飛行機がない?絶対におかしいよな!? (素人目)
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物足りない空
おかしな世界


書いてしまった……


 

転生しました。

 

いや、なにをふざけた事をって思わないでほしい。確かにありえない。目の前にそんなことを言うやつが居たら、優しい目を向ける程度にはイカれたことだ。

 

だが事実だ。真実だ。今でも狂っていると思う。世界か、頭の方かはわからない。脳みその方であって欲しくはないな。

 

まあ、今まで何人とは数えられないほど、人間が死んでいるのは確かだ。一人ぐらい輪廻の輪がバグっても仕方がないのかもしれない。

 

 

幼い頃から違和感はあった。脳裏に浮かぶ、懐かしさを感じる情景。年齢不相応な、妙に成熟した精神。誰も知らないはずの知識。

 

何気なく空を見上げていたとき、飛行機雲が見当たらないことが不思議に思えた。そんなもの、あるはずがないのにだ。

 

そこから断片的な記憶が繋がり、すべて思い出した。

 

 

 

前世があったこと。

 

今の世界は前とは違うこと。

 

……この世界には飛行機がないこと。

 

 

 

この世界には、航空機が存在しなかったのだ。正確には、水素やヘリウムなどを使った、軽航空機しかないと言うべきか。

 

自分は、飛行機好きだった。いや、思い出した以上、今でもと言うべきだ。

前世では、航空関連の仕事にこそ着かなかった。しかし 、自分なりに調べて、オリジナルの飛行機を夢想する程度には好きだった。

 

 

この世界には飛行機がない。ならば自分が作って見せよう。自分がこの世界のライト兄弟になってやるんだ!

 

 

…… と、昨日まで考えてました。

 

『ブルーマーメイドの切り札、07式垂直発射噴進魚雷の実力に迫る!』

 

ネットニュースを見て、頭にハテナマークが浮かんだ。

 

ーーーー噴進魚雷って要はロケットだよな?ロケットがあるのに、なんで人を乗せていないんだ!?

一人ぐらいいるだろ!「ロケットに乗って空を飛んでやったぜw」 とか考える、頭のいいバカは!!

 

技術はある、手段も少ないながらある。なのにだ。未だに空を飛ぶ手段が気球か飛行船しかない。

 

 

これ、おかしいよな?

 

人は未知に憧れるものだ。なのに身近かつ壮大な未知であるはずの空に向かおうとする人が、あまりにも少なすぎる。まあ、確かにロケットのみで空を飛ぶのはリスキーだが、それでも疑問だ。

 

鳥という実例があるにも関わらず、なぜ誰も翼で空に向かおうとしない?

 

 

ライト兄弟が飛行機を作らなかったからか?

いや、違うだろう。

 

航空機関係でライト兄弟は重要と言うのに異論はない。しかし、必須の人物というわけでもない。

 

ライト兄弟の初飛行の3年後には、技術的な交流のなかったアルベルト・サントス-デュモンがヨーロッパでの初飛行を果たしたし、電話で有名なベル博士だって飛行機を飛ばしていた。

 

ライト兄弟がいようがいまいが、誰かは飛行機を作っているはずなのだ。

 

 

なのにない。飛んでいるのは気球や飛行船ばかり。

 

 

もはや、すべて偶然だと考える方が不自然だろう。

 

絶対にいるはずなのだ。

100年単位で組織だち、航空機の発達を邪魔するなにかが。

 

 

 

 

……………さて、どうしようか。

 

 

現に飛行機は存在しない。相手は諜報においてかなり優秀なのだろう。そして実行力もあるのだろう。妨害するなり暗殺するなりしなければ、今頃は飛行機が飛んでいるだろうから。

その能力を別なところに活かして欲しかった。100年以上もこんなことしなくていいのに。

 

 

問題は1つだ。

 

 

飛行機を飛ばしたい。

この夢に、命をかける価値はあるだろうか?

 

相手は実績がある組織だ。ただの個人を事故死させるぐらいは出来るはずだ。

 

狙われる危険を背負ってまで、飛行機を飛ばしたいか?

