アズレンもの(仮) (かじゐと)
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学園母港 前編

「今日の面接、受かるといいんだけどあんまり自信が無いなぁ、僕にも出来そうなアルバイトがやっと見つかったのに……」

「あんまり手応え感じられなかったのは辛いかも、これを外したら次は簡単に見つからないんじゃ……」

 

一人の少年が本日に赴いたアルバイト採用面接の出来栄えを、帰路に着きながら振り返っている。

彼の顔色を伺うも結果は芳しくは無い様子、どうやら自分の能力に対してあまり自信を持てない性格の様だ。

かの少年は姓は舵取(かじとり)、名は(あおい)と言う、重桜と呼ばれる国家に住む学生の一人であり、容姿は線の細い体格に見合った中性的な顔立ちである。

頭頂部には犬耳が、臀部には犬の尻尾が生えているのだが、これは彼だけの特異体質という訳ではない。

彼のように重桜で生まれ育った人間はミズホの神秘と呼ばれる不思議な力の影響を受けており、重桜国民の多数は動物の要素が身体から現われている。

 

────────────────────

 

「あら、あの男の子は……」

「また何か面倒事ですか、姉様」

「まあ、そんなところかしらね、気になった子がいたの、ほら…… あそこにいる犬耳の男の子」

「ふむ、遠くからだと特に珍しくはない男子に見えるが…… あれですか?」

「そう、あの子の事を調べ上げて頂戴、ただの杞憂だとしても構わないわ」

「わかりました、そうなったとしても文句は言わないでもらいたいですな」

「あら、つれないわね、でも私の勘が、KAN-SENとしての何かが、あの男の子を逃すなと私を後押ししてるの、おわかり?」

「はぁ…… 承知しました」

 

────────────────────

 

そして数日後の夕方、彼は通学路を遡りながら自宅に帰る途中、先日に面接を受けたバイト先の人事担当から

碧が所持しているスマホ宛に電話がかかってきたのだが、予想していた通りの不採用連絡であった。

やはり自分のような如何にも虚弱な子供が採用されるのは難しいのだなと思いながら、諦めて帰路に着くのだった。

自宅の玄関前に着いた碧はいつもの様に郵便受けの中身を漁る、入っていたのは一枚の封筒だけだった。

普段ならチラシ等の紙類が大半を占めるのだが、今日はどうやら意図しない珍客が紛れ込んでいた。

封筒の宛名を確認すると我が家の住所と『舵取碧様』と書かれている事から恐らく自分宛てである事は間違いないだろう。

差出人の名前も確認しようと表面を向けると、そこには『重桜帝国海軍』と書かれていた。

今時、珍しい毛筆と墨で書かれている上に、やたら達筆だが読みやすいしっかりとした字で書かれている。

 

これだけ手の込んだ封筒を使うと言う事は、かなり重要な内容が書かれているに違いないだろうと判断した碧だが

玄関前の郵便受けで立ち読みとか流石落ち着かないので、一先ずは自室へ帰る事にした。

家に入り「ただいま」と声をかけると、リビングの方から母親の「おかえり」という声が帰ってくる。

この時間帯の母は家事と料理に追われて忙しいのである、そっとしておくに限ると碧は判断した。

碧は両親の他に双子である弟と妹が居る、二人とも友人と遊んでいる時間帯なのだろう、家の中には見当たらない。

父は言わずもがな、職場で勤務中に違いない、帰ってくるには早すぎる時間である。

 

階段を上り自室に入ると制服を脱ぎ捨てカバンを定位置へと置き、ラフな格好に着替える。

ベッドの上に胡座をかき一息入れた後、手に持った封筒を眺め、意を決して封を切った。

薄い封筒の中にはたった便箋と用紙が1枚ずつ封入されており、便箋には『航空母艦・赤城』の署名に加え彼女がしたためたと思しき文章。

そして用紙には地図と目的地への行き方、面接日時と必要な持ち物が書かれていた。

先ずは便箋を読み上げ内容の確認を取る事にした、便箋も赤城の直筆で封筒と同じく毛筆と墨で書かれており彼女の才の片鱗を感じさせる一枚である。

便箋の文章をスマホのメモへと箇条書きすると、この様な内容となっていた。

 

・貴方を重桜海軍施設の用務員としてスカウトしたい

・職務内容は赤城の身の回りの世話とKAN-SENに関わる職務が主である。

・住み込み前提の職務の為に学業は諦めてもらう事になるが、卒業認定資格やその他資格へのサポート有り。

・各種保険と福利厚生、個室寮を完備。

・給与は高卒初任給程度だが、状況に応じて昇給と手当有り。

 

この様に書かれているが最後の給料の部分は、碧にとっては非常にありがたい条件であった。

そもそも彼がアルバイトとはいえ労働に勤しむ決意をした切欠が両親の負担を減らす為であった。

下の子が双子として産まれてきてしまった為、養育費と子育ての労力が単純に2倍以上になってしまい、大変なのである。

父の稼ぎが極端に悪いというわけではないが、時勢を考えるとやはり貯蓄のペースが思った以上に伸びていない。

そんな状況でありながらアルバイトが出来るようになった年齢で、親に小遣いや自分が欲している物を強請る訳にはいかないのだ。

父の収入は歳の離れた幼い弟と妹の養育費に充てるべきだと碧は考えている。

 

