混血のカレコレ【Over the EVOLution】 (鬱エンドフラグ【旧名:無名永久空間】)
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ストーリー【エボル編】 ※未完成
プロローグ 〜目が覚めたら星狩りになってしまっていた件について〜


初投稿となります。
無名永久空間と申します。
この小説は「混血のカレコレ」と「仮面ライダー」が好きな自分が思いつきで執筆したものですのでキャラ崩壊などご注意ください。
自分は文章力がなく、思いつきで書いたものなので不定期になりますがご了承ください。
これからよろしくお願いします。



 

(……ん?)

 

             

突如として目が覚めた。いや意識が覚醒(・・・・・)したというべきか。

 

(あれ……俺何して…てかここどこ?)

 

周囲を見渡す。…………………………………………………………わ〜綺麗な星……

 

 

 

 

 

 

 

うん、宇宙だここ

 

 

 

 

 

いや何故?何故目が覚めたら宇宙空間にいるの?

 

というかなんで俺宇宙空間で普通に生きてるんだ?

 

人間が生身で宇宙空間に出た場合、窒息する前に身体の全ての細胞と血液が一瞬で無限大に沸騰、気化、爆発するという説がある。

 

例えば宇宙服の生命維持装置のパイプに穴が空いたとしよう。

 

穴は空気圧が外に爆発的に漏れ、パイプは一瞬で破壊、宇宙空間とつながり、気圧がないからものすごい勢いでパイプからあらゆるものを吸い出そうとする。空気はもとより、身体自体を吸い出される。

 

この時、窒息する前に、ゼロ気圧のせいで体内の血液と体液、細胞内の水分は気化して沸騰し、爆破するので、パイプからは骨以外の血液や臓器や皮膚は一瞬で吸い出されてしまう。

 

(少なくとも普通凍死とかするもんじゃやない?一体俺の体はどうなって……んん?)

 

自身の体を確認してみたがそれは見慣れない、しかしどこか見覚えがあった。

 

まず全身赤・青・黒・金のカラーの組み合わせ。肩には宇宙ゴマのようなパーツ。胸には天球儀のようなものが、いやよく見たらこれは………炉?そして何より…………

              

俺は自身の腰あたりについてる「ソレ」に目をやった。

 

「ソレ」がなんなのか一目でわかった。

 

『仮面ライダー』が好きな、その中でも自分が特に好きなライダーが変身に使うそれだからこそわかった。           

 

ソレは………

 

 

 

 

エボルドライバー

 

 

 

 

 

 

それを見て俺はようやく自身の状態を理解した。

 

 

 

「俺………………………………『仮面ライダーエボル』になってるうううううううううううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!??!!?!?」

 

 

なんで仮面ライダーエボルに、いや仮面ライダーエボルなってるということは…まさか俺『エボルト』になってるのか!?

 

 

(なんでこんなことに……ッ!?)

 

わけのわからない状況の中混乱している俺に突如として鋭い頭痛が走った。

 

「…ぐ、ッあー……」

 

すると脳裏にたくさんの知らない……いや知っている(・・・・・)光景が走り抜け……──────────────────────────────────────

 

 

「────────────────────────────ああ、そうだ…………少しずつ思い出してきたぞ………」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

『ブラッド星』

 

 

それは、地球ではいまだ発見されていない未知の惑星。

 

 

そしてその惑星を故郷とする生命体────────“星狩り”──または”ブラッド族”と呼ぶ

 

 

多くの星の文明を滅ぼし、数多の命を奪い、分解した惑星のエネルギーを吸収し自らのものとすることを使命とする、某戦闘力53万の宇宙の帝王にも匹敵するほどの戦闘種族である。

 

俺自身もその一員である。

 

数多の惑星を、息を吸うように、食事をするように何も思わず滅ぼしてきた。

 

 

そんな多くのブラッド族が住むブラッド星にある日突如として────────────────────────終わりが訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハハハーーーハハーハハハーーーヒハハハハハハーーーー!!!ヒャアーハハハハ!!!ヒャヒャヒャアーーー!!!』

 

 

 

 

 

 

狂ったように嗤うソイツは同じブラッド族でありながら同胞である他のブラッド族を次々と惨殺していき、故郷であるブラッド星を思うがままに破壊していく。

 

 

 

 

ソイツの名は、『キルバス

 

 

 

 

この惑星、ブラッド星の王であり………………認めたくないが俺の兄貴だ。

 

 

キルバスは「破滅型の快楽主義者」で、短絡的思考と虚無主義(ニヒリズム)が混ざったようなエキセントリックな性格を持っており、

 

 

惑星を滅ぼす際もその星の住民を虐殺するだけじゃ飽き足らず、自分自身さえも進んで巻き込み全てを壊し尽してしまうほどで、俺や他のブラッド族ですらも引くほどのイカれ野郎だ。

 

 

そしてそのキルバスはとうとうその身に滾る破壊衝動を抑えられず、ついに自身の故郷であるブラッド星に手を掛け始めたのだ。

 

 

俺は目の前で多くの同胞がキルバスに殺されていくのを見たが、そもそも仲間意識なんてなかったからなんとも思わなかった。

 

 

たいして故郷に思い入れもなかった俺は巻き込まれる前にすぐさまブラッド星を脱出することにした。

 

 

だがその前に俺はある物を回収しに行った。

 

 

 

 

それは────────『パンドラボックス

 

 

 

 

パンドラボックスはブラッド星の源であり、ブラッド族が惑星を滅ぼす際に使用する物で地球で言う核より強大なエネルギーを秘めている。

 

そんな強大な力を持つパンドラボックスをあのイカレ野郎(キルバス)の手に渡ったら何をしでかすかわかったもんじゃない。

 

そして俺はキルバスの破壊活動に巻き込まれながらも命からがらパンドラボックスを回収し、ブラッド星から逃げた。

 

 

 

こうして俺の故郷は無くなった

 

 

 

故郷を失った俺はパンドラボックスを持ちながら広大な宇宙をあてもなくブラブラと彷徨っていた。

 

するとふと一つの惑星が目に入った。

 

俺は暇潰しも兼ねて何も考えず手をかざし……───

 

 

 

 

 

その惑星を破壊した。

 

 

 

 

俺はその惑星が崩壊していく様をただボーっと眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

──────すると突如として鋭い頭痛が走り────────────────────────

 

 

 


 

 

 

「──────………で、今に至るってわけか」

 

大体思い出せたのはこんな感じ。

 

う〜ん、どういうことなんだろう。

 

俺はエボルトに俗に言う、転生?憑依?したということなんだろうか。

 

実は思い出せてないだけで俺は前世で死に、なろう系テンプレ通りに神様的な存在に「エボルトになりたい!」と言って転生させてもらったんだろうか。

 

俺は仮面ライダーシリーズは主人公勢より悪役ポジの怪人やダークライダーが好きで、

 

その中でも特に『仮面ライダービルド』の『エボルト』が好きだったから、あり得そうなんだよなあ

 

 

 

……あれ?そういえば…………………………………………………………………………………………前世の俺の名前ってなんだっけ……?

 

 

 

えーっと、一般常識や自分がどんな人間だったかは覚えてる…家族構成、幼い頃や小学校、中学、高校、大学…そうだ大学生だったはずだ。好きなアニメや漫画などの作品は、東方とかFateとかシンフォギア…ヨシっこれも大体覚えてる。それなのに……オイオイうそだろ!名前だけがさっぱり思い出せない!

まるで記憶に靄がかかったようだ。

 

……マジかー、記憶を戻す方法なんて知らないし、…………いや、エボルトとなった今世で前世のことを思い出す必要あるのか?

 

 

う〜ん、これからどないしよ。

 

俺は手に持ってるパンドラボックスに目を向けながら考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────── …… そうだ地球に行こう。

 

そうだ京都行こうみたいなノリで目的が決まった。

 

 

 


 

 

そんなこんなで地球を目指す宇宙旅行が始まった。俺は地球を目指し広大な宇宙を彷徨い続けた。

 

道中立ち寄った数々の星でいろんな出会いがあった。

 

ある時は、白衣を着た酔っ払いのたまに狂気的な言動が目立つ爺さんに出会い、その爺さんの自家製の円盤で酒を飲み交わしたりして騒いだ。

 

ある時は、アホ毛が目立つ白銀の髪をした碧眼の少女とも仲良くなった。……あれ、そういえばあの子自分のことニャルラトホt、い、いやまさかね… ?

 

ある時は、宇宙船を発見し、その船内で発生していた感染症を除去し、感染していた人たちをボトルの力と遺伝子組み換えや粒子操作などで治療した。数多の星を滅ぼしてきた俺があんなに感謝される日がくるとはね。あの金髪の女の子元気にしてるかな。

 

 

それから何十年、何百年たったかわからないが、

 

 

 

俺は遂に────────────地球を見つけた。

 

 

 

(…よっしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!地球キターーーーーーーーーーーーー!!!)

 

俺は歓喜に震えた。

 

ちなみに地球を見つける前に火星を発見したがスルーした。肉体失ってアメーバにはなりたくないし。

 

「…よし、それじゃあさっそく行ってきますか!」

 

「地球に着いたらまず何を食おうかな〜」とか考えながら大気圏に突入した。

 

 

 

 


 

 

一方、地球──────1999年8月〇日。

 

人々は変わらず平和な時を過ごしていた…そう──────

 

「ノストラダムスの大予言」──────『1999年7か月、空から恐怖の大王が降ってくる。アンゴルモアの大王を蘇らせ、マルスの前後に首尾よく支配がなされるであろう。』(「サンチュリ(諸世紀)」第10章72番)

 

この予言が見事に大ハズレしたのである。

 

往生際の悪い者────鼻から興味のない者────安心する者────ひきこもごもであるが────

 

 

 

 

 

 

人々は知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

1ヶ月前────

 

 

 

 

 

 

 

地球の大気圏を突破し、その地上に降りたった者がいたことに────────────。

 

 

 

 

 

 

血のカレコレ

Over the EVOLution

 

ストーリー【エボル編】

 

 

 

 




文才のない自分なりに頑張った方だと思いますがいかがだったでしょうか。


ちなみに最後の方はケロロ軍曹第1巻のモアちゃんが初登場した回が元ネタです。


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異・宙・転・生


—1999年7月〇日00時〇分—

「―…ヨシっ!とうちゃ〜く!………………………さて、これからどうするか」

「とりあえず変身解除するか………………………………あっ……エボルト怪人態…」

「誰かに見られる前に擬態しとくか」


 

—1999年12月〇日〇時〇分—

 

 

風情のあるレトロな街並み

 

 

 少し入り組んだ路地にある喫茶店。店の前には『Cafe〜nascita~』と書かれた立て看板がある。

 

その喫茶店は、知る人ぞ知る大人の隠れ家と言っていい。待ち時間がないのは、ここにはあまり多くの客が訪れないからである。この穴場の店は、静かな雰囲気と上質なサービスで、都会の騒がしさから逃れたかのようなくつろぎを提供している。

 

店内では『店長』が何時ものように、コーヒーを淹れていた。

 

窓側のテーブル席にはサラリーマン風の男性が仕事をしてるのかノートパソコン開いている。カチャカチャとキーボードをうつ音が店内に響いている。。

 

『店長』は先ほど淹れたコーヒーをサラリーマン風の男性のいるテーブルにひとまず持って行く。

 

 

コーヒーカップの中はブラックホールの如く黒々とした色をしていた。

 

 

「はい。お待ちどう」

 

「ああ、どうも」

 

サラリーマン風の男性はパソコンの画面から目を離さずにコーヒーカップを手に持ち口に含む……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いやあ〜、やっぱりマスターが淹れたコーヒーは美味いなあ!」

 

「ははは、嬉しい事言ってくれるねえ、そんじゃサービスとして今回はコーヒータダにしとくよ」

 

「ありがとう!いやあマスターチョロいから少し(おだ)てればサービスしてくれると思ったよ!」

 

「よし!やっぱりちゃんと払ってもらうぞ!」

 

 

 

 

 

(エボルト)の淹れるコーヒーは不味いと思った?残念!絶品でした!

 

地球に来てからかれこれ5ヶ月。俺は、喫茶店「nascita」を経営している。

 

地球に来たばかりの頃、俺はまず金銭面をなんとかする前にすぐに住み込みのバイトを始めた。

 

そして血の滲むような努力の甲斐あって、『仮面ライダービルド』で出てくるカフェ、「nascita」を開店することができた!

 

……え?バイトだけで喫茶店を開店できたのはおかしいって?

 

 

それは…知らない方がいいと思う(君のような勘のいいガキは嫌いだよ)

 

 

ちなみに今俺の淹れたコーヒーを絶賛してくれたサラリーマン風の男性は、『藤田 修』さん。ウチの常連客だ。

 

いつもこの店のテーブル席でコーヒーを飲みながらパソコンを開いて仕事をしている。

 

いちばん最初に店に来た客でそれ以来ここの常連と化した。

 

ちなみに俺が地球で初めてできた友人だ。

 

 

 

 

「今日もコーヒーおいしかったよ!またくるねマスター」

 

「おう、またのご来店をお待ちしております」

 

 

 

数少ない客が帰って、店内は静かになる。

 

 

いやーそれにしても、…ここは一体何の世界なんだろうか?

 

地球に来て5ヶ月いろいろ調べてみたが、まずこの世界に『仮面ライダー』は存在しないらしい。

 

となると漫画、アニメ、ライトノベル、ゲームの世界だろうか。

 

もしそうならできれば知ってる作品だとある程度無駄なトラブルを避けることができるんだが……いや、知ってる作品だとしても「エルフェンリート」や「バイオハザード」とかだったら嫌だなあ。

 

ブラッド族ならなんとかなるだろって?確かにエボルトだったらディクロニウスやB.O.W.ぐらいならいろいろ対策はできるだろうけど、胸糞展開とか生物災害なんて見たくないんだよおおおおおおおおおおお!!!作品自体は好きだけど!!

 

…そういえばそろそろ西暦2000年になるよなあ。

 

俺の頭に『2000年問題』が頭に浮かんだ。

 

『2000年問題』とは西暦2000年になるとコンピュータが誤作動する可能性があるとされた年問題であり、ミレニアム・バグとも呼ばれた。世界規模でプログラムの訂正が行われたので結果としては直前にメディアで騒がれていたような生活に直結するほどの大きな混乱は一切起きずに終わったが…

 

(たしか、バグスターウィルス(・・・・・・・・・)って2000年問題によって誕生したんだよな…)

 

『仮面ライダーエグゼイド』に出てくる『バグスターウィルス』は2000年問題によって誕生したと本編で言われていた。どうやって生まれたのかは本編でははっきりとそのあたりは判明していないが…

 

この世界に『仮面ライダー』の情報は一切なかった。現状で言えばこの世界にいるライダーは俺一人だが、これから先ライダーが誕生する可能性だってある。

 

『幻夢コーポレーション』は存在してなかったが、もしかしたらディケイドのリ・イマジネーションライダーのように、この世界は俺の知るエグゼイド本編とは違うパラレルワールドで、バグスターウィルスが誕生する可能性がある。

 

だがそれはエグエイドに限った話ではない。

 

人類の進化形態である『オルフェノク』が突然発生するかもしれないし、ブラッド族がいるなら同じく地球外生命体である『ワーム』や『メガへクス』が地球へ襲来してくるかもしれない。

 

あらゆる可能性を考慮して用心するに越したことはない。

 

 

「とりあえず念のためにゲームフルボトルドクターフルボトルを生成しておくか」

 

 

 

 

 

────この時俺は、西暦2000年に予想だにしない出来事が地球規模で起きるなんて思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—2000年〇月〇日—

 

 

 

俺はいつも通り店内でコーヒー豆を挽いていた。

 

「やっぱコーヒーは豆からこだわらないとなあ〜♪」

 

これは「nascita」ではいつも通りの光景だ。

 

 

店の外でも人々はいつも通りの風景の中でいつも通りの生活を、いつも通りの日常を送っていた。──…いつも通りの…はずだった…。

 

 

 

「っ!?」

 

 

俺は突然妙な感覚に襲われた。

 

 

(なんだ…?今何か…)

 

 

次の瞬間…

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?なっ、なんだ───」

 

 

店内は───

 

 

 

 

「うわあ!?───」

 

 

 

「な、なに────」

 

 

 

「まっ、眩し───」

 

 

 

人々は───世界は───地球は───

 

 

光に包まれた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだったんだ今のは……」

 

 

光が止むと俺は外の様子を確認するために外に出た。

 

 

「さ、さっきのなんだったんだ?」

 

「突然光ったと思ったら……」

 

 

外に出ると先程の出来事に人々はザワザワと困惑していた。

 

しかし街の景色は特に変わった様子はない。

 

 

……ん?

 

 

ふと空を見上げた俺は違和感を感じた。

 

広がっているのは相変わらずの蒼天である。しかしなんだろう…何かがおかしい…

 

 

 

「あれ?なあ、何か飛んでね?」

 

「鳥…?にしてはデカいような…」

 

「なんかこっちにきて…ぅ、うわあああああああああっっ!!!」

 

「きゃあああああああああああああああああああっっっっ!!?」

 

 

俺が空の違和感の正体を考えていると、悲鳴が響き渡り、慌てて悲鳴が聞こえてきた方へと目を向けると……

 

 

「っ!?」

 

 

理解できない光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

―ギャォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ……!!!!―

 

 

 

 

 

 

鱗に覆われた爬虫類を思わせる体、鋭い爪と牙、羽ばたかせる翼。それは空想上にだけにしか存在しないはずの生き物、『ドラゴン』

 

 

それに似た生物が上空を覆い尽くさんばかりの数え切れない程の数でこちらに向かってきていたのだ。

 

 

 

 

「なんじゃ…ありゃ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西暦2000年

 

突如として地球は『異宙』と呼ばれる異世界に転生してしまった。

 

 

 




小説書くの楽しいけど難しいンゴ


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星狩りはなぜ『仮面ライダー』となったのか


エボルトのコーヒーが美味いことに驚きというコメントに対して、



エボルト「この小説での俺は『津上翔一』や『天道総司』のように料理が得意な設定だぜ」


 

—2000年〇月〇日—

 

 

しかし、人類は予想できていたであろうか……

 

地球の常識を覆す事態が起こり、突如として長らく続いていた平和は崩れ去ることに…………。

 

 

…………いや、思えば必然だったのかもしれない。

 

人類のこれまでの歴史を振り返れば明らかだ。

 

終戦から約50年、世界大戦が起こっていたころに比べれば世界はある程度平和が続いていたとはいえいまだどこかの国や地域では紛争やテロが続いている。

 

環境破壊を繰り返し、寄生虫の如く地球を食い物にしている。

 

差別、いじめ、虐待、悪意、恐怖、憤怒、憎悪、絶望、闘争、殺意……

 

 

嗚呼 

 

 

嗚呼 

 

 

嗚呼っ!!

 

 

人間はなんと愚かな生き物なのだろうか。

 

 

 

これは、地球の意志だったのかもしれない……。

 

地球が傲慢な人類に対して与えた試練、いや……罰なのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!!?」

 

「ぎゃああああああっ!!?」」

 

「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

そこには地獄のような光景が広がっていた。

 

痛々しい断末魔が響き人々はパニックに陥り、生存本能のまま全力で走る。

 

突然目を覆うほどの強い光に包まれたと思いきや、上空から続々と飛来してきた存在が暴れている。

 

それらは『ドラゴン』に次いで、空飛ぶエイ、飛行機と同じサイズの昆虫、地球のような丸い頭部をした細身の巨人、悪魔を彷彿とさせるような姿の怪物など、空想上でしか存在しない生き物。

 

ある者は捕食され、ある者はドラゴンが噴き出した炎で焼かれ、ある者は怪物が突っ込んだことにより倒壊したビルの瓦礫の下敷きとなるなど、

 

人々は怪物たちに次々と無差別に蹂躙されていく。

 

 

 

 

 

一体何が起きている……?

 

 

エボルトこと『礎乃 惣真(きだい そうま)』は不測の事態に見舞われていた。

 

この名前は前回紹介するのを忘れていたが、エボルトが地球で生活するため作った偽名である、とそんなメタ話は置いといて……

 

地球に来て約5ヶ月、慣れ親しんだ街は突如として一変し地獄と化した。

 

惣真はあらゆる可能性を考慮して、いろいろ準備はしてきたが……

 

こんなこと完全に予想外だった。

 

 

 

(まさか地球丸ごと異世界に飛ぶ(・・・・・・・・・・・)とは……)

 

 

 

惣真が空を見た時に気づいた違和感……

 

通常の人間の肉眼ではわからないが、ブラッド族である惣真はすぐに気づいた。

 

そう…地球は宇宙から異世界に転移していたのだ!

 

 

 

………って、いやいやおかしいおかしい!!

 

トラクターに轢かれかけてショック死したひきこもりが駄女神と共に転生するとか、クラスメイト全員が異世界に召喚されるとかならわかるけど…………

 

地球丸ごと異世界に行くことってある?日本国召喚ならぬ地球召喚?スケールデカすぎない?カズマさんもびっくりですよ?

 

地球の周りが『仮面ライダーセイバー』のワンダーワールドみたいな景色が広がっている状況に惣真は頭を抱えた。

 

 

 

……それにしても

 

惣真は周りを見渡す。

 

逃げ惑う人々。

 

不規則に殺戮と破壊行動をし、挙げ句の果てには仲間意識がないのか共食いをする怪物達。

 

辺りに広がるのはドラゴンの炎に焼かれ、或いは倒壊したビルの瓦礫に潰され鉄骨や破片が身体中に突き刺さり肉塊となったかつて人だったモノ。

 

それはまるでスプラッター映画のワンシーンのように悲惨で残虐な光景が広がっていた。

 

そんな光景を目の当たりにし、惣真が思ったことは……

 

 

 

(ああ……人間ってのはなんて脆い生き物なんだろうなあ)

 

 

 

常人であれば嘔吐感と生理的嫌悪感を催す光景を前にして、惣真(エボルト)が思ったことはそんな淡白な感想だった。

 

 

地球丸ごと異世界に転移した時は流石の惣真(エボルト)も動揺したが、人々が目の前で無惨にも虐殺されていることに関しては何も感じなかった。

 

惣真(エボルト)は『仮面ライダーエボル』であるが仮面ライダーの素質を備えた者ではない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

惣真(エボルト)は『本郷猛(仮面ライダー1号)』や『五代雄介(仮面ライダークウガ)』のように人々の平和と笑顔を守ってきた仮面ライダー達とは違う。

 

目の前の怪物達の行いに対して「ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」などと怒りを表すような正義感は持ち合わせていない。

 

惣真(エボルト)は前世が人間とはいえブラッド族だ。エボルの力は全てを滅ぼすためにある。そういう星の元に生まれたのだ。

 

全てを破壊し全てを繋ぐ『門矢 士(仮面ライダーディケイド)』と違い、惣真(エボルト)は正真正銘の破壊者(あくま)である。

 

キルバスがブラッド星の破壊を始めた時もそうだった。

 

同胞が目の前でいくら殺されようと故郷が破壊されても、エボルトが思ったことは、

 

『今まで滅ぼしてきた奴らが滅ぼされる側になるなんて、皮肉だねえ』

 

だった。

 

地球に来る前、発見した宇宙船にいた奴らの感染症を治療してやったときもあったが、単なる気まぐれだ。

 

数多の命を奪い去ってきた自分が今更『仮面ライダー』として人助けするつもりなどなかった。

 

「あ〜あ、せっかく喫茶店のマスターやるのも楽しくなってきたのに……まあ、この星が滅んでいく様をじっくり眺めるのも悪くねえか………………………………ん?」

 

惣真が傍観を決め込んだ矢先、ふとあるものが目に映った。

 

 

「うぁあああああぁぁ…ママぁ……パパぁ……どこぉ……」

 

 

親とはぐれたのか、十歳にも満たない幼い男の子が大声で泣いている。

 

しかし周りの人間は見向きもせず走り去っていく。

 

当然だ。こんな状況で他のやつに気にかけてられない。自分のことで精一杯なのだ。

 

 

すると近くの倒壊しかけてた建物が崩れ、男の子は ちょうど瓦礫が落下する位置にいた。

 

 

男の子はそのまま瓦礫の下敷きに────────

 

 

「あぶねえっ!!」

 

「わっ……」

 

 

────────なることはなかった。

 

 

惣真が咄嗟に男の子を抱きかかえ、ギリギリのところで瓦礫に潰されるのを防いだ。

 

 

「……はああぁ〜、危機一髪だったぜ。…よしよし、大丈夫か?坊主」

 

「う…うん」

 

「太郎!!」

 

「大丈夫か!?」

 

男の子の無事を確認すると、両親らしき男女が慌ててやっててきた。

 

「ママ!パパぁ!」

 

「ごめんね!ごめんね太郎!」

 

「ありがとうございますっ!!息子を助けてくれて…」

 

「いえいえ、それより息子さんを連れてどこか安全なところに避難してください」

 

「あなたは…?」

 

「あー、自分ははぐれた友人を探しにいくんで」

 

惣真はそう言ってその場から走り去った。

 

「おじちゃーん、ありがとー」

 

その際男の子はひらひらと手を振って惣真にお礼を言う。

 

「おじっ…見た目は石動惣一(いするぎ そういち)より若くしてるんだけどなあ…確かに人間よりは遥かに生きてるけど…」

 

男の子の何気ない一言が惣真を傷つけた。

 

 

 

 

 

(あー、くそっ…なんで助けちまったんだよ)

 

安全な場所?そんな場所あるわけない。

 

地球丸ごと異世界に転移してんだぞ。

 

ここだけじゃない。この惨劇は世界各国で起きている。

 

助けたところで、人類が滅ぶことはすでに確定している。

 

それがわかってるのに、なんで俺は…

 

 

『ありがとうございますっ!!息子を助けてくれて…』

 

 

『おじちゃーん、ありがとー』

 

 

ふと思い出すのはさっきの男の子とその子の両親の笑顔。

 

 

『ありがとう!エボルトさん!』

 

 

そして宇宙船で惣真が治療した人たちの中にいた女の子の笑顔。

 

 

 

—誰かの力になれたら心の底から嬉しくなってくしゃっとなるんだよ俺の顔—

 

 

 

桐生戦兎(仮面ライダービルド)』の台詞が頭をよぎった。

 

 

俺もエボルのマスクの下でくしゃっとなってたんだろうか。

 

 

だが俺はラブ&ピースを胸に抱いて闘った『桐生戦兎(仮面ライダービルド)』とは違う。

 

 

それとは程遠いどころか真逆の破壊することしか知らない『LOVEとは対極の存在(EVOL)』の名を持つ者。

 

 

そんな俺が『仮面ライダー』を名乗る資格はあるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ただでさえ客来ねえのに、こんな状況じゃ誰一人コーヒー飲みに来ねえよな」

 

 

新規の客どころか修さんのようにまた来ると言っていた常連すらも来なくなる。

 

もしかしたらあちこちに転がっている死体の中には、肉塊になっててわからないが惣真が経営する喫茶店『nascita』の常連がいたかもしれない。

 

もちろんそれはわからないが…

 

『nascita』に客が来る機会をあの怪物達は奪ったのだ。

 

 

 

「営業妨害したツケをアイツらには払ってもらわねえとなあ?」

 

 

 

それが人間として(・・・・・)の惣真が出した答えだった。

 

 

それはラブ&ピース(愛と平和)のためでもなく、大義の為でもなく、心火を燃やすわけでもなく、

 

 

「…俺は俺のために戦う」

 

 

惣真はあくまでそれが『仮面ライダー』として闘う理由だと自分に言い聞かせ、決心した。

 

 

『エボルドライバー!』

 

 

惣真はエボルドライバーを装着し、未知の物質を充填された2つのボトルを取り出し、ドライバーのスロットに差し込む

 

コブラ ライダーシステム! エボリューション!』

 

 

惣真はハンドルレバーを勢いよく回す。

 

それと同時にベートーベンの交響曲第9番が流れる。それに合わせてコブラの顔のエボルボトルのパーツが歌唱しているかのように稼働する。

 

エボルドライバーに搭載されたエネルギー生成ユニット『エヴォリューションチャージャー』装置内部の発動機『EVダイナモ』が高速稼働し、必要なエネルギーを生み出す。

 

ドライバーから透明なパイプが出現し惣真の前後にプラモデルのランナーのような型が形成され、

 

パイプの中を赤と黒の液体が流れ、前後の型の中に凝縮し、

 

赤黒い霧のようなエネルギーに包まれた装甲を成形し、そして三つの歯車のような金色のリングが出現する。

 

 

覚悟はできたか?(Are you ready?)

 

 

できてるよ(変身)…!」

 

 

その声に反応するように全てが融合し、惣真を中心に三つの金色のリングが宇宙ゴマのように回転し、

 

 

『コブラ! コブラ! エボルコブラ!』

 

 

そしてエネルギー波が弾け飛ぶ。

 

 

『フッハッハッハッハッハッハ!』

 

 

黒い霧が晴れた時には、ソレは姿を顕した。

 

 

 

 

「エボル、フェーズ1……!」

 

 

 

惣真(エボルト)がパンドラボックスのエネルギーを最大限に使うことのできる究極の姿。

 

そのスケールは地球や火星と言った惑星レベルを飛び越え宇宙を支配するとまで言われている最凶最悪の仮面ライダー。

 

 

 

仮面ライダーエボル

 

 

 

 




最初異宙に転生した時はドラゴンなどの飛行するタイプの知性のない異宙の生物が暴れたと自分は思います。


次回戦闘回だけど戦闘描写とかどうやって書けばええんやろ……





追記

主人公の名前を変更しました。

蛇塚惣真→礎乃惣真


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Eは止まらない/蛇は龍を喰らう

とある場所

 

そこには避難してきた人達で溢れかえっていた。

 

一緒に避難してきた医師や消防隊がゲガ人の応急処置・治療などをおこなっている。

 

さらに自衛隊やライオットシールドを持った特殊装備の機動隊、その近くには一般人にとっては映画などでしか見ないような何台ものゴツい装甲車。

 

人口密度は凄まじいものになっている。

 

自衛隊や警察は無線で他の部隊と連絡を取り合い周囲を警戒する。

 

『こちら〇〇!未確認生命体による襲撃を受けている!至急応援を求む!』

 

『こちら△△!こちらでも未確認による被害が!応援を求む!』

 

『至急!!至急応援をっ…ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!??』

 

無線から聞こえてくるのは銃声と爆発音、そして他の部隊の断末魔。

 

「クソっ!冗談じゃねぇぞ!!」

 

自衛隊の隊長は吐き捨てるように言った。

 

(いったい何が起こってやがる…!?)

 

数刻前、突如として上空から現れた未確認飛行生物による襲撃が始まった。

 

多くの人間はこの事態を信じられなかった。だが信じざるを得ない。

 

現実感のない、それこそ、まるで出来の良い怪獣映画のような出来事が実際に起きたのだから。

 

空想上の中でしか存在しないような異形の怪物の襲撃で人々は恐怖と混乱に陥っている。

 

念仏を唱える者もいれば、「これは夢だ、これは夢だ…」と現実逃避する者や「ノストラダムスの予言が遅れて当たった!!」と喚く者も。

 

(ここも安全ではない、いつ、いかなるところからバケモン共が現れるかーー)

 

 

 

―ギャォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ……!!!!―

 

 

 

「!?、今のは…」

 

「た、隊長…あ、アレ!!」

 

自衛官の一人が震えた声で指を差す。

 

そこには─────────

 

 

「ギャォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

 

大きく裂けた口、生え揃う凶暴な牙、野太い腕や脚、鋭い爪、横に広がる両翼。

 

全長十五メートルほどほどの体躯の青いドラゴンがこちらを獲物と定めて飛来してきた。

 

「ひぃぃぃぃいいいい!!!!」

 

「イヤアアアアアアアアアアア」

 

人々は一気にパニックに陥る。

 

自衛隊は一列に並んで、隊列を組み銃を構える。

 

それ以外の者は一般人の避難誘導を行う。

 

「う、撃てぇーー!!」

 

一斉に手に持つ機関銃を発砲する。

 

しかし全く効いてる様子はない。銃弾はドラゴンの鱗に当たっては貫くことなくパラパラと落ちていく。

 

「チクショウッ!全く効かねえ!!」

 

「狼狽えるな!なんとしても食い止めろ!!」

 

自衛隊は発砲し続けた。しかしその抵抗も虚しくドラゴンは口を開き鋭い牙をみせこちらを襲い掛かろうとしていた。

 

(くっ……もはやここまでか)

 

 

 

 

その時だった。

 

 

ドガァアアアアアアアアン

 

「グウウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!?」

 

「は……?」

 

赤色の光弾がドラゴンに直撃した。

 

ドラゴンはその衝撃で吹き飛び地面に転がり地響き土煙が舞った。

 

「な…なんだ……?」

 

人々は光弾が飛んできた方向に目を向けた。

 

 

 

そこにいたのは────────黄金の怪人だった。

 

 

 

天球儀や星座早見盤等など全身の装甲の一部に宇宙関連の器具のようなパーツがあしらわれており、その顔は────────────

 

 

「コブラ………?」

 

誰かがそう呟いた。

 

牙を剥き威嚇するコブラを彷彿とさせる顔つき。

 

その顔も相まって赤、青、金、といった鮮やかな色合いなのにどこか禍々しい。

 

「………………」

 

 

その正体不明の存在はこちらに見向きもせずに先ほど吹き飛ばしたドラゴンの方に歩いていく。

 

「グウウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

ドラゴンは起き上がり咆哮をあげる。

 

ドラゴンは自分を攻撃した黄金の怪人─────『仮面ライダーエボル』を敵と定めて襲い掛かる。

 

エボルはドライバーのハンドルに手をかけ勢いよく回す。

 

するとドライバーから明るい雰囲気の、でもどこか不気味な音楽が鳴り響く。

 

それを聞いて誰かが「交響曲第9番……?」と呟いた。

 

ハンドルを回すのをやめ音楽が鳴り止むと、

 

 

Ready go!

 

 

それはまるで、目の前のドラゴンに対する死刑宣告に聞こえた。

 

エボルの右脚に赤いエネルギーが収束する。

 

そしてエボルは高く舞い上がりドラゴン目掛けて蹴りかかる。

 

 

エボルの蹴りがドラゴンの頭部に直撃し───────

 

エボルテックフィニッシュ!

 

「ギャオッ…」

 

ドラゴンは断末魔を上げる間もなく頭部が爆発し、顎から上がなくなっていた。

 

Cia~o!

 

頭部を失ったドラゴンは力無く倒れ伏す。

 

「た、倒した……?」

 

エボルは何かを思いつたのか、ドラゴンの死体に近づく。

 

するとエボルはドラゴンの胸を貫いた。

 

「ひっ!?」

 

その光景に誰かが悲鳴を漏らした。

 

エボルが腕を引き抜くと血まみれの手の中には、拍動して動脈から血を吹き出しているドラゴンの心臓が握られていた。

 

「ウプッ…」

 

「う、おえっ…」

 

そんな残虐なエボルの行動に人々は嘔吐しそうになる。

 

「…フンッ」

 

エボルはドラゴンの心臓を強く握りしめる。

 

するとドラゴンの心臓は青い光りを放ち、段々と形を変えていく。

 

 

そして最終的に青い小さな筒状の物(・・・・・・・・・)に変化する。

 

 

エボルがソレを眺めていると……

 

 

―ギャォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ……!!!!―

 

 

「!?」

 

「な、なんだ!?」

 

「ひぃぃいい!!!おっおい!!アレ!!!」

 

 

先ほどエボルが倒したドラゴンと同じ体躯のドラゴンが何体もの群れでこちらに迫っていた。

 

人々はパニックになるが、エボルは特に動じず、ドライバーに手を伸ばす。

 

エボルはコブラエボルボトルを抜き、今エボルがドラゴンの心臓から生成した『ドラゴンエボルボトル』を差し込んだ。

 

 

ドラゴンライダーシステム! エボリューション!』

 

 

エボルはハンドルレバーを勢いよく回す。

 

エボルの前後に青黒いオーラを纏った装甲を成形され、エボルはソレに挟まれる。

 

 

ドラゴンドラゴンエボルドラゴン!』

 

 

『フッハッハッハッハッハッハッ!』

 

 

「エボル、フェーズ2、完了……」

 

 

 

「姿が…変わった…?」

 

 

 

ソレは、蛇が龍を喰らいし得た姿。

 

大体のアーマーは変わらないが、肩と頭部がドラゴンを彷彿とさせるアーマーへと変化した新たな姿のエボル。

 

 

仮面ライダーエボル ドラゴンフォーム

 

 

ドラゴンフォームとなったエボルはドラゴンの群れを見捉える。

 

『ビートクローザー!』

 

エボルは手にイコライザーのようなメーターのついた剣、『ビートクローザー』を召喚する。

  

『スペシャルチューン!』

 

エボルはビートクローザーの柄の部分にコブラエボルボトルを装填してグリップエンドを3回引く。

 

『ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!』

 

音声が鳴り、その出力に応じてそのゲージが上下する。

 

すると刀身に蒼炎を纏ったあと、コブラの形の赤いエネルギーが形成される。

 

 

「判決を言い渡す…死だ!………なぁんてなあ?」

 

 

底冷えのするような声でエボルはドラゴン達にそう告げた。

 

 

『メガスラッシュ!』

 

 

エボルはドラゴンの群れに向けて赤いコブラの斬撃を放つ。

 

コブラの形のエネルギーがドラゴン達を喰らわんと牙を向ける。

 

そして……

 

 

『ギャォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ……!!?』

 

 

斬撃を喰らった…否、斬撃に喰われたドラゴン達は断末魔をあげ、上空で大爆発する。

 

空からボトッ…ボトッ…とドラゴン達の体の一部や臓物が降り注ぐ。

 

「嘘だろ…?あの数をを…一瞬で…」

 

その光景を人々は呆然と見ていた。

 

 

─────するとエボルは人間達の方を向いた。

 

 

「っ!!!!」

 

人々の全身に緊張が走る。

 

自衛隊はすぐさまエボルに向けて銃口を向ける。

 

人々は顔面が蒼白にさせ恐怖に駆られた。

 

自分達では全く歯が立たなかった怪物達をあっさり倒した力。

 

その力が今度は自分達に向けられるのではないかと。

 

先ほどのドラゴンよりも目の前の黄金の蛇の存在が恐ろしく感じた。

 

自衛官達は銃を持つ手が震え、冷や汗を流す。

 

自衛隊とエボル。双方とも一歩も動かない。

 

 

 

「…………………フゥ」

 

 

エボルはため息吐き、ワープ能力でその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球は、西暦2000年に突如としてこの異宙と呼ばれる異世界に転生してしまった

 

その日各国で異宙からきた生物による被害が多発した。

 

当時の人々はパニックとなったが、多くの犠牲が出たが、被害は最小限に抑えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その要因として各国で目撃された黄金のコブラの怪人が関係してるとか──────────。

 

 

 

 




エボル「どうした?戦わないのか?」(^U^)

異宙の生物(悪意があるタイプ)「ウワァァァァァァァァァァ!!」(0M0;)


サブタイの意味

「Eは止まらない」

「エボルは止まらない」

「Evolutionは止まらない」

「進化は止まらない」


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広がる異宙の中、小さな星の話をしよう。

突如起こった原因不明の異世界転生の惨劇から数年後の2017年現在、地球は異宙の住人、文化が流れ混沌を極めていた!




惣真「今言う事じゃないが…もしあの時期に宇宙飛行士が宇宙にいってたら二度と帰ってこれなかったよな…」


 

 

やあ、みんな!俺だ!惣真(エボルト)だ!

 

西暦2000年、突如として異宙という異世界に転生してから15年以上……もう2017年か

 

あれからいろんなことがあった。

 

まず地球が転生した先の世界のことを地球人は『異宙』と名付けた。

 

異宙にはそれまで地球にいなかったさまざまな生き物が住んでいた。

 

地球人はそいつらを『異宙人』や『異宙の住人』と呼んでいる。

 

異宙人の名は、元から地球に存在した空想上の生物の名前を引用してる。

 

そんな地球の常識が全く通用しない生物ばかりが生息してることもあり、転生を境に当然人間は生態系の頂点ではなくなった。

 

地球が異宙に転生してからは様々な異宙人や異宙の文化が入ってきた。

 

当然問題も起こった。

 

異宙に転移したことで太陽が存在しないため地球の公転スピードなどいろいろな問題が起きた。

 

だが、『ホルス』という巨大な火の鳥が地球の周りを公転するかのように飛んでいるおかげで太陽の代わりを担ってくれていることで解決した。

 

昔は以前のようにドラゴンなどの空を飛べる異宙人や地球を侵略しようと企む異宙人が簡単に侵入出来るから大パニックだったが、最近人間に好意的な『エルフ』の異宙人が提供した特殊な結界『争闘結界』が張られるようになってからは特殊な乗り物でしか地球に近づく事が出来なくなり、平和となった。

 

そういうこともあり、地球の人々は少しずつ順応していった。

 

だがそれでもまだまだ問題がある。

 

異宙の住人は知性は地球人と同等かそれ以上で、対話や親交を結ぶことも可能で好意的な者もいるが、人間と同じように悪意を持った奴らも普通に存在し、大抵の者達が地球人を遥かに上回る身体能力や特殊能力を持つ者が大半で、人間を見下してる奴もいて人を傷つける奴や中には生来の本能として人を食う奴も存在している。

 

当時の惨劇のこともあり、人間の中にも異宙人を差別する奴や恨む奴も多くいる。

 

異種族(他者)との共存ってのは難しい。 

 

地球が異宙に転生する前もこういうことがあった。

 

肌の色が違うからという理由できた人種差別。

 

宗教上の問題が原因で生じた戦争や紛争。

 

これらの問題は根深く、簡単には解決することができない。地球人と異宙人との関係も例外ではないだろう。

 

…まあ、これは俺がどうこうできることではないな。

 

そういえば少し気になることがあるんだよ。

 

最近あるものが日本を含め各国で導入されたんだ。それは……

 

 

『ガーディアン』

 

 

そう。『仮面ライダービルド』における戦闘員ポジの機械兵。

 

一般的には治安を守る兵隊だが、調べたところ実際は異宙人対処用に開発された戦闘用アンドロイドらしい。

 

たしかビルドでも犯罪抑止のために作られた処刑兵士だったっけ。

 

実際これが導入されてから人間はもちろん異宙人関連の犯罪はかなり減った。

 

単独での戦力はやや心許ないが、ビルド本編と同じように統率の取れた集団戦法はよほど力の強い異宙人でなければ圧倒して追い詰めるほど。

 

…しかしなぜガーディアンが?

 

さっきも言ったように異宙人は地球人より強い力を持つ者が多い

 

それゆえその力を悪用する者も少なくない。

 

さらに異宙には地球の科学とは違った技術が発達してて、その技術を用いて作られたアイテムで悪事を行う人間も出てきた。

 

それもあって異宙人関係の刑務所ができたり、死刑制度の変更などもあった。

 

だがガーディアンが導入された時は驚いた。

 

名前が同じだけかと思ったら姿まで同じとは。

 

一体なぜ?

 

俺が地球に来たことで何か変化が生まれた、とか?

 

う〜ん………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

考えるのやーめた

 

 

にしてもガーディアンか……。

 

今はまだ大丈夫だが、本来は戦闘用アンドロイドだ。

 

たしかに犯罪抑止の効果はあるが、使い方次第で殺戮マシンに早変わり。

 

精巧に作られてるとはいえ所詮は機械。

 

ハッキングされ、『ダウンフォール』のようなテロリスト集団によって悪事に利用される可能性がある。

 

調べたかぎり合体機能はないようだが、もし合体機能が追加されたら簡単に戦争に利用される。

 

いまだ地球人と異宙人の間には溝が残ってるってのに……何も起こらなきゃいいが。

 

惣真はガーディアンの導入に一抹の不安を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???SIDE

 

 

とある研究所

 

そこの一室のデスクでいくつものモニターに映る映像を、メガネをかけた研究員の男は見つめていた。

 

男は映像に映る存在に目を惹かれていた。

 

そこに…

 

「失礼するぞ、『レイナ』」

 

「あ、お疲れさんっす。どうしたんすか?」

 

赤い髪の男が入ってきた。その男は耳に鈴をつけていた。

 

「お前が例の正体不明の異宙人(・・・・・・・・)について調べていると聞いてな。それで、何かわかったのか」

 

「んー…そっすねー、まずこれを見てくださいっす」

 

レイナと呼ばれた研究員に促され、赤い髪の男はモニターの方に目を向ける。

 

その映像には黄金のコブラのような戦士が映し出されていた。

 

「これはここ数年各国で撮影されたものなんですけど、こいつは『黄金の戦士』とか『コブラ怪人』って呼ばれてまして、地球が異宙に転移したのと同時期に目撃されてるっす。こいつを危険視する人間が多数ですが、中にはこいつに救われて『救世主』なんて崇めてる奴もいるっす。まあそれは置いといて、注目して欲しいのはコイツの腰についてるベルトのバックルのようなデバイスっすよ」

 

「ふむ…」

 

レイナは赤い髪の男にあるものを指差して説明する。そこには、赤中心の派手なカラーリングのベルト。

 

「コイツってなんかどことなく変身ヒーローみたいな見た目してるじゃないっすかー。そんでコイツの鎧ってこのベルトによって形成されてるんじゃないかと思うんすよ」

 

「なるほどな」

 

「さらにこのベルトに差し込まれている筒状のもの。最初はコブラのような姿だったのに、この筒状のものを差し替えたことでドラゴンみたいな鎧に変化したとか。フォームチェンジまでするとかまんまヒーローものっすねー見た目は凶悪なのに」

 

「このベルトに秘密があるということか」

 

「はいっす。ホント興味深いっす、ゾクゾクするっす、研究してみたいっす」

 

レイナは口角を上げて笑う。まるで新しい玩具を見つけた子供のように。

 

そんな彼を見て赤い髪の男はため息をつく。

 

「相変わらずだなお前は。まぁいい、俺は少し出てくる。引き続き調べてくれ」

 

「了解っす!」

 

赤い髪の男は部屋から出て行った。それを見送った後、レイナは椅子に深く座り込む。

 

「ホント興味深い、ゾクゾクするねぇ、研究してみたいなぁ」

 

そう呟きながらレイナはキーボードを操作し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球が異宙に転生をして人類は生態系の頂点ではなくなった。

 

あらゆる異宙の住人が住み着いたことでそれ以前とは比べ物にならないほど地球は人間にとっていつ死んでも可笑しくない危険な場所となった。

 

人間の中にはそれをよしとせず再び人間の手に地球の覇権を取り戻すことを目的として結成した組織がいた。

 

その組織の名は…

 

 

 

『トッププレデター』

 

 

この頂点捕食者の名を持つ組織の存在が、惣真(エボルト)とこの星の運命を揺るがすこととなる。

 







惣真「アイエエエ!?ガーディアン!?ガーディアンナンデ!?」


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冥府の守護神との邂逅


惣真「西暦2000年に突如として異宙という異世界に転生してしまった地球。」

惣真「異宙には地球の常識が全く通用しない生物ばかりが生息しており、転生を境に地球はいつ死んでも可笑しくない危険な星となり混沌を極めていた!」

惣真「しかしそんな世界に、地球が異宙に転生する前に地球に来ていた我らがアンチヒーロー、仮面ライダーエボル!」

謎の社畜ペンギン「自分でアンチヒーローとかイタくないか?」

惣真「うっせぇわ!…ってキェェェェェェアァァァァァァペンギンガシャァベッタァァァァァァァ!?」

謎の社畜ペンギン「仮面ライダーエボルこと蛇塚惣真はとある組織に目をつけられてしまう。どうなる第6話」

惣真「突然現れた喋るペンギンに全部言われちゃったよ!俺一応この小説の主役なのに〜!」

謎の社畜ペンギン「メタいぞ」












今回惣真はあるミスを犯してしまう。


「グルウアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」

 

「フンッ!ハァア!」

 

オッス!オラ惣真(エボルト)だってばよ!

