俺はこの世界をどうしたいのか…… (岬サナ)
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入学式

ある日、俺は転生した。

 

死んだ記憶は一切ないけど、ここが自分が元いた場所でないのは、何故か不思議と理解した。

この世界は魔法科高校の劣等生の世界である。

 

俺は──鬼龍院(きりゅういん)リクは、死後の世界も見てなければ、神様に会って転生もしていない。

いつも通りの日常を送って、一晩寝て起きたら、ここにいたのだ。

 

身体も小学生くらいにまで縮んでるのか、若返ったのかは不明だが前の自分の身体よりも視点が低くなっていることは分かった。

 

「これは⁉️」

 

俺が部屋を見渡すと、そこには仮面ライダーの変身ベルトやアイテムの全てがあった。

 

「平成と令和……どっちも揃ってるんだな。……これは転生特典とかに入ってる部類なのか?」

 

俺はそれらが本物であると理解しているが、念のため玩具か本物かを調べる為に触っていたら全て本物だと理解させられた。

そして、自分がいる場所が仮面ライダーセイバーにあったワンダーワールドであることも外を見たら分かった。

 

「そこら辺の知識も一緒に入ってたけど、本当にワンダーワールドなんだな」

 

何故、俺がこの世界に転生したのかは分からないけど、俺はここで生きていかなければいかない。

 

それと俺のいる家には電気と水道も設備されていた。何処から持ってきているのかが不明だが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから時が過ぎ、俺は魔法科高校に入学することができた。

 

 

──────2095年、4月、国立第一魔法科高校

 

魔法が御伽話の物でなくなってから約一世紀が過ぎようとしていた。

2095年4月、魔法師を育成するのに各国が躍起になる情勢で、日本も例に漏れることはなく、育成機関である魔法科高校では入学式が行われようとしていた。

現在日本には第一から第九まで魔法科高校が存在しており、定員は200名になる。

 

第一高校では入学式前に二人の男女が言い争っているようであった。

女性の方には八枚花弁のエンブレムがあり、男性の方にはなかった。

 

全ての魔法科高校では入学の時点から優等生と劣等生が存在する。

八枚花弁のエンブレムがある女性は優等生の一科生であり、エンブレムがない男性が劣等生の二科生である。

 

「納得できません!!」

 

そう言う女性、司波深雪。人形のように左右対称の面持ちで、長い黒髪を携え、人々を自然と惹きつける雰囲気を持っていた。

 

「まだ言っているのか……」

 

ため息混じりに言う男性、司波達也。深雪程では無いが整った容姿をしており、彼女の苦言を困ったように聞いている。

 

「なぜお兄様が補欠なのですか!入試結果は1位ではないですか!」

 

「落ち着け深雪。どうやってペーパーテストの結果を知ったのかは聞かないが、此処ではペーパーテストより魔法実技が優先されるんだ。補欠とはいえよく一高に受かったものだと……」

 

「そんな覇気のないことでどうしますか!!」

 

だが深雪の一喝で黙らせられる。

 

「勉学も体術も!お兄様に勝てる者などいないというのに!!」

 

深雪の評価は強ち間違ってもいない。達也に勉学も体術も勝てる人間などそうそう居ない。

それでも勝てる者がいないと言うのは流石に言いすぎだが。

 

だが次に出てきた深雪の言葉は達也にとって看過出来るものでは無かった。

 

「魔法だって本当なら――」

 

「深雪!!」

 

「!?」

 

突如声を荒げた達也に、深雪はハッと息を飲む。

 

「それは口にしても……仕方の無い事なんだ。分かっているだろ?」

 

「も、申し訳ございません……」

 

そして兄に叱られ落ち込む深雪に、達也はソッと手を乗せ頭を撫でた。

 

「謝ることは無い。お前はいつも俺の代わりに怒ってくれる。その気持ちは嬉しいよ。俺はいつもそれに救われてるんだ」

 

「嘘です……」

 