そんな時に降って湧いたように提示された好条件な仕事の話に飛びつかないわけがない。

碧は早る気持ちを抑えながら、地図が書かれた用紙を確認する。

こちらは面接場所の住所に面接会場の付近の地図、そして連絡先の電話番号と持参する荷物が書かれている。

必要な物は筆記用具と履歴書に学生証、服装は学生服を着用して来るようにと書いてある。

日時は来週の日曜日の昼過ぎ、面接が終わるまではこの書類は大切に保管しておかねばと思い鞄の中にしまう。

封筒の中身を読み終えた後は、家族全員が揃った夕食時に面接へ行く事を伝えた以外には、特に何事もなくいつも通りの生活をして眠りについた。

 

 

そして数日が過ぎ、今日は自分の人生を大きく変えるかもしれない大事な日。

朝早く起き天気予報を確認するも本日は快晴で出かけるにはとても良い日だ。

身支度を整え朝食を食べ終えた後に出発、地図に書かれた目的地まで電車を使って移動するのだが、未知の土地なので少々緊張している。

事前に調べた情報によると最寄り駅から外に出た時に連絡先に電話を送迎の自動車を寄越すとの事だ。

碧は緊張も程々に予め登録しておいた電話番号に電話をかけた。

 

「こちらは重桜海軍学園母港、要件を申されよ」

 

低めの凛々しい女性の声だがやや堅苦しい、今時珍しい喋り方をする人だと思いながらも碧は応答する。

 

「はじめまして、本日にそちらで面接をさせていただく予定の舵取碧と言います」

「ふむ、そなたが…… 赤城殿から話は聞いている、今は最寄りの駅に居られるのか?」

「はい、赤城さんから送られてきた手紙の指示の通り、最寄り駅到着後に連絡しています」

「わかった、今から送迎車を寄越す故、最寄り駅の入口付近にて待たれよ、赤い自動車が送迎車、拙者はそれに乗ってそなたのもとへ向かう」

「拙者の名前は高雄と申す、白い軍服に長い黒髪の女が拙者だ、今から出立するが30分ほど待たせることになる、よろしいか?」

「わかりました、駅前で待っています」

「了解した、暫し待たれよ」

 

碧がそう言うと通話は切れた、迎えが来るまでの間はどうしたものかと辺りを見渡すと、丁度近くにベンチがあったのでそこに腰掛けて待つ事にした。

それから20分程だろうか、自販機で飲料を買って飲んだり、スマホで時間を潰しをしていると一台の赤い乗用車が近づいてくるのが見える。

赤い乗用車は碧から多少離れたところで停車し多少の間をおいた後、運転座席と助手席の扉が開き、車内から二人の女性が現れる。

 

二人揃って同じ程の背丈で、一人は白い大きなリボン、もう一人は重桜の伝統的な装飾品を使って後頭部に長い髪を纏め上げている。

高雄も瑞鶴も白い制服に茶色の革靴という格好であり、いかにも重桜軍人という出で立ちである、彼女達が迎えの者だと碧もそれとなく察したようだ。

彼女達は軽く辺りを見回した後に人気のない場所ということもあり、難なく碧を発見し彼のもとへゆっくりと近づき話しかける。

 

「……失礼、舵取碧殿で間違いないだろうか?」

「はい、僕が舵取碧で間違いないです」

「そうか、本日は面接地の学園母港まで案内を担当する高雄という者だ、よろしく頼む」

「そしてこっちはそなたが見たくて野次馬しに来た瑞鶴という拙者の友人だ…… 全く、これは公務だというのに」

 

高雄は少し呆れた様子で瑞鶴の方を見て溜め息をつく。

一方、瑞鶴は悪びれる様子を見せず朗らかに笑みを浮かべて碧を見ている。

 

「今日の私は休暇だから問題ないし!! それに、あの赤城先輩が率先して会おうとしている少年って気になっちゃってね」

「会ってみて良かったわ!! 少年とは聞いていたけどこんなにかわいいだなんて!! あ、でも男の子にかわいいは失礼かな?」

 

興奮気味に矢継ぎ早に喋る瑞鶴と隣で呆れている高雄を見て、碧はふと思った。

『この人達、めちゃくちゃ大きい』と…… スケールが狂ってるのではないかと錯覚するくらい身長・乳房・下半身が大きい。

身長は碧自身が非常に小柄というのを考慮しても大きい、碧の頭頂部が彼女たちの肩の高さ程になってしまうのだ。

制服もサイズに余裕を持って作られてはいるのだろう、しかし彼女達の制服は肉の暴力に生地が張り詰めながら耐えている。

KAN-SENというのは皆してこんな体型なのだろうか? 碧の疑問は尤もなのだが、彼はまだ目の前の二人が初めて遭遇したKAN-SENなので今はそれを知る由もない。

 

「さて、ではそろそろ行くとしようか」

「えぇ~、もう少しお話したいよぉ」

「瑞鶴殿、あまり時間をかけると遅刻してしまう、それに車内でも会話は出来るであろう」

「ん~…… 仕方ないなぁ」

 

渋る態度をわざと見せる瑞鶴を高雄は適当に嗜めて、碧を後部座席へと案内する。

碧は後部座席へそそくさと乗り込むが、それを見た瑞鶴は便乗する様に碧の隣の席へと乗り込む。

そんな瑞鶴の行動には既に慣れているのか、ため息を一つ吐いて運転席へと高雄は乗り込んだ。

エンジンキーを鍵穴に挿入すると内装の電飾や装置に電力が通い、操縦席に隣接している小型のディスプレイに光が灯る。

高雄は手袋を外しディスプレイに指を押し付ける、認証のサインが表示されエンジンキーを回すと同時にエンジンが低い唸り声をあげる。

そして操縦席横のレバーを操作してギアを入れると車体はゆっくりと前進を始めた。

 

