R指定のソシャゲに転生しました (ash.w)
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終幕から序幕

「突然だが君は死んだ!!」

 

四十近い男にたいして、なぞの人型は言った。

 

「誰だあんたみたいな顔をしてるね、だが答えられない」

 

しかしと言葉を切って

 

「何で死んだのかそれだけは教えてあげよう」

 

そう言ってガムテープを見せてくる。

 

「君はいびきを何とかしようとしてガムテープを口に貼った結果窒息してしまった」

 

「だが、君の死はあってはならない事なんだ」

 

「まだね」

 

「故に、君の死を無かったことにしなければならない」

 

「その方法として君を異世界に送り、異世界に行った存在として曖昧な時間をつくる」

 

「その間に、君を蘇生させる」

 

「そういう方法をとらせてもらう」

 

「まぁ、欠点として異世界に行った君は異世界の住人として一生を過ごすことになるのだが」

 

その言葉に抗議しようとした瞬間、世界が上昇いや自身が落ちているのだ。

 

「頑張ってくれたまえ。君が行く世界はーー」

 

聞こえた世界に一言、

 

(せめてモブでありますように!!)

 

言葉にならない声は

 

 

*********

 

 

「ダメでした」

 

orzの姿の美少女がいる。

より正確にいえば自身の姿が美少女として鏡に写っている。

流れる銀髪は絹のようになめらかに、潤んだ瞳は大海のように蒼く、汚れを知らぬ少女の顔は悲しみにくれていても何一つ美しさは変わらない。

しかしそんなことよりどうして、よりにもよって

 

「スフィア・ナノーグなんですか?」

 

このキャラは、回復特化のユニットで耐久力もあるのでフロントヒーラーとしておける数少ないキャラである。

攻撃を受けるフロント、フロントの補助としてスキルやパッシブで援護するバックスという独自の隊列システムにおいてフロントヒーラーは大抵味方を回復する前に自分が戦闘不能になる場合が多い。

が耐久型かつ星四という高レアの故のステータスの高さで敵の猛攻を凌ぎつつ回復しかも可愛い。

人気投票も高く、一桁代から落ちたことがない。

『ティア・テイルX』

涙の数だけ物語がある。よくあるソシャゲである。

が主人公がR指定か一般指定かで評価がかわる

一般指定なら分身と強化を持ちコミュ力強めのいい人なのだが、R指定ではじけた。

まあ、いろいろやらかした結果。

彼のあだ名は、鬼畜君となった。

無論彼女にも容赦なかった。

衣装差分の数だけ色々と。

 

 

閑話休題

 

 

 

しかし何か違和感がある、鏡を更によく見る。

じっくりと眺めていると、急に声が聞こえた。

 

ーー出来損ないめ!!ーー

 

その言葉はスフィアではありえない、希代の聖女としてもてはやされた彼女ではない、ありえない。

ではこの子は、何者だ?

疑問を浮かべた瞬間流れてくる記憶、それは彼女の証明。

 

「私はスペア、代用品」

 

つけてもらった名前はない。

不吉な双子、出涸らし、出来損ない。

降ってくる言葉は存在の否定。

だからこそ箱舟と呼ばれる遺跡に逃げ込んだのだ。

何度も何度も、ここと姉だけが救いだった。

そんなある日、世界は壊れた。

今ならわかるが、実際にはそんなこと起きていない。

その際に落とされた自分と魂的に融合してしまったようだ。

問題はそこじゃない。

今この船はどこともしれない場所にいるということだ。

シナリオ的には序章……あ!!

 

「ねぇ様が危ない!!」

 

 

******

 

 

 

 

目を開く、目の前に絶景があった。

後頭部の感触から膝枕されていると理解した。

 

???

「あっ、目覚めましたか?」

 

絶景の向こうから声が聞こえた。

 

考えなくともこの絶景の持ち主であることは容易に想像できた。

 

ゆっくりと絶景にぶつからないように起き上がり、その顔を見た。

 

銀髪碧眼巨乳の美少女がいた。

 

???

