大震撼は強さを求めたい (ゆっくり霊沙)
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フットボールフロンティア編
プロローグ


 ポンポンポーンと球体が蹴り上げられる

 

 そこにいたのはみすぼらしい少年であった

 

 少年は球体を必死に蹴る

 

 ドリブルをしたかと思えばリフティングを始め、そして木に向かって球体を蹴った

 

 ドゴ、メキメキ ズドン

 

 その球体の正体は金属球であり、倒木した木にめり込んでいた

 

 金属球には白いマジックペンで模様が書かれており、それはサッカーボールのように見えた

 

 金属球にはこう書いていった

 

《復讐》と

 

 蹴った少年の瞳は俗に言うレイプ目という絶望が色濃く現れていたが、その少年の瞳の更に奥にはメラメラと燃え上がる黒い感情が渦巻いていた

 

 少年の名前は大震撼(だい しんかん)……とある男に全てを壊された男の更に残骸でしかない……残りカスでしかなかった

 

 しかしその残りカスは燻り続けた

 

 いつの日か火が着く事を夢見て

 

 ずっとずっと燻り続けた

 

 その煙が奴に届くと信じて

 

 

 

 

 

 

 大震撼の生まれは父親が教師、母親は震撼を産んですぐに体調を崩して亡くなり、その祖父母によって育てられた

 

 震撼は祖父母も好きであったが、父が何よりも大好きだった

 

 震撼の父親はとある中学校の先生をしていた

 

 父親は休みの日も部活動の顧問がありたまにしか遊んではくれなかったが、たまにの休みに必ず父親は震撼とサッカーに関する事をした

 

 例えばサッカーの大会に観戦しに行ったりだとか、庭でサッカーを教えたりだとか

 

 震撼にとってそれはとても楽しく、震撼は次第にサッカーにのめり込んでいった

 

 サッカーをすれば大好きな父親を喜ばせられる

 

 上手くなれば大好きな父親ともっと楽しく過ごせると

 

 震撼の成長を父親は素直に喜んだ

 

 父親もサッカーが大好きだったのだ

 

 そんなある日父親が顧問をしていたサッカー部が地区予選決勝に進出できたと聞いた

 

 父親は喜びながら震撼にも教え子達のプレーを見てほしいと言って、大会に来るように誘ってくれた

 

 父親は大会の都合で別行動をしなければいけないけれど

 

「見ていてくれ! 大江戸中学サッカー部が帝国学園を破って全国へいく姿を!」

 

 父親はそう言ってその日は朝早くから家を飛び出していった

 

 祖父母と震撼はその姿を見送った

 

 

 

 

 

 

 お爺ちゃんの運転で会場である帝国学園に到着したボクは試合が始まるのを楽しみにしていた

 

 パパが監督として指揮する姿を見たかったのだ

 

「衝撃が立派になってねぇ」

 

「母さん衝撃のチームなら無敗の帝国学園だって勝てるさ」

 

 お爺ちゃん達も試合を楽しみにしていた

 

 会場入りして試合がいまかいまかと待っていた

 

 試合開始時刻の45分前に大江戸中学の選手達が入場してきた

 

 選手達はなぜか焦っているようにも見えた

 

 試合開始15分前……パパが出てこない

 

 パパの姿が見えないのだ

 

 そして試合開始時刻になってもパパは現れなかった

 

 大江戸中学は監督不在として棄権せざる終えなくなり、試合することなく敗北した

 

 聞こえてくるのは監督に対しての罵声

 

 観客は暴言を叫び、選手達は涙を流しながら恨み言を言う

 

 そんなハズはない

 

 パパは試合を楽しみにしていたし、朝早く試合のために家から出ていった

 

 なのになのになのに……

 

「……はい、え!? 衝撃が!」

 

「お父さん衝撃がどうしたの」

 

「……衝撃が……死んだ」

 

「……え、え? 死んだ? ……馬鹿を言うんじゃないよ! 衝撃は今朝元気良く出ていったじゃない!」

 

「駐車場の車の中で自殺しているのを発見された……」

 

「じ、自殺!! 自殺ってどういうことよ!」

 

 お爺ちゃんとお婆ちゃんが喧嘩が始まる

 

 ボクは状況が劇的に変化しすぎて全く着いていけなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 震撼はその日のうちに父親である衝撃に病院の霊安室で面会した

 

 そこに居たのは冷たくなって変わり果てた父親の姿であった

 

 祖父母は泣き崩れ、震撼は現実を受け止められずにただ唖然としていた

 

 警察は事件性は無く、一酸化炭素中毒による自殺と言われたが、そんなハズはないと震撼は断言できた

 

 あれだけ父親が誇りだと言って、父親が育てたチーム

 

 例え相手が数十年無敗だからって逃げ出すような相手では無かったハズだ

 

 しかし、それを知るのは震撼と祖父母しか居ない

 

 震撼と祖父母は今回の件で地域のコミュニティーから差別され、虐められるようになる

 

 帝国を恐れて自殺した教師の子供だとか、自身の教え子を信じられてない小心者の家族だとか

 

 誹謗中傷が飛び交った

 

 祖母は周囲の圧により病気になり、メンタルもボロボロだったため耐えきれずに他界

 

 祖父も一気に老け込んでしまった

 

 祖父は親戚の助けも借りて住み慣れ、楽しく過ごした家を手放した

 

 ここに居ては自身も震撼もダメになると感じ取ったのだ

 

 転居先は稲妻町……そこの借家にひっそりと移り住んだ

 

 祖父は不慣れながらに家事を始め、震撼はそれを手伝う生活が始まった

 

 空いた時間、震撼はサッカーをしていた

 

 亡き父との最後の繋がりであるからだ

 

 サッカーをしていれば天国に旅立った父親の衝撃に届くかもしれないと幼き震撼はそう思った

 

 そう思うことにした

 

 それには天国まで届く名声が必要であり、サッカーが上手くなければならなかった

 

 とにかくサッカーボールを蹴った

 

 蹴って蹴って蹴りまくってボールやシューズが幾つもボロボロになって……そう、そうなるまで練習をしていた

 

 少年サッカーチームに入りたかったが、祖父の貯金も限りがある

 

 これからの震撼の学費を考えると近くのサッカーチームの月謝を払うには働かなければならず、消費するボールやシューズの事を考えると震撼もチームに入りたいとは言い出せなかった

 

 そんなある日震撼が町を歩いていると廃材の中から幾つもの鉄球を見つけた

 

 震撼はそれを持ち帰り、サッカーボールの替わりとして特訓に使うようになった

 

 重くて固い鉄球は震撼に負荷をかけ続けた

 

 鉄球で遊んでいる震撼の元にとある刑事がやって来た

 

 なんでも父親の死に疑問を持ち、自身が調査している別件に関係あるのではないかというものだ

 

 刑事さんに祖父と震撼は当時の父親の様子を詳しく話したところ、帝国学園総帥の影山という男性が関わっているのではないかと話された

 

 影山は帝国学園にとって障害となる選手やチームを妨害するためなら手段を選ばないと言う

 

 その話を聞いて震撼は幼いながらに理解した

 

 影山が父親を消したのだと

 

 直接殺したのは違う人物かもしれないが、元を辿れば影山に着くのではないかと

 

『見ていてくれ! 大江戸中学が全国にいく姿を!』

 

 父親の言葉を思い出す

 

 父親が作ったチームは父親に恨みを抱きながら世代が交代した

 

 今さら父親は殺されたのだと言っても信じる人は少ない

 

 事実世間的には自殺したことになっているのだ

 

 悔しい……力の無い自分が

 

 悔しい……真実がわからない現状が

 

 悔しい……大好きな父親が悪者にされるのが

 

 次第に悔しさが父親を葬ったとされる影山に向かう

 

 悔しさは憎しみへと変わり、それが原動力として震撼を動かし始める

 

 刑事さんが帰った後、残された震撼は鉄球を素足で蹴る

 

 痛みは無い

 

 痛みよりも憎しみの方が強いからだ

 

 この日、震撼は復讐を誓う

 

 影山を倒して父親の無念を晴らすのだと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからの特訓は本当に血のにじむ、流血を伴う凄まじいものだった

 

 足の皮がめくれ、身体中に打撲根や内出血跡が至るところにでき、肺が潰れそうになるまで走り、重りを背負って筋トレをする

 

 目は真っ赤に充血し、肩まで伸びていた綺麗な黒髪は散々に乱れ、滝のような汗が地面に滴っていた

 

「はぁ……はぁ……体温上昇、水分不足、冷却を……」

 

 よろよろと水道の蛇口を捻る

 

 吹き出てきた水を浴びながら、水分を補給する

 

「ミッションを確認、ドリブル、障害物を突破、シュート。プロセスを構築……完了」

 

 まるでロボットかのような言動、我流の訓練は体にダメージが蓄積していったが、そんなのお構いなしに練習を続けた

 

「ドリブル良好、突破……不良、再度挑戦……不良、不良、不良……突破は可能、再計算……回転、サイドスピン……ひとりワンツー!」

 

 障害物として置いた割れた三角コーンをひとりワンツーで突破する

 

「……改良開始」

 

 今さっきできたひとりワンツーを何度も何度も繰り返し、技を進化させ、自身に合った技にしていく

 

「重量感と突破力、速度を強化、迂回時のロスを最小限に……」

 

 鉄球を使ってるとは思えない速度でドリブルを続ける

 

「シュート。コース良し、威力不足」

 

「疲労蓄積、休息10分」

 

 ついに疲労が限界に到達し、足が震え始めたところで休憩を取った

 

 頭の休憩中も頭の中ではイメージトレーニングを続ける

 

 シュートの何が良くなかったか

 

 なぜ威力が不足していたのか

 

 純粋に筋力不足だと結論付けると休憩を終了し、筋トレを開始する

 

「1、2、3、4、5……」

 

 鉄球を担いだ状態でスクワット、木を使って逆懸垂、腹筋、背筋etc……日が暮れても月明かりを頼りに練習を続ける

 

「……食事の時間」

 

 夕飯の時間の20分前に練習を切り上げ、震撼は練習機材を片して祖父の待つ借家に帰る

 

「ただいま帰りました」

 

「震撼帰ったか。晩御飯できてるからお風呂に入ってきなさい」

 

「はい、了解しました」

 

 祖父は思う……昔はこうでは無かったと

 

 自身に対してもロボットの様な敬語を使い、全身ボロボロのハズなのに、それを顔に出さない

 

 どれだけ傷ついても、どれだけ死にかけるほど練習しても笑顔を見せてくれることが無い

 

 昔は息子の話題が出る度に満面の笑みを浮かべていたのに……震撼、不甲斐ない祖父でゴメンよ……と

 

 風呂から出た震撼は柔軟を開始する

 

 ぐにゃぐにゃに体をほぐして明日に備える

 

 体をほぐし終わると祖父と一緒に食事を始める

 

 祖父が色々話しかけるが、震撼は事務的な返答をするだけであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 必殺技……サッカーに限らず陸上以外ではほぼほぼ浸透している個人の資質に左右されるテクニックである

 

 火が出たり、波が起こったり、巨大な手が出たり……様々な技が存在する

 

 震撼も技を持っていたりする

 

 例えばひとりワンツーだったりするが、震撼にとってひとりワンツーは必殺技には入らない

 

「ライフル」

 

 鉄球を両足で挟み込み、空中で両腕をプロペラのようにし、体を回転させ、ライフリングのごとくボールを回転させ、ゴールに一直線にぶちこむ震撼の必殺技の1つである

 

 他には『トーチカ』というブロック技も持っている

 

 その名の通りトーチカが現れて進路を防いだり、シュートをブロックする技だ

 

『浸透』

 

 ボールを蹴り上げると同時に分裂させ、砲弾のように打ち込み、敵が混乱している間に突破する技

 

『リトルインパクト』

 

 浸透もう一つの必殺技でボールを自分の頭の高さに蹴り上げ、ボールに向かってサイドキックをする技で、キックと同時に空間に小さな亀裂が入る

 

 以上4つの技(ひとりワンツーを入れれば5つ)を持っていたりする

 

 どれもこれも震撼にとっては威力不足で進化させたいと常々思っている

 

 そのためには地道な特訓をするしかない

 

 試合による経験が無いのでとにかく特訓をするしか能力を伸ばすことができない

 

 しかし、そんな事を覆す出来事が起こる

 

 フットボールフロンティア予選で帝国学園の試合を観ることができたのだ

 

 小学校の友達が旅行で帝国学園の試合のチケットが余っていたから1枚くれたのだが、そこで初めて帝国学園の試合を観ることができた

 

 ジャッジスルー、キラースライド、デスゾーン、パワーシールド

 

 どの技も進化を残しており、明らかに力をセーブしているのが観てとれた

 

 悔しいが今の自分では敵わない

 

 しかし、圧倒的なレベルの試合を観ることで自身の必殺技をどうすれば強くできるかがわかった

 

 分身すれば良いのだ

 

 キラースライドを見てそう思った

 

 足を高速で分裂したように見せるキラースライドと違い分身は必殺技の原動力でもある気を著しく消費する

 

 分身を生み出し、簡単な動作をさせだけでも凄まじく疲れるのだが、震撼は喜んだ

 

「成長の余地大いにあり……よし!」

 

 自ずと鉄球を蹴る足に力が入る

 

 完成すれば帝国学園だって倒せる

 

 そう思えるほどの力を秘めていることがわかったのだ

 

 分身を扱うための特訓を始めた

 

 まずは思考の分裂である

 

 本体が指示を出すとはいえ分身自身が思考を持っていれば咄嗟の判断が楽になると考えられたからだ

 

 精神を分裂させる方法は簡単だ

 

 鏡に向かってお前は誰だというのを繰り返せば精神は徐々に分裂していく

 

 もしくは自身を分裂させるイメージをすれば良い

 

 そして思考を持たない分身をとにかく動かす

 

 普通の人間であれば精神が分裂などしたならば体の主導権を奪い合って盛大な殺し合いの末に自殺か廃人になるのだが、震撼は復讐心と元々壊れていたことにより奇妙な共存をすることができた

 

 震撼は分裂した思考と話し合いながら名前をつけた

 

 [皇帝]と{覇王}、そして自身を(英雄)とした

 

 分身に思考を付与して満足に動かすようになるまで2年の年月が経過していた

 

 ただ、思考を付与できるということは分身を使った練習の効率が通常の3倍になったことを意味し、必殺技の錬度は爆発的に進化し続けることになる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [うむ! 実に充実しているではないか! これなら帝国学園にも通用するのではないか? ]

 

 {ハーハッハッハ! なーに! まだまだ帝国学園に勝つには実力が足りないではないのか? }

 

(さっさとパスをしてください)

 

 今はドリブルとパスを連続で行う練習をしている

 

 思考の2人は私から分裂した思考なのにやたらと煩い

 

 思考が分裂してからというもの私の学校の成績も上がり始めた

 

 皇帝は文系で、覇王は理系が得意だ

 

 授業で聞き逃したところとかをアドバイスをくれる

 

 いっつも脳をフル回転させているけれど脳がオーバーヒートすることはない

 

 脳も3人の人格に対応するために成長しているのかもしれない

 

 小学生6年生となり、身長も伸び始めて大柄とはいかないが、普通の小学生よりは少し背が高いかなってぐらいには背が伸びている

 

 これなら……これならば帝国学園に通用するのでは? 

 

 いや、足りない……圧倒しなければ……

 

 もはや強迫観念のようになった強さへのこだわり

 

 憎しみが、強さへの執念が……震撼を強くする

 


 使える技

 

 ・ライフルV3

 ・真トーチカ

 ・浸透V3

 ・真リトルインパクト

 ・ひとりワンツーV3

 ・??? 

 ・??? 

 ・??? 

 ・??? 

 ・分身フェイント

 ・分身シュート

 ・分身ディフェンス



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大震撼はサッカー部の門を叩きたい

 最近小学校に謎の倒木事件が多発しているから注意するようにと言われた

 

 なんでも鉄球の様な物をぶつけられて倒木しているらしい

 

 怖いですね

 

 ……まぁ震撼の事なのですがね

 

 震撼はその話を聞いて凄まじい汗をかいており、バレませんようにと願った

 

 震撼の願いが通じたのか警察や先生に追求されることもなく、謎の事件として近隣の七不思議となったくらいで事件は収まった

 

 震撼は反省し、以後ゴールの替わりにするのは木では無く、土手の斜面にすることにした

 

 土手では小学生のサッカーチームが練習していたが、震撼は混じること無く自主錬を続けた

 

 で、ここまで鍛えてくると練習が物足りなくなり、砂を詰めた袋を腰にぶら下げる事で重りとして更に負荷をかけるようになった

 

 重りの重量は約50kgにもなり、体が壊れそうになるまで走り、鉄球を蹴り続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 [来月には中学生か……うむ、帝国学園と戦えるな]

 

 {ハーッハッハッハッ! マンモス校の雷門! サッカー部は去年創設された弱小部らしいが帝国学園とたたかえる可能性が出てきたな! }

 

(事前情報読み込み中……)

 

 {あのさぁ、いつまでロボットでいる気だ本体? }

 

(復讐が成就するまで……読み込み完了、雷門中学サッカー部、キャプテン兼部長円堂先輩、部員、染岡先輩、半田先輩……能力未知数)

 

 [うむ、円堂先輩や他の方々も河川敷で練習しているのを見たことがあるのではないか? ]

 

(A.よく見ていませんでした)

 

 {集中し過ぎた本体}

 

 [しかし、少し接触した方が良いのでは? 本体。サッカー部の部員となるのだから好感度を稼いでそんはないと思うがね]

 

(思考中……思考中……A.皇帝の判断は常識的に有りだと判断、本日接触を試みることにする)

 

 {ハーッハッハッハッ! それがいい}

 

 震撼の脳内会議はいつも賑かである

 

 

 

 

 

 

 夕方、河川敷に行くと円堂先輩や他の先輩達が橋の下で練習しているのを見つけた

 

 近づいて観察する

 

 円堂先輩はキーパーの様でグローブを付け、染岡先輩と半田先輩のシュートを受けていた

 

「よし、次染岡!」

 

「いくぜ円堂!」

 

「よし! 来い!」

 

 バゴンと勢いよくシュートが放たれ、それを円堂先輩がパンチでセーブする

 

 コロコロと足下にボールが転がってくる

 

「あ、おーい! そこの君、ボールを取ってくれないか?」

 

「……A.了解しました」

 

 爪先でボールを浮かせてサイドキックでボールを円堂先輩が取りやすい威力で返す

 

「お! ナイスシュート!」

 

「へぇ、やるじゃん」

 

「雷門サッカー部の皆さんとお見受けします。観察してもよろしいでしょうか」

 

「お! 俺達を知ってるのか」

 

「来月からサッカー部に入部したいと思い、情報を収集中、事前に挨拶をと思い、伺った所存」

 

「スゲーできてるなぁ」

 

「なかなか見所のある後輩じゃねーか! 円堂よかったな来期新入部員0は回避できそうだぜ」

 

「あぁ! 君! 名前は!!」

 

「A.大震撼、大でも震撼でも結構です」

 

「大だと言いづらいな……よし! 震撼! お前も混じれよ! 一緒にサッカーやろうぜ!」

 

「……はい、混じらせていただきます」

 

「よし! じゃあ震撼! 円堂に全力でシュートしてみろよ! 円堂なら受け止めてくれるぜ」

 

 染岡先輩からボールを渡された

 

「よし! 来い!」

 

「パワー100%……シュート」

 

 次の瞬間地面が抉れ、ボールは円堂先輩の後の壁に突き刺さった

 

 1テンポ遅れてドゴっと鈍い音がすると、ゴールに見立てていた橋のコンクリートがクレーターのようにボールを中心として陥没していた

 

「は? 「「え?」」」

 

 呆然とする先輩達に突風が遅れて届く

 

「シュート致しました」

 

「な、なんだありゃ?」

 

「見えたか半田」

 

「見える分けねーだろ染岡!」

 

「……スゲー! スゲーよ! 震撼! お前のシュート凄かった! 蹴る動作したと思ったら次の瞬間には蹴り終わって、ボールが横を通りすぎたのもわかんなかった! 見えなかった! スゲーとしか言いようがない! 震撼! お前! 良いストライカーになるよ!」

 

「A.私はディフェンダーを希望します」

 

「ディフェンダー? あれだけのシュートできるならフォワード向きじゃないのか? なぁ染岡」

 

「あぁ、悔しいが俺より良いシュートだった」

 

「A.ディフェンダーならディフェンスゾーンからロングシュートが可能」

 

「ロングシュートって……確かに凄いシュートだったが距離が伸びれば対処されるぞ」

 

「A.必殺技を使えば可能かと」

 

「必殺技! 必殺技が使えるのか!」

 

「はい」

 

「よし、じゃあ必殺技うってみてくれよ! 皆見たいよな!」

 

「ああ! 見てみたい!」

 

「……あぁ」

 

「よし、じゃあどれぐらい離れるか?」

 

「120m」

 

「おいおいコート外じゃねーか!」

 

「まぁまぁ、よし、じゃあ離れるからうってみてくれよ」

 

「了解しました……私が離れます。橋の下では高さが足りませんので」

 

「そうか? 俺はどこら辺に立てば良いか?」

 

「円堂先輩の位置から120mほど離れますのでそこに居てください……では離れます」

 

 凄まじいスピードで離れていく

 

「ドリブルしながらあの速度ってヤバくないか?」

 

「俺の全速力より速いかもしれねぇ」

 

「いきます」

 

「よし来い!」

 

「ライフルV3」

 

 足に挟み、空中で横向きになると腕を広げて回転する

 

 風切り音なのだが、キュィィィィィンという機械音の様な音の後にドンっという鈍い発射音が響いた

 

 ボールは縦長の形状に変わり、まるで弾丸のような形をしていた

 

 それが高速回転しながら円堂先輩めがけて飛んでいく

 

「ぐっ! うわぁ!」

 

 円堂先輩は弾丸の様なボールをキャッチしようとしたが、ボールの威力に負け、体がボールの回転に合わせて一回転してドサリと吹き飛ばされた

 

 ボールは更に数十メートル進んだ後、地面に突き刺さり止まった

 

「「円堂!」」

 

 半田先輩と染岡先輩が円堂先輩を助けに向かう

 

 円堂先輩はグローブを見ながら固まっていた

 

「円堂大丈夫か」

 

「あ、ああ! 止められなかった……なんだあのシュート! スゲェスゲェよ震撼!」

 

 震撼も円堂先輩の近くに駆け寄る

 

「A.必殺シュートのライフルです」

 

「……なぁ! 震撼! 必殺技って俺らにもできるか?」

 

「A.可能ですが、その人に合った技でないと発動しないでしょう」

 

「そうか……いや、ありがとう」

 

「大事なのは気持ちとイメージ。そして発動に値する実力がなければなりません。ライフルは私の始めての必殺技ですが、最初はこんなに威力はありませんでした」

 

「そうなのか」

 

「はい、必殺技は使えば使うほど強くなります。体がそれに合わせる形で筋肉が付くからです」

 

「なるほどな」

 

「なぁなぁ! 震撼なら俺のじいちゃんの特訓ノートの意味を分かるかもしれないから見てくれよ」

 

「ノート?」

 

 円堂先輩はカバンから古びたノートを見せてきた

 

 所々破れかけていたり、黄ばんでいたりする

 

「……エラー、読み込み不能」

 

「あぁ、ゴメンよ! じいちゃん字が汚くて俺にしか読めないんだった……ええっとこれこれ! ゴッドハンド!」

 

「ゴッドハンド?」

 

「グッと握ってバッとしてこう!」

 

「……」

 

「「……」」

 

 {わ、分かるか皇帝}

 

 [とりあえず絵を見た感じ右手に気を集めるのがグッで、手を開いて上に掲げるのがバッ、そして押し出すのがこうではないか? ]

 

(伝えます)

 

「半田分かるか?」

 

「相変わらず分からねぇな」

 

「おそらくですがこうではありませんか?」

 

 皇帝が解析した事を話してみる

 

「グッと握ってバッとしてこう!」

 

 円堂先輩は気を右手に集めるイメージを始めた

 

 そうすると胸から右手に気が集まり、すぐに離散してしまったが、円堂先輩は気を掴むことに成功した

 

「お、おお! 今胸からこう! 熱いのが右手に来る感じがしたぞ!」

 

「やったな円堂!」

 

「あぁ! 一歩前進だ!」

 

 その後円堂先輩にシュートを皆でうって、円堂先輩はゴッドハンドの練習を続けた

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、疲れた」

 

「お疲れ様です半田先輩」

 

「お疲れ震撼……って汗かいてねーなお前、表面上には出ない感じか?」

 

「いえ、負荷が軽く、まだ疲れておりません」

 

「どんなトレーニングしてんだよ……って、そういえば気になってたんだが腰から下げてるのなんだ?」

 

「砂袋です。重りです」

 

「へぇ……って重!」

 

「砂の他に鉛も入っています。1つ10キロあります」

 

「え、じゃあ50キロの重りを付けながら今まで動いてたのか?」

 

「はい」

 

「どんな化け物だよ……」

 

「半田先輩、私の目標は帝国学園を倒し、復讐を完遂することです。その為には先輩達も強くなってもらわなければならないのです。お願いします」

 

「何に対してのお願いなのかいまいち分からねーが、円堂がよく言ってるけどサッカーは楽しくやるものだぞ、帝国学園に恨みがあるのかもしれねーが、復讐はよくないと思うがな」

 

「……」

 

「ま、復讐だとかの話しは円堂にはするな。きっと揉めるからな」

 

「……分かりました」

 

「さて、日も暮れてきたし今日は解散だろうな。震撼また来いよ」

 

「毎日通わせてもらいます」

 

「おーし! 円堂! 染岡! クールダウンしようぜ! 震撼はどうする」

 

「もう少し別の場所で練習をするのでここで別れようかと」

 

「了解! 円堂、染岡! 震撼これで別れるって」

 

「おう! 震撼今日はありかとな! 明日もよろしく頼むぜ!」

 

「よろしくお願い致します」

 

 私は鉄球をカバンから出すとドリブルをしながら帰路についた

 

「……あいつ鉄球でドリブルしてなかったか?」

 

「いや、流石に見間違いだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が先輩方の特訓に加わって約1ヶ月……約1ヶ月で円堂先輩はゴッドハンドを習得し、染岡先輩も必殺シュートのきっかけを掴みかけていた

 

 半田先輩は私のひとりワンツーを教えたところ、真似しようと頑張っている

 

 ひとりワンツーは気とかではなくほぼテクニックなので最初の必殺技にはうってつけである

 

「ゴッドハンド!」

 

「……20%のシュートは止められますか……続いて25%に移行します」

 

「よし! 震撼来い!」

 

 今円堂先輩はゴッドハンドの改良を続けている

 

 ゴッドハンドは素晴らしい技だが、見るからに改良の余地が沢山ある

 

 純粋に気の出力が上がればゴッドハンドの威力、分厚さが上がっていく

 

 完成度もさることながら成長力も期待できる必殺技で、この技を考えた円堂先輩のお祖父さんは天才なんだろう

 

 惜しいのは字の汚さだろうか

 

 もっと分かりやすく書いていれば円堂先輩が習得に苦労することも無かっただろうに……

 

「おい! 震撼見てくれ!」

 

「はい、なんでしょうか染岡先輩」

 

「いくぜ!」

 

 染岡先輩がシュートを放つと青い竜が現れて地面を這うように動き回り、ゴールに見立てた壁に激突する

 

「どうだ! 俺の必殺技ドラゴンクラッシュだ!」

 

「おめでとうございます! なかなかの威力ですね」

 

「あぁ! でも俺はこれに満足してねぇ! 更に凄い必殺シュートを作り出してやるぜ!」

 

「期待しています」

 

 着実に雷門サッカー部はレベルアップしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 桜舞う4月……卒業式と春休みが一瞬で終わり、気がつけば入学式

 

 私はマンモス校と名高い雷門中学に入学した

 

 馬鹿デカイ校舎に幾つものグランド、部活棟等様々な部活がより良い成績を大会で残すべく切磋琢磨していた

 

 雷門中学サッカー部はプレハブ小屋の小さな建物が部室として使われており、木の板でサッカー部と書いてあった

 

 入学し、放課後早速入部届けを持ってサッカー部の部室を叩いた

 

「空いてるぞ!」

 

 円堂先輩の声が聞こえた

 

「失礼します」

 

 中に入ると円堂先輩、半田先輩、染岡先輩、そしてマネージャーの木野先輩(以後木野マネージャー)の4人がニヤニヤしている

 

「円堂先輩……いや、部長、入部届けです。以後よろしくお願いします」

 

「おう! 改めてよろしくな震撼!」

 

「よろしくお願いします」

 

「よしじゃあサッカー部員の勧誘をやるぞ!」

 

「じゃあ俺はチラシ配るよ」

 

「俺は声かけをやる」

 

「染岡君だけだと怖いから私も染岡君に着いていくね」

 

「木野そんなに怖くねーだろ」

 

「もう、染岡君そういうところが怖いのよ。円堂君はどうする?」

 

「じゃあプラカード持って校内声かけて回るよ! 震撼は部室に来た人の対応をしてくれよ」

 

「分かりました。ミッションをインプット」

 

「よし! それじゃあ目指せ部員11人だ!」

 

「「「おー!」」yesマスター」

 

 

 

 

 

 サッカー部の中を物色していると扉をノックする音が聞こえてきた

 

「すまないでやんす! サッカー部に入部したくて来たでやんすが入ってもいいでやんすか?」

 

「空いてます。どうぞ」

 

「失礼するでやんす」

 

 なんか栗っぽい人が入ってきた

 

「あれ! 部員1人でやんすか?」

 

「A.先輩方は勧誘をしに校内に散らばっています」

 

「そうでやんすか……ん? 先輩方ってことは同じ新入生でやんすか?」

 

「Yes」

 

「おお! よかったでやんす! 他に人が居てくれて! おいら栗松鉄平って言うでやんす! よろしくでやんす」

 

「私の名前は大震撼……大でも震撼どちらでも構いません」

 

「そうでやんすか? なら震撼にするでやんす! 震撼よろしくでやんす!」

 

「栗松……よろしくお願いします」

 

 暇なので栗松と部室の前でパス練をすることにし、部室の前で蹴っていると次々と入部希望の人がやって来た

 

 壁山、少林、宍戸の3人がパス練に加わり、日が暮れてきた頃円堂先輩達が戻ってきた

 

「おお! 5人! 初日で5人も来てくれた!」

 

「やったな円堂」

 

「ああ! この調子で目指せ選手11人だ!」

 

 ……が、それ以降入部希望者は現れずに結局先輩方を合わせても8人の選手にマネージャー1人の9人のサッカー部となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入部から1ヶ月……私、円堂先輩、染岡先輩以外の皆はだらけきっていた

 

 グランドを使えないからという理由でモチベーションが上がらず、更に私が他の1年生皆に筋トレやマラソンばっかりを強要しようとしたことで、サッカーより軍隊だと言われ、更にだらけるようになっていた

 

 で、私、ぶちギレた

 

「基礎体力も筋力も無い人間がサッカーしたい? 笑わせるな。もういい勝手にしろ! 私だけでも強くなる」

 

 と言って以来部室に顔を出していない

 

 染岡先輩は

 

「ほっとけ。腐ってるなら腐らせておけ! その間に俺達はどんどん強くなるぞ」

 

 円堂先輩は

 

「いつか気づく日が来るさ! なに、一応半田も他の1年と一緒に居るってことは何か考えがあるんだろ」

 

 と言っているが、半田先輩が一番腐ってる様に見えるのは私だけなのか? 

 

 1ヶ月前の情熱はどこへ行ったのやら……

 

 染岡先輩は必殺シュート作りに熱中しており、円堂先輩のゴッドハンドを破ると息巻いている

 

 先輩2人は河川敷のいつもの場所で、私は散策がてら重りを更に増やしてロードワークをよくするようになっていた

 

 走りながら考える

 

 どんなに狭くてもトレーニングはできる

 

 場所がなければやらないなどふざけた事をぬかしている連中で、もし11人揃っても試合になるのかはたはた疑問である

 

 と、それよりも雷門中学に入って1つ気になった事がある

 

 開かずの扉……盛り上がった小山に扉があり、それが南京錠でロックされてるんだが……凄い気になる

 

 ロードワークを終えるとその扉の前にやって来て

 

 南京錠を触ってみたところ緩んでいる

 

「……」

 

 キョロキョロと周りを確認するが、近くには誰も居ない

 

 [いや、バレるだろ。内申下がるぞ]

 

 {そうだぞ本体やめとけって}

 

「……えい」

 

 ブチンと南京錠が壊れ、扉が開くようになった

 

 [{しーらね}]

 

 好奇心が勝り、中に入ってみる

 

 暗くてよく見えないが、近くにスイッチが有ったので押してみると電気がついた

 

([{おおおおお!? }])

 

 なんと中には地下グランドに様々なマシーンが有るではないか

 

 施設の名前がうっすらと書かれている

 

 名前はイナビカリ修練場と立て札か有った

 

(エラー、中学の地下にこんな施設が有るのが意味不明)

 

 {ラッキー、ラッキー! ここならば思う存分サッカーできるぞ}

 

 [ふむ……あの機械はなんだろう]

 

 色々触ってみたところ一部を除いて使えるようだ

 

 入り口にある大きなレバーを引いたところ機械が動き始めた

 

 すると同時に入り口が閉まり、9999秒と表示され出れなくなった

 

「……タイマーが終わるまで出れないと判断」

 

 後から発射音が響く

 

 振り向きざまにキックするとガトリング砲からサッカーボールが発射されてるじゃないか

 

 それを蹴り返して奥のゴールに入れる

 

「……特訓になると判断、これより特訓を開始します」

 

 マシンガンをシュートで返すこと幾らか

 

 頭上高いコースのシュートは必殺技のトーチカで止めて、ボールを落とす

 

 レベルがどんどん上がっていき、レベル10になると必殺シュート並みの威力に上がった

 

 必殺シュートには必殺技を

 

 ライフルはボールを挟み込む性質上できないので、リトルインパクトでボールを蹴っていく

 

 一発蹴る毎に衝撃が空間に溜まっていくのがわかる

 

 小さな亀裂がミシミシと増え、砕けたフロント硝子のように至るところに亀裂が入っていた

 

 時間で亀裂は修復されていくが、その状態の亀裂にボールで更に押し込んでみることにした

 

 バキバキっと今度は奥に向かって亀裂が入った

 

 そのままシュートすると亀裂に沿ってジグザグにボールが進んでいく

 

「Wインパクト……いや、奥行きが追加された衝撃……リアルインパクト」

 

 {リアルインパクト……いい名前ではないか! }

 

 [うむ、本物の衝撃か]

 

 ただ、現状ではリアルインパクトを放つ為にはキック力が足りない

 

 相手のシュートの威力を反転させることにより今はリアルインパクトを放つことができるので、単独で放つには修行が必要である

 

 幸い機材は充実しているためいつかは完成するだろう

 

「いつかではなく今完成させないでどうするのですか私」

 

 時間はまだまだある

 

 感覚を忘れないうちにやることにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日ボロボロの姿で登校した私にクラスの全員驚いていた

 

「おい、大丈夫か?」

 

「喧嘩でもしたのか」

 

 ボロボロの理由は疲れて必殺技がうまく発動しなくなってきたことにより蹴り返すのが辛くなり、ボールの勢いに負け、ミスキックを連続するようになったからだ

 

 足が動かなくなり、それを体で止めるように動いたことでボロボロになっていた

 

「A.問題ありません。特訓によるものです」

 

「特訓って……怪我するぞ」

 

「A.私は怪我をしません」

 

「いやいや、答えになってないって……」

 

 先生にも心配されたが、私は特訓によるものと言って受け付けなく、先生は心配しながらもホームルームを始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後

 

 サッカー部に久しぶりに行くとボロボロの姿の私にここには居ない円堂先輩、染岡先輩以外の皆が驚いた

 

「サッカーの特訓ができる場所を見つけました」

 

「いやいや、傷だらけじゃないっすか! 大丈夫なんすっすか?」

 

「A.問題ありません」

 

 私は壁山と栗松の首根っこを掴むとズルズルと引きずりイナビカリ修練場に連れていく

 

「俺、150キロあるのに何でこの人軽々引きずれるんすかね!」

 

「ぐるじいでやんす!」

 

 着いたのは開かずの扉

 

 南京錠は昨日破壊したそのままである

 

「おお、お前達か」

 

「古株さん」

 

 用務員の古株さんがそこに居た

 

「昨日ここの南京錠を誰かが壊してな、修理しに来たんだ」

 

「A.私が壊しました。中身も知っております。使わせてはいただけませんか」

 

「ワシの判断では無理だな~、ここの施設は理事長の許可が無いと使えんことになっている。すまんがダメだ」

 

「……そうですか」

 

「なーんだ。お前ら帰るぞ」

 

 半田先輩が皆を引き連れて帰ってしまう

 

「……諦めません。使えばレベルアップが可能なのに使わないなんて持ったいなさすぎます」

 

 そのままの足で私は理事長室に突撃した

 

 そこには理事長は居らず、代わりに女子生徒が紅茶を飲んでいた

 

 生徒会長の雷門夏未先輩である

 

「あら、何か様かしら?」

 

「A.イナビカリ修練場を使わせていただきたく伺いました」

 

「へぇ、どこでその情報を?」

 

「空かずの扉の南京錠を破壊して入ったところ発見しました」

 

「破壊だなんて野蛮ね……イナビカリ修練場の事は知っています。ただあそこの設備使うと電気代が無視できないほどなのよ。それを部員8名の弱小サッカー部に使わせるほど管理側として優しくはできないわね」

 

「いかがすれば使わせていただきますか?」

 

「そうね……選手を11名集めない。そうすれば使わせてあげなくもないわ」

 

「分かりました。集めたら使わせてください」

 

「ええ、良いわ。雷門夏未の言葉は理事長の言葉と同列の意味と保証してあげるわ」

 

 イナビカリ修練場を使うため震撼は部員集めに奮闘することとなるが、入部シーズンはとっくに過ぎており、なかなか入部希望者は現れなかった



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ハス太は震撼を観察したい

この話から少しオリジナル要素が増えていきます


 震撼がサッカー部への勧誘活動をしている姿を円堂先輩は感激し、手伝ってくれるようになった

 

 円堂先輩や染岡先輩には開かずの扉の先にイナビカリ修練場というサッカーの特訓ができる場所があり、使うには部員11人が必要だと伝えた

 

 染岡先輩は勧誘は苦手だと言い、私と円堂先輩が勧誘している間は先に河川敷で特訓してると言っていた

 

 勧誘活動を始めて数日、ここのところ私の事を追跡する何者かが居ることに気がついた

 

 なんか私の事を眺めてるな~程度なのだが、少し気になる

 

 視線の主を捕まえてみることにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロードワークがてら軽いトレーニングを開始したが、まだ視線を感じる

 

 あれからトイレと授業中以外は視線を感じるのだが、上手く捕まえることができない

 

 ただ敵意のある視線ではなく興味関心の方の視線な感じがする

 

 そこで商店街の裏路地に入ってみることにした

 

 ……やはり視線を感じる

 

「近くに居ることは分かっています。出てきたらどうですか?」

 

 ヒューっと風が吹く

 

「やはり感じていたかボクの事を」

 

 突風が吹き終わると金髪に青い瞳を持つ少女のような少年が立っていた

 

 雷門の制服を着ているということは私と同じか先輩なのだろう

 

「いやー、ボクと同じ年なのにここまで鍛えてる人が居るだなんて思わなくてね……少し興味を持ったんだ」

 

「……私の名前は大震撼。あなたの名前は何でしょうかストーカーさん」

 

「ストーカーとは酷いね……黄衣ハス太……ハス太でもハスターでも良いよ震撼君!」

 

「では、ハス太、興味を持ったついでにサッカーをしませんか! サッカー部の部員を集めているのです」

 

 ハス太は可愛く首をコテンと傾け

 

「うーん、そうだね……ボクと勝負をしようか。君からボールを奪えればボクの勝ち、ボクから3分ボールを死守すれば君の勝ち。簡単だろ」

 

 という条件を出してきた

 

「良いでしょう……では空き地に移動しましょう」

 

「はいはーいっと」

 

 

 

 

 

「サッカーボールではなく鉄球でもよいでしょうか? 今手元にサッカーボールが無くて」

 

「うーん、ボクの体じゃ鉄球は流石にキツいかな。ボクが持ってるからそれを使おう」

 

 ハス太はバックからサッカーボールを取り出した

 

 鉄球をハス太のバックの横に置き、軽くアップをする

 

「へぇー、やっぱり震撼はボクが見てきた中学生の中で一番サッカーが上手いと思うよ」

 

「ありがとうございます」

 

「いやいや、お世辞抜きによ……さて、ボクもアップしようかな」

 

 ぐにょぐにょと柔軟を開始するハス太

 

 軟体生物かと思える様な可動域

 

 恐らくハス太はもって生まれた柔軟性の持ち主なのだろう

 

 女性と見間違う様なルックスから新体操やスケートなんかをやっていたら相当モテルのではないかと私は解析する

 

「本当に男なのですか? 男物の服を着ている女性なのではないのですか?」

 

「失礼な、ちゃんと息子が付いてるよ。触ってみる?」

 

「いえ、遠慮いたします」

 

「ざーんねん。震撼になら触っても問題ないんだけどな」

 

 ハス太……ホモの疑惑が浮上し、少し距離を取る

 

「冗談だよ冗談! ハス太ジョークさ!」

 

 状態に全く聞こえない

 

 彼の目は本気だったぞ

 

「さて、じゃあ始めよっか」

 

 ハス太は腕時計のタイマーを始動させ、3分後にアラームが鳴るようにしていた

 

 私もそれを確認し、ミニゲームを始める

 

 まずハス太が普通にボールを取ろうとしてくるが、私は足に磁石が付いているかのような華麗なボールさばきで回避する

 

「やるねー……じゃあこれはどうかな」

 

 ハス太の体から触手が現れる

 

「這いよる触手」

 

 必殺技を使ってきた

 

 体から無数の触手がボールを取ろうと纏わりついてくるが、それを足の風圧で弾き飛ばす

 

「なんと!?」

 

 時間は1分が経過した

 

 まだ私の足にボールがある

 

 触手がまだ私のボールを奪おうとしてくるが、既に動きを見切り始めており、軽々と避け続ける

 

 時間だけが過ぎていき、奪えないことを悟ったのかハス太は触手を引っ込めた

 

「よーし、それじゃあとっておきだ」

 

「強制SANチェック1D100!」

 

 ハス太の顔がこの世の者ではないような化物に変わった様に見えた

 

 脳が生命の危機と警鈴を鳴らす

 

 [とられるぞ! 体借りるぞ! ]

 

 私の意識が飛びそうになり、動けない瞬間にハス太が強襲してきたが、皇帝が体の主導権を一時的に握ることでそれを回避した

 

(あの技は危険です。分身をしていたら全員持ってかれます)

 

 {上手く入れ替わりながら戦うしかないな! }

 

「……へぇー! まさか動けるとはね! 気に入ったよ! やっぱり君は見ていて飽きない! この勝負ボクの負けだ。良いよサッカー部に入ってあげるよ……改めて雷門中学1年生の黄衣ハス太! よろしくね大震撼!」

 

「……ふぅー、よろしくお願いしますハス太」

 

 その後ハス太に必殺技を聞いたところ、小学校の頃趣味程度だが、サッカーをやっていたらしく、そこで必殺技を自力で生み出したらしい

 

 私の事は趣味の人間観察をしていたところ、異常に発達した下半身を見て興味を持ち、ストーキングして情報を集めたらしい

 

 はっきり言って気持ち悪い

 

「まぁまぁ、自分で言うのもなんだけど、ボクそこそこ強いと思うから戦力にはなると思うよ。勿論鍛えてくれるでしょ」

 

「えぇ、まぁ」

 

「あ、鉄球をいきなり蹴らそうとするのはやめてくれよ。足を痛めるからね」

 

 私はさっそく鉄球でサッカーをやろうとしていた為、若干しょんぼりする

 

「はは、まぁ慣れたらやってあげるから、まずはあの磁石みたいなボールさばきを教えてよ」

 

 私は一から説明を始めるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお! 震撼よくやった! さっそく新入部員ゲットだな!」

 

「よろしくお願いします円堂キャプテン」

 

「おう! よろしくなハス太! 守りたい場所はあるか?」

 

「それでは震撼と同じディフェンスを希望します。ミッドフィルダーでも構いませんが」

 

「よし、じゃあとりあえずはディフェンスに着こうか。俺と染岡は河川敷に居るから混じって練習したかったら声かけてくれ」

 

「はい! でもとりあえず震撼と手取り足取りサッカーを習いたいので震撼と行動を共にしてよろしいでしょうか」

 

「そ、そうか……じゃあ震撼、ハス太の事頼んだぞ」

 

「了解しました。円堂先輩」

 

 私が円堂先輩と話終えて直ぐに半田先輩が円堂先輩に話しかける

 

「円堂、冬海卓先生が校長室に来るように呼んでたぞ」

 

「冬海卓先生が?」

 

「もしかしたら廃部の事かもしれねぇぞ」

 

「廃部!!」

 

「私もそんな話噂で聞いたわ」

 

「え! 木野もか!? と、とにかく校長室に行ってくる!」

 

 円堂先輩はドタバタと校舎の方に走っていった

 

「……入部して直ぐに廃部はボク、疫病神みたいになりません?」

 

「A.流石に無いと思います」

 

「そこは断言してほしかったなぁ……とにかくボクらはサッカーするだけです。半田先輩もいかがですか?」

 

「俺はいいや。他の一年見とかないといけないからな」

 

「サボり魔」

 

「震撼何か言ったか?」

 

「いえ、何でもございません」

 

 ハス太を連れて河川敷へと移動した

 

 

 

 

 

 

 

 今日は染岡先輩も河川敷に居らず、橋の下はハス太と私で占有することとなった

 

 で、ハス太にサッカーを指導し始めて分かったのが、ハス太は飲み込みが早く、ディフェンスがめちゃくちゃ上手い事が分かった

 

 ミニゲームでも片鱗は見せていたが、少し指導しただけで、例えば這いよる触手だったら、触手の本数が増え、太くなった

 

「震撼教えるの上手いですね! ボク、みるみる上達できますよ!」

 

「A.ハス太の飲み込みが良い。普通こんなに上手くならない」

 

「あ、でも鉄球はまだ早いかなって……あからさまにがっかりするね」

 

 バックから鉄球を取り出そうとしたら止められた

 

 今日はハス太用に2個持ってきたのに……

 

「というか腰の砂袋多くない? ボクとミニゲームした時もぶら下げてたけどこれ1つどれぐらい重いの?」

 

「A.1つ10kgになります。合計100kgとなります」

 

「ひゃ、百!? え? 体重ちなみに何キロあるんだっけ?」

 

「70キロになりましたね」

 

「165くらいだよね身長」

 

「はい」

 

「ちょ、ちょっと脱いでくれない」

 

「……」

 

「変な目で見ないから!」

 

 私はユニホームを脱ぐ

 

「……えっぐ」

 

 ハス太は絶句してしまった

 

 腹筋は16個に割れ、背中は鬼の顔のように筋肉でできていた

 

 肩から胸にかけてもパンパンに膨らんだ筋肉がピクピクと動いている

 

 そこらの女性よりも筋肉の盛り上りで胸が出ていた

 

 足に至ってはハス太の腕が5本分束にしても勝る太もも、それに負けないくらい太いふくらはぎと自分でもなかなか鍛えていると思うが……

 

「本当に人?」

 

「それは失礼というのではないでしょうか?」

 

「皆に見せた?」

 

「いえ、いつも私が一番に着替えるのでハス太がサッカー部では最初かと」

 

「最初……最初か……ぐへへ」

 

「気持ち悪いですよハス太」

 

「おっと失礼この筋肉なら納得だよ鉄球蹴ってもびくともしないの……ちなみに足のサイズは?」

 

「28.5ですね」

 

「でかいね。まぁその体を支えるにはそれぐらい必要か……」

 

 私はユニホームを着る

 

「うん、ユニホームを着ても盛り上がりが分かるのはやっぱり異常だわ」

 

「そうでしょうか?」

 

 そんなことを話していると染岡先輩が走ってやって来た

 

「おい! 震撼、ハス太! 大変な事になった一旦部室に来い!」

 

「なんでしょう?」

 

「やっぱり廃部?」

 

「いいから来い!」

 

 

 

 

 

 

 

 部室に行くと円堂先輩は顔を真っ赤にしており、他の人は青ざめていた

 

 この様子だけ見ると円堂先輩がガチギレしたのかと思ったが、どうやら違うらしい

 

「おお! 震撼とハス太も来たか! 練習試合が決まった! 相手は帝国学園だ! 負けたり不戦敗だったらサッカー部を廃部にするって偉そうに言ってきたから啖呵切ってきた」

 

 詳しく話を聞くと円堂先輩は校長室に呼ばれたら、生徒会長兼、理事長代理の雷門夏未先輩と校長、顧問の冬海先生が居て、帝国学園との練習試合を申し込まれた事を告げられ、雷門(雷門中学とごっちゃになるので以後夏未先輩)夏未先輩から負けたり人数が足りなくて試合にならなかった場合サッカー部を廃部にすると言われたらしい

 

 それに円堂先輩は怒って啖呵切ってきたらしい

 

 で、皆青ざめているのは40年間無敗の帝国学園と試合したら実力差でコテンパンにされるのが落ちだと思い沈んでいたらしい

 

 練習を続けてきていた染岡先輩も流石に無理だろと突っ込むぐらいヤバい中学である

 

 ヤバい中学であるのだが

 

「……ん? どうしたでやんすか? 震撼。震撼もキャプテンに言ってくれでやんす無理だって」

 

「そうだよ震撼! 俺達ボロボロにされるのが落ちだって」

 

「震撼もふるえてるっすか?」

 

「私は帝国学園に勝つ為に今まで特訓して参りました……奴らを叩き潰す!!」

 

「「「えぇ!!」」」

 

「無理でやんすよいくら震撼が上手くても相手は帝国学園でやんすよ!」

 

「そうっすよ!」

 

「「そうだそうだ」」

 

「栗松、壁山、少林、宍戸……戦ってみなければ分かりませんよ」

 

「そうだぞ皆! サッカーを愛する気持ちが有れば不可能だって可能になる!! とにかく残り2人集めるぞ!」

 

「円堂先輩、部員集め手伝います」

 

「震撼がやるんならボクも手伝います」

 

「そうか! 助かるよ! よーし部員集め頑張るぞ!!」

 

「「おー!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 円堂先輩は放課後鉄塔広場にて特訓するぞと言い、解散となった

 

 私とハス太は部員集めのために相談する

 

「何か案はありますか? ハス太。なければ看板持って走り回りますが」

 

「そうだね……こういう時はあの人に頼ろう」

 

「あの人?」

 

「たぶん今なら本読んでると思うよ。図書室に行こう」

 

 そう言われてハス太に着いていく

 

 図書室に行くと色んな生徒が本を読んだり勉強したりしている

 

 ユニホーム姿の私達はしばしば場違いのように感じた

 

「ほら、そこに居る人」

 

 ハス太は指差すと綺麗な女子生徒が座っていた

 

 綺麗……いや、綺麗すぎる

 

 白髪の眼鏡をかけた女子生徒は静かに本を読んでいるが、その姿を写真や絵にしたら美女の絵(写真)として飾れるぐらい整った顔をしている

 

 ハス太はそんな美女に何の躊躇いもなく話しかけた

 

「ニャル、知恵を貸してほしいんだけど」

 

「はい、何でしょうか?」

 

 本を読む手を止め、ハス太に向かって振り向く

 

「ここでお喋りするのは不味いので廊下に行きましょう。横に居るあなたもそれで良いですね」

 

「……はい」

 

 完全に見とれていた

 

 小声でハス太に聞く

 

「ハス太、彼女は?」

 

二夜瑠璃(にや るり)さん、同じ小学校の同級生で滅茶苦茶頭良いんだ。彼女なら良いアイデアが浮かぶかもと思ってね」

 

「なるほど」

 

 廊下に出るとハス太が話し始める

 

「ニャル~、実はボクサッカー部に入ったんだけど入部そうそう廃部の危機なんだよね。それを回避するので部員集めをしているんだけどあてとかない?」

 

「……少し考えさせて」

 

 ハス太の無茶振りにニャルはメモ帳を取り出しページをペラペラめくる

 

「影野仁……2年C組の生徒。話しかければ承諾してくださると思うわよ」

 

「ありがとうニャル!」

 

「……そこのあなた。名前は?」

 

 私の方を向いてニャルと呼ばれている少女が名前を聞いてきた

 

「大震撼」

 

「……なるほど、英雄ねぇ……では良き夢を」

 

「意味が分かりません」

 

「いつか分かる日が来るかもね」

 

 

 

 

 

 

 

 その後凄まじく存在感が薄い影野先輩を見つけ、サッカー部を助けてほしいと懇願すると入ってくれることとなった

 

 今日は用事があるからと明日から参加するよと言われ、影野先輩と別れた

 

「ニャルちゃんの言った通りでした」

 

「でしょー、ニャルは人を見抜く力も凄くて、今回みたいな人探しなんかは喜んで協力してくれるんだ! ……ふーん、震撼良かったね。ニャルに気に入られたようだよ」

 

「なぜ分かるのですか?」

 

「ニャルは良き夢をと言ったからね……まぁ寝れば何か分かるかもしれないね」

 

「そうですか。楽しみにしています」

 

 その後鉄塔広場に行くと円堂先輩が特訓をしており、それを風丸先輩が助けに入るところで合流した

 

「円堂、お前のその気合い乗った」

 

「ありがとう風丸!」

 

 風丸先輩が助っ人としてサッカー部に入ってくれることとなり影野先輩と合わせてこれで11人が揃った

 

 円堂先輩の特訓を見ていた他のやる気の無かったメンバーも円堂先輩の特訓を見ていた事でやる気になり、夜遅くまで特訓を開始するのだった




黄衣ハス太


強制SAN値チェック ブロック
這いよる触手 ブロック

容姿 ハス太


二夜瑠璃

容姿 眼鏡ニャル子


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帝国は震撼を潰したい

 鉄塔広場での特訓は私にとってはぬるかったので、鉄球を使ってリフティングを続ける

 

「ふー、ん、震撼その鉄の玉軽いでやんすか? いつも蹴ってるでやんすが」

 

「……触ってみればわかるのでは?」

 

「そんじゃ失礼でやんす……重い! 重いでやんす! 何でやんすかこれ! 持ち上がらないでやんすよ!」

 

「なんだなんだ?」

 

「どうした栗松?」

 

「宍戸、少林! 震撼の鉄球触ってみるでやんす」

 

「鉄球? あのいつも震撼が軽そうに蹴ってるあれ? 見た目だけで実は軽いんじゃないかって言ってたやつ?」

 

「そうそれでやんす!」

 

 栗松がゴロゴロと手で転がす

 

 地面は転がった跡で沈み込んでいる

 

「おっも! なんだこれ! ヤバ!」

 

「持ち上がらないよこれ!」

 

「A.約70kgになると思われます」

 

「「「70!?」」」

 

 私は鉄球を蹴り上げ手で掴む

 

「な、何で怪我しないでやんすか!」

 

「A.鍛えてるから」

 

「いやいや答えになってないって」

 

「? 私はできましたよ。鍛えればあなた達でもできると思われます」

 

 彼らは首をブンブンと振って無理だと否定した

 

 無理でも何でもない

 

 無理なら私でもできないハズだ

 

 私はできている

 

 つまりできると言うことだ

 

 恐らく彼ら……いや、助っ人やハス太、染岡先輩も含めて帝国学園と戦える可能性が有るのは円堂先輩くらいだろう

 

 円堂先輩のゴッドハンド……あれなら帝国学園のシュートを止めることが可能だろう

 

 [私自身がいかに点を取り、ゴールを守るかが鍵になるだろう]

 

 {分身初披露は盛大にな}

 

(わかっています。帝国に勝つために協力お願いします)

 

 [{おう! }]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鉄塔広場での特訓の後皆と別れた後に更に練習し、くたくたになりながらベッドに飛び込み、そのまま眠ってしまった

 

 気がつくと白い部屋に私は居た

 

 いや、私だけでない

 

 私の他にも人が居るようだ

 

 1人は茶髪、もう1人は茶髪と黒髪が混ざった様な髪をしていた

 

 どうやら彼らも起きた様だ

 

(声が出ない)

 

 声が出ない

 

 口を開こうとしても口をパクパクするだけで声が出てこない

 

 {いや、聞こえている……本体……いや、英雄}

 

 [不思議な夢だ。我々3人が互いに見える夢とはな]

 

(……いや、夢なのか? 床の感触がある。妙にリアルと思われます)

 

 {ふふーん、1つは夢、もう1つは何か超常現象的なのに巻き込まれたかかな? ただの人格のハズの僕達が互いに分裂しているのも気になる}

 

(……奥に何かありますよ……何でしょうかあれは)

 

 [机に……3つの椅子と砂時計か? ]

 

 {机の上に手紙が有るようだ……よむぞ}

 

【ようこそ××の部屋へ。気に入った人間を連れてくるのが私の趣味でね。私と勝負をしよう。ここから何らかの方法で時間内に出られたのならば帝国学園戦で役に立つ秘伝書を与えよう。失敗したら君はその程度の人間だと言うことだね。せいぜい私を楽しませてくれ】

 

 と書かれていた

 

 読み終えるとふっと扉が4つ現れた

 

(私達の意志疎通は離れていても可能なのと思案します。別々の部屋を探索すべきと提案致します)

 

 {制限時間はこの砂時計か? }

 

 [なるほど謎解きか。楽しそうじゃないか。まずは扉を調べるか]

 

 扉には東西南北と書かれており、材質は全て木製で、簡単に開けることができそうだ

 

(……この部屋の光源は何なんでしょう。明るいですが)

 

 {夢だし、そこら辺はわからなくても仕方ないんじゃない? }

 

 [とりあえず北から行ってみるか]

 

 {じゃあ僕は南に行くよ}

 

(では東に向かいます)

 

 私は別人格と別れて東の部屋に向かう

 

 扉を開けるとクローバーがいっぱい咲いている部屋で、4本の木があった

 

 なっているのは果物の様でブドウ、リンゴ、オレンジ、さくらんぼが実っている

 

 {こちら覇王、キッチンがあった。厚底のフライパンと調味料が数種類さしすせそ全部有るぞ}

 

 [こちら皇帝、北は書斎の様だ色々な種類の本が置いてある……テーブルにメモ書きが有るな]

 

【狂気を包んで召し上がれ。希望を添えればなおよし】

 

(狂気を包む?)

