ウマ娘 ストリートダービー (ろどっぱち)
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P1ストリートの世界で

注意
本作品はフィクションです。実際の公道での暴走行為、違法改造等を助長するものでないことを深くご理解ください



 

 

 

ずっと前。それは、レースを、夢を本当に諦めたとき。

走ることは嫌いじゃなかったし、むしろ好きだったかも。けど、ほんとにキラキラしたものに届かないって、わかったから。それが早かったことが、私の幸運なのかもしれない。

きっと違う世界の私は、レースで活躍したり、しなかったりしたと思う。トウカイテイオー。三冠を全部とって現役バリバリだとかいう。彼女ではないが、そういった、ホンモノが確かに私の目には映っていた。

眠っているとき。夢で、たまに語り掛けられる。本当はトレセンで、そういうウマ娘と競う運命だったんじゃないかって、何か今の自分に不満がないかって。

ないわけはない。満たされなんかしない。でも、ああやって走っているうちは、満足してるような気がして、だから今も、どこまでも認められないこのストリートの世界で、満たされようと 走り続ける――

 

ちょっと久しぶりにここに来る。埼玉県秩父市と群馬県多野郡神流町を結ぶ、土坂峠。もとから住み着いたチームがいないから、私たちが実質最速っていう、ちょっぴりかわいそうなところ。

ここ2週間くらいこれなかったのは、チューニング代が案外馬鹿になんなくてタイヤ買うとせっかく貯めてきた貯金に手を付けかねないっていう本末転倒なことが起きてたから、なんてアホなこと。今日は三人ともくるって話だから、吹かす煙草もなくトンネル前で待っててみる。

NAロードスターを買ったのは2年前。初めてあこがれたハチロクと同じテンロクだからって、中古で100万いかないくらいのをローン組んでもらって買った。いままでキラキラとは程遠いアタシの人生の中に光を灯したのは、間違いなくこのロードスターだろう。

...すこし早かったなあ。カレシがいるでもないんだから、なんておもっていると、チーム一のツッコミバカのエンジン音がしてくる。最初んころはエンジン音なんてうるさいか静かかくらいしかわかんなかったのに、人間変わるんだなあ(人間じゃないけど)

予定より早く約3分前、EP82スターレットが顔を、というか派手に姿を見せる。(FFでそんな動きするかフツー?)

「おいっす~。早いね、ターボ」

「ひっさしぶり!そういうネイチャこそ早いね!」

ツインターボ EP82を駆る彼女はチーム一の元気娘でツッコミバカ。(名前に反してシングルターボのマシンである。)

「久しぶりったって、先週だって顔合わせたのに、ずいぶんさみしがりやなんだね?」「けど、今までは毎日みたいにあってたんだから、久しぶりに思ってもしかたないと思うけどな~」「あ~、それもそっか、最近妙に時間の流れもはやいから~」

「そんなおばさんみたいなこと言って、ほんとにおばさんになっちゃうよ?」「ハイハイ、もう片足つっこんでるけどね~。」

同い年にそんな心配しょっちゅうされることに軽い疑問を抱きながら話していると、残りの面々もやってくる。

「あれ?二人とも早いなあ。」「概ねちょうどになるように出発したつもりだったんですが...」「ああいや、あたしたちがたまたま早かっただけだから。気にしないでいいよ~」

チームメンバーは4人、あたし(ネイチャ)とターボ、それからS13(J's)に乗ってるマチカネタンホイザ。うちのチーム、カノープスのイチバンの癒し枠で、弟子のような存在でもある

それとGC8のインプレッサに乗るイクノディクタス。うちのチームトップの頭脳キャラで、前線張るというより、バックアップメイン。けどはっきり言ってケッコー速い。(あたしの代わりに走ってくれないかな)

三人にあったのは、ロードスターを買ったころの話。元々知り合いだったらしいけど、土坂の埼玉方面を根城にチームをやるってんだから、混ぜてもらった。はじめは知り合い同士のチームに部外者が入っていいのかなって思ったけど、

どうもみんなお人よしだから、すぐ馴染んだ。今じゃこうして頻繁に会って走りこんでるってワケ。

「こうしてみんな集まって顔を合わせるのも2週間ほどありませんでしたし、すこし久しぶりに感じますね」「イクノまでそんなこといって、あたしだけかあ。一つと変わんないのにどんどんおばさんになってくなぁ...トホホ」

「でも、ネイチャはそれだけ毎日を楽しく過ごしてるってことなんじゃないかな?ほら、楽しいことはスグ過ぎるって言うし。」

「たしかに、そういう考えもありますね」

ゆっくりおばさん談義(なんだそりゃ)に花を咲かせていると「そろそろはしろうよ」と言わんばかりの顔で元気代表大臣が尻尾をふりまわして見てくる

「お~、そうだそうだ、久々なんだしそんな話してる場合でもなかったね。さて、そろそろ出よっか」

「よぉ~っし!バリバリとばすぞ~!」

「タイヤは使い切らないでくださいね。」

「う~し、がんばるぞ~、えい、えい、むん!」

今日は新しくつけたエキマニ、それに合わせて仕上げたセッティングのテストも兼ねてるから、とりあえず前の三人は先行させて後ろから様子見してみる。

(明らかにトルクがリニアについてくるようになってる。前にフライホイールを変えた時にも感じた変化だけど、さらにレスポンスが上がってる。それに今回のチューニングで155馬力を回った。相当調子いいぞ~)

パワーアップに一番貢献していたのは最初にやったマフラーとエアクリーナー、コンピューターあたりだけど、そのあとにやったことも含めパワーはそこそこ高くなった。ただ、これもマックスじゃないし、(なんか嫌だから)ボアアップをしないにしても、

もうすこしNAでパワーを上げたいけど、今はとりあえず満足。足もかるく緩めてみたら、路面のバンプの吸収がうまいこといったから、正解だったと思う。(タイム計測してないから何ともいえないが)

.

..

...

「あちゃ~、ブレーキケッコーきてるね。ターボ、ブレーキ粘りすぎなんじゃないかな。限界を切り詰めてフルブレーキングを繰り返せば、タイヤにもブレーキにもわるいからさ」

「ううん、じゃあどうしたらいいんだろう?」

「もうすこし早めにブレーキを踏み始めて、奥まで踏み切らずブレーキを離すところは今までと同じ、という風にすれば、タイヤブレーキ共に保護になると思います。」

「タイムアタックやバトルじゃないなら、その方がいいね~。」

「う~ん...ターボそこまで細かいこと考えられないよ~」

「あっはは~。まあこの辺りは慣れだからねえ。といえど、二年もやってるんだし、ボチボチできないとだよ~?」

「あ、そういえば。ネイチャが来たら、お願いしようと思ってたことがあるんだけど、いいかな?」

「ほほ~?ネイチャさんにおねがいとな。言ってみんしゃい?」

「セッティングを変えてみたから、外からも軽く様子を見てほしいと思って。それでどうかな、と」

「ほほ~。バトルのお誘いとな?言うようになったね~マチタンも。なら断る訳もないし、いっちょやったりますか~。けど、アタシがいない間にターボやイクノにチェックしてもらうんじゃだめっだったの?」

「それでもいいけど、できれば同じFR乗りのネイチャに見てもらった方がいいかなって。二人のアドバイスよりもわかりやすいし!」

「ほ~。そういうことなら、一肌脱ぐとしますか。下りだよね。そしたら上行って準備しよっか」

みんなして頂上までいくと、ささっと車を並べて準備する。いつものメンツだからそのあたりは早い。

「そしたら、ルールは先行後追い。あたしは後ろから追っかけるから、スタートするときはパッシングだして。」

「いつも通りだよね、OK!そしたらはじめよっか!」

タンホイザのs13がスタートしたのを確認して合わせるように発進する。

「私たちが見た限りでも、コーナー一つ一つの無駄はかなり省けていますし、期待はできますね。」「ケド、ネイチャは速いからな~。ターボはネイチャに一票!」

そんなこんなでバトルが始まった訳だけど

(おお~。こりゃ変化がすぐわかる。明らかにコーナーでの挙動が安定してる。コーナーひとつひとつを前と比べらんないくらいキレーに曲がって見せる。それにテクの方もそれに合わせて仕上がってる。少なからずショックだなあ。こんなに一気に上手くなられると。)

でも弱点はある。S字コーナーでの車の反転が追い付いていない。あまり傾きすぎないドライビングだから目立たないけど、これならいける。仕掛けるなら最後、あのS字コーナーがいい

 

(やっぱり張り付かれてる。離せない。先行後追いのルール上このままもつれ込んでもおそらくこっちの負け、このストレート、そっからの左で出来るだけ離して...)

