吾輩は幽霊である (asikuma)
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その1

初投稿のためビクビク投稿します。


吾輩は幽霊である。名前は知らない

 

突然だった。気がつくは自分は闇夜の道端に突っ立っていた。それまでの記憶が一切なく自分のことさえ何も分からなかった。でもおかしいことは山程わかった。

先ず自分の体が変だ。見下ろしたら自分の体は白くボヤケて発光してて輪郭が辛うじてわかるような状態で心なしかフワフワしててまるで水の中にいるような浮遊感を感じた。そこで最初こそ何だ夢かよ、と思ったけど幾ら待てども覚める気配はないしかなり思考が冴えていた。体感で30分は過ぎたであろう頃から夢という案は保留にした。いつか目覚めるならそれはそれでいいさと我ながら気楽だなと思う。

 

あとこれもヤバいと思ったのが自分の見る景色だ。最初にも言ったが視界がおかしい。周囲の物や形からそれとなくここが日本のどこかの町ということは分かるけどそれを構成する色が全体的に黒というか暗い。まるで何色もの絵の具をかき混ぜたかのような形容し難い色だ。それぞれがそういう色をしているのではなくむしろ自分の目にフィルターをかけられているといったほうがいいだろう。たまたま見つけたコ○・コーラの自販機が黒紫色をしていることでそうなんだと思った。

 

他にも伝えきれないほどあるけど、自分の体も含めて考えて一つの答えに至る。

 

俺、幽霊になったんじゃね?ってさ

 

えぇー…。何、俺死んじゃったの?まだ若いしこれからやりたいこととかたくさんあったのに。まあ記憶がないから知らんけど。でもそうか俺って今タマスィーだけの状態なんだー。地縛霊て気はしないし記憶もないから何かに害する悪霊でも無いだろうから、取り敢えず浮遊霊ってことにしときましょう。

 

にしても人がいないと気づく。いい忘れていたが自分がいるのはどこか地方都市の住宅街。なのに人っ子一人すれ違わないがもしかしたら今って深夜?俺の見る景色じゃ朝も夜も判断がつかない。さすがに時計を見れば分かるだろうとたまたま目についた一軒家に忍び込むことにした。

 

フワフワ移動しながら(ほんとに飛べてた大発見)玄関を前にする。ついドアノブを掴もうとしたら触れることなく手がドアノブをすり抜けた。一瞬驚いたけど自分が霊体だと自覚してニヤリと笑う。そうだ、俺は幽霊なんだ。なら当然「壁抜け」が出来るはず。誰もが妄想の中で一度はしたであろう最早ロマンである。死んだ身でありながら少年みたいなワクワクが衝動が溢れる。いざいかん!

 

『セ○ムしてますかー?』

 

あまりにもあっさり自分はドアを通り抜けた。顔がドアに当たる(当たってない)瞬間ちょっとビビって目を瞑ってしまったが。

 

『うわっwww今モッてなったwww壁の中で体がモッてなったwww』

 

言葉通りである。薄いドアなので一瞬だったがドアの中にある体の表面に若干の圧迫感が生じていた。言うほど窮屈なものではなくまるで羽毛に包まれたかのような感触、感動のあまり玄関のドアを3往復も堪能してしまった。

 

ちょっと恥ずかしくなり咳払いをして家の中を見渡す。通路の先に階段と2つのドアが見受けられた。家の外観からしてリビングであろうドアを通過して部屋を見渡すと探していた時計を見つけその針が深夜の3時過ぎであることを確認した。そりゃ誰も居ないはずだ。時間を見たあとその家はすぐにでた。そりゃ当然他人の家の筈だし泥棒よろしく侵入して住人を見ることに若干の恐怖心があったからだ。いや、自分は幽霊だからバレないだろうけど幽霊が生きてる人を怖がるって逆じゃない?あとリビングとは別のドアから何か感じるものがあったけどもしかしたそっちに人います?

 

家を出るときにまた玄関のドアを数回往復したった。

 

 

 

side住人の息子(無職ニート)

 

俺は幽霊なんかいないと思ってた。テレビで心霊特集の番組をよく見たけどそれらは結局思い込みやヤラセが全ての道楽なんだと内申笑ってた。あの日も俺は夕方に起きてお袋の飯を食べ就活してるのかという嫌味を受け流し自室でゲームとネットにふけっていた。両親も寝静まり深夜を過ぎた頃、ゲームを中断し被っていたヘッドホンを外して伸びをしたまさにその時だった。

 

『フフッ……フフッ』

 

自室の隣、つまり玄関から笑い声がした。知らない声だった。ゲームは一時停止をかけているしその声は幻聴というにはあまりにはっきりしていた。家には二階で寝ている両親と一人っ子の俺以外に人はいない。まさかと思うと今度は先程よりテンションの上がった笑い声がした。また玄関から、今度は耳を済ませていた。確かに誰かが笑った

 

オイオイオイオイ!まじで!?これって心霊体験!?

 

見つかるとやばいと思ってそっとパソコンの電源を落とし机にゆっくり、音を立てないように突っ伏した。部屋の電気を消してて良かった。いや、見つかる可能性は下がるが怖さを思えばつけておけばよかったけれども後の祭りである。

 

くるなくるなくるな!!

