で、俺が生まれたってわけ。 (あかう)
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世界観、その設定

世界観設定です。
1、オリジナル登場人物について
2、今作品の世界について
3、「力」について
4、「種族」について



1、オリジナル登場人物について

 

 羅畏也 (らいや)

 

 種族: 神

 能力:定義、定理を操る程度の能力

   

 今作主人公にして作中最強にして世界のルール。かつて人が火を得て様々な物への恐怖心が薄れ、多くの神霊があ力を失い、どうしようもなくなった者達の祈りにより生まれた化物のような神霊であり、「どうにかして欲しい」という願いを叶えるために暴れ回り、それを諌めるため名前と神格を与えられ、妖神の羅畏也となった。人間に「妖怪」という種族名でも覚えていれば存在し続ける。また、羅畏也が存在する限り妖怪の存在は消えない。気分によって口調がコロコロ変わる。シリアスな時は大体「〜だろう」口調になる。作中では余り妖神らしい行動をしていないが、実は「妖怪への加護」「低級妖怪への一体化先の紹介」などを行なっている。ただし知っている存在はめっちゃ限られる。羅畏也が何か問題を起こした時は日本の神々が何とかすることが義務付けられている。

 

 

 鬼子母神 (きしぼじん)

 

 種族:妖怪

 能力:力を操る程度の能力

 

 鬼の始祖。力を恐れることにより生まれた。また、彼女が人間の男との間に作った子供が鬼である。力を操る程度の能力は、アクセラレータの上位互換と考えてもらいたい。羅畏也に軽くやられたが原作に登場していれば最強クラス。

羅畏也へのリベンジを期待しているが、いつやったところで2秒でやられる。鬼に対して絶対的なアドバンテージを持つため、鬼は基本逆らえない。普段は酒を飲むか鍛錬をするか。

 

 安倍晴明 (あべのせいめい)

 

 種族:半妖狐

 能力:物を複製できる程度の能力

 

 狐っ娘。人間と妖狐のハーフ。常にロリ。羅畏也には幻術が効いていなかったが、普通は成人男性に見える。物を複製する能力はフ◯ールミラーの下位互換。大量の式神はこの能力で量産する。ただし制限が強く、葉書より大きい物は複製できないし、生物はアウト、1日500回が限度。実は羅畏也がゆうかりんとわちゃわちゃやってる頃に幻想郷入りしている。羅畏也のことはいつかぶっ飛ばしてやろうと思っている。最近は手作りで式を作った方が早くなっている。

 

 

 ツクヨミ (つくよみ)

 

 種族:神

 能力:傷ついたモノを癒す程度の能力

 

 かなりのイケメン。今作品一番の被害者であり苦労人。基本的に全部羅畏也さんのせい。かつて羅畏也が暴れ回った時にはその能力で傷ついた大地を癒し続けていた。能力は生物に使えば外傷やストレスによる心的疲労(心の傷)を癒すことができる。物体に使うと破壊される前の状態に戻すことが出来る。ただし一度に癒せる量に限度があり、17話で破壊された月を直すのには3ヶ月くらいかかる。最近はアルテミスちゃんの使いっ走りをしている。

 

 

 スサノオ (すさのお)

 

 種族:神

 能力:感情を反映させる程度の能力

 

 かなりのイケメン。後輩属性強めの年上(羅畏也より)ツクヨミやアマテラスと言った親族や羅畏也以外の神には後輩属性が消える。 昔は髭もじゃだったが、羅畏也が神格得てすぐの時に監視として体よく厄介払いされた結果羅畏也さんの圧倒的強さに憧れ弟子入りした時に剃った方が良いと言われ剃った結果めちゃくちゃイケメンになった。感情を反映させる程度の能力は自信の感情によって周囲に何かしらの影響を与える。オンオフは可能だが感情が大きくなり過ぎると制御出来なくなる。例としては古事記にも載ってる泣きまくって海を荒らした話。

 

 

 アマテラス

 

 種族:神

 能力:照らす程度の能力

 

 高天原では苦労人な方。だがツクヨミくんには負ける。能力は“分からない”ことを“闇”とすると知識の取得が可能。

そのため未来予知も可能。

 

 2、今作品の世界について

 

 今作品の世界は基本的に原作世界と変わりないが、妖怪がかなり強化されているため、人間にとってかなりハードモードで、妖怪にとっても下克上が単独ではほぼ不可能であり、低級妖怪にとってもハードモード。

 別天津神、カオス、ユミル、ヴィシュヌが同一人物であり、そこから各神話体系に繋がっていく。

 日本においては古事記、日本書紀に書かれている事と大体一緒。ただ羅畏也騒動があったため時系列が少しずれている。

 

 

 

 

 

 

 3、力について

 

 霊力

 

 神力を取り込んだ生物の命が削れると発生。

 取り込んだ神力の総量に比例し、削れた際に発生する量が増える。

 また、神力(真)以外への力の変質が可能。

 

 妖力

 

 恐れによって変質した霊力。

 エネルギーへの変換効率が良い。

 妖怪が強い身体能力を持つのはそのため。

 また、物質、熱への変換が可能。

 

 魔力

 

 外的要因によって変質した霊力。

 一度知覚すれば大気中の魔素からの作成も可能。

 熱量、物質への変換効率が良い。

 物体に宿すと思いのままに操ることができる。

 概念、世界への干渉も限定的に可能。

 

 呪力

 

 相手への害意によって変質した霊力。

 放つと幻覚等の効果をもたらす。

 熱量への変換が可能。

 物体に宿すと思いのままに操ることが出来る。

 世界への干渉も限定的に可能。

 

 神力(偽)

 

 無条件の信用によって変質した霊力。

 世界、概念への干渉が可能。

 人間のみ取り込める。

 人間の霊力が高いのはこの力のせい。

 

 神力(真)

 

 穢れる前の世界でのみ発生した力

 世界、概念への干渉が可能

 0から1を創造可能。

 全生物が取り込める。

 

 

 

 

 

 

 4、種族について

 

 人間

 

 現実とほぼ変わらない。

 この世界はハードモードなため、神の加護が強い。

 そのため強さがある程度加護に依存している。

 人間にとって余りにも害となる存在だと認識された場合に加護が切られるので、現実よりも犯罪は少ない。

 

 妖怪

 

 力の総量の6割以上が妖力で構成された者。つまり恐れられる者。

 自身の根幹が認識されている限り死んでも復活する。つまり羅畏也が生きている限り生き返る。生き返った際に記憶は抹消される。

 妖怪から漏れた妖力が形になったり、物に蓄積した場合も生まれる

 妖怪にとって害になる存在と羅畏也に見なされると加護を切られる。

 羅畏也の加護により強力になっている。

 

  鬼

 

  妖怪と人間が混じった存在

  認識されていなければ弱体化するが、

  認識されなくても生きていける。

  羅畏也の加護を得て強力になっている

 

 怨霊

 

 呪力の塊。

 死亡した人間の霊力が余っていて、一定以上害意があれば誕生。

 誕生後はひたすらに自らに満ちる害意のままに行動する。

 羅畏也の加護の範囲外。

 

 神(偽)

 

 神格を持つ者。

 人の信仰が無いと消える

 

 神(真)

 

 神格を持ち、神力(真)を持っている者。

 穢れる前の世界で生まれた神。

 信仰がなくても生きていける。

 世界の創造が可能。

 

 評価




書き足すことが有れば随時書き足していきます。評価評価
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誕生、そして始まり

どうも、ROTROTです!
初投稿です!
ギャグは次話からになります!


 “妖怪”というものをご存知だろうか。

 この世に存在するそれらは、元は神々とは別に人々に信仰される神霊達であった。

 植物に生物、簡単な事象等に代表される些細なこともかつては信仰され、神霊を生み出していた。

 

 だが、人も馬鹿ではない。いつか──そう、火を、文明を得た時に気づいた。気づいてしまった。

「こんなもの、大したことない」と

 気づかれたらそれまで。多くの神霊は信仰を失う。信仰を失った神霊は力を無くしていった。残ったのは“恐れ”……“畏怖”であった。

 畏怖などという負の感情が神霊の神々しい姿を維持できるはずもなく、その体は異形へと変化した。

 するとどうであろうか、それがかつての神霊であるなどと露にも思わぬ人々は異形を見て、口々にこう言った。

「化物だ!」「化物が出た!」と。

 まぁ当然である。事実、化物以外の何者でもない。

 

 さて、いつの時代も、どの人種も、化物を見たならばやることなど決まっている。徹底的な排斥だ。人間は化物をどのような理由があれ許容することはないのだ。石を投げる、水をかける、火で追い立てる。そうして異形どもを排除しようとする……が、そんなことをされては異形も怒るというもの。

 信仰の力は無くなっているとはいえ、畏怖の力はあるのだ。なんとか奴らへ復讐しよう、と異形は躍起になり、行動を起こした。人をさらう。人を食う。人に嫌がらせをする等々。

 人は訳の分からぬそれらに対し、恐怖した、ひたすらに恐怖した。そんな中、誰かが言った。

「コレは妖怪の仕業だ」と。

 確かに彼らの行動は人にとって“妖しく、怪しい”事象である。

 その言葉を聞いた者達の恐怖心は”妖怪“という指標を得て、収束した。

 そして、それは新たな信仰の始まりであった。

 恐怖──畏怖による、新しい信仰。彼らは新たな力の供給元を得た。異形らはそのことに満足した。異形らは自らを妖怪と称し、力の名を妖力と呼び、人々への様々な行動を続けることによって畏怖を得ていた。

 

 

 が、

 そんな行動を起こすこともできない者達も一定数いた

 人間に愛着がまだあった者。

 恐怖すらされることもなく、どうしようもなかった者。

 嫌がらせができるような能力を持っていなかった者。

 

 それらは「祈った」。恐怖を得ることができずに、どうしようもなく。忘れ去られ、今にも消えようとしながら。

「どうにかしてください」

「助けてください」

 と。自分の体を削り人間どもの持つ霊力に見立てて。

 するとどうなったか。人々の脆弱な霊力でも神霊を生み出せる。そんなことを元とは言え今度は神霊が自らの体を用いて行ったのだ。

 削られた体が集まり形を成してゆく。異形をミキサーにかけスムージーにしたような液体が固体へと変わり──色を帯び──目を開いた。

 

 さあ、怪物の誕生だ。

 

 黒曜石が如く漆黒の毛並み。

 その先端はまるで蒼穹に浸され、滲んだように青が広がっており、悍ましさと美しさが同時に存在している。

 威圧という言葉をそのまま表したような純粋な恐怖を与える金色の双眸。

 樹齢数千年というような大樹すら紙のように切り裂く凶爪。

 山をも超え、天にも届くか、とも感じ取れるほどの巨体。

 そのような犬とも狼ともいえぬ怪物が生まれた

 

 怪物は暴れに暴れた。

 山を蹴飛ばし大地に大穴をあけ、地割れを蜘蛛の巣のように引き起こし、

 暴風を起こし、雷を呼び、大氷塊を降らせ、

 災厄という災厄を全て同時に引き起こした。

 

 命が次々と消えてゆく。

 大地が力を失ってゆく。

 そんなことを八百万の神々も、黙って見ているわけにもいかなかった

 アマテラスをはじめスサノオ、ツクヨミ、タケミカヅチ、タケミナカタ、タケハヅチ、フツヌシ。

 しまいにはアマツミカボシすら出てきて怪物を抑えようとした。

 が、抑えられぬ。

 そのため世界の神々も戦った。

 ゼウス率いるオリュンポスの神々。

 オーディン率いるアースガルドの神々。

 ラー率いるエジプトの神々。

 アヌ率いるメソポタミアの神々。

 シヴァ率いるインドの神々。

 彼らも化物と戦うが、それはただの焼石に水でしかなかった。

 

 流石に不味いと思った神々の祖は化物と交渉することにした。

 

「神格と名を与えるので鎮まって欲しい」と

 

 そんなことを言われてしまったからには鎮まるしかない。

 神になれば、異形……眷属達に加護を与え、救うこともできるだろう、と。かくして、怪物は神格と名を得た。すると神性を帯びた怪物──ではなく神の姿が見る見るうちに変化してゆく。

 

 毛並みはそのままに

 目は優しげ──まだ怖くはあるが──に、体躯も人と同程度──それでもまだデカい──になり──

 

 

 

 

「で、俺が生まれたってわけ」

 

 

 

「ふーん」

 

 なんで?俺に話させておいてなんでそんな反応?

 

「いやふーんて何よふーんて」

「いや、あまりにも荒唐無稽すぎて」

 

 え?アレ?もしかして知らない感じっすか?

 

「えぇ〜?アンタ神でしょ?」

「うん」

「あの戦いん時おらんかったの?」

「あー、まだ生まれてないね」

 

 まぁ知ってたら聞かないだろうしな。

 

「大戦があったことは?」

「知らない」

 

 あぁ〜成程。随分最近の神か。

 

「うへぇ──マジか」

「マジマジ」

 

 時は経ち時代は縄文

 片や土着神たる少女……の見た目をしたモノ

 洩矢諏訪子

 

 片や妖神たる大犬……のようなモノ

 羅畏也(らいや)

 

 そんな二柱がクニの社にて駄弁っていた

 

「……しっかし、すげえ発展したなココ。随分前に来た時全然だったのに」

「でしょー! 私、結構頑張ったんだよ!」

「ふーん」

「あ! ふーんて何!」

「ふはははは! 意趣返しだバーカ!」

 ものすごく平和そうに駄弁っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………さて、唐突だが、平和とは突然壊れるものである。それはこの世界においても同様であった。

 古事記にもそう書いてある……まだ縄文に古事記などないわバカめ!

 

「諏訪子様ッ! 大和の神々が戦争を申しこんできましたッ!」

 

「………………は?」




感想、指摘等ございましたらお願いします。
マジで下さい!超下さい!
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謁見、そして戦争準備

まさか本当に読んでもらえるとは…
感激です!


「ふーん」

 

 

『………………』

 

 

 

「ふーん!?」

「いや大したことないなって」

 

 事実大したことはないと羅畏也は思っていた。

 神々など彼からしたらただただちょっと人間に毛が生えたくらいなのだ。

 実際に遠い昔に羅畏也は世界の神々のほとんどを倒した。

 

「いやいやいやいや、大和の神々だよ!?」

「大したことないよあいつら」

「はぁ!?」

「いい?! 大和の神々といえば凄まじい力持っているんだよ?! アマテラス神は太陽! タケミカヅチ神は雷! フツヌシ神は剣! そんな戦うために生まれたような力を持っている神もいるんだよ?! そもそも……」

 

 そんなことを知らない、知るわけのない諏訪子は当然焦る。

 どうにか羅畏也に理解してもらおうと例として高天原内でも強い力を持つとされている三柱を挙げた。

 だがその三柱すら既に瞬殺されているのだ。

 

「よし、俺が使者として行ってくるわ! ツクヨミ君いるかもしれんし!」

「ウェッ?! チョッ?!」

「じゃあの!」

 

 羅畏也はまどろっこしくなったのでさっさと戦争取り付けて戦わせようと考えた。

 自分は神なのだ、何を遠慮する必要がある。

 と、戦争を民に強要することには全く罪悪感を感じていなかった。

 なんなら”聖戦なんだから嬉しいだろ“とすら思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すわこ の 胃は 1000 の ダメージを うけた ! 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 所変わって大和の国、使者が来るという知らせが届き、すごい暇だった神々が暇つぶしに集まっていた。

『…………』

 重苦しい空気が流れる、と言っても神々の心中は非常に穏やかだった。戦争になったところで此方が圧勝する。と信じ込んでいるからである。まぁ事実なのだが。一点を除けば。今から自分達の胃に何が起こるかも知らずに……

 

 

 

 ドス、ドス、ドス。

 と使者の来訪を告げる足音が響く、それは上品さなど欠片もなく、とても神々の待つ場所へ向かっていると自覚があるとは思えない。「なんとも不敬なことか」と神々は怒った。殺してしまおうか、などと思った奴もいる。

 

 

 

 そして、使者がその姿を現した。

 

 

 神々は困惑した。

 犬が現れたからだ。

 まぁ犬ではないのだが。

 よく見れば犬にしては尾が長すぎるし、耳の形も少し違う。

 

「久しぶりだな高天原の諸君(クソ野郎ども)……ツクヨミ君とスサノオ君はいないのか」

 

 神々はまた驚いた。

 まさか高天原にいる犬でもないのに話出すとは思わなかったからだ。

 そして神々は怒った。

 あまりにも不敬すぎたからだ。

 神々の数柱が犬を殺そうと術を構える。

 すると、

 

「お? 俺のこと忘れた?」

 

 神々は頭を捻った。

 そして古代より存在した神々はその顔を真っ青に染めた。

 そして願った。

 コレがアイツじゃありませんように、と。

 ところで、一体彼らは何に願ったのだろうのだろうか。

 神は自分自身だというのに。

 

「俺だよ俺、羅畏也だ羅畏也」

 

 神々は終わりを直感した。

 喧嘩を売ってはならない存在に売ったのだ。

 当然である。

 

「貴様! 不敬であるぞ!」

『ちょっとお前黙ってろ!!!』

 

 殆どの神々は古代より存在するので羅畏也の恐ろしさを知っているが、知らない存在も当然いる。

 そんな神の一柱が声を上げた。

 が、神々によって咎められた。

 

「ふん、じゃアレだ、とにかく戦争は受けるから」

 

『』(絶望)

 

 神々は絶望した。

 羅畏也が戦争など、外宇宙の連中を連れてきたとしても勝てない無理ゲーなのだ。

 だが、ある一柱が希望を見出した。

 

「つまり……お前は出ないと?」

 

 震える声で誰かが尋ねた。

 そう、羅畏也は戦争などしない。

 やる時はそこに一方的な殺戮が展開されるだけだ。

 

「あーうん、そう。俺は参加しない」

 

 神々は歓喜した。

 

「気分次第でちょっと出るかも」

 

 神々は上げて落とされた。

 こう言う時は確実に出るのだ。

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 

 洩矢の国

 

「おーい!」

 

 羅畏也は帰ってきた。

 その足取りはとても軽く、何か“良いこと”があったのは確実だろう。

 諏訪子はそんな羅畏也を目撃し、胃が痛くなった。

 

「ど、どうだった?」

「んお、一週間後来るってよ」

「」

 

 あまりにも短すぎた。

 流石に一週間は短すぎた。

 当時の交通機関どころか道すら整備されてない状態でなにをどうすれば戦争準備が終わると言うのか。

 

「羅畏也さんは参戦するの?」

「面白そうだったら」

「そっかあ」

 

 諏訪子は少しの希望を持って羅畏也に聞いてみた。

 帰ってきた答えにソレって出るの?出ないの?という疑問を持ったが、多分出るんだろうな推測した。

 羅畏也はそう言うものなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「諸君!我々は大和と闘う!闘う意志のあるもの!私を信ずるもの!備えよ!大和に立ち向かう力を!」

『ウオオオオオオオオオッ!!!』

 

 演説を行った諏訪子の心は荒んでいた。

 どうしようかな、という思いが渦巻いている。

 だが、まぁどうにかなるだろう、と考えてなんとかこの胃の痛みを忘れることに努めた。

 

 

 

 

 

 

 




神格を得た羅畏也さんに勝てるのは日本神話では別天津神くらいです(今ではもう勝てない模様)

ちなみに羅畏也さんは人型になれるけど四足歩行が好きなので
基本的にはなりません





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準備、そして戦争

ギャグ…できてるかなあ




…できてる?

戦いって難しいね…


 羅畏也は休憩していた。

 

 終わったのだ。

 何が終わったか、と言うと戦争準備である

 前話から今までなんと約1日である。なんでそんなに早いのかというと、理由は当時の戦争そのものにある。

 当時の──つまり縄文の戦争は海を渡るわけでも銃を撃ちまくるわけでもなく、鉄すらないので棍棒で殴るか石を投げるくらいである。そのため戦争の準備など、

 

 1、棍棒作成

 2、柵作成

 3、その辺の良い石を集める

 4、食糧確保

 終わり

 

 である。

 さらに周囲妖神の眷属である妖怪達が手伝ってくれたので作業はとんでもなく加速。

 正直人間は柵作ってたくらいでその他は大体妖怪がやってくれた。

 ……何処からともなく土着神の声が聞こえる気がする。別にいいだろう、早く終わったんだから。

 

 と、こんな一日で終わったのでかなり余裕ができた。そのため国内の人民を余すことなく集めることができ、訓練するくらい余裕がすらあった。

 

 訓練と言っても人間と妖怪が楽しくじゃれあい(ころしあい)しているだけの訓練と言ってもいいか怪しいものであったが。

 

 さて、そんなことやってると六日間などあっという間に過ぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

(大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫)

 軍神、八坂神奈子の心中は、今すごいことになっていた。

 そりゃあそうである。進軍先にヤバい化物がいると知って進軍するというのは心に非常によろしくない。

 だがまだ救いはあった。

 一つは自軍の兵力である。

 多くの人、強力な妖怪達、河童製の装備、極め付けは鬼の始祖たる鬼子母神と。

 普通にやれば絶対に勝てる編成であった。

 

 

 …………奴が居なければ。

 

 もう一つは奴の言葉である。

『俺は参加しない』

 この言葉が神奈子にまだ平穏を与えてくれる。

 

 

『気分次第で参加する』

 という続く言葉を必死に思い出さないようにしながら。

 

 そんなことやってる間に開戦場所に着く既に相手方の準備は終わっているようだ。

 ああ、向こうから奴が観ている。と神奈子は気が気ではなかった。

 

 

 

 

 そして、開戦を告げる声が響く。

 

 

 

『ウオオオオオオオオオッ!!!』

 人間と妖怪が入り混じりながら突撃していく。向こうからの投石に何人か倒れるものの勢いは衰えない。

 投石を無意味と判断した洩矢の兵が突撃する。

 

 衝突

 

 人も、妖怪も等しく倒れゆく。

 血飛沫が舞い、臓物が地に溢れる。

 

 そんな中、鬼達──特に鬼子母神が圧倒的な力を見せた。

 鬼は全ての個体が返り血で赤く染まり、

 頭を砕かれようが腹を切り裂かれようが敵を薙ぎ倒してゆく

 

 そして────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダゴォンッ!!  

「おお、いるじゃん、面白いやつ」

 

 まあ、当然といえば当然だが────災厄は舞い降りた。

 勿論、鬼の始祖の眼前へ

 

「ッ!」

 咄嗟に防御を行った鬼子母神。

 

 その判断は正しい。とてつもない衝撃が彼女を襲う。

 

 味方を巻き込み、遥か後方まで吹き飛ぶ。回転し、地を削り、静止。

 

 何尺……いや里は飛んだ。そう現状を認識した瞬間目の前に現れる黒い影。それが死もたらす凶爪だと悟るのに刹那もいらなかった。攻撃を間一髪で避け、反撃の一撃を叩き込む。

 入った。確かに入った。自らの能力を確かに使い殴った。 殴ったはずなのだ。

 

 しかし、目の前の影──獣は微動だにしない。

 

 

 ──────────

 

 なんなんだこの化物は。なんなんだこの滅茶苦茶な強さは。

 

「ふはッ」

 

 あ、終わった。

 

 

 

 

 あぁ……沈んでいく……地面に……自らの血に……

 負けた、完膚なきまでに。

 勝てない、絶対に。

 この、鬼子母神たる私が。

 己こそが最強だと信じて疑わなかった私が。

 だが、私はまだ生きている。生きている以上勝機はある。

 次は勝つ。

 殺す。

 

「」

 

 “覚えていろ”。そんな捨て台詞さえ吐けない。喉がやられたか? 

 次こそは……

 次こそは……

 次こそは…………

 …………………………

 …………………………

 

 

 

 ──────────────────

 

 一部始終を見た八坂神奈子は絶望した。

 

 

「うわああああああああああああああああああッッッッ!!」

 

 

 負けたッ! 負けたッッ!! 負けたッッッ!!! 鬼子母神が! 鬼の始祖が! わかってはいた! 理解(わか)ってはいたのだ! (自分)すら軽く下す鬼子母神も主神(アマテラス)すら無力化する化物に勝てるわけないと! あいつ(羅畏也)が出てくるかもとも分かっていた! 心では理解していた! だが! 出たとしても鬼子母神(あいつ)なら少しは戦えると思っていた! 時間は稼げると思っていた! だが瞬殺だった! 1秒もかからなかった! 無理だ! 「……」負ける! 「様……」死ぬ! 

 

 

 

 

「神奈子様ッ!!」

 

「なッ……な、なんだ!」

 

 声が震えている。

 怖い、何だ、何なんだ。もう……もうやめてくれ。怖い

 

「洩矢諏訪子が一騎打ちを申し込んで来ました!」

 

「!!!」

 

 助かった! 生き残った! 身体を歓喜が包む。

 これは恐らく鬼どもの蹂躙によるものだろう。鬼子母神の戦いに集中していて忘れていた。

 

「受けよう、どこでやる」

 

 平静を装えた自分を褒めてやりたい

 

「ハッ! 場所は────」

 

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 

 

 

 一騎打ち

 

 洩矢諏訪子 対 八坂神奈子

 

 結果、勝者 八坂神奈子

 

 

 

 ──こうして、後に諏訪大戦と呼ばれる戦争は終わった。

 

 一柱の神に恐怖を。鬼の始祖に復讐心を残して。

 

 




戦闘シーン超ムズイんだが!?

皆さんよくこんなんかけたなあ

ちなみにどんだけ復讐心を燃やそうが勝てませんよ(無情)

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終戦、そして飛鳥

今回はギャグのはず…はず!


 羅畏也はゆっくりしていた。

 戦争は大和の勝利で終息した。となればやることは一つ。交渉である。

 交渉とは言っても……まぁ分かっているとは思うが、決して公平では──そもそも交渉と言えるかもわからないものだ。戦争後の交渉というものは常に「勝者から敗者への命令」である。

 今回の戦争は元より洩矢の地を求めての戦争であったため、大和が要求するものは、

 一つ、洩矢の国の土地の譲渡

 一つ、洩矢における信仰の譲渡

 一つ、洩矢からの羅畏也の追放および大和への移住

 となった。

 一つ目は問題なかった、主である諏訪子が譲渡すると言えば譲渡される

 二つ目が問題だった。信仰とは“人による無条件の信用”である。

 さて、いきなり戦争を仕掛けられ、多くの命を奪った存在を無条件(・・・)に信用できるか? 

 まぁ無理である。民は反抗する。なので表向きには神奈子を、裏では諏訪子を信仰するということに落ち着いた。

 

 三つ目は完全に神々の恐怖からである。封印しようにも抵抗される上不可能と言ってもいいなのだ。ならせめて遠くの地でコソコソされるよりかは目に見える形にしたかったのだ。

 しかし当の羅畏也はこれを拒否。

 曰く「自由をよこせ」

 そのため渋々洩矢外の、近畿、中国、四国、関東、中部、九州の内において、定期的に高天原、あるいは大和に訪問する限り自由に行動することを許した。

 まぁそんなこと羅畏也が守るわけないが。

 

 

 

「じゃあ、俺、行くわ」

「元気でね〜!」

「た、達者でな……」(二度と来るな)

「ん、お元気で!」

 

 と、羅畏也は走って行った。

 どこに行こうか、と考えた羅畏也は、まず大和へ行ってみることとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 羅畏也はものの見事に大和にハマった。

 思った数十倍程良いところだったのだ。

 そんなわけで羅畏也は大和に定住することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛鳥の世になり、羅畏也は信仰されていた。

 それはそれは物凄い信仰されていた。

 まぁ考えてみれば当然である。妖神の加護を得れるのだ。妖神たるこの大犬に対して礼をするだけで低級の妖怪に襲われ無くなるのだ。

 妖怪の被害が多かった飛鳥の世においてこの加護は必須のものだった。

 と。そんな中一人の僧が現れた。

 

 

「御免ください。羅畏也大神様はございますでしょうか?」

「……んぁ、呼んだ?」

 

 それは女だった。

 羅畏也は不思議に思った。

 女にしては格好が奇抜すぎるし、自らの加護が人間にしては異様に強いからだ。

 

「貴方様が羅畏也大神様でよろしいでしょうか?」

「いかにも」

 

 羅畏也“大神”という呼び名は基本的に浸透していない。

 大体の人間も妖怪も羅畏也様と呼ぶ。

 なので羅畏也はそこから女が神仏に仕える者だと理解した。

 

「では羅畏也大神様、お願いがございます」

 

 羅畏也はとりあえず話を聞いてみることにした。

 

 

 

「人間への加護をやめてほしいのです」

 

 

「ほう?」

「私は僧の身でありながら死を恐れ下法に手を伸ばし、下法を維持するために妖怪を匿っておりました……そして妖怪達を保護しているうちに妖怪も救われて良いのではないか、と思うようになってしまったのです」

 

 妖怪の救済は羅畏也の目的でもある。

 羅畏也は強く興味を惹かれた。

 

「続けてもろて」

「最近になり、飢餓によって寺を訪れる妖怪が多くなり、何事かとこちらを訪ねさせていただきました。そこで羅畏也大神様がご加護をお与えになられていると知り、このようなお願いをさせていただきにまいりました」

 

 羅畏也は訝しんだ。 

 加護と飢餓の因果関係が分からなかったのだ。

 

「何故俺が人に加護を与えると妖怪の腹が減るんだ?」

「? 妖怪とは人を食べるものです、食料たる人間に加護があると、食事ができないのです」

 

 羅畏也は本気で分からなかった。

 明らかにおかしいのだ。元来妖怪とは何も食わず生きていける。人の食料も食えるし、移住したばかりの頃人間と同じような生活ができるように羅畏也が教えたはずなのだ。

 

「何故、人を食う?」

「人は霊力を持っているのです」

 

 羅畏也は霊力の存在を失念していた。

 霊力とはほとんどの力の根源であり、人間がその命を削ることで発生するものだ。

 なので霊力を人間以外の生物が獲得するには人間を食べる必要があるのだ。

 妖怪が霊力を積極的に食べる存在になると言うことは想定外だった。

 だが、羅畏也は妖神だ。

 眷属の幸せを願う羅畏也は渋々人間への加護を弱めることにした。

 

 

「ん、そーだな。少し加護の質を落とそう」

 

 女が歓喜する。

 羅畏也はその姿を見て少し救われた。

 

「ありがとうございます!」

「ん、達者でな」

 

 羅畏也は女の歩行の速さに驚愕した。

 それから、今後どうしようかなと思案をしながら、人間への加護を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 用明天皇2年 物部氏が滅ぶと同時に妖怪による被害が爆発的に増加、人々は神の怒りだと恐れた

 

 




いやーやっちゃいましたね
この頃から陰陽師が出てき始めます
羅畏也さんは妖神ということは周知の事実だったのですが、
この後に蘇我家による神の排斥により妖怪を操る邪神とされます。
で、焚書が行われ、平安以降の人は羅畏也の存在すら知りません。

太子のくだりどうしよう


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登山、そして遭遇

諸説アリです!
がギャグ漫画日和見て知りました!


