双賢の姉妹の片割れに転生しました (ナムサン)
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双賢の姉妹の片割れに転生しました

「セーニャーもう行くわよー」

 

「えーもうちょっと待ってよ姉ちゃん」

 

「あんた...それ何杯めのパフェよ。腹壊すからいい加減にやめなさい。全く、そのちっこい体のどこにその量が入るのよ...」

 

「姉ちゃんも食ってただろ?それも2杯もね」

 

「う、うるさいわね。今日中にホムラの里につかないと勇者達に合流できないでしょ!」

 

「はいはい、今行くよ姉ちゃん」

 

 

 

俺ことセーニャには前世の記憶がある。

 

 前世の俺は男でドラクエが好きだった。その中でもドラクエⅪが一番のお気に入りだった。だが、ベロニカが死ぬのだけは許せなかった。過去では生きているとはいえこれだけは許せなかった。

 

 セーニャは回復呪文が得意だったはずだ。ベロニカを守れるように回復呪文を使えるようにならないといけない。

 俺はベロニカと特訓をして原作以上の力をつける必要があると感じていた。

 目標は命の大樹にたどり着く前にウルノーガを始末することだ。

そのためにはグレイグを何とか説得し、協力してもらう必要がある。

 

 10歳のある日、俺はベロニカを守る力をつけるためにベロニカと呪文の特訓をしていた。

 

「メラ!」

「バギ!」

 

 ベロニカがメラを放ち俺がバギを放った。

ベロニカのメラは俺のバギによって完全にかき消され、ベロニカの肌を浅く切り裂いた。

 

「く、やるわねセーニャ」

 

「姉ちゃん!大丈夫⁉︎」

 

 やってしまった。俺はベロニカの体に傷をつけてしまった。

 

「あんたの呪文は厄介ね...あたしの呪文が全部かき消されちゃうじゃない」

 

「ホイミ」

俺は傷つけてしまったベロニカの体を癒すためホイミを唱えた。

 

「ごめんね...姉ちゃんの体を傷つけてしまって」

 

「もう!セーニャ!あたしに対して必要以上に過保護になるのはやめなさいといつも言ってるでしょ!」

 

「あたしはセーニャのお姉ちゃんなんだから...」

ベロニカが顔を少し赤くしながら呟いた。

 

 俺はこのベロニカの様子を見て決意した。

この命に変えてでも絶対にベロニカを死なせはしないと。

 

 

物語の始まる一年前

 

 俺達姉妹の遊び場であり、拾われた場所である静寂の森で今後の展望について考えを巡らせているとベロニカがやってきてこんなことを言い出した。

 

「セーニャ?なんかあたしに隠しごとしてるわね?」

「ね、姉ちゃんなんでそう思うんだ?」

 

 いつも通り鋭いベロニカに動揺した返事を返してしまったがもう遅い。

 

「あたしはあんたのお姉ちゃんよ?妹に何か困ったことがあったら手を貸すのは当たり前でしょ」

 

「ごめん姉ちゃんそれは話せないんだ...」

 

原作知識は話すことによって原作との剥離が生じる恐れがあった。

そんな危険な橋を渡る勇気は俺にはなかった。

 

「セーニャ...あんたにとってあたしはそんなに信用ないの?

妹であるあんたに助けられてばっかりであたしにも少しは協力させてよ!!あんまり心配かけないでよ!!」

ベロニカが肩を震わせて涙を滲ませながら訴えた。

 

「姉ちゃん...」

 

 後悔した。ベロニカにここまでの心配をかけているとは思わなかったのだ。俺は話せる原作知識をベロニカに話すことにした。

 

「ごめんね姉ちゃんそこまでの心配を掛けているとは思わなかったんだ。俺の今話せる知識を聞いてほしいんだ」

 

「ふん!最初からそう言えばいいのよ!これからはこのベロニカさまに遠慮なく頼るのよ!」

 

 

