってよかったです」

「さすが! それでこそ師匠です!」

 

 俺もドモンも、感極まった声を上げる。本当によかった……。

 そしてここから、師匠の進撃がはじまった!

 

* * * * *

 

「切り裂いてやるぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 マスターガンダムに突撃してくるガンダム・ヘブンズソード。だが師匠はそれをひらりと造作もなくかわし……。

 

「たわけめ! いくら見事な翼を持っていようが、当てることができなければ、ただのスズメよ!」

 

 ヘブンズソードの上空から、飛び蹴りで急襲!! 炎をまとったその飛び蹴りで、ヘブンズソードの翼をぶち破った!!

 

「ぎえええぇぇぇぇ!!」

「東方不敗! 許しませんよ!」

 

 ヘブンズソードに代わって、ウォンのウォルターが襲い掛かってきた!

 

「ふん、わしは東西南北中央不敗と言っておろうが! 来るがよい、風雲再起!!」

 

 師匠が呼ぶと、上空から馬型のMF……モビルホース・風雲再起が現れた! 乗っているのは無論、師匠の愛馬、風雲再起だ。

 

「うぬのような小物は……馬の脚に蹴られて吹き飛ばされるのがお似合いよ!」

「ぎゃああああ~!!」

 

 そして、師匠のマスターガンダムが風雲再起にまたがる。そして、襲い掛かってきたウォルターを、まるでボールを蹴るかのように蹴り飛ばした! サッカーボールのように、ウォルターは遠くへ飛ばされていった。

 

 続いて、グランドガンダムが、ボルトクラッシュを潰すのを中断し、風雲再起に乗ったマスターガンダムにビームを発射する! しかし、師匠と風雲再起はそれを軽やかにかわす。

 

「潰す、潰すぅぅぅぅぅぅ!!」

「ふん、この巨体、倒すのは難しそうだな。だが、巨体とパワーだけで勝てると思うは間違いよ!」

 

 引き続き、マスターガンダムに対空砲火を浴びせるグランドガンダム。だが、それは師匠の狙い通りだった!

 

「さぁ、ブラック・ジョーカー、いやさアルゴ・ガルスキーよ! 力を振り絞るがよい!! うぬのブラック・ジョーカーの力、それでおしまいではあるまい!」

「! うおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 師匠の檄を受け、ガンダム・ボルトクラッシュが息を吹き返した! さらに、ゴールデン・パイレーツ・モードを発動させ、逆にグランドを押し返す!! そして!

 

「砕け散れえぇぇぇぇ!!」

「うがあああああ!!」

 

 ボルトクラッシュのパンチが炸裂! その威力にグランドが吹き飛ばされた!

 

「この死にぞこないがあぁぁぁぁ!」

「ふん、所詮偽物は偽物! 流派・東方不敗の魂のない貴様に、わしが負けるとでも思っているのか!」

 

 さらに、偽マスター・アジアのヘルマスターガンダムが襲い掛かる! 激しい拳と蹴りの応酬が繰り広げられる! だが、やがて、師匠の技の激しさが、偽物のそれを上回っていった! 偽マスター・アジアは、やがて防戦一方になり、おしまいには師匠に撃たれるばかりとなった!

 

「ば、馬鹿なあああぁぁぁぁ!!」

「愚か者め、だからお前はアホなのだああぁぁぁぁ!!」

 

 そしてとどめに、師匠の拳が、偽物のヘルマスターガンダムを吹き飛ばした!

 

 そしてそれを見て、ドモンも勢いづく!

 

「師匠がああしてパワーアップして蘇ったからには、俺も負けてはいられん! はああああぁぁぁ!!」

「ぬぅっ……!」

 

 今度はゴッドガンダムの刃が、デモンガンダムを押していった!

 

「せやっ!」

「くっ……!」

 

 そしてドモンの刃一閃! シャドウは危うくそれを交わした。

 

「これで決める! 行くぞ! 俺のこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと、轟き叫ぶっ!!」

 

 ドモンのボイスコマンドに反応し、胸のカバーが開き、背中の羽が展開し、そのボディが金色に染まる。いや、その金色の輝きは、今までよりも強烈であった。

 

「うおおおお! 爆熱! ゴオオオォォォォッド・フィンガアアァァァ!!」

「その輝きごと喰らいつくしてやる……! カオシック・フィンガー……!!」

 

 そして再び、ゴッド・フィンガーとカオシック・フィンガーがぶつかり合った! しかし、今度は今までとは違った。

 

「なっ!?」

 

 シャドウが驚いた声を上げる。ドモンのゴッド・フィンガーのパワーの前に、デモンの右腕にひびが入り、砕けていったのだ!

 

「はああぁぁぁぁ!!」

「ぐあああぁぁぁ!!」

 

 悲鳴を上げるシャドウ。デモンの右腕は、ついにゴッド・フィンガーに砕かれてしまったのだ!

 

「おのれ……! ドモン・カッシュ……!」

 

 そして後退するデモンガンダム。その腕はたちまち修復されていった。さすがフェイクとはいえDG細胞ということか。

 

* * * * *

 

 飛びずさったデモンガンダムの周囲に、残り四体の五人衆たちが集まってくる。ここからが正念場か……!?

 上空に浮遊しているウォルターが、余裕を演じながらも、震える声で言う。

 

「い、いいでしょう。ならば私たちも奥の手を見せるとしましょう。五人衆の皆さん、行きますよ、合体です!!」

 

 合体だって!? そういえば原作でも、旧四天王が合体したグランドマスターガンダムというのが出ていたな。

 

 そして五体のガンダムが合体をはじめる。その周囲には激しい竜巻が荒れ狂い、阻止することはかなわない。

 

「奴らも奥の手を出してきましたか……!」

「……」

「へい、いくらでもやってきな!……って、これじゃまるで、『俺たちの戦いはこれからだ!』ENDみたいだな」

「でも、どんなのが来ても、俺たちはもう負けやしねぇさ。なぁ、ドモンの兄貴!」

「あぁ!」

「その意気じゃ。例えどんな敵が来ようと、わしらの力で粉砕してくれるわ!!」

 

 そして竜巻が消えた! そこに現れたのは……。

 言葉では言い表せそうにない。まさに三次元の暴力、とでもいうべき形状しがたいガンダムだった。

 

「どうだ、驚きましたか? これぞ私たちの奥の手、五悪魔合体、デスメギドガンダムです! さぁ、この力であなたたちに終末をもたらしてあげましょう!」

 

 そうウォンが言い放つとともに、デスメギドガンダムが一歩を踏み出した。だがその時!

 

「!?」

「な、なんだぁ!?」

 

 突然大きな地震があたりを襲うと、突然地面が裂け、そこから現れた巨大な手が、デスメギドガンダムを握り捉えてしまったのだ!

 

「こ、これは……!? 師匠!?」

「わからぬ。これは一体、何が起こっておるのか……」

 

 ドモンと師匠がそう言葉を交わしている間にも、デスメギドガンダムを握りしめる手の力は、さらに増していく。そして、その機体にひびが走り始めた。

 

「俺は…ドモンを……くら……ドモ……」

「ギィィィヤアアァァァァァ!!」

「グアアァァァァァ!! マノン……! マ……ノ……ン……!」

「ひぃぃぃぃ、い、いやじゃあああああ!!」

「た、助けて……助けてくれぇ~~!」

 

 五人衆の悲鳴や断末魔が響く中、ついにデスメギドガンダムは腕に握りつぶされてしまった! デスメギドガンダム、そしてアナザー五人衆。そのあっけない終わりだった。

 

 だが事態はこれで終わりではなかった! さらに地面から何かが出てくる!

 あれは……デビルガンダム!?

 

 さらに、そのデビルガンダムの周辺から、地面がDG細胞に変異していったのだ!!

 




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* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

大変なことになってしまいました! アナザー五人衆を粉砕して現れたデビルガンダムより、地球は急速に侵食されていきます!
この緊急事態に、ジャンヌたちは、地球に住む人たちの脱出作戦を開始します。

果たしてデビルガンダムに何が起こっているのか? そのコアとなってる、ジャンヌ・エスプレッソ(本体)の真意とは!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第37話『一体何が!? デビルガンダム大暴走!!』

にReady Go!!

それではみなさん! 8/21 12:00にまたお会いいたしましょう!


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37th Fight『一体何が!? デビルガンダム大暴走!!』

 どうもこんにちは、ストーカーです。
 さて、この話も、いよいよ終局を迎えつつあります。

 果たして、ジャンヌの進む道がどこにいきつくのか、しかと見届けることといたしましょう。

 もはや、死が目前となったマスターアジア。しかしそこで、シュバルツ、いえキョウジ・カッシュが秘策を提示します。
 それは、マスター・アジアにDG(デビルガンダム)細胞を注入し、それを彼の生命力でアルティメット細胞に変える、というもの。

 その処置を施したところに、アナザー五人衆が来襲!! さらにパワーアップした彼らの前に、ジャンヌたちはピンチに陥りますが、そこに復活したマスター・アジアが参戦!

 『東西南北中央不敗・スーパーアジア』と名乗るほどの彼のパワーによって、形勢逆転!
 しかし、五人衆も負けてはいません。合体して、五悪魔合体デスメギドガンダムとなって襲い掛かりますが……

 そこでデビルガンダムが出現! デスメギドガンダムを瞬殺したばかりか、地球をDG細胞で侵食し始めたのです。
 果たして、地球の運命やいかに!?