すると途端に二人の醸し出す雰囲気が甘い空間へと変わっていく。

 

「お兄様は何時も私を叱ってばかり……」

 

「嘘じゃないって。お前が俺の事を考えてくれているように……俺もお前の事を思っているんだ」

 

「…………」

 

達也の言葉に深雪は固まる。深雪の様子に達也は首を傾げるが、特におかしなことを言ったつもりはない。

 

「お……お兄様……そ、そんな……」

 

すると深雪は頬をもの凄い勢いで赤くさせていく……そして達也に背中を向けクネクネ動きながら……身体全体で喜びを表していた。

 

「想っているなんて」

 

「?」

 

(あれ、絶対に別の意味として捉えてるよな)

 

そんな深雪の様子を見て達也はますます首を傾げて、アキラも深雪が何を考えているのかを察していた。

 

達也が言った言葉は文字通り『思っている』なのだが、深雪の中では『想っている』と伝わったらしい。

 

「お兄様………」

 

「さあ、深雪。こんなダメ兄貴にお前の晴れ姿を見せておくれ」

 

「そんな!お兄様はダメ兄貴などではございません!分かりました!お兄様、ちゃんと見ていて下さいね!」

 

「ああ」

 

どうにか納得した深雪に達也は安堵する。

 

それを見ていた俺は、この2人の関係が兄妹よりも夫婦のような会話にしか見えなかった。

 

「彼女が新入生総代の司波深雪、ね」

 

俺は司波兄妹の会話を木の枝に座りながら見ていた。この会話を間近で見たいから早い目に来たが、見たいものを見たら暇になってしまった。

 

「式まで2時間か……まぁ気長に待つか」

 

そう言い、俺は持ち込んでいた本を取り出して読み始める。情報端末のレベルが上がるにつれて紙媒体の物は減ったがそれでも需要は一定数存在している。

 

そこから時間が経ち、講堂が開かれて入場が可能となったのを確認して俺は木の上から降りた。

 

講堂に入り暁はため息を吐く。

そこには前に一科生、後ろに二科生がきっかり別れて座っていた。

 

「知ってはいたが、実際に見ると露骨だな」

 

そう言って前方の席に座り、リクは目を閉じて式が始まるまで眠る。

 

 

 

 

 

 

『続いて新入生答辞』

 

生徒会長の祝辞が終わり、次に新入生代表の挨拶にまで進んでいた。

 

『新入生総代、司波深雪』

 

「‥‥ん?」

 

リクはそこでようやく目を覚ました。リクが前を見れば、新入生総代の司波深雪が立っていた。



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E組メンバーとの邂逅

続けて2話目を更新!


司波深雪の答辞を聞き終えた暁は深雪が答辞でかなり際どいワードの『みんな等しく』『魔法以外にも』『一丸となり』『総合的に』と言ったことに対して思った。

 

一科、二科の溝がまだ深くある時に、ここまで言える胆力は凄いと……。

まぁ、聞いていた新入生のほとんどは深雪の美貌にやられて話半分も聞いてないのが真実であるけど。

 

「ギリギリのワードをやっぱり言ってきたか」

 

やはり知ってる身としてはブラコン深雪にとっては大事なことなんだろうなっと理解できていた。

 

その後、入学式も終わり、自分のIDを受け取ってどこのクラスになってるかを確認する。

 

「1年Aクラスか」

 

深雪とほのかに雫と一緒のクラスであると分かった。

 

俺はどうするかを考えていた、今教室に行っても特に何かがあるわけでもない。

教室に行って学友と親交を深めるかは自由となっている。

 

「今回は家に戻っておくか」

 

俺はそのまま下校する事にした、校門を通る道すがら司波達也、千葉エリカ、柴田美月の3人とそれに近付く司波深雪の姿を見かけた。

 

俺は校門を出ると、誰にも見られないように手に持つブックゲートを開いて、ワンダーワールドにある家に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

───翌日

 

 

「っ‥‥ん~!……朝か」

 