 羅畏也は困っていた。

 蘇我に排除の対象として目をつけられ住んでいた場所を追われたのである。抵抗してもよかったが流石に都を壊すわけにもいかない。そのため羅畏也は都を出て放浪していた。

 

 そんなわけで都の外を歩いている羅畏也。

 適当に東の方へふらふらしていると、他の山とは一線を画す大山を見つけた。

 それに興味を持った羅畏也はとりあえずその山に登ってみることにした。

 

 その山は思ったよりも登りやすかった。

 普通の山は基本的に断崖絶壁やら何やらがあるのだが、何故かその山にはそれが無かったのだ。

 そんなわけで割と早く登ることが出来た羅畏也。

 山頂に着くとついつい吠えてしまいたくなるのは狼の習性だろうか。

 

「ウォォォォォォンッ!」

 

 と、遠吠えを一つ。

 実は数百年ぶりに吠えた羅畏也。

 と、登り切って満足した羅畏也は山を降りようとしたが、今は夜だ。変な所へ降りてしまったら色々と面倒くさい。

 というわけで羅畏也は今晩はここで過ごすことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝が来た。

 朝が来たわけなのだが、羅畏也はとても驚いていた。

 この辺り一帯がとんでもない濃度の神力に包まれていたのだ。

 このまま行くとここで第二の日本神話体系が確立してしまうレベルの神力だ。

 そんなものが出来てしまうと色々面倒臭くなってしまうと考えた羅畏也はもう少しの間ここに留まって神力を吸収することとした。

 と、長い眠りに就こうとすると、

 

 

 

「おや?」

 

 羅畏也は喫驚した。

 それはそれは強く強く喫驚した。 

 

「おやおやおやおや? 君、ただの犬じゃないね?」

「そりゃあそうだろう何言ってんだアンタ」

「キェェェェェァァァァァァッ!! シャベッタァァァァァァァァ!!!!」

 

 とても五月蝿い。

 コレは変人の予感がする。

 

「いや普通に考えてこんなところにいるやつが普通な訳ないんだよなあ」

「ふぅむ、まあそうなんだがね?」

「で、どちら様? 何でここに?」

「よくぞ聞いてくれた! 私は聖徳王! 豊聡耳神子(とよさとみみのみこ)! 何故此処にいるかって? そこに山があったからさ!」

 

 羅畏也は大体理解できた。

 変人確定です本当にありがとうございます。

 

「ハハッ(乾)……元気がいいな……俺は羅畏也というモンだ……知ってるか?」

「……へぇ……羅畏也大神……邪神羅畏也と言った方がいいかな? ……こんなところで何をしているんだい?」

「邪神と言われるのはかなり不本意だな、まあ何、ここにいい感じに神力が満ちていたから吸っていただけだ」

 

 雰囲気が変わった。

 まぁ目の前にいるのが邪神だとわかったのだ。

 逆に警戒しない方が変と言うものだろう。

 

「力をつけて復讐でもするつもりかい?」

 

 と、そう言うと。

 羅畏也は

 

「ハハッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

 爆笑した。

 

 「この俺が!? 力をつけて!? 復讐!? そんな馬鹿なことがあるか? 自惚れか? 人間様は強いんだぞってか? この俺相手に成す術なく滅びかけた種族が! この俺より! 強いってか!?ヤバい! 面白すぎる! 笑いが止まらん! 腹がぶっ壊れる! 」

 

「そ、そう……なの……かい……?」

 

 どうやら威圧が漏れていたようだ。

 テンションが高まると羅畏也は威圧してしまうらしい。

 

「ん、そうそう」

「そうか……」

 

 よかった(色んな意味で)

 

「ふう、で? 他に何かあるか?」

「ああ、えっと、そうだ、不老不死について知っているかい?」

 

 羅畏也である。

 

「俺だな」

「あー違う違う。申し訳ない。質問が悪かったようだ。えー……不老不死になる方法を知っているかい?」

 

 と、羅畏也はこの前に来たあの女のことを思い出した。

 

「ふむ、この前そんな奴がいたな」

「いたのか!?」

「うむ、妖怪を匿っているという僧なんだがな」

「あっ」

「ん?」

「そいつもう封印しちゃった」

 

 どうやら異端と見做されて封印されてしまったようだ。

 惜しい者を亡くしてしまった。

 

「マジ?」

「うん」

「マジかー」

「じゃあ知らん」

「そうか……」

 

 流石にここまで来て何もないは可哀想だな、と思った羅畏也。

 何かないか、と自身の記憶を探る。

 検索結果は二つほどでた。

 「悟る」か「仙人になる」だ。

 難易度としては圧倒的に仙人になる方が楽なので、そちらを教えてやることにした。

 

「アレだ、仙人に話を聞いたらどうだ」

「仙人……仙人か!」

「ん、仙人。大陸の方には居ると思うぞ」

「わかった、感謝するよ!」

「おう、じゃあな」

「君は来ないのか? 私が君の名誉を回復させればまた都に住めるよ?」

「いや、まだ此処を離れられんからな。残念だが」

「そうか……」

 

 またも可哀想だと感じた羅畏也。

 これは慰めるしかない。

 

 

「まぁ……何、いつか会えるさ」

「そう……だね。そうだろうとも!」

「ん。不老不死になれりゃあ会えるだろ」

「感謝するよ! 優しき邪神よ!」

「邪神言うな」

 

 山を降りて行く聖徳王。

 羅畏也はその背中を目で少し追い、目を閉じた。

 また会えることを少しだけ思いながら、羅畏也は今度こそ深い深い眠りに落ちた。

 




ギャグが書けん!
原作はまだか!
豊聡耳神子のキャラについてはスマン!


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平安、からの人化

ギャグを書きたい!書きたいが!
原作入らないと殺伐としてる世界だからムズイ!


 羅畏也は目覚めた。

 目覚めたが、辺りの環境が変わりまくっている。神力が無くなっているのは吸収が成功したという証拠なのでいいが、山の様相がかなり大きく変わっている。

 まず羅畏也周囲の様子からして変わっている。

 簡単に言えば羅畏也が埋まっている。

 火山灰などが多く……というか全部火山灰であることからしてどうやら一度か二度ほど噴火したらしい。

 その上でここらの地脈を調べるとかなり弱っていたので、最近噴火したと考えられる。

 寝る前に噴火の兆候のほんの少しも感じなかったので数百、または数十年は寝ていたと思われる。

 と、状況を理解した羅畏也は山を降りることにした。

 

 そして羅畏也は驚愕した。

 道が出来ていたのだ。 

 それは人類が発展したことを表していた。

 そのことに多少の感慨を抱きながら羅畏也は下山した。

 

 

 そこから数日。

 羅畏也は怒っていた。

 何故か、それは桓武天皇が平安京への遷都を行っていたことに起因する。

 遷都が行われていた事を知らなかった羅畏也はかなり迷ったのだ。

 まぁそこは理不尽な怒りであることは自覚しているのであまり怒っていなかったが。

 と、そんなわけで平安に到達した羅畏也。

 まず門を見て一言。

 

「デケェ……」

 

 門が圧倒的にデカかった。

 本当に寝る前からしたら考えられない程デカかった。

 まさか人間がここまで成長しているなどとは全く思っていなかった羅畏也はまたも驚愕した。

 しかし眷属の加護を内部に感じることから妖怪絶滅奥義みたいなのは開発できていないらしい。

 

 門に近づく羅畏也。

 そこで門には門番がいることに気付いた。

 門番は面倒臭い。

 なので羅畏也は他から侵入できないかと考えたが、この都で色々やるには都合が悪い。

 と、そこで羅畏也は内部に侵入するため人化する事にした。

 

 そんなわけで門番に話しかけて中に入れるか打診したところ一瞬で入れてもらえた。

 こんな無警戒に怪しい者を入れるとは、ここの警備に意味ってあるのだろうか。

 

「外からいらした陰陽師の方ですね! どうぞお通り下さい!」

 

 と言われたがいかんせん羅畏也には意味が分からない。

 何なんだ陰陽師。

 

 

 

 さて、都の中に侵入することに成功した羅畏也は先ず、散策からすることにした。

 そこで羅畏也は都中に人の死体が積み上げられ、放置されていることに気付く。

 怨霊も大量、疫病も大量の死のバーゲンセールだ。

 何とかした方がいいんじゃないかと周囲にいた人間に声をかける。

 すると、その人間は

 

「アンタ陰陽師なんだからやってやりなよ」

 

 と、言ってきた。

 とは言われても羅畏也には陰陽師がわからぬ。

 だがまぁ恐らくこう言う怨霊やら死体やらをどうにかする仕事なのだろう。

 取り敢えず成仏させた。

 

 

 

 なんか雇われていた。

 羅畏也はなぜか雇われていた。

 都中の怨霊を祓って回っていたら突然豪華な服に身を包んだ明らかに他とは格が違う人間に占いを頼まれた。

 妖神の力で軽く占ってやるとその人間は大層喜び、羅畏也を雇った。

 なんでも

 

「安倍晴明以上の陰陽師やも知れぬ!百鬼夜行すら解決できるのでは!?」

 

 とのこと。

 誰だ晴明。なんだ百鬼夜行。本当になんだ陰陽師。

 

 と、そんなわけで雇われた羅畏也。

 そこで自身の能力を使えばいいじゃんと思いついた羅畏也は様々な事について調べた。

 そしてわかった事が、陰陽師とは陰陽道に基づいて仕事をする者の総称である事。

 百鬼夜行とは夜に妖怪が都を練り歩き、見たものに災いをもたらす現象である事。

 安倍晴明とは最強の陰陽師だと言う事。

 

 自らの眷属は何をしているんだと羅畏也は思った。

 見つけたら即説教してやるとも思った。

 そして夜。

 雇い主から護衛の任を申し付けられ、屋敷の屋根で待機していると、早速百鬼夜行らしきものが見えた。

 そこで羅畏也は説教のため、百鬼夜行に向かって走り出した。

 

『ギャハハハハハハハハ!』と。

 妖怪達は楽しんでいた

 この道には多くの怨念が渦巻いている。歩くだけで自らの力が強くなっていく。昼の時間、陰陽師どもに怯えながら過ごしているのも全てはこの時のためだ。

 教えてくれたアイツには感謝しなくては。

 

 

 と、いつも通りに列を成し都を闊歩する妖怪達。だが、この日は────

 

「おい」

 

 妖神がいた。

 

 なんだ。なんなんだコレは。

 体が尋常ではない勢いで震える。苦しい……息ができない。

 辺りが静まり返っている。先程まであれほど騒がしかったのに。

 一体何が起こって……いや。

 理解(わか)る。体で、本能で、理解した。

 跪かなくては。

 そこにいるんだ。神が、絶対が。

 

「お前、何をしている?」

 

 質問だ、質問された。

 答えなければ。

 

「ワエ……ア……ウ」

 

 ……アァァァァァァ! 言葉がでない! 

 怖すぎる!  

 ヤバい! 早く答えなければ! 

 

「はぁ……じゃあ、お前は"見せしめ"な」ザシュッ

 

 

 あ。

 

 

 終わった。

 

 ──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前で仲間が死んだ

 かなりの力はあったはずだ。鬼と戦い生き残ったと自慢していた。

 そんな奴があっさりと死んだ

 絶対者の質問に答えられなかったからだ。

 質問に答えなくては。

 

「ふぅ……じゃあ、お前」

「ハイ」

 

 口が勝手に動いた。

 自分の口ではないのではないかとも思える程スラスラと言葉が出た。

 

「何してた?」

「力を集めるために。此処には怨霊(エサ)が多く集います故」

 

 やはり口が勝手に動く。

 本当にもうこの口は私のものではなくなったのではないか? 

 私はこんな口調ではないぞ? 

 

「なるほど……じゃ、次だ。これを見た人間に災いが起きるっつうのは?」

 

 ……? 知らないぞ。なんだそれは。

 

「知りません」

「そうか……じゃあな」

 

 奴が背を向けた。

 今ならば……よし、体が動く、逃げねば。

 

「ああ待て」

 

 再び身体が凍りついた。

 死を覚悟する。

 

「何故こんな多くの妖怪がここにいる?」

「それは皆、空亡様の助言により集まっておりますが故」

「ソラナキ? ……どんな見た目だ」

「黒き服に金色の髪、それと赤い目を持った女の姿をした妖怪に御座います」

「そうか、助かった、有難う……あ、今後もコレは続けていいぞ」

 

 ……今度こそ行ったか? 

 よし、みんな! 逃げるぞ! 

 

 

 ────────────────

 

 羅畏也は思案していた。

 再び屋根の上に戻り先ほどの情報を整理しているのだ。

 

 流石に分からない事が多すぎる。

 ソラナキとか言うやつが元凶のようだが、いかんせん何が起こっているかわからない。

 ツクヨミかアマテラスならば何か知ってそうだな、と羅畏也は思ったが、神々に情報を乞うのは妖神としてキツイ。

 なので羅畏也はしばらく陰陽師を続け、何が起こっているのか究明する事にした。

 

 

 

 

 




その頃の空亡
「ふふふふふ!そろそろよ!そろそろで!……猛烈に嫌な予感がするわね」
ちなみに羅畏也さんが殺した奴は殺したように見えただけで生きてます

平安では戦いが多くあります!
ゆうかりん、ゆかりん、えーりんなど
原作キャラとも戦います!

羅畏也さんの能力も出せたらいいな(多分出る)


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隙間、それと殺生石

しばらくバトルかぁ…
バトルって言っても一瞬で終わっちゃうんだけど…


 羅畏也は牛車に引かれていた。

 依頼を受け、関東の方に向かっているのだ。

 別に受けなくてもよかったがあまりに依頼してくる連中がしつこいので受けてやった。

 

 今回はこの依頼についての話だ。

 依頼の内容は関東に現れた周囲のものを殺す石──殺生石。

 その調査、及び対処だ。

 羅畏也は非常に面倒だなぁと乗り気では無かった。

 だが、羅畏也も殺生石なんてもの万と数千の時、妖神をしているが見たこともない。

 もしかしたらソラナキに関連があるかも知れない。

 と、自分を納得させ、仕事に対する意欲を何とか引き出す。

 

 

 

 長い間牛に引かれ、やっと着いた羅畏也。

 と、遠目から殺生石を確認すると、確かにとんでもない物だとわかる。

 中に何か封印されているようだ。溢れ出る妖力が周囲の地脈に影響を与え、死の瘴気を撒き散らしている。

 どうするかと悩む羅畏也。

 海に沈めるか? などと考え始めた頃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガキンッ! 

 

 

 

 攻撃されたようだ。

 一瞬殺生石の影響かと思ったが、違うらしい。空間に裂け目が一瞬できていた。

 

「何者だ! 出てこい!」

 

 と、羅畏也は声を上げる。

 が、まぁ当然出てくるわけが無い。

 しかし、求められたのならば『羅畏也の前に出なければいけないのだ』

 

 ドサッ

 

 何かが落ちる音がした。

 そちらの方を羅畏也が向くと、

 

「ッ!? ッッ!?」

 

 金髪の女型の妖怪がワタワタしていた。

 金髪だが目の色が違う。ソラナキではないようだ。

 その様相に笑いが込み上げる羅畏也。

 耐えきれず少し笑ったところ、金髪に気付かれたようだ。

 

「……貴方、何をしたの?」

「答える義理はないと思うなぁ」

「そう……」

「で? 目的は?」

「そこの殺生石。その中身が欲しいのよ」

「ほーん? なんで?」

「妖怪と人間が共存できる理想郷を作るために手駒がいるの」

 

 羅畏也は感心した。

 まさか今時そんな事を考える妖怪がいるとは思わなかったのだ。

 人間との共存は羅畏也の目標の一つでもあったりする。

 なのでその思想を全力で支援したいが、羅畏也は気掛かり、というか気に食わない事があった。

 

「俺の許可なしにそんな事するつもりか?」

「ッ!」

「中身が欲しいって言ったな、やるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺に一発でも当てられたらな」

 

 軽いお仕置きを与える事にした。

 一応当てても当てられなくても中身はあげるつもりである。

 

 

 瞬間、周囲に衝撃波が起こる。

 

 妖力、神力、霊力

 三つの力が入り混じったそれは顕現した死として金髪に襲い掛かる。

 妖怪は咄嗟に空間のスキマに入り込み難を逃れるが、ソレも一瞬。

 

「『別空間への転移は0.1秒のみ』だ、違反すんな」

 

 

 バチンッ! 

 

 即座に現実へと弾き出される。

 

「!」

 

 妖怪は妖力弾による絨毯攻撃を行った。

 回避と被弾の境界を曖昧にした上で。

 “一発当てればいい”との言葉から導き出せる最適解の攻撃である

 

 

「ふぅむ……攻撃は素手のみ(・・・・・・・)だぞ、何やってる」

 

 妖力弾が全て霧消する。

 妖怪は今の言葉と状況で羅畏也の能力を察し、即座に相手の背後に移動。

 拳による攻撃を行った。

 

「」サッ

 

 まぁ、羅畏也は回避する。

 それに対して妖怪は非常に驚いている。

 回避と被弾の境界を曖昧にしたというのに回避されたのだから当然である。

 

回避は避けるってこと(・・・・・・・・・・)だからなぁ」

 

 この言葉で妖怪は全てを察した。 

 境界を再定義された、と。

 そして。

 

「残念」

 

 ガンッッッ!! 

 

 蹴りだ。蹴りが繰り出された。

 あまりにも重く、速い攻撃。

 たまらず妖怪は吹き飛ばされる。

 空間に空けた隙間を使い衝撃の吸収を図るが、0.1秒というのは一瞬なものですぐに弾き出される。

 そして。

 

 

 コツンッ

 

 と、妖怪の指が羅畏也に当たる。

 

『あ』

 

 なんとまあ呆気ない終わりだ。

 

『…………』

 

 非常に気まずい空気が流れる。

 いくら羅畏也でも空気くらい読めるのだ。

 

「お前の勝ち。よかったな」

「え、あ、はい」

 

 まぁ仕置きは済んだであろうと羅畏也はここで帰る事にした。

 

「ん、じゃあの」

「待って待って待って待って」 

「何?」

「貴方は、何者なの?」

 

 そこで羅畏也は名乗っていない事を思い出した。

 

「ほう? よくぞ聞いてくれた! 俺の名は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妖神! 羅畏也だ!」

 

 いつもの大犬の姿に変身する羅畏也。

 どうだこの姿。凛々しいだろう。と言わんばかりに胸を張る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッ!!!!??」

 

 

「うるさ」

 

 人間の姿のままでいればよかったと後悔する羅畏也。

 耳がキーンとすることに不快感を抱く。

 

「何、な、何で人の姿して、いや、なんでこんな、わた、私、不敬を、え、え、えええええええ!?」

「落ち着け」

「無理に決まってるでしょうがああああああああああッッッ!!」

 

 

 数分後

 

 

「なるほど……大体わかりましたが……そのソラナキとやらは知りませんわ」

「そうか……じゃああれだ、うん、殺生石あげるから、その……幻想郷? 頑張ってな」

「あ、はい。有難う御座います」

 

 

 と、まあ微妙な感じだがいいことを聞けた。

 幻想郷か、できたら行ってみたいものだと羅畏也は思った。

 そして名前聞いてなかったことを帰ってから思い出した。

 





境界を操られると流石に能力使わないとキツイですね

能力は分かった人は分かったと思います
本当にマジでチートです

あ、ゆかりんは羅畏也さんを知ってます
羅畏也さんを知っているのは縄文以前に生まれているか
昔の都近辺の情報を知れる妖怪のみです


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前触れ、そして誤解

はい、空亡戦…の
前触れ…前哨戦?になります


追記 現在こっから先リメイク中。今までも駄文でしたが更に駄文なのでそれでもいいって方は見てね。


 羅畏也は困惑していた。

 なんと朝廷────のお抱えの陰陽師である安倍晴明から呼び出しを食らったのだ。

 送られた書簡には“報告を求める“と書いてあったが、何の報告かが書かれていない。

 更に書簡には殺意MAXの呪術がくっついていた。ちなみに内容は即死である。コレはヤバい。確実にヤバい。

 だが呼ばれちゃった以上行くしかない。今の羅畏也は陰陽師の「理夜」として活動しているのだから呼ばれたら行く義務がある。

 一応言っておくが「理夜」は偽名である。「羅畏也」の名がバレたら多分都が恐慌状態に陥るからである。

 かつて羅畏也の名は完全に都から抹消されたが、いつぞやの少女が色々やってないとも限らないので念のためでもある。

 

 さて、そんなわけで今羅畏也は牛車に揺られ朝廷まで行っている最中なわけだが、牛車にも殺意マシマシの呪術が付与されている。

 どのくらいかというと強すぎて周囲に漏れ出すくらいには強い。

 人払いの結界でも貼られているのか牛車には誰も近づかないのはまだ良かった。

 ちなみに引いている牛も普通の牛ではなく式神のようなものらしい。

 

 しばらくして、羅畏也は平安宮に到着した。

 が、人払いの結界が平安宮全体に貼られている。

 この範囲と内部の霊力の探知の結果から、恐らく天皇も別の所にいる。

 非常に面倒な気配を察知した羅畏也だったが、進むしか無い。

 とりあえず無駄に豪華な門を潜り、指定された部屋へと向かう。

 人っ子一人いない宮中を歩き、張り巡らされた罠を掻い潜り辿り着いたその部屋では────男が待っていた。

 いや、よく見ると男ではない。もっと言うと人間でもない。

 待っていたのは妖狐の血を引いた少女だった。中々に高度な術だ。

 安倍晴明は人間ではなかったようだ。それは強い筈だ。

 しかし何故男の姿なんてしているんだ?と羅畏也は訝しんだ。

 

「よくお越し下さいました。初めまして、安倍晴明と申します……まさか此処まで無事に辿り着くなどとは思ってもおりませんでしたよ」

 

 晴明が口を開く。

 その少女から放たれる声は透き通るような低音だった。

 あの見た目からそのような声が出ると思っていなかった羅畏也は思わず面食らう。

 どうやら隠蔽術は声にもかけられるらしい。

 

「はぁ……どうも、はじめまして。私理夜(りや)と申すものです」

「おや、アレらについて何かしら感想があるかと思いましたが……無いのであれば、単刀直入に……」

「はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んでいただきます」

 

 

ザンッッッッッ!!! 

 

 

 晴明が両手を床に着き、その後跳躍。

 床には手を着いた位置から円形に剣が生えてきた。

 

 出会って10秒後に殺し合い開始である。

 まぁ既にわかりきっていたことではあったが。

 

 さて、足下から剣山が突き出てきたが、この程度は羅畏也にとって避けるまでもないことだ。突っ立っていれば剣の方が折れる。

 

 と、彼女は─────上か

 

 と、上を見てみると……そこには晴明と、それを囲むように夥しい量の式神が蝙蝠のように下がっていた。

 非常に気持ち悪いその光景。

 集合体恐怖症の人が見たなら卒倒しそうだ。

 

 そこで羅畏也はこう言った。

「『()()()()()()()()()()()()()()8()()()()()()』ってのはどうだ?」

 

 すると、羅畏也の言葉通り、羅畏也の視界内に存在した式神が全て8等分された。

 そこには晴明も含まれていた。

 彼女はいつのまにか式と入れ替わっていたらしい。

 

「ハァッ!」

 

 と、いきなり羅畏也の真横から声が聞こえた。剣を持って羅畏也に切り掛かってきている。

 いつの間にいたのだろうか。

 

 まぁだが、羅畏也の圧倒的硬度を有する体にその刃は届かず、折れる。

 羅畏也が破片を拾い上げると、それが中々の業物であったことがわかる。

 少女は泣いた。

 羅畏也はとりあえず少女を気絶させた。

 

 

 

 

 

 

「ううぅぅぅぅうううう……」

 

 縄で少女を縛るいい年した男。

 少女と言える年齢ではないんだろうが、見た目的には完全に犯罪者である。

 でも仕方ない。向こうから殺しに来たのだから。

 さて、なんでこんなことしたか目的を聞くか。

 

「はい、何でこんなことをしたんですか?」

「くっ、白々しい……! それは貴様が一番良く分かっているだろう!」

 

 これは完全に羅畏也を悪だと思い切っている。

 だが羅畏也はそんなこと全く知らない。

 

「いや知らないんですけど」

「しらを切るな! では何故貴様が来てから妖どもの力が増大しているのだ!?」

 

 羅畏也は驚いた。

 そんなこと全く気づかなかったからだ。 

 それもそのはず、羅畏也にとって妖怪はどれも等しく自らの子であり、どれも弱者なのだ。

 

「更に百鬼夜行が毎日のように行われているではないか!」

 

 羅畏也は驚いた。

 百鬼夜行を羅畏也は毎晩見ていたのだ。

 だからこそ百鬼夜行とは毎晩行われるものだと思い込んでいた。

 

「一体何人が犠牲になったと思っている!」

「いや……でも、俺じゃないんだが?」

「ぐっ……この期に及んで……!」

 

 いやそんなこと言われても。

 

 と、その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空が死んだ

 

 

「お?」




空亡戦に入る…予定
(空亡は瞬殺される模様)

多分能力の詳細出します

というか出します


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決戦(笑)、からの封印

はい、バトルです!
今回はひたすらに羅畏也無双回です!
そして空亡が可哀想な回です


 羅畏也は感心していた。

 敵の用意の良さにとても感心していた。

 前回、空が死んだと言ったが、アレは実際には違う。正確には「隠された」、もしくは「覆われた」と言った方がいい。

 つまり、天空と都が分断されたわけで、それがどう言うことかと言うとアマテラスの加護を完全に遮断されたと言うことである。

 そうなるとどうなるか。

 人間は普段アマテラスとツクヨミの加護を昼夜で交互に受けることで生活しており、それらに守護されることである程度妖怪達に対抗できるわけだが、今この瞬間にそれが消えたのだ。

 当然、地獄絵図が出来上がる。

 

 ────────────────────────

 

 人柱! そうか人柱か! 

 確か……人の命を直接霊力に変換して使う儀式、だったな。

 なるほど、大体わかってきた……“災い”ではなく“誘拐”──いや、“神隠し”か? 

 確かにアマテラスの加護さえ遮断すれば後はどうとでもなるからな。

 それに金髪、赤目、黒服……奴がソラナキだろう。

 本当によく計画が練られている。

 そんな頭いい眷属がいて俺嬉しい。

 

 

 ──────────────────────────

 

 

 

 闇に包まれた平安京。混乱し、次々と食われる人々。狂喜し、手当たり次第に人を食う妖怪。逃げようにも道は分からず、戦おうにも敵は見えない。主神(アマテラス)の加護のない人間など、ただの雑魚でしか無かった。

 そして、妖怪達の腹も膨れてきた頃──────

 

 

 ──都に闇が降りそそぐ。

 闇は妖怪達を呑み込み……

 

 ぐちゃり、と。

 先程まで腹一杯になるまで元気に人間を食らっていた仲間が、

 

 ぐちゃり、と。

 かつて酒を飲みあった親友が、

 

 ぐちゃり、と。

 強大で、偉大な兄貴分が、

 

 一瞬で、

 

()()()()

 

 

 ────────────

 

「!!!」

 

 ほう!? ほうほうほうほうほう……

 いいね! 賢い! 

 確かにそうした方が漏れなく霊力(人間)を妖力に変換できるし、変換された妖力をより効率よく吸収できる。

 でもそれだとキツイんじゃないか? 

 消化に時間がかかるし、かなり隙ができるぞ? 

 ……お? ……おおおおおおお! 素晴らしい! 本命は“再誕”か! 

 いいねいいね! わかってるね! 

 

 ────────────

 

 

 そう、確かに殆どの妖怪は食われた。

 だがそれを免れた者たちもいた。都にいた強めの妖怪達────“恐妖”が、闇の中から這い出してきた。

 まぁ、“再誕”と言う言葉からわかると思うが、無論元の姿ではない。

 頭の先から爪先まで、漆黒に染まった変わり果てた姿だ。

 

 

 ──────────

 

 

 

 ふむ、吸収、再誕からの一体化。

 素晴らしい! 最高効率だ! 

 まさかこれ程賢い眷属がいたとは俺本当に思ってなかった! 

 まぁ、でも都を滅ぼされると色々不都合ではあるから今回は失敗してもらうが。

 

 

 羅畏也の体が大犬の姿へと戻る。

 そして、

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッッッッッッ!!!!!」

 

 

 天地を揺るがす程の大音量。

 それは妖しき神から変わり果てた眷族への慈悲であり、再誕者たちの姿をあるべき形へと戻した。

 

 

 ──────────────

 

 

 一方その頃空亡さんは、

 

「ええええええええええぇぇぇ?」

 

 すごい混乱していた。

 

「何故? やはり計画を前倒ししたから? いやでもあの化け物……」

 

 そう、実はこの空亡、羅畏也に滅茶苦茶ビビっていた。自身の『闇を操る能力』をもってこの計画を実行すればあいつ倒せるんじゃね? などという考えで着々と計画を進めていたが、まさかのご本人登場に焦り計画を前倒ししてしまっていたのだ! 

 

 計画が再誕の段階に入った時実は「もう大丈夫だろう」とか思っていたが、そんなことはなかった(非情)

 

 と、一体化する前に再誕者を解放されてしまった空亡さん。まだだ、まだ終わらんよ! とばかりに今度は羅畏也を狙い攻撃を開始する。が、

 

 ────────────────

 

 

 

 

「うわああああああああッ!」

「うるさい」

 

 マジでうるっせぇ。

 本当にマジで黙ってくれないかなコイツ。

 あの程度ならどうとでもなるっての。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『定義、定理を操れば』こんなもんよ。

 まぁ俺以外はもう操れないようにしたんだがな。

 ……あっ、逃げた。

 まぁ逃がすわけないんだよなぁ。(無情)

 

 

「やぁ」

「へっ? ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

「はいお休みー」

「ぐっ」ガクン

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、言うわけでこの異変も終わり、こいつどうしようかと考えていたんだが……

「封印しません?」

 と晴明が言った。まぁ確かに度々こんなことされても面倒なので、この賢き眷属には少々申し訳ないが、軽く力を封印するために、所謂りぼん、と言うものをしてみた。

 

 

 そしたらなんか縮んだ。

 

「そーなのかー」

 

 飛んだ。

 おーい。どこいくねーん。

 ……うん……まぁ、もう大丈夫だろ。うん。

 とにかく疲れた。

 ってか明日から復興か……面倒クセェ……

 寝よう。

 




羅畏也さんの能力は『定義、定理を操る程度の能力』
で、世界に対し自分の好きなルールを押し付ける
って解釈でお願いします

ちなみに
吸収→妖怪を取り込むこと
   妖怪はそのまま妖力に変換可能

再誕→吸収した妖怪を眷属として排出すること
   

一体化→同じような妖怪同士で結合すること
  今回の場合眷属とすることで無理矢理結合可能にした上、
  意識の主導権を握ろうとしていた
  能力も統合されるため、あのまま一体化していたら数十の能力持ちの化け物になっていた
  (ただし羅畏也さんには勝てない)


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繁忙、そして復興

今回から色々変えて見ました!
違和感等あるかもございませんが何卒ご容赦を!


 羅畏也は多忙だった。

 超多忙と言える程には多忙だった。

 まぁ何でこんなことになっているか、と言うと、分かりきっているとは思うが空亡のせいである。

 今回は都が受けた被害は大きすぎたのだ。

 ちなみにどんな物かというと、

 死亡者 約2万人

 

 負傷者 約4万人

 

 建造物被害 全体の約3割(殆どが平安京下部)

 

(妖怪9割[平安京全体])

 

 である。

 大きすぎた、と言うにはあまり大きくないな、とか。平安京の下部ってガラガラなんでしょ? とか。妖怪めっちゃ減ってるじゃんよかったね────妖怪が減ったのは羅畏也からしたら望むところではないが────とか思っていないだろうか。

 そっちではないのである。

 問題なのは死者だ。約2万人──つまるところ平安京総人口の7分の1。

 そのうちの殆どが仕事すらない日々生きていくことにすら必死な者────言い方を変えると別に要らなかったものだった。

 問題があったのはその殆ど以外にある。

 なんと、全て陰陽師である(・・・・・・・・)

 

 もう一度言おう、全て陰陽師である(・・・・・・・・)! 

 その数、平安京内部にいる全陰陽師の4割! 

 

 

 

 

 ────────────そう。平安京全体の、である。

 

 平安の世において一般的に“陰陽師”といえば妖怪と戦う者、と良く思われるが、実際は違う。陰陽師とは「陰陽道を用いる技官」全てに当てはまる。そのため、霊力を呪力に変換することすらできない者でも仕事が陰陽道を基にしたものならば“陰陽師”なのである。さて、この陰陽師の死者の割合、これを「霊力の変換が可能であり、占い、妖怪退治を主とする者」と限定するとどうなるか──────

 

 

 その割合は、総数の約九割になる。

 

 

 何故そんなに死んだか、それは死者数の少なさ、建造物被害の少なさに関係がある。

 本来ならば平安京が全壊してもおかしくなかったこの異変において何故こんなにも小さい被害なのか、

 それは羅畏也の活躍もあるが、本当の理由は……! 

 

 

 

 

()()()()()()()である。

 

 

 

 

 今回、このとんでもない異変。その中で多くの陰陽師が、命を削る(・・・・)禁術級の結界術(・・・・・・・)を使ったからである。

 さて、そんなものを異変発生から羅畏也により空亡が無力化されるまで張り続けたのだ。

 まあ当然死ぬ。やった本人からしたら満足のいく最期だっただろうし、守られた者からしても有難いものだったが、残された陰陽師達にとっては良い迷惑である。今まで担当していた仕事が、急に10倍になったのだ。しかし、残った陰陽師はそれこそ人外級に強い……というか人外もいるが、とにかく力のある者たちだった。そんなこともあり、できちゃったのである(仕事が)

 

 10倍の仕事をものの見事に捌ききったのである。その仕事っぷりには朝廷くんもニッコリ。

「じゃあ新しい陰陽師育成するまで待っててね」と言いやがったのである。そんなこともあり陰陽師は生粋の過労死まっしぐら集団に生まれ変わったのであった。

 

 

 唯一救いがあるとすれば育成指南書を既に晴明が書き上げていたことだ。育成に気を使わなくてもよい。

 ……逆に言えばそれだけである。

 

 ちなみに羅畏也に対する諸々の晴明からの疑問は晴明が忙しすぎて忘れた。

 

 ────────────────────

 

「ええい! 次!」

 

 羅畏也は圧倒的な量の祈祷の依頼を次々とこなしていた

 その量、他の陰陽師の2倍! (つまり以前の20倍)

 この男、一応妖神であるがため適当にちょいちょいとやるだけで効果がある。そのためその分多くの仕事が回ってくる。息吐く暇などない。

 夜になればまた都の下方に回り復興の邪魔をする怨霊の相手である。最近自らの能力で、

『都の下方に妖怪は出ないし近づかない』

 としたは良いが怨霊は出る。

 怨霊も同様にすれば良いのではないかと思うだろうが、そうもいかない。この平安京、妖怪、怨霊の侵入を阻止するための結界が張られているが、それは内側からも同様であり、さらに普通の真っ直ぐ冥界に行く魂すら阻害するため、冥界に行くには門をくぐっていかねばならない。

 さて、問題である

 平安京の門はどこ? 

 答えは……最下部である。

 怨霊自体の存在を再定義すればいけるかもしれないが、輪廻に不具合が起こらないとも限らない。そのためどうしようもなく、地道に祓い続けるしかないのである。妖神なので寝なくとも大丈夫だが、キツイものはキツイ。

 さっさと育成が終わってほしいものである(切実)

 

 ────────────────────

 

 ハァ……ハァ……忙しすぎる! 

 まだか! 育成はまだか! 

 おいそこの役人! 次の仕事は! 次の仕事はなんだァ!! 

 あ“? 次の仕事は祈祷? 

 誰の? 

 ……大納言? あの人そういうのはあんまりやんない人じゃなかったか? 

 ん? 事情が変わった? 

 は? ”龍を狩る“ぅ? 

 龍って……竜じゃなくて? 獣の方じゃなくて神の方? 

 馬鹿か? 

 は? 求婚のため? 

 馬鹿か? 

 

 はあ?




