愛と呪いは紙一重 (ランハナカマキリ)
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1学期編
家入黎人は特級呪術師




訂正
特級呪詛師『羂索』から、特級呪詛師『夏油傑』に訂正します。



「席に着け。今日は最初に転校生を紹介するぞ」

 

転校生。

それは安定した日常に突如として吹き荒れる嵐であり、学生達の淡い憧れであるここ秀知院学園という、外部入学の者を混院と呼んで疎む文化がある学校でもそれは変わらない。

 

「入っていいぞ。」

 

教師がそう言うと、扉が開く。

 

入って来たのは、黒髪をオールバックにして後ろに纏めている少年。整った顔に、猛禽類のように鋭い眼、そしてその眼の下を黒く染めるクマ。

 

何より目を引くのは、顔の左上部を覆う白い包帯。

 

「家入黎人(れいと)、よろしく。」

 

 

△▲△▲△▲△▲

 

家入黎人17歳

 

日本に4人しかいない特級呪術師。

 

彼は呪術御三家の五条家と禪院家の血を引く、いわばエリート呪術家のサラブレッド。だが彼の両親は、自身の子供を利用しようとする腐敗した御三家や上層部の老人達から彼を守る為に命を失った。その後、両親と同じ学舎で共に過ごした友人に引き取られ彼女の姓を名乗っている。

 

2017年に起きた特級呪詛師『夏油傑』による新宿京都百鬼夜行では東京に放たれた特級呪霊を撃破、2018年に起きた渋谷ハロウィンにて獄門彊より五条悟を救出、死滅回遊では広島コロニーを平定、その後特級呪術師『乙骨憂太』と合流し、呪術界の転覆を目論んだ『羂索』の野望を打ち払うことに成功した。

 

 

 

 

 

任務から帰った彼に、一本の電話がかかる。

 

「特級呪具『草薙之剣』と、特級呪物『八岐大蛇の骨』の回収、ですか。」

 

『そ、明日から秀知院に長期任務だから頑張ってね〜。』

 

プツッ!

 

・・・・

 

 

「おい待て、巫山戯るな。五条悟!!!」

 

「どうした黎人?またあのクズの無茶振り任務か?」

 

缶ビールを飲みながら歩いてくる女性は『家入硝子』、黎人の義理の母であり呪術高専の校医である。

 

 

「秀知院に長期任務だとよ。全く・・・俺この間まで2ヶ月間皇居の護衛してたんだけど?」

 

「まぁ、気分転換だと思えばいいんじゃないか?任務中は緊急以外では任務も出されないだろうし。」

 

「つーか、俺どこで一服すればいいんだよ?」

 

「帳下ろせばいいんじゃないか?私もそうやってたし、頑張りな。」

 

 

▲△▲△▲△▲△

 

 

黎人の任務とは別に、この秀知院では一つの戦争が繰り広げられていた。

 

 

「みなさん・・・ご覧になって!!」

 

 

 

「生徒会のお二人よ!!」

 

 

 

貴族制が廃止された今で尚、富豪名家に生まれ将来国を背負うであろう人材が多く就学している。当然そんな彼らを率いまとめ上げる者が凡人であるなど許される筈も無く、

 

 

 

キャーキャー五月蠅いギャラリー達の間を天才と呼ばれる二名が涼しい顔で通り過ぎていた。

 

 

 

秀知院学園副会長 四宮かぐや。

 

総資産二百兆円。鉄道、銀行、自動車。優に千を超える子会社を抱え、四大財閥の一つに数えられる『四宮グループ』。その本家本流四宮総帥の長女として生を受けた正真正銘の令嬢である。

 

その血筋の優秀さを語るがごとく、芸事音楽武芸いずれの分野でも華々しい功績を残した正真正銘の『天才』。

 

それが四宮かぐやである。

 

 

 

そんな彼女が支える男こそ、両家の御曹司やご令嬢が集まる秀知院の中でも極めて珍しい一般からの進学者でありながら、学園模試において不動の一位を死守し、多才なかぐやとは対照的に勉学一本で畏怖と敬意を集め、その模範的な態度で生徒会長に抜擢された秀才―――秀知院学園生徒会長 白銀御行である。

 

 

 

秀知院生の頂点を位置するこの二人が同時に歩けば自然と人々の視線は彼らに集まる。そんな人々に気圧された様子も無く、普段と同じように雑談しながら歩く二人には最早脱帽するしかない。

 

 

 

「いつ見てもお似合いな二人ですわ。」

 

 

 

「ええ、神聖さすら感じてしまいます。」

 

 

 

趣味や経歴は違えど、どこからどう見てもお似合いの二人。生徒達の間で噂が広まるのは無理からぬ話である。

 

 

 

 

そんな2人が繰り広げているのは恋愛頭脳戦。

 

 

 

勝敗基準は、先に告白した方の負け。

 

 

 

 

因みにこの戦いが始まってから

 

 

 

 

半年が過ぎています。

 

 



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家入黎人は見つけたい

転校初日

 

黎人の姿は学園内の中庭にあった。彼の視線の先にあるのは、生徒達の真上に浮かぶ蝿頭や三級呪霊の群れ。

 

「赤点、どっぢゃっだぁぁぁ」

 

「とうと、尊いぃぃぃぁぁ""!!」

 

 

 

「ここは魔境か?」

 

ハロウィンの渋谷と見間違う程の呪霊の群れが、彼方此方に蠢いている。正直に言うと気持ち悪い。比叡山や原爆ドームに匹敵する呪霊の濃さだ。

 

それもそうかと思う。この秀知院学園には嫉みや憧れといった様々な感情が向けられる。故に呪霊が大集合するのだ。そう、まるで集合フェロモンに群がるゴキブリの様に・・・

 

すると目の前を歩く少年に目が行く。ヘッドホンをかけて気だるげな雰囲気を放つ彼の背にはかなりタチの悪そうな呪霊が憑いていた。

 

「気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。」

 

複眼のようについた無数の目と蜘蛛のように関節が折れ曲がった腕。見るだけで嫌悪感を引き立てる。

 

「・・・キッショ。」

 

呪霊を片手で掴み、一気に反転術式を送り込む。反転術式とは、負の感情である呪力の反対。正の感情を使う術式。簡単に表すなら、

 

(-1)×(-1)は1

 

負の感情を掛け合わせることで、正の感情に昇華させる。これには治癒能力だけでなく、アウトプット出来れば呪霊を消滅させられるのだ。

 

ポロポロと崩れていく呪霊を投げ捨てて彼は校舎に向かう。

 

 

 

「え、今キッショって言われた?」ガーン

 

彼『石上優』を知らない間にディスったことを彼はまだ知らない。

 

△▲△▲△▲△▲

 

 

放課後、既に時計は午後6時を差し人影の無い廊下を黎人は歩いていた。

 

 

闇より出て、闇より黒く

 

 

 

その穢れを、禊ぎ祓え。

 

帳を下ろし、学園内の呪霊達を炙り出す。帳を下ろした途端、窓ガラスやロッカーの隙間から呪霊が滲み出てきた。絵の具のように液状なものから、蟻のようなものまでサイズも見た目も様々な呪霊が現れる。

 

黎人は片手で印を作り、自身の式神の名を唱える。

 

 

夜刀影(やとかげ)

 

 

彼の影から、白と黒の大蜥蜴が現れる。その大きさは大型犬ほどあり、額や背に彫られた呪印がおどろおどろしい。2体は黎人の方に顔を向ける。

 

「喰っていいぞ。」

 

指示を出すと同時に2体は呪霊に襲いかかる。黎人自身も短刀を取り出し呪霊を始末し、直ぐに片は付いた。黒い夜刀影は呪霊の頭部を噛み砕き、白い方は黎人の方に歩き寄り差し伸べられた彼の手を舐める。

 

 

「・・・にしても何処にあるんだ?例の呪物と呪具。」

 

彼が探しているのは

 

三種の神器の1つ『草薙之剣』

 

壇ノ浦の戦いで紛失したとされたが、大正時代に回収されていた。だが戦後の動乱で再び行方が分からなくなり、捜索されていたのだが今年の初め草薙之剣がこの学園に保管されていた事が判明したのだ。

 

この剣は呪具としては特級相当の威力を持つ。だが1番の特性は、『認識の消滅』である。この剣は、斬りつけた相手から特定の認識を奪う事ができる。

例えば相手から"黎人への認識"を奪うと敵は黎人を認識できなくなるのだ。当たれば勝ち、それの具現化のような呪具なのだ。しかも使用者にも作用する事が出来るのでかなり強い。"他者からの認識"を奪えば誰からも認識される事がないからだ。

 

そんな物を野放しにはできないので、黎人が送り込まれたのだ。因みに確保したら封印又は皇居で保管する事が決定されている。

 

そしてもう1つ、彼が探しているのは特級呪物『八岐大蛇の骨』

 

8つの首、8つの尾。水を操る水の神の化身。非術師にも広く知られる日本の大妖怪の1つ。両面宿儺の指に次ぐ特級クラスの呪物である。かつて安倍晴明に封印され、骨だけになった特級呪霊。戦国時代に何者かに持ち出され行方不明となっていた。

 

 

 

そして何故かこの学園内に保管されている事が発覚したのだ。

 

 

長年術師が総力を上げて探し求めていた2つの呪具と呪物、これらが同じ場所にあるのは偶然だろうか、それはまだ分からない。

 

 

「見てる、見てるよぉ?」

 

「・・・資料室の方を調べたら、図書室の方に行くか。」

 

階段の上から降りてくるナメクジに人を掛け合わせたような二級呪霊に小刀を突きつけながら黎人は階段を登る。彼が駆け出した途端、夜刀影が呪霊目掛けて牙を剥いた。

 

▲△▲△▲△▲△

 

潜入から1週間後

 

「見つからない・・・」

 

妙だ。呪物どころか呪具も見つからない。特級相当なら気配だけでわかるはずなのに。考えられるパターンは2つ、1つは封印されていて呪力の感知ができない。もう1つは誰かが持ち出した。そもそも無い可能性だってある。

 

「・・・どうしようか。」

 

一旦別の術師の応援を要請する手もある、だが今は呪術師も繁忙期。呪物探しを手伝うほど暇な連中なんて・・・

 

 

 

いたな。

 

東京都立呪術高専"静岡"分校2年生、黎人の同級生であると同時に呪術高専の中で1番の問題児共・・・

 

準一級術師『南雲晶』

普通に悪口が辛辣過ぎて対人関係が壊滅的。

 

二級術師『篠崎要』

天然、なのに口より先に手が出る。術式の影響で自傷癖あり。

 

 

 

 

いや、アイツらに来られたらこの学校が魔境から地獄になる。首輪を外した狂犬を放つようなものだ。絶対に嫌だしそんな事態にさせたくない。むしろさせるつもりはない。だが、五条悟ならどうする?

 

『えーまだ見つからないの〜?じゃあ晶と要も行かせよっと。その方が効率上がるし〜』

 

面白そうじゃん(・・・・・・・)(笑)』

 

 

 

(・・・クソ教師が。)

 

絶対に見つけなければならない。その為なら腎臓の一つや二つくれてやってもいい。ストレスで胃に穴があく事態だけは避けなくてはならない。平穏な生活のために、何としても見つけ出さなければ・・・

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを考えながら、噴水前のベンチに座る。

 

 

すると

 

「あ、」

 

「あ。」

 

かつて出会った気だるそうな少年が居た。

 

 



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石上優はリア充を呪いたい


少し短めです。


「・・・隣良い?」

 

「どうぞ・・・」

 

そう言うと、石上は直ぐにゲーム機に視線を戻す。学校内でゲームするって良いのか?高専はそう言うの厳しくないから分からない。

 

 

石上優

 

秀知院学園の生徒会会計。噂では、中学時代に何か問題をやらかして停学になったらしい。・・・もっぱら良い噂は無いが、もし噂通りの人間だとしてもそんな彼を生徒会に入れはしないだろう。

 

(何か、裏があるな。)

 

確かに呪術高専にも停学になった先輩はいた。

 

今の呪術高専4年『秤金次』

 

かなり素行の悪い人ではあったが、悪い人では無いだろう(多分)。停学になった理由は、上層部の保守派との衝突。その後は賭け試合の元締めをやってたらしい。

 

 

彼に興味が沸き、会話を試みる。

 

「・・・そのゲーム、俺も好きだよ。ストーリーとキャラが絶妙だよね。前作はストーリーのオチがアレで好きじゃなかったけどね。」

 

「(急に話しかけてきた!?というかこの人もこのゲーム好きなのか・・・ん?オチがアレで好きじゃない(邪魔だから消えてくれ)?まさか、遠回しに消えろって意味!?)・・・あの、僕退きましょうか?」

 

「何で?俺は君の事が嫌いじゃないが。」

 

「だってこの間、僕の事キッショって言ってたじゃないですか・・・」

 

「え?」

 

「え?」

 

 

黎人の頭の中に、転校初日の出来事が浮かぶ。確かにそう言った。しかしあれは呪霊に対して言ったんだが・・・まぁ呪霊に言ったんだよと言ったところでヤバいやつ認定されるに決まってる。ただでさえ片目を包帯で隠して厨二病キャラ扱いされてるのに。

 

「いや、あれは大衆の前で男の人に抱きついて(取り憑いて)頰や首筋に口つけしまくってた(呪ってた)邪で見るだけで嫌悪する存在(呪霊)に対して言った。・・・お前に言ったわけじゃーー」

 

「はぁ?何それ、あの時そんな事やってる■■■野郎共が乳繰り合ってたんですか?大衆の前で?あー許せませんね。学校とは学業に専念し、己を切磋琢磨する場なんですよ。決して■■■■共がキャキャウフフして良い場所では無いんですよ。」

 

不味い、こいつは秤先輩とは違うところがずば抜けてイカレてやがった。一般世間的に言う、リア充反対過激派。

 

「・・・そうだな。」

 

「ですよね〜あ、僕『石上優』って言います。」

 

「・・・家入黎人だ。ここには今年から2年生として転校してきた。よろしく。」

 

 

 

 

因みにこの秀知院学園では外部生を『混院』と差別的に呼ぶ事が暗黙になっている。かく言う黎人も転校初日は・・・

 

馬鹿A『おい混院。ここでのお前の扱いを教えてやーーーグフゥ!!?』

 

「あ"?」

 

誰も居ない物陰で腹パンからの喉を締め上げ、脅しておいた。そしたらその生徒は恐怖のあまり精神を病んで今は休学して療養しているらしい。因みに呪いの仕業となっている。それにあの生徒はかなりの数の外部生に嫌がらせをしていたので因果応報というものだ。任務遂行のための、致し方ない犠牲。

 

 

 

「え、年上だったんですか?えーと、家入先輩?」

 

「いや、秀知院じゃ君の方が先輩だから先輩呼びはやめてくれ。家入でも黎人でいい。よろしく、石上。」

 

 

この時まで、黎人はまさか自身が秀知院学園を巻き込む恋愛頭脳戦に巻き込まれるなど思ってもいなかった。

 

 

 

 



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家入黎人は引き止める


やっと恋愛頭脳戦に突入、天才たちによる恋愛頭脳戦と五条悟の無茶振り、このストレスのダブルパンチに黎人の胃壁は耐えられるのだろうか!?


あれから俺は石上と友人となり、彼の生徒会としての仕事を手伝うようになった。伊地知さんの事務処理仕事を手伝っていたおかげか、パソコン関連の作業はかなり上手い。溜まっていた予算案やら資料を、一夜で全て片付けて渡したら、石上が泣きながら「貴方が神か・・・」と抱きついてきた。

 

ちなみに今日は生徒会室に誘われた。石上と共に生徒会室への長い廊下を歩く。

 

「・・・俺が生徒会室に入っていいのか?」

 

「大丈夫だと思いますよ、白銀会長に話は通してるので。あ、でも四宮先輩にはまだ・・・」

 

 

 

生徒会室の扉を黎人が開く。

 

「ん?君は・・・」

 

「あら?貴方は・・・」

 

中には生徒会会長『白銀御行』と副会長の『四宮かぐや』

 

そして・・・

うろぉぁけばぁぁあ!!!イダダダダだぁぁ!!!ランランララランランラぁあ!!「あ!私きみの事知ってます、今年転入してきた厨二病君ですよね!!」また負けたぁぁぁぁぁ!!!い"や"ぁぁぁぁぁぁあグォォォォォォ!!!レロレロレロレロレロ・・・うゲェはららら!!!

 

 

(っっっっ!!?)

 

言葉には出なかったが、顔には少しだけ出てしまった。なにこれ、いや何なのこれ、何なのこの人!?どんだけ呪霊に憑かれてんだよ。蝿頭は100は超えて、三級から準二級まで大量に取り憑いて人としての姿が見えない・・・前に狗巻先輩が見せてきた銀魂のタマ菌回の近藤くらいなんだが!?呪霊操術の使い手ならまだしも、一般人だったら普通に死んでるレベルだぞ!!?

 

 

「え?何で初対面なのに嫌そうな顔するんですか!?」

 

「・・・・いや、何か貴女と関わったらとてつもない最期を遂げる気が・・・」

 

「え"ぇ'!?酷くないですか!!?会長ぉぉぉ!!この子酷いですぅぅぅ!!!」

 

「あ、石上の手伝いをしてます、2年の家入黎人です。今年から転入してきた外部生ですが、以後お見知り置きを。」

 

「会長の白銀だ。転入して間もないから、何かと不便だろう?何かあったら俺に言ってくれ。」

 

 

藤原千花、スルーされる。

 

「あのー私は無視ですかー?」

 

「日頃の行いが悪いからじゃないですか?」

 

「え、石上くん聞いてたんですか。キモ。」

 

石上、理不尽な悪口によりメンタルが折られる。

 

「ーーー死にたいので帰ります・・・」

 

 

 

 

 

「ところで何かお話ししてたんですか?」

 

「あ、あぁ。実は・・・」

 

「ラブレターを受け取ったんですよ。それで私、行くって思いを伝えたら会長達に止められちゃって。」

 

白銀に緊張が走る!

 

(不味い、もしこのまま四宮を引き止めようとすれば状況を理解していない家入に『ひよっとして、会長は四宮先輩のことを?』と思われる!この状況で四宮の味方が増えるのは不味い・・・)

 

「ラブレター、ですか。」

 

「えぇ、とても情熱的な恋文です。きっと好きになってしまうに違いありません。家入くんはどう思いますか?会長みたいに引き留めます?」

 

(ふふふ、ナイスタイミングですね。このまま彼に賛同して貰えば引き留めるのが不自然になってしまう。それに会長みたいに(・・・・・・)という言い方は会長が私を引き留めたいように聞こえてしまうだろうから、会長が失言する可能性は上がる。この勝負勝ったわ!)

 

 

 

 

 

 

「行かない方が良いと思いますが?」

 

 

((ええええええ!!!?))

 

 

かぐやand白銀、まさかの反対意見に思考がパニック状態に入る。その間黎人はかぐやが受け取ったというラブレターを、顎に手を当てながら読む。

 

 

「・・・ラブレターで食事の誘い。普通、ラブレター書くならせいぜい"校舎裏で待ってます"とかだと思いますよ。会ったこともないのにいきなり手紙で食事を誘うって、俺が受け取った側ならドン引きしますよ?第一食事に誘うことすら口に出さない程度のやつなんて、底が知れてますよ。」

 

 

 

 

思いっきり空気が冷めた。

 

 

「そ、そうか。ほら見ろ四宮、家入もそう言っている。それにそこまで言うなら、俺から教師に話を通しておいてやろう。」

 

「構いません。確かに家入くんの言うことも理になっているかもしれません。でも、それが真実の恋ならば、私は退学だろうと受け入れるつもりです。熱烈な愛を伝えてきている人です!退学も覚悟で応えなければ、不義理ではないですか!!」

 

「ふ、ふざけるな!だったらお前に告白ッ・・!!・・・したら、その男のことは忘れるのか?」

 

「ッッッ!!」

 

思ったんだが、何だこいつら。四宮副会長はまるでデートに行くことを止めてほしいような口調で、白銀会長はデートに行くことを止めたいようだ。

 

自分のためならどんな手も使いそうな連中だ。例えるなら五条悟と同じ人種かもしれない。その他の奴らは関わるとろくなことがない。

 

(面倒だな、こいつら・・・)

 

 

 

 

その後、何故か先程までしょげていた藤原千花により事は収まった。結局その日も目当ての物は見つからなかった。一体どこにあるんだ・・・

 

 

▲△▲△▲△▲△

 

 

 

『チッ、余計なところで邪魔しよって。』

 

 

秀知院学園の何処か。

 

『あともう少しで四宮の小娘がボロを出しかけたと言うのに・・・あのふしだら女は本当に邪魔だ。存在自体がコトリバコのようなものだろ、アレは。』

 

『それにしても呪術師が来るとはな、それも菅原の血。』

 

 

 

 

 

 

 

『我の暇潰しの邪魔をしないいでくれたらいいんだがな?』

 

 



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■■■■■は呪われている

 

都内某所、某焼き肉チェーン店にて

 

 

「兄さん、その肉もう良いと思うよ。」

 

「ん。」

 

「伏黒テメェ!私が育てた肉食うな!!」

 

「・・・お前がさっきから俺が焼いた肉食うからだろ。」

 

「ふ、2人とも落ち着いて・・・」

 

「なぁナナミン!本当に奢り!?俺ら結構食うけど!!?」

 

「・・・別に大丈夫ですよ、大人ですから。子供の食費を払うのは当然です。」

 

 

 

「「「「ありがとうございます!!!」」」」

 

 

黎人は任務後に、高専の同期達と共に焼肉を食べていた。

 

 

この場にいるのは

 

禪院家当主『伏黒恵』

 

田舎出身の『釘崎野薔薇』

 

元両面宿儺の器『虎杖悠仁』

 

元呪詛師の『吉野順平』

 

一級術師『七海建人』

 

 

 

 

 

そして黎人の妹(性別は男)の『家入美夜』である。彼女(彼)は秀知院学園の中等部に属しており、来年から呪術高専に入学する予定だ。

 

 

「そういや黎人、今坊ちゃん学校にいるって本当?」

 

「秀知院な、呪具と呪物の回収だよ。」

 

「マジか、伏黒が俺と会った時みたいなことあったりしてな。」

 

「馬鹿野郎、縁起でもないこと言うんじゃねぇ。」

 

 

 

ちなみにその日は虎杖が限界突破しようとしてストップが入るまで皆焼き肉を堪能していた。

 

 

 

 

 

 

 

▲△▲△▲△▲△

 

翌朝、今日も授業の合間に学校中を隈無く捜索した。偵察用の式神『鸞』を放ったものの見つけられなかった。鸞は元は攻撃補佐の式神ではあるが、その行動範囲は半径10キロにわたる。

 

 

翡翠色の羽を纏うハヤブサのような見た目をした鸞が、中庭のベンチに座る黎人の肩に止まる。申し訳なさそうな鳴き声をあげる鸞の嘴を撫でながら彼は持参した弁当箱を手に取る。

 

中にあるおかずは、硝子直伝の酒のつまみと昨日持ち帰りした残り。

 

鮪ブツにエビアボカドの生春巻き、とり唐揚げのエビチリ風。そして昨日の晩飯だった焼肉と白米。

 

 

「・・・さて、今日は何処で食べようか。」

 

 

そう思いながらふらりふらりと歩き回る。黎人は基本的に弁当を食べる場所を限定しない。今回のようにあちこち歩き回って、感覚的にここが良いと思った場所で食べる。その方が気楽で良い。

 

 

(そう言えば来週、悠二たちがタコパやるって言ってたな・・・)

 

 

そんな風な考えを浮かばせていたその時

 

 

 

 

目の前を、1人の女生徒が歩いていた。それくらいなら大した事はない。ぶつからないように進路をずらして彼女の真横を通り過ぎる。

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

『ん"?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黎人の頭の中に、強烈な"死"のイメージがなだれ込んだ。頭から冷水をかけられたような、後ろから鋭利な刃物で突き刺されたような感覚。

 

 

 

 

 

刃物のように鋭い殺気を放ちながら、彼女の後ろにピッタリとついて行く、血のような赤黒い影。濡羽色の片翼の翼、今にも折れそうな手に握る禍々しい大鎌、鳥類の頭骨のような頭部から、黒いコールタールのような液体が涙のように流れ続けている。

 

 

 

 

 

 

 

特級術師たる黎人が見間違えるわけがない、それは害意の塊であり、平穏な日常を蝕む負の感情の具現化。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が今までの人生で見た中で、2番目(・・・)に強大で悍ましい

 

 

 

 

 

 

 

呪いの姿がそこにあった。

 



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家入黎人は刃を向ける

 

 

 

 

ん"?

 

 

 

 

 

黎人は弁当箱を道端に投げ印を結び、式神を呼び出しながら通り過ぎた彼女の腕を掴み半ば強引に引っ張る。

 

「ーーっふぇ!?」

 

そして校舎の影に一瞬で連れ込み、隠し持っていた小刀を首元に押し当てる。そして彼が呼び出した白地に金色の紋様が描かれた兜虫、『独角僊』が2メートルはある角を彼女に突き立てる。

 

 

「なっ何!?」

 

「お前・・・見えてるだろ。」

 

突然の出来事に当惑している彼女の視線は黎人と独角僊の間を行き来している。間違いなく、見えている(・・・・・)

 

 

「見え・・・?ひょっとして、君も見えるの!?」

 

「あぁ、見えてる。そして言わせてもらうぞ?お前、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「呪われてるぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黎人が事実を告げた次の瞬間、彼が持っていた小刀が刃先から錆びついたように崩壊し始める。再び悪寒を感じた黎人はその場から飛び退き、新たな式神を呼び出す。

 

紫と黒に輝く、1メートルサイズの百足。『絡百節』である。

 

絡百節を掴むと、その姿はムカデの装飾が施された短槍に変化する。

 

 

 

『つばめ様にぃぃぃぃ!!!』

 

「待って!お願いやめて!!玲奈(・・)さん!!!」

 

 

 

黒い影の中から、その存在が姿を現す。鳥の頭骨や枯れ木のような腕が、徐々に顕現され始める。それは、彼女『子安つばめ』に取り憑いた、凶暴で残虐なる呪いの化身。

 

 

『近寄るなあ"あ"あ"!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲△▲△▲△▲△

 

 

数分後

 

 

「あー痛って・・・」

 

「だ、大丈夫なの!?」

 

「え?まぁ大丈夫ですよ。腕が一本削り落とされたくらい。」

 

黎人の右腕は、ミンチのように粉々になって地面にぶちまけられていた。武器から元の姿に戻った絡百節が血や肉を消し始める。

 

 

「大丈夫じゃないでしょ!!?だって!だって君の腕が!!」

 

「いや、本当に大丈夫です。」

 

そう言うと黎人は反転術式で、自分の手を再生させる。トカゲの尾が再生するように生えてくる手を見て、つばめは唖然としていた。

 

 

「・・・・え?何で、手が!?」

 

「反転術式で・・・て、まぁ分かりませんか。説明したいことも、聞きたいことも山々何ですが、一ついいですか。」

 

「う、うん。何でも聞いて?」

 

 

 

 

 

 

 

「貴女誰ですか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

子安つばめ

 

世界的バーテンダー兼大手飲食会社エリアマネージャーの娘であり、裏表のない性格で面倒見が良く、男女を問わず相手にフランクに接し、下級生からも人気がある。一部の生徒からは「3年の白鳥」と呼ばれている。

 

 

 

 

「・・・なるほど、ところであんたは俺を知っていたのか?」

 

「うん、君の事は噂で聞いてるよ。今年から転入してきたとか、結構やばい厨二病だとか、あとそれから・・・石上くんと仲が良いって。まぁ殆どの人はーー君の事を変人扱いしてるみたいだよ?」

 

「へぇ、別にモグモグどうでもモグモグ良いですけどねゴクン。」

 

先程投げた弁当箱、(奇跡的に中身が崩れなかった)を食べながらつばめの話を聞く。

 

 

 

 

「・・・ねぇ、さっき君『呪われてる』って言ってたよね。」

 

「言いましたねモグモグ。」

 

「それについて・・・教えてくれない?」

 

「嫌だ。」

 

「えっ。」

 

 

 

「・・・理由は2つ。1つは、俺はあんたを1ミリも信用(・・)していない。」

 

「うぐっ!?」

 

子安つばめ、今まで様々な経歴の人間と関わりを持っていたが、ここまで本音をズバズバ言ってくる人種は初めてである。

 

「次に、俺はあんたのことを何も知らない。つまり何か聞きたいなら、あんたから話せ。そうだな・・・例えばあの(・・)呪霊についてだ。」

 

彼女の表情に緊張が見えたのが黎人には分かった。それでも黎人は質問を止めない。何故ならそれが大事なことだったからだ。

 

 

黎人にとってもつばめ自身にとっても。

 

 

彼女に憑いている呪霊は、もはや見過ごして良いものではないのだから。

 

 

 

「いつから憑かれてる。」

 

 

「・・・。」

 

 

「何で憑かれた。」

 

「・・・・。」

 

 

 

 

黎人は言葉を選びながら、けれど言葉を濁すことなく聞き出そうとする。彼女の顔は既に真っ白だ。だから黎人は、1つの質問に切り替えた。

 

 

 

 

 

 

 

彼女(・・)は、何者だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの人は・・・」

 

つばめが口を開く。

 

 

「・・・南雲、南雲玲奈さん。私が産まれた頃から面倒を見てくれていた、大切な家政婦(家族)です・・・」

 

 

 

 

 



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子安つばめは過去を明かす


設定

①東京都立呪術高等専門学校・静岡分校
2年生3人、3年生2人

②呪術名家

御三家を除く強力な呪術師の家系。
呪言の狗巻家をはじめ、蟲毒の蟻ケ谷家、塵滅術の南雲家などが主な例。







 

 

「・・・私が4歳の頃、両親と兄が海外に行く用事が出来て私は日本に残ってたの。その時、玲奈さんは私の親代わりになってくれたの。」

 

つばめは、その玲奈という女性をすごく慕っていた。当時大学生だった玲奈は学業と私生活の合間に、毎日1日も欠かさずつばめの元に会いに来て面倒を見てくれたのだ。元々母子家庭だった玲奈は基本的に家でひとりぼっちだったため1人でいる怖さや寂しさを誰よりも分かっていた。明るくて、とても優しい女性だった。

 

『つばめ様、私がいますからね!』

 

『う、うん!』

 

両親が帰ってきてからも関係は続いた。彼女が6歳になる頃には、もう家族の一員のようになっていたのだ。

 

 

 

つばめは彼女が読み聞かせてくれる本が好きだった。特に彼女のお気に入りは結婚式に関する絵本。白いウエディングドレスを着た花嫁が母親とバージンロードを歩く姿は、当時のつばめには美しく見えた。

 

『ねぇ、れいなさーん。』

 

『なぁに?』

 

『どんなひとが、はなよめさんとあるけるの?』

 

『そーねぇ、例えば花嫁さんが1番ありがとうって言いたい人じゃないかしら?』

 

 

 

 

 

 

『じゃあ〜!わたしがはなよめさんになったら、れいなさんがいっしょにあるいて!!おねがーい!!!』

 

『あらあら、いいですよ。指切りしましょうか!』

 

 

『『ゆびきーりげんまん、ウソついたらはりせんぼんのーます、ゆーびきった!!』』

 

 

 

 

 

その次の日、つばめは小学校の入学式に玲奈や両親と共に向かっていた。校門の前、赤いランドセルを背負ったつばめは玲奈と手を繋いでいた。

 

その日、玲奈はつばめにあるものを渡した。

 

 

『はいこれ、入学のお祝いよ!』

 

それは鳥の形をした、小さなキーホルダーだった。

 

『これはね〜私がつばめ様くらいの時に、お母さんからもらったものなの。大事にしてね?』

 

『うん!ありがとう!!』

 

それをランドセルに付けてもらい、喜んでいると信号の反対側から友達が手を振っていた。

 

 

つばめは、早くこのキーホルダーを見せてあげたいという思いでいっぱいだった。周りを見ずに走り出し、歩道を渡り切ろうとしてたその時。

 

 

 

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

誰かに背中を強く押され・・・

 

 

 

キィィィィィィィ!!!!

 

グシャ!!

 

 

アスファルトがタイヤを削る音の後に、何かが砕ける音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃぁぁぁぁ!!!?」

 

「おい、誰か救急車!!!」

 

「バカ、よく見ろ!!助からねぇよ!!!」

 

 

 

 

「体が、千切れてんだぞ!!!」

 

 

 

 

 

「・・・え?」

 

振り返ると、そこには玲奈だった(・・・)肉塊が転がっていた。

 

上半身と下半身の間が千切れ、頭の上半分が潰れている。

 

「玲奈、さん?」

 

顔を青くして駆け寄ってくる親の姿も、慌てふためく人たちも見えなかった。ただ心から慕っていた人の残骸を、見つめていた。

 

 

 

『つ、ばめ様ぁ"・・・』

 

 

すると、肉や血の塊の中から声が聞こえた。次第に声は大きく禍々しくなり、とうとう子供ほどの大きさの異形が卵の殻を破るように、肉塊から出てきた。

 

『私が・・・い"ますからねぇぇぇえ"!!』

 

 

 

こんなのは、玲奈さんじゃない。そう否定できたらまだ楽だったかもしれない。だが、幼いつばめはその口調に玲奈の面影を感じた。いや、感じてしまったのだ。

 

 

 

ゆびきーりげんまん、ウソついたらはりせんぼんのーます、ゆーびきった!!

 

 

遠い正気の奥で、昔交わした指切りが聞こえた。

 

 

 

△▲△▲△▲△▲

 

 

 

 

放課後、黎人はつばめと屋上の柵にもたれかかっていた。誰も来ないように鸞に見張らせている。黎人はポケットからタバコの箱を取り出した。

 

「ちょっ、タバコはだめだよ!?」

 

「俺国籍コロンビアなんで(嘘)。コロンビアは15歳から喫煙しても問題ないです。」

 

「でも、ここ日本だし学校だよ!?」

 

「バレなきゃ合法なんですよ、母がそう言ってました。・・・口止めに、一本吸います?」

 

「いや、いらない!!体に悪いでしょ!?」

 

「いや、さっき俺が手を生やしたでしょ?あれの原理で肺を毎日新しくしてるんで健康維持できます。」

 

つばめは口で断っていたが、結局一本手に取りそれを指で弄る。黎人はそれを横目で見ながら本題に入った。

 

 

「日本国内での怪死者・行方不明者は年平均10,000人を超える。そのほとんどが人の肉体から抜け出した負の感情“呪い”の被害だ。」

 

あの呪霊『南雲玲奈』について聞いた後、一旦授業を受けた後に屋上で会う約束をしていた。

 

「呪いに対抗できるのは、その身に呪力を宿す呪術師だけ。俺はその呪術師を育成する都立呪術高等専門学校静岡分校から派遣された。」

 

「・・・玲奈さんの事で?」

 

「いえ、俺が派遣されたのはこの学校にある呪物と呪具の捜索と回収の為だ。アンタと玲奈さんとは関係ない。」

 

簡単にここに来たあらましを伝えた後、彼女は口を開いた。

 

「そうなんだ・・・ねぇ、呪いを祓うって言ってたよね。てことは玲奈さんも、祓われるってこと?」

 

「可能性は捨てきれませんね。」

 

「・・・・そうなんだ。」

 

 

 

 

「私ね、好きな人がいたの。優しくて、とても明るい人。」

 

「・・・。」

 

「でも告白しようとした時、玲奈さんが彼を本棚の下敷きにしたの。その際で彼、まだ病院に居て、私と関わると碌なことがないって言われちゃったの。だからもう、誰にも傷ついてほしく無いから、誰も好きにならないようにしてきた。」

 

「・・・・へぇ。」

 

「・・・今思えば私、他人に玲奈さんを求めちゃってるんだと思う。だから、玲奈さんは・・・それはいけないんだって言いたくて、そういう人たちを私から遠ざけてるのかな・・・」

 

 

 

 

 

黎人はタバコに火をつけながら、遠い夕日を眺める。

 

「これはとある呪術師の言葉だけど、『愛ほど歪んだ呪いは無い』。」

 

その言葉に、つばめは唇を噛みながら涙を堪える。きっとその通りなのだろう。死んでも尚、自分の面影を他人に求める主人を、道を間違えないように周りの人間を遠ざける。それが誰のためになるのかは分からない。でも、そこには彼女なりの思いやりがあるのだろう。

 

「・・・その、呪術ってのを学んだら。玲奈さんの、呪いを解けるかな?自由にさせてあげるかな?」

 

こちらを見ないで呟くつばめに、黎人は紫煙を吐きながら、人として、呪術師としての言葉をかける。

 

「・・・・分かりません。ですが、子安つばめ先輩。貴女にかかった呪いは、使い方次第で人を殺すこともできるし、救うことだって出来る。」

 

 

 

 

「もしアンタが自分にかかった呪いを解いて、彼女を救いたいのなら、俺がアンタに呪術を教える。」







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家入黎人/白銀御行は相談される



5月20日、追記しました。


 

 

 

「・・・てことがあったんですよ。なので当分呪具・呪物探しはやめて彼女に憑いてる特級過呪怨霊の解呪に専念しますね。」

 

『マジか〜じゃあ回収任務は暇な時にやってね。普通の任務の数もできるだけ減らすから。それにしても、南雲家かぁ〜。』

 

「えぇ、俺も聞いた時は聞き違いかと思いましたよ。」

 

 

南雲家とは、呪言師の末裔である狗巻家の分家である。南雲家には2つの相伝術式があり、1つは呪言、もう1つは『滅塵術』と呼ばれる、吸った者から呪力や肉体を削り取る粉塵を操ることができる術式だ。

 

彼の小刀が崩れたのも、片腕を落とされたのもその術式によるものだ。

 

 

『じゃあ、この南雲玲奈と子安つばめの家系の調査をやっておくよ。伊地知ぃぃ!!!これ明日中に調べてといて!!じゃないとまじデコピンだから!!』

 

 

「自分で調べろクソ教師。」

 

『つーかさ〜つばめって子の調査いるの?君の()で見ても彼女自身には術式はあったけど特級過呪怨霊を生み出すほどの呪力はなかったんでしょ〜?』

 

「・・・まぁ、念には念をですよ。」

 

『・・・あっ、ひょっとして黎人。惚れちゃっーー(・・・・・)

 

「獄門彊に千年封印されるか真希さんに天逆鉾で刺されて死ね。」

 

ブツッ!!

 

黎人はすぐに電話を切った。五条悟はこの手の話に目がない。『若人は青春を謳歌せよ。』がモットーである彼は教え子達の恋愛事情にまでズブズブ入っていく。"自分の片想い"が10年以上続いている反動かもしれない。

 

ちなみに、この時の判断により、つばめを連れて呪術高専に行った時に地獄を見ることになるのを彼はまだ知らない。

 

▲△▲△▲△▲△

 

「恋愛相談、ですか。」

 

「はい!会長にも聞いてるんですけど、やっぱり別の人の視点も大事かなぁって!!」

 

数日後、黎人の姿は生徒会室にあった。彼を呼び止めている男子生徒、彼の名前は『田沼翼』黎人の1つ上の先輩である。

 

「別に良いですよ、俺中学までは結構告白とかされてたんで。」

 

「え!?厨二病の人でもモテるんだ・・・」

 

「・・・俺、厨二病じゃないんですけど。ていうか白銀会長って百戦錬磨だったのか。すごいですね。」

 

そんな会話を繰り広げている翼と黎人。そしてその横で白銀は焦っていた。

 

 

(俺も百戦錬磨呼ばれてるの初耳なんだが!?!)

 

白銀は焦りを感じていく。

 

白銀御行は生まれてから一度も交際経験も告白されたことすらない。だからこの相談だって不安要素しかない。なら、この相談を断ってしまえばいい、と頭の中でそう思うがそれはそれで変な噂が出るような気がする。しかし、受けたら受けたで一度も付き合ってないのバレてボロを出したらなんかしたら・・・

 

 

『会長、童貞だった』

 

『えー、童貞!?』

 

『まじ幻滅!』

 

 

と、こんなことになるかもしれない。

 

「・・・分かった。どうにかしてやる!!恋愛のことなら俺に任せろ!!俺は今まで一度も振られたことがないからな!!」

 

「流石会長ですね!」

 

 

尚、一度も告ったこともないので嘘ではない。そんな白銀に対し、扉から見守る一つの影があった。

 

 

(会長が恋愛相談?これは会長の恋愛観を知るチャンスなのでは?)

 

 

四宮かぐやであった。

かぐやにとって白銀の恋愛観を知る絶好の機会だ。見逃すわけにはいけないし、次この機会を逃したら次はいつになるか分からない。だからかぐやはかなり真剣な顔つきで三人の会話に聞き耳を立てた。

 

「そう言えば黎人。さっきお前、何回か告白されたとか言ってたがその時はどうだった?」

 

「どうだったとは?」

 

「いや、告白してきたのはどういう人だったんだ?一応相手方がどうアプローチしてきたとか今までどういう関係だったのかとかは大事だろ?」

 

白銀、まずは情報収集からスタート。告白された経験を持つという黎人からなら、今この危機を脱するヒントを得られるのではないかと思っての行動だ。

 

 

「・・・そうですね。たまに話す程度の奴もいましたけどしょっちゅう話しかけてくる奴もいました。」

 

「じゃあ、その中で交際に発展したことは?」

 

「1週間付き合って終わりですね。」

 

(ええええ!!?)

 

「えっ!?たった1週間だけ!!?何で何で!?」

 

翼の質問に、黎人はうんざりした顔で答える。

 

「いや、付き合う前に知れる事と付き合った後に知る事ってかなり差があるんだよ。顔はいいけど性格がクズとかしょっちゅうありましたね。記憶に残ってるのは、6股してた奴とかですね。振ったら泣き喚き始めて教師も親も出てきましたよ。」

 

「お、おう・・・」

 

(不味い・・・黎人は別のタイプで女慣れしてる奴だ。)

 

「別れる時とか大変ですよ?ヤッてもないのにあなたの子供を妊娠したって陽性の妊娠検査薬持ってくる奴とか、別れるなら一緒に死んでって教室で包丁取り出してきた奴とか。あ、実際刺されましたよ。刺し傷跡見ます?」

 

そう言って捲られた制服の下には思ったよりも大きい傷跡があった。白銀は何だこの男からヒントを得ようとしたんだろうと後悔した。だがここで後悔しても意味がない。完全に黎人に引いている翼に意識を移す。

 

「・・・それで相談とはどんな事だ?」

 

「僕と同じクラスに柏木さんという子がいて、その彼女に告白しようと思ってるんです。でも・・・余り話した事もないし、告白して断られた事を考えると怖くて。」

 

「成程な。因みに接点はあるのか?例えば、何か貰ったとか。或いは渡したとか。」

 

「あ、バレンタインにチョコを貰いました。」

 

「みなみにどんな?」

 

 

 

 

 

 

 

「チョコボール3粒です。」

 

 

えぇ・・・っと黎人は思った。完全に脈なし、いやそもそも告白しても振られる未来しか見えない。黎人の頭の中には翼が告白して盛大に振られ、卒業するまでずっとその事をネタにされるビジョンまで見えた。

 

 

「あーうん、それはもう間違いなく惚れてるな。」

 

は?っと黎人は思った。こんなバカでも分かる事案も分からないコイツは本当に生徒会長なのかと疑問が脳を埋め尽くした。

 

 

「いいか!女ってのは素直じゃない生き物なんだ。常に真逆の行動を取るものと考えろ。つまり!その一見義理に見えるチョコも!?」

 

 

「逆に本命!?」

 

(いやないだろ、その理論だったら今年のバレンタインに歌姫先生が五条にチロルチョコ郵便で送りつけたアレも本命扱いなの?・・・あれ?ひょっとして白銀会長って恋愛面に関しては五条と同じ?)

 

黎人の頭に最悪の想像が浮かび上がり、どこか胃がキリッとする感覚に駆られた。この後何故か会長が壁ダァンという技を翼に伝授し何故か四宮副会長をベタ褒めし出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲△▲△▲△▲△

 

その日の放課後

 

「・・・てことがあったんだけど、何で俺引かれたんだろう、分かる?石上。」

 

「いや100パーセント黎人さんのせいじゃないですか。普通恋愛相談でそんなこと言いませんよ。」

 

「え、女ってそんなもんじゃないの?最後に付き合った女なんかーー「はいソトォォプゥゥゥ!!!そっから先は嫌な予感しかしないのでアウトです!!!」

 

 

 

 



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子安つばめは呪術を学ぶ/虎杖悠仁は席を譲る

 

『今日、家来ない?』

 

それは思春期の少年少女達にとって、何か特別な雰囲気を強調するセリフの1つ。付き合ったばかりの彼氏彼女が相手の家でモジモジするのは、どんな恋愛漫画でも定番である。

 

 

「・・・え、今なんて?」

 

「明日、俺の家に来てくださいって言いました。」

 

 

 

(ひぃぇえぇぇえぇぇ!!?)

 

 

 

▲△▲△▲△▲△

 

『いや、やめて!!』

 

暗い部屋の中、足音を立てずに近寄る女の霊が、少女にじわりじわりと近寄って行く。そして、女の霊は裂けた口をニンマリとさせながら少女に襲いかかった。

 

にぃぃ!

 

『いやぁぁぁぁ!!!!』

 

 

 

 

 

 

「ひぃっ!!?ビリビリビリ!!!痛つつつ!?」

 

「あー惜しかったですね。でも映画後半の最初の方まで行けたのは良いと思いますよ。」

 

スクリーンの少女と同じタイミングで悲鳴を上げたつばめは、握っていたぶさかわいいナマズの人形から出た電流で痺れていた。彼女が何をしているかというと、話は朝に戻る・・・

 

 

 

朝10時

 

今日は土曜日なので学校はない。子安つばめは黎人に指定された公園に向かっていた。

 

『明日俺の自宅で呪術の訓練しますので、この公園で待っていてください。迎えにいくんで。』

 

 

頭の中で黎人の言葉を反芻するつばめ、何度も考えるうちに彼女の脳はある可能性に辿り着いた。

 

(これってまさか、お家デート!!?)

 

そう、子安つばめは同級生にも後輩にもかなりモテる。だが当の本人は恋愛面に関しては全くの初心者であった!最近同級生から聞いた恋愛系統の話に、『最近のカップルってお家デートも主流らしいよ!』と出ていたことがさらにその可能性の信憑性を増長した!!

 

(落ち着いて私、これはあくまで呪術の訓練よ。ただ黎人君と公園で待ち合わせして、そして彼の家にお邪魔するだけ・・・・・)

 

 

 

 

 

「ねぇ、あの人イケメンじゃない?」

 

「外国人かな・・・」

 

「ねぇ声かけてみない?」

 

 

 

「・・・ん?んんん?」

 

ヒソヒソ声で喋る女性達の視線の先を見る。

 

「・・・あ、先輩。」

 

「んんんんん!!?」

 

そこには黎人の姿があった。いや、声をかけられるまで気づけなかった。何故なら今の彼は顔に包帯を巻いていなかった。普段の学校生活でいつも巻いているから、外したら彼だと気づけない。普段眼鏡かサングラスをかけている人がそれらを外したら誰なのか分からなくなる、『メガネギャップ現象』(五条悟命名)というものである!!

 

そして、何より驚いたのは彼の素顔。キリッとした鋭い目に、目の周りを縁取る白いまつ毛。そして、まるで宝石のように青白く光り輝く瞳が、周りの注目を浴びていた。

 

 

つばめは数秒、その芸術品のような黎人の左目に硬直した。

 

「・・・・・。」

 

「先輩?どうしました?」

 

グィ。

 

(えっ、ちょっと待って距離感おかしいよ!!?近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い!!!?)

 

少し動くだけでキッスをしてしまいそうなくらい、黎人の顔が接近してきた。整った顔とその美しい眼、そして色気を帯びた優しい声によるトリプルパンチでつばめは耳の先端まで赤く染まった。

 

「・・・あ、すみません。自分よく言われるんですよ距離感がおかしいって。」

 

「え!あ、うん、大丈夫、大丈夫だから。」

 

(ひぇぇぇ!!危うくキッスされちゃうかと思っちゃった・・・)

 

 

 

 

 

数分後、黎人はバイクにつばめを乗せて家に向かった。

 

彼が今住んでいるのはとある街中の一軒家。普段は高専内にある寮で生活しているのだがわざわざ高専から通うのは正直言って時間の無駄。なので近場の一軒家を買ったのだ。特級術師の給料様様である。

 

 

自宅に着いて、家の中に入って来ていた上着をハンガーにかける。つばめは何か落ち着かないように周りをキョロキョロと見ていた。黎人は地下室への扉を開けながら着いてくるよう促す。

 

「こっちです。」

 

「え、あ、うん!!」

 

地下室はシアタールームだった。小さな映画館ほどのサイズだが、音響設備は大型映画館と同じだ。

 

「南雲玲奈クラスの呪霊は、呪術規定では『特級過呪怨霊』に分類されるんです。呪術には四から一、そしてさらにその上の特級という階級に分類される。彼女を祓える可能性があるのは、俺を含めた日本にたった4人しかいない特級術師だけでしょうね。」

 

「え、たった4人?」

 

「まぁ、呪いが見える人自体少ないですからね。それでも、正直しんどいと思いますよ?だからそれよりももっと楽な"解呪"を目標にします。」

 

「かいじゅ。」

 

「そ、何千何万もの呪力の結び目を解いていく。それが出来るのは呪われている貴女だけ。」

 

「なので、まずは呪力のコントロールから始めましょう。」

 

「呪力・・・確か負の感情でできるエネルギーだったよね。」

 

「exactly、呪術師っていうのは感情の火種から生まれる呪力を捻出する訓練から始まるんです。訓練方法は様々ですが、つばめ先輩にはかなりしんどいのをやって貰います。」

 

「し、しんどい?」

 

「コレです。」

 

そう言って黎人が取り出したのは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コイツと一緒に映画鑑賞です。」

 

様々な映画のBlu-rayとナマズの人形だった。

 

「映画・・・鑑賞?」

 

 

 

 

「映画を観ながら一定の呪力を流すんです。どんなビビった時でも胸糞悪い時でもね。ちなみに呪力がブレるとコイツが放電します。」

 

「え?この人形ちゃんが?」

 

「呪術高専の学長お手製の呪骸、『デンチくん』です。」

 

「じゅがい、でんちくん。うん、分かったやってみる!!」

 

「じゃあどれから観ます?ハリウッドの名作シリーズから日本のクソッタレ失敗漫画実写化映画B級サメ映画に地雷のフランス映画。色々です。」

 

「うーん、じゃあ実写映画から見よっかな!!」

 

「それならこれがいいと思います、製作費に10億かけたのにストーリーもゴミクズで俳優の演技もクソでオワコンになったんですよ。」

 

「うわー結構悪口言うね。」

 

 

▲△▲△▲△▲△

 

 

番外編、『虎杖悠仁は席を譲る』

 

これは黎人がまだ生徒会のメンバー達と関わりを持つ前の話。虎杖悠仁は『TEITO CINEMA』と書かれた映画館に来ていた。

 

「よし、着いた着いた!!えーと、上映までまだ時間あるしポップコーンとコーラでも買うか。あ、新しい映画のポスター置いてんじゃん!」

 

何故彼がここにいるかと言うと・・・

 

『あ、悠ちゃん!このチケットあげる〜金ちゃんがいっぱい貰ってね、だからお裾分けしようかなーって!後それからこの映画、男女2人で観に行くとその2人は結ばれるってジンクスがあるんだってー面白くない!?じゃねー。』

 

と、呪術高専4年『星綺羅羅』から貰った招待券を手に彼は映画を、1人で観に来ていたのだ。実は何人か誘ったのだが・・・

 

伏黒恵の場合

 

『悪い、俺その日任務あるから無理だ。』

 

釘崎野薔薇の場合

 

『噂とかジンクスと知らないけど、お前みたいなゴリラと恋愛映画見に行くなんて死んでもごめんだわ。京都のゴリラでも誘えば?』

 

吉野順平の場合

 

『あ、その映画なら僕昨日観たよ。面白かったな〜。』

 

 

というわけで1人で来たのだ。3年の先輩達は任務で不在、教師である五条悟は倫理的にアウトである。

 

 

 

 

映画開始前の、予告編が流れ始めた頃。四宮かぐやと白銀御行の顔はどんよりとしていた。理由は簡単、座席の場所がズレたのだ。白銀が座ったのは『G-12』彼は四宮にわかるように色々とヒントを出したのだが彼女が座ったのは『H-13』国民的マスコットであるペンタンと、化学物質であるペンタンを間違えたのだ。(ちなみにペンタンとは炭素数5個のアルカンの総称である。)

 

「四宮・・・ポップコーン食べるか?」

 

「あっはい。ありがとうございます。」

 

(・・・どうしてこうなったんだろう。)

 

まるで葬式のような顔の四宮の前、白銀の隣にある人物が座った。

 

「あ、隣失礼します。」

 

「えっ、あ、どうぞ。」

 

ピンク色の髪の根明そうな少年が、ポップコーンとコーラと数枚の映画のポスターを載せたトレーを持って現れた。そして白銀の隣、元々四宮が座るつもりだった場所に座った。

 

「・・・会長、ポップコーンありがとうございます。」

 

「だ、大丈夫だ四宮。別に、問題ない。」

 

 

 

「えーこの映画、ヒロイン変わるんだ。まぁ監督と色々あったらしいからな〜。」

 

と、呟きながらポップコーンを食べる少年。そんな彼をかぐやは怨みがましい視線で見つめていた。

 

(・・・この平民め。本当だったら、私がそこに座るはずだったのよ?あぁ、その席に座るためにこの私がどれだけ思考を巡らせ努力したと思っているのかしら。たった1人でこの映画を観に来たくせに、何て図々しーーっ)

 

「なぁ、あんたら。ひょっとして2人で観に来たのか?」

 

((ギクッ!!))