 今回のカードは、ガンダムエンジェルフィール。

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



 デビルガンダムが出現して、五人衆が乗るデスメギドガンダムを秒殺した。それはいい。

 

 しかし問題はその後。デビルガンダムは急速に、地球を侵食しだしたのだ。

 この突然の事態には、俺……ジャンヌ・エスプレッソも、驚愕を禁じ得ない。

 

 そしてそれは、ドモンたちも同じようだ。

 

「ジャンヌ、どういうことだこれは!? 人類追放計画は破産になったはずでは!?」

「えぇ、そのはずなのですが……」

 

 そう言葉を交わしているうちにも、侵食はさらに進んでいく。もはや、ランタオ島のこの火山全体がDG細胞に侵食されてしまったようだ。

 そこに、ゴルビーからカッシュ博士の声が届く。

 

「みんな、ゴルビーに帰還してくれ! このままでは地球は人の住めない星になってしまう。大至急、地球に住んでいる人々の、宇宙への脱出作戦を行わなければならん!」

「わかった! みんな、話はあとだ。ゴルビーに戻るぞ!」

 

 ドモンの言葉にみんなうなずき、ゴルビーに戻ろうとする。しかし!

 

 DG細胞に侵食された大地から、何かが浮上し、姿を現した。それは……。

 

「これは……ヘルマスターガンダム!?」

「こちらは……ガンダムヘブンズソードですか」

「ジャンヌ……もしやこれは」

 

 師匠の問いにうなずく。

 

「えぇ。私の本体が、今倒したデスメギドガンダムのデータから生み出したコピーだと思います」

「まずはこいつを倒さなくちゃ、脱出できないみたいだな。やってやろうぜ!」

 

 チボデーの強がった陽気な声に、サイ・サイシーもうなずく。

 

「あぁ! コピーなんかにやられるもんかい!」

 

 そしてドモンたちは、コピーたちとの戦いをはじめた。

 俺もビームセイバーを抜いて戦おう……としたところで!!

 

「……!!」

 

 胸を、そして全身を激しく貫くような激痛に襲われた!

 そして倒れ、意識を失った……。

 

* * * * *

 

(世界にはまだ陰謀と悪意が……)

 

 俺が目を見開くと、そこには俺……いや、ジャンヌ・エスプレッソ本人がいた。俺の本体だ。

 その『俺』は、悲しく目を伏せると再び嘆き、自問する。

 

(各国は陰謀を繰り広げ、ウォンも陰謀を繰り広げていた……。どうすれば……)

(こうなれば……地球を……人類から……)

 

 そして、視界を光が埋め尽くす。

 

* * * * *

 

「ん……」

「あっ、アネキが目を覚ましたぜ!」

 

 目を覚ました時、聞こえてきたのは、サイ・サイシーの声。視界に映ったのは、真っ白な天井。

 

 ここは……ゴルビーのメディカルルーム?

 

「おぉ、気が付いたか、よかった」

「私は……激痛で昏倒していたのですか……」

 

 俺がそう聞くと、ジョルジュがうなずいて答えてくれた。

 

「えぇ。びっくりしましたよ。突然倒れたのですから。世界が凍ったように感じました」

「デモ、キガツイテクレテヨカッタ。カンチャン、ヒトアンシン」

「だが、ジャンヌ、もしかして……」

 

 チコの質問に、俺はうなずいた。

 

「えぇ。流派・東方不敗の亜流の技を使ってきた反動による、私の身体のDG細胞の損傷が、深刻なレベルにきてしまったのだと思います」

 

 そこで重い空気があたりを包んだ。

 

「そうか……。ならばこれからは、戦わず、身体を休めていたほうがいいぜ」

 

 チボデーはそう言ってくれた。それはありがたいが……。俺は微笑んで首を振った。

 

「いえ。私には、人類追放計画に関与した責任があります。この緊急事態を収め、地球を緑あふれる星に戻すまで、剣を置くわけにはいきません。それが私の贖罪ですから」

「でもよぉ……」

 

 そう言い募るサイ・サイシーの肩に、ドモンが手を置いた。

 

「それ以上はやめておけ。武道家が自分の命を賭して、戦い続けると言っているんだ。ならばそれを止めさせる権利は、俺たちにはないはずだ」

「うぅ……」

「ドモン、ありがとうございます……」

「あぁ、だが無理はするなよ」

 

 そのドモンの言葉が暖かった。いかん、目に涙がにじみそうに。俺はそれをごまかすように、ナスターシャ女史に聞いてみた。

 

「それでナスターシャさん、侵食はどうなりましたか?」

 

 俺がそう聞くと、ナスターシャ女史は、深刻な表情をして答えてくれた。

 

「最悪だ。既に、ネオ・ホンコン全体がDG細胞に侵食されてしまった」

 

 引き続き、カッシュ博士が話してくれた。

 

「計算の結果、あと1日で地表全てがDG細胞に侵食され、それから三日で、地球は中枢部まで浸食され、DG細胞の星になってしまう。そうなれば、なんらかの方法でDG細胞を除去したとしても、地球は人類の住める星ではなくなってしまうだろう」

「今、カラト委員長が中心となり、世界各国が協力して、地球の人々を全て宇宙に脱出させる計画が進行中だ。我々も、その計画が実行中であるタネガシマのスペースポートに向かい、その計画を支援する予定だ」

「そうですか……」

「あと一時間ほどでゴルビーは、タネガシマに到着する。それまでゆっくり身体を休めていろ。それも立派な任務だ」

「えぇ、そうさせてもらいます」

 

 そして俺は、ベッドに横になって、再び目を閉じた。でも休むことはできたが、眠ることはできなかった。

 それは、あの夢のことが頭に残っていたからだ。

 

 あれはもしかしたら、俺の本体の心がかすかに俺に届いたのかもしれない。ならば、あの言葉の意味は……? 『俺』は何を考えているんだ……?

 俺は悲しみが混じった不安を感じるのを否定することはできなかった。

 

 そしてゴルビーは、一路タネガシマに向かっていった……。

 

* * * * *

 

 そして約1時間後、ついにゴルビーはタネガシマのスペースポートに到着した。

 

 スペースポートでは、既に世界中から集められた人々が、脱出ポッドに乗せられ、そして宇宙に打ち上げられていった。幸いながらに、デビルガンダムによる邪魔は入れられていないようだ。俺の本体も、『人類を宇宙に追い出す』という目的の根本だけは忘れないでいる、ということなのだろうか。

 

「よし。それでは、任務を開始する。報告では、デスセラフが、ここに追いやるように、人々を襲っているそうだ。お前たちは奴らが人々を傷つけないように、ここにやってくる人々を、デスセラフから守ってやってくれ」

「わかりました!」

 

 そして待機すると、ナスターシャ女史が言ったように、人々が乗った数機の飛行機と、それを追撃するデスセラフがやってきた。

 俺の本体からの指示が十分に届いていないのか、それとも、その過程で人々の被害が出てもやむなしと考えているのか、一機の飛行機が撃墜された。

 他にも、避難民の乗った船と、それを追撃するデスセラフもやってくる。

 

 俺たちはさっそく手分けして、そのデスセラフたちに向かっていった。

 

「……っ」

 

 全身を激痛が駆け巡る。鎮痛剤をてんこもりに打ち、気を保っていられるギリギリまで痛みが緩和されていたが、それでも抑えきれない激痛が俺を襲う。

 それに耐えながら、俺はビームセイバーを一閃! デスセラフたちを斬り捨てた。

 他のみんなも、船や飛行機を守りながら、デスセラフを撃破している。

 

 激痛に耐えながら戦い続ける俺。だがその激痛で注意が散漫になったのが致命的になったのか、気が付いた時には、一機のデスセラフが俺の背後に迫っていた!

 

 そこに!

 

「はあっ!!」

 

 ドモンのゴッドガンダムのビームソードが一閃! その敵機を一刀両断した。

 

「大丈夫か、ジャンヌ?」

「えぇ……ありがとうございます」

「少し休めとは言わん。だが、わかってるな?」

「はい、わかってます……」

 

 そして、戦いを続ける。そんな中……。

 突然、巨大な影が、俺たちの下に降りた。

 

「! いけません、皆さん、離れてください!」

「「!?」」

 

 俺の警告と同時に、みんなはその場を離れた。そしてその直後、俺たちが戦っていた地点に何かが落下……いや、着陸してきた!

 それは……!

 

* * * * *

 

 俺たちが離れたその場に落ちてきたもの……それは巨大なガンダム。デビルガンダムではない。

 

 かつて俺たちと戦い……そして、デビルガンダムに潰された、デスメギドガンダムだった。だが、その姿はあれよりさらに清らかさ、神々しさが増しているような気がした。そう、例えるなら、天使と悪魔が交わったような。

 

「ふむ……これはどうやら、あのデスメギドガンダムを元に、デビルガンダムが生み出した輩のようだな。さしずめ名前をつけるなら、ガンダムエンジェルフィール、といったところか」

 

 師匠……東西南北中央不敗・スーパーアジアが余裕たっぷりに言う。さすがだ。

 一方のサイ・サイシーは苦々しい顔をしていた。

 

「とんでもないが来やがったもんだぜ。こっちは、人々の護衛で、こいつと戦う余裕はないってのによ!」

「ですが、こいつをなんとかしなければ、人々の被害も……。下手したらスペースポートもやられるかもしれません」

 

 ジョルジュも焦りながら、そう言う。そこに!