「おはようございますマスター」

 

「おはようイカロス」

 

翌朝、目が覚めた俺の目の前にいるのは、この家の家事全般をするエンジェロイドの1体であるtypeα(アルファ)イカロスだった。

 

「朝食の用意が出来ています」

 

「分かった」

 

俺は起き上がり、一校の制服に着替えてからイカロスが用意した朝食を食べてから一校に行く準備が終わった。

 

「行ってくる」

 

「お気を付けてマスター」

 

ペコリとお辞儀をするイカロスに見送られながら、俺はオーロラカーテンを出現させ、ワンダーワールドから出る。

 

 

 

 

 

 

アキラはオーロラカーテンを使い、第一高校近くまで移動し校内へと足を運ぶ。

 

「ここが俺のクラスだな」

 

俺はプレートにある1-Aと書いてあるクラスに入ろうとした。

 

「ん?」

 

「あっ」

 

ちょうど入ろうとしたタイミングで反対側からも入ろうとした人と鉢合わせになった。その相手に鬼龍院は少ない驚きを感じた。

 

「初めまして司波深雪(・・・・)さん」

 

「初めまして」

 

司波深雪は丁寧で綺麗なお辞儀を見せた。リクもこのタイミングで互いを認識するとは予想していなかったから驚いた。

 

「俺は同じクラスの鬼龍院リクだ。よろしく」

 

「よろしくお願いします。鬼龍院くん」

 

リクは身体を退かして深雪に道を譲り、深雪もそれを察して先に教室へと入る。

その時、リクは周囲の反応が分かった。皆が皆、司波深雪に見惚れているのだ。

 

「おはようございます」

 

丁寧なお辞儀も見せられ誰しもが見惚れる現場を見せられている俺はこの子スゲーな……重度のブラコンだけどっと感じた。

 

司波深雪の後に俺も教室に入るが、誰もが深雪を方を見ているからか俺が入ったことには気付いていないようだ。

そのまま、俺は決められた指定の席へと向かう。ありがたいことに俺の席は後ろの方であったけど、よく見れば近くに北山雫と光井ほのかの2人がいた。

 

「あっ」

 

深雪に挨拶しようとしていたほのかが転けた。しかも顔からぶつけたのを見て痛そうだなと俺は思った。

 

「プッw」

 

「このクラスにあんな鈍臭い奴がいたのか」

 

ほのかが転けるのを見て小さく吹き出す奴もいたがリクはそんな輩に哀れみの視線で見ていた。

1年の総合において、この光井ほのかよりも上の人間なんてほとんどいないのだから、こいつらの他者に対する観察力は圧倒的にないと言える。

 

「大丈夫ですか?」

 

転けて倒れたほのかに手を差し伸べたのは、注目の的である深雪自身だった。その時の光景はまるでドラマの1シーンのような場面を見た。

その後はほのかは深雪と友人になり、雫も深雪との友人関係を築いた。

 

俺は自分の指定の席に座って時間が過ぎるのを待っていた。さすがに女子の会話にいきなり入り込む勇気は俺にはなかった。

 

「初めまして」

 

「・・・・」

 

ですよねー!隣の席に座るならコミュ力が高い君達とかは話しかけるよなー!

 

「‥‥初めまして」

 

俺は難とか返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

その後はそれぞれが受けたい内容の授業を選びそこに行くっとなるが、このクラスで自分でそこを見学に行こうと考えてる奴はほとんどいない。

何故なら大半の奴は司波深雪の行く場所に勝手に付いていくストーカー集団か一科生二科生での待遇の違いを見せびらかすのも司波深雪も巻き込んでしたいと望むバカがいるからだ。

 

「確か、こっちだったかな」

 

俺は敢えて静かな所に行きたいと思い、ほとんどの一科生が教師の解説有りの方に行くために教師の解説無しの方に来ていた。

 

「あれは……」

 