 

 {なんだろう。それだけではわからないな}

 

 [たぶん何かを食べろってことではないか? 覇王、皿はあるか? ]

 

 {3枚有るな。たぶん人数分に合わせてるんだと思う}

 

 [俺はそのままこの部屋を調べるから、どっちか西の部屋に行ってくれないか]

 

(私が行く)

 

 {了解、頼んだ}

 

 私は部屋を出るときたまたま四つ葉のクローバーを見つけたのでそれを拾って部屋を出た

 

 西の部屋に移動するとハス太の技を受けた時のような硬直と体からけたたましい警報がなり続けているかのような嫌な感じがした

 

 それでも扉を開けると中には蛇が居た羽の生えた大きな蛇だ

 

 それはじっとこちらを見ている

 

 それは部屋の奥に有る何かを守るように

 

 部屋の奥へ進もうとすると蛇が道を遮るように前に出てくる

 

 戦う意思は無いようだが、奥に進めばわからない

 

 私は一度部屋を出ることにした

 

 砂時計を確認するとまだまだ時間には余裕が有るようだ

 

(どうしたものか)

 

 [どうした本体? ]

 

(蛇のような怪物が居ました。幸い敵意はありませんでしたが、部屋の奥を守っているかのようでした)

 

 [怪物か]

 

 {こちら覇王、調理棚の裏にメモを見つけたから読み上げるね}

 

【砂糖200g フルーツ各々 水50cc

 ・ヘタを取り、フルーツを良く洗う

 ・フルーツを潰れないように優しく串で刺す

 ・フライパンに水で砂糖を溶かす

 ・熱して弱火で10分煮詰め、煮詰まったら果物を煮詰まった砂糖に転がそう

 ・お皿に置いて冷蔵庫で冷やしたら出来上がり】

 

 と書いてあったらしい

 

(フルーツなら東の扉の奥に4種類ありました)

 

 {包むって飴にして包むことじゃないか? ただ狂気ってのがわからないけど}

 

 [あ、こっちも机の裏を調べたらメモ書きがある]

 

【北は書斎、南は台所、東は鍵が、西には答えと門番が。門番には生の知恵を与えよう】

 

 {知恵……これまた変なワードが出てきたな}

 

 [狂気に知恵か……花言葉か? 果物の別の意味とか]

 

(そういう本はありそうですか?)

 

 [ちょっと待ってね……あ、あった。ん? ]

 

 [どうしました? ]

 

 [一旦皆集合……判断に困るの出てきた]

 

 皇帝に集まるように言われたので北の扉を開け、中に入ると1冊のノートを渡された

 

【大震撼必殺ノートバージョン1】

 

 [中読んでみなよ]

 

 中を読むとそこには私が開発したライフル、トーチカ、リトルインパクト、浸透の秘伝書となっていた

 

 それは私の字であったが、私はそんなノートを書いたことがない

 

 背筋が凍るような感覚に陥った

 

 が、なんとか踏みとどまるとこれについて議論を開始する

 

 [バージョン1が有るってことはバージョン2が有るってことはだと思う]

 

 {僕もそう思うね。本体大丈夫かい、顔色が悪いが}

 

(正常、問題なし)

 

 [まぁ本棚の中には別バージョンは無かった。あとこれだ]

 

【果物の意味の本】

 

 [たぶんこれに書いてあるのが答えだと思う]

 

 その本には付箋が貼っており、付箋のページを開くとリンゴ、オレンジ、ブドウ、さくらんぼの順番となっており、リンゴは知恵、オレンジは純粋、ブドウは狂気、さくらんぼは分裂と書かれていた

 

(思考中……ブドウ飴を作り、それを食べれば良いのではないでしょうか)

 

 [たぶん本体の言ったそれで正解だと思う。が、西の答えと門番も気になる……知恵のリンゴを与えてみるか]

 

 {生でってことはもぎたてを与えた方が良いと思うな}

 

(では私がリンゴを蛇に与える役割をするので、2人はブドウ飴を3つ作っていてください)

 

 [{了解}]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西の扉を開くと門番と書いてあった蛇が再びこちらを見ている

 

 私は蛇に近づきリンゴを地面に置くと蛇はリンゴを丸のみにした

 

「ありがとう知恵を与えてくれて」

 

 大きな蛇は女性のような声で喋り始めた

 

「知恵を与えてくれた勇気ある者はこの奥に通る権利がある。通るかい?」

 

(通ります)

 

「では通ると良い」

 

 蛇は部屋のすみに移動し、通れるようになった

 

 部屋の奥には光るチケットがテーブルに置かれており、それは体に吸い込まれ、力が溢れるような感覚がした

 

 テーブルの裏を一応確認するとメモ書きがやはり貼っており

 

【希望は四つ葉のクローバー】

 

 と書いてあった

 

 私は蛇に会釈をしてから出ようとして気がつく

 

(質問よろしいでしょうか)

 

「なんだい? 大震撼」

 

(これは夢ですか? 現実ですか?)

 

「夢とも言えるし、現実とも言えるよここで死ねば現実でも死ぬ。ここで得た物は現実にも反映されるよ」

 

(なるほど……不思議空間ですね)

 

「まぁね。他に何かあるかい?」

 

「希望は添えてと書かれていましたが、希望も一緒に食べればよろしいのですか?」

 

「そうだね。希望を分けて食べることをお勧めするよ」

 

(希望を分けて……1つ有れば良いのですか?)

 

「さぁどうでしょうただ、1つも何個でもあなたなら変わらないと思いますがね」

 

(ありがとうございました)

 

 私はポケットから四つ葉のクローバーを取り出す

 

(1つでも幾つでも変わらない……人数分用意した方が良いと判断)

 

 私は東の部屋に戻り、クローバーを探したところ、直ぐに3つ集まった

 

(あ、4つ目見つけた……一応持っていきますか)

 

 私は4つ四つ葉のクローバーを持って台所のある南の部屋に移動した

 

 移動すると皇帝と覇王がブドウ飴を作り終えたところだったらしく、これから冷やすらしい

 

 中央の部屋に戻り砂時計を確認するとまだ時間は余っている

 

(四つ葉のクローバーも一緒に食べることで良いことが起こるらしい事がわかりました。一緒に食べようと思います)

 

 [{了解}]

 

 {そういえば門番の奥には何が有ったのかい? }

 

(光るチケットが有ったのですが、体に吸い込まれてしまいました)

 

 [光るチケットか……]

 

 10分間せっかくなので雑談をする

 

 帝国学園との練習試合をどのように戦うか話しているとブドウ飴は冷えて固まった

 

(結構個数ありますね)

 

 [足りなくても嫌だから少し多めに作ってみたよ]

 

(せっかくですので蛇にもあげませんか? クローバーも4つありますし)

 

 {良いんじゃないか? }

 

 [別に困ることも無いからね]

 

 私達は飴を持って蛇のいる西の部屋に行き、クローバーを添えて、蛇の目の前に置いた

 

「おや、私の分も作ってくれたのかい! ありがとう」

 

(ではいただきます)

 

 パクっと全員でクローバーごと食べると不思議な味がした

 

 ブドウの味でもクローバーの味でも砂糖の甘さでもない

 

 ただ、体から希望に満ち溢れ、意識が冴えていくように感じた

 

【おめでとう。やはり私の目に狂いは無かった。さてそれじゃあご褒美をあげよう】

 

 脳内に直接声が響いたかと思うと、私の目の前にノートが現れた

 

 開いてみると頭に読んだ字や絵が刷り込まれていく

 

 技名は皇帝ペンギン1号と分身ペンギンと言う技らしい

 

 ノートを読み終わると意識が途絶え、気がつけばベッドの上だった

 

 再び声が聞こえてきた

 

【蛇を助けたご褒美にHPとMPを2ずつ、INTを5あげよう。また遊ぼう】

 

 時間を見るとまだ夜の23時

 

 飛び起きて、頭に刷り込まれた2つの技と私の必殺ノートバージョン1と書かれていたライフル等の技をノートに模写する

 

 約30分で書き終わると誰でも読めば理解できるのではないかと思うくらい分かりやすくいが、どれも必要な基礎筋力が馬鹿高い事がわかった

 

 私以外でこの技を使えば体にダメージが入ることが分かる

 

 いわば禁断の技だ

 

 分身ペンギンも皇帝ペンギン1号も、そしてライフル等も他の人には教えられない

 

 ただ今回の件でこの世には不思議な事が有ることがわかった

 

 ドラゴンを出したり、巨大な手を作ったりと超次元な技とはまた別の……精神力を削るような何かが有ることがわかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日も円堂先輩が中心となり、特訓を鉄塔広場で行っていた

 

 私は円堂先輩に頼んで皇帝ペンギン1号を受けてもらった

 

 口笛を吹くとペンギンが地面から現れ、私の足に噛みつき、そのままミサイルの様に飛ぶその姿は可愛く思うが、威力は強力だった

 

 何よりこの技は拡張性が高い

 

 円堂先輩はゴッドハンドを出したが、それを砕き、ゴールに見立てた坂に激突してようやく止まった

 

 この皇帝ペンギン1号だが今の段階でライフルV3と互角くらいある

 

 これは鍛えがいがあるぞと思い、特訓に力が入る

 

 サッカーボールを今度は鉄球に変えて皇帝ペンギン1号の練習を始め、それを見ていた風丸先輩と影野先輩はドン引きするのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1週間というのはあっという間で、帝国学園との練習試合の日になった

 

 いつもはグランドを貸してくれないラグビー部も今日は学校側からの要望もありグランドを貸してくれた

 

 自分達のホームグランドなのに使うのが初めてという弱小故の悲しさを感じなからもアップと柔軟を始める

 

 軟体動物みたいにぐにゅぐにゃすると壁山が怖がってしまったり、皆その姿にドン引きしていたが、何で柔軟ごときでドン引きされなければならないと心底不思議に思う

 

 そして天候が曇りに変わった頃に帝国学園サッカー部がデカイ装甲バスに乗ってやって来た

 

 扉が開くとユニホームを着た生徒達が飛び出してレッドカーペットを敷くと左右に整列した

 

 遅れて帝国学園サッカー部の1軍選手達が現れる

 

「ちょ、震撼笑ってるの?」

 

 ハス太も帝国学園サッカー部の主力のオーラに圧倒されていたが、私の顔を見て更に驚く

 

「帝国の無敗伝説は6年前に終わるハズだったんだ」

 

 笑いながら私は帝国学園の選手を見ていた

 

 私はロープの結びをほどく

 

 ドンドンドンドンと地面に袋が落ちる

 

「ミッションスタート」

 

 

 

 

 

 

 

 

 雷門の選手は当日に参加を表明したマックスとメガネを加えた13名となり、メガネは

 

「ここ一番で出してください」

 

 と言ってベンチスタート

 

 ハス太も体力的に前半からの出場は持たないと円堂先輩に進言してハス太もベンチでスタートすることになった

 

 私は4番のユニホームを着て出場する

 

 円堂先輩が帝国学園のキャプテンに挨拶する

 

「雷門中サッカー部キャプテン円堂守です。練習試合の申し込みありがとうございます」

 

「初めてのグランドなんでね……ウォーミングアップしても良いかな」

 

「あ、どうぞ」

 

 帝国学園の選手達がウォーミングアップを開始する

 

「なんだ?」

 

「消えた!!」

 

「おいおいなんだよあの動き」

 

「あんなのと試合するのかよ」

 

 そうしていると円堂先輩に向かって帝国のキャプテンがシュートを蹴り込んだ

 

「「「キャプテン」」」

 

「「円堂!」」

 

 ジューっと焦げる音と、共にシュートを止めた円堂先輩

 

「大丈夫だ。震撼のシュートの方が何倍も強い」

 

「ほー、言うじゃないか」

 

 帝国のキャプテンがやって来てニヤリと笑う

 

「面白くなってきたぜ! 皆! 1週間の特訓の成果をコイツらにみせてやろうぜ!」

 

「「「ええー!!」」」

 

 何人かが情けない声をあげる

 

「あの、キャプテン」

 

「どうした壁山」

 

「ちょっとトイレ行ってくるっす」

 

「まてよ壁山」

 

「震撼?」

 

「まさか敵前逃亡などしないよなぁ」

 

「震撼顔怖いっすよ」

 

 バチンと腹を叩く

 

「うぐ! な、なにするっすか!」

 

「ここで逃げればお前は二度と学校に来れなくしてやる。私と帝国……どちらが怖いか? 顔面が腫れて誰かわからなくしてもいいんだが?」

 

「ひ、ひぇーや、やるっすよだからぶたないでー」

 

「震撼なに壁山を脅してるんだ! 壁山トイレ行くなら早く行ってこい」

 

「は、はいっす!」

 

 壁山はトイレに向かって走っていった

 

 壁山は3分後に急いで帰ってきて試合がいよいよ始まる

 

 円堂先輩が円陣を組もうと言い出し、円陣を組む

 

「いいか、お前ら! 相手は最強かもしれないが、やってみなければわからない! 勝利の女神が微笑むのは最後まで諦めなかった奴だからな!」

 

「「「おう!」」」

 

「よし、じゃあ行こう!」

 

 ポジションはこの様になる

 

 

【挿絵表示】

 

 

 5-4-1の防御よりのフォーメーション

 

「震撼頼んだぞ」

 

「了解致しました」

 

 ピッピーと審判のホイッスルがなる

 

 ボールは帝国学園のキャプテンが先制を譲るとしたのでこちらからスタートとなる

 

 いよいよ試合が始まる




泥紳士様作 毒入りのスープを参考に致しました

ハーメルンのルールに抵触した場合直ぐに改変致します


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ジャンク品は正規品を上回りたい

 試合開始のホイッスルと共に染岡先輩が上がっていく

 

 帝国学園の選手は一切動こうとしない

 

「なめやがって」

 

 染岡先輩がドラゴンクラッシュの態勢に入る

 

「くらいやがれ! ドラゴンクラッシュ」

 

 実況をしていた将棋部の人もこれには大興奮

 

「ふっ」

 

 帝国学園のゴールキーパーが笑みを浮かべると片手でドラゴンクラッシュを受け止めた

 

「な!」

 

「染岡さんの必殺シュートが!」

 

「片手で受け止められたでやんす!」

 

 私以外のディフェンス1年勢が動揺する

 

「鬼道、俺の役目はここまでだ」

 

 帝国学園のゴールキーパーが鬼道と呼ばれた帝国学園のキャプテンへとボールを投げる

 

「始めようか帝国のサッカーを……行け」

 

 鬼道から帝国のフォワード……9番の寺門にパスを出し、寺門はそのままロングシュートを放つ

 

「ミッションスタート」

 

 私はボールを体でブロックした

 

 ジューっとユニホームが少し焦げる

 

「なに?」

 

「震撼大丈夫か!」

 

 円堂先輩が声かけてきたので私は

 

「問題ありません」

 

 と返答した

 

「よし、震撼前線にパスだパス!」

 

 とりあえず近くに居た風丸先輩にパスをだす

 

 すかさず鋭いスライディングが飛んできて風丸先輩を吹き飛ばしながらボールを奪う

 

「そらよ!」

 

 今度は11番の佐久間がシュートをうってくる

 

「解析、ボールの角度よりキック開始」

 

 利き足とは反対になるが、左サイドキックでボールを受け止める

 

「鬼道、面白い奴ってアイツか?」

 

「いや、違うが……掘り出し物が混じっていたらしいな」

 

「パス……カットされる確率90%、これより前線に上がります」

 

『あーっと大! パスではなくドリブルを選択! 帝国学園の選手を躱す躱すセンターラインを越えてシュート態勢だぁ!』

 

「ノーマルシュートパワー100%」

 

 寺門のシュートよりも遥かに強いシュートが源田に襲いかかる

 

「大野、五条ブロック」

 

「へっ!」

 

 両サイドからのキックで弾き飛ばそうとしたが、ボールの威力の方が強く弾き飛ばされた

 

「任せろ! くっ!!」

 

 ボールはギュルギュルと回転した後煙をあげながら止まった

 

「残念だったな」

 

『源田止めた! 大による凄まじいシュートでしたが源田止めました!!』

 

「万丈!」

 

 すかさず帝国は万丈から鬼道へとパスが繋がり前線にボールが渡る

 

「行かせないでやんす!」

 

「邪魔だ」

 

「ぐわぁ!」

 

『おおっとブロックしようとした栗松ボールと接触と同時に弾き飛ばされた!!』

 

「寺門!」

 

「おう! 百烈ショット」

 

「な! 届け!」

 

 円堂先輩はパンチでボールを弾こうとしたが、ボールの威力に負けて円堂先輩ごとゴールに突き刺さった

 

『ゴール! なんというパス回し、なんという突破力! そしてなんというシュートでしょう! これが帝国サッカーなのか! これが本当の帝国学園なのか!!』

 

「すまないみんな。シュートが速すぎてゴッドハンド出せなかった」

 

「A.仕方ありません。私達で取り返していきます」

 

「でもあの速さじゃ俺達着いていけないですよ」

 

 宍戸が泣き言を言う

 

「パスを回せばなんとかなる! アイツらも流石にボールよりは早く走れないハズだ」

 

「思考中、思考中……私は攻撃には参加しません」

 

「震撼なんでだ! お前か染岡しか奴のゴールは破れないんだぞ! 染岡は必殺技を使ったのに止められてる。ならお前の必殺技が頼りなんだ」

 

「半田先輩、これ以上の失点は致命傷になりかねません。前半は耐えましょう。後半ハス太を投入すれば私が攻撃に参加できる余裕が生まれます」

 

「ハス太? アイツそんなに上手いのか?」

 

「成長速度が尋常ではありません。体力さえつけば帝国学園の選手達とも渡り合えると考えております」

 

「なるほど……それほどか……わかった。円堂と一緒にゴールを頼んだぞ震撼」

 

 

 

 

 

 

 

 雷門ボールから試合が再開する

 

 パスを回して帝国を回避しようとするが、実力差が有りすぎて、吹き飛ばされたり、普通にボールを奪われる

 

「喰らえ、ツイン」

 

「ブースト」

 

 佐久間と土門の合体必殺技が炸裂

 

 が、

 

「やらせません」

 

 私がシュートに立ち塞がる

 

「トーチカ改」

 

 ツインブースを地面から現れたトーチカでしっかり防ぐ

 

「壁山!」

 

「松野さん!」

 

 ボールを止めた私は斜め前に居た壁山にパスし、壁山は松野先輩にパスをする

 

「キラースライド」

 

「ぐわぁー!!」

 

 強烈なスライディング必殺技でボールを奪われ、成神がシュートをしてくる

 

 胸でそれをブロックし、私は前線にパスを出し続ける

 

「ディフェンスの奴を潰せ」

 

「「「おう」」」

 

 シュートをブロックし続ける私を潰す方向に帝国は切り替えた

 

「ジャッジスルー」

 

 ボールを私の腹にミスキックしたかと思えば、強烈な蹴りが飛んできた

 

「震撼君!」

 

『あぁっと大に強烈な蹴りが!?』

 

「へ! 弱者がいきがって……なに!」

 

 蹴り込んだ寺門は驚いた

 

 まるで鉄柱を蹴ったかのような感覚

 

 そして同じくらいの身長なのに見下ろされるかのような巨大な何かを目撃したかのような圧

 

 ジャッジスルーをそのまま受け止めた

 

『なんと大選手! ジャッジスルーが効いていない』

 

「馬鹿な!」

 

「震撼こっちでやんす!」

 

「栗松」

 

「そんなハズはない! 喰らえ」

 

 佐久間が栗松けらボールを奪うと私に向かってシュートを放ってくるが私は腹で受け止める

 

『あーっと佐久間の強烈シュートを大は簡単に止めた!』

 

「いいぞ震撼!」

 

「円堂先輩の活躍奪ってしまって申し訳ありません」

 

「良いの良いの! 助かるぞ震撼!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼道、すまない。あのディフェンス想像以上に強い」

 

「……マネージャー、前半の残り時間は」

 

「残り13分です」

 

「よし、他のスタミナを削る。後半奴以外を倒し、数的有利を作るぞ」

 

「「「はっ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

『さぁクーリングブレイクが終わり、試合が再開します。おおっと帝国素早いパス回し! そのままシュートを放つが、これも大によって止められてしまいます受け取った栗松ドリブルで上がっていくが辺見がマークにつきます! 宍戸にパスし、風丸にボールが移り、染岡へと繋ぎます! 染岡そのままドリブルで上がるが、大野によって止められます』

 

「大野、3、6、8、11」

 

 大野は万丈にパスし、万丈は辺見にパス、洞面へと繋がり、最後の佐久間へとボールが回る

 

「は、早い! 追い付けない!」

 

「震撼ばかりに負担をかけるな!」

 

「壁山! 少林!」

 

「「はい」っす」

 

「邪魔だ!」

 

「「うわぁ!」」

 

 2人が吹き飛ばされ、私は逆サイドのマークをしていたので追い付けない

 

「円堂先輩!」

 

「大丈夫だ! 止める!」

 

「ツイン!」

 

「ブースト!!」

 

 佐久間と鬼道のツインブーストが放たれる

 

「たぁぁぁぁ!! ゴッドハンド!!」

 

 巨大な手が現れ、ツインブーストは防がれる

 

「「なに!」」

 

「よし! 震撼!!」

 

「はい! マックス先輩」

 

「はいよ!」

 

 マックス先輩が切り込んで行こうとしたが、いつもよりスピードが出ていない

 

「スタミナ切れ!」

 

 他のメンバーも体力が削られて思うように動けていない

 

「やられた」

 

 ここで前半終了のホイッスルが鳴った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「はぁはぁ……」」」

 

「皆……」

 

「喋る元気もないみたい」

 

 私はずっと帝国メンバーを睨み続ける

 

「どうした皆! まだ1点だ! ここから取り返していくぞ」

 

「キャプテンはいいっすよねゴール前にずっと居るだけだったから……」

 

「俺達ずっと走り回っていてもう動けないでやんすよ」

 

「僕らずっと遊ばれてるって感じがしましたよ」

 

「円堂先輩、後半ゴール頼みました。私はフォワードに上がります」

 

「おう、そうなると4-4-2のベーシックになるか……後半は影野を下げて少林がミッドフィルダーに上がれ、で、少林のポジションに壁山が入ってセンターディフェンダーにハス太行けるな」

 

「はい! 頑張ります」

 

「メガネいつでも行けるように準備しておけよ」

 

「ふ、ふん! わかってますよ」

 

「それじゃあ後半も頑張るぞ」

 

「「おー!!」」

 

「「「お、おぉー……」」」

 

 

 

 

 

 

 

 帝国の目付きが変わった

 

 私は横に居た染岡先輩に声をかける

 

「帝国メンバーの目付きが変化致しました。気をつけてください」

 

「おう、ただ、正直俺も前半でかなり消耗してる。すまない震撼、お前に負担かけるかもしれん」

 

「A.任せてください」

 

『さぁ後半帝国学園からのボールだが』

 

「いくぞ……デスゾーン」

 

 洞面、佐久間、寺門が一気に切り込み

 

 鬼道のパスから技がスタートする

 

「……防げる確率50%確率を上げるには……」

 

「震撼! 任せて!」

 

「……理解」

 

『あぁっと大走り出した! デスゾーンが放たれゴールに向かっているぞ!!』

 

「這いよる触手」

 

 大量の触手がハス太から伸びてデスゾーンに纏わりつくが、デスゾーンの威力の方が強く触手は弾き飛ばされる

 

「キャプテン!」

 

「任せろ!! ゴッドハンド!!」

 

 円堂先輩は右手を天に掲げてゴッドハンドを繰り出す

 

 ゴッドハンドが砕けると同時にボールは円堂先輩がキャッチしていた

 

「ハス太!」

 

「任せてください!」

 

 ハス太が円堂先輩からボールを受け取り、ドリブルを始める

 

「行かせるな!」

 

「いかせねーよ」

 

 成神がガードしようとするが

 

「ふふ」

 

 ハス太はボールを蹴ると羽が生えて成神の周りをくるくると回る

 

 そしてそのまま突破したハス太の足にボールが飛んでくる

 

「エンゼルボールいかがかな」

 

「アイツいつの間にあんな技を」

 

 半田先輩が感心している

 

「震撼!」

 

「ターゲットロックオン……ライフルV3」

 

 パスされたボールを空中で受け取ると、両足で挟み込み、両手をプロペラの如く開き、体を高速回転する

 

 キュィィィィィィンという機械音の後ドンっと発射された

 

「源田止めろ!!」

 

「パワーシールド!!」

 

 一瞬拮抗したが、ライフルの弾丸とかしたボールの貫通力にパワーシールドは負け、ゴールに突き刺さる

 

「馬鹿な」

 

 源田に向かって私は指を指す

 

「私の弾丸はあらゆるものを貫通する」

 

「震撼! よくやった!!」

 

「染岡先輩」

 

 ガシッと腕を組んだ

 

「よし! この調子で逆転だ!!」

 

「「「おう!」」」

 

 

 

 

 

 

 

「源田、帰ったら特訓だな」

 

「すまない鬼道」

 

「掘り出し物かと思ったら、とんだ怪物が居たもんだな」

 

「鬼道どうする。アイツ俺らよりも強いぞ」

 

「狼狽えるな辺見、奴……いや、大震撼か。震撼に常に2人マークに着け、それでこのチームは完封できる……いいか我々は王者帝国。負けは許されない」

 

「「「おう!」」」

 

 

 

 

 

 

『さて、我らが雷門! 大により遂に同点に追い付きました! さぁ後半残り29分、再び雷門は得点を決めることが出きるのでしょうか!! さぁ帝国学園ボールから始まります! おおっとこれは! 大にマークがなんと2人! 帝国学園大を機能不能にするつもりだ!!』

 

『さぁどんどん寺門と佐久間、洞面と鬼道が切り込んでいく! 雷門イレブン全く対応ができてないぞ!!』

 

「いくぞ!」

 

「「「おう!」」」

 

 再びデスゾーンを放ってくる

 

「「「デスゾーン改」」」

 

 先ほどよりも威力が強いデスゾーンがハス太と円堂先輩を襲う

 

「やらせない! 這いよる触手! ぐわぁ!」

 

「ハス太!! くっ! ゴッドハンド!!」

 

 ゴッドハンドにデスゾーンが突き刺さり、一瞬の拮抗の後、ゴッドハンドが粉々に砕け散った

 

「なっ!!」

 

『ゴール! 2対1!! 帝国学園2点目!!』

 

 その後も帝国の猛攻が続く

 

 最初に私にボールを持っていても私を防ぐために5人がかりでボールを奪おうとしてくれば流石に辛い

 

 パスを出そうにも皆ヘロヘロで今にも倒れそうでパスが出せない

 

 無理に突破しようとしてファールを取られてしまった

 

 帝国ボールになる再びデスゾーン改が放たれゴールを決められてしまうこれで3対1

 

 私が防御に回ればこれ以上の失点は無いかもしれないが攻撃力が足りなくて勝てない

 

 ハス太も円堂先輩もデスゾーン改を2回も真っ正面から止めようとしてボロボロだ

 

 私だけが動ける

 

 私だけしか勝ててない

 

 私だけでは……無理だ

 

 {おいおい、僕達を忘れないでもらいたい}

 

 [なんで俺を忘れているのかな]

 

(皇帝、覇王)

 

 {ショウタイムの始まりだ}

 

 

 

 

 

『さぁ雷門からのキックだが! おおっとなんだこれは!! 大選手が3人いる!!』

 

「あれは伊賀島流の分身か!」

 

「{おいおい、ただの分身だと思わないでもらいたい! 僕らには人格もある! }」

 

「[ふん、さぁ本体に5人がかりの諸君で我々は止められまい]」

 

「ミッション再スタート」

 

『大選手は三つ子ではない! 分身です! これは分身なのです! それぞれが自我を持った分身など聞いたことありません!!』

 

「止めろ!!」

 

「[{止められるかぁぁぁ!! }]」

 

「分身フェイント!! からの浸透戦術」

 

『フェイントをした後横一列に広がったと思ったら必殺技の浸透を進化させた新たな必殺技浸透戦術だぁ!! 一瞬消えたかと見間違うほどのスピードで帝国鉄壁の防衛ラインを突破!!』

 

「これ以上の失点はしない!!」

 

「アタックポイント!!」

 

「[{おう! }]」

 

 ピゥイ! 

 

「あれはまさか!! 皇帝ペンギン2号!?」

 

「{[分身ペンギン]}」

 

「フルパワーシールド!!」

 

 先ほどよりも分厚い衝撃波のシールドが展開される

 

「ぐっぐわぁ!!」

 

「させん!!」

 

『あぁっと鬼道が源田の後ろに回り込んでシュートをブロック!! なんとか止めた!』

 

「A.ぶっつけ本番では上手くいきませんか。調整が必要と判断」

 

『本当に分身だった!! 大の体に合体するように消えていきました』

 

「鬼道すまない」

 

「あれは……皇帝ペンギン2号……いや、1人でうっていると考えると皇帝ペンギン1号に匹敵するダメージが足にいっているハズだ……奴はなぜピンピンしている!?」

 

「鬼道!」

 

「すまない考え込んでいた」

 

『しかし、立っているのは大と円堂のみ、残りのメンバーはダメージに耐えきれずに倒れてしまっている!!』

 

「メガネ、メンバーチェンジです。染岡先輩の代わりに入りなさい」

 

「い、嫌だ! 僕ボロボロになりたくない!!」

 

『あーっとメガネ敵前逃亡だ!!』

 

「使えませんね」

 

「{仕方がないさ}」

 

「[我々だけでも戦おう。父さんの代わりに6年前の無念を今! ]」

 

『またも分身だ!! さぁ帝国ボールで始まった! 大選手が分散、寺門と佐久間をきっちりマーク!! これではデスゾーンは放てない!!』

 

「ちっ! 洞面、辺見!」

 

「はい! 「おう!」」

 

『これは別のメンバーでのデスゾーンだ!!』

 

「「「デスゾーン改」」」

 

「止めないと……震撼があれだけ頑張ってるのにボクは……こんなところでくたばってられるか!! 這いよる触手改」

 

『土壇場で黄衣が必殺技を進化させたぁ!!』

 

「無駄だ」

 

「かは!」

 

『しかし、止められない!!』

 

「ゴッドハンド!!」

 

『なんとか円堂止めたぁ!! おや、雷門イレブンのユニホームを着て……あれは昨年1年生ながら木戸川清修のエースストライカーだった豪炎寺が雷門ユニホームを着て登場!!』

 

「豪炎寺!!」

 

「大丈夫か円堂」

 

「あぁ!」

 

 始めてみる先輩だ

 

「いけませんよ! 君はサッカー部の部員では無いでしょ」

 

 顧問の冬海先生がなんか言っているが

 

「いいや、構わない」

 

 と帝国の鬼道がそう宣告し、審判が帝国が認めたため、選手交代を認めると宣言した

 

 今一番重傷なのはハス太なので、ハス太を交代してもらい、私がハス太の代わりにディフェンスに入り、豪炎寺先輩がフォワードにはいってもらう

 

「豪炎寺先輩、何か作戦はございますか」

 

「お前、ロングシュートを放つことできるか」

 

「A.できます」

 

「なら思いっきり放て。俺が合わせる」

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ帝国のコーナーキックからスタート』

 

「分身ディフェンス!」

 

「ぐわぁ!」

 

 洞面からボールを奪った私は豪炎寺先輩が敵陣地へ走っていく姿が見えた

 

 やってやろうじゃないか

 

「ターゲットロック、ライフルV3」

 

 キュィィィィィィンとけたたましい音が再び鳴り始める

 

「GO」

 

 ドンっと超ロングシュートが炸裂した

 

『ペナルティエリアからの超ロングシュート! 流石にこれは!! あぁっと豪炎寺が射線にはいったぁ!!』

 

「ファイヤートルネード」

 

「源田!!」

 

「うぉぉぉぉ!! フルパワーシールドV2」

 

『源田ここで必殺技をパワーアップしたぁぁ!!』

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ミシミシミシ パリーン

 

「なっ!?」

 

『ゴ────ル雷門2点目です!!』

 

「馬鹿な……俺のフルパワーシールドが」

 

「はい、はい……わかりました……撤収だ」

 

 鬼道がそう言うと審判に何かを告げて歩き始めた

 

「たった今、帝国学園から試合放棄の申し入れがあり雷門中学の勝利とします!」

 

「やった……やった勝ったぞ!!」

 

 円堂先輩や他のメンバーはよろよろと立ち上がると抱き合って喜び始めた

 

「豪炎寺先輩、ナイスシュートでした」

 

「……あぁ、お前もな」

 

「豪炎寺! よく来てくれたな助かったよ! これで新生雷門サッカー部始動だ!!」

 

 円堂先輩が豪炎寺先輩に握手しようとしたが、豪炎寺先輩はユニホームを脱ぐと円堂先輩に渡した

 

「今回限りだ」

 

 そう言って立ち去ってしまった

 

「ありがとな豪炎寺!!」

 

「キャプテン、止めないんすか?」

 

「良いんだよ……見ろよ皆!」

 

 円堂先輩は得点板を指差し

 

「この2点、この2点から雷門サッカー部は始まるんだ!!」

 

「「「おぉ!!」」」

 

 無敵の帝国学園から2点を奪い、試合放棄とはいえ勝利したという噂はたちまち他の学校にも広かった

 

 その噂にはこんな話が付属して着いてきた

 

 曰く、帝国を圧倒する実力のストライカーとディフェンダーが3人居たとか

 

 曰く、超人的な運動量だったとか

 

 曰く、帝国の必殺技を受けてもピンピンしていたんだとか

 

 曰く、曰く、曰く……雷門の英雄だとか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕方、私は無傷だったため保健室行きになった皆よりも早く帰ることになった

 

 ぶらぶらと歩いていると一台のリムジンが私の横で止まった

 

「ふふふ、先ほどの試合は見事だった」

 

「影山」

 

「おや、私の名前を知っているのかい」

 

「あなたに殺された大衝撃の息子です」

 

「大衝撃……はて、私は知らないが……あぁ、6年前に大江戸中学の顧問の名前がそんな奴だったか。確か我が校と試合の前に自殺したのだったな」

 

「覚えてるのではありませんか!!」

 

「私が何かしたという証拠は有るのかね」

 

「……」

 

「逆恨みも甚だしいな。まぁよい。お前にチャンスをやろう」

 

「チャンス?」

 

「あぁ、その身体能力雷門で腐らせるのは勿体ない。プロジェクトzに参加したまえ」

 

「断る」

 

「そうか……後悔することになるぞ」

 

「構いません。私はあなたに逆らい続ける」

 

「ふふふ、せいぜい足掻くと良い」

 

 リムジンは進み始めた




失礼、3対2のところを作者が書いていると中にわからなくなり同点としてしまう誤植がありました

正確には3対2ですので修正を続けますが、どこかおかしな所がありましたら報告していただけると幸いです


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ロッカーは温度と体重と

 帝国学園が試合を放棄したため実質的に勝利を手に入れ、廃部は免れた

 

 そのため、翌日部室に行くと皆喜びが抑えられずにいた

 

「震撼! お前、やっぱりスゲーや! 分身したり、ペンギン出したりさ! これからもバシバシゴール決めてくれよ!」

 

「了解致しました。染岡先輩と一緒にゴールを決めていこうと思います」

 

「おう! 俺も頑張るぜ!! なぁ! 今度合体技作らねーか! 豪炎寺にできるんだったら俺にだって!」

 

「構いません。やりましょう」

 

「よっしゃ! 燃えてきた!!」

 

「はいはい、円堂君も染岡君も浮かれるのは良いけどまずは反省でしょ」

 

「いっけね! わりい木野」

 

 木野マネージャーの一声で円堂先輩はホワイトボードを出してミーティングを開始する

 

「まず何がいけなかったかだ」

 

「いや、震撼以外スタミナ無さすぎ」

 

 松野先輩ことマックス先輩がバッサリ

 

 皆一気にテンションが下がった

 

「あ、ごめんよ。ただ事実だろ」

 

「そうだ! 事実はしっかり受け止めないと!! じゃあスタミナを上げるために走り込みだろ! 他には有るか?」

 

「あの、キャプテン、震撼の位置どうするんですか? ディフェンスに居ればキャプテンと合わせてほぼ無敵になるんですが、それだと攻撃力が足りなくないですか」

 

「なんだと! 俺が居るじゃねぇか」

 

「染岡さんの必殺シュートは確かに凄いですけど、帝国のキーパーには通用しなかったじゃないですか!」

 

「豪炎寺さんが居てくれたらなぁ」

 

「そうっすよ。豪炎寺さんが居れば攻守共に磐石になるっすよね」

 

「豪炎寺、豪炎寺って……俺と震撼が居ればどんな鉄壁のゴールでも抉じ開けてやるよ! 居ない奴の話より今ある戦力でどうにかするのが先だろ!」

 

「確かに染岡君の意見も一理有るね」

 

 メガネがドヤ顔でそう言う

 

「でも……キャプテンはどう考えてますか?」

 

「豪炎寺はこれからは無理に誘うつもりは無い。アイツにはアイツの事情がある。ただ、サッカーへの情熱は前の試合で皆見たろ。アイツは必ず来るよ……でも豪炎寺よりも今は反省だ! とりあえず震撼はディフェンスをしてもらう。ただ、攻撃にも参加するリベロが望ましいな」

 

「わかりました」

 

「あとは……ん?」

 

「円堂君、お客さん」

 

 木野マネージャーが扉を開けて戻ってきた

 

 ミーティング中姿が見えないと思ったら外に居たらしい

 

 入ってきたのは夏未先輩がだった

 

 開幕一言

 

「臭いわ」

 

 と部室の匂いについて文句を言う

 

 それにキレた染岡先輩が

 

「木野! なんでこんな奴連れてきた」

 

 と怒鳴る

 

「あらそう、せっかく新しい練習試合の相手を紹介しようと思ったのに、残念ね」

 

「「「練習試合!!」」」

 

「ええ、相手は尾刈斗中よ」

 

「誰か知っているか? 尾刈斗中について?」

 

 全員首をふる

 

「まぁとにかく無様な負けはしないことね。また負けたらサッカー部は廃部にするわ」

 

「またかよー」

 

「ただし、勝ったら……そうね。フットボールフロンティアに出場することを許しましょう」

 

「「「フットボールフロンティア!?」」」

 

「よっしゃ! 皆やるぞ!!」

 

「「「おー!!」」」

 

「単純ね」

 

 

 

 

 

 

 河川敷にて練習をしていると帝国学園戦にてベンチで観戦していた新聞部の音無春奈さんが尾刈斗中の試合情報を持ってきてくれた

 

 なんでも帝国学園戦を見て雷門サッカー部のファンになったんだとか……

 

 尾刈斗中の試合を見ていて音無さんから噂を教えてもらった

 

 尾刈斗中と試合した選手は後日全員高熱を出しただとか

 

 尾刈斗中が負けそうになると突風が吹いて試合が中止になったりだとか

 

 尾刈斗中の相手選手が突然動けなくなったりだとか

 

「そんな感じです!」

 

「キャプテン、俺トイレ行ってくるっす」

 

「あぁ、壁山!」

 

 壁山はトイレにダッシュで行ってしまった

 

「たく、なに噂は噂だ! 俺の必殺シュートでゴールを抉じ開けてやるよ」

 

「ああ、期待してるぜ! 染岡」

 

 

 

 

 

 

 

 夕方、私は図書室に行き、ニャルに話しかけた

 

「帝国学園戦で忙しくて来られませんでしたが、影野先輩の件ありがとうございました。無事に試合を行うことができました」

 

「そう……で」

 

「尾刈斗中の呪いについて何か知りませんでしょうか? 映像は見たのですが、いまいちよくわからないので」

 

「尾刈斗中……あぁ、地木流のところね」

 

「知っているのですか?」

 

「監督なら少し知っているわ。……ふふ、良いことを思い付いた」

 

「良いことですか?」

 

「えぇ、まぁ今私が情報を渡してもあなたの為にならないわ。知識は乗り越えた者にしか身に付かない」

 

「何の話ですか?」

 

「いえ、なんでもないわ。ねぇ、大震撼君。私とゲームをしましょ」

 

「ゲームですか?」

 

「今夜眠る時に持っていきたい物を身に付けて寝なさい。さすれば面白い事が起こるわ」

 

「……!? それってあの不思議な夢の様な何かは!?」

 

「さてどうでしょうね。私はただの人間よ。ちょびっと普通の人とは違うかもしれないけれどね」

 

 ニャルちゃんがパチンと指を鳴らすと私は意識を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気がついたら図書室のテーブルに突っ伏していた

 

 時間は5分とたっていない

 

 ニャルの姿はそこには居らず、図書委員がカウンターで仕事をしているのみで、他には誰も居なかった

 

 私は不思議に思いながらも、鉄球でドリブルしながら帰るのだった……

 

 

 

 

 

 風呂に入り、祖父と食事をとり、勉強をし、ユニホームの洗濯やシューズの調節をしてベッドに潜り込んだ私はニャルの言葉を思い出していた

 

『持っていきたいものを身に付けて寝なさい』

 

 とりあえず私は学校のカバンと砂の重り近くに置いて寝ることにした

 

 ゆっくりとゆっくりと意識が沈んでいき、気がついたら再び白い部屋にカバンと重りを背負った状態で立っていた

 

 白い部屋には目の前にロッカーが5つ並んでおり、部屋を見渡してみると部屋のすみに砂時計が、反対側には体重計が落ちていた

 

 そして私の横には知らない男性が眠っていた

 

 砂時計をまず調べると、落方として約1時間半には全て落ちきるだろうと予測でき、体重計は持ち運べる様になっており、小数点下一桁までわかるようになっている

 

 私が寝間着だけで乗ると70.3kgと表示され、試しに素っ裸で乗ると70.0と表示された

 

 男性はまだ起きそうに無いのでとりあえずロッカーを調べてみる

 

 1つは縦3m、横5mの横長の大きなロッカーで、開いてみると中には色々な物が雑多に収納されており、残りの4つのロッカーは鍵がかかっており、私の腕力でも開きそうにない

 

 とりあえずロッカーの中身を出してみることにし、約5分かけて全て取り出した

 

 電子温度計

 プラスチックのバケツ1つ(水っぽい液体入り)

 熊のぬいぐるみ(21のタグ付き)

 花柄のミトン

 熱々の鍋(赤い液体が沸騰している)

 絵本

 薬3錠(カプセル型)

 薬入れ

 使用済みホッカイロ

 何かの貝殻

 メモ

 

 が入っていた

 

 ちなみに私の持ち物は

 

 鉄球

 重り100kg分

 各種教材

 ノート

 筆記用具(消しゴム、定規、油性ペン、コンパス等も)

 サッカー部のユニホーム

 スパイク

 ミサンガ

 安全祈願の御守り

 父の写真

 

 を持っている

 

 とりあえずメモを読むことにした

 

【制限時間は砂時計が落ちきるまで ロッカーを全て閉めたら出してあげるよ 報酬は何が良いか考えておいてね】

 

 と書いてあった

 

 とりあえず男性を起こすことにした

 

 

 

 

 

 

 男性を揺すると男性はすぐに起きてキョロキョロと周囲を見渡す

 

「なるほど、また巻き込まれましたか」

 

「またというのが気になりますが自己紹介をしませんか? 私は大震撼と言います。中学生です。よろしくお願い致します」

 

「私の名前は地木流灰人。とある中学で教師をしています……そして不思議現象に巻き込まれるのはかれこれ3回目となりますね」

 

「私は2回目です」

 

「おや、その若さで2回とは……気に入られてしまったかもしれませんね」

 

「気に入られる? 何にでしょうか」

 

「神々とでも言えばよろしいかな。まぁろくでもない者達ですよ。彼らは我々に試練を与え、乗り越えれば力を与える代わりに乗り越えられなければ障害や命を失うでしょう」

 

「なるほど……ろくでもありませんね」

 

「で、どこかに砂時計か時計はありましたか?」

 

「部屋のすみに砂時計が置いてありました。下手に動かすとまずいと思ったので置いてあります」

 

「そうですね。それが正解です。砂時計は動かすとろくでもない事が起こることが過去2回では有ったのでね。お、今回は持ち物アリですか」

 

「持ち物アリというと?」

 

「こういう不思議現象この時は持ち物が全て没収される夢のパターンと、持ち物を全て持っている現実パターンがあります。まぁ夢パターンでも死んだら現実でも死ぬのですがね」

 

「ずいぶんお詳しいですね」

 

「……昔、友人を5人失ってね。私だけが生還した事があったのだよ……今は昔話をしている暇はないから。ちゃっちゃと謎をときましょうか」

 

「それならまずメモでしょうか」

 

 私はメモを見せる

 

「……なるほど。荷物は全部出したのですよね?」

 

「A.全て出しました」

 

「では今開いているロッカーの扉を閉めてみましょう」

 

 そうするとロッカーはガチャンという音が2回した

 

 どうやら横のロッカーが開いた様だ

 

 ロッカーを開けると中に100というメモと油性ペンで書かれたと思われる文字があった

 

【一度に開くロッカーは1つ 物はいくらでも入る】

 

 手でメモを取ろうとしたが、不思議な力で触ることができない

 

「100ですか……何か100に関連する物はあったりしますか?」

 

「A.私が持ってきた重りがちょうど100kgあります」

 

「なるほど、ではそれを入れてみてくださいと言いたいのですが、他に法則があるかもしれません。探してみましょう」

 

「それならグツグツと沸騰している鍋の温度を確認しましょうか」

 

「そうですね。それが良さそうです」

 

 鍋に電子温度計をかざすと100℃と表示された

 

「100℃ありましたね」

 

「他に100に関連する物か……」

 

「私の持っているノートが100円で買いましたがこれもどうでしょうか?」

 

「あとは私の財布にある100円玉が15枚か……とりあえず100円を入れてみるか」

 

「鍋でなくてよろしいので?」

 

「鍋は後で使うかもしれない。これが何かのキーアイテムだった時に入れて開きませんってなったら困るだろ」

 

「確かにそうですね」

 

 100円を入れてロッカーを閉めると再び2回音がした

 

 ロッカーの中には21のメモと油性ペンで

 

【一度鍵を閉めたら二度と開かない 例えどれだけ出たくても】

 

 と書いてあった

 

「何か21に関係する物はあるかい?」

 

「熊のぬいぐるみが21でした。重さや温度も図ってみます?」

 

「そうだな。熊のぬいぐるみをはかってみよう」

 

 熊のぬいぐるみは2.1kg、温度は21℃を示した

 

「温度、重さ、価値……どうやら21に関係すればなんでも良いのかもしれないね……ずいぶんと優しい空間だこと」

 

「地木流先生の行った所は違かったのですか?」

 

「あぁ、殺意が凄くてね。私は死に物狂いで生還したよ」

 

「難易度が違う……なぜそれほどまでに違うのか……」

 

「わからない……わからないがとにかく続けよう」

 

 とりあえず熊のぬいぐるみをロッカーに入れると次のロッカーが開いた

 

 次は55と書かれた紙が貼り付けられていたが、それ以外には何も書いていなかった

 

 温度だとカイロの温度が55度、地木流先生の小銭で合わせることも可能だ

 

「すみません、55と紙に書いたらどうなりますか?」

 

「なるほどやってみるか」

 

 私はノートのページを破いて55と書いて中に入れてみた

 

 するとロッカーは鍵がかかり最後の扉が開いた

 

 中には死体が入っており、それをどかすと人と書かれていた

 

「白骨化していますね」

 

「あぁ、ロッカーの内部を見ると相当もがき苦しんだのだろうな」

 

「数字を入れていって最後に人が指定されてるのでわからないと我々のどちらかを入れろという様に見せかけて争わせるのが目的なのでしょう」

 

「人……人か。少し絵本を読んで良いか」

 

「はい、どうぞ」

 

「……あった。人って文字が何ヵ所か有るな。人って文字だけが漢字であとは全てひらがなだ」

 

「持ち物に書き物とペンが無かった時の救済措置に見えなくも無いですが」

 

「最後の最後に引っかけを用意してくる辺りなかなかだな」

 

「それ以外では何か人に出きる要素有りますでしょうか」

 

「たぶんこれだろ」

 

 先生は鍋に入った液体をミトンの先に染み込ませるとロッカーの床に人と書いた

 

 ロッカーを閉めるとガチャンと鍵が閉まる音がした

 

「当たりの様ですね」

 

 すると今まで白い空間でしかなかった場所に扉が現れた

 

「時間は……ふむ、あと1時間あるようですね。いやー、久しぶりの不思議な空間でしたが簡単で良かった……私はそろそろ帰るとしますが大君はどうしますか?」

 

「少しこの部屋を調べてから帰ろうと思います……あと、地木流先生は尾刈斗中サッカー部の顧問ではありませんか?」

 

「おや、知っていたのですか……えぇ、私は尾刈斗中サッカー部の顧問をやっています。それが何か?」

 

「いえ、私雷門サッカー部の選手なので今度の練習試合よろしくお願いします」

 

「おや、雷門の選手でしたか……良く鍛えられていますね。帝国を恐れさせたディフェンダーは貴方でしょ」

 

「わかりません」

 

「なに、これでも何百人と選手を見てきたのでわかりますよ。その筋肉の付きかたは異常だ。まるで英雄症候群みたいにも見えますよ」

 

「英雄症候群……」

 

「筋肉が異常発達する病気ですよ。まぁその反応だと違うようですがね……ふふ、ここで出会ったのも何かの運命かもしれません。試合楽しみにしてますよ」

 

 そう言うと先生は荷物を持って扉から出ていってしまった

 

 私は散らばった道具を整理して、この部屋に他にギミックは無いかを確認していくが、特に無く、とりあえず絵本を読んでみることにした

 

 内容は以下の通りだ

 

【・人と宇宙人の交わり

 ・腹ペコツトグァ

 ・採掘ミ=ゴ君】

 

 と3つの話が可愛らしいイラストと共に書かれていた

 

 確かに人の字だけが漢字でそれ以外はひらがなで書かれている

 

 最後のページを見るとなにやら暗号の様な文字で書かれており、解読することはできなかった

 

 で、私は最後に残った謎の貝殻がとても気になった

 

 砂時計の時間を見ると残り1/3ほどになっていたので、これ以上の確認は辞めて、私もこの空間から出ることにした

 

 とりあえず絵本と貝殻を持って帰ることにし、部屋を出るのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気がつくとベッドの上で寝ており、時計は朝の4時を示していた

 

 ベッドの横には重りや鉄球、カバンなどが置かれており、カバンの上に謎の貝殻と絵本もそこに置かれていた

 

「なんなのでしょうか……これは?」

 

 とりあえず絵本を本棚に、貝殻を持ってみるとなぜか懐かしさを覚えながら机の上に置き、朝練を開始する震撼であった




shinae様の【ロッカー】を改造した物となっています

制作者に感謝を

改造したらだいぶ優しくなってしまいました

体重計は要らなかったな正直

注意された場合内容を変更する場合がございます

よろしくお願い致します


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尾刈斗中は震撼を止めたい

 自主的な朝練、シャワーを浴びて朝食を取り、サッカー部の朝練に参加し、授業を受けて放課後

 

 円堂先輩に練習に遅れる旨を伝え、私は図書室に向かった

 

 図書室にはやはり白髪の少女が本を読んでいた

 

「ニャル、少し話があります。よろしいでしょうか」

 

「えぇ、良いわ。まぁ、何を聞きたいか予想は出きるけどね」

 

 私達は廊下に出てニャルに昨日の夢のような出来事について話し

 

「あなたが夢……いや、何らかの方法で別空間に飛ばしていると思考します。合ってますでしょうか」

 

「えぇ、合っているわ」

 

「あなたは何者なのです? そもそも人間なのですか? あんな事を出きるなんて人とは思えないのですが」

 

「そうね……まず私は人か人でないかと言えば人よ。ただ、脳を移植された改造人間だけどね」

 

「……?」

 

「まぁ理解できないわよね……ハス太もちなみに改造人間よ。もっとも彼は耐えきれなくて廃棄されたけど」

 

「……待ってください。廃棄だとか改造人間だとか訳がわからないのですが少々整理させてください」

 

 とりあえず今の情報でわかることはニャルとハス太は改造人間で、脳を移植されたらしい(となると別の肉体が有ったことになるのか?)

