Vtuber界を駆け上がりたい (インスタント脳味噌汁大好き)
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プロローグ 何かが変わった世界で

この作品はフィクションです。作中で描写される人物、出来事、土地と、その名前は架空のものであり、土地、名前、人物、または過去の人物、商品、法人とのいかなる類似あるいは一致も、全くの偶然であり意図しないものです。


ある日、朝起きたら世界が変わった。そんな気がした。

 

別に、外が中世ヨーロッパみたいな街並みになったわけではない。日本語が通じなくなったわけでもない。1Kの狭いアパートであることは変わらないし、蛇口を捻れば水が出る。バイト先のコンビニの位置も、店長も変わらなかった。

 

ただバイトの面々の半分ぐらいは入れ替わっており、客層もいつもとは違った。しかしレジの仕組みやマニュアルは一切変わっておらず、バイト作業自体は特に変わりなく無難に終える。

 

家に帰って貞操逆転世界に来たかと期待したが、そんなはずもない。だけどいつものネットサーフィンを始めたところで、世界の変化を理解した。むしろ、なぜ半日も気付かなかったのかが理解できない。

 

「自分の知っているアニメ群が軒並み知らない何かになっている」

 

気づいてしまえば簡単だった。あまりにも差異の少ない異世界転移。それを経験したことになるのだろうか?あらゆるアニメが知らない何かに置き換わっている。正直、自分の精神状態がおかしくなったのかとすら思った。

 

ぶっちゃけわりと望んでいた異世界転生。だけどこんな形で実現するとは思ってなかった。自身のステータスは何も変わらず、世界がよりハードになったとしか思えない。何せ、昨日まで追いかけていたアニメが全部途中でぶつ切りになったわけだからな。とても辛い。

 

アニメが全部入れ替わったということは、また面白いアニメに出会えるということでもあるけど……。

 

ここで気づいたのは、アニメの題名での検索でヒットがなければそのアニメの原作となる漫画やライトノベルはないということ。だとすると、そのライトノベルの執筆や漫画を描くことで有名になるのでは?というものだ。しかし小説の文章を丸々覚えているわけではないし、漫画なんて描いたこともない。

 

ストーリーの面白さだけで、小説や漫画では有名にはなれないだろう。ストーリーが面白いのが特徴という小説や漫画は、大半は他の要素も十分に揃っている。書き写せる状態じゃないため、再現はとても難しい。正直に言って、最初はこの世界に来た恩恵を感じずにいた。

 

しかし翌日になってあることに気づいた自分は、バイトを休んで検索に没頭する。その結果、自身の知っているアニメソングが極めて少なくなっていることがわかった。

 

自分は、オタク趣味に没頭している最中、ボカロでの作曲に手を出していた経験がある。アニソンを耳コピする程度は可能であり、そしてそれを自分は、オリジナル曲として世に出すことが可能だと理解する程度の頭がある。

 

……この行動は、いつか破綻するかもしれない。しかしながら自分は元の世界でも底辺であり、この世界に切り替わってからさらに生き辛くなった。元の世界のアニメを語らう仲間が、もはやネット上にもいない。その孤独感はとてつもないものだと感じている。友人もまあ、この世界にもいないだろうしな。

 

いや、これはもうただの言い訳だ。元の世界のアニメソングにはとても素晴らしい曲が幾つもあった。それらを全て自分のものに出来てしまう可能性がある。その可能性に抗える人間は、相当出来た人間なのだろう。自分は到底抗えそうにない。

 

悪魔の誘惑だった。上手く行けば、この極貧生活から抜け出せるかもしれない。ずっと自分は、何も取り柄がない人間だと思っていた。しかしながら、アニメの知識であればそれなりにある。当然それに付随するアニメソングについて、自分の頭の中には色んな曲が入っていた。

 

そもそも、歌は一度覚えると忘れ辛い。これを利用して重要な単語を歌にして覚えるような手法もあるし、語呂合わせもその一種だろう。……少なくとも今から歌詞だけでもパソコンに保存していけば、近いうちに役立つかもしれない。

 

いや、きっと役に立つ。もう既に自分は、この世界でも購入していたボカロに歌詞と曲を入力していた。アニメが前の世界と違うからか、この世界ではアニメブームの回数が少ない。アニメの影響を受けていたであろうボカロ曲も、結構な割合が知らない曲に置き換わっていた。

 

オタクコンテンツ自体が、若干遅れていると言えるのかな。その差異はきっと、自分が利用できるものだ。ここで停滞を選択したら、恐らく自分はいつも以上に後悔することになる。自分に振って湧いた過去最大級のチャンスを、絶対に物にして見せる。

 

……しかし本当に自分は、異世界に来たのだろうか。何度見返しても知っているものがないという光景は、寒気すら感じる。自分の頭がおかしくなってしまったかどうかは、今は確かめようがないからどうしようもないな。

 



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第1話 借り物の力

下調べをし、準備に没頭するためにバイトを休んだ日の翌日。自分はTwitterのアカウントを作成した。その名前は一晩考えた結果、一見無難な名前にする。

 

藤堂 立冬(とうどう りっとう)

 

それは前の世界では非常に人気だったアニメ・ソシャゲの主人公の名前であり、もしもこの世界にもそのソシャゲが存在するのであればすぐに突っ込みが入る名前。もちろんアニメキャラの名前を使用するだけであればそこまで問題視されないだろうけど、もしも前の世界でこの名前を使用しつつ「Vtuber始めます」なんてツイートをすればすぐにアカウントが凍結されるような事態となるはず。

 

Twitterアカウント凍結RTAとかをするのであれば、最適解かもしれない。そしてTwitterのアカウントを作成後、初めてのツイートは「Vtuber始めます」の一言だけにする。

 

アニメの文化の発展が遅れている影響もあるのか、前の世界ほどVtuber界隈に勢いが感じられないし、歴史も浅い。ただのボカロPとして活動するよりも、こちらの方がより大きくなれるチャンスがあると自分は考えた。

 

というか降って湧いたこのチート、せっかくの機会なのだから遊ばない手はない。どうせなら最速でVtuber界を駆け上がって、頂点を極めてみたい。

 

そして早速、ボカロ曲をYouTubeに投稿する。心臓はもう痛いぐらいにドキドキしている。通らない未来も、通ってしまう未来も、どちらも自分にとっては得難い経験になるだろう。軽く深呼吸して、目を閉じて投稿ボタンをクリックした。

 

曲名は「夏の夜空防衛隊」。前の世界ではニコニコ動画で1000万再生を超えたボカロ曲だったが、この世界ではその曲を世に送り出したボカロP自体が存在しない。ということは、もしかしたら簡単に乗っ取れるかもしれないというわけだ。

 

しかし残念なことに、爆発的な伸び方はしない。そもそも活動初日の無名Vtuber。投稿したオリジナル曲が再生されることすら稀だ。藤堂立冬としての初日の活動結果はTwitterのフォロワー数が7人。YouTubeのチャンネル登録数が22人。「夏の夜空防衛隊」の動画再生回数は76回。凄く少なく見えるが、これでも健闘した方なのかもしれない。

 

……有名になれるはずの借り物の力ですら、自分は有名になれない。持ってない人間が、適切でないタイミングで行動しても上手く行かないのは目に見えていた。曲の残弾はまだまだある。だけどこの状況で、有名になれるのか、不安にすらなって来た。

 

 

 

次にやることは、Vtuberとしての身体を作ることだろう。幸いにも前の世界と同じようにVtuber用のフリーソフトは幾つかあるので、藤堂立冬の身体を男の子バージョンと女の子バージョンで再現してみた。3Dキャラの身体をカスタムできるメイドなエロゲでアニメキャラを再現しまくっていた経験が生きたな。……我ながら、この世界に来てから活かしている知識と経験が屑過ぎる気もするけどまあ良いや。

 

顔部分を写真にとって、その顔をTwitterのアイコンにする。使用する顔はもちろん男の子のほうだが、女の子の方もいずれ使用するかもしれない。それなりに高い声が日常的に出るオタクなので、上手く両性Vtuberとして色物枠でも有名になれないだろうか。

 

何か少しでも良い。きっかけさえ掴めば怒涛の神曲投稿ラッシュで絶対にバズるはず。倫理観的に、許されざる盗作行為をしている自覚は十分にあるが、もう止めるつもりは毛頭ない。

 

バイトの店長に「バイト辞めます」と言ったのでこれで有名になれなければ人生終わりだ。預金残高17万3000円を使い果たす前に収益化すら出来なければ待っているのは餓死だな。

 

アイコンを作り、自己紹介動画を作り始めると共に、ひたすらボカロ曲の再現をして残弾を作る。記憶との勝負でもあるが、曲というのは案外簡単に思い浮かべられるものだ。そして想像以上に、元の世界にあってこの世界にない曲が多い。

 

軌道に乗りさえすれば、ボカロ曲以外にもシフト出来るだろう。アニメソングを自分で歌っても良いし、誰か別の人に歌わせても良い。自身の歌唱力は人並みなので、出来れば元歌い手の人を誘ったりして歌の依頼を出来ないだろうか。……コミュ障がそういう依頼をするのは難しい話だなぁ。

 

最近は、20歳の若さで人生に飽きすら感じていたけど……久しぶりに今、ワクワクしている。今後の展望が、明るいものになったからだろうか。Twitterで積極的に今のVtuberの有名な人をフォローしていき、少しでも世間の目に留まる可能性を上げていく。

 

そうこうしているうちに、3日が経過して自己紹介動画も出来たので投稿する。出来れば現段階で中の人の自我を前面に押し出したくはなかったので、簡潔な自己紹介だけだ。幸い、フォロワーの多い人の目に留まって紹介されたからか「夏の夜空防衛隊」の再生回数は296回となっていた。……これ1000万再生は、超えないだろうなぁ。

 



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第2話 現状の追認

Vtuberとしての活動を本格的に始める前に、今の世界のVtuber界隈の歴史を調べる。始まり自体は一緒のようだけど、企業勢の参入は遅いのかな。個人勢が元の世界よりも若干幅を利かせているし、知らない人も多ければ元の世界では伸びていたはずの人が伸びてなかったりする。

 

……この世の中は、全部タイミング次第だ。自分はそう考えている。同じことを考えても1番最初と2番手では大いに扱いが違うし、同じ行動をしても時と場合によっては結果が全く違って来る。

 

ここで自分は、藤堂立冬の2曲目の発表を生声とボカロの両方で行う。曲名は『幽霊規則』。この曲は男声でも似合う曲だし、元々はボカロ曲でもあるのでそこまで労せず再現出来た。……この曲を作ったボカロPがこの世界には存在しなかったので、この曲も存在しないことになっている。

 

そして案の定、Twitterで急上昇ランキングに載った。2曲目にして早くも初バズりである。フォロワー数がどんどん増え、リツイート回数も今までの数回のツイートとは桁が違う。

 

ますます、自分の中のどす黒い欲望が増していくのが分かった。もう既に列車は走り出してしまった。ここから飛び降りる勇気がなければ、ブレーキをかける自制心もない。間髪入れずに3曲目『メラメラ!』を投稿する。前の世界では人気ヒーローアニメのエンディングだったが、この世界ではそのヒーローアニメ自体がないので以下略。

 

こちらの曲は頑張って女の子声で歌い、MMDに作った女の子の3Dキャラを読み込ませて踊らせてみた。MMD初心者とはいえ、流石に配布している振り付けを組み合わせるぐらいのことは出来るし、背景やエフェクトもそこまで難しいものではない。まあカメラの移動とかは苦手だからずっと1カメだけど。

 

YouTubeのチャンネル登録数は、面白いぐらいに増える。歌の力ってすげー。もしも自分の動きを客観視できる人間がいたら、よく借り物の力で喜べるなあとか思われそうだが、現実だと借り物の力だろうが何だろうが自分の数字が増えるほど心躍るものはない。

 

さて、ボカロ曲のストックは100曲を超えたしアニソンも数百曲は再現できそうなことを確認した。夢が広がると同時に、どう足掻いても自分には合わない曲というのも存在している。

 

となると、他の人を頼る必要が出て来るが、ここでVtuberになったことが生きてくる。Vtuber界隈は上澄みこそ人が集まり盛り上がりを見せるが、1年以上継続して配信をしていてもチャンネル登録数が1000以下、同時接続人数一桁どころか0というのも珍しくない。

 

そういう人達の中で、声の資質を持つ人を探してオファーをかける。Vtuberの利点の1つとして、登録者数の少ないVtuberは転生が容易だ。万を超えるVtuberがいる以上、目立たないVtuberは話題にすらされない。