「乗ってみて思ったんですけどとても大きな車ですね…… 僕だと足元がスカスカです」

「まぁ確かに大きい車ではあるな、この車はある意味KAN-SEN用に作られているからな」

「私達みたいな大型艦船はみんな長身だからね、私達はむしろ控えめなんだ、一部の戦艦KAN-SENとかとても大きいんだよ」

「駆逐艦や一部の巡洋艦の娘達は小柄で、碧殿の様に脚を投げだしているKAN-SENもいる、そう気にするものでは無いぞ」

 

碧の質問に高雄と瑞鶴がそれぞれ答える、その言葉を聞いて碧は納得したような表情を浮かべた。

どうも自分の体が小さいというコンプレックスが未だに拭えない。

そんな碧を見て瑞鶴は悪戯っぽい笑みを浮かべて碧の頭を撫で始める。

突然の事に碧はビクッと体を震わせてしまうが嫌な気分では無かった。

瑞鶴の手付きはとても優しく、慈しみに溢れていたからだ。

そして碧の顔が赤くなっている事に気付いた高雄は瑞鶴に注意をする。

 

「あまり碧殿を誑かすな、赤城殿に何を言われるかわからぬぞ、拙者達の役目は送迎と護衛だ、安易な接触は良からぬ誤解を生む」

「はいはい、わかりました、高雄ってばお堅い」

 

注意を受けた瑞鶴は少しつまらなさそうな顔をして碧の頭に乗せていた手を離す。

碧はその行動にほっとした様子を見せるが、高雄は呆れた様子で溜め息をつく。

 

「全く、そなたが碧殿に興味を持つのは解るが、今は公務中なのだぞ」

「わかってるよ、でもちょっとくらい、ね?」

「よくない、拙者達がこうして護衛についている意味を考えろ」

 

高雄の正論を受けて瑞鶴は不満げに頬を膨らませる、そんなやり取りを見ながら車窓の外にふと目を向ける。

そこには広大な海が広がり、車道はいつの間にか広く大きく、海岸に沿って遠くへ伸びていく。

空には海を縄張りとする海鳥が飛び交い、時折鳴き声をあげながら旋回する姿が見える。

天から灌ぐ太陽の光を海が受け止め、海面を白い光が煌々と照らす。

今から向かう先はどんな場所なんだろうと、期待と不安を胸に抱きながら碧は窓から見える景色を眺め続ける。

 

そんな碧の様子を見て二人は微笑ましく思うと同時に、赤城の考えがイマイチ読めずに居る。

高雄は碧と初めて目を合わせた瞬間、抗う余裕も無く意識が惹き込まれそうになった。

国家間の合同演習に於いて数多のKAN-SENと交戦し、敵から目を逸らさず戦場を自らの力で乗り越えて来た彼女にとってそれは初めての経験だった。

高雄は瞬時に気を強く持ち、意識して強引に少しだけ下に視線を逸らした、強者でもない小動物の様な可愛らしい少年に畏怖に近い感情を覚えたのだ。

言い方が悪いがこのような得体の知れない少年を護衛を寄越してまで学園母港に招待する、そんな赤城の考えが高雄には理解し難かった。

 

一方、瑞鶴は格上の先輩である赤城が労力と時間を割いてまで手元に手繰り寄せ、あわよくば確保を企んでいる相手がどんな人物なのか興味があった。

そして実際に会ってみて、休暇を潰してまで会いに行って正解だと考えていた。

瑞鶴は高雄ほど深刻には考えておらず『こんな可愛らしい少年が母港に来てくれるのかぁ』程度にしか考えて居なかった。

あと『赤城先輩は結構面食いだな……』とそこそこ無礼な事も思っていた。

瑞鶴の思考回路は割と適当で雑な部分が多いのであった。

 

「母港が見えてきたな、そろそろ到着するぞ」

 

瑞鶴との雑談に興じていた碧であったが、高雄の言葉で車窓の外を見ると無骨で巨大な港が視界に入る。

埠頭とドックには大小様々な艦船が停泊しており、少数の女性と多数の『ひよこ』の様な生き物が艦体の上や作業場で何やら作業をしているのが見える。

上空にはレシプロ戦闘機が巡回しており、周囲の警戒に当たっているようだ。

学園母港を眺めていると不意に車の速度が次第に緩やかになり、やがて停車する。

先程の港湾部とは違って、重桜の伝統的な作りの大きな門が堂々と鎮座しており、港湾部で先程見かけた『ひよこ』の様な生物が周辺を警邏していた。

 

車輌を門に近づけ停車し、高雄が運転席の窓を開けると警邏をしていた彼ら(?)が車輌を包囲する。

高雄は懐から身分証と思しき物を取り出して提示すると、彼らは複数でそれを凝視した後に敬礼した。

隊長らしき『ひよこ』が合図を出すと、別の『ひよこ』達が急いで門の扉を開放する。

門が開ききったのを確認した後、高雄は彼ら(?)に労いの言葉をかけて自動車を門の内側へと徐行し、すぐ近くの車庫へと車輌を入庫させた。

 

高雄が自動車のエンジンを切り、後部座席の碧と瑞鶴に降車するよう促す。

二人はそれに従い、先に瑞鶴が、次に碧が車輌から降りる。

最後に高雄が降りて車輌にロックをかけた後に、敷地内の案内を高雄が始める。

 

