凡人うちは転生伝 (ナリヒサ6221)
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一族虐殺

ナリヒサです。
よろしくお願いします。





―――なんでこんな世界に、生まれてきてしまったのだろうか?―――

 

 

 

 

俺の名前はうちはユウスケ。

現在、双子の兄“うちはサスケ”とうちは市街地区に入っていき、多くの死体を目の当たりにしている最中だ。

うちは警備隊のおじさん、うちは煎餅のおじちゃんにおばちゃん、定食屋の夫婦など、自分の知人達が、血を流して死んでいる光景だった。

吐き気を催すような光景だ。

おかげで、頭に鈍い痛みと心臓が締め付けられるような痛みが走っている。

痛みに耐えつつも、俺たちは急いで家に帰ろうしている。

 

 

そして、サスケがふと気付いたようだった。

 

 

「ハッ!……ユウスケ、お母さんとお父さんは!」

 

 

俺はその言葉に何も言わずに、頷く。

そして、二人で急いで駆けていった。

 

 

すまんな、サスケ。

みことママとフガクのおっさんはもう―――、亡くなっているだろう。

俺も、美人のみことママは大好きだったし、凶眼のおっさんにも感謝している。

生まれた時から暖かく、伸び伸びと育ててくれたし、一族の頭目の家系とあってか、豊かな生活を送れた。少し厳しかったかもしれないが、現代日本のどこにでもいそうな家庭だった。

だが、何というか…。

時間が経つにつれ、ピリピリとした雰囲気になっていった。

目に見えて迫害されるようになって、一族や家族がおかしくなっていった。

そして、イタチまでもがおかしくなっていった。

 

 

その辺りからだろうか?

俺が見えない壁を作り始めたのは…。

そして、ついには、“うちは”ないし”家族“をどこか他人気分のように接してしまった。

 

 

この世界に転生してから、俺はうちは迫害問題をどうするか考えてきたが、結局何もしなかった。頭の中で妄想したり、ときには両親や親族に何となく聞こうとしたが、怒鳴られて、はぐらかされた。

日々のストレスと無力感から写輪眼を開眼し、自分に幻術をかけて万華鏡写輪眼を開眼させようとも試みたが、結果としては、開眼しなかった。

齢8歳の子供では何もできなかった。

そして、いつしか、俺は諦めた。

 

 

自分が助かると思っていた節もあったかもしれない。

俺はサスケの双子の弟として生まれた。つまり、イタチの弟という訳だ。

アニメでも漫画でも存在しない人物だ。

イタチ兄さんは俺を殺すかもしれないし、殺さないのかもしれない。

実際、自分がどうなるか、分からない。

だが、この先、何事もなく、幸せにのうのうと暮らせるなんて、思っていない。

というか、色々と面倒なことが起こるのを知っている。

サスケの里抜けに、

痛みを訴える集団に、

忍界大戦。

それに、家具屋さん、と。

8年も経ったから少し曖昧になっているが…。

今、自分がパっと思い出せるだけでも、これだけのことがある。

その他にも、小さいハプニングがあったはずだ。

結局、俺は生き残っても苦労するのが確定事項なのだ。

 

 

蛇のオカマ野郎のモルモットや、誘拐、拷問、なんてのは流石に御免だ。

それに、人を殺したくもない。

この世界に、人権なんてものは存在しない。

“人間の命は尊い“なんていう価値観は持ち合わせていないのだ。

当たり前のように“殺人術”を様々な人から学べる。

成長と共に学んでいって、それがみんなの共通認識になっているまである。

 

 

だからかな?

正直、自分はここで死んでもいいわ、なんて思っていたりもする。

現代日本の価値観を持つ俺は、生き残っても地獄なんじゃないだろうか?とも思っている。

そして、逆に、イタチ兄さんなら苦痛なくサクッといってくれのでは?とも思っている。

現状としては、サスケと共にいるんで、それは起こり得ないんだが…。

“もう、なるようになれ“、って感じだ。

 

 

そんな感じで、俺は多分、この世界に生まれた時から覚悟していたんだと思う。

自分は、最悪8年後、イタチないし里によって消される、と。

それが時間を経て、段々と受け入れた(諦めた)だけにすぎないのだ。

 

 

 

今までのことを思い出し、そして自分を正当化していく。

頭や心臓あたりの痛みを感じながらも、気を失わないようにした。

そして、サスケと共に走っていく。

 