 話す内容はデルカダール王がウルノーガに憑依され意識を失っていること、ベロニカがデンダという魔物に子供の姿に変えられること。最後に主人公こと勇者が悪魔の子と言われ始めた時点でホムラの里に行けば勇者に会えるということを伝えた。

 

 ベロニカが旅の途中で命を落とすかもしれないと言うことは伝えなかった。ベロニカが不安を感じると思ったからだ。

それにベロニカは俺が守ると決めている。

 

「ふーん、あんたの話によればあたしはデンダとかいう魔物に魔力を吸い取られて子供の姿に変えられるのね」

 

「姉ちゃんは疑わないのか?俺が嘘をついているかもしれないって」

 

「最初は当然嘘だと思ったわよ。でもセーニャの真剣な表情を見て真実だと気づいたわよ。それに妹の言うことは信じてあげないとね」

 

「出発するわよセーニャ!そのデンダとかいう魔物はこのベロニカさまがぶっ倒してやるわ!」

 

 俺はそんな姉ちゃんの様子を頼もしく思いつつも同時に危なっかしくも思っていた。

 

「わかったよ姉ちゃん、脅威は少しでも減らしておくに限るしね」

 

 大丈夫だ。俺たち姉妹は原作のこの時期よりもとても強くなった。

デンダ程度に遅れをとることはないとこの時は楽観的に考えていた。

 

 こうして物語が始まる一年早く、俺たちはラムダの里を旅立つことになった。

 

 

 

 




続くかは未定です


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2話

 

 ラムダの里を旅立ちホムラの里に向かう二人。

だがホムラの里に向かうに当たって最大の問題が残っていることに気づいた。

 陸地が繋がっていない以上海を渡っていく必要があったのだ。

 

「問題はどうやって海を渡るかなんだけど」

 

「クレイモランから船が出てるんじゃないの?」

 

「今のクレイモランは魔女リーズレットによって氷漬けにされ機能していない可能性があるんだ」

 

(クレイモランは救ってあげたいが

今の強さでリーズレットに挑んでも返り討ちに合い死ぬだけだろう)

 

「それもあんたの持つ記憶なわけね」

 

(原作の姉妹はどうやって海を渡ったんだろうか?確か原作のベロニカはルーラを使えたはずだが)

 

「姉ちゃん、ルーラって使える?」

 

「ルーラ?使えるけど一度も行ったことがないところには飛べないわよ

 

「それ、俺に教えてくれない?俺なら記憶を思い起こせばホムラの里まで飛べるかもしれないんだ」

 

「セーニャにはこの呪文はできれば教えたくなかったんだけど.....そういうことならしょうがないわね」

 

(セーニャも覚悟を持ってあたしに秘密を教えてくれたんだし、あたしだけ逃げるのはずるいわよね)

 

 ベロニカはこの呪文を使ってセーニャがどこか遠くに行ってしまうのが怖くて今まで教えていなかった。

 

「わかったわ、行くわよセーニャ」

姉ちゃんが俺に両手を向ける。

 

「ん〜〜〜〜〜・・・ ・・・えいっ!!」

 

 姉ちゃんの掛け声のあとに俺の中に何か湧き上がる力を感じた。

(これがルーラを覚える感覚なのか.....何かいつもと違う気がする)

 

「どう、セーニャ行けそう?」

俺はゲームの中のホムラの里の風景を思い出す。

 

「うーーーん.......よし、なんとか飛べそうだよ姉ちゃん」

 

俺が行けそうだと思った瞬間とてつもない倦怠感が襲ってきた。

俺はふらつき倒れ気絶してしまった。

 

「え!!ど、どうしたのセーニャ!」

 

 俺が目を覚ますと頭に柔らかい感触と姉ちゃんの顔を近くに感じた。どうやら俺は姉ちゃんに膝枕をされているみたいだ。

 

「よかった.....セーニャ、目を覚ましたのね」

「ごめん姉ちゃん、MPが全て奪われたかのような感覚を感じて立っていられなかったんだ。恐らく最大MPも減っていると思う」

 

「最大MPが減った!?呪文をつかうものにとって致命的じゃない!