 

「離してくるポイントはこのあたり、だよね。得意なとこを生かせるいいドライビングだけど、それ以上に弱点が大きく露呈してる。ここでアウトからハナッツラをちょいとねじ込んでやって...!」

外側から並びかけ、インとアウトが入れ替わるタイミングでオーバーテイクを図る。古風なカウンターではあるけど、コーナーでの動きを封じつつ抜ける。この狭い峠道ならなおさら効果はでかい。決着だ。

 

「いや~わるいわるい。大人げなかったかな。」「ううんいいよ。そもそも、わたしから挑んだ勝負だし、きっぱり私の負けってことで!それでさ、なにかわかったかな?熱中しててわかんなかったってのはナシだよ?」

「そんなのはさすがにないですよ~。とりあえず、コーナー一つ一つのうごきはすっごく良くなった!ただ、いっこいっこ頑張りすぎて、S字で車がついてこれてないかな。だからS字の場合、手前のコーナーである程度次のために準備しておく必要があるワケ」

「ほ~。勉強になります~。」

メモ帳を取り出していそいそと書き入れてる様子をみて、やっぱり努力の才能あるな~、なんて思う。結局、才能ってのはスタート地点の違いで、その差は必ずスタートした後に縮められるもの。故に最も重要なファクターは、

[努力できるかどうか]だと思う。こんな年になってから、気付いたことで、きっとあの頃に気づけていたなら、なんて思う。

 

 

「お、上がってきた!」「いやはや~負けました~。それももんのすごいきれいなカウンターアタックで!あんなにかんぺきなの見せられちゃうと、もうびっくりしちゃうよ!」

「そんなにすごかったんですか?」「そりゃあもお!見たらわかると思うよ~!」「も~、そんなに言ったってなんにもでないよ?」

――不意に、 エンジン音が耳に入ってきた。

「...なんだろう、この音。重い...直6かな。それ以外の音もかなり」「ここに人が来るなんて、ずいぶん珍しいなあ」

上ってきたのは6台。そのすべてがボディの左に、同じステッカーを貼っている。車を止めると、走り屋と思われる男たちが出てきてそのうちのひとり、が言った

「俺たちは、グリーンラインで走り屋のチーム、ソニックスターズをやってるものだが、ここのチームの人か?」

3人と目を合わせると、便宜上リーダーを張ってるイクノが前に出た。

「一応、私たちは[カノープス]というチームでやらせてもらっています」

「そうか。はっきり言えば、俺たちは県内で最速を目指している!そのためにも、今度の土曜に、ここでのバトルを申し込みたい!」

[県内最速] それは、走り屋の世界でひとつ、強さの証明となる称号だ。走り屋というものは、当然ながら違法行為、言ってしまえばダークゾーン故、誰が最速かを明確に定義できない。ただ、こと県内という比較的ローカルな範囲なら

その最速の称号を走り屋の中で明確にすることができる。

イクノがこちらの方に視線を送ってくる。ターボとマチタンに視線を送ると、二人ともやる気の様子だ。うなずくと、イクノは

「わかりました。勝負はこの場所で土曜日に、ということですね?」

「ああ。最初は交流として9時から走って、10時になったらバトルをする、ってのだ。登りと下りで代表をお互い一人ずつ出してバトルをするんだ。

「わかりました。でしたら、土曜日の9時にまたここで。」

「話が早くて助かるぜ。そしたら、今日から走りこませてもらうぜ。走るうえでのマナーはキッチリ守るさ。」

そういうと、そのチームのメンバーは車に戻り、Uターンしていく。前から順に、180SX、S14後期、A31セフィーロ、N14パルサーGTI-R、R32GT-R、P10プリメーラ。見たところ日産ワンメイクのチームみたい。

「県内最速かあ。こらまたキラキラした目標をお持ちなようで。」「ケド、見てるだけってわけにもいかないね。私たちも行こう!」「そうねー。地元の走り屋として、他所モンに突っつきまわされんのも気分悪いし。」

 なんだか、年甲斐もなく、って言うと違うかもしれないけど、こんなにワクワクしたのは久々かもしれない。

「足元軽くすくうくらい、やったりますかぁ!」

そうして、またキラキラの夢を見れるかもって期待した自分自身のために、走ろうと思えた。傷つくものは自分のプライドくらいしかない。それくらい賭けて、全力でぶつかってやろうと、本当に久しぶりにそう思った。

P2へ続く




あとがき
趣味感覚ではじめたがきんちょ作のシリーズなのでまちがいなどございましたらご指摘ください。不定期更新です。
実はpixivに同様のシリーズを上げていたことがあるのですが諸事情あり削除してこちらに加筆修正し投稿することとなりました。
そのため第五話まではいっきに投稿されますが、それ以降はかなりペースがガタ落ちして、週一投稿できないくらいになることもご容赦ください。クルマ用語がかなり多いので、その話のあとがきに記載致します。

用語コーナー
NAロードスター
正式名称は「マツダ ユーノス・ロードスター。」1989年にマツダより発売されたスポーツカーです。「NA」とつく理由は初期型がNA6CE型であるからです。1.6リッターの排気量に軽量オープンボディで人気を博しました。

ハチロク
トヨタより発売されていた「カローラレビン」および「スプリンタートレノ」の四代目モデル「AE86型」の略称です。中古車価格の安さ、1.6リッターに軽量のボディ、レーシングドライバーや漫画の影響から人気を博しました。

テンロク
1.6リッターの排気量のエンジンを指す言葉です。ほかにもテンゴー(1.5リッター)やテンパチ(1.8)、ニーゴー(2.5)などがあります。

EP82スターレット
「トヨタ スターレット」の4代目モデル、前輪駆動モデルを指す言葉です。単にEP82と呼ばれる場合もあります。軽量な車体に癖のあるターボエンジンで人気を博し、その特性は「ドッカンターボ」として親しまれました。

FF
有名RPGの略称にあらず、前輪駆動の車を指す言葉です。フロントエンジン、フロントドライブから来ています。

ツッコミ
ボケの反対にあらず、コーナーを攻める際の進入速度を表す言葉です。

S13(J's)
「日産 シルビア」の五代目モデル、S13型を表しています。J'sというのは快適装備の省かれた廉価グレードです。デートカーとして作られた一方、スポーティなフォルムに後輪駆動という設計から走り好きに人気を博しました。

GC8
「スバル インプレッサ」の初代モデルで、2リッターの排気量にターボ、四輪駆動のセダンのモデルです。ハイパワーターボ+四輪駆動のパッケージで人気を博し、ラリーでも目覚ましい活躍を見せました。
                                      (セダンとは車のボディタイプの一種。)
エキマニ
エキゾーストマニフォールド(マニホールドとも)の略。エンジン内で発生する排気ガスを整理する排気管です。

フライホイール
エンジンの回転を維持するためのパーツです。慣性を利用しているため、軽量にしたり、形を最適化すると、レスポンス、つまり反応が速くなったり、燃費が良くなったりします。

マフラー
車やバイクにおける排気ガスによって発生する音を調整する機構です。構造の変更等でパワーアップの見込めるパーツです。

エアクリーナー
エンジンに送り込まれる空気に異物が混ざらないようにするパーツです。交換により効率よく空気を取り込んで、パワーアップが見込めます。フィルターを取り換える純正交換式、形ごと変えるキノコ型など存在します。

コンピューター
エンジンは燃料や点火をコンピューターによって制御されており、新品だと、かなり余裕を持ったプログラムである場合が多いです。これを限界に近づけ、パワーをあげることができます。

ボアアップ
エンジンのシリンダー(ピストンを収め中で燃料を燃やすもの)を大きくして、排気量を増加、それによるパワーアップをすることです。

NA
ナチュラルアスピレーションの略称で、日本語では自然吸気といいます。過給機、つまり空気を吸い込む機構を使わず大気圧のみで空気を吸い込む方式です。出力では過給機付きに劣るものの、レスポンスやきれいな排気音が特徴です。


車における足というのはタイヤ、サスペンションなどのことで、こういったもの全体、およびそれに関連するパーツを「足回り」と呼ぶことが多いです。「足を緩める」というのは、バネを柔らかくしたりしてうごきをふやすこと。反対に「足を固める」というのはバネを固くしたりして動きを減らすことです。