 

「心配はいらん。例え地獄から蘇ろうと、天使と悪魔が交わっていようと、わしの敵ではない。こんな奴ら、わしがたやすく葬ってくれよう。ドモン、手を貸せい。共にこいつを葬るぞ」

「はい!」

「キョウジ・カッシュ、いるのであろう? お主も力を貸すがよい。カッシュ兄弟拳を放ったお主の力、頼りにさせてもらう」

「承知した」

 

 いつの間に、キョウジのシュピーゲルが、師匠のマスターガンダムの隣に立っていた。

 正体を明かしても、神出鬼没なのはそのままなのね。

 

「ではいくぞ。他のみんなは引き続き、人々の護衛を頼むぞ」

「わかった!」

「いくぞ!」

 

 師匠の言葉にチボデーが返し、そして師匠が掛け声をかけたその直後、ガンダムエンジェルフィールが、その巨大な腕をマスター、ゴッド、シュピーゲルに叩きつけた! が数瞬早く、三機はその場から散開する。

 

「キシャアアアアアァァァァ!!」

 

 そして、エンジェルフィールと師匠たちの戦いが始まった。エンジェルフィールは三機が集まると大技を撃たれると理解しているのか、ビームやミサイルを乱射し、三機が集合する隙を与えない! だがそれでも、師匠たちはその攻撃を軽々とかわしていく。

 

「ふん、なかなかやるようだが……」

「劣化コピーなら恐れるに足らん!」

「巨体だからと言って、俺たちを捉えられると思うな!」

 

 余裕をもって交わし続ける三機。そして。

 

「石破天驚拳ーーーーー!!」

「石破天驚ゴッドフィンガアアアァァァァ!!」

「シュツルム・ウント・ドランクウゥゥゥゥゥ!!」

 

 ドゴォ!! バゴァ!! ズバアァァァァ!!

 

「ウグアァァァァァ!!」

 

 三方向から師匠たちの技が直撃し、ガンダムエンジェルフィールは苦しさにのたうち回った。そしてそれこそが必殺の隙となる!

 

「よし、いくぞ!」

「はい!]

「これでとどめだ!」

 

 三機が集まる。そして、気を高める。それぞれの機体が黄金色に染まり、金色の光を放つ!

 

「わしらのこの手が真っ赤に燃える!」

「亡霊砕けと!」

「轟き叫ぶっ!!」

 

 そして天驚拳の構えを取った! その高まりつつある気は、今にも弾けるかのようだ!

 なんとか立ち直ったエンジェルフィールが三機に襲い掛かるが、もう遅い!

 

「「「超究極! 石破! 天驚拳ーーーーーー!!」」」

 

 三機から通常の天驚拳をさらに超える大きさと輝きの気弾が放たれた!!

 それは見事に、師匠たちに飛び掛かったガンダムエンジェルフィールに直撃!!

 

「キシャアアアアア!! ドモ……キリキリィ……マロ……ワシコソワ……ヒイヤアアアア!!」

 

 その圧倒的なエネルギーは、エンジェルフィールの身体を光の粒へと変えていく。奴は必死に身体を再生しようとするが、それすらも光に変わる。超究極・石破天驚拳が、奴を光に変えていくスピードが、エンジェルフィールの自己再生能力を上回っているのだ。

 

「ァァァァァ……」

 

 そしてガンダムエンジェルフィールは、光の粒になって消えていった。

 

「ふん、こんなものじゃな」

「はい」

「やりましたね、師匠!」

 

* * * * *

 

 そして、最後の脱出ポッドを打ち上げた後、俺たちも、ネオロシアの宇宙輸送艦ゴルビーⅡに乗り換えて、地球から脱出した。

 

 そして衛星軌道まで脱出したところで、俺たちの目の前で、地球はDG細胞に完全に包まれてしまった。

 もはや一刻の猶予もない。早く、この地球を侵食したDG細胞をどうにかしなくては、人類は地球を失うことになる。永遠に。

 

 そして、その俺の危惧を裏付けることがさらに起こった!

 

「ナスターシャ殿、見てくだされ、あれを!」

 

 ゴルビーⅡに乗り込んでいた恵雲が何かを見つけ、叫ぶようにナスターシャ女史に報告する。

 そして、窓に集まった俺が見たものは……。

 

「地球からDG細胞が盛り上がって、何かの形に……」

「あれは……巨大なジャンヌさん……?」

 

 レイモンドとマリアルイゼ姫が、そうつぶやいて絶句する。

 

 そう、地球を覆ったDG細胞が、DG細胞に覆われた地球を大事そうに抱えた俺の形をとったのだ。まるで宝玉を守る女神のように。

 

 その様子を見て、俺の中でつながった。そして気づいた。俺の本体が何を考えているかを。

 

「これは……!」

「何かわかったのか、ジャンヌ!?」

 

 そう聞いてくるドモンに、俺は我知らず声が震えながら答えた。

 

「私の本体は……ジャンヌ・エスプレッソは……地球を人類から永遠に取り上げるつもりです……!」

 




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* 次回予告 *

デビルガンダムによる、地球消滅の危機!
ジャンヌたちは、それを阻止するべく、彼女の本体を説得しながら戦いに挑みます。

しかし、あまりにも多勢に無勢! その力の前に圧倒され大ピンチに!
その時、世界各国から、あのライバルたちが救援に駆け付けるのです!

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第38話『この想い届け! 集結ガンダム連合!!』

にReady Go!!

それではみなさん。8/24 12:00にまたお会いいたしましょう!


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38th Fight『想いよ届け! 集結ガンダム連合!』

 どうもこんにちは、ストーカーです。
 さて、この話も、いよいよ終局を迎えつつあります。

 果たして、ジャンヌの進む道がどこにいきつくのか、しかと見届けることといたしましょう。

 突然地球と人類に牙をむき、DG(デビルガンダム)細胞で地球を侵食し始めたデビルガンダム!
 ガンダムエンジェルフィールを倒し、他の人々と共に地球を脱出したジャンヌ一行の前で、地球はDG細胞に包まれてしまったのでした。
 タイムリミットはあと三日! 果たしてジャンヌたちは、地球を救うことができるのでしょうか?

 それではガンダムファイト、Ready Go!!



 

「地球を人類から取り上げるつもりって、どういうことだよアネキ!」

 

 衛星軌道上のゴルビーⅡにて、サイ・サイシーが俺……ジャンヌ・エスプレッソに、ショックを張り付けた顔でそう聞いてきた。

 一方の俺も、答える声が震えるのを隠し切れない。

 

「おそらく私の本体は、大会中断後も、ウォンや各国が争いや陰謀を続けていることに絶望して、地球をDG細胞の塊にして、星としての生命を終わらせることで、人類から地球を永遠に奪い、人々に地球の大事さを思い出させようとしているんだと思います……」

 

 その答えに、アルゴが口を開いた。

 

「なるほど。だが、地球の大事さを思い出させるために、地球を消滅させるなんて本末転倒ではないか? 思い出しても大事にする地球がないのではどうしようもないだろう」

「えぇ……。きっと本体は、それも思いつかないほど、思い詰め、これに固執してるんでしょう……」

 

 そこで、チボデーが口を開いた。

 

「だけど、こうして見ているだけというわけにもいかないんじゃないか? あと三日で、地球は人が住めなくなっちまうんだろ!?」

「えぇ。彼女の志はともかく、それを許すわけにはいきません」

 

 ジョルジュの言葉を聞き、ナスターシャ女史がうなずき、びしっと棒鞭を鳴らした。

 

「よし! ジョルジュの言う通りだ。DG細胞の駆除の方法を模索しつつ、これ以上のDG細胞の侵食を阻止するのだ!」

 

 しかし、そこに!

 

「ナスターシャ、あれを!」

 

 チボデーギャルズのジャネットが声をあげる。ナスターシャと俺たちが地球のほうに目を向けると……。

 デビルガンダムから、デスセラフたちが大挙して出撃してきた! そいつらは、まだ衛星軌道上に存在している脱出ポッドばかりか、それより外にある脱出ポッドまでも攻撃していく。

 

「奴ら、この周辺宙域にいる奴らを皆殺しにする気か!?」 

 

 と、ドモン。

 チコも顔をしかめて言う。

 

「もしかしたらジャンヌの本体は、地球に一歩も人類を近づかせないために、人類をコロニーから一歩も出させないつもりなのかもしれん……」

「ソレヤバイ! ソレナッタラ、人類ノ文明、ドンドン衰退シテシマウ!」

 

 カンちゃんのいう通りだ。人の文明の営みは、違う地域との交流があってこそ。それを断たれては、人類は衰退するばかりとなってしまう。俺の本体は、地球保護に固執するあまり、そのことに気づいてないのか、それとも、そうなってしまっても、地球が保護できるならよし、と考えているのか……。

 目を閉じて問いかけてみるも、本体は心を閉ざしているのか、リンクを断ったまま返事を返してはこない。

 

「ナスターシャ殿、こちらにもデスセラフたちがやってきていますぞ!」

 

 瑞山の報告に、ナスターシャ女史は再び、棒鞭を鳴らした。

 

「よし、ならばガンダム各機、出撃せよ! ゴルビーⅡを護衛しつつ、可能なら他の脱出ポッドの離脱も援護するのだ!」

「わかった!」

 

 そう言ってハンガーに駆け込むサイ・サイシーを先頭に、俺たちはブリッジを走り出て行った。

 