 

現在仮面ライダーエボルとなってとある山に現れた異宙の生物と交戦中。

 

その異宙の生物はライオン、シマウマ、キリンを合成したようなナイトオブサファリな姿をしていた。

 

エボルはマリンブルーのボトル…『海賊フルボトル』を取り出し、エボルドライバーに装填する。

 

パイレーツ!ライダーシステム!クリエーション!』

 

レバーを回し、エボルの手元に弓型の武器……『カイゾクハッシャー』を形成した。

 

「これで終わりだ」

 

『各駅電車 〜急行電車〜快速電車〜……』

 

エボルはカイゾクハッシャーに取り付けられた電車型攻撃ユニット『ビルドアロー号』を引きエネルギーをチャージする。

 

『…海賊電車!発射!』

 

エネルギーをフルチャージし、ビルドアロー号から手を離した。

 

そして黄緑色のエネルギー体となったビルドアロー号が異宙の生物めがけて射出される。

 

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!?」

 

ビルドアロー号を食らった異宙の生物は叫び声をあげて爆散した。

 

辺りには異宙の生物の肉片がベチャッ、ベチャッ、と粘着質な音を立てながら散らばる。

 

「さてと……なんか異宙の生物にしては妙だったな」

 

天然物ではなく、まるで人工的に造られたかのような……。

 

「まぁいいか、取り敢えず帰るか」

 

エボルはワープ能力で愛しの我が家nascitaへ帰ろうとした。

 

 

 

……その時だった。 

 

 

 

 

 

突如として光の速度で何かが落ちてきた。

 

いきなりのことにエボルは驚き振り向く。

 

黒い土煙が立ち込める。それが消えるとそこにいたのは………………

 

 

 

 

 

「よぉ、お前か?最近ホルスのヤローが目をかけているって奴は?」

 

そこには1人の少年…………のような姿のナニかがいた。

 

身長は150cmほどだろうか。黒髪で頭の上に犬や狼に近い獣耳がある。

 

紫色の瞳、褐色の肌で顔立ちは中性的で非常に整っており誰が見ても美少年という容姿だが……………………惣真にはわかる。

 

コイツは………ヤバい!!!星狩りとしての直感がそう告げている。

 

今まで屠ってきた異宙の生物とは比べ物にならない程のオーラが仮面ライダーエボルの装甲越しからひしひしと伝わってくる。

 

「てめぇ、一体何者だ」

 

エボルは警戒心を持って問いかけた。

 

「なんだ、俺のこと知らねーのか?まぁいい、俺は────────────────『アヌビス』だ。よろしくな金ピカ蛇ヤロー」

 

 

 

 

 

 

 

???SIDE

 

「あちゃ〜、キメラを餌に奴を誘き出すはずが…予想外の展開っすねー」

 

「まさか“冥府の守護神”が現れるとはな……」

 

 

 

 

 

 

 

惣真SIDE

 

えーと…今、目の前のショタガキはアヌビスとおっしゃいましたか?

 

あー、アヌビスって、たしかアレでしょ?エジプト神話とかに出てくる冥府の神的なアレ。

 

文献とかだとあの世の支配者で死を司る神とも言われてるアレだよね。

 

そのヤベーイ存在が今俺の目の前にいるこのショタガキであると。

 

なるほどなるほど。

 

…………………………ヤバくね?

 

「おい、今ナメたこと考えなかったか?」

 

あ、勘が鋭いわコイツ。あんまり下手なこと考えるのやめよ。

 

「あー、これは失礼。アンタ自身のことは知らねぇが地球の文献でなら知ってるぜ。確か冥界の王とか、そんなんだよな?そんな大物が一体何の用だ?…………………………そんな濃厚な殺気を飛ばしといてただ自己紹介しにきたわけじゃないんだろう?」

 

「ハハハハハハッ!わかってんじゃねーか!」

 

アヌビスは楽しげに笑う。

 

「少し前から異宙じゃお前の噂が飛び交っていてな。なんでも妙な力を持っているらしいじゃねーか。ホルスのヤローも一目置いているみたいだし、ちょっと興味があってな。一度会ってみたかったんだ」

 

アヌビスの紫色の瞳がアメジストのような輝きを放ちながらエボルを見据えた。

 

「そういうわけで金ピカ………いっちょ俺と戦え」

 

アヌビスが発する殺気が一段と濃くなる。

 

正直言ってかなり面倒だ。

 

このままワープして逃げることはできる、が……

 

「……いいぜ、気乗りはしないがな」

 

こいつはおそらくキルバスや仮面ライダー龍騎の王蛇に似たようなタイプだ。もし店に突撃とかされたら迷惑だからな。ここで潰しておくべきだ。

 

「ハハハ!そうこなくっちゃなァ!!異種族交流といこーぜ!!」

 

エボルが了承するとアヌビスは嬉々として叫ぶ。エボルそんなアヌビスの姿を見つつ、内心で戦いを受け入れる覚悟を決める。

 

 

 

 

「先ずは小手調べだ!!」

 

先に仕掛けてきたのはアヌビスだった。アヌビスは手から禍々しい光の黒いエネルギー球を生み出し、それを投げ放つ。

 

「っ!……ハァッ!!」

 

そのエネルギー球をエボルは力と装甲の強度に任せた蹴りを放ち、エネルギー球を霧散させる。

 

「へぇ」

 

アヌビスは少し驚いたような顔をし、口角をあげた。どうやら今のでさらに興が乗ったようだな。

 

アヌビスの足元に魔法陣のようなものが形成されたかと思うと、そこからいくつもの稲妻のような形状の黒い触手がエボルに向かって放たれる。

 

「フッ!ハッ!!」

 

それをエボルは回避、もしくはカイゾクハッシャーで打ち消しながらアヌビスに接近していった。

 

「おー、なかなかやるじゃん……でもなぁ」

 

アヌビスが指をクイっと動かす。すると、一つの触手が軌道を変えてエボルを直撃する。

 

「っ!」

 

エボルは一瞬動きを止めてしまい、その生まれた一刹那の隙を残りの触手が四方八方からエボルを襲う。

 

「っ!!くっ……!!」

 

エボルは咄嗟に両腕を交差させる。

 

 

ドドドドドドドドッ!!

 

 

鈍い音が辺りに響き渡る。全ての触手がエボルが立っていた場所に突き刺さった。立ち込める砂土煙をアヌビスはつまらなそうな表情で見つめていた。

 

「なんだよこれで終わりかよ。ホルスのヤツあんな金ピカのナニにビビってたんだか。とんだ肩透かしだったぜ」

 

アヌビスが落胆した様子で踵を返そうとしたその時。

 

 

エボルドラゴン!』

 

 

「!!」

 

不意に、そんな怪音が響き渡り、それに反応したアヌビスが振り向いた瞬間…。

 

「ハァッ!!」

 

土煙を切るように現れた青龍の戦士が刀身にメーターのようなものが付いた風変わりな剣型武器を振り下ろすのがアヌビスの視界に入った。

 

「グゥッ!?」

 

油断していたためにその斬撃をもろに食らったアヌビスは、後方に吹っ飛ぶ。しかし自ら飛ぶ形で地面に着地し、態勢を立て直す。

 

「…ッハァ、ハハハ、この俺に不意打ちとはな、やるな金ピカ」

 

アヌビスに横一線の切り傷を与えた人物、それは先程とは姿の形状が異なるエボル。具体的に変化しているのは頭部と肩部。よく見れば胸部パーツの一部が消えているがそこは省こう。

 

まず頭部の変化は、複眼が蛇の形からドラゴンの横顔を模したものに変わり、額の星座早見盤を思わせる『マスタープラニスフィア』から竜の顔を模した『EVOフレイムエヴォリューガー』へと変化している。

次に肩部の変化は、宇宙ゴマの思わせる装甲ユニット『EVOコブラショルダー』からは打って変わってシンプルなもので、竜の爪が突起したような装甲の『EVOドラゴンショルダー』へと変化している。

 

それは、エボルドライバーに装填していた『コブラエボルボトル』を『ドラゴンエボルボトル』へと切り替えフォームチェンジした姿。仮面ライダーエボル(ドラゴンフォーム)である。

 

「そういや姿が変わるんだったな」

 

アヌビスは口から流れる血を拭うと再び戦闘態勢をとった。

 

「いくぞ」

 

エボルもそれに応えるように剣型武器…ビートクローザーを構える。

 

両者同時に地を蹴り地面に亀裂が走る。

 

そして、アヌビスの拳とビートクローザーの刀身がぶつかる。

 

普通はあり得ない話だが、ぶつかった瞬間火花を散らした。その衝撃が両者を揺らす。拳と剣だというのに鍔迫り合うような形となる。

 

質量からしてアヌビスの方が上である。しかし、エボルは力任せにアヌビスの拳を弾く。

 

「ッ!へぇ…」

 

エボルのそのパワーに驚きつつもアヌビスはそれを利用しよう思い、弾かれた勢いを反動にして蹴りを放つ。

 

それに対し再びビートクローザーを振り下ろすが、その一撃は間一髪で避けられた。

 

攻撃が空振った反動を利用するかのように身を翻したアヌビスは距離を取ろうとしたために、追撃を避けるためその場を高速で離脱し、遠距離へとその姿を消す。そして次の攻撃が来る前に無数の黒いエネルギー弾をエボルに向けて放つ。

 

「!!」

 

それに対して咄嗟に体勢を整えたエボルはその攻撃をビートクローザーで切り払っていく。その間にエボルは頭部のデータ収集装置『EVO-Dシグナル』で戦闘データを集約し、自身とアヌビスの能力差を分析する。

 

(…おそらく、アイツはまだ本気を出しちゃいない)

 

エボルはアヌビスのエネルギー弾をビートクローザーで弾きながら、分析結果からそう推測する。

 

『スペシャルチューン!』

 

エボルはビートクローザーの柄の部分に『ロックフルボトル』を装填してグリップエンドを2回引く。

 

『ヒッパレー!ヒッパレー!』

 

音声が鳴り、その出力に応じてそのゲージが上下し刀身に蒼炎が纏う。

 

「フッ!!」

 

『ミリオンスラッシュ !』

 

エボルがビートクローザーを振り下ろすと刀身から放たれた蒼炎の火炎弾がアヌビスに迫る。

 

「うぉっ!?」

 

火炎弾を受け止めたアヌビスは、その勢いに押される形で後方に大きく吹っ飛ぶ。

 

そこにエボルは一度ビートクローザーを消し、ワープ移動で一気に距離を詰める。

 

間合いを詰めたエボルが拳を繰り出す。

 

「おっと!」

 

アヌビスはエボルの拳を受け止める。

 

「っ!!」

 

しかしその拳の重さから衝撃を完全には殺しきれない。アヌビスは多少後退し、そこにさらにエボルが追撃をかける。

 

「フンッ!」

 

「ハァ!!」

 

アヌビスもそれに負けじと反撃する。エボルは攻撃を防ぎ、または躱し、拳を撃ちこんでいく。両者の攻撃は凄まじいスピードでぶつけ合っていく。その度に衝撃音と火花が撒き散る。

 

(コイツ…攻撃の威力がどんどん上がってきてやがる)

 

アヌビスは気づく。エボルのパワーとスピード、そして攻撃の威力が上昇し続けていることに。

 

ドラゴンフォームは格闘戦に特化したものである。

 

額の『EVOフレイムエヴォリューガー』が惣真(エボルト)の精神や肉体などのコンディションに合わせて各機能を最適化し、より高い能力を引き出せるようサポート肩部の『EVOドラゴンショルダー』が腕部の動作を最適化し攻撃の速度と威力を引き上げる。格闘センスやエボルの基本性能の向上などといった強化が見られる。

 

それを抜きにしても元々エボルのスーツ内部は未知の物質に満たされており、変身者である惣真(エボルト)の肉体に影響を与え、身体能力や運動速度を大幅に引き上げている。

 

エボルはドライバーのハンドルを回す。ベートーベン、交響曲第9番の不穏なアレンジが鳴り響く。

 

「ハァァァァ…」

 

拳を構えたエボルの腕に蒼い炎が燃え上がる。

 

「ッ!?」

 

その蒼炎の業火に気圧され、防御を取ろうとしたアヌビスだが…。

 

Ready go!

 

それよりも先にエボルが一歩踏み込み。

 

エボルテックフィニッシュ!Cia~o!

 

その蒼炎を纏いし拳をアヌビスに叩き込んだ。

 

「がぁあああああっっっ!?」

 

強烈な一撃を食らったアヌビスは、地面を削りながら吹き飛んでいった。地面にバウンドしながら何度も地面を跳ねるも勢いが段々と削れたところで身体を回転させて地を踏みしめアヌビスは何とか着地する。

 

「ガッ…グ…、ゴハァッ…ク、ハハハ、今のは効いたぜ」

 

エボルの対象の強度を無視した一撃を受けたにもかかわらずアヌビスは、ドロッとした血塊を吐きつつも、笑みを浮かべ立ち上がる。

 

「まさかここまでとはな…正直予想外だったぜ」

 

アヌビスは血反吐に濡れた口元を手で拭うと、まだ闘志の消えない、むしろ歓喜に満ちた獰猛な瞳でエボルを睨む。

 

「しっかし…金ピカ、お前は一体なんなんだ?」

 

「…?」

 

質問の意図が分からないといった様子でエボルはアヌビスの問いに対して怪訝そうに首を傾げる。

 

「お前の噂が出始めたのは、ちょうど地球が異宙に転移した頃だ。それ以前にお前みたいに目立つ奴は異宙にいなかったと俺は記憶してる。かといってこんな発展途上な星でお前みたいなのが生まれるとは思えない。もう一度聞くぞ、金ピカ、お前は一体なんなんだ?」

 

「……」

 

「ま、そんなことはどうでもいいんだけどな。ただ、一つ気に入らないことがあんだよ」

 

アヌビスが入らないこと。それは、噂でのエボル…惣真(エボルト)の行動の数々だった。

 

「地球が異宙に転移したばかりの頃、この星が異宙の生物によって大混乱に陥いる中、お前はあちこちで混乱を収めていた。ある時は地球人と異宙人の戦争に介入して軍勢には攻撃せず双方の兵器を破壊して無力化し、地球人と異宙人の戦意を喪失させ、何年続くか分からなかった戦争をわずか数年で終わらせた」

 

アヌビスはどこか憎々しげな様子でさらに続ける。

 

「お前は俺らと同じ圧倒的な力を持つ強者側でありながら、地球人に肩入れ…いや違うな、人間や人間ほどの力しかない異宙の住民…弱者に肩入れしている。なぜだ?俺はそれが納得できない」

 

「……」

 

エボルは何も言わない。ただ黙ってアヌビスの話を聞くだけだ。

 

「お前の噂は異宙全体にまで伝わっているが、やりようによってはその力をもっと大きく誇示できたはずだ。それだけの力がありながらやってることはシラけるようなことばかり。強者が弱者に肩入れするなんて俺からすればふざけた奴にしか見えない」

 

アヌビスはエボルに視線を向ける。

 

「戦ってみてさらに気に入らなくなった。変身してねー俺をここまで追い込めるだけの力があるくせに、中途半端なことしかしやがらねぇお前にな」

 

アヌビスはその視線を揺るがすことなく、エボルを向け続けている。その目にどのような感情を秘めてるのかは伺えない。

 

「なぁ金ピカ、俺と一緒に来ないか?矮小な雑魚共なんかほっといて、お前はもっと有効的に力を振るうべきだ」

 

そう言ってエボルに右手を差し出すアヌビス。持ちかけられた誘いに対する答えは…。

 

「断る」

 

「…へぇー、理由は?」

 

「この俺が最も好きな事のひとつは自分で強いと思ってるやつに『NO』と断ってやる事ダア…というのは冗談で理由はちゃんとある。俺が今までやってきたことは別に弱者を助けるためでも、ましてや力を示したかったわけじゃない。俺にとって都合の悪いものを潰してただけだ」

 

「都合の悪い?」

 

「そ、例えば地球が異宙に転移した日、あの日俺が戦っていた理由は──────────────────世界中のコーヒー豆栽培地とウチの店の数少ない常連客を守るためだ」

 

「…………………………は?」

 

アヌビスは目をまん丸に見開いて固まった。エボルが発した言葉の意味を理解できなかったために。

 

「ああ、俺ね人間のふりして喫茶店開いてんだけどさ、ウチ結構マイナーな店だからさ、店開いたばっかの頃は滅多に客来なくって常連になってくれるお客さんはマジでありがたかったんよ。そんな貴重な常連客が殺されたりなんかしたらたまったもんじゃないし、それにウチの店はコーヒーが売りだからさ、コーヒー豆の栽培地が被害にあったらコーヒー豆の供給が滞るかもしれないし」

 

「……」

 

「戦争に介入したのだって、それこそコーヒー豆の為さ。それに戦争中じゃ客なんてこねーしな」

 

「……」

 

「あ、そういえばさ、地球の一部の土壌が変わったせいで一時期食糧飢饉があったじゃん?いやーマジであの時は大変だったわー」

 

「……」

 

「前に異宙産のコーヒー豆を試したんだけどさ地球産とは全然風味が違くてさ、いやアレはアレで味わいが深いんだけど…」

 

「プッ…ククク」

 

「うん?」

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

途中から話がエボルの愚痴や世間話になりかけていた中、突如無言だったアヌビスが腹を抱えて笑い出した。

 

「ハハハハ…つまり何だ?今までのことは弱者を守る為じゃなく自分の店の為にやっていたと?」

 

「ああ、そうだ」

 

笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を人差し指で拭いながら聞くアヌビスにエボルは肯定する。

 

「なるほどな、他者の為じゃなく自分の為…力の使い道を間違えてる愚者かと思いきやある意味俺らと同じか」

 

 

アヌビスはスッと目を閉じ…───────────────。

 

 

ますます気に入らねぇな

 

 

能面のような表情になったかと思えばその全身から周囲一帯を覆いつくすほどのオーラを発した。

 

アヌビスの静かな怒りに呼応するかのように、黒い瘴気がアヌビスを中心に巻き起こり、アヌビスのその身を包んでいく。

 

瘴気が晴れ、露となったアヌビスの姿は一変していた。

 

小学生ほどしかなかった身長は二メートル近く、全身は闇を表すような黒い毛並みに覆われ、それとは対照的に背からは太陽の光線を描いたような光背が輝いている。そして頭部ジャッカル、またはアフリカンゴールデンウルフのようなものとなっている。

 

それはまさにエジプト神話の伝承通り。冥府の守護神『アヌビス』の姿であった。

 

戯れ(遊び)は終わりだ。さっきのようにはいかねぇ。全力で完膚なきまでに叩きのめしてやるよ、金ピカ」

 

有無を言わさぬ凄まじい威圧感をエボルに放つアヌビス。

 

「…いいけどよ、そろそろその金ピカってやめてくれるか?俺は金ピカなんて名前じゃない」

 

「んじゃ金メッキで」

 

「誰が鎧武のラスボス(笑)だ!!」

 

「何だそりゃ?まぁいい、冥途の土産に名前ぐらい聞いといてやるさ」

 

「…エボル、エボルトだ。『進化』という意味と、『LOVE』とは相反する存在という意味の『EVOL』だ。以後、お見知り置きを」

 

「ハハハハハハハハハハハハ!!そうか!!そんじゃ、第二ラウンドといこーぜ!!エボルトォッ!!」

 

冥府の守護神と星狩り。両者同時に地を蹴る。

 

拳と拳がぶつかり合い、轟音が響き渡る。周囲の空気が激しく振動し、土煙が立ち上る。

 

激しい一騎打ちが始まる。エボルの一撃がアヌビスに炸裂し、爆発的なエネルギーが空を裂く。

 

互いが互いの急所を捉え、激しい攻防が繰り広げられる。

 

「ハァアア!!」

 

アヌビスの拳がエボルに突き刺さり、その体を大きく吹き飛ばす。

 

「ぐぉっ!!」

 

エボルは数メートル吹き飛び、地面を削りながら何とか体勢を立て直す。

 

「やっぱ硬ぇな…その鎧どんな材質でできてんだ?この俺がヒビすら入れられねぇとはよ」

 

アヌビスは、エボル、仮面ライダーエボルの傷一つ付いてない装甲を見ながら訝しげに呟く。アヌビスの攻撃を何度受けても壊れる様子はなかった。

 

しかしそれは当然のことだろう。

 

仮面ライダーエボルの装甲はエボルボトルに含まれる未知の物質を圧縮・加工したもので、少なくとも地球上のどの物質よりも優れた耐久性を備えており、ボディースーツに関してはいかなる天体でも活動できるよう、全身を覆う遮断フィールドを展開し、過酷な環境や敵の攻撃から変身者を保護する機能を備えている。

 

とはいえ、アヌビスの力は凄まじく、装甲に傷がつかなくとも惣真(エボルト)の身体に着実にダメージが蓄積していた。

 

「………ハハ」

 

エボルは、惣真(エボルト)は自嘲気味にアヌビスには聞こえない程度に小さく笑った。

 

(最っ悪だ……面倒だと思いつつも……俺はこの戦いを楽しんでいる)

 

星狩りとしての本能だろうか。それとも別の要因によるものか。惣真(エボルト)は、この戦いに喜びと一種の興奮を感じていた。

 

アヌビスに戦いを挑まれ、それを承諾したのも、なんだかんだ理由を付けつつこの戦いを心のどこかで望んでいたのかもしれない。

 

「ハハ…ブラッド族としての性か…、まったく嫌になるな」

 

エボルは仮面の下で笑みを浮かべながら呟くとドライバーからコブラエボルボトルを抜き、赤いボトルを装填する。

 

ラビット!ライダーシステム!レボリューション!』

 

エボルはハンドルレバーを勢いよく回し、前後に赤黒いオーラを纏った装甲を成形され、エボルはソレに挟まれる。

 

ラビットラビット!エボルラビット!』

 

『フッハッハッハッハッハッハッ!』

 

「エボル、フェーズ3……」

 

エボルはドラゴンフォームから兎を彷彿とさせる姿へと変化した。

 

複眼は兎の横顔を模したものに、肩装甲は『EVOラビットショルダー』へと変わり、コブラフォームとドラゴンフォームに比べて全体的にかなりスッキリとしたシンプルな印象。

 

これは仮面ライダーエボルの第3段階としての姿。    

 

 

仮面ライダーエボル ラビットフォーム

 

 

「ああ?蛇から龍に成ったかと思いきや今度は兎に退化か?俺を舐めてんのか」

 

「兎を侮るなよ?兎だって獣だ。獅子は兎を狩るにも全力を尽くすって言葉を知らねぇのか?」

 

「ほざけっ!!」

 

アヌビスは手に黒いエネルギー球を生み出し、それをエボルに向かって投擲する。

 

「フッ!!」

 

自身に高速で迫って来るエネルギー球をエボルは跳躍して躱す。そのまま通り過ぎたエネルギー球は大爆発を起こした。

 

「ハァァ!!」

 

エボルは超高速でアヌビスに向かい踵落としを繰り出す。

 

「グッ!?」

 

エボルの踵落としがアヌビスに炸裂する。エボルはそのまま連続キックを繰り出し、アヌビスに連続でダメージを与えていく。

 

(っ、さっきよりも速い!!)

 

ラビットフォームは、攻撃力はコブラやドラゴンよりも下がってしまうが他のフォームに比べて機動力が高めなスペックとなっている

 

肩部の『EVOラビットショルダー』に内蔵された加速ユニットが運動速度と反応速度を瞬間的に高め、まさに脱兎の如し駆け回るような高速移動を可能にする。

 

「くっ、そっ!!」

 

アヌビスは掌に闇を圧縮したようなエネルギー球体を生み出し、エボルに向かって投擲する。しかしそれは避けられて地面に着弾し大爆発を起こすと逆にその爆風に包まれる形になってしまう。

 

「ハハ!!」

 

エボルは高笑いしながら、爆風の中から現れアヌビスの鳩尾に蹴りを食らわす。

 

「ガハッッッ…!!」

 

アヌビスは吹っ飛ばされ、態勢を整える間もなく、すぐにエボルは追撃するべく跳躍して、強烈な連撃を浴びせる。

 

「ぐぅっっ!!…調子に乗るなっっ!!」

 

しかしただエボルの猛攻を喰らうだけのアヌビスではない。エボルの超高速に追いつくほど俊敏な動作でエボルを捉えると、今度はアヌビスが連撃を浴びせかける。

 

「グッ…!!」

 

一撃一撃がかなり重く、攻撃速度が増す。人間ならすでに肉片だけになると思われるほどの威力。

 

「テメェこそ…!!いい加減くたばりやがれぇ!!」

 

彼らは超音速の速さで距離を縮めながら互いに連打を浴びせかける。その一瞬、数百発の拳が空中を舞い、光の線として見える。瞬きさえも許さないその闘いは、一瞬の刹那に数十回もの攻撃が交錯する壮絶な戦いとなっていた。

 

一方の者が空に舞い上がり、もう一方も追随し、高速で衝突する。拳が交差し、衝撃波が空を裂き、稲妻のような閃光が爆発する。

 

衝突する拳から放たれるエネルギーは、爆風のように広がり、周囲の岩や木を粉砕する。彼らの戦いはまさに神話の激闘。世界そのものが揺れるかのような力が発生していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わわわっ…!!ちょ、これっマジで洒落にならないっすよ〜〜!!」

 

「っ…まさか、これほどとは…っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アヌビスとエボル。この時間を忘れさせるような悪鬼羅刹な闘いは、一進一退の攻防を繰り広げ、互いに一歩も譲らない。

 

しかしそんな闘いの中、エボルに異変が起こる。

 

ピシッ…

 

「っ!?」

 

今までアヌビスの攻撃に傷一つ付かなかったエボルの装甲に、罅が入る。

 

(う、嘘だろ…!?エボルには自己修復機能がっ…いやそれを抜きにしても大気圏突破にも耐え得る装甲だぞ!?)

 

それほどアヌビスの力が凄まじかったということだろうか。今までの攻撃で蓄積されたダメージが今表面上に表れたというのか。

 

エボルの心の中での予期せぬ事態への動揺とは裏腹に、更なる追撃を加えんと、再びアヌビスと距離を詰める。

 

「ハァァァァァッ!!」

 

「っ!?しま……」

 

動揺により生まれてしまった隙。反応が遅れるエボル。

 

アヌビスの拳がエボルの腰付近、ちょうどエボルドライバーに当たる。

 

「っ!!」

 

決してアヌビスは狙ったわけじゃない。しかしエボルにとっては致命的だった。エボルにとって、真の急所。

 

後方に吹っ飛ばされ何とか踏みとどまったエボルだが、アヌビスの攻撃をモロに喰らったエボルドライバーはバチバチと音を立てる。

 

(っ!まずいっ!!)

 

エボルドライバーの内部に貯蔵されたエネルギーが、ダメージによって漏れ出していた。このままダメージを受け続ければ、やがてドライバーは自壊してしまうだろう。

 

しかしそんなエボルにアヌビスの追撃が迫る。

 

「オォォォォォォォォォオオオオ!!」

 

「ガァアアアアアッッ!!?」

 

猛々しい咆哮と共に叩き込れた抉るようなその一撃は決定的なものとなった。火花を散らし、胴体装甲に走る亀裂はより一層広がり、やがて、仮面ライダーエボルの変身が解かれてしまった。

 

…その刹那、自身の身体から、ナニカが分離したことに、惣真は気が付かなかった。

 

「あ…?」

 

アヌビスの目の前にいたのは──────赤い蛇、コブラを彷彿とさせる怪人、『エボルト怪人態』。

 

人間態の姿を見られると色々と支障が出るため、惣真は変身が解かれる寸前に、人間態から本来の怪人態に戻ったのだ。

 

「なんだ、それがお前の正体か?どことなく蛇みたいなツラだが……待てよ…?赤い、蛇……」

 

怪人態のエボルトの容姿を好奇な目で見てたアヌビスだが、それはすぐに訝しげなものとなる。そして口を開いた。

 

「まさかお前……、“サマエル”か?」

 

「は?」

 

「前見た時は赤いドラゴンみてーな姿だったが……いや違がうか。“神の毒”が人間の飯屋を開いてるとかそれこそ意味わかんねぇし」

 

「おい、赤いドラゴンとか神の毒とかなんの話だ」

 

「気にすんな。ただの勘違いだ。…ところで」

 

アヌビスは視線を別方向へと向ける。

 

「──────さっきから俺達の戦いを覗き見してる奴らがいるよな?」

 

「あー………………キサマッ!!見ているなッッ! !」

 

一度言ってみたかった台詞を言いながら惣真(エボルト)もアヌビスと同じ方向に目を向ける。

 

暫く不気味な沈黙が場を支配した後、離れた木々や岩の物陰から無断観戦者たちが姿を現した。

 

 

 

「……」

 

「あ〜……、この状況…かなりヤバめっスね…」

 

現れたのは鈴の耳飾りを付けた赤髪の青年、白髪で丸眼鏡の白衣を着た長身の男。

 

そしてその背後には武装した兵士たちが数人控えていた。

 

「おいおい何だよ?俺のファンか?サインがほしいんなら整理券を買え。5万円となります。握手やツーショットなどは…」

 

「ファンではない」

 

惣真(エボルト)の冗談混じりの言葉をバッサリと切り捨てる赤髪の青年の表情は強張っており額から一筋の汗を流していた。白髪の男も引き笑いに近い表情を浮かべ、兵士たちに至っては顔面を蒼白させ体は小刻みに震えており、一刻も早くこの場から立ち去りたいという心情に駆られてるだろう。

 

しかしそれは無理もないだろう。あのアヌビスとエボルの闘いを特等席で見ていた彼ら。全てが規格外。それはまさに天災の如きものであろう。もはや人智を超越したその戦いに畏怖以外の感情を抱けるはずがない。

 

赤髪の青年らは不用意に動けず、額に冷や汗を滲ませながらこの状況をどう切り抜けるか一触即発の重い空気が流れる中思案する。

 

そんな雰囲気の中、アヌビスが嘆息交じりに口にした。

 

「はぁーーー……萎えた」

 

「は?」

 

頭を掻きながら変身を解き少年の姿に戻ったアヌビス。

 

「萎えたっつってんだよ。中途半端だが今回はテメェの鎧の下の面拝めただけでも良しとしとく。だからもう帰るわ」

 

「おいおいおい、そっちから喧嘩振っといて身勝手すぎねぇか」

 

「じゃあな。勝負は預けたぜエボルト」

 

「あっおいっ!!」

 

苦言を呈す惣真(エボルト)に構わず、アヌビスは空へ飛び去って行った。嵐のように現れて嵐のように去って行ったあまりに恣意的、自由奔放なアヌビスに惣真(エボルト)は呆れ果て赤黒い凹凸のない頭を掻きながら嘆息をつく。

 

「……あぁーーー、俺も帰るか…」

 

脱力した惣真(エボルト)はワープ能力でその場を後にした。

 

 

 

………………………。

 

アヌビスが消え、コブラの怪人(惣真(エボルト))も消え、その場に残されたのは赤髪の青年ら、そして静寂。

 

「……虎口を脱したか」

 

赤髪の青年の嘆息混じりの呟きを皮切りに後ろの武装兵たちは脱力したように地に膝を着き、体の至る所から汗を吹き出し、顔面蒼白のまま肩で息をしながら助かったと安堵の声を漏らす。

 

「いやー、やばかったっすね〜〜〜、アザミさん」

 

白衣の男…『レイナ・ガーベラ』はさっきまで危機的状況だったのにも関わらずカラカラと笑いながら…しかしどこか疲労感を持って赤髪の青年…『アザミ』に話しかける。

 

「そうだな、一時はどうなることかと肝を冷やしたが。まさか黄金の戦士が冥府の守護神と互角に渡り合うとはな」

 

「あんな戦い見せられた後じゃ勝てる気しないっすよ。絶体絶命かと思ったら、なんかよくわからない感じで二体ともどっか行ってくれてマジ助かったっすよ〜」

 

ここで言っておくと、最初エボルが戦っていた異宙の生物は、彼らが所属する組織『トッププレデター』が人工的に作ったキメラである。

 

トッププレデターはドラゴンなどの異宙の生物を圧倒するエボルの力に興味を示していた。

 

彼らの当初の計画は、この山にキメラを放ちエボルを誘き出し、エボルのDNA、そして腰の機械『エボルドライバー』を頂戴する作戦だった。ちなみに山の近くには小さな町があり、万が一キメラが町まで降りた場合は被害が出る前に回収する予定だった。仮に犠牲が出たとしてもで彼らにとっては大した問題ではない。

 

計画通りエボルが現れたところまでは良かった。しかしここで誤算、暗礁に乗り上げてしまったというべきか。冥府の守護神、アヌビスの出現である。

 

冥府の守護神が現れたことは彼らにとって想定外の事態であった。アヌビスとエボルの戦闘が勃発し、彼らの計画はご破算となった。無論、エボルがアヌビスと互角の戦闘力を持っていた時点でいずれにせよ彼らの計画は破綻していただろうが。

 

「それにしてもアザミさん!あの正体不明の異宙人の姿見ました!?全く見たことない異宙人でしたよね!黄金の鎧姿よりも蛇みたいな印象だったす!あんな頭でっかちな図体でどうやってあの鎧に収まってるんすかね?やっぱりあの腰のデバイスに秘密が…あ〜っ研究したい!!」

 

「……ハァ…」

 

まるで動物園で見た珍しい生き物を思い出しはしゃぎながら親に語る子供のように興奮を抑えきれない様子のレイナを横目に、アザミは嘆息をつく。

 

「とにかく本部へ報告だ。計画は失敗…」

 

「アザミ様、レイナ様」

 

すると落ち着きを取り戻した兵士の一人が、アザミとレイナの元へ歩み寄ってきた。

 

「どうした?」

 

「あそこに妙な物体が…」

 

何かを見つけた様子の兵士がある方向を指差し報告する。アザミとレイナは互いに顔を見合わした後、その場所まで足を運んだ。

 

「…どうやら、収穫はあったみたいっすね」

 

そこには赤黒いアメーバー状の奇妙な物体が蠢いていた。

 

「なんだこれは?」

 

「正体不明の異宙人、あいつの遺伝子的な奴っすよ」

 

「なんだと?」

 

「おそらくアヌビスとの戦闘の際に削がれたんでしょうが、とにかくこいつは興味深いサンプルっす!DNA回収というタスクはクリアしましたし、今回の作戦決して無駄じゃなかったってことっすよ!持って帰って早速研究っす!」

 

レイナはそう言いながらカプセルのような入れ物にいまだ蠢く物体を入れ回収した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────それが、破滅の胚胎となるとも知らずに……

 





戦闘描写が難しい
これでいいのかがわからん

追記

2023年10月2日
内容を大幅に改稿しました。


惣真(エボルト)「ぅゎ シ ョ タ っょぃ」


改めて戦闘描写ムズイ


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自称頂点捕食者の策略、星狩りの失態

とある会社、『某企画』

ペンギン「うおおおお!!仕事が終わらない!」

パンダ「うおおおお!!リセマラが終わらない!」

ペンギン「お前の存在を終わらせたい…うっ…ね、ねむい…エナジードリンクを…ごくごく…ゔっ!?」

パンダ「ペンギン?」

ペンギン(き…切れた…俺の体の中で何かが切れた…)

ペンギン「…ガクッ」<GAME OVER>

パンダ「ぺ、ペンギンの霊圧が…消えた?」

そこに突如として現れる土管

 \テッテレテッテッテー/

ペンギン「ふぅ…」

パンダ「え」

ペンギン「まさか蓄積した過労とエナジードリンクの飲み過ぎで死ぬとはな…まぁいい、一度死んでスッキリしたし仕事を再開だ」

パンダ「待って待って待って待って!目の前で全く理解できないことが起きたんだけど!」

ペンギン「俺は仕事中にソシャゲをするお前が全く理解できないんだが?」

パンダ「君いま消えて、てか死んだと思ったら某配管工みたいに土管から飛び出てきたじゃん!」

ペンギン「何を言ってるんだ?社畜なら残機ぐらい持ってるだろ」

パンダ「え?ん?ん?え?ん?ん?ん?ん?」

ペンギン「ちなみに俺のライフは1つ減って、残り46個だ」

パンダ「何を言ってるんだあああああああああああああ!!??」





みんなのアイドル〜!惣真エボルトだよっ♡…なにやってんだろ俺。

 

アヌビスとの戦いから早1ヶ月ほど過ぎた。

 

俺は反省した。ブラッド族としての力やポテンシャル、そして仮面ライダーエボルのスペックを過信しすぎていた。

 

どこかで慢心してた結果あのケモ耳ショタに変身解除まで追い込まれた。いやマジパネェってあのショタガキ。規格外の強さだわ。

 

大気圏突入にも耐えれる仮面ライダーエボルの装甲にヒビ入れるってほどだもん。

 

あの時は向こうがなんやかんや引いてくれたから良かったものの、あのまま戦っていたらどうなってたかわからない。最悪エボルドライバーを破壊されてたかもしれない。

 

でもそうだよな。ビルド本編でエボルトはベルナージュとの死闘でドライバーを破壊されて肉体失ってるし、慢心しすぎた結果仮面ライダーに敗北している。

 

異宙の住人の中にはブラッド族である俺よりも強い奴がいる。

 

例えば地球が異宙に転生してから太陽の変わりを担う神鳥『ホルス』。

 

実際に戦ったことはないが俺にはわかる。アレは絶対ヤバイ。

 

あと気のせいだと思うけど俺あいつに監視されてる気がするんだよ………気のせいだと思うけど!

 

まぁ、なんにせよ俺もまだまだ未熟だったわけだし、鍛えなきゃね。

 

響鬼さんも言ってたじゃないか『心だけは強く鍛えておかないと自分に負けちゃうじゃない』と。

 

そういうわけで俺は今………

 

 

 

 

映画鑑賞してます。

 

いやね?万丈龍我とは違って純粋なブラッド族の俺が普通に筋トレしたりプロテイン摂取したところで効果はないし、それならアクション映画とかで武術を学んだ方がためになると思ったんですよ。

 

ほらどっかのOTONAも言ってたじゃない、『男の鍛錬は食事と映画鑑賞と睡眠だけで十分』と。

 

それから何本か映画を観終わった後………。

 

 

俺はある場所でエボルドライバーの整備をしていた。まるで小さめの研究施設この場所、一体どこなのかというと……我が喫茶店、nascitaの地下である。

 

やっぱnascitaといったら秘密基地もなきゃ!って思ってね。

 

ビルド本編と同じようにカウンターの側に置いてある冷蔵庫を通して秘密基地に行ける様になっている。

 

ただ本家の秘密基地とは少し違う点があり、Wの秘密ガレージ、フォーゼのラビットハッチやドライブのドライブピットも参考にしてあるため、基地内はそれなりに広くなっている。

 

男のロマン。秘密の地下基地。壁一つ一つ、装置一つ一つ、全て俺がブラッド族としてのノウハウと知識を駆使した創造の証である。

 

ここではエボルドライバーの整備の他にも、パンドラボックスやボトルの保管にも使っている。

 

現在パンドラボックスから6枚のパンドラパネルを外しており、すべてのパネルにはそれぞれ10本のフルボトルが装填されている。

 

この場所は地下にあるため、誰も気づかない。俺以外にこの秘密基地を知ってる奴はいないから安心してパンドラボックスを置いて外に出れる。安全性はもちろんの事、そもそも冷蔵庫が地下基地への入り口だなんて誰も思わないだろう。

 

エボルドライバーの手入れをある程度終えたところで俺は大きく息を吐いた。

 

「さて、明日朝早いしシャワー浴びたら寝るか」

 

まぁ、ブラッド族だから汗かかないからシャワーとか睡眠は必要ないけどさ。

 

そんなことを考え、気の緩んでいた俺の安らぎの時間は一瞬で過ぎ去る。

 

「ん…?」

 

ブラッド族であるが故の人間より遥かに優れている鋭敏な感覚が何かを感じ取る。

 

「これは…また異宙の生物か?」

 

ここから数キロメートル先の地域で知性のないタイプの異宙人が暴れてるのが

分かった。

 

「はぁ〜、しょうがない、行くか」

 

俺はエボルドライバーとフルボトルを何本か所持し、ワープ能力で現場まで飛んだ。

 

 

 

 

 

 

「グオオオオオッ!」

 

惣真が現場にたどり着くとそこには頭に悪魔のような角を生やし体長3メートル程のライオンのような胴体に、恐竜のような尻尾、背に蜻蛉のような羽が生えたような猛獣が暴れ回り混乱を巻き起こしていた。

 

「…ん〜〜?あれは、マンティコア、か?いやでもなんか違うような…このごちゃ混ぜにした感じ…既視感があるな」

 

「グウオオオッ!!」

 

猛獣…便宜上マンティコアモドキと呼んでおこう。それが惣真に向かって飛びかかる。

 

「フンッ!」

 

「グウウウッッッ」

 

咄嵯の判断でマンティコアモドキの顎を思いっきり殴り飛ばす。

 

エボルはドライバーからコブラエボルボトルを抜き、赤いボトルを装填する。

 

ラビット!ライダーシステム!レボリューション!』

 

「変身」

 

エボルはハンドルレバーを勢いよく回し、前後に赤黒いオーラを纏った装甲を成形され、エボルはソレに挟まれる。

 

ラビットラビット!エボルラビット!』

 

『フッハッハッハッハッハッハッ!』

 

「エボル、フェーズ3……っと」

 

エボルはコブラフォームから兎を彷彿とさせる姿、仮面ライダーエボル(ラビットフォーム)へと変化した。

 

さらにエボルは紫色のボトル…『忍者フルボトル』を取り出し、エボルドライバーに装填する。

 

忍者!ライダーシステム!クリエーション!』

 

レバーを回し、エボルの手元に刀型武器が形成される。

 

剣先は万年筆のような形となっており、4コマ漫画が描かれた刀身をもつ独特の武器、『4コマ忍法刀』。

 

エボルは4コマ忍法刀のトリガーを引く。

 

『分身の術!』

 

その音声が鳴ると『BOOM!』とアメコミのような表現と共に8人に分身するエボル。それは幻影というわけではなく紛れもない実体である。

 

「「「「「「「「フッ!」」」」」」」」

 

8人のエボルはラビットフォームの機動力と4コマ忍法刀の機能を生かし残像を残しながら素早い動きでマンティコアモドキにパンチ、キック、4コマ忍法刀で斬りかかるなどの攻撃を繰り出す。

 

「グゥッ…ガアァッ……」

 

攻撃を受ける度にマンティコアモドキが怯み、さらに飛び交う8人のエボルの素早い動きに目をグルグルと回す。

 

「よしっ、このままとどめだ!」

「了解!」

「おー!」

「わかった」

「振り切るぜ!」

「OK!Start Your Engine!」

「ちくわ大明神」

「誰だ今の」

 

8人のエボルはそれぞれ4コマ忍法刀のトリガーを引く。

 

『火遁の術!』

『風遁の術!』

 

8人の内4人のエボルが炎を纏い、残りの4人が4コマ忍法刀に竜巻を纏わせる。

 

『火炎斬り!』

『竜巻斬り!』

 

「「「「「「「「ハアッ!」」」」」」」」

 

それはまるで悪天候が迫るかのようにマンティコアモドキに向かって火炎と竜巻を纏った斬撃を繰り出される。

 

 「グオオオオオオオオ………」

 

その攻撃を受けたマンティコアモドキは猛々しい咆哮と共に炎を伴った旋風により塵と化した。火花が舞い散り、残されたのは焼けただれた地面と煙だけ。そこにマンティコアモドキの姿は無い。

 

 

 

 

───その様子を陰から見ていた者がいた。

 

「クソッ…!!」

 

建物と建物の間、人目のつかない所で一部始終を見ていた男は苦虫を噛み締めた様な顔で悪態をつき、懐から通信機を取り出しどこかに連絡を取り始めた。

 

「キメラがやられた!!早急に“星狩り”の巣から目的の物を回収しろっ!!」

 

男は通信機に向かって焦燥感から声を荒げる。

 

「星狩りはワープ能力を持っている!!すぐそっちに戻ってくる!!時間がな───」

 

「おい」

 

「…っ!!!?!」

 

背筋に悪寒が走るのを感じる。突如聞こえた、自身にかけられたであろう声に男は息を呑む。

 

振り向く。そこに佇むは、赤と金に彩られた戦士、それとも異形というべきか。

 

「あのマンティコアモドキ、いや、今の話から察するに、キメラってのか」

 

エボルの兎の横顔を模した赤い複眼が男を貫く。

 

「アレを放ったのは、お前か?」

 

「ヒィィィィィィィィッ!!!!」

 

男は情けない声を上げ、腰を抜かして尻もちをつく。男にとって絶望的な状況。

 

「おい、質問に答えろよ。アレを放ったのはお前かって聞いてんだよ。…待てよ、もしかして先月のヤツも…今連絡してたのは誰だ? 早く言え!」

 

「ヒ、あ、あ、くっ来るな化け物ぉっっ!!!」

 

男はエボルの問いに応えず、ただただ取り乱したように喚くばかり。その顔は涙と鼻水と涎で見るに堪えなかった。

 

「ち、地球はっ…お、お、おおお前の好きにはしゃせ、させないっっ!!!じ、人類の未来はっ、我々が…!!」

 

「は?何言ってんだおま──」

 

「…っ」

 

「あっおい!?」

 

エボルに対する恐怖からか、それともエボルが無意識に僅かに出してた殺気に当てられたのか。男は魂が抜けるように崩れ失神し、気を失ってしまった。白目を剥き、口からはまるで蟹のように泡を吐き、ズボンの股部分を中心に大きな染みを作っている。

 

「…だアアアアアアアっっクソっ!!いい加減にしろよ!!」

 

エボルは失神した男に苛立ち地団駄を踏む。

 

「nascitaに連れ帰って、顔に熱々のコーヒーぶっかけてやろうか…いやそれは勿体無い。消防車フルボトルを使って高圧放水で叩き起こしてやろうか…ローズフルボトル使ってトゲトゲ鞭でしばき起こすか…」

 

憤るエボル。しかしすぐにその感情は萎む。

 

男が通信機で話していた内容を思い出したのだ。

 

 

―早急に星狩りの巣から目的の物を回収しろっ!!―

 

 

(…()()()って、俺のこと、か?何故その単語を…いや、それより……『()』?…巣ってなんのことだ…?)

 

 

―すぐそっちに戻ってくる!!時間がな…―

 

 

「!!」

 

エボルは一つの可能性に辿り着く。

 

 

「いや、まさか、だが…そんなはず…」

 

頭の中で要領を得ない何かが巡る。虫の知らせ、というやつだろうか。嫌な予感を感じたエボルは、失神した男をその場に放置し、ワープ能力でnascitaまで移動する。

 

もし仮に、あのマンティコアモドキ…キメラを放ったのがあの男で、その目的がエボルをnascitaから遠ざけること、そして、時間を稼ぐためだったのだとしたら。

 

どうか杞憂であって欲しいと思う。そうして、nascitaに着く。…そこに、nascitaがあるはずだった。

 

 

 

「──────…は?」

 

 

メラメラと、エボルの赤い複眼に反射するオレンジ色のゆらめく焔。

 

エボルは、焔に包まれるソレがnascitaだとは思わなかった。否、思いたくない、信じたくなかったのだ。エボルの…惣真の頭が目の前で起こっている現実への理解を拒否していた。

 

数刻にも感じる数秒ほど、茫然自失と虚空を見つめていたエボルだったが、パチパチと燃焼する音、崩落音により、段々と現実へと引き戻されていく。

 

そしてその現実を理解した途端、エボルの胸中は絶望に満たされていく。

 

その心境は、某国民的アニメに登場するキャラクターの某タマネギ頭の少年が、自身の家が火事で燃えていく様を前にしている時のものに等しいだろう。

 

「う、嘘だろ……?」

 

嗚呼、神よ…。どうか嘘だと言って欲しい。きっとこれは悪い夢なのだと一縷の望みをかける。ところがどっこい。ところがぎっちょん。夢じゃありません…! 現実です……! これが現実…!!と少し悪ふざけした所でそんなものは現実逃避でしかない。より絶望感に、心が苛まれていくだけである。

 

「お、俺の店……俺のnascitaがああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーー!!!!!」

 

エボル…礎乃惣真は、燃え盛る愛しの喫茶店、nascitaを前に叫ぶ。それはまるで某SFロボットアニメにて、量産機に喰われる某2号機の様を見て叫ぶ主人公の如く。

 

その咆哮のような叫びが辺りに轟く。

 

その為か。

 

 

「っ!!まずい!もう戻ってきたぞ!!」

 

 

巣の主である蛇の帰還に気付いた不届き者が声を上げる。エボルはそれを聞き逃さなかった。声の聞こえた方向へ目を向けると異様な集団を捉える。よく見れば集団の内数人が何かを持って、運んでる。それはパンドラボックスとボトルが装填されたパンドラパネルだった。

 

「急げ!なんとしてもパンドラボックスを本部まで持ち帰るんだ!」

 

男たちは急いでその場から逃げようとする。

 

判断材料はそれで十分。黒確定。

 

「現行はぁぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!」

 

エボルは即座にラビットフォームの機動力で一気に距離を詰める。

 

「うわあああっ!」

 

接近してきたエボルに驚き尻餅をつく一人の男。その男は緑色のパンドラパネルを持っていた。するとその男を庇うように、数人の武装した兵士が前に出た。

 

「う、撃てぇ!!」

 

兵士たちが一斉に機関銃を構える。そして一斉射撃が始まった。

 

「んな鉛玉なんぞ効かねぇ…よ!」

 

銃弾に臆することなくエボルは手に大型武器を召喚した。

 

エボルはその大型武器…『フルボトルバスター』を砲撃用のバスターキャノンモードに変形させた。

 

スパイダー!