 

 となると改造を行っている何者か(人もしくは人ならざるものか)がいる

 

「世に出てない天才か人ならざる者でしょうか」

 

「人ならざる者で有ってるわ。種族名ミ=ゴ。外なる宇宙から来訪されし者。私はミ=ゴ……識別するために彼のことはカロンⅩと呼んでいるわ。そのミ=ゴが崇拝している存在を超科学的に再現しようとしたのが私達よ。私、シュブ、ハス太、ヨグ、ツァトの5名を造り出したわ。この学校には相撲部のツァ太郎って名前で在籍しているわ。シュブとヨグは雷門町に住む若い外人夫婦よ」

 

「つまり神を人工的に造り出そうとしたのですね」

 

「えぇ、そうよ。シュブ、ヨグ、私は超劣化個体として成功し、ハス太とツァトは失敗したため記憶を改竄して普通の人として生活しているわ」

 

「作り方は?」

 

「言っても無駄だと思うわよ」

 

「なぜかわかりませんが、私の知的好奇心が抑えられないのです。なぜか今の話も中二病としてスルーすることができないほど引き込まれています」

 

「物好きね。まずミ=ゴが気に入らなかった人間の脳を肉体から離し、記憶を洗浄し、ミ=ゴに逆らえないようにインプットするわ。更に人間社会で生活するための基礎知識を注入し、神々の力を劣化したものを超科学的に作り、それを私達に注入する。私は本来なら夢を操るだけの力を得ただけだった。しかし、そうはならなかった……なぜだと思う?」

 

「私の思考能力外の出来事だと愚考します」

 

「できた改造された脳ミソだけの状態……肉体だけの頃に私は本体に出会った……出会ってしまったわ」

 

「まさか……本物の神にですか?」

 

「名をナイアルラトホテップ。千の顔を持つもの……かの神は人間を観察するのが趣味でね。改造人間であるものの自身の劣化個体に興味を持ち接触し、私に能力を与えていった……私は箱庭の力と呼んでいるわ」

 

「箱庭ですか?」

 

「ええ、空間を自由にカスタマイズする力よ。そこに夢と混同させることで疑似現実を造り出す。あなたが2回体験した不思議な現象は私が作った物よ。そして地木流灰人は私が初めて能力を使った人よ」

 

「それまた何故ですか?」

 

「彼……私が小学1年生の時の担任だったのよ。だから実験したわ。そこで彼は催眠術を手に入れた」

 

「催眠術ですか?」

 

「私の箱庭は不安定で時折変な物が混ざるのよ。彼はそこで催眠術の本を手に入れ、対象の足を動けなくする催眠術……魔術を覚えたわ。ただ、私が関与したのは1回のみ、もう1回は知らないわ。そして3回目の今回は私があなたと会わせるために連れてきたわ」

 

「地木流先生のことはわかりました。ハス太が廃棄されたというのは?」

 

「彼は神の力を全く使えなかった……超常現象である必殺技等は別としてハス太いや、ハスターという神はあらゆる風を操る存在なのだけど……彼はそよ風すら造り出すことができなかった。なのでミ=ゴに関する記憶を消され、ミ=ゴに協力的な家庭の養子として引き取られたわ。ツァトも同様よ」

 

「……なるほど」

 

「そして私はいまだにミ=ゴの監視下に有るけれど、基本的に自由行動が許されてるの。だからあなたにこうしてミ=ゴの事を喋ったりしてるってわけ……もっとも知ってしまったからにはあなたも関わってくるでしょうけどね」

 

「それはミ=ゴですか? それともナイアルラトホテップの方ですか?」

 

「さあ? そこまではわからないし、責任は取ることができないわ。ただ、あなたは私の中のナイアルラトホテップが興味を示しているわ。あなたには何かある。それが何かわからないけどね」

 

「色々話してくださりありがとうございました。質問責めみたいにしてしまい申し訳ありませんでした」

 

「いいわ。別に……ねぇ、昨日混ざり込んだあの貝殻は何かしら?」

 

「ニャルでもわからないのでしたら私にもわからないのですが、どこか懐かしさを感じました」

 

「懐かしさ……ね……ふふ、久しぶりに一杯喋ったわね。ハス太にもこんなに喋らないのに」

 

「なぜハス太には教えないのですか?」

 

「あら、自身が失敗作だなんて教えて嬉しがる人は居る? ……知らない方が幸せな事も有るのよ。現に彼は新しい家族と上手くやっているわ。例えそれが仮初の物だとしても……」

 

「長々とありがとうございました」

 

「……そうね。じゃあ今回の報酬としてデートでも連れてってくださる?」

 

「……エラー」

 

「もうそこはエスコートしますくらい言ってください……ハス太が懐くのもわかった気がします」

 

「?」

 

「いえ、なんでもないです。次の練習試合見に行きますので頑張ってくださいね! 応援してますから」

 

 ニャルは眼鏡をくいっとすると図書室に戻っていった

 

 私は練習に遅くなりながらも参加するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新聞部音無春奈! 今日からサッカー部のマネージャーやります! 皆さんの練習を見てるだけじゃ物足りなくって……だったら同じ部活に入った方が良いと思い入部しました!! 新聞部の情報網を生かして皆さんのお役に立ちたいとおもいます! よろしくお願いします!」

 

 音無さん……いや、音無マネージャーがサッカー部に加わり、サッカー部もマネージャー入れて15人と増えてきた

 

 最初のマネージャー入れて9名から約2倍弱、増えたなぁ

 

 で、現在対尾刈斗中対策に染岡先輩と合体シュートの練習をしているが上手くいってない

 

 ライフルの超ロングシュートにドラゴンクラッシュが決まればどんなゴールでも粉砕できる気がするだけに、私も染岡先輩も力が入る

 

「帝国のキーパーにも通用する必殺シュートを完成させるんだ!」

 

「良いぞ染岡! そのいきだ!」

 

「円堂いくぞ!!」

 

「「ライフルクラッシュ」」

 

「ゴッドハンド!!」

 

 ゴッドハンドは破るもののフルパワーシールドを破れるかというと疑問が残る

 

「くっそ……俺ももっともっと鍛えてシュートを止められるようにならねーとな!」

 

「円堂どうだった今の」

 

「形は出来てたと思うけど……何かが足りないんだよな」

 

「何かってなんだよ!」

 

「確かに見てたでやんすが、ライフルの回転に染岡さんの押し込みがついていけてないでやんす」

 

「震撼回転数を落としてみたらどう?」

 

「A.せっかくの推進力が消えてしまいます」

 

「だめかぁ」

 

 宍戸の意見も確かなのだが、回転数を調整すると変化球のようにボールが曲がってしまう弱点がライフルには存在する

 

 斜め下方向に向かってうち下ろしているが、回転しながら角度調整で結構いっぱいいっぱいなのが現実である

 

 ただ、ライフルクラッシュ(仮)は威力は少しだけだが上がっているのでコンセプトは合っていると思う

 

 なので必要なのは調整だ

 

「染岡先輩、回数打つことで感覚を調整するしかありません」

 

「おう! やってやる! 見てろお前ら! 豪炎寺じゃなくても雷門のストライカーは俺達で十分なんだ!!」

 

「染岡……」

 

「ふふ、ここは僕の出番ですね」

 

「メガネ?」

 

「なーに、僕調整とかはゲームでやり込んでいるので役に立つと思いますよ!」

 

「そ、そうか。じゃあメガネを加えた3人で新必殺技の練習をしていてくれ! お前ら走り込みするぞ!!」

 

「まってよキャプテン!」

 

「あぁ、おいらもいくっす」

 

 私は正直メガネ先輩が嫌いだ

 

 敵前逃亡もそうだが、弱いのに偉そうにしているのが癪に触る

 

 メガネ先輩……いやメガネの話を聞いていたが、なーんか引っ掛かる

 

 ライフルは回転による推進力と貫通力、ドラゴンクラッシュはドラゴンが地を這う様に動くため横ぶれを起こす技だ

 

 真っ直ぐ進む事により威力が上がるライフルとはそもそも相性が悪いのかもしれない

 

「震撼君! 聞いてますか僕の話を! 回転力を上げてカーブしてきたところを染岡君が合わせれば強力な技になると思うのですが!」

 

「おお! やってみようぜ震撼!」

 

「いや、ライフルクラッシュは一旦開発を停止することを提案致します」

 

「おいおい! それじゃあ新合体技無しかよ!」

 

「いえ、もう一つの技を使います」

 

「「もう一つの技?」」

 

「私のシュートは1つではありません。系統に分けると4つになります」

 

 私は棒を拾ってきて地面に書き出していく

 

「1つはライフル……貫通力と推進力によるロングシュートを前提とした技になります。回転速度が安定する中長距離に最大威力となるように調整されています」

 

「……あぁ、だからか最大威力の時じゃねーから俺が蹴ると回転が不安定になるんだな」

 

「はい、それが違和感の正体だと愚考いたしました。続けます。次にペンギン系……ペンギンを召喚する事によりシュートを点から面制圧に切り替えることで押し込むことに特化しています。ゴッドハンド、パワーシールド等の広く気を張る技に効果を発揮します」

 

「帝国戦で使った分身ペンギン等ですかね?」

 

「現在皇帝ペンギン1号と分身ペンギンの改良を行っていますが、これらは合体技にするのにとても不向きなので考えないことにします」

 

「確かにペンギンとドラゴンが威力を相殺し合うかもしれませんね」

 

「同様に分身シュートも無しです。単体で完成されているのと、発展があまり無いのでこの系統は奇襲やシュートコースの調整には優れているのですが、威力が今一つなのです」

 

「じゃあ最後のは何だ?」

 

「リトルインパクト……衝撃をボールに閉じ込める技です」

 

 私はボールを蹴るとビキビキと空間に亀裂が入り、ボールは一瞬空中に停止した後にWを描くように縦にジグザグ進んでいった

 

「おぉ! 染岡君がWの底面でボールを蹴れば凄い必殺技になりそうですよ!」

 

「よっしゃ! 早速やってみるか!!」

 

 そう言われてボールをセットし、シュートを放つ

 

「リトルインパクト」

 

 バキバキと空間がガラスのように割れる音の後にボールが縦軸にギザギザしながら進んでいく

 

「ドラゴンクラッシュ!!」

 

 染岡先輩がタイミングバッチリにシュートをチェインし、竜をまとった一撃がゴールに突き刺さる

 

「よっしゃ!!」

 

「ドラゴンインパクトなんてどうでしょう!」

 

「ドラゴンインパクト……良いなそれ!」

 

「ドラゴンインパクト……はい、良いと思います」

 

「やったな震撼!!」

 

「染岡先輩、よろしくお願いします」

 

 荒削りではあるが合体シュートは完成し、これは対尾刈斗中の切り札になるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「豪炎寺修也だよろしく頼む」

 

「てなわけで豪炎寺がサッカー部に入ってくれることになった! 皆よろしくな!」

 

 数日後、尾刈斗中との練習試合も近くなってきた時に唐突に豪炎寺先輩が加入してきた

 

 どうやら円堂先輩が口説き落としたみたいだ

 

 染岡先輩が俺が雷門のストライカーだと言っているが相手にしてないように感じた

 

 1年生やメガネの面々は豪炎寺先輩の加入を純粋に喜んでいたが、2年生やメガネ以外の途中加入のハス太と先輩達は染岡先輩の努力を知っているために複雑な顔をしている

 

 ただ全体練習をし、ドラゴンインパクトを見た豪炎寺先輩の目付きが変わった

 

 染岡先輩の事を認めたみたいな顔をしている

 

「震撼、帝国戦でやった技できるか?」

 

「A.できます」

 

「俺が調整する。ゴールにうってみろ」

 

「はい」

 

 ライフルを放つと、豪炎寺先輩は回転を調節したファイヤートルネードでシュートチェインをした

 

「どうだ」

 

「威力1.5倍に増大を確認。実用可能と判断」

 

「僕が命名しましょう! 名付けてフレイムライフル」

 

 あっという間に必殺技が完成した事に染岡先輩が睨んでいるが、染岡先輩、彼は天才だ

 

 豪炎寺先輩に勝つためには努力を続けるしかない

 

「染岡先輩」

 

「なんだ震撼」

 

「染岡先輩、勝つべきは豪炎寺先輩ではなく、雷門サッカー部全体での勝利です。私は染岡先輩でも豪炎寺先輩のどちらにも付きません。内輪揉めをしているようでは尾刈斗中には勝てないと言うのをお忘れ無き様にお願いします」

 

「あぁ、わかってる!」

 

「それは良かった」

 

 私にできることはそう伝えることのみ

 

 後は本人達の気持ちの問題である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 尾刈斗中との練習試合の日となり、冬海先生と尾刈斗中の地木流先生が挨拶をし、円堂先輩も相手の相手のキャプテンである幽谷と話している

 

「おや、大君お久しぶり……というには時間が経過してませんね。まぁまたお会いしましたねと言い直しましょうか」

 

「地木流先生こそお元気そうでなによりです」

 

「ん? 震撼相手チームの顧問と知り合いなのか?」

 

「A.ええ、そうです」

 

「ちょっとお互いに謎解きをした仲でね」

 

 円堂先輩が私と地木流先生の仲を聞いてきたのでそう返答する

 

「今日の試合ですが、君と豪炎寺君を見定めるために組ませてもらいました」

 

「なんだと!」

 

「よせ染岡」

 

「でなければわざわざ弱小サッカー部と試合などしませんよ」

 

 地木流先生は雷門イレブン達を煽る煽る

 

「ではよい試合を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 雷門のフォーメーションは4-4-2のオーソドックス

 

 

【挿絵表示】

 

 

 スタミナが無いハス太は体力が無くなり次第に宍戸と交代する予定だ

 

 ベンチはメガネ、宍戸、影野が控える形となる

 

 試合開始のホイッスルが審判により鳴り、試合が開始される

 

 先攻は雷門側なので染岡先輩と豪炎寺先輩が切り込んでいくが、豪炎寺先輩は3人によるマークで身動きが取れない

 

 代わりに染岡先輩はノーマークとなり、ボールが染岡先輩へ繋がる

 

「いくぜドラゴンクラッシュ!!」

 

 ドラゴンクラッシュは必殺技が来ると予測していなかった尾刈斗中のゴールキーパーは対応できずにゴールが決まる

 

「どうだ俺の必殺シュートは!」

 

「やったな染岡!」

 

「あぁ、円堂! これからもバンバン点を取っていくからな!」

 

「ほー、やりますね……あんなストライカーが雷門に居たとは……」

 

 攻守が逆転し、今度は尾刈斗中が攻めてくる

 

「行かせねぇ」

 

「行かせません」

 

「ちっ幽谷!」

 

 尾刈斗中のキャプテンにボールが渡る

 

「喰らえファントムシュート!!」

 

 ボールが黒いオーラを纏い、分裂したシュートが円堂先輩に襲い掛かる

 

「させるか! 熱血パンチ!」

 

 炎を纏った拳でボールをはじき返す

 

 転がったボールは私に

 

 ボールを蹴り上げ空中で挟み、回転を開始する

 

「ライフル」

 

 ドンという発射音と共に超ロングシュートが尾刈斗中ゴールに襲い掛かる

 

「キラーブレードがは!?」

 

 手からオーラで造り出した鉈はライフルの威力に負けて粉砕された

 

 これで2-0まだ前半10分のことである

 

「……そろそろですか……野郎共! ゴーストロックだ」

 

「「「はい」」」

 

 地木流先生がブツブツと何かを呟きだした

 

 それと同時に足が動かなくなる

 

「これが……催眠術……解除方法を確認……交代です皇帝」

 

「[任せろ]」

 

 皆の足が止まるなか、私だけは通常通りに動き、フォワードとミッドフィルダーの5人で攻めてきた尾刈斗中に立ち塞がる

 

「なんでお前動ける! ゴーストロック中だぞ」

 

「[ふふ、何故だろうな。皇帝の前には無力だ]」

 

 簡単な事だ

 

 私自身もゴーストロックは受けているが、催眠術がかかっているのは本体のみ

 

 視覚と聴覚も私本体がメインであるが、第三者視点で別人格達は動くことが可能

 

「[トーチカ!! ]」

 

 そのままブロックをして動けない皆の代わりに私は前線に上がっていく

 

「させるか! おんりょう」

 

「[効かぬ! ライフル]」

 

 キュィィィィィンという機械音が響き始め、ドンと発射される

 

「奴が動ける状態で3点目はまずい! なんとしてでも止めるのだ鉈!」

 

「幽谷……任せろ」

 

 両腕が青白く光輝く

 

「タブルブレード」

 

 両手によるキラーブレード……両手の刃を砕くことはできたが、ゴールポストに当たりエリア外に弾かれた

 

『止めた!! 尾刈斗中キーパーの鉈新必殺で大選手のライフルを止めた』

 

「いや……運が良かっただけだ」

 

 実況をしている角馬の話しに鉈はそう反応する

 

「[ふむ、少々セーブしてしまったか]」

 

(何をしているのです。なぜライフルをV3で放たなかったのですか?)

 

「[うるさいぞ本体、なに、実力を測ったまでだ。次は必ず入れるさ]」

 

『さぁ雷門コーナーキックからスタート!! おおっと再び身動きが取れていない! ゴーストロック炸裂だ!!』

 

 私には4人のマークがつき、物理的に動けないように固められた

 

「円堂先輩! [出てくるな本体! 今は私の時間だ]」

 

 無理やり突破しようにも皇帝はこの状態を突破できるのにしない

 

 何を考えている

 

 自分の別人格であるがわからない

 

 走行している間に動けない円堂先輩にファントムシュートが炸裂する

 

 ボールは円堂先輩の横を通過してゴールに入ってしまう

 

 これで2-1

 

(点数決められてしまいましたよ)

 

 [んん? いや、円堂先輩ならこの催眠術を破れるのではないかと期待したのだが]

 

(そもそも催眠術とわかってないのだから無理でしょう)

 

 ここで前半が終了し、ベンチに皆集まってきた

 

「なんで震撼動けるんすか! 一人だけ呪いにかからないなんて変っすよ」

 

「そうでやんす! 御札でも貼ってるでやんすか?」

 

「いえ、これは催眠術です。催眠術を私自身に押し付けています」

 

 皆? マークを頭の上に浮かべる

 

「[つまり俺と]」

 

「{僕が震撼の別人格なのさ}」

 

「うわ! 震撼が増えたでやんす!」

 

「よく見ろ! 震撼と若干髪や目付きが違う……分身だろ」

 

「A.はい、染岡先輩のいう通りです。私には私と皇帝、覇王の3つの人格が存在します。今回の催眠術を私に押し付けることで回避していました」

 

「なるほどってお前にしかできねぇよなそれ」

 

「はい、風丸先輩のいう通りです。私にしかできません」

 

「待てよ……催眠術って言ったよな」

 

「はい、円堂先輩……気付かれましたか?」

 

「あぁ、わかったぞ! なら大声で下記消せばゴーストロックは破れる!」

 

「でも震撼のライフルが止められちゃったでやんすよ」

 

「そこは俺と震撼の合体シュートで追加点取ってやるよ」

 

「ああ! 頼んだぜ染岡!」

 

 ハス太はゴーストロックで動けなかったこともあり交代無しで続行となった

 

 

 

 

 

 後半が開始して早々に尾刈斗中はゴーストロックを仕掛けてくるが

 

「ゴロゴロビッカーン」

 

 と円堂先輩が大声を発してゴーストロックを解除

 

 動けるようになった皆は私にボールを集めようとするが、3人以上によるマークで私にボールを集めることができない

 

「俺にボールをよこせ」

 

「染岡さん!」

 

 少林から染岡先輩へとボールが繋がる

 

「くらえドラゴンクラッシュ!」

 

「歪む空間」

 

『キーパー鉈止めた!!』

 

「ちっくそ!」

 

 染岡先輩が地面を蹴っている時に豪炎寺先輩が私の方を見ている

 

 私は豪炎寺先輩がこれも催眠術であるとわかったのだと把握した

 

 が、解除されても皇帝は私に体の主導権を返そうとしない

 

(皇帝まだですか! こんな奴ら私で突破可能です)

 

 [いや、ここは染岡先輩と豪炎寺先輩の仲を修復させる]

 

(どうやってです?)

 

 [フォワードにはフォワードでしかわからないことが有るのだよ]

 

(? 理解不能)

 

 [まぁ見てろって]

 

 試合が再開され、こちらに尾刈斗中が攻めてきた

 

 流石に攻撃中はマークが緩くなり、ファントムシュートをそのまま足でカット

 

 そのままドリブルで上がっていく

 

「行かせない!」

 

「[浸透V3]」

 

「ぐわぁぁ!」

 

「フランケン!」

 

「[染岡先輩! ]」

 

「な! 普通のパス」

 

「染岡! 奴の手を見るな! あれも催眠術だ! 平衡感覚をぐちゃぐちゃにされてシュートの威力が落ちる!」

 

「な! 豪炎寺はさっきので攻略法を見つけたのに……俺は……うおぉぉぉぉ!」

 

『ああっと再びドラゴンクラッシュ』

 

「歪む空間」

 

『豪炎寺が上がっている!』

 

「ファイヤートルネード」

 

「ぐわぁぁ!」

 

『決まった! 染岡と豪炎寺の合体シュートで雷門追加点!』

 

(なるほど……こういうことですか)

 

「ふふ、名付けてドラゴントルネードです!」

 

 メガネがイキイキとしているが残り時間も僅か

 

 尾刈斗中最後の攻撃に入る

 

「例えゴーストロックが破られたとしても」

 

「俺達は尾刈斗中! 弱小の雷門なんかに負けて良いはずが無い!」

 

「月村!」

 

「幽谷行くぞ! ダブルファントムシュート!」

 

 ミッドフィルダーの月村とフォワードの幽谷が同時にファントムシュートを放つ

 

「ゴッドハンド!!」

 

 円堂先輩がゴッドハンドで防ごうとするが、ジリジリと押される

 

「もう失点しないって決めたんだ! うおおおお!!」

 

 円堂先輩は更に左手を突きだし両手でのゴッドハンド……ゴッドハンドWが完成した

 

 巨大な手が更に巨大になり、完全に防いだ

 

『と、ここで試合終了!! 3対1で雷門勝利だぁ!!』

 

 




大震撼 (13) 中学生 男
STR:90 DEX:90 INT:75
CON:50 APP:65 POW:90
SIZ:55 EDU:55 移動率:9
耐久力:12
マジック・ポイント:20
正気度:96
幸運:50
ダメージ・ボーナス:+1D4
ビルド:1
住所:東京 雷門 稲妻町
出身:日本
----------------------------------------
【技能】
応急手当:35%
回避:90%
近接戦闘(蹴り):95%
クトゥルフ神話:3%
コンピューター:45%
信用:10%
水泳:50%
跳躍:90%
図書館:50%
サッカー:95%
----------------------------------------
【武器】
素手:25% 1D3+DB (射程:-, 攻撃回数:-, 装弾数:-, 故障:-)
キック:95% 1d6+1d4 (射程:-, 攻撃回数:-, 装弾数:-, 故障:-)
鉄球(サッカー):95% 2d6+1d4 (射程:-, 攻撃回数:-, 装弾数:2, 故障:-)
スパイク:95% 1d6+1d4+1 (射程:-, 攻撃回数:-, 装弾数:-, 故障:98)
----------------------------------------
【装備と所持品】
鉄球 (個数:2) 70キロの鉄球
重り (個数:10) 1つ10キロの重り
ユニホーム (個数:-) 雷門サッカー部のユニホーム
スパイク (個数:-) ごく普通の安いスパイク
謎の貝殻 (個数:1) 約20cm
カバン (個数:-) 雷門中学のカバン
筆記用具 (個数:-) ハサミ、のり、コンパス、ペンも入っている
各種教科書 (個数:-)
父の写真 (個数:-)
学生証 (個数:-)
財布 (個数:-) 基本2000円入っている
----------------------------------------
【収入と財産】
支出レベル:貧乏
現金:2000円
資産:借家に住んでいる お小遣いは月5000円
----------------------------------------
【バックストーリー】
▼ 容姿の描写
黒髪 つり目 色白 やや中性的顔立ち
体重70kg 身長165cm 全身筋肉で膨れ上がっている
太ももの太さは普通の中学生の腕5本分
足のサイズ28.5
▼ イデオロギー/信念
中道ややカオスより/復讐
第二人格皇帝 中道ややロウ
第三人格覇王 中道完全ニュートラル
▼ 重要な人々
祖父 唯一の肉親 歳は65歳
▼ 意味のある場所
大江戸町 大家が排斥された町
雷門町 現在住んでいる町
▼ 秘蔵の品
震撼必殺ノート バージョン1
謎の貝殻
鉄球 家に4つあるため合計6つ
サッカーボール
▼ 特徴
異常に筋肉が発達しているが努力によるもの
英雄症候群ではない
▼ 負傷、傷跡
鉄球の打撲傷複数箇所
----------------------------------------
【メモ】
ニャル?ハスター?に気に入られし者
学生ながら鍛えられた肉体は大人をも凌駕する
生物学的には人間

クテゥルフの探索者(新版 7版)の探索者を作るサイトにて震撼を作成してみました


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デートは波乱に満ちている

 尾刈斗中との練習試合を勝利したことによりサッカー部はフットボールフロンティアに参加できることになった

 

 円堂先輩を含め、全員がこの事実に喜んだ

 

 私はついでにイナビカリ修練場の使用許可を夏未先輩に求めたところ

 

「良いわよ。約束通り11人以上の部員も集めた事だしね」

 

 と言われ、鍵を渡された

 

 これで開かずの扉の奥にあるイナビカリ修練場を使うことができるようになった

 

 円堂先輩は

 

「よっしゃ! 早速そこで次の試合に向けて特訓だ」

 

 と張り切り、皆もノリノリでイナビカリ修練場に向かうのだった

 

 

 

 

 

 

 

 イナビカリ修練場での特訓は熾烈を極めた

 

 動く歯車、レーザー、ルーレットの様な施設、サッカーボールを射出するガトリング砲、滝登り、反り立つ壁、迫り来る跳び箱等々

 

 身体能力を上げるにはもってこいの施設が充実していた

 

 タイマーは9999秒

 

 約2時間半の練習が終わった頃には皆ヘロヘロになっていた

 

 ちなみに私は100kgの重りを付けながら参加したが、めちゃくちゃ疲れた

 

 ハス太は今にも死にそうな顔をしている

 

「大丈夫皆!」

 

「今救急箱取ってきます!!」

 

「わりぃ、マネージャー……がく」

 

「円堂君!!」

 

「死屍累々ね」

 

 そこへ夏未先輩がやって来た

 

「何しに来たんだ……」

 

「あら、それだけの特訓をやってもまだしゃべる元気があるとは中々ね。フットボールフロンティア初戦の相手が決まったわ」

 

「どこでしょうか?」

 

「あら、大は流石ね。立って受け答えできるくらいにはクリアーしたのかしら」

 

「返答をお願い致します」

 

「野生中が初戦の相手よせいぜい初戦敗退して学校の恥にならないように頑張りなさい」

 

「野生中か……皆頑張るぞ」

 

「「「……」」」

 

 円堂先輩が今にも倒れそうなか細い声で掛け声をかけるが、皆から返事がない

 

 疲れて声をあげられないらしい

 

「円堂先輩、私は先に部室に行って着替えているのでお先に失礼します」

 

「おぉ、震撼は元気だな……」

 

「A.私も疲れてはいます。並みの鍛え方はしていないので」

 

「そうか……先行っていてくれ」

 

 私は部室に先に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部室に到着すると2人ほど人の気配がした

 

「へぇー、二夜ちゃんって言うんだ。俺土門。今日転校生してきたんだけどサッカー部ここで有ってるよね?」

 

「ええ、有ってるわよ。後私はニャルと呼んで欲しいな」

 

「ニャルちゃんね! 君マネージャー? 凄く可愛いね」

 

「あら、ありがとう。ふふ、私はまだマネージャーではないわ」

 

「まだ?」

 

 ガラガラと扉を開けて私が入る

 

「ニャルに……誰でしょうか?」

 

「ちーっす! 俺土門! 転校してきたんだけどサッカー部に入りたくてね。入部できるかな?」

 

「構いません。少々お待ちを」

 

 私は棚の中のクリアファイルから入部届けとボールペンを取り出した

 

「こちらに名前と所属クラスを書いてください。顧問の冬海先生には私から提出しておきますので」

 

「いやー、悪いね。さらさらっと……はいよ。ちなみにどこで練習していたの? 学校中探したけど居なかったから困ったんだけど」

 

「A.イナビカリ修練場という地下施設でトレーニングしております。明日から参加してもらうと思います」

 

「へぇ、この学校にそんな設備がね……じゃ! 明日からよろしく!」

 

「よろしくお願いします」

 

 土門先輩はそう言うとバックを背負って帰ってしまった

 

「質問です。ニャルはなぜサッカー部の部室に?」

 

「あら、私もサッカー部に入ろうと思ってね。マネージャーとしてだけどよろしくて?」

 

「構いませんが……待っててくださいマネージャー用の入部届けが確かここら辺に」

 

「これかしら?」

 

 ニャルは既に記入済みの入部届けを私に見せてきた

 

「土門君と一緒に私のも出してきてもらえるかしら」

 

「構いません。しかしなぜマネージャーに?」

 

「尾刈斗中との試合に感動したから……ではダメかしら?」

 

「いえ、他にも理由があると考えますが」

 

「そうね……ミ=ゴ……カロンⅩがあなたに興味を抱いたのと、ハス太の監視を付けるようにお願いされたわ。ハス太が後天的理由で覚醒するかもしれないことに気がついたみたいね」

 

「なるほど……不利益が無いので有れば構いませんが」

 

「ふふ、とりあえず有能な所を見せれば良いかしら? ……理事長室に円堂先輩のお祖父様の必殺技のノートが保管されているわ。明日にでも取りに行けば役に立つんじゃないかしら」

 

「とても有意義な情報です。ありがとうございます」

 

「ふふ、今週の日曜日楽しみにしているわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだって! じいちゃんの必殺技のノートが理事長室にある!?」

 

「はい、ニャルが調べてくれました」

 

「こうしちゃ居れねぇ! 早速探すぞ」

 

 円堂先輩は放課後部員を集めて理事長室に突撃し、夏未先輩に見つかったものの円堂大介の必殺技ノートを入手することができた

 

 そして部室に戻り、新入部員の土門先輩とニャルの自己紹介が行われ、早速必殺技ノートの解読に挑むが、特訓ノート同様に字が汚くて読めなかった

 

 円堂先輩は読んだのだが、ばびょーんだのだんだんだの擬音ばっかりで解読できても難解極まるそれに流石のニャルも苦笑い

 

 話しは野生中の話題に移っていく

 

「野生中俺も前の学校で戦ったことあるけど強いよ彼ら。具体的にはこの地区だと帝国の次ぐらいにはね……特に空中戦にはめっぽう強いんだ。豪炎寺でももしかしたら厳しいかもね」

 

「だったらこのイナズマ落としで突破するぞ!」

 

「イナズマ落としっすか?」

 

 壁山の問いに円堂先輩が擬音ばっかりの説明を開始するが、皆? マークを浮かべていたので、理解できた私とニャルが分かりやすく説明する

 

「A.まず2名がジャンプをし、1名を踏み台にして更にジャンプ、2段階ジャンプをすることで高さを稼ぎます」

 

「2回ジャンプする人は高いジャンプ力とシュート能力を、踏み台になる方はがっしりとした体格の者が望ましいわね。最後にオーバヘッドキックでシュートよ」

 

「「「おぉ! わかりやすい」っす」でやんす」

 

「体ががっしりと……壁山いけるか?」

 

「じ、自分っすか! 実は俺高所恐怖症なんっすが……」

 

「いいや、この技はお前にしかできない! とにかくやってみようぜ!!」

 

 壁山と豪炎寺先輩はイナズマ落としの練習を開始

 

 その間に円堂先輩はノートの最後のページにあるマジン・ザ・ハンドに目がいっていた

 

「震撼、ニャル、ちょっと来てくれ……これなんだけど意味分かるか?」

 

「A.分かりません。解読お願いします」

 

「グッとやってぐぐっとしてバン! どん!」

 

「いやー、キツイ」

 

「理解不能」

 

「注目すべきはここだって」

 

 円堂先輩はノートに赤く塗られた丸の部分……胸、特に心臓と思われる場所を指差した

 

「心臓ですか……」

 

「ごめんなさい。これだけじゃ分からないわ」

 

「良いって……でもこれからのシュートを止めるには必ずこの技が必要になってくると思うんだ。震撼のライフルもV3は止められないしな!」

 

「私も技の開発を急ぎます。特に皇帝ペンギン1号と分身ペンギンを合体させる事ができれば凄まじいパワーのシュートが完成すると思われます」

 

「そうか! よーし! 今日もイナビカリ修練場で特訓するぞ!!」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 壁山の高所恐怖症克服の特訓はスムーズには進まなかった

 

 約80cmの高さがギリギリのため、自身がジャンプした高さを怖がってしまい、すぐに体勢を崩して尻から落ちてしまうのだ

 

 円堂先輩のマジン・ザ・ハンドも困難を極めた

 

 ゴッドハンドは円堂先輩が約1年にも及ぶ特訓で身につけた技なのに対してマジン・ザ・ハンドは今日見つけた技だ

 

 早々に上手くいくハズが無い

 

 ニャルという超人がアドバイザーとして付いているのでたぶんできると思うが……

 

 私はまずリアルインパクトの完成を急いだ

 

 分身を使えばできるのであるが、1人でできるようになって初めて完成と言える

 

 まず最初の一撃で空中にボールを固定する(膝位の高さ)

 

 続いて目にも止まらぬ連続のリトルインパクトで複数の亀裂を空中に作る

 

 そしてトドメに両足で前にボールを押し込めば

 

 バンっという破裂音と共に爆発が発生する

 

 今回は最初の固定が甘かったらしく、少しのズレからボールの威力が不安定になり、暴発してしまった

 

 ただ、後少しの調整をすれば完成が見えているため開発を急いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日曜日

 

 ニャルとのデートの日となった

 

 流石に重りを外して持ってる服の中で町に出ても問題ない服装になり、駅前でニャルを待った

 

「お待たせ」

 

 集合時間丁度にニャルがやって来た

 

 白を基調としたワンピースだが、ニャルが着ることによって横を通る人全てが振り向く絶世の美少女がそこにいた

 

「ふふ、顔が真っ赤よ」

 

「失礼、あまりの美しさにフリーズしました」

 

「さて最初はエスコートしてくださる」

 

「色々考えましたが、少し移動しましょう。大江戸に移動しますよ」

 

「大江戸……あら? 嫌な場所ではなくて?」

 

「流石に6年近く経過しましたから割り切りは付いております。住んでいた近くなはいきませんよ。ただ稲妻町ではデートに向く場所が限られるため、デートスポットの多い大江戸に行こうと思います」

 

「ふふ、楽しみにしているわ」

 

 大江戸に到着した私はとりあえず科学博物館を選択した

 

 科学博物館には巨大な振り子時計に最新のロボット、絶対零度発生装置等が置かれていた

 

「私は来るのが初めてですが、ニャルはどうでしょうか?」

 

「私も来るのは初めてよ。ただやっぱりミ=ゴの科学力には劣るわね」

 

「そんなにすごいんですか? ミ=ゴって」

 

「えぇ、見たこともない武器や脳だけでも生存できる生命装置、不思議な物が沢山あるわ」

 

「科学博物館に来たのは失敗でしたでしょうか?」

 

「いえ、良いチョイスだと思うわ。私にとっては最新の機械でなくても、古い機械でも面白さというのは代わり無いわ」

 

「……私もなぜかこれらの機械が古臭く見える物があるんですよね。なぜなのか分かりませんがね」

 

「あなたは能力をサッカーにほとんど費やしてしまったけれど、本来ならば科学者等になっていたのかもしれないわね」

 

「どうでしょう。サッカーも復讐が殆どを占めてますよ」

 

「でも、サッカーをやっている震撼は楽しそうよ」

 

「そうでしょうか?」

 

「ええ、そう。サッカーを楽しんでいるわ」

 

 館内を歩いていると大きな振り子時計の前に来た

 

「流石のミ=ゴでも時間は操ることができないわ。時間を支配した存在が居ればどんな神かしらね」

 

「もしかしたら時間を支配している種族がいるかもしれませんね。ミ=ゴや神々が居るのですから居ても不思議ではありませんよ」

 

「ふふ、そうかもね」

 

「うーん。何か閃きそうなのですが」

 

「あら? 必殺技?」

 

「こう指をパチンと鳴らしたらゆっくりになったりして」

 

「あら震撼でも冗談を言うのね」

 

 パチンと指を鳴らしてみる

 

 すると振り子時計が一瞬ゆっくりになったような気がした

 

「気のせい……か?」

 

「どうしたの震撼、次地震体験コーナー行くわよ」

 

「あぁ、すみません。行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんだかんだで科学博物館を満喫した私とニャルは横にある動物園に移動した

 

 国内でも5本の指に入る巨大な動物園で、科学博物館の横にある立地からデートスポットとして人気がある

 

「ミ=ゴが脳を集めるように、人は別種の生き物を檻の中で飼う……上位種が下位種を観察するのは普通の事ね」

 

「ナイアルラトホテップが人間を観察するのも同じ理由なのでしょうかね」

 

「かの神は好奇心と変化の神よ。ナイアルラトホテップが面白くなると思ったことに介入してくるわ。その一端の側面を持つ私も理性と好奇心を秤にかけた時好奇心に振れるわ」

 

「なるほど」

 

「……ふふ、面白い物を見つけたわ。こっちに来て」

 

 ニャルに付いていくとそこは使われていない古い扉だった

 

 鍵は掛かっていないようで簡単に開くことができる

 

「ナイアルラトホテップの痕跡があるわ。何かしらの異界に繋がっているわ。この扉」

 

「何かあったら守ります」

 

「ふふ、頼もしいわね……せっかくですし中に入ってみましょうか」

 

 私とニャルは扉を開けると別のエリアに繋がっていた

 

 後ろを振り返ると扉は有るようだ

 

「閉じ込められる感じでもないか」

 

「分かりません……とりあえず進みましょう」

 

 前に進むと花畑に様々な花が咲き乱れており、春夏秋冬関係なく色とりどりの花が存在した

 

「……造花ですね」

 

「……嫌な予感がする」

 

 ニャルが警戒心を強める

 

 更に進むと休憩所があった

 

 中からカーテンがかけられており、中の様子は見えない

 

 ただ、人の気配はする

 

 ノックをしてから休憩所の中に入る

 

 

 

 

 

 

 

 

 中には赤い服を着た美女が本を読みながら座っていた

 

「おや、また迷い込んだ人が現れたか。そろそろここは廃棄しようと思ったが……おや? おやおやおや? 私に似せたミ=ゴの改造人間ではないか。久しいな。くく、好奇心かはたまた無謀への挑戦か……実に面白き事だ」

 

 ニャルの事をミ=ゴの改造人間と言い切り、私に似せたと言った

 

 と言うことは目の前に居るのは

 

「ナイアルラトホテップ神でしょうか」

 

「ふむ、ほぉ、人にしては中々……ふむふむ、なるほど……我と対極なる者よのぉ。気に入った。我が信者となれ。さすれば栄達は約束されるが」

 

「気に入られるような思考や肉体はしていないと思われますが」

 

「なに、人でありながら人ならざる者の側面を持つ者よ。お前がミ=ゴごときに気に入られるのは惜しいと思ったまでだ。なに、信者としての試練は簡単だ。私の眷属を1匹倒すだけで良い。改造人間も打ち勝てば何か役立つ知識を与えようではないか」

 

「ありがとうございますナイアルラトホテップ様」

 

「いや、震撼、このお方の出す試練だ……普通ではない」

 

 ナイアルラトホテップはニヤリと笑う

 

「なに、そなた達が力を合わせることができれば倒せるかもしれないものよ。……ふむ大震撼よ。何か1つアイテムを渡そう。何が良い」

 

 試練の内容の生物が何なのか良く分からないが、この場合だと戦闘だろう

 

 戦闘と言うことは恐らく武器を選ぶのが正解なのだが、私はサッカーばかりしてきたため、武器を扱える自信がない

 

 [いや、ある。本体がの使える武器が]

 

 {いつも蹴っているあれだ}

 

「……では私がいつも蹴っている鉄球をいただきたい」

 

 ナイアルラトホテップ神はクスリと笑うと

 

「良かろう!」

 

 パチンと指を鳴らすと鉄球が落ちてきた

 

 床が軋む音がするが、私は手に持つとご丁寧に復讐の文字が書かれていた

 

「ニャルは武器か何かありますか?」

 

「そうね……」

 

 そう言うとニャルの腕がグニャリと変形し、ハサミの様になる

 

 その腕でバックの中から銃の様な物を取り出した

 

「電気銃……ミ=ゴとの協力者である私達に渡された武器よ。強力な電撃で内部から焼くわ」

 

 ニャルは普通に戦えるようだ

 

 私達は頷き、ナイアルラトホテップ神に話す

 

「準備はできました。あなたの試練に挑戦させてください」

 

「よろしい。勇気有る者よ! 我が信者に相応しいか見せてみよ」

 

 勢い良く扉を開ける

 

 目の前には誰も居ない

 

 が音がする

 

 風を切る音が

 

「上よ!」

 

 私とニャルは咄嗟に回避をする

 

 私達が先ほど居た場所には空から突撃してきた片方だけ翼が生えた蛇が私達をじっとこちらを見ている

 

 キシャァァァっと威嚇の声をあげた

 

 戦闘開始だ

 

 最初に動いたのは私だ

 

「ライフルV3」

 

 空中に浮かせた鉄球を両足で挟み回転を開始し、蛇の怪物に向かって発射する

 

 しかし鉄球が蛇に当たっても蛇は押し込まれただけでピンピンしている

 

 人間だったら普通に死ぬかもしれない一撃なのに

 

「理解不能!」

 

「神話生物はこんなものよ! 奴は固い皮膚により弾丸をも弾くわ! ……来る!」

 

 蛇の攻撃はギリギリ2人共に避けることができた

 

 ニャルによる電気銃による攻撃が炸裂する

 

 バチバチと電気が蛇に襲いかかるがダメージはあんまり入ってないようだ

 

 私は跳ね返ってきた鉄球を転がしながら何時でも蛇の行動に対処できるようにしておく

 

 蛇はニャルに向かって噛みついてきた

 

 私は鉄球を蹴り込んでニャルの回避を手助けする

 

 蛇に当たった鉄球は強烈なスピンがかけられており、震撼の足元に戻ってくる

 

 ニャルは蛇の攻撃をバグ転をしながら華麗に回避に成功する

 

 私は再び蛇の出方を伺う

 

 蛇は私に噛みついてきた

 

 蛇の頭部めがけて鉄球を蹴る

 

 鉄球が蛇に当たり、蛇は吹き飛ばされる

 

 今回はダメージが入ったようだ

 

 続けざまにニャルの電気銃による攻撃を行う

 

 青い光が蛇に命中し、蛇は苦しそうにのたうち回る

 

 追撃とばかりに私は頭部にめかけて鉄球をぶつける

 

「皇帝、覇王」

 

 {[おう! ]}

 

「{[リアルインパクト]}」

 

 凄まじい一撃が蛇に叩き込まれる

 

 鉄球は蛇の頭を粉砕し、蛇の頭はグロテスクなミンチに変化した

 

 蛇の巨体は痙攣したかと思うとズドンと地面に叩きつけられ、二度と動くことは無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素晴らしい。実に素晴らしい。よく試練に打ち勝ったものだ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「では改造人間よ。何か知りたい知識は有るか?」

 

「知識ではなくこちらを改良していただきたい」

 

 いつの間にか腕が人の形に戻っていたニャルはバックから服を取り出した

 

 見るからにゲテモノな服は不思議な突起と明らかに人が身に付けることを想定していない何かであった

 

「ミ=ゴから渡された装甲服なのですが、私達人間が着用すると劣化と激痛がはしるのです。それを無くしていただきたい。できれば普通の服に見えるようにしていただけると嬉しいです」

 

「良かろう」

 

 パチンとニャルが指を鳴らすと白黒のチェック柄長袖Tシャツに変わった

 

「選択による色落ち等は我慢しろ」

 

「ありがとうございます」

 

「さて、次は震撼よ。何が欲しい」

 

 私は考える

 

 今の神に頼めばよほどの事がない限り願いを叶えてくれるだろう

 

 私は……

 

「私専用の特訓場が欲しいです。機材なども付きで」

 

「ほぉ……そんな物で良いのか?」

 

「はい。まだまだ私は鍛え足りません。ただ強くなるためにはイナビカリ修練場だけでは足りないのです」

 

「良かろう」

 

 ナイアルラトホテップ神は私の頭を撫でると体に電撃がはしったかのように痺れた

 

「左手で指を鳴らせば他人には見えない扉が開くだろう。何時如何なる時でもそれは開く。他人を入れるには片手を繋ぐこと。その中にはお前を鍛えるのに最適な道具を揃えてある……これで良いな」

 

「ありがとうございます」

 

「我が信者よ、我が好奇心を満たすよう心がけよ。我は常に見ているぞ」

 

 意識が遠退いていく

 

 気がつくと動物園内にあるレストランのテラスで私とニャルは座っていた

 

 まるで先ほどのは夢であったかのように思えてしまう

 

 ただ、足元には持ってきていないハズの鉄球が転がっていた

 

「……疲れました」

 

「私も疲れた……中々濃いデートになったわね」

 

「ナイアルラトホテップ神はいつもこの様に人に試練を与える神なのですか?」

 

「いいえ、人を破滅に導く神よ。ただ、震撼は気に入られたわ。これからあなたには多数の試練が付きまとうと思うけれど、乗り越えていくしかないわ!」

 

「……頑張ります」

 

 その後動物園で一通り楽しみ、濃いデートは終わりとなった

 

 稲妻町のニャルの家まで送り、私は自宅へ帰るのだった

 

 




実際にサイコロを振らせていただきました

最初の震撼の攻撃は8ダメージで蛇の装甲により無効

狩人(蛇)は70%の組み付き失敗

ニャルの電気銃は装甲貫通及びクリティカルなのでダメージ2倍の4ダメージ(電気銃は気絶判定が通常入るけど神話生物なので無効)

2ターン目 

震撼Delay(行動順を遅くする)を選択

蛇の攻撃は噛みつき 自動成功 対象ニャル

震撼の鉄球のシュートにより攻撃を反らす(命中 回避20%の補正)

ニャルの回避(サイコロの目6)のため成功

3ターン目

震撼Delayを選択

蛇噛みつきを選択(自動成功)

鉄球 頭部狙い(判定-20) 成功

ダメージ2倍のため12ダメージ 装甲軽減のため3ダメージ

ニャル電気銃 9ダメージ

4ターン目

震撼分身によるダメージボーナス3倍

鉄球2d6+ダメージボーナス3d4、頭部狙い2倍36ダメージ

戦闘終了



今回の出来事でクテゥルフ神話技能+3%となりました

正気度が93となりました


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新たな部屋で特訓したい 野生中に空中戦で勝ちたい

 ナイアルラトホテップ神からご褒美として貰った空間は豪華だった

 

 まず入り口を通ると大きなサッカー場に出る

 

 ボールや鉄球が大きな籠にいっぱい入っており、ゴールにシュートするとボールが消えて籠の中に戻るのでいちいち回収しなくても良い

 

 ベンチには小さなハードルや三角コーン、ロープ、タイヤ等が並べて置かれており、自由に使えるようになっていた

 

 奥の壁には扉が幾つかあり、扉には番号が描かれており1番にはロボットが約30体収納されており、1体だけ円堂先輩みたいなキーパーロボットも居たが、それ以外はメカメカしいサッカーロボットだ

 

 他にはめちゃくちゃ重たいユニホームが数枚と工房みたいなのが付いており、工具が一式置かれていた

 

 2番の扉を開けるとロッカールーム、洗濯室、乾燥機のある部屋、リネン室、トイレと温泉、サウナに繋がっており、かけ流しの豪華な室内の浴槽の他に炭酸、電気、ジェットバブ、ジャグジー、水風呂、低温風呂にシャワーが付いていた

 

 シャンプー等も付いていたが、黄色がシャンプー赤がリンス、青がボディーソープと色分けされていたが、成分はよく分からないが使うと髪がさらさらに、いい匂いと疲れが取れるような感じがした

 

 シャンプー等は使っても無くならないし、タオルもいつの間にか補充される不思議使用だ

 

 3番はミーティングルームになっており、今までのサッカー選手の映像を見ることが出きるようになっていた

 

 ボードゲームみたいなのがあり、映像と連動して選手が動く仕組みになっていた

 

 4番は書斎兼私室になっており、本棚には本が1冊入っており、題名は私の姿一覧と書かれていた

 

 開いてみるとナイアルラトホテップ神の姿が分かりやすく描かれており、冒涜的で宇宙の心理の一端を見たような気がした

 

 本棚以外は机、椅子、ベッド、筆記具、エアコン、ミュージックボックス、化粧台、タンス、冷蔵庫が置かれていた

 

 冷蔵庫の中には小腹が満たせる菓子類と栄養ゼリー、謎のドリンクが入っていた

 

 飲んでみるとどれも美味しく体に力が入ったり、疲労が抜けるような感覚がした

 

 冷蔵庫の扉を閉じて、再び開けると中身が補充されていた

 

 以上がナイアルラトホテップ神により渡された空間だ

 

 私は出口から出るともと居た場所に戻るようになっており、この空間が有れば寝る間を惜しんでサッカーが出きると喜んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナイアルラトホテップから貰った空間にあった服を着て今はサッカー部の皆と練習をしている

 

 服は小さくダイヤルが付いており、それをいじると0.1kgから1tまで重さを調節できるようになっていたため、100kgにしている

 

「震撼、震撼! 合体必殺技作ろうよ」

 

「ハス太、そんな簡単に必殺技はできませんよ」

 

「ぶーぶー! 震撼となら合体ブロック技できそうなのに」

 

「トーチカと触手が合わさっても気持ち悪いだけです。それよりも貴方は体力を付けなさい」

 

「そんなこと分かってるよ~」

 

 ハス太はイナビカリ修練場でも体力増強トレーニングを続けており、必殺技はどれも強力な為に、体力の無さが常に足を引っ張っている

 

 ポンポンとハス太の頭を軽く叩く

 

「いつか作りましょう。私と貴方の最強のブロック技を」

 

 ハス太はパァッと笑顔になり

 

「約束だよ!」

 

 と頷いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 イナズマ落としの練習で壁山が泣き言を言い始めた

 

「キャプテン。俺にはできないっすよ……シュートなら豪炎寺さんや染岡さん、震撼だっているじゃないっすか……俺なんて居たって変わらないっすよ」

 

「ちがーう! 違うぞ壁山! 今回はお前の体格が肝なんだ! お前でなければ駄目なんだ!」

 

「でもでも……」

 

 壁山はそれでもうじうじしているので、イラついた私が壁山の尻を蹴りあげる

 

「痛いっす! なにするんすか!」

 

「意気地無し、根性無し……下を見なければ良いのでしょう。だったら胸を反り、強制的に上しか向けないようにしなさい」

 

「そうか、その手が有ったか! 壁山!」

 

「本当にやるっすか? やるだけ無駄っすよ……」

 

「良いからやるぞ!!」

 

 円堂先輩は壁山を引っ張ってイナビカリ修練場にあるサッカーコートに連れていった

 

 ……あれでは駄目の可能性が高いな

 

 私は1人でのリアルインパクト完成を急がなくては……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イナビカリ修練場での練習が終わった後も私はナイアルラトホテップから貰った空間にて練習を続ける

 

 ロボット円堂先輩を相手にライフルV3を放つ

 

『真ゴッドハンド』

 

 機械音から真ゴッドハンドと言う音声が流れ私のライフルが止められた

 

「データ再入力、再計算……皇帝ペンギン1号開始」

 

 ピーっと指笛を吹くとペンギンが5匹現れる

 

 それが足に食らい付き、シュートを放つ

 

「ダメージ軽微、何発でも可能です」

 

 シュートはロボット円堂先輩に向かう

 

『マジン・ザ・ハンド』

 

「マジン・ザ・ハンド!?」

 

 ロボットがグルンと背中を見えるように捻り、魔神を出現させ、シュートを止める

 

「……なるほど。これがマジン・ザ・ハンド……記録します」

 

 私は必殺ノートバージョン2と書かれたノートにマジン・ザ・ハンドとゴッドハンドの原理を詳しく書いていく

 

「ロボット円堂先輩、もう一度お願いします。皇帝、皇帝ペンギン1号を再びうってください」

 

 [わかった]

 

 私はゴールの後ろからマジン・ザ・ハンドの原理を書いていく

 

 円堂先輩がこれができるようになれば雷門サッカー部は更に強くなれるからだ

 

 時間を見るとこの空間に入ってから2時間が経過していた

 

 夕飯を食べたとはいえ、そろそろ風呂に入って、家で寝ないとダメだ

 

「皇帝、覇王はこの空間で特訓を続けられるのですよね……私の代わりに技術の蓄積をお願い致します」

 

 [ああ、まかせろ]

 

 {まかせたまえ! }

 

 私は2の扉から風呂に入り、ユニホームを洗濯して家に帰る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 野生中との試合までの約2週間、サッカー部の面々は皆にしたら地獄のような、震撼にとっては更に負荷をかけた特訓を乗り越えて試合に挑む

 

 その間に円堂先輩にマジン・ザ・ハンドについて詳しく書かれた必殺ノートバージョン2を見せた

 

「震撼これ……スゲーな! イメージがグングン湧いてくる! そうか、じいちゃんは左手を使って出していたのか……右手を心臓に当てることで心臓から気を受け取って……これがぐっ、ググか! サンキュー震撼! やっぱお前はスゲーや」

 

「しかし、野生中には間に合わないと思われますが対応は」

 

「大丈夫だ! イナビカリ修練場でパワーアップしたゴッドハンドと熱血パンチで止めてみせる!」

 

「わかりました。円堂先輩、一応熱血パンチをこのノートに書いてもよろしいでしょうか」

 

「ああ! そうしてくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 いよいよ野生中との試合の日となった

 

 冬海先生の運転で野生中に到着すると、ジャングルのような場所で、鬱蒼と繁る木々を抜けると野生中が有った

 

 会場には野生中の学生達が大勢観客として野生中サッカー部に声援を送る

 

 その野生中サッカー部は

 

「スッゲー、これが車か!」

 

「タイヤが4つもある!」

 

「車始めてみたコケ」

 

「機械がいっぱいだウホッ」

 

 とこの人達は本当に現代日本人かと疑いたくなるようなメンツだった

 

 染岡先輩は

 

「こんな奴らに負けてられるか」

 

 と気合い十分

 

 まだリアルインパクトを1人で放つことはできてないが、私もそれ相応の特訓は積んできたつもりだ

 

 いつもの重いユニホームを脱いで、試合用のユニホームに着替える

 

「染岡、震撼少し良いか」

 

「なんでしょうか豪炎寺先輩」

 

「なんだ豪炎寺」

 

「この試合、壁山のイナズマ落としが完成しなかった場合、震撼との合体必殺技が鍵になると思う……ライフルとファイヤートルネードの合体必殺技のライフルトルネード、リトルインパクトとドラゴンクラッシュの合体必殺技のドラゴンインパクト、俺と染岡のドラゴントルネードの3つが鍵になる。特に俺と震撼はマークが厳しいと思う。場合によっては染岡に負担をかけると思う」

 

「任せろ豪炎寺! お前がうてない分! 俺が点を取ってやるよ」

 

「頼んだ」

 

「私は分身を出すことでマークを外すことが可能なので染岡先輩との連携を中心に行うことと致します」

 

「あぁ、それでいこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フォーメーションは4-4-2のベーシック

 

 

【挿絵表示】

 

 

「さて、皆さんに勝つための簡単な作戦を教えます」

 

 ベンチで本を読んでいたニャルがいきなり話し始める

 

「勝つ方法? いったいなんだ?」

 

 円堂先輩や他のメンバー、他のマネージャー2人も話に加わる

 

「壁山さんと豪炎寺さんの必殺技が完成しなかった場合、キーになるのは震撼となるのは帝国学園戦と尾刈斗中戦での事前情報でわかっているハズよ。ハス太を使い潰しなさい」

 

「え? 僕!?」

 

「使い潰すってお前! ハス太は道具じゃないんだぞ」

 

「失礼、言葉が悪かったわ。前半ハス太を前線への攻撃の繋ぎに使いなさい。使えば使うほど逆サイドの壁山さんが攻撃に加わるチャンスが増えるわ。それと前半ハス太を使うことで後半に震撼のマークを減らす事ができるわ」

 

「前半はイナズマ落としを完成に費やして、後半は震撼を軸に戦う……良いんじゃないか?」

 

 風丸先輩が賛成すると他の皆もそれでいこうとなる

 

 壁山がウジウジまだしてるが

 

「壁山、ヒーローになるチャンスです。貴方が攻撃にも加われる事がわかれば今後の試合に良い影響が出ます。頼みましたよ」

 

「……できるかぎりはやってみるっす!」

 

 ヒーローという言葉に火が着いたのか壁山にやる気がようやく入ったように見えた

 

 試合開始だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ始まりました! フットボールフロンティア地区予選1回戦! 実況は私角馬圭太がお送り致します』

 

『さぁ雷門中のボールでキックオフです』

 

 最初風丸先輩、染岡先輩から豪炎寺先輩にパスとなり、豪炎寺先輩がファイヤートルネードの態勢になったが、これを野生中のミッドフィルダー鶏井が凄まじい跳躍でカット

 

 そのまま香芽、五利へと繋がりこちらの陣中へ突進する

 

「行かせないでやんす! ぐわ!」

 

 栗松がブロックしようとしたが、体格差があり、吹き飛ばされてしまう

 

 ただ、この僅かな時間に左サイドから戻ってきたハス太が割って入る

 

「強制SANチェック1D100!」

 

「ぐわぁぁぁ!」

 

 ハス太が化物に見える技が決まり、五利からハス太はボールを奪う

 

 私とハス太が目があった

 

 ハス太は私にパスを出すと、私はすかさずライフルを放つ

 

 キュィィィィィィン

 

「ライフルV3」

 

 ドンっとライフルは敵ゴールへ向かってうち下ろされた

 

「猪口!」

 

「ワイルドクロー! がは!?」

 

『決まった先制点は雷門中! 大選手の超ロングシュート! 雷門の恐るべきところは自陣ペナルティエリアからでも飛んでくるシュートだ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先制点を取ってから私へのマークが厳しくなった

 

 そのためニャルが提言したハス太を攻撃への繋ぎとした作戦に切り替えた

 

 ただ、ハス太が攻撃よりになった事、壁山も攻撃に参加により実質ディフェンスが2人になってしまった

 

 壁山と豪炎寺先輩のイナズマ落としはチャンスは有れど壁山がひよってしまいいまだに完成しない

 

 そうこうしているうちにドラゴンクラッシュを放とうとした染岡先輩が相手のスーパーアルマジロという技を受けて負傷

 

 交代として土門が入り、染岡先輩の代わりにフォワードには壁山が入る

 

 フォーメーションとしては3-5-2に変化

 

 ハス太はミッドフィルダーとして起用することとなる

 

「作戦変更よ。震撼、円堂さん、栗松さん、土門さんの守備陣は1点を守りきる方向にシフト。得点は壁山さんと豪炎寺さんの2人に任せることにすればこの試合は勝てるわ」

 

「よし、それでいこう! 皆、壁山を信じるぞ」

 

「「「おー!!」」」

 

「キャプテン」

 

 守備よりとなった私は分身を展開し、鉄壁の布陣をひく

 

「コンドルダイブ!」

 

「トーチカ!」

 

 こぼれた球を五利が

 

「ターザンキック」

 

 再びシュートするが

 

「ゴッドハンド!!」

 

 これを円堂先輩がきっちり止める

 

「ハス太!」

 

「任せてください」

 

「行かせない!」

 

「エンゼルボール」

 

 羽の生えたボールはくるくると大鷲の周りを飛び回り、そのまま突破する

 

「壁山! 豪炎寺さん!」

 

「行くぞ壁山!」

 

「……はいっす」

 

 しかし、失敗

 

 攻守が入れ替わり、右サイドから向かってくるが

 

「キラースライド」

 

 土門先輩が帝国の必殺技で防御

 

「あれは帝国の……」

 

「[落ち着け本体、土門先輩は仲間だ]」

 

「{帝国ではない}」

 

「……はい」

 

 再び豪炎寺先輩と壁山のチャンスになる

 

「壁山! 覚悟を決めろ!」

 

「今度こそ!」

 

 しかし失敗

 

 この失敗で壁山の心が折れてしまった

 

 攻撃が機能しなければ防御が頑張るしかない

 

「壁山がダメとなると……震撼!」

 

 土門先輩が私にパスを出し、本体の私は蛇島にマークされていたため、分身の覇王が受けとる

 

「{覇王の力とくと見るが良い! }」

 

『あぁっと大! いや! 大の分身か? どちらかわからないが前線に上がっていく』

 

「させん! スーパーアルマジロ」

 

「{覇王の僕には通用しない! 浸透V3}」

 

 ボールを蹴りあげるとボールが分裂し、砲撃のように弾着し、獅子王が吹き飛ばされる

 

「{僕を止めようなどと無駄なのだよ……本体}」

 

『あぁっといつの間にか上がってきた大の本体か! シュート態勢に入った』

 

「真リトルインパクト」

 

「皆守るコケ」

 

「「「おう!」」」

 か

「「「ディープジャングル!!」」」

 

『野生中新必殺技だ!! これは流石に厳しいか!!』

 

「A.無駄です」

 

「「「ぐわぁ!」」」

 

「その技は完成していません」

 

『あぁっとディープジャングルを突破されてしまった』

 

「させない! ワイルドクロー!!」

 

『キーパー猪口なんとか止めた!! 4人がかりで止めましたリトルインパクト敗れる!』

 

『おおっとここで前半終了です』

 

 

 

 

 

 

「壁山、どうだ! やれそうか?」

 

「キャプテン……ダメっすよ。もう俺にはできないです。これ以上ボールを回しても無駄なので震撼にボールを回してくださいっす」

 

「なに言ってるんだ! あとちょっとで完成するんだ! 壁山と豪炎寺のイナズマ落としで野生中にトドメを刺すんだ!」

 

「でも……」

 

 円堂先輩が壁山を励ましている間に私と豪炎寺先輩で作戦会議をする

 

「壁山の心が折れてしまっている。建て直すのはなかなかに厄介だな」

 

「確かにそうですが、鶏井と言う選手の跳躍力だとライフルトルネードも止め……いや? ライフルトルネードですと貫通しませんか?」

 

「どういう事だ?」

 

「ライフルの軌道を途中上にすることでファイヤートルネードの高さから再度うち下ろす2段階ブーストの意味がありました……が、豪炎寺先輩が跳躍すれば鶏井も跳躍して下の空間ががら空きになります。ライフルをそのままゴールへ突入させれば」

 

「鶏井の起点となるディープジャングルで止められることもない……か。次のチャンスはそれでいこう。2点目差が有れば壁山の気持ち的にも楽になるだろうしな」

 

 2人で頷き後半はこれで行くことに決まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後半野生中の攻撃から始まる

 

 雷門イレブンはゾーンプレスで身体能力の勝る野生中イレブンを封じ込める

 

 そして風丸先輩がボールをカットしたことで私にパスが繋がる

 

「ヤバいコケ! ディープジャングル用意!」

 

「ライフルV3」

 

 通常のライフルよりも響き渡る音が大きいライフルV3が発射される

 

 前線に居た豪炎寺先輩が跳躍する

 

「コケ!? 違う! あれはパスコケ!! 俺は豪炎寺を抑えるコケ」

 

 ディープジャングルが解除され、鶏井が跳躍して豪炎寺先輩よりも高く跳ぶ……が、2人の真下をライフルは直進する

 

「「「な!?」」」

 

「止めろ猪口!!」

 

「ワイルドクロー!! ぐは!?」

 

『ゴール! 今日2回目のロングシュート! 大選手のライフルが炸裂!! これは野生中にとってはとても厳しい追加点!!』

 

 追加点を取って他のメンバーは喜んでいたものの、ゾーンプレスの弱点である相手よりも走り回る為体力消費が大きいのが災いし、私、壁山、豪炎寺先輩とキーパーの円堂先輩以外は疲れきっていた

 

 もう後がない野生中は猛攻を開始ミッドフィルダー5人全員が攻撃に参加し、私が体を使い、それからこぼれたシュートを円堂先輩が止めることで防ぎ続けた

 

「なぜだ……なぜだ!! なぜ決まらないウホッ!!」

 

 五利がイラつきシュートを放つが、私が右足で技を使わずに止める

 

「な!?」

 

「A.君達が弱いだけです。努力不足です……豪炎寺先輩」

 

 強烈なパスが五利の横を通過して豪炎寺先輩に繋がる

 

「カウンター! ディフェンス守れ!」

 

「壁山! 皆頑張ってるんだ! お前だけ心を折れてて良いのか! お前はあいつらの気持ちまで裏切るのか!!」

 

「皆の頑張りを……裏切る」

 

「そうだ! お前はこのまま皆の頑張りを無駄にして良いのか!」

 

 豪炎寺先輩は空に蹴りあげた

 