いい?もうそれはやっちゃダメよ!」

 

(これはもしかして無理にルーラで飛べる場所を増やそうとした代償だろうか?だとしたら危険だな.....今のMPだけならまだいいがこの感覚では最大MPまで減っているだろう)

 

 辺りを見回すと空は暗くなっていてここがキャンプ地だということに気づいた。

どうやら気絶した俺を姉ちゃんがここまで運んでくれたようだ。

 

「セーニャあんたもお疲れみたいだし、今日はここで休むわよ」

「そうだね、もう暗いし今日はここで休もう」

 

二人は周りが雪の中焚き火で暖を取り、背中を向かい合わせて寝てい

た。

 

俺は寝そべりながら自分の失われたMPに関して不安を感じていた。

(一晩寝ると回復してるといいが....この減ってしまった力で姉ちゃんを守りきれるか心配だ....)

 

 俺が早く寝て明日に備えようと目を瞑った時だった。俺の腰に姉ちゃんの手が回された。姉ちゃんが抱きついてきたのだ。

 

「セーニャあんたはなんでも一人で背負おうとしなくていいのよ」

 

「あたしにはわからない苦労もあんたにはあるのかもしれないけど、困った時はいつでもお姉ちゃんに頼りなさい。いいわね?」

 

 背中に姉ちゃんの体温を感じる。俺も姉ちゃんの方を向き姉ちゃんの腰に手を回す。それと同時にとても良い匂いがした。とても安心する姉ちゃんの匂いだ。

 

「わかってるよ姉ちゃん。俺が困っていれば姉ちゃんが助けに来てくれるんだよね?」

 

「当然よ、真っ先にセーニャを助けに行くわ」

 

「ありがとう、姉ちゃん」

 

 姉ちゃんが俺を抱く力を強めてきた。姉ちゃんに包まれて安心していると眠くなってきた。

 

「セーニャ、あんたは絶対にあたしが何からも守ってあげるわ」

 

 セーニャが眠ったのを確認してからベロニカも意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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3話

 

 翌日、目覚めると体の倦怠感は消えていた。

(よかった。魔力は回復したみたいだ。でもやっぱり最大MPまでは回復しなかったか.....)

 

「あれ、姉ちゃん?」

 

 俺は確か姉ちゃんと抱き合って寝たはずだが目が覚めたら姉ちゃんがいなかった。俺は姉ちゃんを探そうと起きあがろうとした。

 

 ふと頭に柔らかい感触を感じる。どうやらまた俺は姉ちゃんに膝枕されてしかも頭を撫でられているらしい。今、目覚めたばかりだというのにまた眠くなってきた。

 

(気持ちいい....まだ起きたくない)

 

「セーニャはとんだお寝坊さんね、もう1時間はこうしてるわよ?」

「姉ちゃん、もうちょっとだけこうしていていい?」

「全く、セーニャは甘えん坊ね。あたしがいないとてんでダメなんだから。」

 そう言いながら姉ちゃんは頭を撫でるのを再開してくれた。

 

 

 その後俺が起きてすぐにルーラでホムラの里に向かうことになった。

 

 俺は姉ちゃんを落としてしまわないようにお姫様だっこのような形で飛ぶことにした。

 

「しっかり掴まっていてよ」

「わかってるわよ、セーニャ」

 

 姉ちゃんが俺の首に手を回してしがみ付いた。

 

「ルーラ!」

俺の体が少し浮き上がり、その後ものすごい速さで上に射出された。

 

「ぐぅぅ!!」

(なんてすごい呪文なんだ。これはもしかすると攻撃呪文にも使えるかもしれないぞ)

 

 気づけば地面に足がついていた。

1分程度の飛行時間だったのかもしれないが、俺には何倍にも感じられていた。

 

「セーニャ、大丈夫?」

 