フルブレーキ
簡単に言うなら急ブレーキのコトです。持てる制動力の限界で停止をすることです。レースなどではコーナーで限界の速度で曲がる際にもそういった言葉が使われます。

FR
フロントエンジン、リアドライブの略で、前にエンジン、後ろのタイヤが駆動する方式のことを言います。

下り
勾配の存在する峠道では、登りと下りの両方があり、それぞれ「ヒルクライム」「ダウンヒル」と言ったりします。

先行後追い
道幅の狭い峠において、車同士のバトルとなると、単純に横並びで発進してゴールタイムを競う方式はやりにくいため、あらかじめ先行、後追いを決め先行は相手を突き放せたら勝ち、後追いは相手にくっついていけたら勝ち、という風に取り決め、お互いが決着がついたと思うまで続けるルールです。

パッシング
本来であればレースなどで相手を追い抜かすときに使います。この場合はパッシングランプのことを指しています。

ハナッツラ
クルマの前部分を指す言葉です。明確な定義こそありませんが、大抵ボンネットの半分くらいまでを指していると思われます。

イン アウト
コーナーの内側、外側を指す言葉です。

オーバーテイク
パッシングと似た意味の単語で、車を追い抜くことを指す言葉です。

カウンター カウンターアタック
反対、反撃等を指す言葉です。レースなどではこれに転じてコーナーのアウト側から相手に並び、次のコーナーで自分がイン側となって相手を抜かすテクニックのことを指します。

直6
直列6気筒のエンジン形式の略称で、縦にピストンが6つ並んでいる形式です。後述するR32型スカイラインGT-Rなどがこのエンジン形式で、ロードスターやシルビアは縦に四つ並ぶ直列四気筒となります。

走り屋
車を愛し、車を速く走らせるのが好きな人の総称です。また、この言葉を公道で違法レースを行う人の総称として扱う場合もあります。(今作では主に後者)暴走族と違い単に走りを楽しむ目的のことが多いですが、いずれにせよ違法な行為であることをご注意ください

バトル
走り屋の中でのレースの別称。

180SX
日産のスポーツカーで、S13型シルビアの兄弟車にあたる。開閉式のヘッドライト、リトラクタブルヘッドライトに、ハッチバッククーペのボディで差別化を図り、走り屋の間で人気でした。

S14
シルビアの6代目モデルです。大型化し、3ナンバーとなりましたが、様々な面で進化を遂げました。しかしスポーティさを巨大化によって損なわれたと言われてしまいS13ほどの人気はありませんでした。前期と後期でフロントマスクが大きく異なることも特徴です。

A31セフィーロ
日産 セフィーロの初代モデルです。スカイライン、ローレルといった日産車と構造の一部を共有する姉妹車で、ドリフトベースとして愛されました。33歳のセダンというキャッチコピーがあり、執筆当時33歳であった現実のナイスネイチャと絡めたカメオ出演的な意味合いがありました

N14パルサー GTI-R
日産 パルサーの四代目モデルです。GTI-Rはグレード名で、シルビアなどにも搭載された2リッターターボエンジンをチューニングしそれに4輪駆動のパッケージでラリーでも活躍しました。タイヤがパワーに対し小さいためタイヤがすぐ削れる弱点も持ちます

R32 GT-R
日産 スカイラインの8代目モデルR32型に設定されていたグレードで、280馬力のツインターボエンジン、FRと四駆のいいとこどりのシステム、ATTESA E-TSに、剛性に優れたボディーでレースでも大活躍しました。

P10プリメーラ
日産 プリメーラの初代モデルです。欧州車を強く意識して開発され、その優れたハンドリングとフォルムから「FF版スカイライン」と呼ばれました。

ワンメイク
レースの世界で、単一の車種、もしくはメーカーの車のみに限定することを指します。

地元
本来は生まれ育った場所を指す言葉で、走り屋やレースの世界では、多く走りこんでいるコースを指すこともあります。


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P2 交流戦!

注意
本作品はフィクションです。実際の公道での暴走行為、違法改造等を助長するものでないことを深くご理解ください。本作品はウマ娘プリティーダービーの二次創作であり、非公式であるということをご承知おきください。


ジュブナイルとは、13~19歳の、いわば少年期を指す言葉

あたしのジュブナイルに当たる時期は、ハッキリ言えば面白みがなく、中身の薄いものであったと思う。一般的に、そのあたりは夢を見始め、それに向かって走り出す時期だと思う。

あたしの場合、それを諦めた時期にあたるから、普通の人よりつまんないのは当然だけど。何もなかった訳じゃない。充実した生活も、おふくろとの時間も、友達だっていた。商店街の人も良くしてくれていた。

主に不満なことなんてほとんどない。ただ一つ、あたしの前にだけ、キラキラがなかっただけで――

 

ズキン、と。

珍しく目覚ましより早く起きた。なにせ仕事も早いもんだから、めざましはそこそこ早めに設定している。

「けど、2時半て...」

昨晩はあんな宣戦布告があったもんだから、早く寝れてないのに、これじゃ3時間も寝れてない計算になる。不思議と寝ざめはいいけど、それでも体にある奇妙な倦怠感はぬけない。かといって二度寝すればそれこそ闇からは抜け出せない。

...せっかくだし、朝ごはんはすこし豪華に食べていこうかな。(と言えどいつもの簡素な納豆ごはんとみそ汁のコンボに余ったもので作った鮭のホイル焼きがあるだけデスガ)

片道一時間の職場、そこから新潟やらなんやらまで運びこみをやったりなんだりして、そういうのが今の仕事。スタミナこそ消費するけど、給料はいい仕事。ただ、今日みたいな日はすごい地獄だ。

...そうして家に帰り着いたころにはボロボロだった。これじゃ週末の交流戦が思いやられるな、なんて思いながらベットに倒れこむと、そのまま意識を意図せず闇に放り投げた。明日は今日ほど早くないことも救いだな、なんてかんがえたのは起きた時だった。

 

     交流戦まであと3日

   

次の日の朝になって昨日より質素な朝食をとっていると、イクノから電話がきた。

「もしもし~ナイスネイチャで~す」『おはようございます、ネイチャさん。今度のバトルの件なのですが、少々情報が手に入りまして。』「ほうほう」

ごはんをほおばりながら聞いた話をまとめると、下り代表が180SXのtype-X、上りがGT-Rであること、またその二人はケッコーワガママハイスペックなマシンに乗っていること。それから、ソニックスターズの面々は県内最速の呼び声の高いチームということだった。

「そりゃあ、不利なんじゃない?」『はい。苦戦を強いられることは確実です。そこでなんですが、今晩正丸峠のほうまでお越しいただけませんか?』「作戦会議、ってことね。けど、どうしてわざわざ正丸に?」

『一応、手の内を易々と明かすわけにもいかないと思いまして。八時半でどうですか?』「おっけ。そしたら、正丸の茶屋の前で。」

正丸峠は飯能市と横瀬町の間の峠で、道が狭くておまけにバンピーっていう、最高にハードな峠。全開になんてとてもできないところだ。昔「師匠」にそこで鍛えてもらっていたのを思い出す。

その夜

 

「おいっす~。ちょっち遅れちゃったかな。」「いえ、ほとんど丁度ですよ。」「それで、作戦はどういう風にするの?」「いえ、それはネイチャさん自身に考えてもらうのが適切だと思いまして、作戦とは別にこれを渡そうと。」

そういって渡してきたのは、キノコ型のエアクリーナーだtt

「エアクリーナー!?ちょ、イクノ、どうしたのコレ!?」「本来なら来月のネイチャさんの誕生日にわたそうと思っていたものなのですが、今回のバトルのことをかんがえて早めに、と」「いやいや、その、うれしいけど、その、いいの?」

「はい。以前よりほしいとおっしゃられていたので。」「いやはや、こ、こらどうも...。」「計算ではおそらくコンピューター周りのセットも含め6馬力アップが見込めます。この辺りはまた現車あわせをしてもらう必要がありますが、これで勝率はあがるかと」

「...なんだか悪いなあ、こんなにいいものもらっちゃって。」「これはネイチャさんのため、という意味もありますが、地元のプライドを守りたいという意味もこめています。下りは任せました。何かあれば連絡してください。では、ご武運を。」

「うん...ありがとう。あたし、勝つから、イクノも勝ってね。」

  

    交流戦まであと二日

 