「壁山ぁ!」

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

 壁山は跳んだ

 

 下を向く事なく、胸をそらして豪炎寺先輩の踏み台となった

 

「やった! 決まった」

 

「「イナズマ落とし!!」」

 

「ワイルドクロー! ぐわぁ!」

 

『ゴール! 3点目! 雷門トドメの追加点!! 強豪野生中相手に3点目!!』

 

 ピッピッピーと審判の笛が響き渡る

 

『試合終了!! 雷門の勝利だぁぁぁ!!』

 

「やった……やった!! 一回戦突破だ!!」

 

 壁山の周りに皆が集まり、壁山はもみくちゃにされる

 

「ふふ、2点は震撼が得点したのにね。震撼は混じらなくて良いの?」

 

 ニャルが横に居る私に声をかけてきた

 

「A.まだ1回戦を勝っただけです。喜びは影山を倒してからにしようと思います」

 

「帝国学園ね。次の対戦相手は御影専修農業高校附属中学校よ。帝国学園の支配下の学校で影山の息がかかっているわ」

 

「御影専農……情報感謝します。ところでどうやって情報を入手しているのですか?」

 

「ナイアルラトホテップの能力の一旦でも使えば軽くはわかるわ。それよりもなかなかの強敵よ。どうするのかしら?」

 

「そんなの決まってます。潰します。圧倒的な実力差で粉砕するのみです」

 

「やっぱり貴方は面白いわ震撼。どせナイアルラトホテップ様に貰った空間で特訓するのでしょ。私とハス太も参加してもよろしいかしら?」

 

「貴方はわかりますが、なぜハス太?」

 

「潜在能力は普通の人間の数倍はあるわよ。震撼どうせプレイヤーというよりも指導者としての能力もハス太を使って上げていけば良いのではないかしら?」

 

「……わかりました。ハス太にも一応確認します」

 

 帰りのバスにてハス太に次の試合に向けて秘密の特訓をしないかと誘ったところ目をキラキラさせながら

 

「やるやるー! 震撼と一緒……グヘヘ」

 

 と意味深な笑みを浮かべ、私はドン引きした

 

 




ディープジャングルですが、雷門OBの3人だから強いのであって野生中の面子でやっても威力が足りないと判断


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ハス太は震撼に追い付きたい

 皆が1回戦の祝勝会を雷雷軒にて行うと円堂先輩が言って私とニャル、ハス太はごめんなさいとパスした

 

 ニャルとのデートでおこづかいが尽きてしまうという悲しみと他のメンバーに奢ってもらうのは気まずいので、更に特訓してくるという理由で、ハス太とニャルは心配だから付いていくという理由で祝勝会をパスした

 

 栗松がノリが悪いでやんすと言われたが、仕方がないし、私だってノリが悪いと思ったよ

 

「で、秘密の特訓はどこでやるの? ニャルは知ってそうだけど?」

 

「付いてきてください」

 

 私はとりあえず郊外にある私の家の近くの空き地にやって来た

 

「ここは」

 

「A.私がこの前まで練習をしていた空き地です……開きます」

 

「何が?」

 

 私は分身をして皇帝と覇王にハス太とニャルの手を繋いでもらう

 

「うわ! いきなり過ぎない?」

 

 ハス太は皇帝にいきなり右手を捕まれて驚くが、ニャルは覇王に捕まれても全く動揺しない

 

 私は左手で指を鳴らすと扉が出現した

 

「え? えぇ!? 扉! が現れたよ!!」

 

「ハス太、手を離すと扉が見えなくなりますので離さないでください……入りますよ」

 

 扉を開くとサッカーコートが広がっていた

 

「えぇ……なにこれ? 不思議現象なんだけど……」

 

「ハス太、ここで特訓をしましょう。少し準備をするのでベンチで2人は待っていてください」

 

 私は1と書かれた扉を開いてロボットの準備を始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロボット!? 20体も居るじゃん」

 

「サッカーロボットです。ここのロボットは帝国学園のメンバーより遥かに強いです。ハス太は私と一緒にこのメンバーと試合をしてもらいます」

 

「試合……試合!? 僕野生中との試合でヘロヘロなんだけど」

 

「ハス太、あとこのユニホームに着替えてください」

 

「これ? 重!? なにこれ」

 

「今20kgに調整したユニホームです。これを着用して試合に出てください」

 

「死んじゃう死んじゃう……ニャルもなんか言ってよ」

 

「逝きなさいハス太」

 

「絶対漢字が逝けだよね! 鬼悪魔!」

 

「ニャルは4の部屋の冷蔵庫にドリンクが入っているので持ってきておいてください。ではハス太、特訓をします。今の実力では帝国学園には通用しないのでね」

 

「逝きたくない! 死にたくない!! うわぁぁぁぁ」

 

 ズルズルと首根っこを捕まれたハス太はジタバタするが、私の力の前には無力

 

 哀れハス太はフィールドに立たされた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合が始まるとロボット達は明らかに人間の出せるスピードよりも速く動き回る

 

 消えたと錯覚するくらい速い

 

 僕は向かってくるボールを取りに行こうと走るが、ユニホームが重いのと野生中の疲れでうまく走ることができない

 

 震撼はロボットの動きを見極めてパスカットしたり、シュートしたりしているが、円堂先輩に似ているロボットが震撼の必殺シュートのライフルV3を技無しで止めるのを見て僕のレベルとかけ離れた試合が展開されているのを嫌でもわかった

 

 それでも諦める事なく走り続け、またまた目の前にボールを持ったロボットがやって来た

 

「這いよる触手」

 

 僕の必殺ブロック技を真っ正面から粉砕される

 

「ぐわぁ!」

 

 そのままロボットがシュートを放つが、震撼が右足でブロックする

 

 ギュルギュルと震撼の右足の中でまだボールが回転している

 

 とんでもない威力だ

 

「ハス太!」

 

 震撼からパスが飛んできた

 

 僕は胸でトラップするとほぼ動けない体に鞭打って必死に前進をする

 

 あっという間にロボットに囲まれ、エンゼルボールで突破しようにもロボット達の行動の方が圧倒的に早く吹き飛ばされてしまった

 

「おっと、大丈夫ですか」

 

 震撼が吹き飛ばされた僕をキャッチしてくれて、地面に叩きつけられることは無かったが、めっちゃ怖かった

 

「ハス太、私がなぜこのような特訓をさせているかわかりますか?」

 

「……わかんない。僕を痛め付けたい様には思えないし……」

 

「速さに慣れて欲しいのです。このロボット達は全力の私の1.2倍速く動くように設定してあります。最初はそのユニホームを着た状態で速さになれてください」

 

「速さに……慣れる……」

 

「あと15分やったら休憩を取りますから頑張ってください」

 

 その後ハス太は無理にボールを取るような行動はせずに、シュートのブロックやドリブルするロボットと併走しようと努力した

 

 

 

 

 

 

 

「ゼヒューゼヒューゼヒュー」

 

 野生中との試合の疲労と更にロボット達との試合で疲労が限界に到達したハス太は過呼吸の様になりながら倒れた

 

 それを担いでベンチに運び込み、ニャルに取ってきて貰ったドリンクをチビチビと飲ませる

 

 すると呼吸が安定して眠るように気絶している

 

「不思議ドリンクね。あれだけ呼吸が乱れていたのに飲ませただけでこうだと医者要らずってわけ……それよりも震撼は何kgのユニホームを着用しているの?」

 

「A.100kgです」

 

「それに重りつきで約60kgのハス太を担ぐなんて人間やめてるわね」

 

「A.まだまだ私は成長できます。人間はまだやめてませんよ」

 

「いつかはやめるってことじゃない……はぁ、ナイアルラトホテップ様の信者に成ってなければミ=ゴに紹介していたわよ。たぶん気に入られて貴方も私達と同じように改造されれば……」

 

「私は改造して人間をやめる気はありませんよ。人間には無限の可能性があるのです」

 

「手っ取り早く上位種族になれるのに?」

 

「力には興味がありますが、力を全てにしてしまえば影山と同じです。私の父が求めていたのは努力による勝利です。汚い手での勝利に何の価値もない」

 

「ふふ、わかったわ……まだ続けるのかしら?」

 

「ええ、ニャルはどうしますか? 1の部屋はロボットの格納庫、2の部屋は洗濯と温泉、3はミーティングルーム、4は空の本棚と私室ですが」

 

「そうね……先に温泉に入っているわ。タオルなどは有るかしら」

 

「A.使っても減らないタオルが置かれています」

 

「了解したわ」

 

 ニャルはそう言うと2番の扉から温泉に向かっていった

 

「やりますか」

 

 私はリモコンでロボット達を再起動させ、ハス太がフィールドに居た時よりも出力を上げた

 

「さぁ行きましょうか」

 

「{僕の力を全力を出そうじゃないか}」

 

「[ふん、俺も楽しませてもらうぞ]」

 

「A.全力で行きます」

 

 

 

 

 

 

 僕が目を覚めるとベンチの上だった

 

 頭に冷えたタオルと、横には七色に光るなぞのドリンクが置かれていた

 

「んん……ここは」

 

 そうだ、震撼に連れられて変な空間に来たんだっけ……

 

 バゴンと激しい衝突音が響いてきた

 

 震撼がロボットとタックルしている

 

 明らかに僕と試合していた時よりもロボットは強く、速くなってる

 

 震撼はボロボロになりながらも笑っている

 

 それは狂人の様にニヤリと

 

 良く見るとボールも鉄球でやっているので、震撼はトラップする度に骨が軋む嫌な音がきこえてくるが、震撼はそれでもお構い無しにドリブルを続ける

 

 激しいチャージや、ロボットから放たれる必殺技に吹き飛ばされながらも果敢に攻め続ける

 

 分身を出しては突破を敢行するがロボットの巧みな守備にブロックやスライディングで止められてしまう

 

 そんな様子を見ていた僕は、震撼に対して不思議な感情が芽生えていることに気がついた

 

 最初は弱小サッカー部に似合わない強さへの興味、次に鍛えぬかれた身体と歪んではいるがサッカーへ対する情熱への感心、そして今だ

 

 震撼を見ていると彼を手伝いたい、支えたいという気持ちが湧いてくるのだ

 

「ハス太、それは損得勘定を無視した物ですか?」

 

「うわ! ニャル! いつの間に……僕話してたっけ?」

 

「小声ですが、口に出ていましたよ……まぁあの異常なトレーニングをしても壊れない肉体は本当に人間か疑いたくなりますが、肉体は高次元に纏まった人間ですね。精神が分裂していても正常なのは違和感がありますが……」

 

「損得勘定か……震撼だったら見返りなんかは求めないかな……何なんだろう……この気持ち」

 

「ハス太、それは恋ですよ」

 

「恋……恋かぁ……恋だと確かにしっくりくるけど男性同士だよ」

 

「貴方はバイだとおもっていたのですが?」

 

「まぁそうだけど……本気でこう胸が熱くなるような恋をするとはおもってもみなかった……」

 

「ふふ、ハス太、震撼は渡しませんよ」

 

「ん? ニャルも震撼を狙ってるの?」

 

「ええ、彼とは命の危機を共に打ち勝ったりしてますからね。デートだってしましたし」

 

「デート!? ……良いなぁ……」

 

「あら、私は共にピッチでプレイできるハス太の方が羨ましいですが……信頼を得ることができるじゃないですか」

 

「信頼……」

 

「ええ、信頼。好意を持ってもらっている相手から頼ってもらえるのですよ。嬉しくないですか?」

 

「……嬉しいね」

 

「その為には強くなる必要がありますけどね。ハス太、貴方には足りないものが沢山ありますよ。その為には練習を沢山するしかなくて?」

 

「……はは、ニャルには敵わないな。わかったよ。僕頑張る……震撼に僕が本気で狙っていることは内緒にしてよ」

 

「ええ、言いませんよ。まぁ私が有利なのは変わりませんのでせいぜい努力しなさい」

 

「ふふーん、僕が震撼のハートをがっちり握っちゃうもんねー」

 

 僕はニャルと握手をした

 

 互いに震撼に好意を持つものとして

 

 異性の親友として

 

 震撼のこの場所という秘密を共有する者として

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミッションコンプリート……ハス太、ニャルですか。ハス太どうしますか? このまま入浴していきますか」

 

「本当! 行く行く!!」

 

「ニャルはどうしますか?」

 

「少しこの空間を探索しますわ。貴方達が入浴し終わるくらいにはここに居ますわ」

 

「じゃあハス太行きましょうか」

 

「じゃあねーニャル~」

 

 私とハス太は2の扉の中に入り、洗濯物を洗濯機に入れてお風呂に入る

 

「わぁ! お風呂広いし、種類も沢山じゃん! どうなってるんだろう!」

 

「私も譲り受けたとしか言えません」

 

「なにこのシャンプーやリンス……めっちゃいい匂いするじゃん! 震撼体洗いっこしようや」

 

「A.ニヤついているので嫌です」

 

「そんなー!」

 

「馬鹿やってないで洗いますよ」

 

 体を洗い、風呂に入ってからサウナに入る

 

 ハス太もサウナに入り、リラックスしている

 

「ねぇ震撼、どうやってこんな場所を知ってるの?」

 

「……私は神に会いました。神から試練を与えられ、それを乗り越えたご褒美にこの場所をいただきました」

 

「神!? ……神かぁ……それなら納得できるか! 何! 神様って普通に居るの!? 試練って何さ」

 

 体がサウナによって徐々に暖まる

 

「巨大な蛇に戦いを挑まされました……勝ちましたが、危なかったです」

 

「ふぇ……僕だったら無理だな……」

 

「鉄球を扱えるようになれば戦えますよ。一緒に鉄球で訓練しましょう」

 

「いや、それできるの震撼だけだからね」

 

 私はションボリする

 

「神かぁ……不思議な事も有るんだねこの世には」

 

 ハス太はそんなことを言っているが、ハス太も改造されたことにより失敗作とはいえ神に近しい存在の一端を持つ者……もしハス太が何らかの出来事で神の力を使えるようになったら……ハス太はハス太のままで居れるのでしょうか

 

 ニャルはニャルのままの様ですが、ハス太も同じとはわかりません

 

 ニャルはハス太に知らせるべきではないと言っていましたが、私はハス太も知るべきだと思っています

 

 最も今では無いですがね

 

「おーい、震撼大丈夫? ボーッとして。一回出ない? 熱くって」

 

「そうですね。汗を流してから水風呂に入りましょう」

 

 雑談をしながらハス太と風呂やサウナを堪能しながらベンチに戻るとニャルがベンチで本を読んでいた

 

「ふふーん、必殺ノート2冊読ませてもらったわ。円堂先輩のノートとは完成度が全然違うわね」

 

「読まれましたか」

 

「分身の作り方は無理ね。普通の人間では分身を維持すること、遠隔操作することができずに破綻するわ。分身ペンギンなんかも普通は不可能ね……ハス太トーチカ覚えない?」

 

「トーチカ……震撼のブロック技だよね」

 

「えぇ、貴方なら習得可能だと思うわ。2つのトーチカが揃ったら何か起こると思わないかしら」

 

「……なるほど。やってみる価値はありそうですね。ハス太、必殺ノートバージョン1を貸します。今日家で読んでください」

 

「わかったよ!」

 

「今日はこれで解散としましょう。また明日練習後に行いましょう」

 

「えぇ、わかったわ」

 

「りょーかい!」

 

 この場で解散となり、それぞれ帰路についた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は河川敷が空いているということなので河川敷で紅白戦の様な練習をしていると橋の上にギャラリーが沢山居るのに皆気がついた

 

「遂にできたかもな」

 

「風丸さん何ができたんですか?」

 

「ファンだよファン!」

 

「「「ファン!?」」」

 

「違います。あれは他校の偵察隊です」

 

「「「偵察隊!?」」」

 

「皆考えてみなよ帝国から2点も奪って尾刈斗中、野生中と強豪を連勝したんだよ。そんな無名校を他校がほっとくわけないだろ」

 

 マックス先輩がそう付け足す

 

「わかってるじゃない」

 

 すると河川敷のグランドに執事に日傘をさしてもらいながら夏未先輩がゆっくりと降りてきた

 

「必殺技の練習を禁止します。相手に情報を与えるのは得策ではないわ。必殺技の練習をしたければイナビカリ修練場で行いなさい」

 

「それもそうだな」

 

 そんなことを話しているとレーダーが付いたトラックが3台やって来て私達の偵察を始めた

 

「なんだあれは!」

 

「なんだかヤバくないっすか!」

 

「明らかに異常だよな」

 

「おいおい、皆大丈夫だ。とにかく必殺技無しで練習を再開しようぜ」

 

 円堂先輩の言葉で解散となり、皆元の位置に戻る

 

 その後普通に練習をして、休憩になると音無マネージャーがトラックに乗っている人物が御影専農の杉森と下鶴だと情報をくれた

 

「御影専農の正ゴールキーパーの杉森とエースストライカーの下鶴です。杉森は正ゴールキーパーになってから失点したことが無いんだとか」

 

「そんなスゲー奴と次試合できるのか! よっしゃ! 初失点は俺達が決めてやる!」

 

 円堂先輩は盛り上がり、それに釣られて他の皆の士気も上がる

 

「よし! 練習再開だ!」

 

 練習が再開してからもパス回しや普通のシュート、ドリブルなんかの基礎を中心とした練習を続けていると、グランドに杉森と下鶴が入ってきた

 

「ちょっとタイム! お前ら、練習中にグランドに入ってくるなよ」

 

「なぜ必殺技を使わない」

 

「なぜって……」

 

「我々はお前達の情報を既にインプットしている。勝利は確実だ」

 

「勝利は確実って……試合はやってみなくちゃわからないだろ」

 

「試合……試合ではない。ただの害虫駆除だ」

 

「害虫!?」

 

「ひどいっすよ!」

 

「あんまりでやんす!」

 

「「「そうだそうだ」」」

 

 害虫と言われて腹が立った皆、特に染岡先輩なんかはキレて殴りかかろうとしているのを私とハス太が止めに入る

 

「取り消せよ今の言葉!!」

 

「取り消す? なぜ事実を取り消す必要がある? お前達のチームランクはC-……我々には勝てない」

 

「頭に来た! いいぜ見せてやるよ! 俺達の必殺技を!!」

 

 円堂先輩が啖呵を切った

 

 成り行きで1on1の勝負となり、始めは円堂先輩と下鶴の勝負

 

 驚くことに下鶴はファイヤートルネードを放ち、驚いた円堂先輩は熱血パンチでガードしようとしたが、止めきれずにシュートはゴールに入ってしまう

 

「そんな……豪炎寺さんのファイヤートルネードが……」

 

「コピーされたなんて……」

 

 明らかに皆動揺している

 

「豪炎寺……すまない」

 

「任せろ円堂」

 

 円堂先輩からボールを受け取った豪炎寺先輩は続いて杉森との勝負になる

 

 豪炎寺先輩から放たれたファイヤートルネードは今度は杉森のシュートポケットに止められてしまう

 

「これでわかっただろう」

 

「お前達は我々には勝てない」

 

「そんなの試合が始まってみなければわからないだろ!」

 

「諦めの悪い奴らだ」

 

 そう言うと杉森と下鶴は帰っていった

 

 皆の士気が明らかに低下している

 

「どうした皆! まだ試合までには時間がある! 特訓して勝ちに行くぞ!!」

 

「でも豪炎寺さんのシュートが止められたっす……」

 

「そうでやんすよ」

 

「何言ってるんだお前ら! 俺達には合体シュートがある! 震撼の3人でバンバン点を取ってやるよ!」

 

「期待してるぜ染岡!」

 

「任せろ円堂!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『勝利確率75.0%……シュミレーションを終了してください』

 

「……やはり大震撼が勝率を大きく下げているか」

 

「監督いかが致しますか」

 

「この勝率では総帥にお見せすることができない。先日来ていただいた時には大震撼のデータを外したのを見せたが、大震撼を入れただけで勝率が25%も下がるとは……杉森、ロケット拳で震撼のライフルを弾く可能性は幾らだった」

 

「25%になります」

 

「うむむ……宛にできん数字だ……何より厄介なのが奴がディフェンスな事だ。ディフェンスゾーンからのシュートでこの確率なのだからセンターラインを越えた瞬間に確率がはね上がる……仕方がない。杉森、あれを使うぞ」

 

「……あれですか。しかしまだ完成できておりませんがよろしいので?」

 

「なんとしてでも完成させろ。でなければ次の試合負けるぞ」

 

「は!!」



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大震撼は止まらない

「ハス太いきますよ」

 

「よしこい!」

 

 場所は私の異空間

 

 練習後にハス太を誘い、トーチカの練習をしている

 

「うぉぉぉぉ!! トーチカ」

 

 ボゴっとトーチカが姿を現すが、私のと比べると明らかに小さい

 

 ノーマルシュートを放ってみたが、トーチカは止めること無くく砕け、ボールはゴールに突き刺さった

 

「くっ! もう一回!」

 

「行きます」

 

 ハス太のトーチカはできてはいる

 

 ただ威力が足りていない

 

 筋肉だったり、体格だったりと私に比べると足りないものが多すぎるが、必殺ノートを読んだだけで弱々しいながらもトーチカができているハス太の才能は恐ろしい物がある

 

 私も負けてはいられない

 

「ハス太、次からは私も必殺技を使っていきます。頑張ってください」

 

「わかった!!」

 

「行きます……リアルインパクト!!」

 

 リトルインパクトに奥行きの衝撃が追加された一撃は今まで分身を使ってできていたが、遂に1人でも放つ事ができるようになった

 

 空間にベキベキとヒビが入る

 

 まるで硝子にハンマーを打ち付けたかのようなヒビがボールを中心に入る

 

 ヒビはゴールに向かって突き進み、ワンテンポ遅れて亀裂を沿うような感じでボールが突き進む

 

「トーチカ!! うわ!」

 

 ヒビがトーチカに触れた瞬間にトーチカは砕け散り、ボールは障害が消えたことで威力をそのままにゴールネットに突き刺さり、ギュルギュルとまだ回転している

 

「す、凄い! 凄いよ震撼!」

 

 リアルインパクトの良い所は衝撃が2段階になっているところだ

 

 初撃で相手の必殺技を粉砕し、それでもダメならば次撃のボールが襲いかかる

 

 恐らく帝国学園はライフルを止めてくる

 

 その前にライフルを超える必殺技を多く覚える必要がある

 

 インパクトシリーズができたのであれば、次はペンギンシリーズかライフルシリーズだ

 

 3系統に分裂したシュートは貫通力のライフルシリーズ、衝撃のインパクトシリーズ、制圧力のペンギンシリーズと役割がある

 

 ただ、ドリブル技の浸透、浸透戦術、分身フェイトやディフェンス技のトーチカ、分身ディフェンスなんかも強化しなければならない

 

 分身系は強力だが、分身を集めなければならないデメリットがあり、独自に動かせるのにディフェンスやフェイントに集中させるのは効率が悪い

 

 浸透戦術も分身を使う技なのでこれ以上の発展も厳しいので、浸透を進化させる必要がある

 

 浸透を進化させるとしたら突破力と防御力が欲しい

 

 浸透はボールを蹴りあげて複数に分裂させ、着弾と同時に爆発させることで目眩ましによる奇襲的意味合いが強く、面の制圧力はあるが、突破力としては物足りないし、防御力に至っては皆無に等しい

 

 氷や炎で包むとかをやれば良いのだが、いかんせん私には合っていない

 

 ふとゴール横に待機させているロボット円堂先輩を見た

 

「メカ……装甲……これでいきましょう」

 

「ん? 震撼何か思い付いた?」

 

「A.新しい必殺技を思い付きましたが、今はハス太のトーチカを強くしましょう」

 

「はい! よろしく!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハス太との秘密の特訓の他にも全体でイナビカリ修練場で皆レベルアップするために地獄の様な特訓を続けていた

 

 皆ボロボロになりながらも必死に食らい付き、倒れるまで特訓を続けた

 

 土門先輩なんかは

 

「この練習……何の意味があるんだよ」

 

 と呟くほど変な練習も多々あっあが、私にとっては全てがサッカーに通じていると思えた

 

 円堂先輩はマジン・ザ・ハンドの特訓を続けており、私は基本円堂先輩のサポートをしながら皆の倍動き回っていた

 

 勿論100kgのユニホームを着用して

 

「ライフルV3」

 

「よし! マジン・ザ・ハンド!!」

 

 一瞬マジンは出るものの円堂先輩の気の溜め方や筋力不足で私のシュートを一瞬の拮抗の後離散してしまう

 

「だぁぁもう一度だ!!」

 

「円堂先輩、次は私のシュートもライフルではなく別のに致します」

 

「よし! わかった!! 来い!!」

 

 ピー

 

 指笛を吹き、ペンギンを召喚する

 

「皇帝ペンギン……1号」

 

 ペンギンが私の脚に噛みついてくるが、そんなのは私にとって何の負荷にもならない

 

「マジン・ザ・ハンド!! ぐぉ!」

 

 円堂先輩が吹き飛ばされる

 

「震撼スゲーシュートだな! ライフルよりも強いんじゃないか!」

 

「分身ペンギンには劣りますがなかなかだと思われます。この技のレベルをドンドン上げようと思います」

 

「よーし! じゃあ特訓再開だ!!」

 

 扉の隙間からその様子を見ている者が1人……

 

「あれは! 皇帝ペンギン1号……なぜ禁断の技をアイツが……」

 

「あれれ? 土門先輩何してるんですか?」

 

 そこにハス太が通りかかる

 

「あ、いやー、ハス太か……通りかかったら震撼と円堂の特訓に見惚れてな」

 

「禁断の技とか言ってませんでしたか? 詳しく聞きたいなぁ」

 

「ぐっ……黙ってろよ。俺が元帝国学園出身なのは知ってるな」

 

「えぇ、まあ必殺技を見ればわかりますよね。キラースライドなんか帝国学園の人しか使いませんし」

 

「帝国には強力だが使えば使うほど体を壊す禁断の技が存在する……その1つが皇帝ペンギン1号なんだ」

 

「なるほど……でも震撼普通に使ってませんか?」

 

「あぁ、わからねぇ……普通なら3回も使えば使用者は再起不能になるんだが」

 

「とりあえず頭の隅っこに記憶しておきます。土門先輩、戻って一緒に特訓しましょうねー」

 

「いやー俺もう疲れたかなって……」

 

「死ねば諸ともですよ」

 

「ハス太顔怖いって! かわいい感じのお前がしちゃいけない顔してるって!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 御影専農との試合前日

 

 ニャル、ハス太の3人でなんとか完成させたハス太のトーチカ

 

 私のがコンクリート色なのに対してハス太のは黄緑色をしているが大きさ、強度はとりあえず進化前といったところか

 

「トーチカの合体技の理論は私が考えておきました……これを見てください」

 

 必殺ノートバージョン1に新しいページが追加されていた

 

 そこにはニャルの字で【防衛線】と書かれていた

 

「トーチカを複数出すことにより点から線にする技よ。これが完成すれば鉄壁の防衛ラインができて、これ以上先には進ませないわ」

 

「……分身も使って4人でやれば更に強くなりそうですね」

 

「えぇ、人数が増えれば増えるほど防御力は増すわね」

 

「では分身2人とハス太でやってみましょう。私はシュートをしてみます」

 

「よし! 守っちゃうからね!」

 

「[俺の出番かな? ]」

 

「{ハーッハッハッハ! 例え本体といえども完璧に守ってみせるさ! }」

 

 ハス太を真ん中に、両サイドに私の分身が立ち、各々がトーチカを発動させる

 

 そこに私がリアルインパクトをぶつけるが防衛線は破壊されてしまった

 

「……線になってないわ。防御力の共有ができてない。タイミングを合わせる必要が有るかもしれないわね」

 

「もう一度お願いします」

 

 その後何度も挑戦したのだが、防衛線は完成しないまま試合当日となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ始まりました御影専農中対我らが雷門中との一戦はここ御影専農のフィールドにて行われます!! 実況は私角馬圭太がお送り致します』

 

 試合開始前に私はフィールドをぐるりと1周

 

 ニャルの話によれば御影専のは帝国学園と繋がっている

 

 帝国学園と繋がっているとなれば影山との繋がりが必ずある

 

 巨大なアンテナやレーダー群、彼らはデータによりサッカーを行うというのは音無マネージャーから情報を得ていたし、ニャルからも注意するように言われていた

 

「震撼……」

 

「大丈夫です。まだ私は負けるわけにはいきません。必ず勝ちます」

 

「そうだよね! そうこなくっちゃ」

 

 ハス太に心配されながらも試合が始まる

 

「よし皆! 力を合わせれば破れない壁はない! ガンガン攻めていくぞ!!」

 

「「「おう!」」」

 

 円堂先輩の激励で皆の士気が上がる

 

 フォーメーションはベーシック

 

 

【挿絵表示】

 

 

 前回とは栗松とハス太の位置が入れ替わっている

 

 

 

 

 

 

 

『さあ審判が開始のホイッスルを今鳴らしました! 試合開始です』

 

 雷門からの攻撃が始まる……目の前に下鶴が居たがスルー

 

「な!?」

 

 染岡先輩がビックリするが、そのまま攻め上がっていく

 

 その後豪炎寺先輩にボールが渡るが、いつの間にか6人にマークされていた

 

 フリーの染岡先輩に再びボールが渡り、ドラゴンクラッシュが放たれるが、4人居たディフェンダー達によるブロックでシュートの威力が消され、キーパーの杉森が軽くキャッチする

 

「なんだ今のは!?」

 

 円堂先輩含め皆おどろいているが、私とハス太は冷静だ

 

 私とハス太は更に凄いロボット達を見ているので動揺は全く無い

 

「ハス太」

 

「わかってるよ震撼」

 

 横に居るハス太に声をかけるとハス太もわかっているようだ

 

 この試合、たぶん鍵は私になるだろう

 

 ファイヤートルネードがコピーされた以上ドラゴントルネード等も対処されてしまっているだろう

 

「システム構築……これより起動します」

 

『出た!! 大選手の分身だぁ!!』

 

「分身ディフェンス」

 

『大選手御影の山岸からボールを奪った!!』

 

「ライフルV3」

 

 キュィィィィィィンとけたたましい機械音と共にボールが発射される

 

「ダブルロケット」

 

 杉森の両腕からゴッドハンドの様な大きな腕が出現し、それがボールめがけて発射された

 

 空中でせめぎ合った後、ライフルは吹き飛ばされた

 

「な!?」

 

「ライフルが……止められた!?」

 

『ここで今まで止められてこなかったライフルが杉森のナイスセーブによって弾かれてしまった!!』

 

「……理解しました」

 

 私は杉森に指差してこう言う

 

「貴方はこれ以降私を止めることは不可能と理解しました。これより破壊を開始します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 御影専農の猛攻が始まるがそれを他のメンバーもがっちり守っていく展開となる

 

 カウンターで攻めた染岡先輩と豪炎寺先輩のドラゴントルネードをシュートポケットで杉森が守るが弾き、それをディフェンスから上がってきた壁山とのイナズマ落としが炸裂するが、これはロケットこぶしでクリアされてしまう

 

 ボールは御影専農へと移り、攻め上がってくる

 

「やらせないよ! 強制SANチェック1D100!!」

 

「スーパースキャン」

 

 御影の藤丸がハス太を突破

 

 が

 

「{ハーッハッハッハ! 行かせはしないさ! }」

 

 すかさず覇王がカバーに入る

 

 下鶴は私が、山岸は皇帝がブロックし、完全にパスコースを潰した

 

「オフェンスフォーメーション∂8!」

 

 杉森が指示をし、藤丸は大部にバックパス

 

 大部はそのままシュートを放つが、円堂先輩ががっちりキャッチ

 

「震撼!」

 

 ボールは皇帝に渡る

 

「皇帝!」

 

「おう!」

 

 皇帝は私にパスを出し、私は覇王、皇帝と3人でパスを回しながら御影専農の中腹まで攻め込む

 

「ディフェンスフォーメーションγ2」

 

「皇帝、覇王」

 

「{[おう! ]}」

 

 私はピーっと口笛を吹く

 

 ペンギンが召喚され、それがミサイルの様に飛び始める

 

「{[分身ペンギンV2!! ]}」

 

 ペンギンがボールを囲むように遊泳しながら御影ゴールに突き進む

 

 それを御影のディフェンダーが身を呈して守るが突破されてしまう

 

「ダブルロケット!!」

 

 空中でこぶしとペンギンが衝突する

 

 こぶしにペンギンが突き刺さるとペンギン達の目の色が黒から赤に変化し、大きなこぶしを粉砕する

 

「な!? 馬鹿な」

 

『ゴール!! 杉森無失点記録ここで終わる! 更に強力となった分身ペンギンが杉森の技を粉砕した!!』

 

「データ以上だぞ……なぜだ」

 

「A.まだ私は底を見せていないということですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

『監督いかが致しましょう』

 

「大震撼のシュートがお前の守りを突破する可能性が高かった以上これも考慮されている。ただ、奴は本体がシュートの起点となっている為、本体を封じればシュートはうてない。本体のデータはこちらで演算後直ぐに送る。藤丸、本体を徹底的にマークしろ」

 

『は!』

 

「杉森、オフェンスフォーメーションα9だ」

 

『了解しました』

 

 御影専農監督の富山は影山からの言葉を思い出す

 

「大震撼、奴を潰せ」

 

「理由を伺っても宜しいでしょうか」

 

「なに、雷門に勝つためには奴を潰せば勝率が上がる。簡単な事だ」

 

「わかりました。選手達にも伝えておきます」

 

「期待している」

 

(影山総帥の言葉を信じるのであれば、大震撼を潰せれば確かに御影の勝率ははね上がる。しかし、奴を潰すには藤丸だけでは不可能……分身を出してくる以上奴を倒さなくては11対13の勝負になる。フットボールフロンティアのルールに分身を禁ずる等は書かれていないからな。だが、本体を潰せれば……勝てる)

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ御影専農のキックで試合再開だ! おおっとディフェンスを含め全員が攻め上がっていく』

 

「エリア5からサイド1、∂7からα4へ」

 

「「「おう!」」」

 

『杉森全体を指示してパスが繋がる繋がる!! 雷門のディフェンスラインにすぐに到達!!』

 

「サイコショット」

 

 シュートコースにハス太が走り込み

 

「トーチカ」

 

 地面からトーチカを出現させてシュートをブロックする

 

「な!?」 

 

「馬鹿な! それは大震撼の必殺技」

 

「凄いぞハス太!」

 

 御影は明らかに動揺し、円堂先輩はハス太の必殺技に喜ぶ

 

「えへへ、ピースピース! からのー風丸先輩!」

 

「おう!」

 

『ハス太から風丸にパス!』

 

「豪炎寺!」

 

『ああっと花岡がカット、すぐさま前線にパス』

 

「下鶴!」

 

「ファイヤートルネード」

 

「させるか!! ゴッドハンド」

 

 下鶴のファイヤートルネードを円堂先輩はがっちりキャッチ

 

「どうだ!」

 

「くっ」

 

「攻め続けろオフェンスフォーメーションβ3」

 

「震撼!」

 

「[任せろ]」

 

 皇帝に円堂先輩からボールを受け取る

 

「行かせるか! スーパースキャン」

 

「[ふん]」

 

『おおっと誰も居ないところにパス? いや! ボールが回転してるぞ!!』

 

「[ひとりワンツー]」

 

「御影専農の防衛ラインを突破!! そのままシュートか!?」

 

「[本体]」

 

「させない」

 

『ああっと藤丸がボールを奪ってない!! 奪ってないぞ』

 

「なに!?」

 

『ボールにスピンをかけてトラップミスを誘発した! なんて技量なんだ!!』

 

「ディフェンスフォーメーションΨ1」

 

『ああっと大選手3人に囲まれたぞ』

 

「こっちだ」

 

『豪炎寺にパスが繋がる!』

 

「ファイヤートルネード」

 

「シュートポケット」

 

『杉森シュートを止めきれてない!! 弾いた先には大が走り込んでいる!!』

 

「リトルイン」

 

「「「させるか!!」」」

 

 私が蹴る瞬間に3名の御影専農の選手がボールめがけてオーバーヘッドキックでブロックしようとする

 

「ふん」

 

「「「うわぁ!」」」

 

 技は不発に終わったものの御影の選手達は吹き飛ばされた

 

「稲田、室伏、花岡!!」

 

 シュートはゴールポストに当たって外に出る

 

「大丈夫か」

 

「キャプテン、問題ありません」

 

「監督」

 

「続行だ」

 

「「「はっ!!」」」

 

 ボールは御影からのゴールキック

 

「オフェンスフォーメーションΔ3」

 

 再び御影の猛攻

 

 私は藤丸という選手にきっちりマークされて動きにくいが、ゴールは円堂先輩のゴッドハンドがあるかぎり奴らには破れない

 

 それにハス太も居るため、私はディフェンスゾーンよりやや前ですぐにシュートに移れるようにしていた

 

「山岸!」

 

『ボールはフォワードの山岸に渡った!』

 

「行かせない! トーチカ!!」

 

「サイコショット」

 

「なに!?」

 

 ボールはトーチカのはるか上を通過する

 

 そこに走り込んできた下鶴が回転を始める

 

「それはパスだ!!」

 

 豪炎寺先輩が叫ぶがもう遅い

 

「ファイヤートルネード」

 

 下鶴のファイヤートルネードが炸裂する

 

「ゴッドハンド」

 

 円堂先輩はゴッドハンドをしたが、ボールは明後日の方向に飛んでいく

 

「円堂先輩! 罠だ!!」

 

「な!?」

 

 ファイヤートルネードだがサイコショットも生きている

 

 念力の力と下鶴がかけた回転でボールは大きく半円を描きカーブする

 

 そう、ゴッドハンドをすり抜けるように

 

 慌てた円堂先輩は熱血パンチで対応するが、受け止めきれずに入ってしまう

 

『ご、ゴール!! 奇策の前に円堂破れる! 御影専農1点をもぎ取り同点です』

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵もなかなかやるわね……二夜さん何を書いてらっしゃるの?」

 

 野生中との試合後に新たにマネージャーとなった夏未先輩がニャルに話しかける

 

「いえ、この状況を打開する方法を考えていまして」

 

「できるの?」

 

「えぇ、御影の人達は震撼の身体能力を測りきれてないわ。震撼が出力を上げれば済む簡単な話よ」

 

「でも大さんはマークが厳しいんじゃなくて?」

 

「マークを粉砕するのは容易いわ。現に彼、まだ浸透ってドリブルの必殺技を使ってないじゃない」

 

「確かにそうね」

 

「……さて、そろそろ震撼が動き始めるわよ。雷門先輩見逃してはダメですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ雷門からキックオフです! ボールは豪炎寺から染岡へ、そこから後ろのマックスに移ります。マックスから風丸、風丸から大にボールが渡るぞ』

 

「ライフル」

 

「トルネード」

 

『出た大と豪炎寺の連携必殺技ライフルトルネード!! 遠距離から発射される必殺技に豪炎寺のファイヤートルネードで威力が上がってるぞ』

 

「タブルロケット」

 

『おおっと杉森ナイスセーブ! ライフルトルネードを弾き飛ばした!? いや! 大が走り込んできている!!』

 

「「ドラゴンインパクト」」

 

『出た! 今度は染岡と大の連携技ドラゴンインパクトだぁ!! 杉森逆をつかれたが!?』

 

「ダブルロケット」

 

『これも防いだ!! が、ボールは大の足元だぁ』

 

 ピーと指笛を吹く

 

「分身ペンギンV2」

 

「ダブルロケット……ぐわぁ!!」

 

『ゴール!! 分身ペンギンが杉森のガードを粉砕! 2-1で前半戦はここでホイッスル。前半終了です』

 

 

 

 

 

 

「杉森」

 

 円堂先輩はトイレの前で御影の選手達がたくさん居る前で相手キャプテンの杉森と話し始める

 

「サッカー楽しいか?」

 

「楽しい? 理解不能だ」

 

「サッカーは楽しいものだろ! 敵も味方も一丸となってボールを追いかけシュートを決める! お前らのサッカーはもっと楽しく強くなるはずだ」

 

「……」

 

「後半はもっと楽しめよサッカーを!」

 

 円堂先輩は杉森にそう言うと去っていった

 

「理解……不能……なぜ負けている我々を励ますような事を言うのだ? ……なぜだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総帥誠に申し訳ありません。前半はこの様な無様な様を見せてしまい」

 

『後半、雷門を潰せ』

 

「はい、しかし、大震撼を潰すとなると3人以上必要でして……」

 

『私は雷門を潰せと言ったのだ。意味はわかるな』

 

「……はい」

 

『よろしい。後半は期待している』

 

 

 

 

 

 

 

 後半が始まる前に監督が我々を集めて話を始めた

 

「総帥より指示だ。これより雷門を潰す」

 

「しかし監督。大震撼は我々の数値以上の選手です。我々の方が潰されてしまいます」

 

「大震撼ではない。他のメンバーを潰せ」

 

「その様なプレイはデータにありません」

 

「柔軟に対応しろお前ら。総帥に逆らったらどうなるか……わかっているよな」

 

「しかし監督」

 

「くどい! これは勝つための命令だ。指示に従え杉森!」

 

「くっ……」

 

 監督より厳命された

 

 雷門潰しの開始

 

 しかし、我々にはその様なデータは無い

 

 監督は勝利のためと言っているが、データに無いことをいきなりやればチームのリズムが狂ってしまう

 

 我々は精密機械のごときサッカーをしている

 

 歯車が狂えば修正は困難……どうすれば

 

『もっと楽しめよサッカーを!』

 

 ふと円堂守の言葉を思い出す

 

「サッカーを楽しむ……か」

 

 私は決断を下す

 

「オフェンスフォーメーションβ2」

 

「な!? 指示違反だぞ杉森!!」

 

「お言葉ですが監督。我々はこちらの方が勝率が高いと判断しました」

 

「な!?」

 

 監督の顔色はみるみる真っ青になっていく

 

 そして監督はヘッドギアを放り投げてベンチから出ていってしまった

 

「監督!?」

 

 監督からの情報が切断されたことにより私以外の皆は戦意を喪失してしまう

 

「終わりだ」

 

「終わりだ」

 

「終わりだ」

 

「勝てない終わりだ」

 

 戦意を失った皆は棒立ちとなり、雷門に深く切り込まれてしまう

 

「終わり……負けるのか……我々が!?」

 

「ファイヤートルネード」

 

 豪炎寺のファイヤートルネードが襲い掛かる

 

「まだだ! まだ負けていない!! うぉぉぉぉぉ!! ロケットこぶし!!」

 

「何!?」

 

「目を覚ませ皆!! 監督が居なくても我々が培ってきた努力は無駄にはならない!! 諦めるな!!」

 

 その言葉にメンバーは顔を上げる

 

「御影専農の底力! 雷門に見せてやろうぜ!!」

 

「「「おう!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「御影は立ち直りましたか」

 

「戦意喪失のまま試合が決まるかなと思ったけどなかなか上手くはいかないか……震撼どうする?」

 

「……円堂先輩」

 

「なんだ震撼」

 

「ゴールは私とハス太で守ります。楽しんできてくださいよ先輩」

 

「震撼……わかった。行ってくる!!」

 

『御影と雷門前半とはうって変わって中段にて激しいボールの取り合いが発生しております!! おおっとなんと! 円堂がゴールから飛び出してきているぞ!!』

 

「少林こっちだ!!」

 

「キャプテン!!」

 

『少林から円堂と豪炎寺の真ん中にパスが繋がる!』

 

「豪炎寺」

 

「円堂」

 

「「イナズマ1号」」

 

『出た!! 円堂と豪炎寺の新必殺技だ』

 

「キーパーがシュートをうつなど……理解不能だ……が

 負けるわけにはいかん!! ダブルロケット」

 

 イナズマ1号はダブルロケットと拮抗状態になる

 

「いっけぇぇぇ! 染岡!」

 

「なに!?」

 

「ドラゴンクラッシュ」

 

 空中でドラゴンクラッシュが炸裂する

 

 ダブルロケットを押し退けてそのままゴールに押し込む

 

『ゴール!! 円堂、豪炎寺のシュートを染岡が更に押し込んだ!! 3-1』

 

「やったっす! キャプテン! 豪炎寺さん! 染岡さん! 最高っす!」

 

「やったでやんす!」

 

「ナイス円堂!」

 

 

 

 

 

 

 

「まだだ! まだ我々は負けていない!」

 

 御影が逆襲を開始しようとドリブルで上がってくる

 

「もう勝敗は着きました。真トーチカ!!」

 

「ぐわぁ!!」

 

『出た!! 鉄壁を誇る大のトーチカだぁ!! 御影専農の猛攻に大と黄衣のダブルトーチカでシャットアウト』

 

「馬鹿な! これ程までに強いというのか雷門は!?」

 

『ここで試合終了のホイッスル!! 3-1で雷門勝利です』

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けた……完敗だ。円堂、負けてしまったがお前達とのサッカー楽しかったぞ」

 

「あぁ! 杉森! こっちも楽しい試合だったまたやろうぜ!」

 

「また……か、機会が有ればまたやろう」

 

 円堂先輩は杉森と会話をしているが、私は御影専農のエースストライカーの下鶴に声をかけた

 

「何か様か?」

 

「どうやってファイヤートルネードをコピーしたのですか?」

 

「映像を何度も見てイメージを固め、反復練習で身につけましたが?」

 

 普通の人であればただ他の選手の必殺技をコピーした者だとか、自力で技を開発できない奴だとかの評価を受けるだろうが、私は彼をこう評価した

 

 彼は見ただけで技をコピーできる才能を持った選手だと

 

 私は下鶴をいたく気に入り、帝国と繋がっている嫌な奴から環境さえあればどこまでもコピーできる可能性を秘めた選手と感じた

 

 私は彼に頼み込んで連絡先を教えてもらい、彼もハス太との特訓に参加させようと画策した

 

 この事をハス太に何で下鶴を誘うのか聞かれた時に

 

「帝国を倒すことが目的ですが、私の人生は高校大学、プロと続いていくでしょう。そしたら彼のような選手を教えるのはとても楽しい。私は技の開発が上手いですが、コピーするのも才能だと思っています。今のうちに将来のチームメイトを確保するのは悪いことではないと思うのですがね」

 

 と言った

 

 後日下鶴も私の空間に招待する事となる




・ライフルV3
・真トーチカ
・浸透V3
・浸透戦術
・真リトルインパクト
・リアルインパクト
・ひとりワンツーV3
・皇帝ペンギン1号G2
・分身ペンギンV2
・???
・??? 
・分身フェイント
・分身シュート
・分身ディフェンス


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始まり

 御影専農との試合後もハス太とニャルを交えて異空間で特訓し、休憩時間に私はボソリと呟く

 

「今日の御影専農の選手達はもったいない選手ばかりだった」

 

「勿体無い? どの選手も震撼に手も足も出なかったじゃん。攻撃は僕らのトーチカに阻まれて、攻撃は皇帝ペンギン1号を使うこと無く得点したし……」

 

「サイボーグの様な選手達ばかりでしたが、下鶴と私をマークしていた藤丸、キーパーの杉森は素晴らしい選手でした。とりあえず彼らの中で一番印象に残った下鶴に声をかけましたが、彼らは帝国を軽く凌駕するポテンシャルがありました」

 

「へー、なるほどね。でも僕的には実力が足りてなかった様に見えるけどね」

 

「ハス太、貴方の観察眼ですが、現状を見るのには適していますが成長力や選手の発掘力となるとポンコツになりますよね」

 

「なにお! ニャルだって僕と大差無い癖に」

 

「……まだ早いかもしれませんが円堂先輩が卒業した後の雷門を率いるのは私とハス太です。他のサボっていたメンバーに雷門の指揮を取らせたくはありません」

 

「まぁそれには同意かな。震撼に惚れて僕はサッカー部に入部したくちだし」

 

「顧問の冬海が使えない以上私達3人が後人の育成をする必要があるわね」

 

「まぁまだフットボールフロンティアの予選を戦っている段階なので時期尚早なのですが、私達より下の見込みのある選手の発掘をしたいですね」

 

「でも震撼の練習は体壊すよ」

 

「勿論セーブしますが……ニャルは練習の組み立て等は得意ですか?」

 

「……勉強中の知識でよければね」

 

「構いません冬海よりはマシです」

 

「まず今ある練習の中で一番効率が良いのがここでのロボットを使った練習よ。特に重りのユニホームは動きを阻害すること無く負荷だけをかけるから膝への負荷を考えれば20kgまでなら常時着用しても良いくらい良い道具ね。……100kg着用している震撼が本当に人間かは置いておくとして、その次に効率が良い練習はイナビカリ修練場よ。雷門さんがリホームしてくれたおかげで身体能力を上げるのには良いわ」

 

「なるほど」

 

「ただイナビカリ修練場はサッカーの連携等は身に付かないわ。だからそのズレをそのうち修正しないと連携がこのままだとぐちゃぐちゃになるわよ。やる気になっている皆には言わないけどね」

 

「じゃあどうすれば良いのさ?」

 

「方法は2つ、ズレを練習で合わせるようにするか優秀な司令塔がズレを人力で直すか」

 

「ズレを人力でなんてできるの?」

 

「私ならできるわ。ただ、私は選手でもないし……そうね、ハス太やってみれば?」

 

「え? 僕?」

 

「地頭は悪くないし、ダメ元で練習してみれば? 防衛線も手詰まりだし」

 

「やってみましょうハス太」

 

「震撼が言うなら……」

 

 この時は冗談半分だったがハス太の司令塔化計画が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地区大会準決勝の対戦相手が決まった

 

 相手は雷門に負けたことにより特訓を重ねて強化された尾刈斗中を0-1で下した秋葉名戸学園と決まった

 

 この秋葉名戸学園だがフットボールフロンティア出場校の中でも最弱なのではと言われるくらい弱いチームなのだがなぜか準決勝まで勝ち進んできた

 

 尾刈斗中を倒したぐらいなので何かあるのだろう

 

「どんなチームなんだよ秋葉名戸って」

 

 円堂先輩含め全員がざわめく

 

 木野先輩が秋葉名戸の情報を読み上げていくが何で勝ったのか謎である

 

 特に試合前にメイド喫茶に入り浸っていたてのが本当に謎

 

「ここはこのメガネが一肌脱ぎましょう!」

 

 そう言ってメガネが宣言する

 

「尾刈斗中を破った訳が秋葉名戸のサッカー部が入り浸っているというメイド喫茶にあると見ました!! これは試合を有利に進めるための情報収集なのですよ! 偵察に行きましょう円堂君」

 

 と……

 

 馬鹿馬鹿しい……メガネが行きたいだけだろうに……

 

 私はメイド喫茶への情報収集が試合を有利にするとは考えられないのと、そんなことに少ないお小遣いを消費したくないと思い、静かに立ち上がり部室から出ようとした

 

「震撼君! 待ちなさい! これは試合に勝つために必要な」

 

「意味が有るとは思えません」

 

 メガネに止められるが私は構わず扉を開けてイナビカリ修練場へと向かうのであった

 

「あぁ! 震撼待ってよー」

 

 ハス太も私に付いてくるようだ

 

 

 

 

 

 

 

 結局メガネに乗せられた円堂先輩が皆を引き連れてメイド喫茶に行ったらしいが地下でオタクの巣窟(一応秋葉名戸サッカー部)を見せられ、メガネが興奮しただけで徒労に終わった……いや、秋葉名戸のメンバーがあまりに弱そうと言うことで翌日の練習にも皆やる気が感じられなかった

 

「わわ! 震撼ストップストップ!」

 

 私の顔に怒筋が浮かび上がっていたらしく、ハス太が私に抱きついて皆へ突っかかろうとしていた私を止めた

 

 円堂先輩や豪炎寺先輩、染岡先輩はいつも通りなのだが、それ以外のメンバー……特に私とハス太以外の1年がだらしない

 

 とりあえず私はニャルに頼むことにした

 

 ニャルの持つ特殊な情報網であれば何かわかるのではないかと思ったからだ

 

「えぇ、私は彼らの戦い方を理解しているわ。それをわかった上で話すと……弱者の戦い方よ」

 

「弱者の戦い方……ですか?」

 

「フットボールフロンティアのルールに抵触しない不正をガンガン行うわ。そして前半は体力を温存して後半戦勝負を挑んでくるわ」

 

「例えばどんな不正を?」

 

「ゴールをずらす、西瓜とボールをすり替える、ベンチの下に盗聴機を仕込む等ね」

 

「えげつないね」

 

「……なるほど……しかし、不正をしなければ勝てない程度の実力なのはわかりました」

 

「ディフェンスである貴方達2人もガンガン上がりなさい。攻めてこないから。さて、何点貴方達は取れるかしらね?」

 

「帝国学園戦に向けて弾みをつけられる試合にしようね震撼」

 

「ただ粉砕するのみ……例えどんな相手であろうとも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、俺をこんなところに呼び出して何か様か? 大、黄衣に……雷門中のマネージャーの?」

 

「二夜よ。ニャルと呼んで」

 

「失礼、ニャルか。こんな雑木林に何か有るのか?」

 

 私は御影専農の下鶴に練習がしたいから会わないかと連絡を取った

 

 今御影専農は監督不在なのとフットボールフロンティアを敗北したことで杉森が引退して新たに下鶴がキャプテンに就任して引き継ぎなどで忙しいなか来てくれた

 

 曰く

 

「俺達に勝った雷門が全国に行ってくれたら嬉しいからな」

 

 とのことだった

 

「今から開けます」

 

 私がそう言うと左指を鳴らした

 

 すると目の前に扉が現れた

 

「な! なんだこれ!」

 

 下鶴が扉に触ろうとしてもすり抜けてしまい触ることができない

 

「私の手を繋いでください。下鶴さん」

 

「お、おう!」

 

 ニャルが左手を握り、ハス太はニャルの手を握る

 

 右手で下鶴の手を握り、扉をくぐる

 

「な!? サッカー場だと」

 

 現れたのはサッカー場

 

 それも中学のグランドの様な質ではなくプロ等が使う事を想定したかのような人工芝、ゴムチップも質の高いものだった

 

「下鶴さん、ここにはサッカーロボット等もあり、私達のレベルを上げることに適しています。一緒に練習をしませんか?」

 

「こんな質の高いグランドは始めてだ。御影や帝国よりも質が高いんじゃないか?」

 

「最高級だと思われます」

 

「わかったやろう! こんな場所を出されたらやる気が出る」

 

「ではこのユニホームを着用してください」

 

「なんだ? ……重い!?」

 

「20kgのユニホームです。重さを調整できますが、私がパスワードでロックしているので下鶴さん達は調節することができないようにしています。これを着用して練習をしましょう」

 

「お、おう……わかった」

 

「では始めます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初3対3のミニゲームを3セット行ったがハス太と下鶴がバテた

 

「つ、辛い」

 

「重りでいつものように動けん……大は平気そうだな」

 

「ウォーミングアップみたいなものですので……これより負荷を上げますよ」

 

「少し休憩させてくれ……思ったよりも体力の消費が激しい」

 

「わかりました。私はドリブル練習をしているのでニャルからドリンクを貰って少し休憩していてください」

 

 そう言うと私はロボットを使ってドリブル練習を始めた

 

 

 

 

 

 

 ベンチでニャルからドリンクとタオルを貰い、汗をふく下鶴とハス太

 

 下鶴は震撼の動きを見てハス太に話し始める

 

「凄いな……あのデータは何だったのかと思えるほど大は強かったのだな」

 

「データ?」

 

「御影専農のサッカーは最新の機材を使ってインプットされたデータを元にシミュレーションを繰り返す。大のシミュレーションも俺達は繰り返し行ったが、データの数十倍強い事がわかった。雷門と河川敷でミニゲームをした時に大がシュートをしていれば俺達のデータが間違っていたと気づけたが……雷門は見越してたのか?」

 

「そんな深い考えはありませんよ下鶴さん。円堂先輩がゴールキーパーで豪炎寺先輩がエースストライカーなのには変わりません。ただ震撼はリベロ……フォワードもできますが、エースは豪炎寺先輩なんですよ」

 

「大は納得しているのか? 自分よりも弱いのがエースストライカーをしていて」

 

「豪炎寺先輩は弱くはありませんよ。……でも確かに僕から見ても震撼が豪炎寺先輩や染岡先輩にストライカーを任せているのかは不思議です。震撼がストライカーをやった方が良い場面も多々ありましたからね」

 

「ではなぜ?」

 

「震撼はキーパー以外全てのポジションにつけるようになりたいだけではないかしら?」

 

 ニャルが話しに入ってくる

 

「キーパー以外全て……か」

 

「彼の技術的には可能よ。それに震撼は未来を見てるわ」

 

「未来?」

 

「まだ1年生なのに3年に自分がなった時の構想を考え始めているわ。ハス太が司令塔にならないかという話をしたのも3年の時に物になっていれば儲けもの、今のままでもディフェンダーとしては震撼の次に動きが良い。だから中盤の守りのためにハス太を起きたいって」

 

「後はどうするのです?」

 

「壁山と栗松が居るじゃない。今のままだと使えないけど3年になる頃には使えるんじゃないかしら」

 

「……俺を練習に誘ったのはもしかして高校を見越してか?」

 

「もしかしたらね、ただ震撼は貴方達御影の選手を勿体無いと言ってたわ」

 

「勿体無い?」

 

「ええ、コピーするのも才能だと言ってたわ。あと未来のチームメイトとも」

 

「……高校を見越してか。ずいぶんと気の早い事だな」

 

 震撼が走ってきて

 

「そろそろ練習に戻りませんか? 下鶴さんのファイヤートルネードを私達にも教えてくださいませんか」

 

 と言ってきた

 

「豪炎寺が居るのにそっちに教わらなくて良いのか?」

 

「豪炎寺先輩から教わるのが筋でしょうが、コピーに成功させた下鶴さんの方が教えるのは上手いと感じました。それにファイヤートルネードはまだまだ発展の余地が有ると考えております。下鶴さん……豪炎寺先輩を越えてみたくはありませんか」

 

「……」

 

 下鶴は静かに頷いた

 

 コピーが本物を越える

 

 その行為はとても魅力に思えたからだ

 

「開発しましょう。ファイヤートルネードを越える必殺技を」

 

 練習が始まる

 

 勿論ファイヤートルネードの練習だけでなく下鶴にライフルを教えたり、ハス太と防衛線の開発も同時に行う

 

 普通なら無理だが、私には分身が使えるので効率良く進んでいく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ始まりましたフットボールフロンティア地区予選準決勝雷門中対秋葉名戸学園との一戦です。実況は私角馬圭太がお送りします』

 

 あれから数日

 

 防衛線はいまだに完成すること無く、他の必殺技の進歩もほぼ無い

 

 強いて言うなら1人の時に皇帝ペンギン1号を打ちまくって威力がほんのり上がったくらいか

 