 はい、こっから竹取です
 え?もっと古い時代にあるだろって?
 この日本では平安だったんですよ

 
 こっからは羅畏也さんの具体的な能力の使い方です!
 今から定義、定理を操作し空を飛びます!

 使い方1
 書き換え

 例)重力
 定義
 物体が物体に引き寄せられる力
 定理
 物体の質量が大きい程力が強くなる
 範囲内にいる限り常に加わり続ける
 物体の中心へと向いている
 etc…

→定義変更
  「引き寄せる力」から「引き離す力」
 
 こうするとこの世の全ての物体が上に落ちるようになります

 なので
 使い方2
 書き足し

 →定理追加
  「羅畏也以外は倍の力で押し返される」

 これで上に落ちるのは羅畏也のみです、が、止まれません

 そこで
 →定義(ルール)作成
 羅畏也力
 定義
 羅畏也に対し特定高度で発生する力
 定理
 羅畏也が望んだ方向にかかる

 こんな曖昧なルールでもこの世の法則になっちゃいます
 いや〜チートですね〜

 と、このようにすると空を飛べます
 重力の書き換えいるか?ですって?
 
 ちっちゃいことは気にするな、というやつですよ


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難題、そして護衛

はい、竹取です
もこたんはまだ出ません


 さて、先程「求婚するので龍を狩る」───正確には「龍の球を持ってくる」だが、それは狩ると同義だ。

 そのため、「無事を祈ってほしい」とのことだが、

 完全にお前は何を言っているんだ状態である。

 雨の神を狩るだと? 干害を起こすのか? 

 求婚だと? 

 求婚するのにそんなもんがいるのか? 

 まあ依頼されたからにはやってやるが……

 調べてみるか……

 

 ────────────

 

 なるほど、大体理解した。

 つまり「輝夜姫とやらに五人の公達が同時に求婚したので、その姫がそれぞれに難題を出し、達成した者が求婚できるようにした」と。どれだけ結婚したくないんだという話である。どれもこれもほぼ実現不可能なものだ。

 内容は──

 

 石作皇子は「仏の御石の鉢」

 車持皇子は「蓬莱の玉の枝」

 右大臣は「火鼠の裘」

 大納言は「龍の首の珠」

 中納言は「燕の産んだ子安貝」

 

 を持ってこい、というものだった。無理だろ、これ。仏の鉢などとうに砕かれ聖遺物として唐の各寺にあるし、蓬莱など存在しないし、火鼠は赤道直下にしか居ないし、龍は神だし、燕は貝など産まん。

 

 出来るかは別として実現できるのが右大臣殿、大納言殿しかおらぬ。

 ふむ……これはどれほどの美人か見に行くしかないな(使命感)

 

 ──────────────

 

 ふむ、少なくとも地上の人間ではないな。ツクヨミ君の加護が夜でもないのに強いので、恐らく月人だろう。それならば美人というのにも頷ける。しかし月人とは初めて見た。知識として知ってはいたが、見たことはなかった。かつて“穢れ”とやらから逃れるため月に移ったと聞くが、此処に降りて大丈夫なのだろうか? まあ良い、厄介事にならないと良いのだがな……

 

 ──────────────

 

 なったよ! 

 なっちゃったよ厄介事に! 

 早いよ! 

 月人共が連れ戻しにくるから? 輝夜姫を守れ、だぁ? 

 まあ良いよ、やるよ! 

 というか帝からの命令だからやるしか無いが……っていうかあいつらやっぱり無理だったのか。まああんな難題達成できる方がおかしい。

 というわけで今現在、輝夜姫と対面しております! 

 

『……』

 

 気まずい。非常に気まずい。初対面なのだ。なんか話せ、と言う方が無理な話である。

 

「ねえ」

 

 あ、話しかけてくれた。

 有難い、やっと会話ができる。

 

「貴方、強いのかしら?」

 

 ふむ、まあ日の本において俺に勝てる奴はいないな。しかしアレだな、都限定にしておくか。

 

「はい、都内において最強であると自負しております」

「そう」

 

 3秒で終わったな、会話。

 ……くっそなんで俺が謙らんといけないのだ。

 ……あ、翁殿。

 

「この度はよくぞ来てくださいました理夜様。既に聞き及んでおられると思いますがこの輝夜姫は今現在月の者に追われておりまして、その者からの護衛をお願いしたいのです」

「はい、全力を尽くし姫をお守り致しましょう」

「おお、それは心強い! かの空亡を討伐したその手腕、期待しております!」

 

 空亡……あったなそんなこと。

 忙しすぎて忘れていた。

 ……っていうかそうじゃん! 忙しかった原因あいつじゃん! 

 許さぬ(怒)

 

 無言の時間か続く。

 そして

 

 ────────────

 

 

「来たぞぉッ!」

 

 どうやら月の民が姿を現したらしい。

 さて、どうなるか。

 

 




というわけで次回、えーりん戦です
…どうやって竹林に逃そうかな…
あ、羅畏也さんはシリアスモードと通常モードで口調が変わるタイプの人です(今更)


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困惑、そして逃亡

 今回は月の人に羅畏也さんが混乱する話です
 (普通にやってたら瞬殺していた模様)



 羅畏也は混乱していた。

 訳がわからない、と。

 どうしてだ、と。

 

 何故そんなことになったか。

 

 月人が武装していたことか? 

 それは奴らの目的が「輝夜姫の奪還」である、ということを考えれば、何らおかしいことはない。

 

 それは、帝の兵達が一瞬で無力化されたこと……でもない。むしろそれは予想できていた。

 というか絶対にそうなると思っていた。

 

 では、何か? 

 それは…………服である。

 数人いる中の先頭の服がヤバい。まさかの赤青半々である。しかもご丁寧に上下で赤青逆になっている。なんだ? 何故真顔? 何故その服で一切の羞恥なくいられる? 月ではあんなのが流行っているのか? 遥か太古から生きている奴らは我々と美的感覚が違うのか? しかし後ろの連中の服は普通である。何故先頭の服があんなことになっている? 隊長服か? なんかの制服か? それともアイツ自身がヤバい奴なのか? 

 

 合わない。少なくとも今この瞬間の緊迫した空気とは圧倒的に合わない。

 まあ、とりあえず結界を……

 

「構え」

 

 あ、俺が動いたの見て弓向けてきた。

 

 撃たれた。

 

 どうしよう、痛くも痒くもない。いや何十本も撃たれたところでそんな……とりあえず倒れとこ。

 

「え? 都最強ってこんな……」(超小声)

 

 おいそこの、聞こえたぞ。気に食わん、起きよう。

 

 ……うわドン引きされてる。ヤベぇ奴にヤバい奴認定された。屈辱だ。

 

 ……輝夜姫が話したそうにしてるな。こちらに敵意が無いことをアピールして会話を促すか。まずは両手を上げるところからだ。

 

「……姫様。刑期は終わりました、帰りましょう」

 

 よし、伝わったな。しかし良い声だ。益々その服の残念さが際立つな。

 

「嫌よ。私、ここが気に入ったの」

「……わかりました」

 

 お? 仲間撃ったな。姫が残りたいって言ったら残してくれるのか。いいね、それこそ真の忠義だ。感動的だな。だが無意味だ。

 

 やはり数が物を言うか。強そうだったんだがな。もう針山みたいになっているぞ。……いやなんで弓止めないんだ。絶対死んで……は!? 動いた! 動いたぞあいつ! 

 

 なんで動ける!? 分からん! 不死身か!? (圧倒的おまいう案件)

 

「ちょっとアンタ早く永琳を助けなさいよ!」

 

 アッハイ。ええと、じゃあ、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 これでよし。ってうわ一瞬で殺し尽くした。強い。変な服なのに。じゃあもうこの定義要らんし消しとこ。

 

「姫様!」

 

 およ? いつの間に? 

 

 ………………いや待て待て待て待て……うわなんか投げて来た! 

 薬……絶対ヤバいヤツだこれ。やっぱアイツヤバいヤツだよ。うわ……

 

 ってあ、やべ、逃げられた。おい、そっちは竹林……まあ問題ないか、あの強さだし。

 

 ………………え? 

 

 で? 

 

 こっからどうすりゃいいの? 兵士固まってるし、翁も固まってるし、その辺血みどろだし。

 

 俺が片づけんの? ってか俺が責任とんの? 

 

 …………そういや幻想郷……だっけ? の完成が近いとか言ってたな。

 

 もう人の姿も疲れたし、逃げるか。

 薬は……その辺置いておくか……

 




次回あたりゆうかりん戦ですかね。


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戦闘、つまり蹂躙

 ゆうかりん強いですよね〜
 今回は独自設定が多いです。
 許してください。


 羅畏也は悩んでいた。

 自分は本当に妖怪にとっての神……妖神なのか、と。

 なんでこんなことしているんだろう、と。

 

 事の発端は少し時を遡る────

 

 

 羅畏也は逃げていた。久々の大犬の姿で。

 月のヤバい奴に輝夜姫を連れて逃げられてしまったため、確実に面倒事になるだろうと思ったからだ。そんな訳でいつぞやの妖怪から完成が間近と聞いた幻想郷とやらに行ってみることにしたのである。場所は直ぐ分かった。自分の加護が妙に密集している場所があり、もしやと思い行ってみたら合っていた。中々に良い場所であった。元々良い場所であったとは記憶しているが、見慣れない……ものの違和感は無いものが幾つかあった。

 霧の立ち込める湖、瘴気を持った森、妖怪がやけに多い山、そして人間の町など。軽く見ただけでこれだけがあった。完成間近というのは本当らしい。そんな具合に見て回っていると────いきなり竹林が生えた。生えた、というか瞬間移動してきた、という方が正しいかもしれない。目を離していた隙に現れたのだ。驚いていると目の前にいつぞやの妖怪が出てきた。何やらあの竹林はこいつが元々あった場所から移動させたらしい。

 なかなかにいい力を持って──え? 困っている? 

 

 ……なるほど、大体理解した。

 何やら強力な妖怪のいる興味深い場所があり、そこをこの場所に持って来たいのだが、その妖怪が抵抗して来るらしい。

 空間転移に抗える、というのはすごい。本当に強力な妖怪なのであろう。そんな眷属がいて俺嬉しい。で、俺にそいつを説得して欲しいと。

 

 ……ま、いっか。

 

 

 ──────という訳である。

 

 確かに自分は妖神だしの信者(妖怪)望みは叶えてやるのが筋ではないか。とも思ったが神とは加護とある程度の指針だけを与えてやるのが普通では無いか。とも思えてしまう。

 まあそんなことは後々に考えよう。しかし、自分の本来の足で走るとは何とも気持ちの良いことだろうか。このままいつまでも走っていたいが、まずは説得が優先だ。自分のことを知っていれば一瞬で終わるだろうが、恐らく知らないだろう。さて、場所は見たら分かるとのことだがどんなものだろうか。

 

 ────────────

 

 なるほど、分かりやすい。確かにこれは非常に興味深い。花畑だ。しかし勿論“ただの”では無い。

 一面に一種類の黄色い──種類はわからない──花が咲いている。

 が、まずデカい。7、8尺はある茎に、人の顔程もある花が付いている。それに、全て同じ方向を向いている。全ての花が全く同じ方向を向き続けている。妖力の類は感じられない。どうなっているのだろうか。それは後で調べるとして、まずは突入しよう。

 

 …………さて、入ったは良いが、5秒で背後を取られた。入った時に感知されたのだろう。しかし早すぎる。待つ、と言う選択肢はなかったのだろうか。

 

「ねぇ」

 

 女性の声だ。アマテラスといい、鬼子母神といい、いつぞやの妖怪といい、ソラナキといい、この世界は女性の方が強いのだろうか。いや、どうでも良いな。

 

「貴方、何の用?」

 

 ふむ、振り向いてみるが何の反応もない。……なるほど、この姿の時に俺のことを妖神羅畏也であると認識出来ないということは俺のことは知らないらしい。

 

「何、アンタを幻想郷へと招待してやろうと思ってな」

 

 ドンッッッ!!! 

 

 早い早い早い! 戦闘までが早い!5秒で背後を取ってきた事といい戦闘脳なのか?俺じゃ無かったら死んでたぞ?

 

 ドドドドドドドドッ! 

 

 う──む。

 無痛。その……傘?かな?武器だったのか。すごい突いてくるじゃん。うん……うざい(とても)

 

 ぶっ飛ばそう。羅畏也の声は力を持つ(・・・・・・・・・・)

 

 「ワンッッ!!」 

 

 あ、思ったより飛んだ。花に影響は無いようにした……が。

 あの花々がこちらを向いている。中々に不気味である。

 ……なるほど。花は固定砲台だったか。

 

 だが…

 花は攻撃できない(・・・・・・・・)

 

 よし。…………うお!? 

 

 …なんだろう、急に極太熱光線放ってこないでもらって良いですか? 

 まあ無痛だけど。

 あ、連射できるのね? ソレ。

 何気に花に気遣ってるみたいだな……。

 花の妖怪って言う感じなのか? 

 にしては強すぎるな……。

 一体化を何度も繰り返した感じか? 

 

 ……うん……これ説得無理だな(今更)

 

 は〜い、ちょっと眠ってね〜。

 地を蹴り一瞬で背後に回る。

 ……おー、反応した。

 だが遅い。

 

 

 

 

 ダガンッッ!!! 

 

 ────────────

 

 その後は、いつぞやの妖怪──八雲紫と言うらしい──に説得(暴力)が成功したと報告しておいた。すげえ良く寝ていてイラッときたので夢に出て大音量で報告してやった。

 神からのお告げだぞ。感謝しろ。

 

 

 …そんな訳で幻想郷に花畑が出来ました!

 

 とは言ってもこれで完成では無いらしい。彼岸やら冥界やらを此処と繋げたり、彼岸を繋げた影響で出現するであろう旧地獄への縦穴を掘ったり、仙界?や魔界?とか言うところとも繋げるという。

 しかも俺のために家──つまり神社を用意してくれるらしい!いやーこれは楽しみだ。

 全然完成してねえじゃんとか言いたかったが…まあ…許す!

 

 本当に楽しみだ…。

 




 この世界において羅畏也さんは
 『攻撃されても表面で同じ力で相殺する』し
 『活動を停止しない』し
 『能力を封じられない』です。


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完成、その前に厄介事

あと、あと少しで原作だ…!


 ふむ……成程、俺はこの為に呼ばれたのか。しかし、中々に良い度胸を持っている。俺を馬車馬の如く働かせた上でコレを鎮めろ、か……。

 

 羅畏也は八雲紫から「なるべく多くの妖怪達に幻想郷の存在を知らせて欲しい」との願いを受け、かつて登った……富士? だったか? 山に再び登り、そこで各地の妖怪達へ夢という形で幻想郷の存在を知らせた。大方終わった、という時に「神社が完成する」との報告を受けたため、幻想郷へと戻って来た。確かに神社は完成しかかっている。しかし、なんと妖怪が妖怪同士で殺し合っているではないか。人間には被害が出ていない……というか人間は眼中に無いと言った具合である。

 コレはどうしたことか。と八雲紫に問うと、なんでも「幻と実体の境界」というものを「妖怪拡張計画」という幻想郷を作ると同時進行していた計画の最終段階として幻想郷を囲むように引こうとしたらしい。これは世界において幻想郷を幻とする事によって勢力の弱くなった妖怪を呼び込む効果を持つようだ。

 俺が幻想郷を知らせていたのは、呼び込まれた時に幻想郷という場所を知識として持っていて欲しかったから、とのことだ。なんでも一々説明するのが面倒だから、らしい。

 そんなことのために俺は働いていたのか……俺、神ぞ? ……ま、別に構わんが。

 問題は、これを引くことを幻想郷に住む者達に通達した事によって起こった。此処に住む人間は「もうどうにでもな〜れ」と言ったようなもう疲れちゃった人が殆どのため、「ふ〜ん」と言った感じだったのだが、妖怪には「自分達を閉じ込めるための結界」と勘違いされ、暴動が起こったようだ。何度か説得を試みたが、失敗したらしい。

 で、俺に助けを求めたってわけか。

 その判断は非常に良かったと褒めて差し上げたい。

 さあ行くぞとっとと行くぞ! 俺が2秒で鎮めてやろうではないか! 

 

 ──────────────

 

 妖怪達は激怒していた。必ず、かの邪智暴虐の八雲紫……は、強すぎて無理なので、ムカつく隣にいる奴を除かねばならぬと決意した。

 何故我々が封印されなければならないのか、という怒りをとにかく闘う事で発散する。別にそんな気にしていない奴も面白いので闘っている。逃げる? 無理に決まっているだろうが馬鹿め! 死ぬわ! 

 と、各々が各々好き勝手に闘っていた時。

 

「おい」

 

 凍りつく。

 そんな感覚が体を襲う。

 ヤバい。

 

「こっち見ろ」

 

 身体が勝手に声のした方向へ向かう。

 犬……ではない。狼でも無い。なんだ、アレは? 

 一歩引いた位置には八雲紫もいる。なんだ? 何が行われる? 

 

「では……俺の話を聞いて欲しいんだが……いいか?」

 

 これは聞くしか無い。(聞かなかったら死にます)

 

「よし、まずは自己紹介だな。俺は羅畏也。妖神をやっている」

 

 妖神? (知ら)ないです。

 

「まぁ知らない者が大半だと思うが、妖怪の神だ。お前らが生きているのは俺のおかげだし俺が生きているのはお前らのおかげだ」

 

 そうなのか。

 

「と、本題に入ろう。この八雲紫から既に話は聞いていると思うが、此処、幻想郷の周囲に『幻と実体の境界』を引く事になった」

 

 はい

 

「まあそれが嫌で今戦っていたんだろうが、これはお前達の為になるものだ」

 

 そうなの? 

 

 <妖神説明中……>

 

 ──と、いうわけだ」

 

 そうだったのか。

 

「で、今の話を聞いた上で『幻と実体の境界』を引くか引かないか。それを聞いてみようと思う」

 

 これは賛成するしかない。(しないと消し飛びます)

 

「では全会一致で賛成という事で、いいな?」

 

(問題)ないです

 

「うむ、と、いうわけだ。紫、やってきて」

「はい、分かりました」

「よし、じゃあ解散!」

 

 ──────────────────

 

 俺にかかればこんなもんですよ。

 2秒じゃないって? そんなこと言った? (すっとぼけ)

 そんな訳で境界が引かれました! これで幻想郷自体は完成らしい。

 じゃあ後は神社だな! すぐでいいよ! 

 いやー楽しみだなー。

 




 後は…吸血鬼異変か…
 博麗の巫女も…どうするか…


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完成、からの月面

月!月を忘れていた!ボコボコにしなきゃ!


 ついに……ついに俺の神社が完成した! これでやっと働かなくても良くなるぞ! 

 

 羅畏也は喜んでいた。やっと羅畏也を祀る神社が出来たのである。かつて飛鳥の世に一回作られてはいたが割とすぐに邪神認定されて追放されてしまい、そこから数百年越しにやっとである。

 この幻想郷ならば邪神認定はされど追い出されることはないだろう。羅畏也は安住の地を手に入れたのだ!

 神社の名は『博麗神社』と言うらしい。「羅畏也神社」や「幻想神社」と言った候補もあったが、どちらもなんか違うということで没になった。

 

 と、ご満悦な様子の羅畏也さんだったが、少々して仕事がやってきた。

 ある日。八雲紫が現れ、「月の進んだ技術を奪いに行くので、付き添いとして来て欲しい」と言ってきた。

 正直、羅畏也は乗り気ではなかった。かつて月人のことを一度見たことはあるが、あんな赤青半々の服を着た変人のいる国の技術など奪ったら、とんでもない事になってしまうのではないか。と、非常に心配だったのである。

 しかし、変人だと言うことは裏を返せばとんでもない天才なのかもしれない。そう考えた羅畏也は月へ一緒に行く事にした。

 そして、ふと思い出した。月とはとんでもなく離れた場所にあったはずだ、と。そこで羅畏也は紫にどうやって行くつもりか、と尋ねた。なんと、水面に映った月と現実の月の境界をいじり、月へ移動出来る様にするらしい。

 そんなこともできるのか、と羅畏也は感心した。(驚いてはいない)

 

「かなり集まっているな」

「はい、幻想郷中の妖怪が集まっております」

 

 幻想郷中の妖怪を集めるとこんなにもいるのか。自らの加護が密集しているとはかなり気分がいいものである。集まった妖怪を見ているとかつて無理矢理此処に引っ張ってきた花の妖怪の姿もあった。

 とても良い笑顔をしている。若干周りの妖怪達が引いている事に気づいてはいるようだ。なかなかに良い性格をしているらしい。

 

「あの妖怪は……」

「彼女は風見幽香と言うようです。どうやらこの場所が気に入ったようで満足してもらっています」

「なるほど、それは良かった。で、いつ出発するんだ?」

「はい、すぐに」

 

 と、紫が手を叩き、こちらに注目を集める。大半の視線は俺に向けられている。まあ妖神だからな、仕方ないな。

 

「────皆、最近暴れ足りないんじゃない?」

 

 え? あれ? 凄い反応がある? この前めっちゃ暴れてたと思うんだけど。

 

「私は今から、月に侵攻しようと思っているの。月には様々な物があるの。酒に、娯楽に、──強い敵」

「もし皆が暴れ足りないって言うのなら、私に力を貸して頂戴?」

「しかも今回は羅畏也様も着いて来て下さるの。活躍出来たら──────何かご褒美があるかも知れないわね♪」

「そこの池に月への道があるの。参加の意思が有れば、そこに飛び込んで」

 

 

 物凄い勢いで池へと飛び込んで行く妖怪達。

 本当に凄い勢いである。

 あー、あー、あんま押さないでやれよ。中間くらいにいるやつが潰れてるぞ。

 

「では、私達も参りましょう?」

 

 

 あー、そうね、行くか。

 

 ────────────────

 

 ふ─む、なんもない! 

 

 見渡す限り一面の白い砂漠。所々大穴が空いているものの、特に何も見当たらない。

 いや……アレは……人? 

 

 ぬ!? 

 

 なんだアレは!? 人が一斉に現れたぞ!? 

 

 何も無かったはずの月面、そこに一瞬にして軍隊が現れる。

 そしてその軍隊は──────珍妙な格好をしていた。

 服については何もおかしくはない。だが、頭に良くわからぬ被り物をしている。どうやら兎を模しているらしいが何故なのだろう? 

 そして……手に謎の棒……筒? を持っている。全員が持っている所を見るに、武器だろうか。

 

 ドドドドドドドドと。音が鳴る。そして──────

 

 ──────死んだ。妖怪達が。

 

 大半の妖怪達が全く理解できず混乱し、死にゆく中、羅畏也は冷静だった。

 羅畏也には攻撃が効かない。そして羅畏也は高速で飛来してくる小さな塊が見えた。撃ち落とそうと思ったが、やめた。

 見えるのは羅畏也だけではない。見える者が妖怪達を守りに入ったのだ。まずは鬼だ。鬼──かつて諏訪大戦に於いても活躍していた種族。その時の個体もちらほらと見える。良く見ると鬼子母神もいるようだ。飛来する塊は鬼の強固な肌を貫けず、そこらに散乱している。

 次に天狗だ。妖怪においてカマイタチの次に速い種族であり、何体か撃墜されてはいるものの回避して、風で塊を押し返している。

 他には、紫に、幽香に、山姥に──九尾? 九尾なんていつの間にいたんだ? 

 紫、あの九尾は……そんな余裕は無さそうだな。

 まあ良い。

 

 今は奴らに殺された眷属の恨みを晴らさねば。

 

 ────────────────

 

 玉兎達は侮っていた。

 突如として鳴り響いた訓練以外で初めて聞く警報に緊張が走ったが、その正体が地上の妖怪だと分かるとその緊張は消し飛んだ。

 教官も「いい訓練相手が来た」などと言っていた。「どうせ雑魚だ」「とっとと終わらせよう」とも。

 思った通り地上の妖怪は弱かった。何十かの妖怪が守りに入っているが、前にいた多くはすぐに死んだ。地面に血が広がる。大地を穢された事に怒りが湧いて来る。守っている奴もすぐ殺す。

 そんな時だった。突如として視界に大犬が現れた。

 一瞬は驚いた。だがその大犬はすぐに蹲った。それを見て誰かの弾が当たったのだろう。と思った。

 だが……違った。

 大犬の影が膨らむ。一瞬のうちに大犬は巨大な怪物へと変化した。

 その金色の眼からの視線が体を貫く。

 拙い。そう思った。

 

 

 ────その瞬間、月面に破壊が降り注ぐ。

 

 怪物が一歩進む毎に地震が起きる。

 

 怪物が腕を振るう毎に雷が落ちる。

 

 怪物が跳ぶ毎に大地から溶岩が噴き出す。

 

 怪物が鳴く毎に暴風が巻き起こる。

 

 “蹂躙” その言葉でしかこの惨状を表現できない。

 1秒のうちに幾つもの命が消し飛ぶ。

 今まで唯の訓練しか受けていない、教官によって与えられる恐怖以上の恐怖、教官から受ける折檻以上の痛みを知らぬ玉兎は────────逃げた。

 偶然かな、逃げるその姿は被り物と名が模しているように、まるで兎のようだった。

 普通の──自然に発生した災害であれば逃げることが出来ただろう。

 だが、ラスボスからは逃げられないのはこの世の法則(定理)

 

 一人は地割れに落ちた。

 

 一人は炭になった。

 

 一人は宇宙空間に放り出された。

 

 一人は舞い上がり、地に叩きつけられた。

 

 一人は刺身になった。

 

 一人は地に怪物の足跡を残すための朱肉となった。

 

 

 断末魔は絶えることなく上がり続ける。

 兎は大地の振動に恐怖しつつ、逃げる。逃げる。逃げる。

 

『都に着きさえすれば』

 

 そんな願望を抱き、走る。

 

 無知というのは優しく、残酷なものである。

 知らないからこそ希望を抱ける。

 いくら逃げようが、逃げられないと既に決まっているのに。

 

 ──────────────

 

 八雲紫は戦慄していた。

 月の技術を侮っていたわね……! まさかここまで圧倒的だとは思わなかったわ…! 

 妖怪達が死んで行く。鬼や自分の式である藍が守っているけど、多くの妖怪が死んでしまった。羅畏也様は、羅畏也様はどうしたの!? どこにいるの!? ……いた! 見つけた! 

 その瞬間、羅畏也が蹲る。

 嘘でしょう? 妖神が? ……いや、有り得ないわね。この程度で死ぬハズがない。

 

 ほら、始まった。

 

 羅畏也の体が巨大化する。圧倒的な存在感と威圧感で押し潰されそうになる。周りの妖怪達も、月の連中も、動けない。

 動き出す。厄災が。破壊が。死が。

 渦巻く。火が。雷が。大地が。風が。

 死に行く。月の連中が。奴等が私たちにしたように。

 逃げ惑う。あれ程進んだ技術を持った月の民が。

 

 あれが……最強。

 

 あれが……神。

 

 彼の加護を持っている自分が誇らしくなってくるわね……。

 

 ……ねえ、大体殺したけど、いつになったら止まるの? 

 

 




 次回!月の都、死す!デュエルスタンバイ!

 ちなみに羅畏也さんは途中まで姿を消してました。


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崩壊、からの発狂

月が散々な目に遭います!
月愛好家の方は注意してください!


 玉兎達は逃げていた。

 恥も外聞もかなぐり捨て、ただひたすらに迫り来る災害から逃げていた。

 必死の逃走。だが非情かな、ラスボスからは逃げられない。もうすぐ後ろまで迫って来ている。

 後方にいた仲間の断末魔が聴こえてくる。しかし今の玉兎達にその声は聞こえていない。逃げる事のみを考えろと脳が感覚を遮断する。

 そして──────壁にぶつかった。

 玉兎達は絶望する。

 

 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 

 

 死にたくない! 

 

 死にt「落ち着いて!」……!!!? 

 

 綿月豊姫(わたつきのとよひめ)様……? 

 

「落ち着きました?」

「えっあっはい!」

 

 変な返しになってしまった……それどころじゃない! 

 

「あの化物は何ですか?」

「あっ犬が! 犬が巨大化して! 死ぬ! 逃げないと!」

 

 逃げないと! 逃げないと! 死ぬ! 

 

「落ち着いて!!!」

 

 あっ。……月の都? 

 

「私の能力で連れてきました。ここなら安全です」

「あっああ有難う御座います!」

 

 やった! 生き残った! 

 

「あの化物は何ですか?」

「えっと……地上の妖怪の……犬……が……巨大化して……」

「犬? ですか」

「はい……」

「ところで……今私がここに連れてきたのは30人程なのですが……他の方々は……」

「はい……」

「……そうですか」

 

 そうだった。皆死んだんだ……ん? 

 

「あの化物は今どうなってますか?」

依姫(よりひめ)が対処に当たっているため直ぐに終わると思いますが……」

 

 え? 

 

 ──────────────

 

 綿月依姫は困惑していた。

 

 異常事態との知らせを受け、姉の能力により送ってもらった場所には化物がいた。漆黒に青が混じった犬? だ。

 この化物を討伐すべく能力を──『神霊の依代となる程度の能力』を発動。カグツチを呼び出そうとしたところ──────数十の神々がすっ飛んで来た。

 そしていきなり戦闘が始まった。大地に既存の大穴の十倍はある大穴ができる。一瞬でこれである。さらに雷が落ち、炎が飛び、何故か津波が起こる。

 どうしてこうなった。

 

「ねぇねぇ君」

「あっはい」

「あの犬、何でここにいるの?」

「分かりません」

「……そっか……アノイヌッコロメ」

 

 凄い怨みを感じますね……

 

「貴方は?」

「ああ、僕はツクヨミ。月の神やってるよ」

「え、そうだったんですか」

「うん」

 

 月の神ですか……

 しかしツクヨミって月夜見様と何か関係が? 

 いや、それは後ですね。

 

「あの化物は何か知っていますか? 今戦っている彼らは?」

「あれはねー羅畏也って言う妖怪(ゴミ)の神だよー、戦ってるのはnドンッッッ!!! ……あ」

 

 ……大穴、じゃなくて風穴が開きましたね。星の中身を見るのは初めてです。

 

「うわぁァァァァァァァァァァァァアアアアアアアッッッッッ!!」

 

 ……哀れな……。

 

 ────────────────

 

 ドンッッッ! 

 

「ヒエッ!」

「な、何事です!」

 

 突然とんでもない振動が月の都を襲った。

 絶対にあの化物だ。絶対そうだ。

 

 そして────

 

 ドンッッッッッッ!!! 

 

 都が……月が半分くらい消し飛んだ。

 

 

 

 

 ────────────────

 

 羅畏也はちょっと頭に血が昇っていた。

 あの兎どもをいい感じに殺してやろうと考えていた。するといきなり兎が消えて少女が一人出た……と思ったら神々(ゴミども)が来た。なんでも「ツクヨミが可哀想だからお前を鎮める」だそうだ。

 随分と昔よりは強くなったようだが、俺には無痛だ。いい機会だし消し飛ばす。

 

 …………もはや羅畏也に月云々の話はほんの少しも残っていなかった。兎に角こいつらをぶっ殺してやると考えていた。

 

 引き付けて……跳躍。

 

 天高く跳び……直下に超極太熱線。

 

 ……チ、避けたか。

 

 回避不可能の定理付けときゃよかった。

 

 面倒くさいな。月ごと消し飛ばすか。

 

 体内の力を解放する。4割あれば行けるだろう。

 

 ……あ、全然足りなかった。半分くらいか? 

 

 ………………ん? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………アレ? もしかして俺、やりすぎた? 

 

 

 ────────────

 

 八雲紫はまた戦慄していた。

 

 ヤバすぎるんだけど……。月、満月だったわよね? 何で半月になってるの? 

 しかも縦じゃなくて横にかけてるんだけど。絶対にこれ羅畏也様やったわよね? 

 月の都もう滅んだんじゃないかしら。

 

 八雲紫と妖怪達は嫌な予感を感じ一足先に幻想郷へと帰ってきていた。

 予想は半分当たっていた。

 

 ……あ、羅畏也様。

 

「ねぇ」

「はい」

「もしかして俺やり過g「やり過ぎましたね」そっかあ……」

「ツクヨミ君、大丈夫かなぁ……」

 

 ──────────────

 

 大丈夫ではなかった。

 

「ウボバシャァァァァァァァァァァァァプギャァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 もう狂っていた。

 

「落ち着いて、落ち着いて下さい」

 

 逆に落ち着き過ぎな奴もいた。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァイイ!!! ↑↑↑」

 

 そして狂ったように月の修復作業を始めた。

 

 頑張れツクヨミ! 負けるなツクヨミ! 

 今作一番の苦労人は君だ! 

 

 後もう2回くらい月はぶっ壊れる予定だから! 

 次もぶっ壊せるようにしといてくれ!!




 ちなみに月夜見とツクヨミさんは別人です

 今作一番の苦労人はツクヨミさんです。

 ちなみに必中効果を付与していたら地球にいる神の方にもビームが飛び地球が滅びます。


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巫女、そして結界

 ヴェッ!?評価バーに色がついてる!
 UAが凄いことになってる!お気に入りが100越えてる!
 
 まさかこんなに読んでもらえるとは……!
 有難う御座います!