次の日の夕方、少し早めに切りあがった仕事から帰ってロードスターの主治医の町田さんの所へ行ってみる。

「こんにちはー。」「お。きたね?待ってたよネイちゃん。さ、ガレージの方持ってきて。」「へ?えっと、あたしまだ何も...」「いんや、イクノちゃんから話は聞いてるよ。そのクリーナーの取り付けだろう?さ、早く始めちまおうぜ。」

そんな至れり尽くせりあるかぁ!と心の中でイクノに感謝しつつ、取り付けとセットを主治医の町田さんたちに進めてもらう。

結果、6馬力どころか9馬力ものパワーアップで、約165馬力をマークした。

「Oh...」「なっはは。言葉も出ないかい?さ、今度のバトル、俺たちも見に行くからな。勝っても負けても、ダサいとこだけは見せんなよ?」「は...はい、ありがとうございます!!」

勢いで頭を思いっきり下げてしまう。ここまで期待背負って負けられない。地元の維持と、みんなの意思。背負うものが自分のちっぽけなプライドだけじゃなくなった。勝負は明後日。

そこまでに腕もついていかせる。これはもうあたしだけの戦いじゃない。

 

   交流戦まであと一日

 

本番の日は休みだから、昼間にタイヤ交換の予約をしておいた。すなわち今のタイヤはぼろにしてもOKということである。仕事をいつもより遅いくらいの時間に終えて帰ると、すこし作戦を考えてみる。

弱点はやはり車重だろう。こちらはあたしふくめ1トン強の車重にたいして、相手はイクノ曰くターボでがちがちのロールバーまである。なら、考えうる策はひとつ。今日は定峰で練習して、そして明日。きっと大丈夫。そう体に言い聞かせながら、夜を過ごした

 

   交流戦本番

 

昼間にタイヤの交換はすませた。新品のスポーツタイヤとエアクリーナーを引っ提げて土坂へ赴く。

「おいっす~。マチタンはまだ来てない?」「まだ来てない...あっ!見て!」「みんなこんばんわ~」「これで全員ですね。」「んにしてもすっごいギャラリーですなあ。こんな量は初めてかも。う~さらに緊張してきた...」

「リラックスだよ、リラックス、ほら、リラァ~ックス~」「んふ、ちょ、それキク、ふふふ」「ねえイクノ!ターボ走ってきてもいい?」「はい。これだけのギャラリーですから、気を付けてください。」「私も行く!ネイチャは?」

「あたしはここで待ってる。タイヤ残したいからさ。敵チーム思いっきりかき乱してきてよ!」「私も待っています。」「わかった!よし!ターボバリバリ走ってくるぞ~!」

「ネイチャさん、作戦のほうは?」「ばっちり。そういうイクノもダイジョブそうだね。」「はい。あとは本番を待つのみです。」

峠を包む熱気が徐々に増していく。いよいよ本番だと理解させられる。この高揚感を収めるには、もうバトルしかない。ふたりして、その時間を待つ。

--すると、見覚えのあるマシンが視界に映り始める。グリーンスターズ御一行、到着だ。降りてくると、180の男が話をはじめる。

「わるい、遅れたか?登り代表が遅刻してな。」「それは悪かったっていったろう、相沢。」「ああいや、ぴったしくらいですよ。それにそっちの練習時間が削れる分にはメリットなんですし。」「ま、そうか。そしたら、はじめはつるんで走って、本番は10時からだ。」

「はい、先日の通りですね。」「こっちの代表は180と俺、相沢和志が下り担当、こっちのGT-Rと兼井大地が登り担当だ。そっちは?直前まで開示ナシってんなら受け付けるが。」

「いんや、それじゃフェアじゃあないですし、こっちも。あたしとロードスターが下り担当で、」「わたしとインプレッサが登りです。」「よし。そしたら、十時までは好きなようにしててくれ。俺たちもそうさせてもらう。」

相手チームも、代表の二人以外はクルマに乗り込み下っていく。こちらと策略は同じ、万全の状態で挑むようだ。

 

すると下り代表と名乗った相沢さんがこちらへ来る。

「相沢だ。よろしく頼む。」「はい、よろしくお願いします、と。なにも、名前まで開示することはなかったんですよ?」「いや、それじゃあまり意味がなくってな。俺としては、この埼玉県内の最速を目指すうえで、うまくいこうが失敗しようが、名前が残るようにしたかったんだ」

「ほほお?それはどうして?」「自分の名前が知れれば、それに挑もうとする人も増えるからな。俺はチームのみんなで強くなりたいから。そういう意味では県内外から挑戦をしてくれる人もいて成功しているって言える。」

「ふむ。いやはや、まぶしいですよ、そんなに前向きで。あたしには到底届かないですね、そんなまぶしさには。」「そんな前向きなものでもないさ。結局のところ、俺はあぶれもんだ。だから、そんな俺を手助けしてくれた人に見限られないよう必死なだけなんだと思う。」

「案外、そうでもないかもですよ。リーダーとして信じれる人だと思って付いてきてる、って。そういう風にもみえましたけどね。」「...そうか。なんだか悪いな。言わせたみたいで。」「いえ、お世辞なんて言ってませんし。それよりも。あたしは今日のバトルが楽しみなだけですよ」

「ああ。お互いにとっていいバトルにしよう。」

そういうと、相沢さんはメンバーのところへもどっていった。

 

次第に増えていくギャラリーの中に見知った顔が紛れているのに気付く。その見知った顔はこちらを見つけるやいなや駆け寄ってくる。

「ネイちゃん!探したぞあちこち!」「あ~はは..探さないでもいいんに、町田さん、きてくれた...んだね。」「当然だ!勝っても負けても、このバトルだけは見に来るさ。ネイちゃん、意気込みはどうだい?」

「ハッキリ言えば、あまり自分に期待はしてない。けど、期待をそこそこ背負ってるんですから、その分も頑張りは、します。けど、ほんとに期待しないでね?」「あっはは!たく、自信持ちなよ。なんせ俺たちが仕上げたマシンだ。勝てるはずだよ、ネイちゃんなら!」

「...そうまで言われちゃ引けないなぁ。頑張って走ってくるから、見守っててよ?」「おうよ!がんばれよ!」

そういうと町田さんはまたギャラリーの波の中に消えていった。...ほかのショップの仲間とかもいたような気がするけど、キニシナイ。

「とにかく、自分にできる最高のレースにする。それだけは絶対。そのためにも、ロードスター。あんたの力が必要だから。頼むよ。」

ひとっこ一人聞こえない。ただクルマとの一対一の対話をすませ、心を整える。

 

そして本番は、気持ち早くやってきた。

「それじゃあ、10時になるから、バトルを始める。みんな、車どけて準備始めてくれ!」[おおおおお!]「盛り上がってきたね~」「ネイチャ、イクノ、頑張って!」「リラックスだよ!」「うん、ありがとう。ふー...よし、行ってくる。応援、しててね。」

そういって歩いていく。観衆が沸き立って、一気に本番ムード。こちらも車を並べる とそのまえに

「位置はどうする?どっちが先でもいいけど。」「なら、1本目はこっち先行でもいいか?」「オッケー。じゃ、車並べちゃおっか。」「その前に、すこしいいか?君の名前を教えてほしい。これはチームとしてじゃなく、1人の走り屋として、だ。いいか?」

「...ナイスネイチャ。いいバトルにしようね、相沢さん」「ああ。ありがとう。」

クルマをパパっと並べる。

当然、緊張している。けど、同時にこの緊張という「圧」を心地よく感じている。

怖いは怖いけど、これほどの興奮は初めてかもしれない。勝っても負けてもこの感覚をわすれないようしっかり浸っておこう。

「カウント5秒前!!」

---次第に、感覚がさえていくのがわかる。まるで1秒がずっと長く感じれるほど

「4!」

作戦はできてる

「3!」

マシンは完璧な仕上がりだ

「2!」

視界は夜とは思えないほどクリアだ

「1!」

     「GO!!!!」

 

クラッチを離して加速を始める。前のマシンの方がホイールスピンをしている。収束はかなりこっちの方が早いが、それがあっても加速でかなり負けてる。コーナーが近いのが救い。

そして初めにわかることとして、相手のマシンは若干ピーキーだ。踏みすぎればずるっといきそうな、けれどかなり高レベルで制御できてる。ただ、立ち上がりでのカウンターとかでは誤魔化しきれてない。対してこっちはどうか。かなり踏んでいける。それと、上がったパワーも予想より安定性に響いていない。