 

 

 

 

 

 

 

育ててくれた親には悪いが、覚悟は決まっている。

 




07式垂直発射噴進魚雷は適当です。

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現実は非情なり

やる気だけでどうにかなって欲しかったです。


 

覚悟、やる気はとても良いものだ。少なくとも、これらが無ければ始まるものも始まらない。

だが、気持ちだけで何とかなるとは言っていない。

 

 

「ただの高校生に何ができるっ!?」

 

「お前は何を言っているんだ?ほら野辺、とっとと問3の答えを教えろ。」

 

 

せめて大学生ならば、航空機の研究もなんとか成っただろうに。クラスメイトにノートを見せながら回想する。

 

野辺拓人は、2周目の高校生活をロールプレイ中だ。つい先日、前世の記憶が戻ったは良いが、自分の立場が高校生だったことには少し絶望した。

時たま、「高校生活に戻りたい」なんてことは聞く。今の状況は正しくそれに近くはあるが、自分は嬉しくない。むしろ嫌気がさす。

 

 

高校生なんて社会的弱者、大したことできないじゃないかっ!?

 

考えてみろ、金がない。自由時間も少ない。これでどうやって飛行機をつくれと?

周りの協力も仰げない。無駄としか思えない事を飽きずに続けている組織に情報が漏れたらどうする?自分は暗殺されとうないっ!

 

大人になるまで我慢しろ?できるかそんなの!自分は今から飛行機に関わりたいんだ!

 

 

………何だか幼稚な性格になってしまった。精神的にはもうじき100歳に成ろうというのに。これでは100年分の記憶を持った青二才ではないか。肉体に精神が引っ張られているのだろうか?

 

まあ、三つ子の魂百までというし、というより前世からこういったことへの我慢は効かなかった。歳をとって落ち着いたのは、ただ気力が尽きただけなのだろう。

 

つまり自分は、一生涯を使い切っても大して成長しなかった人間ということにーーーーー

 

 

「おい野辺っ」

 

「へ?」

 

「他のやつ、もう帰ってるぞ?なにボーッとしてるんだよ」

 

「あ、ああ。」

 

「電気消すの頼むぞ。あとノートどうもなっ」

 

 

階段を駆け下りる音が聞こえた。見れば、もう教室には誰も居ない。遠くからかすかに運動部の掛け声が聞こえてくるのが、ここに誰も居ないことを際立たせていた。

 

 

よし、とっとと撤収するか。

 

 

速やかに荷物をまとめる。ただでさえ少なすぎる時間だ。これ以上減らしたくはない。

 

 

*****

 

高校生は大人に比べて、出来ることは少ない。だが、何も出来ないわけではない。足りぬ足りぬは工夫が足りぬということだ。負けフラグには目をつむる。

 

前世では、とある工業高校が数年掛けて飛行機を作りあげた実例があるが、あれは例外中の例外なので置いておく。高校生では、人が乗る航空機は到底作れない。

 

 

だが、ラジコン飛行機のレベルならどうだろうか?

 

それなら技術的な難易度は格段に下がるし、製作費用もたかが知れている。アルバイトでどうにかなる。

 

要は、ガスの類を使わなくても空を飛べることを実証すればいいのだ。なら、ラジコン飛行機で十分だろう。

 

もちろん、かの忌々しい組織にばれたら困るので、飛行機の製作は他の人には極力バレないようにする。

ついでに、航空関連の情報を書き残す場合は、暗号を使う。暗号と言っても、ローマ字に対応するアルファベットや数字の順番をバラバラにしただけの簡単な暗号だが、ないよりはマシだろう。一応、可能な限りの単語は符号化しておく。

 

 

………というか、飛行機嫌いの組織はふざけているのか?

何が何でも飛行機を作られたくないのか、インターネットを探しても、紙飛行機はおろか、竹とんぼなどのおもちゃレベルの情報まで消えている。やりすぎだろう。とことん人間を空から遠ざけたいらしい。

 

 

ふざけた組織に向ける、あらん限りの悪口を考えながら暗号をかく。慣れないためか、ペンの進みは遅々としたものだ。しかし、今は頭の柔らかい高校生だ。一月もすれば、普通の文書を書くのとそう変わらなくなるだろう。

そして、情報を纏めていると、あることに気が付く。

 

 

数式、全く覚えていない件について。

 

 

いや、理屈はなんとなく覚えているんだ。ただ、計算に必要な公式がわからないということだけなんだ。完全に戦犯だな!