 

 

 

自分達の敷地につく。

 

 

「サスケ、写輪眼を出しとけ」

「う、うん。言われなくても…」

 

 

俺たちの声は震えていた。

いや、結末を知っている俺のほうが、震えていたかもしれない。

 

 

そして、自分達の敷地に恐る恐る入っていく。

いつでも対応できるようにクナイを片手に持って、だ。

 

 

玄関、廊下へと進んでいく。

シーンと静まった家に二人の足音がミシリ、ミシリと鳴る。

俺もサスケも、鼻で呼吸をしているが息は荒い。

居間へと進んでみるが、誰もいなかった。

そのまま、台所へと進んでみるが、誰もいなかった。

家族がいつも、だいたい居る場所には誰もいなかった。

 

 

―――ドサッ

 

「!?、誰かいるの?」

 

 

家の中から音がして、サスケが反射的に声を出した。

明らかに自分達の敷地からの音だった。

当たり前だが、この家は、生まれた時からずっと住んでいる場所だ。

俺たちは、この家の訓練所からの音だとすぐにわかった。

俺はサスケに訓練所の方向を指さした。

そして、サスケは頷いた。

俺たちの思いは通じた。

訓練所に行こう、と。

 

 

廊下へと戻って行き、恐る恐る訓練所へと向かう。

確実に、誰かいるのだ。恐ろしさは、さっきの比じゃない…。

サスケなんか、真剣な顔をして息を殺していた。

訓練所の襖の前に俺とサスケが立った。

そして、俺たちは恐る恐る入っていったのであった。

 

 

訓練所の中には、

そこには、―――。

 

そこには、

 

 

血を流して倒れている両親に、不気味に立っているイタチがいた。

 

 

 

 

 

 

「に、兄さん!」

 

 

サスケが大慌てでイタチに近寄っていく。

すると、イタチが振り向き様に、俺たちの目を見据えた。

 

 

「愚かなる…弟達よ……万華鏡写輪眼!!」

 

 

次の瞬間、俺が見ていたのは、、

 

 

イタチが俺たちの両親を殺している光景だった。

 

 

「あ“あ”あ“あ”あ“――――――――」

 

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い...)

 

 

脳から嫌な物質がドバドバあふれ出るような感覚の鈍痛を味わった。

余りの痛みで何も考えられなかった。

息をするのもやっとな状態だった。

 

 

サスケは大声で発狂している。

「辞めて、辞めて、兄さん」と。

そして、目から血を流しながら気絶した。

 

 

「イ、 イタチ………す(まん…………)」

俺は、イタチと話そうとするも、あまりの激痛で言葉を発するのがやっとだった。

そして、謝罪の言葉を言いれないまま、意識を失った。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

イタチside

 

 

まさかな…。

弟たちが万華鏡写輪眼を開眼するとは…。

 

イタチはフガク、ミコトの目が入った瓶を見た。

 

(サスケとユウスケを頼む)、か…。

 

 

イタチは弟たちをどうするべきか考えた。

8歳児の子供が身に合わない力を携えてしまった。

これは、危険なことだった。

それに、希少価値のある血経限界に基づく力だった。

新たな火種となる可能性があった。

 

 

ついさっき、燃え盛る炎を、

応急処置という手段で、虐殺という手段で、鎮圧したというのに、これだ……。

イタチはそっと涙を流した。

 

 

炎を完全に消し去ったと思っていたが…、

“別のところに飛び散っていただけ“に過ぎなかった。

今度は弟達だった。

イタチは弟たちを見て、涙を流し続けたのだった。

 

 

 

イタチはもう一度瓶を見て考えた。

 

(サスケとユウスケを頼む)、か…。

 

 

イタチは「ふぅー」と長い息を吐いた。雑念を取り払った。

そして、弟達が自分と殺し会う光景を思い浮かべたのだった。

犯罪者の自分は死に、弟達は生き残る。

この葉の英雄として、うちはの新たな光として。

 

 

イタチは、それぞれの目を入れ替えたのだった。

サスケの目をユウスケに、ユウスケの目をサスケのものへと入れ替えた。

 

 

そして、それから、三代目に保護を頼みに行ったのであった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

目が醒めると、そこは病院だった。

 

「起きたのね、今、先生を呼んでくるからね」

 