* * * * *

 

「ヒュー! 来やがる来やがる! 次から次へと!」

 

 ゴルビーⅡから出撃した俺たちに、デスセラフの軍団たちが突撃してくる。その数は、以前俺たちが戦ったデスアーミー・オルタ軍団の数よりはるかに多い。だがそれを前にしても、面白そうに強がってしまうのは、ファイターの性だろうか。

 

 師匠も、動じず面白そうに言い放つ。

 

「ふん。いくら来ようが、雑魚にすぎぬわ。こんな奴ら、あっという間に蹴散らしてくれよう。行くぞ!」

 

 そして戦闘に突入した。

 

「ぬあああぁぁぁぁっっ!!」

 

 ドモンのゴッドガンダムが、拳でデスセラフの一体を貫き、それが爆散したのと同時にそこを離れ、次のデスセラフへと向かい、それも葬る。

 

「マシンガン・パアアァァンチッッ!」

 

 チボデーが駆るマックスリボルバーが、迫りくるデスセラフの軍団を、豪熱マシンガンパンチでまとめて吹き飛ばしていく。

 

「そーれ、焼かれちまえ!」

「行きなさい、ビットたち!」

 

 サイ・サイシーのダブルドラゴンが、龍モードの火炎放射でデスセラフたちを焼き尽くし、ジョルジュはローゼス・ビットによるオールレンジ攻撃で、デスセラフたちを撃滅していく。

 

 そして俺もスプラッシュ・ソードでデスセラフたちを貫いていく……が!!

 

 ビキィ!!

 

「んあああっ!!」

 

 ついに技の反動が限界を超えたのか、俺の右腕が(物理的に)砕け散った!! 砕け散った腕のカケラたちは風化して消えていく。いよいよ、俺の命の終わりが迫ってきているのか……。

 その激痛に耐えながら、ビームセイバーを左腕に持ち替えて戦い続けるが、続いて後ろに回りこんだデスセラフに蹴りを喰らってしまう!

 

「きゃあああぁぁ!」

 

 そして別のデスセラフがメイス型ビームライフルをこちらに向ける!! そこに!

 

「はあっ!!」

 

 師匠のマスターガンダムが駆け付け、デスセラフをマスタークロスで一刀両断した!

 

「師匠……!」

「ジャンヌ、デビルガンダムの元へ向かうがよい」

「え?」

 

 俺がデビルガンダムの元に行ったところで……あ……。

 

「そうじゃ。わしらガンダムファイター……いや、武道家にとって、想いを伝える方法は言葉だけではなかろう?」

 

 そうだ、拳はただ敵を打ちのめすだけにあらず。拳は己の心を物語るもの。そう言っていたのは、目の前の人だったじゃないか。

 ならば、私の本体の元まで駆け付け、この拳を使えば、直接想いを伝えることができるかもしれない!

 

「はい……!」

「チコ、ジャンヌの護衛をしてやれ。彼女一人では無理だが、お主ら二人なら、なんとかデビルガンダムまでたどり着くことができようからな」

「わかった!」

「後詰はわしらに任せておけい! はあぁぁぁ!!」

 

 そして師匠は後方から迫ってくるデスセラフたちに突撃、次々とこれをせん滅していった。

 

「よし、行くぞ、ジャンヌ!」

「はい!!」

 

 そして二機で突撃していく! ただデビルガンダム……俺の本体のもとへただ一直線に!

 

* * * * *

 

 目の前の敵を斬り捨てながら、デビルガンダムに向けて一直線で進んでいく。

 そうしていく俺たちの目前に、デスセラフが突っ込んできた!

 

「はぁっ……!」

 

 そのデスセラフに蹴りを見舞う!

 

「……っ!」

 

 蹴りを放った右脚に激痛が走る。その痛みとともに、右脚が、膝の下から砕け散った! でもそのかいあって、デスセラフは大きく態勢を崩した。そこに、チコのヘルトライデントが槍の一撃を放ち、撃破することができた。

 

 そしてデスセラフを倒しながら進んでいくが、やはりデビルガンダムの、デスセラフを生み出す能力はすさまじく、その物量の前に、俺たちは苦戦を強いられていた。

 

 無双を続ける師匠は相変わらずだが……。

 

「ぐわっ!」

 

 ゴッドガンダムが、デスセラフたちの集中砲火を吹き飛ばされる!

 

「くそ、とっととやられちまえ! くっ!!」

 

 マックスリボルバーが拳で、デスセラフの一機を撃破するも、背後から別の敵の攻撃を受けてよろめいてしまう。

 

「くっ……ローゼス・ビットの残りが。でも、まだまだ負けませんよ!」

 

 ほとんどのローゼス・ビットを破壊されたジョルジュのヴェルサイユが、それでも、残りのビットたちとビームサーベル片手に奮闘する。

 

「くそ、これではらちが明かん。だが、負けるわけにはいかない! うおおぉぉぉぉ!!」

 

 ボルトクラッシュがビームやミサイルを浴びながら、その傷だらけのボディを駆り、グラビトン・メガハンマーと拳で、デスセラフたちをなぎ倒し続ける。そのボルトクラッシュに、またビームが命中した!

 

 サイ・サイシーも、ダメージを受けながら、それでも負けずに戦い続ける。

 

 そして俺たちのほうも……!

 

「きゃあ!!」

 

 デスセラフの攻撃を受けた俺のオルタセイバーは吹き飛ばされ、ヘルトライデントのそばを離れてしまう!

 

「ジャンヌ!! ……くっ!」

 

 そのヘルトライデントに、別のデスセラフが斬りかかる!

 さらに、それとはまた違うデスセラフが、俺に斬りかかろうとした! 万事休すか!

 

 その時!

 

「ネーデル・ビームタイフーン!!」

 

 どこからか、光の渦巻きが放たれ、そのデスセラフを飲み込んで粉砕した!

 

 そしてやってきたのは……。

 

* * * * *

 

「ルドガー!」

「ジャンヌ・エスプレッソ! 間に合ってよかった!」

 

 そう。かつて戦った、ルドガー・バンホーベン。そして彼の駆るネーデルガンダムだった。ところどころ、宇宙戦用に改修されているようだが。

 

「ありがとうございます。でも、身体のほうは大丈夫なのですか?」

「あぁ。コクピットをMF(モビルファイター)仕様ではなく、通常のMS(モビルスーツ)仕様に改装してあるからな。心配してくれてありがとう」

 

 そう言葉を交わしているうちに、別のデスセラフが襲ってきた!

 しかし、それは両肩のパーツと、長大な曲刀(ミナレット)が特徴のガンダム……ミナレットガンダムに一刀両断された!

 

「セイット! あなたも来てくれたんですね、ありがとうございます」

「礼はいらないよ。君には、ドモンとともに、俺をDG細胞から解放してくれた借りがあるからね。それに、駆け付けてきたのは俺たちだけじゃない」

「え?」

 

 デスセラフの一機とつばぜり合いを演じているドモンのゴッド。その背後から別のデスセラフが襲い掛かろうとしたところに、細身のまるで女の子のようなガンダムが飛び掛かり、そのビームリボンで、デスセラフを撃破した!

 

「アレンビー!」

「へへ、久しぶりだね、ドモン! 約束通り、身体を治してきたよ!」

 

 そう、アレンビー・ピアズリーのノーベルガンダムだった!

 

 一方、傷つきながらも奮闘するアルゴの元へは……。

 

「ふん!!」

 

 別のガンダムがその巨大な斧で、ボルトクラッシュに迫ってきていたデスセラフたちをまとめてなぎ倒した!

 

「アンドリュー!」

「助けたわけではない。痛みを抱えても進むといったお前の覚悟を全て見せてもらう前に倒れられては困るからだ」

 

 そう言い放ったアンドリュー・グラハムのランバーガンダムが、接近してきたデスセラフを叩き潰す。

 

 それ以外にも、ガンダムゼブラやマーメイドガンダム、ジェスターガンダムにマンダラガンダム、いやその他にも、俺たちが戦ったガンダムや、それ以外の世界各国のガンダムたちが、コロニーのほうからたくさん駆け付けて、援護してくれている。

 

 その様子に、思わず目がしらが熱くなってくる。

 

「さぁ、行ってこいジャンヌ。お前にはまだするべきことがあるのだろう? ここは私たちに任せておけ」

「はい、ありがとうございます!」

「恩に着るぞ!」

 

 ルドガーの言葉を受け、俺とチコは再びデビルガンダムへと突撃していく。

 そして、ついにその至近まで到達した俺の目前に、巨大ジャンヌの姿をとったデビルガンダム……デビルジャンヌの額に、コアとなっている俺の本体の姿が映った。

 

 だがそこで、そのデビルジャンヌの胸部に穴が開くと、そこにエネルギーがチャージされ始めた。まさか!?

 

* * * * *

 

 デビルジャンヌがエネルギーをチャージし、超高出力ビームを発射しようとしていることは、ゴルビーⅡの面々、戦っているガンダムたち、そしてそのうちの一機である、マンダラガンダムを駆るキラル・メキレルにも感じ取れた。彼はすかさず、同胞たちに指示を出す。

 

「いかん、奴らはネオ・ジャパンコロニーをビームで破壊しようとしているぞ! ガンダム連合第一部隊は我に続け! 我らの力を合わせて、コロニーをデビルガンダムから守るのだ!」

 

 彼の言葉を受け、アレンビーたち、他のガンダムたちが全員、デビルジャンヌとネオ・ジャパンコロニーの中間点に集結する。そして一斉に構え、気を練り始める。

 

 そして、デビルジャンヌから超高出力ビームが発射された!!