 

そして新規であればあるほど、伸びやすい。短期間ではあるが、初動次第では個人勢でも伸びる可能性が高まるのがVtuberだ。

 

今後も伸びが期待出来なさそうなVtuberを中心に、とにかくTwitterのダイレクトメッセージで歌を歌ってくれないかとオファーをかける。条件としては1つ目が転生すること、2つ目が藤堂立冬の立ち上げる箱に所属すること、3つ目が今後継続的にVtuber活動を続けることだ。

 

まだ1回バズっただけのボカロPがVtuberの箱を作るとか怪しさ満点ではあるのだけど、この短期間で3つの曲を出していて、その3曲をオファーを受けた側が聞ける以上、時勢に敏感な人は乗ってくれる可能性がある。

 

……15人目のオファーで、ようやく1人、前向きな返事が返って来た。フォロー数1679人でフォロワー数548人。Vtuber名は華京院アリス。活動歴1年半でチャンネル登録数は1436人と1000人の壁を超えているのだからそこそこ戦えている個人勢Vtuberだ。

 

ただこのチャンネル登録数でも、直近の生配信の累計視聴者数は30人、同時接続数は最大で6人とまあ少ない。声はアリスと自分から名乗るだけあって若干ロリ寄り。ただ綺麗な声ではあるんだけどトークが下手というかない。皆無。

 

1年半の軌跡を消すと了承した上でこちらに連絡を取っているのだから、わりと現実が切羽詰まっているのかもしれない。とりあえずオンライン上で少し会話をしてみるけど、最低限の会話スキルと常識はあったので直接会って話をしてみることに。そこで契約社員として雇用契約も結ぶ予定だ。

 

……曲のストックは、500曲を超える。有効活用するためにも、起業はしておくべきだと判断した。Vtuberとして活動するなら、個人勢でも寄り合い所帯には所属しておいた方が良い。この世界でもVtuberが起業しているケースは何件かあるし、1人は大勝ちしているから参考にさせて貰おう。



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第3話 1人目の確保

小さな喫茶店で巨大な味噌カツサンドに苦戦しながら、目の前の女性と話をする。スーツでもないのに全身真っ黒の服で身を包んでいるので、ファッションセンスは無い方なのかな。

 

Vtuberで華京院アリスと名乗る人物は、痩せている24歳女性だった。母子家庭で育ち、高校を卒業前、就職活動中に母親が急性くも膜下出血で倒れて入院。以降、母の介護をしながら出来る内職をしつつ、日銭を稼ぐためにVtuberをしていたようだけど、基本外に出ない人のようだから生配信中の話に厚みが出ない。

 

……普通の社会生活を送ってなくてもトークが上手ければ話題には困らないけど、普通の人だと外に出ないとどうしても話題不足になる。同じゲームの話だけとかだと、人は徐々に離れていって、固定面子だけの配信とかになってしまう。

 

案外顔は綺麗な人だったけど、全体的に痩せすぎていて少し怖い。胸もないので起伏の少ない身体だし、学生時代にモテたエピソードとかも話している感じだと無いかな。そしてTwitterでのオファーを見て、自分のアカウントと曲と自己紹介動画を見てチャンスだと感じたらしい。

 

自分の話を信用する時点で、かなり素直な人だし、年下男性の話を真面目な顔で聞けるのは印象が良い。あ、手首に包帯がある。……見なかったフリをしてえ。

 

「契約書へのサイン、ありがとうございます。早速ですが、2曲提供しますので1週間ほど練習しておいてください」

「1週間、ですか?あの、デビュー日はいつになりますか?」

「1週間後の9月11日にします。前日までに録音したデータを送ってください」

 

歌動画は、マイク一本で大きく変わるがぶっちゃけ最初は安いマイクでも問題ないだろう。その方が成り上がり感は出るだろうし、歌が上達しなくても機材の質が向上することで歌が上手くなっていると錯覚させることも出来る。

 

正直に言って、この人の歌の才能には全く期待していない。というか若干音痴なのは把握している。しかしそれでも、貴重な1人目だ。『この人にオファーが来るなら』『自分の歌の方が上手い』とチャンスをうかがっている人に思わせることが出来れば、上手く箱をスタートさせることが出来る。

 

……14人もの人に断られたりスルーされた原因は、歌を歌うことに対する報酬が、少なかったことにもある。と言っても箱所属の人の収益の半分を自分が貰う形だから企業勢Vtuberと比較してそこまで差はない。ただ、業界トップの企業が収益の3割しか取ってないと公表しているから嫌な顔をされている。

 

とりあえずは、この1人目の名前を考えて1週間後までにもう一つボカロ曲を世に出すか。『幽霊規則』がニコニコ動画で音楽ジャンルの1位を取ったことで自身の自己紹介と3曲の歌しかないチャンネル登録数は2500人を超えた。ついでにYoutubeの方でも再生回数は伸び続けているので、計画が順調に進みすぎている。

 

藤堂立冬チャンネル:チャンネル登録数2649人

『自己紹介動画』:再生回数36562回

『夏の夜空防衛隊』:再生回数38901回

『幽霊規則』:再生回数76587回

『メラメラ!』:再生回数43625回

 

Twitter上で箱を作ると宣言して、1人目の名前を「シンガー=エーラ」として発表。エーラ部分はもちらんシンデレラからです。こいつが成り上がらないと自分も死ぬので全力でフォローをするしかない。渡した曲は1曲目が『コネクタ』で2曲目が『色彩』となる。両方とも元の世界では以下略。

 

個人的には好きな曲だし、万人受けは難しそうだが一定の反響はあると思っている。可能なら自身の持っているチートを最大限に活かせるよう、アニソンの作曲とかを引き受けられるようになりたいけどそのルートはまずアニメ業界に関わること自体が難しそうだよなぁ……。

 

バズったTwitterのサビ部分だけの動画は『幽霊規則』が21万再生、『メラメラ!』が16万再生と良い感じに回っているので、今は日常的なツイートを全て止めてフォロワーが剥がれないことに注力する。まだ一発屋の自分の昼食画像とか誰得だよという話だな。まだ自分のファンは、このフォロワー1600人の中に極僅かしかいない。

 

これを自分のファンとして定着させるために、次の曲、そしてエーラの1曲目までは無言を貫く。残念ながら、曲の残弾は有限だ。早い速度で消化してしまうと、破綻が早まる。

 

ということで4曲目はボカロ曲で『億千桜』を出す。元の世界だとボカロ曲を知らない人でも曲名ぐらいは聞いたことのある曲だろう。この世界でも再生回数が伸びるかは心配だったが、YouTubeとニコニコ動画の両方で初動がかなり良い。

 

まだ一介の新人Vtuberだけど、Vtuber界隈では早くも注目を集め始めた。素直に数字が増えるかは微妙だけど、個人勢で1週間もしない内にチャンネル登録数が1万を突破したのは快挙だろう。

 

あ、この世界だと1日でチャンネル登録数が2万の人とかいるのか。企業勢だと1日どころかデビュー前にチャンネル登録数が5万人の人とかいるし、このレッドオーシャンでトップまで駆け上がるのはなかなかに難しそうだ。



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第4話 転生

自分が有名になる際、Vtuberを選んだ一つの理由は天才キャラを作れるからだ。特に音楽は才能が大きいと自分は思っているし、タイミングを掴むのも才能の一種だろう。天才キャラで通せば通すほど、チャンネル登録数やTwitterのフォロワー数などの数字は目に見えて増える。これは今までそう言った人達のフォロワー数の推移を見てきた経験からだ。なお長続きはしない模様。

 

……いやしかし、これだけバズったのにも関わらず「盗作」や「丸コピ」などのコメントはない。これはマジで世界が入れ替わったとか自分が異世界転移したとかそういうやつなのか。もしくは別世界の自分の記憶を引き継いだか。まあここら辺は考えても仕方ないからありがたくメリットだけを享受するけど。

 

自分は鶴が恩返しに来た時、好奇心を抑えて綺麗な織物をたくさん貰うタイプだ。好奇心に負けて、全てを失うタイプにはなりたくない。

 

「あの、これで良いでしょうか?」

「……はい。明日になったらチャンネルに自己紹介動画と共にアップをお願いします。

思っていたよりお上手ですね」

「ありがとうございます」

 

ディスコードで連絡を取り合っていたエーラさんに歌の合格を出して、1枚絵に歌詞が流れるだけの動画を作成。案の定期待値は超えなかったため、思っていたよりお上手ですねと超失礼なことを言いつつ、エーラさんに動画を送り返す。

 

この動画に使う1枚絵は藤堂立冬としてデビューする前に知名度の低い絵師さんに2万円を出して書いて貰った。今までの歌動画はMMDのボーカロイドや自分のアバターが踊ってる動画だったけど、更に手抜きをしたということだな。

 

しかしこの絵師を、自分は元の世界で知ってる。とあるアニメ界隈が盛り上がる前からそのアニメキャラを高いクオリティで書き続けていたため、自然と有名になった絵師だ。塗りが独特なので覚えていたし、この世界ではバズっていないことに驚きもした。絵も若干下手になってるけど、将来が約束された絵師と縁が出来たのは嬉しい。

 

……さて、ここ最近で調べ上げた元の世界のVtuber界隈と今の世界のVtuber界隈の比較をしよう。現在、Vtuberのトップは世界初のバーチャルライバーという肩書きの世界白(せかいはく)。これは元の世界と変わらない……読み方が「しろ」から「はく」に変わってるけど、それ以外に差異はない。チャンネル登録数が218万と飛びぬけて高いというか元の世界より高いが、最近の動画再生回数は下火になっており、投稿頻度もかなり低い。

 

次いで活動休止になってる人や引退した人を飛ばすと2番手が2D3D所属の美月(みづき)ノトで、こちらはチャンネル登録数が67万人。ここまでは元の世界と変わらない感じなのだが、3番手でチャンネル登録数が52万人、玉手箱所属の華山亜季(かやま あき)から以下半分ぐらいのVtuberは名前を知らないレベルなので人が入れ替わっていたり、Vtuber界隈の歴史自体が変化している。

 

まあ元々そこまで詳しいわけじゃないけど。企業勢はトップを2D3Dと玉手箱が争っていて、3番手がアルチライブという元の世界では2D3Dと殴り合っていた企業だ。どこも若い社長が引っ張っている感じだし、界隈全体が若いんだろうな。

 

……元の世界よりVtuber界が活気づいているし、この世界で後発の企業勢が駆け上がれたら面白いだろうな。せっかくリアルで戦える武器を持てたんだから、使って楽しまないと損だ。

 

「あ、あの、緊張し過ぎて動画投稿のボタンが押せないのですが……」

「目瞑って有名になる覚悟が出来たら押して下さい。今までの1年半は無かったことにして、新人Vtuberシンガー=エーラとしての人生を始めて下さい」

 

エーラさんが緊張で吐きそうな声で通話をして来たけど前垢を消した時点で覚悟完了はしておいて欲しかった……。エーラさんに「1年半を無かったことにしろ」と最初に言った時、エーラさんはちょっとムッとしていたけど、無為に過ごしていたから結局伸びずに引退した形だし、これから嫌でも有名になって貰わないとこちらが困るので頑張って欲しい。

 

企業勢としてVtuberに求められるものは、数字と結果。努力した過程で人を惹きつけられるならそれはそれで構わないが、結果を伴わない努力は何にもならない。

 

「エーラさんに再度伝えておきますが、Vtuberとしての努力が出来ないなら一時的にバズっても人は継続してついて来なくなり、いずれ底辺Vtuberの海に呑まれて前回と同じように跡形も無く消え去りますよ」

 

配信者の大半はチャンネル登録数が上手く伸びない。その最大の理由は努力をしないからだ。有名実況者などの動画を見て、『努力せずともお金を稼げる』という勘違いをすると悲劇が起こる。配信をし続けても、一向に面白くならないし人がどんどん離れていく。

 

まあ人にそんなきついことを言いつつ、自分は楽して稼ぐために歌動画以外は滅多に上げない、配信しないスタイルで行くけど。作詞作曲家兼プロデューサー兼社長ポジションが中身を積極的に見せに行っても、面白くなければ基本逆効果だ。自分の生き様が求められるようになってきたら多少は自我出すし、そのためにVtuberになったわけだけど、実際に配信することはあまり考えてないな。