 


 羅畏也は苦悩していた。

 近頃妖怪達の気力がない。

 理由は幾つか存在する。まず数百年前に起こった月面戦争の傷痕があまりにも多かったことだ。鬼や参加していない妖怪達は平気だったが、それ以外はそうもいかなかった。八雲紫ですらしばらく落ち込んでいたくらいだ。仕方のないことかもしれない。

 次に、妖怪達の力が弱くなりつつあることだ。どうやら外の世界は発展をどんどんと続けているらしい。我々妖怪の存在が否定されつつあるようだ。

 最後に博麗の巫女が強すぎることだ。博麗の巫女とは、羅畏也の博麗神社に住んでいる巫女であり、非常に強い羅畏也の加護を持っている。元々は人間が妖怪にただ喰われるだけの存在にならないように用意された救済措置のようなものだったが、代替えをする度に強力になり、今では低級妖怪では歯が立たない存在となっていた。そのため人間を食べることができていないのだ。

 

 一応良いこと……なのか? として鬼が地底に降りたことが挙げられる。

 何やら弱くなっていく人間に嫌気が差したらしい。博麗の巫女では駄目なのかと聞いたが、殴り合いが出来ないので嫌だ。とのことだ。

 鬼とは妖怪にとって恐怖そのものだったので、本当に降りたと分かった時には喜んでいたことが思い出される。

 

 どうしたものかと羅畏也が苦悩している間も時間は進む。

 

 ────────いきなり、妖怪の力が急速に弱くなっていった。

 

 多くの低級妖怪達が羅畏也のおかげで消滅することはなかったが、動けなくなる程に衰弱していた。

 外の世界ではその頃、明治維新が起こっており文明が急速に発達したのだ。

 

 無論その影響は非常に大きい。まず……幻想郷が妖怪で溢れた。

 これは『幻と実体の境界』を引いており、勢力の弱まった妖怪を呼び込むと言う性質を幻想郷が持っていたからであった。

 それにより幻想郷内の妖力濃度がとんでもないことになり、魔物が大量に発生した。

 この状況を打破すべく羅畏也は一時的に殆どの妖怪を休眠に入らせ、出来る限り一体化させる。

 そして魔物は死ぬ、慈悲は無い。

 だがこれは一時凌ぎである。妖怪そのものを再定義すればどうにかなるかもしれないが、妖神である自分がどうなるかも分からない。

 さて、どうするか。俺が外に出て暴れるか。

 

 そう考えていた時に、紫が博麗神社周囲の木々と博麗の巫女を核とした結界────『博麗大結界』の展開を提唱してきた。

 

 それは外の世界の「常識」を幻想郷の「非常識」に、外の世界の「非常識」を幻想郷の「常識」にすると言うものであり……それは外の世界と幻想郷をほぼ完全に隔絶すると言うことであった。

 確かにそれを展開すれば外の世界において非常識とされたもの──────妖怪の存在、妖怪の覇権が幻想郷の常識となり、妖怪は救われるだろう。

 博麗神社周囲と博麗の巫女を核とすることはまだ良い。

 だが外の世界との隔絶はあまり歓迎できるものではない。雲や空気、植物と言ったものは共有される。

 しかし人間はどうする。幻想郷内で生まれた人間では絶対に足りない。張る前に大規模に連れてくるとしても足りない。

 

 俺が定義を弄れと? 出来るが。

 成長を早めれば確実に目当ての霊力がそこらの獣よりちょっと大きい程度になるぞ? 

 出産量を増やしても幻想郷が畑だらけの土地になるぞ? 

 

 何? 人間は食べさせない? ……そうだった。元々人間を食べずとも奴らは生きていけるんだった。

 ……やるか。まずは外の妖怪を招集せねば。

 

 

 ──────────────────

 

 日本に存在した全ての妖怪達は幻想郷なる場所、その一角に集まっていた。

 妖神という我々の神を名乗る存在に呼ばれたのだ。

 

 そして八雲紫なる者からとんでもない話を聞いた。

 我々を世界から隔絶するらしい。

 そんなこと認められる訳がない。

 ふざけるな。

 

「これは君達の為だ!」

 

 嘘に決まっている。

 

「向こうで妖怪がいなくなる……つまり非常識になれば此方では君達の存在は絶対なものになれる!」

 

 嘘に決まっている。俺は戻るぞ。

 

「残念ながら戻ることは認められない!」

 

 は? 

 体が動かない? 

 何故? 

 

「今から君達を一体化できる限りさせてもらうが、大丈夫だ!」

 

 なっ!? 

 馬鹿な!? 

 やめろ!! 

 大丈夫な訳g「ただちょっと意識が消えるかもしれないけどな!」

 

 ハハハッと声が響く。

 そして俺の意識はそこで消えた。

 

 ────────────────

 

 ……さて、これで粗方終わったな。

 随分と少なくなったな……何千分の一だ? 

 

 

 …………申し訳ない。

 

 ……じゃあ……やるか。

 

 ────────────────

 

 大結界は問題なく張れた。

 新しく来た人間も人里に受け入れられたようだ。

 妖怪も大半がちょっと生まれ変わったがこれも妖怪全体のためだ。

 間引きされるよりかは良かっただろう。

 

 予想外の事も起きた。

 妖精や幻獣が現れたのだ。

 妖怪が若干増えたがまだ土地は余っている。

 好きにさせておこう。

 

 今から此処が妖怪の桃源郷だ。

 此処ならあいつらも安心して暮らせるだろう。

 ……これで「どうにか」出来ただろうか。

 万と数千年を要したし、多くの妖怪を犠牲にした。さっきもそうだ。

 それでも、俺は生まれた理由(わけ)を果たせただろうか。

 俺は……いや、やめよう。

 まだまだやることはある。

 あいつらにとっての最後の希望に成り続ける必要が俺にはあるんだ。この桃源郷を失わない為の最後の砦に。

 月での一戦は久々に俺の課題点を教えてくれた。

 あんな精々数十人程度*1に苦戦していたのだ。

 しかも世界には奴らを超える神々がいるらしい。

 最終的にはそいつらをまとめてボコボコにして差し上げられるようにしなくては。*2

 

 さて、頑張るか。

 

 

 

*1
日本神話トップクラス

*2
もうできる




 もう少し…もう少しで原作…!
 原作で羅畏也さんどうやって活躍させるかあんまり考えついていない!(月は二度破壊させる)
  
 ちなみに羅畏也さんが大規模一体化を強行していなかったら幻想郷の妖怪が朝のスクランブル交差点レベルになってました。


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交代、それと吸血鬼

 よし!これで…ついに!原作に!
 こっから文字数増えそう!


 八雲紫は悩んでいた。

 何でこんな事になるのかと恨んだ。

 羅畏也を。

 

 さて、どうしてこうなったのか。それは海より深く山より高く羅畏也程に理不尽な理由があった。

 

 まず、羅畏也が龍神をボコボコにしていたのである。龍神は創造と破壊を行う日本神話とは別系統の強力な神である。が、羅畏也にとっては雑魚でしかないようだ。羅畏也曰く、「俺に命令してくるとかマジないわ」とのこと。

 とまあ、そんなことされては当然龍神も怒る……が、羅畏也がいるので下手に手が出せず、泣きそうになっていた。

 丁重に謝ったら許してくれた。そして同情された。なんか惨めな気分になった。

 

 そして次の問題も羅畏也にある。博麗大結界が張られてから二度の巫女の世代交代を経て、三度目の世代交代が終わった、という時だった。羅畏也がなんか山を吹き飛ばしていた。何故こんなことをしたか。と問うと、「修行だよ」と奴は答えた。

 紫は憤慨した。お前のような最強の化身が何故修行をする必要があるのか、と。何故修行で山を吹き飛ばすのか、と。

 それを問うと奴はこう答えた。「この郷を守るため」と。「眼力を鍛えていた」と。「吹き飛ばした山はツクヨミが直す」と。

 紫は胃と頭が痛くなった。幻想郷を守ってくれるというのは嬉しい。嬉しいのだが。眼力て! 眼力て!! 何故眼力で山を吹き飛ばせる!? それにツクヨミ? というのは……うわあ。奇声を上げながら山を修復していく男がいた。早い。とても早い。すごい勢いで山が修復される。しかし狂っている。彼も羅畏也の被害者なのだろう。可哀想に。

 

 これには新博麗の巫女の霊夢ちゃんもびっくり。何をやっているんだと人の身にして羅畏也さん相手にとても刺さるいい口撃をしていた。

 紫はそれを見てスッキリした。

 

 と、そんなことをやっていた時、突如として霧の湖の島に真っ赤な館が出現した。

 そして、館から数百の翼を持った人型の妖怪? が飛び出してきた。そして周囲の生物達に攻撃を始めた。

 そんな中には無論妖怪もいる。妖怪達は羅畏也により一体化を多くしているため、非常に強く、奴等と互角以上の戦いができた。奴等はこのままでは分が悪いと判断したようで、此処の支配者を出せと言ってきた。

 妖怪達は困った。どちらを呼ぶか、と。妖神である羅畏也か、創設者である八雲紫か。妖怪達はとりあえず待っていてほしいと答えた。明日此処にこの時間に連れてくると約束をして。

 

 ──────────

 

 翌日

 八雲紫は霧の湖の畔に来ていた。妖怪達に呼ばれたのである。

 

(館って聞いたけど……あれね)

 

 視界の先に真っ赤な館が確かにある。あんなもの持ってきた記憶はない。

 そう考えていると門が開き、妖怪? と人間が出てきた。中央に居る奴は遠目でも他のとは格が違うとわかる。幼女だが。

 

(妖怪? ……でも違うわね……鬼*1に近い感じかしら)

 

 奴等は十歩分程度まで離れた位置に着くと、口を開いた。

 

「貴様が、此処の支配者か?」

「ええ、そうね」

 

 羅畏也はどっちかって言うと守り神──破壊神みたいなことをしているが──であるので、八雲紫が支配者で間違いないだろう。

 

「我が名はレミリア・スカーレット。此処、紅魔館の主にして、吸血鬼の王だ」

「八雲紫……妖怪の賢者なんて呼ばれてるわね」

 

(吸血鬼……羅畏也様なら知っているかしら?)

 

「それで? 目的は何なのよ?」

「ククク……私達の目的か、簡単だ、此処(幻想郷)を寄越せ」

 

 どうやら吸血鬼達は幻想郷の支配が目的のようだ。だが、聞き入れられる訳がない。

 

「もちろん、お断りしますわ」

「よろしい、ならば戦争だ!」

 

 目の前の幼女……の姿をした吸血鬼の王が徐に右手を上げる。すると館から一斉に吸血鬼達が飛び出した。

 

「ククク……交渉が決裂したのならやることは一つしかあるまい?」

「……そうね」

「まあ精々足掻くがいいさ。もしあいつらを倒せたら私が相手しよう」

 

 そう言って館へと戻る幼女、それを見ることなく紫は神社へ移動する。下手をすると此処が月の二の舞になりかねない。急がねば。

 

 ────────────

 

 羅畏也は急に身に覚えがない自らの加護がいきなり現れた事に驚いていた。だが、あまり勝手に動きすぎると霊夢に怒られてしまうため行動を起こさず待機していた。

 そこに紫が出てくる。何やら切羽詰まっている。

 

「羅畏也様! 今吸血鬼という連中が幻想郷を征服しようとしていますが、羅畏也様は絶対に動かないで下さいね! 能力も使わないで下さいね!」

 

 と言って消えてしまった。恐らく月での出来事がトラウマになっているのであろう。

 

「紫があんな事になるって……アンタ一体何したの?」

 

 霊夢が聞いてくる。

 

「月に風穴開けて半分消し飛ばした」

「……冗談よね?」

「マジだよ」

「ええ……」

 

 ドン引きしている。確かに俺も少々やり過ぎた気はしているが別に大丈夫だろう。ツクヨミ君いるし。……しかし吸血鬼か、中々に厄介な種族が出たものだ。真祖はいないだろうがそれでもかなり強いと思うが…大丈夫だろうか。

 

 ──────────────

 

 八雲紫は大勢の妖怪達と館を取り囲んでいた。

 吸血鬼達はあの後様々な場所で数日間暴れ回っていた。その被害はとんでもないことになっていたが、朝が近づくと毎回逃げるように館へ戻っていくのだ。そして日が沈むまで館から出てこない。どうやら吸血鬼達は日光に弱いようである。ならば出てきたところを一気に叩く。何事も根からやった方が早いのだ。

 

 ──日が沈む。

 

 門が開く、そして吸血鬼達が出てくる。中にはレミリア・スカーレットの姿もある。どうやらこれで決着をつけるつもりらしい。

 

「姑息な手を考えたものだな」

「狡猾と言ってほしいわね」

「ふん、此処で貴様を倒せば此処は我が手中に収まるのだな?」

「さあ、どうかしらね」

「では、死ね!」

 

 レミリアが緋色の槍を手元に創造し、投擲する。

 速い。だが直線的だ。避けるのは容易い。

 

 遠くで爆発音が響く。それが開戦の合図となった。

 

 ──────────────

 

 ドゴォン! と、近くで爆発音が起こる。

 羅畏也は驚いた。霊夢も驚いた。

 だが、勝手に動くわけにもいかない。反撃を叩き込みたいのをじっと我慢する。

 そうだ、寝よう。もう夜だし、後のことは紫がやってくれるだろう。そう思い体を丸くし、瞼を閉じる。

 ……ドゴォン! 

 今半分寝てたんだが? 起きたんだが? 

 ……ドゴォン! 

 まただよ。もういいよ。

 ……ドゴォン! 

 

「ウボァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 寝ようとすると響く爆発音、流石にこれには羅畏也さんも激おこ。

 熱線をやり過ぎないレベルで放つ。

 

 <アアアアアアアアアアアアアアアアア! 

 

 なんか聞こえるが気のせいだろう。

 

 霊夢もイライラしていたようで、「よくやった」と言ってくれる。

 そうであろうそうであろう。

 もっと敬ってくれてもいいぞ?

 

 

 ────────────────

 

「ハアッ!」

「くっ!」

 

 吸血鬼達との戦闘は熾烈なものだった。互いに一歩も引かない。

 

 吸血鬼が吹き飛ぶと妖怪も吹き飛ぶ。

 吸血鬼が爆発すると妖怪も爆発する。

 

 妖怪陣営では特に風見幽香や藍が活躍していた。

 彼女たちに間合いに入った途端吸血鬼の体が潰れる。そのため彼女たちの近くには吸血鬼がいなくなっていた。

 

 吸血鬼陣営は中国風の妖怪と魔法使いと人間が活躍していた。何故吸血鬼陣営なのに妖怪と魔法使いと人間なのだろうか。

 そんな疑問が浮かぶがその三人は非常に強く、多くの妖怪がやられていた。

 

 と、どちらが先に崩れるか、という時、紅魔館が爆発した。

 ものの見事に爆発した。

 お手本かの如く爆発した。

 飛来した熱線により爆発した。

 確定である。羅畏也だ。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 レミリアが叫んでいる。吸血鬼達も混乱している。古参の妖怪達は喜んでいた。羅畏也様が助けてくれた、と。そんな具合に士気が爆上がりし、瞬く間に吸血鬼達を抹殺していった。

 新参の妖怪達は混乱していたが。

 紫は羅畏也に対し怒りが湧いたが、今はそんな時ではないと判断し、とりあえずレミリア・スカーレットを捕縛した。

「どうしてこうなったのよ……」レミリアの声が聞こえる。流石に同情する。

 …………え? アレ? ツクヨミさん? 

 ツクヨミが真っ白になりながら紅魔館を修復している。どうやら「羅畏也が破壊した=自分が直す」という法則が生まれてしまったらしい。

 非常に哀れである。

 

 さて、交渉の時間である。

 今回の件にて、紛争やらが起こる度にこの被害はヤバい、との事で物事の解決におけるルールを制定しよう。という事になり、その試験としてレミリア・スカーレットに数年後、異変を起こしてもらう事にした。

 それまでは館を隠し、外に出ないことも条件付けた。

 

 そして博麗の巫女や、羅畏也と協議しできたルールが『スペルカードルール』である。これにより幻想郷への被害を最小限にできるだろう。

 特に羅畏也からの。特に羅畏也からの! 

 

 で、これにて一件落着である。

 

 よかったな、ツクヨミ! これでもうお前は働く必要は無くなったぞ! 

 ……前に比べれば。

 

 

*1
鬼子母神(力の妖怪)と人間の混血、またはその末裔




アアアアアアアアアアアアアアアアア!原作だああああああ!


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苦労人、そして同情

 ツクヨミ君人気ですね〜。
 日本神話の神々のトップ層は羅畏也さんに気にいられているのが何人かいるので今後出るかも!


 八雲紫は疲れていた。

 理由は勿論、羅畏也である。今回は地面の強度を書き換えて畑が耕せなくなったのだ。曰く「地面の強度上げればあんまり壊さないと思った」

 気を遣ってくれるようになったのは成長したと言えるが、空回りした上でさらにとんでもないダメージを胃に与えてくる。マジでもうやめてほしい。

 そんな中、とある山の山頂に最近よく見る男がいた。羅畏也の後片付けをいつもしている可哀想な人だ。

 

 ──話しかけてようかしら。

 

「あの……」

「うおっ!!」

 

 ……随分と過剰に反応されたわね……

 

「驚かせてごめんなさい。私は此処の支配者をしている八雲紫よ」 

「あ、ああ、そうか……よかった……僕はツクヨミ、一応月の神をやっているよ」

 

(月の神? じゃあなんで此処に……羅畏也様(あのバカ)ね)

 紫は月の出来事については恨んでいないどころか、月が半分程度吹き飛んだ事に対して同情すらしていた。そんな吹き飛ばされた月……の神がこんな所に居る理由は、羅畏也の破壊後を奇声を上げながら修復している姿を見ていると一つしか考えつかなかった。

 

「そうでしたかこれは大変失礼致しましたわ……此処に居る原因は羅畏也様、ですわよね?」

「…………ああ」

「…………随分とご苦労なされているようで……」

 

「本当だよ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

「ッッッ!」

 

 耳が壊れる! なんて声量……! 

 

「本当に、本当にそうだよ! なんでこんな! なんでこんな何時(いつ)も何時も何時も何時も何時も何時も! 僕が何したって言うんだ! 何で何時も僕なんだ! アイツ自分で直せるだろうが! 自分でやれよ! ってかそもそも何で毎回毎回ぶっ壊すんだ! しかも毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回! 規模がデカいんだよ!! そして何時も何で月なんだよ! 何で僕の星を! 毎回! おかしい! 絶対におかしい! 何で僕が責任取るんだ! 姉さん(アマテラス)は知らん顔してるし! クソガキ(スサノオ)は好き勝手にやってるし! 分かってくれるのが何で悪神(アマツミカボシ)なんだよ! それに! 何で! 僕が毎回謝りに行かなくちゃいけないんだよマジで! あのボケ(羅畏也)が大陸ぶっ飛ばした時も僕が大体直したし! その上! 大陸中の神々の所に行かなくちゃ行けなかったんだぞ! 遠いんだよ! オリュンポスも! アースガルドも! あああァァァァァァァアアアアアアア!! もう嫌だ! もう嫌だァァァ!! 何で僕がァ! 何で僕がァァァァァァァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!! プギブジャァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 …………マジ? 

 それは流石にヤバいわねぇ…

 なんか私の苦労がちっぽけのものに見えてくるわ……事実格が違いすぎる…

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ」

「えっと……大変……でしたね」

「うん……」

 

 本当に可哀想ね……

 

「あの……どうやら最近は羅畏也様もあまり破壊しないように気は付けているらしいので……破壊が起こりにくいルールも制定しましたし……」

「ッ!!! 本当!?」

「え、ええ」

「うわアアアアアアアアアアアアアアアアア! ヤタアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 すごい喜びようね……本当に可哀想……。

 

「月に逃げれなかったのですか?」

「うん……何回かは逃げたんだけどね? アルテミスちゃんに追い出されるし、姉さんには連れ戻されるし……」

「ああ……」

 

 逃げ場がないのね……本当に……。

 

「元気……出してください。これ、今人間の里で売られている薬で……胃痛に良く効くんです」

「ああ……有難う……傷ついてもないのに痛むからどうしようもなかったんだ……なんも起きてない時もいつ起こるか心配で心配で……」

 

 あ、なんか涙が……

 

「君とは何だか仲良く出来そうな気がするよ」

「奇遇ですね……私もです」

 

 本当に。

 

「この際ですし羅畏也被害者の会でも設立しますか?」

「ああ、もうあるよ……。殆どの神々が加入してるよ……こんな事にならないように定期的に顔出させるようにようにしてたのに*1……」

 

 そうなのね……何やらかしたのかしら。

 

「昔に羅畏也様は何をされていたんですか?」

「ああ、それはね──────

 

 

 ────────────────

 

 予想以上に酷かった。

 

 まず熱線による熱風により南の果ての大氷塊を溶かし日本と大陸を分断した上で、大陸、周辺海域を蒸発させ、発生した大雨で大陸を一つ沈め、日本の山を平らにし、事あるごとに月を、たまに太陽を消し飛ばしていたらしい。

 その時に大体の人間────月の民含む──と、生物が死んだらしいが、カミムスビ、ガイア、デメテル、ブラフマー、イザナミ、ハデス、アヌビスと言った生、死を司る神々が協力して生き返したようだ。そして流石にこれ以上はヤバいと判断した別天津神様が神格と名を与える事を許可したとの事。

 

 とんでもなく強いと言うことは身に染みて分かっていたつもりだったけどもっとヤバかったわね。

 そんなの龍神も手も足も出ないに決まってるわよ。しかもツクヨミ様の話だと「世界ごと消し飛ばしてないだけまだ手加減していた」ですって? 

 アレで? アレで本当に手加減しているの? ……何? 「その気になれば光速超える」? 「質量が無限になる」?いや流石に………でも出来そうね羅畏也様なら……

 

 幻想郷……大丈夫かしら……ウッ……胃が……頭が……

 

「…………ところでさ、もしかして君……僕が色々直してるの見てた?」

「ええと……はい」

「…………どうなってた?」

「え?」

 

(質問の意図が分からないわね……どういうこと?)

 

「えっと、客観的に見て僕はどんな感じだった?」

「え、ああ」

 

(なるほど……でも……それは……)

 

「……やっぱり狂ってた?」

「………………はい」

「そっかあ……実は修復してる間の記憶が無くて……」

 

(やはり神とは人とあまり変わらないのかしら。辛すぎる現実から狂うことで逃避する……神ですら狂う程ってどれだけ……)

 

「あ、じゃあ私はそろそろ……」

「あ、そう?」

「……強く生きて……いや頑張って下さい……」

「うん……」

 

 そう言うと紫はスキマに入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………入る直前に響いた爆音は気のせいだ。絶対そうだ。そうに決まっている。悲鳴なんかも全然聞いていない。鶏を絞め殺したような声など聞いていない。

 

 

 ……‥……………………………………………………………………寝よう。

 

*1
4話参照




 ギャグ漫画とかにおける次話に何もかも直ってる現象。
 この世界ではそれは全てツクヨミが引き受けている……。
 ちなみに大陸の神々は羅畏也に関わりたくないが、放っておくと世界がやばい時はなんとかしてくれます。

 それと高天原内羅畏也被害ランキングは
 一位ツクヨミ   →言わずもがな。
 二位山幸彦    →山を殆ど壊されたため。
 三位アマテラス  →何度か太陽を破壊されたため(スーリヤ、アポロン、ラー、ツクヨミ等と協力し即座に修復していた模様)それと後処理。
 四位カミムスビ  →羅畏也が怪物だった時に既存の霊力を殆ど奪われ、霊力を生み出すはずの生物が殆ど殺されたので、生き返すために必要な霊力を生み出さなければならなくなったため。
 五位ワダツミ   →海が蒸発したりしたため。
 六位海幸彦    →同上。
 七位スサノオ   →パシリにされていたため。
 八位ウマシアシカビヒコヂ→生命という生命を殺されたため。
 ⑨位タカミムスビ →同上。

 です!8、⑨位は「自分の苦労を水の泡にされたから」ランクインしてます。


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魔法使い、それと妖神

神が次出るとしたらスサノオ君かな……


 博麗霊夢には友人がいた。

 

 友人の名は霧雨魔理沙。普通の魔法使いを自称している人間の少女だ。

 そんな友人なのだが……今、まさしく眠っている羅畏也への悪戯を実行しようとしていた。霊夢が花を摘みに行った一瞬の間に魔理沙は家探しを敢行し、魔理沙が来ている時には押し入れで寝てもらっている羅畏也を見つけたのだ。ただ悪戯と言ってもその漆黒の毛並みに一枚づつ葉を差し込んでいくという幼稚なものだったが、しかしそんなものでも、博麗の巫女として羅畏也の隠蔽の義務を背負っている霊夢にとっては気が気ではなかった。魔理沙を止めようにも変に抵抗され、羅畏也に起きられでもしたら何が起こるか分からない。そのためヒヤヒヤしながら見守ることしか出来なかった。

 そんな時。

 

「ぬぅ……」

 

 拙い、起きちゃった。起きちゃった。どうしよ。このままじゃ…

 

「む? なんだ?」

 

 やめて、喋らないで……あ。

 魔理沙が目を輝かせている………これはもう……

 

「おい霊夢すごいぜ! 犬が喋った!」

 

 ……嗚呼……………魔理沙……知っちゃった……

 

「霊夢、いい」ボソ

 ッ!!!!

 

「……ほう? 貴様は?」

「私は普通の魔法使い! 霧雨魔理沙だ! お前は? ペットか?」

 

 待って待って待って待って待って。やめて。

 

「俺は妖神……この神社の神をやってる羅畏也だ」

「へぇ〜この神社、神なんて居たのか! 犬って狛犬とかじゃねえの!?」

「ああ、一応いるぞ? 外に」

 

 うん、一応いるわね。“あうん”が。

 

「魔法使いか」

「おう! 魔法使いだぜ!」

「魔女ではないのか」

「私は人間でいたいからな!」

「そうか、そりゃあいい」

 

 あ、大丈夫そうね。じゃあちょっと……

 

「魔理沙?」

「おお、霊夢! 此処に神様なんていたんだな!」

「友人というのはこの娘か? 霊夢」

「そうよ、霧雨魔理沙。魔法使いを自称してるわね」

「自称じゃなくて魔法使いだぜ!」

 

 ……あ、そうよ、羅畏也様の葉抜かないと。

 

「魔理沙、羅畏也様の背中に葉っぱが刺さってんだけど何したの?」

「おお? そうなのか?」

「ああそれ? 私が刺した」

「何やってんのよ……私が抜くわ」

 

 知ってるわよ、見てたもの。ホントヒヤヒヤしたんだから。

 

「……最近の子は凄いな。霊夢といい魔理沙といい、度胸があるなぁ」

「おう! 女は度胸だぜ!」

「頼もしいな」

 

 私は今めっちゃ気が気じゃないけどね! ってかふわふわね羅畏也様の毛。……魔理沙? やめてよ? そんなこっち見ても変わらないわよ? ってかあんたもう十分触ってたでしょ

 

「……私にもモフらせてくれよ」

「いいぞー別に」

 

 あ、いいのね。

 

「おお〜! すげー! モッフモフだぜモッフモフ!」

「ハハッ。俺は毛にも気を遣うからな!」

 

 そうなの? でも……

 

「羅畏也様毛の手入れしてるところ見たことないんだけど」

「ん、それはアレだ。衝撃波飛ばしたり熱線飛ばしたりすれば汚れが消し飛ぶからな」

 

 あ、だからたまに真上に熱線飛ばしてたりしてたのね。

 

「へぇ! じゃあ私もマスタースパークで出来るか!?」

「いや、人間じゃ耐えれないと思うぞ?」

「あ、そうなのかぜ」(´・ω・`)

 

 魔理沙可愛い。ではなく。

 

「アンタいつもそんなの境内からぶっ放してたの?」

「んや、大丈夫だ。境内は俺が結界張ってるから直撃しない限り被害は出ん」

「…………そう」

 

 滅茶苦茶すぎるわね……紫の気持ちがちょっと分かったかも……

 

「ま、ツクヨミ君いるし直撃してもなんとかなる」

「………………」

 

 あのいつも奇声上げて山直してる人ね……。変神(羅畏也)の周りは変人しかいないのかしら? 

 

「壊す気でやれば直撃させなくてもいけるぞ?」

「やめて」

 

 本当に。それ幻想郷ごと吹っ飛ぶやつじゃない? 

 

「やる気は当分はないから安心してもろて」

「そう……」

 

「……」(´・ω・`)

 

 落ち込みすぎでしょ。

 

 ──────────────

 

「ところで魔理沙ちゃんや」

「お? どうした?」

 

 あ、立ち直ったのね。

 

「さっき言ってたマスタースパーク? 見せて〜」

「いいぜ! じゃあ外だ!」

「…………」

 

 大丈夫かしら……

 

 と、魔理沙が縁側から外に出る。羅畏也も縁側に座り見る準備をした。魔理沙がミニ八卦炉を空に向けて構える。

 

「よし! いくぜ! マスター! スパァァァーク!!」

 

 虹の光線が天を貫き、凄まじい熱風が此方を襲う。

 

(コレって避け易いけど結構怖いのよね……)

 

「うむ、いい熱だ、やはり時代は熱光線だよな」

 

 ウンウンと首を振る羅畏也。

 

「だけどまだ足りないなぁ。もっと熱量を上げれるんじゃないか?」

「うーん……。上げたいけど難しいんだよなー」

「では手本を見せて差し上げようじゃないか。見てしっかり学んでくれよ?」

 

 は? ちょ待っ! 避難してからにして!! 

 

「オォッ!!」

 

 光の柱が出来る。あまりの光量にあたりが暗く見える。が、そんな事は些細な事だ。風が凄まじい。熱もだ。この光量でこの程度なのならば結界の効力は確かにあるのだろう。だがとんでもないものはとんでもない。吹き飛ばされないようにするのが精一杯である。魔理沙は木にしがみついている。……やっと収まった。

 

「……ハッ、アンタ何やってんのよ! まだ避難してなかったじゃないのよ!」

「あ、やべ、ごめん」

「こちとら人間なのよ! 普通に死ぬんだから!」

「いやホントごめんて」

 

 魔理沙は、魔理沙は大丈夫? あ、いた。

 

「うわ…… 魅魔様とどっちが……」

 

 あんな悪霊より羅畏也様の方がヤバいに決まってるでしょ。何言ってんの。

 

「って言うかもうスペルカードルールがあるんだから殺すレベルの光線なんて出しちゃダメでしょ!」

「あ、そうだった」

「忘れてたの!? アンタが好き勝手やんないように創ったって面もあるのに……って言うか創った時アンタいたでしょ!」

「ゴメンゴメ「師匠!」……ん?」

 

 ん? 

 

「師匠と呼ばせて下さい!」

「お、いいぞ?」

 

 いやダメでしょ。殺人光線よ? ソレ。

 

「いやー弟子か! スサノオ君以来だな!」

 

 ん? スサノオ? 須佐之男命? え? じゃあツクヨミって月読命? は? 

 

「よろしくお願いします!」

「俺の修行は厳しいが、しっかりついてこいよ?」

「ハイ!」

 

 やめて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? アイツが光線撃ったのに何も壊れてないぞ? やっとか? やっとアイツも壊さないことを覚えたか!?」

 

「羅畏也さまが何も壊さなかった……何が起こるの?」

 

 逆に壊さないことに驚く苦労人二人であった。

 

 

 

 

 




 次の次くらいで紅魔郷ですかね。
 魔理沙は魔改造されます。


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嘆願、それと式神

 藍しゃまです!
 次回紅魔郷です!


 八雲紫は心配していた。

 それは以前レミリア・スカーレットに約束させた異変の開始が迫って来ていることに起因する。で、何が心配なのかというと勿論羅畏也である。羅畏也が異変を勝手に解決してしまわないか心配なのである。今回の異変は、スペルカードルール制定後初の異変であり、試験運用も兼ねているため、“博麗霊夢”が“弾幕ごっこ”により解決する必要があるのだ。決して“羅畏也”が“圧倒的暴力”によって解決するものであってはならない。絶対に。

 その心配を払拭するために羅畏也の下へ説明しに来た八雲紫。霊夢は今境内の掃除をしているので大丈夫だろう。

 

「羅畏也様」

「んお? どした?」

「近々幻想郷で大規模な異変が発生しますが、絶対に手出ししないで下さいね? スペルカードルールの試験運用ですからね? 勝手にドンッ! と解決しないで下さいね?」

「ん、了解……あ、ところでさ」

「はい?」

「この辺に九尾って居るっけ?」

 

(九尾? 藍の事?)

 

「ええ、私の式に藍という九尾を媒体とした式がおりますが……」

「お、それ、呼んで」

「何故?」

「ホラ、金毛九尾なんて珍しいじゃん?」

「はぁ……分かりました」

 

 確かに九尾、というか妖狐はかなりの数いるが金毛というのは珍しい。普通は茶か白になる。金毛だからなんだという話だが単純に物珍しいだけである。

 

(藍ー? 藍ー? 聞こえてるー?)

(どうなされましたか紫様)

(ちょっと急いでこっちまで来てくれる? 羅畏也様が貴女を呼んでるから)

(は?)

(あ、スキマの方が早いわね)

(え?)