「……」

 

「震撼?」

 

 ハス太が心配そうに私を見てくる

 

「大丈夫です。問題有りません」

 

「皆ー、頑張って!」

 

 マネージャー陣がなぜかメイト服になっているが、私はこの試合、帝国学園前にどれだけやることができるか考えていた

 

「あと1つ勝てば帝国……影山のチームと再び戦える……」

 

 そう思うとやる気が溢れでる

 

「さぁ皆勝つぞ」

 

「「「おう!」」」

 

 フォーメーションは前回と同じベーシック

 

 

【挿絵表示】

 

 

 試合が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合開始と同時に秋葉名戸はパス回しで時間を稼ごうとするが

 

「遅いです」

 

「な!?」

 

『おおっとディフェンダーの大が敵陣深くまで走ってきていた!! 秋葉名戸ボールを取られた』

 

「震撼こっちだ」

 

「豪炎寺先輩」

 

 私は豪炎寺先輩にパスを出す

 

 すると秋葉名戸が動き始めた

 

「いくぞ皆」

 

「「おう!」」

 

「「「五里霧中」」」

 

 足を高速で動かして砂煙を上げ始めた

 

 そんなの関係無しに豪炎寺先輩はファイヤートルネードを放つが、砂煙が晴れるとゴールネットの中にボールは無く、ゴールの後にボールが転がっていた

 

『なんとファイヤートルネードはゴールの外に! 雷門惜しい!!』

 

「ドンマイドンマイ! この調子で行け!」

 

 私はニャルに言われたゴールずらしをしているという言葉を理解した

 

 砂煙で見えなくしている間にゴールをずらしてシュートを外す……芝ではなく土のグランドだからできる技であるし、ルールにも抵触していない

 

 が、ズルはズルだ

 

「皆さん私にボールをください。秋葉名戸を攻略します」

 

 

 

 

 

 

 

『秋葉名戸のゴールキックからスタート、秋葉名戸ボールを前線に回さない! またもや時間稼ぎか!』

 

「甘いね! 這いよる触手改」

 

 うねうねと動く太い触手が相手のボールを絡めとり、ハス太がボールを奪う

 

「震撼!」

 

「「「五里霧中」」」

 

 私にパスが来たが目の前には再び砂煙

 

「皇帝、覇王」

 

「[{おう! }]」

 

「浸透戦術」

 

 空中にボールを打ち上げると同時にボールが分裂し、絨毯爆撃のように増えたボールが爆発する

 

 その爆撃の中を3人でパスを回しながら高速で突破する

 

「「「ぐわぁ!?」」」

 

「仮沢! 漫画! 筋路!」

 

 五里霧中をしていたメンバーを吹き飛ばし、砂煙は解除される

 

「や、ヤバイんだな! こうなったら」

 

「まさかさっき豪炎寺君のゴールが入らなかったのは!」

 

 メガネがベンチから何か叫んでいるが奴も気がついたらしい

 

 ゴールをずらしていることを

 

「ライフルV3」

 

「必殺! ゴールずらし!!」

 

 相手のゴールキーパーがタックルでゴールをおもいっきりずらしたが、私のライフルはシュートしながらゴールに突き刺さった

 

「ボールが変化しただと!?」

 

「A.ライフルの回転を弄れば可能。ゴールずらしなど私には通用しない」

 

 その後は一方的な試合となった

 

 五里霧中は私の浸透や浸透戦術で強制的に解除され、ゴールずらしもキーパーがずらそうとする方向の反対側に走るので、ずらされた方向にシュートを変化させるか、予測して放てば面白いように決まる

 

 私は5ゴール3アシスト

 

 豪炎寺先輩が3ゴール

 

 染岡先輩が2ゴール2アシストで10-0

 

 秋葉名戸を完膚なきまでに粉砕した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよ……いよいよ父さんの仇が取れる……」

 

 私はその日秋葉名戸から帰る途中父さんの墓の前に来ていた

 

 なけなしの小遣いで線香と花を買って報告に

 

「父さん……いよいよ来週父さんが果たせなかった帝国との試合があります。……必ず勝利を届けます。見守っていてください」

 

 墓を綺麗に掃除して線香と花を添えて拝んだ後、立ち去ろうとすると、別の男性達が父さんの墓の前にやって来た

 

「……まさか監督のお子さんか!?」

 

「……? 貴方達は誰でしょうか?」

 

「元大江戸中学サッカー部のOBだ。大監督にお世話になったメンバーだよ」

 

「……父さんの……」

 

「……色々有ったから親族と会わないように1週間ずらしてたんだがな……俺達の親達が申し訳ないことをしてしまった……監督には恩しかない! それなのに親達はご家族を大江戸から追い出すようにしてしまって本当にすまない」

 

 スラッとした男性がそう言うと他の男性達も頭を下げる

 

「……頭を上げてください。そんなことをして父さんは喜びません……それにもう少しで父と貴方達が行うことすらできなかった事が達成できそうなので!」

 

「……その制服……雷門中か! つまり決勝は雷門と帝国か!?」

 

「俺達の無念を晴らしてくれるか!」

 

「頑張れよ大監督の息子さん!」

 

「……俺達は大監督が自殺したなんて今でも思ってねぇ。誰かに殺されたと考えてる。誰かは解らねぇが……」

 

 その言葉は嬉しかった

 

 父の育てた選手達は誰一人として父を恨んでいなかったから

 

 誰一人として父の死が逃げだとは思っていなかったから

 

 私はツゥーっと涙を流した

 

 なぜ涙が流れるのか解らなかったがそれでも涙が溢れてくる

 

「見ていてください。必ず帝国を粉砕して父さんと皆さんの無念を全国に届けて見せます。決勝必ず勝ちます。大震撼! 私の名前は大震撼です!」

 

「わかった大震撼! 数年前の悲劇を、俺達の無念を全て託した。頼んだぞ」

 

「はい」

 

 ガシッと先頭に居た男性と握手をする

 

 戦う理由が増えた

 

 彼らの無念も私は背負う

 

 数年前の大江戸中の悲劇

 

 私は走り出した

 

 更なるレベルアップの為に

 

 勝つために……

 

 

 

 

 

 

 走って家に帰る途中

 

 私が信号で待っているとトラックが私に突っ込んできた

 

 跳ねられる直前運転席を見ると黒尽くめの男が笑っていた

 

 私は瞬時に理解した

 

 影山……奴はここまでやるのかと

 

 

 

 

 ドン

 

 ガッシャーン

 

「きゃぁ──ー!!」

 

「人が撥ね飛ばされた!」

 

「救急車と警察を呼べ」

 

 

 

 

 私は空中に浮遊しながら薄れ行く意識の中で声が聞こえた

 

『やっと見つけた! 会いたかった』

 

 と



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田中

 秋葉名戸戦の翌日、雷門イレブンに衝撃の一報が届く

 

「震撼がトラックに跳ねられた!?」

 

 音無マネージャーが報告を続ける

 

「震撼君のお父さん昔大江戸中サッカー部の監督だったらしいんですよ。それで墓参りをした後に前方不注意の4トントラックに跳ねられたらしいの」

 

「震撼は無事なんだよな! 生きてるんだよな!!」

 

「それが……現場に大量の血痕が残っていた以外の情報が無いんです……どこの病院に搬送されただとか、そう言う情報が全く無いんです」

 

 この場に居た土門と冬海先生の2人の顔が真っ青になる

 

 いや、他のメンバーも顔色は悪いが

 

「今日震撼が居ないのはそれが理由か……」

 

「でもどうするでやんす! 震撼が居ないとなると俺達の戦力はガタ落ちでやんす! 帝国に勝てるでやんすか!?」

 

 栗松が絶望した様な顔をしながらそう言うと場の雰囲気は更に沈む

 

「震撼は必ず来る……帝国学園戦に来る」

 

「ハス太……でも震撼はもしかしたら……」

 

「そんなハズはない! 震撼は並みの人間とは違うんだ!! きっと戻ってくる! 必ず来るんだ!!」

 

「ハス太……」

 

 僕は泣きながら訴える

 

 ふとニャルの顔を見るが、ニャルも首を横に振った

 

 ニャルでも解らないらしい

 

「どうなっちゃうんすかね……決勝戦……」

 

 壁山の声は皆の心を代弁していた

 

 こんな状態では練習にならないと今日はそのまま解散となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼道さん! これが帝国のやり方ですか! 選手の命を奪うなんてあんまりですよ」

 

「待て土門……何の話だ」

 

 解散となってそのまま土門は鬼道と路地裏で会ってい

 

「昨日トラックに震撼が跳ねられました。タイミングがあまりに良すぎる。考えても見てください。過去にも何度か有ったでしょ! 去年の豪炎寺だってそうだ。決勝直前に妹さんの事故に今回震撼の事故……偶然とは思えない。それに有力選手が帝国との試合前に怪我をしたり、体調不良で試合に出れないなんて事も帝国のデータベースを調べた時に複数回ありました」

 

「なんだと!?」

 

「鬼道さんも知ってたんでしょ今回の事も」

 

「いや、知らん。知らんがそうなると辻褄が合うことが多すぎる……まさか総帥が!?」

 

「でも今回の事で俺はもう無理です。帝国のスパイとしての活動は金輪際やめさせて貰います……いや、これが総帥のやり方ならばまだ何かしようとするかもしれません。仲間達が危ないかもしれませんので俺は守るように動きますからね!」

 

 そう言うと土門は走り去っていった

 

「……まさか総帥貴方は……」

 

 鬼道は帝国学園の方に戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

「寺門!」

 

「いくぞ佐久間」

 

「「二百烈ショット」」

 

「止めろ源田」

 

「パワーシールドV3」

 

 帝国イレブンが練習をする中、鬼道が浮かない顔で戻ってきた

 

「鬼道さんお帰りなさい! ……どうかしましたか?」

 

「洞面……いや、土門から情報を得ていたのだが」

 

「あぁ、雷門に転校した土門さんですか……? 何か有ったのですか?」

 

「大震撼がトラックに跳ねられた」

 

「な!? 大震撼が……」

 

「容態等は不明だから皆には話さないつもりだ。……なぁ洞面。このタイミングは我々帝国にとって都合が良すぎないか?」

 

「確かに良すぎる気がします。……そうですね。チームのメンバーは大震撼を止めると意気込んでいる人が多数ですし、その情報は伏せておいた方が良いかと」

 

「……今回の件、もしかしたら総帥が関わっているかも知れない。俺は独自に動く」

 

「解りました。気をつけてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この翌日冬海先生がバスのブレーキオイルを抜く細工をしていた事が決定打となり、土門は鬼道を再び呼び出し

 

「総帥はそこまでやるのですか! おかしいでしょ! 我々も殺す気ですか!!」

 

「……すまない。土門我々は総帥の批判は許されない……許されないが……度を超えているのは確かだ」

 

 鬼道はその後音無に見つかり、一悶着有ったものの、鬼道は総帥への不信感を更に強めることとなる

 

 

 

 

 

 更に翌日、土門は冬海のバスへの細工を告発し、自分が帝国のスパイである事実を冬海にバラされながらも皆を守ることに成功した

 

 ただ、監督であった冬海は夏未さんの指示で解任

 

 雷門教職員を辞めることとなる

 

 ただ困ったのが監督不在のチームはフットボールフロンティアに出場できない事だ

 

 雷門メンバーは新監督探しと搬送された震撼が何処にいるのか、そもそも生きているのか探すグループに別れて行動することとなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……生きている?」

 

 私はキ──ーンという甲高いエンジン音で目が覚めた

 

 体を動かそうとすると激痛が走る

 

「そうか、トラックに跳ねられて……私は……」

 

 体をよく見ると点滴や包帯でグルグル巻きにされており、足は無事の様だが、トラックに直接ぶつかった左腕はベキベキに折れていた

 

「目が覚めましたか」

 

 私の横からスッと薄い褐色肌の少女が現れる

 

「やっと見つけましたよ同胞。ギリギリのタイミングでしたが生きてて良かった」

 

 薄い褐色の少女は泣きながら私に抱きついてくる

 

「意味が解りません? ……そうだ! 私はどれぐらい寝ていたのです! それにここは何処ですか!」

 

「寝ていた時間は1日、今飛行機の中で、治療施設が整っている大島という場所に運んでいます」

 

「東京の病院で良くないですか! 私は来週にある帝国学園戦に出ないといけないのです!」

 

「同胞……大丈夫です。それらはなんとか致しますから今はゆっくり眠ってください。……そうそう、私は田中と言います。同胞は……大震撼でよろしいですよね?」

 

「名前も解らずに運んでいるのですか? いや、それよりも皆に無事を伝えなければ」

 

「無事ではありませんよ、左眼窩骨骨折、左腕複雑骨折、あばら骨5本、肺にあばら骨が刺さり穴が空きましたし、背骨が圧迫骨折……動こうとすると凄まじい激痛のハズです」

 

「……」

 

「今は折れたあばら骨の摘出と肺の穴を塞ぐオペをしましたが、それ以上は体力が持たないと判断してこうして運んでるんです。とにかく今は安静にしてください。私はもう同胞を失いたくないのです」

 

「……? さっきから言っている同胞とはなんなのですか?」

 

「覚えていないのですか! ……失礼」

 

 そう言うと彼女はおでこに手を当てると黄緑色の光が発せられた

 

「……なるほど融合しているのですのね……なぜ私が同胞と言うのか等は後でじっくり教えますので、今はゆっくり眠ってください」

 

 田中と言う少女がそう言うとカポっと口に呼吸器をはめられた

 

 すると意識がすぅっと途切れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に目が覚めると白い天井で、顔に違和感を感じた

 

「起きましたか。手術は無事に完了致しましたよ」

 

 白衣を着た田中を中心に白衣を着た複数人現れた

 

「眼窩骨骨折の影響で左目を失明していたので義眼にしました。まぁ我々の科学力が有ればこの程度造作も無いですがね」

 

 左目の周りを右手で触ると冷たく感じた

 

「骨を摘出して特殊合金に変えておいた。人工皮膚で覆ってはいるが、冷たいのは仕方がないと諦めてくれ」

 

「すみません鏡をいただけますでしょうか」

 

「はい、どうぞ」

 

 渡された鏡を見ると左目は一見普通の様に見えたが、よく見てみると小さな歯車だったりケーブルみたいなのが見えた

 

「左目の視力は5.0に設定してある。右目は2.0だから違和が有ると思うからこれをはめると良い」

 

 そう言って田中はモノクル(片眼鏡)を渡してきた

 

「このモノクルは右目に合わせて視力を調整してくれる優れものだ。これをはめて行動すると良い……あ、そうそう左腕と背骨、あばら骨の一部も特殊合金に変えておいた。筋肉は無事だったからそのままにしておいたよ」

 

 私は起き上がると飛行機の中で感じた痛みは無く、普通に立つ事ができた

 

「といっても血を失いすぎたから輸血したとはいえふらつくと思う。……おい!」

 

 田中がおいと言うとナースさんが私を支えてくれた

 

「サイボーグみたいですね。背骨を取り替えたと言うことはもう成長しない感じですかね」

 

「特殊合金と言ったろ。ちゃんと成長するし、合金も体の成長に合わせて太くなったり長くなったりするよ」

 

「それは良かった……ふぅ……今事故からどれぐらい経過したのですか?」

 

「そうだね2日ってところだよ……ここだと殺風景だし、少し歩けるかい? 車椅子も用意したけどどうする?」

 

「では車椅子でお願いします」

 

「わかった」

 

 すると私を支えてくれていたナースさんとは別の人が車椅子を押して、私を座らせてくれた

 

「歩きながら少しずつ話そう……まずここは伊豆大島と呼ばれる場所だ。私はここを改良して拠点にしている。といっても君が知っている伊豆大島ではないけどね」

 

 ナースが車椅子を押す速度に合わせて田中や他の人達も歩く

 

 田中以外の人物は喋らない

 

「知っている伊豆大島ではない? どういうことでしょうか?」

 

「……今ここは数万年後の伊豆大島さ」

 

「数万年後……何を馬鹿な事を。そんなわけあり得ませんよ。飛行機で移動したのに、なぜ数万年後の伊豆大島に来ているのですか? 確かに骨を特殊金属に変えるだとか人工皮膚なんかは確かに未来の技術だと思いますが、それでもおかしいですよ……未来だなんて」

 

「我々には可能なのですよ。時間を支配した種族である我々にはね。勿論大震撼貴方もですよ」

 

「時間を支配した種族……? 私は人間ですよ。その言い方では私は人間ではないようじゃないですか」

 

「そう……大震撼貴方は人間ではないよ。我らが種族はイスの偉大なる種族! 母星イースより生存を目的とした種族なのです」

 

「……宇宙人と言うことですか? 馬鹿馬鹿しい。私は人間のハズでしょ」

 

「いや、違うね。貴方も立派なイス人よ。私達は基本精神体の種族よ、他人に乗り移って記憶を読み取り、知識を糧にする。もっとも我々の母星は破壊されてしまったけどね」

 

「破壊された?」

 

「まずは貴方がなぜ人間だと思っているかから話しましょう」

 

 田中はタブレットを私に渡してきた

 

 とても軽く、映像は今の技術力では到底不可能なほど画質が良い

 

「まず私が読み取ったイス人としての貴方の過去を見せましょう」

 

 そこに映されたのは幼き日の私であった

 

 具体的には赤ん坊だ

 

「現代換算で今から13年前母星イース……いや、宇宙その物が何者かにより破壊され、生き残ったイス人達は元々拠点を持っていた各々の別の宇宙の過去に時間跳躍を行い、生き延び、そしてなぜ宇宙空間が消滅するような大事件が起こったのか探った……が、私には解らなかった。私単体でできる事等限られている。だから仲間を作ることにした。イス人の力を使えば人を人ならざるイスの民に遺伝子を組み換えてする事は容易い……容易いハズだった」

 

「ハズだったっということは失敗したのですか?」

 

「どいつもこいつも人からイス人になることを拒み続けた……記憶を消して元の世界に返したが、それでも私は同胞が欲しかった……そんな中調査ロボットがイス人の痕跡を見つけた。大震撼、貴方何処で電撃銃を手に入れたのですか?」

 

「電撃銃? ……心当たりが有りませんが」

 

「これだよ」

 

「貝殻……あ!?」

 

「君の部屋に同じ物が有った。これはここを押すとコードが出てきて電気を充電し、32発分の電撃を発射することができるイス人の武器なんだ。これが有ったから私は同胞の君を探すことができた」

 

「しかし、それだけでは私が人でない事の説明とはなりませんが」

 

「それもそうだ。と言っても私は同胞だと記憶を読むことで確信したが、タブレットを再び見て、赤ん坊の貴方にイス人の光が入って行ったでしょ」

 

 タブレットを見ると確かに光が私の体に入って行った

 

「ただ、イス人としての貴方も緊急跳躍でダメージを受けていた。その為人格の乗っ取りに失敗して融合するという形になった……解ったかな」

 

「……確かに私の肉体が人間を超えた力が有ることは理解していました。過去に英雄症候群みたいだとも言われた事があるのでね……治していただいてこんな事を言うのも心苦しいのですが、私は私です。イス人という側面が有っても大衝撃の子供です。あと少しで親の仇を取れるのです。帰してはくれませんか」

 

「勿論帰すさ。同胞の君がそう望んでいるのだから。でも少しの間私と遊んではくれないか……今まで独りぼっちだったんだ……ようやく……ようやく同胞を見つけれたんだ」

 

 田中は涙を流しながら懇願する

 

 私も鬼ではない

 

「解りました。では色々教えていただけませんか? そもそも私はイス人であるのにイス人の事をよく知りませんので」

 

「構わない! 1から教えよう! ……とりあえずだ、私の拠点に案内するよ」

 

 病院を出ると海が広がっていた

 

 綺麗でゴミ1つない美しい浜辺に海鳥が消波ブロックの上で羽休めをしている

 

「人類が居なくなった地球だよ。宇宙に進出したのは良いが、地球は環境汚染が酷くて住めない惑星となってしまった……宇宙進出した人類も緩やかに衰退しているよ……もっとも色んな惑星に住み着いているがね……母星を無くした者は衰退するのみなのに……」

 

 それは母星が存在しているのにその母星を捨てた人類の愚かさを言っているようだった

 

「私の力では地球全てのテラフォーミングは不可能でね。この伊豆大島周辺の僅かな地域のみをなんとかテラフォーミングして快適な居住空間にしているんだ……もっとイス人が増えれば生存圏も拡大できるんだけどね」

 

「他のイス人は何処に飛んだとかは解らないのですか?」

 

「それが解れば私は独りぼっちではないさ……こうしてイス人1人見つけるのに100年もかかったんだ。地球だけで100年……確かに地球では過去に同胞が一大生存圏を作っていたが、それも過去の話で、私達は様々な時間軸に1つしか存在しない……この意味がわかるかい」

 

「つまり何かしらのパラレルワールドが有ったとしてもイス人は居ないと言うことですか?」

 

「その通り……だから過去をやみくもに探しても時間軸にヒットしなければ無駄なのよね……だから電撃銃や私達が作ることができるアーティファクトを検索のキーにしていたの」

 

「なんとなくですが、理解できました」

 

 車椅子を押されて移動すると大きなホテルがそびえ立っていた

 

「ここのスイートルームがこれから震撼が暮らす場所だよ」

 

 と田中が言う

 

 明らかに高級感がハンパなくて場違い感が凄い

 

 エントランスの横にはレストラン、2階は温泉施設になっているらしく、スイートルームは7階と言われ、エレベーターで昇っていく

 

「イス人は偉大なる種族と呼ばれていますがなぜだか解りますか?」

 

 唐突に田中は私に質問をしてきた

 

 これまでの会話から察するに

 

「時間を支配したと言ってませんでしたか?」

 

「その通りです。過去や未来を自由に往き来できるのは私達種族しか今は居ません……まぁ人類も往き来できる可能性は有りますがね」

 

「……と言うことは父さんを助けることも!?」

 

「どの様にして亡くなったのか映像を用意してあります。それを見てから考えてみても良いのではないでしょうか?」

 

 膝に置いていたタブレットが光だす

 

 私は見易い様にするとそこには手袋をした黒スーツの男達が車から出ようとした父さんの口にハンカチを押さえつけると、父さんはだらりと手を下ろした

 

 どうやら意識を失ったらしい

 

 その後車の中に練炭を焚かれて父さんは亡くなった

 

「……やっぱり自殺じゃなかった!! 父さんは殺されたんだ」

 

 犯行時間は僅か1分……

 

「……ねぇ田中、イスの力を使えば父さんを助けられるかい?」

 

「可能だよ。……と言いたいところだけど彼は遅かれ早かれ死ぬ運命にある」

 

「死ぬ……運命?」

 

「どんなに世界線を分岐したとしても死ぬ運命の人は必ずいる。……彼の魂は神によって捕らわれてしまっているからね」

 

「どう言うことですか!!」

 

「君は神と契約をしなかったかい?」

 

「……あ」

 

「神は【今の君】と契約をした。今の君になる重要な要素は神によって固定された……特にナイアルラトホテップはもてあそぶ神だ……君が一番大事な物を奪うだろうね」

 

「そ、そんな……じゃあ父さんは私が助けたとしても……」

 

「死ぬね」

 

「……ァァァアアアア!!」

 

 私は叫ぶ

 

 ナイアルラトホテップ神の信者になるというのこういうことだったのか

 

 ナイアルラトホテップ神はこの事を知っていて私を信者に誘ったのだとしたら……

 

 私は取り返しのつかない間違いをしてしまった

 

 叫んだところで過去は変わることもない

 

 大粒の涙を流しながら私は叫び続けた

 

 ……対価は貰ってしまっている

 

 過去を改変できると知ったが、私に関しての過去は固定されてしまった

 

 泣いて泣いて泣いて……泣きつかれて私は前に進む事にした

 

「おさまったかな?」

 

「取り乱してすみません。落ち着きました」

 

「それは良かった……着いたよ」

 

 そこにはフロアを1つ全てを使った豪華な部屋が有った

 

 生活に必要な物は全て揃っており、食材が有ればここで暮らせるのではないかと思えるくらいとても立派な家具、家電が揃っていた

 

 中には見たこと無い家電も多数あったが、田中が1つ1つ教えてくれた

 

「職員を1人部屋に滞在させておくから呼べばすぐに手伝ってくれるよ」

 

「……1つ気になったのですが、彼らは人ですよね? 全く喋らないですが」

 

「いや、私が作ったロボットさ」

 

「ロボットだったのですか……」

 

「AIも搭載しているから喋ることもできるんだけど、今まで黙らせてたんだ。人らしい行動もするよ。まぁ喋り相手が欲しかったら私をこのベルで呼んでよ。何時でも来るからさ」

 

 と言って田中は私にハンドベルを渡してきた

 

 車椅子から降りた私はリビングのソファーに腰を掛けてご案内と書かれたプレートを手に取る

 

 そこには食事の時間や毛布の貸し出し、マッサージ予約等が書かれていた

 

 プレートの横には長方形の機械が置いてある

 

 田中曰くスマートフォンと言うらしい

 

 スマートフォンの電源を付けると電話マークやメモ帳等のマークが分かりやすく表示された

 

 プレートの電話番号を打ち込めばドリンクや軽食や備品を持ってきてくれるらしいので、早速フロントに電話をかける

 

『いかが致しましたか大様』

 

「サッカーボールを1つ借りたいのですが」

 

『ただいまお持ち致します』

 

 1分後にサッカーボールが届けられ、私は軽く両足の間を転がしながらテレビを付ける

 

 テレビでは明日の天気や見たこともないドラマ、SANちゃんと愉快な仲間達という教育番組がやっているのを見て、改めてここが日本ではなく未来なんだというのを理解した

 

 チャンネルを回して見たけれどスポーツはやってないならしい

 

 テレビを消して、ベッドの上で大の字になって寝ることにした

 

「お爺ちゃん……大丈夫かな……そうだ」

 

 ハンドベルを鳴らすと田中がエイみたいな空飛ぶ乗り物に乗ってベランダから入ってきた

 

「なんだい?」

 

「お爺ちゃんに無事なこととここに呼びたいんだけどダメかな?」

 

「構わないよ。ちなみに今君は病院に救急搬送されたことになってるよ。何処の病院かは解らないようにしてあるけどね」

 

「お爺ちゃんは私が元気なところを見なければたぶんポックリ逝っちゃうから早く!」

 

「わかったわかった。今から呼びに行くから」

 

「お願いします田中! 私に唯一残っている肉親なんです」

 

「大丈夫。安心して」

 

 田中は再びエイみたいな乗り物に飛び乗ると空中に虹色の穴が開き、そして田中はその穴に入ると消えてしまった

 

 やることが無くなった私はベッドで眠る

 

 輸血されたとはいえ、血が少し足りないのか立ち眩みがする

 

「色々情報が入ってきて疲れました……休息に移行」

 

 私はそのまま眠ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「震撼に面会できないとはどう言うことだ!! 儂に残された最後の希望なのです! ……希望なのです」

 

「肉親なのは解るのですが、大震撼君は一刻も争うのでお会いすることはできません。最善を尽くします」

 

「神様……神様どうか震撼を救ってください……」

 

 儂は震撼がトラックに跳ねられたと聞いて真っ青になった

 

 病院から連絡があり、タクシーを呼んで病院に駆け込んだ時には震撼は集中治療室の中で、中の様子は全く分からなかった

 

 トラックのドライバーは警察に捕まったらしいが、そんなことより震撼が生きていれば儂は……儂は……

 

 実年齢より老け込んでしまった顔を覆う様にシワシワの手で顔を隠す

 

 何で……儂よりも早く皆逝ってしまう

 

 衝撃も婆さんも……震撼も逝ってしまうのではないかと不安になる

 

 儂が頭を抱えていると目の前に薄い褐色の震撼くらいの少女が現れた

 

「大丈夫震撼は生きてますよ。今会わせてあげる……来て」

 

 儂は凄い力で手を引かれ、よく分からないまま少女の後ろに座らされ、そこで意識が切れてしまった

 

 気がつくとどこかのホテルのフロント前に立っていた

 

 摩訶不思議な現象に驚いているのもつかの間、儂は少女に連れられて7階までエレベーターに乗って移動した

 

 部屋に案内された儂は大きなベッドで横になって眠る震撼を見つけた

 

「し、震撼!! 震撼!! 夢か!? 夢なら覚めないでくれ! もう儂から家族を奪わないでくれ」

 

「震撼のお爺さん落ち着いてください。震撼は無事ですので……疲れて今は眠ってしまってますが時期に起きますので……」

 

「無事……無事……」

 

 儂は腰が抜けてしまった

 

 死も覚悟した震撼が目の前で眠っている

 

 触ると確かに温もりを感じた

 

 安心した儂は涙が出てきた

 

 目の前に少女が居るのに儂はワンワンと大粒の涙を流した




へべれけ様の【伊豆大島でお待ちしております】を改変した物となっております

使用許可は頂いております

作者に感謝を

注意をされた場合内容を変更する場合がございます

ご理解のほどよろしくお願い致します


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田中 2

 起きるとお爺ちゃんがソファーで座っていた

 

「震撼気がついたか!」

 

「はい……私は無事です……田中に助けて貰いました」

 

 無事とは言いつつも一部人工皮膚だったり、謎合金だったりするが、とりあえず無事だと伝えた

 

「田中さん、貴方は震撼の命の恩人だ! 感謝しますぞ」

 

「なに、私にも利点が有ったからね」

 

 私は悩んだ

 

 お爺ちゃんに何処まで説明して良いのかと

 

 私が実は宇宙人だった何て言ったらどんな反応になるか検討もつかない

 

「あー、えっと……その……」

 

 私が言葉を詰まらせていると見かねた田中が声をかけてきた

 

「私が全て説明します。ここは何処なのか、なぜ震撼は事故に有ったのか、なぜ私が震撼を助けたのか等もお教えします」

 

 落ち着いたお爺ちゃんは田中の話をゆっくり聞く

 

 まずここは何処なのかだが、未来の伊豆大島と伝えられた

 

 なぜ未来なのかというと田中の拠点が私やお爺ちゃん達が暮らす時代に無いから未来に連れてきたと説明された

 

 次になぜ私が襲われたのかだが、帝国学園総帥の影山が部下を使い帝国学園戦に出させない為の工作だと教えられた

 

 田中は影山が部下に指示する場面の発言を盗聴機で全部すっぱ抜き録音していたのを全て見せてくれたし、バレないように帝国学園中枢のパソコンをハッキングして情報を押さえていた中で要注意メンバーの中に入っていたのも見せてくれた

 

 重要度がレベル10中10なの私だけだったけど

 

 そしてなぜ私を田中は助けたのかを話し始める

 

「震撼は私と同じ宇宙人なのですよ」

 

「宇宙人……そんな馬鹿な。何処からどう見ても人間じゃないか」

 

「これを見てもそう言えますかね」

 

 田中は自身の髪の毛を思いっきり引き下ろすとベリベリと嫌な音と血が飛び散る

 

「な! 何を馬鹿なことを!」

 

「私をよく見てください」

 

 田中の中から現れたのは機械と融合している何かだった

 

「私が作ったアンドロイドなんだけど、ここに私の精神を宿しているんだ。本体は別の場所に保管してあるよ」

 

 お爺ちゃんは驚いて腰を抜かしてしまった

 

 それを私がベッドから起き上がり支えてあげる

 

「失礼、刺激が強すぎた」

 

 田中は皮膚を元に戻すと傷はみるみる見えなくなり、5秒後には跡形もなく消えてしまった

 

「で、震撼はイスの民と呼ばれる宇宙人で、精神が人の震撼と事故で融合してしまっている。分離することは不可能だから事故直前に助け出した。例え混ざってしまったとしても同胞は同胞だからね。だから助けた」

 

「質問よろしいですか?」

 

「なんだい? 震撼」

 

「イス人は時間を支配した種族と聞いていましたが、なぜ事故のタイミングなのです? 事故前でも良かったハズでは?」

 

「1つ、調べるのに時間がかかった。2つ、震撼が他の人と分離できるのがあのタイミングしかなかった。この2つが主な理由だよ。大会中に本当は呼びたくなかったよそっちの事情も分かるから。でも今のタイミングを逃すと死んじゃうから強行策を使わせてもらったよ」

 

「ありがとうございます」

 

「他に質問はあるかい?」

 

「時間を支配……じゃ、じゃあ衝撃と婆さんも」

 

「ごめん、それは出来ない。神によって過去は固定されてしまったからね……震撼に詳しく話したから後で聞いてよ。他には?」

 

 お爺ちゃんは色々聞く

 

 未来の地球はどうなっているかやイス人とは何か

 

 神が存在するのか等々……ただ最後に田中が言う

 

「私は生き残ったイス人を集め、この朽ち果てた世界を復興させ、生存圏を広げるつもりだ。その為私は人工イス人計画も進めている。人をイス人に進化させる計画だ。そもそもイス人である震撼は良いとして、お爺様はどうなさいますか? イス人になれば老いとは決別し、不老の存在に近くなりますが」

 

「ありがたい話ですが、儂は良いです……衝撃や婆さんとあの世があるのであれば会いたいです。儂は歳を取りすぎた。生きる気力も少ししか残ってないのを自ら感じておりますゆえに……私は老いて朽ちる人でありたい」

 

「分かりました。貴方の死後、震撼は私が全面的にバックアップ致します。安心してください」

 

「ありがたい。この子には父親や母親、親代わりだった婆さんも失って貧しい思いをさせてしまった。宇宙人とはいえ頼りになる方に支えていただけるのであればとても喜ばしい事です。ありがたい」

 

 田中とお爺ちゃんは握手をする

 

 お爺ちゃんは当面の間と言うより私の状態が回復したら元の世界に先に戻りたいと田中に言う

 

「婆さんや衝撃を残してきているから儂が守らないかんよね」

 

 ただ私は回復しても少しの間ここに居るように田中に言われた

 

「貴方のサッカーは帝国学園戦で終わりではありません。始まりなのです。少しでもこの空間で強く賢くなって戻った方が良いでしょう。勿論サッカーだけではダメなので色々教える必要もありますからね。神がこのまま放っておくハズがありませんから……生き残るためにね」

 

 田中は私に電撃銃を渡してきた

 

「まずはこれの使い方を思い出しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体調は2日で良くなり、お爺ちゃんはここでの生活に満足して帰っていった

 

 その時に生活の足しにしてくださいと田中から見事な宝石や金貨を渡されていた

 

「何から何までありがとうございます。震撼を頼みました」

 

 そう言うと田中はお爺ちゃんを現世に帰しに行き、田中との生活が始まった

 

「じゃあサッカーしようか」

 

 四方を金網で囲まれた見事なフィールドに案内され、私はいつもの100kgのユニホームを着用する

 

 数日間着ていなかったせいか何時もより重く感じる

 

「とりあえず1対1でボールの取り合いをしようか」

 

 田中はそう言うと私に向かってドリブルを始めた

 

 私は進路をブロックして突破を防ぐ

 

「……ここ」

 

 私はボールを取ろうと足を伸ばすが、田中は華麗に回避する

 

「ホッホッホッと!」

 

 田中はリフティングをしながら人差し指をちょんちょんと折り曲げかかってこいと挑発してくる

 

「計算中……そこです」

 

「甘いね……動きが鈍いよー」

 

 またまたかわされながらも情報を修正する

 

 繰り返すこと5回目で田中からボールを奪う

 

「やるね、じゃあ次私の番だ……もちもち黄粉餅」

 

「必殺技……分身フェイント」

 

 私は分身を出すことで技を回避しようとするが、餅を振り回されて分身がかきけされた

 

 ボールはなんとか維持したが私は田中のパワーに驚いた

 

 {ハーッハッハッハ! 素晴らしいパワーだ}

 

 [俺達がかきけされたのは初めてじゃないか? ]

 

「思考中……思考中……」

 

「もう一回もちもち黄粉餅」

 

「ふん」

 

「何処に蹴って……あれ? あー!」

 

「ひとりワンツー」

 

「ありゃりゃ、やっぱり難しいか……」

 

「ボールキープは上手いのに取るのは苦手なのですか?」

 

「まぁ生身の相手とサッカーするのが初めてなだけだけどね……何時もはロボットとやってたし」

 

「そうですか」

 

 その後も1対1を続け、取ったり取られたりを繰り返す

 

「円堂先輩の言葉ですが、サッカーをすれば相手がどんな人か分かると言っていた事がありましたが、宇宙人でも分かるものなのですね」

 

「まぁイス人は思考が人間に近いからね。たまによく分からない事もあるけど……よっと」

 

「カットします」

 

「させないよーっと」

 

「田中楽しいですか?」

 

「凄く楽しいよ」

 

「それなら良かった」

 

 

 

 

 大浴場で汗を流し、昼食のバイキングを堪能し、田中に連れられて図書館に案内された

 

 銀と白を基調とした曲線で構成された外観をしており、その膨大な著書の量に圧倒された

 

「全て写本さ、数は約2億4500万冊あるよ。はい、これを着けて」

 

 田中からインカムを渡され、それを着用する

 

「これは本を開くと自動で翻訳して読み上げてくれる機械だよ。で、まずはこれを読もうか」

 

 田中はよく分からない字で書かれたファイルを渡してきた

 

「イス人の事について詳しく書いた私著書の書物だよ。開いてみて」

 

『イスの偉大なる種族について

 

 ……』

 

 約10分程で私の精神に宿るイスの種族についての歴史や価値観、中には繁殖方法等も記されていた

 

「寿命は約4千年から5千年……ちなみに私はまだ1200歳しかなっていない若輩者だよ……まぁ震撼は転移前のも合わせても150歳くらいしか無いけどね」

 

「150……」

 

「それよりも元々は地球は3つの種族によって分割統治されていたんだ太平洋やルルイエ、ムーをクトゥルフの一族が、北部地域をミ=ゴ、南米、アフリカ、オーストラリアを我々イス人が統治してきたんだけど……ポリプと我々が呼ぶ生物に一度駆逐されかけて未来に逃げて……まぁここら辺は別に良いか。もうそのポリプもこの地球だと絶滅してるし」

 

「ミ=ゴはこの時間軸でも生きているのですか?」

 

「たぶん冥王星で今でも生きてると思うよ。まあこんな滅んだ地球にはもう興味が無いと思うけどね」

 

「そうですか」

 

「さて次にこのファイルを読もうか」

 

 それは電撃銃の使い方や整備の仕方等が未知なる言語で書かれていた

 

「……凄い、分かりやすくで私でも直ぐに理解できます」

 

「実は手術中に特殊なお香を炊いてね。数日間知能が活性化する効果があるんだけど、たぶんそれのおかげ。工具と材料持ってきたから自分で作ってみなよ」

 

 言われるがまま私は一度田中から渡されていた電撃銃を分解し、それを真似て一から作っていく

 

 工具の使い方等も分かりやすく記載されていたので約1時間で1丁作ることができた

 

「……できた……できてしまった……」

 

 こんな簡単にできて良いのかと思えるほど簡単に出来上がった電撃銃は後で試射するとして、私はその後貧欲に知識を吸収していく

 

 特に私は科学技術や未来のパソコンに興味を持ち、田中に頼んで色々と教えてもらった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕食後、ホテルの地下にある射撃場で電撃銃の射撃訓練をさせて貰えた

 

 田中曰く近くに加工されてない機械があるとショートしてしまうことが有るからロボットも立ち入らないようにしてあるらしい

 

 とりあえず普通に単発で放ってみるが、なかなか上手く的に当たらない

 

 田中は密着しながら手取り足取り教えてくれるおかげでとりあえず動かない的に当てることはできるようになったので、明日から動く的に射撃してみようと言う話になった

 

 

 

 

 再び大浴場で今度はゆっくりと浸かって疲れを抜く

 

 サウナも有るので明日はサウナでも入ろうかなーっと考えていると田中も入ってきた

 

「……田中何をしているのです?」

 

「いや、私も体流そうかと思ってね」

 

「いやいや、私は男、貴方は女性……OK?」

 

「別に良いじゃん同胞なんだし、何発情でもした?」

 

「いえそう言うわけでは無いのですが」

 

「気にしなーい気にしなーい!」

 

 田中に押しきられる形でその後毎日この様な事が続くことになる

 

 

 

 

 

 午前サッカー、午後勉強、夕食後射撃訓練、その後田中とお風呂に入るのが日課となり、体の鈍りが取れてきた頃、田中にキーパーを頼んで私のシュートの改良を行うことにした

 

「行きます!」

 

「よし来い!」

 

 最初のうちはノーマルシュートを連発し、続いてライフル、リトルインパクト、皇帝ペンギン1号と必殺技を使い始める

 

 田中はノーマルシュートは技無しで受け止め、ライフル等は

 

「ビーム拳」

 

 手から赤色ビームを放って止められた

 

 皇帝ペンギン1号G2は防げなかったけど、田中はどや顔で私を見て

 

「ふふーん! どうよ」

 

「凄いですね」

 

 と言ってきたのでそう返した

 

「次、私の中で一番威力が出る技です」

 

「よし! 来い!」

 

「リアル……インパクト」

 

 2つの衝撃が田中を襲う

 

「タブルビーム」

 

 両手から赤と青のビームが発射され、それが螺旋状に混ざり合いながらリアルインパクトに直撃する

 

 爆発の後にボールが直進を続けるが、田中はそれを技無しで受け止めた

 

「ナイスシュート」

 

「止められますか」

 

「紙一重だよ。その技まだまだ改良の余地がありそうだし、進化させたら負けてしまいそうだよ」

 

「貴方もその頃には技を進化させるのでしょ……」

 

「でもシュートばっかり鍛えて大丈夫なの? ドリブルやブロック技も進化させないとヤバイんじゃない?」

 

「確かにそうです……シュートはまた別の機会にしましょう。ではすみませんがまた1対1をお願いします」

 

「了解!」

 

 

 

 

 

 ドリブル技はイメージが既にできていたので、後はイメージを実現するために特訓するだけ

 

 ダッシュトレインというブロック技を謎空間のミーティングルームにある過去の映像で知った私はそれを浸透と組み合わせてドリブル技にしようと考えていた

 

 ボールをドリブルし、前面を戦車の様に気でできた装甲で覆い、相手を吹き飛ばす技だ

 

 これであれば装甲で相手の必殺技を受けきる事ができると考えられたからだ

 

 防御力と突破力の構想中の技と多数を制圧できる浸透や浸透戦術、意表を突く分身フェイントの3つがあればある程度は対処ができると言い訳だ

 

 早速田中で実験を開始する

 

 気を前面に覆うように田中に突撃するが、パリンと田中にぶつかった瞬間に装甲が粉々に砕けた

 

「もう一度お願いします」

 

 突撃しては割り、突破しようとしては割りを繰り返し、技の精度を上げていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ震撼、すこしゲームをやらないかい?」

 

「ゲームですか?」

 

「このホテルゲームコーナがあるんだけど行ってないよね」

 

「私、ゲーム等はあんまり……」

 

「せっかくだから少し息抜きしましょうよ! ね!」

 

 田中に連れられて昼食後ゲームコーナーに連れてこられた

 

 そこにはクレーンゲームやわにゃわにゃパニック、スロット、コインゲーム等が並べられていた

 

「ここのコインゲームはコインの数で商品と交換できるよ。クレーンゲームは1回500円、わにゃわにゃパニックも1回500円、スロットも1回500円、コインゲームは500円で100枚のコインと交換だよ。どれやりたい?」

 

「いや、私お金持ってませんが」

 

「そうだね……じゃあ私が5万円貸すからいつか返してくれれば良いよ。あ、商品は私の発明品や便利道具だったり、魔術的な物、アーティファクト、本物の宝石なんかも有るからやってみてね」

 

 田中は私に1万円札を5枚を渡してきた

 

 5万円は中学生からすれば大金だ

 

 手が震えてきた

 

 この金額が有れば新しいシューズを幾つか買えるし、なんなら雷雷軒に2ヶ月毎日行っても少し余るくらい大金だ

 

「ちなみにさっきも言ったけどここにある宝石は本物だから1つ取れれば黒字かもよー」

 

 クレーンゲームの中に宝石が箱で入っているが、箱にA、5.0ctとかS、10.0ctとか書いてある

 

 というかB以下は入って無いらしい

 

 私は500円玉に崩して早速クレーンゲームで遊ぶことにした

 

 とりあえず10ゲーム分の5000円入れて始める

 

 最初の5回は失敗したが狙っている箱を手繰り寄せて、6回目で取ることができた

 

「おお! 震撼上手いね」

 

「このクレーンゲーム優しい気がするのですが……」

 

「いや、アームの強さはランダムだから震撼が普通に運が良いだけだと思うよ」

 

 8回目と10回目も宝石の入った箱を掴んで持ってくることに成功し、ダイヤモンド、エメラルド、パールとそれぞれの箱に書かれていた

 

「どうする? 換金する?」

 

「どれが一番高いのですか?」

 

「パールだね。開いてみなよ」

 

 そう言われて箱を開けるとゴルフボールくらいの大きさの真珠が入っていた

 

「そうだね……ざっと700万円ってところかな」

 

「700……」

 

「エメラルドが500万、ダイヤモンドが300万円だね。どうする? 換金するかい」

 

「と、とりあえずキープで……もう少し遊んで良いですかね」

 

「どうぞどうぞ」

 

 宝石のクレーンゲームは怖くなったので、私は田中の発明品が入ったクレーンゲームを遊ぶことにした

 

 5000円入れて最初の2回と4回目、8回目に商品を取ることができた

 

「5個入りのアメに綺麗事な指輪、天使の模様入りのネックレスに……ミサンガかな」

 

「希望のミサンガだね。つけると潜在能力を引き出してくれる力があるよ。まぁ気持ち程度だけどね」

 

「便利ですね」

 

「アメは精神状態を落ち着ける効果があるし、指輪はこれには魔力が溜まる仕組みになっているんだ。魔術を使うときにここからエネルギーを取り出せるよ。ネックレスは1度死亡するような事が起きたときに肉体の時間を健康的な状態に再生することができるんだ。1回だけだけどね」

 

「死を回避できるネックレスですか……もう少しまだ入ってますよね」

 

「そうだねまだこの台の中に入ってるよ」

 

「……怪我が治るのは是非とも欲しいですね」

 

 また10ゲームやってみたが、今度は運が悪くて1つも取れなかった

 

「取れませんか……」

 

「スロットで景品交換もしてるからそっちでチャレンジしない? コイン2つでネックレスと交換できるからさ」

 

「なるほど! 選べるのでしたらそっちの方が確実ですね!」

 

 私はスロットに座り、500円を投入する

 

 すると20ゲームと表示されてゲームが始まる

 

 初っぱなから当たりを連発し、500円で1コインをゲットした

 

 そのまま続けて500円を投入し2ゲーム目、3ゲーム目とコインを獲得し、5ゲーム目と10ゲーム目にはジャックポットに入り、全部合計して21コインも5000円でゲットすることができた

 

「震撼運が良いね!」

 

 コインを握りしめて商品が入ったショーケースを眺めると、天使の模様入りのネックレスが2ポイント、指輪1ポイント、アメ1ポイント、シューズやグローブ、ペンダントやブレスレット、ゴーグル等々様々な物が置かれていた

 

「このシューズは何ですか?」

 

「学習シューズだね。足を刺激して効率よく技を覚えたり技術を磨く事ができるようになるよ」

 

「1ポイントですか……5組ください」

 

「はいよ。他には?」

 

「この学習装置ってのをください5ポイントの」

 

「はーい」

 

 これで10ポイント

 

 他には改良されたバイオ装甲や復元ライト、万能薬、怪力手袋、別次元カバンに残りのポイントで2つネックレスを頂いた

 

 まるでドラえもんの秘密道具だ

 

「こんなに素晴らしいものを貰って良いのですか?」

 

「別に私ならいつでも作れるから別に良いよ。あ、復元ライトだけどネックレスは効果までは直らないから気をつけてね」

 

「あ、はい」

 

 残ったお金でメダルゲームを田中と楽しみ、競馬ゲームで最終的に約2倍になったのでメダルを換金して貰い借りたお金を返しても1万円余ることになった

 

「今日の夜はセンターモールでも行くかい? 買い物できるけど」

 

「せっかくですが、最終日に行こうと思います」

 

「そうかい、わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 島に来て約1ヶ月かけてイス人としての力を習得しようと努力したが、時間を約3秒停止するという技を身に付けた

 

 僅か3秒……ただサッカーにおいて3秒有ればボールを奪うこともドリブルで突破することも可能だ

 

 3秒の停止時間を使うことでインパクトシリーズの新必殺技が作れそうであるが、そこまではできなかった

 

 技名は息抜きで読んでいた漫画から取って【ザ・ワールド】とした

 

 最終日の今日はセンターモールで買い物を楽しみ、お守りやお弁当を買い込んで田中に現代に返してもらう

 

「じゃあ戻ろうか……現代に」

 

 田中はエイみたいな乗り物に私を乗せると空に浮かび上がり、虹色の穴に入っていった

 

 穴の中は七色に光っており、とても幻想的な光景が広がっていた

 

「到着~震撼の家だよ。じゃあまた私を呼びたかったらハンドベルを鳴らしてね。また行くから……じゃあまたね同胞」

 

「色々ありがとう田中、じゃあまた」

 

 田中は再び異次元の穴に帰っていった

 

「ただいまお爺ちゃん」

 

「お帰り震撼」

 

 帝国学園戦の前日の夜に私は帰ってきた




クレーンゲームは震撼の幸運が50なのでサイコロを振って50以下の数が出たので対処しました

スロットも同様ですが、1クリと3クリを出したのでジャックポット

ちなみにこれだけ振ってファンブルが1つも無いので相当運が良いです


大震撼 (13) 中学生 男
STR:100 DEX:90 INT:100
CON:50 APP:65 POW:105
SIZ:55 EDU:55 移動率:9
耐久力:12
マジック・ポイント:23
正気度:79
幸運:50
ダメージ・ボーナス:+1D4
ビルド:1
住所:東京 雷門
出身:日本
----------------------------------------
【技能】
応急手当:35%
回避:90%
科学(化学):70%
科学(生物に):80%
機械修理:60%
近接戦闘(蹴り):95%
クトゥルフ神話:20%
芸術/製作(電撃銃):80%
コンピューター:45%
射撃(電撃銃):90%
信用:10%
水泳:50%
跳躍:90%
電気修理:90%
電子工学:75%
図書館:50%
サッカー:95%
----------------------------------------
【武器】
素手:25% 1D3+DB (射程:-, 攻撃回数:-, 装弾数:-, 故障:-)
キック:95% 1d6+db (射程:-, 攻撃回数:-, 装弾数:-, 故障:-)
鉄球(サッカー):95% 2d6+db (射程:-, 攻撃回数:-, 装弾数:2, 故障:-)
スパイク:95% 1d6+db+1 (射程:-, 攻撃回数:-, 装弾数:-, 故障:98)
電撃銃:90% 1d10 (射程:100, 攻撃回数:1~10, 装弾数:32, 故障:5以上ごとに5%)
----------------------------------------
【装備と所持品】
鉄球 (個数:2) 70キロの鉄球
重り (個数:10) 1つ10キロの重り
ユニホーム (個数:-) 雷門サッカー部のユニホーム
スパイク (個数:-) ごく普通の安いスパイク
電撃銃 謎の貝殻 (個数:1) 約20cm
カバン (個数:-) 雷門中学のカバン
筆記用具 (個数:-) ハサミ、のり、コンパス、ペンも入っている
各種教科書 (個数:-)
父の写真 (個数:-)
学生証 (個数:-)
財布 (個数:-) 基本2000円入っている
希望のミサンガ (個数:1) STR+5
狂気治しのアメ (個数:5) 食べるとSANを1d3回復して狂気を治す
透き通った指輪 (個数:1) 5ポイントのMPを溜められる指輪
天使のネックレス(ヌトス=カアンブルの加護) (個数:3) このネックレスを持っていると耐久力が0になった時に自動で全回復し、それまでに負っていた傷や欠損を無かったことに出来る

この効果が発動したらこのネックレスはバラバラになり効力を失う
別次元カバン (個数:1) 四次元ポケットと同じ効果
万能薬 (個数:1) 老衰以外のあらゆる毒と病気を治し、健康体にする
改良されたバイオ装甲 (個数:1) 8点分の装甲を得る 見た目は白い長袖のシャツ
怪力手袋 (個数:1) 30分間STRを3倍にできる
復元ライト (個数:1) 壊れた物を復元できる ネックレスは無理
ハンドベル (個数:1) 田中を呼べる
宝石  (個数:3) 合計1300万円分
----------------------------------------
【収入と財産】
支出レベル:貧乏
現金:2000円
資産:借家に住んでいる お小遣いは月5000円
----------------------------------------
【バックストーリー】
▼ 容姿の描写
黒髪 つり目 色白 やや中性的顔立ち
体重70kg 身長165cm 全身筋肉で膨れ上がっている
太ももの太さは普通の中学生の腕5本分
足のサイズ28.5
▼ イデオロギー/信念
中道ややカオスより/復讐
第二人格皇帝 中道ややロウ
第三人格覇王 中道完全ニュートラル
▼ 重要な人々
祖父 唯一の肉親 歳は65歳
▼ 意味のある場所
大江戸町 大家が排斥された町
稲妻町 現在住んでいる町
▼ 秘蔵の品
震撼必殺ノート バージョン1
謎の貝殻 電撃銃
鉄球 家に4つあるため合計6つ
サッカーボール
震撼必殺ノート バージョン2
▼ 特徴
異常に筋肉が発達しているが努力によるもの
英雄症候群ではない
▼ 負傷、傷跡
鉄球の打撲傷複数箇所
▼ 恐怖症、マニア
▼ 魔導書、呪文、アーティファクト
▼ 遭遇した超自然の存在
イス人
----------------------------------------
【仲間の探索者】

----------------------------------------
【メモ】
ニャル?ハスター?に気に入られし者
学生ながら鍛えられた肉体は大人をも凌駕する
生物学的には人間
精神はイス人と混じりあった何か

ナイアルラトホテップの信者


以上田中との出会いと【伊豆大島でお待ちしております】のシナリオとなります

一部改編しておりますが、成長シナリオとしては完成度が段違いに高く皆さんも一度やってみることをお勧め致します

シナリオ使用の許可をくださったへべれけ様には感謝を


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帝国学園戦 前編

「結局震撼は見つからなかったな」

 

「でも雷雷軒の親父さん……響監督が力になってくれて良かった」

 

 帝国学園へ向かう電車の中で軽いミーティングをする雷門イレブンの皆

 

 しかし、その表情は暗かった

 

 震撼が事故に巻き込まれたからだ

 

 あれから色々な病院を探したが見つからず、豪炎寺が病院の先生である父親に掛け合って探してもらったが、手がかりすら無かった

 

 これは異常である

 

 まるで何者かが細工をして震撼を隠したかのようにも思えた

 

 新監督の響は既に起きてしまった悲劇に憤りを感じていた

 

(40年前の悲劇が再び起こってしまった……円堂にも言っていたが、雷門サッカー部は影山によって徹底的に潰しにかかっている。くそっ……守れなかった)

 

「響監督、何か一言お願いします」

 

 円堂に言われ、座席から立つとメンバーに向かって激励の言葉を送る

 

「俺からはたった一つ……全てを出しきれ。後悔しないように!」

 

「「「はい!」」」

 

(気がかりなのは影山だ。震撼を罠にはめたとはいえ更に手を打ってくる可能性が高い……残ったコイツらは必ず守らなくては……監督として、元イナズマイレブンとして)

 

 電車の外に帝国学園が見えてきた

 

 まるで要塞とも思える建築は影山を守っているようにも思えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「震撼行ってらっしゃい」

 

「行ってきます……お爺ちゃん」

 

「儂も後から必ず見に行く。皆と一緒に行かなくて良かったのかい?」

 

「私が無事なのが試合前にバレれば何か工作してくるかもしれませんので……田中からおこづかいも貰っているのでタクシーで向かいます」

 

「あぁ。必ず無事に帰ってきておくれ」

 

「了解致しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝国学園に到着した俺達雷門イレブンは更衣室の前で鬼道と出会った

 

 染岡が

 

「てめぇ更衣室でなにやってた! 白状しろ!」

 

 と突っかかるが、俺が制止する

 

「やめろ染岡、鬼道はそんなことをする奴じゃない」

 

「でも円堂!」

 

「安心しろ。ここには何もない」

 

 鬼道はそう言うと歩いて何処かへ行ってしまった

 

「勝手に入ってすまなかった」

 

 と言い残して……

 

 更衣室に入った俺達は1年のメンバーと染岡が中心となって工作されてないか確認作業を始めた

 

「やめろみっともない……鬼道が無いと言ったんだ。少しは信じろよ皆!」

 

「でもキャプテン……鬼道さんは帝国学園のキャプテンなんすよ! 影山と繋がってる可能性があるっすよ」

 

「そうでやんす! 現に震撼はやられたじゃないでやんすか!」

 

 ロッカーを確認しながらハス太もその意見に賛同する

 

「震撼が見つからないのも影山の工作かもしれないです。もしかしたら円堂先輩のお爺さんみたいになったかもしれないのですよ……僕はもう帝国の奴らは信用できません」

 

「鬼道は信じて良い! 俺にはわかる!」

 

 俺は堂々と言う

 

 すると秋が手をパンパンと叩いて

 

「はい、この話はおしまい! 決勝なのよ! 集中していきましょ」

 

 と言ってくれた

 

「サンキュー秋」

 

「さあ! 試合に勝つぞ!!」

 

「「「おう!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は戻ってきた! 決着をつけに! あいつらの未来を守るために」

 

 俺は影山の前まで行き、そう宣言した

 

「響か……老兵は死なず。ただ去るのみ……去らねばどうなる?」

 

「脅しか! 今の俺にもあいつらにも通用しない!!」

 

「惨めに負けることになるぞ」

 

「あいつらは負けない」

 

 俺はそう言うと部屋から出た

 

 

 

 

 

 

 影山は円堂に鬼道と音無の関係を暴露し、鬼道がフットボールフロンティア3連覇しなければ音無と鬼道は離ればなれだという脅しをされたりして円堂の同様を誘ったりと盤外戦術をする影山

 

 しかし、その影山にも予想外の人物がスタジアムに近づいていた

 

「運転手さん、ありがとうございます」

 

「良いって! 試合頑張れよ坊主!」

 

「はい!」

 

 大震撼スタジアムに到着

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フットボールフロンティア地区大会決勝! 実況は私角馬圭太がお送り致します』

 

『さあ! メンバー握手をし、位置に着きます』

 

 

 

 

 

 握手をする時に鬼道から耳打ちを円堂はされた

 

「天井に仕掛けをされている! ホイッスルと同時に選手をゴール付近に固めろ!」

 

「なに!」

 

「信じてくれ」

 

「わかった皆には言っておく」

 

 

 

 

 鬼道は俺達を守るために動いてくれた……信じるしか無いだろ! 