その割アクセルを開けやすい区間の離れ方も予想よりたいしたことがない。

「-いける。あたしの方がうまい。これなら後半戦...ツッコミを切り詰めるよりタイヤの温存を意識したほうがいい。」

 

「っちい。ついてくる。テクニカルコースのここにはあっちの方があってる。こっちも265馬力。トラクションもフラット。なら離せると、考えが甘かったか。フラットでピックアップのいいトラクションは唐突なオーバーステアを招く。これは事前にわかっていた

アンダーを強めるセットにしたけど、これがあだになってる。S字複合での車体の反転が、ベストな動きでも相手に遅れを取る。それだけじゃなく、相手はタイヤの温存までできる走りだ。こっちも温存してるけど...それじゃ勝てない。二本目、後追いにかける!」

 

「二本目はいったねえ。疲れないかな?ターボ、全開バトルだと、一本で疲れちゃうもん!。」「たしかに、ターボさんは二本目にもつれ込むとだいたい負けていますからね。」「けど、ネイチャはかなり持久戦もできてるからなあ。二本目じゃ決着つかないかなあ。」

「ええ。お互い疲労はしてなさそうですし、三本目も確実でしょう。」

 

「二本目始めます!5!4!3!2!1!GO!!」

二本目。先行は苦手だけれど、作戦はある。ついてきなよ、こっちのターンはもう始まってるからね。

 

(二本目に入ることは想定内だった。でも、今、想定より明らかにタイヤが削れてる。どこも不調はない。であれば、俺がプレッシャーに負けている、ということだ。でも、相手のペースが落ちている。ツッコミがあまい、そこだ!)

 

「かかった!」

インを差そうするのを確認して大胆なコーナリングへ切り替えてブロックして、インとアウトの逆転するコーナーで離せば!

 

「ぐ、レイトブレーキングを無駄遣いさせられた、もう一発、全開区間先の左で!」

 

そう、するだろうね。プレッシャーはやばいけど、感覚は信じられないほど冴えてる。さあ、いくよ...!

 

(インを、開けた...?突っ込むしかない、けど!)

 

もらった。

並びかけてくる。サイドバイサイドになる。そのタイヤのグリップじゃ、いけないはず!

 

「しまっ!滑る、もどれ...!」

 

相手はオーバーステアを出したけど、こっちは大丈夫。復帰したけど、あれじゃタイヤは削れる。三本目でどうか、と。

 

「3本目いきます!」

「相沢のやつ、不利だな。どう考えてもタイヤ差が響き始めてる。」「ああ。頼むよ、相沢さん、ここが勝負をかけられる最終段階だから...!」

「GO!!」

 

「相手、焦ってるなぁ。かなり無茶なプッシュ。おそらくこの感じであればマチタンのときと同じでいいはず。あとは精度の問題...!」

 

(タイヤはもうガタが来ている。レイトブレーキングをしすぎた、このままじゃ負ける、このままじゃ、ストレートでなんとか、こっちは260越えの馬力、ロードスターじゃ簡単には来れない、あそこでめいっぱい開ければ...!!!!)

 

「ストレートでなんとか誤魔化していても、ペースの落ち方は尋常じゃない。高速区間からのブレーキがさらにグリップに影響する---そこだ!」

立ち上がりでの不安定さを突く、左から被せる、このまえはコーナリングスピードの違いだけでいけていた。なら今回は、それ以上、コーナーのターンイン終盤でタッチ程度にサイドを引く。リアがグリップをなくして、グリップの残るフロントは回転で横を向く。

フロント部分で相手の頭を塞いでコーナリングスピードを落とす、これなら感性を生かしつつ反対を向けば...!

 

「な...そんな....スーパードリフトが...。

一つ目のコーナーでのオーバーアクションはブロックだけじゃなく、次のコーナーのフェイントモーションも兼ねていたんだ...こんな完璧なカウンターアタックが、俺に出来たろうか...すげえよ、あんた...」

 

 

------はぁ...勝った、のかな。正直、集中しすぎの疲れすぎで何にもわかんない、とりあえず、空気を吸おう。そうすれば整理つく...はず?

「お!出てきたぞ!すげえよあんた!あの相沢に勝っちまうなんて!」「え...えっと?」「んもう俺もゾクゾクしちゃったよ!」「すごいのね!私もぜんっぜん追い付けなかっていうのに、それを完璧に!!」「いや、ちょいちょい!あたしそんな!?」

「謙遜するなよ!ほら勝ち誇って!すげえことしたんだぜあんた!」

訳もわからないように歓声を浴びせられる。そうした中でようやく整理できた。勝ったんだ。埼玉一っていわれたチームに、あたしなんかが。

「負けた...な。まるで文句のつけらんない勝負だった。ともかく、これで県内最速のプロジェクトもおしまいか。」「そんなことないっすよ相沢さん!またリベンジすりゃいいじゃないですか!」「...けど、俺にはもう」

「心配すんなよ!俺たちも手伝うぜ!また腕ぇ磨いてこうぜ!」「...え?」「僕も手伝いますよ!勝負になるかわかんないっすけど、このまままけっぱは悔しいですから!」「...いいのか?俺は、負けたんだぞ?」

「関係ねえよ!お前は俺たちチームの誇りなんだ、俺たちをここまで成長させてくれたんだ、このままやめるなんて言わないでくれよ!」「...そう、か。そうだよな。...まだ、俺なんかのワガママに、つきあってくれるか?」

「当然ですよ!リーダー!」「...ありがとう。俺まだやってみるよ。けど、まだ登りもあるんだ。これのあとにやらせんのはちっと荷が重いからなぁ。っと、噂をすればなんとやら。」

「よ、相沢。派手に負けたみたいじゃねえか。」「ああ。わるいな。」「ま、登りはまかせな。勝てるかかなり疑わしいけど、やってみる。」「ああ...頼んだ。」

 

「や、イクノ、登りはできそう?」「ええ、作戦は練ってあります。一本でおわらせてきます。」「言うね~。見させてもらうよ?」

 

「登り担当の兼井だ。よろしく。」「イクノディクタスです。こちらこそよろしくおねがいします。」「さぁてあたしの仕事は終わったし、じっくり見物かなあ。」

「カウント始めます!5秒前!5-----4----3---2--1-

GO!!」

 

後追いを選んでくれたのはこちらとしては好都合でした。相手はハイパワーながらかなりうまいこと付いてくるいいドライバー、ですが、それが命取りです。

 

「いいぞ、このペースなら勝てる...相沢の仇は、俺が...!」

「甘いですね、おそらく、このままではついてこれない---」

一瞬でいい。制動力の働かないギリギリまでブレーキを踏みこむ。このコースの中で最高速を記録する区間でのフェイントブレーキング---逃れられない

 

「!?なに!?.....畜生、フェイントだ..汚い手ェ使いやがって、逃がす....か....

なんだ...よ、あのペース、ありゃ、フェイントなんかなくったって、勝てたんじゃないのか....?」

 

「勝った勝った~!ターボたちの勝ちだ~!」「アンタは走ってないでしょうが」「すごいよネイチャもイクノも!次はわたしも頑張らなきゃなあ。」「計画通りにいってなによりです。それよりも、今考えるべきは~...」

「あはは~...こりゃ簡単に帰してくれなさそうだ...」

こうして、あたしたちの(奇跡的にうまくいった)初の交流戦は幕を閉じた。今日の体験をどう生かすか...そこも成長のカギになる、とかも考えたけど、それよりもあたしの頭には、このギャラリーの対応の仕方が問題になりそうだな~とか、そういうことを思ったのであった。

P2 完。

P3へ続く

 

 

 

 

 

 

      




あとがき
書き溜めなのですぐに投稿できました。
本作を書くにあたってハイパーレブを何冊か購入しました。51号と73号、102号です。ロードスターについての知見が薄いので購入したのですが、ハイカムがはいってるくらいの馬力だと今更ながら知りました。
軽量コンパクトが武器のロードスターですがハードトップとボディ補強があるとさすがに1000キロいってそうなので、軽量化の話とかそのうちあると思います。書き溜めは5話までなのでそれ以降ですかね。

用語コーナー
type-X
180SXの後期型のターボグレードです。

ロールケージ
ボディを補強するパーツです。

クラッチ
回転の伝達、切り離しを行う機構です。車においてはシフトチェンジの際にクラッチを利用し駆動力を切り、負荷を抑えたりします。

ホイールスピン
タイヤが地面に食いつかず、空転をすること。

ピーキー
扱いが難しく神経質になるもののこと。

カウンター
前回でも同様の単語があったが、今回は、コーナーでドリフトをして、その制御のためにハンドルを反対に切ることを指す。

オーバーステア
コーナーでリアタイヤがすべりコーナー内側に向かって行き過ぎてしまうこと。反対にアンダーステアはフロントタイヤが滑りコーナー外側に膨らんでしまうこと。