 

「いや、まぁな。それにしても、よく気付いたな、君。」

 

「いや他人だったら席挟んでポップコーン渡したりしないだろ・・・あ、ひょっとして席間違えたのか?あんたら。」

 

「うっ、それはーー「じゃあ俺、席変わるわ。えっと、四宮さんだったっけ。こっち座っていいよ。俺そっち座るから。」

 

 

((えええええーーー!!!?))

 

幸運の女神は2人に微笑んだ、この少年の姿をした恋のキューピットを通じて。

 

「い、良いのか?見ず知らずの相手のためにわざわざ・・・」

 

「いや良いって、せっかく恋愛映画を2人で観に来たのに離れ離れで見るなんて嫌だろ?」

 

「・・・ありがとう。それじゃあ、四宮。こっちに来るか?」

 

「は、はい。」

 

(ごめんなさい、私は心の中で貴方のことを蔑んだいたというのに、見ず知らずの相手に席を譲ってくれる優しさを向けてくれるなんて・・・)

 

 

この日かぐやは産まれて初めて、見返りを求めない優しさ(・・・・・・・・・・・)というものを知った。

 



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家入黎人は本気を出さない


入院前に書き進めてた作品です。変な点が有ればコメントでご指摘おねがいします。


街灯に照らされる夜の街中

 

つばめが帰宅した後、黎人はゲオに行って新しい映画を借りて来た。

少し涼しい夜風が肌を撫でる。確か16歳の誕生日の夜もこんな風に涼しい夜だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ここで彼の出自について、疑問に思った人たちがいるだろう。

 

実際に作者はコメント欄で質問を受けていた。彼の両親が今も生きていたら31歳。となると、黎人が産まれたのは計算すると両親が15歳の時ということになってしまう。御三家ならあり得るかも・・・しれないが、倫理的にやばいと思う人も多いだろう。

 

 

 

 

実は、彼の母『五条梅』は黎人を出産していない。というか妊娠すらしていない。疑問を通り越して矛盾を感じるだろう。実は、そこにはある特級呪具が関係しているのだ。

 

特級呪具『伊邪那美之胎』

 

 

この呪具は、言うなれば人工子宮、和式ホムンクルス製造機である。母親と父親、双方の血を入れ、適切な量の呪力を三日三晩流し続けることで胎動が始まる。そして12ヶ月経つと胎児が誕生するのだ。

 

 

御三家最大の汚点『加茂憲倫』によって作り出されたこの呪具は、禪院家が所持していた。それを許嫁同士だった黎人の両親に使わせた。

 

 

 

 

これが彼の出自の大まかな説明である。本当はもっと長いのだが、今明かせられるのはここまで。では話を戻そう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「・・・次はこのホラーでも観せるか。あ、小銭今どれくらい持ってたっけ。」

 

そう呟きながら黎人は財布を開いて小銭を数える。そして、曲がり角を曲がり・・・・

 

 

パシッ!

 

 

飛んできた槍を財布で挟んで止めた。

 

「あ?何で財布なんかで止めれんだよ!?」

 

「落ち着けよ、どうせ術式だ。家入黎人だな?」

 

目の前から歩いてくる2人組は、明らかに戦闘慣れした歩き方で黎人に近づいてきた。

1人は背中に大量の投げ槍を担いだ茶髪の男。

もう1人の中国人は、鎖鎌を振り回しながら近づいてくる。

 

間違いなく、奴らは呪詛師だ。

 

「・・・そうだが?」

 

「じゃあ話が早い、簡潔に言おう。秀知院から手をひけ。」

 

(秀知院から、手をひけ?)

 

自分が呪物回収のために潜入している呪術的には平和そのものな学園、そんなところに何故・・・

 

(・・・茶髪のやつはともかく、この中国系の奴はかなり面倒臭そうだ。)

 

「断る、と言ったら?」

 

「殺す。」

 

財布で掴んだ槍を投げ捨てながら黎人は片目を覆う包帯に手を伸ばし、目の前の呪咀師たちを見やる。後ろから3人、前からは2人を含めて6人。呪力の流れと、相手の術式を看破しながら包帯を解く。

 

「あいにく君らに構うほど暇じゃないんだ、断る。」

 

「じゃあ、死ね!」

 

得物を構え、走り出した呪詛師。

 

黎人は包帯に隠された、青い瞳(・・・)を露わにする。

 

現代日本、"呪術界のNo.4"が呪詛師達に立ちはだかった。

 

「"死ね"ね・・・覚えとけ、人ってのは、ちょっと力入れると死ぬよ。」

 

 

数分後

 

通りは死屍累々となっていた。まぁ、死人はいないのだが。最初に襲いかかって来た茶髪の呪詛師を踏みつけながら黎人は包帯を巻き直す。出来るだけ早めに終わらせたかったのだが、流石に早め過ぎた。

 

(・・・あの中国系のやつは逃げたか、まぁそれ以外の奴らは捕まえたから伊地知さんを待つか・・・)

 

さらに数分後

 

「今到着しました!!家入くん・・・何をしているんですか?」

 

黎人は捕まって氷漬け(・・・)になった呪詛師達は、箱のような形に積み重ねられていた。

 

「え、見て分からない?デッドマンズチェスト(死者の宝箱)だけど。」

 

昼間につばめと見た海賊映画に影響されて、あまり見たく無いオブジェを作っていた。

 

▲△▲△▲△▲△

 

月曜日

 

秀知院の校舎の屋上は黎人とつばめの密会の場になっていた。別にやましい意味は無い。ただ至って健全な、呪術講習をしているだけである。

 

「問題。呪術の極地、領域展開は"必中"と"必殺"を兼ね備えた術師のフィールド。自身の心の中"生得領域"を大量の呪力を消費することによって現実に構築する。・・・それによって」

 

「しばらく術式が使えなくなるけど、それに見合う強力な攻撃を与えられる。」

 

「正解です。」

 

「やった!」

 

そんな感じの講習をしていると、階段を登る音が聞こえて来た。恐らく2人分、体格や歩幅から考えるに低身長な女子2人。

 

「先輩、少し待っててください。」

 

「え?いいけど・・・」

 

念のためにつばめを残し、彼は階段の扉を開いて閉じる。しばらくすると、目当ての女子2人が現れた。

 

「ゼェ・・・やっぱりここに居た!」

 

「ミコちゃん、ゼェ・・・落ち着いて。昨日考えた対策マニュアル通りに・・・」

 

階段を駆け上がって来たのか、息を荒くした少女2人がそこに居た。

 

「お久しぶりだね、伊井野に大仏。」

 



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伊井野ミコは疑う/■■■は焦がれる

き、きつい・・・・・


誤入力多い・・・・・


明日、尿の管とるって(死に目)


『伊井野ミコ』

父親は高等裁判所裁判官、母親は国際人道支援団体職員。

入学時から学年1位をキープする秀才であり、風紀委員に所属する精励恪勤、品行方正を地でゆく優等生である。

 

※ちなみに、黎人とはかなりギスギスした関係である。作者曰くオリミコにはならないとのこと、ミコおしの方々申し訳ありません。

 

「・・・家入黎人。」

 

「やぁ、久しぶり。」

 

「久しぶりでもないでしょ、この校則違反者。」

 

彼を見上げる伊井野の目は、嫌なものでも見るかのようにキリッと睨みつけられている。

何故ここまで嫌われているのか、それは黎人の転校初日に遡る。

 

△▲△▲△▲△▲

 

 

「ちょっと、そこの貴方。」

 

「ん、・・・・何か?」

 

ある日の朝、伊井野はとある人物を呼び止めていた。

 

顔の左側に巻かれた包帯が目を引く。だが怪我をしている様子はない。たぶんだが、厨二病(・・・)だろうか・・・この学校、秀知院でも不良はいるにはいる。だが彼のようなパターンは前例がないのだ。ちなみに彼の手には、余裕で炭酸水のボトルが握られていた。

 

「すみませんが、飲み歩きは校則違反です。その炭酸水と包帯は没収でーー」

 

「知るかボケ。」

 

そう言いながら彼は懐から何か取り出し、口に咥え先端に火をつけた。

 

 

スゥーーーー・・・

 

彼、黎人はタバコを吸い・・・

 

フゥーーーー・・・

 

一服し、紫煙を焚いた。

 

「ーーーな、なっ!何やってるんですかぁぁぁ!!!」

 

▲△▲△▲△▲△

 

「あのタバコは見かけだけの偽物、それに万が一本物でも本籍地がコロンビアなんで合法。」

 

「でもここは日本です!!ここは秀知院、貴方の行動は校則違反です!!」

 

「・・・・へぇ。」

 

「『・・・・へぇ。』じゃないですよ!!とにかく貴方を生徒指導室にーーー!!」

 

そう言いながら伊井野は彼を引っ張ろうとする。だがどうこうしても伊井野の少ない筋力では彼の体重を引っ張る事はできない。

 

「ぐぐぐぐ・・・・・」

 

「は、頑張れ頑張れ。」

 

かつて自分を殺しかけた()()と同じ言葉を彼女に放ちながら、その表情に薄笑いを浮かべる。3分ほどたち、途中で『大仏こばち』が致し方なく参加したが2ミリしか動かせず伊井野はムキーという擬音が合いそうな表情をみせた。

 

「ゼェ、ゼェ・・・何でうごかせないのよ。」

 

「純粋に筋力の無さでは?」

 

「むきぃーーーー!!!」

 

「ミコちゃん落ち着いて、猿みたいだよ。」

 

黎人は別に引っ張られても力まない、ただ術式の応用(・・・・・)なのだ。

 

「じゃあ、もう行く。」

 

「あっちょと!!話はまだ終わって・・・」

 

 

ガチャ!

 

「あれ、何でミコちゃんいるの?」

 

「つばめ先輩!!?」

 

伊井野は屋上に続く階段の扉から、つばめが出てきたのに驚いていた。伊井野ミコは風紀委員として不純異性交遊を取り締まっている。だが実際の所、彼女は誰よりも"そのこと"に敏感なのだ。ぼっしゅーーとしたR18本などをこっそーーり持ち帰っているせいだろうか。

 

 

2人きり、屋上 ・・・

 

 

 

・・・・。

 

 

「ーーーせっ、く!!?」バタツ!!

 

 

 

伊井野ミコは勝手に妄想し出た考えを言い、そして倒れた。1番至近距離にいた黎人とこばちは目を合わせ、『ヤッたの?』『ヤッてない。』の手話で会話した。

 

ちなみにつばめだけが状況を理解していなかった。

 

「え?どユーラシア大陸?」

※どういう状況なの?っという意味。

 

 

(・・・・狗巻先輩?)

 

いきなりの理解不可能なことばに、黎人は、今ここにいない呪言師を連想した。

 

 

 

 

 

 

「ツナ?」

 

「ん?どうしましたっすか、狗巻術師」

 

「・・・・・ツナツナ。」

 

△▲△▲△▲△▲△▲

 

「・・・さすがに情報がでねえな、くそ。」

 

秀知院の屋上。1人の気の強そうな少女が寝転がっていた。

 

「まったく、どこにいるんだ・・・・・」

 

彼女は()()()()を隠す帽子を脱ぎながら、1人の()()()の名をつぶやいた。

 

 

「伏黒のやつ。」

 

 



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家入黎人はもうしてる

 

生徒会室にて

 

 

 

「あ'あ"〜〜!・・・吸いたい。」

 

「す、吸いたい!?吸うって、まさかーー」

 

「2秒チャージ。」

 

「え、あ、うん。」

 

家入黎人は、生徒会室にてダラリとしていた。

 

元々の任務、つばめの呪術訓練、そして五条に押しつけられる数多の任務。これらが原因で彼は机の上で溶けていたのだ。

 

高専ではタバコが吸えるのだが、秀知院ではそうはいかないだろう。

※(本当はダメなのだが。)

 

「そういやさっき、顔真っ赤にして走ってた四宮先輩を見ましたけど。」

 

「き、気のせいじゃないか?」

 

「・・・・ん?何ですかこの本。」

 

会長の机の上に置いてあった本を手に取り、数枚めくる。『恋☆バイブル』と毒々しいほど鮮やかなフォントと特徴の無い女の子が表紙のその雑誌を数秒見たのち、机の上に投げた。

 

「・・・・・34%が高校生までに経験済みであるねぇ、くだらな。」

 

「・・・参考に聞いておくが、家入はそういう経験が?」

 

「5回ってとこですね。」

 

中学生の頃、同級生4人と担任1人と一回だけ関係を持った。これによって内申点を満点で合格したのは秘密だ。

 

「なっ!!?」

 

(嘘だろォォォォ!!!!???)

 

「へぇ〜その反応、会長まだDTですか。」

 

疑問が確証に変わった。

 

前回の恋愛相談の時にやたら焦っていた白銀。黎人は人の目を見れば考えていることの8割は分かると石上に教わっていた。それがまさかこの場で活かせるとは思わなかった。

 

「いや、ちがっ、決してそうではーー」

 

「へぇ・・・・ちょっとトイレ行ってきます。」

 

「まっ、待ってくれぇぇぇ!!!」

 

「後それから、ヤリまくってる男より純潔守ってる男の方が女子受けいいですよーーー四宮先輩しかり。」

 

「は、え!?」

 

パタンッ

 

白銀は、少なからず後輩に励まされた気がした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

じゅじゅさんぽ!!

 

順平「虎杖くんそれ自炊?」

 

吉野順平の弁当、惣菜パン

 

悠二「いや、なんか脹相が作ってた。買い弁するからいいよって言ったら駄々こね出して・・・」

 

虎杖悠仁の弁当、●リキュアキャラ弁

 

順平・野薔薇「「あ〜(察し)」」

 

〜回想〜

 

脹相「お願いだぁぁぁぁぁぁゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅじぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

悠二「やめろ!!引っ付くな!!!ちょっと壊相兄さぁぁん!!!!」

 

〜回想終了〜

 

野薔薇「とんでもない光景連想させんじゃないわよ。」

 

釘崎野薔薇の弁当、卵焼きにウィンナーなど普通の弁当箱

 

悠二「ごめーん・・・あれ、伏黒も自炊?なんかめっちゃ多いけど。」

 

野薔薇「ほんとだ。何よアンタ、筋肉ゴリラになりたいって夢まだ諦めてなかったわけ?」

 

順平「やめた方がいいかもよ?五条先生が喚き散らしちゃうよ。」

 

獄門疆から出てきたばっかの頃、真希さんを見るや否や奇声をあげて教室から逃げ出したのだ。どうやら伏黒の父親にそっくりらしい。

 

 

 

 

 

恵「いや、なんか毎朝部屋の前に置いてある。」

 

伏黒恵の弁当、重箱に生姜焼きや肉団子などを詰めた豪華なやつ。

 

弁当箱には手紙がついていた。

 

拝啓、私の運命の人

 

最近任務が多く寝不足だろうと考えるので、元気が出そうなおかずを詰めさせていただきました。

お口に合うと嬉しいです。

弁当箱は共有スペースに置いといてください。

 

貴方の運命の人より

 

追伸、あなたの部屋に置かれていた洗濯物を勝手に整理させていただきました。パンツに穴が空いていたのでワンちゃんのワッペンを付けましたのでご了承ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

悠二「なん、だとーー」

 

順平「愛妻弁当・・・いや、ヤンデレ弁当?」

 

野薔薇「・・・お前、殺すぞ?」

 

恵「なんで・・・」

 

 

 



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家入黎人と日車寛見は調べたい

 

「まっ、まってくれ!!この件から手を引く!!金も払う!!!だから、命だけはーー」

 

ゴッ!!

 

「流石だな。さすがは特級呪術師。」

 

今、黎人の目の前には気絶した呪詛師が倒れていた。降参したふうに見せて背中から鉈を取り出したのは見え見えだった。

 

だから、"気圧"を急激に上げて倒れかけた寸前に、当て身を喰らわせた。

 

「そうですね。後は他の方々に任せましょう、日車さん。」

 

日車寛見

 

羂索の仕込みによって術師としての才が目覚めた一級術師。元々は弁護士を仕事にしていたが、術式が目覚めたことで死滅回遊に参加した。2018年11月以降は虎杖と伏黒、来栖華、高羽史彦という名の変態と共にコロニーから脱出。その後の羂索との戦いにも協力してくれた。

 

 

 

「で、今は秀知院学園に潜入していると?」

 

「えぇ。日車さんも虎杖から聞いていましたか?」

 

「妙な仕事が以前あってな・・・"石上優"と"大友京子"について知ってるか。」

 

石上優は大半の1年生に嫌われている。

 

原因は石上が中学時代に起こした事件にあった。周囲の生徒の会話から聞いた限りでは、石上が好意を寄せていた大友京子にストーカーした挙句、彼女が付き合っている男子に暴力を振るったらしい。実際、噂が出回った頃、石上は停学になっていた。

 

「知ってはいる・・・・が、あの事件は黒か白かハッキリしてはいない。それに俺は白だと思います。」

 

「ほう?興味深いな。」

 

日車が彼に缶コーヒーを投げつけ、それを受け取ってそれをじっと見つめる。石上が今ハマっているアニメキャラとのコラボらしい。プリントされたキャラがにこやかに笑っている。

 

「・・・ブラック好きなの言ってましたっけ?」

 

「家入さんに聞いた。五条悟にも差し入れしたが、角砂糖を10個以上入れていたな。」

 

「糖尿病になって死ぬんじゃ?」

 

あの男はそろそろ禁糖したほうがいいのでは?

 

「さあな、それより石上優が白の理由を聞いておきたい。実は、俺は大友京子の彼氏に相談を受けていた。相談の内容は、『友達がストーカーに付き纏われて、自分は殴られた。』だ。なのに彼は自分が悪い事と仮定して話していた。それにひと月に20回も相談してきた。」

 

「それで?」

 

「しばらくして相談して来なくなった。」

 

「・・・・まず俺はこの1ヶ月、石上と会ってわかったことがある。あいつは根暗で卑屈っぽい所がある、だが善人だ。あいつがストーカーなんかするとは思えないし、そんな度胸もないでしょう。」

 

「いや、今年から根暗になったのかもしれないぞ。事件を経て性格が変わったという話は珍しくない。」

 

「確かにそれも思いつきました・・・でも、たったそれだけであいつが生徒会に入れる訳ないでしょう。聞いた話によると彼が生徒会に入ったのは生徒会長の直々の推薦・・・つまり何かある。」

 

「・・・成る程な。だが君の推理はあくまでも推測だ。実際の法廷では事実が求められる。」

 

「今度、石上と一緒にゲーセンに行くことになっています。そのときに、貴方の術式で調べていただきたい。」

 

「・・・分かった。」



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生徒会は買い物に行く①

「わーーい!!生徒会みんなでお買い物だぁ〜!!」

 

(・・・どうしてこうなった。)

 

休日の某大型ショッピングモールにて、生徒会全員が集結していた。どうしてこうなったのかは2日前の放課後に遡る。

 

 

2日前

 

「交流会?野球かサッカーでもやればいいのでは?」

 

「あ、良いですね!!スポーツでお互いの距離間を縮めましょう!!!」

 

「いや、そういうやつじゃないんだ。」

 

(やばいィィ!!このままでは俺の運動音痴が四宮だけでなく向こうの学校にも知れ渡ってしまう!!もしそうなれば・・・)

 

『あら会長、運動音痴だったのですね・・・お可愛いこと。』

 

(ダメだぁぁぁぁぁぁ!!!絶対言われる・・・何としても止めなくては!!)

 

「えぇ〜」

 

「冗談ですよ。確かフランスにある姉妹校との交流会ですよね?ポロでもやりますか。」

 

ポロとは馬に乗って行う団体球技の一種。世界で最も古い歴史をもつ競技の一つである。ちなみにあの有名なポロシャツはポロの選手が着ていたシャツだ。覚えておこう。

 

「あれはイギリス発祥のスポーツだろう・・・」

 

「イギリスもフランスも同じものでは?ヨーロッパ欧州の国々だし。大差ないでしょう。」

 

「いいえ?イギリスとフランスは大きく違いが見られるものですよ。公用語や文化にはかなりの相違点が見られます。」

 

「俺は英語とフランス語だったら、英語を選びますけどね〜大体の映画は英語が基本じゃないですか。」

 

「・・・家入は何か恨みでもあるのか?」

 

「イギリス及びフランス軍に喧嘩売られました。まぁその後叩きのめしましたけど。」

 

「あはは!面白い冗談ですね〜あっ、何ならコスプレ大会なんてどうでしょう!!」

 

「「「「コスプレ?」」」」

 

「はい!!日本はコスプレ大国、なのでコスプレして迎え入れましょう!!!」

 

「流石に醜態晒すのは・・・」

 

「え〜そもそもコスプレって言っても最近じゃそこまでガチじゃないのも多いですよ?ナース服とか婦警さんのコスプレとかは普通に仕事で来ている物ですし〜」

 

「何故看護服や警察衣装と言わなかったのかは見逃すが、俺達なら学ランやブレザーでもコスプレになるだろ。」

 

「はぁーこれだから会長は〜そういうと思って助っ人も呼んどきましたよ!!!」

 

バンッと大きな音で扉を開ける藤原、そして入ってくる助っ人・・・黎人には見覚えのある人物だった。

 

「3年の子安つばめです!!おっ、黎人くんおひさ〜」

 

「どうも、つばめ先輩。」

 

「えっ!?家入くんつばめ先輩と知り合いなんですか!!?」

 

「うん!映画の趣味が偶然同じでね!!」

 

「えぇ、この人ホラー映画苦手なのにホラー映画好きって面白くないですか?」

 

事実である。つばめは黎人が勧めたホラー映画6本のうち6本を途中でリタイアしたのだ。ちなみに黎人は特級呪霊に睨まれるよりはマシ、と言って笑いながら観ている。

 

「も〜怖いから好きなんだよ。ジョーズは怖いけどキャビアはスキヤキみたいな。」

 

(キャビアはスキヤキ・・・キャビアはチョウザメの卵、スキヤキは好きととっていいかな。そしてジョーズは歴史に名を残すサメ映画。"サメ映画は怖いけどチョウザメのキャビアは好き"って理解で多分OK。)

 

「まぁ分かりますーーーなんだよ石上?」

 

「お前ぇ〜あの日誓い合った友情は嘘だったのかぁ〜?」

 

石上、完全に友人だと思っていた人物が実はリア充だったことに怨霊と化していた。

 

「はっ、ばか言うな。もし仮にそうだとしても、友情と恋情は別物だよ、優?」

 

「うわーーーお前ホストになったら直ぐに天下取れそうだな・・・」

 

「ふふっ、悪くはないな。」

 

 

 

白銀ら生徒会メンバーがコスプレに興じていた頃、黎人は頭の思考を巡らせていた。誰に衣装借りるか、実際彼の周りにはコスプレに近い格好をした人が多い。京都の加茂憲紀や庵歌姫、究極メカ丸、こっちじゃ虎杖の兄の壊相、パンダ、そして・・・

 

「・・・知り合いにセンターマンの格好してる芸人がいるんだけど、衣装借りたい人いる?」

 

「センターマンとは?」

 

「左半身はタイツ、右半身は全裸の変態的格好です。ちなみにその人は現時点で何度も警察のお世話になってます。」

 

「「「「却下!!!」」」」

 

というわけでコスプレ用の小道具とパーティー会場で必要となる物を買いに出かけることになった。

 

 

 

ーーーオマケーーー

 

「そういや家入、さっきの話は冗談なんだよな?」

 

「・・・冗談ですよ、半分。」

 

「いやそれでも気になるが!?」

 

 

 

 



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生徒会は買い物に行く②

 

時間は現在に戻る。

 

男子と女子で分れましょうと言った黎人だったが、かぐやからの冷たい殺意に一瞬だけだがビビり、白銀とかぐやチームとその他に分れることになった。因みにアドバイザーとしてつばめも同行することになった。

 

白銀&かぐや

 

「会長、飾り付けのリボンは・・・」

 

「あぁ多分、あっちの方じゃないか?」

 

(まさか四宮と2人きりだとは・・・家入の奴機転をきかせたのか?不味い緊張する・・・)

 

(家入くんが私と会長を2人きりにセッティングしてくれるとは、脅しが効いたんですかね・・・・会長と2人きり、これは良いチャンスだわ!)

 

 

 

 

 

 

その他

 

「それにしても何で会長とかぐやさんだけ飾りを買いに行かせたんですか?」

 

「後で刺されたくないんですよ。誰にとは言いませんけど・・・」

 

 

 

パーティーセットなどを置いているエリアで、石上&藤原ペア、黎人&子安ペアに分かれた。

 

「ネコミミ、イヌミミ、あっ!ミミズミミってあるよ!」

 

「ミミズ、ミミ?」

 

「あーでも可愛くないしなー」

 

「いや、ミミズミミってなんですか?」

 

何やら気になるようなワードが聞こえたのだが、つばめがささっと視界から消えたため慌てて追いかけた。追いつくと、つばめはカチューシャの試着をしていた。

 

「ねぇ、似合うかな!」

 

子安つばめ×ネコミミ

 

・・・・。

 

マリアージュ(奇跡的相性)!!!

 

打撃と呪力の衝突が0.0001秒の瞬間起こる空間の歪み並みのマリアージュ(奇跡的相性)!!黎人の脳内では黒閃を決められたときと同じ衝撃が発生した!!

 

(・・・ウッッッッッッッソだろオイ。)

 

「似合う、と思います。」

 

「え!そう?黎人くんも付けてみない?」

 

「・・・どうですかね。」

 

家入黎人×ネコミミ

 

・・・・。

 

マリアージュ(奇跡的相性)!!!

 

(はわわわわわわわっっ!!!?)

 

照れた黎人の顔とネコミミの破壊力に、つばめのたくらみは打ち破られた。その後、カチューシャや飾りなどを買った黎人らは一旦広場の噴水に集合していた。

 

「んじゃ、買い物も終わったんで適当にぶらぶらしましょう!!つばめさん一緒に行きませんか?」

 

「いいよ!スイパラ行こう!!」

 

「黎人さん一緒にゲーセン行きません?」

 

「いいけど、俺結構強いよ。」

 

ゲームセンター

 

『格闘企業戦士』という名前のアーケードゲームを2人プレイで楽しむ黎人と石上。

 

「ふはははっ!!どうですこのハメコンボ!!」

 

「うわぁ陰湿。」

 

「これはもう負けを認めーー「隙あり。」えっ!?ちょ、まっーー」

 

 

数十分後

 

黎人の姿はベンチの近くにあった。ベンチには項垂れる石上が座っている。

 

「ちくしょう、何で僕あんなクソゲーに1000円も使ったんだろう・・・」

 

「だから言っただろ。大体の格闘ゲームは操作方法が一緒だって。ほらコーラ飲め。」

 

黎人が開けたコーラ缶を持って、石上は一気飲みする。

 

「ちくしょ〜もう二度と格ゲーなんーーー何か眠くなってきた・・・」

 

ベンチに背をもたれ、意識が朦朧とした石上。すると背後からある言葉が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

領域展開・誅伏賜死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『非術師に領域展開?』

 

『えぇ、日車さんの術式ならバレることなく情報が手に入る。』

 

『無茶苦茶だな。呪術規定9条に引っかかるぞ?』

 

『・・・バレなきゃ犯罪にはなりません。』

 

最初から2人を尾行していた日車。黎人がこっそり睡眠薬を入れたコーラを石上に渡し、石上が眠ったところで領域を展開した。

 

 

 

「被告、石上優は、去年●月■日同級生の女子生徒にストーカーを行い、当時女子生徒と交際していた男子生徒に暴行を与えた疑いがある。」

 

 

 

領域が消え、日車の手には石上優の資料が握られていた。内容を把握できる日車は眉間に皺を寄せていた。

 

「・・・んで?」

 

「彼は、重度のお人好しだよ。虎杖みたいにな・・・」

 

 

 



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じゅじゅさんぽSpecial①

①、CoCo●

 

釘崎「CoCo●行きたい!」

 

伏黒「唐突だな。」

 

吉野「この近くにあったかな・・・1番近いところで高専から30分だよ?」

 

釘崎「知るか、おい虎杖。お前おぶれ、お前の足なら3分だろ。」

 

虎杖「釘崎は俺のことなんだと思ってんの?あと俺もカレー食いたいから食べていい?」

 

釘崎「50mを3秒で走るやつを人間と判定するのがおかしいだろ。あとそれからナンを奢れ。私が1番食べたいのはそれだ。」

 

虎杖・吉野・伏黒「「「じゃあコンビニでナン買ってこいよ。」」」

 

②、狗巻は見た!

 

あの日は鼻歌を歌いながら廊下を歩いていました。

 

狗巻「しゃけしゃけ五目〜いくら!昆布!!(あなたのアイドル〜サインはB!チュ!!)

 

誰もいない高専の寮内、自分以外は任務か外出で居ないはずの寮内でアイロンをかける音が聞こえている。

 

何だろう?そう思い、音が鳴る方に行ってみました。

 

 

 

俺は伏黒の部屋の前に止まりました。アイロンの音はまだ響いています。

 

恐る恐る、中を覗くと・・・

 

 

 

来栖「恵〜♪貴方の服は私が綺麗にして畳むから安心してね♡あとお弁当もお布団もお風呂もその他あれこれもぜーーーーんぶ私がやるから♡私貴女の未来のお嫁さんだからね〜♡♡♡♡♡♡」

 

 

 

狗巻「:(;゙゚'ω゚'):・・・」

 

③、さしすとその他と犬猫

 

五条「あ?うちペット禁止だからそんな選択肢ねーよ。」

 

夏油「うーん、犬?いや、猫かな?」

 

硝子「犬だな。」

 

歌姫「猫ね。」硝子「やっぱ猫にします。」

 

七海「犬ですね。」灰原「僕も犬です!!」

 

夜蛾「そうだな・・・やっぱりーー「ジーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」ーーパンダだな。」

 

④、女子会

 

最初

 

三輪「なんかワクワクしますね〜!」

 

真希「そーか?」

 

真依「あら〜?釘崎ちゃん何なのそのボロ雑巾見たいな寝巻きは?」

 

釘崎「あん?ユニ●ロの新作だわボケ。」

 

その後

 

西宮「オラオラ〜もっとツマミ持ってこーい!!」

 

三輪「グヘヘ、メカまりゅに落書きしちゃお〜」

 

真希「それ真依だぞ?」

 

真依「ムニャムニャ、おねぇーちゃーんムニャムニャ」

 

釘崎「オラ虎杖!私の前にひれ伏せぇい!!」

 

真希「それたわしだぞ?」

 

 

翌日

 

真希「お前らどうした。」

 

その他「「「「二日酔い・・・です。」」」」

 

⑤、大人の嫌いなもの

 

労働は〜〜〜?

 

七海「クソ。」

 

司法の腐敗は〜〜〜?

 

日車「クソ。」

 

老害は〜〜〜?

 

五条「クソ。」

 

海賊版は〜〜?

 

シャルル「Merde!!」

 

藤原は〜〜〜?

 

烏鷺「クソォ!!」

 

弱者は〜〜〜?

 

両面宿儺「クソ。」

 

 

 

 

 



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家入黎人は気張らせたい

石上優、去年複数の女性と交際していた同級生によって暴行犯に仕立て上げられ、当時の想い人を守るためにそのイメージを受け入れた。その同級生は退学、想い人は成績不振で別の高校に行ったが石上の悪いイメージは払拭されることはなかった。

 

お人好しもいたもんだな・・・

 

「ん?どうしたんです黎人さん。」

 

「いや、それより次の定期考査について話そう。お前次赤点だったら留年らしいな。」

 

「・・・いや、僕はそれでもいいと思ってーー」

 

「馬鹿かお前。」

 

「え?」

 

3()0()()()()()()()、これは命令だ。」

 

「・・・黎人も、冗談いうことあるだな〜?」

 

「いや、本気だ。」

 

「「・・・・。」」

 

「いや絶対無理ですよ!?無理無理無理です!!!」

 

確かに一般的に考えれば無理だ。

 

石上は赤点常習者としてブラックリストに載っている。

 

秀智院では平均点の半分を下回れば赤点と見做される。秀知院に救済処置はない。科目で赤点を二回取れば欠点と見做され、必修科目を落とせば即座に留年となる

 

つまり石上はギリギリのギリギリなのだ。

 

(まぁこの回答は予想済みだがな。)

 

すると黎人は席を立ち、ロッカーからあるものを取り出した。それはヘノヘノモヘジで書かれた石上そっくりのマネキンだ。

 

グシャ!!

 

真っ赤な花が咲いた、という比喩が正しいだろう。ヘノヘノモヘジで書かれた石上のマネキンの頭部を、黎人が鷲掴みにして握りつぶしたのだ。周囲に赤い液体が飛び散り、石上の顔にもかかる。

 

「ーーーーーえっ?ちちちち、血?」

 

「インクだよ・・・・もし30番以内に入らなかったらお前がこうだからな?」

 

「ひぇ、は、え、え?」

 

「『いいえ』なんて言う犬は要らない、言っていいのは『はい』と『ワン』だけだ。前者はいたとしても殺すし、逃げ出したら何処までも追いかけて殺す。」

 

「ーーーーーー」

 

「死ぬ気で気張れよ?」

 

▲▽▲▽▲▽

 

石上優は頑張った。

 

今までゲームに使っていた時間を勉強をする時間に変え、今まで眠っていた授業をクラス1番の態度で聞き、休憩時間や昼食の時間も勉強に費やした。

 

何故なら、もし30番以内に入らなかったら、それは彼の人生終了を意味する。

 

石上優は言った。

 

「こいつは戦争だ。」

 

石上優は言った。

 

「テストは難しい。今までの経験で分かる。だがやる気では負けない。」

 

石上優は言った。

 

「時は来たぁ、やるだけだ。」

 

 

そして定期考査・・・

 

 

そして結果・・・

 

1位、伊井野ミコ

 

 

 

49位、石上優

 

 

「まぁ、頑張ったと思うよ?今までほぼ最下位だったのにここまで登り詰めるなんて。どんな生き物も窮地に立たされると本気を出すってのは本当だよな。」

 

「れ、黎人ーーー」

 

「どうした、犬。」

 

「これ一体何のプレイですか?」

 

石上は公然の前で四つん這いになり、その背に黎人が座っていた。

 

「ここまで上がるのは予想外だったけど、30位に入らなかったからこれ10分な。返事は?」

 

「は、はい・・・」

 

 

 

「というか黎人はどうだったんだ?まさか僕より低かっーーー」

 

石上の目の前に差し出されたスマホ。その画面に目が止まった。

 

1位、家入黎人、白銀御行

2位、四宮かぐや

 

「久々に本気で勉強したけど結構チョロいね。あははは。」

 

「ーーーーーーーー」

 

「てな訳で、はいこれ。」

 

彼の目の前に大きな紙袋が差し出された。

 

「何すか、これ。」

 

「頑張ったお前へのご褒美。」

 

「え、これP●5じゃないですか?え、しかも、初回限定版のやつ!?嘘でしょ!!?」

 

とある守銭奴さんに大金叩いて手に入れたものだ。数十万が消えたが特級術師の給料を考えると痛くはない出費だ。

 

飴と鞭は使い分けなくてはな?

 

「裏ルートで売られてたから3つ買っといた。今度一緒に一狩りいこうぜ。」

 

「ワン!!(はいぃ!!)」

 

 

 

 

 

オマケ

 

黎人「あ、最後のスペルミスなかったら俺1位じゃん。」

 

御行「グフッ!」

 

 

黎人「あ、つばめさんこれあげます。」

 

つばめ「ん?何これーーーーえぇぇぇぇ!!!?」

 

黎人「石上にもあげたんで今度一緒にモンハンしましょう。」

 



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四宮かぐやは駒にしたい

 

東京某所、四宮邸。

 

「早坂〜!!急いで来て!!!」

 

「はいはい。何でしょう、かぐや様。」

 

「何でしょう、じゃないわ!今回の定期考査の結果見たでしょ!!?」

 

「あー、あの厨二病くんが一位とったやつですか。」

 

確かに四宮御付きの早坂もあの結果には驚かされた。成績一位を取ったのはまさかの厨二病との噂の転校生。秀知院に衝撃が走るのもわけないことだ。さらにかぐやにとっては転校生に上を取られたのだ。これを見過ごせるほどの善人の心を彼女は持っていない。

 

「私と会長が一位二位を争う場に颯爽と現れ一位の座を手に入れるなんて!!って、これじゃ私が会長に一位を取って欲しかったみたいじゃない!!」

 

「会長は一位ではなかったのですか?」

 

「家入くんは凡ミスのせいで一点下がったのよ。つまり実質的には彼が一位!!取り敢えず、調べて頂戴。」

 

「かしこまりました。」

 

 

 

2日後

 

「家入くん、できれば2人だけで話したいのですが宜しいですか?」

 

「ん?良いですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、話とは?俺はもう、浮ついた話ではないのは気付いてますよ。」

 

「話が早いわ。禪院家の黎人くん。」

 

「・・・どうやって調べた。呪術御三家に関わる情報は全て機密扱いだぞ。」

 

「どんな堅牢な城にも抜け穴はあるんですよ。使用人に情報通がいましてね。産まれたのは2003年8月の31日。2歳年下の妹と3歳年下の弟がいる。両親は既に他界して、今は母の友人を義母に持つ。ここまであっていますか?」

 

「最初のが間違ってる。親父はもう禪院家の人間じゃない、それに嫁いだのは親父の方だから五条の人間だ。」

 

とは言っても立場は変わらない。呪術に関する情報が非術師に漏れている。そこをゆすられては今後の呪術界の発展に影響する。

 

「この話を秘密にする代わり、条件がひとつ。いや、縛りを結びましょう。」

 

「縛りまで知ってんのか、俺がここに来たのは特級呪具と呪物の回収。これさえ協力してくれればなんでも言うことを聞くさ。」

 

「ふふっ、分かりました。ではこうしましょう。私のお願いというのは会長に告白させるのに協力してほしいんです。」

 

(は?秘密情報とか呪術界の特権とかではなく、そんなことで?まぁ良いか。あ、良いこと思いついた。)

 

「・・・せめて"一年限定"でお願いしますよ。上との都合上、秀知院にいれるの一年だけなんで。」

 

「分かったわ。"私は黎人くんの秘密をバラさない"その代わりに、"一年間、私と黎人くんはお互いに協力する"、これで良いわね?」

 

「あぁ、取引は成立です。」

 

 

 

再び四宮邸

 

「ーーーってなわけよ。」

 

「へぇ〜〜〜。ん?あれ、これ一年限定なんですよね。」

 

「ええ、そうよ?」

 

「じゃあもしかぐや様が一年以内に会長に告白出来なかったら、黎人くんはかぐや様が会長に恋してることを誰かに言えるってことですよね?」

 

「ーーーーーあぁぁぁぁぁぁ!!!??」



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五条悟は過去の過ちから逃れられない。①


前話のオマケ

かぐや「騙しましたねぇ!!?」

黎人「ははは、騙してませんよ。安心してください。四宮の影響力なんて家に湧くアリの巣と同じですから。」

かぐや「サイッテーー!!」

黎人「貴女に会長の情報幾つか教えようと思ったんだけどな〜」

かぐや「あなた最高の友達だわ!!」

黎人(チョロ、まぁいいや。これでオモチャが2人に増える。)

本日の勝敗、黎人の勝ち


特級呪術師・五条悟

 

天上天下唯我独尊、自他ともに認める最強。

 

後進育成のために教師というポストについていたが、今年度から東京都立呪術高等専門学校の学長に就任した。

 

今日は祝日、珍しく任務もないため自宅でのんびりしながらテレビの前でダラけていた。

 

ピンポ〜ン。ピンポ〜ン。

 

「ん?なんか宅配してたっけ。」

 

ドアを開けると、そこにはセーラー服を着た少女とパーカーを着た少年がいた。

 

「・・・君らだーー「はじめまして。()()()()?」

 

そう言った少女の悟に似た顔立ちの顔はまるで苦虫を噛み潰したような表情になっており、その長い白髪を風にたなびかせていた。

 

△▲△▲△▲

 

日下部は言った。

 

「腐ってんな。」

 

七海は言った。

 

「腐ってますね。」

 

2人の視線は五条と、ソファに座った少女と少年に向いていた。

 

少女の名は巳乃斗(みのと)、少年の名は(なぎさ)と言っており、五条の隠し子だと主張している。

 

「以前から尊敬に値しない人だとは思っていましたが、まさか学生時代に女の人を孕ませて、しかもほったらかしにできる人だとは思いませんでした。」

 

「ちょいちょいちょい!!?いや、ないから。子供なんてないから!?だって保健体育の成績は傑と一緒でオール5だったもん!!」

 

「保健体育関係ねぇだろ。つーか!このサラッサラの白髪、綺麗すぎる顔立ち、高身長、明らかにお前の血だろ!!」

 

「そうですね。この流れだと夏油さんも隠し子か落とし胤がいそうですね。」

 

「誰が高身長白髪の伝承者だ!!」

 

「お前だろ。」

 

「失礼ですが、貴女の母親は?」

 

「母親は学生時代に私を妊娠して、家を追い出されてそのまま風俗嬢になった。その後ヤクやらドラックやらにはまって、私も同じ道たどるのやだったから2年前に家出して父親探ししてた。そんで去年の初めに、この子と出会ってね。一緒に父親探しの旅に出た。」

 

「「「・・・」」」

 

「そしたら、昨日。あんたをカフェで見かけたの。美人な巫女さんを笑いながら揶揄ってたアンタをね。」

 

「おい五条、テメェ仕事行ってくるって言ってたよな?」

 

「まさかサボって歌姫先輩を揶揄っていたんですか?」

 

「「隠し子が見ている前で?」」

 

「・・・・・はい。」

 

「おい性根腐ってんなおい。」

 

「無限解いてください。殴れません。」

 

「ちょっと、待って、待ってください。」

 

五条悟は内心焦っていた。

 

封印された時も達観していたし、宿儺に首を斬られた時も余裕を保っていた最強が、何故こんなにも焦っているのか。

 

それは・・・

 

(せっかく歌姫との関係がマシになったのに、何でこのタイミングなの!!?)

 

庵歌姫との関係に直結しているからだ!!

 

庵歌姫

京都校の担任であり、東西の生徒教師からの人望も厚く、生徒らによる『1番家族になったら嬉しい人ランキング』で首位にランクイン。

 

だが、五条は歌姫にすっっっっごく嫌われていた。

 

『げ、五条・・・』

 

廊下ですれ違っただけで舌打ちをされ。

 

『何でテメェがいんだよ!!?』

 

呼ばれてもない飲み会に飛び入り参加しただけでキレられ。

 

『死ねぇ!!クズがぁぁ!!!』

 

風邪で寝込んだ歌姫の布団の中に入ったらキレられた。

 

そんな小学生レベルの関係だったのだが、去年のいざこざを経てやっと中学生レベルの関係になったのだ。もし、自分に隠し子がいることがバレたら。

 

『最低、もう話しかけないで。』

(ゴミを見るような目。)

 

(ダメだぁぁぁぁぁぁ絶対言われる!!!この子らは、絶対に歌姫にバレないようにしないと!!)

 

実は七海と日下部が来る前に、何人かの呪術師に相談に乗ってもらった。全然役に立たなかったが。

 

雨宮静流

死滅回遊で参加した元警察官。京都コロニーで110ポイントを集めた一級の呪術師だ。口は硬く信頼に厚い。

 

『・・・捨て子?』

 

「そーなんだよねーだからさ、この子ら引き取ってもらえない?」

 

『冗談やめてくださいな。2人とも旦那にそっくりそのままじゃないですか。自分で蒔いた種でしょう。自分で責任とってください。警察は民事不介入なんですよ。』

 

 

日車寛見

 

『明らかにお前の子供だな。』

 

「そんなー、先生どうにかしてくださいよ。親権は向こう側にあるんでしょ〜?」

 

『いや彼らはそもそも出生届が出されていないからな。こういう場合には血のつながりのある人物が親となる。こいつらの母親は受取拒否してる場合、こいつらの親権はお前だな。』

 

冥冥

 

『くくく、五条くん。過去の過ちはいつかやってくるものだよ?』

 

「冥さん、500億円あげるから歌姫にバレないようにしてくれない?」

 

『五条くん♡大好きだよ♡』

 

 

 

 

などと、このように全く参考にならなかった。

 

取り敢えず2人には帰ってもらい、考えがまとまってからどうするか決めよう。何なら養育費を払って終わりでもいいかもしれない。

 

目の前では巳乃斗の苦労談を七海と日下部が涙ながらに聞いていた。完全に空気と化した五条はじっとこちらを見ている汀の隣に座った。

 

(くっそぉぉ、どうにかしないとーー)

 

「・・・おとーさん。」

 

「ん、何?」

 

「おとーさん、僕ら捨てるの?」

 

(げ!この子感がいいな・・・いや、こういうのに慣れてるって感じだな・・・全く、そういうこと言うキャラじゃないのにな〜)

 

「汀、取り敢えず君らはこの家に住め。今後のことは僕に任せてよ。」

 

「・・・おとーさん良い人なの?お酒飲まない?叩かない?」

 

「うわっ、小学生に怪しまれてる。まぁ、大丈夫大丈夫!」

 

 

父親としての責務を全うする。

自分の初恋も叶える。

 

これを両方果たすってのは特級呪術師の腕の見せどころだね。

 

 

 

 

「大丈夫、僕最強だから。」

 

 

その頃天国にて、五条袈裟を着た胡散臭い前髪男が腹を抱えて笑っていた。尚、彼は後々同じ目にあうことになる。

 

 



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家入黎人は教えたい


短めです。

今回で主人公の術式が軽く紹介されます。これだけは言いますが、特級術師のNo.4というのは呪力燃費が悪いからです。乙骨ほど呪力があったらNo. 1になれます。


黎人は任務を終え、暗い夜道を歩いていた。

 

もはや一寸先が見えないほどに暗くなっているが月の光のおかげで前は見える。

 

(・・・秀知院高校校舎はあらかた調べた。まだ見つかんないんだよな特級呪具と呪物、中学の方は美夜が調べてくれてるし・・・)

 

思案に頭を抱えていると、目の前に人影が現れた。見覚えのある呪力と術式に、黎人は立ち止まる。

 

「・・・久しぶりだなーーー」

 

現れたのは、この間襲撃してきた中国人の呪詛師。手に持った槍を突き刺そうとしてきたため紙一重で避ける。

 

刺突、回避からの蹴り。

 

「遅ーーっ!」

 

怯んだように見せかけた相手が、黎人の体を槍で貫く。間一髪腕で防いだ黎人だったが既に相手の術式発動範囲だった。

 

(マオ)!!!」

 

相手の術式が走り、黎人は瞬時に体を守る。そして一旦距離をとり、式神を出そうとして・・・

 

(出せない?馬鹿な、破壊された感覚は無かった。)

 

男は槍を回しながら距離を詰める。

 

「俺の背の五芒星、それぞれの角が(ピンイン)(マオ)(ダン)(チュイ)()を表す。俺の術式はこの五芒星の特性に沿って強くなる。今お前を貫いたのは槍、この槍は攻撃した相手の術式を一定時間制限する。」

 

術式の開示。

 

「・・・成る程、道理で式神を呼び出せないのか。」

 

「お前の術式は恐らく式神だろ、つまり今のお前はステゴロしか選択ない。」

 

「へぇ?お前の雇い主も考えるようになったな。でもお前みたいな雇われ呪詛師は最後切り捨てられるってのがテンプレだ。こっちに転職してみないか?」

 

「・・・お前を殺せば、100億は俺のモノだ。ついでに言っとく。ドルの方だぜ?」

 

黎人は内心驚いていた。

 

(まさか海外にこれ程の実力者がいるとはな。去年以降、強力な術式持ちが現れ始めているってのは本当かもな。いや、五条悟誕生からの影響かもしれないな。)

 

仕方ない。使()()()

 

「来ないのか?ならこっちからーーー」

 

剣に持ち替えた男が距離を詰めーーーまるで壁に叩きつけられたかのように弾き飛んだ。空気が、()()()()()()()()変化したのだ。弾け飛んだ男は血を撒き散らしながら地面を転がる。

 

(何だーー術式!!?馬鹿な、コイツの術式はさっき封じた。もう一つの術式!?そんなのありえーー「・・・()()って知ってるか?深ければ深く成る程強くなっていく力、大体水深4000メートルで指の上に車が乗るくらいの重さらしい。地球上で最も深いマリアナ海溝はもっと大きな力がかかる。」

 

先程の拳は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。そして今度は手の中に術式を走らせ、男の周辺の水分を集めブラック状にして閉じ込めた。

 

「この力を、お前にぶつけたらどうなるかな?」

 

(ーーっ!!?完蛋了(しまった)!!)