 

 ぼすっ

 と、スキマから落ちる藍。

 

「え?」

「おお、ちゃんと金毛してる」

「藍、この方が羅畏也様よ」

「ええぇぇぇぇ……」

「お、尻尾に妖力詰まってる」

「ご挨拶なさい」

「えっと……お初にお目に掛かります……八雲藍と申します……」

「ちゃんと妖力篭ってる尻尾ってあんまりないんだよな」

 

 なんだこの状況。

 

 ────────────────

 

「ふーん。そうなんだ。聞いたことはあるな……玉藻の前だったか? だから封印されてたのか」

「いや……はい……お恥ずかしい限りで……」

 

 どうやらこの藍とかいう九尾、かつて俺が調査した殺生石の中に封印されていたらしく、玉藻の前と呼ばれていた狐だったようだ。玉藻の前といえば傾国の美女だが、なるほど確かに俺の美醜感覚でも美女と認識できるな。

 

「大丈夫? 紫に変なことさせられてないの?」

 

 ちなみに聞かれちゃいけない話は終わったので霊夢もいる。

 

「うむ、たまに無茶振りが来るがそれ以外は……」

「どんな?」

「えぇと……『寝たいけど回るところ残ってるからやっておいて』とか……」

 

 待て待て待て。

 

「おいどういうことだ幻想郷の支配者さん?」

 

 お前が回るべき所に他の子送っちゃダメだろ。

 

「違うんです。違うんですのよ羅畏也様」

 

 何が違うのか、と視線で問いかける。……すごい焦ってるなアイツ

 

「あの……あれですわ……その……」

「おい」

 

 絶対何もないだろ。面倒だから押し付けたろ。

 

「申し訳御座いません」

「……」

 

 ────────────────

 

「うん、藍ちゃん。困ったらいつでもこっち来たらいいから」

「有難う御座います……」

「ま、それくらいならいいんじゃない? 大変そうだし」

 

 紫? 紫なら埋まってるよ。

 

「じゃあアレだ。なんか他にやる事もあるだろうしそこの連れて帰っていいよ」

「あ、はい」

 

 …………思ったより深く埋めたな? 霊夢。

 

 ────────────────

 

「……しかし式神か。いいな」

「ん? アンタ式神作れるの?」

「無論」

 

 甘く見ないでもらいたいものだ。かつて俺は陰陽師の真似事をしていたんだぜ? 

 

「何を式神にするかだよな……そんじょそこらの奴らでは満足せんぞ俺は」

「えぇ……幻獣じゃ駄目なの?」

 

 幻獣もいいんだがな? 

 そうじゃないんよ。

 

「もっと強そうなのが良いよな。龍とか」

「龍ぅ? アンタこの前龍神ボコしてなかった?」

 

 お、それだ。

 

「ちょっと龍神式神にしてくるわ」

「……行ってらっしゃい」(あぁ、やっちゃった)

 

 ────────────────

 

 <キサマナニヲスrギャアアアアアアアアア!!! 

 <ウルセェサッサトシキニナレ! 

 <イヤダ! ニゲル! ニゲルゾワレハ! 

 <ニガサン! 

 <ヤメテクレ! リュウジンハニホンノカミジャナイカラオコラレル! 

 <ウワァァァァァァ! 

 <アッニゲラレタ! テメェコノヤロウ! オレカラニゲラレルトオモッテイルノカ! 

 <タノムカラニガシテクレ!! 

 

 ────────────────

 

「失敗したわ」

 

 よかった。超よかった。

 

「あの見た目で日本出身じゃないとは……」

 

 そうだったの? 日本の神だとばかり思ってたわ。

 

「よくよく考えたら妖怪っていうかこの世界全部俺の式みたいなモンなんだよな」

 

 どんだけよ。アンタ。ホントに。

 

「じゃあ俺寝るから。魔理沙ちゃん来たら起こして」

 

 分かったわよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし……紫が此処に羅畏也を訪ねて来た……近々何かあるわね。

 しかも碌でもないことが。

 

 

 

 

 

 

 




 羅畏也さんは式神は持ちません!
 近々もっと性能の良いやつがくる予定なので!


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紅魔、それと嘗ての常闇

アンケート結果は6月くらいから書き始めますね。
さて、原作です!
ちなみにこの世界旧作は吸血鬼異変前に解決済みです。


 博麗霊夢は空を飛んでいた。

 かの神に悪態を吐きながら一直線に飛んでいた。

 こうなった事の発端は数時間前にある。

 

 ──────────────

 

 博麗霊夢は茶を飲んでいた。

 特にやる事が無いのである。何時もの賽銭箱の確認は終わったし、掃除も終わっている。しかも博麗神社の神は信仰を必要としないため、信仰を集めるなんて事する必要もない。そんな具合のためやる事と言えば茶を飲むくらいである。

 ────と、そう呑気にしていると、突如として空が赤い霧に覆われた。自分で何とかするのは面倒だと判断した霊夢は羅畏也に霧を払って欲しい……と、頼もうとするがこの犬ぐっすりと寝ている。この大犬無理矢理起こすと機嫌が悪いため、霧を払うために幻想郷ごと払いかねないのだ。

 そんな訳で恐らく霧が出ているであろう場所に急行していた。

 

 ────ちなみに羅畏也は狸寝入りをしているだけだった。

 

 ──────────────

 

 博麗霊夢は焦っていた。

 思った以上に被害が大きい。発生場所と思しき場所と神社との間に人里があるのだが、地獄絵図であった。

 この霧かなりの妖力を含んでおり、普通の人間が吸うと身体に影響をもたらすものであったため、逃げ遅れた老人が何人か倒れており、それを助けようとするものが苦しみながら老人を引きずる。ということが起こっていた。

 流石にこれは不味い。

 何故こんな時に限ってあの神は役に立たないんだと霊夢は苛立った。実は羅畏也が霧が起こった瞬間に対策していたため死ぬことはなかったのだが、そんなこと露にも知らぬ霊夢はぶつくさ言いながら目的地へ向かって飛ぶ。

 目的地は霧の湖。多くの妖怪、妖精が住む妖力溢れる湖である。つまるところ湖に近づけば近づくほどに妖怪が出てくるのである。

 

「ふっ」

 

 針や札を投げ次々と現れる妖怪、妖精を殲滅していく霊夢。この場に羅畏也がいたら何か思うことがあるんだろうが、今はそんな事を気にしている場合では無い。こんな緊急事態に目の前に立ち塞がる方が悪い。しかし、

 

「多いわね。暗いのは好きだけど、これは」

 

 そう、多いし暗いのである。この霧無駄に赤いせいで日光を遮断しているのである。しかも妖力を帯びているため妖怪も活性化している。これは厄介極まりない。と、そんな時。

 

「そうよね〜暗いって良いわよね〜」

 

 なんか出た。

 幼女である。赤い目と金髪が非常に可愛らしい。

 

「アンタ誰?」

「さっき会ったじゃない」

 

 とかいうがこの暗闇、“何かいる”ことは分かれどそれが“何”かは分からない。そんな中でいつ誰と会ったかなど分かるわけがない。恐らく目の前にいる幼女は妖怪なのだろう。

 

「人は暗いところだとよく見えないのよ」

「え? 夜でしか活動しない人もいるよ?」

「それは取って食べても良いわよ」

「そーなのかー」

 

 この幻想郷において夜に活動する人間など精々が泥棒か妖怪に食べられたい病患者──つまり自殺志願者くらいしかいない。そんなもの食べても別に問題はないだろう。

 

「で、邪魔なんだけど」

「ところで目の前のは食べても良い人間?」

「なるほどね、ぶっ飛ばしてあげるわ」

 

 さてもう既に分かっている人が多いと思うが、この妖怪はルーミア──“元”空亡である。そんなかつて都を恐怖の底に追いやり羅畏也さんにボコボコにされた上に封印された空亡(元)ことルーミア。

 封印されたとは言え未だ強い妖怪ということに変わりはないのだが……相手が悪かった。

 相手は博麗の巫女であり妖怪への特攻持ちで、尚且つ羅畏也の加護持ちである。そんな嘗ての自分ですら苦戦する──というか負けるような化物レベルに強い相手に封印された状態で戦えるか? 無理である。

 

「『月符』ムーンライトレイ」

 

 光線と弾幕を放ち攻撃を行うが、そんなもの全弾命中したところで霊夢の針一本の方が強い。

 

「ええ……?」

 

 困惑するルーミア。当然である。単純な力の放出で弾幕を全て消されたのだ。ちなみにこれはボムでは無い、ただ本人からしたらちょっと力んだだけである。これを羅畏也さんがするとクレーターが出来るが、霊夢は弾幕を全て消すくらいである。こんなのまだ優しい方だ。

 

「『闇符』ディマーケイション」

 

 赤、青、緑の弾幕と、青い霊夢を直接狙った弾を放つ。が、

 

「ふっ!」

 

 当然の如く消される。どうしろと言うんだ。と、半ば放心していると札が直撃し、落ちる。

 強すぎる。あの理不尽(羅畏也)のせいだろうか。アレの近くにいると自動的に強くなるのか。その通りである。

 

 とにかく、そんな具合でルーミアを倒した霊夢は恐らく元凶であろう場所へ向けて進行を再開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お? なんか来たぞ? この圧倒的サイキョーのチルノ様が冷凍保存してやる!」

「えぇ〜? やめておこうよチルノちゃん」

「なんか知らんが今凄い調子が良いからな! 負けるわけがない!」

「あの赤い霧のおかげだよ? 見えないの? チルノちゃん」

 

 なんか面倒臭そうな⑨がいるが霊夢は進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

「異変か! じゃあこの超パワーアップした魔理沙様が解決してやるぜ!」

 

 なんか最近頭おかしいやつ(羅畏也)に魔改造された魔法使いが動き始めたが霊夢は進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ! 爆発の予感!」

 

 なんか可哀想な人がいるが霊夢は進む。

 

 

 

 

 とりあえず紫が思った通りに進まないことは確定だろう。頑張れ紫! 負けるな紫! 今回羅畏也さんはあんまりやらかしてないぞ! (直接的には)

 

 




はい!絶対にカオスになる東方紅魔郷スタートです!
ちなみに霊夢は高天原のフツヌシとかタケミカヅチとか以外には勝てる位強いです!


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紅魔、それと⑨

魔理沙…強くね?


 博麗霊夢は進んでいた。

 先程ちょっと強めの妖怪と勝負したがそんなこと全くなかったが如く進んでいた。しかし。

 

「湖広くない? こんな広かったっけ?」

 

 そうではない。霊夢は迷っていた。何で迷っているのか、真っ直ぐ進んでいたハズだが。と思っていると、

 

「それは妖精が迷わせているからよ!」

 

 なんか出た。

 

「あ、アンタこの辺に島あったでしょ? 案内して」

「ちょっと! ちったぁ驚きなさいよ! 目の前に強敵がいるのよ!?」

「私には標的しか見えないわね」

 

 実際そうである。

 

「ふざけやがって〜!」

 

 そんなことは知らないこの⑨からしたら馬鹿にされたように聞こえたようだ。

 

「冷凍保存してやる! 『氷符』アイシクルフォール!」

 

 と、弾幕を放ってきたわけだが。

 

「…………え?」

 

 霊夢が困惑するのも当然である。一見隙がないように見える弾幕だが、何とあの妖精の目の前がガラガラなのである。これはでは本当に標的でしかない。

 

「……」

「何!?」

 

 無言で⑨の目の前に移動する霊夢。それによって自分のスペルカードの欠陥に気づいた⑨は次のスペルカードを切ろうとする…が、

 

「くっ!『凍符』パーフェクt「ふん!」ぐはぁ!」

 

 盛大にぶっ飛んでいく妖精。本当に何がしたかったのだろうか?とにかく迷っていた原因を除くことに成功した霊夢は進行を再開する。今度は迷わず進めるだろう。

 

 ──────────────

 

(多分此処が中心部……なんだろうけど……こんな館あったっけ?)

 

 と、無事に島に着いた霊夢。館は紫が異変直前まで隠していたので、今まで霊夢は知らなかったのだ。

 

(真っ赤ね……住民は目が痛くならないのかしら?)

 

 外観に驚いている霊夢だが、驚くところはそこではなかった。門(だっただろう)ものがものの見事に破壊されていた。門番だろう人物も倒れていたが今はいいだろう。とにかく侵入である。

 

 何故こんなことになったか。それは少し前……

 

 ──────────────

 

「FUUUUUUUUUUUUUU!!!」

 

 霧雨魔理沙は飛んでいた。音速手前の速度で。

 勿論、Raiya's boot camp の効果である。羅畏也式空気抵抗減少技術は魔理沙の箒での移動にベストマッチであり、殆どの空気抵抗のカットに成功し、魔理沙に被害が及ばなくなったため、速度上限がほぼ無くなったのである。

 

 さて、そんな具合に霧の湖上空を飛行中。なんか視界の端にそれっぽい館が映った魔理沙は方向転換を行い上空から館へ突撃……しようと思ったが、結界が張られている。

 ちなみに何故分かったかと言うと羅畏也さんの「とりあえず見えたらマスパ」の指示に従った結果である。

 どうやら結界は館をドーム状に覆うもののようであり、そう言うものは基本門から入れるというかつての平安京の結界を知る羅畏也さんから教わっている魔理沙は迷わず門目指し侵攻を始めた。

 

 と、どうやら門番らしき人物……妖怪? がいるようである。かつての月人程ではないが変な格好である。

 

「あ、どうも」

「んお、どうも」

 

 礼儀正しい人だった。変な格好だが。

 

「邪魔だからどいてもらっていいか?」

「門番だから邪魔してるんだけど」

 

 どうやら本当に門番だったようだ。変な格好だが。

 

「お、アンタやっぱり門番だったのか」

「そうね、門番をしている者よ」

 

 じゃあやることは一つである

 

「ok分かった。つまりぶっ飛ばせば良いってことね」

「貴女どんな教育受けたのよ」

 

 というわけで戦闘開始である。当然魔理沙は羅畏也さんの教えに従い「とりあえずマスパ」である。

 

「『速符』マスタースパーク!」

 

 先制攻撃を奪うことに特化した熱量低め威力弱めのマスタースパークを放つ魔理沙。熱量低め威力弱めと言ってもマスパはマスパであるため、当然門番は門ごと高熱の光の奔流に巻き込まれる。

 

 ───幸いにも門は破壊されたが門番は無事なようだ。妖怪というのも間違いではなさそうだ。

 

 何はともあれ入れるようにはなった。が、正面玄関から入ることを魔理沙の本能が拒絶する。なんか違う気がするのだ。というわけで窓から侵入……と、魔理沙は思ったが窓が無い。なので「よし、ぶち抜こう」という考えに至るのは自然の摂理であった。

 

「『波符』マスタースパーク!」

 

 このマスタースパークは波状に放つマスタースパークであり、本来は弾幕ごっこ終盤に放つ「マスタースパークは真っ直ぐ進む」という固定観念ができ始めた相手に効くマスタースパークなのだが、よく壊せるマスタースパークでもある。近似種として『貫符』マスタースパークがあるが、そのマスタースパークは一点集中の結界に対して使用する貫通力特化型のマスタースパークのため、そのマスタースパークで入り口を作ると館内部に甚大な被害をもたらす上、普通に殺すマスタースパークなので滅多に撃たない。

 

 …マスタースパークって何だっけ?(錯乱)

 

 とにかく、これにて道は開かれた。紅魔館は一体どうなるのだろうか。

 

 

 ────────────

 

 一方その頃

 

「はい、これで大丈夫だ」

「おぉ、有難う御座います、何とお礼をしたら良いものか……」

 

 ツクヨミは人里にて傷ついた人間達を癒していた。

 

「こんなところか?」

「治りました、有難う御座います」

 

 久々に自分の能力をまともな使い方で使えたことをツクヨミは喜んでいた。

 そんな時。

 

(ツクヨミくーん?)

 やべえ奴(羅畏也)から連絡が来た。嫌な予感がする。

 

(霧の湖でなんかありそうだから終わり次第向かって〜)

 

 …………まさかあの爆発の予感は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その通りである! 

 頑張れツクヨミ! 負けるなツクヨミ! 月じゃないだけまだ優しいぞツクヨミ! 

 




 魔理沙はマスパキチ、霊夢はチートスペック。
 さて、どうなるんでしょうねぇ…

 魔理沙のマスパは
 速符、遅符、長符、波符、鏡符、増符、貫符、広符、散符、残符、降符、昇符があり、ランダムで幾つかセレクトします。
 後々増加するかも。


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紅魔、そこの大図書館

明日から三日くらい感想返せなくなるけどご容赦ください。


 魔理沙は紅魔館内を探索していた。

 いや、探索というのは正しくないのかも知れない。何度も同じ場所を回り、何度も同じ扉を開ける。それを繰り返していた。────つまり迷っていた。そんな時、羅畏也の影響を受けた(・・・・・・・・・・)魔理沙が行う行動とは……? 

 

 ────────────

 

 くそう、なんなんだぜ!? この館! 絶対に外から見たのと同じ大きさじゃないぜ! 妖精は多いし! なんか緑色のよくわからんのいるし! ……ええーと……毛玉? もいるし! 面倒が過ぎるぜ! 

 

 こうなったら……! 

 

「『散符』マスタースパーク!」

 

 ──なんということをしてくれたのでしょう(ビフォーアフター並感)。あれ程入り組んでいた館内部が、分散する、まるでシャワーのようなマスタースパークにより壁という隔たりがすっかりとなくなり、窓の無かった閉鎖的な空間は外の景色の見える開放的な空間へと様変わりしました。匠の粋な()心遣いが読み取れます。これには館内で働いていた妖精メイドもびっくり。泡を吹いて倒れてしまいました。あまりの嬉しさに倒れてしまったのでしょう。(圧倒的勘違い)────────

 

 お! 階段があったぜ! やっぱり「とりあえずマスパ」だな! ……しっかしこう見ると……やっぱり外とは大きさが違うぜ。どうなってるんだ? まぁいいや! あの階段おりてみるぜ! …………お? おお? おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! すごい! すごい量の本だぜ! 何の本だ? 暗いから灯りをつけて……えっとコレは……絵本だな。次! ……なんだコレ……? 絵本……にしては色がついてないぜ……小さいし……でも面白そうではあるな……うん……次! …………おおおおおおおおおおおおおおおおおおお! コレだぜコレ! こういうのを待ってたんだ! この辺全部魔導書か!? これは貰って帰るしかないぜ! 師匠なら危ないタイプの魔導書も何とかなりそうだしそういうの持って帰るか……

 

「あ! ドロb「『速符』マスタースパークッ!」グヘっ!」

 

 あ、やべ、なんかいきなり出できたからマスパ撃っちまったぜ……あ、コイツ悪魔じゃん。じゃあいいや。……って言うか本が全く焦げてないぜ……何かの魔法でもかかってるのか? ……かかってるんだろうな。(自己解決)……さて、この辺の目ぼしい魔導書は詰め終えたな。

 

 ────今現在魔理沙の着けている帽子は羅畏也製の所謂「四次元ポケット(笑)」であり、内部に多くのものを収納出来る。入れられる上限はあるが、どれだけ詰めても重くならず、帽子内に手を突っ込まないと中身が出ないという仕様である。────

 

 じゃあもっと奥の方に進んでみるか! ……なんかいるな。紫色の……不健康そうな……もやしのような……まぁいいや。この辺のも良さげだし、貰っていくか。

 

「ちょっと。持ってかないで」

「だが断る。持ってくぜ」

「えぇーっと……目の前の黒いのを倒す方法は……」ペラペラ

 

 え? 載ってるのか? そんな超限定的状況に対する対策載ってるのか? 

 

「うーん……最近目が悪くなったわね……」

「いや部屋が暗いからじゃないか?」

「鉄分が足りないからかしら……」

「いやビタミンAじゃないか? どっちかって言ったら」

 

 コイツ、頭悪いのか? こんな所に住んでるのに? 

 

「貴女は?」

「ん、足りてるぜ! 色々とな!」

「じゃあ、頂こうかしら」

「私は美味しいぜ?」

「えっと……灰汁を効率よく取り出す方法は……なるほど、『火符』アグニシャイン!」

 

 お、いきなりか。って! なんつー量の弾幕だぜ! 

 

「『散符』マスタースパーク!」

「は!? えぇ……『日符』ロイヤルフレア!」

 

 おぉ、本気出してきたな。

 

「『増符』マスタースパーク!」

 

 ────ミニ八卦路から放たれた光線が大量の弾幕をかき消し……止まった。丁度魔理沙と紫もやしの中間で止まり……ミラーボールに光を当てたかのように光が分散する。その光は周囲の弾幕という弾幕を消し去った──────

 

「ゲフッ、ゴフッ……熱過ぎる……何よあの熱線……」

「どうした? 私を頂くんじゃないのか?」

「ぐっ……『火水木金土符』賢者の石!」

 

 おお、今までで一番いい弾幕だぜ。だが……! 

 

「『遅符』マスタァァァァアアアア! スパァァァクッッ!」

 

 ────さて、皆「遅符」と聞くと何かしら遅いイメージが湧くと思うが、“遅い光”など存在しない。ならば何が遅いか? それは”攻撃までの時間“である。遅符は攻撃までに少しの溜めがいり、その溜めの時間が長ければ長いほど強くなる。具体的には1秒毎に恋符一発分である。今回は約3秒……つまり恋符の3倍になる。ちなみに「〜倍」についてもっと具体的に言えば魔力の溜め方によって大きさ、攻撃力のどちらかを倍に出来る、という風である。今回は大きさの方だ。別に広符でもよかったがそちらは溜めがなくなる代わり威力が落ちる。ではこのことを踏まえてこの後の結果を見てもらおう────

 

 

 

 

「ううううううううううっ!」

 

 ほぉ、なかなかにやるな。あの一瞬で弾幕引っ込めて魔力を結界に回したか。じゃあその結界ごと……ん? 

 

「う……貧血が……」ドサリ

 

 ……不健康すぎないか? 運動をおすすめするぜ。……お、奥に続く道発見! コレは進むしかないぜ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「呼んだ!?」

「呼んでないぜ、アンタ誰?」

「えぇ〜? 人に名前を聞くときは……」

「ok、私は博麗霊夢! 博麗の巫女だぜ!」(大嘘)

「巫女は無理があると思うな〜?」

「ん、霧雨魔理沙。魔法使いだぜ!」

「私、フランドール!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※次回は霊夢対咲夜です。

 

 




フラン戦は次々回!


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紅魔、そこの従者

いやー主人公組が強いですね〜。
ちなみに咲夜さんは瞬殺されます。


 博麗霊夢は驚いていた。

 館の正面扉から侵入したその瞬間に開いていたはずの扉が閉まったのだ。

 

 ──────────

 

 何が起きたのかしら? 魔力も妖力も知覚出来なかったわね。となると誰かの能力……

 

「はぁ〜。またお掃除の邪魔をする〜」

「! ……貴女――は、此処の主じゃなさそうね」

「なんなの? お嬢様のお客さま?」

 

 あ〜。そのお嬢様ぶっ倒しに来たっつっても通してくれないわよね〜。

 

「通さないわよ。お嬢様は滅多に人に会うことはないわ」

「軟禁されてるの?」

「…………お嬢様は暗い所が好きなの」

 

 今の間は? ……しかし『暗い所が好き』ねぇ? まぁいいわ。

 

「この霧出してるのアンタ達でしょ。アレが迷惑なの、何が目的で出してるの?」

「日光が邪魔だからよ。お嬢様は暗い所が好きって言ったでしょ」

「私は好きじゃないから止めて欲しいんだけど」

「お嬢様に言って欲しいわね」

「じゃあ連れて来て」

「お嬢様を危険な目に遭わせるわけないでしょ」

 

 どうしろっていうのよ。うーん……じゃあ、

 

「此処で騒ぎを起こせば出てくるかしら?」

「さぁ? ま、貴女がお嬢様に会うことはないけどね。それこそ、時間を止めてでも時間が稼げるし、ね」

 

 時間を止める!? そういうことね! 

 

「『現世』ザ・ワールド!」

 

 ──世界の時が止まる。この世界を知覚し、動けるのはメイド──十六夜咲夜ただ一人。の、ハズだった。

 

 ──────────────────

 

 止まった。

 止まったな? 確かに止まったぞ? 

 

 羅畏也は軽く苛立ちを覚えていた。

 実は自分以外が世界そのものに干渉することがあまり好きではない男、羅畏也。──ちなみに今までコレを知覚出来なかったのはパチュリーの結界により紅魔館内部の事象が外の世界に干渉しないようになっていたからであるが、パチュリーが貧血で結界が維持できなくなった──そんな男が時間が止まったことを知覚したのである。当然苛立ちもする。さて、そんな時羅畏也はどうするであろうか。それは非常に単純。『時間停止はいかなる能力を用いても不可能』とこの世界に定義付けたのである。

 

 

 ──────────────────

 

「え?」

「?」

「時間が止まらない?」

「は?」

 

 え? なんで? さっき止めてたんでしょ? ……まぁいいわ。

 

「ッ! 『幻符』殺人ドール!」

 

 ……どこにこんな量のナイフ隠し持ってたのかしら? でも私には効かないわね。

 

「ふん!」つ札

「ぐっ!」

 

 ……なんか締まらないわね……なんで止められなかったんだろ? まあそんなことはどうでもいいわね。とにかく此処の主の所へ行きましょうか。

 

 ──────────────────

 

 多分此処ね。……でもなんで一階は壁が無くなってたのかしら? 

 

 ──とか思いつつ霊夢は扉を開ける。そこにいたのは玉座に座る……幼女? の妖怪だった──

 

「あら、やっぱり人間は使えなかったか?」

「あ、あのメイドやっぱり人間だったのね」

 

 妖力を感じないとは思っていたが本当にそうだったとは。

 

「アンタ邪魔だし迷惑だから出て行って欲しいんだけど」

「へえ? 此処は私の城だぞ? 出ていくのは貴様だ」

「あ〜言い方が悪かったわね、この世から出て行ってくれる?」

「ハハッ! 仕方がないな、今は腹一杯なんだが……食事にするか」

 

 私を食材にするってことね? 

 

「アンタみたいな護衛雇ってる妖怪なんて一瞬よ、一瞬」

「アレは掃除係だ。お陰で首一つ落ちていない」

「アンタ強いの?」

 

 妖力量は紫より少ないけど……

 

「さあな。分からん」

「……」

「月が紅いな」

 

「こんなにも月が紅いのだ、本気で殺す」

「……こんなにも月が紅いのに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しい夜になりそうだ」

「永い夜になりそうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん? 今霊夢殺すっつった?」

 

 

 

 

 

 

 

 




レミリアはブレイクします。
レミリアの口調はブレイクしてからいつものに戻ります。


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狂気、対する魔改造

あああああああああああ!帰ってきたあああああああ!三日ぶりの家だアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 魔理沙は辟易としていた。

 敵の数があまりにも多過ぎるのである。大体は散符で消し飛ぶがたまに残っている奴がおり、魔力弾で止めを刺す必要がある。しかし面倒になり放っておけば放っておいたで、回復され後ろから攻撃されるとか言うひたすらに疲れる状況なのだ。

 

 ────────────

 

「ええい! 何でこんなに妖怪やら妖精やらが多いんだ!? ってか何で怨霊もこんないるんだぜ!?」

 怨霊がいる……ってことはつまり……人間が? いや、こんな妖怪の巣窟で? 

 

 ──────そう、この館の地下、実はかなり怨霊がいる。怨霊は基本病気や事故、あるいは寿命で死んだ人間からしか出ないはずである。妖怪等に喰われれば妖力として変換されるためだ。なのに何故これ程怨霊が多いのか? と、彼女は訝しんだ。──────

 

 ぬぅぅん……埒があかないぜ……お? アレ? 急に終わったぜ……行き止まり? ……ん、いや、アレは……。

 ……扉? コレは入るしかないぜ! って妖力濃ッ!? 此処に親玉がいるのか!? 

 

 ……いないな。しかもボロボロだぜ。

 ……うん、引き返すぜ! 

 

 ──此処には何もなさそうだ。そう魔理沙は判断した。しかし此処にはとある悪魔がいた──

 

「呼んだ!?」

 

 うわビックリしたぜ。コイツが親玉か? ってかアレ羽か? アレで何で飛べてるんだ? 

 

「呼んでないぜ、アンタ誰?」

「えぇ〜? 人に名前を聞くときは……」

 

 お、そうか、じゃあ

 

「ok、私は博麗霊夢! 博麗の巫女だぜ!」(大嘘)

「巫女は無理があると思うな〜?」

 

 チッ、やっぱりバレたか

 

「ん、霧雨魔理沙。魔法使いだぜ!」

「私、フランドール! 吸血鬼!」

「お前がこの異変の黒幕か?」

「違うよ!」

 

 違うんかい。

 

「そんなことより魔理沙! 私と遊ばない?」

「んお、いや、私はちょっと……あー、ok、いいぜ」

 

 まぁ、少しくらいいいだろ。

 

「じゃあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴女は壊れないでね?」

 

「ッ! 『速符』マスタースパークッ!」

 

 ──突如として始まった弾幕ごっこ。確かに弾幕“ごっこ”なので遊びと言って間違いはないのだろうが、死ぬ時は普通に死ぬのがこの弾幕ごっこである。殺気を感じ取った魔理沙は反射的にマスタースパークを放ち、直撃する。門番は一撃で倒せたが……──

 

「アハハハハハハ! すごいすごい! 『禁忌』クランベリートラップ!」

 

 ンなッ!? ちょっと煤けただけ!? しかも何つー量だぜ! あのもやしとは別格だ! 

 

「『恋符』マスタースパーク!」

 

 ──此処に来て通常のマスタースパーク。やはり弾幕ごっこにおいて一番使いやすいのはこれである。だが一度見られたマスタースパークは易々と避けられてしまう。しかし魔理沙も恋符を連発する。羅畏也の修行により魔理沙の魔力量はとんでもないことになっている。回復量も増えているため恋符程度なら撃ってる最中に回復する。所謂『消費より自動回復の方が早い』というヤツである。と、やっと一発命中した。するとフランは──

 

「アハハハハ! アハハハハ! 『禁忌』フォーオブアカインド!」

 

 は!? 増えた!? 増えただと!? コレはヤバ過ぎるな……ただでさえキツい弾幕が少なくとも4倍になるのか……避けられるか? 

 

 ──フランが四人に増える。このようなスペルカードは今まで──と言っても弾幕ごっこはまだ数えられる程度しかやっていないのだが──見たことがないタイプのスペルカードであった。魔理沙はコレを見てただ四人に増えたと思ったようだが、そんな訳がない。相手は言動からして今までこの遊びを続けて来たプロフェッショナルなのだ──

 

「『禁忌』レーヴァテイン! 「『禁忌』カゴメカゴメ! 「『禁忌』恋の迷路! 「『禁弾』スターボウブレイク!」」」」

 

 

 

 ──スペルカード4重展開……炎の剣に、自身を囲う弾幕と超高密度の弾幕と虹色の弾幕……つまり不可避である。普通はこの4種類の弾幕の壁の前に誰もが屈するだろう。だが魔理沙は違う──

 

「『鏡符』マスタースパークッッ!!」

 

 ──跳ね返るマスタースパーク。狭い空間で発動されると真の効果を発揮するこのマスタースパークは、部屋全体を高熱と光で埋め尽くし、部屋に存在する弾幕の半分以上を消し飛ばた上でフランにダメージを与えた。ちなみに魔理沙は自身の魔力に対するバリアを常に張っているため無事である……が──

 

「ふう……ふう……ヤバい、ぜ」

 

 ──当然である。本来のマスタースパークは純粋な魔力放出による熱光線なのだ。それに追加効果を与えさらにそれを十数秒間維持していたのだ。当然疲れる。魔力切れとかではなく単純な体力切れである。──

 

 なるほど……わかったぜ……アイツ、人間を食うわけじゃなくてこんな感じに弄んでいたのか……だからあんなに怨霊がいっぱい居やがったんだな? 

 

「ケホッケホッ」

「!!」

 

 オイオイマジか。もうキツいぜ。

 

「スゴい! スゴいよ魔理沙!! こんなに楽しいのは初めて!!!」

「そうか……そりゃあよかったぜ……」

「じゃあコレはどう!? 『秘弾』そして誰もいなくなるか?」

 

 ──フランの姿がかき消える。そして魔理沙を狙う青い球が現れる──

 

 な!? え!? アイツは!? いなくなったぜ! ……いや、「誰もいなくなるか」って言うのはそう言うことか。アレに当たると不味そうだな。

 

「私ね!? ずっと此処にいたんだ!」

 

 ん? 

 

「ずっと! ずっと! 495年間ずっと!」

 

 は? 495年間ずっと? 

 

「寂しかった! 怖かった! 暇だった!」

 

 …………

 

「たまに咲夜が持って来てくれる玩具もすぐに壊れちゃう!」

 

 ……なるほど、能力か。

 

「外に出たかった! でも! お姉様は出してくれない!」

 

 お姉様……そいつが黒幕か……

 

「『貴女は狂ってる』って何よ! 私は私! 狂ってなんかない!」

 

 ……

 

「この私が私なの! 何でわかってくれないの!」

「そりゃあそうだろ」

「…………え?」

「お前、狂ってるぜ」

「……………………え?」

「だって、そうだろ? 普通はさ、生き物を玩具って言わないんだぜ? そんなのおかしいだろ? さらにそれを壊したって……殺したって事だよな? 私はよく知らないけど、それはヤバいって言えるぜ」

「………………………………」

「お前が今まで壊した……殺した人間の声聞いて何思った? 何考えた? 何にも思ってないって言うなら……」

「……………………………………………………………………」

「お前、相当ヤバいぜ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う! 違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!!!!! 『QED』495年の波紋!!」

 

「!」

 

 

 ──弾幕が水面にできた波紋のように広がる。それは幾重にも重なり、凄まじい密度の弾幕となり襲いかかる──が、魔理沙は別の事を考えていた。──

 

 ああ、なるほど、狂いたくて狂ってるわけじゃないのか。そりゃあ辛いわな。

 

 ──魔理沙は見えた。フランに取り憑いた怨霊を。飽和し、溢れそうになるほどの怨霊を。それも非常に古い。恐らく、生まれたての能力の使い方がわからなかった時に殺した人間のものだろう。追い出そうにも元の心が優しくて追い出せなかったのだろう。そして奴らがフランを狂わせている元凶だろう。それに外に大量に怨霊が居たことにも納得がいく。もう取り憑く余地がなかったのだろう……ならば話は早い──

 

 ぶっ飛ばす! 師匠! 使わせてもらいます! 