プッシュ
ペースをあげること

ブロック
相手の進路を塞いで、速度を落とすこと。公のレースでは違反行為として扱われる。(競馬で言う斜行のような行為)

サイド
サイドブレーキの略。パーキングブレーキ、ハンドブレーキともいわれる。

フェイントモーション


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P3 余韻に浸る間もなく

かなり遅くなりましたが今後はさらに遅くなりますのでご注意を。


 

3、という数字は、どこか嫌に思ってしまう。それは、これまで生きてくる中で3、という数字がおおかったから、というのが一つ。

福引をやるにしたって、競争をするにしたって3に選ばれることが人生の中で特段多かった。

そして最近、夢を見る。そんな「3」の夢を。

何度も何度も、嫌と言うほど、自分のものですらない記憶がリフレインされる。あまりに鮮明に、まるで語られるように、ターフの上に自分を見る。そんな夢が―――

 

 

ガツンと、また音が聞こえそうな頭痛が目を覚まさせる。昨夜セットした目覚ましがちょうど朝を知らせてくれている。そういえば、時折起きるときにくる頭痛もストレスだ。ほんの一瞬、目覚ましを止めたころにはもうなくなっているけど。

それが週に一回はあるからむかつく。なんかの病気かと思って調べてもわからないし、放っておいてるけどこれもイラつく。

「きょう...やすみ...だっけか」

寝ぼけた頭をクリアにするために顔を洗いに行く。そしてすこし寝ぼけが収まると、昨晩のことを思い出した。あんな興奮初めてだった。

自分のポテンシャルを出し切って、どうやって勝とうか頭を振り絞るみたいにつかって、最後にはなにもかも吹っ切れるくらいの高揚感だった。

「あのときだけは...キラキラ...出来てたかな...」

ぽろっと、そんなことを漏らす。小学生とかのときに抱いてた、夢。もう捨てられたと思ってたのに、まだどこかそれを夢に見るあたしがいるらしい。

二つの夢。望むことと思い出させること。全く違う夢だが、どこか繋がる気がする。

朝ごはんを用意しようと思ってリビングダイニングに行き、テレビをつける。

今朝は安くなっていたパンを食べる。期限が今日までなので、パパっと食べてしまおう。実家を出てからは自炊の回数も減ってすこし手短になりつつある。夜と土日くらいはしっかりするものの、悪い傾向だと自覚する。

そうしてバターをつけたパンを頬張っていると、気になるニュースが流れてきた。

「トウカイテイオー、引退を表明...か。」

そういってニュースでは会見の様子が流れてきた。どうやら6年もの間最前線で活躍していたらしい。テレビに映る会場にはこれでもかと記者がおしかけて我先にと質問を投げかけ、

それを慣れたように受けるトウカイテイオーとその担当「トレーナー」の姿があった。

「本当のキラキラって、こういうのを言うんだなぁ...また自信なくしたかも。」

自分の勘違いが恥ずかしくなる。あんなのはただ...ちょっとちやほやされているだけで...なんでもないんだと、再確認した。

記者会見の様子を流し終えると、テレビとしてはそればかり取り上げてもいられないので、5月1日の天皇賞春を引退レースとすることを告げるとすぐ次のニュースになった。

ちょうど食べ終わったので、テレビをけして着替えて、朝の散歩兼買い物に出かける。財布とMD式の音楽プレイヤー、それ用のイヤホンをとって出て、外に出てカギを閉める。

下に行って、ふと止めてあるロードスターに視線をやる。普段はシートをかぶせてあるけれど、それでもあたしは、そこに目を向けずにいられなかった。

「なんでもないなんて言わない方がいいよね...アンタは...アタシのために頑張ってくれたのにさ...。」

そう言うと、イヤホンをつけて音楽をつける。

商店街までの道のりもずいぶん見慣れた。2、3年はこのあたりに住んでいるのだから慣れて当然かもしれないが、やはり最初は不安が強かっただけにすこし安心したようにおもう。

ここの商店街は、地元の歩行者天国的な雰囲気のあるタイプじゃなく、道路横に歩道があって、そこに八百屋やらが立ち並ぶ形式。今じゃ馴染んできたけど、やはり十数年の記憶のせいで違和感は否めない。

目的の八百屋に近づいて、音楽を止めてイヤホンを外すと、今朝も3、4人中外にいるようすがうかがえる。行きつけ、という概念に抵触するくらいにはよく来ている店で、こちらも顔を覚えてもらって訪れると

「おおネイちゃん!いらっしゃい!今日はずいぶん早いなぁ。」

こんな風に声をかけてもらえる。 地元ほどの付き合いじゃないが、半年もしたころにはこんな雰囲気だった。

「おっす~。いんにゃ、今日はやけに寝覚めがよかったもんだから、散歩がてら、と思ってね。健康寿命とやらにもいいらしいし、それに冷蔵庫には昼を乗り切れる食料もないもんで~」

「なんだうちのカミさんみたいなこと言ってぇ。ま、そういうことならゆっくり見てきな!まだ客は少ないから新鮮でデキのいいのが残ってるぜ?」

「お~。朝っぱらだとそういうメリットもあるからな~。どれどれ」

 

そうして目的の品を大方買い終えると、並びの古着屋に立ち寄る。来たばかりのころに、ここで手伝いをやってた、「ヤマノマナミ」さんっていうウマ娘にこのあたりのことを教えてもらったことがある。

それ以来買い物帰りにはいつも立ち寄っている。

「マナミさん~?」

「ほいほ~い。ちょっとまってねっと。 はいはい、あ、ネイチャちゃん!早いね今日は?」

「今日だけで何回聞いたかな~、ソレ。」

「なはは~。ネイチャちゃん、いつもお昼過ぎに来てて、それがみんなにとっても当たり前になってきてるんだよ。きちんと馴染めてる証拠なんだから嫌そうにしないでもいいじゃない?」

「そーいうもんかあ...そう捉えると悪くない...のかな?」

「ま、ネイチャちゃんは、ヒトに好かれる才能、ってのは確かにあると思うな!話しやすくてなじみやすいし、それに~...」

「それに?」

「うんにゃ、なんでも~?ただ、最近のウマ娘は発育がよくていいな~、っていっこ違いとかなのにねえ?なっはは~」

.. 優しい人だけど、たまにスケベなのは、このひとのある種アイデンティティなのかもしれない。(その乳じゃヒトのこといえないだろうに)

「っと、わざわざ来てもらってこんな話じゃわるいね。この前、乗せてもらったクルマのことなんだけどさ、私もさ、あれ以来もうクルマの世界にゾッコンでね?私も車ほしいって思うようになったんだよ。」

「へえ。マナミさん。アタシのロードスター乗るまで、そんなに興味ないカンジじゃなかった?(武内イ〇キかってんだ)」

「そんときの私と今の私はちがうのさ。でさ、ネイチャちゃんみたいな後輪駆動の車がいいなって思うのさ。バイト代も貯まってきてるし。なんてったっけ、トレノってやつ?とかボロだけど安いしいいかなって。」

「ほ~。1、2週間でそこまで。マジだね?」

「マジマジ」

「ふむ、なら来週あたり、中古車屋でも回る?手伝うよ、あたしなんかでよければ、ダケド。」

「お、ほんと?よっしゃ!なら来週の日曜日、開けておいてね!約束だよ!私、約束守らない人と煙草吸う人はキライだからね!」

「わぁわかりましたからそんなに盛り上がらないでよ。あたしはカルくついてくだけなんだからさ。」

「うん、それでも私超うれしいよ!」

「マナミ~。ちょいと来な~」

「ありゃお母さん。は~い!それじゃネイチャちゃん、細かいことはメールで!それじゃ~」

「は~い。まったく、元気のいい人だこと。こっちのほうが年下のはずなのに、気合負けしてるって感じ。」

けどまあ、たまにこうやって買い物をしつつ商店街をまわると、童心に帰れるというか、元気をもらえる。ナイスネイチャの在り方の原点はやっぱり、こういうおっちゃんおばちゃんのいる商店街にこそある、なんて思う。(それってどうなの)

 