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第5話 スタートダッシュ

エーラさんの初動画をリツイートして、初動を助ける。エーラさんが歌った『コネクタ』はエーラさんの綺麗な立ち絵と共に公開され、若干バズった。まあ前日に台風上陸したし、世間的には注目されるはずもない。Vtuber界的にもあまり大きな出来事じゃないのかスルー気味。しかし『億千桜』の方がYoutubeでかなり再生回数を重ねており、早くも『幽霊規則』を抜きそうである。

 

藤堂立冬のチャンネル登録数が3万と順調過ぎる伸び方をしているし、徐々にトレンドにも上がって来た。作られたブームではないからか、勢いがまばらだけど結構凄いことじゃないかこれ?流石はニコニコ動画のボカロ曲元1位だわ。世間的な知名度も高かったのは伊達じゃない。知名度が限りなく低かった藤堂立冬が、早くも期待の新人Vtuberになっているのが笑えて来る。

 

こうなってくると、企業系Vtuberのうち数人がこちらのフォローをしてくれるので有り難くこちらからもフォローする。企業系Vtuberと言ってもピンからキリまでいるわけで、キリ側の方はわりと余裕がないので浮上の気配を感じたら当然すり寄る人が出て来る。

 

……よし、アルチライブのメカ子さん、玉手箱の群馬ルミさん、2D3Dの熊野ハルさんと3大箱全ての歌をよく歌っているVtuberと相互になれた。早速曲のオファーをして、歌って貰えるか交渉していこう。各企業に直接営業をかけるよりも、Vtuber同士なら本人同士で話をした方が早いだろう。

 

そしてこの3箱のうち、反応が早かったのは玉手箱と2D3Dなのでこの2箱を中心に曲を提供していくことを決め交渉を開始。現時点のツートップだし、絡めば絡むほどこちらの知名度が上がる。もう自分の知名度を上げるためにこの縁を利用する気満々だが、相手側も良い作曲家がいれば所属Vtuberにオリジナルソングを用意出来るのだから、winwinの関係になっていくだろう。

 

早速玉手箱の本社に突撃すると、相手側の社長が出迎えてくれた。というか最初は社長だとは思わなかった。まだ19歳の華山亜季を名乗る女性が、Vtuber界の大御所で巨大な箱のトップとかやっぱりこの界隈は若さと勢いが凄い。元の世界には居なかったはずだけど、どういう経緯でVtuberになったのかは気になるかな。

 

直接会った感じ、年下のはずなのに全然そんな雰囲気を感じない。目付きは怖いし絶対クラスのボスやってたタイプの人間だろこれ。

 

「曲の提供をする代わりに、自身の作る箱の宣伝の協力をして欲しいとは中々に思い切った人ですわね」

「……リアルでもその口調なんですか?」

「現実でもキャラ作ってた方が楽ですわよ。

……そうですわね、玉手箱のアイドル部門、そのグループ曲を作って欲しいですわ」

「納期はいつまででしょうか?」

「再来月の11月11日でお願いしますわ。12月には私の3周年イベントを行う予定ですので、そこで発表の流れですわね」

 

なんか華山亜季さんの隣にいる秘書みたいな人がめっちゃ険しそうな顔をしているけど、決定権はこの社長にあるんだろうな。3周年記念イベントということは、相当気合いの入ったイベントになるだろう。そこで歌う曲の提供なら非常に美味しい案件になる。

 

そして報酬の話に移行するが、ここで華山は条件を提示してきた。

 

「1曲50万、と言いたいところですが、今後Vtuberへの楽曲提供を玉手箱だけに限定するのであれば倍の100万を出しますわよ」

「それは、玉手箱からの依頼が無くなったらどうなりますか?」

「こちらから発注している状態でなければ他の箱に提供しても良いですわよ?」

「…………私の立ち上げる箱への制限撤廃と、11月納期のグループ曲について、今即金で100万円を頂けるなら」

「そこは制限しませんわよ。

エーコ、100万持ってきなさいですわ」

 

印税や使用料云々は別にして、完成報酬は1曲50万ということになったがこれはかなり破格だ。無名のボカロP、通常なら数万から十数万。高くても20万円ぐらいだろう。その2.5倍ということは、それだけ高く評価して貰ったということになる。

 

また、今後楽曲の提供を自身の立ち上げる箱と玉手箱だけにするなら1曲当たりの報酬を倍額にするとまで言われたが、ここまで1回の話し合いで詰めて来るのは相当なワンマン経営者なのだろう。初期資金が足りてないので受諾一択である。まだエーラさんの2Dアバターすら完成してないし。

 

これから2人目、3人目まですぐ増やすのは確定しているので札束ビンタはめっちゃ効く。しかしまあ、ポンと100万を見ず知らずの男に渡すとか相当勘の良い人間か、ただの馬鹿か……。まあ、こんな東京のど真ん中にオフィスを設けられる会社の社長が馬鹿なわけないか。

 

とりあえずは、方針が固まったので2D3Dにはお断りの連絡を入れておこう。本来なら一旦2D3Dにも直接話を聞きに行くべきだが、ここまでの好条件が出て来るとは思えない。というか既に2D3Dからは1曲当たり15万というのは聞いているし、直接会って条件が上方修正されたとしても100万には届かないだろう。



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第5.5話 掲示板回①

【バーチャルVtuber】個人勢監視スレ Part394

 

1:774さん@お腹いっぱい

・スレ立ては>>950

・踏み逃げされた場合は宣言後に立てよう

タイトルコピペ用(数字は次スレ用)

【バーチャルVtuber】個人勢監視スレ Part395

 

↑までコピペ ・数字は次スレ用部分を繰り上げ

 

・前スレ

【バーチャルVtuber】個人勢監視スレ Part393

 

2:774さん@お腹いっぱい

□荒らし報告はこちら□

YouTube板荒らし報告

https://~~~

 

□犯罪行為やその他、法に抵触する行為等の場合もこちらで□

 

 警視庁HP

 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/anket/jiken_cyber.html

 

 インターネット・ホットラインセンター

 http://www.internethotline.jp/

 

3:774さん@お腹いっぱい

>>1乙

前スレ997って誰かの転生?元ボカロP?

 

4:774さん@お腹いっぱい

黒桜も顔割れてんのか

まあもうどんな化け物が来ても耐える自信はあるがな

 

5:774さん@お腹いっぱい

黒桜は個人勢入れるなよ

 

6:774さん@お腹いっぱい

日課の5chアンチスレエゴサをしていて思ったのですが、

アンチの方って驚くほど語彙力と表現力が乏しいんですよね。

 

7:774さん@お腹いっぱい

なんか今日は懐かし目のコピペ多くて良いな

最近変なのばっかだから

 

8:774さん@お腹いっぱい

奴の名を出すな

 

9:774さん@お腹いっぱい

藤堂立冬(天命/destiny)@Toudourittou

4曲目です。

https://twitter.com/~~~~

 

10:774さん@お腹いっぱい

どれだけ曲貯めてたんだ

 

11:774さん@お腹いっぱい

今回のやつ一番クオリティ高いな

 

12:774さん@お腹いっぱい

メグ姉メグ姉メグ姉メグ姉メグ姉メグ姉メグ姉メグ姉メグ姉メグ姉

 

13:774さん@お腹いっぱい

絶対元ボカロPなんだろうけど生声で分からんか?

 

14:774さん@お腹いっぱい

そろそろ藤堂は個スレ立ててそっちでやれ

 

15:774さん@お腹いっぱい

http://youtube.com/~~~~

姉小路マリンと白夜がコラボ

 

16:774さん@お腹いっぱい

底辺共が盛り上がって来やがったな

 

17:774さん@お腹いっぱい

お誕生日お祝いVtuberとして周りに擦り寄って生きていこうかな

マッチマンさん、お誕生日おめでとう!どんな奴か1ミリも知らんけど

 

18:774さん@お腹いっぱい

毎日数百人の誕生日祝い出来る気がしない

 

19:玉手箱最強@お腹いっぱい

姫シコ

【3周年記念ライブ決定祝いの姫のファンアート.jpg】

 

20:774さん@お腹いっぱい

華京院アリスってアカウント消えた?

 

21:774さん@お腹いっぱい

>>20

消えたっぽいね

白のマリカ大会荒らしたの絶対許さないからな

 

22:774さん@お腹いっぱい

フェードアウトしていくやつ多すぎ問題

 

23:774さん@お腹いっぱい

多産多死

 

24:774さん@お腹いっぱい

よく知らないけどマジレスすると華京院アリスだけ叩く必要はないと思う

何もやらかしてないし叩く理由がないじゃん

コラボだって頑張ってるし性格もよく分かんないけど多分問題ないキャラで同性にも好かれるいい人だと思うけど?

無理やり叩こうとしてるのは無産底辺の嫉妬でしょ

私怨叩きはスレチだからスルー推奨だよまじで

 

25:774さん@お腹いっぱい

本当に何も知らなさそうな文だわ

 

26:774さん@お腹いっぱい

昨日できたテンプレを早速使う敏腕スレ民好き

 

27:774さん@お腹いっぱい

今の推しで手一杯だから個人勢まで開拓出来ないんだけどオススメいる?

 

28:774さん@お腹いっぱい

今の推しで手一杯ってお前常人の数倍推しいるからな

 

29:774さん@お腹いっぱい

https://twitter.com/narumisabaki~~~

 

30:774さん@お腹いっぱい

>>29

おっほぉwwwwwwwwwwww

 

31:774さん@お腹いっぱい

物申す系も何だかんだ色んなキャラがいて草

噛みつき先にも個性が出て非常にほほえましいですね

 

31:774さん@お腹いっぱい

>>29

面食いの糞ビッチが

ブチ犯すぞ

 

32:774さん@お腹いっぱい

>>9

藤堂の天命って箱の名前かこれ

 

33:774さん@お腹いっぱい

二匹目のドジョウを狙う人多すぎ問題

 

34:774さん@お腹いっぱい

二匹目どころか十数匹目だろ

 

35:774さん@お腹いっぱい

Vtuberで起業して上手く行くわけないじゃん

 

36:774さん@お腹いっぱい

個人勢じゃなくなったことだしとっとと専スレ立ててどうぞ

 

37:774さん@お腹いっぱい

最近寒暖差激しすぎて風邪引きそう

 

38:774さん@お腹いっぱい

あー、こいつバズるな。俺には分かる()



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第6話 箱形成

エーラさんの2Dアバターを急ピッチで仕上げていく。1枚絵を描いて貰った方に許可を頂いて2Dアバター化しているのだが、追加発注で金が飛ぶ不具合。可愛いVtuberは金がかかる。あのファッションお嬢様からの初期投資が無かったら詰んでいたかもしれないから素直に感謝しておこう。

 

さて、エーラさんと同様に声をかけ、2人目と3人目までは確保した。自力で人を確保するのはここまでだ。Twitterのフォロワー数はあっという間に5万人を超え、一躍有名新人Vtuberポジションまで進出出来たので今後は応募してくれる人が増えて来るだろう。

 

問題はこの3人がどこまで頑張ってくれるかだが、将来的に存在感が薄くなるポジションなら存在を纏めてしまった方が印象には残りやすい。というわけで、双子の姉妹としてデビューさせる。

 

名前は2人目がヘンデル=ヘクサールで3人目がグレーデル=ヘクサール。元ネタのヘンゼルとグレーテルではヘンゼルが男の子だが、当分は女性しか増やすつもりないので2人とも女の子です。アバターは両方18歳。中の人は2人とも28歳。

 

ある程度の社会経験がある2人で、同年齢だったことから双子案を思いついた。エーラさんと会った次の日には2人に曲を渡していたけど、エーラさんとは違ってデュエットになるので流石に練習期間を設けて練習させた。

 

渡した曲は『烏の詩』で、色褪せない神曲という印象の歌。盗作作曲家が曲のランク付けするのはおこがましいことだが、個人的には迷わずに神曲に分類した曲でもある。練習の成果は……してないよりかはマシかな。まあ女性Vtuberで半年活動してチャンネル登録数が56人と138人なので色々とお察しレベルではあった。

 

ついでに玉手箱のグループ曲の方は依頼を受けた日の翌日に曲を提出。グループ曲と聞いて真っ先に思い浮かんだ『ミラクルシンデレラ』を出したら一発で受理された。音ゲーをやっていて良かったと思った瞬間である。この曲はとある音ゲーのノルマ曲みたいなもので何度も聞いたけど、飽きない魅力がある。

 

これでうちの箱の面子は全員歌動画を出したが初配信はまだ、という状況になった。初配信はかなり重要なファクターであり、配信タイトルにも初配信の文字を入れると人が来やすい。そして数百人数千人の人が見ている「初配信」は、とてつもない数の人を呼び込む効果がある。

 