「これから赤城殿が居る執務室へと向かおう、面接は其処で赤城殿が直々に行うと聞いている、拙者について参れ」

「高雄について行こっか、碧くん」

「あっ、はい、よろしくお願いします」

 

ごく自然に碧と手を繋ぐ瑞鶴を見て、高雄は彼女の社交性を少しは見習わなくてはと思いつつ、舗装された小径を歩いていく。

敷地内は重桜式の庭園となっており、色とりどりの花が咲き乱れる花壇が並び、時折吹く風が花の香りを運んでくる。

庭園の中にも大小様々なサイズの『ひよこ』の様な生物がそこかしこに居り、碧はどうしても気になったので高雄に問いかける。

 

「高雄さん、さっきから気になっていたんですけど、あの子達は一体……」

「ああ、彼等は『饅頭』と呼ばれている者達で、我らKAN-SENと共存している不思議な生物だ」

 

高雄の説明を聞いてもいまいち理解できないのか首を傾げる碧、そんな彼の様子に高雄は苦笑しつつ補足する。

 

「まあ、見ての通り可愛らしい生き物であろう? 敵意は無いので安心してほしい」

「見た目に依らず結構優秀というか多芸なんだよね、言葉は話せないけどこっちの考えは理解してくれるし」

「そうだな、饅頭達のおかげで成り立っている業務もある、決して無碍にはできない我々の仲間だ」

 

饅頭の説明を聞きながら小径を歩くこと数分、前方に重桜様式の立派な邸宅が姿を現した。

碧が住んでいる地域は現代的な建物が立ち並ぶ場所なのだが、この基地は港以外は古風な作りの建物が多い様だ。

勝手知ったる我が家の如く、靴を脱ぎ邸宅の中に入っていく高雄と瑞鶴に、碧は恐る恐るついていくしかなかった。

高雄は玄関から真っ直ぐ伸びる廊下を歩き、とある部屋の前まで行くと立ち止まり襖の前で中にいるであろう人物に話しかける。

 

「赤城殿、客人をお連れした」

「お務めご苦労、入りなさい」

 

赤城の落ち着いた口調の返事を聞いた高雄は襖を開けて二人を招き入れる。

室内には畳が敷かれ、広々とした部屋の隅の一画は小規模な書斎と化しており、赤城は文机の前に置かれた座椅子に座っている。

文机の上には資料、そして事務作業用のノートパソコンが置かれており、重桜様式の室内と些かミスマッチな組み合わせにも見える。

 

「高雄、このお方を無事に此方まで送り届けた事、ご苦労でした、そして…… 瑞鶴、貴女は休暇の筈、でしょう?」

 

赤城は普段通りの穏やかな表情を浮かべつつもその声音は何処となく冷たい、瑞鶴は冷や汗を流しつつ答えた。

 

「乗用車に乗って出発する寸前で瑞鶴殿に見つかってしまったのだ、普段は気にも止めない癖に今日はやけに拙者に問い詰めて来てな……」

「赤城先輩が高雄を寄越してまで会いたいってどんな人かな?と思いまして、高雄について行っちゃいました、あはは……」

「そんな大雑把な好奇心で休暇を潰してまでついていくなんて、全く貴女と来たら……」

 

呆れながら溜息を吐く高雄と、冷ややかな視線を向ける赤城に瑞鶴は縮こまりながら弁明する。

 

「いやそのぉ~、ちょっとした出来心と言いますか、別に悪気が有った訳じゃなくてですね、はい……」

「任務中の高雄に迷惑を掛けた事ですし、後日に始末書を提出しなさい」

「えぇっ!?」

「あら、加賀に扱かれる方が好みかしら?」

「始末書でお願いします……」

 

瑞鶴が高雄に助けを求めるような目線を送るが高雄は「自業自得」と目で返すだけだった。

赤城は二人の様子を眺め苦笑しつつ、高雄と瑞鶴に部屋から退出する様に促した。

二人は赤城に一礼するとそのまま執務室を後にするのだった。

 



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ちょっと前に話題になった子に会って来た

1:名無しKAN-SEN ID:ZuiZui

赤城先輩が面接するっていう男の子に会って来たよ!!

 

2:名無しKAN-SEN ID:KADEKURU

あら、どんな男の子だったのか教えて頂戴な♪

 

3:名無しKAN-SEN ID:AkuSokuZan

さっき会ったばかりというのに、此処に書き込むのが些か早すぎるのではないか?

拙者の感想としては、ごく普通の重桜人の少年であったな、不思議な力の片鱗みたいな物は感じたが。

 

4:名無しKAN-SEN ID:ZuiZui

えっ、そんなの全然感じなかったわ、小柄で可愛い男の子って印象だったし、オーソドックスな犬タイプの耳と尻尾生えてたよ。

 

5:名無しKAN-SEN ID:KADEKURU

小柄ってどのくらいなのかしら? 年齢とかわかる?

 

6:名無しKAN-SEN ID:ZuiZui

駆逐KAN-SENの子ぐらいの大きさだったよ、150cm半ばくらいじゃないかな? 年齢は聞いてなかったからわかんないや。

労働の為に面接へ来るぐらいだから、高等部の学生さんかな、見た目はどう見ても中等部なりたてみたいな可愛さだったよ!!