 

「俺のもう一つの術式は・・・

 

()()()()()()()()()万象操術(コスモ・コントロール)』だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十死一生、満身創痍、虫の息になった男に近づく。

 

「さて、聞こうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰に言われて、ここに来た?」

 

これが呪術界のNo.4、家入黎人

 

五条悟曰く、『銀河の支配者』

 

 

 

 

 

 

オマケ、特級術師のランキング

 

強さ

 

五条>>>〜>>乙骨>九十九>黎人

 

体術

 

五条>>>九十九>>乙骨=黎人

 

術式

 

五条>>乙骨>>黎人>九十九

 

呪力量

 

乙骨>>>黎人>五条>九十九

 

 



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家入黎人/四宮かぐやは対話する





休日、黎人の姿は四宮邸にあった。

 

中庭で椅子に座るかぐやと後ろに控える早坂。そして目の前に座る黎人。ティーカップを手にしながら、かぐやから本題に入った。

 

「・・・で、話とは何ですか?」

 

「昨日お前の兄に雇われた呪詛師が俺を殺しに来た。」

 

あの後、例の呪詛師の口を割らせ、誰が雇い主かを聞き出すことに成功した。雇い主は四宮黄光、かぐやの兄にあたる・・・ハゲだ。

 

「あら・・・それは大変でしたね。」

 

「はっ、絶対に心から思ってないだろ。この恋煩悩ヒス女。」

 

「あらせっかく人が親切にしてあげたのに。この包帯ヤニカス男。」

 

「「 」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((コイツ、どうしてくれようか。))

 

重苦しい雰囲気の中、早坂が間に入った。

 

「家入様、今の発言は聞き逃せませんよ?」

 

(やっっっっっべぇぇぇぇぇ!!!!!生黎人生黎人生黎人生黎人生家入黎人だぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!)

 

意外!!

早坂愛、心の中では大絶叫しながらうちわを振り回しさながらアイドルオタクのような熱狂を叫んでいた。

この女、かつて家入黎人に間接的に命を救われ、さらに彼のことを調べる過程で彼の限界オタクとなっていた。

 

「早坂、その必要はないわ。」

 

「その通り、そして勘違いするなよ。俺にとっては街中で声かけられたレベルのハプニングだ。」

 

「・・・分かりました。」

(くっーーーーーーカッコよ。)

 

「連中にとってはどうやら俺は目の上のたんこぶらしい、もし仮にお前の派閥に特級術師が入れば相手にとっては大騒ぎだろうしな。ま、四宮なんか興味ねぇけど。」

 

「では、どうしますか?」

 

「簡単だ。これ以上俺の邪魔しないようにアイツらに灸をすえる。それと並行して、呪物の捜索。あともう一つ特級案件があるけどそれは自分で対処する。」

 

「成る程・・・ところで学校で私は貴方と噂になってるんですけど。」

 

事実、火のないところに煙は立たないと言うがその火をつけたバカな命知らずがいるらしい。もうそいつはバカをできないようにしたが、まだ火は燻っているらしい。

 

とりあえず、『俺は四宮家に一切興味がない』ことだけは確定だ。誰が好き好んでこんなドSポンポコリンのポンポコラー女と付き合わないといけないんだよ。

 

「安心しろまな板には興味ねぇーーーあっぶな。」

 

目にも止まらぬ手刀。

俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

ちなみに俺の趣味は『年上のお姉さん』だ。

 

「あら毒虫が。危ないところでしたね・・・で、私がなんてーー「会長貧乳派だってよ。」ーーしゃぁぁ!!」

 

珍しく雄叫びを上げるかぐや。

 

((こっわ・・・))

 

黎人と早坂はリアルな恐怖を抱いた。

 

「もう帰っていい?」

 

「早坂、玄関まで送って?」

 

「はい、かしこまりました。」

(タイミングあったら、サインと写真撮ってもらお。)

 

◾️◻️◾️◻️◾️◻️

 

四宮邸の玄関、サインを書きながら黎人は早坂に話しかける。

 

「お前何処かで会ったか?」

 

「ええ、去年渋谷で。まぁ私が一方的に見知っただけですよ。」

 

あ、死ぬなと思ったのは去年の秋。

かぐや様のお使いを頼まれた私は渋谷郊外の雑貨屋にいた。急に()()()()()が現れて、気づいたら後ろから怪物が迫っていた。

 

 

恐怖に足がすくんで、目をつぶった。

 

 

目を開けたら怪物ごと周辺の建物、車、そして怪物が彼方に見える青黒い光の玉に引き摺り込まれて

 

 

轟音と共に光が溢れ出した。

 

 

辺りを、更地に変えてしまった。

 

まばゆい光と共に貴方が降りてくるのが見えた。

 

あの日私は貴方に助けられた。

 

「お礼が言いたかったんですよ。あの日、私を助けていただきありがとうございました。」

 

「・・・そうか、一応聞いとくけど、それで惚れたとかだったら断るぞ。」

 

「私は貴方に"尊愛"を抱いてるんです。決して恋愛感情を持ってなどいませんよ。ま、いい友達になりそうですよね。私たち。」

 

「はっ、そうだな・・・写真撮る?」

 

「あ、何なら目隠し外してくださいお願いしますお金払うんで。」

 

(こわ・・・限界オタクってこういうのを言うのかな。)






ここでかぐや様登場キャラの扱い
友達枠、石上、早坂
オモチャ枠、白銀、かぐや、伊井野、藤原
■◾️枠、つばめ


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白銀御行は認めない





ある日のこと。

 

白銀御行は足りなくなっていたシャーペンの芯や消しゴムを買いに文房具店に向かっていた。

 

事件が発生したのはそんな時だった。

 

「・・・ん?圭ちゃーーーんっ!!?」

 

圭は中等部の生徒会である白銀の妹である。最近は反抗期でしょっちゅう喧嘩してばっかりだ。

 

その妹が、

 

 

 

 

その妹が、、

 

 

 

 

"異性"とデートしていたのだ!!

 

ニット帽を深く被り、右目に眼帯をつけ、トレーナーを着こなす、黎人ーーーに似た"少年"は圭の腰に手を回してベンチに座っていた。

 

「それでね?お兄ぃが全然私の服かわいいって言ってくれないの。いっつも『スカート短くない?』とか『肌見せすぎじゃない』とかしか言わないんだよ?」

 

「んふふ、圭は可愛いね。」

 

「ちょっ、可愛いとか言わないでよ・・・お兄ぃは私を真面目にしたいんだって。」

 

「へぇ?でも、半ば失敗かもね。」

 

"少年"は圭を抱きしめ、後ろから頰にキスをした。赤く火照る妹の顔に、遠くから見ていた白銀の脳は破壊された。

 

◻️◾️◻️◾️◻️◾️

 

「へぇーそんなことがあったんですかーーー」

 

翌日、白銀は青空を見ながら石上に相談していた。

 

仲の良い友達が妹と付き合っているかもしれない。その悩みを信頼できる後輩に打ち明けた。

 

「・・・石上?」

 

「ちょっと僕人間を辞めてきますよ会長ぉぉぉ!!」

 

「何ィィ石上やめろ!!そのトイレットペーパーで何をするダァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

白銀と石上は生徒会室に向かっていた。あの後人間を辞めようとした石上を止めるのに苦労したシロガネ・●ョースターは肝心の黎人が探してもいないことを石上に言って何とか落ち着かせた。

 

とは言っても白銀はずっと思い悩んでいた。

 

圭にキスした"少年"、あの"少年"は何処となく黎人に似ているが何処となく違うような気がした。確か黎人が包帯を巻いているのは左目、あの"少年"が眼帯をつけていたのは右目だった。

 

 

生徒会室に着くと何やらかぐやと藤原がドアから何かを覗いていていた。

 

「ん?何してるんだ?」

 

「あ!会長!?ちょっとこっち、こっちきてください!」

 

藤原に手を引かれ中を覗くと

 

「け、圭ちゃん!!?れ、黎人!!?」

 

ソファには圭と黎人似の"少年"がいた。黎人似の"少年"はベレー帽の中に髪をしまって圭を見つめていた。

 

「何であの2人が?」

 

「最初に会長に用があるんですって圭さんが来て、私たちが席を外して戻った時にはもう既に家入くんが・・・」

 

 

「ねぇ、千花姉ぇとかぐやさん来るかもしれないよ?」

 

「いいよ別に、むしろ見せつけちゃうのはいけないことかな?」

 

「もう・・・知らないよ?」

 

(うお、なんかエロ。)

 

黎人に似た"少年"は圭を抱きしめながら彼女の腰から足にかけてそぉっと優しく撫で回す。

 

(黎人テメェェェェ!!!)

 

(何やってるんですか会長!?そのトイレットペーパーで何をする気ですかァァァァ!!!?)

 

もはや先程の石上になった白銀。とうとう堕ちたな、ジョー●ターの血統よ。

 

(え、うそ、あの2人もうそこまでいっちゃって!!?)

 

お互い向かい合い唇を重ね、数秒顔を近づけた後に圭の舌からタラァっときらめく液体のようなものが糸を引いていた。その顔は真紅に紅潮し、目にはハートが浮かんでいた。

 

(圭ちゃぁぁぁん!!!?)

 

「圭・・・もう我慢できないかも。」

 

「えっ、ここ学校だよ?流石にダメだって・・・」

 

(会長ぉぉ、あの2人ABCのCまで行ってますよ!!?もう神ってる、もう神ってますよ!!!)

 

(ナニィィィィィ!!!?)

 

(あの、神ってるとは?)

 

(えーと、ここでは神聖なる行いのことを指してまして、ゴニョゴニョゴニョ・・・)

 

(セックっ!!!!???)

 

圭を優しくソファに押し倒す"少年"、優しく受け入れようとする圭。

 

(圭ちゃぁぁぁん!!!俺は認めないぞぉぉぉ!!!)

 

もうその場の空気は限界だった。このまま妹と親友が神っているところを見るか、それとも涙を流しながら走り去るか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから目の前の光景に目を奪われた生徒会メンバーは気づかなかった。

 

ガチャッ!!

 

「「「「「「!!!?」」」」」」

 

「おいゴラァ、お前らTPO弁えろ。」

 

「・・・チッ、何しに来たのよ。今逢引の真っ最中なんだけど?」

 

黎人が黎人似の"少年"に叱咤していたのだった。

 

「え、黎人さんが、2人!?」

 

「へ、はれ?」

 

「まさか、ドッペルゲンガー!!?」

 

「あ、すみません。コイツ盛ってるときは機嫌悪くて。」

 

不機嫌になる"少年"、かぁっと赤面する圭、状況が理解できない生徒会メンバー、そして状況を理解した黎人が頭をかきながら説明する。

 

「コイツは、俺の()なんです。」

 

「・・・皆さんはじめまして、家入美夜(みよ)と申します。圭の彼役でーす♡」

 

 

 

 

 

 

「「「「えぇぇぇ!!!!??」」」」



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家入美夜は認められたい


黎人や美夜の名前の隣に書いてある年齢は今年でなる年齢のことです。


家入美夜、15歳

 

中学生で既に一級呪術師の称号を手にした実力者。黎人と同じで伊邪那美之胎で産み出された。昔とあるキッカケで異性を恋愛対象と見なくなった。そのキッカケには五条悟がふか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜く関わっているのだが、この話はまた今度に。

 

「圭ちゃん考え直してくれぇ!!」

 

「いやだ!!美夜以外と一緒になるなんて嫌!!」

 

ソファに座り込みながら、隣に座る美夜に必死になって抱きつく圭。美夜は見苦しいものを見るような目で御行を見つめていた。

 

「まぁまぁ、もうお義父さんには話通してますし〜「嘘だろ親父ぃぃ!!!」もうあんな事もこんな事もしてますんで。諦めてください?」

 

「あんな事やそんな事や、こんな事もだとぉぉぉ!!!?」

 

御行は頭をわしゃわしゃと書きながら断末魔を上げ、生徒会メンバーは呆然として目の前の百合カップルと面倒なシスコン兄を見ていた。まともなのは紅茶を飲んでる黎人だけだ。

 

「ぐぬぬ・・・黎人お前からも何か言ってやれ!!」

 

「お前元カノ2人から脅迫されてたろ。アイツらどうした。」

 

「あ〜何かあの子達で付き合うことになったらしいわよ。」

 

「マジか、類は友を呼ぶと言うけど。あ〜〜〜〜〜だったら問題ないか。圭ちゃん?妹を頼むわ。」

 

「はい!お義兄さん!!」

 

「おいぃぃ!?俺を裏切るな黎人ぉぉぉ!!」

 

「・・・・いつから俺が味方だと錯覚していた。俺はその場が面白くなる方向に火をつける愉快犯だよ!!ははは!!!」

 

「だぁ〜〜、やっぱお前カスだな。妹として恥ずかしく思うわ。」

 

御行は項垂れながらこの人格破綻者兄妹から目を離して生徒会メンバーに目を向ける。

 

「四宮、石上、藤原、お前らからも説得してくれ〜」

 

「えっと、あれ、お二人はいつから付き合って?」

 

「1年前だね。怪しい男らに腕掴まれてた圭ちゃんを私が助けました。その日から彼女は私の虜、私は彼女の虜です♡」

 

「え!?そんなことがあったんですか!!?圭ちゃんったら何で教えてくれなかったんですか?」

 

「だって、千花ネェに言ったらお兄ちゃんに言いそうだし。」

 

「く〜〜〜〜ぅ!!隅におけないなぁ〜〜〜〜!」

 

(1年!?たった、たったその短い期間で会長の妹を落としたって言うの!!?これは会長を告白させる上で参考になりそうね!!)

 

「何で会長は認めたくないんですか?愛の形なんて千差万別でしょう?百合は良いですよ?おんにゃの子がおんにゃの子同士でにゃんにゃんしてるのマジ眼福じゃないですか?」

 

「俺は別に反対してない。けど、美夜さんが本気で愛しているかどうかが知りたいんだよ・・・・」

 

「・・・失礼ですね。純ーー「アッパー!」ぐっふっ!!?」

 

唐突に黎人が振り上げた拳が美夜のあごをクリーンヒットする。空中に浮いた美夜に回し蹴りを喰らわそうとしたが、寸前で交わされ黎人の足は空を切った。

 

シュッ!!

 

「ちっ!」

 

「・・・おいカス?何妹の顎殴ってんだ?血が出ただろうが?」

 

「お前如きが、あの乙骨先輩の名台詞を言うんじゃねぇ。言葉が汚れるだろうが?」

 

ゴゴゴゴゴ!!!

 

「「殺す!!」」

 

その日、石上はアニメの戦闘シーンがリアルで繰り広げられたと証言した。

 

『現実で卍蹴りとジャブと踵落としを見ることになるとは思いませんでした。』

 

本日の勝敗、黎人は物理的に勝利(美夜に)

      美夜は精神的に勝利(白銀に)

 

◾️◻️◾️◻️◾️◻️

 

秀知院学園の何処か。

 

『ふむ、淑女同士の恋・・・・・良い、実に良い!!面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い!!!あなやあなや、誠に尊いなぁ!!』

 

『さて、お前たちのことを忘れたわけでないぞ?かぐや姫と御行殿・・・』

 

薄暗い部屋の中、男の紫色の目が淡く光る。

 

『むむ?おぉ、これはこれは楽しみだなぁ?早く魅せてくれぇ!」

 



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子安つばめは耐えられない


録画してたタイタニック観て1人泣いてた・・・





取り敢えずあの婚約者(笑)はバカ。

7/5、途中までしか書いてない奴を投稿してました。申し訳ございません。



 

「剣の先を見ろ、そして相手に視線を向け、目を逸らすな。剣にゆっくり呪いを込めろ。」

 

「う、うん。」

 

時は梅雨が明けた初夏。黎人とつばめの姿は東京都立呪術高等専門学校静岡分校の演習場にあった。黎人の模擬槍とつばめの西洋剣を模した木剣がじりじりと距離を詰める。

 

そして・・・

 

「はじめっ!!」

 

審査役の静岡分校2年担任『小野寺國吉』が、初めの合図を出した。

 

「ハァッ!」

 

下から斬り上げ、交わす黎人に繰り出される突き。

 

呪いはものに宿ってる方が非常に安定する。故に剣に玲奈の呪力を流し、次第にその量を増やして行く末は完全に支配する。そうすれば呪いの解呪も簡単だ。

 

彼女は演劇部に所属しているため、非常に体が柔らかくある程度動けるため、最初は慣れなかった剣術もだいぶ習得した・・・

 

 

とはいえ、呪術を学んでまだ4ヶ月なので黎人の巧みな棒術によってコテンパンにされた。

 

「ぐへーーー」

 

「・・・お前、女の子に容赦なさすぎじゃないか?」

 

「え?これくらい大丈夫でしょう?」

 

「あーこれだから神童は、人に何か教えるのにほんと向いてねぇんだよ。お前高専の教師志望だろ?しかも京都校の。やめとけやめとけ、人の痛みを理解しないやつには教師向いてないんだよ。」

 

「うっせ、そんなんだから明姫(めいひめ)先生に振られるんですよ・・・学生時代に惚れてからもう9年でしょ?今が24。もう諦めたらどうですか?」

 

庵明姫先生とは静岡分校の呪術資料管理人のことだ。京都校の庵歌姫とは8歳年下の従姉妹だ。大きな丸メガネとポニーテールなのを除けば庵歌姫と大体顔が似てる。

 

ちなみに女生徒からは明ちゃんと呼ばれている。

 

「ウルセェ!!振られてねぇもん。まだ延長試合してるだけだもん!!!」

 

(ガキっぽいな〜)

 

「・・・・てかどういう風の吹き回しだ?あんなに人と関わんのが嫌いだったお前が、武具の立ち合いまでするようになるなんてーーーー」

 

(天ッ啓!!!)

 

「お前、まさか惚れたか?」

 

「ーーー何勘違いしてんですか?」

 

「とぼけてんじゃねぇよ?お前の趣味はこの前の男子会で大体知ってーー」

 

「殺す。」

 

万象操術(コスモ・コントロール)雷光(ステロペス)

 

「ギィヤァアアア!!!!」

 

黎人の指先から放たれる電撃に、國吉が断末魔の叫びを上げながら痺れた。いつの間にかに黎人の左腕に小さなハートの印が付いていたが誰も気づかなかった。

 

▲△▲△▲△▲△

 

「ふぅ〜〜〜」

 

演習場の近くにあるシャワー室に繋がる脱衣所、バスタオルを巻いて出てきたつばめはトコトコと竹製の床を歩いて鏡の前に座りドライヤーで髪を乾かした。

 

(黎人くんキツかったなーー)

 

『足がまともに動かせてないですよ。』

 

『剣に集中しすぎ。』

 

『これ本番なら10回は死んでますよ?』

 

黎人の武器指導は正直キツイ。

 

(・・・でも傷はほとんどないんだよなーというか、上手いって言うよりも気遣ってると言うべきか。黎人くんそういうところ優しいんだよなーーー)

 

どきんっ。

 

 

 

(ん?あれ?)

 

 

 

どきん、どきんっ。

 

(まって?何で私黎人くんのことこんなにも考えるようになってるの!?)

 

確かにここ数ヶ月、つばめは黎人と話すことが多くなった。呪力の訓練で彼の家に何度もお邪魔し、一緒に買い物にも行き、何ならP●5も貰った。それに先日は一緒に映画を観に行った。

 

『上映は何時からだっけ?』

 

『大体10時ーーーつばめさん文句は後で。』

 

『え、ちょっと!?』

 

ブロォォォォ!!

 

横を通った車がぶつかりそうになったが、黎人くんが急いで手を引いて彼の胸元に引き寄せてくれたため無事だった。

 

『大丈夫ですか!?』

 

『え、う、うん。』

 

『そう、よかった・・・』

 

彼の整った顔が、一瞬だけ安堵に歪んだような気がした。その顔が目に焼き付いて何度も思い出してしまう。そしてその度に胸がどきんっと熱くなる。

 

(ひょっとして・・・これって!?)

 

 

 

 

どきんっ、どきんっ、どきん!

 

 

 

 

恋なのでは?

 

(いや違う違う!確かにチューしかけたり一緒に買い物に行ったりしたけども別にそんな邪な気持ちとかそういうんじゃなくて・・・そうだ、この胸の高鳴りは不整脈、心理的な問題じゃなくて肉体的な問題なんだ。そう、そうだ、そうなの?彼のこと考えてる時だけ胸が高鳴るし、これって、やっぱり・・・)

 

すると、抜き足差し足と、人影が彼女に迫った。

 

「あら〜?珍客かしら〜?」

 

「はひぃ!!?だ、誰ですか!?」

 

後ろに立っていたのは金髪のふわふわな髪を持つシスター服を着た少女。その和やかそうな雰囲気が何とも人を落ち着かせる。

 

「私〜?私は3年の『山寺有菜(ありな)』よ。よろしくね〜」

 

「は、はい。子安つばめです・・・」

 

「黎ちゃんから話聞いてるわ〜大変なのね〜ご苦労様〜」

 

「あ、いえいえ。」

 

つばめは内心ホッとしていた。今現時点で、彼女があったことのある呪術師は黎人と同期の2人、國吉と明姫だけだ。彼女は現時点で1番まともに感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だって・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だって・・・

 

 

 

 

だって、他の面々、特に黎人が人格破綻者と呼ぶ南雲と篠崎はイカれ過ぎているからだ。

 

〜〜〜

 

南雲晶の場合

 

『は、はじめ『あ"あ"ん?誰だテメェ!』ヒィ!?』

 

基本誰にでもキツイ態度を取る南雲だが、彼にとっては普通に会話しているのだ。呪術高専のメンバーはもはやこの状態でも茶化したりできるのだが何も知らないつばめにとっては怖いだろう。

 

(ちなみにその後ベッコウ飴や金平糖の入った包みを貰った。やはり根は優しいのだ。)

 

篠崎要

 

『はじめましーーーって、キャァァァァァァ!!!?』

 

『ん、どうしましたーっておいぃ!!教室で首吊り自殺すんなぁぁ!!!』

 

『ぐひゅ、何で死なないのぉぉぉぉ!!!!』

 

『自分を卑下すんな!人生を楽しめ!!』

 

『おいっ!小野寺の奴泡吹いてんぞ!!』

 

要の術式のせいで、その時國吉が首を抑え悶え苦しんでいた。要は自殺道具になりえる物を撤去させた自室(監禁部屋)謹慎処分(ほぼ監禁)となった。それでも舌を噛み切ったため黎人が死にかけた。

 

〜〜〜

 

その中で、唯一の常識人であろう有菜。何としても仲良くなりたい・・・

 

「・・・ぶっちゃけ聞くけど〜黎ちゃんと■■■■までいっちゃった?」

 

「ブフッーーーー」

 

・・・訂正、常識人じゃなかった。

 

この女、西洋の呪術師の血が流れており呪術師として入学したのだが、コイツ聖職者のくせに、色恋沙汰となると日本のマンガのせいか下ネタやそういうネタしか言わない。それでいて結婚願望などは一切ない。彼女曰く『私の彼氏は二次元にしかいない。』とのこと。

 

「何言ってるんですか!!?」

 

「いや〜?なんか最近黎ちゃんが楽しそうだし、つばめちゃんと訓練してる時もやたらとニコニコしてたから。あ〜ひょっとしてもうソッチまでいっちゃった?はっは〜ん?▲▲▲▲とか●●●●●までしちゃったのかしら?あらあら〜?」

 

「ふ、ふざけないでください!!そんなことーーーーす、する、するわけ////」

 

赤面して黙り込むつばめ、有菜は彼女の首筋にピンク色の小さなハートの印を付けた。有菜はニヤリと笑いながら微笑んだ。

 

「あらあら〜可愛いわね・・・黎つば、良いわね〜私に任せてよ〜こちとら恋のキューピット歴3年よ?失敗したことはないわ!!」

 

「え、そ、そうなんですか?」

 

「・・・成功したこともないけど。」

 

「ずこぉぉ!!!」

 

「んじゃ、私シャワー浴びてくるね〜黎人くん堅物だけど年上好きだから頑張ってね!Bye〜」

 

「最後ぉ!!!?」

 

有菜が脱衣所からシャワー室に入って直ぐ、勢いよくドアが開いた。

 

「つばめさん!何かありましーーー」

 

さっき上げた大声が聞こえたのだろう。黎人がノックせずに化粧室に入ってきた。そしてつばめを見て、硬直した。

 

「あ・・・」

 

艶々の珊瑚色の髪、真珠のような目の瞳、透き通るような肌、そして扇情的な身体を布一枚で隠したその姿を黎人は見て・・・

 

「ーーーーっ!?ノックせず入ってすいませんでした!!」

 

バンッ!!

 

 

 

 

 

 

「あぁっ、クソ・・・山寺先輩の術式か。」

 

山寺有菜の術式は『恋愛想愛(ラブ・シミュレーション)』他人の恋愛を自分好みにセットして、それが現実になる術式。術式対象には小さなハートの印が付けられる。気づくと腕にハートが付いていた。つまりこの術式を解かないとつばめとのラブコメが繰り広げられる。黎人は急いで術式を解除して顔に両手を当てた。

 

「あのくそアマが・・・」

 

つばめの姿が目に焼き付いた黎人は、1人廊下で悶絶していた。

 

 

一方・・・

 

「あ"あ"あ"あ"!!!??」

 

つばめも1人竹の床の上で悶絶していた。

 

本日の勝敗、黎人・つばめの敗北



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乙骨憂太は手助けしたい


前回に比べて短めです。

そろそろ去年の呪術廻戦編を出していこうと思うのですが、良いと思いますか?アンケート出しますのでよろしくお願いします。


「ーーてなことがあったんです。とても先輩に話すことではないことはわかりきっています。けれど、あれからつばめさんと顔を合わせにくいんです。どうかアドバイスを頂けないでしょうか、"乙骨先輩"!!」

 

「えっと、頭上げてくれない?黎人くん・・・」

 

乙骨憂太、呪術高専3年生。

 

2017年12月24日、新宿京都百鬼夜行を起こした『夏油傑』との激闘の末勝利。2018年11月、仙台コロニーにて『ドルゥブ・ラクダワラ』『黒漆死』『烏鷺亨子』『石流龍』を連戦で撃破し150ポイント以上を獲得し、合計190ポイントを得る。2018年12月24日、五条悟が宿儺に勝利した後に虎杖らと羂索と戦い勝利する。

 

百鬼夜行後に三ヶ月で特級術師へと返り咲いた、五条悟に次ぐ現代の異能。

 

それが、『乙骨憂太』

 

「えっと、つまりこの騒動の発端って有菜さんなんだよね?」

 

「はい。あの後学長に説教されてました。当分問題を起こすことはないかと。」

 

「・・・毒には毒をって言うけど。子安さんと仲直りするためにもう一度、恋愛想愛を使ってもらったらどうかな?あー変なこと抜きで。」

 

「あのくそアマに借りを作らせたくないんです!!あの女にお願いしたが最後、五条先生がどうなったか分かりますか!?」

 

「う、うん・・・監禁未遂で1週間警察にお世話になってたね。やっぱりダメか・・・」

 

うーんと悩む乙骨憂太。

 

(通う学校こそ違うけど可愛い後輩だし、何とかしてあげたいんだよな〜それに子安さんも僕とは違って呪われてる人だし・・・手助けしてあげたいんだよな〜〜〜。

 

 

 

・・・。

 

 

 

・・・。

 

 

 

だったら・・・)

 

 

「黎人くん、だったらーーーーー」

 

▲△▲△▲△▲△

 

『授業終わったらこの前行ったカフェで話し合いませんか?』

 

LINEで送られてきたお誘い。普段であれば気も軽く行けるはずなのに、何でだろう。恥ずかしさと緊張が混ざってギクシャクしてしまう。あの一件以降、黎人くんとは顔を合わせても話すことはなく、お互い気まずそうにして通り過ぎるだけだ。

 

 

「お、お待たせ。」

 

「・・・ども。」

 

アイスコーヒーを注文し、それが届いて口をつけ、飲み終える。それまで無言だった黎人くんが・・・

 

ドンッ!

 

「この前は誠に申し訳ありませんでした!!!」

 

「ちょ、ちょっ!?黎人くん!!?」

 

テーブルに両手を置いて深々と頭を下げた後輩に慌てるつばめ。周囲の目を集めてしまったが、そんなのお構いなしに黎人くんは言葉を続ける。

 

「もしこれでも怒りが収まらないのであれば玲奈さんを使って眼球消滅させてくれて構いません。どうか・・・」

 

「いや、怒ってないよ?ただ、顔が合わせづらかっただけで。」

 

「あのくそアマは学長に鉄鎚を喰らわせました。事故であることは分かっています。ですが、それでも俺の気は晴れないので罪滅ぼしの提案をさせてもらいます。」

 

「い、いいよ?」

 

「俺が都合の許す限り、一回だけつばめさんの言うことに従う。それで良いですか?」

 

「・・・うん、良いよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、よかった〜」

 

ビルのテラス席、双眼鏡を両手に持っていた乙骨がヘニャヘニャと崩れ落ちた。彼の視線は地上のカフェに座っている黎人とつばめに向けられていた。

 

「"何でも言うことを聞いたら"ってのは僕のアイデアだけど、上手くいくか分かんなかったし、本当によかった〜」

 

すると隣に座っていたキャップ帽を被って火傷を隠す人物が、裸眼で黎人らの様子を見て乙骨に話しかけた。

 

「・・・しかし、黎人のやつに気になる女ができるとはな?あいつお前より恋愛に向いてねぇだろ。」

 

禪院真希

 

去年、美夜と双子の妹『禪院真依』を救いに禪院家に行った際、禪院直哉に殺されかけた。だが死の瀬戸際に真依が使った特級呪具『辿りの鋏』を使い、呪力を全て捨て、鋼の肉体と手に入れた天与の怪物。一方、真依の方は圧倒的な呪力を手に入れることができた。その際3人で禪院家を崩壊させた。

 

ちなみに黎人とは叔母甥の関係である。

 

「え、確か黎人くん中学のころは彼女とかいたんじゃ?」

 

「あーあれか、あれは()()()()()()()の間違いだろ。確かに逢引まで行ったこともあったらしいけどな。自分から"この人だ"って思って交際したことは一度もねぇんだよ。」

 

「へぇーーーーあれ?つまり・・・」

 

 

 

 

 

 

「今度の夏休み、一緒にお祭り行こ?」

 

「ーーー」

 

 

 

 

 

「今回が、黎人にとって初めての()()ってやつだ。」



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龍珠桃は聞き出したい


ちょっと短め。

後悔はしてない。私の頭の中に急にインスピレーションが沸いたんだ。許してください。反応は感想にお願いします。


6月の終わり、例年より梅雨が短かったせいか日の光が秀知院にも照り付けている。自分の周囲に水分を浮遊させて凍らせいるため彼の周りは年中涼しい。

 

だが、それでも彼の頭の中はあることでいっぱいだった。

 

夏休みの浴衣デートの約束。

 

今年から始まる『呪術高専学年合同研修修学旅行』には重ならないが、何処からか情報を手に入れた母及び妹弟に死ぬほどいじられた。

 

(とりあえずその日までに、任務は終わらせるとして問題は呪物の捜索。学校の隅から隅まで探した。中庭も図書室も何処にも無かった。いったい何処に?あとは、四宮先輩にお願いするとしてーー)

 

ドンッ!!

 

「ん?」

 

「おいお前。ちょっと面貸せ。」

 

■◽️■◽️■◽️

 

龍珠桃

指定暴力団『龍珠組』組長の愛娘。その美貌から、秀知院の難題女子としても名高い少女だ。かつて生徒会に入っていた経歴がある。

 

「・・・で、何のようです。」

 

「伏黒って、お前知り合いにいるか?」

 

「伏黒?」

 

伏黒・・・

 

3人ほど候補がある。

 

ウニ頭の伏黒恵。

 

クワガタ頭の伏黒津美紀。

 

職なしゴリラの伏黒甚爾。

 

(・・・伏黒甚爾は去年生き返ったけど接点はまずないと信じたい。となると恵くんか津美紀さんかな?けど津美紀さんは不良と絡んでるイメージ無いし・・・あーとなると恵くんかな?てか、あいつ女ふっかけすぎだろ。サソリ女にメンヘラ天使女にヤクザ女って。あいつハーレムでも目指してんのか?いや、サソリ女はアメリカに連れてかれたし・・・来栖さんは元気に公認ストーカーしてるし・・・なんて言ったらいいのかな・・・)

 

「それって、ウニ頭の?」

 

「はぁ?ちげぇよ、どっちかっていうとクワガタみてぇな・・・」

 

「クワガタ?あーだったら、津美紀さんかな?」

 

伏黒津美紀

伏黒恵の一歳上の弟想いの義理の姉。

 

伏黒恵曰く典型的な"善人"であり、高専内でも評価は高い。"誰かのことを呪う暇があったら大切な人のことを考えていたい"と話すほど、心優しい性格の人物。ちなみに伏黒の初恋相手なんじゃないかという噂が1年ズと2年ズの間であるが、去年のある一件で伏黒の初恋は完全に崩壊する。

 

「津美紀さんは・・・・」

 

そう。彼にとっては言いづらい。

 

 

去年のある一件に関連しているから。

 

(・・・言いずれェェェ。あぁぁぁぁ、どーしよっかな〜〜津美紀さん、貴女を恨みますよ?何でこの人と知り合いなんですか?なんか声質似てるし・・・)

 

 

 

 

 

 

「んだよ・・・まさか。」

 

「いや死んでない。」

 

「死んでねぇぇんかい!!」

 

ツッコミを入れる龍珠。汗をかきながら髪をわしゃわしゃとかく黎人。困ったときの癖だ。金●一耕助みたいだなとおもったらあながち間違っていない。黎人の弟の愛読書にハマったゆえについた癖だ。ちなみに弟にはこの癖はない。

 

「あーでも言ったら怒るよ?多分、いや絶対。」

 

「言え。焦らすな厨二病。」

 

「・・・・した。」

 

「あぁん?」

 

「俺が信頼してるし信用してるし尊敬してる一年上の先輩と、駆け落ちした。」

 

「ーーーーーは?」

 





最後意味分かんなくて宇宙猫になったらごめんちゃい。詳細は次話で説明します。

次回
津美紀『私この人と結婚する♡』
???『はじめまして。』

恵『キュゥーーー』
五条『コロス。』

黎人「ーーーてな訳。」
龍珠「コロスコロスコロス!」
黎人「待て早まんな!!!」


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伏黒津美紀は恋に落ちた


最後、津美紀がキャラ崩壊してます。



 

去年の12月24日に『人外魔境新宿決戦』を経て呪術師側は勝利した。宿儺と激闘を繰り広げた五条と宿儺に乗っ取られていた伏黒、羂索と戦った高専メンツは重傷を負ったものの何とか生きていた。

 

そして後始末やら何やらが終わり、普段の呪われた生活に戻ったときその事件は起こった。

 

「私この人と結婚する♡」

 

「はじめまして。静岡分校2年の『照屋輝沙羅(てさら)』だ。」

 

「「・・・ぐはっ!!」」

 

2019年2月9日

伏黒恵が大量に吐血し高専病院に緊急搬送。

 

「ふるべ、ゆら、ゆらーー」

 

その際意識が朦朧として摩虎羅を呼び出し暴れたため特別一級術師『鹿紫雲一』と、同じく特別一級術師『虎杖悠仁』によって鎮圧される。

 

「葬前祭だ!!上げろ上げろぉぉぉ!!!」

 

「ちょっ!?鹿紫雲さんストップストップ!!高専壊れる!!!」

 

そして五条悟と照屋輝沙羅の戦闘により住宅三棟を巻き込む。五条悟の勝利で終わったが戦闘の裂傷の他に何らかの精神的ダメージで大量に吐血。その後照屋と伏黒津美紀は行方不明に。

 

「もう知らない!!五条さんなんて大っ嫌い!!!」

 

「グフッゥゥゥゥ!!!!」

 

3日間幼児退行したため京都高専の庵歌姫が派遣される。尚、歌姫は交換条件として家入硝子と冥冥と雨宮静流とともに1週間アメリカ旅行を申請した。

 

「ヒャッハァァァ!!!ついに来たわアメリカ!!待ってろ大谷ぃぃ!!!」

 

「・・・なかなかに面白かったな。バブ化した五条をヨシヨシする歌姫さん。」

 

「一応一眼レフに撮っといたけどお金にしたらいくらになるかな?」

 

「ま、とりあえず酒だ酒。」

 

伏黒甚爾に失踪した2人の捜索を要請するが、既に金を握られていた上に当人は婚姻を認めていたため拒否された。

 

「あ?何で拒否すんだよ。お前の娘だろ?」

 

「あーーあいつが惚れたやつ、輝紗羅だっけ?多分昔可愛がってやった九十九の息子な。あ、これオフレコで頼むわ。」

 

「ーーーーは?」

 

◾️◽️◾️◽️◾️◽️

 

「ーーーてな訳で今俺の弟が捜索にあたってるが2人は現状行方不明。五条先生と恵くんは輝紗羅先輩を殺す気だ。」

 

「・・・コロス。」

 

「へ?」

 

よく見たら龍珠は泣きながらカタコトで殺すと言いながら、手に持ったトイレットペーパーを拳に巻き校門の方へ走り出した。

 

「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」

 

「待て落ち着け、そのトイレットペーパーでどうする気なんだよ!?てかどこ行く気だ待て!?」

 

「あぁん?ズビッ!!決まっってんだろ?グスッ!!伏黒のやつに手ェ出しやがったクソ野郎殺してくんだよ。」

 

「いや泣きながら言うことじゃないだろ?」

 

もはや涙だけでなく鼻水まで垂らした龍珠。ほんの少しだけ同情するが、ひとさまの恋路は邪魔することはできない。(五条は除く。)

 

「つーか、グスッ!!何もんだよその輝紗羅ってやつ。」

 

「俺の一歳年上の準一級術師。呪術を科学的な観点から分析・解析し、利用するマッドサイエンティスト。食事を摂るのは一週間に一回な。好きなタイプは研究のサポートしてくれる女。」

 

「破綻者じゃねぇかよ!!!??ズビッ!!つーか何でズビッ!!何で伏黒はそんな奴に惚れたんだよ!!?」

 

「えーと、一つは過去の術師に受肉され意識を奪われた彼女を救った恩人であること。もう一つは、12月のいざこざの後全身大怪我を負った先輩を献身的に看病していたこと。」

 

「ズビッ・・・吊り橋効果とナイチンゲール症候群かよ。うっ、何で。」

 

「まぁ場合が特殊なんだが、大体それで合ってる・・・てか大丈夫?ほらティシュやるから鼻とれ。」

 

「グシュッ・・・ありがと、うっ、オゲェ・・・」

 

「ぎぃ!!?おい人前でえづくな・・・まぁ友達が結婚してたらそりゃショックか。」

 

 

 

少し離れた校舎影

 

「・・・龍珠ちゃん。黎人くんとどう言う関係なの?」

 

目からハイライトが消えたつばめは手で握った柱を崩壊させながらそう呟いた。

 

〜じゅじゅさんぽ〜

 

「てなことがあったんですけど、津美紀さんいつ彼女と知り合ったんですか?」

 

『あー私が中2の頃かな。大人の男の人に絡まれてた龍ちゃんを助けて、足を擦りむいてたからうちで手当てしたの。懐かしいなぁーーーーあ、輝紗羅くんが呼んでるから行くね?輝紗羅(ダーリン)♡どーしたの〜?』

 

「・・・五条先生と恵くんが聞いたら卒倒するかな。」





次回、黎人死にかける。


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家入黎人は死にかける①


シリアスなのかな?
まぁ保険としてシリアスです。



 

翌日、つばめさんに『大事な話がある。』と連絡をうけた。

 

任務は東京の2年ズに肩代わりしてもらったため、呼び出し先のカフェでいきなり手を掴まれたと思ったらタクシーに乗せられ、山奥の人気のない山道に連れてかれた。

 

黎人はこんな状況で恋愛要素を期待するどこぞのポンコツかぐやと奥手白銀とは違う。何故なら彼女が完全に怒っているのがわかるからだ。黎人は今までの人生で様々な呪いや呪術師と戦った。

 

里桜高校では特級呪霊『真人』

 

渋谷では特級呪霊『漏瑚』と呪いの王『両面宿儺』

 

広島コロニーでは130ポイントの江戸時代の遊郭の女帝『天野河天音』

 

なので幾度も敵の殺意や本心に触れることがある。彼女から放たれるオーラもまさにそれなのだ。

 

もし恋愛だったのなら全財産賭けてもいい。

 

黎人は心の中でそう呟いた。

 

▲△▲△▲△▲△

 

「・・・ねぇ黎人くん。君にとって私って何?」

 

「え、「ただの先輩?可哀想な女の子?それとも・・・都合のいい女?」

 

あ、これ恋愛よりの奴だ。帰ったら全財産つばめさんに差し上げよう、彼は心の中で誓った。ハイライトの無い目で黎人を見ながらつばめは言葉を続ける。

 

「ねぇ何で否定してくれないの?ねぇ、ねぇ、確かかぐやちゃん家に招かれたって噂があったよね?昨日は龍珠ちゃんを慰めてたよね?私の間違いじゃなかったら、昔彼女何人もいたんだよね?ほんとなの?」

 

「・・・多少脚色されていますが、事実です。」

 

とうとうつばめさんが狼狽えた。不味い、このままだと小野寺先生経由で母さんにチクられて殺される。何とか、何とかしないと・・・

 

「へぇ、そっか、じゃあ、もういいよ。呪術も結構教わったし、この2ヶ月楽しかったよ?けど私、黎人くんの邪魔になーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血で濡れてない手で、幼い俺を撫でながら遠い日の記憶の父はこう言いながら涙を流していた。

 

『俺、お前たちの邪魔になるからな・・・元気でな。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめてください。」ーーえ?」

 

「その言い方、その言い方をやめてください。いや、やめろ。」

 

敬語を使わなくなった黎人。黒の右目と蒼色の左目が震えながら訴えかける。

 

「お願いだーーやめてくれ・・・俺はあんたが思うような女たらしじゃない。あんたのことは、あんたのことは友達として大事に思ってる。だから、やめてくれ・・・」

 

「黎人くーーゆる"さない。』

 

「ーーっ!?」

 

ーー殺意ーー

 

慌てて飛び退くと、地面が音を立てて崩壊する。つばめの髪が桃色から黒みを帯びた白に変色する。そして目の角膜と瞳の色が逆転する。

 

黎人はすぐさま空性結界を張り、辺りを包み込む。景色が一面岩畳に包まれる。ここで何が起きても現実世界には何も起きない。黎人の結界術の腕前は五条悟でも到達できない。その腕前は、両面宿儺をも上回る。

 

だからそれは、夕焼けと灰色の世界でより存在感を出した。

 

『ゆ"る"ざなぁぁあいいぃぃ!!!』

 

おそらく南雲玲奈が怨霊と化したのは、大切な主人を守るため。その主人は子安つばめであり、それを害そうとする存在を彼女から遠ざけ守ってきた。

 

しかし彼女は呪術を学び、玲奈が勝手に出てくることを防げるようになった。前より自由に行動が出来なくなってしまった玲奈にとっては悪夢に等しいだろう。

 

自分が守ると決めた主人を守れない。

 

『許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!!!』

 

だが、黎人が他の女子と話していたことでつばめが作り上げた障壁が壊れてしまい再び玲奈が自由になってしまった。さらに自分をつばめの肉体に憑依させて、呪霊本来の機動力と耐久性を失う代わりに術式効果と呪力量を底上げした無意識の、即席の"縛り"。

 

その凶暴な殺意が黎人に向けられる。

 

『許せない、ゆるさ"ないぃ"ゆ"るざなぃぃぃ・・・つばめ様を弄ぶなぁァァァァァァ!!!!!!』

 

「弄んだ記憶は・・・いや、何を言っても通用しないな。」

 

(不味い。完全に乗っ取られてる。万が一を想定して空性結界を張って正解だった。そうじゃなかったらここら一体塵芥になってる。反転術式で祓うか?いや、そうなった場合受肉された彼女も同時に死ぬ。つまり最善策はーー)

 

猛顎(たけりあぎと)

 

現れたのは体長15メートルを超える白の巨体、屈強な四肢と鋭い鉤爪、頑丈な顎とずらりと並ぶ牙、そして怒り狂った悪魔のような鋭い瞳孔。

 

獣脚類の姿をした式神が、南雲の化身と化したつばめに向かって吼えたてる。

 

黎人は伊邪那美乃胎で産み出された存在。500年に1度しか産まれない五条家の『六眼』を持って産まれ、産まれながらにして術式を2つ持つ。

 

 

これが黎人のもう一つの術式。

 

埜亜乃方舟(のあのはこぶね)

地球上のありとあらゆる生物を式神として使役、自律的な行動が可能である。しかも多くの式神は破壊されると使役出来なくなるが彼の術式はそうではない。式神は黎人の呪力を貰い受け、それを自ら増幅させることができる。どちらかと言うと完全自律呪骸の性質に近いのだ。

 

宇宙をも操る万象操術

全ての生命を使役する埜亜乃方舟。

 

これが黎人を特級にたらしめる要因。

 

(コイツを再起不能になるまで疲弊させて、つばめさんが肉体の主導権を得られるようにする!!)

 

空気の塊を纏いながら、目の前の玲奈に青い瞳を向けた。



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家入黎人は死にかける②

「噛みちぎれ。」

 

猛顎が雄叫びを上げながら玲奈に齧り付く。齧り付いた瞬間、パキパキという音がし、猛顎の顎から血が噴き出す。玲奈がそのまま真っ直ぐに黎人に突っ込んでくる。

 

『滅塵術・抹消の大鎌』

 

『死ねェェェ!!』

 

人の頭蓋骨を模った大鎌を振り翳し、黎人に向けて振り下ろす。

 

「死ね、ね。そっちに返すわ。」

 

グサッグサッグサッ!!!

 

肉体の肉と骨を貫くーー

 

玲奈の体は列状に大きな穴が空き、そこから大量の血が噴き出した。

 

『ぎぃ、きゃ、は?』

 

「猛顎の物理攻撃は防御不能、しかもいつ肉体にダメージが入るかは自分で決められるんだよ。しかもその傷は、俺の反転術式じゃないと治せない。あとそれからーーー」

 

「ーーグォォォォォォ!!!

 

「ーーそいつの攻撃は、俺の術式と合わさって()()が90%の確率で起きる。」

 

空を切り、玲奈の脇腹に打ち付けられた大樹の幹のような尻尾、凄まじい衝撃と共に黒い雷光がほとばしる。

 

 

 

 

 

 

 

黒閃を経験した現京都呪術高専1年担任・東堂葵曰く

 

「その現象を起こすのは世界をも捻じ曲げる全能感。

 

 

 

 

打撃との誤差、0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間。

 

 

 

 

空間は歪み、呪力は黒く光る。」

 

 

 

 

 

 

その()()を、人は"黒閃"と呼ぶ。

 

『ーーいぎぃゃぁぁァァァア!!!』

 

紫色の血を撒き散らしながら、玲奈は空性結界を突き破り何度も何度も結界内に現れては結界壁にぶつかり突き破るを繰り返した。黎人の術式は、あらゆる現象を操る。その術式対象は自然界の現象だけでなく、呪術的な現象だって操ることができるのだ。

 

(いくら憑依体の受けたダメージは呪霊側にしかいかないとはいえ、行きすぎた攻撃は両者にダメージが通る。出来るだけつばめにダメージが入らないようにしねぇと。)

 

黎人は心の中でそう決めていた。

 

(あと一撃だけ、攻撃を喰らわせる。もし相手が領域を展開したらこっちも領域を展開しないといけない。)

 

黎人は満身創痍の玲奈に肉弾戦を仕掛ける。

 

目に止まらない勢いの拳。それを全て受け止める玲奈。

 

「っ!!」

 

気づけば黎人の拳から呪力と表皮が無くなって、血塗れの痛々しい赤い姿になっていた。彼女が持つ滅塵術の粉塵は、対象の肉体や呪力を消滅させる。その粉塵を手に纏い、黎人の拳を受け止めたのだ。

 

『死ねっ、死ねっ!!後悔しろォォ!!!』

 

再び振り上げられる大鎌。

 

「グァァァァ!!!」

 

後ろから大きく口を開ける猛顎。玲奈は鎌の持ち方を変え、粉塵を纏った刃を振り下ろした。彼女は宙で前転、まるで風車のように素早く風を切った。

 

猛顎は真っ二つに切られ消滅、いくら破壊されないとはいえ制限はある。一撃で破壊されると、それから一週間再顕現出来なくなってしまう。

 

そして黎人の顔から胴体にかけて、スパッと血が噴き出した。

 

(ーーーークソッ。手加減するのに意識を奪われちまった!?しかもこの傷、反転術式の治りが遅い!!しかもどんどん傷口から崩壊していく!!)

 

黎人の誤算。

 

1つは相手の呪力特性を見抜けなかったこと。彼女の呪力特性は粉塵と一緒で当たった箇所からどんどん崩壊させる。

 

2つ目は手加減することに気を取られすぎたことだ。だが、この時点で玲奈も誤算をしていた。これはこの勝負の勝敗を左右するものだった。

 

「ーーー手加減無しだからな?」

 

玲奈の誤算は、自分の実力以上の相手を敵に回したことだ。

 

黎人の周囲が淡く青色に光り、凄まじい突風が吹き荒れる。日本には激しい突風で腕や足が切れることを『鎌鼬』という。

 

万象術式(カオス・コントロール)神嵐(ユピテル)

 

風が肉体を打ちつけるたびに、玲奈の服や肉体がみるみるうちに削れる。そして首が掻っ切れ、重要な血管のある部位がさらに掻っ切られる。

 

『ぐーーなー舐める、なーー「舐めてんのはテメェだろ!!」ぐふっう!!?』

 

黎人の拳が玲奈の腹と胸に突き刺さる。そしてーー

 

「黒閃!!」

 

二度目の黒閃、からの回し蹴りの踵落とし。

 

「黒ッ閃!!」

 

三度目、からの顔面への拳の一撃。

 

「黒ッッッ閃ッッ!!!」

 

四度目・・・の黒閃玲奈が顔面で受け止めた。血を流しながら、彼女はニヒルに笑うそして、左手と右手を合わせ与願印と施無畏印の構えをとる。

 

(ーーまさかっ!?)