俺の目線の先には司波達也、西城レオンハルト、千葉エリカ、柴田美月の4人がいた。

それぞれのメンバーが入試の試験方法により二科生と判断されようとも類い希なる才能や実力の持ち主達である。

ハッキリと言うならば、そこら辺の一科生よりも評価は圧倒的に上だと俺は考えている。

 

「凄いな」

 

俺は今2人の人物の内側を視ていた。片方には膨大な魔法力が片方には膨大な生命力があった。普通ならばこの2人の半分もあれば1級とも呼べるだろうと思った。

 

「きゃっ⁉️」

 

「ん?」

 

「何だ?」

 

「美月?」

 

「どうした?」

 

今の段階だと俺から話しかける理由もないから普通に見学してようとしたら彼女──美月が突然驚いたような声を上げた。

 

それに伴って知人の達也、エリカ、レオの3人は美月を心配しそちらを見る、俺も急な声に疑問を感じながら美月の方を見た。

 

「あっ⁉️いえ、すみません」

 

「大丈夫、美月?」

 

「どうかしたのか?」

 

「少し‥‥驚いちゃって」

 

彼女が驚くような物がこの辺りにあったかと頭を捻らせるリクだった。

 

「何か驚くもんがあったのか?」

 

「アンタと同じ意見なのは癪だけど私も思ったわ」

 

「んだとっ‼️」

 

「何よ‼️」

 

レオは美月が驚く何かがあったのかと疑問に感じた。エリカの疑問に感じて、レオと口喧嘩をしかける。

 

「い、いえ、急に視界に入ったものに驚いてしまって」

 

「どうかしたのか?」

 

俺は念の為に自分から彼らに近付いて声をかけた。

 

「あぁ、すまない。煩くしてしまったか?」

 

「いや、そんなことはないよ。急に声が聞こえたから何事かと思っただけだ」

 

特に冷静な達也が対応してきた。そこはリクも特に何かが起こるとかはない。

 

「名乗りが遅れたな、俺は鬼龍院リクだ。よろしく」

 

「司波達也だ」

 

達也は俺の制服の八枚花弁のエンブレムを見て一科生だと理解した。

 

「それより、そちらの彼女は大丈夫か?」

 

「はっはい!大丈夫‥‥です」

 

美月の方を見るが彼女は俺の方を極力見ないようにしていた。

 

「彼女に何かしてしまったか?」

 

「美月。彼と知り合いなのか?」

 

「いえ、少し彼から見えたものに驚いてしまって」

 

「・・・」

 

彼女の眼は普通の人と違い、普通は見えない魔法師のサイオンや精霊の光などが特定の血筋の魔法師並かそれ以上に見える霊視放射光過敏症(・・・・・・・・)という症状を持っている。

 

俺は美月が持っているのを知ってはいるけれど、ここは知らない振りをするのが得策かな。

 

「なるほどな。君は眼が良いんだな」

 

「あっ‥いえ」

 

こう言えば、俺が彼女に霊視放射光過敏症を持っていると知ったことに何の違和感もないだろう。

まぁそれでも俺が驚いた事実も無くならないけどな。

 

彼女の眼は達也の持つ精霊の眼(エレメンタル・サイト)よりも概念的な物が見える幅を多いとはいえ、まさか俺自身のことを何かしら見れるとは思わなかった。

 

「霊視放射光過敏症を持っているのかな?それでも、そこまで見える人に会ったのは初めてだな」

 

「え‥‥えっと」

 

俺が美月の眼を見つめていると──

 

「はいはい、そこまでにしてくれる。この娘が怖がってるから」

 

「ワリィな」

 

エリカとレオが壁になって俺と美月の間に身体を挟み込んだ。

 

「……すまないな。さっきも言ったけどそこまで見える人は初めてだったからな」

 

「他にも会ったことがあるのか?」

 

「何人かは、ね」

 

「そうか………」

 

リクの言葉に反応する達也。少しばかり警戒心が上がったように感じた。

 

(ちょっと面倒になったな~)

 

リクは達也が警戒する理由(わけ)は知ってはいるが、やり方が雑だな~と感じた。



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面倒事

ストックを出し尽くす!
3話目!