 

そして砲身の後端にあるスロット『クアッドフルボトルシリンダー』に紫色のボトル…『スパイダーフルボトル』を装填した。

 

フルボトルバスターに紫色のエネルギーが溜まっていき…

 

「大人しくしてな!」

 

『フルボトルブレイク』

 

「「「ぐわああ!?」」」

 

エボルは兵士たちに向けて紫のエネルギー弾を撃ち、命中し吹き飛ばされた兵士たちは蜘蛛の巣のようなもので拘束されていた。

 

「なっなんだこれは!?」

 

「 蜘蛛の糸!?」

 

兵士たちは必死にもがくが、その粘着力は強く離れない。

 

「グボアッ!?」

 

エボルは尻餅をついていた男を蹴り飛ばし持っていたパンドラパネルを奪い取る。

 

「さあ、残りのパネルとパンドラボックスも返してもらうぞ。それともう一つ、お前ら…nascitaになした?じゃなくてnascitaに何した!?」

 

「ひいいっ!!!」

 

気が動転しているためかうまく呂律が回らない口調で問いながらエボルは怯えてる男たちに近づく。その様は先ほどの失神失禁男さながらだ。

 

その時…。

 

 

「っ!」

 

突如、赤い刃がエボルに襲いかかる。

 

「…お前は」

 

「久しぶりだな『星狩り』。それとも、お前からすれば俺みたいな脆弱たる存在は記憶にも残らないか?」

 

エボルに赤い刃を飛ばした張本人である耳に鈴をつけた赤い髪の男…『アザミ』は棘のある言葉を吐く。

 

「…いや、覚えてるぜ。お前、先月俺とアヌビスの闘いを見てた奴だよな?あの時は対して気にも留めなかったが、今回はそうはいけねぇな。何者だ?」

 

エボルは捲し立てるように言う。店が燃えて心が荒れてるのか自然と、否、必然と語気が強まっていた。

 

「我々はトッププレデター。人類の救済者だ」

 

「トップ、プレデター…?」

 

トッププレデター。頂点捕食者という意味を持つその言葉をエボルは仮面の下で訝しげな表情を浮かべながら反芻する。

 

「地球が異宙に転生をして人類は生態系の頂点ではなくなった。人類が再び地球の覇権を取り戻すことを目的として結成された組織。それが我々だ」

 

「ほーん…そいつはまた大層な、仰々しい組織だな。つまりアレだよな、お前らは人類を守る正義の味方ってことだよな?」

 

「概ねそのような解釈で合っている」

 

「へー、なら変だな。さっきのマンティコアモドキ、そして先月のも、たしかキメラだったか?アレを放ったのはお前らだよな?」

 

「そうだ。アレらのキメラはトッププレデターが作ったものだ。先月あの山にお前を誘き出すためキメラ放ったのは、お前のDNA、そしてその腰の機械をいただくことが目的だった。」

 

「…なんだと?」

 

腰の機械。エボルドライバーのことだろう。エボルは自身の腰のエボルドライバーを指先で撫でるように触れる。

 

「冥府の守護神の出現により計画は狂ったがな」

 

「正気か?あの山の近くには小さな町があったんだぞ?もし俺が現れないであのキメラが町まで降りてたらどうするつもりだったんだ?さっきのキメラに至っては街で暴れてたぞ。人類を守るとか言いておきながら本末転倒じゃないのか?」

 

「それらは我々が被害が出る前に回収する予定だった。まあ仮に犠牲が出たところで人類発展のためには微々たるもの、些末な問題だ」

 

アザミは微塵も悪びれる様子がなく毅然とした態度でただ酷薄に淡々と話す。詰まるところ、トッププレデターは正義のためならどこまでも残酷になれる組織ということだ。エボルは質問を続ける。

 

「まだ訊きたいことがある。どうやって俺がnascitaのマスターだと知った?それだけじゃない。なぜ秘密基地のことを知ってる?」

 

エボルトの正体が喫茶店nascitaのマスター、礎乃惣真という情報を特定できたのはまだいい。だが秘密基地のことを知っていたのは腑に落ちない。惣真以外に秘密基地の事を知ってる者はいない。だからこそこれまで安心してパンドラボックスを置いて外出できていたのだ。

 

「冷蔵庫が秘密基地への入り口なんて、普通わかるわけないよな?」

 

「確かにな、半信半疑だったが、まさか本当に冷蔵庫が入口になってたとはな。“奴”の言ってた通りか…」

 

「奴だと?奴って、誰だ?」

 

アザミが呟いた『奴』という言葉をエボルは聞き逃さなかった。 『奴』とはどういうことだろうか。そいつが秘密基地の事を彼らに教えたのか。だが前述した通り、惣真以外に秘密基地の事を知ってる者はいない。アザミは余計なことを言ってしまったかと言わんばかりに顔を顰めるも、口を開く。

 

「…『奴』が言っていた。お前は異宙の住民ではなく、地球が異宙に転生するよりも前に宇宙から訪れた地球外生命体だと」

 

「!!?」

 

「その地球外生命体は宇宙でありとあらゆる惑星を滅ぼしてきたブラッド族という存在だと…星狩り、お前は地球を滅ぼすためにやってきたらしいな」

 

エボルは仮面の下で愕然とした表情となる。兎型の赤い複眼の下で目を大きく見開く。

 

(待て待て待て…!!?なんで…っ、なんでブラッド族のことまで…!!)

 

地球を滅ぼしに来た、というのは間違いであるが、秘密基地の事といい、地球外生命体やブラッド族、そんな情報、惣真自身が口外でもしない限り知り得ないことだ。

 

「…それもその、『奴』が教えたのか?一体『奴』って誰なんだ!?」

 

「さあな。お前が知る必要はないさ………目的は達成されたからな」

 

「なに?………!!」

 

そこでエボルは気づく。

 

パンドラボックスやパネルを運んでいた男達がいないことに。今この場にいるのはエボル、アザミ、蜘蛛の巣で拘束され動けない兵士たち。

 

(コイツ…ずっと時間を稼いでいたのか!!)

 

アザミが質問に律儀に答えていたのはエボルの注意を引くため。エボル自身、nascitaが燃えたショックから注意力が散漫していたため彼らの逃走を許してしまった。

 

「クソッ!!」

 

エボルは悪態を零し、すぐにパンドラボックスらを持ち去った男達の行方を追うべく動こうとする。

 

「行かせると思うか?」

 

しかしアザミが赤い剣で斬りかかり遮る。

 

「チッ!人類の救済者さん達が強盗の真似事か!?」

 

「…」

 

アザミは無も言わずエボルに斬りかかる。

 

「ハッ!」

 

エボルはアザミの攻撃に怯むことなくカウンターの回し蹴りを放つ。

 

「ぐぅ!」

 

しかしアザミはエボルの攻撃になんとか耐える。

 

今は攻撃力の劣るラビットフォームとはいえ、仮面ライダーエボルの攻撃に耐えたアザミにエボルは驚く。

 

「…そうか、お前、“吸血鬼”だな?その剣も血液から生成したのか。俺の攻撃に耐えれるとはな、吸血鬼の耐久力ってやつか?とはいえ、ダメージが入っていることに変わりはないようだな」

 

「…」

 

「そういえば、もう一つ訊きたいことがあった。俺の店、nascitaを燃やしたのって、お前らか?」

 

 

その問いに対し、アザミは表情ひとつ動かさず答えた。

 

「──────地球を滅ぼしにきた害獣の巣だぞ?火を放つのは当然の事だろう」

 

「…スゥゥゥゥゥゥーーーーーーー……そう、か。そうかそうか、うん」

 

アザミの答えに、エボルは息を深く吸い、わざとらしく相槌を打つ。

 

「そういえば、アヌビスとの戦いの時の見物料…取ってなかったな。お支払いは…────────────────お前の命だ!!!!!

 

 

エボルの怒りのボルテージはMAXとなる。

 

「始めようぜ。楽しい楽しい、殺し合いをなぁっ!!!」

 

エボルは殺意、憎悪、憤怒、なんなら一種の狂気も混じった敵愾心をもって疾走する。その足取りに迷いはなく、エボルはすぐさまフルボトルバスターをバスターブレードモードにし、瞬く間にアザミとの間合いを詰める。

 

「…!」

 

エボルが振るったフルボトルバスターをアザミは血液の剣を盾にして防ぎ受け止める。しかし力は拮抗せず、押し切られる。

 

「グウッ!!」

 

アザミは吹き飛ばされ、地面を転がる。しかし吸血鬼故か、すぐさま態勢を立て直しエボルに対峙する。

 

するとアザミは全身が血液のようなものに包まれていき、最終的に蝙蝠の羽の装飾がついた血の色をした禍々しい鎧を纏った。

 

(オイオイなんだよあれめちゃくちゃイカしてるじゃないか)

 

エボルは自身の厨二心をくすぐられながらも、決して怒りを忘れない。聖域を踏み荒らし、挙げ句の果てに火を放った悪漢に制裁を下さんとし、目標を捉える。

 

アザミは身体から血液の剣、あるいは槍とも取れる棘を生やし構える。

 

「…フッ!」

 

アザミはエボルに向かって走り血液の剣を振るう.。エボルはそれを容易く受け流しフルボトルバスターを水平に薙いで刃とは逆の部分、峰の部分でアザミに大振りの打撃を与える。

 

「ぐぅっ…!?」

 

鋭い一撃に肋骨が砕ける感覚が襲う。アザミは意識が飛びそうになりながら苦痛の声を上げる。尚もエボルの怒りは鎮まることはない。むしろ、彼の怒りは一層猛烈に燃え上がり、制御を難しくしていた。

 

「オラアッ!」

 

「がっ……」

 

怯むアザミにエボルはすかさず蹴りを叩き込んだ。

 

「まだまだ行くぜぇ?」

 

「舐めるなあ!!」

 

更に追撃を加えるべく接近するエボルにアザミは自身の周りに大量の血液で出来た刃を生成し飛ばす。しかしエボルはその攻撃を物ともせず装甲で弾きフルボトルバスターで薙ぎ払っていく。

 

「どうした?お前の力はこんなもんじゃないだろ?」

 

「くっ……」

 

「さあもっと楽しませてくれよぉ?」

 

エボルは完全に悪役のような台詞を言いながら確実にアザミを追い込んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

『あっら〜…?アザミさんかなりピンチ?』

 

「レ、レイナ様!!」

 

蜘蛛の糸で拘束されている兵士たち。彼らが耳に着けている小型通信機から聞こえてくる声の主、『レイナ・ガーベラ』はどこから見ているのかアザミがエボルに押されている様子に唖然としていた。しかしすぐにそれは詮無いことだと納得する。

 

冥府に守護神、アヌビスと互角の戦闘力を持つエボル。現在は夜。吸血鬼が力を増す時間帯。とは言え力の差は天と地程あるのは火を見るより明らかだ。

 

今回の任務はエボルを倒すことではない。あくまでも時間稼ぎである。しかし窮地に追い込まれるアザミ。このままではアザミという貴重な戦力を組織は失いかねない。レイナ・ガーベラは助手として、アザミのピンチをフォローする役割だ。

 

『う〜ん…あっ!そうだそうだ!』

 

ここで超天才レイナ君は妙案を思いつき手のひらにポンと叩く。レイナ・ガーベラはアザミの助手として、その期待を裏切らないのである!

 

『すいませ〜ん、アザミさんピンチなんであんたら助っ人に行ってくださーい』

 

レイナは通信機越しから兵士たちに指示を出す。

 

「そうは言われてもっ!この糸が全く…」

 

兵士たちはご覧の通りエボルに蜘蛛の糸で拘束されてからかれこれずっともがき続けているが、全身に巻き付いた粘着性の高い強靭な糸はむしろ振りほどこうともがけばもがくほど、彼らの身体を締め上げ絡みついてくる。

 

『そうっすね。だから……そんな糸簡単に振りほどけるように()()()()()っすよ』

 

「「「!!!!」」」

 

その言葉にレイナがなにをしようとしてるのかを察した兵士たちはたちまち身を震わせ顔を蒼白させる。

 

「そ、それだけはやめてくれ……!!なんでもするからっ!!!」

 

「たったのむぅうう!!あんなの (・・・・)は、あんなの (・・・・)はいやだぁっ!!!」

 

必死に懇願する兵士たち。だが…

 

『え〜…でもあんたら、今なんもできないでしょ』

 

レイナはそれを無視し、一片の容赦もなく、躊躇なく、無情にも宣告した。

 

 

通信機越しに、『カチッ』と、スイッチを押すような音が鳴る。

 

 

すると…

 

「「「がぁ■■あ■■■ああ■■っ!!?」」」

 

メキメキと音をたて兵士たちの体はみるみる肥大していき、彼らを拘束していた蜘蛛の糸はブチンッブチンッと音を立て引きちぎられていく。

 

「「「ガァアア!!!」」」

 

『ジャジャーン!』

 

兵士達は理性を失い、元の面影のない醜悪な異形の姿へと変貌した。彼らはレイナ・ガーベラが開発した『改造人間』であり、傀儡に過ぎない。心なしか彼らの金目鯛のような目からは涙が流れているように見える。

 

『はい、行ってらっしゃ〜い』

 

「「「オォオオオッッッ!!」」」

 

異形と化した兵士たちは雄叫びをあげながらエボルに向かって走り出す。

 

 

「んん?っておいおい、なんだありゃ!?」

 

「「「オオオッ!!!」」」

 

エボルは突如現れた迫り来る異形に驚愕する。

 

「ええい!小賢しい!」

 

エボルは咄嵯にフルボトルバスターで薙ぎ払う。

 

「「「グゥウウッッ!?」」」

 

エボルはフルボトルバスターをバスターキャノンモードにする。

 

忍者!』『海賊!』『スパイダー!

 

『ミラクルマッチデース!』

 

スロットに『忍者フルボトル』『海賊フルボトル』『スパイダーフルボトル』を装填した。紫と水色、そして少し違う紫色のエネルギーが混ざり、チャージされる。

 

『ミラクルマッチブレイク!』

 

エボルは水色と二色の紫が錯綜する大きなエネルギー弾を放った。

 

「「「ぐがああああああああああっっっっ」」」

 

エネルギー弾が直撃した異形たちは爆散した。塵になりきらなかった彼らの身体の一部、内臓、肉片が辺りに散る。

 

 

『アザミさ〜ん!ズタボロっすけど大丈夫っすか〜?』

 

「……レイナ」

 

アザミが付けている小型通信機越しに、レイナの声が聞こえてくる。

 

『アザミさん!時間稼ぎはもう十分っす!退散するなら今っすよ!』

 

「……恩に着る」

 

異形となった兵士たちを撃退したエボル。だが、それがアザミに逃げる隙を与えてしまった。

 

「ん?あっおい!!」

 

アザミの身体は蝙蝠と化し、どこかへと消え去った。

 

「待てっ!!……ちぃっ!!どこいきやがった!!……くそっっ!!」

 

 

 

その後、暫くしてパンドラボックスを持っていった男たちを探したが見つからなく、仕方なくはnascitaへと戻った。………………焼け跡となったnascitaへと。

 

「……」

 

改めて見ても、言葉が出なかった。惣真の心には大きな穴が空いた喪失感。どこを見ても炭と瓦礫の山。一部崩落した瓦礫と共に重力に従って落下しそれにより煤が舞う様を見てさらに悲しくなる。

 

「ちくしょう……」

 

惣真はしゃがみ込み項垂れる。

 

「はぁ〜っ………残ったのは、コイツだけか」

 

惣真は一枚のパンドラパネルを見てため息をつく。

 

「えーと、エボルボトルを除いて残ってるボトルは…」

 

タカフルボトル

ガトリングフルボトル

ローズフルボトル

ヘリコプターフルボトル

タートルフルボトル

ウォッチフルボトル

クマフルボトル

テレビフルボトル

バットフルボトル

エンジンフルボトル

 

そして戦闘時に持っていった忍者フルボトルと海賊フルボトルとスパイダーフルボトル。つまり…

 

「それ以外パネルごと全部持ってかれたってことじゃねえかああああああ!!!クソがあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

惣真は怒りのままに声を大にして叫んだ。

 

「あー…最悪だ…」

 

惣真は頭を抱えながら近くの 合成皮革が焦げ溶けてぐちょぐちょになりながらも燃え残ったソファーに寝転んだ。化学物質が燃えたツンとした匂いがするが気にしない。天井を仰ぎ見る。いや、天井は崩れ落ちていて、見えているのは夜空。燦然と輝く月が照明のように照らす。まだ現実を受け入れたくないらしい。

 

「………いや、嘆いてる場合じゃねえ、一大事だぞ」

 

百歩…いや、一億歩譲ってボトルはまだいい。だが一番の問題はパンドラボックスである。

 

パンドラボックスの危険性はブラッド族であり、前世でビルドを何度も視聴した惣真自身がよく知っている。

 

一つの惑星を滅ぼすほどの強大なエネルギーを持つパンドラの名を持つ箱。エネルギーの量次第では、宇宙全体にビッグバンを引き起こすことだって可能だ。

 

そんなアイテムが、頂点捕食者と人類の救済者を標榜する得体の知れない組織、トッププレデターに渡ってしまった。

 

(あの吸血鬼が言っていた『奴』………そいつはパンドラボックスやブラッド族のことを知っていて、トッププレデターという組織に情報を与えた…)

 

なぜその『奴』はパンドラボックスやブラッド族のことを知っているのか。考えられる可能性は二つ。

 

一つは、自分以外のブラッド族の生き残り。

 

あり得なくはない。

 

キルバスが暴走し思い思いにブラッド星の破壊活動を行い、惣真(エボルト)はパンドラボックスを持ち命からがら逃げおおせた。

 

だがもしかしたら、自分以外にもいたんじゃないだろうか、キルバスの魔の手から逃れ、そして地球に訪れたブラッド族が。

 

ここ数年、惣真は仮面ライダーエボルとしてかなり派手に活動していた。それでもう一人のブラッド族が惣真(エボルト)の存在を認知した。そして気付いたんじゃないだろうか。惣真(エボルト)がパンドラボックスを持っていると。

 

ブラッド族にとって、パンドラボックスは神器だ。絶大なエネルギーを持つソレは喉から手が出るほど欲しいものだろう。とは言っても惣真(エボルト)自身、最近となってはそこまで重要なものではなくなっていたが。

 

ともかくそのもう一人のブラッド族がパンドラボックスを手に入れるためにトッププレデターに協力し情報を与えた。

 

十分に考えられる。

 

もう一つの可能性は、自分と同じ転生者。

 

それなら冷蔵庫が地下室の入り口だと知っていることも頷ける。

 

この場合、その転生者は前世でビルドを視聴したことがある、そうでなくてもボトルやらブラッド族やら断片的なことだけは知っていたのだろう。

 

ビルドを視聴したことがなくとも、動画サイトでビルドの解説動画を見たり小説投稿サイトでビルドの二次創作小説を読んでたりすれば、ライダーシステムはネビュラガスがなんたら〜、エボルトは地球を滅ぼそうとする悪い怪人〜、などにわかながらも大体の設定はなんとなく理解することはできる。

 

尤も、惣真に地球を滅ぼそうとする意志は毛頭なく、ただなんとなく地球を訪れ、なんとなくnascitaのマスターをしている風来坊である。

 

少し話が逸れたが詰まるところ、おそらくその転生者は惣真(エボルト)がビルド本編のエボルトと同様に地球を滅ぼさんとする存在だと結論付けた。そして地球を滅ぼされることを危惧して食い止めなければならないという使命感に駆られたのだろう。

 

パンドラボックスやボトルを奪取すればエボルトが『パンドラタワー』を形成することを妨げれるし、ライダーシステムを開発し対抗できる。

 

だがそうだとしたらその転生者は大馬鹿者だと惣真は思う。協力した組織がトッププレデターという点だ。

 

詳細は不明だが街にキメラを放ったり、人の店に放火したり、赤髪の吸血鬼の口振りからしてトッププレデターは決して真っ当な組織ではないのは明らかだ。そんな組織と協力している辺りかなり盲目的な奴だと思われる。それとも何か別の思惑があり利用しているだけなのか。

 

とにかく妥当なのはこの二つ。ブラッド族か、転生者か。

 

いずれの可能性にせよ、パンドラボックスがトッププレデターというどんな手段も厭わなそうな組織の手に渡ってしまった以上、野放しにしてはおけない。ライダーシステムなんて開発されてしまえば兵器として利用され戦争が起こることは明白だ。

 

それに…………。

 

惣真はソファーから起き上がり、ほとんど炭だけとなったnascitaを見渡す。

 

立ち上がり、黒く焦げ染まったカウンターへと歩を進める。その上にあるのは真っ黒に焼け焦げ、焼損したハンドル部分以外原型を留めていないコーヒーミル。このコーヒーミルは惣真が愛用していたもの。今では見る影もない。

 

惣真は拳を強く握る。

 

地球を訪れ、nascitaを開いてからかれこれ20年近く。ブラッド族にとっては大した歳月ではないが、それでも惣真にとってnascitaでの日々はかけがえのないものであった。

 

扉を開けるたびに、温かな香りが鼻をくすぐり、心地よい静けさが迎えてくれた。自分が淹れたコーヒーの香りは、毎朝の儀式のように感じられ、コーヒー豆から湧き上がるアロマは心を落ち着かせる。

 

そして、お客さんたち。nascitaは、街の人々や通りがかりの旅行者にとって、ほんのりした安らぎの場所だった。これからも変わらぬ温かさとおいしさを提供し、お客さんたちの笑顔を引き出すことが、自分の使命であると心に誓っていた。

 

それが今はどうだ。

 

かつてのnascitaは、炭と瓦礫の山と化した。トッププレデターは、一瞬で惣真の努力と思い出を焼き尽くした。壁などに染み付いていた温かなコーヒーの香りは、今や炭の香りだけ。ましてや壁もない。nascitaで築いた二十年にわたる思い出が炎と煙と共に消え去った。

 

トッププレデターはパンドラボックスを奪ったに限らず、惣真が愛してやまないnascitaを奪ったのだ。

 

ここまで舐めた真似されて、黙っていられるか。

 

(トッププレデター…その名を覚えたぞ。てめーらはおれを怒らせた…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徹底的に滅ぼしてやる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そういや住む場所どないしょ………アイツに頼るか」

 




アヌビス「へぇ〜、ケモ耳ショタねぇ…俺のことをそんなふうに思ってたのかーそっか、そっかー、エボルトお前………良い性格してんなぁー」


惣真「っ!?……な、なんだ?急に寒気が…」








混血のカレコレストーリー編で新キャラが出てきましたね。
これからどのような展開になっていくのか楽しみですね。
次回のストーリー編が楽しみです。



…動画の最後なんか不穏なものが映ったんだけどマジでどうなるんだろう



追記

2023年10月2日
内容を大幅に改稿しました。


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混血児の少女

前回のあらすじ

トッププレデター「パンドラボックスはもらっていくぜ。あばよ、とっつぁ〜ん」

アザミ「勝った…計画通り…!」

惣真「オレァ クサムラヲ ムッホロボス!!」ピキピキ



よぉ、みんな、惣真(エボルト)だ。

 

俺は今ある場所に向かっている。

 

前回トププレ共にパンドラボックスとボトルの大半を奪われたうえにnascitaを放火され、俺はもう激おこシャバドゥビタッチファイナルアタックタイムブレイクぷんぷんエクストリームてな訳で、連中をムッホロボスと心に決めた。

 

そしてあれから3ヶ月…

 

ついに見つけた

 

トッププレデターの研究所の一つを。

 

俺はあの後すぐに奴らの居場所を突き止めるために行動を開始した。

 

ろくに情報もなかったから探すのにかなり時間がかかった。

 

できればこの研究所にパンドラボックスがあればいいんだが…まぁここになくてもこの施設から情報が得られればいずれ奴らの本拠地に辿り着くだろう。

 

と、いうわけで

 

「──────ファルコン、パアァァァァァァンチ!!!」

 

ドガァァァァァァァン

 

すでに仮面ライダーエボル(コブラフォーム)に変身していた俺は研究所の壁を破壊して侵入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

あるモニタールームの中で、白衣に身を包んだ研究員たちは、監視カメラの映像に映る予想外の姿に戸惑いと恐怖が入り混じった瞬間を迎えていた。

 

「侵入者だああああ!!」

 

叫び声が部屋を満たし、研究員たちは不安と驚きの中で、モニターに映る存在をじっと見つめた。

 

「お、おい、コイツってまさか…」

 

別の研究員がつぶやき、彼らの間に不穏な沈黙が広がった。その映像の中には、伝説的な黄金の怪人の姿があった。

 

「おいおいおいおい!?おかしいだろ!なんで星狩りがこの研究所にいるんだよ!」

 

混乱が広がり、研究員たちの心臓は激しく鼓動し始めた。怪物…異宙の住民を圧倒するほどの力を持った未知の力と謎めいた存在が、平穏だった研究所に突如現れ、擾乱をもたらすものとして立ちはだかったのだ。

 

「こうなったら…あの実験体にアレ (・・)を使用させ奴にぶつけるぞ!」

 

「え、でも正規品とはいえまだガキだしハザードレベルも不十分だから『ドライバー』は使えないんじゃないか?」

 

「曲がりなりにも正規品だ。それにいざという時は我々が逃げるまでの時間稼ぎにはなってもらう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究所に入りエボルを出迎えたのは機械兵士、ガーディアンの集団だった。

 

〈侵入者ヲ確認。攻撃開始〉

 

ガーディアン達は銃剣型の『セーフガードライフル』を向け、一斉に発砲を開始した。

 

しかしエボルの装甲に銃弾は全て弾かれてしまった。

 

エボルは右手にエネルギーを収束させる。

 

「…ハァッ!」

 

その手からは強力な衝撃波が発生してガーディアン達を吹き飛ばした。

 

吹き飛ばされたガーディアン達は壁に激突しバチバチと火花を散らしながら機能を停止した。

 

そこから先もガーディアン達が次々襲い掛かってきたが全てエボルに返り討ちにされた。

 

〈侵入者ヲ確認。排除シマス〉

 

またもやガーディアン達が立ち塞がった。

 

「ハァ〜、ゴキブリ並みに湧いて出てきやがるな」

 

ガーディアンたちが現れては倒してまた現れては倒す単純作業の繰り返しにエボルは気が滅入っていた。

 

そしてエボルがいまだ非常事態を告げる警報が鳴り続ける研究所内を進んでいると

 

「来たか化け物め…!」

 

白衣を着た男達が現れた。

 

「お!ようやくお出ましか!ガーディアンばっかでうんざりしてたところだ。さ、パンドラボックスの在処を教えてもらおうか?」

 

「黙れ!貴様のような化物に教えることなど何も無いわ!」

 

「おいおい、自分達がどういう状況か分かってんのかァ…?」

 

エボルの底冷えするような声色に白衣の男達は恐怖を感じた。

 

「ひ、怯むな!我々人類の力を見せてやる!」

 

一人の研究員の言葉の響きがその場に充満する。

 

エボルは何をするつもりなのかと奇妙な期待が生まれた。

 

すると研究員達の中から現れ前に出る小さな影。

 

「……」

 

「…子供?」

 

流石のエボルも仮面の中で目を丸くして首を傾げるしかなかった。

 

出てきたのが子供だったからだ。

 

おそらく見た目からして10歳くらいの年齢だろう。透き通ったような金髪で、短く切られているが女の子だとわかる。しかし額からは緑色の角、馬のそれに近い尻尾が生えており、少女の整った外見も相まって特異さを醸し出していた。

 

研究所の白い壁と同化するような色合いの入院着を着たその少女は不気味な静寂を纏っており、感情がそぎ落とされたような無表情で虚な目をしていた。子供がこんな表情、こんな目をするものなのか。

 

そしてエボルが最も注目したのはその少女の腰に巻かれているもの。

 

「ドライバー、だと」

 

それは惣真も知らないドライバーだった。スクラッシュドライバーに近い構造に右側にはゲネシスドライバーのレバーのようなものががついていた。

 

(おいおい3ヶ月の間にもうあんなものまで作ってたのかよ!?だがなんでこんな子供が…?)

 

「良いですか『フィーア』?アレは人類の敵です!!そして我々は人類の味方!!つまりあなたの仕事は『ライダーシステム』を使って奴を殺すこと!!殺せなくても奴を足止めし、我々科学者という人類の発展に必要な財産が逃げるための時間を稼ぐことです!!」

 

「…はい」

 

研究員の男が捲し立てるようにそう言うとフィーアと呼ばれた少女は返事をする。この歳の少女にしては声はひどく無機質で、命令に従う機械のようで、不気味な印象を受けた。

 

「さぁ行きなさいフィーア!我々人類の未来を守るために戦うのです!」

 

研究員の男にそう言われるとフィーアは懐から一本のボトルを取り出す。

 

(ボトル…?だがなんだあのボトル、見たことねぇぞ)

 

フィーアはボトルをドライバーに装填した。

 

『Rider system standby, Ready?』

 

「…変身」

 

そしてドライバーの右側にあるレバーを押し込んだ。

 

すると

 

「ッ!アァッ!アァ、ァァァアアッ!!」

 

フィーアの体にバチバチと電流が走り、叫びを上げその場に倒れる。

 

「なに…?」

 

「おっおい!?何をしている!!早く起き上がれ!!」

 

「やっぱり、まだハザードレベルが足りなかったんだ……」

 

「クソッ!!なんという尫弱っ…早く立て!!」

 

エボルは研究員のその言葉を聞き、フィーアのハザードレベルを測る。

 

(ハザードレベル2.3、か)

 

ビルドドライバーの使用条件は3.0。

 

あのドライバーのことは知らないが、あの少女が使うにはハザードレベルが3.0以下では足りなかったのだろう。

 

…それよりも、だ。

 

「おい、聞きたいことがある」

 

「な、なんだ!!化け物に教えることなど…」

 

「お前ら、こんな小せえガキに、ネビュラガスを注入したのか?

 

「「「!!?!」」」

 

研究員達はエボルの威圧感に気圧され声が出せなかった。

 

「おい答えろよ、ネビュラガスを、このガキに、使ったのか?」

 

「ひぃっ!そ、そうだ!だからなんだっていうんだ!!」

 

「…お前らはネビュラガスの危険性を理解してるのか?」

 

「き、危険性だと?ああ、ハザードレベルが低すぎると消滅する(・・・・・・・・・・・・・・・・・)ことか?

 

 

 

 

 

 

 

 

それがどうした!!コイツらはただの実験体!!人類の発展ために必要な犠牲だ!!我々は必ず異宙人共から地球の覇権を取り戻すのだ!!『科学』の力によってなぁっ!!!

 

 

研究員の男は狂気に満ちた笑みを浮かべながらそう言い放った。

 

(コイツらは人体にネビュラガスを注入することの危険性を理解している。ということは、つまり…)

 

エボルはその意味を理解すると、コブラフォームの仮面の下で奥歯を噛み締め、己の拳を強く握りしめる。

 

「あなたはいつまで倒れてるんですか!?早く立ち上がりなさい!!それでも選ばれし正規品か!!!我々を守るために戦いなさい!!」

 

研究員の男はいまだうずくまっているフィーアに怒鳴りつける。

 

「ウゥ…ッ!グ、ウゥッ……!!」

 

フィーアは命令に従おうとなんとか立ち上がろうとするが体が言うことを聞かない。

 

そんなフィーアを見てエボルは ポン と、彼女の頭に手を置いた。

 

「え…?」

 

フィーアは恐る恐ると顔を上げる。

 

「少し待っててくれ」

 

エボルはフィーアに優しい口調でそう言うと、フィーアは不思議そうな顔をする。

 

「お、おい!いったい何を」

 

研究員の男が言い切る前にエボルはヒュンッと、研究員達の目の前まで瞬間移動する。

 

そしてエボルは研究員達に両手を向け、手の平にエネルギーを集め…

 

「きゅっとしてドカーン、なんてナァ」

 

研究員達に向け、エネルギー弾を放った。

 

「「「ぎゃああああっ!!?」」」

 

研究員達は悲鳴をあげ、その衝撃で吹き飛ばされた。

 

「お前らはコンティニューできないのさ、兵六玉共が」

 

エボルは倒れ伏す研究員達にそう言うとフィーアの方に向き歩み寄る。

 

フィーアは未だに何が起こったのか理解できずに困惑していた。

 

「立てるか?」

 

「え、あ…は、はい」

 

エボルに手を差し伸べられ、フィーアは少し戸惑いつつもその手を掴んでよろよろと立ち上がる。

 

だが

 

「ハァ…!ハァ…!どうせ人類の敵になるなら…処分するしか無いですねぇ…!!」

 

エボルに吹き飛ばされ辛うじて生きていた研究員の一人がその光景を見て端末を操作する。

 

「ア…ッ、アア……アァッ!!」

 

するとフィーアが突然苦しみ出し、倒れてしまう。

 

「お、おい!?どうした!?」

 

エボルは慌てて駆け寄り抱き起こす。

 

するとフィーアの首に取り付けられている首輪が赤く光っているのに気づいた。

 

エボルはもしやと思い、フィーアに付けられていた首輪に触れる。

 

(なるほど、首輪から毒が流れているのか…なら)

 

エボルは首輪を破壊し、フィーアの体に手を当てて解毒を行った。

 

「あ……」

 

フィーアはエボルの解毒により苦しみから解放され、気を失う。

 

呼吸は安定しているので問題ないだろう。

 

「ふぅ、これで大丈夫だろう」

 

「な…!?馬鹿な、専用の解毒剤がなければ解毒できないはずっ…!?」

 

「あいにく俺は毒の専門家なもんでね」

 

ニヤリと仮面の下で不敵な笑みを浮かべる。

 

研究員の男の顔には先程までの余裕はなく、額から冷や汗を流していた。

 

「くっ……だったら!!」

 

研究員の男は再びタブレットを操作する。

 

「おいおい、これ以上何をしようと…っ!!」

 

エボルはタブレットを覗き、研究員の男のしようとしていることがわかった。

 

そして研究所内でエボルに機能停止させられ転がっていたガーディアン達の顔に『0:60』とタイマーが浮かび上がった。

 

(コイツ…!!この施設にいるすべてのガーディアンの自爆装置を作動させやがった!!)

 

エボルは舌打ちし、このままだと自分はともかくフィーアが爆発に巻き込まれてしまうと危惧する。

 

「ヒッ…ヒヒッ…私は…私は最後まで人類の為に戦いましたよ…!!」

 

研究員の男は壊れたように笑う。目の焦点も定まっていない。

 

「くっ…!」

 

エボルはフィーアを抱え、すぐさまワープする。

 

 

 

「我が魂はァァァァ……トッププレデターと共にありぃぃぃィィィ――――ッ!!!」

 

 

 

研究員の男の叫びと同時に研究所は大爆発を起こし、爆炎に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァー、何もねぇな」

 

惣真は爆風が届かない場所まで転移し、研究所の炎がゆっくりと沈静化していくの確認した後、瓦礫の中を丹念に探したが、何も見つからなかった。

 

(ここにパンドラボックスがあることは期待してなかったが、何かしらの手がかりがあると思ったんだけどなぁ………………………………いや、収穫はあったか)

 

惣真は近くの木陰に寝かせている少女、フィーアに目をやる。そしてフィーアの腰に巻かれていたドライバーに目を向ける。

 

(まさかもうドライバーまで作ってるとはな。あの研究員共もネビュラガスのことに詳しかったし、おそらく『スマッシュ』も……)

 

とりあえずドライバーの方は回収するとして残った問題は一つ。

 

「この子…どうするかなぁ」

 

流石にこの場に放置はできない。惣真はいまだ気を失っているフィーアを一督しながら思考を巡らせる。

 

(やはり、一旦この子を連れて帰るか。この子からトッププレデターの情報を聞き出せるかもしれないな。どうするかはその後考えるとしよう)

 

いくらブラッド族とはいえ、星狩り的なモノだけではなく人間的倫理観や道徳観念も一応は併せ持っている。幼い子供をこんな場所に放置するほど落ちてはいない。

 

惣真は再びエボルに変身し、フィーアを背負いワープして姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィーアSIDE

 

物心ついた頃から目に見える世界は白い壁や灰色のコンクリートの壁。

 

『あなた達実験動物は人類から地球を奪った害悪、異宙人と戦うために作られたのです』

 

『あなた達は人類の発展の為に必要な犠牲なのです』

 

研究者の声は堅苦しく、無情。研究者達に耳にタコができるほど滔々と語り聞かされた定型文の羅列。

 

私自身も自分達は人類の発展の為に作られた、その為に犠牲になることはとても名誉のあること、それが自分の存在意義だと信じて疑わずこの閉じられた環境の中でどんな実験にも耐えてきた。

 

何より、時々私と同じ子たちが処分されていくのを見る度『ああなりたくない』と思ったから。

 

そしてある日、私は正規品に選ばれた。

 

私は『戦麒』という名から『フィーア』という名へ変わった。…名前を与えられたというよりナンバリングされたが正しいかもしれない。

 

『今日からあなたはこの施設でライダーシステムを扱うための実験を受けてもらいます』

 

私は別の施設に移され、そこでライダーシステム?というものを使えるようになる為の実験が行われた。

 

私は水槽のようなカプセルの中に入れられた。四肢は拘束され口に酸素ボンベを付けられた。

 

周りを見ると、防護服で体を覆ってガスマスクを被った、おそらく研究者であろう何人もの人間が私の様子を観察したり、機材をいじったりしていた。

 

そして…。

 

『…ッ!?アッ、アァァァアアアアア!!?!』

 

私はよくわからないガスを浴びせられ、体の中に何かが流し込まれていく。

 

痛い!苦しい!! 体が内側から焼けるように熱くなっていく。

 

『1.3…1.7…1.9……ハザードレベル2.0に到達!スマッシュ化はしていません!』

 

『おお、さすがは正規品と言ったところか。最初は欠陥品や廃棄品でネビュラガスの注入実験をしたが、消滅するかスマッシュ化するだけだったからな』

 

そんな苦しむ私を他所にガスマスクをした研究者達は淡々と作業と分析をしていた。

 

それからは地獄の日々だった。

 

ライダーシステムを使えるようになるには、ハザードレベルというものを上げなければいけないらしい。

 

その方法として、私は毎日何度も何度も異宙の生物やガーディアン達と戦わされた。それは正規品に選ばれる前の施設での戦闘実験よりも過酷なものだった。

 

 

『うぅ…ぐ…っ…』

 

 

何時間も戦わされ疲労で戦闘中にその場で倒れてしまうことも稀にあった。

 

しかしそこにガーディアンたちが私を囲み容赦無く蹴りを入れる。

 

 

『あがッ⁉ぐぅッぅぁあ…ッいっ…!!』

 

 

ガーディアン達が容赦無く袋叩きにしていく。金属の足がまだ成長途中の幼い私の体を傷つけていく。

 

一体のガーディアンの足が私の腹部に直撃する。

 

 

『ゔっ!?…うっ…ッ…ゔぉぇぇ…!!』

 

 

私はたまらず嘔吐してしまった。それでもガーディアン達は攻撃を止めない。

 

研究者たちは相も変わらずひどく冷静で淡々とその様子を観察していた。それは当然だろう。実験動物に対して抱く感情など実験動物に向けるそれ以外無い。ましてや情を抱くなんてことはあり得ない。

 

彼らは私の親じゃないのだから。いや私を作り出したという意味では親みたいなものかもしれないけど…そもそも『親』とはなんだろう。そんな疑問も再び腹部に直撃した衝撃で吹っ飛ぶ。

 

口に広がる胃酸の酸っぱさと、口の中の傷から滲み出る血の味。蹴られた腹部に残る気持ち悪さと戦闘の疲労から与えられた食事も微塵たりとも喉を通らない。

 

しかし研究者たちは正規品の私が栄養失調で死なれたら困るので用意された食事を無理矢理口に突っ込まれる。むせて吐き出し一人の研究者の白衣を汚してしまい、その人は顔を真っ赤にして激怒し私を何度もぶった。

 

その時の私は冷静にもその研究者の顔が『鬼』という異宙の生物に似てるなぁ、と考えていた。

 

研究者達も面倒になったのか、その日から私の食事は点滴や栄養剤、サプリメントに変わった。私としてもその方がありがたかった。元々食事を億劫に感じていた。出された食事を美味しいと思ったこともない。…そもそも『おいしい』ってなんなのかがわからない。

 

最近では研究者達が『スマッシュ』と呼ぶ怪物とも戦わされた。

 

そんな日々の中、私は失敗作として廃棄された子たちを思い出していた。前は『ああなりたくない』と思っていたのに、今では彼らを羨ましいと思う。

 

あの子たちはこの地獄を味わうことも知ることもなく解放されたんだから。

 

 

 

…………………………いや違う。

 

これは名誉あることなんだ。

 

自分達は実験動物で人類の発展のためには必要なことでもう駄目私は兵器なんだ兵器は兵器らしくただ命令に従っていれば良い私は正規品で処分された子達とは違う助けて私は人形ただ従順にもう殺して嫌だ死にたくない忠実に私は混血児誰か助けてよ 違う違う違う違う考えるな兵器は感情を持たない涙を流さない痛いどうしてなんでこんな誰か助けてお願いだから私は一体何者もう疲れたよなんの為に生まれそれじゃ存在意義って何痛いごめんなさいもう逆らいませんごめんなさいごめんなさい…

 

 

何度も繰り返される実験は私の身も心も壊していった。

 

その日も過酷な実験が終了し、私は監獄のような部屋へと戻り就寝していた時だった。

 

突然警報が鳴り響き慌ただしい雰囲気に包まれる。

 

その鳴動で私は何事かと思い目を覚ますと突如として研究者達が部屋に入ってきた。

 

『あの…一体何が…』

 

私が口を開く前に、一人の研究員が切羽詰まった様子で語りかけてきた。

 

『我々は現在襲撃を受けているっ!!あなたには襲撃者と戦闘し、我々を守るという大変名誉な役目を与えます。今すぐ準備しろっ!!』

 

私はこの時、自分が初めて兵器として使われるのだと悟った。

 

『………はい』

 

私はコクリと首を縦に振るしかなかった。

 

私は黙ってコクリと首を縦に振った。

 

私は研究員からドライバーとボトルを渡され、襲撃者がいる場所へと向かった。

 

着くとそこにいたのは————黄金の蛇を彷彿とさせる鎧の怪人。

 

コブラを彷彿とさせる顔。それはまるで神様にも牙を剥くような鋭い目つき。金色を中心としたパーツがごちゃごちゃした

装甲はとても禍々しかった。

 

あれはたしか『星狩り』。この施設でモニターの資料映像で教えられた。 冥府の守護神とほぼ互角に戦える圧倒的な力持ち、いずれ世界に仇なす存在だと。

 

目の前の星狩りが放つオーラに私は気圧される

 

勝てない。次元が違う。

 

戦闘で培った私の勘が告げる。

 

 

『良いですかフィーア?アレは人類の敵です!!そして我々は人類の味方!!つまりあなたの仕事はライダーシステムを使って奴を殺すこと!!殺せなくても奴を足止めし、我々科学者という人類の発展に必要な財産が逃げるための時間を稼ぐことです!!』

 

 

『…はい』

 

 

しかし兵器である私に拒否権などない。ただ命令に従うだけ。

 

私はボトルをドライバーに装填した。

 

 

『Rider system standby, Ready?』

 

『…変身』

 

 

そしてドライバーのレバーを押し込み、変身————することはなかった。

 

 

『ッ!アァッ!アァ、ァァァアアッ!!』

 

 

全身がバチバチと電流が走った様な感覚に襲われ、私は倒れてしまった。

 

変身に失敗した。原因はわかりきってる。ハザードレベルが足りなかったからだ。

 

そのため凄まじい拒絶反応に襲われた。

 

それ以前に力に歴然の差がある。研究員たちもわかっていたはずなのに短絡的に私を駆り出した。そんな愚挙に出たのはきっと藁にもすがりたい思いだったのだろう。正直愚かだと思った。

 

研究員の一人が私に怒鳴りつける。

 

立ち上がろうにも体が言うことを聞かない。

 

そうこうしてるうちに星狩りは目の前にいて、私を見下ろしていた。

 

私は最期を悟った。

 

あんなに苦しい思いしたのに、兵器としてすら碌に使われないまま終わるんだ。

 

私の人生は、何だったのだろう。

 

何のため、生まれてきたんだろう。

 

でもよかった…。これで私も解放されるんだ。もう戦う必要なんてないんだ。

 

これでやっと…私も———————————————————————————————————————————————死にたくないなぁ…

 

 

そして怪人は私に近づき—————

 

 

 

 

ポン

 

 

 

 

私の頭に手を置いた。

 

 

 

『え…?』

 

 

私は一瞬何をされたか理解できなかった。私は恐る恐る顔を上げる。

 

 

『少し待っててくれ』

 

 

蛇を彷彿とさせるフルフェイスからは考えられない優しい声色で星狩りは言った。

 

戸惑う私を差し置き、怪人はいつの間にか研究者たちの前まで移動していて、両手からエネルギー弾を放ち研究者たちを吹き飛ばした。

 

何がどうなってるの…?