そうして音楽を楽しみつつ帰っていると、アパートの駐車場にロードスター、セフィーロのならびにS13を見つける。持ち主と思われる帽子の似合うウマ娘は、こちらを見つけて手を振る。音楽を止めてイヤホンをポケットにしまい声をかける。

「おいっす~。どうしたのタンホイザ。今日は記念日かなんかだっけ?」

「こんにちは~!そうじゃないけど、ヒマだったし、一緒にご飯でも、とおもって。どうかな?」

「お、いいですな~。んじゃ、これだけパパッとしまってくるから、まってて~」

 

「今、馬力いくつ出てるんだっけ?このS13。」

「う~んと、180ちょい位...あ、前にちょっとセットを変えたから、175くらいと思うけど、それがどうしたの?」

「いや、前にバトルしたとき、結構加速で離されてたからさ。やっぱSRはいいエンジンだな~。アタシのB6じゃそこまで簡単に出ないもんなー。」

「けど、ネイチャのロードスターは軽いし、それに足も私のS13より煮詰まってるし。ダブルウィッシュボーンだったよね?S13はストラットとマルチリンクだから、それと比べると足がいまいちになっちゃうんだよね~」

「ま、スポーツカーとして産まれた車と結果的にスポーツカーになった車の差なのかな。前に見たときはかなりイイ動きしてたし、ぼちぼち調整してけばイイとこ行けると思うよ?上達も、ここらへん早いし。」

と、あたし達にとって他愛もない話をしながら窓の外を見ていると、一台、見慣れないクルマを見た。ホワイトとガンメタのツートンに横っちょには吸気口

「AW11かな。あ、ハイマウントストップランプ。ありゃ最終型だ。」

「このあたりのナンバーっぽいし、走り屋の車かな?」

「どーだろ。最近あんまし走ってなかったしわかんないなあ。」

「っとと、ここだった。はい、目的地到着~。ここのおいしいんだよね~」

 

「で、そのX-90がハイオク入れてて、もう珍しい続きで。」

「見たかったな~。県外ナンバーだったんでしょ?もう見れないだろーなー...。あ、時間大丈夫?結構引っ張っちゃってるけど。」

「う~んと、大丈夫!今日は夜までフリーだから大丈夫だよ!」

「それならさ、軽く中古車でも見ていかない?」

「いいけど、まさか、乗り換え...!?」

「ああいや、そうじゃなくて、知り合いがクルマ探してるらしくって、手伝いたいな~って。」

「そういうことなら、いこっか!時間はたっぷりあるし!」

「おっけ~。あ、会計、アタシ出しとくよ。」

 

「ほ~。結構見ないようなのもあるもんだな~。このビートなんか調子よさそうだし。」

「かわいいよね~。そういうのも。あ、FRがいいならこれとかどう?180!前期型だからCAだけど、ターボだしいいとおもうなあ。」

「お、いいね~。結構、180も10年落ちの車両が出てくるから、時の流れってのも侮れないな~。」

そんな風に見て回っていると、向かいの駐車場に、ボンネットを開けて中をいじっているヒトを見つける。どうやら、あの様子だとエンジンがかからないようだ。

「ごめん、アタシちょっちトイレに。」

「うん、わかった~。」

そういってその駐車場の方へ行ってみる。NB型のロードスターのようだ。

 

「えっと~、お兄さん?車、どうかされたんですか?」

「え?あ、いやっちょっとエンジンがかかんなくなって、でも、大丈夫、こんなもんなら...いって、っつう~。これで...」

しかし、その威勢に反してエンジンはかかる様子がない。

「う~んこの分なら...ちょっと見てもいいですかね?」

「いいけど...全然わかんなくて...」

「いや、こういう場合は~..やっぱし、接触不良だ。これを、ぐっと...あれ、こりゃ接続かなり緩んでるな~。このまま、セルまわしてみて!」

すると、さっきまでの煮え切らない音とは違いしっかりエンジンがかかった。

「おお...ホントに治っちまった...」

「接続がかなり緩んでるから、早めにここの...このコードごとバッテリーとっかえちゃったほうがいいよ。」

「えっと、ありがとう!なんてお礼したら...」

「いや、そんなのいいよ、ただ、アタシはこのロードスターが気になっただけだから。アタシもNAだけど、ロードスターのっててさ、しっかりキレーに乗っててほしいなって。それだけ。お兄さん、走り屋の人みたいだし。」

「じゃあ、名前だけでも、せめて恩だけでも覚えさせてほしいんです。」

「だから、いいってんにな~。アタシ、ナイスネイチャ。それじゃ。」

「...!ありがとうございます...!」

そうして、そそくさとその場を去った。慣れないことするもんじゃないな~、と、そうおもった。

 

その夜はまた土坂にのぼった。そうすると今度はみんなが揃い踏みだった。

「こんばんは、ネイチャさん。」

「おいっす~。見慣れないクルマ二台くらい見たけど、あれは?」

「おそらく先日のバトルの噂を聞いてきた走り屋かと。すでに一度挑戦をうけました。」

「で?」

「勝利しました。」

「さっすが。うちのリーダー、頼もしい限りですわ。」

「いえ、相手はおそらくココが初めての方でしたので、当然の結果かと。」

「そっか。しかし、こうなるとちと気をつけなきゃだな~。これまでは多くてもアタシたちプラス一人だったし。」

――ふと、見覚えのある車を見つける。ホワイトとガンメタのツートンに横っちょには吸気口。そしてハイマウントストップランプ。昼に見たMR-2、AW11だ。

「あんたたちが、この前ここでソニックスターズを倒したカノープスって走り屋だよな。」

「...そうだよ。一応、ここであのチームと戦ったのはアタシ達だけど。」

「そうか。なら早い話だ。次の土曜日、俺とここで下りのバトルをしないか?」

「...挑戦、ってわけ。」

「ああ。ルールは昨日のルールと同じだ。どうだ?」

「断る理由はないかな。OK、受けて立つよ。けどその代わり、あんまりこのことは騒ぎ立てないでほしいかな。できればバトルのあとで。」

「了解した。俺は紅葉康介。また、土曜9時、ここで会おう」

そういうとMR-2に乗る男、康介はそのまま去っていった。

「間髪入れず第二バトルですね。」

「そうだねぇ。うんや、あれケッコー疲れんだけどな~。」

「けど、昨日の調子でいけば勝てるよ!レコード、すごかったしさ!」

「うん!ターボも手伝うよ!」

「あっはは~。なんで当の本人より盛り上がってるんだかな~。」

そうして、第二バトルの予定が建てられることとなった。しかし、相手はミッドシップ。かんたんには勝てないかな~。なんて思うけど、心のどこかじゃ、きっと勝ちたくてうずうずしてるアタシがいるんだと、なんとなく考えた

 




あとがき
執筆当時は4月16日ということで改めましてナイスネイチャ号34歳おめでとうございます。。シャルロットという競走馬は40歳まで生きた競走馬がサラブレッドの中で最長寿だとされているため、
すでにとっても長生きさんです。これからも元気でいてほしいですね。さて、本作の話に戻りますが、今回ウマ娘においてもオリジナルキャラを出させていただきました。「ヤマノマナミ」という名前ですが、埼玉の牧場に
真波というウマがいるというのを見たのと、ヤマノ、はぱっとおもいつきです。キャラとしては真希波マリイラストリアスと葛城ミサトと武内樹を足して三で割った感じを想定しています。今後も時々登場させたいと思ってはいます。
ほかのウマ娘ですが、現在は、セイウンスカイ、アドマイヤベガ、その妹にあたるウマ娘、それからまだ補欠的にですがナカヤマフェスタとシリウスシンボリを考えています。史実においてド主人公のキャラは、若干登場させづらいのが
公道レース作品として書いたことの弊害としてありますね。「関東でわざわざレースでなく走り屋をやっている理由」がないともやもやするんですよね。故にナイスネイチャを選定した面もあります。
先日ハイパーレブのGRヤリス号ボリューム2を購入したのですが、あまりチューンが盛んでないというか、専用設計エンジンの弊害が出ているなという印象でした。
というか、これは私見なのですがvol100前後と比べて少々装飾が派手過ぎるように感じましたね。
さらに関係ない話に飛ぶのですが、このシリーズをいったん完結させた後、首都高を舞台にした物語を作りたいと考えています。おそらくまだまだ先ではありますが、そちらもよろしくお願いいたします。
用語コーナー