あれから適当に達也たちの‥‥主に達也からの軽い追及やら何やらを回避して昼食を食べるために教室で1人で食べていた。

 

まぁ教室で食べるから弁当だが、俺自身が作ったわけではなくイカロスが作ってくれた。

 

「モグモグ……この静けさも放課後までだろうな……モグモグ」

 

今日の放課後には森崎達が深雪に群がって周りの迷惑も気にしないで子供でもまだマシな事を言いそうな頭が悪い会話が起こるのが分かっている。

イカロスが作ってくれた弁当はめっちゃ美味しいと思った。これを食べたら学食に行こうとか思わなくなるのが間違いないと断言できるくらいに美味い!

 

「取り敢えず、森崎は1発ぶん殴る」

 

哀れな森崎の運命が決まる。……あんまり哀れとは思わないな。むしろ自業自得としか思わない。

他人からどう思われても俺自身は特に何も痛手を負わないから気楽にやれる。

 

余談だが、教室に戻ってきた深雪はリクから見ても落ち込んでいるのが目に見えた。

ほのかと雫の2人が苦労してなんとか宥めたのか疲れた表情を見せていた。

 

あの姿を見たら、深雪とお近づきになりたいとか願った森崎は永遠に深雪とお近づきになれる可能性を失った。

よくあそこまで仲良くなりたいと思う相手の地雷を踏み抜けるのかは逆に気になる部分でもある。一種の才能とも言えるだろう。……全く欲しくない才能だが!

 

 

 

 

 

そして、運命の時が訪れる!

 

 

 

リクは確かに、こうなると原作知識で知っていたし森崎たちの反応から絶対に起こると原作知識を知らなくても予想が出来るくらいには面倒な奴だな~と知っていた。

聞こえてきた部分だけでも、どれだけアホなんだ森崎の奴は⁉️と言いたくなった。

 

「いい加減にしてください! 深雪さんはお兄さんと一緒に帰ると言ってるじゃないですか!大体、貴方たちに深雪さんとお兄さんを引き裂く権利があるんですか!」

 

「ちょっと美月…そんな、引き裂くだなんて」

 

「どうした深雪?顔を赤くして」

 

「いえ!なんでもありません!!美月ったら何を勘違いしているのでしょうね?」

 

「深雪……なぜお前が焦る?」

 

「えっ?いえ、焦ってなどおりませんよ?」

 

知っていても美月が声を大きくあそこまで主張をハッキリ言うのは驚きが少しは出てくる。気が弱そうにも見えるが彼女は友達の為ならば前に出れる優しい子なのだと思う。

 

そして、深雪は安定のブラコンを発揮しているようだ。端から見れば2人の関係は恋人や夫婦と言われても違和感がないレベルなのだから仕方ないだろう。

 

 

それはさておき、

 

「僕たちは彼女に相談する事があるんだ!」

 

「そうよ!しばらく司波さんに時間を貰うだけなんだから!」

 

「ハンッ!そういうのは自活中にやれよ。ちゃんと時間が取られてるだろが」

 

「相談だったら予め本人の同意をとってからにしたら?深雪の意思を無視して相談も何もあったもんじゃないの。それがルール。高校生になって、そんなのも分からないの?」

 

森崎達の頭の悪い理論にエリカやレオ達は当たり前の正論で反論した。

 

この場合、正しいのは達也たちであり、悪いのは森崎たちなのは誰が見ても明らかだが、プライドだけが高くて正当性も何も言えない森崎達は自分達に反論するこいつらが悪だ!と言う犯罪者のような思考をしているのに気付いていない。

 

「うるさいっ!他のクラス、ましてや二科生(ウィード)ごときが僕たち一科生(ブルーム)に口出しするなっ!」

 