人は人を集める。多くの人が見ている配信が「初配信」なら更なる人を呼び込む効果がある。これから自分がやらなければいけないのは、自分の初配信をある程度盛り上げた上でエーラさん、ヘンデルさん、グレーデルさんの初配信に人を誘導すること。彼女らの初配信の日時をお知らせすることで、初配信ブーストを補助すること。

 

これから自分の立ち上げる天命箱の初動が、大きく変わる1日になるだろう。というわけでその初配信で流す曲を5曲選出する。初っ端が大切なため、この中の1曲は元の世界のYouTubeで1億再生を記録した『ゲーマーズ人生』にする。アニメありきの曲人気だったかもしれないが、それだけで1億再生は届かないだろう。

 

残りの4曲はアニソンから特定の層に刺さりそうな『正義の光』『失楽園』『繋ぎ手』『誓いの証』を選出。アニソンのオファーがあれば出したかった曲群を贅沢に使用しており、元の世界のアニメファンが自分の行動を見ていたら勿体無いとか言いそうだが、どうせ今の世界だとこれらの曲を連続で流しても贅沢だと分かるのは自分一人だ。

 

しかしまあ、生配信で曲を流すという休憩時間があるのは良いかもしれない。とりあえずそれぞれの曲のイメージを絵師に伝え、それぞれの曲で藤堂立冬の一枚絵を描いて貰う。歌うのはボカロ。でも立ち絵は自分。これ大事。

 

Twitterで初配信日時を予告しつつ、5曲目のボカロ曲『炎撃』を投稿。藤堂立冬の女性ver顔をスコープで覗き込むような立ち絵と共に投稿し、極力元の世界の絵に近づけたお蔭か、フォロワー数がまた爆増を始めて10万人を突破する。チャンネル登録数が5万人を突破し、そろそろVtuber界で藤堂立冬の名が売れ始めたね。初配信すらまだな新人Vtuberの活躍に、Vtuber専門のまとめサイト等も注目し始めた。

 

この短スパンで神曲を連発しているということで、評判もある程度良い。しかしながら天命箱の一人目のエーラさんの前世が華京院アリスだと速攻でバレたため、少々のアンチも発生している。何気にエーラさん、世界初のバーチャルライバーである世界白さんが開いたマリカ大会で決勝まで1位通過、決勝でも3位に入っているのか。

 

……世界白さんと同じ予選からずっと走り続けて1位を取り続けたならあのチャンネル登録数は納得ではある。まあもう風化したことだし粘着する人はいなさそうだけどしくじったかな。ただゲームの腕がそれなりにあると思っていたし、配信が完全な虚無になることは少なそうで良かった。



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第7話 初配信ブースト

2019年9月20日。とうとう藤堂立冬の予告していた初配信の日を迎え、生配信が始まっていないにも関わらず待機勢は2000人ほどいる。企業勢でもここまで期待されることは少ないだろう。いや企業勢だけど。これから巨大な箱を作って大儲けするつもりだけど。

 

開始5分前にもなると、さらに人は増えて3500人を突破。開始直前には4000人という大台に乗り、コメント欄は凄まじいお祭り騒ぎとなる。既に生声を披露しているから、普通に挨拶しても人は離れないと言い聞かして定刻通りに配信を開始。

 

「こうして配信でお話するのは初めてですかね。初めまして。天命箱を立ち上げる藤堂立冬です」

 

なるべく最初は、視聴者に話しかける形で喋っていこう。……わりと配信業に憧れてはいたけど、いざ自分が5000人もの人を集める配信者になると緊張で吐きそうになってくるな。

 

「今日は簡単な自己紹介と、箱の初期メンバーの紹介、あとは配信中に新作のボカロ曲を5曲流そうと思います」

 

コメント:こんばんは~

コメント:5曲新作!?

コメント:今までの5曲じゃなくて!?

コメント:勢いヤバイwwww

コメント:6000人行った!

コメント:初見です

コメント:スパチャ出来ない

コメント:起業系Vtuberだあああああああ

コメント:5曲!?

コメント:幽霊規則いつも聞いてます

 

1秒でコメントが10ぐらい流れるとか勢いが凄い。上手く捌ける自信はないが、台本は用意してあるし都度都度新作のボカロ曲を流すことで休憩も取れる。とりあえずは1時間の配信、視聴者の全員に満足感を与えることでチャンネル登録数を更に増やす。

 

「まずは自己紹介ですが、私、藤堂立冬の性別は男時々女です。年齢は20歳。リアル年齢と同じなので毎年1歳ずつ加齢していきます。趣味と特技は楽曲作成ですね」

 

なるべく丁寧に話して、物腰弱そうな印象も与える。将来的には男性Vtuberもどんどん雇うつもりだけど、しばらくは女性Vtuberだけになりそうだから炎上の火種が常にある状態。男性受けもしそうな男性キャラを狙わないとあっという間に炎上するだろう。

 

……よし、この辺で玉手箱と絡みがあることを話そう。3周年イベントのグループ曲を作成したことについて言及し、コメント欄の勢いを加速させると共に、玉手箱リスナーも呼び込む。

 

するとすぐに視聴者数は1万を超え、初配信ながらTwitterのトレンドにも乗る。よし、新曲発表するタイミングはここだぁ!

 

「それではまず1曲目、『ゲーマーズ人生』です。しばらく黙りますねー」

 

画面を切り替え、作成しておいた動画の方を流し始める。ついでにTwitterで曲の投稿もしておく。良い感じに界隈が注目してくれているし、今のところアンチコメントは極めて少ない。

 

歌い手がボカロに置き換わってはいるが、今のところ反響はとても良いので今回の配信が終われば投稿している歌動画は一気に回るだろうし急上昇にも入る可能性は高い。

 

歌の動画の最中は人があまり離れず、むしろ人が増え続ける異常事態に突入するので同接は1万2千人まで増える。この初配信で1万2千人も集めているという事実が更なる人を呼びこみ、好循環を生み出す。

 

そしてその配信で提供されるのは高クオリティな歌動画が5つ。今日はめっちゃ雑に5曲投稿したが、いずれもコメント欄の加速はえげつない状態であり、自身も特に変なことは喋ってないのでアーカイブはそのまま残しても問題ないだろう。

 

……初配信のアーカイブが回るということは、それだけ1期生達の紹介もされるということ。嫌でも注目を集める状態にしたのであの3人は頑張ってくださいとしか言いようがないな。

 

最大同接1万6485人の配信が終わると、凄まじい勢いで投稿した5曲の歌動画の再生回数が伸びていく。『ゲーマーズ人生』『正義の光』『失楽園』『繋ぎ手』『誓いの証』の内、反響が良かったのは『ゲーマーズ人生』と『誓いの証』でこの2つは早々に10万再生を突破した。勢いが予想以上である。

 

Vtuber専用のまとめサイトどころか、オタクコンテンツのまとめサイトにまで紹介されるようになったし、ここまですべて順調だ。しかしながら、歌を武器にしているVtuberは自分達だけではない。

 

筆頭Vの神譜(じんぷ)さんのチャンネル登録数28万人、歌を武器にしている箱の通称「神譜箱」は露骨にTwitterでの絡みを避けているし、唯一こちらからのDMに返答すらなかった。まあ完全なライバル企業だししゃーない。まだこちらのチャンネル登録数は7万8千人だし、チャンネル登録数10万は流石に3週間ぐらいかかるか。

 

無事に初配信が終わったので一段落。すると思っていたのかと言わんばかりに11曲目の『Twins Soul Beats』を投稿。トップバッターのエーラさんの初配信の日までお祭り騒ぎが継続するようにフォローを実施。お蔭でエーラさんからの泣き言回数が増えた気がするけど、マシュマロとか山ほど来ているみたいだし初回の雑談配信ぐらいは何とかなるだろう。



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第8話 世間の評価

9月22日にエーラさんが初配信を行い、画面切り替えに戸惑ったり、R-18なマシュマロを表示してしまったりとお前本当に1年半のキャリアがあるのかと突っ込みたくなったが、無難に〆ることは出来たので及第点です。ゲームの腕はそこそこあるし、人が多いとコメントも多いので話題に詰まりにくい。

 

特にマシュマロ雑談なら事故も起き辛いし、今回は凄まじい勢いでマシュマロが届いていたらしいから良いマシュマロを選別するのも楽だっただろう。事故はまあ盛り上がった部分でもあるし、わざとなら相当な演技力だから今回はスルーで良いや。

 

ヘンデルとグレーデルの初配信はコラボで話しながら行わせることで、虚無配信を回避。この2人も配信歴半年で配信回数自体は多かったからキャリアはあるが実績はない悲惨な状態。下手に1人で配信させたら事故る気しかしないし、とにかく成功体験を積ませていくしかないな。

 

結局箱の3人の初配信には6千人から8千人の人が来ていたため、天命箱は無事にスタートダッシュを決めることが出来た。というか新規参入とは思えない数字を叩き出しており、特に藤堂立冬の名は売れまくっている。また歌動画の方も再生回数の伸びが衰えず、広告収入だけでも結構な額になりそうだ。

 

なお天命箱の正式名称は天命/destiny箱で長いからと一部の掲示板ではデス箱、死箱とも呼ばれているらしい。無事に3人の前世が特定され、虚無配信ばかり繰り返していた経歴から死産を期待されているとか掲示板は怖い所だ。

 

また玉手箱から追加発注があったが、玉手箱のアイドル部門15人分それぞれのオリジナルソングを作れとかわりと無茶な発注しますね?そして個人相手に1つの仕事で達成報酬1500万円を用意するとかヤバイ箱ですね?

 

まあとあるシャイニングなアイドル音ゲーから適当にキャラソンを当てはめて提出するだけで済むから楽な仕事なんだけど。まだ再現してなかった分野だったので再現しつつ、覚えてないところは適当に良い感じの歌詞で穴埋め。発注から3日で提出。1500万円美味しいです。

 

ちなみに曲の完成報酬と印税や使用料は別なので、提出した曲のCDが売れまくったり、動画で再生されまくったりすると自分のところにもお金が入る仕様です。玉手箱は既に太客が多く、アイドル部門のスパチャ額は凄まじいのでそこから巻き上げる金の一部がこちらまで流れて来るのは嬉しい。

 

しばらくはVtuber界の話題を席巻した藤堂立冬だけど、次の週には玉手箱と2D3Dが合同でポケモンのランダム技大会を開催し、決勝戦は下馬評通りに2D3Dの椎花裕香(しいかゆうか)が玉手箱のシーバル=ユースを降して優勝したことで話題を掻っ攫われる。運ゲー大会で優勝候補が優勝ってどういうことなの。

 

また神譜箱の動きが活発化し、歌ってみた動画とオリジナルソングを怒涛のように連投している。こっちは完全にこちらを意識している動きだけど、意識されるとやっぱり嬉しいね。まあその後の華山さんの配信のお蔭で藤堂立冬が3日で15曲作ったと話題になったけど。

 

「2曲目の方はどうですか?もう少し練習しますか?」

「あの、もう少し練習させてください。頂いた2曲とも、素晴らしい曲なのに私のせいで全然活かせてなくて……」

「ボイトレなら経費で落とすので上手くなりたいなら行って下さい。というか外に出て下さい」

 

これは完全に玉手箱が後押しする姿勢を見せているので、波に乗るためにエーラさんに2曲目の状況を問い合わせるけどこれはちゃんと練習する気になっているようなのでボイトレ行けと指示を出す。完全ド素人なら2回3回のボイトレでかなり変わって来るだろう。纏まったお金が入ったお蔭で、自由に行動できるようになったのは非常にありがたい。

 

しかしまあ、自分もそうだけど素人でも指摘できるような点がいっぱいある状態はこれから改善していきたいな。この世界にはいない動画投稿者の言葉だけど「発信者はたった一つのミスも犯してはならないが、受信者はたった一つのミスを見つけるだけで非難が出来る」というのはネットの真理だ。

 

……ヘンデルとグレーデルの2人はそれぞれ2回目の配信で流行りのゲームの実況を選択。視聴者数が安定して2000人と初配信の1/3以下の人数にまで減ったが、これでもまだ人が残っている方である。そして「初配信から人が減った」という事実が、更なる人離れを起こす。

 

かつてはチャンネル登録数が70万人を超えていたキズナミライさん。今ではチャンネル登録数が減少フェーズに入り、昔は配信1万人を集めていたのにもかかわらず、直近の同接数は500人以下と全盛期の1/20以下だ。世間的な知名度はまだ保っているが、既にVtuber界隈では関わりを避けられている始末である。

 