 

私が困惑してると星狩りが私の方に歩いてきた。

 

 

『立てるか?』

 

 

『え、あ…は、はい』

 

 

手を差し伸べられ、私も戸惑いながら手を伸ばした。

 

体が痛むが、星狩りの手を掴みなんとか立ち上がった。

 

 

『ハァ…!ハァ…!どうせ人類の敵になるなら…処分するしか無いですねぇ…!!』

 

 

『ア…ッ、アア……アァッ!!』

 

 

突然苦しくなり、私は倒れる。

 

何をされたかはすぐわかった。

 

私の首に装着された首輪から毒が注入されたのだと。

 

今度こそ死んでしまうと思った。

 

私が諦めかけたその時、怪人が私の体に手を当てる。

 

するとさっきまでの苦しみが嘘のように消えていった。

 

瞼が重くなっていき、そこで私の意識は途絶えた…。

 

 

 

 

 

 

「…………はっ!!」

 

フィーアはベッドの上で目を覚まし、ガバッと起き上がった。

 

「こ、ここは…?」

 

「おっ、目が覚めたか!」

 

フィーアが声のする方へ顔を向けるとそこには白いワイシャツ、ベージュのズボンというラフな格好をした20代後半の男性がいた。

 

その男性からフワッと芳しい香りが漂いそれが不思議とフィーアの心を落ち着かせる。

 

それが『コーヒー』という飲み物の香りだということをフィーアはまだ知らない。

 





今回は惣真と混血児との出会いでした。

自分は混血のカレコレのキャラクターの中でフィーアが一番好きなので、今回ようやく出せたって感じです。


追記

2023年10月10日

内容を大幅に改稿しました。


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星狩りと少女と卵焼き

〜ライダーバトルに参加するとどうなるのか?〜

俺の名はモブ男

俺は今ライダーバトルというバトルロワイヤルに参加しようとしている。

神崎士郎「最後に存在できるライダーはただ一人。ライダーを倒せ。戦え」

なんでも最後の一人になれば最後の1人になるまで勝ち残れば、叶えたい望みが叶えられるらしい。

神崎士郎「戦いに勝ち残れば、お前が望むものはすべて手に入る。戦え。戦って望みを叶えろ!」

そして俺は目の前の神崎士郎という男からカードデッキを渡され、さっそくモンスターと契約しようとした。

フラグちゃん「立ちました!」

モブ男「あれ?フラグちゃん」

フラグちゃん「モブ男さん!ライダーバトルに参加するのは死亡フラグです!ライダーバトルに参加するということは他の参加者と殺し合いをするうてことですよ?そしたらモブ男さん自身の手を汚すことになりますし、モブ男さんもいつか他の参加者に殺されることなりますよ!」

モブ男「フラグちゃん、そんなこと百も承知さ。それでも俺はどうしてでも叶えたい願いがあるんだよ」

フラグちゃん「そこまでして叶えたい願い…それって一体…」

モブ男「俺の願い、それは………ハーレムを作ることだ!!」

フラグちゃん「…は?」

モブ男「このライダーバトルに勝って、俺は念願のハーレムを手に入れるんだ!!ぐへへへへ」

フラグちゃん「最低です!!」

モブ男「というわけでモンスターと契約!君に決めた!」

フラグちゃん「ああ!モブ男さん!!」

ボルキャンサー「これは契約だ。モブ男の夢を私に見せてくれ」

モブ男「よ〜し!それじゃあさっそく————ヘシン!」

そうしてモブ男は『仮面ライダーシザース』へと変身した。

シザース(モブ男)「どう?フラグちゃん。俺かっこいいでしょ!ゴージャスな金色で高級な蟹、俺にピッタリでしょ!」

フラグちゃん「えっと、なんか死亡フラグがものすごい勢いで増えたんですけど…」

シザース(モブ男)「それじゃ、俺はミラーワールドで戦ってくるよ。今の俺は、負ける気がしねぇ!」

フラグちゃん「その台詞モブ男さんが言うと死亡フラグです!!」



「俺の名前は蛇塚惣真、この喫茶店のマスターだ」

 

「喫茶店…?マスター?」

 

フィーアは困惑した顔で惣真を見ていた。

 

自分が何故こんな場所にいるのか全く理解出来なかったのだ。

 

自分はトッププレデターの研究施設で実験を受けていたはず…。

 

目の前にいる蛇塚惣真と名乗ったこの男性は何者なのだろうか。

 

「…こいつを見りゃ、俺が何者なのかわかるんじゃないか?」

 

そんなフィーアの様子を察してか、惣真はあるものをフィーアに見せた。

 

フィーアは目を大きく見開いた。

 

惣真が手に持つモノ…それは——————『エボルドライバー』

 

 

惣真が手に持つソレを見た瞬間、フィーアの脳裏に記憶が蘇る。

 

 

思い出すのは、腰に赤いデバイスをつけた黄金の怪人。

 

その顔は蛇を彷彿とさせ対峙する者を威嚇してるかのようで、見る者全てが恐怖する。

 

そして————————自分の頭に優しく置かれる怪人の手。

 

『立てるか?』

 

自分に差し伸べられた手。

 

あの時掴んだ怪人の手は何故かとても温かく感じた。

 

 

「もしかして…黄金の怪人、ですか?」

 

「正解!俺こそが巷で噂の怪人さんだよ。ちなみにあの姿での名はエボルだ」

 

「え、でも、人間ですよ、ね?」

 

「人間じゃねぇよ。かといって異宙人でもないけどな」

 

「???」

 

フィーアは頭の上に疑問符を浮かべていた。

 

当然だろう。人間でも異宙人でもなければなんだというのか。

 

「…あの、私は研究施設にいたはずなんですけど……」

 

「あー…実はな」

 

惣真はフィーアが倒れた後のことを話した。

 

研究員がヤケを起こし研究所を爆破したこと。

 

そして気を失っていたフィーアを自らが経営する喫茶店nascitaへと連れ帰ったこと。

 

「…とまあ、そういう訳だ」

 

「……そうだったんですか」

 

説明を終えた惣真に対し、フィーアは納得いかないような顔をしていた。

 

「…どうして、私を助けたんですか」

 

「ん?あー、そうだな。お前からトッププレデターについて知ってるかぎりの情報を聞きたかったからだな。それに、子供をあんな場所に放っておくわけにはいかないだろ?」

 

「…」

 

「えーっと、たしかフィーアだったか。腹減ってないか?」

 

「え?」

 

「飯、用意してるからさ」

 

惣真はそう言ってフィーアをリビングに連れていった。

 

 

 

惣真SIDE

 

俺はフィーアをリビングのテーブルの前に座らせ、お粥の入ったお茶碗と卵焼きが乗った皿を置いた。

 

病み上がりだし食べやすいものが良いと思ったのだ。

 

「はい、おまちどうさん」

 

「…」

 

フィーアは目の前に置かれた料理を見て戸惑っていた。

 

「食べなきゃ体力つかないぞ」

 

「…」

 

「言っとくけど毒なんか入れてねえよ」

 

「えっと、いただきます…」

 

フィーアはフォークで恐る恐る卵焼きを口に運んだ。

 

 

「……————」

 

するとフィーアはポロポロと涙をこぼし始めた。

 

「え、ちょ、おいおい!?どうした!?」

 

俺はフィーアの様子に困惑しつつ、皿の上の卵焼きを一つ手に取り、口に運んだ。

 

(っっ!?あっっっっま!!!)

 

卵焼きはまるでお菓子かと思うくらい甘かった。

 

(砂糖の量間違えたか!?いつもはこんなミスしないのに)

 

こんなものを食わされたらそりゃ泣きたくもなるだろう。

 

「わ、わりぃ、フィーア!すぐ新しいの作るからその間にお粥で口直しを———」

 

「いえ…違うんです…」

 

フィーアは首を横に振りながら否定した。

 

「美味しいです…すごく…」

 

「い、いや無理しなくていいんだぞ?」

 

「いえ…本当に、美味しいです…」

 

フィーアはその後も涙を流し続けながらも、卵焼きとお粥を平らげた。

 

「ごちそうさまでした」

 

「お、おう、お粗末様でした」

 

フィーアは空になった食器を前に両手を合わせた。

 

「…あの、その、ありがとうございます」

 

「え?あぁ、気にすんなって」

 

「でも、助けてもらった上に食事まで頂いて……」

 

「子供がそんなこと気にすんな。それに俺が勝手にやったことだしな」

 

「…あの、あなたは…惣真さんはどうして私にそこまでしくれるんですか?」

 

「うん?」

 

俺はその質問の意図がよく分からなかった。

 

「私は…人類の発展のために作られた実験動物です…。情報を聞き出すだけなら、ここまでするメリットもないはずです…」

 

そう言いながらフィーアはじっとこちらを無表情に見つめてくる。だがその顔はどこか悲しげだった。

 

「うーん、なんつーか。さっきも言った通りお前を助けたのは俺の勝手だ。お前が今までどういう扱いを受けてきたのかは知らないけど、少なくとも俺はお前のことをただの実験動物だなんて思ってないし、これからも思わない。それだけだ」

 

「……」

 

フィーアは黙り込んでしまった。

 

「なぁ、実験動物って言ってたけど、ちょっとその辺りも含めて詳しく教えてくれないか」

 

「…」

 

フィーアは無言のまま俯いた。

 

「嫌なこと思い出させちゃったか…」

 

「……いえ、大丈夫です」

 

フィーアは、今までのことを話し始めた。

 

自分が異宙の住民達よりも強い生物を作る実験、『デュアルコアプラン』と呼ばれる2種類の異宙人のDNAを人間の胎児に与えて作られたトッププレデターの実験体であること。

 

自分は正規品として選ばれ、あの研究施設に移されたこと。

 

そこで体に何かのガスを浴びせられたこと。

 

それからは『ライダーシステム』というものを使えるようになるために異宙の生物やガーディアン、そして『スマッシュ』という怪物と戦わせられたこと。

 

 

「…以上が私が知ってる全てです」

 

「…………」

 

正直想像していたよりも酷い内容に言葉が出てこなかった。

 

特にガスの話や『ライダーシステム』と『スマッシュ』という言葉で俺は強く歯を噛み締めた。

 

俺は激しい怒りを感じていた。

 

トッププレデターに対して、そして……————————自分に対して…。

 

人類発展の為に倫理を無視した非人道的な実験を平然と行うトッププレデターが許せなかった。

 

だが『ネビュラガス』『スマッシュ』『ライダーシステム』…

 

これらに関しては、俺の責任だ。

 

俺があの日、ヘマして連中にパンドラボックスを奪われたせいだ。

 

俺がトッププレデターに技術を与えてしまったんだ。

 

一体、この3ヶ月の間にどれだけの奴が実験で犠牲になった……

 

俺のせいで…どれだけ…

 

俺は血が滲むほど拳を強く握り締めた。

 

 

「そ、惣真さん…?」

 

フィーアが心配そうな目でこちらを見ている。

 

しまった。きっと今の俺はよほどひどい顔をしていたのだろう。

 

「すまん、なんでもないんだ」

 

「そうですか…」

 

フィーアはそれ以上何も聞いてこなかった。

 

さて、聞けるだけのことは聞いたどうするか。

 

「そういえばお前、親はいんのか?」

 

俺がそう聞くとフィーアは首を振った。

 

「私を含め実験体に親はいません。いたのかもしれませんが…会ったことはありません」

 

「なるほどな……」

 

行くあてはないってことか…。

 

「なあフィーア、お前はこれからどうしたい?」

 

「…わかりません。今までずっと人類の発展の為の実験動物として生きてきました。だから…どうしたらいいのかわからないんです…」

 

まあ、そりゃそうか。

 

トッププレデターという檻の中で生きてきたフィーアからしたらいきなり自由を与えられても戸惑うだけだよな。

 

しかし、このまま放っておく訳にもいかない。

 

俺は少し考えた後、フィーアにある提案をした。

 

フィーアをnascitaに住まわせてあげようと思ったのだ。

 

トッププレデターから解放されたとはいえ、まだ世間知らずの子供に変わりない。

 

そんな子供を1人で放置するわけにはいかねぇだろ?

 

それに他所で保護してもらうより俺の傍にいた方が安全かもしれない。

 

もちろん、フィーアの意思を尊重するつもりだ。

 

もし嫌だというなら、俺も無理強いするつもりはない。

 

するとフィーアはしばらく俯いて考え込んだ後に顔を上げた。

 

「…お願いします。迷惑じゃなければ、私を…ここに置いてください」

 

「迷惑なわけあるか。俺が提案したんだぞ?」

 

こうしてフィーアは正式にウチで暮らすことになった。




〜ライダーバトルに参加した男の末路〜

王蛇「ハアァァァァァァァァッ!!」

シザース(モブ男)「ほげええええええええ!!?」

王蛇「ッチ!!雑魚すぎて面白くもねえ!ああ…イライラするぜぇっ!!」

モブ男「や、やばい!!今のでカードデッキが壊れた!!」

ボルキャンサー「グルル…」

モブ男「え、ちょ、蟹くん?ナズェミテルンディス!」

ボルキャンサー「ギシャアアアアアア‼」

モブ男「ぎゃああああああっ!!?」

フラグちゃん「モブ男さーん!!」

モブ男「なんでこうなるんだよ…俺は…俺は…ハーレムを作りたかっただけなの、に…」

 モブ男 DEAD END

ボルキャンサー「ゲプッ…食べログ星2、と」


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リサイクルショップの女店主

テイコウペンギンの『カタツムリになるとどうなるのか?』から


ペンギン(カタツムリ)「『最強でん⭘ん』のゲーム言語には謎の『火星語』があるぞ!」

パンダ(カタツムリ)「だれが使うのそれ!?」

惣真(蛇)「ベルナージュとかだろ」

パンダ(カタツムリ)「使える人いるの!?だれなのそれ!?」

惣真(蛇)「火星の王妃」

ペンギン(カタツムリ)「他にも『グロンギ語』や『オンドゥル語』なんてのもあるぞ!」

※ありません


〜とある世界〜

美空「〜♪」

戦兎「ん?美空、それなんのゲームやってんだ?」

美空「『最強でん⭘ん』」




フィーアをnascitaに住ませてから数日が経過していた。

 

「おはようございます、惣真さん」

 

いつものように朝食の準備をしていると、フィーアが起きてきたようだ。

 

「おう、おはようフィーア」

 

俺は最近できた同居人に挨拶をする。

 

「もう少しでできるから待っててくれよな」

 

「はい」

 

その返事を聞いて俺はキッチンに立ちながら後ろを振り向く。

 

そこにはパジャマ代わりのTシャツを着たフィーアがテーブルについていた。

 

ちなみに今フィーアが着ているTシャツには「happy life.」というロゴが入っている。

 

………ウチにあんな服あったかな? そんなことを考えながらも俺はフライパンを振るう。

 

 

 

 

「なぁフィーア、今日服を買いに行かないか?」

 

「服、ですか?」

 

俺の言葉に朝食を食べながらフィーアは首を傾げる。

 

「服なら今のでも十分ですよ?」

 

フィーアの服装はTシャツに短パンだ。

 

だがそれではダメだ。

 

というのも、フィーアはずっとTシャツしか着てないのだ。

 

さすがにそれはどうかと思う。

 

女の子なんだし色々とおしゃれだってしたいはずだ。

 

俺はそう思って提案してみたのだが、当の本人はきょとんとした顔でこちらを見つめるだけだった。

 

「Tシャツは機動性と快適性に優れているので問題ありません」

 

いや、確かにTシャツは便利だけどさ。

 

けど女の子としてはそんなホテルおじさんみたいなセンスの服ばっか着るのはどうなんだろうか。

 

まあ本人がそれでいいっていうなら無理強いはできないんだけど。

 

俺が選んで買ってきてもいいんだが、実を言うと俺自身もファッションに関しては全くの無知だったりする。

 

それ故、nascitaにはほとんどTシャツしかないと言っても過言ではない。

 

そこでどうしたものかと考えていた時に以前nascitaに訪れたある人物が思い浮かぶ。

 

そうだ! あの人に相談すればなんとかなるかもしれない!! そう思った俺は朝食を終え、早速電話をしてみる。

 

数回のコール音の後、相手が出たようだ。

 

そして俺は用件を伝える。

 

すると向こう側の人物は訝しげな声で尋ねてくる。

 

『久しぶりに連絡してきたと思えば…お前、子供なんていたか?』

 

まぁ、当然の反応だよな。

 

「あ〜、実は訳あって預かっている子がいるんだが…まぁ、詳しい話はそっちに行って話すよ」

 

『ふむ、そういうことならわかった。じゃあその時に詳しく聞かせてもらうぞ』

 

「ああ、頼む」

 

俺はそう言って通話を切った。

 

「フィーア、朝食が済んだらちょっと出かける準備してくれ」

 

「?はい、わかりました」

 

俺の言葉にフィーアは不思議そうな顔をしながらも了承してくれた。

 

さて、それじゃあ行くとするかね。

 

 

 

 

 

そうして俺たちがきたのはとあるマンションに来た。

 

そのマンションのそばにはリサイクルショップがあり、その近くには「SALE」「50%オフ」の張り紙が付いた巨大なスライムや「業務用!」の張り紙が付いたマンションほどの大きさの大剣など用途のわからないものがたくさん置かれていて、とても風変わりな場所だ。

 

このリサイクルショップこそ、俺が連絡した人物がいる場所である。

 

フィーアと二人で店内に入ると店の奥にいた20代前半ぐらいの女性がこちらに気づいて近づいてくる。

 

「来たか、蛇塚」

 

「よぉ、久しぶりぃ…でもないかぁ」

 

「いや、かなり久しぶりなんだが?」

 

男勝りの凛々しい口調で話す女性はこのリサイクルショップの店長にして、この建物のオーナーだ。

 

ウチの喫茶店nascitaの常連であり、俺の正体(・・・・)を知る人間の一人である。

 

だがトッププレデターの件でnascitaを営業停止しずっと連中のことを調べていたから、会うのは実に3ヶ月半振りになる。

 

「それじゃあさっそく説明してもらうぞ。この3ヶ月全く音沙汰がなかった理由とその子について、な」

 

彼女は俺の服を握り締め後ろに隠れているフィーアに視線を配りつつ、まるで睨みつけるような視線で俺を見据えている。

 

どうも彼女は相当ご立腹の様子だ。

 

まぁ、そりゃそうだろう。

 

長い間nascitaを営業停止し音沙汰なしだった上、突然連絡してきたと思ったら子供の衣服を提供してほしい、だ。

 

怒るのも無理もない。

 

「まぁ、とりあえず話を聞いてくれよ。順を追って説明する」

 

俺はそう言って、彼女にこれまでの経緯を話した。

 

 

 

 

 

「———と、いうわけでこの子はうちで預かっているんだ」

 

「…なるほどな。それでその子のために服を提供してほしいと」

 

そう言って彼女は納得したように大きく息を吐いた。

 

「大体事情はわかった。いいだろう、用意してやる」

 

彼女は俺にそう言い、俺の後ろに隠れていたフィーアに目線を合わせるようにしゃがむ。

 

するとフィーアはビクッと体を震わせてさらに俺にしがみついてきた。

 

その様子にオーナーは気にせず話しかける。

 

「大丈夫だ。私はお前を傷つけたりなんかしない。だから安心しろ」

 

優しい声色で語りかけるオーナーを見て、フィーアは恐る恐ると顔を上げた。

 

それを見たオーナーはニッコリと微笑んでフィーアの頭を撫でる。

 

しばらくするとフィーアは落ち着きを取り戻した。

 

「落ち着いたか?」

 

オーナーが優しく問いかけると、フィーアはまだ少し怯えながらも小さくコクリとうなずく。

 

「じゃあ、お前に合う服をいくつか見繕ってやろう」

 

オーナーは立ち上がり、店の奥に入っていった。

 

フィーアもだいぶ落ち着いてきたようで今はもう俺の服から手を離している。

 

 

それからオーナーが選んでくれたいくつかの服を受け取り、早速フィーアに服を着せてやった。

 

白を基調としたワンピースで袖がふんわりとしたデザインになっており、裾にはフリルがあしらわれていてとても可愛らしい。

 

うん、なかなか似合っている。

 

ちなみに服代はもちろんタダではない。

 

金は払うと言ったが、 彼女は「nascitaの営業が再開してからでいい」と言ってくれた。

 

なので俺は彼女の厚意に感謝しつつ、オーナーの店を後にした。

 




少し短いですが今回はここまで。

今回はオーナーの登場です。

混血のカレコレでフィーアの次に好きなキャラです。


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悪夢からの救済者

〜意味がわかると怖い世にもヤベーイ物語〜 
『ハンバーグ』

パンダ「久々の外食だ〜!」

ペンギン「ここがシャチが言ってたとこか」

シャチ「はい!このお店のハンバーグすっごく美味しいんですよー!」

パンダ「でもこことても営業してるようには見えないよ?『閉店』って張り紙があるし…」

ペンギン「いや、よく見たらその上に『本日やってます』って張り紙がある」

シャチ「それじゃあ入店しましょっか」

ペンギンたちは店に入った。

ペンギン「…なぁ、この店本当にやってるのか?」

ペンギンの疑問も無理もない。

どの窓もブラインドが降りており、ドアの窓などは段ボールで覆われていた。

灯りはついてるものの薄暗く、おびただしいテーブルと椅子が広いホールに積み重ねられていて少し埃臭い。

シャチ「いつもこんな感じですよ?」

シェフ「いらっしゃいませシャチさん」

すると厨房から小太りの物腰が柔らかい男性が出てきた。

シェフ「おや?今日はお連れの方がいるのですね」

シャチ「はい!僕が働いている職場の先輩のペンパイとパンダさんです」

シェフ「そうですか。最初の料理が出来上がりますので、奥のフロアへどうぞ」

ペンギン・パンダ「…」

ペンギンたちはシェフに案内されたフロアに行くとそこには他の客たちがそれぞれテーブルに座っていた。

ペンギン「他に客がいるってことは、ちゃんと営業してるんだな…(だがなんだ…?この妙な雰囲気は…)」

パンダ「あれ?メニュー表がないね」

シャチ「ああ、このお店はハンバーグオンリーなんです」

パンダ「えぇ!?ハンバーグだけ!?」

シャチ「はい。でも凄く美味しいんですよ!」

シャチのがそういうと、他の客たちもコクリとうなずいていた。

それから少し待っているとシェフが

シェフ「お待たせしました」

と言いながら人数分のハンバーグを運んできた。

そしてそれをテーブルに置く。

それはまさに、鉄板プレートに乗った絵に描いたようなハンバーグで食欲をそそられる見た目をしていた。だが…

ペンギン(な、何だこの匂いは…)

ハンバーグから漂ってくる匂いはとても食欲をそそられるものではなかった。

シャチ「いただきま〜す!」

ペンギン・パンダ「い、いただきます…うっ!?」

シャチ「ん〜、やっぱり最高です〜」

ペンギン「ま、まずい…」

パンダ「うっ、オロロロロロロロロロロロ」

シャチ「ちょっ、パンダさん!?何してるんですか!」

シェフ「お、お口に合いませんでした?」

パンダ「なにこれ…食感も味も全て最悪だよ!!」

シャチ「そうですか?とっても美味しいですけど…もしかしてパンダさんって偏食なんですか?」

ペンギン「すまないが、俺もパンダと同意見だ。とても食べられたもんじゃない」

シェフ「えぇ!?そんなぁ…こんなに美味しいのに」

シェフ「申し訳ありませんでした。シャチさんのお連れでしたのでてっきり…すぐに別のものをご用意しますね」

それから少しして新しいハンバーグがやってきた。匂いも味も先ほどのものとは違い普通に美味しかった。

そしてペンギンたちは店を後にした帰りの道中、パンダとシャチは言い争っていた。

パンダ「今まで食べた肉で一番不味かったよ!」

シャチ「パンダさん!やっぱり失礼ですよ!」

パンダ「ほんとに不味かったんだよ!ペンギンもそうでしょ!?」

ペンギン「あ、ああ…(いや、あれは不味かったというより…まるで身体が受け付けなかったような…)」

シャチ「でも自分はすごく美味しかったですよ?他のお客さんだって美味しそうに召し上がってたじゃないですか!」

ペンギン(たしかに、シャチや他の客はみんな普通に食べていた…。俺とパンダの味覚がおかしいのか…?)




———あれ…ここはどこだろう?

 

気が付くと私は何もない黒い空間にいた。

 

どこまでも果てしない闇が広がるばかりで自分がどこに立っているのかさえ分からないような感覚に陥る。

 

『フィーア…』

 

ふと、後ろから私を呼ぶ不気味な声が聞こえる。

 

振り向くとそこには…誰もいない。

 

そう思った瞬間、地面から泥のようなものが滲み出て、溢れる。

 

泥は徐々に形を成してゆき、そして…人の形になった。

 

「ひっ……」

 

その人型のナニカはあまりに醜く、おぞましい姿をしていた。

 

鼻や口は無く、本来目がある場所にはぽっかりと穴が空いているだけでそこから絶えず真っ黒な泥が流れ落ちている。

 

私は恐怖を感じ、後ずさる。

 

『フィーア…あなたは何をしてるんですか…?』

 

「え…?」

 

『あなたは人類の発展の為に作られた道具なんですよ…?それなのに我々を裏切るなんて何を考えているのですか!?』

 

その声に聞き覚えがあった。

 

私がいた研究施設の研究員の声だ。

 

『あなたが裏切ったから、あなたが裏切ったせいで、お前のせいで、お前のせいで、お前のせいで、お前のせいで、お前のせいで、お前のせいで許さない

許さない許さない許さないゆるさないゆるさないゆるさないユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ

 

「い、いやっ…」

 

その悪意に満ちた言葉に思わず耳を塞ぐ。

 

もうこれ以上聞きたくない。

 

だがいくら目を瞑っても、どれだけ耳を抑えても、脳に直接語りかけてくるように聞こえてくる。

 

『フィーア…』

 

すると、人型のナニカの声が、男の声から少女のものに変わる。

 

その声にも聞き覚えがあり、私は顔を上げる。

 

目の前にいたのは相も変わらず泥で形成された人型のナニカだった。

 

だが穴ぼこしかなかった真っ黒な顔がぐにゃりと歪むと、少女の顔になった。

 

私はこの子のことを知っている。

 

私が最初にいた研究施設で廃棄品として処分された子だ。

 

『私は廃棄されて死んで…あなたは正規品に選ばれて生き残った…』

 

その声は恨みと妬みが混ざったような声で、私の心を蝕んでゆく。

 

『今度はあなたが死んで私が生きるのは…とぉうぜんのことよねぇ?』

 

やめて…もう許して…

 

『空っぽのあなたには生きる価値なんてない。————————早く死んでくれないかな

 

そう言うと彼女は、人型のナニカはボコボコと音を立ててその姿を変えていく。

 

そして現れたのは、あの研究施設でハザードレベルを上げるために戦わされた怪物—————————『スマッシュ』だった。

 

グオオオオオオオオォォォォォォォォォォォッッッ!!

 

スマッシュは咆哮を上げながら私に襲いかかってくる。

 

「い、いやぁぁぁぁぁ!!」

 

私は無我夢中で走った。

 

しかしどこを走っても黒い空間ばかりで景色が変わらない。

 

それでも走り続ける。

 

足を止めれば殺されてしまう。

 

やがて走るのも辛くなり、立ち止まる。

 

後ろを振り返ると—————スマッシュの姿はなかった。

 

『………はぁ』

 

どうやら撒けたようだ。

 

私はホッと胸を撫で下ろす。

 

 

 

立ちました

 

「え…」

 

あの不気味な声が聞こえ、私は再び前を向く。

 

そこにはさっきまでいなかったはずのスマッシュが立っていた。

 

スマッシュは私を叩き潰さんばかりに腕を振り下ろした—————————

 

 

 

 

「———はっ!?」

 

ベッドの上で目が覚める。

 

「ハァッ…ハァッ…ハァ…ゆ、め?」

 

汗がびっしょりで、心臓の鼓動も早い。

 

先程までの光景は全て夢だったのだ。

 

まだバクバクしている心臓を抑え、なんとか落ち着かせる。

 

時刻はまだ深夜の2時。

 

起きるにはかなり早すぎる時間だ。

 

もう一度寝ようと寝返りを打つ。

 

だが目を瞑ると夢の内容がフラッシュバックする。

 

またあの夢を見るのが怖くて眠れなくなってしまった。

 

私はベッドから起き上がり、部屋を出た。

 

 

 

 

 

惣真SIDE

 

深夜の2時頃

 

俺はブラッド族故睡眠を取る必要はないので、地下の秘密基地でエボルドライバーや武器のメンテをしていた。

 

「ふぅ〜これで完了っと」

 

全てのメンテナンスが終わり、椅子にもたれかかる。

 

ブラッド族だから身体的疲労はないとはいえ、気分的には疲れるものだ。

 

休憩がてらにコーヒーを飲もうと思い、地下室を後にした。

 

冷蔵庫から出て、カウンターに置いてあるコーヒーポットを手に取る。

 

ふと、背後で扉が開く音が聞こえ、振り返る。

 

「…惣真さん」

 

そこにはパジャマ姿のフィーアがいた。

 

起こしちゃったか?と思ったが、何やら様子がおかしい。

 

するとフィーアはトテトテとこちらに近づいてくると、俺の体にぎゅっと抱きついてきた。

 

「フィ、フィーア?」

 

フィーアは震えていた。

 

「…どうした?何かあったのか」

 

俺はフィーアを安心させるように頭を撫でながら優しく問いかける。

 

それから何分かしてようやくフィーアは開ける。

 

「惣真さん…一緒に寝てくれませんか…?」

 

フィーアは震えた声でそう言った。

 

「わかった、行こう」

 

「ありがとうございます…」

 

ブラッド族だから睡眠は必要ないと言っても寝れないわけじゃない。

 

久しぶりに寝るのも悪くないだろう。

 

俺はフィーアを連れて寝室に向かう。

 

フィーアはベッドに入ると、すぐに俺の腕の中に入ってきた。

 

俺はフィーアを抱き寄せ、背中をさすってやる。

 

「大丈夫だ。何も心配することなんてないからな」

 

「はい…おやすみなさい」

 

「あぁ、おやすみ」

 

俺はフィーアが寝静まるのを見守った。

 

 

 

 

フィーアSIDE

 

「…また、この夢…」

 

私はまたあの黒い空間にいた。

 

ごぽ…ごぽぽ…

 

ふと、後ろから大きな泡音が聞こえ、私は振り返る。

 

すると地面から泥のようなものが溢れ、ごぽごぽと泡立ってるのに気がついた。

 

そして…

 

グオアアアァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ‼

 

地面から泥と共に何かが飛び出した。

 

それは、スマッシュだった。

 

スマッシュは咆哮を上げ、太い腕を振りながら迫って来る。

 

「ひっ、い、いや!来ないで!」

 

私は逃げようと必死に走る。

 

だが、足がもつれて転んでしまった。

 

すぐに立ち上がろうとするが、腰が抜けて立てない。

 

すると、すぐ後ろにまでスマッシュが迫っていた。

 

いや…誰か…誰か、助けて………………………………………惣真さん……!!

 

そしてスマッシュは私に向かって、腕を振り下ろした。

 

私は目を瞑り、体を縮こませる。

 

 

 

しかし、いつまで経っても衝撃はこなかった。

 

ッ!…ッ!?

 

スマッシュの動揺する声が聞こえる。

 

「え…?」

 

不思議に思い、恐る恐る目を開ける。

 

そして私の目に映ったのは、スマッシュの振り下ろした腕が黄金の怪人によって掴まれている光景だっ

た。

 

黄金の怪人はもう片方の手に赤いオーラを纏い、その拳をスマッシュに叩きつける。

 

ッ!?グウゥゥゥゥッッ!!?

 

スマッシュは後方へ吹き飛ばされた。

 

黄金の怪人は自身の腰にベルトのバックルのように装着されたデバイスのレバーに手を伸ばし、それを勢いよく回す。

 

不気味なアレンジの交響曲第9番が鳴り響く。

 

グッ、グウゥ…ゥゥォォオオッッ!!!!

 

スマッシュは立ち上がり、雄叫びを上げながら、目の前にいる存在に向かって走り出す。

 

Ready go!

 

黄金の怪人の右腕にエネルギーが収束される。

 

そしてスマッシュが間合いに入った瞬間、

 

エボルテックフィニッシュ!Cia~o!

 

黄金の怪人はスマッシュにエネルギーを収束させた拳を叩き込んだ。

 

グオアアァァァァァ…

 

その衝撃によりスマッシュの肉体は泥となって崩れ落ち、黒い地面に沈んでいった。

 

黄金の怪人がこちらに振り返る。

 

口を開き舌を出す蛇を真横から見た姿の形状をした鋭い赤い目。

 

今にも襲いかかってきそうなコブラのような顔。

 

赤、青、金、といったとても鮮やかな色合い。

 

その装飾は複雑かつ凶悪でどこか禍々しい。

 

そんな異形の外見をした存在は私に歩み寄る。

 

そして、私の頭を優しく撫でる。

 

安心感と暖かさが私を満たしていく。

 

涙が頬を伝う。

 

黄金の怪人の表情は分からないが、なんとなく微笑んだ気がした。

 

 

 

「———はっ」

 

ベッドの上で目が覚める。

 

横を向くと惣真さんが寝ていた。

 

「…ん」

 

私は惣真さんにギュウッと抱きつき再び眠りについた。

 

それから悪夢をみることはなかった。

 





上司「あ〜、腹減ったな〜…おっ!こんなところにレストランがあるじゃないか!」

上司はその店に入る。

シェフ「いらっしゃいませ。奥のフロアへどうぞ」

上司がフロアへ行くと…そこに入った瞬間、そこにいた客たちが一斉に上司の方に振り向いた。

上司「なっなんだ!?」

客たちは何も言わず、ただじっと上司の方を見ていた。

シェフ「失礼しました。ここは満席なのでそちらの部屋へどうぞ」

上司「え、あ、は、はい…」

上司は戸惑いながらもシェフに促されるまま別の部屋へと連れて行かれた。

そして上司が連れてこられたのは厨房の続きの食料庫。

上司「なぜこんなところに…?」

シェフ「それではさっそく…」

上司「ん?」

突如、シェフは体から強烈な衝撃波と高熱を生じる。

そしてその姿を蟹を彷彿とさせる怪人へと変化させた。

カニアマゾン(シェフ)「調理させていただきます

上司「ぎゃああああああああ!?」





シェフ「お待たせしました」

シェフは手にハンバーグの皿を持ち、フロアにいる客たちにそう言う。

シェフが着ているコックコートには血がべっとりと付着していた。

しかし客たちはそのことを気に留めることなくハンバーグに舌鼓をうつ。

シェフは満足気にその様子を見回していた。


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父と娘

医者「あなたにお話があります。どうか、落ち着いて」

医者「あなたは前回の更新からずっと昏睡状態だった」

医者「ええ、ええ、わかってます。どれくらいの長さか?」

医者「あなたが眠っていたのは—————————2ヶ月半です」

鬱エンドフラグ「っっっ!!!??」(体にオレンジ色のノイズが走る)

医者「まずい!!」

医者「看護師(ナース)!ゲーマードライバー!ライダーガシャット!」

医者「これより緊急オペを開始する!」

<タドルクエスト!>

<ガッシャット‼︎>

『let'sgame!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム⁈ I'm a 仮面ライダー』




喫茶店『nascita』

 

ここはコーヒーはもちろんのこと軽食メニューがおいしい魅力の場所だ。店内にはクラシック音楽が流れており、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

 

その店内にまた一人足を踏み入れる。

 

ドアを開けると、ふわっとコーヒーの香りが客を歓迎し、ここが喫茶店だということを実感する。

 

扉は開けた際にベルが鳴る仕組みとなっている。

 

来客を告げる音に反応し、カウンターの奥にいた一人の少女が顔を上げる。

 

「いらっしゃいませ!」

 

明るい声を出しながら立ち上がり、額から角の生えた少女は金髪のポニーテールを揺らしながら客の元へ駆け寄る。

 

「お一人様ですか?」

 

nascitaの看板娘は今日も笑顔で接客をする。

 

 

 

フィーアSIDE

 

 

『人類の発展の為』

 

そんなことを毎日研究者達に何度も聞かされ、私も自身にそう言い聞かせつらい実験に耐えてきた。そうしなければ私は確実に壊れていたから…。

 

でも正規品に選ばれ、別の施設に移されてからが本当の地獄だった。

 

異宙人、キメラ、ガーディアン、スマッシュ…

 

送られた施設でよくわからないガスを浴びせられてからは何度も何度も化け物と戦わされる日々が続いた。

 

 

『うぅ…ぐ…っ…』

 

 

何時間も戦わされ私は遂にその場にドサッと倒れてしまう。

 

しかしそこにガーディアンたちが私を囲み容赦無く蹴りを入れる。

 

 

『あがッ⁉ぐぅッぅぁああああああああッ』

 

 

ガーディアンたちの金属の足がまだ幼い私の体を傷つけていく。

 

一体のガーディアンの足が私の腹部に直撃する。

 

 

『ゔっ!?…うっ…ッ…ゔぉぇぇ…!!』

 

 

私はたまらず嘔吐してしまった。

 

それでもガーディアンたちは攻撃をやめなかった。

 

その様子を観察している研究者たちの顔は嗜虐的な笑みを浮かべていた。

 

その時、私はここに来る前失敗作として廃棄された子たちを羨ましく思った。

 

あの子たちはこの地獄を味わうことも知ることもなく解放されたんだから。

 

何度も繰り返される実験は私の身も心も壊していった。

 

…もういっそ人形のように空っぽになってしまおう…。

 

そうすれば恐怖も不安も、痛みも苦しみも感じなくなる……。

 

そうだ。私は兵器なんだ。兵器は兵器らしくただ命令に従っていれば良い。

 

そんなことを考えていたこの時の私の目はきっと虚ろになっていたのだろう。

 

しかし私の運命を変える出来事が起きた。

 

 

その日の実験が終了して私は牢屋へと戻り就寝した時のことだった。

 

突然警報が鳴り響き慌ただしい雰囲気に包まれる。

 

 

その音で私は何事かと思い目を覚ますと突然研究員が牢屋に入ってきた。

 

 

『あの…一体何が…』

 

 

『我々は現在襲撃を受けているっ!!あなたには襲撃者と戦闘し、我々を守るという大変名誉な役目を与えます。今すぐ準備しろっ!!』

 

 

私はこの時、自分が兵器として使われるのだと悟った。

 

 

『………はい』

 

 

私は黙ってコクリと首を縦に振った。

 

私は研究員からドライバーとボトルを渡され、襲撃者がいる場所へと向かった。

 

着くとそこにいたのは————黄金の蛇。

 

コブラを彷彿とさせる顔。それはまるで神様にも牙を剥くような鋭い目つき。

 

金色を中心としたパーツがごちゃごちゃした装甲はとても禍々しい。

 

怪人が放つオーラに私は気圧される。

 

勝てない。次元が違う。

 

戦闘で培った私の勘が告げる。

 

 

『良いですかフィーア?アレは人類の敵です!!そして我々は人類の味方!!つまりあなたの仕事はライダーシステムを使って奴を殺すこと!!殺せなくても奴を足止めし、我々科学者という人類の発展に必要な財産が逃げるための時間を稼ぐことです!!』

 

 

『…はい』

 

 

しかし兵器である私に拒否権などない。ただ命令に従うだけ。

 

私はボトルをドライバーに装填した。

 

 

『Rider system standby, Ready?』

 

『…変身』

 

 

そしてドライバーのレバーを押し込み、変身————することはなかった。

 

 

『ッ!アァッ!アァ、ァァァアアッ!!』

 

 

全身がバチバチと電流が走った様な感覚に襲われ、私は倒れてしまった。

 

変身に失敗した。原因はわかりきってる。ハザードレベルが足りなかったからだ。

 

そのため凄まじい拒絶反応に襲われた。

 

研究員たちもわかっていたはずなのに私を駆り出した。

 

きっと藁にもすがりたい思いだったのだろう。

 

研究員の一人が私に怒鳴りつける。

 

立ち上がろうにも体が言うことを聞かない。

 

そうこうしてるうちに黄金の怪人は目の前にいた。

 

ああ…私ここで死ぬんだ。

 

あんなに苦しい思いしたのに、兵器としてすらろくに使われないまま終わるんだ。

 

私の人生は、何だったのだろう。

 

何のため、生まれてきたんだろう。

 

でもよかった…。これで私も解放されるんだ。もう戦う必要なんてないんだ。

 

これでやっと…私も———————————————————————————————————————————————死にたくないなぁ…

 

 

そして怪人は私に近づき—————

 

 

 

 

ポン

 

 

 

 

私の頭に手を置いた。

 

 

 

『え…?』

 

 

私は一瞬何をされたか理解できなかった。

 

目の前の怪人が私の頭を撫でた…?

 

私は恐る恐る顔を上げる。

 

 

『少し待っててくれ』

 

 

蛇を彷彿とさせるフルフェイスからは考えられない優しい声色でその怪人は言った。

 

戸惑う私を差し置き、怪人はいつの間にか研究者たちの前まで移動していて、両手からエネルギー弾を放ち研究者たちを吹き飛ばした。

 

何がどうなってるの…?

 

私が困惑してると怪人が私の方に歩いてきた。

 

 

『立てるか?』

 

 

『え、あ…は、はい』

 

 

手を差し伸べられ、私も戸惑いながら手を伸ばした。

 

体が痛むが、怪人の手を掴みなんとか立ち上がった。

 

すると

 

 

『ハァ…!ハァ…!どうせ人類の敵になるなら…処分するしか無いですねぇ…!!』

 

 

『ア…ッ、アア……アァッ!!』

 

 

突然苦しくなり、私は倒れる。

 

何をされたかはすぐわかった。

 

私の首に装着された首輪から毒が注入されたのだと。

 

ああ、今度こそ死んでしまう…

 

私が諦めかけたその時、怪人が私の体に手を当てる。

 

するとさっきまでの苦しみが嘘のように消えていった。

 

そこで私の意識は途絶えた…。

 

 

目が覚めると私はベッドの上に寝ていた。

 

研究所にいたときは部屋の隅の地面で寝ていたので今思えばベッドで寝たのはこれが初めてだった。

 

 

『おっ、目が覚めたか!』

 

 

声のする方に向くとそこには白いシャツの男の人がいた。

 

男の人の名前は蛇塚惣真さん。

 

どうやら今私がいる喫茶店『nascita』の店主であり…あの時、研究所を襲撃した黄金の怪人だった。

 

話によると私が意識を失った後、研究員がヤケになり研究所内の全てのガーディアンの自爆機能を作動させ研究所を爆破したらしい。

 

それを察知した惣真さんが咄嵯に助け、この喫茶店で保護してくれたそうだ。

 

 

『…どうして、私を助けたんですか』

 

 

私は聞いた。助けても、貴方にはなんの利益もないはずなのに。

 

私の質問に惣真さんはこう答えた。

 

 

『お前からトッププレデターについて知ってるかぎりの情報を聞きたかったからだな。それに、子供をあんな場所に放っておくわけにはいかないだろ?』

 

 

前半はまだ納得できるが後半の言葉の意味がよく分からなかった。

 

子供だから?そんな理由だけで?

 

私が沈黙していると惣真さんが口を開いた。

 

 

『腹減ってないか?飯、用意してるからさ』

 

 

私は惣真さんにリビングのテーブルの前まで案内され、椅子に座った。

 

そして出されたのは一杯のお粥とお皿に乗った黄色い物体。

 

私は戸惑ったがお腹が空いてるのは事実だし惣真さんに促され、私はフォークで黄色い物体…卵焼きを恐る恐る口に運んだ。

 

…美味しい。

 

初めて食べた温かい食事に気づけば私は涙を流していた。涙の流し方なんてとっくに忘れてたはずなのに…

 

私は涙を流しながら卵焼きとお粥を平らげた。

 

食べ終わった後、私は惣真さんに今までのことを話した。

 

『デュアルコアプラン』、『ライダーシステム』、私自身のことやあの施設で受けた実験のことまで。

 

話し終えると惣真さんの顔が段々と険しくなっていった。私が心配し声をかけると惣真さんはすぐに元の表情にもどった。

 

すると親はいるのかと聞かれ、私は首を横に振った。私を含め実験体に親はいない。もしかしたらいたのかもしれけど…

 

次にこれからどうしたいと聞かれ、私はわからないと答えるしかなかった。

 

私は生まれた時からトッププレデターの兵器になることを強いられてきた。それ以外の生き方を知らない。かといってまたあの地獄に戻りたいとは思わない。

 

惣真さんは少し考えたあと、こんな提案をしてきた。

 

 

『なぁフィーア、よかったらここに住まないか?』

 

 

『住む…?ここに、ですか?』

 

 

『ああ、他のとこで保護してもらってもいいんだが、お前の安全を考えると俺の近くにいたほうがいいと思うんだ。もちろん無理強いはしない。フィーアの意志を尊重する』

 

 

なぜこの人はここまで親身になってくれるのだろう。私は迷い少し考えてから答えた。

 

 

『…お願いします。迷惑じゃなければ、私を…ここに置いてください』

 

 

会ったばかりの人を信用するのは早計だと思う。でもこの人なら信用できると思ったから。

 

そうして私は喫茶店nascitaに住むことになった。

 

 

 

惣真SIDE

 

やぁ、みんな!俺だ!nascitaのマスターこと蛇塚惣真だ!

 

フィーアをnascitaで保護してから5年近く経った。

 

短かった髪も長くなりポニーテールに纏めている。

 

表情も最初の頃と比べ豊かになり、よく笑うようになった。

 

いつだったか、ある日フィーアが料理の作り方を教えてほしいと頼んできたことがあった。

 

理由を尋ねると、「私は惣真さんにお世話になってばかりで何も返せていない」とのこと。

 

そして、何か自分に出来ることはないかと考え、そして思いついたのがnascitaの手伝いをすることだそうだ。

 

そのためにも料理を覚えたいと言ったのだ。

 

俺は少し迷ったが、フィーアがこうやって自分から何かをしたいと言い出したのは初めてであり嬉しく思った。

 

それにnascitaの手伝いはともかくとして、料理を覚えるのは良い事だろうと思い快く

承諾した。

 

その日から俺はフィーアに料理指導を始めた。

 

最初は包丁すら握ったことがなかったフィーアだったが、毎日練習するうちに上達していった。

 

当然失敗も多くあった。

 

焦がすこともあれば、普通の材料で作ったはずなのにカレーが紫色になったりもした。

 

その度にフィーアがシュンと落ち込み、俺が慰める光景はもはや日常となっていた。

 

しかしそれでもフィーアは諦めずに一生懸命に頑張り続けた。

 

そうしてようやく、nascitaでお客さんに出せるレベルの料理を作ることが出来るまでになった。

 

そんなこんなでフィーアの特訓の成果もあって今では立派なnascitaの看板娘である。

 

 

(子供の成長は早いものだなぁ)

 

なんてしみじみ思っていると…

 

「ゴハアァァァッ!!??」

 

突如一人の男性客が口からコーヒーを吹き出し椅子ごと後ろに倒れ込み、ドガシャンッッ!!と大きな音を立てる。

 

その音に他の客も驚き、何だ何だと倒れた男性客の様子を伺う。

 

 

「ちょ、ちょっと!?大丈夫お客さん!?」

 

 

俺は慌てて駆け寄ると男性客はピクピクと痙攣し、白目を剥いていた。

 

ふと俺が目を落とした先に、男性客が倒れる直前に飲んでたであろう、コーヒーカップがあった。

 

カップは床に落ち割れており、中身がこぼれてしまっている。

 

しかし問題はそこではない。

 

それはコーヒーというにはあまりにもドロリとしており黒く濁った色をしているではありませんか。

 

これはどう考えても俺が淹れたコーヒーじゃない。

 

こんな暗黒物質生み出せるやつは一人しかいない。

 

「フィーア、まさかとは思うが…お前コーヒー淹れたか?」

 

「あ、はい。お父さんが料理を作るのに忙しそうだったので私が代わりに淹れました」

 

「お前が作るコーヒーは特級呪霊も即昇天するレベルの劇物なんだから絶対に入れるなとあれほど言っただろ!」

 

「ご、ごめんなさい!今日はうまく作れそうな気がして…」

 

俺はフィーアを叱り、フィーアが申し訳なさそうに頭を下げる。

 

実はフィーアは料理は作れるようになったのだが、ただ一つだけ、コーヒーをいれると何故かヤベーイぐらいに激マズになるのだ。

 

それもビルド本編のエボルトが寄生しているのではないかと疑いたくなるレベル。

 

以前フィーアのコーヒーを飲んだことがあるが、あまりの不味さにぶっ倒れたことがある。…いや違う。脳が不味いことを認識する前に倒れたんだ。

 

その時一瞬「立ちました!」と言いピコピコハンマーがついた鎌を持った『死亡』と大書された黒いTシャツを着た女の子が見えた気がするが幻覚だろう。

 

ブラッド族である俺ですらこうなるんだから、お客さんが飲んだら大事件だ。

 

だからフィーアには絶対にコーヒーを作らないように厳重に注意していたというのに…

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

フィーアは男性客に駆け寄り声をかける。

 

すると男性客はゆっくりと瞳を開けた。

 

「────………まっぱだカーニバル

 

男性客は虚な目をしており、機械のような抑揚のない声で喋った。

 

………やっちまったあああああああああああああああああああああぁぁ!!!