 

この辺り、今まで完全に資料だよりだったのが裏目に出た。

 

 

 

これは、綿密な実験が必要だな……

 

 

 




アルファベットをバラバラにしただけの暗号、いくら符号化しようが解こうとすればすぐに解けそうな気がする。

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母は鋭い

遅くなりました。


 

最近、息子がなにか始めた。

 

内容はよくわからない。だけど、部屋に引きこもりがちになって、ふとした時に何かを考え込むようになったのは確かだ。

しかも、アルバイトまで始めた。この前、お金稼ぎたいからと、口座開設の許可をお願いされたときは驚いたものだ。

 

息子は変わった子だ。

幼い頃からそうだった。やるべきことはしっかりこなすが、どこか無気力に思えたのだ。夫は、生きがいを無くした社会人と評していた。実の子にそれはひどくないだろうか?

 

そんな息子が、自主的に何かを始めた。

 

夫は、ゲームにでもハマっているんじゃないかと言った。

納得した。確かに高校生ならおかしくない。今まで何事にも無関心だった息子にも、ようやく興味をそそられるものが出来たのだと喜んだ。ただ、課金には気を付けてほしい。

 

しかし、息子がホームセンターで買ってきたものを見て、首を傾げた。

私も夫も、ゲームには詳しいとは言えないものの、細い木の棒やノコギリ、プラスチックの板なんかをゲームに使うとは到底思えない。

ゲームじゃなくて、工作に興味があるのだろうか?

 

思い切って聞いてみる。

 

 

「拓人、これ何に使うの?」

 

「ああ、こいつらで船でも作ろうと思ってな。」

 

「……ふね?」

 

「と言っても、ただのラジコンだよ。動画で見てね、せっかくだから自分でも作って見ようかと思ったんだ。」

 

 

そう言って、そそくさと部屋に行った。

 

息子が工作に興味があったなんて知らなかった。あまり良くない考えかも知れないけど、ゲームじゃなくて良かったと思った。課金の繰り返しで、多額のお金がなくなってしまうのは不運な事だろう。

いや、工作のほうがお金がかかる気がする。まあ拓人は、昔から計画的に物事をこなしていたし、アルバイトも始めた。上手くやるだろう。

 

 

だからこそ、違和感を感じた。

 

夫は酒好きで、極たまにではあるが、内緒で馬鹿高いワインを買うことがある。そして、その時は決まって顔が少しこわばっていたりするが………

 

息子に後ろめたいことは無いはずなのに、その顔に少し似て見えたのは、なぜだろうか?

 

 

*****

 

やはり時期尚早だろうか?一人暮らしするまで待つべきだったか?

 

親の目から隠すのは難しい。聞かれたときはヒヤリとした。事前に言い訳を考えていなかったら危なかった。

 

現状、飛行機作りは誰にもバレていないと思う。何だったら、空に興味があることすら知られてないだろう。なぜなら、空に関することの一切を、インターネットで調べていないからだ。

この世界にも、飛行船やロケットが存在する以上、航空力学は存在するはずだ。

しかし、わけの分からん組織の存在を否定出来ない以上、検索することでこちらの存在が露呈するのは避けたい。本当にそんな組織がいるかも確証が取れないが、用心に越したことはない。

 

あと、調べたら負けた気がする。だから嫌だ。

 

 

 

駄目押しとばかりに、カバーストーリーも用意した。

 

おかげで船まで作るハメになったことには目をつむる。

 

…… いっそのこと、水上機にしてみよう。フロートを分散させてやれば、離水ならともかく、着水するのは難しくない。はじめは手で投げ飛ばせばいいだけだ。

 

 

ひとまず、機体のラフ図をかく。

作るのは3hcラダー機だ。

機構は船のラジコンのを調整して使う。通信関係までいちいち作ってられない。

 

機体は、細い角材を、伸びない釣り糸(PEライン)で補強して胴体を作る。バッテリーなどの重量物を可能な限り下に配置して、重心を下げる。配置場所も調整できるようにしよう。

翼はプラダンを湾曲させて作る。長方形のプラダンに、等間隔でリブ(という名の翼型に合わせてカットした角材)を縛り付けるだけ。

湾曲させることで強度を持たせる。この方法だと厚みのない薄翼しか作れないがいいだろう。このサイズならこれ以上の構造材はいらないだろうし。

 

飛行性能を競うならともかく、ただ飛ばすだけなら、これで十分だ。

 

 