歌の力で一時的に成り上がっている以上、その力を上手く使えなければ自分達もその仲間入りを果たす。「歌を歌っているだけで良い」「歌を作っているだけで良い」とまで言われたらVtuberとしてはお終いだから、そうはならないように配信内容には力を入れて質を上げよう。



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第9話 箱ゲーム

天命箱のチャンネル登録数が順調に増えて行っているが、ただ歌を歌わせるだけなら箱を作った意味はない。せっかくの初期資金も有効活用したいし、いずれは業界トップクラスの箱にしたい。

 

そう決意して、今日決めていくのは箱でやるゲームだ。一番有名なところでは、マインクラフトだろう。箱でワイワイプレイするゲームとして、あれほど最適なものはない。

 

玉手箱も2D3Dもアルチライブも、みんなそれぞれマインクラフトのサーバーを持っていて盛り上がっているし、真似するのは誰だって出来る。ただ恐らく、想定以上の戦果は期待できないだろう。取れ高のほとんどは他箱の猿真似になってしまうし、積み重ねもないので面白い絡みも少なくなるはず。

 

となれば、新規でマインクラフトを超える面白さのマルチゲームを探す必要がある。ここで方針として、他箱を出し抜くか同時に流行らせるために共闘するかは選択となる。

 

現状、Vtuber界隈のトップである2D3Dと玉手箱は比較的仲が良い。まあ合同で大会とかよく開催しているし、コラボ回数も多い。一方でアルチライブは独自路線を展開し、他箱との関係を一切断っている。ここら辺は、元の世界と違うところだ。

 

……最終的にトップを目指すとして、Vtuber界で生き残り、戦っていくためには、道中で全ての箱を敵に回すムーブは避けるべきだろう。既に連絡先も知っているため、玉手箱のトップに新規のマルチゲームを開拓する相談をする。すると提案されたのは「ARK: Survival Evolved」というゲーム。

 

玉手箱は今年の冬休み期間辺りから学生客を引き寄せるため、このゲームをマインクラフトの代わりに箱推奨ゲームとするらしい。これあれだな。グループ曲と各個人15人分の曲を提供したから完全に向こう側も強い繋がりを作りに来てるな。そうじゃなきゃ教えてくれるはずもない。

 

そのまま一緒に鯖を開設する時期と配信開始時間まで決めて、一緒にスタートを切れるよう調整する。向こうに談合するメリットがあるのかは分からないが、こちらは談合するメリットしかないので素直に乗ることにする。

 

というか現状、一番のスポンサーだしな。玉手箱は1500万円をポンと振り込んで来る社長の剛毅さがヤバイ。あと元の世界にはいなかったVtuberということで配信や行動を追いかけたけど、どうやら俺と同類なのかもしれない。それも時間が巻き戻るというおまけ付きで。

 

世界初のVtuberとしてデビューし、元の世界で有名だったVtuberの魂を集めて起業し、今では業界トップクラスの箱の社長とか随分と上手く儲けている。うん、見れば見るほどこの大成功劇はそうとしか思えない。

 

……これ、向こうも気づいているか?そうじゃなきゃ、あそこまでの大金をポンポンと払わないし、玉手箱限定とかの話もしないだろう。頭の回転は速そうだったし、互いに暴露されても問題はないが知られたくない秘密を握っているという状態。当分は共闘するしかないか。

 

 

藤堂立冬チャンネル:チャンネル登録数98,120人

『自己紹介動画』:再生回数170,659回

『夏の夜空防衛隊』:再生回数276,580回

『幽霊規則』:再生回数401,659回

『メラメラ!』:再生回数275,690回

『億千桜』:再生回数462,706回

『炎撃』:再生回数225,071回

『【初配信】5曲リリースします【藤堂立冬】』:再生回数817,437回

『ゲーマーズ人生』:再生回数506,782回

『正義の光』:再生回数180,438回

『失楽園』:再生回数139,884回

『繋ぎ手』:再生回数267,466回

『誓いの証』:再生回数409,001回

『Twins Soul Beats』:再生回数96,687回

 

 

チャンネル登録数がもうすぐで10万に到達しそうだけど、尋常じゃないペースだろうな。各曲の再生回数がガンガン増えていくのは素晴らしい。まだ「もう知ってる」人よりも「全然知らない」人の方が多い以上、初配信のアーカイブは回り続ける。

 

ここまで来ると、こちらからオファーを出さなくても勝手に応募が来るようになる。その中で歌の上手い人を選び放題というわけだが、そこまで美味しい話でもない。こういう場で応募してくる人の歌唱力がプロ並みのはずがなく、素人の域を超えていたら良いレベルで、明らかな音痴だとか声が汚いとかは実際に歌を聞くまで分からないので選別作業が大変だ。

 

というかプロ並みの歌唱力を持っていたらプロになっているんだよ。Vtuberにはそこまで求められないのを理解した上で、自分で歌いたかったから、がVtuberになった理由の1つでもある。

 

……よし、箱ゲームは「ARK: Survival Evolved」にしよう。軽く触ってみたが、中々に面白いしマルチ向きだ。鯖開設時期を11月1日に揃えるということは、天命箱の2期生デビューぐらいまでなら間に合うか。あまりにも多人数だとごちゃごちゃして分かり辛そうだし、7~8人ぐらいで遊ぶイメージを持っておこう。



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第10話 停滞の時期

1期生達が通常配信をするようになり、普通に人が離れて行ってる。その中でエーラさんだけは1000人ラインを切らないように頑張っているので一応期待は出来そうだ。魂ガチャRぐらいのレア度はありそう。少なくとも、人が減っていることに言及しないだけ優秀ではある。

 

一方で藤堂立冬の2回目の配信では2期生の募集を告知。単独で最大同時接続数2万2千人はえげつないというか最早怖いよ。同時に新作ボカロ曲の『炉心溶融』を流すが、ハードルは無事超えていたみたいでチャンネル登録数がとうとう10万人を突破する。箱内2番手のエーラさんが1万5千人なので箱内では完全な単独トップです。

 

Vtuber界隈の外からも注目を集め始めたみたいで、Vtuber市場の拡大に尽力していることになっているからか玉手箱以外からの接触もある。早々に地上波に出るかは悩みどころ。間違いなく世間的な知名度は上がるけど、主戦場はあくまでYoutubeだしなぁ……。

 

また、箱ゲームとして推奨しているARKに1期生達が全員あまり乗り気じゃないのは辛い。全員ゲームはするようだけど、単純に洋ゲーを嫌っている節がある。というか「流行らないだろ」みたいな感情が伝わって来るようである。いやその点は自分も心配なんだけど、マインクラフト後追いよりかはマシでしょ。

 

そして鯖開設のあれこれで忙しいのに2期生の選別や1期生達の歌のレッスンの手配やケアもするとかもはや休み無いな?玉手箱からは更に玉手箱の1期生達に曲作れと3曲発注があったので翌日に『アトランティス』と『地平線』と『アナザーワールド』の3曲を投げつける。

 

藤堂立冬の元ネタ関連のゲームで使用されたテーマソング3曲のため、個人的には取っておきたかったが現時点で歌ってくれる人の中のレベルが一番高い人達に送り付けたのだから選択肢として間違ってはないはず。個人的には誰が『アナザーワールド』を歌うのか楽しみだな。今回は誰がどの曲とかの指定はしてないし。

 

……エーラさんの2曲目は『色彩』は、そこまでバズらなかった。一番の理由は歌っている本人の力量不足だろう。ニコニコ動画に投稿した方は、即座に歌い手が歌った歌の方がランキング1位を取る始末。流石はニコニコ動画で長年歌い手をしていた人だ。声量が違いますよ。

 

ただ、それでもエーラさんのチャンネル登録数は微増を続け、2万人に到達する。バズってないだけで、再生回数は順調に増えるし、歌が下手なのはVtuberにとって、チャンネル登録数が減る要素ではない。これから上手くならないとVtuberとして死ぬけど。

 

「2期生のトップバッターとして採用したいと思いますが、キャラの方向性とか希望はありますか?」

「ないっす。強いて言うならブラック企業勤めだったので扱き使われる後輩キャラでお願いします」

「ではライバー名はカレン=ヨーカで決定しますね。赤髪の女の子にする予定です」

「……赤い靴のカーレンっすか?」

「博識ですね。その通りです」

 

2期生の募集には、1人オンライン面接で後輩キャラを作って来てくれたメンタルの強い子が応募してくれていたので採用。昔アイドルを目指してボイトレとかもしていたようなので声が聞き取りやすい。ようやく魂ガチャでSRを引けた気分。なお残りの応募は全部N(ノーマル)の模様。色々と辛い。

 

ちなみに年齢は21歳と自分より年上なので全然後輩じゃないです。ブラック企業に3年間正社員で勤めていたというわけで、社会人経験者はマジでありがたい。ヘイデルさんとグレーデルさんは2人ともアルバイトと派遣だったから責任ある仕事を全然やってなかったんだよね。まあ入社して3年目の社員に責任ある仕事を任せられていたのかと言われたら疑問だけど。

 

スタートダッシュ期間は終了したため、時間をかけて2期生を選出することも出来るけどとりあえずはアバターだけ先に作って当て嵌まりそうな人に渡す感じで行こう。ヘンデルさんやグレーデルさんも1回の配信で来る人が500人ぐらいになったけど、この500人が離れなさそうな固定客となったお蔭で最悪の事態は回避出来ている。

 

ヘンデルさんとグレーデルさんは歌の練習を真面目にやっている上、音ゲーの配信をしながら歌うことで虚無配信を回避しつつ配信でも歌の練習をしている。こちらには2曲目となる『Cruel Angel』を来月までには出せるように準備している。

 

この曲も、アニメを知らない人でも知っているような曲だがアニメありきの人気曲でもあったため流行るかは微妙。元々が古い曲だと活用は出来ても人気を出すのは難しい感じがするな。3曲目には囲碁アニメの神OP『Get Other』を用意しているけど、こっちも古い曲なので人気が出るかは運。ただ『Cruel Angel』よりかは『Get Other』の方が再生回数は増えそうな気がする。

 

……Vtuberの人気は初動のブーストが終わったら、階段状に増えていくので停滞する時期は必ずある。それを歌の力で回避していくためには、もう少し歌の上手いVtuberの力が必要だな。



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第10.5話 掲示板回②

【Vtuber】デス箱総合スレpart15【楽曲倉庫】

 

1:774さん@お腹いっぱい

・リンク

デス箱公式HP→http://tenmei~~~

デス箱公式チャンネル→http://youtube.com/~~~~

デス箱公式Twitter→https://twitter.com/~~~~

 

・関連スレ

【Vtuber】玉手箱総合スレpart8968【運ゲしろ】

【独裁社長系Vtuber】華山亜季アンチスレpart2853【オワコン3周年】

 

・前スレ

【Vtuber】デス箱総合スレpart14【3日で15曲】

 

2:774さん@お腹いっぱい

1乙

姫が話盛るとは思えないんだがマジで3日で15曲作ったのか?

 

3:774さん@お腹いっぱい

>>1乙ですわよ

 

4:774さん@お腹いっぱい

ワンマンアーミーが過ぎる

 

5:774さん@お腹いっぱい

1期生達全員底辺個人勢からの拾い上げかぁ

 

6:774さん@お腹いっぱい

藤堂立冬が節操無しに声かけてたという噂は聞いた

 

7:774さん@お腹いっぱい

マジでこいつ何者なんだ

 

8:774さん@お腹いっぱい

複数の作曲家の集団説

 

9:774さん@お腹いっぱい

ずっと貯めてただけじゃない?

 

10:774さん@お腹いっぱい

1期生達の扱いがぞんざいにならないと良いなぁ

 

11:774さん@お腹いっぱい

何でエーラって嫌われてるん?

 

12:774さん@お腹いっぱい

歌動画はよ

 

13:774さん@お腹いっぱい

素行の悪いVtuberと配信しないVtuberは嫌われても仕方ないじゃん

 

14:774さん@お腹いっぱい

スレ間違えてない?

 

15:774さん@お腹いっぱい

タイピングゲームやろうやろうやろう

 

16:774さん@お腹いっぱい

ゲリラとか来ないかなー23時まで暇だわ

 

17:774さん@お腹いっぱい

あれ、30分ズラした?

なんか手前に1枠取りそうな予感

 

18:774さん@お腹いっぱい

立冬の女子アバター制服姿助かる

 

19:774さん@お腹いっぱい

変なの居着いたのか

 

20:774さん@お腹いっぱい

なんかこっちまでソワソワするなぁ

3周年までもう少し!