 

黎人もすかさず、法界定印の手印を結ぶ。

 

 

 

 

 

『「領域ーー展開ッ!!」』

 





重なる領域、制するのは誰か!?


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家入黎人は死にかける③


前にしでかしたミスを修正したところがあります。


 

『「領域ーーー展開ッ!!」』

 

領域展開、それは術師の中にある生得領域、いわゆる心象風景を結界という形で体外に創り出して敵を閉じ込め、その結界に術師本人の生得術式を付与する事で術式に基づく攻撃を必中とする技。

 

ピシッ!!

 

この領域が2つ以上展開されたとき、より洗練された領域に塗り替えられる。

 

ピシッ、ピシッ!!

 

黎人の領域は、玲奈の領域より洗練されていた。

 

 

バリンッッ!!!

 

 

だが押し合いに負けたのは黎人だった。

 

先に領域を展開しようとしたのは玲奈だった。だが黎人の展開スピードが彼女を上回り、黎人の領域が先に完成した。呪術において相手より先に領域展開すれば勝つのは先に領域展開した方である。

 

だが、つばめの術式と玲奈の術式効果を甘く見ていた。

 

『領域展開・涅槃生滅殿(ねはんしょうめつでん)

 

彼女の領域内に入った全ての人間や呪術を崩壊させ消滅させる。その対象は結界も含まれていた。そしてつばめの術式の『貝燕(かいつばめ)術式』、自身の結界術や術式効果を増幅させ、強化する術式。

 

領域に付与された術式、効果を強化する術式。

 

「ーーーくそっ!!」

 

黎人の左半身がみるみるうちに崩壊していく。

 

彼は崩れ落ちながら、物思いにふけっていた。

 

▼▽▼▽▼▽▼▽

 

「まさか六眼を持つ者が産まれるとは。」

 

「片目だけだが、うまくいけば五条悟をも超える。」

 

「あれには術式が2つあるしな。」

 

「次の子どもにも期待だな?」

 

 

 

 

「・・・きっしょ。」

 

「ちょっと梅?駄目だろ黎人の前でそんなこと言っちゃ。子どもの頃の記憶って結構残るらしいからね。」

 

「うー?」

 

「ごめんねー美夜ちゃん?お母さんが今言ったことはオフレコだからねー?」

 

「きゃきゃきゃ!!」

 

「・・・何で真佐の方が懐かれてるのかしら。」

 

禪院本家から山を2つ挟んだところに造られた離れ家。

 

黎人の父親『禪院真佐』と母親『五条梅』は今年に1歳になった美夜を愛でていた。

 

※(結構前に黎人と真希の関係について取り上げましたが変換ミスしてました。ただしくは甥と叔母です。ご了承ください。)

 

「それにしてもウザいんだよね。あのクソ親父。」

 

黎人の血縁上の祖父、『禪院扇』は誰もが言うゴミ屑なのだ。あんまり強くない術式のくせ、次期当主になれなかったのを自分の子のせいにする屑。

 

「・・・また黎人を寄越せって手紙来たの?ほんと懲りないよね。」

 

「そういや、黎人は何処?」

 

「山の方に・・・何か拗ねてる見たいよ?」

 

「あーーひょっとして美夜に僕らを取られたって拗ねてるのかもね。探してくるよ。」

 

 

 

黎人は今年で3歳になる。大樹の枝の上に座りながら、物思いにふけ、ぼーーっとしていた。

 

「・・・空、青いな。」

 

「あ!いたいた!!黎人〜?降りてきな〜」

 

「やだ。」

 

「えーじゃあそっち行っていい?」

 

「・・・いいよ。」

 

黎人の隣に登って座る真佐。彼は息子の頭を撫で撫でしながら口を開いた。

 

「黎人。何かあったの?」

 

「・・・この前変なオッサンが、『お前は人間じゃない。』って言いに来た。俺、人間じゃないの?」

 

真佐の顔が固まった。そしてうーーーんと首をひねり、こう言った。

 

 

 

「黎人。人間とか人間じゃないとかどうでもいいんだ。いつか、お前のことを必要とする人が現れるから。その人に人間って思われたいと思うのがどうでもよくないんだよ?ま、僕らは黎人のこと人間だと思ってるけどね。さぁ、帰ろうか。」

 

「・・・うん。」

 

△▲△▲△▲△▲

 

その次の日、父さんは上層部の送り込んだ柄及び躯倶留隊に殺された。その翌年、母さんは祖父に殺された。

 

黎人は祖父を惨殺、その後送り込まれた二級術師3人、特別一級術師1人を返り討ちにした。

 

秘匿死刑になったところにある人物によって死刑は無くなった。

 

「君のお母さんさ、僕の妹なんだよ。つまり僕は遺伝上の君の叔父ってわけ!!」

 

長身包帯の怪しい男が、俺が高専所属の呪術師になることを条件に秘匿死刑を取り下げた。コイツのことは覚えてる。

 

3歳の頃、初めて会ったときに

 

『お前が梅がつくったガキ?キッショ。』

 

と言った不審者。

 

その後母さんに殴り飛ばされ、唾を吐き捨てられていた。ちなみに母とこの男は2歳差の兄妹である。この男の同期である家入硝子は俺が産まれた頃からの母の友達である。身寄りのない俺たちを、自分の子どもとして受け入れてくれた。

 

「で、どうする?呪術師する?」

 

「やらないと明星()美夜()はどうなる。」

 

「さぁ?でもマシな扱いは受けないと思うよ。特に美夜ちゃんの方はね。」

 

「・・・明星(あけぼし)が18になるまで死ねねーよ。やってやんよ、呪術師。」

 

「よしっ、楽しい地獄へようこそ!!」

 

 

■◽️■◽️■◽️

 

(あーーー走馬灯か。)

 

黎人は左半身から胴体の殆どを崩壊され、目の前に立つ玲奈の方を見る。妖しい微笑を浮かべながら、泣いていた。恐らく玲奈の中にいるつばめが主導権を取り返そうとしているんだろう。

 

(・・・このまま死んだら、彼女処刑かな。)

 

特級術師が殺されれば、かなりの問題となる。恐らくつばめは死刑になる。過去の問題と黎人の死が決め手になって、玲奈ごと殺されるだろう。

 

『いつか、お前のことを必要とする人がいるから。』

 

(あんたにそんな顔させて、死ねるかよ。)

 

右手を掲げ、人差し指と中指を伸ばし親指を当てそれ以外は内側に折り畳む。それは黎人が両面宿儺との戦いで到達した彼オリジナルの手印。

 

「領域展開・輪廻宙処(りんかいちゅうしょ)



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家入黎人は死にかける④

 

金色の先体、大理石の燈篭が鏡のように2つ重なっている。そして燈篭の中には細胞分裂のような点滅をする青と紫の光。

 

宇宙の真ん中にあるそれを、玲奈はただ見ていた。

何をされた、と思いながら。

 

トンッと黎人の手が玲奈の肩に置かれた。

 

「俺の術式は、あらゆる現象を操る。今からお前に体験させるのは、()()()()()()()()()、全てが終わる頃にはお前は人の形を保てなくなる。普段からブラックホールとか超新星爆発とか出来るかどうかで聞かれたら起こせるんだけど、これらを使わない代わりに縛りで呪力量上げてんだ。そもそもこの術式、呪力消費が激しくてな。モノによっては1日に一回きりなんてこともあるんだよ。」

 

術式の、開示

 

「とはいえ、このままだとお前の大事なつばめ様も死ぬ。俺や五条悟ならまだしも普通の人間が経験したら最初の辺りで死ぬからな・・・死なせたくないなら、彼女に体渡せ。」

 

◽️■◽️■◽️■

 

「・・・ごめんなさい。」

 

「謝るな。むしろ謝らなきゃいけねーのはこっち。」

 

つばめが体の主導権を取り返したことでこの一件はうまくおさまった。全て空性結界の中で起きたこともあり、現実世界の被害はなかった。もし空性結界が破られていたら山一つ消えていただろう。

 

とはいえ、反転術式に必要な呪力は領域展開と胴体と左半身の治癒に使ったためボロボロの左腕を上着で作った三角巾で固定してるのが黎人の現状だ。

 

「玲奈さんが、君を傷つけるなんて。」

 

「もともと彼女にとってお前が1番大切だったんだろ?つまりお前を泣かせた俺は抹殺対象だ。」

 

「・・・あのね、黎ーーーピーロロロロ!!!!

 

いきなり鳴り出した鳥の声。

 

「ん?弟からだ。」

 

着メロだった。相手は黎人の弟、『家入明星』今年で13歳になる。黎人や美夜とは違う特殊な眼をしており、"黄金を操る術式"を持っている。ちなみに去年まで一人称俺だったのだが今年から一人称僕にした。

 

「もしもしーー」

 

『あ、兄さん?さっきから電話してるのに、何かあったんですか?ーー』

 

「あーーーちょっと野暮用があってな、結果片腕吹っ飛んだ。」

 

『ーはぁ!!?何やってーーいや僕がいない間に何があったんですか!!?』

 

「つーかお前、敬語使うようになったんだな。去年まで一人称俺だったのにな。あははは・・・」

 

『いや、はぁーーー・・・というか見つけましたよ?津美紀さんと輝紗羅さん!!今東京に住んでます!!』

 

「マジぃ?五条と恵くんには言うなよ?」

 

『言いませんよ・・・ところで会いに行きます?』

 

黎人はチラリとつばめを見て・・・

 

「連れがいるけど、別に良いよな?プツッ」

 

そういい電話を切るとつばめの手を掴み

 

「高いところって大丈夫か?」

 

「へ?」

 

バシュッ!!

 

その場から明星のいる目的地へ瞬間移動した。



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家入黎人は傾聴したい


久々にほのぼの回。最後はあの人が出てきます。

※タイトル別回のやつだった。訂正します。


東京某所、とあるマンションの一室の前。

 

「・・・遅いですね。」

 

家入明星、12歳

現時点で準二級術師で、五条曰く『将来性はA』というポテンシャルを秘めた麒麟児。伸びた後ろ髪を三つ編みにしてサングラスをかけており、彼の眼は十字架のような黒い模様のある瞳孔と赤い宝石のような瞳となっている。

『架眼』

あらゆる生命体の脈拍、血液の流れ、内臓の活動、脳細胞の電気信号などを見透かす明星の武器。その視力は約10キロ離れた場所にいる人間をも感知することができる。

 

「ーーーぎぃやぁぁぁぁぁあ!!!」

 

「うん?ーーってぇぇぇ!!!??」

 

「ーーー明星ぃ、そこどけぇぇ!!」

 

だが空の上から降ってきた黎人とその連れを見抜くことは出来なかった。

 

△■△■△■△■

 

数分後、マンションのエレベーターの中には黎人、明星、つばめの姿があった。

 

「何で上から降って来るんですか!!」

 

「いや、そっちの方が早かったんでな。あとこいつは子安つばめ。」

 

「あ、はい。初めまして、弟の家入明星と申します。兄が御迷惑かけていないでしょうか?」

 

「えっと、あ、大丈夫です。逆に私がマンモスレベルの迷惑かけてました・・・」

 

「ところで明星、津美紀さんが住んでるのってここ?」

 

黎人は少し古びたマンションだと思いながら明星に聞いた。掃除してないというより、避けている印象だ。

 

「えぇ。管理人の人に聞いたんですが、数年前地下アイドルが住んでた部屋で、ファンに刺されて死んで事故物件になってました。管理人さんは部屋が埋まって感謝しているって喜んでましたよ。」

 

「とんでもねぇ情報だなおい!?」

 

マンションの一室の前に立ち、インターホンを鳴らす。

 

『誰だ。』

 

「俺です。黎人ですよ。」

 

数秒経たぬうちに、ドアが開いた。

 

「やぁ久々だな、明星くんに黎人くん。ん、そちらの方は?」

 

現れたのはシャツを着た金髪の青年。左眼にはオレンジの縁の片眼鏡。そして何徹目かも分からないほどに隈が深くなっていた。

 

この人が、輝沙羅だ。

 

「はじめまして、子安つばめです。黎人くんと友達です。」

 

「うぅん?ほっほーそうかそうか、黎人くんに友達がいたとは驚きだな。」

 

黎人はムカっとした。コイツが天元様亡き後の結界の運用やその他諸々をやっていなければ、必ずやこの人格破綻者を五条悟の前に引き摺り下ろしてやろうと。

 

ちなみに明星はクスリと笑い、黎人にギロッと睨まれた。

 

「アンタよりは多いですよ。津美紀さんは?」

 

「買い物だ。途中で妹くんに会ったとLINEしてきたぞ。」

 

「やっぱ東京は知人に会う確率高いんですよ・・・五条さんと伏黒さんから逃げるなら地方に逃げた方がいいですよ?」

 

「だが、津美紀がどうしてもとな。絶縁したとはいえ、やっぱり家族が心配らしい。」

 

((心配しなくてもいいと思うんだけどな・・・))

 

「・・・んで、中に入っても?」

 

「勿論、どうぞ中へ。あ、玄関でセンサー鳴るかもだが、それは空港の手荷物検査みたいなものだから安心しろ。」

 

入った途端、巨大なサイレンが靴棚から現れけたたましい音を立てて鳴り響いた。

 

ビ〜〜〜〜〜!!!

 

 

「いやうるさ。」

 

■◽️■◽️■◽️■◽️

 

ここは輝紗羅の部屋。壁や床さらには天井に隙間なく埋められた数式、本やら設計図やらが散乱してもはや押し入れ状態になっていた。輝紗羅は椅子に座り、黎人らは物置台にされていたソファに座った。

 

「・・・すごいですね。」

 

つばめが呟く。

 

「ふふっ、そうだろう?ここには日本全国のみならず我が母九十九由基が収集した海外の、つまり世界各国の呪霊の発生ポイント、その時期、呪霊発生に至る背景などの情報が詰め込まれている。」

 

「というか、改めて見ると海外も結構呪霊が多いんですね。まぁ日本と比べたら少ない方なんでしょうけど。」

 

「いい着眼点だな明星くん。日本は海外に比べて呪霊が多い。これは呪術師の数に比例しているが、俺は呪霊をノーリスクで祓う上により天才的で画期的な有効活用を思いついた!」

 

決めポーズを決め注目を浴びる輝沙羅。黎人はハァァァァァァァァァァっとため息をつきながら

 

「・・・呪力のエネルギー化でしょ?去年羂索が各国首相に吹き込んでたやつ。」

 

「good!!黎人くん百点満点フルスコアだ!!」

 

「アンタのお母さんが1番危惧してるやつだろそれ?生きた人間がエネルギー源になるんだ。いや、1人の呪術師から生み出される呪力エネルギーを100とするとその100で1家庭1年分のエネルギーを賄える。それができるなら、アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスに中東諸国が今まさに日本に攻め込もうとしてもおかしくないですよ。」

 

「そう、そこなんだよ。それは呪力は呪術師からしか生み出さない場合に限った話さ。だがこの問題のリスクを100から0に変える方法がある!!それが呪力の塊、呪霊を使った発電法だ!!名付けて呪霊変換発電法(CurseConvertGeneration)!!!はい、拍手!!」

 

「「「オーパチパチ」」」

 

棒読みかつ適当な拍手が、かえってこの部屋を静かにさせた。輝紗羅は眉間に皺を寄せながら、怒鳴る。

 

「・・・おい棒読みなのは何故だ1人ずつ理由を言え!!」

 

「なんか、凄い話すぎてついていけまセントラル・パークです。」

 

「以下同ブラジリアです。」

 

「そのままだとgenerationが世代って訳されるかもだぞ。」

 

「クッッソォォォォ!!!やはり科学の進歩には反対意見がつきものかぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

(((やっぱイカれてんな。)))

そう3人は思った。

 

ガチャ!

 

玄関のドアが開き、トタトタと買い物を終えた津美紀さんが入ってきた。

 

「あ!黎人くん明星くん久しぶり〜!!ダーリン♡ただいま〜♡」

 

輝紗羅に足早に近づき、ギュッとハグする2人。五条悟と伏黒恵が見たら卒倒するであろう光景が目の前に広がっていた。

 

「おうおう熱々ですなぁ。お、つばめちゃーん。それからカス1号に2号。」

 

「もう、悪口は良くないよ?」

 

買い物袋を持った美夜と圭が入ってきた。

 

「あ、圭さんお久しぶりです。」

 

圭とハグする明星。美夜が嫉妬の舌打ちをした。黎人は頭に浮かんだ疑問を問う。

 

「あれ、お前圭ちゃんに会ってたのか?」

 

「えぇ。1ヶ月前に家に遊びに来てたんですよ。また一緒にマイクラしましょう。」

 

「うん!!家入家の人って優しいんだよな〜未成年飲酒とか喫煙とかしてるけどねー」

 

美夜と圭ちゃんの存在に気がついたつばめが近づいてくる。同じ学園内で何度か会ったことがあるらしい。

 

「あ、美夜ちゃんに圭ちゃんこんにち殺法!!」

 

「こんにち殺法!!」

 

「こんにち殺法返し〜あ、みんな今日は女子会お泊まりしちゃおうよ〜。男どもはとっとと立ち退きな。」

 

「「「うーす。」」」

 

部屋を出た黎人と明星、輝紗羅は津美紀と名残惜しいのか最後にハグをしキス、多分深いほうをして部屋を出た。

 

「・・・夕飯奢るから今のはオフレコで頼む。」

 

「じゃあ叙々苑行きましょう。」

 

「寿司食べたいです。」

 

「貴様ら図太いな?」

 

▲◽️▲◽️▲◽️▲◽️

 

週明けの放課後。

 

「え?妹さんが朝帰り?」

 

「・・・昨日圭ちゃんが帰ってこなかったんだ。んで今朝外泊したのかって聞いたら無視されてしまったんだ。」

 

「会長。そういうときは黙って赤飯炊いてあげないと。」

 

「ふざけんな!!俺は認めねぇよ!!?」

 

「お?会長と石上だ。」

 

ベンチに座っていた2人に歩いていた黎人が近寄る。どうやら昨日のお泊まりの話らしい。3人揃って歩きながら、石上が本題を切り出した。

 

「黎人、お前の妹って昨日帰ってきたか?」

 

「あーー確か親戚の家で女子会開いたらしい。写真送られてきたぞ、ほーーゴスッ!!/ゲシッ!!

 

「ーーーギャァァァァァァァアア!!!!」

 

「「えぇぇぇ!!?」」

「ん?」

 

その日、白銀は1人の少女の頭を踏み、黎人は少女の腰、というか尻にあたる部位を蹴り上げた。





眞紀さん、原作より扱いが酷い。


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四条眞紀は嘆きたい/釘崎野薔薇は気づきたくない


キャラ崩壊・・・まぁ原作の時点で崩壊してるからいいかな?


生徒会室にて

 

「イタタタ、頭だけでなくお尻を蹴り付けるなんてぇメソメソ〜」

 

尻に手を押さえながら座る少女の反対側に、黎人ら生徒会男子ズ3人は座った。

 

「・・・おい石上。アイツ誰。」

 

「いや知りませんよ。多分会長と同じ学年なんじゃ?」

 

「ふん!!とんだ不調法者ね。私の名は四条眞紀!!学年3位の天才で正当な四宮の血筋を引く者よ!!!」

 

(・・・学年3位なの?この人。)

 

(実質お前がミスらなかったら4位なんだけどな?)

 

「四宮の血筋を引くって・・・四宮先輩の親戚?」

 

「えぇ、まぁそうね。再従祖叔母にあたるわ!!」

 

もうそれは他人だろ、とは言わなかった。伏黒は黎人の遠い親戚だし、禪院真希と真衣は叔母だし、元禪院家当主の禪院直毘人は黎人の大叔父だ。他人のようで親戚のような関係はよく分かる。

 

「へぇーーというか四条先輩はあそこで何を?」

 

「そんなことも分からないの?私はあそこでーーーーーーーーーーーーーーーーー何してたんだろ。ウッウッ・・・」

 

ソファの上で泣き崩れる四条眞紀。

 

(あれ!!?何!?何なの!?)

 

(・・・まってちょっと分かったかも。)

 

(何だ!?何が分かった!!?)

 

黎人にはもう分かっていた。

 

それは3ヶ月ほど前に恋愛相談をしにきた翼くん。その後何とか告白して付き合うことが出来たらしく、何度も街中で見かけることがあった。しかも、柱や建物の後ろで泣いている四条先輩の姿も見かけた。

 

(これ、めんどくせーーー)

 

だがその答えによっては隣に座る白銀が殺されかけない。黎人は考えを巡らせ安全策を選んだ。そして彼が選んだ選択肢は・・・

 

「・・・何があったんだ?吐いて楽になれ。」

 

あえて気づいてないフリをして情報を確実なものとすることだ。

 

数分後

 

「なるほど、四条先輩はその人のこと好きなんですか?」

 

「だから、好きじゃないって!!まぁ、あっちがどうしてもっていうなら考えてあげなくてもいいけど?」

 

なんかどっかで聞いたことのあるようなセリフだ。血は争えないな、と黎人は思った。

 

「いや好きなんでしょ!?」

 

「好きじゃないって!!!」

 

「本当は好きなんでしょ!!?」

 

「・・・うん/////」

 

「あ、思ったより可愛いなこの人!!」

 

「ちょっと同意。」

 

なるほどコレがツンデレか。乙骨先輩が真希さんにデレデレな理由が分かる。けど歌姫さんが五条悟に向ける感情はツンだけだと思う。

 

「というかそれってただの甘えじゃないですか?好きだった人が先に告白されて別の人と付き合っちゃったんでしょ?好きなら自分から告白すべきでしょう。相手が同じ気持ちだったならなおさらです。永遠に結ばれないですよ。」

 

「そうだそうだ何なら略奪でもやっちまえ。WSS(私が先に好きだったのに)になっても知らねーぞ?」

 

石上と黎人はしれっと白銀を傷つけた。

 

「はぁ〜〜嫌だ嫌だ。これだから庶民は野蛮で困るのよね。私がそんなはしたないことをするわけないでしょう?」

 

(え・・・めっちゃ呆れられたんだけど。不敬ぞ?)

 

(どうする黎人。処す?処す?)

 

(おいお前ら!!)

 

「学生のお飯事みたいな恋愛なんて長続きしないの。どうせ放っておけば勝手に別れるわよ。それまでゆっくりお茶啜って待てばいいのよ。」

 

「へぇーーーー」

 

(四宮先輩と違って大人びてるな〜コイツ。五条悟に爪垢煎じて飲ませてあげたい。)

 

「だから別に、彼が誰と付き合おうと構わないの・・・うっ・・・最後に私のそばにいてくれたら、それで十分よ・・・うっ。」

 

「先輩は心が強いですね・・・僕だったら考えただけで死にたくなりますよ?もしデートに行っても相手は『前の子はこうだったな〜』とか比較されちゃうんですよ?」

 

「ーーーー何で、そんなこと言うの?」

 

「おい石上ぃ!!?」

 

「優、踏み抜いちまったな、地雷。安心しろよ地雷は踏んですぐには爆発しねぇよ。」

 

「心配できないんですけど!!?」

 

焦る3人を尻目に、四条先輩は青ざめながら震えた声を絞り出した。

 

「あぁ・・・そういえば、あの2人今度の夏休みにディ●ニーランド行くって言ってた・・・もう彼とディズニー●ンドに行けない。」

 

「安心しろよ、その時はUS●に行けばいい。」

 

「そ、そうね・・・というか、こんなことになったのは彼に変なこと吹き込んだ奴よ!!!」

 

(あ・・・察した。)

 

「"壁ダァン"とかいうあの変な技よ!!!それまでいい感じに距離を詰めていたのに!!!アレがなければ今頃は・・・奥手な彼にアレを吹き込んだやつの皮を剥いで鞣してやる!!!もう四の五の言うのはやめたわ!!略奪だろうがなんだろうがやってやるわ!!!」

 

隣の白銀から生気を感じない。これは己の死を悟ったか・・・しょうがないなぁ?首切り台に登った友達に、引導を渡してやろう!!

(※善意)

 

(うわ・・・黎人が獲物を見つけた狼みたいな顔をしてる!!?)

 

「協力・・・してくれる?」

 

「はい。壁ダァンを吹き込んだのかいちょーーー「れいとぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

△▲△▲△▲△▲

 

番外編『釘崎野薔薇は気づきたくない。』

 

釘崎野薔薇。東京都立呪術高等専門学校2年生にして準一級呪術師の肩書を持つ2年の紅一点。相棒は五寸釘と金槌。去年の渋谷で片目を失い生死の境を彷徨ったが反転術式を会得。その後京都コロニーを平定し、105ポイントを手に入れる。新宿で羂索に大ダメージを与えた。

 

そんな彼女には悩みがある。それは虎杖悠仁に関する悩みだ。

 

「お、釘崎〜どっか飯行かん?」

 

「は?今から任務なんだけど?」

 

「え〜〜」

 

きつめの態度で食事の誘いを断った釘崎。

 

〜〜〜〜〜

釘崎フィルター

「お、釘崎〜何処か飯行かん?俺奢るよ⭐︎⭐︎☆」

〜〜〜〜〜

 

(何でアイツがキラキラして見えんのよぉぉぉ!!!?)

 

これである。実は去年の秋からこの現象が続いておりどんどん悪化しているのだ。(ちなみに虎杖は奢るとは言っていない。言わなくても奢るのかもしれないかもだが。)

 

(というか何でアイツだけなのよ。まさか、私アイツのこと好きなの?無理無理無理無理無理無理無理。あのハナクソ食ってそうな脳筋ゴリラのことが?ないないないない。ゾウがステップダンス踊っても天と地がひっくり返っても有り得ない。無理無理無理無理無理無理。)

 

という邪念を払うべく、彼女は任務に集中することにした。車に乗り暗くなりかけの空を見上げる。運転手の新田に声をかけた。。

 

「ねぇ新田ちゃん。」

 

「どうしたんスか?野薔薇ちゃん。」

 

「実は〜〜〜ってなわけで、これってなんか呪いかけられてんのかなぁ。」

 

「野薔薇ちゃん・・・それって惚れてんスよ!!!」

 

「は?え?は?」

 

 

「ハァァァァァァァァァァ!!!!???」

 



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釘崎野薔薇は認めない

午後6時

黎人はぐてぇっと自宅のソファに溶けた。

 

「疲れたァァァァ・・・」

 

あの後白銀が四条先輩に殺されかけた。

 

『お前が犯人かぁぁぁぁ!!!』

 

『いやぁぁぁぁあ!!!?』

 

トイレットペーパーを片手に白銀に飛びかかる四条。トイレットペーパーで首を絞められ絶叫する白銀。

 

『石上!!止めるぞ!!!』

 

『イエッサッァァァア!!!』

 

止めに入り四条先輩を羽交い絞めする黎人とトイレットペーパーでミイラにして拘束する石上。

 

『ムーー!!ムーー!!』

 

『落ち着け!!どうどう!!』

 

『ーーーあ、あ、あ』

 

扉の隙間から見る伊井野。その後熊手を持った彼女が生徒会に乱入。なんやかんやの大乱闘秀知院ブラザーズを経て何とか事態は収まった。ちなみに伊井野も四条先輩に気に入られて4人とも友達認定された。

 

▲△▲△▲△▲△

 

「疲れーーーー『あ〜こんな村嫌ダァ〜おらこんな村嫌ダァ〜』ーーんあっ?」

 

どっかで聞いたような曲の着メロがスマホから流れる。

 

「・・・釘崎?はい、もしもーー『来い!!』

 

 

 

 

 

「え〜これより第一回緊急女子会を開始します。司会は釘崎野薔薇様の1番舎弟こと、雨宮静流が務めさせていただきます。副司会は男子の家入黎人が務めさせていただきます。それでは黎人さん何かご挨拶を。」

 

「・・・帰っていい?」

 

「それでは釘崎野薔薇様、今回の招集の議題を。」

 

「ねぇ聞いてーー「黙れ殺すぞ。」ーーわぁッ・・・あッ・・・」

 

参加者は、釘崎野薔薇、家入黎人、雨宮静流、禪院真希、星綺羅羅。

 

「最近、虎杖がキラキラして見えます。真希さん、何らかの呪いでしょうか?」

 

「・・・・惚れたんじゃね?」

 

「え〜☆野薔薇ちゃん、悠ちゃんに恋しちゃったの〜?」

 

「違いますっ違います!!!私がアイツに惚れるわけありません!!!天と地がステップダンスしてもあり得ません!!明日富士山が噴火するくらいあり得ません!!!!神に誓います!!!つーかもし明日富士山が噴火するんだったら私虎杖に恋してるって素直に認めます!!!」

 

 

翌日

『次のニュースです。今朝富士山の麓から煙が登っているという連絡があり、地元の地質学者の意見では新しい火口が出来たのではないかとーーー』

 

「ーーーーは?」

 

『そりゃ活火山だからな。噴火はするだろ。大地の特級呪霊を祓った影響だな。んじゃ、俺学校だから。プツッ』

 

「・・・認めたか?野薔薇。お前悠二に惚れてんだよ。」

 

釘崎の方がワナワナと震える。真希の位置から顔は見えないが、釘崎の顔は赤く赤面していた。

 

「ふ、ふざっ、ふざっけんなぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

〜じゅじゅさんぽ〜

 

「〜〜てな訳で、何かの呪いかしら。」

 

伏黒「惚れたな。」

 

順平「惚れたんじゃない?僕応援するよ。」

 

狗巻「いくら〜」

 

パンダ「惚れたな。」

 

 

真希「ぶっちゃけるが、自覚すんの遅すぎね?」

 

静流「まさか野薔薇様が恋に堕ちるなんて・・・許せない、あの珊瑚頭浮気しようものなら奴の睾丸引き抜いてこの手で蜂の巣にしてくれるわ!!!」

 

綺羅羅「八つ当たりやばいね〜静流ちゃん。何でこんな性格になっちゃったの?」

 

真希「噂によると京都コロニーでやさぐれてた頃、野薔薇に殴られてそれからガチ勢舎弟になったってよ。」

 

綺羅羅「あーーあの人のお兄さん殺されて、その捜査を上司に邪魔されてたらしいからね・・・お兄さんの名前って何だっけ。」

 

真希「・・・雨宮吾郎じゃね?」

 



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家入黎人は仰天する


小説書いてくと初期の設定とか忘れちゃう。分かる人いる?


 

夏休みまであと数時間。夏の盛りの昼下がり、学年集会を残すのみ、数時間後に鳴る鐘が長い休みの始まりを告げる。

 

普通の高校生は夏を友達との爽やかな汗と楽しみで迎える。

 

だが呪術師は違う!!!

 

「あ"あ"あ"ー!!!!!!!!〜!!!!!!!!」

 

「ど、どうしたの!?声がバリエーションだよ?」

 

「7月、8月は慰霊の日終戦の日原爆投下の日もあって呪術師は繁忙期なんだよ。むしろ夏休みが終わった頃の方が休める。それに今年は研修旅行という全国の呪霊スポットを巡る地獄があるからより辛い。」

 

「へぇ・・・・じゃあお祭り行けないの?」

 

「いや、無理矢理その日は連勤に穴開けたんで行けます。」

 

「わーい!やったー!!」

 

 

 

「「「「肝試し?」」」」

 

「はい!!1学期最後なので学校から誰もいなくなるじゃないですか〜TG部が校長に許可とって今日の18時から21時までならオッケーもらったんですよ〜!!やりませんか!?肝試し!!!」

 

「そうですね。たまには息抜きにいいでしょう。」

(肝試し・・・会長は怖いのが苦手だと黎人くんが調べてくれたわね。吊り橋効果を狙う絶好のチャンスだわ!!)

 

「なら俺も参加しよう。帰り道に1人くらい男がいた方がいいだろう。」

(肝試しか・・・確か黎人が四宮は怖いのが苦手だと言っていたな?ならば吊り橋効果を狙う絶好の機会だ!!)

 

こいつら、既に黎人の手のひらの上で転がされていた。

 

「じゃあ、僕も参加します。」

 

「あーーーーつばめ先輩も誘っても?先輩肝試ししたいって言ってたので(嘘)」

 

(はっ、オモチャ2人をくっつけるだけでなくつばめ先輩と2人きり。肝試ししたいって藤原に思わせるのに苦労したが・・・まさに、計画通りだ!!)

 

何処ぞの連続殺人犯並にニヤリと笑う黎人。

 

(・・・・ん?てか何で俺、つばめ先輩と2人きりになりたいと思って・・・)

 

黎人がこの気持ちに気づくのはもう少し先であった。

 

△▲△▲△▲△▲

 

7月24日午後19時

 

生徒会メンバーと黎人とつばめは()()()用意された懐中電灯を手にして藤原が主催する肝試しの内容を聞く。頭に霊媒師のろうそくライトをつけた彼女は怪しい雰囲気を出している。

 

「じゃあ!!最初はかぐやさんと会長ペア〜校内3階にある演劇部の道具入れに剣と勾玉と鏡が置いてあります!!それを持って中庭の木に貼ってあるお札を貼って持ってきてください!!!」

 

恐らく三種の神器をモチーフにした肝試しだろう。

 

てな訳でまずは白銀・四宮ペア

 

暗い夏の夜に照らされる廊下、廊下を歩いていた白銀のライトが急に点滅し出した。懐中電灯を持って内心ビビりながら進む会長と、同じく懐中電灯を持って勾玉を持ったかぐやが続く。

 

(・・・そろそろね?)

 

チカッ、チカッ!!

 

「うぉっ!?電池切れたか?」

 

(あらあら?黎人くんに頼んで電池を切れかけのものに入れ替えさせて正解だったわ?これで使える懐中電灯は私のだけーーー)

 

チカッーーチカッ!!

 

「あ、あれ?はれ!?」

 

以外!!策士策に溺れる。黎人は白銀の電池を交換すると同時にかぐやのも交換させていた。そしてここからが演劇部員のつばめの指導の結果と、TG部の腕の見せ所。

 

「会長〜〜かぐやさ〜〜ん?」

 

いつのまにか後ろに立っていたのは白いワンピースを着た女。その顔と手は墨で真っ黒に染まっていた。

 

「「ひぃ!?」」

 

「あ〜そび〜ましょぉぉぉ??」

 

「「ギャァァァァァァァ!!!!」」

 

 

 

『やったね〜2人のおかげだよつばめ先輩に黎人くん。』

 

「油断はするな。次に行くのは優と藤原先輩だ。階段の上で見下ろす体でいきな。マッキー先輩。」

 

『了解!!』

 

石上・藤原ペア

 

「だ〜れ〜〜?」

 

「「ギャァァァァァァァ!!!!」」

 

 

黎人・つばめペア

 

「今何時〜?」

 

「・・・顔に米粒ついてるぞ?」

 

「え?マジ?やっば夜食用のゆで卵おにぎりのやつだ・・・」

 

「???」

 

「あ、もう帰る時間だ。それじゃあ〜ね〜」

 

「そのまま帰るんだ・・・」

 

 

演劇部の倉庫。黎人とつばめは手分けして、"剣"を探していた。

 

「えっと、あ!これじゃない?」

 

つばめが歓声を上げる。

 

「どれどーーーー」

 

それは刀身の両側に刃を備えた、反りのない刀剣。刃長は60cm以上で、持ち手には翡翠の玉が埋められ美しく素晴らしい剣だった。

 

 

 

 

 

 

そして黎人が探し求めていたものだった。

 

「ーーーって草薙之剣じゃねぇかぁ!!!!???」

 

▼▽▼▽▼▽▼▽

 

急いで肝試しを終わらせて、生徒会室に戻ってきた黎人は藤原に怒鳴った。

 

「何であんたがこの剣持ってんだよ!?」

 

「え?確か家入くんが転校してくる前に倉庫にあるのをTG部でダウンジリングやってたら見つけて〜なんかカッコいいから校長に許可とって家に持って帰ったんですよ〜」

 

「通りでーー通りで見つからないわけだよ!!!!この学校の隅から隅まで探し回ったのに・・・じゃあ八岐大蛇の骨は?」

 

「あ〜あの蛇の骨ですか!確か中庭の木下に埋めてあったのを箱に入れて生徒会室に置いてきましたよ?会長の座ってる椅子って空きスペースあったじゃないですか〜今日のためにとっといた方がいいかな〜って!!」

 

タッタッタ〜と会長の椅子のマットを外し、木の箱を取り出す。

 

「めっちゃ近くにあるじゃねぇぇかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「つか何で俺の椅子にぃぃぃ!!??」

 

「え、ダメでしたか?」

 

「「ダメに決まってんだろぉぉぉぉ!!!」」

 

「あれ、てか家入くん何でこの剣と骨探してたんですか?」

 

「あ、それ僕も気になります。」

 

「・・・・俺は東京都立呪術高等専門学校静岡分校の呪術師ですよ。」

 

 

〜説明中〜

 

 

「〜〜〜ってなわけでこの学校に転入して呪具と呪物を探してたんですよ。返してくれません?」

 

唖然としたかぐやを除く生徒会メンバー。その中で会長が真っ先に口を開いた。

 

「現実は小説よりも奇なりというが、そういう訳があったのか・・・藤原書記、黎人にその箱を。」

 

「あ、はいーーっととと!?」

 

足が攣り、箱が宙を飛び・・・

 

ガシャンッ!!

 

「「あ。」」

 

高校二年生男子の平均体重は約60キロほど。運動をしていない白銀だが、毎朝の新聞配達や見栄を張った体育の授業のおかげで肥満体型ではない。

 

そんな彼が座っている下に置かれていた八岐大蛇の骨。

 

衝撃が少なくとも、小さな水滴が長い年月をかけて石に穴を開けるように、どんどんヒビを入れたのだ。そして、トドメの一撃。

 

「ひょっとして、壊しちゃいました?」

 

「え、これワニワニパニックじゃない?」

 

「・・・あぁ、マジでやばい。」

 

箱から溢れてくる青黒い水。そして最初は小さかったうめき声が、笑い声に変わる。

 

『ーーーアハ、アハハハハハハハ!!!』

 

バンッっと蓋が飛び、中から溢れた水。その水がどんどん人の形を作り出す。だがその人形には大蛇のような太い尾があり、その眼からは紫色の焔が灯っていた。

 

『遂に、遂に出られたぞ!!千年ぶりの現世は素晴らしいなぁ!!!?』

 

(不味いーー顕現しちまった!!!)

 

『さてと、始めようか?血湧き心踊っーーー』

 

万象操術(カオス・コントロール)神風(アイオロス)!!!』

 

凄まじい突風、八岐大蛇が完全に顕現する前に窓から外に吹き飛ばす。学園の上空には渦を巻く雷雲。

 

「俺の術式は現象を操る。こんなふうにな?」

 

万象操術(カオス・コントロール)神雷豪壮(ゼウス)!!!』

 

樹齢1000年の大樹の幹よりも太い稲妻。まさに神の鉄槌のような凄まじさを放つそれは、中庭の木々を巻き込みながら八岐大蛇を撃ち抜いた。

 

完全な実力差。なのに八岐大蛇はまだ生きていた。それに黎人は内心驚いていた。今まであの攻撃を防げた敵はいない。漏瑚という呪霊も天野河天音も両面宿儺も防げなかった。なのに何故?

 

まぁどうでもいい。

 

こいつの呪力はあと残りわずか。あとは反転術式で祓えばいい。

 

「最期にいうことは?」

 

やっと八岐大蛇が完全に顕現した。白い前上がりのボブの髪、神社の神主のような恰好に下半身は白と黒の模様の付いた蛇の胴体。顔には八つの勾玉を表した入れ墨と額には第三の目。

 

目は蛇の瞳孔の周りを紫色の宝石のような角膜。額に浮かぶ冷や汗が、彼が観念したことを告げていた。

 

『ーーーふっ。』

 

彼はため息をつき、そして・・・

 

『すみませんでしたごめんなさい祓わないでくださいお願いします何でしますから許してください靴舐めますから祓わないでくださいれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろ「キッショ!!」ーーひでふっ!!』





〜じゅじゅさんぽ〜
みんなの反応
御行・めっちゃ驚いているが、受け入れようとしている。

藤原・なんかついていけないけど、ヤクザみたいなものかなと思ってる。大体合ってる。生可愛い後輩なので受け入れるつもり。

石上・自分に唯一の友達だから何でも受け入れる。呪具を回収した黎人がこの学校を去るのではと不安。


いい友達だね。


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家入黎人は■■せたい


1学期編終了です。次は研修旅行編と2学期編になります。




「お前ふざけてんの?」

 

『ふざけてない!!我は今年まで死ねないのだ!!!』

 

「・・・何でだ?」

 

『推しカプの行く末を見守るまで死ねん!!』

 

「・・・推しカプ?まさか・・・輝紗羅先輩と津美紀さんのことか?」

 

『誰だそいつら!!?あのかぐや姫と吊り目のことだ!!!』

 

「ーーーーちょっと待ってろ。もしもし五条先生?」

 

数秒後

 

スヤスヤ眠っている小学生の男の子を背負った五条が現れた。

 

「ん?これどーいう状況?」

 

「あ、五条先生。実はかくかくしかじか。」

 

「これからうまうま。ふーん、やっぱ●Uペイって使った方がいいんだ。」

 

絶対通じてない。黎人は最初から疑問に思っていたことを口にする。

 

「ところで・・・その子は?」

 

「あ"、えーと、し、親戚の子・・・これだけは言っとくけど僕の子じゃないからね?縛り結んどこうか。」

 

絶対に五条の隠し子だ。ツートンカラーの髪だけど五条悟にめっちゃ似てるもん。

 

「・・・ふーん、分かりましたよ、歌姫姉さんと歌姫姉さんと親しい人には言いません。」

 

「感のいい子供は嫌いじゃないね?」

 

五条悟、言わないことを条件に何でもいうことを聞く縛りを結ぶ。これが後に彼を苦しめることになるとは知らない。

 

「で、コイツどうします。」

 

「あれ?A●ペイの話じゃなかったんだ・・・祓う以外ないでしょ。やっちゃえ!」

 

『待て待て待て!!せめて来年の春まで待ってくれ!!!?面白い展開が待ってるって我の"眼"が言ってるから!!!!何ならお前に我の力全部やる!!!"眼"も術式もだ!!!!』

 

((信用出来ね〜〜))

 

「俺は今術式を2つ持ってる。3つめなんか持ったら頭はち切れるだろ?」

 

『いや、我が肩代わりする。故に問題ない。』

 

「そもそも"眼"ってなんなの?確かに妙な呪力の塊して底が見えないけど、僕と黎人の六眼とは違うものでしょ?」

 

『ふんっ、教えてやろう。我の"眼"は『宙眼(くうがん)』といって、幾多の未来が見ることができるのだ!!あらかじめ言っとくが、未来を変えることはできん。回避することは出来るがな?』

 

「・・・なるほど。黎人コイツと縛り結べば?」

 

「先生・・・とうとう脳が逝っちまったか・・・去年あれだけ前頭葉ぶっ壊した影響か。」

 

「黎人、僕怒るよ?」

 

「冗談はさておきーー「冗談で済ますかどうかは僕が決めるからね?」ーーコイツとどういう縛りを結べば?」

 

「黎人はコイツを祓わない代わりに、コイツの力を貰うって縛りにすればいいさ。何なら黎人本人を含む誰かに危害は加えないってやればいい。」

 

『貴様頭が回るな・・・羂索の入れ知恵か?』

 

「あ"っ?あのゴミ雑巾と友達か?」

 

『つまらん戯言を!!誰があんな愉快犯を知り合いにしたいと思うか!!?』

 

「ははっ、奇遇〜んじゃ、僕帰るね。あ、黎人の友達近くまで来てるから、とっとと用事済ませといで〜」

 

どうやらあのメロンパンは呪霊にも嫌われてるらしい。そして俺は五条悟に殺意も湧いた。あの戦犯性犯罪者、隠し子がいるくせに歌姫姉さんに手ェ出しやがったら殺す。

 

『ふん?それにしても貴様は中々面白い未来が待ってそうだな?最前列で見るのは悪くない。どれ、教えてやろうか?貴様はーー』「知るか。自分の未来なんて興味ないが、お前の企みは俺が止める。とっとと眼に入れ。」

 

『・・・ふっ。では取引成立だ。』

 

 

 

 

次の瞬間、眼に激痛が走った。髪留めが解け、オールバックにしていた前髪が全て垂れ下がる。

 

「ぐっーーーがぁぁあ!!!」

 

眼の痛みが過ぎ去り、近くの噴水の手すりをつかみ水面を見る。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

青い左眼が光り輝き、紫色の右眼が煌びやかに灯っていた。

 

「黎人ー!!大丈夫かっておいぃ!!!?」

 

「え、黎人くん写輪眼を会得したんですか!!?」

 

「写輪眼は赤色だろ・・・ちょっと呪霊と取引したんですよ。殺さない代わりに力をもらう取引を。」

 

「黎人くん大丈夫!?怪我はない!?」

 

「はい大丈夫ですよ。つばめ先輩・・・今日はお開きにしましょう。詳しい話はまた今度、生徒会メンバー全員が揃った時にしましょう。」

 

 

 

 

 

翌朝、黎人は洗面台で驚いた。

 

鏡の向こうに白髪の自分が立っている。それに目の色が左右反対で前髪の向きも違う。ニヤリと笑った自分、八岐大蛇だった。

 

『貴様、あの女に情が湧いているな?』

 

「・・・何のことだ。」

 

『しらばっくれるでない。貴様はあの女に今まで家族にしか向けたことのない感情を抱いている。そうだろう?』

 

「例え・・・俺がつばめ先輩にそういう感情を抱いていたとしよう。だがそれでつばめ先輩がその感情に応えてくれると思うか?くれるわけないだろ。」

 

あのお人好し先輩のことだ。自分より良い人がいるからと振るに決まっている。そのせいで自分が辛く悲しいと胸に抱いても。

 

『・・・いいぞ、面白い。で?おまえはどうしたい。』

 

「だから"告らせる"。

 

俺はこの一年、つばめ先輩が卒業するまでの時間。

 

あと約3ヶ月と半年・・・

 

俺は、

 

家入黎人は告らせたい。」





主人公のイメージ画まだ現時点の下書きです。


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番外編 天界のじゅじゅラジオ①

 

「「天界のじゅじゅラジオ!!!」なのじゃ!!」

 

「えー猿どもの皆さんこんにちは。私は夏油傑。元最悪の呪詛師でーす!!」

 

「元星漿体の天内理子なのじゃ!!!」

 

「ところでなんで私たちここにいるんだろう。確か流れ的には研修旅行編だよね?」

 

「この間の最新話でお気に入りの登録数がガクンと減ったからじゃろ?あのせいで作者の制作意欲がゼロになってしまったからな!!」

 

「メタい話はやめておこう?取り敢えず、この箱に入った紙の質問に答えていけばいいんだね?」

 

「ちなみに既に感想欄で答えてる質問も返してみんなに共有させていきますし、作者が現実の友達らから質問されたことにも答えるぞ!!」

 

「えっーーと、まずは1つ。これは感想欄で言われてたことだね。」

 

・来栖ってストーカーなんですか?

 

「あー天使の受肉体のことだね。」

 

「いや、勝手に部屋に入って洗濯掃除料理されてたらもうストーカーなんじゃないか?」

 

「うーん、伏黒くんが嫌がっていたら話は別なんだけどね?伏黒くんは来栖さんを受け入れちゃってるんだよね〜彼にとって彼女は何なんだろうね。」

 

「えぇ・・・なんか、そういうもんなの?」

 

「理子ちゃんは、黒井さんに勝手に部屋に入って掃除されたりしたことある?彼にとってはそういうものなんだよ・・・流石はプロヒモの息子だね。」

 

「さて気を取り直して・・・おっ、今度は友達からの質問じゃ!!」

 

・黎人って禪院の家系図のどの位置にいるんですか?

 

「あー、大体こんな感じかな?」

   

   血縁上の曽祖父祖父母

    |ーーーーー|

   直毘人    扇

    |     |

  うんこクズ   |ーーー

         |   |

      真希、真依  真佐ーーー梅

                |

            黎人、美夜、明星

 

「このうんこクズって誰じゃ?」

 

「うんこクズはうんこクズだよ。」

 

・パパ黒は生きているんですか?

 

「ーーーちっ、イタコの婆さんが下ろして暴走した後に伏黒くんと戦って自我取り戻して、大阪コロニーに行ったよ。ちなみにそこで呪霊になったうんこクズと戦って『誰だっけ?』て言われて斬り殺されてた。」

 

「なんかうんこクズが可哀想に思えてきた。」

 

「理子ちゃん?あいつにとってはこれがご褒美さ。さて次の質問。」

 

・黎人は2つ領域展開が使えるんですか?

 

「そうだね。まず万象操術を生得領域に使う『輪廻宙処』は悟の領域展開の外郭を作らないで術式効果で流れなくするやつだね。宿儺の領域とは違うけどそれくらい強いよ。ただ悟みたいに何度も使うのは無理だね。」

 

「そして埜亜乃方舟を使うのが『全命螺廻(ぜんめいらかい)』じゃ!!これは外郭を閉じる領域じゃが、人の遺伝子を分解して別の遺伝子を組み込むことができる領域じゃ!!!両方とも落花の情じゃ防げんぞ!!!」

 

・美夜ちゃんは何で百合の道に入ったんですか?

 

「本当は伏黒くんが初恋の男性だったらしいんじゃ。それで一生懸命手作りした生姜焼きを渡そうとしたら五条に食べられてしまったらしい。」

 

「悟・・・」

 

・美々子と菜々子は死んだんですか?