 

7:名無しKAN-SEN ID:Atagon

小柄な少年と聞いて、そんなに可愛らしい子ならお姉さんが保護すべきよね? そうよね?(使命感

 

8:名無しKAN-SEN ID:AkuSokuZan

お主は中性的な少年と聞くと興奮するのは何なのだ……

我が妹ながらよくわからぬ……

 

9:名無しKAN-SEN ID:EnprGG

あの赤城が民間人の少年と接触するとはなかなかに珍しい、興味深い話だ。

高雄が言う不思議な力を彼女も感じたのだろうか?

 

10:名無しKAN-SEN ID:ZuiZui

げぇっ、現れたなグレイゴースト!! その不思議な力というのが私にはわからないんだよねぇ。

でも、身体は女の子みたいに柔らかかったよ、流石に男の子だから骨格はほんのりとゴツゴツしてたけどね。

 

11:名無しKAN-SEN ID:Atagon

身体の感触についてkwsk

 

12:名無しKAN-SEN ID:AkuSokuZan

少しは落ち着け、というかそんなこと聞いてどうするのだ……

 

13:名無しKAN-SEN ID:KADEKURU

瑞鶴がすぐに仲良しになれたならお姉ちゃんも仲良くなれそうね♪

あの性悪な赤城先輩の面接に心折れなければ良いのだけれど

 

14:名無しKAN-SEN ID:AkuSokuZan

あの赤城殿が客人として呼び寄せておきながら、そんなことをするとは思えぬな。

しかし、かの少年が母港で働くにしても何をさせるのかは謎ではあるな、人員は既に十分ではあるのだから。

 

15:名無しKAN-SEN ID:ZuiZui

そう、それ!! 戦場や現場に出張ってガンガン働くってタイプじゃなさそうだったよね。

戦いに必要な経験や知識も一般人なので当然無いからね、何やらせるつもりなんだろう?

 

16:名無しKAN-SEN ID:KADEKURU

そんな面倒な事を考えるのは赤城先輩で良いじゃないの〜。

妥当な流れだと雑用係とかになるんじゃないかしら。

私達も忙しい時は隅々までは手が届かない事もあるから。

 

17:名無しKAN-SEN ID:Atagon

雑用係ね…… 閃いたわ。

 

18:名無しKAN-SEN ID:AkuSokuZan

おいばかやめろ、閃かなくていいから。

この色ボケが好みそうな容姿と性格の子だから、尚更頭が痛い……

 

19:名無しKAN-SEN ID:EnprGG

私は余程の用事がないとユニオンからそちらに行けそうにはないからな。

個人的に会ってみたいが、立場というものは時に己を縛り付けてしまう、世知辛いものだ。

 

20:名無しKAN-SEN ID:Yayanami

新しい人が来るなんて初耳なのです、その人はどんな人なのですか?

 

21:名無しKAN-SEN ID:ZuiZui

人間の男の子だよ、綾波よりも少し年上だけど背丈は同じくらいかな?

大人しい感じの落ち着いた男の子だから、綾波も仲良くなれるかもね

KAN-SENと饅頭だらけの学園母校に人間の男の子が来るって滅多にないよね、しばらくは騒ぎになりそうだね。

 

22:名無しKAN-SEN ID:Yayanami

あまり変な人ではなさそうで安心したです、ゲームとかが趣味だと嬉しいのです。

 

 

23:名無しKAN-SEN ID:ZuiZui

車の中でお話ししてたけど、年頃の男の子らしくテレビゲームが好きだって言ってたよ。

ただ、綾波の様に寝坊してまでがっつり遊ぶのかはわからないけどね。

 

 

24:名無しKAN-SEN ID:Yayanami

ゲームの話出来る相手が学園母港にはいないから、ネタ振り出来る人が身近にいるだけでも嬉しいのです。

この板やゲーム内では多数いるのです、でも現実にはそんなにいないのです。

 

 

25:名無しKAN-SEN ID:AkuSokuZan

何にせよ、人間の男子がこの学園母港に指揮官以外の役職で就任するのは初めての試みかも知れぬからな。

赤城殿の采配がこの母港にとって吉と出るか凶と出るか……

 

 



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学園母港 後編

「文机を挟んで正座しながら面接するのもなんですから、向こうのソファでお話をいたしましょうか」

「は、はい、わかりました」

 

赤城が指差した先にあるのは執務室の隅にL字型に配置された大型のソファであり、いかにもしっかりとした造りで座り心地が良さそうな代物である。

赤城が先にソファへ座ったのを確認した後、赤城とは別のソファへと碧は腰をゆっくり落とす。

我が家にある一般的なソファと違い、柔らかいながらも適度な反発力があり座り心地が堪らなく良い。

そんな感想を抱きながら緊張気味に赤城を視界に収める碧だが、赤城はソファの前に置かれた木製のローテーブルに文机から持ってきた資料を置き、ローテーブル上の卓上ベルを鳴らす。

 

「お話をする前に楽な姿勢になさって、温かいお茶でも飲んで一息入れてくださいな」

 

ソファの背もたれに軽く寄りかかり姿勢を正していると、何処からか前掛けを付けた体高1mほどの饅頭が丸盆に温かい緑茶の入った湯呑みを2つ乗せて現れ、それぞれの前にそっと置く。

そして赤城の隣に立つなり会釈すると、彼(?)に赤城は労いの言葉を掛け、下がるように促した。

赤城の指示に従いその場から離れる饅頭を見送った後、碧は目の前の湯飲みを手に取り口を付ける。

熱すぎず温くもない程良い温度加減の緑茶を一口飲めば思わず吐息が漏れるほど美味しかった。

普段はあまり緑茶を飲まない為、味の違いなど分からない碧ではあるが、少なくともこれは今まで飲んだことのあるどの緑茶よりも美味しく感じられた。

緊張気味だった全身の筋肉も少し緩みリラックスしてきたところで赤城の方へ視線を向けてみる。

赤城はいつの間にか手元の資料に目を通しており、その表情からは考えを読み取ることはできない。

しばらくそうして赤城を見つめていると、ふとその視線に気付いたのか彼女は顔を上げこちらを見た。

 