 

21:774さん@お腹いっぱい

>>20

誤爆

 

22:774さん@お腹いっぱい

玉手箱から流れたやつ多いから気にするな

 

23:774さん@お腹いっぱい

両方の箱推してる人多いだろ

 

24:774さん@お腹いっぱい

拙者社長系Vtuber大好き侍

義によって介錯いたす

 

25:774さん@お腹いっぱい

介錯するな

 

26:774さん@お腹いっぱい

基本Vtuberが起業するのは続かなくなるからなぁ

 

27:774さん@お腹いっぱい

キズナミライ……月夜輝夜……うっ、頭が

 

28:774さん@お腹いっぱい

糞運営の搾取とかいう親の声より聴いた引退理由

 

29:774さん@お腹いっぱい

枠立ったな

メドレーとかも楽しみね

 

30:774さん@お腹いっぱい

活動1か月で歌メドレー実施とかいう意味不明な状況

 

31:774さん@お腹いっぱい

概要欄のはてななんだろ

また新曲かな

 

32:774さん@お腹いっぱい

アンスレ建ってない?

 

33:774さん@お腹いっぱい

>>32

活動初日からあるぞ

 

34:774さん@お腹いっぱい

Twitterで「毎日曲を投下します」とか言ってる基地外ムーブで推すと決めた

 

35:774さん@お腹いっぱい

藤堂立冬が強すぎて他のメンバーが死んでる

 

36:774さん@お腹いっぱい

既に12曲目?だけど若干曲調が古いの多いような気もする

 

37:774さん@お腹いっぱい

3日に1回曲を出す人外

 

38:774さん@お腹いっぱい

3日に1回曲出しながら3日で15曲提出した人外

 

39:774さん@お腹いっぱい

あれ玉手箱阿鼻叫喚だったの草生えた

その後のグループ曲の発表と藤堂立冬の曲を聞いて手のひら返ししたのも草生えた

 

40:774さん@お腹いっぱい

Vtuber達の作曲家って儲かりそうなポジションだな

 

41:774さん@お腹いっぱい

曲がゴミでもファンが買うしな

 

42:774さん@お腹いっぱい

神譜みたいにレコード出してほしいわ

 

43:774さん@お腹いっぱい

MV作って欲しいよなー

幽霊規則とか誓いの証とか

 

44:774さん@お腹いっぱい

幽霊規則はオリジナルで一番好きな曲だわ

 

45:774さん@お腹いっぱい

概要欄もリアルタイムで更新されてるの手が込んでるね

 

46:774さん@お腹いっぱい

2期生募集マジか

 

47:774さん@お腹いっぱい

動きはっや

姫かよ

 

48:774さん@お腹いっぱい

わざわざこんなスレ来て全肯定っぽいこと言ってるやつキショすぎる

 

49:774さん@お腹いっぱい

>>48

こういうの見るとアンスレさっさと建てたの有能

 

50:774さん@お腹いっぱい

1期生達放置されそう

 

51:774さん@お腹いっぱい

それぞれわかりやすいキャラがあって数人破天荒な言動するメンバーがいればコラボにもシナジー生まれるんだがな……

 



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第11話 2期生

今日も朝起きたらおはようのツイートをして、エーラさんの泣き言とヘンデルさんの朝の歌練習配信、グレーデルさんのゲーム配信の視聴人数の推移をチェックしてから2期生募集フォームから応募してきた人のプロフィールをチェックしていく。

 

まず最初に、年齢である程度弾く。最終的にはライブ公演とかやって貰う以上、体力のある若い子の方がVtuberは圧倒的に有利だ。30代40代の独身男性を捕まえるために35歳前後の女性を捕まえるならまだ大丈夫だが、それ以上はアウトだよ。

 

次いで女性の応募者のショート動画から見ていくけど数が少ない上に課題曲の歌の練習すらしていない感じの人が多いので全員にお祈りメールを送る。これ以上1期生のような人が増えたらマジで詰むから仕方ない。

 

そして男性の応募者の方も確認していくけど、結構な割合でふざけた投稿があるのはもうどうしようもないな。まあまだ出来立てほやほやの箱だし、法的措置も今は面倒なことにしかならないので却下。淡々と処理していく。

 

そうこうしているうちに、1人当たりを引いた。というかSSRだこれ。わりと伝説級の歌い手じゃん。ニコニコ動画の歌い手で元から地盤持っているタイプの人だし、当然ながら歌が上手い。性格に難があるのかもしれないから、Twitterの発言を遡るが、問題になりそうな発言どころか当たり障りのないことしか言わない人なので大当たり。

 

早速面接に入ると、どうやら2期生全員にオリジナルソングを3曲以上渡されると聞いたことが応募のきっかけだったらしい。あとは自分の曲が好きになったとかなんとか。海老で鯛を釣った気分だ。まあ餌は海老(超高級)だが。釣られた方は鯛(伝説級)なのでヨシ。

 

ついでにもう1人、こちらは地盤がないけど同じくニコニコ動画の歌い手だった人なのでそれなりに歌が上手い。生配信歴は断続した期間こそあるものの、ゲーム実況を中心に5年あるなら十分過ぎるキャリアだろう。

 

元人気歌い手だった方のライバー名は『ラン』で、ゲーム実況者だった方は『オルカ』と2人とも短い名前にしておいた。前世の名前をある程度意識した名前にもなっており、わりとVtuber界のタブーを無視して突っ切っている。

 

Vtuber界隈は、わりと前世持ちが多い。まあ前世が上手く行かなかったからこそのVtuber化なわけだけど、基本的に前世を匂わせるのはアウトだ。それをやって良いのは、前世がよほど世間に好かれていた場合だけ。今回それに当て嵌まるランさんは、間違いなく初動が凄まじいことになる。

 

というわけでランさんにはとあるアニメのOPシリーズを丸々歌わせようと決心する。『静寂のメロディ』『明日のリスク』『チェイン!』『一人』『ロリスター』等々の個人的には好きな神曲群を惜しみなく投資。また寿命が縮まったけどここでは大きく出るべきだ。

 

持ち歌となる曲は順番に練習していく方向で打ち合わせは終わらせ、声質的にもピッタリな『ロリスター』を初投稿動画の歌に選出。いやしかしずっと歌を歌って来た人は凄いね。一発で期待値以上の歌を聞かせてくれる。

 

これで2期生は男2人、女1人の布陣になったけどどこの箱も何故か1期生は女しかいないのに2期生には男がいるようなので問題はないだろう。オルカさんの方にも同じくアニメのOPシリーズを丸々歌わせるが、こっちは素面で打ち合わせをしたくないな。

 

渡す曲は『Raise our kite』『サバイバル』『我欲』『奮闘』の4曲。どれも素晴らしい曲であるのは間違いない。……間違いないのだけど、元の世界ではアニメの方のインパクトが大きすぎて全てがネタ曲となってしまった不幸な曲達だ。

 

特に『我欲』は知らずに聞くととても熱くて良い曲なのに、勝手に脳内イメージが再生され、思わず吹き出してしまいそうになるほどである。自分で歌うと肩幅の大きい茶色な男が、勝手に走りだすイメージ映像のループから抜け出せなくなりそうなので、自分の声質にもあってそうな曲達だが渡すしかない。

 

そしてこの世界ではそういう風評被害もないので、純粋に曲の評価がされるだろう。初めて聞いた時は素直に良い曲だと感じたものだ。あのBBさえ無ければ……。

 

……同じ2期生となるカレンさんには『freedom』を歌わせようかな。綺麗な歌声に似合う曲だろう。2期生達の準備が出来たところで、自身もボカロで『全全全世』を投稿。元の世界では映画の主題歌で、カラオケの年間ランキング1位を獲得した曲でもある。

 

映画人気ありきの曲だとは思っていたが、結構評判は良いし良い場面で切らなかったのは勿体なかったかもしれないが後悔はない。そして早くも玉手箱のアイドル部門と玉手箱ライバーの内、歌の上手い人達が曲を次々に発表。

 

毎日日替わりで計30人がオリジナルソングを出すとか随分と金のかかった催しをしますね。まあスパチャでそれ以上に稼ぐんだろうけど。何ならCDや物販でえげつない収益叩き出すんだろうけど。

 

……まあでも、そのことで一番注目を集めているのは謎の作曲系Vtuber藤堂立冬だ。今のところは想定を遥かに超えるペースで知名度を稼げている。曲のストックはまだ幾らでもある。頂点は遠いが、その麓ぐらいは見えて来たな。

 



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第12話 才能

都内某所のオフィスビルで、引っ越し作業を終えた玉手箱社長の華山亜季が玉手箱所属ライバーの雨鳥美心に話しかける。引っ越しとは言ってもオフィスビルの4階から5階へ、一部の荷物を移動させるだけの作業だが、半日ほどの時間を要した。

 

「引っ越しの手伝いありがとうございましたわ。まさか手伝ってくれるとは思いませんでしたわよ」

「いやいや、姫が机運んでいるのを見て手伝わない玉手箱ライバーはいないって。お小遣いも貰えたし。それより、とうとう2フロア独占するようになったんだね」

「ちょっと人が増えましたし、3Dの収録が出来る広いスペースを確保したかっただけですわ」

 

現時点で所属ライバーの合計チャンネル登録数はトップ、総再生回数もトップである玉手箱は新たに3D用のスタジオを用意した。それは今後のVtuber界を見越したものであり、3Dモデルの持つ力を存分に活用するためでもあった。

 

ここで華山は、ずっと考えていたことを雨鳥に聞く。自身にはない才能についてのことは、才能のある人間に聞く必要があった。

 

「ちょっと質問なのですが、音大生なら1度聞いた曲を何も見ず、聞き直すこともせずに完璧に書き起こすことが出来ますの?」

「んー、かなり難しいと思うけど出来ないことはないかな?慣れてないと本当に難しいけど」

「1曲丸々でも?」

「それはちょっと無理かも。1曲丸々となると相当聞き慣れている曲しか無理だと思うよ。私も毎日聞いているような曲なら可能だけど、それ以外は無理」

「……回答ありがとうですわ。まあ、1曲丸々は難しいですわね」

 

多少カラオケで歌った経験のある人間であれば、アカペラで歌う難しさを知っているだろう。絶対音感があっても、リズムの取り方次第では別の曲になってしまう。歌詞を丸暗記するには、当然ながら記憶力を要する。

 

1曲丸々耳コピするためには、ある程度の音楽の才能が必要であり、敷居が高いことだ。

 

「それにしても1500万円をポンと無名の作曲家に使うとか相変わらず凄い判断するね……」

「アイドル部門のオリジナルソングの確保は早急の課題でしたから、一番早く納得できる曲が出て来るところへ依頼しただけですわ」

「一番早く納得……藤堂立冬かー。箱を作ってるし、要注意だね」

「注意するも何も、しばらく玉手箱は天命箱と協調しますわよ?」

「え!?」

「というか既に20曲ほど藤堂立冬に曲を用意して貰いましたし、追加発注もどんどんしますわ。発注している間は、他所に取られないですわよ」

 

業界トップクラスのVtuber企業が、設立して僅か半月、元々の知名度も地盤も何もないVtuber企業相手に寄り添う必要性はどこにもない。しかし玉手箱社長の華山亜季は、藤堂立冬の1曲目を聞いた瞬間に藤堂立冬がどういう存在なのか理解し把握した。

 

「あ、さては惚れた?事務所でも格好良かったって話題になってたし」

「惚れてはいませんわ。まあ将来的にVtuber企業の社長同士、政略結婚もありとは思っていますが」

「ぶっ」

「汚いですわ!配信のネタ確保ですわ!」

「いや止めてー!?というかマジ!?」

 

冗談半分で雨鳥は華山を揶揄うが、華山が真剣な顔で政略結婚も視野に入れていることを話すと雨鳥は飲んでいたスポーツドリンクを噴き出す。もろにその液体を浴びた華山は、非常に喜んでいた。そういう性癖である。

 

「先ほどのは冗談ですが、Vtuber同士の結婚というのも一発目はコンテンツとしてありだと思いますわよ。ただの結婚引退であれば炎上は避けられないでしょうし」

「んー、結婚はまだ考えたくないなぁ。ただ大学時代の友達とかが婚活しているとか聞いて『あ、私もそろそろそういう年齢なんだ』って自覚し始めてるけど」

「別に結婚しても良いですけど、それが世間に露呈したらかなり辛い現実を見ることになりますわよ」

「そこら辺は全部知ってるよ。ただ、藤堂立冬は姫が結婚しても良いと思う相手ということは理解した」

 