  

数分しても変化がなくホッと息を吐くとまた玄関から笑い声がしてそこで俺の意識は落ちた。

 

 

次の日の朝珍しく朝食に顔を出した息子に両親は意外な顔をした。

 

「どうしたのアンタがこんな時間に起きてくるなんて珍しい」

「いや、まぁ…うん。夜寝落ちしたから」

「いい機会だ、これを気に生活習慣を正すように」

「そうね。また前みたいに起こしてあげようかしら?」

 

クスクス笑う両親に息子は言った。

 

「母さん、俺のリクルートスーツってまだあるよね?」

「そりゃ捨ててないからまだあるわよ」

「俺…就活するよ」

「あらっ」「おおっ」

 

喜色の声を上げる両親とは裏腹に息子は内心1日も早くこの家を出ることを決めたのだった




思い付き

幽霊関係の知識は皆無のため設定は作者の想像です。



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その2

 

俺が幽霊となってから数日がたった。霊体てすげーけどデメリットもやっぱり多いね。まず寝る必要が亡くなったことですごい退屈。こちとら毎日が夏休みになったのにさゲームもネットも出来ないのよ?そういうときって寝て過ごせばいいのにそれが出来ないわけ。人が起きてる時間帯はまだいいけどさぁ、夜になったらホントに暇。暇すぎて誰か呪ってやろうかと思ったわ、やり方知らないけど。

 

あとねあとね、壁抜けの件だけど当然やったよ?『覗き』

当たり前じゃん?絶対バレないしスゲー簡単だもん。でもさー、まあ結果からして普通に覗けたよ?見たよ、女性の全裸。けど拍子抜けもいいとこ、一言で表すなら

 

『おっ、サーモグラフィーかな?』

 

まぁ知ってたけどね。初日にも言ってたけど幽霊の見る景色って生きてる時のそれと全然違うわけ。無機物は色を除けば普通に分かるけど生物、特に魂があるものはまた違った見え方でさ。まさにサーモグラフィーを通したみたいに白を基準に赤とか黄色く発光して見えるわけ。何人もみて自分なりに検証してみたけどあれはやっぱりその人の魂の質とか感情の機微で違うんだわ。特に頭と胸辺りの発光が強いから体に関しては見づらいのなんの…やはり心と魂は脳と心臓に強く関係してるということだろうか?

 

でもまぁ全く見えないわけじゃないから、覗きしてるって事実で滾るものもあったけど賢者モードも半端なかったね。半分失敗といったところかな?

 

え?変態?気にするなよ。向こうだって気づいてないって。それにすぐ(4人くらいで)辞めたから。

 

あとわかったのは幽霊はやっぱり鏡に映らない。人から見えないのは勿論幽霊になった自分の目でも当然見えなかった。でもね鏡越しだと人の姿がクッキリ分かるっていうのは結構良い収穫だったね。反射体に魂魄は無いってことだろう。因みに覗いてるときにわかったよ、やっぱエロって偉大だわ。

 

ん?そういえば心霊写真てあるけど、鏡の件からして心や魂はそういうのに影響しないということなのでは?やっぱりヤラセ?それとも幽霊っていうむき出しの魂はまた別問題なの?不思議は尽きないものである。

 

次に幽霊から生きた人間に対する接触の検証もしてみた。無機物はすり抜けたけど同じく生物もすり抜けるのか?結果としてダメだったでござる。こちら側からしたらなんと触れたんだよね。でもって触れたけど摘むとか出来ない、いうなれば干渉できないというべきか。干渉できないから触られた側からしても自覚はないようだ。憑依とかあるけど多分できない。これは幽霊の質にもよるだろうけど俺の考えとしては肉体は魂の器であり鎧でもあってそういう干渉を阻害してるんだと思う。でももし俺の幽霊としての質が強かったり人間側に何かしらの要素が合えばいけると思うんだ。ほら見える人とかよく聞くじゃん?この町じゃまだそういう人に出会えてないんだよねー。

 

そしてそして、皆が気になると思う幽霊同士の接触。勿論検証してみた。やべー、俺○ーチューバーだったらかなり再生数稼げる案件だと思うんだが?

意外と町中じゃ俺以外の幽霊は全然いなかった。まだ全域廻ってないていうのもあるけどもしかしたらこの町は事件とか少いのかも、いいことだ。でも宛はあった。

 

そう『墓地』だ。

 

正直幽霊となった自分でも怖いという思いはあった。何せ俺は幽霊ではあるけども感性は生きた頃のままであり感情もそのままだ。でもまぁ何とかなるっしょという思いで行くことにした。幸い町の案内板で寺を見つけることができた。近くまでフワフワ飛んでると次第にザワつきを覚えた。見えるとか臭うではないまた別の感覚、人によっては第六感というのか…え、それは違う?とにかく向かっている方角に進むに連れてザワが大きくなる。やっぱり『いる』んだって思ったね。

 

 

『お、おぉ…やっぱりいるんだ』

 

墓地についた俺は初めて自分以外の幽霊を見つけた。てっきりひしめくくらいいるかと思ったが幽霊の数は墓石に比例せず数人程度だった。やっぱり墓地に縛られているんだろうか誰もこの場から離れようとせずそれぞれその場で立ちすくんだり墓石の周りを彷徨いてるだけでザ・幽霊の典型みたいな奴らだ。あと幽霊同士だからか他の幽霊たちの顔立ちは思いの外はっきりして見えるのね。でも俺みたいに白くなくてはっきり言って半透明、深海魚で内臓が見えるほど透けてる魚とかいるじゃん?あんな感じで流石に中身は見えないけど体を通して向こうの景色が見えんのよ。こんなもんかーとか思いつつ俺は取り敢えず近い幽霊から話しかけることにした。あれ?そういえば幽霊同士の挨拶って何だろう…

 

『う、うらめしやぁ…?』

『…』

 

今ほど自分を馬鹿過ぎるバカだと恥じたことはないと思ったね。

初対面で恨みぶつけるとか通り魔かよ、普通にこんにちはでいいじゃないか…

羞恥心から咳払いのあと再度話しかける。

 

『あ、あのぅ…こんにちは?』

『…』

 

相手はヨボヨボのおじいちゃんだった。外見からして年齢による老衰か病死のどちらかだろう。俯いていた半透明のおじいちゃんはゆっくりこちらを見ると何を言うこともなくまた視線を戻した。

 

え?無視?顔合わせといて無視とかそれ既読スルーだよそういうの良くないって、気まずくなるじゃんお互いに…ん?既読スルーとはなんぞや?