基本的な骨子は固まった。

後はサイズと翼型を決めるための風洞実験と、プロペラの製作だ。あと、機体を飛ばす場所を探さなければいけばい。

 

 

わかっていた事だが、何気に大変な作業ばかりだな。




自分は、模型グライダーは作ったことはあります。しかし、動力付きは作ったことはありません。
おかしな箇所があっても、生暖かい目で見てください。

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インターネットの恐ろしさ

非常に遅くなりました。


とある日、複数のアダルトサイトに同じ動画があげられた。

 

その動画は、性欲を刺激するような描写は一切含まれていない。何気なくこの動画を見た人は、おそらく困惑しただろう。

 

大きさ、80cm程の簡素なもの。

多少の工作が出来ればだれでも簡単に作れる、''翼で''飛ぶ飛行機械のプロモーションビデオだ。

 

 

 

人類が初めて空を飛んだのは、写真がない頃まで遡れる。

しかし、鳥類という身近な存在がいるにも関わらず、この世界で人類が飛ばしたものは、熱い空気で昇る気球や、水素やヘリウムで浮かぶ飛行船、後はごくわずかのロケットぐらいだ。

 

人が鳥のように飛ぶことはついぞ叶わなかった。

 

 

そんな状況が、一変した。

 

どこか有名な大学や研究所の発表ではなく、たった一本の動画によってだ。しかも簡単な理論の解説付き。人が翼で飛ぶ実現性が出てきたのだ。

 

しばらくして、この動画は「当サイトの目的にそぐわないもの」として削除された。

 

しかし、電子の海にさらされた動画の抹消は不可能だ。

 

 

多方面に多大な影響を与える情報は、確実に拡散していった。

 

 

*****

 

中古で買ったパソコンを捨てて、ひとまずの安心を得る。

 

翼で空は飛べるという実証は、上手く行ったと言えるだろう。

 

自分は、完成させた模型飛行機の設計図とデータをインターネットで拡散した。英語版も拡散したから、既存のネットワークを完全に破壊しない限り、飛行機の存在は永遠に残り続けるだろう。

 

 

一年近く時間がかかってしまったのはご愛嬌だ。本当に大変だった。

何せ、まともな既製品が一つもなかったからだ。船のラジコンの操縦系統は改造しないと使えなかったし、飛行船のラジコンからプロペラを回収できないかと思ったが飛行船のラジコンが存在しない始末(結局手作り)。プラスで親にはばれないようにだ。大変という言葉も足りないよホント。

 

 

飛行は人里から見えない湾で行った。この世界の日本は、地下資源のとりすぎで大規模な地盤沈下を起こしている。

 

果てし無くふざけた事だとは思うが、その思いは脇に置いておく。重要なのは、もともと谷だったところが水没して、数え切れない数の湾が出来ていることだ。峠を1つ越えれば、人目つかない所を見つけるのは容易い。

 

…………これ、犯罪組織の温床になり得るのでは?

 

まあ、そんなこんなで飛行を終えた。

その後は、湾の片隅に模型飛行機を隠し、撮影した映像や設計図を動画として編集して、中古品のパソコンにTorやら仮想マシンとやらを入れてから、匿名性の高いアダルトサイトにアップしたという顛末だ。そして、使った中古パソコンも今捨てた。

 

これで、あの忌々しい組織の鼻をあかせただろう。

そう、飛行機の発達を妨害していると思われる謎の組織だ。現代になっても飛行機が開発されてないことを考えるに、絶対に実在する組織だ。

未だに影すら見えないのは残念だが、今回ばかりはこちらの勝ちだ。こちらが見えないように策は弄したし、証拠も今捨てた。暗殺したくても出来ないし、情報がばら撒かれた今、個人の暗殺だけでは無意味だ。

 

完全勝利と言えるだろう!