 

「2人とも無事だよ?今は沖縄にある私の別荘に住んでるらしいね。」

 

「懐かしいのじゃ・・・ナマコって内臓出すって知ってたか?」

 

「えぇ・・・それ私も知らなかったよ。」

 

 

 

「今回はここまで。あと挿絵は完成したら余白のところにいくつか掲載するので、作者を馬車馬の如くしごきますね。」

 

「絶対見るのじゃぞ〜!!あと感想、お気に入りにしてくれた人ありがとうなのじゃ!!!!あと登録者ふえてほーー何じゃこのカンペ!!!?」

 

「おい作者、私情を混ぜるな。」

 

挿絵

・家入黎人、八岐大蛇ver

 

【挿絵表示】

 

 

「彼が3歳の頃に一度会ったことはあるよ。」

 

「何で右側は白髪なのじゃ?」

 

「術式を発動すると白くなるんだ。まだ本編では出てないけど。普段は黒いよ。両目は悟みたいに包帯を巻いてるね。」

 

「あいつ厨二病にでもなったのか?」

 

・家入美夜

 

【挿絵表示】

 

 

「何か硝子に似たような気がするね。」

 

「産みの親より育ての親ってやつじゃな?」

 

・家入明星(姉妹作『愛と呪いは小説より奇なり。』の15歳ver)

 

【挿絵表示】

 

 

「何で帽子を被っておるのじゃ?」

 

「・・・作者の趣味らしいよ。」

 

・領域展開『輪廻宙処』

 

【挿絵表示】

 

 

「入ったら終わりの領域か・・・巻き込まれたくないね。」

 

「そういや夏油は使えんのじゃろ?領域・・・夏油?ちょっーーいや!?ギャァァァァァ!!!」

 

・特級仮想怨霊『八岐大蛇』

 

【挿絵表示】

 

 

「未来が見える目、彼は一体何が目的なんだろうね。ねぇ?理子ちゃん?」

 

「ゼェ・・・お前なァァァァ!!!」

 

 



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研修旅行編
家入黎人は嘆きたい


新章スタート
前章の最終話から2日後からスタートです。


 

夏の夜というのは昼間照りつける日光の余韻が残り蒸し暑くなる。だが、この部屋には冷房の空気以外に空気を極限まで冷やす存在がいた。

 

「は?」

 

家入黎人の義母、家入硝子だ。

 

彼女はキレている。理由は聞くまでもなく黎人が勝手に呪霊と取引したことだ。呪霊と取引してしっぺ返しを喰らったのは例がないわけじゃない。吉野順平は真人と取引して殺されかけ、与幸吉は羂索と真人と縛りを結んだものの縛りを破られ、口封じに殺されかけたが九十九由基に命を救われた。

 

「・・・ごめんなー「黙れ。」ーいっつ!!?」

 

テーブルに乗せていた両手にメスが突き刺さる。

 

(不味い・・・かなりキレてる。)

 

『貴様の義母か?中々肝が座っているな。』

 

首に巻き付いているのは紫の眼を持つ白と黒の蛇。八岐大蛇、『八岐(やた)』はこの姿で顕現するようになった。

 

「黙ってろよ呪霊。反転術式で崩壊させるぞ。」

 

『すみませんごめんなさい御母様。』

 

「全く・・・五条に呪霊と取引させられただと?私を馬鹿にするのもいい加減にしろ。相談せずに勝手に行動するからややこしくなるんだ。このバカ息子。」

 

「言い返す言葉が、ありません。」

 

「兄さんが謝るの初めて見た。」

 

「ほんとカスね〜あの愚兄。」

 

面白い空気を察して集合した家入ファミリー。

酒とヤニカス(硝子)

包帯目隠し(黎人)

眼帯百合娘(美夜)

プリン大好き(明星)

 

「お前たちにも言ってんだぞ。美夜、明星。」

 

「「チッ。」」

 

「小遣い3千円マイナス。」

 

「「申し訳ございませんでした。」」

 

「取り敢えず友達にはもう話したんだろ?ならもういいさ。本当の友達ってのは、そういう複雑な事情も受け入れてくれるからさ。」

 

「・・・はい。」

 

 

その日の夜。翌朝の支度をしながら八岐を問いただした。

 

「・・・で、お前の目的って何だ。」

 

『・・・・推し活がしたい。

 

「は?なんて?」

 

推し活がしたいのだ!!!

 

「ーーは?」

 

『大体いい加減にしろ!!?我はただ紳士淑女が惹かれて恋して共に道を歩むのが見たいのだ!!!だから現時点で7()()、7人の女と7人の男をくっつけた!!!なのに、8人目はーーーー我を淑女を喰らう怪物みたいに言って男に殺させたのだぞ!!!?羂索がいなければこの世から消え去っていた!!!!その後アイツと交友関係を持ってしまった故に大変な目に遭わされてしまったんだ!!!』

 

「・・・まぁ、心中察する。」

 

やはりあのメロンパンはクソ

 

『だから、せめてあと1人。あと1人の恋を見守るまで死ねんのだ!!!あの、()()()()()という淑女の恋を!!!!』

 

「ーーーー」

 

やばいちょっと面白がって恋路めちゃくちゃに仕掛けたの俺だ。急いで軌道修正しないと俺のせいで特級呪霊が暴れる。

 

『呪術師、黎人といったな。貴様が我を祓い清めたければ、我の願いを叶えて見せよ!!!』

 

何で、俺の周りはこうも極端な奴が多いんだろう。黎人は神を呪った。

 

▼▽▼▽▼▽▼▽

 

呪術高専研修旅行

 

それは2週間の日程で日本各所の呪霊の発生スポットを北から南へ巡っていく今年から始まった五条悟企画の弾丸ツアーだ。

 

キャリーケースを引っ張りながら、髪を下ろし両目を包帯で隠した黎人が集合地点である屋上を目指す。

 

羽田空港の屋上。人払いの済んだそこには三名ほど一年生が積み上げられていた。

 

そしてその後ろには・・・

 

「あわわわ・・・」

 

は?

 

「というわけで、彼女のことが大好きな家政婦さんに呪われてる子安つばめさんで〜す。」

 

何でここにつばめ先輩が?

 

「「「・・・早く言ってくれません?」」」

 

「今年の一年は気が短いな。」

 

「しゃけしゃけ。」

 

「お、黎人くんだ!!いや〜要ちゃんと有菜さんに誘われて・・・五条さんもOKって言ってくれたから来ちゃった!!」

 

クソ・・・あの自殺マニアと変態シスターと29歳児め。

 

「たっくーーー何ですか秤先輩。」

 

金髪に染めたドレッドヘアの男と唇や耳にピアスをつけた男の娘がニヤニヤ笑いながら近寄ってくる。東京校4年の『秤金次』と『星綺羅羅』だ。

 

「おいおいすみにおけねぇな?黎人よぉ〜彼女出来たんならそう言えよ?」

 

「彼女じゃないです。」

 

「えっ、彼女じゃねぇの?」

 

「"まだ"彼女じゃないですよ。」

 

「ふーんまだねぇ?」

 

「・・・言わないでくださいよ?男の娘とパチカス。」

 

「「へいへーい。」」

 

その時、黎人の携帯が鳴った。

 

プルプルプル!!!

 

「ん?冥さん?」

 

『あぁ、黎人くん?この間のPS●の件で話があってね。今日出張でインドに行くことになってるんだよ。代わりをしてくれるとありがたい。あとそれからごめんね?君の先輩の居場所情報が五条くんに漏れちゃった。多分君が日本にいない間に五条くんは君の先輩殺す気かもね。』

 

「ーーーっ!?」

 

五条の方に振り向く。

 

「んっ?にぃ(笑)」

 

ーーーくそっ、図られた。不味いどうする?九十九さんは何処にいるか分かんないし乙骨先輩もこのままじゃ輝紗羅先輩が殺される。どうする考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ!!!

 

 

待て、俺は五条悟の弱みを1つ握っているではないか。

 

「あー残念だけど、黎人は長期任務でインド行きだね。いやー残念だなーー僕はちょっと()()がーー「そういえば、五条先生。縛り結んでましたよね?」

 

「・・・え?」

 

 

飛行機搭乗口、北海道行きにて

 

「黎人ぉぉぉぉ酷いよぉぉぉぉ!!!僕仕事したくないよぉぉぉぉぉぉ!!!!やだやだ置いてかないでぇぇぇ!!!僕仕事できないもん!!僕赤ちゃんだもん!!!ばぶぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

「・・・皆さん、あんな大人にはならないでください。」

 

引率変更、東京校1年担任七海建人。副引率、東京校2年担任日下部篤哉。京都校2年担任庵歌姫。

 

「「「「「「はい。」」」」」」

 

〜じゅじゅさんぽ〜

 

旅のしおり、8月1日〜8月15日

 

北海道、五稜郭、花魁渕、クマ牧場

 

青森、恐山、青森ねぶた祭

 

福島、福島原発

 

茨城、多良崎城址、国営ひたち海浜公園

 

神奈川、しとどの窟、中華街

 

京都、比叡山、清水寺

 

和歌山、三段壁、淡島神社

 

島根、石見銀山の祓、砂丘でパラセーリング

 

広島、原爆ドーム

 

福岡、旧犬鳴トンネル

 

長崎、平和公園、ハウステンボス

 

鹿児島、屋久島

 

沖縄、全島心霊スポット巡り、沖縄美ら海水族館

 

東堂「結構ハードな日程だな。」

 

真希「なんで島根でパラセーリングすんだよ。鳥取じゃなかったか?」

 

乙骨「五条先生が間違えたんだって。左山口右鳥取、って教えたのに・・・」

 

パンダ「お、懐かしいな〜鷹の●団。」

 

狗巻「しゃけしゃけ!!」

 

三輪「た〜か〜の〜つ〜め〜って奴ですね!」

 

与/真依「全然分からない・・・」

 



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五条悟は過去の過ちから逃れられない②

羽田空港屋上、泣き叫ぶ五条悟をインド行きの飛行機にねじ込み見送った伊地知と巳乃斗と汀は雲に消える飛行機を見つめていた。

 

「・・・ねぇ伊地知。」

 

「な、何でしょう。」

 

巳乃斗が声をかける。ちなみに巳乃斗と汀は伊地知と初対面の際、五条悟にこう言われた。

 

『コイツ後輩でさ。僕に逆らえないから先にこき使っていいよ〜』

 

『え?』

 

てな訳で五条がしょっちゅう呼び捨てするため巳乃斗と汀も呼び捨てになった。伊地知は少し傷ついているが、五条さんの子供だしという事で許容している。

 

ちなみに伊地知は五条から・・・

 

『伊地知。もしあの子らの事を歌姫と硝子に伝えたら、二度と日の目を見られないようにしてやっからな?』

 

『は、はい!!!』

 

「お父さんインドに行ったんだっけ?」

 

「「その間私たち/僕たちどうするの?」」

 

「えっと、その・・・私の家、来ます?」

 

「うん、いいーー「ダメ。お父さん帰ってきたら貴方殺されるよ?」

 

『あはは、2人をお前ん家に泊めたの?お前よく息できんな。今の際だぞ?』

 

想像しただけで伊地知は胃がキュッと締まるのを感じた。

 

「あ、そうですね・・・あ、ならーー」

 

▲△△▲△△▲

 

「てな訳で私が来た。」

 

家入美夜。

先日、白銀圭との蜜月なワンナイトを終え、彼女は有頂天だった。なので伊地知の申し出に応じて秘密にする縛りも結んだ。

 

「こんにちは、五条巳乃斗です。こっちは弟の汀です。」

 

「・・・君らの話は伊地知さんとうちの兄貴から聞いたよ。結構苦労したみたいね。よく頑張ったねよしよし。」

 

汀の頭を撫でながら巳乃斗に話しかける。

 

「それにしても巳乃斗ちゃんは私と同い年か。一緒に高専通えるかもね?」

 

「はい。そうですね!」

 

にっこり笑う巳乃斗。つられて笑う美夜。

 

部屋に入るとそこにはテレビゲームをしていた輝紗羅と津美紀がいた。

 

「お、君らが美夜くんが言っていた五条悟の隠し子か?」

 

「うわ〜2人とも五条さんにそっくり!!」

 

2人は黎人から・・・

 

『五条悟がそっちの居場所を掴みやがった。死にたくないなら妹の家に避難してください!!』

 

とLINEがきたため、自宅から美夜が契約してるアパートに疎開していた。

 

「五条悟が帰ってくるまで2週間。それまでよろしく!!」

 

「よろしくお願いします。ほら汀、あいさつ。」

 

「よろしくお願いします・・・」

 

津美紀は美夜とゲームのソフトを選んでいた。

 

「大人数でやるならマリカーかマリオパーティーか・・・」

 

「みんなどっちやりたい?」

 

「「「マリカーで!!」」」

 

 

 

「ちょ、津美紀さん青コウラ投げないで!!!」

 

「なぁこれ何かな。」

 

「おぃぃ!!ボム持ったまま突っ込んでくるなァァァア!!!」

 

 

 

夕方

 

ぴ、ぴ、ぴ・・・

 

コンピュータから幾本ものコードが繋げられている青いメガネをつけた輝紗羅が汀をじっーと見つめていた。近くにいた美夜が質問する。

 

「・・・なんですかそのメガネ。」

 

「五条悟の網膜をほんの少し採取して作った簡易六眼だ。対象を10分さえ凝視して、解析すれば術式の判別くらいできる。」

 

「・・・何であんた特級認定くらわないんですかね。んじゃ、私もう帰りまーす。」

 

「あの、僕お見送ります!!」

 

「お、いい子いい子。」

 

2人が家の外に出ている間、簡易六眼による解析が終了した。輝紗羅は結果を見るやかなりホクホクした顔をした。

 

「なるほど、巳乃斗くんは魅了に関する術式。そして汀くんは不死鳥の術式か・・・・ベネ!!実験の幅が広がる!!2人とも私のもとでバイトしないか?一回のバイトで報酬は一万円だ!!!」

 

「遠慮させていただきまーす。」

 

輝紗羅の申し出を軽く流す巳乃斗は部屋を出てリビングに向かった。彼女の視線はスマホの画面に釘付けになっていた。ちょうどお風呂から上がった津美紀がそのことを質問した。

 

「・・・ん?ミノちゃん誰にLINEしてるの?」

 

「ん?カ・レ・シ♡」

 

「ーーー」

 

(うそ、巳乃斗ちゃん彼氏いるの?うわ、気になるな〜!!ってあれ?・・・相手が誰かはともかく、間違いなくーー)

 

自分の娘と思って面倒を見てきた津美紀の駆け落ち。

 

恵は自分の知らぬ間に公認ストーカーに家事洗濯させている。

 

そして蘇った筋肉ゴリラこと甚爾。

 

この時点で吐血しそうな内容なのに、本当の娘に彼氏ができたと知ったら・・・

 

『ーーーゲボバァ!!!』

 

津美紀の脳内に最悪の結果が見える。

 

(間違いなく、五条さんは死ぬ!!!)

 

「へ、へぇ〜!ね、写真ないの?」

 

「この人。」

 

「へぇ〜このひーーーえ、え?」

 

津美紀はその()()に見覚えがあった。

 

オールバックのブルーブラックの長い髪、後ろに束ねた三つ編み、そして特徴的な()()・・・

 

顔の形も目の形も微妙に違う。

 

だが()()()()に似ていた。

 

「城ヶ崎 (すぐる)っていうの。」

 

それは夏油傑の生き写しのようだった。





オマケ

五条巳乃斗


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照屋輝紗羅


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北海道・青森①


結構流れ早いし、呪術キャラのキャラ崩壊してます。

あとそれから今年のオリキャラ一年登場します。


 

虎杖は叫んだ。

 

「北海道はぁ〜!!」

 

釘崎は叫んだ。

 

「でっかいどぉ〜!!!」

 

研修旅行初日

北海道、五稜郭。

 

「おーでっけ。」

 

「五稜郭は明治に旧幕府軍と新政府軍の最後の戦争が起こった激戦地です。そのため当時の犠牲者の霊が湧き出ています。今回はグループに分かれて五稜郭全部の呪霊を祓ってください。それでは私たちは展望タワー最上階で待っています。1番早く辿り着いたグループは特別に夕張メロンを差し上げますよ。」

 

「さてバスで決めたグループに別れるぞ。」

 

数時間前

 

『各々くじ引け。グループ決めるぞ〜』

 

東堂(これは、この旅の間ブラザーと熱い友情を高め合う絶好のチャンス!!もし外れたら俺の術式で入れ替える!!)

 

真依(お姉ちゃんと一緒に全国を巡るチャンス!!外れたら構築術式でくじの番号を変える!!)

 

釘崎(真希さんと列島スイーツ巡り!!!これは絶対外さない!!!)

 

与(三輪と同じ三輪と同じ三輪と同じ三輪と同じ三輪と同じ!!!)

 

 

『んじゃ引くぞ〜』

 

『『『『せーの!!!!』』』』

 

虎杖と真希が壱と書かれたくじを引いた瞬間

 

策士1号は自分のくじを真依の壱と入れ替える。

 

策士2号は自分の壱の番号を真希と同じ壱にする。

 

この差、ほぼ同時!!

 

『はーーー弐?』

 

東堂は虎杖と同じ班になることを確信した。だがこの後、彼に残酷な運命が訪れてしまう。

 

『ブラザー!!!同じはーー』

 

『壱にゴリラ3人!?東堂を弐にして真希を参にしろ〜虎杖は壱のままな〜』

 

単純と楽、2つの効率性を重視した日下部の非情な決定が、東堂に直撃した。

 

『ーーー』

 

『おいどうした東堂ーーーし、死んでる。』

 

策士、策に溺れる。結局2人とも虎杖と真希と同じ班に入ることは叶わなかった。残る2名も望んでいた結果にはならなかった。

 

そして現在

 

「なぜ、なぜマイブラザーと同じグループじゃないんだ・・・」

 

「三輪と、同じグループが良かった・・・」

 

「お姉ちゃん・・・」

 

「真希さん・・・何で・・・」

 

壱グループ

加茂、虎杖、釘崎、狗巻、三輪、パンダ

 

弐グループ

東堂、西宮、与、伏黒、順平、真依

 

参グループ

乙骨、真希、綺羅羅、秤、新田

 

肆グループ

黎人、つばめ、篠崎、南雲、山寺

 

「んじゃ、一年どもの組分けを始めるぞ。この班は研修旅行が終わるまでずっと一緒だから泣いても笑っても変わんね〜からな。」

 

京都1年『楽巌寺典雅(のりまさ)

 

京都の学長の孫。肩に担いだエレキギターと後ろに流すドレッドヘアが印象的だ。教育実習中の東堂の生徒であり、担任交換を希望している。

 

「弐はやだ弐はやだ弐はやだ弐はやだ弐はやだ弐はやだ弐はやだ弐はやだ弐はやだ弐はやだーーー」

 

「はい、弐だな。よろしくなマイストゥーデント。」

 

「嫌だァァァァ!!!!」

 

「肺活量すご。」

 

「さすが鍛えてるだけあるな。」

 

京都1年『蟻ヶ谷莉乃(りの)

 

呪術名家の1つ、蟻ヶ谷家の1人。基本的に物静かで必要なこと以外何も話さない・・・なのだが実はコミュ障なだけで本人はもっと人と喋って仲良くなりたい。蟻を操る術式を持つ。

 

「・・・・」

 

「よし肆グループだな。」

 

「蟻ヶ谷ちゃ〜んよろしくね〜!」

 

「・・・・ヨロシクオネガイシマス。」

 

((声ちっちゃ!!))

 

東京1年『我那覇瑠維(るい)

 

沖縄出身の非術師家庭出身。空手家の祖父に育てられ、用事で沖縄に行った五条悟にスカウトされた。先輩の虎杖悠仁を尊敬しており、稽古を受けてもらっている。術式は『海命(うみぬち)』祖父の影響で方言口調。

 

しゃぁぁぁ(やっさぁぁ)!!!壱グループだ!!!」

 

「おー!!よろしくー!!!」

 

「2週間よろしく お願いします(ゆたしく うにげーさびら)!!虎杖先輩!!!」

 

グループが決まったところで五稜郭の4地点に移動する。

 

壱グループ

 

「勝つぞ虎杖!!夕張メロンは私のもんよ!!!」

 

「え、お前のもんなの!?」

 

弐グループ

 

「伏黒、吉野、絶対勝つぞ!!さぁ気合いを入れろマイストゥーデント!!」

 

「もうやだ・・・帰ったら東京に転校したい。」

 

参グループ

 

「真希さん頑張ろう!!」

 

「たっく、しゃーねーな。」

 

『それでは、スタート。』

 

人払いの済んだ五稜郭に帳が降りる。

 

肆グループ

 

「すっごーーイカ墨になってく。」

 

「帳、呪霊を炙り出す結界だ。」

 

つばめ語に慣れてきた黎人が先頭を走り、他の面々が続いていく。

 

「来やがったな・・・」

 

目の前から無数の兵士の呪霊が襲いかかってくる。

 

南雲がマスクを外し、呪いの言葉を吐く。

 

「"死んで"」

 

「"お前嫌い"」

 

「"何で生きてんの"」

 

『ひっ、ひっぐっ、ひぃぃぃぃ!!!』

 

南雲晶の呪言は精神攻撃。狗巻の呪言とは違って心に響く。とはいえ、負の感情で形成される呪霊には効きにくい。

 

「もうやだぁ・・・死にたい!!」

 

『ぐぇぇぇぇ!!!』

 

それをサポートするのが篠崎要の術式。自分に向けられた負の感情やダメージを相手に送り返す。彼の呪言による弱体化と彼女の術式によるダメージで呪霊は確実に消滅した。

 

「あらー要ちゃん自殺はダメよ〜。」

 

「はひ、ごめんなさいごめんなさい!!!」

 

「ほらほら泣かないで?」

 

「ひぐぅ、ひぐぅ・・・」

 

「・・・・」

 

女子が全員要のメンタルケアに入ってしまい、男子2人の呪霊狩りになってしまった。

 

「八岐、お前の術式使うぞ。」

 

『了解。脳への負担は我が肩代わりする。』

 

術式解放・水流蛇頭(すいりゅうじゃとう)

 

黎人の右腕に渦を巻く水、そこから現れる8つの蛇頭。

 

水は刀で斬っても斬れず、槍で貫いても貫けない。水はあらゆるものを飲み込み破壊する。

 

まさにあらゆる攻撃に適応し、あらゆるものを流す。

これが八岐大蛇の術式。

 

「喰らえ!!」

 

ー神楽舞ー

 

周囲の呪霊をねごそぎ喰らいたくし、立ち尽くす黎人。

 

だが・・・

 

「強・・・けど・・・」

 

『あ、やべ。』

 

この術式、かなり体内の水分の消耗が激しい。

 

「おい家入!?」

 

「黎人くん!?しっかりして!!」

 

家入黎人が体調不良を起こしたため肆グループは棄権した。

 

 

 

 

 

1時間後、各々のグループが術式をふるい呪霊を狩り尽くし試合は終了。

 

接戦を制し1位となったのは・・・

 

「あーウマ。ごめんな〜真希〜」

 

「ごめんな〜伏黒〜」

 

虎杖の壱グループだった。加茂の赤血操術と虎杖のフィジカルは呪霊狩りにもってこいだった。2位は接戦で参グループで3位は同じく接戦の弐グループだった。

 

「パンダぁ?お前覚えとけよ?」

 

「・・・ちっ。」

 

「真希さ〜ん、これ一口あげますよ〜」

 

「ムタ丸〜これあげますよ!!あーん!!」

 

((・・・ま、いいか。))

 

本日の勝敗、壱グループと真希と与の勝利。

 

バスに乗り彼らは次の目的地の心霊スポットを巡りながらホテルに向かう。

 

「次の目的地まで時間ありますね。」

 

「んじゃそれまでカラオケでもするか。庵〜出番だぞ〜俺は暫く寝るからな。」

 

バスの運転に集中する七海。アイマスクを下ろす日下部。

 

「っしゃぁ!!出番キタァ!!!」

 

そして久々の出番に喜ぶ庵歌姫はマイク手に持ち曲をセットした。

 

『おいお前らぁ!!耳の穴かっぽじって静聴しろ!!!』

 

「待ってました〜!!」

 

「いよっ、歌姉!!!」

 

『選曲は『青と夏』よ!!』

 

夏はまだ始まったばかりだ。

 

〜じゅじゅさんぽ〜

 

石上「あれは会長に生徒会に入らないかと勧誘される前の話です。」

 

去年10月上旬の深夜、石上優は橋の上にいた。

 

(何で僕だけがこんな目に、もう辛いや・・・死のう。)

 

彼は身投げしようと靴を脱いで告発状を置き、橋の上に登っていた。

 

(ネットとかで自殺する人は何の躊躇をしないって聞いたことあったけど本当なんだな・・・)

 

「・・・馬鹿みたいな人生だったな。」

 

「そこに立って悟ったのか?」

 

「いや別にーーーだっ誰ですか!?」

 

後ろに誰かいた。恐る恐る振り向く。

 

「誰って、パンダだけど。」

 

「ーーーぱ、ぱ、ぱ、パンダが喋ったァァァァァァ!!!」

 

 

 

 

近くの公園、蛾の集まる電灯に照らされて2つのブランコが揺れる。1人は石上、もう1人、いやもう一頭はパンダだった。

 

「なるほどなぁ・・・好きだった女の子を守るために汚名を被ったのか。」

 

「馬鹿みたいな話ですよね。まぁ喋るパンダに打ち明ける自分も馬鹿みたいなもんですけど・・・」

 

(着ぐるみじゃないし、ほんとのパンダ?ははっ、とうとう幻覚まで見えてんのかな・・・)

 

「馬鹿だな。」

 

「グフッーー何かストレートに返しますね。この超速球パンダ。人の心ないんですか・・・」

 

「おう、パンダだからな〜人間の好きも嫌いもよくわかんねぇ。目標に向かって頑張ってるくせにサバサバしてんのかウジウジしてんのか分からない奴がいるんだけどな?そいつは人一倍、人百倍辛い思いして血汗流して頑張ってるけどそれでも自分を卑下しないんだよ。」

 

「多分、最初に強く決めたことは必ず最後まで叶えなきゃならないんじゃないか?人間ってよぉ。お前は何でその女の子庇ったんだ?強く決めたことじゃないのか?」

 

「僕は・・・」

 

「まぁ泣いても叫んでも現状は変わんないけど、そうしたら気持ちが楽になるぜ?何か叶えたいことがあんなら応援するぜ。」

 

「僕世界で最初にパンダに応援された人じゃないですか?そのウジウジ君以外で・・・こんな、根暗なインキャなのに。」

 

「陽キャとか陰キャとかで差別する奴と思うか?パンダだぞ?」

 

「あははっ・・・ありがとう、ございます。結構気持ちが楽になりました。」

 

「おうそうかそうか!じゃあな、頑張れよ〜」

 

石上「多分幻覚だったと思うんですけど、あのパンダに救われたと思うんですよね〜」

 

白銀「へぇ、だからパンダグッズをラッキーアイテムにしてるのか。」

 

黎人(・・・それパンダ先輩じゃね?)





ちなみにパンダのくだりは初期から考えてました。


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北海道・青森②


今日長めです。
筆者の実体験をモチーフにしてる箇所あります。


 

バスの中、そこで小さなカラオケ大会が行われていた。

 

『残酷な天使のテーゼ!!悲しみがそして始まる!!

 

抱きしめた命の形!!その夢に目覚めたとき!!

 

誰よりも光を放つ!!

 

少年よ神話になれ!!!』

 

パチパチパチパチ!!!

 

「いいぞ憂太!!」

 

「そのまま光になっちゃえ憂太ちゃん!!」

 

「え、えへへ・・・」

 

照れる乙骨が座り、後ろに座っていた加茂憲紀がマイクを渡される。

 

「次は俺の番だな。一緒に歌え西宮」

 

「何歌うの?津軽海峡・冬景色?」

 

「季節に合わないだろ。米津玄師の『打●花火』」

 

その後、バスの中には腹が捩れそうなくらいの笑い声を押し殺す西宮と、その他生徒含め教師と、一生懸命に歌う加茂の姿があった・・・

 

 

 

 

 

だが波乱は静かに近づいていた。

 

研修旅行から時は戻って午前10時。

 

高専敷地内のアパート。

 

「け、研修旅行だと・・・」

 

虎杖の置き手紙を手に持ち、何も知らずキャラ弁を作っていた脹相は震えていた。

 

「え、兄さん聞いてなかったのかい?」

 

「俺、悠二からお土産何にする?って聞かれた。」

 

脹相、壊相、血塗こと九相図ブラザーズ(東堂はメンバーじゃないがメンバーを名乗っている。)は緊張に包まれていた。

 

「ゆ、悠二ぃぃ!!!あの変態目隠しと旅行など行かせるかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「兄さーん!!/兄者ー!!」

 

時は戻って高専敷地内の学生寮。

 

「ーー研修旅行?しかも男女混合の?」

 

いつものように伏黒の部屋に訪れて(侵入して)いた来栖華は伏黒の置き手紙を見て震えていた。

 

『華落ち着け。脈拍が不規則だぞ。』

 

「いや、待って、恵?私のどこが悪いの?私料理もできるし掃除もできるよ?それを片腕だけでやってるんだよ?なのになんで?なんで他の女の子と旅行しに行くの?」

 

『華・・・確かに実質その通りだが、呪術高専に通ってる女子に対して彼は恋愛感情を抱いてーー』

 

「まって、まってよぉ、恵・・・置いてかないでよぉぉぉ!!!」

 

『華ァァァァ!!!』

 

時は戻って新設された高専医療棟。

 

「な、な、野薔薇様が、旅行に行っただと?何故野薔薇様親衛隊隊長の私に言ってくれなかったんだ!!!」

 

1人ワナワナと肩を揺らす雨宮静流に、家入硝子は1人飴を舐めながら旅行のしおりを渡した。

 

「親衛隊お前1人だけだろ。」

 

「しかもあの珊瑚頭と一緒だとぉぉ!!?野薔薇様が欲しくば私を殺してからにしろォォォォ!!!」

 

「おい天国のお兄さん泣くぞ。」

 

 

長男こと、恋人こと、親衛隊ことイカレストーカーたちが北の試される大地に集結しようとしていた。

 

午後6時30分、北海道の自殺の名所や観光。夕飯は寿司を堪能した彼らは旅館に到着した。

 

「なぁ伏黒、修学旅行で旅館に6時過ぎくらいに着くのは共通なのかな。」

 

「共通じゃないか?俺の方もそうだった。吉野と釘崎は?」

 

「えっと、大体6時ちょっと過ぎだったよ。釘崎さんは・・・」

 

「そもそも、修学旅行が無かったのよーーあったのは自然教室だけ!!しかも一泊!!!」

 

「「「あ〜ドンマイ。」」」

 

車酔いで項垂れる要を肩と肩で担ぎ運ぶ黎人と南雲。後ろで歩いているつばめと有菜だ。

 

「ぅぅぅ。」

 

「しっかりしろ〜」

 

「お寿司美味しかったわね〜たこあたまが1番好きよ。」

 

「たこあたま美味しかったね〜」

 

((たこあたま?))

 

※実際にある寿司ネタです。筆者の1番お気に入り。

 

□■□■□■□■

 

温泉、それは日本だけでなく世界中に存在する文化。

 

ここ北海道には登別温泉や十勝川温泉など有名な温泉地帯が多い。この旅館も近くの源泉からお湯を引いている。

 

そして昔から風呂の湯煙越しに見える人の裸体というのは老若問わず目を惹かれる。

 

「あ"あ"〜」

 

その湯煙の中、虎杖が息を吐いた。

 

「いやこういう流れなら女湯映せよ。」

 

筆者【※流石にやばいと思ったんだよ。いつか番外編で出すから待っとけやー】

 

「う、何か頭に声が。」

 

「どした?黎人。」

 

「いや、何でもない・・・つーか虎杖また腹筋割れたか?」

 

「あー分かる?俺トージ先生みてぇな腹筋目指してんだわ。」

 

フロントダブルバイセップスのポージングをとる虎杖。黎人もなかなかの細マッチョなのだが虎杖悠仁の筋肉と比べれば月とスッポンだ。

 

「お、筋トレの話か?ブラザー。」

 

サイドチェストのポージングをとる東堂。九十九由基に鍛えられた一級ボディは鋼の如き質感を持つ。

 

「てか東堂!改めて見ると上腕二頭筋すげえな!!」

 

「おう!!ブラザーの大腿四頭筋も負けてないぞ!!」

 

「お?筋肉自慢か?なら俺も混ぜろ。」

 

フロントラットスプレッドのポージングをとる秤。

 

「俺も挑みたいです!!虎杖先輩!!」

 

モストマスキュラーのポージングをとる我那覇。

 

もはやツッコミ役はおらず、大浴場でマッスル大会が始まった。

 

「うわーあっちすご・・・あれ?伏黒くんもう上がるの?」

 

「ツナマヨ?」

 

「俺・・・これ、でも・・・鍛えてます。」

 

伏黒はひっそりと風呂から上がった。これでも伏黒は鍛えている。だが彼の筋肉は育たなかったし体重は下がった。

 

■■■□□■■■

 

壱グループの部屋

 

加茂が母と母の再婚家族とテレビ電話しているのを尻目に根明組(虎杖、釘崎、三輪、我那覇)は各々が撮った写真を見ていた。ちなみに与と蟻ヶ谷は旅のしおりに書いた今日の感想を提出しに行っている。

 

「ほら〜これ真依が寝言呟いてるんですよ?」

 

『むにゃ、お、おねぇちゃん・・・・何撮ってるのよ!!』

 

「は、あのツンデレドルオタにも可愛いとこあんのね〜。あ、虎杖は何見てんのよ。エロ画像のスクショ?」

 

「釘崎は俺を何だと思ってんの?ちげーよ最近行ったとことか食ったものの写真!!」

 

「ふーん。スイーツの写真も結構あるじゃーーーー誰この娘。」

 

虎杖と肩を組んでピースするピンク髪の女子が釘崎の目に止まった。

 

「ん?"藤原千花"ってラーメン仲間。たまに一緒に買い物に付き合ったり、飯食いに行ってんの。」

 

「ふ、ふーん・・・」

 

その時、隣の襖が開き、黎人と順平、狗巻に抱き抱えられるパンダが現れた。パンダは去年鹿紫雲一にバラバラにされ、今のミニパンダとなった。後ろでは雄叫びを上げながら東堂と秤が腕相撲をしている。

 

「藤原書記の話してる?」

 

「ん?黎人の知り合い?」

 

「あぁ、秀知院の生徒会の人。特級呪具を持って帰って蝿頭を大量にくっつけてたヤバいやつ。」

 

「へぇ〜あ、そーいや藤原に飯奢ったこともあったな。あ、町中華とかラーメンとか奢ったっけ。」

 

「は?あいつ金持ちのくせに虎杖に奢らせたのか?今度の夏祭りの時に説教だな。」

 

「え?お金持ちなんですか!?この娘!!羨ましいなぁ〜」

 

「三輪先輩は弟ら(ウットゥら)でーじ多いですからね〜」

 

「黎人は俺を貧乏人だと思ってんの?俺今は月収15万だよ?」

 

釘崎は思った。

 

(・・・ゲス。男を食い物としか思ってないゲスの女、自分の欲望を叶える為だったら男に媚び売るゲスの女なんだわ。私はお前を許さない。このゆるふわピンク巨乳・・・呪詛ってやるわ。)

 

(く、釘崎さんが暗殺者みたいな目を!?)

 

順平は1人ビビった。

 

「あとそーだ。今ハワイ行ってんだってさ!ほら写真送られてきたし。」

 

「ほぉ〜どれどれーーービキニじゃん。え〜悠二〜何見せてくれてんのよ〜」

 

「明太子〜明太子〜」

 

「ちょ、パンダ先輩〜狗巻先輩までやめてくださいよぉ。」

 

釘崎は思った。

 

(・・・阿婆擦れ。男に容易く股を開く性欲の化身。欲望と自己愛に塗れた穢れた存在。あぁ、何て悍ましい。こーいう人間が地球を滅ぼすのよ、地球のガン。もはや呪霊ね、淫欲の呪霊。祓ってやろうかしら・・・)

 

(く、釘崎さんがこの世の終わりみたいな目を!?)

 

順平は再び1人ビビった。

 

「で、どうなんだ?藤原書記好きなの?」

 

「いんや?友達とは思ってるけど。そーゆーのに発展することはないかな。」

 

(よっしゃァァァァ!!!ざまぁ淫欲ピンク巨乳!!!虎杖を土下座させて付き合ってくださいを言わせんのはこの私よ!!!)

 

(釘崎さんが、悪魔のような笑みを!?)

 

順平は再度ビビり怯えた。

 

本日の勝敗、筋肉自慢・東堂葵の勝ち

      腕相撲・秤金次の勝ち

      恋愛勝負・釘崎野薔薇の勝ち(順平は恐怖にビビった。」

 

〜じゅじゅさんぽ〜

 

「研修旅行1日目、何事もなく終わりを迎えられたことを嬉しく思います。明日と明後日は青森のねぶた祭りにーー」

 

『悠二ィィィィ!!!』『めぐみぃぃぃぃ!!!』『野薔薇様ァァァァ!!!』

 

「・・・前言撤回します。まずあのストーカー三人衆を止めましょう。」



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夏祭り編
家入黎人は遊びたい



アンケートは今日の21時まで続くため、まだ決まっていないのですが試験的に夏祭り編を先に投稿しようと思います!!
時期的には研修旅行編が終わって翌日という流れです。

今回頑張りました。


夏休み!!

 

それは学生達にとっての希望。ある者は友人達と思い出作りを。夏を迎える前にした者は恋人と愛を育み。またある者は自身の趣味のために時間を費やす。

 

だが呪術師にとって夏は繁忙期、本当の休みは秋頃にしか訪れないのだ。黎人は任務地で、早坂からその知らせを受けた。

 

「・・・は?」

 

『はい、おっしゃった通りです。この夏休み、かぐや様は全然会長を遊びに誘えませんでした。』

 

「お前のご主人アホなの?」

 

片手で呪霊の首を掴み、氷点下に温度を下げて祓う。

 

『ええ、アホです。恋愛事になると100のIQがマイナス100になるくらいアホなんです。』

 

「・・・まじかぁ、これ思ったより深刻だぞ。このままだと八岐が暴れて日本水没する。」

 

夏休みの間に距離を詰めさせて2学期の体育祭で告白させるって計画だったのに、あの恋愛朴念仁共が。

 

『うわ、まじであり得そう。てか八岐大蛇が"白かぐ"推しって・・・あれ?"かぐ白"でしたっけ?』

 

「どっちにしろ不味いんだよなぁ・・・あ、四宮先輩って土日空いてるよな。」

 

土日の任務を適正のある京都の3年に回したため黎人の土日は空いている。それから夏祭りまでは連勤だが問題が発生したら五条悟に任務を振ったらいい。

 

『はい、まぁやることがないので。』

 

「勝算あり。俺はその日つばめさんと映画を見に近くの大型デパートに行く。何とかしてあの2人を同行させよう。俺は会長に声かけるから、お前は四宮先輩に連絡しろ。」

 

『ーーーまさか?』

 

「そうだーーー

 

 

 

 

 

 

()()()()()()だ。」

 

黎人のIQ130の脳が弾き出した結論、この1日で夏休み2週間分の思い出を補完する。

 

■□■□■□■□

 

当日

 

某デパートのエレベーターフロアにて。

 

「あら、お久しぶりですね会長。」

 

「あ、あぁ、久しぶりだな四宮。」

 

(ヤッベェェェェ何で四宮がここにぃぃぃ!!!)

 

「会長はどうしてこちらに?私は久々にこちらに寄ろうかなと思いまして。」

 

嘘である。

(本当は早坂に勧められて来たのだけれど、まさか会長がいるなんて。ふふふ、あの子気が効くわね!!)

 

かぐやの手には『とっても楽しい夏休みイベント!!』と書かれたチラシが握られている。

 

黎人と早坂の狙いはこれだ。このイベントでは擬似花火大会や擬似スイカ割りなどが楽しめるデパートならできそうな夏イベが体験できる。つまりこのイベントを白銀とエンジョイさせれば夏休みの思い出を補完できる!!

 

「俺は、黎人に誘われて・・・」

 

マジである。

この男、黎人に今度の夏祭りに着て行く服を選ばないかと誘われたのだ。ちなみに黎人はトイレに行ったーーに見せかけてつばめを迎えに行っている。

(チクショーーー!!黎人に四条の時と肝試しの時のように嵌められたか!!?いや、待て・・・よく考えたら四宮に会うの久しぶりじゃないか?つまり黎人は中々四宮を遊びに誘えなかった俺を気遣って・・・)

 

「あれ?四宮先輩じゃないですか。」

 

「あ!かぐやちゃんだ!!」

 

「「つばめ先輩!?」」

 

「いや〜奇遇だね!!黎人くんに誘われて来たんだけど・・・2人はデートなの?」

 

((デ、デートォォ!!??))

 

「あ、なら4人で遊びますか。」

 

「じゃあダブルデートみたいなもんだね!!」

 

((ダッ、ダブルデートォォ!!??))

 

これよりダブルデート戦争、開戦!!

 

前方を歩く白銀・四宮ペア、黎人・つばめペアはその後に続くと言う流れだ。

 

「いいか早坂、あいつらの『夏休みの間全然会えなかったレス』を解消するためには今日という1日で大体のイベントを補完するしかない。」

 

『名付けてEVA(エンジョイバケーションアプローチ)作戦・・・何かどっかのロボットアニメで聞いたようなないような・・・』

 

「乙骨先輩の好きなアニメな。あとそれからあれはロボットじゃなくて人造人間だ。」

 

耳につけた小型イヤホンに小声で話しかける黎人。早坂は金髪のチャラ男に男装しており、彼らの上階から覗いている。

 

「ん?黎人くん誰と話してたの?」

 

「四宮先輩の側仕え。彼女のお願いで四宮先輩のサポートお願いされた。」

 

「ふーん。仲良いんだ〜」

 

ちらっと横を見ると

 

「・・・もしかして嫉妬してる?」

 

「いや〜?まぁ〜私たち別に付き合ってないけど、一緒に出かける友達が他の女の子と電話してるとか、ちょっと焼いたお餅になっちゃうかな?なんてね!!」

 

「同い年のギャルに興味はない。」

 

「へぇ〜・・・質問だけど私がギャルになったらどうする?」

 

「えっと・・・モヤモヤモヤモヤ・・・結構アリだけど、今のままでいいと思う。」

 

「・・・黎人くん意外とむっつりなんだね。」

 

「伏黒くん程じゃないけどな。」

 

「えっと、"在院家"だっけ?津美紀ちゃんの弟で元ヤンの子でしょ?」

 

「"禪院家"な?最近は禪院家の敷地内を私立動物園にしようと躍起になってるらしい。」

 

マジである。

実は禪院家の敷地内はかなりの広さがあり、それを有効活用するために犬やら鹿やら虎やら挙げ句の果てには象まで飼育してるらしい。数ヶ月前アナコンダに巻き付かれた伏黒の自撮り写真が送られてきたため、通い妻ことエンジェルストーカーと一緒に助けに行った。

 

「えっ、パ●ク町田?」

 

「どちらかというとムツ●ロウだろ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

まず四宮が興味を示したのはスイカ、じゃなくてスイカ風に色が塗られたボールだった。これを目隠しをつけたまま叩くのが偽スイカ割りの醍醐味。成功した人にはスイカ一切れがプレゼントされる。

 

つまりこの競技で求められるのは一点集中。

 

最初は白銀。

 

(スイカ割りなんて初めてなんだが・・・もし失敗したらーー)

 

『あらあら、会長外してますね。()()()()()()。』

 

(ーーって言われる!!!絶対に割らなければ!!!)

 

目隠しをつけ、恐る恐る偽スイカに歩みを進める。

 

「左だよ左〜!」

 

「もうちょっと右〜!!」

 

(え!?左なの!?右なの!!?どっちだぁぁ!!!)

 

以外!!サポートするスタッフの声に白銀は翻弄される!!

 

「お、おい!!黎人!?どっち向けばいい!!」

 

「心の目でちゃんと見ろ〜」

 

「ざけんな!!心に目はないだろ!!!」

 

白銀の正論が、黎人に直撃する。むかっとした黎人が火種のついてない爆弾にダイナマイトを大量に投下する。

 

「・・・んじゃ、会長が外したらこの場で会長の性癖を暴露します。」

 

「おぃぃぃぃ!!!??」

 

(不味い!!!もし外したら四宮との心の距離がガチで遠ざかる!!!)

 

『へぇ、会長そんな趣味が・・・()()()()()()。』

 

(ダメだぁぁぁぁぁぁ!!!!)

 

ポカ!!

 

「あ、当たった。」

 

「へ?」

 

白銀、スイカ割り成功。

 

「じゃあ次かぐやちゃんだね。」

 

2番手は四宮。

 

(ふっ、このくらいなんてことないわ。昨日早坂といっしょに練習した甲斐があったわね!!)

 

マジである。

この女、夏休みが始まってから友達の前で恥をかきたくない一心でスイカ割りの練習に明け暮れていたのだ。最近はサボりがちだったのだが、昨日練習を再開してもはやスイカ割りレベルAに到達した!!

 

(音の反響、空気の流れ、これらから計測するにスイカの位置は・・・)

 

ここ!!っと振り下ろしーーー

 

ポカ!!

 

「四宮先輩クリア〜」

 

「ふふ、これ楽しいですね!!」

 

3番手、つばめ。

 

「どりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

カスッ!!

 

「おしい外れ!!」

 

「えぇぇぇぇ!!!??」

 

4番手、黎人。

 

(・・・まぁぶっちゃけ目隠ししようとスイカの位置は大体分かるんだよな。)

 

マジである。

六眼と宙眼のおかげで黎人は常に目隠しをつける生活を余儀なくされている。つまり上からさらに目隠しされようと問題ないのだ。

トコトコとスイカの前まで歩き、棒を振り下ろす。

 

ポカ!!

 

「おぉ!!黎人くんクリアだ!!!」

 

 

その後、スイカを食べる白銀とかぐや。その真横でつばめは羨ましそうに見ていた。

 

「・・・いいな〜」

 

「つばめ先輩。これ食います?」

 

黎人が自分のスイカを差し出す。

 

「え!いいの!?やったー!!」

 

((くっ!?その手があったか!!!))

 

白銀とかぐやはスイカの種をゴミ箱に捨てながらそう思った。

 

「じゃあ次あれやりましょう。」

 

黎人が指差したのは、『サマーファイターズ』と書かれたゲーム機。ゲームセンターから引っ張り出されたそれは、一対一の対戦ゲームだった。

 

『レディーファイト!!』

 

黎人vs白銀

 

「うぉぉぉお!!連打ラッシューーって、ちょっ!ハメ技!?コンボ早!?おい黎人!!?ちょっと待ってーーおい待て必殺技決めるなァァァァァァ!!!」

 

白銀の金髪キャラが、黎人のデフォルトキャラに負けた。

 

かぐやvsつばめ

 

「よっしゃぁぁ負けなーーえっ!?何でかぐやちゃんプロゲーマーの動きできるの!!?初心者だよね!?ひょっとしてやりこんでる!!?ちょっとぉぉぉ!!!!!」

 

つばめのエンジェルキャラが、かぐやのウサミミキャラに負けた。

 

白銀は言った。

「お前らひょっとしてこのゲームやりこんでる?」

 

黎人は言った。

「いんや。けどこの手の格闘ゲームとかは操作方法とかが共通してるんだよ。石上にも勝ったし、そういうもんだろ。」

 

かぐやは言った。

「いえ、最初は操作方法が分からなかったのですが、次第に慣れましたね。」

 

決勝戦

黎人vsかぐや

 

「一応言っときますけど容赦しませんよ?」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すわ。」

 

目と目の間に火花が散る両者!!

 

(この戦い、まず速攻で来る相手の動きを見切る。)

 

(この戦い、対策してくるであろう相手に反撃の隙を与えない。)

 

両者が考えたのは安全策。

確実に勝利を手にするための投了図。

 

だが!!!

 

((それは敗者の思考だ/よ!!!))

 

『レディーファイト!!!』

 

((全力で!!押し切る!!!))

 

〜数分後〜

 

結論から言うと勝敗は決まらなかった。

 

「くらえ必殺ーーん?」

 

「くらいなさい極意ーーあら?」

 

フリーズした画面。

 

「あーすいませんねー多分古いゲームなんでショートしちゃったみたいですーー」

 

 

「クソっ、あの一撃が決まってたら俺が勝ってたのに。」

 

「まぁまぁ、あのスタッフさんに景品の風船スライダーのチケット貰えたからいいじゃん!!」

 

「もぉ〜!!あの勢いで黎人くんを返り討ちにできたのに!!」

 

「まぁ、結局チケット貰えたんだからいいんじゃないか?」

 

「「いいわけないだろ!?/いいわけないでしょう!?」」

 

決着がつかずモヤモヤした2人を連れて、イベントの目玉『風船スライダー』の列に並ぶ。風船でできた滑り台で、スタッフに後ろから押してもらい大量の風船で作られたプールの中に飛び込むという代物だ。2人ペアで滑るため、それぞれのペア同士でペアを組む。

 

白銀・四宮ペア

 

通常滑る際はそのまま滑る。だが先に滑っていったカップルは手を繋いでいた。

 

(ど、どうする!?手を繋ぐって誘うか!?でもーー)

 

『あら会長?怖いんですかーー()()()()()()。』

 

(ど、どうしよう!?下から見るよりも結構急なんだけど!?会長に手を繋いで貰おうかしら!?でもーー)

 

『おやおや、四宮は怖いのかーー()()()()()()()()。』

 

((ダメだぁぁ!!!絶対言われる!!!))

 

「それでは行きますよ〜「「えっ!?ちょっ、待っ!!」」〜それ!!」

 

「「ぎぃ

   や

    あ

     あ

      あ

       あ

        あ!!??」」

 

滑り落ちる2人、その手はお互いギュッと握りしめられていた。

 

遠くで見ていた早坂は・・・

 

「ふっ、楽しそうですね。」

 

一方、黎人・つばめペアはというと。

 

「ねぇ、あのペアお姫様抱っこで滑ってない!?」

 

「スッゲェ!!あのめかく体幹やばくないか!?」

 

ともかく、夏を満喫した両ペアであった。

 

〜じゅじゅさんぽ〜

 

「ステイステイ、イージーガール?」

 

クルルル!!!