 

『あのー、おじいちゃん?俺の声聞こえてます…よね?』

『…』ブツブツ

『んん?』

 

無反応かと思えばおじいちゃんは何か呟いている。顔を寄せて聞いて見るとやれ昼飯は魚がいいとか風呂の温度は最も熱くしろってなかんじ、何やこれ爺ちゃんボケてる?思わず鉄板ネタで返してしまった。

 

『なーに言ってんですか、おじいちゃんもう死んじゃったでしょ?』

 

ご飯はさっき食べたでしょ?みたいなノリで言ったのだがおじいちゃんの反応ははっきりしたものだった。目を見開いてこちらを見るおじいちゃんの顔は驚いているようで数秒口をわなわなさせた後深い息を吐いたと思ったら半透明から完全な透明となって消えてしまったではないか

 

え…ウソ、逝っちゃった?

 

どうやら自分はおじいちゃんを成仏させてしまったようだ。どうやらおじいちゃんは自分が死んだという事実を知らなかったらしい。いいことだろうけど何だか申し訳なくて次に行くことにした。今度から言葉を選んで話さなければ…

 

 

side墓参りに来たシングルマザー

 

夫が私と息子を残して先立ち2年経ち、何となく娘を連れて夫の墓参りに行った。娘は春から近所の小学校に通う年になりその報告と娘のランドセル姿を見せようと思ってのこと。寺から掃除道具を借り墓石を清掃したあと夫が好きだったタバコと缶ビールを添えて線香を立てた。

 

居眠り運転だと聞いた。電話を受け着の身着のまま病院に駆け込むとそのまま霊安室に通された。わけが分からず横たわった人の顔に掛けられた布を取るとそこに夫がいた。遺体の損傷は酷くなかったが轢かれたあとの打ちどころが悪かったらしい。目の前の夫は本当にただ寝てるみたいだった。現実を受け入れられないまま葬式を済ませ気づけば時が過ぎていて今でもたまに朝食を3人分用意してハッなることがある。受け入れるためにもこうして墓参りをしているというのに…

 

「見てよ、あの子春から小学校に行くんだから。しっかり見てないと次見るときは制服来てるかもしれないよ?」

 

隣でボーッと虚構を見る娘を他所に私は口を開く。

私には霊感はない、けどそこに夫がいるんだと思って語りかける。娘がまだおねしょをすること、朝番組のマジカル少女に夢中になっていること。なんでもない会話、夫が生きていたらテーブルを挟んで話したであろうことを口にする。前に来たときは未亡人の私にアプローチしてくる男性の話もした。こんなんだからまだ受け入れられないんだろうとも自覚があるのに…

 

「え…?」

 

すると頭を撫でられたような気がした。横からゆっくり2回、それは夫が生前私にしてくれた動作の感触のそれと同じで思わず顔を上げたが目の前には墓石しかない。呆気にとられていると隣りにいる娘が私に、正確には私を通して隣に向かってバイバイと手を降っている。

 

「ママ」

「ど、どうしたのアヤカ?」

「コレがさいごだって。つぎのしあわせを見つけてくれって」

「一体なんの…」

「もうパパはヨシヨシできないから。ママがパパ好きなのはわかったからありがとーって」

 

ハッとした。さっき感じた頭の感触をズバリ当てられたかのような気がして、しかもまるで今まで私が夫に話したことを知ってるかのような物言いに聞かずにいられなかった。

 

「パパに聞いたの?」

「違うよ。でもパパがそう言ってるってお兄ちゃんが教えてくれた」

「お兄ちゃん?バイバイってパパにバイバイしたの?」

「ううん。教えてくれたお兄ちゃん帰った。でもパパもバイバイなりそう。だからママもバイバイして?」

 

わけがわからない、でもパパもバイバイなりそうという言葉ははっきり頭に入ってきた。

 

「パパいるの?どこに?ママ見えない…から、教えてアヤカ」

 

涙声になって娘に問う。すると娘には私の背後を指差してそこだと言った。体ごと後ろを向くがやっぱり誰も見えない、やっぱり子供ながらの虚言かと思えば、また頭を撫でられた。

 

『じゃあなミヨ。アヤカを頼むぞ』

 

押し留めていた涙が決壊し涙と声が溢れ出る。夫が死んでから2年、この日私は初めて大声で泣くことができた。

 

 

 

 




主人公のネタはポッと出てくるけど知識にはあっても記憶にないから元ネタを思い出せない設定


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その3

やっぱり女の子成分は欲しい。けどこういう話で出そうと思ったら結局見える子ちゃんになってしますね。一応主人公主体の話だけども幽霊関係で今後を考えると意識してしまうところはある。パクリかな?パクリだね


 

暇すぎて死にそう。

 

幽霊となってから数週間が過ぎた。数週間といったけど思い出して欲しい、幽霊は寝る必要がないのだと。おそらく一般的な幽霊は自我が薄いから別にいいだろうけどこちとら思考は生前のままなのだ。つまり幽霊となってから数百時間をぶっ続けで起きてるわけである。わかる?1日の区切りとして寝ることのなんと贅沢なことか。良い子に限らず皆感謝して寝るべきだ。じゃなきゃ寝ないやつは代わりとして俺に就寝時間を寄越せと言いたい。あーあー、レイ友(幽霊友達の略)も出来ないつーかやっぱり自分は幽霊として異質なんだとわかった。墓地の件で他の幽霊も話すことが出来たけど幽霊って自我が薄いんだわ。半透明な奴らはあれだ、魂の残り滓みたいな感じで感情が薄い。おじいちゃんみたいに幽霊っていう自覚がなくて生前の癖を繰り返してるとかでちょっとした拍子で成仏するレベルなのね。だから会話も成り立たないし向こうも周りに対する興味をないみたいで幽霊同士の交流はまずないってわけ。

 

幽霊の死ぬ=成仏でしょ(多分)?さっき言った普通の幽霊はすぐ成仏出来るけど俺はそうでもない。幽霊としての自覚はあるけど全っ然成仏する気配はない(それで成仏するなら初日で逝っとるわ)。やっぱり生まれたて(笑)の幽霊だから成仏するのに時間がかかるとかそーゆー感じ?時間が経てば俺も段々半透明になってくんの?今の調子からして余裕で数千時間いけそうなんだけど…先が重すぎる。

 

っといかんいかん。あんまりダークになる考えは辞めとかないと。何をきっかけに悪霊になるかわかったもんじゃないしな。霊媒師に祓われるとか嫌だよ?クリーンな浮遊霊だからね俺、マイナスイオンとか出せないだろうか?