姉ちゃんの方を見てみるとこの程度ではなんともないようだった。

 

「うん.....なんとか大丈夫だよ」

少しグロッキーになりふらつきながら答えた。

 

「あたしが使うときはそんなことにはならないんだけど....まあ、すぐに慣れるわよ」

 

「そうだったらいいんだけどね....」

 

(こんな呪文を使っても平気なんて、やっぱり姉ちゃんはすごいなあ)

 

 辺りを見回してみると温泉のようなものに蒸気が噴き出しているのが見える。

どうやら無事ホムスビ山地についたらしい。

 

ホムラの里に入っていくと小太りの男性に入口で話しかけられた。

 

「おやおや、お嬢さんたちは見たところ旅の方のようですね!」

「わたくし、つい先日蒸し風呂を開店したばかりでして、今でしたら先着100名様まで無料でご利用いただけますよ!」

 

 (あれ?この人勇者達が来たときにも開店したばかりとか言っていたような....それに確か原作のベロニカがさらわれたのも蒸し風呂に入っていたときだったな)

 

「あー悪いけど俺たちは...

「お風呂⁉︎喜んで入るわ!セーニャも行くでしょ⁉︎ね?」

 

 (しまった俺が断ろうとしたら姉ちゃんが行くと言ってしまった)

こうなってしまっては俺も行くしかないか.....)

 

「そうだね。一緒に行こうか姉ちゃん」

 

「はい!2名様ご案内〜!さあさあこちらでございます。」

 

 

「セーニャーここの蒸し風呂は中々いいわねー」

 

「そ、そうだね」

(現代日本人としてはできれば普通の風呂に入りたいところだがそれは贅沢というものか.....)

 

 俺がそんな呑気なことを思っていたときだった。

(空気が変わった何か悪しきものに狙われている)

 

「気をつけて姉ちゃん、何者かの悪意を感じる」

(まさかデンダ一味か?時期的には大丈夫なはずだが)

 

「え⁉︎た、確かに何かを感じるわね.....あたしとしたことが気づかないないなんて迂闊だったわ」

 

「ザキ!」

 

俺の放ったザキが柱の影に隠れていたものを狙う。

 

「いきなり即死魔法を放ってくるとは....なんて小娘だ」

 デンダの子分が姿を表した

 

「くそ!即死耐性のある敵だったか!」

 

「ヒャダルコ」

デンダのこぶんが俺にヒャダルコを放つ

 

間一髪で躱したが少し足を切られてしまった。

 

「やってくれたわね!メラミ!」

 

ベロニカがメラミを放つ

 デンダの子分に命中した。しかしあまりダメージを受けていない。

 

「くふふ、今のは効いたぞ。そこの赤い小娘は中々の魔力を秘めているな?この娘をデンダ様に献上すれば俺の立場も上がるだろうなぁ」

 

「やめろ!姉ちゃんに手を出すな!」

(おかしい!なぜこんな奴がここまで強いんだ⁉︎まさかこの世界は原作よりも敵の強さが数段上なのか⁉︎それに何故この時期に蒸し風呂に入って狙われるんだ⁉︎」

 

「おい、まさか俺が一人で来るとでも思ったのか?」

「⁉︎しまっ⁉︎」

「ラリホー」

 

 その言葉とともに後ろに隠れていたデンダのこぶん2匹がラリホーを唱えた。

 

(くそ!せめて姉ちゃんだけでも!)