 

「皆聞いてくれ! 試合開始と同時に味方ゴールの方に走ってくれ!」

 

「でもそれじゃあボールをみすみす」

 

「頼む! 信じてくれ」

 

「……円堂を信じよう」

 

「豪炎寺……」

 

「ちっ! わかったよ」

 

「染岡!」

 

 フォワードの2人が納得すると他のメンバーも納得してゴールに走る事に合意した

 

 

 

 

 

 

(俺の考えが正しければ)

 

(鬼道を信じる)

 

 試合開始のホイッスルと同時に天井からガコガコっと何かが落下してくる音が響き渡った

 

 天井から鉄骨が落ちてきたのだ

 

 雷門側にピンポイントで落ちてきた鉄骨によって砂煙が舞い上がり、雷門イレブンが見えなくなる

 

「み、皆!!」

 

『なんと言う悲劇! 雷門イレブンに鉄骨が降り注ぎました! 雷門イレブンは無事なのか!? ……砂煙が晴れていきます……!?』

 

 帝国イレブンも絶句しているが砂塵舞う鉄骨の中に人影が見えた

 

(信じきれなかった奴も居たのか!!)

 

 砂塵が雷門イレブン側が晴れると11人全員が無事だった

 

 しかし、落ちた鉄骨の中央にまだ人影が見える

 

「「誰だ!!」」

 

 鬼道と円堂が叫ぶ

 

「我が名は震撼……大震撼なり!」

 

 

 

 

 

 

 

 鉄骨が落ちる数十秒前、私は観客席に居た

 

 試合始まってすぐに皆に合流するために

 

 すると横に刑事さんが鬼の形相で走ってきて

 

「今すぐ試合を止めろ! 天井に細工されている!」

 

 と叫んでいたが、試合のホイッスルに書き消された

 

 私は観客席から飛び降りてスタジアムに走ったら

 

「ザ・ワールド」

 

 3秒だけ時間が止まる

 

 鉄骨が落下してくる瞬間に止めたが、雷門イレブンは巻き込まれていないことを確認し、私も脱出しようとしたが、間に合わないとかんじ、鉄骨の隙間に立って落下してきた鉄骨を回避した

 

「そして時は動き出す」

 

 ガコガコと鉄骨が私の周りに落ちるが、私は無傷

 

 そして両方向から誰だと聞かれたので私は答えた

 

「我が名は震撼……大震撼なり!」

 

 と……

 

 

 

 

 

 

 

「震撼……震撼だ!!」

 

 ハス太が走って飛び付いてきた

 

「震撼! 震撼!! 生きてる!! どこ行ってたんだよ!」

 

「すみませんハス太……皆さん。私はとある人物に匿われていました。影山の手下に襲われたので」

 

「やっぱりあの事故は……」

 

「影山が仕組んだ仕業です」

 

「影山!!」

 

 鬼道さんが叫ぶ特等席で見ている影山に向かって

 

 私達は総帥執務室に乗り込みに向かった

 

 

 

 

 

 帝国イレブンと雷門イレブン、響監督や刑事さんが総帥執務室に怒鳴り込む

 

 まず鬼道が言いはなった

 

「影山!!」

 

「何かね」

 

「これが総帥のやり方ですか」

 

「こんなやり方には我々はついていけません」

 

「俺も無理だ」

 

「源田、寺門……総帥。我々は我々のサッカーをします! もうあなたの指示は受けない」

 

「そうか……しかし、今回の事を私がやったという証拠が有るのかね」

 

「証拠なら有るぜ」

 

 刑事さんがボルトの入った袋を投げる

 

 そして点検員を連れてきて

 

「そいつが証拠だ。そしてこいつが全て白状した。影山に命令されたとな」

 

「いや、まだあります」

 

 私は影山のテーブルにカセットテープとDVDを置いた

 

「お前が大江戸中学サッカー部顧問大衝撃を殺すように指示を出した音声が入ったテープと私を殺すようにドライバーに指示した映像と音声が入っております……影山。私はお前を許さない」

 

「大……どこでそれを……」

 

「刑事さん。私には私の協力者が居るとだけ教えておきます」

 

「そ、そうか……」

 

「あの日父の死の真相を真剣に探ってくれたのはあなただけです……感謝しています」

 

「……影山、大衝撃殺人の容疑と雷門イレブンの殺人未遂の現行犯として逮捕する!」

 

「ふん! よかろう。私が欲しいのは主人に噛みついてくる犬ではなく、忠実な僕だ。貴様らなど既に必要ない!」

 

 私は影山をにらみ続ける

 

 影山という男は自信たっぷりの様子でこの場を連れてかれた

 

「……奴はまだ終わってない」

 

「震撼?」

 

「……円堂先輩! 皆さんもご迷惑を御掛けしました」

 

 私は皆に向かって頭を下げた

 

「良かった……生きてて良かったよ震撼!」

 

「俺達がどれ程心配したと思ってるんだよ! このこの」

 

 ハス太が泣き付き、染岡先輩が肘でつっついてくる

 

 すると鬼道さんや帝国のメンバーが私達の前に集まり

 

「雷門中学の皆さん誠に申し訳有りませんでした。私達は試合をする資格がありません。よって棄権しようと思います」

 

 と言い出した

 

 雷雷軒の親父さん……皆で頼んだらしい新監督の響監督は

 

「それは円堂、お前らが決めろ」

 

 と言い、円堂先輩は

 

「俺達はサッカーをしに来たんだ! 関係無い! 鬼道! サッカーやろうぜ!!」

 

「だそうだ。試合をしてくれはしないか」

 

「良いんですか……」

 

「かまわないさ! なぁ皆!」

 

「「「おう!!」」」

 

「ありがとう……円堂、雷門の皆……正々堂々勝負だ」

 

「よろしくな鬼道!!」

 

 円堂先輩と鬼道さんが握手をし、帝国第二グランドで試合となった

 

 フォーメーションはいつものベーシック

 

 

【挿絵表示】

 

 

 帝国のフォーメーションはデスゾーン3-5-2のフォーメーションだ

 

「見せてやろう絶対王者帝国の力を」

 

 

 

 

 

 

 雷門からのキックオフで試合が始まる

 

 豪炎寺先輩と染岡先輩が中心となり、敵陣に突撃していく

 

「させない! アースクェイク!!」

 

 染岡先輩が地面が盛り上がったり陥没したりする技を受けて吹き飛ばされる

 

「鬼道!」

 

「いくぞ必殺タクティクスだ!」

 

 ピーっと指笛を吹くとペンギン達が現れる

 

「ペンギンカーニバル」

 

 ペンギン達が宙を舞い、私達雷門イレブンに降り注ぐ

 

 地面にペンギンが刺さった瞬間に爆発し、皆を吹き飛ばす

 

「ぐっ!! 効かぬわ!!」

 

「やはり大震撼には通用しないか!! 佐久間! 寺門! 洞面」

 

「「「おう!」」」

 

「デスゾーン開始!!」

 

 鬼道がボールを蹴り上げ、デスゾーンが始まる

 

「これが改良を重ねたデスゾーンだ!!」

 

「「「真デスゾーン」」」

 

 紫色のエネルギーを纏ったボールは地面を抉りながらゴールに突き進む

 

「ターゲットロック……真トーチカ」

 

 私はボールの正面に立ち塞がりトーチカを展開した

 

「……!? なに!?」

 

 トーチカに亀裂が入ると粉々に粉砕されてしまった

 

「馬鹿な!?」

 

「震撼のトーチカが敗れた!?」

 

「円堂!!」

 

 豪炎寺先輩が叫ぶ

 

 どこか円堂先輩の顔色は優れない

 

「ゴッドハンド!!」

 

 ゴッドハンドを円堂先輩が展開するが、デスゾーンの威力が勝りゴッドハンドを突き破る

 

「な!? うわぁ!」

 

 ボールはゴールポストに当たり辛くも防ぐことに成功した

 

「震撼……」

 

「仕方ありませんトーチカも無敵の技ではありません。いつかは破られます。動揺してはいけませんよハス太」

 

「うん!」

 

 帝国の佐久間のコーナーキックから始まる

 

「行け!」

 

 佐久間のボールは鬼道に渡り、そのままシュートするが、円堂先輩がキャッチ

 

「ナイスセーブです円堂先輩」

 

「おう! 反撃だ!! 皆上がれ! 震撼!」

 

 私にボールが来る

 

「佐久間! 寺門マークだ!」

 

「甘い! 分身フェイント」

 

『大選手! 帝国の佐久間と寺門を抜いた! 分身を展開したまま敵陣に切り込む』

 

「キラースライド」

 

「アースクェイク」

 

「皇帝、覇王」

 

「{[おう! ]}」

 

「{[浸透戦術V2]}」

 

 砲弾の嵐のように爆発する分裂したボールが空から落ちてきて、本物のボールを皇帝と覇王とパス回しをしながら帝国のミッドフィルダーとディフェンダーを抜いて右サイドからゴールを目指す

 

「豪炎寺先輩」

 

「任せろ」

 

「ライフル」

 

「トルネード」

 

 ファイヤートルネードとライフルの合体技が炸裂する

 

「源田止めろ!」

 

「もう俺は失点はしない……ダブルパワーシールドV3」

 

 パワーシールドを2枚展開し、ライフルトルネードが激突するが、1枚1枚が厚みを増しており、2枚目に阻まれてしまった

 

「……」

 

「ドンマイ豪炎寺……豪炎寺?」

 

「いや、なんでもない。染岡俺達もやるぞ」

 

「ああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝国のカウンターが始まる

 

「ペンギンカーニバル」

 

「皇帝! 覇王!」

 

「{[任せろ]}」

 

「{[大爆発]}」

 

 私が皇帝と覇王を空に投げ、皇帝と覇王が空中で手を繋ぐと体が光だして大爆発をした

 

 空中を浮いていたペンギン達をかき消した

 

「なに!? もう破られただと」

 

「震撼! こっち!」

 

「ハス太」

 

 鬼道からボールを奪った私はノーマークのハス太にボールを渡す

 

「エンジェルボールV2」

 

 ハス太はそのままドリブルをして、ブロックに来た成神を華麗に交わして染岡先輩にボールを繋ぐ

 

「いくぞ豪炎寺! ドラゴン」

 

「タブルパワーシールドV3」

 

「パワーシールドの弱点は薄さだ! 1枚目さえ破れれば2枚目は怖くない」

 

「トルネード改」

 

 豪炎寺先輩は1枚目のパワーシールドに直接ボールを蹴り込んだ

 

 豪炎寺先輩の蹴りを直接受けたパワーシールドの1枚目は粉々に砕けたが

 

「その程度で破れるほどパワーシールドは柔ではない!!」

 

 残っていた左手を地面に突き刺した

 

「トリプルパワーシールド!!」

 

「「なに!?」」

 

 まさかの3枚目によって進化したドラゴントルネードは防がれてしまう

 

「行け! 五条」

 

「へっ! 分身フェイント」

 

「な! それは震撼の技じゃ!」

 

 風丸先輩が抜かれる

 

「我々も相手のよい部分は盗むのですよ! 辺見」

 

「おう!」

 

「行かせないアチョー」

 

「イリュージョンボール」

 

「な! しまった」

 

「鬼道さん」

 

「いくぞこれが俺達帝国の必殺技だ」

 

 ピーっと鬼道が再び指笛を吹くとペンギンが現れ

 

「皇帝ペンギン」

 

「「2号」」

 

「させないっす!!」

 

 走り込んできた壁山が叫び始めると地面から壁が競り上がってきた

 

「うぉぉぉぉ!! ぐわ!」

 

「ナイスです壁山……ハス太」

 

「でも震撼まだ防衛線は……」

 

「……トーチカ2枚でいきます」

 

「真「トーチカ!!」」

 

 トーチカ2枚で皇帝ペンギンをなんとか防ぎきると私の反撃が始まる

 

「止めろ! 皆!」

 

「「「おう!」」」

 

「1号戦車!」

 

「な!? 触れられない! ぐわ!」

 

「成神!」

 

「戦車の装甲の前には無力」

 

「アースクェイク!!」

 

「キラースライド」

 

「「ぐわ!」」

 

「五条! 大野!」

 

 全員を突破し、私は源田と1対1となる

 

「必ず止める」

 

「あなた方を破るにはこの技が相応しい」

 

 ピーっと指笛をする

 

「まさか! あれは!!」

 

「皇帝ペンギン」

 

「奴を止めろ! あれは禁断の技だ!!」

 

「1号G4」

 

「ふん!! フルパワーシールドW」

 

 今度はフルパワーシールドを2枚展開して防ぎきろうとする

 

 がペンギン達の目がギラギラと光輝いている

 

 パリンと1枚目を割る

 

 そして2枚目に差し掛かった時走り込んできた鬼道と佐久間がパワーシールド越しにボールを蹴りに行く

 

「皇帝ペンギン1号は体への負荷がかかりすぎると封印した技!」

 

「お前にそれを決められたら俺達の努力を否定することになる!! うぉぉぉぉぉ!!」

 

 パワーシールドが壊れると同時にボールは上に上がった

 

 それを源田がキャッチしてなんとか防ぎきる

 

「奴は……!? なんともないだと」

 

「馬鹿な!」

 

「この程度で壊れる程柔な鍛え方はしていない!!」

 

「いや! チャンスだ寺門!! カウンターだ行け!!」

 

 ボールは私の上を通り寺門へ繋がる

 

「洞面、寺門、成神やれ!!」

 

「「「真デスゾーン」」」

 

「やらせないっす!」

 

「壁山合わせる」

 

「ハス太! はいっす!!」

 

「「うぉぉぉぉ!! 大黒壁」」

 

 真っ黒の壁に目玉が幾つも現れているおぞましい壁がハス太と壁山の協力で現れた

 

「「ぐっ!! ぐは!!」」

 

 技の威力は完全に消えたボールが円堂先輩の前に飛んで行くが、円堂先輩はまさかのファンブル

 

 円堂先輩は慌ててボールを抱え込み事なきを得るが明らかに不調だ

 

「円堂先輩……覇王円堂先輩をカバーしなさい。私と皇帝で上がる」

 

「{ハーッハッハッハ!! 任せたまえ}」

 

「行くぞ皇帝」

 

「[おう! ]」

 

『さぁ円堂のキックで試合が再開します』

 

「栗松!」

 

「はいでやんす!」

 

 栗松はドリブルで上がるが、途中キラースライドの餌食になる

 

「ぐわぁ!!」

 

「栗松!」

 

『アーッと辺見ファールです栗松立てない足を負傷したのでしょうか』

 

「「「栗松!!」」」

 

 皆が駆け寄るが栗松は

 

「大丈夫でやんす! うっ!」

 

 と強がったが立ち上がることができない

 

「土門変われ」

 

「了解しました」

 

『栗松がベンチへと下がり、土門が入ります』

 

 土門からのキックで試合が再開し、私にボールが来る

 

 私は皇帝とアイコンタクトをし、パスをしながら帝国陣地深くに切り込んでいく

 

「アースクェイク!!」

 

「ふっ」

 

 私はヒールリフトで大野を抜き去る

 

 例え地面が凸凹してようとも私の速度を遮ることはできない

 

「万丈!!」

 

「サイクロン」

 

「1号戦車」

 

 サイクロンをしてきた万丈を突飛ばし更に前進する

 

「貴様のシュートは必ず止める!!」

 

「衝撃は伝播する……全てにおいて」

 

「まずい! 奴を止めるぞ!!」

 

「皇帝!」

 

「[おう! ]」

 

「「[リトルインパクトW]」」

 

「大丈夫……俺なら止められる……フルパワーシールドV3」

 

 1枚とはいえ今までで一番分厚いシールドを展開してきた

 

 衝撃か衝撃波か

 

「「[いっけぇぇぇぇぇ]」」

 

「やらせん!!」

 

 鬼道が再び戻ってきてボールを蹴りに行く

 

「ぐわぁ!!」

 

「鬼道!」

 

「「鬼道さん!」」

 

 ボールはラインを越えて外へ出る

 

 防がれてしまった

 

『おおっと鬼道足を痛めたか?』

 

 鬼道はフィールドの外に出ると治療のために靴を脱ぐ

 

「流石震撼だ。凄まじいシュートだ」

 

 すると音無マネージャーが救急箱を持って鬼道に近づいた

 

「春奈……どうして」

 

「私にだってわからない……気づいたら体が動いていた」

 

 話が横にいた私にも聞こえてきた

 

 どうやら2人は兄妹らしい

 

「……」

 

 私はその場を後にした

 

 私が居ても邪魔なだけだ

 

 私がベンチに戻ると豪炎寺先輩が円堂先輩にファイヤートルネードをぶちかましていた

 

「グランドの外で何が有ったかは関係無い! ホイッスルが鳴ったら試合に集中しろ!」

 

 豪炎寺先輩は円堂先輩が集中できていないと説教していた

 

 円堂先輩は俯いていたが、すぐに顔を上げる

 

 吹っ切れた様だ

 

『さぁ前半も残り僅か! 0-0のまま後半戦に突入か!』

 

「五条!」

 

 源田から五条にボールが渡る

 

 五条は分身フェイントで染岡先輩を抜き去り、成神にパスをする

 

 成神から鬼道にパスが渡る

 

「円堂ぉぉぉ!!」

 

「来い!! もう迷わない!!」

 

 ピーっと指笛がグランドに響き渡る

 

「皇帝ペンギン!!」

 

「「2号!!」」

 

 私は急いで向かうが間に合わない

 

 壁山とハス太は他の選手にマークされてこちらも間に合わない

 

「円堂先輩!!」

 

「大丈夫……全力のプレーで答える!!」

 

「ゴッドハンド!!」

 

 右手を突き出した円堂先輩

 

 だが皇帝ペンギン2号はゴッドハンドの指に突き刺さり手を押していく

 

「負けない!! 皆のゴールは俺が守るんだ!! だぁぁぁぁあ!!」

 

 円堂先輩は左手も突きだし、皇帝ペンギン2号を完全に防ぎきった

 

「ゴッドハンドW」

 

 メガネがベンチで命名し、ボールは土門に渡る

 

「{僕に回せ}」

 

「震撼!」

 

「{受け取ったよ}」

 

『おおっとあれは震撼の分身が今度は敵陣に単独で切り込んでいく』

 

「分身単体では必殺技は出せない!! 奴を止めるんだ」

 

「{誰がそんなことを決めたんだ? }」

 

「「なに!?」」

 

「{ザ・ワールド……時よ止まれ}」

 

『!! 私の目がおかしくなったのでしょうか! 先ほどまで辺見と咲山にマークされたと思ったら既に突破している!? 何が起こったのかわからない!! 瞬間移動か!!』

 

「{本体。出し惜しみはしない主義でね僕は……必ず決める}」

 

 ボールを中心に亀裂が走る

 

 まるでガラスをハンマーで打ち付けた様な亀裂が

 

 その亀裂はゴールに向かって突き進む

 

「{リアルインパクト改}」

 

『出た!! 大震撼の新必殺技だぁ! 凄まじい威力のシュートが突き進んでいく!!』

 

「まだだまだ俺は皆の為! 勝つためにこのゴールに入れさせるわけにはいかないんだぁ!! フルパワーシールドT(トリプル)

 

 3枚の衝撃波の壁1枚目は最初の衝撃が、2枚目はボールの威力で破ったものの3枚目の壁で止められてしまう

 

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

 源田勝利のガッツポーズ

 

 だがこれで確信した

 

 今打てる最高の技出ないと源田を突破することは不可能だと

 

「皇帝、覇王」

 

「{あぁ}」

 

「[理解した]」

 

「[{あれで行く}]」

 

 ここで前半終了のホイッスルが鳴り響く

 

 0-0のまま試合は後半戦へともつれ込む




青牛様の【源王は玉座を譲らない】のトリプルパワーシールドを使用させてもらいました

作者がイナイレ二次創作を創るきっかけとなった作品なのと、作者自信が源田好きなので許可を頂き作中に登場する事となりました

https://syosetu.org/novel/265384/

こちらより【源王は玉座を譲らない】に飛ぶ事が出きるので是非とも読んで頂きたい

またこの場で使用許可をしてくださった青牛様には感謝を


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帝国学園戦 後編

 前半終了後、私はハス太と壁山を呼んだ

 

「防衛線を3人で作り出す」

 

「え? でもそんな即席で出きるような技じゃ……」

 

「そもそもなんなんすか? 防衛線って?」

 

「両サイドのラインギリギリまでトーチカを展開してきたボールを防ぐ技……だけども技として完成させない」

 

「技として完成させない?」

 

「どういうことっすか?」

 

「必殺タクティクスとして完成させる。完成すれば今までの防御力が格段にあがる。壁山は普通にザ・ウォールをしてください。私とハス太で合わせます」

 

「いきなり合わせるって……無茶だよ震撼」

 

「無茶でもやるのです。私が1点を必ずいれるのでそれを円堂先輩と守り抜くのです」

 

「「……」」

 

 後半が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 ピーっと試合開始のホイッスルが鳴り響く

 

 攻めるのは帝国学園

 

「キラースライド」

 

「甘い、イリュージョンボール」

 

 土門先輩のキラースライドを鬼道はイリュージョンボールで回避し、雷門ディフェンスゾーンに突入する

 

「ハス太! 壁山!」

 

「ええいままよ!! トーチカ」

 

「ザ・ウォール!!」

 

「分身! からの真トーチカ!!」

 

 壁に幾つものトーチカが現れるが、タイミングが合わずにトーチカが崩れ落ちる

 

 鬼道は壁を跳躍で飛び越えるとそのままシュートを放つ

 

 円堂先輩は新技爆裂パンチで防ぐとボールは風丸先輩に渡る

 

「疾風ダッシュ! 少林」

 

「竜巻旋風!! 半田さん!」

 

「ジグザクスパーク!! 染岡」

 

「おう!」

 

 染岡先輩までパスが繋がる

 

「だぁぁぁぁあ!!」

 

『円堂が上がっていく!!』

 

「ドラゴンクラッシュ改!!」

 

 更にここに走り込んできた豪炎寺先輩と円堂先輩がシュートチェインをする

 

「イナズマ1号!!」

 

「入れさせはしない!! それがキングオブゴールキーパー源田幸次郎だ!!」

 

「トリプルパワーシールドV2!!」

 

 更に進化したパワーシールドにより雷門のシュートは防がれる

 

『これが帝国学園最強のキーパー源田幸次郎です! 彼から雷門は点を取ることができるのか!!』

 

「五条」

 

「へっ!」

 

「五条成神にパスだ」

 

「成神!」

 

「はいよっと!!」

 

『ああっと! 帝国学園カウンターだ!! 円堂がゴールに居ない!!』

 

「しまった!!」

 

「させるか!! キラースライド!!」

 

「鬼道さん!」

 

「任せろ!!」

 

『成神鬼道にパス! キラースライドをかわした!!』

 

「行くぞ!! ペンギンカーニバル!!」

 

 再びペンギンが空を舞い、足元に刺さると爆発して雷門の選手を動けなくする

 

「行くぞ佐久間! 寺門!!」

 

「「おう!」」

 

「皇帝ペンギン」

 

「「2号」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハス太、壁山動けるか」

 

「なんとか」

 

「大丈夫っす」

 

「ここで決めなければこの試合負けだ……ラストチャンスだと思え。ハス太。あなたのタイミングで始動させます。皆のリズムを託しました」

 

「……わかった」

 

「頼んだっすよハス太」

 

 この間にも皇帝ペンギン2号が着々と近づいてくる

 

「!! 皆手を繋いで!!」

 

 ハス太が叫び、反射的に私は壁山の手を握る

 

「3、2、1……今!!」

 

「「「絶対防衛線!!」」」

 

 地面が盛り上がり、巨大な壁に幾つものトーチカが現れた

 

 それは鶴翼の陣のようにV字に私達を中心に競り上がる

 

 トーチカから機関銃が放たれ弾幕が展開され、ボールに幾つもの弾丸が命中し、威力が弱まり、最後には壁山のお腹でボールが止まった

 

「なに!?」

 

『なんと言うことでしょう! 分身した震撼を入れると5名で壁を作り皇帝ペンギン2号を防いだ!! ボールは震撼に渡り蹴り込んでいく!!』

 

「もう貴様に打たせはしない!!」

 

「分身フェイント」

 

「な!?」

 

『鬼道抜かれた!!』

 

「「おりゃぁぁぁ!」」

 

『佐久間、寺門によるダブルスライディング!』

 

「ひとりワンツー」

 

『これもかわした!!』

 

「風丸先輩!!」

 

「おう! 疾風ダッシュ」

 

「震撼!」

 

『今度は風丸を使ってワンツーだ! 風丸成神をかわして大にパス!』

 

「「震撼!」」

 

「染岡先輩!」

 

「行くぞ豪炎寺! ドラゴン」

 

「トルネード改」

 

『ああっと瞬間移動した震撼とその分身2名が射線上にいる! まさかまさかのこのドラゴントルネードはパスだ!!』

 

「{[リアルインパクトTC(トリプルクラッシャー)]}」

 

 サイドキック2名とオーバーヘッドキックの3名による一撃は空間に大きな亀裂を作りだし、3本の横軸の亀裂がゴールに向かって伸びる

 

 ボールはその中心を地面を抉り取りながら進んでいく

 

「ここで終わるわけにはいかないのだ!! フルパワーシールドT!!」

 

「現時点での最強技だ!! 止められるものかぁぁぁ!!」

 

 亀裂が1枚目、2枚目とフルパワーシールドを粉砕する

 

「まだだ! まだこのゴールは割らせるわけにはいかん!!」

 

「ミッションコンプリート」

 

 最後のシールドも亀裂が勝り、ゴール威力が収まることなくゴールに突き刺さった

 

 ゴールネットを突き破り、壁に激突し、壁に大きな窪みをつくり、ボールが破裂するまで威力は弱まらなかった

 

 

「やった……やったぞ!!」

 

 円堂先輩は喜び、私は染岡先輩と豪炎寺先輩とハイタッチする

 

「なんという威力だ……くそ! くそ!!」

 

「源田……」

 

「源田さん……」

 

「すまない皆……止められなかった」

 

「……まだ後半の時間は残っています! 必ず点を取ってきます!!」

 

「洞面の言う通りだ!! まだ終わっちゃいない!! 最後まで諦めるな!!」

 

「「「おう!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ帝国学園のキックオフで試合再開です』

 

「行かせるか!」

 

「半田鬼道にフェイントで突破された! 少林がカバーに入るが間に合わない」

 

「ペンギンカーニバル」

 

「「ぐわぁ!!」」

 

 今回はもろに食らった壁山とハス太が大きく吹き飛ばされる

 

『あぁっとこれでは絶対防衛線が使えない!! 雷門ピンチ』

 

「佐久間、寺門、洞面」

 

「「「おう!!」」」

 

『鬼道が上げた!!』

 

「「「真デスゾーン」」」

 

『が! 真下に打ち下ろしたぞ!! 下には鬼道だ!!』

 

「ツインブーストD(ダークネス)

 

『出た新必殺技だ!!』

 

「真トーチカ!! ……ぐわぁ!!」

 

「「「円堂!!」」」

 

「「「キャプテン!!」」」

 

「皆の思い……必ず答える!!」

 

 円堂先輩は右手を胸に当て、体を思いっきり捻る

 

「だぁぁぁぁ!! マジン・ザ・ハンド」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベンチで見ていた俺は驚いた

 

 あれは大介さんしかできなかった幻の技……マジン・ザ・ハンド!! 

 

 円堂の奴……いつの間に

 

 ……そうか

 

 ちゃんと受け継がれていたんだな

 

 俺達の意志は……イナズマイレブンは

 

 円堂見せてみろ

 

 お前のサッカーを

 

 

 

 

 

 

「皆と一緒に全国に行くんだ!!」

 

 円堂先輩の新必殺技マジン・ザ・ハンドでツインブーストDを完全に防ぎきった

 

「まさか止められるとは……」

 

「行け! 震撼!」

 

 私にボールが来る

 

 試合時間も残り僅か……ボールをキープすれば勝てる……勝てるが、そんな逃げのサッカーで全国に行ってもお父さんや大江戸の先輩方の気持ちは晴れないだろう

 

 なら攻めるしかない!! 

 

「ザ・ワールド」

 

 時間停止で私をブロックしてきたメンバーを抜き去り、1号戦車で突破する

 

「源田ぁぁぁぁ!!」

 

「来い震撼!!」

 

 キュイイイイイインと機械音がなり始める

 

 ボールをハサミ空中に回転しながらジャンプし、両手を広げてライフルの構えだが今までと少し違う

 

 空中で回転しているボールに向かって私は気で壁を作るとそれを踏み台にしてドロップキックを炸裂させた

 

「対物ライフル!!」

 

「フルパワーシールドT!!」

 

「源田! 忘れたかライフルは貫通力だ! 壁など貫通するわぁ!!」

 

「追加点は絶対にやらさん!!」

 

 パリンと1枚目が破れる

 

「例え俺の腕が砕けようとも」

 

 2枚目も破れる

 

「ぬぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 このままでは負ける

 

 追加点を取られれば負けてしまう

 

 どうする

 

 どうすれば防げる

 

 今まで生きてきた過去を思い出し、現状を打開できる方法を探す

 

 禁断の技

 

 皆との練習

 

 影山……影山!! 

 

『パワーシールドは衝撃波の壁……いわば【装甲】だ。柔軟性は無いが弾くこと、連発性は高い武器となる』

 

 装甲……装甲!! 

 

 安西先生の社会の授業で確か

 

『ドイツ軍はソ連軍の戦車の【傾斜装甲】に大いに苦しめられました』

 

 そうか! 

 

 傾斜だ!! 

 

「小細工かもしれない! 無駄かもしれない! だが可能性が有る限り試してみようじゃないか!」

 

 俺は膝を地面に付け拳の角度を調節し、シールドの角度を斜めにする

 

「インクラインシールド!!」

 

 ボールは斜めにシールドを沿うように上に上にとズレていき、ゴールポストに命中する

 

『ふ、防いだ!! キーパー源田の機転により対物ライフル破れる!!』

 

「ラストチャンスだ! 鬼道!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「源田が最後の最後で繋いでくれた! ロスタイムの今決めないでどうする!! 必ず点を取る!! ……全員上がれ!!」

 

 源田以外の帝国メンバーが上がる

 

 これは凄まじく嫌な予感がする

 

「これが帝国最強の必殺技……」

 

 鬼道以外の9人全員が空中で回転を始める

 

 鬼道が空中にボールを蹴り上げ3段階に別れ3つの三角形を作りだしデスゾーンをそれぞれ行うらしい

 

「「「「「「「「「ヘルゾーン」」」」」」」」」

 

 その膨大なエネルギーがボールに集まったところを鬼道がかかと落としでゴールに向かって蹴り込む

 

「「「絶対防衛線!! ぐわぁ!!」」」

 

 多少威力を弱めることができたが、それでもヘルゾーンは止まることなく突き進む

 

「マジン・ザ・ハンド!!」

 

 円堂先輩渾身のマジン・ザ・ハンドを繰り出すもマジンが押されている

 

「馬鹿な! 爺ちゃんの必殺技が! 負けるなんて!! ぐわぁ!!」

 

「{[させない!! ]}」

 

 ザ・ワールドで時間を止めて円堂先輩の背後に回り込み、ボールを受け止める

 

「何がなんでもこの試合勝たねばならないんだぁぁぁ!!」

 

 分身も合わせた3人がかりでのブロック

 

 足が軋む

 

 シューズやソックスが焼けるように熱くなり、破けて肌が露出する

 

 露になる打撲根

 

 鉄球蹴りを続けてなってしまったその痣

 

 努力してきた全てをボールにぶつける

 

 バリンバリンと空間に亀裂が入る

 

 何度も何度もハンマーでガラスを打ち付けるかのように

 

 細かく……より大きく亀裂が入る

 

「「「震撼!!」」」

 

「「「震撼!!」」」

 

「大!」

 

 皆の思いが聞こえてくる

 

 負けたくない

 

 勝ちたいって

 

「{[うおぉぉぉぉぉ!! ]}」

 

 バリンとついに空間が耐えられなくなり割れた

 

 空間内にボールは吸い込まれると同時に再生が始まる

 

 エネルギーの逆流だ

 

 溜め込まれたエネルギーが黒色のビームとなって帝国ゴールに向かっていった

 

「「「な!?」」」

 

「馬鹿な止めた! いや! 弾き返しただと!!」

 

 どす黒いビームが源田に襲いかかる

 

「インクラインシールド」

 

 だが源田の渾身のシールドを貫通し、黒いビームはゴールに突き刺さる

 

 ゴールネットが浮き上がり、観客席側の壁にゴールが突き刺さり、先程の比ではないくらい大きな穴が空いたところでボールは止まった

 

 ピッピッピー

 

『ここで試合終了のホイッスル!! 雷門2-0で帝国学園に勝利です』

 

 試合が終わっても誰も動くことができなかった

 

 地面は大きく抉れ、源田は奇跡的に無事なものの、今まで見たこともない異常なカウンターシュートに絶句していた

 

 私はビリビリと痺れる足を心地よく感じながら円堂先輩の肩を叩いた

 

「円堂先輩、やりました! 優勝です!」

 

「あぁ、俺達勝ったんだよな!! 勝ったんだよな!!」

 

「はい!!」

 

 ようやく理解したメンバー達は円堂先輩の元に集まり勝利を喜んだ

 

『『『雷門! 雷門! 雷門! 雷門!』』』

 

 観客席からも雷門コールが沸き起こる

 

 あの帝国に勝った

 

 40年間無敗に終止符を打った

 

 これ程心地よい物はない! 

 

「やりましたよ父さん……私……帝国に勝ちましたよ」

 

「震撼泣いてるでやんすか!」

 

「大活躍だったもんね!」

 

 栗松と少林がからかってくるが、私は涙を流し続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地区予選の閉会式が終わり、メダルを受け取った私は帝国を去る前に帝国のゴールキーパーの源田さんと話がしたくて帝国学園の中を探していた

 

「……いた」

 

 源田さんは観客席に腰掛けていた

 

「失礼します」

 

「……大震撼か。……どうした敗者を笑いに来たか」

 

「……横失礼します」

 

 私は源田さんの横に座る

 

「源田さん、私は全力を出したつもりです。最後の黒色ビーム……あれを必ず私は物にして見せます」

 

「そうか……もっと力が有れば止めることはできたと思うか?」

 

「わかりません。ただ貴方は世界に通用するキーパーだと私は思いました……私と共に世界を目指してみませんか?」

 

「世界……か」

 

「数ヵ月後FFI……フットボールフロンティアインターナショナルが始まります。世界に向けて戦うメンバーを私は既に集め始めています。円堂先輩と貴方のダブルキーパーで世界を圧倒しませんか?」

 

「……世界大会は聞いたこと無いが……本当に有るのか」

 

「必ずあります」

 

「……そうか! 楽しそうじゃないか。だが、まずは全国大会お前達と決勝で戦う……その時にお前のシュート必ず止めて見せる! 新たな帝国サッカーでな」

 

「はい! お互いに頑張りましょう源田さん」

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 私は皆と別れるとそのままお墓に直行した

 

「お父さん……やりましたよ。帝国に勝ちましたよ」

 

 私は泣きながら勝利報告と田中からのおこづかいで高めのお花と線香を添えてお墓を綺麗に掃除する

 

「……震撼君おめでとう!」

 

 するとお父さんの教え子の1人がまたお墓にやって来て掃除を手伝いながら私の試合を観ていたらしく誉めてくれた

 

「僕らの無念を晴らしてくれてありがとう」

 

「……いえ、これで終わりではありません。全国……いや、全世界へとこのまま突き進みます」

 

「そうかい……ありがとう。これからも僕達は君を応援し続ける! 頑張ってくれ!!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰るとお爺ちゃんに田中も居た

 

「田中どうしてここに」

 

「えへへ、来ちゃった……それより震撼おめでとう!」

 

「ありがとうございます」

 

「私とお爺さんで料理をいっぱい作ったんだ!! 一緒に食べよう! お祝いだ!!」

 

「ありがとうございます」

 

「田中さん、ありがとね。震撼を大事にしてくださって……貴女の援助のお陰で儂らの財もなんとか一息つけることができました……本当にありがとう」

 

「いえいえ、震撼にはまだまだお爺さんが必要ですし、そのお爺さんが健康で居るための援助なら惜しみませんので!」

 

「ありがたやありがたや」

 

「さーって震撼! 深きうま味のミカン寿司なんてどうだい! みかん汁がサバと言い具合に組み合わせってとても美味しいんだよ! いや! ここは豪華に海の親子丼といこうか! イクラとサーモン沢山あるよ!!」

 

「わぁ! 美味しそうですね! 体洗ってから頂いても良いでしょうか」

 

「今日の主役は震撼だからね! 震撼に合わせるよ」

 

「急いで洗ってきますね!」

 

「なんなら私が洗おうか?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「がく!」

 

 賑やかな祝勝会が行われた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どんちゃん騒ぎは夜まで続き、田中が持ってきたゲームで遊んだりもして楽しく終わった

 

 田中は元の時空に帰っていき、私も布団に横になる

 

 うとうとと眠くなり、そのまま目を閉じると白い空間に出だ

 

「ここは」

 

「いやぁ~おめでとう大震撼。私からもお祝いさせてもらうよ」

 

 目の前に居たのは絶世の美女

 

 赤いドレスで身を包んだ女性が椅子に座って拍手している

 

 ナイアルラトホテップ神だ

 

「神様も観ていましたか……楽しめたようでしたら幸いです」

 

「とりあえず序章のクリアーおめでとうと言っておこうか。私もなかなかに楽しめた。この調子で私を楽しませてくれ」

 

「神様……貴方は私がイス人であることは知っていたのですか?」

 

「勿論だとも。人間と混ざり合ったイス人なんて面白いじゃないか。イス人の協力者も得て順風満帆と言ったところかな? ……まあ当面は私も君には手出ししないさ。今の段階で十分に面白いからね。ただ私が居ないところで巻き込まれて死なないようにしてくれよ。興が削がれたらお爺さんを殺っちゃうかもしれないからね」

 

「……」

 

「とりあえず今日はそのくらいかな、次の山場は全国決勝かな? 不届き者に鉄槌を下すと良い」

 

「わかりました。ご期待に答えられるように頑張ります」

 

 パチンと神が指を鳴らすと私は急激に眠気に襲われた

 

 そのまま倒れるように眠りについた

 

 

 

 

 

 

 

 

 気がつくと翌日になっており、今日の午後から祝勝会が雷雷軒で開催されるので、それまで時間が余っていた

 

 私は異空間であの時のどす黒いビームの技を再現しようと努力するが、全然できない

 

 それもそうだが、トーチカが破れたのも問題だ

 

 全国の決勝が帝国になるとしてもトーチカが破れた以上更に強い必殺技を編み出さなければならない

 

 トーチカを編み出すまで結構な時間がかかっていたので、それが簡単に破られた衝撃は実は大きい

 

「何か……何かアイデアは……」

 

 ふと電撃銃が視界に入った

 

「電撃銃……気で再現してみるか?」

 

 シュートはブロックできないが、ブロック技としては面白いかもしれないと私は考え付き、さっそく実験を開始するのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達は優勝したぞ!!」

 

「「「優勝したぞ!!」」」

 

 雷雷軒での祝勝会は円堂先輩が中心となって大いに盛り上がっている

 

 私は醤油ラーメンネギ多めを食べながら皆のノリに付き合う

 

「しっかし震撼の最後のシュート……あれ凄かったな」

 

「あの黒色のビーム……ヤバイだろ。ゴールを粉砕だぜ粉砕!!」

 

「観客席にドデカイ穴が空いてたでやんすよね!」

 

「私もまだあの技は再現できてません……しかし、あの技が使えるようになれば更に強くなれる気がします」

 

「でもよ! リアルインパクトTCだっけか! あれも凄かったよな。な、豪炎寺」

 

「あぁ。凄まじかった」

 

「あの技はいつでも放つ事ができるので任せてください」

 

「頼もしいな!」

 

「監督! 餃子追加で」

 

「こっち烏龍茶3つ!」

 

「あいよ」

 

 そうこう話していると土門先輩が夏未先輩を夏未ちゃんと言って場が凍りつくが、夏未先輩が良いわねと言ったことで場の雰囲気が緩む

 

「でも理事長代理としての側面が有ることもお忘れなく」

 

「なら理事長はコイツらにどんな言葉をかける?」

 

 監督が夏未先輩に問いかける

 

「……今やサッカー部は雷門中の誇りとなりました。必ず全国制覇を成し遂げてちょうだい」

 

「「「おう!」」」

 

 こうして祝勝会はラーメンの麺が尽きたことで終了となった




・ライフルV3
・対物ライフル
・真トーチカ
・浸透V3
・浸透戦術V2
・1号戦車
・真リトルインパクト
・リトルインパクトW
・リアルインパクト
・リアルインパクトTC
・ひとりワンツーV3
・皇帝ペンギン1号G4
・分身ペンギンV3
・分身フェイント
・分身シュート
・分身ディフェンス

必殺タクティクス
・絶対防衛線


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全国に向けて 戦国伊賀島戦

 雷門イレブンOB……伝説のイナズマイレブンと練習試合をすることになった

 

 円堂先輩がいつの間にか約束を取り付けて、響監督が仲間を集めたらしい

 

 当日、メンバーを見ると商店街で良く見る顔がちらほらと……

 

 中には生活指導の先生まで居たりして皆驚いていた

 

「スゲーな、皆1度は見たことある人ばかりだぜ」

 

「どんな必殺技が飛び出してくるかわからねーな」

 

 皆楽しみと言った感じだ

 

 ニャルがチョンチョンと私をつつき

 

「今日は貴方はベンチよ。実りがあまりないからね」

 

 と言われてしまった

 

 確かに鍛えている人もいるが、サッカーのために鍛えてる人は皆無であり、健康や仕事のためといった感じだろうか

 

「ハス太も下げますか?」

 

「そうね。他のメンバーを出した方が良いでしょう」

 

 と言ってニャルは円堂先輩にメンバー表を見せに行った

 

 円堂先輩は驚いていたが、ニャルに言いくるめられ、ベンチは私、ハス太、メガネ、影野の4名が座ることに

 

「おいおいナメられた物だな……皆! 久しぶりとはいえ勝ちに行くぞ」

 

「「「おう!」」」

 

 響監督が雷門OBを激励する

 

 ただ、キックオフしてからボロが出るわ出るわで、あまりに酷い

 

「……錆び付いてますね」

 

「なんだか覇気みたいな……いや、やる気も無いように見えるなぁ」

 

 ハス太の言う通りやる気を感じられない

 

 この状態に響監督は渇を入れる

 

「お前達! それで良いのか! 目の前に居る子達は伝説のイナズマイレブンを夢に描いて居るんだ!! 俺達にはその思いを背負う責任がある!! 俺達は伝説のイナズマイレブンなんだ!!」

 

「伝説の」

 

「イナズマイレブン……」

 

 おじさん達のやる気が変わった

 

 響監督の言葉で目が覚めたらしい

 

 動きが見違えるほど良くなり、出るわ出るわ新しい必殺技が

 

 クロスドライブ、炎の風見鶏等々……炎の風見鶏を受け、ゴールに入れられてしまった円堂先輩は審判をやってくれていた刑事さんにタイムをお願いする

 

「おいおいサッカーにタイムはねーぞ」

 

「お願いします! 大事な事なんです」

 

 刑事さんはしょうがないと許可を出して皆を集める

 

 円堂大介の必殺ノートを円堂先輩がバックから取り出すとそこには炎の風見鶏の事が書かれていた

 

 円堂先輩が解読すると

 

「スピードがビューン、ジャンプ力がビヨヨーン」

 

 と相変わらず訳のわからない

 

「スピードなら俺かな」

 

「風丸やってくれるか」

 

「あぁ!」

 

「円堂、俺もやる」

 

 豪炎寺先輩も名乗り出て2人で必殺技をやるようだ

 

 この後何度も失敗するが、ベンチでOBが再び放った炎の風見鶏を影野が理解して2人にアドバイスを送る

 

「この技の鍵は2人の距離だ! ボールを中心に同じ距離、同じスピードで合わせないとダメなんだ」

 

「良く気がついたな影野」

 

「なるほどそうか!!」

 

 アドバイスを受けた豪炎寺先輩と風丸先輩は無事に炎の風見鶏を完成させることができた

 

「やったぞ!!」

 

 風丸先輩と豪炎寺先輩を皆で囲んで新必殺技の習得に喜ぶ

 

「ニャルの予想は外れましたね。実りが有りました」

 

「たまには外すわよ」

 

「ふふふ、ニャル恥ずかしー」

 

 ベチンとハス太はニャルに頭を叩かれた

 

「イッツ~」

 

「しかし、この技が有れば帝国学園以外には通用すると思われます」

 

「まぁ確かに威力は高いよね」

 

「……対帝国に向けて私も技を開発しなければいけませんね」

 

「あの最後のどす黒いビームが打てるようになれば良いのにね」

 

「あれもそうですが、トーチカが突破されてしまったのが問題です……トーチカの代わりとなる技の開発を急がなければなりません。一応繋ぎの技は既に構想しておりますが、シュートをブロックできるだけの技はいまだに……」

 

「でも僕らの絶対防衛線があれば!」

 

「分断されたときに困るのです。あくまで1人で完結できる技こそが正義です。連携技はその延長線上でしかありません」

 

「震撼……」

 

「ハス太は強制SANチェック1D100に這いよる触手、トーチカにエンジェルボール……壁山との連携を合わせれば大黒壁がありますが、次の方向性は何か決めてますか?」

 

「強いて言うならドリブルかな~。エンジェルボール強いけど……ボールを分裂させるイリュージョンボール覚えようかな。エンジェルボールと組み合わせられそうだし」

 

「協力なドリブル技はそれだけで味方全体の連携を上げることができますからね」

 

「体格が体格だから震撼みたいに1号戦車を覚える事ができないからね……僕は僕なりの必殺技を作り出して見せるよ」

 

「そのいきですハス太」

 

「でも震撼との連携技作っても良いんだよ……絶対防衛線は壁山が入っちゃったから、僕と震撼の2人きりの技が欲しいなぁ」

 

「私はホモではありません……そっちの趣味は無いので」

 

「少し位は良いじゃん! 裸を見せ合った仲だし!」

 

「ただ同じ風呂に入っただけでしょ……はぁ、考えておきますよ」

 

「やったやった! 必ずだからね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「震撼無事で良かったよ。そして帝国勝利おめでとう」

 

 下鶴さんと連絡を取り、練習の再開を教えると、すぐにやって来て開口一番そう言ってくれた

 

 下鶴さんにも迷惑をかけてしまいすみませんと謝ると

 

「影山のやりそうなことだよ。謝ることは無いよ、本当に無事で良かった」

 

 好い人だ

 

「下鶴、こんなところでなにやるんですか?」

 

 今日は下鶴さんの紹介で藤丸さんも連れてきてもらい、一緒に特訓をしないかと誘ってみた

 

「良いけどこんな場所でやるのかい? ただの雑木林にしか見えないが」

 

 私は異空間に招待すると藤丸さんも驚く

 

「な、なんだここは!!」

 

「私の空間です。初めの人は皆さん驚きますよ」

 

 この場には私、ニャル、ハス太、下鶴さん、藤丸さんの5名がフィールドに立ち

 

「さて、では藤丸さんにこれをプレゼントです」

 

「ユニホーム? 重!!」

 

 お約束の20kgのユニホームである

 

 それに、今日は皆にプレゼントがある

 

「学習シューズ!」

 

 ドラ○もんの物真似をしながらシューズをバックから取り出して皆に渡した

 

「これは?」

 

「学習シューズです。足を刺激して効率よく技を覚えたり技術を磨く事ができるようになる特殊なシューズです。それを履いてトレーニングをしてもらいます」

 

「うお! なんだこれ! 履いたらサイズが調整されたぞ」

 

「たまに震撼不思議な物を渡してくるよね。いや、別に良いんだけどね」

 

「それに私はこれを被ってやらせてもらいます。学習装置」

 

「またヘンテコリンな装置を……それはなに?」

 

「えっとちょっと待ってください……着用者が経験した事を周囲に居る人物にも分け与える事ができる装置……らしいですね。着用者は普通に練習するより多くの経験値を得れる……らしいです」  

 

「なるほど……ってなるか! そんな装置御影にもないぞ!!」

 

 どうやら藤丸さんは突っ込みなのらしい

 

 とにかく練習を始める

 

 ニャルが練習メニューを組んでくれて、それに合わせて練習していく

 

 重りをつけた状態で猛ダッシュは疲れるだろうな

 

 皆がクタクタになったところで休憩を挟み、少し雑談を藤丸さんとする

 

「ゼハー……ゼハー……」

 

「ドリンクです。ゆっくり飲んでください」

 

「サンキュー……フゥー……疲れが少し和らいだ気がするよこれ飲んだら」

 

「そういうドリンクなので」

 

「これは鍛えられるな。雷門は皆こんなトレーニングを?」

 

「似たような事は別の場所でやってますが、この空間は私が気に入った人物しか呼んでません……円堂先輩や豪炎寺先輩、染岡先輩はここで練習しなくても勝手に強くなっていきますし……他の1年の連中はハス太以外信用してないので」

 

「信用していない? 仲間じゃないのか?」

 

「フットボールフロンティア出場前に練習をサボっていたメンバーなので、どうしても信用できないのですよ。だったら将来同じチームで戦いたい仲の良い選手を集めて練習をした方が楽しいですし」

 

「そうか……ん? 将来?」

 

「藤丸さんや下鶴さんは2年生ですが、私とハス太は1年……中学でサッカーは終わりません。高校、大学、プロと続いていきます。それに遠くない未来に世界大会もありますし」

 

「世界大会? 聞いたこと無いが」

 

「私の情報収集能力を甘くみないでください……独自の情報網が有るのでね」

 

「ふーん、世界大会か。確かになら鍛えないとな」

 

「藤丸さんスーパースキャンを進化させませんか? 攻守共に使える必殺技は貴重ですし、進化することができれば面白いことになりますよ。それかハス太にエンジェルボールを教わるのも面白いかもしれません。私と一緒に下鶴さんとファイヤートルネードを教わるのも面白いかもしれませんよ」

 

「はは、選択肢が沢山だな……とりあえずロボットを使ってスーパースキャンを進化させるのを最初にするか」

 

「やること沢山有りますから! 頑張りましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達が放課後練習していると理事長(中学サッカー協会会長兼フットボールフロンティア実行委員会会長)がやって来て皆を集めてこう言った

 

「雷門イレブンの皆! 皆のお陰でフットボールフロンティアは例年より大きな盛り上がりを見せている! 全国大会でも君達の活躍を楽しみにしていり」

 

 と激励の言葉を賜った

 

 そして

 

「全国大会出場のご褒美だ。新しい部室をプレゼントしよう。今使っている部室も40年以上前の物だからな」

 

 とご褒美を頂けることになったが、円堂先輩がこれを断った

 

「すみません理事長、でもこの部室は部員が11人居なかった頃の俺達も、昔のイナズマイレブンも使ってきた大切な部室なんです……だから大丈夫です」

 

「そうか……わかった。大切な部室なんだな」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 理事長との話が終わり、練習に戻る私達は途中風丸先輩が陸上部の後輩に誘われて練習から離脱し、その後戻ってきた風丸先輩は精細さを欠いていた

 

 豪炎寺先輩は直ぐに風丸先輩の異変に気がついたようで声をかけている

 

 陸上部に戻ってこいと言われたらしい

 

 風丸先輩はあくまで助っ人だ

 

 風丸先輩が抜けるのは炎の風見鶏を完成させたばかりでもあるので痛いが、それを決めるのは風丸先輩だ

 

 私達が引き留めることはできない

 

 ただ、翌日になると吹っ切れた様で風丸先輩はいつも以上に張り切って練習に励んでいた

 

 そんな時だった

 

 夏未先輩に電話がかかってきて理事長……夏未先輩のお父さんが事故に巻き込まれたとのことだった

 

 不穏な雰囲気が漂い始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁついにこの日がやって参りましたフットボールフロンティア全国大会開会式です! 各地区を勝ち上がってきた強豪校がここフロンティアスタジアムに集います! 入場が始まります! 最初の出場校は近畿ブロック代表戦国伊賀島中学』

 

「とうとう来たぞ……今日まで色んな事が有ったけど、ここまで来たら思いっきり暴れてやろうぜ!!」

 

「「「おお!!」」」

 

 円堂先輩の一声で皆に気合いが入る

 

 いよいよ入場だ

 

『関東ブロック代表雷門中学』

 

「よし皆行ってこい」

 

 監督が皆に声をかけて行かせる

 

『雷門中学はあの帝国学園に勝利した恐るべきチームです! 伝説のイナズマイレブン再びと注目が集まっております』

 

 角馬圭太のお父さん角馬王将が実況している

 

 帝国学園も入場して私達の横に並ぶ

 

 円堂先輩と鬼道さんが何か話しているが、私はざっと今並んでいる選手達を見渡す

 

 {どんな選手が居るのか楽しみだな}

 

 [そうかな、帝国学園と再び合いまみえることになると思うがな]

 

 最後に特別招待校の世宇子中学の入場してくると思ったが、パネルガールだけの入場で、選手は来ていなかった

 

『調整のため開会式を辞退だそうです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 開会式が終わり、私は売店で売られていた選手名鑑を購入してどんな選手が居るのかチェックする

 

 ちなみに私はこう書いてあった

 

『圧倒的な総合力を持つDF、分身を繰り出し敵を圧倒するその強さに過去の対戦校は彼を超人と呼ぶ』

 

 私の渾名超人ですか

 

 ハス太は

 

『小柄ながらトリッキーな動きをするDF、攻守の起点となることが多々ある』

 

 らしいっちゃらしい

 

 とりあえずめぼしい選手をチェックしていく

 

「……これくらいか? うーん、やっぱりキーパーは円堂先輩と源田さんに無失点記録を持つ綾野って選手が有力ですかね?」

 

 選手名鑑は軽く紹介しているだけなのでどれぐらい強い選手なのかはいまいちわからないが、ある程度注意すべき選手は渾名みたいなのが付いているように感じた

 

 源田さんのキングオブキーパーみたいに

 

「震撼帰るよ」

 

「すみませんハス太。今行きます」

 

 とりあえず勝とう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後フットボールフロンティア全国大会のトーナメントが発表され、初戦は戦国伊賀島中学と戦うことになった

 

 音無マネージャーが情報を集めてきたらしく、皆に報告してくれた

 

「戦国伊賀島の校長であり、監督は忍者の末裔と言われているらしく、選手達に忍術を教え、忍者のような訓練をすることで鍛えてるのだとか」

 

「忍者の末裔ね」

 

 忍者と言うからにはスピードが速いのだろうか? 