 

 ──帽子から一枚の札を取り出す。コレは羅畏也が作った(・・・・・・・)札である。羅畏也が作ったと言うことはつまりとんでもない力を持つと言うことであり──それをミニ八卦炉へ貼り付けた──

 

「喰らえ! 『遅符』マスター…………スパークッッッッ!!」

 

 ──たっぷり10秒チャージ。それは弾幕の壁を貫き──

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 ───直撃。フランに取り憑いた怨霊をまとめて祓った──

 

 ──────────────

 

 

 

「えっぐ……ひぐ……」

「いや……悪かったって……強すぎたのは謝るし……服まで消し飛ぶとは思わなかったんだぜ……」

 

 ──まぁ……それは燃えるだろう……服だし……だが怨霊はしっかりと祓えた。コレで大丈夫だろう──

 

「ううううううううううううう……」

「いや、ホラ、な!? もう大丈夫だから! あの……お前の姉ちゃんとこ行って! 出してもらおうぜ!?」

「うう……うん……」

「よし! じゃあ行k」

 

バゴオォォォォォンッッ!!! 

 

 …………ああああああ! 嫌な予感があああ! 

 

「……えぇ?」

「おい! 急ぐぞ! 多分ヤバい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回! レミリアブレイク! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




心的描写ってキツくない?

アンケート結果は圧倒的FGO!…設定考えなきゃ…


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紅魔、つまり爆発

皆さんお待ちかね、爆発です。


 博麗霊夢は戦っていた。

 この赤い霧を出している張本人であるレミリア・スカーレットと。闘いは熾烈を極める……と、思っていたのか? 

 

 ──────

 

 …………弱くない? いや……え? いくらなんでも弱すぎない? さっきの強そうな感じどこ行ったの? 弾幕は確かに濃いけど……弱……っていうか弾幕も真っ赤ってどんだけ赤が好きなのよ。アレね、多分見た目に気を遣い過ぎて中身がスカスカになっちゃったのね。

 

「どうした人間! 動きが鈍いぞ!」

 

 いや……そんな……最低限の動きで避けるのは基本でしょうに……避ける必要すらないし……知らないの? もしかしてわかった上で言ってる? ……いや、知らなそうね……めっちゃ動き回りながら避けてるし……でも当たらないのウザいわね……本気で当てに行こうかしら……そろそろ動きのクセもわかって来たし……この辺ね。

 

「ぐむっ……やるな! 『紅符』スカーレットシュート!」

 

 うん、スペル使っても弱いわね。もう面倒臭いしこっちもスペル使っちゃおうかしら? 多分鬼とおんなじ感じっぽいし大丈夫でしょ。

 

「『霊符』夢想封印」

「何っ!? ぐううううううううう!!!!!」

 

 え? あれ? 大丈夫!? よね!? 殺してないわよね? いや殺してはないはず……

 

「……人間の分際で……!」

 

 あんまり効いてない? タフさだけはあるみたいね……

 

「アンタ弱いわね……何でそんなんで異変起こそうなんて思ったの?」

「ぬぅ……五月蝿い! 『神槍』スピアザグングニル!!!」

 

 なっ!? コレは!? ……なんて威力……ちょっと当たるわけにはいかないかも知れないわね……

 

「殺す!」

「やれるもんならやってみなさい!」

 

 ──────────────────────

 

 羅畏也は苛立っていた。

 霊夢を殺す……つまり幻想郷を壊すと言う声が聞こえたのだ。コレは許すわけにはいかない。

 

 ──────

 

 …………さて、どうするか……多分あそこの……湖の方だよな? 熱線……は不味いな。霊夢ごと巻き込む。……いや大丈夫だなアイツ普通に耐える。

 よし、じゃあ早速やるか……『羅畏也の熱線は敵本拠地に直撃する』……と。

 ハーイウチマース………………

 

 

 <バゴーン

 

 ウシ! ok! 寝る! 

 

 <ウワアアアアアアアア! 

 <ギャアアアアアアア! 

 <エエエエエエエエエエ!? 

 

 寝る! 

 

 ──────────────────

 

 ちょっとキツいわね! あの槍が厄介すぎる! 弾幕は相変わらず弱い……! アレさえなんとかできれば……! 

 

「クハハ! さっきの威勢はどうした! 私が弱いんじゃないのか!?」

「うるっさいわね! 今にぶっ飛ばしてやるわ!」

「ハハハハハハ! やってみるがいい! 出来るわけがないだろうがな!」

 

 言ったわね! ならこっちも! 

 

「夢想天sバゴオォォォォォンッッッ!!!! ええええええええええええええええええ!?」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!」

 

 は!? は!? え!? 館吹き飛んだわよ!? え!? あ! ちょっと! 湖半分くらい蒸発してるんだけど! コレ! 絶対! 絶対コレ羅畏也様でしょ! 何やってんの!? 

 

「ウワアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 うわ可哀想な人!? いつの間に!? 

 

「お嬢様!? お嬢様どうなされました!?」

 

 あ、メイド。起きたのね。……逆に起きない方がすごいけど。

 

「わかんないわよ〜!!!! しゃくや〜〜!!」

 

 ええ……あっちが素? さっきと変わり過ぎじゃない? 多重人格? 

 

「おい霊夢! 何があったんだ!?」

「ええ……紅魔館が……」

 

 魔理沙……と金髪幼女? ってかアンタいたのね。

 

「羅畏也様がやらかしたわ」

「やっぱりそうだよなぁ! やったよなぁ!?」

「ウヒャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 可哀想な人……大丈夫じゃなさそうね……羅畏也様……アンタ本当に何やってるのよ……まぁ……じゃあ

 

「ええと……ねぇ」

「グズ……何よ……」

 

 あ、かわいい。じゃなくて

 

「この異変解決でいい……かしら?」

「もういいわよ……なんでも……何で2回も……今回はあっちに撃たないようにしたのに……」

 

 ……あ、そういえばスペルカードルール決める前にすごいこっちに撃ってきたやつあったわね……アレコイツだったのね。

 

「あの……お姉様……」

「フラン……フラン!? 何で此処に!?」

「あ、私が狂気を治したぜ」

 

 ん? 狂気を治す? 

 

「え? 狂気って治るものなの?」

「あ〜、今回は外に要因があったから……」

「そう……なのね……」

 

 だとしても魔理沙に治せるのかしら……まぁいいわ。

 

「じゃあ話す時間を少しあげるわ。さっさと済ませなさい」

 

 少しだけよ。

 

「お姉様……」

「フラン……ごめんなさいね? こんな長い間……」

「ううん……吸血鬼だから暗いところで大丈夫……っていうか快適だったし……暇ではあったけど……」

「もう……大丈夫なのよね?」

「うん……」

「そう……それは良かったわね……本当に……」

「……お姉様、私外に出たい……今出てるけど」

「ええ、いいわよ。これから一緒に外に出て遊びましょう?」

「うん……!」

 

 ええっと……何があったかわからないけど……なんか重いわね……

 

「もう十分かしら? じゃああの霧引っ込めてもらえる?」

「ええ、その前に日陰に行かせてもら……直ってる!?」

 

 何が……アレ!? 館直ってる!? 一瞬で!? まさか! 

 

「」チーン

 

 か、可哀想な人……!! アンタすごかったのね……! 

 

 

 ──────

 

「じゃあ……霧止めるわね」

 

 ……よし、止まったわね。コレで解決……で、いいわよね! 

 

「おし! じゃあ宴会だ! 宴会の準備するぜ! 酒とメシはお前ら持ちな!」

「ええ、わかったわ。咲夜」

「はい、直ちに……あ、時間が止まらない……」

「え!? 何で!?」

 

 あ、忘れてた。

 

「あー……その辺含めてウチの神のところに行ってくるわね」

「おー、いってらー」

 

 さて、詳しく話を聞かなきゃね……

 

 

 

 

 ────────────────────

 

「私! しっかり! 言いましたよね!? やめてくださいって!!」

「んああ、ごめんごめん」

 

 紫……頑張れ。

 

 

 

 

 

 

 

 




霊夢はグングニル当たっても何ともないしフランと戦っても圧勝できます。


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依頼、それと使いっ走り

スサノオ君ついに登場!


 羅畏也は反省していた。

 ちょっと頭に血が昇って放った熱光線が大惨事を呼んでしまったことを霊夢と紫にしこたま怒られたのだ。

 

 ──────

 

 いやーまさかそんな大事になっていたとは……多少は手加減したはずだったんだがな……くっ! 直接向こうに出向いてぶっ飛ばすべきだったか! ……今霊夢楽しんでるんだろうなー羨ましいなー宴会。俺も行きたかったぞ。でも俺が行くと面倒なことになるし……いや俺を認識できなくなるようにすれば行けるか!? そうと決まればいくしかない! 出発だ! 

 

『待て』

 

 うお!? ってなんだナギさん(イザナギ)か。ビックリした。

 

「どないしたん? ナギさん」

『いや何、最近地獄が少々面倒なことになってるとナミ(イザナミ)から連絡が来てな……』

「え? マジか……畜生界だけは絶対行かんぞ俺は」

『問題ない。泰山王のところだ』

 

 泰山王……薬師君か。薬師君のところの問題っつうと……アレか? また復活の禁法が持ち出されたか? 薬はこの前補充したって聞いたし……はぁ……晴明ちゃんなんか知ってるかな? 

 

『まぁあまり急ぎではない。何か地獄に用事がある時に向かってくれ』

「ok、わかった」

『あとな……』

「ん?」

 

 まだ何かあるのか? あんまり面倒なやつならやらんぞ。

 

『スサノオがな……』

「お? スサノオ君がどうした」

『いやどうしてもお前に会いたいと言っていてな……』

「ありゃ? 月の時おらんかったの?」

 

 あの時スサノオ君いなかったのか……でも確かに言われてみればいなかった気もする。

 

『お前の所に送ると面倒になりそうでな……』

「あー」

 

 まあ、うん。

 

「もうこっちにスサノオ君送ってもいいぞ? 俺も久々に会いたかったし」

『アイツをそんな目的で呼ぶのはお前くらいだろうな』

 

 そりゃあな。

 

「まぁとにかく送ってもらって構わんぞ」

『分かった、伝えておこう。地獄の事は頼んだぞ』

「あいよ」

 

 さて、スサノオ君が来るのか……騒がしくなるな……

 

「おーい! 羅畏也サーン!」

 

 すごく爽やかなイケメンがこちらに走ってくる。早くない? 流石に早くない? 

 

「いや久々っスね! 何千年振りっスか!?」

 

 ……懐かしいなーこのうるささ。ってかコイツ何で歳下にこの口調でいる事に恥かかないんだ? 

 

「うん、まぁ三千年くらいか?」

「あんまりっスね!」

 

 あー……爽やかだなーホントコイツ……この前まであんな髭もじゃだったのに……

 

「これからはこっちで暮らさせてもらいますね!」

「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て」

 

 ちょっと待て。コイツいい笑顔でとんでもない事言いやがったぞ。

 

「?」

「? じゃないのよ。何で?」

「姉さんに追い出されました!」

 

 あーまたかー何やらかしたー? 

 

「フツの剣を片っ端から叩き折りました!」

 

 何やってんの

 

「あー、そうか」

「ハイ! なんでこれから此方の神社の副神として頑張ります!」

 

 ん!? 

 

「え!? 此処に住むん!?」

「ハイ!!」

 

 おおう……マジか……別に構わんが……

 

「……変なことすんなよ?」

「ハイ!」

「泣くなよ?」

「…………ハイ!」

 

 おい待て何だ何だ今の間は。お前泣くと災害起こるの分かってるよな? ナギさんもお前を海に持ってくくらいしか解決法なかったんだからな? 

 

「大丈夫っス!」

「……そうか、じゃあいいや引き続き俺のパシリ頑張ってくれ」

「ハイ!」

 

 ……成長……と言っていいのか? 最初の方はあんなに嫌々やってたのに……コレはコレで大丈夫なのか? ……ま、いいや。

 

「ウシ! じゃあ今から向こうでやってる宴会に凸るから! ついてこいよ!」

「ハイ!」

 

 ────────────────────

 

 一方その頃高天原

 

「スサノオは!? スサノオはどこ行ったの!?」

「何言ってんすか? アマテラス様が追い出したんでしょ?」

「その追い出した所にいないの!」

「は?」「え?」「マジ?」ワラワラ

「え? ホントにいないじゃん」

 

『ああ、アイツ羅畏也の所に送ったぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ナニィィィィィィィィィィィ!!!?」」」」」

 

 スサノオ──かつて羅畏也が神格を得た際にアマテラスが厄介払いとして羅畏也のパシリにさせたはいいものの、なんと二人で意気投合。とんでもない被害を生み出し大地に──ツクヨミの胃に深刻なダメージを与えた男である。そんな男が再び羅畏也の元へ行ったということは──

 

 

 

 

 

 

 「ヤバすぎる……」

 

 

 つまりそういうことである

 

 

 




頑張れ高天原!頑張れツクヨミ!


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巫女、その苦労

FGO小説出来ました!設定はもうちょっとしたら貼ります!
https://syosetu.org/novel/289352/


 博麗霊夢は疲れていた。

 毎日毎日魔理沙が来る────のはいつも通りなのだが、最近はそれに加えて吸血鬼ども──レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレット、それとメイドの十六夜咲夜が来るのである。

 前者は既に羅畏也を知っているが、後者は羅畏也を知らないため羅畏也とスサノオには────そうだった。スサノオが来たのだ。先にスサノオと霊夢の邂逅の方を話しておこう。

 

 ────────────────────

 

 博麗霊夢は気分が良かった。

 宴会にて久々に腹一杯食べ、少し酔っているためである。霊夢はワインを初めて飲んでみたが、中々に気に入ったようだ。だがワインのアルコールではどれだけ飲もうが霊夢をほろ酔いにさせる程度であったらしい。

 霊夢は鼻歌を歌いながら神社へと飛んでいた。だが霊夢は知らなかった、神社にとんでもない厄ネタが待っている事に。

 

 ──────

 

 ふぅ……洋風の宴会ってどうなるんだろうと思ってたけど、中々に良いもんだったわね。

 ……羅畏也様も来れば────駄目ね、存在を知られると面倒になるわ。

 

 

 着いた着いた。山は壊れて……ないわね。よし。

 

「ただいまー」

 

「おー、帰った?」

「あ、お帰りっス! 此処の巫女ちゃんっスね!」

 

 ……ファッ!? 

 

「誰!? アンタ!」

 

 知らん人いるんだけど! 

 

「あーコイツはね〜、今日から此処の副神になったスサノオくん」

「ヨロシクです!」

 

 スサノオ……須佐之男!? え!? 本物!? ヤバ……え? 大丈夫? 古事記じゃあ結構ヤバい事してたけど……

 

「ええと……よろしくお願いします」

「ハイ! ヨロシクです!」

 

 なんか私のイメージと違う……めっちゃ爽やかなんだけど……髭達磨みたいなモンだと思ってたのに……

 

「ええと……ウチの神とはどんな関係で?」

「ハイ! ちょっと前に羅畏也サンのパシリやってました!」

 

 何やってんのアイツ。っていうかパシリやってた事なんでそんな誇らしげに言うの? 

 

「ま、そんな訳だ。別に神が一柱増えた所でウチは大丈夫だから、食費とかその辺は安心して良いぞ! ちょっと山が吹き飛ぶ頻度が増えるかもしれんけどもな!」

 

 全然良くないんだけど? あの可哀想な人どうなっちゃうの? 

 

 心配ね……

 

 ────────────────────

 

 と、こんな具合である。

 さて、最初の話に戻ろう。魔理沙と吸血鬼どもが来ると言う話だったが、前者は羅畏也を知っているため別に問題はないが────ちなみにスサノオは紹介済みである。「おう、ヨロシク!」で割とあっさり終わった────後者は羅畏也を知らないため、魔理沙の時の反省を活かし、羅畏也とスサノオには何処かに行ってもらうのだが、たまにとんでもないものを持ってくるのである。

 

 補足としてだが、吸血鬼どもの来訪は羅畏也が事前に察知できるためいきなり来られてバレるなんて事は無い。時間を止められても羅畏也ならば知覚できる。

 

 ──────

 

「──────じゃあ、今日の所はこんな所かしらね、帰るわよ、フラン、咲夜」

「はーい! じゃあね!」

「失礼するわ」

 

 はぁ、やっと帰ったわね。……今日は何も無いと良いんだけど。

 

「おーい! 霊夢ー!」

 

 ……早いわよ。一息くらい吐かせて欲しいんだけど。

 

「はいはい、お帰りなさい」

「ハイこれお土産」ポン

 

 ……何コレ? 球? 

 

「何コレ?」

「ああ、ソレ、龍玉っス!」

 

 は!? 龍玉!? 龍狩ってきたの!? 絶対色々破壊したでしょ! 

 

「おう、狩ってきた狩ってきた。最近外の川が穢れてるみたいでな、弱くなったのがいっぱい居んだよな」

「コレも人間達が成長した証なんスけどねぇ」

 

 あ、そうなの? 

 

「でさ、ソレ一応弱くなったやつのとは言え龍玉だから、改造していい感じになんかに使って?」

「え、ええ」

 

 ……後で紫に相談ね。何に使おうかしら? 

 

 ……じゃなくて!! 

 

「龍狩りってアンタらねぇ! 雨降らなくなるし川涸れるんじゃないの!?」

 

 雨と川の神獣でしょ? アイツら。

 

「いやそれがね〜外の連中、雨を究明したんよ」

 

 ……え? 雨を……究明? どう言う事? 

 

「いやね? 実は雨って人間の知ってる事象だけで説明できるのよ。龍とか別にいらなくて」

 

 そうなの!? 

 

「そんな事知られちゃったモンだから龍の価値が大暴落しちゃってさ、もう川の名物みたいになってて、そんな事もあって“川穢してもいいや!”ってなっちゃったんだろうね」

「うぅん、悲しいやら嬉しいやら、わかんないっスね」

 

 神が……神獣が……そんな簡単に……ちょっと衝撃的過ぎるわね……

 

「ってわけで問題ないから後勝手にやっといてね〜」

 

 ………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと! 羅畏也様居る!?」

「何!?」

 

 ビックリしたわ……いきなり出てこないで紫……で? 何事? 

 

「どうしたの紫?」

「羅畏也様が森ごと龍ぶっ飛ばしたの!」

 

 ……やっぱり破壊してたわね? 

 

「……でも、いつもの事じゃない?」

「眷属を殺されたって龍神様が怒ってるの! このままじゃちょっとヤバいわ!」

「……え? いや、龍神って羅畏也様がボコボコにしてなかった?」

 

 何がそんなに紫を焦らせているのか分からないわね……

 

「なんとかしないと毎日龍神様が私の所に文句言いに来るって言ってきたの!」

 

 …………どうでもいいわよ!! 

 

「そう……頑張ってね」

「待って! 私今羅畏也様の近くに移動できないから連れてきて!」

「何でよ」

「いや……いきなり近くに出られるとビックリするからって……接近が不可能にされて……」

 

 あー……

 

「まぁ……じゃあ……連れてくるわね……」

「有難う霊夢!」

 

 はぁ……面倒ね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「休みを…休みをくれ…」

 『苦労してるな…貴様も…』

 




言ってませんでしたがこの世界のイザナミとイザナギは和解して再婚してます


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釣り、それと河童

 羅畏也達は釣りに興じていた。

 いつも通り吸血鬼達が神社に来ていたため、外に出なければならず、暇をしていたのだ。構図としてはイケメン三人が並んで川に釣り糸を垂らしている状況である。────ちなみに三人とはスサノオと人化した羅畏也と連れてこられたツクヨミである。この三人、無駄に顔面偏差値が高いのだ。

 

 ──────────────────

 

「……しかし釣りか……久しぶりだな」

 

 実際久しぶりだ。何百年振りってところだな。最後に釣りをしたのが……確か……海だったな。うん、釣りすぎてワダツミのやつに怒られたんだったか? あのケチめ、生態系を破壊したわけでもないのにあんなに怒りやがって。ウミサチが止めてなきゃあ殺してたぞ。

 

「僕は最近やる機会が多いな」

「俺は高天原にいた時もよくやってました!」

 

 へぇ、そうなんだ。ツクヨミ君は最近地上によくいるからわかるな。うん。まあ俺の所為なんだが。でもスサノオ君よ、高天原で釣りはちょっと……大丈夫なのか? 

 

「お前……高天原でって……大丈夫なのか?」

「僕も初耳なんだが? あそこ釣りなんてできたモンじゃないだろ?」

 

 流石の俺でも高天原で釣りというのは勘弁願いたい。それだけ高天原での釣りというのはキツイのだ。……まず、全くかからない。本当にかからない。これは次の理由にも繋がってくるのだが、奴らは頭がいい。そのためかかるのは精々馬鹿くらいである。次に……こちらが主なのだが……奴らは喋る。釣ったら釣ったですごいうるさいのだ。俺はサクッと仕留めてしまうので別にいいのだが……仕留めるとそこの周辺の魚が物凄い責めてくるのだ。俺としては全員殺していいのだがあそこの魚殺り過ぎると割と実際の海にヤバいダメージが行くのだ。一匹一匹が神獣のようなものなので一匹殺す毎にその種の魚千〜十万匹近くが死ぬと考えて欲しい。というわけで高天原での釣りはやるだけ面倒くさいのだ。

 

「いや、あそこの(わに)*1との格闘結構楽しいんスよ」

「は!? 鮫!?」

「おい、大丈夫か? アマテラスのヤツに怒られるんじゃねぇのか?」

 

 高天原の鮫は強い……だけならいいのだが、奴ら太古から生きている個体がほとんどであり、割と洒落にならないレベルの神力を持っているので下手に殺すと周囲の魚────つまり獣神が神力を取り込み、その取り込んだ魚の種が超強力になり、生態系の破壊が起こる可能性がある。俺が言えた事じゃないが流石にヤバいんじゃないか? 本当に俺が言えた事じゃないが。

 

「大丈夫っス! 殺す寸前に現世のでっけぇ山にぶん投げるんで!」

 

 でっけぇ山……富士か! だからあそこあんなに神力溜まってたのか! ようやっと謎が解けたぞ! 

 

「お前……! 現世に高天原の生物放り出すって……ヤバいだろ……」

「問題ないぞ兄貴。あんな所登れる人間いねぇから」

「いたぞ?」

 

 いたぞ? 普通に。今じゃあもう皆“人生で一回は登ってみたい”みたいな感じになってるぞ? 

 

「……マジスか?」

「おう、まぁ神秘は今めっちゃ薄れてるから。今後も続けてokだ」

「やめてくれ、怒られる」

 

 ……別に良くね? 俺たちの事なんて此処(幻想郷)くらいでしか認識できないんだから。

 

「おっ」

「んお」

「あ?」

 

 何だ? 

 

「かかりました」

「お、マジか」

「網どこやったか……」

「ホッと」ザパー

 

 ………………何だ? コレ。なんか青い人の水死体……じゃねぇな、妖怪だ。生きてるし……いや生きてるわけじゃないんだが……ってか何つーもん釣ってんだ……ヤベェぞこの光景……側から見たら男三人が釣竿に吊るされた水死体を眺めているって感じだぞ……これは間違いなく犯罪者です本当にありがとうございます。

 

「……とりあえず陸まで持ってこいよ」

「あ、ハイ……よっと」

 

 ビターン

 

 うわあ……顔面からいったぞオイ……もっと優しくやってやれよ……

 

「おい、ツクヨミ君」

「あー、はいはい」

 

 妖怪を癒すツクヨミ。相変わらずなかなかにチートだなソレ。

 

「うーん……此処は……?」

「おい、誰だお前」

「え? ……ヴェッ!?」

 

 おおう……すっごい震えてる……俺ら今そんなに威圧してn思いっきりしてたわ。スサノオ君。ちょっとやめて。

 

「あー、ツレがすまんな……お前は?」

「えっと……川城にとり……河童です……」

 

 河童か。なんだ? 正しく河童の川流れだ〜ってか? 

 

「お恥ずかしながら……ちょっとやらかしてしまいまして……」

 

 そうだったよ。

 

「何で」

「外から来た道具の実験を……ちょっと……」

 

 あー……まぁ河童だしな。技術厨だから仕方がない。

 

「外の道具が何で此処にあるんスか?」

「ちょっと結界が薄いところから入ってくるんだと」

 

 無縁塚とかそうだな。あそこは色々ある。まあ俺は自由に出入りできるが。

 

「ま、頑張ってくれや」

「あ、はい。では私はこの辺で……」

「ん」

 

 帰った。外の道具がこちらで使えるようになったら便利そうなので非常に頑張っていただきたい。使えなかったら俺が何とかするし。

 さて、釣るか。

 

 

 ────────────────────

 

 

「あ、また釣れた」

「俺もだ」

「俺もっス」

 

 何だこの川、めっちゃよく釣れるんだが? …………龍が。

 何でこんなにいんのコイツら。小さいし……もしかして奴ら繁殖した? 

 龍って鯉が滝登ってなるモンじゃないの? もしかしてその辺も龍が力失ったことに関係あったりするのか? 

 

 ま、いいや。サクッとサクッと……お、いい鱗してんじゃーん。コレは今日のお土産決定ですね。

 いやー霊夢の反応が楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃の龍神

『アァァァァァァ! 眷属がァァァァァァ!!』

 

 

 

 

 

*1
サメ




第三の苦労人:龍神


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魔理沙、いつもの修行

UA5桁…だと!?
というわけで魔理沙がどんな修行をしているのか、公開します!


 魔理沙は秋の森を走りまくっていた。

 羅畏也の修行の一環で迫り来る竜巻から逃げているのである。ちなみに魔法は巻き込まれて吹き飛ばされて叩きつけられる寸前まで禁止だ。羅畏也にそうルール(法則)を作られた。そんなの死ぬんじゃないかと思われるだろうが、死んでも羅畏也の力で生き返れる。と言っても痛いのは嫌なので必死に走る。──────ちなみにコレは羅畏也曰く準備運動、一番最初のメニューである。

 と、いうわけで今回は魔理沙と羅畏也の修行の内容を話そう。

 

 ──────────────────

 

「はっ、はっ、はっ」

 

 相変わらず疲れるぜ、コレ。ちょっとでも気を抜いたら巻き込まれるし、たまに上からなんか降ってくるし、風すげぇし。

 しかも巻き込まれるとめっちゃ痛いんだよなぁ……巻き込まれた木で切れるし、石で骨折れるし、叩きつけられた時魔力で受け身取らないと死ぬし。

 

 <マリサーアトゴフンナー

「はーい!」

 

 あと5分か、キツイぜ。まあ慣れたからいけるがな! 

 ……しかし、師匠この竜巻どうやって維持してるんだ? いつも30分間ずっと消えないし勢い落ちないけど。

 

 ──────────

 

「おー、早くなったなー。20分だ」

「はい!」

 

 ふう……何気にコレも疲れるぜ……走り終えたら休憩なし……って言うかコレが休憩なんだろうが歩いて神社に戻らないといけないんだぜ! 

 逃げる方向とかちゃんと考えないと迷子になるし時間かかっちまうんだよな! 

 

「うし、じゃあ次!」

「はい!」

 

 さてと、やるか。

 足を肩幅と同じくらい開いて、腰落として、で────

 

「ハァッ!!」

 

 全力魔力放出! ──────ぐうううううううううう! キッツイぜ! で、こっから自分が放った魔力を魔力放出を続けながら吸収! これぞ永久機関だぜ! でも長いことやると普通に死にそうになるので永久は無理だぜ! 

 ってか何でいっつもいっつもこの神社にダメージないんだ! 全力なのに! 

 ………………えーっと、1セット3分だから…………あと1分くらいだな。で、それを……

 

 ──────

 

 

 

「ハイ20セット終わり〜。休憩〜」

「ゼー……ゼー……ック……ハイ……ゲフッゲフッ!」

 

 死ぬぜ☆

 いや割とガチで。

 咳き込んでマジで死にかけた。いや死んでも生き返るけど。(羅畏也的な意味で)……なんか最近私の死への恐怖が薄れてる気がする。コレ人間として大丈夫なのか? 

 ……今そんな事考える余裕ないんだったぜ。休憩休憩。

 

 ──────────────────

 

「はいじゃあ次マスパ1000発ね」

「ハイ!」

 

 この時間はかなり楽な部類だぜ! 上空に向けてマスタースパークを撃つぜ! ちなみに最近マスタースパーク撃ちすぎて超効率化されたのと修行の成果で魔力量めっちゃ上がったからもうただのマスタースパークにミニ八卦路はいらないぜ! 逆に使ったら火力が強すぎて可哀想な人が可哀想になるぜ! (ツクヨミ的な意味で)

 

 ──────

 

「次ー。貫符と速符100ー」

「ハイ!」

 

 うーん、速符の方は楽なんだが貫符がな……あれ収束限界までやんなきゃいけないから……まあでも楽な部類だぜ! 

 

 ──────

 

「次ー。散符と増符100ー」

 

 コレはヤバいぜ! 散符はミニ八卦路ないとできないし増符は魔力消費が多いのとちょっと複雑な魔法式使うからすごい疲れるぜ! 

 ま、まだマシだぜ。

 

 ──────

 

「次ー。鏡符と遅符100ー。各30秒ねー」

 

 コレはガチエグいぜ! コレが一番ヤバいぜ! どっちも途中で魔力吸収を行いながらやらないと命を魔力に変換することになるから下手すると死ぬぜ! 

 まぁ私はもう慣れたからそんな事ないんだけどな! 

 

 ──────

 

「うーし、終わりー。……じゃ、飯だー!」

 

 飯だぜ! 飯は霊夢が作ってくれるぜ! 普通にすげぇ美味いぜ! 

 

「おーい! 霊夢ー! 一段落したから飯作ってー!」

「もうすぐできるから座っといてー!」

「あいよー!」

 

 こんな会話が毎回あるぜ! ここだけ聞いたら夫婦みたいだけど実情知ってると“そんなわけねぇじゃん“ってなるぜ! 

 

「お、魔理沙っスか! じゃあいつものっスね!」

 

 スサノオさんだぜ! 飯待ってる間に将棋をしてるぜ! (3勝5敗56分)

 やけに引き分けが多いのは飯待ってる間にやってるからだぜ! 

 

 ──────────────────

 

「「「ごちそーさまでした(っス)」」」

「お粗末様」

 

 美味かったぜ! 

 

「うし、じゃあ瞑想」

 

 瞑想だぜ! 昼飯食った後だから気ぃ抜くと寝るぜ! 寝るとスサノオさんにぶっ叩かれるぜ! 超痛いぜ! 

 

 ──────

 

「zzz……」

「ふん!」

「ギャッ!!!」

 

 イッ↓タイ↑カタガァァァァァァアアアアアアア↑↑!! 

 

 ────────────────────

 

「ふっ!」

「マスタースパーク!」

 

 瞑想が終わったら霊夢と模擬戦だぜ! 霊夢の弾幕は一発だけでもめっちゃ痛いぜ! まぁこの程度の痛み私にはまだ弱い方だぜ! 

 とにかくマスタースパークを撒くぜ! 一瞬でもマスパ切らしたら夢想封印が飛んでくるぜ! ……あ、ヤベ

 

「『霊符』夢想封印!」

「ぐううううっ!」

 

 あっぶねえ! 間一髪だぜ! ……しかし本当に何でこんなにやってんのに神社壊れないんだ? 

 

 ────────────────

 

「ん、コレでok」

 

 模擬戦が終わったら修行は終わりだぜ! 

 最後にミニ八卦路のメンテを羅畏也さんにしてもらうぜ! 私の魔力量が増えすぎて不具合が起きる事が最近多くなってるからな! 

 

「ありがとうございましたー!」

「おー、じゃあなー」

「またねー」

「お疲れっスー」

 

 よし……帰って寝よう! もう疲れた! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔理沙が順調に化物になってってるんだけど」

「お前が言うなよお前が」

「……」(どっちも原因は羅畏也サンなんだよなぁ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ああ、もうあんなに強く…破壊だけはやめてくれよ…マジで…」

 

 それは無理な願いだぞツクヨミ君。




妖々夢までもうちょっとかかりますかねぇ…


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疑問、そして露見

そういえば羅畏也さんって賢者達とは紫くらいしか会ったことないんですよねぇ…
まぁ今話とは関係ないんですけど。
 
ちなみに超シリアス回です。
見たくない人は見ない方がいいかもしれません。


 博麗霊夢は焦っていた。

 理由はいつも通り遊びに来ていたレミリア・スカーレットと愉快な仲間達(メイドと妹)の質問である。

「そういえば私の館を二度破壊したあの光線は何?」と、そう質問されたのだ。さて、なんと答えたらいいものか。

 

 ──────────────────

 

「ああ、それね……それはね……」

 

 拙いわねコレは……どうしようかしら……久々にかなり焦っているわね、私……

 座っている足にじんわりと汗を感じる。胸の鼓動が速まる。これ程の緊張感は……魔理沙が羅畏也様に悪戯してた時以来かしら?いや、魔理沙の時の方が緊張したわね。 

 …………っていうかどっちも羅畏也様絡みね。本当にやめてほしいと思う。

 とにかく羅畏也様の存在がバレたら拙いわ。いくらコイツらだからといって羅畏也様の存在が他にバレれば遅かれ早かれ人里に伝わる。だから私は…………なんとしてもそれ阻止しないといけない。

 魔理沙は本当に運がよかっただけ。でもコイツらに魔理沙の時と同じような展開は期待できない。

 どうしよ……どう答えればいいの……? 