「さて、緊張も解れたようですし面接をはじめることにいたしましょうか」

「はいっ、よろしくお願いします!」

「建前として面接の形式を取らせていただきますが、採用を前提としたお話をさせていただきます」

 

『どういうことなのか』と碧は訝しむような表情を浮かべる。

それを見た赤城は苦笑しながら言葉を続けた。

 

「貴方の素性は部下に探らせていたのです、なので貴方の事は大凡こちらで把握させていただいていますわ」

「懐疑的になるのも無理はないと私も思います、貴方の経歴を調査したところ、不審な点、そして不可解な点など無いごく普通の男子学生であるとしか思えませんでした」

 

そこまで言うと赤城は手元にあった資料を机に置き、ソファにもたれ掛かるようにして長く肉付きの良すぎる脚を組み替えながら話を続ける。

 

「しかし、それはあくまで表面的な部分でしかありません、街中で貴方を偶然見かけたあの日から私は貴方のことが気がかりになっていましたわ」

「掻き集めた情報から答えを見出だせないならば、リスクはありますが直に接触を試みて確かめるしかないと思いましたの」

「答えを示せと言われても明確な形には表すことは今は難しい、しかし私は貴方と直接会って確信いたしました」

「私のKAN-SENとしての本能が、貴方こそが私が探し求めていた人だと訴えかけているのですわ」

 

突然の発言に碧の頭の中は疑問符ばかりが浮かび上がる。

自分は此処で働く為の面接を受けに来たはず、それが何故このような話となってしまったのか。

彼女が自分に対して何を求めているのか、そして何が目的なのかを知らなくてはならない。

 

「赤城さんが望んでいる様な『何か』を自分が持っているとは思えません……」

「僕に対して赤城さんが求めている物を教えていただけませんか?」

 

赤城は碧の問いに数秒ほど体と表情を静止させるが、やがて口元に微笑みを浮かべながら口を開く。

 

「貴方に『何か』を見出したのは間違いありません、しかし説明する事は今は出来ないのです」

「先程も述べた様に本能で察したとしか言いようが無いのですから」

 

赤城は困ったように笑いながらそう告げる、その表情は本当に困惑した様子であり、嘘や偽りは無いように碧には見えた。

碧の短い人生に於いて赤城が語った様な特別な力など、自らの身を以て発揮した事など一度も記憶になかった。

何かの間違いではないか、彼女の勘違いや思い違いではないのか、碧は自らの心の内を若干強張って震え声になりながらも正直に吐露した。

 

「申し訳無いのですが僕に赤城さんが求めているような、不思議な力があるとは思えません」

「今まで生きてきてそんな経験は一度もありませんでしたし、これからもそういった力を発揮するとも考えられません」

「用務員としての仕事は努力で覚えられるかもしれませんが、赤城さんが求めているような事は出来ないかと思います……」

 

そんな碧の言葉に赤城は一瞬呆気にとられた顔をするも、軽く微笑むと彼の言葉をやんわり否定する。

彼女の笑みは先程までの柔らかなものではなくどこか悪戯っぽい笑みだった。

 

「ふふっ、用務員として雇うのは間違いありませんのよ、貴方が想像している様な事はさせません」

「括りとしては軍港という場所ですから行動に多少の制限はかけますが、非常時を除いて自由を奪うなんて事は誓って致しません」

 

赤城はそう言うと纏められた書類の束から一枚の書類を取り出し碧に差し出す。

それは雇用契約書と書かれたものであり、既に赤城のサインと印鑑が押されていた。

 

「不都合が無いか、ゆっくりとご確認くださいませ、不明事項ありましたらご質問下さい」

 

碧は渡された契約内容を読み進める。

そこには給与や休暇、福利厚生などの待遇に関する事などが書かれており、特におかしな点は見当たらない。

強いて言えば少しばかり給料が高いように感じる程度だろうか。

 

(何か目的があって僕を雇うはずなのに、その事に関する要項が書かれていない……)

(僕自身ですら気づいてない不思議な力を目当てにしてるみたいなのに、本当に何も協力しなくて良いのかな……)

 

碧は疑問を抱きつつも、口に出すことなく最後まで契約書を読み終える。

赤城が目的としている『不思議な力』に関しての項目は無かった、もしかしたら労働に関係ない項目なので書かなかっただけかもしれないが。

ああでもない、こうでもないと碧は思案するも、労働条件はこれ以上の物を望むのは分不相応の高望みであるし

何よりあれこれ考えられる程、社会経験があるわけではない、学生の身分しか知らない上に子供である碧には経験が圧倒的に不足しているのだ。

軍に所属していて役職にまで就いてる赤城に、どうあがこうと青二才の少年である碧が逆立ちしても勝てる筈がないのである。

結局のところ、この場で自分に出来ることは何も無いのだと理解した碧は無言で契約書を机に置いた。

赤城は満足げにその様子を見届けると湯呑を手に取り、茶を一口飲むと小さく息を漏らして言葉を続ける。

 