 

完全に何らかのダメージ負ってるよ!!どうしてこうなった!? …あ、フィーアのコーヒーのせいか。

 

「えっと、どうしよう“お父さん”?もう一度私のコーヒーを飲ませてショックを与えたら治ったりとかしませんかね?」

 

「治るわけないでしょうが!昭和のブラウン管テレビか!!」

 

俺はよくわからないツッコミをしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは…ある男の始まりの夜(ビギンズナイト)

 

 

 

 

「カゲ…好きだよ」

 

 

「私はカゲチヨを愛してます」

 

 

「ヒビキーーー!!」

 

 

 

「え…?ヒビキ…?シロウ…?」

 

 

「うわああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

「血を吸ったんすか?」

 

 

「いや血を与えた。眷属にしたんだ」

 

 

「上手く行けば、吸血鬼とゾンビのハーフの完成だ」

 

 

 

 

「…してやる…絶対に殺してやる…!!」

 

 

 

 




長らくお待たせしました。

書きたいものはあるのにそれを書くための文章力がない…

プライベートで忙しく後回しにしてたら2ヶ月以上たってもうた…

コメントも全然返せてなくてごめんなさい…

あ、あと気づいたら10000UA突破してた。ありがとうございます。

次の更新はいつになるかわかりませんがド〇えもんのような温かい目で見守ってもらえると幸いです。


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不穏な陰影

上司「あああああああああ〜〜〜〜!!!」

パンダ「どうしたんです?上司」

上司「ぺ、ペンギンが…『ZAIAエンタープライズ』にヘッドハンティングされたーっ!!」

パンダ「えっそうなの?」

ペンギン「本当だ」

パンダ「上司〜実は僕も『スマートブレイン』って企業にスカウトされてるんですよ〜」

上司「なっ、なにいいいいいいい!?」

シャチ「あ、上司さん。僕も野座間製薬という製薬会社から声がかかってます」

上司「ファッ!?」

シャチ「ペンパイと違う職場になるのは寂しいですけど、もうこんなブラック企業にはうんざりなので転職しますね!」

上司「お前ら〜!!この会社への恩はないのか!?」

ペンギン「そんなもんあるわけない」



とある繁華街

 

「待てゴラァ!!泥棒ー!!」

 

「待ちやがれクソガキィ!!」

 

「ハァ…!ハァ…!ハァ…!」

 

一人の少女がどこかの店の従業員らしき服装の男達に追いかけられている。

 

少女は腕にパンや果物などの食べ物を抱えており、恐らく彼らの店から盗んだ物だと思われる。

 

少女は咄嗟に路地裏に駆け込む。

 

「クッソ!!どこいきやがったあのガキ!!」

 

少女は物陰に隠れながら自身を追いかけてきた男達が去るのを待つ。

 

「…ハァ〜」

 

男達の姿が見えなくなったのを確認すると少女は脱力したように猫耳と二本の尻尾(・・ ・・・・・)を垂れ下げる。

 

「…チキショウ」

 

少女は悪態をつきながら人気のない道を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニャー」

 

「はいはい、今日も用意してますよ」

 

喫茶店nascitaの裏の勝手口から出た場所で、フィーアは一匹の野良猫に餌を与えていた。

 

少し前にフィーアは店の近くでうろついていた野良猫に残飯を与えた。

 

それからその野良猫は毎日決まった時間帯に現れるようになったのだ。

 

さらに乗った残飯を野良猫は嬉しそうに食べているのでフィーアも何時しかこの時間が楽しみになっていた。

 

「フフッ、本当に可愛いですね」

 

フィーアはその猫を撫でようと手を伸ばす。

 

 

パシッ

 

 

しかしその手は猫の肉球で弾かれてしまう。

 

猫はゴロゴロと喉を鳴らして餌を食べるのを再開した。

 

「…」

 

フィーアは真顔になりつつも再び猫を撫でるために手を伸ばす。

 

 

パシッ

 

 

またしてもフィーアの手は猫の手で払われた。

 

「…」

 

フィーアは無言で猫を睨みつける。

 

そして目に見えぬ速度で猫に手を伸ばす。だが猫はそれと同じ速度でフィーアの手を払い除ける。

 

それでもフィーアは諦めず何度も猫に触れようとするが、

 

シュッ  パシッ  

 

シュッ  パシッ  

 

シュッ  パシッ  

 

シュッ  パシッ 

 

猫も負けじと爪を立ててそれを拒む。

 

「…あぁぁぁもうっ!!少しぐらい触らせてくれたっていいじゃないですかああああああああ!!!」

 

フィーアは猫相手に本気でキレる。

 

なぜこうも抵抗されるのか。自分はただこの愛くるしい生き物に触れたいだけなのに…。

 

その後もフィーアと野良猫の攻防は続いた。

 

 

 

 

 

同日、深夜

 

「目の前でイチャつくカップルがいてよ、あーゆー奴らが幸せそうにしてんの見るとイライラすんだわ」

 

ここはどこかのオフィスビル。

 

「そんでよ、そのクソカップルの男をボッコボコにしてやったわけよ!そしたら女がもうやめてって泣きながら俺にすがりついて来てよぉ!」

 

オフィスで一人の男がソファーに座りながら部下達に自慢げに話していた。

 

男はドレッドヘアで蛇柄の赤いスーツを着ており、その風貌は誰が見てもカタギの人間ではない。

 

男の名は蝮谷キワミチ。府露斗会という暴力団組織の若頭である。

 

「兄さんってカタギに手を出してもいつもマッポ共に許されてますよね?なんでですか?」

 

話を聞いていた一人の構成員がキワミチに素朴な疑問を投げかける。

 

「あ?あー、テメェは新入りか」

 

「はい」

 

「俺ぁ、マッポ共のカシラの家族と友達なんだよ」

 

「どういうことですか?」

 

「マッポからもらった際どい仕事やってんだよ。主に異宙関係のな。だからマッポ共は俺を捕まえられねー。だから、俺は自由だ」

 

「さすが兄さん!」

 

構成員はキワミチを褒め称える。

 

その時だった。

 

ドガァァァッ!!

 

突如オフィスのドアが轟音を立てて吹っ飛んだ。

 

「な、なんだ!?」

 

突然の出来事にキワミチ達は驚く。

 

するとドアの先から現れたのは…

 

「復讐の時間だ」

 

異形の怪物だった。

 

(な、なんだこいつは…異宙人…なのか?)

 

キワミチは目の前の怪物を見て動揺する。

 

人型で上半身は茶色、下半身は青の身体をしており、顔には二つの大きな複眼がついていて水平方向に伸びた四角い瞳孔をしている。

 

頭部からはねじれたツノを生やしており、それは『山羊』を彷彿とさせる。

 

両腕にもそれぞれ同様のツノが一本づつ生えていおり、まるでドリルのよう。

 

そして何よりその全体的なフォルムはメカニカルな意匠を纏っており、生物というにはあまりに無機質な見た目をしていた。

 

キワミチは今まで警察からもらった仕事の関係で多種多様な異宙人を見てきたが、こんな化物は見たことがなかった。

 

「我が名は〝ジャッジ〟。貴様らゴミ共に裁きの鉄槌を下す」

 

ジャッジと名乗ったその怪物の声に呆けていたキワミチ達は我にかえる。

 

「な、なんじゃテメェは!」

 

「誰に喧嘩売ったのか分かってんのかコラァ!!」

 

キワミチの部下達は銃やドスを手に取り戦闘態勢に入る。

 

するとジャッジは腕のドリルを回転させると、凄まじい速さで回転させ、目にも止まらぬスピードで動き出す。

 

次の瞬間二人の構成員がジャッジのドリルで体を貫かれ絶命した。

 

(っ!?は、早いっ!!)

 

キワミチは驚く

 

更に他の構成員達もジャッジのドリル攻撃を避けきれず、次々と体を引き裂かれ物言わぬ肉塊となり、残りはキワミチ一人となった。

 

一瞬にして部下達全員が殺されたことにキワミチは戦慄した。

 

ジャッジはキワミチの元にゆっくりと歩み寄る。

 

「は、はは。なんなんだテメェは、いったい誰からの差し金だ」

 

キワミチは怖気づくのを悟られぬよう不遜な笑みを浮かべ傍ら置いていた日本刀を引き抜く。

 

「私は、貴様らのような法で裁けぬゴミ共に鉄槌を下す者」

 

「ハッ!そうかい、警察がダメじゃ俺を殺すしかねーもんな!」

 

キワミチは強気な態度で挑発する。内心は焦っていたが彼にはこの状況を切り抜ける自信があった。

 

(落ち着け…俺には奥の手がある)

 

するとキワミチはジャッジに気づかれないように日本刀の刃で自身の指先を浅く切りつけた。

 

そしてキワミチはジャッジに向かって走り出した。

 

実はキワミチには特殊能力がある。

 

それは…ヒュドラの毒

 

『ヒュドラ』

 

それは異宙で、ある生物を除いて(・・・・・・・・)最も強力な毒を持つと言われる。

 

キワミチは一度、ヒュドラの毒に侵されたことがある。

 

だが奇跡的に抗体があり、九死に一生を得た。

 

それどころかヒュドラの毒を自由に操る能力を得た。

 

それもあってキワミチは警察から異宙関係の仕事を任されるようになった。

 

普段なら自身の爪を使って相手の皮膚を傷つけそこから毒を注入するのだが、目の前の怪物の外殻からして生爪では傷つけることは困難と判断したキワミチは自身の指を切りつけ、血液をつけた刀で突き刺し、直接毒を体内に送り込むという荒業に出ることにしたのだ。

 

キワミチは刀を突き刺さん勢いで構える。

 

ジャッジは避ける素振りすら見せず、ただ棒立ちのまま動かない。

 

(馬鹿め!!そのまま突っ立ってろ!!)

 

キワミチは勝利を確信した。

 

そして刀はジャッジの腹に深々と突き刺さる———ことはなかった。

 

刀はジャッジの外殻に傷ひとつつけることなく刀身が砕けた。

 

「あ…あ…あぁ…」

 

キワミチは最後の手段が失敗に終わったことに絶望し戦意喪失する。

 

するとジャッジは左手でキワミチの首を掴み持ち上げた。

 

「グッ…ゲェェ…ヒャめ…やめろ…ォ」

 

キワミチは首を掴まれ呼吸が出来ずもがく。

 

——ギュイイイイイイイイイイイイイイイ!!

 

しかしジャッジは気にすることなく右腕のドリルを高速回転させる。

 

そしてジャッジはドリルを振り上げ、キワミチの体を貫いた。

 

「アグッ、ゲェ…ゴフゥゥッ…」

 

ドリルが背中から突き出され、キワミチは血反吐を撒き散らしながら息絶える。

 

ジャッジはキワミチが事切れたのを確認すると亡骸を放り投げた。

 

辺り一面肉塊が浮かぶ血の海。

 

その中心にいるのは山羊の異形一人。

 

「この街のゴミは全て綺麗に掃除する。それが私に与えられた使命だ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日付が変わりかける時間帯。

 

一人の少女が暗い夜道を歩いていた。

 

少女は茶髪で頭には猫耳が生えており、臀部には二本の尻尾が生えている。誰の目から見ても異宙の住人だということがわかる。

 

少女が着てるのはボロボロの薄手の服。その格好から少女が訳ありだということが伺える。

 

「あー、猫缶食いてぇ…ニ”ャッ!?」

 

少女は前から走ってきた人影にドンッとぶつかり、その衝撃でよろける。

 

「イテテテ…おい!気をつけろよ!」

 

少女はぶつかった相手に向かって怒鳴った。

 

だが、すでにそこには誰もいなかった。

 

「…ハァー、なんなんだよ……ん?」

 

すると少女は、近くに何かが落ちていることに気付く。

 

少女はそれを拾い上げる。

 

「さっきの奴が落としてったのか…?」

 

拾い上げたそれは筒状の小さな容器のようなもの。

 

容器は紫色のクリア素材でできておりキャップ部は茶色く、容器の側面には———————銀色の『山羊』のマークが刻印されていた。

 




上司「な、なにいいいい!?お前らも辞めるだとぉ!?」

戦極凌馬「ええ、私は『ユグドラシル・コーポレーション』に、ドクター真木は『鴻上ファウンデーション』に、ね」

真木清人「そういうことになります」

上司「ま、待ってくれ!!技術開発部の中でも特に優秀な人材であるお前らに抜けられたら…某企画はおしまいだ!!」

真木清人「いいではありませんか。この会社は終わらせるべきです」

戦極凌馬「それでは失礼させてもらうよ。この会社は破滅する。それが某企画の、運命…」

真木清人「今まで、お世話になりました。良き、終末を」

上司「いやああああああああああ見捨てないでくれええええええええ」


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ネコ娘との出会い

「なぁ、フィーア。コーヒーを淹れたんだよな?」

 

「はい!今回はうまくできたと思います!」

 

俺の問いに対してフィーアは満面の笑顔を浮かべながら自信ありげに答える。

 

俺はその笑顔を見て苦笑いしながら再びカップに目を向ける。

 

カップの中には…黒い球体が生物のように蠢いていた。

 

「フィーア、もう一度聞くぞ?コーヒーを淹れたんだよな?」

 

俺は再度確認を取るように尋ねる。

 

フィーアは首を傾げる。俺の質問の意図を理解していないようだ。

 

俺はフィーアが作った謎の物体Xを見つめる。

 

うん、どう見てもこれは飲み物ではないよな?

 

それに何だか禍々しいオーラを感じるんだが……。

 

「これって飲んで大丈夫なのか?」

 

「今回は大丈夫です!飲めます!十中八九!多分!きっと!おそらく!ひょっとしたら!」

 

喋るたびに可能性下がってない?

 

…あーもう考えたって仕方ない!! どちらにしろ俺が毒味しないといけない。

 

俺は意を決してカップを手に取り黒い球体に口をつける。

 

黒い球体のプルンッとした感触。その感触に、え?ゼリー?と思った次の瞬間、気持ち悪い舌触りが口に広がった。

 

味は全くしない。ただただ得体の知れない感覚が襲ってくるだけだ。

 

俺はなんとか口の中のものを吐き出さないよう堪えて飲み込んだ。

 

そして…

 

「…ぐふっ」バタリ

 

「お、お父さーん!?」

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか?お父さん?」

 

「ハァーッ…ハァーッ…ああ、問題ない。それよりお前にコーヒーを作らせてはいけないことが改めて理解した…」

 

「そ、そんなことありません!私だって少しは上達してるんです!!」

 

「ほう、さっき飲んだあの物体、ヒ素や青酸カリより遥かに毒性が高かったんですが?」

 

俺が人間だったら即死だぞ?

 

俺の言葉を聞いてフィーアが「ええ!?」と言って驚く。

 

フィーアの作るコーヒーは下手すると命に関わる。

 

料理は美味いんだけどなぁ、どうしてコーヒーだけ…。

 

やはりフィーアにコーヒーは絶対に作らせないようにしよう。

 

俺はそう心に誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビーフキノコ買えてよかった〜。これシチューに合うんですよね〜」

 

あ、どうも皆さん。フィーアです。

 

私は今、お父さんからおつかいを頼まれて、近所の商店街に買い出しに行って、その帰りです。

 

「…今日もコーヒー失敗したなぁ」

 

どうしていつもうまくいかないんでしょう…。

 

はぁ…とため息をつきながら電化製品店の前を通り過ぎようとした時、店頭に並ぶテレビに流れるニュースが私の耳に入ってきた。

 

『——殺害された男たちは府露斗会という暴力団組織で、現場の状況から2日前に起きた振り込め詐欺グループ襲撃事件と同一犯だと思われ…』

 

…なんだか最近こんな事件が多いですね。

 

この前は詐欺グループ、その前は不良や半グレ集団、そして今度はヤクザですか…。

 

悪人、犯罪者ばかりが狙われてますよね。

 

まさか…拷問ソムリエが!?

 

私は最近youtubeで観た動画を思い出しながらnascitaへ帰ろうとした。

 

「おいっ!!テメェ!!今ぶつかっただろ!!」

 

「な、なんだよお前!!」

 

すると猫耳の女の子が柄の悪い男に絡まれているのを目にした。

 

 

 

 

 

 

 

「おいっ!!テメェ!!今ぶつかっただろ!!」

 

「な、なんだよお前!!」

 

街中で少女と男が揉めていた。

 

少女は頭に猫のような獣耳が生えていて、尻尾もついている。男の方は大柄で肌は緑色、額から2本のツノを生やしている。

 

誰が見ても少女と男は異宙人だということがわかる。

 

「だからぶつかってないって言ってるだろ!」

 

少女は反論するが、男は興奮しており聞く耳を持たない。

 

それどころか逆上し、さらに詰め寄っていく。

 

「い、言いがかりだっ…アガッ!?」

 

「ガアアアアアアアア!!」

 

男は少女の首に腕をかけ、持ち上げるとそのまま締め上げ始める。

 

「オイオイ…あれヤバくね?」

 

「誰か止めろよ…」

 

「異宙人同士の喧嘩なんてほっとけよ」

 

「ははっすげ、これ絶対バズるわ」

 

周りの人達は誰も助けようとせず遠目で眺めていた。

 

それどころかこの状況を撮影し、SNSに投稿する者までいた。

 

しかしこれは仕方がないことだろう。

 

周囲にいるのは全員人間。

 

人間と異宙人とでは力に差がありすぎる。

 

関わり合いたくないのが普通だ。

 

(…ちくしょう)

 

少女は男に締められてる間、首の圧迫感に苦しみながら思う。

 

(私が一体何をしたっていうんだよ…。なんで私がこんな目に遭わないといけないんだよ!)

 

少女は悔しさから涙を流した。

 

男の首を絞める力が強くなり、少女の意識が遠退き始める。

 

(…みんな嫌いだ)

 

そんなことを考えながら、少女の意識が闇に落ちようとしていくその時だった。

 

「とうっ!」

 

「があっっ!!?」

 

突如何者かが男の頭部に蹴りを入れる。男は頭に衝撃が走り、少女を締め上げてた腕の力が緩む。

 

そして少女はそのまま地面に落ちた。

 

「ゲホッ…ゴホッ…い、一体、何が…」

 

少女は突然の出来事に困惑する。

 

「大丈夫ですか?」

 

すると少女を助けたであろう人物の声が聞こえてきた。

 

少女は声の主の方を見ると、そこには金髪のポニーテール、額から緑色の角が生えた、自身よりも年上の少女が立っていた。

 

「ッガアアアアアアアアア!!ナメんじゃねえええええ!!」

 

すると男は激昂し、金髪の少女に向かって殴りかかろうとする。

 

しかし金髪の少女…フィーアはそれを難なくかわす。男は拳を振り回すが、その攻撃は全て空を切る。

 

フィーアは男の攻撃を全て見切っているようだ。

 

そしてフィーアは隙をついてカウンターで男のみぞおちに蹴りを入れた。

 

「ゴッハァ……!?」

 

男は蹴られたみぞおちを押さえ、喉にこみあげる不快感を抑えつつ膝をつく。

 

一方フィーアは、先程までの戦闘が嘘のように落ち着いた様子で男を見下ろしている。

 

「まだやりますか?」

 

「っ…………クソがっっっ!!!覚えてろよっっ!!!」

 

フィーアが問いかけると、男は捨て台詞を残してその場を去った。

 

「…」

 

フィーアは周囲の人間に視線を向ける。その目はとても冷たいものだった。

 

視線を向けられた人々は目を逸らし、ばつが悪い表情でそそくさに立ち去っていく。

 

周りに人がいなくなると、フィーアは少女に近づき手を差し伸べた。

 

「立てますか?お怪我はありませんか?」

 

「っ……」

 

少女は差し伸べられた手をパシンッと弾いた。

 

「なんで…なんで助けたんだよ!!」

 

少女は苛立ちを募らせながら叫ぶ。フィーアはその様子に戸惑う。

 

「どうせ…どうせ生きてたって……う」

 

ドサッ

 

すると少女はその場に倒れ伏してしまった。

 

「え!?ちょっ大丈夫ですか!?」

 

フィーアは慌てて倒れた少女に駆け寄る。

 

(あーもう…本当にちくしょうだ…)

 

少女は心の中で呟くと意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

とある廃工場

 

 

「頼む!!新しい『ボトル』をくれ!!あれがないとゴミどもを掃除できない!!」

 

一人の男が必死の形相で懇願していた。しかし、男の目の前にいる人物は冷淡な声で言い放つ。

 

新しいボトル…ね。随分と勝手なことを言ってくれる。あれはシャーペンや消しゴムみたいな消耗品じゃねえんだ。むしろこちらとしてはボトルを紛失したお前さんに責任を取ってもらいたいくらいなんだぜ?

 

「っ…そ、それは…」

 

男の言葉に反論できず、口籠る。その様子に目の前の人物はため息をつく。

 

どこで無くしたか、心当たりはないのか?

 

男は自身の記憶を辿る。

 

男は昨晩、『ボトル』で『ジャッジ』となり、府露斗会のオフィスに突撃しゴミ掃除(・・・・)をした。それを終えるとそのビルから数キロ離れた場所で変身(・・)を解除し、ボトルをズボンのポケットにしまい帰宅し…

 

そこで男はハッと気づく。

 

帰りの道中、誰かとぶつかったことを思い出した。

 

あの時はなるべく顔を合わせないようすぐにその場を離れたが、もしかすると…あの時か?

 

男は目の前の人物にそのことを話す。

 

すると目の前の人物はどこからかタブレットを取り出すと何かの操作を始める。さらに男から具体的な場所や時間帯

を聞きながらタブレットを操作する。

 

そして僅か数秒後、作業が終わると、男にタブレット画面を見せる。

 

ハッキングであの地区の監視カメラの映像を入手した

 

その映像には街灯が僅かにあるだけの暗い夜道で自身と猫耳の少女がぶつかる場面。

 

映像の自分は少女を気にもせず走り去る。喚く少女を無視して。

 

すると映像の少女は道に落ちるナニカに気づき、それを拾い上げる。

 

そこで目の前の人物は映像を止め、映像の少女を拡大する。少女が手に持つものの形がハッキリと映る。

 

それは今となっては見慣れた筒状の小さな容器…

 

紫色のクリア素材…茶色いキャップ部…

 

そして———————刻印された『山羊』マーク。

 

 

どうやらロストボトルはこのガキが拾ったようだな

 

 

それは紛れもなく自身の落としたボトルだった。

 



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懸念

フィーア「ただいまー」

惣真「おう、おかえりって…どうしたんだよその子!?」

フィーア「えーっと、かくかくしかじかで…とりあえず私の部屋に寝かしてきます」

猫耳の少女「…」ポロッ

惣真「ん?今あの子から何か落ちて…!これは…!?」



「う〜ん…ニャッ!?」

 

「あ、気がつきました?」

 

猫耳の少女は目を覚ますと知らない場所にいた。その横には自身をあのチンピラに首を絞められているところを助けてくれた額からツノの生えた金髪の少女がいた。

 

「お、お前!なんで」

 

「あなたさっきの男に首を絞められてたからからなのか急に倒れたんですよ。病院は少し遠かったのでうちに連れてきたんですけど…」

 

「…フンッ、あのまま放っておけばいいのによ!」

 

猫耳の少女はそう言い放つとそっぽを向く。

 

「助けなんて頼んでねぇ、だから礼なんて言わねぇぞ」

 

「ひねくれてますね〜」

 

金髪の少女は呆れたように言うとため息をつく。

 

「でも良かったです。それだけ元気なら大丈夫そうですね。」

 

「…………」

 

「私の名前はフィーアと言います。あなたの名前を教えてくれませんか?」

 

金髪の少女、フィーアは猫耳の少女に話しかける。しかし、彼女は口を開こうとはしなかった。

 

「……」

 

「困りましたね……じゃあ私が当てましょう。えーっと……『ニャーニャ』ちゃんですか?それとも『ミケ』ちゃんとかでしょうか?」

 

「アタシが猫耳生やしてるからって安直すぎだろ!!」

 

フィーアのネーミングセンスに思わずツッコミを入れる猫耳の少女。

 

「あれれ〜違いましたか?」

 

「違うわ!!てかなんだよその名前!ふざけてんのか!?」

 

「いえ別にそんなつもりはないですよ」

 

猫耳の少女の剣幕にも全く動じず、フィーアは平然と答える。

 

「……ねーよ、名前なんて」

 

「…え?」

 

「親に地球に捨てられたんだよ。まぁ今更どうだっていいけどな。」

 

「…………」

 

フィーアは黙ったまま何も言えなかった。

 

「おい、なんだよその顔。同情してんのかよ?気持ちわりぃな」

 

猫耳の少女は悪態をつくが、それでもフィーアは何も答えなかった。

 

数分、いや数秒だっただろうか。部屋では、しばらく重い沈黙が続いた。

 

そしてようやくフィーアが何か言おうと口を開こうとしたその時。

————ぐぅぅぅぅぅぅ。

 

そんな音が部屋に響いた。

 

音の出どころは猫耳の少女のお腹からである。

 

「あ、や、ちがっ、今のはっ」

 

猫耳の少女は顔を赤く染めると、慌ててお腹を隠す。

 

その様子にフィーアはクスッと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ
「…んがっ…ぐ…」
モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ

 

「よく食うな」

 

「よっぽどお腹が空いてたんですね」

 

惣真とフィーアの二人はテーブルを挟んだ向かい側に座っている猫耳の少女を見ながら感心したように呟く。

 

「…ング…ゴクン……うっせぇな、ほっとけよ!」

 

「デザートもありますよ。ほら、リンゴの猫ちゃんです」

 

「めっちゃリアル!?」

 

「……」

 

フィーアと猫耳の少女のやりとりを見て惣真は微笑ましく思いながらもある懸念を抱いていた。

 

惣真はフィーアたちから見えない場所に移動しズボンのポケットに手をいれ、あるものを取り出す。手に掴んだソレを見る。

コレはフィーアがあの猫耳の少女をnascitaに運んできた際、猫耳の少女の服の中から出てきたものだ。

惣真はコレがなんなのか知っている。

 

(どう見ても、『ロストボトル』だよな…)

 

 

ロストボトル

 

正式名称はロストフルボトル

 

それは惣真が生前観ていた特撮番組『仮面ライダービルド』におけるアイテムの一種

 

仮面ライダービルドが変身に用いるフルボトルとは別の、パンドラボックス由来でない、人工的に作られたボトルであるのだが…

 

(これは…山羊?)

 

今手に持ってるこのロストボトルは惣真の知識にはないものだった。

 

 

ロストボトルは全部で

 

コブラ、コウモリ、城、クワガタ、フクロウ、シマウマ、ハサミ、CD、ハンマー、スパナの10種類存在するが、これはそのどれにも該当しない『山羊』のレリーフ。

 

(ロストボトルは人工的に作られたもの…考えられるのはトッププレデターが作ったのか?…いや、だとしてもなんであの子がこんなものを持ってたんだ…?)

 

「あの、お父さん」

 

「!」

 

後ろからフィーアに声をかけられ惣真は咄嗟にロストボトルを背に隠しつつ振り向く。

 

「お、おう。どうしたフィーア?」

 

「えっと、相談があるんですけど———」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫耳のガキの居場所がわかったぞ

 

「本当か!?」

 

ああ…(それにしても、まさか『nascita』にいるとは…これは思いもしない形で計画(・・)が進みそうだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「———で?一体何が目的なんだよ」

 

「?、なんのことですか」

 

フィーアは猫耳の少女の言葉の意味がわからず首を傾げる。

 

「惚けんなよ。アタシを助けたのも飯を食わせたのも何か企んでるからだろ?ハッ!まさかさっきの食事には睡眠薬が入っていてアタシが眠っている間に奴隷商に売るつもりじゃ…」

 

「そんなことしませんよ!」

 

さすがにフィーアは憤慨した。

仮に奴隷商に売るつもりならそれは猫耳の少女が気を失っていた段階でそうそうするだろう。

わざわざ介抱したり、食事を振る舞う必要はないのだ。

 

「まったく、さんざん食べたくせに何を言ってるんですか。しかもこんなに食べ散らかして……お行儀が悪いですよ?」

 

「生憎アタシは人間のマナーやらルールに従うつもりは一切ないんでね」

 

「いけません。これから一緒に暮らす以上、最低限のルールは守ってもらわないと困ります」

 

「だから……はぁっ!?」

 

 

一緒に暮らす。今そう言ったのかこの少女は。

 

「な、なんだよそれ!!聞いてねーぞ!!」

 

「はい、ついさっき決めましたから」

 

あっけらんかんと言うフィーア。

 

「だってあなた、行くところ無いでしょう?だったら私と一緒に暮らしましょう。大丈夫です。お父さんにはすでに話をつけています。部屋もありますので」

 

「ふざけんな。誰がお前らなんかに世話になるかよ」

 

「あ、それと」

 

「人の話聞けよ!?」

 

「私のことはお姉ちゃんと呼んでください」

 

「…は?」

 

「お・ね・え・ちゃ・ん、ですよ」

 

フィーアは目をキラキラと輝かせながら言う。

 

「…ぜってーヤダ」

 

「お・ね・え・ち・ゃ・ん」

 

「……」

 

「お・ね・え・ち・ゃ・ん」

 

「だああああああああ!!!うるせぇ!!!絶対呼ばねぇしアタシはここに住むつもりはねぇ!!」

 

「むぅ…そこまで拒みますか。一体何が不満なんですか。衣食住だけでなくこの超絶完璧美少女である私が姉になると言うのに」

 

「アタシはそもそもお前らを信用してねーんだよ!」

 

ハァー、ハァー、と息を切らし数秒の間を置いてから猫耳の少女は言葉を続ける。

 

「…だっておかしいだろ?なんで会ったばかりのアタシにここまでするんだよ。何か裏があるとしか思えねぇ」

 

「裏も表もありませんよ。私がそうしたかったからそうしただけです」

 

「なんの見返りもなしにかよ」

 

「子供相手に見返りも何もないですよ」

 

フィーアはさらに続けて言う。

 

「…あなたがここに住むのを拒むなら私は強要しません。でもこれだけは言わせてください―――――――あなたを応援したいと思っています。あなたのこの先に“幸”があるように、と」

 

「…………フ、フンッ!んなもん腹の足しにも何ねーよ!」

 

そう言うと猫耳の少女は立ち上がり店の扉に向かう。

 

「行っちゃうんですか…?」

 

「外の空気を吸いにいく…………少しだけ考えさせてくれ」

 

そう言い猫耳の少女は店の外に出た。

 

「……」

 

フィーアはしばらく扉を見つめていた。

 

「…あの子は帰っちまったのか?」

 

すると冷蔵庫の扉を通じて地下秘密基地から出てきた惣真が声を掛ける。

 

「…考えさせてほしいそうです。まだ店の前にいます」

 

「そうか…。(本人の意思を尊重するつもりだが…ロストボトルを持ってたことが気がかりだ)」

 

惣真が猫耳の少女を住ませることを許したのには理由がある。

 

フィーアから話を聞いてあの少女に身寄りがないことを知りフィーアと同じように放って置けなかったのもあるが、1番の理由はあの少女がロストボトルを持っていたことからトッププレデターと何かしらの繋がりがあると思ったからだ。

 

「まぁ、すぐに答えが出るとは思っていませんでしたし、気長に待ちましょう」

 

「……そうだな」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

nascitaの前で猫耳の少女は空を眺めながら先ほどのフィーアの言葉を思い出していた。

 

 

───あなたを応援したいと思っています。あなたのこの先に“幸”があるように、と───

 

 

今まで生きていて碌なことがなかった。生きることなんて嫌いだと思ったことだってあった。

 

だが今日この日まで自身にあんなことを言ってくれた人はいただろうか。

 

「……アタシは「見つけたぞ」———え」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああああ!?」

 

「「!?」」

 

店の外から聞こえてきた悲鳴に惣真とフィーアはすぐさま外に出る。

 

「どうしました!?…!!」

 

「はなせっ、離せよ…!!」

 

二人の目に映ったのは…猫耳の少女が奇妙な姿をした存在に取り押さえられていた。

 

ワインレッドのボディと装甲…マフラー、あるいはネックウォーマーのように首周りを覆うパイプ、額から生える煙突のような角…そして、コブラ(・・・)のような形状の緑色のバイザー。

 

「馬鹿な…、あり得ない…」

 

惣真はその存在を知っていた。知っているからこそ目の前にいる存在が信じられず戦慄していた。

 

()()()()()()()()…!?」

 

「あ、あなた!!その子に何してるんですか!!」

 

惣真の動揺に気づかず、フィーアは目の前の人物…ブラッドスタークに迫る。

 

「…」スチャッ

 

バキュンッ!

 

「っ!?」

 

ブラッドスタークが右手に持つ銃…『トランスチームガン』から放たれた弾丸がフィーアの足元の地面を削り取る。それに思わずフィーアは怯んでしまう。

 

ブラッドスタークは再びトランスチームガンの銃口を地面に向け引き金をひく。

 

シュウウウウ…

 

しかし次に銃口から出てきたのは弾丸ではなく…煙だった。

 

排気ガスのような色のその煙はブラッドスタークと猫耳の少女の全身を包むほどの

量で辺り一帯に充満する。

 

「な、なんですかこれ…!?ま、待ちなさい!!」

 

ようやく煙が消えた頃には、ブラッドスタークと猫耳の少女の姿はなかった…。

 




読者の皆様、長らくお待たせしました。
ああ…前回の投稿からおよそ2ヶ月…とうとう年を越して2023年を迎えてしちまったよ。
今年中にエボル編を終わらせるつもりだったのに…
次の投稿いつになるかな…(遠い目)
とりあえずだいぶ遅れましたが明けましておめでとうございます。
2023年も『混血のカレコレ【Over the EVOLution】』をよろしくお願いします。


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ベストマッチなカレラ

皆様に謝罪します。

久しぶりの投稿となるのです…が!!

今回の話は前回の「懸念」の続きではありません。前回からの続きを書くのに行き詰まった結果、エボル編は未完成のまま締めて、そのまま次に行くことにしました。

無計画に初めた結果がこれだよ。

今回の話はエボル編の最後の話として投稿する予定でした。

シディとヒサメの過去編を合わせた話なので少し長くなりました。

エボル編は追々、話の投稿、ストーリーや設定の修正、変更などを行なっていく予定です。

何卒ご了承ください。



鬱蒼と生い茂る木々の隙間から見える空は曇天。

 

雨が降り注ぎ、冷たい湿気を帯びた森の中に響く無数の足音と声。

 

「足跡があったぞ!!こっちだ!!」

 

「急げ!!」

 

 

 

「…」

 

男達が叫ぶ声を聞きながら、木に背中を預け身を隠し、一人の男の子を抱き抱える白髪の女性がいた。

 

「母さん…?」

 

「シッ!」

 

「…?どうかした?」

 

キョトンとした表情で尋ねる男の子の容姿は女性と同じ白髪で褐色肌の整った顔立ちをしているが、頭と臀部に狼のような耳と尻尾が生えている。

 

女性は抱えた男の子をゆっくりと地面に下ろし立たせる。

 

「…“シディ”」

 

女性は男の子…シディの肩に手を乗せ目線を合わせながら優しい顔で告げる。

 

「今日から、君は自由だよ」

 

「…じゆう?」

 

「これから沢山の人と出会えるし、沢山のモノを学べるし、沢山の感情を知れる」

 

「母さんも一緒…?」

 

シディがそう問うと女性は

 

「大丈夫」

 

 

 

「シディにはこれから家族みたいな大切な仲間が沢山出来るから」

 

 

優しく微笑み、そう答えた。

 

すると女性は立ち上がりシディから離れる。

 

「ま、待って!!どこ行くの!?」

 

「ちょっとそこまで見に行くだけ」

 

女性は振り返らず優しい声で答えるが、まだ幼いシディでも察することができた。それは別れを意味していると。

 

「嫌だ…!!俺も行く…!!」

 

シディは涙を流し女性に手を伸ばす。

 

その瞬間、雷が一筋の光と共に鳴り響き、それに思わずシディは目を瞑る。

 

そして再び目を開けた時には

 

「かあ…さん…?」

 

女性の姿が消えていた。

 

 

 

 

 

 

「脱走者です!!脱走者を捕えました!!」

 

女性は複数の武装した男達に取り押さえられていた。

 

「太陽神の個体は!?」

 

「いません!!」

 

「デュアルコアプラン唯一の太陽神DNAと適合した個体だ!!なんとしても探し出せ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「子供の足だ!!そう遠くには行けない!!」

 

シディは木に身を隠し座り込んでいた。男たちの声と足音が響くたびに、ビクビクと身を震わせる。

 

「…母さん」

 

シディはポツリと呟く。その時だった。

 

ガサガサと草むらが揺れる音を聞いたシディは反射的にそちらを見る。

 

 

「フゴッ!フゴッ!!」

 

 

それは草木に紛れるほど緑色の肌。とんがった耳と口から覗かせる鋭い牙。それはゴブリンという種族。しかし世間一般が想像するような小柄な体躯のRPGなどで馴染み深い姿ではなく、そこらのボディビルダーよりもガタイの良い大柄な身体をしていた。

 

「…だ、だれ?」

 

シディは恐る恐る尋ねる。

 

「フゴ…」

 

ゴブリンはクイッとシディの腕よりも太い指を曲げて動かす。ついてこい、ということだろうか。

 

シディは立ち上がり、ゴブリン…『武者小路ゴブアツ』について行った。

 

 

 

 

 

…それから10年後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の中、山の中を、一人の青年が元気よく駆けていた。

 

白髪褐色肌の美丈夫で端正な顔立ちをしており、身長は頭の上の狼耳を入れずに測っても180cm以上ある。

 

その体格は服の上からでも良く解るほど鍛え抜かれた肉体美をさらけ出している。

 

その青年の名は、『シディ』。歳はちょうど20才。

 

彼には愛すべき家族がいる。

 

一人目は『ゴブイチ』。種族はゴブリン。

 

建築が得意であり真面目な性格でシディ達をまとめ上げてくれる。

 

「フゴフゴフゴゴ!!(俺に建てられねぇ小屋はねぇ!!)」

 

二人目は『ゴブフタ』。彼もまた種族はゴブリン。

 

ふくよかな体で食べるのが大好きで、少しばかりドジなところがあるが、すごく優しい兄である。

 

「フゴーフガフゴゴ〜(いつか満腹というモノを知りたいよ〜)」

 

三人目は『ゴブミツ』。彼も当然種族はゴブリン。

 

女の子に大人気(ゴブリン限定)で光るものが大好きで金色のアクセサリーを身につけ髪も整えており家族の中では一番お洒落。

 

「フゴフゴフゴガァ(シディは女ゴブにモテねぇからなぁ)」

 

 

そして…

 

10年前、山で捨てられていたシディを拾ってくれたゴブリン。シディにとっても兄達にとっても強くて尊敬できる父親。

 

武者小路ゴブアツ

 

 

 

3年前まではゴブリンの母親がいたが、人間の使う『車』という乗り物に轢かれてしまい亡くなってしまった。

 

 

 

 

「フギャ!!フギャ!!(急げ!!急げ!!)」

 

「ガァアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

3人の兄達は背後から迫ってくる単眼の巨人、『サイクロプス』から逃げていた。

 

シディとその家族であるゴブリン達が住む山は、自然に溢れた場所だが、その分危険な野生生物も多く生息しているためこのように常日頃から命の危険に晒されている。

 

サイクロプスはドスンドスンと巨体に見合ったパワーで木々を薙ぎ倒しながら獲物である三匹のゴブリンを追いかける。

 

 

「フゴ!!(伏せろ!!)」

 

そこで、シディの出番である。

 

シディはサイクロプスを見捉えながら、自身の右手からゴォオオオと燃え盛る火球を生み出す。その大きさは、シディの頭ほどの大きさはある。

 

それをシディはサイクロプスに向けて放つ。

 

真っ直ぐ飛んでいく火球は見事にサイクロプスの背中に命中する。

 

するとその炎はボッ!!と音を立ててあっという間にサイクロプスの全身を覆い尽くした。

 

「ゴアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

サイクロプスの咆哮のような断末魔が山に響いた。

 

 

その後仕留めたサイクロプスの肉を兄弟仲良く召し上がっていた。

 

「フゥギャフギャフギャア!(相変わらず不味そうな食い方してんだなぁ!)」

 

「フギャフギャフゴゴ!(シディは味音痴だからな!)」

 

「フガフガフゴンガ(俺はこっちの方が好きなんだ)」

 

3人の兄たちが肉に紫色の木の実などを乗せて食してるのに対し、シディは塩胡椒をふりかけ食していた。

 

「フガフガフゴンゴー(絶対俺らの食い方の方が美味いよー)」

 

「フゴンゴッ!(間違いないっ!)」

 

「フンゴフゴゴー(シディは本当変わってるよなー)」

 

 

 

 

 

 

シディと3人の兄たちは頭を悩ませていた。注目すべきはゴブフタの手の中にある8つの青い木の実。

 

「フギフゴギ…(ここに8つの木の実がある…)」

 

「フギャフギャウゴ(兄弟4匹で平等に分けたいな)」

 

「フギギィ(どうすれば分けられるんだ)」

 

「「「フゴォ…(うーん…)」」」

 

その超難問に、ゴブイチ、ゴブフタ、ゴブミツの3匹が唸っていると、ある者が解を導きだした。

 

「フギャフギ…(もしかして…)フゴフギゴガフゴギフゴガフゴ?(1人2つずつにすれば皆同じ数食べられるんじゃないか?)」

 

シディである。

 

「フギィ!!フギギィ!!(確かに!!流石シディだ!!)」

 

「フギャフゴフゴオ!!(シディは本当に頭がいいな!!)」

 

「フギャフギィ!!(ゴブリン界の神童だよ!!)」

 

「フギャゴフギンゴフゴギンゴッ!(俺は4兄弟の頭脳担当だからなっ!)」

 

 

シディは家族達と、毎日楽しい日々を送っていた…

 

 

あの夜

 

 

“彼”と出会うまでは

 

 

 

 

 

 

ある日の晩のこと、暗い森の中をゴブフタが鼻歌交じりで歩いていた

 

「フガフゴフガァ♪(なにやらこっちからおいしそうな匂いが♪)」

 

どうやら食べ物の匂いを嗅ぎつけてきたようだ。

 

彼は気づかなかった。

 

真横から、山道を走る白いトラックが迫ってきていることに。

 

「んっ、ゴブリンだ」

 

運転手はゴブフタに気づくものの

 

「轢き殺せ、俺たちは急いでんだ」

 

悲しいかな。運転手と助手席に座る男にとって、ゴブリンという生き物は、動物どころか踏みつけられる蟻に等しい。

 

そんな彼らにとっては、山道を歩くゴブリンなどただの障害物。わざわざ停車して通り過ぎるのを待つ道理はない。

 

トラックはどんどんゴブフタに近づいていく。

 

「っ!ゴブフタ兄さん!!」

 

それにシディがいち早く気づく。彼の狼耳の鋭い聴覚が迫り来る轟音を捉えたのだ。

 

シディの脳裏にフラッシュバックする光景。

 

10年前、自身を置いて去っていく母親の後ろ姿。

 

3年前、人間の車に轢かれ死んだゴブリンの母親。

 

 

(────俺が家族を守らなきゃ!!)

 

 

もう失いたくない。その想いに突き動かされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フゴフガフゴ?(ゴブフタ兄さん大丈夫?)」

 

「フ、フギィー…(た、助かったー…)フゴフゴフゴ(もう食べられなくなると思ったよ)」

 

「フガフゴフガ?(こんな時まで食べ物のことかい?)」

 

シディたちの近くには先ほどのトラックが横転している。シディが兄を助けるために自身の力を使った結果である。

 

この後に及んで食べ物のことばかりの兄に苦笑しつつも助けられたことに安堵する。

 

その時、シディの聴覚が微かにだが物音が聞こえた。

 

「何かいる…!?」

 

発生源はたった今シディが横転させたトラックからだった。

 

「誰だ?」

 

トラックの中で蠢く影。何かを啜るような音が聞こえてくる。

 

シディは警戒しながらトラックに近づく。

 

徐々に、その全体像が明らかになっていった。

 

 

 

 

「ヂュル…ヂュルル……」

 

 

そこにいたのは、少年…の姿をした化け物だった。

 

前頂部は黒髪なのに対し、前髪などの髪先は赤い。目は充血してるというにはあまりにも赤い。

 

「な、なんだアレは…!?人間なのか…?それとも別の…」

 

その化け物は怪我をした男の首筋に牙を突き立て血を啜っていた。血を吸われてるのはトラックの運転手だろう。

 

「フギャギャ…(ち、血を吸ってる…)」

 

ゴブフタは恐怖していた。

 

「このままではまずいな…」

 

しかしシディは違った。

 

「!?」

 

シディは素早い身のこなしで化け物から男を引き剥がした。

 

「それ以上血を吸えば、この人間は死ぬぞ?」

 

「グァ、グゥア、ガァアアアアアアアアアアアアアアア‼」

 

化け物は邪魔するなと言わんばかりに雄叫びを上げる。

 

「!?、戦う気か?」

 

化け物は髪を逆立たせ、手から糸状の赤いオーラのようなもの出し戦闘体制に入っていた。

 

兄を庇うようにシディは一歩前に歩み出る。

 

「フゴフゴガ(ゴブフタ兄さんは下がってて)」

 

「フゴフゴ、フギイ(気をつけなよ、シディ)フガゴガ…(なんかあいつ変だ…)」

 

「フガ(あぁ)」

 

兄を下がらせシディは構えをとる。

 

「ぐ、ぐぅうううううう…」

 

化け物が唸る。その様子にシディはあることに気づいた。

 

「!?、泣いてるのか…?」

 

化け物は赤い眼から涙を流していた。

 

(なにか哀しいことがあったのか…?)

 

「がぁあああああああああああ!!」

 

「くっ!!」

 

しかし考えている暇は与えてくれない。化け物の赤いオーラを纏った爪がシディを襲う。それをシディは跳躍し紙一重で避ける。

 

(これは…強力だなっ…)

 

跳躍の勢いで木の枝の上に乗り距離を取る。

 

(なにやらわからぬが…相手は正気ではない。だが俺が逃げれば兄さんたちに狙いを定められるかもしれん)

 

────()()()()()()()()()()()…?

 

()()()()()()だからなぁ…)

 

 

「…やむを得ない」

 

シディは覚悟を決める。

 

「殺す気で行くか」

 

────でなきゃ、こちらがやられる。

 

シディは木から化け物へ飛び掛かる。

 

それは一瞬だった。シディが風の如く化け物の横を駆け抜けたかと思えば

 

「ガッ!?」

 

化け物の首元から鮮血が舞う。

 

「ペッ」

 

シディは血の混じった唾を吐いた。しかしその血はシディのものではなく…

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」

 

化け物の首からブシャアアアアアアという音を立てながら血が吹き出す。

 

「首元を噛みちぎった。これでどんな動物でも…!?」

 

シディは目を疑った。なぜならそこには傷口が塞がっていく化け物の姿があったからだ。

 

(傷が治っている…?傷を再生させる能力があるのか…?まさか…)

 

不死身…?

 

(いや!!それはない筈だ…。それにしても…なんなんだ…!?)

 

この自然界の理に反するような生物は…

 

(とにかく陽が出てさえいれば…俺の力も元に戻る…コレはなんとか陽が出るまで粘るしかないか…)

 

 

 

 

 

 

「ガハッ!!」

 

シディは化け物の攻撃を喰らい飛ばされる。シディはハァッ、ハァッ、と息を荒げる。身体は傷だらけで結んでいた髪は戦闘途中で紐が切れた為、今は腰辺りまである長い髪は乱れている。

 

(マズいな…身体が動かない…かれこれ数時間闘い続けてる…)

 

あの後、シディと化け物の闘争は続いた。しかし、シディの力は夜にのみ発揮されるものであり、長期戦により徐々にシディは劣勢に立たされていった。

 

そして今に至る。

 

(もう限界か…)

 

「ぐうううぁあっ…!!」

 

そうこうしてるうちに化け物の赤いオーラを纏った拳がトドメと言わんばかりに振り下ろされようとしていた。

 

(ここまでか…)

 

シディは自身の死を悟り、目を閉じる。

 

(兄さんたちからはずいぶん離れた…あとは父さんが守ってくれるはずだ。俺がここで死んでも問題は…)

 

その時だった。

 

(…?)

 

ふと、頬に液体がつたるような感触にゆっくりと瞳を開く。

 

雨かと思った。しかしすぐに自身の頬を濡らすものは水ではないと知る。

 

「ガッ…!!ウウッ…!!」

 

ピタっと腕を振り上げたまま動きを止める化け物。

 

「ヤ、ヤ…だ…!!お、おれ…!!ガァッ…!!」

 

シディの頬を濡らしていた水の正体…

 

それは化け物の…少年の涙であった。

 

少年の赤い眼からは大粒の涙が流れ落ちていた。その顔には悲痛に歪め、今まで焦点の合ってなかった赤い目は理性を取り戻したかのようにしっかりとシディを捉え、堪えるように身体を震わしている。

 

(…戦っている…のか…?自分の中で…暴走する自分を抑え込もうと…俺を傷つけまいと…?)

 

自分は今すべてを諦めて、死を受け入れようとした。

 

(俺はこれでいいのか?コイツは必死に俺を傷つけないように戦ってるとのに!!)