 

* * * * *

 

 デビルジャンヌは、なりふり構わなくなったのか、ネオ・ジャパンコロニーにビームを発射して消し去ろうとしていた!

 

「やめてーーーーー!!」

 

 俺がそう叫びながら、本体の元に急ぐも、たどり着く前にビームは発射された!

 

 それはネオ・ジャパンコロニーに向かって直進し、そして爆発!!

 

「なんとことを……」

 

 そして絶句するチコ。そしてそれは俺も同じだった。

 

「私……。え?」

 

 俺は驚いた。ネオ・ジャパンコロニーからの信号は健在だった。コロニーは無事だったのだ。

 そして、デビルジャンヌと、ネオ・ジャパンコロニーの中間地点には、多くのガンダムたちが。彼らが力を合わせて、コロニーとそこに住む人々を守ってくれたのだ。

 

 そのことに、俺の本体も驚愕し、動きを止めている。チャンスは今しかない!

 

「やああああぁぁぁぁ!!」

 

 俺はオルタセイバーのバーニアを全開にして、一気に本体に急接近する。そして目前まで近づいたところで、コアとなった俺の本体を守っているクリスタル状のカバーに、その左拳を叩きつけた! そして念じる。

 

* * * * *

 

―――私、もういいでしょう? 彼らの姿を見れば、人類が排除するべき存在なのかどうか、わかるはずです。

―――……。

―――許してくれ、とは言いません。ですが、彼らを、人類をもう一度、信じてみてはくれませんか?

―――……。

―――彼らはただ地球を汚し、傷つける存在だけの問題ではないんです。

―――……。

―――彼らには、欲望のために地球を傷つける心だけではなく、地球を労り、守りたいという心もあります。今、彼らが見せてくれたように、その心が集まれば、このような手をとらずとも、地球を蘇らせることができるはずです。その可能性を信じてあげてほしいんです。

―――私……そうですね……。

―――私……。

 

* * * * *

 

 俺の想いは届いたようだ。デスセラフたちの動きは止まり、戦いがとまっている。

 そこに、ナスターシャ女史からの報告が届く。

 

「カッシュ博士から朗報だ。DG細胞の、地球中心部への侵食が止まったそうだ。これなら、細胞の駆除方法を確立すれば、地球は再び人が住めるようになるだろう。みんな、よくやった」

 

 間に合ったか、よかった……。

 それも、みんなが力を合わせて頑張ってくれたおかげ。そして彼らの奮闘と、俺の想いを受け取った俺の本体が翻意してくれたおかげだ。

 

 ふと目の前を見る。クリスタルのカバーの奥、金属のようなDG細胞で包まれた俺の本体も、やわらかい微笑みを向けてくれている……ような気がする。

 

 だがそこで!

 

「あああああああああ!!」

「私!?」

 

 突然、俺の本体が顔を歪ませて苦悶の悲鳴をあげた。そして、俺の本体は封じられたカプセルごと、DG細胞の中に埋もれていく。

 こ、これは一体……!?

 

 そこに響く声。

 

「ふふふ……待っていたぞ。この時を! コアの支配が緩むこの時を、私が人類に復讐する時を!!」

 

 ゴルビーⅡからまた報告が届く。

 

「デビルガンダム、地球のDG細胞、再活性化を確認!」

「なんだと!? 再び、地球への浸食を再開するつもりか!?」

「い、いえ、これは……!!」

「デビルガンダムが変形していきます!」

 

 その報告の通り、俺の姿をとったデビルガンダムは蠢きながら、変形を開始した。

 デビルガンダムは、少しずつ、まがまがしい、恐ろしい、まさに悪魔というべき姿に変形していった。

 

 そしてその頭頂部に水晶のカプセルに封じられて現れたのは……。

 

「ウルベ……!?」

 




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* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

さてさて、またまた大変なことになってしまいました!
あの男の手により、禍々しい悪魔と化したデビルガンダムは、全人類に対して攻撃を開始!
たちまち人類は、再び滅亡の危機にさらされてしまいました!

この事態に、ジャンヌは、自らの命と最期の力を賭けて、本体の解放に立ち上がります!
デビルガンダムの猛威に苦しめられながらも、シャッフル同盟や新生四天王、そしてガンダム連合のガンダムたちも、彼女を援護します。

果たして彼らは、あの男の魔の手から、ジャンヌの本体を助けだすことができるのでしょうか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第39話『地球と人類危うし! 憎しみに染まったデビルガンダム!!』

にReady Go!!
それではみなさん! 8/27 12:00にまたお会いいたしましょう!


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39th Fight『地球と人類危うし! 憎しみに染まったデビルガンダム!!』

 どうもこんにちは、ストーカーです。
 さて、この話も、いよいよ終局を迎えつつあります。

 果たして、ジャンヌの進む道がどこにいきつくのか、しかと見届けることといたしましょう。

 地球保護のため、地球を人の住めない星にしようとするデビルガンダム!

 ジャンヌたちはそれを阻止しようと、奮闘しながら、コアとなっているジャンヌの本体を説得します。

 駆け付けたガンダム連合の助力もあり、ついに本体は説得に応じ、危機は救われたと思われました。

 ですが!

 突然異変を生じ、邪悪な姿に変貌したデビルガンダム! そこにはあの男の姿があったのでした。

 さてさて、人類はどうなってしまうのでしょうか!?

 それでは、ガンダムファイト! Ready Go!!



 俺……ジャンヌ・エスプレッソを模した姿から突然、邪悪な異形の姿に変貌したデビルガンダム。その姿はまさに全てを滅ぼそうとする悪魔のようだ。

 

 そして、その頭部のクリスタルに封じられているのは……ウルベ!? 彼が、俺の本体からデビルガンダムから奪い取ったというのか!?

 

「ウワーハハハハアアァァァァ!!」

 

 クリスタルの中で高笑いをあげるウルベ。その笑い声は衝撃波となって、周囲に放たれた。

 俺もその衝撃波で吹き飛ばされてしまう。この衝撃で全身が粉砕されなくてよかった……。

 

「待ったぞ、待ちかねたぞ、この時を!!」

「ウルベ、なぜあなたがそこに……?」

 

 仮に彼が寄生していれば、危険因子として俺の本体に抹消されているはずなのだが……。

 

「言っただろう、この時を待っていた、と。私は、デビルガンダムを発見すると、そのサブシステムに寄生し、サブシステムのユニットの一つに擬態して、コアによる消去を免れていたのだ!」

 

 そして、俺の説得で、俺の本体が翻意して、コアによる支配が弱まったことを利用して、逆にデビルガンダムの制御を奪い取った、と……。

 だが、謎はまだ残っている。

 

 それは、カッシュ博士が言ってくれた。

 

「だが、男の身体では、デビルガンダムをそれほどに成長させることはできず、逆に弱体化してしまうはず!? なのになぜ!?」

 

 そうだ。デビルガンダムのコアに適応しているのは女性だ。男がコアになっても、これほどの成長はしないはずなのだ。

 

「それにウルベ大尉、なぜ君がこのようなことを?」

 

 カラト委員長がそう聞くと、ウルベは苦笑いを浮かべて言った。

 

「その質問、二つともに答えてやろう。それは……これだ!!」

 

 そしてウルベは、身に着けていた服を引き裂き、上半身をさらけ出した。そこにあるのは……本来そこにあるはずのないもの!!

 

「それは……女性の胸!?」

 

 驚きの声をあげるドモン。そう、ウルベの胸にはささやかながらも膨らんだ乳房があったのだ!!

 

「まさかあんた……女性だったのか!?」

 

 チボデーがそう聞くと、ウルベはチボデーに憎しみに満ちた視線を送り、デビルガンダムの腕からビームを発射して、マックスリボルバーを吹き飛ばした。

 

「馬鹿を言うな、私は男だ! だがあの時……」

 

* * * * *

 

 一年前……。アルティメットガンダムが地球に落ちてデビルガンダムになったばかりのころ。

 ウルベの駆るMS(モビルスーツ)、ファントマと、セイットのミナレットガンダム、そして、ルドガーのネーデルガンダムが、そのデビルガンダムと激闘を繰り広げている。

 

 デビルガンダムは、その巨腕をネーデルガンダムに叩きつけた。ネーデルガンダムは吹き飛ばされ、大破してしまう。

 

「おのれ、デビルガンダムめ!」

 

 ミナレットガンダムが背後から、デビルガンダムに斬りかかった! しかし、そのデビルガンダムの背中から無数の光弾が放たれ、ミナレットガンダムを撃ち落としてしまう。

 その光弾の中には、DG(デビルガンダム)細胞でできた弾丸も含まれていたらしい。ミナレットガンダムが少しずつ、でも着実に、DG細胞に侵食されていく。

 

 そして残ったのは、ウルベのファントマのみ。デビルガンダムは不気味に、ゆっくりとそのファントマに近づいていき……。

 

* * * * *

 

「私はセイット・ギュゼルとともに、DG細胞に侵されてしまった。だが、私の身体の遺伝子はDG細胞とは相性が悪かったらしく、こともあろうに、細胞は私の身体を、女性のものに作り替えてしまったのだ!!」

 

 そう叫ぶウルベの脳裏に、はじめて膨らんだ自分の胸を目撃して、衝撃を受けた時の様子がフラッシュバックされる。

 

「それで私の軍人としてのキャリアは終わった。男と女のあいのこと軽蔑され、侮蔑され、出世街道から外され、ガンダムファイトとデビルガンダム捜索の部署に回されてしまったのだ! そればかりか、軍の奴らどころか、市民まで私に心無い視線を送ってきた! お前たちにわかるか、男としてのプライドが女の身体によって打ち砕かれた衝撃を! わかるか、男女と侮蔑され、さげすまれた目で見られるあの屈辱を!!」

 

 そしてさらに吠える。その叫びは再び衝撃波となって俺たちに襲い掛かった。

 

「くぅ……!」

「人類なんてそんなものだ。所詮、自分たちとは異なる者に対しては、軽蔑し、侮蔑し、排除しようとする! そんな人類など滅べばいい! そうだ、デビルガンダムによる世界征服などどうでもいい! 私はこのデビルガンダムで、人類を、地球を滅ぼしてやるのだ!!」

 

 彼の気持ちはわかる。だが、それでも奴のしようとすることを許すわけにはいかない! なぜなら……!