「一個人としては、私は貴方を手の届く場所に置いておきたい程に興味がありますの」

「貴方が学園母港に居ればKAN-SENにとって何かしらの影響が現れるかもしれない、そして私自身も貴方と接する機会が増えて嬉しいですわ」

「貴方が欲しい、といった方がわかりやすくて良かったかしら? ふふっ」

 

艶やかな容姿と相反する子供の様な笑顔でわかりやすく口説いてくる赤城を見て、碧は何とも言えない気持ちになる。

彼自身はここまで自分を求めてくるような相手に出会った事は無かった、身体は小さく虚弱で、頭抜けて聡明という訳でも無く、ただ品行方正なだけが彼の取り柄であったからだ。

家族や友人から冷たくされる様な事は無いが、これ程までに熱意を向けられるような人物に出会った事も無かった。

碧は決意する、たとえ自分の中にある力が大した物では無かったとしても、そもそも存在しなかったとしても赤城の期待に向き合おうと。

ペンと印鑑を手に取り、契約書に署名と押印をすると、彼女は両手を胸の前で合わせ朗らかな笑顔を浮かべた。

 

「よくぞ決意なされましたね、決して悪い様には致しませんわ」

「ありがとうございます、期待にお応えできるかは分かりませんが精一杯務めさせて頂きます」

 

署名と押印を終えた契約書を赤城へと手渡しながら碧は答える。

赤城はそんな碧の言葉を聞くと、嬉しそうに微笑み契約書を受け取ると大事そうに抱え、言葉を紡いだ。

『学園母港へようこそ』と……

 

────────────────────

 

赤城との面接を終え、邸宅から出て来た碧は舗装された小径を歩きながら小さく息を吐く。

海軍施設の用務員という、ただでさえとんでもない求人の面接だというのに、まさかあんなにも熱烈なアプローチを受けるとは思ってもいなかった。

赤城の気持ちの熱量が大きすぎて、それに背中押される勢いで雇用契約してしまった気がしなくもないが、決意自体は自分自身で決めたので後悔はしていない。

面接も無事に終わり雇用契約も済み、後は家に帰るだけなのだが、帰りの道も高雄に送迎してもらえると赤城に聞いていたので、碧は言われたとおりに正門近くの駐車場へと歩いていく。

到着した駐車場には既に車両の準備が出来ており、運転席の窓から顔を出した高雄の姿があった。

高雄に促されるまま車に乗り込むと、碧がシートベルトを着用すると車は発進し、緩やかに加速していく。

 

「赤城殿との面接は疲れたであろう? こう言っては何だが立場の都合上、彼女は味方にも腹の内を隠さねばいけない立場でもあるからな」

「拙者も彼女の考えが読めない事は多々ある、謀は元々得意ではないというのもあるのだが」

 

ハンドルを握り高雄は言葉を続ける、どうやら彼女から見ても赤城は普段は何を考えているのかわからない人物らしい。

確かに赤城の言動は予想外すぎる事が多いのでわからないでもない。

 

「高雄さんが言いたい事はなんとなくわかる気がします、色んな人とのお付き合いもありそうですし偉い人って大変ですよね……」

「まぁ、なんというか、赤城殿はああ見えて身内には甘い所があるからそこまで心配する必要は無いと思うぞ」

「歳の若い駆逐艦や潜水艦達とも慕われている様子を度々見る事も有る、立場などが下だからと侮る様な事はせぬ」

 

高雄は苦笑いをしながら答え、それを聞いた碧は赤城の人となりを多少垣間見たような気分になる。

彼女がどのような人物なのか、まだ完全に把握できたわけではないが、少なくとも悪い印象を抱くような相手ではなさそうだ。

雑談をしながら数十分ほど自動車を走らせていると、最寄りの駅が見えてくる。

駅前にある小さなロータリーに自動車が停車したのを確認した後、碧はシートベルトを外し高雄にお礼を言った。

 

「駅まで送っていただきありがとうございました、学園母港で住込み勤務をする事になったらよろしくお願いします」

「うむ、何か困った事があれば遠慮無く相談してくれ、拙者も出来る限り力になろう」

「お気遣いに感謝します、そういえば瑞鶴さんは帰りは姿を見かけませんでしたね」

「あやつは始末書でも書いているのだろう、勝手に送迎についてきた事を赤城殿に釘を刺されていたからな」

「お主の送迎は護衛も兼ねた正式な任務でもあるのだ、赤城殿も立場上窘めなければならぬ」

 

高雄は呆れたように肩を竦めてため息をつくと、碧は頬を指でかきながら苦笑いを浮かべる。

『そういえばあの時に赤城さんに叱られてたなぁ』と碧は思い返す。

 

「拙者は学園母港に帰らねばならぬ、まだまだ仕事は残っているのでな、ここでお別れだ」

「はい、今日は本当にありがとうございました、お疲れ様でした」

 

高雄に手を振り別れを告げながら、駅の改札を抜けてホームへと向かう。

日も傾き始め、人影も疎らな駅のホームに夕日が差し込む中、電車が到着するアナウンスがスピーカーから流れる。

程なくして到着した電車に乗り込み座席に腰掛けると、発車のベルが鳴り響きゆっくりと電車が動き出す。

碧は窓の外を眺めると、徐々に遠ざかる景色を見ながらこれからの生活の事を考える。

不安が無いと言えば嘘になるが、碧の心は不思議と落ち着いていた。



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彼の受け入れが決まりました

1:名無しKAN-SEN ID:OtoriRed

例の少年こと舵取碧様の受け入れ準備を完了いたしましたわ。

予定されている日時は○○月△△日の午前9時となるので、皆も出来る限りの歓迎をするように。

 

2:名無しKAN-SEN ID:Kaga100man

姉様の突飛な行動は今に始まった事ではないが民間人の少年に此処まで労力をかけるとは……

姉様の直感が正しければ良いのだが。

 

3:名無しKAN-SEN ID:ZuiZui

碧君の受け入れ準備終わったんですね!! 彼と一緒に働けるのが楽しみぃ~!!