 

 俺はラリホーによって眠る直前に姉ちゃんを蒸し風呂の外に蹴り飛ばした

その物音によりホムラの里が騒がしくなる。

 

「ち、本当は二人共さらうつもりだったんだが仕方ない、この緑の小娘をデンダ様に献上するか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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4話

「うぅ、こ、ここは.....?」

 

 俺は目覚めて最初に手と脚に違和感を感じた。

自分の状態を確認すると枷を嵌められていた。

前に威圧感を感じ見てみると青い竜が目に入った。

間違いない。こいつがデンダだ。

 

「目が覚めたか女、ここはデンダさまのアジトだ。早速だが、オメーの魔力をいただかせてもらうぞ。おい、この女を押さえつけておけ。」

 

 俺はデンダの子分に床に押さえつけられた。

 

「や、やめろ!!」

 

 自分でも驚くほど情けない声が出た。

体を拘束されているせいか自分がどうしようもなく無力で惨めな存在に思えて目に涙まで滲んできた。

 

「ククク、限界まで魔力を吸いつくしてやるぞ!」

 

 デンダが手に持っている壺で俺の魔力を吸い取り始める。なんとか逃げようとしたが、デンダのこぶんに床に押さえつけられて拘束されているため逃げることが出来ない。

 

「い⁉︎ゔああああああ!!」

 

 俺はせめてもの抵抗として魔力が吸い取られないように歯を食いしばって耐える。

 だが体から力が抜けていく感覚と共に意識が遠くなっていく。

 

「助けて.....姉ちゃん.....」

 

「気を失いやがったか。おい、お前ら、こいつを奥の牢屋にでも放りこんどけ。目を覚ましたら再開だ、限界まで搾り取るぞ。」

 

 

 

ベロニカside

 

 起きたらあたしは宿屋のベッドで寝ていた。誰か親切な人が倒れていたあたしを運んでくれたらしい。

 油断していた。まさかセーニャがさらわれるなんて....あの魔物たち、今度見つけたら絶対に生かしてはおかない。

 

 (確かセーニャは荒野の地下迷宮というところにデンダのアジトがあると言っていたわね。今すぐにでもセーニャを助けに行きたいけど、セーニャが自分で抜け出してくるのを待つべきかしら?)

 

 (駄目だ。セーニャが今も酷い目に遭わされていることを考えれば気が気ではいられない。今すぐに助けに行かなくては)

 

 あたしは宿屋を料金も払わずに飛び出した。

 

 

 

 

セーニャside

 

「う...あ」

 

 俺は冷たい地面の牢屋の中で再び目を覚ました。それと同時に自分の体の異変に気がついた。

 

「体が縮んでる.....」

 

 俺の体は原作のベロニカのように5歳程度の子供の外見になってしまっていた。

 

「とにかくここを抜け出さないと」

 

(確か原作のベロニカは小さくなった体を利用して脱出していたな)

 俺がどうやって逃げ出そうかと思案に耽っていたときだった。

ものすごい爆発音が聞こえた。

 

「もしかして、姉ちゃんが助けに来てくれたのか?」

 

 

 

 

ベロニカside

 

 あたしは走っていた。荒野の地下迷宮は侵入者を避けるための罠が無数に張り巡らされていたがそんなものあたしには関係なかった。

 落とし穴に落ちようともすぐに登り、また走った。

 

 そうしていると青い竜が目に入った。あいつがセーニャの言っていたデンダだとすぐにわかった。

 

「アンタがデンダね、あたしの妹は返してもらうわよ」

 

「なるほど、オレが取り逃した獲物自らきてくれるとはな!オメーの魔力も吸いつくして妹と同じ目に合わせてやるよ!」

 

「アンタ、あたしの妹になにかしたの?」

 

そのときベロニカからドス黒いオーラが解き放たれた。

 

「楽に死ねると思わないことね」

 

「マホトーン!」

 

 デンダのこぶんがラリホーを唱えようとした。しかしベロニカのマホトーンによって呪文を封じ込められ唱えることができなかった

 

「そう、何度も同じ手がこのベロニカさまに通じると思う?」

 

ベロニカの2回行動!

 

ベロニカはベギラゴンを唱えた!

 

「ヴギャァ」

デンダのこぶん A.B.Cを倒した!

 

「よくも、オレさまの可愛いこぶんをやりやがったな!」

 

デンダのつめたいいき!

 

ベロニカはひらりと身をかわした!

 

ベロニカのカウンター!

 

デンダに83のダメージ!