 

では、もっと情報を拡散しよう。

 

 

 

スレタイ:アダルトサイトで世界ひっくり返す情報を見つけたw

 

 

 

まあ、気休めだが良いだろう。

 

 

*****

 

 

「……で、どうだ?」

 

「ダメです。あっちこっちで拡散されています。大本は消しましたが意味はありませんね。」

 

後ろでため息が聞こえる。ため息を吐きたいのはこちらの方だ。後でネチネチ遠まわしなお叱りを受けると思えば気が滅入る。

あんな情報をまさかエロ動画のサイトに乗せるなんて誰も思いはしないだろう。おかげで対処が遅れに遅れ、今や止める手段はない。

 

「こちらの脅威になり得ると思うか?」

 

「なると思います。動画でも、『いずれ飛行船にとって変わるだろう』と紹介されてますし、おもちゃレベルとはいえ飛んだ以上は、いずれ人が乗るようになるでしょう。」

 

気球も元は紙風船だったのだ。このおもちゃもいずれは化けるだろう。

そう伝えると、我が上司サマは考え込んだようだ。さて、次はどんな命令がくるのだか。

 

「動画の拡散は可能な限り妨害しろ。そして同時にーーーーー」

 

 

はい、サービス残業決定です。




アダルトサイトのくだりは、FGC9の登場を参考にしました。
まあ、想像に妄想をかけたので、間違っているとは思います。

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先人

遅くなりました。
なお時間の割に短い模様。


こりゃ駄目だ。

ちっとも飛行機の話題が上がらない。

 

いや、確実に例の動画は拡散したはずなのだ。実際、新たなる中古パソコンで少し探したら確認できた。つまり、探さなければ見れないのだ。はてまた、見つけたページすらも再読み込みがきかなくなっていく。

トップニュースとかに上がる気配が微塵もない。

 

完全に、あの頭のイカれた組織の妨害ですね………

 

完全勝利と思いきや、まんまとやられたようだ。

一年も掛けたのに!

 

いくら拡散しようが潰される。そりゃ飛行機なんて流行りませんわ。最初は盛り上がり掛けたと思ったのに、今や知る人ぞ知る情報になってしまった。

まあ、あんなサイトにアップしたから、当たり前といえば当たり前なんだがな。匿名性向上のためとはいえ、やりすぎたかもしれない。

 

 

 

てか、もう個人では限界が来ている。というより家の自室でやるのは限界と言うべきか。

 

現世の親父と母さんは、工作のことなんてからっきしだった。だから飛行機作りを船作りと誤魔化せた。しかし、工作を自分が始めたことに興味を持ったのか、自分たちで船の模型を作り始めたのだ。しかも結構うまい。工作が最近の話の種になっているのだ。

そのおかげで船以外も作っていたことがバレそうになった。多分、またなにか作り始めたら、速攻でバレる。

 

いい親に恵まれたと思う。正直うれしい。だが今回ばかりは自重して欲しかった……

 

もう協力を仰ぐしかない。

丁度いい人なら目星をつけているのだ。

 

 

 

*****

 

 

インターネットや電子メールが普及した現代において、知らない個人から手紙が届くことは、滅多にないだろう。

 

 

 

謹啓

突然お手紙を差し上げる失礼をお許し下さい。以前より鳥類学者の三倉先生のご高名はーーーーーーー

 

 

………生物学者ではなく、鳥類学者と来たか。

 

生物学者の間では、昔から噂というか、暗黙のルールというか、とにかく何故か分からない事が囁かれている。

 

 

『むやみに鳥には手を出すな』

 

鳥類や羽の生えた虫を研究しようとすると、何故か予算が下りなくなるのだ。

更には大学や研究所から圧力が加わって、いつの間に立場が不安定になってくる。慌てて撤回しようも、しばらくは冷たく振る舞われるのだ。

 

それを知ってか知らずか、俺を鳥類学者とよぶとは。

 

 

昔からの憧れだった

昔、カモメに夢中になった。空を鳴きながら舞う姿に、魅了された。何故かはわからないが、とても『イイ』と感じたのだ。

 

以後、カモメを知るために学者になった。先輩の声を振り切り、カモメの研究を始めた。別の研究の片手間に自費でやり、書き上げた論文を発表した。

 

その後のことは、あまり思い出したくない。

まあ、そのせいで大学や研究所を転々とした。今思えば、研究職をやめなかったのは意地だったのだろう。

 

そんな頑固者だから、婚期を逃したのかもしれない……

 

 

 

それはともかく、普段名乗っている生物学者の肩書きではなく、鳥類学者という言葉を使ったからには、こちらのことを相当調べたのだろう。イタズラに見合う労力ではあるまい。

 

同封されていたSDカードを読み込む。スタンドアローン状態の端末で読み込めと書かれていて、それはもう怪しさ満点だったが、勢いで読み込む。どうせ古臭いパソコンだ。壊れたら買い替える。