 

4:名無しKAN-SEN ID:Yayanami

みんなで大騒ぎは少し苦手です、でもがんばって歓迎するのです。

あわよくば、どんなゲームで遊んでいるのかお話ししたいのです。

 

5:名無しKAN-SEN ID:OtoriRed

学園母港に派遣・駐留している他陣営のKAN-SEN達には明日に告知します。

既に噂にはなっているとは思いますが、余計な混乱を生まない為に口外は禁止とします。

特に五航戦の片割れ、二度目はないわよ。

 

6:名無しKAN-SEN ID:ZuiZui

ひぃ〜!! わかりました…… 始末書を何度も訂正させられるのはもう懲り懲りですよ!!

 

7:名無しKAN-SEN ID:Kadekuru

ああ、かわいそうな瑞鶴、パワハラ上司からの権力行使に負けたら駄目よ、お姉ちゃんは見守ってますからね。

 

8:名無しKAN-SEN ID:ZuiZui

いやいや、今回は高雄にも怒られたから自業自得かもしれないし……。

ところで赤城先輩から見て碧君ってどうでしたか? 碧君かわいいですよね〜。

 

9:名無しKAN-SEN ID:OtoriRed

やばい。

 

10:名無しKAN-SEN ID:ZuiZui

えっ。

 

11:名無しKAN-SEN ID:OtoriRed

だからやばい。

 

12:名無しKAN-SEN ID:Kaga100man

姉様、その語彙力と説明では理解できる人は恐らくいません……。

 

13:名無しKAN-SEN ID:OtoriRed

いや、ね? 遠目から見た時にすごい男の子が居るとは思っていたけれど、いざ呼び出して間近で接したら

 

14:名無しKAN-SEN ID:Kaga100man

接したらどうなったんですか?

 

15:名無しKAN-SEN ID:OtoriRed

続きを書こうとすると『卑猥な単語が含まれています』と表示されて書き込めないわ。

 

16:名無しKAN-SEN ID:AkashiSanma

このスレは良い子の駆逐艦や潜水艦も閲覧・書き込み出来る場所ニャ。

下ネタや卑猥なネタは避けるようにしてほしいニャ、近い内に入れるKAN-SENを分別出来る機能を付ける様にするニャ。

 

17:名無しKAN-SEN ID:Kadekuru

面接での出来事を説明するのに、検閲に引っかかる様な言葉が何故出てくるんですかねぇ……。

まさかとは思いますが「面接」とはあなたの想像上の出来事にすぎないのではないでしょうか。

 

18:名無しKAN-SEN ID:OtoriRed

なんにせよ、この赤城が想像した以上の男の子が来たという事には違いないわね。

 

 

19:名無しKAN-SEN ID:Kaga100man

依頼されて調査はしましたが、あの少年に特筆すべき何かは見受けられなかった様に思えますが。

軍事など全く知らない、ごく普通な重桜の一般国民にしか見えませんよ。

 

 

20:名無しKAN-SEN ID:OtoriRed

外見や経歴は普通の学生なのは間違いないわね、でも一つだけ違う事が確かにあります。

 

 

21:名無しKAN-SEN ID:Kadekuru

先輩がそこまで断定するなんて只事無いですね、それで何が一般人とは違うんですか?

 

22:名無しKAN-SEN ID:OtoriRed

なんというか、えろい。

 

 

23:名無しKAN-SEN ID:Kadekuru

突然何言ってるんですか、というか色ボケするような要素とか流れ、今ありました?

 

24:名無しKAN-SEN ID:Kaga100man

姉様の知能や語彙を著しく低下させる何かを発しているのだろうか、興味深いな。

 

25:名無しKAN-SEN ID:OtoriRed

どの様に例えたら良いのかわからないけれど、思わず傅いて慕いたくなる色気みたいなのが凄まじかったわね。

 

 

26:名無しKAN-SEN ID:ZuiZui

私はそんな色気みたいなのは感じませんでしたよ? 可愛いから一緒に居て構いたくなりますね。

 

 

27:名無しKAN-SEN ID:Kadekuru

瑞鶴が感じているのは庇護欲みたいなものではないかしら、赤城先輩の言う事が正しければですけど。

 

 

28:名無しKAN-SEN ID:kaga100man

そんな調子で面接は滞りなく終えられたのですか?

 

29:名無しKAN-SEN ID:OtoriRed

外交の経験が生きたわね、無駄な催事に駆り出されてストレスもあったけど、今日ほど自分の胡散臭さが役に立ってよかったと思ったことはないわ。

何にせよ、無事に勧誘できたのは良かったわ、一段落ついただけでこれからまだやることは有るのだけれど。

 

30:名無しKAN-SEN ID:Kaga100man

胡散臭いっていう自覚はあったのですね、昔はもっとストレートに嫌味ったらしかったような。

天城さんと三笠殿、長門様への報告はどうしますか?

 

31:名無しKAN-SEN ID:OtoriRed

天城姉様には事後報告で良いわ、ある程度の詳細は伝えてあります。

三笠様と長門様には今後の予定を書いた書類を準備しておくから渡しておいて頂戴。

 

 



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