 

無理やり体を動かしシディは立ち上がる。

 

(諦めるな!!諦めても死ぬときは死ぬ!!)

 

 

だが!!

 

 

(俺は俺が諦める事を許さん!!)

 

「おい、そこのお前」

 

シディは目の前の少年に語りかける。

 

「安心しろ。俺はお前に殺されない」

 

戦意を取り戻したシディと暴走した少年の戦闘が再開する。

 

 

 

 

 

 

 

「ハァッ…ハァッ…ハァッ…────────朝だ」

 

シディは膝をつきながらも勝機が見えた。

 

あれからさらに数時間、ようやく夜は明け日が昇り、シディの本領が発揮される。

 

シディの背中の、双翼のような痣が光を放ち始める。その輝きは太陽のように眩く神々しい。

 

シディは手から巨大な火球を生み出す。

 

「今は──────」

 

燃え盛る火球は、少年の眼前に迫る。

 

「ア…」

 

 

「──────眠れ」

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ…どこだここ…?」

 

少年は洞窟のような場所の入り口近くで目を覚ました。少年はなんとか頭を働かせ、自身の記憶を辿る。

 

「…!、そうだ!皆がゾンビにされて…」

 

 

 

『じゃ、ヒビキを頼むぜ』

 

 

『生きてね、カゲ』

 

 

 

 

 

「“シロウ”…“ヒビキ”…」

 

少年は最後に見た二人の親友の変わり果てた姿を思い出し、悲しさと悔しさで涙を浮かべ顔を伏せる。

 

(“ヤツ”に噛まれてから意識を失って…)

 

でも僅かに覚えてる。

 

悲しくて悲しくて、それを誰かにブツけてた。

 

(アイツはずっと受け止めてくれてて…)

 

「目が覚めたか」

 

「!!」

 

突然の声に驚き声の方に振り返る。そこにいたのは先程まで自身と死闘を繰り広げていた青年、シディだった。彼の身体は傷だらけで、さらに左腕は添え木と布で固定されており、骨折の応急手当だと思われる。

 

「お、お前その身体…俺が…?」

 

「ただのジャレ合いだ。山ではよくある事さ」

 

そんな状態にも関わらず彼は優しく微笑んだ。

 

それに対し少年は呆然とし、思わず涙が滲んだ。

 

「…んだテメー、いけすかねー奴かな…」

 

泣いた顔を見られたくなのか少年はくるっとシディに背を向け、袖でゴシゴシと目を拭う。

 

「ウム?生け簀?捕まえた魚を入れておく場所の事か?」

 

シディが返した天然な返答に少年は思わずガクッと項垂れる。

「それより良かった。お前の涙が止まって」

 

「ア゛?」

 

「ずっと泣いてたから」

 

「…おかげさまでな…──────────────────泣いてちゃ復讐は出来ねーからな」

 

 

シディは少年それぞれ何があったのかを話した。

 

少年の話を聞くに彼は自分の村を襲われ、2年間も眠り続けていたらしい。そして起きた時には身体が作り替えられていたのだと…。

 

「なるほど…それでトラックの中から俺が出てきて、お前らを襲い出したわけか。…悪かったな」

 

「ウム」

 

「!、そうだ、トラックに俺を運んでた奴らの痕跡が残ってるかもしれねぇ」

 

「確かあのトラック運転手…」

 

「どうした?」

 

「ウム、あのトラック運転手の服のマークと、俺が幼い頃実験室で着せられていた服のマークが同じなのだ」

 

「実験室…?そもそもお前普通の人間じゃないよな?」

 

「ウム、そこらへんがよくわからんのだが、俺は幼い頃は白い壁の実験室で育ったんだ。そこから母さんが俺を逃がしてくれて今に至る」

 

「そっか…実験室…とにかくトラックの場所に案内してくれ」

 

「ウム」

 

 

二人はトラックのところまで向かった。だが…

 

 

「くそっ!!やられたっ!!」

 

少年は轟々と燃えるトラックを前に悪態をつく。

 

「どういう事だ?俺がいた時には燃えていなかったが…」

 

「奴ら、証拠隠滅の為に燃やしやがった…!運転手もどっか消えてる…」

 

怒りが湧き絶望感に襲われ少年は膝を落とし地面に手をつき悔やむ。

 

「ちくしょう…!!せっかく奴らの手がかりが得られると思ったのに…!!」

 

そんな彼にシディはかける言葉が見つからない。

 

「ゴギャゴギャイ!?(シディ無事か!?)」

 

「ゴガゴガンゴ!?(お前怪我してるじゃないか!?)」

 

「フガフギャ?(というかソイツは誰だ?)」

 

その時、二人の元にゴブイチ、ゴブフタ、ゴブミツの3匹が駆け寄ってきた。

 

「フガ!!フギャフゴフガ(皆!!彼とはさっき知り合った)」

 

シディは兄たちに少年のことを説明する。

 

「フギャギャ…?(人間か…?)」

 

「フギャウフギャ…?(少し違うような…?)」

 

「なんだ…?コイツら…?」

 

少年は突然現れた三匹のゴブリンに動揺していた。

 

「俺の家族だ」

 

「はぁ?」

 

「俺は母さんに逃がされてからゴブリンに育てられたんだ」

「ゴブリンに…?信じらんねぇ…ん?それは…?」

 

すると少年はゴブリンの内の一匹、ゴブミツの手にあるものに気づく。

 

「フギ、フギャゴガ?(ゴブミツ兄さん、それは?)」

 

「フゴ!!フゴフゴフゴ!!(あぁ!!これ光っててかっこいいだろ!!)フゴフゴンゴンゴ!!(さっきのトラックから拾ったんだ!!)」

 

「さっきのトラックから拾ったらしいぞ」

 

「!?」

 

シディらはゴブミツが持っているソレが光る板ぐらいにしか思っていなかったが、ソレがスマホだと知っていた少年はトラックから拾ったという話を聞きもしかしたらと思い、ゴブミツからスマホを受け取った。

 

調べてみるとそのスマホには『カーナビ』が設定されており、少年をトラックで運んでいた運転手たちの行き先を知ることができた。

 

 

「助かったって伝えといてくれ。奴らの行き先がわかった」

 

「ウム、お前はそこへ向かうのか?」

 

「当然だ」

 

「そうか…気をつけてな」

 

「おう、じゃあ…」

 

少年はカーナビを頼りに連中の行き先に向かうためシディと別れようとしたが「待てよ?」と踏みとどまる。

 

(さっきの話だと、コイツは人間以上の能力を持ってるんだよな…。だったら利用できるかもしれねぇ)

 

「なに言ってんだよ」

 

「ム?」

 

「お前も行くんだろ?」

 

「どうしてだ?」

 

「さっき言ってろ?このトラックの運転手が身に付けてたマーク、お前のいた実験室のマークと同じだって」

 

「あぁ」

 

「つまりよ、このトラックの行先に行けば、お前が何者かわかんじゃねぇのか?」

 

「!!」

 

「その上、もしかしたら母親とも会えるかもしんねぇ」

 

「た、確かに…」

 

少年の言う通り、一緒に行けばその場所で自分が何者なのか知れ、母に再会できる可能性はある。しかし自分には此処での生活がある。そう簡単に決められない。

 

「…少し考えさせてくれないか?」

 

「傷が治るまでだ」

 

「む?」

 

「その怪我、俺のせいだろ」

 

少年はシディの応急手当てされた左腕を見て言う。

 

「だから元の生活に戻るまでは此処で力を貸す」

 

「…ウム、わかった」

 

 

 

 

 

それから数日後

 

 

「…」

 

 

シディの腕はほとんど治り、もう少しで完治する。少年はもうすぐ此処を離れる。決断の日は迫っていた。だが、心はまだ迷っていた。すると一人日を眺め黄昏るシディのもとに武者小路ゴブアツがやって来る。

 

「ウガァ(迷っておるのか?)」

 

「ウガァウゴゴウゴウガガウゴ(俺は自分が何者なのか知りたい)ウゴガウゴ(そして母さんとも…)ウガ(けど…)」

 

自分のことを知りたい。母に会いたい気持ちはある。しかし…

 

「ウガガウガンゴ(ここには俺の家族がある)」

 

母と別れてから自身を育て共に生活してきた家族を置いて離れたくなかった。するとゴブアツが言う。

 

「フガフガフゴフゴフガ(ならば残る理由など一つもないな)」

 

「えっ?」

 

その言葉に思わずゴブリン語ではなく人語で聞き返してしまうほど呆気にとられる。

 

ゴブアツはシディの胸を指さす。

 

「フガフゴンフガ(家族ならば此処にいる)」

 

さらに続けて言う。

 

「フゴギ、フガンガ(どんな時も、たとえ離れていてもな)フガンゴギャフゴンガ(勿論お前の二人の母さんもな)」

 

「あ…」

 

父のその言葉にシディは感銘を受け目を開く。

 

(そうか…どんなに離れていても…)

 

シディは思う。自分は家族のことが大好きなのだと。だからこそ心配をかけさせたくない。迷惑かけたくない。そんな想いがあった。

 

しかしゴブアツの助言を聞いてようやく決心がついた。シディはゴブアツに頭を下げる。

 

「フガガ!!(父さん!!)ウガガウゴガ(今まで育ててくれてありがとう)フガゴガフガフガ(ゴブリンの家族は俺の誇りだ)」

 

その様子にゴブアツは優しい笑みを浮かべる。

 

「ウゴオ、ウゴガウガ(息子よ、世界を知れ)ウガウガウゴウガウガ!!(そして生きることをただ楽しめ!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

「フゴー!!(気をつけてなー!!)フゴフゴフゴンゴー!!(夜はちゃんと暖かくして寝るんだぞー!!)」

 

「フギャフゴフゴゴー!!(お腹が空いたら帰ってくるんだぞー!!)フゴフゴゴフゴー!!(兄ちゃんの芋虫サンド食わしてやるからなー!!)」

 

「フギャギャフギャー!!(人間からモテなくても落ち込むなよー!!)フギャフゴー!!(女の事なら兄さんに相談しろよー!!)」

 

 

「フギャーフガンガー!!(兄さんたちもお元気で)ンガガー!!(じゃあなー!!)」

 

3人の兄に見送られながら、シディは少年と共にゴブリンの里を後にした。

 

 

 

「言葉はわかんねーけど、良い家族そうだな」

 

「ウム、家族は俺の誇りだ」

 

少年の言葉にシディは笑顔で言う。

 

「そっか…」

 

少年の顔に哀愁が漂う。

 

「俺の家族はもういなくなっちまった…。家族だけじゃねぇ…友達も…全部…」

 

「…」

 

悲しげに語る彼の話を聞き、今度はシディが言う。

 

「そうだ、名前を聞いてもいいか?」

 

「ア゛?そういえばまだだったな」

 

「お前はほとんど喋りたがらなかったからな」

 

「ゴブリンの会話はわかんねーし、俺が会話に入るとややこしいだろ」

 

「変なやつだな」

 

「気ぃつかってんだよ」

 

「そうか、お前はいい奴だな」

 

「自分のこと殺しかけた奴によくそんなこと言えんな」

 

少年は呆れながらも答えた。

 

「俺は“カゲチヨ”だ」

 

「カゲチヨか」

 

「お前は?」

 

 

「ウム、俺の名は────────────シディだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか」

 

カゲチヨとシディがカーナビを頼りに向かった先には大きな施設…おそらく研究所と思われる建物があった。

 

「入り口を探すのもメンドクセェ。シディ、頼む」

 

「ウム」

 

 

 

 

 

 

 

ドガァァァァァァン!!!

 

破砕音が響く。

 

壁は割れ、瓦礫は散乱し、土埃が舞う。

 

 

「な…!?」

 

突然の出来事に中にいた白衣を着た研究員らしき男たちは唖然とする。

 

「やっと見つけたぜ…、クソ共がっ…」

 

「こんなところに隠れて何してた?」

 

カゲチヨとシディはその者たちに向かって言う。それに対し研究員たちはパニックになる。

 

「は、はぁ!?」

 

「おいおいおいおいおい!?おかしいよっ!!おかしいだろ!!な、なんで強化防壁で出来てる屋根が吹き飛んでんのぉ!?」

 

そんな研究員の喚きと舞う土埃を無視し、カゲチヨは研究員たちを睨みつけ言う。

 

「鈴をつけた吸血鬼を出せ」

 

「侵入者!!侵入者だあああああ!!」

 

研究員の一人がカゲチヨにショットガンを向ける。が…

 

「ぐあっ!!」

 

「…勝手に動くな」

 

赤い…血液の斬撃によって薙ぎ払われる。

 

「あまり抵抗しない方がいい」

 

シディが忠告するように言う。

 

「アイツが怒ってる」

 

 

「くっ…おいお前!!来いっ!!」

 

「キャッ!!」

 

研究員は苦虫を噛み潰したような顔をし、白い服を着た水色髪の少女を抱え連れ去る。

 

「ア゛…?なんだアレ…?」

 

その様子にカゲチヨは疑問に思い、後を追おうとするが…。

 

〈侵入者ヲ確認、侵入者ヲ確認〉

 

複数のアンドロイド、『ガーディアン』がカゲチヨとシディを囲むように現れる。白い隊服を着ており、その隊服にはトラック運転手の服にあったものと同じマークがあしらわれていた。

 

「ウヌ?なんだコイツらは…」

 

「コイツら…ガーディアンじゃねーか!!」

 

「がーでぃあん?知ってるのか?」

 

「主に都市部の警備、犯罪者や異宙人対策を目的として作られたアンドロイドだ。俺の村は田舎だったから実際に見んのは初めてだが…」

 

〈排除シマス。排除シマス〉

 

ガーディアンたちは銃剣型の武器、『セーフガードライフル』を構え、侵入者を排除すべく襲い掛かる。

 

「うおっと、オラッ!!」

 

「フンッ!!」

 

しかしカゲチヨは攻撃をかわしつつガーディアンから武器を奪い取りそれで攻撃し、シディは腕を振るいガーディアンを殴り飛ばす。

 

シディに殴り飛ばされたガーディアンは後ろにいた他のガーディアンたちを巻き込みながら壁に激突し火花を散らしながら機能停止する。

 

カゲチヨに攻撃されたガーディアンは起き上がり、再び攻撃を仕掛けようとするが、ガシャン!! とシディに頭を掴まれそのまま地面に叩きつけられ粉砕される。

 

「ウム…そこまで頑丈ではないようだな。これなら数は多くともなんとかなりそうだ」

 

「シディ!!悪いけど此処任せてもいいか!!」

 

「ウム!!」

 

この場はシディに任せ、カゲチヨは先程の研究員、そして水色髪の少女の後を追った。

 

 

 

 

一方その頃、焦った研究員の男は水色髪の少女に迫っていた。

 

「いいですか!?あれは人類の敵です!!そして我々は人類の味方!!つまり君の仕事は奴らを殺し私たちを守る事!!」

 

どうやら少女を囮にしようとしているようだ。 しかし少女は首を振る。

 

「わ、私…戦うのは…無理…」

 

「大丈夫です!!これは実験のための戦いじゃない!!コレは私と言う人類の財産を守る為の戦い!!守る為なら戦えるでしょ?」

 

「嫌ぁ…」

 

「ッチィ!!」

 

怯えた表情を浮かべ拒否する少女に対し、男は苛立ちを募らせていく。

 

「おいっ!!コイツに痛みを与えてください!!最大で!!今すぐ!!」

 

すると男はもう一人の肥満体型の研究員の男に指示を出す。

 

「えっ?」

 

「首輪の毒ですよ!!死にたいんですかぁ!!」

 

「あっ、お、おう」

 

肥満体型の男は困惑しながらも男の剣幕に気圧され鼻息混じりに承諾し、取り出したタブレットを操作する。

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

少女は悲鳴を上げ苦しむ。

 

「う、うぅ!!い、痛…ひ…イタいぃいいいいいい!!あぅう…ゆ、ゆる…して…た、たたかいます…戦いますから…」

 

少女は許しを乞うように泣き叫ぶ。

 

そうしている間に、カゲチヨが現れる。

 

 

「ウッ…ウゥ…」

 

「行きなさい。人類の為に戦うのです」

 

「…はい」

 

「んだ?お前…?やる気か?」

 

少女は涙を流しながらも男の命令に従い、カゲチヨの前に立ち塞がる。腕に冷気を纏いながら。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「っ!?」

 

少女は槍のように細長い氷塊を生成し、カゲチヨに向かう。

 

(もういいよ…名前も知らないアナタ…私を殺して)

 

しかしその行動は、目の前の相手、カゲチヨを殺すためではなく、寧ろ殺されるようとしたものだった。

 

(私がこれ以上…誰かを傷つける前に…どうか…────────────────私を終わらせて…)

 

そんな思いで、彼女は突撃した。だが…

 

 

 

「えっ…」

 

少女は唖然とした。

 

自身の持つ氷の槍が、目の前の男、カゲチヨの胸を貫いていた。

 

彼は、少女に攻撃をするでも、少女の攻撃を避けるわけでもなく、ただ何もせず彼女の攻撃を喰らったのだ。

 

「なんで…?」

 

少女の問う。それに対してカゲチヨは口から血を流しながら言う。

 

「だってお前…泣いてんじゃん」

 

するとカゲチヨは自分の胸に氷が刺さっていることも気にせずに少女を抱き止める。

 

「泣くほど戦うのが嫌だって言う事は…無理矢理戦わせているクズがいるって事だよなぁ!?」

 

カゲチヨは研究員の男たちを睨みつける。貫かれた胸は再生してる。その光景に研究員たちは戦慄する。

 

「き、傷が治ってる!?」

 

「化け物め…!!そうやって暴力に訴えて自分の意見を通そうと、人類は決して異宙人には屈しない!!例え今は負けても将来絶対にっ…!!」

 

研究員の男がそこまで言うと。

 

「人類はぁっ…!?」

 

「ガハッ…!!」

 

カゲチヨは研究員たちを攻撃した。

 

「…知るかよ、女子泣かせてまで果たすべき大義なんて」

 

カゲチヨはそう吐き捨てた。

 

するとちょうどそこへ、ガーディアンたちと抗争を繰り広げていたシディがやって来る。

 

「カゲチヨ!こっちは終わったぞ」

 

「任せた俺が言うのもアレだが、あんだけの数を一人で倒したのか?」

 

「ウム!念の為、全部破壊しておいた」

 

(やっぱコイツ強いな…)

 

カゲチヨは改めてシディの強さを再認識していた。するとシディはカゲチヨの近くにいる少女に気が付く。

 

「この子は?」

 

「おう、奴らに捕まってたっぽい」

 

「ウム…俺と同じような感じなのか?」

 

カゲチヨがシディに水色髪の少女について説明していたその時だった。

 

「ヒッ…ヒヒッ!!どうせ人類の敵になるくらいなら…!!」

 

カゲチヨに攻撃された研究員の男はまだ僅かに息が続いていており不気味に笑っていた。男は倒れ伏した状態でタブレットを操作する。

 

「アッ…ガッ…ガハッ!!アアッ!!」

 

少女が突然倒れ苦しみ出す。何事かと思いシディは駆け寄る。

 

「苦しんでるぞ!ど、どうなっているんだ?」

 

「わかんねぇ!?けど…」

 

カゲチヨは男が操作していたタブレットを拾い上げ、調べる。

 

「この画面…首輪から毒が流れてるみてーだ!!」

 

それを聞いたシディはすぐに少女から首輪を外す。

 

「ガハッ…!!ガハッ!!」

 

「駄目だ!!首輪を外しても回復しない!!」

 

「クソがっ!!毒が既に身体にまわってやがんだ!!」

 

しかし少女の容態はよくならず悪化していく一方である。カゲチヨは焦燥を帯びながらもなんとか彼女を助けられないか思考を巡らせる。

 

(どうする…?どうすればこいつを助けられる…?血液操作の能力でウイルスの抗体を…いや!!無理だ!!んなことできるわけがねぇ!!)

 

カゲチヨは色々考えるが、すぐに無理だと結論づける。

 

(また…奴らに奪われるのか…!?)

 

今でも脳裏に残っている。親友二人の最期。変わり果てた姿。

 

目の前で一人の少女の命が消えようとしているというのに、自分は何も出来ないのか。

 

カゲチヨが自身の無力さに打ちひしがれていた、まさにその時だった。

 

 

 

 

 

「解毒剤は東の倉庫、D-28」

 

 

 

 

「なんだって!?」

 

シディの耳が確かに捉えた、突如として聞こえてきた声に反応する。

 

「東の倉庫D-28!?どう言うことだ!?」

 

「はぁ!?何言ってんだシディ?」

 

いきなり謎の情報を叫んだシディに対してカゲチヨは困惑するが、一番驚いていたのは研究員の男だった。

 

「なんで…どうしてそれをお前が知ってんだ…!?」

 

男はワナワナと声を震わせて言う。

 

「シディ!!」

 

「わからん!!だが、聞こえてきたんだ。女性の声が」

 

カゲチヨは考える。そこに本当に解毒剤がある保証があるのか?だがどちらにしろ時間がない。

 

「…ァア゛ーッ!!くそっ!!行くぞっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ…」

 

壁に背をもたれ状態で少女は目を覚ました。

 

「おお!!目を覚ましたぞ!!」

 

「はぁ…良かった…」

 

あの後、少女に解毒剤を打ち、無事に目を覚ましたことにシディとカゲチヨは安堵の息を吐く。

 

「ア、アナタたちが…?ありがと…」

 

少女は二人に感謝の言葉を告げる。

 

「起きがけ悪いが、此処に捕まってるのはお前だけなのか?」

 

シディが少女に尋ねる。

 

「…うん、そう聞かされてる」

 

「じゃあ、中に残ってる奴らは全員敵ってわけだな」

 

「話を聞きに行くとするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーもう!!なんで私が他所のプロジェクトの尻拭いしなくちゃいけないのよっ!!」

 

苛ついた様子の女性。その女性は褐色肌で長い白髪と青い目でアラビア風の衣装を着た特徴的な容姿をしていた。

 

「“フウ”、“ライ”、回収終わった?」

 

「はい」

 

「ん…」

 

女性は()()()()()に問いかけると、一人は青緑色の髪の少女、もう一人は白髪の少女がそれぞれ返事をする。

 

「重要データの回収は完了しました」

 

「ん、あの3人は殺さなくても?」

 

「アレはまだ利用価値がある。じゃ、さっさと燃やして、“ズィーベン”」

 

「…はい」

 

女性に指示されズィーベンと呼ばれた()()()()()()()()()()は地面に手をつくとそこからボッ!と炎が広がる。

 

炎はどんどん燃え広がっていき、あっという間に研究所を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燃え盛る研究所を見て、少女、シディ、カゲチヨの3人は言葉を失っていた。

 

「っ…」

 

「まだ中に仲間がいるのに…」

 

「っち、手がはえぇな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何も見つからなかったな」

 

「あぁ…」

 

炎が収まった後、カゲチヨとシディは瓦礫と炭だけが残った研究所跡を見つめながら呟く。

 

カゲチヨは少女の方に向き合う。

 

「お前、なんか知ってることはないのか?」

 

「えっ…い、いや…」

 

少女は突然の質問に戸惑っていつつ首を振る。

 

「私たちは人類のために作られた実験動物…それ以外は何も…」

 

「ケッ!何が人類の為だよ…」

 

それを聞いたカゲチヨは腹立たしげな顔でそう吐き捨てた。

 

「どうする?彼女は何処かに保護してもらうべきだと思うが…」

 

「ア゛ー、そうだなー」

 

一旦、少女の処遇について決めることにした。

 

「俺たちは奴らを追わなきゃいけねーしな。街まで行って保護してもらえるとこ調べてみっか」

 

「ウム、それがいいな」

 

「え、あ、わっ、私も…」

 

「ア゛?」

 

「わ、私も…い、一緒に行きたい…私…この身体を…元に戻したい」

 

「…おう、俺たちが身体の戻し方を聞き出してやる」

 

「ウム、任せてくれ」

 

「い、いやっ、そうじゃ………はい」

 

少女は何かを言いたげな顔をするが、すぐに諦めたように目を伏せ二人に賛同する。

 

「でも、安全なトコってどこなんだ?」

 

「とりあえず保健所とかに…」

 

 

「…」

 

少女としては彼らについて行きたかった。しかし生まれた時から研究所で実験動物として教育を受けてきた彼女は「相手に逆らわない」という習慣が染み付いており、二人の提案にも反論できずただ頷くしかなかった。

 

(私がついて行っても、迷惑なだけだよね…────────────)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────『私達人間は、やりたいことをやる為生まれてきたんだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

昔、ある少女から言われた言葉を思い出し、ハッとする。

 

 

「なめないで!!」

 

突然声を張り上げる少女。

 

「なんだ急に?」というカゲチヨとシディの思考が一致する中、少女は続ける。

 

「さっきから私のこと足手まといみたいに言ってんじゃん!!私はあんた達なんかより100倍強いんだから!!だから私の事連れて行け!!」

 

少女は先程とは打って変わって強気な態度をとる。

 

「…本気でついてこようとしてんのか?」

 

「そうだよ!!」

 

強い意志の籠った一言だった。彼女の眼には決意が宿っている。

 

「…はぁ」

 

「カゲチヨ?」

 

「ガキがっ…」

 

「待てっ、何をする気だ?」

 

しかしカゲチヨは、少女がついてくることを良しとしない。呆れたようにため息を吐き、少女に迫る。ただならない様子にシディは呼び止める。

 

「現実を教えてやる。なんも知らずに首を突っ込むのは危険だ」

 

「…」

 

カゲチヨの言葉にシディは一理あると思い押し黙るが。

 

「な、なんにも知らないのはアンタたちじゃん!!」

 

再び少女が声を上げる。

 

「こっちは生まれてからずっとアイツらに身体いじられてんだから!」

 

「諦めてもらう」

 

「っ!、あっそう…なら」

 

突如、少女の全身から途轍もない電流が発生しバチバチと音が鳴る。

 

「!?」

 

「ちょっと痛くするから!!」

 

「チィッ!!」

 

カゲチヨは身構える。

 

「後悔してもおそっ…」

 

 

 

 

ぐぅう〜

 

 

 

 

少女がカゲチヨに攻撃しようとしたその時、間抜けな音が鳴り響いた。発生源は少女の腹辺り。

 

「…」

 

「…」

 

カゲチヨと少女の間に静寂な空気に包まれる。

 

「…ちょっと痛くするから!!後悔しても遅いよ!!」

 

「…プッ」

 

少女は誤魔化すように再び同じセリフを吐くが、カゲチヨはその様子に耐えきれず吹き出してしまった。

 

「ハハハハッ!!いや!!お前それは無理だろ!!そっからシリアスには戻れねーって!!」

 

大笑いするカゲチヨに少女は顔を赤くし涙目でプルプル震える。

 

「…うぅぅ〜!!しょうがないじゃん!!お腹空いたんだから!!」

 

「タイミングっつーもんがあるだろ!!」

 

カゲチヨはさらに笑う。「こんなはずじゃなかったのに…」と空腹に腹を押さえながら呟く少女。

 

そんな二人を見て、シディは微笑ましく思いながら、カゲチヨに言う。

 

「この勝負、彼女の勝ちのようだな」

 

「ア゛?なんで?」

 

「俺と会ってから一度も笑わなかったお前が笑わされてしまっているからな」

 

「あっ…」

 

シディがそう話すとなんだかカゲチヨは気恥ずかしなり、くるっと踵を返す。

 

「ア゛ー!!もうそう言う空気じゃなくなっちまった!!とりあえず飯行こうぜ!!飯!!話はそれからだ!!」

 

カゲチヨはひとまず少女の同行を許可する。

 

 

「俺はシディだ。よろしく」

 

「…カゲチヨな。いちおー」

 

「…」

 

「…んだよ。名前無いのか?」

 

「…あるよ」

 

彼女は笑顔で答えた。

 

「私“ヒサメ”って言うんだ!!」

 

 

 

 

 

シディ

 

カゲチヨ

 

ヒサメ

 

 

こうして彼らの物語は始まった。

 

 

彼此のコレカラはまだ分からない。しかしこの三人ならきっと大丈夫だろう。何故だかそう思える。

 

後に彼らは各々の目的を果たすために組織を追うべく、情報収集も兼ねて何でも屋を開業することとなる。

 

その何でも屋の名は───────────『カレコレ屋』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし…何かお忘れじゃないだろうか?

 

この物語は【KAREKORE OF MIXED BLOOD】ではなく【Over the EVOLution】だと言うことを…。

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月〇日

 

某国某所、そこでは異宙人による奴隷市場が行われている。しかし今日は何やら様子がおかしい。市場は大混乱に陥っていた。

 

 

「市場荒らしだ!!殺せ!!」

 

「襲撃者はたった二人!!それもガキだ!!」

 

「おっ、よく見ればどちらも結構イイ女じゃねぇか!おい、こいつらも市場で売るだすぞ!!」

 

「抵抗できないようにダルマにするか!」

 

「まずは俺らで味見しようぜー!!ヒャハハハハハ!!」

 

この市場の警備兵、用心棒である屈強な異宙人たちの下衆な声に対し

 

「「…」」

 

市場を打撃した張本人である二人の少女は余裕そうな表情をしていた。

 

「…行くよ、ライ」

 

「ん、殲滅開始」

 

二人の少女はそれぞれ左腕、右腕の二の腕に装備してある『青緑色の歯車のついたアイテム』と『白い歯車のついたアイテム』を取り出す。

 

青緑色の髪の少女、『フウ』の手には()()()()が握られている。その銃を右隣の白髪の少女、『ライ』に手渡す。

 

ライは銃を受け取ると、『白い歯車のついたアイテム』を銃のグリップ前に突き出ているスロットに装填し引き金を引く。

 

ギアエンジン!ファンキー!】

 

ライは銃をフウに手渡す。

 

フウは『青緑色の歯車のついたアイテム』をスロットに装填し引き金を引く。

 

ギアリモコン!ファンキー!】

 

 

「「潤動!!」」

 

その言葉と共に、少女たちは黒煙に身を包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

物語はすでに修正が不可能なほど正史から逸脱していた。

 

 

 

 

 

 

 

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!

 

 

赤い蛇、ブラッドスタークは愉快に嗤う。

 

 

 

 

 

 

 

 

狂い出した歯車は、もう止まらない。

 

 

 

 

世界は混沌を極めていた。

 

 

 

 

 

【エボル編】完

 

to be continued…




2023/03/29時点

最近の三つの出来事

一つ、ブラックチャンネルでモモ先生が推しになる。

二つ、予約していたDXキルバスパイダーが届く。

三つ、シン・仮面ライダーを観に行った。



と言うわけで次回から『カレコレ編』スタート

お楽しみに!!


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ストーリー【カレコレ編】
カレコレ屋へようこそ


お久しぶりです。

鬱エンドのフラグを回収する者です。

今回から『カレコレ編』突入です。

ようやくカレコレ屋の三人を本格的に活躍させていけますよ。

今回の話は『913人一斉自〇…ジョーンズタウンで起きた狂信者たちの異常行動…』を元にしています。

少し長くなりました。




西暦2000年。

 

突如として地球は丸ごと────────────…異世界に転生してしまいました。

 

地球の外は宇宙から“異宙”へ変容し、異宙の生物、異宙の住人達の文化の流入により、地球は…混沌を極めていた!!

 

そして、異宙転生の惨劇から27年…

 

 

 

 

 

西暦2027年の現在では、なんやかんや人類はこの世界に適応していた。

 

空を見上げれば飛行機と一緒にドラゴンが飛行するのが見え、街を歩けば人間の他に、獣人、エルフ、妖精、リザードマン…2000年以前では空想上の存在でしかなかった種族が闊歩している。

 

ファミレスのメニュー表を開けば、オークのソテー、スライムのスムージーなんてメニューがあり、コンビニの雑誌コーナーで『大物司会者Sのサキュバス狂いの夜』と言うタイトルのエロ本が並んでいる。

 

そんな光景はもはや日常となっていた。

 

 

そんな中、街の路地裏の壁に貼られた1枚のチラシがヒラッと揺れながら落ちる。

 

そこには、こんな内容が書かれていた。

 

 

—困りごとはこちらへ!!カレコレ屋—

 

 

 

 

 

 

 

 

血のカレコレ

Over the EVOLution

 

ストーリー【カレコレ編】

 

 

 

 

 

 

 

とある町角の寂れたビル。

 

その建物はマンションで、そばには『SALE』、『50%オフ』と書かれた紙が貼られた巨大なスライム、建物ほどの刀身の大剣などといった怪しげな品々ばかりが売られている異様な雰囲気の店。どうやらリサイクルショップのようだ。

 

そのリサイクルショップの横に地下へと続く階段。

 

階段の入口には『カレコレ屋』と書かれた看板。

 

その店を訪れるのは、事情を抱えた依頼人…。

 

階段を下ると、また扉がある。

 

依頼人はその扉のドアのぶに手を掛け、ゆっくりと開ける。

 

「あのー…」

 

 

バンッ

 

 

 

(!?)

 

依頼人の目に飛び込んできたのは一人の男が壁に叩きつけられる光景。

 

依頼人の頬にピピッと赤い点々が付く。それは叩きつけられた男の血。

 

男が吹っ飛んできた方向に目をやると、そこいたのはエリンギ。

 

正確に言えばその輪郭はエリンギのようなもの。手足が生えており、スカーフや帽子を身につけている。

 

『ゴゴゴゴ』と効果音が付きそうなメラメラと燃えたぎるようなオーラを放つそれは勢いよく振り返る。

 

「死ねぇええ!!」

 

(えぇ!?)

 

手に包丁を持ち単眼と大きな唇が特徴的なエリンギのような生物の凄まじい剣幕に依頼人はギョッとする。一体なんだと言うんだ。事件か?

 

「っー…」

 

すると、先ほど壁に打ち付けられた男がボタボタと出血する頭を押さえながら立ち上がる。

 

「いってえなコラ!!」

 

男は怒りの形相を浮かべながらエリンギのような生物に掴み掛かる。

 

「コロス!!コロシテやるわあぁ!!」

 

「うるせぇあばれんな菌類が!!」

 

男とエリンギのような生物は取っ組み合う。

 

「死なば諸共!!」

 

「い゛でででででで!!」

 

エリンギのような生物が男の頭に噛み付く。

 

「はなせてめぇ〜!!」

 

「うぼおおおおオオオオオ!!」

 

「…」

 

依頼人は思う。もしかしたら自分はヤベーイところに来てしまったのではないかと。

 

「ハァッ…ハァッ…」

 

噛みつき攻撃からなんとか逃れた男は息を切らす。一方エリンギのような生物の方はまだ興奮冷めきらない様子で「滅!死!」と喚いている。

 

「締めて食ってやる…」

 

男がそう呟き立ち上がった時

 

「ハイハイストーップ」

 

突如として掛けられた静止の声。

 

「カゲもキノコ婦人も落ち着いて」

 

水色の髪、こめかみから生える小さな角が印象的な 白い衣装を着た少女…『ヒサメ』が、男…『カゲチヨ』とキノコ婦人と呼ばれたエリンギのような生物の間に割って入り宥めるように話しかける。

 

「ジャマすんなヒサ!俺はこいつをキノコ鍋にする!」

 

「小娘はひっこんでな!!」

 

しかし二人の怒りは収まらず、ヒサメを押し退け再び喧嘩を始めようとする。

 

「キノコ婦人」

 

そこに一人の青年が現れ、キノコ婦人に声をかける。

 

「依頼されたご主人の浮気調査の結果が出たぞ」

 

「シディさん♡」

 

誰が見てもわかるイケメンなビジュアルと狼耳が特徴の白髪褐色肌の青年…『シディ』を前に、キノコ婦人はさっきまでの怒りはどこへやら、頬を赤らめキュルンとした表情となる。

 

「婦人の言うとおりご主人はこの日、エリンギではなくしめじを食べていたぞ」

 

「やっぱりしめじ食べてんじゃねーか!!」

 

シディの報告にキノコ婦人は再び怒りの形相で目を血走らせる。

 

「あの野郎!!」

 

キノコ婦人はダッと勢いよく飛び出して行った。

 

「ふざけんなあの暴走キノコ!!」

 

ドドドと走り去る音が聞こえなくなったと同時にカゲチヨは怒声をあげる。

 

「シディにだけ態度ちげーし!やっぱ顔か!?イケメンだからか!?」

 

「カゲがいけないんでしょ」

 

悪態をつくカゲチヨにヒサメが呆れたように言う。

 

「依頼人に──────」

 

 

 

 

 

『キノコが浮気?www、冗談は顔だけにしろよ!(笑)』

 

 

 

 

 

「──────なんて言うから」

 

「だって…おかしいじゃん。しめじがダメってなんだよ…」

 

「カゲチヨ、“口は技ありのもと”だぞ」

 

「それを言うなら“災い”な!」

 

ドヤ顔で言うシディにツッコむカゲチヨ。

 

「シディはイケメンだけどバカだよな〜…って、ん?」

 

そこでカゲチヨたちはようやく呆然棒立ちの依頼人の存在に気がつく。

 

「あ、え、あ、えっと、か、カレコレ屋と間違えました!!」

 

我に帰った依頼人はきっと場所を間違えたのだろうと、その場から慌てて離れようと踵を返す。

 

「わーっ!!ちょっと待ってください!!ここがカレコレ屋で合ってます!!」

 

そんな依頼人の様子を見たヒサメは慌てて引き止めた。

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい!手伝ってもらって…」

 

「い、いえ…」

 

キノコ婦人の暴走によって荒れた部屋を片付けながらヒサメが申し訳なさそうに謝り、依頼人は苦笑いを浮かべながら丸椅子を運ぶ。

 

 

 

 

 

 

「それでは改めて自己紹介しますね」

 

部屋の整理が一通り終わり、依頼人がソファに座ったところでヒサメがコホンと咳払いして話し始める。

 

「俺はシディ」

 

「私はヒサメっていいます」

 

「俺はカゲチヨです」

 

シディ、ヒサメ、カゲチヨの順で自己紹介する。

 

彼らはこの異世界で悩める人たちの依頼を解決するカレコレ屋、所謂何でも屋を運営している。

 

三人は目の前の依頼人の話を聞いた。

 

依頼人も気を取り直して話し始める。

 

「ジョーンズタウンってご存知ですか?…900人以上が一斉に自害した街です」

 

 

「900人以上が一斉に自害…!?」

 

「一体どうしてそんな事が起こったんだ?」

 

「ほ、本当にあった事なんですか…?」

 

依頼人の話にカゲチヨ、シディ、ヒサメがそれぞれ 驚きを露わにする。

 

「本当にあった事です。事が起きたのは1978年11月18日─────」

 

 

米国の宗教団体『Peoples Temple』の信者たちが教祖の指示に従いジョーンズタウンと呼ばれる街で集団自殺を遂げた。

 

自害方法は主にシアン化合物入りの飲料水を使い行われた。

 

自害した913名の内、276名は子供だったという。

 

 

「酷すぎる…」

 

「宗教か…信仰に傾いた人間はそこまでするのか…」

 

ヒサメとシディがそう口にする。

 

「でもそれって40年以上前の出来事ですよね?なんでその話を?」

 

カゲチヨは依頼人に疑問を投げかける。依頼人はそれに答える。

 

「はい、それは今、似たような事が起きようとしているからです」

 

「え!?」

 

「なに?」

 

ヒサメとシディが驚きの声を上げる。

 

「私は同じ事が起きないようになんでも依頼を遂行してくれるというカレコレ屋に来たんです」

 

どうやらここからが本題のようだ。

 

「…詳しく聞かせてもらえますか?」

 

「はい」

 

 

依頼人が話したのは『ジャム』という教祖のこと。

 

ジャムの父親は異宙人への強い偏見を持っており、異宙人排除運動に参加していた。そしてジャムが幼い頃に家庭を捨てた。

 

ジャムの母親は信仰の強い宗教家で父親とは逆に異宙人も人間も関係なく貧しい人を支援していた。

 

ジャムが生まれた町はいわゆる聖書地帯だった。それゆえ不遇だった彼は信心にのめり込み、常に聖書を持ち歩くようになった。

 

そして宣教師の娘との結婚を機に聖職者の道を歩み始めた。

 

情報商材での大成功により資金を作ったジャムは自らを教祖とする宗教を掲げた。

 

その宗教の名は『地球人民幸』。

 

地球が異宙に転移し異宙人がやってきたことで地球は不安定になり、職を追われる者も増えてきました。

 

そこでジャムは貧しい人間たちに住居や食事、仕事を与え、身寄りのない高齢者のために福祉施設を建設した。

 

これらの活動によりジャムはメディアに取り上げられ、ヒーローとなった。

 

更にジャムは信者拡大のために心霊療法も行った。

 

献金は多い時には1回で800万円ほど集まったという。

 

しかし、そのあまりに派手な資金集めはSNSなどで話題になりジャムに対し「詐欺師」などと批判の声が多く集まり始めた。

 

そんな中、ある日ジャムは異宙の生物に襲われる。

 

幸い無事に済んだものの、ジャムは命の危険にさらされたことにより、考え方を大きく変える。

 

その思想はどんどん歪んだ方向へと進んでいった。

 

ある日、ジャムたちは信者たちを集めてこう告げた。

 

 

『女神様のお告げが訪れた!』

 

『世界のほぼすべてを焼き尽くす悪魔の異宙人がやってこようとしている!!』

 

『ただし、我々のような正しき魂をもつ者たちのために、世界に1箇所だけ安全な避難所が残されている!!』

 

『その場所でだけは女神様が我々を守ってくださる!!』

 

 

そうしてジャムは『ミューズビレッジ』という村を作った。

 

その実態はジャムと少数の側近が支配する植民地であり、信者たちは灼熱の熱帯で奴隷のように農業に従事させられていた。

 

更にルールは憶え切れないほど定められており、少しでも違反した者は容赦なく殴られる。

 

罰は日ごとにエスカレートしていき、拷問と呼べるものへとなっていった。

 

そして遂に事件が起きた。

 

ミューズビレッジがある地区の議員であり依頼人の上司に当たる『レオナルド』という男が政府に介入を要請し、ジャーナリスト一行を連れてミューズビレッジへと出向いた。

 

レオナルドは正義感が強く自分の地区を票田 として見るのではなく、一人一人の市民と対話を図る立派な政治家だった。

 

村を訪れた初日、ジャムと笑顔で歓迎する信者たちに案内されレオナルドが最初にミューズビレッジに抱いたのは『平和』で『牧歌的』といった印象だった。

 

レオナルドらは地球人民幸の評判はもしかすると誤りだったのではないかと思い始めた。

 

しかしすぐにその認識は覆ることとなる。

 

翌朝、あたりを散歩していたレオナルドは厳重に施錠された小屋を見つけた。

 

小屋の中には病気の老人がぎちぎちに詰め込まれていた。

 

病気の老人の内の数人はレオナルドに気がつくやいなや「どうか助けてください」と彼に縋ってきた。

 

翌日にレオナルドはそのことをジャムに詰め寄った。

 

するとジャムは酷く傷ついた様子を見せた。

 

そしてジャムは狂った様子で恐ろしい計画をレオナルドに話し始めた。

 

どうやらジャムは現在自分が不遇な扱いを受けるのは異宙人の悪魔のせいだと考えており、女神を呼び寄せることにより人々の魂は救われる…そう本気で信じていた。

 

女神を呼び出す為には大勢の命が必要で、一斉に自害にする必要があるとのこと。

 

その日の事をジャムは『最後の夜』と呼んでいた。

 

『最後の夜』には収容所で信者たちを一列に並ばせ、バリウムで割って飲みやすくしたシアン化合物を飲ませる計画だとジャムは話した。

 

また、逃げようとする者は銃殺する、と付け足して。

 

レオナルドはミューズビレッジを危険だと察知して、即座に救出用のセスナへ乗り込もうとした。

 

しかし、その時。

 

ジャムの側近たちが乗ったトレーラーが現れ、彼らの持つ自動小銃によりレオナルド達は蜂の巣となった。

 

 

 

 

「─────…以上のことをレオナルドが…命を落とす直前に私に伝えてくれました…」

 

依頼人は顔を伏せながら話し終えた。

 

「んな事が…」

 

「レオナルドさん…」

 

話を聞き終えたカゲチヨ達の間に重い空気が流れる。そこでシディがある疑問を投げかける。

 

「だが、そう簡単に自害するのか?いきなり死ねと言われたら暴動が起きそうな者だが。数は支配者より多いのだろ?」

 

「そこが宗教の怖いトコだと思うぜ」

 

「えっ?」

 

カゲチヨは言う。

 

「支配されてる側は日々ジャムの言葉に従っている。そう言う日常が続くとジャムの言うことは正しいっつー事になっちまうんじゃねーか?」

 

「じゃあ、信者達は本当に幸せになれると思い死んでいくのか…?」

 

「あぁ。現に、昔ジョーンズタウンで似たようなことが起こってるわけだしな」

 

カゲチヨがシディにそう話していると依頼人が頭を下げる。

 

「どうか皆さんの力をお借りしたい!!ジョーンズタウンのように大量の命が意味なく奪われる前に…!!レオナルドの無念を晴らすためにも…!!」

 

依頼人は涙を流しながらカゲチヨ達に懇願する。

 

「でもそんな大事な事、なんで俺らみたいな胡散臭いガキに?」

 

「皆様は異宙人のDNAを持ち、非常に強力だと伺いました。普通の人間が行っても返り討ちになるだけですから」

 

「でも武装してるって言ってもそんなに数は多くないでしょ?警察とか軍とかに任せた方がいいんじゃ…」

 

ヒサメがそう言うとカゲチヨは察したように口を開く。

 

「正規の手続きを踏むほど余裕がねぇってことか」

 

「はい…ジャムの言う『最後の夜』は近づいています」

 

「それなら早く行かなきゃ!!」

 

「これはそんな簡単な話じゃねーぞ」

 

「武装した人間が何人いようと陽が出ている間の俺なら無力化できるぞ?」

 

「そう言うことじゃねーよ。奴ら自分で死を選ぶほどジャムとやらを信仰してんだぜ?」

 

「どういうことだ?」

 

「つまり、ジャムがシディに命懸けで特攻しろっつったら、奴ら死ぬまで戦う。そしたら結局、大勢死んじまう」

 

「じゃあ、どうすれば…」

 

「大事なのは、()()()()()()()()()っつー事だ」

 

「えっ?」

 

「奴は確かに信者から以上なほど信仰されている…が、それは何も奴だけの力じゃねぇ。そのあたりから崩していければ、被害をゼロに抑えることも可能だと思うんだけど…」

 

「何か考えがあるんだな」

 

「あぁ」

 

カゲチヨは依頼人に聞く。

 

「『最後の夜』まであとどれくらいの猶予が?」

 

「ジャムの話が本当ならギリギリまで粘ってもあと10時間後にはここを出ないと…」

 

「わかりました。『地球人民幸』の資料を集めてもらえますか?」

 

「え、えぇ勿論!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ…これならなんとかなりそうだ…」

 

カゲチヨはデスクの前で依頼人に集めてもらった地球人民幸の資料に目を落としながら数時間後に行われる『最後の夜』に向けて作戦を練っていた。その後ろではソファで眠るヒサメとシディ。

 

「あとは必要な物を集めてもらえば…上手く行けば、被害が出ないで済む」

 

カゲチヨはソファで眠る二人の方を向く。

 

「シディ、ヒサ起きろ。仕事だ」

 

 

 

 

 

 

依頼人の車に乗りカゲチヨたちはミューズビレッジへ向かっていた。

 

「2人とも大丈夫か?」

 

助手席でスマホの画面と夜のビル街を眺めながらカゲチヨは後部座席のシディとヒサメに声を掛ける。

 

「作戦はわかったけどさ、それじゃあカゲが…」

 

ヒサメは心配そうにカゲチヨの方を見る。

 

「んな事言ってる場合じゃねぇだろ、大勢の人の命がかかってんだ」

 

「でも…」

 

「本当にお前は大丈夫なのか?カゲチヨ。最後の工程は試した事はあるのか?」

 

「ア゛ー、ある、大丈夫だったぜ。吸血鬼の弱点は心臓だからさ、心臓が無事なら大丈夫なんだよ」

 

(試した事があるというのは嘘か…)

 

シディはカゲチヨの答えをすぐに嘘と見抜いた。だが…

 

「…わかった、カゲチヨの言う通りで行こう」

 

「おう。頼むぜ、3人の連携がキモだ」

 

 

 

 

 

 

ミューズビレッジ、収容所にて『最後の夜』が行われようとしていた。

 

「いよいよ我々は『最後の夜』を迎えた!!」

 

地球人民幸の教祖ジャムの高らかな声と共に信者達の歓声が上がる。

 

「我々は今日!!異宙の悪魔から真の正義と博愛の心を守る為命を捧げるのだ!!」

 

彼の前には一列に並べられた信者たちの姿。中には感極まって涙を流す者も。そして、彼らの手にはシアン化合物入りのバリウムの入ったコップが。

 

「だが恐れる事はない!!これは所詮肉体の死である!!真に恐れるべきは魂の死!!悪魔に魂を売る事こそ我々が憎むべきことなのだ!!」

 

ジャムが狂言めいたことを語れば、信者達はそれに呼応するように熱気を上げていく。

 

「女神に捧げた魂は必ずしやユートピアへと導かれるだろう!!これは別れではない!!始まりだ!!地球人民幸よ!!永遠に!!」

 

『おぉー!!』』

 

ジャムの仰々しい宣言に、信者達はより大きな歓声を上げた。

 

その時だった。

 

 

 

「カッカカカカカカカカカッ!!」

 

突如、収容所内に笑い声が響いた。

 

信者たちはもちろん、ジャムも困惑を露わにする。

 

「だ、誰だ?笑っているのは!?」

 

 

「俺様だよ」

 

 

声が聞こえた方にジャムも含め誰もが視線を向ける。

 

そこにいたのは赤い異形の存在。

 

「お前は…?」

 

「よーく知ってんだろ?」

 

戸惑い気味に問うジャムに対して全身ほぼ赤一色の身体に深紅の翼を生やすその男は口角を上げて答えた。

 

「俺様はお前らの言うトコの悪魔だよ」

 

「なっ!?」

 

赤い眼光を輝かせて不敵に笑う男に、ジャムは驚きの声を上げる。

 

「女神の奴が来る前に、厄介な地球人民幸の奴らを皆殺しにしてやろうとおもってなぁア゛!!」

 

男は赤く鋭い爪を光らせる。

 

「カッカカカカ!!人間程度が悪魔である俺様にたてつこうとするからこうなんだよ!!さぁ!!魂をいただくぜぇ!!」

 

収容所内は騒然とする。

 

「あ、悪魔だ!!」

 

「あ、悪魔…」

 

「本当なのか…?そ、そうだ、ジャム様ならわかるはず…」

 

「ジャム様…」

 

信者達はジャムの言葉を待つ。

 

ジャムは狼狽えながらも男を指差す。

 

「や、奴は悪魔で間違いない!!奴の姿を見ろ!!聖典に載ってる姿にそっくりであろう!!」

 

目の前にいるのは悪魔。地球人民幸に仇なす、人の肉と魂を喰らう異形の怪物。

 

「殺せ!!奴を撃ち殺せぇーーー!!」

 

ジャムの叫びに、側近の信者達は自動小銃を構える。

 

「うおおおおおおおおおお!!」

 

「この悪魔めえええええええ!!」

 

「人類は我々が守るんだぁあああああああ!!」

 

目の前の悪魔に向けて信者達が次々と発砲する。

 

「ガハッ!!ア゛ッ…ア゛ァ…!!ア゛ァ!!」

 

放たれた弾丸に体を貫かれ後ろのめりになり倒れる悪魔。

 

(や、やべぇ!!一瞬トんでた!!いてぇ!!死ぬほど痛ってぇ!!)