 

「・・・何やってるんですか?恵。」

 

禪院家敷地内。

威嚇するワニ3頭を両手で静止させる伏黒恵と、それを見守る来栖華がいた。



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四条眞紀は認めない/五条悟は認めない


銀⚫︎ネタです。
同じ流れの別話を書くのが面倒だったので一つにまとめました。

注意、キャラ崩壊です。


 

遊園地

 

それは子供にとって夢のような遊び場でもあり、また高校生にとっては甘酸っぱい恋の思い出にもなる空間。

 

これは家入黎人の口から語られる8月に起きた出来事と、今年の3月に同じ場所で起きた出来事である。

 

8月の出来事は□、3月の出来事は■だ。

 

 

遊園地の入り口、植え込みの近くにある噴水。

 

そこで待っていた少年の元に、遅れてやってきたのか慌てるヘアピン少女が現れた。

 

「翼くんお待たせ〜待った〜?」

 

「うぅん。ちょうど今来たとこだよ?」

 

そんな2人に憎しみを持った目線、もう血涙を流しそうな目で見つめる人物がいた。

 

「ふざけんじゃないわよ。翼くんはアンタが来る1時間前から待ってたんだからね。翼くんの1時間、アンタの一生で償ってもらうわ!!御行、あんた土台になりなさい!!」

 

そう言い放ったのは、植え込みの中でカラシ入り水鉄砲のスナイパーライフルを持った四条眞紀。その後ろには生徒会男子組が立っていた。

 

5ヶ月前、

同じく遊園地の入り口にて1人の少年が、遅れてやってきた少女を待っていた。

 

『ごめん遅れちゃった!!輝紗羅くん大丈夫?』

 

『別に構わないぞ!ちょうど今来たところだ!』

 

『ふざけんじゃねぇよ。そいつは1時間も前から津美紀が来るのを待ってたんだよ。そんなに待つのが好きなら永遠の眠りで待たせてやんよ!!!悠二、茈ぶっ放すから土台になって。』

 

そう言い放ったのは、植え込みの中で虚式"茈"の構えをとった五条悟。その後ろには虎杖悠仁と伏黒恵と家入黎人が立っていた。

 

 

「やっぱりぃ!!てかお前親友殺す気か!?」

 

ツッコミ役の白銀が叫んだ。後ろには黎人と石上が立っている。この3人は眞紀から『決起の時が来た。』とLINEが送られて来たため、何となく察しがついたから遊園地に来たのだ。ちなみに黎人は任務帰りだったのでだいぶお疲れである。

 

「親友じゃない!!!親友じゃないわよ・・・私もね翼くんの幸せを考えて、いっそのこと身を引くことも考えたわ。何なら2人を応援してもいいって考えたわよ!!」

 

「お前にしてはよく頑張ったなーー「2秒で辞めた。」ーー前言撤回する。」

 

「もう我慢ならないわ。私は今から殺し屋《ツンデレ13》よ!!」

 

「ツンデレって認めてんじゃねぇか!!!」

 

白銀の叫びが辺りに響いた。

ちなみに()()気づいていない・・・

 

 

『先生ちょっと待って!?あれ輝紗羅先輩と伏黒のねーちゃんじゃん!!!え!?娘の彼氏暗殺すんの!!?』

 

先日、『奴が動く。』と五条悟と伏黒恵に遊園地に来るように言われた虎杖と黎人。輝紗羅と津美紀が()()()()()()なのは虎杖を除く全ての高専生も知っていたため、黎人は何となく分かっていた。ちなみに虎杖はそのことを知り慌てふためいている。

 

『彼氏じゃねぇよ!!僕はあんなマッドサイエンティスト認めないよ!!でも・・・僕もね、輝紗羅が津美紀のことを真剣に好きで、津美紀も輝紗羅のことが真剣に好きなら認めてもいいって考えたよ。』

 

『・・・先生も真面目に考える時ってあるんだなーー『0.0001秒で辞めた。』ーー前言撤回するわ。』

 

『もう我慢ならない。今から僕のことは、殺し屋《親バカ13》と呼んで貰おう!!』

 

『え!?親バカなの!?そーいえばトージ先生は!!?』

 

『あのパチカスが来るわけねぇだろ!!!』

 

事実、伏黒甚爾は近所のパチ屋でボロ負けしていた。

 

 

「付き合ってられねぇよ・・・帰るぞ石上。」

 

呆れた白銀だったが、現実は非常だった。

 

「誰が石上ですか?僕は殺し屋《石上13》です。」

 

眞紀と同じように水鉄砲を構える石上優。彼も彼女の味方であった。白銀は半ば捨てられた子犬のような気分になった。

 

「・・・その13どっから来た?」

 

「先週ゲーセン行ってたら伊井野の奴にしょっぴかれた。これで13回目です。」

 

「ただの腹いせじゃねぇか!?」

 

 

『全く・・・伏黒、五条先生止めるぞ。』

 

止めようとした虎杖、だが親友は彼の味方じゃなかった。

 

『誰が伏黒だ?俺は殺し屋《ウニ頭13》だ。』

 

両手を手前に出し、赤血操術の『穿血』の構えをとる。今年に入り、反転術式を会得した伏黒は式神の能力だけを顕現できるようになった。満象の水、大蛇の毒。これらを掛け合わせたものを撃ち込もうとしていた。

 

『・・・その13どっから来た?』

 

『先週、任務帰りに本屋寄ったら来栖と鉢合わせてやたら重いクマさんのぬいぐるみを貰った。これで13回目だ。』

 

『伏黒?やっぱ警察行こう?そろそろ来栖に拉致られる未来が見えてきた。』

 

ちなみに、伏黒が朝起きたら隣に誰かがいた痕跡があったり、気づいたら棚の中に盗聴器が置いてあったりともう警察に通報したほうがいい状況である。

 

 

石上は言った。

 

「そもそも学生の本分は勉強ですよ?それなのにあんな馬鹿ップルがキャキャウフフするなんて生徒会として見過ごせませんよ。」

 

黎人は心の中で、お前学生の本分ほっぽいてゲームとか漫画持ち込んでんじゃねぇか、と呟いた。

 

「よく言ったわ!!石上!!さぁ、あの馬鹿ップルを引き裂きに行くわよ!!!」

 

「イエッサーー!!!」

 

2人は意気投合して、あのカップルを引き裂くために遊園地に突入していった。

 

 

伏黒は言った。

 

『輝紗羅先輩は術師としては尊敬してるし五条先生よりかはマシです。』

 

((それは分かる。))

 

教え子のスカート履かないし、初恋を拗らせて伊地知に八つ当たりもしない。

 

『恵、僕泣くよ?』

 

『けど人間としては、津美紀を託せられる人間じゃありません!!あのサイコパス男を義兄だなんて認めません!!!』

 

確かに、真人に殺されて死んだと思われた与幸吉をコッソリ匿ってたり、改造人間を自分が作った呪具の練習台にしていたり、かなり空気の読めないサイコパスだ。

 

『よく言ったね恵。さぁ、あのクソ科学オタクぶっ殺すよ!!!』

 

『イエッサーー!!!』

 

珍しく2人は意気投合し、輝紗羅を抹殺すべく遊園地に乗り込んでいった。

 

□■

 

テンパる白銀と、過去の虎杖。

 

2人は無意識に同じ場所、同じ行動をしていた。そんなシンクロした2人は黎人に声をかける。

 

「『ヤべぇよ・・・おい黎人、あの2人止めるぞ。』」

 

だが、現実は非常だった。

 

「『誰が黎人だ?俺は殺し屋《ウェザー13》だ。てな訳で、面白そうだし行ってくるわ。』」

 

基本的に黎人は中立派、だが過去では面白そうだという純粋な思いと現在は寝不足のためのハイ。これらが黎人の面白いものを見たいという思いを助長した。

 

「『おい!!!黎人!!!!』」

 

これより過去と未来の馬鹿トリオによる暗殺計画。

開始っ!!!

 

■□□■□□■□□■

 

メリーゴーランドにて

 

 

「くっそ!!これを選ぶとはあのヘアピン女、なかなかやるわね!!」

 

「エイムが定まりません!!やばい・・・気分悪くなってきた。オロロロロ!!!」

 

ゲロを吐く石上、彼にゴミ袋を渡す黎人。

 

「ていうかこれいつになったらあいつらに追いつくわけ?」

 

「メリーゴーランドが追いつくわけねぇだろ!!!もう一生周ってろ!!!」

 

白銀は1人ツッコミを入れた。

 

 

『チッ、これを選ぶとかあいつ中々やるね。』

 

『狙いが定まらない・・・うっ、上下左右するせいで気分悪くなってきた・・・』

 

『というかこれいつになったらアイツに追いつくわけ?』

 

『当たり前だろ!!メリーゴーランドだぞ!!?もう一生周ってろ!!!』

 

虎杖は1人ツッコミを入れた。

 

そして次にジェットコースターにて

 

 

「黙ってジェットコースターに乗れ。」

 

「はっ、はい!?」

 

自分は怖いの無理だから、と拒否していた翼に背後からオモチャのナイフを突き立てる石上。ジェットコースターに乗らせた石上は新たな指令を出す。

 

「腰抜かして失禁しろ。」

 

「ぇぇ!?」

 

 

「ちょっと!?翼くんに何させる気よ!!!」

 

「まぁ見ててくださいよ。このジェットコースターで、渚先輩の翼先輩への好感度は地の底に落ちますからぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

加速するジェットコースター、腰を抜かし失禁して、地に落ちたのは石上だった。

 

 

『黙れ動くな・・・腰抜かして失禁しろ。』

 

『・・・ほう?』

 

輝紗羅と津美紀が先頭、後ろの席には黎人と伏黒、そして後ろ側には五条と虎杖が座る。ジェットコースターが上に登り始める。

 

『なるほど、輝紗羅の失態を見せることで津美紀との距離を話す作戦か。恵いいね。さて、山場のジェットコースターがどんなものか、お手並み拝けぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!』

 

その時、伏黒の席に備え付けられていた安全レバーが開き、宙に投げ出された。

 

『ギィヤァァァァァァァ!!!』

 

『伏黒!!掴まれ!!!』

 

間一髪、手を伸ばした虎杖に助け出された伏黒。

 

『ヒィィィ!!!死ぬぅぅぅぅ!!!』

 

『あれ?コイツ本当に伏黒?』

 

『こういうのは無理ぃぃぃ!!!こういうタイプのアトラクションに弱いタイプなのぉぉぉぉ!!!!』

 

伏黒の絶叫を乗せて、ジェットコースターは更に加速した。

 

 

「いや〜楽しかったね〜あれ?翼くん何で席から浮いて・・・」

 

「渚・・・誰にも言わないでほしいんだけど・・・」

 

「・・・よかった〜私だけかと思っちゃったもん!」

 

「「「えぇぇ!!!??」」」

 

数分後

 

トイレから出てきた2人を遠くに、4人はベンチに座っていた。ちなみに石上は真新しいパンツを履き、黎人に慰められていた。

 

「嘘、嘘嘘、渚と翼くんが、嘘よ!!」

 

叫ぶ眞紀に、黎人は自分なりの推測を告げる。

 

「いや多分渚さん漏らしてないですよ。ただ翼先輩が恥ずかしくならないようにしたんじゃないですか?」

 

「というか2人とも観覧車乗ったな・・・なんか疲れたしもう帰るか。」

 

「そーね・・・何か奢るわ。」

 

「マジっすか!!んじゃ叙々⚫︎お願いします!!」

 

「顔の面厚いな!!!つーか誰のせいで男の失禁の後始末したと思ってんのよ!!!!」

 

「イギャァァァ!!!」

 

喧騒を繰り広げる2人とそれを止める白銀。そんな中、黎人は、こっちを見てニッコリ笑う渚と目があった。

 

「へぇ・・・こえー女。」

 

 

ジェットコースターが終わり、中々降りない五条悟を無視して黎人と虎杖は伏黒を肩に担いで先に降りた。目線の先には輝紗羅と少し足取りが遅い津美紀がいた。

 

『いやいや、中々楽しーー津美紀さん?』

 

『て、輝紗羅くん・・・誰にも、言わないで、ゴニョゴニョゴニョ・・・』

 

『あーーー取り敢えず、着替え用意しよう。』

 

『『ーーー』』

 

思ってなかった人物の失禁に、伏黒恵はショックで放心状態になってしまった。ちなみにいつまで経ってもジェットコースターから降りない五条悟を黎人が引っ張り出している時のことだった。

 

数分後、トイレから出て来た津美紀が輝紗羅の真横に座って、泣いた。

 

『ごめん・・・嫌になったよね?私、ジェットコースターで、そのーー』

 

『別に嫌いにならないさ。今日はもう帰ろう。夕飯と洗濯は私がするから気にするな。』

 

『あ、ありがとう・・・大好き。』

 

 

 

■■■■■■(声にならない断末魔の叫び)!!!』

 

見たことない姉の女の顔を見て、伏黒はポップコーンの容器に顔を突っ込み叫び出した。黎人と虎杖はチュロス片手に疲れた表情を見せた。

 

『はぁ・・・あれ?五条先生?何で浮いて・・・』

 

五条は1人、ベンチに浮かんで、泣いていた。

 

『黎人、悠二・・・誰にも言わないで欲しいでございまする。』

 

『『・・・ま、まさか?』』

 

その日五条悟が男子トイレで()()の入ったビニール袋を持って出てきたことは、虎杖と伏黒と黎人しか知らない。

 

〜じゅじゅさんぽ〜

 

東京都内の何処か。

 

郊外にある小さな林に包まれた教会。

懺悔室の中には牧師服を着た1人の少年と対面に座る女性がいた。女性の肩には人間とコウモリの中間のような呪霊が乗っかっている。

 

「神父さん。私には病気の母と弟が2人いて、私は家族を支える為に高校を休学して働いてきました。今年、1番下の弟が去年大学に受かりましたが、私は今年で22になりました。今は年齢を偽って高校3年生をしています。これは罪でしょうか?」

 

「いいえ。貴女は何も悪くありません。貴女は今までの人生を、他人の為に費やして来ました。その経験で得た心はどんなダイヤモンドよりも美しいのです。貴女がどんな選択をして、どんな道を進んだにしても、主は貴女を祝福してくれます。」

 

少年は、対面に座る女性の肩に乗っていた呪霊を、ドロリと溶かしその掌に吸い込んだ。形を失い、赤色に変色した呪霊玉を、少年はコッソリポケットに入れた。

 

「あれ、何か肩が・・・話して楽になったのかな?」

 

 

「今日はありがとうございました!!」

 

「いえいえ。ここは神の家、神の子供である貴女はいつでもいらしてもいいですよ。」

 

少年は女性を見送り、ポケットに入れた呪霊玉を飲み込んだ。

 

「ーーーーっ!辛っ!!うぅ・・・この間の、ブルーハワイ味の呪霊のほう良かったかな?」

 

少年は、()()()()を整えながら呟いていた。





天国にて、
天内理子が夏油傑を正座させていた。
「おい、誰じゃあのお前そっくりな少年は?」

「・・・」

「妾にもそっくりだったぞ!!?誰なのか言え〜!!!」

「・・・ひ・み・ちゅ♡」

夏油がボコボコのギッタンバッタンにされてる中、後ろで夏油の記憶を見ていた灰原と里香がうわーっと引いていた。

「うわー夏油先輩ボコられてる。」

「ふふっ、憂太とお友達を傷つけた罰ね。」

「そーいや君誰?」

「憂太の元婚約者。」


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夏祭り前の騒動


8/29訂正しました。声優さん繋がりで例のアノ人をネタキャラにしようかなと思います。


その知らせを受けたのは夕暮れ。

 

伏黒家で2年ズとタコ焼きパーティーの片付けをしていた時だった。黎人はここまではサイドカー付きバイクに乗って来た。帰りにつばめ先輩を駅で迎え、生徒会全員でお祭りに行き、夏休み最後の思い出を作る。

 

とはいえ順調に進むわけなかった。

 

「あ?おい黎人。LINE来てるぞ。」

 

「勝手に人のスマホ見てんじゃねぇよ。バカ親父。」

 

「渡して渡して、どれどれ・・・」

 

『お祭りに行けなくなりました。』

 

嘘、だろ?

 

四宮先輩がこの間藤原先輩らと買い物に行く用事を家の都合でドタキャンしたのは知っている。まさかお祭りまでドタキャンする羽目にあうとは。肩に現れた蛇、もとい八岐は真顔でキレていた。

 

『ねぇ処していい?四宮本家処してオケ?』

 

まずい日本沈没の危機だ。

 

「落ち着け爬虫類・・・おい伏黒、俺今から京都行ってくる。」

 

「ドタキャンか?」

 

「んな訳ねーだろ。私立禪院動物園初代園長。」

 

瞬間移動した黎人、その後ろでは2年ズとパチカスヒモニートがわいわいしていた。ちなみに虎杖はトイレを借りている。

 

「そろそろ花火ねー」

 

「伏黒!!?トイレットペーパー切れてんだけど!!?」

 

「あ、伏黒くん蚊取り線香切れてるよ。」

 

「おい恵〜酒切れてんぞ〜」

 

「おい男どもうっさいわよ!!」

 

「お前らウルセェんだよ!!静かにしろ!!」

 

珍しく伏黒がキレた。新しい蚊取り線香を持ち、冷蔵庫からキンッキンに冷えたビール缶を持って伏黒が怒鳴った。この世に禪院家当主に蚊取り線香とビールを持って来させる人間がいただろうか。

 

「お願いします!!紙を、紙を恵んでください!!!」

 

この後、パパ黒に『一万円くれんなら紙一枚くれてやんよ。』という悪魔の取引に虎杖悠仁は躊躇なく了承し、六万円を失うことになった。

 

□□

 

「誰だ。」

 

「通りがかりの特級術師でーす。」

 

■■

 

別邸のかぐやの部屋。

 

「わーん!!!もうみんなに会えないんだわ!!」

 

「学校始まったら会えますよ・・・」

 

コンコン!!

 

「何の御用でーー「やっぱ何度来ても慣れないね。」ーーい、家入黎人!!?」

 

「お、早坂いたのか。」

 

「ぐふっーーー推しから認知してもらってる・・・ところで何故ここに?傷心中のかぐや様を慰めに来たのですか?」

 

「いや、ちょっと四宮の本家に直談判した。四宮先輩を呪術師が護衛するならお祭りに行っていいって。」

 

「「え!!?」」

 

黎人は先程まで京都の四宮家の本家にいた。そこで現当主に直談判してかぐやがお祭りに行けるように、そして今後問題なく学生生活を過ごさせるようにしたのだ。護衛の任務については、お祭りに行く予定だった呪術高専2年から4年も快く護衛を了承してくれたのだった。

 

「じゃ、俺は()()()()を迎える用事があるんで同期に連れてってもらってください。早坂は?」

 

「わ、私は仕事が・・・」

 

「んなもん後でいいだろ?あのジジイから聞いたが子供の頃から仕事してんだろ?今から数時間サボってもお釣りが帰ってくる。」

 

「早坂・・・私、会長とお祭りに行きたいって言ったけれど貴女ともお祭りに行きたいの・・・」

 

珍しいかぐやのデレ、幼少期を共に過ごした幼馴染という名に相応しい関係、最初から()()()()()()主人の思いを叶えたい。

 

「ーーー分かりました、行きましょう!!」

 

「よし・・・虎杖?準備できたか?」

 

開けっぱなしにしていた窓から、珊瑚髪の顔に傷痕がある少年が入ってきた。かぐやは虎杖に、んっ?と何か思い出しかねたような顔をした。虎杖はかぐやを見て、あれ?と頭の中に5月の思い出が蘇った。

 

「ん?あんた確か映画館の?」

 

「ーーはれ?え?貴方呪術師だったんですか!!?」

 

「ま、いいや。とりあえず掴まって!!」

 

「えっ!ちょっーーーーーーーー」

 

その日、四宮邸からお祭り会場まで住宅街の屋根を突っ切るピンク髪の少年と米俵担ぎされ悲鳴を上げる少女達がいたとか。

 

『いいぞ、それでいい。』

 

「いいから黙ってろ恋愛脳爬虫類。今から駅まで十分ってとこか・・・まぁいい。突っ切るぞ。」

 

黎人はサイドカー付きバイクのエンジンをかけ、駅に向かって勢いよく飛ばした。

 

お祭り会場

 

「会長、かぐやさん・・・」

 

「僕らも行きーーーん?」

 

かぐやを迎えにチャリを走らせた白銀を見送った藤原と石上。その数秒後、つんざくような悲鳴が聞こえ、女子2人を俵担ぎした虎杖が着地した。

 

「「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」」

 

「よっと!!」

 

「伏黒、何分!!」

 

気づけば和服姿の黒髪のツンツン頭の少年がタイマー片手に歩いて来た。後ろには長い前髪を後ろで整えた少年がついて来ている。

 

「ピッタシ5分。相変わらずはえーな。」

 

 

「え、かぐやさん!?今家なんじゃ・・・ん?あ!虎杖くんだ〜!!」

 

「え、あ、虎杖じゃん久しぶりだな〜!!」

 

「あ!!藤原に石上じゃ〜ん!!!え、2人とも秀知院だったの!!?」

 

「お前知り合い多くね!!?」

 

伏黒恵は親友の交友関係の広さに驚いた。

一方その頃・・・

 

黎人は摩天楼をバイクで飛びながら四宮家当主との取り決めを思い出していた。

 

『二学期から高専所属の準一級以上の術師がかぐやの護衛を務めること。』

 

(というか・・・あのジジイ、話が分かるな。そこまで悪い人じゃねぇな。おおかた四宮先輩と同じでどツンデレなだけだな。さて、護衛誰にしようか・・・五条先生は誰でも好きなの選んでいいよ〜って言ってたし・・・)

 

クラゲマークのLINEアカウントを押し、LINE電話をかける。

 

「コイツでいいか。」

 

〜じゅじゅさんぽ〜

 

誰もいなくなった伏黒家のアパート。

 

「はい皆さんこんにちは〜

『ニート兼ヒモのフィジギフおじさん』で〜す。」

 

『キタァァァ!!!』

 

『イケボおじさん!!!』

 

『この見た目で自宅警備員ってマジ?』

 

『養うんでうち来てください♡』

 

『おいしれっと告白してんじゃねーよブス』

 

『あ"?テメェ調子乗んじゃねーよ?』

 

「おっとコメ欄が荒れてきちまった。喧嘩はやめてくれよ〜」

 

『『はいやめます』』

 

『目にも止まらぬ速さの和睦、俺じゃなきゃ見逃しちゃう』

 

「はい今日は、娘が認知症予防にいいよって買った脳トレやっていこうかなと思いま〜す。」

 

伏黒甚爾、禪院家の血を引きながら呪力を一切持たないかわりに輪廻を壊す肉体を手に入れた天与の暴君。去年黄泉返った彼は大阪コロニーに参加した後、最終決戦で、照屋輝紗羅の作った究極傑作特級呪具『一蘭ノ太刀』を使い伏黒恵の肉体から両面宿儺をきり剥がし、最後は五条悟が両面宿儺を虚式"茈"で消滅させた。

 

そんな彼は大人気ユーチューバーとなっていた。

チャンネル登録者数、現時点でおよそ3万人!!!





時期未定だけど、借金5億円チャンネルとフィジギフチャンネルコラボするってよ。


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生徒会と高専生は夏祭りをエンジョイしたい①

夏祭りに行ったことないのに適当書き殴りました。変な所、変な設定あるのでご了承下さい。

前話修正しました。必ず見てくれるとありがたいです。


人がごった返す駅前。子安つばめは浴衣を着てモニュメントの前に立っていた。普段のアップスタイルの髪型からサイドダウンの髪型に変えておりガーリーな雰囲気を放っている。

 

当然引き寄せられる者もいた。

 

「ねーおねーさん1人?」

 

「俺ら今からお祭り行くんだよ〜一緒に行かない?」

 

ナンパだ。

 

「えっと、私、友達と待ち合わせして・・・」

 

ナンパ男たちの特徴は、本人の都合を無視し自分たち優先に物事を考え進めようとすることだ。そして相手の状況を自己流に解釈するゴミやろうなのだ。

 

「え〜でも、もうすぐ花火なのに君待たせてるってそいつ最悪じゃな〜い?」

 

「それな〜そんな奴より俺らーー」

 

ペチン!!!

 

ナンパ男の頬につばめのビンタが炸裂した。

 

「貴方たちに彼を侮辱する権利はありません!!」

 

「あ"?テメェ調子乗ってんじゃーー「おい。」あぁ!?」

 

後ろに、黒のブルゾンに青のシャツ灰色のジーンズのズボンに身を包んだ黎人がいた。その眼はサングラスで隠されているが、凍える氷柱のような冷え切った気配を放つ青と紫の瞳孔。

 

「言葉に気をつけろ三下、今の際だぞ?」

 

数分後、バイクに向かう黎人とつばめがいた。ヘルメットを被った黎人が、勝ったばかりのピンク色のヘルメットをつばめに投げ渡す。黎人はまだ先程の光景を忘れられずに笑っていた。

 

「あはは、睨んだだけで失禁して悲鳴あげて逃げるとかウケる。」

 

「いや、当然の反応だと思うけど・・・大丈夫?呪術規定引っかかんない?」

 

「モーマンタイモーマンタイ。」

 

「ん?たしか中国語だっけ?黎人くん詳しいね。」

 

「伊達に英語、フランス語、ロシア語、イタリア語、中国語、ヒンディー語、スペイン語、韓国語、アラビア語をマスターしてないですよ。」

 

「マルチリンガル!!?」

 

つばめは驚愕した。

実は黎人は一度学んだことはそのまま吸収するタイプの人間であり、義母である家入硝子の持っていた医学書を読むにつれ、だいたい理解した。

 

「それより・・・免許持ってるの?」

 

「高専お抱え教習所でバイク、車、トラック、大型バイク、大型重機、戦車、戦闘機、戦闘ヘリの免許まで持ってる。」

 

「何処のベトナム帰りの戦闘員!!?」

 

つばめは再び驚愕した。戦闘ヘリに乗って弾幕を撃ちまくるバンダナ巻いた黎人の姿は黎人の家の地下シアターで見た『ラン●ー』を彷彿させた。

 

「それじゃ、行こうか?」

 

「ーーうん!」

 

黎人はバイクに跨がり、つばめはサイドカーに乗りお祭り会場に向かった。つばめがヘルメットのシールド越しに見た黎人の横顔は、何でか凄く綺麗だった。

 

△▲△▲△▲△▲

 

その頃、お祭り会場には秀知院の生徒会組と高専生の2年と狗巻とパンダが集まっていた。その中で、1人正座させられているのは虎杖悠仁。静かにキレてるのは釘崎野薔薇。

 

「何でお前ボンボン学校の奴らと仲良いんだぁ?おん?」

 

「え〜と、それには、深い訳がありましてーー」

 

(ひょぇぇぇぇ、これが本当のヤンキー女子かぁぁ!!?)

 

藤原はビビり散らかしていた。ヤンキー女子はドラマやアニメでよく出るため大体理解した気になっていたのだが、どうやら甘かったようだ。釘崎という眼帯ヤンキー金槌系女子にビビり散らかしていた。

 

この状況を何とかしようと、1人の少年が勇気を振り絞った。

 

「あの、僕が説明しまーー「黙れ第一印象根暗根弱陰キャ!!」ーーはいぃ!!」

 

(ヒィィィ!!?何この人、ヤンキーみたいだし、眼帯着けてるし怖いィィィィ!!!)

 

石上はビビり散らかしていた。元々女子に対する抵抗は無く、黎人のおかげで自尊心とプライドは高まったのだが、これで元に戻ってしまった。

 

「あれは今年の6月・・・」

 

『『極上天上味噌ラーメンニンニクましましで!!』』

 

たまたま同じラーメン屋で意気投合した藤原。

 

『ウォォォォォ!!目指せハイスコアァァ!!!』

 

『行けぇぇぇぇ!!!』

 

『『よっしゃぁぁぁぁぁ!!!』』

 

パチンコやりにゲーセンに行ったら最新のアーケードゲームがあり、たまたま一緒にプレイしたのが石上だった。

 

「ってなわけで一緒に映画館行ったりラーメン食いに行ったりゲーセン行ったりしまして・・・ご満足頂けましたでしょうか・・・」

 

「ーーーーふんっ、今度のセールで荷物持ちに命ずる。」

 

「かしこまりましたぁぁ!!」

 

(女桀・・・)

 

(男まさり・・・)

 

(すじこ・・・)

 

(姉御・・・)

 

「何か失礼なこと考えたな?」

 

「「「いえいえ、そのようなことは。」」」

「高菜高菜高菜。」

 

「おーい白銀っての見つけたぞ。」

 

真希が四宮邸に向かった白銀を連れてきた。人形のフリをして、棘に抱き抱えられていたパンダが声を上げる。

 

「お〜真希お疲ーーーてか何でお姫様抱っこなの?」

 

白銀は、真希にお姫様抱っこされ、顔に両手を当て赤面していた。

 

「いやコイツ人の話聞かずにかぐやのところに行こうとしたから、適当に気絶させて連れてきたんだよ。んで、途中で目を覚ましたってわけ。」

 

「もう、お婿にいけない・・・」

 

(会長が赤面!!?ひょっとして・・・会長をお姫様抱っこできるくらい鍛えなくては!!!)

 

かぐやは変な勘違いをして己を鍛えることに決めた。

 

▲△▲△▲△▲△

 

ひゅ〜〜〜ドンッ!!!

 

「「「「たまや〜!!」」」」

「こ〜んぶ!!」

 

お祭り終盤、花火が上がり虎杖たちが声を上げる。

 

「そういや、"たまや"って何なんだろ?」

 

「江戸時代の有名な花火師の屋号の玉屋が由来だ。鍵屋ってのもあって、たまやとかぎやっていう掛け声もあるらしい。」

 

「伏黒めっちゃ物知りだな〜」

 

「けっ、どうせお金持ちお嬢様の前でカッコつけたいだけよ。」

 

「あ"?お前らが調べてくれって言ったんだろ!!」

 

「「そうだっけ?」」

 

「お前らな・・・」

 

「はいはい喧嘩やめろ。んじゃ2、3年で護衛します。白銀会長、虎杖はこき使ってもいいので。」

 

「え!?俺だけ!!?てか秤先輩と綺羅羅先輩は!!?」

 

「知らね。どっか()()()()()()()()に行ったんだろ。」

 

「「「「あぁ〜〜(察し)」」」」

 

「あの、黎人くんたちは何を・・・」

 

「あ!?実はこの場合の人目のないところっていうのはゴニョゴニョ」

 

「青かっ!!!??」

 

△▲△▲△▲△▲

 

「お、たこ焼きだ。みんなで食べよーぜ!!おっちゃーん!!!10人分お願いしま〜す!!!」

 

お祭りの屋台では必要以上の価格でぼったくられることがある。だが、ぼったくることは悪い事ではない。騙され、ぼったくられてしまった奴がマヌケなのだ。ここで、買い物の仕方を解説しよう。

 

「合計で4000円だ。」

 

「4000円〜?高すぎじゃね?もう少し安くしてよ〜」

 

"俺は吹っかけられてるのをお見通しだ"という態度を取り笑いながら値引きを要求する。

 

「じゃあどのくらいだ?」

 

と、相手が探りを入れてくるため。

 

「んじゃ〜1500円ってのは?」

 

自分でも安すぎるくらいの値段を呈示する。

 

「はっ!安すぎるぜ兄ちゃん!!ウチ赤字になっちまうよ〜」

 

と、相手は笑いながら苦言を呈示する。だがここで怯んではいけない!!

 

「んじゃ〜他の店で買うか〜」

 

他の店で商品を買う、と言い帰る真似をしよう。

 

「あー!!ちょっとちょっと!!分かった安くまけるよ!!3000円でどうだ!!」

 

と、言って引き止めてくる。相手も商売、他の店で買われるより自分の店で安く買ってもらったほうがいい。そこにつけ込むのだ!!!

 

「いや、1000円にしろ!!」

 

そして、ここから本格的な値段交渉がスタートする。

 

値段交渉、開始ぃ!!

 

「2900!!」

「1100!!」

「2700!!」

「1300!!」

「2500!!」

「1500!!」

 

「「2000円だぁぁぁ!!!!」」

 

半額にまけて、有頂天になりみんなの下に帰った虎杖。だが10人分は1000円で販売していたことを知り、釘崎にドロップキックされたのち卍固めされた。

 

 



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生徒会と高専生は夏祭りをエンジョイしたい②


9/7、添削ミスで100本が1001本になっていました。
100本の薔薇の意味は『100%の愛』です。


生徒会と高専生らがお祭りを楽しんでる一方。

 

京都呪術高専

 

「ねぇ歌姫〜一緒にお祭り行かーー「ごめーーーん!!!」

 

職員室、1人で事務作業をしていた庵歌姫の元に五条悟が現れた。

 

「え〜大丈夫だよ歌姫の着物買ったから。」

 

「行かねーよ!!てか何で私のサイズ知ってんのよ・・・これ■■■万円する着物じゃない!!?」

 

「歌姫のためだからねー」

 

庵歌姫は驚いていた。確かに五条悟は生意気でムカつく後輩だ。腹立たしいし俺様から僕ちゃんにキャラ変したし唯我独尊だし、他人のことを考えない奴だと思っていた。だがあれからもう14年、少しはまともになったのかもしれない。

 

「・・・あんたのこと見直し「だって歌姫貧乳でしょ?着物って胸ない方が着やすいらしいから歌姫も着やすいじゃん!!」ごめんなさい私この後、血祭りに行かないといけないの♡」

 

歌姫の手に握られるのは特級呪具『天の逆鉾』のレプリカ、その効果は発動中の術式強制解除。輝紗羅・真依・美夜が合作で創り出したレプリカを手に、歌姫は逃げ出した五条悟を追いかけた。

 

□■□■□■□■□■□■

 

虎杖がぼったくられた後、二手に分かれて屋台を巡っていた黎人達は何とかライダーのお面を被った狗巻、ぬいぐるみのフリをして抱き抱えられるパンダ、長袖に帽子を深く被った真希と合流した。

 

「よぉ〜黎人。久しぶりだな。」

 

((((え、パンダが喋った?))))

 

かぐや・白銀・早坂・つばめは喋るパンダに驚きを隠せなかった。まぁ、初対面の人は大体同じ反応をする。喋るパンダ、高専に来ないと絶対会えない。

 

「呪骸のパンダ先輩です・・・動く呪いの人形ですよ。」

 

「おい日本人形みたいに言うなよ。こんなに可愛いのに。」

 

金魚すくいの屋台

 

「会長、金魚すくいしませんか?」

 

「おぅ、やってみるか。」

 

数分後

 

((・・・やばい。1匹も取れない。))

 

数十分後

 

「やった!!会長早く早く!!」

 

「落ち着け四宮!!焦らずゆっくりぃ!!」

 

やっとのことでそれぞれ1匹ずつ捕まえた。かぐやは赤い金魚を、白銀は黒い出目金を手に入れ大満足。

 

一方隣の水槽のメンバーは・・・

 

「しゃけぇぇ!!!」

 

「あの、狗巻さん?それは金魚ですよ?」

 

「おかか?」

 

「いや、おかかじゃ・・・え、おかか?」

 

つばめがおにぎり語の棘に苦戦していた。

 

「棘は呪言師なんだ。まぁ言霊みたいなもんでさ。フツーに喋ったら人を傷付けちまうから会話は全部おにぎりの具なんだ。"しゃけ"がYES、"おかか"がNO。それ以外はフィーリングだな。」

 

「牛すじ〜」

 

「何か、大変ですね。」

 

「「え、まぁ・・・」」

 

早坂のこぼした一言に、順平と黎人は同意した。

 

そして数分後、任務で遅れた乙骨が現れた。

 

「お、来たぞーーー」

 

彼らの視線の先にはでっかい薔薇の花束恐らく100本の花束を片手に持ち、もう片方の手に箱に入った婚約指輪(結構デカいダイヤの指輪)を持って現れた乙骨がいた。

 

「みんなお待たせ〜はいこれ真希さんにーー」

 

「いらね。」

 

ブンッ!!

 

薔薇の花束と指輪は夏の夜空に消えた。

 

「あぁぁ!!?」

 

慌てて取りに行く乙骨を尻目に、人混みを突っ切っていく真希。

 

「・・・あの人が?」

 

「はい、3年の乙骨先輩です。多分高専の中で1番"愛"について知ってると思います。」

 

「その割には、あの人プロポーズ失敗してるが・・・」

 

「パンダ先輩。今日で何回目でしたっけ?俺が記憶してる限り、今年の一月から10回以上プロポーズしてた気が・・・」

 

「ん?今日で100回目だぞ。その度に指輪の新しいのを買ったり造ったりしてるから結構出費すげーと思うけどな。」

黎人は言った。

「その度にフラれてるんですか?メンタルヤッベェなおい。」

順平は言った。

「だよね。メンタルヤッベェなおい。」

狗巻は言った。

「しゃけ、昆布、いくら。」

 

 

早坂は言った。

「すごいですね。メンタルヤッベェなおい。」

白銀は言った。

「・・・すごい人だな。メンタルヤッベェなおい。」

かぐやは言った。

「すごい人、ですね・・・メンタルヤッベェなおい。」

 

「え、四宮先輩が"おい"って言ってる?」

 

「え、かぐやちゃんが?偽物じゃない!?」

 

「偽物じゃありません!!!」

 

白銀とかぐやなどの秀知院組は、順平・黎人・パンダ・狗巻の空気に乗ることにした。そしてかぐやは高専組とそれに感化されたつばめに茶化された。

 

「かぐや様・・・楽しそうですね。」

 

早坂は1人微笑んだ。

 

□■□■

 

一方、綿菓子屋の前。

 

「うぉぉぉぉ!!!」

 

「うわぁぁぁ!!!」

 

「「スッゲェデッカいわたあめだぁぁ!!」」

 

馬鹿でかいわたあめを手に持ち、何処ぞの虎杖・藤原(馬鹿2人)は子供のようにはしゃいでいた。

 

「「・・・・」」

 

作り笑いを浮かべ、般若が背後に浮かんで見える釘崎が死んだような目でその2人を眺め、石上と伏黒は焼きとうもろこしを手に持って外野となっていた。

 

ゴゴゴゴゴ!!!

 

(あの!伏黒さん!?釘崎さんめっちゃ怒ってますよ!?)

 

(落ち着け石上・・・あの表情、怒っている理由には気づいているがそれを認めたくないって顔だ。一体何にキレーーまさか!?)

 

伏黒は察した。いや、察してしまった。去年釘崎から『私に彼氏ができるより先に、虎杖に彼女ができるのがムカつく!!』と言われ、じゃあお前が虎杖と付き合えばいいじゃん、と思ってしまった。そしてその伏黒の適当な思いが、現実のものとなってしまった。

 

そして石上も察してしまった。

 

(も、もしかして、()()()()()()ですか!?)

 

(あぁ、()()()()()()だ!!)

 

恐らく、虎杖と藤原にとってお互いの関係は友達。

 

だが!!

 

しかし!!!

 

ただでさえ男女同士が仲良さげにしていると"付き合ってる"感が出るというのに、今回は陽キャと陽キャの脳内ウハウハ、髪の毛ピンクコンビ。周りにいる者たちが()()()()()()なのではと思ってしまうのだ!!!

 

(ま、不味い・・・どうにかしなーー「あ!悠ちゃんと野薔薇ちゃんだ〜!!」

 

そこに"青少年の性癖破壊"というあだ名を持つ呪術高専4年『星綺羅羅』が現れた。

 

夏祭りはまだ終わらない。



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生徒会と高専生は夏祭りをエンジョイしたい③


夏祭り編短かったですがこれで終了です。
2学期編を始めるにあたり、研修旅行編をストップしておこうかなと思います。たまに投稿しますが、かぐや様キャラはほぼ出ない感じです。

かぐや様主力の2学期編、ある呪術原作キャラと早坂の絡み、黎人とつばめの恋物語を投稿していきます。ちなみに数学教師として"あの人"が赴任してきます。そろそろ黎人の胃に穴が開く日は近いです。

ヒントは、白髪目隠し


伏黒は項垂れながら質問した。

 

「綺羅羅先輩・・・秤先輩は?」

 

秤金次、4年の一級術師。

パチンコに関する術式を持っており、冥冥のカラスカメラを利用した、非術師にも呪術が見える"熱い"呪術師の賭け試合の元締めをしている。

 

「あー金ちゃん?お祭り回ってたらシャルルちゃんとハジメちゃんに会って、それで3人で回るって!!私、除け者にされちゃったの〜メグミちゃん慰めて〜?華ちゃんには内緒にするから〜」

 

伏黒に抱きつこうとする綺羅羅、だが伏黒は寸前のところで綺羅羅の抱擁を回避した。

 

「いえ、秤先輩に殺されたくありません・・・泣き真似しないでください!!脱兎出しますから!!」

 

「うわーん!!メグミちゃんも酷いよぉ〜!!そこの君、石上くんだっけ〜?慰めてよぉ〜!!!」

 

今度は涙を目に浮かべながら、石上の胸元に抱きつく綺羅羅。

 

ムニィ!!

 

男性にはないような柔らかい胸。その情報が石上の頭を支配した。

 

「うぉ!?うわわわ!!」

 

石上!!人生初の恋愛イベント発生!!!

 

石上は中等部の一件より前から、クラスの陰キャとして恋愛の"れ"の文字もない存在だった。

 

だが!!今この瞬間!!!

 

通常の女子に比べ、失恋したての女子との恋愛成功率は格段に上がる。これはフラれたことで自尊心が低くなってしまった女子は、そのとき優しくしてくれる男子に惚れてしまう。例えその男子がブッサイクでも紙メンタルの陰キャだとしても!!!

 

通常であれば、これは絶好のチャンスだった。

 

「えぇっと!!?星さん!?落ち着いてください!!」

 

だがしかし!!!

 

(やばいやばいやばいやばいぃぃ!!!)

 

この男、モンスターチェリー(童貞)だった!!!

 

(あわわわわ!!!むっ、胸が!?僕の胸と当たって胸肉で!!?おっ、落ち着け落ち着け!!素数を数えろ1、2、3、5、7・・・)

 

涙袋を腫らした綺羅羅が、石上の顔をじ〜っと見つめる。

 

「・・・よく見たら石上くんいい顔してんなぁ〜こっちに乗り換えちゃっていいかな?」

 

(じゅうさーーーえ、マジで?)

 

石上、意外でもないがチョロかった。だがその考えは綺羅羅の次のセリフで吹き飛ぶこととなる。

 

「優くん好きな人いる〜?()()()()()()()しよーよー?」

 

 

 

 

 

(ボーイズ、トーク?)

 

石上は思考停止した。目の前に立つパンク風の()()

自分のことを()()()と言ったことが事実なら、彼女ーーいや()には棒がもう一本あるということだ。つまり、つまり・・・

 

「・・・あの、失礼ですが、星さんって、()()ですか?」

 

「ん?そーだよ?あっ、勘違いしちゃった?テヘ!!」

 

「男の娘かよぉぉぉ!!?」

 

石上は現実は非情だと悟った。だが1つ学んだことがある。それは二次創作でよくある女の子っぽい男の子は現実に存在するということだった。

 

石上は、神はこの世に存在することを知った。

 

□□□■■■□□□

 

お祭り会場の端。

 

釘崎野薔薇は捻くれていた。

 

「・・・どーせ私は男まさりで、可愛げのない女よ。」

 

禪院真希はムカついていた。

 

「くそ、くそ、くそ・・・何で諦めねぇんだよ。」

 

「「あ。」」

 

めんどくさい女、2人が出会った。

 

「なるほど、つまりピンク髪頭ふわふわな女子が悠二と仲良いと。嫉妬だな。」

 

「いや、いいや、違います違いまー「違くねーだろ。」・・・ムカつくんですよ、何か、アイツが私以外の女子と仲良さげに話すのが。」

 

ふーんと真希が頬杖をつき、釘崎が手に持ってたイカ焼きを頬張り食いちぎる。

 

「ホフホフホフ・・・そもそもアイツが私に向ける優しさって、自責の念からできてるんです。」

 

去年のハロウィン、真人により左目を吹き飛ばされた釘崎を、虎杖は後悔し続けていた。

 

「自分のせいで左目吹っ飛ばされたからって・・・好きだからって意味じゃないんですよ。」

 

「めんどくせーな・・・私もさっき憂太に告られて振ってきたから、めんどくせー女に当てはまるんだろうけど。」

 

水風船を振り回し、天を見上げながら呟いた真希。釘崎は目の色を変えて仰天していた。

 

「はぁっ!?また告白されたんですか!!?」

 

「いや、告白してくる前に花束と指輪奪って投げ捨てた。もうこれで100回目だ・・・アイツいい加減諦めろよ。」

 

「真希さんは何であの乙骨憂太(ヘタレもやしクソ野郎)を振り続けてるんですか?私だったらボコボコにしてますけど・・・はっ!!まさか何か弱みでも握られてるんですか!!?教えてください!!アイツのナニをボコボコのギッタンバッタンにしてきますよ!!!」

 

真希は頰を赤く染め、口に出した。

 

「・・・・・ほ、惚れちまった弱み。」

 

「へ?」

 

「でもアイツには里香がいるだろ?指輪もそのままだし、私の付け入る隙はねーよ。好きな男が他の女を好きになってたら、その先に進める勇気は、少なくとも私にはないな・・・無理に奪っても憂太の心は奪えない。」

 

「   」

 

真希の火傷跡は治療を続けてどんどん薄くなり始め、下半身から腹は元の姿に戻りつつある。みんな優しく接してくれるが、けれど人一倍優しく接するのは、憂太ただ1人。

 

恐らく優しさからなんだろうが、それを自分だけのものにしたい。

 

「ま、そんなことで諦める私じゃねーけどな!!あいつが里香との未練を消し去った時に、隣を歩けるようになる。それが今の私の目標・・・野薔薇?」

 

「   」

 

釘崎、憧れの先輩の見たことない顔を見て塵となり灰と化す。

 

「し、死んでる・・・」

 

■■■□□□■■■

 

つばめと黎人はほぼ2人きりだった。

 

ぶちっ!!

 

「おぅ!?」

 

「どうした?」

 

リンゴ飴を持った黎人が歩み寄る。

 

見ると下駄の鼻緒が切れていた。慣れない和服に慣れない場所だ。気をつけて歩いたとしても帰りに切れていただろう。

 

「ほら、おぶってやる。」

 

「え、え?」

 

「・・・別に下世話なこと考えてねーよ。」

 

「むむむ・・・分かった。」

 

『ぁぁぁぁぁぁぁ!!!恋イベだぁぁぁぁぁ!!!』

 

肩に巻きついている八岐が小さく叫んだ。

 

(コイツ・・・四宮先輩と会長がくっついたら即祓ってやる。)

 

「・・・ねぇ、お願いいいかな?」

 

「この状況でよく頼めるな・・・何です?」

 

「・・・もし玲奈さんの呪いを解けたら、もう私に用は無くなっちゃうかな?」

 

「・・・でしょうね、少なくとも頻度はー「私卒業したら高専の事務の仕事する。」ーへ?」

 

普通に考えられなかった。

 

呪いを解けば、彼女はただの呪霊が見える一般人。彼女が呪術界に関わる理由もない。まぁ彼女に取り憑いた玲奈さんの憑依条件が分かればの話だが。

 

「何故わざわざこんな地獄に?」

 

「黎人くんは私の友達だから。友達のそばに居たいのは普通でしょ?だから、私に用を無くさないで。」

 

「俺が覚えてたら・・・約束しよう。」

 

「はい、縛り!!」

 

「ーーーひょっとして津美紀さんに教わった?」

 

「うん!!あの人アインシュタインだからね〜」

 

何処ぞの平安露出狂みたいな縛りの設け方だ。絶対に津美紀さんから教えられたに違いない。

 

(アインシュタイン・・・いや、頭良いって意味か。津美紀さんと美夜に何教わったか、こんど聞くか。)

 

「後それから禁煙してよ?」

 

「・・・やなこった。」

 

「えぇ〜!?ぷく〜」

 

夏は去り、秋が近づく。

 

「・・・やっぱお祭りは良いや。呪霊集めに丁度いい。」

 

黒ずくめの格好の少年が、近くにいた女性の肩に乗った呪霊を丸めて取り込んだ。ペロリと舌を舐める彼は、再び呪いを取り込む。

 

燕の子安貝に見初められた森羅万象

 

それによって固められた塵の上に置かれた盃

 

それに星のように光沢する油を注いで。

 

〜じゅじゅさんぽ〜

 

七海「夏も終わりですね・・・」

 

伊地知「そうですね。」

 

巳乃斗・汀「「たーまやー!!」」

 

七海「仕事が始まりますね・・・」

 

伊地知「そうですね。」

 

日下部「オメーら何やってんだ?」

 

巳乃斗・汀「「花火とアイス!!」」

 

七海・伊地知「「仕事が始まる葛藤。」」




最近感想がこないのでペース下がり気味です。それでも鞭打って夏祭りを全力で書いた自分を誰かに褒めて欲しい。

てな訳で感想、高評価お願いします。


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じゅじゅさんぽSpecial②


二学期編を期待してた方すいません。
書き溜めてたじゅじゅさんぽSpecial②の方を先に投稿します。
最後の方かぐや様キャラ出してるんでシクヨロです。


①、ア●ンジャーズ

 

五条悟/キャップ●ン・アメリカ

 

「ヘルメットに目隠しってなかなか良くない?」

 

虎杖悠仁/スパイダー●ン

 

「先生、全然カッコよくないし不審者でもそんな格好しないよ?あ、伏黒見てる!?俺蜘蛛に噛まれてねーけど指の握力だけで天井ぶら下がれるよ!!」

 

与幸吉/アイ●ンマン

「俺はいつもと変わらない気がするんだが・・・」

 

加茂憲紀/ホーク●イ

 

「・・・俺もだな。」

 

伏黒甚爾/●ルク

 

「何で俺だけパンツ一丁なんだよ。」

 

②、狗巻は見た!ver.2

 

就寝時間、深夜12時に目を覚まし、ピンクのウサギモコモコ寝間着を着た狗巻は伏黒の部屋から物音がするのを耳にした。

 

「・・・ツナマヨ?」

 

覗くと・・・

 

「恵〜♡寝顔も可愛いな〜♡恵は寝ぼけてると記憶も無くすことはお義姉様から聞いてるからね〜♡♡」

 

「・・・いい匂い、お花畑みたい。」

 

ムニィ!!

 

「うわぁ・・・柔らかい・・・」

 

「うふふ♡♡甘えてもいいよ?私の心も体も恵の物なんだからね〜♡♡♡」

 

「(((///;゚Д゚)///))))!!?」

 

③、アイドルin東京校

 

黎人が秀知院任務に行った4月。芸能業界に嫌がらせを目的とした低級呪霊が放たれ、東京校校長の五条悟は3人の生徒にアイドルグループとして潜入捜査させた。

 

『それでは!!彗星のごとく現れた新人アイドルグループの『光光(キラキラ)妖美』さんお願いしま〜す!!!』

 

「みんな〜!!元気〜?」

光光妖美のセンター、『キララ』

「ニコッニコッ!!」

無口だけど笑顔とノリが可愛い、『トゲ』

「今日はよろしくお願いします・・・」

クール系で恥ずかしがり屋、『メグミ』

 

全員女装!!

女性の声になる呪いをかけているためバレること無し!!