 

 

何やかんやあるけど直面している案件は孤独感をどうにかしたいことだ。他の幽霊は宛に出来ないしー…あっ!そういえば墓地で俺のことが見える子供がいたんだよ。あそこの幽霊に事故死した若めの男がいてさ他の幽霊と違っていきなり死んだからなのか少しだけ話ができたわけよ。そしたらそこにちょうどその幽霊の妻子が来てさ、奥さんが近況報告すんのよ。いやぁ泣かせるねぇ。

 

で、何か見られてるな〜怖いな〜て思ってたらその女の子本当に俺のことが見えてるわけ。ビックリしたね(生者に驚かされる幽霊とはいかに)。んで奥さんの話をボーッと聞いてる旦那さんに感想を聞いて(あくまで話しかけないとアクションを起こさないから)それをそのまま娘に伝えて上げてさ。そしたら奥さん泣き出して、その様子見てた旦那さんは成仏していった。内心初めてレイ友ができるかと思ってて残念だったけど。あの光景を見て映画が一本出来そうだなって思った。

ならその女の子と話せばいいじゃないかって?いやそれはだめでしょ?あれくらい小さい子供だったらたまに見えてる子がいるらしいけど話し続けてたら周りが引くに決まってんじゃん。精神病棟行き確定だよ。そういうところちゃんと考えてるからね俺。誰でも手を出す節操なしじゃありません!

 

でもまぁいい経験だったかな、あれは。やはり人(心的な意味で)には話し相手が必要なのよ。それから町中で積極的に人間相手にちょっかい出しまくってたけど墓地であった女の子みたいな霊感のある人にはついぞ会えなかった。突いたあとたまに周囲を見回す人がいて再度トライしたけど完全無反応で期待した分凹んだ。

 

そうだそうだ!見ました!幽霊といえば!そう!

 

守護霊!

 

背後霊っていうのもあるのかな?本当に人の背後についててさ、人だったり犬猫の動物だったよあれ。最初見つけたとき興奮してうぉーってなって突撃したらまぁ吠えられるはビンタされたで本当に守ってるんだなと身を持ってわからせられました。ぴえん

でも守護霊がついてるのは稀にってかんじ数百人に一人二人とかそんくらいかな。ちょっと痛い目みたけどその人から離れたら追われることはなかった。でも守護霊の強さによってはヤラれてたりすんのかな?相手は選ばないとね!

 

あと俺の行動範囲だけど基本制限はないよ。前にも行った地縛霊みたいに特定の場所に因縁とかなさそうだし何なら電車バスにも乗れたのには笑ったね。飛んでるから移動に労力はないけど流石に自動車程の速度は出せないみたい。全力でチャリくらいかなぁ…え?どうやって飛んでるかって?知らんし、生きてる人がどうやって息を吸って吐いてるのか説明できないのと一緒だよ。

そういや怖い話で車で逃げてもいつの間にか後部座席にいる幽霊とか何なんだろうね?俺が知らないだけで○リーチの瞬歩みたいな特殊な技法でもあるんかな。試して見る価値ありますぜ!ってな

 

話しが逸れだけど幽霊のデメリットを1つ見つけた。都市部は駄目だ。電波とか周波数の関係なんか知らんけどあっちこっちからガンガン来るのよ。別に耐えられないわけじゃないけど、ほら耳元で歯ぎしりとか目覚ましアラームとかそういうの四六時中されるの考えたら発狂するっしょ?そんなかんじ。明確な原因はまだわからないけど突き止めるにはそれなりの覚悟がいりそうだ。あそこで幽霊やってるやつは頭おかしい。多分大体悪霊

 

にしてもやることないー暇ー…

 

しかたなし

やることないなら

風呂覗く

 

その夜、落ち武者の守護霊に斬り殺されそうになった

 

 

 

side見える人

 

最近変なものを見るようになった。いや、変なもの自体は以前から見えてたけど『あれ』は別の意味で変だった。

私には所謂霊感がある。感じるどころか幽霊が見える。幽霊は基本的に無害だ。余程強い怨念があったり悪霊でなければ他人と差して変わりない。でも見える私からして見ると明らかに違う、半透明だし…。

小さい頃はバカ正直にそれを親友達に公言していた。当然私は奇異の目で見られ周囲から心無い言葉を浴びせられ何度か病院に連れて行かれたこともあった。そうして学んだ、この才能は周りにバレてはいけないと。幸い地元で悪い幽霊はいなかったし私が黙っていれば何も起きないのは当然だった。通学路にいる地縛霊もよく電車で乗り合わせるサラリーマンの守護霊も今じゃ景色の一部と思うほど慣れた。

 

そんなある日のこと。視界の端に『あれ』は現れた

 

『へーい彼女ー!お茶しなーい!?』

『無視しないでくださーい!ワタシアヤシイモノジャアリマセーン!』

 

物凄い時代錯誤なお誘いを通行人(女性の割合が多い)にかける変態がいた。

 

『おっ寝坊か?急げよハゲ』

 

男には当たりが厳しいらしい。にしてもあまりに無礼な物言いだというのに声をかけられた人々はその変態に見向きすらしない

 

「なにあれ?」

「どしたのユリ」

「いや、あれ…やばくない?」

 

指差す先の『あれ』は今度はバス停でベンチに座っている男性の足の上に座るというのか暴挙にでていた。私の言葉にそれを見た友人のハルカは不思議な顔で私を見返す。

 

「何がやばいの?いつものバス停じゃん」

「は?何がって…まさか」

 

見えてない…?あんだけハッキリしてるのに…え、うそ?アイツ幽霊?