 

悪魔…と偽るカゲチヨは失いそうな意識を必死で保ちながら、撃たれるたびに激痛が走る自分の体に耐えていた。

 

(脳は痛みから逃げる為に気絶させようと信号を送ってきてる…けど!!立ち上がらないと!!また撃たれるとしても…!!)

 

自分は悪魔を演じなければいけない。

 

「や、やったか…?」

 

一方ジャムは額から汗を流しつつ倒れた悪魔(を演じるカゲチヨ)を見て勝ち誇ったような表情を浮かべている。

 

「カッ…カカッ…人間ごときの鉛玉なんぞ…」

 

カゲチヨは痛みに耐え嘲笑うように立ち上がる。

 

「効かねぇんだよ…へへへ」

 

その姿にジャムは恐怖する。

 

「ば、化物め…お前ら!!更に撃ち込め!!我々地球人民幸は最後の一人になるまで悪魔と戦うぞ!!」

 

ジャムの号令に、再び銃弾の雨がカゲチヨに降り注ぐ。

 

「ギャアアアアアアアアアアア‼︎!」

 

無数の弾丸を浴び悲鳴を上げるカゲチヨ。

 

(もう少し…もう少し耐えれば…)

 

カゲチヨは歯を食いしばり、朦朧とする意識を繋ぎ止める。

 

「なにボーッと見ているんだ!?お前ら!!爆弾を持ってあの悪魔に抱きつけ!!それが地球人民幸であるお前らの役目だろ!!」

 

「は、はい!!女神さまにこの命捧げます!!」

 

ジャムが棒立ちで見ていた女、子供、老人の信者達に指示し、信者達もそれに従おうとしたその時だった。

 

 

「そこまでです」

 

 

「あ?」

 

突如聞こえてきた凛とした声にジャムは振り返る。

 

「な、なんだ?」

 

そこには宙に浮かぶ純白のドレスを纏った美しい女性の姿。

 

「女神を信仰する気高き者たちよ、悪魔から離れなさい」

 

長い金髪を靡かせ、背からは氷のような翼を生やしている。その神々しい姿にジャムを含め誰もが目を奪われる。

 

「お母さん…アレって女神様だよね…?」

 

信者の内、一人の子供が指差し母親にそう尋ねる。

 

「ま、まさか…そんな…」

 

ジャムはありえないと呟く一方、女神(?)と悪魔(を演じるカゲチヨ)は対峙していた。

 

 

「ア゛ーくそがっ!!女神の登場かよ!!」

 

「悪魔よ、そこまでです。信者たちは誰一人として傷付けさせない」

 

「カッカカカカ!!ちょうどいいぜ!!信者と女神!!ここで地球人民幸を根絶やしにしてやる!!」

 

「させません」

 

女神が手を掲げると眩い光が辺りを包み込む。

 

「ウッ…!!」

 

そのあまりの光量にジャムや信者たちは思わず目を閉じてしまう。

 

 

 

 

「死ぬなよっ!カゲチヨ!!」

 

そこに何者かが駆け込んだ。

 

 

 

周囲が白く染まる。

 

「ハァアアアアアアアアアアアア‼」

 

女神の手からバチバチと音を立てながら放たれる雷撃。

 

「悪魔よ、消え去りなさい!!」

 

それはカゲチヨがいた場所に轟音を響かせ降り注いだ。

 

光は収まり、信者達は瞼を開く。

 

「あ、悪魔は…?」

 

「ど、どうなったんだ…?」

 

信者達が困惑しながら見つめる先にあったのは…。

 

「カッ…カカッ…」

 

ボロボロで体がほぼ消えかかってる悪魔の姿。

 

「流石だな…地球人民幸…」

 

そう言い残し、悪魔は消滅した。

 

悪魔が消滅すると、信者達は歓声を上げた。

 

「やったー!!悪魔を倒したぞ!!」

 

「女神さまが倒してくれた!!我々の祈りが届いたんだ!!」

 

「女神様!!万歳!!」

 

歓喜の声に包まれる中、ジャムは女神の元まで行き跪く。

 

「女神様…私はジャムと申します。私の事は存じていますよね?貴方様が私に地球人民幸の教えを伝えてくださっていたのですから。そう!!私がここまで地球人民幸を大きくしたのです!!」

 

「…」

 

女神はジャムに対して何も答えず、代わりに信者たちに向けて告げる。

 

「地球人民幸の者たち!!よく聞きなさい!!この男は偽物の教祖です!!」

 

「なっ!?」

 

女神の言葉にジャムは驚愕する。それを余所に女神は続ける。

 

「この男の言う事を聞く必要はありません!!心霊療法を行ったり信者を労働力として使うこの男は悪魔にとり憑かれた偽物です!!」

 

「な、何を言ってるんですか…?女神様…?」

 

「もうこの男を信じてはいけません!!」

 

女神の言葉に信者たちは困惑する。

 

「そ、そう言ってるけど…」

 

「今までジャム様の教えに従ってきたわけだし…」

 

「でも確かにおかしいトコは沢山あったよな…」

 

信者たちの様子にジャムは焦り始める。

 

「違う!!私は本物だ!!そうだ!!この女神の方が偽物だ!!コイツは女神のフリした悪魔なんだ!!」

 

「いやでも女神様は悪魔から私たちを助けてくれたし…」

 

「ジャム様はあの時俺達を守ってくれたか…?」

 

「安全な場所から観てるだけだったよな?」

 

ジャムの反論も虚しく信者達は不信感を露わにしていく。マインドコントロールが解けていく。

 

「グッ…!!ぐぐっ…!!信者の分際で…教祖に…グ、グエッ!?」

 

ジャムは自身に従わなくなった信者達に対し焦りと怒りに震えていると女神に首根っこを掴まれる。

 

「や、やめろ…!!俺は教祖だぞ!!」

 

「この男は私が裁きます。あとは任せてください。…それから地球人民幸の皆さん」

 

女神は信者達に振り向く。

 

「これからは自分の命を大切に、ご自身の幸せを第一に考えて生活してください。それが女神への、私への信仰となります」

 

慈愛に満ちた笑顔で信者達に告げ、女神はジャムを連れてその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

「───よかった…上手くいって…」

 

ミューズビレッジから離れた森。そこで女神…を演じていたヒサメは金髪のウィッグを外して一息つく。

 

「なっ!?カツラ…!?」

 

それを見てジャムは驚く。ジャムは縄で縛られて転がされていた。

 

「やはり偽物だったか!!女神様が私を裏切る訳がないんだ!!こうしてはいられん!!信者達に伝えねば!!信者共を騙すなど許されんぞ!!」

 

「それはテメーもだろ?」

 

ジャムの前に上半身裸の男が現れる。

 

「なっ!?」

 

ジャムはその男の顔を見て驚く。無理もない。その男は地球人民幸を襲撃し女神(を演じていたヒサメ)に倒されたはずの悪魔(を演じていたカゲチヨ)だったのだから。その後ろにはシディと依頼人の姿も。

 

「悪魔の…?」

 

「悪魔役な。中々演技上手かっただろ?」

 

「な、なぜ生きている!?たしかにこの女の攻撃でお前は消えたはずだ!!だから私の信者達もこの女を信じた!!」

 

「ア゛ー、俺はゾンビと吸血鬼のハーフでさ、知っての通り再生力がスゲーんだよ。だから、心臓さえ無事なら再生できるかなーと思って」

 

カゲチヨはとある事情により吸血鬼とゾンビのDNAを持つ。そしてその両方の再生能力を持つ。

 

それゆえほぼ不死身。

 

だからこそ今回の作戦を思いついた。

 

ヒサメが光でジャムと信者達の視界を潰す。

 

その隙にシディがカゲチヨの心臓を奪い、別の場所で再生する。

 

「───これで劇団カレコレの茶番劇がカンセーってワケだ」

 

カゲチヨの説明にジャムは怒りに震える。

 

「こ、この化物どもがぁっ!!」

 

「それは貴方でしょう」

 

「なに?」

 

ジャムの前に依頼人が立つ。

 

「レオナルドさん達を殺した罪…償ってもらいますよ。この国のルールの下で」

 

「ふざけるなっ!!俺には地球人民幸のルールがある!!司法なんぞで裁かれるか!!俺は教祖なんだ!!」

 

子供の我儘のように喚くジャムにカゲチヨは顔を近づける。

 

「お前はただの人間だよ。身勝手で、妄想の激しい、ただの人間だ」

 

「ぐっ…ぐぅ…!」

 

ジャムは悔しそうに歯軋りする。

 

「カレコレ屋の皆さん、ありがとうございました。これでレオナルドさんたちも浮かばれる」

 

依頼人は深々と頭を下げる。

 

「ア゛ーいいんすよ。依頼料さえ払ってくれれば困ってる人達の頼み事を解決する。それが俺たちカレコレ屋の仕事ですから」

 

「それでは、ジャムは私が連れて行きます。あとのことは私に任せてください」

 

依頼人がそう言いジャムを連行しようとした。

 

 

その時だった。

 

「う゛っ!?」

 

ナニカが依頼人の首に突き刺さった。それはチューブのようなものだった。

 

チューブはすぐに抜かれると依頼人はそのまま倒れた。

 

突然の出来事にカゲチヨ達は驚愕した。

 

「どっどうなってんだ!?」

 

カゲチヨはジャムに目を向けるが彼が何かしたわけではないようだ。

 

「おい!!大丈夫か!!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

シディとヒサメが依頼人の元に駆け寄る。

 

しかし

 

「グッ!?」

 

「アッ…!?」

 

シディ、ヒサメの背にチューブが突き刺さり、依頼人同様二人は倒れ伏す。

 

「シディ!?ヒサ!?」

 

カゲチヨは二人のもとに駆けつけようとする。が…

 

「ガッ…!?」

 

突如腹部に鋭い痛みと異物感を覚える。

 

カゲチヨは下を見る。

 

自身の腹にチューブが生えるように突き刺さっていた。

 

何かが流し込まれる感覚と共に目眩に近い感覚が襲い体に力が入らなくなりカゲチヨは膝をつく。

 

「なっなんだ…!?ヒッ、ヒィイイ!!」

 

ジャムの情けない悲鳴が聞こえ目を向けると、巨大な蛇のようなものがジャムに迫っていた。

 

「た、助けっひぃやあああ…」

 

蛇はあっという間にジャムを飲み込むとどこかへと消えてしまった。

 

「ぐ…」

 

麻痺していく平衡感覚に耐えかねたカゲチヨはついに倒れ伏す。

 

コツ…コツ…コツ…

 

朦朧とする意識の中、やけに大きく聞こえる足音が耳に届いた。

 

カゲチヨは顔を上げた。

 

そこにいたのは、赤い人型のような存在。

 

カゲチヨはボヤける視界をなんとか凝らす。

 

その存在の顔は確認できない。だが胸部の緑色の装甲のようなものを捉えることができた。

 

その装甲の形状は特徴的で、まるで…

 

「コ、コブラ…?」

 

そう呟いたところでカゲチヨの意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、カゲチヨ達は病院で目を覚ました。

 

あの後依頼人の仲間の人たちが倒れてるカゲチヨ達を発見し、病院まで運んでくれたらしい。

 

医者の話によれば麻痺毒を打ち込まれたらしいが毒の種類はわからなかったとのこと。

 

しかし毒は自然と体内から消え、病院の適切な処置もあって命に別状はないと言われた。

 

しかしカゲチヨ達の表情は暗い。

 

その理由はジャムが何者かに連れ去られたことだ。

 

カゲチヨが意識を失う直前に見たコブラのエンブレムの存在。ソレがジャムを連れ去った理由は不明だが、結果的にジャムを取り逃したことになる。

 

その事実にカレコレ屋の三人は責任を感じていた。

 

しかし、それでも尚、依頼人はカゲチヨ達に礼を言った。

 

「たしかにジャムを捕まえられなかったことは残念です。ですが貴方達のおかげで大勢の命が無意味に失われずに済みました。地球人民幸もジャムがいなくなったことでいい方向に変わっていくでしょう。本当にありがとうございました」

 

そう言い依頼人は頭を下げた。

 

ジャムの行方は依頼人の方で捜査するらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「カゲチヨが見たというコブラ?は、なんだったんだろうな」

 

帰り道、シディはふと疑問を口にする。

 

「…さーな。顔は見れなかったけどジャムの仲間って感じじゃなかったぜ」

 

前を歩くカゲチヨの顔は後ろを歩くシディとヒサメからは見えない。

 

「…」

 

ヒサメはカゲチヨの背中を眺めながら悲痛そうな顔をしていた。

 

(…今回、カゲはすっごく痛い想いをして、しかも心臓から再生できる確実な保証もないのにあんな危険な賭けをした…)

 

本当は今回の作戦に反対してた。

 

しかし一刻を争う状況で、他の作戦を考える時間もなかったため仕方なくカゲチヨの案に乗ったのだ。

 

結果的に良い方になった。だが…

 

(こんなことを続けてたらいつかカゲは…)

 

そんなヒサメの心情を悟ってか隣で歩くシディは声をかける。

 

「ヒサメ、気持ちはわかる。アイツは自分をぞんざいに扱いすぎてる」

 

「…うん」

 

「けど、今日はそんな顔をしてやるな。せっかく頑張ったカゲチヨが報われん」

 

「…!!」

 

シディの言葉にヒサメはハッとした。

 

「…うん、そうだね」

 

ジャムを捕まえられなかったとはいえ信者の人たちを救うことができた。

 

もちろんカゲチヨの自己犠牲なやり方には腹が立つし心配にもなる。

 

だがカゲチヨがやったことは決して無駄ではない。

 

今はそれで良しとしよう。

 

 

「…」

 

一方、前を歩くカゲチヨは昨晩の光景を思い出しながら考えていた。

 

ジャムを連れ去った赤いシルエットのコブラの意匠の存在。

 

(アイツ、一体何者なんだ…)

 

カゲチヨはあのコブラマークを思い出すとどうも嫌な予感がぬぐいきれなかった。

 

そんなことを考えていると後ろからヒサメが駆け寄ってきた。

 

「カゲ、今度焼肉奢ってあげるよー」

 

「ア゛?なんだよ、いきなり。なんか裏があんじゃねーだろうな!?」

 

「ないよ!!」

 

ヒサメは悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 

「ただ今日はそんな気分なだけ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんなんだお前は…!?俺をどうするつもりだ…!?」

 

とある場所、ジャムは目の前にいるコブラの意匠を持つ存在に怯えていた。

 

まぁまぁ落ち着けってェ。別に取って食ったりなんてしねェよ

 

その存在────────…ブラッドスタークはジャムを落ち着かせるように声をかける。しかしその声は不気味でどこか狂気じみたものがあった。

 

 

なぁ、お前…

 

 

ブラッドスタークはジャムに近づき、肩に手を置く。

 

「ヒッ…」

 

その瞬間ジャムの背筋に悪寒のような感覚が走った。

 

そして耳元で囁くように言う。悪魔のささやきを。

 

 

アイツらに…カレコレ屋に、復讐したくねぇか?

 




フィーア「ついにカレコレ編に突入しましたね!」

惣真「え?あー、うん、そうね(エボル編未完成だけど…)」

フィーア「最終回はどうしましょうか」

惣真「新章に入ったばっかでもうそれ考えるのかよ!?気が早すぎるだろ!!最終回はまだまだ先だよ!!」

フィーア「私としては豆腐を買いにパリまで行く、ってのがやりたいです!」

惣真「それが許されるのはカブトだけだ!!」

フィーア「じゃあ…続きは劇場版で」

惣真「それはディケイドでも許されなかったからダメ!!」

フィーア「それでは次回もお楽しみに♪」


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戦麒と腐血

おひさカゲヒサ!亀投稿系ハーメラー鬱エンドフラグだぅ!

…はい、唐突なクソつまんないギャグごめんなさい。




日本のとある高校。

 

そこは異宙人と人間が共存している珍しい学校のうちの一つ。

 

人間の生徒はもちろんのこと、エルフ、妖精、獣人、リザードマンなど多種多様な種族が在籍しており、かなり風変わりだがこの世界では珍しくもない光景だ。

 

 

 

「え?カゲチヨ、学校に来るのをやめたんですか?」

 

「そーなんだよ!」

 

昼休み。教室で昼食をとっていたヒサメは、クラスメイトであり友人である少女…フィーアにプンスカと怒りながら愚痴をこぼしていた。

 

「昨日来てなかったと思ったらそういうことだったんだねー」

 

「なんでカゲチヨは学校にこなくなったんだ?」

 

話に加わるピンクに近い薄紫色のロングヘアーにスタイルの良い少女『ミキ』と黒髪にぽっちゃり体系の少女『ノリコ』。

 

彼女らもヒサメの友人でありこの四人で昼食を摂るのはもはや恒例の事。

 

ノリコの言葉にヒサメは大きくため息を吐き答える。

 

「暑いから、だって」

 

「クズだな」

 

「クズだねー」

 

「全国の不登校に悩む子ども達に謝ってほしいですね」

 

ノリコ、ミキ、フィーアの順に酷評する三人。

 

それを聞いてヒサメは苦笑を浮かべた。

 

「でもたしかカゲチヨってゾンビと吸血鬼のハーフでしたっけ?」

 

フィーアがそう言うとヒサメはうなずく。

 

「やっぱり普通の人より日差しに弱いんでしょうか」

 

「まぁ夏も真っ盛りだしな」

 

フィーアの言葉にノリコが同意する。

 

実際吸血鬼とゾンビのDNAを持つカゲチヨにとって夏の暑さや日の光はかなり堪えるものなのだろう。

 

「フィーちゃん、今日もお弁当美味しそうだねー」

 

ミキが話題を変えるように言う。フィーちゃん、というのはフィーアのことだ。彼女の弁当箱には色とりどりのおかずが入っておりとてもおいしそうである。

 

特に今まさに彼女が食べている卵焼きはとてもきれいな黄色をしており、見ているだけで食欲をそそられる。

 

そんなミキの言葉にフィーアは嬉しそうな表情を見せた。彼女は料理が得意であり、褒められて純粋に嬉しいようだ。

 

するとフィーアはあることに気づき、やれやれ、しょうがないなぁ、という顔をする。

 

「ヒサメちゃん…一個だけなら良いですよ」

 

「えっ!?な、な、なんのこと!?」

 

「ヒーちゃん…涎出てるよ…」

 

ミキの指摘にヒサメは慌てて口元を拭う。

 

「じゃ、じゃあ一個だっけ…」

 

「ヒーちゃんだけずるいよー、フィーちゃん!私にもちょうだい!」

 

「私にも一つくれないか?」

 

「もー、3人とも。仕方ないですね」

 

3人の催促にフィーアは呆れた様子を見せながらも自分の弁当箱を差し出す。

 

ヒサメ、ミキ、ノリコは礼を言うとそれぞれの箸で卵焼きを掴み口に運ぶ。

 

そしてその味を確かめた3人は…。

 

「「「──────…甘っ!?」」」

 

開口一番に口を揃えそう言った

 

「?そりゃ甘いですよ、砂糖入れてますから」

 

「いやいやいや!だとしても甘すぎじゃない!?」

 

「ミキの行きつけのスイーツ店のパフェより甘い…」

 

「無性に渋いお茶かコーヒーのブラックが飲みたい」

 

3人の反応にフィーアはキョトンとした顔を見せる。

 

「そうですかね?私はまだまだだと思いますけど」

 

どうやら彼女にとってはこの程度の味付けはまだ未熟らしい。

 

「ちなみにだけどフィーアちゃん、この卵焼きってどれくらい砂糖入れたの?」

 

恐る恐る尋ねるヒサメにフィーアはさらりと答えた。

 

まるで何でもないことのように。それが当然であるかのように。平然と。さも何事もないように。淡々と。当たり前であるかのように。普通に。

 

「1kgのやつ一袋分ですね」

 

「糖尿病になるよ!?」

 

「甘党どころじゃないよ!!狂気の沙汰だよ!!」

 

「それはひょっとしてギャグで言ってるのか!?」

 

「そんなにおかしいですかねぇ…」

 

フィーアは弁当の卵焼きを口に入れる。

 

(うーん、やっぱり物足りないなぁ。昔食べたあの味がどうしても再現できない…)

 

もぐもぐと舌鼓を打ちながら考えるフィーア。

 

(…それにしても)

 

フィーアはチラリとヒサメを見る。

 

(カゲチヨ、ヒサメちゃん、そして二人と一緒にカレコレ屋を営むシディさん…)

 

カゲチヨはゾンビと吸血鬼、ヒサメは雪女とカンナカムイ、シディは狼男とホルス。

 

3人とも人間でありながら異宙の能力を持っている。

 

(まるで私と同じ──────…)

 

「…いや、考えすぎですね」

 

「何か言った、フィーアちゃん?」

 

「いえ、なんでもありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰もいねぇよな…」

 

コンビニ前の電柱に隠れながらキョロキョロと辺りを見回す男。側から見れば完全に不審者である。

 

深い隈に血色の悪い顔の男…カゲチヨ。

 

なぜ彼がこのような行動をとっているかというと、理由は簡単。

 

現在不登校中である彼は同級生や知人にはできる限り会いたくないのだ。それだけでなく人の視線が怖い。学校に行ってないことを責められてるような気になってしまう。

 

そのためカゲチヨはこうして人目を避けているわけだが。

 

そもそも日差しが苦手な彼にとって日中に出歩くこと自体が苦痛なのだが。しかしそれでも外に出なければならない理由があった。

 

スマホの充電器が壊れたため、新しいものを買わなければならない。

 

学校への不安、不登校ゆえの漠然とした恐怖などのネガティブな思考の隙間を埋めるにはスマホは欠かせない。

 

それで仕方なく外に出てきたのだ。

 

本当ならシディについて来てもらえたらよかったのだが残念ながら彼は今フードデリバリーのバイト中だ。

 

よって一人で外出することになった。

 

「大丈夫だ、落ち着け俺…コンビニは目の前だ…サッと買ってサッとカレコレ屋に戻ればいい…」

 

カゲチヨはもう一度周りを確認する。よし、大丈夫そうだ、と思った瞬間だった。

 

背後から近付いて来た男がカゲチヨのパーカーのポケットから財布を抜き走り去った。

 

「ア゛…?……ア゛ァ!?」

 

突然の出来事に唖然となるカゲチヨだったがすぐに我に返り慌てて追いかける。

 

「待ちやがれっ!!」

 

必死に追いかけるが、ひったくりの男の足が思った以上に速く追いつくことができない。

 

(こうなりゃ能力使うか?)

 

とカゲチヨが考えたその時、ひったくりの男の前方から一人の少女が片手に買い物袋を持ちながら歩いてくる。

 

「おや?あれは…」

 

少女は目の前に迫ってくるひったくりの男とその後方のカゲチヨに気がつく。

 

ひったくりの男は懐からフォールディングナイフを取り出し柄から刃を展開する。

 

「邪魔だあああっ!!」

 

それを少女に向かって振り回す。

 

「っ!やべぇっ!!」

 

カゲチヨは血液操作を用いて男を拘束しようとするが。

 

(ダメだ!!この距離からじゃ間に合わねぇ!!)

 

ひったくりの男のナイフが少女に突き刺さる寸前。

 

少女はギリギリのところでサッとナイフを躱すと自身の足をひったくりの男の足に引っ掛けた。

 

男は勢いよく転倒し、ナイフは地面に落ちカキンッと音を立てる。

 

「マ、マジかよ…」

 

カゲチヨが呆気に取られていると少女は寄ってきた。

 

「カゲチヨじゃないですか。何してるんですかこんなところで?」

 

「え、あ!フィーア!?」

 

それは彼のクラスメイトでありヒサメの友人のフィーアであった。

 

「ア゛ー、ちょっとコンビニに…」

 

「へー、暑いという理由で学校に来ないくせに外出はするんですね」

 

「うぐっ!い、いやスマホの充電器が壊れて仕方なく…」

 

「全く、ヒサメちゃん呆れてましたよ」

 

「とっところでお前大丈夫かよ!?怪我とかしなかったか!?」

 

「露骨に話題変えて来ましたね…別になんともありませんよ。それより…」

 

先ほどフィーアに転ばされたひったくりの男はいつの間にか起き上がっており逃走を図ろうとしていた。

 

「忘れ物ですよ」

 

フィーアは地面に落ちてある財布をリフティングの要領で一度蹴り上げ、足の甲のつま先で財布を蹴っ飛ばした。

 

「えっちょそれ俺の財布!!」

 

カゲチヨは自身の財布が蹴っ飛ばされたことにギョッとするが。

 

「グエフッ!?」

 

財布は見事にひったくりの男の後頭部に直撃し跳ね返る。

 

「よっと」

 

フィーアはそのまま跳ね返った財布を片手でキャッチした。

 

ひったくりの男は財布が頭部に直撃した痛みと衝撃でダウンした。

 

その光景を見てカゲチヨは唖然とする。

 

 

「はい、どうぞ」

 

「お、おうありがとな」

 

フィーアはカゲチヨに財布を手渡す。

 

(こいつ運動神経ヤバすぎるだろ…)

 

カゲチヨは内心冷や汗を流した。

 

「それじゃあ私はこれで失礼します。それと、もう不登校についてはとやかく言うつもりはありませんが、あんまりヒサメちゃんを心配させちゃダメですよ」

 

そう言って去っていくフィーアの背中を見ながらカゲチヨはふとあることを思う。

 

(アイツもしかして、シディとヒサと同じ──────…)

 

そんな考えが頭に浮かんだが、すぐに打ち消した。

 

「…考えすぎか」

 

カゲチヨは深く考えるのをやめ、ダウンしたひったくりの男を交番に突き出して帰路についた。

 

…充電器を買うのを忘れていたことに気付いたのはカレコレ屋に着いた直後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後…

 

「おや、カゲチヨようやく学校に来たんですね」

 

フィーアはヒサメと共に登校するカゲチヨの姿を見つけ声をかけた。

 

「まぁ色々あってな…」

 

「…それ、大丈夫ですか?」

 

日差しによりカゲチヨの頭からジュウウウウという肉が焼ける音と共に煙が上がっている。

 

「だ、大丈夫だ…問題ない」

 

「それフラグでは?」

 

「カゲが学校に来るようになったのは嬉しいんだけど…」

 

ヒサメも困った顔をしていた。

 

「シディに居場所を奪われる(精神的な)痛みに比べれば!なんのこれしき!!」

 

「本当に何があった」

 

「よくわかりませんが、不登校から脱却できたようでよかったですね」

 

 




フィーア「天の道を往き、総てを司る女…私の名は、フィーア!」(ドヤァ)


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氷電のメランコリア【前編】

お久しぶりです!!

ここ暫く更新が遅れてしまい誠に申し訳ありません。

前回の更新3ヶ月以上前って…。

とりあえず今回はストーリー編一章の話に入ります。コミカライズ版の方をベースにしてます。

前編と後編に別けて投稿します。

そういえば昨日はシディの誕生日でしたね。

余裕ができれば誕生日回とかもやりたいなぁ(遠い目)


「あの、ヒサメちゃん何かあったんですか?」

 

「え?」

 

朝、教室へと向かう途中、フィーアにそう尋ねられたヒサメはドキリと心臓が跳ね上がるような感覚がし思わず声がでる。

 

「その、ここ最近様子がおかしいような気がして…」

 

「そ、そうかな?」

 

「ヒサメちゃんもそうですが…」

 

教室の前に着くと、フィーアは教室の方へ目を向ける。

 

朝の教室はクラスメイト達による独特の喧騒に包まれていた。友達同士で集まり仲睦まじく話している者、授業の準備をしている者、机の上で寝ている者など様々だ。

 

しかしフィーアが目を向けるのは彼らではない。

 

教室の窓側の席に座っている男子生徒…カゲチヨ。彼はぼんやりと窓の外を眺めていた。

 

「カゲチヨも様子が変ですよ。二人ともなんというか、哀愁〜?が漂っているような」

 

「えっと…それは」

 

ヒサメは言い淀み目を泳がせる。

 

「悩みがあるなら相談に乗りますよ」

 

フィーアのそれは友達を想っての一言だろう。ヒサメは自身に向けられる真っ直ぐな翡翠色の眼差しに思わずたじろぐ。

 

「え、えっと…」

 

ヒサメは口つぐむ。その時。

 

「ヒーちゃん、フィーちゃん、おっはよー!!」

 

「!!」

 

刹那の間を破ったその声にヒサメとフィーアは後ろを振り返ると、ミキとノリコの二人がそこにいた。

 

二人の登場、特にミキの声によって先程までヒサメとフィーアの間に流れていた重苦しい空気が霧散する。もっとも、重苦しく感じていたのはヒサメだけだったかもしれないが。

 

「今日帰りにnascitaによらない?あの店のスイーツメニューを制覇したいからさ」

 

「えっあ、うん!行こう!」

 

「ふふ、いつもご贔屓いただきありがとうございます」

 

「えーーミキダイエット中なんですけどぉ」

 

友人たちとの他愛のない会話の中、ヒサメは安堵していた。

 

ヒサメは再び物憂げに窓の外を眺めるカゲチヨに視線を向ける。変わらずカゲチヨは物憂げな表情で窓の外を眺めている。

 

「……」

 

 

時を遡ること4日前――

 

 

 

『――…だったら情報が集まってくるような仕事、そうだ!何でも屋とか‼︎』

 

『いや俺は遊んでる場合じゃ…』

 

『俺は良いと思うけどな』

 

 

(———あれ…カゲと…シディの声…?)「う…、ん…」

 

聞き慣れた仲間の声にヒサメは目覚めた。

 

朧げな意識の中目を開けたヒサメの視界に真っ先に映り込んだのは

 

 

『二人で勝手にやってくれ』

 

 

カゲチヨの顔だった。

 

正確に言えばプロジェクターの光で壁に映し出されたカゲチヨの姿だった。映像の中の彼は煩わしそうな態度で淡々と喋っていた。

 

「…え、何これ…!?」

 

ヒサメは戸惑った。自身が縄で椅子に拘束されていることにも気づかないほど。

 

「おや、目覚めました?」

 

ヒサメは聞こえてきた声の方へと目を向ける。

 

そこにはスーツ姿で眼鏡をかけた男がいた。男は椅子に座って足を組み目の前の映像を眺めていた。

 

『だったらお前はどうやって探すつもりだ?』

 

『それは…』

 

「あ、失礼、ちょうどいいところなもので」

 

「え…」(誰!?)

 

照明の灯りが一つもついていない暗い空間を映像の音と光が満たしている中、穏やかな笑みを向ける男にヒサメは困惑する。

 

『お前らも巻き込まれる…』

 

「‼︎」

 

『いーじゃん別に!!』

 

『はぁ!?俺はお前を心配して…』

 

(これって…)

 

映像を見て気づいた。

 

「カレコレ屋を結成した時の、私達の会話…?」

 

「えぇ、あなたの過去を覗かせていただいています。その“カコジェクター”を使ってね」

 

アンティークベローズカメラにタコの足がついたような生物『カコジェクター』がヒサメの頭にがっしりとくっついていた。

 

カコジェクターとは寄生した宿主の過去の記憶を映像として書き起こす能力を持つ異宙の生物だ。

 

以前、カレコレ屋に中学の頃のいじめっ子に復讐したいという依頼があり、カゲチヨが依頼人に全校集会にて高校では良い子を演じていたいじめっ子のいじめの証拠を全校生徒の前で晒すのに使わせた。

 

それゆえヒサメもカコジェクターのことは知っていた。

 

「どういうこと⁉︎何で私の過去を!!」

 

問題は、何故目の前の男がそんなものを使ってまで自分の過去に干渉してきたのか、ということだ。

 

ヒサメが睨むように男を見つめると、彼は相変わらずの笑顔のまま答える。

 

「いやぁ気になっていたんですよ人外の3人が集まってカレコレ屋というなんでも屋をやっている。とても興味をそそられるじゃないですかぁ……僕ね、人外のヒューマンドラマが大好きなんですよ。ほら、車とかオモチャとかに人格が与えられる映画とかあるでしょ?あぁいうのを見ると思うんですよねぇ…ああ、やっぱり世界は僕達人間を中心に回っているんだなーって」

 

「だって」と男は更に言葉を続ける。

 

「アイツらは人間を感動させるためだけに人格を与えられているんですからねぇ…──────あなた達も同じように人間に利用されるために作られた存在だ」

 

「も、目的はなに?」

 

ヒサメの問いかけに対して、男は変わらずにこやかな表情で答える。

 

「────勿論、全人類を幸せにする事ですよ」

 

 

バリッ バリッ

 

「!!」

 

強い光とけたたましい音に男は僅かに驚く。

 

「────あのさ、あなた何なの?全人類の幸せ?意味わかんないんですけど」

 

ヒサメの身体を縛っていた縄が焼け焦げながらバラバラと崩れ落ちる。

 

「こんな縄、私には意味ないから」

 

バチバチと全身に電流を走らせながら椅子から立ち上がったヒサメは男を睨みつける。

 

「…ええ、そうですよね」

 

男は尚も余裕の態度を崩す事なく貼り付けたような笑みを浮かべている。

 

「そんな物も、必要じゃないですもんね」

 

「は?」

 

ヒサメは眉をひそめると男は答えた。

 

 

「僕の名は“エイファ”。君を育てた研究所にいた人間です」

 

 

「…え」

 

 

『す…──い…こんなに適…率が高いのは…───アプラン始まって以来初ですよ──』

 

 

『人類の…───為───…』

 

 

『アーシ、──ナ。あんたは?』

 

 

ドクン…と心臓が跳ね上がるような感覚と同時にフラッシュバックする記憶。

 

「あぁっ…あぁっ…」

 

脳裏に次々と浮かび上がってくるそれは、消そうとしても決して消えることのない忌まわしき過去の記憶。

 

「い…、いやあぁぁ!!」

 

ヒサメは頭を抱えてその場にうずくまる。ガタガタと震えるその姿にエイファは鼻で笑う。

 

「あそこで育った君は僕には逆らえない。そう教育されてますもんねっ」

 

「や、やぁっ…い、言うこと聞きます…!!お願いします…お願いします!!だから…」

 

ヒサメの必死の懇願に、エイファはフッと更に笑みを深くした。

 

「良い子だ」

 

エイファはヒサメの腕を掴み上げ身体を自身に引き寄せると彼女の顎に手を添える。ヒサメは恐怖で全身の力が抜け一切抵抗できない。いや、抵抗しないと言った方がいいだろう。彼女はそう教育されているのだから。

 

「僕が君をもっと改良(よく)してあげますからね」

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

とカレコレ屋のドアが開けられた。

 

「すまん、遅れた!」

 

フードデリバリーのバイトから帰ってきたシディは中に入る。

 

しかしカレコレ屋内には誰もおらずシーンとしていた。

 

「……誰もいないのか…」

 

カゲチヨはともかくヒサメもいないとは珍しい。そう思いながら背負っていたデリバリーバッグを下ろす。

 

「!」

 

すると、あるものが目に入った。背もたれのあるキャスター付きの椅子だ。それだけなら特に不思議ではないのだが、その椅子の周りにバラバラの焦げた縄が散らばっている。

 

妙に感じたシディは、クン、と匂いを嗅いでみる。シディは狼男のDNAを持つ故、普通の人間よりも優れた嗅覚を持つ。

 

だからこそ、

 

その『ニオイ』が鼻腔に入った途端、

 

「!!」

 

ザワっと全身が総毛立った。

 

「このニオイ……!?」

 

その『ニオイ』は嗅上皮を刺激すると同時に自身の記憶を刺激した。その『ニオイ』を、彼は知っていた。

 

(なぜカレコレ屋に…!?…いや、そんなことより!!)

 

その『ニオイ』と一緒にヒサメの匂いがしたということは────────

 

(────ヒサメの身が危ない!!)

 

そう直感したシディはカレコレ屋を飛び出し、三輪車に跨り、ペダルを漕ぎ、ヒサメの匂いと共に混じるその『ニオイ』を辿った。

 

 

 

 

「…ここか?」

 

キキッと三輪車の前輪のブレーキをかけたシディは、目の前の建物を見つめた。

 

シディが匂いを辿りついた場所は街から少し離れた場所にある山奥の廃工場だった。三輪車から降り、扉の前に立ち取っ手に手を掛ける。

 

ギィィィィィィ、と錆びた金属の軋む音を響かせながら扉を開け、目に入ってきたのは────────

 

「‼︎」

 

台の上に手枷とベルトで拘束され、布で口を塞がれたヒサメの姿だった。

 

「ヒサメ!!」

 

「やはり来てくれましたね…ホルスの個体」

 

その横ではヒサメを攫った張本人であるエイファがヒサメの首筋にナイフを突き付けていた。

 

(…俺のことを知っている?)

 

そんな疑問が浮かんだが、今そんなことはどうでもいい。

 

「ヒサメを離せ!!」

 

「ヒサメ…?……あぁ、()()か。すみません、それは出来ません。彼女は大切な実験材料ですから」

 

「なに?…やはりあの研究所の人間か…!!」

 

「おや、するどいですね!」

 

「忘れもしない…あの醜悪に満ちたニオイの記憶…!!」

 

「────素晴らしいです。僕は君達を作った組織の一員だ。だから君達は…、僕の所有物」

 

「!!」

 

「電気の竜と雪女のDNA、太陽神と狼男のDNA…ともに素晴らしい個体です」

 

そう言いながらエイファはパチパチとわざとらしく拍手をする。

 

「…俺たちを使ってまた実験をしようという事か?」

 

「御名察…!!」

 

「最も」と、鳴らしていた拍手をピタッと止める。

 

「────僕ならもっともぉっっっっっと、お二人を改良(よく)改良出来ますがねっっ!!」

 

醜悪な笑みを浮かべるエイファ。

 

「……、そんなこと…」

 

「んーー!んーーー!!」(…ダメ、来ちゃダメ!シディ!!)

 

ヒサメは必死で叫ぶが、口を布で塞がれた状態であるが故、シディには伝わらない。

 

ゴオオオオオオッ!!

 

「させるものか…!!」

 

シディは全身から炎を放ち纏った。

 

「ヒサメを返してもらう」

 

「フフフ、それは出来ません」

 

エイファは余裕の笑みを崩すことなく、パチンと指を鳴らした。するとズズ…とエイファの背後にいくつもの黒いモヤのような歪みが発生する。そこから現れたのは、薄暗い工場内に溶け込むような黒い体に蝙蝠のソレに近い羽をパタパタと羽ばたかせ、そして何より特徴的な大きな単眼。

 

「キーー」「キキキッ」

 

それは異宙の生物、“ゲイザー”。ソレらがエイファのフィンガースナップを合図に何体も現れたのだ。

 

「言ったでしょう?彼女は大事な実験材料だと。もちろん…ソレはあなたもです!太陽神!!」

 

ゲイザーたちはエイファに応えるように一斉にシディに飛びかかる。

 

「幻覚作用を持つ異宙の生物『ゲイザー』!幻覚地獄に耐えられますか!?」

 

「キキキッ」

 

ゲイザー達は、その黒い体を覆う『眼』から能力を発動しようとする。シディはグワングワンと脳が揺れるような感覚に襲われ────────────────────────

 

 

「──フッ!!」

 

「「「ギギィィィィィィィィィ!!?!?」」」

 

───る前に、全てのゲイザーを炎を放ち撃ち落とした。

 

「ギ…」「ギギ…」

 

ゲイザー達は死んではいないものの満身創痍の状態で床に倒れ伏していた。

 

「なっ…あ…」

 

エイファは、言葉が出ないようだ。

 

シディは、その隙を見逃さなかった。

 

一瞬にして間合いを詰め、エイファの、ナイフを持っていた腕をガシッと掴み上げた。ナイフはエイファの手から離れ地面に落ちカランという音を立てる。

 

「さぁ、観念するんだな」

 

「ヒィィ!!い、痛い!!腕が折れるぅぅっ!!…──────────なんてね♪」

 

ガチャン

 

「!?」

 

エイファは自身の腕を掴み上げてたシディの腕に、腕輪…いや、手枷のようなものを取り付けた。

 

 

ヒィイイイイン…─────ブウンッ

 

「な…!?」

 

直後、手枷が光だしたかと思うと、ハニカム模様の球型のバリアが展開され、シディの周りを包み込んだ。

 

「何だこれは…!?」

 

「そこからは出られませんよ♪」

 

「!」

 

「コレで解除しないとね」

 

エイファは左手で首をポリポリかきながら右手に持つリモコンのようなものをシディに見せる。

 

「こんなものオレの炎で…」

 

シディは手に炎を出現させ、バリアに手をかけようとする。だが──────── 炎はフッと消えてしまった。

 

「!!」

 

再び炎を出そうとするが、全く出せなかった。

 

(炎が出ない…!?いや、それどころか…力が抜ける…!?)

 

シディのその様子にエイファはニヤリと笑う。

 

「やっと気づきましたか?これは僕が作ったものでね、この装置の中では擬似的な夜になっているんです。凄いでしょ〜う?」

 

「夜…だと?」

 

「はい♪太陽神の力は()()()()()()()()()…つまり、君の力を無効化出来るんですよっっ!!」

 

全ては罠だった。相手は自分たちの能力を完全に把握していて、その対策まで用意していた。シディは自身の軽率さを呪った。

 

「…うん、そうだ…」

 

エイファがボソリと呟いたかと思うと、突如彼は自身の首を両手でボリボリと音がする程掻きむしり始める。

 

「うん!!そうだ!!僕はスゴイんだ!!うん!!電気の竜も太陽神も僕の力で捕らえた!この僕こそが人類最高の研究者なんだ!!うん!!やっぱり僕はスゴイ!!スゴすぎる!!うん!!うん!!」

 

皮膚が傷つき血が滲むほど首を掻きむしりながら壊れたオモチャのように自画自賛の言葉を繰り返すエイファにシディとヒサメはゾッとする。

 

「僕が人類の救世主なんだぁぁぁぁ!!」

 

廃工場内にエイファの狂笑が響き渡った。

 

「お前…一つ忘れていないか?」

 

「…はぁ?」

 

刹那の静寂が支配するとエイファに向かって、シディはそう告げた。

 

「カレコレ屋には、もう一人いる」

 

「もう一人?…あぁー、あの失敗作ことですか?アレは論外です」

 

そう言うとエイファはジャラ、と鎖を引っ張る。

 

「アレには何も出来ませんよ」

 

 

グルル…

 

 

エイファの背後から現れた、鎖につながれたソレは唸り声を上げる。

 

「対処は、コレで完璧です。フフフ…」

 

ソレの羽が舞う中、不遜な笑みを浮かべるエイファに悟られぬようシディは自身の左胸のバッチに手をやる。

 

(頼むぞ…!!カゲチヨ!!)

 

 

 

 

 

一方その頃、カゲチヨは…

 

 

 

「うおおお!?『プイステ5』売ってんじゃん!!オーナー、まけてください!」

 

「ヤダ」

 

「…オーナー、何か依頼はないですか?報酬はもちろんプイスt」

 

「帰れ」

 

「くそぅ!!」

 

 

───…この時、カゲチヨの胸のバッチがチカチカと光っていた。




タートル()!×ウォッチ(時計)!ベストマッチ!