〔ウィード〕、〔ブルーム〕というのは第一高校において禁止用語である。が、しかし、有名無実化されているものでもある。

 

「同じ新入生じゃないですかっ!現時点であなた達がどれ程優れていると言うのですか!?」

 

「……どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやるぞ」

 

「ハッ!おもしれぇ!だったら教えてもらおうじゃないの!」

 

ヒートアップして来た口論により森崎が魔法を使うためにCADを取り出す。あれは汎用型ではなく特化型のCADで魔法を発動させようとすると、横から警棒のような物で叩かれCADを落とす。

 

「これくらいの距離なら身体を動かしたほうが速いのよ」

 

「お前、俺の手ごとぶっ叩こうとしたよな⁉️」

 

レオはエリカの警棒の攻撃範囲に入っていたことに愚痴を直接言う。

この光景に唖然とした両陣営だが、やがて意識を取り戻した一科生たちが再び魔法を発動させようと、想子を纏わせる。

 

(これ以上はマズイな……)

 

「そこまでにしてくれないか」

 

「誰だ‼️」

 

そこでようやく俺は言い争っている彼らの前に姿を晒した。言い争いの原因は森崎たちで悪いのも森崎たちという面倒な所ではあるが。

 

「帰り道の邪魔になるからさ。喧嘩なら別の場所でしてくれないか?」

 

「煩いぞ!僕たちの邪魔をウィードの連中がしなければいいだけなんだ!お前もブルームなら僕たちに協力しろ!」

 

「ハァ……」

 

こいつやこいつに従ってる同級生達は本当に高校生なのかと疑いたくなる気持ちが湧いてくる。あまりのバカさ加減にため息を吐いた俺は悪くないだろう。

何故、特に親しくもなく現状の立場的に加害者の奴らの協力などをせにゃアカンのや。

 

「お前の下らないプライドを誇示する行為に俺を巻き込まないでくれないか」

 

「何だと‼️お前はこいつらの味方をするのか!」

 

流石はモブ崎と名高い森崎だ。ここまで自分が何をしているか自覚してない奴も中々いないと思う。

 

「はぁ‥‥」

 

《スクラッシュドライバー‼️》

 

俺でも言葉での説得は無理だと早々に実力行使に入るために、俺はスクラッシュドライバーを腰にあて、ドライバーからベルトが巻かれた。

 

「何だそれは⁉️」

 

「一応、警告するぞ。面倒だから止めろ」

 

森崎の質問には答えず最終警告を返す。だが、森崎はそれに対して俺が自分達よりも二科生の味方をするという部分しか認識していない。

 

「なら、お前も敵だ‼️」

 

森崎は自身の弾き飛ばされたCADを拾い、こちらに銃身を向けて魔法を放とうとしている。それを自分で止めるつもりはないのは一目瞭然だろう。

 

「ハァ……バカが」

 

《ロボットゼリー》

 

俺はスクラッシュドライバーにロボットスクラッシュゼリーを差し込んだ。

 

「変身」

 

リクはレバーのレンチを下げて変身する。

 

 

《潰れる!流れる!溢れでる!ロボットイングリス!ブラァ!》

 

 

俺の周囲にカプセルのような物が展開され、中にいる俺はロボットスクラッシュゼリーの成分でを身体全てを浸かり身体にに纏わせて……俺は仮面ライダーグリスに変身した。

 

「潰される覚悟は決めたか、森崎?」



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仮面ライダーグリス

4話目!
先言っとくと、作者は森崎のことは大っ嫌いです。

ので今回の話は個人的にはスッキリとして楽しかったです♪


「な、な、何なんだ!それは⁉️」

 

仮面ライダーグリスに変身した俺に森崎は叫びながら聞いてくる。

 

「詳しく教えてやるわけないだろ。……まぁ名前くらいは言ってやるよ」

 

俺は自身の両手を広げながら名乗る。

 

「仮面ライダーグリス……それがこの姿の名だ」

 

「そんな物で⁉️」

 