「初めまして箱舟の方、私の名前はスフィア」

 

スフィア

「スフィア・ナノーグと申します」

 

それまるで日輪のような笑顔だった。

 




わかる人にはわかると思いますが
リスペクト元はあれです


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序章いずれかしれぬ場所で

この作品の主人公は、鬼畜君の能力を知っています。
しかし、鬼畜君サイドの人は知りません。
これを念頭に置いてご覧下さい。


「でもどこに行けば…」

 

答えを知っていても、どこでおきるのかそれがわからない。

 

「案内板…あった、しかもリアルタイム」

 

見れば二人の位置がわかった。

しかし、問題はある。

 

汚染体(イレギュラー)が多い」

 

この船は汚染されているのだ。

説明は省くがこの箱舟がどこでもない空間に潜航するに至った理由がこの汚染である。

たかが汚染などと言う事なかれ。

この汚染は、ある一定以上進行すると置き換わるのだ。

汚染→浸食→変質と変わっていく。

浸食までならなんとか助かるが、変質は全身はおろか魂まで汚染されてしまった状態である。

無論助かることはない。

それは、艦内機能を用いた実体のあるホログラムにすら作用する。

汚染を浄化できる能力の持ち主はこの箱舟で眠っていた鬼畜君以外全て女性であり、ことさら鬼畜君の希少性が上がる。

ついでに言えば、浄化能力を覚醒させることもできその方法があれなので、鬼畜君と呼ばれる。

話を戻すが、ぱっと見三割今もなお増加中も言ったところだ。

 

「安全なルートはどこ?」

 

何回も案内板を見て、ルートを頭に焼き付ける。

あとはもう駆け出すだけだ。

一歩踏み出せばあとはもう止まることはない。

右手首に巻き付いたミサンガを見ながら、覚悟を決めた。

 

「命をかける」

 

 

 

********

 

 

スフィア

「落ち着きましたか?」

 

理由もわからぬまま、美少女の膝枕などという

奇跡のような事態に出力がバグったかのようにあ、と言う言葉しかでず。

 

落ち着かせるために重ねられた手の柔らかさに、更にバグって行く思考回路。

 

そしてそんな状況から、十数分たってやっと落ち着き今に至る。

 

離れた手の感触を名残惜しく思いながら、尋ねる。

 

???

「ここは?」

 

スフィア

「……ここは箱舟と呼ばれている遺跡です」

 

スフィア

「そして貴方は、この部屋でこーるどすりーぷなる眠りについていました」

 

???

「コールドスリープ……」

 

聞いたはずのない言葉だ、しかし納得できてしまう。

 

???

「聞いたことのない言葉なのに何故わかるんだ?」

 

疑問に感じていると、背後から声がした。

 

???

「それは私から説明します」

 

振り向けばそこにいたのは、ピンク色の髪のなんちゃって軍服を着たスフィアさんよりも幼い少女だ。

 

???

「君は?」

 

???

「そうですか……わかりました、私の名前はナビィ。正式名称new-backup-interface」

 

ナビィ

「最新式の貴方の手足です主様(マスター)

 

一瞬だけ見せた寂しそうな顔はすぐさま消え去りけれども寂しそうに笑い自己紹介した。

 

マスター

「俺がマスター?」

 

ナビィ

「イエス、貴方がコールドスリープにつく前からこの船の管理及び主様の補佐をさせて貰っています」

 

マスター

「すまない、君のことをおぼえていないんだ」

 

ナビィ

「仕方ありません、使用期限以上のコールドスリープをした上、専用設備を用いない解凍作業でしたから」

 

ナビィ

「記憶程度で済んでよかったと思います」

 

なぜかその泣きそうな顔をどうにかしたいと思いながらしかし何もできずにただ時間が過ぎてゆく。

 

その静寂はけたたましい音と共に破られる。

 

ナビィ

「主様、ゆっくりしてはいられません。汚染範囲が広がってきました」

 

スフィア

「汚染……こちらで言う穢れですか?」

 

ナビィ

「イエス、既に私たちの一割は汚染され船体の三割二分が汚染領域です」

 

マスター

「なんなんだそれ?」

 

二人の顔が一気に険しいものへと変わる。

だが、それについていけない

 

ナビィ

「主様、説明している暇はなくなりました」

 

マスター

「わかったとりあえずついて行けばいいんだな」

 

ナビィ

「イエス、感謝します」

 

言うに早く、この部屋唯一のドアがスライドする。

 

汚染された同型

「目標発見、攻撃開始」

 

開かれたドアの向こうには、ナビィと同じ姿のーーしかし全く別人のような雰囲気のーー敵だと理解できる存在がいた。

 

ナビィ

「主様!!」

 

???