…今後の更新もタートルウォッチフォーム(亀更新)になると思います。






次回オリキャラ登場。


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氷電のメランコリア【後編】

西暦201X年

???「キシャシャシャー、キシャキシャー…(ワシはどこに行っても、迫害されるんじゃ…)」

エボル「なるほどな…それで癇癪を起こしてあの村を滅ぼそうとしたのか」

???「キシャーキシャシャシャ、キシャシャーキシャーキシャシャーキシャー…キシャシャーキシャー(ワシに近づいてきたヤツらもいたが、他者との交流の仕方がわからなかったワシはそのたびに誤って殺してしまったのじゃ…ひどい時は星一つ破壊したこともあった)」

エボル「そうか…」(まぁ、いくつも星ぶっ壊してるブラッド族よりはマシだな)

???「キシャーキシャシャ、キシャシャキシャー…(ワシはこの先ずっと、独りなのだろうか…)」

エボル「お前さんはどうしたいんだ?」

???「……キシャキシャシャシャー…、キシャシャーキシャーキシャシャ。キシャーキシャシャシャ(……ワシも他の者たちのように友が欲しい…、じゃがまた迫害されて怒りで殺してしまうかもしれん。ワシはもうどうすればいいかわからない)」

エボル「…俺もこういったことに関しては不得意でな。あんま良いアドバイスはできねぇが、俺から言えるのは…とことん悩め。お前さんは今何かに縛られてるわけじゃない、たくさん悩む時間があるんだ。とことん悩んで、それで納得のいく答えが出たら、居場所も見つけられるんじゃないか?」

???「……キシャシャシャシャ、キシャシャキシャー…(……ずっとここで悩んでいれば、答えが出るかな…)」

エボル「出ないだろうな。だってそんな簡単に答えが出たら悩むことないだろう?何年かかったって良いんだよ。誰だって悩んで成長するんだから。お前さんの場所はなくならないんだし。お前さんが生きている限りずっと、その時いるそこが、お前さんの場所だよ。そしてその場所で自分が本当に好きだと思える自分を目指せば良いんじゃないか?」


夜来る。

 

山奥に佇む廃工場からは、外は厚い雲に覆われ暗く深い夜に包まれている。

 

街灯はおろか、月明かりさえも届かない。

 

このような場所にわざわざ訪れる者は誰もいないだろう。

 

 

故に。

 

 

「んーー!!んーー!!」

 

 

口を塞がれ、辛うじて出るくぐもったヒサメの声は誰にも届かない。

 

この廃工場で何が起ころうとしているのか、誰も知る者はいない。

 

「そもそもアレにはここに辿り着く事すら無理でしょう」

 

「ふー!!ふー!!」

 

涙を浮かべるヒサメに対して闇の中で爛々と目を輝かせるエイファは液体、そしてその液体に浸かるダイオウグソクムシのような生物が入ったビーカーを見せつけるように揺らす。

 

「“掣肘グソクムシ”。生物から自意識を奪う寄生虫です」

 

『掣肘』が付くその名の通り、寄生した生物の自由を奪う。

 

「実験体の寿命が短くなるので、使いたがらない研究員もいますがね…」

 

エイファがヒサメの服の裾を掴み、ガバッと捲り上げるとヒサメの腹が露わになる。

 

「…僕は使う派です」

 

エイファはビーカーから掣肘グソクムシを掴み取り出す。液体から解放された途端キシキシと音を立てながら身動きするソレにヒサメは生理的恐怖と嫌悪感を隠せない。

 

「んーー!!んーーっ!!」

 

「この虫が肌を食い破って脳まで体内を進んでいく…。どんな感じか、是非感想を聞きたいですねぇ♪」

 

エイファは掣肘グソクムシをヒサメの腹に近づけていく。キチキチという不快な音が耳元まで近づき、ヒサメは全身の毛穴が逆立つような感覚を覚える。

 

「っん〜〜〜〜〜っ、んーーーーーーっ!!」

 

「やめろおおおお!!」

 

ヒサメは必死に抵抗するが、拘束された状態では何もできない。掣肘グソクムシとヒサメの腹の肌の距離が、徐々に近づいていく。その様子をバリアの中でなす術もないシディはただ見ていることしか出来ない。

 

迫る恐怖にヒサメはガタガタと体を震わせながら涙を流す。恐怖に負け目を瞑れば走馬灯のように一人の男が浮かぶ。

 

 

(カゲ……!)

 

 

掣肘グソクムシがヒサメの肌に触れる距離がわずか数センチにまで縮まった時…。

 

 

 

 

 

 

「ギッ」

 

「!!」

 

掣肘グソクムシが『ザクッ』という音を響かせ赤い針のようなナニかに貫かれた。

 

エイファの手から絶命した掣肘グソクムシが崩れ落ちる。

 

エイファは赤い針が飛んできた方向へ視線を向ける。ヒサメとシディもその方向を見る。

 

 

 

 

 

「────えーーーっと、全っっっ然状況わかんねーんだけど……その虫、潰しちゃってよかった?」

 

入り口に立っているその人物はカレコレ屋のリーダー、カゲチヨ。

 

 

「カゲチヨ…!」

 

まさに深き夜に差し込んだ光明。カゲチヨの登場にシディは声を上げる。

 

(…カゲ………)

 

カゲチヨを捉えたヒサメの目からはさっきまでとは違う感情から来る涙が浮かんでいた。

 

「……よくここが分かりましたね」

 

「ア゛ーー、これで位置わかるようにしてっから」

 

表情を崩さずに問うエイファにカゲチヨは自身の左胸のバッチを指差す。

 

「シディが位置を知らせてくれたんだよ」

 

「…なるほど」

 

「──で、お前、ヒサメに何してんだ」

 

カゲチヨはエイファを鋭く睨みつける。

 

「残念ですが…」

 

対してエイファはそんな彼に怯む様子もない。

 

「あなたに用はないんですよ」

 

エイファがそう言い放ったのを合図に。カゲチヨの左横。工場内の暗闇に潜んでいたソレの目が光った。

 

「っ!」

 

獰猛な爪が空を切り裂く。

 

ドオッ

 

「うおっ!!」

 

ソレの爪が振り下ろされる刹那、本能的に危機を感じたカゲチヨは咄嗟に後方へ飛び退

いて回避する。ソレの爪がカゲチヨが立っていたコンクリートの床に深々と刺さり大きな亀裂が入る。

 

「な、なんだよコイツ!?」

 

「グルル…」

 

全長三メートルほどの巨躯。その体を包む体毛は黄褐色で、獅子を彷彿させる頭部から生えている赤いツノ。背から生える鷲のような翼を大きく広げ圧倒的な存在感を放ち、猪のソレを思わせる鋭い牙が突き出た口元から獣の息を吐きながら獰猛な金色の瞳でカゲチヨを睨みつけている。

 

「僕が作ったキメラです♡ 君の相手はこの子にしてもらいます」

 

「コエー…、話す気ないってことね」

 

「フフフ……やれ」

 

スッと笑みを消し冷徹な表情でエイファが指示を出すとキメラは勢いよくその鋭い爪を振るう。

 

(!!はやっ──)

 

咄嗟の事で対応が遅れたカゲチヨは凄まじい速度で薙ぎ払うように振るわれた爪を真正面から受けてしまい、ドガァァンとドラム缶と倒れ伏していたゲイザー達を弾き飛ばしながら吹っ飛び壁際まで転がる。

 

「くっ…」

 

「グオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

すぐさま立ち上がり体勢を立て直すカゲチヨにキメラは雄叫びを上げ襲い掛かる。カゲチヨは即座に右手をかざし血液の針を飛ばす。しかしそれはキメラの顔をピシピシと掠る程度で物ともしない。

 

キメラの突進の勢いを乗せた爪撃がカゲチヨを襲う。

 

カゲチヨは咄嗟に避け、キメラの爪は波型スレートの壁を貫き破壊した。

 

しかし完全には避けきれず左腕に傷を負い、さらに避けた勢いでバランスを崩し転倒してしまう。

 

「ぐっ…!」

 

「カゲチヨ!!」

 

バリア越しにシディが叫ぶ。

 

転がるカゲチヨを鼻で笑いながらエイファは言う。

 

「ゾンビと吸血鬼のハーフ、能力は『血液操作』と『超再生』。下の上、良くても中の下クラスの強さ。対して僕のキメラは中の上と言った所」

 

わかりやすく言えばカゲチヨの戦闘能力は一般人よりは上のレベルでしかない。

 

今この場で戦闘能力が最も高い者はシディ、その次にヒサメ。

 

そしてキメラはヒサメとカゲチヨの中間に位置する。

 

「僕らの敵ではありません」

 

エイファが淡々と語る一方で、カゲチヨの表情は険しかった。

 

(傷が…()()()()()…!?)

 

カゲチヨは瞬時に自身の傷を回復させる超再生能力を持っている。にも関わらず先程受けたばかりの裂傷。それが未だに塞がらず、血が滴り落ちている。

 

「気がつきましたか?」

 

エイファがにやりと笑いかける。

 

「キメラの爪には再生を遅らせる能力を持たせています。君の超再生は対策済みです。…それに」

 

エイファは告げる。

 

「君は不死身じゃない。ある条件を満たせば普通に死ぬ」

 

エイファの声音が重々しく響いた。

 

「…なんで…、そんなに…俺に詳しい…?」

 

カゲチヨは理解が追いつかない中、絞り出すようにエイファに問う。

 

「当然でしょ」

 

エイファは一笑に付すように言う。

 

「僕は君を作った組織の一人だったんですから」

 

「!!」

 

カゲチヨは目を見開く。

 

「アイツらの…!!」

 

カゲチヨは己の両手を広げガタガタと震わせ見つめる。その様子にエイファはニィ…と口角を上げる。

 

「どうしましたぁ?そんなに震えて。今更怖くなりました?」

 

エイファは嘲笑のまなざしを向けながら煽るように言った。

 

すると…

 

「……………………ヒッ」

 

「…?」

 

「ヒヒッ…ヒヒヒヒヒヒヒヒ」

 

カゲチヨは小刻みに肩を震わせる。

 

そして、傾かせていた顔を、上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──やっっと会えたなぁ…!!

 

「!!」

 

エイファは息を呑んだ。

 

その顔は、笑っていた。

 

それは嬉々としたものではない。いや、嬉しいという感情も確かにあった。しかしそれに混じる憎悪、憤怒、殺意といった負の感情。鋭い目付きで口角だけをつり上げた、危うい笑みだった。

 

(お、落ち着け…!!)

 

思わず怯んでいたエイファだが、すぐに気を取り直す。

 

何を恐れる必要がある。有利なのは自分だ。

 

相手は碌な戦闘能力もなく、自慢の再生能力も機能せずボロボロ、すでに虫の息。

 

ここから自身の勝利が揺らぐことなど──────

 

 

 

グラァ…

 

視界が揺れた。

 

ドサッ

 

(…………………………………………………………は?)

 

エイファは後ろから倒れた。

 

(アレ?僕が地面に…?)

 

理解が追いつかないでいるとドサ…と何かが倒れる音がした。

 

視線を向けるとキメラも倒れ伏していた。

 

「…!!……っ」

 

膝をついていたカゲチヨが立ち上がる。

 

(何で…、)

 

エイファは混乱した。何だこの状況は。

 

(何でこいつが僕を見下ろしている…!?)

 

 

「……」

 

混乱するエイファを他所に、カゲチヨは台の上に拘束されたヒサメの方へと駆け寄る。

 

カゲチヨは血液の刃を形成しヒサメを拘束していたベルトを切断し、彼女を解放した。

 

「大丈夫か、ヒサ」

 

「カゲ…」

 

「…ア゛ー、とりあえずさ、ほら、貸すからコレ着とけ」

 

「あ…うん…」

 

そう言いカゲチヨはパーカーを脱ぎ、ヒサメに羽織らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒサメ!大丈夫か!?」

 

カゲチヨが腕の装置を壊し、バリアから解放されたシディがヒサメに駆け寄る。

 

「う、うん…………………二人共ごめん…」

 

ヒサメは弱々しい声で答え、顔を俯かせる。

 

「シディ、ヒサを頼む」

 

「あ、ああ」

 

カゲチヨはシディにヒサメを任せ、地に伏しているエイファに向き直り、歩み寄る。

 

ヒサメはその背を、ただ見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ、ハァッ…!!ハァ…!!ハッ…」

 

エイファは床に伏した状態で蹲り、胸を押さえ苦しげな呼吸を繰り返す。

 

身体の内側からくる熱と倦怠感に冷や汗と脂汗が吹き出す。

 

(身体が熱い…!!身動きが取れないっ…!!僕の体は一体どうしてしまったんだ…!?)

 

「気分はどうだ?」

 

「!!」

 

そんなエイファを冷めた表情で見下ろすカゲチヨ。エイファは息を切らせながらカゲチヨを睨む。

 

「ぼ…、僕に…、一体何をした…っっ!」

 

「……」

 

それに対してカゲチヨは、冷めた目はそのままに、ゆっくりと口角を上げて答えた。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「…!!ウイルス…!?」

 

エイファが驚くと、カゲチヨは手をグッと力を込めるように動かす。すると…

 

「あぐっっ…ぐぅぇ…!!」(い、息がっ…!?)

 

「症状を止めるのも進めるのも、オレ次第だ」

 

「〜〜っっ!!」

 

呼吸が困難になり、エイファは悶える。

 

(しっ死ぬっ…!!)

 

カゲチヨがパッと力を抜くように手を広げる。するとエイファの呼吸は正常に戻る。

 

「ぶはぁっ…!!ハッ…ハッ…」

 

肺に停滞していた二酸化炭素が吐き出し、酸素を求めて喘ぎつつ、エイファは思考を巡らせる。

 

(ま、まさか…、ウィルスを操作してるのか!?)

 

カゲチヨはゾンビと吸血鬼のDNAを持つ。

 

ゾンビは噛み付き、仲間を増やす。

 

吸血鬼も噛み付き、眷属を増やす。

 

双方の共通点。それは、()()()()()()()()()()()

 

狂犬病に感染した動物に咬まれると感染するように。

 

マラリアやデング熱などの病原体を持った蚊の媒介によって感染するように。

 

ゾンビと吸血鬼も、噛み付く、吸血というプロセスを介することで、自らのウイルスを他者に感染させ同族を増やす。

 

(仮にコイツが血液操作を使い、体内でゾンビと吸血鬼のウィルスを混ぜ、オリジナルのウイルスを作って操作してるとしたら…!?)

 

そんなことがあり得るのだとすれば。

 

(あのとき…、僕が勝利を確信し口を走らせていたときにはすでに…)

 

──────僕にウイルスを感染させていた!?

 

ホルスの個体などに比べれば取るに足りない雑魚だと踏んでいた。故にエイファはカゲチヨを『失敗作』と評価していた。

 

自身が敗北するなど、露ほどにも思っていなかった。しかし今、エイファは地に伏している。こんなはずじゃなかった。

 

(まさか血液操作にっ…、こんな能力があったなんて…!!)

 

「おい」

 

「…!!」

 

「質問に答えろ」

 

エイファを見下ろすカゲチヨは、冷たい視線のままに問い掛ける。

 

「答えられなくなった時点で死ぬ。嘘をついても死ぬ。わかったか?」

 

それが脅しではないことは、瞳に宿る狂気が物語っていた。

 

「…ハ、ハイィ…わかりましたぁっ…!!」

 

「俺達を作った組織について、知っている事すべて話せ」

 

「そ…、組織の名前は────────────『トッププレデター』という組織です」

 

 

 

そこからエイファに明かされた、『トッププレデター』という組織について。それはカゲチヨ達にとって目を見開く内容だった。

 

地球が異宙に転移し、人類は生態系の頂点ではなくなった。それを良しとしない一部の人間が、再び人類の手に地球の覇権を取り返すことを目的として作られた組織。

 

その目的の為の彼らが実験の一つとして実行したこと。

 

それは、異宙の住人達よりも強い生物を造り出すこと。

 

それが────────────

 

「…」

 

「それが…俺達…?」

 

「なのに…っ、あいつだ……あいつに実験を奪われた…!!」

 

「ア゛…?奪われた?お前がシディやヒサを作ったんじゃないのか?」

 

「ち、ちがいますっっ!!」

 

憎々しげに言ったエイファの言葉に疑問を抱いたカゲチヨの問いに彼は即座に否定した。

 

「僕は生物合成研究の第一人者だったんだ…、うん…!!」

 

「なのに…」とエイファは表情を歪ませて、ギリっと歯ぎしりする。

 

「その後に入ってきた奴が僕の実験を乗っ取って、うん…!!ソイツが…、ソイツが実験体のあなた達を作ったんです!!僕は組織を追い出されて、それ以上は何にも知らないんです!」

 

「じゃあなぜ俺たちの能力を知っていた?」

 

「うぐ、そ、それは、雪女の…、い、いや、ヒサメさんの過去を覗いてデータを収拾しました…!!」

 

「…!!」

 

エイファの言葉にヒサメはハッと目を見開く。自身がカレコレ屋で目を覚ました時、頭に『カコジェクター』を取り付けられていたことを思い出す。エイファがシディ達への対策が取れたのはヒサメさんの過去を覗き、能力を把握していたからだ。無論、カゲチヨのウイルス操作能力までは把握していなかったため結果はこのザマだが。

 

「組織に返り咲くために…、あなた達実験体をさらに進化させようと思ったんです…」

 

エイファは苦しげな表情で言葉を絞り出す。トッププレデターから追放されたことで、彼は大きな屈辱を受けた。組織に認めてもらうために、今回の凶行に及んだ。

 

「…他に知ってることは?」

 

「えっ…と…最近風の噂で小耳に挟んだ程度で、詳しくは知りませんが…、『ライダーシステム』という新たな兵器開発のプロジェクトが進められてるらしくて…」

 

「ライダー、システム…?」

 

確か『ライダー』は『乗り手』や『騎手』を意味するはず。『ライダーシステム』と言うのが何なのか気になるが詳細はエイファも知らないようなので一旦保留。

 

「知ってることはそれだけです…!僕はすぐに組織を追い出されたから後任の名前さえ知らない…!…そうだ…、僕は悪くない…」

 

エイファは震える声でそう言うと自分の首をガリガリと掻きむしり始めた。

 

「僕を責めるのはお門違いだ!僕は可哀想な被害者だっ!うんっ…!!優秀なのに追い出されてっ…!!うんっ…!!全部周りが悪いんだよおおおおおおっ!!」

 

堰を切ったように被害妄想が混じった叫び声をあげるエイファ。ひとしきり叫び、ハァハァと息切れする彼を見るカゲチヨの目は冷たかった。

 

「…お前、自分しか好きじゃないんだな」

 

「うぐっっ…、あがっ…!」

 

カゲチヨはウイルスを操作し、エイファの症状を悪化させる。

 

「な…んでぇっ…ぜん…ぶっ…ちゃんとっ…はなし…たのにぃ…!!」

 

「…」

 

「あがっっばっばばっばっ…!!」

 

カゲチヨはさらにウイルスの強度を上げる。エイファはもがき苦しみ死の淵へと立たされる。

 

「やめろカゲチヨ」

 

シディがカゲチヨに手を掴み制止する。

 

「…いいだろ。俺達には…、その権利がある…!!」

 

「「…」」

 

臓腑の底から湧き上がる深く暗い憎悪を込めて、カゲチヨは言った。ヒサメとシディの表情も曇る。

 

カゲチヨ、ヒサメ、シディ、それぞれの脳裏によぎる、屈辱、苦痛、悔恨の記憶。ソレをするのに正当な理由は確かにあるかもしれない。

 

しかし…

 

「───そんな権利はない。コイツは俺達の実験に無関係だ」

 

「…」

 

シディの言葉にカゲチヨは一度湧き上がった憎悪に蓋をし、ウイルスの操作を止め手を下ろした。

 

「ゼー…、ゼー…ハァ…ハァ…」

 

「…最後に」

 

「!」

 

呼吸が戻り荒い呼吸をするエイファにカゲチヨは最後の質問を投げかける。

 

「鈴の…鈴の耳飾りをした吸血鬼を知ってるか?」

 

「鈴の耳飾り…?き、吸血鬼…?し、知らないです…!!」

 

「…そうか」

 

これ以上情報は得られないと判断し、背を向けて歩き出す。

 

(……。助かった…、のか…?)

 

ウイルスによる気だるさと全身の痛みにまともに体を起こせないエイファは、安堵する。

 

「…安心してるみたいだが、ウイルスはお前の体内に永遠に残る」

 

「!?」

 

「何かしてるとわかったらウイルスを活性化させる、いいな?」

 

「は、はひぃぃ…」

 

最後にエイファに釘を刺し、カゲチヨはヒサメとシディと共に廃工場から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

帰り道、3人に会話は無い。

 

山道を下る一同の表情は暗く、その中でも特にヒサメの表情は重いものだった。

 

(何もできなかった…!!私が足を引っ張った…!!)

 

ヒサメは今回のことに深く責任を感じていた。

 

カレコレ屋結成時、覚悟は出来ていたはずだった。…覚悟していたつもりになってた。

 

しかしいざとなると恐怖から身体がすくんで動かなかった。自分が情けなくて仕方がない。

 

(きっと私は…、二人と一緒にいない方がいいんだ…────────────)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが4日前の出来事。

 

あれから、カゲチヨはずっと上の空。今もボーッとしたまま、心ここにあらずといった様子。

 

(やっぱり、組織のこと考えているのかな……)

 

ヒサメがそう思っていると、教室の外、廊下からバタバタと複数の足音。

 

「カゲチヨーッ!!」

 

ガラッと教室の扉が開かれる。入ってきたのは4人の人物。

 

彼らはカゲチヨの席までズンズンと歩いていく。

 

窓の外をぼんやり眺めていたカゲチヨは名前を呼ばれて振り返ると、4人の人物。そのうち一人は赤ん坊ほどのサイズで宙を浮遊していた。

 

「──────聞いたかカゲチヨ!!エリコちゃんが…、グループ卒業って!!」

 

ダバーッと滝のような涙を流す、そばかすと尖った耳が特徴の茶髪の男子。彼の名は“アサオ”。種族はエルフ。美男美女が多いことで定評のエルフにしてはブs…ゲフンゲフン、やや劣った容姿だがエルフの第3王子である。

 

「我はもう生きてはいけぬ!!」

 

坊主頭に黒マスクと金色のイヤリングが特徴の大柄な男子の名は“チダイ”。種族はわからないが実家が殺し屋を営んでいるらしい。そんな彼もグッと拳を握り締め滂沱の涙を流している。

 

「あぁ…こんな現実受け入れられないよ…」

 

やたら爽やかで気取った仕草や口調の糸目が特徴の長髪の男子の名は“ルイ”。種族はインキュバス。インキュバスとは女性を魅了し精を搾り取る異宙の住民だが、彼は他のインキュバスのように女性を魅了することが不得意らしい。そして一番重要なのが、目は閉じてるように見えるが開いている。彼もまた閉じてるのか開いてるのかわからない目から涙を流している。

 

「キシャシャシャシャーーー!!(エリコーーーーーー!!)」

 

赤ん坊サイズでトサカのようなモヒカン頭の男子の名は“マチャソ”。種族は妖精。常に背から生やした蝶のような羽で浮遊している。この世の終わりだと言わんばかりの悲鳴…もとい鳴き声をあげる。

 

(………エリコ?)

 

ヒサメが疑問符を浮かべていると、突如カゲチヨがバンッと机を叩きユラァっと立ち上がる。

 

「てめぇら……────────────考えないようにしてたのに…、思い出させんなよおおお!!エリコオオオオオオ〜〜!!」

 

(は?)

 

ヒサメの顔から表情が消える。

 

「すまんカゲチヨ〜!!」

 

「今日はカゲチヨ殿の家でライブ上映会だ!!」

 

「キシャシャシャ〜〜〜〜!!(最後までエリコちゃんを応援するのじゃ!!)」

 

 

「エリコって誰…?」

 

「ホイ」

 

盛り上がってるカゲチヨたちを死んだ目で眺め呟いたヒサメに、ノリコがスマホを差し出す。

 

(アイドル!!)

 

スマホの画面には、キラキラとした衣装を着た女の子が笑顔を振りまいていた。

 

(組織の事じゃなくアイドルの事考えてたんかい!!)

 

ヒサメは心の中でツッコんだ。

 

 

 

「なんか“キモ(ファイブ)”が騒いでんだけどキモッ」

 

「なんかー、アイドルの引退にマジ泣きしてるみたいよキモッ」

 

「うわっドルオタの傷の舐め合いとかキモッ」

 

カゲチヨ達を遠巻きに見てた女子達が嫌悪感を表しながらヒソヒソと囁き合う。『キモ5』というのは、カゲチヨ、アサオ、チダイ、ルイ、マチャソの5人組に対する蔑称。カゲチヨ達は一部の女子から気持ち悪がられていた。

 

 

 

「なになに〜?カゲチヨ君()行くの〜?僕も行くー」

 

「ゲッ、“マカミ”」

 

中性的で整った顔立ちの黒髪の男子『日津賀 マカミ』に、にこやかな顔で声を掛けられたキモ5一同はあからさまに顔を顰めた。

 

「なんだマカミ。俺達は今お前のような陽キャに構ってられるほど寛容ではないぞ」

 

「毎回絡んできやがって。女子にモテるお前は俺たちと住む世界が違うんだよ!」

 

「キシャーキシャシャシャ!!(陽キャオーラが眩しいんじゃ!!)」

 

「ひっどいなー、僕はただ君たちと仲良くしたいだけなのに、すっごく悲しいよ……僕、そういう顔してるでしょ?」

 

「どこがだ!!100万ドルの陽キャイケメンスマイルじゃねーか!!」

 

「そもそもお前エリコちゃんのファンでもないだろ!」

 

「うん。全然知らない。アイドルに興味ないし、僕音楽はクラシックの方が好きだからねー」

 

「コイツ…!さらっと自分は音楽の趣味がいいですアピールしてきやがった…!!」

 

「恐ろしいね…実は人間じゃなくてインキュバスなんじゃないかい?」

 

「やはり貴様とは価値観が合わん!」

 

「ひどい言われようだなー」

 

 

 

「あの6人は相変わらず仲良いですねー」

 

「えぇ…そうかなぁ…?」

 

キモ5とマカミのやり取りを微笑ましげに言うフィーアにヒサメは苦笑する。

 

「マカミ君たまに空気読めないとこあるけど気さくで話しやすいし、一部の女子に人気があるからねー」

 

「5人とは真逆の部類だし、カゲチヨ達にとっては苦手なタイプだろうな」

 

ミキとノリコがキモ5とマカミの関係をそう評する。

 

「でもなんだかんだ仲良さそうじゃないですか?」

 

「お前らー、席つけー」

 

フィーアがそう言ったところで、ヒサメ達のクラスの担任“神谷丹次(かみやたんじ)”が教室に入ってくると各々は席についた。

 

 

 

 

 

授業中、板書の内容をノートにまとめながら、ヒサメは考えていた。

 

カレコレ屋は、もともと、あの組織を追うために3人で結成した。3人でこの街に住みながら、こうして学校にも通い、組織の情報が集まってくるような仕事として、なんでも屋のカレコレ屋を始めたのだ。

 

なのにあの日。組織の人間を前に自分は何もできなかった。

 

これからどうなるんだろうと、ヒサメは思う。カゲチヨはきっと、組織を追うことをやめないだろう。

 

(私は………)

 

ヒサメはチラッと少し離れた席のフィーアを見る。

 

(フィーアちゃん…心配してくれてありがとう。でも、ごめん。私達の事情に巻き込めないよ…)

 

 

 

 

 

 

 

 

キーンコーン…カーンコーン…

 

学校は放課後を迎え、部活動に向かう者や帰宅する者で賑わっていた。

 

「さぁスイーツ食べ行こぉ」

 

「ダイエットは?」

 

「明日」

 

「うーむ、ミキらしいですね」

 

帰りの支度を済ませたヒサメ達はnascitaに向かおうとしていた。

 

「あ」

 

すると教室の入り口のところでヒサメはバッタリとカゲチヨに出くわした。

 

ヒサメは何を言えばいいのか頭が真っ白になり、カゲチヨとの間に一瞬の間が生まれる。

 

「…、あ、明日…!!カレコレ屋で!」

 

「あぁ」

 

ヒサメがなんとかそう声を絞り出すと、カゲチヨは抑揚のない声で返した。

 

「カゲチヨ行くぞー」

 

「おう…って、結局マカミも来んのかよ!」

 

「あはー☆」

 

 

カゲチヨ達の背を見送るヒサメの表情は曇っていた。

 

(私は…、今のままみんなと普通に、過ごしたい)

 

「ヒーちゃーん?行こー?」

 

「あ、まってー」

 

 

 

そんなヒサメの切実な思いとは裏腹に。

 

これから舞い込む依頼が、自分達を戦いの渦へと巻き込むことになるとは、知る由もなかった。

 

当然、カレコレ屋が全滅することも…。

 

 

 

 

 

 

 

『私、結婚します!』

 

「ゴッハァッッッッ!!」

 

「ゔわ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 

「オ゛ロロロロロロロ」

 

「…そこまでショックー?」

 

カゲチヨの家にてエリコ卒業ライブを視聴していたキモ5一同だったがエリコの爆弾発言により精神的ダメージを喰らい、その阿鼻叫喚の中、マカミは若干引きながら呟いたのだった。

 




アサオ「フィーアちゃんの家が喫茶店なのは聞いてたが実際に行ったことはなかったな」

チダイ「エリコ殿を失った悲しみをコーヒーとケーキで埋めるとしよう…」

カゲチヨ「にしてもマカミのやつはマジ何しに来たんだマジで!鑑賞会の後『僕この後デートの約束あるから〜』って言って帰りやがったぞ」

ルイ「エリコちゃんロスに苦しむ僕たちにさらに追い討ちをかけるなんて、恐ろしい男だ」

マチャソ「キシャーキシャシャー(やっぱり奴はいけ好かないのじゃ!!)」

惣真「あ、いらっしゃー…お?」

マチャソ「シャ…(あ…)」

カゲチヨ「マチャソ?」

マチャソ「…キシャ(…うっす)」ぺこり

惣真「おう、久しぶりだな」

カゲチヨ、アサオ、チダイ、ルイ((((知り合い?)))

惣真(自分の居場所、見つけたんだな)


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依頼と壺と仲違い

珍しく筆がスラスラと進んだので更新します。


この混沌とした世界で悩める人達の依頼を解決するカレコレ屋。今日も彼らの元に、重大な案件を抱えた依頼者が訪れていた。ソファに座り、依頼人にコーヒーをお出しして、話を聞くとする。

 

「私、イーラと申します」

 

目の前の『イーラ』と名乗った女性。褐色の肌、白髪と青い目、金色の髪飾りとアイボリーカラーのベールを身につけており、アラビア風な服装が特徴的だ。彼女が今回の依頼人である。

 

「今回はどんな御用で?」

 

「この度はカレコレ屋の皆さまに、こちらの壺を守っていただきたく参りました」

 

そう言って彼女はテーブルの上に八寸ほどの黒い壺を置いた。見れば蓋の部分には幾何学的模様が刻まれている。

 

「壺…、ですか?」

 

「この壺はなんだ…?禍々しい感じがするが…」

 

野性の勘だろうか。目の前の壺からなんとなく感じる異様さからシディが発した疑問にイーラが答える。

 

「この壺には…、悪魔が封印されていて、封印を解いた者は悪魔と契約ができます」

 

「悪魔!?」

 

ヒサメが驚きの声をあげる。

 

「そこいらの悪魔とはわけが違います。ソロモン72柱が1柱に数えられる時間を司る悪魔、イスカンダル双角王『ボティス』が封印されています」

 

「イスカンダル双角王、ボティス…」

 

「な、なんか凄そう…」

 

イーラの説明にシディとヒサメは顔を見合わせごくりと唾を飲む。ヒサメに至っては小並感あふれる感想を述べている。

 

「ええ、最大限に悪用すれば地球を終わらせることも不可能では無い程度の能力を持っています」

 

「ええぇぇ!?嘘でしょ!?」

 

「そこまでの…」

 

さらっと告げられたその壮大さにヒサメとシディは驚愕する。そんな代物が今、自分たちの目の前にあるのだから。

 

そんな二人とは対照的にカゲチヨは物静かだった。そもそもここまでの話にカゲチヨは興味なさげな様子で、上の空。イーラの話を聞いてるのかさえわからない。

 

そんな彼を気にせず、イーラは「とはいえ」と左手で髪をかきあげながら続ける。

 

「悪魔の力を借りる為には条件には条件があります」

 

「条件?」

 

「まず、力を借りられるのは一度きり、更にその力の行使後に契約者は己の心臓を悪魔に捧げなくてはなりません」

 

「し、心臓を…」

 

「契約を終えた悪魔はどうなる?」

 

「心臓を得た悪魔は一定期間姿を消します。高等な悪魔程長い期間姿を消します。どこへ行っているかは謎です」

 

青ざめるヒサメの隣で冷静な表情でシディが投げた質問にイーラはそう答えた。

 

「ええっと、依頼はそちらの壺を守って欲しいという事ですか?」

 

「はい」

 

「誰かに狙われてるのか?」

 

「…はい。ボティスの力を悪用しようとする輩に狙われているんです。連中は…────────────()()()()()()()()と名乗っていました」

 

「「「!?」」」

 

トッププレデター。その名が彼女の口から出てきたことによりヒサメとシディ、そして今までなんの関心も示さなかったカゲチヨまでもがその表情を驚愕に染め、目を見開く。

 

カゲチヨはガタッと勢いよく立ち上がる。そのためかコーヒーカップが傾きガチャンと音を立てて中身を溢しながら床に落ちた。

 

「トッププレデター、だと…?」

 

カゲチヨのその表情は驚きというより、鬼気迫るものを感じさせた。

 

「は、はい」

 

イーラはそれにたじろぎながらも、カゲチヨが反復した言葉を肯定した。

 

(なんで…!?)

 

ヒサメは腿のところで手をギュッとさせる。五日前に知ったばかりのその名に、どうしてこんなにも早く関わることになるのか。

 

「…壺を狙う奴を返り討ちにすりゃいいんすか?」

 

「はい、明日の朝まで壺を守ってください」

 

「なぜ、明日の朝なんだ?」

 

カゲチヨがイーラからの依頼内容を確認し、シディが問う。

 

「明日の朝、この壺を異宙の遥か彼方に飛ばす予定です。しかしこの情報は連中にも流れている可能性があります。もしそうなら連中は明日の朝までにこの壺を狙ってくるでしょう」

 

「で、でもそんな大事な壺なら、私達じゃなくて警察とかの方が…」

 

「やります。是非、やらせてください」

 

「えっ…」

 

ヒサメの言葉に被せるように、力強く宣言したカゲチヨにヒサメは戸惑う。

 

「おい、カゲチヨ」

 

ガシッとカゲチヨの肩をシディが掴む。

 

「なんだよ?」

 

カゲチヨはやや顔を顰めてシディを見る。

 

「まさか、引き受けるつもりじゃないよな?」

 

「は?断る理由あるかよ」

 

シディの言葉にカゲチヨは目を細め、淡々とした口調で返す。

 

「私からもお願いします!!」

 

「イ、イーラさん…?」

 

イーラが頭を下げて頼み込む。その様子にヒサメは困惑する。

 

「…なぜそこまで俺達に?」

 

その必死とも取れる様子に、なぜ自分達カレコレ屋に拘るのか疑問を覚えたシディがイーラに尋ねる。

 

「理由はシディさんです」

 

「俺?」

 

「失礼ながらシディさんについて調べさせていただきました。私が調べた限り生物的に一番強度がある」

 

「ほら!俺達をご所望だ。この依頼引き受けます」

 

「ありがとうございます。では、私は明日の準備に取り掛かりますので」

 

そう言ってイーラはカレコレ屋から去っていった。

 

 

 

 

 

 

「…」

 

カレコレ屋を後にしたイーラは足早に、どこかへと向かっていた。

 

(…なんとかカレコレ屋に壺を預けさせることができたわ)

 

イーラは()()の初手が順調に及んだことに内心ほくそ笑んでいた。

 

(最初は消極的な様子だったけれど、組織の名前を出した途端予想通り“腐血”が食いついた。これで“冥府の守護神”の矛先がカレコレ屋に向いてくれればあの壺を、ボティスの力を安全に入手できる)

 

そしてあわよくば、氷電と陽狼を捕獲できれば──────

 

よぉ、計画は順調そうかい、イーラ様ァ?

 

その悍ましく、そして明らかに敬う気がない『様』付けの声色にイーラはピタリと足を止め、不機嫌な表情で振り返る。

 

「………何故お前がここにいるのかしら?◼️◼️◼️

 

おおっと!今はスタークと呼んでくれ。俺の正体はまだ『観客』には秘密にしておきたいんだ

 

「はぁ?観客?意味がわからないわ。声や口調まで変えて、一体何がしたいのかしら」

 

だーかーらー、ネタバレはまだ早ぇんだよ!観客達が混乱するだろ!

 

「…ハァ、もういいわ。で?何故ここにいるのかしら?スターク」

 

イーラは不愉快さを隠そうともせず、コブラの意匠を持つワインレッドの特殊スーツの怪人、『ブラッドスターク』を睨みつける。

 

なぁに、イーラ様にちょいと提案があってきたのさ

 

「提案?」

 

スタークの『提案』という言葉にイーラは眉を潜める。

 

ああ、今回の計画、俺にも是非手伝わせて欲しいと思ってねェ

 

「……どういう風の吹き回しかしら?普段碌に命令も聞かず勝手な行動ばかりするお前が」

 

いやいや、俺だって組織の一員として、人類の未来を想って行動してるんですよォ?

 

イーラが疑いの目を向けると、スタークはおどけたような態度で返す。

 

俺が協力すればあのヘンテコな壺の中の悪魔の力を手に入いるだけじゃない。氷電と陽狼、そして、 戦麒の捕獲もなァ?

 

「!戦麒…『星狩り』が連れ去った正規品…」

 

なぁ?悪い話じゃないだろォ?

 

「…星狩りの元から戦麒をどうやって捕獲するつもりかしら?」

 

そこは任せとけよ。プランは考えてある

 

「……いいわ、好きにしなさい」

 

へっ、感謝するぜ。イーラ様ァ

 

赤い蛇がバイザーの奥でニヤリと口角を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっじゃあお前ら…」

 

「待て、カゲチヨ!この依頼は危険だ」

 

イーラが去った後、早速準備に取り掛かろうと二人に指示を出そうとするカゲチヨにシディが待ったをかける。

 

「それにヒサメは前襲われた時の事を引きずっている」

 

「じゃあ、ヒサメは今回参加しなければいい」

 

「……ぇ?」

 

カゲチヨの突き放すような言葉にヒサメは呆然と声を漏らす。

 

「そういう事じゃないだろ!!」

 

ヒサメを蔑ろにするかのような態度にシディは激昂し、ガッとカゲチヨの胸ぐらを掴む。それに対してカゲチヨは動じず、それどころか ギロリと睨み返す。

 

「…綺麗事抜かすなよ。お前だって同じ意見だろ」

 

「何がだ!」

 

「依頼主のお目当てはシディだ。つまりお前はあの場で依頼を断ることも出来た…。けどそれをしなかったのは、お前もトッププレデターに迫るチャンスだと思ったんだろ」

 

「っ…、それは…」

 

 

「ごめんっ!!」

 

シディが言葉を詰まらせていると、ヒサメが謝罪の声を上げる。

 

「私、今回は抜けるよ!やっぱ怖くてさー、ハハハ…駄目だねーヘタレでさ…」

 

「ヒサメ…」

 

無理に明るく振る舞うヒサメにシディは複雑な表情を浮かべる。

 

「って事でごめん。二人ともあとは任せるわ」

 

「ヒサメ!!」

 

そう言い残してヒサメは部屋を飛び出し、シディの引き留める声を無視してカレコレ屋から走り去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

町を歩きながら、ヒサメは自分の情けなさに苛立っていた。

 

(そうだよ、元々カレコレ屋は、あの組織を追う為にやってただけ…)

 

自分はあの組織の人間には逆らえない。そういう風に作られている。

 

あの施設で生まれた時から実験を受け続けたヒサメは組織の人間には絶対逆らえないよう身体に刻みつけられている。

 

(トッププレデター相手に動けなくなる私は足手まとい…。だから、カゲが言っていることが正しいんだ)

 

俯くヒサメの視界が濁る。雫がポタポタと地面に落ちては消えてゆく。

 

(悪いのは、弱い私だ…!!)

 

ヒサメは自分の不甲斐なさに涙を溢しながらあてもなく歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが氷電の女、今回のターゲットか」

 

ヒサメをビルの屋上から見下ろす人物がいた。

 

「本当に凄い異宙人のDNAを持ってんのか?」

 

「キキッ」

 

その人物は、右目の額の上から頬にかけて刀傷があり、左腕には肩や胸板まで付いたアーマー、そして鋭利な爪が特徴的な義手を付けていた。彼の傍らには異宙の生物、ゲイザーが一匹ふわふわと浮いていた。

 

〈侵入者ヲ確認〉

 

そこにビルの警備として配備されていた一体のガーディアンが現れる。ガーディアンは立ち入り禁止のビルの屋上に不法侵入した不審者の男を捉え、対処すべく警告を発しながら近づく。

 

〈警告。ココハ立チ入リ禁止デス。タダチニ退去シテクダサイ。従ワナイ場合ハ実力行使ヲ─────〉

 

 

ドッ!!

 

 

男が振り返らずに義手の方の腕をガーディアンに向けて伸ばすと、爪の部分がワイヤーのようなものと共に高速で射出され、一瞬にしてガーディアンの頭部と胴体を貫いた。男が義手の爪を戻すと、風穴が開いたガーディアンは火花を散らし、そのままガシャリと倒れ伏す。

 

〈外攻撃認。エー発生。緊急停。自己修不可能。機能全……〉

 

ガーディアンは男の背後で完全に沈黙する。

 

「ヒヒッ、この腕でたぁっぷり遊んでやるぜぇ……氷電ちゃん」

 

男は自身の義手の爪とヒサメを交互に見ながら舌なめずりをした。

 





―何も傷つけず自分の手も穢さない。優しい生き方だけどなぁ…なーんの役にも立たないんだなぁ…―

アマゾンズより 『鷹山仁』



次回も読んでいただけると幸いです。


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冥府の守護神、再び

前回の投稿から4ヶ月…申し訳ありませんでしたあああああ!!

せめて年明け前にと思い、早足気味で作成し投稿したため、短く雑ですが、いずれ修正するつもりなのでご了承ください。


ヒサメが飛び出て行ってから恐らく時間にして五分も経っていないであろうカレコレ屋内でカゲチヨとシディの間に重苦しさを帯びた空気が漂っていた。

 

「カゲチヨ、ヒサメを追え」

 

「は?俺達はイーラさんの依頼で、この壺を守らねーといけねーんだぞ」

 

強い口調で言ったシディに対し、カゲチヨは眉を寄せながら反論する。

 

「『トッププレデター』からな…」

 

トッププレデター。最後にそれを強調するように言った。

 

しかし、シディの眼差しは更に一層厳しさを増していた。

 

「いや、今回の依頼は俺一人でやる」

 

「は!?なんでだよ!!」

 

シディの冷静かつ断固な発言にカゲチヨは驚きを隠せずに反応する。

 

「今、お前は普通じゃない」

 

シディのその言葉に、カゲチヨの中でプツリと何かが切れた。

 

「普通でいられるかよっっ!!」

 

ガタッ!!とテーブルが揺れる勢いで立ち上がり、怒声を上げた。

 

「こっちはアイツらに全部奪われてんだっ!!全部だぞっっ!!」

 

カゲチヨは剥き出しにした怒りの感情に身を任せ声を荒げる。

 

だが、シディは一歩も引く様子無く、視線を強くして自信を睨みつけるカゲチヨを見詰めていた。

 

「…今のお前は冷静じゃない。正直足手まといだ」

 

「…っ!!」

 

足手まとい。その言葉にカゲチヨは口を一文字に結び、静かになる。

 

「…ハッ…そうかよ…」

 

カゲチヨの口から乾いたような声が漏れる。

 

 

「……お前は、本当に人の気持ちがわかんねえんだな」

 

 

そう吐き捨てるように小さく呟いた。

 

「…!!お、俺は…」

 

 

───おい。

 

 

「…!!」

 

突如響いた声にシディは言いかけた言葉を途中で止める。

 

 

───お前だよお前。

 

 

「…?どうしたんだよシディ」

 

(カゲチヨには…聞こえていない…?)

 

 

───俺の壺、返せよ。

 

 

壺。自分にしか聞こえない謎の声に動揺しつつもシディはテーブルの上に置いてある壺に目をやる。

 

(なんだ…?俺を、呼んでいるのか…?)

 

シディは壺を見据えながら考える。今自分がすべきことは…。

 

「カゲチヨ、すまん!お前は…、ヒサメの所に行け!!」

 

テーブルの上から引ったくるように壺を手に取ったシディはそのまま抱えながらカレコレ屋から飛び出して行った。

 

「シディ!?……チッ!」

 

 

 

同時刻。

 

地上から何百メートルも離れた遥か上空。

 

「地球に来んのも久しぶりだな。アイツとの戦い以来か」

 

ミサイルの如く轟音を響かせながら雷の如く速さで地上目掛けて飛んでいく少年は一人呟く。

 

「さーて、ホルスのヤローのDNAを継いだ奴を呼び出したはいいけど、オレの方が先に着いちまうな」

 

今も尚急降下しながら少年は考える。すると何かを思いついたのか口角を上げた。

 

「ちょっと寄り道していくか」

 

少年、否、少年の姿をした怪物…アヌビスのその瞳は、アメジストのように深く静かに輝く色を放っていた。

 

 

 

 

カレコレ屋を飛び出してからどれくらいの時間が経ったか、ヒサメは特に行く宛などなく未だ街中をフラフラと彷徨っていた。

 

(カレコレ屋は元々、トッププレデターを追うために作った……なら戦えない私は、あの二人と一緒にいちゃいけないんだ…)

 

レンガ道を上靴で踏みつける度にカツ、カツ、と乾いた音が周囲に響き渡るとともにヒサメの心は曇っていくばかりだった。そんなブルーな気持ちに比例するように、足取りも重くなっていた。

 

ザザァ…ン…

 

「…?」

 

突如聞こえた波の音にヒサメは足を止める。

 

(あれ?ここ…)

 

傾けてた顔を上げると、そこにはただただ青く広がる海と白い砂浜が視界に広がっていた。今さっきまで街中を歩いていたはずのヒサメは、いつのまにか浜辺にいた。それに気づいたと同時に波の音はより鮮明になり、ツンと鼻をつくような潮の香りが漂って来た。

 

(ここどこ!?私さっきまで街歩いてたよね…?)

 

困惑しながら周囲を見渡すヒサメ。そこに一つ小さな影が忍び寄る。

 

「キーッキーッ」

 

「!」

 

振り向くとそこには、パタパタと蝙蝠のような羽を小刻みに羽ばたかせながら飛んでいる一つ目の生物、ゲイザーがいた。

 

「ゲイザー…?てことは私幻覚にかかってたってこと…?」

 

「ノンノンノン、それは違うぜぇ?」

 

「!!」

 

突然響いた声にヒサメはビクッと身体を震わせる。その声が聞こえた方向、そこには大柄の男が立っていた。男は、顔には刀傷、左腕には鋭利な爪の義手を装備している。

 

「俺がお前さんを呼んだんだ。コイツでね」

 

「キーッ」

 

ゲイザーを肩に止まらせながら男はそう言った。

 

 

 

 

数分ばかり時間を遡り、カフェ『nascita』では店主である礎乃惣真は戦慄していた。

 

「……っっ!!この気配はっ…!!!」

 

その感じ取った異質なオーラに礎乃惣真は覚えがあった。

 

「まさか……っ、来てるのか……!?」

 

気配は確実にnascitaに近づいて来ている。

 

「アヌビス……!!」

 

そう、惣真が感じている気配とは、数年前に一度死闘を繰り広げた因縁の相手、アヌビスのものだったのだ。

 

惣真はエボルドライバーを取り出し身構える。

 

そしてついに気配が店のすぐ外、扉越しでもわかる程にまで近づいてきた瞬間…。

 

ドガアアアンッッッ!!

 

扉が吹っ飛んだ。否、吹っ飛ばされたと言った方が正しいだろう。オーラを放っていった者によって。

 

「…!!」

 

惣真はすぐさまエボルドライバーを装着し、エボルボトルを取り出しいつでも変身できるように臨戦態勢を取った。

 

 

「おっ、ビンゴ!やっぱりここだったか。人の姿に化けてても分かるぜ。…にしても本当に人間の飯屋なんてやってんだなお前」

 

現れたアヌビス。惣真はその姿を見て固まった。何故なら…。

 

「…いや、お前…なんだその格好…」

 

目の前に立っているアヌビスは某遊園地のマスコットキャラのカチューシャをつけ、赤と青のフィルムの3Dメガネを掛け、『鬼畜王』とプリントされた白いTシャツで温泉マーク入りののタオルを羽織り、右腕にサメのぬいぐるみを抱え、左手にはテラボールシェイク。日本刀、カヌレの紙袋をぶら下げてるなど、かなり情報過多の異様な格好をしていた。

 

「ん、ちょっと寄り道にな」

 

困惑する惣真の問いにあっけらかんとアヌビスは答えた。




エボル編の話の修正を先にやるか、エボル編の続きを作成するか、カレコレ編の続きから作成するかで、結局ほとんど手がつかずに、気づいたら前回の投稿からかなりの期間が空いてしまった…。

pixivの方ではたまにイラストやいつかやろうと思っている内容の予告的なものを投稿してたんですが…。

タスク管理が苦手なことに悩まされています。新しいアイディアやストーリーが浮かんできても気分が乗らないと、どうしても手つかずのままになってしまうことがあるんですよね。

元々計画性もなく見切り発車で進めていたこともあって、どこから手をつければいいのか分からなくなることもあります。

なかなか進捗が出て来ずヤキモキしてる状況ですが、この小説を楽しみにしている数少ない読者の皆様には今後も引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。


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