 

ベロニカはマヒャドを唱えた!

 

デンダに186のダメージ!

 

ベロニカの2回行動!

 

ベロニカはメラゾーマを唱えた!

 

デンダに258のダメージ!

 

デンダを倒した!

 

ベロニカはデンダ一味をやっつけた!

 

「ば、馬鹿な、なんだその強さは.....ククク、だがオメーではいずれ復活する魔王さまに勝つことはできねえぞ....」

 

 デンダは黒い煙となって消えた。

 

 あたしはデンダ一味を始末した後セーニャを探すためさらに奥へと進んで行った。

 そこには見た目は小さくなってしまったがあたしの妹セーニャがいた。あたしはセーニャに抱きついた。体が幼くなっているせいかいつもより柔らかくて抱き心地が良かった。

 

「セーニャ...!無事でよかった...!!」

 

「姉ちゃん!やっぱり助けに来てくれたんだね....ありがとう」

 

 セーニャは手と足に枷を嵌められていた。すぐに枷を手で引き千切る。さらに体をよく見てみるといたるところに痣ができているのがわかった。おそらく奴らに殴られたのだろう。それに顔を見てみると泣いた跡があった。余程奴らに痛い目に遭わされたのだ。

 あたしのなかでまたデンダ一味に対する怒りが膨れあがっていくのがわかったが、奴らは既に始末したと思い直し怒りをなんとか鎮める。

 

「ごめん、俺があんな奴らに捕まるなんて.....完全に油断していたよ。

姉ちゃんを守るのは俺の役目なのに.....」

 

「もう安心していいわよ。セーニャを苦しめていた奴らはあたしが全員消したからね」

 あたしはセーニャの頭を優しく撫でながら安心させるように答える。

 

「よく一人で勝てたね...姉ちゃん」

 

「余裕だったわよ!このベロニカさまにできないことはないのよ!」

(本当はセーニャが酷い目に遭わされたことを知っていつもより強い力が出たんだけど)

 

「そういえばデンダが何か壺のようなものを持っていなかった?」

 

(壺、怒りで周りが見えていなかったけどそういえばそんなものがあったような気がする)

 

「確かにあいつの横に何かあったわね」

 

「それに俺の魔力が封じ込められているんだ」

 

「あたしが背負って行ってあげるわ。背中に乗りなさい、セーニャ」

 

 セーニャは傷だらけで疲れているようだったのであたしが背負ってあげることにした。

 

「う、うん」

 

そう言ってセーニャが背中に乗った。とても軽い。あたしは今のセーニャを抱き枕にして寝たらとても気持ちがいいだろうなと思った。

 

「これね...」

 

 あたしはセーニャを優しく降ろす。

セーニャが恐る恐る壺の蓋を取る。すると壺から勢いよく出た緑の魔力がセーニャを包み込んでいく。

 

「ホイミ!」

 

セーニャがホイミを唱えてあたしと自分の傷を治した。

 

「やった!俺に魔力が戻ってきた!でもやっぱり体は小さいままか.....だけどまあこれはいいか」

 

「姿は変わってないみたいだけど、ひとまずは魔力が戻って一安心ね」

(前のセーニャも可愛かったけど、今のセーニャはもっと可愛いわね.....)

 

 あたしは密かにセーニャの姿が元に戻らなかったことに喜びを感じてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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5話

 

「うーん...ここは....」

 

 俺は気づけば、宿屋のベッドに寝かされていた。

実はあの後、今までの疲れが出たのか急に眠たくなってその場に倒れて寝てしまったのだ。

 

「セーニャ、起きたの?」

 

姉ちゃんが俺の顔を覗き込むようにして立っていた。

 

 なぜだか、俺の体が震えて、呼吸も乱れてきた。

デンダに無理やり魔力を奪われたときのことを思い出してしまったのだ。なんとか落ち着こうと、体を縮こませて蹲ったが、止まる気配がない。

 