 

伏黒は思った。

(・・・頼むから、殺してくれ。)

 

④、エイプリルフール

 

虎杖悠仁の場合

 

虎杖「ごじょぉぉぉぉぉせんせぇぇぇぇ!!!」

 

五条「んー?どうしたの、悠ーー」

 

虎杖「伏黒がキレた!!!」

 

五条「え?ナニそれ面白そう!!!」

 

伏黒恵の場合

 

伏黒「五条先生、俺卒業したら海外に住みます。」

 

五条「恵・・・御三家の当主だから無理だよ?」

 

釘崎野薔薇の場合

 

釘崎「おいゴミ教師、警察の人来てんぞ。」

 

五条「えーマジか・・・どれがバレたかな?学生時代に当時の総理大臣の娘をナンパしたやつ?それとも当時のアメリカ大統領の顔に落書きしたやつかな?」

 

釘崎「お前何で教師やってんだよ・・・」

 

吉野順平の場合

 

順平「伊地知さんが辞表出しました!!」

 

五条「ん?アイツ今パシらせてるよ?」

 

順平「・・・何頼んだんですか?」

 

五条「受肉組がね、熊鍋食べたいって言ってたからさ。北海道まで行って、ヒグマ仕留めてこいって。」

 

4人とも失敗・・・

 

だがこの男は違った。

 

黎人「母さんが、歌姉が結婚するって言ってました。」

 

五条「    」

 

黎人「・・・五条先生?」

 

五条「    」

 

この後嘘だと伝えるまで、五条は脳内無量空処だった。

 

⑤、師匠

 

四条眞紀は絶望していた。

 

「・・・あはは。何で私こんなところに・・・」

 

友達がくれた高田ちゃんライブチケット2枚、それを恋焦がれる翼くんに渡そうとしたらもう既に渚とデートに行く用事があったため、たった1人でアイドルのライブに行く羽目になった。

 

『たんたかた〜ん!!!』

 

「高田ちゃ〜〜ん!!!!」

 

「高田ちゃぁぁん!!!」

 

そして隣には全力でオタ芸を踊る美女と、涙を流しながら『高田ちゃん(LOVE)してる』と書かれたうちわとタオルを振り回す上裸筋肉ゴリラがいた。

 

「どうしたそこのツインテ女子!!もっと高田ちゃんへの愛を伝えないと!!!」

 

「・・・」

 

「貴女・・・失恋したのね?」

 

「ぎくっ!!?べ、別に失恋なんかじゃないわよ!!ただ好きだった男の子が私の幼なじみに告白されて付き合って!!その男の子に何度もアタックしたけど失敗して、何か変なかんじになってるだけよ!!」

 

「ほほう・・・だがな、迷える子羊よ。友情は憎悪と違うようで似ているのさ。お前がその幼なじみの恋路を応援するのか、それとも一時の憎悪に流されて全て失うか、どちらも恋という感情から生まれた2種類の選択肢。お前がもしその友達の、幸せと幸福を願うなら、笑顔で笑って身を引くべきだ。涙?笑いで蒸発させろ!!」

 

「うぅぅ、師匠ぉぉぉ!!!私を弟子にしてください!!!」

 

「OKシスター!!取り敢えず今は高田ちゃんへの愛を伝えよう!!!」

 

⑥、イケボおじさんチャンネル

 

伏黒の実家、アパートの一室。

「それではお便り雑談室です。最初のお便りは・・・『フィジギフおじさんって"借金5億チャンネル"のおじさんと声似てるよね。』言われてみたら・・・確かに似てんな。」

 

白銀の実家、伏黒宅の隣の部屋

「えー借金5億チャンネル始まりました〜。視聴者さんから面白そうなコメントをいただきましてね。なんとかの有名なニート兼ヒモのフィジギフおじさんと私、声が似てるそうです。」

 

 

「「いつかコラボしてみよっかな。」」




改めてお気に入りしてくださった皆々様ありがとうございます。
9月12日11時現時点での公開登録者の名前を上げさせてもらいます。
Boss缶 Euler057721 やすけー 古池 シュん ユキオ アンチャーテッド BLOODRAIN 朝霧 時雨 鬼獣八紅 寄葉 Okada7859 星雲 輪廻 ご当地弁当 純心太 jackpot9 ハクエイ29 湯豆腐冷奴お味噌汁 れおりん 松泉 実 キャン裕 結社 貴樹 怜 千空 -工場長- ビスコ森永 V3-X 北方守護 茶柱 赤いトマト 運流株式 深山木秋 --けい-- リムルppp ハルトマン提督 姉小路 ゼクロム HTα 泡沫/utakata 〇タ ドドスン 樋川麻央 作者2 あそみな コカアア 夜桜乃道 カイヨゾラ アジ・ダハーカ 土岐やん 
Uta123 雪の日の猫鍋 Wana012 神木横臥 勝鬨斬月 狂った空飛ぶカタツムリ karuma00 まっつん 皇帝ペンギンZ atc1 守護騎士 猫袋 世界の神様 もつカバーな イワチャ Sae木3 なっし 寝転ぶ人 二期やって欲しいアニメが多すぎる 智如 Re_nx 菓子わ餅 翡翠1341 緋蓮@拉麺廚 チョコトマト piko6 ゲラウェイ 月満 嶽 フォーレスト UBW00 からすけ deryu 仲良し村の有機マッシュルーム コモン8580 抹茶ラテ0527 鯖犬 アトレティさんま susie( ˘ω˘ )スヤァ どこぞの機械好き 猫二匹 ムンクンチ papikogorira アルスシン 汐音@Magia アクルカ グッドマンズR Syurei 黒姫凛 みなみかぜ Dr.cloud_man 
辺ABを動く点P シロネコヤマト XX蒼XX チコちゃん zzx 壬生咲夜 ろくてん パンデモニウム 夜桜夜月 ビリーアニキ ソラ0 ノーブンサイ 黒露丸 猫飼いたいなぁ 槐環 ジムリー・クリーンド undertree ヨッシー7w76kxZ HΛL シャロ0802 スライム型の抹茶アイス ウルフウッド 立花オルガ 白秋-アヤミ ちくちく2号 白神浬 ペロロン Mebius217 チャン根田 ババキャノン マスク クラウン こあら 怠惰なみどり フィリップ・ペタン and 過白 ナルラトホテプ Magical-glasses ふともも、 torosu 排他的 青鬼の玉井様 ヴァンプッシュ 匿名のDIO わたしはだれ? 海老カツ Kumorase ポポ〜漢〜 フェリト 鷹野 折紙 
エイト! 十六夜霞 ヨイハ ism ニンジャ0号 アイアンスローン 하루토라 夜桜刹那 大宮 孟 oobuchi9 元一 サーモンの稚魚 紅桜風月 夜心みょんZ ウーラケイ プラムプラム アルテラ064 hon うるせぇ、ばー◯ 緋曁 Okurawave cswwk5 夜9さん ジャック・ダニエル きんぴら@山田 もちもちのギロチン rar sugiyan 紙さま セレスト 鮎阪留夫 Atria8726 零zero たくみっち 昇空 湖沼 アカサタナハ 子沢山 ポケットかぷせる コマル うんぷてんぷ こんにゃく畑 ヒキン アセロラスプラッシュ サトゥー リュー@ パリの民 綾翔 白福雪絵推し naruminn 
紅 日暮 面白そうな小説探すマン 零露時 詩乃 ライセンス パンドラちゃん ひーひーーーーーー モブザ=コーカス 奈良 ♠Ryu♠ カカアオ まされる carol あかさたなさはやら 7歳 Magnu とんとろ丼 ティルナファ しろねこ さすふぉー fokattya リューク tqブドウ トムさん ナンヤテー @Nezha Alan=Smitee おっぺー 月魔 プラタナス オロナイン 秋兎01 影老人 vr another key ライアークラウン 混沌者 Blues Ai 羽田共也 NR したなす ボルンガ ヴぁい Cパチュリー yunaital 冨岡義勇 たい焼き侍 Banshee109 TToy yuya_toshi つきみんぬ 
sinkeylow 神皇帝 モリヤ元輝 shikito レイ・ブラドル・ドラニス Taku0000 多田羅 たくぅ しゃおり 茶々。30号 rai322 怪猫蜜佳 nao透け すけ〜るp vfx Na7shi 這いよるゆで卵 柘の木 三度の飯よりパン アギマスゼロ 狩る雄 (・∀・)v ストークス ヨク バボちゃん 幻の犬@旧名は赤犬 会社辞めたい人 アレスハ 0415 かもめ 森熊ノ助 ブルース1 はと丸 シンシン 練炭 ばっしぃーv2 のぞみ Gussan0 makiri コメリ 5等身 yuma2017 優二 LuNya 赤波四浪 zeroポン太 まにま モンダミン 高城刻 羅刹マーン 
刈谷 光輝  堕落猫 忍刀 Cケア ktmknt 蛾は柄 ゆう2015 黒海ななし KOU 怠け牛 杉崎鍵 星★ 博麗 霊夢 オリアス ももも 戦艦大好き 高鳴り 蒼介 My.K たかおさん 由希 紺華 いう^o^ fumin ギルネリーぜ ピチュー LNADYRTA 葵紋 カシオオレンジ お馬ちゃん 大紫蝶 魁人 タイラノマサキ 水素 天翔青雷 鷹の目 オグニス 雫石静 キクナリ xg70 ☆コウキ☆ 気弱なセブン 紅戯遊人 No.29 赤紫セイバー さかなくんさん cars 練乳は飲み物 八幡零士 ふりかけを翔 
鷹樂 職也 カ―ネル タツオ・クローニン 夜はねこ ホワホワ d-ank 愚物 大自在天 parry 十把一絡げ 文月翠月 のほっほん 愉悦部下っ端 一番星 チョコ大和 とある考察者 ピラ D.O84529 ユキータ 真っ白白豚 黄猿58歳 魚躬 カレイの煮付け 卍混沌の覇者卍 竣夜 エーギル アラリス ハイド302 ニタニタナハナハ ビフテキ ren瀟洒中 DAC224 横田ァ! 昌平君米 光を掲げる者 前島亜美 帝 海 なかじww いのやん ナイルナハト マサヒロ 夏凛 とろとろトマト UtaLyz Alseif アステカちゃん アキラ0106 普通の東方好き Akuto 
ゼロゼロゼロ 鷹柳 晃 山中群司 夜桜 一 ふおんお uhi 修羅曼荼羅 ふとポニョ 【快楽】ティキ・ミック カラコル 漆黒の大翼 otona 業魔の反逆者 夜国 tinyes タブリス mizinco_co nowi 旅人 _ryo @RU5 天野翔 ユーた 紫 水晶 歌伊斗 †黙示録† 佐伯 誠 Ko-keke たいぞー tora-dog 瑠歌 凛音アルカード ☆ペロロンチーノ☆ モンイツ ネクソン ワン01 シンフ ヴィダール 大墨天乃 カキヨミ むんきゃっと フローンティア でるこ 神林 生死 Z1gSAW あ! 爆砕衝点穴 ランニングシャツ ノラ メンミグ 
Mr.TripleThree 九里府身 サシカマス エイミィ メリオダス1 晴 輝 エンプティ 颯丸 野獣と化した先輩 ボールド 

これからも頑張って行きますので、よろしくお願いします。
あと感想、感想マジで欲しいです。このままだとモチベーションが"浴"で沈められちゃうので感想お願いします。


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2学期編
家入黎人/吉野順平は逃げ出したい



二学期編スタート!!!

訂正しました。少し飛び飛びのところが多いと感想のところでありましたので今後はそういう箇所を直していこうと思います。直しが終わったら最新話を投稿します。


 

新学期!!!

体育祭に学園祭!!!

学業優先の秀知院にも、

学校の一大イベントがある!!!

 

そんな初日、黎人は校門前で風化委員2人に呼び止められていた。

もちろん彼の目の前で肩を上下させて唸るのは伊井野、隣で「もう諦めたら?」と言う大仏。髪を下ろし、()()()()()()()()()黎人は気怠げかつ、少しイライラした様子で彼女の小言を聞いていた。

 

周りの人は避けるように避ける現場では、伊井野がギャイギャイ言っていた。

 

「1学期は、片目包帯でタバコも吸ってて・・・2学期には髪下ろして両目包帯って!!?」

 

「安心しろ、前は見えてる。」

 

「ダメですっ!!!校則違反です!!!」

 

「おい伊井野、お前まだ黎人のストーカーしてたのかよ。しつこい女は嫌われるぞ。」

 

隣に立つ石上が苦情を申し立てる。

 

「石上は黙ってて!!!とにかく校則違反ですよ!!今度は言い逃れできませんからね!!!」

 

「たっく・・・おい石上、俺が合図したら校門通り抜けろ。

 

石上がこくりと頷き、黎人は横手を向いてわざとらしく大きな声を出す。

 

「あ!校長〜おはようございます!!」

 

勿論、校長はいない。黎人のハッタリだ。

 

「えっ!!校長先生!!?おはようございます!!!」

 

頭を下げた伊井野。同時に大仏も頭を下げる。

 

(今だ行け!!)

 

この隙を見逃さない。黎人と石上は急いで校門を通り抜け、2人並んで笑い出した。後ろでは「あれっ!?」と伊井野が慌てふためいている。

 

「あははは!!にしても、二学期が8月の最終週でスタートって中々鬼畜だな。課題と夏休み明けテスト対策したか?」

 

「黎人さんに脅はーーというか()()()されたんでやりましたよ?目の前でマネキンを踵下ろしで潰すって、一体何食ったらそうなるんですか?」

 

「母さん直伝の酒のつまみと伝説の銘酒『酒呑童子』」

 

「無視しないでくださぁぁい!!!」

 

校門から走ってきた伊井野が黎人らにたどり着く前に、2人は校舎内に逃げ込んだ。

 

△▲△▲△▲△▲

 

1時間後・・・

 

『エェ、新学期ガ始マリマスノデ、ウンタラカンタラ〜』

 

「おい黎人、お前何食べてる?」

 

「キシリトールガム、禁煙中なんだよ。」

 

「禁煙!?お前が!?」

 

『ト言ウワケデ、ココデ私ノ体験談ヲ・・・』

 

「何でいきなり禁煙したんだ?」

 

「・・・"ある先輩"に禁煙してって言われたんだよ。」

 

体育館、全校集会という校内放送に変えてもいいだろと思うそれを、黎人はただ聞いていた。彼はこの学校にはあと半年しかいれない。だがその1年は、去年の騒動の後ほとんど休んでいない黎人にとって貴重なものなのだ。

 

(あんな形とはいえ、あの異常者どもを送られる事もなくて安心だな。俺はあと半年、この学校で低級呪霊を祓いながら四宮先輩と会長をくっつければいい・・・ま、呪霊は式神に祓わせて俺はあの2人に集中するか。)

 

難易度はともかく。

 

呪詛師は黎人が学校中に張った結界を通れない。

 

呪霊はセルフコントロールの式神が祓らう。

 

めんどくさい受肉体も来ない。

 

まさに極楽!!

 

ちなみに重要なこと以外は右耳から左耳に聞きながしている。

 

そう、重要なこと・・・

 

『ソレデハ、今年度ダケ数学ヲ担当スル新任ノ()()先生です。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・は?

 

校長の隣に立つ白髪、サングラスをかけ、白いシャツに黒のジーンズを見に纏っても隠しきれない高身長の男。

 

(五条?いや、勘違いだな、あんな変態教師がここに来たら極楽が極悪に変わる!そもそも奴は東京校の学長に就任して忙しいはずだ・・・お願いします、五条悟じゃないように五条悟じゃないように五条悟じゃないように五条悟じゃないように五条悟じゃないように五条悟じゃないように五条悟じゃないように五条悟じゃないように五条悟じゃないように五条悟じゃないように五条悟じゃーーーー)

 

「どうも〜初めまして!!2年生の数学を担当の五条悟です!!みんな、よろしく〜!!!」

 

「ーーーーグハッ!!」

 

黎人は血とガムを吐き、崩れ落ちた。

五条悟、何故お前がここにいる。

 

本日の勝敗、黎人の負け

(胃に穴が空いて保健室に運ばれた。)

 

家入黎人は逃げ出したい。

 

▲△▲△▲△▲△

 

時間は遡って昨日

 

四宮別邸にて、門の前には大きな荷物を抱え、黎人の指示通りに門が開くのを待つ少年がいた。

 

「でっっっか・・・映画のロケに使えそうなくらいデカいんだけど・・・」

 

吉野順平

呪術高専2年の準一級術師。

去年の里桜高校の一件の実行役だった彼は特級呪霊『真人』の策略で母の吉野凪に重傷を負わされ当人は殺されかけたのだが、その場に居合わせた虎杖悠仁と七海建人、そして家入黎人に命を助けられた。処刑対象となったのだが、家入黎人による観察処分で落ち着いた。

現在は家入硝子の弟子となり、()()()()()反転術式を使えるようになった。タバコの根性焼きの痕は硝子によって消え、伸ばしていた前髪を後ろにオールバックの髪型に変えた。

 

そんな彼が何故四宮別邸にいるのか。

 

話は夏祭りの時に遡る・・・

 

お祭り前、黎人に『後で話がある。』と連絡があった。何だろうという疑問と、命の恩人の願いは聞こうという思いが順平にあった。

 

で、祭り途中で聞いてみると四宮かぐやという四宮家のお嬢様に会わされた。

 

『四宮の当主と『準一級以上の術師を四宮かぐやの護衛に付かせろ。』って縛りを結んだ。てな訳で、俺がお前の任務肩代わりするから、お前行ってこい。』

 

『えぇぇぇ!!!??無理です!!!』

 

『はじめまして、四宮かぐやです。』

 

『あ、はじめまして。ぼくは吉野順平ーーって僕まだ行くとは『俺ん家の地下シアター使わせるから。』

 

『キリッ‼︎頑張ります!!』

 

という経緯でかぐやに挨拶して、側仕えの早坂というメイドを呼んでくれた。

 

(うぉぉ・・・メイドだ。)

 

「早坂、彼が派遣された呪術師よ。私はもうお祭りの時に紹介されたけど、貴女はまだでしょう?」

 

「はじめまして、吉野順平と申します・・・早坂さん?」

 

「ーーーーガクッ」

 

早坂は、目からハイライトが消え、膝から崩れ落ちた。

 

「「え?」」

 

黎人様(最推し)が来ると思ってたのにぃぃ!!!!ひょっとして、かぐや様、夏祭りに挨拶したって言ってましたよね!?つまりかぐや様は黎人様じゃなくて貴方が来るの知ってたということですか!!?何で教えてくれなかったんですかぁ!!!!」

 

(えぇぇぇ!!?何なのこの人ぉぉぉ!!!?)

 

(えぇぇ!!?どうしたの早坂ぁぁ!!?)

 

吉野順平は逃げ出したい。

 





早坂のキャラ崩壊ってあんま見ないから、書くの苦労しました。
あとそれから、勘のいい人なら分かると思います。

元呪詛師と裏切り者、ちょっと似たもの同士です。

カップリング作っていいよね?


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五条悟は愉しみたい


秀知院の校長は、十年以上前までは廉直女学院で英語教師をしていました。五条や夏油とも面識はあります。その後秀知院学園のフランス校に行き、校長を務めていたが、現在は日本校高等部に勤めている。

天内は、初めて受け持った生徒でした。


「いや〜ありがとね()()。」

 

「いえいえ、五条クンのお願いごとですカラネ。それにしても、君と会うのは久しぶりデスね。」

 

14年前、あの青い夏の日。

 

星漿体、天元様と適合する少女の"護衛"と"抹消"を命じられた五条らは廉直女学院で教師をしていた校長と会っていた。そしてその後教師となった五条は、教師とは何なのか、教師としてどうしたらいいかという事を校長に尋ねたりして交流を続けていた。

 

つまり現在の五条悟のおよそ3割を作ったのはこの校長だ。

 

「校長は廉直のころから変わんないね・・・あれからもう、14年か。」

 

「あの時は君は生意気小僧でしたネ、隣に立っていた前髪クンが理知的に見えましたヨ・・・天内さんのことを忘れたことはありまセン。」

 

2人はしみじみと、14年前のことを思い返した。

 

「・・・天内も、傑も逝った。黒井さんは沖縄で傑の置き土産の双子を面倒見てっけど、まだ立ち直れてない・・・まぁ僕も人のこと言える人間じゃないや。いい加減立ち直らなきゃね。」

 

「ところで五条クン。この後一緒に●ケモンGOしませんカ?」

 

「んーその前に黎人の様子見に行っていいです?」

 

 

 

秀知院保健室

 

「知らない天井だぁ・・・」

 

家入黎人は目を覚ました。

 

「お、起きたなカス兄貴。」

 

ベットの隣の椅子に座るのは美夜、美夜がカーテンを開けると外で話をしていた生徒会メンバーが駆け寄ってきた。

 

「黎人くん大丈夫!?いきなり倒れたから、みんな心配してたんだよ!?」

 

「なんか具合でも悪かったのか?」

 

「ごめん・・・多分祓いの仕事多かったからな、呪術高専の恥(特級アホ)が現れた幻覚を見た。」

 

「呼んだ?」

 

保健室の窓から五条悟が身を乗り出していた。

 

「優、俺の目をくり抜いてくれ。多分眼球に幻覚が見える呪いがかけられている。一思いにやってくれ、じゃなきゃ自分で視神経を焼き切る。」

 

「視神経を!!?」

 

いやだ、現実を認めたくない、という黎人の思い。その思いは2歳年下の美夜にとっても同じだった。

 

「千花姉、今すぐ私をぶん殴ってくれない?そうすれば目の前の真っ白お化けの幻覚を忘れられるから。じゃなきゃ私は東京スカイツリーから飛び降りる。」

 

「美夜ちゃん!!?」

 

急に自殺宣言をした友人と後輩にあたふたする藤原と石上。話に追いつけてない白銀とかぐやの視線は保健室に入ってきた新任教師に向けられていた。

 

「も〜黎人も美夜も照れ屋さんなんだから〜GLG(グッド・ルッキング・ガイ)の五条悟先生だよ〜?」

 

「・・・なぁ、黎人。ひょっとして、この人・・・」

 

「はい。現呪術界の頂点に君臨する、史上最強の呪術師『五条悟』・・・その実態は人が予測しない行動を平然とやってのける変態目隠しです。」

 

「もう!!黎人ったら褒めても何も出ないよ?てな訳で〜」

 

「褒める訳ねぇだろ。てかどんな訳?」

 

「僕生徒会の顧問になったから、生徒会のみんなよろしくね〜」

 

「「「は?」」」

 

「いや〜ここの校長とは古い付き合いでね。LINEで連絡したら即答でいいよって返事きたからさ。生徒会の顧問やってって言われたわけ。てな訳でみんなよろしく〜」

 

「五条先生・・・貴方学長ですよね?大丈夫なんですか?」

 

「あ〜大丈夫、大丈夫!!仕事はぜーんぶ伊地知に丸投げしたから!!」

 

((伊地知さん可哀想に!!))

 

一方その頃・・・

 

「はい!!すいませんすいませんっ!!えぇ、ですからその件は乙骨特級術師にーーーーえ!?あと3つも特級案件!!?ご、ごめんなさい、分かりました!!え、私が九十九特級術師と家入特級術師に直談判しろ!?無理です!!私4級なんですけど!!私死にたく・・・あ、はい。」

 

・・・閑話休題。

 

「・・・てか、何でここに来たんですか?」

 

「そりゃ決まってんでしょ・・・青春は若人だけの特権じゃないからね!!」

 

ガッツポーズを決める五条。()()()()、その言葉を聞いた黎人と美夜はIQ50000(自称)の脳が五条の言った言葉の真相にたどり着いた。

 

「・・・まさか母さんも?」

 

五条悟の同期、家入硝子もここに来ているのでは?

 

だがその推測は、ある意味では空回りした。

 

「あー誘ったんだけどさ、今日は忙しいからって断られちゃった。七海は休暇で温泉行っててさ。伊地知には学長の仕事丸投げしたし。」

 

((ホッ・・・))

 

「そうですか、それならーーー

「ま、明日から秀知院(ここ)の制服着て転校生演じるってさ。硝子って黎人ら三兄妹絡むとめっちゃ空気読んでくれるんだよね。あははは!!」

・・・俺早退するわ。美夜、後は頼む。」

 

「OK兄貴。29歳のセーラー服を絶対に阻止しろ。」

 

本日の勝敗、家入兄妹の敗北。

理由、吐血のちに脳破壊

(ちなみに硝子の転入は阻止できた。)

 

〜じゅじゅさんぽ〜

家入美夜はぶつくさ言いながら中等部の廊下を歩いていた。前方から同学年の女子2人、そんなことに構わず美夜は歩き続ける。どうやらかなりご立腹だ。

 

「全く・・・母さん何考えてんだか。まぁ、あのクソ五条とタメだからな。」

 

「ねぇ知ってる〜?最近話題の()()()!!」

 

「うん知ってるよ〜!!()()()()()()の親父様がいる所でしょ?昨日行ったんだけど肩が物凄く軽くなったんだよ〜!!」

 

どうやらエセ霊媒師の話らしい。こういうのは呪術について知っており金儲けしようという雑魚の発想だ。

 

「やっぱお祓いっていいのかもね〜〜あー感謝感謝!!!神様、仏様、()()()()〜!!」

 

 

 

 

「え?」




ご拝読ありがとうございます。
1番苦しいのは、苦しいのを乗り越えるんじゃなくて乗り越えた先ですよね。私はそう思ってます。
感想と高評価お願いします。


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子安つばめは祝いたい


皆さん学生時代の夏休みはいつまででしたか?
感想欄で教えてください。
ちなみに私の学生時代最後の夏休みは病院で消えました(涙)

※話の内容を一部変更します。


 

8月31日、日曜日

 

つばめと津美紀は美夜の家で女子会を開いていた。輝紗羅は明星を連れて任務という名の実験に向かっていた為、今この家には女子しかいない。

 

午後5時、●イクラで東京タワーを作っていた。赤のブラックはTNTで出来上がったそれは、もう完成しそうだった。

 

「ふーん。つばめちゃんって4月生まれなんだ。」

 

「あれ?そんな珍しいかな・・・」

 

「いやいや、私の家族って3人とも誕生日が12月だから。」

 

構築術式で構築されたマネキンの腕が、壁にかかっていたカレンダーを取る。

 

伏黒津美紀の家族・・・五条悟、伏黒恵、伏黒甚爾の事である。それぞれ12月7日、12月22日、12月31日生まれだ。強い術師は同じ月に生まれる法則でもあるのだろうか。

 

「あ、確か三輪先輩も4月でしたよ?あと伊地知さんも。というか4月4日生まれって、三輪先輩と誕生日同じですね。」

 

美夜が指摘し、津美紀が相づちを打つ。

 

「あ、本当だ!!」

 

カレンダーをペラペラとめくり、4月のカレンダーを取り出す。子安つばめ、三輪霞の誕生日は4月4日。根明で人気者は誕生日も同じらしい。

 

「じゃあ、来年は祝えると良いね!!」

 

「はい!!あ、美夜ちゃんって誕生日いつなの?」

 

「3月21日生まれです。弟は、4月17日ですね。」

 

美夜はカレンダーに赤ペンで日付に丸を描きながら、話を進める。するとここで、つばめがふいに思った事を口にした。ここで口にしなければ、明日黎人にダル絡みされていたかもしれない。

 

「そういえば、黎人くんの誕生日っていつだっけ?」

 

つばめの問いに、美夜と津美紀はキョトンと首を傾ける。津美紀がカレンダーを手に取ってパラパラとめくり、8月に戻す。そして美夜から赤ペンを受け取り、今日。8月31日に丸をつける。

 

「え、今日だよ?」

「今日ですよ?」

 

 

「・・・やば。」

▲▲

 

場所は変わって京都。

 

既に日は暮れ、夜の帳が下りる時間帯。山奥のダムのそばに建てられた研究所、『呪術高専所属九十九研究所』だ。

 

人間の呪術からの脱却を目指し、日々研究を続けている・・・とはいえ所長は海外をプラプラ、副所長の輝紗羅は駆け落ち、残った職員は1人だけだ。この研究所も大層な目標を掲げているが、実際のところ特殊な呪具や呪物の複製・製造を行っている。

 

その残った職員・・・もとい()の部屋。クーラーの効いた大量のモニタールームで黎人は無言で泣いていた。モニターにはよく分からない数値やグラフなどが映し出されている。

 

「おい、キーボードの上で泣くな。壊れたら弁償させるぞ。」

 

与幸吉、京都校3年の傀儡操術の使い手。去年内通者として暗躍し、真人によって殺されかけていたが、九十九由基と照屋輝紗羅に助けられた。以降、黎人による監察処分として死刑は免れた。

 

ここの職員として働いているが、1週間に一度だけしか来ていない。他の曜日は傀儡のメカ丸1号から6号にこなさせている。

 

移動式の椅子を黎人のそばに寄せ、パソコンのキーボードの心配をする。どうやら壊れていなかったようで、ホッと安堵する。その様子が傷心の黎人の心に引っかかった。

 

「先輩さ、俺が監察(見て)なかったら死刑なってたのに最近辛辣になってきましたね。俺泣くよ?」

 

「・・・お前、五条悟に似てきたな。」

 

黎人は跳ね起き、身震いしながら幸吉の肩を掴んで揺らした。

 

「おい冗談はやめろ!!この間、秀知院にあの五条悟(特級バカ)が赴任してきて胃に穴が空いて、蜂の巣になりそうなんだよ。あとそれから監察対象の先輩に、"誕生日おめでとう"って言われてない。もう死にそうだ・・・」

 

「じゃあ、俺の部屋にアポ無し訪問してんのは八つ当たりか?東京の高専の連中にも京都の高専の連中も、秀知院の生徒会には祝ってもらったんだし、別に良いだろ。」

 

事実、石上におめでとうと言ってもらえた。プレゼントは最新ゲームの攻略本だった。他の生徒会メンバーにも"おめでとう"のLINEは貰えたので御の字だ。

 

でも好きな人に祝って貰えないと辛い。

 

「そう言わないでくれよ、()()()()()〜」

 

「誰が22世紀の猫型ロボットだ!!?」

 

「じゃあ()()()()()()()。」

 

「お前な・・・いい加減にーー」話を聞いてくださいよ〜()()()()()

 

「おい待てやめろ?俺は三輪のことをどう思ってないし、別にそんな邪な感情を持っていない。別に好きでも何でもないんだからな。分かったな?」

 

幸吉が黎人の肩を掴んで左右に揺らした。目が血走り、汗が滝のように流れている。明らかに動揺している。

 

「オー、ワカッタワカッタ、ワカリマシター」

 

「なら良い・・・話に付き合ってやるよ。」

 

与幸吉は三輪霞と極秘交際をしている。だがしかし、周囲からはバレバレだ。京都校では『早くアイツら結婚させろ。』という苦情が出てるレベルだ。

 

「第一、彼女には伝えたのか?」

 

「LINE垢に誕生日書いてる。」

 

マジである。

この男、自分から伝えるのは恥ずかしいからLINEアカウントの紹介文だけにしか誕生日を書いていない。

 

「1番見ないやつだろそれ・・・んなんだから、受肉体のヤバいやつにストーカーされんだよ。」

 

()()()の話はやめろ!!!この間なんか・・・ベットの下の隙間に潜り込んでやがった。何、何なの、アイツ!!」

 

アイツ・・・あの花魁ストーカーの話はまた後日。

 

「あのな、恋情は一線踏み越えると凶情になるんだよ。伏黒と来栖見て分かんないのか?」

 

「あぁ、来栖ね・・・待って?アイツがストーカーやってるのは知ってんだけど、何?先輩アイツが何やってんのか分かんの?」

 

『ねぇペッパーくん、もし私が恵をストーカーしてるのバラしたら・・・ね?』

 

「・・・来栖に、口止めされてるから言わん。」

 

「・・・そうですか。」

 

黎人はこの世の暗部を聞いてしまったような気がした。

 

一方その頃、津美紀の家にて。

 

「あわわわわっ!!?絡まっちゃった!!?」

 

「つばめちゃん落ち着いて!!いい?まずこうやって紐を・・・」

 

「無理無理無理無理無理ぃ!!?」

 

△△

 

瞬間移動とは、SF映画や超能力バトルでよく見る技。A点からB点まで秒も経たずに移動する、そんな技術は現時点で確立されていない。アメリカ海軍の実験で戦艦がワープしたと言う話があるが、本当かどうか確かめる術はない。

 

だが黎人は瞬間移動という()()を操れる。

 

術式反転の会得、それは現在の科学で証明できない現象の操作及び他者への干渉の是非である。その為、黎人は去年のハロウィンにて、羂索と裏梅、改造人間と呪霊のみを超新星爆発で吹き飛ばすという荒技をやってのけた。

 

その黎人は意気消沈して帰路についていた。

 

「あはは・・・もう全部灰になっちゃえ。」

 

『あかん、此奴ならやりかねない。おい小童、誕生日を祝って貰えなかった程度で大袈裟だな。』

 

「黙れ五月蝿い、焼き蛇にすんぞ。」

 

『焼き蛇・・・ん?おい、あそこにいるの小娘でーーちょっまっ。』

 

黎人の自宅のドアの前。

そこにはドアをトントンと叩くつばめがいた。普段の彼女からは分からないほどに、慌ててオロオロとしている。

 

「どうしたんですか先輩っ。」

 

「ほぇ!?いつの間に!!!?」

 

『小娘よ、ひょっとして小僧の誕生日の祝いか?なら地球は安泰だな。』

 

「黙ってろ・・・いや、ありがとうございます。まさか気づいてくれるとは・・・どうしたんです?」

 

つばめは何か重要な事を伝えようとしてオロオロしており、黎人は喋るように促した。落ち着いたのか、彼女は口を開いた。

 

「あ、あのね?津美紀さんに黎人くんの誕生日今日だって教えてもらって・・・私、慌てて近くのケーキ屋さんでケーキ買ってきたんだけど、転んじゃってケーキがトラックに踏まれちゃって・・・」

 

((トラック絶許。))

 

実はこの後、そのトラックが廃車になっていたとかいないとか。

 

「んで、見かねた美夜ちゃんと津美紀さんにアドバイス貰って、ニット帽作ったんだけど・・・難しくって。」

 

((・・・え?ニット帽?))

 

「それで、その・・・これができました。」

 

目の前に差し出される布。それを受け取り、黎人はそれが何なのか理解した。黎人と八岐は文字通り目を丸くした。

 

「この()()()()が出来上がったと。」

 

「はい・・・」

 

顔を真っ赤にして俯くつばめが、出来上がった黒と赤のマフラーを手渡した。

 

初心者にしてはよく出来た方だ。

 

だが!!季節は夏!!!

 

今は夏休みが終わったとはいえ8月31日だ。基本的に夏の日差しが終わるのは9月上旬か下旬までの間。つまり、今マフラーなんぞ渡されたとしても、首に巻いたら間違いなく汗疹とかぶれができる。

 

ならば冬に巻けば良いのでは?

 

そう思う人もいるだろう。しかし、受け取ったプレゼント、しかも手作りのマフラーより既製品のマフラーの方が性能良いし、手触り良いし、何しろ長く使える。もちろん黎人には去年買った物があったため、マフラーには困っていなかった。

 

というか、ぶっちゃけ黎人は周りの気温を変えられるのでマフラーなど要らない。弁当に入っているバランと同じだ。

 

いるようでいらないもの。

 

だが!!しかし!!!

 

「・・・ありがとう、大切にします。」

 

この男、結構甘かった!!好意を寄せる先輩が、自分を思って編んでくれたマフラーをいらないから捨てるほど、黎人はイカれてはいない。うるうるしていたつばめの瞳が再び輝いた。

 

「よ、よかったぁ〜!!胸がドキドキノコしちゃっー「明日からこれ付けて過ごします。別に校則とか引っかかりませんよね?」ーだ、駄目だよ!!?駄目駄目!!」

 

「何でですか?」

 

平然とした表情で質問する黎人。まじまじしながら「えっと、その・・・」という彼女の表情が何よりも愛おしい。周りの人間から見たらなんだお前と言われそうなくらい黎人は上機嫌だった。

 

「・・・私が作ったもの、学校でつけられると恥ずかしいの。」

 

キュンッ!!

 

黎人は心臓が止まり地面に倒れた。この上なく良い顔をしながら、明日からこのマフラーつけて登校する事に決めた。

 

「れ、黎人くん!!!?」

 

〜じゅじゅさんぽ〜

 

三輪「ねぇコウくっ!!コホン、与くん!!」

 

真依・西宮(あ、これコウくんって呼んでるやつだ。)

 

幸吉「なぁ、かすーー!!三輪、少し良いか。」

 

東堂・加茂・新田(あ、これ霞って呼んでるやつだ。)

 

京都校全員(堂々と呼べや!!!)





黎人が誕生日に貰ったもの。
明星、高級プリン
美夜、『高嶺の花の先輩を堕とす方法』という題名の本
硝子、究極の名酒『毘沙門天』
東京高専メンバー、禁煙Tシャツ
京都高専メンバー、高田ちゃんファンクラT
生徒会(石上)、新作ゲーム『●loodborne』


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家入黎人/早坂愛/吉野順平は逃げ出したい


前話修正しました。

呪術本誌読みました・・・
もうダメだおしまいだアババババ!!!

※タイトル変えました


9月9日

今日は白銀御行の誕生日!!!

 

そんなおめでたい日の朝、順平と早坂は目の前に聳え立つウェディングケーキと頭に花が咲いたぽんぽこぽんかぐや様を見て絶句していた。

 

「どうでしょう?会長のために特別に発注して用意してもらったケーキです!!会長、ケーキ食べたがってる感じでしたから。とっても喜ぶに違いないわっ!!」

 

かぐやは声を弾ませて嬉しそうに、自分が会長のために用意したケーキについて説明をしていた。

 

それは、ケーキというにはあまりにも巨大過ぎた。

 

下の段から、1、2、3段作り。

通常の誕生日ケーキを1番上にし、2段、3段目に大きくなっていく。真っ白なクリームがスポンジに塗られ、真っ赤な苺がその上で存在感を放っていた。

 

順平は、"五条先生がいつも食ってるやつだ"と現実逃避したが、すぐに現実に目を向けた。

 

「苺も買い付けから行って、糖度17で苺の味が濃厚な物を運よく見つけられてですね!!」

 

今は9月、従来の苺のシーズンから外れており、それでも購入しようと思うならある程度、いや随分お高いのだろう。

 

だが、国の中枢たる四宮の血を引くかぐやは一切の妥協をしなかった。

 

「このスポンジにも秘密があって〜!!!」

 

このまま放っておくと花でも生えてきそうな、いやもう花は咲き誇っているのだが、かぐやはなおも続ける。

 

「このケーキを贈ろうとしたのには、実は黎人くんが関わってるのよ?だって黎人くんったら、つばめ先輩がプレゼントしたマフラーをまだ9月なのにつけてるのよ?やっぱり好きな人からのプレゼントっていいわね!!会長の、泣いて喜ぶ顔が見てみたいわっ!!!」

 

早坂は恥ずいを通り越して絶望していた。

 

(・・・え?私の主人重すぎぃ?)

 

こんなもの付き合ってもない異性に渡されたら、確実にヤバいやつ認定されてしまう。同じ思考に至ったのは順平も同じだった。だから順平は決断した。

 

ぴっ、ぽっ、ぱっ!!

 

トゥルルル・・・

 

「おはよう家入くん。ところで力貸してください。僕じゃどうしようもない!!!」

 

 

 

呼び出された黎人が見たのは3段ケーキだった。黎人は驚いていた。ついでに肩に巻きついていた八岐も唖然としていた。

 

「何コレ?」

 

「何って会長の誕生日ケーキですよ?黎人くん鈍いわね〜。あ!黎人くんにお願いがあったんです。コレ生徒会室に運んでくれませんか?」

 

「・・・え?1人で?」

 

「あら?早坂と吉野くんにも頼むつもりよ?」

 

早坂と順平の顔から、サァッと血が抜けた。彼らがケーキに背を向けてむけ走り出した瞬間、黎人が素早く順平の手を握った。そして同じタイミングで早坂の手を順平が掴んだ。

 

「家入くん!?何のつもりなの!!?」

 

「いやだ!!1人でこの生き恥の責任取らされんのやだ!!!」

 

「『ここは俺に構わず行け!!』とか言えないの!!?」

 

「くっ!ここは私に構わず逝ってください!!」

 

「「巫山戯んな!!お前も道連れだ!!!」」

 

■□■

 

何やかんやあって、3人はまだ始業時間前の裏門に来ていた。後ろにあるのはカバーされたウェディングケーキ(笑)だ。コレを誰にも見られず、形を崩さないように運べと依頼された。

 

「昔はあんなにアホじゃなかったのに・・・」

 

「えっと、大変だね・・・」

 

吉野は項垂れる早坂の頭をヨシヨシと撫でた。

 

「・・・ありがとうございます。欲を言えば吉野くんじゃなくて家入様にヨシヨシされたかった。」

 

「おいお前ら、始めるぞ。」

 

導火線にマッチの火がついた。

 

MISSION START(ミッション スタート)!!

 

「頼むよ?黎人くん。」

 

「了解した・・・ふーっ・・・」

 

黎人は呪力を練り込み、影絵を作り出す。

 

風蛇(ふうだ)

 

現れたのは巨大な翼竜。蛇のように長い鎌首の上には大きな鶏冠。全身に極彩色の羽毛が生えている。牙を持つ嘴と二股に分かれた尻尾。4枚の翼を広げ、空へ羽ばたいた。

 

『まず風蛇が上から見張る。誰かが接近してきた場合、すぐ知らせてくれるだろうな。』

 

『けど建物の中は?』

 

風蛇の活動範囲は基本的に野外に限定されている。山や谷などの広い場所では使えるが、建物の中などの狭い場所では使えない。

 

『そこは俺の式神と、順平の海月に任せてくれ。問題はどうやって生徒会室に辿り着くかだ。』

 

裏口から生徒会室のある別棟に向かう3人。誕生日ケーキを手押し車で押しながら、素早く移動する。

 

(・・・私何やってるんだろう。)

 

(深く考えたらダメですよ?考えたらダメです。)

 

校舎の壁際をつたって、別棟まであとわずかというところまで辿り着いた。黎人が校舎の影から歩み出そうとした瞬間。

 

「あ、黎人〜どうした?」

 

石上優、一年前の順平にめっちゃ似てる子が現れた!!

 

(((優っ!?/会計くん!?/えっ!僕!?)))

 

「よ、よぉ。お前にしては早いな・・・」

 

「まぁ、お前にスパルタ式に扱かれて課題終わらせたからな。やっぱまだ慣れないな、そのマフラー。暑くないか?」

 

「い、いや別に・・・」

 

「ん?後ろにいるの誰ーーー」

 

(万象操術・睡魔(ヒュプノス)!!)

 

黎人が吹きかけた青い煙には、人に麻酔のような現象をもたらす。

 

「ふにゃっ・・・」

 

石上は眠った。

 

彼らは急いで別棟に入り込んだ。順平の小さなクラゲの式神が玄関から生徒会室までを泳ぎ回る。黎人も呪力を練り直していた。ここからは風蛇の活動範囲外、なので室内向けの式神を出す。

 

戯鰐(ぎわに)

 

床から滑りと現れたホオジロザメ並みの大きさのサメ。6つの目をギロギロと動かしながら床を泳いでいく。戯鰐は床や壁を泳ぐ式神、どんな障害物を通り抜けられるのだ。

 

「・・・中に誰もいない。今のうちに急げ!!」

 

『ここからが難関です。どうやって放課後まであのケーキを死守できるんですか?』

 

『そこは、"帳"を。それも四宮先輩を入れる代わりにその他全ての人が入れない帳を。特定の個人に作用する"帳"を下ろすには時間かかるから、その間誰も近寄らせるな。順平は式神で生徒会室周辺を監視、早坂は校舎で誰も生徒会室に近寄らせんな。』

 

『はい。/承知致しました。』

 

ここまでは上手く行った。

 

そう、ここまでは・・・

 

「あれ?黎人くんじゃないですか〜」

 

「っ!?」

 

対象F、出現!!

 

慌てて部屋の脇の扉を閉める黎人。

 

(バカな!!玄関の方に順平が居たはず・・・もしや、トイレに行っていたのか!!?)

 

黎人の失策!!!

 

彼は生徒会室に誰かいる可能性だけを考慮しすぎてしまった。藤原の足が、どんどん黎人に近づく。"帳"の設定中に術式は使えない。もしウェディングケーキを見られたら、確実にバレる!!

 

もうダメか・・・そう思った瞬間!!

 

〈春の夜の 夢ばかりなる 手枕に〉

 

〈かひなく立たむ 名こそおしけれ〉

 

窓から吹き抜けてきた、春の穏やかな空気。

 

「んっ〜?はへ〜?」

 

そのままソファに倒れ眠る藤原。目の前に現れた人物に、黎人は安堵のため息をついた。美夜だ。美夜の術式、『移季乃舞姫(いきのまいひめ)』は口に出した百人一首を使った術式だ。具体的な効果は彼女が決める。

 

今回は春の眠気をプレゼントしたらしい。

 

「助かった・・・あ、"闇より出て闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え"」

 

降りる"帳"、疲れ切った黎人はソファにグッタリとした。

 

「呼び出しておいて酷いわね、バカ兄貴・・・そのマフラー似合うわね。つばめさん色に染まる日も近いんじゃない?」

 

「ばかめ、つばめ先輩が俺色に染まるんだよ。」

 

とにかく紆余曲折あったが、黎人達の任務は終わった。だが早坂と順平は、夜に大量のケーキを食う羽目になる。




オマケ
黎人が白銀に送ったプレゼント。
(アイツ睡眠不足っぽいし・・・コレでいいか。)

牡蠣の写真が印刷された抱き枕カバー。


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家入黎人は観戦したい/五条悟は辟易する

辟易する、何度も迷惑をかけられて呆れると言う意味。
五条悟は何に呆れてるのか。

前髪教祖さん。お答えください。

「ノ、ノーコメントでーー「あたぁぁぁ!!!」ーーグフッ!!?」


退屈、それは人を死に至らしめる猛毒。

 

何故東堂は女のタイプを聞くのか、何故鹿紫雲は戦いに身を投じるのか。

 

答えは簡単、退屈だからだ。

 

その退屈は生徒会室にまで及び、黎人は封印して存在しないタバコを漁る。そしてないことに気づき、落胆した。仕方ないので辛めのキャンディーを舐める。眠気覚ましになった。いい具合に気分が良くなった。

 

そう、良くなった。

 

ここに、余計な不純物がいなければ・・・

 

「暇だね〜?」

 

「五条先生、テスト採点終わったんですか〜?今回私どうでした!?」

 

不純物がいるんだな、これが!!!

 

この男、五条悟は秀知院に来て二週間ですっかり馴染んでしまった。生徒の名は下の名で呼び、年上の教師に敬語を使わず、授業に1分ほど遅刻するのが当たり前。なのに、なのにコイツの数学の授業、めっちゃ分かりやすい!!!

 

「うん!この間の小テストに出した問題も解けてるね!!千花頑張ったね〜!!!ご褒美に何をご所望で!!!」

 

何でこの男、高専じゃまともに授業しねーんだよ。

 

「何かゲームしたいです!!!」

 

ゲームね、アレは面白ーーいやヤバかった。

 

白銀会長×藤原先輩の9人子供、1人増えるたびに四宮先輩が絶望していた。ていうか藤原先輩がやぶさかじゃない顔してたのアレ何?恥ずかしさゆえなの?めんどくさいのはやめてくれ。お願いだから。

 

最終的には四宮副会長×藤原先輩の結婚。

 

もう人生ゲームはゴリゴリだ。序盤で石上と同じ目にあって戦線離脱できたから少しマシだったものの、もう二度とあんなゲームしたくない。

 

ましてや、虎杖家作の()()()()()は特に・・・

 

「お、いいね!!じゃあ、みんな退屈してな〜い?てな訳で〜『呪術界版人生ゲーム』しない?しようぜ!!!」

 

「いいですね!!!」

 

「「却下で。」」

 

却下したのは黎人とかぐや。

 

黎人はゲームの内容を知っているから、かぐやは前回の人生ゲームで寿命が擦り減ったから。だが、脳と自分の欲求が直結してるコイツ、対象Fこと藤原千花はそんなことお構いなしだった。

 

そういう意味では、五条悟とめっちゃ似た人物だ。

 

「ではルール説明を始めたいと思いま〜す!!!テンション上げて!!!」

 

「いぇ〜い!!!」

 

「おい聞けよ?」

 

虎杖悠仁、虎杖血塗、虎杖壊相、虎杖脹相。

 

すなわち虎杖四兄弟が作成した呪術界版人生ゲーム。

 

具体的なルールは普通の人生ゲームと同じ。コマとイベントの内容はこんな感じ。

★☆★

 

呪術師

①、法律に逆らう事ができるが呪術規定に逆らえない。

②、呪いを祓える。

③、呪詛師になることができる。

 

非術師

①、法律に逆らえない。

②、呪いを祓えない。

③、収入ポイントでは他のキャラの2倍貰える。

 

呪詛師

①、法律も呪術規定も逆らえる

②、呪いを祓える。

③、呪術師に戻ることはできないし、収入ポイントでは他のキャラの半額しか貰えない。

 

呪術師、呪詛師のランク

①、呪いを1体祓うごとにランクが上がる。

②、その分収入は上がるが危険マスに出会う確率は上がる。

③、四、三、二、一の順にランクが上がる。

 

特級

初期のキャラ決めやイベントの結果の際に、コレらの条件が当てはまっていれば特級術師になれる。最上等級の危険マスに出会うが、収入は通常より3倍。

①、六眼を持つ。

②、呪霊操術、星の怒りを持つ。

③、天与呪縛で最大10離れた場所にマスを設置できる。

④、特級過呪怨霊を持つ。その場合呪詛師認定。

 

受肉体

基本的には呪詛師と同じ。だがランクは一で固定される。特級と同じ危険マスに出会える。収入は通常より2倍。

 

①、呪物を取り込む。

②、共生するとサイコロは2回ふれる。

 

その他etc・・・

 

☆★☆

 

まず序盤のキャラ決めから、このゲームはスタートする。実はこのゲームで1番重要なことだ。これで失敗したらマジで詰む。

 

呪術界版人生ゲーム体験者、乙骨憂太は語る。

 

『えっと、一言で言うならクソゲーです。救済措置もないし、宿儺の指20本見つけたら自分以外のキャラ殺してクリアとか、幼馴染と結婚の約束をするってマスに止まったら特級過呪怨霊になっちゃうし、死んだら死んだであのメロンパンに体乗っ取られるし・・・とにかくもう、何と言うか・・・カオスです。まぁ、五条先生監修だからな〜ってことで説明ができるんですけどね。』

 

『え?僕がこのゲームやったことあるか?えっと・・・最下位でしたよ?ただ、真希さんがブチギレたから僕が抑えたときに、体に手が触れちゃって半殺しされました・・・』

 

親戚の破廉恥話は聞きたくない。

 

石上side

「非術師ってやつが出ました。」

 

「優は一般人だな。呪霊に襲われたら間違いなく死ぬ。」

 

「成る程・・・皆さん気をつけてください。コレ序盤でガチャゲーです。」

 

「さ〜て!!みんな術式出たかな〜?まずは御行から!!」

 

白銀side

「六眼と・・・無下限呪術?」

 

「お!御行運いいね〜僕と同じだよ?てな訳で御行君には〜?学生になるまで2億円の懸賞金がかけられまーす!!」

 

「めっちゃ高っ!?」

 

「大丈夫、コレ最強だから。」

 

かぐやside

「あら?えっと・・・十種影法術?」

 

「お、御行と因縁のカードだね!!慶長の頃だったかな〜六眼持ちの無下限呪術の使い手と十種影法術の使い手同士が殺し合って両方死んだの。ま、僕は勝ったけどね〜!!あははは!!!」

 

((((なんか、すごい情報が聞こえたような・・・))))

 

「ウソつけ、アンタ去年死にかけただろ。茈放つ直前に、肩から腹を斬られて、()()()()()()()()、実質相打ちだったろ。俺と鹿紫雲が乱入してなかったら今頃ーー「黎人、それは言わない約束。」

 

「ところで藤原先輩は?」

 

藤原side

「うーん?何も書いてないカードが出ましたよ?」

 

「「うん、術式なし。」」

 

「え〜!!!??」

 

「でもシン・陰流とか使えますよ?術式なしの場合だと。」

 

「黎人くん・・・ウワーン!!ありがとう!!!君のことずっと他人が貶め合うのを笑って楽しむドS男だと思っててごめんね・・・」

 

「俺のことそういう風に思ってたんですか?」

 

まぁ、実際間違ってはいない。

 

「ん?そういや黎人は?」

 

「コマ四つだけだからな。俺は観客、先生は司会進行役。」

 

「そいじゃ、スタァァァトォォ!!!」

 

序盤はそれぞれが難無くコマを進めていた。だが序盤を終えた瞬間、白銀にこのゲームが牙を剥いた。

 

「『昇級試験、偶数の目が出たら合格。奇数の目が出たら不合格。』これ不合格だったらどうなるんだ?」

 

「このマスを軸に、他のプレイヤーが3マス以内にいたら助けてくれます。会長は・・・四宮先輩がいるから安心していいですよ?」

 

「そ、そうか・・・」

 

(不味いぃぃ!!?もしこれで奇数の目が出たらーー)

 

『あらあら?会長ったら私に助けを求めるんですか・・・()()()()()()。』

 

(ダメだぁぁぁ!!!絶対言われる!!!)