 

「ごめんごめん。見間違いだったー」

「寝坊助、また夜ふかししたなぁ」

 

ハルカが私の目を覚まさせようと両手で頬をウリウリしていると『あれ』が守護霊付きの人に突撃しその守護霊から張り飛ばされていた。

 

「ぶふぅ!!」

「えっちょ、きたな!!」

「ごめんハルカ!」

 

どうしよう…私、耐えられるかな?




主「いーじゃんいーじゃん!お前は毎日その人の素っ裸見てるんでしょーがぁ!?1回くら」
守「ちぇすとおおお!!!」


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その4

 

最近、幽霊の特性を活かした楽しい時間の過ごし方を覚えた。

 

ズバリ映画である。

 

いやすまんね皆の衆、俺ってば幽霊だからいつどこの映画館だろうとフリーパスなわけよ。一本約2時間としても何作もあるから見放題!まぁシリーズものだと前作知らないからわからない話もあるけど大体見れるから問題ない。一応幽霊フィルターかかってるけど大画面の映画だったら見れないほどじゃないのは不幸中の幸いだったね。それに幽霊になったことで途中トイレで席を立つ必要もないんだよなぁ。とくにナイトシアターとかいう夜までやってくれるところは助かる。幽霊になってからというもの何より夜が暇になるんだからね。昼はせっかく人が出歩いてるんだから昼は俺を見える人探し、んで夜になったら映画観賞する。うーむ我ながらいいルーティーンが組めそうだ。

 

でもやっぱり映画館だとあれだね、ポップコーンとかジュース飲みたくなるのが痛いところ。当然空腹なんて感じないけど雰囲気ってやつ?口が、喉が求めてくるわけ。誰かに取り憑いて飲み食いすればその欲求も満たされるのだろうか。あれ?そういや人の3大欲求の性欲食欲睡眠欲てあるよな。性欲はまぁ、うん…いいとして食欲と睡眠欲を欠いてる状態なのか今の俺って。性欲まで無くなったらそのうち感情消えてモノホンの幽霊とか悪霊墜ちしたりしない?逆に性から開放されて聖霊とかなったり!?

 

いやそれはないな…前者の方もないと思いたい。でもまぁそのうち憑依とか出来るようになりたいよねー。素敵やん?幽霊っぽいし

 

あと意外なのが映画館にも幽霊て出るんだね。誰かに突っかかるとかしないけど毎日同じ時間同じ席に現れる女性がいるねん。ボーッと映画眺めてエンドロールまでしっかり見てから消えるの。最初は成仏したのかと思ったらまた別の日に現れてビックリした。どうやって消えるのそれ教えて!って聞いたけど映画の途中はガン無視されるし終わった途端消えるから取り付く島もない。あれは一定条件を満たさないと出現しない幽霊なんだろうか。なんか○ケモンみたい。成仏も特殊条件があったりしてwww…いやマジでそういうやつかもしれんな。俺にはどうにも出来ない案件だと思いそれ以降関わることはやめた。

 

あとはまぁ最初こそ人という人にちょっかい出してたけどそのうち人間観察が趣味になってきたね。特定の誰かについていって勤め先の人間関係とか眺めるの。別に責めるわけじゃないけど職場の誰かが席を外したら残った人間でその人の陰口話し始めるとかよく見る。でもさ「人を呪わば穴二つ」て言葉あるだろ?俺がついていって他人の陰口叩いた人も席を離れたら今度はそいつの陰口叩かれてるんだから笑っちまうね。誰もがそうじゃないだろう、でもそういう人もいる。俺も生きてた頃ってそうだったのかなぁ?違うといいけど…

 

それ以外にもコンビニとか深夜警備だったり深夜もお勤めしている職場を廻って毎日の時間潰しをするようになった。流石に長時間留まってみていると俺の視線に気づく人がちらほらいたけど俺の声が聞こえるわけでもなく、寒気がしてる程度っぽいから怖がらせてるみたいで申し訳ないからほどほどにしてる。

 

夜勤といえば病院があるって?行くわけないじゃん、怖いもん。

ほら、墓地は死んだ人が埋葬されるところであって、そこで死んだわけじゃないじゃん。ちゃんと供養された結果行き着くところであってさ。だから思いの外幽霊の数が少いと思うんだ。そして病院はそうだね、人が死ぬところだね。誤解を招く言い方かもしれないけど人がいる地域で一番人が亡くなる場所って病院を置いて他にないでしょ?人を治す施設だけど直せなかった人がそこで御臨終してしまうわけで…一回だけ真っ昼間に病院に訪れたことあるんだけど、まぁ中には入れなかったよね。墓地のときとは比べものにならないくらいザワっていうかゾクゾクきたね。病院が見える頃には住人(幽霊)もそりゃあ沢山見えましたとも。大半が半透明だったり成仏しかけだったけど、なんか黒ずんだ奴が見えたときには迷わずUターンしたよ。俺にはまだ早い。言うなれば鉄砲で戦車に立ち向かうくらいには無謀と思われる。医療従事者って偉大だわ(ここまで早口)

 

なんか思い出したらまた怖くなってきた…よーし今夜は某猫型ロボットのハチャメチャ映画を見るとするかー!!(2回目)

 

とあるネットのオカルト板

 

20☓☓/02/□□

俺夜間警備しとるんやがなんか変な視線感じる

 

20☓☓/02/□□

はいはいあるある

 

20☓☓/02/□□

いやほんまなんや、今先輩と控室で1時間の休憩入ってるんやがお互いなんか感じるもんがあってな

 

20☓☓/02/□□

おい、ここはホモスレではないぞ?