業界の一部の人間からは『未来を見通す』とまで言われている華山は、藤堂立冬の先が長くはないと考えた。1年後か、早ければ半年後で破綻する。ただそれでも、当分の間は利用できると判断してすり寄る。

 

華山自身、認識が間違っていたと気付くのは少し後の話になる。しかしそれでも、藤堂立冬と早くから接触し、太い繋がりを構築したことについて、未来の華山は過去の華山の判断に感謝している。

 

翌日から、玉手箱は毎日オリジナルソングを発表するオリジナルソングプロジェクトを始動。1か月間、毎日玉手箱所属のライバーが歌を発表することとなり、その中の30曲中、18曲に藤堂立冬の名前が入っていることについて、Vtuber界隈は華山亜季と藤堂立冬の予想以上に注目を集めた。



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第13話 追い風

Vtuberとしての人気より、作曲家としての人気の方が上回って来た今日この頃。地上波で一瞬触れられたせいなのかチャンネル登録数が再度激増を開始。初動の時並みの勢いで各動画の再生回数が増えているが、これは連日Vtuber界隈を騒がせている玉手箱のオリジナルソング発表ラッシュも大きい。

 

まあ単純に考えて頭おかしいことしてるからね。どんなに作曲が早い人でも、3日で15曲はあり得ない。化け物染みた人なら1日2曲、3日で6曲程度は可能だろうけど、キャラソンでそれをやるのはほぼ不可能だ。これ年末までに50万人ラインを突破しそうだな。

 

玉手箱のアイドル部門の中でも、飛びぬけて人気が高いのは昨日チャンネル登録数が50万を突破し、そのうち現トップの華山さんを抜いて1位になると言われている鬼龍院(きりゅういん)ココアさん。この人はアメリカ人で英語ネイティブのため、英語の曲を渡せるのは強み。元の世界ではアルチライブの筆頭Vtuberだったけど玉手箱が引き抜いているね。これはズルい。

 

……玉手箱からの追加発注がまた来て、ココアさんに英語の曲を作れとのこと。これは完全に玉手箱が世界進出を狙っているし、それに藤堂立冬は便乗出来る形となった。とりあえずは発注が来た翌日に『Keeping to keep』を提出。とあるアニメの処刑曲だの殺戮曲だの言われていたけど、まあ世界に名を売るための曲としては良い感じだろう。

 

「英語の曲を、貴方は何曲用意出来ますの?」

「すぐに、という条件なら50曲。時間かけて良いなら300曲は余裕です」

 

というか向こうから「何曲用意が出来る?」と聞いてくる時点で向こうもこちらを理解しているな。しかしサビの一部でも覚えていたらそこから曲の復元をすれば良いし、最終的にはかなりの曲数になると思う。

 

お、『幽霊規則』と『ゲーマーズ人生』に引き続いて『誓いの証』もミリオン動画達成だ。流石はYouTubeの急上昇に載っただけはある。チャンネル登録数も30万人が見える新人Vtuberって何だよ。明らかに異常なペースだし、各種まとめサイトにも藤堂立冬タグが出来て各記事のコメント数が多くなってきた。

 

その記事の中には「集団作曲家説」だの「作曲AIを駆使してる説」だの面白い記事が沢山あるので、それが論争を呼んで更に知名度を上げてくれる。

 

またこのタイミングで2期生達がそれぞれ歌動画を投稿。日付をズラして初動の注目を集めさせるようにしたが、案の定ランさんがニコニコ動画の有名な歌い手だったこともありトレンド1位を記録。投稿された歌動画の『ロリスター』は初日段階でYouTube50万再生とニコニコ動画20万再生を記録。

 

これにより、天命箱自体の知名度も急上昇して1期生達のチャンネル登録数も増えていく。なお1期生達の同接は増えない模様。2期生達の初配信には1期生達の時と同じく6000人から8000人の人が集まり、全員歌が上手いことで1期生と2期生の比較もされ始めた。

 

「そういえば、発表時期が違うのにアイドル部門のCDの販売日は合わせるんですね」

「投票券もセットですからね。オリコンランキングをジャックしてお茶の間をパーフェクトフリーズさせますわよ」

「……人気投票ですか?」

「上位3人にはもう一曲オリジナルソングをプレゼントですわ」

「うわ、えげつない」

 

電話で軽い雑談からとんでも情報を投下していく華山さんだが、この上位3人に入った人に追加でもう1曲プレゼントの話が先ほどのココアさんの話だろう。まあ間違いなく投票で1位を掻っ攫う人気だから、あらかじめ用意はするか。

 

……それにしても、アイドル部門の曲が同時リリースされオリコンランキングをジャックするという話なら、その作詞作曲家の欄は全部藤堂立冬になるんだよな。これはまた世間の知名度が上がる。

 

CDの売上順で順位を付けるのではなく、わざわざ投票させて順位を決めようとするところはVtuberファンの心情をよく理解している。これなら、15人分全員のCDを買ったとして15票を推しに突っ込むことが可能だ。

 

1人に数千枚買わせるよりも、1000人に15枚ずつ売った方が良いしね。同じCDだけ山のように買わせるのは購入者にとってもあまり嬉しい事ではないし、購入分を分散させて売上の方は平らにしたいのだろう。

 

というか、この形式なら万が一ココアさんが3位以内に入らなくても順位操作をすることが可能だ。そういうことも視野に入れて決行していそうだからとんでもない存在だ。まあ『Keeping to keep』が一発で受理されたし、自分にもその恩恵が来るなら止める必要もない。



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第14話 不運

10月中旬。2期生達がスムーズにスタートを切り、ランさんは4000人~6000人を常時ソロ配信で集める存在となったが、意外にもオルカさんがずっと同接3000人を下回らない。カレンさんは順調にソロで同時接続数が降下しているのに対し、オルカさんは2D3Dに自分で営業に行き、コラボ企画を多く実施しているからだ。

 

どうやらニコニコ動画で絡みのあった人が結構な数2D3Dに行っているようで、その縁を頼っているのだろう。悪いことではなく、同接が維持出来ているのは本人に力量のある証拠だろう。実際トークが上手いし何より雑談が面白い。

 

一方で天命箱で一番同接が少ないのはグレーデルさんだけど、それでも200人はいるから最低限の人は残った。切り抜き動画も一応上がるので視聴者に恵まれている形だろう。まあ2D3Dでも下位のライバーは同接3桁どころか2桁も珍しくないことなので無問題。

 

そして玉手箱から連絡が来て、11月1日の21時から玉手箱の華山さんと自分がコラボする形でARKをプレイすることに。今回は簡単にゲームの説明と、それぞれの鯖の設定を紹介することになる。

 

配信の内容に関する打ち合わせ等は特になく、ゲーム中に困ったら死んだら良いですわの一言でコラボ配信をしようとする辺り、ガチアドリブ勢は頭おかしいわ。当然ながらコラボ配信ということで注目を集め、話題にもなるが今回のコラボ配信は華山さんの方のチャンネルで行うからこっちの旨味は少ない。

 

コラボ配信の時、どちらのチャンネルで実施するかは揉める原因となりやすいそうだ。自分のチャンネルでコラボをするか、相手のチャンネルでコラボをするかでチャンネル登録の増加数が明らかに違う。今回は完全に華山さんの方が格上だし、どちらかと言えば自分が教えを乞う立場だから文句はないが、これが同格だと確かに揉めるだろうな。

 

まあ先のことだし、今は目先の問題に対処しよう。エーラさんが真面目に歌の練習をしてくれるのは良いんだけど、そのせいで喉を傷めたようで病院に行かせたら声帯が弱いとか何とか。これ1期生達は上手く行かない呪いにでもかかっているのかと勘繰りたくなるな。

 

というわけでエーラさんの3曲目『ルクス』は当分お蔵入りが決定。1期生トップバッターで期待が大きかっただけに、玉手箱の鶴見 鈴(つるみ すず)さんや2D3Dの美月ノトさん、アルチライブの白狼(はくろう)フミさんのようにはどう足掻いてもなれなさそうな現実が辛い。

 

今後天命箱が大きくなるにつれて、エーラさんの負担はますます増えるだろう。そしてチャンネル登録数がまだ2万3千人という状況、喉が弱く、長時間配信が負担になる点。そもそも歌が上手くなければトークも上手くないことまで考えるとVtuberとして間違いなくやってはいけない行為No1の魂入れ替えすら視野に入って来る。

 

……視野には入る。うん。でもまあ、ここで魂を入れ替えることなんて出来ないし、自分はしたくない。自分がエーラさんを選んだ最大の理由はその人柄だ。人生常に崖っぷち。ずっと上手く行かずに頼れる人すらいなかったエーラさんが、最後に縋ったのが自分だ。あのメンタル弱弱っぷりを見ているとここで見捨てられたら母親と一緒に無理心中するんじゃないかとすら思うわ。

 

初対面の時には滅茶苦茶壁を作るのに、一度知り合ったら今度は見捨てられないように必死に尻尾を振って真面目さをアピールする。真面目さなんて他にアピールするものがない人が最後にアピールするものだが、実際エーラさんは真面目さ以外にアピールする点なんて無かった。世の中は無情だ。

 

だから自分はエーラ(シンデレラ)と名付けたし、個人的には好きなアーティストの曲を押し付けた。喉を傷めて、配信が出来ないなら今は配信者としての勉強チャンスだ。常にイメトレをするように言って、絶対に無理はしないよう言い聞かせる。

 

……4曲目には『誰も知らない物語』を用意。感動路線はぶっちゃけ嫌いだが、今のエーラさんが駆け上がれる最短ルートを構築する。いややっぱり元から有名なランさんや実力あるオルカさんをプロデュースするより、エーラさんのような存在をプロデュースする方が楽しいな。

 

「というわけでエーラさんに関しては感動復活路線でバズって貰います。配信はしばらく休んでいてください」

「いやあの……人の人生でゲームしないで貰えます……?」

「人生はゲームのように楽しむものですよ?」

 

エーラさんは一旦療養して貰って、体力ゲージが回復して疲労ゲージと喉ゲージが全快になったら『誰も知らない物語』の方でバズって貰おう。そこまでにヘンデルさんとグレーデルさんをごり押しして、エーラさんは天命箱での最下位にしておこう。

 

2期生はカレンさんにテコ入れしつつ、ARKの方で人気になって貰おうかな。2期生達はソロでもARKを結構楽しめてるみたいだし、マルチなら良い感じに協力できるはず。……まあARKで玉手箱と一緒にこけたらどうしようもないけど、あの箱は未来知ってるなら100%こけないから大丈夫でしょ。



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第15話 初コラボ

藤堂立冬の初コラボ相手は先日チャンネル登録数が60万人を突破した玉手箱の社長系Vtuber、華山亜季だ。こちらもチャンネル登録数が30万人を突破したとはいえ、相手はVtuber界の大先輩だし下手なことしたら自分が炎上するとかめっちゃ怖い。

 

「皆様こんばんは。お久しぶりですわ。今日は今後玉手箱サーバーが出来るアークについて解説しながら、天命箱の藤堂立冬さんとコラボ配信ですわ」

「初めまして、で良いのかな。天命箱の藤堂立冬です。作曲家系Vtuberやってます」

 

コメント:こんばんは~

コメント:1週間ぶり!

コメント:あれ?音声入ってる?

コメント:口パクしかしてない

コメント:wwwwwwwwwwwww

コメント:やらかしてるよ姫!

コメント:無音声助かる

コメント:ミュート芸?

コメント:黙ったら美少女説

コメント:ミュートやで

 

そして1分間ほどミュート芸をやらかす華山さん。当然わざとだがその後の言い訳を聞いていると仕込みだと分かっているのにマジでやらかしたように見えるからこの人は不思議だ。

 

「申し訳ありませんわ……。では改めまして、今日は今後玉手箱サーバーが出来るアークについて解説しながら、天命箱の藤堂立冬さんとコラボ配信ですわ」

「初めまして。天命箱の藤堂立冬です。作曲家兼社長兼Vtuberです」

 

ミュート中に、自己紹介について社長ということを前面に出した方が良いですわよと華山さんに言われたので挨拶を少し修正。本番で練習して指導が入るとか意味不明な光景ではあるな。ついでにコラボでミュート芸をやらかし、藤堂立冬から華山亜季への敷居を低くした辺り配慮の塊である。

 

基本的には初心者の自分に華山さんが教えるという形なんだけど、この人めっちゃゲーム上手い。チート疑われてFPS系の大会で出禁になるVtuberって何?