「ねぇ様!!」

 

突き飛ばされるように/引っ張られるように部屋の中へ戻される。

 

扉が閉まったとき、部屋には三人しかいない。

 

しかし聞こえたのだ。四人目の声が、そしてそれを知っている少女は、

 

スフィア

「あの子がわたしを……」

 

理解すればするほど、絶望的な状況だった。

 



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序章そして彼ははじけたらしい

「見えた」

 

小さく呟いて目的の扉を目指す。

汚染区画を通らざる得なかったとはいえ、この体の不調は重すぎる。

走っているのに歩いているかのような遅さを感じてしまう。

実際にはそんなことないのだが、一分一秒を争うような事態で気持ちだけが先行しすぎているだけだ。

そう言い聞かせても、自分の大事なものがいま穢されようとしている、それだけは避けなければならない。

反対側の通路から汚染された同型が現れた。

扉が開く、かまえられてる。

私の方からは、鬼畜君が見えてる。

つまり向こう側にいるのは、

 

(不味い不味い不味い!!)

 

慌ててミサンガを引きちぎる。

瞬間、全身に力がみなぎる。

しかしそれは自らの破壊と引き換えの一度きりの力。

けれど躊躇はしなかった。

右脚が砕けんばかりの勢いで踏み出し、百メートルを1秒で駆け抜け、その全ての勢いを左脚を犠牲にしながら殺す。

目の前の女性をそっと押し、部屋の中へ。

扉閉まる寸前目が合った。

驚いたような、ありえないとでも言いたい顔をしていた。

音は五回、被弾は四カ所。思考する暇はなかった。

勢いのまま、吹っ飛ばされ床を滑る。

痛みと自分が何かに穢されてゆくそんな感覚を感じながら、声を聞いた。

 

「脅威、この個体は汚染以上にならない。研究の必要性あり」

 

壊れた左脚を無遠慮につかまれ、しかし痛みに悲鳴を上げることもできず、引き摺られて行く。

薄れゆく意識の中、ねぇ様の事だけが気がかりだった。

 

 

 

********

 

 

マスター

「大丈夫か?!」

 

二人の方を向く、特に不安だったのはナビィの方だ。

先に部屋に入ったのはスフィアの方だ。

ナビィは俺を引き込む時に顔をしかめた。

 

もしもそれが、銃弾に当たった痛みによるものだったとしたら。

 

ナビィ

「すみません主様」

 

観念して静かに隠していた手の甲を見せる。

 

スフィア

「そんな……」

 

右手の甲には蠢く黒があった。

少しずつ、広がっているようだ。

 

ナビィ

「申し訳ありません、直ぐに別の個体と交代してーー」

 

その右手を掴む。

無くした記憶が叫ぶ、これ以上失いたくない。

たくさんいる個体の一人?だからなんだ。

 

ナビィ

「主様、離して下さい。私達は主様の為に、それにーー」

 

俺はこの子を失いたくない!!

 

そう心で強く叫んだ。

 

彼女の右手が光に包まれる。

 

スフィア

「これは、浄化の光?」

 

光がやんだ時、そこにはきれいな白い手があった。

汚染されていた痕跡はみじんも無い。

 

ナビィ

「驚きました。いえ、ここまで強力な浄化ができるほど力があったわけでは無かったはずです」

 

手の甲をじっと見ながら、感嘆の言葉を漏らす。

 

スフィア

「浄化の力を男性が?」

 

ナビィ

「はい、主様は唯一の浄化能力を持った男性です」

 

マスター

「その浄化能力ってなんだ?さっきの黒いのと関係あるみたいだけど」

 

二人に聞くと、知らないことを驚いたような顔をしたが記憶喪失に思い至ったのだろう。

 