 

20☓☓/02/□□

深夜の控室に男二人、何も起きないはずがなく…

 

20☓☓/02/□□

笑わせんなよwwいや助かるわ笑わせてくれ。 

その先輩と顔合わせてさ、なんか視線感じません?え、お前もってなって。確かめるためにじゃあせーのでどっから見られてるか指差しましょって言ったらお互い同じ方向の開いてる席に指差したんだぜ?みんなの話の方がスゲー怖いけど体験したらこの程度でもやばいくらいビビるんだが…

 

20☓☓/02/□□

よし、そのまま○っくりさんだ

 

20☓☓/02/□□

洒落にならんわアホ。時間繰り上げて外の現場戻る

 

20☓☓/02/□□

え、この時間帯に外出るの?フラグ乙

 

 

 

 




映画観の彼女は救われる時が来るのだろうか?全ては作者の都合次第


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その5

 

幽霊になって…数えるのは辞めた。

 

取り敢えず映画は飽きたわ。あれってたまに行くからいいのであっていつも行くとワクワク感とか無くなってだるくなるんだ。新作が出る頻度もそれなりにかかるし数日もしたらそのシーズンの新作映画は殆ど網羅してしまった。本編開始前の映画○棒の動きは最早完コピ出来るくらいみたね、なんならパトランプ役もできる。急募『映画泥棒のパートナー』

 

あと人気作品の時はたまに、いやかなりカップルが来る。テメーら映画見に来たんだろうが何イチャ付いとんねん?肘置きで手繋いでるカップルにはもれなく放映中ずっと肩に手を置いてやった。ホラー映画だったから臨場感が半端なかったに違いない。何せガチモンの幽霊が付きっきりだったのだから。二人共時折後ろをチラ見してたから俺としては満足である。あれ?俺ってば悪霊化してない?大丈夫大丈夫、セウトセウト。

 

 

あっ。いい忘れてたけど今の自分はなんと『肉体』を持ってます。凄かろう?気になるやろう?

 

 

 

滑らかな黒毛

 

しなやかな体の曲線美

 

小顔に対して大きなお目々

 

ユラユラ揺れる魅惑のしっぽ

 

極めつけは手足に備えたプニップニのキュートな肉球

 

 

 

そう、吾輩は…猫である!

 

 

ふぅ…人型のときと違い視線が低くて物が大きく見えるのは幽霊になったときとは別の新鮮さである。視界も幽霊フィルターがないのは良い…といいたいところだが、なんかボヤケてるんだよ。てっきり猫の視力って良いもんだと思ったけどそうでもないのね。ちょっと期待外れだがそれでも幽霊だったときの見え方では天地の差だ。文句を言うのは贅沢というものだろう。

それに何より他人が自分を認識してくれることが何より嬉しい。そりゃあ今の俺って畜生ですけど?生者からは認識されず同類からもガン無視されてたら荒んでくるってもんですよ。しかも猫ってことてちょっと愛らしく振る舞ってたら向こうから来てチヤホヤしてくれるんだぜ?いやぁ人ってチョロいわー、猫が人間に対して不遜な理由がわかった気がするね。

 

それはそうと俺がどうして猫になってるのかだが、まぁ問題にするまでもない。『憑依』できたって話だわ。最初こそどうすれば人に憑依出来るかと模索していたが結局うまくいかなかった。性別や年齢を変えてトライしては肉体の壁を超えられずお手上げ状態だったとき、たまたま近くにこの猫がいたわけ。しかも都合よく寝てた。で、ものは試しってこと感じにその猫をつついて見たら指が猫体に入り込んだからまあびっくり!触られた側の感覚はわからないけど自分の感覚としてはゴム風船を割らずに貫いたって感じ。グググ…ズボッ!!みたいな?人間相手の時は全くどうしょうもなかったのが嘘みたいに干渉することが出来たんだよ。

 

猫と人間じゃ生物学的に全く違うけど今回注目する点はやはり魂となる。俺(幽霊)から見た人と猫(その他動物)の違いというと魂の明瞭さだ。どういうことかというと、生物の肉体はガラスみたいに枠だけ見えて魂の色形がその中から湧いてる様に見えるのね。で、人間の魂って各所強弱はあっても肉体の枠に綺麗に収まってるの。肉体の形=魂の形って言えばわかる?そして他の動物はそうでもなくて、肉体の形に対して小さめの魂が収まってるんだよね。断言は出来ないけどおそらく人間の自己認識力の強さが影響してるんだと思う。例として上げると赤ちゃんや幼児の魂は動物よりの見え方だった。つまりそういうことじゃね?

 

まぁそんなわけで、入れるってわかったらすぐ実行に移した。入ったあとどうやって出るんだろうとか後のこと一切考えてなかったけどあのときは勢いで行ったね。猫の体に指が全部入って次に掌、腕が収まっていく時点でいや四次元○ケットかよ!てツッコミそうになった途端全身がすごい勢いで猫の体に吸い込まれた。一瞬のことで驚く暇さえなくて、気づけば俺in猫になってました。

 

人型から四足歩行の生き物になると最初は歩くことも難しかった。つーか頭の中パニックになった。しゃーないやん、いきなり猫ですもん。耳と手と足が違う生え方してて尻尾とか自分の体ながらナニコレ状態。歩こうとして右の手足が同時に出てバランス崩すとか卒業式かよ…

そのまま数十分猫の体に悪戦苦闘してたけどそのうち『考えるな、動け』って結論が出た。変に動くことを意識しなけりゃ意外とすんなり動き回れるようになった。慣れたというより猫の体が覚えてるってことかな。

まだ慣れないことが多いが何やかんや結構楽しんでる俺、ほれほれ今もこうして戯れてくれる通勤中のOLおねーさんが屈んだことで見える桃源郷のような三角州…の向こうから感じる何これプレッシャー?