看護師がずっと見守っていたのだろうか。

起きてすぐに話しかけてきた。

表情は心配しているというより、どこか哀れむような感じだった。

 

 

そうか、俺は………。

イタチの幻術で気絶したのか………。

 

 

「はぁ。」と俺は起きて早々、ため息をはいた。

起こってしまったものは仕方がない、とイタチの件は割り切れた。

だが、看護師の女、てめぇは何だ。

起きて早々、哀れむような視線。

流石にムカついた。

ぶん殴ってやりたくなった。

 

 

俺は起きて早々、嫌な気分になった。

あの女、そして、この葉の里の人間も、マジでみんなクソだな、と思った。

そして、少し考えて、それは違う、と気付いた。

ずっと、見守っていたーーー火影直属の可能性もあるか、とも考えた。

 

 

まぁ、どっちでもいいわ…。

全て終わったんだ…。

 

―――俺は、生まれたときから知っていたのに。

 

 

 

(痛っ!)

 

だんだんと頭が醒めてくると頭に鈍い痛みが走った。

精神的なものなのだろうか、それとも開眼による肉体的なものだろうか?

脳の一部が削られたような痛みだ。

それと、感情などの情動にストップがかかるような感覚もあった。

 

なんだ?

あ-、たしか、これが……。

これが愛の喪失による何とかという奴だったか?

極度のストレスで一部の脳細胞が破壊されていたりして?

でも、確か、脳のミラーニューロンとかって復活するんじゃなかったっけ?

忘れたけど。

 

 

俺は慣れない頭痛に、頭を片手で抑えながらボッーとしていた。

 

 

そして、しばらくすると、医者の先生と三代目、そしてサスケと共に、イタチが何をしたのかを話した。医者も聞いているが、……こいつも、そうなのか?

サスケは“イタチを殺す”と言いながら暴れ、三代目と医者に取り抑えられている。

 

 

ま、原作を知る俺からすると、目の前にいる三代目、そしてダンゾウに相談役二人に対する怒りと呆れしかない話だった。

俺はそういうことに関してはごまかせない人間だった。

そのため、目を合わせず、そっぽを向きながら話を聞いた。

こんなところにいると、心が死ぬ。

俺はそう思った。

 

 

いつか、それ相応の謝罪をさせたい。

無理なら、revolutionするかもしれない。

そして、貴様らの親族、全員殺す。

民族浄化レベルの皆殺しだ。

いや、里の人間諸共、全員消してしまうかもしれない。

貴様らが、俺たちにやったように…。

 

 

おっと。

頭の痛みに引っ張られて、かなり危険思想に走ってしまったようだ。

落ち着かなければ。

 

 

俺は目を瞑り、深呼吸した。

 

が、ダメだ。

 

身体が勝手に強硬手段を選んでいる気がする。

荒れ狂うチャクラに身体が拒否反応を示しているっていうか、なんというか。

まぁ、不思議な力が働いているような感じだ。

以前のチャクラ量の軽く数倍はあるし、しばらくは身体を慣らさないと…。

まずは、そこからだ。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

解放された。

俺たちは、猿飛ヒルゼンが保護という形で預かることになったそうだ。

だからといって、住む家は猿飛ヒルゼンと同じではないようだ。

猿飛の市街地区だそうだ。

猿飛の市街地区は開放的で、色々な氏族がいた。それ以外はどこも変わらない。

“猿飛”をブランド化させた形で商売をしている。それだけだ。

どこも変わらない。

そう、どこも変わらないのだ。

封兼的で選民思想だった、うちはの市街地区”以外”とは….。

 

 

 

住む家の説明がされた。

そして、俺たちは用意された家に二人っきりになった。

 

 

「ユウスケ、お前はイタチが憎くないのか」

 

 

憎くないよ。むしろ、申し訳なさでいっぱいだよ。

なんて、言えるはずもなく...。

 

 

「ああ、憎いよ。殺してやりたいぐらいだ!」

 

俺は、思ってもいないことを言うのだった。

この一言が、俺の心には限界だった。

 

 

ダメだ。

今日はもう、何もしたくない...。

 

 

これから先のことは、明日の自分に任せよう。

こんな時に、考えたっていい案は出てこないだろう。

 

取り敢えず、寝よう。

 

 

(ごめん、サスケ...イタチ...)

 

 

俺は身体を丸める様にして、寝たのだった。

 

 

 



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