ナビィ

「すみません主様、後ほど詳細な資料を提供します。今は簡潔に、汚染と呼ばれる正体不明の現象により世界が危機に瀕しています」

 

ナビィ

「それに対抗できる能力の事を浄化と呼んでいます」

 

ナビィ

「そしてその能力の持ち主は主様を除いて女性しかいないのです」

 

ナビィ

「更に、主様には女性に浄化能力を授ける事ができる可能性があるのです」

 

その言葉で自分の重要性がわかった。

だからと言って、

 

マスター

「君が犠牲になるようなことはして欲しくない」

 

ナビィ

「主様……」

 

嬉しいようなしかし、それだけではないような顔をされた。

 

ナビィ

「それはそれとして、浄化能力の付与のための実験が必要なのですが」

 

なぜか少し言いよどむ。

 

マスター

「何か問題が?」

 

ナビィ

「いえ、どちらかと言えば私の覚悟の問題ですので」

 

ナビィ

「とりあえず、マスター、スフィア様の手を両手で包んで下さい」

 

マスター

「えっ?!」

 

スフィア

「は?」

 

ナビィ

「時間が惜しいのでさっさとして下さい」

 

ジト目になる。

 

スフィア

「………」

 

なにか言いようのない、恥ずかしさを感じながら無言で差し出された右手を両手で包む。

 

スフィア

「んっ……」

 

右手から全身へ光が広がる。

思わずと漏れた声ば、艶を含んでいた。

光が静まった頃やや赤く染まった頬を自覚せずに右手を見つめ、

 

スフィア

「輝きを」

 

右手の中に光が生まれる。

それは、浄化の光と呼ばれるものなのだろう。

 

スフィア

「こんな簡単に……」

 

ナビィ

「それがマスターの力です、そして私にも……」

 

といった所で、言葉に詰まる。

 

マスター

「ナビィ?」

 

何かを察したように、スフィアが

 

スフィア

「仮眠室はこっちですか?」

 

ナビィ

「はい、そうです」

 

元々赤かった頬を更に赤くしながら慌てたように、部屋へ入っていった。

 

ナビィ

「マスター……」

 

少し顔を赤らめながら、

 

ナビィ

「優しくして……ください」

 

そっと服を摘まんで言った。

 

 

*********

 

 

マスター

「あ、あーその」

 

ナビィ

「何か用でしょうか変態(マスター)?」

 

マスター

「すみません!!」

 

土下座したが、笑顔が何一つ崩れない。

 

ナビィ

「大丈夫です変態、とにかくこれで反撃の準備は整いました」

 

顔を笑顔から真面目な顔に戻すと、

 

ナビィ

「浄化開始です」



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攻略サイトの掲示板より+マスター評価

攻略掲示板風なのであしからず


悲報わい、変態呼びされることになった

 まだ序章か一般版だとほんとに意味不明に変態呼びされるからな。

 R指定版だと残当だしな

  そんなにひどい?

  十数名で自家発電×五回からの本番だからな

  ワァオ、やりすぎしゃね?

  だからこその変態(マスター)呼び

  することしまくったらぶっ倒れたのも悪いかと

 

ナビィちゃん役割タンクなわりに火力高め

 序章(チュートリアル)は三人しかいないから

 基本ナビィのBS(バックススキル)に主人公おいて、毎ターン主人公のスキル使うだけで序章は突破できる

 F(フロント)におけるのが二人だけで敵の数も多く感じるけど、主人公のスキルが全体攻撃プラス全体回復なもんでオススメが地雷というね

  序章ボス戦から事前登録受け取れる、ガチャとか色々とできるけど、強化できるのが序章終了後だからね

  

 

序章のボス割と強い

 もしかして、編成し直した?

 そうです、何か問題があるんでしょうか?