 

 

 

 

 

 試合当日

 

 フロンティアスタジアムにて雷門側がウォーミングアップと軽い練習をしているといきなり相手チームの選手が雷門のボールを奪い

 

「大震撼俺と勝負しろ」

 

 と言ってきた

 

「噂は聞いているぞ。人間を超えた超人だとな。我らが戦国伊賀島の技をパクっておいて、ずいぶんとイキがっている様じゃないか」

 

「……」

 

「俺は戦国伊賀島の霧隠才次! 俺も脚には自信がある勝負をしようじゃないか」

 

「計算中……計算中……良いでしょう」

 

「よし! ここからフィールドをドリブルして速さを競う……簡単だろ」

 

「わかりました。皆さん少しだけ時間をください」

 

「お、おう……震撼負けるなよ」

 

「無礼なやつっす」

 

「やっちゃえでやんす!」

 

 木野先輩がコーンを2つ置いていただき、私と霧隠が勝負することとなる

 

「準備は良いか」

 

「はい」

 

「おう!」

 

「よーい、ドン」

 

 私は本気のドリブルを開始する

 

 試合用にいつものユニホームを着ていないし、皆に合わせていつものドリブルを少し遅くしていたがこれならば問題ない

 

「なに!?」

 

「凄い! 凄いっす!! 震撼あんなに速かったんすね」

 

「滅茶苦茶速いでやんす!」

 

「馬鹿な! こんなに差が有ると言うのか!」

 

 霧隠が半分の折り返しの時には私は既にゴールしていた

 

「そんな……」

 

「大したことないっすね」

 

「大口叩いてカッコ悪いでやんす」

 

「くっ!」

 

「気が済んだか霧隠」

 

「馬鹿なことを」

 

 また2人戦国伊賀島の選手が現れた

 

「霧隠の無礼を謝罪する」

 

「お、おう」

 

「それでは」

 

 そう言うと霧隠を含めた3人は居なくなった

 

「あの2人……良いな」

 

「震撼?」

 

「鉢巻きと緑髪の選手伸び代を感じた……是非とも一緒に練習したいものです」

 

「そうかなー、僕はあの霧隠の方がビンビン来たけど……震撼より弱いけど」

 

「今の完成度ではなく伸び代の方が重要ですよハス太」

 

「僕の見る目がおかしいのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『幾多の名勝負を産み出してきたここフロンティアスタジアム! 全国最初の試合の今日も今か今かと待ち構えている!! 名勝負は生まれるのか! はたまた一方的な試合となるのか! 2回戦に進むのはどちらのチームか』

 

 雷門のフォーメーションは4-4-2のいつものベーシック

 

 

【挿絵表示】

 

 

 栗松が外れて土門先輩が入り、壁山と位置をチェンジしてハス太と連携がしやすいようになった

 

 対して戦国伊賀島は鶴翼の陣

 

 4-4-2の形で中盤に人がいないく、2トップが大きく左右にいるフォーメーションだ

 

 雷門からのキックオフで試合開始

 

 染岡先輩が半田先輩にパスしようとしたところ走ってきた霧隠がボールを奪う

 

『おおっと戦国伊賀島の速攻』

 

 これに風丸先輩が対処しようとするが

 

「伊賀島流忍法残像の術」

 

 残像を使った必殺技で突破されてしまう

 

「ハス太」

 

「伊賀島流忍法残像の術」

 

「強制SANチェック1D100」

 

「くっ!?」

 

『おおっと黄衣選手がボールを奪ったぞ!!』

 

「震撼!」

 

「ターゲットロックオン……!」

 

 私はボールを脚で挟み込み回転を始める

 

 何時もの機械音が鳴り響き

 

 そこにドロップキック

 

「対物ライフル」

 

『出た!! 大選手得意の自陣ペナルティエリアからの超ロングシュートだぁ!!』

 

「「「ぐわぁ!!」」」

 

『体で止めに行った戦国伊賀島の選手が吹き飛ばされる』

 

「伊賀島流忍法つむじの術……ぐわ!」

 

『決まった!! 開始3分で雷門1点目!! これが雷門の恐ろしいところ! どこからでもシュートが飛んできます』

 

『さぁ伊賀島反撃なるか』

 

「伊賀流忍法蹴球戦術……偃月の陣!!」

 

「承知、疾風怒濤!!」

 

 私が目を付けた2人が全体に指示を出す

 

『戦国伊賀島の選手達がVの字になり砂塵を巻き上げながら突進』

 

「「ぐわ!」」

 

「くそ! これじゃあ近づけない」

 

『おおっと雷門の選手が次々に吹き飛ばされていく!! おお! 大選手偃月の陣に突っ込んでいく』

 

「馬鹿め死にに来たか」

 

「ザ・ワールド」

 

『な、なんと! 大選手あの砂塵吹き荒れる偃月の陣からボールを奪い、突破している! 個人で必殺タクティクスを粉砕!!』

 

「なに!」

 

「そんな馬鹿な!」

 

「風丸先輩!」

 

「行くぞ豪炎寺」

 

「おう!」

 

「「炎の風見鶏」」

 

『ゴール!! 雷門追加点!! 2-0』

 

「やったぞ!!」

 

「ば、馬鹿な拙者達の忍術が通用しない……」

 

「そんな……そんな事って……」

 

 

 

 

 その後も一方的な試合展開となり、相手が攻撃に転じて偃月の陣を出してくれば私の個人技か絶対防衛線で粉砕し、攻撃はドラゴントルネード、ライフルトルネード、炎の風見鶏、ドラゴンインパクト、対物ライフルで伊賀島のゴールに連続で入れていき、前半で7点、後半で8点入れることに成功した

 

 

 

『誰が予想できたでしょう戦国伊賀島と雷門中のこの一戦……15-0で雷門中学2回戦に進出です』

 

 戦国伊賀島の選手達はあまりの一方的な試合に戦意喪失してしまい立つことが誰一人できなかった

 

 1人だけ別の意味で立てないのがゴールキーパーの選手だ

 

 15回も必殺技を受けてボロボロで立つことができない

 

『これがイナズマイレブンの再来です。帝国を破ったのはフロックでも何でもありませんでした。圧倒的です。雷門中学これはこの大会の目玉となるのは間違いなくこのチームでしょう。超人大選手、炎のエースストライカー豪炎寺選手、ドラゴン使いの染岡選手、そして今大会失点は僅かに1点のみの正ゴールキーパー円堂選手……彼らの進撃はどこまで続くのか楽しみです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合後私は失意で項垂れていた2名の選手……鉢巻きの風魔小平太選手と初鳥伴三選手に声をかけた

 

「ふふ、拙者達を笑いに来たか」

 

「試合前にカッコよく登場した割にボロボロの俺達を」

 

「いえ、貴方達を私の特訓に招待しようと思い、誘いに来ました」

 

「誘い……だと」

 

「大会期間中東京に滞在するのは知っています……どうです? 私と特訓して更にレベルアップ致しませんか? 私は貴方達2人の才能がこのまま発掘されずに埋まってしまうのは惜しいと考えたのですが……いえ、もうサッカーに対する情熱が無いというのならば断って頂いて結構ですが」

 

「……どうするよ」

 

「どうするって……」

 

「ちなみにこの後数ヵ月後に世界大会が行われます。それに貴方達まだ2年生でしょ。諦めるのは早いと思いますが?」

 

「……拙者はこの誘い受けようと思うでござる」

 

「初鳥……」

 

「こいつと練習すれば単独で我らを破った秘密がわかるかもしれないでござる! 悔しいじゃないでござるか! 拙者達が必死に編み出した偃月の陣が全く通用しなかったのでござるよ!」

 

「……」

 

「今のままではダメでござる! 拙者はこいつと練習して強くなりたい! あんな惨めな気持ちはもう沢山でござる!」

 

「……俺もやる」

 

「風魔」

 

「俺だって悔しいさ! 俺達が必死になって作った忍術が全く通用しない! 蜘蛛の糸を出したのに平然と歩く事ができるこいつを止めたい! 次は必ず勝ちたい!!」

 

「拙者「俺を強くしてくれ!!」」

 

「わかりました」

 

 私は2人に地図を渡した

 

「この雑木林に来てください。毎日5時半から3時間半特訓をしています」




ハス太 DF/MF

強制SANチェック1D100 進化しない
這いよる触手     改進化
トーチカ       改進化
エンジェルボール   V進化

下鶴 FW
ファイヤートルネード 改進化
スーパースキャン   V進化

藤丸 MF
スーパースキャン   V進化


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源田はプロジェクトZを知る

「な、なんなんだこの空間は」

 

「拙者達は雑木林に居たはず」

 

 やはり最初に来た人は必ずこの空間に驚くのが定番なのか、私が異空間に招待すると目を見開いて驚いていた

 

「新入りか?」

 

「俺も最初は驚いてたな」

 

 何回か来たことで慣れた下鶴さんと藤丸さんが戦国伊賀島の2人に話しかける

 

「ほほーん、2人も震撼にスカウトされた感じか。頑張ろうぜ! ここでの特訓は凄い力になるからな」

 

 下鶴さん……好い人過ぎる

 

 河川敷でぶっきらぼうな下鶴さんはどこへ行ったのか……

 

「では、はい、これを渡します」

 

 お約束の重りのユニホームと学習シューズを渡す

 

 1組み足りない分は私が履いていた(洗って脱臭済み)を彼らに渡した

 

 5組みしかないからな……学習シューズ……田中に頼んで増やしてもらいたいな

 

 でだ、彼らにニャル特製トレーニングメニューをやってもらう

 

 ちなみにニャルのトレーニングメニューのレベル1をクリアーしているのは私しか居ない

 

 トレーニングを最初に始めたハス太は元々のスタミナが足りない事が脚を引っ張りもう少しでクリアーできそうだが、その前にバテてしまっている

 

 下鶴さん、藤丸さんは来たばっかり、今日参加した風魔さんと初鳥さんは言わずもがな……

 

 ちなみに私のニャル考案のトレーニングメニューのレベルは30です

 

 皆の十数倍の負荷がかかっていますし、100kgのユニホームの時点で体への負荷がとんでもないことになってますがね

 

 皆ドン引きしていますが、私は普通にこなしますよ

 

「戦国伊賀島の利点は分身を作り出せる事です。私みたいな邪道ではなく、技術として覚えることができれば、技の範囲が大きく広がります」

 

 私はポンとボールを蹴りあげ

 

「リアルインパクトTC!!」

 

 凄まじい威力のボールがゴールに突き刺さる

 

「この様に、1人で2人や3人の連携技ができるようになるだけで大きく戦力が上がります」

 

「しかし、拙者達は完敗したでござるが……」

 

「良い質問です初鳥さん、それは実力が足りない、無駄が多い、戦術の過信の3つですね」

 

「戦術の過信……」

 

「確かにベンチから私は観ていたけど戦術が破られた瞬間、動揺からか動きが悪くなったわね。それに戦術は人数が必要な分、カウンターされた時に弱かったわね」

 

「ニャルの言う通り、私単独で破ったことにより精神的に攻撃を今回致しましたが、絶対の自信がある物を壊されると人は弱いです。勿論私だってそうですよ」

 

「そんな風には見えないけどね」

 

「ハス太、見えないようにさせているだけですよ……そうですね……例えばハス太、私を倒す方法を今言ってみてください」

 

「え!? えっと……えー!! 思い付かないよ」

 

「1つは分身をラフプレーで掻き消してしまえば良いのです。本体よりは打撃に弱いので簡単にとはいきませんが、必殺技をぶつける事で案外消えてしまう物です。なので分身を見分けられればボールを奪うことは可能です」

 

「弱点って言うのかそれ……」

 

「そうですね……他だと家族を人質に取るなんかもベターでしょう」

 

「いや、誰だってそうだろ」

 

「私より強い人を呼ぶ」

 

「日本に居るのかそんなの……帝国の選手を圧倒してたんだぞお前」

 

「……諦めてください」

 

「「「おい!!」」」

 

「結論、震撼は普通じゃ倒せない……敵になったら恐ろし過ぎない?」

 

「雷門のハス太は良いだろ。来年俺達こいつの居る雷門と今のメンバーが殆どそのまま上がってくる帝国と同地区でやりあうんだが?」

 

「頑張ってください藤丸さん!」

 

「だぁぁぁぁ!! 絶対に強くなるし、震撼の弱点この特訓で見つけてやるからな」

 

「その前にはい!」

 

「ニャルちゃん……何このレポート?」

 

「開いてみてね」

 

 藤丸さんの顔がみるみる真っ青になる

 

「レベル2はこれやるから頑張って」

 

 覗き込んだ下鶴さん、風魔さん、初鳥さんも真っ青になる

 

 ハス太はそんな皆を見て爆笑してる

 

 こいつ性格悪いな

 

「ハス太はこっちね」

 

「え?」

 

「何でハス太逃れられると思ってるの?」

 

「ほら僕小柄だし、皆と同じ特訓は合わないかなって……」

 

「だから何? 私、この中で一番鍛えなければいけないのハス太、あんただからね」

 

「ニャル待って待って! 死んじゃう」

 

「大丈夫、震撼死んでないから」

 

「ギャァァァァァ! 助けて震撼!」

 

「死んで強くなりなさいハス太」

 

「やめて! 死にたくない! 逝きたくない!!」

 

 哀れハス太はロボットに引きずられて強制的に練習させられるようだ

 

「俺達もかな?」

 

「逝け」

 

「「「「ギャァァァァァ!!」」」」

 

 4人の絶叫も響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 特訓後、ぷかーんと5人風呂場で死んだ魚の目をしながら全裸で浮かんでいた

 

 疲れて動けなくなり、ロボット達に運んでもらい風呂に浮かべている

 

「じ、じぬ」

 

「何時のも何倍もキツかった……」

 

「あぼぼぼぼ」

 

「初鳥! おい! 溺れるな! 初鳥! 本当に死ぬぞ」

 

「疲労回復、超回復促進、打ち身、打撲回復の効能があるのでゆっくり浸かってくださいね。私はサウナで整ってきますからごゆっくり……あ、脱衣所に特製のドリンク人数分置いてあるので必ず飲んでくださいね。飲まないと明日疲労で動けなくなるので」

 

 バタンと私はサウナに入る

 

「……本当に人間かあいつ?」

 

「だから超人って言われてるんだろ。……練習量も超人かよ」

 

「でもあの肉体……良いゲヘヘ」

 

「ハス太、お前ホモかよ」

 

「失礼な! 僕は震撼専門のバイだよ!」

 

「あぼぼぼぼ」

 

「誰か手伝ってくれ初鳥がガチで死にそう」

 

「いや、僕らも浮いてるのが精一杯だし……いま腕に全く力が入らないから無理」

 

「「同じく」」

 

「あぼぼぼぼ……」

 

「あ、沈んだ」

 

「初鳥!!」

 

 この後初鳥はロボットに引き上げてもらった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後

 

 雷門サッカー部の皆がイナビカリ修練場で練習していると音無マネージャーが息を切らしながら入ってきた

 

「帝国学園が……」

 

「帝国学園初戦突破か?」

 

「10-0で……」

 

「結構な点差だな」 

 

「世宇子中に……完敗しました」

 

「な!?」

 

「嘘だろ! 音無!」

 

「ガセじゃねーのか! あの帝国だぞ」

 

「正ゴールキーパーの源田選手は雷門との試合で手を痛めていたので欠場、お兄ちゃんも足を痛めていたので大事をとって試合に出なかったんです……相手がノーマークの学校だったから……そしたら……見たことも無い技が次々に決まって気がついた時には……スタメンで立っている人が誰一人居なくなっていて……」

 

「そんな……あの帝国が……嘘だろ!! そんなこと絶対にあり得ねぇ!!」

 

「キャプテン落ち着いてほしいっす」

 

「落ち着いていられるか! 鬼道達が完敗なんて……あり得ねぇ!!」

 

「円堂!」

 

「キャプテン!」

 

 円堂先輩は走って何処かへ行ってしまった

 

「……!! 源田さん」

 

「震撼何処へ行くの!」

 

「源田さんの所へ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「源田さん」

 

「よぉ、震撼……笑いに来たのか……初戦で負けた俺達を」

 

「なぜそんな馬鹿馬鹿しいことをしなければならないのですか?」

 

「……くくくっ、そうだな。お前はそんなことはしない奴だよな……くそったれ! お前と約束したのに……全国の決勝で勝負すると約束したのに……守れなかった」

 

「……手は大丈夫なのですか?」

 

「……お前の黒色のビームを受けた時に痛めたらしい。気がついたのはお前と別れて数時間後だ……アドレナリンが出まくってたらしいな」

 

「そうですか……」

 

 帝国学園に居た源田さんは更衣室で座っていた

 

 私はその横に座る

 

「……実は私は世宇子について少し知っていました」

 

「な! それは本当か」

 

「世宇子の裏には影山が居ます……プロジェクトZ……ゼウス計画です。帝国学園の最深部のコンピューターを協力者がハッキングした際に見つけたらしく、私も実はプロジェクトZに影山から参加しないかと誘われていました」

 

「影山は逮捕されているハズじゃ」

 

「この前あの逮捕劇の場に居た刑事さんから証拠不十分で釈放されたとの連絡がありました……では源田さん問題を出しましょう。誰が工作したでしょうか」

 

「誰がって……影山じゃ……!? 檻の中に居た影山は工作できるハズがない……つまり協力者が居るのか!?」

 

「正確には影山には上司が存在します」

 

「馬鹿な! 帝国学園という日本中学サッカーのほぼトップに君臨していた奴に上司だと!?」

 

「正解は世界です」

 

「世界……世界!?」

 

「世界には名だたる富豪が沢山居ますよね。億万長者番付でも日本人ってトップでも50位以下なんですよ……ここまで言えばわかりますよね」

 

「世界の富豪の誰かが影山を操っていると」

 

「まぁここで誰かはあまり関係有りません。私の復讐対象は影山であり、父の殺害や私の事故にこの億万長者は関わってないですし……話を戻しましょう。プロジェクトZ、ゼウス計画は強化人間計画ですね」

 

「強化……人間だと」

 

「薬物で身体を強化する計画らしいですね」

 

「ドーピングじゃないか!! そんな奴らに俺達は……」

 

「まぁ勝ちますけど」

 

「奴らの強さは尋常じゃないんだぞ……例えお前だとしても」

 

「勝たなければならないのですよ。影山の計画をぶっ潰して誰が最強か証明しなければ……天国に居る父に活躍を見せるには日本……いや、世界一になるくらいしないとダメですからね。ドーピング野郎には負けませんよ」

 

「……強いんだなお前は」

 

「私も手段は違えど強さを常に求めていますからね」

 

「……世界か」

 

「世宇子は私が叩き潰しますので貴方は世界だけ見ていれば良いですよ。一緒に特訓しましょう。悩んでいてもゼウス計画は潰れませんし、今だって練習している誰かに代表の座を奪われるかもしれませんのでね」

 

「ああ! ……そうだな」

 

「御影専農や戦国伊賀島の選手を誘っての合同練習をここでしているので良ければ来てください」

 

「……なぁ、その合同練習に参加させたい奴が居るんだが参加させて良いか」

 

「どんな方ですか?」

 

「俺の……弟だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帝国の源田! 本当に世界狙ってるんだな震撼」

 

 源田さんを連れてきたことについて下鶴さんがそう反応した

 

「世宇子戦観ていたが……無念だろう」

 

「あぁ、だから特訓することにした。この空間には驚いたが……良いフィールドだ。怪我しにくそうで素晴らしいな。改めて源田幸次郎だ。そしてこいつが弟の」

 

「げ、げ、げ……源田真俉(しんご)です。皆さんの活躍は現地観戦で応援していました!! 特に大選手! ファンです! サインください!!」

 

「……性格が似てませんね」

 

「良く言われる。こいつは今小学5年生だ。そして未来の帝国の正ゴールキーパーだ」

 

「兄貴、俺帝国の正ゴールキーパーは重いって……サブキーパーぐらいが丁度良いよ」

 

「こんな事を言っているが俺より才能はある。揉んでやってくれ」

 

「よ、よ、よ……よろしくお願いします!」

 

「後輩だ! パシりに使おう!」

 

 ハス太が調子に乗り始めたのでニャルが関節技をかけて成敗

 

「あわわ、ぱ、パンツ見えて……」

 

「見せパンだと思うので気にしない方が良いですよ。さて、これで私、ハス太、下鶴さん、藤丸さん、風魔さん、初鳥さん、源田兄弟の8名となりました。とりあえずニャルのレベル1をクリアーするのを目標に頑張っていきましょう」

 

 源田兄弟にも20kgのユニホームを着用してもらいニャル考案のトレーニングを開始する

 

 キーパー用に少しだけ違うが、足腰を鍛えるのには変わらず、とにかく走り込み、バービー、スクワット、ドリブル、障害物走等々をやっていく

 

 今日も皆ダウンしたところで終了となり、当面はこの調子が続くだろうと予想できた

 

 私は私で特訓を続けながら皆に有った必殺技をガンガン開発していく

 

 下鶴さんは私のライフル系列をコピーできると思うのでしてもらえば良いですし、藤丸さんはスーパースキャンの進化で良いので大丈夫

 

 問題は忍者2人だ

 

「速度特化の必殺技をお二人に考案します」

 

 風魔さんと初鳥さんを集めてゼロヨンを教える

 

「クラウチングスタートから相手を瞬時に抜き去る技です。必要なのは瞬発力です。習得難易度は簡単だと思うのでとりあえず練習してみませんか? これが基礎になるので頑張りましょう」

 

「こうか?」

 

「いや、こうでござるよ」

 

「一度手本を見せますね」

 

 私はクラウチングスタートの体勢をとり、片足を下げる時に地面を堀ながらスターターの代わりにする

 

「ゼロヨン」

 

 私は目の前に居たロボットを抜き去った

 

「「おお!」」

 

「簡単でしょ。やってみてください」

 

 瞬発力さえあれば誰にでもできる技なので今日の特訓のうちに彼らはゼロヨンをマスターした

 

「では本題です。ゼロヨンを私なりに改良した零戦……やってみましょう」

 

 零戦……ゼロヨンは前にボールを置きクラウチングスタートと同時に運ぶ技だが、零戦は頭にボールを置く

 

 ゼロヨンの如くクラウチングスタートの体勢をとり、全力で前に飛ぶ

 

 ボールを頭に置いたら手を広げて翼の代わりにし、揚力を作り出して低空を飛行しながら突破する技だ

 

 高速かつ長距離ボールを運べる必殺技であるが弱点もある

 

 ザ・ウォール、トーチカの様な壁系に極端に弱いのだ

 

 つまるところ防御力皆無の必殺技なのだ

 

「しかし、そのスピードと距離は拙者達にとって魅力的でござる」

 

「俺達が使う残像は1対1を想定している技だから複数人突破できる技はとてもありがたい。なにより副産物で簡単な必殺技も使えるからお得だ」

 

 2人はニャルの特訓をしながら零戦習得に躍起になっていく

 

 最後に源田さん達にはパワーシールドのやり方を詳しく教わり、必殺技ノートバージョン2に書き込んでいく

 

「気を手に溜めて地面に叩きつけることでシールドを出す……簡単な様に見えるが、気を溜める事が難しい。できるようになれば出力を上げればフルパワーシールドやトリプルパワーシールドの様に様々な応用が効くようになっている」

 

「ありがとうございます」

 

「大さんはノートに書いて何してるんですか?」

 

「このノートを読めばその必殺技を理解できるようにしているのです。理解できれば改良も進化させることもできるのでね」

 

「なるほど」

 

 こうして情報交換もしながら秘密裏に特訓は続けられた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恐れていた事態が起きた

 

 イナビカリ修練場での特訓により急激なレベリングをしたことで個々の能力は上がっていたが、それが遂に連携に支障が出るまで上がりすぎた

 

 いや、上がることは良いことなのだが、連携が崩壊してしまってはもとも子もない

 

 私はパスを出すとき等は常に調整(セーブ)して行っているので問題なく、ハス太はこの時の為に司令塔としての特訓をしてきたため自身を中継役としてのパスは繋がる……が、司令塔としてはまだまだ未完成であり、形になるには時間がかかる

 

 これについては響監督も危惧していたが、時間が解決するしかないと仰っていた

 

 マネージャー陣には普通に振る舞うように指示を出し、それを私はたまたま近くに居たので聞いていた

 

「最終的に個に完結するのですね……やはり連携技は強い反面連携の歯車が1つでも食い違えば不発になる……だから私は連携技があまり好きじゃないんですよね……」

 

 ハス太が連携! 連携とせがんでくるのもわかるのですが、調整役が居ないと弱点になりかねない連携技にはどうにも危機感を抱いてしまう

 

 ……次の対戦相手は鉄壁を誇る千羽山中学……源田さんよりもすごいかもしれないと言うキーパー技の無限の壁を操る学校だ

 

「勝利方法を模索……私が通常の2倍頑張れば良いだけの話ですね」

 

 いよいよ全国大会2回戦が始まる




ゼロヨン・・・GOの技 探せば動画有るので視ていただくとわかりやすいかも

零戦・・・1人版ブーストグライダー


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鬼道登場 千羽山戦 一ノ瀬という男

 全国大会2回戦、千羽山中学との対戦は響監督が全員揃っているのにも関わらず1人足りないと言い続け、試合が始まらないでいた

 

「全員揃っているんですよ!」

 

「なんで試合を始めないんですか! 響監督」

 

 審判があと3分以内にグランドに出なかったら試合放棄と見なすと忠告してきた

 

「……何を考えているんだ」

 

 私は響監督が何を待っているのか理解できなかった

 

 焦る

 

 源田さんに世宇子を叩き潰すと言った手前、こんなところで試合放棄なんてふざけてる

 

「監督!」

 

「響監督!!」

 

 皆も焦る

 

 その時コツコツと誰かが通路を歩く音がした

 

「誰だ!!」

 

 私は叫んだ

 

 すると出てきたのはドレッドヘアーにゴーグル、青いマントを翻した鬼道有人がそこに居た

 

「やっと来たか」

 

「「「ええぇ!? 嘘ぉ!?」」」

 

 雷門のユニホームを着用した鬼道さんが居るではないか

 

「待たせたな」

 

「鬼道どうして鬼道がうちのユニホームを!?」

 

 皆驚いているが、会場全体も驚いている

 

『鬼道……間違いありません帝国学園の鬼道選手です』

 

 どうなってんだとかそんなのアリかよと観客から罵声が飛ぶ

 

『ええっと失礼……有りました大会規約64条第2項試合開始前に転入手続きをしていれば大会に出場するのは問題ないとのことです!!』

 

 実況の人が解説してくれたがつまり監督は鬼道さんが来るのを知っていて……

 

「あのままでは引き下がれない……世宇子の奴らに必ずリベンジする!」

 

「鬼道俺にはわかってたぜ! お前があのまま引き下がるような奴じゃないと!!」

 

 円堂先輩は鬼道さん……いや、鬼道先輩か

 

 鬼道先輩が世宇子に負けっぱなしで終わるような人じゃないと信じて……

 

「なんて執念だ」

 

「少林、すまないが鬼道にかわってベンチだ。鬼道、右サイドに入れ、左サイドは松野で行く」

 

「「「はい!」」」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 私はモノクルをこの試合から着用する

 

「お? 震撼どうした? 珍しい眼鏡だな片方しか無いぞ?」

 

「モノクルです。前の事故で視力が変わってしまい、今までは裸眼でやってきたのですが、やっぱり視力に差があると厳しいので……」

 

「そうか! 似合ってるぞそれ! 今日もバンバン決めていけよ」

 

「了解致しました」

 

 視力に差が有るのは事実だが、事故で義眼となった方は視力が高すぎる為落として調整するためのモノクルだ

 

 田中特製のスポーツ用モノクルをしっかりはめ込み、臨戦態勢完了

 

「無限の壁の強さ確かめさせていただきます」

 

『さぁ試合開始だ!!』

 

 ホイッスルと同時に染岡先輩から豪炎寺先輩に渡り、豪炎寺先輩は私に向かってバックパスをする

 

 ややズレていたが、私の身体能力でカバーし、ライフルの発射準備にかかる

 

 キュイイイイインと回転と同時に機械音がフィールドに響き渡り、ドンと発射する

 

「ライフルV3」

 

『出た! 数多の中学を絶望に陥れてきた大選手お得意の超ロングシュート! ライフルだ!! 発射されてから威力が全然落ちること無くゴールに突き刺さってきたこの技は千羽山にも通用するのか!?』

 

「無駄ずら」

 

「「「無限の壁」」」

 

『出た千羽山の絶対的防御の無限の壁だ!! ライフルを難なく止めて見せた!!』

 

「豚の糞ずら」

 

「ドンマイドンマイ切り替えてけ!!」

 

 円堂先輩が後ろから励ましてくれた

 

 次は決める

 

 ただ今のでわかった

 

 源田さんや円堂先輩よりは弱い

 

 源田さんは単独で止めていたのを彼らは3人で止めていたのが1つ

 

 そもそも能力が源田さんや円堂先輩より劣っている

 

 ゴキゴキっと首を鳴らす

 

「絶対防御はこちらだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここから約10分は守りのサッカーだった

 

 パスが私とハス太からの以外繋がらないのでフォワードの2人に行く前にボールがカットされてしまうのだ

 

 ただ私、壁山、ハス太の3人による必殺タクティクス絶対防衛線で攻撃を完全にシャットアウト

 

 これに横から切れ味抜群のスライディングでボールを奪う土門先輩のお陰で私達の負荷もあまり無い

 

 千羽山は絶対防衛線の突破方法がわからずにいたずらに時間を消費し、10分が経過すると鬼道先輩が動き始めた

 

 パスの時にテンポ、タイミング、方向の指示を行いハス太が努力していた司令塔としての役割をこの短時間でこなし、雷門のズレを修正してパスが繋がるようになった

 

 その後ドラゴントルネード、イナズマ落とし、ライフルトルネード、ドラゴンインパクトの全てを無限の壁で止められたものの、私に全く焦りは無かった

 

 鬼道先輩にアイコンタクトを送ると彼も理解してくれたらしい

 

 後半動くと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後半震撼を一番前に置く……3-4-2-1にする。無限の壁は驚異ではあるが弱点はある」

 

「弱点?」

 

「無限の壁は3人技だということだ。3人のうち誰かが欠ければ無限の壁は簡単に突破することができる。震撼を前に置いたのは分身でディフェンスを掻き乱すことで無限の壁を発動できなくさせる」

 

「なるほどその手があったか」

 

「でも震撼が抜けたら絶対防衛線は発動できませんよ鬼道先輩」

 

「ハス太と言ったな。千羽山のオフェンスの動きをみていたが、土門、ハス太、壁山の3人であれば対象可能だ。ハス太、ディフェンス陣の指揮はお前が取れ」

 

「僕ですか?」

 

「お前は俺が言う前からパスコースの修正が既にできていた。全体が見えている証拠だ。俺とお前で指揮系統を分裂させることで相手のオフェンスの動きに柔軟に対応することができると判断した。やってくれるな」

 

「わかりました。精一杯やらせてもらいます」

 

「ダメそうならすぐに切り替えて俺が全体指揮を取る形にする。皆も良いな」

 

「1つ良いか」

 

「何だ半田」

 

「雷門のサッカーは豪炎寺と染岡のツートップ。それに震撼と円堂の2人が防御の中心となって他を寄せ付けない防御力を誇る雷門必勝の型を簡単に変えて良いのかよ」

 

「半田……」

 

「確かにそれはそうでやんすが……」

 

「わかってないな」

 

「なに!」

 

「ここはフットボールフロンティア全国大会、全国の強豪が雌雄を決する場所だ。今までのお仲間サッカーがいつまでも通用すると思うな」

 

「半田先輩、私も鬼道先輩の意見に賛成です」

 

「震撼まで」

 

「必勝の型と貴方は言いましたね。型ができてしまえば相手は対処しやすくなります。今日を入れてあと3回勝たなければ全国の頂点には行けません。全国で勝ち進むには今までのやり方とは別の方法も取らなければならないのです」

 

「やってみようぜ半田」

 

「円堂……わかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ千羽山からのキックオフで後半開始です』

 

『おおっと猛烈な勢いで震撼が上がっていく! 速い速いぞ』

 

「ち! 山根!」

 

「電撃銃」

 

 走りながら指に気を集め、指鉄砲の形を作り、そのまま電撃を発射した

 

「ぐわ!」

 

「「「山根!!」」」

 

 痺れて動けない隙に私はボールを奪う

 

「行かせないっぺ」

 

「ミッションスタート……零戦」

 

『大選手! 飛行している!! 低空ながら高速で敵陣深くに侵入を開始!!』

 

「かごめだっぺ!」

 

「無理だっぺ!! あいつ速すぎるっぺよ!」

 

「追い付けないだす」

 

 私はそのまま回転して空に飛び上がると、再び機械音が響き始まる

 

「いくべお前ら無限の壁ずら」

 

「「おう」」

 

「震撼ダメだ! 防がれるぞ」

 

 鬼道先輩の声が聞こえてきたが、私は確信している

 

 こいつで無限の壁は破れると

 

「対物ライフル!!」

 

 凄まじい回転がかかったせいで細長い槍の様にも見えるボールが無限の壁に突き刺さる

 

 メキメキと嫌な音が鳴り響き、バリンと無限の壁が崩壊する

 

「「「ぐわぁ!」」」

 

『ご、ゴール! 無限の壁超人の前に破れる!! なんというシュートだ大選手圧倒的な力を見せつけます』

 

「ナイス震撼」

 

「無限の壁が破られて動揺しています。ファイヤートルネードでも今なら決まるでしょう」

 

「わかった。助かる」

 

 千羽山の精神的支柱であった無限の壁という絶対防御が簡単に突破されたことにより千羽山は明らかに動揺していた

 

 仲間同士でぶつかったり、パスミスしたりと様々なミスを連発していた

 

 それに付け入らない私達ではない

 

 円堂先輩、豪炎寺先輩、鬼道先輩の新技イナズマブレイブで2点目、私のリアルインパクトで3点目を取ると戦意を喪失してしまい、後半だけで5点取られて千羽山は敗北した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鬼道先輩が雷門に加わって一番影響を受けたのはハス太だった

 

 ハス太は鬼道先輩に司令塔の立ち回りや全体指揮のやり方等を学ぼうとし、それに鬼道先輩が快く教えてくれた

 

「全体指揮ってやっぱり難しいですね……」

 

「なに、学ぼうとする姿勢が有るだけ立派だし、俺にだって利点がある。ハス太が指揮が上手くなればそれだけ俺の負担も減る。俺が雷門に居る間は教えてやる」

 

「ありがとうございます」

 

 一方私は豪炎寺先輩と連携シュートの練習をしていた

 

 ただ、この頃連携シュートと言えば豪炎寺先輩みたいな風潮を感じる

 

 それだけファイヤートルネードが連携に適した必殺技であるのだが……それだけに私も必死にファイヤートルネード習得を陰で下鶴さんと行っているのだが、相性の問題か難航していた

 

「震撼集中しろ! 次の相手が無限の壁以上の防御技を持っている可能性がある! 世宇子は必ず持っている! 打開するための新技習得を言い出したのは震撼お前だろ」

 

「すみません」

 

「よしいくぞ」

 

 豪炎寺先輩は全てにおいて炎の人だ

 

 熱く皆を焚き付けて円堂先輩が足りない部分を冷静に判断し、支えながらも自身の役割をきっちり果たす

 

 その燃え上がる闘志を内に秘めていることで爆発的な攻撃力になるのだと考えられた

 

 それを新技に生かせれば良しと思い、豪炎寺先輩に声掛けして新技作製に取りかかった……が、ライフルトルネード以上の技はなかなかできなかった

 

 一応火縄バレットという技ができたのだが、威力はライフルトルネードの方が上、ロングシュートできるがそれはライフルトルネードも同じなため利点とはならない

 

 なんとも中途半端な技となってしまった

 

 ちなみに下鶴さんとやったら滅茶苦茶上手くいった

 

 それこそファイヤートルネードの合体技を諦めてこの技の派生や進化させた方が良いんじゃないかってぐらいには私と下鶴さんに火縄バレットは合っていたのだ

 

 ……正直今の豪炎寺先輩とでは良い必殺技は完成しないと感じた

 

 豪炎寺先輩と私の相性が実はあまりよろしくないのではないかと私が一方的にだが感じてしまっている

 

 いや、円堂先輩とハス太、染岡先輩、土門先輩、鬼道先輩以外の面々とどこか壁みたいなのが有るように感じた

 

 今はそれが水面下で動いているだけでいつか爆発するような……そんな感じがしてならない

 

「もう一度だ」

 

「はい!」

 

 練習は続いていく

 

 

 

 

 

 

 ある日練習をしていたら、ミスキックでボールがフィールド外に転がってしまい、それを拾った人がドリブルをして練習に乱入してきた

 

 ドリブルで少林、宍戸、壁山、栗松4人をあっという間に抜き去るとそのまま円堂先輩の居るゴールにシュートを決める

 

 シュートは円堂先輩が止めたものの、乱入してきた人は素晴らしい動きをしていた

 

 皆でその人物を囲んでスゲーなお前だとか、どこの選手なんだとか質問すると木野先輩と土門先輩が用事から帰ってきたらしく、2人が囲んでいる皆に近づくと、木野先輩に乱入してきた人が抱きついた

 

「会いたかった」

 

「てめー! 秋になりしや……一ノ瀬! 一ノ瀬なのか! 本当に!!」

 

 どうやら木野先輩と土門先輩の知り合いらしく、2人がアメリカに住んでいた時の友達なんだと

 

 事故で死んだことになっていたが、それは怪我でもうサッカーができない体になってしまっていたからで、リハビリや手術を繰り返し、このようにまたサッカーができるまで回復したのだと教えてくれた

 

「震撼、彼まだ完治してないね」

 

 ハス太が小声で教えてくれた

 

「筋肉の付き方がおかしい。事故の後遺症がまだ残ってるし、今のままサッカーを続けたら確実に将来歩けなくなる」

 

 ハス太の現状の人を視る目は確かだ

 

 将来性を視る目は甘いが、ハス太がそう断言したということは彼は爆弾を抱えながらサッカーをしている

 

 田中に頼めば彼を治すことは可能だろうが、今さっき会った人物を助けるほど私はお人好しではない

 

 一ノ瀬さんは皆と混じってサッカーの練習をするが、それを止める訳にもいかずにただただ自分の練習をこなすに留めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一ノ瀬さんはフィールドの魔術師と呼ばれるほどの天才ミッドフィルダーだ

 

 ゲームメイクではなく自身の個々の技能が高いパターンだ

 

 勿論ゲームメイクもできなくはないが、鬼道先輩には1歩劣る

 

 それが私の評価だ

 

 彼が私をどう思っているかはわからないが、私はそう評価した

 

 彼は円堂先輩を気に入ったらしくトライペガサスという技を復活させようと言い出し、円堂先輩は準決勝が近いというのにその技を物にしてやると意気込んでいる

 

 こうなっては彼らは止まらない

 

 一方私は豪炎寺先輩とまだ何もできてない新必殺技の開発に時間を浪費することとなる

 

 打ち切っても良いが、それをしてしまえば豪炎寺先輩との関係が拗れてしまう

 

 だから私は言い出さない

 

 鬼道先輩は気がついているかもしれないがね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼凄いね、身体能力が僕達と同じ人じゃないみたいだ。鬼道はどう思うかな」

 

「あぁ、震撼は俺が見てきた中で1番凄いディフェンダーだ。一ノ瀬、アメリカではどうだ?」

 

「あんなに凄いシュート技を持っているのにディフェンダーなのかい? ……アメリカには居なかったな彼ぐらい凄い選手は」

 

「あぁ、奴はリベロだが、攻守共にトップクラス……いや、更に上にいる。俺達はまだ奴を最大限に生かせた事がない」

 

「でも鬼道、君はこの前加入したばっかりなんだろ? 生かせないのは仕方がないんじゃないか?」

 

「いや、それでも生かすのが司令塔だ……ただ豪炎寺と組ませたのは失敗だったな」

 

「相性が悪そうだね。見てたらわかるよ」

 

「あぁ、震撼の成長速度に豪炎寺が追い付いていない。豪炎寺も日本屈指のストライカーだが、震撼には残念ながら完成度で劣ってしまっている……豪炎寺が一皮剥けなければ新技は完成しないだろう」

 

「それでも技の開発を続けさせているのは何か意味があるのかい?」

 

「新技の開発は震撼が言い出したんだ。豪炎寺はそれに付き合っているに過ぎない……だから豪炎寺は震撼が納得するまで続けさせるし、震撼は言い出した自分が諦めてしまったら悪いと思って開発中止を言い出せない」

 

「なら止めさせるべきだと僕は思うけどね」

 

「タイミングが重要だ。タイミングをミスれば2人に亀裂が走る」

 

「いや、これは今言った方が良い……豪炎寺、震撼ちょっと良いか」

 

「あ、一ノ瀬待て」

 

 一ノ瀬さんとなし崩し的に巻き込まれた鬼道先輩の説得で新技開発は中止となった

 

 私はこれ以上時間を浪費しなくてホッとしたが、豪炎寺先輩はとても悔しそうにしていた

 

 しかしこれでハッキリした天才タイプの豪炎寺先輩と努力と理詰めで新技を開発する私では相性が悪いことが

 

 恐らくファイヤートルネードが私ができるようになれば話しは変わってくるのだろうけど、今の私と豪炎寺先輩では必殺技はできない

 

 私は基礎練習に戻り、新技開発は異空間でのみ行うことになる

 

 

 

 

 

 一ノ瀬さんが来て数日が経過し、一ノ瀬さんがアメリカに帰る日となった

 

 トライペガサスはあと少しで完成しそうだが、まだ出来上がっておらず、時間的にラストチャンスの時、木野先輩がトライペガサスの中心点に立って目印とした

 

 トライペガサスは3人……この場合は円堂先輩、土門先輩、一ノ瀬さんの3人がボールを中心に重なり、トップスピードで走り込み、交わった瞬間に青い炎がボールを押し上げてペガサスの形になって、それを相手ゴールに3人でボールを空中で蹴り、ペガサスが空からかけ降りる様に見える技だ

 

 威力はイナズマブレイブよりは少し落ちるかな位の技だ

 

 ラストチャンスは木野先輩のアシストもあり成功し、空にペガサスが現れた

 

 満足した一ノ瀬さんは皆にお別れをいうとアメリカに帰っていった

 

 ……と誰もが思ったが、なんと日本に残ることにしたらしい

 

 円堂先輩や皆に感化されてこのチームでプレイしたいとの事

 

 一ノ瀬さんがチームに加わったことで準決勝は多少楽に勝てるかもしれない

 

「皆さん! 準決勝の相手が決まりました!! 準決勝は木戸川清修です!」

 

 強豪木戸川清修が対戦相手に決まり、私達は準備を始める……勝つために



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炎の壁 木戸川清修戦

 源田兄弟と練習をするようになってはや10日、源田幸次郎さんと源田真俉の練習に付き合っていた

 

 私は黒色のビームを再び出すために、源田兄弟は更なる高みを目指すために特訓を続けている

 

 源田幸次郎さんはインクラインシールドよりも強力な必殺技の開発に取りかかっていた

 

 インクラインシールドではリアルインパクトWを止めることができない

 

 フルパワーシールドTでもそうだ

 

 故に新必殺技を開発しなければ私のボールは止められないと判断したらしい

 

 源田真俉の方はインクラインシールド習得にいそしんでおり、傾斜をつけるだけなので角度調整が終わればすぐに習得できるだろう

 

(以後源田さん=源田幸次郎、真俉=源田真俉)

 

 源田さんとあーでもない、こーでもないと話しているとニャルがふらっと現れて

 

「パワーシールドに属性を付ければ良いんじゃない? 衝撃波の層と例えば炎の層ができればボールを焼き焦がしたりできるし、熱風で威力を弱めたりもできるんじゃない」

 

「それだ! ニャル助かった。感謝する……震撼、早速試させてくれ」

 

「はい!」

 

 とりあえず最初は炎が吹き出すイメージをしながら源田さんは新技の練習をしていたが、私がミーティングルームの過去の映像から参考になりそうなボルケイノカットというディフェンス技の映像を見せると

 

「そうか、地中のマグマの力を借りればより強い必殺技になる」

 

 とのことで、とりあえず初期段階は腕に炎を纏い、回転しながら炎の渦を作り、そこから拳を地面に突き刺して衝撃波を展開

 

 前面に炎の層、後ろにパワーシールドを展開する技が完成した

 

「どんな技名にするんですか?」

 

「単純にファイヤーシールドで良いだろう。残念ながらこれではリアルインパクトTCは止められないがな……必ずお前のシュートを止めてみせる!」

 

「いたちごっこですね。負けません。私の開発力で更に突き放してみせます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世宇子がやはり決勝に駒を進めた

 

 準決勝は10分で相手チームが負傷者続出で試合続行不可能となり、棄権しての勝利だった

 

 一方雷門も鬼道先輩、一ノ瀬先輩というミッドフィルダーに新戦力が加入したことにより部員数は17名となり、ベンチに入りきらなくなったので、メガネが試合中はマネージャーとしてベンチに入ることで人数を調整した

 

 外部戦力の取り込みと既存の選手の上達により世宇子中と戦う準備は確実に整ってきていた

 

 木戸川清修戦はただ勝つだけではダメで、次に繋がる試合をしなければならない

 

 勿論楽して勝てれば文句無いのであるが、豪炎寺先輩の才能を見抜き、1年からエースストライカーに抜擢するほどの実力主義の中学なため油断はできない

 

 私は音無マネージャーから木戸川清修の映像を借りて相手の情報を頭に詰め込んだ

 

「震撼、何見てるの?」

 

「ハス太ですか、ちょうど良いです。木戸川清修の試合映像を見ていました」

 

「ふーん……同じ顔が3人……三つ子のスリートップなんて珍しいね」

 

「はい、彼らが使うトライアングルZは強力な技です」

 

「どれぐらいなの?」

 

「帝国のデスゾーンより強力かもしれません」

 

「あの真デスゾーンより?」

 

「相手だって改や真にしている可能性があります……円堂先輩のマジン・ザ・ハンドで止められると思いますが……」

 

「油断はできないと」

 

「はい」

 

 となるといかにトライアングルZを出させないかになる

 

 3人の連携技なだけに1人に徹底マークを付けて潰すも良し、絶対防衛線で止めるも良し、その前にボールを彼らに繋げなければ良い

 

 映像を見ていると前衛の武方三兄弟と中段及び後衛との連携があまり上手くいっていないように感じた

 

 ハス太も気がついた様だ

 

「ハス太」

 

「わかってる震撼。鬼道先輩からディフェンスの指揮権をいただいているから壁山と土門先輩を操って中段と武方三兄弟に亀裂を入れる。そうすれば脆い」

 

「了解しました。私は武方三兄弟に徹底マークを致します。ハス太は指揮と中段への繋ぎをお願いします」

 

「わかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木戸川清修との試合当日

 

 どうやら豪炎寺先輩絡みで武方三兄弟とトラブルがあったらしい

 

 まぁ私には関係無いが

 

 豪炎寺先輩にとっては古巣との勝負……メンタル的に辛いかもしれないが、頑張ってもらいたい

 

『さぁフットボールフロンティアもいよいよ佳境……準決勝Bブロック……木戸川清修対雷門との一戦です』

 

 雷門のフォーメーションは4-4-2のディフェンス型

 

 ミッドフィルダーがダイヤモンドの形になるようなフォーメーションで攻撃よりも防御よりの陣形だ

 

 

【挿絵表示】

 

 

 対する木戸川清修は4-3-3の布陣

 

 武方三兄弟はやはりフォワードとして出てきている

 

 試合開始のホイッスル

 

 木戸川清修からの攻撃

 

 武方三兄弟のパス回しによる速攻を鬼道先輩が阻止しようとする

 

「松野、一ノ瀬中央を塞げ」

 

「甘いっしょ」

 

「俺達武方三兄弟は最強なのです」

 

「どけどけ!」

 

 松野先輩と一ノ瀬先輩、更に風丸先輩が突破される

 

 ボールは天高く蹴りあげられ、武方三兄弟の三男が必殺技の体勢に入る

 

「バックトルネード!」

 

「ファイヤートルネードと逆の技」

 

「円堂先輩!」

 

「任せろ! ゴッドハンド」

 

 円堂先輩のゴッドハンドによりボールは止められた

 

「さぁ、反撃だ」

 

「「「おう!」」」

 

『さぁ雷門反撃なるか』

 

「震撼!」

 

「豪炎寺先輩」

 

「わかった!」

 

「ライフル」

 

「トルネード」

 

 ディフェンスゾーンからライフルが放たれ、それに豪炎寺先輩がファイヤートルネードで合わせる

 

「させるか! スピニングカット」

 

 地面から青い衝撃波が現れ、シュートの行く手を阻む

 

 更にキーパーの軟山がタフネスブロックでシュートを阻止し、止められてしまった

 

「ちっ!」

 

「西垣行け!」

 

「おう!」

 

 ボールは西垣に渡るが、それを鬼道先輩がカット、こぼれたボールを松野先輩が取ったが相手のディフェンスに取り返されてしまった

 

「チャンスみたいな」

 

 これを見て一気に武方三兄弟が上がる

 

「行け! 努!」

 

「おうよ!」

 

 三男にボールが渡り、こちらのディフェンスゾーンに入ってくる

 

「壁山! ハス太!」

 

「「はい」っす」

 

「「「絶対防衛線」」」

 

「ぐわっ!!」

 

「「努!!」」

 

 絶対防衛線の前には彼ら三兄弟も突破は不可能

 

「くそ! なんて奴らだ」

 

「大震撼という4番がヤバイっしょ」

 

「アイツを封じ込められれば俺達の勝ちみたいな……友、努」

 

「「おう!」」

 

 私が風丸先輩にパスをしたが、風丸先輩が三兄弟の次男にボールを奪われた

 

「しまった!!」

 

「超人だかなんだか知りませんが、調子に乗ってたら痛い目見るんですよ! 勝兄さん!」

 

「行くぜ怪物退治だ!」

 

 バックトルネードを私に向けて放ってきた

 

 私は胸でトラップしようとした瞬間に左右から三兄弟の残り2人が現れて、私のトラップしたボールめがけてバックトルネードを放ってきた

 

「「「これぞバックプレス!! ……なに!」」」

 

「1つ教えてあげよう。なぜ私が超人と呼ばれているかを」

 

 私は胸で彼らの蹴りを弾き飛ばすと、ハス太にパスを出した

 

「震撼!」

 

「ラフプレーは想定済み、この程度効きません」

 

「想像以上の化物みたいな」

 

「本当に人ですか!!」

 

「友兄、慌てるなよ、何度かやれば必ず崩せる!」

 

 前半は一進一退の攻防が続く

 

 私は三兄弟を徹底マークする一方、相手もそれを逆手にとって私のマークを外そうとしないし、分身を上手く封じ込めている

 

「{焦れったいな}」

 

「[焦るな覇王、必ずチャンスは来る]」

 

 一方雷門のフォワード2人も木戸川清修の巧みなディフェンスに攻めきれずにいた

 

「ちっ! なかなか手強いじゃねーか」

 

「いや、これはチャンスかもしれないぞ」

 

「豪炎寺どういうことだ?」

 

「既に鬼道が動いている」

 

 

 

 

 

 

 

 鬼道先輩は円堂先輩、土門先輩、一ノ瀬先輩を集めてトライペガサスを発動させるように言っていた

 

 ノーマークの3人は今の膠着した現状を打開するのにうってつけである

 

「やってやろうぜ!」

 

「「おう!」」

 

 スローインから試合が再開する

 

『あぁっと円堂飛び出している! ディフェンダーの土門も上がっているぞ』

 

「まずい! トライペガサスだ!! 俺が必ず止めてやる」

 

 初撃は西垣のスピニングカットがギリギリ間に合い防がれてしまうが、攻撃のリズムを変えることができた

 

 これで円堂が上がれば別のシュートが飛んで来ると意識させることができた

 

 防がれたということは反撃が来るが、私と分身が三兄弟のマークに付いていることによりハス太と壁山がフリーとなり

 

「「大黒壁」」

 

 このピンチをしっかり防ぎきった

 

 ボールは鬼道先輩に渡り、鬼道先輩は一ノ瀬先輩を近くに寄せる

 

「一ノ瀬やるぞ」

 

「任せて鬼道!」

 

 鬼道先輩はボールを蹴りあげ、それを一ノ瀬先輩がヘディングで落とす

 

 落としたボールを鬼道先輩がシュートを放つ

 

「「ツインブースト」」

 

「そこからもシュートが放てるのかよ!」

 

「軟山止めろ!!」

 

「タフネスブロッぐわ!!」

 

『ゴール! 雷門先取点!! これが雷門サッカーの怖いところ。どこからでもシュートが飛んで来るぞ』

 

 前半はここで終了

 

 後半が始まると同時に円堂先輩が上がる

 

「またトライペガサスが来るぞ!! 西垣!」

 

「任せろ」

 

 鬼道先輩は木戸川清修の動きにほくそ笑み、染岡先輩にパスを出した

 

「いくぜドラゴン」

 

「トルネード改!!」

 

「タフネスぐわ!!」

 

『ゴール2点目!! トライペガサスと見せかけて染岡選手と豪炎寺選手のマークを緩めた結果の頭脳プレイ! 天才ゲームメーカー鬼道有人ここにあり』

 

「ナイス鬼道、染岡、豪炎寺!」

 

「円堂、土門、一ノ瀬ナイスアシスト!」

 

 雷門完全にイケイケムードになり、木戸川清修は焦りが多くなる

 

 私は今日の試合は三兄弟を完全にマークすることに留め、得点は他の人に任せた

 

「くそ! こんなところで終われますか!!」

 

「友! 危ない!!」

 

『ああっとボールを強引に取ろうとした武方友選手がマークしていた大選手と接触です……どうした友選手立ち上がることができません。足でも痛めたか』

 

「「友」兄!!」

 

「くそ! 足が動かねぇ……アイツは! 大震撼は」

 

「……ピンピンしてやがる……みたいな」

 

「まずいっしょ! 友兄が居ないとトライアングルZがうてないっしょ!」

 

「やられた!!」

 

 武方三兄弟の次男が私と接触した時に足を痛めたらしい

 

 私も倒れたが、受け身をしっかり取ったことで無傷

 

 これでトライアングルZは放つことができなくなった

 

 円堂先輩にゴールは任せていてもこれなら大丈夫

 

 私の気持ちを他所に円堂先輩は攻撃に参加し続け、トライペガサスをザ・フェニックスに進化させ、トドメをさす3点目を叩き込んだ

 

 試合はそれで決まり、武方三兄弟は本来の力を出すこと無く負けてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「{[リアルインパクトTC]}」

 

『ペンギン・ザ・ハンド』

 

「やってますねー」

 

「遂に決勝だからな。震撼の奴滅茶苦茶気合い入ってるでござるな」

 

 異空間にての練習で私は黒色ビームの練習を繰り返していた

 

 あれは空間が耐えきれなかったことによる反動を利用した技ということはわかっているのだが、それを再現するのが滅茶苦茶難しい

 

 今までみたいに衝撃の方向を決めて放てば良い技じゃないからだ

 

 ニャルの特訓により約3週間でかなりレベルアップしている

 

 下鶴さんはライフルを遂に習得し、藤丸さんはスーパースキャンの進化技、ハイパースキャンという技を会得、

 

 風魔さんと初鳥さんは零戦を物にした

 

 ニャルの特訓レベルもなんとか2をクリアーし、3レベルに挑戦中である

 

「源田さん、世宇子のシュートと私のシュートどちらが怖いですか?」

 

 禁断とも言える質問を世宇子の戦いをベンチで見ていた彼に聞くと

 

「五分……いや、震撼の方が強いと思うが……」

 

 と返答してくれた

 

 世宇子の試合は一方的過ぎてデータが無いに等しい

 

 誰もまだ技を使用していないし、キーパーにシュートが1本も行っていない

 

 行く前にミッドフィルダーによって止められるか叩き潰されてしまっているからだ

 

 私はハス太の方を見る

 

 私は世宇子の猛攻を耐えられるかもしれないが、ハス太は無理かもしれない

 

 ハス太の小柄な体格が残念ながら仇となっている

 

 ……例え改造人間でも覚醒しなかった失敗作がハス太だ

 

 なのでニャルに相談することにした

 

「ハス太に改造人間であることを理解させて能力を引き出させるですって?」

 

「はい、今のままでは世宇子にハス太は叩き潰される可能性が高いです。潜在能力を覚醒させなければ危険だと判断いたしました」

 

「震撼、それは危険よ。ハス太が自由に動けているのは覚醒していないからよ。覚醒したらミ=ゴの協力者であるハス太の両親……育て親が黙ってないわ」

 

「しかし、このままではハス太が世宇子の力に壊されてしまう可能性が高いのですよ」

 

「……そこまで言うのならミ=ゴ……改造人間にした張本人であるカロンXを説得しなさい。私は彼との接触させる手助けだけはしてあげるから……それにミ=ゴの力でハス太は欠陥品の烙印を押されているからそんな簡単には潜在能力の覚醒だなんて無理よ」

 

「いいえできると私は確信しています。私をカロンXに会わせてください。ハス太を覚醒させても自由を保証させてみせます」

 

 ニャルは携帯を取り出し、電話をかけた

 

 ニャルは一言も話さないが、何度か頷き、そして私に携帯を投げ渡してきた

 

『やあ大震撼君。君の事は映像で拝見しているよ。中々人間にしては興味をそそる人物だからね。ニャルから聞いたのかい? 私達ミ=ゴの事を』

 

 携帯から脳内に直接話し声が聞こえた

 

 電話の相手はミ=ゴ……カロンXだろう

 

「昔話をしよう。あれはまだ3つの種族が地球を分けあっていた話だ……ここの管轄はクトゥルフの一族のハズではなかったのかい? 我々はそう記憶しているが? ミ=ゴ」

 

『なに?』

 

「いやぁ失敬、私は人間ではないことがつい最近知ってね。勿論神だとかそういう存在でもない……イスと言えばわかるだろ」

 

『……!? まて! イスは滅んだハズでは!!』

 

「滅んでなど居ない。我々種族は生存を第一とする者。私は同胞にこの前助け出されて真実を知った……イスは滅んでいないという情報……貴方は幾らの値を付けますか?」

 

『……旧稲妻駅の3番線ホームに今日21時に来れるか。そこで話がしたい』

 

「わかりました。ではまた後で」

 

 私はニャルに電話を投げ渡すとニャルは通話終了ボタンを押した

 

「……人間じゃなかったの?」

 

「肉体は人間ですが、精神は違うのです……まぁ肉体も一部サイボーグですがね」

 

 私はモノクルを外して瞳をよく見るように言うとニャルは顔に手を触れながら瞳の奥を見る

 

「皮膚が冷たい……瞳の奥に歯車が見えたわ」

 

「まぁこれは事故の手術でこうなったので仕方がありません。ニャルはイス人という生物を知っていますか?」

 

「いえ、初めて聞いたわ」

 

「イースの大いなる種族……精神生命体の種族で生命の肉体に乗り移る事ができ、私は乗り移る時に事故で人間の精神とイス人の精神が混ざりあった存在らしいのですよ」

 

「つまり……人間ではないと?」

 

「いえ、先ほども言いましたが肉体は人間ですよ。精神が人間よりも上位なだけです。もっとも私もついこの前まで知りませんでしたがね」

 

 その後もニャルにイス人についてある程度教え、私は旧稲妻駅に向かうと言った

 

 ニャルもついていくとのことでニャルと2人で旧稲妻駅に向かった



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ハスター

 旧稲妻駅……現在の稲妻駅があった場所より200mほど離れた場所の地下にある駅で、老朽化により廃棄されていた

 

 近々改装工事が行われるとの噂もあり、基本的には立ち入り禁止の場所だった

 

 夜の21時

 

 異空間で練習している皆には、今日は用事があるからと先に帰し、ニャルは帰路に着くふりをして戻ってきて旧稲妻駅前で合流した

 

 懐中電灯を照らしながら中を進むとKEEP OUTのテープが張り巡らされており、所々にスプレーで落書きされていた

 

 約束通り3番線のホームに向かうとそこに居た

 

 約1.5mほどのそれは甲殻類の様な胴体に膜のような翼、手は蟹の手足の様な物を大きくしたのが付いており、頭は触手で覆われていた

 

 田中に教えられたミ=ゴの特徴と一致する

 

 目の前のミ=ゴは手にニャルが持っている電気銃の同型のと見たこともない武器の様な何かの2つを手でゆらゆらと揺らしながら私達の前に近づいてきた

 

『御機嫌好う大震撼、そして二夜瑠璃も久しいな。4月の定期集会以来か。体調はどうだ? 変化はないかな?』

 

 頭に直接声が響く

 

「電話で言ったわよ。元気だって……私は付き添い、2人が戦闘にでもなったら引き離す役目よ」

 

『イスの民とは不可侵を結んでいる……まぁ伝承レベルのおとぎ話位古いが、破られる前にイスの民が何処かへ行ってしまったがな』

 

「まぁ私も特殊個体だからなんとも言えないが、とりあえず絶滅はしていない。どれくらいの個体が居るかは伏せますが」

 

『それは別に良い。日本という場所は3種族の中立地点で昔はあったが、イスの民やクトゥルー眷属が次々に姿を消し、我々もあくまでこの地を支配する訳ではなかったため支配者不在の地となり、結果人間が繁栄した』

 

「それは知っています。本題はハス太とニャルを私の管轄下に譲っていただきたい」

 

『ハス太はともかくニャルは駄目だ。数少ない成功個体であり、神とアクセスできる存在だ。故に駄目なのだ』

 

「ハス太は良いのですか?」

 

『失敗個体が欲しいのであれば別に構わない。私達は既に放棄した感覚で居たからな……二夜が欲しいとはどういう意味だ?』

 

「二夜を私の家族にしたい」

 

「え!?」

 

『ハハハ、擬似的な神を家族にしたいだと……面白い。面白いが……それ相応の対価を頂こう』

 

「何が欲しい?」

 

『我々種族は特殊な鉱物を採掘し、収集するのを生き甲斐とする種族だ。……そうだな魔石を一定量渡してもらえばニャルとその子孫に監視は続けるが手は出さないと約束しよう』

 

 私は小さな魔石がはまった透き通った指輪を指から外して投げた

 

「これ何個分集めれば良い」

 

『ほぉ、そうだな……これがあと9個ほど有れば私は満足だろう』

 

「わかった約束だ」

 

『ニャル、どの様な形になれど4ヶ月に1回の定期集会には必ず参加してもらう。それは良いな』

 

「わかっているわ」

 