森崎はリクが変身したグリスの姿を見ても結局は虚仮威しだと思い直して魔法を再発動させてリクに向けて放つ。

 

(はい。人生御愁傷様~~)

 

「あ⁉️」

 

リクは森崎を内心でバカにしながらその場を動かずにいたら誰かが声を出す。

 

「フン!」

 

「なっ⁉️」

 

「嘘⁉️」

 

「あり得ない⁉️」

 

グリスに撃ち出された魔法は軽く薙ぎ払うように拳にぶつけて消し飛ばした。

その光景に森崎や他の一科生たちは驚きを隠せなかった。

 

そして、グリスは森崎に近付いていき左の拳を握り締める。

 

「仕置きだ」

 

「グブッ⁉️」

 

俺は森崎の腹をドスッ!と音がなるくらい左の拳で打ち上げるように殴って森崎の身体を浮かせた。

 

「オラァァ!」

 

バキッ‼️

 

「ガハッ‼️」

 

浮かせた森崎にすぐさま俺は殴った左とは逆の右の拳で森崎の顔面を殴って地面に叩きつけた。

その拍子に森崎の歯は何本か抜けるのが見えた。

 

「な!あっ!」

 

「嘘でしょ……」

 

「あわわわわ⁉️」

 

あまりにも瞬殺劇でもあり蹂躙劇でもあった。圧倒的な実力差を見せ付けられて意気消沈する一年生の集団。

 

「………」

 

「……お兄様」

 

その光景を見た達也は深雪を後ろに下げ庇える立ち位置に動かす。深雪もそれが分かっているからか素直に移動して兄の心配をする。

 

「これで少しは懲りたか」

 

俺はスクラッシュドライバーからロボットスクラッシュゼリーを引き抜いて変身を解除する。

 

『…………』

 

あまりの光景に誰も口を開くことが出来なかった。

 

「貴方たち、何をしているの!」

 

その時、その場の誰でもない声が聞こえてきて硬直した雰囲気が消える。

そこに現れたのは生徒会長の七草真由美と風紀委員長の渡辺摩利の2人であった。

 

「君達は1-Aと1-Eの生徒だな。何があったか話してもらおうか」

 

虚偽は許さないといった雰囲気を言外に伝える渡辺摩利は醸し出している。

それにしてもよく全員のクラスが分かるよなとリクは思ったが、すぐに傍観してる時に調べたのかと察した。

 

「話しならそいつらだけにしてくれますか?こっちは絡まれただけなので」

 

「……何」

 

俺の言葉に渡辺先輩の眉に険しくなるのが見てとれる。

 

「というか、俺が間に入る少し前辺りから見てましてよね」

 

「……」

 

「無言は肯定と一緒ですよ」

 

「そうね。否定はしないわ」

 

そうなのだ。この2人はリクが介入する少し前くらいから、この2人は騒ぎを遠巻きから見ていたのだ。

リクはそれに気付いていたために森崎が魔法を撃った後から森崎を殴るまでの間の感覚を空けて2人がすぐに止めれるように配慮していたのだが結局は来なかったのだ。

生徒会長の七草先輩はリクからの問いを肯定して答えた。

 

「風紀委員に配属されるこいつが犯罪を犯したんですからそれなりの罰は降りますよね?」

 

他人に対して自衛以外での魔法の使用は基本的に禁止されているために無断での使用は犯罪となっている。

隠匿に長けた存在や後ろに強力な後ろ楯があるのならば隠れて使用している奴もいるらしい。

その為に今回の問題の発端を起こし、更に他人に自衛以外での魔法を使用して問題行動をした森崎は一校の退学や酷ければ魔法連盟関係からの除籍や家の取り潰しがされる可能性もある。

 

(さすがに達也でもこの状況で全員に被害を及ぼさない手はないだろうな。有ったとしても森崎だけは必ず罰がいくように動くしな)

 

リクは内心でゲスいことを考えていた。転生する前の世界では森崎のことは嫌いな部類だったからだ。

 