「もう、大丈夫よ安心しなさいセーニャ」

 

 姉ちゃんが俺の布団に入ってきて、背中から抱きしめてくれた。

ああ、まただ。俺はまた姉ちゃんに甘えようとしている。本当は俺が姉ちゃんを守らなければいけないのに。

 

 どのぐらい時間が経ったのだろうか。姉ちゃんは俺が落ち着くまでずっと抱きしめていてくれたら。いつのまにか体の震えは止まって、呼吸も落ち着いていた。

 

「落ちついた?」

 

「うん、もう大丈夫だよ」

 

「じゃあ、セーニャの服を買いに行きましょ、そんな服じゃ気持ち悪いでしょ?」

 

 俺は服なんかいらないと思ったが、小さくなった影響で服がブカブカになってしまっていることを思い出す。

 

 防具屋についたが姉ちゃんの気に入った服はなかったみたいだ。

 

「うーん、セーニャに似合いそうな服がないわ」

 

「俺は着れればなんでもいいよ」

 

「セーニャは可愛い服を着ないとダメよ。...そうね、サマディーに行けばセーニャに似合う服もあるかもしれないわね。それに勇者が来るまでの時間、どこかで暇をつぶさないといけないし」

 

「わかったよ、姉ちゃん。じゃあ明日にでも出発しよう」

 

 (サマディーか。ファーリス王子の厄介ごとに巻き込まなければいいけど....ま、今の時期は大丈夫かな)

 

 サマディーには上手いデザートがあるといいなあなどと思いながら宿屋に戻る道を歩いていると、おにごっこをしていたらしい少年が話しかけてきた。

 

「あれ、君見ない顔だけどここの子?オイラたちと一緒に遊ばない?」

 

(この少年、よく見ると原作キャラのテバだ。ということは、向こうにいるのがサキか)

 

「ああ、ごめん俺、先を急いでるんだ」

 

「ええ、いいじゃんか。ちょっとだけだからさ」

 

「あら、セーニャあたしは宿屋で待ってるから遊んできてもいいわよ」

 

 俺は今更子供の気分になって遊ぶなどしたくなかったため断ろうとしたが、姉ちゃんがこう言ってしまっては仕方ない。

 

「しょうがないなあ...ちょっとだけだよ」

 

「わーい!ありがとう!オイラはテバ!ねえ、君の名前は?」

 

「セーニャだよ」

 

「じゃあセーニャがおにだよ!オイラたち二人を捕まえるんだ!」

 

 テバとサキ二人が元気よく逃げていく。

 

「やれやれ、子供が俺に勝てると思っているのかな?」

 

 俺は日没まで、テバとサキと遊んだ。テバとサキは、優しくてとても良い子だった。

 

「またね!セーニャ!」

 

「俺も結構楽しかったよ!じゃあね!」

 

 

 

 

テバside

 

オイラはさっきの子が去っていった方向をしばらく見ていた。

(さっき一緒に遊んだセーニャって女の子可愛かったなあ)

 ちょっと大きめの服を着てたのも男みたいな話し方をしてたのも自分を強く見せようとしているようで可愛いと思った。

 

「また、会えるよね....」

 

 

 

 

 俺は疲れ切って姉ちゃんの待つ宿屋に帰った後すぐに寝てしまった。

 

 そして翌日起きて、宿屋で朝ごはんを食べた後にサマディーに向かうために里を出発した。

 

 サマディーに向かう途中、珍しい魔物を見つけた。

 

「姉ちゃん!メタルスライムだよ!」

 

「なんとか倒したいわね...これでも食らいなさい!」

 

 姉ちゃんが持っていた杖でメタルスライムを殴ろうとしたが避けられてしまった。

 メタルスライムは今の攻撃に怯えてしまったのか、すごいスピードで逃げていった。

 

「逃げられたわね」

 

「まあ、これはしょうがないよ」

 

 気を取り直して、歩いているとサマディーが見えてきた。

サマディーの中に入ってみると、何か街が賑わっているようだった。

 