 

同接は基本1万人から1万3000人と、まあ人は多いしコメントの流れは速い。案外トークは続くし、何故か男女コラボなのに予想していた男女コラボ反対勢は湧かない。元の世界とかなり差異はあるし、結構Vtuber界のノリが違うのかもしれないな。

 

「経験値は5倍入るようにしていますわ」

「……あれこれ0.2であってるんです?5倍なら5だと思いますよ?」

「……やばかったら後で変えておきますわ」

 

ゲームの設定数値を垂れ流しながら解説タイムに入るけど、英語は読めるようで読めないな。ところどころ質問するだけで基本は華山さんが喋ってくれるのは楽。まあ華山さんもこれはかなり台本を用意してそうな配信の仕方だけど。明らかにメモを見ている時間がある。

 

ただ、それが許されているVtuberってのも凄いな。台本を用意していても、流石に配信歴が長いから咄嗟のアドリブにも強いし、自ら墓穴掘るムーブは見習うべきだろう。

 

というか玉手箱の設定値、テイム時間1/200は思い切りが良すぎる。完全に配信向けに振り切っているし、これはライバー達への負荷を極力減らしに行ってる形か。雑談しながら解説するとのことなので、時々雑談のネタは振る。

 

「ところで次の曲の発注いつになりそうです?」

「A子が止めてなければ来月までに300曲ぐらい用意して貰いたかったですわね。

まあ来月までに3曲はお願いしたいですわ。詳細は後でメールを送りますわ」

「はーい」

 

コメント:ただの商談で草

コメント:1曲100万円の歌

コメント:A子さんはよく止めた

コメント:来月までに300曲wwwwww

コメント《10000円》:オリジナルソング代

コメント《2000円》:3曲新曲!?

コメント:誰の曲だろう……?

コメント:鬼発注

コメント《500円》:いつも見てます!初スパチャです!

コメント:社長同士で話を進めて後で下の胃が痛くなるやーつ

 

基本的に、新情報を出せば出すほど視聴者は盛り上がる。新曲をまた3曲発注するということは、人気投票の上位3人には全員新曲渡せるということか?それとも華山さん自身の持ち歌とかにするつもりかな?

 

何はともあれ、最大同接16017人の配信は大きな事故なく終わった。いや初手で事故を起こしてくれたお蔭で死にまくる部分とかは大した事故じゃなかったわ。しかし徐々に配信者としての適性がないことに気付かれているようで、配信回数は減らす方向で行くようにする。

 

そして案の定、コラボ配信が終わった直後には華山さんから華山さん用の歌を3曲作れと発注が来たので元々用意していた『聖戦』『share the paradise』『BLUE BIRD WATER』の3曲を提出。なお向こうは曲名を見た瞬間に噴き出したので意味は伝わっている模様。

 

ちなみに全部エロゲのOPである。エロゲソングはそこまで詳しくないが、流石に有名な曲ぐらいは知っている。藤堂立冬の元ネタもエロゲだしな。しかしここら辺の曲を知っているとなると、普通の女ではあり得ない。よっぽど元の世界ではアレな人だったのだろう。

 

特に『ぬきさし3』のOPである『BLUE BIRD WATER』はエロゲソングとは思えないので、それを見て吹いたということは十中八九同志である。企業間で対立するようなことになったとしても、個人的には仲良くしたいかな。



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第15.5話 掲示板回③

【藤堂立冬初コラボ】デス箱アンチスレ part218【ワンマンアーミー】

 

157:774さん@お腹いっぱい

ARKは野良でマルチ行ったら監禁された記憶ががが

 

162:774さん@お腹いっぱい

玉手箱がステルス運営してそう

 

163:774さん@お腹いっぱい

面白そう

 

165:774さん@お腹いっぱい

>>163

面白いから買え

 

169:774さん@お腹いっぱい

今後はARK配信で一色になりそうだな

 

171:774さん@お腹いっぱい

ないっすううう

 

174:774さん@お腹いっぱい

捕獲ですわ!

 

175:774さん@お腹いっぱい

キマシタワー

 

177:774さん@お腹いっぱい

テイムした本人が1番驚いていて草

 

178:774さん@お腹いっぱい

22時からつるみんのところかー2窓やな

 

179:774さん@お腹いっぱい

姫「誰かとゲームやるの久しぶりですわ!」

 

182:774さん@お腹いっぱい

>>179

姫……

 

183:774さん@お腹いっぱい

ガチ社長系Vtuberがお仕事で忙殺されとる

はよ人増やせ

 

186:774さん@お腹いっぱい

このゲームなにこれ?

トカゲ追い回すゲーム?

 

191:774さん@お腹いっぱい

BGMええな

 

193:774さん@お腹いっぱい

藤堂の配信全くワクワクせんわ

基本及び腰やし

 

196:774さん@お腹いっぱい

正直配信者としては微妙だけどそれは姫もだからな

 

198:774さん@お腹いっぱい

金曜の夜に見るものないのヤバい

 

200:774さん@お腹いっぱい

>>198

玉手箱リスナーなら姫の配信最優先だよなぁ!?

 

201:774さん@お腹いっぱい

藤堂の声って普通にSRはあると思ってるの俺だけなんか?

 

206:774さん@お腹いっぱい

>>201

声質ええけど自分に酔いしれるあまりぶりっこしすぎててキツイ

正直歌が無かったら男Vの中でも下位

 

208:774さん@お腹いっぱい

>>206

ぶってナンボだろvなんて

素人とか要らねえんだよ

 

210:774さん@お腹いっぱい

>>206

だがらこそいいんじゃないのか?

性格とガワが合ってる

 

211:玉手箱最強

>>208

上手にやれって事だよ

 

215:774さん@お腹いっぱい

あんま声で嫌うってないと思うけどな

昔から男向けの萌えアニメとか見てる女オタクって少なくないし

 

219:774さん@お腹いっぱい

藤堂の声割と好きだけど配信を見ようとは思わない

なぜだろうか

 

220:774さん@お腹いっぱい

>>219

相手を楽しませる話し方じゃないんだよな

レス乞食みたいな質問して盛り上がってる空気作っとけばいいと思ってる節ある

 

221:774さん@お腹いっぱい

>>219

面白くないから、以外にある?

声だけ良いならもう歌だけでええやろ

 

224:774さん@お腹いっぱい

まんさん多くないここ?何で藤堂が擁護されてるんだ

 

226:774さん@お腹いっぱい

ぼくのきらいなおとこライバーはたたいてくれないー!

まんさんスレなんだー!あきらめるしかないんだー!うわーん!

きっつ

 

 

 

【Vtuberの作曲家】デス箱総合スレpart287【ARKコラボ】

 

1:774さん@お腹いっぱい

・リンク

デス箱公式HP→http://tenmei~~~

デス箱公式チャンネル→http://youtube.com/~~~~

デス箱公式Twitter→https://twitter.com/~~~~

 

・関連スレ

【Vtuber】玉手箱総合スレpart9856【藤堂コラボ】

【独裁社長系Vtuber】華山亜季アンチスレpart2914【オワコン3周年】

 

・前スレ

【Vtuber】デス箱総合スレpart286【ARKコラボ】

 

2:774さん@お腹いっぱい

>>1乙

帰るの遅くなって最初の20分位見れてないんだけどどんな感じだった?

 

3:774さん@お腹いっぱい

>>2

お見合いみたいな空気が流れてた

 

4:774さん@お腹いっぱい

>>2

仕事デッキしかない者同士の手探りコラボ

初々しくて良き

 

5:774さん@お腹いっぱい

一般Vもそうだけど読みにくい名前にするメリットないよな

2人とも初見だと読み間違える……か?

 

6:774さん@お腹いっぱい

何でそれぞれの鯖ルールが違うんだろう?

 

7:774さん@お腹いっぱい

玉手箱入手経験値2割とかガッチガチの設定になってて草

 

8:774さん@お腹いっぱい

やったああああああああああああああ

 

9:774さん@お腹いっぱい

テイムは準備が10割

 

10:774さん@お腹いっぱい

これ2人とも経験者の動きだな

 

11:774さん@お腹いっぱい

事前にある程度はやってるのに何で死にまくっているんだ

 




すいませんが続きを書く気が起きなくなったので次話に準備していた最終話だけ投げて次の話を書きます。誠に申し訳ございません。


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最終話 自力

Vtuber活動を開始してから3年。今までに出した楽曲は合計で1289曲。平均ペースで考えると1日1曲以上のペースで作曲し続けていることになるのか。しかしもう限界だった。もうこれ以上は曲を思い出せないし、ワンフレーズのサビすら思い出せない。

 

いつか迎える終焉。こうなることは理解していたが、止めることは出来なかった。予想以上にちやほやされたし、Vtuber史上初の2000万チャンネル登録数は、今後超えるVtuberが出て来るのか怪しいレベルである。

 

……最後に、元の世界で自分が一から作詞作曲をした曲を投稿する。曲名は『世界より』という、格好つけすぎていて自分でも羞恥心が込み上げて来るレベルの曲名だ。今までに出して来た曲より、明らかにレベルは低いだろう。何せ元の世界では動画再生数11、コメント数1。唯一ついたコメントの中身は「駄作。才能無いよ」の一言。あれ以降、自分がオリジナル曲を投稿することはなかった。

 

しかし今は、2000万を超えるチャンネル登録数を誇るのだ。もしかしたら、少しでも良い反応が貰えるかもしれない。思い入れのある処女作に対して、ちょっと気に入らない部分を修正して投稿すると、今まで通りのペースで再生回数は伸びた。むしろ最近は少し再生回数の伸びのペースが落ち気味だったけど、投稿後2時間で100万再生は久しぶりのハイペース。

 

……修正部分は、歌詞のワンフレーズを変えただけ。曲調は弄ってないし、ほとんど弄ってないと言っても良いだろう。それなのにコメント欄では賛美する声が続き、駄作というコメントは見られない。ということは、結局のところ神曲か否かは出す人の肩書きにも左右されるのだろう。

 

もしも元の世界でも初めてついたコメントがもう少しマシなものなら、2曲目を作っていたかもしれない。そうなっていれば、元の世界でも随分と人生は変わっていたのかもな。

 

この程度のオリジナルソングであれば、この後ごまんと出せる。それならば、元からアニソンやボカロ曲に頼る必要はなかったかもしれない。この『世界より』ぐらいのレベルなら1日2曲も可能だ。これはこのまま、1日1曲のペースを守って活動は継続出来そうだな。

 

YouTuberとしてのチャンネル登録数も、日本人で1位となった。それなら今度は、世界一でも目指すか。歌の力があれば、ここから駆け上がるのも難しくないかもしれない。そう思いながら、次の曲を作り始めた。

 

 

 

 

 

玉手箱社長の華山亜季は、藤堂立冬が完全にオリジナルな曲を作ったと本人から聞き、今更かと思った。

 

そもそも、曲を丸々一曲覚えるというのはそれなりに時間を要する。だから華山が藤堂へ15曲纏めて依頼し、納品された曲を聴いた時、既に藤堂が曲を全て覚えていないことに気付いていた。一部のフレーズや曲調が、元の曲とは全く違ったからだ。しかし曲の完成度は、元の曲よりも高かったと華山はその時に思った。

 

同じオタク趣味でも、範囲が違えば詳しいジャンルも違う。見ていないアニメのアニソンなど、聞きもしないだろう。逆に詳しくプレイしているゲームのBGMなら、簡単に口ずさむことが出来る。

 

藤堂が出した15曲は、藤堂自身そこまで熱心にプレイしていない音ゲーからの曲だった。一方の華山は、かなり熱心にやり込んでいる音ゲーだった。よって必然的に、藤堂の記憶があやふやな部分は自力で何とかしていることに気付いていた。

 

やがてそれは、サビからだけのオリジナルソング作成に変化し、やがてCMなどで聞いたワンフレーズからのオリジナルソング作成に変わった。

 

元から作曲の才能はあったのだろう。そしてレベルの高い曲をひたすらに再現しようと、高い密度で作曲し続けた結果、一瞬思い浮かぶ短いメロディから5分の曲を作る力を藤堂は手に入れた。

 

今後、藤堂は作曲家兼Vtuberとして活動を続けることとなる。その供給先である天命箱の所属ライバーは藤堂の活動の恩恵を最大に受け、所属ライバーは全員1人10曲以上の持ち歌がある状態となり、箱の総再生回数はトップを独走。特にライブで強い箱となり、日本の音楽界を席巻した。




誠に申し訳ございませんが「Vtuber界を駆け上がりたい」はこれにて完結とします。これまでたくさんのお気に入り登録や評価、感想をありがとうございました。


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