 

 

 

それは昔日の夢のようだった。

羽ばたいてはいなかったが、確かに宙を舞っていた。

 

 

 

こうしちゃおれん。

三倉は急いで便箋を探し始めた。




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考えなしに突き進んでしまった。
どうしよう……


そこは、よくわからない公園だった。

堤防か防波堤の役割でもあるのだろうか。どこにでも浮いている船が、半ば沈められた上に、甲板には芝生が敷かれている。

特に遊具も設置されていないからか、遊んでいる子供は見当たらない。ポツポツと置かれたベンチが、どこか寂しさを匂わせていた。

 

そのベンチの一つに、男二人が腰掛けていた。

 

「……だから鳥類関連の本を見かけないわけですか?三倉さん。」

 

「そうゆうこった。論文1つで大騒ぎするんだ。本なんか出版したら焚書になるんじゃねえか?」

 

「表現の自由はどこ行った……」

 

こんなの憲法違反だろ。裁判所は仕事してるのか?

してないからこうなっているんだろうな。

 

 

 

ーーーさて、手紙のやり取りをえて、協力者候補と面会することはできた。この人ならば乗って来るだろうし、ふざけた組織関連の人物でもないだろう。まさか被害者面した組織協力者という線はあるまい。

 

 

 

しかし、憲法まで歪めてくる組織とは一体……

 

「都市伝説では『禁句』ってのが腐るほどあるぞ。使い古されすぎて、もはや事実だろうといわれるぐらいにはな。」

 

「禁句……」

 

「なんでも、禁止されている言葉を喋ると消されるらしい。何者かにな。」

 

知らなかった。そんな都市伝説があるのならば、都市伝説の調査と表して組織の正体を暴けるかもしれない。

共通点としては、鳥や飛行機などのーーー

 

「ーー空を飛ぶものか」

 

「おい、全部聞こえているぞ」

 

「えっ?あ、」

 

「いい加減、腹の中ぜんぶさらけ出せ。ただ協力しろと言われても、俺は動かねえぞ。」

 

 

じっと目を見てくる。いや、ほぼ睨んでいると言ったほうがいい。この人は直に組織の被害にあった人だ。危険な橋はもう渡りたくないだろう。

 

だが、やりたいことがある。

 

三倉さんは、自分と似ているところがある。

しばらく話していてわかった。この人は、譲れないところは絶対に譲らない人だ。ある程度は理性的に振る舞うが、一線を超えると損得勘定を度外視する、自分の同類と言える人だ。

 

だから、やりたいことを伝える。

 

「三倉さん。空が綺麗に思えたことはありますか?」

 

「あ?まあ、あるが……」

 

「自分もです。いつかは覚えてないんですけどね。ふと、雨上がり空を見上げた時、光に照らされた白い雲と、雲の切れ間から見えた青空が、とても神々しく思えたんですよ。」

 

「………」

 

あの時の感動はよく覚えている。なぜ昔の人が、神が空にいると思ったのか、わかる気がした。

それからだった。空を鳥のように舞いたいと思うようになったのは。とにかく、空の一部になってみたかった。

 

 

気球は違う。自分はエレベーターのようにしか思えなかった。

 

飛行船も違った。確かに良いものだが、大気を押しのけるような感覚が気になった。

 

自分が求めているのは、風と一体化して、空の一部になるものだ。空という領域に立ち入るための翼が欲しいのだ。

 

 

だからこそ、飛行機がない現状が我慢ならない。

 

 

*****

 

 

気づけば、随分と長く話し込んでいたらしい。ふと腕時計を見れば、いつの間に長針が一回転していた。

三倉さんはどこか遠くを見ていた。いや、港の海鳥を見てるのか?

 

そして、ポツリと呟く。

 

 

「ーーーお前、馬鹿だろ」

 

いきなり何を言う。馬鹿とは失礼な。それを言うなら、あんなに迫害されたのに未だに研究職を続けている、三倉さんの方こそ馬鹿だ。

 

「まあ、確かにな。だが、命の危険を理解しているくせして突き進もうとするのは、馬鹿のやることだろ?」

 

とりあえず、それは置いておく。

ーーーそれで、協力の是非は?