 

 

はっ、貴様は何時ぞやの落ち武者!?なぜここに!?

 

 

刀を揺らし獲物を判別する守護霊を前に、ただの野良猫を演じきる俺であった。

 

 

 

とある猫の1日

 

いつからだったか、とある住宅街に一匹の黒猫が現れた。おそらくは住民達も以前から認識していたが意識するほどのものではなかった。それが意識するようになったのいつからかはわからない。気づけばその黒猫は住人達から注目をあびるようになっていた。

 

朝の通学時間、道行く学生を黒猫はいつも同じ塀の上から見下ろしている。普通なら人々は次回の片隅に流して通り過ぎるが黒猫は決まって一声鳴いてまるで挨拶をしているようだと住民達は言う。

ある時はバス停のベンチ上に黒猫はまるで特等席のように座り込む。人が寄っても逃げ出さず、好奇心に駆られた少年少女の手を嫌がることもしない。勿論中には黒猫を邪魔とみて追い立てようとする者もいるのだが、そういうときはあっさりベンチから飛び退いて場所を譲るというものわかりの良さを見せる。しかし逃げないのだから日を重ねれば人々も愛着が湧いてくるというものだ。

そうしていくうちに、食い物を手に黒猫を餌付けしようとする者が現れるのは必然と言えよう。

 

「さーて猫さん猫さん。今日は朝ごはんからくすねてきた鮭の塩焼きでございますよー」

「ニャニャ!」

 

どこぞの女子高生がタッパーの中から数切れの焼き魚を取り出して黒猫に差し出す。すると黒猫はなんの迷いも見せずにむしゃぶりつく。のら猫であれば匂いを嗅ぐなり警戒するがこの猫はそれがない。飼い主とペットくらいの関係性を感じるがこの猫、餌をくれる相手なら誰でもこんな感じである。

そうして供物を捧げた女子高生は黒猫が餌を食べ終えたのを確認するといざと抑えていた欲望を解き放つ。

 

「うりゃりゃりゃ」

「ニャニャニャ!」

 

撫で回す、抱きかかえる、モフる、そして猫といえば…

 

「はぁ、このプニプニ…至高の感触」

 

前脚の肉球を何度も指で堪能する。ここまでされるがままの黒猫、本当に野良なのかと怪しむ人は多い。

 

「そろそろ行かないと遅刻しちゃうかぁ。名残り惜しいけど…猫さん、また今度ね!」

「ニャ!」『肉でもええんやで!』

 

手を振って走り去る女子高生を送るように黒猫は尻尾を振って返す。そうして女子高生が道の角を曲がったのを確認すると黒猫は腰を上げて次なる目的地へ歩みを進める。

 

「ニャァ…」『次はー、3丁目の山西婆ちゃんの家ー。3丁目の山西婆ちゃんの家ー』

 

気分は『突撃!お宅の○ご飯』だそうな

 

 

 

 





守護霊『ギルティ(変態)?』
主「ニャニャ!」『猫!猫!』


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その6

 

黒猫に憑依して数週間、いつの間にやら俺に名前が付けられたらしい。ズバリ…

 

クロちゃんです!!(裏声)

 

いや安直すぎぃ!?まんまですやん。まぁ覚えやすく親しみ安さで言えば妥当っちゃ妥当か?

 

人に媚びへつらい各地を周回俺も名前を貰うほど有名になったらしい。そんなに可愛がってくれるなら一人くらい(美人女性希望)飼い主を買って出てくれてもいいと思うんだが、どうやら八方美人しすぎたせいでみんなのアイドルだから個人で飼うことはしないという暗黙の了解みたいなのが共通意識として認識されてるようだ。いやぁかわいいって罪だわー。仕方ないからあいも変わらず毎日挨拶回りして胡麻すりする俺であった。その習慣も功を奏して食い扶持には困っていない。この体雑食だから基本何でも食えるけど、中身は人の心だからね。狩りは出来ないこともないけどネズミや鳥とか食い殺すなんて出切るわけないじゃん…

晩飯の残りとかなら最高だけど最低ラインとしてはキャットフードだな、意外と悪くない。

 

え?人としての尊厳?知りまへん、今の俺猫だから。

 

あと猫の本能ってやつ?あれには困惑する。下校途中の子供と戯れてたらやっぱりアレを持ってくる子がいる。

 

そう、『マタタビ』である。

 

目の前で揺らされる毛玉。はいはい、いつかは来ると思ってたけど俺はただの猫じゃないんだぜ?俺の気を引きたk…あれ?くそぅ目が離せない!つい体が反応して飛びつき、猫パンチを連打した。目指せ!フルコンボ〜

手な感じで自制が聞かない場面が偶にある。ネズミとか突然遭遇したら条件反射で狩りそうになってな、お口でキャッチする直前に理性が全力ブレーキをかけた。あれは危なかったな、流石に小動物を噛み殺すとか生理的に許容出来ない。

あと、猫相手に芸求めてくる奴なんなん。お手?伏せ?待て?犬じゃないんだから…いや出来るけど、してやったけど!この野良スゲー!って中学生がはしゃいで更に要求してきたけどスンと虚無って拒否した。詰まるところお布施(食い物)がいるってこと、おわかりぃ?