『そして良かったなお前のような改造人間を愛してくれる者が居て……実ある会話だった。イスの民が絶滅していない情報はミ=ゴ全体の方針に関わる情報だった。魔石とこの情報を持って二夜と関係を持つことを許そう。では去らばだ』

 

 ぶーんと羽音と共にミ=ゴは暗闇の中に消えていった

 

「……もう!」

 

 げしっと軽くつつかれた

 

「私が欲しいだなんてアイツらが許してくれる分けないじゃない」

 

「ハス太とニャルを解放するところまで持っていきたかったのですが、力不足ですみません」

 

「……魔石だなんて貴重な物を渡してでも私が欲しいの?」

 

「欲しいですよ。とても魅力的な女性だと思っています」

 

「……馬鹿……」

 

「もっともこれからは魔石を探さなければいけなくなりましたので頑張って探さなければいけませんね」

 

「心当たりはあるの?」

 

「協力者に聞くくらいでしょうか。せっかくですしニャルにも紹介しますよ」

 

 私はバックからハンドベルを取り出して鳴らした

 

 すると空間に虹色の歪みができて、そこから田中がエイの様な機械に乗って現れた

 

「ヤッホー震撼、何のようかい?」

 

「質問が2つほどありまして呼びました。1つは魔石と呼ばれる石を集めなくてはいけなくなりましたので、どこら辺に有るか教えていただくとありがたいのですが」

 

「そうだね……富士山に5年前落ちた隕石なんかが魔石だよ。人間はエイリア石なんて呼んでるけどね……馬鹿デカイし、君が景品であげた指輪の数百倍の大きさとパワーがあるよ。盗むのは難しいだろうね。あとは曰く付きの場所だったりに転がってたりするよ。絶対にあると言えるのは静岡マスター遊園地かな? 十数年前にジェットコースター脱線事故、ホラーハウス炎上、観覧車落下事故を立て続けに起こして廃園になった場所だね。あそこには大きい魔石があると思うよ」

 

「なるほどありがとうございます」

 

「私からも質問良い? 彼女さん?」

 

「彼女は二夜……ニャルと呼んでいます。まだ違いますがいずれしたいと思ってます」

 

「ありゃりゃ、先越されたか……」

 

 ニャルが田中をじっと見ていたが、口を開く

 

「イスの民って人に化ける事ができるの?」

 

「いや、私はヒューマロイドと言えば良いかな。この体私が作った体なんだよね。まぁ生殖行動もできるし、人間の数倍の速さで出産できる様に調整してあるんだよね」

 

「それはまた何故に?」

 

「イスの民がもうほぼ絶滅しているから数を増やすためにはこうするしかないんだよね」

 

「……まさか」

 

「今確認されているイス人は私と震撼だけ。まぁ震撼と子供を作るのは種族を残すために絶対だし、貴女も混じっても良いよ。ただ産まれる子供は必ずイス人にするけどね……貴女もイス人になる?」

 

「田中、それやるとミ=ゴと戦争になるから駄目。ついさっきミ=ゴと協議して魔石を渡す代わりにニャルと付き合うことを許されたからね」

 

「ニャルちゃん良かったねぇ……私が魔石渡してさっさと解放させてあげても良いけど?」

 

「私の力で集めなければ駄目だと思うのでやめておきます。もう1つの質問はさっき田中が答えてくれましたがニャルともし子供を作った時にイス人になるのかというのですが……」

 

「可能だよ。精神種族だから肉体が別でもイス人が交尾すればイス人の方が強いからイス人となるよ。震撼も精神の寿命があと数千年有るけど肉体はもって100年だろうから適時取り替える必要があるよ。ニャルちゃんもイス人になりたかったらいつでもお姉さんに言ってね。改造してイス人にするから」

 

「お姉さん……」

 

 田中の方が小さく見えるが、精神的な年齢は確かにお姉さんだろう

 

「質問はこれで終わりかな? うーん、暇だし、数週間震撼の家にお世話になろうかな。良いでしょ震撼」

 

「構いませんが島の管理は大丈夫なのですか?」

 

「別に数日あげても問題ないし、元の時間にタイムジャンプすれば良いからね」

 

「……タイムジャンプ?」

 

「ニャルには言って無かったね。イス人は時間を支配した種族で時間跳躍を自由にできる種族なんだ。私は時間を3秒停止させることしかできませんが、いずれ私も自由に時間跳躍をできるようにしてみせます」

 

「まぁそのうち人間も時間を支配できるようになるけどね。愚かにも争いの道具として使うけど」

 

「そうなのですか。まぁ私には関係無いと思いますが」

 

「……」

 

 田中は何故か黙ってしまったが、とりあえずニャルに田中というイス人の協力者を伝えることはできた

 

 ハス太の解放だけだったのが大事になったが、ハス太は既に興味の対象外との事なので頑張ってハス太の潜在能力を覚醒させて、世宇子中との決勝戦に挑むとしよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハス太の潜在能力の高さは出会った時から既に感じていた

 

 見たこともない必殺技を繰り出して私のボールを奪おうとしたのもそうだし、最初の帝国学園戦にて見せた這いよる触手を進化させた成長能力は恐るべき物がある

 

 鬼道先輩を師として仰ぎ、司令塔としての役割の一部を委託されているのも持ち前の成長力が有ったからだ

 

 私を超えるのは現状ハス太しか居ない

 

 円堂先輩はキーパーなので除外するが、豪炎寺先輩、染岡先輩には申し訳ないが私の方が現状は勝っていると思う

 

 だが、ハス太は違う

 

 私以上の成長力は私を脅かすには十分であり、ハス太がいつか私のステージに到達するのは時間の問題だと感じている

 

 だからこそその成長の時間を縮めなければ世宇子には勝てない……確実に勝つためには私、ハス太、円堂先輩が完全なる防御をしなければならない

 

「ハス太、大切な話があります」

 

「何々! 震撼! デートのお誘い?」

 

「いえ、貴方の肉体についての話です」

 

「え~? 僕は僕だよ?」

 

「もしハス太、貴方の肉体が普通ではないと言ったらどう思いますか?」

 

「え? いきなりそんな事を言われても」

 

 私はハス太の肩を掴み

 

「貴方は宇宙人により肉体を改造された改造人間なのです」

 

「……ハッハッハッ冗談は辞めてよ震撼。君が何で僕の事を知ってるのさ。まだ出会って数ヶ月だよ。質の悪い冗談は辞めて。僕には産んで育ててくれた両親が居るし、そんな改造された記憶なんか無いよ」

 

「ニャル」

 

「震撼の話は本当よ。貴方は私と同じ改造人間よ」

 

「ニャルも巻き込んで僕を騙すのかい? 質が悪すぎるよ! 僕でも怒るよ」

 

「じゃあ何故ニャルと同じ場所に手術痕が有るのですか」

 

「な……え!?」

 

 ニャルは後ろを向くと髪を上げる

 

 そこには髪が生えていない部分があり、傷みたいになっていた

 

 私はハス太の後ろに回り、ハス太の髪を上げて写真を撮る

 

 すると同じ場所に手術痕があった

 

 ニャルは右脇を上げるとここにも縦に手術痕がくっきり残っていた

 

「ハス太、貴方の脇を見せない」

 

 ハス太は滝のように汗を流しながら恐る恐る脇を上げた

 

 鏡でハス太も見えるようにすると手術痕がくっきり残っていた

 

「真実を話そう。私達は別の人間の脳味噌を宇宙人に都合の良い様に調整され、前の人格を消して上書きされたのが今私達よ。臓器等は脇から入れられた。背中にも骨を入れた時の手術痕があるハズよ」

 

 ハス太は動揺しながらも私に背中を写真を撮ってくれと頼んできた

 

 ハス太が服を脱ぐと背中にも30cm程の手術痕がくっきり残っていた

 

 それを写真を撮ってハス太に見せる

 

「……」

 

「私達は宇宙人……ミ=ゴという人間よりも発展した科学力を持つ生命体の神を人工的に作り出す計画で産まれたデザイナーズベイビーよ。神の名前はハスター! 名状し難きもの!」

 

「ハスター! 神の名! 君達は何を言って……」

 

「ハス太! 真実を受け入れるのです! 貴方は作られた存在! 神の力を持てる可能性が有るのです!」

 

「神の力……」

 

「黄衣の王よ! その力を目覚めるのです。貴方にはその素質がある!」

 

 ハス太は黙ってしまった

 

「田中!」

 

 ハンドベルを鳴らす

 

 すると田中が私達の前に現れる

 

「田中、ハスター……いや、黄衣の王の力を持つ物を持っていないか? 目の前のこの男はハスターの力を人工的に宿している」

 

「あるよ!」

 

 田中は田中の乗っているエイの様な機械のボタンを操作すると本と仮面が現れた

 

「黄衣の王の本と黄衣の王の仮面だよ。もし本当に彼に適正が有るのならば仮面を被ると良いよ」

 

 ハス太は余りの怒涛の展開に正気を失いつつある

 

 改造人間であること

 

 両親だと思っていた人が全く関係の無い人物だったこと

 

 田中の出現

 

 神の力

 

 多数の真実がハス太を狂わせる

 

 目の焦点が合わなくなり、ハス太は田中の持つ仮面を手に持つと顔に取り付けた

 

 風が吹く

 

 ハス太を中心に風が舞う

 

 風は砂煙となりハス太を包み込むと風が止む

 

 そこには黄色のローブに包まれたハス太が居た

 

 ローブは風に靡いてドレスのように膨らみ、ハス太に後光がさす

 

「なるけど……理解した。僕は神ではない。人間でもない。中間に位置する者なり」

 

 ハス太は田中から本を奪い取ると凄まじい勢いで読んでいく

 

「……僕は僕らしい。神には到底及ぶことのできない……できないが、私は新しい力を得れた……フゥー」

 

 ハス太は仮面を外すと田中に仮面と本を返した

 

「僕は僕だ。例え改造人間だとしても黄衣ハス太だ。震撼焦りすぎだ。試合に勝つために親友を無くそうとしてどうする」

 

「……すみません。焦りすぎました」

 

「許すよ。でもほら」

 

 ハス太は掌の上に小さな竜巻を起こした

 

「僕は風を操る力を得れた……世宇子に勝とう震撼」

 

「はい!」

 

 ハス太は狂気を飲み込み力を得れた

 

 遠くない未来では化身アームドと呼ばれるその力をハス太は会得した

 

 更に風を自在に操れる存在となった

 

 この後田中のことを根掘り葉掘り聞かれたが、その頃にはいつものハス太に戻っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもの練習をしていた時だった

 

 円堂先輩はマジン・ザ・ハンドに満足せずに次なる必殺技を編み出そうと皆で協力して練習をしていた

 

「ドラゴン」

 

「トルネード改」

 

「ツイン」

 

「ブースト」

 

 2つの必殺技が円堂先輩に襲い掛かるが、それをいきなり現れた人物が片手ずつで止めてしまった

 

「スッゲー! ツインブーストとドラゴントルネードを止めるなんてお前! スゲーキーパーだな」

 

「よしてくれ、私はキーパーではない。私のチームのキーパーなら指1本で止めただろうね」

 

「そのチームとやらは世宇子中のことか」

 

「知ってるのか鬼道」

 

「あぁ、こいつは世宇子のキャプテンアフロディだ」

 

「「「世宇子!!」」」

 

「円堂守君だね。改めて自己紹介をしよう。世宇子中のアフロディだ。君のことは影山総帥から聞いているよ」

 

「やはり世宇子のバックには影山がいるのか」

 

「て、てめぇ、宣戦布告に来やがったな」

 

「宣戦布告? ふふ、宣戦布告というのは戦いをするために行うもの……私は君達と戦うつもりはない……君達は戦わない方が良い。それが君達のためさ」

 

「なぜだよ」

 

 一ノ瀬先輩がアフロディに聞く

 

「なぜって……負けるからさ」

 

「「「な!?」」」

 

「神と人間が戦っても勝敗は見えている」

 

「自分が神だとでも言うつもりかよ」

 

「さぁ、それはどうだろうね」

 

「試合はやってみなくちゃわからないだろ」

 

「結果は見えていると思うけどね。リンゴは木から落ちるだろ、世の中には変えようのない事実があるのさ……この事実はそこにいる鬼道有人君がよく知っていると思うけどね」

 

 鬼道先輩が突っかかろうとするのを豪炎寺先輩が肩を掴んで止める

 

「だから練習も辞めたまえ。無駄な時間を浪費するのはよくない」

 

「黙れ! 練習が無駄だなんて誰にも言わせない! 練習はおにぎりだ! 俺達の血となり肉となるんだ!!」

 

「……ハハハなるほど上手いことを言うね。練習はおにぎりか」

 

「笑うところじゃねーぞ」

 

「言っても無駄なようだね。ならわからせるまでだ」

 

 アフロディは急に飛び上がると上空からボールを蹴った

 

 円堂先輩はそのボールを受け止めると、ずるずると後ろに後退しながらもなんとか止めた

 

「ほぉ、神のボールを止めたのは君が初めてだ。決勝が楽しみだ……それと大震撼。君のことは総帥が徹底的に潰すように指示を出されている。怖くなって逃げても構わないが、簡単に潰れてくれるなよ」

 

「A.私は潰れません。逆に貴方達を叩き潰します」

 

「ふふ、威勢だけは良いようだね。楽しみにしているよ」

 

 アフロディはそのまま消えていった



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世宇子 前編

 アフロディが居なくなった後、円堂先輩は手をじっと見つめていた

 

「円堂先輩……大丈夫ですか?」

 

「あぁ……アイツのシュート凄かった……技を使ってなくてもあの威力は凄いな」

 

「世宇子キャプテンアフロディ……奴だけじゃない。世宇子全体があのレベルだ」

 

「マジン・ザ・ハンドを超える必殺技を編み出さないと」

 

「今のお前じゃ無理だ」

 

 響監督が円堂先輩の発言を否定する

 

「これまでは大介さんのノートというわかりやすい道標が有ったが、次の必殺技には無い。大介さんを超えなければ新しい必殺技は完成しない」

 

 ……私は円堂先輩にマジン・ザ・ハンドを教えることはできたが、それ以上の技となるとペンギン・ザ・ハンド位しか思い付かない

 

 ただ円堂先輩がペンギン・ザ・ハンドを習得したとしても肉体が破壊される禁断の技扱いになると思うので無しだ

 

 となると可能性があるのはゴッドハンドを進化させるしかない

 

「円堂先輩、ゴッドハンドを進化させましょう」

 

「ゴッドハンドを進化……震撼、何かイメージがあるのか?」

 

「魔神を作り出したエネルギーをゴッドハンドに注入するのです。そうすれば今よりは強くなると思われます」

 

「そうか! わかった!! 必ずゴッドハンドを進化させて見せる!!」

 

 円堂先輩はやる気になり、それにつられて皆のやる気も上がる

 

 早速イナビカリ修練場で特訓を開始した

 

 

 

 

 

 

「「「合宿!?」」」

 

 響監督が練習終わりに合宿を提案してきた

 

 円堂先輩の新技習得もそうだし、全員のレベルアップをするためだ

 

「18時に学校に集合だ。遅れるなよ」

 

 マネージャー含めて体育館を借りての合宿で、各々寝具を家から持ち込み、早く来たメンバーで枕投げをしていたり、メガネなんかはプラモデルで遊んでいたりとゆっくりしていた

 

 私は校庭で鉄球を使ってリフティングをし、ハス太は私から鉄球を借りて風で鉄球を浮かせるトレーニングをしている

 

 精密に風を操るのが難しいらしく凄まじい汗をかきながら手を前に突き出して操っている

 

 最後にやって来たのは以外にも円堂先輩だった

 

 全員揃ったところで今日は夕食のカレーを皆で作るらしい

 

 ここで活躍したのがニャルだった

 

 凄まじいスピードでジャガイモ、ニンジンの皮を向いて包丁で細かく切っていく

 

 料理にそこそこ自信が有った私の5倍は早い

 

 豪炎寺先輩がお肉の筋を切ったり、食べやすいサイズに切っていったり、鬼道先輩が玉ねぎを切ったりしていき、その他のメンツでご飯を炊いたり、茄子やゴボウ、蓮根等を切ったりして作っていきます

 

 ニャルに何でこんなに速いのか聞いてみたところ

 

「独り暮らしだから家事はちゃちゃっとしないと自分の時間が作れないからね」

 

 そのレベルなら料理人やった方が良い気がするが……

 

 カレーを皆で仲良く食べているとイナズマイレブンのOBの方々も集まって来て食事の和に加わった

 

「なんだこれ絶品だな」

 

「学生の力量じゃないだろ!」

 

「これ市販のルーじゃこうならないぞ。スパイス独自にブレンドした奴が居るな」

 

 私達はただ美味しい美味しいと食べていたが、大人のOB達は舌が肥えているのか絶賛している

 

「「「たぶんニャル」」」

 

 皆がニャルを指差し、ニャルは一升瓶を取り出した

 

 中には独自ブレンドのスパイスが入っていた

 

「嬢ちゃんやるなぁ」

 

「家の店バイト来ないか! お駄賃弾むからさ」

 

「マスターのコーヒーと合わさればバカ売れ間違いなしだろこれ」

 

「ビルダーなんか毎日食いに行きそうだけどな」

 

「中学生を働かせるのはまずいんじゃなくて?」

 

「厨房見えないから大丈夫だって」

 

「あのマスター、生活指導の菅田先生が居ますけど」

 

「あ、やべ!」

 

「あ、やべじゃねぇぞマスター! 中学生を働かせるのは無しだ無し! 法律に抵触してどうする」

 

「俺達の仲じゃないか! 見逃してくれ!」

 

「バカヤロー! 駄目に決まってるだろ!」

 

 皆がそのコントの様なやり取りに笑いが起こる

 

 ちなみにニャルは高校生になったらで良いかしらと言っており、マスターは手を握って助かるよぉーと言っていた

 

「でもイナズマイレブンの皆さん何で合宿に?」

 

「いやな、合宿やるって響から聞いたからあれを持ってきたんだ」

 

「あれ?」

 

 円堂先輩かわOB達に質問するとOB達は食事が終わったらイナビカリ修練場に来いと言って食事を再開する

 

「うめぇおかわり」

 

「ビルダー食いすぎ」

 

「おれもっす!」

 

「壁山もう10杯目じゃないでやんすか! お前も食いすぎでやんす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 イナビカリ修練場に有ったのはマジン・ザ・ハンド養成マシンだった

 

 円堂先輩はマジン・ザ・ハンドを既に会得しているが、これが有れば新必殺技の手助けになるんじゃないかと皆で盛り上がった

 

「よし! やろう!」

 

 が、使ってみると40年前のマシンだったからか錆び付いて動かなかったが、菅田先生が油を持ってきて挿してくれたことで機械をなんとか動かすことができた

 

 一番固い部分は何故か私がハンドルを回す事になった

 

「だって震撼以上に力がある奴居ないじゃん」

 

 半田先輩、1年生の私に言うことじゃない

 

 情けない発言をした半田先輩は置いておいて、皆でマシンを人力で動かし始める

 

 円堂先輩は最初動く棒にぶつかったり、足を踏み外して転んだりしていたが、5回、6回と繰り返すうちにだんだんと動きが良くなってくる

 

「もっと速く! 正確にだ! 円堂腰が引けてるぞ! 前に出せ前に!」

 

 響監督からの指示も飛び、OBの皆さんはその様子を眺めていたり、疲れた選手のハンドル回しを交換したりして手伝ってくれた

 

 円堂先輩は10回目でクリアーし、OBの面々から称賛される

 

「やっぱ大介さんの孫だわな」

 

「呑み込みが早い」

 

「ハンドル回すの速くするぞ! レベルアップだ」

 

 とにかく夜遅くまで円堂先輩のトレーニングに皆で付き合った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガァーゴォー……ガァーゴォー」

 

 夜、壁山のイビキで起こされた私はグランドに出て鉄球でリフティングをしていた

 

「コラ、震撼。休むのもトレーニングだぞ」

 

「響監督……」

 

「ちょっとこっち来い」

 

 響監督はベンチに座るように言われたので、私はベンチに腰をかける

 

「鉄球でリフティングなんて無茶な事をいつもやっているのか?」

 

「はい。うちは貧乏なのでサッカーボールを何個も買うことができなかったので廃材から鉄球を拾ってきてトレーニングしてきました」

 

「そうか……震撼、父親の事を詳しく調べさせてもらった……ずいぶんと凄い指導者だったみたいだな」

 

「私は幼かったので大江戸中学のサッカー部顧問としかわかりませんが……帝国から驚異に写るくらいには凄かったとはわかりますがね」

 

「生きていたら俺なんかよりも真っ先に監督に就任するように頼むべき人材だな。まぁそしたらお前も雷門じゃなくて大江戸に居ただろうが」

 

「そうですね……不思議な巡り合わせだと思います。私は復讐のためにサッカーをしていた。それこそ楽しさは二の次にするくらい……でも円堂先輩がサッカーの楽しさを思い出させてくれました」

 

「口ではそう言っているが、お前のプレーはまだ復讐に取り憑かれている……影山みたいになるぞ」

 

「私が……影山に?」

 

「勝利のみを追求する奴にな」

 

「響監督は私がそう思えてならないのですね……私は影山にはなりませんよ。サッカーもそうですが、育成する楽しさを知ってしまったのでね」

 

「育成?」

 

「雷門イレブンに負けた他校の選手でこれはという人達を集めて合同練習をしていました。雷門は円堂先輩がいるので皆勝手に伸びていきますが、他校はそうじゃない。だから私は彼らの背中を押して上げるのです。すると彼らはみるみる強くなる。そうすれば将来同じチームメイトで戦える日が来ると思うのでね」

 

「お前……高校の事を既に考えているのか? ずいぶんと気の早いことを……」

 

「私の一番弟子はハス太です。彼の成長速度とても魅力的でしょ」

 

「まぁな。鬼道とハス太のダブル司令塔が連携し、ゴールは円堂が守り、攻守共に高次元なリベロのお前、絶対的エースストライカーの豪炎寺とサポートもできる染岡、松野、一ノ瀬、風丸のミッドフィルダーとしての完成度もさることながら、土門と壁山というディフェンダーもいる。普通のチームならまず勝てんよ。だが相手は世宇子。何があるかわからん。わからんからには練習で怪我させるわけにはいかん」

 

「私はこれを毎日していますが?」

 

「こんな視界の見えない深夜にやるのは辞めろというだけの話だ。……世宇子に豪炎寺は通用すると思うか?」

 

「単独では無理でしょう。ですが豪炎寺先輩と鬼道先輩の合わせ技……イナズマブレイクであれば可能性があります」

 

「イナズマブレイクは円堂が前線に出る必要がある。世宇子戦ではそれが致命傷になりかねん」

 

「大丈夫です。私が居ます」

 

「頼もしい限りだよ本当にな……」

 

 

 

 

 

 

 

 合宿中に円堂先輩は必殺技を見つめ直し、他のメンバーもリフレッシュすることで、練習への熱が入る

 

 ハス太の風を操る力を使い、ボールをコントロールし、新たな必殺技を会得しようと頑張っている

 

 ……それに黄衣の王の姿に変わるとハス太は爆発的に能力が上がる

 

 練習を見に来ていた田中はこっそりそれは化身アームドであると教えてくれた

 

「君のキャプテン(円堂先輩)のマジンなんかも化身の一種だよ。化身は強い心と気の高まりか外部的なショックによりできるよ……まぁ震撼もやろうと思えばできるんじゃないかな?」

 

「私がですか? ……確かに強そうなのは認めますが……」

 

「まぁ今の震撼には要らないね。たぶんそこまで劇的に強くなるのはアームドしてからだから、化身ができても震撼はそこまで強くならないんじゃないかな?」

 

「なるほど……ありがとうございます田中」

 

「おーい! 震撼何女子としゃべってるんだ!」

 

「世宇子との一戦が近いんだ! 集中していくぞ!!」

 

「すみません。じゃあ田中また」

 

「えぇ、試合楽しみにしているよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合当日フットボールスタジアムに到着するとそこには閉鎖と書かれた看板が立て掛けられ、柵で入場できないようにされていた

 

「はい、雷門です。はい、変わった? どういうことですか……はい。わかりました」

 

 夏未先輩が電話で誰かと会話をし、その内容を皆に伝える

 

 曰く急遽試合会場が変更になったのだとか

 

「どこに変わったんだ?」

 

「それが……空としか言われてないわ」

 

「空? 空って上の……!?」

 

 円堂先輩が上を見て驚いていたので、皆も上を見るとそこには巨大なスタジアムが空を浮いていた

 

「まさか……決勝戦のスタジアムというのは!」

 

「ええ、あそこ……世宇子スタジアムよ」

 

「世宇子スタジアム……」

 

 世宇子スタジアムに行くために私達はヘリに乗り、グランドに降ろされた

 

 空中だというのに揺れはほとんど感じず、芝、ゴール共に帝国よりも質が良い

 

「影山」

 

 円堂先輩がスタジアムの高段を見ると影山が私達を見てほくそ笑んでいた

 

 私、鬼道先輩、豪炎寺先輩が影山の姿を見ると睨み付ける

 

 私は残っていた復讐心が、鬼道先輩は帝国の皆の思いを、豪炎寺先輩は妹さんの事で各々が思うところがある

 

 響監督はここで円堂大介さんの死には影山が関わっているかもしれないと爆弾発言をする

 

 円堂先輩は動揺するが

 

「影山は憎い……ただそんな気持ちでサッカーをプレイしたくはない。サッカーは楽しくて素晴らしくてワクワクする。1つのボールを皆の熱い思いをぶつける最高のスポーツなんだ……だから俺達はいつもの……いつもの俺達のサッカーをする! そして全国を優勝するんだ」

 

「「「円堂」」」

 

「「「キャプテン!」」」

 

「「円堂先輩」」

 

「……よし! お前ら試合の準備だ! 勝ちに行くぞ」

 

「「「はい!!」」」

 

 円堂先輩は覚悟を決めた

 

 私はどうしても影山に対しての復讐心を捨てきれずにいた

 

「震撼! ちょっと来い」

 

「はい」

 

 響監督に私は呼ばれる

 

「お前に対しての復讐心を完全に捨てろとは言わん。こびりついた物はそう簡単には落ちないからな……プレーで見返してやれ。お前のサッカーで影山の計画とやらを破綻させるんだ!」

 

「ミッションインプット……これより復讐……いや、私のサッカーをしてきます」

 

「あぁ! 見せてみろ! お前のサッカーを!!」

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ遂にこの日がやって参りました。フットボールフロンティア全国大会決勝……40年ぶりにBブロックで他を圧倒してきた雷門中は決勝を勝つことで無敵のイナズマイレブンとなることができるのか!! 対するは今大会最注目の世宇子中学! 帝国を始め、全ての試合で途中で試合続行不可能で勝ち上がってきました。その力はまさに神ともいえるでしょう』

 

『さぁまもなく試合開始です』

 

 私達は円陣を組み、円堂先輩が激励を発する

 

「いいか! 全力でぶつかればなんとかなる!! 行くぞ!!」

 

「「「おう!!」」」

 

 対する世宇子の面々はコップの水を掲げて

 

「僕達の勝利に」

 

「「「勝利に」」」

 

 と言って水を飲み干した

 

 彼らなりの掛け声なのだろう

 

 雷門イレブンのフォーメーションは4-4-2のベーシックに戻し

 

 

【挿絵表示】

 

 

 対する世宇子は4-5-1のワントップのフォーメーションで、ミッドフィルダーが5名と中間が分厚くなっている

 

『さぁ世宇子からのボールで試合開始です』

 

 ヘラからデルメス、そしてアフロディへのバックパス

 

 アフロディはゆっくりと歩きだし

 

「君達の力はわかっている僕には通用しないということもね」

 

 ゆっくり歩くアフロディからボールを奪おうと染岡先輩と豪炎寺先輩が走り込んでいくが

 

「神の時間の前に人は無力だ……ヘブンズタイム」

 

 アフロディが左指を天高く掲げて指を鳴らす

 

 その瞬間時間の流れがゆっくりになった

 

 私はそれをじっと見ている

 

 アフロディは微笑みながら豪炎寺先輩と染岡先輩を通過し、時間の流れを元に戻す

 

「な! 消えた!?」

 

「後ろだと! いつの間に」

 

 再び指を鳴らすと時間の流れが元に戻る

 

 そして通りすぎた2人に突風が襲い掛かり、吹き飛ばされる

 

「豪炎寺! 染岡!!」

 

「なんて速さだ……見えなかった」

 

「俺達も行くぞ」

 

 鬼道先輩と一ノ瀬先輩がアフロディをブロックしようと試みるが、2人もヘブンズタイムの餌食になる

 

 サイドから走り込んできたマックス先輩と風丸先輩もヘブンズタイムで吹き飛ばされ、雷門のディフェンスゾーンに入ってきた

 

 仁王立ちした私が立ち塞がる

 

「神を通さない気かい? 無駄だよ。神と人では抗えない差が存在する。身をもって知るが良い……ヘブンズタイム」

 

「ザ・ワールド」

 

 

 

 

 

 

「……な!? 体が動かない」

 

「貴方は馬鹿ですか? 人間が神を騙るなと烏滸がましいです。ボールはいただきますよ」

 

 停止した時間の中で喋れるだけヘブンズタイムという技は強力なのだろう

 

 それこそ本当に時間を停止している私の技を食らって完全停止していないのだから

 

 今度は私がゆっくりとドリブルで前に上がる

 

「ヘブンズタイムが破られた? いや、そんなハズはない」

 

 アルテミスが裁きの鉄槌を私に向かって繰り出してきたので、ハス太にパスをする

 

 私はそのまま技をヒラリとかわす

 

「神様ってね。君達が思ってるよりも人間に興味が無いんだよ」

 

「貴様何を言って」

 

 ハス太は手で風を作り出す

 

 風に乗ってボールが再び私に届けられる

 

「エアサービス」

 

「なに!?」

 

「ナイスハス太」

 

 私は更に前にドリブルしていく

 

「アースクエイク!」

 

「メガクエイク!」

 

 2人のディフェンダーが私の前を技で吹き飛ばそうとするが、揺れる足元を右足で踏みつける事で技を粉砕する

 

「馬鹿な! 神の力が通用しない!」

 

「ポセイドン守れ!」

 

「ふん、かかってこい」

 

「行きます」

 

 ピーっと指笛で真っ赤なペンギンを召喚し、右足に噛みつかせる

 

「皇帝ペンギン1号G5」

 

 赤きペンギンはミサイルのように飛びながらゴールに向かって突き進む

 

「ギカンドウォール」

 

 巨大化したポセイドンは渾身の力でボールを止めようとする……が、ペンギン達がポセイドンの体にぶつかるとポセイドンの体がペンギンによって持ち上がった

 

「なに!?」

 

 そのままポセイドンごとゴールに突き刺さり、雷門の得点になる

 

 世宇子や仲間のハズの雷門のメンバーも絶句している

 

 いつも通りなのはハス太だけ

 

「馬鹿な神の力がただの人間に負けるハズがない!」

 

「ただの人間が神を騙ることは許されません」

 

『さぁ雷門の得点によって動き始めました世宇子中対雷門中の一戦……アフロディが雷門ディフェンスゾーンまで進みましたが、それを大選手がブロックし、黄衣選手と協力してゴール前に持っていく事ができました。そのままシュートして1-0雷門先制で現在世宇子のキックオフにより試合再開です』

 

「ダッシュストーム!」

 

「ヘブンズタイム」

 

 個々が強力な技を繰り出し、雷門の選手を弾き飛ばして再びディフェンスゾーン

 

 アフロディの前に私が立ち塞がる

 

「ヘブンズタイム」

 

「ザ・ワールド」

 

 再び時間が停止する

 

「何故だ! 何故動けない!」

 

「完全停止した時間の中で動けているアフロディもなかなかだけど、私には敵いませんよ」

 

 時間停止が終わるとアフロディからボールを奪っていた

 

「今度こそ!」

 

「止める」

 

 2人がかりのスライディングがボールに直撃するが、私の足からボールは離れない

 

「なんだ! 壁! いやそんなハズは」

 

「まるで鋼鉄の壁を目の前にしているかのような感覚……」

 

 ヘラとアルテミスは私が力を込めて突破すると弾き飛ばされていった

 

「「ぐわ!」」

 

「何をしている! さっさと止めないか」

 

「うぉぉぉぉメガクエイク」

 

 地面が裂け、盛り上がり、揺れる地面を私は再び地面に右足を踏みつける事で鎮める

 

「「裁きの鉄槌!」」

 

「零戦」

 

 巨大な足が踏み降ろされる前に高速移動できる技で回避する

 

「豪炎寺先輩」

 

 豪炎寺先輩にパスをし、豪炎寺先輩と染岡先輩でドラゴントルネードを放つが、それはポセイドンが止める

 

 カウンターでダッシュストームやヘブンズタイムで突破され、普通のドリブルでも私とハス太以外は止めることができない

 

「エアダスト」

 

 ハス太は強烈な向かい風を引き起こし、ボールを世宇子の選手から回収する

 

「神の力が通用しない!!」

 

 世宇子の選手は驚いているが、ハス太は周りを見渡して一旦ラインの外にボールを出す

 

 風丸先輩とマックス先輩は世宇子の必殺技を受けて負傷したらしい

 

 選手交代でマックス先輩の所に少林が、風丸先輩の所に半田先輩が入る

 

 

 

 

 

 

 

 

「神の力が通用しなかった……おい、お前」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「神のアクアをもっと渡しなさい」

 

「し、しかしこれ以上の接種は危険……」

 

「私達が負けても良いと」

 

「いえ、その様なことは……」

 

「ではさっさと持ってこい!」

 

「は、はい!」

 

 神のアクア……強化人間計画プロジェクトZことゼウス計画の根本とも言える強化人間を作り出す為の液体である

 

 これを体内に取り込むことで莫大な力を得る変わりに副作用として神のアクアを摂取し続けなければ力を失ったり、依存性があったり、肉体にダメージが残ったりする劇薬でもある

 

 本来は軍用なのを影山配下の研究チームが改良及びサッカーに最適にしたのが神のアクアである

 

 世宇子の面々は神のアクアをもってしても圧倒することのできない大震撼とハス太に焦りを感じていた

 

 いや、1点を先取される失敗もしてしまっている

 

 影山から神のアクアを取り上げられればただの人間に戻ってしまう恐怖が彼らを神のアクアの更なる摂取に走らせた

 

 それが致命傷になりかねないと知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方の雷門は世宇子よりは落ち着いていたが、震撼とハス太に負担を強いている状態をなんとかする方法を考えていた

 

「震撼が途中でボールを奪ってくれてるからなんとかなっているが……世宇子がこのまま終わるとは思えん」

 

「あぁ、鬼道のいう通りだ。世宇子は更に力を発揮してくるかもしれない」

 

「怖かったっす。震撼とハス太が居なかったらキャプテンがボロボロになってたかもしれないと思うと……」

 

「なーに! 飛んできたボールは必ず止める!! 鬼道! 何か作戦は無いのか?」

 

「無くはない……敵は震撼とハス太に注視しているハズだ。だから他のマークが甘くなると思う……豪炎寺、円堂! チャンスが有ればイナズマブレイクを、一ノ瀬と土門はザ・フェニックスをうっていくぞ! 震撼とハス太はゴールをなんとしてでも死守してくれ」

 

「了解致しました」

 

「OK! 僕頑張るよ!!」

 

「よーし! この調子でガンガン点を決めて勝つぞ!!」

 

「「「おう!」」」

 

 

 

 

 

 

『さぁ少林と半田が入った雷門イレブン……世宇子は反撃なるか! 世宇子のスローインで試合再開!!』

 

 世宇子のスローインから再開した戦いは、世宇子が先程とは比べ物にならない位強くなっていた

 

「馬鹿な! この短時間で強くなるだと」

 

「ちっ! 全力を出してなかっただけだぜ! アイツ等」

 

 ドンドン雷門陣地に突撃してくる世宇子イレブン

 

 私がアフロディのマークに付こうとしたら逆サイドから走り込んできたデメテルにボールが渡る

 

「こい!」

 

「リフレクトバスターV2」

 

 グランドの一部が捲れ上がり、岩の塊になると、それにボールがぶつかるごとに加速していく

 

 数回岩にボールがぶつかったところで円堂先輩めがけて飛んでいく

 

「たぁぁぁぁ!! マジン・ザ・ハンド!!」

 

『止めた! 円堂ナイスセーブ! 円堂から震撼へとボールが渡ります』

 

「震撼!」

 

「させるか!」

 

「ザ・ワールド」

 

 時間を停止して確実にボールを奪い、そのまま世宇子のゴールめがけて走り出す

 

「{[いくぞ!! リアルインパクトTC!! ]}」

 

「スピニングカット」

 

「タイタンウォール!!」

 

 地面から青い炎が噴き上げ、更にディオがタイタンウォールという自分を巨大化させて腹部でシュートをブロックしようと試みるがどちらもシュートの威力を弱めるだけで止めるまでには至らない

 

「ギカンドウォール改」

 

 だが先程よりも何故か威圧感が増したポセイドンにより止められてしまう

 

「見たか神の力を!」

 

 とか言っているが3人がかりでようやく止めているので神の力もへったくれもない

 

 が、現時点で最強のシュートを止められてしまったというのはよろしくない

 

「行け! アフロディ」

 

 ポセイドンからアフロディにボールが渡る

 

 私は急いで戻るが全力でドリブルするアフロディの方がペナルティエリアに早く入られてしまうだろう

 

 先程よりもアフロディは速さが増しているように見えた

 

「ハス太! 止めろ!!」

 

「這いよる触手V3」

 

「ヘブンズタイム改」

 

 ハス太よりも速くアフロディは突破し、ハス太は風を操ることで吹き飛ばされる事は無かったが、円堂先輩と1対1となってしまった

 

「これが神の力だ!! ゴットノウズ改」

 

「させるか!! マジン・ザ・ハンド!!」

 

 円堂先輩必殺の魔神が現れた、一瞬拮抗したと思ったが、ゴットノウズに押されてしまう

 

「うおおおおお!!」

 

 円堂先輩が押し返そうとするが、魔神が耐えきれずに離散してしまう

 

「しま!」

 

 ボールは無情にもゴールに叩き込まれた

 

 




ヘブンズタイムが催眠術なんて私は認めないからな


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世宇子 後編

 1対1……円堂先輩はマジン・ザ・ハンドが破られたことに凄いショックを受けていた

 

「爺ちゃんの必殺技が通用しないなんて……」

 

 ゴットノウズ……神のみぞ知る……か

 

「ぐ!?」

 

「染岡!? おい! 染岡! しっかりしろ!」

 

「大丈夫だ。まだやれる」

 

「見せてください」

 

 私は染岡先輩の服を脱がすと右肩が脱臼しており、とてもじゃないが試合続行は不可能である

 

「駄目です。外れてます」

 

「選手交代だ。震撼お前が上がれ、震撼の場所は栗松が入れ……染岡お前は直ぐに病院に」

 

「待ってください監督! せめて最後まで見せてください!」

 

「……仕方ないわね」

 

 ニャルがそう言うと染岡先輩をベンチに左手を置かせて外れている右肩を脱力させ、ニャルはゆっくりと右腕を引っ張り、そして手を離した

 

「痛みが……消えた?」

 

「応急手当をしただけよ。無理に動かしたら今度は骨が折れるわ。プレーはできないけれど観るだけならこれで大丈夫よ」

 

「サンキューニャル!」

 

 染岡先輩が離脱したことで私染岡先輩のポジションであるフォワードに上がる

 

 私が豪炎寺先輩にボールを渡して試合再開

 

「よし! 皆上がれ!!」

 

 鬼道先輩の指揮の元雷門イレブンは果敢にも攻めいる

 

「神の前では無力だということを思い知らせてやる!! 必殺タクティクス! ゴットワールド」

 

 世宇子のフォワードとミッドフィルダーの6人が円陣を作り、私と豪炎寺先輩を巻き込んで、その場に光の線が次々に描かれていく

 

 光の線に豪炎寺先輩が触れた瞬間に円外に弾き飛ばされた

 

「豪炎寺先輩!」

 

「震撼気を付けろ! 光の線に見えるのは圧縮された空気の塊だ! 蹴りと同時に空気の塊を線のように描いている!!」

 

 線を避けていたが遂に私の足に空気の塊がぶつかる

 

「ぐぅ!?」

 

 ボールを離すことは無かったが、負荷が凄い

 

 並みの人であれば豪炎寺先輩みたいに弾き飛ばされてしまうだろう

 

 並みの人であれば……だ

 

「分身フェイント・スカイ!」

 

 皇帝と覇王を出し、私が皇帝と覇王を空に投げ、ボールを蹴りあげる

 

 ゴットワールドは腰から下が攻撃範囲だと受けてわかったので、空からの脱出を試みた

 

 空中で更に皇帝の肩を踏み台に覇王が更に高く飛ぶ

 

 その高さ約15m

 

 覇王はボールをガッチリ受けとると馴染みある機械音が響始める

 

「対物ライフルV2」

 

 空中からゴールめがけてうち降ろされたシュートはディフェンスの頭上を超えてゴールのポセイドン向かって突き進む

 

「ギカンドウォール改!? なんてパワーだ!! ぐわぁぁぁぁ!」

 

 無情にもゴールにボールは突き刺さる

 

「ミッションコンプリート」

 

『ゴ──ール!! 世宇子の必殺タクティクスを初見で突破!! これが大選手が超人と言われる所以です!』

 

「何故だ! 何故だ何故だ何故だ!! 私達の必殺タクティクスをも攻略するだと」

 

「アフロディ……」

 

「……追加摂取をする。神のアクアを」

 

「アフロディこれ以上は体が……」

 

「怖気付いたかデメテル! これ以上の失態は私達の破滅だぞ」

 

「そうだが、2倍量で足りないとなるといくら飲む気だアフロディ」

 

「5倍だ」

 

「「「5、5倍……」」」

 

「死ぬぞアフロディ」

 

「そうだ5倍は流石に無理だ肉体が弾ける」

 

「……無理だ、無謀だ……それで結構。私が求めるのは勝利のみ」

 

「アフロディ」

 

 アフロディは神のアクアが入ったコップを5つ持つと一気に体に流し込んだ

 

「うぐ!? ……が! ぐ!?」

 

「「「アフロディ!!」」」

 

「だ、大丈夫だ。さぁ試合を再開するぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁデメテルがヘラにボールを渡して、ヘラはアフロディにバックパス』

 

 ドクン……ドクン……

 

「ぐ! ……」

 

「「「アフロディ!!」」」

 

「大丈夫だ! 大震撼! 勝負だ」

 

「受けてたちます」

 

「これが時をも超えた必殺技だ! コネクトワープ」

 

「ザ・ワールド」

 

 私は時間を停止し、アフロディからボールを奪おうとするが、アフロディが居ない

 

「消えた?」

 

 時間停止中のハズなのに居ないというのはおかしい

 

 私は時間停止を解除するとアフロディは私の後ろに出現した

 

「な!?」

 

「これが神の力だ」

 

 アフロディは高速でドリブルして雷門陣中深くに切り込んでいく

 

 こんな時に絶対防衛線が活躍するのだが、私がアフロディの後ろに居るため絶対防衛線を構築することができない

 

「ハス太! 止めろ!!」

 

 鬼道先輩から指示が飛ぶ

 

「神を遮るな」

 

「僕は人を超えた者として君の神を否定する」

 

「コネクトワープ!!」

 

「トルネード」

 

 ハス太を中心に風の壁が発生し、まるで風の柱の様だ

 

『なんということだ! フィールドにトルネードが出現した!! しかし! なんとアフロディこれを突破している!!』

 

「なに!?」

 

「さぁ進化した神の力を見るといい! ゴットノウズ・インパクト」

 

 アフロディから白い翼が生えると、ボールが凄まじいエネルギーを纏いながら落下し、落雷と一緒に地面を抉りながらゴールに向かって突き進む

 

「マジン・ザ・ハンド!! ぐわぁぁぁぁ!」

 

『ゴール!! 世宇子ここで追加点!!』

 

 ピッピーと笛がなる

 

 ここで前半が終了する

 

 私とハス太でもアフロディを止めることができなかった

 

 円堂先輩は今の一撃でグローブが破けてしまい、円堂のお爺さんが使っていた古いグローブに交換し、それをじっと眺めている

 

「円堂先輩……何か掴めましたか?」

 

「あぁ、次は止める」

 

「残念ながらコネクトワープを今の私では止めることができそうにありません……なのでゴールは円堂先輩に任せます。カウンターで点をとって見せます」

 

「期待してるぜ震撼!」

 

「お任せを」

 

 

 

 

 

「ゼヒュー……ゼヒュー……」

 

「アフロディ」

 

「大丈夫だヘラ……大震撼を突破できた。これで我々の勝利は揺るぎ無き物になった」

 

「しかし、アフロディ。お前の体は」

 

「なに、勝てば影山総帥がなんとかしてくれるハズさ。私達はこのまま勝利を勝ち取るのみ……圧倒的な勝利をな!」

 

「アフロディ……」

 

「さぁ後半に行こう……ぐ!? ぐわぁぁぁぁ!」

 

「「「アフロディ!!」」」

 

 アフロディは吐血し、体を抑えながら震えている

 

「拒絶反応だと……そんな馬鹿な……」

 

「神のアクアを飲みすぎたんだ……反動を抑えるには……アフロディごめん!」

 

 ヘラは神のアクアを5つ持つとアフロディに神のアクアを飲ませた

 

「はぁ……はぁ……助かった。ヘラ」

 

「アフロディ……お前……」

 

「大丈夫だ。試合を再開しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ後半雷門からのキックオフ! 大選手が豪炎寺選手に蹴って試合再開です』

 

 豪炎寺先輩は鬼道先輩にバックパスし、鬼道先輩が守備を疎かにしない範囲で指示を出していく

 

「一ノ瀬!」

 

「おう!」

 

 一ノ瀬先輩にボールが繋がれ、そして私にボールが来る

 

「皇帝、覇王……いくぞ」

 

「{[おう! ]}」

 

『なんと分身のみを行かせ大選手はディフェンスゾーンに走っていく! 何をする気だ!!』

 

「{[リアルインパクトW!! ]}」

 

『なんと分身達は味方ゴールに向かってシュートを放ってきたぁ!? あり得ない事が起こっています!! 錯乱したか大選手!!』

 

「いや、これで良い!」

 

 私はシュートを両足で挟み込むと腕を回転し始める

 

 そのまま⊂の字を描く様にボールを操る

 

『なんだ! 何か起こっているんだ!! シュートを操りながら今度は世宇子陣内に突入している!!』

 

 そのまま両足でボールをゴールに向かって空中で更にバク転しながら勢いよくボールを放り投げる様に足で押し込む

 

「カウンターインパクト」

 

 シュートの威力をそのままに衝撃を更に追加付与してのロングシュート

 

 インパクトシリーズの新たな可能性の一撃だ

 

「ギカンドウォール改!! 止める! アフロディがあれだけ頑張っているんだ!! 俺だって!! うぉぉぉぉ!!」

 

「無駄です。リアルインパクトTCと同威力のこの技を1人で止めることはできません」

 

「うぉぉぉぉ!! ぐわぁ」

 

『ゴ──ール3対2!! 大選手ハットトリック達成!! 貴重な1点をもぎ取りました!!』

 

「くそ! くそぉ!!」

 

 ポセイドンは地面に拳を何度も地面に叩きつけながら悔しそうにしているが、これでハッキリした

 

「敵はアフロディただ1人」

 

 確かに全体的に試合開始よりは上がっている……他から見たら急速なレベルアップにも見えるが、私には通用しない

 

「アフロディ! あなたを止めます」

 

「止められるなら止めてみたまえ! 直ぐに同点にしてみせる」

 

 もう対決の構図がアフロディ対私になってきてしまったが、他も皆も私にボールを回そうとしてるし、世宇子もアフロディにボールを回そうと必死だ

 

 世宇子からのボールで再開した試合はアフロディではなくヘルメス、アテネ、デメテル、アルテミスを中心にどこかアフロディを守るようにパスを回したり、必殺技でこちらの防御を突破してくる

 

 鬼道先輩が指揮をしているが、世宇子の能力の高さで突破されてしまう

 

「ハス太!」

 

「壁山、土門先輩」

 

「おう!」

 

「行くっす!」

 

「キラースライド!」

 

「ザ・ウォール」

 

「ダッシュストーム」

 

「「ぐわぁ!」」

 

「ハス太! なんとしてでも奴らを止めろ!!」

 

「鬼道先輩わかってます!」

 

 ハス太は覚悟を決めた

 

「吹き飛ばしてくれる!! ダッシュストーム!!」

 

「はぁぁぁぁぁ!! 黄衣の王ハスター! アームド!!」

 

「「「なに!?」」」

 

『なんと黄衣選手! 黄色いローブを身に纏い! 姿が変わったぞ!!』

 

「虚仮威しだ!」

 

 ハス太が右手を前に突き出す

 

「エアカッター」

 

 デメテルの足元にあったボールが切り刻まれ、技を不発にし、ハス太が彼らを通りすぎるとボールはハス太の足元に転がっていた

 

「なに!?」

 

「今確かにボールが切り刻まれたハズじゃ」

 

 ハス太は一ノ瀬先輩にボールを渡す

 

「はぁ、はぁ……この姿体力の消耗が激しいんだよね! 一ノ瀬先輩頼みました」

 

「おう! 必ず震撼に届ける」

 

「「させるか!!」」

 

「キラースライド!」

 

「メガクエイク!!」

 

「ぐわぁぁぁぁ!」

 

「「「一ノ瀬!!」」」

 

「くっ……頼んだぞアフロディ!!」

 

「任せろ……あと2回……体よ持ってくれ」

 

 円堂先輩が体を捻り、体の中心に気を集め始めた

 

「マジン・ザ・ハンドは通用しない!! くらぇ! ゴットノウズ・インパクト」

 

 通常のゴットノウズとは比べ物にならない一撃が

 

 先程破られた一撃が

 

 円堂先輩に襲い掛かる

 

「皆が居てくれたから……皆の期待が! 希望が! 努力が! 有ったからここに居る! 必ず俺達のサッカーで優勝するんだ!!」

 

 貯めたエネルギを右手に宿し、そして右手を地面に向けた

 

「な!?」

 

 右手を中心に黄色いエネルギーでできた羽が現れた

 

「大介さんでもできなかったゴットハンドの進化系か!?」

 

「ゴットハンド……V!!」

 

 あの威力のゴットノウズ・インパクトを止めた……

 

「馬鹿な! 大震撼でもなく円堂守にも私のシュートが止められるだと……」

 

「いっけぇ! 豪炎寺!!」

 

「おう!」

 

 円堂先輩から豪炎寺先輩にゴールからのロングパス

 

 私にばかりマークに付いていたため、豪炎寺先輩はノーマーク

 

「鬼道!」

 

「おう!」

 

 鬼道先輩にパスし、鬼道先輩は上にあげ、それを豪炎寺先輩がファイヤートルネードでうち降ろす

 

「「ツインブーストF(ファイヤー)」」

 

「ギカンドウォール改!! ……ぐ! なんて威力だ!! ぐわぁ!」

 

『ゴール!! 4対2!!』

 

「嘘だ……我々は神ではなかったのか」

 

「おしまいだ……」

 

 世宇子の士気が見るからに落ちた

 

 それを見逃さない雷門ではない

 

 諦めてないのはアフロディのみのようだが、アフロディも動きがおかしい

 

「まだだ! まだ私は戦える」

 

 今までのような強者のオーラは既に無く、病人のように弱々しく感じられた

 

『残り時間は残り僅か! おおっと円堂飛び出した!!』

 

「最後の1秒まで全力で戦う! 諦めない! それが雷門サッカーだ!! 土門! 一ノ瀬!!」

 

「「おう!」」

 

『これはザ・フェニックスか!? いや! 豪炎寺が走り込んでいる!』

 

「ファイナルトルネード」

 

「「「いっけぇ!」」」

 

 私の横で力尽きたアフロディが呟く

 

「神が……負ける……」

 

 ポセイドンは既に戦意喪失しており、ファイナルトルネードの威力にビビってゴールから逃亡してしまった

 

 ファイナルトルネードはゴールネットを突き破り、ボールはそのまま空に消えていった

 

 ピッピッピー

 

『ここで試合終了のホイッスル! 5対2で雷門の勝利だ!!』

 

「やった……俺達勝った!!」

 

「やったぞ!!」

 

 円堂先輩を皆で胴上げをする

 

「「「わっしょい! わっしょい!!」」」

 

 私、ニャル、そしてハス太はその胴上げを見つめているアフロディ達に近づいた

 

「神の力を手に入れた僕らを倒すとは……なんて奴らなんだ……」

 

「神のアクア……ドーピングに手を出すとは情けない人達ね」

 

「過剰摂取でアフロディ、君の体はもうボロボロだろ」

 

「神等というのは人に恵みを与える代わりに試練も与えます。あなた達はこれから神のアクアを肉体から完全に取り除く辛い治療が必要でしょう。アフロディ、それを含めても見事でした」

 

「君達は本当に人間かい?」

 

「Yes であり、Noでもあります」

 

「まぁそれを君達は知らない方が良いかもね!」

 

「地球にはあなた達が知らない神秘がまだまだあると言うことだけは伝えておきましょう……かしら」

 

「はは、なるほど。それを調べるのも面白いかも……ぐぅ!?」

 

「アフロディ……どうしました」

 

「対価を払う時が……来たようだ……グゴポ」

 

 アフロディは大量の吐血をし、地面に真っ赤な水溜まりが出来上がる

 

「ニャル!」

 

「わかっているわ! ここじゃ不味いから移動させますよ」

 

「世宇子の人達も手伝って」

 

「「「アフロディ!」しっかりしろ」ゆっくりだ。ゆっくり持ち上げるぞ」

 

「「せーの!」」

 

 私とディオがアフロディを持ち上げ、フィールドから運び出す

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達なれたのかな……伝説のイナズマイレブンに」

 

「あぁ、いや、伝説はこれから始まるんだ」

 

 円堂先輩と豪炎寺先輩が観客に手を振りながら会話する

 

 雷門! 雷門! 雷門! 雷門と観客から雷門コールが巻き起こり、紙吹雪が舞い散る

 

「あれ? 震撼は? どこ行ったんだこんな時に」

 

「トイレじゃないでやんすか?」

 

「まぁ良いか、閉会式には来るだろうし」

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……ゴポゴポ」

 

「……駄目、止血できない! 色んな箇所内出血してるし、鼻血や吐血も止まらない」

 

「「「アフロディ!」」」

 

「神の代償は……思った以上にヤバい物だったらしい……ゴポ」

 

「仕方がない……田中」

 

「はいは~い」

 

 いつの間にか居た存在にハス太とニャル以外の世宇子の面々は驚く

 

「な!? え? 今どこから」

 

「さっきまで居なかったよな」

 

「誰だ」

 

「私の名前は田中……ただの宇宙人さ! さてとうーん、これは駄目だね。肉体の再構築が必要なレベルだ……とりあえず、はいっと」

 

 田中はアフロディの首に注射を射した

 

 アフロディは白目、いや瞳孔が開き、赤い泡を吹いている

 

「アフロディ? アフロディ!!」

 

「でめえアフロディに何しやがった!!」

 

「何って仮死状態にしただけだよ。震撼がこの人助けたいって言うから私が治療してあげるよ……最も人じゃなくなるかもしれないけどね」

 

「田中、あまり皆を驚かせないでくれませんか」

 

「失敬失敬……いやぁサッカーとは面白いね……まぁドーピングで力に酔ったりするのもわからなくはないが、それで文字通り命がけでの戦いはドーピング云々を抜きにしても面白かったよ……アフロディは私が預かる。どうせ君達のバックに居た者も捕まっているハズだからね」

 

「田中、警察にリークしていたのですか?」

 

「まぁ私ができる範囲でね……君達も神のアクアだっけ? それの後遺症で苦しむと思うけど、2ヵ月安静にしていればまたサッカーできるようになるから焦らないこと。良いね」

 

「俺達と同じ年の様にしか見えないが……」

 

「田中ですが、立派な大人ですよ。深くは検索しないでください。アフロディは私達が預かり、必ず元気な姿に戻しますので安心してください」

 

「震撼達、そろそろ戻った方が良いよ。雷門の皆がそろそろ探し始める頃だからね。……保管カプセルっと」

 

 田中がポケットからカプセルを取り出し、ボタンを押すと錠剤の様な形のカプセルが現れた

 

 田中はその中にアフロディを入れると、素早くカプセルに備え付けられていた酸素マスクを取り付け、点滴を射していく

 

 カプセルのボタンを再び押すとカプセルは手のひらサイズまで小さくなり、田中はポケットの中に入れてしまった

 

「じゃあ私はこれで失礼するね」

 

「よろしくお願いします」

 

 田中はエイの様な機械に乗ると、そのまま消えてしまった

 

「き、消えた……」

 

「アフロディ……」

 

「何かあったら責任は私が取るので……世宇子の皆さん、次は神のアクアに頼らないで試合をしましょう」

 

「まぁ僕達ももっともっと強くなるけどね!」

 

「失礼します」

 

 ハス太とニャルも彼らに挨拶をして会場に戻っていった

 

「……何だったんだろうな……アイツ等は」

 

「まぁ……何て言うか負けてもなぜだか納得している自分がいる」

 

「俺達はこれからどうするか」

 

 世宇子の面々が話し合いを始めようとしたら、警察達がやって来て世宇子の面々は警察に保護という補導をされることとなる

 

 やがて病院で禁断症状や後遺症と戦うことになるのだがそれはこの物語では語られることは無いだろう

 

 

 

 

 

 

「震撼、ハス太! 何処へ行ってたんだよ」

 

「すみません円堂、少し世宇子の面々と話していました」

 

「いやー、強かったね彼ら」

 

「あぁ、強かった。だけど俺達は勝ったんだ!! 日本一だ!!」

 

「日本一……良い響きですね」

 

「ああ! この感動を噛み締めようぜ!!」

 

 円堂先輩はこの試合でもゴットハンドを進化させ、更に強くなった

 

 円堂先輩の成長速度も驚異的だ

 

 だけどそれにそのうち付いていけないメンバーも出てくるだろう

 

 その時に円堂先輩はどう接するのか……いや、今はこんなことを考えても仕方がない

 

「私達は日本一だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




フットボール編を無事に書き終える事ができました

皆さんの応援のお陰です

ありがとうございます

世宇子よりも帝国戦の方が力入っていた様に感じます

世宇子も頑張ったつもりなのですがどうしてもアフロディ単体との勝負みたいになってしまい申し訳ない

ハス太が化身アームドという最先端を身につけたことにより雷門のインフレが進む進む・・・

次話から第2章になりますが引き続きよろしくお願いします


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