 

「お前、俺が生物学者を名乗っているのを忘れたのか?生物学ならまだしも、工学なんて分かんねえよ。」

 

すみません。確かに無茶振りです。しかし、三倉さんしか居なかった。今なら良かったと思っている。

 

「……そうかよ。つか、腹の中を晒し出せと言われてマジでペラペラ喋る奴なんて初めて見たわ。なんだ?今の高校生はそこまでオープンなのか?」

 

……冷静に考えて、いきなり自分の夢を語り出す男って迷惑だな。

 

「お前、確か野辺だったか。此処まで何で来た?」

 

「はい?水上バスですけど」

 

「このあと、時間はあるか?」

 

「はい」

 

「なら着いてこい」

 

「……え、ちょっ!」

 

いきなり腰を上げたかと思えば、スタスタと歩き始めた。

もちろん、慌てて後を追う。

 

「三倉さん!いきなりどうしたんですか!?」

 

「排斥された人間なんて、大抵は孤独になるもんだが、例外は存在する。排斥された人間が複数人いる場合、そいつら同士で群れることも有るもんだ」

 

「今日いきなりですか!?その方たちだって仕事とかあるかもしれませんし、日を改めた方が」

 

「なに、あいつなら関係なしに食い付く」

 

そう言って、三倉さんはポケットから携帯電話を取り出した。




三倉さん、チョロい?
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濃い人がいると苦労する

ご都合主義的な感じで話が進んでいます。

てか無茶苦茶です。


この世界の地価は安い。

デフレじみた値段でこそないが、前世の日本と比べれば圧倒的に安い。なにせ低地の平野が軒並み水没した上に、今では水上都市が発達しているのだ。

それに、一度沈んだ以上、また沈むかもしれないという不安があるのだろう。

ちなみに国の調査の結果、これ以上沈むことはほぼ無いらしい。だが、人の不安なんて早々消えない。イメージとしては事故物件だろうか。

 

そんな海沿いの陸地にある、こじんまりとした会社、矢場マリン。

水没のことを考えなければ、水上都市群も近く、良い立地だ。

 

 

「……三倉さん。念の為言っておきますけど、プライベートならともかく、社会人としていきなり押しかけるのは非常識ですよ」

 

「おっしゃる通りです。ですが今回ばかりは急いだ方がいいと思いまして。ーーーートビウオのことですよ」

 

 

……私服の自分が、ものすごく場違いに思える。

ついて行ったら、いきなり会社の応接室に送られた。会社の人が怪訝な目をむけるのも頷ける。土曜日にお疲れさま。

 

というより、今の状況がよくわからない。三倉さんの話を信じるならば、この中年に足を仕込んだ人はあの忌々しい組織の被害者らしいが……

 

 

「そういえば、まだ挨拶していませんでしたか。矢場マリン経営者の矢場蒼汰です」

 

「あっ、ご丁寧にどうも。野辺拓人です」

 

「いきなりですが、あなたはこの会社の助けになると聞きました。具体的にどういったことでしょうか?」

 

「ーーーあの、すみません。ここには特に説明もなく、急に連れて来られまして、今でもなにがなんだか………」

 

 

矢場さんはしらけた目を向ける。向けられた三倉さんは目をそらす。良かった。悪いとは思っているらしい。

 

 

「三倉さん。どうゆうことか教えて頂けますか?とゆうか見たところ野辺くんは精々高校生ですよね?」

 

「あーっと、それに関しては、こちらを見ていただいた方が早いかと。」

 

カバンからパソコンを取り出し、矢場さんの方に画面を向ける。

って、これ自分が作ったプロモーションビデオかよ。持って来てたのか………

矢場さんは最初けげんな目を向けていたが、次第に興味ありげに画面を見る。どうやら初見だったらしい。数分なんてあっという間だった。

 

 

「………なるほど」

 

 

矢場さんは静かにパソコンを戻した。口角は僅かに上がっているが、どこかで諦観の念を感じさせる、なんとも曖昧な表情をしている。

 

 

「この情報をトビウオに使えと。ーーー遅すぎなんですよ。いや、最初からあっても意味は無いでしょう」

 

「そうか………」

 

 

二人して暗い雰囲気を出しているが、未だに状況がわからない自分には理解しがたい。そもそもの話、

 

 

「あの、すみません。そのトビウオとは一体?」

 

「スキッパーに羽つけてピョンピョンさせようっていう企画だ」

 