  ある、一ターンがタイムポイント(TP)バーで管理されてること。オススメが指定しないとアタッカーをフロントに配置すること

  ボスがターンファストアタックとして雑魚を2~5体召喚して、ターンラストアタックとして召喚した雑魚を弾丸として発射してフロント全員に200~300くらい食らう

  基本強化してないアタッカーのHPは400位しかないので、処理し損ねるとアタッカーが溶ける

  レベルアップ前なら他のどの全体攻撃スキルよりも主人公のBSの方が強く、処理しつつ回復できるから始めの三人で十分勝てるようにできる。

  そうなんですかありがとうございます

 

 

マスター

レアリティR

HP10(固定)

攻撃力250、

防御力250

素早さ30

 

FSP(フロントスペシャル)

FS(フロントスキル)

BS(バックススキル)

浄化

敵全体に攻撃力×2のダメージを与え、フロント全体を防御力×2だけ回復

BP(バックスパッシブ)

強化

装備したフロントのステータスを10%アップさせTP(タイムポイント)10ごとにSPを上昇(小)

 

ゲームにおいて

戦闘では前に出ないで下さいと言わんばかりのHPとスキル構成である。

序章はナビィの方が素早さが早いためナビィのバックスにつけること

序章は最強の攻撃手段だが、一章以降は強化上昇値が低く、好感度ボーナスもないので最終的なメンバーからは外れる。

 

小ネタ

理由不明の分身能力を持ち寝室シーンではじける。

ヒロイン一人にたいして、複数人でかかる(一応理由有り)一対一のシーンは寝室1が多く寝室2以降衣装差分すら複数人(シーン内では一対一の場合あり)である。

数少ない例外がスフィアである。

なお、被害者の会が設立されている。



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序章塗りつぶされた世界の片隅で

暗い暗い暗い。

世界が暗い。

何がどうなった?

周囲が黒に染まり、もう何も認識できない。

ああ、自分は死んでしまったのか?

それならいい、そちらのほうがいい。

ねぇ様に迷惑をかけたくない。

 

「…………い」

 

「?」

 

何か聞こえた。

有りえるわけが無い。

ここは私のーー

 

「……ーい、きこえてるか?」

 

暗闇に、形が生まれた。

その姿に、私は

 

「何で私のそっくりさんになってるんですか?!」

 

そう、言わざるえなかった。

お前は、男じゃなかったのか?

そう聞きたい、私とこいつはつながっているのだ。

私の記憶はこいつの記憶。

こいつの記憶は私の記憶。

だから簡単に思い出せたし、理解も早い。

故に、ツッコミを入れざるえなかった。

だってこいつ男でしかも私と似ても似つかない容姿だったはずだ。

なのに今は、黒目黒髪とはいえ私にうり二つだ。

服装もそうだし、仕草以外は私とあいつに違いはほぼ無い。

 

「何がどうして、そうなったのよ?」

 

「何が、というよりは目覚めたのが俺が先でーー」

 

今は実験の真っ最中という言葉が続く前に、

 

「うん、わかった。ありがとう」

 

言葉を切った。

知っては、いるからそれ以上聞く必要が無いと判断した。

これから理解することになる事は分かりきった話だ。

もうすぐ私として目覚めるから。

 

「でもその程度でかわるの?」

 

「魂の大きさがね、俺とお前じゃ月と太陽くらい違う」

 

そんなにか、太陽?

魂の大きさがそれほどあるのなら、

 

「あー、お前は生まれたときの事情で力が使えない」

 

そのかわり、汚染が深まらないからいいんだけど、と呟いた。

しかしなら、

 

「知っているのに教えてくれないの?」

 

「教えたくない、今知ったらガチでヤバいからな」

 

まあとりあえず、

 

「人ともっとつながれとしか言い様がないな」

 

少しだけ寂しそうに言った。

その顔がなぜかずっと頭から離れなかった。

目が覚めるまでずっとーーーー

 

 

*******

 

 

ナビィ

「素晴らしいです、主様」

 

戦闘を終えたとき、ナビィが言った。

 

マスター

「そうかな、必死にやってるだけだけど」

 

ナビィ

「必死に何かをやったとしても結果につながらない事などままあります」

 

ナビィ

「コールドスリープに、入る前の主様がそうでした」

 

その顔が寂しそうな嬉しいような、一括りには表せない顔をしていた。

 

ナビィ

「主様の力は小さく、付与されたとて汚染と戦えるものではありませんでした」

 

ナビィ

「ただの延命に過ぎなかったのです」

 

ナビィ

「それを嘆き、しかしそれで何か変わるわけでもなく」

 