「なんか街が随分と賑わってるね」

 

「ははーん、なるほど.....」 

 

 姉ちゃんが思わせぶりなことを言った。何か知っているらしい。

 

「今は年に一度行われるレースの真っ最中のようね。きっと今はそれで 賑わってるのよ、ちょっと見に行かない?」

 

 姉ちゃんはこう言っているが俺は早く服を着替えたかった。

 

「姉ちゃん、今はそれより俺の服を買いに行かない?いい加減着替えたいんだ」

 

「それもそうね。じゃあ行きましょセーニャ」 

 

 俺と姉ちゃんは防具屋を探すために歩き出す。

防具屋に着いて品を見たが、俺に似合いそうな服はないと思った。だが姉ちゃんにとっては違ったらしい。

 

「セーニャ!これ!これよ!絶対セーニャに似合うわ!」

 

 見てみると姉ちゃんはとんでもない服を嬉しそうに持っていた。

 

「嫌だよ!姉ちゃん!そんな服、ほぼ裸同然じゃないか!」

 

 姉ちゃんが持っていたのは必要最低限のところしか隠されていない服。いわゆるおどりこの服だった。

(原作のセーニャはこんなものを何の恥じらいもなく着ていたのか)

 

「ええ?でもセーニャが着れそうな服はここにはこれしかないわよ?」

 

 姉ちゃんが意地悪そうな笑顔を浮かべてそう言った。

 

「ぐっ...」

 

 そうなのだ。よりによって女性が着ることが出来そうな服は今はこれしか売っていなかったのだ。

 

「はあ、じゃあもうそれでいいよ。ただし条件があるよ」

 

 本当に仕方なく俺はある条件付きで我慢することにした。

 

「条件?何かしら」

 

「姉ちゃんにも、同じ服を着てもらうよ」

 

「あ、あたしもこの服を⁉︎」

 

 姉ちゃんが狼狽えた様子でそう言った。そんなことを言われるのは想定外だったみたいだ。姉ちゃんは少し考えていたようだったが、やがて決心したようにこう言った。

 

「わかったわ!セーニャにだけ着せるのは不公平よね。あたしも着るわよ!」

 

 俺と姉ちゃんは、おどりこの服を購入してまずは姉ちゃんが装備した。

 

 

「姉ちゃん...可愛い....」

 

 そこにはおどりこの服を装備した姉ちゃんが足をくっつけて顔を赤らめながら恥ずかしそうに立っていた。原作のベロニカは露出度の高い見た目装備がなかった。そのため今の姉ちゃんを見ていると背徳的でいけないモノを見ている気分になる。

(完全に舐めていた。おどりこの服を装備した姉ちゃんの破壊力を)

 

 たが俺は心配にもなっていた。姉ちゃんのこの姿を見た街の男たちが劣情を抑えきれず姉ちゃんに襲いかかるかもしれないと。

 

「は、恥ずかしい.....もう!セーニャにも着てもらうわよ!」

 

「もちろん、わかってるよ」

 

 俺もおどりこの服を装備した。

なんだろう。自分でも似合ってるとは思うけど、姉ちゃんに比べれば霞んでしまっているような気がする。

 

「似合ってるわよ!セーニャ!」

 

姉ちゃんが可愛い笑顔になってそう言った。

(姉ちゃんは本当に可愛いなぁ、この笑顔を守るために俺は頑張ろう)

 

 大丈夫よ、セーニャは今は小さいんだから誰もエッチな目で見ることはないわよ。それにもしそんな奴がいたら、あたしがぶっ飛ばしてやるわ!」

 

(確かに男にそういう目で見られるのは怖いけど、その心配は姉ちゃんの方が要りそうだよ)

 

「お二人とも、よくお似合いですよ!

 

 防具屋の女主人に言われて俺たち二人は少し照れてしまった。

 

 俺と姉ちゃんはしばらくの間サマディーに滞在することにした。

 

 

 




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