 

「そういえば私も気になっていました」

「私もー。魔理沙と霊夢はなんか知ってそうだったと思うんだけど……えーと……確か……ラ……ラーラ? みたいなこと言ってた筈」

「そうなの?」

 

 は!? え!? 大体合ってる!? 何で知ってるの!? そんなこと言った!? 

 

 ──思い出される記憶──

 

『おい霊夢! 何があったんだ!?』

『羅畏也様がやらかしたわ』

『やっぱりそうだよなぁ! やったよなぁ!?』

 

 ──────────────

 

 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!! 言ってたああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!! 

 

 馬鹿! 当時の私の馬鹿! 何やってるの! バッチリ聞いてる人いたじゃない! 

 ああああ、どうしようどうしよう。

 なんとかはぐらかして…勘付かる前に…いや、無理…かしら?

 やめて、もうコレ以上は。

 コレ以上追求するなら、私は………。

 

「霊夢? どうしたの? 顔色が悪いわよ?」

「あっ!? え!? ああ、うん。大丈夫大丈夫」

「で、霊夢は何か知ってるの?」

「あ……もしかして……此処の神だったり?」

「ああ、それならば納得もいきますね」

 

 あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。

勘付かれた。勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた勘付かれた

 

 勘付かれた!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………殺さなきゃ。

 

「………………ええ、そうよ」スッ

 

 大幣を呼ぶ、それとこの前もらった龍玉で作った陰陽玉も。陰陽玉だけでもいいのだけど、念のために大幣も使う。どれだけ強い技を使おうとこの神社が壊れることはないからね、全力で、まとめて、殺す。

 

 

「ッ!!」

「お嬢様! お逃げください!!」

「時間は!!?」

「境内での使用はできません!」

「くっ!」

 

 ちょっとは悪いと思っているのよ? 原因は全て羅畏也様だし。でも羅畏也様の存在を公言しないっていう確証を得られないのに知られてしまったのなら、生かしておくわけにはいかないの。

 できるだけ楽に殺してあげるからそこ、動かないでね? 

 ……本当に魔理沙は運が良かった。もし羅畏也様が寝ていなかったら、もし羅畏也様が魔理沙を許していなかったら、同じ末路を辿っていた筈だった。

 

「夢想……天s「はぁ!」

 

 フランがこちらに向けて拳を握っている……なるほど、核を破壊したのね。核の破壊による内部からの崩壊……凄まじい能力だわ。

 アンタのことは眼中にもなかったのだけれど……まさかアンタが一番の脅威になるとは思わなかったわ。でも無駄よ、核なんて、霊力でいくらでも作れる。

 フランに目線を向けると、フランの目に鮮明な恐怖の色が出る。

 罪悪感が湧く。でも私の体はコイツを殺すことに対して一切の抵抗を示さない。私って随分と非情だったのね。

 

「フランッ!!!」

「妹様ッ!!!!」

 

 まず自分の心配をするべきじゃない? 

 

「夢想天生」

 

 この瞬間、私はありとあらゆる物から浮く。

 何者も……羅畏也様は除くとして私に攻撃することはできない。

 集中力がいるから目は閉じるけど、そんなの関係ない。

 全方向に対してありったけの霊力を吐き出して弾幕を放つ。

 アイツら……この世界に存在する羅畏也様以外の存在にこれを防ぐ術などない。

 だからこそコレはスペルカードにされた(・・・・・・・・・・)。あまりにも強過ぎたから、制限をつけるため。

 

 

 ……………………………………

 

 …………………………

 

 ………………

 

 殺した…かしら? 

 

 目を開けて確認しようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石にやり過ぎだ、霊夢」

 

 羅畏也様がいた。

 

「ッ!!!?」

 

 羅畏也様!? 何で!? 

 

「お前、一回攻撃受けたろ、それ」

 

 ……本当に過保護ね。

 

「何で助けたの? ソイツら」

 

 羅畏也様の後ろには気絶した三人の姿があった。羅畏也様にソイツらを助ける必要はなかった筈だと思うんだけど? 

 なんで? 

 

「いや、何、西の方の出身を俺の関係者が殺すとちょっと問題かな、と」

 

 あー、そうだったわね。

 ってか……

 

「何でアンタそんなこと気にしてんの? アンタならどうとでもできるんじゃないの?」

「ん、あんまりやり過ぎると世界に矛盾ができて不具合が起こる(バグる)からな。限定すればどうとでもなるが」

 

 不具合、ね。どうなるのかしら? 

 …………いや、考えない方がいいわね、コレは。

 私はまだ“まとも”でいたいわ。

 それはそれとして

 

「どうするの? ソイツら。記憶でも消すの?」

「いや、むしろ俺の事は知っておいてもらう。その上で俺に関する事を口外出来なくする(・・・・・・・・・・・・・・・)。逆らえなくすればいざという時の駒にはなるだろ」

「……自分の眷属にする事とは思えないわね? あとアンタにはいらないんじゃないの?」

 

 妖神でしょ? アンタ。

 

「そうなんだがな? 幻想郷を……博麗を失うわけにはいかんのよ。それと西のヤベェやつ(オーディン)への対策」

「…………そう、じゃあ後は任せたわ」

「おう」

 

 ……アイツもアイツで幻想郷のこと考えてるのね。

 じゃあいつもやってる破壊も……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや、絶対何も考えてないわね。(真実)

 

 

 

 

 




羅畏也さんはインド神話以外の神話体系に敵視していますし、されています。

博麗の巫女は羅畏也様に気づいた存在を終了させる義務があります。


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冬、つまり炬燵

……冬っすね!(錯乱)
今回は霊夢無双(豪運的な意味で)回です!


 博麗霊夢は温まっていた。

 外は現在冬であり、非常に寒い。そんな訳で霊夢は羅畏也、スサノオ、それといつの間にかいた魔理沙と一緒に炬燵でぬくぬくしながら麻雀に興じていた。ただし勝者は敗者に対する命令権獲得である。

 ちなみに羅畏也は人化している。

 

 ────────────────

 

 よっ……と。北……ね。私南だし、捨て安定ね。今私が欲しいのは北じゃなくて發なのよねぇ……あ、これやったっぽいわね。羅畏也様がとてもいい笑顔してる。……ホントなんでこんな無駄に顔がいいのかしら。

 

「ロンっス。霊夢ちゃん」

「あ、俺も俺も」

 

 スサノオ様もだったのね……スサノオ様、鉄仮面が割と上手いのよね……やっぱり古代から生きていればそういうのは慣れるモンなのかしら? 

 

「うわマジか。ラッキーじゃん霊夢、超レアだぜそれ」

「いらないわよこんなラッキー」

 

 しかし……まさか北を待ってたとは……想定外だったわね……何点かしら? 

 

「国士っス、32000っスね」

字一色(ツーイーソー)、48000だ」

 

 ファッ!? 二人とも役満!? しかも国士無双と字一色って……有り得なくはないけど……くっ……! ダブロン採用するんじゃなかったわね……! 

 

「おお……霊夢、豪運だな……!」

「いらないわよ……そんな豪運……!」

 

 どっちかって言ったらこれ不運の方じゃないの? 

 

「ふぅ……じゃあ霊夢トビで負けか……じゃ、霊夢。酒取ってきて」

「私も飲みたいぜ!」

「羅畏也サン。俺も飲みたいっス!」

「魔理沙はいいがお前はダメだ。下手すっとこの辺大変なことになるし」

「(´・ω・`)」

「はぁ? こんな昼間から? ……まぁいいけど……スサノオ様には頼まないの?」

 

 あんなに自信満々にパシリって言ってたのに。

 

「いや、アイツ途中で呑むからダメ」

 

 ああ、成程ね……ふぅ……さて、取ってこようかしら……覚悟を決めないと……

 炬燵を出て……襖を……開ける! 寒い! 

 

「霊夢〜。閉めてってくれよ〜」

「分かってるわよ!」

 

 縁側に出て襖を閉じる。さっさと取って来なくては……! 

 

 ──────────

 

「ふぅ……ふぅ……寒い!」

「ん、お疲れ霊夢」

「お疲れ様っス」

「お疲れー」

 

 あの後一瞬で蔵まで行って取って帰ってきた。

 猪口を取ってないと気づいた時は絶望したけど、部屋の盆の上に置いてあったのを思い出して一命を取り留めた。

 

「……魔理沙。魔法で何とかできなかったの?」

「ん? 魔法は破壊しか出来ないぜ?」

 

 は? どういうこと? …………ああ、そういうことね。魔法=マスパになってるのね? コイツ。

 羅畏也様もっと便利な魔法教えればいいのに。

 

「よし、じゃ、続きしようや……」

「okっス! やりましょう!」

「ふーむ、じゃあ私は霊夢にツマミ作らせようかな」

 

 コイツ……もう既に私に勝ったつもりでいるわね……いいわ。じゃあ私が勝ったらアンタに作らせてあげる。

 

 ──────────

 

「ぬぅ……まさかこの俺が……!」

 

 まさか羅畏也様が負けるとは予想してなかったわね…ちなみに勝ちは私。

 小さい役で親をキープしてアガり続けたら勝った。羅畏也様は最初の私のツモの時親だったのでいち早くトンだ。

 しかし、羅畏也様って料理できるのかしら? 気になる。

 

「じゃあ羅畏也様。何か作って来て」

「はぁ……わかったよ……ツマミでいいな?」

「ええ」

「ん……ok……ほいっと」

 

 羅畏也様が手をひっくり返すと突然炬燵の上に人数分の唐揚げと箸が出現した。

 勿論皿付きだ。直置きではない。

 

「ええ……何やったんですか? 師匠……」

「『俺が手を返すと俺と一緒に麻雀してる人数×6の皿に乗った唐揚げと箸が出る』んだぞ? 知らない?」

「知らないわよそんなの……」

「今作ったからな」

 

 なんだコイツ。

 ……あ、美味しい。

 

「オラ続きだ続きィ! 次は俺が勝つ!」

 

 確率は弄らないでよ? つまらなくなるから。

 

 ────────────────

 

 私が親の番……ん? アレ? ……コレ……まさか……え? 嘘でしょ? 

 ……マジね。ヤバすぎない? コレ。ヤバすぎて手が震えるんだけど。

 

「ア……アガリ……ツモ……」

「「「はぁァッッ!?」」」

 

 ま、まあ……そうなるわよね……やった私もかなり信じられないもの……天保(テンホー)なんて……

 

「冗談だろ!? おま……牌見せろ!」

「マジだ……マジっスよコレ……兄貴以外で初めて見ましたよコレ……」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……? さっきから霊夢本当に豪運すぎないか?」

 

 本当にヤバい。動悸が止まらない。羅畏也様の反応見る限り確率操作したわけじゃなさそう。

 

「えっと……『俺の問いには真実でしか答えられない』、で……霊夢。イカサマしたか?」

「い、いいえ」

 

 疑われるのも当然よね……流石に。

 

 ……で。

 

「マジだ……マジだよコレ……エグすぎん?」

「ハイ……これは……」

「えぇ……どうするコレ?」

「霊夢の勝ちでいいんじゃないですか?」

「あー……そーね。そーしようか。330000分の1引いてなんもないは可哀想だし」

 

 と、流れで私の勝ちになった。負けはまた羅畏也様。

 外の世界の食べ物を出してもらって食べた。とてもデカい蟹だった。とても美味しかった。

 

 

 

 

 




雀魂で天保をかつてかまされたことのあるこの私。
当時は負けたのに大興奮して叫んじゃいました。


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雪、つまり合戦

いやー…ついに日本神話じゃない神…龍神いましたけど…出ます!


 博麗霊夢は困惑していた。

 紅魔館の吸血鬼どもが最近以前にも増して神社へと来るのだ。

 この前あんな事があったのになんでこんなに来るのか、と霊夢は戸惑っていたのだが、本人たち曰く「妖神の覚えが良くて悪いことなんて無くない?」とのこと。

 なんとまあ見上げた心の強さである。

 ちなみに魔理沙と羅畏也とフランは外へ遊びに、スサノオは高天原から呼び出しを受けて戻っている。

 ──────────────────────

 

「だからね? 私はアレを毛布にするべきだと思うのよ。だからちょっと刈ってきてくれない?」

 

 一体何を言っているの? 

 死ねと? 私に死ねと? 

 まぁ確かに羅畏也様の毛触りが良いのは同意するけど……多分刈ろうとしたら指の方が刈られるわよ? 

 

「なんでよ。嫌よ……っていうか西洋って毛布使うの?」

「最近気付いたわ、アレは良いものよ……で、ちょっとだけ……ね?」

「いや”ちょっと“って……毛布作るのにちょっとじゃ無理でしょう」

「大丈夫よ。里にある程度の大きさまでなら複製が作れる人間がいるの」

 

 そんな人いたんだ……知らなかった。

 

「しかし毛布ねぇ……安眠は出来そうね、ソレ。毛から何か変なのが出てなければ」

「出てるの?」

「わかんないわよ。今まで抜け毛の一本も見たことないんだから」

 

 毛が季節で生え替わるなんてことは今まで一度もなく、夏はひんやりとしているし、冬はあたたかい。

 ……そう考えるとなんか最適に思えてくるわね……ただ本当に何かが出てなければの話だけれど。

 

「じゃあ霊夢、一本抜いて確かめてよ」

「嫌よ……本当に。触らぬ神に祟りなしって言葉がこっちにはあんの。下手に触りに行くとどうなるかわかったもんじゃないわ」

「あら? 博麗の巫女ともあろうものが怖がっているの?」

「怖いわよ……アンタはちょっとしかアイツのことを見てないからそんなこと言えるのよ」

 

 はぁ……本当にアイツは気まぐれだし、頼んだらokくれるかもしれないけど……やっぱり怖いモンは怖いわよ。

 

「……失礼致します」

「咲夜? どうしたの?」

「それが……突如として謎の人物が妹様方の近くに現れまして……破壊行動を羅畏也様と共に開始しました」

「はぁ!? 誰!?」

「青い肌の男です」

「……知らないわ。……これは……ちょっと急いで行ってくるわ!」

 

 ────────────────────────────

 

 魔理沙は呆然としていた。

 隣にいるフランも呆然としていた。

 魔理沙とフラン、羅畏也はつい先程まで普通に──普通と言っていいか分からないが──遊んでいた。

 積もりに積もった雪中を縦横無尽に移動する羅畏也でモグラ叩きをしたり、雪像を作って破壊(破壊が本命)をしたりしていたのだ。

 そして、雪合戦を始めようとしたその時……! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 筋肉モリモリ、マッチョマンの変態が現れた。

 しかもただの人間ではない。肌が青く額に目がついているし、極め付けは裸である。

 流石に下は着けていたが上裸である。

 

 “白銀の世界に佇む青肌で上裸のマッチョマン”

 

 どっからどう見ても不審者です本当にありがとうございます。

 と、そんなところから話は始まる。

 

 ──────────

 

 うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? 

 変態だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 

 

「ほう? まさかお前が来るとはなぁ!」

 

 あ、なんだ。師匠の知り合いか。じゃあ変態なのも頷けるな。

 

「ハハハハハ! よォ羅畏也ァ! 今日こそテメェを追い越してやるぞ! この! 雪合戦でなァ! ……すまんなァ嬢ちゃん方。俺ァコイツを追い越さなきゃァならんのでなァ。今回ァ譲ってくれやァ」

「アッハイ」

 

 うん! キャラが強い! それと声がデケェ! 

 

「ルールァ単純! 先に当たったほォ()の負けだァ! 今回こそァテメェにブチ当ててやるぜェ! この為に百年近く修行した俺に勝てるなんざァ思うんじゃあねェぞォ!」

「フハッ! 良い威勢だな! さぁ! かかってこい!! テメェのその修行を水泡にしてやる!」

「ハハハハハハ! おっしゃァ! 行くぞォ! フンッ!」チュドォォォォォォォン! 

 

 ファッ!? 

 待て待て待て待て待て待て待て待て! 

 なんだその破壊力!? 

 

「フラン! 逃げるぞ!」

「えっ!? あ、ああ、うん」

 

 ──────

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」チュドォォォォォォォン! チュドォォォォォォォン!! チュドォォォォォォォン!!! 

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」ドゴォォォォォォン! バゴォォォォォォォォォン!! ズドォォォォォォォォォォォォン!!! 

 

 ワー。スゴイナー。サッキマデアソコ、ヤマガアッタハズナノニナー。モウジメンガアナダラケダー。

 

 ……いやヤバすぎね? 

 雪玉の音じゃないんよソレ。

 なんかもうソレ雪玉じゃなくて魔力砲とかじゃないのか? 

 ……あ、雪玉だったわ。足元の雪が凄まじい勢いで減ってるわ。

 ……空が青いなぁ(現実逃避)

 

「魔理沙! フラン!」

「ん、おお。霊夢」

「大丈夫!? どうなってるの!?」

「あー……師匠と師匠の……ご友人? が雪合戦してる」

「ゆ……雪合戦?」

「うん」

「…………そう。大丈夫なのね?」

「おう、全然全然」

「じゃあ、ここは危険だし神社に戻りましょう。フランもね」

「……ウン」(遠い目)

 

 ふぅ……帰るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」チュドォォォォォォォンチュドォォォォォォォンチュドォォォォォォォンチュドォォォォォォォンチュドォォォォォォォンチュドォォォォォォォンチュドォォォォォォォンチュドォォォォォォォンチュドォォォォォォォンチュドォォォォォォォン

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」バゴォォォォォォォォォンドゴォォォォォォンチュドォォォォォォォンズドォォォォォォォォォォォォンチュドォォォォォォォンバゴォォォォォォォォォンドゴォォォォォォンチュドォォォォォォォンズドォォォォォォォォォォォォン

「やめてェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!」

「うわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

 まさに地獄! 頑張れツクヨミ君! 負けるな紫ちゃん! 

 神話の時代よりはマシだから! 

 

 

 

 




と、言うわけでシヴァ君登場です!
シヴァ君は何気に羅畏也さんと一番仲が良い神です。


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破壊神、それと妖神

暑いっすね〜最近。
外出たくないけど出なくちゃ行けない現実に打ちひしがれる者、POTROT


 羅畏也は楽しんでいた。

 百年と少しの間会っていなかった親友であるシヴァ君が遊びに来てくれたからだ。

 羅畏也はシヴァ君がまさかこの幻想郷に来てくれるなどとは思っていなかった。何故ならばシヴァ君は大の修行好きなので基本はインドから離れることが無いためである。

 前に会った時も地獄絡みの件でインドへ赴いた時であった。

 ────ちなみに当時もかなりの破壊が起きたがブラフマー君がなんとかしてくれた。

 と、そんな具合のため羅畏也さんのテンションは今、爆上がり中であった。

 それでも某苦労人達の叫び声を聞いてから若干冷静になり結界を張っているのは、妖神として眷属の居場所をあんまり壊しちゃいけないなーという配慮である。

 

 ────────────────────

 

 いややっぱり楽しいねコレ、この……そう雪合戦! 

 うん、やっぱり弾が有限っていうのが最高だと思う。俺普段は実質弾無限みたいなモンだから。

 ……しかし……シヴァ君上手になったなぁ……(しみじみ)

 マジで修行しまくったんだろうなぁ……すっげぇ早いじゃん。

 あのね……投げる→雪取る→玉作る→投げる、の一連の動作が0.01秒あるか無いか。

 本当に成長したよ……前なんか「つめってぇ!」とか言って雪に触るのすら難しかったのに。

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 おお、更にスピード上がった。

 いいねいいね、そうでなくっちゃ面白く無い。

 じゃあこっちも本気……を出そうか。全力では無いけどネ! 

 

「フハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 こんなモンでどうよ! 

 オイオイどうしたどうした! 

 避ける動作がデケェぞオイ! 

 そんなに反復横跳びみたいな動きしやがって! お前避ける修業はしてなかったのかァ!? 

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 声に余裕が無くなって来たな!! 

 俺を超すんじゃなかったのか!? 

 オラオラ!! 来いよオラ! お前もっと来いよオラ! 

 少ねぇんだよ! 玉が! お前もっと行けるって! 1玉/0.005sくらいで行けるって! 

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 ううん! 早くなった! 早くなったけどまだ動きがデカい! 

 そんなんじゃすぐに当たっちまうぞオラァ! 

 もっとだ! もっと行けるだろ! シヴァァ!! 

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────

 

「やり過ぎよ」

「「正直スマンかった」」

 

 うん、やり過ぎたとは思うよ。うん。

 結界張ったとは言え中がもうとんでもなく抉れてたし。

 いやホントすごいことになってた。

 何で雪が無くなってないんだってレベル。

 ちなみに勝ったのは俺。決まり手は擬似光速雪玉でした。

 …………衝撃波で大体消し飛んだぜ! 

 

「……ハァ……アンタらねぇ……結界張ったのはまぁいい判断だと思うけど流石にアレはちょっと……ねぇ……」

「あー……申し訳ねェなァ……ウチからブラフマー連れて来っから見逃してくれねェかァ?」

「ブラフマー? 誰?」

「コッチで言うツクヨミ君」

「あっ」(察し)

 

 ブラフマー君……元気してるかなぁ……今度新しい顔を持っていってやろうかな(某ヒーロー並感)

 

「えっと、あぁー……大丈夫だ、問題ない。ウチにはツクヨミ君がいるから」

「んァ? いいのか? この前また月ぶっ壊れたって聞いたんだが……」

「何世紀前の話よソレ……時間感覚大丈夫か?」

「む、まァ……若干ヤベェかもしれんがァ……ウチァ普通にウン劫*1年とかずっと動かねェヤツもいるしなァ……」

「そうだった……ソッチ元からやべえんだった……」

 

 劫……劫か……俺もまだそんなに生きてねぇよ。

 天地開闢が……10劫年くらい前だったか? ……ヤバ過ぎるな……

 

「まァ……そういうんだったら帰るわ。んじゃ、元気でなァ」

「ん。……あ、俺もしかしたら近々ソッチ行くかも知れん」

「お、わかったぜェ……また地獄……十王かァ?」

「おう、まぁ日の本内で済めばいいんだがなぁ……」

「ムズいんじゃねェかァ?」

「だよな〜」

 

 そうなんだよなぁ……マジで十王どもがやらかすとインドに波及すんだよなぁ……

 

「じゃコッチでも調べさせとくなァ……うし、じゃあな!」

「じゃあの〜」

 

 ……おおう、瞬間移動……

 アレか。此処とインドまでの距離破壊したのか。

 便利な能力やの……

 

「……で、アイツ誰?」

「シヴァ君。インド……天竺の破壊神」

「天竺ぅ……? それはまた大層な……」

「で、霊夢。連中は?」

「向こうで寝てるわよ……今、夜よ? 夜」

「あ〜……そうね」

 

 そういえばもう夜だった。

 ……よく待っててくれたな霊夢。

 

「ん……飯は食ったか? 風呂は?」

「当然」

「ok、じゃあ寝るか」

「アンタはいいの?」

「俺はいい。食う必要も体洗う必要もねぇし」

「わかったわよ……おやすみなさい」

「ん、おやすみ」

 

 離れに向かって行く霊夢。

 ……しかし、シヴァ君なんでコッチ来たんだ? 

 …………いや、意味なんて無さそうだな、うん、寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寝、寝たい……」

 

 修復作業で眠れないツクヨミ君であった。

*1
百年に一度降りる天女の羽衣が直径7kmある岩を撫で岩を削り切るまでの時間




シヴァ君が来た理由は単純に「修業がひと段落したから」です。


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月神、その一日

ツクヨミ君が普段何してるかを書いてみました!
思ったより普通でした!


 ツクヨミは疲弊していた。

 ちょっと前までは羅畏也による大規模な破壊が少なくなっており、かなりよく休めていたのだが最近になってまた破壊活動が活発になってきたのだ。

 これも全てあのインドのせいである。

 さて、今回はそんなツクヨミ君の一日をお見せしよう。

 

 ──────────────────────────────

 

 窓から眩しい光が差し込んでいる。姉さんの光だ。

 ……あぁ……朝が……朝が来てしまった……

 ずっと寝ていたい……休んでいたい……もうずっと夜でいいんじゃないかな……

 いっそのこともう月で太陽ずっと隠して……いやダメだ色んな所から怒られる……

 はぁ……今日は……森の方か……途中で阿求から新しい情報を貰っていこう。

 

 

 

 

 まず顔を洗って……冷った! ……痛ッ! 

 …………指パックリいった……こういう時この能力便利だよなぁ……でもこの能力のせいで今僕こんな所にいるんだよなぁ……高天原に帰r……

 …………いや、やっぱないな、あそこもう二度と帰りたくない。

 あそこで飯を食うとオオゲツヒメ*1を思い出して食欲なくなるし、

 大体の生き物喋るし、下手な事すると子供出来るし。

 ……僕なんて父さんが右目洗って生まれたんだよなぁ……(ガチ)

 ……はぁ……ご飯食べよう……

 

 今日は……また龍か……羅畏也が取れたの全部押し付けてくるんだよな……

 まぁ人間が食ったら影響がほぼ確実に出るから仕方ないんだけどね……本当に霊夢ちゃんには過保護なんだよなぁ……

 まずは……鱗を取って…………うん、手がズタズタ。もう治したけど。

 鱗も有効活用すればいいのに……いや必要ないのか? アイツ普通に爪ヤバいし。

 ……ふぅ、捌くか……もう慣れたよ流石に……

 腹切って、内臓取って、骨抜いて……龍玉はないな。

 じゃあ焼くか……無駄に火を通さないんだよなぁコレ……

 ……よし、焼いてるうちに米と味噌汁を……

 

 焼けたかな〜? ……焼けたな。

 じゃあタレをつけて……いただきます。

 いや待てまだ米出してなかった。

 

 ……今度こそ、いただきます。だ。

 …………うめぇ……何回食ってもうめぇこのタレ……

 もうアイツ(羅畏也)ずっとコレ作ってればいいんじゃないかな。

 

 ──────────────────

 

 はぁ……さて、行くか……

 ……なんで僕こんな山奥に家建てちゃったんだろうなぁ……

 移住も考えておこうかな……

 ……うん、人里までは飛んでいこう。

 

 冬の空は冷えるな……

 雪が降ってないことが救いだけど……此処には天候自在犬(羅畏也)がいるんだよなぁ……

 今の時間は寝てるハズ……ハズだよな? 

 

 ん、見えてきたな。

 降りるか。

 …………うわっ! めっちゃ沈んだ! スッゲェ雪積もってる! 

 ……こんなに雪が積もってるのはオカミノが怒った時以来か……あの時は大変だった。うん。カグツチがすごい頑張ってた。

 ……っていうか動けん! ……飛ぼう! 

 

 ──────────────────

 

「どーもー」

「あ、月詠様。いつもご苦労様です……コチラが三日前からのものになります」

 

 おおう……もう僕がいきなり背後に現れても驚かなくなったか……

 お、今回はかなり薄いな。

 コレは期待できる。

 

「じゃ、僕はコレで」

「はい、頑張ってくださいね」

 

 うん、かなり少ないな。

 いつもこんな調子なら……いやまず破壊をしないで欲しい。

 さて……こっから森まで……数分って言ったところか。

 

 ──────────────────

 

 お、着いた着いた。アレだな。

 ……うん、かなり小さめ。

 多分……スサノオのヤツと何かの勝負でもしたな。

 

 この程度なら2、3時間あれば終わるか?

 

 ────────────────────

 

 ハイ終わり。

 じゃあ次行くか。

 

 ……コレも……さっきと同じ位か。

 多分同じ理由だろうな。

 ってことはコレと同じのが更にもういくつかあるってことで……

 はぁぁぁぁ……やるか……

 

 

 

 <ドォォォォォォォォォン

 

 ……仕事が………増えた…………………

 

 ──────────────────

 

 姉さんが……あの位置か……そろそろ昼だね……

 此処で取り出したるはアイツ(羅畏也)が外から持ってきた「かろりーめーと」! 

 非常に美味い! その上持ち運び易い! 

 壊れ易くたまに粉末状になっているもののこれ以上に便利な飯は無い! 

 たまにはいいことするよねアイツ。

 で、それと最近謎の旅人がよく持って来てくれる滋養強壮剤(エナジードリンク)を装備! 

 コレで僕はもう無敵! 

 次の仕事も頑張るぞ! 

 

 ────────────────────

 

 さーて、次は……デケェ……

 午後はずっとコレになりそうだな……

 

 

<ズドドドドドドドドドドドドドォン

 

 ……だぁぁぁぁぁああああああもぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!! 

 アレ絶対ヤバいやつだよ絶対! 今日中に終わらせないといけない規模だよ!

 また夜まで労働確定だよもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はぁ……夜だな……僕の加護は……ちゃんとあるね。ok異常なし、と。 

 ……っていうかこんだけやって1/4ってマジ? 

 コレ多分この辺の地脈弱ってるな……後で父さんにお願いして流してもらうか……

 緊急のやつ*2は……アレの他にはなさそうだね。

 うん。じゃあさっきのヤツだけやって終わるか……

 

 ────────────────────────────

 

 はぁ……帰ってきた……

 さて、じゃあ今朝の龍の残りと、米と、味噌汁と、漬物と、あと少し牛肉があったな…を食べて……寝よう。

 酒も少し呑むか…

 明日は高天原に行かなきゃな……

 

「おーい! ツクヨミくーん!?」

 

 あぁ…なんか来た…。

 何? なんかまたやらかしたのか? 

 

「脈は俺が流しといたぞ〜」

 

 マジで? いや有難い……

 ……ん? いや、むしろお前がやって当然のことなんじゃないか? 

 僕感謝する必要なくないか? 

 ……あ、嫌な予感。

 

「脈流しすぎて暴走して若干凄いことになってるから頼むな〜」

 

 ……………………ハッ(嘲笑)

 まぁそんなことだろうと思ったよ。

 で、僕が直せばいいんだね?いつも通りに。

 さて、寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
全身の穴という穴から食い物捻り出した神

*2
人里の連中が羅畏也さんを認識出来るくらいのやつ




色々頑張ってるツクヨミ君。
実は退屈しない今の生活も意外と好き。


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妖神、それと外界

暑いっすね!
今回新キャラ出ます!


 羅畏也は外の世界のとあるカフェへと来ていた。

 羅畏也は定期的に霊夢の目を盗み外の世界に遊びに来ているのだ。

 念のため言っておくが、しっかりと人化しているし、現代風の服も着ている。

 ちなみに今霊夢は霖之助の家で魔理沙と鍋を突いている。

 

 ────────────────────────────

 

 ……ふぅ……やっぱりこのコーヒーっての良いな……作り方は大体覚えたし、神社に植えるのもいいか……? 

 いやダメだ霊夢にバレて怒られる。

 どうするか……原産は南米だったな……南米にいい感じのヤツいたか……? 

 …………いねぇな。ふぅむ……いややっぱり幻想郷にいいスペースを見つけて……気候は最悪弄ればいけるし……

 …………気候……外の世界は今、春なのか……幻想郷はまだ雪降ってんだよな……

 やはり異常……異変だな。霊夢に調査させるか。

 原因は多分…………

 

「おや? これはこれは、理夜さんではありませんか」

 

 …………あー……

 この名前で呼ぶヤツっつったら……

 やっぱりコイツか……その女の姿気に入ったのか? 

 

「……よう、元気してたか?」

「はい、おかげさまでこの通り元気ですよ」

「……朝斗(あさと)は?」

「ハハッ。あんな要介護ジジイの世話なんて夜口(よぐち)辺りに任せておけばいいんですよ」

 

 ひでぇな、オイ。

 一応王様なんだろ? アイツ。少しくらい敬ってやれよ。

 

「ハァ……で? 狂気と混沌云々の進捗はどうだ?」

「全っ然ですよ。此処の連中どいつもこいつもガード固くないですか?」

「まぁ俺がやらかしまくったからなぁ……」

 

 割とマジで固いんだよなぁ……此処の神々の精神汚染対策。

 俺がちょっと世界バグらせちゃって一時期人間の精神状態がヤバいことになってたからな……

 だって仕方ないじゃん、俺だって失敗くらいするんだから。

 

久藤(くとう)とか葉下(はした)は今何やってるんだ?」

「あ〜……最近じゃ大人しくしてますね。よっぽど理夜さんが怖かったんでしょうね」

「そうか? あんまり怖くないと思うんだが……」

「ハハッ。寝言は寝ていってもらっていいですか?」

「お? なんだ喧嘩か? 買うぞ?」

「すいませんでした」

 

 はぁ……俺そんな怖いか? 

 昔は舐められないように威圧を撒いてた時あったが……

 

「ふぅむ……じゃあお前今やりたい放題じゃん。今のうちにやっちゃいなよ」

「だからですねぇ……此処の連中どいつもこいつもガード固いんですよ。上手いことできないんですよ」

「頑張れ頑張れ出来る出来る絶対出来る頑張れs「ちょっと黙っていただいていいですか?」……」

 

 くっ……応援してやったというのに……

 

「もっとこう……理夜さんに協力していただけるのなら楽にいけるんですけど……」

「お前……一応俺も此処の……あー……人間なんだから」

「えぇ〜? 貴方はどちらかといえば狂気が満ちた方が色々都合がいいと思うんですけどね……」

 

 否定はしないがなぁ……

 外が狂気で満ちちまうと、幻想郷の全員が正気になることになるからなぁ……

 

「ん〜……キツイな。他を当たってくれ」

「他がないんですよ……ロキさんなら行けそうですが、どのみち貴方が敵対するとなるとどうしようも無いんですよねぇ……」

「まぁな。俺がいる限り此処をどうこう出来ると思わないでいただきたい」

「貴方を暴走させれば壊せますかね?」

「そん時は戻す」

「強すぎますねぇ……」

 

 俺云々の前にインドとギリシャどうやって攻略するか考えたらどうだ? 