ナビィ

「主様は最後まであの方の死を悔やみながら」

 

横たわる少女、手をつないで

笑いながら、なにかを

しかしその体は全て黒に染まりーーーー

 

マスター

「ッ!!」

 

ナビィ

「主様大丈夫ですか?!」

 

ふらついた体を支えながら、ナビィが聞いてくる。

それに対して問題ないと立ち上がる。

 

ナビィ

「主様……」

 

スフィア

「……どうかしましたか?」

 

戦闘終了後偵察に出ていたスフィアが入ってきた。

 

マスター

「何でもない」

 

スフィア

「そうですか、でもつらい時は辛いと言ってくれた方がいいんですよ」

 

少しの後悔が混じったような攻めるような言葉だった。



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序章対汚染濃縮体会議

53:名無しのマスター

序章ボスに関して

難易度上がっても汚染濃縮体ままなのはなぜ?

 

55:名無しのマスター

マジだぞ

他は難易度ハードだと浸食体

ベリーハードだと変質体に変わる

 

56:名無しのマスター

あれ、もしかすると汚染体以上になることはないって意味なのかね

 

57:名無しのマスター

それでも強いからな

 

58:名無しのマスター

難易度一つ上がるだけでダメージ量がポンと上がるからな

 

61:名無しのマスター

いっそ油断しなくても汚染弾二連射されるだけで全滅しかけるからな

 

64:名無しのマスター

雑魚処理も難易度が上がると鬼畜君単発じゃ処理しきれないからな

 

66:名無しのマスター

それはそれとして、『悲報』会長と副会長、別衣装なし

 

68:名無しのマスター

ああ、生放送でのあれね。

 

69:名無しのマスター

「もう少し会員が増えるまでお待ちください」

だっけ

 

70:名無しのマスター

くそワロタ

 

71:名無しのマスター

鬼畜君のせいであることが確定したね

 

73:名無しのマスター

何をしたんだよ

 

75:名無しのマスター

ナニに決まっておろう

 

77:名無しのマスター

頑張ったんだな

 

79:名無しのマスター

悲しいことだがな

 

81:名無しのマスター

それよりも新規キャラなんの説明もなく出てきたな

 

83:名無しのマスター

どうやら、序章と一章の間の話らしいな

 

84:名無しのマスター

おねぇちゃんはっちゃけすぎじゃない?

 

86:名無しのマスター

使命とか、お勤めとかみーんな吹っ飛んだらあーなる

俺にはわかる

 

 

 

 

*******

 

ナビィ

「マスター、汚染領域の減少を確認しました」

 

しばらく画面を眺めていたナビィが唐突にこう言った。

 

スフィア

「当たり前な話じゃ、ないんだね」

 

ナビィ

「イエスです。スフィア様、その減少している領域が私達の周辺であるなら問題ないのです」

 

ナビィ

「汚染そのものが、浄化された領域とは相性が悪いのですから」

 

ナビィ

「しかし、これではまるで縮小というよりーー」

 

マスター

「というより?」

 

少し言いよどむようにしながら言った。

 

ナビィ

「濃縮、しかも実験場に……」

 

マスター

「場所が問題なのか?」

 

ナビィ

「イエスです、主様。汚染の思考は拡張拡大が根本理論であり、浸食変質はその過程の副産物なのです」

 

ナビィ

「にもかかわらず、広がることをせずにまるで一カ所に吸い込まれるかのような速度で集まっているのです」

 

ナビィ

「何らかの異常(イレギュラー)が発生しているということです」

 

ナビィ

「その理由はおそらく……」

 

スフィアを見ながら言葉を濁す。

 

その仕草から、理解したのだろう。

 

スフィア

「私の……妹ですか?」

 

ナビィ

「99%の確率で、間違いないかと」

 

その一言にストンと膝から崩れ落ちる。

 

その姿を見ながら、真剣な表情でこちらを向く、

 

ナビィ

「主様、ここで最終確認です」

 

ナビィ

「現在、汚染率7%でなおも減少中です」

 

ナビィ

「この勢いのままならば、おおよそ2時間後には汚染領域は実験場の中だけになります」

 