「すみませんが」

 

「ん?」

 

「……はぁ」

 

論破してさっさと帰ろうとしたが、その前に司波達也が一声かけてきた。

渡辺先輩はそちらに振り向き、リクはタメ息は吐く。

 

それ故に俺と渡辺先輩は達也の方へと視線を向け何を言うのかと待つ。

 

「今回は些細な行き違いですよ」

 

「行き違いだと?」

 

渡辺先輩は達也の言ってることが理解できずに聞き返した。リクはそういう路線で話を逸らして問題を軽減させる方向に決めたようだ。

 

「えぇ。森崎の家のクイックドロウは有名ですからね。後学の為にも見せてもらおうと思いまして」

 

「それにしては件の森崎はそこの彼に再起不能にされているようだが?」

 

まぁ、そうだよな。と思うリク。

 

「ですから、些細な行き違いなんです」

 

「ならばどんな行き違いがあったのかな?」

 

「あまりにも迫真に迫っていたのを見て彼は危険だと思って介入したんでしょうね。それに驚いて反射的に魔法を撃ってしまったんでしょう」

 

「それはさ。森崎や自分達は悪くないけど勝手に割り込んできた俺が全面的に悪いって事かな」

 

ハッキリ言うならそうとしか聞こえないけど。

 

「いいや。生徒会長や風紀委員長が前から見てたなら魔法を直接撃たれたお前は正当防衛が成立されるから悪いとは言ってない」

 

「あっそ……これで話しが終わりなら俺は帰らせてもらうぞ」

 

「待て」

 

帰ろうと俺が踵を返した所で風紀委員の渡辺摩利は俺に制止の言葉を掛ける。理由も察せれてるからまともに答える気はないけど。

 

「……はぁ、何ですか」

 

「先程なっていた姿についての事を聞いていないのだが?」

 

「教える必要性あります?」

 

「こっちも詳しい状況を知りたいしね。出来れば教えてほしいかな」

 

明け透けにライダーシステムの情報の開示を求めてきてるな。出来ればなんて言ってるけど、どっかに拘束して洗いざらい吐かせるのが目に見えてるな。

 

「あの姿については教える義理も義務もありませんよ。今回の事に関しては、そこにいる司波深雪の兄や一行に話しを聞けば詳しく知れますよ。俺は途中からの介入だから詳しい説明は無理ですからね」

 

「だが…」

 

「それとも俺でないとダメな理由でもあるんですか?俺はCADを操作していないし、先程そこにいる司波の兄が言ったように正当防衛なんですけど」

 

確かにアキラは仮面ライダーに変身して森崎を殴りはしたが罪の重さで言うならば人に殺傷レベルの高い魔法を撃った森崎の方が断然罪は重い。

 

「ッ⁉️」

 

「………」

 

俺の言葉に渡辺先輩が驚いた理由は察している。俺の使っていたベルトがCADでないと言ったことであることは簡単に理解できる。

そして達也も俺の心意を知るためかこちらに視線を向けている。

 

「そうね。今回は特に貴方が介入した問題以外での事を強制する権利は私たちにはないわね」

 

「真由美⁉️」

 

流石は生徒会長で十師族の七草だとリクは思う。この場で無理な詰問は後の損害が大きいと判断したのだろう。

 

「それじゃあ、本当に俺は失礼させてもらいますよ」

 

そのまま俺はそこから離れて校門から出ていく。明日から面倒事が色々と起こるな~と考えながらワンダーワールドへと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会長の真由美や風紀委員長の摩利は残ったメンバーに話しを聞くためにリクのことは後回しにして軽く事情を聞く。

他の面々もそれに合わせてリクの事は思考の隅に追いやっていた。

 

(奴は……何者なんだ)

 

ただ1人、リクが見えなくなっても鋭い視線をリクが消えた方に向けている司波達也を除いて。




取り敢えず、ストックはこれで使い切った……次にこの続きを書けるかは未定です。


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