 

白銀、ありもしない妄想を膨らませる。

 

「246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246246っ!!!」

 

2だった。

 

(よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!!!)

 

心の中で雄叫びを上げる白銀。

 

(会長、あんなに喜んで・・・まさかっ、私に助けてほしくなかったんじゃ!!?)

 

ちょっとガーンとしたかぐやの番になるまで、白銀は心の中での偶数最高ぅ!!という踊り続けた。

 

その次、かぐやは特級マスを踏み抜いた。

 

「えっと、『特級呪霊が出現、1を出したら生還。それ以外は怨霊となる。』」

 

(何よこれ!!?落ち着きなさいかぐや、これは6番の1の確率!!!)

 

「1出て1出て1出て1出て1出て!!!」

 

6だった。

 

「いやぁぁぁぁ!!!??」

 

「怨霊になっちゃいましたね・・・1番近くのプレイヤーに取り憑きます。会長、お疲れ様です。」

 

「えぇ!?しかも呪詛師認定!!!?」

 

御行、呪詛師認定によりマイナスが増えた。

 

「怨霊は暴走しかねないからね〜、基本的に意識にモヤモヤって霧かかってる感じだから。御行ドンマイ!!」

 

(あれ、でも会長と一緒になれた・・・悪くない、わね?)

 

この場にもし早坂がいたら、

 

『何言ってるんですか?』

 

と言っていたはずだ。

 

石上はというと、序盤で受肉マスに入ったため、自分より弱い藤原を狙って攻撃していた。

 

「よしゃぁ!!!受肉体って最高だぜぇヒャッハァァァァァ!!!」

 

『赤燐躍動・穿血』により藤原のコマ、2回休み。

 

「だぁぁぁ!!?私のコマ2回休み〜!!?」

 

「やっぱ強いのな。赤血操術って。」

 

「このゲームちょいと補正かかってるよね〜?」

 

「まぁ、製作者がお兄ちゃん贔屓だからな。」

 

呪胎九相図ファミリーは身内には甘いのだ。

 

実はこのゲーム、めっちゃ改善点大有りのクソゲーなのだ。

2年にやらせたら釘が飛び、3年にやらせたら鬼神がブチギレ、受肉組にやらせたら電気と光とブラストが飛び交う。

まさにクソゲーオブクソゲーなのだ。

 

そんなクソゲーを持ってきた五条悟は何なのだろうか。

 

「あ、結婚マスですね〜あ、かぐやさんとだぁ〜!!!」

 

「えぇぇぇ!!!??」

 

「うぇ〜い!!幸せになりましょ〜ね!!!」

 

かぐや、また藤原と結婚する。呪術師は去年から同性愛を認めている。実は女性補助監督の間では、楽巌寺学長と去年亡くなった夜蛾学長がまさかのカップリングだったんじゃないかと噂されていた。

 

ちなみにパンダは微妙な顔をしていた。

 

「結婚かぁ〜〜黎人もそろそろ考えたら?五条家に収まらず、禪院の分家、加茂家、ましてや呪術名家からも縁談の話来てるんでしょ?」

 

「え!!?黎人くんっ結婚するんですかぁぁ!!!?」

「こ、コンニャロォォ・・・幸せになりやがれ!!!」

 

飛び上がる藤原、悪態をつきながら幸せになれという石上。2人の思いを黎人は片手で薙いだ。

 

「いやしねーよ。てかそんなに縁談の話来てるんですか?俺ん家に一通も来てないんですけど?」

 

「そりゃ硝子が焼き潰してるからに決まってるでしょ。ついでに僕の縁談のやつも焼かせてもらってるよ、歌姫のもね。」

 

ドヤ顔する五条。尊敬出来るわけがない。

 

「・・・また郵便局員脅して手紙ぶんどったんですか?もう諦めたらどうです?アンタ隠し子2人もいるんでしょう?()()も子供がいるんだから。」

 

「ーーーーあはは、黎人も面白い冗談言うね。」

 

五条悟、一瞬だが時が止まった。動揺を隠しきれていない。

 

「冗談じゃねぇよ。幸吉先輩のことですよ。」

 

「大丈夫、歌姫が子持ちだろうが何だろうがバツイチだろうが僕は気にしないから。」

 

()()は気にすんだよ。2年前、アンタが歌姉の自宅のベッドの下に潜り込んで襲いかかってきたのをきっかけに、高専の女子寮の畳の部屋で寝てるからなあの人。」

 

「前から思ってたんだけど、歌姉って何なの?」

 

「え?まぁ、歌姉とは長い付き合いでしてね。最初に会った時に・・・」

 

まだ小さかった黎人と美夜と明星が、歌姫に預けられたとき。彼女はこう言ってくれた。

 

『あなた達・・・五条の甥っ子姪っ子に思えないくらいいい子ねぇ・・・梅ちゃんの遺伝かしら・・・も〜食べちゃいたいくらい可愛いわね!!!』

 

『私のこと、歌姉って呼んでいいわよ!!!』

 

『あなた達がいたら、もう結婚なんていいわよ〜!!』

 

「・・・って。」

 

「ちくしょぉぉぉぉぉぉおおお!!!!」

 

 

 

ゲームの盤上をひっくり返して絶叫する五条、勝負は文字通りひっくり返った。もう二度とゲームはしない。生徒会の不文律となった。

 

本日の勝敗、五条悟の敗北。

(自分の甥っ子が歌姫に思いの外気に入られていたから。)

 

 

 

 

 

 

 

 

「かぐやちゃん。ちょっとだけ、聞きたいことあるんだけど・・・()()()()って知らない?」

 

「城ヶ崎?四宮家の分家のことですか?」

 

「そっ。その家のことなんだけど。変な噂ってない?悪い男と付き合ってる人とか。そんな人と付き合ってた人とか。」

 

五条悟が秀知院に来たのは黎人を冷やかし、古い恩人と思い出話にひたるためだけでは、なかった。

 

それはとある人物、()()の調査。

 

五条は美夜からある報告を受けていた。

 

『私のクラスメイトが、呪霊操術を持つ人間と接触したようです。』

 

呪霊操術、降伏した呪霊や怨霊を玉にして飲み込んで取り込み自在に操る術式。異形の軍隊を作れるため、呪術上層部は呪霊操術者を特級指定している。2017年に殺された夏油傑も同じ術式を持ち、翌年の2018年、家入黎人に殺された羂索も呪霊操術を持っていた。

 

もし本当なら、早めに監視しないといけない。

 

だが、五条悟は一つの胸騒ぎを起こしていた。

 

 

それは呪術にも、何にも関係ない。

 

 

 

ただ、五条悟自身の()

 

「・・・それって、(あずさ)さんに関係してます?」

 

「っ!!そう、その人。」

 

「確か18歳の頃に、名前も知らない男の赤ちゃんを授かって、男の人はどっかの宗教の教祖で・・・今はもう亡くなってるらしいですけど。」

 

「・・・それで、その梓さんは?」

 

「出産後の肥え立ちが悪かったみたいで、すぐに亡くなりました。赤ちゃんのその後は、梓さんの両親に引き取られたらしいです。熱心なキリスト教徒らしいですよ。確か、名前が・・・」

 

後日、高専の学長室にて。

 

五条は伊地知が集めた情報と、美夜が手に入れた教会の情報を照らし合わせていた。夥しい点の一つ一つが、一本の紐で繋がり、その全てが繋がった。その名前、旧友に似た名前を口に出す。

 

「城ヶ崎、(すぐる)ね・・・」

 

彼の写真。

特徴的な前髪、夏油傑のは一束だったが彼のは夏油より幅広い。

髪型はお団子ではなくて三つ編み。

 

だが・・・

 

「天内に似てねぇか?」

 

そう、それ以外。

顔の形、眼、口、髪色、雰囲気。

全てが天内理子のそれだった。

 

(夏油と、天内の子?いやありえん。もしそうだったら城ヶ崎の女について説明がつかん。そもそも、()()()()()()()()()()()()()。顔が似てる可能性は十分ある。つーか、コイツが味方なのか敵なのかよく分かんねーんだよな。)

 

五条はタブレットを起動させ、報告書を見る。

 

記録 2019年6月7日

 

東京都、

旧五輪会場

 

任務概要、

会場内および周辺の怪奇現象

その原因と思われる呪霊の祓除

 

担当者(高専4年 秤金次)

派遣されたものの、呪霊の姿がなく、既に何者かに祓除された残穢が残されていた。

 

記録 2019年8月1日

 

東京都、

浅草神社周辺

 

任務概要、

付近の小学校で神隠しが発生

その原因とみられる一級呪霊の祓除

 

担当者(高専所属術師 日車寛見)

派遣当日。フードを被った何者かが、呪霊を丸め飲み込む姿を日車一級術師と補助監督が確認。すぐに捕縛しようとしたものの、新たな呪霊が出現し何者かを乗せて遠くに連れ去る。

 

記録 2019年9月5日

 

東京都、

日本放送局スタジオ

 

任務概要、

アナウンサー及びアシスタントら6名が原因不明の発熱で緊急搬送。

6名の飲料水から残穢を確認。

以前から報告のあった呪詛師の仕業と認定

 

担当者(受肉体・特別一級術師 烏鷺亨子、監視術師 釘崎野薔薇)

派遣されて2日。姿を見せた呪詛師と烏鷺特別一級術師と釘崎一級術師が交戦。その途中、正体不明の呪霊操術の使い手が乱入し呪詛師を拘束。その後使い手が血と髪の毛のそれぞれが入った容器を釘崎一級術師に渡してその場から去る。

 

渡された血と髪の毛の遺伝子解析の結果、特級呪詛師『夏油傑』のDNAと99パーセント一致。夏油傑の親族、または実の息子である可能性が高い。

 

「・・・たっく、あんにゃろぉ!!とんでもねぇ置き土産遺して逝きやがって!!」

 

〜じゅじゅさんぽ〜

 

あなたにとって五条悟とは?

 

黎人「人でなし、ろくでなし、高専が生んだ恥。そして・・・」

 

美夜「私の初恋奪ったカス野郎。あとそれから、認めたくはないけど・・・」

 

明星「大人だけど、子供です。でも・・・」

 

乙骨「命の恩人です。恩師でもあるし、そう言う点では尊敬してますけど、たまにハラハラさせられたりしますね。あと、去年の新宿決戦でハッキリしたことなんですけど、これだけは確実に言えます。」

 

秤「五条さんは高専の中で、誰よりも"熱"がある。それに比例して・・・」

 

綺羅羅「悟ちゃん?そんなの決まってるって!!」

 

「「「「「「最強。」」」」」」

 







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伊井野ミコは正したい


この作品の五条悟は以下の方法で宿儺に勝っています。
・無制限の虚式発動。
・宿儺瀕死の重傷、摩虎羅が消滅する直前に五条の心臓を刺し宿儺の斬撃で上半身チョンパされる。
・五条一時死亡、彼岸を彷徨う。
・宿儺、鹿紫雲及び高専側と戦闘。羂索、五条の死体を乗っ取ろうとしたため黎人が割って入る。
・羂索死亡、黎人瀕死、乙骨重傷。
・五条現世行きの飛行機に乗り復活、史上最強の術師となり宿儺を消滅させる。


それは運命だったと伊井野は言った。

 

「あのね?初めて会った時、『君、風紀委員?一年生なのにしっかりしてるね!!頑張ってね〜』って応援してくれたの!!!この思いってもう()()じゃない!!?」

 

「ミコちゃん?その人ってまさか・・・」

 

 

 

 

 

一年の教室、その隅で黎人と石上は差し迫る模試に備えていた。とはいえ、黎人は学習せずに石上に数学のグラフ問題を解かせていた。必死に机に齧り付く石上の脳内には、1学期粉砕されたマネキンの姿が映されていた。

 

その様子を見ていた者たちがいた。

 

「ねぇ、あれって家入先輩だよね?何で石上と?」

 

「1学期から一緒らしいよ?似たもの同士仲良いんじゃない?ていうかあの目隠し見えてんの?キモッ。」

 

「うわっこっち見た・・・行こ行こ。」

 

 

 

 

「ボロクソ言われてるが気にすんな。俺にとってあんなクズどもの、親の威を借りるクソ雑魚どもの言う陰口ことなんぞ痛くも痒くもない。」

 

「お前の方が酷いこと言ってるけど?」

 

石上は目の前に座る黎人のアドバイスに苦言を言った。

 

「うるせぇ、子供の頃から人の暗黒面を見る仕事してきたからな。だいたい慣れるんだよ。嫉妬、怨恨、辛酸、後悔、恥辱、etc。そういうのの集合体が呪いなんだって前話しただろ?人がいる限り呪いは産まれる・・・たっく、今考えると呪術師ってエンドレスマラソンゲームだな。」

 

「くそくそ」っと呟いて天井を仰ぎ見る黎人。そんな彼に、石上は聞きたいことがあった。とはいえ、これはあまりにもデリカシーのない発言じゃないのかと思っていたが、もうこの際聞いてしまおう。

 

「・・・黎人ってさ。なんで俺の面倒見てくれるんだ?」

 

黎人は唐突の質問に少しの間固まり、座り直して口を開いた。

 

「そんなの親友(ダチ)だからに決まってんだろ。」

 

「・・・後悔したりはしてないのか?俺と同じやつみたいに言われーー「知るか。だっていちいちお前みたいにさ、生真面目に自分の行動を考えて後悔してたら、ただのバカだ。」

 

黎人は机に身を乗り出して、言った。

 

「この世で1番上手くいくやつは、()()()()()()()()。」

 

「・・・俺もお前みたいな割り切れる脳みそ欲しかったな。」

 

石上は解き終わったグラフの問題を見せ、採点する黎人に呟いた。黎人は採点しながら苦笑する。どことなく哀愁漂わせる笑みを浮かべた。

 

「・・・馬鹿が。持ってても後悔するだけだぞ?それより、今度の模試・・・クラス上位に入らなかったら、次の模試まで逆立ちで授業させるぞ。」

 

「ひぃぃぃ!!!」

 

△▲△▲△▲△▲△▲△▲

 

翌日、生徒会選挙の中間結果が出た。

 

そして何故か、夏休み前まであれだけ二期目やらないと言っていたはずの白銀も出るらしい。

 

「何でお前二期目やるんだよ。」

 

「あぁ・・・やりたくなったしな。」

 

どうせ四宮案件だろうな。

 

『む、恋愛の匂い!!!』

 

(黙ってろ蛇。いい加減祓うぞ?)

 

「お!会長ぶっちぎりじゃないですか!!」

 

「これは勝ったも同然ですね。」

 

校舎内の廊下に貼られた一枚の学内新聞。そこに書かれていたのはとあるアンケートの結果だった。内容は、生徒会選挙に出馬する三人の生徒の中で誰を支持するか。

 

その三人。

 

白銀御行、伊井野ミコ、本郷勇人。

 

その3人のうち白銀は、アンケートに答えた生徒の過半数の50%の票を手に入れていた。これはもう勝率大だ。だが白銀の意見は違った。

 

「いや、予測の数字なんて当てにならん。前期の活動で俺達の名前を記憶してる層が多いだけだ。他の候補者の活動次第で、この数字は変動しうる・・・油断は禁物だ。」

 

「そ、そう、ですね。油断は禁物です!!」

 

白銀の態度に引っ張られ、石上と千花の緩んだ表情が引き締まる。尊敬する同期と先輩の態度に自分の態度を改めたのだ。

 

(ーーーいやもう勝っただろ!!)

 

以外!!白銀はさっき口にした言葉とは全く真逆の事を考えていた。アンケートの事前予想の数字を鵜呑みにして完全に油断しきっていた。

 

その点、1番先を読んでいたのは黎人だった。

 

「・・・確かに、本郷は追い上げてくる可能性がある。にしても、1番危険視すべきは伊井野ミコだな。」

 

石上の顔に驚きが現れる。

 

「え!?あいつ出てんの!!?」

 

「あぁ・・・世も末だな。」

 

2人は伊井野ミコに目をつけられている指名手配犯。

奴とは犬猿の仲なのだ。

 

「あ・・・あそこでビラ配りしてるから話してきたらどうです?あれ、黎人くんは行かないんですか?」

 

「地学の課題提出してくる。」

 

▼▽▼▽▼▽▼▽

 

黎人の術式はありとあらゆる現象を操る。

 

地震、台風、火山の噴火、銀河の誕生。

その全てを操るためにはその現象が発生する経緯を知識として脳内に入れなければならない。

 

ちなみにあまりにも大きすぎる現象(ビッグバンやブラックホール、超新星爆発など)は領域内でしか出せない。

 

地学の課題を提出し終えた黎人は廊下で、知った顔と会った。

 

「うぇーいカス兄貴。可愛い妹が来てやったぜ。」

 

家入美夜だ。

 

「何しにきやがった。ここ高校練だぞ?」

 

「国語の先生のお手伝いした帰りで〜す。職員室同じなの知らないの?てかこないだ藤原さん眠らせて助けてやったのに、酷くない?」

 

「お前・・・何か隠してないか?いや、隠してんだろ。」

 

ピクリと、美夜の口が引くついた。

 

「図星だな。お前、何の情報握ってんだ?」

 

「・・・言うわけねーだろ?このカス。」

 

「チッ、死ね愚妹。」

 

「あ"?」

 

悪態をついた両者。

冷え込んだ空気がさらに殺気を帯びる。

 

美夜が手のひらに術式の扇を出し、黎人が虚空から絡百節の槍を取り出す。

 

「これで私が勝ったら、特級の称号返上しな?」

 

「泣いても知らなーーってありゃ?」

 

黎人の視線は美夜ではなく、中庭の方へと向けられていた。

 

△▲△▲△▲△▲

 

中庭、伊井野ミコが生徒会メンバーと討論を繰り広げていた。何と伊井野が藤原を生徒会に加えるという暴挙に出て、説得しようとした石上と白銀を伊井野は言い正した。

 

「失礼ですが、私は白銀前会長の生徒会には問題があると思います。あらゆる校則を破り!!未成年喫煙に授業中に途中下校する!!そのくせ成績上位!!!学校生活態度不良の黎人先輩が生徒会にいるのはおかしいと思います!!」

 

「おい伊井野、黎人は生徒会に必要な戦りょー「石上は黙ってて!!この不良!!」・・・会長、俺やっぱコイツ嫌いです。」

 

「とにかく!!今度の生徒会選挙、藤原先輩を引き入れるためにも頑張ります!!!」

 

「覚悟しておいて下さいね!!」

 

 

「「いや、何で寝返ってんだよ。」」

 

「ん?どうした優。」

 

「あ!黎人!?実はコイツがカクカクシカジカ〜」

 

「うわ〜なんか言い返せない。」

 

日本は"変"に対して不寛容、だからLGBTへの理解やオタクへの理解は少ないし、奇抜な少数派を普通の多数派が虐めることが正当化され、呪いが増える。

 

その中で"変"の代表格は呪術師だろう。

 

長身目隠し、三つ編み前髪、右半身全裸、変な前髪教祖、チョンマゲ性癖ゴリラ、魔女っ子、斜め前髪、男の娘、etc・・・

 

とはいえ、ファシャンに関してはまともな部類に入る黎人にとって先程の伊井野の発言は納得できないものであり、なかなか言い返せないものだった。

 

「っ!!噂をすれば・・・ん?後ろの方は?」

 

「うわっ、何この先輩。ぜんっぜん敬おうって気が湧かないんですけど?」

 

「ぷぷっ!」

 

「はははは!!!」

 

黎人についてきた美夜が思ったことを口に出した。

 

石上が思わず吹き出し、黎人は爆笑した。

「ちょっ!?貴女だれです!?その制服中学生ですよね!?先輩には敬語を使いなさい!!」

 

「家入美夜〜てか・・・この先輩ぜんっぜんタイプじゃないから敬わないで〜す!!」

 

「ムキィィィ!!!」

 

飛びかかろうとする伊井野を慌てて大仏が制止した。

 

その瞬間。

 

「い〜ね〜!!青春してるじゃん!!!」

 

「「「「「五条先生!!?」」」」」

 

サングラスに青シャツ姿の五条悟が現れた。

 

「ごめんね~。黎人たちさ、ミコの事をだ〜いぶ意識してるみたいで・・・も〜美夜ったら先輩敬わなきゃダメよ?お母さん悲しいわ?グスン!!」

 

「うげっ!!キモいからやめろ。その格好で良くオカマになれるな?」

 

「五条、先生・・・あのっ!!先生に、お願いがあるんです!!」

 

「ん?なになに?」

 

(あれ、なんか嫌な予感・・・っ!?この未来は!?まさか!!!?)

 

黎人が宙眼で見た未来、それは照れた伊井野が五条からの返事を嬉しそうに聞く未来だ。

 

(火照った頰、純粋な瞳、何かしら意味を含ませた喋り方・・・ま、まさか!!?)

 

自身も恋する乙女である美夜、伊井野の顔が完全に恋する乙女そのものだった。

 

「私が生徒会長になったら生徒会の顧問を継続した上で!!風紀委員会の顧問になってくれませんか!!!」

 

((まさかコイツ五条に!!??))

 

「え?いいけど?楽しみにしてるよ〜!!「っっ!!はいっ!!」ーーんじゃ!!!」

 

五条が去っていく姿をじっと見つめる伊井野。

 

黎人と美夜の脳内には、

 

『新任秀知院教師。教え子と熱愛か?』

 

『秀知院で発生した不純異性交遊!!』

 

などのテロップが流れた。2人は勢いよく伊井野の肩を掴み、怒号とも取れる音量で捲し立てた。

 

「ちょっと待って!!何?アンタまさかあの男に惚れてんの!!!?」

「伊井野早まるな!!ぜっっったい後悔するぞ!!!いや確実に!!!!」

 

「な、何で五条先生を悪人みたいに決めつけるんですか!?白銀前会長の周りには碌な人が集まらないみたいですね!!!」

 

五条に想いを寄せたであろう伊井野が赤面しながら言い返した。

他の生徒会メンバーも慌てて説得する。

 

「ミコちゃん?絶ッッッッッッッッ体やめた方がいいよ!!?五条先生何やったのか知ってる?女子の制服着て学生料金で購買弁当食べようとしたんだよ!?まぁ面白かったけども!!!」

 

「だからです!!普通じゃ考えられないことをする臨機応変で割り切れる頭!!何もかも見通してるような慈愛の目!!こういう人が生徒会や風紀委員会に必要なんです!!!」

 

「ヤ、ヤバい・・・こいつ本っ気でヤバい!!!」

 

「伊井野、お前まさか脳の病気か?救急車呼ぶか?いや救急車呼べ!!」

 

狼狽える石上と、救急車を呼ぼうとする白銀。

 

「な、何で私の邪魔するんですか!?」

 

「「絶対後悔するから止めてんだよ!!!」」

 

美夜は伊井野の隣に立っていた大仏に泣いて縋った。この世にこのアホを説得できる者がいるのなら、もう彼女しかいない。

 

「大仏先輩!!この人頭おかしいんじゃないですか!!?()()五条悟に惚れてんですよ!!!精神年齢中学生みたいな人に!!絶対持て遊ばれて絶対後悔します!!!」

 

「いや、私も五条先生は生徒会及び風紀委員会に必要だと考えます。それに、私は・・・ミコちゃんの友達です。友達の恋路は応援します。」

 

悲報、味方になってくれなかった。

 

プンスカ怒りながら立ち去る伊井野ミコ。生徒会メンバーは唖然と見送ることしかできなかった。

 

沈黙を破ったのは美夜だった。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!私もう転校する!!!()()()()()()が副会長になるだけならまだしも!!天上天下唯我独尊男が風紀委員会の顧問になって生徒と熱愛!!!?無理ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!圭ちゃん連れて駆け落ちするぅぅぅ!!!」

 

「しれっとウチの妹と駆け落ちすんなぁ!!!」

 

「なんか私貶されてる!?」

 

阿鼻叫喚する美夜を尻目に、黎人は石上に一通の封筒を手渡す。

 

「優、これ念のために待っといてくれない?俺の遺書、遺産はお前とつばめ先輩で分けてって書いてあるからさ?」

 

「待って早まんな!!まだ負けてねーから!!」

 

「ハッ!!優、お前天才!!おい会長!!優!!あと藤原先輩!!この馬鹿の為にも、全力で伊井野派(彼奴等)を潰すぞ!!!」

 

「「「お、おす!!!」」」

 

黎人ら生徒会組が、異常な結束力を見せた瞬間だった。

 

〜じゅじゅよこく〜

 

五条「最近秀知院の風紀委員の女の子にしょっちゅう声かけられるんだよね〜」

 

家入「通報した。」

 

五条「待って待って!!?手出してないから、僕のマニュフェストは30代の酒と野球好きで顔に傷のある巫女服着た女の人だから!!?」

 

家入「次回、『家入黎人は演説したい』お楽しみに〜」

 

五条「教え子がストーカーされてるし、娘みたいに思ってた女の子が駆け落ちしたんだよ!!?僕が恋愛してもいいじゃん!!!?」

 

家入「どっちみちアウトなんだよ、このクズが。」



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家入黎人は演説したい


今回呪術キャラの会話が少し多めでかぐや様は少し短めです。それでもいい人は、どぞ。

ちなみに、秀知院での黎人の評価は『変な厨二病』です。


「よぉ、久しぶりだな。上がっていいか?」

 

黎人の家。扉を開けた先、黒いジャージと雷神と黄色で縁取られた青のTシャツを着た男がいた。

 

「・・・監視の術師はどうした。鹿()()()。」

 

鹿紫雲 一

400年前、呪術界の頂点に立った呪術師。

 

老いて尚衰えることのない闘争を追い求める野心は、呪いの王両面宿儺に向けられた。東京第2コロニーに参戦、1人で200ポイントを手に入れたが秤金次との戦闘に敗れ、宿儺と戦うことを条件にポイントを手放した。

 

新宿人外決戦で宿儺と殺し合い、虎杖と真希、釘崎、東堂と共に五条悟復活までの時間を稼いだ。

 

ここで読者の皆様には疑問が生じるだろう。

 

彼の術式『幻獣琥珀』は一度使用したら死亡する。

なのに何故彼は生きているのか?

 

それに関しては輝紗羅の術式『伊江蘇の光』が関与している。

 

この術式、大雑把に言えば()()()()()

 

ちゃんと条件もある。

 

1、呪術師・呪いが見える人間であること

2、死後の次の木曜日まで魂を抑留させること。魂は基本2日、3日しか抑留しないため復活可能範囲は月〜水曜日が限界。

3、受肉体の場合、器か受肉体の片方を蘇生可能。一度に2人以上蘇らせるのは不可能。

4、1度復活させると来月の同じ日にしか目を覚さない。

5、1度復活したらもう復活させられない。

 

という感じで鹿紫雲は復活した。伏黒も全式神を調伏した状態で復活した。

 

「伊地知なら適当に撒いた・・・何かメシ食わせろ。」

 

「はいはい、焼きそばでいいか・・・」

 

▲▲△△▲▲△△▲▲

 

2018年、羂索の手で受肉した過去の術師の内、高専に所属している数は30人以上いる。

 

その中で鹿紫雲一は、意外にもこの現代に1番早く馴染んだ。

 

「・・・この世界は、暇だ。」

 

彼は過去の術師の中で4番目にまともな人格をしている。とはいえ戦闘狂は戦闘狂。月5回で呪詛師や特級呪霊を殺しに行ってはかなり問題を起こしている。

 

「俺は慶長の時代からこの時代に黄泉返った。あまり面倒起こすとめんどくせぇ報告書書かされるし、五条悟は兎も角七海に説教される。正直言って面倒で暇だ。だが、別にこの時代は嫌いじゃねぇ。」

 

「飯はうめぇし、虎杖と秤が勧めるテレビも映画もゲームも面白え。」

 

「石流とバイク乗り回したし、甚爾と博打をしに行った。」

 

「秤が開いた地下闘技場で、いろんな奴と戦えた。平安の空間女と明治の天才軍人、現代の術師も強い。俺は・・・宿儺とやれただけでも満足してる。だがーーーー」

 

・〈you lost〉・

 

「チッ、また負けた。」

 

黎人の持っているバトルロワイヤルゲームで近接縛りをしていた鹿紫雲が本日3回目の敗北にキレていた。事実、鹿紫雲は銃に慣れていないのと、鹿紫雲の呪力パンチがゲーム内でも適応されていると勘違いしている。

 

つまり、ただのアホ。

 

「だから銃拾えって何度もーーてか俺のアカウントでやるな!!キルレが下がるんだよ!!つーかお前のアカウント作ってやっただろ!?」

 

「どれだ?『クラゲ人間』、『タイガーゴリラ』、『ウニ一貫』、『金槌女番長』・・・」

 

どっかで聞いたことのあるような、連想で名前が浮かぶような、そんなアカウント名が並ぶ。

 

「『バイリンガルriceball』、『猫熊』、『粉っぽいプロテインを許すな』、『アメイジングもやし』、『リーゼント美食家』、『露出魔』、『刀マニア』、『戦闘狂ピ●チューーーおい誰がピカ●ュウだ?」

 

「・・・塩にするか?それともあんかけにするか?」

 

黎人は話題を焼きそばに変えた。

 

「おい聞けよ・・・ところで、()()()()がお前を探し回ってんぞ。」

 

鹿紫雲の爆弾発言。

 

黎人が調理の手を止め、鹿紫雲の方を振り向いた。

 

「ーーーうげぇ、あの女お前の顔見知りだろ。お前何とかしろよ?」

 

「あ"?誰があの●女ババァの顔見知りだ。」

 

「てか、え?アイツ処●なの?受肉前から?遊郭って●女いて大丈夫なのか?」

 

白鳥太夫

本名、天蓋(てんがい)

鹿紫雲と同じ時代を生きた呪術師。広島コロニーで80ポイント所持していた歴戦の強者であり、結界術の達人である。

 

光の術式『天照真珠(あまてらすしんじゅ)』を持つ。

 

()()()()()特別なんだよ。奴の結界術の腕は天元並み、それに奴の術式なら簡単に幕府を潰せた。あの時代では呪術師最強といえば俺か天蓋だった・・・まぁ、奴が俺に勝てたことなかったけどな。」

 

ドヤァッと勝ち誇った顔を黎人に向ける。黎人は斬って捨てるように訂正した。

 

「いや、お前も勝ったことないだろ。相変わらず仲悪りぃな・・・ていうかお前らくっついてくれない?お前ら話によると昔恋仲だったんだろ?そうすりゃ俺もあんしーーー」

 

バチバチバチッ!!!

 

鹿紫雲の電気が床を焼き、照明、テレビを破壊した。

 

「げ、壊すなーー「おい、冗談やめろ殺すぞ?誰があんな気狂い処●ババァと?もう終わった関係だ。しかもあの女、今はお前にゾッコンだろうが。」

 

「は〜〜〜それは困る。だって俺惚れた女がいるし。」

 

つばめのことを告げると、鹿紫雲が唖然とした。

 

「マジか・・・あの女に知られたら修羅場になるぞ。()()()()()()()()()になりたくないなら用心しろ。」

 

広島の街が焼き尽くされ消滅させた戦いを、黎人は思い出した。まぁ、焼き尽くしたのは天蓋。消滅させたのは黎人だ。

 

△△▲▲△△▲▲△△

 

『私が次期生徒会長に白銀君を推薦する理由は、この学校でどんな相手にも臆することなく、平等に手を差し伸べてくれる人物だと考えるからです。自分は今年の春この学校に転校してきました。新しい環境、既に周りのクラスメイトが各々のグループを作り上げている中孤立していた私に、白銀君は手を差し伸べてくれました。』

 

生徒会選挙当日。

黎人はマイクを片手に演説していた。

 

選挙に立候補したのは先に挙げた三人。

その内、本郷勇人だけが突如辞退を公言した。

 

(ちなみに、裏で四宮先輩と早坂と順平が何かしたようだ。)

 

とはいえ生徒会選挙は予定通り開催される。

白銀陣営と伊井野陣営の直接対決として。

 

『他の候補者の人がどうなのか、私は知りませんが彼以外に生徒会長に相応しい人物はいないでしょう・・・あと、名指しでは言いませんが・・・白銀君は全男子生徒を丸刈りにしようとするどっかの芋女とは違います。』

 

この発言で、体育館全体の空気が停止した。

 

「ちょっとぉぉ!!!??」

 

(おいぃぃ黎人!!?ここで伊井野陣営のヘイト集めてどうすんだよ!!?)

 

非難の声を上げる伊井野、内心焦る白銀。そして体育館中に響く黎人へのブーイング。

 

すいませんマイク借ります、『芋女とは失礼ですね!!言っときますけど!!?あなたのファッションセンスの方が酷いと思いますよ!!?』

 

憤慨する伊井野。

 

『えっ、だって、皆さんこの公約見ました?今は平成から令和に変わった新時代、見るっからに戦前大日本帝国の二の足を踏むような公約じゃないですか。コイツ頭どうかしてますよ?逆に伊井野に投票した人〜はい、そこのあんた。明日から丸刈りで女子との距離4メートルでスマホ使わないでス●サプとかC●assiとか使えるか?・・・ほら無理でしょ。』

 

冷静に受け応える黎人。

 

『むむむむっ!!』

 

『正直言って、俺のファッションも校則に何の影響もないだろ。両目目隠ししてても前見えるし、授業も体育も受けられて、授業途中退席してもその代わりに土日に補習授業受けてんだから。別に問題ないし、ね?』

 

正論で伊井野の口撃に反論する黎人。言い返す言葉を失ったのか、ワナワナと大声でずっと気になっていた事を指摘する。

 

『というかその目隠し見えてるんですか!!?白銀元会長がどうこうって言う前に、まずそれ外して話して下さーー』『めんどくさー、はいよ。』

 

黎人は目隠しの包帯を解く。

 

その日、秀知院の生徒たちは目撃した。

 

圧倒的顔面の良さ。

 

瞳の内に青空が広がる左眼。

 

瞳の周りに紫色と黒色の模様が描かれた右眼。

 

それぞれを縁取る純白と漆黒のまつ毛。

 

顔面偏差値の概念を超越した

 

イケメン過ぎる黎人の剥き出しの顔を。

 

 

 

 

再び、静寂が包み込む。

 

「・・・ん?俺なんかやった?」

 

「「「「えぇぇぇ〜〜〜!!!!??」」」」

 

「えっ、スゴ!?イケメンじゃん!!!」

 

「何で目が紫なんですか!?」

 

「オッドアイ!?カラコン!?いや、裸眼なのあれ!?」

 

「ちょっ、スクープ!!!写真撮って!!」

 

「家入くんポーズお願いしますっ!!!」

 

生徒会選挙討論会場は、一瞬にして黎人の写真撮影会に変化した。

 

「へいへ〜い!!も〜黎人ったら罪なんだから〜お子ちゃまは僕の美顔に見惚れてなさい!!!」

 

「「「「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」」」」

 

ちなみに五条悟も乱入した。

 

△△△▲▲▲△△△

 

放課後、投票が終わり結果が廊下に張り出された。

 

「いや、まさかここまで反響があるとはな・・・」

 

「そうですね・・・もちろん会長の人望もあると思いますよ!?けど、まさか・・・」

 

「まぁ・・・生徒会会計としてはなんとも言えないですけど、親友としては良くやったって思います。」

 

白銀御行・・・80%

 

伊井野ミコ・・・20%

 

本日の勝敗、白銀陣営の勝ち

(やっぱ顔面しか勝たん。)

 

 

 

 

 

 

廃墟、忍び装束の男と浅葱色の袴姿を履き白の着物を羽織る女がいた。

 

「・・・は?誰なのよ。この女。」

 

彼女の視線はスマホに、黎人の隣に立って笑うつばめに向けられていた。

 

「子安つばめ、特級過呪怨霊を持つ特級被呪者。黎人殿は今年の春から彼女の監視をしているとのことだが・・・」

 

女がスマホを握りつぶす。

 

「ふざけないで。()()()()()()()、五条悟・乙骨憂太・九十九由基っ!!彼らはそれぞれの孤独を持っている。黎人()も同じっ!!その彼の孤独を埋めるのは、このわっちよ!!?・・・てかこの娘、結構可愛い。会ってみたいわね。」

 

「・・・好きにしろ。報酬は口座に。」

 

つばめと天蓋、会合する日は近い。

 

〜じゅじゅ予告〜

 

真依「最近私の周りの人間が浮ついてるのよね。桃は加茂と、三輪は幸吉と。東京じゃ、あの短足1年も真希も浮ついてるらしいし〜?」

 

東堂「何だお前。真希が乙骨に想いを寄せてるからってヤキモチしてんのか?」

 

真依「してないわよ!!あーいやだいやだ!!何か黎人くんもそういう話が出てきてるし伏黒くんも華と半ば同棲してるらしいじゃない!!ていうか親族の内、明星くん除いて私だけフリーってどういうこと!!?」

 

東堂「次回『龍珠桃は説得したい/子安つばめは盗られたくない』see you later brothers and sisters。」




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龍珠桃は説得したい/子安つばめは盗られたくない


ヤンキー女子と優等生キャラの絡みって面白いよね。

つーか今更だけど、恋愛未経験だから恋愛書くのすっげ〜ムズイ。

広島コロニーの過去話は次回ちょろっと出します。


黎人くんは私の友達だ。

 

初見は厨二病だと思った。けど玲奈さんの呪いに苦しんでる私を助けてくれた。色んな映画一緒に観たし、体術を教えてくれたし、去年までの交流会や一昨年の百鬼夜行とかの映像記録も見せてくれた。

 

彼と一緒にいると楽しい。

 

『黎人は僕の甥っ子だよ〜?あと僕の実家の次期当主候補の1人!!!』

 

五条先生の甥っ子であり御三家の一つ、五条家の次期当主候補。この情報に関しては五条先生が漏らしたらしい。勿論、詳しい内容は言わなかったそうだが。

 

五条先生はあの後、ナナミンさん?に絞められたそうだ。正直、本音で言えば私も絞めたかった。あの応援演説で黎人くんの素顔が晒されたのと五条先生のリーク情報のせいで、彼の周りにいる人は生徒会のみんなを除いてほぼ私だけだったのに今では可愛い女の子たちに囲まれている。

 

『黎人先輩一緒にカラオケ行きません!?』

 

『う〜んその日予定あるから無理。』

 

『家入くん!私この課題持っていってあげる!!』

 

『え〜悪いですよ。』

 

彼は作り笑いを浮かべながら女の子たちの申し出を全て断っている。

 

でも何か、胸がもやぁっとする。

 

 

 

 

彼は私の物なのに。

 

■□□□■□□□■

 

「言いたいことがある。五条悟のクソ野郎!!!!」

 

「うわぁ!!ビックリした!!!」

 

生徒会室にて、黎人の大声が響き渡っていた。今この場には男子メンバーしかいない。女子メンバーは高専女子とスイパラに行くと言っていた。いつの間に連絡先交換してたんだアイツら。

 

「あんの白髪目隠しめ!!こうなると見越して俺の情報を開示しやがった!!大方この間の人生ゲームの腹いせだろうけどさ!?流石にやり過ぎだろうが!!!」

 

黎人は自分の鞄をひっくり返し、机の中やロッカー、靴箱に入っていた手紙・・・もといラブレターを机の上にばら撒いた。

 

バサァッ!!

 

「うわっ!!これ全部ラブレターか!?」

 

「黎人お前モテまくりだな・・・・羨ましいこと山の如しだ。」

 

「羨ましくね〜よ!!?こんな事になるならあの時目隠し外すんじゃなかった・・・・あの乳首から下が脚野郎、隠し子の件を暴露してやろうか?

 

バンッ!!!

 

「おい家入。」

 

「ん?お久しぶりですねゲロ極道ーー「変なあだ名つけんじゃねぇ!!!」

 

「え、黎人の知り合い?」

 

「何のようです?アンタまで俺のことナンパしに来たんですか?ごめんなさい。自分、自分より年上の人が好きなんで。」

 

「テメェの性癖は聞いてねぇんだよ!!大事な話をしに来たんだよ私は!!」

 

「・・・ひょっとして津美紀さん関連?」

 

「なぁ黎人、津美紀さんって誰?」

 

「伏黒の姉さんで龍珠の尊敬する人。今年の初め頃に駆け落ちしたの。」

 

「え、マジか・・・・てことはその人は龍珠みたいにグレてる人なのか?」

 

「いやーー「んなわけねぇだろ!!津美紀はな、見ず知らずの私を助けてくれたんだ。アレは3年前・・・・・・・・」

 

〜〜〜〜〜

 

あれは私が中等部2年の頃、親父の会談中に離れたところでたむろってる他校の不良に喧嘩売りにいった時だった。

 

『テメェらが最近うちのシマ荒らしてる連中か?』

 

『あ"?何だよお前ーーーいっで!!』

 

耳にチャラチャラとしたピアスを付けた不良、その耳をグイッと引っ張り、地面に顔面を叩きつけ、更に不良の頭を踏みつけた。

 

『気持ち悪りぃ面見せてんじゃねぇよ。馬鹿が。』

 

周囲の不良たちが激昂する。

 

『テメェ!!舐めてんじゃねぇ!!リンチにすんぞオラァァ!!!』

 

数十分後

 

龍珠は喧嘩には強い。だが、今回は多勢に無勢。

 

『はぁ、はぁ・・・・』

 

疲れ切った龍珠に、1人無事だったチンピラが腕を振り上げた。

 

『隙あーー『やめなさい!!』

 

殴りかかろうとしたチンピラの肩を、ポニーテールの少女が掴んでいた。

 

『女の子に大勢で襲いかかるなんて恥ずかしいと思わないんですか!?』

 

『っ!!邪魔すんじゃーー!!『はぁっ!!』グフッ!!?』

 

合気、片手で肩を抑えもう一方の手で腕を掴みチンピラは顔面から地面にぐるりと回転しながら崩れ落ちた。

 

『くっ、くそ!!お、覚えてろこんちくしょ〜!!!』

 

不良らが何処ぞの三流悪役みたいなセリフを言い残しながら走り去って行き、その姿が見えなくなると、津美紀は龍珠の横で、顔を覆ってしゃがみ込んだ。

 

『ーーーやっちゃった・・・あわわどうしよう!?硝子さんと歌姫さんから教わった護身術使っちゃった!?明日から学校でとやかく言われーーーてか、貴女膝擦りむいてるじゃない!?良かったら、私の家で治療しーー『姐さん!!』

 

津美紀の前で正座し、龍珠は勢いよく頭を下げた。

 

『え、はい!?』

 

『舎弟にしてください!!!』

 

『えぇぇぇぇ!!?』

 

〜〜〜〜〜

 

「〜てなわけで、家にお邪魔して治療してもらってよぉ、そのまま尊敬してるんだよ。」

 

(え、津美紀さん結構破天荒なの?)

 

黎人は知人の意外な側面に驚いた。そういえば初対面のとき、中学生の頃少し警戒されていた気がした。恵に警戒されていたと思ったんだが、警戒していたのは津美紀さんだったのか?

 

「外面は礼儀の良いお嬢様だった。けど内面は周りの人を第一に考える善人、私は伏黒に憧れてた。なのに、なのに・・・・・・・・」

 

出会って3ヶ月の男と駆け落ちしてっ!?()()()()わけが無いだろ!!!

 

「「「えぇぇぇぇ!!!??」」」

 

「てか何で黎人も驚いてんの!?」

 

「俺だって初耳だわ!!それどこ情報!?」

 

「その話をしに来たんだよ!!昨日帰り道の近くの公園で、男に指輪渡されてプロポーズされてる女がいるな〜と思ったらその女が津美紀だったんだよ!!?相手はお前が尊敬してる金髪マッドサイエンティスト!!!」

 

「うわぁぁぁ・・・・・・・・でも俺の所にまだ報告来てねーし、お前の見間違いじゃーー「私が伏黒を見間違えるわけがねーだろ!!!!」いぎゃぁぁ!!!誰かヘルプ!!!トイレットペーパーで首絞めんなぁぁぁ!!!」

 

ブーー!!

 

机の上に置いていた黎人のスマホからバイブ音が鳴る。背中に馬乗りしている龍珠にトイレットペーパーで首を絞められかけていた黎人が床を這う這うの体でスマホに手を伸ばし、通話ボタンをタッチした。

 

「はいもしもーー『あ、黎人くん?今話せるかな?』ーー噂をすれば何とやらだな。津美紀さん?今貴女の話してたんですよ?『そうなんだ。実は私、輝紗羅くんの・・・・・・・・プロポーズOKしちゃいました!!』ーーーマジですか。赤飯と御祝義持っていきます。『ありがとう!!あの、よかったら桃ちゃんにこのこと伝えて欲しいんだけど、良いかな?』今いますけど?『ーーーえ?桃ちゃんそこにいるの!?待ってて!!すぐ行くから!!秀知院だよね!?10秒くらいで行くから!!!』ーー喜べ龍珠、今会いにくるってさ。」

 

「へ?」

 

するとその時、窓が開き外から蜻蛉の羽を生やした津美紀が現れたーーーというより突っ込んできた。

 

「うわ!!桃ちゃん久しぶり〜!!背伸びたね!!ほっぺもぷにぷに〜〜!!」

 

「え、あ、あわあわ、あわわわ!!!」

 

(ーーーおい黎人?俺の幻覚じゃなければ龍珠が見たことない顔をしているんだが?え?幻覚幻想または夢だよな?)

 

(いや、恐らく普段強気なキャラ作りしてるから、反動が来てるんでしょう。さてそろそろ本題に・・・・)

 

「えっと、実は今の津美紀さんの状況を言ってしまったんですけど。その、彼女が現実を受け入れられなくて・・・・」

 

「っ!そうだよ伏黒!!さすがに出会って3ヶ月の男と婚約は待てって!!せめて一年ーーいや三年くらい経ってからじゃねぇと。今は円満でも学生結婚の殆どは離婚するってWikiで言ってんぞ!!」

 

「そうよっ!!あんな準一級メリケンクソ野郎絶対後悔するわよっ!!?」

 

悪寒っ!!

 

龍珠の隣には、秀知院の女子制服を着た五条悟がいた。

 

どっからか入手し施した口紅、化粧、etc。

 

其れ等をふんだんに使いオカマ化粧を施した五条は、初見で見たら●オウであろうと背を向けて走って逃げ出したくなるほど気持ち悪かった。

 

「え!?五条先生!?何ですそのかっこ!!?」

 

「ふっ、演劇部の物を借りパクしたのよんっ*1。この学校には侵入者探知用の結界が張られてるからね!!それに津美紀の呪力を見間違える呪術師最強じゃないわよっ!!もう二度と離さないからね!!あんなメリケン男の洗脳解いてやるわよぉ〜?」

 

(((オ、オカマ口調だと!?)))

 

白銀石上龍珠の三人の中で一気に五条への好感度が下がった。やたらムカつくオカマ口調で津美紀に抱きつこうとする五条、それを手で弾いた津美紀は心底軽蔑の目を向けてこう言った。

 

「やめてくださいキモイです。」

 

「グハッ!!」

 

遊雲よりも力強く、釈魂刀よりも鋭い本音が五条悟の心臓を貫く。津美紀駆け落ち事件以来の大ショックにより、五条悟は久々に血を吐いて倒れた。

 

「私は輝紗羅(ダーリン)に助けられた。なら心も体も彼に捧げるのは当然のこと!!私がどんなに本気か分からないのに自分勝手な憶測ばかりで邪魔しないで!!」

 

「津美紀さん落ち着け、五条先生息してない。」

 

黎人は珍しく五条を庇った。

 

「桃ちゃんが心配に思うのも分かる。けど私本気なの・・・・だってプロポーズされた日にABCのCまでいっちゃったもん!!それくらい愛してるのよ!!」

 

「ーーーーグフッ!!」

 

あまりの情報の供給過多により、龍珠は吐血して倒れた。

 

本日の勝敗

五条悟・龍珠桃の敗北

 

□■■■□■■■□

 

一方その頃

 

「あ、釘崎さん四宮先輩たちとスイパラ行ってるみたいです。」

 

街中、スタバで駄弁ってるつばめと美夜がLINEで届いたメッセージと写真を開いていた。

 

「どれどれ〜?真希さんと綺羅羅さんと・・・・・・・・ん?烏鷺さんもいるじゃん!!?」

 

仙台コロニーで乙骨と死闘を繰り広げた平安時代の呪術師が、黎人が使った仙台コロニーの記録映像の姿とは違ってちゃんと服を着て、しかもとびっきりの笑顔でケーキを食べている写真が画面に表示されていた。

 

「あの人釘崎さんと超絶仲良いみたいですよ?休日一緒に買い物行くくらいに。つばめ先輩もウチのカス1号と買い物行ったらいいじゃないですか・・・・ん?なんか最近面白くないって顔してますよ?どうかしたんですか?」

 

「・・・・実はーー「見つけた・・・・わっちの恋敵!!!」

 

横を向くと、黒のデニムズボンを履き白のワイシャツを着た女性が憎たらしげに見つめていた。

 

〜じゅじゅ予告〜

 

釘崎「ぶっちゃけ現代と平安を比べるとどうなの?」

 

烏鷺「それ聞くまでもないでしょ?こっちの世界が最高に決まってんじゃない。スマホもテレビもあるし、スイーツも美味しいし!!」

 

石流「太るぞ?」

 

烏鷺「あぁん?」

 

釘崎「次回『子安つばめは勝ち取りたい』お楽しみに〜」

 

鹿紫雲「アイツら何喧嘩してんだ?」

 

釘崎「痴話喧嘩でしょ」

*1
未使用品




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