「って、三倉さん!?」

 

「なに、今更だ。何でも今までに無い新感覚というていで売り出すつもりだったらしい。」

 

 

矢場さんの混乱をよそに、三倉さんは企画の内容を口にした。

ほそぼそと、小型高速艇やスキッパーの生産をしていた矢場マリンが、そのノウハウを活かして『変わり種』を作ろうとしたらしい。

後は簡単な話で、いつの間に不良債務が積み上がったそうだ。この会社は持って数ヶ月らしい。そういえば、すれ違った社員も、どこか疲れ顔だった気がする。

 

うろたえていた矢場さんが再起動するころには、三倉さんはほとんど話終えていた。

 

 

「……よく経営者の前で、堂々と情報漏洩できますね?」

 

「もちろん、こちらも情報をお渡ししますよ?ーーー野辺、今までやっていた事と、お前の言う組織とやらのの説明を」

 

「アッ、ハイ」

 

 

いろいろとメチャクチャだ。

 

もうどうにでもなーれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

「あなた達馬鹿ですか!?そんなのに協力できるわけないでしょ!会社を立て直す一発逆転の手段って、ロシアンルーレットと何が違うんですか!!」

 

この人の反応も仕方ないと思う。

 

あの忌々しい組織の説明をする際、自分はリスクをぼかして説明した。協力への忌避感を抑えるためにだ。

ところが三倉さんという常識行方不明者がその説明を補完した。具体的には組織による暗殺の危険性を強調しやがった。

 

 

「野辺、リスクへの対応は?」

 

「あれだけ危機感を煽っておいて自分に丸投げですか!?ええと、あっ!大衆に情報を拡散することでリスクの分散が図れます。先程お話した中にーーーーー」

 

 

自分は以前、匿名でインターネットに航空機の動画をアップして、暗殺のリスク回避を狙った。世界中の人々が航空機を知り、多くの人が実証すれば、組織の能力を上回ることが出来ると思ったのだ。

まさか100年単位の歴史を持った組織でも、世界中の不特定多数の人を殺害してまわるわけにもいくまい。

 

実際のところ、組織の情報統制能力が予想以上に高く、動画が拡散しきる前に動画が削除されてしまい、あえなく失敗に終わった。

 

だからこそ、やるなら徹底的にやるのがいい。

 

 

「多くの人がいる前で、デモンストレーションはどうでしょう?なんの事前情報もなしに、いきなり鳥のように、空を飛ぶものが飛んできたらどう思いますか?一気に拡散されるでしょう。組織は暗殺なんてしている暇はありません」

 

「………組織や人というのは、結局は理屈ではなく感情で動くものです。ヤケになって刺客を送る可能性はどうでしょうか?」

 

 

話を聞いているうちに、表面上は落ち着いたらしい。冷静に質問してくる。

そのあたりは大丈夫だ。

 

 

「そんな組織なら、長い月日の中で正体を表しているはずです。今まで知られていないのが、感情より理屈を重視している何よりの証拠かと」

 

 

矢場社長は長考に入ったようだ。腕を組んで眉をひそめている。

そこに三倉さんの追い打ちが掛かる。

 

 

「せっかく親から継いだ会社を、ここで畳むか?」

 

「……ああもう、わかりました協力します!ただし設計に社員は関わらせませんよ。あくまで製造や組み立てまでです。真っ先に狙われるなら設計者でしょうからね!」

 

 

やけくそながら、言質を取ることに成功した。

設計ならこちらで出来る。これでも前世持ちだ。初歩的な航空機の概念設計図はしっかり覚えている。離着水のためのフロートがネックだが 、ただ人一人飛ばすだけなら簡単だ。

 

 

 

 

 

 

「……………設計図は海の日、つまり明後日までにおねがいします」

 

 

………………は?

 

 

「いや、この会社に時間的余裕が本当にないんです。出来れば月末までに倒産の手続きを開始しなければならない程にはヤバいんです。ですから可能な限り、部品は会社にあるものを使って、外部への発注は極力抑えてください。」

 

 

………………………………………………………………………………………………………………………ひとまず、在庫の一覧表とCAD貸して下さい。




野辺「そういえば、よくあんな荒唐無稽な話を信じましたね?」

矢場「心当たりが有り過ぎるんですよ………」



出来れば高評価、コメントおねがいします。


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