 シヴァもクソジジィ(ゼウス)も滅茶苦茶強いぞ? 

 ……さて、そろそろ霊夢が帰ってくるな。

 

「んじゃあ俺は帰るわ。で、夜口にコレ渡しといてくれ」

「了解です……ん? ……えぇ? ……何ですかコレ」

「伝言。夜口宛じゃないが」

「あ〜……okです。ではお元気で」

「ん、じゃあな」

 

 さて、コーヒーを何処に植えるか考えないとな。

 

 




というわけでニャルラトホテプさんでした!
他は
朝斗→アザトース
夜口→ヨグソトース
久藤→クトゥルフ
葉下→ハスター
です!

というわけで今作最強キャラランキング!

一位 羅畏也→言わずもがな
二位 シヴァ→宇宙ごと壊せる
三位 別天津神(ヴィシュヌ、カオス)→世界そのもの
四位 ブラフマー→宇宙には宇宙をぶつける
五位 インドラ→単純な暴力
六位 ゼウス→単純な暴力
七位 タケハヅチ→単純な暴力
八位 霊夢→無双天生
⑨位 アザトース→宇宙の王
十位 アマツミカボシ→星々の王

です!
まさかの霊夢八位!強い!


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妖々夢、つまり春雪

ついに春雪異変突入!
原作よりかなりハードになっております!


 霊夢は漂っていた。

 正確には“漂っていた”ではなく“調査していた”なのだが、空にやる気なさそうに浮かんでいる姿を見ると漂っているとしか見えない。

 何故調査をしているのか? と言う疑問は前回を見ていればわかるだろうが、外に行った羅畏也がもう既に外が春なのに対し、幻想郷が冬なことに疑問を持ったからである。

 しかし、そんなこと知らない────というか外に行ってた事がバレると羅畏也が教えてない────霊夢はいきなり「なんで冬なのか調べてこい」と言われたところで“何言ってんだコイツ”状態なのだ。

 無論そんな状態で”なんで冬なのか“という普段でも訳のわからないものが見つかるわけがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ見つかったのだが。

 流石博麗の巫女(魔改造被害者)である。

 

 ────────────────────────────

 

 はぁ……なんで私、冬の超寒い時にこんな意味のわからないことをしなくちゃならないのかしら? 

 なんで冬って……そりゃあ冬でしょうよ冬なんだから。

 確かに今年の冬は長いなとは思ったけど……妖力も神力も感じないしただの偶然なんじゃないの? 

 でもアイツがああ言うって事は多分なんかあるんだと思うんだけど……

 

 

 

 

 

 …………ん? 

 桜の……花弁? 

 ………………多分コレよね。というか絶対コレよね。

 よく見たらなんかコレが流れてる川みたいなのが結構ある……

 追いかけたいけど……まずは報告ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんぞコレ?」

「……何っスかコレ?」

「えぇ……?」

 

 二人も知らないの? 

 見た感じコレが原因っぽいけど……ホントなんなのコレ? 

 

「うーん……大陸の青龍ならなんか知ってるんじゃないっスか?」

「あ〜……青龍君ね……龍神に取り継がせるか。霊夢、この前渡した龍玉ある?」

「もう陰陽玉に改造したわよ」

「ん、それでいい。くれ」

 

 なんで龍玉を……もしかして龍玉から龍神を呼べるの? 

 儀式的なことするの? ちょっと興味あるわね……

 

「オラー! さっさと出てこんかワレェ!」

「ザッケンナコラー! スッゾコラー! ドグサレッガー!」

 

 …………思ったのと随分違うわね。

 なんかこう……呪文的なことを唱えるものかと……いやコレも呪文なの? 

 

『なんだなんだ! 何の用だ!』

 

 あ、声だけなのね? 

 

「オイ青龍君に取り継げ! すぐでいいよ!」

「5秒毎にアンタのお可愛い眷属ちゃんが死んでいくっスよ! 嫌だったら30秒以内に取り継ぐっス! ハイよーいスタート!」

『なっ!? わっ、わかった! 取り継ぐからそれはやめろ!』

 

 ……鬼畜すぎない? 

 流石にもうちょっと待ってあげなさいよ。

 

「ん? 霊夢。その顔は可哀想だと思っているな? あの蛇共は大丈夫だ! 気にする事はない! むしろ最近増えすぎて困ってるくらいだ! アイツらのうちの低位のヤツらが格落ちしすぎて繁殖をし始めやがったからな!」

 

 ……あ、そうなの? 

 ……もしかしてあの結構大きめの蛇みたいなの全部龍なの!? そこら中に大量発生してるじゃない! 

 

「じゃあ羅畏也サン! 俺アイツら狩ってくるんで! 青龍が出たら連絡下さい!」

「おうよ。…………よし霊夢、多分数時間かかるし四目並べでもしてようぜ」

「わかったわよ……囲碁板持って来るわね」

 

 そういえばコイツにこういうので勝ったこと片手で数えられるくらいしかないわね……生まれてすぐから一緒にいるのに。

 よし……絶対勝とう。

 

 

 

 

 

 ──────────────────────────────────

 

 か……勝てない……! 50回はやったわよ!? 

 何故……!? 

 

「ハハッ! 甘い甘い! この歴代巫女(超天才)達と永い時を争い続けたこの俺に早々勝てるものか!」

「くっ……! ムカつく……!」

 

 なるほど……圧倒的な経験の差……ね。

 ……でも惜しいのが何回かあったわね……頑張ればいけるんじゃないかしら……

 

『もしもーし、聞こえますかー?』

「んお……聞こえてるぞー!」

『はーい……で、なんの用ですか?』

「あー……ちょっと待って、スサノオ君呼ぶから」

『わかりました〜』

 

 ……えぇ? ……なんでこのタイミングで……! 

 

 

 

 

「はいはーい! 帰りましたー!」

「お帰りー。龍玉あった?」

「ありましたけど、もうどれもダメっスね! ゴミ程にも役に立たないっス! もう全部纏めて消し飛ばしましょう!」

『やめてくださーい』

 

 ……いいんじゃないかしら? あの量は流石に気持ち悪いし。

 

「で、青龍君や。春を司る君に聞きたいことがあるんだが……コレ何かわかる?」

『見えないです』

「じゃあ送る」

『……あ、コレですか。コレは春ですね。春を凝縮して目に見える形にしたモノです。そっちのアマテラス様の加護を生命力に変えたモノ、とも言えますね。それが降ることで春が訪れます』

 

 へぇ……コレ、天照様ゆかり(紫にあらず)のものだったのね。

 

「……俺今までこんなモン見たことなかったんだけど」

「俺もっス」

『ああ、それはさっきも言いましたがコレは凝縮されたモノです。普通は春が凝縮されるなんてことないので初めて見るのは当然ですよ。精々見るのは我々のような直接春に関わる神や幻獣くらいです』

「ん……なるほどな……霊夢、コレどこで見つけた?」

 

 えっと……確か……

 

「その辺に浮かんでるのを捕まえたわ。あとはコレが一箇所に集まってるのが見えたわね。川の支流が本流に流れて出て〜って感じで」

「……え? 拙くね? 生命力なんだろ? ソレ」

『えっと……はい、拙いです。そのままだとその辺の生物、植物含め全部死に絶えますよ』

「ファッッ!? 霊夢ゥ! 急いでコレが集まってる所行ってこい! スサノオ! 魔理沙にも解決手伝わせて!」

「了解っス!」

 

 えぇ……コレは流石に洒落にならないでしょ……急がないと……! 

 遊んでる場合じゃなかった…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何が起きてるんだ!? なんで春が来ない!? 皆死にそうだぞ!?」

 実はちょっと前からずっと裏でめっちゃ癒やして回ってたツクヨミ君。

 頑張れツクヨミ君! 負けるなツクヨミ君! 

 正直今回君が頑張ってなかったらヤバかったぞ!

 

 

 

 

 

 

 




春雪異変って割とヤバい異変だったと思うんですよ。

ちなみにアマテラスさんは幻想郷を認識できないのでこの事態を知りません。
羅畏也さんも生命に関することは迂闊に弄れないので霊夢が頑張るしかないです。

一応あと数日は大丈夫(ツクヨミ君のおかげ。ツクヨミ君がもっと頑張れば一週間行くか行かないか)ですが割と気付くのギリギリでした。


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妖々夢、それと焦燥

うわっ…うちの霊夢…強すぎ?


 霊夢は焦っていた。

 今回は割とガチで焦っていた。まぁ今回は幻想郷の全生命の生死がかかっているので仕方ない事だが。

 霊夢は今春の凝縮体の川を追い猛進しているわけだが────

 ところで皆さん、思い出して欲しい。今作の霊夢は圧倒的最強さん直々に魔改造された正真正銘のバケモンなのだ。

 なので普通に音速など軽く超えるスピードで異常な冬の空を駆け抜けてゆく。

 原作ならば此処でレティやらプリズムリバー三姉妹やらとの弾幕ごっこがあるわけだが、音速を超えた運動により発生する衝撃波がそんなもの薙ぎ倒す。

 と、そんな具合なので数分とかからず冥界への入り口に辿り着くわけだが……

 

 ────────────────────

 

 速く! 速く! もっともっと速く! 間に合わなくなる! 

 って着いた! 此処ね!? この孔ね!? 

 さっさと侵入して元凶をぶっ飛ばさないと! 

 

『んお? 着いた?』

「キャアアアアアアアァァァ!!?」

『ううん耳ぶっ壊れるぅ〜』

 

 

 ビックリした! ビックリした!! ビックリした!!! 

 羅畏也!? なんで!? 此処上空よ!? 丸見えよ!? 

 アンタ存在自体が禁忌なの自覚してる!? 

 ……アレ? いない? 

 

『あ〜……俺今その陰陽玉通してお前に話しかけてるからそっちにはいない。心配すんな』

 

 あ、成程、だったら大丈夫ね。

 いやそんなことよりもまず言っておかなきゃいけないことがあるわね。

 

「アンタねぇ……こう、そういう……そっちからも話しかけれることは事前に言っておいてくれない? すっごい驚いたんだけど?」

『いや申し訳ない。もうその辺わかっているとばっかり思ってた』

 

 う〜ん……まぁ確かに分かりそうではあるけど……

 

『まぁ俺の神力流して離れてても話せるようにしたのついさっきだからわかるわけないんだけど』

「怒っていい?」

『ゴメン』

「はぁ……ま、いいわ。今多分相手の根城の入り口っぽい孔にいるんだけど、わかる?」

『ん、じゃあこの球放り込んでみ?』

「コレを? なんでそんなことするの? あとコレ壊れないの?」

 

 いくら元が龍玉って言ったってぶん投げたら壊れそうな気がするんだけど。

 実際硝子っぽい材質だし。

 

『まぁ軽く安全確認をね? 強度は意外とあるから遠慮なく放り込んでもらって』

「……わかったわよ」

 

 そこまで言うのなら大丈夫なんでしょうけど……ま、時間も無いしとっとと投げちゃいましょうかね。

 

「じゃあ……ふっ!」

 

 球を手元まで引き寄せてからの全力投球。

 空中で投げたからかなり体勢が崩れたけど上手く入った。

 

『ん。冥界だな』

「早っ!?」

 

 瞬間移動してきたわねこの球。

 本当に毎回毎回なんでうちの主神はこんなに驚かせに来るのかしら……

 っていうかその球に私そんな機能つけてもらって無いはずなんだけど。

 

『冥界ってことは多分紫が言ってたゆ……ゆゆなんたらって言うピンクが元凶だろうな。で、あと中に桜があるらしいんだがそれは消し飛ばしたり封印したりしない方がいいっぽいみたい。ってなわけで突っ込めェ! そんでもってとにかくピンク色を蹴散らせェ!』

「当然!」

 

 さて、じゃあ全部ぶっ飛ばしましょう! 

 まずは突入! ……いきなり階段!? 

 急上昇して衝突を回避! 

 そのまま上まで直行! 

 

「侵入者!? とm「邪魔!」グハッ!?」

 

 なんかぶっ飛ばしたけどピンクじゃないから違う! 

 ピンク! ピンクは何処だ! 

 見つけた!! ピンク!! ……だけどアレは桜ね。

 アレが消し飛ばしちゃダメなやつね? 

 でもなんかアレに春の凝縮体が吸い込まれてるように見えるんだけど。

 本当にアレ消し飛ばしちゃダメなの? 

 

『ん? あぁ、アレやっちゃうと冥界の管理がちょっとヤバいっぽいんだよね。最悪ナミさんに頼んでもいいけどナギさんに何言われるかわかったモンじゃないから出来るだけ避ける方向で』

 

 ナミさんとナギさんは知らないけど色々拙いのね! 

 大体理解したわ! 

 ……長くない? この階段……って思った矢先に門があった! 

 突撃! 

 ……で、屋敷? 

 此処にピンクが……いた! 

 

「アンタが元凶ね! さっさとぶっ飛ばしてあげるからさっさと準備なさい! それと春返しなさい!」

「あら? いきなり乗り込んできて随分な態度ね。失礼よ?」

「私にはそんな暇ないの! わかったらとっとと戦う!」

「はぁ……こういう時って普通もっと話すものじゃないの?」

「普通じゃないから話さないの!」

「…………わかったわよ……じゃあ始めましょう?」

「さぁ! さぁさっさとスペカ宣言なさい! 早く!」

「…………『忘郷』忘我郷ー彷徨える魂「『霊符』! 夢想封印ッッッッッ!!」……早くない?」

 

 5つの光弾がピンクに殺到した。

 勿論ピンクはぶっ飛んだので私の勝ち。

 え? 何? 羅畏也様。……やりすぎ? 

 こんな異変起こした方が悪いのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、じゃあ春を返してもらいましょうか……春って返せるモンなの?」

「出来るわよ。今あの桜についている分を剥がせば大丈夫だし」

 

 今現在異変解決後の会議中。

 異変の首謀者……西行寺幽々子はどうやらあの桜を満開にさせようとして起こしたらしい。

 なんでもあの桜の下には誰かの死体が埋まっているらしく、それを復活させようとしたみたい。

 羅畏也様が桜を調査した結果「やめておけ」とのこと。

 ちなみに羅畏也様のことは幽々子には言っていない。禁忌なんだし当然だけど。

 しかし……あの下には何があったのかしら? 

 

「よし、じゃあ今回はそっちが奪った「春」の返還、及び後日開催される宴会の費用負担。それでいいわね?」

「ええ、大丈夫よ。……出来れば今度はもっとちゃんとした弾幕ごっこがしたいわ」

「考えとくわ」

 

 コレで万事解決ね。

 さっさと帰りましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい紫、冥界と此処が繋がってたわけだが……お前なんかやったか?」

「……イ……イエ……ナニモ……」

「…………………………………………説教」

「ヒエッ」

 

 

 

 




圧倒的急展開!
ちなみに今作霊夢ちゃんはヘカちゃんも瞬殺できます!
逆にシヴァさんと羅畏也さんには瞬殺されます!
ついでに言っておくと別天津神とシヴァさんとの間には絶対に覆せないレベルの実力の壁があります!


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宴会、それと忙殺

夏・・・暑い・・・


 霊夢は忙しかった。

 それはそれは忙しかった。

 具体的に言うと宿題を4分の1くらいしかやってなかった時の八月三十一日である。

 救いがあるとすれば全くやってなかったと言うわけではないことだ。

 ────まぁだとしても忙しいことに変わりはないが。

 さて、何故こんなことになっているのかと言うと原因は異変解決後に予定されていた宴会である。

 本来ならば異変の解決直後に開かれるはずだったのだが、今回は一面雪景色であったため開くのが難しいと判断され、『桜が満開になったら開く』ことになった。

 と、ここまではよかった。ここまではよかったのだが、霊夢と羅畏也は侮っていた。

 春の力を。

 そう。幽々子との交渉により春が返却されることになったわけだが、霊夢も羅畏也も「いくら凝縮されてると言ってもこんな雪景色なら流石に段階的に春になるだろ」と()()を括っていたのだ。

 しかし、いざ一夜開けてみると、もう既に桜が満開だったのだ。

 この劇的ビフォーアフターという言葉ですら生緩いほどの変化には幻想郷の皆さんびっくり。

 まさかこんなことになるとは思わなかった霊夢たちもびっくり。

 勿論そんな状況だったので料理なんて用意しているわけがなく、霊夢と手伝いに来た妖夢は急いで料理を用意していた。

 ちなみに羅畏也とスサノオは見つかるわけにはいかないので神社の奥で待機している。

 と、そんな状況から話は始まる。

 

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 あああああああああああああああああああああああもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! 

 なんで! 私が! こんなことしなきゃいけないのよ! 

 宴会の用意してなかったからよ! (自己解決)

 早いのよ春を返すのが! こんな早いとは思わないじゃない普通! 

 あのピンク今度会ったら覚えてなさい! 

 ってああああああ! 焦げたああああ! 

 本当に……本当になんでこんな……私の本職巫女なんだけど! 料理人じゃないんだけど! 

 

「そこのみりんください!」

「はいどうぞ!」

 

 コイツはコイツでなんなのよ! 

 なんでこんな多くの種類を! こんなに多くの量を! 一片に作れるの!? 

 私いらないんじゃないのコレ!? 

 っていうか私がいない方がいいまであるんじゃないの!? 

 ってあああああ! 唐揚げ揚げないと! 

 取り皿取り皿……そういえばあとどんくらい料理作ればいいの? 

 今回は花見形式にするから重箱をいくつか作るっていうのは聞いてるけど……もう机埋まるわよ? 料理で。

 

「ねぇ、コレあとどれくらい作るの?」

「そうですねぇ……あと5、6箱分は欲しいですね!」

「はぁ!? 正気!?」

「いや……おそらくこの半分程度は幽々子様のお腹に消えますので……多分皆様の分が足りないかと……」

「一体何がどうなってるの!?」

「ハハ……どうなってるんでしょうね……ハハハ……」

 

 隣で作業してる少女、魂魄妖夢の目の輝きが消えた。

 この目は知ってる。

 コレはよく可哀想な人(ツクヨミ)がしている目ね。

 ……苦労してるのね、アンタ。

 

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<ワイワイ

<ガヤガヤ

<キャーキャー

<ウワァァァ! 

 

 つ……疲れた……

 本当に疲れた……

 無事に間に合ったのはいいけど本っ当に疲れた……

 私も早くお酒飲みたい……

 …………あ、そう言えば羅畏也様大人しくしてるかしら。

 襖を開けて、奥の部屋へ。

 空間弄ってるっぽいから結構距離あるのよね……

 着いたって、ん? まさか……

 嫌な予感がする。

 多分コレ開けたら面倒臭いことになってる。

 ……でも開けるしかないのよねぇ……

 

「おう霊夢! 遅かったな!」

「あら、霊夢も来たのね」

「やっほー霊夢ー!」

「気づかれてしまいましたか……まぁ気づかれますよね」

「お邪魔してるよ」

「」

 

 やっぱり何かいる〜。

 紅魔組と魔理沙に可哀想な人……と、紫。いつもの面々ね。

 

「ん、霊夢。お前もコレ飲むか?」

「美味いっスよコレ」

「え……ナニソレ?」

「ん? ア○ヒ。外の酒」

 

 外の酒ぇ……? 

 まぁ興味はあるけど……そんなことより

 

「そこで転がってる紫は何したの?」

「あぁ、コレ? 随分前からあったけど気づいてなかったん?」

「え? そうなの?」

「ハイ。異変解決直後からずっとあったっスよ?」

「そうだったの……」

 

 異変解決直後ね……え? 大丈夫なのソレ? 

 ピクリとも動いてないけど? 

 

「大丈夫大丈夫。後何日かしたら動き出すだろ。気にすんな」

「吊るしとけば解りやすいんじゃない?」

「お、いいね。スサノオ君。吊るしといて」

「了解っス〜」

「いややめてやれよ……」

 

 いいんじゃない? 吊るしておいても。

 

「で? 紫は何やったの?」

「ん? 冥界との境界を開いたまま放置してたんで今回の異変が起こったってことだったからな。説教した」

「思ったより紫が悪かった」

「有罪ね。寒かったんだから」

「まぁ有罪だな」

「吊るすのどこにするっスか〜?」

「そこの梁あたりに吊るしとけ」

「了解っス〜」

 

 スサノオさんが紫の足を持って持ち上げる。

 あ、逆さ吊りなのね? 

 死なないようにしておいてよ? 

 死なれると結構困るから。

 

「よし、いい感じに吊れたな。じゃあ乾杯しようぜ!」

「ハイコレどうぞ」

 

 あ、どうも。

 ……この筒みたいなのどうやって開けるの? 

 コレ……この……えぇ? 

 

「異変解決を祝ってー!」

「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」

 

 本当にコレどうやって開ければいいの? 

 

 ──────────────────

 

 ……思ったより美味しいわねコレ。

 この……シュワシュワがいいわね。

 お子ちゃま三人の口には合わなかったっぽいけど。

 

「なぁツクヨミ君よ。お姉さん最近どうしてる?」

「ニャルの処理に追われてるっぽいよ? 狂信者と発狂者が最近増えてるらしいし」

「あ? アイツまだ諦めてなかったのか?」

「ん、意外とまだ頑張ってるぞ。この前も俺に接触してきたし。まぁいい機会だったんでオーディンの野郎に脅迫状送っといた」

「オーディンさんに? なんでだ?」

「あー……『お前の槍、ねぇから!』ってな」

「え? 槍って……グングニルっスよね? どうしたんですか?」

「まぁ何。最近思わぬ収穫があったってとこだ。気にすんな」

「で? どうするんだ? アースガルドに侵攻するんなら止めるぞ?」

「いやもうぶっ壊しちまおうぜあそこ。ワルキューレども滅ぼしといた方が色々こっちも……

 

 ウチの神々がすっごい物騒な話してる。

 ニャル誰? オーディン誰? 

 しかも侵攻とか聞こえたんだけど? 

 大丈夫よね? 大丈夫なのよね? 

 なんか羅畏也様なら有り得そうなのが怖いんだけど? 

 

「ねぇ霊夢。なんか面白い話して」

「そうだぜー。面白い話をするんだぜー」

「みんなが笑えるやつお願い!」

「無茶振りすぎない?」

 

 いきなりなんなの? コイツら。

 暇なの? 

 っていうか温度差がすごいわねこの部屋。

 

「うーん……じゃあこの前の羅畏也様が龍の一本釣りした時の話でも……」

「……なんか想像できるのよねソレ」

「面白くなーい」

「もっとこう……意外! ってやつないのか?」

「なんで話す前からそんな低評価なのよ……じゃあ……この前異世界に連れて行ってもらった時の話は?」

「それよ! そういう話よ!」

「早く話すのぜ!」

「ハリーハリー!」

 

 えぇ……? こういうのでいいの? 

 

「ハイハイ……えっとねぇ……確か……」

 

 どんなところだったっけ? 

 確か馬鹿でかいカエルとか畑泳ぐサンマとか街に響く爆発音とか……

 自分で考えてて思ったけどコレ結構面白そうね。

 どこから話そうかしら? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃のアースガルド

 

「……ヤバくね? コレ、無理じゃね?」

「いやもっと考えてくれ親父! 頼むから!」

「えぇ……お前でも瞬殺されるのにどうしろって言うんだよ……ロキ、何かいい案はあるか?」

「ん? まぁボクは羅畏也さんと仲良いし……あと悪いのどっちかっていうとコッチだし……」

「いやそんなこと言わずに! マジで頼む!」

「えぇ……」

 

 命乞いすれば助かるぞ! (ロキは普通に助かる)

 




唐突に始まる
羅畏也さんと仲良い神ランキング!
一位 シヴァ→破壊仲間
二位 スサノオ→言わずもがな
三位 ツクヨミ→言わずもがな
四位 ロキ→破滅仲間
五位 諏訪子→意外と仲良い
六位 ブラフマー→友達の弟みたいな
七位 マカミ→狼仲間
八位 インドラ→バトルが楽しい
九位 イザナギ→再婚させてくれたから
十位 イザナミ→同上


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腕、それと仙人。

 茨歌仙プロローグ!
 


 霊夢は困っていた。

 というのも先程、参拝者から奉納物を受け取ったのだが、それの扱いをどうすれば良いかわからなかったのだ。

 ちなみにどんなものを受け取ったかというと、「河童の腕」と書かれた箱に入ったマジックハンドだ。

 詳しいことはよくわからないが、おそらく「よくわからない腕みたいなものが落ちていたので、河童の腕だと思った」とかそんなところだろう。

 そんなわけで霊夢はどうするのが良いか羅畏也に意見を聞くことにした。

 

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 全く……本当によくわからないものを……

 羅畏也なら多分何か知ってると思うけど……

 羅畏也様は────いた。寝てた。

 

「ねぇ羅畏也様」

「……ん。なした?」

「このガラクタ、何なの?」

 

 と、手に持ったこの謎の……腕? を羅畏也に見せる。

 すると羅畏也は興味深そうに答えた。

 

「お、マジックハンドだな。最近じゃ見ねぇし、忘れられて入って来たんだろう」

「ふーん……見た感じ手の届く範囲を広げるには便利そうだけど、皆使わないの?」

 

 ウチで使えないかしらコレ。

 

「そもそも使い時が無ぇ。手でとった方が早いし、届かないなら歩いたほうが早いからな」

「そうなのね……」

 

 つまり需要があんまりなかったってことね? 

 まぁよく考えたらそうね。

 ウチじゃあ使いたい物は物の方から来てくれるし……外の世界も似たような感じなんでしょ。

 じゃあどうしようかしらコレ……

 魔理沙にでもあげようかしらね……

 

「なぁ霊夢、それの扱いに困ってる感じか?」

「ええ。どうしましょ、コレ」

「じゃあそれ高天原に送っていいか?」

「え? なんで?」

 

 こんなモン送ったところでどうするのかしら? 

 

「いや何、最近アマテラスが多忙で手が足りないらしいとスサノオが言ってたからな。それ送って「ホレ、手が足りないんだろ?」と言ってやりたくてな」

「アンタ性格悪すぎない?」

 

 それ所謂悪魔の所業ってやつじゃないの? 

 それの報復で幻想郷から太陽が消えるとかになったら大惨事よ? 

 

「大丈夫大丈夫。そん時は俺が太陽作る」

 

 できそうなのが怖いんだけど。

 ……ん? 来客? 

 結界が反応した。反応的に妖怪っぽいわね。

 ウチは危害のない妖怪なら客として扱うけど……どうかしら。

 

「ん?」

「来客よ。行ってくるわね」

「OK」

 

 腕を羅畏也様に預け、神社の正面の方に回る。

 さて、鬼が出るか蛇が出るか……

 あれ? 人間? 

 ……いや、精巧に気配を隠しているけど妖怪ね。

 でも一応、友好的そうではあるわね。

 

「ねぇ、アンタ」

「!!」

「ここに何の用? ってか誰?」

 

 思った以上にびっくりされたわね。

 確かに気配は消したけど。

 

「え、ああと……私は茨華仙、ただの行者です」

 

 行者? 妖怪が? 

 

「ふーん……なかなか珍しい行者もいたものね。で? 何の用?」

「いえ、ここに河童の腕なるものがあると聞きまして……どのようなものか見せていただきたく参上いたしました」

 

 アレが目的? 

 妖怪が? 何のために? 

 まぁ……いいか。

 

「良いわよ。今から取ってくるから、待ってて頂戴」

 

 と、羅畏也様のところに戻って羅畏也様から箱を受け取る。

 羅畏也様が来客がどんな人か知りたがっていたが、後で説明するとだけ言って戻る。

 羅畏也様にこういうことを教えると基本質問攻めにされるので後回しにする方が得策なのよね。

 

「待たせたわね。これよ」

 

 と、箱を渡す。

 華仙は早速箱を開けて……顔を驚愕に染めた。

 

「えっ? ……これが……河童の?」

「マジックハンドって言うんですって。少なくとも河童の腕ではないわね」

 

 そう告げると華仙は項垂れた。

 すると、

 

「お前、見たことあるぞ」

「「!?」」

 

 羅畏也が神社の屋根から見下ろしていた。

 

「お前、鬼だろ?」

「ッ……」

「え? アンタ鬼だったの? 妖怪ってことはわかってたけど……」

「……いや、元・鬼といった方が正しいか?」

「……羅畏也大神様。何故、貴方が此処に?」

「何故? 俺がここの主神だからだが?」

「っ! 成程……」

「さて、ではお前も何で此処に……と聞くのは無粋だな。その腕だろう? ……なんだ? その顔は。俺は妖神だぞ? 一度見た眷属は忘れん」

 

 あ、会ったことあるのね? 

 

「で? すっかり邪気が抜けきったようだが……もう一度鬼に戻りたいか?」

「……ご冗談を。ただ自分の腕は自分の近くに置いておきたいだけですよ」

「ハハッ。まぁそうか。じゃあ引き続き腕探し頑張ってくれや」

 

 ……行ったわね。

 

「何? アンタ。アイツと面識あったの?」

「まぁ……ね」

「……まぁ、何か困ったことがあったらウチに来なさい。羅畏也様のお客さまならお茶くらい出すわよ」

「じゃあ、そうさせてもらいましょうか。……また来るわね」

 

 と、言うと帰って行った。

 鬼ってあんな大人しいモンなのかしら? 

 でも羅畏也は元、とも邪気がぬけた、とも言っていたし……

 うん、あんまり深く考えない方が良さそうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スサノオ。アイツの腕を探してこい。放置するわけにゃあいかん」

「了解っス。でも良いんスか?」

「いい。俺は妖神だぞ?」

「はいはい。久々の物探し、骨が折れそうっスねぇ」





羅畏也様は眷属が苦悩していることを放っておけません。


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鬼、そして苦悩


 久々にこっちも更新!
 まだエタらんよ!!


 羅畏也は悩んでいた。

 普段は結構どうでも良いことを考えている羅畏也だったが、今回は割とガチめに悩んでいた。

 悩みの種は言わずもがな前回登場した茨歌仙である。

 

 ────────────────────

 

 ……さて、どうしたものか。

 アレは巧妙に隠しているつもりだが、消滅願望持ちだ。

 放っておいたら、いずれ死ぬために動き始める。

 恐らくだが霊夢も巻き込まれることになるだろう。博麗の巫女に大事があってはならん。

 

 それに俺は妖神として、救う神として、一度見てしまった以上は放置などできん。

 ……しかし、どうしたものか。彼奴は割と()()()()

 彼奴が持つ消滅願望の本質は、多分『絶望』。

 

 邪気と共に封印された、『鬼としての感性』と、表層に出てきた『妖怪として本来持つ感性』のあまりのギャップの大きさに耐えきれないのだろう。

 んで、『妖怪として本来持つ感性』を知ってしまったが故に『鬼としての感性』がいかに歪んでいるかを知ってしまい、自分の今までの所業に絶望、再び鬼に戻った後の自分を想像してもう一度絶望。

 鬼に戻りたいけど、戻りたくない。現状は地獄、何とかしても地獄……まぁ、辛いわな。

 

 最善は現状を完全に受け入れるか、鬼としての自分を許容すること。

 ……うん、キツいにも程があるな。

 

「…………ぬぅ」

 

 記憶操作は論外。

 鬼なんて言う人間と妖怪の混ざり物*1に記憶操作なんざしたら何かの拍子に突然発狂する爆弾になる。

 発狂した場所が地底だったら俺もすぐさま検知は無理だしな。

 

 俺の能力では……無理、か? ……無理だろうな。

 俺の能力はあくまで世界を変えるのみ。心は……動かせるかもしれんが、複雑すぎてどうしようもできん。

 出来るとして……アマテラスか? 

 

 アイツも一時期似たような感じになってたって話だしな……

 ……いやダメだ。アイツ太陽神だ。妖怪にとって不倶戴天の大敵だ。

 どうする? マジでどうする? 

 

「珍しいな。そこまで悩んでいるとは」

「……ツクヨミ」

 

 コイツならどうにかできそうか? 

 ……そうだな。身の上話させて同情をさせまくって『私はまだマシ』とでも思わせる、とかか? 

 

「ロクでもないことを考えているな?」

「さて、なんのことやら……で、なんの用だ?」

「特にない。今日一度もお前の波動を感じなかったから様子を見に来ただけだ」

「ほう? それは何だ? 俺にもっと地形を壊しまくってほしいと言うことか?」

「違う。絶対に確実に間違いなく100%違う」

 

 いや、そんなに否定すんなよ……

 

「なぁ」

「何だ?」

「お前の姉が引きこもった時、お前らどうやって引き摺り出した?」

 

 とりあえず相談してみるか。

 何の参考にもならなそうではあるが聞かんよりはマシだ。

 

「は? いや、お前も居ただろあの時。全神集合だったぞ」

「いや、俺生まれてねぇから」

「あ、そうかそうか、そうだったな。じゃあ説明するか……そうだな、みんなで酒盛りしまくって、アメノウズメがめっちゃ踊って、鶏を鳴かせまくって、みんなで大笑いして」

「おう」

「気になって外の様子を見ようとしたところをアマノテヂカラが引き摺り出した」

「成程……」

 

 宴……宴か。

 試す価値は十分ある、な。

 でもこの前に宴はやっちまったからな……次の異変を……

 

 俺が異変起こすか? 

 こう、『毎日宴異変』的な感じで……

 あ、ダメだ。そうなると俺を霊夢が倒さないとならん。

 確実に無理。

 

 ってなると、誰かに首謀者をやらせることになるな。

 誰か……あ、萃香の能力使えばいけそうだな。

 そうなると…………地底。

 

 せっかくだしナミさんのとこ寄るか……。

 

*1
今作において鬼は鬼子母神と人間の間に生まれた子の子孫





 次回はついに地底行くぞー。
 更新いつになるかわからんが。


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