 

 アルゴのボルトクラッシュが一歩進み出た。そしてアルゴが言う。

 

「ウルベ、お前は一つ間違えている」

「なにぃ!?」

 

 さらにジョルジュが。

 

「あなたのその境遇にはささやかですが同情を感じます。ですがそれも、アルティメットガンダムを奪い取って良からぬ目的に使おうとしたことによる自業自得!」

 

 サイ・サイシーも続ける。

 

「それに、辛い思いをしてるのはあんただけじゃないぜ!」

 

 チボデーも厳しい言葉をぶつけてくる。

 

「世界には、あんたの他にも差別や心無い目に苦しむ人たちや、力による理不尽に苦しめられる人たちもいる! ネオ・ケニヤの人たちのようにな! でもそれでもみんな、世界に恨みを持つことなく、必死に生きてる!!」

 

 そして、四人のガンダムの前に、ドモンのゴッドガンダムと、キョウジのガンダムシュピーゲル、師匠のマスターガンダムが現れて、言い放つ!

 

「なのに、世界や、お前と似たような目にあっている人々を含めた人類に憎悪を向けて滅しようなど!」

「くだらぬ私怨! 理から外れた的外れな恨み、憎しみにすぎぬわ!!」

「そんなもので地球と人類を滅ぼそうなど、俺たちが許しはしない!」

 

 おぉー! 俺が思っていること、言おうとして思っていたことを全部言ってくれた! まさにその通り!

 

 だが、そう断じられても、ウルベの恨み、憎しみは揺るぎもしなかったようだ。再び叫びとともに衝撃波が俺たちに叩きつけられる。

 

「えぇい、黙れ! わからぬならわからぬともよい。お前らをせん滅し、人類を滅ぼすだけだああぁぁぁぁ!!」

 

「そうはさせないと言っている! いくぞみんな!!」

『おぉ!!』

 

 そして俺たちと、ウルベ操るデビルガンダムとの決戦がはじまった!

 

* * * * *

 

 そして、ウルベとの決戦に突入した俺たちだが、ウルベのデビルガンダムは強敵という言葉すら生ぬるい強敵だった!

 

 彼が女性だったことに加え、彼の持つ憎しみの力によってさらに強化され、そのパワーを十二分にふるってくるのだ!!

 

「ぐわぁーーー!!」

 

 キラルのマンダラガンダムが、デビルガンダムの触手、ガンダムヘッドの直撃を受けて吹き飛ばされる。彼の横で戦っていたアレンビーも……!

 

「キラル!! きゃあーーー!!」

 

 別のガンダムヘッドからの光弾を受けて吹き飛ばされた!

 

 そして俺たちの元へも!

 

「喰らいやがれ、マシンガン・パーンチッ!!」

「極・流星胡蝶剣ーーーー!!」

「グラビトン・メガハンマアアアァァ!!」

「ローゼス・ハリケーンッッ!!」

 

 チボデーたち四人の必殺技が、ガンダムヘッドに直撃! ガンダムヘッドが爆炎に包まれた!!

 

「やったぜ……!」

 

 そう安心したように言い放つサイ・サイシー。しかし!!

 

「!!」

 

 チボデーが何かの気配を感じ、衝撃に目を見開く! その爆炎の中から、ガンダムヘッドが突っ込んできたのだ!

 その体当たりに四機は吹き飛ばされてしまう。

 

 忌々し気にアルゴが言う。

 

「くそ、これではらちがあかない……!!」

 

* * * * *

 

「やらせはせん! 恵雲ビーム!」

「瑞山レーザー! 発射!!」

 

 ネオ・チャイナの恵雲と瑞山の二人が、両舷のビーム砲からビームを放ち、ガンダムヘッドに吹き飛ばされたガンダム連合のガンダムを援護する。

 

「レイモンド、そっちに行きましたわ!」

「かしこまりました!!」

 

 マリアルイゼ姫の管制に従い、レイモンドが機銃を指示した方向に向け、対空砲火を放つ。

 

 必死にガンダム連合のガンダムを援護しながら、デビルガンダムの攻撃をかわし続けるネオ・ロシアの輸送艦ゴルビーⅡ。

 そのブリッジには、ガンダム連合各機からの悲痛な報告が立て続けに届いていた。

 

「こちらネーデルガンダム部隊! マーク3、マーク5、マーク6大破!! うわぁーーーー!!」

「こちら、ガンダム連合第4部隊、損耗率76%! え、援護を!!」

 

 それを聞きながら、危機感と焦りに表情を歪ませるナスターシャ。そこに、キャスから驚くべき報告が入る!!

 

「いくつかのガンダムヘッドが、後方にある他のコロニーに向かっています!」

「なんだと!?」

 

 その報告に、カラト委員長が驚きの声をあげ、ライジングに搭乗しているカッシュ博士が顔を歪ませて言う。

 

「奴め、コロニーまでも飲み込み、滅ぼすつもりか!?」

「全世界に警告! 地球が……いや、地球圏、そして全ての生きとし生けるものたちが危ない!!」

 

 ナスターシャから切羽詰まった警告が送られた。

 

* * * * *

 

 いつ終わるともしれない苦闘を続ける俺たちとガンダム連合たち。

 

 ドモンと師匠はまだ余裕がありそうだったが、それでもその消耗は無視できないようだ。

 

「なかなかしぶとい奴よ。これはさすがのわしも少しきついわい」

「くそ、なんでこんなにしぶといんだ!?」

「おそらく、ウルベ本人の憎しみの力に加えて、取り込んでいる私の本体の女性としてのパワーも加えてるんだと思います。せめてそれらを切り離せれば……あ」

 

 そこで俺は一つ思いついた。俺の本体とデビルガンダムを切り離す術、必殺の策を。俺の命と引き換えにの策ではあるが……。

 

 だが、背に腹は代えられない!!

 

* * * * *

 

「……師匠、ドモン、それに他の皆さん。私を援護してもらえませんか?」

「ぬぅ……?」

「何をする気だ、ジャンヌ!?」

 

 触手の一本をビームソードで断ち切ったドモンが俺に、そう聞き返してくる。

 

「私の本体に接近し、私の力、記憶、心全てを、私の本体に託します。そうすれば、私の本体をデビルガンダムから解放することができるはずです」

「なるほどな……」

「だが、そうすればお前は……?」

 

 ドモンの質問に、俺は苦笑して返す。それが答えだった。

 

「えぇ。これまでの戦いで傷ついたこの体、もたずに砕け散ってしまうでしょうね……」

「なんと……!」

「ですが、悔いはありません。私の命が、地球圏を助けるきっかけになれるなら……」

 

 そこに、サイ・サイシーから通信が入る。

 

「そんな、アネキ……! そんなの……」

「やめろ、サイ・サイシー。ジャンヌ、それしか手はないんだな?」

「はい……」

「それしか手はないなら、それをファイターであり武道家であるお前が決めたのなら、俺たちにそれを否定する権利はない。せめてもの手向けに、全力で援護してやる」

「うむ。それがわしらにできるせめてものことよ」

 

 ドモンと師匠、二人の言葉を聞き,目がしらが熱くなる。そこに。

 

「ジャンヌ……」

「ジャンヌノアネキ……」

「チコ、カンちゃん、今までありがとうございました。もしできれば、私の本体も憎むことなく、あなたたちの仲間として受け入れてもらえませんか?」

 

 二人とも同時にうなずく。

 

「あぁ、約束しよう」

「ワカッタ。タトエ本体ダロウガナンダロウガ、ジャンヌハジャンヌダ」

「ありがとうございます……カッシュ博士。私の本体の位置を探ってください」

「了解した。任せてくれ」

「……行きます!」

 

 そして俺はオルタセイバーを駆り、デビルガンダムへと突撃していった。

 

* * * * *

 

 ただ一筋にデビルガンダムへと突進してくる俺のオルタセイバー。加速によるGの影響で、身体が少しずつ崩れていく。

 だがそれでもいい。俺はこの作戦に命を賭けている。彼女……俺の本体のもとに、俺の全てと、このオルタセイバーを託せれば。

 

 その俺に、ガンダムヘッドが追撃してきた! いけない、振り切れない!!

 

 そこに!