ナビィ

「安全策をとるならば、実験場ごと濃縮体の切り離しを行います」

 

スフィア

「それは!!」

 

その言葉に顔を上げ、睨みながら言った。

 

その言葉を受けてもなお、冷静に続ける。

 

ナビィ

「はい、この方法をとった場合妹様の生存確率は0%です」

 

スフィアが顔を下に向ける。

その姿に目もくれずさらに指を上げる

 

ナビィ

「もう一つ、こちらは推奨されていません」

 

マスター

「言ってくれ」

 

ナビィ

「奇跡にかけて、汚染濃縮体の浄化です」

 

ナビィ

「今回の事態が異常事態(イレギュラーアクション)の状態で有り、こちらのサブフレームすら運用できる状態で有りながら、おきたとするのなら」

 

ナビィ

「もしかすると、もしかする(助けられる)のかもしれません」

 

ナビィ

「ただし、こちらはメインフレームの演算でも確率は0.000000……%ともはや奇跡と言える行いです」

 

ナビィ

「どちらを選びますか?」

 

マスター

「決断までの時間は?」

 

ナビィ

「接触するにせよ、切り離すにせよ二時間は何もできません」

 

…………不安そうな顔でスフィアが見つめる。

目が覚めて初めて見たのは笑顔だ。

 

それからもずっと笑顔だった。

 

マスター

「今から言うぞ、俺はーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスター

「助ける」

 

たった一言、それだけで救い主を見つけたかのように祈りながら、

 

スフィア

「ありがとうございます!!」

 

ナビィ

「さすが主様です、やはりそちらになりますか」

 

まるで初めからそうするだろうと言うように動き出すナビィ。

 

ナビィ

「主様、そうと決まれば善は急げです」

 

ナビィ

「濃縮量を下げるために周辺を浄化しましょう」

 

スフィア

「そうですね、頑張ります」

 

迷いはない、ただ前に向かうだけだ。




次回戦闘描写
予定は未定です。


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序章汚染濃縮体

戦闘シーン省略可です


ナビィ

「残り一時間、これ以上は本戦に差し障ります。安全域に戻って休息を」

 

スフィア

「まだ、戦えます!!」

 

手を膝に置いていたスフィアが、鬼気迫る顔で言葉を発する。

 

誰がどう見ても限界だ。

しかし確率を上げる意味でもまだ続けようとしていた。

 

ナビィ

「ダメてす。これ以上は本戦に差し障ります」

 

スフィア

「ですがっ?!」

 

 

抗議しようとしたスフィアにナビィは、人差し指をあてる。

 

ナビィ

「不安なのは、仕方が無いです。しかし作戦が失敗した場合、我々の退避後切り離しが行われます」

 

スフィア

「え?」

 

ナビィ

「わかって下さい、其程危険な作戦なんです」

 

スフィア

「…………」

 

息をととえながら、少しずつ自身のはやる気持ちを静める。

 

息と共に焦りを吐き出す。

 

吸うと共に冷静さを取り戻す。

 

呼吸を数度繰り返し、いつものいやそれに近いメンタルまで戻す。

 

スフィア

「申し訳ありません」

 

ナビィ

「いいえ、私も主様が無事だから冷静でいられるのです」

 

微笑み合う頃には、彼女のはやる気持ちは消えていた。

 

 

 

*******

 

 

ナビィ

「主様、最終確認です」

 

マスター

「問題ない、行こう」

 

実験場とドアの上に書かれている。

 

そのドアが重たい音を立ててスライドしてゆく。

 

ナビィ

「接敵しますマスターは後方へ!!」

 

飛び込んだ先、見えたのは異形だった。

 

大きく太い両腕、それに反して胴体は華奢で下半身はない。

 

まるで、穴に落ちそうな怪物がそのまま迫ってくるようだ。

 

スフィア

「待ってて、今…………おねぇちゃんが助けるから!!」

 

咆哮は、悲鳴か怒声かーー

 

*******

 

ナビィ

「浄化率80%、しかし未だに衰弱は見られず!!」

 

スフィア

「まだ、ダメなの?!」

 

ナビィ

「しかしこれ以上は……」

 

マスター

「まだだ、まだ終わってない!!」

 

叫ぶ、これが懇願であることなど百も承知だ。

 

けれど、それでもーー

 

諦めたくない!!