SR
日産のエンジンのシリーズを指す。直列四気筒、DOHC(次項で解説)16バルブ(次項で一緒に解説)のエンジンのシリーズである。シルビアやその他の日産車に搭載され、高い強度を誇ることからチューニングベースとして活躍した。

DOHC、バルブ
バルブというのはエンジン内部に空気を送り込む際、また内部から排気する際にそれらを制御するための弁機構のことで、DOHCとはデュアルオーバーヘッドカムシャフト、つまりカムシャフトと呼ばれるバルブを押し引きする棒がエンジン上部に二つ付いたエンジンを指す。

ダブルウィッシュボーン
サスペンションの形式の一種。二つのアームでサスペンションを支えることから来ている。左右車輪を独立して稼動させられる独立懸架に分類される

ストラット
サスペンション形式の一種。安価かつ小型で単純なことから採用車種が多い

マルチリンク
サスペンション形式の一種。4つ以上のアームでタイヤを動かす。

ハイマウントストップランプ
高い位置に補助的に取り付けられるブレーキランプのコト。MR-2のAW11に搭載されるものは厳密にはハイマウントストップランプではないとされる。

AW11
トヨタ・MR-2の初代モデル。AE86などにも搭載された4AGエンジンと国産初のミッドシップ車両ということで人気でした。

X-90
スズキの小型車。コンセプトがあまりに奇抜だったためあまり売れずに終わりまし
た。

CA
日産のエンジンで、SR型の前任に当たります。

NB型ロードスター
二代目ロードスターのコト。リトラクタブルヘッドライトを廃止したり、ボディ剛性を高めたりして元のポテンシャルそのままに進化を遂げました。

ミッドシップ
車両の中心(またはそれに近い位置)にエンジンを搭載する駆動方式。


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P4 長期戦

いつもとノリは変わりません。


「そこそこかな~。明後日のバトル、どう?」

「どうもこうもないかな。自信はまだないけど、ベストは尽くすよ。」

「そっか、じゃ、ターボからアドバイス!ここぞってときは、車を信じて仕掛けてみるといいよ!」

「ほほ~。その心は?」

「ターボね、車って生きてると思ってるんだ!だから、思いっきり行くぞってときはクルマのことを信じれば、きっといける!ネイチャも参考にしてみるといいよ!」

「なるほどね~。クルマを信じて、か。」

すっと、ロードスターの方を見る。 今は、まるで眠っているようにしている。だけど...確かにこの車は、生きている。ターボの言葉はほんとうだと思う。

シートにおさまって、ステアリングを握っていると、だれにも聞こえるようなエンジン音とかだけじゃなく、深く、奥深くから声が聴こえる。

「それじゃ、ターボ明日早いから、これでね!」

「おいよ~。気を付けなさいな~。」

...信じられて、なかったかもしれない。そうだ、負けてなんかいない。あんたも、アタシも....

 

 

二日後。カーテンを開けて風に当たってみる。これほどまでに高揚することなんてない。頭を冷やそうと思ってたけど、ぜんぜん意味がない。冷水にでも頭つけるべきかな...

と、ケータイがピロンと音を鳴らす。メールかなんかだろうけど、どうしたんだろう。見れば[明日のことについて]というマナミさんのメールだった。

「しまったぁ...ぬけ落ちてたなあ...ネイチャさんともあろうものが...」

最近、変に忙しい気がするな... 

さて、晩御飯は景気づけに外で食べていこう。今日はまた負けたくない戦いなんだから、うんとスタミナがないといけない気がする。

 

「あれ、先に来てらっしゃいましたか。」

「おう。万一遅れても嫌だしな。」

「そっか。んならさっそく始めるとしますか。先行後追い、先行はちぎれば勝ち、後追いはべたづけるか、抜いたら勝ち。勝負がつくまで繰り返す方式で。」

「それは前に確認したろ。始める...ん...?」

3...いや4台車が上ってきている。

「おい、俺はギャラリーを呼んだ覚えはないぜ。それなのに、お前が来るってんはどういうことだ。」

「そう身構えるなよ。俺は、そこの嬢ちゃんに言われてきたんだ。」

「へえ、お前も美人だからって簡単にオトしちまうとはなかなかの口だな?」

「はっはは!そういうんじゃなくて、かるくそういう話をしただけですよ。」

「もう集まっていましたか。では、進行は私が。」

「ごめんね~イクノ。こういう仕事頼みっきりで。」

「いえ、気にしないでください。」

「うし。それじゃはじめよっか!ポジションはどうする?こっちが地元なんだし選んでもらっても構わないけど。」

「なら先に後追いで頼む。」

「よし、じゃクルマ並べちゃって!」

正直なところ、先行のポジションになることはなんとなくわかっていた。おそらくこっちのレベルを1本目で図る作戦だろう。

「カウント5秒前!4、3、2、1、GO!」

1本目、全力でやればタイヤを消耗する。相手の作戦がこちらの実力を見る作戦なら全開で飛ばすことはない。

 

「ほお...結構やるじゃねえか、嬢ちゃん。女だてらに走り屋やってるだけあるぜ。(ちょっち変な表現化もだが)だがこの程度じゃないはずだ。こんなもんなら県内最速と噂されたソニックスターズは負けてないはずだ。

ヘアピンと呼べるコーナーの存在しないこのコースでゼロカウンターの実現は難しい、ならあえて慣性を利用しカウンターで反転しドリフトをする...この芸当を、全開じゃないということと、タイヤ温存と両立する。ただものじゃないな。」

 

「二本目入ります!5、4、3、2、1、GO!」

「二本目、じっくり見させてもらうよ、その走り...!」

 

「へ、へへへ...すげえぜこのプレッシャー、こうでなくちゃなバトルってのは...!!興奮するぜ、今までのどの瞬間より...!」

 

うまい、コーナー、そこから立ち上がり、イーブンなようで、立ち上がりで僅かにあっちが速い。ミッドシップの恩恵か、4AG型のパワーかどちらにせよ、だ。辛いバトルになることは初めから予感してたけど、これは不味いかも...

...でも、初めに想像していたよりも距離が離れない。ミッドシップ故の弱点、ピーキーさが、ツッコミにわずかに影響している、いや、アタシの想定より限界が高いはず、でもこれなら勝負できる。

お互いにタイヤが万全な間は勝負を仕掛けられない。なら限界までもつれ込ませる。そう難しいことじゃないだろ...!

 

「三本目入ります!5、4、3、2、1、GO!」

 

「三本目に入ったか。まだまだここから、ってわけだ。悔しいぜ。俺はここでもうやられちまってたってのに。」

「こんばんは!先週は、話してませんでしたっけ。マチカネタンホイザです!」

「ああ、ネイチャさんのチームの。相沢だ。よろしく。 君らのとこの御頭は、結構なスタミナなもんだな。俺にゃ簡単にはまねできないな。」

「ネイチャがああやって熱くなるようになったのはここ最近のコトですけどね。相沢さんとバトルしたときのネイチャは、いままでとは違うカンジがしてましたし。」

「じゃ、今回はそうだと思う?」

「今回も、というより、今回の方が、さらにいままでとは違う感じがしますね。今回も、私はネイチャが勝つと思ってます!」

「そうか。俺もそう思うよ。この前、すこし彼女と話したんだ。ビックリしたな、なんというか。バトルしていた時の殺気にすら近いプレッシャーを放つあのロードスターのドライバーと、自然体な感じで話す彼女はあまりに乖離していたからな。

バトル前にも軽く話したけど、走り屋としてのオーラなんてこれっぽっちも感じやしなかった。はっきり言えば今でも同一人物か疑ってしまうほどさ。」

「そ、そんなにですか?私にはそんな風には見えないんですけどね~。」

「ま、本気でバトルしたやつ同士でわかることってもんだな。一度本気を見たからこそ今回のバトルも彼女が勝つってわかるよ。あれを超える走り屋なんて想像つかないからな。」

「でしょう?なんたってうちのダウンヒルエースですからね!」

 

ジリジリと、追いつめられるような感触。三本目ももう終わる。そろそろタイヤのグリップに怪しさが見えてくる頃合いだ。程よい温度のドライ路面、タイヤが垂れるタイミングは大体予想できる。




あとがき
いや...イベントストーリー...めっっっっっっちゃよかったです...。なんというか、キングとネイチャのなんというか自然体な表情で会話してる感じがもう...好きです。今回はそれだけです。

用語コーナー
スーパーチャージャー
過給機の一種で、ベルトで駆動する。レスポンスがよく、常に一定の過給圧をかけられる。

ここもこんだけです。


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