 

「石破天驚拳ーーーーーー!!」

 

 師匠が放った石破天驚拳が直撃し、ガンダムヘッドを消滅させた。

 

「師匠!」

「全力で援護してやると言っただろう? お主は後ろや周囲を気にせず、ただ本体の元へ向かうがよい」

「はい……!」

 

 さらに加速して向かう。前方からガンダムヘッドが二体迫ってきた! それらが口を開け、ビームを放とうとしたその時!

 

「ガトリング・デススピアー!!」

「たあああぁぁぁーーー!!」

 

 駆け付けたチコのガンダムヘルトライデントと、アレンビーのノーベルガンダムがガンダムヘッドを撃破してくれた。

 

「ありがとうございます、二人とも!」

「うむ!」

「さぁ、ここは私に任せて、先に行って!」

「はい!」

 

 さらに突撃する。そこに、カッシュ博士からの報告が届いた。

 

「発見した! デビルガンダムの胸元だ!」

「しかし、DG細胞の筋肉に包まれているな……」

「ならこじ開けるのみだ! ビーム砲、発射用意! 目標、ジャンヌの本体が封印されているポイントの周辺部分だ!!」

 

 そして。

 

「行きますぞ! 恵雲ビーム!」

「瑞山レーザー!」

「「最大出力斉射!!」」

 

 ゴルビーⅡから高出力のビームが放たれ、デビルガンダムの胸元に直撃した!

 そのビームの連射を浴びているうち、そのダメージに耐えかねたのか、胸元の一部分が盛り上がり、開いた。そこには、俺の本体が封印された水晶が!! いまだ!!

 

* * * * *

 

 その衝撃で、ウルベの奴に縛られた俺……ジャンヌ・エスプレッソ本人の意識が戻った。

 

 その俺の視界に、俺の分身が生み出したガンダム、ガンダムオルタセイバーが映った。

 そのオルタセイバーは、攻撃をかわし、またある時は攻撃を受けながら、ただ一直線へと向かってくる。そしてそれを、他のガンダムたちが必死に援護している。

 

 それを見守る俺に、分身からの思念が届いた。

 

―――待っていてください、『私』。今行きます!

―――『私』、なぜそこまで……。道を誤り、罪を犯した私に……。

―――だからこそです。私たちは罪を償わなくてはなりません。そして、人類を救い、明るい道を切り開くことこそが、その償いです。

―――『私』……。

 

 そして、そこでデビルガンダムが大きな口を開いた。まさか……!

 

「だめええぇぇぇ!!」

「オオオォォォォォ!!」

 

 デビルガンダムが、その咆哮とともに、衝撃波を放った!! その直撃を受け、オルタセイバーは中破するも、さらに接近してくる。

 

―――だから、また立ち上がりましょう、『私』。私とあなたに託すことを決心してくれた、みんなのためにも!!

―――『私』……!

 

 そしてオルタセイバーは俺の目前まで接近すると、頭突きで水晶を破壊した! そしてハッチが開き、中からもう頭部と肩までになった俺の分身が飛び込んでくる。その身体もどんどん崩れていく。

 

「私……!」

 

 そして頭部も砕けると、後には光の玉だけが残された。その玉を俺は抱えると、胸へと抱え込んだ。光がどんどん俺にしみこんでくる。

 

 彼女の力、記憶が俺の中にしみこみ、精神が『彼女』と融合していくのがわかる。

 

 そして俺は、ついにデビルガンダムの、ウルベの支配から完全に抜け出した! そして、目前にたたずむオルタセイバーに向かって言う。

 

「行きますよ、『私』! そして、オルタセイバー、いえガンダムピュセル!!」

 




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* 次回予告 *

皆さん、いよいよお別れです!

ジャンヌが解放されたとはいえ、ウルベが操るデビルガンダムの力はいまだ強大!
果たして、この化け物を止める術はあるのでしょうか!?

地球と人類の運命やいかに!?

『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

最終回『俺とみんなで切り開く明日! 光あふれる未来へレディーゴー!!』

それではみなさん。8/30 12:00にまたお目にかかりましょう!


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Final Fight 『俺とみんなで切り拓く明日! 光輝く未来へレディーゴー!!』

 皆さん、こんにちは。ストーカーでございます。
 さて、ついにこの時が来てしまいました。私にはもう、お伝えすることは残っておりません。

 そう、これが正真正銘、最後のガンダムファイト!

 さぁ皆さんご一緒に!!

 Ready Go!!



 俺……ジャンヌ・エスプレッソの本体……は、分身が砕け散ったあとに残った光の玉……彼女の力や心、記憶の集合体を抱え、胸に押し当てた。

 

 光の玉が俺の中に入り込み、分身の全てが俺の中にしみこんでいくのが感じられる。彼女の心や記憶が、俺のそれと一体化していくのが感じられる。

 

「これが、『私』が今まで培ってきたもの……」

 

 今や、俺は俺ではなくなっていた。俺は俺であり、『俺』でもある。

 

「ありがとうございます……そして、これから一緒にがんばりましょうね、私」

 

 俺は、目の前に直立したままのオルタセイバーを見据えて言った。

 

「行きますよ、オルタセイバー! ……いえ、ガンダムピュセル!」

 

 その言葉に呼応するかのように、オルタセイバーが崩れ始めた。否! 新たな姿に生まれ変わろうとしているのだ! 俺の思念に反応し、アルティメット細胞に変質し、機体を修復、改修しては崩れていくDG(デビルガンダム)細胞。

 そして、全てのDG細胞が崩れ落ちた後には、完全な状態のオルタセイバー……いや、かつての俺の乗機、ガンダムピュセルが堂々と直立していた!

 

 そして、俺は絡みついていた触手を引きちぎり、ガンダムピュセルのコクピットに飛び込んでいった。俺が入ると同時にそのハッチが閉まる。

 

 頭上からリングが回転しながら降りてくる。そのリングはそのまま回転しながら、俺の生まれたままの身体にファイティングスーツをまとわせていく。その苦しさがどこか懐かしかった。

 

 そして、俺のささやかな胸も、細身の腕や足も、ファイティングスーツに包まれていく。

 

 それが全部終わったところで、ピュセルのモビルトレースシステムが起動。軽く演武を行う。その動きの通りに相棒が動く。

 

「よし、いきます!」

 

 そして俺は、ガンダムピュセルとともに、みんなの元に戻った。

 

* * * * *

 

「ジャンヌノアネキ!」

「戻ってきたか、本当によかった!」

「えぇ、ご心配をおかけしました。それに、あのような罪を犯しておいて、皆さんの元に戻るのもどうかと思いましたが……」

 

 俺がそう言って頭を下げると、チコもカンちゃんも笑って許してくれた。

 

「気にするな。お前の分身と別れる時、約束したんだからな。お前を変わらず仲間として受け入れると」

「ソウダ。ソレニ、タトエ本物ダロウガ分身ダロウガ、ジャンヌハジャンヌ」

「二人とも……」

 

 そこに、師匠やドモンからも通信が入る。

 

「それに、お主がしたことなど、わしがしようとしたことに比べればどうってことはない」

「正直、お前がしたことは看過できるものではないが、お前なりに地球のことを思ってやったことだし、そして自らのことを悔い改めたのなら、俺たちはそれ以上言うべきことはない」

「二人とも……」

 

 さらに、シュバルツ……いや、キョウジも言ってくれた。

 

「何より、ある漫画家も言っていた。『男の価値はどんな奴だったかで決まるものではない。今どんな奴かで決まるもの』と。過去に過ちを犯したのなら、これからの行動でそれらを払拭すればいいことだ」

「キョウジ……ありがとうございます。私は女なんですけどね」

 

 俺のそばに、シャッフル同盟の四人も駆け付けて、言葉を投げかけてくれる。

 

「そうそう、これからのお前の頑張り、しっかりと見せてもらうからな!」

「手を抜いたら、承知しないぜ、アネキ!」

「その通りです。共に、全力で戦いましょう!」

「何より手を抜くなど、お前の中のジャンヌも許さないだろう」

 

 その言葉を受け、俺は胸に熱いものを感じながらうなずく。

 

「はい。行きましょう、みんな!」

 

 そして俺たちは、改めてデビルガンダムに突撃した!

 

* * * * *

 

 俺を失ったデビルガンダムは、やはりいくらか弱体化したようだ。攻撃の激しさも、今までほど激しくはない。

 

 とはいえ、やはり腐ってもデビルガンダム。弱体化しながらも、その攻撃は緩むところを知らない。

 

 ビームセイバーを振るって、接近してくるガンダムヘッドを両断! 何しろ、生身の身体に戻ってしまったことで、今まで磨いてきた、流派・東方不敗の亜流の技は使えなくなってしまった。今の身体ではその負荷に耐え切れないのだ。元から使える剣術しか使えない。しかし、やるしかない!

 

 また別の方向から飛んできたガンダムヘッドに、ビームセイバーを突き刺す!

 

「たあぁぁー!!」

 

 そして切り上げて撃破!! 

 しかし、別の方向から飛んできたガンダムヘッドに体当たりを喰らって吹き飛ばされる!

 

「くぅっ……!」

 

 吹き飛ばされた俺のガンダムピュセルに、ビームで追撃しようとするガンダムヘッド。そこに!

 

「させぬ!」

 

 キョウジのガンダムシュピーゲルが駆け付け、そのガンダムヘッドを一刀両断してくれた!