 

強く願えば、奇跡は応える。

 

ナビィ

「自身の出力の上昇を確認、これなら」

 

スフィア

「あの娘を助けられる!!」

 

駆けだす、絶望はもう晴れた。

 

ナビィ

「私は両腕を撃ちます!!スフィア様はーー」

 

スフィア

「あの娘を引きずり出します!!」

 

ナビィ

「レディ……シュート!!」

 

両手で構えた銃口から放たれた光線によって両腕がはじけ飛ぶ、両腕を復元しようと汚染体が集まるその隙を突き、スフィアが飛び込む。

 

スフィア

「柏子見柏子見申します、穢れを祓い清め。願わくば、また健やかなる日々を『天授の寿ぎ』を!!」

 

叩きつけるように、両手を細い胴体に押しつける。

 

輝きが汚染を晴らし、その中にいた少女がスフィアの方に倒れていく

 

スフィア

「お帰り、私の妹」

 

抱きしめたその少女の顔は晴れやかであった。



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序章旅の始まり

未だ暗闇に囚われている。

仕方の無いことだ。

諦めにも似た、心の持ち様。

それは慣れた感覚だ。

私には、自分自身の居場所がなかった。

当たり前だ。

ずっと力が使えなかった。

双子の姉とずっと比べられた。

しかし、そのことに恨みなどない。

なぜなら、姉だけが私の居場所だからだ。

ねぇ様の居場所が私の居場所。

他の誰にも邪魔させない。

 

「きこえるか?」

 

目を開けば、私がいる。

 

「聞こえているならそのままの聞いてくれ」

 

「大丈夫だ、助けられた」

 

「お前は、お姉ちゃんが助けた」

 

だから、そろそろお目覚めの時間だ。

その言葉と共に光が私達を包む、光の向こうから声が聞こえる。

だれだっけ、聞いたことのある声……

ああ、これはあいつの記憶……

なら、呼びかけているのは……

 

********

 

彼女の目が開く。

 

どこか、いやどこも見ていない瞳に光が宿り俺を見る。

 

???

「誰?」

 

マスター

「目が覚めたか?」

 

???

「うん」

 

コクンと静かにうなずく。

 

そして同じ事を聞く。

 

俺は、その問いに

 

マスター

「マスター……そう呼んでくれ」

 

???

「マスター……うん、マスターさん」

 

少しずつ潤んでゆく瞳、袖を摘まんだ手はおびえを含みしかし力強く、紅潮した頬はそれを望んでいた。

 

???

「酷いことをされました、抵抗もできなくて。なんども何度も……」

 

???

「今、ねぇ様がいなくてよかったです」

 

???

「きっと、もう立ち上がれなくなるから」

 

???

「でも、立ち上がりたいから」

 

???

「ねぇ様と歩いて行きたいから、だからーー」

 

???

「上書きして……下さい」

 

その言葉を退けることは、俺にはできない

 

*******

 

「すごかったな」

 

暗闇の中、私が言う。

膝から崩れ落ちて今も両手で支えなければそのまま倒れそうなのだ。

心が弱っていた。

そんな言い訳で自分自身が納得できるのかと言えば、そんなわけが無い。

何よりも彼がやりすぎる男だと知っていて、望んだのだ。

そのツケが羞恥心をぐさぐさ刺されている現状なのだから甘んじて受け入れるべきだ。

と理性が言っている。

だが、心がそれについて行かない。

もはや、悶える以外の行動をとれない。

うめき声しかでていない。

 

「おーい、そろそろ戻ってこーい」

 

戻ってこいといわれても、しばらくは無理!!

 

「ま、そうなるよな」

 

うーあー、唸っていると世界が緩やかに光り輝いてゆく。

 

「目覚めの時間だ」

 

白に染まる世界でーー

 

*******

 

見知った天井を眺めながら、

 

「ピンポンパンポーンーー当艦はこれより浮上航行を開始します、若干の振動があると思われますので搭乗員は注意して下さい。繰り返しますーー」

 

「あぁ、旅が始まる」



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