 

とまぁ猫生活を満喫している俺だが、ときには住民の生活に貢献している。人気のなくなった昼間の住宅街を巡回し空き巣がいないかセルフパトロールしているのだ。2回は遭遇した。未遂もあるけど被害が出るのはやはり一戸建て。玄関に鍵がかけてあっても他の窓や勝手口の戸締まりがおざなりになってるところを狙われて侵入されるようだ。一部の例外を除いて各家の住人の顔を覚えてるはずもないがサングラス・マスク・ニット帽と泥棒三種の神器を装備してたからね。最早自己紹介してるよねあれって。ときに大声で泣き喚き、或いは近所のオバちゃん(顔見知り)を誘導して通報させるという頭脳プレーを発揮し俺の名声は更に上がったことであろう。お布施のグレードアップを所望するネ。

 

そんでもって、最近気になることがある。近くの高校に通う男子学生の1人なんだが、なんか憑かれてるっぽいだわ。いつものようにバス停で住人の見送りしてたらいつも見る学生の左肩に何やら黒いモヤみたいなものが見えた。誰もそれに気づいてないから汚れや埃ではないだろうと観察していたのだが、日に日に学生の顔が気落ちしていってこれは『そっち系』のトラブルだろうと悟った。個人的に思い入れはない人物だが彼も自分に何度か食い物をくれたことがあったのを覚えている。

 

ここは猫の恩返しというものを見せねばならんようだな。

 

 

悩みを抱えた男子高校生

 

通勤と通学で人が行き交う道を肩を落として歩く少年がいた。彼は近くの高校に通う2年の男子学生だ。学校では中学からの友達や熱の入った部活動を満喫し順風満帆の生活を送っていたのはつい最近までの話。

 

ことの始まりは3日前の夜、少年は部活動の終わり仲の良い先輩や部活仲間と共に帰宅していると先輩の1人が突然「今から肝試しに行かないか?」と言い出した。今は夏の手前であり若干の季節外れもあり周囲も何でいきなり?と返す。興味はなくもないがそういうのは夏休みのイベントが定番じゃないのか、それに何より部活帰りもあり女子が1人もいない。肝試しは男気を試すものではあるがそれを見せたいと思う相手がいなけりゃ醍醐味も半減というものだ。しかし先輩が言うには目星を付けていたアパートがあるのだが、そこが来週には取り壊し工事があるらしい。場所もこのまま歩いて20分程だし肝試しの内容もアパートの一部屋ずつにノックしていくだけという。正直「えっ、それだけ?」と拍子抜けの内容だったが先輩が手を擦り合わせてお願いしてくるものだから周りが根負けして寄り道していくことになった。

 

例のアパートは木造二階建てのボロ屋だった。裏手に雑木林、表にある1本だけの街頭が時折点滅を繰り返しそれらしい雰囲気を醸し出していた。一見どの街にもいくつかありそうなボロ屋、神社でなければ墓場でもない。どうしてここで肝試しをしようとしたのか尋ねれば、何年も前(いつかは全くわからないらしい)にアパートの住人の一人娘が交通事故で亡くなった事件があったという。ではここにその娘の幽霊がいるのか、それは違うと先輩は続ける。その悲劇に娘をとても可愛がっていた母親が精神を病み一年も待たずに部屋の中で首を釣り後を追った。娘と妻を亡くし家庭を失った夫は耐えられずそのアパートを引っ越した。そして空き部屋になったのだが後々その空き部屋からうめき声や騒音が鳴り出すという苦情が出始めた。そしていつしか住民も居なくなり空き家となったが夜な夜な帰り道で通った人がアパートの一室から件の声を聞くのだとか…

 

いつしかそれが地元の都市伝説になっていたらしく、俺達のような興味本位で訪れる輩はたまにいるらしく先輩も友人から聞いて試したくなったそうだ。

 

そしていざ肝試しとなったわけだがその時点では正直あまり怖くなかった。アパートの前には電灯があったし、やることも各部屋のノックをするだけだ。誰もいない部屋にノックするなんてわけないしなんならピンポンダッシュのほうが緊張感があるだろう。

 

6人いたメンバーでジャンケンをして運がいいのか悪いのか俺が最後を引いた。アパートは二階建てで例の声は二階のどれかからするというのでノックするのは二階の部屋のみで決まった。先輩や友達は各々何事もなく終えてなんとも無かったと豪語する。内何人かは階段で駆け足していたのは足音でわかったから冷やかされていた。そんなこんなで俺もすぐ終わるだろうと2階に登る。何てことはない、8部屋あるドアを順にノックしても結局返答はなかった。内心ほっとしながら階段に足を下ろした瞬間だった

 

 

ガチャ

 

 

それはドアが開く音だった。総毛立つというのはこのときの俺のを言うのだろう。

 

えっ、は、えっ?どっか開いた?ノックが返ってくるんじゃなかったの?

 

頭が体が心臓が逃げろと警報を鳴らす。しかし馬鹿な俺。ここで走ったら下で待つ連中に弄り倒されることも恐れた。ほんとに、今思えばなりふり構わず全力で逃げるべきだったんだ。ひくついていたであろう顔に無理やりポーカーフェイスを貼り付けて何食わぬ顔で階段を折り続けた。幸いなことに追ってくるような足音はしない。聞き間違いだった、そうに違いないと必死に思い込む。登るときはすぐだった階段がこのときばかりは一歩一歩が果てしない時間に感じた。

 

なんとか階段を降りきった俺は若干早足で先輩達のもとに向かう。案の定それをからかわれたが逆に救われる思いだった。もし俺を残してその場を離れていたら一生許さない自身がある。

 

「やっぱり何もなかったなー」

「いやぁ、でもちょっと怖かったっす」

「お前階段小走りで降りてたもんな笑」

「先輩、ブーメラン刺さってますよ」

「えっ」

 

人の気も知らずに談笑し踵を返す先輩方を他所に俺は勇気を出し振り返ってアパートを見た。電灯に照らされた二階のドアはどれも開いてるようには見えない。ほっと息をつく。あれは雰囲気に当てられて幻聴が聞こえたんだと、そう思い先を行く集団を追いかけようとしたその時、肩を叩かれた

 

 

「…ぉあぇ…かぁ?」

 

 

そして俺の『影』に怯える日々が始まった。

 

 




言い訳はしません。忘れてた


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