 

「ありがとうございます、キョウジ!」

「礼には及ばん。では!」

 

 そして、接近してくる二本のガンダムヘッドに飛んでいき、その両方を両断する。

 さすがキョウジ。俺も負けてはいられないな。俺もビームセイバーを構えなおし、気合を入れる。

 

 そこに、ゴルビーⅡのナスターシャ女史から通信が入る。

 

「朗報だ! 各コロニーに伸びていたガンダムヘッドたちが、コロニーの目前で動きを止め、朽ちていった。どうやら、ジャンヌを失って弱体化したことが原因のようだ」

 

 それを聞いて、チボデーが歓声を上げる。

 

「そいつはハッピーな報せじゃねぇか! よーし、もう一息、頑張ろうぜ!」

「あいよ!」

 

 チボデーの言葉に、サイ・サイシーがうなずき、ガンダムマックスリボルバーと、ガンダムダブルドラゴンが突撃し、暴れまわる。

 

 師匠の無双っぷりは相変わらずだし、ドモンもビームソードでガンダムヘッドを斬りまくる。

 

 ガンダムヘッドの一体の頭上にガンダムボルトクラッシュが着地し、拳を振り上げる。

 

「喰らえ! ガイアクラッシャー!!」

 

 そして拳を叩きつける! ガンダムヘッドはつながっている触手もろとも砕け散った。

 

 激闘を繰り広げる俺たちだが、それでもデビルガンダムの猛威はとどまるところを知らない。ガンダムヘッドを潰しても潰しても、また新しいガンダムヘッドが現れる。本体を攻撃しても、すぐに自己再生で修復されてしまう。

 

 もう、きりがない。無限に戦い続けるしかないように思われた。

 

「くそ、これではきりがないぞ! カッシュ博士、何か手はないのか!?」

 

 カラト委員長が焦った様子で、カッシュ博士にそう意見を求める。

 

「本体を一気に叩くしかないですが……」

「そうですね……。叩いても自己再生されてしまいます。強烈な光のパワーで、デビルガンダムを構成しているDG細胞を、一瞬にしてすべて、アルティメット細胞に昇華させてしまえばいいのですが、そんな手段は……」

 

 俺が言ったその時!

 

「手段? そんなものあるではないか」

 

 師匠がそう言い放った!

 

* * * * *

 

「手段!? 師匠、何か手があるのですか?」

 

 そう聞いてくるドモンに、師匠は不敵に笑みを浮かべて言った。

 

「キョウジ・カッシュがいっていたではないか。DG細胞は意志の力で、アルティメット細胞に昇華することができると。そしてわしらには、意志の力を敵にぶつける手があるはずだ」

「そうか、拳か!」

 

 チコの答えに、師匠がうなずく。

 

「そうじゃ。石破天驚拳に意志の力を込めて放つ!」

「ですが、あれだけの巨体をアルティメット細胞に昇華させるには、私たちだけの意思の力では……」

 

 圧倒的に足りない。この場にいる、俺たちやガンダム連合たちを集めても、出現している全てのガンダムヘッドを消滅させられるかどうかってところだ。とても、デビルガンダムを消滅させるなんてことは……。

 

「心配はいらぬ。ほら、感じぬか?」

「え? あ……」

 

 確かに感じる。あちらこちらのコロニー……いや、地球圏の全てから、光にあふれた意志が集まってくるのが。

 これは……。

 

「地球消滅の危機を目の当たりにし、そしてわしらの戦いを見た者たちが、地球を守りたいという気持ちを抱いてくれておる。この力があれば、あの化け物を光に還元することなどたやすいであろう」

「皆さん……」

 

 人々がその気持ちを持ってくれたことに目頭が熱くなる。俺の進んだ道は結局は誤りだったが、それでもこうして地球を救う一助になってくれたのは、本当によかった。

 

「おのれええぇぇぇぇぇ!!」

 

 そこに、ウルベの叫び声。デビルガンダムがガンダムヘッドとともに突撃してきた!

 

「ふん、最後の悪あがきに出たか。皆の者、いくぞ!」

「はい!」

「えぇ!」

 

 師匠の言葉に、ドモンと俺が答える。他のみんなも力強くうなずいた。そして全員で構える。

 

「わしらのこの手が光輝く!」

 

 師匠の後を、ドモンが続ける。

 

「未来を拓けと!」

 

 その後に俺が。

 

「轟き叫ぶっ!!」

 

 さらにデビルガンダムが突っ込んでくるが、動じない。

 それどころか、俺や師匠、ドモンたち、いや、この場にいる全てのガンダムたちが金色を超えた金色に光輝いていた。

 

 再び師匠が。

 

「星!」

 

 シュバルツが。

 

「破!」

 

 チコとカンちゃん、そしてシャッフル同盟たちが。

 

「超越!」

 

 そして全員で。

 

「神驚拳ーーーーーーーー!!」

 

 俺たちから超巨大な光の塊が放たれた!! 俺にはその光の塊の中に、無数のキング・オブ・ハートが見えたような気がした。

 

 それはまさに、星を破り、神を驚かすというその名のごとし。

 

 その光の塊は迫りくるガンダムヘッドを、次々と光に変え、そして、デビルガンダム本体に直撃した!!

 

 その光のパワーの前では、その巨体は意味をなさない。その巨大な体が徐々にアルティメット細胞へと変わって崩れていく。そしてウルベも。

 

「あぁ、私の身体が……憎しみや恨みが……浄化され、光へと変わっていく……!」

 

 そして憎しみと恨みに生きた男は、デビルガンダムとともに、浄化され、光……アルティメット細胞となって消えていったのだった。

 そして、神驚拳の光はそれだけではなく、地球にも……。

 

「見て、地球が……」

「おぉ……!」

 

 通信機から、チボデーギャルズと、サイ・サイシーのお目付け役二人の、喜びの声が聞こえてくる。

 振り注いだ光は、地球を覆っていたDG細胞をアルティメット細胞へと変えていった。変わったアルティメット細胞は大地に、緑を蘇らせて消えていく。

 そして、地球を覆っていたDG細胞が消えた後には、今までよりもさらに美しい地球がそこにあった。

 

 地球は救われたのだ。

 

* * * * *

 

 最後の戦いから四年後。ガンダムファイト14回大会が始まった。

 

 この14回大会では、これまでのガンダムファイトが地球を汚し、傷つけてきたことを反省し、ラグランジュポイントに作られた大会用コロニー『ガンダム・コロシアム』で行われることになった。

 

 良い変化はそれだけではない。

 コロニー国家各国が共同して、地球に住む貧しい人たちをも、コロニーに住まわせるように手を尽くして、今や地球には、環境を調査する調査員以外の人類は存在しない。

 

 みんな、あの戦いを通して、地球について考えてくれた成果だ。

 

「久しぶりじゃな、ジャンヌよ」

「師匠」

 

 そう俺が回想しているところに、師匠……東方不敗・マスターアジア……もとい、東西南北中央不敗・スーパーアジアが俺の隣にやってきた。

 彼は俺の身体を見回すと、面白そうに笑みを浮かべて口を開いた。

 

「ふむ、鍛錬は欠かしてはおらぬようだな。結構なことだ」

「はい。そのおかげもあって、東方不敗亜流の技も、スプラッシュ・ソードぐらいなら問題なく撃てるようになりましたよ」

「そうか、それは楽しみだ」

「師匠も参加されるのですか?」

 

 俺がそう聞くと、師匠は苦笑して首を振った。そして答える。

 

「いや、わしは東西南北中央不敗・スーパーアジアだからな。そんなわしが大会に出ては、他の者たちのやる気がなえるじゃろう。今回は見届け人よ」

「はは……」

 

 俺も苦笑を浮かべる。全てが終わり、師匠はまた東方不敗・マスターアジアの名を名乗っても問題ないようになった。だがそうなっても、師匠はいまだ、東西南北中央不敗・スーパーアジアの名を名乗り続けている。確かに、彼の強さならそう名乗っても違和感がなさすぎるのだが。

 

 と、そこに、アナウンスが流れた。次の試合が始まるらしい。

 

 リングに現れたのは、カンガルーのようなガンダム。カンちゃんの弟子、ピョンちゃんの駆るジャンピングガンダムMk-Ⅱと、ネーデルガンダムの改良機のような機体。

 

 確か、ルドガーの話では、あのガンダムには彼の弟子が乗っているらしい。彼の技や力を全て受け継いだその弟子は、圧倒的な強さでサバイバルイレブン(これも当然、宇宙で行われていた)を勝ち抜いたんだとか。

 

 この二機のガンダムの対決は、新しい時代を象徴しているかのように見えた。

 

 彼らが対峙している向こうには、青く輝く地球が。まるで、新しい時代をつかみ取った俺たち人類を祝福してくれているかのようだ。

 

 そんな希望にあふれた風景の中、二機のガンダムのファイターたちは、希望にあふれた叫び声を放つ。

 

「ガンダムファイト!」

「レディーゴオオオォォォォ!!」

 

 

~END~

 

 




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テテテUCを書いてくださる方も募集しています!



さて皆さん、ストーカーでございます。
ここまで、『とうけん』こと『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』を読んでいただき、まことにありがとうございます。

次の更新は、9/5に『イカダ』こと『好き放題してた市長ですが、気が付いたらイカダで漂流していました』の4話の公開を予定しております。
さらにその1週間後、9/12にはひいちゃオリジナルのガンダムものの短編を公開する予定でございます。
こちらも、どうぞお楽しみしていただけたら幸いでございます。

それではこれまでお読みいただき、ありがとうございました!


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